衆議院

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第18号 平成13年11月22日(木曜日)

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平成十三年十一月二十二日(木曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第十三号

  平成十三年十一月二十二日

    午後一時開議

 第一 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律案(内閣提出、参議院送付)

 第二 文化芸術振興基本法案(斉藤斗志二君外十五名提出)

 第三 地方公共団体の議会の議員及び長の選挙に係る電磁的記録式投票機を用いて行う投票方法等の特例に関する法律案(内閣提出)

 第四 出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)

 第五 中小企業信用保険法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第六 新事業創出促進法の一部を改正する法律案(内閣提出)

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本日の会議に付した案件

 日程第一 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律案(内閣提出、参議院送付)

 日程第二 文化芸術振興基本法案(斉藤斗志二君外十五名提出)

 日程第三 地方公共団体の議会の議員及び長の選挙に係る電磁的記録式投票機を用いて行う投票方法等の特例に関する法律案(内閣提出)

 日程第四 出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)

 日程第五 中小企業信用保険法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第六 新事業創出促進法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑




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    午後一時四分開議

議長(綿貫民輔君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

議長(綿貫民輔君) 御報告することがあります。

 永年在職議員として表彰された元議員大出俊君は、去る八日逝去されました。まことに哀悼痛惜の至りにたえません。

 大出俊君に対する弔詞は、議長において去る十七日既に贈呈いたしております。これを朗読いたします。

    〔総員起立〕

 衆議院は 多年憲政のために尽力し 特に院議をもってその功労を表彰され さきに懲罰委員長の要職につき また国務大臣の重任にあたられた正三位勲一等大出俊君の長逝を哀悼し つつしんで弔詞をささげます

     ――――◇―――――

 日程第一 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律案(内閣提出、参議院送付)

議長(綿貫民輔君) 日程第一、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。総務委員長御法川英文君。

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 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

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    〔御法川英文君登壇〕

御法川英文君 ただいま議題となりました特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律案につきまして、総務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、最近のインターネットその他の高度情報通信ネットワークによる情報の流通の拡大にかんがみ、特定電気通信による情報の適正な流通に資するため、特定電気通信による情報の流通によって権利の侵害があった場合について、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示を請求する権利につき定めようとするものであります。

 本案は、去る十一月九日参議院より送付され、十四日本委員会に付託されました。

 委員会におきましては、翌十五日片山総務大臣から提案理由の説明を聴取し、二十日質疑を行い、採決の結果、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 なお、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(綿貫民輔君) 採決いたします。

 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第二 文化芸術振興基本法案(斉藤斗志二君外十五名提出)

議長(綿貫民輔君) 日程第二、文化芸術振興基本法案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。文部科学委員長高市早苗君。

    ―――――――――――――

 文化芸術振興基本法案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔高市早苗君登壇〕

高市早苗君 ただいま議題となりました法律案につきまして、文部科学委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、文化芸術が人間に多くの恵沢をもたらすものであることにかんがみ、心豊かな国民生活及び活力ある社会の実現に寄与するため、文化芸術の振興に関し、基本理念を定め、国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、文化芸術の振興に関する施策の基本となる事項を定めることにより、文化芸術活動を行う者の自主的な活動の促進を旨として、文化芸術の振興に関する施策の総合的な推進を図ろうとするもので、その主な内容は、

 第一に、文化芸術活動を行う者の自主性や創造性の尊重など、文化芸術の振興に当たっての基本理念について規定すること、

 第二に、文化芸術の振興に関する施策の策定及び実施に関し、国及び地方公共団体の責務を明らかにすること、

 第三に、政府は、文化芸術の振興に関する施策を実施するため必要な法制上または財政上の措置等を講じなければならないものとすること、

 第四に、政府は、文化芸術の振興に関する施策を総合的に推進するため、文化芸術の振興に関する基本方針を定めなければならないものとすること、

 第五に、国の文化芸術の振興に関する基本的施策について規定すること

などであります。

 本案は、十一月十六日斉藤斗志二君外十五名から提出されたもので、去る十九日本委員会に付託され、昨二十一日斉藤斗志二君から提案理由の説明を聴取した後、質疑を行い、採決の結果、賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されたことを申し添えます。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(綿貫民輔君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(綿貫民輔君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第三 地方公共団体の議会の議員及び長の選挙に係る電磁的記録式投票機を用いて行う投票方法等の特例に関する法律案(内閣提出)

議長(綿貫民輔君) 日程第三、地方公共団体の議会の議員及び長の選挙に係る電磁的記録式投票機を用いて行う投票方法等の特例に関する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員長中馬弘毅君。

    ―――――――――――――

 地方公共団体の議会の議員及び長の選挙に係る電磁的記録式投票機を用いて行う投票方法等の特例に関する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

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    〔中馬弘毅君登壇〕

中馬弘毅君 ただいま議題となりました地方公共団体の議会の議員及び長の選挙に係る電磁的記録式投票機を用いて行う投票方法等の特例に関する法律案につきまして、政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、情報化社会の進展にかんがみ、選挙の公正かつ適正な執行を確保しつつ開票事務等の効率化及び迅速化を図るため、当分の間の措置として、地方公共団体の議会の議員及び長の選挙において、電磁的記録式投票機を用いることができるよう、公職選挙法の特例を定めようとするものであります。

 その主な内容は、

 第一に、地方公共団体は、条例で定めるところにより、電磁的記録式投票機を用いることができるものとする。

 第二に、二重投票の防止、選挙の秘密の確保、予想される事故への対応措置等の電磁的記録式投票機の具備すべき条件を規定するものとする。

 第三に、市町村の選挙管理委員会は、条件を具備する電磁的記録式投票機のうちから当該選挙の投票に用いる電磁的記録式投票機を指定しなければならないものとする。

などであります。

 本案は、去る十一月九日本院に提出され、十六日本委員会に付託され、十九日片山総務大臣から提案理由の説明を聴取し、昨日質疑を終局いたしました。

 次いで、私、委員長より、指定都市については、一部の行政区を除いて電磁的記録式投票機を用いて投票を行うことができるものとする等を内容とする修正案を提出し、採決の結果、修正案及び修正部分を除く原案はいずれも全会一致をもって可決され、よって本案は修正議決すべきものと決しました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(綿貫民輔君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は修正であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり修正議決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第四 出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)

議長(綿貫民輔君) 日程第四、出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。法務委員長保利耕輔君。

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 出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔保利耕輔君登壇〕

保利耕輔君 ただいま議題となりました法律案について、法務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、来年五月に開催されるワールドカップ日韓共催大会を控えてのフーリガン対策、さらに、緊急の課題になっている外国人犯罪対策及び旅券等の偽造・変造文書による外国人の不法入国・不法滞在対策を効果的に推進するため、上陸拒否及び退去強制事由を整備するとともに、入国審査官による事実の調査に関する規定を整備し、あわせて事務処理の合理化を図るため、法務大臣の権限の委任に関する規定を新設しようとするものであります。

 本案は、参議院先議に係るもので、去る十五日本委員会に付託され、翌十六日森山法務大臣から提案理由の説明を聴取した後、昨二十一日質疑を行い、これを終局し、採決を行った結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されたことを申し添えます。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(綿貫民輔君) 採決いたします。

 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第五 中小企業信用保険法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第六 新事業創出促進法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(綿貫民輔君) 日程第五、中小企業信用保険法の一部を改正する法律案、日程第六、新事業創出促進法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。経済産業委員長山本有二君。

    ―――――――――――――

 中小企業信用保険法の一部を改正する法律案及び同報告書

 新事業創出促進法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔山本有二君登壇〕

山本有二君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、経済産業委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 まず、中小企業信用保険法の一部を改正する法律案につきましては、中小企業者の資金調達の一層の円滑化を図るため、中小企業信用保険について、

 第一に、中小企業者が売掛金債権のみを担保として金融機関から借り入れを行う場合に、信用保証協会が行う保証を対象として、売掛金債権担保保険を創設し、保証限度額を一億円とすること、

 第二に、小規模企業者に対し無担保無保証人で信用保証協会が行う保証を対象とする特別小口保険につき、保証限度額を現行の一千万円から一千二百五十万円に引き上げること

等の措置を講じようとするものであります。

 次に、新事業創出促進法の一部を改正する法律案につきましては、新事業の創出を促進し、我が国経済に活力を与えるとともに良好な雇用機会をもたらすことが喫緊の課題となっていることにかんがみ、

 第一に、中小企業信用保険について、信用保証協会が行う新事業創出関連保証に係る無担保保険につき、保証限度額を現行の一千万円から一千五百万円に引き上げること、

 第二に、国が、人材の育成、資金調達の円滑化及び需要開拓の支援等、創業に必要な施策を総合的に推進するよう努めなければならないことを法律上明確にすること、

 以上の措置を講じようとするものであります。

 両案は、去る十一月十五日本委員会に付託され、同月十六日平沼経済産業大臣からそれぞれ提案理由の説明を聴取いたしました。昨日両案について質疑を行い、それぞれ採決を行った結果、両案はいずれも全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決いたしました。

 なお、中小企業信用保険法の一部を改正する法律案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(綿貫民輔君) 両案を一括して採決いたします。

 両案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。よって、両案とも委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(綿貫民輔君) この際、内閣提出、国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。国務大臣中谷元君。

    〔国務大臣中谷元君登壇〕

国務大臣(中谷元君) 国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。

 この法律案は、国際連合を中心とした国際平和のための努力に対して適切かつ効果的に寄与するため、これまでの国際平和協力業務の実施の経験等を踏まえ、武器の使用による防衛対象の拡大、自衛隊法第九十五条の適用除外の解除及び自衛隊の部隊等が行う国際平和協力業務についての特例規定の廃止の三点に関して改正を行うものであります。

 次に、この法律案の内容について、その概要を御説明いたします。

 その第一点は、第二十四条の武器の使用に係る防衛対象に、自己と共に現場に所在するその職務を行うに伴い自己の管理の下に入った者の生命又は身体を加えることとするものであります。

 第二点は、自衛隊法第九十五条の適用除外を解除し、第九条第五項の規定により派遣先国で国際平和協力業務に従事する自衛官に対し、武器等の防護のための武器の使用を認めることとするものであります。

 第三点は、自衛隊の部隊等が行う国際平和協力業務についての特例規定を廃止するものであります。

 以上が、この法律案の趣旨であります。

 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。(拍手)

     ――――◇―――――

 国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(綿貫民輔君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。細野豪志君。

    〔細野豪志君登壇〕

細野豪志君 民主党の細野豪志でございます。

 私は、民主党・無所属クラブを代表いたしまして、政府提出のいわゆるPKO協力法改正案につきまして、関係大臣に質問を行います。(拍手)

 九月十一日の米国における同時多発テロ以降、世界はテロリズムと闘っております。今回の闘いに最初に挑んだのは、ハイジャックされた四機の旅客機のうちの一つ、ユナイテッド航空九三便に乗っておりましたジェレミー・グリックさんであります。

 技術系会社の営業部長であったグリックさんは、仕事でサンフランシスコに向かうために、九三便に乗り込みました。彼は、ハイジャックされた機内から、地上の妻のリズベイさんに対し携帯電話で話し、既にハイジャックされた他の二機がワールド・トレード・センターに激突したことを知りました。絶望に満ちた機内で、グリックさんは、被害を最小限度に食いとめようと、文字どおり決死の行動に出られております。全米学生柔道チャンピオンであったグリックさんは、奥さんに対し、これから操縦席に突入する、娘を頼むと言い残して、乗客の協力者二、三名とともに操縦席に突入をいたしました。激闘の末、旅客機はピッツバーグ郊外の森の中に墜落をしております。九三便のターゲットは、ホワイトハウスがあるワシントンであったと言われております。

 娘を持つ三十一歳の青年の勇気ある行動でございます。全く同様の環境にある私として、彼の勇気に心より敬意を表したい、そういう思いでおります。日本の武道を学んだ彼の行動は、米国人のみならず、我々に対しても大きな勇気を与えているのではないでしょうか。(拍手)

 忘れてはならないのは、九月十一日以降、世界じゅうの多くの警察官、消防士、軍人、NGO関係者、この多くの方々が平和のために誠心誠意、努力をしているということでございます。もちろん、日本人の中にも、日本国内外で努力をされております自衛官、警察官、消防士、またパキスタンのような、今、危険にさらされている地域で活動しているNGOの関係者の方々、数多くいらっしゃいます。

 テロ特措法に関連をいたしまして、私は、何人かの自衛官、警察官の方から話を伺いましたけれども、その中で、彼らのように危険に身をさらしながら働く方々の尊厳を我々は余りにも軽んじていないかということを感じました。彼らが誇りを持って働くことができる環境を整備することは、我々政治家にとって最低限の義務ではないでしょうか。

 PKOを論じる際に、もちろん憲法との整合性は極めて重要でございます、しかし、同時に、活動に参加するPKO要員の円滑な任務の遂行と、何よりも安全に対する配慮が絶対に必要である、私はそのように考えております。

 以上の基本認識をもとに、関係大臣に、まずはPKOに対する基本認識からお伺いをしたいと思います。

 九月十一日の米国における同時多発テロは、二十一世紀の国際社会の平和と安全を守る上で、我々に大きな変化をもたらすものであります。二十世紀、世界は、国家間の紛争の予防に知恵を絞ってまいりました。今世紀、国家ではない主体が地域紛争やテロによって民主的な社会に生きる私たちを脅かす事態が、現実のものとなっています。このような地域紛争やテロの背景には、拡大する一方の貧困問題、民族、宗教などをめぐる歴史的に深い問題が潜んでいることは、言うまでもございません。このような紛争の変化に伴い、国連においても、昨年八月には、PKOの見直し案、いわゆるブラヒミ・レポートが発表されております。

 もう一つ考えていくべきは、我が国におけるPKOの重要性であります。天然資源のない、そして国際貿易に依存している我が国にとりまして、他国に増して、国際社会の安定が我々の生存の上で極めて重要になってまいります。私ども民主党は、議論に議論を積み重ね、国連を外交の中心の一つに据える我が国においては、PKOを人的貢献の大きな柱に据えるべきであるとの結論に達しました。

 このような国際環境の変化、また我が国の置かれている状況を考えたときに、我々はこのPKOに対してどのように取り組んでいくべきなのか、特にこの法律案につきまして、どのような問題意識のもとに出されたものなのか、官房長官及び防衛庁長官にまずお伺いをしたいと思います。

 次に、臨時国会終了間際に本改正案が提出された理由についてお伺いをいたします。

 一昨日、ワシントンで開催されましたアフガニスタン復興支援会合を皮切りに、これからさまざまな形でアフガニスタンへの復興支援が始まることが予想されます。今回のPKO協力法の改正案がこの時期に唐突に出てきたことは、このアフガニスタンへのPKO部隊の派遣を念頭に置いたものではないか、そういう認識を今多くの国民は持っております。実際に、与党の幹部の中では、アフガニスタンでの地雷除去にPKOを派遣する、そういうような方向性の発言すら聞こえております。しかし、私は、今回の改正案が仮に成立をいたしましても、参加五原則が基本的に維持される限り、アフガニスタンでのPKOには、到底、日本が参加できる状況にはならないであろう、そう考えております。

 アフガニスタンでの国連PKOの可能性、また日本の参加の可能性につきまして、現時点で政府がどのようにお考えか、お伺いをしたいと思います。特にこの点は、アフガニスタンの復興においてまさに陣頭指揮をとられていると自任をされております田中眞紀子外務大臣にお答えをいただきたいと思います。また、福田官房長官にもお答えをお願いいたします。

 次に、PKO参加五原則についてお伺いをいたします。

 五原則は、我が国がPKOを派遣する際に、その判断を行う極めて重要なものであります。与党内での議論を見ておりますと、政局的な思惑のみが交錯をして、この重要性がどれぐらい吟味をされたのか、私は疑問を持っております。

 第五原則の武器の使用基準については、先般のテロ特措法に倣って、とりあえず、「その職務を行うに伴い自己の管理の下に入った者」、これに対する防護は、武器の使用が可能となりました。PKO要員の安全確保に最も重要な武器の使用を、趣旨の異なる法律の文言を流用するという小手先の修正に終わった、そういう感が否めません。

 具体的に伺ってまいります。

 「管理の下に入った者」とは、具体的に、どのような状況の、だれを指すのでしょうか。「職務を行うに伴い」といった場合、PKO協力法における職務というのは、テロ特措法よりもはるかに広く、任務の種類も異なっております。

 今回の改正でPKFも解除されると仮定をいたしますと、例えば巡回や監視業務などを実施する際に、他国のPKO部隊の要員とともに行動する場合なども想定をされます。どのような状況になれば、他国のPKO要員のために武器を使用することが可能となるのでしょうか。また、PKFの本体業務に参加する場合、今回の武器使用の基準の見直しで十分と判断されるのかどうか、防衛庁長官にお伺いをいたします。

 さらに、武器の使用基準をめぐりましては、もう一つ、重大な問題がございます。

 本改正案を見る限り、たまたま我が国PKOの隊員とともに現場にいる者を防護する場合に限っては武器を使用することができるというようにも読めます。我が国のPKO要員は、現場にいる者、例えば国連職員や非武装のPKO要員、NGOスタッフなどを守らなくてはならないのでしょうか。それとも、武器を使用して守ることは可能ではあるが、場合によっては、守らなくてもよい、守らないこともあり得るということなのでしょうか。現場でともに職務に従事している非武装のPKO要員にとりましては、何かあった場合に必ず助けてくれる、そういう認識でともに活動を行うのとそうでないのとでは大きな違いがあります。

 民主党は、非武装のPKO要員をしっかりと守れるような措置を講ずるべきだとの考え方の中で検討を行ってまいりました。今回の武器使用基準の緩和だけで、ここで私が申し上げました我が国の非武装のPKO要員は、果たして守られるのでしょうか。この点は極めて重要ですので、防衛庁長官の明確な御答弁をお願いいたします。

 次に、PKO参加における第一原則の、紛争当事者間の停戦の合意について伺ってまいります。

 PKO法第三条では、「武力紛争の停止及びこれを維持するとの紛争当事者間の合意」と明記をされております。来年三月には、東ティモールにPKO部隊を派遣するとの情報も既に出てきておりますが、現在の東ティモールにおいて、果たして、紛争当事者とはだれのことを指すのでしょうか。また、紛争当事者の間で合意があるかないかの判断は、何に基づいてなされるのでしょうか。冒頭で申し上げましたとおり、近年の国際社会における紛争は、極めて複雑な様相を呈しております。紛争当事者が不明確な場合に、第一原則につきましてどのように適用をされるのか、官房長官に伺いたいと思います。

 ここまで指摘してきましたとおり、今回提出されました法案は、国会の論戦を非常に重要視する余り、我が国の国際協力がどうあるべきなのかという大局的な視点を全く欠いたものとなっております。

 PKOや人道的な国際救援活動は、それ自体、激動する国際情勢の中でさまざまな影響を受けて変貌しつつあります。ブラヒミ・レポートでは、PKOの迅速かつ効果的な展開能力の必要性や、平和維持活動の軍事要員、文民専門家などの効果的な活用という内容が、既に盛り込まれております。これまで以上にPKOの専門性、特殊性が要求をされる、この状況を考えたときに、我が国も、PKOを行うための組織を、警察や自衛隊とは分けて、別途、新たに創設するということも考えなければならない時期に既に来ているのではないでしょうか。

 我が国は、国際情勢の変化を敏感にとらえ、国連の一員としてその責任を果たしていく必要があります。PKOは、国連憲章上の根拠規定に基づき粛々と行われてきたわけではありません。むしろ、予見しがたい紛争が発生をし、国連がそれに対応を迫られる中でまさに進化をしてきたと言えるのではないでしょうか。この教訓を踏まえ、我が国としても、紛争の解決と、平和で安定した国際社会の建設を模索してPKOにかかわっていくという主体的な姿勢が今こそ求められていると私は考えます。

 我が国は、法律の個々の条文に則して何ができるのかという制約の議論から入るのではなくて、国際平和のために一体我々は何をなすべきか、この原点に立ち返りまして国際協力のあり方を議論していくときに来ている、私はそう考えております。この点につきまして、官房長官及び外務大臣の御決意を伺いまして、私の質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣福田康夫君登壇〕

国務大臣(福田康夫君) 細野議員にお答えします。

 まず、国連平和維持活動への我が国の取り組みについてお尋ねがございました。

 ますます相互依存関係を深めている国際社会において、国連を中心とした国際平和のための努力に対し、人的な面で積極的な協力を行うことが、我が国の国際的地位と責任にふさわしい協力のあり方であると考えております。

 このため、我が国は、平成四年の国際平和協力法施行以来、六回にわたる国連平和維持活動に参加してきたところであり、こうした実績は内外から高い評価を得ているところでございます。

 我が国としては、今後とも、これまでの活動の経験を踏まえつつ、国連平和維持活動に積極的に協力していく所存であります。

 次に、アフガニスタンでの国連PKO実施の可能性、日本の参加についてお尋ねがございました。

 現在のアフガニスタンの情勢は、国連PKOが設立されることになるかを含め、流動的な状況でございます。

 今後、我が国が国連に対し、いかなる協力を行い得るかについては、現地の情勢等を十分把握した上で、関係国及び関係国際機関とも協議しつつ、検討してまいる必要があると考えております。

 次に、停戦合意についてお尋ねがございました。

 東ティモールの紛争における紛争当事者は、独立派と統合派であると考えております。両紛争当事者間の武力紛争は、九九年四月に両紛争当事者を含む関係者によって署名された和平合意により停止されており、この和平合意が、国際平和協力法における「武力紛争の停止及びこれを維持するとの紛争当事者間の合意」に該当すると判断されます。現在の東ティモールの具体的な状況を総合的に判断すれば、停戦合意は有効に遵守されているものと考えております。

 また、個別の事例において停戦合意が存在しているか否かを認定するに際しては、具体的状況を踏まえて総合的に判断することとなります。

 最後に、国際平和の維持、回復のための原点に立った、あるべき国際協力のあり方についてお尋ねがございました。

 国連を中心とした国際社会の平和と安全を求める努力に対し、資金面だけでなく、人的な面でも協力を行うことが、我が国の国際的地位と責任にふさわしい協力のあり方であると考えております。

 我が国としては、今後とも、これまでの活動の経験をも踏まえながら、国連平和維持活動等に積極的に参加していくよう、一層努力してまいる考えでございます。(拍手)

    〔国務大臣田中眞紀子君登壇〕

国務大臣(田中眞紀子君) お答え申し上げます。

 アフガニスタン情勢につきましては、国連PKOが設立されることになるかを含めて、流動的な状態にあります。

 我が国といたしましては、国連を中心としたアフガニスタン和平への取り組みを積極的かつ主体的に支援していく考えですが、具体的にいかなる協力を行い得るかについては、現地の情勢等を十分に把握した上で、関係国及び関係国際機関とも協議しつつ、検討していく必要があると考えております。

 それから、国際平和の維持、回復のための原点に立った、あるべき国際協力のあり方についてお尋ねがございました。

 国連を中心とした国際社会の平和と安全を求める努力に対しまして、資金面だけではなく、人的な面でも協力を行うことが、我が国の国際的地位と責任にふさわしい協力のあり方であると考えております。

 我が国としては、今後とも、これまでの活動の経験をも踏まえながら、国連平和維持活動等に積極的に参加していくよう、一層努力していく所存でおります。(拍手)

    〔国務大臣中谷元君登壇〕

国務大臣(中谷元君) 細野議員から、今回の法改正に関しての基本認識についてのお尋ねがございました。

 我が国は、平成四年の国際平和協力法の施行以来、過去九年間において六回にわたる自衛隊の部隊等の派遣を行い、着実に実績と経験を積み上げてきたところであります。いろいろな成果と教訓がありました。

 このような実績等を踏まえまして、我が国が国際連合を中心とした国際平和のための努力に積極的に貢献することについて、内外でさらに期待が高まってきたところであります。

 こうした認識のもとに、政府として、国際連合を中心とした国際平和のための努力に対して一層適切かつ効果的に寄与するために、PKF本体業務の凍結解除をするとともに、防衛対象の範囲を拡大するなど武器使用規定の改正を行う旨の改正案を提出したものでございます。

 今回の改正においては、国際平和協力業務に従事する自衛官等による法第二十四条に基づく武器の使用に係る防衛対象に、「自己と共に現場に所在する」「その職務を行うに伴い自己の管理の下に入った者」を加えるということといたしております。

 これは、自衛官等が国際平和協力業務を行うに際して、同一の場所で活動することがある自衛隊員以外の者のうち、不測の攻撃を受けて自衛官と共通の危険にさらされたときに、その現場において、その生命または身体の安全確保について自衛官等の指示に従うことが期待される者を防衛対象とするものであります。

 その上に、どのような状況で他国のPKO要員のために武器の使用が可能になるというのかというお尋ねがございました。

 これにつきましては、他国のPKO要員等が改正後の国際平和協力法第二十四条の武器使用による防衛の対象となるか否かは、具体的な状況のもとで、その者が「自己と共に現場に所在する」「その職務を行うに伴い自己の管理の下に入った者」に該当するか否かによります。

 一般論として申しますと、部隊行動をしている武装した他国のPKO部隊は、その身を守るために必要な手段を有し、独自の判断で行動するものと考えられることから、「自己の管理の下に入った者」には当たらないというふうに考えております。

 他方、武器を所持した他国のPKO部隊の要員であっても、不測の攻撃を受けて自衛官等と共通の危険にさらされたという具体的な状況のもとで、独自の対処によりその生命または身体の安全を確保することが難しく、自衛官等の指示に従って統制のとれた行動をすることが適切かつ合理的である場合には、「自己の管理の下に入った者」に当たり得るというふうに考えております。

 今回の武器使用基準の見直しで十分と判断しているかというお尋ねがありました。

 私としては、自衛隊の部隊が国際平和協力業務を行うに当たって、活動する自衛官等が安全かつ効果的に任務を達成し得ることが重要だと考えており、この観点から、今回の国際平和協力法改正案は重要な意義があるものだというふうに考えております。

 防衛庁としては、国際平和協力業務に参加する自衛官が安全かつ効果的に任務を遂行できるよう、与党三党や、また野党の皆様、国会での御議論を踏まえつつ、今後とも、不断に検討を行ってまいりたいというふうに考えております。

 最後に、今回の武器使用に係る規定の改正だけで、現場でともに職務に従事する非武装のPKO要員は守れるのかどうかというお尋ねがありました。

 今回の改正におきましては、防護対象に、「自己と共に現場に所在」し、「その職務を行うに伴い自己の管理の下に入った者」を加えるものでございます。したがいまして、非武装のPKO要員については、不測の攻撃を受けて危険にさらされた場合に、みずからの生命または身体を守るすべを持たないため、このような者が自衛官等と同一の場所で活動する場合には、その生命または身体の安全確保について自衛官の指示に従うことが期待されているところであり、一般には、今回の改正により追加する防衛対象として守られることとなるというふうに考えております。

 以上でございます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(綿貫民輔君) 東祥三君。

    〔東祥三君登壇〕

東祥三君 私は、自由党を代表して、ただいま議題となりました国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律の一部を改正する法律案について質問すると同時に、自由党のこの問題に対する考え方、つまり、政府案の対案として自由党がつくった法案の骨子を述べさせていただきたいと思います。(拍手)

 かつて、PKOの生みの親であります第二代国連事務総長のダグ・ハマーショルド博士は、PKOは軍人の仕事ではない、しかし、軍人にしかできないと申しました。この言葉が、PKOの持つ特殊性、困難性を端的に物語っていると思います。

 今日、数多くの文民や志願したボランティアの方々もPKOに参加し、国際社会の平和のために汗を流して活動しておられます。こうした人々の活躍なしに活動が成り立たないのはもちろんであります。しかし、PKOの任務の中核は、武力紛争終結後の停戦の監視であり、兵力の引き離しであり、軍隊でなければできない仕事なのであります。

 湾岸戦争以来、我が国の国際貢献をめぐり、国会においてさまざまな議論がなされてまいりました。その過程で、今日のPKO協力法が制定されたのであります。しかし、国会での議論は、世界平和への貢献のために自衛隊のPKOへの参加がなぜ必要なのか、国連は我が国に何を求めており、その要請にこたえるためにはどうしたらいいのか、PKOに自衛隊が参加するに当たり国民の合意をどうつくっていくのかという核心をついた議論ではなく、PKOでは通常あり得ない事態を想定して、武力行使と一体化するとかしないとか、武器の使用はどうだとか、枝葉末節の議論に終始してきたと言わざるを得ません。

 この瑣末な議論の根源にあるのは、国際社会の共同行動である国連の活動に参加、協力するという、国際社会の一員として当然の責務を果たす行動にまで憲法九条を盾にとって制約を課してきた内閣法制局の憲法解釈に依存した歴代政府・与党の最高責任者、つまり内閣総理大臣の無責任な政治姿勢にあることは明らかであります。この呪縛から解き放たれない限り、自衛隊員が国際の平和と安全のため、各国の軍隊とともに堂々と胸を張って活動し、我が国が国際社会で名誉ある地位を占めることなど、到底できないと言わなければなりません。

 さて、今回、政府提出の改正案は、端的に申し上げれば、国際社会に格好をつけるために、またもや、ごまかしながら政府解釈を変更して、与党三党が合意できる範囲内で内容をわずかに手直ししたものにすぎません。このようなこそくな手段、与党の利害、打算による法案提出をいつまで続ければ気が済むのでありましょうか。

 私は、この立場から、中谷防衛庁長官の御見解を伺います。

 今回の法改正では、いわゆる平和五原則の規定が、武器使用規定をわずかに緩和したのみで、そのままになっております。PKO協力法制定時には、停戦の合意や当事国の同意などの原則が国連においても有効に機能しておりました。しかし、今日、PKOの形態も多様化し、古典的なPKOの原則に基づかないPKOも現にあらわれ、また、今後も行われる可能性があります。

 東ティモールへのPKO展開では、紛争当事者が不明確でありました。アフガニスタン和平後のPKOも、情勢は流動的であり、明確な停戦合意が成立した状態で行われるのか、定かではありません。過去の我が国のPKO派遣で最も貢献したと言っていいカンボジアの派遣の際にも、停戦合意が崩れているのではないかという疑問が提起されたのであります。

 その場合には、他国の要員をほったらかして、我が国だけ逃げて帰ってくるというような規定をそのままにして、今後もPKOに参加していくのでしょうか。これでまともなPKO協力ができるとお考えですか。また、国連安保理でPKO派遣決議が出ても、日本は参加することができない場合が多く出てくるのではないですか。防衛庁長官の御所見を伺います。

 次に、武器使用規定についてお伺いします。

 武器使用規定は、法改正するたびに拡大解釈を繰り返しております。しかも、そのたびに、なぜ最初からそうしなかったのだという内容だらけであります。

 政府は、米国で発生した同時多発テロ事件に際して、米英が、アメリカ、イギリスが自衛権を発動して行った軍事行動に対して、集団的自衛権の行使を認めないままに、後方支援と称して自衛隊を派遣するための法律を成立させました。そこでは、またもや政府解釈を変更し、武器の使用を、従来認めてこなかった「自己の管理の下に入った者」にまで防護対象を拡大して規定したのであります。そして、今回、国連協力とは何の関係もないこの規定を援用して、PKO協力法にもこれと同様の規定を盛り込もうとしているのであります。

 PKOには、国際的に定められた行動基準があるのです。政府解釈をもてあそび、いたずらに自衛隊員の命を危険にさらすようなこそくな対応は、もうとるべきではありません。

 先月来日した国連のゲエノPKO局長は、PKO活動は、参加する全部隊の団結が必要で、自国の部隊しか守れないようではだめだと述べておられます。なぜ、他国の部隊の要員を守るための武器使用を認めないのか。一緒に活動する他国の部隊に対して、あなた方が我々を守るのはよいが、私たちはあなた方を守りませんなどと、我が国の現地の指揮官に言わせて平気なのですか。防衛庁長官の御所見を伺います。

 次に、PKOの任務規定について伺います。

 PKOの任務は法律に限定的に列挙されているため、派遣先の事態に機敏かつ的確に対応することができず、任務遂行に大きな障害となっています。カンボジアでは、警護の任務が与えられていなかったために、情報収集と称して事実上の警護の任務を行った例もありますが、このような机上の空論にどれだけ派遣される隊員が神経をすり減らせているかと、防衛庁長官はお感じになりませんか。

 シビリアンコントロールの本義は、自衛隊の行動を、軍事を理解しない政治家が微細に一々チェックすることではなく、自衛隊に明確な任務とその遂行のための権限を与え、そのことに政治が責任をとるということであります。その大枠の実施計画を作成しさえすれば、実施要領を定めることなく、あるいはこれに縛られることなく、あとは現地の指揮官の判断にゆだねるよう法改正すべきではないかと思いますが、率直な御答弁をお願いしたいのであります。

 さらに、指揮権の問題について伺います。

 PKO協力法には、平和五原則を入れたがために、指揮権は国連にではなく、我が国が有することとなっております。PKO協力法第八条第二項では、現地のPKO司令官の指揮のことを「指図」と規定しております。政府解釈では、これを英語でコマンドと言うそうであります。現地司令官の指図は、実施要領を介して整合性のある形で我が国の指揮のもとに実施されるという、これも机上の空論の上につくられた論理に基づいて活動することを余儀なくされているのであります。つまり、我が国が勝手に引き返すことができなくなるからであります。

 PKOでは、すべての加盟国が国連の指揮のもとに活動するのは常識であります。下された指揮命令によって、これは実施要領にはないからできませんとか、実施要領を変更しますので待ってくださいなどという非常識がまかり通る余地はないのであります。堂々と法改正して、国連に指揮権があるとお認めになるべきだと思いますが、防衛庁長官の見解をお聞かせください。

 以上、防衛庁長官の見解をただしてまいりましたが、いわゆるPKFの凍結解除という全面的なPKOへの参加の道を開くに当たり、同時にしなければならないことは、制定当時の政治状況などもあり、かつて、いびつな形でつくられたこの法律全体を俯瞰して、抜本的に改めることでなければなりません。

 PKFに参加するのに閣議決定があり、国会の事前承認があり、二年ごとの国会承認があり、国会報告がある。このような煩雑な手続は、当時の渡辺美智雄外務大臣が評したように、若葉マークをつけて国連協力を始めたころの名残であり、本格的に国際貢献できる体制を改めてつくり直さなければならないと思うのであります。

 自由党は、昨日、政府案への対案として、国際平和協力法案並びに防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案を本院に提出いたしました。

 我が党は、自衛隊が、我が国の防衛とともに、国連のもとに行われる国際の平和及び安全の維持または回復のための活動に積極的に参加、協力することができることを明記した、国の防衛及び自衛隊による国際協力に関する基本法案を既に国会に提出しているところであります。この基本法に基づき、国際連合の決議による活動等に我が国が適切かつ迅速に協力していくための規定を整備しようとするのが、その趣旨であります。

 まず、国際平和協力法案でありますが、PKOなどの我が国の国連協力は、その活動が国際社会の共同行動であるにもかかわらず、政府の御都合主義的な憲法解釈により、多くの制約が課され、国際常識に反するばかりか、派遣される自衛隊員などの要員の安全確保の見地からも大きな問題となっております。この法案は、このような障害を取り除き、国際連合を中心として行われる平和のためのあらゆる活動に積極的に参加、協力することができるとするものであります。

 第一に、我が国の行う国際平和協力業務は、これを特定して限定的に列挙するのではなく、国連憲章第四十二条による平和強制活動、国際連合平和維持活動など、国際連合の決議に基づいて行われるあらゆる活動に参加することができるとしております。

 第二に、内閣総理大臣は、国際平和協力業務を実施するに際しては、実施計画を閣議決定し、国会に報告すれば、国連の指揮のもと、活動の細部にわたる規定を設けることなく活動できることとしております。

 第三に、隊員に貸与する武器は小型武器に限定することなく、また、任務遂行のため、確立された国際的な基準に従い武器を使用することができることとしております。

 第四に、この法律を制定するに当たり、国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律を廃止することとしております。

 次に、防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案についてであります。

 第一に、国際社会の中で国際連合の果たす役割及びその活動に我が国が積極的に参加、協力することの重要性にかんがみ、自衛隊法第百条の七に雑則として規定されている国際平和協力業務を、自衛隊法第三条第二項に本来の任務と定め、第三条第一項の我が国自身を防衛する任務に支障を生じない限りにおいて実施することとしております。あわせて、防衛庁設置法等に所要の任務規定を設けることとしております。

 第二に、国連のいわゆる武力行使容認決議に基づき、必要な武力を行使することができることとしております。

 自由党は、この法律を成立させることこそが、憲法の定める国際協調主義の理念に基づき、国際社会に対して貢献し、日本の役割を明確に果たしていく道であると考えるものであります。

 防衛庁長官の御所見をちょうだいし、あわせて各党議員各位の御賛同を切にお願い申し上げ、私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣中谷元君登壇〕

国務大臣(中谷元君) 東議員から、まず、我が国の派遣要員の途中の撤収についてのお尋ねがありました。

 国際平和協力法においては、原則がございます。停戦合意、受け入れ同意、中立性という国連平和維持活動の前提自体が崩れた場合には、我が国の判断で業務を中断し、派遣を終了し得ることとなっております。

 この原則は、我が国が派遣する要員の活動が、憲法が禁じる武力の行使に該当しないことを担保するための重要な原則であり、今後とも維持する考えであります。

 なお、我が国のこうした判断は、国連との間で密接な連絡をとりつつ行うこととしており、これは国連にも十分説明し、理解を得ているものであります。

 次に、他国の部隊の要員を守るための武器使用についてのお尋ねがありました。

 現行の国際平和協力法においては、武器使用による防衛対象には、他国のPKO要員や国連職員等は含まれておりません。他方、例えば平和維持隊に参加する各国部隊の要員が他国の部隊の要員や選挙監視要員などと同一の場所で活動するケースが考えられることから、いかなる範囲が防衛の対象として適当であるのか検討したところでございますが、このような検討の結果及び先般の与党の間における合意を受けて、自衛官が武器を使用して防衛することができる対象として、「自己と共に現場に所在」し、「その職務を行うに伴い自己の管理の下に入った者の生命又は身体」を新たに追加することとしたところであります。

 本改正は、憲法の範囲内において、国際平和協力業務の円滑な実施に資するものであるというふうに考えております。

 次に、PKO任務の実施について、できる限り現地の司令官の判断にゆだねるよう法改正をすべきではないかとのお尋ねがありました。

 国際平和協力業務の実施に当たっては、法律で定めた要件、業務の範囲を踏まえて、業務の内容、派遣先国、活動期間等を定める実施計画を閣議決定し、国会に報告するとともに、業務の実施方法や地域等に関してより具体的な内容を定めた実施要領を作成することといたしております。これによって枠をつくるわけでありますが、こうした枠組みのもとで、現地の指揮官が現地の状況に柔軟に対応することといたしております。今後とも、これの方向についてさらに努力をしてまいります。

 次に、PKO活動における国連の指揮権についてお尋ねがありました。

 派遣国から国連平和維持活動に派遣された要員は、派遣国の公務員として活動するものであり、国連は、派遣された要員や部隊の配置等に関するコマンド、指図は行うものの、身分に関する権限を含めた全般的な指揮監督権を有しているわけではないと承知をいたしております。したがいまして、要員は派遣国の公務員として活動するというふうに認識をいたしております。

 次に、自由党提出の法案に対する見解についてのお尋ねがございました。

 自由党におかれましては、国連を中心とした国際平和のための努力に対する我が国の協力のあり方を真剣に検討され、この法律案を提出されたものと考えまして、心から敬意を表したいと思います。政府提出の国際平和協力法の改正法案を御審議いただく中で、今後、国際平和協力のあり方について、ともに御議論してまいりたいと考えておりますので、よろしくお願いを申し上げます。

 以上でございます。(拍手)

    ―――――――――――――

    〔議長退席、副議長着席〕

副議長(渡部恒三君) 赤嶺政賢君。

    〔赤嶺政賢君登壇〕

赤嶺政賢君 日本共産党の赤嶺政賢でございます。

 私は、日本共産党を代表して、PKO協力法改正案について質問します。(拍手)

 十一月二十日、防衛庁長官は、テロ特措法に基づき、アフガンでの米軍の戦争支援のための自衛隊の出動を命令しました。戦後初めて自衛隊が戦時に海外出動するもとで、PKO協力法改悪が提案されております。戦争放棄、武力による威嚇、武力の行使はしないという憲法を踏みにじる相次ぐ暴挙を、厳しく糾弾するものであります。(拍手)

 PKO協力法は、湾岸戦争を契機にして、カンボジアPKOへの参加を口実に、自衛隊の海外派兵の突破口としたものであります。九〇年の最初の法案提出以来、足かけ三年、四つの国会を経ながらも、中核部分のいわゆるPKF本体業務を凍結することによって成立した、憲法九条にかかわる極めて重大な法律であります。

 そのPKO法の改悪を国会会期末になって突如提出し、しかも、国際平和協力本部長たる総理の本会議出席を拒否し、与党合意をてこに短時間の審議で成立させようとしていることは、断じて容認できません。(拍手)

 第一に、今なぜPKFの凍結を解除するのかであります。

 本法案は、いわゆるPKF本体業務の凍結を解除し、国連平和維持軍への自衛隊の普通科部隊、歩兵部隊の参加を可能にし、そのために、自衛隊のPKO参加が憲法違反とならない大前提としてきた武器使用原則を変更し、拡大しようとするものであります。それは、まさに、公然と武装した自衛隊の部隊を海外に出動させ、国連PKO、平和維持軍の武力行使を伴う活動に参加させようとするものであります。

 こうした法改正がなぜ必要なのですか。それは、アフガニスタンへのPKOを想定したものですか。日本の自衛隊がアフガニスタンでのPKFに参加し、停戦・武装解除などの監視や、緩衝地帯での駐留・巡回、武器の搬入搬出の検査・確認、放棄された武器の収集、地雷除去などの任務を行うことを検討しているのではありませんか。答弁を求めます。

 第二に、PKF参加に当たっての政府基本方針について質問します。

 PKF、国連平和維持軍は、武力紛争が冷めやらぬ外国領土に展開し、停戦監視や兵力引き離し、武装解除、治安の維持などに当たる部隊であります。現に行われているPKF活動は、停戦監視のために担当地域を巡回・パトロールし武器を押収する、あるいは、検問所を設けて不審者を尋問するなどの活動を行うものであります。こうした活動をめぐって、検問所が襲撃され、待ち伏せに遭うなど、突発的な武力衝突の危険と常に隣り合わせの活動であります。

 国連は、こうしたPKF任務の遂行に当たって、自衛だけでなく、任務遂行の妨害に対する武器使用、すなわち武力行使を認めています。だからこそ、政府自身も、自衛隊のPKF参加について、武力行使の目的を持って自衛隊を海外に出動させることは憲法上許されない、武力行使を伴うような平和維持軍への自衛隊の参加は認められないとの見解を表明してきたのであります。

 PKFが憲法違反の武力行使につながる危険があるから、PKF本体業務は凍結とせざるを得なかったのではありませんか。十年たったからといって、武力行使を伴うような平和維持軍という実態が変わったとでも言うのですか。明確な答弁を求めます。

 武力行使を伴うような平和維持軍になぜ自衛隊が参加できるのか、随分問題になりました。それに対して、政府は、PKO五原則を前提にするからPKFに参加しても憲法違反ではないとし、そのPKO五原則の中心的要素として、「武器の使用は、要員の生命等の防護のために必要な最小限のものに限られる」という政府基本方針を示したのであります。武器使用は、個々の隊員の判断で、自分の命が危なくなったときに自己防衛のために自然権的権利として行うものであり、部隊として指揮命令によって組織的に使用するものではない、はっきり歯どめをかけていると繰り返し説明してきたではありませんか。

 ところが、九八年の法改正で、武器の使用は、現場にある指揮命令権限を持つ上官の命令によって組織的に武器を使用することに変更し、今回さらに、「自己の管理の下に入った者の生命又は身体」を防衛対象にし、武器防護のために自衛隊が武器使用する規定まで盛り込みました。

 政府自身が、PKF参加が憲法違反とならない前提としてきた五原則の、その中心的要素である武器使用原則を大きく変質させることは、政府自身の見解からいっても、前提を崩した歯どめのないPKF参加であり、違憲の法律ということになるのではありませんか。明確な答弁を求めます。

 第三に、武器使用権限の拡大について質問します。

 この「管理の下」にある者の範囲は極めて不明確であります。政府は、「管理の下」にある者とは、自衛隊の宿営地、診療所、車両内や自衛官に同行している通訳などだと言います。一方、自民党の山崎幹事長は、この管理下という規定によって警護ができることになると述べ、久間政調会長代理は、管理下というのはゴムひもみたいなもので、伸びたり縮んだりすると述べ、警護任務が事実上可能になるとしています。結局、「管理の下」というあいまいな規定で、なし崩し的に外国部隊などの警護が事実上できるようにしようということではありませんか。

 今回の武器使用規定の拡大について、政府は、国連側から、自衛隊員だけでなく他国の要員なども守るのが国際標準であり、同じルールでやらないのは問題だとの指摘があったと説明しています。しかし、PKO法審議の際、日本の武器使用規定と国連の基準の違いが問題となり、当時の丹波外務省国連局長は、自衛隊の武器の使用は要員の生命などの防護のため必要な最小限のものに限るという原則で国連側の了解を得たと答弁してきたものであります。それを、今になって、国連からの要請なるものを盾に法改正を行おうというのは、到底、国民を納得させるものではありません。答弁を求めます。

 また、自衛隊法九十五条の適用を盛り込んでいることも重大です。従来、PKOに自衛隊法九十五条を適用しない理由として、PKOというのは紛争が終結した直後でまだ混乱が終息していない外国領土内で行う活動であり、武器防護のための自衛隊の武器使用は非常に不安定な状況の中でかえってその事態の混乱を招くおそれがあるから行わないと述べてきました。九十五条を適用して自衛隊が武器防護のために武器を使用すれば、当然、事態の混乱を招くのではありませんか。混乱を招かないとどうして言えるのでしょうか。十年間の中でこうした事態が変わったとでも言うのですか。

 自衛隊法九十五条に基づく武器使用は、PKO法二十四条に基づく自己防衛のための武器使用とは根本的に異なるものであります。九十五条の武器使用は、あらかじめ自衛隊の武器、装備などを警護することを任務として行うものであります。九十五条で防護する武器の範囲は、単に武器弾薬だけでなく、車両、燃料、通信機器なども対象にしており、結局、自衛隊のPKF部隊が構築する検問所やキャンプ、陣地を防護する部隊を置き、襲撃を受けた場合には応戦することになるのではありませんか。

 現に、自衛隊は、カンボジアPKOのときは、情報収集と称して武器を持って巡回任務を行い、ルワンダのときは、土のうを築いて宿営地を防護、警護し、その周辺地域を自動小銃を装備した装甲車でパトロールするなど、事実上の警護任務を行ってきました。

 こうした経験に照らせば、今回、「管理の下」にあるという規定や武器防護の武器使用を適用することによって、事実上の警護活動をさらに拡大する危険は極めて大きいと言わなければなりません。防衛庁長官の答弁を求めます。

 さらに、自衛隊が持っていく武器の内容も重大です。PKF参加、防護範囲の拡大、武器防護によって、自衛隊が持っていく武器、装備は、小銃にとどまらず、国連の求める任務に応じて、バズーカ砲や重機関銃、装甲車なども持っていくことになるのではありませんか。

 最後に、最近の国連PKOについての政府の認識について聞きます。

 政府は、停戦合意、当事者同意など、PKO参加五原則を前提にしてきました。しかし、現実のPKOはどうでしょうか。たとえ紛争当事者間に停戦の合意があったとしても、その後の事態の進展次第で合意がほごにされ、紛争が再発したり武力衝突が起きることは、これまでの実例が示しています。

 この十年間のPKOに関して、国連は、カンボジアでは和平合意の履行に挑戦し、アンゴラ、ソマリアなどでは内戦に後戻りさせ、ルワンダでは八十万人を下らない人々を組織的に虐殺したと指摘し、停戦合意があっても必ずしも和平に好意的でない不満分子の存在を挙げています。

 こうしたPKOの実態を政府はどのように認識していますか。答弁を求めます。

 最近の国連PKOは、従来のような国家間の紛争だけでなく、内戦型の紛争に展開するようになっており、そのもとでの武力衝突が多発しています。例えば、東ティモールPKOでは、昨年、西ティモールから越境してきた併合派の武装集団と国連PKO部隊が衝突し、銃撃戦を繰り広げ、国連側に犠牲者が生まれています。また、シエラレオネでは、武装解除に反発した紛争当事者の一方にPKO要員約五百人が拘束され、救出のために武力を行使するという事態も起こっています。

 こうした内戦型のPKOに対しては、停戦合意、当事国の受け入れ同意などを要件とする日本のPKO法のもとでは、およそ参加できないのではありませんか。答弁を求めます。

 昨年八月、国連平和活動検討委員会がアナン事務総長に提出したいわゆるブラヒミ報告は、今後のPKO活動について、停戦合意や中立性、自衛のための武力行使というPKOの基本原則は維持するとしながら、国連部隊などを攻撃してきた武装勢力に対して、応戦にとどまらず沈黙させるに足る反撃を認めるとか、中立性はすべての当事者を平等に扱うことではないといった見解を打ち出しています。

 今、政府・与党内で検討している、PKO参加五原則の全体の見直しは、こうした国連での検討方向に沿って、停戦合意や当事国の受け入れ同意がはっきりしないPKOにも参加しようというものではありませんか。明確な答弁を求めます。

 以上、本法案は、武器使用権限を拡大して、自衛隊がPKF参加に公然と踏み出すものであります。従来の政府の憲法見解をも一顧だにせず、憲法の平和原則をずたずたにして、ひたすら自衛隊の海外派兵を進める小泉内閣の政治姿勢を厳しく糾弾し、本法案の撤回を求めて、私の質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣中谷元君登壇〕

国務大臣(中谷元君) 赤嶺議員にお答えをいたします。

 今回の法改正の必要性についてお尋ねがございました。

 我が国は、平成四年の国際平和協力法の施行以来、PKO活動に対して、過去九年間において六回にわたる派遣を行いまして、着実に実績と経験を積み上げてきたところであります。このような実績を踏まえて、我が国が国際連合を中心とした国際平和のための努力に積極的に貢献することについて、内外で期待が高まっているところであり、政府として、国際連合を中心とした国際平和のための努力に対して一層適切かつ効果的に寄与するために、これまでの平和協力業務の実施の経験を踏まえ、PKF本体の凍結解除、防衛対象の範囲を拡大するなど武器使用規定の改正を行う旨の改正案を提出したものでございます。

 次に、今回の改正はアフガニスタンへのPKO派遣を想定したものではないかという御質問でございます。

 アフガニスタン情勢につきましては、そもそも国連PKOが設立されることになるかどうかを含めて、極めて流動的であります。

 いずれにしましても、今後、我が国がいかなる協力を行い得るかについて、現地の情勢等を十分把握した上で、関係国及び関係国際機関とも協議しつつ、検討していく必要があると考えております。

 次に、PKF本体業務の凍結解除についてのお尋ねがありました。

 このPKF本体業務については、国連平和協力法案の国会審議の過程において、当時の自民党、公明党、民社党の三党合意に基づき、国会で法案が修正され、凍結されたものですが、凍結の理由については、憲法違反につながる危険があるという説明ではなくて、我が国として初めて試みる国際平和協力業務の経験を実際に積み、内外のより広い理解を得てからPKF本体業務を実施することとしたものと説明をされております。

 これに対して、このPKO法に基づく協力の実績を踏まえまして、我が国が国際社会に積極的に貢献することについて、内外で期待が高まってきたところでありまして、政府として、先般の与党間における合意も受けて、今国会において、PKF本体業務の凍結を解除することとする法改正を行うこととしたところでございます。

 次に、参加五原則と武器使用規定の関係についてお尋ねがありました。

 参加五原則は、我が国が国連平和維持隊に参加するに当たって、憲法で禁じられた武力の行使をするという評価を受けることがないことを担保する意味で策定された、国際平和協力法の重要な骨格であります。

 他方、この業務を行う自衛官が、「自己と共に現場に所在」し、「その職務を行うに伴い自己の管理の下に入った者の生命又は身体」の防衛のために武器を使用することは、いわば自己保存のための自然権的権利というべきものであって、憲法の禁じる武力行使に該当するものではなくて、憲法の範囲内で、必要な最小限の武器の使用にとどめるとの考え方は、法制定時から何ら変わるものではございません。

 したがいまして、「自己の管理の下に入った者の生命又は身体」を防衛するための武器の使用を認めたとしても、参加五原則を策定することとした目的の範囲内であるというふうに考えております。

 続きまして、「管理の下」というあいまいな規定で、なし崩し的に外国部隊の警護、防衛を事実上できるようにするのではないかという御質問がありました。

 この改正においては、不測の攻撃を受けて自衛官と共通の危険にさらされたときに、その現場において、その生命、身体の安全確保について当該自衛官の指示に従うことが期待されている者を「その職務を行うに伴い自己の管理の下に入った者」と明確に表現したところでありまして、あいまいであるとか、なし崩し的であるとかいった御指摘は当たらないものだと考えております。

 続きまして、今回の改正により適用除外を解除することとしている自衛隊法九十五条の武器防護のための武器使用についての御質問がありました。

 この自衛隊法九十五条による武器等防護のための武器使用は、我が国の防衛力を構成する重要な物的手段を防護するための、あくまでも受動的かつ限定的な必要最小限のものでありまして、こうした趣旨、法的性格にかんがみて、あえて適用を除外しない限り、我が国領域外においても当然に適用されるものでございます。

 他方、PKO法においては、法制定当時の政策判断として、武器等防護のための武器使用によってかえってその事態の混乱を招くおそれも排除し得ず、まずは慎重かつ謙抑的に業務をスタートさせておくべきであるとの観点から、あえて自衛隊法第九十五条の規定の適用を除外するという判断を行ったところでありますが、この国際平和協力法の施行以来の国際平和協力業務の実績、経験を踏まえると、例えば、窃盗グループのようなものによる自衛隊の通信機材の盗難に際して、武器による威嚇等を行ったとしても事態を混乱させるようなことはないと考えられる一方、武器等の破壊または奪取を看過することによってかえって隊員の緊急事態への対応能力の低下や治安の悪化につながることも想定されること、こういった点が認識されるようになったことも踏まえまして、今般の改正により、自衛隊法第九十五条の規定を適用するものといたした次第でございます。

 続きまして、この九十五条を適用することによって、自衛隊のPKF部隊が検問所等を防護、防衛する部隊を置いて応戦することになるのではないかというお尋ねであります。

 先ほど御説明したとおり、自衛隊法九十五条はあくまで受動的かつ限定的な必要最小限度のものでありますし、また、九十五条に基づく武器使用は、武器等を警護する任務を付与された自衛官のみが行うことができるものであります。そのために武器等の防護を専らの任務とする部隊を置くのではなくて、国際平和協力業務に当たる隊員がその任務に付随して武器を防護するものでございます。

 仮に、武器等を破壊、奪取しようとする者がある場合において、他に手段がない、やむを得ない場合には武器を使用することとなりますが、これは、あくまで受動的かつ限定的、必要最小限度のものになるわけでございます。

 最後に、PKFに参加する自衛隊の携行する武器についてのお尋ねがございました。

 この部隊等につきましては、携行する武器についての限定はないものの、PKO参加五原則のもとに、個別具体的に任務の内容、現地の情勢も踏まえて、必要な装備の種類、数量を決めることになります。したがって、自衛隊の携行する装備については、PKOの実施計画に定めた上、国会に報告しているところであり、このような枠組みは、今回の改正により変更するものではございません。従来のものに従いまして武器等の選考を行ってまいりたいというふうに思っております。

 以上でございます。(拍手)

    〔国務大臣福田康夫君登壇〕

国務大臣(福田康夫君) 赤嶺議員にお答えします。

 まず、内戦型のPKOに対する参加についてお尋ねがございました。

 紛争当事者が国ではないといったいわゆる内戦型のPKOについても、国際平和協力法で定める要件を満たす限り、そのような活動への我が国の参加は可能であると考えております。

 なお、我が国が参加したUNTACやモザンビークのONUMOZ等のPKOは、いわゆる内戦型のPKOであったと考えております。

 次に、参加五原則の見直しについてお尋ねがございました。

 そもそも、ブラヒミ報告は停戦合意や当事者の受け入れ同意がはっきりしないPKOを志向するものではありませんが、いずれにせよ、政府としては、現在、今回の改正に加えてさらなる国際平和協力法の改正を予定しているわけではございません。

 また、参加五原則は、我が国が国連平和維持隊に参加するに当たって、憲法が禁ずる武力の行使をするとの評価を受けることがないことを担保する意味で策定された、国際平和協力法の重要な骨格であり、それを崩すといったことは考えておりません。(拍手)

    〔国務大臣田中眞紀子君登壇〕

国務大臣(田中眞紀子君) 赤嶺議員にお答え申し上げます。

 PKOの実態に関する政府の認識につきましてお尋ねがございました。

 冷戦後、紛争解決における国連の役割が見直されて、国連PKOへの期待が高まりました。他方、国際社会が対応を迫られる紛争の多くが、国内紛争、または国内紛争と国際紛争の混合型に変わったことなどから、国連PKOも、ソマリアなどで大きな試練に直面いたしました。

 国連は、このような過去の教訓を踏まえ、PKOを中心とする国連の平和活動の包括的な見直しを行っております。我が国としても、かかる取り組みを評価しており、見直しのための議論に積極的に参加を果たしてきております。国際の平和と安全の維持のために一層重要な役割を果たすことが期待される国連PKOが直面する問題に対処するために、我が国は可能な限り努力をしていく所存でおります。

 次に、今回の武器使用規定の拡大に関する国連側の要請についてお尋ねがございました。

 御指摘のとおり、我が国が国連PKOに参加するに当たっては、国際平和協力法上認められる武器使用に関し、国連に対し、十分な説明を行ってきております。一方、国連側といたしましては、我が国の法制度を理解し、我が国の国内議論に立ち入る立場にないとしつつも、PKOはあくまで平和を達成する活動であることを強調の上、各国のPKO部隊ができる限り武器使用に関し統一的な行動をとることが、目的達成のため、また要員の安全の確保上、重要であることを指摘いたしております。

 日本といたしましては、国連側からのかかる指摘やこれまでの国際平和協力業務の経験などを踏まえ、今回の法改正案を提出した次第でございます。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(渡部恒三君) 今川正美君。

    〔今川正美君登壇〕

今川正美君 社会民主党の今川正美です。

 私は、社会民主党・市民連合を代表しまして、ただいま議題となりました国連平和維持活動協力法の一部改正案について、質問いたします。(拍手)

 私は、せっかくこの大事な席に立ったわけでありますが、このように空席ががらがらと多いのを前にしまして、本当に残念であります。

 まず最初に、現在、米軍などが行っているアフガニスタンへの戦闘行動を支援するために、政府は、今月九日、護衛艦など三隻をインド洋へ派遣しました。これは防衛庁設置法第五条十八号を根拠とすると説明されていますが、第五条は、防衛庁の所掌事務を規定したものであって、自衛隊の艦船がはるかインド洋まで出かけて情報収集をするような任務を定めたものではありません。しかも、本隊派遣のための基本計画策定に必要とされた情報収集は間に合わず、まさに、法律も基本計画も全く無視した見切り発車でしたが、防衛庁長官の御見解を伺います。

 さて、今月二十五、二十六日にも、いわゆる本隊が、私の住む佐世保や呉、横須賀から派遣されようとしております。その基本計画をめぐって、与党内部からさえ、具体的内容に欠けるのではないかとの批判が出た模様であります。今回、演習とは違って、戦争支援に出動するのですから、詳細の計画は軍事機密の理由で明らかにされない、つまり、シビリアンコントロールがきかなくなるおそれが強いと思います。また、米軍支援を円滑にやろうとすれば、米中央軍の指揮下に入ると思われますが、そうなると、集団的自衛権の行使になってしまいます。

 ところで、いわゆる先遣隊が派遣された今月九日、私は、土井党首とともに小泉総理と会った折、B52戦略爆撃機が発進しているディエゴガルシア、インド洋は戦闘地域であって、そこに自衛艦を派遣するのは国会答弁やテロ対策特措法に反するのではありませんかと問いましたら、首相は、米軍にとっては確かに戦闘地域だ、このようにはっきり明言されました。後方支援も、武力行使のいかんを問わず、国際的常識では戦闘行為そのものであって、日本国憲法によってかたく禁じられているはずですが、この点、福田官房長官の御見解を伺いたいと思います。

 さて、次に、PKO協力法改正案についてお伺いします。

 第二次世界大戦後創設された国連は、本来、国際紛争を解決する機関として期待されましたが、冷戦と五大国の特権で安保理が機能せず、相次ぐ紛争を処理するためにPKOが生まれ、五十三年の歴史の中で数々の実績を積み上げてきました。その原則は、中立的であり強制しない、だから、その中心は常に中小国でした。ちなみに、PKOへの派遣国は、第一位がバングラデシュ六千四十人、第二位はナイジェリアの三千四百四人であります。

 そして、PKO自体、第一世代から第三世代まで、つまり、伝統的PKOから拡大PKOへと、時代の変化の中で大きく変わってきています。そのプロセスの中では、例えばガリ元事務総長の提唱した平和執行部隊のように、ソマリアPKOで挫折したケースもありました。

 こういう状況のもとで、日本のPKO参加に関しては、九年前のいわゆるPKO協力法案をめぐって大激論が交わされ、自衛隊の海外派遣を例外的に認める代償としてPKO参加五原則を設定し、PKFへの参加凍結を決めるなど、厳しい制約を課したのでした。そして、当時、これは法解釈の限度とされたはずです。

 しかし、今回のPKO協力法改正案では、防護対象を、テロ対策特措法同様に、「自己の管理の下に入った者」にまで広げ、さらに、自衛隊法第九十五条の適用除外を解除して、武器等の防護のための武器使用をできるようにしました。また、PKF本体業務を凍結解除するとしています。

 これらは、これまでの貴重な議論の積み重ねを無視するものであって、断じて許されません。こうした武器使用の拡大は、国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為につながる可能性が高く、憲法九条がかたく禁じたものと思いますが、防衛庁長官の御見解を伺います。

 また、次期通常国会では、任務遂行を実力で妨げる企てに対抗するための武器使用や警護任務の付与、あるいは紛争当事者の同意抜きのPKO参加など、PKO参加五原則全体の抜本的な見直しまで行う動きもあるようです。

 これらは、かつて自民党の後藤田正晴元副総理が、自衛隊の海外派遣はまるでガラス細工のようなもので危うい、あるいは、ダム決壊はアリの一穴からと例えられ、厳しく警告されていましたが、現実は、まさにそのとおりになりつつあります。中谷長官、この警告をどのように受けとめられますか。御見解を伺いたいと思います。

 カンボジアに始まり、現在のゴラン高原まで、九年間に及ぶ自衛隊のPKO参加についての検証と総括を国会できちんとやるべきです。自衛隊よりも文民組織による方が成果の上がったケースも少なくありません。これからのPKOでは、ブラヒミ・レポートの提言にもあるように、紛争の予防や平和構築を基軸に据えるべきだと思います。

 そうした意味でも、我が党が社会党時代に提唱した、非軍事、文民、民生による、別組織による国際協力をいま一度本格的に検討してみる価値があると思うのですが、福田官房長官の御見解を伺います。

 ところで、敗戦後、日本は、憲法第九条で、戦争放棄、非武装を規定しました。ところが、間もなく、朝鮮戦争を契機として、アメリカが日本の再軍備を求め、自衛隊を創設したのでした。しかし、その条件として、専守防衛に徹し、自衛隊が海外に出ることは決してない、必要最小限の自衛力にとどめるということを、我が国民のみならず、大変な惨禍を与えたアジア諸国に約束したのでありました。私たちは、この原点を決して忘れることがあってはなりません。

 小泉総理は、いとも簡単に、自衛隊は常識からすれば戦力と発言されました。制服組出身の長官でもあられる中谷長官は自衛隊の原点と総理発言をどのように考えられますか、御見解を伺います。

 また、自衛隊の基本任務は自衛隊法第三条に基づくものであって、本務から外れた仕事を第百条の雑則で多用、乱用するのは法体系自体を崩すことになりかねないと思いますが、中谷長官の御見解を伺います。

 冷戦終結から十二年、この間、欧米諸国では、軍事費や装備、兵員数などを約二、三割削減していますが、残念ながら、我が日本だけは軍縮を怠ってきました。さしたる脅威もない今日、米軍基地の整理縮小はもとより、自衛隊の大胆な縮減が必要だと思います。

 あわせて、約二十四万人にも肥大化した自衛隊の実態にメスを入れるべきだと思うのです。三年前の防衛調達に係る汚職に見られる上層部の腐敗と、その温床である産軍癒着の構造を抜本的に改める必要があります。

 一方では、下部で、いじめ、しごきなどによる自衛官の自殺が何と毎年六十人前後も生じていることは、決して見逃すわけにはいきません。

 今回、佐世保から派遣される予定の護衛艦「さわぎり」では、二年前の十一月、三等海曹がいじめによって二十一歳の誕生日に艦内で自殺をするという痛ましい事件があり、先月一日から佐世保で、さわぎり事件の裁判が始まっております。

 このたびの自衛艦海外派遣でも、隊員や家族の皆さんの不安、悩みは深刻なものがあります。国土を守るために命をかけることはあっても、他国の戦争支援にはるか海外へ出動することは当初から想定していなかったからです。

 私は、この際、軍事オンブズマンなど、自衛官自身の人権を守るしっかりした制度を国会のもとにつくるべきだと思いますが、中谷長官の明快な御答弁を求めます。

 最後に、本改正案は憲法が禁じた武力行使に道を開くものであって、速やかに撤回されることを求めます。あわせて、自衛艦の海外派遣を直ちに中止するよう強く求めて、私の質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣福田康夫君登壇〕

国務大臣(福田康夫君) 今川議員にお答えします。

 まず、インド洋で協力支援活動を行うことについてお尋ねがございました。

 協力支援活動等の実施区域については、戦闘行為が行われない地域でなければならないことなどを考慮して、テロ対策特措法に定めるところにより設定したところでございまして、御指摘のような憲法上の問題は生ずることはないと考えております。

 なお、このような実施区域において、仮に米軍の爆撃機が発進することがあるとしても、爆撃機の発進自体はテロ対策特措法に規定する戦闘行為には当たらないことから、そのことのみをもって当該地域で戦闘行為が行われているとは、認めることはできないと考えております。

 次に、国連平和維持活動への、自衛隊ではない別組織による協力についてお尋ねがございました。

 国連平和維持活動は、冷戦後、選挙、文民警察、人道支援、行政事務等の多様な任務を含むようになってきており、我が国が派遣する国際平和協力隊を構成するのは自衛隊に限られません。他方において、停戦監視等の軍事的任務が依然として国連平和維持活動の中核的な部分を占めていることも事実であります。

 我が国がこのような活動に適切かつ迅速に協力するためには、自衛隊が長年にわたって蓄積した技能、経験、組織的な機能を活用することが最も適切であり、このことは、国際平和協力法制定以来、九年間で六回にわたり国際平和協力業務を実施してきた自衛隊の実績を勘案すれば、明らかであります。こうした自衛隊の実績は、内外から高い評価を受けてきたところでございます。

 また、仮に自衛隊と同様の機能を有する新たな組織を設ける場合には、膨大な経費と時間を要し、非効率であることは明らかであります。

 これらのことから、停戦監視等の任務の実施のため、自衛隊と別個の組織を設ける必要はないと考えております。(拍手)

    〔国務大臣中谷元君登壇〕

国務大臣(中谷元君) 今川議員にお答えをさせていただきます。

 まず、情報収集のための艦艇派遣の法的根拠についてのお尋ねでございます。

 これは、防衛庁の所掌事務の遂行の必要性から、防衛庁設置法第五条第十八号が根拠でありまして、これによりまして、レーダーサイトや航空機、艦艇による警戒監視を初め、例えば海外の例におきましては、自衛隊法百条の五、国賓等の輸送、また百条の八、在外邦人の輸送における派遣予定地域への現地調査、事前の飛行場や港湾の調査、また海域調査等も実施をいたしておりまして、これが根拠でございます。

 今回の派遣につきましても、テロ対策特措法に基づく自衛隊の協力支援活動の実施が考えられる海域を対象として実施をいたしておりまして、気象、海象、寄港地の補給能力を含む港湾等の状況に係る情報収集を行っているものでございます。これらの情報収集活動は、今後の協力支援活動等を円滑に行うとの観点から実施しているものでありまして、基本計画の策定のみを目的としたものではございません。

 他方、基本計画においては、協力支援活動の実施区域の範囲が定められておりますが、実施区域の範囲については、対米協議を通じて得られた米側のニーズ、戦闘行為の状況、自衛隊の能力等を総合的に勘案して、我が国として主体的に検討した結果、決定したものでございます。

 このようなことから、先般の情報収集のための艦艇派遣は、法も基本計画も全く無視した見切り発車との御指摘は当たらないものでございます。

 続きまして、国際平和協力法制定時における議論の積み重ねを無視した、憲法に触れるような法改正ではないかというような問い合わせでございます。

 この法律制定時においては、国連を中心とする国際平和のための努力に対して我が国としてどのような貢献を行うべきかについて、さまざまな議論がございましたが、この議論を経て成立した国際平和協力法に基づいて過去九年間にわたって各種の国際平和協力業務を実施して、それぞれ実績と経験を積み重ねたわけでございまして、この実績と経験については、その都度、国会に報告をされ、さまざまに御議論をいただいているところでありまして、それぞれの国会での御議論の積み重ねをいたしまして、今回の法改正を行うものでございます。

 また、今回の改正後の武器使用は、憲法の禁じる武力行使に当たるものではございません。

 法制定時における後藤田元副総理の御指摘についてのお尋ねがございました。

 御指摘の後藤田元副総理の発言は、国際平和協力のための自衛隊の海外派遣については、憲法との関係で慎重な議論が必要であるという趣旨の発言であるというふうに承知をいたしております。

 非常に大事なことでございます。私も、自衛隊による国際平和協力のあり方については、今後とも、国会で議論を十分にしていただくことが重要であるというふうに考えております。

 続きまして、専守防衛等防衛政策の基本的な考え方と小泉総理の発言との関係についてのお尋ねがございました。

 専守防衛とは、申すまでもなく、相手から武力攻撃を受けたときに初めて防衛力を行使し、その形態も自衛のための必要最小限にとどめ、また、保持する防衛力も自衛のための必要最小限度のものに限るなど、憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略の姿勢をいいます。

 我が国は、この専守防衛に徹して、他国に脅威を与えるような軍事大国にならないという基本理念に従って、適切な防衛政策の運営に努めてきておりましたし、こうした考え方は今後も堅持をしてまいりたいというふうに思っております。

 なお、御指摘の小泉総理の発言は、戦う力という一般的な意味での戦力という言葉を使うならば、自衛隊は戦力、すなわち戦う力であるという趣旨のものであると私は承知をいたしておりますが、他方、憲法九条に言う戦力に自衛隊が当たらないというのは当然のことでございます。

 続きまして、自衛隊の任務と法体系についてのお尋ねがございました。

 自衛隊法第三条は、自衛隊の本来の任務として、「自衛隊は、わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対しわが国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当る」と規定しておりまして、防衛出動などの具体的な任務については、自衛隊法第六章に規定をいたしております。

 一方、自衛隊法第八章では、これらの付随的任務として、国際緊急援助活動、国際平和協力業務、在外邦人の輸送、後方地域支援等の任務を規定いたしておりますが、これらの任務は、自衛隊が長年にわたって蓄積した技能、経験、組織的な機能などに着目して、これを活用するとの性格を持つものでありまして、自衛隊の本来の任務に支障のない限度で行うものといたしております。

 したがいまして、自衛隊を律する法体系を崩すことになるのではないかという御指摘は当たらないというふうに思います。

 最後に、軍事オンブズマン制度についての御提言がございました。

 防衛庁、自衛隊におきましては、自衛隊員の不祥事が発生した場合には、公正な立場で調査し得る隊員によって調査を実施し、必要な対策を講じており、必ずしも内部調査等に限界があるとは認識をしておりませんが、防衛調達、懲戒処分等の人事分野において、より一層の透明性、公正性を向上させるために、防衛調達審議会や防衛人事審議会等の部外有識者による機関を活用しているところでございます。

 他国のオンブズマン制度の導入例のお話がございました。外部機関による行政のチェック機能にかかわる基本的な問題が含まれていることでもございますので、慎重に検討することが必要であるというふうに考えております。

 以上でございます。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(渡部恒三君) 小池百合子君。

    〔小池百合子君登壇〕

小池百合子君 私が、本日、最後の代表質問者でございます。

 与党三党、自由民主党、公明党及び保守党を代表いたしまして、国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、主務大臣である防衛庁長官に御質問をさせていただきたいと思います。(拍手)

 早いものでございます。平成四年、いわゆるPKO法が成立いたしましてから、はや十年目を迎えます。湾岸危機、湾岸戦争を契機といたしまして、国際社会への貢献、とりわけ人的貢献の必要性が国民の間にも強く認識される一方で、自衛隊の海外での活動を大幅に拡大いたしますPKO法は、当時の国論を大きく二分したものでございます。この衆議院の本会議場、そして委員会におきます激しいやりとりは、いまだに記憶に残っているところでございます。

 さて、このような激しい国民的な大議論を経まして成立したPKO法に基づきまして、我が国は、これまで、カンボジア、モザンビーク、ルワンダなどでの国連活動に対しまして、停戦の監視、文民警察、選挙分野での協力や、道路、橋の修理、輸送業務の実施等の後方支援分野への自衛隊の部隊派遣と、さまざまな活動を実施し、国際貢献に大きく寄与してまいりました。日本のPKOに対しましては、その地道ながらも的確な活動、そして、きめの細かさに対して、派遣された地域の人々、政府はのみならず、世界からも定評のあるところでございます。

 しかし、これらの活動のすべてが順調かつ安全に実施されてきたわけではないことは、皆さんも御存じのとおりでございます。カンボジアにおきましては、文民警察の高田警視、そして、NGOの中田厚仁さんがそのとうとい命を失われたのでございます。ルワンダでは、治安状況が極めて悪い、その中で、拉致された邦人を救出に向かったということも、報道で伝えられているところであります。

 私は、我が国が、憲法前文にうたわれております、国際社会における名誉ある地位に立ち、国際社会から尊敬をかち取るためにも、国際貢献は必要不可欠なものと考えております。そのために、遠く異国の地に派遣され、その任務を課されるのは、自衛隊など日本国民であります。したがって、これらの方々が安全にかつ効果的な国際貢献を実施できるようにするのは、国家として当然の責任と考えます。

 まことに残念なことに、現行のPKO法でございますが、早い段階から、幾つかの問題点が指摘されてまいりました。

 PKF本体業務を凍結することによりまして、緩衝地帯における駐留・巡回など、我が国が協力できる分野をみずからが縛る、そして、その結果として効果的な国際貢献の範囲を狭めるということになっているわけでございます。

 また、安全を確保する最後の手段であるはずの武器の使用基準が極めて制約されており、派遣された隊員の方々に過度の負担を強いてきたことは、我々、立法府に身を置く国会議員として、反省すべきところも多々あると思います。

 さらに、自分たちの武器が壊される、はたまた盗まれたりする、そういうことのないためにも武器使用を認めております自衛隊法の第九十五条も、適用されていません。結果として、隊員の緊急事態への対応能力の低下、そして現地の治安が悪化しかねない、こういった点が懸念されるわけであります。

 今般、政府は、これら現行PKO法の問題点を克服するために、この改正法案をようやく今国会に提出されました。

 そこで、防衛庁長官にお伺いをいたします。

 政府は、現行PKO法に対して現在どのような評価をされておられるのでありましょうか。そしてまた、今般のPKO法の改正法案はもっと早い段階に国会へ提出されるべきであったと考えますが、この点についてどのようにお考えなのか、お聞かせいただきたいと存じます。

 今後、PKO法改正法案の成立によりまして、現状と比較して、我が国が実施できる国際貢献の分野が広まり、また、より安全かつ効果的に活動に従事することが可能になると考えているところであります。我が国が主体的かつ積極的に国際貢献を行うことに国際社会の期待も高まっている現状におきまして、今後、政府は、我が国が国連のPKO活動に対しましてどのようにかかわっていくべきなのか、そのお考えについて伺わせていただきたいと思います。

 最後に、今般のPKO法改正法案は、今後の我が国の国際貢献の可能性を飛躍的に高めるものであり、国際社会における我が国の立場をより強いものにするという点で、国益にも合致するものであります。また、派遣される隊員の方々が安全に、かつ効果的に活動に従事することを可能にするといった点からも、有益なものと言えると思います。

 細部にわたります具体的な質問は安全保障委員会の質疑の場に移してまいりたいと思いますが、私は、議員各位の良識のもと、本院におきます本法案の速やかな可決を期待いたしまして、最後の代表質問を終わらせていただきます。(拍手)

    〔国務大臣中谷元君登壇〕

国務大臣(中谷元君) 小池百合子議員にお答えをさせていただきます。

 まず、PKO法に対する評価についてのお尋ねがございました。

 現在の国際平和協力法は、我が国の国際平和協力のあり方をめぐる国会でのさまざまな議論を経て成立したものですが、施行以来九年間、さまざまな活動を実施してまいりました。

 例えばルワンダにおいては、難民救援活動に対して、ガリ国連事務総長や、アフリカ四十八カ国を代表して象牙海岸共和国、コートジボワールのエッシー外務大臣より、高い評価が表明されるなど、国際的にも高く評価されており、また、我が国においても、国民の理解と支持が深まっているものというふうに考えております。

 これまでの派遣の経験と国会での議論を踏まえることによりまして、今後、我が国が、国連を中心とした国際平和のための努力に対してより適切かつ効果的に寄与することによって、世界から評価され、より尊敬される国家になりますように、この同法の改正案をもってさらなる努力をしていかなければならないというふうに思っております。

 次に、国連平和維持活動への我が国の取り組みについてのお尋ねがございました。

 ますます相互依存関係を深めている国際社会において、国連を中心とした国際平和のための努力に対して人的な面で積極的な協力を行うことが、我が国の国際的地位と責任にふさわしい協力のあり方であると考えております。

 我が国としては、今後とも、これまでの活動の経験を踏まえつつ、国連平和維持活動に積極的に参加していくよう、一層努力していく所存であります。来春には東ティモールにおける国連平和維持活動に自衛隊部隊を派遣する方向で準備を進めておりますが、今後とも、国際平和により積極的に寄与すべく、全力を尽くしてまいりたいというふうに思っております。

 先ほどの今川議員の御質問の中で、一点、今後、自衛隊のあり方、縮小等を念頭に考えるかという御質問がございまして、答弁漏れがございました。

 この点につきましては、防衛計画の大綱、また中期防衛力整備計画等の中で、陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊、それぞれコンパクト化等を実施いたしまして、情勢の変化に合わせて、より機動的な自衛隊の整備、体制のあり方、また、リストラ等も進めておりますので、御趣旨の点につきましては、不断の努力を続けてまいりたいというふうに思っております。

 以上でございます。(拍手)

副議長(渡部恒三君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(渡部恒三君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時十二分散会




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