衆議院

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第10号 平成13年10月30日(火曜日)

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平成十三年十月三十日(火曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第六号

  平成十三年十月三十日

    午後一時開議

 第一 司法制度改革推進法案(内閣提出)

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 電気通信事業紛争処理委員会委員任命につき同意を求めるの件

 労働保険審査会委員任命につき同意を求めるの件

 中央社会保険医療協議会委員任命につき同意を求めるの件

 運輸審議会委員任命につき同意を求めるの件

 公害健康被害補償不服審査会委員任命につき同意を求めるの件

 日程第一 司法制度改革推進法案(内閣提出)

 小泉内閣総理大臣の第九回アジア太平洋経済協力首脳会議出席及びその際に行われた二国間首脳会談に関する報告及び質疑




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    午後一時三分開議

議長(綿貫民輔君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 電気通信事業紛争処理委員会委員任命につき同意を求めるの件

 労働保険審査会委員任命につき同意を求めるの件

 中央社会保険医療協議会委員任命につき同意を求めるの件

 運輸審議会委員任命につき同意を求めるの件

 公害健康被害補償不服審査会委員任命につき同意を求めるの件

議長(綿貫民輔君) お諮りいたします。

 内閣から、

 電気通信事業紛争処理委員会委員

 労働保険審査会委員

 中央社会保険医療協議会委員

 運輸審議会委員

及び

 公害健康被害補償不服審査会委員に

次の諸君を任命することについて、それぞれ本院の同意を得たいとの申し出があります。

 内閣からの申し出中、

 まず、

 電気通信事業紛争処理委員会委員に香城敏麿君、田中建二君、富沢木実君、森永規彦君及び吉岡睦子君を、

 労働保険審査会委員に藤村誠君を、

 運輸審議会委員に小野孝君及び三橋滋子君を、

 公害健康被害補償不服審査会委員に加藤信世君を

任命することについて、申し出のとおり同意を与えるに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。よって、いずれも同意を与えることに決まりました。

 次に、

 中央社会保険医療協議会委員に星野進保君を、

 公害健康被害補償不服審査会委員に大西孝夫君を

任命することについて、申し出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(綿貫民輔君) 起立多数。よって、いずれも同意を与えることに決まりました。

 次に、

 運輸審議会委員に佐々木建成君を

任命することについて、申し出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(綿貫民輔君) 起立多数。よって、同意を与えることに決まりました。

 次に、

 運輸審議会委員に田島優子君を

任命することについて、申し出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(綿貫民輔君) 起立多数。よって、同意を与えることに決まりました。

     ――――◇―――――

 日程第一 司法制度改革推進法案(内閣提出)

議長(綿貫民輔君) 日程第一、司法制度改革推進法案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。法務委員長保利耕輔君。

    ―――――――――――――

 司法制度改革推進法案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔保利耕輔君登壇〕

保利耕輔君 ただいま議題となりました法律案について、法務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、内外の社会経済情勢の変化に伴い、司法の果たすべき役割がより重要になることにかんがみ、司法制度の改革と基盤の整備について、基本となる事項を定めるとともに、司法制度改革推進本部を設置すること等により、これを総合的かつ集中的に推進することを目的とするもので、その主な内容は、

 第一に、司法制度改革は、国民がより容易に利用できる司法制度を構築し、高度の専門的な法律知識と職業倫理を備えた多数の法曹の養成など司法制度を支える体制の充実強化を図り、国民の司法制度への関与の拡充を通じてその理解の増進を目指し、もって、より自由かつ公正な社会の形成に資することを基本として行われるものとすること、

 第二に、司法制度改革は、基本理念にのっとって必要な制度の整備を図るとの基本方針に基づき推進されるものとし、政府は、基本方針に基づく施策に必要な法制上または財政上の措置を講じなければならないものとすること、

 第三に、政府は、司法制度改革に関し構ずべき措置について司法制度改革推進計画を定めなければならないものとすること、

 第四に、司法制度改革を総合的かつ集中的に推進するため、内閣に司法制度改革推進本部を置くこととし、その所掌事務、組織、事務局等について所要の規定を整備すること

であります。

 本案は、去る十八日本会議において趣旨説明及び質疑が行われ、同日本委員会に付託されたものであります。

 委員会においては、十九日森山法務大臣から提案理由の説明を聴取した後、二十四日から質疑に入り、参考人から意見を聴取するなど慎重に審査を行い、二十六日質疑を終局したところ、日本共産党及び社会民主党・市民連合の共同提案により、目的規定から規制緩和に関する記述を削除する旨などを内容とする修正案が提出され、趣旨の説明を聴取した後、討論、採決を行いました。その結果、日本共産党及び社会民主党・市民連合の共同提案による修正案については賛成少数をもって否決され、原案は賛成多数をもって可決すべきものと決しました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されたことを申し添えます。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(綿貫民輔君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(綿貫民輔君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 内閣総理大臣の発言(第九回アジア太平洋経済協力首脳会議出席及びその際に行われた二国間首脳会談に関する報告)

議長(綿貫民輔君) 内閣総理大臣から、第九回アジア太平洋経済協力首脳会議出席及びその際に行われた二国間首脳会談に関する報告について発言を求められております。これを許します。内閣総理大臣小泉純一郎君。

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 私は、十月十九日から二十二日にかけて、中国の上海で開催された第九回アジア太平洋経済協力首脳会議に出席するとともに、その機会を利用して、韓国、オーストラリア、米国、シンガポール、ペルー、ロシア、中国、マレーシア及びインドネシアの九カ国の首脳と個別会談を行ってまいりました。これらの結果について御報告いたします。

 今次APEC首脳会議では、首脳間で率直な意見交換を行った結果、以下の主要な成果が達成されました。

 第一に、従来、APECにおいては経済問題を中心に協議が行われてきましたが、九月十一日の米国での同時多発テロの重大性にかんがみ、今次首脳会議においては、テロリズムにいかに対処していくかについても協議が行われました。宗教的、文化的に多様なメンバーから成るAPECにおいて、テロリズムを強く非難し、反テロリズムのための国際協力を強調する声明を発出したことは、国際社会の連帯を示す上で極めて有意義であったと考えます。

 第二に、世界経済情勢について、早期回復に向けた意見交換が行われました。私からは、構造改革なくして成長なしとの決意のもと、民需主導の自律的な経済成長の達成を目指して、我が国が進めている構造改革の進展状況につき説明しました。

 第三に、WTOに関しては、来月のドーハでの第四回WTO閣僚会議において必ず新ラウンドを立ち上げるべきであること、また、新ラウンドは十分広範なアジェンダのもとで行われるべきことで合意が得られました。

 第四に、APECプロセスの活性化、グローバル化及びニューエコノミーへの対応を目指して、今後のAPECの活動につき首脳間で議論がなされ、人材養成の重要性についての認識が得られたほか、今後のAPECの活動方針についても認識の一致が得られました。

 また、私は、九カ国の首脳と個別に会談し、有意義かつ率直な意見交換を行いました。

 まず、日米首脳会談においては、私より、同時多発テロへの我が国の取り組みにつき説明しました。これに対し、ブッシュ大統領より、日本の協力に謝意を表するとともに、アフガニスタンの和平、復興についての我が国への期待が表明され、引き続き日米が緊密に協力していくことで意見の一致を見ました。

 日ロ首脳会談においては、平和条約締結問題及びテロ対策を中心に議論を行い、平和条約締結交渉については、話し合いの具体的進め方を含め、精力的に交渉を行っていくことで合意しました。

 主催国である中国の江沢民国家主席との会談では、先般の北京訪問の結果を踏まえ、来年の国交正常化三十周年に向け、日中関係を一層発展させていくことで一致しました。

 また、日韓首脳会談においては、先般の私の訪韓を踏まえ、明年のワールドカップ開催及び国民交流年に向けて、具体的かつ積極的な協力を行っていくことで一致しました。

 このほか、私は、オーストラリア、シンガポール、ペルー、マレーシア及びインドネシアの各国首脳とも個別会談を行いました。その中で、私は、二国間関係の議論に加え、我が国が進めているテロ対策措置、アフガニスタン和平及び将来の復興をも視野に入れた構想、そして、断固たる決意を持って進めている構造改革につき説明しました。また、日本・シンガポール首脳会談の結果、新時代経済連携協定につき、交渉を成功裏に終えた旨、及び署名のため本年末までに本協定を完成させるべきである旨の共同発表を行いました。

 以上の二国間会談を通じ、これら諸国との友好関係を一層強固なものにすることができたものと考えます。(拍手)

     ――――◇―――――

 内閣総理大臣の発言(第九回アジア太平洋経済協力首脳会議出席及びその際に行われた二国間首脳会談に関する報告)に対する質疑

議長(綿貫民輔君) ただいまの発言に対して質疑の通告があります。順次これを許します。桑原豊君。

    〔桑原豊君登壇〕

桑原豊君 私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいまの総理の御報告に関し、総理に質問いたします。(拍手)

 今回のAPEC会合は、二十一世紀に入り、世界経済が厳しさを増してきた中で、前代未聞の同時多発テロが発生するという極めて深刻な状況を背景に開催されました。参加各国が強い危機感を共有し、テロの影響をはね返すため、今後の方向性を模索し、国際協調の強い意志を確認するという、歴史的に大変重要な会合であったと認識いたしております。まさしく、我が国の経済力と外交の真価が問われる場であったとも言えましょう。

 そこで、まず、今回のAPEC会合に当たり、総理がAPECをどのように位置づけ、そこでの我が国の役割と戦略についてどのように認識しておられたのか、その所期の目的は十分達成できたのか、お伺いをいたします。

 テロ事件を受けて、APECにおいて初めて政治的な声明が発表されました。特に、日本のアフガン復興支援に対して強い期待が寄せられております。民主党も、そのために我が国が懸命の外交努力を行うべきであると一貫して主張してまいりました。政府としても、和平復興会議を東京で開催する意思を表明した以上、慎重かつ着実に外交努力を積み重ねることが重要であります。

 しかしながら、率直に申し上げて、私どもには、今後、政府がどのような戦略、戦術を持ってアフガン復興への外交を展開していこうとしているのか、全く見えてまいりません。

 そこで、総理に伺います。

 昨日、いわゆるテロ特別措置法が成立をいたしました。まず、この法律によって実施される自衛隊の海外派遣に関して、インドネシアを初めとしたイスラム諸国やアジア各国はどのようにこのことを理解し、反応しているのでしょうか。また、膠着状態とも伝えられるアフガン情勢の今後の展開についてどのように認識しておられるのか。その認識に基づいて我が国として具体的にどのような貢献ができるとお考えなのか。まさしく、これから策定する基本計画の基礎をなす根本的な認識について、パキスタン及び周辺イスラム諸国との関係、中東和平プロセスへの関与、貧困問題への取り組みなどを含め、見解をお伺いいたします。

 また、首脳声明には、テロ対策について国連を中心とする外交の重要性がうたわれていますが、我が国として、国連にどのような役割を期待し、どのように働きかけているのか、お伺いをいたします。

 さて、世界経済の回復に向けて我が国経済をしっかり再建することは、APECが最も期待しているところであります。今回のAPEC首脳宣言における持続的成長の促進のための構造改革や金融の効率化、ソーシャルセーフティーネットの開発など、まさしく我が国へのメッセージそのものであります。

 構造改革を断行し、新しい時代の要請にこたえる経済対策を講じることが急務であります。不良債権処理、特殊法人改革、規制改革など、与党内の抵抗勢力を排除して断行すべきであります。補正予算は、従来のばらまき型から脱却し、新産業創造・新雇用創出型に転換すべきと考えます。当然、総理の公約である国債三十兆円の枠も堅持すべきであります。

 総理は、各国首脳に対して、我が国が進める構造改革の進捗状況について説明をし、理解を得たとのことでありますが、どのような御説明をされたのか。特に、前回ブッシュ大統領と会談されたときからどのような具体的進展があったと説明をされたのか、厳しいアジア経済の中で、我が国の回復への工程表でどれほどの時間軸を示されたのか、各国は十分満足しているのか、これらの点について総理の答弁をいただきたいと思います。

 また、米国への同時多発テロ以来、航空産業、観光産業に大きな被害が出ています。とりわけ、米軍基地のある沖縄への観光客は激減いたしております。沖縄の観光、経済振興を含めて、政府の具体的な対応策をあわせて総理に伺います。

 次に、APEC首脳宣言で、早期立ち上げについて確認されたWTO新ラウンドについてお尋ねいたします。

 同時多発テロで深刻な危機に立たされた世界経済を再活性化するためにも、自由化促進に向けた広範な議題のもとで新ラウンドを立ち上げることは、大変重要な意味を持っております。万一失敗すれば、世界の貿易・投資にさらに冷水を浴びせ、世界経済が危機的状況に陥ることにもなりかねません。

 当然のことながら、我が国は、WTO新ラウンドの立ち上げに主導的な役割を果たすべきと考えます。新ラウンド立ち上げに向けて日本として具体的にどのような行動に取り組むのか、総理の見解を伺います。

 次に、WTOへの加盟申請をしている中国との関係について質問いたします。

 日本は、WTOのルールに基づいて、中国産のネギ、生シイタケ、イグサにセーフガードを暫定発動しました。その対抗措置として、中国が、自動車、携帯・自動車電話、空調機の日本製品三品目に特別関税を課したことは憂慮すべき事態と考えます。報復措置はWTOでは認められておらず、WTOへ加盟申請している中国がかかる措置をとったことは納得できません。しかし、今回の事態を招いた政府の対中外交における責任は極めて重いと思います。

 今月二十一日の日中首脳会談で、総理は、この問題を話し合いで解決すると改めて確認されました。与党では、交渉決裂を前提に早々と本格発動を声高に唱える向きもあるようですが、私は、あくまでも、日本政府は、中国政府と粘り強く話し合い、貿易制限的な措置をとらなくても事態を収拾できるよう努力を続けるべきだと考えます。

 この点について総理はどのような展望をお持ちなのか、明快なる答弁をいただきたいと思います。

 次に、ロシアとの関係についてお伺いします。

 日ロ関係は、森総理のころから首脳会談を重ねていますが、平和条約締結交渉、北方四島返還については、実質的には全く進展がないと言わざるを得ません。それどころか、先般、ロシア政府が北方四島周辺水域で第三国漁船の操業を認めるなど、日本との領土交渉をないがしろにするような行動に出たことは極めて遺憾でした。このような事態を外交的に阻止できなかったことは、我が国外交の失態であったと断ぜざるを得ません。

 事務レベルで交渉中とのことですが、なぜ首脳レベルで政治的な決着を図らなかったのか、交渉の現状と今後の展望はどうなのか、総理並びに外務大臣及び農林水産大臣から、国益を踏まえた御見解を伺いたい、このように思います。

 さらに、北方四島について、APECでのプーチン大統領との会談で、歯舞、色丹の議論と国後、択捉の議論を同時に、かつ並行的に進めていくことで一致とありますが、これは、北方四島を二島ずつに分けて、前者はその返還について、後者はその帰属について考えるということでしょうか。我が国の方針は、外務大臣が何遍も答弁されたように、四島一括返還と考えますが、だとすれば、なぜ二つに分けて交渉するのか、その意味するところは何なのか、総理並びに外務大臣の明確な答弁をお願いいたします。あわせて、今後の日ロ交渉について、どのような展望と方針を持って取り組んでいくのか、総理のお考えをお伺いします。

 最後に、今回の同時多発テロ、中東地域における衝突、炭疽菌の恐怖など、今、世界は不安の中で動揺しております。日本は、平和外交によって、各国、国連等と一致協力して、平和で安定し、豊かで公正な国際社会を築いていくという断固たる意志を示していくべきです。その意味で、今、日本外交は極めて重要な局面にあります。

 今回のAPECでの合意を踏まえ、構造改革の断行など日本経済の再生を図るとともに、アフガン復興などで積極的な役割を果たすなどの外交努力に全力を傾けていくことを強く政府に要請し、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 桑原議員にお答えいたします。

 今回のAPEC会合の位置づけについてでございます。

 APECは世界最大の地域協力の場であり、我が国は、APECをアジア太平洋地域の経済面での協力の中核として重視し、アジア太平洋外交の重要な柱と位置づけております。

 今次APEC首脳会議では、反テロリズムに関する声明を発出したこと、我が国が進めている構造改革につき各首脳の理解が得られたこと、そして、今後のAPECの活動方針についても認識の一致を見たことなど、大きな成果が得られたと考えます。

 テロ対策特別措置法との関連で、各国の反応やアフガニスタン情勢に関する認識についてのお尋ねであります。

 テロ対策特別措置法は、国際社会の平和と安全の確保を目的として、テロリズムの防止及び根絶に向けた国際社会の取り組みに積極的かつ主体的に寄与するためのものであります。このような我が国の対応については、各国に適切に説明してきており、理解を得られてきているものと考えます。

 アフガン情勢については、情勢は極めて流動的ですが、今後とも、和平、復興の両面で貢献の方途を検討していく考えであります。

 今後の取り組みに当たっては、周辺諸国支援、中東和平問題、貧困問題への取り組みなどの重要性も十分考慮していく考えであります。

 我が国として、国連にどのような役割を期待し、どのように働きかけているのかとのお尋ねです。

 テロを防止し根絶するためには、国際社会が一致団結して、断固たる決意で立ち向かうことが重要であります。このような考えのもと、我が国としては、国連その他の場を活用しつつ、テロを許さない国際環境形成のための外交努力、国際的な法的枠組みの強化、経済システムの安定、貧困の削減、民主化の推進等に積極的に取り組んでいく考えであります。

 我が国の構造改革について各首脳に対してどのような説明を行ったかについてのお尋ねであります。

 我が国が進めている構造改革につきましては、民需主導の自律的な経済成長の達成を目指して構造改革を進めていくことを説明しました。我が国経済の回復はAPECの地域にとっても必要であり、我が国が改革の手を緩めないということで、ブッシュ大統領初め各首脳からの理解が得られたと考えております。

 テロによる被害の出ている航空、観光産業への対応策についてのお尋ねであります。

 テロの影響により厳しい経営状況に置かれている航空会社、旅行関連事業者に対しては、本日、円滑な資金繰りを確保するため、日本政策投資銀行等による緊急融資、信用保証協会による別枠保証等を行う旨、決定したところであります。

 また、沖縄については、既に観光関連業者に対する沖縄振興開発金融公庫の資金支援を強化するなどの措置を講じておりますが、さらに沖縄県とも連携をとりながら、安全に関する正確な情報の提供や旅行需要の喚起に資する対応策を進めてまいります。

 今後とも、テロによる航空、観光産業への影響については適切に対応してまいりたいと考えております。

 WTO新ラウンドについてでございます。

 新ラウンドは、我が国の国益にとって、また、多角的貿易体制の強化のため、極めて重要な交渉です。したがって、我が国は、貿易自由化のみならず、貿易ルールの明確化、強化を含む十分に広範な交渉項目に基づく新ラウンドを十一月のドーハ閣僚会議で立ち上げるため、各国と協力しつつ、一層努力していく考えであります。

 農産物セーフガードについてのお尋ねです。

 セーフガードは、自由貿易体制のもとで、輸入の増加による国内産業の重大な損害に対し、国内産業が構造調整を行うための緊急避難的かつ一時的な措置であり、その発動等の検討に当たっては、WTO協定及び関連国内法令に基づき、透明かつ公平、厳正に対応してまいります。

 ネギ等三品目の暫定措置は、これらの手続にのっとって発動したものであります。確定措置の発動については、今後、輸入増加と国内産業の損害との間の因果関係の有無等を見きわめた上で、WTO協定及び関連国内法令に基づき、総合的に判断することとしております。

 本件については、中国との間で対話を通じて解決することが重要であると考えており、さきの江沢民国家主席との会談においてもこの点について意見の一致を見たところであり、引き続き中国側と粘り強く協議を続けていきたいと考えております。

 北方四島周辺水域におけるサンマ漁問題についてのお尋ねであります。

 政府としては、これまで、累次にわたり、首脳レベルを含むあらゆるレベルで関係国等に抗議や申し入れを行っています。

 例えば、八月二十日には、私よりプーチン大統領に対し親書を発出し、ロシア側が誠意ある対応をとるよう働きかけてきており、日ロ双方は、この問題について相互に受け入れ可能な解決策を早急に見出すことで一致しています。また、今月二度行った日韓首脳会談の結果を踏まえ、韓国との間でも、本件についてハイレベルの協議が行われているところであります。

 政府としては、この問題を早急に解決するため、関係国と引き続き真剣に協議を行っていく考えであります。

 歯舞、色丹の議論と国後、択捉の議論を同時かつ並行的に進めていくことについてのお尋ねであります。

 このような協議の進め方は、歯舞、色丹の引き渡しについては一九五六年の日ソ共同宣言で既に合意されているという意味において、歯舞、色丹の問題と国後、択捉の問題との間に交渉の進捗状況に違いがあるという事実を踏まえたものであります。

 こうした協議の進め方は、北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するとの一貫した方針を前提としているものであり、この方針には何ら変更はありません。

 政府としては、これまでに達成された成果を引き継ぎ、今後とも精力的に交渉を進めていく考えであります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣田中眞紀子君登壇〕

国務大臣(田中眞紀子君) まず、北方四島周辺水域におきますサンマ漁問題につきましてお尋ねでございます。

 政府といたしましては、本件が我が国の領土主権にかかわる重要な問題であるとの認識のもとで、総理を初め私からも関係国等に抗議を行うとともに、ロシア側に対しまして誠意ある対応を求めてまいりました。

 九月十日、十一日の日ロ協議におきまして、双方は、この問題について相互に受け入れ可能な解決策を早急に見出すことで一致しており、十月九日の次官級協議を経て、先般の上海での首脳会談において、双方は、解決策を模索するための話し合いが続けられていることを歓迎いたしました。

 また、本件につきましては、今月二度にわたって行われました日韓首脳会談の結果を踏まえて、日韓の間でもハイレベルの実務者協議を行っているところでございます。

 政府といたしましては、この問題を早期に解決するために、関係国と引き続き真剣に協議を行っていく考えでございます。

 次に、北方領土問題についてのお尋ねでございます。

 先般の日ロ首脳会談におきましては、歯舞、色丹の返還の態様の議論と国後、択捉の帰属の問題の議論を同時に、かつ並行的に進めていくことでおおむね一致いたしました。

 これは、歯舞、色丹の引き渡しについては一九五六年の日ソ共同宣言で既に合意されているという意味におきまして、歯舞、色丹の問題と国後、択捉の問題との間に交渉の進捗状況に違いがあるという事実を踏まえ、今後の交渉をどのように進めていくべきかという観点から両首脳間で話し合った結果、基本的な一致を見たところでございます。

 政府といたしましては、北方四島の帰属の問題をまず解決して、そして平和条約を締結するとの一貫した方針をとっており、このような方針に一切変更はございません。(拍手)

    〔国務大臣武部勤君登壇〕

国務大臣(武部勤君) 桑原議員にお答えいたします。

 北方四島周辺水域での第三国漁船の操業問題についてのお尋ねであります。

 本件は、現象的には漁業問題でありますが、本質的には領土問題であり、韓国サンマ漁船の三陸沖での操業許可を留保しつつ、韓国等への抗議を行うとともに、プーチン大統領あてに発出された総理親書に基づき、本問題の解決につきロシアの関係機関に要請を行うなど、毅然とした対応をとってきているところであります。

 本問題については、北方領土問題に関する我が国の法的立場を害さない、代替漁場は提供しない、日本の漁民に新たな負担を強いることはしないことを基本原則として対応していく必要があると考えております。

 この前提に立って、今後とも、ロシアと交渉を行うとともに、十月十五日の日韓首脳会談の成果を踏まえ、韓国と高級実務者協議を行うこととしております。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(綿貫民輔君) 工藤堅太郎君。

    〔工藤堅太郎君登壇〕

工藤堅太郎君 私は、自由党を代表して、ただいま行われました小泉総理の第九回APEC首脳会議出席及び二国間首脳会談に関する御報告に対して質問をさせていただきます。(拍手)

 APEC首脳会議で採択された反テロ声明では、反テロ国際協調に国連が主要な役割を果たすことや、国連憲章や他の国際法に従って将来のあらゆるテロを予防し、抑圧する方針をうたうなど、国際社会の協調を重視する姿勢を打ち出しております。

 今回のテロ事件は、反テロ声明に示されたように、単に米国に対する攻撃ではなく、国際社会全体に対して向けられたものであるととらえるべきであります。国連中心主義に立つ我が国として、テロに対して、米国による自衛権の行使とその支援ではなく、国連による制裁措置として対応していくことの重要性を指摘すべきであると思います。総理は、今回の首脳会議に、この点についてどのような認識を持って臨まれたのか、まずお伺いをいたします。

 あわせて、我が党は、我が国が国連加盟国の一員として国連のもとでテロ組織に対して武力行使することは、平和のために行う活動であり、現行憲法の禁ずるところではないと考えますが、総理の御所見をお伺いいたします。

 総理は、APEC首脳会議で、日本は武力行使以外のすべての力を発揮し、国際的なテロとの戦いに参画するとの日本の姿勢を強調されたそうであります。しかし、武力行使をしないと言いながら自衛隊を海外に派遣することについて、各国の理解は得られたのでありましょうか。

 総理御自身がおっしゃるように、自衛隊が戦力であることは世界の常識であります。しかるに、自衛隊は戦力ではないという政府解釈も変えることなく海外に派遣することについて、世界は理解をしてくれるでしょうか。たとえ後方支援であれ、米国の活動に軍事的に協力することは、戦闘行動への参加であり、武力行使そのものであることも世界の常識であります。武力行使はしないと詭弁を弄して簡単に自衛隊を海外派遣する日本の姿勢こそ、世界から見て脅威であり、長い目で見て我が国の国益を大きく損なうものではないかと思いますが、小泉総理の御見解をお伺いいたします。

 APEC首脳宣言は、テロの影響による世界同時不況入りを回避するために、グローバル化による景気刺激の重要性を強調しております。しかし、現実の景気刺激は容易ではありません。すべてのAPEC加盟国の経済成長率は昨年より落ち込む見通しが指摘されております。我が国自身、実質一・七%の当初見込みは達成されないどころか、当の財務大臣がマイナス成長すら容認する発言をしている始末であります。

 小泉総理は、これまで首脳会談が開かれるたびに、また国際会議が開かれるたびに、構造改革に臨む強い決意を披瀝しておられます。今回のAPECでも、この点について各国首脳から大方理解を得たとしております。

 しかし、大方理解とはどのような意味でありましょうか。総理就任以来六カ月、構造改革の中で、具体的に総理がリーダーシップを発揮して実行されたものが、ただの一つでもあったでしょうか。その答えは、今日の我が国の経済状況、景気の状況を見れば、一目瞭然であります。

 改革という言葉だけが語られ、何も行われないことは、我が国が国際公約を破ることにほかなりません。決意ではなく、一つでも直ちに実行に移すことが重要であると考えますが、総理の御所見をお聞かせいただきたいのであります。

 次に、各国との首脳会談について伺います。

 米国のブッシュ大統領との会談では、引き続き緊密に協力することで意見の一致を見たと、ただいま総理は御報告されました。

 総理は、相手が同盟国である米国であれば、その行動を最後まで支持し、総理のお言葉で言う、武力行使以外は、無原則、無制限に行動に協力していこうというおつもりなのか、それとも、対米外交についても何らかの原理原則を持って対応されるおつもりなのか、お聞かせをいただきたいと存じます。

 米国のラムズフェルド国防長官は、多くのイスラム諸国がラマダンの期間中も戦争をしてきたと述べ、イスラム世界を敵に回しかねない姿勢を示しておりますが、政府はラマダン中も空爆を支持されるおつもりなのか、あわせてお聞かせ願います。

 ロシアのプーチン大統領との会談で、総理は、歯舞、色丹両島の返還問題と国後、択捉両島の帰属問題とを並行して協議するよう提案したと伺っております。これは、今までの対ロシア外交と四島返還問題について、我が国のスタンスの変更を意味するのでしょうか。四島一括返還ではなく二島一括でもいいということなのでしょうか。総理の明確な御所見をお伺いいたします。

 また、イランやイラクとの軍事的な提携や、武器輸出を続けるロシア外交について、あわせて御所見をお伺いいたします。

 総理は、主催国である中国の江沢民国家主席と会談をされました。

 中国は、この十一月から、WTOという国際自由貿易の枠組みに新たに加わります。中国が国際社会の中で、貿易障壁や投資、流通面での規制緩和など、一層開かれた経済運営を行うように求めていくことが重要であると考えますが、総理はこの点についてはっきりと主張されたのかどうか、お聞かせください。

 今回、中国は、民間被害を避けることなどの留保条件をつけながらも、米国のアフガン攻撃を容認しております。中国が米国の武力行使を容認するのは、極めて異例のことであります。中国は、今回、新疆ウイグル自治区のイスラム系少数民族の分離独立運動をテロリストと名指しすることで、米国との反テロ協調に踏み出したのであります。

 総理はこの中国の戦略に理解を示されるのか、どのように対応していかれるおつもりなのか、お考えをお聞かせ願います。(拍手)

 最後に伺います。

 総理は、一連の首脳外交で、アフガンの政治的安定や復興へ、東京での和平復興会議開催などを含め、強い意欲を示されたようでありますが、果たして日本にその実力があるのでしょうか。かつてカンボジア復興に協力したときのように、金だけは自由に使えるという恵まれた状況にはもはやありません。加えて、今の日本外交にその機能が備わっているとお考えでしょうか。田中外務大臣は、パキスタン訪問を拒否されました。十一月のWTO閣僚会議で新ラウンドを開始するという重要な決定を下したAPEC閣僚会議にも、出席されませんでした。日本外交は機能不全に陥っているのであります。

 総理が意欲を示される前に、日本外交の明確な原則と外交体制を確立することの方が先決であることを申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 工藤議員にお答えいたします。

 APEC首脳会議において、テロに対して国連の制裁措置として対応していくことの重要性を指摘すべきではなかったかとのお尋ねであります。

 我が国としては、テロの根絶に向け断固たる姿勢で取り組む考えであり、今回の米国等による自衛権に基づく行動を支持しております。また、テロを防止、抑圧するためには、安保理決議一三七三にあるような、金融面を含む包括的な措置を各国が実施していくことも重要と考えており、こうしたテロの防止及び根絶のための国際社会の取り組みに積極的かつ主体的に寄与していく考えであります。

 APEC首脳会議においては、私より我が国の考え方を積極的に説明しましたが、宗教的、文化的に多様なAPECの場において、反テロリズムのための国際協力を強調する声明が発出されたことは、極めて有意義であったと考えております。

 国連のもとでテロ組織に対して武力行使することは現行憲法の禁ずるところではないのではないかとのお尋ねがありました。

 我が国は、憲法の平和主義、国際協調主義の理念を踏まえて国連に加盟しており、最高法規である憲法に反しない範囲内で国連憲章上の責務を果たすこととなります。したがって、国連のもとでの活動であっても、憲法第九条によって禁止されている武力の行使または武力による威嚇に当たる場合には、そのような行為を我が国として行うことは許されないと考えております。

 自衛隊を海外に派遣することについてお尋ねがございました。

 今般、国会で成立したテロ対策特別措置法に基づく対応措置は、テロ根絶に向けた国際社会の取り組みに積極的かつ主体的に寄与するためのものでありますが、我が国の国益にかなうものであり、かつ、世界各国の理解を得られるものと考えております。

 また、テロ対策特別措置法に基づく対応措置は、それ自体として武力の行使に当たらず、また、その活動地域は戦闘行為が行われない地域に限定されていること等から、諸外国の軍隊等による武力の行使との一体化の問題を生じさせることはなく、憲法上の問題はないものと考えており、従来の政府見解と矛盾するものではありません。

 我が国の構造改革についてAPECで各国首脳から大方理解が得られたが、大方理解とはどういう意味かというお尋ねでございます。

 我が国が進めております構造改革に対する各首脳の理解につきましては、民需主導の自律的な経済成長の達成を目指して構造改革を進めていくことを説明しました。我が国経済の回復はAPECの地域にとっても必要であり、我が国が改革の手を緩めないということで、各首脳からの理解が得られたと考えております。

 構造改革を直ちに実行に移すことが重要ではないかとのお尋ねです。

 小泉内閣は、これまで、改革なくして成長なしとの決意のもと、経済の基本的な成長力を高めるための構造改革を着実に進めております。

 まず、六月には、いわゆる基本方針を閣議決定し、構造改革の基本的考え方を国民に提示するとともに、九月には、基本方針に基づいて進めていく構造改革の政策と実施時期を具体的に示した改革工程表を取りまとめました。さらに、改革工程表に盛り込んだ施策のうち、先行して決定、実施すべき施策については、十月二十六日に、改革先行プログラムとして取りまとめたところであり、構造改革を加速することとしております。今後は、改革先行プログラムを早急に実施に移すとともに、改革工程表に従って、着実に構造改革を進めてまいります。

 今般のテロへの対応を含めた対米外交についてのお尋ねがありました。

 今回のテロは、米国のみならず人類全体に対する極めて卑劣かつ許しがたい攻撃であり、毅然とした対応なくしては、テロの一層の助長を招きかねません。

 我が国としては、このようなテロリズムと断固として闘う米国の行動を強く支持してきており、こうしたテロが二度と繰り返されることのないよう、国際的なテロリズムの防止及び根絶に向け、米国を初めとする国際社会の取り組みに積極的に寄与していく考えであります。

 政府としては、このような考えに基づき、テロ対策特措法案を国会に提出したものであり、今般成立した同法に基づく具体的な措置については、我が国が自主的に決定することは言うまでもありません。

 ラマダン中も米国の空爆を支持するつもりかとのお尋ねです。

 先ほど述べたように、我が国としては、テロリズムと断固として闘う米国の行動を強く支持し、こうしたテロが二度と繰り返されることのないよう、国際的なテロリズムの防止及び根絶に向け、米国を初めとする国際社会の取り組みに主体的に寄与していく考えであります。

 北方領土問題についてお尋ねです。

 政府としては、北方四島の帰属の問題を解決することにより平和条約を締結するとの一貫した方針をとってきています。先般の私とプーチン大統領との会談に際しても、こうした方針を変更したことはありません。

 ロシア外交についてのお尋ねです。

 同国の軍事提携や武器輸出については、必ずしも全貌が明らかになっているわけではありませんが、ロシアとイランは、本年十月に軍事協力協定に署名していると承知しています。他方、イラクについては、国連による制裁もあり、そのような提携は確認されていないものと承知しております。いずれにせよ、我が国としては、各国間の軍事的提携や武器輸出が中東情勢を初めとする地域情勢の不安定化を招かないことを希望しております。

 中国の経済運営についてのお尋ねです。

 我が国は、中国の改革・開放政策を一貫して支援してきており、こうした観点からも、中国のWTO加盟が近く実現する見通しとなったことを歓迎しております。今後、中国がWTOのルールのもとで、一層開かれた経済運営を行っていくことを強く期待しており、先般の江沢民主席との会談においても、こうした考えに基づき、両国間の経済面を含む各分野の協力の重要性を指摘したところであります。

 中国のテロへの対応についてのお尋ねです。

 中国政府は、あらゆる形態のテロに反対し、強く非難するとともに、米国に対し一切の必要な支援と協力を提供する旨表明しています。我が国としては、今般のテロ事件への対応を含め、中国が国際社会において引き続き建設的な役割を果たすことを期待しております。

 外交の明確な原則と外交体制の確立の必要性についての御指摘です。

 さきの所信表明演説において述べたとおり、我が国の平和と繁栄を実現するため、現下の国際社会の主要課題に積極的に取り組む方針であり、今次テロ事件に際しても、このような方針のもと、我が国として主体的に対策を講じてきております。

 また、外交体制についても、政府が一体となって、引き続き努力してまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

    〔議長退席、副議長着席〕

副議長(渡部恒三君) 山口富男君。

    〔山口富男君登壇〕

山口富男君 日本共産党を代表して、小泉総理に質問いたします。(拍手)

 今回のAPEC首脳会議は、テロ対策に関する首脳声明で、同時多発テロ事件を厳しく批判しました。その一方で、米国などのアフガニスタン軍事攻撃に対して、マレーシアのマハティール首相が、支持できないと述べ、インドネシアのメガワティ大統領も、無辜の人々への攻撃に強い懸念を表明しました。また、ASEAN諸国も、軍事攻撃の中止を求める声明を出す議論をしていると伝えられています。軍事攻撃が始まって約一カ月、戦争が報復の色を濃くし、泥沼化してきているからにほかなりません。

 米軍などによる空爆は病院や住宅地にまで広がり、病院への爆撃では、市民の死傷者が二百人に上ったと言われております。国連NGO事務所、国際赤十字の倉庫も攻撃にさらされました。テロの根絶と容疑者への厳しい裁きは世界の共同の願いです。しかし、容疑者とテロ集団がいるからという理由で、一国の国民に攻撃を加え、命を奪うなど、絶対に許されるものではありません。

 総理は、軍事攻撃によってテロ根絶が何か前進したというのですか。具体的に答えていただきたい。

 その上、空爆は食糧支援を初めとした人道援助の実施を困難にしています。国連人権高等弁務官が、冬の到来を前にしたアフガン国民の状況は絶望的であるとして、アフガン国民への巨大な人道援助を可能にするために空爆を中止しなければならないと訴えたのも当然であります。

 総理、あなたもアフガン国民への人道的支援の必要性を認めてきました。それならば、軍事攻撃への支援ではなく、人道援助の実施を困難にしている空爆の中止こそ、今、求めるべきではありませんか。(拍手)

 米軍は、その軍事攻撃で、クラスター爆弾の使用を始めました。この兵器は、地雷を広範囲にまき散らすことも可能な、まさに無差別殺傷兵器であり、国際赤十字がその使用禁止を求めてきたものです。二十五日には、対人地雷被害救済を掲げるダイアナ記念基金などが、クラスター爆弾の使用を批判し、その中止を米英両政府に要求しました。

 総理は、情報を持ち合わせていないと、答弁を避けてきました。かつて、対人地雷全面禁止条約に署名した小渕元総理は、私たちの子孫が地雷の脅威にさらされない世界に住めるよう、早期に犠牲者ゼロの目標を達成できるよう積極的活動を展開していく、こう述べました。総理、こうした立場に立つのなら、クラスター爆弾の使用中止を米国に求めるべきではありませんか。

 米当局者は、ウサマ・ビンラディンを捕まえるのは干し草の山から針を探すくらい難しいと、容疑者の拘束に見通しがないことを認めています。このまま軍事攻撃を続ければ、犯罪者を引きずり出すどころか、テロ根絶への国際的団結を弱め、テロと報復の悪循環という一層の泥沼化へ進むことは明らかです。報復と泥沼化の様相を強める軍事攻撃は直ちに中止し、国連を中心とした制裁と裁きの道に切りかえるよう、重ねて提起するものであります。(拍手)

 昨日、いわゆるテロ特措法が強行成立させられました。早くも、ディエゴガルシア島の米軍基地に燃料や物資を輸送し、洋上で米軍艦艇に補給するために、自衛隊の補給艦や護衛艦、そして輸送機の派遣が伝えられています。

 総理は、法案審議中、米側から自衛隊派遣の要請は一切ないと言ってきましたが、法案が成立した途端に、要請が来たというのですか。米側からいかなる要請があるのですか。国民に明らかにすべきであります。

 たとえ米側からいかなる要請があっても、この法律は発動すべきではありません。なぜなら、自衛隊の派遣は憲法違反であり、戦時の派遣など、もってのほかだからです。

 しかも、政府は、今、イージス護衛艦の派遣を検討中といいます。空母戦闘群の護衛を目的に開発されたイージス艦は、艦艇へのミサイルや航空機攻撃などを監視し、情報を空母群に提供するものです。その派遣は、まさに米空母戦闘群の武力行使と一体化するものです。テロ特措法には、艦船の護衛も情報収集も明記されておりません。イージス艦による協力支援活動とは、一体、テロ特措法のどの規定に根拠を置くものですか。

 政府は、これまで、特定国の武力行使を直接支援するための偵察活動を伴う情報収集・提供は武力行使と一体と判断される可能性があるとしてきました。この政府見解からいっても、イージス艦の派遣は憲法違反ではありませんか。きっぱり取りやめるべきであります。

 今、憲法の平和原則を持つ日本がとるべき道は、国連を中心に、正義と理性を持ってテロ根絶に立ち向かうよう、力を尽くすことにあります。

 ところが、総理は、憲法が戦力の保持を禁じているにもかかわらず、自衛隊は常識的に考えて戦力だと述べ、憲法は国際常識に合わないと言い放つなど、最高法規である憲法に極めてぞんざいな態度をとってきました。これは、憲法尊重擁護義務を負うべき者として、許されない、憲法をないがしろにする姿勢だと言わなければなりません。

 世界平和の危機的な事態に対して、日本は、テロ特措法の発動による戦争への支援ではなく、憲法九条に基づく行動と平和の貢献にこそ、力を注ぐべきであります。このことを最後に強く求めまして、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 山口議員にお答えいたします。

 米軍等の軍事行動によってテロ根絶に向けて何か前進したのかとのお尋ねでございます。

 我が国としては、テロリズムと闘う米国等の行動を強く支持しておりますが、米国は、これまでの攻撃を通じて、今回のテロに関与しているとされるアルカーイダを支援するタリバンの防空能力及び全国的な命令指揮系統をおおむね壊滅させた旨、述べております。

 軍事行動に際し、とうとい人命が失われることは極めて残念であります。我が国としては、こうしたテロが二度と繰り返されることのないよう、今後とも、国際的なテロリズムの防止及び根絶に向け、米国を初めとする国際社会の取り組みに積極的かつ主体的に寄与していく考えであります。

 軍事攻撃への支援でなく、人道援助の実施を困難にしている空爆の中止こそ求めるべきではないかとのお尋ねです。

 先ほども申し上げたとおり、今回のテロは人類全体に対する極めて卑劣な許しがたい攻撃であり、我が国としては、このようなテロと断固として闘う米国等の行動を強く支持しているところであります。

 また、米国は、軍事行動開始当初より、困難な状況に置かれているアフガン人に対して人道的援助を与えることをその主要な目標に掲げています。実際、米国は、軍事行動と並行して人道救援作戦を継続しており、米軍による食料投下は既に八十五万食以上に達した旨発表しているものと承知しております。

 我が国としても、アフガニスタンに対して、その窮状にかんがみ、これまでも支援を実施してきたところであり、今後とも、現地の情勢等を踏まえ、関係国及び関係機関等とも協議の上、人道支援を行っていく考えであります。

 米国によるクラスター爆弾の使用についてのお尋ねであります。

 米国政府は、これまでも、民間人の犠牲を防ぐべく、注意深く目標を選定し、あらゆる努力を払って市民の巻き添えを防ぐよう努めている旨、繰り返し述べておりまして、当該爆弾の使用に関しても、目標に対して最も効果があるときに限って使用するとしております。

 米側からの自衛隊派遣の要請についてのお尋ねです。

 自衛隊の派遣については、米政府から要請はされておりません。いずれにせよ、自衛隊の派遣の時期、規模等については、我が国として主体的に判断すべく検討中であり、現時点において、具体的なお答えができる段階にはありません。

 自衛隊艦艇の派遣とテロ対策特別措置法及び憲法との関係についてのお尋ねです。

 情報収集のための自衛隊艦艇の派遣の時期、規模等については検討中であり、また、新法に基づきいかなる自衛隊の部隊を派遣するのかも今後検討していくものであることから、自衛隊艦艇の派遣について具体的にお答えできる段階にはありません。いずれにせよ、今後、艦艇を派遣する場合においても、憲法に抵触しない範囲内で実施することは当然であります。

 憲法尊重擁護義務についてのお尋ねであります。

 私は、内閣総理大臣として、憲法を遵守し、そして、その完全な実施に努力すべきことは当然であると考えます。しかしながら、憲法の議論をすべきでないという考えには賛成できません。憲法を遵守するということと憲法論議を大いにするということは、両立可能だと私は考えております。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(渡部恒三君) 東門美津子君。

    〔東門美津子君登壇〕

東門美津子君 社会民主党の東門美津子です。

 私は、社会民主党・市民連合を代表して、ただいま御報告のありましたAPEC首脳会議に関しまして、小泉総理大臣に御質問いたします。(拍手)

 今回のAPECは、九月十一日に米国で発生した、許しがたい残虐な同時多発テロの記憶がまだ生々しく残る中で開催されました。国内に多数のイスラム教徒を抱える東南アジア諸国など、政治的、文化的、さらには宗教的にも多様な国々の集まりであるAPECにおいて、テロ対策に関するAPEC首脳声明を決定し、域内各国の首脳がテロに対し結束して対処する姿勢を示すことができたことは、評価すべきことであると感じています。

 しかし、我が国が現在行おうとしている対応は、APEC首脳声明で示されている内容に比べても、非常に突出したものとなっているのではないでしょうか。

 首脳声明では、国連の役割の重要性を強調し、対テロ対策としては、テロリストへの資金の流れを防ぐための適切な金融措置などが掲げられていますが、米国が現在行っており、また、我が国が支援をしようとしているアフガニスタンにおける軍事行動については、何ら言及されておりません。APECにおいて、米国の軍事行動はどのように位置づけられていたのでしょうか。お聞かせいただきたいと思います。

 そして、我が国が新法を制定して行おうとしている措置は、APEC加盟各国にどのように受けとめられているのでしょうか。我が国が平和憲法を持ち、自衛隊の海外派兵を禁止していることはAPEC加盟各国にも広く知られており、我が国に対し軍事的な役割を期待している国はほとんどないと思います。

 先週、我が党は、パキスタンの難民キャンプへ調査団を派遣しました。難民キャンプでは、今回の米英の戦争への憎悪が渦巻いており、そこへ武装した自衛隊が物資を届けるなど絵そらごとだということが判明いたしました。三週間に及ぶ空爆で、アフガニスタンの人々への水、食料、医薬品などの供給が途絶え、NGOが懸命の努力で物資を送り続けています。平和憲法を持つ日本が行うべき貢献とは、迫りくる冬を前にした何百万という飢餓線上の人々に温かい人道的支援をすることだと思います。

 米国の軍事行動及び我が国の支援策についてのAPEC各国の認識と評価並びに真に我が国が期待されている役割について、小泉総理の見解をお伺いいたします。

 本来、経済面での課題を協議することがAPECの重要な役割であります。今回も、米国でのテロの影響などによる世界経済の落ち込みを回避し、グローバル化とニューエコノミーがもたらす恩恵を共有することなどを内容とする首脳宣言と上海アコードが採択されました。そして、域内で発展段階が異なる国が共存するAPECにおいて、先進国による途上国に対する支援が不可欠であり、人材育成が大変重要です。我が国は、このような経済面においてこそ、果たせる役割が大きいと思います。

 しかし、報道で伺う限り、小泉総理の発言は、対米支援の勇ましい話が聞こえてくるばかりで、途上国に対する支援について、我が国が積極的に具体的な人材育成等の支援策を提示されたのでしょうか。総理の見解をお伺いいたします。

 観光が主要な産業である沖縄には、在日米軍専用施設の七五%が集中し、余りにも広大な米軍基地の存在ゆえに、沖縄がテロの標的にされるのではないかとの不安から観光客のキャンセルが相次ぎ、そのことが県経済に非常に深刻な影響を及ぼしています。

 今後、テロの影響によって、人の流れや物の流れが弱まり、世界貿易が縮小することになれば、内需が小さく、貿易に経済成長を依存せざるを得ないアジア諸国の経済の後退と政治的不安定を拡大させるおそれがあります。閣僚会議でも、各国が結束してアジア太平洋地域の経済成長を復活させることで一致しています。

 そうした中で日本政府の役割は特に大きいと考えます。テロの影響から我が国の産業や社会を守り、経済を安定軌道に乗せることがアジア諸国の経済的、政治的不安を和らげるのに大きく寄与するものと考えますが、総理はいかがお考えでしょうか。御所見をお尋ねいたします。

 また、特に不良債権問題の解決が喫緊の課題であると思いますが、今後の見通しについてお聞かせください。

 ブッシュ政権は、その発足以来、ミサイル防衛計画推進の強行、ABM制限条約脱退の動き、京都議定書からの離脱、生物兵器禁止条約の検証議定書草案の拒否など、一国主義を志向する動きを強めてきました。しかし、今回のテロ事件を契機に、国際協調を重視する方向に転じたようにもうかがえます。

 小泉総理は、テロ事件発生後の先月後半に米国を訪問され、そして、今回は上海において日米首脳会談を行われましたが、今回のテロ事件により米国の外交姿勢に変化が生じたと感じられたでしょうか。総理の認識をお伺いいたします。

 また、首脳会談の席において、京都議定書など国際協調が必要な事項について、何らかの話し合いを行ったかどうかについてもお伺いいたします。

 今回のAPECに際して、江沢民中国国家主席との日中首脳会談が行われました。今月初めの小泉総理の中国訪問に引き続く首脳会談で、歴史教科書問題や小泉総理の靖国神社訪問によりぎくしゃくしていた日中関係がようやく正常化に向かうことになったとすれば一安心というところですが、総理は、今月の二度にわたる日中首脳会談を経て、教科書問題や靖国神社問題についての中国の懸念をどのように受けとめられましたか。そして、総理の説明により本当に中国側の懸念が解消されたとお考えですか。総理の認識をお伺いいたします。

 次に、二十日に行われた日韓首脳会談についてお伺いいたします。

 教科書問題と靖国神社問題に対する韓国の反発は、中国よりもさらに大きなものがあります。特に韓国国民の反発は非常に強く、たとえ首脳同士が理解し合うことができても、韓国国民の理解が得られなければ、真の日韓友好の実現にはほど遠いものであると言わざるを得ません。

 今回の会談でも、去る十五日の総理訪韓の際の合意を踏まえ、歴史認識についての日韓共同の研究会の設置など七項目を確認したとのことですが、小泉総理の基本的スタンスが変わらない限り、問題の根本的解決はあり得ないと思います。金大中大統領との二度の会談を経て、それでもなお教科書問題と靖国神社参拝についての総理の認識に変化は生じなかったのでしょうか。来年の八月には、再び靖国神社参拝を行うつもりなのでしょうか。総理の見解をお伺いいたします。

 次に、北朝鮮のAPEC加盟問題についてお伺いいたします。

 韓国の金大中大統領は、昨年のブルネイでの会合に続き、今回も北朝鮮の加盟を提起したとのことです。北朝鮮自体は必ずしもAPEC加盟に積極的ではないとの報道もありますが、緩やかな政府間の地域協力の枠組みという性格を持つAPECに北朝鮮が参加することは、双方にとって非常に有意義であると考えます。我が国からも北朝鮮のAPEC加盟を積極的に働きかけるべきではないでしょうか。小泉総理の見解をお伺いいたします。

 APECは、アジア太平洋地域における広範な地域協力の場としてこれまでも大きな役割を果たしてきましたが、今回、テロ対策という多国間の政治的な協調においても役割を果たせることを示しました。アジアにおける地域協力としては、ほかに、ASEANプラス3やASEAN拡大外相会議、ARFなどがあり、アジアとヨーロッパの協力の枠組みとして設けられたASEMも、近年、その重要性を増してきています。

 日米関係ばかりにとらわれ、今回のテロ対策特別措置法のような対米追随の姿勢をとることは、かえって、世界各国の日本に対する信頼を失うことになるかもしれません。平和憲法を持ち、国際協調の立場をとる我が国としては、APECやARF、ASEMなどの地域協力の場において、積極的な外交を展開すべきだと思います。

 既に、社民党は、北東アジアにも、ARFに倣って北東アジア総合安全保障機構を組織し、日米関係への過度の依存を改め、総合的かつ多極的な関係に重心を移していくという構想を提起しています。APEC、ARFなどの地域協力機構の果たすべき役割と我が国の外交のあり方について小泉総理の見解をお伺いして、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 東門議員にお答えいたします。

 米軍の軍事行動及び我が国の支援策についてのAPEC各国の反応についてのお尋ねであります。

 米国等の軍事行動に対する各国の反応は国情に応じて異なりますが、先般のAPEC首脳会議では、宗教的、文化的に多様なAPECのメンバーが一致して、反テロリズムのための国際協力を強調する声明を発出し、国際社会の連帯を示すことができました。また、各国首脳との会談において、我が国の取り組みについて説明し、理解と支持を得ました。

 国際社会は、テロ根絶のために、あらゆる取り組みを行うことを求められております。我が国としても、米国軍等の活動に対する支援のほか、テロ防止のための国際的な法的枠組みの強化、アフガニスタン周辺国に対する支援、避難民支援、G8を通じた国際協力、アフガン和平に向けた外交努力等を含め、幅広く取り組んでいく考えであります。

 APECにおける途上国支援についてのお尋ねです。

 人材養成など経済・技術協力の分野は、APECの重要な分野の一つであります。人材養成は、グローバル化の利益を幅広く共有するための手段として、我が国としても重視して取り組んでおり、九月末に熊本においてAPEC人材養成大臣会合を開催する等、我が国は具体的な貢献をしております。

 アジア諸国の経済的、政治的不安の緩和に向けた我が国の役割についてのお尋ねであります。

 アジア諸国を含む世界経済は、成長が同時的に減速しています。また、先般の米国における同時多発テロ事件により先行きが一層不透明な状況となっており、各国の経済動向に注視が必要であります。

 日本経済の再生は世界に対する我が国の責務であり、我が国経済の基本的な成長力を高めるための構造改革を着実に推進することにより、民需主導の自律的な経済成長を目指すこととしております。こうした日本経済の再生は、アジア諸国経済の自律的回復、ひいては政治的安定にもつながるものと考えており、このような方針は、今般のAPECにおいても各国首脳の理解を得たところであります。

 不良債権問題に関するお尋ねです。

 政府としては、不良債権の最終処理を経済、財政の第一の課題と位置づけており、改革先行プログラムにおいて、主要行に対する特別検査の実施、整理回収機構による不良債権買い取りの価格決定方式の弾力化、企業再建のための基金の設立などの措置を講ずることとしたところであります。これらの施策を果断に実施することにより、遅くとも集中調整期間が終了する三年後には不良債権問題を正常化することを目指し、全力を尽くしてまいります。

 米国の外交姿勢についてのお尋ねです。

 米国は、テロ根絶に向けて世界の国々と緊密に協議、協力して対応してきているものと考えており、米国のこうした姿勢は、さきの訪米時や上海における私とブッシュ大統領との会談においても、強く感じたところであります。

 日米首脳会談におけるやりとりについてのお尋ねであります。

 上海での日米首脳会談においては、先ほど御報告したとおり、今次同時多発テロへの取り組みについて話し合うとともに、アフガニスタンの復興等の問題について、引き続き日米が緊密に協力していくことで意見の一致を見ました。

 二十一世紀の国際社会はさまざまな課題に直面しており、日米両国を含む国際社会が協力、協調して取り組んでいくことが必要であります。我が国としては、このような観点から、米国との間の政策対話を強化し、幅広い分野において緊密な政策協調を行っていく考えであります。

 日中間の過去をめぐる問題についてのお尋ねであります。

 先般の訪中を通じ、私からは、中国側に対し、過去の反省の上に未来志向の協力関係を発展させていきたい旨説明し、今までのわだかまりも解けたものと考えております。また、今後、来年の国交正常化三十周年に向け、両国間の各分野での協力、交流を促進していくことについても中国側と一致したところであります。

 歴史教科書問題についての認識について、私にお尋ねがございました。

 韓国に対しては、我が国の教科書は国定ではなく検定制度であること等について、従来から説明してきたところであります。

 私は、さきの金大統領との会談においても、同様の説明を行うとともに、相互の理解を深めるためにも、日韓の歴史について専門家による共同研究を行うことが重要である旨提案し、意見の一致を見たところであり、今後、共同研究の具体的なあり方について外交当局間で協議させたいと考えております。

 靖国神社への参拝に対する認識についてです。

 戦没者の方々に対して追悼の誠をささげるという私の思いに変わりはありませんが、過去を直視し、戦争を排し平和を重んずるという基本的考えを明確に示しつつ、韓国との間で未来志向の協力関係を構築していく考えであります。

 来年のことについては、来年、状況を見て考えてまいりたいと思います。

 北朝鮮のAPEC参加についてのお尋ねです。

 一般論として申し上げれば、北朝鮮が国際社会との対話を拡大し深化させていくことは、朝鮮半島の緊張緩和のためにも有益と考えられます。APECへの北朝鮮の参加問題につきましては、APECへの新規参加が二〇〇七年まで凍結されていることもあり、参加国・地域間でさらに議論していくべき問題と考えております。

 地域協力の果たすべき役割と我が国外交のあり方に関する御質問であります。

 国際社会が直面するさまざまな課題の解決には、二国間での取り組みのみならず、それを補完する地域協力の役割が重要であります。

 我が国は、従来より、二国間の取り組みに加え、APECやARFなどの地域協力に積極的に取り組み、各国の多様な意見を踏まえつつ、地域の平和と繁栄の実現に努めてきております。今後とも、こうした努力を続けてまいりたいと考えております。(拍手)

副議長(渡部恒三君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(渡部恒三君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時二十四分散会




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