衆議院

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第34号 平成13年5月31日(木曜日)

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平成十三年五月三十一日(木曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第十九号

  平成十三年五月三十一日

    午後一時開議

 第一 水産基本法案(内閣提出)

 第二 漁業法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第三 海洋生物資源の保存及び管理に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第四 漁港法の一部を改正する法律案(農林水産委員長提出)

 第五 中間法人法案(内閣提出)

 第六 国際労働機関憲章の改正に関する文書の締結について承認を求めるの件

 第七 最悪の形態の児童労働の禁止及び撤廃のための即時の行動に関する条約(第百八十二号)の締結について承認を求めるの件

 第八 相互承認に関する日本国と欧州共同体との間の協定の締結について承認を求めるの件

 第九 旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 裁判官訴追委員辞職の件

 裁判官訴追委員の選挙

 日程第一 水産基本法案(内閣提出)

 日程第二 漁業法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第三 海洋生物資源の保存及び管理に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第四 漁港法の一部を改正する法律案(農林水産委員長提出)

 日程第五 中間法人法案(内閣提出)

 日程第六 国際労働機関憲章の改正に関する文書の締結について承認を求めるの件

 日程第七 最悪の形態の児童労働の禁止及び撤廃のための即時の行動に関する条約(第百八十二号)の締結について承認を求めるの件

 日程第八 相互承認に関する日本国と欧州共同体との間の協定の締結について承認を求めるの件

 日程第九 旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 林業基本法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑




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    午後一時三分開議

議長(綿貫民輔君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 裁判官訴追委員辞職の件

議長(綿貫民輔君) お諮りいたします。

 裁判官訴追委員菅直人君から、訴追委員を辞職いたしたいとの申し出があります。右申し出を許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。よって、許可することに決まりました。

     ――――◇―――――

 裁判官訴追委員の選挙

議長(綿貫民輔君) つきましては、裁判官訴追委員の選挙を行います。

小此木八郎君 裁判官訴追委員の選挙は、その手続を省略して、議長において指名されることを望みます。

議長(綿貫民輔君) 小此木八郎君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。

 議長は、裁判官訴追委員に中野寛成君を指名いたします。

     ――――◇―――――

議長(綿貫民輔君) 日程第一ないし第三とともに、日程第四は、委員長提出の議案でありますから、委員会の審査を省略し、四案を一括して議題とするに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。

    ―――――――――――――

 日程第一 水産基本法案(内閣提出)

 日程第二 漁業法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第三 海洋生物資源の保存及び管理に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第四 漁港法の一部を改正する法律案(農林水産委員長提出)

議長(綿貫民輔君) 日程第一、水産基本法案、日程第二、漁業法等の一部を改正する法律案、日程第三、海洋生物資源の保存及び管理に関する法律の一部を改正する法律案、日程第四、漁港法の一部を改正する法律案、右四案を一括して議題といたします。

 委員長の報告及び趣旨弁明を求めます。農林水産委員長堀込征雄君。

    ―――――――――――――

 水産基本法案及び同報告書

 漁業法等の一部を改正する法律案及び同報告書 海洋生物資源の保存及び管理に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書

 漁港法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔堀込征雄君登壇〕

堀込征雄君 ただいま議題となりました四法律案につきまして申し上げます。

 初めに、内閣提出の三法律案につきまして、農林水産委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 水産基本法案は、水産に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、沿岸漁業等振興法にかわる新たな基本法を制定しようとするものであります。

 漁業法等の一部を改正する法律案は、漁場利用の合理化を図り、漁業生産力の向上に資するため、広域漁業調整委員会の設置、定置漁業の免許の優先順位の見直し等の措置を講じようとするものであります。

 海洋生物資源の保存及び管理に関する法律の一部を改正する法律案は、排他的経済水域等における海洋生物資源の適切な保存及び管理を図るため、新たに漁獲努力量の総量管理制度を創設する等の措置を講じようとするものであります。

 水産基本法案は、去る四月五日本会議において趣旨説明及び質疑が行われ、本委員会に付託されました。また、他の二法案については、同月九日本委員会に付託されました。

 委員会におきましては、四月十日谷津農林水産大臣から三法律案の提案理由の説明を聴取し、以来、五回にわたり政府に対する質疑を重ね、その間、五月二十二日には現地視察を、また、同月二十四日には参考人の意見聴取を行う等、慎重な審査を進めました。

 かくて、五月二十九日質疑を終局したところ、水産基本法案について、多面的機能に関する施策をより積極的に規定する等を内容とする自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、日本共産党、社会民主党・市民連合及び21世紀クラブの七会派共同提案に係る修正案が提出され、採決の結果、本案は全会一致をもって修正議決すべきものと議決した次第であります。

 次に、漁業法等の一部を改正する法律案について討論を行い、採決の結果、本案は多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 次いで、海洋生物資源の保存及び管理に関する法律の一部を改正する法律案について採決の結果、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 以上、御報告申し上げます。

 次に、漁港法の一部を改正する法律案につきまして、提案の趣旨及び内容を御説明申し上げます。

 本案は、水産業の基盤である漁港及び漁場を、一貫した水産物供給システムとして、総合的かつ計画的に整備するため、題名を漁港漁場整備法に改めるとともに、漁港漁場整備基本方針及び長期計画の策定、地方公共団体等による漁港漁場整備事業の施行等についての規定を整備しようとするものであります。

 本案は、五月二十九日農林水産委員会において全会一致をもって委員会提出の法律案とすることに決したものであります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(綿貫民輔君) これより採決に入ります。

 まず、日程第一及び第三の両案を一括して採決いたします。

 日程第一の委員長の報告は修正、日程第三の委員長の報告は可決であります。両案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。よって、両案とも委員長報告のとおり議決いたしました。

 次に、日程第二につき採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(綿貫民輔君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

 次に、日程第四につき採決いたします。

 本案を可決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。よって、本案は可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第五 中間法人法案(内閣提出)

議長(綿貫民輔君) 日程第五、中間法人法案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。法務委員長保利耕輔君。

    ―――――――――――――

 中間法人法案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔保利耕輔君登壇〕

保利耕輔君 ただいま議題となりました法律案について、法務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、公益も営利も目的としない団体の社会経済活動が、我が国において重要な地位を占めていることにかんがみ、これらの団体の法人格の取得を可能とする制度を創設しようとするもので、その主な内容は、

 第一に、中間法人としての法人格付与の対象とする団体は、「社員に共通する利益を図ることを目的とし、かつ、剰余金を社員に分配することを目的としない社団」とし、そのような団体が準則主義により設立の登記をすることによって法人格を取得することができるものとすること、

 第二に、中間法人の種類については、社員が法人の債権者に対して責任を負わない有限責任中間法人と、社員が法人の債権者に対して責任を負う無限責任中間法人の二つの類型を設けること、

 第三に、有限責任中間法人においては、社員総会、理事及び監事を置いて、決議、執行、監査するほか、基金制度を採用することとし、無限責任中間法人においては、原則として、各社員が業務を執行し、その過半数の意見により決定するものとすること

などであります。

 本案は、去る二十三日本委員会に付託され、同日森山法務大臣から提案理由の説明を聴取した後、二十五日から質疑に入り、二十九日には参考人から意見を聴取するなど、慎重に審査を行い、同日質疑を終了し、直ちに採決を行った結果、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されたことを申し添えます。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(綿貫民輔君) 採決いたします。

 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第六 国際労働機関憲章の改正に関する文書の締結について承認を求めるの件

 日程第七 最悪の形態の児童労働の禁止及び撤廃のための即時の行動に関する条約(第百八十二号)の締結について承認を求めるの件

 日程第八 相互承認に関する日本国と欧州共同体との間の協定の締結について承認を求めるの件

議長(綿貫民輔君) 日程第六、国際労働機関憲章の改正に関する文書の締結について承認を求めるの件、日程第七、最悪の形態の児童労働の禁止及び撤廃のための即時の行動に関する条約(第百八十二号)の締結について承認を求めるの件、日程第八、相互承認に関する日本国と欧州共同体との間の協定の締結について承認を求めるの件、右三件を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。外務委員長土肥隆一君。

    ―――――――――――――

 国際労働機関憲章の改正に関する文書の締結について承認を求めるの件及び同報告書

 最悪の形態の児童労働の禁止及び撤廃のための即時の行動に関する条約(第百八十二号)の締結について承認を求めるの件及び同報告書

 相互承認に関する日本国と欧州共同体との間の協定の締結について承認を求めるの件及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔土肥隆一君登壇〕

土肥隆一君 ただいま議題となりました三件につきまして、外務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 まず、国際労働機関憲章の改正について申し上げます。

 国際労働機関は、大正八年の第一回総会以降、平成十二年の第八十八回総会までの間に、さまざまな分野において国際的な労働基準を設定するため、百八十三の条約を採択してきました。それらの条約の中には、採択後、相当の期間が経過したためその目的を失ったもの等があり、そのような条約に対しても機関の監視メカニズムが引き続き適用されることに伴う負担がその効率的な活動を阻んでいるとの認識が近年高まってきたことから、平成九年六月の第八十五回総会において、本改正文書が採択されました。

 本改正文書は、機関において採択された条約がその目的を失ったことなどが明らかであるものについて、総会は、理事会の提案に基づき、出席代表の投票の三分の二の多数によって当該条約を廃止することができることを規定しております。

 次に、最悪の形態の児童労働の禁止等に関する条約について申し上げます。

 昭和四十八年に採択された就業最低年齢条約以降も、児童の一層の保護に対する世界的関心の高まりを背景として、労働の中でも児童の心身の発達を妨げるような最悪の形態の児童労働の禁止及び撤廃のための新たな文書を作成する必要性が認識されたため、平成十一年六月の国際労働機関の第八十七回総会において、本条約が採択されました。

 本条約は、児童を強制労働、売春、薬物取引、危険有害業務等の最悪の形態の児童労働に使用することなどを禁止し、及び撤廃するためにとるべき措置等について定めております。

 最後に、日欧州共同体相互承認協定について申し上げます。

 我が国と欧州共同体との間の相互承認に関する協力につきましては、平成十年十月の日・EU閣僚会議において、通信端末機器及び無線機器、電気製品、化学品に係る優良試験所基準並びに医薬品に係る優良製造所基準の優先四分野について、協定締結に向けた作業を推進することで意見が一致いたしました。これを受け、我が国と欧州委員会との間で交渉を行った結果、合意に至ったので、平成十三年四月四日、ブラッセルにおいて、本協定の署名が行われました。

 本協定は、通信端末機器及び無線機器、電気製品、化学品並びに医薬品について、我が国と欧州共同体との間で、規格への適合性評価の結果や製品の試験データ等の相互承認を行うための法的枠組みを定めるものであり、これにより、従来、輸入側締約者の領域内において必要とされていた一定の手続が省略できることとなっております。

 以上三件は、去る五月二十三日外務委員会に付託され、同日田中外務大臣から提案理由の説明を聴取し、三十日質疑を行い、引き続き採決を行いました結果、三件はいずれも全会一致をもって承認すべきものと議決した次第であります。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(綿貫民輔君) 三件を一括して採決いたします。

 三件は委員長報告のとおり承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。よって、三件とも委員長報告のとおり承認することに決まりました。

     ――――◇―――――

 日程第九 旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(綿貫民輔君) 日程第九、旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。国土交通委員長赤松正雄君。

    ―――――――――――――

 旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔赤松正雄君登壇〕

赤松正雄君 ただいま議題となりました法律案につきまして、国土交通委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、東日本旅客鉄道株式会社、東海旅客鉄道株式会社及び西日本旅客鉄道株式会社の、いわゆるJR本州三社の自主的かつ責任ある経営体制の確立等を図るため、所要の措置を講じようとするものであります。

 その主な内容は、

 第一に、JR本州三社を旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律の適用対象から除外すること、

 第二に、国土交通大臣は、国鉄改革の経緯を踏まえ、JR各社間の連携及び協力の確保、路線の適切な維持等に関する事項について、JR本州三社が事業運営上踏まえるべき指針を策定し、正当な理由がなくて指針に反する事業運営を行う場合には、勧告、命令を行うことができることとすること

であります。

 本案は、去る四月十日の本会議において趣旨説明及び質疑が行われ、同日本委員会に付託されました。

 本委員会では、五月二十三日扇国土交通大臣から提案理由の説明を聴取した後、質疑に入り、同日参考人からの意見聴取及び質疑を行い、昨三十日質疑を終了いたしました。

 質疑の中では、国鉄改革についての評価、地方路線の維持方策及び指針の運用に当たっての考え方、本州三社を除くJR各社の将来展望等について議論が行われました。

 質疑終了後、討論を行い、採決いたしました結果、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(綿貫民輔君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(綿貫民輔君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 林業基本法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(綿貫民輔君) この際、内閣提出、林業基本法の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。農林水産大臣武部勤君。

    〔国務大臣武部勤君登壇〕

国務大臣(武部勤君) 林業基本法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 現行の林業基本法は、昭和三十九年、その当時における社会経済の動向や見通しを踏まえて、我が国林業の向かうべき道筋を明らかにするものとして制定されました。

 しかしながら、基本法制定後三十七年が経過し、我が国経済社会が、急速な経済成長、国際化の著しい進展等により大きな変化を遂げるとともに、森林に対する国民の要請は、木材生産機能から、国土や自然環境の保全、地球温暖化の防止等の多面にわたる機能の発揮へと多様化しているなど、我が国森林・林業をめぐる状況も大きく変化いたしております。

 こうした中、現行林業基本法が規定する政策体系につきましては、関係者の多大な努力により成果を上げてまいりましたが、一方で、林業の採算性の悪化、林業収入への依存度の低下等による森林所有者の経営意欲の減退により、管理不十分な森林が増加しつつある状況にあります。

 このため、国民の要請にこたえて、我が国の森林が将来にわたり適切に管理されるよう、木材の生産を主体とした政策から、森林の有する多面にわたる機能の持続的発揮を図るための政策へと転換し、国民的合意のもとに政策を進めていくことが必要であります。

 本法案は、このような基本的考え方のもとに、林政審議会の報告を踏まえ、国家社会における森林・林業の位置づけなど、森林・林業政策に関する基本理念を明確化するとともに、政策体系を抜本的に再構築し、今後の中長期的な政策展開の基軸を明確化するため、提案したものであります。

 次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、森林及び林業に関する施策についての基本理念を明らかにすることであります。

 まず、森林の有する多面的機能の発揮のためには、森林の適正な整備及び保全が必要であることを基本理念として位置づけております。

 また、林業が森林の有する多面的機能の発揮に果たしている重要な役割にかんがみ、その健全な発展を図るとともに、国民の需要に即した林産物の供給及び林産物の利用の促進を図ることについても、基本理念と位置づけております。

 さらに、あわせて、国、地方公共団体及び森林所有者の責務等を定めております。

 第二に、基本計画を策定することであります。

 森林及び林業に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、森林・林業基本計画を定めて、施策についての基本的な方針、森林の有する多面的機能の発揮並びに林産物の供給及び利用の目標、総合的かつ計画的に講ずべき施策を国民の前に示すこととしております。

 第三に、森林及び林業に関する施策の基本方向を明らかにすることであります。

 森林の有する多面的機能の発揮、林業の健全な発展、林産物の供給及び利用の確保に関する施策として基本的なものを定めております。

 以上、林業基本法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第であります。(拍手)

     ――――◇―――――

 林業基本法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(綿貫民輔君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。後藤茂之君。

    〔後藤茂之君登壇〕

後藤茂之君 民主党の後藤茂之です。

 民主党・無所属クラブを代表して、森林・林業基本法等について質問をいたします。(拍手)

 山高きがゆえにたっとからず、木あるをもってたっとしとなす。山は高いだけで価値があるわけではない、森林があってこそ山の価値がある。森林あってこその値打ち、その代表的働きは水の保全です。土砂の流出や崩壊を防ぐ働きもあります。近年では、二酸化炭素の吸収源、野生動植物が生息する場としても注目されています。木漏れ日を浴び、木々の香りを吸いながら森林浴を楽しむことは、心豊かな人生を生きる喜びを感ずるときだと思います。

 ちなみに、代替法を用いたこうした森林の公益的機能の評価額は、七十四兆九千九百億円に上るとも言われます。森林と人間との関係は、生活資材としての木材や水などを森林に依存し、森林からの恵みによって文明が発達したことを考えれば、まさに共生の関係にあると言えます。

 ところが、今、日本の森林が泣いています。

 今回、森林・林業基本法案において多面的機能が正面から位置づけられていることは、大きな意義のあることと考えます。しかし、森林の有する多面的機能の発揮という基本理念から、国民、地域住民の理解と支援を得つつ、どのような森林の整備を推進していくのか、どのように森林の保全を確保していくのか、新たな森林政策の体系が明確にされねばなりません。

 第一に、森林・林業基本計画の森林整備の指針、全国森林計画の策定を通じて、森林の公益的機能の別に応じて、水土保全林、森林と人との共生林、資源の循環利用林に森林を三区分して、複層林化、針広混交林化、広葉樹の導入、優良木材生産林の形成等、多様な森林を整備していくこととされています。

 そこで伺いますが、その区域の設定に当たっては、地域の方々の声をどのような仕組みで、どのように反映していくのでしょうか。また、それぞれの地域の中で、例えば、日本の伝統であった森林と人との豊かな関係を回復するための里山づくり、林道の道沿いに桜を植えて桜並木をつくる桜林道など、さまざまなアイデアが出てきております。こうした地域のすばらしいアイデアは、三区分による森林整備に一体どう生かされるのでしょうか。農林水産大臣に伺います。

 第二に、平成十二年十二月に決定された林政改革大綱で、森林の多面的な機能を図る観点から、森林整備のための地域による取り組みを推進するための措置を検討するとされたことを踏まえ、森林・林業基本法案十二条二項に、森林施策を計画的かつ一体的に実施するために不可欠な森林の現況の調査等の活動を行う森林所有者等への支援が位置づけられております。

 林業においては、現在でも、造林、間伐等の林業生産活動については直接の助成措置が講じられているところであります。しかし、これだけでは十分とは言えません。不在村地主、山林の放棄といった実態に着目すれば、こうした生産活動に対する直接助成に加え、地域による取り組みを可能とするための、面積当たりの直接支払い制度を導入すべきと考えます。大臣の見解を伺います。

 我が国やヨーロッパの歴史において、森林や木材との密接なかかわりの中で、森林を保全しながらこれを有効に活用する仕組み、すなわち森林文化が形成されてまいりました。山村は、その発生、再生産の場であります。

 日本では、長い年月にわたる努力により造成された人工林は森林面積の四割を占め、森林面積は、一世紀前とほぼ変わらず維持されてきています。これは、苗木を背負って山に入り、植えつけや下刈りに汗を流した山村の人々のおかげです。その山村が、現在、高齢化と過疎化に直撃されています。

 森林・林業を守るためには、まず山村を守らねばなりません。山村の活性化に向けた就業機会の増大、用排水施設等生活環境の整備、バイオマスエネルギーの活用などを通じて、資源循環型の社会を山村に築くことが急務です。また、森林を利用した体験活動の場の整備、教育、福祉等の連携による森林環境教育の推進などの都市と山村の交流も、多面的機能の発揮の面からますます重要となっています。

 関係省庁との連携を前提としつつ、多面的機能の発揮とのかかわりにおいて、山村というものを森林・林業と同様、政策体系の中心の一つに位置づけ、トータルで新しい山村政策を展開していくべきと考えます。農林水産大臣の見解を伺います。

 森林を守り育てることは、単に森林所有者だけの問題ではなく、国民全体のコンセンサスをつくり、費用負担を含めて、社会全体で取り組まねばならない課題です。近年、流域の下流の自治体が上流の自治体と協力して、水源地での森林整備を支援する活動がふえてきております。水道料金の一部分を活用して森林整備基金をつくっている例もあります。

 先週二十六日に、木曽川の水源の里、王滝村、三岳村で、「未来世紀へつなぐ 緑のバトン」植樹祭が開催され、参加してまいりました。「緑のバトン」は、木曽川下流域の愛知用水周辺の住民が、水源地で採取されたドングリの実からみずから育てた苗木を、長野県西部地震災害復旧地などの水源地に植林し、生物に優しいドングリの森、すなわち広葉樹の森を造成するものです。流域の上流、下流の協力のまさに実践です。

 また、豊かな海をつくるために、漁業関係者が川の上流で植林、下刈り、間伐等を行うという取り組みが、例えば、「山は海の恋人」というすばらしい言葉とともに有名になった宮城県唐桑町のカキの森づくり、開拓による原生林の伐採によって、「何もない春」とまで歌われた襟裳岬の砂漠の緑化など、全国各地で行われています。国民もまた行動を起こさねばなりません。

 基本法上のもう一つの基本理念とされる林業の健全な発展のためには、林業の担い手への施策の集中、経営の集約化、地域の森林管理主体としての森林組合の機能の充実などの林業構造を確立することに加えて、人材の育成、林業労働力の確保は特に重要であると考えます。林業労働についてどのような施策を講じようとしているのか、農林水産大臣の見解を伺います。

 林業が健全化していくためには、公益的機能による施策に頼るだけではなく、やはり川上の林業と川下の木材産業の合理化と連携を図らなければなりません。育林家が原木を切り出し、住宅建設のために大工さんに運ばれるまでの搬出、加工、流通のそれぞれについて、コストダウンを図り、効率的なシステムをつくることが必要になります。また、消費者のニーズに合わせて売れる林産品をつくるためには、乾燥材供給体制の整備、規格の統一、取引のIT化など、木材産業の構造改革が不可欠となります。

 木材価格の現状について一例を挙げると、杉の山元立木価格が一立米六千円、搬出、加工、流通後の小売値が一立米四万六千円となっています。乾燥材として入ってくる米ツガは一立米四万九千円であるのと比べると、杉の国産乾燥材が立米六万円にもなっています。この間、木材価格の下落により、日本の木材産業の経営が限界まで追い込まれています。天然のヒノキで有名な木曽を通る国道十九号線沿いには、閉鎖された木材工場が幾つもそのまま放置され、通るたびに胸が痛みます。今までどうしてこんなに対応がおくれたのか、早急な対応が必要です。

 こうした現状を踏まえて、木材産業の今後のあり方について、農林水産省としてのビジョンを伺います。

 文豪島崎藤村の生誕地であり、馬籠宿として古い町並みを残す木曽郡山口村は、小学校の全面改装に当たり、古い町並みと学校周辺の豊かな自然に調和した、木の香りとぬくもりにあふれた木造校舎を建設しました。地域のシンボルとなる公共施設に木材を使用することは、利用者に対して木造建築の心地よさと快適な環境を提供するとともに、木材のすぐれた特性に対する地域住民の理解を深め、木材利用を推進する上で効果的です。公共施設における木材利用を推進すべきと考えますが、農林水産大臣の御見解を伺います。

 平成十二年七月に開催された九州・沖縄サミットにおいては、まず外相会合で、バーミンガム・サミットで発表されたG8森林行動プログラムの取り組み状況が報告されるとともに、首脳会合で、持続可能な森林経営の重要性が確認されました。特に、国際的課題となっている違法伐採問題については、サミット参加各国で、輸出及び調達に関する慣行を含め、この問題に対処する最善の方法について検討することが合意されております。

 違法伐採の問題について、環境保全の観点からどう取り組んでいくのか、どのような貿易上のルールづくりを行っていくのか、農林水産大臣並びに外務大臣の見解を伺います。

 国有林については、平成十年の国有林野事業改革関連二法で、既に、木材生産機能重視から公益的機能重視に転換するなど、抜本的な改革を民有林に一歩先んじて進めています。今後、民有林と国有林を一体とした森林政策を展開すべきと考えます。農林水産大臣の見解を伺います。

 民主党は、森林の持つ保水機能や土砂流出防止機能に着目し、森林の再生、すなわち、森林の自然の力を活用した緑のダム化を進めることによって、コンクリートのダムにできる限り頼らない治水対策を目指しています。(拍手)

 もちろん、ダムの中には、急峻な山合いの地形のもとでの治水対策、飲料水確保等の利水対策の観点から必要なものもあります。しかし、速やかに見直しを行った上で、必要性のないものについてはその建設を取りやめ、荒廃した山の間伐、造林、直接支払い政策の導入などの林業政策にその財源を充てていくべきと考えます。(拍手)

 小泉総理も、公共事業について聖域なき見直しを行うと、繰り返し発言されておられます。公共事業のあり方の見直しや自然との共生は、国民の声であります。こうしたいわゆる緑のダム構想を実行すべきと考えますが、国土交通大臣並びに農林水産大臣の御見解を伺います。

 今、国民は、環境、教育、文化といった非物質的なものに大きな価値を認め、人間らしく心豊かに生きようとしています。また、生活にかかわる諸問題の解決について、透明な手続、個人の決定過程への参加を求めております。今、政治の世界に新しい風が吹いているのです。政治は、こうした国民に対し、国の政策理念、制度の仕組みについて、明確に発信し、国民的に開かれた議論を行う責任があります。そして、必要があれば、政策転換や新しい政策の採用に勇気を持って立ち向かわねばならないと考えます。(拍手)

 森林の整備は、長期的な視点に立って、長い年月の努力を要するものです。国民の見識と英知が問われる課題です。

 総理は、所信表明演説の中で、長岡藩の米百俵の話を引用されました。私は、管子の「一年の計は穀を樹うるにしくはなく、十年の計は木を樹うるにしくはなく、終身の計は人を樹うるにしくはなし」と申し上げ、質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣武部勤君登壇〕

国務大臣(武部勤君) 後藤議員の、森林の恵みに感謝する気持ち、そして人と自然、あるいはまた我々自身も自然生態系の一員である、心にしみ入るお話を伺いまして、まず、改めて敬意を表したいと存じます。(拍手)

 委員会の審議を通じて、お互いの考えを開陳し合い、二十一世紀の命のふるさとをお互いに論じ合いたい、かように存じます。(拍手)

 まず、森林の区分について申し上げます。

 森林所有者等の地域の関係者の意見を十分にくみ上げた上で行うことが必要である、このことは言うまでもございません。森林の区分を定める市町村森林整備計画の立案段階から幅広い関係者の参加を進めるなど、地域の意見が適切に反映されるよう、地方公共団体と連携を図って努力してまいりたいと存じます。

 次に、地域のアイデアを生かした森林整備についてお答えいたします。

 三区分のもとで多様な森林整備を推進することとしておりますが、特に、森林と人との共生林を中心に、地域のニーズを踏まえ、御提案のございました林道に沿った桜等の花木の植栽、地域住民等の参加による里山林づくりと利用の推進など、地域のアイデアも生かしつつ、適切な森林整備を推進していく考えであります。

 また、直接支払い制度を導入すべきではないかとのお尋ねがありました。

 お説のとおり、森林・林業分野におきましては、森林所有者等による造林、間伐等の森林施業に対して、従来から助成措置が講じられているところであります。また、昨年十二月の林政改革大綱では、森林整備のための地域による取り組みを推進するための措置を検討するとされたところでございます。

 これらを踏まえ、森林施業を計画的かつ一体的に実施する上で不可欠な森林の現況の調査等の活動に対する支援について、森林・林業基本法案第十二条に位置づけるとともに、現在、その具体化に向けて検討を行っているところでございます。御理解をお願いいたします。

 続いて、新しい山村政策の展開についてでございます。

 御指摘のとおり、山村地域の活性化を図ることは、森林・林業基本政策の重要な課題の一つとして認識しているところでございます。

 森林・林業基本法案の第十五条及び第十七条において、山村における定住の促進、都市と山村の交流等の施策を総合的に位置づけておる次第でございます。これを踏まえつつ、新たな山村政策の展開に向けて検討を進めてまいりたいと存じます。

 また、人材育成、林業労働等についてのお尋ねがございました。

 森林の適切な管理と林業の健全な発展を図るためには、経営の担い手の育成、確保を図るとともに、施業を担う者として、知識、技術等を備えた人材の育成、定着を図ることが重要な課題であります。

 このため、森林組合等への就業希望者の掘り起こしや、技能の向上のための研修等を推進するとともに、安定的な事業量の確保を通じて就業者の処遇の改善を図ってまいりたいと存じます。

 続いて、木材産業の今後のあり方についてでございます。

 木材産業は、木材製品の生産を通じて森林の適切な管理に資するとともに、地域社会の重要な産業の一つであります。

 このため、原木生産、流通、木材加工の各関係者間の連携を強化するとともに、住宅の性能についての関心の高まりなど、木材の需要構造の変化等に対応して、品質、性能の明確な製品の低コスト供給等に意欲的に取り組んでいる企業、地域を重点的に支援し、木材産業の構造改革を推進し、活性化を図ってまいる考えであります。

 次に、公共施設における木材利用の推進についてお答えいたします。

 我が国の林業、木材産業を活性化するためには、国産材を中心とした木材利用の促進が重要であります。

 このため、農林水産省としては、地域のシンボルとして波及効果が大きい、地域材を利用した公共施設整備への支援のほか、木材のよさについての普及啓発を行うとともに、関係省庁に対し、公共施設への木材の積極的な利用を働きかけているところであります。

 今後とも、関係省庁、地方公共団体との一層の連携を図り、公共施設への木材利用が促進されるよう努めてまいる所存であります。

 また、違法伐採問題への取り組みについてのお尋ねがございました。

 違法伐採問題への対応については、昨年、沖縄で開催されたG8首脳会合において、違法伐採に対処する最善の方法についても検討する旨合意され、コミュニケが公表されたところであります。

 違法伐採をなくし、世界の持続可能な森林経営の推進に貢献するため、木材輸入国である我が国として、違法に伐採された木材は使用すべきでないとの考え方に基づき、違法伐採に対処する国際的に理解の得られる最善の方法について、関係省庁と共同して検討してまいりたいと存じます。

 次に、今後、民有林と国有林を一体とした森林政策を展開すべきではないかとの御指摘がございました。

 全く同感であります。

 これまでも、民有林と国有林を初め、幅広い関係者の連携による多様な森林の整備と林業、木材産業の振興を進めてきたところであります。新たな基本政策の展開に当たりましても、民有林と国有林を合わせた施業の実施や、上下流住民の参加等による森林整備の推進など、引き続き、こうした流域管理システムの推進に努めてまいりたいと存じます。

 最後に、緑のダム構想についてお答えいたします。

 森林の有する、水資源の涵養、国土の保全等の機能が高度に発揮されるよう、計画的かつ着実に保水力と土壌保持力がすぐれた森林整備を推進していくことは、まことに重要であります。

 他方、ダムの建設による水源開発は、安定的な水利用を可能とする有効な手法の一つであり、その必要性を吟味した上で着実に推進してまいる考えであります。

 いずれにいたしましても、森林は、後藤議員御指摘のとおり、水資源の涵養、国土の保全、自然環境の保全を初め、多面的な機能を有しております。

 私は、今月二十日に山梨県で開催された全国植樹祭において、緑の少年団から、苗木の贈呈を受けました。その際、森の恵みに感謝し、全国に豊かな緑を広げることをお約束してまいりました。

 将来にわたり、森林の多面的な機能が持続的に発揮されるよう、その整備、保全を推進し、しっかり頑張ってまいりますことの決意を申し上げて、御答弁といたします。(拍手)

    〔国務大臣田中眞紀子君登壇〕

国務大臣(田中眞紀子君) 緑と自然は、私たちの心身をいやしてくれる、大変大切なものでございます。後藤茂之議員が先ほどおっしゃいましたように、共生をしていかなければならないということは、全く同感でございます。

 環境問題として、森林の違法伐採の問題は、大きな問題の一つでありまして、国際社会としての取り組みが重要と認識いたしております。

 我が国としては、関係諸国とも協力しながら、その取り組みを推進していきたいと考えております。特に、我が国は、国際熱帯木材機関を積極的に活用しまして、輸出途上国の体制の改善強化などへの協力を進めてきております。

 貿易ルールに関しましては、違法に伐採された木材は使用すべきではないとの考え方が基本です。木材輸入国である我が国として、違法伐採への対処について、国際的に理解の得られる最善の方法を関係省庁とともに検討してまいります。(拍手)

    〔国務大臣扇千景君登壇〕

国務大臣(扇千景君) 後藤議員から、緑のダムについての御質問がございました。

 我が国は、世界各国の先進国の中でも有数の、森林面積の割合が高い森林大国でございます。現在、森林は日本国土の約六七%を占めているのは、先生も御存じのとおりであろうと思います。これは、ドイツの約二倍の森林でございます。我が国の土地利用から見て、これ以上、森林が大幅にふえるとは考えにくいところでございます。

 そのような状況の中で、死者十名、負傷者百十五名の方を出した昨年の東海豪雨を見るまでもなく、我が国で発生している洪水は、森林の保水機能を上回る降雨によって発生しているのが事実でございます。

 さらに、我が国の河川は急流でありまして、例えば先生の信濃川と欧州のライン川の河川勾配を比べてみますと、信濃川はライン川の約七倍の勾配になっております。このため、ライン川では、数週間かけてゆっくりと洪水が流下しますけれども、信濃川では、一日もかからずに、一気に洪水が押し寄せてまいります。

 したがって、治水上、森林が重要であることは当然ですけれども、森林のみで洪水に対応するには限界がございます。このため、森林を良好に保つとともに、必要なダムの整備を図っていくことも不可欠であると考えております。

 なお、国土交通省所管ダム事業につきましては、先生も御存じのとおり、昨年の公共工事の見直しで、四十八のダムについて見直しをし、四十六のダムを中止するという決断もしております。

 今後とも、むだのないダムの整備を推進して、国民に安全と安心をしていただくために図ってまいりたいと思っております。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(綿貫民輔君) 原陽子君。

    〔原陽子君登壇〕

原陽子君 社会民主党の原陽子です。

 私は、社会民主党・市民連合を代表し、政府提出の林業基本法の一部を改正する法律案に対する質問を行います。(拍手)

 私は、本日、この法案について質問できることを非常にうれしく思っています。なぜなら、実は私の実家は、木を育てる仕事をしています。植林するためのヒノキとか松とか杉の苗木を育てる専業農家に、私は生まれ、育ちました。そうした木への思いを込めて質問をさせていただきたいと思います。(拍手)

 今日、日本の森林・林業は、大きな岐路に立たされています。その原因は、林業の担い手が減少しているということに尽きます。国による林業政策の失敗、つまり、外材依存による国産材の不振と林業への支援不足であるということは、林業の現場から、長い間、指摘されてきました。このような状態が今後も続けば、森林そのものが衰退すると危惧されています。

 そして、さらなる危惧は、この事態に対し、私たちに余りにも危機感がないことではないでしょうか。

 森林が人間の営みと切っても切れない関係にあることは言うまでもありません。人類が森林とともに歴史を刻んできたことは事実であり、森林の破壊や消滅が古代文明の滅亡や幾多の国家の消滅と直結していたことも、今日では明らかになっています。

 森林を消滅させてきたのは、ほかでもなく人類であり、その子孫である私たち現代人は、森林の育成に余り関心を抱かず、加速度的に森林を破壊し続けてきました。一方で、森林の破壊による環境への影響が地球的規模で問題となり、森林の大切さ、重要さが叫ばれてきたゆえんだと思います。

 さて、この林業基本法の一部を改正する法律案は、おくればせながらも、森林・林業の政策を、木材生産を主体にしたものから、森林の有する多面的機能の持続的発揮を図る政策に重点を移すことを目的としています。その中で、林業は、「森林の有する多面的機能の発揮に重要な役割を果たしている」とされ、「健全な発展が図られなければならない。」ものとされています。二十一世紀は環境の世紀と言われますが、多様な生物や豊かな水をはぐくむ森林の役割は大きく、国民の森林・林業に対する期待の多くも、この点にあります。

 しかし、日本の森林の実態は、森林そのものの育成が思うようにいかず、森林の持つ機能が十分に発揮できるような状態ではありません。これは、山林に足を踏み込めば明らかで、農林水産大臣も御承知のことと思います。

 市場原理にゆだねた林業生産活動から、森林の持つ多面的機能という公共性に着目した政策へ転換する以上、ある程度の国の支援のもとで、安定した森林経営が行われることが前提にならなければならないと思います。財源的な裏打ちなしに環境面の配慮まで強いるのは、森林経営・労働者に今以上の負担やリスクが加わることになるからです。

 私は、政府の新たな理念と方向性には同意します。しかし、残念ながら、その理念の実現方法についての具体性は見えてきておりません。農林水産大臣は、持続的林業経営についての具体的方策について、どのようにお考えになっておられるのでしょうか、また、そのための財源についてはどのようにお考えでしょうか、お尋ねをいたします。

 私は、これまで山林や山村に配分されてきた公共事業費のあり方を見直してはどうかと考えます。つまり、これまで、政府の方でも、むだである、あるいは環境破壊であると批判を浴びて、農道事業や一部の大規模林道の事業を中止したように、コンクリートとかアスファルトや無数の治山ダムで山を破壊するのではなく、本当に森林の育成やその担い手を育てることに役立つよう、税金が次の世代に生かされるよう、予算の重点を移すといったあり方が考えられると思いますが、財務大臣並びに農林水産大臣の御見解を伺います。(拍手)

 次に、担い手の問題について、もう少し詳しく質問をいたします。

 担い手を育てるということは、森林を育てるということと一体のものです。この点についても、この法案では、一定の方向性は示されていますが、担い手がどのように確保されるのかは明確ではありません。現場で言われている切実な声としては、林業をやりたいという若者はいるのだが、その受け皿がない、危険な上に収入が安定しない、後を継いでほしいとはなかなか言えないといったことで後継者が育たないというものです。

 この点を解決するには、収入を含め、労働環境の改善を図るための施策が必要ではないでしょうか。法案には、「教育、研究及び普及の事業の充実その他必要な施策を講ずる」とありますが、果たして、これで担い手は本当に育つのでしょうか。具体策について、農林水産大臣の明確な御答弁をお願いします。

 私は、林業をやることに対しての、直接支払いや所得補償などの思い切った政策の導入が必要だと考えていますが、このことについても、大臣のお考えをお聞かせください。

 次に、森林・林業基本計画について伺います。

 政府は、これまでの林業基本法の中で、森林資源に関する基本計画や林産物の需要供給に関する長期見通しを立て、林産物の需給や価格の安定を講ずるものとしてきました。しかし、計画と実績は大きく乖離し、長期見通しが破綻したことは、政府が一番熟知されていることだと思います。

 この一部改正案においても、政府は、林産物の供給や利用に関する目標を定めることになっていますが、従来の長期見通しや計画とどこが違うのでしょうか、また、今回の法案による計画の実効性を担保するものは一体何なのでしょうか、農林水産大臣にお伺いをいたします。

 政府は、目標の実効性を確保するために、国産材の利用に関する目標を具体的な数量で示すとしていますが、この数量目標の設定が国民の実際の消費とどうつながっていくのかは明確ではありません。国産材の育成が実際の供給や消費につながらないのであれば、これまでと変わらず、計画倒れに終わります。

 法案では、政府が消費に関する指針も定めることになっています。しかし、国産材の消費につながる具体的な施策は見えてきません。政府は国産材の消費についてどのような施策を講じるのでしょうか、農林水産大臣にお伺いをいたします。

 また、環境を重視して立てられる供給量の目標は、市場原理ではなく、森林育成や需要促進の観点から設定される必要があると私は考えておりますが、いかがでしょうか。もちろん、原生林や広葉樹を伐採するのではなく、健全に育てるべき木を育てるべき場所で育てて、そして健全に切るという発想です。農林水産大臣の御見解を伺います。

 外材への依存構造からどう脱却するかということについても質問をいたします。

 日本の木材の利用は、外材利用が八〇%、国産材の利用が二〇%という中で、国産材は、外材の価格に連動させられる形で価格を引き下げざるを得ないというのが実態です。この実情を改善し、国産材の利用を促進するための有効な施策は考えられないのでしょうか、農林水産大臣にお伺いをいたします。

 国産材の自給率向上にこだわるもう一つの側面は、国際的環境保全の見地からも重要だからです。

 国際的な批判も浴びている、日本企業による熱帯雨林やシベリアの森林の乱伐、それが、環境破壊を引き起こし、一種の南北問題に発展しています。一九九二年の地球サミットでは、森林原則声明が採択されました。この声明は、森林の保全と利用を両立させ、持続可能な森林経営を理念とするものです。

 私は、必要な木材はできる限り国内で生産することを基本とすべきだと考えます。また、できるだけ身近な資源を利用し、循環させることは、エネルギー保全にもつながります。日本の国土の七〇%は森林であり、世界第三位の森林国です。そんな国が、自分の国の木材は採算がとれないから利用しないとか、国外の木材は安いから幾らでも伐採して利用するというのでは、国際的に通用するはずがありません。

 そこで、木材の自給率向上に取り組むべきだと考えますが、農林水産大臣の御見解をお聞かせください。

 冒頭に申し上げました。私は農家の娘です。林業とか農業の大変さは、よくわかります。実家にいたころは、農業なんて絶対にやりたくないというふうに思っていました。そして、なりふり構わず、泥だらけになって働く両親を恥ずかしいと思ったこともありました。しかし、大変な仕事ながらも、生き生きと働く喜びを持って木を育てている家族を、私は今、誇りに思います。(拍手)

 私たちの心を豊かにしてくれる自然環境、その保全の一端を担う林業を営む人々が、また、これから林業に携わっていこうという人たちが、喜びを持って働くことができる、これが私たちの望みではないでしょうか。そんな願いを酌んでの大臣からの御答弁を期待して、私の質問を終わりにいたします。(拍手)

    〔国務大臣塩川正十郎君登壇〕

国務大臣(塩川正十郎君) お答えいたします。

 先ほどの御質問の中で、森林を破壊するようなダムとか林道の建設への投資をやめて、もっと人材育成に尽くすべきではないかとおっしゃっておいででした。

 人材育成は私たちも大いに賛成でございますが、しかし、ダムの建設や林道の建設というものは、山を健全に守っていくためにはやはり必要なものであると思っております。それは、一つは、山地の災害を防ぐことでもあり、一方においては、林道の整備を通じましてより健やかな、いい森林をつくるためでございます。

 したがって、林道並びにダムにつきましては、その建設について、十分に環境破壊との関係を考慮しながら、必要なものは進めていくという方針をとらざるを得ないのであります。

 なお、人材育成につきましては、私も大いに賛成でございますし、どうぞ、そういうことにおきます積極的な施策を展開するよう協力いたしてまいるつもりであります。

 以上であります。(拍手)

    〔国務大臣武部勤君登壇〕

国務大臣(武部勤君) 最もお若い、新緑にも匹敵する原議員から、さわやかな、心温まる、まことに整理されたすばらしい御質問をいただきまして、大変感激いたしました。(拍手)

 私の答弁は、御質問に順序よくお答えできないかもしれませんが、お許しをいただきたいと思います。

 まず、森林の有する多面的機能に配慮した林業経営の実現のために、森林の果たすべき機能に応じた施業への誘導を図りつつ、効率的、安定的な林業経営を育成、確保する、かような必要を感じております。

 このため、育成すべき担い手の明確化と、これらの者への受委託等による施業や経営の集約化の促進、林道等の整備や機械化による生産コストの低減等を図ってまいらなければならない、かように存じております。

 次に、林業者への支援の財源についてであります。

 効率的、安定的な林業経営を育成、確保するために、今後とも、森林の整備、保全への支援、生産性の向上、木材の需要の開拓等の施策を総合的に講じる必要がございます。これに必要な財源については、施策の重点化、効率化を行いながら、その確保に最大限努力してまいりたいと存じます。

 次に、林野公共事業の見直しについてでございます。

 林野公共事業は、国民の要請にこたえ、森林の有する多面的機能を持続的に発揮させていくためには、極めて重要な事業であると存じます。これまでも、造林、林道の整備、また治山施設の配備等を行い、豊かな森林の育成、整備を進めてきたところでございますが、今後とも、森林整備や担い手の確保・育成対策に資するよう、重点的かつ効率的な事業の推進に努めてまいりたいと存じます。

 次に、林業の担い手確保についてのお尋ねでございます。

 林業就業者を確保、育成していく上で、就業者の処遇の改善が重要であることは言うまでもございません。そのように認識しております。

 このため、生産性の向上等により事業体の収益性を高めることを通じて、安定的な事業量の確保とともに、通年雇用化等、そこで働く就業者の処遇の改善を図ってまいりたいと考えております。

 あわせて、林業の担い手確保のための林業者への所得補償についてのお尋ねがございました。

 担い手の確保については、先ほど申し述べましたような施策を推進していく一方で、森林所有者等が行う、森林施業の計画的かつ一体的な実施に不可欠な森林の現況調査等の活動に対する支援を、今回の森林・林業基本法案に位置づけるとともに、現在、その具体化に向け検討を行っている次第でございます。

 続いて、森林・林業基本計画と従来の計画との相違についてのお尋ねがございました。

 現行の資源基本計画及び林産物の需給に関する長期見通しは、森林整備の基本方向と重要な林産物の長期的な需要及び供給の見通しを示したものであります。

 これに対して、森林・林業基本計画は、施策の基本方針、森林の整備及び保全の指針としての目標と林産物の供給及び利用の目標、政府として講ずべき施策等を総合的に盛り込んだ計画でございまして、森林・林業、木材産業関係者はもとより、広く国民の取り組むべき課題や国の施策の方向を明らかにするものであります。

 また、森林・林業基本計画の実効性をどのように担保するのかについて申し上げます。

 基本計画に掲げる目標を達成するには、施策の着実な推進とともに、森林所有者など関係者一体となった取り組みが求められます。

 このため、基本計画においては、関係者が取り組むべき課題を明らかにし、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策を定めるとともに、これを具体化していく考えであります。おおむね五年ごとに計画を見直し、政策の効果を検証していくことを通じ、その実効性の確保を図ることといたしております。

 次に、国産材の消費拡大をどのように図っていくかというお尋ねがございました。

 木材は、人や環境に優しいすぐれた資材であり、その利用を通じて、我が国林業の活性化、森林の適切な管理に資するものであります。

 このため、木材利用について国民への普及啓発を図るとともに、住宅や公共施設等への地域材利用の促進、またバイオマスエネルギーとしての利用など、木材、とりわけ国産材の需要拡大に取り組んでまいりたいと考えております。

 また、林産物の供給・利用目標についてお尋ねがございました。

 この目標については、望ましい森林施業のあり方や、それに伴い産出される木材の供給量、品質、性能等に係る消費者ニーズを踏まえ、関係者が取り組むべき課題を明らかにし、当面目標とすべき具体的な木材の供給・利用量や木材利用の方向について提示することを想定しております。

 今後、この目標を含めた基本計画に基づき、望ましい森林施業と、人や環境に優しい素材である木材の利用の意義について、国民の理解を得つつ、木材利用の促進を図ってまいりたいと存じます。

 次に、国産材の利用促進について申し上げます。

 国産材の利用を促進するためには、品質、性能の明確な製品を低コストで安定的に供給することが重要であります。

 このため、乾燥材等の供給体制の整備や加工、流通の拠点施設の整備等により木材の安定供給体制をつくり、需要者のニーズに合った国産材の供給を図ることにより、その利用を促進していく考えであります。

 最後に、国際的な環境保全の観点から木材の自給率の向上に取り組むべきとの御指摘がございました。

 全く同感でございます。

 我が国の木材輸入により、輸出国の森林の有する多面的機能が失われることがないよう、我が国として配慮することは大変重要なことと考えております。

 また、国産材の利用の促進が、我が国の森林の有する多面的機能の発揮及びそれを支える林業の健全な発展に極めて重要な役割を果たしていることから、引き続き、国産材の需要の拡大に努めてまいります。

 以上、答弁といたします。(拍手)

議長(綿貫民輔君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(綿貫民輔君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時十六分散会




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