衆議院

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第40号 平成13年6月15日(金曜日)

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平成十三年六月十五日(金曜日)

    ―――――――――――――

  平成十三年六月十五日

    午後一時 本会議

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本日の会議に付した案件

 土地収用法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 銀行法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑




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    午後一時四分開議

議長(綿貫民輔君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

小此木八郎君 議案上程に関する緊急動議を提出いたします。

 内閣提出、土地収用法の一部を改正する法律案を議題とし、委員長の報告を求め、その審議を進められることを望みます。

議長(綿貫民輔君) 小此木八郎君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。

    ―――――――――――――

 土地収用法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(綿貫民輔君) 土地収用法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。国土交通委員長赤松正雄君。

    ―――――――――――――

 土地収用法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔赤松正雄君登壇〕

赤松正雄君 ただいま議題となりました法律案につきまして、国土交通委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、事業認定の透明性及び信頼性の向上を図るため、事業の認定に関する処分を行うに際して公聴会の開催、第三者機関からの意見聴取及び事業認定の理由の公表を行うとともに、収用または使用の裁決に関係する手続の合理化を図るため、収用委員会の審理における代表当事者制度の創設、土地調書及び物件調書の作成手続並びに補償金払い渡し方法の合理化等の措置を講じようとするものであります。

 本案は、去る七日の本会議において趣旨説明及び質疑が行われた後、同日本委員会に付託され、八日扇国土交通大臣から提案理由の説明を聴取し、十二日参考人からの意見聴取を行い、十三日質疑を終了いたしました。

 質疑の中では、今後の我が国における公共事業の目指すべき方向、事業計画策定段階からの情報公開及び住民参加の必要性並びに公聴会における議論及び第三者機関の意見の反映方策などについて議論が行われました。

 本日、本案に対し、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、保守党及び21世紀クラブから、国土交通大臣及び都道府県知事は、事業の認定に関する処分を行うに際して聴取した第三者機関の意見を尊重しなければならないものとする等の修正案及び社会民主党・市民連合から、原案の全部を修正する修正案がそれぞれ提出され、両修正案について趣旨説明を聴取いたしました。

 次いで、討論を行い、採決いたしました結果、社会民主党・市民連合提出の修正案は賛成少数をもって否決され、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、保守党及び21世紀クラブ共同提出の修正案並びに修正部分を除く原案はいずれも賛成多数をもって可決され、本案は修正議決すべきものと決した次第であります。

 なお、本案に対して附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(綿貫民輔君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(綿貫民輔君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり修正議決いたしました。

     ――――◇―――――

 銀行法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(綿貫民輔君) この際、内閣提出、銀行法等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。国務大臣柳澤伯夫君。

    〔国務大臣柳澤伯夫君登壇〕

国務大臣(柳澤伯夫君) ただいま議題となりました銀行法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 昨今、金融業以外の事業会社による銀行業への参入の動きが本格化してきていること等、銀行業、保険業その他の金融業等を取り巻く社会経済情勢は著しく変化してきております。

 このような状況のもと、銀行等の株主に関する制度の整備を行うとともに、金融における新たなビジネスモデルに対応した環境整備を行うことにより、銀行等の健全かつ適切な経営を確保し、その信認の向上を図りつつ、我が国金融の活性化を図るため、この法律案を提出することとした次第であります。

 以下、その大要を申し上げます。

 第一に、銀行等の経営の健全性確保の観点から、銀行等の発行済み株式の五%を超える株式の所有者については、その株式所有に関して届け出ることとするとともに、原則二〇%以上の株式の所有者については、銀行経営等に対する実質的な影響力に着目して主要株主と位置づけ、株式所有の目的や財務面の健全性等に基づいて、あらかじめ認可を受けることとしております。これらの株主に関しては、特に必要な場合における報告等の徴求や立入検査等、適切な監督の仕組みを設けることとしており、また、五〇%を超える株式を所有する主要株主に対し、特に必要があると認めるときは、銀行等の経営の健全性確保のための措置を求め得ることとしております。

 第二に、金融における新たなビジネスモデルに対応した環境整備を図るため、銀行の営業所の設置等について、認可制を原則、届け出制に改めるとともに、銀行、保険会社及び協同組織金融機関について、子会社における従属業務と金融関連業務の兼営を認めるなど、所要の制度整備を行うこととしております。

 以上、銀行法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第であります。(拍手)

     ――――◇―――――

 銀行法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(綿貫民輔君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。五十嵐文彦君。

    〔五十嵐文彦君登壇〕

五十嵐文彦君 民主党の五十嵐文彦でございます。

 私は、民主党・無所属クラブを代表いたしまして、ただいま議題となりました銀行法等の一部を改正する法律案について質問をいたします。(拍手)

 バブル崩壊以前、我が国の自殺者は毎年二万人前後でございました。ここ数年、もうしばらくたちますけれども、三万人の水準を超えて、今や、三万三、四千人という悲惨な数に達しております。しかも、この自殺者は、中高年の自殺者が二倍になり、とりわけ中小零細企業の経営者の自殺が目立っております。私の友人の中にも自殺をされた方がいらっしゃいます。

 この背景には、金融機関が、貸し渋り、貸しはがしをする一方で、悪質な取り立てを行う商工ローンや消費者金融にお金を回すといった事実があります。そして、銀行自体も、他の先進国に余り類を見ない過酷な個人保証、連帯保証をとって、これらが大きな原因をつくっているところであります。金融機関が個人保証で中小企業経営者に無限責任を負わせるというのは、貸し手と借り手の力関係を利用したアンフェアな商慣習だと私は思います。

 大体、銀行というものは、リスクを審査し、その審査結果を利率に反映させるということで、金融機関は仕事をしているわけであります。リスクを全くとろうとしないということであれば、これは私は、銀行業の堕落にほかならないと思います。

 また、一方で、この個人保証制度というのは、倒産経営者の再起を妨げます。我が国のベンチャービジネス、どうして起業が立ちおくれるのか、ニューエコノミー対応が立ちおくれているのか、その大きな原因になっているのではないでしょうか。

 アメリカでは、何度も倒産から立ち直った、そうした企業家がニュービジネスを育て上げ、立派に雇用を吸収するということをしているわけであります。日本においては、長い間、護送船団方式の金融行政で甘やかされ、それにおごった殿様商売、銀行のモラル低下がいかに経済全体を悪くし、多くの犠牲者を出したかということであります。

 個人保証など銀行優位の仕組みやモラルハザードを招きやすいシステムを改めることこそ、経済構造改革の実は大きな前進につながるのではないでしょうか。本来、熱血漢の小泉総理にこの点の御所見をまず伺います。

 断っておきますけれども、私は、決して規制緩和に反対する立場ではございません。むしろ、徹底した規制緩和、規制改革の論者であります。しかし、規制緩和という看板だけ掲げればそれでいいということではありません。

 規制緩和の目的は、競争原理を徹底して働かせ、そして、市場の活性化と公正性をむしろそれによって確保し、消費者の利益に寄与するというものであります。この目的を達成するためには、透明で公正なルールづくりというのが絶対に欠かせません。そうでなければ、強い者の論理が市場を支配し、競争原理がむしろ逆に働かなくなってしまうからであります。ましてや、経済に血液を供給するという金融機関の公共性、この公共性を担う銀行業では、より厳格で公正なルール、高いモラルというものが求められなければなりません。

 ところが、我が国の銀行は、バブルをあおり、バブル崩壊後は、責任逃れのために、その不良債権処理を引き延ばしに引き延ばし、そして、日本経済混迷の最大の原因をつくってまいりました。にもかかわらず、その反省に立った透明、公正なルールづくり、あるいは厳しいチェック体制、あるいは罰則の強化というものが、我が国ではいまだに欠落をしております。

 本法律案では、異業種からの銀行業への参入を認めています。そのこと自体は、私は賛成をし、悪いことではないとはっきり申し上げますけれども、しかし、新規参入した企業グループが、その銀行をいわゆる機関銀行化してしまわないか、あるいは銀行経営にちょっとつまずいたからといって、さっさと逃げ出してしまうようなことがありはしないか、こうしたアンフェアな行為に対して歯どめが十分にかかっているのかどうか、私どもは十分に注意をしなければなりません。その点について、柳澤金融大臣のお考えを伺いたいと思います。

 また、他業禁止が定められていた、あるいは定められている現行法下ですら、あのバブルの最盛期には、銀行は不動産業化してしまいました。私の友人の銀行の支店長も、事実上、その時代は不動産業をやっていたと言っているわけであります。その反省を生かすことなく、普通銀行に信託業務を解禁してしまえば、将来は不動産業化を招くおそれがあるのではないでしょうか。仲介業務は禁止をするということでありますけれども、その程度の禁止規定では、しり抜けになるのではないでしょうか。

 他方、銀行は、全銀オンラインというような仕組みによって異常に高い手数料を固定化し、私たち預金者に強いております。新規参入の銀行もこの全銀オンラインへの参加をしなければならないということで、手数料引き下げを新規参入の銀行しようとしてもなかなかできないという仕組みになっている。すなわち、競争原理がもともと十分機能しない世界を、あの護送船団方式の時代に形づくってきてしまったということが言えると思います。

 金利についても、自由化をしたわけですけれども、その横並び姿勢は直っておりません。競争原理が働きにくいということは、全く変わっていないわけであります。

 さらに、最近では、個人向けローン会社を次々に銀行は設立し、超低金利で仕入れた資金でもって年利一五%から一八%、そうした高金利の消費者ローンをみずから始めました。モラルハザードを拡大させているのではないでしょうか。金融機関のノウハウ、そして情報の集積、財務力を生かせば、金利はもっと下げられるということではないでしょうか。

 民主党は、地域金融円滑化法案を参議院に提出しました。銀行に地域経済への貢献を促すとともに、貸し手、借り手の間のルールをきちんとする、そして、銀行の支配力によって自分たちだけ有利な仕組みを保つ、こういったことをとめていく、そうした提案をいたしております。さらに、インサイダー取引などを厳しく取り締まる日本版SECを設置するための証券取引委員会設置法案を提出いたしております。

 与党は、こうした構造改革法案に対し審議すら拒否をしているわけでありますが、小泉内閣の姿勢と全く相反する、矛盾するものではありませんか。総理並びに柳澤大臣の所見を伺います。

 ところで、先週の党首討論で、我が党の鳩山代表が不良債権問題をただしました。小泉総理は、それは予算委員会で柳澤大臣との間でやってくださいというような回答でありました。

 私は、日本の不良債権の額は本当にどうなのか、実態はどうなのかというのは国際的な関心を呼んでいる問題だ、来るべき日米首脳会談でも必ず重要テーマの一つになると思っております。決して、細かい問題でも、専門的過ぎる問題でもありません。金融庁が銀行の甘い自己査定をそのまま容認して大本営発表を繰り返し、日本経済全体、日本の市場全体に対する不信を招いている、こうした問題に正面から私どもは取り組まなければならないと思います。

 小泉総理に、不良債権問題への取り組み姿勢を改めて伺いたいと思います。

 私たちは、銀行に対して緊急一斉検査を実施して厳格に資産査定をし、よい銀行と実質過少資本行を区別する、その方が経済の先行きをむしろ明るくすると考えています。その上で、万が一、システミックリスクがあるという可能性がある場合は、金融再生法を復活して、公的資金の強制注入もむしろ検討した方がいい。ただし、これには金融機関の責任追及というのは絶対に欠かせません。その上で、最悪の事態にも万全の備えをしているんだから大丈夫ですよということを市場に伝えて、安心感をむしろもたらすということがいいことだと思っております。

 柳澤大臣はいかがでしょうか。最悪の場合に備えるのが政治というものではないでしょうか。

 また、公的資金注入行の経営健全化計画の履行状況については厳しいチェックが必要であります。スウェーデンなど諸外国の例を見ても、グッドバンクとバッドバンクを分ける、そして厳しいリストラによって、おおむね三年程度でみんな経営指標を著しく改善しているという例が目立っております。日本でだけ、どうしてこんなに時間がかかるのでしょうか。

 日本でも、例えば総会屋に対する便宜供与という不祥事を契機に、ある銀行では経営陣二十六人を一斉に退任させました。それによって、むしろ、この銀行は人材が育ち、その他の競争においても、他行より経営内容の改善が目立っております。すなわち、責任をとるということが大事なのであります。責任や使命を問う厳しさが解決の切り札であります。

 リストラがおくれ、甘い経営健全化計画しか立てられず、配当余力を失った銀行については、国が議決権を行使して一時準国有化、そのような道を選択した方が、むしろ早く、日本全体の金融危機のおそれを完全に回避できるのではないでしょうか。護送船団方式へ逆戻りをするような大甘の行政措置をとらないように、柳澤大臣に強く求めるところであります。

 また、生命保険会社については、逆ざや対策としての予定利率引き下げの要求が与党内などから出ているようであります。その一方で、膨大な費差益や死差益が逆ざやを補っていると発表されております。

 死差益というのは、生保の努力によらない利益であります。これが大きいのは問題です。新しい簡易生命表を使う。古いのを使えば死差益がたくさん出るわけであります。また、平均余命の端数を切り捨てると、実は、その分だけ生命保険会社は得をいたします。こうしたことは、しかし、本来は保険加入者に還元をしなければいけない、保険加入者に不利とならない計算をできるだけすべきでありまして、圧縮すべきであります。

 逆ざやは、新規契約の増加あるいは資金の運用努力、そしてリストラによって吸収すべきでありまして、安易に予定利率を引き下げるということは、日本における契約概念というものを崩壊させ、日本社会全体の信用を失わせるのではないでしょうか。柳澤大臣に明確な方針の御提示を求めたいと思います。

 小泉内閣は、構造改革への意気込みは大変立派でございます。しかし、改革の第一歩と称する緊急経済対策は、肝心な点で先送り先送りをし、また、ピント外れの点が目立っております。

 民主党は、公共事業コントロール法案、天下り禁止法案、あるいは先ほど申し述べました金融関係の法案、たくさんの改革のメニューを提示し、全体像を既にこうした法案の形で提示しております。

 私は、さきの予算委員会で、総理との間で、改革をウナギに例え、抵抗勢力をウツボに例えて、かば焼き問答をいたしました。しかし、三カ月も四カ月もにおいだけでは、幾ら国民でも空腹に耐えかねるのではないでしょうか。改革はスピードが肝心であります。

 小泉総理は、たびたび、石原都知事と目立つ形で会われていますけれども、ひょっとすると、小泉・石原新党、そして衆議院解散という、このにおいを出し続けることによって、与党内あるいは官僚の世界にあるウツボ集団を押さえ切れるんじゃないか、そう思っておられるのではないでしょうか。しかし、水槽の中は官僚も含めてウツボだらけに近いわけでありますから、においだけの牽制でうまくいくとは思えません。

 ぜひ、ウツボの皆さんや抵抗勢力の皆さんときっぱりとした決別をされるようお勧めをいたしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 五十嵐議員にお答えいたします。

 金融機関がシステムとして個人保証等に依存し過ぎているのではないかとの御指摘であります。

 金融機関が融資を行うに当たり、借り手の財務状況等の審査をなおざりにして担保や保証のみに依存することは、不適切であると考えております。したがって、各金融機関においては、不良債権の発生を抑えるためにも、適切な審査、管理体制を確立し、審査精度の向上に努めることが重要であります。しかしながら、借り手の状況によっては、債権保全を図るため個人保証を求めることが有効な場合もあり、個人保証を求めるかどうかについては、個々の経営判断にゆだねられるべきものと考えております。

 民主党提案の、地域金融円滑化法案及び証券取引委員会設置法案に関するお尋ねです。

 法律案の審議の進め方については、私から申し上げることは差し控えさせていただきます。院の判断によるものが多いと思います。

 検討中の地域金融円滑化法案に関しましては、各金融機関は、従来より、地域住民、中小企業への融資を初め、その業務を通じて、地域経済の発展等のためにさまざまな貢献をしているものと考えております。また、このような金融機関の融資業務等については、基本的には、自主的な経営判断、すなわち市場メカニズムに従って行われるべきであることから、一定の基準に基づいて政府が各金融機関の活動を評価すること等については、慎重に考えるべきものと考えます。

 次に、民主党より提出された証券取引委員会設置法案についてです。

 金融の担い手や金融商品が、銀行、証券、保険などの垣根を越えて一体化しつつある流れを踏まえると、銀行、証券、保険の各分野を横断的に所管し、企画、検査、監督、監視と機能別に編成している金融庁の現体制は、こうした流れと一致しており、機動的かつ総合的な政策の遂行が可能な体制であります。

 したがって、金融庁から証券・市場部門のみを分離独立させて証券取引委員会を設置しようとする同法案は、適切ではないと考えております。

 金融機関の自己査定及び不良債権問題への取り組みについてです。

 金融機関の自己査定については、監査法人等による外部監査のほか、金融庁の厳正な検査、監督が行われているところであり、その結果も開示されているところであります。

 不良債権については、基本的に、こうした査定のもとに担保及び引き当て等により適切な保全が図られているところでありますが、金融と産業の一体的な再生を図り、経済の構造改革を進めるため、その最終処理に全力を挙げて取り組む決意であります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣柳澤伯夫君登壇〕

国務大臣(柳澤伯夫君) 五十嵐文彦議員から、数々、御質問をいただきましたが、第一は、異業種からの銀行業への新規参入と、機関銀行化等アンフェアな行為に対する歯どめがあるのか、こういうことについてお尋ねがございました。

 本法律案では、機関銀行化の弊害を防止する等の観点から、主要株主が銀行に不利益を与えるような取引を禁止するルール、つまりアームズ・レングス・ルールでございますが、この対象にいたしております。

 また、主要株主の適格性を確保する見地から、参入に当たって、株式所有の目的や経営方針、社会的な信用等に基づいて厳正に審査をし、さらに、継続的に報告徴求や検査等の監督を行うことといたしておりまして、これらの制度の的確な運用を通じて銀行等の健全かつ適切な運営が確保されることとなっております。

 次に、普通銀行が信託業務の解禁のもとで不動産業化するのではないかとの懸念について質問がございました。

 都市銀行等に解禁するのは、金融業務の一環としての不動産信託のみであり、本業との関連性が少ない不動産仲介業務等については、法令上、参入を認めないことを明定いたしました。したがって、野方図な不動産業化を招くおそれがあるという御指摘は当たらないものと考えております。

 次に、民主党が御提案し、あるいは御検討中の、地域金融円滑化法案及び証券取引委員会設置法案に関してお尋ねがございました。

 ただいま総理も御答弁申し上げましたとおり、地域金融円滑化法案につきましては、各金融機関は、従来より、その業務を通じて、地域経済の発展等のためにさまざまな貢献をしているものと考えております。このような金融機関の融資業務等については、基本的には、自主的な経営判断、すなわち市場メカニズムに従って行われるべきことであると考えておりまして、一定の基準に基づいて政府が各金融機関の活動を評価すること等については、慎重に考えるべきものと存じます。

 次に、証券取引委員会設置法案についてお答えを申し上げます。

 ただいま総理もお触れになりましたように、昨今の金融市場を見ますと、金融コングロマリットの出現といった金融の担い手の一体化、それから金融商品の一体化といった流れがございまして、これを踏まえますと、銀行、証券、保険の各分野を横断的に所管する金融庁の現体制の方が、むしろ、この流れに沿っているというふうに考えております。金融庁より証券・市場部門のみを分離独立させて日本版SECを設置しようという考え方は、私どもは適切でないと考えております。

 次に、厳格な資産査定及び公的資金の強制注入についてのお尋ねがございました。

 金融機関の資産査定等につきましては、国際基準にのっとり、パブリックコメントまでをいただいて制定をいたしました金融検査マニュアルに沿って、金融機関による自己査定、公認会計士等による外部監査、さらに金融当局による検査、監督を通じて、厳正な資産査定等が行われているところでございます。

 また、公的資金の強制的な注入に関しましては、自由主義経済のもとで、私企業の経営戦略の根幹をなすところの資本政策に国が強制的かつ直接的に介入することになることは、適当でないと考えるところでございます。

 また、経営健全化計画、すなわち、公的資金で資本増強を行った銀行の提出いたしました計画でございますが、この遵守状況についてお尋ねがございました。

 現在、主要行のみについて私ども審査をいたしておる、概観をいたしておるわけでございますけれども、店舗数、従業員数等に係るリストラ計画は、おおむね計画どおり実現されているというふうに認識をいたしております。

 最後に、生命保険会社の既契約の予定利率引き下げについてお尋ねがございました。

 生命保険会社の経営をめぐる問題につきましては、我々は、総合的な取り組みが必要であるというふうに考えておりまして、こうした観点から、現在、金融審議会において、生命保険をめぐる総合的な検討を行っていただいているところでございます。

 この中で、既保険契約の条件変更の問題につきましても、当然、御議論をいただいておるわけでございますが、この問題を考えていく上では、五十嵐議員も御指摘のように、契約者の保険業に対する信頼をどう考えるか、こういうような問題が非常に重要でございまして、これらの問題を含めて、幅広い観点からの検討が必要であると存じます。

 現在、金融審議会における十分な検討をいただいておるというところでございまして、結論を私の方から現段階で申し上げるのは適切でない、このようにお答え申し上げます。

 なお、多額の死差益が発生していることが問題であるというような御指摘もあったやに伺いましたが、この点につきましては、生命保険の商品におきましては、保険料を設定する際にある程度の安全率を見込みまして、事後的に剰余が発生した場合には配当という形で契約者に還元するという仕組みになっているケースが多い点に留意が必要であろう、このように考える次第であります。

 以上でございます。(拍手)

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議長(綿貫民輔君) 鈴木淑夫君。

    〔鈴木淑夫君登壇〕

鈴木淑夫君 自由党の鈴木淑夫でございます。

 私は、ただいま議題になりました銀行法等の一部を改正する法律案につきまして、自由党を代表して質問いたします。(拍手)

 法案審議の前提として、まず、総理の構造改革並びに不良債権処理の考え方についてお尋ねいたしたいと思います。

 小泉総理は、構造改革、不良債権処理なくして景気回復なしという側面を常に強調しており、そのこと自体は正しいのでありますが、また、自由党もかねて主張していることでありますが、しかし、同時に私ども自由党は、景気を維持しなければ構造改革や不良債権処理は挫折するとも言っております。景気後退が続けば、不良債権を処理する端から、次から次へと新たな不良債権が発生して、不良債権の処理は終わることがないからであります。

 構造改革や不良債権処理は痛みを伴いますが、さらに景気後退で一層の痛みが加わるならば、倒産の多発や失業の増大などで国民の暮らしは破壊され、必要悪以上の大きな痛みに国民は耐えられなくなるでありましょう。

 結局、構造改革、不良債権処理、景気維持という、この三つは相互に影響を与え合う関係にあるのであって、小泉総理が言われるように、構造改革、不良債権処理なくして景気回復なしという、一方方向の因果関係だけではないのであります。それを一方方向と誤認して、構造改革と不良債権処理だけを行っていれば今の景気後退が自然ととまって、また回復してくる、こういうふうに思い込んでいるのでは、とても今始まった不況はとまりません。ますます深刻になり、景気の面から構造改革と不良債権処理が挫折することは、私は、間違いないと思います。

 景気は、ことしに入ってはっきりと後退の局面に入っております。鉱工業生産は、本年一―三月期に、前期比マイナス三・七%と大幅に下落して、早くも前年の水準を下回っております。さきに発表された一―三月期の国内総生産も、実質で年率〇・八%のマイナス成長となってしまいました。四月の実績指数と五月、六月の予測指数によりますと、鉱工業生産と出荷は今後も下落を続けてまいります。他方、過剰在庫はどんどん急増していきます。今後はこの過剰在庫の在庫調整の圧力も加わってまいりますから、当分の間、生産は減退を続けるでありましょう。そうなれば、雇用と賃金の悪化から、個人所得と消費は減少します。また、企業収益の悪化と先行き見通し難で、設備投資も勢いを失います。現に、完全失業率は三月、四月と、じりじり上がっているではありませんか。時間外勤務手当は、もう前年の水準を下回ってしまいました。設備投資の先行指標である機械受注、民需(除く船舶、電力)、これは一―三月期に、七四半期ぶりにマイナスに転じたではありませんか。

 このような動向から判断しますと、今始まった景気後退は、ことしの秋から暮れには極めて深刻な状態となり、小泉総理の構造改革や不良債権処理が困難に直面する危険性は極めて高いと思います。

 小泉人気で、一時は一万四千円台にまで達した日経平均株価も、再び一万二千円台に落ち込んでおります。きょうは、一時一万二千円台の前半まで下がってしまった。このような経済の先行きを市場が案じているからであります。この株価下落もまた、一万二千円台ではほとんどの銀行は含み損になりますから、銀行の含み損を膨らませて不良債権処理をおくらせます。また、逆資産効果を通じて消費回復にも悪影響を及ぼします。

 総理、一体どうするおつもりなのか。改革もしないうちに、改革の痛みに耐えろ、耐えろと言って、痛みだけが先に走っておる。これは、欲しがりません、勝つまではと言っていた、あの国民の中にユーフォリアをあおった戦時中をほうふつとさせます。御見解を伺います。(拍手)

 また、小泉総理は、大手銀行と断らないで、不良債権全体を、公的資金を使わずに二、三年で処理できるかのごとく言い続けております。外国の投資家はそれを信じて、日本の株式市場に投資しています。しかし、柳澤大臣が財務金融委員会で大変注意深く断っているように、これは大手銀行のみの不良債権処理の話であります。その他の金融機関を含む預金取扱金融機関全体としては、とても二、三年で不良債権を処理することはできません。ましてや、株価が一万二千円台になって、みんな含み損が出ているような現状では、なおさらのことであります。

 それがわかったとき、海外の信頼がどうなるか、海外の投資家がどう動いて株価にどう響くか、一体、総理は考えたことがあるのでしょうか。お伺いいたします。

 次に、金融改革の問題に移りたいと思います。

 長短金融の分離、信託の分離、銀行、証券の分離、こういう垣根の規制のために、日本の金融機関は、普通銀行、信託銀行、長期信用銀行、証券会社と分かれて、垣根によって各業態の安泰を保障され、お互いに別々の金融業務を営んできました。しかし、その垣根を取り払う規制緩和のきっかけは、昭和五十六年の銀行法の全面改正でありました。このとき、銀行の国債ディーリングが始まり、銀行、証券間の垣根が初めて低くなったのであります。そして、平成四年、金融改革法によって、業態別の子会社方式による各業態の相互乗り入れが開始されました。さらに、平成十年には、金融改革法、銀行法の全面的な改正によりまして、金融持ち株会社方式で各業態を同時に営む道が開け、金融業内部の垣根規制は大きく緩和されたのであります。

 しかし、現在の銀行や金融取引を取り巻く状況は、さまざまなビジネスモデルの開発とか情報化、グローバル化の中で、今までの伝統的な銀行概念にとらわれない新たな銀行形態が生まれつつあります。

 一昨年末、流通業を営む事業会社が銀行業への参入を表明して以来、金融業とは異なる業種による銀行業への参入の流れが始まっていることや、店舗を持たないで、主にコンビニエンスストアに設置されるATMを中心に金融サービスを展開していく事業とか、さらには、インターネットを利用した金融サービスの提供など、金融業のあり方もさまざまなものに変わりつつあるのであります。

 今回の銀行法改正は、これまでのような金融業内部の垣根規制の緩和だけではなくて、金融業への外からの参入についての規制緩和とルールづくりを行うものでありまして、金融の自由化をいま一歩進めるための工夫であります。この観点から幾つか質問をいたします。

 まず、銀行の大株主に対して新たに導入される届け出制あるいは認可制の政策的な意義についてであります。

 昭和の初めの金融恐慌では、大株主が銀行子会社を財布がわりに使う機関銀行化が問題となりました。また、最近においては、平成六年、経営者によるファミリー企業への甘い融資によって、東京の二つの信用組合が破綻に追い込まれたという事例もあります。公共性の高い決済業務を担う銀行が、他の業態に属する会社によって悪用されることのないようなルールをつくることは、他業態からの金融業態への参入を許す以上、欠くことはできません。

 本法案では、銀行または銀行持ち株会社の発行済み株式の五%を超える株主は届け出制、また、原則二〇%を超える株主は主要株主と位置づけて、認可制をとることとしております。

 バーゼル銀行監督委員会のコアプリンシプルを引用するまでもなく、大株主に対する監督は必要でありますが、それは、あくまで他業態から銀行業への参入自由化を実現するためのルールであって、規制強化が目的ではありません。監督規制が強くなり過ぎて、参入自由化そのものを阻害しては意味がないのであります。この点に関する柳澤金融担当大臣の姿勢を確認させていただきたいと思います。

 次に、二〇%を超える主要株主の認可についてお聞きいたします。

 法案では、主要株主は認可をあらかじめ受けなければならないことや、必要がある場合は、主要株主に対して報告徴求や検査の実施を行うことができる、不適格と認定されれば、そこで認可の取り消し等の処分もできるということになっております。

 しかし、主要株主の適格性の判断基準や審査ルールについて事前に明確にしておかなければ、当局のケース・バイ・ケースの恣意的な判断の部分が多くなります。これはまさに、過去の裁量型の行政に逆戻りすることであります。極力、ルールと手続の透明化に努めて、判断、決定についての説明責任を明確にしていただきたい。政省令に任されるこれらの点につきまして、どのようにされるおつもりか、金融担当大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

 銀行経営悪化時の対応についてお聞きいたします。

 法案では、銀行経営が悪化した場合、五〇%を超える株主については、当局が、銀行経営を改善し、健全性を確保するための措置を求めることができるという、いわゆるソース・オブ・ストレングスのドクトリンが適用されております。

 しかし、これが行き過ぎて、経営悪化について大株主が早い段階ですべての改善責任を負わされるとなれば、これは、異業種からの参入に対する大きな障壁となってしまうおそれがあります。この点、金融担当大臣はどのような運用の基準をお持ちなのか、御見解をお伺いいたします。

 最後に、今後の銀行業などの規制緩和についてお聞きいたします。

 今回の法案では、銀行などの支店の設置について、認可制から届け出制に改めることや、銀行の子会社の従属業務と金融関連業務をあわせて営むことを認めるなど、銀行の新たな事業展開に即した規制緩和を進めることとしております。これは、遅きに失したとはいえ、適切な措置だと思います。

 今後、利用者利便の向上、銀行経営の効率化、積極的な事業展開の観点で、さらにどのような規制の撤廃を進めるおつもりか、具体的な方向性について、柳澤大臣の見解をお伺いいたします。

 また、金融業務の垣根規制の緩和や金融決済手段の多様化の中で、個人情報、顧客情報の漏えいの防止という点にも配慮していかなければならないと思いますが、柳澤大臣はこの顧客情報の保護のあり方についてどうお思いか、あわせてお伺いいたします。

 申すまでもありませんが、金融取引や資本取引が瞬時に国境を飛び越えるような情報化、グローバル化の時代において、金融業務の効率化と金融システムの安全性の双方を維持しながら進めていく金融構造改革というものは、決して容易なものではありませんが、あくまで基本は自由化であって、その自由化による自由競争が生み出す市場の失敗に対してのみ事前の透明なルールで規制を設ける、これが正しい政策態度だと思います。

 最後にこの点に関する総理の御所見を確認させていただきまして、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 鈴木議員にお答えいたします。

 構造改革と景気回復の関係についてでございます。

 我が国の景気動向が示す脆弱性の背景には、構造改革のおくれがあると考えております。このため、政府としては、構造改革なくして景気回復なしとの考え方に立ち、経済、財政の構造改革と景気回復を一体ととらえ、取り組んでまいります。

 不良債権処理と株価についてのお尋ねです。

 株価は市場における取引により形成されるものであり、その動向について、今、コメントすることは差し控えますが、緊急経済対策の実施を初め構造改革に全力を挙げて取り組み、我が国経済に対する内外の信頼を確保していきたいと思います。

 金融構造改革を進めるに当たっての政策態度のあり方に関するお尋ねでございます。

 我が国金融市場は、フリー、フェア、グローバルの三原則にのっとった金融システム改革を進め、市場規律と自己責任の原則に基づく自由な市場へと整備されてきております。また、これに合わせて、金融行政も、市場原理や国際的なルールとの整合性を踏まえつつ、明確なルールに基づく透明かつ公正な金融行政へと転換しました。

 今後とも、こうした金融行政の方針を堅持しつつ、我が国金融システムの安定と活性化に全力を挙げて取り組む方針であります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣柳澤伯夫君登壇〕

国務大臣(柳澤伯夫君) 鈴木淑夫議員から、いつもながら大変専門的な、含蓄のある御意見を拝聴しながら、御質疑をいただきました。

 第一に、主要株主に関するルール整備と、銀行業への参入の考え方についてのお尋ねでございます。

 異業種による銀行業参入等の新たな動きにつきましては、顧客にすぐれた金融サービスを提供するとともに、金融界の活性化につながるものと考えておりまして、基本的に積極的に評価しておるのは、議員と同じ見解かと思います。

 主要株主に関するルールの整備は、こうした動きに対応して、銀行業への参入ルールを透明化すること等によって、我が国金融業の健全性確保、活性化に資するとの意義を有するものと考えております。

 また、主要株主等に対するチェックの仕組みについても、例えば、主要株主に対する報告徴求、検査については、必要な場合に必要な限度でのみ行われることとするなど、適切なものといたしておりまして、銀行業参入を不当に阻害するものではないと考えております。

 次に、主要株主の適格性の判断基準等に関してお尋ねがございました。

 適格性の審査に係る基準につきましては、今回の法律案におきまして、銀行の健全性を確保する観点から必要なものとして、株式所有の目的、財産及び収支の状況、社会的信用等を規定しているところでございます。

 主要株主の適格性につきましては、これらの諸要因を総合的に勘案して審査することといたしておりまして、一つ一つの項目について、あらかじめ定量的な基準を設けることは困難と考えております。ただし、その手続等に関しては、認可申請に添付を求める事項をあらかじめ内閣府令に規定するなど、透明化、明確化に努めてまいりたいと考えております。

 次に、銀行の経営悪化時の対応についてのお尋ねでございます。

 銀行経営が悪化した場合においては、まずは、銀行自身に対して経営の健全化を求めることによって対処するのが原則であると考えておりまして、主要株主に対しては、さらに必要な場合に限り、銀行の経営の健全性を確保するために適切と判断される措置が求められる、このような、いわば二段構えの規定を置かせていただいております。

 このような趣旨から、主要株主に銀行経営悪化のときの対応を求めることが、異業種等からの銀行界への参入の障壁になるということはないと考えております。

 今後の銀行業についての規制緩和に関するお尋ねでございます。

 御指摘のとおり、金融における新たなビジネスモデルに対応した環境整備を図るため、銀行等の業務範囲や営業所等に係る規制につきまして、その緩和を推進することといたしております。法改正が必要なものについては、本法案において、所要の制度整備を行うこととしているところであります。

 今後も、経済社会情勢の変化を踏まえ、金融機関がより魅力のある商品、サービスを提供することを通じて、我が国金融市場がより活性化する方向で一層の規制緩和に取り組んでいきたい、このように考えているところでございます。

 顧客情報の保護のあり方についてのお尋ねがありました。

 金融機関の顧客の個人情報につきましては、顧客ニーズの多様化への対応等の観点から、これを有効に活用しようという動きが見られます。その一方で、個人情報は、個人の人格尊重の観点から、また、個人の権利利益と密接にかかわるものであることから、その有用性に配慮しつつ、個人の権利利益の保護を図るための措置を講じる必要があると考えております。

 金融分野における個人情報保護のあり方につきましては、今国会に提出されました個人情報の保護に関する法律案との整合性に配意しつつ、金融審議会において御審議いただいているところでありまして、その結果を踏まえまして適切な対応を図ってまいる所存であります。

 以上でございます。(拍手)

    ―――――――――――――

    〔議長退席、副議長着席〕

副議長(渡部恒三君) 佐々木憲昭君。

    〔佐々木憲昭君登壇〕

佐々木憲昭君 私は、日本共産党を代表し、銀行法等の一部改正案について、総理並びに関係大臣に質問します。(拍手)

 法案の内容に入る前に、急速に悪化している経済の現状に対する総理の認識をお聞きします。

 一―三月期のGDP、国内総生産は年率マイナス〇・八%となり、昨日発表された政府の月例経済報告も、「景気は、悪化しつつある。」と診断しました。日本経済は、一段と深刻な事態となっています。

 政府は、その要因として、アメリカの景気低迷に伴う輸出の減少などを挙げていますが、肝心なことは国内の要因であります。緊急経済対策の前文で、「個人消費の回復は見られていない。」と政府も指摘しているとおり、GDPの六割を占める家計消費の落ち込みが景気後退の重大な要因となっていることは明らかです。小泉総理はこれをどのように受けとめておられるのか、まず初めに、景気の現状に対する認識を伺いたい。

 このような経済情勢のもとで、金融機関のあり方が改めて問われております。

 言うまでもなく、金融が果たすべき重要な機能は、産業が必要とするところに資金を適切に供給することにあります。しかし、銀行の貸出残高は低下し続けており、とてもその機能を果たしているとは言えません。

 日銀統計によると、一九九七年三月からことしの三月までの四年間で、国内銀行の貸出残高は、平均して二七%も減少しております。とりわけ、中堅・中小企業向けの貸し出しは、驚くべきことに、三五%も減少しているのであります。総理は、この原因はどこにあるとお考えでしょうか。

 日銀短観によると、資金繰りが苦しいと答えた中小企業は、ことしの初めから、再びふえ始めております。また、金融機関の貸し出し態度が厳しいと答えた企業が半数を超えております。ところが、その一方で、日銀が超金融緩和政策をとり続けているため、過剰な資金が行き場を失い、長期国債の大量買い切りという、好ましくない動きさえ生まれています。

 超金融緩和政策を実行しているのに必要なところに資金が回らないのは、どこに原因があるのでしょうか。

 その理由は、第一に、消費の低迷に伴う実体経済の冷え込みによって資金需要の一層の低下が起こっていること、第二に、銀行の貸し出し態度が一層厳しくなり、貸し渋り、資金回収が再び横行するようになったこと、この二つが主要な原因ではありませんか。総理の答弁を求めます。

 今、直ちになすべきことは、個人消費を直接刺激し、実体経済を立て直す政策に転換すること、そして、金融機関に対し、中小企業への貸し渋りを是正するよう求めることであります。

 では、緊急経済対策に家計消費を支援する政策はあるのでしょうか。

 塩川財務大臣は、私の質問に対して、個人消費を刺激する直接の対策は盛り込まれておりませんと答弁したのであります。それだけではありません。政府は、昨年からことしにかけて、医療・年金・介護・雇用保険、これらを次々と改悪し、三兆円の負担増、給付削減を行い、家計を一層圧迫しているのであります。

 総理、このような政府の政策が最近の消費低迷の重要な一因となっているのではありませんか。答弁を求めます。

 では、銀行の貸し渋りを是正させる政策は、政府の緊急経済対策の中にあるのでしょうか。どこを探しても見当たりません。そればかりか、構造改革として挙げた不良債権の早期最終処理は、銀行の融資行動をますます慎重にさせており、貸し渋りと貸しはがしを一層加速するものになっているのではありませんか。答弁を求めます。

 不良債権処理の対象となる破綻懸念先などの債権は、不況の痛みに耐えて必死に生き、働いているまじめな中小企業が大部分であります。不良債権処理とは、現に生きている中小企業に対して、融資を打ち切り、担保を回収し、息の根をとめることであります。それは、大量の倒産と失業を生み出し、急速に落ち込んできた実体経済をますます冷え込ませ、新たな不良債権をつくる、終わりなき最終処理への道であります。この政策は、景気後退の悪循環、デフレスパイラルへの道を加速することになるのではありませんか。答弁を求めます。

 次に、銀行法等改正案の内容について質問いたします。

 本法案の目的の一つは、一般事業会社から銀行業への参入の条件を整え、これを促進しようとするものであります。しかし、それは、事業会社が資金調達の手段として自分の子会社である銀行を悪用する、いわゆる機関銀行化の危険を持つものであります。事業会社が経営のリスクを銀行業務に持ち込めば、銀行経営を不安定にさせます。それは、経済全体に重大な影響を与え、銀行の社会的、公共的役割を大きく損なうものとなります。

 ところが、本法案では、このような弊害を防止する規制が極めて不十分であり、国際的な水準にも達しないものとなっているのであります。

 まず指摘したいのは、参入規制の対象が極めて狭い範囲に限定されていることであります。

 本法案では、銀行業に参入する事業会社の規制は、株式保有割合に応じたものとなっています。当局の認可が求められ、監督の対象となるのは、原則として、株式の二〇%以上を保有する主要株主に限定されています。五%から二〇%までの株式を保有する者に対しては、単に届け出を義務づけているにすぎません。

 しかし、昨年十二月の金融審議会第一部会報告が指摘しているように、銀行の株主の中で議決権の五%を超える者はほとんどないため、五%を超える株式を保有すれば、銀行経営に相応の影響力を及ぼし得るのであります。にもかかわらず、二〇%までは届け出だけでよいとするのでは、不適格な事業者が銀行経営に容易に参入でき、影響力を持つことを防止できないではありませんか。

 ヨーロッパでは、事業会社の銀行業への参入を認めているものの、ECの第二次銀行指令で、一〇%以上の株主に対して適格かどうかの審査を求めており、国内法で、このルールに沿った参入規制をしております。

 なぜ、このような経験に学ばず、厳格な条項を設けないのですか。金融行政においては、銀行経営の健全性と公共性を確保することが第一義的に追求されなければならないのではありませんか。それをゆがめたのは、金融審報告が述べているように、「事業会社等の銀行業への参入意欲を阻害しない」ということをすべてに優先させたからではありませんか。総理の答弁を求めます。

 さらに、二〇%以上の株を保有する主要株主に対する監督規定を見ても、本法案の内容は、極めて不十分なものと言わざるを得ません。

 機関銀行化を防止するためには、主要株主が子会社の銀行に影響力を行使して不当な取引をしないよう、規制する必要があります。ところが、本法案では、現行法の規制以上の新たな規制は盛り込まれておりません。

 金融審報告は、機関銀行化の弊害を防止する等の観点から、主要株主に対する信用供与等について適正な量的規制を設定するなどの追加的な措置について、検討することを求めていました。ところが、本法案は、この指摘にこたえるものになっていないのではありませんか。

 欧州諸国では、我が国よりも厳しい大口融資規制を行っております。さらに、親会社の経営が悪化したとき、子会社からの融資を制限する規定、すなわち、子会社のリングフェンスを設けております。なぜ、日本ではこのような規定を設けないのでしょうか。金融担当大臣の答弁を求めます。

 親事業会社に対する当局の検査権限も重要であります。しかし、本法案では、この点に関して、特に必要があると認められるときは、その必要の限度において、報告徴求や立入検査ができると定めているだけであります。金融審報告ですら、定期的報告を求めることも必要であると指摘していたにもかかわらず、なぜ、本法案にそれを盛り込まなかったのでしょうか。金融担当大臣の見解を求めます。

 その一方で、本法案は、子会社に対する親会社の責任が明確ではありません。

 子会社である銀行の経営が悪化した場合、主要株主には、銀行を支援することが当然求められます。しかし、本法案では、子会社への支援を求める対象を、五〇%以上を保有する株主に限定し、しかも、特に必要があると認められるときは、その必要の限度において、銀行の経営改善計画の提出を求めることができると規定しているだけであります。

 これでは、厳しい審査を受けることなく参入してきた事業会社が、子会社を利用するだけ利用して銀行経営を悪化させても、親会社の経営責任は求めないということになるではありませんか。親会社である事業会社に対して、甘過ぎるのではありませんか。

 最後に、銀行の支店廃止自由化の問題についてお聞きをしたいと思います。

 銀行の支店は、利用者が預金や借り入れなど金融サービスを受ける拠点であり、また、地域経済の拠点でもあります。そのため、現行の銀行法では、支店設置、位置の変更は認可制になっており、その基準として、顧客に著しい支障を及ぼすものでないこと等を要件として定めております。

 しかし、本法案では、この認可制を廃止することにしております。これでは、銀行が、顧客の利便などについて何の配慮も払うことなく、採算に合わないと判断すれば、勝手に廃止、撤退ができることになるのであります。

 現に、この五年間で、都市銀行の支店、出張所数は、三千四百九十四店舗から二千七百八十二店舗へと七百十二カ所、二〇・四%も削減され、地域のサービス低下を招いているという苦情が絶えないのであります。

 規制のかかっている現在でさえ、このような事態なのに、規制を取り払ったらどのような事態を招くか、火を見るよりも明らかではありませんか。これでも、支店の廃止、撤退が国民のサービス低下につながらないと言えるのでしょうか。

 今、なすべきことは、国民に痛みを押しつける改革ではありません。これまでのような大銀行・大企業支援から、国民生活と中小企業への支援に政治の重点を抜本的に転換することこそ、求められているのであります。

 GDPの六割を占める家計消費の拡大を通じた実体経済の立て直しこそ、日本の未来を保障するのであります。日本共産党はそのために全力を挙げる決意を表明して、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 佐々木議員にお答えいたします。

 景気の現状についてでございます。

 我が国の景気は、個人消費は、おおむね横ばいの状態が続いているものの、足元で弱い動きが見られ、失業率は高水準で推移しています。また、輸出、生産が引き続き減少しており、企業収益の伸びは鈍化し、設備投資は頭打ちとなっているなど、景気は悪化しつつあります。先行きについては、在庫の増加や設備投資の弱含みの兆しなど、懸念すべき点が見られます。

 銀行の貸し出しが減少している理由についてのお尋ねであります。

 日銀の統計によれば、一九九七年十二月末から二〇〇一年三月末にかけての貸出残高は約八%の減少、中小企業向け貸出残高は約九%の減少となっております。

 したがって、御指摘のような減少幅ではないと認識しておりますが、政府としては、金融機関が、中堅・中小企業を含めた企業への融資を含め、その融資態度を必要以上に萎縮させることなく、健全な取引先に対し必要な資金供給が円滑に行われるよう、今後とも、金融機関の融資動向を注視していく必要があると考えております。

 近年の金融機関の貸出残高の減少については、景気の低迷等により、借り手である企業の資金需要が弱いことや、過剰債務の圧縮が見られること等に主因があるものと考えており、必ずしも、いわゆる貸し渋り等によるものだけではないと考えております。

 これまでの政府の施策が消費低迷の一因となっているのではないかとのお尋ねでございます。

 我が国の景気動向が示す脆弱性の背景には、構造問題の存在があり、構造改革を強力に推進していく方針であります。国民の皆様にこうした改革に取り組む姿勢をはっきり示すことが、我が国経済に対する自信を取り戻すことにもつながるものと考えております。これにより、我が国経済の再生を図り、所得環境の改善や国民の不安感の解消を通じて、個人消費の回復と本格的な景気回復を実現していきたいと思います。

 なお、昨年度における社会保障の制度改正等は、能力に応じた適切な負担と、給付の必要な見直しを行うことにより、持続可能な制度を構築するためのものであります。

 不良債権の早期最終処理は貸し渋りと貸しはがしを一層加速するものになるのではないかとのお尋ねです。

 金融機関が不良債権の最終処理を進め、その残高を削減していくことは、その金融機関の収益力を高め、資金仲介者として経済活動に必要な資金を安定的に供給していくための基盤を強化するものであると考えております。

 政府としては、金融機関が融資態度を必要以上に萎縮させることなく、健全な取引先に対し必要な資金供給が円滑に行われるよう、今後とも、金融機関の融資動向を注視してまいりたいと考えております。

 不良債権処理がデフレスパイラルへの道を加速することになるのではないかとのお尋ねです。

 不良債権の最終処理に伴う暗い側面ばかりを見るのではなく、新しい時代に新しい産業に立ち向かっていけるような対策を講じていくのが大事ではないかと考えております。

 また、こうした痛みを最小限にするため、緊急経済対策に盛り込まれた中小企業対策や雇用面でのセーフティーネットを整備するための施策の効果的な実施に取り組むとともに、産業構造改革・雇用対策本部で早急に議論を深め、各般の対策に万全を期してまいりたいと思います。

 参入規制の対象となる主要株主の範囲についてのお尋ねです。

 主要株主に関するルールは、銀行経営の健全性確保等の観点から、銀行の株式を一定以上取得して経営に関与しようとする株主について、適切な監督の仕組みを整えるために整備するものであります。

 このような考え方から、銀行の株式を五%を超えて所有する株主に関して届け出制を導入するとともに、原則として二〇%以上の株式を所有する株主を、銀行経営等に対する実質的な影響力に着目して主要株主と位置づけ、認可制を導入することとしているところであります。

 事業会社の銀行業への参入と銀行経営の健全性の確保等についてのお尋ねであります。

 異業種による銀行業への参入等の動きは、すぐれた金融サービスの提供や金融界の活性化につながるものであり、基本的に、歓迎すべきであると考えております。

 他方、本法案においては、事業会社等による銀行業への参入、監督のルールを整備することとしており、不適格な者の参入を適切にチェックすること等により、銀行の健全かつ適切な運営が確保されるものと考えております。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣柳澤伯夫君登壇〕

国務大臣(柳澤伯夫君) 主要株主に対する信用供与等に関する適正な量的規制等の設定についてのお尋ねがございました。

 金融審議会の報告におきまして提言されておりますように、銀行が主要株主に対して行う融資などの取引については、本法案において、機関銀行化の弊害を防止する観点から、主要株主を、銀行に不利益を与えるような取引を禁止するルール、いわゆるアームズ・レングス・ルールの対象としているほか、今後、銀行法の政令において、量的規制の観点から、大口信用供与等規制について改正を予定しているところでございます。

 親会社が経営を悪化させたときに親会社向け融資を制限する、いわゆるリングフェンスについてのお尋ねでございます。

 先ほども申し上げましたとおり、本法案におきましては、主要株主を銀行に不利益を与えるような取引を禁止するルールの対象としており、銀行と主要株主との間で、当該銀行の通常の条件に照らして当該銀行に不利益を与える取引等を禁止しているところでございます。

 さらに、金融庁が昨年八月に策定した、銀行免許の際の運用上の指針におきまして、事業親会社等の子銀行へのリスク遮断をより強固なものにする観点から、通常の融資条件であっても、事業親会社の業況が悪化した場合には、当該事業親会社等に対し追加融資等を行わない等を内容とするリスク遮断策の策定を求めているところでありまして、これらにより、親会社の経営悪化のリスクが子会社に波及しないよう措置されているところでございます。

 親事業会社に対する定期的な報告徴求についてのお尋ねがございました。

 本法律案におきましては、銀行の主要株主に対し、銀行の業務の健全かつ適切な運営を確保するため特に必要があると認めるときは、その必要の限度において、報告徴求を実施し得ることとされていますが、御指摘の金融審議会報告で述べられているような、有価証券報告書等のディスクロージャー資料を基本とした資料につきましては、この規定に基づき、主要株主に対して定期的な形で報告を徴求し得ると考えております。

 銀行の経営悪化時における親会社の経営支援につきましてお尋ねがございました。

 本法律案では、子会社である銀行の経営が悪化した場合において、特に必要があると認めるときは、主要株主のうち五〇%を超える株式を所有する親会社に対し、銀行の健全性を確保するための改善計画の提出を求めることができること等を規定いたしておりまして、この計画の中で、経営支援が行われることも想定されているところでございます。

 支店の認可制の廃止に関する御質問がありました。

 支店の設置及び廃止等につきましては、現在、認可制としておりますが、情報化の進展や銀行業における経営の効率化の要請などの観点から、本法案におきましては、基本的には、銀行の自主的な経営判断にゆだねるものとし、原則、届け出制に改めることといたしております。

 ただ、認可制の廃止後も、各行におきましては、地域の顧客ニーズ等も十分踏まえつつ、いわばマーケットルールのもとで支店の設置及び改廃を行っていくものと考えております。

 以上であります。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(渡部恒三君) 植田至紀君。

    〔植田至紀君登壇〕

植田至紀君 社会民主党・市民連合の植田至紀です。よろしくお願いします。

 きょうは、心なしか空席が目立つようでございますが、最後まで御着席の議員各位に敬意を表しますとともに、いましばらく御清聴をお願い申し上げます。

 さて、私は、小泉内閣に対する抵抗勢力としての社会民主党・市民連合、そして、一人一人の命、暮らしにまなざしを据えた政策を実現し、それを目指す、そういう意味においての抵抗勢力としての社会民主党・市民連合を代表して、銀行法等の一部を改正する法律案に対して質問をさせていただきます。(拍手)

 その前に、二言ばかり。

 一点は、きょう、在外被爆者への被爆者援護法適用に係る大阪地裁判決にかかわって政府が控訴をされたという点、これは非常に遺憾と私は思います。怒りを禁じ得ません。(拍手)

 さて、去る八日、大阪教育大学附属池田小学校で起きた事件によって、犠牲となられた方々の御冥福、負傷された方々の一日も早い御回復をお祈りいたしますとともに、関係者の皆様方にお見舞いを申し上げます。

 この痛ましい事件によって、子供たちや保護者を初めとする方々が受けた心の痛手は想像を超えたものがあるでしょうし、また、その影響は、実際の被害に遭われた方々にとどまるものでないことも、周辺の各自治体が受け付けた相談の実態からも明らかになっています。

 しかし、今回の事件のように、陰惨をきわめる事件であればあるほど、心的外傷後ストレス障害への対応を、これまでのような自治体任せにするという方法では、限界があることもはっきりしています。自治体や学校の主体的な取り組みなどを強力に支援していくためにも、専門性を有し、広範かつ機動的に対処できる十分な人員体制による対応組織・チームの養成、組織化が何よりも急がれると考えます。総理にはかかる御決意がおありか、明確な答弁を求めたいと思います。

 実際の被害に遭われた当事者や関係者の方々の容疑者に対する怒りというものは、筆舌に尽くしがたいものでありましょう。そのことを正面から受けとめるとともに、このような事件を防ぐためのシステムをどう構築していくかが、政治に求められる課題でしょう。その要諦は、社会全体の健全性や包容力の向上などに見出されなければならないと思うのです。

 政治に要請されるかかる立場からすれば、総理が、事件翌日のインタビューで、容疑者に対する精神鑑定の前であるにもかかわらず、精神障害者の犯罪に関する刑法改正を含めた法整備を早急に図ることに言及されたことは、軽率に過ぎると言わざるを得ないと思うのであります。

 この発言は、社会復帰を目指して精神障害の治療に努める患者の方々や関係者に対する過剰な反応、また、開放治療へのいわれざる圧力を生みかねないものであると、やはり厳しく指摘しなければならないと思います。

 この点については、森山法務大臣に、総理の発言についていかなる御認識をお持ちか、お伺いいたします。

 もちろん、総理、政治が国民の声に謙虚に耳を傾け、その声に、誠実に、そして迅速に対応すべきことは言うまでもないことです。それはよくわかります。しかし、一方で、国民の方々の冷静な判断と理解を促すために、困難が伴っても、その責務を全うすることも同時に求められていると思います。いやしようがないともいえる心の傷を負った方々に対して、かすかな光明に至らなかったとしても、政治が今なすべきこと、これを、私自身、思わずにいられません。

 そこで、総理にお伺いいたします。

 我が国では、海外に比べて精神鑑定のシステムの整備がおくれています。正式な鑑定用の施設すらない現状にあります。幾ら優秀な鑑定の専門家がいても、犯罪に至った過程を検証するに欠かせない条件上の不備があるのです。また、既に指摘されていますように、どのような治療が行われ、また、措置入院の解除処分が適切だったのかどうなのか、あるいは、処分解除後のサポート体制は十分だったのかというようなことに関して、担当者以外の専門家が具体的に提言が行えない、そういう問題についても意を払われてこなかったという事実もあるわけです。

 これらの整備や改善が求められている喫緊の課題に対して、万全の予算措置も含めて、果断に取り組まれるのかどうか、確たる答弁を求めたいと思います。

 では、銀行法の改正案について、生活者の視点から明確にすべきことが求められる点について総理にお伺いいたします。

 本改正案は、異業種からの銀行業参入という流れを踏まえて、銀行の健全性を確保しつつ、金融の活性化を図ることによって、安定的な金融システムを構築することを目的とします。

 なるほどトレンドにかなうものと、できることなら簡単にうなずきたいところなんですが、幾つか、やはり問いただしたいところがあります。規制緩和の大合唱に必要以上に押されてしまったのではないだろうか、不易流行が貫かれるべき点がゆるがせにされていないかどうか、まず確認したいと存じます。

 各国においても、銀行経営に対しては、程度の差はあっても、何らかの規制を加えているのは、一般企業とは異なる存在意義を認めているからにほかなりません。それを支えるのが、公平性、健全性などの経営理念です。これらは、競争による勝ち負け、経営効率のよしあしを議論する立場とは、決定的に違う位相にあるものです。

 それゆえに、本来は、一般事業会社が銀行に有形、無形の経営支配力を行使し得る立場で参入することに対して、厳し過ぎるぐらいの規制が講じられるのは当然だと思います。御見解をお伺いします。

 経済活動の基盤、血液としての、言いかえれば、社会的インフラとしての金融システムだからこそ、他業にない、手厚いセーフティーネットが張りめぐらされてきたのではないでしょうか。そのコインの裏表の関係として、最悪の事態に備えた、事前の強力な予防的規制が加えられるべきことは、金融行政のイロハであるはずです。

 このことを金融ビッグバンの三原則になぞらえて整序するのであれば、フリー、グローバルの上位にフェアが置かれなければならないのじゃないでしょうか。要するに、フェアの実現のためには、フリーやグローバルは一定程度阻害されることもしかるべきだという認識に立つことこそが、銀行業への異業種参入に踏み切った金融行政に、今、求められている最低限の姿勢ではないかと思います。明確な答弁を求めます。

 さて、今回の改正は、適格性等が満たされたとの認定による異業種の参入が進めば進むほど、金融の活性化、安定化に資するという論理構成を持つものです。ならば、なおのこと、ペイオフの解禁は待ったなしとなるはずです。世界の金融史にもまれなる不名誉な名を残した延長を繰り返すことは、もちろんあり得ないだろうなと思いますが、あわせて、その点について御明言していただきたいと思います。

 続いて、柳澤金融担当大臣に伺います。

 改正案は、昨年暮れの金融審議会の検討結果の具体化を図ったものであることは言うまでもありません。また、改正の趣旨は、異業種の参入によっても、銀行法上要請されている銀行業務の健全かつ適切な運営の確保が影響されることのない枠組み整備を目指そうとしたものであること自体は、十分理解をいたします。

 しかし、我が国の株主構成から見てもどんな意味を持つのか、読み取れへん箇所もあります。例えば、経営悪化時の救済義務を課す輪切りが五〇%超となっていることなどです。ちなみに、五〇%超の水準は新生銀行とかに限られます。とすれば、何のことはない、現実の発動をほとんど想定してへんのと違うやろかと思うわけです。小泉内閣は、殊のほかお金持ちにだけお優しいのでしょうか、ささやかにそういう疑問が生まれてきます。経営悪化時の株主の救済義務がなぜ五〇%超にされる必要があったのか、説明を求めたいと思います。

 また、国際決済銀行の銀行監督の基本原則では、出資比率一〇%以上の株主を審査の対象にしています。このBISの原則に照らすのであれば、原則二〇%以上というハードルの置き方は緩いのじゃないかという疑問も生まれてくるでしょう。

 同時に、主要株主に対する報告等の徴求や立入検査に関して、必要な限度においてという自己制約的な道を選んだことは、理解に苦しみます。銀行業にはおよそ当てはまらない、無定見な規制緩和論に押し切られたのと違うやろかという勘ぐりもせざるを得ない部分なんです。社会的インフラとしての金融システムのほころびを最小限に抑えるためにも、必要にして十分な検査を行うことが求められるんと違うでしょうか。この点についても答弁を求めます。

 さて、最大の争点でもあるでしょう、子銀行が親会社の資金調達機関になる、いわゆる機関銀行化を防ぐための弊害防止措置が十分機能し得るんかということについても、ただしておきたいと思います。

 グループ企業の存在理由は、一定の経営理念に基づいて統合体の一員としての企業活動を行うということに端的に見出せると思います。アームズ・レングス・ルールの効果については、表向きは一定のことが期待できるにしても、強固な企業グループの行動原理を前にするのであれば、どこまでその有用性を保ち得るのか、心もとなさも否定できません。今回の弊害防止措置で機関銀行化が防ぎ得ると断言できるとするのであれば、その根拠をお示ししていただきたいと思います。

 さらに、異業種参入の時代における銀行業の公共の利益を最優先する態度を確立する観点から、検査充実のためのマンパワーの拡充を含めた体制整備のあり方、また、消費者保護と銀行業法などとの整合性を追求していくための日本版金融サービス法ともいえる、金融商品の販売等に関する法律のさらなる拡充強化などに取り組む用意がおありなのか、お伺いいたします。

 最後に、経済財政諮問会議が取りまとめた、今後の財政運営及び経済社会に関する基本方針にかかわって、総理に伺います。

 総理を支える与党の中から、その内容に関して、とりわけ道路特定財源の見直しに関して、自民党の政策責任者が、一般財源にするとか環境汚染のために何とかするとか、話が飛び交っているが、一般財源にすることはないと述べたと伺っています。また、来年の国債発行額を三十兆円以下にすることに関連して、与党から、歳出削減を強調し過ぎだという異論が出ているとも伺っています。どうもこうした声は総理の意向とは逆行するものではあらへんかと思うのですが、御見解をお伺いします。

 また、与党には、諮問会議の方針に対する意見の集約を参議院選挙後に先送りする意向が強いとのことですけれども、本来であれば、選挙前に公約として発表して、国民に信を問うのが当然ではないでしょうか。私の申し上げていることは決して不自然ではないと思いますが、総理、御所見をお伺いいたします。

 さらに、総理は、常々、改革には痛みが伴うと強調されておられます。改革の理念の向こう側には、経済の停滞、マイナス成長、企業倒産、そして、失業の増大という現実が待っているのです。痛みの中身が何なのか、国民に具体的に明示していただきたいのです。

 国民はみんな貴乃花じゃない。痛みを辛抱したくても我慢できない、しんどい国民がたくさんおるわけです。そういう国民に対して、どんな痛みがあるのだ、こういう痛みがあるのだ、理解を求めるなら具体的に示すのは、やはり政治のトップに立つ方の責務であろうと私は思います。その点についての具体的な御説明を求めまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 植田議員にお答えいたします。

 心的外傷後ストレス障害への対応についてお尋ねであります。

 心的外傷後ストレス障害への対応に当たっては、生活の場である地元自治体や学校などにおいて、長期間にわたるケアが必要になってまいります。今回の事件に際しましても、学校が地元自治体と連携して対応を進めており、政府としても、事件後直ちに、職員の派遣等の協力を行っております。

 今後とも、こうした地元における取り組みに対し、できる限りの支援を行うこととしており、御指摘の専門的な支援体制のあり方についても、研究を進めてまいりたいと考えております。

 精神鑑定及び精神医療についてのお尋ねであります。

 刑事手続において、責任能力が問題となる事案については、的確な精神鑑定が行われることは重要であり、今後とも、そのための体制の整備を図ってまいります。

 また、措置入院患者の診察、治療や退院の可否の判断及び措置解除後の医療の提供に当たっては、精神保健指定医等が、看護婦や臨床心理技術者等のスタッフの協力を得ながら対処することが重要であります。今後さらに、精神保健福祉士の養成や、精神障害者のケアに携わる専門職の研修の強化を図るなど、チーム医療の充実のための取り組みを進めてまいりたいと思います。

 銀行業参入に対する規制のあり方に関するお尋ねです。

 本法案においては、銀行経営の健全性確保等の観点から、銀行の株式を一定以上取得して経営に関与しようとする主要株主について、財務面の健全性や株式所有の目的、社会的信用等に基づき、その適格性を審査するなど、主要株主に関するルールを整備することとしております。

 このように、一般事業会社等による銀行業への新規参入のルールを整備し、不適格な者の参入を適切にチェックすること等により、銀行の健全かつ適切な運営が確保されるものと考えております。

 金融行政の姿勢についてです。

 フリー、フェア、グローバルは、金融システム改革の基本となる原則であり、金融行政において、いずれもひとしく求められるべきものと考えております。

 今回の法整備は、異業種参入等の金融の新たな動きに対応して、制度の国際的な調和も考慮し、銀行等の健全性確保の観点から必要最小限の規制を行うものであり、これらの原則に合ったものと考えております。

 ペイオフについてであります。

 政府としては、厳正な検査、監督や、本年四月から施行された改正預金保険法等による破綻処理スキームの恒久化などを通じて、より強固な金融システムの構築に努めており、平成十四年四月に予定されているペイオフ解禁をさらに延期することは考えておりません。

 道路特定財源の見直しと国債発行額三十兆円以下にする目標についてのお尋ねであります。

 この目標に沿って、今後、来年度予算編成に向かって成案を得ていきたいと思います。いずれにしても、いろいろな考え方がありますが、年末までに成案を得る必要があると考えております。

 与党は諮問会議の基本方針を選挙前に公約として発表すべきではないかとの御指摘がありました。

 経済財政諮問会議においては、今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針を、今月中に取りまとめることとしております。私は、基本方針において、財政を含む経済社会の構造改革の基本的な考え方を国民にわかりやすく示すメッセージとともに、これに必要な政策の方向性について示すこととしており、先送りという御指摘は当たらないと考えます。

 改革による痛みについてのお尋ねであります。

 不良債権の最終処理等構造改革を進めていく上において生じる可能性のある痛みということをわかりやすく申し上げれば、例えば、企業が倒産する場合がある場合、それは、その過程で職を失う人も出てくると思います。そうしたことを痛みと申し上げておりますが、そういう方が新しい職につけるような支援策をどのように講じていくかというのが、構造改革を進めていく上においても大変重要な課題であると考えております。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣森山眞弓君登壇〕

国務大臣(森山眞弓君) 植田議員にお答えいたします。

 精神障害者による犯罪に関する小泉総理大臣の御発言についてお尋ねがございました。

 大阪教育大学附属池田小学校で起きた殺傷事件につきましては、捜査当局において、事件の全容解明に向け、被疑者の精神の状況をも含め、あらゆる観点から鋭意、捜査を行っているところでございます。

 他方で、異常としか思われない事件が相次ぐ情勢にかんがみ、精神障害に起因する犯罪の被害者を可能な限り減らし、また、重大な犯罪を犯した精神障害者が同じようなことを繰り返す不幸な事態が起こらないようにするための対策を検討することは、重要な課題であります。

 お尋ねの小泉総理の御発言の趣旨も、このような考え方であると受けとめております。(拍手)

    〔国務大臣柳澤伯夫君登壇〕

国務大臣(柳澤伯夫君) 銀行の経営が悪化したときにおいて対応が求められる株主の範囲についてお尋ねがございました。

 主要株主のうち、五〇%を超える株式を保有する親会社に特別な責任を課しているわけでございますが、これは、単独で銀行の経営に対する支配力を有しているということに着目し、銀行持ち株会社に対する現行法上の規定をも踏まえまして、銀行経営の健全性を確保するために、こうした措置を求めることとしている次第でございます。

 本法律案における主要株主の基準について、国際決済銀行の基準と比較してのお尋ねがございました。

 本法律案におきましては、企業会計の実質影響力基準を踏まえまして、銀行の経営に対する実質的な影響力に着目して、原則二〇%以上の株主を主要株主と位置づけ、認可制の対象とするとともに、五%以上の株主を届け出の対象としたところでありまして、銀行の経営の健全性確保の観点から、適切なものと考えております。

 なお、バーゼルのコアプリンシプルでも、別段、主要株主について、特定の範囲を法定するように求めているものではないと認識しております。

 主要株主に対する報告徴求、立入検査についてのお尋ねでございます。

 主要株主に対する報告徴求や立入検査は、銀行の業務の健全かつ適切な運営を確保するために行うものでありますが、他方、その権限の行使の程度や態様によっては、主要株主の経営に過度の影響を及ぼすおそれもあり、当局の権限の乱用が行われないよう留意することが必要であると考えております。

 このような考え方から、審議会の報告におきましても、特に必要な場合に限り必要な限度において行うことが適当とされたところでございます。

 機関銀行化防止のための措置についてのお尋ねでございます。

 本法律案では、機関銀行化の弊害を防止する等の観点から、主要株主をアームズ・レングス・ルールの対象としているほか、主要株主の適格性を確保する見地から、参入に当たって、株式所有の目的や経営方針、社会的信用等に基づいて厳正に審査を行い、また、継続的に報告徴求や検査等の監督を行うこととしておりまして、これらの制度の的確な運用を通じて、銀行等の健全かつ適切な運営が確保されることになっておると考えております。

 検査充実のための体制整備のあり方についてお尋ねがございました。

 金融庁といたしましては、我が国の金融システムに対する信認を確固たるものとするためには、検査体制の充実強化を図っていくことが重要であると考えております。こうした観点から、平成十三年度におきましては、四十六名の検査官等の増員を行うなどの体制整備を図っております。

 透明かつ公正な金融行政が求められる中で、検査の頻度と深度の充実がより一層重要性を増していることから、今後とも、検査機能のさらなる強化に向けて、厳正で効率的な行政手法の確立に努めますとともに、関係機関の御理解を得ながら、検査体制の計画的な強化を進めてまいる所存であります。

 また、金融商品販売法につきましては、利用者保護の観点から金融商品を横断的に対象とした金融商品販売法につきまして本年四月から施行されたところでございまして、まずは、その着実な実施に努めてまいりたいと考えております。

 今後、新たな金融商品が登場した場合には、速やかに本法の対象に加えるとともに、同法に基づく勧誘方針の策定、公表を通じて、勧誘の適正化に向けた業者の自主的な取り組みを促してまいりたいと考えております。

 と同時に、各業法の整合的な整備や証券取引法の一層の活用を図ることも大事だというふうに考えておりまして、これら機能別・横断的法制の整備を着実に進めてまいりたいと考えております。

 以上でございます。(拍手)

副議長(渡部恒三君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(渡部恒三君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時四十六分散会




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