衆議院

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第2号 平成14年1月22日(火曜日)

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平成十四年一月二十二日(火曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第二号
  平成十四年一月二十二日
    午後一時開議
 一 国務大臣の演説に対する質疑
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 国務大臣の演説に対する質疑


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    午後一時三分開議
議長(綿貫民輔君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説に対する質疑
議長(綿貫民輔君) 国務大臣の演説に対する質疑に入ります。城島正光君。
    〔城島正光君登壇〕
城島正光君 民主党の城島正光でございます。
 私は、民主党・無所属クラブを代表して、塩川財務大臣の財政演説と、今年度第二次補正予算二案並びに関連する諸法案に対し、総理並びに関係大臣に質問をいたします。(拍手)
 具体的な質問に入ります前に、総理にお尋ねをいたします。
 昨日から、アフガン復興会議が東京で開催されております。厳しい財政状況の折、アフガン復興への巨額の財政支出は困難をきわめるとは思いますが、一方で、日本は、緒方貞子氏を共同議長に据えるなど、調整手腕と強力な支援を国際社会から期待されているわけであります。荒廃した国土の復興だけでなく、地雷除去や、女性や子供への教育、人材育成、保健医療など、日本に対して大きな役割が期待されているわけであります。
 民主党は、昨年来、鳩山代表、羽田特別代表を中心に、アフガン、パキスタン、インドを訪問するなど、野党外交を強力に推進しており、今回のカルザイ議長の来日もその成果の一つだと自負しております。(拍手)
 しかし、会議の開会に際して、日本の有力なNGOが昨日出席を拒まれましたことはゆゆしき問題であり、今後のアフガン復興について総理は具体的にどうリーダーシップを発揮されていくのか、御決意をお聞かせいただきたいと思います。
 次に、総理の政治姿勢についてお伺いいたします。
 第一に、総理は、第一次補正予算審議に際して、「二次補正予算の編成は考えておりません。」と断言されましたが、一次補正成立直後に二次補正の編成の指示をされたのは一体どういうことでありますか。
 一次補正を国会で審議しているとき、既に二次補正を組む腹づもりであったにもかかわらず、虚偽の答弁をされたのであれば、それは、国会すなわち国民を愚弄するものであり、大きな問題であると言わざるを得ません。率直な答弁をお願いいたします。
 第二に、自民党元幹事長加藤紘一議員の秘書の脱税事件に関してお伺いいたします。
 公共事業にかかわる口ききで数億円もの金を集めたとされる秘書は、加藤事務所の代表であり、資金管理団体などの会計責任者であり、その行動が加藤議員と一体であったと思われても当然であります。この秘書がこうした肩書や議員の名前を利用して多くの公共事業に介入していたことは、地元では既に知れ渡っており、これを放置した加藤議員の責任は極めて重いと言わざるを得ません。議員の関与はなかったのか、みずからがきっちりと対応すべきことは不可欠だと考えます。
 予算委員会における証人喚問の実現も含め、事実の解明に向けどのように取り組んでいかれるのか、総理の御所見をお伺いいたします。(拍手)
 あわせて、あっせん利得処罰法の改正についてお伺いいたします。
 これは、自民党の中尾栄一元建設大臣の受託収賄事件をきっかけに、一昨年秋に成立いたしましたが、私たち民主党は、この法案の審議当時から、犯罪の主体から私設秘書が除外されている、あるいは、犯罪の構成要件に立証の困難な請託があり立件が困難などの問題があり、ざる法だと指摘をしてまいりました。そして、他の野党と協力して修正案を提出してまいりましたが、自民党のみならず、公明党、保守党も、私たちの主張に耳を傾けませんでした。しかし、今回の事件を見れば、私設秘書の除外はやはり抜け道であったわけではありませんか。
 現行では、これ以外にも抜け道が多々ありますが、国民の政治に対する信頼を回復するため、私設秘書を対象とする法改正がどうしても必要だと考えますが、総理の御所見をお聞きいたします。
 第三に、狂牛病、いわゆるBSE問題に関連してお伺いいたします。
 BSE問題において、消費者の不安は一向に解消せず、大変な影響を受けている関連業界からは、まさに悲鳴が上がっております。とりわけ、業績を悪化させている企業が相次ぐ中で、BSE関連で既に二十四件の倒産が報告され、深刻の度を増しているわけであります。
 小泉総理自身、昨年九月二十七日には、この問題に関して、農水、厚生労働両省の対応を、国民の行政に対する不信を招いた、海外で既に発生し、問題点も明らかになっていたにもかかわらず、これまで対応措置がとられていなかったことは極めて遺憾であると、厳しいコメントをされたではありませんか。にもかかわらず、両省はその責任をとらないどころか、年明けに退官した熊澤前農水事務次官に、あろうことか、満額の退職金八千八百七十四万円の支払いをするに至っては、苦境に陥っている方々の怒りは今や頂点に達しているわけであります。(拍手)
 ところが、この間、特に農水大臣は、繰り返し、農林水産省全体に危機感が足りないと、その対応ぶりを、まるでみずからの責任を全く自覚することなく、他人事のような発言をしてこられました。しかし、その一方では、大臣は、感染源、感染ルートの解明はそんなに大きな問題なのかとか、農家が行政指導を知らなかったことは恥だ、あるいは、学校給食で牛肉使用を取りやめていることを、こうした対応は非常に情緒的だなどなど、問題の本質を理解せず、無自覚、無責任な発言を何度も繰り返し、問題解決どころか、ますます混迷と不信を深める原因をつくっているのであります。
 もともと、みずからには何ら落ち度がないのに、経済的あるいは精神的被害や痛みを一方的に受けている生産者や外食産業を初めとする関係者の方々のやり場のない怒りと苦悩を、大臣は全く理解していないのではありませんか。
 総理、これほどの痛みと被害と損害を国民に与えておきながら、いまだ何ら責任をとらない無責任体制を一体いつまで続けるのですか。一般社会の常識からかけ離れ過ぎております。
 一たび国民の信頼を失った大臣のもとでは、どんなよい施策でもむだです。即刻、大臣を更迭し、新しい体制で臨む以外、この問題の本質的解決はあり得ません。また、苦しんでいる関連業界の皆さんのあすもあり得ません。総理の御決断をお伺いいたします。(拍手)
 次に、第二次補正予算の内容についてお伺いします。
 第一に、この第二次補正予算について、総理がうまいへそくりと表現されたNTT株式売払収入は、元来、国債の償還に充てるものであり、これを公共事業のために流用するのは、負担を先送りする隠れ借金そのものではありませんか。この点について、一体どのような御見解をお持ちなのでしょうか。
 第二に、NTT株式売払収入無利子貸付事業の収益回収型の問題であります。これは、問題三セクに融資し、穴があいた部分を税金で補てんしているのが現状であり、民間でできることは民間にとふだんは強調されている総理が、このような枠組みを利用してまで、わざわざ審査能力に欠ける官になぜやらせるのか、不可解であります。無利子貸し付けなど、本来、政府が民間金融機関に利子補給をすれば十分ではありませんか。
 第三に、補助金型は地方自治体に裏負担を強制するものであり、これは逼迫している地方財政をさらに窮地に追い込むものであります。地方分権を進めるとおっしゃる総理が、なぜこのようなことをなさるのですか。
 第四に、総理は、平成十四年度予算の公共事業関係費を一割カットしたと胸を張っておられますが、結局、この第二次補正は、何のことはない、平成十四年度予算の公共事業関係予算削減分の先取りにすぎないのではないでしょうか。
 以上、四点について、総理並びに財務大臣の御見解をお伺いいたします。
 次に、中小企業政策についてお尋ねいたします。
 厳しい不況は、中小企業の経営者、従業員や家族の生活に大きな打撃を与えております。金融機関による貸し渋り、貸しはがしに、中小企業から大変大きな悲鳴が聞こえてきております。
 しかるに、今般の二次補正には、中小企業対策が欠落しており、ベンチャー企業、新産業創出につながる施策もありません。中国のWTO加盟という新しい状況下では、産業の空洞化がとめどなく進むおそれがあり、実効ある対策が何としても必要であります。総理の御見解をお伺いいたします。
 最後に、雇用の問題について触れなければなりません。
 昨年十一月現在、完全失業率は五・五%と最悪の数字を更新し続け、退職を余儀なくされた非自発的な離職者は自発的な離職者を上回り百二十三万人、世帯主の失業者が百一万人という深刻な事態となっております。
 悪化する一方の雇用失業情勢への対策は社会全体の最重要課題であり、ことしの春闘では、ついに我が国でも、ワークシェアリングが大きな焦点の一つとなっております。ワークシェアリングは、最終的には働き方の大改革につながるものであります。政労使のコンセンサス形成に当たっては、政府の機動的かつきめ細かい対応が不可欠であります。総理の御所見をお聞きいたします。
 次に、悪化の一途をたどる雇用保険財政についてお尋ねいたします。
 民主党は、さきの国会において、今年度中にも底をつく雇用保険の積立金について、二兆円規模の失業等給付資金設立を提起いたしました。同時に、パートなど短時間勤務者の社会保険への加入率を高めるなど、社会保険制度の整備を行う抜本改革に着手すべきだと考えますが、今後、政府はどうされるのでしょうか、お尋ねいたします。
 さて、総理は、この間、小泉流構造改革を進めれば、当然、痛みが生じ、職を失う人も出てくるが、サービス部門を中心に今後五年間で五百三十万人規模の雇用創出が期待でき、希望にあふれた、自信と誇りに満ちた日本の社会を実現できると豪語されました。
 ところが、リストラという言葉が新聞紙上に載らない日はなく、犯罪は多発し、自殺者が後を絶ちません。自信と誇りに満ちた生活を送るのは既得権を持った一部の人だけであり、失職、廃業に追い込まれる国民、つまり痛みを感じる国民にとっては、まじめに働いても安心して生活できないではないか、救済されるのは大企業ばかり、中小零細企業は切り捨てられ、小泉流改革とは結局のところ所得格差を広げるだけではないか、こうした不公平感、不安感、そして閉塞感が静かに、しかし、確実に広がりつつあるのではないでしょうか。
 構造改革とは一体何なのか、そこでの対立軸は何か、何が変わるのか、どのような社会にしたいのか、そして、そこで国民にどのような心構えが求められるのかといった二十一世紀の社会像の提示なくして、真の改革はあり得ません。下手をすると、破壊のみに終わる可能性すらあります。
 言葉やスローガンを振り回すのではなく、真摯に国民の暮らしと向き合い、新しい日本社会の姿を具体的に示すことこそが、今、最も必要なことであることを総理に強く訴えて、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 城島議員にお答えいたします。
 アフガニスタン復興支援についてのお尋ねであります。
 アフガニスタンの包括的な和平と安定のためには、昨年十二月に発足した暫定政権が十分にその役割を果たすとともに、国際社会がアフガニスタンの復興支援に積極的に関与していく必要があります。我が国は、この考えに基づき、二十一日、二十二日に、アフガニスタン復興支援国際会議を開催しました。
 また、我が国は、アフガン復興支援のために、向こう二年六カ月の間に五億ドルまでの支援を行い、NGOとも協力しつつ、復興を積極的に支えていく考えであります。
 二次補正予算編成に関する私の発言に関するお尋ねです。
 昨年の臨時国会においては、現在、第一次補正予算の速やかな成立をお願いしているところであり、第二次補正予算の編成は考えておりませんと答弁するとともに、開会冒頭の所信表明演説において、「経済情勢によっては、大胆かつ柔軟に対応します。」と述べたところであります。
 今回の第二次補正予算は、昨年秋の第一次補正予算の編成後、米国における同時多発テロの発生を契機に世界同時不況のリスクが高まる中、我が国の景気は一段と悪化したとの認識に立ち、構造改革をさらに加速しつつ、デフレの進行と相まって景気が加速度的に悪化することを回避するため編成することとしたものでありまして、虚偽答弁との議員の御指摘は当たらないと考えております。
 加藤議員の事務所元代表に関連した問題について、証人喚問も含め事実の解明にどう取り組むかとのお尋ねです。
 政治と関連した金銭の問題について、世間から疑惑を持たれている場合は、まずは、個々の政治家が国民に対してきちんと説明し、対応していくべきものと考えます。その上で、証人喚問をする必要があるのかどうかについては、議院の運営に関する問題であり、国会においてよく議論していただきたいと考えております。
 あっせん利得処罰法の処罰対象についてお尋ねでありました。
 信なくば立たずの言葉どおり、私は、政治家に対する国民の信頼なくして政治や政策に対する信頼も成り立ち得ないと考えます。その意味からも、どうすれば政治家と金の結びつきについて国民の不信を招くような行為を防止できるか、早急に改善策を検討すべきものと考えます。御指摘の私設秘書を処罰対象とする法改正についても、今国会で十分御議論いただくべきものと考えます。
 BSE問題の政治責任についてでございます。
 BSEの問題については、事態の初期段階で、行政部内における関係者間の連絡が不十分で、対応に混乱が見られ、国民の行政に対する不信を招いたことは遺憾であります。
 このため、私から、農林水産大臣、厚生労働大臣に対し、両省一体となり、国民の立場に立った対応をするよう指示し、既に屠畜場においてすべての牛に検査を行い、BSEに感染していない牛肉だけが流通する体制を確立しました。
 現在、さらに、感染経路の究明や関連対策の実施などに全力で取り組んでいるところであり、農林水産大臣には、今後とも、これらの職責を果たし、国民に安心していただくよう全力を尽くしてもらいたいと考えております。
 NTT株式売却収入の活用に関するお尋ねです。
 現下の財政状況にかんがみれば、国債発行額三十兆円以下の方針を堅持することにより政府の財政運営に対する信頼を保持し、国債の追加発行が国債市場に与える悪影響を回避する必要があると考えます。
 今回の措置は、国債の追加発行によらず、国債整理基金特別会計における政府保有資金を国債償還に支障の生じない範囲内で活用するものであり、財政規律を保持しつつ構造改革に資する事業を行うものであることに御理解を賜りたいと思います。
 収益回収型の無利子貸し付けについてです。
 今般の補正予算においては、まさに民間でできることは民間にとの考え方により、事業主体に中部国際空港株式会社を加えるとともに、新たに民間事業者を追加し、再開発事業など、民間投資と公共施設整備の一体的な推進を図ることとしております。
 なお、個々の貸し付けに当たっては、貸付機関である民間都市開発推進機構において適切な審査が行われることが重要と考えております。
 NTT株式売却収入無利子貸付事業の補助金型は、地方自治体に裏負担を強制するもので、地方財政を窮地に追い込むものであるとのお尋ねです。
 補助金型は、あくまで地方からの要望に応じ予算措置を行うものであります。また、地方負担分については、原則としてその一〇〇%を地方債によって措置することとしていますが、その償還費については、後年度における地方財政計画の策定を通じて所要の財源を確保し、地方財政の運営に支障が生じないよう措置することとしております。
 第二次補正と十四年度予算の公共事業費についてのお尋ねであります。
 今回の補正予算は、十三年度において構造改革を加速しつつデフレスパイラルに陥ることを回避するための緊急対応プログラムを実施するため編成したものであり、平成十四年度予算削減分の先取りとの御批判は当たらないと考えます。
 中小企業対策、新産業創出対策についてのお尋ねでございます。
 中小企業をめぐる厳しい経済状況を踏まえ、第一次補正予算において、中小企業の創業促進対策、セーフティーネット整備などのため、約二千五百億円の中小企業等対策費を計上し、現在既に、これら対策を強力に実施しております。
 また、今回の第二次補正予算には、新産業を創出するための共同研究施設の整備のための経費などを計上し、ベンチャー企業育成に向けて対策を一層強化いたします。
 中国のWTO加盟と我が国産業の空洞化についてのお尋ねです。
 中国のWTO加盟は、巨大なマーケットの出現をもたらすものであり、一概に我が国産業の空洞化につながるものではないと認識しておりますが、近年、我が国製造業の海外への進出、移転が続いていることもまた事実であります。
 我が国産業の空洞化を防ぐために、規制改革等を通じて魅力的な国内事業環境を整備するとともに、産業技術力の強化等を通じて製造業の高付加価値化を進め、国際競争力の強化に取り組んでまいります。
 ワークシェアリングに関する政府の対応についてでございます。
 ワークシェアリングについては、雇用の維持、創出という観点から、社会的関心が高まっているところでございます。
 政府としての取り組みについては、どのような形でワークシェアリングを実施するかによって異なってくると考えられますが、政府としては、昨年十二月に、政労使ワークシェアリング検討会議を設置したところであり、本年三月を目途に、ワークシェアリングについての基本的な考え方について政労使の間で合意ができるよう取り組んでまいります。
 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
    〔国務大臣塩川正十郎君登壇〕
国務大臣(塩川正十郎君) 私に対する質問は、四点ございました。けれども、その四点すべて、小泉総理が丁寧にお答えいたしましたので、私からは重複することでございます。しかし、せっかく御指名いただきましたので、つけ加えまして補足説明させていただきます。
 まず、私に対する質問の第一点でございますけれども、NTT株式売却収入資金の活用について、これは隠れ借金ではないかという御質問でございます。
 総理からも十分御説明ございましたが、これは、隠し借金では決してございませんで、政府が保有しております資金の一部を活用するということでございまして、政府内における資金の活用でございますので、そういうことは当たらないと思っておりますが、そういう批判があるということも自分は承知いたしております。
 それからなお、国債発行を三十兆円以下に抑える方針を堅持いたしましたことにおきまして、これによって国債を増発することなく補正予算を組んだということは、国債市場に与える悪影響を回避するものと思っておりまして、適当な措置であったと思っております。
 なお、この補正予算におきましては、経常的な経費、あるいはまた特殊法人等への貸し付け等が従来行われておりますけれども、今回は、財政規律の確保の意味におきまして、そういう方面におきます配慮はいたしておらないということでございます。
 それから、二番目の問題でございますけれども、NTT株式売払収入無利子貸付事業の収益回収型についてでございますが、これは審査能力の欠ける官にやらすのではなくして、民間金融機関にやらせて利子補給したらどうだという御質問でございます。
 これも一つ考えられる方法ではございますけれども、しかし、民間金融機関に任せましたときに、そこに果たして国民的視野における公正公平の論理が適用されるかということになりますと、若干そこに問題があると思っておりまして、それがために、政府が関係いたしております民間都市開発推進機構において、これを審査し、貸し付けする方が、より国民的立場からいって公平であろうと思っておるところでございます。
 三番目の御質問でございますけれども、NTT株式売払収入無利子貸付事業の補助金型についてでございますが、この補助金型を実行することによって今回二兆五千億円近くの資金を出すわけでございますが、これによって地方自治体の裏負担を強制するものではないか、したがって、それによって地方財政を窮地に追い込むのではないか、こういう御質問でございます。
 しかし、この事業の推進につきましては、あくまでも私たちは、地方自治体との協議を経て、地方の要望に応じて予算措置をするものでございまして、裏負担を強制的なものにするというものではございませんで、また、地方負担につきましては、原則としてその一〇〇%を地方債によることにいたしておりまして、その地方債の返済につきましては、そのときにおきますところの地方財政計画の中で適当に措置をし、地方財政を窮地に追い込むというようなことのないように十分な注意を払ってまいりたいと思っております。
 四番目の問題でございますけれども、第二次補正予算は平成十四年度予算の公共事業関係予算削減分を先取りして追加補正しておるということではないか、したがって、十四年度予算におけるところの公共事業費は逆にふえていくのではないかということの御質問でございますけれども、そうではございませんで、十四年度本予算に組んでおりますところの公共事業と今回の第二次補正予算の性格は若干違ったものでございまして、すなわち、今回の第二次補正予算は、構造改革のための社会資本の整備ということに重点を置いております。
 それがために、ちょっと念のために申し上げますと、一つは、都市機能の一層の高度化、国際化を図るための資金に使うということ、二番目は、環境に配慮した活力ある地域社会の実現に使用するということ、三番目は、科学技術、教育、ITの推進等による成長フロンティアの拡大に使うこと、それから四番目は、少子高齢化への対応に使う、こういう切り口を明確にいたしましてこの補正予算を組んだものでございますので、御理解のほどお願いいたしたいと存じます。
 以上であります。(拍手)
    〔国務大臣坂口力君登壇〕
国務大臣(坂口力君) 城島議員から、二問についての御質問がございました。
 第一問は、雇用保険財政についてのお尋ねでございます。
 厳しい雇用失業状況のもとで雇用保険受給者の増加が続いておりますが、雇用保険制度は、労働者が安心して働くための最後のよりどころとなるセーフティーネットでありまして、給付に必要な財源は、今年度においても確保しているところでございます。十三年度の収支はマイナスになりますけれども、積立金でカバーできる額でございます。
 今後とも、経済動向、雇用失業動向を十分踏まえた上で、本年度から施行された新制度の影響なども十分に注意をしまして、安定的な運営を確保してまいりたいと思います。
 現在の時点で、保険料だけに依存するかどうか、まだ結論の出ていないところでございます。
 二番目には、短時間労働者に対する社会保険の適用についてのお尋ねでございました。
 御指摘をいただきましたとおり、ワークシェアリングの前提といたしまして最も重要なのは、短時間労働者に対する社会保険の問題、そして、もう少し広く、社会保障の問題であると思っております。正規労働にどう近づけるかということと、そして、企業活力をどう維持するかという両面から結論を出さなければならない問題であると思っているところでございます。
 このような中で、昨年末に取りまとめました女性と年金検討会の報告書におきましても、この問題につきましては、新たに社会保険が適用される短時間労働者に係る労使の保険料負担や年金財政への影響等の課題につきまして十分な検討が必要であるとされているところでありまして、今後、次期年金制度改革におきましても、国民的な議論のもとに検討を進めてまいりたいと考えているところでございます。(拍手)
    ―――――――――――――
議長(綿貫民輔君) 久間章生君。
    〔久間章生君登壇〕
久間章生君 私は、自由民主党、公明党、保守党の与党三党を代表して、塩川財務大臣の財政演説に対し、質問いたします。(拍手)
 二〇〇一年はさまざまな意味で非常に厳しい年でありましたが、その中で、敬宮愛子内親王殿下の御誕生は、国民に明るいニュースをもたらしてくださいました。まことに慶賀にたえません。内親王殿下の御誕生を心よりお祝い申し上げ、お健やかな御成長をお祈り申し上げたいと存じます。(拍手)
 新年を迎え、世界は新たな局面を迎えております。
 米国については、昨年九月の衝撃的な同時多発テロ事件後、心配されていた経済情勢の悪化は、当初、市場等で予想されていたよりも回復時期が早まるとの考え方が広まってきております。
 日米関係は、我が国外交の基軸であり、米国同時多発テロ事件への対応を通じて、さらに強固なものになったものと考えております。このような中、来月には、ブッシュ大統領の訪日が予定されており、日米首脳会談が開催されることとなっております。
 ヨーロッパにおいては、単一通貨ユーロが新たな段階を迎え、通貨が現実に流通し始めており、一つの時代の幕あけとなりました。
 アジアについては、今後期待される世界経済の回復に伴い、深刻であったIT不況の余波から徐々に回復していくことが予想されております。
 小泉総理は、一月九日より十五日まで、フィリピン、マレーシア、タイ、インドネシア、シンガポールの五カ国を訪問し、各国要人と会談を行い、また、シンガポールでは、我が国にとって最初の自由貿易協定となる日・シンガポール新時代経済連携協定に署名するとともに、我が国の対東アジア外交についての基本的姿勢などをうたった政策演説などが行われておりますが、今般の総理東南アジア諸国訪問について、その成果をまずお聞かせいただきたいと思います。
 さて、昨年九月のテロ事件以来、安全保障問題の関心が高まっているさなか、十二月には、我が国の排他的経済水域を航行した不審船騒動が起こり、我が国の安寧が脅かされました。こうした情勢を踏まえ、我が国は専守防衛に徹しつつ、つけ入るすきを与えない万全な備えが必要であり、国民の生命と財産を守るため、有事法制の整備等に向けた早急な取り組みが強く望まれますが、総理のお考えはいかがなものでしょうか。
 また、アフガニスタンの復興は世界の平和と安定にとって重要でありますが、我が国が共同議長国として、二十一日から開催されているアフガニスタン復興支援国際会議を主催し、六十一カ国の国々や二十一の国際機関がハイレベルで一堂に会し、議論を行っていることは、我が国の有意義な国際貢献であると考えております。この会議の成果を実際にアフガニスタン国民にもたらしていくことが必要であると考えますが、今後、我が国としてアフガニスタン復興支援にどのようにかかわっていくおつもりか、総理のお考えをお聞かせください。
 次に、経済財政政策についてお尋ねいたします。
 小泉内閣は、改革なくして成長なしとの考え方のもと、構造改革を着実に推進されていることは、だれの目にも明らかなことであります。
 まず、昨年六月に、いわゆる骨太の方針を閣議決定されました。そこでは、我が国が目指すべき経済社会の姿とそのための基本方針を明らかにされ、その後、九月に、今後構造改革を進めるための手順、道筋を改革工程表として取りまとめられました。十月には、そのうちから先行して決定、実施すべき施策を盛り込んだ改革先行プログラムを策定され、さらに、これを受けて、雇用対策等に重点を置いた十三年度第一次補正予算が編成されております。また、十二月には、事業規模四・一兆円の緊急対応プログラムを策定されておりますが、これを実現していくため、今般、第二次補正予算が提出されております。
 このように、小泉内閣は、大胆かつ柔軟に経済に対応しつつ、改革先行プログラムや緊急対応プログラムを適切な時期に取りまとめ、諸般の構造改革の流れを平成十四年度予算につなげていくことに成功してきているものと考えます。
 平成十四年度については、さらに改革に向けて邁進したいとされておりますが、その御決意を改めてお聞かせください。
 さて、経済情勢に目を転じてみると、我が国経済は、戦後初めての持続的な物価下落というデフレの進行する中、生産、企業収益は大幅に減少しており、失業率が五・五%と、これまでにない高さに上昇し、倒産件数は高い水準で推移するなど、厳しい状況にあります。
 そこで、総理の我が国経済の現状と今後の見通しについての御認識をお伺いいたします。
 次に、平成十三年度第二次補正予算についてお伺いします。
 ただいま申し上げましたとおり、現下の景気が非常に厳しい状況にある中で、私は、今回の第二次補正予算は景気のこれ以上の悪化を防ぐ上で不可欠なものであると考えております。
 今回の第二次補正予算では、国費二・五兆円を充てるようですが、果たして、この財政支出によりどの程度の経済活性化効果が見込めるのか、お考えをお聞かせください。
 今回の二次補正においては、平成十三年度における国債発行額を三十兆円以下に抑制するため、政府の保有資金であるNTT株の売却収入を活用し、無利子貸し付けを行うこととしておりますが、この資金は、無利子貸し付けとはいえ、最終的に何らかの方法で国庫に返す必要のあるものであり、将来の増税により賄われるケースも十分に考えられるところであります。
 特に、無利子貸し付けのうち、将来の国庫補助金を返済原資とするタイプについては、後年度への負担の先送りにつながり、かつまた、後年度、形式上、予算を再計上することになり、公共事業を毎年三%程度削減しようとする「構造改革と経済財政の中期展望」との関係で問題は生じないのか等の批判もあり得るところだと思います。
 今回、国債発行三十兆円以下の目標を堅持しながら、あえて国債発行に頼らず、このような財源調達方法をとられた真意について、総理から御説明をお願いいたします。
 次に、税制について伺います。
 ともかく、我が国経済は元気がなく、希望もない。どうしたらこの泥沼から抜け出すことができるのでしょうか。一つの答えは、元気の出る税制の構築ではないでしょうか。
 小泉総理は、構造改革なくして景気回復なしのスローガンのもとに、構造改革を一貫して進めてきました。今こそ、総理のリーダーシップのもとに、一日も早く税制のグランドデザインを描き、税制も構造改革をすべきときに来ているのではないでしょうか。それを契機に我が国経済を再生する足がかりにすることだと思います。
 総理は、既に、抜本的な税制改革を進める旨を幾度となく表明されていますが、今後あるべき税制の構築に向けてどのようなスケジュールをお持ちなのでしょうか、お考えを伺います。
 次に、金融政策について伺います。
 我が国は、戦後初めての継続的な物価下落、すなわちデフレ問題を経験しており、消費者物価指数は二年以上、GDPデフレーターでは、九〇年代半ば以降、持続的に下落しています。デフレは、企業による投資意欲の減退や民間消費の抑制といった問題を生じさせ、経済へ悪影響を与えております。特に土地価格の継続的な値下がりは各方面に深刻な影響を与えつつあり、その下げどまりが明確となる政策が求められております。
 日本銀行におかれては、一層潤沢な資金供給を行い、デフレの阻止に向けた適切な金融緩和の措置を行っていただきたいと考えます。
 報道等では、三月危機が取りざたされる中、総理は、金融の危機を起こさないためにはあらゆる手段を講じるとおっしゃっていますが、改めてその決意をお聞かせください。
 また、最近、政治家の秘書等が絡む不祥事が報道されておりますが、与党三党としても、政治倫理の確立に関する協議会を設置し、対応していくこととしております。
 総理は政治倫理に関してどのようなお考えをお持ちか、伺っておきたいと思います。
 最後に、小泉内閣が進める諸施策のうち、一つだけ気になることがあるので、重ねてお尋ねしておきたいと思います。
 それは、我が国経済、特に製造業等の空洞化対策が十分ではないのではないかということであります。製造業の拠点が海外に移転することに伴い、これに関連する中小企業が閉鎖を強いられており、これが経済の悪化の一因になっております。構造改革が進行し、不良債権の処理が進んでも、経済の空洞化が進んでしまったらどうなるのか、今日の不況の本当の原因はここにあるのではないか、心配なところであります。
 この空洞化対策についてお考えをお聞きし、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 久間議員にお答えいたします。
 今回の東南アジア諸国訪問についてでございます。
 私は、訪問した五カ国の首脳と忌憚のない意見交換を行い、また、シンガポールでは、経済連携協定に署名いたしました。ASEAN諸国と率直なパートナーとしてともに歩みともに進む、そういう考えのもとに、東アジア地域において具体的協力を積み重ねていくとの考えを表明しました。この点につきまして、各国から理解と支持を得、今後の東アジア外交に道筋をつけることができたと思います。
 有事法制の検討についてでございます。
 これは、平時から緊急事態に備えておく、いわゆる備えあれば憂いなし、この考え方に立って、さまざまな態様の有事について包括的観点から法整備の検討を進めていきたいと思います。
 アフガニスタン復興支援についてでございます。
 アフガニスタンの包括的な和平と安定のためには、昨年十二月に発足した暫定政権が十分にその役割を果たすとともに、国際社会がアフガニスタンの復興支援に積極的に関与していく必要があります。我が国は、この考えに基づきまして、昨日、本日、アフガニスタン復興支援国際会議を開催いたしました。
 また、このアフガン復興支援のために、向こう二年六カ月の間に五億ドルまでの支援を行い、NGOとも協力しつつ、復興を積極的に支えていきたいと思います。
 平成十四年度における構造改革に向けた決意でございます。
 我が国経済の潜在力は、また成長力は、十分にあると思っております。これをいかに発揮させるか、状況の変化に細心の注意を払いつつも、改革なくして成長なしとの決意のもと、今後とも、不良債権処理、特殊法人改革、税制改革などの構造改革を強力に遂行してまいります。
 我が国経済の現状と今後の見通しについてでございます。
 確かに議員御指摘のとおり、失業率がこれまでにない高さに上昇するなど、厳しい状況にあります。我が国経済は集中調整期間にあり、来年度の実質成長率がゼロ%程度と見込まれるなど、厳しい経済状況が続きますが、構造改革の断行によって日本経済の再生を図ることが必要だと思います。
 今後とも、この改革の手を緩めることなく、潜在力を開花させ、民需主導の持続的成長の実現を図ってまいりたいと思います。
 第二次補正予算の経済効果についてでございます。
 第二次補正予算においては、骨太の方針に示された構造改革に資する重点分野において、民間投資の創出、就業機会の増大に資し、早期執行が可能な事業を取り上げており、内閣府の経済モデルに基づく試算では、今後一年間のGDPの押し上げ効果は、名目で一・二%、実質で〇・九%程度等の経済活性化効果が期待できるものと考えております。
 二次補正予算における財源調達方法についてでございます。
 現下の財政状況にかんがみれば、国債発行額三十兆円以下の方針を堅持することにより財政の規律を維持し、また、国債の追加発行が国債市場に与える悪影響を回避する必要があると考えます。今回の措置は、このような考え方に立ち、国債の追加発行によらず、国債整理基金特別会計における政府保有資金を活用するものであります。
 また、後年度における公共投資の規模、無利子貸し付け等の償還時に交付される補助金等の財源については、その時々の経済財政状況を踏まえてそれぞれ検討されるべきものであり、今回の措置が直ちにその規模あるいは将来の国債発行に影響を及ぼすものではないと思っております。
 あるべき税制の構築に向けてのスケジュールについてでございます。
 税制改革は、大きな構造改革の柱だと思っております。
 今後、広く税制上の課題について、予断なく、総合的に取り組みまして、六月ごろを目途に、二十一世紀のあるべき税制について基本的な方針を取りまとめたいと考えております。その後、引き続き、この基本的な方針を踏まえ、まずは当面対応すべき課題について年内に取りまとめ、その議論、結果を平成十五年度予算編成に生かしていきたいと考えております。
 金融危機に対する決意でございます。
 政府としては、市場の動向や不良債権の処理状況等、金融情勢については十分注視しているところであります。今後、万一、我が国の信用秩序の維持に重大な支障を生じるおそれがある場合には、金融危機対応会議を開き、大胆かつ柔軟に対応してまいりたいと考えております。
 政治倫理に関するお尋ねです。
 政治倫理の確立は、まさに議会政治の根幹であります。主権者たる国民の代表である国会議員が、国家国民のことを第一に考え、政治家の良心と責任感を持って政治活動を行うことにより、初めて国民の信頼を得られるものと考えます。政治家一人一人が、こうした基本に立ち返り、みずからを厳しく律していく必要があると思います。
 「聖域なき構造改革」は、政治も例外ではございません。まさに国民から信頼される政治を目指し、一つ一つ改革を積み重ねていきたいと思います。
 空洞化対策についてです。
 製造業は我が国の基幹的な産業ですが、近年、内外のコスト価格差等を踏まえ、中国を初め海外への進出、移転が続いており、国内の雇用の減少や関連中小企業への影響が予想されます。
 産業の空洞化や雇用の減少を防ぐためには、規制改革等を通じて魅力的な国内事業環境を整備するとともに、高付加価値化等により製造業の国際競争力の強化を図ることが必要不可欠であり、産業技術力の強化や新事業の創出など、積極的な取り組みを進めてまいります。(拍手)
    ―――――――――――――
議長(綿貫民輔君) 達増拓也君。
    〔達増拓也君登壇〕
達増拓也君 私は、自由党を代表して、平成十三年度第二次補正予算案について質問いたします。(拍手)
 日本経済は、既に破綻の危機領域に入り、経済再生の兆しさえ全く見ることができません。小泉総理の就任以来、株価は三割下がり、完全失業率は、十一月に五・五%と、過去最悪の記録を更新し続けています。
 小泉総理は、口先では構造改革なくして景気回復なしと叫び続けてきていますが、これまで一体何を構造改革してきたのでしょうか。改革を断行したと自己評価している道路公団、住宅金融公庫、石油公団等のいわゆる先行七法人改革にしても、特殊法人の整理合理化計画にしても、問題の先送りやごまかし、看板のかけかえだけであり、改革という名には全く値しません。(拍手)
 そもそも、総理の言う構造改革とは一体何なのでしょうか。総理がどのような経済、社会をつくり上げようとしているのか、それが明確でなければ、どの仕組みをどのように改造すればいいのかが説明できず、有効な政策を講じることはできません。
 我々自由党は、総理が目指す経済、社会の将来像について何度も質問してまいりましたが、いまだに明確な答えは返ってきておりません。総理の政策は、いずれも、将来のビジョンを明らかにしないまま、単発的なキャッチフレーズを叫ぶだけの、政策のつまみ食いにすぎません。本来の構造改革ではないばかりか、日本の経済、社会を悪化させるだけであります。この八カ月間の経済情勢の推移が、そのことを如実に物語っています。
 小泉総理は、いつも叫んでいる改革の痛みの先に、どのような経済、社会を描いているのか、暮らしはどうなるのか、仕事はどうなるのか、国民に明確にお答えいただきたいのであります。総理には、その義務があります。(拍手)
 本来、補正予算であれ本予算であれ、経済、社会の将来ビジョンと中期的な展望を持ち、その上で、今すぐに講じなければならない方策を明確に示して予算編成をするべきであります。しかも、それは、既存の枠組みにとらわれず、経済、社会、行政、財政、税制の仕組みを根本から改めることと一体でなければなりません。
 ところが、自民党政権は、これまで繰り返し、本予算案を編成したその直後から補正予算案の話をし、補正予算案を編成したときから第二次補正予算案の必要性を説いてきました。みずからつくった予算案をみずから否定するやり方であり、無責任、場当たり的、その場しのぎの自民党政治の体質そのものであります。(拍手)
 当然ながら、小泉内閣も、その自民党体質は変わっていないのであります。つい二カ月前、第一次補正予算が審議される前から、政府・与党の一部では、二次補正の編成が必要と言われていました。これは、構造改革に踏み込むこともなく、単に累次の補正予算で積み増しするだけのことです。相も変わらぬ無責任、場当たり的、その場しのぎ手法であり、今までの自民党政治から全く変わっていません。それでは景気を浮揚させることもできないのは明らかであります。
 総理は、構造改革が進行中は倒産や失業が増大し、景気は悪化するとお考えのようですが、もしそうであるならば、物すごいスピードで構造改革を完了させ、悪化局面を早く終わらせるべきです。行政、税制、財政、経済、社会のあらゆる分野で構造改革の具体的政策を明示し、今すぐに実行しなければなりません。
 しかし、税制の抜本改革の議論はこれから、特殊法人改革は先送り、規制撤廃ははっきりしない。一方で、景気の下支えもしていない。構造改革を訴えながら、このような無為無策を続けるならば、不況は悪化し、長引くばかりであります。
 また、総理は、この二次補正予算編成においても国債発行三十兆円枠は守ったと胸を張っているようですが、実際には、将来の国債償還財源であるNTT株の売却益を充てただけです。総理御自身、うまいへそくりがあったとおっしゃったとおり、何が何でもあちこちからお金をかき集めて、つじつまを合わせているにすぎません。三十兆円枠を守る論理と意義は事実上破綻しており、総理が言っておられる財政再建、財政健全化にも逆行しています。資本市場や国際社会で信用されていないのも当然であります。
 つまり、この第二次補正予算案は、景気の下支えにも景気浮揚にも、財政再建にも、構造改革にも役に立たない代物と言わざるを得ません。総理は、この補正予算によって景気を支えることが本当にできるとお考えなのか、総理の言う構造改革をどのように支える予算案なのか、お聞きいたします。
 我々自由党は、構造改革の先にあるものは何かを訴え続けてきています。我々が目指す社会は、官僚による規制社会、管理社会を根本的に改め、みずからの創意工夫と責任で個人も企業も能力を最大限に発揮できる、自由で公平で開かれた社会であります。それを実現するために、あらゆる仕組みを改めることこそ構造改革であると考えます。
 自由な経済活動を阻害し、行政指導の根拠ともなっている、いわゆる各種事業活動規制を原則廃止し、統一した市場ルールを定めることによって経済を活性化させる。官業である特殊法人は政治のリーダーシップにより三年以内に原則廃止・民営化する、そのことを決め、民間の経済活動のステージを広げるべきです。
 また、国と地方のあり方を根本的に見直す第一歩として、国からの事業費補助金を廃止し、一括して自主財源とする、そして地方に交付する。それにより、国の通達行政、利権政治を改め、地方のことは地方自治体が住民と相談しながらできるようにし、むだな行政経費を省く。
 所得課税については、各種の人的控除は原則廃止するとともに、税率構造を簡素化して税率を引き下げる。源泉徴収は廃止して、全国民がたとえ少額でも社会への参加料として自分で税金を納めるようにすべきです。官が民からお金を吸い上げて使い道を決めるのではなく、国民がみずからの才覚と自己責任でお金の使い道を決めることができるようにするべきなのです。
 我々は、以上の政策を法案として既に整理しております。行政のむだと経済、社会への過剰介入をなくすだけではなく、経済活動の土俵を広げ、個人や企業が新しいことにチャレンジできる環境を整えることで、景気対策にも雇用対策にもなります。我々の構造改革は、景気回復と二律背反ではありません。このような考え方について、総理の御見解をお伺いいたします。(拍手)
 我々自由党がかねてから主張してきたように、我が国の最大の構造問題、つまり構造改革の第一の対象は、政治、官僚、業界の癒着構造、政官業のもたれ合い、なれ合い構造であります。その構造のために、自由な市場経済が発展できず、不正が社会の隅々まで広がり、個人も企業も自立できないでいるのです。
 この構造を打破し、自由党の主張するフリー、フェアでオープンな社会を実現しなければなりません。陳情政治や、裏で不正に手を回した人が有利になる社会を改め、まじめに努力した人がきちんと報われる社会を構築しなければなりません。
 逆に言えば、自民党政治は政官業癒着構造に基づいている以上、小泉総理が幾ら自民党を変える、日本を変えると絶叫をしたところで、自民党政権である限り、構造改革はできないのです。不正や汚職が絶え間なく起きてきます。
 一体、総理は、この八カ月間、癒着構造を打破するために何をしてきましたか。全く何もしてこなかったではないですか。派閥を基本単位とした自民党の政治構造は、今も温存されています。
 その結果が、自民党元幹事長加藤紘一議員の金庫番秘書による口きき料の脱税事件です。これこそ、癒着構造の典型であり、自民党政治が今も全く変わっていないことの証拠であります。
 以前、あっせん利得処罰法案をめぐって、与党案と自由党を初めとする野党共同案が審議されたとき、我々は、処罰の対象に私設秘書を含めることを強く主張しましたが、与党は、頑としてこれを受け入れませんでした。
 ところが、今回、私設秘書が事件を起こして社会的批判が強まると、慌てて、あっせん利得処罰法の処罰対象に私設秘書を含めることを検討し始めるありさまです。何という定見のなさでしょうか。政官業の癒着構造について、総理の見解をお尋ねいたします。
 BSE、狂牛病問題も同様です。
 農水省は、日本でも狂牛病が発生する可能性が強いというECの勧告を握りつぶし、何の対策も立てませんでした。しかも、いざ狂牛病が発生すると、後手後手の対策しかとらず、あまつさえ、農水省の安全宣言後も狂牛病が確認されるという失態を演じ、酪農農家や焼き肉店を初めとする食産業と国民の信頼を完全に失ったのであります。とりわけ、責任者である武部農水大臣は、失言しても責任はとらずに、大臣のいすにしがみついており、情けない限りであります。この点について、総理の見解をお伺いいたします。
 小手先の対策と問題の先送り、かけ声だけで実態のない改革論議は、もう終わりにすべきです。
 総理は、二言目には、自民党を変える、日本を変える、結果を見てくれとおっしゃいますが、何か一つでも構造改革を実現しましたか。何か結果が出ましたか。そもそも、結果が出るめどがあるのでしょうか。
 会議や談合で決定事項ばかり積み重ね、実行が伴わないのはもう結構です。国民の暮らしがどう変化したのか、国民の仕事がどう変化したのか。そこが変わらなければ真の改革とは言えないのではないでしょうか。(拍手)
 その意味で、政官業癒着構造の自民党政治である限り、日本が変わることはありません。したがって、その基盤によって立つ小泉総理には何も期待できないと思いますが、せめて自己改革の気概があるのか否かをお伺いして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 達増議員にお答えいたします。
 構造改革の目指す社会についてのお尋ねであります。
 改革なくして成長なしの考え方に基づき、民間にできることは民間に、地方でできることは地方にゆだねるとの方針のもと、構造改革を着実に進めてまいりました。
 このような改革に引き続き取り組みますが、先般の所信表明において、努力が報われ、再挑戦できる社会、人をいたわり、安全で安心に暮らせる社会など、小泉内閣の目指す構造改革を今後とも着実に進めてまいりたいと思います。
 第二次補正予算と景気及び構造改革との関係についてであります。
 政府は、米国における同時多発テロ事件後の経済環境の急激な悪化に対応し、構造改革をより一層推進しつつ、デフレスパイラルに陥ることを回避するため、平成十三年度第二次補正予算を編成いたしました。
 この予算におきましては、骨太の方針に示された構造改革に資する重点分野において、民間投資の創出、就業機会の増大に資し、早期執行が可能な事業を取り上げており、経済活性化効果が期待できるものと考えております。
 自由党の構造改革に関する見解についてのお尋ねであります。
 まず、自由党が考える特殊法人改革、これは三年以内に原則廃止・民営化する、二は、国からの事業費補助金を廃止し、一括して自主財源として地方に交付する、三は、所得課税について、各種人的控除の原則廃止、税率構造を簡素化して税率を引き下げる等といった政策を基本としておると思います。このような方針について、私は、おおむね理解し、これからこの方針のもとに具体的にどう対応するか、着実に改革を進めていきたいと思います。
 さらに、議員御指摘の項目に沿って申し上げますと、私は、既に、特殊法人改革については、道路公団等民営化の方針あるいは住宅金融公庫、石油公団等についての廃止の方針、積極的に取り組んでおります。
 また、規制改革については、医療、福祉、保育、労働分野など、生活分野の規制を抜本的に見直し、実施に移す、そういう方針を既に打ち立てております。
 地方分権においても、地方にできることは地方に任せるという基本的な考え方のもとに一層の推進を図る。
 税制改革についても、これは構造改革の大きな柱だといって、既に今年度当初から検討を進めております。
 いわば、自由党の言っている方向については、総論的に大して違いはない、具体的にも、これからも今までできなかった分野に具体的に進めていこうとするのが小泉内閣の構造改革であるということを御理解いただきたいと思います。
 政官業の癒着構造についての見解についてであります。
 政治も構造改革の例外ではございません。さまざまな改革に一つ一つ取り組んでまいりましたが、いまだ十分であるとは考えません。
 今回、政治家の元秘書が逮捕されたことや、あるいは加藤議員の事務所元代表に関連してさまざまな報道がなされていることは、大変残念なことであります。これを機会に、政治腐敗防止に全力を挙げていく決意でございます。
 政治家の秘書の行為について、どのような対応をしていくべきか、どうすれば事件を防止できるか、既に与党三党による検討を指示したところでありまして、この問題について、真剣に検討を始め、実効ある措置を国会でも議論していただきたい。今までの取り組みに対して不十分な点はなかったか、これから必要な点は何かということを改めて点検し、一層、政治腐敗の防止に、政治の信頼性向上に努力をしていきたいと思います。
 BSE問題に対する対応、責任についてのお尋ねであります。
 この問題につきましては、現在、既に屠畜場においてすべての牛に検査を行い、BSEに感染していない牛肉だけが流通する体制を確立いたしました。
 さらに、感染経路の究明や関連対策の実施などに全力で取り組んでいるところであり、農林水産大臣には、今後とも、これらの職責を果たし、国民に安心していただくよう全力を尽くしてもらいたいと考えております。
 今後の改革への取り組み、気概についてのお尋ねでございます。
 私は、総理に就任以来、特殊法人改革あるいは医療制度改革、財政構造改革など、着実に構造改革を進めてきたと思っております。
 さらに、実際の福祉、医療の分野におきましても、構造改革の一環であります規制改革につきましては、先ほどお話ししましたように、ケアハウスの経営の民間参入の促進や労働分野における規制改革、保育所待機児童ゼロ作戦などにより、国民の暮らしや仕事の分野における改革も着実に進めております。
 また、自民党も従来とは違いまして、抵抗勢力も協力勢力に変わっております。引き続き、政府・与党一体となって構造改革を断行してまいりたいと思います。(拍手)
    ―――――――――――――
    〔議長退席、副議長着席〕
副議長(渡部恒三君) 山口富男君。
    〔山口富男君登壇〕
山口富男君 私は、日本共産党を代表して、小泉総理に質問いたします。(拍手)
 まず、暮らしと経済の深刻な現状についてです。
 大規模な解雇、リストラの横行しているもとで、失業率は五・五%と統計史上最悪の状態です。しかも、収入が減っているために、国民は消費を抑えなければならず、暮らしの冷え込みと生活状態の悪化は極めて深刻な事態となっています。中小企業の倒産、廃業も高水準であり、今では、企業生産そのものが全体として縮小の傾向にあります。さらに、経済状態を映し出す株価も、連続的な下落と低迷を続けています。
 先月発表された経済財政白書は、景気回復が進まない大きな原因に、九八年以降、消費がふえなかったことを挙げました。なぜ、消費が力を回復しないのか。消費者心理調査などによっても、その最大の理由が収入の減少と雇用、失業の不安、そして、老後と将来の備えへの不安にあることは明らかです。この問題の解決に力を尽くすことこそ、政治の務めのはずです。
 そこで伺いたい。総理は、日本経済全体の苦境の大もとに国民の暮らしと個人消費の冷え込みがあることをはっきり認識されているのですか。
 消費の冷え込みという点で、小泉政権の責任は極めて重大です。
 総理は、年頭会見で、小泉政権はまだ九カ月と述べました。しかし、この九カ月だけでも、小泉政権は、日本経済と国民の暮らしに大きな打撃を与えてきました。実際、個人消費は、昨年四月以降、二四半期連続の後退で年率四%を超える大幅なマイナスであり、失業率、倒産のどの指標も悪化しているではありませんか。
 とりわけ、医療の負担増の押しつけなど社会保障の改悪、倒産や雇用悪化に歯どめをかけるどころか、民間でも構造改革が進んでいる、産みの苦しみだと発言したり、不良債権の早期最終処理の名で実際には中小業者を追い詰めるやり方などが、暮らしと経済の悪化に拍車をかけました。これでは、消費がさらに落ち込み、景気も後退するという悪循環を生むのも当たり前ではありませんか。
 一連の世論調査で、医療改悪を評価しないとする声や、小泉政権が雇用問題で真剣な対応をしていないとの批判が広がっているのも、そのことを裏づけるものです。
 こうした中で、日本経済は、所得、消費、企業生産が連鎖的に落ち込み、力を弱めるという、かつて経験したことのない状況に直面するようになったのです。政府自身、デフレスパイラルに陥る可能性があると認めています。
 この深刻な状況から抜け出すためには、国民に痛みを押しつけ、消費を冷え込ませてきた自民党政治の根本的な転換を図らねばなりません。そして、需要の六割を占める家計消費の力を回復する、暮らしを元気づけて経済を立て直す方向に真剣に足を踏み出す必要があります。無法な解雇、リストラに歯どめをかけ、雇用を確保、拡大し、社会保障を充実させるなど、この不況で苦しめられている国民の暮らしを直接応援して、内需を回復していく施策の具体化こそ、今、求められます。ところが、二次補正予算案には、その視点が全くありません。あるのなら示していただきたい。
 総理は、従来型の公共事業積み増しの補正はやらないと、繰り返し述べてきました。しかし、二次補正に盛り込まれている施策は、公共事業の積み増しを中心とする公共投資のみであり、それ以外の施策はありません。さらに、都市・環境対策、科学技術、ITなどを重点にしたと言いますが、そのいずれもが、橋本内閣、小渕内閣、森内閣の補正予算でも重点とされ、それぞれ多額の予算を注ぎ込んだものです。
 総理、本補正予算案は、あなたがやらないと言ってきた従来型の公共事業積み増しの補正そのものではありませんか。(拍手)
 しかも、その中身を見れば、採算の見通しの全くない中部国際空港の建設、圏央道など住民合意のない都市部での高規格道路づくり、環境保全どころか環境破壊を進める各地のダム建設の推進を初め、むだと浪費を指摘されてきた大型開発がメジロ押しです。従来型の公共事業の積み増しは、景気回復に役立たないばかりか、財政悪化を深刻にさせる、既に破綻が明瞭になったものです。これでどうして景気回復につながるのですか。
 総理は、政府が提出を予定している来年度予算案で公共事業費を一割カットしたと盛んに言います。しかし、本補正での公共事業前倒しによって、そのカット分は事実上復活しており、合わせてみれば増額となったではありませんか。はっきり答えていただきたい。
 二次補正予算案は、NTT株売却益を財源とする無利子貸し付けとして行われます。総理は、この財源について、うまいへそくりと述べました。しかし、総額二兆五千億円のうち、実に二兆四千六百億円は、政府が五年以内の償還義務を負う、紛れもない借金です。これがどうしてへそくりなのか。しかも、NTT株売却益を利用して公共投資を行うやり方は、国債償還財源の逼迫を理由として、一たんは中止されたものです。結局、国債発行額三十兆円の公約を守ったと見せるために借金をへそくりと言い逃れる、財源の粉飾ではありませんか。
 その一方で、深刻な雇用問題の解決や、不況と貸し渋りで苦しむ中小企業を支援するための本格的な施策は、何もありません。特に、今、信用金庫、信用組合などの地域金融機関が、融資実態にそぐわない金融庁検査の押しつけで相次いで破綻に追い込まれた結果、中小企業・業者が整理回収機構に送られたり、融資を打ち切られて倒産、廃業を余儀なくされるなど、地域経済は深刻な打撃を受けています。
 日本共産党は、実態調査に基づき、今月八日に、「信用金庫、信用組合など地域金融機関の連続破たんから地域経済と中小業者を守る「緊急要求」」を提案しました。
 政府は、これ以上の信金、信組つぶしと融資実態に合わない金融検査マニュアルの押しつけを直ちにやめ、この不況の中、地域経済を支えてきた信金、信組の育成や発展に力を尽くすべきであります。そして、政府の方針で信金、信組の破綻が引き起こされたのですから、借り手である中小業者と地域経済を守る万全の対策をとるべきです。まじめに返済を続けている中小企業を倒産に追い込むようなことがあってはなりません。さらに、不況を深刻化させている銀行の貸し渋りをやめさせ、その公共的責任を果たさせるべきであります。総理の答弁を求めます。(拍手)
 また、大手銀行への公的資金の注入が議論され始めました。地域金融機関を破綻に追い込む一方で、中小企業への貸し渋り、貸しはがしを強める大銀行に対しては、繰り返し公的資金をつぎ込むようなやり方に全く道理はありません。しかも、資本注入を受けた大手行は、みずから立てた中小企業への貸し出し目標さえ現時点で大幅に下回っており、到底達成できないことは明らかです。公的資金の再投入はきっぱりやめるべきであります。
 次に、消費税の問題です。
 塩川財務大臣は、消費税率の引き上げについて、今すぐにでも問題になる、財政構造を変えるとなると消費税を避けることはできないと、消費税の増税は不可避と明言されました。総理は、年頭会見で、消費税も聖域化せず、税制全体のあり方について議論をすべきと述べ、税制の見直しを指示しました。総理は、塩川大臣と同様に、消費税増税を念頭に置いているのですか。はっきり明らかにしていただきたい。
 九八年の消費税の大増税が消費に深刻な打撃を与え、景気後退の大きな契機となったことは、周知の事実であります。このようなやり方の繰り返しは、消費をますます冷え込ませ、景気の悪化に拍車をかけるばかりです。国民いじめの消費税増税への道はきっぱりやめるべきであります。(拍手)
 最後に、公共事業をめぐる政治家の不正な関与と資金をめぐる問題です。
 茨城県、山形県など東北、北関東の公共事業をめぐって、加藤紘一元自民党幹事長の秘書、鹿野道彦元農水大臣の元秘書の関与する脱税・金権腐敗事件が明らかになりました。公共事業の入札をめぐり、政治家に口ききを求め、それによる巨額の不当利益と所得隠しを行ったものです。これは、政治家のいわゆる政治力を悪用したものであり、秘書や元秘書がやったものと済まされる問題では断じてありません。
 しかも、かつてゼネコン汚職の舞台となった茨城や東北で再び事件が起きたことは、この問題の構造的な根深さを示すものです。事件の真相究明と根本的な対策の確立は、今国会に課せられた重大な責務と言わなければなりません。
 この点で、事件の関係者を秘書としていた政治家とその政党は、真相を調査究明し、その結果と責任を明らかにすべきであります。また、問題の徹底究明のために、国会として必要な証人喚問を行うこと、当面、加藤紘一議員並びに同議員秘書の佐藤三郎氏、既に逮捕されている鹿野氏元秘書の尾崎光郎氏の証人喚問を求めるものです。
 さらに、この事件は、現行のあっせん利得処罰法の抜本的強化が不可欠であることを示しました。一昨年の法案審議の際にも、私たちは、私設秘書が対象でないなど、同法に抜け穴があることを批判して、野党共同で対案を提起しました。これを拒否した与党三党の責任は重大であります。総理・総裁として、答弁を求めるものです。
 以上、小泉総理の姿勢と政策をただしてきましたが、国民に痛みだけを押しつける小泉内閣の構造改革路線に経済と国民の暮らしを託すわけにはいきません。大企業・大銀行応援の政治から国民の暮らし応援の政治に切りかえることこそ、不況克服と経済立て直しの道です。日本共産党はそのために全力を挙げることを申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 山口議員にお答えいたします。
 個人消費に関する認識と、構造改革の進展が個人消費の低迷や景気の後退という悪循環を生んでいるのではないかとのお尋ねであります。
 個人消費については、さきの景気回復局面においてはほとんど増加しておらず、景気の回復力を弱める一因となりました。この要因としては、御指摘のとおり、所得の低い伸び、家計の将来不安が消費を抑制する方向に働いたことが考えられます。また、我が国経済は、御指摘のとおり、現在、各経済指標を見ても厳しい状況にあります。
 しかし、やるべき構造改革を行わなければ持続的な経済成長はないものと考えております。我が国の潜在的な成長力は十分にあり、これを生かすためにも、経済情勢には細心の注意を払いつつも、構造改革を断行することにより、将来に対する国民の不安感の解消等を通じた個人消費の回復や経済の活性化を図り、持続的な景気回復を実現していきたいと思います。
 雇用の確保、拡大など、国民の暮らしを応援し、内需を回復する施策が必要とのお尋ねでございます。
 小泉内閣としては、昨年十一月に、雇用対策等に重点を置いた平成十三年度第一次補正予算を編成し、現在、その着実な執行に努めております。次いで、今回の第二次補正予算においては、特別養護老人ホームや保育所等の施設整備、また、公共空間のバリアフリー化推進等、少子高齢化への対応に関する施策を含め、構造改革の加速に資する事業であって、就業機会の増大に資し、経済への即効性が高い事業について、総額二兆五千億円を計上しております。
 このように、政府としては、国民の暮らしを応援しつつ内需を回復していくため、必要な施策を切れ目なく講じていきたいと思います。
 補正予算は従来型の公共事業の積み増しではないかとのお尋ねでございます。
 今回の補正予算は、都市機能の高度化、国際化、環境に配慮した活力ある地域社会の実現等の政策課題に対応した構造改革に資する事業であって、経済活性化効果が期待できるものに必要な経費を計上しているところであり、従来型の公共事業積み増しの補正との御批判は当たらないと考えております。
 また、公共事業の内容と景気回復についてのお尋ねでございます。
 今回の補正予算では、都市機能の一層の高度化、国際化などの政策課題のもと、経済活性効果が期待できるものを実施することとしております。また、財源については、国債の増発ではなく、NTT株式売却収入を活用することにしております。
 この補正予算を早期に執行することが改革を加速化し、デフレスパイラルを回避することとなるものと考えております。
 来年度の公共事業費が増額しているのではないかとのお尋ねでございます。
 今回の補正予算は、十三年度において改革を加速しつつデフレスパイラルに陥ることを回避するため取りまとめました緊急対応プログラムを実施するために編成したものであります。その内容も、構造改革に資する事業に必要な経費を計上しているところであり、来年度予算と合わせて増額となったとの御批判は当たらないと考えております。
 NTT株式の売却益の活用に関するお尋ねです。
 現下の財政状況にかんがみれば、国債発行額三十兆円以下の方針を堅持することにより政府の財政運営に対する信頼を保持し、国債の追加発行が国債市場に与える悪影響を回避する必要があります。
 今回の措置は、国債の追加発行によらず、国債整理基金特別会計における政府保有資金を国債償還に支障の生じない範囲内で有効活用するものであり、財政規律を保持しつつ改革に資する事業を行うものであることに御理解を賜りたいと思います。
 信用金庫、信用組合の経営に関するお尋ねです。
 政府としては、信用金庫、信用組合が今後ともその役割を十全に果たしていくことができるよう、検査や日常の監督を通じて経営状況を的確に把握し、その結果を踏まえ、経営の健全性確保に努めることとしております。
 さらに、やむを得ず破綻に至った場合には、地元経済への影響を最小限に抑える観点から、早急に受け皿を確保する等の努力を行っております。
 貸し渋りに関するお尋ねでございます。
 政府としては、金融機関に対し、先般の改革先行プログラムを受け、中小企業を含む健全な取引先に対する資金供給の一層の円滑化に努めるよう要請を行っているところであります。
 中小企業向け貸し出しと資本増強についてのお尋ねであります。
 公的資本増強を受けた金融機関の中小企業向け貸し出しについて、進捗の不十分な金融機関は、いずれも十三年九月期の履行状況報告において、年度末に向けて計画達成のために最善を尽くす旨を明らかにしており、今後の履行状況を注視してまいりたいと考えております。
 また、現時点において公的資本増強が必要な状況にあるとは考えておりませんが、万が一、今後、我が国の信用秩序の維持に重大な支障を生じるおそれがある場合には、金融危機対応会議を開き、大胆かつ柔軟に対応してまいりたいと考えます。
 消費税についてのお尋ねでございます。
 私は、今回の税制改革の議論に当たっては、消費税を上げるとも下げるとも言いません。あるべき姿の税制改革に向けて検討を行っていただきたい、そして、今後も、二十一世紀に対応できるような、国民が持っている潜在力を引き出すことができるような、活力ある税制改革をなし遂げたいと思っております。
 政治と関連した金銭の問題についてでございます。
 世間から疑惑を持たれている場合は、まずは、個々の政治家が国民に対してきちんと説明し、対応していくべきものと考えております。その上で、証人喚問をする必要があるのかどうかについては、議院の運営に関する問題であり、国会においてよく議論していただきたいと考えております。
 一昨年のあっせん利得処罰法の法案審議の経緯についてでございます。
 一昨年の法案審議におきましては、私設秘書について、さまざまな形態の私設秘書を一律に処罰の対象とするのは不適当であるとの判断から、処罰の対象に含めなかったものと承知しております。
 今回の一連の容疑事件によって、政治家と金との結びつきについて国民の不信を招きかねない状況にあることは、極めて遺憾に思っております。どうすれば国民の信頼を損なう行為を防止できるかについて、私設秘書を処罰対象に加えることを含めて、各党各会派の議論を踏まえつつ、私としても判断してまいりたいと考えております。(拍手)
    ―――――――――――――
副議長(渡部恒三君) 辻元清美君。
    〔辻元清美君登壇〕
辻元清美君 私は、社会民主党を代表いたしまして、昨日の塩川財務大臣の財政演説及び小泉内閣の政治姿勢について質問をさせていただきます。(拍手)
 私は、小泉総理の政治手法の特徴はええかっこしいだと思っています。特に今回の第二次補正予算につきましては、このええかっこしいの馬脚をあらわしたのではないかというように思っています。その理由を一つずつ申し上げたいと思っています。
 まず、第二次補正予算の財源の問題です。竹中大臣にお伺いしたいと思います。
 今回の予算の二兆五千億円の財源に、先ほどからも議題になっておりますが、NTT株の売却益を充てることになっています。特に今回、NTT資金の中でもいわゆる補助金型が大半ですけれども、これでは、自治体は、交付されるNTT資金に合わせて地方債を発行し、調達しなければならなくなるため、地方債分を合わせると、二兆五千億円を上回る将来の負担になります。結局、将来の国債発行の増加要因となるもので、現在の国債発行をさらに負担を増して先送りしたにすぎないということになると私は考えます。
 竹中大臣は、国民負担を先送りする点で国債発行と性格に変わりはないと既に発言されていますが、今でもこの御認識に間違いありませんか。政治的配慮を抜いた、経済学者としての正確な御答弁をお願いしたいと思います。
 国債発行を三十兆円におさめた、公約を守ったでしょなんて、総理がええかっこするのは、財政の現状を余計見えにくくし、あたかも改革が行われているようなイメージだけを振りまくことになり、総理大臣としての見識を問われると私は思いますが、いかがでしょうか。
 さらに、今年度予算については公共事業を一兆円削ると総理はおっしゃっていますが、今回の補正予算で従来型の公共事業費を二兆五千億円使う分、結局、一兆円減るのではなく、事実上、一兆五千億円ふえたことになるのではないでしょうか。塩川大臣、いかがでしょうか。昨年度の補正予算だというような形式的ではない御答弁をお願いしたいと思います。
 さて、改革、改革と小泉総理が絶叫する裏では、高祖前参議院議員の郵政選挙違反事件、加藤紘一自民党元幹事長の佐藤三郎秘書による脱税・口きき疑惑や、国会議員元秘書による入札介入事件が明らかになってきています。相も変わらず、政官業の癒着体質、利益誘導政治は変わっていません。
 この構造が、仮に幾ら立派な予算を成立させたとしても、税金を食い物にして財政赤字をここまで膨れ上がらせてきた原因だと私は考えますが、小泉総理はいかがでしょうか。
 小泉総理は、口では改革、改革と叫び、自民党をぶっ壊すと身ぶり手ぶりをつけて、この場所で、上半身では改革のパフォーマンスを演じていらっしゃいますが、下半身はどっぷり古い自民党体質という岩盤に組み込まれていらっしゃるのじゃないでしょうか。(拍手)
 あっせん利得の禁止については、社民党はいち早く提起し、我が党の土井党首は、いつも目くじらを立てて怒っていると言われるほど、政治の御意見番として、この問題には厳しい主張をしてきました。
 かつて、あっせん利得処罰法の議論の最中に、自民党議員の中からは、政治家はあっせんする動物だなどという発言も飛び出し、あきれ返ったことを覚えています。今もこの本会議場にいらっしゃいます。総理、政治家はあっせんする動物でしょうか。いかがお考えでしょうか。
 一年半前、皆さんも覚えていらっしゃると思います、中尾元建設大臣が逮捕されました。与野党が、それをきっかけに、あっせん利得処罰法案を提出して議論がされました。私は、提出者として、リクルート事件のときの竹下元総理の金庫番の青木秘書も私設秘書であったというような事例も引きながら、私設秘書が抜け道になるので対象に入れるべきであると一貫して主張してきました。これを最後まで拒否したのが、与党の対応でした。今回の佐藤秘書も、案の定、私設秘書でした。竹下さんの時代から何が変わったのでしょうか。
 当時、与党案の提出者の一人でいらっしゃったのが尾身大臣です。尾身大臣に対して、委員会で、何人私設秘書がいるのかという単純な質問にすら、お答えできませんと答弁されないありさまだったわけです。なぜですか。
 もう一度、この場で尾身大臣にお聞きします。私設秘書は国会議員として何人いらっしゃるのでしょうか。そして、小泉総理は、国会議員として私設秘書を何人お持ちでしょうか。それぞれお答えいただきたいと思います。
 私は、あっせん利得処罰法の処罰対象に私設秘書を加えるだけではなく、私設秘書も登録制にしたらどうかと考えますが、総理はいかがでしょうか。
 また、口きき行為に国会議員が関与したかどうかの厳しい解明も必要だと思います。加藤議員を初め国会議員の関与について、そして、佐藤秘書初め関係者の予算委員会での証人喚問も含め、真相究明が必要だと考えますが、総理はいかがでしょうか。
 そして、さらに、政治と金の癒着を断ち切るためには、政党支部に対する企業・団体献金の禁止に踏み込まない限り、実効性に乏しいと思います。
 自民党の政党支部は、今年一月で六千九百三十一で、二〇〇〇年度は百六十八億円の企業・団体献金を受けています。三百の小選挙区で割っても、一つの選挙区に二十三も支部があることになります。総理は、六千九百三十一もある自民党支部の数について、多過ぎるとお考えか、それとも適当であるとお考えか、率直な御意見を伺いたいと思います。
 総理は、以前、政治家が受ける企業・団体献金について、スポーツ選手や芸能人がスポンサーをつけるのと同じだというような御答弁をこの場所でされました。私は、これらを同列に論じる感覚こそ、総理自身の感覚が麻痺している証拠ではないかと思うのです。私たちは、公人です。そして、税金の使い道や税金のいただき方を決める立場にある者です。
 例えば、先日破綻した石川銀行は、昨年九月期で二百二十四億円の債務超過に陥っていることが判明しましたが、同行が赤字だった年も、小泉総理が頼り切っていらっしゃる森前総理は政治献金を受けていたことが明らかになっています。総理は、このような形での政治献金も、スポーツ選手などへのスポンサーからの資金提供と同じだとお考えなんでしょうか。御意見をお聞かせください。
 リストラで首切りが横行している現状で、痛みに耐えてくれと叫ぶ一方でそれら企業からも政治献金は受け取るでは、自分たちの痛みは逃れて人にだけ痛みを押しつけていることに等しいと私は思いますが、総理、いかがでしょうか。
 議員歳費を減らし、みずから痛みを分かち合う。結構でしょう。しかし、一方で企業・団体献金を百六十八億も自民党が受け取っているようでは、単なるパフォーマンスにすぎないのじゃないでしょうか。
 社民党は、政党支部の数の制限と企業・団体献金の全面禁止を皆さんに訴えたいと思います。皆さん、いかがでしょうか。(発言する者あり)特にこの問題になると自民党席からのやじが多いです。それは痛いところに触れられているからじゃないんですか。何回同じような質問がこの本会議場で繰り返されたんですか。今こそきちっと踏み切るべきだと私は思います。総理の御意見を伺いたい。
 次に、小泉内閣が掲げる構造改革と不良債権処理問題についてお尋ねします。
 先日、青木建設がつぶれましたが、これらゼネコンと今までもたれ合い関係にあったのも自民党であったにもかかわらず、その責任にはほおかむりをして、昨年十二月六日、青木建設が破綻したとき、総理は、構造改革が順調に進んでいるあらわれだと述べられました。今もこの見解を変えておられないのでしょうか、まずお伺いします。
 さて、一月十八日、大手スーパー、ダイエーの新再建三カ年計画が発表されましたが、これには政府の意向も強く反映されていると聞き及んでいます。言うまでもなく、ダイエーが抱える危機は日本経済の抱える危機そのものであると私も認識しています。
 ダイエーは、ツー・ビッグ・ツー・フェールと言われ、今回の措置によって延命されて、三月危機で破綻することはないと見られています。私は、ダイエーが破綻から免れるならば、それは結構なことだと思っています。
 しかし、総理の青木建設のときの見解からすると、今回の延命は構造改革が進んでいないことになるのではないかと思われますが、総理の御見解はいかがでしょうか。青木建設の場合とどこが違うのか、お答えをいただきたいと思います。
 また、取引銀行三行による四千二百億円の支援は、債務総額が二兆三千四百億円の約一八%に当たります。青木建設は、銀行から一八%より多い三〇%の債権放棄を受けながら、結局、倒産してしまいました。総理は、今回の再建策が十分問題に対処し得るものだとお考えでしょうか、お答えいただきたいと思います。これは後に響いてくる答弁だと思いますので、しっかり答えてください。
 さらに、ダイエーの経営責任の問題が残っていると思います。
 今回の再建策では、役員報酬のカットぐらいしか発表されていません。経団連や全国銀行協会のまとめた私的整理に関する指針でも、債権放棄を受ける企業の経営者の原則退任が条件になっています。
 ダイエーの経営陣がほとんど責任らしい責任もとらないでは、日本の企業のモラルハザードを世界に示すことにはならないかと私は心配しております。五割減資となる株主も、これには納得いかないのではないでしょうか。ダイエーの経営責任のとり方はこれで十分とお考えか、総理の御見解を伺いたいと思います。
 ここをはっきりさせない限り、小泉総理の掲げる「聖域なき構造改革」は、企業献金問題や経営者責任問題などの具体的な局面になると「聖域だらけの構造未改革」になっている感は否めません。
 小泉内閣の構造未改革は、BSE問題への対応でも明らかです。
 熊澤農水省事務次官が辞任したのを、武部大臣は、BSE問題の引責ではないと公言されました。それでは、これだけ社会不安に陥れているBSE問題の政治責任は、だれが、どのような形でとるのでしょうか。感染源、感染ルートの解明はそんなに大きな問題なのかなどの発言一つをとってみても、武部大臣の責任は大きいと思います。罷免要求をしていますけれども、総理はいかがお考えでしょうか。
 また、昨日から、アフガン復興支援国際会議が開かれています。この復興会議で、これまで頑張ってきた日本のNGOの参加が昨日までは排除されました。政府に批判的であるということに対する、何か外務省と一部議員の意見によって排除されたと聞いております。
 今や、国際協力分野では、各国政府よりもNGOの方が、情報量も多く、持続的な活動を展開する新しいセクターとしての国際評価は定着しており、その重要性は、折に触れ、私も国会の中で訴えてきたところです。
 幾ら総理がアメリカの週刊誌にアフガン支援の投稿をして、ええかっことは申しませんけれども、かっこよくお書きになっても、おひざ元がこのような状況では世界の笑い物になってしまうと、私は大変危惧しております。NGOを排除した政府のあり方は国際社会の中で非常識きわまりないと考えますが、総理の御認識はいかがでしょうか。
 最後に、私は、開かれた日本をつくることが経済の活性化にとってとても大事だと訴えたいと思います。
 先日、私も出席しました経済四団体の新春の会合で、小泉総理は、日本民族は必ず経済をよみがえらせることができるという趣旨のスピーチをされました。私は、ここで日本民族という言葉による根性論が出てくること自体、日本経済の現状を総理は御認識されていないのではないかと愕然といたしました。
 アメリカのIT産業を支えたのは、インドから大量にやってきた技術者でした。EU諸国では、民族だけではなく、国境を越えたユーロの実験が始まっているのです。グローバリゼーションの波にさらされているのは、経済だけではありません。政治も一民族、一政治形態の時代は終わろうとしているという認識が必要な時代であるということに、まだお気づきではないのでしょうか。
 私から見れば、小泉総理とは、自民党が生んだ、自民党しか知らない、骨まで自民党の、ミスター自民党の現在のチャンピオンにすぎないように見えます。ですから、残念ながら、未来を切り開くグローバルなイマジネーションの限界があらわになってきているようにお見受けするのです。
 日本経済再生を日本民族の根性論で乗り切れるわけはありませんし、多様性をいかに吸収できる社会に構造改革していくかこそが望まれているということを最後に訴えて、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 辻元議員にお答えいたします。
 まず、NTT株式の売却益の活用に関するお尋ねであります。
 ええかっこしいと言いますけれども、何がこれ、ええかっこなんですか。現在の厳しい財政状況を考えて、苦心惨たんの策ですよ。デフレスパイラルに陥らせない、国債の追加発行が国債市場に与える悪影響を回避するために打った手であって、ええかっこしいとは私はちっとも思っていません。苦心惨たんの策だということを御理解いただきたいと思います。(拍手)
 政官業の癒着体質や利益誘導政治が財政赤字を膨れ上がらせた原因ではないかとのお尋ねであります。
 私は、今回の一連の事件、疑惑は、国民の政治への信頼を揺るがす大変残念なことと思っております。これを機に、さらなる政治腐敗防止に全力を挙げてまいりたいと思います。政官業の癒着や利益誘導政治が行われないように努めるとともに、税金のむだ遣いなどが起こらないよう努力していきたいと思います。
 政治家はあっせんする動物だという発言をどう思うかというお尋ねでありました。
 私は、政治家は多くの国民の声を国政の場に反映させ、国家国民のことを考えた政策を立案していくのが仕事であって、どのような意図でそのような発言がなされたのか、全く理解ができません。
 私の国会議員としての私設秘書は何人かとのお尋ねがありました。
 私設秘書については、明確な定義があるわけではありません。私の事務所に勤務する職員のうち、いわゆる公設秘書を除いた人数は九人であります。
 私設秘書について明確な定義がないというのは、それは、一般には、議員と親しい関係にある人や、その職務を補佐するなど重要な役割を果たしている人などをいうものと思われますが、その近しさや職務の内容は千差万別であります。具体的にどのような関係、職務をもって私設秘書というかは、各議員ごとにばらばらなのが実態ではありませんか。したがって、私設秘書の定義については、今後、各党各会派において十分御議論をいただきたいものと考えております。
 あっせん利得処罰法の処罰対象についてのお尋ねであります。
 私は、今回の一連の容疑事件によって、政治や政治家に対する国民の信頼がまたもや大きく損なわれたことを憂慮しています。どうすればこの国民の不信を招くような行為を防止できるか、政治家がみずからの問題として、法律の整備を含めて早急に改善策を検討すべきものと思います。御指摘のように、本法の処罰の対象に私設秘書を加えること及びその場合の私設秘書の定義の問題も含めて、今国会で十分御議論いただくべきものと考えます。
 口きき行為に国会議員が関与していたかどうかの真相究明についてのお尋ねでございます。
 私は、こうした政治と関連した金銭の問題について、世間から疑惑を持たれているのであれば、まずは、個々の政治家が国民に対しきちんと説明し、対応していくべきものと考えております。
 政党支部の数の制限と企業・団体献金の禁止についてのお尋ねであります。
 政党がその支部をどのように構成し、財政面も含め政治活動をいかなる形で展開するかは、それぞれの政党組織の基本にかかわる問題であり、直ちに数の制限を設けるという一律の規制を設けることは難しいと思います。
 いずれにしても、政治及び政治家に対する国民の信頼を損なうことがないよう、政治資金の透明性を高めることとあわせて、政治献金による利益誘導を防止する仕組みについて、企業・団体献金のあり方も含め、各党各会派において引き続き議論すべきものと考えております。
 また、企業・団体献金がスポーツ選手へのスポンサーの資金提供と同じだと考えるかとのお尋ねであります。
 私が過去に企業献金について発言したことについて言われていると思いますが、私は、この発言は、現在の日本の状況を見ると、スポーツ選手にしても、音楽においても、コンサートにおいても、あるいは芸術、テレビ、新聞についても、企業の寄附、協力なしにその活動が成り立っているものはないということを言ったのです。
 本来、政治家や政党というのは、国民の福祉に最も献身的に活動するのが政党であり、政治家であります。そういうことから考えれば、政治家として政治活動にどのような資金の協力を求めるべきか、それについては私は真剣に政党も考えるべきではないか。
 私は、一定の規制のもとで企業・団体献金を受けることは、必ずしも悪であるとは思っていません。企業献金、団体献金を受けなかった場合、政治活動はだれがやるんですか。税金でやるんですか。こういう問題も考えていただきたい。
 そういうことから、私は、現在の状況において、政党を悪と考えたり、政治家を悪という前提でもって政治献金のあり方を考えるのは不適当だと思っております。
 これからも、民主主義社会の中で、どのように政治活動のための寄附を集めるのか、国民が提供してくれるのか。政治は国民のためのものであります。政治を活性化するために、政治活動を国民のものとするために国民から自発的な寄附、献金を受けるのが悪いとは思っておりません。(拍手)
 首切りを実施している企業からも政治献金を受け取るのでは、人にだけ痛みを押しつけているのと同じではないかとの御指摘がありました。
 先ほども申し上げたとおり、政党が一定の規制のもとに企業・団体献金を受けることは認められていることであり、この問題とリストラと雇用の問題とは別の問題であると考えます。
 議員歳費を減らす一方で企業・団体献金を受け取っているようでは、単なるパフォーマンスではないかとの御指摘がありました。
 私は、両者は区別して考えるべきものだと思います。議員歳費の削減は自由民主党の公約であり、改革の痛みを国会議員も国民と分かち合うべく、その実現に努力していきたいと考えているものでありまして、パフォーマンスとの御指摘は残念に思います。
 個別企業の破綻と構造改革の関係についてのお尋ねがありました。
 私は、就任以来、不良債権の処理が日本経済の再生のための構造改革として最も重要な課題である旨、申し上げてまいりました。同時に、御指摘の発言の際にも、個別具体的な企業の問題を論評するのは適当ではないと申し上げたところであります。一般論として、不良債権の処理が進められることは構造改革の進捗をあらわすものとして評価すべきであると考えており、その考えは現在でも変わっておりません。
 ダイエーの再建策についてでございます。
 ダイエーの再建策については、先週末に、再建のための新三カ年計画の骨子が発表されました。再建策の具体的な内容については、今後、当事者がみずから決めるべきものでありますが、政府としては、ダイエーが選択と集中による構造改革を進め、主力行がそれを支援するという、危機感を持った自主的な取り組みを行っていると理解しております。
 ダイエーの経営責任についてお尋ねであります。
 企業の経営責任は、関係当事者間で決めるべき問題であります。
 お尋ねのダイエーについては、再建に取り組む前の経営責任者について、退職慰労金の返上等の責任がとられているとともに、昨年来経営再建に取り組んできた現経営陣についても、役員報酬のカットが行われるものと承知しております。
 BSE問題の政治責任についてでございます。
 先ほどもお答えしましたとおり、既に屠畜場においてすべての牛に検査を行い、BSEに感染していない牛肉だけが流通する体制を確立しました。
 現在、さらに、感染経路の究明や関連対策の実施などに全力で取り組んでいるところであり、農林水産大臣には、今後とも、これらの職責を果たし、国民に安心していただくよう全力を尽くしてもらいたいと思います。
 アフガン復興支援国際会議で、ある日本のNGOが外されたのは、外務省が知らなかった北部同盟の有力者の携帯番号をこのNGOが自民党議員に教えたことを新聞で明らかにしたのを根に持った嫌がらせだというような御指摘がありましたが、そのような事実はありません。
 アフガン復興に関しては、政府とNGOがそれぞれの役割を果たしつつ、お互いに補完し合い、協力することが望ましいと思います。特に、我が国の顔の見える援助という観点からも、我が国のNGOとの協力は有意義だと考えます。
 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
    〔国務大臣塩川正十郎君登壇〕
国務大臣(塩川正十郎君) 質問にお答えする前に、辻元さんは、再三再四、小泉総理をええかっこしいとおっしゃいましたが、最近、若い人は、ああいうのを、パフォーマンスがいいと言うんですよ、パフォーマンスがいいと。その意味で、あなたもなかなかええかっこしいのところがありまっせ。どうぞ、十分気つけておやりなさいませ。(拍手)
 質問のお答えでございますけれども、何か質問を聞いておりましたら、こういうことをおっしゃいましたね。平成十四年度予算で公共事業費を約一兆円削減したのに今度の第二次補正予算で二兆五千億円をふやしておる、差し引き一兆五千億円をふやしておるじゃないか、こういう質問であったと思うております。そうですね。
 そういうことを聞いていると、何か従来型の公共事業というものを、悪いことをやっているように解釈するような感じがする。そうではなくして、公共事業というのも立派な、財産を形成する、日本の社会基盤をつくることでございますので、公共事業は今後もやはりできるだけやってもらいたいが、しかし、予算の許す範囲内において効率的にやってもらいたいというのが我々の主張でございますので、誤解しないでいただきたいと思うのです。
 それと同時に、今度二兆五千億円入れますのは、従来型の公共事業でないと再三再四言っております。これは、今度やるのはちょっと違うんや。構造改革を推進するための社会資本の整備のためにやるということです。そしてもう一つは、デフレスパイラルを防止する、回避するためにさらなる財政的追加をするという意味でございますので、間違えないようにしていただきたい。
 でございますから、従来型の公共事業と違って、今回は、都市機能の一層の高度化、国際化を図るための事業、それから、環境に配慮した活力ある地域社会をつくるための事業、それから、科学技術、教育、ITの推進等による成長フロンティアの拡大、ここに金を使う。そして、少子高齢化対応に使う。こういう従来型の公共事業と違う新しい分野における公共事業に、公共施設に使うものでございますので、誤解ないようにお願いいたします。(拍手)
    〔国務大臣竹中平蔵君登壇〕
国務大臣(竹中平蔵君) 私に対しては、今回の補正予算の財源にNTTの資金を活用するということについてどう認識するかという点のお尋ねがございました。
 簡単に申し上げますが、本補正予算については、現下の厳しい財政状況にかんがみまして、政府が保有する国債整理基金の資金を活用して公共投資を行うものであります。したがって、今回の措置によって、将来、何らかの財源手当てを必要とすることがあり得るということを申し上げたつもりでありますし、そのことを否定するつもりは全くございません。
 しかし、その一方で、このNTT資金の活用は、まず第一に、平成十三年度においても国債発行三十兆円以下を堅持することにより政府の財政運営に対する信頼性を保持することが大変重要である、第二に、国債の追加発行が国債市場に与える影響を回避する必要がある、この二点を考慮したものであります。
 いずれにしても、ここで重要な点は、今回の補正予算におけるNTT資金の活用については、国の会計間での資金調達であるという点であります。したがって、これは市場における資金調達、つまり国債発行とはその意味で性格が異なるものであるということを認識しております。
 市場における資金調達が格好が悪くて、内部がいいか悪いかというのは、市場経済というものをどのように認識するかという資本主義観、市場経済観による違いなのではないかというふうに認識をしております。(拍手)
    〔国務大臣尾身幸次君登壇〕
国務大臣(尾身幸次君) 辻元議員にお答え申し上げます。
 私にも、国会議員としての私設秘書は何人かとのお尋ねがございました。
 私設秘書につきまして明確な定義があるわけではないということは、先ほど総理が答弁を申し上げたとおりでございますが、私の事務所に勤務する職員のうち、いわゆる公設秘書を除いた人数は十九人でございます。(拍手)
副議長(渡部恒三君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
副議長(渡部恒三君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後三時五分散会


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