衆議院

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第5号 平成13年10月10日(水曜日)

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平成十三年十月十日(水曜日)

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  平成十三年十月十日

    午後一時 本会議

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本日の会議に付した案件

 平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法案(内閣提出)、自衛隊法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び海上保安庁法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑




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    午後一時三分開議

議長(綿貫民輔君) これより会議を開きます。

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 平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法案(内閣提出)、自衛隊法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び海上保安庁法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(綿貫民輔君) この際、内閣提出、平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法案、自衛隊法の一部を改正する法律案及び海上保安庁法の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を順次求めます。国務大臣福田康夫君。

    〔国務大臣福田康夫君登壇〕

国務大臣(福田康夫君) 十月八日未明、米軍は、英国軍とともに、アフガニスタンに所在するタリバンの軍事訓練施設等に対する爆撃を開始しました。政府としては、テロリズムと戦う米国等の今回の行動を強く支持しております。

 このような政府の立場を申し述べた上で、平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法案について、その趣旨を御説明いたします。

 この法律案は、平成十三年九月十一日にアメリカ合衆国において発生したテロ攻撃が、国際連合安全保障理事会決議第千三百六十八号において、国際の平和及び安全に対する脅威と認められたことを踏まえ、あわせて、同理事会決議第千二百六十七号、第千二百六十九号、第千三百三十三号その他の同理事会決議が、国際的なテロリズムの行為を非難し、国際連合のすべての加盟国に対し、その防止等のために適切な措置をとることを求めていることにかんがみ、我が国が国際的なテロリズムの防止及び根絶のための国際社会の取り組みに積極的に寄与するため、我が国が実施する措置、その実施の手続その他の必要な事項を定めることを内容としております。

 当該テロ攻撃は、アメリカ合衆国のみならず人類全体に対する極めて卑劣かつ許しがたい攻撃であります。我が国としては、国際的なテロリズムに対して断固としてこれに立ち向かっていくとの決意を持って、このようなテロリズムとの闘いに我が国自身の問題として主体的に取り組み、世界の国々と一致結束して、テロリズム根絶のための努力を行わなければなりません。

 本法律案は、かかる観点から、テロ攻撃によってもたらされている脅威の除去に努めることにより国際連合憲章の目的の達成に寄与する諸外国の軍隊等の活動に対して我が国が実施する措置、その実施の手続その他の必要な事項及び国際連合の決議または国際連合等が行う要請に基づき、我が国が人道的精神に基づいて実施する措置、その実施の手続その他の必要な事項を定め、国際テロリズムの防止及び根絶のための国際社会の取り組みに積極的に寄与し、もって我が国を含む国際社会の平和及び安全の確保に資することを目的として提出するものであります。

 以上が、この法律案の提案理由であります。

 次に、この法律案の内容について、その概要を御説明いたします。

 第一に、政府が対応措置を適切かつ迅速に実施すること、対応措置の実施は武力による威嚇または武力の行使に当たるものであってはならないこと、対応措置は戦闘行為が行われることのない地域等で行うこと等の基本原則を定めております。

 第二に、協力支援活動、捜索救助活動または被災民救援活動を実施することが必要な場合には、閣議の決定により基本計画を定めることとしております。

 第三に、自衛隊による協力支援活動としての物品及び役務の提供の実施、捜索救助活動の実施等、自衛隊による被災民救援活動の実施並びに関係行政機関による対応措置の実施を定めております。

 第四に、内閣総理大臣及び各省大臣等は、諸外国の軍隊等または国際連合等から申し出があった場合において、その活動の円滑な実施に必要な物品を無償で貸し付けまたは譲与することができることとしております。

 第五に、内閣総理大臣は、基本計画の決定または変更があったときはその内容を、また、基本計画に定める対応措置が終了したときはその結果を、遅滞なく国会に報告しなければならないこととしております。

 第六に、協力支援活動、捜索救助活動または被災民救援活動を行っている自衛官は、自己、自己とともに現場に所在する他の自衛隊員、同じく自己とともに現場に所在する者であってその職務を行うに伴い自己の管理の下に入ったものの生命、身体を防護するために、一定の要件に従って武器の使用ができることとしております。

 なお、この法律案は、施行の日から起算して二年を経過した日にその効力を失うこととしておりますが、必要がある場合、別に法律で定めるところにより、二年以内の期間を定めて効力を延長することができることとしております。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。

 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。(拍手)

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議長(綿貫民輔君) 国務大臣中谷元君。

    〔国務大臣中谷元君登壇〕

国務大臣(中谷元君) 自衛隊法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。

 防衛庁といたしましては、平成十三年九月十一日にアメリカ合衆国で発生したテロリストによる攻撃等にかんがみ、我が国における同様の攻撃等への備えに万全を期すことが必要と考えております。

 そのためには、本邦内にある自衛隊の施設並びに日米地位協定第二条第一項の施設及び区域の警護のため、自衛隊の部隊等の出動を可能とするとともに、通常時からの自衛隊施設の警護のための権限の整備が必要であります。また、自衛隊が、武装工作員等の事案や不審船の事案に効果的に対応するため、武器使用権限等の整備が必要と考えており、あわせて、我が国の安全が損なわれないよう、我が国の防衛上特に秘匿することが必要な秘密について、その保全と仮にそれが漏えいした場合の罰則の整備の必要があります。

 以上が、この法律案の提案理由であります。

 次に、この法律案の内容について、その概要を御説明いたします。

 この法律案は、自衛隊の行動として自衛隊の部隊等による警護出動を新設するとともに、通常時における自衛隊施設の警護のための武器使用の規定を整備し、治安出動下令前の武器を携行する部隊による情報収集の制度を設けるとともに、治安出動時に武装工作員等を鎮圧等するために行う武器使用及び海上警備行動時等において一定の要件に該当する船舶を停船させるために行う武器使用について、それぞれ人に危害を与えたとしても違法性が阻却されるように所要の規定を整備し、あわせて、我が国の防衛上特に秘匿することが必要な秘密について、防衛秘密としての指定その他の取り扱いを規定し、防衛秘密を取り扱うことを業務とする者がこれを漏えいした場合の刑罰規定を設けることを内容とするものであります。

 以上が、自衛隊法の一部を改正する法律案の趣旨でございます。

 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。(拍手)

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議長(綿貫民輔君) 国土交通大臣扇千景君。

    〔国務大臣扇千景君登壇〕

国務大臣(扇千景君) 海上保安庁法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 現在、海上保安官等の武器の使用については、海上保安庁法において警察官職務執行法が準用されており、武器の使用が認められる場合において人に危害を与えることが許容されるのは、刑法に定める正当防衛または緊急避難に該当する場合のほかは、死刑または無期もしくは長期三年以上の懲役もしくは禁錮に当たる凶悪な罪の既遂犯等の場合に限定されております。

 単に逃走を続けるだけで、その外観等からだけでは船内でどのような活動が行われているかを必ずしも確認できない、いわゆる不審船に対しては、武器使用は認められても、これを停船させるための船体に向けた射撃は、人に危害が及ぶ可能性があるので、事実上困難であります。

 このため、平成十一年六月の関係閣僚会議で了承された能登半島沖不審船事案における教訓・反省事項においては、不審船を停船させ、立入検査等を行うという目的を十分に達成するとの観点から、危害射撃のあり方を中心に法的な整理を進め、検討することとされたところでございます。

 このような趣旨から、このたび、この法律案を提案することとした次第でございます。

 次に、この法律案の概要につきまして御説明申し上げます。

 適確な立入検査を実施する目的で船舶の進行の停止を繰り返し命じても乗組員等がこれに応ぜずなお抵抗し、または逃走しようとする場合において、海上保安庁長官が一定の要件に該当する事態であると認めたときには、当該船舶の進行を停止させるために海上保安官等は武器を使用することができることとし、その結果として人に危害を与えたとしてもその違法性が阻却されることとしております。

 以上が、海上保安庁法の一部を改正する法律案の趣旨でございます。(拍手)

     ――――◇―――――

 平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法案(内閣提出)、自衛隊法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び海上保安庁法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(綿貫民輔君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。石破茂君。

    〔石破茂君登壇〕

石破茂君 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま提案されました諸法案につき、小泉内閣総理大臣に、この法案の一刻も早い成立を願う立場から質問をいたします。(拍手)

 冒頭、今回の同時多発テロの犠牲となられた方々に哀悼とお見舞いの誠をささげます。そして、今このときも、捜索、救出、復興に全身全霊で取り組んでおられる方々に、さらには、自由と民主主義という我々が共有する価値観に真っ向から挑戦をする憎むべきテロの撲滅に向け、身命を賭して戦いに挑んでいる勇気ある人々に、深く敬意を表したいと存じます。(拍手)

 まず、今回の米国、英国の行動について、総理の御認識を承ります。

 私は、これは個別的・集団的自衛権の行使としてとらえるべきものと考えます。国連憲章においては、すべての戦争を違法といたしておりますが、ただ、国家固有の権利である自衛権の行使は認められておるのであります。相手が国家であるか、集団であるかを問うてはおりません。

 オサマ・ビンラーディンをテロの容疑者として位置づけた従来の国連決議に加え、今回のテロ行為を国際の平和及び安全に対する脅威と認めた国連安保理決議第千三百六十八号によって、この米英の行動は十分に正当づけられるものであり、常任理事国の現在の姿勢から見ても、やがて行われるであろう安保理への報告後にこれが否定されるというようなことは到底考えられないのであります。

 話し合いで解決できるような事態では、もはやありません。軍事行動による危険より報復を恐れ行動に出ない危険の方がはるかに大きいとしたトニー・ブレア英国首相の認識は、まさに正しいと言わなければなりません。

 では、我が国はどのような行動をとるべきか。それは、この脅威が我が国にも向けられたものであることを正確に認識し、個別的自衛権の発動には至らないまでも、脅威撲滅のために主体的に行動すること、そして、長きにわたり、日米安全保障条約のパートナーとして我が国の独立と平和、安全と繁栄を支えてくれた最大の同盟国である米国が攻撃を受け、自衛権を発動しているときに、憲法解釈で許された範囲内、すなわち、集団的自衛権の行使は行わないとしてきた従来の政府解釈の範囲内で、最大限なすべき責務を果たすことであります。

 さらには、アフガン和平に向けた東京会議開催のため努力してきた我が国独自の立場を生かし、この戦いが仮にも文明の衝突というような事態に至らないよう、力を尽くすことであります。これは口で言うほどたやすいことではございません。古来、戦争は始めるのは容易であるが終わらせるのは難しいと言われてまいりました。まして今回、テロの一派に対して決定的打撃を与えたとしても、それが殉教者として称賛され、さらなる連鎖を呼ぶことだけは、どうしても避けなければならないのであります。

 これらの我が国がとるべき行動は、憲法前文の趣旨からも当然に導き出されるものと考えますが、総理の御見解を承ります。

 次に、テロ対策特別措置法の内容についてお尋ねをいたします。

 今回、なぜ自衛隊を派遣するのか。私は、危険だから自衛隊が行くべきであるとの議論は誤解と不安を与えかねないものと考えております。自衛隊は、自己完結性と高い練度を有しております。民間であれば避けることができない危険も自衛隊であれば回避でき、立派に任務を遂行できるという期待があるからこそ、自衛隊が派遣されるべきなのであります。民間の協力をほとんど仰ぐことができなかった湾岸戦争時の教訓も、決して忘れてはならないと考えます。

 しかし、それは、派遣される自衛隊に十分な能力と権限が与えられることを前提といたします。今回想定される相手はハーグ陸戦法規、ジュネーブ条約などの武力紛争法を遵守しない武装した偽装難民であること、自衛隊は決して与えられた命令を拒むことはできないことを、我々は認識しなければなりません。

 正規戦を想定した訓練を積んできた自衛隊に、国際法上当然認められ、我が国の政府答弁におきましても憲法理論上否定されていないとされてきた海外における自衛権行使としての武力行使の権限を与えることなく、危害許容要件を正当防衛と緊急避難のみに限定したままで、危険な地域に派遣することがあってはなりません。

 拡大解釈は厳に慎まなければなりませんが、過度に抑制的な縮小解釈もまた、すべきではないと考えます。いずれにせよ、まず派遣ありきではないはずです。

 本法案では、そのベースとなったと考えられる自衛隊法の邦人輸送の規定にある「その職務を行うに際し、」との部分を「その職務を行うに伴い」に、「保護の下に入った」を「自己の管理の下に入った」にと、語句を微妙に変えておりますが、これが武器使用の権限を拡大したことになるのか、海外における自衛権行使としての武力行使との間に間隙は存在するのか、重大な責任を負わされた現場の指揮官が判断に迷い、ちゅうちょするようなことはないのか、具体的にお答えをお願い申し上げます。

 国会の承認を不要とされた理由についてお尋ねをいたします。

 政府の立場として、なるべく簡素な手続を望まれたことと推察はいたします。今回の事態に限った特別措置法であり、この法案の成立をもって基本計画策定の枠組みが定められるとされる政府を信頼すべきであると存じますが、PKOの本体部分や周辺事態法において国会承認が求められているということとの整合性はどうなるのか、そのような指摘も考えられるのであります。

 周辺事態と異なり、武力紛争法無視のテロリストが想定をされ、海上と比較して活動を一時中止し避難するなどして危険を回避できる可能性が低い陸上にあって、万一当該活動地域で戦闘行為が行われるような事態に遭遇したらどうするのか。政府のこの点についての説明責任を明確にするとともに、シビリアンコントロールのさらなる徹底と、我々立法府もともに責任を負うとの観点から、PKO法第六条に例のある、迅速性に配意しつつ、国会の原則事前承認を求めるべきとの見解につき、総理の御所見を承ります。

 我が国の安全保障政策は、明確性や法的一貫性という点において、今後さらに万全を期すべきであります。集団的自衛権の位置づけや、自衛隊とは何か、警察と軍隊との本質的差異は何か等々の問題を直視することが今こそ必要であると考えます。

 今回の法案は、あるべき論からすれば、決して十二分に満足のいくものではないのかもしれません。私は、悩み抜いた末に、新世紀の戦争ともいうべきこの事態に我が国がいかに迅速に対応し、日本の立場と責任を明確にするかとの道を選択すべきという結論に到達をいたしました。

 のど元過ぎれば熱さを忘れというような姿勢は、もはや許されません。北朝鮮工作船事件の反省に端を発したいわゆる領域警備的内容を盛り込んだ法案が、政府内の調整に時間を要し、今回提出するまでに二年半を要するようなこともまた、あってはならないことであります。

 危機管理とは、ありとあらゆる事態を想定し、法的措置と具体的対応を整備しておくことであり、想定外の事態であったなどと言うのは、責任ある政治のとるべき態度では決してありません。仮に今回のテロが日本で起こったとすればいかなる対応をすべきかなどの法的検討も必要なのであります。いざとなれば超法規などということは、法治国家として断じてあるまじきことであります。

 国の経済的な繁栄も個人の幸せも安全保障が確立されてこそ初めて成り立つという当たり前の事実を、今回、我々は改めて学びました。サイバーテロや生物化学兵器対策、情報収集・分析機構の整備充実など、課題は山積をしており、我々に与えられた時間は長くないのであります。一刻も早い法案成立と、一貫した安全保障政策の確立に与党として全力を尽くしますことを表明して、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 石破議員にお答えいたします。

 まず、審議促進に対する御協力、激励に感謝申し上げます。

 米国及び英国の行動は自衛権の行使ではないかというお尋ねです。

 今回の米国及び英国の行動は、国連憲章第五十一条に基づく個別的及び集団的自衛権の行使として安保理に報告がなされております。我が国としても、今般の米英両国による行動は個別的及び集団的自衛権の行使であると考えております。

 今回のテロに対する我が国の対応についてのお尋ねであります。

 今回のテロ攻撃は、米国のみならず世界人類に対する、自由と平和と民主主義に対する挑戦であり、卑劣な行為だと私ども考えております。この事件に対して我が国が主体的にどう取り組むかというのが問われているのではないかと思います。

 我々としては、憲法の範囲内でできる限りの支援、協力を行い得るよう、今回の法案を提出したものでございます。今後とも、世界の各国と一致協力しながら、このテロとの対応に毅然とした態度で臨みたいと思います。

 今回の事案を早期に終わらせるためにはどうすべきかということでございます。

 私も、ブッシュ大統領との会談におきまして、今回のテロとの対決は、テロリズムそのものに対する対決であって、アラブとの対決でもない、イスラム教との対決でもない、そういう点を踏まえながら、冷静に、忍耐強く対応することが必要だということを申し述べております。

 我々としても、今回の想像もできないようなテロ行為に対しまして、世界と協力しながら、主体的に取り組んでいきたいと思います。

 自衛隊の派遣地域と危険を回避できる能力、権限との関係についてのお尋ねでありました。

 本法案では、自己等の生命や身体を防護するための必要最小限の武器使用権限を規定するとともに、自衛隊の武器等を防護するための武器使用を規定した自衛隊法第九十五条を適用することとしております。

 また、本法案では、戦闘行為が行われることがない地域で活動を実施することとしており、さらに、現地の治安情勢も十分考慮するため、外国の領域に関しては当該外国と協議することとしております。

 政府としては、以上のような武器使用権限と活動地域に関する枠組みにより、派遣された自衛隊員等の安全を十分に確保できると考えております。

 テロ行為と自衛権行使との関係についてのお尋ねであります。

 あえて一般論として申し上げれば、我が国に対する急迫不正の侵害とみなされる場合はともかく、突発的なテロ行為などは戦闘行為に当たらないと考えております。

 他方、本法案においては、武器使用の際の危害許容要件として、「刑法第三十六条又は第三十七条に該当する場合のほか、人に危害を与えてはならない。」と規定しておりますが、これは個人レベルでの自己等の防護の問題であり、国家レベルでの自衛権行使とは別の問題であると考えております。

 武器使用の範囲に関し、テロ対策特措法と自衛隊法第百条の八との比較についてのお尋ねであります。

 武器使用の職務との関連について自衛隊法第百条の八と本法案を比較した場合、本法案においては、武器使用が必要となる可能性が生じ得るものとしてさまざまな活動の場面が想定されることから、「その職務を行うに伴い」との規定ぶりをしているところであります。

 また、防護対象の規定ぶりについては、本法案では、自衛隊の宿営地や車両内といった、自衛隊が一般的な秩序維持、安全管理を行っている場にいる者などさまざまに想定されることから、「管理の下に入った」との文言を用いるのが適当であると判断したところであります。

 国会承認についてのお尋ねです。

 本法案は、米国の同時多発テロへの対応に目的を限定した特別措置法案であり、対応措置の必要がなくなれば廃止することを前提としております。また、自衛隊の派遣を含めた基本計画の内容も国会に報告します。このため、法案をお認めいただければ、対応措置の実施についても御同意いただいたとみなし得るのではないかと考えております。(拍手)

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議長(綿貫民輔君) 伊藤英成君。

    〔伊藤英成君登壇〕

伊藤英成君 私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま提案をされましたいわゆるテロ対策特別措置法案等について、総理並びに関係大臣に質問をいたします。(拍手)

 去る九月十一日の米国における同時多発テロにより犠牲になられた方々、被害に遭われた方々、御家族初め関係者の方々に、改めて、心からお悔やみとお見舞いを申し上げます。

 人道と正義に反する卑劣きわまりないテロは、どんな理由をもってしても正当化できない、許せない行為であり、国際社会とともに一致協力して、毅然として立ち向かうべきであります。しかし、テロの背景には、遅々として進まない中東和平交渉や貧困問題、非民主的な政治体制、そして、民族、宗教、石油利権等をめぐる歴史的に根深い、複雑な問題があります。

 日本として、中長期的な外交方針の中で、我が国の外交上の特性や果たすべき役割をしっかりと認識した上で、今回の事態への冷静な対応が重要だと考えます。テロ対策のための国連や多国間協議へのイニシアチブ、中東における和平外交の推進、ODAの活用、国際的な裁判のあり方なども検討されるべきであります。

 今回の米軍等への支援にしても、その必要性は理解をいたしますが、我が国にとって最も重要なことは、外交による非軍事的な貢献なのではないでしょうか。総理の見解を伺います。

 まず、この法律案によって米軍等への協力、支援を行うならば、ウサマ・ビンラディンやアルカーイダやタリバンがテロの犯人及び支援者であるということが大前提であります。総理は、訪米の際にブッシュ大統領から説明を受けているとのことですが、いまだ国民への明確な説明はありません。英国政府は、しっかりと文書で国民に説明をしております。日本政府が、今回の米軍等の攻撃への協力、支援が適当であると判断する犯人及び支援者を特定する証拠について、総理に説明を願います。(拍手)

 また、本法律案では、今回のテロに関係する脅威の除去が目的とされています。その範囲は一体どこまでなのでしょうか。十月七日、アメリカは、アフガニスタン以外にも軍事攻撃を加える可能性を文書で国連に示しております。この事実についてどのように考えるか、アフガニスタン以外のどのような地域が考えられるのか、総理の認識を伺います。

 また、米軍を中心とした軍事攻撃がアフガン以外に拡大した場合にどのように対処する方針か、総理に伺います。

 今回の法律案では、国連安保理決議第一三六八号初め、過去の幾つかの決議を根拠としております。国際的取り組みの枠組みで自衛隊の海外派遣と米軍等の支援を正当化するならば、国際ルールに基づき実施することを担保するために、さらなる国連安保理決議等を求めていくべきだと考えますが、総理の見解を伺います。

 次に、国会の関与について伺います。

 今回の法律案では、基本計画を閣議決定し、国会に報告する形となっております。この政府案では、実際の行動措置に対し、国会がシビリアンコントロールを及ぼすことは困難であります。まして今回は、公海の範囲を超え、見えざるテロ組織に対処するために、極めて不安定かつ不確実な政治情勢にあるかもしれない外国領域まで行くという、我が国としては全く初めての行動となります。やはり、国会の関与のあり方として、基本計画や実施計画を国会の承認とすべきであると考えます。いかがですか。

 また、派遣後に自衛隊の活動等に支障が出たときなどに、必要に応じて国会が活動の中止や撤退を決定できるようにすべきであると考えますが、総理の見解を伺います。

 また、本法律案では、二年間の時限立法となっております。しかし、今回のテロへの対応では、状況の変化は極めて早く、また、米国等の今後の行動も予測できない部分が多々あります。私たちは、国会の関与及び事態への対応という点で一年間が現実的であると考えますが、官房長官の所見を伺います。

 本法律案では、本法案による対応措置を実施する地域について、現在及び活動期間を通じて戦闘行為が行われない地域としております。また、戦闘行為は、「国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為」としております。これは、周辺事態法の後方地域及び戦闘行為と全く同じ規定となっております。しかし、テロや内戦も、当然、ここで言う戦闘行為に当たると考えますが、総理の見解を伺います。

 派遣対象国の一つとして想定されるパキスタンでは、現在、米英の攻撃に反発する市民がおります。激しい反米デモも頻発している様子が報道されております。また、タリバン勢力に親しみを感じている市民も多くいるとの報道もあります。避難民等にテロのメンバーが紛れて混乱を起こす場合も想定されます。局所的な自爆テロは戦闘行為と認定するのでしょうね。また、受け入れ国の政治情勢が不安定化することも予想されます。このような場合、活動地域が法律で定める範囲内であるのかどうか、その認定を、だれが、どのような基準に基づいて判断するのでしょうか。総理に伺います。

 現地パキスタンの政府高官の声として、現段階において、パキスタン政府は、外国の軍隊がその領土内で活動することについては極めて慎重な意見もあるというふうに聞きます。また、部族によっては、その地域での活動そのものが困難という指摘もあります。そのような中では、実際には、UNHCRを通じてNGOが支援活動の中心となり、自衛隊の出る幕はないとも思われます。政府は現地の実情をどのように把握されておるのか、総理に伺います。

 また、政府は、さきに航空自衛隊のC130輸送機六機を派遣し、テント三百十五張り、毛布二百枚などを無償で提供しております。これからの厳しい冬を想定したときに、伺いますと、百万人の難民に六万張りのテントが必要との指摘があります。そのように考えたときに、政府のこの支援のあり方は、民間機の活用を図ることや支援の規模の問題等にしても、現状認識を疑わざるを得ません。さらには、その判断も疑わなければならない。総理の御所見を伺います。

 人道的な被災民救援は、たとえ受け入れ国の同意が得られても、危険を伴うことにならないでしょうか。国境付近に他国の軍隊が展開することになると、特にそれが米軍陣営の一員ということになれば、かえってテロ組織の攻撃対象となり、ひいては、難民キャンプや受け入れ国まで混乱させてしまうことにもなりかねないのではないでしょうか。

 さらに、被災民救援に関して、自衛隊は具体的にどの程度、どのような準備をしているのでしょうか。今回想定される地域では、イスラム教徒、とりわけ女性や子供、老人に対する医療活動などがあると考えます。女性患者には女性の医者や看護婦も必要になるのではないでしょうか。法律的な枠組みで自衛隊の派遣をたとえ可能にしたとしても、現実に現地の人々への配慮ある対応ができるのか、防衛庁長官に伺います。

 人道的な被災民支援でもこれほどの困難がある中、さらに戦闘地域に近いところで実施される可能性がある捜索救助活動は、現実的かつ実効性あるものとなるのでしょうか。今回の場合、一体どこで捜索救助活動を行うことを想定しているのでしょうか。総理に伺います。

 武器弾薬の輸送については、私どもは、そもそも本法律案から除くべきであるというふうに考えておりますけれども、このような複雑な現地の状況などを踏まえると、パキスタン国内においても実施することは現実的ではないと私は思うわけであります。いかがですか。

 本法律案に定める武器の使用基準について伺います。

 今回の法律案は、戦闘とは一線を画した地域としながら、総理は危険なところに派遣すると発言されたと報道されました。基本的に危険が想定されない地域に限って派遣をするのか、かなりの危険を冒してでも任務のために派遣するのかによって、自衛のための装備も変わってまいります。改めて総理に確認しますが、この法律案で、総理は自衛隊を一体どこに派遣しようとしているのでありますか。

 さらに、PKO協力法でさえ踏み込んでいない規定として、「自己の管理の下に入った者」という規定があります。これまで政府は、武器使用の基準については、基本的には自然権的権利に基づく正当防衛、緊急避難の範囲などで説明をしてまいりました。今回、PKO協力法でも周辺事態法でも認めなかった部分について本法律案において定めることとした憲法上の根拠を総理から明らかにしていただきたい。

 最後に、総理は、米英両国の武力攻撃に対して、間髪入れずに強い支持を表明されました。今回の米軍等への支援については、総理の積極姿勢はよく伝わってくるのですが、私には、日本が世界の中でどういう国として生きていくのか、国際社会の中でどういう地位を占めたいのか、全く伝わってまいりません。日本は軍事活動はできるだけ抑制的にしながら世界の平和を築き上げる努力をする国であるべきであると私は考えます。いかがですか。

 八日未明に始まった米英両国によるタリバン勢力への攻撃行動を、米国の自衛とテロ撲滅への国際的行動の一環として民主党も理解するものです。ただし、今後の行動が、一般市民の犠牲が拡大しないことなど、本来の目的を超えることなく、しっかりと目的にかなった形で進められることを強く求めます。

 また、我が国としては、必要な米軍等への支援は実施していくべきでありますけれども、一方で、これまで指摘してきましたような課題が存在することも事実であります。そうした中で、我が国による外交的貢献としては、紛争後の復興支援におけるイニシアチブを重視すべきだと思います。現に、パキスタンやアフガニスタンでは、水の確保や土地の改良など、農業や技術分野等、そうしたことに重点を置いた復興支援が極めて重要であることをもう一度指摘し、そして、平和で安定した国際社会の実現を心から祈念して、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 伊藤議員にお答えいたします。

 今回の事態に対応するための外交上の努力に関するお尋ねがございました。

 当然に、日本としても、非軍事的な貢献が必要でございます。米国を含む関係国と緊密に連絡をとり合うとともに、テロへの対応の国際的連帯を強化するための働きかけ、アフガニスタン周辺国への支援、避難民支援、G8等を通じた国際協力、国際的な法的枠組みの強化等の努力を行っておりますが、さらに外交的努力、これについて、国際協調のもとにこのテロとの対応に対処していきたいと思います。

 今回のテロの犯人及び支援者に関する証拠についてのお尋ねであります。

 日米間では、事件発生以来、今回のテロへのウサマ・ビンラーディンの関与等も含め、先般の首脳会談を初めとして、緊密に連絡をとっております。我が国としては、このような情報交換を総合的に勘案して、ウサマ・ビンラーディン及びアルカイーダの関与等については、説得力のある説明を受けていると思います。

 ただし、アメリカ側との累次の情報交換の内容の詳細を述べることは、事柄の性質上、控えさせていただきたいと思います。

 本法案の目的の範囲及び米国によるアフガニスタン以外の国に対する攻撃の可能性についてのお尋ねがありました。

 いかなる場合に本法案に言う「テロ攻撃によってもたらされている脅威」が除去されたと認められる状況となるかについては、現在のところ、予断できるものではなく、具体的にお答えすることは非常に難しいと思います。

 また、米国は、七日付で国連安保理議長に対して発出した今回の軍事行動に関する書簡の中で、米国の自衛として、今回の行動の対象以外の組織や国に関してさらなる行動が必要となることが判明するかもしれない旨記していますが、その具体的内容については明示されておりません。

 米国の行動対象がアフガニスタン以外に拡大した場合に我が国がどういう行動をとるか、対応するかというのは、これは仮定の問題でありまして、現在のところ、具体的にお答えするというのは非常に難しい状況ではないかと思います。

 本法案に基づく対応措置の内容については、法案の目的に照らし、我が国として状況を的確に判断し、主体的に検討していきたいと考えております。

 我が国の米軍等への支援を正当化するには、さらなる安保理決議を求めていくべきではないかとのお尋ねです。

 本法案に基づき我が国が諸外国の軍隊等に対して実施する措置は、武力の行使に当たりません。武力行使以外の方法で、国際協調のもと、いかにこのテロ撲滅に対応するかというのが本法案の趣意でございます。

 我が国は、本法案に基づき、できるだけの支援協力体制をとっていきますが、武力行使はしない、戦闘行為には参加しない、そういう前提のもとに、国連憲章の目的の達成に寄与する活動を行っていきたいと考えております。

 さらに、我が国が本法案に基づき行う被災民救援活動は、国際連合等が行う要請に基づき行われるものでありまして、我が国の活動は、まさに国連憲章の目的に合致したものと考えます。

 以上のことから、私は、さらなる安保理決議等を求める必要はないのではないかと考えております。

 国会の関与のあり方についてです。

 この法案は、米国の同時多発テロへの対応に目的を限定した特別措置法案であります。対応措置の必要がなくなれば廃止することを前提としております。このため、法案をお認めいただければ、対応措置の実施についても御同意いただいたとみなし得ると考えています。

 自衛隊の派遣を含めた基本計画の内容及びその変更についても国会に報告いたします。

 さらに、万一予期せぬ情勢の変化が生じた場合には、実施区域の指定の変更、活動の中断といった対応を的確にとることとしております。

 テロが戦闘行為に当たるかについてのお尋ねであります。

 テロというのは実にさまざまであります。その規模、態様、これから、これが戦闘行為に当たるか否かについては、その実態に応じ、国際性、計画性、組織性等の観点から個別具体的に判断すべきだと考えています。しかしながら、国内治安問題にとどまるテロ行為や散発的な発砲や突発的なテロなどは、戦闘行為に当たらないと考えます。

 だれが、どのように、活動地域が法律で定める範囲内であるかを判断するかについてのお尋ねであります。

 活動地域が法律で定める範囲内であるかについては、地域の情勢についての各種情報等を総合的に分析することによって、防衛庁長官が実施区域を指定する際に合理的に判断することが可能であると考えております。

 難民支援に関連し、パキスタンの現地の実情についてお尋ねがありました。

 パキスタンにおいては、既に二百万人の難民が出ておりまして、さらに最大百万人程度の難民が押し寄せると言われております。かかる中、UNHCR等の国際機関は、パキスタン政府やNGOと協力しつつ、大量の難民発生に備えた準備を開始したと承知しております。

 いずれにせよ、現地の実情については、今後とも、UNHCR、パキスタン政府等と緊密に連絡をとりながら、引き続き注視してまいりたいと考えます。

 我が国の難民支援のあり方についてです。

 現在のアフガニスタン及び周辺国において発生している難民への支援については、UNHCR等国際機関を中心として、国際社会が一致して取り組んでおります。

 我が国も、UNHCR等国際機関の要請を受ける形で、難民のための生活関連物資協力及びその輸送協力を行うとともに、国連機関などが行う難民支援活動に対し、我が国としての貢献策を五日、発表いたしました。我が国としては、今後とも、積極的に難民支援を行ってまいりたいと思います。

 捜索救助活動が現実的かつ実効性があるものとなるのか、また、捜索救助活動をどこで行うことを想定しているのかについてのお尋ねであります。

 本法案における捜索救助活動については、「我が国領域及び現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる」地域において実施することとしております。

 また、万が一不測の事態が発生したとしても、実施区域の指定の変更、活動の中断といった対応をとることにより、戦闘行為が行われている地域で当該活動が実施されないことが担保されております。

 さらに、自衛隊による活動に際しては、自己等の生命、身体を防護するための必要最小限の武器使用権限等についても規定されております。

 以上を踏まえれば、捜索救助活動が現実的かつ実効性があるものと考えております。

 現時点では、武器弾薬の輸送を実施すべきではないという考えであるが、総理の見解を問うというお尋ねであります。

 私は、仮に武器弾薬を輸送の対象から外せば、実際の輸送の際に、どれが武器でどれが弾薬かと一々確認する必要が生じ、円滑な輸送業務の妨げとなる側面も否定できないと思います。そういうことを考えまして、私は、本法案において、武器弾薬を輸送できるようにしておくことが適当であると考えております。

 危険の程度と自衛隊の派遣先の関係についてのお尋ねであります。

 本法案における自衛隊による協力支援活動については、戦闘行為が行われることがない地域において実施することになっております。また、本法案においては、自衛隊が活動を行うに際して、自己等の生命、身体を防護するために、一定の要件のもとで武器を使用できることとしており、派遣される自衛隊員及び支援活動の安全が確保されるよう措置しているところであります。

 武器使用基準に関し、PKO協力法でも認めなかった部分の憲法上の根拠についてのお尋ねであります。

 本法案においては、PKO協力法とは異なり、「自己の管理の下に入った者」を防護対象としておりますが、自衛隊が協力支援活動等を行うに際しては、自衛官と共通の危険にさらされたときには、その生命、身体の安全確保について自衛官の指示に従う関係にある者について防護できるようにすべきと考え、このような関係にある者を「自己の管理の下に入った者」と表現し、防護対象に加えたものであります。

 かかる防護のためのものを含め、本法案に規定する武器の使用は、いわば自己保存のための自然権的権利というべきものであり、憲法上の問題は生じないと考えております。

 日本は軍事活動をできるだけ抑制的にしながら世界の平和を築き上げる努力をする国であるべきとの御指摘であります。

 同感であります。国際社会の一員として、このテロ根絶、抑止のためにいかに日本が対応すべきか、国力に応じて、国情に応じてできるだけの支援をしたい、そういう観点から、武力行使はしない、戦闘行為には参加しない、そういう前提のもとに、日本がいかに世界と一緒になって国際社会の責任を果たしていくか、テロ防止、テロ根絶のためにどのような支援、協力ができるかということを考えた法案であるということを御理解いただきたいと思います。

 残余の質問については、関係大臣に答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣福田康夫君登壇〕

国務大臣(福田康夫君) 伊藤議員にお答えいたします。

 法案の期限についてお尋ねがございました。

 この法案は、先般のテロ攻撃への対応に目的を限定しておりまして、対応措置の実施の必要がなくなれば廃止する性格のものでございます。そのため、国際平和協力法の事例も参考にしながら、期限を二年間といたしております。ただし、必要がなくなれば、法律により速やかに廃止することができるものといたしております。(拍手)

    〔国務大臣中谷元君登壇〕

国務大臣(中谷元君) 二点についてお答えをいたします。

 まず、被災民救援活動と、その実施の活動地域についてお尋ねがございました。

 自衛隊の活動地域につきましては、今後、事態がどのように推移をして、どのような要請が出されるかなど、現時点では明らかでない部分がありますので具体的に申し上げることは困難でありますけれども、いずれにしましても、本法案においては、「現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる」地域において実施することといたしております。

 また、仮に実施区域内で当該活動を実施する間に事前に予想されなかった戦闘行為が発生したといたしましても、実施区域の変更、活動の中断、一時休止等により危険を回避できる枠組みとなっておりますので、御指摘のような事態が生起することは基本的に想定されないと考えております。

 さらに、被災民救援活動を要請したUNHCR等の国際機関や現地政府とも調整をいたしまして、万が一にも混乱が起こることがないように努めてまいります。

 次に、自衛隊の被災民救援の準備状況、現地への配慮の対応についてのお尋ねがございました。

 自衛隊におきましては、従来から、語学教育やPKO、国連平和維持活動について豊富な経験を有する諸外国における研修を通じて、国際平和協力業務の実施に必要な技能の蓄積に努めているところでありまして、これまで、国際平和協力法に基づきまして、ルワンダの難民支援のためにザイール共和国、現在コンゴ民主共和国になっておりますが、この地域、及び東ティモールでの難民支援でインドネシア共和国において、難民救援等のため、医療、防疫、給水、空輸等の業務を実施した経験がございます。

 今後、事態がどのように推移をし、いかなる被災民支援の所要が生じるか現時点では明らかでございませんが、今後、我が国の措置の一環として、自衛隊がこれまでの実績等を生かして被災民支援活動を行うことは十分可能ではないかというふうに考えております。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(綿貫民輔君) 末松義規君。

    〔末松義規君登壇〕

末松義規君 民主党の末松義規です。

 伊藤議員に引き続き、民主党・無所属クラブを代表して、質問させていただきます。(拍手)

 まずもって、今次テロで犠牲になられた方々の御冥福をお祈りいたしますが、これら犠牲になられた方々にお気の毒ですと言うだけでは済まされません。特に、邦人のテロ犠牲者の御家族に対し、国家補償というような救済の仕組みがあってしかるべきだと思いますが、現状、いかがでしょうか。総理にお尋ねします。

 さて、テロ特措法に入る前に、まず、今次テロに関する我が国の外交努力についてお伺いします。

 今回、国際社会は、テロとの闘いやテロ撲滅の必要性をなお一層痛感させられました。今後、テロ犯罪捜査の国際協力が常時行われることが必要です。その意味で、例えば、民主党案のように、国連に常設のテロ監視機構のようなものを我が国が音頭をとって設置することも主体的外交努力の一環だと思いますが、外務大臣、いかがでしょうか。

 また、古来より、宗教、民族対立という観点からは、中東や南アジア地域では、すさまじい歴史がありますし、また、それは現在進行形でもあります。今回、我が国については、キリスト教圏である米国やNATO諸国への支援ということがクローズアップされておりますが、そうであればあるほど、パキスタンを初めイスラム世界に対し、宗教上中立的な我が国の立場を明確にし、対テロ撲滅支援を独自に働きかけるという意味で、精力的な外交を展開することが肝要です。

 その意味で、政府の特使派遣は評価しますが、むしろ、こういうときにこそ、外務大臣本人がパキスタンやイランを初めとする周辺諸国や中東諸国を直接行脚して日本の顔となるべきではないでしょうか。さらに、こういうときこそ、国民の貴重な税金を使っているODAの成果を示すべきときだと思いますが、外務大臣、いかがでしょうか。

 また、日本は、米軍等の武力攻撃中はなかなか地域の支援は行いにくいところがありますが、例えば、事態の鎮静化後、日本が主体的に行う援助として、日本は中長期的にアフガンの復興支援を中心に努力していくと今から正々堂々と世界に向かってアピールしていくことが極めて外交上有益だと思いますが、総理、いかがでございましょうか。

 対アジア外交についても、外務大臣に質問します。

 思うに、このような時流の変化があるときこそ、将来の中長期的な対アジア外交構想を念頭に置きながら、対テロ撲滅支援という現時点での材料を活用し、アジア諸国間の共通認識と連帯をさらに深めていくというような、したたかな戦略的発想で対処すべきだと思います。

 その意味で、とんざしたままの対中国、対韓国外交を今こそ積極的に進め、例えば中国や韓国のトップと小泉総理が三者会談を行い、対テロ撲滅宣言を出し、ASEAN諸国やAPEC諸国に対し、その三国がアピールしながら共同で働きかけていくようなシナリオをまず外相御自身が書くべきではなかったかと考えますが、外相、いかがでしょうか。

 さて、次に、特措法について、米国支援の法的根拠からお伺いします。

 米国は、今次テロに対して、戦争だとも言い、個別的自衛権の発動だとも主張しています。米国の武力攻撃を見る限り、対テロ処罰行為というよりもむしろ戦争行為だと思いますが、総理の御認識はいかがでしょうか。

 また、日本政府が今次テロを米国の個別的自衛権発動の対象と判断した根拠を示してください。テロにもいろいろあり、爆弾テロなどで五人ぐらいの犠牲者が出ても、国家の個別的自衛権発動要件の対象とはなり得ません。犠牲者の規模で判断しているのでしょうか。また、我が国が米国の戦争行為に真正面から協力しているという事実は重いものです。我が国が協力する憲法上の根拠もきちんと示してください。

 一方、逆に、今回のようなテロを我が国が受けていたらどうだったか。総理にお伺いしますが、我が国は、その場合、個別的自衛権を行使し得たのか。行使し得るとして、米国のように、テロ撲滅のために海外派兵を行うことは可能だったのか。さらに、海外派兵はできないとしたら、テロ組織撲滅のため何らかの実力行使は可能だったのか、あるいは不可能だったのか。テロ案件についてはテロ予防が最善だとしても、念のため法的解釈をお伺いします。

 また、今回の支援の財源規模を財務大臣に伺います。

 米国も、四百億ドル、約五兆円ということで議会の承認を得ています。今まだ財源規模が不明でありますが、財源規模が不明ならば、基本計画作成時に明確にするのでしょうか。財源規模が不明では話になりません。

 なお、湾岸危機時のような増税というようなことは今回は一切ないと思いますが、念のためお聞きします。

 さて、今回の新法には武器弾薬の輸送が含まれています。日本近辺の有事を想定している周辺事態法の場合は、武器弾薬の輸送が認められましたが、今回の対米支援は、おのずから緊張、切迫の度合いが違います。しっかりとそこを区別するべきです。

 また、何よりもまず、テレビなどで日本から膨大な武器弾薬を積み込む映像が大々的にイスラム諸国に流れるシーンを思い浮かべてください。歴史的に根深い宗教対立の中、比較的中立の立場で、よいイメージを持たれてきた日本が、途端に中東を初めとするイスラム諸国の民衆より、日本はアメリカや西洋文明の手先として、同じイスラム教徒を殺す武器に手を染めているのかといった敵対的な印象を持たれるのは必至です。大変な外交的な損失です。

 さらに、このことは、内政不安も懸念されているパキスタン等で難民支援や医療支援で働くことになるかもしれない自衛官や、日本人NGOの方々の危険度を一千倍にも引き上げることでしょう。いわば自分で自分の首を絞めるようなものです。武器弾薬は輸送しないという総理の勇断を強く求めますが、総理、いかがでしょうか。

 さて、反米感情や内政不安などを憂慮し米軍でさえも部隊派遣を考えていないパキスタン等に対し、政府は、難民支援や医療支援で自衛官を派遣しようとしています。その際、自衛隊は、現地で決して中立とはみなされず、民衆の反米感情の矛先が向けられる中、後方支援というよりもむしろ前方支援ともいうような、そういう気持ちで頑張るのでしょうか。そもそも、パキスタンなどは外国の軍隊の入国を許さないのではないでしょうか。

 不測の事態等で万が一犠牲者等が出た場合、総理の責任は重いと思いますが、総理はこの責任、もしそういった責任があるとするならばどうお考えになっているのでしょうか、お伺いします。

 また、難民支援等で派遣される自衛官の武器使用については、質問の繰り返しを避けますが、一点、携行する武器のレベルは、車両突っ込み等によるテロ、そういった危険性を考えて、機関銃以上の、例えば対戦車砲などの装備も許容するつもりなのか、防衛庁長官にお伺いします。

 さらに、自衛艦の派遣は、国内的説明がどうであれ、米艦隊の付近にいる場合、対外的には多国籍軍と同一視されることになると思われます。例えば、イージス艦を中心に艦隊として行く際、武器弾薬をフル装備しておいて、情報収集や調査目的のためだけなのだと言って、説得的な説明になるでしょうか。防衛庁長官の見解をお伺いします。

 次に、自衛隊法改正につき、総理に質問します。

 国内の警備強化ということで自衛隊法を改正して、自衛隊が米軍と自衛隊のみを警護することとしています。実情はというと、米軍から、対アフガン武力攻撃ゆえの留守番警護を頼まれたとも聞いております。国民生活の観点に立って、テロから重要施設を守るということであれば、まず原発など原子力施設の警護等が最初に必要でしょう。どうして、この法案では、警護対象として米軍施設や自衛隊施設の二つだけなのでしょうか。

 また、法案では、唐突に警護出動という新しい概念が出されていますが、従来からの治安出動と、概念的にまた手続的にどのように違うのか、明確に説明をお願いします。

 なお、私は、個人的には、テロに対する警護強化ということであれば、機動隊などの警察体制強化でかなりの対応が可能だと考えております。米軍施設警護が米国からの強い要請だということであれば、現行法でも、総理が、米軍施設のみと対象を限定し、国民に対して米側要請の経緯を明確に説明しながら、治安出動を自衛隊に命令すれば事足りるのではないかと思いますが、総理、いかがでしょうか。

 終わりに、今回の対テロ対応については、日米同盟関係の現実的な視点とともに、宗教、民族の歴史的対立に日本民族を巻き込ませないという視点が特に重要です。ショー・ザ・フラッグという湾岸危機時の民族的なトラウマがあるかもしれませんが、現地で活動するかもしれない自衛官等の邦人の安全は至上命題と言えます。

 いずれにせよ、現時点を時流の変化ととらえて、将来の我が国の国益を踏まえた、たくましい外交を行ってほしいとの要望を強く訴えながら、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 末松議員にお答えいたします。

 邦人のテロ犠牲者の御家族に対する国家補償についてでありますが、本件テロ事件について国家が補償する制度は、現在、存在しておりません。

 武力攻撃後のアフガニスタン復興支援についてのお尋ねであります。

 我が国は、アフガニスタンにおける人道状況の悪化を懸念し、従来より、さまざまな支援を行ってまいりました。今後、具体的に復興支援が検討される際には、アフガニスタンにおけるさまざまな需要を踏まえつつ、適切な支援の方途を考えていきたいと思います。

 米国による軍事行動と自衛権に関するお尋ねがございました。

 国連憲章第五十一条に言う個別的または集団的自衛権の発動の対象となる武力攻撃とは、一国に対する組織的、計画的な武力の行使と解されています。今般の米国に対する同時多発テロは、諸般の状況からして、このような武力攻撃に該当すると考えられます。

 なお、お尋ねのあった一連の紛争との用語が具体的に何を示しているか承知していませんが、今回の同時多発テロに対する闘いは、パウエル国務長官も技術的に法的な意味での戦争ではない旨述べており、テロ根絶に向けた世界的な取り組みとしてとらえるべきと考えます。

 米国に対する支援についての憲法上の根拠についてのお尋ねであります。

 テロ対策特別措置法は、憲法第九条に抵触しない範囲内において、憲法の前文及び第九十八条の国際協調主義の精神に沿って我が国が実施し得る活動として、国際的なテロリズムの防止及び根絶のための国際的な取り組みに積極的かつ主体的に寄与するために実施する措置等を定めたものであります。

 米国で起きたテロ事件と同様のテロが日本で起きた場合、どういう対応をするかというお尋ねであります。

 あえて一般論として申し上げれば、我が国に対する急迫不正の侵害とみなすことができるような特別の場合を除いて、突発的テロなどについては自衛権の行使の問題は生じないと考えております。

 政府は、従来から、いわゆる海外派兵は憲法上許されないものと解しており、テロ行為に対処する場合であっても同様であります。したがって、このような場合には、必要に応じ国際連合に働きかけるなど、武力の行使以外の方法でテロ組織に対処することになると考えます。

 武器弾薬の輸送はやめるべきではないかとの御指摘がございました。

 現時点では、米国を初め諸外国の軍隊等が今後どのように活動を展開していくかはっきり想定することは明らかではありませんが、仮に武器弾薬を輸送の対象から外せば、実際、輸送の際に、これは武器ですか、これは弾薬ですかと一々確認する必要が生じます。そういう場合には、円滑な輸送業務の妨げとなる側面も否定できません。このような状況では、諸外国の軍隊等のいろいろな活動に柔軟に対応できるようにしておくことが不可欠であり、法律上は武器弾薬の輸送を可能にすることが適当であると考えております。

 いずれにしても、どの範囲で支援、協力を行うかは、常に我が国として主体的に判断していきたいと思います。

 被災民救援活動についてのお尋ねであります。

 本法案における被災民救援活動は、当該活動が行われることについて「当該外国の同意がある場合に」「現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる」地域において実施することとしております。

 また、仮に実施区域内で当該活動を実施する間に事前に予想されなかった戦闘行為が発生したとしても、実施区域の変更、活動の中断、一時休止等により危険を回避できる枠組みとなっております。

 これらの枠組みにより、政府としては、隊員の安全確保に万全を期してまいります。

 警護出動の警護対象についてお尋ねです。

 自衛隊法改正案により新設する警護出動は、米国における同時多発テロ事件を踏まえ、自衛隊や米軍の防衛関連施設について、特別の必要があれば、治安出動によることなく自衛隊が警護に当たることができるようにするものであります。

 今回の法改正においては、防衛関連施設という特性などを考慮して、自衛隊の警護出動の対象施設を定めたところであります。

 自衛隊法の一部改正に関連して、警護出動と治安出動の内容と手続の違いについてのお尋ねであります。

 現行自衛隊法における治安出動は、一般の警察力をもっては治安を維持することができないような緊急事態に際して、自衛隊に出動を命じて当該事態の鎮圧等を行うものであり、その手続に応じて、内閣総理大臣の命令による治安出動と都道府県知事からの要請による治安出動がございます。

 一方、大規模なテロ攻撃が外国で発生し、我が国においても同様のテロ攻撃のおそれがあるような場合、それだけでは治安出動の要件に該当するとは限りません。

 今般の自衛隊法改正案においては、このような場合に自衛隊や米軍の防衛関連施設を警護するため、内閣総理大臣が自衛隊の出動を命じることができるようにするものであり、改正は不要ではないかとの御指摘は当たらないのではないかと考えております。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣田中眞紀子君登壇〕

国務大臣(田中眞紀子君) まず、民主党が主張されております国連における常設テロ監視機構についてのお尋ねがございました。

 御主張の詳細については現在よくは承知しておりませんが、しかし、よい意見でありますれば検討をさせていただきたく存じます。

 いずれにいたしましても、テロは人類全体に対する極めて卑劣かつ許しがたい挑戦でありまして、我が国としては、テロを根絶するために、世界の国々と一致団結して、テロを許さない国際環境形成のための外交努力及び国際的な法的枠組みの強化、経済システムの安定のための適切な対応など、あらゆる手段を用いて、断固たる決意で立ち向かう覚悟でおります。

 次に、大臣の対応及びODAの成果についてのお尋ねがございました。

 我が国といたしましては、九月末に外務副大臣をパキスタンに派遣いたしまして、種々の困難にもかかわらず国際社会とともにテロに取り組んでいる立場をとるパキスタンに対して我が国の支援を表明し、また、中東、中央アジアの諸国に総理特使を派遣するなどいたしまして、今回のテロ事件に関連して外交努力を積み重ねてきております。

 そして、今回のテロに関していろいろ努力もいたしておりますけれども、私自身も、連日、関連した在京大使でございますとか種々の国際機関と頻繁に連絡をとりまして、密接に情報の交換をいたしてきております。さまざまな情報を集約し、全体として指揮、総括を行うことの重要性を考慮いたしまして、各国や国際機関の関係者と意見交換を重ねてきております。

 これらの外交努力に当たりましては、これまでODAを通じて培ってきました信頼関係、それを基礎としてきておりまして、また、今般の事態の影響を受けている国に対しまして、ODAを活用した支援も行っていく考えでございます。

 さらに、テロリズム撲滅を踏まえた対アジア外交についてのお尋ねもございました。

 テロリズムの根絶、防止のためには、国際社会が一致団結して取り組むことが肝要でございます。今般、小泉総理が訪中した際には、テロ事件への対応について意見交換を行っており、また、私も在京各国大使と機会をとらえて頻繁に話し合いを重ねてきております。

 今後とも、中国、韓国を含むアジア諸国等との友好協力関係を踏まえまして、幅広く総合的な取り組みを行ってまいります。(拍手)

    〔国務大臣中谷元君登壇〕

国務大臣(中谷元君) 携行する武器のレベルについてのお尋ねがありました。

 具体的な武器の種類等につきましては、実際に自衛隊を派遣する場合に、自衛隊の具体的な活動内容や現地の状況などを総合的に勘案して決められることとなると考えておりまして、現時点で具体的にお示しすることは困難であるということを御理解いただきたいと思います。

 次に、自衛隊艦艇を派遣した場合に、これが海外派兵に当たるのではないかというお尋ねがございました。

 いわゆる海外派兵については、一般的に、武力行使の目的を持って武装した部隊を他国の領土、領海、領空に派遣することと解されておりまして、このような海外派兵は憲法上許されないと考えております。

 一方、この法案に基づいて実施することを想定している活動は、それ自体は武力の行使に該当せず、また、その活動地域等にかんがみまして、諸外国の軍隊による武力行使との一体化をするものではありません。したがいまして、本法案に基づいて自衛隊艦艇を派遣した場合であっても、憲法上許されない海外派兵に当たるものではないと考えております。

 なお、防衛庁設置法第五条第十八号の調査研究に関する規定に基づいて自衛隊艦艇を派遣した場合についても、これは、所掌事務の遂行に必要な情報の収集を目的とするものであり、武力の行使の目的を持って派遣するわけではないことから、海外派兵に当たるものではないというふうに考えております。(拍手)

    〔国務大臣塩川正十郎君登壇〕

国務大臣(塩川正十郎君) 私に対するお尋ねは、新法が予定しておる財源の規模はどのぐらいかということでございますが、目下、財源を予定して新法を出しておるものではないと思っておりまして、したがいまして、お尋ねの趣旨は、新法が実施されるとするならばどのぐらいの金がかかるのか、こういうお尋ねであろうと思っております。

 もちろん、これにつきましても、目下のところ、予想はついておりませんけれども、それは、米国等の意向または行動がどのように広がっていくかということ、それを踏んまえなければわかりませんし、また同時に、我が国が支援する事業の内容等についても把握をまだ十分いたしておりません。特に、これから行ってまいります支援体制につきましては、我が国が独自に支援体制を計画するものでございますので、その点が十分になってからお答え申し上げたいと思っております。

 なお、基本計画で明確になるのかというお尋ねでございますけれども、基本計画は、協力支援活動の規模や内容等の基本的な事項を定めるものと承知しておりまして、これによりまして直ちに具体的な事業の規模が明確になるとは限らないと思っております。

 なお、湾岸戦争時のような増税はあるのかというお尋ねでございますけれども、あの当時は、クウェート対イラクの戦争が発生し、国連の要請によりまして我が国は支援金を出したものでございますから、今回とは事情が違っておりますので、目下のところ、それに準ずるということは申し上げられないと思っております。

 以上です。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(綿貫民輔君) 田端正広君。

    〔田端正広君登壇〕

田端正広君 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりましたテロ対策特別措置法案、自衛隊法一部改正案、海上保安庁法一部改正案に対し、質問いたします。(拍手)

 あの忌まわしい九月十一日から、あすでちょうど一カ月になります。いまだ五千人以上の方々が行方不明でありますが、私は、改めて、犠牲になられた方々に心からお悔やみを申し上げ、関係者の皆様にお見舞いを申し上げるものでございます。

 去る十月八日未明、世界が注視する中、米国と英国は、アフガニスタンを実効支配するタリバンの軍事拠点や、同時テロ首謀者のビンラディン一派の訓練施設などに対する攻撃を開始しました。同時に、市民、避難民に向け援助物資も投下しました。

 今回の米英両国の対応は、国連安保理決議一三六八号で事実上認められている個別的自衛権あるいは集団的自衛権の行使として、やむを得ずとられた措置として、これを支持するものであります。国連安保理理事国も、今回の米国、英国の迅速な自衛権の行使に対して理解を示しています。したがって、我が国が憲法の範囲内でできる限りの協力を行うことは、国際社会の一員として当然であります。

 そこで、前提として総理に確認いたします。

 第一に、ビンラディン及びアルカイダの犯行であるとの確証は何か、第二に、今回の空爆はテロリストの訓練基地やタリバン軍事施設に限定すべきであり、アフガニスタンの一般市民やイスラム社会に対する攻撃ではないということをブッシュ米大統領に確認されているのかどうか、お伺いします。残念なことに、現地のNGOの方々が犠牲になったとの報道もあります。この点について、再度、米大統領に要請すべきだと思いますが、いかがでしょうか。

 このテロ対策特別措置法案は、憲法の枠内という大前提で、あくまでもテロ対策と人道的措置という目的を明確にしており、国連決議をも踏まえ、さらには時限性を持たせたことによって、幾重もの歯どめになっています。

 その一方で、軍事的行動が早期に終息に向かうように、国連中心の対話による努力を貫き、国際テロ撲滅とその未然防止のための国際的枠組みづくりへ世界の指導者が結束して対応することも重要であります。

 過日の国連総会やG7でも、各国首脳が参集し、国際的なテロ包囲網を構築するための真剣な討議が行われました。すなわち、テログループへの資産凍結を初め、テロ関連条約の批准の推進、武器輸出の禁止、ハイジャック防止対策、テロ組織の実態解明への協力、そして、ありとあらゆる外交措置や、非軍事的分野における重層的な対応をすることによって、我が国はリーダーシップを発揮すべきだと考えますが、総理の御決意をお伺いします。

 また、総理は、八日の中国訪問の際、米国におけるテロ事件との関連で、テロ対策新法を初めとする我が国の対応措置について、江沢民国家主席を初め中国首脳からの理解が得られたのかどうか、お伺いいたします。

 さて、今回の軍事的対応により、邦人の安全確保、国内の警戒警備態勢及び入国管理体制の強化、さらには、大量に難民が発生することが予想されるだけに、法案の早期成立へ向けての迅速かつ柔軟な対応が求められていますが、総理の率直な御所見をお伺いします。

 今回のテロ対策特別措置法案には、明確に、「武力による威嚇又は武力の行使に当たるものであってはならない。」と規定されており、その活動は、医療、補給・輸送、難民等への人道的支援であり、現在、世界から高く評価されている日本の国際平和協力活動に限りなく近く、憲法の枠内でできる最大限の国際貢献だと思いますが、総理の御認識をお伺いします。

 次に、武器弾薬の輸送についてお伺いします。

 法案では、非戦闘地域である他国の領域にまで運べることになっておりますが、国民の理解が得られるように、より慎重に対応すべきだと考えますが、総理はどうお考えですか。

 武器使用についてお尋ねします。

 武力行使と武器使用について混同して議論されている向きがあります。周辺事態法においての武器使用は、自己防衛と現場の自衛隊員、そして武器等防護に限定されていましたが、それを、自己の管理下にある者、すなわち医師や看護婦、難民等を守るためにも使用可能となっています。これは何ら武力行使に当たりませんが、武器使用の緩和について、どういう武器の携行を認めるのか、防衛庁長官の御見解をお伺いします。

 かつて、ガンジーは、平和を構築するにはだれかが不屈の信念を持って取り組まなければならないと叫びました。今、重要なことは、今回の事態に対して我が国が信念を持って主体的に取り組むと同時に、一刻も早く和平へのプロセスを歩めるよう、各国と連携を図りながら全力を尽くすことであります。

 過日、私は、与党の東ティモール視察団の一員として、東ティモールを訪れました。そこで痛切に感じたことは、日本の国連平和維持活動、PKO活動が高く評価されているということであり、デ・メロ国連事務総長特別代表は、日本の平和憲法の制約はよくわかっている、その範囲内で国際的な平和活動を貫くべきだと語っていました。

 つまり、日本は憲法の枠内での国際貢献を積極的に推進すべきだと思いますが、最後に総理の御所見をお尋ねして、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 田端議員にお答えいたします。

 本法案審議促進に対する御協力、また激励に対しまして、感謝を申し上げたいと思います。

 今回のテロがウサマ・ビンラーディン及びアルカイーダの犯行であるとの確証についてのお尋ねであります。

 私も、いろいろ各国との情報交換、またブッシュ大統領との直接の意見交換等によりまして、今回のテロへのウサマ・ビンラーディン及び同人が率いるアルカイーダの関与については、説得力のある説明を受けております。ただ、どういう内容かということについては、いろいろ事柄の性質上、差し控えさせていただきたいと考えます。

 今回の米国による軍事行動の対象についてのお尋ねであります。

 米国ブッシュ大統領は、九月二十日の議会演説で、敵はイスラムでもない、アラブでもない、テロリストとそれを支援する政府であると述べております。私も、ブッシュ大統領との直接会談において、これはテロリストあるいはそのグループとの対決であって、アラブ人との対決でもなし、イスラム教徒との対立でもないということをはっきり申し上げ、その点については意見の一致を見ております。

 さらに、ブッシュ大統領は、今回の軍事行動の目的は、テロリストの作戦基地としてアフガニスタンを使用することを中断させ、タリバン政権の軍事能力を攻撃することにあると述べており、民間人の犠牲者を出すことを望んでいるとは思いません。

 あらゆる外交措置や重層的な対応をすることにより我が国も主体的な外交を展開すべきだという御指摘でございます。

 同感でありまして、今回のテロ事件に際しましては、武力行使をしない、戦闘行動には参加しないという前提の中で、国際社会としていかにテロ撲滅、抑止に向けて我が国の責任を果たすかということが主体的な考え方であり、我々としても、このような立場から、国際的な法的枠組みの強化、アフガニスタン周辺国への支援、避難民支援、G8等を通じた国際協力等に積極的に取り組むとともに、各種の情報の収集や交換、関係国への働きかけに鋭意努力しておりますし、今後とも、その努力を継続していきたいと思います。

 我が国のテロ事件への対応措置に関する中国首脳の理解についてでございます。

 今回の訪中の際に、江沢民主席また朱鎔基総理に対しまして、我が国としては、武力行使をしないという前提の中で、憲法の範囲内でできるだけのテロ撲滅・防止活動に取り組むという説明をし、私は、先方の理解を得ることができたと考えております。

 迅速なテロ防止・根絶対策の実施についてです。

 政府としては、御指摘のような各種の緊急対応措置を速やかに実施してまいります。また、米国等の行動を支援するとともに、人道的立場から被災民の救援を行うために、法案に定めた措置を早急に実施していく必要があり、十分御審議の上、一日も早い法案の成立をお願いしたいと考えております。

 本法案に対する認識についてのお尋ねであります。

 今回の法案は、先般のテロ攻撃に対応し、国際社会の取り組みに我が国として積極的かつ主体的に寄与するため、諸外国の活動に対する協力支援活動や、国連等の要請による被災民救援活動を定めたものであり、御指摘のとおり、憲法の範囲内でできる限りの支援、協力を行い得るようにするという意義を有するものと考えております。

 武器弾薬の輸送について、他国の領域にまで行うことについて慎重に対応すべきとの御指摘であります。

 同感でございます。これからどのような活動が、米国を初め関係諸国等の軍隊が展開されるのか、はっきりとした想定はできませんが、仮にそのような諸外国の軍隊等の活動が行われた場合、他国の領域において武器弾薬が輸送されるかどうか、明らかに想定することはできませんが、これが外されるということになりますと、実際の輸送の際、武器弾薬が含まれないことを逐一確認する必要が生じて、円滑な輸送業務の妨げとなる側面を否定することはできません。今回、国民の理解を得ることの重要性は十分認識しておりますが、いずれにせよ、武器弾薬の輸送については、同意を得た他国の領域において行えるようにしておくことが適当と考えます。

 我が国の国際貢献についてのお尋ねであります。

 繰り返しになりますが、今回は、九月十一日の米国におけるテロ事件、これに対する国際社会の一員としての責任を果たす、それが趣旨でございます。我々としては、武力行使をしない、戦闘行為には参加しないという前提で、日本の国力に応じてできる限りの支援と協力をとっていきたいという法案であることを御理解いただきたいと思います。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣中谷元君登壇〕

国務大臣(中谷元君) 現場での武器使用についてのお尋ねがありました。

 この法律に基づく活動では、例えば難民、傷病者や現地の被災民の治療を行います。また、人員の輸送、またはUNHCRなどの国際機関や各国との連絡調整、通訳や自衛隊の宿営地への物資の搬入など、活動を命ぜられた自衛官がその職務を行うに伴いまして、幅広い場面で自衛隊員以外の者とともに活動することが想定をされるため、このような活動の様式に合わせて、自己とともに現場に所在し、「その職務を行うに伴い自己の管理の下に入った者」をも防護対象としたものでございます。

 このように、法案に規定する武器使用は、周辺事態安全確保法、ガイドライン法に比べて法案の活動の形態に合わせ防護対象は広がっているものの、いわば自己保存のための自然権的権利というべきものでございまして、自己等の生命、身体の防護のための必要最小限の武器使用権限を規定したものであり、携行する武器についても、想定される不測の事態に対して適切に対処することができる必要最小限のものになるというふうに考えております。

 以上です。(拍手)

    ―――――――――――――

    〔議長退席、副議長着席〕

副議長(渡部恒三君) 土田龍司君。

    〔土田龍司君登壇〕

土田龍司君 私は、自由党を代表して、ただいま議題となりましたテロ関連三法案について質問いたします。(拍手)

 このたび、米英両国は、予想されていた軍事行動の一環として、アフガニスタンへの攻撃を開始いたしました。

 今回の攻撃は、米国の個別的自衛権、英国の集団的自衛権の行使であります。我が国が自衛隊を派遣することによりこれを軍事的に支援することは、集団的自衛権の行使に当たり、それは、これまで政府が憲法で禁じられているとしてきたものであります。NATOは、既に集団的自衛権を行使することを明確にした上で、平和のために戦う活動に参加したのであります。日本政府がこのことを真正面から論ぜず、新しい憲法解釈を国民に明示することなく、人道支援あるいは国際協力という名の装飾を施して新法を通そうとしていることは、国民を欺く以外の何物でもありません。

 この見地から、私は、以下数点にわたり、小泉総理の御所見をただしてまいります。

 まず、政府案では、今回の軍事行動への我が国の支援活動を、国連憲章の目的達成のための活動と法案名に明記し、いかにも国連の旗のもとでの活動であるかのように見せておりますが、これは、国民に誤った認識を与えるもの、言いかえれば、国民に対するごまかしであります。

 本来、国際紛争を解決するのは、国連憲章第四十二条による平和強制措置、あるいは国連の武力行使容認決議による加盟国の共同行動でなければなりません。今回の米英両軍の行動並びに各国が行い、または行おうとしている軍事的支援措置は、国連憲章第五十一条に基づく、国連が動き出す前の暫定措置としての、個別的・集団的自衛の権利を行使するための行動であります。これらの行動は、国際紛争を解決するために陸海空軍を動かすこと、イコール戦争、イコール武力行使なのであります。ごまかしではなく、国際法上、各国の軍事行動がどのような性格を持つものなのか、小泉総理から明確に国民に説明すべきであると思いますが、いかがなものでございましょうか。(拍手)

 そもそも、政府が今回の行動をあくまで国連憲章の目的達成のための活動と位置づけるおつもりならば、国連憲章第四十二条に基づく国連における武力行使容認決議の採択を安保理各国に働きかけるべきではありませんか。こうした努力を行ったのでしょうか。総理の御答弁を求めたいと思います。

 米国がテロという卑劣な行為に対して自衛権を行使し、NATO諸国が集団的自衛権の行使を宣言して、前方あるいは後方に軍事力を展開しようというときに、我が国は、自衛隊は派遣するが集団的自衛権は行使しないなどという国際ルールにそぐわない論理が通用しないことは明らかであります。

 戦争には前方も後方もありません。兵たんをたたくのが近代戦争の常識であります。前線でしか武力行使しないということはあり得ません。後方地域であっても、いつ攻撃されるかわからない、戦闘に参加している状態なのであります。戦闘状態には常に動きがあり、戦線も移動していくのもまた常識であります。後方地域に戦線が拡大した場合に逃げて帰ってくるというような対応をすることこそ、国際社会の笑い物であり、自衛官の誇りを傷つけるものであります。そのようないいかげんな法律をつくってまで、自衛隊を海外に派遣するべきではありません。テロのような新しい形の現代戦争には、戦場という概念そのものもなくなりつつあるのであります。

 政治が責任をとろうとしない、武力行使と一体化しない武器の使用なら構わないが、武力行使と一体化するのは憲法で禁じられているからだめだなどという机上の論理を押しつけて、現場の指揮官が安んじて指揮をとることができるでありましょうか。派遣するなら、堂々と、後方地域であっても武力行使することもあり得ると、政府の憲法解釈を変更して派遣するべきであると思いますが、小泉総理の御見解を伺いたいと思います。

 次に、今回の自衛隊の派遣は戦後の我が国の安全保障政策を大きく転換しようとするものであり、わずかばかりの審議で慌てて法律をつくって自衛隊を派遣すればよいというような安易な対応は許されません。

 我が国は、戦後、米国との間に日米安全保障条約を結んで、我が国の安全を確保してまいりました。我が国及びその周辺地域において我が国の安全が脅かされた場合には、日米両国が共同で対処する、すなわち、日本の平和と安全を共同で守るというのが日米安保条約であります。今回、この枠組みから大きく外れて、日本周辺地域からもかけ離れて、第三国の領土と領海に赴き、米国と日本が共同作戦を行おうとするものであり、これは紛れもなく、我が国の防衛大綱からの逸脱であり、日米同盟関係の大きな変質であります。

 言うまでもなく、我々も、日米関係は最も重要な二国間関係だと考えております。日米同盟の重要性も認識しております。しかし、日米同盟を改める必要があるならば、どんな原則で、どこまで米国と行動をともにするのか、政府がまずその方針を明確に示すべきであります。日米安保条約の改定もしないで、日米ガイドラインを見直すこともなく、ACSA改定協定も結ばずに、この法律さえ制定すれば米国とともに自衛隊を海外に派遣できるという態度は、およそ主権国家、法治国家として我が国がとるべき態度ではありません。この件に関する総理の御見解を明確にお示しいただきたいと思います。

 このような泥縄的な対応を予見し、警鐘を鳴らし、政治としての明確な対応が必要であることを常に主張してきたのが我々自由党であります。

 自由党は、一昨年の一月、自民党との連立政権に加わるに当たり、国家としての安全保障の原則と方針を示し、具体的な法的措置をとるよう要求いたしました。しかし、残念ながら、自自連立、その後の自自公連立において、自由党が主張した、安全保障の基本原則の確立も、有事法制など危機管理のための対応も、一向に進展を見ることもなく、我が党はそのために連立政権離脱の道を歩んだのであります。

 当時の与党協議では、国連の旗のもとに、中立も確保され、停戦の合意があり、当事国の同意もあって自衛隊の部隊を派遣するPKFの凍結解除にさえも消極姿勢をとり続け、現に今も凍結したままにしているにもかかわらず、今回は、国連の活動でもなく、中立的な活動でもない、停戦の合意もない活動に自衛隊を参加させるという政策転換が行われたのであります。

 与党三党はその決断をいつ行ったのか、PKF凍結がされたままであることのこの矛盾をどう説明されるのか、最も肝心な有事法制の整備はどうするのか、今まで何もしてこなかった反省も含めて総理の明快な御答弁をお聞かせいただきたいと思います。(拍手)

 自由党の主張は一貫しております。この見地から、自由党は、政府提案の三法案に対する対案として、国の防衛及び自衛隊による国際協力に関する基本法案を提出いたしました。

 その要旨は、日本国憲法において武力の行使を含む自衛隊の軍事行動が認められるのは、一、個別的であれ集団的であれ、我が国が直接侵略を受けた場合、あるいは、放置すれば武力攻撃に至るおそれのある周辺事態における自衛権の発動、二、国連の安保理または総会において武力行使容認決議がなされ、その要請に基づく平和活動に限られる。すなわち、国際紛争への自衛隊の派遣については、例えば、湾岸戦争のように国連の武力行使容認決議に基づく活動には積極的に参加するが、ベトナム戦争のような米国等の軍事行動には米国の要請があっても参加しないというものであります。

 今回のテロ攻撃に対処するための措置を含め、今申し上げました明確な原則に基づいた対応を行っていくことが最も重要だと考えておりますが、自由党提出のこの法案についての総理の御所見を伺いたいと存じます。

 次に、我が国自身のテロに対する対応策について伺います。

 我が国は、昭和五十二年九月、ダッカ日航機ハイジャック事件において、日本赤軍等九人の釈放と身の代金要求に屈するという、法治国家、民主主義国家として国際社会における恥ずべき行為を容認したという過去を持っております。我々は、今、その当時の経験を踏まえ、その認識と覚悟を新たにしなければなりません。

 我が国がテロに対して断固として闘う姿勢を示し、テロ行為の根絶を目指すとともに、すべての面において我が国が怠ってきた危機管理のための体制整備に早急に着手すべきであります。各国との協力体制を強化して、出入国管理体制の強化や関係者への資産凍結、資金洗浄対策など、可能な限りの対策を講ずるべきであります。

 また、我が国においては、重大なテロ事犯を対象とした法制が未整備であります。テロ組織を対象とした、未然防止、情報収集と通信傍受、特殊訓練部隊の設置、省庁間の連絡調整、各国との協力、そして、まだ行っていない、テロに関する国際条約の速やかな締結、ジュネーブ人権条約追加議定書の締結と関連法制の整備など、総合的な対策整備をすることが必要であります。

 これらの点について、小泉総理の御所見を伺いたいと思います。

 十月八日の電話会談で、小泉総理に対してブッシュ米大統領は、忍耐強い冷静な対応が必要だと述べたと言われておりますが、まさにそのとおりであります。国の防衛という国家国民の最も重要問題にかかわることであり、日本政府は、今日の米英の軍事行動に沈着冷静に対応すべきであります。無原則に自衛隊を海外に派遣することは日本の将来に大きな禍根を残すことになることを強く申し上げまして、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 土田議員にお答えいたします。

 今回の米英両軍の行動及び各国の軍事的支援措置の国際法上の性格、さらに、武力行使容認決議の採択に向けての我が国の立場についてのお尋ねであります。

 今回の米国及び英国による行動は、国連憲章第五十一条に基づく個別的及び集団的自衛権の行使として行われたものであります。自衛権の行使に関して、両国に武力の行使を容認する安保理決議を必要としないことは明らかだと思います。

 我が国が法案に基づき実施することを想定している対応措置は、武力の行使に該当せず、安保理決議が必要とは考えておりません。

 憲法解釈を変更して自衛隊を派遣すべきであるとの御指摘がございました。

 今回のテロ対策特措法案は、武力行使との一体化に関する従来の基本的考え方を踏まえるなど、憲法の範囲内でできる限りの支援、協力を行うという観点から作成したところであります。本法案に基づく活動において想定される武器の使用は、あくまでも、派遣される自衛隊員及び支援活動の安全を確保するための、自己保存のための自然権的権利の範囲に限られるものであると理解しております。

 日米同盟関係と本法案に関して我が国がとるべき態度についてのお尋ねであります。

 我が国外交の基軸であります日米同盟関係は、さまざまな課題に直面している二十一世紀の国際社会において、引き続き重要なものであると認識しております。

 他方、本法案は、関連の国連安保理決議を踏まえ、国際的なテロの防止及び根絶のための国際社会の取り組みに積極的かつ主体的に寄与することを目的としているものであり、日米安保体制を基軸とする日米同盟関係と直接に関係するものではありません。

 自衛隊派遣とPKF凍結の関係についてのお尋ねであります。

 本法は、国際テロによる脅威の除去に努める外国軍隊等への措置等を定め、我が国を含む国際社会の平和及び安全の確保に資することを目的としております。この点、停戦合意成立後の国際連合平和維持活動等への協力を行うための国際平和協力法とは、その目的や想定される状況を異にするものであり、同列に論ずることは適当ではないと考えております。

 有事法制の整備については、これは、備えあれば憂いなしとの考え方に立ちまして、引き続き、有事法制について検討を進めてまいります。

 自由党提案の法案についてどう思うかということでございますが、この自由党御提案については、議員提出の議案として、今後、国会で種々議論が行われるものと期待しております。

 テロへの対応と危機管理についてのお尋ねでございます。

 今回のテロに対して、我が国は、国際社会と一致協力して、テロ根絶、防止のために断固たる姿勢で臨んでおります。これまでも、危機管理については、初動体制の整備や各種事案に対する対応体制の確立などに努めてまいりましたが、このたびの事案を踏まえ、新たなテロとの闘いのため、各国と協力して、情報の収集、出入国管理、資金源対策など、あらゆる角度から対策を進めているところであります。また、法整備の面でも、関連の条約を受け国内法の整備を図るなど、テロ対策に万全を期してまいりたいと思います。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(渡部恒三君) 木島日出夫君。

    〔木島日出夫君登壇〕

木島日出夫君 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となりましたテロ対策特別措置法案外二法案について、小泉総理に質問します。(拍手)

 十月八日未明、米軍は、アフガニスタンに対する軍事攻撃を開始しました。国連を中心とした国際政治の場で、国際社会としての的確な告発と制裁という手段が尽くされないまま軍事行動と戦争という事態になったことは、極めて重大です。国連NGO事務所が爆撃され、アフガン職員四人が死亡しましたが、軍事行動の拡大によって罪なき市民の犠牲が広がることは、許されないことです。

 ビンラーディンは、今月八日のビデオ演説で、みずからの犯行を否定せず、今後もテロを行うことを事実上予告する発言をしていますが、これは、ビンラーディンとアルカイダが今回のテロ攻撃を実行、関与した容疑を示すものです。タリバンは、容疑が明らかになったらビンラーディンを引き渡すと言明してきたのですから、引き渡すべきであります。国連を中心にして、国際社会の一致協力のもと、タリバンに身柄の引き渡しを要求し、国連としての制裁行動もとって身柄を確保し、法による裁きを下すという道に切りかえるべきです。そして、そのためにも、米軍による軍事報復の中止を求めるべきであります。日本政府は、そのための努力をすべきです。総理の答弁を求めます。

 テロ対策特別措置法について聞きます。

 本法案は、現にアフガニスタンとの戦争を行っている米軍等の軍事行動を支援するため、日本の自衛隊が、爆撃機の発進基地であるインド洋ディエゴガルシアやパキスタンなど、他国の領土、領域にまで出動して、軍需物資を補給し、武器弾薬を輸送し、兵器を修理し、米軍の傷病兵を治療し、攻撃されたら武器を使用して反撃することなどを可能にしようとするものであります。まさに戦争参加法であります。

 このような法律が、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」と定めた憲法九条一項が厳然と存在するもとで、どうして許されるのですか。総理の明確な答弁を求めます。

 以下、法案に即して、具体的な問題にかかわって質問します。

 第一は、自衛隊が支援をしようとしている米軍等の軍事行動は具体的にどのようなものかという問題です。

 法案第一条は、自衛隊が協力するのは、九月十一日アメリカで発生したテロによってもたらされている脅威の除去に努めている米軍等の活動と書いています。

 そこで聞きます。

 脅威の除去に努めている米軍等の活動とは、どのような活動をいうのですか。その活動はだれが決めるのですか。

 一つ一つの軍事行動について、事前に日本政府や自衛隊に知らされるのですか。その保証が法案にはありますか。

 アルカイダなどテロ組織は、世界六十カ国に存在すると言われています。米国は、十月九日、国連安保理で、アフガニスタン以外の国に対しても軍事攻撃を加える可能性があるという言明をしていますが、戦争の大規模化への危惧を抱かせるものです。この法案では、世界じゅうどこの地域での軍事活動に対しても支援できる仕組みになっています。自衛隊が支援できる地域について、歯どめはあるのですか。

 ラムズフェルド米国国防長官は、核兵器の使用についても否定していません。この法律には、核兵器による攻撃については支援しない歯どめがありますか。米軍等による軍事行動の手段や方法について、自衛隊が支援しない制度的歯どめはあるのですか。

 米国の空爆の拡大によって、罪のない市民に被害が広がるおそれが心配されています。このような武力攻撃にまで自衛隊が兵たん支援することになってしまってもいいのですか。これに対する歯どめはあるのですか。

 法案には、自衛隊が支援する米軍等の活動については、その手段も、時期も、場所も、何らの制約もありません。米軍が、いつ、どこで、どのような軍事攻撃を行っても、自衛隊は世界じゅうに展開できる仕掛けになっているのではありませんか。あらゆる面で無限定な軍事行動に対して自衛隊が兵たん面で協力できる法律が、戦争放棄を定めた日本国憲法のもとで、どうして合憲と言えるのですか。総理の明確な答弁を求めます。(拍手)

 第二は、自衛隊が活動する地域の問題です。

 法案第二条によれば、「現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる」地域で、公海とその上空、当該外国の同意がある場合の外国の領域が自衛隊の支援活動地域です。

 そこで聞きます。

 相手は見えない敵と言われるテロ集団です。「戦闘行為が行われることがないと認められる」地域を、だれが、どのような方法で判断するのですか。そんなことは、テロ集団を相手にした戦争において可能なのですか。

 パキスタンのアフガニスタン国境付近が、最も難民キャンプがあるところです。いつ難民に紛れてテロ攻撃が行われるか、だれも事前に予測することは不可能でしょう。このような地域は、「戦闘行為が行われることがないと認められる」地域になるのですか。

 現在、米軍の戦闘機は、インド洋ディエゴガルシア島の基地、アラビア海、ペルシャ湾洋上の空母から攻撃発進しています。このような基地、空母は、「現に戦闘行為が行われておらず、かつ、」「行われることがないと認められる」地域になるのですか。

 法案の最大の特徴は、テロ集団という見えない敵との戦争に対して自衛隊が兵たん支援を行うということです。自衛隊が活動できる地域と活動できない地域との合理的区分けなど、本質的に不可能なのではないですか。総理の答弁を求めます。

 第三は、武器弾薬の輸送の問題です。

 本法案では、戦闘機が現に発進しているペルシャ湾、アラビア海の洋上にある米空母やディエゴガルシア島の基地に、自衛隊が武器弾薬を輸送できるのですか。米軍による空爆や武力攻撃を継続させるためにこそ、武器弾薬の輸送が不可欠になるのです。これはまさに、自衛隊が米軍と一体となって戦争を行うのと同じではないですか。こんなことが憲法上許されないことは明らかです。総理の答弁を求めます。

 第四は、自衛隊による武器使用の問題です。

 法案第十一条によれば、協力支援活動、捜索救助活動、被災民救援活動中の自衛隊は、自衛隊員のほか、「その職務を行うに伴い自己の管理の下に入った者の生命又は身体の防護のため」武器の使用をすることができるとなっています。この問題で、周辺事態法との最大の違いは、本法案が、「自己の管理の下に入った者」の防護のために自衛隊員に武器の使用を認めたことであります。

 そこで、お聞きします。

 「自己の管理の下に入った者」とはどういう者ですか。パキスタン国内の難民キャンプで食糧や水の支給を実施している自衛隊員、テロ監視をしている自衛隊員の場合、対象の難民は「自己の管理の下に入った者」に当たるのですか。

 救助され自衛隊員と同道中の米軍の傷病兵、自衛隊員が治療中の傷病兵などは「自己の管理の下に入った者」に当たるのですか。

 なぜ、今度の法案に、新たに、このような者を武器使用の防護対象に加えたのですか。

 PKO法や周辺事態法では、自衛隊員の武器の使用は、自己及び自己と活動をともにする自衛隊員の生命、身体に対する急迫不正の侵害から自己を守るという、正当防衛としての武器の使用でありました。だから、武器の使用は武力の行使とは異なり、自衛隊の活動は憲法違反ではないというのが政府の説明であったのではないですか。

 本法案で、防護の対象を「自己の管理の下に入った者」まで拡大したことは、まさに、戦闘がいつ行われるか予測のつかないところでの自衛隊の活動が想定されているからではないのですか。また、武力の行使そのものを行った結果負傷した米軍兵士と極めて近接したところで自衛隊の活動が行われるのを想定しているからではないのですか。

 武力の行使と武器の使用を使い分けてきたこれまでの政府の説明は成り立たないのではないですか。総理の答弁を求めます。

 次に、被災民救援活動についてです。

 政府は、法案の中に自衛隊による被災民救援活動を加え、これを大きく打ち出していますが、本当に被災民救援をするなら、民間による活動の方がはるかに有効、アフガニスタンと戦争状態にある国の軍隊が行うことは逆に危険だとの厳しい指摘が、現地の状況をよく知る人々からなされています。米国を支援する国の中で、これまでにアフガニスタンの難民救援に軍隊を出している国はありますか。あれば挙げてください。答弁を求めます。

 以上、法案に即して幾つかの問題を指摘してきましたが、それだけでも、政府のこれまでの、自衛隊の行動は武力行使そのものではなく、武力行使と一体化するものでもないから憲法九条に反しないという詭弁が全く通用しないものであることが明らかです。憲法違反の、戦争参加法であるテロ対策特別措置法案はきっぱりと撤回することを求めます。(拍手)

 こういうときだからこそ、我が国は、憲法を投げ捨て米軍の戦争支援に突き進むのではなく、憲法九条を持つ国として、非軍事による、テロの根絶を目指して国際社会に働きかけることが求められているのではないでしょうか。その道こそが、憲法が示す、我が国が国際社会において名誉ある地位を占める方向だと確信をいたします。

 日本共産党は、そのために全力を尽くして頑張ることを申し上げて、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 木島議員にお答えいたします。

 ビンラディンは法により処罰されるべきであり、日本として努力すべきではないかとのお尋ねがありましたが、法の言うことを聞く相手じゃないじゃないですか。国連決議を無視しているのはテロリストです。法の言うことを聞くようだったら、こんなに我々は苦労しませんよ。聞かないから、国際社会の声を無視してテロ行為をしているから、我々は苦労しているんです。

 我が国は、テロリズムと闘う米国や英国、国際社会と協力して、今回のテロ根絶、抑止のために毅然として立ち向かわなきゃならないと私は思っております。(拍手)

 今回の同時多発テロに関し採択された国連安保理決議においては、自衛権が各国固有の権利であることに改めて言及しつつ、今回のテロ行為を国際の平和及び安全に対する脅威であると認め、テロの実行者及び支援者等を処罰し、並びにテロ行為の防止、抑圧のために国際社会が努力することを求めているんですよ、国連が、国際社会が。このような安保理決議を踏まえて、国際社会の一員として責任ある支援、協力をしなきゃならないのが、我々日本政府として当然だと思います。こういう国連決議を踏まえ、我が国としては、テロ根絶、抑止のために、積極的に、主体的に取り組んでいきたいと思います。

 法案と憲法九条第一項の関係についてお尋ねがございました。

 法案に基づき実施することを想定している活動は、それ自体は武力の行使に該当しない内容のものであり、また、その活動の地域の範囲などにかんがみれば、米軍等の武力の行使と一体化するものでもありません。したがって、憲法第九条第一項との関係において、問題はないものと考えております。

 脅威の除去に努めている米軍等の活動についてお尋ねがありました。

 これは、九月十一日の米国におけるテロ攻撃を行った者等によってもたらされている脅威の除去に努めることにより、国際の平和と安全を維持することを含む国連憲章の目的の達成に寄与する活動を意味しております。諸外国の軍隊等の活動がこのような活動に該当するか否かは、当該活動の目的、態様等から我が国自身が判断します。

 米国の軍事行動の際の事前通報に関するお尋ねがありました。

 今回のアフガニスタンにおける軍事行動については、事前にパウエル国務長官より連絡がございました。また、軍事行動開始数時間後の私とブッシュ大統領との電話会談において、今後の対応についても日米両国間で緊密に連絡をとることで意見の一致を見ております。

 本法案に基づいて自衛隊が実施できる対応措置の地域についての歯どめについてのお尋ねであります。

 本法案のもとでの対応措置については、戦闘行為が行われることがない地域に限って実施すると規定されています。このことから、テロ攻撃に対応する諸外国の軍隊等に対する自衛隊の対応措置には、地域についての歯どめがあると思われます。

 諸外国の軍隊等の活動のうち、本法案に基づいて自衛隊が対応措置を実施する場合の歯どめについてのお尋ねであります。

 本法案では、国際連合憲章の目的の達成に寄与する諸外国の軍隊等の活動に対して対応措置を実施すると規定しており、対応措置の対象は限定されていると考えております。

 なお、テロ攻撃による脅威の除去に努めるこのような諸外国の軍隊等が核兵器を使用したり、あるいは罪のない市民を大量虐殺するようなことは、およそ想定されておりません。

 いずれにせよ、我が国が行う支援、協力は、常に我が国として主体的に判断して実施してまいりたいと思います。

 米軍の無限定な軍事行動に対して協力できる本法案は合憲と言えるのかとのお尋ねがございました。

 本法案に基づく協力支援活動の対象は、テロ攻撃によってもたらされている脅威の除去に努めることにより国連憲章の目的の達成に寄与する諸外国の軍隊等に限定するとともに、その実施地域は、戦闘行為が行われることがない地域に限定しております。

 このように、本法案においては、協力支援活動はその対象、実施地域を限定していることから、無限定との指摘は当たりません。憲法に違反するものではないと考えます。

 テロ行為と「戦闘行為が行われることがないと認められる」地域についてのお尋ねであります。

 本法案において、戦闘行為は、「国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為」と定義されており、テロ行為は通常これには当たりません。

 本法案においては、自衛隊が活動する地域を戦闘行為が行われることがない地域に限定しております。これらの地域に当たるか否かについては、基本計画の策定時などに際し、地域の情勢について各種情報等を総合的に分析することにより、常に我が国として合理的な判断を行うことが可能であると考えます。

 米軍の戦闘機が攻撃発進している基地、空母が所在する地域についてお尋ねがありました。

 ある地域が戦闘行為が行われることがない地域に当たるか否かについては、基本計画の策定などに際し、当該地域において、「国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為」が発生し、または活動の期間を通じて発生するおそれがあるかどうかなどに基づき、個別具体的に判断すべきものであると考えます。

 自衛隊の活動地域の合理的な区分けは不可能ではないかとの御指摘でありますが、可能であります。

 この法案において、我が国の対応措置は、「現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる」との要件を満たす地域において実施することとしております。ある地域がこのような地域か否かについては、地域の情勢に関する各種情報等を実施区域の指定に際して総合的に分析することによって、合理的に判断することが可能と考えます。

 自衛隊による武器弾薬の輸送の合憲性についてのお尋ねであります。

 本法案に基づく協力支援活動としての武器弾薬の輸送は、それ自体としては武力の行使に当たらない活動であり、また、その活動の地域は戦闘行為が行われることがない地域に限られていることなどにかんがみれば、憲法上の問題は生じません。ある地域が戦闘行為が行われることがない地域に当たるか否かについては、今までの答弁で繰り返しているとおり、活動の期間を通じて戦闘行為が発生するおそれがあるかどうかについて個別具体的に判断すべきものであると考えております。

 本法案における「自己の管理の下に入った者」についてのお尋ねであります。

 自衛隊が協力支援活動等を行うに際しては、幅広い場面で自衛隊員以外の者と活動することが想定されます。このような者が自衛官と共通の危険にさらされたときには、その生命、身体の安全確保について自衛官の指示に従うことが期待される関係にある者について防護できるようにすべきと考え、このような関係にある者を「自己の管理の下に入った者」と表現し、防護対象に加えたものであります。

 これに該当する者は、自衛隊の活動の態様等によりさまざまなものが想定されますが、例えば、自衛隊の診療所にある、または輸送中の傷病兵や被災民などが挙げられます。なお、宿営地外の一般の市民や被災民など、自衛官とともに現場に所在していない者は該当しないと考えております。

 「自己の管理の下に入った者」に関して、武力の行使、武器の使用との関係についてのお尋ねがありました。

 本法案において「自己の管理の下に入った者」を防護対象としたのは、自衛隊が協力支援活動等を行うに際しては、幅広い場面で自衛隊員以外の者と活動することが想定されるため、この活動の態様に合わせて措置したものであります。

 かかる防護を含め、本法案に規定する武器の使用は、いわば自己保存のための自然権的権利というべきものであり、政府として、従来から申し上げているとおり、武力の行使には該当しないと考えております。

 いずれにせよ、活動を行う地域は戦闘行為が行われることがない地域に限定されており、憲法に抵触するものではございません。

 アフガン難民支援についてのお尋ねです。

 現在、アフガニスタン及び周辺国において発生している難民への支援については、UNHCR等国際機関を中心として、国際社会が一致して取り組んでいるところと承知しております。その際の各国の具体的な支援については、各国が現地情勢等を踏まえ主体的に判断していると承知しております。

 法案を撤回すべきというお尋ねでございますが、政府としては、この法案の一日も早い成立を期待しておりまして、法案を撤回する考えはございません。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(渡部恒三君) 今川正美君。

    〔今川正美君登壇〕

今川正美君 私は、社会民主党・市民連合を代表して、このたび政府より提出されました米国同時多発テロ事件に関する三法案につきまして、反対する立場から質問をいたします。(拍手)

 まず冒頭に、今回の米国テロ事件に関して、世界の多くの人々が軍事報復だけはやめてほしいと願っていたにもかかわらず、今月八日未明、米英両軍がアフガニスタンに空爆開始をし、既に民間人が死傷し、国連の関連施設まで被害を受けております。また、小泉内閣がこれを支持したことに対して我が党は厳しく抗議をするとともに、空爆の即時中止を求めます。これ以上、罪なき多くの市民を殺傷し、これ以上の難民をつくり出し、報復テロを誘発することは、決して許されません。

 さて、今回の米国テロ事件は、その手段の卑劣さと、我が国を含む六十カ国以上に及ぶ犠牲者数の大きさにおいて、まさしく前代未聞であり、しかも、米国の大都市や軍事中枢施設が直接攻撃にさらされたことで、その衝撃の大きさははかり知れません。こうしたテロ組織の行為は、平和と自由、民主主義、人権を破壊し、世界人類に対する重大な挑戦であって、断じて容認できるものではなく、国際社会が一致協力して国際的テロの防止と根絶のために全力を尽くすことは至極当然のことであります。

 ところで、米国のブッシュ大統領は、このテロ攻撃を二十一世紀の新たな戦争と呼び、テロ集団及びその支援国家に対して軍事報復をすると宣言して、証拠の開示もないまま、対テロ戦争に踏み切りました。

 そこで、小泉総理にお伺いします。

 軍事報復は明らかに国際法に違反するのではありませんか。また、米国は戦況次第では核兵器の使用も選択肢に入れていると言われますが、日本はそれも含めて支持するのですか。さらに、米国はアフガンのタリバーン政権崩壊後も視野に入れて作戦を組んでいると言われますが、こんな内政干渉、主権侵害も甚だしいことを、日本はテロ根絶を理由にして支持するのでしょうか。総理の御見解をお聞かせください。

 今回のテロ事件は、その犠牲と衝撃の大きさにもかかわらず、戦争と規定するには無理があります。あくまでも、集団殺りくの国際犯罪と位置づけた上で、「平和に対する脅威、平和の破壊及び侵略行為に関する行動」を定めた国連憲章第七章を基本に据えて、国際法及びそのルールにのっとって裁いていくのが本筋だと思います。

 国連も、事件の翌日、安保理決議千三百六十八号の中で、国際の平和及び安全に対する脅威に対してあらゆる手段を用いて闘うことを決意しつつ、同時に、法に照らして裁くとも宣言していることをしっかり受けとめるべきではないでしょうか。

 実際、これまで、国際犯罪を裁くための条約は、一九四八年の集団殺害罪の防止及び処罰に関する条約を初め、一九九九年のテロ資金供与防止条約に至るまで、数多くの条約があります。また、国際法廷も、いわゆるロッカビー事件と呼ばれる、一九八八年のスコットランド上空のパンナム機爆破事件を初め、旧ユーゴスラビアやルワンダあるいはポル・ポト派などの国際犯罪法廷が開設されていることは、御承知のとおりであります。

 今回のテロ事件に関しては、イスラム圏諸国も含めて、ほとんどの国が国際テロの根絶に向けて結束を固めつつあるのですから、こういう機会にこそ、自衛権を理由とする米国中心の軍事行動ではなくして、国連の基本理念である集団安全保障に基づく対応をすべきではないでしょうか。小泉総理の御見解を伺いたいと思います。(拍手)

 次に、今回のテロ事件に対する日本の対応についてお伺いします。

 まず、小泉総理が示されたテロ対応措置七項目の方針と今回提出された法案、いずれもその内容の柱は、テロ根絶のための国際協力を大義名分にしつつ、米国の軍事報復を前提にして、その支援のため、専ら自衛隊派遣ありきというものではありませんでしたか。

 こうした発想の前提には、湾岸戦争の轍を踏むなとして、対応の迅速さと、目に見える人的貢献だけがあるのではありませんか。しかし、それは大変な錯覚と言うべきであり、米国依存症候群と言うほかありません。

 米国のワインバーガー元国防長官の著作を引用するまでもなく、十年前の湾岸戦争は、この在日米軍基地がなければ実行不可能でした。加えて、百三十億ドルもの財政支援は先進国の総額をも超えるもので、最大の国際貢献を果たしたのではなかったのですか。彼はまた、日本の政治リーダー層の内部には、米国の外圧を利用して自衛隊の海外派兵と憲法改正という軍事大国化への動きがあった、しかも、民主的手続を押しつぶして思惑を達成しかねない異質さを日本は内包しているとも指摘しており、いみじくも、今回のテロ事件への日本政府の対応を示唆しているではありませんか。

 ちなみに、昨日、四日がかりでパキスタンへ救援物資を運んだ自衛隊のC130輸送機、民間機ならもっと大量の物資をより早く安全に運べるのに、なぜここまで自衛隊機派遣なのですか。

 主体的な協力を連発されるたび米国依存を感じさせてしまう小泉総理の御見解をお聞かせください。

 さて、いわゆるテロ対策特別措置法案について、特徴的な事項についてのみお伺いをいたします。

 自衛隊は、創設以来約半世紀、国論を二分する対象でしたけれども、今日、七割を超える国民の合意を得たのは、専守防衛という基本原則があったからではないのですか。

 ところが、冷戦後、PKO活動を皮切りに海外へ行動範囲を広げ、周辺事態法で、日米安保の定める範囲も極東を超えました。今度は、インド洋、パキスタンまで拡大、米軍の作戦次第では地球規模にまで広がるのではないですか。自衛隊法第三条の基本任務を逸脱した行動を自衛隊法第百条の雑則で補う、これはまさに法の退廃、政治の怠慢と言うほかありません。

 自衛隊による後方、つまり兵たん支援は、国際的常識では戦争行為と一体であり、しかも、戦闘なき地域や武力不行使という歯どめも、テロ集団を相手の戦いでは実態としては意味をなさず、結局は、自衛隊員の命を守るためには武力行使も避けられない、交戦規則も必要とする、つまり、憲法がかたく禁じる集団的自衛権の行使に至ってしまうのではありませんか。

 以上の点について、小泉総理の答弁を求めます。

 次に、自衛隊法の一部改正案について、中谷防衛庁長官にお伺いをいたします。

 同法案には、防衛秘密保全に関する罰則強化が示されており、しかも、今回は民間人までがその対象となる、いわば一種の国家機密法ともいえる内容になっています。どさくさに紛れた有事法制の早期制定へのステップとも受け取られますが、長官、いかがですか。

 さて、最後に、田中外務大臣にお伺いいたします。

 今回の事件も含め、国際的テロを根絶するには相当の労力と時間を要します。特定の犯人と組織を摘発することも大事ですが、それ以上に、テロの温床、つまり貧困や差別、抑圧などをなくすことこそ肝心ではありませんか。

 今回の事件の背景には、米国の不公平な、誤った中東政策があったのではないでしょうか。イラン・イラク戦争のときに、イラン封じ込めのためにイラクに莫大な軍事援助を与え、あるいは、アフガン戦争では反ソ・ゲリラにテロの訓練や武器を与え、湾岸戦争の後もサウジアラビアに米軍が駐留することで、過激集団に卑劣なテロの口実を与えたのではないですか。何よりも、パレスチナの地を不法に占拠し、戦車とミサイルでパレスチナ人を無差別殺りくするイスラエルを支援して、アラブ、イスラムの世界にぬぐいがたい反米感情をつくってきた事実があるではないですか。テロの主要な根源はまさしくここにあるわけであって、米国に対して、恐れず、ひるまず、中東政策の抜本的な転換を忠告すべきではありませんか。

 その点、日本は、七〇年代以降、中東諸国には武器輸出をすることもなく、中立的姿勢で臨んできた分、米国とは異なる独自の外交チャンネルを生かせるのではありませんか。ここは、防衛庁ではなくて、外務省の出番ではありませんか。田中外務大臣の御見解をぜひお聞きしたいと思います。

 最後に、国際テロの根絶はもとより、二十一世紀の平和と民族の共生の国際社会をつくるためには、人間の安全保障という観点から、各国の政治的、外交的努力と同時に、経済支援、NGOなど民間団体との共同作業こそが必要なのであって、日本はその目的のために平和憲法を生かして世界に貢献できる最大の機会に直面しているのだということを申し上げ、私たち社会民主党もそのために全力を尽くす決意を表明しまして、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 今川議員にお答えいたします。

 今般の米英両国の行動は国際法違反ではないかとのお尋ねでございます。

 今般の米英両国による行動は自衛権の行使であると考えており、国際法上違法であるとの御指摘は当たらないと思っております。

 米国による核兵器等の使用の可能性についてのお尋ねであります。

 米国政府高官は、先般のテロ攻撃との関係で、核兵器の使用は想定していない旨、これまで繰り返し発言しております。我が国としては、国際的なテロリズムの防止及び根絶のため、米国等の行動を強く支持しているところであります。

 米国の行動が政権転換まで企図するのであれば主権侵害ではないかとのお尋ねがございました。

 今般の米国及び英国による軍事行動は、個別的及び集団的自衛権の行使として、米国における同時多発テロに責任を有するビンラーディン率いるアルカイーダ及び同組織を支援したタリバン政権の軍事施設を攻撃したものであり、国際的なテロリズムの防止と根絶を目的としたものと理解しております。

 国連が中心となって国際法のルールにのっとった裁きを行うべきではないかとのお尋ねであります。

 国際テロ根絶のためには、実行犯及び犯罪行為を組織、支援した者を厳正に処罰することが不可欠であり、そのための国際的な法的枠組みの強化を図ることは極めて重要であります。我が国は、従来より、他のG8諸国と協力して、国連によるテロ関連条約の作成交渉に積極的に参加してきており、世界のすべての国々にテロ関連条約の締結を呼びかけているところであります。

 先月十九日の当面の措置七項目、テロ対策特別措置法案についての我が国の主体性についての御指摘がございました。

 御指摘の七項目は、テロリズムとの闘いについての我が国の断固たる決意を示すものでありまして、経済の分野も含めて取りまとめた措置でありまして、我が国の主体性がないとの御指摘は当たらないと思います。

 米軍への支援は集団的自衛権の行使に当たり、憲法違反であるとの御指摘がありました。

 今回の本法案に基づく米軍等に対する協力支援活動等は、武力の行使には当たりません。そして、テロ根絶のため、防止のために国際諸国と協力して支援するものでありまして、武力行使もしなければ戦闘行為にも参加しない、そういう点を考えますと、憲法違反との御指摘は当たらないと思います。

 ある地域が戦闘行為が行われることのない地域か否かの判断についてでございますが、地域の情勢についてのいろいろな情報等を総合的に分析することによって、我が国が主体的に合理的な判断を行うことが可能であると考えております。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣田中眞紀子君登壇〕

国務大臣(田中眞紀子君) 今川議員にお答え申し上げます。

 我が国の中東政策についてのお尋ねがございました。

 政府といたしましては、今回のテロ行為と米国の中東政策を短絡的に結びつけることが適当であるとは考えておりません。しかし、中東和平について、我が国は、これまで、おっしゃるとおり中立的な立場から、私が着任いたしましてからも、書簡の発出でありますとか電話会談をたびたび行っております。イスラエルのペレス外相だけではなくて、パレスチナ暫定自治政府のシャアス長官とも意見の交換をいたしまして、そして、どのようにして中東に和平をもたらすかについて、まことに真摯な対応を続けてきております。

 中東問題は、私ども日本外交にとりまして、まさに主要な外交課題でありまして、真摯に取り組んでおります。そして今後も、こうした取り組みを続けてまいります。その中で、米国を初め関係国とも緊密に協議をしていくという考えでございます。(拍手)

    〔国務大臣中谷元君登壇〕

国務大臣(中谷元君) 今川議員にお答えをいたします。

 防衛秘密の保全に関する今回の罰則強化についてのお尋ねです。

 今回の改正案におきまして、防衛秘密の漏えい行為に係る罰則の対象者は全国民ではありません。今までと同じでありまして、従前から、民事上を含めて何らかの秘密保全上の責任を有していた、防衛秘密を取り扱うことを業務とする者に限定しておりまして、こうした責任を何ら有さない一般の国民につきましては、漏えい行為の正犯の対象としていないということでございまして、御指摘の点は当たらないものだというふうに考えております。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(渡部恒三君) 小池百合子君。

    〔小池百合子君登壇〕

小池百合子君 私は、保守党を代表いたしまして、いわゆるテロ対策特別措置法等三法案に対しまして、賛成の立場で質問をさせていただきます。(拍手)

 あのアメリカでの想像を絶します卑劣な同時多発テロから、ちょうど一月がたちました。犠牲となられた方々は六千人とも言われ、心から哀悼の意をささげるとともに、行方不明者の御家族の方々にはお見舞いを申し上げたいと存じます。

 六千人と申しますと、実は、あの阪神大震災での犠牲者の数にほぼ匹敵いたします。まさか世界一のオフィスビルに飛行機が飛び込む、まさか大地震が起こるなど、だれが予測したでしょうか。人災であれ、天災であれ、まさかに備えることは、事前防止、事後対応のいずれにおきましても、危機管理の要諦でございます。今や、テロでさえグローバル化の時代を迎えました。いつ何どき、どこでまさかが起こるか、わからないのです。幾つかのテロ事件を経験した我が国も、いま一度真剣に国内でのテロ対策に取り組まねばなりません。その意味で、このたびの自衛隊法改正並びにこれまでは不審船をあたかもお見送りするしかすべのなかった海上保安庁法の改正は、大きな前進ととらえ、適切な措置と考えております。

 国外におきましては、既に、今回の卑劣なテロに対する制裁措置としての空爆が、米英両軍によって連日連夜行われております。両軍の行動は、テロ行為の防止と抑制を求めた安保理決議一三六八号等におきまして既に確認された自衛権に基づくものであり、保守党は、両軍の行動を断固として支持するところであります。(拍手)

 国会は、議論の場であると同時に、結論を出す場でもあります。かつて湾岸戦争の折、一民間人としてあの牛歩国会を見て、牛歩する時間があったら審議をしたらいいのになと率直に感じたのは私だけではないでしょう。アメリカでの戦争終結宣言が出された後に、日本としての財政支援のための決議が行われるという愚を繰り返すべきではなく、今回はまさかそんなことはないと信じております。

 我が国として憲法の枠内でできること、主体性を持ってなすべきことをまとめ上げた三法案をしっかりと審議し、その上で、法案の速やかな成立とそれに基づく確実なアクションを期待いたしております。総理の決意を伺います。

 ちなみに、さきの阪神大震災の折、地域の人々は、被災地の現場で日夜を問わず活動する自衛隊に、深い感謝と多くの称賛の声を送りました。これまでとは大違いの光景でした。今回、自衛隊の皆さんには遠くパキスタンでの厳しい任務が待っているわけですが、国民のバックアップがなければ、持てる力も発揮できません。

 また、法の不備によりまして、派遣される自衛隊員が犠牲になるような事態は何としても避けなければならない。また、難民支援とはいいましても、今回はかなり事情が違ってまいります。難民に紛れ込んだテロリストの襲撃に耐え、その任務を全うできるよう、武器使用基準においてより弾力的な規定が必要と考えますが、今回の法案の規定で十分なのかどうか、総理の御見解を伺います。

 テロは場所を選びません。「活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる」地域という条件をつけることで、派遣地域が極端に狭まり、日本として実際には十分な協力ができないことにならないか。また、アフガニスタンからの難民の流出は、パキスタンにとどまることなく、国境を接しているイラン、ウズベキスタン、トルクメニスタン、タジキスタンなど、中央アジア諸国への流出も十分考えられるわけであります。これら諸国への自衛隊の派遣も考えておられるのか、福田官房長官に伺います。

 次に、運用面でございますが、派遣先においても、国としての体制をしっかり組むことが極めて重要であります。

 今回のオペレーションは、国際的なテロ対策と難民支援という、政治的に極めて難しい課題の遂行を現地で行わなくてはなりません。そのためには、パキスタン政府の全面的な支援が欠かせないわけであります。また、自衛隊の責任者は、パキスタン軍の首脳、そして外国の軍の代表者と緊密に接触して、意思疎通を確保する必要があります。そのような行動、判断のできる人材を派遣部隊の指揮官とすべきと考えますが、いかがでしょうか。

 また、自衛隊員によります後方支援、捜索救助及び難民支援の活動について、安全を確保しつつ適時適切に行うためには、関係各官庁の幹部から成ります政府連絡室を現地に設けまして、バックアップの態勢をとる必要があると思います。小泉総理並びに中谷防衛庁長官に伺いたいと思います。

 最後に、今回のテロと制裁を、ハーバード大学ハンチントン教授の著書にあるような文明の衝突に広げることは、絶対に避けなければなりません。

 本来、イスラームとテロは相入れないものであります。一方、歴史の流れの中におきまして、抑圧する者と抑圧される者は移り変わってきたものです。その意味におきまして、幸か不幸か、歴史的な接点が薄かった我が国の特異な位置づけを最大限生かすべきではありませんか。九三年のオスロ合意を実現させたのは、ノルウェーのホルスト外相でございました。大変な努力をなさいました。我が国とすれば、このノルウェーの方法についても、学ぶべき点が多々あると思います。

 今後のアフガニスタン和平、そして、極めて複雑ではありますが、パレスチナ問題、エルサレム問題を中心とした中東和平の実現への日本の役割は、日本人の想像以上に大きなものがあります。ビラーディッ・シャムス・ル・ムシュリク、日出る国日本へのあこがれと尊敬があるのであります。

 自衛隊が武器弾薬を輸送機に積み込むシーンが報道されたら、イスラム諸国はどのような反応をするのか。先ほど否定的なお話もございましたが、イスラム諸国としてひっくるめて考えるのにはやや無理もあると考えております。また一方で、自衛隊員の生命、安全を無視するわけにはいかない。あっちもこっちもと、どっちつかずは最も危険な道であり、かつ、どちらからも当てにならない国に成り下がってしまうという、その方が危険だと思います。

 そういった意味で、総理、テロの根絶はもちろん、今後の中東地域と世界の安定に向けまして、日本がもっともっと役割を果たすべき、また、果たせるはずという私の心の叫びに対しまして、総理の御見解と決意とを伺うことで、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 小池議員にお答えする前に、今川議員の質問で補足答弁をさせていただきます。

 パキスタンへの救援物資の輸送について自衛隊機を使用したことについては、現地の情勢等を総合的に判断し、輸送したものであります。

 小池議員にお答えいたします。

 まず、法案の審議協力、激励に対して、感謝を申し上げます。

 法案に関する私の決意についてのお尋ねでございます。

 今回の米国で発生したテロに対しては、米国に対する直接の攻撃でございますが、我々としては、単に米国に対する攻撃ではない、日本も人ごとではない、国際社会と協力してテロ根絶のために立ち向かわなきゃいけないと思っております。日本は、このようなテロ根絶、防止に立ち向かおうとするに際しまして、傍観者であることは許されないと思います。

 主体的に、積極的に日本のできる限りの支援協力体制をとることが国際社会の中で責任ある国として発展するゆえんではないかと考え、毅然として、国際社会と協力して、この法案を通すためにも一生懸命頑張っていきたいと思いますので、御協力をお願いしたいと思います。

 難民支援等の際の自衛隊の武器使用基準についてのお尋ねであります。

 自衛隊が被災民救援活動等を行うに際しては、不測の事態が発生することも否定できないことから、本法案では、自己等の生命、身体を防護するための必要最小限の武器使用権限を規定するとともに、自衛隊の武器等を防護するための武器使用を規定した自衛隊法第九十五条を適用することとしております。

 また、本法案では、戦闘行為が行われていない地域、そして、実施する活動期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域で活動を実施することにしておりまして、仮に戦闘行為が行われることが予測される場合には、活動の休止、中断等をすることとされまして、さらに、現地の治安情勢も十分考慮するため、外国の領域において実施区域の範囲を定める際には当該外国と協議することとしております。

 政府としては、以上のような武器使用権限と活動地域に関する枠組みにより、派遣された自衛隊員等の安全を十分に確保できると考えております。

 派遣する自衛隊の部隊の指揮官についてのお尋ねでございます。

 本法案成立後、本法案に基づく活動を自衛隊が実施する場合には、その能力を十分に発揮できるよう、部隊の指揮官の選考も含め、政府として適切に対応していきたいと考えます。

 自衛隊員の活動に対するバックアップ態勢についてでございます。

 国際的なテロリズムの防止及び根絶のための国際社会の取り組みに、我が国としても政府一丸となって関係行政機関が相互に協力する旨規定されておりますので、このバックアップ態勢についても十分な配慮をしていきたいと思います。

 今後、活動の実施に当たり具体的にどのような態勢をとっていくかについては、事態の推移を踏まえ、御指摘の点も含めて検討してまいりたいと思います。

 中東政策についてのお尋ねでございます。

 日本は、今回の自衛隊の活動のみならず、経済面、外交面、わけても今回のテロとの闘いは、テロリストたちとの闘いであり、テロ組織との闘いであり、アラブとの闘いではない、イスラム教徒との闘いでもないということをはっきりと言明しております。また、ブッシュ・アメリカ大統領もそのような見解で一致しております。

 中東政策について、大変重要なことでありますので、外交努力、あるいはアフガニスタン和平についても、国連等による中東和平努力に対しましても、日本としても積極的に支援、協力を行っていきたいと考えております。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣福田康夫君登壇〕

国務大臣(福田康夫君) 小池議員から、この法案のもとでの自衛隊の活動の実施地域や具体的な派遣先についてお尋ねがございました。

 法案のもとでの自衛隊の活動の実施地域、派遣先につきましては、今後、事態がどのように推移し、どのような要請が出されるかなどが明らかでない現段階におきましては、具体的に申し上げることは困難でありますが、いずれにせよ、我が国としては、「我が国領域及び現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる」、そういう地域の中において、適切なる活動をでき得る限りしてまいりたい、そのように考えております。(拍手)

    〔国務大臣中谷元君登壇〕

国務大臣(中谷元君) 小池百合子議員に二点お答えいたします。

 まず、派遣する自衛隊の部隊の指揮官についてのお尋ねです。

 先ほど総理からも御答弁がありましたように、この法律が成立した後、この法律に基づく活動を自衛隊が実施する場合には、派遣する部隊の任務の内容、部隊の規模等を踏まえまして、指揮官を含めた部隊の人選を行うということになりますけれども、御指摘の点のことは当然だと思います。その人選をする際には、自衛隊がその能力を十分に発揮できるように、防衛庁として適切に対応してまいります。

 もう一点、自衛隊員による活動のバックアップ態勢についてお尋ねがありました。

 この法律案におきましては、政府一丸となって対応すべく、関係行政機関が相互に協力する旨が規定をされております。防衛庁として、活動の実施に当たって具体的にどのような態勢をとっていくかにつきましては、事態の推移を踏まえ、小池議員からの御指摘の点も含めまして、関係行政機関と連携の上、検討してまいりたいというふうに思っております。

 以上です。(拍手)

副議長(渡部恒三君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(渡部恒三君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後四時四分散会




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