衆議院

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第17号 平成13年11月16日(金曜日)

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平成十三年十一月十六日(金曜日)

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  平成十三年十一月十六日

    午後一時 本会議

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本日の会議に付した案件

 裁判官の育児休業に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 経済社会の急速な変化に対応して行う中高年齢者の円滑な再就職の促進、雇用の機会の創出等を図るための雇用保険法等の臨時の特例措置に関する法律案(内閣提出)及び雇用保険の財政の安定化及び求職者等に対する能力開発支援のための緊急措置に関する法律案(城島正光君外四名提出)の趣旨説明及び質疑




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    午後一時三分開議

議長(綿貫民輔君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

小此木八郎君 議案上程に関する緊急動議を提出いたします。

 内閣提出、裁判官の育児休業に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、委員長の報告を求め、その審議を進められることを望みます。

議長(綿貫民輔君) 小此木八郎君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。

    ―――――――――――――

 裁判官の育児休業に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(綿貫民輔君) 裁判官の育児休業に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。法務委員長保利耕輔君。

    ―――――――――――――

 裁判官の育児休業に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔保利耕輔君登壇〕

保利耕輔君 ただいま議題となりました法律案について、法務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、最近における我が国の社会経済情勢にかんがみ、子を養育する裁判官の継続的勤務を促進し、裁判事務の一層の円滑な運営等に資するため、裁判官の育児休業の対象となる子の年齢を現行の一歳未満から三歳未満に引き上げるとともに、所要の経過措置を定めようとするものであります。

 本案は、去る八日本委員会に付託され、翌九日森山法務大臣から提案理由の説明を聴取した後、本日質疑を行い、これを終局し、採決を行った結果、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(綿貫民輔君) 採決いたします。

 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 経済社会の急速な変化に対応して行う中高年齢者の円滑な再就職の促進、雇用の機会の創出等を図るための雇用保険法等の臨時の特例措置に関する法律案(内閣提出)及び雇用保険の財政の安定化及び求職者等に対する能力開発支援のための緊急措置に関する法律案(城島正光君外四名提出)の趣旨説明

議長(綿貫民輔君) この際、内閣提出、経済社会の急速な変化に対応して行う中高年齢者の円滑な再就職の促進、雇用の機会の創出等を図るための雇用保険法等の臨時の特例措置に関する法律案及び城島正光君外四名提出、雇用保険の財政の安定化及び求職者等に対する能力開発支援のための緊急措置に関する法律案について、趣旨の説明を順次求めます。厚生労働大臣坂口力君。

    〔国務大臣坂口力君登壇〕

国務大臣(坂口力君) 経済社会の急速な変化に対応して行う中高年齢者の円滑な再就職の促進、雇用の機会の創出等を図るための雇用保険法等の臨時の特例措置に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げたいと存じます。

 一層厳しさを増しております雇用情勢にかんがみ、政府においては、本年九月に総合雇用対策を決定し、雇用の安定の確保に向け、総合的な施策を展開することとしております。

 このうち、実施の緊急性が特に高い施策については、十月に策定した改革先行プログラムに盛り込み、先行して実施することとしており、これに必要な法的措置、具体的には、中高年齢者、すなわち四十五歳以上の方々の再就職の促進、雇用の機会の創出等を図るための雇用保険法等の臨時の特例措置を実施するため、本法律案を作成し、ここに提出した次第であります。

 次に、この法律案の内容につきまして、概要を御説明申し上げます。

 第一に、雇用保険法の特例であります。

 中高年齢者のうち六十歳未満の者について、公共職業安定所長が指示した公共職業訓練等の受講後、必要に応じて、基本手当を受けつつ、再度、公共職業訓練等を受けることができるようにすることといたしております。

 なお、船員保険法につきましても、同様の措置を講ずることとしております。

 第二に、中小企業における労働力の確保及び良好な雇用の機会の創出のための雇用管理の改善の促進に関する法律の特例であります。

 中小企業者が、中小企業経営革新支援法による承認を受けた経営革新計画に基づき経営革新を行い、これに伴って中高年齢者を雇い入れた場合に、雇用保険法の雇用安定事業等として必要な助成を行うこととしております。

 第三に、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律の特例であります。

 派遣先が、専門的な知識、技能または経験を必要とする業務等以外の業務に中高年齢者である派遣労働者を受け入れる場合に、派遣期間の上限を三年間とすることとしております。

 なお、この法律は、平成十四年一月一日から施行することとし、平成十七年三月三十一日限り効力を失うことといたしております。

 以上が、経済社会の急速な変化に対応して行う中高年齢者の円滑な再就職の促進、雇用の機会の創出等を図るための雇用保険法等の臨時の特例措置に関する法律案の趣旨でございます。

 何とぞよろしくお願いを申し上げたいと存じます。(拍手)

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議長(綿貫民輔君) 提出者城島正光君。

    〔城島正光君登壇〕

城島正光君 ただいま議題となりました雇用保険の財政の安定化及び求職者等に対する能力開発支援のための緊急措置に関する法律案、能力開発支援法案の趣旨を御説明申し上げます。

 本法律案は、ただいま厚生労働大臣から趣旨説明がございました政府提案の雇用対策臨時特例法案では、現下の極めて厳しい雇用失業情勢への認識が乏しく、対策としてはなお不十分であるとの思いから提案させていただくものであります。

 九月の完全失業率五・三%という過去最悪の数字にあらわれているように、我が国経済は低迷を続け、経済社会の先行きに対する閉塞感は、これ以上ないというほど深まっております。多数の労働者、しかも、世帯の主たる生計者が離職を余儀なくされ、かつ、長期にわたって再就職が困難な状況に陥っているばかりでなく、多くの自営業者が廃業に追い込まれております。次代を担う子供たちにもこうした雇用不安は大きな影を落としており、親のリストラや失業、倒産などの経済的な理由で学業を継続することができなかった生徒が年々増加しているわけであります。

 今後、不良債権処理が進展すれば、雇用情勢がさらに悪化する可能性は否定できません。この際、雇用保険財政の安定化を図り、再就職、創業のための能力開発を積極的に支援するなど、政府の責任のもとで抜本的なセーフティーネットを整備することによって、国民の将来不安を可能な限り除去し、安心して暮らすことのできる社会を構築することこそが政治に課せられた使命であるとの思いから、必要な緊急措置として、この法律案を提出することにした次第でございます。

 以下、その主な内容を申し上げます。

 第一に、求職者等能力開発支援制度を創設いたします。

 民主党は、さきに発表いたしました総合雇用政策の中で、再就職や創業のための能力開発訓練の委託先を民間も含め増大させ、バリエーションのみならず内容の充実を図り、国が認定し、こうした能力開発訓練に係る費用を援助することを提言しておりますが、この法案では、こうした能力開発訓練の受講を要件として、雇用保険の失業等給付が終了した非自発的失業者、一年以上失業している自発的失業者及び一定の自営業廃業者への最長二年間の能力開発手当の給付制度を創設するという内容を盛り込んでおります。

 第二に、失業等給付資金を労働保険特別会計の雇用勘定に設けます。

 これは、雇用保険の制度的安定化を図り、失業等給付を受け取ることができないという不安を解消するため、失業等給付費等を支弁するため必要があるときに使用することができる資金であり、一般会計から二兆円規模をこれに拠出することとしております。

 現下の雇用失業情勢をかんがみれば、危機的財政状況にある雇用保険の求職者給付の水準を確保するために必要な緊急財政措置を講ずることは、まさに政治の責任であります。また、再就職、創業のための能力開発手当の給付制度の創設は、やる気がありながらも必要な職業能力開発に専念できない多くの失業者にとって、生活の安定を図るとともに、新領域での就業の可能性を広げ、個人の自主的なキャリア開発を積極的に支援する一助となると考えられます。

 新たな発想で二十一世紀にふさわしいセーフティーネットを築いていくため、全会派の御賛同により本法案を成立させていただきますようお願い申し上げまして、趣旨の説明といたします。(拍手)

     ――――◇―――――

 経済社会の急速な変化に対応して行う中高年齢者の円滑な再就職の促進、雇用の機会の創出等を図るための雇用保険法等の臨時の特例措置に関する法律案(内閣提出)及び雇用保険の財政の安定化及び求職者等に対する能力開発支援のための緊急措置に関する法律案(城島正光君外四名提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(綿貫民輔君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。上川陽子君。

    〔上川陽子君登壇〕

上川陽子君 自由民主党の上川陽子でございます。

 私は、自由民主党、公明党、保守党を代表して、ただいま議題となりました、経済社会の急速な変化に対応して行う中高年齢者の円滑な再就職の促進、雇用の機会の創出等を図るための雇用保険法等の臨時の特例措置に関する法律案につきまして、質問いたします。(拍手)

 本年九月の完全失業率は、五・三%と過去最高を記録いたしました。景気は一段と悪化しており、アメリカにおける同時多発テロの影響等も勘案すれば、雇用情勢は今後さらに厳しい状況になることが懸念されます。

 このような状況においては、構造改革をより力強く、スピーディーに進め、新たな発展の基盤となる新産業の育成も進めながら、民需主導の経済の再生を図ることが重要です。この苦しみを乗り越えてこそ、意欲のある者の努力が報われる新しい日本社会が生まれるのです。私たちは、今こそ、国民の危機意識に訴えるとともに、総理を先頭に政治の強力なリーダーシップのもと、改革の痛みに耐えていかなければなりません。

 不良債権処理を初めとする構造改革の断行に際しては、改革に伴い生ずる国民の雇用への不安を解消することが不可欠です。適切な雇用対策を欠けば、社会不安や不満が増大し、ひいては、民主主義の基盤をなす社会の最低限のまとまりさえも損なうことになりかねません。

 こうした状況に対し、与党三党が取りまとめた緊急雇用対策を受けて政府が決定した総合雇用対策のうち、直ちに取り組むべき施策を改革先行プログラムに盛り込み、本日成立した補正予算では、改革先行プログラム関係費一兆円のうち、過半に当たる五千五百一億円を雇用対策に充てることとしています。この補正予算にあわせて、政府法案についても、早期の成立と適正な施行を図るべきものと考えます。

 私は、現下の厳しい雇用失業情勢に対処するに当たっては、まず、ミスマッチ対策が重要と考えます。九月の完全失業率五・三%のうち、いわゆるミスマッチによる失業が四・〇%と大半を占めています。情報、年齢、労働条件等、さまざまな要因が考えられる中で、特に能力のミスマッチの解消を強力に進め、産業構造を転換していくことが重要です。

 したがって、補正予算において中高年のホワイトカラーに対するものを初め職業能力の開発機会を拡充するなどの措置を講じた上で、政府法案において雇用保険の訓練延長給付の拡充を盛り込んだことは、まことに意義深いものと考えます。

 政府法案の訓練延長給付制度の拡充は、意欲を持って再就職にチャレンジする方に対し、失業給付の受給期間の早い段階から受講指示を行い、訓練期間中に受給期間が終了した場合も、引き続き能力開発を可能にするものです。

 一方、民主党の法案では、失業時点から手当の受給・訓練開始時点まで相当の期間が経過することが前提となっています。これは、早期の訓練受講による再就職促進という観点を欠いたものと言わざるを得ず、財源の調達方法が不分明であることと相まって、到底、賛同できるものではございません。

 さらに、民主党案においては、雇用保険財政の安定化のための基金を設けることとしていますが、労使の共同連帯による共済的制度である雇用保険制度の趣旨を逸脱し、安易に国民全体に負担を転嫁することにつながると危惧するものであります。

 あるべき雇用対策は、努力すれば報われるという、国民一人一人の意欲を引き出すものであるべきであり、モラルハザードを生じさせるものであってはなりません。その観点から、政府法案につきましても、複数回の公共職業訓練を受ける者は、真に能力開発が必要で、しかも意欲のある者に限るよう、運用上の留意を求めます。今回の複数回訓練の対象者をどのように絞り込み、再就職促進を実効あるものにしていくのか、厚生労働大臣にお伺いします。

 ミスマッチを解消し、再就職を促進するためのもう一つの重要な柱は、求人・求職の情報提供、相談援助など、労働力の需給調整機能の強化です。ハローワークの機能と民間の人材ビジネスの機能とをどのように連携させ、全体としての機能強化に結びつけていくかが課題です。

 例えばイギリスでは、地域において、民間企業が公共職業安定所と失業者を就職させた場合のインセンティブ契約を結び、失業者に徹底したケアを行っています。我が国においても、民間の職業紹介サービスが十分に活躍できるような環境整備を進めることで、民間は機動性、柔軟性を生かして社会のニーズにこたえる一方、ハローワークは、無料でサービスを提供するセーフティーネットとしての役割を十分果たせるよう、機能を強化すべきものと考えます。

 既に、しごと情報ネットなど、国民の視点に立った官民連携の取り組みがなされていますが、今後の需給調整機能の強化策とハローワークや民間事業者の果たすべき役割について、厚生労働大臣にお伺いします。

 さらに、今回の政府法案では、需要不足失業の増加が見られる中で、雇用指標の地域格差に十分留意しつつ、雇用機会の創出策を講じています。補正予算には新公共サービス雇用として三千五百億円が計上されていますが、平成十一年度からの実績で三十万人の雇用創出が確実と見込まれるなど、この交付金事業は、地方分権の大きな流れの中で、地域の自主性と自律性を生かした雇用対策として高く評価すべきものと考えます。

 特に、地域の実情に合わせ、男女が等しく担うべき子育てや介護、福祉など、働く人々が職業生活と家庭生活との両立を図る上でニーズの高い分野などに有効活用されるならば、単なる雇用対策の枠を超える画期的な施策となり得るものと考えます。ただし、一方で、この施策は実施要件が余りに緩く、単なるばらまきではないかとの指摘もなされています。

 より確実な雇用創出と社会のニーズに合致した事業展開の観点から、現行制度の評価を踏まえつつ、地域のニーズに応じた雇用創出を図るために、どのような点を見直し、どのような効果を期待するのか、厚生労働大臣にお伺いします。

 以上、喫緊の政府法案と雇用対策について伺ってまいりましたが、中長期的には、労働力不足が見通される中で、若年者の就業意識を高め、技術、技能の蓄積などの面で、フリーター現象に象徴されるような社会的損失を防ぐことも欠かせません。

 雇用対策は、省庁の枠を超え、構造改革との整合性を確保しながら総合的に進めていく必要があります。また、雇用の受け皿を整備するための各般の施策を進めていくためにも、総理の強いリーダーシップが不可欠です。

 最後に、今後の雇用対策の推進による国民の雇用不安の払拭に向けての総理の御決意をお伺いし、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 上川議員にお答えいたします。

 雇用対策全般にわたりまして御質問でございますが、今後の雇用対策推進に対する決意についてのお尋ねでございます。

 確かに、現在、完全失業率が過去最高の五・三%になるなど、厳しいものがございますけれども、まだまだ日本には潜在力は強いものがあると思っております。今、政府としては、五年間で五百三十万人の雇用づくりを計画しておりますが、明るい展望を持ちながら、いろいろな御指摘の点につきましても十分配意しながら、今後、この雇用の不安を払拭するよう、全力を傾けてまいりたいと思います。

 特に、教育水準の高い国民、勤労意欲の旺盛なる国民、その能力、活力を引き出すような対策をこれからも積極的に展開していきたいと思います。

 三百五十万人の失業者の中でも七百万人の求人数があるということを考えますと、このミスマッチをどう克服するかという点においても大事な点がありますので、全般にわたりまして、厚生労働大臣を中心にしながら、政府としても、規制改革等を進めながら、雇用の創出と雇用の不安解消のために全力をもって取り組んでいきたいと思います。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣坂口力君登壇〕

国務大臣(坂口力君) 上川議員の御質問にお答えを申し上げたいと思いますが、三問ほどちょうだいをいたしました。

 まず最初は、訓練延長給付の拡充についてのお尋ねでございます。

 訓練延長給付の拡充を実施するに当たりましては、失業者の滞留を招くことなく、真に受給者の早期再就職を実現する施策として十分にその効果を発揮できるように、訓練受講対象者の選定基準を明確にして、訓練受講により就職可能性が高まる場合に限定することといたしております。

 また、訓練を必要とする者につきましては、極力、早期の受講指示に努めるとともに、特に複数回受講の場合には、求人事業主の求めます能力や一回目の訓練への取り組み状況、能力習得状況等の把握を通じまして、複数回受講により就職可能性が高まるものであると考えているところでございます。

 二番目には、ハローワークと民間事業者との役割についてお尋ねがございました。

 御指摘をいただきましたとおり、民間の職業相談所におきましても非常に優秀なところがたくさん出てまいりましたので、民間の方にお任せできるところはぜひお任せをしていきたいというふうに思っておりますが、しかし、公的なハローワークでなければできない分野もまた多いことも事実でございます。とりわけ、採算性のとれないところ、こうしたところも多いわけでございますし、また、大きな設備を必要とするところもあるわけでございまして、こうしたところにつきましては、やはり公的なハローワークで担当をしなければならないというふうに考えておる次第でございます。

 官民がそれぞれの特性を生かしながら競争的に機能を強化することを通じて、現下の厳しい雇用失業情勢に対応してまいりたいと考えております。

 最後に、緊急地域雇用創出特別交付金につきましてのお尋ねがございました。

 現行の交付金事業の一部に雇用創出効果の低いものも見られますことを踏まえまして、都道府県の事業計画全体におきまして、事業費に占める人件費の割合、そしてまた、事業に従事する全労働者に占める新規の失業者数の割合等を明確にいたしまして、真に雇用創出効果が高い事業が着実に実施されるようにしたいと考えております。

 御指摘をいただきましたように、男性の職場だけではなくて、女性の皆さん方もこの中に入っていただいて、そして、多くの職を得ていただけるような配慮もしていかなければならないと考えているところでございます。

 いずれにいたしましても、地方自治体がみずから企画をしていただく、みずから考えていただくところにこの事業の一つの大きな特徴があるわけでございますので、この皆さん方のお力をぜひとも発揮していただくようにお願いをしたいと思っているところでございます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(綿貫民輔君) 三井辨雄君。

    〔三井辨雄君登壇〕

三井辨雄君 ただいま議題となりました、政府提出の、経済社会の急速な変化に対応して行う中高年齢者の円滑な再就職の促進、雇用の機会の創出等を図るための雇用保険法等の臨時の特例措置に関する法律案及び民主党提出の、雇用保険の財政の安定化及び求職者等に対する能力開発支援のための緊急措置に関する法律案につきまして、民主党・無所属クラブを代表し、質問いたします。(拍手)

 今日まで歴代内閣が次々と打ち出してきた緊急雇用対策と称するものは、従来型公共事業と短期失業対策事業の繰り返しであり、いずれも雇用状況の根本的な改善に結びついてきませんでした。そればかりか、不良債権処理と構造改革の先送りによって、不況をさらに深刻化させ、雇用不安の拡大すら招いております。その結果が、九月の完全失業率史上最悪の五・三%、そして、三百五十七万人の完全失業者を生み出していることは、言うまでもありません。

 こうした自公保政権の限界は、既得権益擁護の体質によるものであり、これまで多くの新規ビジネスの芽が摘まれ、弱者と脱落者が拡大生産され、社会的不公正さがさらに助長されております。このような経済・雇用政策の誤りが繰り返されれば、我が国の経済社会は長期に立ち直りがたく、さらに多数の勤労者にしわ寄せが及び、チャレンジする機会が剥奪されることとなりかねません。

 政府案は、その予算額、盛り込まれた内容を見る限り、踏み込み不足としか言いようがなく、これが本当に現在の極めて厳しい雇用失業情勢を十分に認識された上で出されたものなのか、首をかしげざるを得ません。

 そこで、お伺いいたします。

 本来、雇用政策とは、単なる失業対策ではなく、新しい雇用を創出し、新たな産業分野を育成することこそが王道であり、そこには明確なビジョンが示されなければなりません。政府はどのようなビジョンを持って二十一世紀にふさわしい成長産業を育てようとされているのでしょうか、総理にお伺いいたします。

 次に、セーフティーネット、雇用安全網についてお伺いいたします。

 総理、現在、長期にわたって再就職できない方が一体何人いらっしゃるか御存じでしょうか。今や、一年以上の長期失業者は、八月現在、九十万人を超えています。今回の補正予算は、特にこうした長期失業者に光を当て、万一失業を余儀なくされても、必ず新しい職を見出すことのできる能力開発を進め、その間の生活支援について、一人一人の勤労者に温かい施策を行うものでなければならないと考えます。

 さて、私の生まれは、北海道の産炭地であります美唄というところでございますが、物心つくころから戦後の復興期に当たり、石炭産業の隆盛を目の当たりにしてまいりました。ところが、今では、国内で稼働する二つの炭鉱のうち、長崎の池島炭鉱が十一月二十九日に閉山すると言われ、最後に残るのは、北海道の釧路の太平洋炭鉱ただ一つという事態になりました。現在の厳しい雇用失業情勢を見るにつけ、昭和三十年代、北海道や九州などで多くの炭鉱労働者が離職、転職を迫られました、あのエネルギーが石炭から石油へと構造転換した光景を思い出さずにはいられません。

 総理、あの当時、どれだけの人が不安と苦痛を背負いながら故郷を離れ、そして再就職に取り組んだことか、御存じでしょうか。炭鉱に働く者として、誇りを持って取り組んできた仕事と生活を国策の名のもとに取り上げられた労働者、その家族の方、そして地域は、長い年月をかけてその苦難の道を乗り越えてまいりました。

 総理が構造改革なるものを標榜しておられるのであれば、政労使が、当時の離職対策の経験を生かし、再就職支援などきめ細かいセーフティーネットを用意しなければなりません。その点で、今回の補正予算、そしてこの法案に盛り込まれた内容は、そうした失業者一人一人の人生を背負っているのだという意識に欠けており、不十分であるとしか言いようがございません。(拍手)

 そこで、お伺いします。

 対症療法的な従来型の政策の延長にすぎない今回の対策で、果たして十分な効果を期待できると本気でお考えなのか、総理の率直な御意見をお伺いいたします。

 また、民主党提案者に対しては、どのようなお考えのもとにセーフティーネットの整備を用意しているのか、その政府案との違いを明確にお答えください。

 このほど、日本労働組合総連合会が、全国の主な職安前で、失業者三千人への聞き取り調査を実施いたしました。その一端を挙げますと、職探しで困っていることについてという問いに、求人がない、少ないと答えた方が五八%もいらっしゃいました。次に、求人が自分の年齢に合わないという方が三一%となっております。特に年齢制限については、四十代が三八%、五十代は四八%と、年齢のミスマッチで門前払いされている実態が浮かび上がっております。また、情報も相談体制も不十分な状況も明らかになっております。

 政府の雇用失業対策は、低失業率の中で培われてきたものであります。二割職安と言われるハローワークにきめ細かく対応するだけの人員体制や求人開拓の機能がないのであれば、それは民間の職業紹介所あるいは地方公共団体に託すべきではありませんでしょうか。従来の雇用政策の延長ではなく、もっと大胆に新たな発想が求められているのではないでしょうか。厚生労働大臣のお考えをお聞きします。

 また、民主党提案者は、現在の職安行政の問題点をどう認識し、今後どのような点を改革すべきと考えておられるのか、お伺いいたします。

 では、今回の政府案について具体的にお伺いします。

 まず、職業訓練の受講者に対する雇用保険の給付の拡充でありますが、特別会計と合わせて百九十一億円といった程度の予算規模では、セーフティーネットとしては全く不十分であります。一体、この制度の拡充は何人程度の失業者を対象とする予定なのでしょうか。

 また、四十五歳以上の中高年齢者について、派遣期間の制限を現行の一年間から三年間に延長するとしておられます。そもそも、臨時的派遣労働は、通常の労働者との競合を避け、常用代替を促進させないため、厳格な期間制限を置いております。さきの法改正の際の、法施行後三年後の見直し規定にもかかわらず、あえて今回、業務について期間制限を見直すのではなく、四十五歳以上と人単位への規制に見直すとおっしゃるのですから、そこには明確な政策意図があるに違いありません。

 厚生労働大臣、この四十五歳以上の派遣労働の三年への延長によって、一体どのくらい新たな雇用が生まれるのでしょうか。さらに、経営革新に伴う労働者の雇い入れに対する助成も盛り込まれておりますが、この助成による雇用創出の見込みについても、あわせてお伺いいたします。

 次に、民主党提案者にお伺いいたします。

 先般、民主党が発表いたしました総合雇用政策で、新しい労働形態への対応を述べられています。政府側も、総理が、さきの予算委員会において、終身雇用前提ではもう対応できないのではないかと述べられております。しかし、雇用の流動化を推し進めても、それが単に正社員を減らし、その代替要員として派遣やパートといった非正規社員をふやすだけでは、中長期的な雇用政策としては不安を助長するにすぎません。現に、サービス業などでは、正社員とパートの仕事や労働時間はほぼ同じになってきたのに、賃金格差はこの十年間、一向に縮まらないというのが実態であります。

 新しい時代における安定した雇用を確保し、創出するため、民主党はどのような働き方、どのような社会像を描いていらっしゃるのか、お示しください。

 さきに石炭産業について述べさせていただきました。私は、石炭を単にエネルギー政策の範疇にとどめるのではなく、資源小国日本の危機管理対策として位置づけるべきだと考えております。

 今般のアメリカの同時多発テロを初めとする国際政情不安の折から、石油代替エネルギーを国内で確保することは極めて重要であり、世界一と言われる炭鉱の坑内掘削技術、保安管理技術も、生産しなければ技術の継承は困難であります。石炭ガス化複合発電の技術開発等、石炭を素材とした新たな技術の研究開発を政府はもっと後押ししてもよいのではありませんか。経済産業大臣にお伺いいたします。

 この厳しい情勢の中で政府に求められているのは、新規産業の育成による新たな雇用の受け皿づくりであり、そして、求職者一人一人が尊厳を持ち、チャレンジ精神を持って、新たな長期雇用のために能力開発ができる環境を整備することであります。

 チャレンジする人への投資を積極的に行い、構造転換につなげる総合雇用政策の確立こそが二十一世紀にふさわしいものであることを指摘するとともに、総理は、眠れぬ夜はバラードをお聞きになってお休みになるそうでございますが、三百五十七万人の失業者は、毎日、わらをもつかむ思いで就職活動に取り組んでおります。音楽を聞いても眠れぬ夜を送っていることを申し添えまして、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 三井議員にお答えいたします。

 二十一世紀にふさわしい成長産業の育成についてでございます。

 経済を牽引する成長産業は、技術革新や社会経済構造の変化に対応する中で生まれてくるものだと思います。政府としては、IT、健康、福祉、環境など、国民の潜在需要が高い分野や企業の競争力に資する分野を中心に、規制改革、技術開発の推進、産学連携の強化等を進めることにより、二十一世紀にふさわしい成長産業の育成に取り組んでまいります。

 雇用対策の効果に関するお尋ねです。

 現下の厳しい雇用情勢に対応するため、総合雇用対策として、公的雇用における緊急かつ臨時的な雇用創出、ミスマッチを解消するため民間の活用による再就職支援などの失業なき労働移動の支援、訓練延長給付の拡充や自営廃業者等に対する生活資金貸付制度の創設等を取りまとめ、本日成立しました補正予算において、雇用対策のための必要な措置を講ずることといたしました。

 雇用対策臨時特例法案の早期成立をお願いするとともに、補正予算の早期執行に努め、規制改革の推進による雇用づくりや労働市場の構造改革を進めるなどして、雇用対策が最大限効果が上がるよう、努力をしてまいりたいと思います。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣坂口力君登壇〕

国務大臣(坂口力君) 三井議員にお答えを申し上げたいと思います。

 まず、公共職業安定所の体制についてのお尋ねがございました。

 ハローワークに多くの失業者が訪れていただいている現状から、大変いろいろな問題点を指摘されているわけでございます。ハローワークにおきましては、これまでも体制整備に努めてきたところでございますけれども、利用者が急増しておりますことに対しまして、これまで以上に機能を強化していかなければならないと考えております。

 このため、今後、民間の専門家でありますとか実務経験者を就職支援アドバイザーとして委託をいたしまして、きめ細かな職業相談機能を充実させますとともに、民間事業所のすぐれた手法の積極的導入を図ることとしたいと存じております。

 また、先ほども申しましたとおり、民間の職業紹介所等におきましても積極的な役割を果たしていただきまして、そして、相補い合う形でこれをぜひ進めていきたいというふうに考えているところでございます。

 いずれにいたしましても、厳しい雇用失業情勢に対応いたしますのに、それらのことも十分に考えながらやっていきたいと考えているところでございます。

 それから、本法案による雇用保険制度の拡充措置の対象となる方の数でございますとか、本法案による雇用創出効果についてのお尋ねがございました。

 雇用保険制度の拡充につきましては、平成十三年度補正後で、約十六万人の方が訓練延長給付の対象となるものと見込んでおります。また、本法案によります複数回の訓練受講の対象となる方の数は、平成十三年度におきましては約五千人、そして、平成十四年度におきましては三万五千人を見込んでいるところでございます。

 また、派遣期間の延長によります雇用創出効果を予測することは、なかなかこれは難しい面がございますが、派遣先の中高年齢者の受け入れに関する意向等を考慮いたしますと、制度が定着した段階におきましては、年間約五万人程度の雇用創出効果が期待できるというふうに思っております。

 さらに、経営革新に伴います雇い入れに対し、中小企業労働力確保法の助成措置を適用することによりまして、年間で約一万人の雇用創出が図れるものというふうに見込んでいる次第でございます。(拍手)

    〔国務大臣平沼赳夫君登壇〕

国務大臣(平沼赳夫君) 三井議員にお答えさせていただきます。

 第一点は、炭鉱技術の継承の問題でありました。

 委員御指摘のとおり、日本は、炭鉱技術に関しては、世界有数の技術の蓄積がございます。そこで、世界の産炭国にこれを技術的に承継してもらうべく、御承知の研修制度を立案いたしました。

 これは、平成十四年度から五年間の計画で、中国、ベトナム、インドネシアから積極的に研修生を入れまして、そして日本の培った技術を継承していただく、こういう計画で進めております。既に、第一段階で、ベトナムから六十人の研修生が入っておりますけれども、五年間で一千名の研修生を受け入れて、その承継に万全を期していきたい、このように思っています。

 平成十三年度の予算は十億円の規模でございまして、十四年度は四十億円を予定いたしております。

 次に、いわゆる総合エネルギー安全保障、危機管理の見地から、石炭の関連技術、これをしっかりやらなきゃいけないという御指摘でありますけれども、それもそのとおりだと思わせていただいています。

 石炭というのは、他の化石燃料に比べまして、御承知のように、CO2の排出量が多いわけでありまして、これが環境負荷を高める、こういう原因になっています。ここをいかに克服するかという問題でございまして、石炭ガス化複合発電、こういったところで、その発電の際に、CO2の排出量を石油並みに抑えるという技術が、ほぼめどがついてまいっております。

 我々、平成十四年度予算では、その他のいわゆるクリーンコールテクノロジー開発、こういったことで約百億円を計上して頑張らせていただいているところでございまして、こういったことは三井議員御指摘のとおりでございますので、さらに力を入れて頑張ってまいりたいと思います。

 以上であります。(拍手)

    〔大島敦君登壇〕

大島敦君 三井議員の御質問にお答えいたします。

 御質問にございましたとおり、民主党は、雇用保険の財政の安定化及び求職者等に対する能力開発支援のための緊急措置に関する法律案、いわゆる能力開発支援法案を提出し、セーフティーネットの抜本的な拡充を提案いたしました。

 この法案は、二つの柱から成っております。

 一つは、求職者能力開発支援制度の創設であります。

 これは、失業給付期間が終了してもなお就職できない非自発的失業者、一年以上失業している自発的失業者、そして一定の自営業廃業者に対して、能力開発訓練を受けているという要件のもとに能力開発手当を給付し、生活の安定を図るという内容であります。ここには、新領域での就業、創業、そして個人の自主的なキャリア形成を積極的に支援しようという願いが込められております。

 この制度を機能的なものにするには、構造転換につながり、かつ労働市場のニーズに合わせた、最新かつ実践的な職業訓練コースを充実させることが不可欠です。そこで、民主党は、既に、民間教育機関、大学、大学院、NPOなどに職業訓練機関を拡充することを提案しております。三年間で二兆円規模の、極めて手厚い整備となっております。

 政府は、職業訓練つきの失業給付延長制度の拡充、また、自営業者を対象とした生活資金を貸し付ける制度も設けられているようですが、抜本的な改革とは言いがたく、また、こうした施策は、再就職、再起業といった新たな飛躍と結びつく効果的な職業訓練と一体でなければ、単に失業給付期間を延長するだけ、安易に返済不可能な貸し付けをふやすことになるだけという結果に終わりかねないことを指摘しなければなりません。

 もう一つの柱は、雇用保険財政の安定を目的とした失業等給付資金の創設であります。

 構造改革につながる経済政策を推し進めるに当たっては、雇用保険の制度的安定を図ることは不可欠であり、民主党は、二兆円規模の失業等給付資金を一般財源から繰り入れて創設することを提案しております。これは、雇用情勢が大幅に悪化し、積立金がなくなった場合、失業等給付資金から通常の求職者給付に拠出するというものであります。

 雇用保険財政は、平成六年度から赤字となり、厚生労働省の試算によれば、平成十三年度末の積立金残高は五千八百億円程度、仮に現行の失業率で推移したとしても、平成十五年度末には底をつくことが明らかとなっております。

 現行制度においては、雇用保険財政を補強する方策として、弾力条項、一般会計からの借り入れなどが用意されておりますが、今後、不良債権処理などの進展で失業率がさらに悪化すれば、ことし四月の雇用保険改正による法改正効果は来年度で喪失、雇用保険財政は危機的状況に陥ることが予想されます。

 このように破綻寸前の労働特会の雇用勘定に対し、何らその対策を図ることなく、一時しのぎの繰り入れを繰り返すのは余りにも無責任であります。雇用保険の制度的安定を図りながら施策を展開するのが責任ある対応だと考えます。

 ミスマッチの解消についても御質問がありました。

 民主党は、さきに発表した総合雇用政策の中で、長期失業者就職実現プログラムと新職業能力開発支援制度を連動させ、カウンセリング、職業訓練、職業紹介、再就職という一連の流れを一貫して行う新しいシステムを提唱しております。一人一人の経験に照らし、職業能力の向上を図りながら再就職に結びつけるため、そのモデルを全国的に実施すべきだという提言であります。

 三井議員の質問にもございましたが、失業率の上昇に伴い、ハローワークでの対応は短時間にならざるを得ない状況になっております。現場の職員からも、一時間、二時間待って五分の相談になってしまう、求職者の期待にこたえた質の高い相談、紹介ができないという声が上がっております。

 職業紹介は、求人需要の掘り起こし、職業訓練などと一体でなければ効果が上がるものではなく、この際、ハローワークの機能強化、充実だけではなく、民間職業紹介所や地方公共団体への業務委託も積極的に行い、求職者が就職して六カ月たったら当該職業紹介所に報酬を支払うなど、インセンティブのあるシステム開発を促進することが不可欠であると考えます。

 民主党が描く二十一世紀の働き方、社会像についても御質問がございました。

 端的に申し上げれば、新しい時代における安定した雇用が確保される社会を目指します。そのために、民主党は、雇用のための社会合意、日本版雇用創出型ワークシェアリングを積極的に支援し、二十一世紀型成長産業の育成を進めると同時に、公正な労働市場を確立してまいります。また、二十一世紀型の成長産業を育成する観点から、民間企業、ベンチャー企業の創業を支援するとともに、雇用の受け皿としてNPOの役割を重視し、その育成を図ります。

 さらに、働き方に関する価値観の多様化に対応し、公正な労働市場原則を確立することが必須であります。雇用保険を初めとする社会保険制度の抜本改革、募集・採用における年齢制限の撤廃、日本版職業資格制度の構築、同一価値労働同一賃金の原則を進展させる均等待遇の確保など、中長期的な課題は山積しております。

 労働市場の流動化を語るのであれば、公正な労働市場原則を確立するための明確なビジョンがなければなりませんが、小泉首相にはそれが欠けていることを指摘し、私の答弁といたします。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(綿貫民輔君) 佐藤公治君。

    〔佐藤公治君登壇〕

佐藤公治君 私は、自由党を代表して、ただいま議題となりました、政府提出の雇用機会創出特例法案並びに民主党提出の雇用対策関連法案について、質問いたします。(拍手)

 雇用情勢が深刻な事態となっていることは、今、改めて数字を挙げて申し上げるまでもありません。毎月の完全失業率は政府が発表するたびに上がり続け、九月の完全失業率は五・三%と、またも過去最悪を更新いたしました。このとき、坂口厚生労働大臣は、記者会見で、雇用情勢は緊急事態を迎えたと述べられたようですが、その言葉とは裏腹に、政府には全く危機意識が感じられないと言わざるを得ません。

 厚生労働省が発表した情勢判断は、八月時点には、依然として厳しい状況から、九月には、さらに厳しさを増していると、表現を修正しただけであります。この程度の情勢認識しか政府が持っていないがために、今回の補正予算や、今ここで審議されている法案程度の対応しかとることができないのだと言わなければなりません。雇用情勢はもうどうしようもない状況にあると認識すべきなのであります。

 三百五十七万人という統計上の数字のほかに、企業内の潜在的失業者が百五十万人、求職をあきらめた人は四百二十万人いると言われております。リストラによって職を失った一家の大黒柱である中高年齢者や、廃業が相次いでいる自営業者の方々のために、小泉内閣が一体何をしてきたのでありましょうか。

 ことしになってから一段とひどくなった雇用情勢をしり目に、小泉総理は、改革、改革と叫び続け、何もしてこなかった結果、起きているのが今日のこの事態であるということを、まず総理自身が認識すべきであります。(拍手)

 小泉総理が本気で改革をおやりになるのなら、この国会で実現しなければならない本格的な構造改革関連の法案を、なぜお出しにならないのでしょうか。それを裏づける補正予算を、なぜお組みにならないのでしょうか。改革は待ったなしと言いながら、待ったし続けているのが今の小泉内閣であります。

 構造改革の根本は、官僚主導の護送船団方式の行政、民が官に依存し、地方が中央に依存してなれ合ってきた規制社会、中央集権体制を仕組みから改めることであり、これこそ、待ったなしの改革なのであります。

 私たち自由党は、自由な経済活動を阻害し、行政指導の根拠ともなっている、いわゆる業法を原則廃止し、統一の市場ルールを定めることによって経済を活性化させるための法案、特殊法人を三年以内に廃止・民営化する法案、国から地方への各種事業費補助金を廃止し、地方に一括交付する法案、所得課税について、人的控除を原則廃止し、税率構造を簡素化して税率を引き下げ、全国民がたとえ少額でも社会への参加料として税金を納めるようにする法案、国会みずからが議員を削減する衆議院議員の定数削減法案の、五つの法案の今国会成立を目指しております。

 こうした本来の構造改革を進めない限り、競争力のある企業社会は生まれることもなく、経済全体が活性化することも、永続的な雇用創出の場が生まれてくることもないのであります。規制の撤廃や、特殊法人を解体することによって、今、埋もれてしまっているビジネスチャンスを企業に早急に開放することが必要であると考えますが、総理の御見解をお伺いいたします。

 今回政府が取りまとめた今後の雇用対策は、雇用の受け皿整備、雇用のミスマッチ解消のための施策、セーフティーネットの整備と、項目だけが並べられておりますが、構造改革の理念や具体策がないだけではなく、すべて、対症療法にとどまっております。本来の目標である構造改革は、今回の対策のどこに盛り込まれているのでしょうか。総理の御見解をお伺いいたします。

 政府の今回の補正予算に係る雇用対策の最大規模のものは、緊急地域雇用創出特別交付金として三千五百億円を地方に交付するというものであります。しかし、この対策についても、小泉内閣の経済無策の穴埋めとして一時的に失業対策に充てる、焼け石に水の施策であると言わざるを得ません。また、遅きに失しております。

 既に、地方自治体では、後手後手に回る国の対策を待つことができずに、多くの道府県が九月議会で、補正予算による雇用対策を済ませてしまっているのであります。本来、国がまず補正で手当てをし、その施策を前提に、地方自治体が国のすき間をみずからの補正予算によって埋めていくのがあるべき姿だと思います。この時期になって遅きに失した対策を講じるよりも、地方自治体の九月補正よりも早い段階で、雇用対策に使える一般財源として三千五百億円を交付した方がはるかに効果があったのではないかと思いますが、総理の御見解をお伺いいたします。

 また、今回政府が講じようとする二年から三年の一時的な雇用を、失対事業のような失業救済による短期雇用措置にとどめるのではなく、中長期的な就業の定着に結びつけていくビジョンはおありなのか、あわせてお考えをお示しください。例えば、学校の教員補助者を臨時に雇うという構想は、教育現場にどのような影響を及ぼすとお考えか、小泉総理の進める教育改革に何か結びつくものなのか、全く無関係なものなのか、お聞かせをいただきたいのであります。

 また、政府の講じた施策により企業助成で再就職した労働者が、助成期限が切れた後もその企業に定着しているのか。職業訓練についても、具体的な再就職に結びついているのか。これらの点について十分な検証は行われているのか。短絡的なお役所仕事で済ましていられる事態では、もはやありません。政府の対策が雇用拡大に結びつく実効性のあるものに少しでもつながっているのか、心配にならざるを得ませんが、総理の御見解はいかがでありましょうか。

 構造改革は、労働分野においても求められております。

 いわゆる日本型雇用形態により、新卒者が一斉に採用され、定年まで雇用が保障され、年功序列で賃金が上がっていく。戦後の高度成長を通じて、この形態が労使一体の企業別組合によって支えられてきたのであります。

 しかし、今日、雇用を取り巻く環境は大きく変化しております。国際競争、技術革新、情報化、消費者の価値観の多様化、少子高齢化、就業者の意識の変化などに伴って、雇用形態もさま変わりしつつあります。パート労働者は、雇用労働者の二割を超えて、ふえ続けております。決まった定職につかない若者が急増し、フリーターと言われる若者は二百万人と言われております。就業形態においても、勤務時間を弾力的に設定するフレックスタイム制を採用する企業や、年齢ではなく、成果や能力を重視して賃金を支給する企業がふえております。企業を襲う国際競争の荒波や、急速に広がるIT化は、雇用のあり方の根本的な構造変化を迫っております。

 これまで、ぬるま湯につかるようにして続けてきた雇用制度の全般について、就業形態の多様化や、職場を移動することによって不利にならない社会保障制度の確立など、大胆に改革していくことが必要なのであります。従来の問題先送り型をやめ、規制改革により企業が再チャレンジできるような環境を整備しつつ、国の雇用支援は再挑戦する意欲のある個人に対して行っていく仕組みに改めるべきであります。小泉総理の御見解を伺います。

 今回の雇用対策の中には、労働者派遣制度や有期労働契約の規制緩和が一部にありますが、この程度の規制緩和で雇用形態の多様化が進んでいくとお考えなのが小泉総理の言う構造改革なのでしょうか。先行プログラムの名にも値しないのではないでしょうか。中高年齢者の派遣期間の制限を緩和しましたが、なぜ中高年に限定しているのか。また、労働時間を使用者が管理するのではなく労働者が自分で管理する裁量労働制や、雇用契約について三年ないし五年の契約も認めていくという有期的労働制についても、見直すべきであります。

 また、雇用保険財政の将来の見通しも立たない中で、結婚退職についても失業保険を給付する、高額退職金をもらって退職した人にも失業保険を給付するような制度をいまだに続けていることには、驚愕せざるを得ません。真に失業給付の必要な離職者に支給するような仕組みに抜本的に改めることが重要であると考えますが、これらの点についての総理の御認識をお聞かせいただきたいのであります。

 労働の規制緩和には痛みも伴います。労働者の雇用を守る立場にある労働組合がこれらの改革に消極的なのもわかりますが、新しい日本の新しい雇用形態を創出していくためには、労働者自身が、また労働組合自身が意識を変革していかなければなりません。みずからの利益、組合員だけの利益を擁護するのではなく、我が国の将来像を描く中で、パートも、契約も、未組織も、自営業者も、すなわち国民全体の利益を思い、改革を進めていくことが今ほど求められているときはありません。(拍手)

 先般、政府、経済界、労働界の代表による政労使雇用対策会議が開催され、ワークシェアリングの進め方について新たに協議が進められると伺っており、前進が図られるものと期待しておりますが、雇用制度改革に果たす労働組合の役割をどのようにお考えか、総理並びに民主党案提出者のお考えをお尋ねいたします。

 最後に、総理はいつも国民に痛みを強いることばかりをおっしゃっておられますが、小泉総理、小泉内閣は今日までどれだけの改革を目に見える形で国民にお示しになり、それを実行された結果、どのような痛みが発生しましたか。総理が今お感じになられている一番の痛みとは何かを具体的にお答えください。

 もしも、その痛みとは、反対勢力との闘いや給与一部カット程度に思っておられるなら、それは間違いです。改革に向かって物事は何もなされていないのですから、あなた方は痛みを伴うどころか、傷ついてさえいないと思います。これでは到底、国民の皆さんに痛みを強いることなどできないではありませんか。

 総理は、よく、「聖域なき構造改革」と叫ばれますが、構造改革を断行する第一歩は、今ここにいる我々政治家の意識改革にほかなりません。今さら申し上げるまでもございませんが、「聖域なき構造改革」の原点は「聖域なき意識改革」であることを小泉総理にお伝えいたしまして、私の質問を終わります。どうもありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 佐藤議員にお答えいたします。

 本来の構造改革を進めるべきとの御指摘でございます。

 構造改革なくして成長なし、民間でできることはできるだけ民間に任せていこうという原則のもとに、むだを省いて経済を効率化するとともに、新しい産業を興し、我が国経済を中長期的に持続的に成長軌道に乗せるため、各般の改革に取り組んでいきたいと思っております。

 今後の雇用対策と構造改革の関係についてのお尋ねでございます。

 今言ったような改革の観点から、新市場、新産業の育成による雇用の受け皿整備、官民の連携強化、能力開発、就業環境の整備による雇用のミスマッチの解消、雇用のセーフティーネットの整備、これらを柱とする総合雇用対策を取りまとめたところであり、規制改革の推進による雇用づくり、労働市場の整備による円滑な労働移動の推進など、構造改革の推進とその痛みの緩和に向けて、それぞれの施策を適切に推進してまいります。

 新たな交付金の効果についてのお尋ねがありました。

 新たな緊急地域雇用創出特別交付金は、地方公共団体が地域の実情を踏まえ、創意工夫を凝らして緊急かつ臨時的な雇用創出に取り組めるよう、国が客観的指標により交付する、全額国負担の事業でありますが、あわせて、地方公共団体による事業の上積みについても期待しているところであります。これらの国と地方の施策が相まって、地域における雇用創出効果が高まるものと考えております。

 新たな交付金事業による雇用を定着に結びつけていくビジョンについてのお尋ねであります。

 今般の緊急地域雇用創出特別交付金は、構造改革の集中調整期間における臨時応急の措置として創設するものであります。交付金事業に雇用された失業者については、事業での就業経験を生かし、常用雇用につなげることが重要であり、地方公共団体に対し、このような視点を十分に踏まえた事業を企画、実施することを促してまいりたいと思います。

 学校における教員補助者の雇用についてであります。

 社会人を教員の補助者として採用し、その豊かな経験を教育に生かしてもらうことは、学校教育の一層の活性化や、子供たち一人一人に目配りのきいた教育を実現するものであり、新たな国づくりを担う人材を育てるための教育改革に資するものと考えております。地方公共団体がこのような視点を十分に踏まえて取り組まれるよう、促してまいりたいと思います。

 企業の雇い入れ助成と職業訓練の雇用拡大効果についてのお尋ねです。

 雇い入れ助成は、労働者を一定期間雇い入れた後、雇用した事実をハローワークなどの支給機関において確認の上、事後的に支給するなど、定着状況にも着目した運用を行っているところであります。また、職業訓練受講後の就職状況についても把握を行っており、これに基づき、訓練コースの設定、見直し等を行っております。今後も、施策の効果等について検証を進め、より実効性あるものにしてまいりたいと考えます。

 雇用支援の仕組みの見直しについてです。

 今回の総合雇用対策においては、規制・制度改革を通じ、新市場、新産業の育成を図ることとしております。また、労働者個人を積極的に支援するため、官民の連携による職業紹介、職業能力開発により人材の適材適所を実現するよう努めてまいりたいと考えております。

 審議いただいております雇用対策臨時特例法案においても、再就職に意欲的に取り組む中高年齢者に対し、訓練延長給付の拡充により支援をすることといたします。

 労働者派遣制度や有期労働契約等の規制緩和に関するお尋ねです。

 今般の派遣期間の特例については、現下の厳しい雇用失業情勢を踏まえ、特に再就職が厳しい状況にある中高年齢者について、再就職の促進、雇用機会の創出等を図るための臨時緊急の措置として、制限を一年から三年に延長することとしたものであります。

 労働者派遣制度全体や有期労働契約、裁量労働制に関しては、労働市場の構造改革を進める観点からも、その見直しについて調査検討を既に開始しており、労使関係者の意見等も十分聞きながら検討を進めてまいりたいと思います。

 失業給付を真に必要とする離職者に支給すべきではないかとのお尋ねです。

 失業給付は、離職後、労働の意思と能力がありながら就職ができない方に限って支給するものであり、退職後再就職を希望していない方には、離職の理由のいかんを問わず、支給しないこととしております。また、本年四月には、解雇、倒産等による失業者の給付を充実するなど、緊要度に応じた給付になるよう制度改正をしたところであります。いずれにしても、失業の具体的認定に当たっては、労働の意思、能力の有無を厳正に判断し、適切な制度運営に努めてまいります。

 雇用制度改革に果たす労働組合の役割についてのお尋ねです。

 経済社会の変化に伴い、雇用制度も変わっていくことが必要ですが、こうした変化の中で、労働組合の果たすべき役割は重要と考えております。

 例えば、最近盛んに議論されておりますワークシェアリングに関しても、まず労使間で、どのようなワークシェアリングを目指すのかという点について合意を形成することが必要ですが、その過程では、労働組合としても、単に組合員だけの利益にとどまらず、社会の変化にこたえ、国民全体の利益にも十分に配慮していくことが求められると考えております。

 現在の厳しい雇用情勢に対応するとともに、これからの新しい時代に対応した雇用システムを構築していくため、政府としても、労使と協力して取り組んでまいりたいと考えます。

 これまでの改革と痛みについてのお尋ねであります。

 私は、改革しない場合、痛みがないのかというと、そうでもないと思います。このままがいい、今までのままが、現状がいい、今までの制度を全部維持したいといったら、別の痛みが出てくる。そうではないでしょう。新しい時代にはやはり、改革すべきもの、既得権を壊さなきゃならないもの、どちらにも痛みは伴う。どうせ痛みが伴うのだったら、あすへの展望を持って、国際社会の中で対応できるような制度改革をすることによって、これからの日本の経済の発展を図るための痛みをある程度甘受して、将来に希望の持てるような社会にしようとするのが改革の痛みだと御理解いただきたいと思います。(拍手)

    〔大島敦君登壇〕

大島敦君 雇用制度改革に果たす労働組合の役割について、佐藤議員から御質問がございました。

 日本の労働組合は、これまで安定した労使関係を築きながら、現実を直視し、柔軟な対応によって、さまざまな経済的困難を乗り切り、労働行政はもとより、今までの日本経済の発展と社会の安定に貢献を果たしてきたと考えます。

 今日、五・三%に達する高失業率の難局にあっても、その果たすべき役割はますます高くなっております。日経連と連合が共同で発表した、雇用のための社会合意を見ても、また、地方においては、政労使一体での雇用に対する活動には注目すべき内容が含まれております。例えば複合不況地域とも言える沖縄県では、労使一体で、地場産業・雇用安定に向けて必死の取り組みを行っております。

 加えて、佐藤議員からワークシェアリングの推進について言及がございましたが、民主党も、新しい時代における今後の雇用制度改革にとって重要なポイントだと考えております。この分野においても、労働組合の果たす役割は大変に大きいと期待しております。

 今や、我が国の産業、企業は非常に経営困難な状況にありますが、経済のグローバル化、雇用・就労形態の多様化、企業組織の再編成等、働く人たちを取り巻く環境の変化に対応して、働く人すべての雇用不安を除去するため、労働組合もその英知を結集し、労使ともに力を合わせながら問題の解決に尽力されることを期待しております。ありがとうございました。(拍手)

    ―――――――――――――

    〔議長退席、副議長着席〕

副議長(渡部恒三君) 小沢和秋君。

    〔小沢和秋君登壇〕

小沢和秋君 日本共産党を代表して、雇用対策臨時特例法案について、小泉総理並びに坂口厚生労働大臣に対し、質問いたします。(拍手)

 質問に先立ち、本日夕方、小泉内閣が、アフガニスタンへの戦争を行っている米軍を支援するため、自衛隊を海外派遣する基本計画を閣議決定しようとしている問題で一言申し上げます。

 計画は、米軍艦船への燃料補給、物資や兵員の輸送などを盛り込み、派遣規模は護衛艦、輸送機など千五百人に上り、その活動範囲はアラビア海やペルシャ湾、インド洋など、極めて広範な地域とされています。まさに、自衛隊を初めて戦時派遣し、限りなく戦場近くで米軍の軍事作戦行動を全面的に支援しようとするものであります。しかも、自衛隊が支援しようとする米軍は、アフガン攻撃に無差別殺傷兵器をも投入して罪なき民間人に犠牲を及ぼし、国際的な非難を浴びております。難民支援のためにも、一刻も早い攻撃中止が求められています。

 憲法の平和原則を幾重にも踏みにじり、自衛隊の戦時派遣を強行することは、断じて許されません。このような閣議決定を行うことに、強く反対の意を改めて表明するものであります。(拍手)

 さて、九月の完全失業率は、ついに五・三%にはね上がり、過去最悪となりました。これに潜在的失業者を加えれば、今や、我が国は十人に一人が失業しているという深刻な状況であります。こういう中で、小泉総理は、今後、不良債権処理を強行し、さらに百万人を超える新たな失業者を発生させようとしております。

 そこで、私は、まず第一に、雇用失業問題に対する総理の基本的な考えをお尋ねしたい。

 一昨日も、あなたは、参議院で、失業の増大について質問され、戦時中やアフガンの状況に比べれば今の日本は天国と答えています。これは、総理が、失業することの重大さ、深刻さを全く理解していないことを端的に示した発言であります。

 私自身も一度首を切られておりますからよくわかりますが、失業すれば、すぐ、家族ぐるみ、生活できなくなります。社会的な存在や人生そのものを否定されるほどの大きな打撃を受けます。失業が長期化すれば、ホームレスに転落し、自殺に追い込まれることにもなりかねません。失業はそれだけ深刻な問題であります。

 総理は政治には失業の発生を何としても抑えなければならない責任があるという認識をお持ちなのかどうか、お尋ねいたします。

 本法案の第一条には、最近における経済社会の急速な変化に伴い、雇用及び失業に関する状況が悪化し、多数の中高年齢者が離職を余儀なくされることが見込まれること等にかんがみ、中高年齢者の再就職の促進、雇用機会の創出等を図ると述べられています。

 このように、この法案は、不良債権処理等でさらに膨大な失業者が発生することを当然の前提にしております。失業の増大を当然とするような立場でつくられた法案が、そもそも雇用対策法の名に値するものでありましょうか。

 確かに、法案には対策も盛り込まれてはおりますが、それは、中高年齢者の職業訓練を二度まで受けられるようにし、その間、訓練延長給付を受けられることとするなど、わずか三項目だけであります。膨大な失業者の発生を放置、促進しておきながら、わずかの対策をとることで本当に国民の不安を取り除くことができると考えているのか、総理にお尋ねをいたします。

 第二に、リストラと言いさえすれば、企業の社会的責任など無視して大量の人減らしをしてよいのかという問題であります。

 例えば、日立、東芝など電機大手九社は、今年三月期まで黒字を出し、十兆円を超える膨大な内部留保を持ちながら、来期が若干の赤字見通しとなった途端に、約十万人の人減らしを行おうとしております。その赤字は半導体などへの過大な投資という経営者の責任で発生したのに、経営者は何の責任もとらず、すべて労働者に犠牲を押しつける、こんなことが許されるのでしょうか。

 最高裁の判決では、解雇四要件の中で、人員削減の必要性が本当にあるのか、解雇を回避する努力を尽くしたのかなどと判示しております。こうした最高裁の判例にさえ背くやり方が社会的公正という点からも通ることなのか、総理の見解を示していただきたい。(拍手)

 今、NTTでは、十一万人もの大規模なリストラが進められようとしております。電電公社の時代から何十年も働き続け、巨大な企業に発展させてきた社員を、子会社に無理やり転籍させ、しかも、賃金は三割から五割引き下げようとしております。NTTグループは、今も超優良企業ではありませんか。しかも、このNTTの最大の株主は政府であります。最高裁で、本人の同意があって初めて移籍が効力を持つという判決が今から二十三年も前に出され、転籍は本人同意が絶対に必要ということが判例法として定着しております。

 総理、最大の株主の代表であるあなたに、この判決を守り、少なくとも、転籍を断る社員に対し転籍の強要はしない、そういう社員にはこれまでどおりの職場や仕事を保障すべきだとNTTに伝えることを、ここではっきり約束していただきたいが、いかがですか。(拍手)

 次に、坂口厚生労働大臣の、解雇の取り決めを法律として提案したいとの先日の発言に関連してお尋ねをいたします。

 マスコミによると、今年五月、総理が、解雇しやすくすれば企業はもっと人を雇うことができると指示したのを受け、九月から労働政策審議会の分科会でいわゆる解雇ルールの議論が始まり、坂口発言になったとのことであります。

 今でも我が国には、解雇を規制する法律はほとんど存在しません。だから、最高裁の判例を無視して首切りを強行しようとする企業の横暴をなかなか抑えられないのが現状です。そういう中で、もっと解雇しやすくする法律をつくったら、リストラのあらしはますます吹き荒れるばかりではありませんか。今、必要なのは、こういう解雇の野放しを抑えるため、少なくとも、最高裁の解雇四要件や転籍の本人同意原則などを法制化することではありませんか。

 第三に、現在の雇用を確保するとともに、新たな雇用をどうつくり出すかであります。

 私は、そのためには、我が国も労働時間の短縮に積極的に取り組む必要があると思います。サービス残業根絶はもちろんのこと、長時間残業を厳しく制限し、年次休暇の完全消化を保障することが、雇用の拡大にとって決定的に重要であります。既に政府は、一九八八年、国際公約として、年間総実労働時間を千八百時間にすることを決定しております。これを実現すれば、数百万人の雇用増となり、失業問題の解決に大きく前進することができます。

 総理の先日の答弁では、賃金の取り扱い等について労使の合意形成に向けた取り組みに協力するなどと、まだ入り口の話をしております。要するに、この十三年間、国際公約実現の努力を何もしてこなかったということではありませんか。こういう姿勢を改めるのかどうか、答えていただきたい。(拍手)

 総理は先ほどの答弁でも、五百三十万人雇用創出計画で新しい雇用をつくり出すと答弁されました。これは、骨太方針以来の小泉内閣の重要公約の一つであります。しかし、これが本当に実現するのか、私は大きな疑問を持っております。

 実際、この計画の根拠は、他の先進国に比べ日本はまだサービス部門の就労者が少ないという程度のものにすぎません。最大の増加を見込まれている家事サービス部門にも、求人の増加などの動きがあるとは聞いておりません。医療、介護、保育などは潜在的に大きな需要があることは私も認めますが、本人負担が重いため、利用が抑制され、福祉施設では人員削減さえ進められているのが現実であります。総理、あなたはこの公約をいつまでに実現するのか、明確な答弁を求めます。

 第四に、待ったなしで求められている失業者の生活保障について、以下、坂口厚生労働大臣にお尋ねをいたします。

 私は、今回の補正予算に計上された新公共サービス雇用三千五百億円、五十万人の就労枠を大幅に拡充することこそ、現実的解決策の大きな柱であると申し上げたい。この公的就労事業の拡大は、我が党が一貫して要求してきたものであります。一九九九年秋、この制度が創設されて以来、全国の状況を我が党は点検してまいりましたが、最低、次のような改善が必要です。

 その一は、失業者が多数就労できるように失業者の雇用枠の増加を保障することです。今のように、一名でも失業者が入っていればよいということではだめです。その二は、六カ月間、一人一回限りという制限をなくすことであります。その三は、実態に即した就労対策を実現するためには、最大限、市町村に創意性を発揮させるべきであります。これらの点の改善について、大臣の考えを伺います。

 次に、雇用保険を改善する問題です。

 今、失業期間が一年を超え、雇用保険が切れても再就職ができない四十五歳以上の中高年失業者がふえ続けております。失業者にとって、雇用保険は命綱であります。政府は、今回の対策で、職業訓練を二回まで受講できるようにし、雇用保険の受給期間を延長しますが、失業者が安心して適職を探せるようにするためには、職業訓練の受講者以外にも給付の延長が必要であります。この法案で臨時特例の措置を講ずるというのであれば、直ちに今年四月の改悪前の給付水準に戻し、さらに、全国延長給付に踏み切るべきではありませんか。

 この際、職業訓練については、原則として希望する全員に受講させるべきであります。また、訓練が雇用保険の給付を延長する手段に終わらず、実際に再就職に役立つためには、科目を見直すなどの改善が必要だと思いますが、大臣の見解はいかがですか。

 最後に、中高年の派遣労働者の派遣期間の上限を一年から三年に延長する問題であります。

 私には、これが雇用増に結びつくとは、どうしても考えられません。考えられるのは、これまで仕事を行っていた正社員を派遣労働者に置きかえることだけではありませんか。

 前回の法改正時、一年間同じ職場で働き続けた派遣労働者を正社員に切りかえるよう国の指導を求める附帯決議が、参議院で行われました。今回の改正は、その趣旨を完全に覆し、一年働き続けた派遣労働者が正社員になる道をわざわざふさぐことになるのではありませんか。さらに、これまで私たちの反対で見送られてきた製造現場への派遣労働者の導入、四十五歳以下についても三年までの期間延長を認めるなど、次々に改悪を拡大することにつながらないのか。以上の諸点についてお答えください。

 私は、最後に、現在の深刻な不況の中で、真に求められている雇用対策は、解雇規制法の制定、サービス残業根絶を含む労働時間短縮、失業保険給付期間の大幅延長などであり、我が党はその実現のため引き続き奮闘することを表明し、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 小沢議員にお答えいたします。

 失業発生を抑える政治の責任と雇用対策についてでございます。

 失業の発生を抑えるためにも、現下の雇用対策、特に今御審議いただいております雇用対策臨時特例法案の早期成立をお願いしているところでございます。さらに、補正予算の早期執行に努め、規制改革の推進による雇用づくりや労働市場の構造改革を進めるなどして適切な施策を推進し、国民の雇用不安の払拭にできるだけ努めてまいりたいと思います。

 大企業のリストラについてでございます。

 経済社会が非常に大きく変化する中で、大企業も雇用調整を余儀なくされていることは承知しております。しかし、そういう場合におきましても、失業の予防や雇用の安定に大企業も最大限努力すべきものであると思います。仮に労働者が離職を余儀なくされる場合であっても、企業がその再就職を支援していくことが重要であるということは、言うまでもないことであります。

 解雇規制法とNTTの転籍の問題についてでございます。

 解雇については、いわゆる整理解雇の四要件や合理的な理由を必要とするという裁判例により対処されてきているところであります。労働関係をめぐる紛争の防止の観点から、解雇基準やルールを明確にすることは大切なことだと考えております。その解雇基準やルールの内容については、厚生労働省において、今後、労使を初め関係者の意見も十分聞きながら検討していく必要があると考えます。

 なお、NTTの転籍の問題については、NTTにおいて、転籍に関する最高裁の判例を踏まえて、適切な対応がなされるものと考えております。

 労働時間短縮、ワークシェアリングへの取り組みでございます。

 ワークシェアリングの導入に当たっては、検討しなければならないさまざまな問題がありますが、政府としては、現在、当事者である労使が議論を行っていることを踏まえ、労使の合意形成に向けた取り組みに協力するなど、社会的合意を形成していくよう努力をしていきたいと思います。

 なお、労働時間の短縮については、政府目標である年間総実労働時間千八百時間の達成、定着に向けて、所定外労働の削減及び年次有給休暇の取得促進に重点を置き、引き続き努力してまいります。

 五百三十万人の雇用創出についてでございます。

 これは五年間で五百三十万人規模の雇用創出を計画しているわけでありまして、サービス分野を初めいろいろな具体的事業については、既に先般の改革工程表において示されているところであります。福祉や保育や環境等いろいろな分野で、まだまだ日本は潜在成長力を持っております。規制改革を初めとするいろいろな改革を進めることによって、私は、五年間で五百三十万人の雇用機会の創出は決して不可能ではないと思い、懸命に努力を続けていきたいと思います。(拍手)

    〔国務大臣坂口力君登壇〕

国務大臣(坂口力君) 小沢議員からは、まず、新公共サービス雇用についてのお尋ねがございました。

 新たな緊急地域雇用創出特別交付金においては、現行の交付金の実施状況を踏まえて、失業者の雇い入れ割合については、八割以上というような要件を設けることにしたいというふうに思っております。

 雇用期間につきましては、六カ月未満を原則としつつも、事業内容等により更新を認めること、今までとそこは改革をしたいというふうに思っているわけでございます。

 それから、市町村の自由な創意性につきましては、現行と同様に、市町村が独自に創意工夫を凝らしてさまざまな事業を企画、実施できるようにしてもらいたいというふうに思っております。そして、できることならば、これが恒久的な雇用に結びつくような形で企画してもらうことを我々は望んでいるわけでございます。

 雇用保険についてのお尋ねがございました。

 雇用保険制度につきましては、昨年、失業者の再就職の促進と生活の安定の確保を図りますために、中高年齢層を中心に、倒産、解雇等による離職者に手厚い給付を行うことを内容とした改正を行いまして、本年四月に実施されたところでございます。政府といたしましては、中高年齢者に対しまして、能力開発を通じて再就職の促進を図るという観点から訓練延長給付を拡充いたしまして、その効果的な実施に努めてまいりたいというふうに思っています。

 ただ、御提案のように、全国延長給付ということにつきましては、残念ながら、そこまで考えているわけではございません。

 それから、職業訓練による再就職の促進についてのお尋ねがございました。

 厳しさを増します雇用情勢に対応いたしまして、再就職のために職業訓練の受講が必要と認められる方々に可能な限り受講機会を提供するよう努めますとともに、早期に再就職を実現する施策として十分にその効果が発揮できるよう、対象者の的確な選定を行う必要があるというふうに考えております。

 訓練コースの設定につきましては、これまでも、地域の労働市場のニーズや訓練修了者の就職実績等を把握した上で行ってきたところでございますが、さらに、訓練機関とハローワークの連携を強化いたしまして、求人ニーズに沿って訓練科目を機動的に見直すことによって、職業訓練受講者の能力開発を的確に進めてまいりたいというふうに考えております。

 派遣期間の延長についてお尋ねがございました。

 今般の中高年齢者に係る派遣期間の特例措置につきましては、求人意欲の旺盛な営業等において活用されることが見込まれておりまして、若年者に比べて就業機会に恵まれにくい中高年齢者について、延長された派遣期間による雇用機会の拡大などの効果が期待できるものというふうに考えておりまして、正社員が派遣労働者に置きかわるような可能性はないというふうに思っております。また、雇用の努力義務の規定は、今回の派遣期間の延長の措置によりまして、一年以上働き続けた中高年齢者である派遣労働者の方についても、同様に適用されるものであります。

 なお、労働者派遣制度全体の見直しについては、今回の臨時特例措置とは別に、去る八月三十一日より検討を開始したところでございまして、今後、もう少し議論を詰めていきたいと思っているところでございます。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(渡部恒三君) 菅野哲雄君。

    〔菅野哲雄君登壇〕

菅野哲雄君 私は、社会民主党・市民連合を代表いたしまして、本日議題となりました雇用対策臨時特例法案に対し、小泉総理並びに坂口厚生労働大臣にお尋ねいたします。(拍手)

 本法案の質問に入る前に、緊急に小泉総理大臣にお伺いいたします。

 薬害ヤコブ病訴訟は、十一月九日に大津地裁から、また、十四日に東京地裁から、和解に向けての所見が出されました。

 国が承認した医療器具、ヒト乾燥硬膜がクロイツフェルト・ヤコブ病に汚染されたものであったため、移植により不治の病に侵され、既に七十六人もの方が亡くなっておられます。アメリカで第一症例が発表された一九八七年から十年間も日本政府は何の措置もとらなかったことによって被害が拡大したことは、繰り返された薬害の歴史に何一つ学ばなかったことを如実にあらわしています。国の無策が国民を死に至らしめる、こんなことがあってはならないのです。

 今回の裁判所の所見は、明らかに、国の法的責任に踏み込んだものとなっています。この所見を直ちに受け入れ、被害者救済のため、一日も早く和解のテーブルに着くように強く求めますが、小泉総理のお考えをお尋ねいたします。(拍手)

 それでは、本題に入ります。

 まず、小泉総理にお尋ねいたします。

 十人に一人が失業者とも言われている大失業時代を迎えつつある今日の情勢を踏まえるならば、一人一人に確実に届く、実際に効果のある雇用創出・安定化策であるかどうかが問われなくてはなりません。

 深刻化する雇用収縮に対応するためには、公的関与による雇用機会の創出を積極的に図る必要があります。

 福祉や環境分野にとどまらず、国民生活に安心と安全をもたらすという立場を重視するなら、消防職員や消費生活相談員などの抜本拡充は喫緊の課題となります。

 多くの犠牲を出した過般の新宿歌舞伎町の雑居ビル火災などの教訓に学ぶならば、立入検査や周期的な事後点検、改善指導を含む違反是正措置の強化などが急がれなくてはなりません。このためにも、求められている消防職員の定数を完全に充足することは不可欠の要素となります。

 消費生活相談員については、ことし四月からの消費者契約法の施行を受けて、各地の消費生活センターは、裁判所を利用する前の段階の解決・処理機能として、大きな役割を果たすことになりました。しかし、センターで業務に従事する消費生活相談員の待遇は、その専門性などからしても低く、不安定な身分に置かれています。規制緩和時代を迎えて、国民が自己責任原則に基づく誤りのない判断を行うことを支援する相談員の重要性などを踏まえるなら、待遇改善や研修を拡充することを前提に、消費生活相談員の大幅な増員を図ることは時代の要請とも言えるのではないでしょうか。

 これらの分野の正規雇用の創出に積極的に取り組む用意がおありか、確たる答弁を求めるものであります。

 さて、総理は、今国会冒頭の所信表明で、厳しい雇用情勢の中にあっても、公共職業安定所には求職者を上回る年間七百万人もの求人がある、バブル期に匹敵する水準だと述べました。これは、十二年度中に公共職業安定所に提出された求人を足し上げた数字と思われます。

 しかし、公共職業安定所における求人の有効期限は、提出日の翌々月末となっており、最長でも三カ月です。期間内に充足せず、企業が引き続き募集する場合は、新規扱いとした上で、提出し直す仕組みとなっていることは、御承知だったはずです。つまるところ、一年埋まらない求人は、四回提出され、期間内新規求人として計上されるということになります。一方、求職側は、一たん新規に出されると、就職や本人辞退がない限り、新規に出し直すことはありません。

 このような性格の異なる数字を比較して何の意味があるというのですか。同列視し得ない座標軸をあえて持ち出した真意は一体何なのか、私には理解できません。あたかも、雇用の枠は十分あるにもかかわらず、その条件を満たせない側に問題があるかのように、世論をミスリードしかねない可能性もあると指摘せざるを得ません。

 今国会冒頭の所信表明で述べられた真意はどこにおありなのでしょうか。不適切な発言であったとして訂正なさるおつもりはありませんか。誠実な答弁を求めるものであります。

 次に、坂口厚生労働大臣にお尋ねいたします。

 底割れ懸念すら帯びつつある雇用失業情勢にかんがみても、今こそ、坂口労政、坂口雇用対策と言われるような労働政策の確立へ、その能力、見識をお持ちの坂口大臣であるからこそ、不退転の決意を持って臨んでいただきたいと存ずるものであります。

 今はやりの雇用ミスマッチ論は、雇用失業問題の本質をゆがめるおそれがあります。特に、改革先行プログラムのように、ミスマッチを高失業率の主な要因であるとする見方は、今日の雇用失業問題が陥っている原因から見ても、因果関係を逆転させるものであります。

 雇用のミスマッチが失業を拡大させているのではなく、失業の増大が雇用のミスマッチを誘発、拡大しているのです。ミスマッチと言うなら、労働条件のミスマッチの拡大こそ問題にしなければなりません。

 中高年の求職者にとって、離職前の半分以下の賃金での求人というのが当たり前であり、再就職先の賃金が余りにも低いために、とても生活できずに再び離職せざるを得なかったというケースすら珍しくありません。

 求人者と求職者とを対等な立場に立たせ、すべての労働者にふさわしい雇用と労働条件を保障するためには、公的職業紹介機能の抜本的拡充が喫緊の課題となります。ところが、実態はお寒い限りです。紹介担当の職員の方が求職者に割くことができる時間は、約三分程度というではありませんか。これでは、求職者の意向に最大限沿う紹介を行うという本来の職責を遂行しろと言う方が無理です。

 実体のない五百三十万人というような雇用創出案ではなくて、実際にハローワークに申し込まれている求職と求人のマッチングを図るための、求人開拓部門の抜本的強化を含めたその機能拡充、体制整備こそが何よりも求められています。

 大臣には釈迦に説法ですが、我が国はILO八十八号条約を批准しており、国が無料の職業紹介を行う責務があります。いわゆる先進諸国で、職業紹介分野から行政が手を引いている国があろうはずもありません。このような例を引き出すまでもなく、ハローワークの民営化はあり得ないのではありませんか。確たる答弁を求めるものです。

 深刻の度を増す雇用失業情勢に的確に対処し得る中身が求められていた本法案ですが、ふさわしい内容の充実が図られているかについては、心もとなさが残るのも事実です。

 やっと日の目を見ることになった失業給付にかかわる訓練延長給付の積極的適用は、失業者がみずからを安売りしなくても再就職を果たすために欠かせない能力開発やスキルアップとの両立を図るものです。社民党は、その必要性を九八年段階から強く求めてきました。該当者がすべて適用対象となるための不可欠な財政措置及び二年間の延長を制度的に担保できる訓練コースをどのように整備されていくおつもりなのでしょうか。御見解をお示しください。

 失業給付が退職金の補完でないことは、論をまちません。ただし、いわゆる大企業の離職者と、不況の影響を一番強く受けざるを得ない中小零細企業の倒産やリストラによって失業に直面した方とでは、その置かれている実態は天と地ほどの格差が存在すると言えます。

 この現実を認識するならば、保険制度である限り所得の多い少ないによって差別化はできないという原理原則に逃げ込むのではなくて、時限的な特例措置としての位置づけであったとしても、中小企業の離職者により手厚い給付が可能となる枠組みを早急に構築することを提案したいと思います。

 失業給付が低くて生活できないから職業訓練校に行きたくても行けないということでは、せっかくの訓練延長給付も役に立ちようがありません。本施策の目的を絵にかいたもちに終わらせないためにも、この提案の趣旨はお酌み取りいただけると思いますが、前向きな答弁をお聞かせください。

 中高年齢者に対する派遣期間の延長については、その副作用も冷静に推しはかる必要があります。

 私が危惧を抱かざるを得ない点は、第一に、幾ら中高年に限るという縛りがあったとしても、未曾有の長期不況のもと、企業の経営状態の深刻化に正比例する形で、正社員のリストラ誘因として働きさえしかねないという問題です。とりわけ、デフレ経済の進行を伴う不況下においては、大胆なコスト削減策こそが至上命題となるため、少なくとも現局面における期間延長は、正規雇用の代替機能としての側面を持たざるを得ないのではないでしょうか。

 この懸念が不幸にして的中するならば、低賃金層の増大による消費停滞の一層の拡大すら起こしかねないと言わなくてはなりません。要するに、効果よりも萎縮効果の方が大きくなりかねない点が第二の問題となります。

 当然、このような負の作用をも比較して考えなければならないと思いますが、今回の見直しが時宜を得ているかも含めて、明確な理由をお聞かせください。

 同時に、臨時異例の限定的な措置であり、現行の二十六業務以外に今後これが一般化されることがないことを明確に確認できる答弁をいただくことをもって、私の質問の締めくくりといたします。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 菅野議員にお答えいたします。

 ヤコブ病訴訟についてのお尋ねであります。

 このたび、裁判所から示された所見の内容は、これまで国が主張してきたことからすれば大変厳しい内容のものではありますが、この問題を早期に解決したいという裁判所の意志と理解しております。所見の内容については、関係省庁において現在詳しく検討しているところであり、また、患者の皆さん方や御家族の皆様方の御労苦は大変なものだと思い、できるだけ早く今後の対応を決めたいと考えております。

 消防職員や消費生活相談員などの公的分野での正規雇用の創出についてのお尋ねです。

 今般の総合雇用対策において、雇用された失業者については、事業での就業経験を生かし、常用雇用につなげることが重要であり、地方公共団体に対し、このような視点を十分に踏まえた事業を企画、実施することを促してまいりたいと考えます。

 なお、消防職員や消費生活相談員については、地域の実情等を踏まえて、地方公共団体において、必要な職員が確保、配置されるべきものであると考えております。

 所信表明で年間七百万人の求人があるということを述べたことについての真意でございます。

 その真意は、このように多くの求人がある中で、求人と求職のミスマッチを解消し、少しでも多くの人が職を見つけることができるよう、適切な雇用対策に努めることが重要であるという点にあります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣坂口力君登壇〕

国務大臣(坂口力君) 菅野議員にお答えをいたします前に、小沢議員の方から先ほどお尋ねをいただきました解雇ルールにつきまして、私の方も答弁をしなければならないということでございますので、お答えを申し上げたいと存じます。

 先般、解雇ルールを決める必要があるということを私が申しましたときに、経営者の皆さんからは、解雇しにくくなるから反対であるというお声をいただきました。また、労働組合の方からは、解雇されやすくなるから反対であるというお声をいただきました。

 しかし、労働関係が非常に多様化されてまいりまして、終身雇用だけではなくて、パートも多くなってまいりましたし、また派遣業もできてまいりましたし、また嘱託等もございますし、さまざまになってまいりましたから、この働くということについて法的なルールがないということの方が私はおかしいと思っておりまして、皆さん方が安心をして働いていただきますためには、やはり一定のルールが必要であるというふうに思っておる次第でございます。

 マスコミによりますと、坂口の声はだんだん小さくなってきたというふうに書いてございますけれども、きょうは、明確に、解雇ルールを決めたい、こういうふうに申し上げておきたいと存じます。

 菅野議員に対しまして、お待たせいたしました、お答えを申し上げたいと思います。

 まず最初は、ミスマッチを解消するためのハローワークの体制整備についてのお尋ねがございました。

 現在の厳しい雇用失業情勢に的確に対応しますためには、いわゆるミスマッチの問題を解消するということが大変重要でございますし、それから、ハローワーク自身も、非常に限られた人数の中で多くの失業者の皆さん方を処理しなければならないわけでございますから、非常に厳しい環境になっておることも事実でございます。

 しかし、ここのところは、ハローワーク自身でやらなければならないところと、そして、できる限り民間の皆さん方にもお手伝いをいただいて、民間の職業紹介所のようなところにつきましても今まで以上に整備をしていただいて、双方補いながらやっていく以外にないだろうというふうに思っております。

 ハローワークの方も、できる限り、民間の皆さん方の中で優秀な方、とりわけ職業の紹介等につきまして多くの知識をお持ちの皆さん方にひとつできるだけお越しをいただいて、その皆さん方のお力をかりて、ハローワーク自身といたしましても頑張っていきたいというふうに思っているところでございます。ハローワーク自身、やはりハローワークでなければならない、できない、採算に合わないベースのところもあるわけでございますから、そこはひとつここでしっかりとやっていきたいというふうに思っております。

 それから、訓練延長給付制度の拡充につきましてのお尋ねがございました。

 就職に当たりまして職業能力開発が必要な方に的確に職業訓練の受講機会を提供しまして、訓練延長給付の拡充を実効あるものにしますために、補正予算後で、本年度は約十六万人分の訓練延長給付に係る予算として計上しているところでございます。

 また、民間教育訓練機関でありますとか大学等を初めといたしまして、官民のあらゆる教育訓練資源を活用させていただいて、長期の訓練コースを含めて、多様な訓練コースを設定することにしてまいりたいというふうに思っているところでございます。

 それから、失業給付についてのお尋ねがございました。

 雇用保険制度は、失業前の生活水準を考慮の上で失業期間中の生活の安定を図るものでありまして、個人の生活水準ではなくて企業の規模に応じて給付水準を異ならせる取り扱いは適切でないというふうに考えておるところでございます。

 ただ、失業期間中の生活の安定を図るという趣旨から、離職前の賃金額の低い人に対しましては、基本手当の給付率を高くいたしておりまして、手厚い給付となっていることも事実でございまして、高給の方と低所得の人との間の格差がさらに大きくなっていくということであれば、こうした点につきまして、今後も検討していく道はあるだろうというふうに思っているところでございます。

 最後になりますが、中高年齢者に対する派遣期間の延長についてのお尋ねがございました。

 今般の中高年齢者に係る派遣期間の特例措置につきましては、現下の厳しい雇用失業情勢を踏まえまして、特に中高年の皆さん方が非常に厳しいわけでございますので、この中高年の皆さんに対する安定を図るためにとった措置でございます。

 今般の措置は、求人意欲の旺盛な営業等の業務において活用されることが見込まれております。若年者等につきましての本格的なこの問題は、これから多くの皆さん方にお集まりをいただきまして、そして、議論を重ねていって結論を出すということにしていきたいと思っているところでございますので、よろしくお願いを申し上げます。(拍手)

副議長(渡部恒三君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(渡部恒三君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時十二分散会




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