衆議院

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第14号 平成14年3月19日(火曜日)

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平成十四年三月十九日(火曜日)
    ―――――――――――――
  平成十四年三月十九日
    午後一時 本会議
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 二階俊博君の故議員岸本光造君に対する追悼演説
 特殊土じよう地帯災害防除及び振興臨時措置法の一部を改正する法律案(農林水産委員長提出)
 土壌汚染対策法案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時三分開議
議長(綿貫民輔君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
議長(綿貫民輔君) 御報告することがあります。
 議員岸本光造君は、去る一月二十三日逝去されました。まことに哀悼痛惜の至りにたえません。
 岸本光造君に対する弔詞は、議長において去る十七日既に贈呈いたしております。これを朗読いたします。
    〔総員起立〕
 衆議院は 議員従四位勲三等岸本光造君の長逝を哀悼し つつしんで弔詞をささげます
    ―――――――――――――
 故議員岸本光造君に対する追悼演説
議長(綿貫民輔君) この際、弔意を表するため、二階俊博君から発言を求められております。これを許します。二階俊博君。
    〔二階俊博君登壇〕
二階俊博君 ただいま議長から御報告のありましたとおり、従四位勲三等衆議院議員岸本光造君は、今国会召集の直後に、郷里和歌山市の病院で逝去されました。
 昨年末に体調を崩され、療養中でありましたが、私たちは、あなたの一日も早い御回復をお祈りするとともに、近いうちに必ず元気なお姿で以前と変わらぬ精力的な政治活動を再開されるものと、だれもが信じて疑わなかったのであります。
 今年の一月六日のことでありました。和歌山県選出の国会議員の三時間にわたるラジオ討論会に、病を押して東京から電話で参加された君は、今年の政局展望について、次のように語っておられました。「小泉内閣の改革を進めていくことについて、いろんな意見はありますが、改革をとことん進めていくことが日本の未来につながっていくのではないか。多少の痛みは伴いますが、改革は進めていかなければならない。」と、絞り出すような声で、強い決意を述べられました。
 しかし、残念ながら、私たちにとって、これが君の声を聞かせていただく最後の言葉となってしまいました。
 その後、しばらくして郷里に帰られた君は、容体、にわかに急変され、最愛の奥様を初め、御家族の皆様の懸命の看病にもかかわらず、去る一月二十三日、六十一歳という若さでその生涯を閉じ、不帰の客となられました。
 君と私は、昭和五十年、ともに和歌山県議会議員選挙に初当選以来、当時の若手議員十二名をもって、清新自民党県議団を結成、互いに切磋琢磨しながら、「県政界に新風を」を合い言葉に、ふるさと和歌山県の発展に若い情熱を傾けたのも、つい先ごろのように懐かしく思い起こされるのであります。
 さらにその後、ともに国政に参画の機会を得て、たとえ党派を異にしながらも、互いに声をかけ合いながら、同じ目的に向かって歩んでまいりました。
 君の余りにも早過ぎる急逝の悲しい知らせに接し、まことに、惜しみても余りあり、痛恨のきわみであります。
 私は、御列席の各位の御同意を得て、議員一同を代表し、謹んで哀悼の言葉を申し述べたいと存じます。(拍手)
 君は、昭和十五年十一月、有吉佐和子さんの小説「紀ノ川」で有名な清流のほとりに、美しい紀州富士を仰ぐ、豊かな自然の景勝に恵まれた、和歌山県は那賀郡粉河町で、ミカン農業を営む父健治氏、母濱子さんの長男として生をうけられました。
 君の過ごされた少年期は、申すまでもなく、戦中戦後の大変厳しい時代でありました。
 温かい御両親の愛情に包まれ、家業であるミカン農業の作業を手伝いながら成長された君は、県立粉河高校を卒業の後、神奈川大学、さらに法政大学大学院へと進まれました。
 君が学生生活を送られた時代は、六〇年安保闘争の真っただ中でありました。その激しい時代のうねりの中、多感な岸本青年は、社会の持つ不平等に対し、若者らしい純粋な正義感を燃やし続け、さまざまな角度から学び、悩み、思索を繰り返す青春の日々を過ごされたのであります。
 特に同和問題に対しては、若いころから強い関心を持ち、県議会の当時からも、人一倍、熱意を持って取り組んでこられました。そのきっかけとなったのは、高校時代に、何事も隠すことなく語り合ってきた無二の親友が、ある日、「おまえにも死んでも言えないことが一つだけある」と、一人で悩み、苦しみ、ただただ涙を流すばかりの、その友人の姿を目の当たりにして、同和問題の存在を知らされたのであります。
 それ以来、君は、「同じ人間でありながら、なぜ差別をしたり、されたりするのか、これは絶対に許せないことである」という熱い思いを抱くようになり、その思いが君の生涯を通して「人にやさしい政治」を訴え続けてこられた、人間・岸本光造君の原点がここにあったのであります。(拍手)
 大学院を卒業の後、京都短期大学で、政治学の教師として学究の道を歩まれました。その君が政治家としての道へ転身の機会を得られたのは、和歌山県設置百年の記念論文の募集に応募された際、君の主張の和泉かつらぎ山系研究学園都市構想が見事に選ばれ、研究学園都市構想という形で、後の県の重要政策にも取り上げられたことにあるのであります。
 このことを知る郷土の皆さんの間から、君を県議会に送ろうという動きが澎湃として起こりました。当時の心境を、一身をなげうつ覚悟で期待にこたえることを決断したと、しばしば私たちに語ってくれました。
 激戦の中を見事に初陣を飾られた君のその後の活躍は実に目覚ましく、教育者、研究者としての経験を生かして、教育改革や同和問題に、水を得た魚のごとく、積極的に取り組まれました。
 また、全国有数のミカン生産県である和歌山県の農業振興の先頭に立って、努力を傾けてこられたのであります。
 とりわけ、オレンジ自由化の際は、みずから走り回って全国のミカン生産県に呼びかけ、全国みかん生産府県議会議員対策協議会を結成し、推されてその会長としてミカン農家の生活安定のために尽くされた君の姿は、今でも全国のミカン生産者の間で語り継がれているのであります。
 君は、県議会議員を務めること五期にわたり、その間、農林常任委員長、同和対策特別委員長、議会運営委員長、県議会副議長、そして平成二年七月には県議会議長に就任されるなど、和歌山県政の発展のために大きな役割を果たされました。
 県政界の第一人者としての活躍ぶりは、やがて、政治改革を争点とした平成五年の第四十回総選挙において、君は、自由民主党公認候補として、当時の和歌山県第一区から勇躍立候補され、見事に初当選の栄冠に輝かれたのであります。(拍手)
 国会議員になられてからの君は、ライフワークとしての人権・同和問題の改善に、文字どおり熱い情熱を傾け、全力投球を続けてこられました。
 法務委員会においては、理事として、人権擁護施策推進法の成立に、また逓信委員会においては、聴覚障害者の知る権利のために、字幕放送の発展にも尽くされました。一昨年には、議員立法である人権教育及び人権啓発の推進に関する法律の立案に携わり、その成立のために奮闘されたのであります。
 つい先日のことでありますが、与党人権問題等に関する懇話会の席に、いつもの元気者の君の姿が、もうどこにも見えないのであります。何とも言えない寂しさを覚えながら、私は、先輩や同僚のお許しを得て、「もしこの席に岸本議員がおられれば何を言われるのだろうかと先ほどから考えていました。せっかく人権擁護法案ができましたが、やはりここは、三年ぐらい経過したところで見直しを図るという附帯決議をつけてはどうか」と提案しましたところ、出席者全員の御賛同を得て、三年後見直しの方針が与党三党として決定されました。まさに、岸本議員のような、人間愛のほとばしるような政治家が、間違いなく私たちの心の中に生き続けていることを確認する瞬間でもありました。
 さらに、君は、我が国農業の発展向上のために、専門的な知識を生かして大いに御活躍されました。
 衆議院農林水産委員会においては、理事を務め、自由民主党にあっては、農林水産部会長、果樹農業振興議員連盟幹事長などを務め、二十一世紀には食料が必ず不足する、日本の食料は国内で自給することが大切であるとの信念に基づき、昨年三月、農産物緊急輸入制限の暫定措置発動に力を注がれたことは、記憶に新しいところであります。
 また、県にあっては、和歌山県土地改良連合会会長として、常に農業者の立場に立って、関係者の期待にこたえられたのであります。
 第二次橋本内閣においては、農林水産政務次官として、農林水産業の抜本的改革に精力的に取り組まれ、新しい農業基本法の制定、米及び麦の新たな政策大綱の策定、国有林野事業の改革に代表されるように、将来に向けて、その確かな道筋を残されたのであります。
 君の農業にかける熱い思いと力強いリーダーシップによって、我が国農政の歴史に輝かしいページを記すことができたのであります。
 さらに、中国及び韓国との漁業協定の早期締結に尽力されるとともに、ローマにおける国際連合農業機関総会、そしてジュネーブで開催された世界貿易機関閣僚会議において、日本政府代表として出席し、堂々たる演説を行い、我が国の主張を世界にアピールすることができました。
 このようにして、岸本光造君の八面六臂の御活躍は、本院議員に連続して当選されること三回、在職八年八カ月。私たちは、あなたが余りにも早く人生を駆け抜けられたことをうらむものであります。
 志半ばで倒れられた君の無念を察するとき、いましばし君に存分の活躍の場をと思うのは、恐らく、彼を知るすべての同僚の思いであります。
 君の気さくで、決して飾ることのない、真実一路のお人柄は、多くの人々に愛され、先輩からも後輩からも敬われてまいりました。そして、常に郷土を思い、国家を愛した君は、政治のテーマに対し、一途なまでの真摯な姿で、真正面から挑戦を続けてこられました。
 君は、政治家たるものの覚悟について、こう語っておられます。「政治には、国民生活を豊かにする、平和で自由な世界を構築するという素晴らしい目標と理念がある。それゆえに、政治に関わる者の責任は極めて重いのである。重いという言葉では足りぬ。責任のとり方は生か死かといったものでなければなるまい。そうでなければ国民の信頼を得られようか。」
 君の、みずからの立場や利害損得を考えず、常に体ごと物事に当たるという熱血かつ純粋な性格は、まさに、政治家岸本光造の真骨頂でありました。しかし、このような性格や、休むことを知らない人間機関車のような活動が、知らず知らずのうちにお体を損なうような結果を招いてしまったことは、政治家の宿命とはいえ、まことに返す返すも残念であります。
 今、改めて、岸本光造君を失ったことは、和歌山県民はもとより、本院にとりましても、大いなる損失であります。
 岸本君、私どもは、もはやこの議場で、あの優しさにあふれた温顔に接することができなくなりました。しかし、君の歩んでこられた輝かしい足跡とその志は、私たち同僚議員の胸に深く刻まれているのであります。
 ここに、謹んで岸本光造君の生前の御功績をたたえ、その人となりをしのび、心から御冥福をお祈りいたしまして、追悼の言葉といたします。(拍手)
     ――――◇―――――
馳浩君 議案上程に関する緊急動議を提出いたします。
 農林水産委員長提出、特殊土じよう地帯災害防除及び振興臨時措置法の一部を改正する法律案は、委員会の審査を省略してこれを上程し、その審議を進められることを望みます。
議長(綿貫民輔君) 馳浩君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。
    ―――――――――――――
 特殊土じよう地帯災害防除及び振興臨時措置法の一部を改正する法律案(農林水産委員長提出)
議長(綿貫民輔君) 特殊土じよう地帯災害防除及び振興臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 委員長の趣旨弁明を許します。農林水産委員長鉢呂吉雄君。
    ―――――――――――――
 特殊土じよう地帯災害防除及び振興臨時措置法の一部を改正する法律案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔鉢呂吉雄君登壇〕
鉢呂吉雄君 ただいま議題となりました特殊土じよう地帯災害防除及び振興臨時措置法の一部を改正する法律案につきまして、提案の趣旨及び内容を御説明申し上げます。
 本法は、特殊土壌地帯の保全と農業生産力の向上を図ることを目的として、昭和二十七年四月、議員立法により五年間の時限法として制定され、以後、九度にわたり期限延長のための改正が行われました。
 今日までの五十年間にわたる特殊土壌地帯対策事業の実施により、災害防除と農業振興の両面において改善がなされてきたところでありますが、その現状は必ずしも満足すべき状態にあるとは言えず、引き続き、これらの事業を推進していくことが必要であります。
 こうした観点から、本年三月三十一日をもって期限切れとなる現行法の有効期限をさらに五年間延長しようとするものであります。
 本案は、本十九日農林水産委員会において、全会一致をもって委員会提出の法律案とすることに決したものであります。
 なお、特殊土壌地帯対策事業について、事業評価を実施し、今後五年以内に本制度のあり方に検討を加え、抜本的な見直しを行うことを内容とする特殊土壌地帯対策に関する件を本委員会の決議として議決したことを申し添えます。
 何とぞ、御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
議長(綿貫民輔君) 採決いたします。
 本案を可決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。よって、本案は可決いたしました。
     ――――◇―――――
 土壌汚染対策法案(内閣提出)の趣旨説明
議長(綿貫民輔君) この際、内閣提出、土壌汚染対策法案について、趣旨の説明を求めます。環境大臣大木浩君。
    〔国務大臣大木浩君登壇〕
国務大臣(大木浩君) 土壌汚染対策法案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 土壌が有害物質により汚染されると、その汚染された土壌を直接摂取したり、汚染された土壌から有害物質が溶け出した地下水を飲用すること等により、人の健康に影響を及ぼすおそれがあります。
 この土壌汚染につきましては、これまで明らかになることが多くありませんでしたが、近年、企業の工場跡地等の再開発や事業者による自主的な汚染調査の実施等に伴い、重金属、揮発性有機化合物等による土壌汚染が顕在化してきております。特に最近における汚染事例の判明件数の増加は著しく、ここ数年で新たに判明した土壌汚染の事例数は、高い水準で推移してきております。
 これらの有害物質による土壌汚染は、放置すれば人の健康に影響が及ぶことが懸念されることから、これらの土壌汚染による人の健康への影響の懸念や対策の確立への社会的要請が強まっており、このような状況を踏まえ、国民の安全と安心を確保するため、こうした土壌汚染の状況の把握、土壌汚染による人の健康被害の防止に関する措置等の土壌汚染対策を実施することを内容とする本法律案を提出した次第であります。
 次に、この法律案の主な内容につきまして御説明申し上げます。
 第一に、この法律の目的は、土壌の特定有害物質による汚染の状況の把握に関する措置及びその汚染による人の健康に係る被害の防止に関する措置を定めること等により、土壌汚染対策の実施を図り、もって国民の健康を保護することとしております。
 第二に、土壌汚染の状況を的確に把握するため、有害物質の製造、使用または処理をする施設であって、使用が廃止されたものに係る工場または事業場の敷地であった土地の所有者等は、その土地の土壌汚染の状況について、環境大臣が指定する者に調査させて、その結果を都道府県知事に報告すべきものとするとともに、都道府県知事は、土壌汚染により人の健康に係る被害が生ずるおそれがある土地があると認めるときは、その土地の土壌汚染の状況について、その土地の所有者等に対し、環境大臣が指定する者に調査させて、その結果を報告すべきことを命ずることができることとしております。
 第三に、土壌汚染の状況の調査の結果、その土地の土壌汚染の状態が一定の基準に適合しない場合に、その土壌汚染の管理を適切に図るため、都道府県知事は、その土地の区域を指定区域として指定及び公示するとともに、指定区域の台帳を調製し、保管すべきこととしております。
 第四に、土壌汚染による人の健康に係る被害の防止を図るための措置として、都道府県知事は、指定区域内の土地について、土壌汚染により人の健康に係る被害が生じ、または生ずるおそれがあると認めるときは、その土地の所有者等以外の者の行為によって汚染が生じたことが明らかであって一定の場合には、その行為をした者に対し、それ以外の場合には、その土地の所有者等に対し、汚染の除去等の措置を講ずべきことを命ずることができることとしております。あわせて、この命令を受けた所有者等は、その汚染が他の者の行為によるものであるときは、その行為をした者に対し、汚染の除去等の措置に要した費用を請求することができる旨を規定しております。また、指定区域内において土地の形質の変更をしようとする者に、その施行方法等を都道府県知事に届け出ることを義務づけるとともに、都道府県知事は、その届け出に係る施行方法が一定の基準に適合しないと認めるときは、その計画の変更を命ずることができることとしております。
 第五に、本法に基づく土壌汚染の状況の調査を行う者として環境大臣が指定する指定調査機関について、その指定手続、土壌汚染の状況調査の義務等の所要の規定を設けることとしております。
 第六に、環境大臣は、指定区域内の土地において汚染の除去等の措置を講ずる者に対して助成を行う地方公共団体に対する助成金の交付等の業務を適正かつ確実に行うことができると認められる者を、指定支援法人として指定することができるものとし、指定支援法人は、その業務に関する基金を設け、政府から交付を受けた補助金と政府以外の者からの出捐金をもってこれに充てることとしております。
 このほか、環境大臣及び都道府県知事による報告及び検査、国の援助、国民の理解の増進、必要な罰則等に関し、所要の規定を設けることとしております。
 以上が、土壌汚染対策法案の趣旨でございます。(拍手)
     ――――◇―――――
 土壌汚染対策法案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
議長(綿貫民輔君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。これを許します。近藤昭一君。
    〔近藤昭一君登壇〕
近藤昭一君 私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました土壌汚染対策法案について質問いたします。(拍手)
 いきなり質問に入って恐縮でございます。法案名は、なぜ、土壌汚染対策法案なのでしょうか。汚染された土壌に対して対策を施すことは必要なことではありますが、当然ながら、土壌を汚染しないよう予防することも重要であると考えます。この点、法案では、土壌汚染行為の禁止規定が設けられておりませんが、汚染されてから対策を施すよりも、汚染されないように予防することの方が重要であると考えます。
 なぜ、土壌汚染予防、この当たり前のことが法案から抜けているのか、環境大臣にお尋ねいたします。(拍手)
 この法案には、汚染土壌の拡散防止の観点も不十分ではないかと思われます。すなわち、法案では、水質汚濁防止法の有害物質使用特定施設の廃止時には義務的に土壌汚染状況を調査することとされておりますが、その他の場合には、健康被害が生ずるおそれがあると認めるときにのみ、都道府県知事が調査を命ずることとされております。
 例えば、有害物質使用特定施設を建てかえるような場合には、義務的な調査の対象とはされておりません。しかし、このような場合に、汚染された土壌が搬出されるおそれが大きく、汚染の拡散を招きかねません。特定施設が廃止される場合だけではなく、特定施設から汚染された土壌が搬出される可能性が高い場合には、調査を義務づけるべきであると考えますが、いかがでしょうか。
 また、特定施設だけではなく、土壌汚染の蓋然性が高い土地として、基地、廃棄物処分場などが考えられます。
 実際に、横須賀基地北部の住宅建設工事区域内では、基礎工事のため掘削した土壌から、環境基準値を超える総水銀と砒素が検出されています。また、嘉手納弾薬庫地区のうち一部返還された土地の土壌が汚染されていた場合のように、在日米軍からの返還後に各種有害物質が発見されるケースも、これからふえてくるものと考えられます。
 なぜ、このような汚染のリスクの高い土地について、義務的調査の対象としていないのでしょうか。環境大臣にお尋ねいたします。
 土壌汚染により健康被害が生ずるおそれがあると認められる土地については、都道府県知事が調査を命ずることとなっております。何が健康被害が生ずるおそれがある土地に該当するかということについては、住民の不安を解消する観点から、なるべく広く考え、調査を進めるべきであると考えます。いかがでありましょうか。
 また、このような調査を命ずるに至る過程では、行政、市民、事業者などから、さまざまな情報が寄せられることになると考えられます。特に、過去の汚染に対する市民の不安を解消するためにも、市民からの情報については、誠実に対応するべきと考えております。
 そこで、市民からの申し出がある場合には、調査をするかどうか、きちんと対応し、理由もなく申し出が放置されることを避けるべきであると考えます。このような市民からの申し出について、法案ではどのような対応を予想しておられるのか、環境大臣にお伺いいたします。
 調査義務と費用負担についてお尋ねをいたします。
 例えば、広大な工場跡地が分譲され、多数の住宅が建設され、汚染調査の対象となった場合を考えるとき、この仮定はまれなケースではないと思いますが、調査対象となった土地の所有者は、汚染があると知らずに購入した場合がほとんどであり、所有者が調査費用を負担することになると、不公平感も強く、実際に調査を行わない場合も多いのではないかと思われます。このような、現在の所有者が汚染原因者ではないことが明らかな場合で、調査費用の負担を求めることが公平性を欠く場合には、都道府県の費用で調査を行うこととすべきであると考えます。
 しかしながら、法案にはこのような規定は存在しておりません。このような状況を放置すれば、実際に住んでいる人たちの健康被害を拡大することになりかねません。都道府県がみずからの費用負担で行う調査について、これを積極的に行うべきであると考えますが、なぜ、これを法律に明記しなかったのか、また、このような調査についてどのような位置づけを行おうとしておられるのか、お伺いをいたします。(拍手)
 法案では、土地の調査については、指定調査機関が行うこととされておりますが、指定調査機関については、能力があるものについて幅広く指定をし、調査内容や調査方法、調査結果を広く公開して、透明性の高いシステムにすべきであると考えます。指定調査機関と調査内容・結果等の公表についてどのように考えておられるのか、環境大臣にお伺いいたします。
 平成十二年度土壌汚染調査・対策事例及び対応状況に関する調査結果の概要によれば、土壌汚染の原因行為の中に、廃棄物の不法投棄が含まれており、処理基準違反の産業廃棄物の不法投棄がなされたケースを本法案で処理した場合、土地所有者みずから浄化し求償するか、原因者不明の場合には、基金から補助がなされるとしても、土地所有者に負担がかかることになるわけであります。
 しかし、これは土地所有者に全く責任がないケースであり、このような場合には、廃棄物処理法に基づき、土地所有者の負担なく原状回復を行うべきであると考えますが、環境大臣の御所見をお伺いいたします。
 汚染土壌に対しては、健康被害の防止措置がなされることになりますが、恒久対策としては、原位置分解や原位置抽出などの処理方法があり、法案では、その技術的基準については、環境省令で定めることとなっております。
 しかし、このような処理を行う場合には、重金属類が大気中に放散される可能性もあり、周辺環境への影響を最小限に抑えるためにも、処理が適切に行われているかどうかをチェックすることが必要になります。
 ところが、水銀などについては、大気への排出基準も大気の環境基準も全く定められてはおりません。これでは、何をもって適切な処理を行っているのかにつき、客観的に確認することはできないわけであります。土壌の汚染に係る環境基準が定められている物質で、大気への排出基準、大気の環境基準が定められていない物質、特に重金属類については、速やかに基準を定めるべきと考えますが、いかがでありましょうか。環境大臣の見解をお伺いいたします。
 この法案における健康被害の防止措置についてお尋ねをいたします。
 汚染土壌の浄化については、覆土などの簡単な方法から、掘削除去や原位置分解まで、さまざまな方法がありますが、中央環境審議会の答申においては、汚染原因者に求め得る費用負担の範囲として、リスク低減措置の費用までを求償し得ることとされております。この考え方により法案がつくられているとすれば、汚染された土地の対策としては、ほとんどの場合、覆土のみがなされることとなり、汚染土壌の除去や汚染物質の除去がなされることにはなりません。
 そうなると、汚染土壌の拡散の危険性が高まることが懸念されるわけであります。特に、住宅地などについては、汚染物質の除去や汚染土壌の除去を健康被害の防止措置の原則として位置づけるべきであると考えます。この点についての御見解を環境大臣に伺います。
 さらに、土壌汚染により飲料用の地下水が汚染される場合が考えられますが、この対策として、安易に、地下水の飲料をとめ、河川水などに頼るという措置が考えられます。
 しかし、地下水は有効な水資源であり、持続可能な利用を行うことが望まれます。また、安易に河川水に頼ることになれば、河川上流のダムの増設などということも考えられることから、ダム増設などの追加的負担と、土壌浄化による地下水飲料の継続とをきちんと比較考量する必要があると思われますが、環境大臣の御所見をお伺いいたします。(拍手)
 最後に、先般、小泉首相直属の自民党国家戦略本部国家ビジョン策定委員会が、与党事前承認廃止、事務次官会議廃止、政と官の接触制限を内容とする政策決定システム改革案をまとめました。
 政策決定を内閣で一元的に行うことを目的とするもので、これまで与党内での密室の議論で決まっていた政策プロセスを改革する一歩としては、理解することはできます。
 しかしながら、民主的な政策決定の不可欠の前提となるものは、開かれた議論であると考えます。行政の独善によってのみ国家が運営されないためにも、少数の意見も尊重しながら、国会の場での開かれた議論に基づいて国家を運営していく仕組みをつくるべきだと思います。
 また、土地が汚染されると、人々の健康を害します。きちんとした草木も育ちません。土地そのものをきれいにしていく必要があるわけであります。
 政治も、行政も、経済もまたしかりであります。きれいな土壌があって初めて、健全なものが育つ、国民の幸福な生活が存在するものだと思います。土地の浄化だけではなく、政官業の土壌浄化の必要性についてもお訴えをいたしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
    〔国務大臣大木浩君登壇〕
国務大臣(大木浩君) 近藤議員にお答え申し上げます。
 この法案について十一の質問をいただいたと思っておりますので、順次お答え申し上げたいと思います。
 まず第一に、土壌汚染の予防についてということを非常に強調されたわけであります。
 御指摘のとおり、土壌汚染による健康被害の防止を図る上では、まず土壌汚染を生じさせないことが重要であります。
 現在、土壌汚染の予防につきましては、既に、水質汚濁防止法におきまして、有害物質を含む水の地下浸透の規制等によりまして、対策が講じられておるというふうに理解をしております。
 次に、汚染土壌が搬出される可能性がある場合の調査についてのお尋ねであります。
 本法案は、有害物質を取り扱う工場等が廃止され、その土地が他の用途に用いられる場合や、地下水モニタリングによりまして汚染が懸念される場合などを調査の契機としてとらえ、土壌汚染により健康リスクを生ずる蓋然性の高い場合を確実に捕捉することとしております。
 なお、汚染が認められた土地の区域については、汚染土壌の搬出を含め、土地の形質の変更の制限を行うこととしております。
 また、本法案における措置に加えまして、処分のために搬出された汚染土壌につきまして、廃棄物として取り扱うことに関し、現在、廃棄物・リサイクル制度の一環として検討を行っているところでございます。
 次に、米軍基地及び廃棄物処分場等について調査を義務づけるべきではないかとのお尋ねであります。
 在日米軍基地の土壌汚染につきましては、日米合同委員会及び環境分科委員会の枠組みのもとで対処され、また、基地の返還に当たっては、必要に応じて調査の上、原状回復が行われることとされております。
 また、廃棄物処分場については、廃棄物処理法に基づきまして適正に管理され、必要な措置が講ぜられることが基本と考えております。
 基地及び廃棄物処分場は、これらの仕組みにより、適切に管理されるものと考えております。
 次に、調査命令の対象となる土地を広くとらえるべきであるとのお尋ねであります。
 調査命令の対象となる土地は、汚染の可能性が高く、汚染があるとすれば健康被害のおそれがある土地であります。このような土地に該当するかどうかは、地下水のモニタリング調査等によりその土地の汚染が懸念される場合など、環境上の資料等に照らして、都道府県知事等が適切に判断することとしております。
 次に、調査命令の発動に当たり、市民からの土壌調査の申し出についてのお尋ねであります。
 地域の状況をよく知る住民からの調査の申し出は、汚染の発見につながる情報の提供として、意義あるものと考えております。
 申し出があった場合には、都道府県知事等は、調査命令の要件に該当するかどうかを検討し、該当する場合には調査命令を行うことになると考えております。また、お尋ねがあれば、調査命令を行ったかどうかは、都道府県等によりお知らせすることとなります。
 次に、土地所有者が汚染原因者でないことが明らかな場合は、調査を都道府県の負担で行うべきではないかとのお尋ねであります。
 本法案においては、土壌汚染の調査は、汚染の有無や汚染原因者がだれかが判明していない段階で行うものであることから、土地所有者に調査を行わせることとしております。
 ただ、このように、土地所有者に土地の管理の責任を負っていただくこととしてはおりますが、調査の方法をできるだけ簡易なものとすること等により、土地所有者に過度の負担とならないように配慮することとしたいと思っております。
 次に、指定調査機関の指定及び調査結果の公表についてのお尋ねであります。
 指定調査機関の指定につきましては、土壌汚染の調査を行う技術的能力を有するものを幅広く指定することとしております。また、調査の結果、汚染が判明した場合には、その汚染状況について台帳に記載の上、公衆の閲覧に供することとしております。
 次に、廃棄物の不法投棄により生じた土壌汚染についてのお尋ねであります。
 廃棄物処理法に基づく処理基準に適合しない不法投棄が行われた場合において、生活環境保全上の支障が生じ、または生ずるおそれがある場合には、不法投棄の実行者及び関与者が、廃棄物処理法に基づき、その支障の除去または発生の防止のために必要な措置の一環として、不法投棄により汚染された土壌についても処理することと定められております。
 次に、汚染の除去等の措置によっては有害物質が大気中に放散される可能性があり、大気環境基準等が定められていない物質について速やかに基準を定めるべきであるとのお尋ねでありました。
 汚染の除去等の措置に当たって、周辺環境に悪影響を及ぼすことがあってはならないのは当然であります。環境省令で定める技術的基準においては、そのようなことがないように、適切な技術的手法と注意事項を詳細に定めることとしております。
 なお、技術的基準を検討する過程で御指摘のような大気環境への懸念があるということになれば、大気汚染防止法等において所要の対応をいたしたいと思います。
 次に、汚染物質の除去や汚染土壌の除去を健康被害の防止措置の原則として位置づけるべきであるとのお尋ねであります。
 汚染の除去、拡散の防止等の措置は、覆土、封じ込めから浄化まで、その土地の汚染の状況等に応じた適切な方法による必要があります。このため、技術的基準で詳細に定める方法によることとし、健康被害の防止には十分な措置が実施されるように配慮したいと思います。
 最後の御質問は、土壌汚染により飲料用の地下水が汚染される場合の対策についてのお尋ねであります。
 地下水が環境資源として貴重であることは、お説のとおりであります。飲用されております地下水の汚染が判明した場合には、人の健康を保護する観点から、まず、安全な代替飲用水の確保等の緊急対策を講じた上で、汚染の程度や地下水の将来の利用を考慮しつつ、浄化等の対策の推進を図る必要があると考えております。
 以上、十一問についてお答えをいたしました。(拍手)
議長(綿貫民輔君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
議長(綿貫民輔君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後一時四十九分散会


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