衆議院

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第26号 平成14年4月19日(金曜日)

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平成十四年四月十九日(金曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第十九号
  平成十四年四月十九日
    午後一時開議
 第一 地方公共団体の一般職の任期付職員の採用に関する法律案(内閣提出)
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 日程第一 地方公共団体の一般職の任期付職員の採用に関する法律案(内閣提出)
 健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び健康増進法案(内閣提出)並びに医療の信頼性の確保向上のための医療情報の提供の促進、医療に係る体制の整備等に関する法律案(山井和則君外三名提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時三分開議
議長(綿貫民輔君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 日程第一 地方公共団体の一般職の任期付職員の採用に関する法律案(内閣提出)
議長(綿貫民輔君) 日程第一、地方公共団体の一般職の任期付職員の採用に関する法律案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。総務委員長平林鴻三君。
    ―――――――――――――
 地方公共団体の一般職の任期付職員の採用に関する法律案及び同報告書
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔平林鴻三君登壇〕
平林鴻三君 ただいま議題となりました地方公共団体の一般職の任期付職員の採用に関する法律案につきまして、総務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 本案は、地方公共団体の行政の高度化及び専門化の進展に伴い、専門的な知識経験またはすぐれた識見を有する者の採用の円滑化を図るため、地方公共団体の一般職の職員について、任期を定めた採用に関する事項を定めようとするものであります。
 本案は、去る四月十一日に本委員会に付託され、十六日片山総務大臣から提案理由の説明を聴取し、昨十八日質疑を行い、討論の後、採決いたしましたところ、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
 なお、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
議長(綿貫民輔君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
議長(綿貫民輔君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び健康増進法案(内閣提出)並びに医療の信頼性の確保向上のための医療情報の提供の促進、医療に係る体制の整備等に関する法律案(山井和則君外三名提出)の趣旨説明
議長(綿貫民輔君) この際、内閣提出、健康保険法等の一部を改正する法律案及び健康増進法案並びに山井和則君外三名提出、医療の信頼性の確保向上のための医療情報の提供の促進、医療に係る体制の整備等に関する法律案について、趣旨の説明を順次求めます。厚生労働大臣坂口力君。
    〔国務大臣坂口力君登壇〕
国務大臣(坂口力君) 健康保険法等の一部を改正する法律案及び健康増進法案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 まず、健康保険法等の一部を改正する法律案について申し上げます。
 急速な高齢化等による医療費の増大等により、医療保険財政が厳しい状況にある中で、医療保険制度については、給付と負担の公平を図るとともに、将来にわたり持続可能で安定的なものとしていくことが求められています。
 このため、今回の改正では、患者一部負担金の見直し、健康保険の保険料における総報酬制の導入、政府管掌健康保険の保険料の引き上げ、老人医療費拠出金の算定方法の見直し、国民健康保険の財政基盤の強化等の措置を講ずることとしております。
 以下、この法律案の主な内容について御説明申し上げます。
 第一は、健康保険法等の一部改正であります。
 まず、健康保険の本人及び家族の入院時の一部負担金について、各制度間の給付率を統一する観点から三割負担とするとともに、外来に係る薬剤一部負担金を廃止することとしております。ただし、七十歳以上の者については原則一割負担とし、三歳未満の者については二割負担とすることとしております。
 次に、保険料について、総報酬制を導入するほか、政府管掌健康保険の保険料率を千分の八十二とするとともに、中期的に保険財政の均衡が図られるよう、少なくとも二年ごとに保険料率の見直しを行うこととしております。
 このほか、片仮名書き・文語体となっている健康保険法の表記を、平仮名書き・口語体に改め、表記の平易化を図ることとしております。
 また、船員保険法についても、健康保険法の改正に準じて所要の改正を行うこととしております。
 第二は、老人保健法の一部改正であります。
 まず、老人医療の対象者を現行の七十歳以上から七十五歳以上に、老人医療費に対する公費負担割合を三割から五割に、いずれも五年間で段階的に引き上げることとしております。
 また、老人医療の一部負担金について、月額上限制及び診療所に係る定額選択制を廃止し、一割負担の徹底を図ることとしております。あわせて、一定以上の所得を有する者については、二割負担とすることとしております。
 このほか、老人医療費の伸びを適正化するための指針の策定、老人医療費拠出金の算定方法の見直し等の措置を講ずることとしております。
 第三は、国民健康保険法の一部改正であります。
 一部負担金について、各制度間の給付率を統一する観点から健康保険法と同様の改正を行うほか、広域化等支援基金の創設、高額医療費共同事業の拡充・制度化、低所得者を多く抱える保険者に対する支援制度の創設等、国民健康保険の財政基盤を強化するための措置等を講ずることとしております。
 最後に、この法律の施行期日につきましては平成十四年十月一日とし、三割負担、薬剤一部負担金の廃止及び総報酬制に関する事項につきましては平成十五年四月一日としております。
 あわせて、医療保険各法の給付率については、将来にわたり七割を維持することとするほか、保険者の統合及び再編を含む医療保険制度の体系のあり方、新しい高齢者医療制度の創設並びに診療報酬の体系の見直しに関する基本方針を平成十四年度中に策定し、その方針に基づき所要の措置を講ずることを初め、医療保険制度の改革に関する各般の課題について改革を進めることとしております。
 次に、健康増進法案について申し上げます。
 我が国における高齢化の進展や疾病構造の変化に伴い、国民の健康の増進の重要性が増大しており、健康づくりや疾病予防を積極的に推進するための環境整備が要請されております。
 このため、健康の増進の総合的な推進に関し基本的な事項を定めるとともに、国民の健康の増進を図るための措置を講ずることとし、この法律案を提出した次第であります。
 以下、この法律案の主な内容につきまして御説明申し上げます。
 第一に、国民の健康の増進の総合的な推進を図るために、厚生労働大臣は基本方針を、都道府県は都道府県健康増進計画を定めるものとし、市町村は市町村健康増進計画を定めるよう努めるものとしております。
 第二に、厚生労働大臣は、健康保険法その他の関係法令に基づき行われる健康診査の実施等に関する共通の指針を定めるものとしております。
 第三に、厚生労働大臣は、国民健康・栄養調査を行うものとするとともに、国及び地方公共団体は、生活習慣病の発生の状況の把握に努めるものとしております。
 第四に、市町村は、生活習慣の改善に関する相談等を行い、都道府県等は、特に専門的な知識及び技術を必要とする保健指導等を行うこととしております。
 第五に、多数の者が利用する施設の管理者は、受動喫煙を防止するために必要な措置を講ずるように努めなければならないこととしております。
 第六に、特定給食施設の設置者は、当該施設における適切な栄養管理を行わなければならないこととするほか、現行の栄養改善法に基づく特別用途表示及び栄養表示基準の制度を引き継ぐこととしております。
 このほか、栄養改善法の廃止その他所要の規定の整備を行うこととしております。
 最後に、この法律の施行期日は、一部の事項を除き、公布の日から起算いたしまして九月を超えない範囲内において政令で定める日としております。
 以上が、健康保険法等の一部を改正する法律案及び健康増進法案の趣旨でございます。
 何とぞよろしくお願い申し上げたいと存じます。(拍手)
    ―――――――――――――
議長(綿貫民輔君) 提出者山井和則君。
    〔山井和則君登壇〕
山井和則君 民主党の山井和則です。
 ただいま議題となりました、医療の信頼性の確保向上のための医療情報の提供の促進、医療に係る体制の整備等に関する法律案、私どもはいわゆる患者の権利法案と呼んでいますが、これについて、提出者を代表し、その趣旨及び概要を御説明申し上げます。(拍手)
 今、医療事故が国民の大きな不安となっており、年間二、三万人が医療事故や医療過誤で亡くなっているとの推計もあります。そんな中、調査でも、八七%の人がカルテ開示を求め、医療事故に関する情報公開が不十分だと感じている人が七一%にも達しています。さらに、医療についての満足度調査でも、医療情報の公開は、待ち時間の長さ、医療費の高さに次いで、三番目に高い不満の原因となっております。
 先ほど坂口大臣から、健康保険法等の改正案の趣旨説明がありましたが、国民が求めているのは、三割への自己負担アップではなく、この患者の権利法のような医療情報の開示であります。
 二十一世紀のキーワードは、情報公開と国民の主体的参加です。そして、医療は、患者を中心に、患者と医師との共同作業で行われるべきものです。患者の理解と選択に基づく医療のためには、医療内容の十分な説明、診療情報の積極的な開示が前提で、それによって、患者と医師との間に信頼関係が生まれ、良質かつ適切な医療が可能になります。そのためには、法的な整備が必要不可欠であります。
 以上が、本法律案提案の趣旨で、次に、法律案の概要を申し上げます。
 第一は、基本的理念及び責務です。医療は、患者と医療従事者との信頼関係のもとに患者の理解と選択に基づいて行われること、患者と医療従事者との間で情報が共有化されることなどを基本理念として定めております。
 第二は、医療機関に係る情報提供を定めるとともに、広告規制の緩和について、原則自由化の方向を示しております。
 第三には、医師等は診療について十分な説明を行うこと、患者は医療適正化委員会に相談できるとしております。
 そして第四に、カルテなど診療記録の開示等です。医療機関の管理者は、患者等から請求があれば、患者に悪影響を及ぼす場合などを除き、診療記録を開示しなければならないとし、医療に要した費用の支払い明細書、レセプトの交付もすることとしています。
 また、第五には、安全かつ適正な医療確保のための体制整備の規定、最後の第六に、患者等からの苦情の解決策を定めています。
 以上が、本法律案の趣旨及び概要であります。
 日本の医療費は、GNP当たり、先進国に比べて少ないにもかかわらず、国民からもっと医療にお金をかけようという声が上がりにくいのは、医療費をふやしても、むだな検査や薬に使われるのではないかという不安が強いからです。
 医療情報の開示のメリットは、患者の満足度を高め、選択肢をふやすことにとどまりません。支払い明細書、すなわちレセプトを患者がチェックすることは、不正請求、過剰請求、検査漬け、薬漬けの防止になり、医療の質向上とともにむだな医療費を削減する、一石二鳥の効果があるのです。
 小泉首相は、三割負担にしないと医療改革は進まないと言っておられます。しかし、病気で苦しむ患者という最も弱い立場の人々に痛みを押しつける前に、医療情報の開示によって、むだな医療費を削減することが先決ではないでしょうか。(拍手)
 患者の三割負担により補われると見込まれる約八千五百億円の経費は、情報開示をすれば削減できるのではありませんか。不正請求、過剰診療を減らすことは、本当に必要な医療や良心的な医療機関に十分な医療費を回すことにもつながるのです。
 医療情報の開示なくして医療改革なしです。カルテ開示は四年前に、レセプト開示は五年前に、その方向性が示されましたが、遅々として進んでいません。今こそ、法制化が必要です。
 小泉首相、国民の声を聞いてください。私の知人も、四十歳で、経営難で、二歳と六歳の子供を置いて自殺しました。今、年間三万人以上が自殺しているこの国において、最も切実な、どん底の不況の中での優先課題は、有事法制よりも、不況対策、そして、安心してかかれる医療や福祉ではないでしょうか。小泉首相、国民の痛みを感じてください。国民の声を聞いてください。
 以上で、提案理由説明とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
     ――――◇―――――
 健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び健康増進法案(内閣提出)並びに医療の信頼性の確保向上のための医療情報の提供の促進、医療に係る体制の整備等に関する法律案(山井和則君外三名提出)の趣旨説明に対する質疑
議長(綿貫民輔君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。宮澤洋一君。
    〔宮澤洋一君登壇〕
宮澤洋一君 自由民主党の宮澤洋一です。
 私は、自由民主党を代表して、健康保険法等の一部を改正する法律案並びに健康増進法案について、総理並びに厚生労働大臣に質問いたします。(拍手)
 我が国の医療制度は、国民皆保険制度のもと、良質な医療をひとしく国民に提供することを実現し、欧米諸国を超える成果を上げてまいりました。この結果、平均寿命のみならず、健康寿命においても世界でトップになるなど、WHOでも、我が国の保健医療制度は世界第一位と評価されております。
 他方、今後、これまでのような高度経済成長や労働力人口の増加は望めず、我が国の社会経済環境は成熟期、安定期に入っております。
 こうした環境変化に合わせ、医療制度の姿も、それに見合ったものにしていかなければなりません。人に例えれば、若々しく筋肉隆々たる時代にあつらえたすばらしい背広が、年をとり、身の丈に合わなくなってきたので、そのよさを残しつつ仕立て直しをしていかなければならないということであります。将来にわたり我が国のすぐれた医療制度を持続可能な制度へと再構築していくためには、保健医療システム、診療報酬体系の見直しなど、医療制度全般にわたって総合的な構造改革を進めていくことが必要であると考えます。
 これまで、総理は、平成九年度の健康保険法等の改正に厚生大臣として携わられるなど、医療制度改革を推進してこられましたが、今般の改革の全体像や基本的考え方について、まず総理にお尋ねいたします。
 さて、今回の診療報酬改定においては、過去最大のマイナス二・七%、しかも、薬価のみならず、初めて、診療報酬本体についても引き下げが行われました。このような思い切った診療報酬改定を行ったことには、医療制度改革を進めていく上での強い意気込みを感じます。
 今回の診療報酬改定の基本的な考え方、ねらいについて、厚生労働大臣の御所見をお伺いします。
 続きまして、健康保険法等の改正案について伺います。
 現在、毎年一兆円の医療費増加に加え、保険料収入が伸び悩み、医療保険各制度は、いずれも大きな赤字となっております。とりわけ国民健康保険は、産業構造の変化や高齢化等により、年間約三千億円もの赤字が生じており、その財政基盤の強化が喫緊の課題であると考えます。国民皆保険を守り、国民が安心して暮らすことのできる環境を確保していくためには、医療保険財政の安定を図っていかなければなりません。
 今回の健康保険法等の改正は、どのような認識に基づき、また、どのようなねらいから行おうとしているのか、厚生労働大臣にお伺いします。
 今回の改正案では、被用者保険の自己負担割合を平成十五年四月より三割に引き上げることとしております。自己負担の引き上げは、家計に大きく関係する問題であります。今後、さらに自己負担割合を引き上げるわけにはまいりません。
 三割の自己負担を最終的な姿とするという点について、厚生労働大臣の強い御決意をお伺いします。
 次に、長年の課題となっております高齢者医療制度についてお尋ねします。
 予想以上の高齢化のもと、老人医療費が急速に増大する中で、このままでは、拠出金を負担している医療保険者の財政は、破局的な状況に追い込まれることが危惧されています。今回の改正案においては、高齢者医療制度について、後期高齢者への対応の重点化を図るなど、思い切った手を打つこととしておりますが、高齢化はさらに進んでまいります。
 今回の改革にとどまることなく、高齢化のピークを迎える時点においても揺るぎない制度とするため、今後、どのような改革を行うべきと考えておられるのか、厚生労働大臣に御所見をお伺いします。
 将来にわたり国民が安心して医療を受けることができるよう、医療保険制度の安定的な運営を確保することが我々政治家たる者の使命であると考えます。そのためには、保険者の統合再編、診療報酬体系の見直しなど、さらなる改革を進めていくことが必要であります。今後、どのような姿勢でこれらの改革に臨まれるのか、厚生労働大臣の御所見を伺います。
 また、こうした改革には、痛みを伴うことは避けられません。国民とともに、国も痛みを分かち合うことが必要と考えます。厚生労働大臣として、国の痛みについてどのように考えておられるのか、あわせてお伺いします。
 今後の医療制度改革に当たっては、医療に対する国民の安心と信頼を確保することが重要であり、医療の質の向上を図るため、医療提供体制の改革を推し進めていくことも大きな課題であると考えます。
 また、国民の生活の質を一層向上させていくためにも、生涯を通じた健康づくりのための施策を強力に進めていくことがぜひとも必要であります。今回の健康増進法案は、この課題に正面から取り組んだ初めての法律として、大変意義深いものと考えております。
 今後、少子高齢化はさらに進展し、社会経済は成熟・安定期に入ります。この中で、世界に冠たる我が国の医療を今後とも維持していくことは、現実問題として、非常に厳しい道のりであると考えます。しかし、これを我々は何としてもやり遂げねばなりません。
 最後に、すばらしい我が国の医療を私たちの子や孫の世代に引き継いでいくための改革の断行に対する総理の御決意を伺い、私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 宮澤議員にお答えいたします。
 今般の医療制度改革の全体像、基本的考え方についてのお尋ねであります。
 平成九年以降、薬価や診療報酬、医療提供体制、高齢者の患者負担などの改革を着実に進めてまいりましたが、医療を取り巻く環境が大きく変化するとともに、保険財政が厳しい状況となる中で、持続可能な制度としていくためには、さらなる改革が待ったなしとなっております。
 このため、今般の医療制度改革においては、まず、健康づくりや疾病予防の推進を図るとともに、医療に関する情報の開示を進めるなど、質の高い医療サービスが効率的に提供される仕組みへと見直すこととしております。
 また、厳しい保険財政の安定を確保するため、患者、加入者、医療機関にそれぞれ負担を分かち合っていただくこととし、これまでにない診療報酬の引き下げを行ったほか、給付率の七割への統一や高齢者医療制度の見直しなど、思い切った改革を行うこととしております。
 同時に、医療保険制度の今後を考えると、高齢化のピークを迎える将来においても安定的な運営を確保することが必要であり、医療保険制度の体系のあり方、新しい高齢者医療制度の創設、診療報酬体系の見直しなどの諸課題についても、先送りすることなく、平成十四年度中に基本方針を策定し、さらなる改革を進めてまいりたいと思います。
 改革に対する決意でございます。
 我が国は、いまだ経験したことのない少子高齢社会を迎える中で、すぐれた国民皆保険制度を守り育ててまいりました。将来にわたり持続可能な、揺るぎない国民皆保険制度へと再構築していかなければならないと思います。
 国民の皆さんの御理解を得ながら、本年度中に主要課題の基本方針を策定するなど、断固たる決意で改革を進めてまいりたいと考えます。
 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
    〔国務大臣坂口力君登壇〕
国務大臣(坂口力君) 宮澤議員にお答えさせていただきたいと存じます。
 診療報酬改定についてのお尋ねがございました。
 今回の診療報酬改定につきましては、医療制度改革の一環として、改革の痛みを公平に分かち合うという観点から、初めての診療報酬本体の引き下げを含む、過去最大のマイナス改定を行ったところでございます。
 また、具体的な改定項目につきましては、広範な項目にわたり、思い切った合理化を行いますとともに、医療の質の向上の観点から、評価すべきところは重点的に評価するといった、めり張りのきいた改定を行ったと考えております。
 診療報酬につきましては、今後さらに、患者の立場に立ったあるべき医療の姿を踏まえまして、体系的な見直しを進めることが必要であると考えております。年度内に基本方針を策定いたしまして、皆さん方にいろいろの御議論をいただきたいと考えているところでございます。
 改正法案の認識とねらいについてのお尋ねがございました。
 高齢化の進展や経済の低迷など、医療制度を取り巻く環境は大きく変化しておりまして、こうした中で、医療保険財政は極めて深刻な状況にありますことから、制度を持続可能なものへと再構築を図りますためには、改革が待ったなしの状況となっております。
 今回の改正法案では、こうした状況を踏まえまして、制度間、世代を通じた給付率の統一を図るなど、公平でわかりやすい給付と負担の実現を図りますとともに、公費負担割合の引き上げなど、後期高齢者への施策の重点化を図りまして、拠出金負担の軽減を図るなどの改革を行うことといたしております。
 こうした改革を進めることにより、将来の国民負担の増加を抑制し、医療保険制度の持続可能性を高めることができるものと考えているところでございます。
 三割負担についてお尋ねがございました。
 先ほども申しましたとおり、今日の厳しい医療保険財政を考えますと、患者、加入者、医療機関といいました関係者にひとしく痛みを分かち合っていただくことは、避けられない状況にあります。診療報酬につきましてはこれまでにない引き下げを行いまして、保険料につきましても大幅な引き上げが必要となっている中で、患者負担につきましても三割負担をお願いせざるを得なかったところでございます。
 しかし、国民に必要な医療を保障するという公的医療保険制度であります以上、三割負担が限界であると考えておりまして、これを堅持するために、今回の改正法案の附則にその旨を明記したところでございます。これを堅持いたしますため、あらゆる改革を進める決意でございます。
 高齢者医療制度についてのお尋ねがございました。
 医療保険制度の将来を考えましたときに、高齢化のピーク時においても安定的な運営を確保していくことが必要でありまして、高齢者医療制度のあり方につきましても、先送りすることなく、改革を進めることが必要でございます。
 こうした高齢者医療制度のあり方につきましては、密接に関連する問題であります医療保険制度の体系のあり方とあわせて検討することが必要であります。国民の間での給付と負担の公平性の確保、被保険者の立場に立った自主的な運営の確保、保険料徴収等の事務の確実かつ効率的な実施といった観点が重要であると考えているところでございます。
 本年度中に、この高齢者医療制度の基本方針を明らかにしたいと考えております。
 最後になりますが、医療制度改革への姿勢と国の痛みについてお尋ねがございました。
 高齢化のピーク時におきましてもその安定的な運営を確保していきますためには、高齢者医療制度のみならず、医療保険制度の体系、診療報酬体系の見直しなどの諸課題について、改革を進める必要がございます。特に高齢者医療制度につきましては、国全体の税や財政のあり方とも関連が大きいと認識しておりまして、早々の議論をお願いしたいと考えているところでございます。
 このため、先般、私を本部長といたします医療制度改革推進本部を厚生労働省内に設置いたしまして、不退転の決意で検討に着手したところでございます。まずは、本年度中に、こうした課題につきまして、基本方針を策定したいと考えております。しかし、できる限り早期に、抜本改革の具体的方向性を示したいと考えているところでございます。
 改革の検討に当たりましては、制度運営に当たります国の事務の効率化、合理化にも真正面から取り組むことといたしておりまして、社会保険と労働保険の徴収事務の一元化等につきまして、具体的な検討を行いまして、八月までに皆様方にお示ししたいと考えているところでございます。
 以上でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
議長(綿貫民輔君) 釘宮磐君。
    〔釘宮磐君登壇〕
釘宮磐君 民主党の釘宮磐です。
 民主党・無所属クラブを代表して、健康保険法改正案など政府二法案並びに山井君外三名提出による、いわゆる患者の権利法案について質問します。(拍手)
 小泉総理、私は、五年前にタイムスリップした思いがします。
 当時、私は、参議院での国会論戦の中で、あなたの厚生大臣としての医療制度抜本改革実現への強い決意を感じ取り、この人ならやるのではという期待感から、野党に身を置きながらも、当時の健保法改正案に賛成をしたのであります。
 しかし、その期待は、見事に裏切られました。今にして思えば、自民党をぶっ壊してでも構造改革を実現すると国民に強烈なアピールを送り、大きな期待を持たせたあなたが、いまだもって見るべき成果もなく、国民に失望感を与えている姿を見るにつけ、それが、小泉総理、あなたの常套手段だったのかと、人間不信に陥ってしまいそうであります。(拍手)
 あなたは、総理就任後、遅々として進まない構造改革に対し、まだ就任して数カ月しかたっていないではないかと弁明していました。そして、一年を経過した今日、英国のサッチャー元首相を引き合いに出し、彼女の改革は五年かかったと言い出す始末です。結局、あなたは、ノーアクション、トークオンリーの総理大臣ではありませんか。(拍手)
 あなたは、これまで、自民党の抵抗勢力と実に上手に妥協を繰り返しながら、一方では、野党や国民を手玉にとってきました。今や、あなたの正体がまさに露見したのです。もはや国民は、小泉改革の中身のなさを十分に知っています。その証拠に、あなたが唯一頼りにしていた支持率は、坂道を転げ落ちるがごとく下がり続けているではありませんか。
 総理は、今回の健保法案を医療制度改革の関連法として提出されましたが、与党内ですら、いまだに異論、反論がくすぶっているこのような法案が、本当に二十一世紀にふさわしい医療保険制度につながっていくとお思いですか。将来とも安心できる医療制度にするための改革だと国民に向かって胸が張れますか。
 三割負担にすれば抜本改革が進むという論理もまた、変人と言われたあなたならではの論理ですが、我々凡人には到底理解できません。法案の附則に羅列された抜本改革の努力目標など、だれも、実現ができない、そう思っています。五年前は厚生大臣だったからできなかったけれども、今度は総理大臣だからやれると、あなた独特の論理を持ち出し、強がって見せていますが、だれが信用するでしょうか。
 総理、今、あなたに課せられた課題は、政治不信を招いたこれまでの経過を猛省するとともに、五年前と同様、今回も同じ愚行を繰り返そうとする本法案の即時撤回を決断すべきということを、まず申し上げておきたいと思います。(拍手)
 以下、質問に入ります。
 まず、総理の発言の矛盾について伺います。
 あなたは、五年前、厚生大臣として、抜本改革を二〇〇〇年までに実施することを条件に、二割負担を提示しました。にもかかわらず、改革はすべて先送りにしてしまいました。ところが、今度は、総理として、三割負担にしないと抜本改革はできないとおっしゃっておられる。これでは、場当たり的な方便を繰り返し、国民をだましていると言われても仕方がないではありませんか。(拍手)
 総理、この五年間、抜本改革が先送られてきたことは、国民に対する公約違反ではありませんか。この責任は、一体、だれが、どのようにとったというのですか。せめて、国民に当時の責任者として謝罪すべきではありませんか。
 また、あなたは、三割にしないと抜本改革ができない、改革がおくれると答弁していますが、それはどういう意味でしょうか。ここは非常に重要な点ですので、明確にお答えいただきたい。
 なぜ、総理がこれほどまでに三割負担にこだわるのか。私は、国民に改革後退のイメージを見せないため、たったそれだけの理由で、頑固なまでに三割と言い続けたのではないかと思うのです。
 総理は、就任以来、自分の言葉にこだわりを見せてまいりました。組閣の際は、派閥の論理は持ち込まない、一内閣一閣僚、さらには、国債発行三十兆円枠の堅持、こうした発言をかたくなに守ってきたあなただから、国民は大きな期待を抱いたのです。信用できると思ったのです。
 ところが、ことし初め、総理は、外務省問題、特に田中元外務大臣をめぐる問題に振り回され、田中元外相を更迭した結果、内閣支持率は大暴落してしまいました。これ以上支持率を下げたくないあなたは、公言していた患者窓口の三割負担導入を自民党族議員の反発で撤回してしまうと支持率低下に拍車がかかると判断、三割負担こそが改革の象徴のように振る舞ったのではありませんか。
 三割負担に固執する総理と、これに反対する医師会へのアリバイづくりとして負担増先送りを画策する自民党族議員、この両者の妥協の産物が今回の健保法案ではありませんか。どこが、二十一世紀を見据えた制度改正ですか。国民にとっては全く迷惑な話ではありませんか。(拍手)
 総理、反論があればお聞かせください。
 このような法案について、総理は、三割負担は将来とも堅持するし、抜本改革も今年度中に基本方針をつくり、来年の通常国会に法案を提出すると答弁しています。
 それでは、お聞きしますが、総理、仮にこれらが実現できなかった場合、政府・与党として、責任はどのようにとるおつもりですか。国民だけに痛みを強要し政治家は何も責任をとらない、これでは、政治不信はますます募るばかりではありませんか。断固、改革実行と言うのなら、当然、実現できなかった場合、総理みずからが責任をとるぐらいの覚悟が必要だと考えますが、いかがですか。お答えください。(拍手)
 三方一両損という言葉も、総理は繰り返しお使いになっておられます。私は、抜本改革の先送りで国民だけに負担が押しつけられる一方三両損だと思いますが。
 ともかく、政府は、当初、患者、保険者、医療機関の三者がひとしく痛みを分かち合うとしていましたが、途中から国が入っていないと気づき、政府みずから、政府管掌健保の民営化構想を持ち出してまいりました。ところが、連立与党内で拙速とされ、その後の政府・与党合意では立ち消えになっている始末です。
 坂口大臣、あなたは、この間の国会審議で、政管健保の都道府県単位分割論を披露され、民営化構想にも触れられております。今、この話はどうなってしまったのですか。構想の具体的なイメージとあわせ、明快な答弁を求めます。
 次に、抜本改革の方針についてお伺いいたします。
 まず、高齢者医療制度について、政府は、法案の本則で、老人医療の対象年齢を二〇〇六年度までに七十五歳へ引き上げることを打ち出しています。ところが、法案の附則では、二〇〇二年度中に基本方針を示した上で、二〇〇四年をめどに所要の措置を講ずるとしております。
 ということは、今後の基本方針策定では、七十五歳以上公費五割を前提にしないと、同じ法案の本則と附則とで整合性がとれないのではないでしょうか。この点、坂口大臣に明確な答弁を求めたいと思います。
 また、被用者健保が過重な負担にあえぐ老人保健拠出金制度について、総理は廃止するお考えをお持ちかどうか、答弁を求めます。
 新たな高齢者医療制度については、年内にも基本方針を策定するとのことであります。
 今後の国会審議のたたき台にしたいと思いますので、ぜひ、総理御自身のお考えを御披露ください。くれぐれも、国会において慎重審議をとか、与党内で議論をなどの、逃げの答弁はなさらないでください。国民があなたに期待したのは、三割負担のごり押し的なリーダーシップではありません、真のリーダーシップなのですから。よろしくお願いします。
 また、診療報酬体系及び薬価制度についても、どのような見直しをお考えか、総理の見解を求めます。
 さらに、医療保険制度のあり方について、総理は、厚生大臣当時の答弁で、わかりやすい医療保険制度、いわゆる一元化の方向を示唆しておられますが、基本方針では一元化に向けた検討を行うのかどうかも、あわせてお聞かせください。
 さて、ここで、民主党の法案提案者に伺います。
 まず、民主党提案者は、そもそも、医療制度改革はどうあるべきと考えているのでしょうか、そして、どのような理由から今回の法案を対案として提出されたのか、その背景を詳しく御説明ください。
 私は、民主党案の提案理由説明にもあったように、二十一世紀のキーワードは情報公開と国民の主体的参加だと考えます。患者は医療サービスの消費者です。私は、民主党案で示されている、医療に関する情報公開と第三者評価を行うことによって、医療の質を向上させ、患者が選択できるようなシステムへの改革がまず必要ではないかと考えます。
 総理、民主党のこうした提案にどのような見解をお持ちでしょうか。いいものはたとえ野党の提案でもどんどん取り入れると、たびたびおっしゃってこられたあなたですから、当然、賛同いただけるものと思いますが、お考えをお聞かせください。(拍手)
 最後に、小泉総理、本法案は、国民注視の中、二十一世紀にこの国の医療制度が、国民合意のもとに制度維持ができるのか否かが問われています。
 党利党略を超えた、真に国民が納得できる結論が見出せるまで、徹底した議論を尽くすべきであります。内閣のメンツで早期成立をさせることだけが目的であるかのような拙速な国会審議は絶対に避けるべきであるとの意見を申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 釘宮議員にお答えいたします。
 医療制度の抜本改革と三割負担についてです。
 医療制度改革については、平成九年以降、薬価や診療報酬、医療提供体制、高齢者の患者負担などの改革を着実に進めてきたところであります。釘宮議員、委員会での質疑のとおり、かなり進んでいることも御理解いただけると思います。
 また、今般の改革においては、一切、聖域を認めず、改革を断行することとし、これまでにない診療報酬の引き下げを行ったほか、給付率の七割への統一や高齢者医療制度の見直しなど、思い切った改革を行うこととしております。
 同時に、将来にわたって医療保険制度の安定的運営を図るため、医療保険制度の体系のあり方など、医療制度の将来を見据えた諸課題について改革を進めることとしており、その実現を図ることこそが私の責任であると考えております。
 こうした改革の推進に当たっては、国民の負担を伴う三割負担の導入の時期を平成十五年四月と明示するとともに、本年度中に改革の基本方針を策定する旨、法案に明記し、期限を区切って検討を進めることとしたところであります。これにより、改革の基本的方向を示すことができると信じております。
 今回の法案は妥協の産物ではないかとのお尋ねであります。
 三割負担の導入は、公平でわかりやすい給付体系を目指すとともに、医療保険財政が厳しい状況にある中で、患者、加入者、医療機関といった関係者にひとしく痛みを分かち合っていただくとの観点から行うこととしたものであります。
 また、医療保険制度の体系のあり方などの諸課題についても、本年度中に基本方針を策定するなど、期限を区切って改革の実現を図ることとしております。
 このように、今回の健保法案は、医療保険制度を将来にわたり持続可能な安定的なものへと再構築するためのものであり、御批判は当たらないと考えます。
 改革に対する決意でございます。
 将来にわたってこの国民皆保険制度の安定的運営を図るためには、引き続き、各方面の御理解を得ながら、医療保険制度の体系、高齢者医療制度、診療報酬体系の見直しなどの改革を進めていくことが不可欠であります。
 これらの諸課題については、断固たる決意で、本年度中に改革の基本方向を明らかにし、これに沿って、順次、改革を断行してまいりたいと考えます。
 高齢者医療制度についてでございます。
 今般の改革では、老人医療拠出金の縮減を図る観点から、対象年齢の引き上げや公費負担の拡充などにより後期高齢者への施策の重点化を図り、高齢者医療制度の安定的な運営に一定のめどをつけることとしております。
 しかし、高齢者医療制度の将来を考えたとき、高齢化のピーク時においても安定的な運営を確保していくことが必要であり、拠出金のあり方を含む現役世代の支援と公費の適切な組み合わせ、被保険者の立場に立った効率的かつ自主的な保険運営の確保、国民の間での給付と負担の公平性の確保などの点を念頭に置いて検討を進めてまいります。
 いずれにしても、本年度中には基本方針を策定し、高齢者医療制度の基本的方向を明らかにしたいと考えております。
 診療報酬体系及び薬価制度についてでございます。
 診療報酬体系については、患者の立場に立ったあるべき医療の姿を踏まえ、体系的な見直しを進めることが必要であると考えており、年度内に基本方針を策定すべく検討を進めてまいります。
 また、薬価制度については、これまでに講じてきたさまざまな適正化対策の結果、薬価差の縮小や薬剤比率の大幅な低下など、相当の成果が得られたものと考えておりますが、今後とも、薬剤費のより一層の適正化に努めてまいります。
 医療保険制度の一元化についてです。
 医療保険制度の安定的な運営を確保するためには、まずは、地域保険、職域保険のそれぞれで保険者の統合再編を進めることが必要と考えております。さらに、地域保険と職域保険との間の一元化も、将来の医療保険制度の体系を考えるに当たっては一つの有力な選択肢であるとは思いますが、所得や就業の形態の相違をどのように考えるか、事業主負担や公費負担のあり方をどう考えるかなどの課題があり、今後、こうした点も含めて検討を進め、医療保険制度の将来像を明らかにしてまいります。
 民主党提案の法案についてでございます。
 政府としては、診療内容や医療機関を患者みずからが選ぶことができるよう、患者に対する情報提供を推進することにより、患者の立場が尊重されるとともに、医師と患者の信頼関係に基づく医療が提供されることが重要であると考えており、医療機関の広告規制の大幅な緩和、電子カルテの普及の推進など、医療サービスの質の向上と効率化に向けた施策を進めております。
 民主党の今回の法案につきましては、法律で一律に患者の権利と医師等の義務を定めることが適当か、責任回避のための形式的、画一的な説明や同意の確認に陥るおそれがないかといった問題点がありまして、このような点について慎重に検討する必要があると考えております。
 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
    〔国務大臣坂口力君登壇〕
国務大臣(坂口力君) 釘宮議員にお答え申し上げたいと思います。
 政府管掌健康保険の都道府県単位での分割や民営化についてのお尋ねがございました。
 政府管掌健康保険は、約三千七百万人の被保険者を有しまして、そのあり方は、将来の医療保険制度全体の体系を考えます上で主要な課題であると思っております。
 政府管掌健康保険の組織形態につきましては、現在の全国一本の事業体で運営していることについてのメリット、デメリット、現在の組織形態以外にどのような方法があり得るのかなどにつきまして、将来の医療保険制度の体系をどう考えるかという観点も含めて、さまざまな角度から検討しなければならないと思っております。
 その中で、先ほどお触れになりました都道府県単位での分割あるいは民営化などはその選択肢の一つでありまして、私の考え方の一端も申し述べたところでございます。
 もう一点は、高齢者医療制度についてのお尋ねがございました。
 今般の改革におきましては、高齢者を取り巻きます環境の変化や拠出金負担の増大などを踏まえまして、後期高齢者への施策の重点化を図ることにより制度の安定的な運営に一定のめどをつけることといたしております。
 しかし、高齢化のピーク時におきましても安定的な運営を確保していくことが必要でありまして、今回の改革の基本的方向を踏まえながら、先送りすることなく、改革を進める必要があると考えておりますし、そうする決意でございます。
 その検討に際しましては、現役世代の支援と公費の適切な組み合わせ、被保険者の立場に立った効率的かつ自主的な保険運営の確保、制度間の給付と負担の公平性の確保といった点を中心にいたしまして検討を重ねていく必要があると考えているところでございます。
 以上、お答えを申し上げました。(拍手)
    〔水島広子君登壇〕
水島広子君 釘宮議員にお答えいたします。
 まず、医療制度改革はどうあるべきかという御質問をいただきました。
 議員の御質問にもございましたが、政府・与党は、医療の抜本的な制度改革を先送りし、今回の健保法改正案のように、必要な改革を全くしないまま患者負担増だけを求めたり、良心的な医療を行おうとしている医療者を追い詰めるような、小手先の財政対策ばかりを行ってまいりました。
 このような政府の姿勢では、医療そのものの質も上がりませんので、国民の医療に対する不信、不満は解消しませんし、さらなる負担への理解を求めることもできないと考えております。
 そもそも、医療は、患者を中心にして、患者と医療者との共同作業として行われるべきものでございます。趣旨説明にもございましたが、抜本改革を行う際のキーワードは情報の公開と国民の主体的な参加だと考えております。患者を、医療の受け手としてだけではなく、消費者という観点からもとらえて、医療に関する情報の開示と第三者評価、そして、患者の理解と選択を促すことで、医療の質を向上させるような制度改革を目指すべきであると思います。
 実際には、医療情報の提供をしたくても、制度の不備のために、時間的余裕がなく、十分に対応できないという医療者も多いのです。医療制度さえきちんと整備されていれば、よい医療を追求する患者と医療者の利益は一致すると私たちは考えております。
 現在、そのような考えに基づいて、民主党の医療制度改革案をつくっております。小泉首相お得意の論理のすりかえに惑わされることなく、真に日本に必要とされている医療制度改革を実現させていきたいと思っております。(拍手)
 次に、どのような理由から今回の法案を対案として提出したのかというお尋ねがございました。
 政府の健康保険法等改正案は、抜本改革のための法改正案ではなく、法案の附則に改革項目を並べただけの、極めて粗末なものでございます。今、国民が求めているのは、医療制度の抜本改革であり、単なる政管健保の財政安定化法案ではございません。
 医療保険制度改革の議論を進めるためには、まず、医療そのものが国民に信頼され、かつ、医療を取り巻く環境の変化に十分対応し得るものとならなければなりません。民主党案が定める医療情報の提供と安全かつ適正な医療の確保は、まさにその基盤となるものであり、そのためにも、対案として提出させていただきました。
 日本の医療の質を向上させるため、本法案の成立に向けて、党派を超えて、多くの議員の皆様の御理解を賜りますようお願い申し上げまして、答弁とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
    ―――――――――――――
議長(綿貫民輔君) 江田康幸君。
    〔江田康幸君登壇〕
江田康幸君 公明党の江田康幸でございます。
 私は、公明党を代表して、健康保険法等の一部を改正する法律案について、総理並びに厚生労働大臣に質問をいたします。(拍手)
 医療制度改革の主眼は、急速な高齢化や経済の低迷にも耐えられる持続可能な制度に再構築し、国民の健康と安心を将来にわたって守ることにあります。
 現在、国民医療費は三十一兆円、その三分の一に当たる十一兆円が七十歳以上の高齢者医療費です。このまま放置すれば、高齢化のピークを迎える二〇二五年には、国民医療費は八十一兆円に達し、その半分以上を高齢者医療費が占めることになります。
 既に、各医療保険は財政赤字に苦しんでおり、政府管掌健康保険に至っては本年度中に積立金が底をつくなど、このままでは日本が世界に誇る国民皆保険制度自体が崩壊しかねない、危機的状況にあります。まさに、医療制度の抜本改革が不可欠であり、これ以上の先送りは断じて許されません。
 この医療制度の抜本改革の中で避けて通れない重要課題の一つは、患者負担の見直しでございます。今回の改正案は、サラリーマン本人の自己負担割合を来年四月から三割とするものであります。医療保険制度を将来にわたり揺るぎのないものにするためには、医療の合理化を図る改革を断行するとともに、一方で、患者の方々、保険料や税金を負担している国民、そして医療関係者といったすべての国民が、負担を分かち合っていくことが不可欠であります。国民皆保険制度を守り、子や孫の世代まで引き継いでいくためには、サラリーマン本人の三割負担は避けて通れない課題なのであります。
 公明党がこの三割負担の引き上げを来年四月からとする本法案を容認した理由は、保険料を支払う加入者の負担に配慮し、将来の保険料の引き上げ幅を緩和するためであります。三割負担を来年四月以降に先送りすれば、保険料率は八・二%で済まなくなり、これ以上の保険料負担を国民に求めるべきではないと判断したからでございます。
 ただし、この三割負担については、将来にわたって三割を堅持し、さらなる負担を求めないということを本法案の附則に明記させ、国民が漠然と抱いておられる、将来の負担増に対する不安を払拭するのに努めております。
 ここで、総理にお伺いいたします。
 このように、改革には国民の大きな痛みが伴いますが、厳しい経済状況下での国民の負担増をどのように感じておられるか。また、国民に負担増をお願いする以上、その痛みの先にある医療の将来ビジョンを示さなければなりませんが、総理のお考えをお聞かせいただきたい。
 国民皆保険制度を守るためには、患者負担の見直しはやむを得ない措置でありますが、一方で、低所得者や高齢者へのきめ細かな配慮が必要であります。今回の患者負担の見直し等で、受診抑制が働き、特に低所得者については、その影響が大きいことが予測されます。
 これに対して、公明党は、低所得者の方々が安心して医療サービスを受けられるよう、負担割合や自己負担限度額等の設定段階で、低所得者対策の拡充や激変緩和策を強く求めてまいりましたが、これらの点について、本法案ではどのような配慮がなされているのか、厚生労働大臣にお伺いいたします。
 次に、本法案の附則に盛り込まれた、抜本改革の基本方針についてお伺いいたします。
 公明党は、医療制度改革に当たり、改革なき負担増は断じて許さない、その立場から、今回の患者負担増の大前提として、診療報酬の引き下げ、新たな高齢者医療制度の創設、各医療保険の統合再編、さらには、医療の効率化や質の向上といった抜本改革を強力に推進するよう、繰り返し主張してまいりました。これらについては、本法案の附則に基本方針として盛り込まれ、厚生労働大臣を本部長とする医療制度改革推進本部において議論が開始されたと伺っております。
 特に関心の高い、新しい高齢者医療制度の創設については、介護保険制度との適切な連携とサービスの整合性や保険給付のあり方、さらには、税制も含めた財源問題など、早急な検討が必要と考えますが、いかがでしょうか。
 また、診療報酬体系の見直しについては、医療提供や資本整備に係るコスト等を反映した新たな体系づくり、また、包括払い制度の拡大など制度の再構築が必要と考えますが、あわせて厚生労働大臣の御所見をお伺いいたします。
 さらに、これまで以上に良質なサービスを提供する医療提供体制の改革が求められております。医療のIT化、EBMに基づく診療ガイドラインの活用、さらには、医療機関の情報公開を進めることにより患者側の選択を通した競争原理で、医療の質が向上するものと期待いたします。
 この医療提供体制の改革の検討内容やスケジュールについて、厚生労働大臣の御所見をお伺いいたします。
 これまで、何度も抜本改革が叫ばれながら、その都度、先送りされてまいりました。しかし、今回、抜本改革の基本方針が、これまでのような単なる申し合わせではなく、本法案の附則に法律として明記され、改革の実施時期まで示された意義とその与えられた責任は、極めて大きいものでございます。
 最後に、今後の医療制度改革に対する厚生労働大臣の不退転の決意をお伺いして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 江田議員にお答えいたします。
 医療制度改革に伴う国民の負担増と医療の将来ビジョンについてでございます。
 厳しい保険財政のもと、医療制度を持続可能なものとしていくためには、患者、加入者、医療機関といった関係者にひとしく負担を分かち合っていただくことは避けられません。今回の改革は、将来にわたり国民皆保険を守り、国民の負担の増大を抑制するものであり、中長期的には国民生活にプラスになるものと考えております。
 さらに、高齢化のピーク時においても医療制度の安定的な運営を確保するため、医療制度の将来像についても期限を切って検討を進めることとしており、五千を超える保険者の統合再編を含めた医療保険制度の体系のあり方、新しい高齢者医療制度の基本的な骨格、あるべき医療の姿や医療技術、医療機関の運営コストが適切に反映される診療報酬体系のあり方などについて、平成十四年度中に基本方針を策定してまいります。
 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。
    〔国務大臣坂口力君登壇〕
国務大臣(坂口力君) 江田議員にお答えさせていただきたいと思います。
 今回の法案における低所得者に対する配慮についてのお尋ねがございました。
 今回の改革におきましては、負担能力の低い方に対する十分な配慮を行うことといたしておりまして、低所得者に係る自己負担限度額を据え置きますほか、高齢者につきまして、特に低い自己負担限度額が適用される対象者の範囲を、高齢者全体の、今まで〇・八%ぐらいでございましたが、これを一五%へと大幅に拡大いたしますとともに、高齢者の外来につきましては、一月当たりの自己負担限度額を低所得者の場合には八千円にとどめるなど、きめ細かな配慮を講じることとしているところでございます。
 高齢者医療制度と診療報酬体系の見直しについてのお尋ねがございました。
 高齢化のピーク時におきましても安定的な運営を確保していくためには、先送りすることなく、必要な決断を行いまして、改革を進めることが必要と考えております。
 高齢者医療制度につきましては、御指摘のように、高齢化の進展に伴いまして、さらに増大していきます老人医療費の財源をどのように確保していくか、介護保険との役割分担をどのようにしていくかなどの論点がございまして、今後、医療保険制度の体系のあり方とあわせて検討していく必要がございます。
 また、診療報酬につきましては、これは簡潔明瞭な尺度、物差しによりまして透明性の高いものにしなければならないと思っておりますし、また、医療技術でありますとか医療機関の運営コストが適正に反映されるように、見直しが必要であると思っております。
 これらの点を中心にいたしまして、できるだけ早く、改革の方向性というものをお示ししたいと考えているところでございます。
 医療提供体制の改革の検討内容やスケジュールについてのお尋ねがございました。
 医療に対します国民の安心と信頼を確保するためには、医療の質の向上を図ることが重要でありまして、今回の医療制度改革におきましても、重要な柱の一つとなっております。
 その一端を申し上げますと、この四月から、医師の専門性でありますとか手術件数等を広告できるよう、いわゆる広告規制を大幅に緩和することにいたしました。また、医療事故を防止いたしますため、医療安全相談センターの整備等を内容といたします医療安全推進総合対策を策定いたしました。また、EBMを推進いたしますため、診療ガイドラインの作成の支援に加えまして、本年度より、データベースの整備に着手したところでございます。さらには、平成十八年度末までに電子カルテを四百床以上の病院・診療所の六割に普及させるなどの取り組みを進めているところでございます。
 これらの問題を中心にいたしまして、さらに今後、その内容を深めていきたいと考えているところでございます。
 最後になりますが、今後の医療制度改革に対する決意についてのお尋ねがございました。
 人生九十年時代、そして、その後には人生百年時代が待ち受けているわけでございます。安定的な運営を確保していきますためには、医療保険制度の体系のあり方、そして、先ほどから申しております高齢者医療制度の創設、診療報酬体系の見直しなどの諸課題につきまして、どうしても構造改革を進めることが必要であると考えております。
 このため、三月八日に、私を本部長といたしました医療制度改革推進本部を厚生労働省内に設置いたしまして、現在、着手したところでございますが、いずれにいたしましても、先ほど申しました医療保険制度の体系のあり方あるいは高齢者医療制度の創設でありますとか、こうした問題はどうしても整理しなければならない、そう決意をいたしておりまして、断じてこれはやり遂げる、そういう決意で今取り組んでいるところでございます。(拍手)
    ―――――――――――――
議長(綿貫民輔君) 佐藤公治君。
    〔佐藤公治君登壇〕
佐藤公治君 私は、自由党を代表して、ただいま議題となりました、政府提出の、健康保険法等の一部を改正する法律案等につきまして質問いたします。(拍手)
 まず、社会保障への基本的理念についてお聞きいたします。
 これからの日本は、他の国々とは比較にならないほど、急速に人口構造が変化します。将来推計人口によれば、女性が一生の間に産む二〇五〇年の合計特殊出生率は一・三九と、平成九年の推計に比べてまたも〇・二二ポイントも下方修正され、少子化は極めて深刻になろうとしています。加えて、日本の総人口は二〇〇六年にはピークを迎え、徐々に人口が減少していく中で、六十五歳以上の高齢者は二〇五〇年には現在の二倍以上の三五・七%に急増し、三人に一人がお年寄りという、世界的にも歴史的にも全く例のない超高齢国になります。
 この変化は、単に人口構成が変わるだけにとどまりません。経済、雇用の環境、日本国民の生活そのものが劇的に変化することを意味するのです。
 総理は、さきの施政方針演説で、「努力が報われ、再挑戦できる社会」、「国民の抱くさまざまな不安を解消し、人をいたわり、安全で安心に暮らせる社会」を実現することを目指すと述べられました。しかし、総理のこの言葉だけでは、総理がどのような社会をつくろうとしているのか、国家像が明確になってまいりません。
 自由党の提案する新しい国家目標は、長い歴史と伝統を踏まえ、日本人の心と誇りを大切にする、自由で創造性あふれる自立国家日本をつくることにあります。個人の生活や企業の活動も、一定の基本的な規律とみずからの責任でみずから決定し、年齢や性別に関係なく、だれもが生き生きとした生活を送る、生きがいを持てる社会を実現していくのが自由党の基本理念です。そうした、国民が生き生きと経済社会活動が行える雇用システム、産業形態、税制、地域共同体を確立すべきであり、それを政策パッケージとしてまとめております。
 国民の生き生きとした生活を確保していく中で、老後の生活への不安、突然の病気への不安に対して、安心できる、安定した社会保障を確保することによって、働き盛りの人も、高齢の方も、障害を持つ方も、真の社会参加と安心した生活を送ることができると考えます。つまり、安定した社会保障の確立は、社会政策でもあり、経済社会の活性化政策にもなるのです。
 私たち自由党は、今日のような人口構成下と、高度成長期とは異なる経済・雇用・社会環境の下では、基礎年金、高齢者医療、介護という三本柱は、現行の保険方式によって支え続けることは不可能であり、国民全体で支えていくべきと常に主張しています。すなわち、基礎的社会保障の給付を安定して維持するためには、今の消費税五%は、福祉目的税化し、基礎年金、高齢者医療、介護の財源に限定するべきであると主張しております。
 小泉総理大臣は、経済社会の仕組みをどのように変えるのか、経済構造、財政構造、雇用構造、社会構造のすべてを合わせたパッケージ、つまり国家ビジョンの中で、社会保障制度をどのように位置づけ、仕組みを改めていこうとお考えなのでしょうか。その説明ができなければ、総理の社会保障改革論は、つじつま合わせの財政論議だけでしかありません。社会保障への基本的な考え方について、総理にお聞きいたします。
 次に、医療制度に関する総理の改革手法についてお聞きいたします。
 総理は、これまで、三方一両損という言葉を多用して、診療側、保険料を負担する側、患者のいずれもが負担という痛みを分かち合うと、それが結果として、国民全体にとって安心して診療を受けられ、制度の維持につながると主張してきました。
 しかし、三方一両損と言われる今回の改正で最も確実に痛みをこうむるのは、保険料を払い、医療にかかれば自己負担額がふえる国民自身なのです。そして、一番得をしているのは、制度の仕組みそのものを改められるわけでもなく、問題を先送りして政権にしがみつき続ける政府・与党そのものであります。
 しかも、今回の改正の手法は、一九九七年、小泉総理が当時厚生大臣であった医療改革の手法と全く同じであります。
 当時の小泉厚生大臣は、老人医療のあり方、診療報酬制度、医療提供体制、薬価問題などの医療制度抜本改革は二〇〇〇年を目途に実現させるとした上で、保険料の引き上げと、健康保険本人負担や老人医療の負担増を行いました。結果として、これに伴う国民負担増約二兆円が、回復の兆しをつかみかけていた日本経済を悪化させる一因となってしまったのであります。
 その負担増との引きかえで医療制度改革は進展したかといえば、小泉厚生大臣は厚生省案をつくっただけで、その後は何ら改革が実行されることはありませんでした。総理がお得意の論点整理をしただけにすぎません。
 今回の医療改革の手法も、全く同じであります。まず先に負担増を行い、抜本改革は十四年度までに考えるとして、先送りしています。前回できなかった改革を、果たして、今年度中に結論を出して実行することができるのでしょうか。結局、負担増だけで、後の改革議論は進まず、政府みずからが政管健保の赤字を予測する平成十八年度を迎えるだけの、いつもの政府・与党の手法になるのではないですか。
 総理は、さきの予算委員会で、期限を区切った前回の改革ができなかった理由を、政権の枠組みが変わった、指導力でやろうとする勢いや政治的意思が足りなかったと言っておられますが、就任から間もなく一年がたつのに、日本を変える、自民党を変えると言ったものの、何ら実績も見出せない小泉総理に政治的意思があるのか、そもそも疑問であります。
 小泉総理、今回はなぜ、改革を断行すると自信を持って絶叫されているのか、前回の改革とどのように違うのか、その理由をお聞きいたします。
 また、小泉総理がかたくなにこだわった自己負担三割引き上げについて、将来にわたって堅持するとしておりますが、その根拠は、本則ではなく、改正案の附則で担保しているにすぎません。与党内の政権がかわれば、別の理由をつけて自己負担引き上げを検討するかもしれません。
 どのような根拠で、今回、自己負担にキャップをはめることにしたのでしょうか。小泉総理に、将来にわたって自己負担増はあり得ない揺るぎない根拠と担保があるのか、お聞きいたします。
 さらに、総理が改革断行の一例として挙げている診療報酬改定について、一部では再改定を求める声が出ています。これについてどのように考えておられるのか、総理の意思をお伺いいたします。
 次に、医療改革の具体的な方向についてお聞きいたします。
 この改正案は、制度の仕組みを改めるという根本的問題を先送りし、現行制度を維持するための負担増と保険財政のやりくりと、ごまかしをしているにすぎません。
 法案では、老人医療の対象年齢を段階的に七十五歳へ引き上げ、現役世代の保険料負担を実質引き上げるとともに、サラリーマンの自己負担をふやして三割にする。
 そして、その先どうするのか。保険者の統合再編を含む医療保険制度体系のあり方、新しい高齢者医療制度の創設、診療報酬体系の見直しに関する基本方針の策定、健康保険の保険者である政府が設置する病院の見直し、社会保険、労働保険の徴収事務の一元化、政管健保の事業組織の見直し等、総花的に、今後見直しを検討するとしております。
 結局、改革の方向について、どのような理念に基づいて、いつまでに改革を完成させるのか全くわかりません。医療の効率を向上させるのか、医療費の伸びを抑制させるのか、あるいは国民が受診を抑制するようにしてしまうのか、医療保険制度の姿をどのように変えたいのか、国民と医療との接し方はどのように変わっていくのか、医療従事者自身はどのようになるのか、その具体的イメージがわきません。
 仕組みを改めるというのであれば、どのような改革の内容があり、いつまでに改革は完成し、国民と医療との関係はどう変わるのか、今回の負担増の前提となる将来を明確に説明する責任があります。小泉総理の御見解をお伺いいたします。
 医療改革で大切な視点は、質の高い医療を維持しながら、患者本位で選べる視点に立つことであり、そのために、時代に即した規制緩和とシステムの構築が必要であると考えます。受診票やカルテ、レセプトの電子化、医療情報の公開やIT化を通じて医療機関同士の連携と情報伝達体制を構築し、過剰な重複診療、重複投薬を防ぎ、効率的に医療提供が行われるように整備することで必要な医療を適切に受けることができ、ひいては、医療の効率化にもつながると考えます。
 医療の質の維持と効率化は、具体的にどのような視点で行うべきとお考えか、坂口厚生労働大臣にお聞きいたします。
 小泉総理の骨太の方針では、医療サービス効率化プログラムを掲げておりましたが、これに盛り込まれた個々の項目は今後どのように進めるおつもりであるのか、あわせて厚生労働大臣にお聞きいたします。
 また、国民がみずから必要な医療が的確に得られるような仕組みづくりも重要です。自分が何か病気にかかったかもしれないと感じたとき、予防医療、健康管理を含め、十分な相談と説明を受けることができる体制を整備し、その上で、必要な情報と医療が的確に受けられる、地域医療と総合・集中医療との適切な分担を進めることなどを通じて、安心できる医療体制を整備すべきと考えます。この点につきまして、厚生労働大臣の御見解をお伺いいたします。
 我々自由党は、官僚による規制社会、管理社会を改め、みずからの創意工夫と責任で個人も企業も能力を最大限に発揮できる、自由で公平で開かれた社会をつくる、それを実現するためにあらゆる仕組みを改めることが構造改革であると思います。
 真の二十一世紀の社会づくりを目指して、私たち自由党は、戦後、いや、明治以来の制度疲労した諸制度の構造改革、日本一新を訴え続けてまいることを申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 佐藤議員にお答えいたします。
 社会保障制度の基本的な考え方に関してでございます。
 社会保障制度は、国民の安心と安定を支える制度だと思います。しかし、これからは、負担は軽く、給付は厚くというわけにはまいりません。少子高齢化社会に臨んで、いろいろな社会保障制度を、国民の協力のもとに、持続可能な制度、安定的、効率的な制度に再構築していかなければなりません。「自助と自律」という精神を基本に、多くの国民の方々の理解を得ながら、しっかりとした社会保障制度に向けて努力をしていきたいと思います。
 今後の医療制度改革についてでございます。
 平成九年以降、薬価や診療報酬、医療提供体制、高齢者の患者負担などの改革を着実に進めてまいりました。
 さらに、今般の改革においては、患者、加入者、医療機関の三者がそれぞれ負担を分かち合うという方針のもとに、これまでにない診療報酬の引き下げを実現するとともに、給付率の七割への統一、高齢者医療制度の見直しなど、思い切った改革を行うこととしたところであります。
 同時に、将来にわたり給付率七割を堅持することとした上で、医療保険制度の体系、高齢者医療制度、診療報酬体系の見直しなど、将来を見据えた医療制度の諸課題について本年度中に基本方針を策定する旨、法案に明記し、期限を区切って検討を進めることとしたところであり、これにより、改革の基本的方向を示すことができると思います。
 将来にわたって三割負担を堅持する根拠と担保は何かというお尋ねであります。
 三割負担の導入は、公平でわかりやすい給付体系を目指すとともに、保険料負担の上昇をできるだけ抑制するという観点から行うものであります。
 今後とも国民に必要な医療を保障するという公的医療保険制度の役割にかんがみれば、給付率については将来にわたって七割給付を維持すべきものと考えており、今回、その旨を明確にするために、改正法案の附則に明記したところであります。
 診療報酬の再改定についてでございます。
 今回の診療報酬改定については、医療制度改革の一環として、改革の痛みを公平に分かち合うという観点から、初めての診療報酬本体の引き下げを含む、過去最大のマイナス改定を行ったところであります。
 改定に当たっては、特定の診療科にとって特に厳しい影響が生じないようにさまざまな配慮が行われており、厳しい改定ではあるものの、医療機関の経営に想定を超えるような深刻な影響が生じるとは考えられず、再改定を行うことは考えておりません。
 今後の医療制度改革の内容と時期、国民と医療の関係などの医療の将来像についてでございます。
 高齢化のピーク時においても医療制度の安定的な運営を確保していくためには、医療保険制度の体系を初めとする諸課題について、さらなる改革が必要と考えております。
 このため、五千を超える保険者の統合再編を含む医療保険制度の体系のあり方、新しい高齢者医療制度の基本的な骨格、あるべき医療の姿や医療技術、医療機関の運営コストが適切に反映される診療報酬体系のあり方について、本年度中に、基本方針を策定し、具体的内容や手順及び年次計画を明確にすることとしております。
 また、あわせて、社会保険病院のあり方の見直し、社会保険と労働保険の保険料徴収事務の一元化などの諸課題についても、年限を区切って改革を進めることとしております。
 こうした一連の改革を実施することにより、将来にわたり医療制度を持続可能なものとし、制度に対する国民の信頼や安心が確保されるものと考えております。
 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
    〔国務大臣坂口力君登壇〕
国務大臣(坂口力君) 佐藤議員にお答えさせていただきたいと思います。
 医療の質の維持と効率化の視点についてのお尋ねがございました。
 医療に対します国民の安心と信頼を確保しますためには、医療の質の向上を図ることが重要でありまして、今回の医療制度改革におきましても、重要な柱の一つと位置づけているところでございます。
 具体的には、広告規制の緩和でございますとかカルテ開示の推進等を通じまして、患者側からの選択の尊重、これを実現していきたいと思っているところでございます。
 もう一つは、EBM、いわゆる根拠に基づく医療の推進や医療機関の機能分化等を通じました、質の高い、効率的な医療供給体制の整備を進めるという決意でございます。
 それから、救急医療の充実確保でありますとか医療のIT化等を通じました、国民の安心のための基盤づくりといった視点からも、医療の質の向上と効率化を図ってまいりたいと考えております。
 医療サービス効率化プログラムの取り組み状況についてのお尋ねがございました。
 昨年六月に経済財政諮問会議が策定いたしました、いわゆる骨太の方針の中の医療サービス効率化プログラムに盛り込まれました内容につきましては、本年四月から医療機関の広告規制の大幅な緩和などを行います情報提供の推進、それから、診療ガイドラインの作成支援でありますとか最新医学情報を提供するデータベースの整備など、いわゆる根拠に基づきます医療の推進、それからもう一つは、電子カルテ等の普及目標と推進方策を示しました保健医療分野の情報化に向けてのグランドデザインの策定でございまして、これらを現在進めているところでございます。
 最後に、安心できる医療体制の整備についてのお尋ねがございました。
 今回の医療制度改革におきましては、御審議をお願いいたしております健康増進法案によりまして、地域におます健康増進の基盤整備をさらに進めますとともに、患者の選択に資しますように広告規制の大幅な緩和を含めた医療情報の提供を推進しますほか、地域医療計画の見直しの推進によりまして、医療機関の機能分担と連携を促進することといたしております。
 これらの取り組みを通じまして、地域において、予防医療から高度な医療に至ります医療サービスが体系的に提供される体制の構築を進めることといたしまして、これにより、国民の医療に対する安心と信頼の確保を図っていきたいと考えているところでございます。
 以上、お答えを申し上げました。(拍手)
    ―――――――――――――
    〔議長退席、副議長着席〕
副議長(渡部恒三君) 小沢和秋君。
    〔小沢和秋君登壇〕
小沢和秋君 日本共産党の小沢和秋であります。
 日本共産党を代表して、健康保険法等の一部を改正する法律案について、総理に質問いたします。
(拍手)
 総理、あなたは、今回の医療改革を語るとき、必ず三方一両損を口にいたします。しかし、あなた流の三方一両損とは、国や大企業の責任を棚上げして、患者には窓口負担増を、国民には保険料の引き上げを、そして医療機関には診療報酬引き下げを押しつけ、結局、国民の側にすべての痛みを押しつける、甚だ一方的な話ではありませんか。
 あなたは、九七年、厚生大臣のときに、健保本人の窓口二割負担を強行いたしました。今回はそれを三割に引き上げるなど、全国民にさらに大きな犠牲を強いようとしています。こういうやり方にあなたは総理として何の責任も痛みも感じないのですか、まずお聞きいたします。
 本法案の最大の問題は、第一に、七十歳未満の人々に対し、三歳未満児を除き、外来も入院もすべて三割に窓口の負担を引き上げることであります。その影響は、八千万人以上の労働者、年金生活者とその家族に及びます。
 五年前、小泉厚生大臣のもとで健保本人負担が一割から二割に引き上げられたとき、受診者数は一挙に一二%も減少しましたが、今回はそれ以上の深刻な受診抑制を引き起こすことは明らかであります。今回の抑制効果は、政府の試算でも五千四百億円に達します。しかし、こういうやり方では、病気がひどくなってからしか病院に行けなくなるので、かえって医療費がかさむという結果になるのではありませんか。明確な見解を示していただきたい。
 職場の健康保険加入者の負担増は、それだけではありません。保険料が夏冬のボーナスからも月々と同率で取られるようになります。特に政府管掌保険加入の中小企業労働者は、料率も七・五%から八・二%に引き上げられる。これによる負担増は、平均年間二、三万円にはなるでしょう。不況で減収になっている中でのこの負担増は深刻であります。
 しかも、今後、政府は、中長期的に保険財政の均衡が図られるよう、少なくとも二年ごとに収支両面で見直し、国会に報告するだけで保険料を引き上げることができるなどの規定が新設されます。今後は、政府が必要と認めさえすれば、幾らでも保険料を引き上げることができるようになってしまいます。このような、全く歯どめのない値上げの仕組みをつくることをやめるべきではないか。明確な答弁を求めます。
 第二に、七十歳を超える高齢者に対し、昨年一月から実施したばかりの一割負担を徹底する問題であります。
 当時、政府は、一割にしても余り負担がふえないよう配慮していると、繰り返し説明してきました。ところが、それからわずか一年余で、八百円の定額診療を廃止し、一カ月の上限を一万二千円、一挙に四倍に引き上げるというのであります。
 加えて、その上限を超える分も一たん窓口で全額支払わせ、三カ月後に返すという償還払いを導入することは重大であります。窓口で何万円請求されるかわからないようにする、これほど強力な受診抑制策はありません。その上、病人の高齢者に、わざわざ役所まで行って払い過ぎた金の返還の手続をさせる、それがどれほどひどいことか、総理にはわからないのですか。
 昨年一月の医療費引き上げに続き、十月からは介護保険の保険料も二倍になっております。こういう相次ぐ引き上げに、年金三、四万円で暮らす高齢者たちは、もう医者にもかかれない、私たちに早く死ねというのかと、悲痛な声を上げております。こんな重い窓口負担で受診を抑制している国は、先進国では日本だけではありませんか。お答えいただきたい。
 その上、今後の老人医療費削減を法案に明記し、そのための指針の作成、自治体への助言などを打ち出しております。具体的にはどのような措置を考えているのか、この機会に明らかにしていただきたい。
 今、我が国の失業率は実質的に一〇%を超え、二月の倒産件数も戦後最悪です。勤労世帯の平均消費支出も、四年連続で前年割れするという深刻な状況です。こういう中での一兆円もの医療費の負担増は、国民の生活苦、将来への不安をさらに強めることは明らかであります。だから、広範な国民の中に反対運動が広がり、全国で四百を超える地方議会が反対の意見書を決議しているのであります。
 総理、この法案は、今でも窮迫している国民生活をさらに悪化させ、不況を一層深刻化させる結果にしかならないのではないか、お尋ねいたします。
 さらに指摘したい問題は、今回の改悪の一環として、この四月から、史上初めて、病院などに支払う診療報酬の減額を行ったことであります。
 この減額は、病院の経営困難に一層拍車をかけ、医師、看護婦などのスタッフの削減や労働条件の低下にとどまらず、今でも深刻な医療ミスの増大にもつながりかねません。病院経営の困難は、患者への診療の質を低下させることにもなります。このままでは経営が成り立たない、診療報酬再改定をの声が広範な医療関係者から上がっているのは当然であります。この再改定を求める声に何とこたえるのか、お伺いいたします。
 とりわけ、六カ月を超える長期入院に対しては、入院医療費を保険の対象外として患者から徴収する制度を導入いたしました。これに伴う自己負担は、月約五万円と言われています。これを払えない患者は病院から追い出すというのが今回の診療報酬改定ではありませんか。政府は、行き先のない患者に対し、病院から追い出された後どうしろというのか、ここではっきり答えていただきたい。
 本法案の附則には、今後の我が国の医療制度の抜本改革のテーマとされている諸問題と、その結論を得るべき時期を細かく規定しております。ここでも最大の問題は、新しい高齢者医療制度の創設であります。
 既に本法案には、五年かけて拠出の対象を七十五歳以上に引き上げるなど、年齢引き上げの布石が打たれています。また、すべての高齢者から医療保険料を徴収することも、介護保険で既に前例がつくられております。さらに、政府管掌保険の組織形態のあり方の見直しが示されていますが、これは、中小企業の労働者と家族の医療に対する国の責任を放棄することになりかねません。
 結局、政府の言う抜本改革とは、国民に際限のない負担増を押しつけ、金を持たない国民は病気になっても病院に寄りつけないようにして、保険制度を形だけ安定させようという、まさに抜本改悪そのものではないのか。答弁を求めます。
 今、何より大切なことは、医療に対する国の責任を明確にすることであります。家計消費支出に占める医療、健康のための費用は、日本では一一・一%に達しています。これは、イギリス一・二%、ドイツ四・五%、フランス三・七%、イタリア三・二%などと比べて異常な高さであります。ところが、我が国の医療費のGDPに占める比率は、OECD加盟二十九カ国のうちで二十位、サミット参加七カ国だけでいえば、イギリスに次ぐ低さであります。家計から見ると極めて重い負担なのに、日本経済全体に占める医療費の割合が先進国の中では極めて少ないのはなぜか。それは、他の先進諸国では国の財政を主に医療、年金など社会保障に振り向けているのに、日本では公共事業に振り向けてきたからであります。
 保険証一枚で、日本じゅうどこに行っても、貧富に関係なく、安心して最善の治療を受けられるという、世界に誇るべき国民皆保険制度を守るためには、日本の政治を他の先進諸国のように社会保障中心に転換する以外にないことは、明らかではありませんか。総理の明確な答弁を求めます。
 日本共産党は、だれもが安心できる医療制度にするために、次の三つの方向を提案いたします。
 第一に、負担増を押しつけるのでなく、削られた国庫負担の割合をもとに戻すことであります。
 もともと、今のような深刻な医療制度の危機を引き起こしたのは、政府が国庫負担を減らし続けてきた結果であります。老人医療費の国庫負担は、有料化された一九八三年には四四・九%あったものが二〇〇二年には三一・五%へと、一三・四ポイントも減らされています。国民健康保険も、八〇年の五七・五%から二〇〇〇年の三六・三%へと、実に二一・二ポイントも減らされています。政管健保も、一六・四%から一三%に減らされたままです。これらの国庫負担を計画的にもとに戻せば、国民への過酷な負担増の押しつけが必要ないことは明らかではありませんか。明確に答弁してください。
 第二に、高過ぎる薬価にメスを入れ、欧米並みに引き下げることです。
 確かに、医療費に占める薬剤比率はこの間三〇%から二〇%に低下していますが、その大半が薬価差益であり、高過ぎる薬価本体の引き下げは進んでいません。その結果、製薬大手十五社は、この不況の中、三年間で二〇%近くも利益を伸ばしています。新薬の承認と価格決定の過程を透明にし、薬価を欧米並みに引き下げれば、一兆四千五百億円の節減が可能であるとの経済産業省の試算もあります。総理にそういう方向で薬価を見直す意思があるかどうか、お尋ねします。
 第三に、患者負担を軽減し、早期発見、早期治療の体制を確立することです。
 四十歳以上の住民健診の受診率は四〇%程度、中小企業労働者の健康診査も三〇%程度という状況を改善するためにも、国からの補助増額を検討すべきではないですか。保健所の統廃合をやめて保健師の増員を図るなど、国と自治体挙げての抜本的な対策の強化が必要と考えますが、いかがですか。
 日本共産党は、国民全体に大幅な負担増を強いる本改悪案の撤回を強く求めるとともに、将来にわたって安心して治療を受けられる医療制度の実現を目指して奮闘する決意を表明し、質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 小沢議員にお答えいたします。
 医療制度改革に対する私の責任についてでございます。
 これから少子高齢化社会を迎えると、今までのように、給付は厚く、負担は軽くというわけにはまいりません。私は、今後の医療保険制度を、持続可能な、揺るぎない制度へと再構築していかなきゃならないと思いまして、国民皆保険制度という、世界の中におきましても誇ってもいいと思いますが、この制度を揺るぎないものにしていく、そういう改革が私の責任と考えております。
 患者負担の引き上げと受診抑制についてのお尋ねであります。
 三割負担の導入に当たっては、薬剤一部負担は廃止するとともに、高額療養費制度によって、患者負担に一定の歯どめが設けられており、特に、低所得者については限度額を据え置くなどの配慮を行っていることから、必要な医療が抑制されることはないと考えております。
 保険料の見直しについてでございます。
 今回、政府管掌健康保険の財政運営については、少なくとも二年ごとに収支両面の見直しを行い、その結果を公表することとしておりますが、これは、経済情勢や医療費の動向を迅速かつ的確に反映させるとともに、財政状況をより透明化させるためのものであります。
 保険料率の見直しについては、法律に定められた手続のもと、上限の範囲内で行われるものであり、現行の仕組みと変わるものではありません。
 高齢者医療制度における患者負担の見直しについてお尋ねがありました。
 高齢化の進展により老人医療費が増大する中で、高齢者医療制度を持続可能なものとするためには、高齢者の方にも応分の負担をお願いし、現役世代と負担を分かち合っていただくことが必要であります。
 このため、今回の改正案においては、高齢者の医療費について、窓口での定率一割負担を徹底するとともに、自己負担が一定額を超える場合には、その額を償還することとしております。
 こうした外来の自己負担は、他の先進国において設けられている例もあり、例えばフランスにおいては、かかった医療費全額を窓口で一度支払った後に償還を受けるという仕組みがとられていると承知しております。
 なお、今回の上限額については、低所得者に配慮するなどの措置を講じており、必要な医療が抑制されることはないと考えております。
 老人医療費の伸びの適正化の指針についてでございます。
 医療制度を持続可能なものとしていくためには、高齢者数の伸びを大きく上回って伸びる老人医療費の伸びを適正なものとしていくことが必要であります。
 このため、今回の法案では、国、都道府県、市町村等がそれぞれの役割に応じて努めるべき具体的な施策を盛り込んだ指針を策定することとし、これに基づき、健康づくり、疾病予防、医療提供体制の効率化を初め、総合的、体系的な施策の推進を図ってまいります。その際、地方公共団体における取り組みが円滑に進められるよう、国としても必要な助言などの援助に努めてまいります。
 今回の医療制度改革が国民生活に与える影響についてであります。
 今回の改革を通じて、患者負担と保険料負担を合わせた国民の負担の増加は抑制されることとなり、中長期的には国民にとってプラスとなるほか、患者負担の見直しに当たっては、低所得者の方々にきめ細かな措置を講じるなど、配慮を行っております。
 いずれにせよ、今回の改革は、将来にわたり国民皆保険制度を守っていくためのものであり、国民の理解を得ながら、断固たる決意で改革を進めてまいります。
 診療報酬の再改定についてのお尋ねがありました。
 初めての診療報酬本体の引き下げを含む、過去最大のマイナス改定を行ったところであります。
 この改定に当たっては、特定の診療科にとって特に厳しい影響が生じないようにさまざまな配慮が行われており、厳しい改定ではあるものの、医療機関の経営に想定を超えるような深刻な影響が生じるとは考えられず、再改定を行うことは考えておりません。
 長期入院患者についてのお尋ねです。
 今回の診療報酬改定においては、医療と介護の機能分担を明確化する観点から、入院医療の必要性が低く、みずからの事情により長期に入院を継続する場合に限って給付の範囲の見直しを行ったところであります。
 また、見直しに当たっては、負担の増加が患者の方々に与える影響をも勘案し、二年間かけて段階的に見直していくなどの経過措置を設けております。
 あわせて、入院医療の必要性が低い方については、状況に応じた適切なサービスを確保することができるよう、介護施設や在宅サービスなどの介護基盤の整備を図ることとしており、御指摘のような事態は生じないよう配慮しております。
 医療制度の抜本改革についてでございます。
 国民皆保険制度、この医療の皆保険を揺るぎないものへと再構築するためにこそ、今回の改革が必要不可欠であると考えております。
 医療保険制度の体系のあり方、新しい高齢者医療制度の創設、診療報酬体系の見直しなど、諸課題についてさらなる改革を進めていかなければならないと考えております。
 国の財政を社会保障に振り向けるべきとのお尋ねです。
 社会保障給付費は平成十一年度で既に七十五兆円に達しており、平成十四年度予算における社会保障のための国庫負担は十八兆三千億円と、政策経費として最大であります。その中でも、医療費の国庫負担は最大の費目として約七兆五千億円にも達しております。
 ただ、少子高齢化の進展を踏まえれば、これからは、給付は厚く、負担は軽くというわけにはいかない、世代間の給付と負担の均衡を図り、将来にわたり持続可能な、安心できる社会保障制度を再構築していかなければならないと思います。
 こうした方針のもとに、「自助と自律」の精神を基本に、給付と負担の両面にわたる改革を行うとともに、必要な財源については、保険料、税金、患者負担の適切な組み合わせにより確保し、給付と負担の均衡を図っていくことが必要であると考えます。
 国庫負担割合の見直しについてです。
 医療費の国庫負担については、これまでも、医療保険制度の円滑な運営を図るために必要な額を確保してきており、二十年前と比較すると、国の一般歳出の予算額は約一・五倍しか伸びていない中で、約二倍の七兆五千億円、これは平成十四年度予算でありますが、そうなっております。
 さらに、今回の法案においては、保険財政の安定的な運営を確保する観点から、高齢者医療制度について、対象年齢を七十五歳に引き上げるとともに、公費負担割合を三割から五割に引き上げることとしております。
 今後とも、保険料、税金、患者負担を適切に組み合わせることにより、必要な財源の確保を図ってまいります。
 新薬の承認と価格決定の過程の透明化及び薬価の引き下げについてでございます。
 新薬の承認や価格決定については、それぞれ、専門家から成る組織において検討を行うとともに、審議内容を公表するなど、既に透明化が図られているところであります。
 また、薬価については、これまでに講じてきたさまざまな適正化対策の結果、外来薬剤費比率で見れば既に欧米並みとなっておりますが、今後とも、さらなる適正化に努めてまいります。
 早期発見、早期治療の体制の確立、保健所の統廃合と保健師の増員についてでございます。
 疾病の早期発見、早期治療を図るため、各種の健診事業について必要な予算の確保を図りつつ、施策の推進を図っているところであります。
 また、保健所については、地域保健の専門的、広域的、技術的な拠点にふさわしい、適切な配置に努めてきたところであり、保健師についても、従来より増員を図ってきたところでありますが、平成十三年度からは、地方財政措置において、新たな計画的増員のための措置を講じるなどの取り組みを進めております。
 さらに、国民の健康づくりのための施策について一層の充実強化を図るため、今般、健康増進法案を提出しているところであります。(拍手)
    ―――――――――――――
副議長(渡部恒三君) 阿部知子君。
    〔阿部知子君登壇〕
阿部知子君 社会民主党・市民連合の阿部知子です。
 今回提出されております健康保険法等の一部を改正する法律案並びに健康増進法案に対しまして、社会民主党・市民連合を代表いたしまして、質問をさせていただきます。(拍手)
 小泉内閣が発足してから一年がたちましたが、今、我が国の政治は大きな不信に揺らいでおります。国民の政治に寄せる目は、不安と、本当にこの国の将来が大丈夫であるのかという疑いの眼で私たちを見詰めております。
 私は、今回、この国民の命にかかわる法案が論じられるこの場において、冒頭、まず、小泉総理大臣の国民への責任ということについてお伺い申し上げたいと思います。
 去る一月二十五日でしたか、予算委員会の場で、私は、小泉総理に、政治にとって一番大切なものは何であるとお考えですかとお尋ねいたしました。総理は、国民であるとお答えになりましたが、果たして、昨日国会に提出されました有事法制関連三法案を見ましても、あるいはまた、本日、この場で、本会議提出されております健康保険法等の改正を見ましても、この国民という視点、一番大切なものが国民であるという視点がどこにあるのか、大いに疑問に感じております。
 とりわけ、有事法制関連三法案にあっては、国民の保護義務は二年先送りされた中で、有事法制化のみが先んじて論じられております。果たして、このような形で本当に大切な民を守れるのか。実は、小泉総理のおじい様でいらっしゃった小泉又次郎氏が、自由民権運動の中で最も大切に思われた民、民の権利ということを、小泉首相もまた、今、新たに思い起こしていただきたいと思います。
 そして、この場で、小泉総理の国民に対する過去、現在、未来の責任についてお尋ねさせていただきます。
 国民の過去、この問題において、私は、有事法制化との関連あるいは命との関連で、ぜひとも、この場で一点、明らかにお答えいただきたいことがございます。かつての第二次大戦における戦死者、戦没者の問題でございます。
 ことしもまた、八月十五日がめぐってまいります。その中で、小泉首相、果たして靖国参拝ということが、本当のこの亡くなられていった方々への鎮魂になるのか。
 私は、終戦、敗戦直後、五十万、六十万と報告されていた戦死者の数が、その後、改めて海外での戦没者二百四十万という数が明らかになる中で、今まだ、この国を出ていったままこの国に帰れぬ遺骨が百十六万柱あるというこのことを、極めて重く受けとめていただきたいと思います。
 異国の地で眠るこの方々の骨を一刻も早く収集し、そして国立の墓苑にきちんと鎮魂すること、このことを抜いて、あらゆる、今行われている法制化問題は語れないと思います。
 そして、第二でございます。これは、現在の政治への首相の責任でございます。
 鈴木宗男氏問題。この間、疑惑の総合商社等々の指摘がございましたが、私は、それ以上に、実は、北海道の釧路の地で、矢臼別の米軍の実弾演習をめぐって、その周辺の町長が人間扱いされなかった悔しい思いを伝えている事実を小泉首相がどう受けとめておられるか、ぜひとも伺いたいと思います。
 厚岸町長は、四千名の住民署名とともに、この米軍の実弾演習場の誘致に本当に心から反対して、鈴木宗男氏のもとに参りました。しかしながら、結論は、恫喝に等しく、そして四千名の署名を圧殺する形で、地方自治をじゅうりんする形で、現在ちょうど有事法制化で行われようとすることと同じ事態が既に進行しておりました。それらを放置したまま、あえて住民自治を制限する法制化を担おうとする小泉内閣は、果たして鈴木宗男氏問題にどんな決着をつけるのか、この場できちんとお聞かせいただきたいと思います。
 第三は、国民の未来への責任でございます。
 今回、小泉首相を初めとする内閣提案が、ひたすらに国民の負担増を求めるものであるということをいかがお考えでしょうか。
 「聖域なき構造改革」という名において、一兆円の高齢者医療費の自然増すら七千億円に圧縮されました。しかしながら、防衛費総額四兆九千五百五十三億円は全く手つかずのまま、アメリカに次ぐ高い、世界第二位の軍事予算として計上されております。
 果たして、我が国の医療費は、これらの防衛費に比して高いものであるのか。およそ七・六%対GDP比の我が国は、先進国においては、イギリスに次いで、対GDP比の低い医療費をなし遂げております。そして、そのイギリスにおいては、サッチャー政権において本当に荒廃してしまった国民の医療の再建のために、ブレア首相は、対GDP比一〇%を公約に掲げました。
 小泉首相にあっては、先人に学び、この一連の経過をどうごらんになり、我が国としてどのような指標を立てるのか。まず、その大きな大きな指標を明らかにしていただきたいと思います。
 引き続いて、坂口厚生労働大臣にお伺い申し上げます。
 私は、坂口厚生大臣は、厚生労働大臣になられましたが、我が国の厚生行政の中に人権という太い柱を打ち立てられた、歴史に名を残す厚生大臣だと思っております。九十年余に及ぶハンセン病の患者さんたちの奪われた人権、失われた名前の回復、そしてクロイツフェルト・ヤコブ病の早期の和解、このことは、実は、坂口厚生労働大臣の御尽力なくしては実現し得なかったとも思っております。
 そうした坂口厚生労働大臣が今回の健康保険法等の改正を担うに当たって、私は、単に金銭の出入りだけ、支払い方法だけではない、医療の根幹問題をぜひとも論議の俎上に上げていただきたいと思います。
 医療の根幹問題とは何か。まず第一は、医療提供体制でございます。
 先ほど私が例に挙げました厚岸町、人口が一万三千、釧路の郊外にございます。そこにある九十床の町立病院では、わずか五名の医者で周辺の地域住民の健康を担い、日夜の当直を行っておりますが、少ない医師、過労、そして赤字の中で、今、その経営が続けられるかどうか、本当に一日一日薄氷を踏む思いだといいます。
 一方、都市においても、私が長年実践しておりました小児医療は、余りにも採算性を重視する我が国の医療のそのしわ寄せを一身に受けて、小児科病床の閉鎖が相次ぎ、加えて、国公立病院の統廃合の中で、例えば人口八十万の世田谷区において、夜間小児医療の無医村と化すような現実が起こっております。
 このこと一つとっても、我が国は、まず、だれにどのような医療を、たとえその人がどこに住もうと、どこに生まれようと、どこで亡くなろうとも提供していけるか、そのことを本当に原点に立ち返って論ずるべきでございます。そして、その時期は今しかございません。二十年、三十年後の本格的な高齢社会に備えて、今からきちんとした医療提供体制を論ずること、それが今国会の役割でもございます。
 第二に、医療の質をめぐる問題でございます。
 きょう、民主党の皆さんからも、カルテ開示等々にかかわり、医療ミスを軽減させ、そして、よりよい患者中心の医療を実現するための法案が提出されておりますが、実は、この医療の質に関しましては、果たして、欧米に比して二分の一から四分の一という少ない医療従事者数で担えるものなのか否か、この点もきちんと論議していただきたいと思います。
 現在、医療従事者数二百六十九万、介護従事者数百二十六万、総労働力人口の五・八%という数字は、アメリカであれば一一%、北欧諸国であれば、もっともっと多くの人たちが医療や介護や福祉に携わっております。せめて、坂口厚生労働大臣の手で、医療従事者、介護従事者数の全労働人口に占める比率目標を一〇%までお置きいただきたい。それが、一つでも悲しいミスをなくし、本当に国民が安心と納得できる医療提供体制の質の保証のまずスタートであると思います。
 三点目は、いわゆる医療を担うマンパワーの質の問題、医師の初期研修の問題であります。
 平成十六年度に義務化されます医師の研修問題では、ついせんだっても、関西医大で、わずか二十六歳の若者が、月に三百時間以上の労働をして、わずか六万の賃金の中、過労死してしまいました。果たして、研修医をこのような状態に置いて、そしてアルバイトなくしてはやっていけない状況に置いて、国民に必要な医療を担う人材を育成できるのか。
 このことに関して、今、例えば日本大学では、最低給与を十二万に上げましょうという、労働者に準ずる改定を行いましたが、しかしながら、これでもまだまだ不十分でございます。真にアルバイト診療をなくし、そして十分に教育にあるいは研修に専念していただける体制のために、実はアメリカでは、研修医一人当たり十万ドルの予算を立てて、うち四万ドルが給与、六万ドルが教育にかかわる人材に払われる仕組みになっております。
 教育にきちんとした金とスタッフを配置せずして、国民の未来は守れません。この件に関しましても、この間の医道審議会での論議の内容、そして坂口厚生労働大臣のお考えをお聞かせいただきたい。
 ちなみに、医道審議会は二十名の委員から成り立ちますが、うち十五名が医師、そして十二名が大病院の院長か大学病院の教授でございます。このような中では、真に必要な、私が冒頭申し上げました、地域一般医療を担う人材は育て切れません。そのことともあわせて、本当の国民の未来のために、坂口厚生労働大臣の御英断を仰ぐものです。
 そして、本法案に関しまして、四つの質問をいたします。
 一点目は、まず、患者自己負担問題でございます。
 この点については、先ほど来、他の議員の方々も御質問でございますので、あえて私は、自己負担増の前にやるべきことがある、そのことを指摘させていただきます。
 高い医療費、医療材料費、反復する検査、不正請求などなど、坂口厚生労働大臣が、この点に対して、まずそれらのむだを省いてから国民に初めて負担を求めるべきという私の意見にどうお答えいただけるかにあります。
 第二は、保険料の値上げ問題でございます。
 この点も多々御指摘がございましたが、この点に関して、国民健康保険は大幅な赤字、組合健保は老人医療拠出金に悩み、そして政府管掌保険は年々その数を減じており、国民皆保険制度は空前の危機と言われております。
副議長(渡部恒三君) 阿部知子君、申し合わせの時間を過ぎましたから、なるべく簡単にお願いします。
阿部知子君(続) 済みません。
 このことにあって、私は、ぜひとも、この各健康保険組合の財務状況の情報公開をしていただきたいと思います。
 あと、二点省略させていただきまして、竹中経済財政担当大臣と石原行革担当大臣にお願いいたします。
 竹中経済財政担当大臣には、果たして、経済財政諮問会議では、医療、介護、福祉という分野をどのように論じておられるのかについてお願いしたい。
 そして、石原行革担当大臣にあっては、いわゆる医療の情報公開、わけても、民間病院と国立病院の財務状況についてどのような報告を義務づけているのか。カルテの情報公開とあわせて、財務状況の報告を健康保険組合と各病院に行わせることが、今、国民の論議の出発点でございます。
 以上、時間を超過して大変申しわけございませんでしたが、質問を終わらせていただきます。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 阿部議員にお答えいたします。
 戦没者の遺骨収集と国立墓地に関するお尋ねであります。
 さきの大戦の戦没者の御遺骨については、一日でも早く祖国にお迎えできるよう努力することが国の責任であると考えておりまして、引き続き努力をしてまいりたいと思います。
 現在、内閣官房長官のもとに懇談会を開催し、おおむね一年を目途として、だれもがわだかまりなく、戦没者等に追悼の誠をささげ、平和を祈念することのできる記念碑等、国の施設のあり方について幅広く御議論いただいているところであり、この懇談会の意見を踏まえて対応を検討してまいります。
 鈴木議員の問題についてであります。
 疑惑については、もう何度も申し上げているとおり、議員本人がきちんと説明するべきものだと思います。私としては、今回の問題を踏まえ、政治と金の問題、政と官の問題、外務省改革の問題などについて建設的な改革につなげていきたい、そういうことによってみずからの責任を果たしていきたいと考えます。
 医療費の抑制についてであります。
 医療費については、制度や社会的背景の違いなどもあり、単純に国際比較することは困難ですが、我が国の医療費の対GDP比は、主要先進諸国と比べて、現時点においては必ずしも大きくはないものの、国民一人当たりの医療費は、主要先進諸国と比べても、低い水準ではありません。
 医療費の規模についてどのような水準が適切かを示すことは難しい問題でありますが、いずれにせよ、世界に例のない急速な少子高齢化の進展等に伴い、医療費の増大は避けられないと思っております。
 我が国の国民皆保険制度を将来にわたって守っていくためには、医療の質の確保を図りつつ、医療費の伸びを適正なものとすることにより、制度の持続可能性を確保していくことが必要であると考えております。
 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
    〔国務大臣坂口力君登壇〕
国務大臣(坂口力君) 阿部議員にお答えさせていただきたいと思いますが、初めいただいておりました問題とは大分違った問題がたくさんあるものですから、うまくお答えさせていただけるかどうか、よくわかりません。
 一番最初は、医療供給体制と医師の確保についてのお尋ねであったと思っております。
 医療資源の効率的な活用でありますとか、医療施設間の機能連携等の確保を図りますとともに、自治医大でありますとか地元の大学の協力を得まして、医師の確保にも努めているところでございます。
 確かに、御指摘になりましたように、いわゆる過疎化の問題とそして過密化の問題とがございまして、とりわけその中で、小児医療の問題等、非常に深刻な問題も起こっておりますので、これらの問題につきまして、ひとつ格差のできないように最善の努力を図っていきたいと思っております。
 それから、医療の質につきましてのお尋ねがございました。
 将来の需給を見通し、計画的な養成、確保を図っていくことは重要でございますが、そうした人数の問題だけではなくて、質の問題も大変大事だと思っております。
 とりわけ、医療の分野の中で看護職員につきましては、平成十二年に策定いたしました看護職員需給見通しに基づきまして、養成力の確保、それから離職の防止、再就職の支援、資質の向上等の総合的な確保対策に今取り組んでいるところでございます。
 いずれにいたしましても、医療従事者の需給に十分配慮いたしまして、そして、医師、歯科医師を含めました必要な医療従事者の確保と資質の向上に努めてまいりたいと考えております。
 それから、医師の臨床研修についてのお尋ねがございました。
 平成十六年四月の医師の臨床研修の必修化に当たりましては、研修医が、アルバイトをせずにプライマリーケアの診療能力の修得に専念いたしまして、医師としての人格の涵養に努められる環境を整備することが重要であると考えております。
 現在、医道審議会の医師臨床研修検討部会におきまして、研修内容に加えて、勤務条件等の処遇の問題につきましても検討を進めているところでございます。
 この医道審議会の内容につきましてのお話もございましたけれども、確かに医道審議会は、医療従事者、とりわけ大学の先生等が多いわけでございますが、しかし、地域医療に携わる方々を初め、さまざまな関係者からヒアリングも行っているところでございまして、地域医療に携わる方々の多数の御意見を伺っていきたいというふうに思っておるところでございます。
 それから、研修医が研修に専念できる環境の整備が重要であると考えております。そのための必要な財源の確保、そして、研修医に対してどれぐらいの給料をお出ししたらいいのかといった問題につきましても、現在詰めを行っているところでございます。
 それから、最後の二問は、三割以前に抜本改正が必要ではないかというお話でございました。
 これはもう御指摘のとおりでございまして、私もそう思っております。したがって、どういたしましても、この抜本改革の筋道というもの、基本的な方向性というものは早く出さなければならないというふうに思っております。
 この御審議をいただきます間にも、そうしたものをできる限り次々と出していきたいというふうに思っているところでございます。
 最後に、情報公開のお話がございました。
 これも現在進めているところでございまして、病院あるいは診療所の情報公開も進めておりますが、そうした問題とあわせまして、患者の側から見まして、患者の側が医療に参加できるような体制につきましても、現在、進めているところでございます。
 これらの問題にひとつおこたえができるように、十分にやっていきたいと思っているところでございます。(拍手)
    〔国務大臣石原伸晃君登壇〕
国務大臣(石原伸晃君) 阿部議員にお答え申し上げます。
 一点、御質問がございました。国公立等の医療機関の財政状況の公開についてであったと存じます。
 経営情報の開示の促進につきましては、医療機関の経営の透明化を図る上で、私どもも重要であると認識しております。
 国公立の病院等については、国立病院特別会計法等に基づく損益計算書、貸借対照表等の作成等を通じて、その財政状況が明らかにされております。
 また、医療法人が開設している病院につきましても、先般、特定医療法人等に対して決算の公開に関する指導がなされているなど、財政状況の自主的開示が促進されるための環境整備が図られているものと承知しております。
 なお、この三月に閣議決定いたしました規制改革推進三カ年改定計画において、各医療機関はできる限り日本医療機能評価機構の審査を受け、審査を受けた医療機関も評価内容を公開するよう指摘させていただいているところでございます。
 具体的に申しますと、審査項目の中で、病院会計準則に基づく会計処理がなされているかどうか、第三者による外部監査が行われているかどうかなどの財務、経営管理面のほか、保健医療や健康にかかわる地域のニーズに対応しているかどうか、患者に対して診療に関する説明と同意を行う体制が確立しているかどうかなど、医療機関が必要とする公共性についての評価も対象となっております。
 こうした機構の審査と医療機関の評価公開を通じて、各種情報の開示が今後とも促進されていくものと理解しているところでございます。(拍手)
    〔国務大臣竹中平蔵君登壇〕
国務大臣(竹中平蔵君) 阿部議員から、経済財政諮問会議における医療、介護、福祉分野の位置づけについてのお尋ねがございました。
 医療、介護、福祉等の社会保障制度については、昨年六月のいわゆる骨太の方針におきましても、本年一月のいわゆる「改革と展望」におきましても、次の二点を指摘しております。
 第一は、国民の生涯設計における重要なセーフティーネットであり、これに対する信頼なしには国民の安心と生活の安定はあり得ないということであります。
 第二は、経済と調和し、将来にわたり持続可能で安心できるものとなるようにこれを再構築しなければならないということであります。
 極めて大変重要な問題である、改革の中核にあるという位置づけをしておりますので、引き続き、諮問会議におきましても、さまざまな角度から議論を深めたいというふうに考えております。
 以上、お答え申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
副議長(渡部恒三君) 井上喜一君。
    〔井上喜一君登壇〕
井上喜一君 保守党の井上喜一でございます。
 私は、保守党を代表し、ただいま議題となっております健康保険法等の一部を改正する法律案に関連いたしまして、総理並びに坂口厚生労働大臣に質問いたします。(拍手)
 保守党の強い主張によりまして、昨年の医療制度改革大綱に引き続き、今回の改正案におきましても、医療制度の抜本改革の一つとして、新しい高齢者医療制度の創設が盛り込まれました。平成十四年度中にその具体的内容、手順及び年次計画を明らかにした基本方針を策定し、その方針に基づき二年以内に所要の措置を講ずると明確に規定するに至ったことは、高く評価いたすものであります。
 今日の医療制度の最大の問題は、高齢化の進行とともに増大する老人医療費の問題にあります。だれしも年をとれば病気にかかりやすく、入院期間も長くなり、高齢者一人当たりの医療費が若人の五倍にも達しており、それだけ医療費もかさみます。現在、国民医療費は三十兆円、七十歳以上の老人医療費は約十兆円とその三分の一を占め、しかも、その割合は年々増加いたしております。毎年、医療費は約一兆円伸びておりますが、その九割は老人医療費の伸びによるものであります。増大する老人医療費をどういう形で負担し、どう給付水準を維持していくかが問われております。
 今日の老人医療制度において、老人医療費は、社会保険方式を基本としているため、患者の一部負担や三割の公費負担を除き、その七割を医療保険の各保険者からの拠出金に依存いたしております。この結果、増大する老人医療費に伴う拠出金の負担で、各保険者は深刻な財政難にあえぐ状況となっております。現在の仕組みのまま事態を放置すれば、保険料を引き上げるか給付水準を引き下げるか、それ以外に選択の道はありません。
 そもそも、世代間負担を前提とする現行の社会保険方式は、ピラミッド型または長方形の人口構成において円滑に機能する方式でありまして、少子高齢化という今日の状況においては、新たな視点に立って制度の再構築を図るべきと考えます。
 保守党は、このような観点から、世代間の違いを問わず、国民に広く薄く負担を求める、安定した財源である消費税を社会保障目的税とし、その使途を、基礎年金、介護と並んで、高齢者医療制度の主たる財源とすべきことを強く求めてまいりました。このことは、小泉内閣発足の際の与党三党間の政策合意の中にも明記されております。
 新しい高齢者医療制度の創設に当たっては、以上の経緯を踏まえて制度の枠組みを構築すべきであると考えます。この点についての総理の見解を伺います。
 さらに、新しい高齢者医療制度の創設に当たっては、次のことを基本とすべきと考えます。
 すなわち、第一は、原則七十歳以上の高齢者を対象とした、国所管の全国共通の統一した制度とすること、第二は、高齢者医療制度と介護制度との連携を強化し、高齢者個々の態様に応じた適切なサービスを提供する体制を確立すること、第三は、消費税の社会保障目的税化に当たっては、内税化や益税の解消、インボイス方式の導入などの改革を行うと同時に、税率の引き上げに当たっては、食料品については軽減税率を設けることの方向性を明示することであります。
 新しい高齢者医療制度は、このような安定した基盤の上に、国民が安心して老後生活を営むことができるものとして構築しなければなりません。総理並びに坂口厚生労働大臣の見解をお伺いします。
 最後に、政府は、今回、健康増進法案を提出しておりますが、健康こそ最良の医療であり、生涯を通じた健康づくりや疾病予防対策の充実等、国民の健康寿命を延ばす政策に一層の努力が必要であります。坂口厚生労働大臣にその対策をお伺いし、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 井上議員にお答えいたします。
 新しい高齢者医療制度の枠組みについてであります。
 高齢化のピーク時においても安定的な運営を確保していくために、高齢者自身の負担に合わせて、現役世代の支援と公費の適切な組み合わせを図るとともに、必要な財源の確保を図っていくことが重要と考えております。
 いずれにしても、高齢者医療制度の財源のあり方については、こうした視点を踏まえ、検討されるべき課題であると考えております。
 新たな高齢者医療制度についての具体的な御提案がありました。
 医療保険制度全体の体系の見直しとあわせて高齢者医療制度の位置づけを考えるとともに、介護制度との関連や各制度、世代を通じた給付と負担のあり方などを踏まえて検討を行い、本年度中にはその基本的方向を明らかにしてまいります。
 なお、消費税の使途を含め、将来の税制、財政のあり方については、今後の少子高齢化の進展など経済社会の構造変化や財政状況等を踏まえつつ、国民的な議論によって検討されるべき課題であると考えております。
 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
    〔国務大臣坂口力君登壇〕
国務大臣(坂口力君) 井上議員にお答えさせていただきたいと存じます。
 一番最初は、高齢者医療制度についてのお尋ねでございました。
 抜本改革の大きな柱として高齢者医療制度を取り上げるべきだという御主張をちょうだいしたところでございます。
 考えてみまするに、高齢者医療制度、それから保険の統合一元化の問題は、既に議論がもう尽くされていると思っておりまして、もう尽くされましたこの議論の中で、どれを選択するかという問題になっていると思っている次第でございます。したがいまして、このどれを選択するかということにつきまして御議論いただきまして、そして、一日も早くその道筋を決定させていただければというふうに感じている次第でございます。
 もう一つは、国民の健康寿命を延ばす政策についてのお話であったと思います。
 高齢化の進展でありますとか生活習慣病の増加などの疾病構造の変化に伴いまして、要介護者が増加しておりますし、健康寿命を延ばして、より多くの方々が健康で生き生きとした生活を送ることができるよう、国民の健康づくり、疾病予防の取り組みの支援をさらに強化することが必要であると思っております。
 健康日本21をスタートさせまして、生活習慣病とその原因となります問題等につきまして、具体的な目標を提示し、国民の主体的な健康づくりの取り組みを現在促進しているところでございますが、このような取り組みをさらに推進させますために健康増進法案をここに提出させていただいたところでございまして、今後とも、健康づくり、疾病予防の対策の一層の強化に努めてまいりたいと考えております。(拍手)
副議長(渡部恒三君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
副議長(渡部恒三君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後三時四十二分散会


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