衆議院

メインへスキップ



第29号 平成14年4月26日(金曜日)

会議録本文へ
平成十四年四月二十六日(金曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第二十二号
  平成十四年四月二十六日
    午後一時開議
 第一 電波法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)
 第二 野菜生産出荷安定法の一部を改正する法律案(内閣提出)
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 日程第一 電波法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)
 日程第二 野菜生産出荷安定法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金の提供等の処罰に関する法律案(内閣提出)
 政策金融機関に対する検査の権限の委任のための関係法律の整備に関する法律案(内閣提出)
 エネルギーの使用の合理化に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
 電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法案(内閣提出)
 安全保障会議設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)、武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案(内閣提出)及び自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


このページのトップに戻る

    午後一時三分開議
議長(綿貫民輔君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 日程第一 電波法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)
議長(綿貫民輔君) 日程第一、電波法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。総務委員長平林鴻三君。
    ―――――――――――――
 電波法の一部を改正する法律案及び同報告書
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔平林鴻三君登壇〕
平林鴻三君 ただいま議題となりました電波法の一部を改正する法律案につきまして、総務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 本案は、IT革命の進展に伴い深刻化した電波の逼迫状況にかんがみ、無線アクセスや移動通信サービスなどの新たな電波ニーズに的確に対応できるよう、電波の利用状況を調査し評価する等の制度を導入するとともに、無線局に関する情報の提供制度を拡充する措置等を講じようとするものであります。
 本案は、参議院先議に係るもので、去る四月二十二日に本委員会に付託され、二十三日片山総務大臣から提案理由の説明を聴取し、昨二十五日質疑を行い、採決の結果、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
議長(綿貫民輔君) 採決いたします。
 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 日程第二 野菜生産出荷安定法の一部を改正する法律案(内閣提出)
議長(綿貫民輔君) 日程第二、野菜生産出荷安定法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。農林水産委員長鉢呂吉雄君。
    ―――――――――――――
 野菜生産出荷安定法の一部を改正する法律案及び同報告書
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔鉢呂吉雄君登壇〕
鉢呂吉雄君 ただいま議題となりました野菜生産出荷安定法の一部を改正する法律案につきまして、農林水産委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 本案は、最近における野菜の生産及び出荷に関する諸事情の変化にかんがみ、野菜価格安定制度を見直し、契約取引制度の創設、生産者補給金制度の拡充等の措置を講じようとするものであります。
 委員会におきましては、四月二十三日武部農林水産大臣から提案理由の説明を聴取し、翌二十四日及び二十五日に政府に対する質疑を行ったほか、二十四日には参考人から意見を聴取するなど、慎重に審査を行いました。
 昨二十五日質疑を終局し、直ちに採決いたしましたところ、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
 なお、本案に対し附帯決議が付されました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
議長(綿貫民輔君) 採決いたします。
 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
馳浩君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
 内閣提出、公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金の提供等の処罰に関する法律案を議題とし、委員長の報告を求め、その審議を進められることを望みます。
議長(綿貫民輔君) 馳浩君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加されました。
    ―――――――――――――
 公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金の提供等の処罰に関する法律案(内閣提出)
議長(綿貫民輔君) 公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金の提供等の処罰に関する法律案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。法務委員長園田博之君。
    ―――――――――――――
 公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金の提供等の処罰に関する法律案及び同報告書
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔園田博之君登壇〕
園田博之君 ただいま議題となりました法律案について、法務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 本案は、テロリズムに対する資金供与の防止に関する国際条約の締結その他のテロリズムに対する資金供与の防止のための措置の実施に関する国際的な要請にこたえるため、公衆等脅迫目的の犯罪行為に対して資金を提供する行為等についての処罰規定等を整備しようとするもので、その主な内容は、公衆または国等を脅迫する目的をもって行われる殺人その他の一定の犯罪行為を公衆等脅迫目的の犯罪行為と定義し、そのために資金を提供または収集した者を十年以下の懲役または千万円以下の罰金に処するものとし、これら資金提供の罪及び資金収集の罪につき国外犯を処罰するものとすることであります。
 本案は、去る十一日本委員会に付託されたもので、十九日森山法務大臣から提案理由の説明を聴取し、二十三日から質疑に入り、本日これを終局し、討論、採決を行った結果、賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
 なお、本案に対し附帯決議が付されたことを申し添えます。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
議長(綿貫民輔君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
議長(綿貫民輔君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
馳浩君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
 内閣提出、政策金融機関に対する検査の権限の委任のための関係法律の整備に関する法律案を議題とし、委員長の報告を求め、その審議を進められることを望みます。
議長(綿貫民輔君) 馳浩君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加されました。
    ―――――――――――――
 政策金融機関に対する検査の権限の委任のための関係法律の整備に関する法律案(内閣提出)
議長(綿貫民輔君) 政策金融機関に対する検査の権限の委任のための関係法律の整備に関する法律案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。財務金融委員長坂本剛二君。
    ―――――――――――――
 政策金融機関に対する検査の権限の委任のための関係法律の整備に関する法律案及び同報告書
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔坂本剛二君登壇〕
坂本剛二君 ただいま議題となりました法律案につきまして、財務金融委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 本案は、政策金融機関について、その財務の健全性及び透明性の確保への要請が高まっており、リスク管理をより一層適切に行う必要があることから、政策金融機関に対して金融庁検査を導入できるよう、各政策金融機関の設置法において所要の措置を講じようとするものであり、以下、その概要を申し上げます。
 第一に、主務大臣は、立入検査権限の一部を内閣総理大臣に委任できることとするとともに、内閣総理大臣は、立入検査をしたときは、速やかに、その結果を主務大臣に報告することにしております。
 第二に、内閣総理大臣は、主務大臣から委任された権限等を金融庁長官に委任することにしております。
 本案は、去る四月十一日当委員会に付託され、同月二十三日塩川財務大臣から提案理由の説明を聴取した後、質疑を行い、本日質疑を終局いたしました。次いで、討論を行い、採決いたしましたところ、本案は多数をもって可決すべきものと決しました。
 なお、本案に対し附帯決議が付されましたことを申し添えます。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
議長(綿貫民輔君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
議長(綿貫民輔君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
馳浩君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
 内閣提出、エネルギーの使用の合理化に関する法律の一部を改正する法律案、電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法案、右両案を一括議題とし、委員長の報告を求め、その審議を進められることを望みます。
議長(綿貫民輔君) 馳浩君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加されました。
    ―――――――――――――
 エネルギーの使用の合理化に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
 電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法案(内閣提出)
議長(綿貫民輔君) エネルギーの使用の合理化に関する法律の一部を改正する法律案、電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法案、右両案を一括して議題といたします。
 委員長の報告を求めます。経済産業委員長谷畑孝君。
    ―――――――――――――
 エネルギーの使用の合理化に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書
 電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法案及び同報告書
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔谷畑孝君登壇〕
谷畑孝君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、経済産業委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 まず、エネルギーの使用の合理化に関する法律の一部を改正する法律案は、近年におけるエネルギーをめぐる経済的、社会的環境の変化に応じた燃料資源の有効な利用の確保を図るため、
 第一に、第一種エネルギー管理指定工場の指定対象業種の限定を撤廃し、エネルギー消費量が大規模である事業場についても指定対象とし、エネルギーの使用の合理化のための中長期的計画の作成及びエネルギー使用状況等の定期報告等を義務づけること、
 第二に、エネルギー消費量が中規模である工場または事業場に対して、同様に、エネルギー使用状況等の定期報告を義務づけること、
 第三に、床面積二千平方メートル以上の住宅以外の建築物を建築しようとする建築主に、熱の損失の防止等のための措置に関する事項の届け出を義務づけること
等の措置を講じようとするものであります。
 次に、電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法案は、内外の経済的、社会的環境に応じたエネルギーの安定的かつ適切な供給を確保し、及び環境の保全に資するため、
 第一に、経済産業大臣は、風力、太陽光、バイオマスその他のエネルギーを変換して得られる新エネルギー等電気について、電気事業者が利用すべき量の目標を定めること、
 第二に、経済産業大臣は、新エネルギー等電気を発電する者等の申請に基づき、その設備等について認定を行うこと、
 第三に、電気事業者に、毎年度、その供給する電気の量のうち、一定量以上の量の電気を新エネルギー等電気とする義務を課すこと
等の措置を講じようとするものであります。
 両案は、去る四月十七日本委員会に付託され、同日平沼経済産業大臣からそれぞれ提案理由の説明を聴取いたしました。
 同月十九日より質疑を行い、同月二十三日には参考人から意見を聴取するなど、慎重な審議を行い、同月二十四日に質疑を終局いたしましたところ、本日、エネルギーの使用の合理化に関する法律の一部を改正する法律案について、採決の結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決いたしました。次いで、電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法案について、討論の後、採決の結果、賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
 なお、本案に対し附帯決議が付されました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
議長(綿貫民輔君) これより採決に入ります。
 まず、エネルギーの使用の合理化に関する法律の一部を改正する法律案につき採決いたします。
 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
 次に、電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法案につき採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
議長(綿貫民輔君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 安全保障会議設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)、武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案(内閣提出)及び自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明
議長(綿貫民輔君) この際、内閣提出、安全保障会議設置法の一部を改正する法律案、武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案及び自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を順次求めます。国務大臣福田康夫君。
    〔国務大臣福田康夫君登壇〕
国務大臣(福田康夫君) ただいま議題となりました安全保障会議設置法の一部を改正する法律案及び武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案について、その趣旨を御説明いたします。
 初めに、安全保障会議設置法の一部を改正する法律案について御説明申し上げます。
 この法律案は、武力攻撃事態等に際して、政府が、事態の認定、対処に関する基本的な方針の策定等の重大な判断を行うに際しての安全保障会議の重要性にかんがみ、内閣総理大臣の諮問事項及び同会議の議員に関する規定を改めるとともに、会議に専門的な補佐組織を設けることにより、事態対処に係る安全保障会議の役割を明確にし、かつ、強化することを目的として提出するものであります。
 以上が、この法律案の提案理由であります。
 次に、この法律案の内容について、その概要を御説明いたします。
 第一に、内閣総理大臣の諮問事項に、武力攻撃事態への対処に関する基本的な方針を加え、これに伴い、防衛出動の可否を諮問事項から除いております。また、諮問事項に、内閣総理大臣が必要と認める武力攻撃事態及び重大緊急事態への対処に関する重要事項を加えることを定めております。
 第二に、会議の機動的な運営を図るため、議員の構成を見直すとともに、常置の議員以外の国務大臣を、議員として、臨時に会議に参加させることができるようにすること等としております。
 第三に、事態対処に係る安全保障会議の審議及び意見具申に資するため、必要な事項に関する調査及び分析を行い、その結果に基づき会議に進言する事態対処専門委員会を置くこととしております。
 以上が、この法律案の趣旨でございます。
 引き続きまして、武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案について、その趣旨を御説明いたします。
 我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つため、我が国に対する外部からの武力攻撃に際して、我が国を防衛し、国土並びに国民の生命、身体及び財産を保護するために必要な法制を整えておくことは、国としての責務であります。
 この法律案は、こうした観点から、武力攻撃事態への対処について、基本理念、国、地方公共団体等の責務、国民の協力その他の基本となる事項を定めることにより、対処のための態勢を整備し、あわせて武力攻撃事態への対処に関して必要となる法制の整備に関する事項を定め、もって我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に資することを目的とするものであります。
 以上が、この法律案の提案理由であります。
 次に、この法律案の内容について、その概要を御説明いたします。
 第一に、武力攻撃事態への対処に関する基本理念として、国、地方公共団体及び指定公共機関が、国民の協力を得つつ、相互に連携協力し、万全の措置が講じられなければならないこと、日本国憲法の保障する国民の自由と権利が尊重されなければならず、これに制限が加えられる場合、その制限は、武力攻撃事態に対処するため必要最小限のものであり、かつ、公正かつ適正な手続のもとに行われなければならないこと、日米安保条約に基づいてアメリカ合衆国と緊密に協力しつつ、国際連合を初めとする国際社会の理解及び協調的行動が得られるようにしなければならないこと等を定めた上で、この基本理念にのっとり、国の責務等について所要の規定を置いております。
 第二に、武力攻撃事態への対処に関する基本的な方針、武力攻撃事態対策本部の設置、組織、所掌事務及び同対策本部長の権限、内閣総理大臣の権限等について所要の規定を置いております。
 第三に、政府は、武力攻撃事態への対処に関して必要となる法制の整備について、武力攻撃から国民の生命、身体及び財産を保護するため等の措置、武力攻撃事態を終結させるための措置等が適切かつ効果的に実施されるようにするものとすること、その緊要性にかんがみ、この法律の施行日から二年以内を目標として総合的かつ計画的に実施するものとすること等を定めております。
 第四に、政府は、武力攻撃事態以外の国及び国民の安全に重大な影響を及ぼす緊急事態への対処を迅速かつ的確に実施するために必要な施策を講ずるものとしております。
 以上が、この法律案の趣旨でございます。
 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願い申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
議長(綿貫民輔君) 国務大臣中谷元君。
    〔国務大臣中谷元君登壇〕
国務大臣(中谷元君) 自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。
 我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、防衛出動を命ぜられた自衛隊がその任務をより有効かつ円滑に遂行し得ることが必要であり、このため、防衛出動時及び防衛出動下令前における所要の行動及び権限に関する規定を整備し、並びに損失補償の手続等を整備するとともに、関係法律の適用について所要の特例規定を設けるほか、武力攻撃の事態に至ったときの対処基本方針に係る国会承認等が新設されることに伴い防衛出動命令の手続について所要の整備を行い、あわせて防衛出動を命ぜられた職員に対する防衛出動手当の支給、災害補償その他給与に関し必要な特別の措置を定める必要があります。
 以上が、この法律案を提出する理由であります。
 次に、この法律案の内容について、その概要を御説明いたします。
 まず、自衛隊法の一部改正について御説明いたします。
 第一に、第百三条の規定により土地を使用する場合において、都道府県知事等は当該土地の上にある立木等を移転または処分することができることとし、同条第一項の規定により家屋を使用する場合において、都道府県知事等は当該家屋の形状を変更することができることとするとともに、同条の規定により処分を行う場合には、都道府県知事は公用令書を交付して行わなければならないこと、及び、この場合において、土地の使用に際して公用令書を交付すべき相手方の所在が知れない場合等にあっては事後に公用令書を交付すれば足りること等とするものであります。
 第二に、自衛隊の行動として防衛出動下令前の防御施設構築の措置を新設するとともに、当該職務に従事する自衛官が自己または自己とともに当該職務に従事する隊員の生命等の防護のためやむを得ない場合に武器を使用することができることとし、及び、防御施設構築の措置を命ぜられた自衛隊の部隊等の任務遂行上必要があると認められるときは、都道府県知事は防衛庁長官等の要請に基づき土地を使用すること等ができることとするものであります。
 第三に、防衛出動を命ぜられた自衛隊の自衛官は、当該自衛隊の行動に係る地域内を緊急に移動する場合において一般交通の用に供しない通路等を通行することができることとするものであります。
 第四に、道路法等について、防衛出動等を命ぜられた自衛隊の任務遂行を円滑ならしめるため、適用除外その他の特例を設けることとするものであります。
 第五に、取扱物資の保管命令に違反して当該物資を隠匿等した者は六月以下の懲役または三十万円以下の罰金に処すること等とするものであります。
 第六に、武力攻撃事態に至ったときの対処基本方針に係る国会承認等の手続が新設されることに伴い防衛出動命令の手続について所要の整備を行うこととするものであります。
 次に、防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部改正について御説明いたします。
 これは、防衛出動を命ぜられた職員で政令で定めるもの以外のものに対し防衛出動手当を支給することとするとともに、防衛出動手当を公務災害補償の平均給与額算定の基礎に加えること等とするものであります。
 以上が、自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案の趣旨でございます。
 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。(拍手)
     ――――◇―――――
 安全保障会議設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)、武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案(内閣提出)及び自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
議長(綿貫民輔君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。菱田嘉明君。
    〔菱田嘉明君登壇〕
菱田嘉明君 自由民主党の菱田嘉明であります。
 私は、自由民主党を代表いたしまして、武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案、いわゆる武力攻撃事態対処法案など関係三法案について、小泉内閣総理大臣並びに中谷防衛庁長官に質問をいたします。(拍手)
 国家の緊急事態に対する対処は、国の最も重要な責務であります。経済的な繁栄も、個人の幸せも、安全保障が確立されてこそ初めて成り立つものであります。
 これらの法案は、国家の緊急事態への対処のための基本的な枠組みをつくるものであり、我が国の安全保障政策を充実していく上で歴史的な節目となるものであると確信いたしております。それだけに、国民的合意が得られますよう、国会において真剣な議論を重ねていくとともに、政府は国民にわかりやすく説明していく責任があると考えております。
 国民の間には、既に冷戦が終結したにもかかわらず、また、経済の課題も多い状況でありながら、なぜ、今、これらの法案を整備する必要があるのかといった疑問の声もあろうかと思います。また、武力攻撃事態において、国民の権利はどうなるのか、地方自治はどうなるのか、こうした不安を感ずる向きもあろうかと思います。
 そこで、改めて総理から、この法案の必要性、国民の権利との関係、地方自治との関係について、政府の考え方を明快に御説明いただきたいと思います。
 また、国民の間では、米国同時多発テロや武装不審船事案などを踏まえて、こうした事態に対する不安が高まっております。
 武力攻撃事態対処法案の第二十四条においては、政府は、武力攻撃事態以外の緊急事態に迅速かつ的確に対処するために必要な施策を講ずるものとされておりますが、政府は、テロ等の緊急事態に対して今後どのように取り組んでいく考えなのか、国民の不安を払拭すべく、総理の明確な御答弁をお願いいたします。
 国民が政府に期待しておるのは、武力攻撃事態における国家の安全の確保とともに、国民の生命、身体の安全の確保であろうと思います。
 武力攻撃事態対処法案においては、国民の被害への対応という極めて重要な分野の法整備も全体の枠組みの中に明確に位置づけており、今後の政府の取り組みに期待するところであります。
 避難のための警報の発令等、具体的な措置を講じていくためには、国、地方公共団体、公共機関等の各機関が一体となって取り組む必要があります。それだけに、時間をかけてじっくり取り組むべき課題ではありますが、大きな問題でもありますので、いかなる取り組みをしていくのかについて、現時点での総理のお考えをお伺いいたします。
 続いて、自衛隊の行動の円滑化の観点から、防衛庁長官にお伺いいたします。
 まず、武力攻撃事態対処法案では、政府として決定する対処基本方針に、防衛出動待機命令等を記載することとされました。これは、国家存亡のときの自衛隊の重要な行動等について、行政府限りではなく、立法府とともに、まさに国全体で判断していこうとするものであり、政治的に極めて重要な意義を持つものであります。
 この新たな制度のもとでは、これまでは国会の承認に係っていなかった措置について、新たに国会の承認が必要となったわけでありますが、このことについて、防衛庁長官の御見解をお伺いいたします。
 また、今回の自衛隊法等の一部改正法案では、防御施設構築という新たな自衛隊の行動が追加されております。部隊運用の現実を踏まえたものでありまして、こうした措置の創設により、我が国の防衛がより効果的なものとなるよう強く期待しておりますが、防衛庁長官から、この新たな行動の類型の必要性について、国民にわかりやすく説明をしていただきたいと考えます。
 次に、今回の自衛隊法等の一部改正法案と基本的人権の制約の問題についてお伺いいたします。
 今回、取扱物資の保管命令違反に対して新たに罰則を設けることについて慎重な意見がある一方で、業務従事命令には罰則を設けていない点についてもさまざまな意見が出されております。罰則の問題は、武力攻撃事態における国民の人権の保障に関する重要問題であります。
 本法案で新たに設ける罰則の考え方について、防衛庁長官から明瞭に御説明願います。
 最後に、これらの法案は、日本の安全保障政策の歴史の大きな転換点となる重要な法案であると考えております。法案の一刻も早い成立と、本法律案を軸とする確固たる安全保障政策の構築に向けて、与党として全力を尽くしますことを表明して、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 菱田議員にお答えいたします。
 法案の必要性、国民の権利との関係、地方自治との関係についてのお尋ねであります。
 今回提出した三法案は、武力攻撃事態という国及び国民の安全にとって最も緊急かつ重大な事態への対処を中心に、国全体としての基本的な危機管理体制の整備を図るものであります。かかる法制の整備は、長年の課題であり、国家存立の基本として行われていなければならなかったものであります。
 また、憲法に定める国民の自由と権利の尊重を基本理念として明記しており、武力攻撃事態への対処においても、この基本理念にのっとって行うこととしております。
 法案では、地方自治の趣旨を踏まえ、具体的に国が地方に関与していく場合には個別の法律に根拠を持たなければならないこととするなど、十分な配慮をしております。
 テロ等の緊急事態に対する取り組みについてでございます。
 政府としては、国及び国民の安全を確保するため、武力攻撃事態への的確な対応を図るだけでなく、いかなる事態にも対応できる安全な国づくりを進めていくこととしております。
 テロや不審船等、武力攻撃事態以外の緊急事態については、これまで、警察・海上保安関係法、自衛隊法、災害対策基本法等によって態勢を整えてきているところですが、今後とも、これを一層改善強化するための措置を講じてまいります。
 国民の安全の確保に関する国、地方公共団体、公共機関等の取り組みについてでございます。
 法案に基本理念として明記されているとおり、武力攻撃事態への対処においては、国、地方公共団体及び指定公共機関が、国民の協力を得つつ、相互に連携協力し、万全の措置が講じられなければならないと考えます。
 また、関係機関による対処措置の総合的な推進のため、武力攻撃事態においては、対策本部を設置することとしています。
 さらに、政府としては、国民の保護のための法制の整備に当たって、国、地方公共団体及び指定公共機関の具体的な役割を検討し、関係機関が一体となった態勢の整備に努めてまいります。
 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
    〔国務大臣中谷元君登壇〕
国務大臣(中谷元君) 新たに国会承認が必要となった措置についてのお尋ねがございました。
 自衛隊の防衛出動は、国としての武力の行使そのものにかかわる特に重大なものであり、これまでも、自衛隊法第七十六条においては、国会の承認に係らしめていたところであります。
 また、即応予備自衛官及び予備自衛官の防衛招集、防衛出動待機命令や防御施設の構築等に着手することは、我が国防衛の強固な意思を内外に示すものであります。
 このようなことから、その実施を行政府と立法府の統一的な意思決定のもとで行うため、必要的記載事項として対処基本方針に記載し、この対処基本方針について国会の承認を求めることとしたところでございます。
 本案の防御施設構築の措置という新たな行動の類型の必要性についてお尋ねがございました。
 近年、我が国に対する脅威や武力攻撃の形態については多様化してきており、武力攻撃が発生する危険が切迫してから実際の武力攻撃に至るまでの期間が極めて短いことがあり得ること、陣地等の防御施設を構築するには相当の期間を要することなどから、事態が緊迫し、防衛出動が発せられることが予測される状況下から防御施設を構築することが必要な場合が想定されるところであります。
 このような防御施設の構築に当たっては、武力攻撃に備えた準備の一環として、必要に応じて土地使用の処分を行うとともに、自己防護のために武器を使用する必要がある場合もあることから、かかる権限の行使を伴う行動の要件と手続を明確にする必要があります。
 以上のことから、新たな行動類型として、改正自衛隊法第七十七条の二の規定を設け、事態が緊迫し、防衛出動が発せられることが予測される状況において、展開予定地域内で行う防御施設構築の措置について、防衛庁長官が内閣総理大臣の承認を得てこれを命ずることができることとするものでございます。
 また、本法律案で新たに設ける罰則の考え方についてお尋ねがございました。
 この改正案における罰則は、国民の人権保障に配慮しつつ、武力攻撃事態における自衛隊の任務遂行を確保するため、必要最小限のものに限定しております。
 例えば、取扱物資の保管命令は、自衛隊の任務遂行上必要とされる物資を確保するために必要なものですが、これに関する罰則は、保管命令に違反して保管物資を隠匿、毀棄、または搬出するという悪質な行為を行う場合に限り罰則を科することといたしております。
 このように、改正法案における罰則は、主として、積極的な作為義務の履行を確保するためのものではなくて、むしろ、妨害等を行わないという不作為を要求し、それに違反する行為に対して科すなど、公共の福祉を確保するための必要最小限の制限として、憲法上許されるものであるというふうに考えております。(拍手)
    ―――――――――――――
議長(綿貫民輔君) 伊藤英成君。
    〔伊藤英成君登壇〕
伊藤英成君 私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました、いわゆる有事法制関連三法案について質問をいたします。(拍手)
 私は、今、この場に立ちまして、本日午前中、この壇上でプローディ欧州委員会委員長が演説をされ、中東・パレスチナ問題に関連いたしまして、軍事的行動は恒久的解決にならないと強調されていたことを、今、印象深く思い出します。(拍手)
 私は、有事法制を議論しようとするとき、日本の姿勢として、そもそも憲法の基本原則である平和主義や国際協調主義に基づく外交、予防外交を積極的に展開し、できる限り紛争を未然に防止し、アジアの近隣諸国との信頼関係を構築するなど、しっかりとした外交を展開していくことが大前提であることをまず冒頭申し上げ、質問に入りたいと思います。(拍手)
 さて、民主党は、一九九八年の結党大会で、「シビリアン・コントロールや基本的人権を侵害しないことを原則としながら、有事・危機に際して超法規的措置をとることのないよう関連法制の整備を早急に進める。」と決定して以来、翌九九年には安全保障基本政策を策定し、「緊急事態において、日本に対する武力攻撃などに効果的に対処できるようその活動の根拠を与えるとともに、」「このような緊急事態においても自衛隊などの活動が、シビリアン・コントロールの下にあり、国民に対する必要以上の権利制限とならないよう、国民の権利、とりわけ憲法上認められた基本的人権・表現の自由等を保障すること」、こういうことに重点を置いて、積極的に検討を重ねてきました。
 有事法制の本質は、一時的にではあれ、時の政府に国民の権利の制約をゆだねる側面があるということです。そのため、政府の権限拡大を認めるには、国民の信頼に足り得る政府であることが不可欠です。
 しかし、今、小泉総理への支持率は大きく低下しています。身内の国会議員や、この法制の中心となるべき防衛庁や外務省においてもさまざまな疑惑が喧伝され、とどまるところを知りません。国民生活に重大な影響を及ぼす法案が、疑惑を指摘されている議員や役所の主導で審議されるのでは、国民の理解が得られません。
 失われた国民の信頼の回復についてどうなさるのか、有事法制整備に向け、小泉総理、川口外務大臣及び中谷防衛庁長官から、基本的な認識をお伺いいたします。
 次に、政府案について具体的に伺います。
 政府案は、外部からの武力攻撃に対抗するために、自衛隊の行動の円滑化を優先する法整備となっており、国民の安全や保護のための法制、国際人道法や米軍支援に関する法制などの重要事項については、単に言葉として挙げているのみで、事実上先送りです。政府案では二年以内を目標に整備となっていますが、むしろ、こちらの方こそ重要であるはずであります。
 また、現代社会で最も蓋然性が高いと思われるテロやゲリラや不審船への対処、大規模災害等への対応についても、すっぽりと抜け落ちております。
 小泉総理は、折に触れ、備えあれば憂いなしと言っておられますが、この法案では、基本的人権に関する備えなくして憂いありとの疑念を持たざるを得ません。(拍手)
 こうなったのは、連立与党間の政局絡みのさや当て、包括法を主張する小泉総理と冷戦思考の国防族との確執、防衛庁と警察庁の縄張り争いのせいと言われております。
 国民生活に重大な影響を及ぼす法案が、政権内部の御都合主義によってゆがめられたとしたら、これほど国民にとって危険な話はありません。国民の安全のためにそもそも何が必要なのか、改めて検討し直す必要があると考えますが、総理の考えを伺いたい。
 次に、武力攻撃事態の定義について伺います。
 政府案では、対象を、武力攻撃のおそれのある事態と、事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態としていますが、その区別が不明確です。予測される事態まで対象とすると、時の政府に都合のいい、主観的、恣意的な運用となる余地が生じてきます。また、周辺事態でも武力攻撃事態になり得るとしたら、周辺事態法との関係はどうなるのですか。このような難解な定義では、かえって現場で混乱をもたらすのではないでしょうか。明確な判断基準とすべきだと考えますが、総理の御所見を伺いたい。
 次に、民主的統制の観点から伺います。
 政府案では、国会の関与や見直し規定、政府の暴走を阻止する仕組み等が極めて不十分です。武力攻撃事態では、通常の手続をとるいとまがない可能性が生じることは否定しません。しかし、不用意に手続の省略を認めると、行政府の専横によって、民主主義そのものが危殆に瀕する事態もあり得ます。
 武力攻撃事態に対処するには、自衛隊の活動を含む諸態様を実施する行政府と、その基本方針を定める立法府が、共同して当該事態に対処するのだという決意のもと、必要な情報開示を受けた国会や国民が、自衛隊を含む行政各部の行動や人権制約を伴う公権力の行使をしっかりと監視していくべきであります。
 そのような見地から政府案を見ますと、心もとない限りであります。例えば、自衛隊が必要な国会承認を受けて防衛出動をした場合であっても、一定の期間が経過した後に、新たな視点から活動の是非をチェックするようなシステムも必要ではないでしょうか。また、対処基本方針の廃止等には国会の議決による廃止規定を設けるべきであり、その際、事の是非を判断するためには情報開示規定が必要だと考えますが、これらの諸点について、総理及び防衛庁長官から御答弁をいただきたい。
 次に、地方公共団体、指定公共機関等について伺います。
 地方公共団体は、住民保護のための必要な措置を実施する責務を負わされることになります。内閣総理大臣と地方公共団体の長との関係では、総合調整が整わない場合は、別に法律の定める事項について指示をし、従わない場合は代執行ができるようですが、具体的にはどのような場合を想定しているのか、片山総務大臣から明らかにしていただきたい。
 また、責務の一端を担うとされる指定公共機関とは、別に政令で定めることとされていますが、そもそもどういうものなのか。対象となる業種程度は、きちんと法律で規定すべきだと思います。対象には民放や各種マスコミも含まれるのでしょうか。これら指定公共機関にあっては、どのような活動制限か、指導をだれが、どのような権限で行使するのか、片山総務大臣から明らかにしていただきたい。
 さらに、国民等に及ぼす影響が最小となるための警報の発令、避難の指示、被災者の救助、消防等に関する措置について、具体的にどのような枠組みを構築していくのか、全くわかりません。国の省庁間、地方公共団体等をまたいだ相互連絡、物資配給、警報、避難誘導、消防等を行うための法制は、実際どのように考えられておられるのか。総理及び総務大臣の御所見を伺いたい。
 次に、法案では、国民の協力の名のもとに、強制的に徴用されるのではないかとの不安の声も聞かれます。また、物資の収用等や業務従事命令及び違反者への処分については、専ら自衛隊による任務遂行という都合から不服申し立てができないようですが、こうむった不利益はどのように解消できるのでしょうか。総理及び防衛庁長官からお答えいただきたい。
 さらに、この法案には、武力攻撃事態において国民の権利が侵害、制限されたときの申し立て、補償、賠償などに関する規定、具体的手続など、裁判所による事後の司法審査についての言及がありません。特別な定めが必要だと思いますが、既存の法的枠組みで十分という認識なのでしょうか。総理から御所見を伺います。
 次に、米軍の行動に関する法律が検討されながら、最終的には先送りされてしまいました。米軍が行動する場合、どのようなシステムで調整されるのか、日本有事のための支援であっても、米軍の行動についての定めがなければ、国民は不安に思います。周辺事態における後方支援活動等や集団的自衛権との関係等、極めて重要な課題の解決も迫られています。
 法案にある対処措置においては、米軍への物品、施設、役務の提供その他の措置が明記されていながら、武力攻撃事態における米軍との物品役務相互提供協定の整備については述べられていませんし、武力攻撃事態に米軍による権利侵害などがあった場合の裁判管轄権、適用法令の選択等の規定もありません。総理及び川口外務大臣から、米軍にかかわるこれらの問題について、具体的にお答えをいただきたい。
 最後に、最も重要な基本的人権の尊重について伺います。
 人権に関する基本理念は、平時、有事を問わず守られるべきであります。武力攻撃事態における公権力の発動においては、人権侵害に至る危険性が高いことを想起すべきです。だからこそ、あらかじめ政府が守るべき基本理念を定め、それを最大限尊重する努力義務を定めることが重要だと考えます。
 例えば、いかなる事態にあっても、思想、良心、信仰の自由といった内心の自由は絶対不可侵であること。その他の精神的自由権に対する制約がなされる場合は、より重大な人権を守るための必要最小限の範囲にとどめなければならないこと。特に表現の自由については、原則として事前に制約してはならず、例外的に事前抑制が可能な場合も、その内容を問題にする制約は許されないこと。経済的自由権に対してやむを得ず特別の制限を課すには、その損失等を補償しなければならないこと。難民の迅速な受け入れ等や捕虜、戦傷病者の保護等を定めるジュネーブ条約関連法制を早急に整備することなどが重要でしょう。
 以上のような観点からの具体的な規定を置くつもりはないのか、また、どのようにして国民の基本的人権を担保していくつもりなのか、小泉総理からお伺いをして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 伊藤議員にお答えいたします。
 武力攻撃事態対処法制整備に向けた基本的認識についてでございます。
 法案は、武力攻撃事態という国及び国民の安全にとって最も緊急かつ重大な事態が生じた場合における対処を中心に、国全体としての基本的な危機管理体制の整備を図るものであります。すなわち、武力攻撃事態への対処は、すべて、あらかじめ法律の定める枠組みの中で行うものと位置づけられております。
 政府としては、国民の権利と自由を最大限尊重するためにも、緊急事態における法手続をあらかじめ整備しておくことは重要であると考えます。このような点について、国民の理解と協力が得られるよう努めるとともに、武力攻撃事態への対処に万全を期してまいりたいと考えております。
 国民の安全のために何が必要かというお尋ねであります。
 今回提出した三法案は、武力攻撃事態への対処を中心に、国全体としての基本的な危機管理体制の整備を図るものでありますが、国民の保護などのための法整備についても、この法案に示された枠組みのもとで、整備の方針や項目を示しつつ、包括的に実施していくこととしたところであります。
 また、法案においては、武力攻撃事態以外の緊急事態への対処についても、一層改善強化するための施策を講ずることとしており、全体として、いかなる事態にも対応できる安全な国づくりを進めていくこととしております。
 武力攻撃事態は明確な判断基準によるべきではないかとのお尋ねです。
 武力攻撃事態の判断は、国際情勢、相手国の意図、軍事的行動等を総合的に勘案してなされるものであり、その認定は対処基本方針に記載され、閣議決定された後、国会の承認を得ることとされております。
 武力攻撃が予測される事態において、一定の範囲で対処を始める必要があることについては御理解いただきたいと思います。
 周辺事態と武力攻撃事態とは、それぞれ別個の法律上の判断に基づくものでありますが、事態の進展によっては両者が併存することはあり得ると考えます。
 民主的統制についての御指摘がありました。
 政府が国会の審議等を通じて示された国会の意思を尊重することは、当然であります。
 また、武力攻撃事態が終了し、自衛隊の防衛出動や被災者の救助、被害の応急復旧等、一連の対処措置の必要がなくなれば、政府として対処基本方針を速やかに廃止いたします。
 なお、政府としては、行政府と立法府の統一的な意思決定のもとで武力攻撃事態に対処していく観点から、国会の判断に必要な情報を可能な範囲で開示してまいります。
 国民の保護のための法制についてでございます。
 避難のための警報の発令、被災者の救助、施設及び設備の応急の復旧等、国民の生命等の保護のために必要な諸措置については、今後、個別の法制の中で、国、地方公共団体、公共機関等の各機関の役割を具体的に定めていくこととなると考えております。
 今後、国民の保護のための法制の整備に全力で取り組んでまいりますが、その際には、関係機関の意見を聞くとともに、国民的議論の動向に配慮して、十分な国民の理解を得つつ進めてまいりたいと考えます。
 自衛隊法に基づく処分による国民の不利益をどのように解消するかとのお尋ねであります。
 自衛隊法に基づく処分については、緊急時において迅速に行われる必要があることから、御指摘のとおり、従来、行政不服審査法による不服申し立てをすることができないこととされています。
 他方、かかる処分によって通常生ずべき損失や実費については、適正な補償を実施することとしており、国民のこうむった不利益の解消を図っております。
 国民の権利が制限された場合の補償等についてのお尋ねです。
 法案では、基本理念の中で、国民の自由と権利に制限が加えられる場合は、必要最小限のものであり、かつ、公正かつ適正な手続のもとに行わなければならないことを明記しています。
 政府としては、今後の法制整備において、国民の自由と権利を制限せざるを得ない場合の手続等について、慎重かつ適切に検討してまいりたいと考えております。
 なお、このような手続等にのっとった対処措置は、当然、事後の司法審査の対象となるものであります。
 武力攻撃事態における米軍の行動についてです。
 米軍の行動の円滑化のための法制については、今後、日米安保条約の目的の枠内及び憲法の範囲内で国連憲章を初めとする国際法に従い、武力攻撃事態対処法案に基づき検討していくことになります。
 ただいま議員より御指摘ありました点につきましても、それを十分に踏まえつつ、今後適切に検討してまいります。
 人権に関する規定及び人権の担保についてのお尋ねです。
 法案では、基本理念として、武力攻撃事態への対処においては、国民の自由と権利が尊重されなければならず、これに制限が加えられる場合、その制限は必要最小限のものでなければならないこと等が明記されており、武力攻撃事態への対処は、かかる基本理念にのっとって行われることとしています。
 また、今後、法案の定める期限内を目標として進められる事態対処法制の整備においても、かかる基本理念にのっとって、国民の基本的人権を尊重するとともに、ジュネーブ諸条約等の国際人道法の的確な実施を確保してまいります。
 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
    〔国務大臣川口順子君登壇〕
国務大臣(川口順子君) 有事法制整備に向けた外務省の信頼回復についてお尋ねがありました。
 私といたしましては、武力攻撃事態対処法案等も含め、内外の重要課題にしっかりと取り組んでいくためにも、私に課せられた第一の使命でございます外務省改革を断行し、一日も早く国民の皆様の信頼を回復し、国益を増進する外交の実施体制を整える決意でおります。
 武力攻撃事態における米軍の行動についてのお尋ねがありました。
 米軍の行動の円滑化のための法制につきましては、今後、日米安保条約の目的の枠内及び憲法の範囲内で国連憲章を初めとする国際法に従い、武力攻撃事態対処法案に基づき検討していくことになります。
 具体的には、例えば、日米安保条約に従って武力攻撃を排除するために必要な行動を実施する米軍に対し、物品、役務、施設の提供等を実施するための法制整備などが対象となりますが、ただいま議員より御指摘ありました点につきましても、それを十分に踏まえつつ、今後適切に検討してまいります。(拍手)
    〔国務大臣中谷元君登壇〕
国務大臣(中谷元君) 有事法制に向けた基本的認識に関するお尋ねがございました。
 有事法制は、有事に際し、外部からの侵略を排除し、国や国民の主権また国民生活を守っていくため、国家の防衛作用を確保するために行うことは、言うまでもありません。
 自衛隊の任務遂行に当たっては、自衛隊に対する国民の信頼が必要不可欠であります。私は、防衛庁長官として、このことを十分に踏まえ、国民の皆様の信頼のもと、武力攻撃事態への対応に関する法制の整備を初めとする防衛行政の遂行に邁進してまいります。
 民主的統制に関するお尋ねがございました。
 先ほど総理が御答弁したとおりでございますが、政府が国会の審議等を通じて示された国会の意思を尊重することは、当然であります。
 また、武力攻撃事態が終了し、自衛隊の防衛出動や被災者の救助、被害の応急復旧等、一連の対処措置の必要がなくなれば、政府として対処基本方針を速やかに廃止いたします。
 なお、政府としては、行政府と立法府の統一的な意思決定のもとで武力攻撃事態に対処していく観点から、可能な範囲で国会の判断に必要な情報を開示してまいります。
 また、物資の収用や業務従事命令により国民のこうむった不利益をどのように解消するのかというお尋ねがございました。
 改正自衛隊法第百三条及び第百三条の二の規定に基づく処分は、防衛出動時等という国家の緊急時において、我が国を防衛するために行動している自衛隊の任務遂行上必要な物資等を確保するために行われるものでございます。こうした処分による損失については、適正な補償を実施することとしておりまして、国民のこうむった不利益の解消を図っているところでございます。
 今般の自衛隊法改正で設ける罰則については、適正な手続のもとで行われることとされております。(拍手)
    〔国務大臣片山虎之助君登壇〕
国務大臣(片山虎之助君) 伊藤議員の御質問にお答えいたします。
 私には、三点ございました。
 第一点は、内閣総理大臣による指示や代執行についてのお尋ねでございます。
 この具体的な内容は、総理の答弁にもありましたが、今後、個別法制の整備に当たって、内閣官房を初め関係省庁と協力しながら検討していくことになると思いますけれども、私としては、地方団体の意見をしっかりと踏まえながら適切に対応いたしたい、こう思っております。
 例えば、指示する場合はどういうケースかといいますと、例えば、ある地方団体の住民の皆さんを避難させなければならない、避難を受け入れる地方団体が複数ある、ただ、その複数間ではなかなか話がつかない、こういう場合には国が責任を持って指示をして、引き受けてもらうということ、これが指示でございます。
 それから、代執行の方は、例えば、住民の皆さんに避難勧告をやる、あるいは避難勧告をした住民の皆さんを輸送する、こういう場合に、当該地方団体と連絡がうまくつかないとか、あるいは地方団体の方の態度が決まらないというときに、緊急の場合には国が直接やる、こういうケースが考えられると思いますけれども、いずれにせよ、具体的な検討はこれから関係省庁で行ってまいります。
 指定公共機関についてのお尋ねがありました。
 指定公共機関とは、公共的な機関、例えば日銀あるいは日赤、NHK等でございますけれども、公共的な機関と公益的事業を営む法人、例えば電気、ガス、輸送、通信その他の法人の中から政令で定めるということになると思います。
 ただ、これも、どういう機関を指定するかは、これから国民保護法制をつくっていくわけでありますから、どういう役割が期待されるか、その期待される役割とそれぞれの機関の機能との関係を精査しまして、その機関の意見も聞きながら指定をしていく、総合的な判断をしていく、こういうことになろうと思いますけれども、これにつきましても今後十分検討してまいりたい。
 その指定公共機関に対しましては、特に必要がある場合には、別に法律で定めるところにより、内閣総理大臣が指示や代執行をできることとなっております。
 第三点目は、国民の保護のための法制についてのお尋ねでございます。
 この国民保護法制につきましては、これも総理の答弁にありますように、今後二カ年以内にこの法制を検討して成案化するわけでありますけれども、いずれにせよ、国と地方との連絡調整や消防を受け持っております私のところでは、地方公共団体の意見を十分踏まえて、具体的な適切な対応について盛り込んでまいりたい、こういうふうに考えております。
 以上であります。(拍手)
    ―――――――――――――
議長(綿貫民輔君) 白保台一君。
    〔白保台一君登壇〕
白保台一君 私は、公明党を代表しまして、ただいま趣旨説明のございました、武力攻撃事態対処法案及び安全保障会議設置法の一部改正案、自衛隊法の一部改正案に対し、総理並びに関係大臣に質問いたします。(拍手)
 今回の武力攻撃事態対処関連三法案の提出によって、我が国に対する武力攻撃事態という国家の緊急時における国民の生命財産を守るための法整備の全体像と枠組みが示され、いよいよ本格的な論議がスタートしました。
 万一に備えた法整備をきちんとしておくことは、法治国家として当然です。また、緊急事態に適切な対応をとり得る態勢を平時から備えておくことは、政治の責務でもあります。むしろ、法的枠組みがないまま緊急事態に直面したら、超法規的な措置がとられたり、無用の人権制限をもたらすおそれがあります。さきの大戦における沖縄戦の地上戦でも明らかであり、今なお残されている旧軍用地の取得に関する諸問題を見ても明らかです。
 そういう意味で、今回の関連三法案の提出は大きな意義があり、今後は、国民や地方自治体にもわかりやすい形で議論を進めるべきだと私は強く主張したいと思いますが、総理は、今回の法整備の必要性についてどのような認識をお持ちか、また、国民への理解を得るために具体的にどのような努力をされようとしているのか、あわせてお考えを承りたいと存じます。
 さて、今回の武力攻撃事態対処法案については、一部に、武力の行使、すなわち、事実上の戦争を容認する法律だから憲法違反であるとの批判があります。しかし、この批判は全く当たりません。
 第一は、必要最小限の自衛権の行使の明示です。
 武力攻撃事態対処法案の基本理念の第三条三項に、我が党の主張によって、「武力の行使は、事態に応じ合理的に必要と判断される限度」と明記されました。これは、自衛権の行使を規定している自衛隊法八十八条と同趣の規定であり、憲法で許容される必要最小限度の自衛権の行使であることは明らかです。
 第二は、国連への報告義務の付加です。
 武力攻撃の排除に当たって我が国が講じた措置について、国連安全保障理事会への報告を法律で義務づけました。こうすることで、国際法上当然認められている個別的自衛権の行使であることが担保されるわけであります。
 したがって、憲法九条の理念と趣旨は厳格に規定されており、憲法の枠内における対処措置であることは当然と思いますが、総理の御見解を承りたい。
 角度を変えて、防衛庁長官にお伺いします。
 今回の法案が成立すると、我が国の自衛隊を初め防衛力は強化されるのか、専守防衛という我が国の国防の基本方針が変化するのか。私たちは、今回の法案は、憲法の範囲内の防御措置であり、そこから一歩もはみ出すことはないと明言できるものと思うが、明確にお答えいただきたいと思います。
 我が党の主張によって、さきの二点に加え、対処法案に次の三点の重要事項が盛り込まれました。
 第一は、対処基本方針の国会承認です。
 公明党は、緊急事態だからこそ、民主的なプロセスが確保されることを重視しました。従来は、自衛隊法七十六条の規定で、自衛隊の防衛出動が国会承認事項となっていたのを、今回は、さらに範囲を拡大し、対処基本方針そのものを対象としたものであります。その理由は、対処基本方針の中に、防御施設構築に伴う土地使用など、一部私権制限を伴う、国民生活に影響を及ぼす内容が盛り込まれているからであります。
 第二に、基本的人権の尊重です。
 万一、国民の安全確保のために国民の権利が一部制約される場合であっても、それは必要最小限であり、かつ、その手続も公正、適正であるよう定めました。
 第三は、損失補償の原則です。
 国民が国や地方自治体に協力したことによって財産上の損失を受けた場合、財政上の損失補償があることを明記しました。
 特に、基本的人権の尊重と損失補償については、今後整備される国民保護など個別法制の中にも具体的に盛り込まれ、国民の基本的人権に十分配慮された内容になるよう、強く訴えておきたいと思います。
 この点について、内閣官房長官の責任ある答弁を求めます。
 今後の法案審議に当たり一番重要なのは、国民への十分な理解であります。
 今回の法案の中で、武力攻撃事態の定義と国民生活に一番かかわる個別法のイメージがわからないとの指摘があります。
 そこで、私は、次の点について政府は早急に国民に明示すべきであると考えます。
 第一は、武力攻撃が予測される事態とは何か、具体的に明示していただきたい。第二は、武力攻撃事態と周辺事態との関係についての説明。第三は、国民保護、自衛隊支援、米軍支援等に関する法制等の個別法の概要と方針。以上三点について、それぞれ、関係大臣にお答えいただきたい。
 最後に、提案をさせていただきます。
 国民の安全確保を図る上で最も重要な避難誘導など、国民保護に関する個別法制の整備期間が二年以内を目標と対処法案に書かれております。しかし、その法整備については、住民の保護に直接かかわることなので、地方公共団体や指定公共機関などとも早急に協議し、少なくとも来年の通常国会に法案が提出できるよう、政府は全力を挙げるべきだと思います。この点について政府の方針をお伺いしたい。
 また、審議に当たり、国民や地方自治体の幅広い意見を聞く努力が必要です。同時に、アジア諸国の理解を得ることも重要であり、丁寧な説明が必要です。特に韓国や中国に対しては、今回の法案の趣旨について、今の段階からきちんとした説明を行い、理解を得るための絶え間ない外交努力がますます重要です。
 この点について総理並びに外務大臣の御決意をお伺いし、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 白保議員にお答えいたします。
 法整備の必要性と国民への理解についてです。
 三法案は、武力攻撃事態という国及び国民の安全にとって最も緊急かつ重大な事態への対処を中心に、国全体としての基本的な危機管理体制の整備を図るものであります。いわゆる有事法制は、長年の課題であり、国家存立の基本として整備されていなければならなかったものであります。
 政府としては、国会審議の場において常にわかりやすい説明に努めるとともに、今後、地方公共団体等に対し必要な情報提供を行い、国民の理解を得るための最大限の努力を続けてまいりたいと考えます。
 法案と憲法九条との関係についてでございます。
 法案に定める対処措置が憲法の枠内で行われるものであることは、当然であります。
 法案においては、対処措置の実施に一層の慎重を期する観点から、武力の行使が事態に応じ合理的に必要と判断される限度でなされなければならないことを明記したところです。また、国連憲章上の義務を重視する立場から、安保理への報告義務についても明記しています。
 国民の保護のための法制の整備期間についてです。
 国民の保護のための法制の整備に当たっては、関係機関の意見のほか、国民的議論の動向を踏まえながら、十分な国民の理解を得られるような仕組みをつくる必要があります。かかる法制の重要性にかんがみ、今後、法案の定める期限内を目標にして、法案の取りまとめに全力で取り組んでまいります。
 中国や韓国の理解を得るための外交努力についてでございます。
 武力攻撃事態に対処するための法制は、主権国家として当然検討すべきものと考えますが、本件を含む我が国の安全保障政策に関しては、中国や韓国を含む各国に対して、引き続き透明性を確保してまいります。
 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
    〔国務大臣中谷元君登壇〕
国務大臣(中谷元君) 我が国の自衛隊を初め防衛力は強化されるのか、専守防衛という我が国の国防の基本方針が変化するのか、今回御審議いただく三法案と我が国の防衛政策の基本との関係に関するお尋ねがございました。
 我が国は、日本国憲法のもと、外交努力の推進及び内政の安定による安全保障基盤の確立を図りつつ、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国とならないとの基本理念に従い、日米安全保障体制を堅持し、文民統制を確保し、節度ある防衛力を自主的に整備すること等により、我が国の防衛を全うすることを基本的な方針といたしております。
 今回御審議いただく三法案については、今申し上げたような我が国防衛における基本的な方針のもとで、国家の緊急事態への対処のための態勢を整備するに当たり、武力攻撃事態対処についての基本理念、国、地方公共団体等の責務その他の基本となる事項、今後必要となる事態対処法制の整備に関する事項等を定めるとともに、防衛出動時及び防衛出動下令前における自衛隊の行動及び権限に関する規定、手続を整備するなどするものでございます。
 政府といたしましては、今後とも、さきに申し上げた我が国防衛における基本的な考え方、方針を堅持してまいりたいと考えております。(拍手)
    〔国務大臣福田康夫君登壇〕
国務大臣(福田康夫君) 白保議員にお答えします。
 まず、国民の保護のため、基本的人権に配慮した内容の法制とすべきとのお尋ねがございました。
 法案では、武力攻撃事態への対処に関する基本理念として、日本国憲法の保障する国民の自由と権利の尊重を明記しております。今後の個別の法制整備は、この基本理念にのっとって行ってまいります。
 また、国民が協力をしたことにより受けた損失に関し財政上の措置を講ずることも、法整備の基本方針として明記されているとおりであります。
 次に、武力攻撃が予測される事態についてお尋ねがございました。
 武力攻撃が予測されるに至った事態とは、いまだ武力攻撃が発生していないが、事態が緊迫し、自衛隊の防衛出動の下令が予測されるような事態であり、現行の自衛隊法に言う防衛出動待機命令等を発令し得る場合と同様でございます。
 次に、国民保護に関する法制についてお尋ねがございました。
 国民保護に関する法制としては、避難のための警報の発令、被災者の救助、施設及び設備の応急の復旧等、国民の生命等の保護のために必要な措置について、国、地方公共団体、公共機関等の役割を具体的に定めていくこととなると考えております。
 また、法制の整備に当たっては、国民の自由と権利を尊重するとともに、国際人道法の的確な実施を確保してまいります。
 以上であります。(拍手)
    〔国務大臣川口順子君登壇〕
国務大臣(川口順子君) お答えいたします。
 米軍支援等に関する法制の概要と方針についてのお尋ねがありました。
 これにつきましては、日米安保条約に従って武力攻撃を排除するために必要な行動を実施する米軍に対しまして、物品、役務、施設の提供等を実施するための法制整備などが対象になります。
 その際、米軍の行動は、我が国に対する武力攻撃を排除し、我が国及び国民の安全を守るためのものであることから、米軍が自衛隊と同様に円滑な行動を行えるような支援を検討してまいります。
 次に、中国や韓国の理解を得るための外交努力についてお尋ねがありました。
 武力攻撃の事態に対処するための法制は、外部からの武力攻撃に備え、我が国の独立と主権、国民の安全を確保するために整えるものであり、主権国家として当然整備すべきものであって、周辺諸国に無用の警戒心を起こすようなものではないと考えております。
 今回提出された武力攻撃事態対処法案等につきましては、外務省としても、その基本的な考え方や構造について、東京の外務本省や我が国の在外公館を通じまして、各国に対して随時説明してまいってきておりまして、また、今後も必要に応じて説明していく考えでおります。
 いずれにいたしましても、この法制を含む我が国の安全保障政策に関しましては、中国や韓国を初めといたします各国に対して、引き続き透明性を確保してまいります。(拍手)
    ―――――――――――――
議長(綿貫民輔君) 東祥三君。
    〔東祥三君登壇〕
東祥三君 私は、自由党を代表して、ただいま議題となりました有事法制関連三法案について質問いたします。(拍手)
 国民の生命、財産、自由、人権、文化を守り、国民生活を発展させることは、国家の最大の責務であります。日本国の危機は、すなわち国民の危機であり、国家の存亡にかかわる非常事態に当たっては、政府は、すべてに優先して国民の生命財産等を守らなければなりません。武力攻撃であろうが、テロであろうが、自然災害であろうが、非常時の国家の鉄則に変わりはありません。
 本来、この最重要事項については、憲法に規定がなければなりません。日本の有事、非常時に、我が国としていかなる手段、方法によってその危機を管理し、排除するのか、その明文規定がないのは現行憲法の欠点であります。(拍手)
 私たち自由党は、それを補うために、安全保障に関する基本法と非常事態に対処するための基本法を制定すべきであると考えます。
 日本の安全保障は、これまで、政府の憲法解釈によって、なし崩し的に、恣意的に行われてきましたが、安全保障の原則とそれに基づく自衛隊の行動原則を確立し、内外に宣明すべきであります。その土台の上に、非常事態において、国家が国民の生命と財産をどのような手段、方法で守っていくのかを定める必要があります。この二つの基本法により、これまであいまいにしてきた憲法解釈を確定し、国がどうやって国民の平和と安全を守るかについて基本方針を明示するのであります。
 まず、安全保障基本法について申し上げます。
 我が国の安全保障は、一、個別的であれ、集団的であれ、自衛権は極力自己抑制的に行使する、二、日米安全保障体制を堅持し、その信頼性をさらに高める、三、国際連合の平和活動に積極的に参加する、の三原則に基づいて行う。
 具体的には、第一に、我が国に対し直接の武力攻撃があった場合、及び我が国周辺の地域においてそのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれがある事態が生じた場合、自衛隊を出動させる。
 第二に、我が国に対する直接の武力攻撃でなくても、日本国を侵害する目的をもって、国民の生命財産を侵し、社会の治安を乱す事態が生じた場合には、自衛隊により治安の回復を図る。
 第三に、国連安保理もしくは国連総会において国際平和の維持、回復のための決議が行われた場合には、国際社会の一員として、PKO活動及び武力行使を含む多国籍軍に参加する。
 次に、非常事態に対処するための基本法について申し上げます。
 まず、国家の非常事態とは何かが問題であります。国家の非常事態とは、他国からの武力攻撃にとどまらず、国家テロ、サイバーテロ、原発事故、水道への細菌混入、エネルギー危機、大規模地震、大洪水など、多種多様な形態が考えられますが、国民生活に不可欠な食料、飲料水、燃料、電灯、交通手段の供給が崩壊し、あるいは国民生活から生活必需品が剥奪されるような、すべての事態を想定しなければなりません。
 そのようなときには、内閣は、国会の承認を得た上で国家の非常事態を宣言し、非常事態態勢のもと、内閣の責任において、強いリーダーシップによって事態を収拾していかなければなりません。そうしなければ、国民の生命財産等を守ることができないからであります。
 また、非常事態はいつ起きるかわからないことから、非常事態に対処する態勢は平時から内閣の中に組織しておく必要があり、総理大臣のもとに権限を集中して、いつでも対処し得るようにしておかなければなりません。
 さらに、非常事態においては、国民生活を守るために、道路、鉄道、航空、船舶等の交通、郵便、通信、電波、そして電力、ガス、石油等エネルギーの輸出入及び販売などについては、一定の統制を行わざるを得ません。内閣が地方自治体に対する指揮命令権を持つことも必要になります。しかし、それは、あくまでも国民を保護するために限定されるべきであります。
 以上、自由党の考え方を述べてまいりましたが、この考え方に立って今提出されている政府案を拝見すると、政府案は、時代錯誤そのもので、まことに支離滅裂、あいまいもこ、奇想天外。国民の生命財産を守ろうと本気で考えたとは思えない代物であります。(拍手)
 政府は、米国同時多発テロ事件を契機に、憲法解釈を回避したまま、自衛隊を米軍の後方支援のために海外に派遣しました。一国の軍事力を動かすのに、そのように無原則、なし崩し的に運用するやり方は、海外だけでなく国内でも、自衛隊を恣意的に動かす可能性をはらみ、危険きわまりないものと言わなければなりません。(拍手)
 今、安全保障についての自由党の原則を申し上げましたが、政府は、一体、いかなる原則のもとに自衛隊を活動させようとするのか、小泉総理の御所見をお尋ねいたします。
 また、今日、我が国を取り巻く安全保障環境は大きく変化しております。かつてのように、戦闘機や艦船を使って上陸し攻めてきた敵に戦闘機や戦車で応戦するという、古い戦争観は通用しなくなっています。まずテロで日本国じゅうをパニックに陥らせてから攻撃したり、いきなりミサイルや生物化学兵器で日本の戦闘能力を奪うといったシナリオが考えられます。
 政府はどのような有事を想定して本法案を策定したのか、冷戦後の有事の中心形態と見られているテロや最も発生頻度の高い大規模災害への対処をなぜ後回しにしているのか、総理の御見解を伺います。(拍手)
 政府案では、有事に当たって、対処基本方針を閣議決定した上、「武力攻撃事態対策本部を設置する」となっていますが、そんなのうてんきな感覚で国民の生命財産を守ることができるはずがありません。
 洪水や地震などの災害対策と同じような認識で、どうして武力攻撃事態に対処できるのでしょうか。小泉総理は、政府案によって国家の危機に迅速に対応できると本気で考えておられるのか。もしできると考えておられるなら、その理由を明確にお話ししていただきたいものであります。
 そもそも、政府が想定する武力攻撃事態とはどんな事態なのか。政府案では、日本が直接攻撃された場合のほか、武力攻撃が予測されるに至った事態も含むとされておりますが、その判断基準は何であり、だれがどのように判断するのか。周辺事態安全確保法には、我が自由党の主張で、「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態」との文言を入れましたが、政府案の言う「武力攻撃が予測されるに至った事態」とは、それと同じ意味なのか、あるいは全く別の概念なのか、御説明願いたいものであります。
 また、政府は、国民保護法制、自衛隊支援法制、米軍支援法制などを二年以内に整備するとしておりますが、どのような優先順位で、どのような位置づけで法案を整備するのか。有事法制の全体像や考え方が全くわからないのであります。非常事態のときの国民の避難・保護措置が担保されていないだけで、この法案は欠陥法案であると言わなければなりません。
 以上の点について、御所見をお聞かせください。
 政府の有事法制整備方針は、国民に対する重い責任感が全く見られず、何の見識も方針もなく、体裁だけを整えたものにすぎないと言わざるを得ません。
 自民党、公明党との連立政権で有事法制の整備を決めてから、三年近くが経過しております。それにもかかわらず、政府・与党はこんな内容の法案しか提出できなかったのですか。第一、自自公連立政権において、有事法制の整備に反対したのは自民党ではありませんか。立案能力がないというのであれば、政権を交代していただかなければなりません。総理の責任ある答弁を求めます。(拍手)
 最後に、国民の私権の制限について伺います。
 有事の際には、我が国の危機を管理、克服するために、一時的に国民の私権を制限せざるを得なくなることがあります。それは、憲法第十二条等に規定されている公共の福祉にかなうものとして行わなければなりませんが、そうである以上、どのような場合にどこまで制限するのか、明確にしなければなりません。そうしなければ、権限の乱用が行われたり、国民を混乱に陥れることになります。私権制限のガイドラインについて、御見解を伺います。
 以上指摘してまいりましたように、政府案は、いずれの面からも、いずれの角度からも、非常事態において国民の生命と財産を守る上で、百害あって一利なしと言わざるを得ません。
 したがって、自由党は、今、小沢一郎党首を中心に対案を作成しており、近く、安全保障基本法案と非常事態に対処するための基本法案を国会に提出し、どのような事態においても国民の生命、財産、自由、人権、文化を守り抜くため、基本方針を国民に明示したいと思います。(拍手)
 自民党幹部は、既に、有事法制関連三法案を今国会で成立させるために、野党との修正協議に大胆に対応する考えを示しておりますが、このようなずさんな法案は、修正協議に値しません。政府案は、土台が間違っている以上、廃案にして根本からつくり直すしかありません。政府案の修正でごまかして成立させることは、日本国と日本国民に対する重大な背信行為であります。
 よもや修正協議に応じる野党はあるまいと申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 東議員にお答えいたします。
 自衛隊の活動の原則についてでございます。
 今回提出の三法案は、日本国憲法のもと、専守防衛等の基本的な防衛政策を堅持しつつ、武力攻撃事態対処を中心に、国家の危機管理体制を整備するものであります。
 武力攻撃事態に至ったときは、自衛隊の行動等に関する事項を定めた対処基本方針を政府が策定し、国会の承認を求めることとしており、恣意的に動かす可能性をはらんでいるとの御指摘は当たりません。
 法案が想定する事態についてです。
 本法案は、武力攻撃事態における対処を中心に、国全体としての基本的な危機管理体制の整備を図ろうとするものであります。法案においては、武力攻撃事態以外の緊急事態への対処についても、一層改善強化するための施策を講ずることとしているところであり、これを後回しにするとの御指摘は当たりません。
 法案により国家の危機に迅速に対応できるのかとのお尋ねがありました。
 武力攻撃事態への対処に際しては、国として、総合的な意思決定と各種の措置の実施を迅速に行うことが重要であります。このようなことから、安全保障会議の機能を強化して、対処基本方針の迅速な策定を図るとともに、内閣総理大臣に総合調整権を付与することにより、対処措置の的確かつ迅速な実施を図ってまいります。
 法案で想定する武力攻撃事態についてのお尋ねです。
 武力攻撃事態であるかどうかの判断は、国際情勢、相手国の意図、軍事的行動等を総合的に勘案してなされるものであります。武力攻撃事態の認定は対処基本方針に記載されることとされており、この対処基本方針は、内閣総理大臣の求めにより閣議において決定された後、国会の承認を得ることとされております。
 なお、武力攻撃事態とは、我が国に対する外部からの武力攻撃が発生した事態等であり、そのうち、武力攻撃が予測されるに至った事態とは、いまだ我が国に対する外部からの武力攻撃は発生していないが、事態が緊迫し、その発生が予測されるような事態を指しております。
 国民の避難・保護措置を含む国民の保護のための法制、自衛隊の行動の円滑化などに関する法制、米軍の行動の円滑化に関する法制の今後の整備の方針についてです。
 今回提出した法案は、武力攻撃事態への対処を中心に、国全体としての基本的な危機管理体制の整備を図るものでありますが、国民の保護などのための法整備についても、この法案に示された枠組みのもとで、整備の方針や項目を示しつつ、包括的に実施していくこととしたところであります。
 かかる法制の重要性にかんがみ、今後、法案の定める期限内を目標にして、法案の取りまとめに全力で取り組んでまいります。
 いわゆる有事法制は体裁だけを整えたものにすぎないとの御指摘であります。
 武力攻撃事態対処法案は、我が国に対する武力攻撃が発生した場合の対処に係る基本理念や対処の際の基本方針の策定などの基本的枠組みを定めるとともに、国民の安全確保や自衛隊、米軍の行動の円滑化といった今後整備すべき法制の検討内容等を明示して、的確に法制の全体像を示しているものと考えます。
 国民の私権の制限についてです。
 法案では、基本理念として、「日本国憲法の保障する国民の自由と権利が尊重されなければならず、これに制限が加えられる場合は、その制限は武力攻撃事態に対処するため必要最小限のものであり、かつ、公正かつ適正な手続の下に行われなければならない。」と明記しております。
 個別の法制整備において、権利の制限を定めることが必要となる場合には、この基本理念にのっとり、個々の対処措置の目的、内容等に即して精査することが必要と考えます。(拍手)
    ―――――――――――――
    〔議長退席、副議長着席〕
副議長(渡部恒三君) 石井郁子君。
    〔石井郁子君登壇〕
石井郁子君 私は、日本共産党を代表して、有事法制三法案に対して質問いたします。(拍手)
 私たち日本国民は、日本を二度と戦争を起こす国にしてはならないと、かたく誓ってきました。二千数百万のアジアの人々と三百万の日本国民のとうとい命を奪った戦前の痛苦の教訓に立ち、平和で国民一人一人の人権、自由が大切にされる社会をつくることを共通の理念として、この半世紀を歩んできました。この国民の努力を励まし、支えてきたのが、戦争の放棄を高らかにうたい、基本的人権を「侵すことのできない永久の権利」と宣言した日本国憲法であることは、言うまでもありません。(拍手)
 ところが、今回の有事法制三法案は、この憲法の平和原則や基本的人権などの民主的な諸原則を真っ向から踏みにじって、アメリカが引き起こす戦争に国民を総動員するという、まさに戦争国家法案というべきものであり、断じて認められません。(拍手)
 第一に、何のための有事法制かということです。
 小泉総理は、もしかしたらどこかの国が日本を攻めてくるかもしれない、だから有事法制が必要だと言います。しかし、一体、どこの国が日本に攻めてくるというのですか。これまで、防衛庁長官自身が、当面は日本が本格的な武力攻撃を受けることは想定できないと明言してきたのではありませんか。
 では、何のためでしょうか。重大なことは、法案が発動される武力攻撃事態とは、日本への武力攻撃が起きた場合だけではないということです。武力攻撃のおそれのある場合でも、武力攻撃が予測されるだけの場合であっても、国民動員条項が発動されることになっています。
 この武力攻撃事態について、中谷防衛庁長官は、周辺事態のケースもその一つと答弁しました。つまり、有事法制が発動される事態は、周辺事態法が発動される事態と重なり合っているということであります。総理もこのことはお認めになりますね。
 アメリカがアジア太平洋地域で介入戦争を起こし、周辺事態法が発動され、自衛隊が米軍の戦争に参戦するとき、有事法制を発動して国民を強制的に総動員する、これが有事法制をつくる真のねらいではありませんか。(拍手)
 三年前に周辺事態法がつくられて以来、米軍のアジア介入戦争を日本が支援し、日米共同作戦を行う態勢づくりが進められていますが、日米政府間では、次の課題として、日米共同作戦への国民の動員が重要な課題となってきたのではありませんか。
 現に、ブッシュ政権の対日政策責任者であるアーミテージ現国務副長官らが、日本が集団的自衛権を認めること、新ガイドライン実施のための有事法制をつくることを公然と要求しています。このアメリカの要求に全面的にこたえようというのが本法案提出の最大の理由ではありませんか。総理の答弁を求めます。(拍手)
 アメリカのブッシュ政権は、イラクや北朝鮮などを悪の枢軸国と名指しし、そこへの軍事攻撃を公言し、無法な戦争と軍事介入の政策を進めています。そして日本は、インド洋に自衛隊艦船を出動させ、アメリカの戦争を支援しているのであります。こうしたもとで有事法制をつくり、アメリカの戦争に一層加担、協力しようとしていることを厳しく指摘しなければなりません。
 第二に、国民の総動員、権利と自由の制限の問題です。
 政府が武力攻撃が予測される事態と認定すれば、自衛隊は準備のための軍事行動を開始し、武力行使を行う米軍と自衛隊の軍事作戦行動にとって必要となる土地、人、物の提供、すなわち、国民の総動員体制づくりがこの法案の核心をなしています。
 法案は、「国民は、」「対処措置を実施する際は、必要な協力をするよう努める」と明記していますが、これは国民に戦争への協力を義務づけるものではありませんか。
 また、法案は、武力攻撃事態の予測段階から国民の自由と権利に制限が加えられることも明記しています。
 総理、どのような国民の権利を制限するというのですか。国民の自由と権利を包括的に制限するなどということが憲法のいかなる条項を根拠にしてできるというのですか。憲法上の根拠がどこにあるのか、条文を示して明確にお答えいただきたい。(拍手)
 次に、国民の動員について具体的にお聞きします。
 自衛隊法百三条では、自衛隊が必要とすれば、国民の土地や家屋等の使用が強制されます。自衛隊は、予測段階から、陣地施設の構築として、指揮所、大砲やミサイルの発射台、野戦病院、航空機の発着施設をつくることができます。そのために必要な私有地を、政府が必要だと言えば、予定展開地域に指定され、土地の所有者が反対しても、地方自治体を使って強制使用することができるのです。極めて重大な国民の権利制限ではありませんか。
 自衛隊が必要とするあらゆる物資には、保管命令が下されます。しかも、自衛隊が必要とする物資の保管命令に民間人が従わない場合、さらに、自衛隊による立入検査を民間人が拒んだ場合には、罰金とともに懲役刑まで定めています。また、自衛隊が必要とする医療、輸送、土木工事などの従事者は、業務従事命令で強制されます。
 罰則までつけて協力を強制していることは、極めて重大です。憲法が明示的に否定した戦争遂行に対して非協力の立場をとることを、国家が犯罪だとみなすということではありませんか。これがどうして戦争を放棄した憲法から説明できますか。答弁を求めます。(拍手)
 さらに、法案は、指定公共機関に対し、戦争協力の責務を定めています。指定公共機関として、日本銀行、日本赤十字社、NHKその他の公共的機関、電気、ガス、輸送、通信その他の公益的事業を営む法人を挙げていますが、これはあらゆる分野の公的機関、民間企業が指定対象になり、その範囲に限定はないのではありませんか。
 NHK以外の民間放送会社や新聞社なども、指定の対象になりますか。それらのマスコミには、緊急警報や情報の提供が義務づけられるのですか。輸送では、陸海空のすべてに緊急輸送手段の確保などが義務づけられるのですか。医師会や看護婦会、医療機関も対象になりますか。これら指定公共機関の従業員には、業務命令で協力が強制されるのですか。明確にお答えいただきたい。(拍手)
 政府は、権利の制限は必要最小限だと言いますが、この基本的人権の制限については、何の歯どめもないのであります。日本国憲法が保障する、集会、結社及び言論、出版、表現の自由、学問の自由、思想信条の自由をも制限するものではありませんか。それは、まさに包括的かつ無限定に国民の自由と権利を侵害するものではありませんか。
 憲法が「侵すことのできない永久の権利」として保障した基本的人権を一片の法律で制限することがどうしてできるのか。事は重大であります。明確な答弁を求めます。(拍手)
 それだけではありません。本法案に続いて、事態対処法制を二年以内を目標として整備するとしています。その中に、社会秩序の維持に関する措置がありますが、これは治安維持や野外外出禁止令なども入るのですか。言論、表現の自由や移動の自由をも制限するもので、憲法を真っ向から踏みにじるものと言わなければなりません。
 国民の生活の安定の措置も挙げていますが、これは物資統制や価格統制を想定しているとしか考えられません。それは、国民生活のすべてを国家の統制下に置く、まさに文字どおりの戦時体制づくりではありませんか。
 また、事態対処法制として、どういう米軍に対する措置を検討するというのですか。法案二条六号には、武力攻撃事態を終結させるため、自衛隊や米軍へ物品、施設、役務の提供その他の措置をとることが明記されています。これは、米軍に対しても自衛隊と同様に、土地等の使用や物資の収用を行い、物資の保管命令や輸送などの業務従事命令が出せるということですか。答弁を求めます。
 第三に、戦争のためには、首相が全権限を行使し、国会が無視される問題です。
 法案の発動要件となる武力攻撃事態の認定や自衛隊の軍事行動、国民動員にかかわる対処基本方針が、国権の最高機関である国会にも諮らず、内閣だけの決定で実施できるという問題です。
 対処基本方針は、閣議決定後直ちに国会にかけ、承認が得られない場合には速やかに解除するとしていますが、閣議決定された対処基本方針は決定と同時に実施に移されているのであり、国会は事後に承認を求められるだけなのであります。国権の最高機関である国会をもわきに置いて、政府が独断専行するものではありませんか。
 しかも、有事法制の発動を決定するのが首相ならば、対処基本方針を決定するのも首相です。これらは安全保障会議に諮られますが、その議長も首相です。対処基本方針に基づき国民動員を行う対策本部の本部長も首相です。首相には地方自治体などへの指示権や直接執行権まで与えられており、文字どおり、首相に全権を集中する体制です。このもとで、地方自治体などが政府の決定と異なる独自の判断をすることができるのですか。まさに、有無を言わさずの強行になるではありませんか。答弁を求めます。
 最後に、私は、この議論に当たって、国家総動員法が成立させられ、本格的な戦時体制、そして太平洋戦争へと突き進んだ戦前の歴史を想起せざるを得ません。「送らじなこの身裂くとも教え子を理(ことわり)もなきいくさの庭に」と詠んだ教育者の痛恨の思いを胸に、私は、子供の命を守り育てる女性として、絶対に歴史の過ちを繰り返すことは許せません。(拍手)
 日本共産党は、侵略戦争に反対して闘った唯一の政党として、戦争国家法案を断じて許さず、憲法の平和的、民主的な原則を守り抜くために、広範な国民の皆さんと共同して闘う決意を表明し、質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 石井議員にお答えいたします。
 武力攻撃事態対処法制の整備において、特定の国からの攻撃を想定しているのかとのお尋ねであります。
 本法案は、武力攻撃事態という国及び国民の安全にとって最も緊急かつ重大な事態が生じた場合における対処を中心に、国全体としての基本的な危機管理体制の整備を図るものです。これは、平素から国の備えとして当然に整備すべきものであり、特定の国からの武力攻撃をあらかじめ想定しているものではありません。
 周辺事態との関係についてです。
 この法案に言う武力攻撃事態と周辺事態安全確保法に言う周辺事態とは、それぞれ別個の法律上の判断に基づくものであります。しかし、状況によっては、我が国に対する武力攻撃事態が周辺事態にも当たる場合もあり得ると考えられます。
 法案は米国の要求に応じた新ガイドライン実施のためのものではないかというお尋ねです。
 本法案は、我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保のため、武力攻撃事態への対処を中心に、国全体としての基本的な危機管理体制の整備を図ろうとするものであります。
 このような法制は、日本国憲法の枠内において、いわば国家存立の基本として整備されているべきものであり、米国の要求にこたえるために整備するものではありません。
 国民の協力についてです。
 武力攻撃事態への対処においては、国、地方公共団体及び指定公共機関が、国民の協力を得つつ、相互に連携協力し、万全の措置が講じられなければなりません。国及び国民の安全を確保することの重要性にかんがみ、国民にも御協力をいただきたいと考えておりますが、この法案は、国民に戦争への協力を義務づけるといった指摘は当たらないと思います。
 武力攻撃事態における国民の権利についてであります。
 法案は、武力攻撃事態への対処に当たって、国民の自由と権利が尊重されなければならない旨を明記しております。事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態においても住民の避難等の措置に着手する必要があり得ますが、やむを得ず国民の権利を制限する場合も、あくまでも本法案の基本理念にのっとり、十分な合理性を有する手続と手段を個別の法律によって定めるべきものと考えております。
 こうした権利の制限は、国及び国民の安全を保つという高度の公共の福祉のため合理的な範囲と判断される限りにおいては、「国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」との憲法十三条等の趣旨に沿ったものと理解されます。
 罰則についてです。
 自衛隊法の改正法案においては、取扱物資の保管命令に対する違反等について、悪質な違反態様に限定するなど、必要最小限の罰則を設けることとしています。
 このような罰則は、事態対処に対する一般的な非協力の立場を対象とするものではなく、国民の生命や財産を守るために行動する自衛隊の任務遂行を確保するという、公共の福祉のための必要最小限の制限であり、憲法上許されるものと考えます。
 指定公共機関についてです。
 具体的にいかなる公共機関を指定公共機関に指定するかについては、当該機関の業務の公益性の度合いや、その業務の武力攻撃事態への対処との関連性などを踏まえ、当該機関の意見も聞きつつ、総合的に判断することとなります。
 なお、この法案において、指定公共機関の従業員に対し、国から直接命令を発することは想定しておりません。
 基本的人権の制限についてです。
 法案では、基本理念として、「武力攻撃事態への対処においては、日本国憲法の保障する国民の自由と権利が尊重されなければならず、これに制限が加えられる場合は、その制限は武力攻撃事態に対処するため必要最小限のものであり、かつ、公正かつ適正な手続の下に行われなければならない。」と明記しております。
 武力攻撃事態への対処は、かかる基本理念にのっとって行われるとともに、個別の法制整備も、かかる理念のもとで行うものであります。基本的人権の制限には何の歯どめもないとの御指摘は当たりません。
 事態対処法制に関し、社会秩序の維持に関する措置と国民の生活の安定の措置についてです。
 武力攻撃事態においては、社会秩序の維持や国民生活の安定に関して必要な措置を講ずることは重要であります。今後、関係機関の意見を十分に聞くとともに、国民的議論の動向にも配慮しつつ、具体的な法整備に全力を挙げてまいりたいと思います。
 いずれにせよ、具体的な法制整備が、憲法の保障する国民の自由と権利を尊重するという本法案の基本理念にのっとって行われることは当然であります。
 対処基本方針の国会承認についてです。
 武力攻撃事態への対処は、国民の理解と協力を得て、時期を失することなく、適時適切に行われる必要があります。このため、対処基本方針を定めたときは、直ちに国会の承認を求め、不承認の議決があったときは、速やかに対処措置を終了することとしております。
 現行自衛隊法で国会承認の対象とされていない防衛出動待機命令等について、対処基本方針に記載し、国会の承認を得ることとするなど、法案は、現行法制に比べて、武力攻撃事態対処に関する国会の関与を強化している面もあり、政府の独断専行との御指摘は当たりません。
 地方公共団体の置かれる立場についてです。
 武力攻撃事態への対処については、その性格にかんがみ、国が主要な役割を担うことを基本とするものですが、地方公共団体等においても、その判断のもとに対処措置を実施できることは当然であります。
 武力攻撃事態においては、国、地方公共団体及び指定公共機関が相互に連携協力し、万全の措置が講じられなければなりません。地方公共団体等においても、連携協力して対処していただけるものと考えております。
 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
    〔国務大臣中谷元君登壇〕
国務大臣(中谷元君) 我が国に対する武力攻撃発生の可能性につきまして、私の発言に関してのお尋ねがございました。
 私は、例えば、昨年五月、国会におきまして、基盤的防衛力整備の議論の中で、我が国を侵略する能力を持った国があらわれることは三年、五年のタームでは想像できないかもしれないが、不透明、不確実な要素が残されていることにかんがみれば、全く読めない世界でありまして、やはり将来に備えておくことは必要でもありますし、一番大切なのは、みずからが力の空白とならないように、常に国際情勢に照らし合って力の均衡が保たれるように、我が国としても均衡のとれた体制を保つということが必要ではないかと述べているところでございます。
 いずれの国家にも基盤的防衛力が必要であって、武力攻撃事態への対処に関する法制の整備は、こうした取り組みの一環として、国全体としての武力攻撃の事態に対処するための基本的な態勢の整備を図るものであります。
 何事も基本が大事であります。書道にしても、剣道にしても、柔道にしても、基本の構えや楷書があってこそ、しっかりしたものができるわけであります。このような国家基本の安全保障の態勢は、我が国の長年の課題であったものであり、また、いわば国家存立の基本として、平素から当然に整備するものでありまして、特定の国からの武力攻撃を具体的に想定して整備するものではございません。
 日米共同作戦への国民の動員を次の課題としているのではないかというお尋ねがございました。
 この法律案は、我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全確保のため、武力攻撃事態への対処について、国全体としての基本的な態勢の整備を図ろうとするものでございます。このような法制は、いわば国家存立の基本として整備されているべき我が国自身の課題でありまして、そのような御指摘は当たらないと考えております。
 自衛隊法の百三条の規定による土地等の使用が重大な国民の権利制限ではないかというお尋ねがございました。
 自衛隊法百三条は、防衛出動時において、国民の生命財産を守るために行動する自衛隊の任務遂行に必要な土地等を確保するため、公用令書の交付等の適正手続のもと、損失補償を行うことにより土地の使用等を行うことを認めるものでありまして、極めて重大な国民の権利制限であるとの御指摘は当たらないものと考えます。
 なお、同様の仕組みは、災害対策基本法等でも設けられているところでございます。
 保管命令及び立入検査に対する罰則、業務従事命令についてのお尋ねがございました。
 今般の改正案における罰則は、国民の人権保障に配慮しつつ、武力攻撃事態における自衛隊の任務遂行を確保するため、必要最小限のものに限定いたしております。
 例えば、取扱物資の保管命令は、自衛隊の任務遂行上必要とされる物資を確保するために必要なものでありますが、これに対する罰則は、保管命令に違反して保管物資を隠匿、毀棄または搬出するという悪質な行為を行う場合に限り罰則を科すことといたしております。
 また、業務従事命令は、防衛出動を命ぜられた自衛隊の行動に係る地域以外の地域において、医療、土木建築工事または輸送を業とする者に対して、適切な実費弁償や損害の補償を前提として、同種の業務に従事することを命ずるものでございます。自衛隊の行動に係る地域以外の地域において、この規定があるわけでございます。
 このような罰則や業務従事命令は、国及び国民の安全確保といった公共の福祉を確保するための必要最小限の制限として、憲法上許されるものだと考えております。
 また、米軍の行動の円滑化に関するお尋ねがございました。
 米軍の行動は、自衛隊とともに我が国に対する武力攻撃を排除し、我が国及び国民の安全を守るものであることから、米軍が自衛隊と同様に円滑な行動を行えるように、今後、これに対する支援を検討する必要があると考えております。
 米軍の行動の円滑化のための法制としては、例えば、日米安保条約に従って武力攻撃を排除するために必要な行動を実施する米軍に対し、物品、役務、施設の提供その他の措置を実施するために必要な法的整備を行うことが対象となるわけでございます。(拍手)
    ―――――――――――――
副議長(渡部恒三君) 金子哲夫君。
    〔金子哲夫君登壇〕
金子哲夫君 私は、社会民主党・市民連合を代表して、ただいま議題となりました政府提案のいわゆる有事関連三法案について質問をいたします。(拍手)
 質問に先立ち、この三法案の本会議、本日の審議は、議院運営委員会においても採決をもって上程されたと聞いております。しかし、今、この議場を見てみますと、余りにも多い空席に唖然とするばかりであります。まず、私は、総理に、このような本会議の状況をどのようにお考えか、お聞きいたしたいと思います。(拍手)
 私は、広島の出身です。一発の原子爆弾で十数万のとうとい命が一瞬にして奪われ、廃墟と化した広島の町から、平和の願いを届けるために国会にやってまいりました。
 広島の平和公園にある原爆犠牲者慰霊碑には、「安らかに眠って下さい 過ちは繰返しませぬから」と刻まれています。私は、この慰霊碑の言葉を誠実に守ることこそが政治家としての責任であると思っております。どのような理由であれ、人間の最も大切な命を奪う戦争という過ちを再び繰り返してはなりません。そのような決意を込めて質問をいたします。(拍手)
 まず最初に、憲法との関係についてです。
 政府は、この有事関連三法案を現行憲法の枠内のものと主張していますが、果たして、そう言い切ることができるでしょうか。これらの法案の目的が、国民の安全や平和を守ることではなく、自衛隊の軍事行動をどうスムーズに展開するかというところにあるのは、明らかであります。結局、憲法が保障する国民の自由や基本的人権が自衛隊の軍事的必要性の犠牲になっていくのではありませんか。私には、日本が再び七十年前と同じ過ちを繰り返そうとしているように思えてなりません。
 有事関連法案は憲法が保障する国民の権利を奪うものではないか、総理大臣にお伺いいたします。
 次に、今回の立法の必要性についてお尋ねいたします。
 今回の法案の対象にはテロ対策は含まれておらず、専ら外国軍隊の大規模な直接侵略を想定している内容と考えられます。しかし、今、果たして、そのような事態が起きる可能性がどれだけあるのでしょうか。
 冷戦が崩壊した後、日本に本格的軍事攻撃を行う能力を持つ国はなくなりました。かつての仮想敵国ソ連も、ロシアとなって大きく変わり、全シベリアで陸上自衛隊の半分程度の兵力しかないと言われています。日本は、江戸時代中期以来の北方の脅威からついに脱した、非常に安定した状況にあると言えるのではありませんか。その他の周辺諸国の経済力や人口、軍事力の実態を考えても、当分の間は日本が直接侵略を受ける可能性はないと言えます。
 つまり、そもそもの立法事実がないのではないでしょうか。果たして、有事法制の立法化を急ぐ必要があるのか。武力攻撃を受けるおそれが現にあるというのであれば、どこの国の、どのような部隊が、どんな方法で、何の目的で日本を攻撃するというのか、具体的な想定をお示しいただきたいと思います。
 武力攻撃事態法では、国民の生命や財産の保護に関する法制を初め、重要な部分が、二年以内を目標として実施するとして後回しにされています。戦争状況下の国の姿を規定する重大な法制を、その全体像が見えないままで、泥縄式に審議を進めるべきではありません。もう少し時間をかけて全容を明らかにした上で、国民の判断を仰ぐべきだと考えますが、いかがでしょうか。御見解を伺います。
 さて、私がこれらの法案の中で最大の問題と考えるのは、その定義のあいまいさです。
 実際に日本が武力攻撃を受けたというならともかくも、そのおそれのある場合や予測されるに至った事態の段階で自衛隊の活動が始まることになるのですから、この基準が極めて重要です。恣意的に武力攻撃を予測できることが許されてはならないでしょう。具体的にどのような状況で、武力攻撃の発生を予測できる状態と判断されるのでしょうか。その認定をだれが、どのような基準で行うのでしょうか。
 自衛隊法改正案でも、同様に、防衛出動命令が発せられることが予測される場合に部隊を展開することができることになっております。こうした予測の基準は相当厳格でなくてはならないと考えますが、御見解をお示しください。
 さらに、武力攻撃事態と周辺事態とはどのように区別されるのでしょうか。
 周辺事態法は、そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態を周辺事態としていますが、このような事態も、日本に対する武力攻撃の発生を予測できる事態とされるのではないでしょうか。周辺事態との線引きがあいまいなまま、都合のいいように有事が予測されることになれば、有事の対象がどんどん広がっていくことになりかねません。
 現実の問題として、武力攻撃事態法に言う予測される事態と日米新ガイドラインの周辺事態が予測される場合とは全く重なり、周辺事態と武力攻撃事態が連動し、直接攻撃を受けないまま、米軍との共同作戦に組み込まれていくことになるのではないでしょうか。それは、憲法で禁じられた集団的自衛権の行使そのものではありませんか。御見解を伺います。
 自衛隊法改正では、国民に自衛隊の活動に協力させるための規定と、陣地の構築のために民間の土地を使用したり、立木を撤去したりするための規定が新設されております。
 そもそも、日本の狭い国土に陣地を築いて、本気で地上戦を戦うつもりなのでしょうか。第二次世界大戦のときですら、我が国で地上戦が戦われたのは沖縄戦だけであります。
 その沖縄でどれほど悲惨な結果となったか、御存じでしょうか。軍民混在の状況で、九万人以上の兵員と、それを上回る十三万人余りの住民の命が奪われています。当時の人口の三分の一にも及ぶ犠牲者です。しかも、本来は守ってくれるはずの日本軍によって殺されたり、集団自決を強いられた住民が余りにも多かったということもまた忘れることはできません。
 自衛隊が陣地を自由につくれるようにするという法改正自体が全く現実味を欠いたものでありますが、そもそも、地上戦を行うような事態は、既に取り返しのつかない事態なのであり、決してあってはならない事態です。有事における自衛隊作戦行動と守られるべき住民との関係はどのようになるとお考えでしょうか。沖縄で起きた事態はあり得ないと言えるのでしょうか。防衛庁長官にお尋ねいたします。
 私は、広島で、長く被爆者援護の活動に携わってまいりましたが、常日ごろから矛盾を感じてきたことがあります。それは、旧軍人軍属に対しては手厚く補償しながら、一般戦災者には、戦争被害はひとしく受忍すべきとしてきた国家の論理であります。
 第二次世界大戦の際の被害者に対しては、軍人軍属であった人々にはさまざまな補償が行われてきたのに対して、非戦闘員であった子供、老人、女性など一般市民の被害は全く放置されてきました。こうした人たちこそ、政府の誤った政策に巻き込まれて被害を受けた最大の被害者であり、本来は最初に補償すべきものであったと私は考えております。(拍手)
 今後想定される有事に際しても、国の指示に基づく地方公共団体などの損失に関しては定めがあり、また、今後の事態対処法制の整備の中でも、国民が協力したことにより受けた損失に関し、必要な措置を講ずる措置は整備することとされていますが、これはどのような範囲者を対象と考えているのでしょうか。
 すべての国民は国に対する必要な協力の務めがあるとされているのですから、この務めを果たしている国民すべてに対してその損失を補償するのが当然と考えますが、いかがでしょうか。また、そうだとすれば、第二次世界大戦の一般戦災者にも救済の手を差し伸べるべきではないでしょうか。総理にお尋ねいたします。
 強い軍事力によって平和が保てるといった発想が、既に時代おくれになっています。万一の武力攻撃を引き起こさないためには、有事法制によって武力行使の条件を整備することより、平和憲法に基づく日常からの外交努力こそが重要なのです。有事は、災害と異なり、政治の責任で避けることができるのです。(拍手)
 去る二十一日に、総理は、突如、靖国神社へ参拝し、韓国や中国などから厳しい批判を浴びました。私には、こういうセンスが全く理解できません。周辺諸国が嫌がることを行い、反発をあおるような行為を繰り返される。みずから憂いをつくりながら、憂いに備えるために有事法制だとおっしゃる。こういう手法が、まさにマッチポンプと言われるものではありませんか。(拍手)
 総理は、かねて、治にいて乱を忘れずが政治の要諦と述べておられます。私も、その点については全く同感であります。ただ、それは、乱に備えた軍事的な備えを強めるという総理の目指される方向ではなく、乱を招かない政治を着実に行うことこそが重要だということとして私は理解いたしております。(拍手)
 軍事力に依存するのではなく、平和憲法の理念を基軸に据えた平和外交の努力と近隣諸国との信頼関係の醸成こそが最良の備えであるということを強く訴え、総理大臣のお考えをお伺いいたします。
 戦争は、人々の命を奪う最大の悪であります。憲法の平和主義を真っ向から否定し、戦争への道を開く有事関連三法案に反対であることを強く表明し、私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 金子議員にお答えいたします。
 国民の自由や権利が自衛隊の軍事的必要の犠牲にされるのではないかとのお尋ねです。
 この法案では、基本理念として、憲法の保障する国民の自由と権利を尊重するとともに、これに制限が加えられる場合においても、その制限が必要最小限のものであり、かつ、公正かつ適正な手続のもとに行われなければならないことを明記しております。政府としては、この基本理念にのっとり、国民の生命、身体及び財産を保護する使命を全うすることとしております。
 立法化を急ぐ理由は何かということであります。
 三法案は、武力攻撃事態という国及び国民の安全にとって最も緊急かつ重大な事態における対処を中心に、国全体としての基本的な危機管理体制の整備を図るものです。いわゆる有事法制の整備は、長年の課題であり、国家存立の基本として当然整備されていなければならなかったものであります。
 また、この法案では、武力攻撃以外の緊急事態への対処についても、一層改善強化するための措置を講ずることとしております。
 有事法制の全容についてのお尋ねです。
 武力攻撃事態対処法案では、武力攻撃事態が発生した場合の対処に係る基本理念や対処の際の基本方針の策定などの基本的枠組みを定めるとともに、国民の安全確保や自衛隊、米軍の行動の円滑化といった今後整備すべき法制の検討内容等を明示して、法制の全体像を示しております。
 政府としては、法制の全体像の中で、避難誘導など個人の生命財産の保護に直結する問題等について、法案の定める期限内を目標として、国民議論の動向を踏まえながら、多くの国民の御理解を得られる仕組みをつくってまいりたいと考えます。
 法案で想定される事態についてのお尋ねです。
 この法案は、我が国に対する外部からの武力攻撃が発生した事態等への対応を想定しています。
 武力攻撃が予測されるに至った事態とは、いまだ我が国に対する外部からの武力攻撃は発生していないが、事態が緊迫し、その発生が予測されるような事態を指しています。
 いわゆる有事の認定についてです。
 武力攻撃事態であるかどうかの判断は、国際情勢、相手国の意図、軍事的行動等を総合的に勘案してなされるものであります。武力攻撃事態の認定は対処基本方針に記載されることとされており、この対処基本方針は、内閣総理大臣の求めにより閣議において決定された後、国会の承認を得ることとされております。
 武力攻撃事態と周辺事態との区別についてです。
 武力攻撃事態は、我が国に対する外部からの武力攻撃が発生した事態等であります。他方、周辺事態は、我が国周辺の地域における我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態であります。
 このように、これらの事態は、それぞれ別個の法律上の判断に基づくものであります。これらの事態における対処は、両者とも、あくまで憲法の範囲内で実施するものであり、集団的自衛権に関する従来からの政府の考え方に変わりはありません。
 一般市民の被害に対する補償についてです。
 武力攻撃による国民の被害にはさまざまな場合があり、個別具体的な判断が必要であります。補償の問題については、武力攻撃事態終了後の復興施策のあり方の一環として、政府全体で検討していかなければならないものと考えます。
 私の靖国神社の参拝と我が国有事への対処が周辺諸国との信頼醸成の努力に水を差すことになるのではないかとのお尋ねであります。
 私の靖国参拝と武力攻撃事態への対処のための態勢を整備することは、周辺諸国との信頼醸成の努力に水を差すものではないと思います。
 有事を起こさない取り組みについてであります。
 有事に至らないよう外交をしっかり行うことが重要なことは当然であり、政府としても、そのために引き続き全力を尽くしてまいります。
 他方で、最悪の事態に備えることも国の重要な責務であり、今般、武力攻撃事態対処法案等を提出した次第であります。
 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
    〔国務大臣中谷元君登壇〕
国務大臣(中谷元君) 武力攻撃事態における国民の保護に関するお尋ねがございました。
 武力攻撃事態が発生した場合には、その要因を取り除かなければなりません。自衛隊を中心に武力攻撃の排除に全力を挙げることはもとより、国等が国民の生命、身体及び財産の保護等に全力を傾けることは、当然のことでございます。
 今回、御審議いただく法案におきましては、武力攻撃事態において、警報の発令、伝達、避難の指示等の措置を実施するための国民の安全確保及び保護に関する法制を含む事態対処法制を、二年以内を目標として整備することといたしております。
 政府といたしましては、武力攻撃事態における国民の生命、身体及び財産の保護に万全を期していく必要があると考えているところでございます。(拍手)
    ―――――――――――――
副議長(渡部恒三君) 小池百合子君。
    〔小池百合子君登壇〕
小池百合子君 私は、保守党を代表し、ただいま提案されております武力攻撃事態対処法案等関係三法案に関しまして、総理並びに防衛庁長官に御質問をさせていただきます。(拍手)
 総理、きょうは四月二十六日でございますが、二日後の四月二十八日、五十年前の四月二十八日が何の日か、御存じでありましょうか。五十年前の昭和二十七年四月二十八日、アメリカのGHQが我が国から撤退した日であります。独立国日本が再出発した記念すべき日であります。二月十一日の建国の日もさることながら、四月二十八日こそ、日本が独立国としての主体性を回復した記念すべき日ではないでしょうか。五十周年に当たりまして、総理の御所感を伺います。
 その独立国家の基本の基本とは、侵略から国を守り、国民の生命と財産を守る体制を整えておくことであります。一体、現在の国際社会の中で、有事法制、危機管理の法制を持たない国があるでしょうか。
 我が国は、戦後半世紀を経過した今日まで、平和憲法を口実とし、日米安保をお守りとして、国家の安全保障や防衛の問題から目をそらしてきたからこそ、みずからの経済的繁栄のみを追求できたのであります。しかし、それは、国の形としてはまことにいびつであり、国家としての体をなしてないと言わざるを得ません。これが、制度面のみならず、国民の心の面でも、今、さまざまな問題を生み出していることは御承知のとおりであります。
 今、なぜ有事法制かという声が先ほどから何度もありました。しかし、国家として当然のことがなぜ今まで放置されてきたのか、むしろ、このことこそを問うべきであります。
 我々は、阪神・淡路大震災などの緊急事態におきまして、自衛隊という防衛組織を持ちながら、有事法制が整備されていないため、初動態勢がおくれ、さらに多くの国民を犠牲にしてしまった事実を決して忘れてはなりません。
 保守党は、このような立場から、遅きに失したとはいえ、今回、武力攻撃事態対処法案、そして自衛隊法の改正案等のいわゆる有事法制が今国会に提出されるに至りましたことを、高く評価しております。
 具体的な脅威が想定されていないのに、なぜ有事法制なのか、先ほどからこういう指摘もありました。しかし、冷戦の終結にしろ、昨年の米国の同時多発テロにしろ、日本海沖の不審船の侵入にしろ、また、自然災害については、あの阪神大震災の発生をだれが予測できたでありましょうか。
 今後、日本の安全保障を揺るがす事態が起きないとはだれもが予測し得ないのであり、これこそが、まさに危機の本質と言えるわけであります。何が起こるかわからないからこそ平時から備えておく、備えあれば憂いなしであります。
 有事に際した法整備を図り、それに基づき緊急事態に対処するシステムを整え、対応行動をマニュアル化し、日ごろから訓練を積み重ねておく。これらの備えが、有事に際し、侵略を排除し、被害を最小限に食いとめる最善の道と心得るべきであります。
 何よりも、有事法制を整備し、有事の際に自衛隊等の超法規的行動を防ぐことは、シビリアンコントロールの有力な歯どめであり、手段であります。民主主義国家として、法治国家として当然のことであります。
 保守党は、このような観点から、今回の法案提出を評価いたしますが、今回の法案提出の背景、目的についての総理の明快な見解を改めて伺います。
 さて、有事に際し、最も重要なことは、国民の国を守る心であり、国民の理解と協力であります。
 この観点から、保守党は、今回提出された法案の中に、国民の協力の明記を主張いたしまして、盛り込むことができたわけでございますが、肝心の国民の生命や財産を保護する法案は二年以内に整備することとされております。国民の理解と協力を得るためにも、避難誘導、保健衛生の確保、生活安定、輸送、通信手段の確保など、国民の生活を守る法制は、二年と言わず、早急に整備すべきものと考えますが、総理の御決意を伺うところであります。
 最後に、有事におきましてその中心的役割を果たすのは、防衛庁・自衛隊であります。諸外国においては、国の防衛に当たる組織は、国の基本的事務を分担する省として位置づけられておりますが、日本では、いまだ、この重要な組織が庁のままであります。自国の防衛に真剣に取り組む国家として、自衛隊が有事に際し、誇りを持って、的確に任務遂行ができるように、防衛庁の省昇格・移行を一日も早く実現すべきであります。(拍手)
 保守党は、既にこれまでにも国会に防衛省設置法案を提出し、その成立を目指しておりますが、この点について総理並びに防衛庁長官の見解をお伺いして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 小池議員にお答えいたします。
 五十年前の四月二十八日以後、日本としての独立国、これに対する所感についてのお尋ねであります。
 私は、予測し得ないこと、そういうものについては備えが必要でないという考えには理解に苦しんでおります。有事に対していかに万全の備えをするか、まさに備えあれば憂いなし、治にいて乱を忘れず、これが政治の要諦であり、今回の法案提出の背景もその考えに沿ったものであるということを御理解いただきたいと思います。
 国民の保護のための法制の整備いかんについてでございます。
 国民の保護のための法制の整備に当たっては、関係機関の意見や国民的議論の動向を踏まえながら、十分な国民の理解を得られるような仕組みをつくる必要があります。かかる法制の重要性にかんがみ、今後、法案の定める期限内を目標にして、法案の取りまとめに全力で取り組んでまいります。
 防衛庁の省移行に関するお尋ねであります。
 国民が自分の国は自分で守るという気概を持ち、国として適切な防衛の体制をとることは、国家存立の基本であると認識しております。
 防衛庁の省移行については、このような点を踏まえ、国民の十分な理解が得られる形で議論が尽くされることが重要であると考えております。
 小池議員の指摘、御意見に対しては敬意を表し、今後とも、よろしく御指導、御協力をお願いしたいと思います。
 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
    〔国務大臣中谷元君登壇〕
国務大臣(中谷元君) 防衛庁の省への移行につきましてのお尋ねでございます。
 これにつきましては、第百五十一回通常国会におきまして、防衛省設置法案が議員提出され、継続審議となっております。
 国の防衛の重要性が増大している中、防衛庁の省移行は、安全保障、危機管理に取り組む国の体制を強化し、これを重視している国の姿勢を内外に示すことになり、重要であると考えております。
 また、法律的な面で申し上げますと、国民の安全確保や国の危機管理のために自衛隊を運用すること、また、法律の制定、人事などについて、現在は、防衛庁長官名で閣議を求めることができません。また、予算の要求、執行を財務大臣に求めることもできません。
 このような点を改善するため、ぜひとも、一日も早く防衛省昇格を、防衛省設置法案の成立をお願いする次第でございます。(拍手)
副議長(渡部恒三君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
副議長(渡部恒三君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後三時四十五分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.