衆議院

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第7号 平成13年10月18日(木曜日)

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平成十三年十月十八日(木曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第四号

  平成十三年十月十八日

    午後一時開議

 第一 平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法案(内閣提出)

 第二 自衛隊法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第三 海上保安庁法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第四 銀行法等の一部を改正する法律案(第百五十一回国会、内閣提出)

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 永年在職の議員相沢英之君、原田昇左右君、中西績介君、谷洋一君、津島雄二君、池田行彦君、中野寛成君、鹿野道彦君及び中村喜四郎君に対し、院議をもって功労を表彰することとし、表彰文は議長に一任するの件(議長発議)

 日程第一 平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法案(内閣提出)

 日程第二 自衛隊法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第三 海上保安庁法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第四 銀行法等の一部を改正する法律案(第百五十一回国会、内閣提出)

 司法制度改革推進法案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑




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    午後一時五分開議

議長(綿貫民輔君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 永年在職議員の表彰の件

議長(綿貫民輔君) お諮りいたします。

 本院議員として在職二十五年に達せられました相沢英之君、原田昇左右君、中西績介君、谷洋一君、津島雄二君、池田行彦君、中野寛成君、鹿野道彦君、中村喜四郎君に対し、先例により、院議をもってその功労を表彰いたしたいと存じます。

 表彰文は議長に一任されたいと存じます。これに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決まりました。

 これより表彰文を順次朗読いたします。

 議員相沢英之君は衆議院議員に当選すること九回在職二十五年に及び常に憲政のために尽くし民意の伸張に努められた

 よって衆議院は君が永年の功労を多とし特に院議をもってこれを表彰する

    〔拍手〕

    …………………………………

 議員原田昇左右君は衆議院議員に当選すること九回在職二十五年に及び常に憲政のために尽くし民意の伸張に努められた

 よって衆議院は君が永年の功労を多とし特に院議をもってこれを表彰する

    〔拍手〕

    …………………………………

 議員中西績介君は衆議院議員に当選すること九回在職二十五年に及び常に憲政のために尽くし民意の伸張に努められた

 よって衆議院は君が永年の功労を多とし特に院議をもってこれを表彰する

    〔拍手〕

    …………………………………

 議員谷洋一君は衆議院議員に当選すること九回在職二十五年に及び常に憲政のために尽くし民意の伸張に努められた

 よって衆議院は君が永年の功労を多とし特に院議をもってこれを表彰する

    〔拍手〕

    …………………………………

 議員津島雄二君は衆議院議員に当選すること九回在職二十五年に及び常に憲政のために尽くし民意の伸張に努められた

 よって衆議院は君が永年の功労を多とし特に院議をもってこれを表彰する

    〔拍手〕

    …………………………………

 議員池田行彦君は衆議院議員に当選すること九回在職二十五年に及び常に憲政のために尽くし民意の伸張に努められた

 よって衆議院は君が永年の功労を多とし特に院議をもってこれを表彰する

    〔拍手〕

    …………………………………

 議員中野寛成君は衆議院議員に当選すること九回在職二十五年に及び常に憲政のために尽くし民意の伸張に努められた

 よって衆議院は君が永年の功労を多とし特に院議をもってこれを表彰する

    〔拍手〕

    …………………………………

 議員鹿野道彦君は衆議院議員に当選すること九回在職二十五年に及び常に憲政のために尽くし民意の伸張に努められた

 よって衆議院は君が永年の功労を多とし特に院議をもってこれを表彰する

    〔拍手〕

    …………………………………

 議員中村喜四郎君は衆議院議員に当選すること九回在職二十五年に及び常に憲政のために尽くし民意の伸張に努められた

 よって衆議院は君が永年の功労を多とし特に院議をもってこれを表彰する

    〔拍手〕

 この贈呈方は議長において取り計らいます。

    ―――――――――――――

議長(綿貫民輔君) この際、ただいま表彰を受けられました議員諸君の登壇を求めます。

    〔被表彰議員登壇、拍手〕

議長(綿貫民輔君) 表彰を受けられました議員諸君を代表して、相沢英之君から発言を求められております。これを許します。相沢英之君。

相沢英之君 ただいま、私ども議員九名が院議をもって永年在職議員として表彰の栄を賜りました。まことに光栄この上もなく、ここに、年長をゆえともちまして、一同を代表して、心からお礼の言葉を申し上げたいと存じます。(拍手)

 私が二十五年の長きにわたり、本院に在籍し、院にあっては、法務委員長、外務委員長などの大役を務め、経済企画庁長官、金融再生委員長の要職も大過なく務めさせていただきました上、今日ここにこのような栄誉に浴することができましたのは、ひとえに、先輩、同僚議員の皆様の御厚情と郷土鳥取県の皆様の多年にわたる温かい御支援の賜物でありまして、この機会に心から厚く御礼を申し上げます。(拍手)

 顧みますと、昭和十七年秋、学徒動員で陸軍に入隊、兵役にあること六年、この間、中国各地を転戦後、北鮮に移駐、戦後三年間のソ連抑留生活を体験し、二十三年の夏、舞鶴に上陸いたしました。

 戦災による廃墟を目の前にし、戦争中及び抑留間、喪われた多くの戦友の死を思うとき、胸中深くふつふつとして湧き上がるものは不戦の誓いでありました。子々孫々に至るまで再び戦争の悲哀を嘗めさせるな、そして、万一戦うことあらば絶対に負けてはならない、そしてまた、戦争から生きて帰れた自分のこのいわば拾いものの人生は亡き戦友達の志に捧げ、世界の平和のため、お国の復興のため、生命ある限り働かなければならないという固い思いでありました。(拍手)

 復員後、大蔵省に復帰し、昭和四十九年、事務次官で退官後、故赤沢正道先生の強い慫慂もあり、鳥取県から衆議院議員選挙に立候補を表明いたしましたが、それは、この思いを実現すべく、政治家として微力を盡すべき秋が来たと思ったからであります。

 長い官歴を生かして中央政界において活動すること及び地元山陰の発展のため中央とのパイプ役として働くことをモットーに掲げ、私が初当選いたしましたのは昭和五十一年十二月、戦後初の任期満了選挙が行われ、三木首相の退陣、福田内閣の誕生を見た時であります。

 爾来二十五年、自民党の政治主導のもと、我が国経済は生々発展を続け、高度成長の極限としていわゆるバブル期に突入、株価も地価も異常な昂騰を見せましたが、軈てバブルの崩壊、今や円高、産業の空洞化、戦後最高の完全失業率、経済のマイナス成長、著しい少子化現象等、いまだかつて経験したことのないほどの深刻な事態に直面いたしております。

 近くはまた、米国におけるイスラム過激派勢力による集中テロ事件の勃発により惹き起こされた世界的な政治経済の混乱にも、我々は敢然として、勇気を持って立ち向かうことが求められております。

 今こそ、国政に参画する者として、日はまた昇るという固い信念を持ち、国民の英知と努力によって築き上げられてきた国際的評価と実力に率直に眼をいたし、議会制民主主義のもと、政治、経済、社会のシステムを大胆に見直し、新しい活力ある構造改革を実現しなければなりません。日々三省の心をもって自粛自戒し、謙虚に課題に直面し、明るい、力ある日本の再生に向けて、勇気を持って責任ある政策を遂行し、国民の負託に応えることをお誓い申し上げ、御挨拶といたします。ありがとうございました。(拍手)

議長(綿貫民輔君) 本日表彰を受けられました他の議員諸君のあいさつにつきましては、これを会議録に掲載することといたします。

    ―――――――――――――

    原田昇左右君のあいさつ

  ただいま、院議をもって永年在職の表彰を賜りました。議会人として誠に光栄であり、先輩同僚議員及び関係者各位に、厚く御礼申し上げます。これもひとえに、旧静岡一区、現二区を初めとする静岡県民の皆様の変わらぬ御支援の賜物であり、心から感謝申し上げます。また、私事ながら、政治生活を支えてくれた事務所のスタッフ、年老いた母、亡き妻、その他の家族にも御礼を申したいと思います。

  このたび、アメリカで発生した同時多発テロは、残虐、非道な無差別テロであり、心底から怒りを禁じ得ません。犠牲になられた多くの方々に、改めて哀悼の意を表します。

  私は、かって湾岸戦争のとき、イラクに拘束された人質の解放交渉に、議員団の一員として参加しました。席上、イラク側に日本の武士道について説き、武士は己を律するに厳しく、無辜の民を巻き添えにしないと話したところ、先方からは異論も無く、数日後に人質の解放が実現できました。これと比べて、今回のテロは全く何をかいわんやであります。我々は今こそ、テロの根絶と打撃を受けた経済の再建のために、全力を挙げて取り組まなければなりません。

  さて、議員生活を振り返って印象に残るものは数多ありますが、そのうちの一つを挙げれば、国民の安全と安心に係わる地震立法を手がけたことであります。

  私の初当選は昭和五十一年ですが、当時、東海地震間近しという説がマスコミに大きく取り上げられ、地元の静岡県民は不安な日々を過ごしておりました。そのため、何とか地震の予知を含めた対策ができないかと思い、各方面と折衝して、地震に関する体制整備を目指す「大規模地震対策特別措置法」を、さらに、いわゆる「財特法」を成立させました。それにより、駿河湾や周辺地域に細かくセンサーが張り巡らされ、東海地震の予知体制を作ることができた上、学校等の公共建物の補強が可能になりました。

  その後二十数年を経て、予想外の阪神・淡路大地震が起きました。もともと日本列島は地震の巣の上にあり、何処で地震が起きてもおかしくない状態にあります。そこで、地震予知よりも、地震の被害を最小に抑える対策と、調査研究体制の確立を主眼として、「地震防災対策特別措置法」を超党派の議員立法で成立させ、若干の時間を経て、「被災者生活再建支援法」を作りました。被災住宅の再建については目下検討中ですが、これによって、地震対策は法的には一応整ったものと思います。

  四半世紀に及ぶ議員生活を通じて、私は、どんな困難に遭っても常に前向きに考え、国益のため、郷土の発展のために力を尽くしてまいりました。これからもこの姿勢を貫いていきたいと思います。

  最後に、サミエルウルマンの詩の一節を引用させていただき、お礼の挨拶といたします。

  人は信念とともに若く 疑惑とともに老いる

  人は自信とともに若く 恐怖とともに老いる

  希望ある限り若く 失望とともに老い朽ちる

  ありがとうございました。

    …………………………………

    中西 績介君のあいさつ

  本日、院議を持ちまして、永年在職議員として御丁重な表彰の決議をいただきましたことは、身に余る光栄であり、感激にたえません。

  この栄誉は、ひとえに、先輩同僚各位の御指導、特に郷土福岡県の皆さんの多年にわたる温かい御支援の賜物であり、また、全国各地からの同志の声援のおかげであり、心から御礼申し上げます。

  私が本院に初めて議席を得ましたのは、一九七六年、国内的には日中国交回復、沖縄本土復帰、ロッキード田中金権批判、田中内閣総辞職後田中前総理逮捕後の十二月でした。

  政治倫理と本格的な国会の在り方が追及された時代でした。

  しかし、今なお正常化されず、混乱は続いており、自責の念にかられます。

  しかも、私自身、エネルギー革命により破壊的な打撃を受け、地域経済復興が最も困難な状況にあった旧産炭地、筑豊でありましたので、諸先輩とともに真正直に政治の在り方を勉強させていただきました。

  私が育った時代は、世界恐慌による不況と治安維持法の猛威、国家主義の台頭、その結果、一九四五年八月十五日の敗戦直後、九月の卒業式に参加できたのは五十名中七名でした。

  翌一九四六年、旧制中等学校の教職に就き、一月の天皇人間宣言、十一月、日本国憲法公布は、国家主義的観念を引きずっていた者として、平和憲法の九条は理解できても、十条以下の社会的イメージは当初理解できませんでした。

  しかし、その成立過程と、翌年中止させられたが二・一ゼネスト参加以降、弾圧と学習の中で、国の最高法規であり、戦争の申し子であった者として、平和憲法三原則は、人間としてこれだけは如何なる事態になろうとも護り抜くことの勇気と誇りを持つことを決意しました。

  しかし、半世紀、戦後民主主義は何であったかで問われています。

  大国覇権主義追随と、経済至上主義による政治、経済、教育、社会構造の崩壊は、目に余るものがあります。

  今こそ、国権の最高機関としての最大の危機乗り切りのため、真の国会再建を目指すべきです。

  また、本日採決される自衛隊法改正、テロ対策防止法等は、今こそ冷静に再検討し、撤回すべきです。

  私は、二十一世紀を担う世代に平和で心豊かな社会を引き継ぎ、地球規模で人間の尊厳を認め合い、共生と連帯を築くためには、世界唯一の日本国憲法前文の崇高な理想と目的を達成する以外に実現はできないと確信します。

  いささか所感を述べましたが、お許しをいただき、今後一層の御指導、御鞭撻をお願い申し上げまして、感謝の言葉といたします。

    …………………………………

    谷  洋一君のあいさつ

  このたび、衆議院在職二十五年に当たり、院議をもって表彰していただきましたこと、誠に光栄であり、感謝にたえません。

  これもひとえに、中曽根康弘先生を初め、多くの先輩同僚議員の皆様方の御指導、御鞭撻の賜物であり、また、今日まで温かい御支援をいただきました郷土の皆様方のおかげであります。改めて、心から厚く御礼申し上げます。

  私は、第三十四回(昭和五十一年十二月)総選挙で初当選いたしました。三回目の選挙後ぐらいから、最高裁判所から一票の格差が強く指摘され、我が選挙区は、三名区から二名区に減員という運命が待ち受けていました。第三十八回総選挙から実施されました。選挙制度もこれで安定するかと思いましたが、第四十一回から小選挙区比例代表選挙が行われ、これほど選挙区情勢の変化があったにもかかわらず、選挙区の皆様方に絶大なる御支援をいただいたこと、心から感謝を申し上げます。

  振り返りますと、昭和三十年、町議会議員に当選して十年、昭和四十年より村岡町長を六年務めた後、昭和四十六年、兵庫県議会議員に当選し五年八カ月、師小島徹三先生の御推挙により後継者として出馬し当選しましたことが、今日の栄誉を担うことになり、心から感謝しております。

  昭和五十六年十二月、自治政務次官に就任は、嬉しさがこみ上げ、感激を覚えました。以来、今日まで地方自治、過疎山村問題等に力を入れてまいりましたし、建設政務次官就任以後は、地域開発の発展に努力してまいりました。特に自治、建設、農林水産に頑張りました。

  世界平和のために、日朝友好促進議員連盟会長として、朝鮮民主主義共和国と日本の友好親善に努力しましたことや、日本ウルグアイ友好促進議員連盟の会長として、ウルグアイに、自閉症の子供たちの学校をつくったことも、大きな思い出です。

  今、世界は大変な動乱の時期に入りました。それは、アメリカにて同時多発テロによって、人類が意識を変えなければならない時代となりました。日本の平和、世界の平和、心から願わなければなりませんが、日本の伝統、「親を大切に、兄弟仲良く、友人隣人を大切に」この気持ちをもう一度見直す時代が今だと思います。

  今、私は、自民党の林政調査会長として、新しい森林林業に取り組んでいます。山林は資産価値を失ったと言われますが、それ以上に大切な国土の保全、水資源の涵養、環境整備など、限りなく大きい使命があります。我々は山を大切にしようという日本古来の風習をよみがえらすのが私の願いです。

  長年にわたります皆様方の御厚情に対し、衷心より感謝申し上げまして、私の御挨拶とさせていただきます。

    …………………………………

    津島 雄二君のあいさつ

  このたび、本院永年在職議員として院議をもって表彰を賜り、議会人としてこの上ない名誉であり、先輩同僚議員各位に対し、心から御礼申し上げます。特に、昭和五十一年から今日まで、一日も欠かすことなく私を地元選良として本院に送っていただいた青森県民有権者の皆様には、心の底から深く感謝いたしております。

  思えば、在職二十五年の間、世紀の変わり目というこの時期を通じて、我が国を取り巻く情勢は、冷戦の終結や新たなる国際テロリズムの台頭など、特筆すべき展開があり、また、国内の社会・経済状況においても、バブル経済の崩壊と長引く資産デフレ・不況や、本格的な少子高齢化の到来など、これまでの経験では対応できない困難な課題に直面しているところです。このような歴史的挑戦を前にして、今、何よりも求められるのは、変化に対応できる政治基盤の形成であり、これに向けての国民の理解と協力の確保であります。

  私は、この機会に、次の三つの課題について広く世論や同僚議員に訴えるとともに、私に残された政治家としての活動の日を、その課題の解決に献げたいと考えるものです。

  第一は、政党政治の確立であります。

  一定の理念に則った骨太の政策は、政治家個人の力のみによって実現できるものではありません。政党に所属する志ある政治家による、時間をかけての努力と、その積み重ねから生まれる伝統が必要です。社会や経済の変化に対応しながらも、政治力の結集の求心力を失わせない、強固にして柔構造を兼ね備えた政党がなければ、議会制民主主義は機能しません。五五体制の下で結成された自由民主党は、この意味における政党の役割を果たしてきたと確信しますが、他の政治勢力を含め、我が国の政党政治の確立のため、一層の努力が必要であると感じているのは、私一人ではないと信じます。

  第二に、日常、政党間で激しい論戦が行われるべきことは当然ですが、一朝有事、すなわち我が国の命運のかかる困難に直面したときは、党利党略を乗り越えて、国民の平和、安全、福祉のために結束できる日本の政治であってほしいと念願するものです。

  第三は、国際社会の中で日本がより建設的で、かつ、積極的な役割を果たすことです。

  言うまでもなく、日本の人口は、世界人口の二%にも満たない一方で、経済的には世界のGNPの一五%を占めるのです。その事実を重く受けとめ、国民が二十一世紀においても真に揺らぎない平和と繁栄の途を歩み続けていくためには、世界の人々のために貢献し、憲法にも謳われるとおりの名誉ある地位を与えられなければなりません。比較的長い期間にわたり海外生活を経験することができた私としても、後世のため、この目的に沿って今後一層の努力を重ねたいと誓うものであります。

  今日の栄誉にあずかった感激を忘れることなく、私は、これからも生命の続く限り、世界の平和と国民の幸せ、日本国の発展のために尽瘁することを改めてお誓いし、お礼の言葉といたします。

    …………………………………

    池田 行彦君のあいさつ

  このたび、院議をもって永年在職の表彰を賜りましたことは、身に余る光栄であり、感激のきわみであります。四半世紀にわたり国政に参画できましたのも、ひとえに、多くの方々、とりわけ郷土の皆様の御理解と御支援並びに先輩同僚議員各位の御指導と御鞭撻の賜物であり、衷心より感謝申し上げます。また、今日の栄誉を天上で喜ぶ二人の母を含めた家族の永年の労苦にも謝意を表するものです。

  顧みますと、私どもが初めて議席を得た昭和五十一年暮れの総選挙では、四年の任期満了の上行われたこともあり、百二十四人に上る多数の新人が当選しました。当時、我が国の経済社会は第一次石油危機による激動の中にあり、政治の世界も大きく揺れておりました。エネルギー問題や環境問題、さらに、新しい経済社会の在り方等、時代の課題をめぐり、若い仲間で議論を闘わせたのも懐しい思い出です。

  その後、大蔵常任委員長を務めたのを初め、予算委員会、内閣委員会、外務委員会等を中心に議会活動を続け、内閣にあっては、総務庁長官、防衛庁長官、外務大臣を歴任、自由民主党においても、政務調査会長、総務会長等として、時々の重要課題に取り組む機会を得たことは政治家として真に幸せであったと存じます。

  殊に、防衛庁長官として、湾岸戦争終結後ではありましたが、海上自衛隊の掃海部隊を派遣できたことは、新たな国際貢献の途を拓くことにつながったと秘かに自負してきたところです。また、外務大臣としては、大きく変化した国際社会の枠組みの中での我が国の在り方を真剣に追求してまいりましたが、就中、日米同盟の今日的意義を確認し、将来に向けて一層緊密化していくことに力を注ぎました。党政務調査会長として、金融システムの危機への対処、連立の構築と維持のための政策協議に文字どおり日に夜を継いで取り組んだこと等、昨日のことのように思い起こします。

  数々の局面でともに汗を流した多くの方々の友情と、主義主張を超えて国と国民を思う至情に敬意と謝意を表す次第です。

  新しい世紀の劈頭に立つ今、世界も日本もテロリズムと闘い、新しい秩序を構築しようとしております。経済社会のパラダイム変革のための政治の役割も極めて大なるものがあります。私も二十五年の経験と反省を踏まえ、より一層の力を尽くす決意であることを申し上げ、謝辞とさせていただきます。

    …………………………………

    中野 寛成君のあいさつ

  私は、このたび、院議をもって永年在職議員の表彰の御決議を賜り、誠に光栄に思い、心から感謝申し上げます。

  これもひとえに、恩情あふれる御指導を賜りました先輩諸兄及び友情に満ちた同僚のおかげであり、重ねて感謝申し上げます。

  特に、「魔の大阪三区」と言われた選挙区で勝ち抜くことができましたことは、旧大阪三区及び分区後の現大阪八区の皆様や、格別の御支援を賜りました各種団体の皆様のおかげであり、厚くお礼申し上げます。

  私が政治家を志したのは、小学校一年生の時でした。長崎での原爆体験と無医村での疎開生活の中で、「戦争や原爆を無くし、無医村に医者を呼ぶことのできる仕事」として政治家という仕事があるとの父の言葉がきっかけでした。

  その後も父の事業の数回の失敗によって貧困生活が続く中で、中小零細企業対策や育英制度の充実など、政治家への決意はますます固まりました。

  大学入学と同時に六〇年安保騒動に巻き込まれましたが、ちょうどそのころ、世界平和、議会制民主主義の確立、福祉国家の建設を党是とする民社党が誕生。胸をときめかせて早速入党。

  豊中市議会議員を経て、若くして急逝された岡沢完治代議士の後を受けて、諸先輩のお推めにより衆議院に立候補、その時は落選しましたが、四年後の昭和五十一年、ロッキード事件直後の選挙で初当選、ついに夢の代議士になることができました。

  その後は、永らく文教委員会に属し、政争の具になりがちの文教行政を立て直すことに心血を注ぎ、後に民社党の政策審議会長や書記長として、非自民・反共産の野党結集と二大政党制を目指し、頑張ったものです。

  続いて、細川内閣、羽田内閣を支え、日本政治の改革に取り組みましたが、残念ながら、与党生活も短命に終わり、改めて野党の結集を目指し、新進党、新党友愛、民主党へと離合集散を繰り返しましたが、終始、政策調査会長などとして政策畑を歩み、中道勢力の結集と、二大政党制による議会制民主主義の完成と、社会政策の充実による国民生活の向上を目指し続けてきた誇りだけは、今日も堅持しております。

  今、改めて内外の諸情勢を見るとき、テロ問題に世界は揺れ、私が政治家の目的とした平和、教育、医療、中小企業、貧困等の問題は、古くて新しいテーマとして、その深刻さの度合いを拡大しております。

  振り返って、改めて、自らの非力を思うとともに、歴史的使命の重大さを思い、残された力を振りしぼって政治、経済、社会システムの改革に邁進する決意を新たにするものであります。

  皆様の今後ともの御指導をお願い申し上げます。

  最後に、苦労をかけた家族、事務所の諸君にも心から感謝します。

    …………………………………

    鹿野 道彦君のあいさつ

  このたび、衆議院議員在職二十五年の永年勤続に院議をもって表彰していただき、議会人として誠に光栄であり、名誉なことと感激しております。

  これもひとえに、地元山形の皆様の格別な変わらぬ御支援、御厚情の賜物であり、指導いただいた政界の先達、同僚議員、また友人、知人の温かい叱咤激励があったればこそと感謝しております。

  誠にありがとうございました。

  さて、顧みれば、私が初当選を果たしました昭和五十一年、ロッキード事件が政界を直撃し、政治の在り方が根本から問われておりました。永年たまった政治のひずみ、ゆがみをいかにして正すか、政治改革の機運を背に、自由、公正、友愛、共生を信条として、国民の政治に対する信頼を回復すべく、ひたすら精進してまいりました。

  そして二十五年、運輸・交通問題に取り組み、農政不信と闘い、官依存の政治脱却、政治主導体制の確立を目指し、ひたすら走り続けてまいりました。

  新しい国造りの根幹をなす憲法問題に対しては、国会の憲法調査会に所属し、背景、経過、問題点を提起し、時代の変化とどう適合すべきか、各国の憲法事情や国民の憲法意識を探り、地道な勉強、厳しい論議を積み重ねております。憲法は、国の歴史、文化を背負い、国の精神文化を体現しております。人間の身体に例えれば骨格をなすものであります。挑戦と改革、信義・信頼の政治へ足掛かりを築くために、さらに、二十一世紀の我が国の本質的テーマとして論議を深めていきたいと思っております。

  忘れられないのは、国鉄改革、さらには山形新幹線、すなわち新幹線直行特急構想の実現です。在来線を活用した新型の新幹線によって、地元の利便性が飛躍的に向上し、地域の発展に寄与できたばかりか、全国にミニ新幹線網整備の先鞭をつけることになったのではないかと自負しております。

  また、農林水産大臣や総務庁長官として、農政改革、行政改革に取り組むことができました。まだまだ課題は山積しておりますが、農林水産業の再建と、時代を担う新しい行政の構築に一定の役割を果たせたのではないかと思っております。

  米国を襲った同時多発テロ。暗雲立ち込める世界経済。経済回復の兆しが見えず、いまだ閉塞感に覆われる日本。いかに時代を切り開くのか、国民の願いはこの一点に絞られております。

  今こそ、幕末の志士が胸に刻んだ「知行合一」の思想に学びたいと考えております。旧来の手法に堕するなら、行動を伴わなければ、日本は甦ることなく、二十一世紀の日本は停滞と後退を繰り返すばかりであります。

  本日の名誉を糧として、改めて初心に立ち返り、国政の改革に渾身の力を奮うことをお誓い申し上げ、感謝とお礼の言葉とさせていただきます。

    …………………………………

    中村喜四郎君のあいさつ

  このたび、本院永年在職議員として院議をもって丁重なる表彰の御決議を賜り、議会人として誠に身に余る光栄であり、感無量でございます。

  連続九期、二十五年の長きにわたり国政に参画することができましたのは、ひとえに、諸先輩同僚議員各位の御指導、御鞭撻、さらには、今日まで順境の時も、誠に厳しい逆境の時も、深い御理解と温かい御支援を賜りました郷土の皆様方のおかげであります。

  また、陰に陽に私の支えとなってくれた事務所スタッフ、家族の協力の賜物であります。

  この機会に当たり、改めて御礼を申し上げます。

  私が本日賜った栄誉はこれらの方々に帰するものと、重ねて感謝いたす次第でございます。

  さて、私が衆議院に初めて議席を得ましたのは、昭和五十一年十二月の第三十四回総選挙でありました。

  この選挙には、自民党を離党した河野洋平氏ら六人で結成した新自由クラブが台風の目となり勝利し、それから政界の離合集散が繰り返され、今日の流動化が始まった大きな節目の選挙であったと思われます。

  その後、幾多の政界スキャンダルを経ながら政治改革が議論され、その結果として、衆議院の選挙制度改革のみが先行して実施されていきました。

  これを機会に、保守と革新のイデオロギー対立の構図で描かれた五五年体制が崩壊していく中で各政党の存在基盤も埋没してしまったことが、今日、国民が国政への信頼を失った大きな要因であったと思われます。

  私は、本来、政治改革と選挙制度の改革は切り離して実行しなければ大きな不都合が起きるという持論でありました。

  内政・外交・防衛各般にわたり、各々の政党の主義、主張、信念を明示して、国民に選択しやすい政党政治の基本をつくり上げていくことが政治改革であり、その後に選挙制度の改革を進めていかなければならなかったと自責の念を持っています。

  なぜならば、今日の与野党政治の有り様は、選挙に勝つためだけの野党協力であり、政権を維持するためだけの連立政権になってしまい、そこには、各政党の主義、主張、理念がことごとく埋没してしまい、国民がますます政治に参加しにくい、理解に苦しむ政治が遠い存在となってしまったというところに、今日の深刻な政治危機があると認識しております。

  他方、日本経済は未曾有の危機的状況にある財政事情の中で、構造改革を進め、新世紀の活力のある社会を構築していくために最も大切なことは、今、我が国が大きく失いかけている「公正」「公平」をすべてに優先させ、経済・行政・教育・司法の改革の中で回復させていくことが、社会にモラルと秩序を取り戻すことであり、国難に立ち向かえる国民のエネルギーにしていかなければならないと認識しております。

  一方、冷戦構造の終焉により、米国、中国、ロシアを初めとする世界各国は、国際秩序の創造に重点を置き、積極的な外交政策の展開、相互依存関係を強めつつあります。

  各々の国家の拠って立つ理念と責任がこれまで以上に厳しく問われる中で、我が国はもっとはっきりと国民に国益の取らまえ方を示していくべきであると考えています。

  具体的に、当面する国益、中期的展望に立つ国益、そして長期的展望に立つ国益、それぞれが密接に関連しながらも微妙に矛盾を含んでいることも含め、日本の未来への具体的な方向性を示していくことで国民の総力を結集することができる「外交新時代」をつくり上げていくことに、さらに研鑚を重ねていくことが長年本院に籍を置いた者の務めであると自覚し、初心を忘れずに取り組んでまいります。

         ――――◇―――――

 日程第一 平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法案(内閣提出)

 日程第二 自衛隊法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第三 海上保安庁法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(綿貫民輔君) 日程第一、平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法案、日程第二、自衛隊法の一部を改正する法律案、日程第三、海上保安庁法の一部を改正する法律案、右三案を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等に関する特別委員長加藤紘一君。

    ―――――――――――――

 平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法案及び同報告書

 自衛隊法の一部を改正する法律案及び同報告書

 海上保安庁法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔加藤紘一君登壇〕

加藤紘一君 ただいま議題となりました各法律案につきまして、国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等に関する特別委員会における審査の経過及び結果について御報告申し上げます。

 まず、テロ対策特別措置法案について申し上げます。

 本案は、平成十三年九月十一日にアメリカ合衆国において発生したテロ攻撃が国連安保理決議第千三百六十八号において国際の平和及び安全に対する脅威と認められたこと等を踏まえ、我が国が国際的なテロリズムの防止及び根絶のための国際社会の取り組みに積極的かつ主体的に寄与するため、我が国領域並びに戦闘行為が行われていない地域において、協力支援活動、捜索救助活動、被災民救援活動その他の必要な措置を適切かつ迅速に実施しようとするものであります。

 次に、自衛隊法の一部を改正する法律案について申し上げます。

 本案は、我が国に駐留する米軍の施設等を警護するため、自衛隊の部隊等の警護に関する所要の規定を整備し、武装工作員等の事案及び不審船の事案へ対処するための措置を定めるとともに、あわせて、秘密保全のための罰則強化を図ろうとするものであります。

 次に、海上保安庁法の一部を改正する法律案について申し上げます。

 本案は、我が国の領域内における重大凶悪犯罪の発生を未然に防止するため、海上保安官が立入検査を適確に実施することができるように、船舶の進行を停止させるための武器使用ができることとし、その結果として人に危害を与えたとしてもその違法性が阻却されることとするものであります。

 以上各法律案は、去る十月十日本会議において趣旨説明並びに質疑が行われ、本委員会に付託されました。

 本委員会におきましては、同日各法律案を一括して議題とし、政府から提案理由の説明を聴取いたしました。十一日より質疑に入り、連日審査を重ね、小泉内閣総理大臣に出席を求めて質疑を行うとともに、参考人から意見を聴取し、質疑を行いました。

 去る十六日、テロ対策特別措置法案に対し、自由民主党、公明党並びに保守党の三会派共同により、基本計画に定められた自衛隊の部隊等が実施する協力支援活動等に関しての国会の事後承認制を設けるとともに、外国の領域における武器弾薬の陸上輸送を含まない旨の修正案が、また、民主党・無所属クラブより、自衛隊の部隊等が実施する協力支援活動等に関しての国会の事前承認制を設ける等の修正案が提出され、それぞれ趣旨の説明を聴取した後、両修正案に対する質疑を行うなど、慎重かつ熱心な審査を行いました。

 かくして、質疑を終了し、討論を行い、順次各法律案について採決いたしましたところ、テロ対策特別措置法案は、民主党・無所属クラブ提出の修正案を否決した後、賛成多数をもって三会派共同提出の修正案のとおり修正議決すべきものと決し、自衛隊法の一部を改正する法律案並びに海上保安庁法の一部を改正する法律案は賛成多数をもってそれぞれ原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。

 なお、テロ対策特別措置法案に対し附帯決議が付されましたことを申し添えます。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(綿貫民輔君) 三案中、日程第一に対しては、玄葉光一郎君外一名から、成規により修正案が提出されております。

 この際、修正案の趣旨弁明を許します。玄葉光一郎君。

    ―――――――――――――

 平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔玄葉光一郎君登壇〕

玄葉光一郎君 ただいま議題となりました民主党提案に係る修正案につきまして、その趣旨及び概要を御説明申し上げます。(拍手)

 本年九月十一日に米国で発生した同時多発テロは、多くの罪なき人々を巻き込んだ卑劣かつ残虐な行為であり、安全で民主的な社会を希求する私たち人類への挑戦であると考えます。

 民主党は、このようなテロリズムを全く新しい形の脅威ととらえ、テロリズムの撲滅には、テロリズムの温床となる根本原因を除去するための外交的努力に加えて、新たな立法による対応措置が必要であるとの認識を持っていることをまず申し上げます。

 新法は必要、問題は中身ということでありますが、与党との修正協議において、民主党は、国会の原則事前承認を譲れぬ一線としてまいりました。

そこで、この際、国会の事前承認に絞り込んだ修正案を提出するものであります。

 与党は、テロ対策特別措置法案に定める基本計画に関して、国会報告事項から、防衛庁長官が対応措置の実施を自衛隊等に命じた日から二十日以内に国会の事後承認事項とする旨の修正をされました。

 この点、原案では国会報告としていたことからすると、一歩前進したとは言えなくはないでしょうが、民主党は、第一に、シビリアンコントロールを徹底させること、第二に、自衛隊の派遣に対して国会もともに責任を負うべきであること、第三に、周辺事態法等との整合性などの見地から、国会の原則事前承認を義務づけるべきと考えます。

 民主党修正案では、基本計画に定められた自衛隊の部隊等が実施する協力支援活動、捜索救助活動または被災民救援活動については、内閣総理大臣は、これらの対応措置の実施前に、これらの対応措置を実施することにつき国会の承認を得なければならないこととしております。

 ただし、緊急の必要がある場合には、国会の承認を得ないで当該協力支援活動、捜索救助活動または被災民救援活動を実施することができ、その場合には、内閣総理大臣は、速やかにこれらの対応措置の実施につき国会の承認を求めなければならないこととしております。その際、国会で不承認の議決があったときは、政府は、速やかに当該協力支援活動、捜索救助活動または被災民救援活動を終了させなければならないこととしております。

 以上が、この修正案の概要であります。

 議員各位の御賛同をお願い申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(綿貫民輔君) 討論の通告があります。順次これを許します。亀井善之君。

    〔亀井善之君登壇〕

亀井善之君 私は、自由民主党、公明党及び保守党を代表して、与党修正を経た平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法案、自衛隊法の一部を改正する法律案及び海上保安庁法の一部を改正する法律案の三法案につきまして、賛成の立場から討論いたします。(拍手)

 まず、いわゆるテロ対策特措法案については、国連安保理決議第千三百六十八号が、平成十三年九月十一日にアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃を国際の平和及び安全に対する脅威と認め、また、その他の同理事会決議も、国際的なテロリズムの行為を非難し、国連のすべての加盟国に対し、その防止等のために適切な措置をとることを求めていることにかんがみ、我が国が国際的なテロリズムの防止及び根絶のための国際社会の取り組みに積極的に寄与するため、テロ攻撃によってもたらされている脅威の除去に努めることにより国連憲章の目的達成に寄与する諸外国の軍隊等の活動に対して我が国が実施する措置とともに、国連の決議または国連等が行う要請に基づき、我が国が人道的精神に基づいて実施する措置について定めることを内容とするものであります。

 かかるテロ攻撃は、命のとうとさを全く省みない残虐非道の行為であり、アメリカ合衆国のみならず人類全体に対する極めて卑劣かつ許しがたい攻撃であります。我が国としては、国際的なテロリズムに対して断固としてこれに立ち向かっていくとの決意を持って、このようなテロリズムとの闘いに対し、我が国自身の問題として主体的に取り組み、世界の国々と一致結束して、テロリズムの根絶のための努力を行わなければなりません。

 この法律案は、憲法の範囲内において、憲法の前文及び第九十八条の国際協調主義の精神に沿って、国際テロリズムの防止及び根絶のため、我が国として可能な限りの支援、協力について定めたものであり、我が国が民主主義社会の安全と発展のために主体的な役割を果たしていくために必要不可欠なものであります。

 また、この法案の与党修正部分は、政府原案についての審議を踏まえ、自衛隊の部隊等の活動について国会の承認に関する規定を設け、国会の責務を明らかにするとともに、外国の領域における武器の陸上輸送について修正を加えるものであります。これは、政府原案の基本的な考え方と枠組みを維持しつつ、国民の一層広範な理解と支持を得ていくとの観点から必要なものであります。

 次に、自衛隊法の一部を改正する法律案は、平成十三年九月十一日にアメリカ合衆国で発生したテロリストによる攻撃等にかんがみ、本邦内における自衛隊の施設並びに日米地位協定第二条第一項の施設及び区域の警護のため、自衛隊の部隊等による警護出動の制度を新設するとともに、通常からの自衛隊施設の警護のための武器使用の規定を整備し、また、自衛隊が武装工作員等の事案等に効果的に対応するため、治安出動下令前の武器を携行する部隊による情報収集の制度を設けるとともに、治安出動時に武装工作員等の鎮圧等を行うための武器の使用及び海上警備行動時等において一定の要件に該当する船舶を停船させるために行う武器使用につき、それぞれ、人に危害を与えたとしても違法性が阻却されるように所要の規定を整備し、あわせて、我が国の安全が損なわれないよう、我が国の防衛上特に秘匿することが必要な秘密について、その保全と、仮にそれが漏えいした場合の罰則の整備を行うことを内容とするものであります。

 この法律案は、我が国における同様のテロリストによる攻撃等への備え等に万全を期するためにぜひとも必要なものであります。

 最後に、海上保安庁法の一部を改正する法律案は、外国船舶と思料される船舶の乗組員等による我が国の領域内における重大凶悪犯罪の発生を未然に防止する必要性にかんがみ、海上保安官が立入検査を適確に実施することができることとするため、海上保安庁長官が一定の要件に該当する事態であると認めたときにおいて、当該船舶の進行を停止させるために行う海上保安官または海上保安官補による武器の使用について、人に危害を与えたとしてもその違法性が阻却されることとすることを内容とするものであります。

 我が国領域内において重大凶悪犯罪に関与している疑いを否定できない不審船による犯罪を未然に防止するためには、海上保安官による適確な立入検査の実施が極めて重要であり、その実効性を確保するため、このような武器使用に関する規定の整備が適切かつ不可欠であります。また、このような法整備により、最終的な実力手段として、海上保安官等が船体に向けて射撃を行うことがあり得るということが明確に示され、犯罪を未然に抑止する効果があります。

 以上の理由から、これらの法律案に対する賛意を表する次第であります。

 なお、政府提出のいわゆるテロ対策特措法案に対する民主党の修正案は、自衛隊の部隊等の活動を原則として国会の事前承認にかからしめるものでありますが、これについては、さきに述べた与党修正の考え方とは異なるものであり、反対するものであります。(拍手)

議長(綿貫民輔君) 渡辺周君。

    〔渡辺周君登壇〕

渡辺周君 私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました内閣提出のいわゆるテロ対策特別措置法案並びに自由民主党、公明党及び保守党提出の修正案に反対、民主党提出の修正案に賛成し、内閣提出の自衛隊法の一部改正案並びに海上保安庁法の一部改正案に賛成の立場で討論いたします。(拍手)

 本年九月十一日に米国で発生した同時多発テロは、多くの罪なき人々を巻き込んだ卑劣かつ残虐な犯罪行為であり、自由かつ秩序を守って民主的な社会を希求する私たちへの許しがたき挑戦であります。

 民主党は、今回のテロを全く新たな型の脅威ととらえ、テロ撲滅に向けたあらゆる外交努力、国内外における徹底したテロ対策を行うこととあわせて、国際協調の枠組みの中で、自衛隊の活用も含めた新たな対応が必要であると認識をしております。その際には、周辺事態法での議論を踏まえ、日本国憲法の枠内で、しっかりとしたシビリアンコントロールのもとに行うべきだとの考え方を一貫して示してまいりました。

 しかしながら、内閣提出のテロ対策特別措置法案並びに与党三党の修正案は、自衛隊の海外派遣に際しての国会の関与という点で看過できない重要な問題点を抱えており、以下、本法案に反対する理由を申し上げます。

 内閣提出案では、対応措置についての基本計画の決定、変更等を国会への報告事項としています。また、与党三党の修正案では、防衛庁長官がこれらの対応措置の実施を自衛隊の部隊等に命じた日から二十日以内に国会に付議して、これらの対応措置を実施することにつき国会の承認を求めなければならないとし、事後に承認を得ることになっています。

 我が国の有事につながるおそれのある周辺事態への対処に当たってさえ、基本計画に定められた対応措置を実施する際には、原則、国会による事前承認が必要とされています。この法案によって、自衛隊は、我が国の領域をはるかに越え、公海上ばかりか、外国領域内においての活動が可能となります。PKO活動以外で戦後初めて我が国の自衛隊が海外で活動するというまさに歴史的政策転換であり、しかも、従来の後方地域という概念があいまいになりかねないテロという新たな事態下での自衛隊派遣については、極めて慎重に行うべきである、そのように我々は考えます。

 外交的には、現時点ではアフガニスタン及びパキスタンの対日感情はまだ良好であり、我が国しかでき得ぬ重要な役割を果たすことも可能と考えます。将来のアフガニスタン並びに周辺諸国の安定と復興に向けて我が国が果たすべき役割を考えても、自衛隊の派遣には、海外の理解を十分に得られるよう、国会の関与としての事前の承認が必要であります。

 私たち民主党は、これまで、代表質問、本会議、特別委員会での質疑を通じて、想定される実施地域、対応措置の態様等について、再三再四、政府にただしてまいりました。しかし、本法案が成立すれば即座に基本計画が策定され、自衛隊が派遣されることが想定されるにもかかわらず、政府側の答弁は、終始、今後事態がどのように推移するかわからないなどの理由で、具体的な答弁は全く行われませんでした。

 内閣提出案の事後報告並びに与党修正案のような実施後二十日以内の事後承認では、自衛隊の海外展開が既に既成事実化している可能性も高く、対応措置の実施について、国会がシビリアンコントロールのもとにしっかりと歯どめをかけていくことは、実質的に困難となります。

 自衛隊の海外における活動について、我が国の国益に基づき、法律の目的にかなった対応措置を実施できるように、国民から選ばれた国会がしっかりと関与することは、かつて軍部の行動を国会が制御できなかったという反省に立つ、極めて重要な原則であります。また、この法案によって、遠く異国の地で使命感を持って任務に当たられる自衛隊の方々の活動に、国会、政治家が共同して責任を持つことが必要であります。

 事前承認では機動性、柔軟性が危惧されるとの意見がありますが、民主党案では、緊急の必要がある場合には、国会の承認も得ないで、当該協力支援活動、捜索救助活動または被災民救援活動を実施することができると、緊急の場合の事後承認を認めており、何ら法案として問題はなく、なぜこの修正案が党首会談で理解されなかったか、政策論というよりも、まさに与党内の内部事情以外の何物でもないと言わざるを得ないのであります。(拍手)

 以上の点から、基本計画に定められた対応措置の実施等につき、原則、国会での事前承認事項とすることを内容とした民主党修正案は、国民の良識に最もかなった法案であると確信をいたします。民主党案への議員各位の賛同を改めて要請するものであります。(拍手)

 次に、自衛隊法の一部改正案について、国民の生命財産の安全を確保する上で必要との政府案を理解し、賛成いたします。

 ただし、公共の安全と秩序の維持に関しては警察が一義的に責任を負うとの原則を踏まえ、本改正案で新たに規定された警護出動という、治安出動に至らない事態における重要施設警備などの自衛隊の活用については、その対象、範囲、要件、警察との関係など、今後の国会審議を通じてさらにしっかりと検討していくべきであります。

 また、秘密保持への罰則のあり方については、国民の知る権利や報道の自由等の基本的人権を侵害しないよう運用すべきであると考えます。

 海上保安庁法の一部改正案については、不審船に対する必要な対応措置と認識し、賛成をいたします。

 航空機ハイジャックという物理的暴力テロから始まった恐怖は、現在は炭疽菌に姿を変え、企業やオフィスをねらった、市民社会に侵入してくる忍び寄るテロという新たな脅威とも我々は闘わなければなりません。国際協調の枠組みの中、我が国国民の生命と財産、秩序を守るため、民主党は、毅然と、正義感を持ってテロ終息のための外交政策、内政政策を実行することを改めて約束し、私の討論を終わります。(拍手)

議長(綿貫民輔君) 山田正彦君。

    〔山田正彦君登壇〕

山田正彦君 私は、自由党を代表して、ただいま議題となりましたテロ対応特別措置法案並びに民主党提出の修正案に反対、自衛隊法の一部を改正する法律案に反対、海上保安庁法の一部を改正する法律案に賛成の討論を行います。(拍手)

 米国における同時多発テロは、自由主義、民主主義の否定であり、このようなテロリズムとは断固闘わなければなりません。国際社会に対する挑戦であるテロという最も卑劣な行為に対しては、国際社会が一致協力して、その撲滅に努める必要があります。

 とりわけ、我が国は、昭和五十二年九月、ダッカ日航機ハイジャック事件において、日本赤軍ら九人の釈放と身の代金要求に屈するという、法治国家、民主主義国家として国際社会における恥ずべき行為を容認したという過去を持っております。私どもは、この経験を踏まえ、テロに対する認識と覚悟を新たにする必要があります。

 しかし、今回の政府の対応は、日本国憲法の解釈にかかわる判断を全く示すことなく、無原則で場当たり的、なし崩し的に自衛隊を海外に派遣しようとしており、このようないいかげんな政治手法こそは、日本国並びに日本国民の将来を大変危うくするものであります。

 今回の法案のように国家と国民の安全にかかわる重要法案は、国会において十分に審議した上で討論、採決に至るべきことは当然であります。しかるに、法案に対する実質審議は、参考人質疑を入れてもわずか六日間、三十二時間の審議のみで衆議院を通過させようというのは、拙速以外の何物でもなく、我が国の議会主義に大きな汚点を残すものであると言わなければなりません。

 このように採決を急ぐ必要がどこにあるのでしょうか。巷間言われているように、総理がAPECに出席する前に衆議院を通過させたかったと考えていたのであれば、言語道断であります。(拍手)

 テロ防止等に関する特別委員会の審議を通じても、一体、政府が何をしようとしているのか、何のための法案なのか、さっぱり明らかにされておりません。政府は、テロリズムとの闘いを、我が国の安全確保の問題と認識して主体的に取り組むとしておりますが、我が国の安全確保すなわち安全保障は、日本国憲法の運用、解釈にかかわるところであります。それにもかかわらず、政府はこの問題に全く触れず、何らの判断も示しておりません。

 政府は、国連安保理決議千三百六十八号のテロ非難決議を、あたかもそれによって米国の武力行使が容認されたかのごとき見解のもとに、米国の戦争に参加しようとしております。これは、国民に対する全くのごまかしであります。

 総理は、今回の委員会審議で、自衛隊が戦力であることを政府として初めてお認めになりました。これは事実上の解釈改憲ではありませんか。また、防衛庁長官は、爆弾を積んで突っ込んでくるテロのトラックに反撃できると答えられ、また、誘導ミサイルの発射は戦闘行為に当たらないとも述べられました。政府は、集団的自衛権の行使は憲法上許されない、武力行使はできないとしながら、まさに国民をごまかし、なし崩し的に憲法解釈を変更して、自衛隊の行動範囲を拡大しているのであります。総理みずからがあいまいさを認め、法律的な一貫性、明確性を問われれば答弁に窮すると言うように、わずかな審議の間にも支離滅裂となる答弁が繰り返されたのであります。

 そのようなやり方をするのではなく、自衛隊を派遣したいのであれば、政府は明確に、憲法解釈を変えたいならば変えると明言し、日米安保条約の改定も含め、集団的自衛権の行使を認めた上で派遣すべきものであります。(拍手)

 自衛隊という軍事力を動かすこと自体が武力行使に該当するのは、世界の常識であります。武力行使はしないと言いわけしながら、自衛隊を派遣して諸外国と共同行動させる政府の姿勢は、憲法が否定する、自国のことのみに専念して他国を無視する姿勢そのものであります。自衛隊という軍事力を動かすことは、政治の最も重い決断であります。そのような重大事を場当たり的、なし崩し的に行うことは、敗戦に至る昭和史の教訓を忘れたものであり、日本を再び誤らせることになると言わざるを得ないのであります。(拍手)

 この見地から、テロ対策特別措置法案は、憲法についてのあいまいな政府解釈のもとに成立させるべきではなく、このような無原則な法改正には断固反対であることを表明いたします。

 また、民主党提出の修正案にも、政府案同様、根本的な考え方が違うため、当然、賛成するわけにはまいりません。

 自衛隊法改正案についても、有事法制や危機管理法制などについての政府自身の考え方を示すことなく、また、警護する対象を慎重に吟味することなく、唐突に、また安易に自衛隊に新たな任務を付与しようとするものであり、我が党としては反対であります。

 また、海上保安庁法の一部を改正する法律案については、唐突に提出された感は否めませんが、かつて自自公三党連立政権で合意した領域警備に係る法制化措置であり、賛成いたします。しかし、運用に当たっては、これが効果的に行われるよう、迅速的確な対応を強く求めるものであります。

 なお、自由党は、国の安全保障に対する基本的な考え方を示した、国の防衛及び自衛隊による国際協力に関する法律案を衆議院に提出し、現在、テロ防止等に関する特別委員会で審議されております。

 日本国憲法において、武力の行使を含む自衛隊の軍事行動が認められるのは、一、個別的であれ集団的であれ、我が国が直接侵略を受けた場合、あるいは放置すれば武力攻撃に至るおそれのある周辺事態における自衛権の発動、二、国連の安保理または総会による武力行使容認決議がなされ、その要請に基づく平和活動が行われる場合に限られるものとしております。あわせて、所要の規定を整備しようとするものであります。

 平成十年十一月十九日、自由党は、自民党と連立政権をつくるに当たり、今回、自由党が提出した法案と全く同様の考え方に基づいて、法制度を整備するという合意書を、当時の小渕総理と小沢党首の間で取り交わしたのであります。これまでにその合意に基づいて法整備を進めていれば、今日、このような拙速な政府・与党の対応もなかったでありましょう。

 議員各位には、自由党提出の基本法案が速やかに成立しますようお願い申し上げ、私の討論を終わります。(拍手)

議長(綿貫民輔君) 赤嶺政賢君。

    〔赤嶺政賢君登壇〕

赤嶺政賢君 私は、日本共産党を代表して、テロ対策特別措置法案及び自衛隊法一部改正案に反対、海上保安庁法一部改正案に賛成の立場で討論を行います。(拍手)

 九月十一日の米国への同時テロ攻撃は、アメリカだけでなく、国際社会に対する卑劣で残虐な許しがたい犯罪です。私たち日本共産党は、この蛮行に対して強い非難と抗議を行うものです。

 今、テロをどう根絶していくか、世界と日本に問われています。テロ根絶のためには、国際社会の大同団結が何よりも大切です。国連を中心とする告発と制裁という手段を尽くさないまま、十月八日、米国など一部の国によるアフガニスタンへの武力攻撃が始まりました。地雷除去に取り組んでいた国連NGOの職員が誤爆により亡くなり、赤十字国際委員会の倉庫、小学校なども爆撃に遭うなど、これまでに、罪のない多数の人々が死傷しています。今後、地上戦も取りざたされており、戦争が拡大され、さらに多くの犠牲者が生まれることが懸念されています。

 こうした武力攻撃に対して、マレーシアのマハティール首相やインドネシアのメガワティ大統領は厳しい反対の声を上げ、パキスタンを初めアジア、中東を中心とするイスラムの民衆の中から、激しい抗議の行動が広がっています。今、世界各地で、罪もない多くの犠牲者を生むテロにも、報復のための武力攻撃にも、反対する声が巻き起こっています。

 日本共産党は、アフガニスタンへの武力攻撃を直ちに中止し、国連を中心とする裁きの道に引き戻すべきだと考えます。(拍手)

 ビンラディン自身が今回のテロ事件への関与を事実上認めており、国連が、今回のテロ行為に対するビンラディンとアルカイダの容疑を確定し、引き渡しをタリバンに要求すべきです。それが拒否されたなら、国連が主体となって、アフガニスタン住民への人道的配慮を十分に行いながら、経済制裁など非軍事的措置によって、それを実行させるべきです。これを徹底してもなお不十分と国際社会が認めた場合には、国連憲章四十二条に基づく措置の検討も含め、国際社会の団結によって、法と道理に沿ったあらゆる手段を尽くして問題を解決すべきです。

 ところが、本特措法案は、まさに戦後初めて、現に米軍などが進めている戦争に自衛隊が参加し、他国領土への出動も可能にするものであり、「武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」と定めた憲法の平和原則に根本的に反するものです。

 以下、具体的に法案の重大な問題を指摘します。

 第一は、テロ根絶のためとして米軍が武力行使すれば、白紙委任的に日本がその戦争に参加する仕組みになっていることです。

 米軍への協力は、地理的にも米軍の活動内容の面でも、全く限定されていません。米軍が、地球上のどこであれ、だれに対してであれ、どんな手段であれ、テロ根絶のためとして軍事行動を起こせば、日本が無限定にその戦争に参加するものです。

 第二は、自衛隊が行う輸送・補給などの一連の協力支援活動や捜索救助活動が、米軍の武力行使と一体不可分のものであり、憲法違反の武力行使そのものであるということです。

 その一つは、自衛隊の活動区域の問題です。

 政府は、アラビア海などに作戦展開し、アフガニスタンに空爆を行っている米空母や駆逐艦などへの燃料の補給、武器弾薬の輸送を、戦闘行為が行われていないところだから可能だと言い、ミサイル発射後、人が誘導するような構造なら戦闘行為にならないという珍論まで展開しています。大体、テロとの戦いで戦闘地域と非戦闘地域に区分するなど、本質的に成り立つものではありません。

 二つは、自衛隊の活動内容の問題です。

 自衛隊が行う米軍支援の内容は、いわゆる兵たん活動であり、NATOが集団的自衛権の発動として行おうとしている活動内容とほとんど同じものであり、政府は、集団的自衛権でないと繰り返し答弁していますが、国際的に通用するものではありません。

 さらに、武器使用の対象を拡大したことも重大です。

 政府は、突発的なテロやゲリラの発砲に応戦することもあり得ると答弁しました。これは、他国に派遣された自衛隊による武器使用がまさに武力行使につながる危険性を示したものにほかなりません。

 第三は、自衛隊による被災民支援の問題です。

 政府は、人道支援だと言いますが、米軍が行う戦争に参加している自衛隊が行えば、攻撃対象とされ、逆に、難民を危険にさらすことになります。難民救援は国連諸機関やNGOなど中立の立場の諸組織によって取り組まれており、難民支援を言うならば、これらの諸組織の努力に対する支援こそ強めなければなりません。

 なお、与党による、事後の国会承認を盛り込むなどの修正は、自衛隊の海外派兵という憲法違反の本質を何ら変えるものではありません。

 次に、自衛隊法改正案です。

 これは、米軍基地への警護出動の新設、治安出動下令前の情報収集出動や武器使用権限の拡大など、自衛隊の権限を大幅に拡大するものです。その上、防衛秘密漏えい罪を設け、防衛庁職員、自衛官だけでなく、民間人まで厳罰に処す規定を盛り込んでおり、極めて重大な基本的人権じゅうりんの内容を持つものです。このような法案をテロ対策に乗じて強行するなど、到底認められるものではありません。

 このような重大な法案を、憲法原則にかかわる大きな矛盾が露呈してきたにもかかわらず、わずか五日間という短期間の審議で、公聴会も開かず押し通すことは、憲法と議会制民主主義の原則を真っ向から破壊するものであり、断じて許されるものではありません。(拍手)

 沖縄に、命(ぬち)どぅ宝という言葉があります。これは、悲惨な沖縄戦の体験を通して、二度と戦争を起こしてはならないという崇高な平和への願いです。これは憲法九条の精神でもあります。憲法九条をずたずたにする本法案は、沖縄県民を初め我が国の国民、そして平和を願う世界の人々の心とは相入れないものであります。

 私は、本法案の廃案を強く要求して、反対討論を終わります。(拍手)

議長(綿貫民輔君) 山口わか子君。

    〔山口わか子君登壇〕

山口わか子君 私は、社会民主党・市民連合を代表し、いわゆるテロ対策を初めとする三法案に対して、反対する立場から討論を行います。(拍手)

 まず冒頭に申し上げたいのは、この法案が、戦後日本が営々と築いてきた平和への努力を根本から覆そうとする重大な法案であるにもかかわらず、たった五日間の審議しかなされていないということです。それも、まず自衛隊派遣ありきであったことに強い危惧を覚えます。小泉総理がAPECへ出席するためのはなむけとして拙速に法案成立が図られたのであれば、国会と国民の軽視そのもので、政府の見識を疑わざるを得ません。(拍手)

 しかも、集団的自衛権行使や武力行使についてのこれまでの政府答弁と法案との関係については、あいまいなままです。小泉総理の答弁も、時には冷笑さえ浮かべ、はぐらかし、時には高圧的で、その態度からは、真摯さ、誠実さをみじんも感じることができません。こうした指導者のもとで、今、国の方針の大転換が図られようとしているのは、まことに残念です。

 もとより、今回のテロが残虐卑劣な行為であり、私たちがテロ根絶のために立ち上がらなければならないことは言うまでもありません。しかし、自衛隊を派遣してアメリカの軍事行動を支援するということは、テロを根絶するどころか、新たな憎しみを生み出すのに加担することになるのです。

 次に、この法案は、憲法や従来の法律体系と余りにも乖離し、これまでの政府解釈とも整合性がなく、これらをもまさに踏みにじるものであることです。

 周辺事態法では、周辺とは地理的概念ではないものの、自衛隊派遣の範囲はインド洋までは含まれないとされています。また、日米安保条約では、台湾以北であり、自衛隊法では、自衛隊の任務は国内に限定されています。ところが、この特別措置法での小泉総理の答弁によると、テロはどこで起きるかわからないので地域は無限定だというのです。

 今回のテロに限った対策法であるとしつつ、自衛隊の派遣は地球上どの地域であっても可能と強弁されるに至っては、何をかいわんや、総理自身、事の重大性についての御認識が余りにもなさ過ぎます。

 しかも、テロ対策法案は、時限を区切った特別立法でありながら、実は延長規定が盛り込まれており、一般法と全く変わりないものです。自衛隊を恒常的に、総理の言葉をかりるなら、無限定に、いわば世界の果てまでも派遣できるなどという法案は、無謀きわまりないもので、断じて認めるわけにはまいりません。(拍手)

 さらには、法案の内容です。

 テロ対策特別措置法案第二条では、対応措置を実施する地域は、「現に戦闘が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる」地域で、公海上や外国の領域だとされています。ところが、第三条では、捜索救助活動として、「戦闘行為によって遭難した戦闘参加者について、その捜索又は救助を行う」となっています。

 要するに、対象は戦闘参加者なのです。委員会の審議を通じても、このことについて政府から納得のいく説明はなされていません。

 また、第二条と第十一条の武器使用の関係もはっきりしません。安全な地域に派遣するのに、なぜ武器使用の規定が必要なのでしょうか。しかも、第十一条では、自己の管理下に入った者の生命または身体の防護のための武器使用まで容認しており、明らかに、これまでの武器使用容認の範囲を超えるものです。

 総理は、武力の行使はしないし、武力行使に至ることもないと答弁されています。総理が心底そう信じておられるのなら、御認識の甘さに愕然といたします。武力の行使どころか、集団的自衛権の行使にまで至る危険性をはらんでいる条文であり、総理の答弁は、国民を欺き、愚弄するものです。

 そして、見逃すことができないのは、テロ対策というどさくさに紛れて、自衛隊法第七十八条の治安出動以外に自衛隊による警護出動を認め、その際の武器使用をも容認するという、自衛隊法の改正が提案されていることです。

 この改正は、治安出動における厳格な規制を大幅に緩め、平時に国民を戒厳令下に置くようなもので、国民の基本的人権を大きく侵害しかねない内容となっています。

 さらに許せないのは、防衛秘密の新設です。守秘義務の対象者を業務にかかわる民間業者などにも拡大し、また、罰則も強化されており、これは、廃案となった国家秘密法案と同様、表現の自由に重大なかかわりを持つものです。テロ対策とは直接関係のないこの条項をなぜ意図的に加えるのか、こそくとも言えるやり方に憤りさえ覚えます。

 自衛隊法の一部改正案は、即刻撤回すべきです。(拍手)

 そして、海上保安庁法の一部を改正する法律案にも重大な疑義があります。

 停船命令後の武器使用で相手が死傷しても構わないという乱暴きわまりない内容で、正当防衛の範囲を大きく逸脱したものであり、もちろん、容認することはできません。(発言する者あり)

 静かに聞いてください。

 以上、反対の理由を述べてまいりました。

 小泉総理、あなたが特攻隊員に涙し、不戦を誓った結果がこの自衛隊の派遣なのですか。改めてここで、今回のテロ根絶のために、軍事的手段をとるべきではない、人間の安全保障という立場からの人道支援をすべきであることを強く訴えます。

 最後に、参考人として御出席をいただいた、アフガニスタンで医療支援、水源確保支援を懸命に続けておられる中村医師の揺るぎない信念に、私は深く心を打たれました。ここに、メッセージの一部を紹介します。

 武力報復は、憎しみを沈着させ、さらに根深い報復を生み出します。報復協力者日本もまた、かつてなく危機にさらされるでしょう。テロの防止は、暴力ではなく、命の大切さを人々の心に訴えることによってのみ力を持つことができると信じます。平和の維持には、戦争よりも勇気と忍耐が要ります。

 以上、テロ対策を初めとする三法案に強く反対し、私の討論を終わります。(拍手)

議長(綿貫民輔君) これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

議長(綿貫民輔君) これより採決に入ります。

 まず、日程第一に対する玄葉光一郎君外一名提出の修正案につき採決いたします。

 玄葉光一郎君外一名提出の修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(綿貫民輔君) 起立少数。よって、玄葉光一郎君外一名提出の修正案は否決されました。

 次に、日程第一につき採決いたします。

 本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(綿貫民輔君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり修正議決いたしました。

 次に、日程第二につき採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(綿貫民輔君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

 次に、日程第三につき採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(綿貫民輔君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第四 銀行法等の一部を改正する法律案(第百五十一回国会、内閣提出)

議長(綿貫民輔君) 日程第四、銀行法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。財務金融委員長山口俊一君。

    ―――――――――――――

 銀行法等の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔山口俊一君登壇〕

山口俊一君 ただいま議題となりました法律案につきまして、財務金融委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、最近の金融業以外の事業会社による銀行業への参入の動きなどを踏まえ、銀行等の株主に関する制度の整備を行うとともに、金融における新たなビジネスモデルに対応した環境整備を行うため、所要の措置を講じようとするものであり、以下、その概要を申し上げます。

 第一に、銀行等の発行済み株式の五%を超える株式の所有者については、その株式所有に関して届け出ることとするとともに、原則二〇%以上の株式の所有者については、主要株主と位置づけ、あらかじめ認可を受けることにしております。また、これらの株主に関しては、特に必要な場合における報告等の徴求や立入検査等、監督の仕組みを設けることにしております。

 第二に、五〇%を超える株式を所有する主要株主に対し、特に必要があると認めるときは、銀行等の経営の健全性確保のための措置を求め得ることにしております。

 第三に、銀行の営業所の設置等について、認可制を原則届け出制に改めるとともに、銀行、保険会社及び協同組織金融機関について、子会社における従属業務と金融関連業務の兼営を認めることにいたしております。

 本案は、第百五十一回国会に提出され、去る六月十五日の本会議において趣旨説明及び質疑が行われた後、同日当委員会に付託されました。当委員会においては、同月二十六日柳澤国務大臣から提案理由の説明を聴取した後、質疑を行いましたが、以後、今国会まで継続審査に付されていたものであります。

 今国会におきましては、昨十七日質疑を行い、質疑を終局したところ、佐藤剛男君外一名から、金融機関の信託業務の兼営等に関する法律の一部改正等の規定の施行期日を、「公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日」に改めることを内容とする修正案が提出されました。次いで、討論を行い、採決いたしましたところ、本案は多数をもって修正議決すべきものと決しました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されましたことを申し添えます。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(綿貫民輔君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(綿貫民輔君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり修正議決いたしました。

     ――――◇―――――

    〔議長退席、副議長着席〕

 司法制度改革推進法案(内閣提出)の趣旨説明

副議長(渡部恒三君) この際、内閣提出、司法制度改革推進法案について、趣旨の説明を求めます。法務大臣森山眞弓君。

    〔国務大臣森山眞弓君登壇〕

国務大臣(森山眞弓君) 司法制度改革推進法案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 新世紀を迎えた我が国においては、社会の複雑・多様化、国際化等に加え、国の規制の撤廃または緩和が一層進展し、社会が事前規制型から事後監視型に移行する等の内外の社会経済情勢の変化に伴って、司法の果たすべき役割は、より一層重要になると考えられます。

 この法律案は、このような状況にかんがみ、司法制度の改革と基盤の整備について、その基本的な理念及び方針、国の責務その他の基本となる事項を定めるとともに、司法制度改革推進本部を設置すること等により、これを総合的かつ集中的に推進することを目的とするものであります。

 以下、法律案の内容につきまして、その概要を御説明申し上げます。

 第一に、司法制度改革は、国民がより容易に利用できるとともに、公正かつ適正な手続のもと、より迅速、適切かつ実効的にその使命を果たすことができる司法制度を構築し、高度の専門的な法律知識、幅広い教養、豊かな人間性及び職業倫理を備えた多数の法曹の養成及び確保その他の司法制度を支える体制の充実強化を図り、並びに国民の司法制度への関与の拡充等を通じて司法に対する国民の理解の増進及び信頼の向上を目指し、もって、より自由かつ公正な社会の形成に資することを基本として行われるものとした上で、司法制度改革に関する国等の責務について所要の規定を置いております。

 第二に、司法制度改革は、基本理念にのっとって必要な制度の整備等を図るとの基本方針に基づき推進されるものとし、政府は、基本方針に基づく施策を実施するため必要な法制または財政上の措置その他の措置を講じなければならないものとしております。

 第三に、政府は、司法制度改革に関し講ずべき措置について司法制度改革推進計画を定めなければならないものとし、この計画の作成等について所要の規定を置いております。

 第四に、司法制度改革を総合的かつ集中的に推進するため、内閣に司法制度改革推進本部を置くこととし、その所掌事務、組織、事務局等について所要の規定を置くとともに、その設置期間を設置日から三年間とするものとしております。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)

     ――――◇―――――

 司法制度改革推進法案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

副議長(渡部恒三君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。佐々木秀典君。

    〔佐々木秀典君登壇〕

佐々木秀典君 私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました司法制度改革推進法案につき、内閣官房長官並びに法務大臣に質問をさせていただきます。

 一九九九年七月、小渕内閣のもとで設置された司法制度改革審議会は、二年間六十三回にわたる審議を経て、本年六月十二日、小泉総理に対し、我が国の司法改革についての最終意見書を提出いたしました。

 法曹のみならず各界の有識者で構成されたこの審議会が、極めて短期間の中で、あらゆる角度から我が国司法についての検証を行い、その審議の内容をすべて公開しつつ、あるべき司法について真摯な討議の上に最終意見を策定された御努力に対して、私は深い敬意を表するものであります。

 小泉内閣は、この意見書に基づき、戦後、新憲法の制定に伴って行われた改革以来五十年を経た現在、それをも上回ろうとする我が国司法の大改革に着手すべく、その具体化の作業を推進する体制づくりのために本法案を提出されたものと了解をいたします。

 その意味で、この法案は、「聖域なき構造改革」をうたわれる小泉内閣として、また二十一世紀の我が国の国のあり方からも、その意義はまことに重要であるところ、本法案が、今、全国民の耳目を集める中で先ほど採決されたテロ対策特措法の陰に置かれることを、私としては憂慮せざるを得ないのであります。

 そこで、本来なら、この法案成立の場合、内閣に設置される司法制度改革推進本部の本部長に就任されることとなる小泉総理から、三権分立の一翼を担う司法の位置と我が国司法の現状についての認識、あわせて、今次司法制度改革の基本的方向と決意についてお伺いをしたかったところでありますが、いらっしゃらないようでありますので、かわって内閣官房長官に、この点の政府としての御答弁をいただきたいと存じます。

 次に、この法案の内容について伺います。

 法案第一条は、この法律の目的として「国の規制の撤廃又は緩和の一層の進展その他の内外の社会経済情勢の変化に伴い、司法の果たすべき役割がより重要になることにかんがみ、」「司法制度の改革と基盤の整備」を推進するとうたっております。

 私は、司法の究極の役割は、憲法の保障する国民の基本的人権の擁護と、そのための行政に対する司法の優位、すなわち法の支配の確立、そして社会正義の実現に求められるところ、現在の官僚司法体制のもとでその役割は十分に果たされていない、このことを正すためにこそ司法制度改革が行われなければならないと考えております。

 司法制度改革審議会設置法制定の際、参議院の法務委員会の附帯決議もこの点を特に留意すべきこととして挙げ、またその審議の際、当時の陣内法務大臣も、司法制度の改革は、単に規制緩和などを推進していくために必要であるという観点からだけで行われるのではなく、国民にとって身近で利用しやすく、わかりやすい司法制度を実現するという観点から検討されなければならないと答弁されておられます。

 この点について官房長官の御見解を伺いますが、あわせて法務大臣に、この本法案の第一条に司法の人権擁護機能という文言を付加する修正について検討をされてはいかがであるか、そのことを御要望申し上げます。

 私たち民主党は、我が国の司法を官僚司法から市民が主役の国民のための司法を実現するため、「新・民主主義確立の時代の司法改革」と題する提言を行っております。

 そこで私たちが強調しているのは、今回の司法改革が、単に事件数の増加や質の変化に司法サービスが応じ切れていないことに対する対応だけではなく、国民から縁遠いものとなっている司法に有効にして迅速な国民の人権擁護機能を充実させるという理念と目標を問うことから始めようとするものであります。

 具体的には、法曹人口の増大、法曹一元の実現、陪審制など国民の司法参加の促進、行政訴訟制度の改善、家庭裁判所の改革、司法アクセスの改善、被害者救済の確立、裁判の適正迅速化、裁判外の紛争解決手段の拡充、最高裁判所裁判官のジェンダーバランス、法科大学院構想、隣接法律専門職種の活用などを提案しているのであります。

 これらの問題については、審議会においても論議され、それぞれについて提言されていますが、これをよりよく実現するためには、これからの全国民的論議が必須であると考えます。

 そのためにも、この法律によって設置される司法制度改革推進本部の改革案作成作業は、できる限り国民にオープンにされることが重要であるとともに、作業自体に法曹以外の各層の有識者を関与させ、また、広く国民の意見を反映させる方策を講ずることが必要だと考えますが、本法案にはこうした配慮がなされているのかを法務大臣にお伺いいたします。

 法案は、第四条に、日本弁護士連合会の責務規定を置いております。

 在野法曹として国民の人権を擁護し社会正義を守ることを職責とする弁護士と、その強制加入団体である弁護士会と、その連合体である日本弁護士連合会は、我が国司法制度の上で重要な位置と役割を占めております。それである以上、司法制度改革実現のために積極的な役割と社会的責務を果たすべきことは言うまでもありません。

 しかし、本来その在野としての職責の重要性にかんがみ強い自治権を保障される日弁連について、本法にこの責務規定を設ける趣旨はどのようなものなのでしょうか。これによって、日弁連に対する政府または行政の干渉の契機となることを恐れるとの声も聞かれるのですが、いかがでしょうか。法務大臣、その真意をお聞かせ願いたいと存じます。

 また、審議会の意見を尊重した司法改革の具体策を実現するためには、恐らく莫大な予算措置を講ずることが必要になると考えられます。本法案の第六条では、必要な財政上の措置を講じなければならないとされています。しかし、御承知のように、現在、我が国の司法予算は、国家予算総額の一%にも満たず、先進諸国に比べて格段に少額であることがつとに指摘されてまいりました。

 政府においてもこの点の意識改革を抜本的にしなければ、今次の司法改革も結局は絵にかいたもちになるものと思われますけれども、官房長官、この点の改革、そして予算措置について大胆な実行をなさる御決意があるか、これをお尋ねいたしたいと存じます。

 終わりに、私は、このたびの司法改革を真に国民のための司法を実現するものとするためには、これから始まる改革案の作成作業にすべての同僚議員と国民の皆さんが深く関心を持ち、議論に積極的に参加していただくことを心から念願して、私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣福田康夫君登壇〕

国務大臣(福田康夫君) 佐々木議員にお答えします。

 司法の位置と我が国司法の現状認識、今次改革の基本的方向と決意についてお尋ねがございました。

 司法は、三権分立のもとで、国民の権利の実現を図るとともに、国民の基本的人権を擁護し、さらには安全な国民生活を維持するなど、極めて重要な役割を担うものであります。

 我が国の司法制度については、これまで、国民のニーズにこたえるべく司法関係者において努力が重ねられてきたものと認識しておりますが、新世紀を迎えた我が国社会において、司法の果たすべき役割はより一層重要なものとなっており、司法がその役割を十分に果たしていくための改革が必要と考えております。

 政府としては、司法制度改革審議会の意見を最大限に尊重し、本法案に掲げられた基本理念に従って、司法制度改革の実現に全力を挙げて取り組んでいきたいと考えております。

 次に、司法制度改革の目的についてお尋ねがございました。

 法の支配は、我が国が規制緩和を推進し、行政の不透明な事前規制を排して、事後監視・救済型社会への転換を図り、国際社会の信頼を得て繁栄を追求していく上でも欠くことのできない基盤をなすものであります。

 今般の司法制度改革は、司法がその役割を十分に果たすことができるようにすることによって、法の支配の拡充発展を図ることを目的とするものでありますから、国民の基本的人権の擁護も図られていくものと考えております。

 次に、司法予算についてお尋ねがございました。

 内外の社会経済情勢の変化に伴い司法の果たすべき役割はより一層重要になると考えられ、司法制度改革審議会の意見を尊重した司法制度改革を実現していくことは極めて重要であり、司法がその役割を十分に果たすことができますよう、所要の予算を確保し、司法の基盤の充実、拡充に努めてまいりたいと考えております。(拍手)

    〔国務大臣森山眞弓君登壇〕

国務大臣(森山眞弓君) 佐々木議員にお答え申し上げます。

 まず、司法制度改革の作業を国民にオープンにすること、有識者の関与及び国民の意見を反映させる方策についてお尋ねがありました。

 御指摘の点は重要であると認識しております。したがいまして、本法案に基づいて司法制度改革を推進するに当たりましては、国民の皆様への積極的な情報提供に努め、改革推進過程の透明性を確保するとともに、法曹以外の各層の有識者の方々にも関与していただき、また、国民の皆様からの御意見にも十分に耳を傾けつつ改革を進めてまいりたいと考えております。

 次に、日弁連に対する責務に関する規定についてお尋ねがございました。

 弁護士は司法制度を支える重要な存在ですので、御指摘のとおり、日弁連が、司法制度改革実現のために、みずから積極的な役割と社会的責務を果たすべきことは言うまでもございません。

 このような認識に立ちまして、本法案では、日弁連は、弁護士の使命及び職務の重要性にかんがみ、司法制度改革の実現のため必要な取り組みを行うように努める責務を負う旨を規定したものでございます。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(渡部恒三君) 保坂展人君。

    〔保坂展人君登壇〕

保坂展人君 私は、社会民主党・市民連合を代表いたしまして、司法制度改革推進法案に対する質問を行います。(拍手)

 主に法務大臣、幾つかの点を総理にかわって官房長官にお尋ねいたしたいと思います。

 司法制度改革審議会の意見書には、「半世紀を経て初めて、利用者である国民の視点から抜本的に改革するもの」とあります。

 したがって、この司法制度改革推進法案が最大に重視すべきところは、まさに国民の視点、その一点であるということをまず確認させていただきたいと思うのです。大企業や経済効率、また最高裁や法務省など政府の視点ではなく、まずは国民の視点、この点は間違いないですね。

 そして、法案の「目的」は、司法の役割がより重要になる理由として、「国の規制の撤廃又は緩和の一層の進展」を挙げています。

 司法改革に当たり、規制緩和や社会経済情勢の変化はうたわれていても、人権の実現という言葉がどこにも見当たらないのはなぜですか。人権の実現とは、司法制度改革の目的であり、基本ではないでしょうか。

 はっきり言って、政府は、これまで、薬害エイズやハンセン病の隔離政策、そして、大気汚染などの行政責任を否定し続けてきました。狂牛病をめぐる今日の対応を見ても、事前規制型から事後監視型を合い言葉に、国民の健康と安全のために必要な規制をサボタージュしたり、あるいは、業界の要請で規制を緩和した後で、文句があるなら訴訟を起こしてください、こんな社会にしてはならないことは明白ではありませんか。司法制度改革を前に、政府は行政責任をこれまで以上に率直に認め、真実を明らかにしていく覚悟と姿勢があるのか。

 以上の点は、官房長官にもお尋ねをしたいと思います。

 本案の「基本理念」には、「国民の司法制度への関与の拡充等を通じて司法に対する国民の理解の増進及び信頼の向上を目指し、」とあります。

 あたかも、国民は司法制度をいかによりよく理解し、さらに信頼を深めていくだけの客体として位置づけられているというふうに私には読めます。主客転倒とはこのことではないでしょうか。まず司法が国民に近づき、信頼の向上を得るための努力を欠かさない、こういった視点が欠けているのではありませんか。

 「基本方針」には、「国民がより容易に利用できる」とあるのですが、司法制度改革審議会の意見書では、弁護士費用の敗訴者負担制度の導入に言及があります。

 行政や企業が、責任逃れのために規制緩和を行い、文句があるなら訴訟を起こしてくださいと居直って、弁護士費用も、負けたらあなたの責任ですよと、これは国民に泣き寝入りをしろということと同じではないですか。

 人権にかかわる、例えばセクシュアルハラスメント訴訟、公害訴訟、株主代表訴訟などの多くが大企業を相手に争っており、弁護費用も高額の弁護団を組織しているケースが多い中で、この制度が導入されれば、司法改革どころか、市民を司法からけ散らしていく改悪となってしまいます。

 そうではないのなら、行政訴訟を初め敗訴者負担制度を導入しない訴訟の類型をはっきりと示していただきたい。敗訴者負担は、例えば、借金を返したのに取り立てられてしまって、債務不存在の訴訟を起こしたときなどは必要とされますが、これは厳しい限定を要するものと考えますが、見解を伺いたいと思います。本法案の最重要論点なので、丁寧な答弁を求めたいと思います。

 「より迅速、適切かつ実効的にその使命を果たすことができる司法制度を構築する」と法案にあります。

 裏を返せば、現在の司法の実情は、迅速さに欠け、不適切な部分もあり、実効性において不十分という認識を持っておられるのか、基本認識を伺います。

 「民事に関し、その解決のため専門的な知見を要する事件その他の事件に関する裁判所における手続の一層の充実及び迅速化、」とあります。

 審議会は、知的財産権や医療過誤、建築などの専門的な訴訟で、裁判所がその分野の専門家から意見を聞いて争点整理や判断に当たる制度を提言しているのです。

 現在も、中立的な専門家の鑑定人を裁判所が確保するのが難しく、訴訟が長引く原因となっています。どのような人選を行っていくのか。大企業や行政側、あるいは医療過誤であれば医師たちに都合がいい人ばかりが集められてしまうのではないかという危惧を持ちますが、そうならないための法整備をお考えであれば、説明をいただきたいと思います。

 一般市民が契約書をつくるとき、公証役場に気軽に行ける環境があるでしょうか。公証人は裁判官や検事の天下り先で、法律に定められた試験さえ一度も実施されていないとは本当ですか。裁判官・検事OBが高給に恵まれ、豊かな暮らしを続けている、そんな状況を改めることも司法制度改革なのではないでしょうか。

 「刑事に関し、裁判所における手続の一層の充実及び迅速化、被疑者及び被告人に対する公的な弁護制度の整備、検察審査会の機能強化等を図る」とあります。

 死刑という究極の刑罰を科すという判断は、充実の上にも充実をした裁判で下されるべきであって、拙速はこれを戒めるべき、これは当然だと思いますが、はっきりと御答弁をお願いしたいと思います。

 また、「国民が裁判官と共に刑事訴訟手続に関与する制度の導入」がうたわれています。

 審議会が提唱したいわゆる裁判員制度が検討されるはずですが、なぜ陪審制度ではないのでしょうか。国民の良識を生かすのであれば、陪審制度がふさわしいのではないですか。政府の見解を求めます。

 国民の司法参加を保障するためには、子供のころからの司法教育が何よりも重要ではありませんか。司法は遠いと多くの国民が感じています。被疑者となったときにどのような司法手続があるのか、あるいはその際の権利義務関係、人権を侵されたときの司法救済を求める手段などを子供のころからきちっと教えてこなかったのはなぜなのか、このことについても官房長官に一言お答えいただきたいと思います。

 さて、「裁判所、検察庁等の人的体制の充実」というふうにありますが、十年後に必要不可欠な

裁判官と検察官の人数は一体何人なんでしょうか。

 裁判官や検事の給与の相当性は、これまでも、私、問いただしてまいりましたが、現在の給与水準で増員をするおつもりでしょうか。事務次官と同じ年収二千三百十七万円以上の給料をもらっている裁判官は二百五十一名、検事は六十四名で、計三百十五名ですが、一体この増員計画によって幾らの予算が必要となるのか、概算でも結構ですから示していただきたいと思います。

 裁判官や検事を大幅に増員し、裁判所や検察庁の体制を拡大する予算があるのなら、むしろ、小中学校で二十人学級を実現し、教員の給与、レベルを引き上げて、今申し上げました司法教育を徹底的にやる、国民の司法への参加ですから司法教育を徹底的にやるということの方が二十一世紀の日本のためになるのではありませんか。官房長官にこの点にもお答えをいただきたいと思います。

 検察審査会の機能強化として、起訴相当を議決した際には被疑者を起訴する方向、現在は法的拘束力がありませんが、起訴する方向で検討がされているようです。さて、その場合に公判の検事役はだれが務めるのですか。

 また、法曹人口の大幅な増加によって、庶民や中小企業のために安い報酬もいとわずに働く弁護士、社会正義と人権実現のために働く法曹はどのくらいふえると予想されているのでしょうか。裁判官や検事、大企業や金回りのいい人たちのための弁護士ばかりがふえてしまう心配はないのですか。

 法科大学院構想では、高額な学費が予想されています。能力はあっても学費負担が難しいから法曹への道が絶たれてしまうという心配があります。高額な学費を抑制するための財政措置及び奨学金制度の整備について伺います。

 また、法科大学院は、「基本理念」にある「高度の専門的な法律知識」だけではなくて、「幅広い教養」や「豊かな人間性」、これを持った人材を育成するということのために構想されているというふうに聞きます。審議会が提言したように、司法試験の受験資格を原則として法科大学院修了者に限定すると、どのような影響が司法にあらわれるのか、人材の幅を狭めることになってしまうのではないか、法科大学院で「幅広い教養」や「豊かな人間性」を持った学生を育てる教員に必要な条件は何なのか、どこからそのような教員を探してくるのか、見解を問いたいと思います。

 判検交流という言葉があります。裁判官が国の代理人の訟務検事となり訴訟を担当し、数年後にはまた行政訴訟の裁判官に戻って国と市民との訴訟を担当しているという制度で、どんなに法曹が立派であっても、市民には、これは公平でないなという不信感を抱かせるのではないでしょうか。こういったことこそ改革をしなければならない、この制度がまかり通っていること自体、法曹の思い上がりと思いますが、いかがですか。

 裁判官、検事、弁護士が国民から遠い、これは、法曹が独善的で、謙虚に一般の市民の声に耳を傾けないからではないでしょうか。福岡地検次席検事の問題、ダンプにはねられ、当初は不起訴になった、亡くなった小学生片山隼君の当初の東京地検の対応、検察庁幹部のスキャンダルなども含めて、謙虚さや思いやり、つまり謙抑的であることがなお求められているのではないでしょうか。

 司法制度改革推進本部事務局は、法曹三者と中央省庁出向者で構成される見込みだと聞いています。

 国民の視点から抜本的に改革する司法制度改革のメンバーとしてこれで十分なのか、広く人材を求め、公聴会をテーマごとに重ねるなどの必要を自覚しておられるのか、官房長官に、その努力を求め、また、見解を問うものであります。

 また、事務局主導になってしまったり、事務局主導を抑えるための顧問会議がきちっと行われなければならないのですが、その人選はどうされるのでしょうか。顧問会議やテーマごとの検討会議の議論を全部情報公開していく、このことをただしておきたいと思います。

 私は、十六歳から三十二歳まで、いわゆる内申書裁判という民事裁判の原告人として過ごしました。高校進学に当たる内申書の是非を、十六歳から始めて三十二歳でこの結果が出るというのは、本当に長い長い年月でした。

 最後に、自分の裁判の判決が最高裁判所でどう出るのかということを、十六年も裁判をやっていたら知りたいというのは、皆さんもおわかりのことと思います。これを当時の最高裁は教えてくれないのです。十六年かかった民事裁判の判決の当事者に判決がいつあるのかも通知をしない、求めに求め続けて、朝九時になると札が出る、その札を見て十時過ぎから開廷しますというのが当時の最高裁です。まことに国民から遠い司法を私は実感してまいりました。

 その思いを込めて、国民のための、国民の視点に立った司法制度改革の実現を政府に求めまして、私の質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣森山眞弓君登壇〕

国務大臣(森山眞弓君) 最初に、先ほどの佐々木議員の御質問に対する答弁を落としましたので、今申し上げたいと思います。

 日弁連に対する行政の干渉の契機になるのではないかという御疑問でございましたが、そのようなことはないと考えております。

 続いて、保坂議員にお答えを申し上げます。

 まず、司法制度改革の目的についてのお尋ねでございましたが、今般の司法制度改革により法の支配を拡充、発展させることによりまして、国民の基本的人権の擁護も図られていくものと考えております。

 次に、行政責任の自覚についてのお尋ねがございました。

 事後チェック型行政への転換は、消費者・生活者本位の経済社会を実現するためでございまして、行政の責任逃れというものではないと思います。

 次に、「基本理念」に関する法案の第二条についてお尋ねがございました。

 司法制度改革審議会意見は、国民が自律性と責任感を持ちつつ司法の運営に関与すべきであり、そのことにより、司法に対する国民の理解、支持が深まり、ひいては司法の国民的基盤が確立されることになる旨述べております。同条の御指摘の部分は、その趣旨を踏まえまして、司法制度改革を進める上での基本的な理念を明らかにするものでございます。

 次に、敗訴者負担制度の導入についてお尋ねがございました。

 司法制度改革審議会の意見におきましては、弁護士報酬の一部を敗訴者に負担させることができる制度を導入すべきであるとする一方で、不当に訴えの提起を萎縮させることがないよう、一律に導入することなく、敗訴者負担を導入しない訴訟の範囲等について検討すべきであるとされております。

 具体的な制度設計につきましては、このような審議会の意見を十分に踏まえつつ、国民の裁判所へのアクセスに不当な影響を及ぼさないよう、慎重に検討を進めてまいりたいと考えております。

 次に、司法の実情に関する基本認識についてお尋ねがございました。

 我が国の司法制度については、これまで、国民のニーズにこたえるべく司法関係者が大変努力を重ねられてまいりました。しかし、新世紀を迎えた我が国社会におきまして、司法の果たすべき役割はより一層重要なものとなっておりまして、より迅速、適切かつ実効的な司法制度を構築することに対する国民の期待は一段と高まっているものと認識しております。このような国民の期待にこたえ得るよう、司法制度の改革を推進していく必要があると考えております。

 専門委員制度についてのお尋ねがございました。

 司法制度改革審議会意見では、専門家の選任方法や手続への関与のあり方等の点で裁判所の中立・公平性を損なうことのないよう十分配慮して、専門委員制度の導入のあり方を検討すべきであるとされております。専門委員制度については、このような意見の趣旨を踏まえ、十分検討される必要があると考えております。

 公証人の任用についてお尋ねがございました。

 この点につきましては、確かに試験は実施されておりませんが、これは、公証人法では、試験をすることなく法曹有資格者を任用することができることになっていることからも明らかなように、公証人に要求される能力と同水準の能力を要求する試験として司法試験がありますことから、結局のところ、これと重複したものにならざるを得ず、別個に試験を実施することは合理的、効率的とは言えないからであると考えます。

 しかしながら、公証制度が有効に機能することは司法制度改革にとって重要でございまして、今後も、公証制度のより一層の充実に努めてまいりたいと考えております。

 次に、刑事裁判の審理の充実についてのお尋ねがございました。

 司法制度改革審議会意見におきましても、「刑事裁判の充実・迅速化を図るための方策を検討する必要がある。」とされているところでありまして、今後、この意見を踏まえ、具体的制度のあり方について検討される必要があると考えております。

 なぜ陪審制度をとらないのかというお尋ねがございました。

 司法制度改革審議会の意見は、刑事訴訟手続において、裁判官と国民が相互のコミュニケーションを通じて知識、経験を共有し、その成果を裁判内容に反映させることに意義がありますので、一般の国民が裁判官とともに責任を分担しつつ協力する制度が適当であるとしているものと思われます。

 次に、司法教育に関するお尋ねがございました。

 司法制度改革審議会の意見のとおり、国民の司法制度への関与の拡充をも踏まえまして、学校教育等における司法に関する学習機会を充実させることが望まれるとともに、このため、教育関係者や法曹関係者が積極的役割を果たすことが求められると思われます。

 裁判官、検察官の増員等についてお尋ねがございました。

 司法制度改革審議会意見は、全体としての法曹人口の大幅な増加を図る中で裁判官及び検察官を大幅に増員することが不可欠であるとしておりますが、その必要数及び予算につきましては、今後、司法制度改革の推進のあり方を検討する中で決定されるものと認識しております。

 裁判官及び検察官の給与は、その職務と責任の特殊性等にかんがみまして、個別の法律で定められているところでありまして、それぞれの給与の額は適正妥当なものであると考えているところでございますが、今後、司法制度改革や公務員制度改革の動向等をも踏まえつつ、さらに検討が加えられるものと考えております。

 次に、検察審査会の議決に法的拘束力を持たせた場合の訴訟追行の主体についてお尋ねがありました。

 お尋ねの点につきましては、司法制度改革審議会の意見におきましても、十分な検討を行うべきものとされているところでございまして、今後、十分検討しなければならないものと考えております。

 法曹人口の大幅な増加と弁護士の活動についてお尋ねがございました。

 司法制度改革審議会の意見は、法曹人口の大幅な増加が必要であるとした上で、弁護士について、国民の権利利益の実現に奉仕することを通じてその社会的責任を果たすべきであると提言しておりまして、今後、法曹人口の大幅な増加に伴い、社会的弱者の権利擁護活動など、弁護士による公益活動の一層の充実が図られるものと期待しております。

 次に、法科大学院に関する財政措置及び奨学金制度についてお尋ねがございました。

 司法制度改革審議会意見は、法科大学院の設立、運営に要する費用について、現下の厳しい財政事情等にも留意しつつ、適切な評価の結果を踏まえまして、適正な公的支援が行われる必要があるとするとともに、資力の十分でない者が経済的理由から法科大学院に入学することが困難となることのないように、奨学金等の各種の支援制度を十分に整備、活用すべきであると提言しております。

 今後、これらの提言の趣旨を踏まえまして、関係機関と連携しつつ、所要の検討を行ってまいりたいと考えております。

 次に、法科大学院と司法試験の関係についてお尋ねがございました。

 司法制度改革審議会の意見は、法学教育、司法試験、司法修習を有機的に連携させたプロセスとしての法曹養成制度を新たに整備すべきであるとし、その中核をなすものとして法科大学院を設けるべきであるとしております。

 このようなプロセスとしての法曹養成制度の整備によりまして、法科大学院における教育を受けた多数の者が司法試験を経て法曹となり、二十一世紀の司法を支えるのにふさわしい、質量ともに豊かな法曹が確保されるものと期待しております。

 次に、法科大学院の教員についてお尋ねがございました。

 司法制度改革審議会意見は、法科大学院における教育のあり方として、豊かな人間性の涵養や向上、法曹としての責任感や倫理観の涵養等が必要である旨提言するとともに、教員資格につきましては、教育実績や教育能力、実務家としての能力、経験を大幅に加味したものとすべきであると指摘しております。

 法科大学院においては、これらの能力や経験を有する教員による充実した内容の教育が行われるものと期待しております。

 次に、判検交流に関するお尋ねがございました。

 まず、裁判官と検察官の人事交流につきましては、基本的には、司法制度、民事、刑事の基本法令の立案等、法律的知識、経験を要する法務省の所掌事務を適正に行うためには、法律専門家である裁判官の実務経験を有する者を任用することは意義あるものと考えておりまして、人事交流が公正な裁判を阻害していることはないと信じております。

 ところで、法務省・検察庁への出向に関し、司法制度改革審議会意見書においては、「裁判官以外からも広く人材を受け入れるための方策を講じるべきである。」とされているところでございまして、この御提言を十分に尊重し、弁護士や民間の専門家、学者あるいは他省庁の職員など、多種多様な経験を有する者を積極的に受け入れるなどして、国民の法曹に対する信頼にこたえてまいりたいと考えております。

 次に、法曹が独善的ではないかということについてのお尋ねがございました。

 御指摘のとおり、法曹が独善に陥ることがあってはなりません。司法制度改革審議会の意見におきましても、法曹三者の資質の向上を図るとともに、それぞれの業務の運営に国民の声を反映させるために関連諸制度の改革が求められているところでございまして、それら意見の趣旨を踏まえ、今後、具体的制度のあり方について検討が加えられるものと考えております。

 最後に、事務局の主導にならないためにチェックはどうするのか、また、顧問会議の人選はどうするかという御質問がございました。

 事務局主導にならないためのチェックにつきましては、推進本部には、中央省庁等改革推進本部の場合と同様に、有識者による顧問会議のようなものを置きまして、司法制度改革審議会意見に沿った改革であるかどうか、御意見を伺うことができるようにしたいと考えております。顧問会議の人選につきましては、適任の方にお願いできますよう十分に検討してまいりたいと考えております。

 そして、さまざまな会議の公開について、会議の内容をできるだけ公表するなど、透明性を確保した形で運営してまいりたいと考えております。(拍手)

    〔国務大臣福田康夫君登壇〕

国務大臣(福田康夫君) 保坂議員にお答えします。

 国民の視点からの改革の重要性についてのお尋ねがございました。

 今般の司法制度改革を実現するに当たりましては、御指摘のとおり、国民の視点を踏まえることが大変重要であると考えております。

 本法案におきましても、そのような視点を踏まえ、国民がより容易に利用できるとともに、公正かつ適正な手続のもと、より迅速、適切かつ実効的にその使命を果たすことができる司法制度の構築等を内容とする改革の基本理念、基本方針等を定めているところでございます。

 次に、司法制度改革の目的についてお尋ねがございました。

 今般の司法制度改革は、規制緩和を初めとする内外の社会経済情勢の変化に伴い、司法の果たすべき役割がより一層重要になることにかんがみ、司法がその役割を十分に果たすことができるようにすることを目的とするものであります。このように、法の支配を拡充発展させることによって国民の基本的人権の擁護も図られていくものと考えております。

 次に、行政責任の自覚についてのお尋ねがございました。

 規制改革を推進するに当たり、事後チェック型行政への転換は改革方針の一つでございますが、これは、消費者・生活者本位の経済社会を実現するためであり、行政の責任逃れではございません。例えば、医療、介護、保育などの分野での規制改革でも、サービスの質の確保に関するルールを設け、十分なチェックを行っていくことが重要であるという考え方を明らかにしているところであります。

 次に、司法教育についてお尋ねがございました。

 司法の役割等については、従来から、児童生徒の発達段階に応じて、社会科、公民科を中心として指導が行われているところでございます。

 例えば、中学校社会科では、法に基づく公正な裁判の保障があることについて理解させ、また、高等学校公民科の政治・経済では、司法の仕組みやその機能等について理解させることとしております。

 今後とも、初等中等教育段階においては、児童生徒の発達段階に応じて、国民主権を担う公民としての資質を培う教育が適切に行われるよう努めてまいります。

 次に、小中学校における二十人学級の実現や教員の給与等についてのお尋ねがございました。

 子供たちの基礎学力の向上ときめ細かな指導を充実する観点から、教科等に応じ二十人程度の少人数指導が実施できるよう、平成十三年度から新たに、第七次教職員定数改善計画をスタートしたところであります。

 また、教育界に優秀な人材を確保するため、従前よりその処遇の改善に努めてまいったところであります。

 最後に、司法制度改革推進本部事務局の体制等についてお尋ねがございました。

 司法制度改革を推進するに当たっては、国民の皆様からの御意見に十分に耳を傾けつつ進めることが重要であると認識しております。推進本部事務局の体制についても、このような点に十分留意しつつ、司法制度改革を総合的かつ集中的に推進するためにふさわしいものとなるようにいたしたいと考えております。(拍手)

副議長(渡部恒三君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(渡部恒三君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時十四分散会




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