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第34号 平成14年5月16日(木曜日)

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平成十四年五月十六日(木曜日)
    ―――――――――――――
  平成十四年五月十六日
    午後一時 本会議
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本日の会議に付した案件
 法人税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時三分開議
議長(綿貫民輔君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 法人税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明
議長(綿貫民輔君) この際、内閣提出、法人税法等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。財務大臣塩川正十郎君。
    〔国務大臣塩川正十郎君登壇〕
国務大臣(塩川正十郎君) ただいま議題となりました法人税法等の一部を改正する法律案の趣旨を御説明申し上げます。
 本法律案は、近年の社会経済情勢の変化や企業活動の国際化の進展等を踏まえ、我が国企業の円滑な組織再編成に対応するとともに、企業経営の実態に即した適正な課税を行い、もって我が国の経済構造改革に資する観点から、連結グループを一体として課税する連結納税制度を創設するための所要の措置等を講ずるものであります。
 以下、その大要を御説明申し上げます。
 第一に、内国法人及び完全支配関係にある他の内国法人について、国税庁長官の承認を受けた場合には、その内国法人を納税義務者として連結所得に対する法人税を納めることとしております。
 第二に、連結所得の金額及び連結法人税額について、連結グループ内の各法人の所得金額を基礎とし、所要の調整を加えた上で、連結グループを一体として計算することとしております。なお、これらの計算に係る諸制度について、個々の制度の趣旨等を踏まえ、所要の措置を講ずるほか、国税通則法等の整備その他所要の規定の整備を図ることとしております。
 第三に、連結納税制度の創設に伴う税収減に対応するため、連結付加税等の連結納税制度の仕組みの中での措置及び退職給与引当金の廃止等の課税ベースの適正化のための措置を講ずることとしております。
 以上、法人税法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第であります。
 何とぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。(拍手)
     ――――◇―――――
 法人税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
議長(綿貫民輔君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。生方幸夫君。
    〔生方幸夫君登壇〕
生方幸夫君 民主党の生方幸夫です。
 民主党・無所属クラブを代表いたしまして、ただいま議題となりました法人税法等の一部を改正する法律案について質問いたします。(拍手)
 本題に入る前に、一言申し上げます。
 昨日、この本会議場において、議院運営委員長の解任決議案が否決されました。鈴木宗男氏の議員辞職勧告決議案を本会議で採決するかどうかについて、それを議院運営委員会の場において否決したことに対して責任を問うたものです。
 どうして、かかる重要な問題を本会議で討議することにすら、自民党、保守党の皆さんは反対をしなければならないのか、なぜ、鈴木議員にそれほど遠慮をしなければならないのか、全く理解に苦しみます。(拍手)
 多くの国民が、鈴木議員に対して、疑惑についての説明を求めております。それに鈴木議員が誠実にこたえないまま、本日も本会議に欠席している状態では、国会議員として職責を果たしているとは、どうしても言えないと思います。(拍手)
 さらに、既に鈴木議員の秘書が逮捕され、側近と言われた外務省の職員も、一昨日、逮捕されました。鈴木議員の政治責任は、もはや明確です。
 こうした鈴木議員の一連の行動についてどう考えているのか、この本会議場において堂々と所見を述べるのが政権党たる責任であると私は考えます。しかるに、議院運営委員会の場において、やみからやみへ葬り去ろうということは、まさに議会制民主主義を無視したものと言わざるを得ません。
 外務省職員の逮捕によって事態は大きく変化いたしました。速やかに鈴木議員の議員辞職勧告決議案をこの場において上程するように、強く私は訴えかけます。(拍手)
 さて、本題に入らせていただきます。
 国際競争力の強化等の観点から、企業組織の再編の必要性が高まり、純粋持ち株会社の解禁、会社分割法制の整備、自社株保有の解禁、株式交換・移転制度の創設など、法整備が順次進められてまいりました。しかし、これらの新たな制度は、その必要性に反して、実際にはなかなか導入が進められてきませんでした。その最大の理由は、税制であります。その意味で、今回の法人税法の改正案は時宜を得たものではございますが、出てきたものを見ますと、多くの問題点がございます。
 連結納税制度の導入に当たっては、政府・与党内で多くの紆余曲折がありました。本来なら一年以上前に導入が予定されていたものが、ずるずると引き延ばされ、昨年九月の改革工程表に平成十四年度創設が盛り込まれることによって、ようやく政府の姿勢が明らかになりました。しかし、これ以降もすんなりとはいかず、十月に政府税制調査会が導入決定しておきながら、翌十一月には塩川財務大臣が導入先送りを表明し、さらに、わずか一週間で再度ひっくり返るなどの失態を演じてきました。
 このような紆余曲折を反映するかのように、中身についても明確な方向性が見えません。連結納税は、企業が競争環境に適応する組織再編を行うために必要不可欠なものであります。速やかな導入が求められているにもかかわらず、その中身にさまざまな条件が付され、政府としてこの連結納税の適用をあたかも嫌がっているような、使いづらい制度となっています。
 以上のような経緯、内容となってしまった大きな要因は、やはり現在の小泉政権が官僚主導の政権であり、役所の縦割りを排除できないことだと考えております。内容、とりわけ、税収確保のために役所の言いなりになった結果、グループ内寄附金の控除を認めない、子会社の損失を翌期に繰り越せないなどという小細工を行い、きわめつけの連結付加税に至っては、何のために連結納税制度の導入を図るのかという、制度の基本的な考え方を疑わせるものとなってしまいました。
 まず、本当に政府として連結納税制度の導入を促進する意欲があるのかどうか、基本的な姿勢をお伺いしたいと思います。
 この連結付加税については、制度そのものについても、二%という税率についても、単に歳入確保という以外、全く論理的な説明がありません。財政状況は厳しく、安易な減税が望ましいとは考えませんが、それにしても、金がないから取るといった政府の安直な姿勢には強い疑念を感じます。これでは、あたかも連結納税を選択する企業が悪者であり、これに対し懲罰を科すようなものだと考えられます。その上、この連結付加税が障害となって連結納税の導入がおくれ、我が国企業の競争力向上のテンポがおくれてしまっては、まさに、角を矯めて牛を殺すことにほかなりません。
 改めて、連結付加税について導入の考え方を伺うとともに、これを理由にして導入が進まないという懸念に対して財務大臣はどうお考えになっているのか、お伺いしたいと思います。
 次に、具体的な点について、二点お伺いいたします。
 第一に、試験研究費の取り扱いです。
 現在の税制では、研究関連費が一定の比率を上回って増加した企業に対して、その増加分の一部を法人税額から控除できる制度となっております。企業は、この税制を活用して、研究子会社をつくり、ここで集中的に研究を行うことによって、研究に係る納税額を節税するなどの対策をとってまいりました。しかし、今回の連結納税制度によって、仮に研究開発費をグループ全体で計算する必要が生じるとなると、この増加試験研究費の特例の活用が困難になり、かえって国内企業の研究開発に対する意欲を減退させることが考えられます。
 試験研究費の取り扱いについて、本改正案ではどうなっているのか、仮に、今申し上げたように、グループ全体で計算することが義務づけられるとするとその影響をどのように考えているのか、御意見をお伺いします。
 第二は、子会社の繰越欠損金の控除が認められていない点です。
 繰越欠損金は、現在の制度でも、黒字になった時点で税控除が認められています。しかし、連結納税制度を導入した時点でこの控除が認められなくなります。付加税に次いで企業から非常に不満の強いこの繰越欠損金の問題について、財務大臣はどのような見解をお持ちでしょうか。
 次に、現在、政府で検討されている税制抜本改革について、若干お伺いいたします。
 これは、小泉総理の、新時代に対応するあるべき税制を目指すとの号令によって始まったものですが、その方向性は、これまた、右往左往しているありさまです。最大の原因は、小泉総理のリーダーシップの欠如にあることは明白です。同時に、何のために税制改革を行うのかという基本的理念が不明確なことにも原因があります。
 そこで、財務大臣に伺います。
 税制に関しては、経済財政諮問会議と政府税制調査会がそれぞれ検討を行っておりますが、この二つの機関はどのように役割分担をしているのか。経済財政諮問会議においてはかなり具体的な問題を検討しているやに聞いておりますが、税制に関する責任者として、財務大臣はどのような整理をするつもりなのかをお伺いいたします。
 さらに、財務大臣は、G7で、減税先行を容認すると思われるような発言をなさいました。この点について、改めて財務大臣の御所見を伺うと同時に、先行実施される場合は、その実施時期や財源についてどのように考えているのか、お聞かせください。
 最後に、国際公約について伺います。
 大臣は、六月に減税を含め明確な戦略を示すと宣言されましたが、これは六月のサミットまでに考え方を示すということを意味しているのか、また、どんな中身を想定されているのか、さらに、それを取りまとめるのは、経済財政諮問会議なのか、政府税調なのか、これらの点をお伺いしまして、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)
    〔国務大臣塩川正十郎君登壇〕
国務大臣(塩川正十郎君) 私に対する質問は、全部で六点あったと思っております。
 まず最初にお尋ねがございましたことは、政府として本当に連結納税制度の導入を考えておるのかというお話でございます。
 確かに、昨年の暮れに、法人税法を一部改正して連結納税制度を導入したいと思ったのでございますけれども、何分法案の整理が、皆さんのお手元に行っておりますように、こんな分厚いものが行っておりますが、その整備にとても時間がかかって、慎重を期しておったということでございまして、その点につきましては、おくれましたことを心からおわびいたしたいと思いますが、何としても導入したいという一心から、一生懸命、連日連夜、これを詰めてまいりまして、やっと提出いたしましたので、ぜひ御採決いただくように心からお願い申し上げます。
 したがって、この制度を講ずることによって、国際的な企業競争力を高めるということもできますし、また経済界の、企業の再編成にも役立つと思っておりますので、その意味におきまして、この制度はぜひ必要であると信じ、提出した次第であります。
 二番目の問題といたしまして、連結付加税についてでございます。
 こんなことを何でつけたのかということでございまして、おっしゃるように、これは、ある意味においては連結納税制度のメリットを帳消しにするという、そういう心配をされる方もあります。
 しかしながら、連結納税導入に伴いまして税の減収が生じますので、それをある程度埋め合わすために、退職給与引当金の廃止等を行い、また、連結納税制度を選択する企業にも応分の負担を求めるという意味において付加税の措置を講じた次第でございまして、このような連結付加税の措置が講じられるといたしましても、連結納税制度のメリットを受ける企業も相当程度存在するため、導入する意義は大きいと考えております。
 また、財源措置につきましては、二年後において、制度の実施状況や財政状況等を踏まえまして、見直しを行うということにいたしておりますので、御理解をいただきたいと思います。
 三番目のお問い合わせでございますが、法案における試験研究費の取り扱いいかん、この取り扱いの企業の研究開発に対する影響はどうかというお尋ねでございます。
 この制度のもとでの試験研究費につきましては、増加試験研究費の特別税額控除についても、連結グループを一体として適用し、連結グループ全体の試験研究費が増加した場合に特別税額控除を認めることとしておりまして、企業の研究開発に特段の影響を与えることはないと考えております。
 四番目の問題でございますが、連結納税制度適用開始前に生じた子会社の欠損金についての控除のお問い合わせでございます。
 これは、一言で言いますと、連結納税にする前に、故意にとは申しませんけれども、ある程度、子会社に赤字を大きくつくっておいて、それを一緒にするということになったら、ちょっとぼろい話じゃないか、こう思います。
 したがいまして、制度適用前の所得は単体法人を納税単位として、制度適用後の所得は連結グループを納税単位として課税を行うことを原則としておりまして、制度適用前の欠損金については、親会社のものに限って控除することといたしております。
 また、子会社の制度適用前の欠損金額のすべてを控除するとするならば、欠損金のある会社の買収による租税回避の行為が行われることもございまして、これを避けるためにとった措置でもあるということを御了承いただきたいと存じます。
 第五番目のお問い合わせでございますが、税制について経済財政諮問会議と政府税制調査会がそれぞれ検討を行っておると聞いておるが、この二つの機関はどのような役割を分担しておるのかということでございます。
 マスコミ等によりますと、往々にいたしまして、この二つの会議がお互いに勢力分野を主張しておるような、そういうような報道をされておりますが、決してそういうことではございませんで、一体となって税制についての調査研究を進めていただいておることは申すまでもないと思っております。
 まず最初に、経済財政諮問会議におきましては、税に対する、あるいは税と経済政策との関係の整合性を考えていただくこととし、基本問題的な立場に立っての議論をいたしております。その内容といたしましては、受益と負担のあり方、国と地方の問題、あるいはまた特定財源のあり方、あるいは租税の簡素化の方法というような、大局的な議論を進めてもらっております。
 そして一方、政府税制調査会におきましては、所得税なり法人税、あるいは資産税、消費税、あるいは個々の地方税等の問題等につきまして、具体的な税目のあり方について検討を進めていただいておるところでございまして、政府税制調査会と経済財政諮問会議間におきます意思疎通は十分に行われており、それぞれの役割分担を踏まえて、今後、十分な審議をし、結論を出していただけるものと思っております。
 第六番目のお問い合わせでございますけれども、財務大臣は、G7で、六月に減税を含め明確な戦略を示すと言った、これは本当かということでございますが、まさに、そのように私は申し上げました。そして、先般のG7においては、経済と財政の構造改革を念頭に置きつつ減税等に取り組むこととして、その場合、集中的に議論を行い、六月中に考え方を取りまとめるという趣旨を申し上げました。
 ただし、この場合におきましても、財政の節度ということをやはり基本として考えておるということもつけ加えておるのでございまして、税制改正が経済の活性化に役立つ方向について一層の努力をすることも、あわせて表明した次第であります。
 したがって、六月をめどとした基本的な方針の取りまとめに向けて、現在、政府税制調査会並びに経済財政諮問会議におきまして鋭意議論を進めておるところであり、六月中にはその基本方針は決定するものと思っております。
 以上であります。(拍手)
    ―――――――――――――
議長(綿貫民輔君) 西村眞悟君。
    〔西村眞悟君登壇〕
西村眞悟君 自由党の西村眞悟でございます。
 私は、自由党を代表して、ただいま議題になりました法人税法等の一部を改正する法律案を中心として質問いたします。(拍手)
 まず第一に、五月八日の日本領事館事件について申しておかねばなりません。小泉総理は、本件事件に関して、中国における国際法違反と人権擁護の理念のもとに、遺憾の意を表明されましたけれども、中国人によると日本人によるとを問わず、我が国家の主権がないがしろにされたことの発言が小泉総理からなされていないことを遺憾に思うものでございます。
 このたびの事件をきっかけとして、改めて、中国は人権に関して極めて重大な問題を抱えている国家であることが明らかになりました。その中国が核ミサイル開発など軍備拡張路線にあることを考え合わせれば、我が国が自由と民主主義の理念のもとに法治国家である以上は、対中援助を見直すべきときだと考えます。ODA四原則がありながら、なおも対中援助を続けるのは、昨今深刻な疑惑を招いている、公金の不正支出になるのではありませんか。
 本法人税法改正においても、減税分の穴埋めについて非常な工夫を積み上げざるを得ない逼迫した財政を抱えている財政当局が、対中ODAについては、原則に反する支出を野放しにしているのは、極めて不合理でございます。このたびの事態を契機として、対中ODAを直ちに見直す決断が必要と考えますが、財務大臣の考えをお聞かせいただきたく存じます。
 さらに、北朝鮮に拉致された日本人を含む邦人は、我が領事館に逃げ込んできた五名の北朝鮮人以上に、自由を奪われております。しかるに、我が国に在留する北朝鮮人は、毎年約一万人以上、北朝鮮に行ってはまた我が国に戻ってきているのでありまして、彼らの持参する物と金も、北朝鮮独裁政権を支えているのでございます。つまり、北朝鮮独裁政権は、我が国が在日北朝鮮人に与えている自由を利用して、日本人の自由を奪う権力を維持しているのであります。五名の北朝鮮人が中国官憲に引き戻された事態を人権の名において中国に抗議するならば、政府はさらに北朝鮮により拉致された日本人の救出に取り組まねばならないのであります。
 よって、我が国は、北朝鮮政府が北朝鮮に抑留、滞在する日本人全員に自由を与えるまで、在日する北朝鮮人が祖国北朝鮮に帰るのは自由であるけれども再度日本に入国することは禁止するとの日本人救出策を、政治家としての法務大臣は考慮に入れるべきときと考えますが、法務大臣の見解をお聞きしたいと存じます。
 さて、現在、日本の現にある緊急事態は、武力攻撃事態ではなくて経済であると考えられます。一年間の自殺者三万人を超える事態の何年間にわたる連続は、現実の武力衝突を経験した日清・日露戦役の死者を超えており、これは明確な緊急事態であります。
 そこで、税の問題が経済にいかなる作用を与えるのか、また、与えてきたかについて、次の経験された事項について財務大臣の基本的認識をお聞きいたします。
 一、今から五年前の九兆円の増税路線への転換が、それまで三、四%に迫る成長を遂げてきた日本経済を一挙にマイナス成長に突き落とした大きな要因である。一、増税路線に転換しても、予想に反して税収はふえなかった。一、過去数年にわたって公共事業に巨額の金を投入したが、効果は目に見えてこなかった。
 私は、我が国は、もはや、公共事業に金を投入して経済を浮揚できるような、発展途上国型の経済ではないと認識しております。成熟経済の段階に達しております。この成熟経済とは、国内総生産の六割以上が国民の消費であり、経済の活性化とは消費の活性化にほかならない経済であります。したがって、官が民から多くの税を徴収して消費の規模を縮小させれば、デフレになって経済が低迷し、反対に、官の使う金を減らして民の使う金をふやせば、消費が活性化し、国民総生産は上昇するのであります。
 したがって、この数年間における我が国の実験を見ても、我が国の経済段階においては、官が使う金よりも民の使う金をふやすこと、つまり、減税路線が真の経世済民の方策であると考えられるのでございますが、財務大臣の考えをお知らせいただきたい。(拍手)
 我が国の経済段階においては、減税は消費を活性化させて将来の税収をふやし、増税は消費を冷え込ませて将来の税収を減らす、この公式は我が経済の現実に即したものと考えますが、財務大臣はいかに認識しておられるか、お聞かせいただきたい。
 自由党は、国民が自分の金は自分の責任で自由に使えねばならないとの原則のもとに、所得税、住民税は税率構造を簡素化して税率を引き下げ、各種の人的控除を原則廃止すること、また、勤労者の源泉徴収を廃止して、全国民が金額の多寡を問わず税金はみずから納めるという、民主主義国家における納税者の当然のあり方を回復しなければならないと考えております。さらに、産業や文化を活性化させるために、世界の頭脳が我が国に流入してくるように法人税率を世界で最も低い税率とすべきであると考えております。(拍手)
 財務大臣は、先月の先進七カ国財務相・中央銀行総裁会議後の記者会見において、財政の均衡を図りながら減税が先行することもあり得ると会議で説明したことを明らかにされました。また、オニール・アメリカ財務長官との会談においては、産業再生につながる税制改革を初めとする経済活性化策を六月中に取りまとめる方針を示されたと伺っております。
 産業活性化につながる税制改革とはどのようなものなのか、減税を柱とするものなのか、さらに、二十一世紀の国家社会を支える税制のあるべき姿をどのように考えているのか、その基本的考え方について財務大臣の見解をお伺いいたします。
 以上の基本的考えから、今回の改正の柱である連結納税制度導入を見るとき、奇怪な感を抱かざるを得ないのが連結付加税の導入であります。さきの先進七カ国財務相・中央銀行総裁会議における財務大臣の発言内容とは、整合性がありません。小泉内閣は内部分裂しているのではないかと思えるほどでございます。
 連結納税制導入の評価すべき点は、親会社と子会社、孫会社との損益を合算して課税を行うことで、企業の大胆な再編や新規投資を後押しすることにあります。しかしながら、連結付加税は、これらすべてのプラス面を一挙にマイナス面に押しやり、企業活動の活性化どころか、それに冷水を浴びせかけるものでございます。特に、グループ内に赤字のない優良企業グループは、赤字を抱えるグループよりも付加税分の税負担が重くなり、連結納税は導入できがたくなります。
 そのことを裏づけるように、連結納税を導入するという企業は、ある調査では百社のうち二割にとどまり、ある調査では九十三社中二社にとどまっているのでございます。つまり、これは産業活性化に逆行する税制と言わざるを得ません。(拍手)
 連結納税制のすべての利点をつぶしてしまう連結付加税とは、目先の税収確保以外のいかなる理由によって導入しようとされるものか、その導入理由を明確に御答弁いただきたい。また、G7で国際的に公表された産業活性化策と整合性があるのか否か、御答弁いただきたいと存じます。
 産業界あって初めて経済の活性化でございますが、その産業界は、連結付加税に強く反発し、連結納税制導入をちゅうちょしております。財務大臣は、先月、経団連会長との意見交換の後で、産業界の反発については理解を示し、付加税については法案成立後の見直しを示唆されたと報道されておりますが、この報道は事実でしょうか。事実ならば、法案成立後ではなくて、成立前の今、なぜ付加税を見直されないのか、その理由を明らかにしていただきたい。
 さらに、付加税は二年間の時限措置となっておりますが、これを短縮する意向はないのか、財務大臣の御答弁をいただきたいと存じます。
 また、連結納税導入による減税見込みの穴埋めとして、連結付加税のほか、退職給与引当金の廃止を初めとする法人税の一般的な課税ベースの見直しによる財源捻出が計画されておりますけれども、これは、法人一般については、連結納税を導入すると否とにかかわらず、原則的な増税であります。これは極めて場当たり的な態度でございまして、江戸時代のおかっぴきのような、こすいやり方でございます。法治の国ではなくて、人治の国のごときありさまであり、資本主義を支える信頼の原則、政治に対する信頼を揺るがせかねない政府の態度でございます。
 今回の課税ベースの見直しと連結納税導入との関連性について、財務大臣の御見解を伺いたいと存じます。
 最後に、税制については、政府税調や経済財政諮問会議から、さまざまな議論が、また態度があらわされており、これら錯綜した議論の中にあって、肝心の、小泉総理の税に対する理念なり決断なりリーダーシップなりが全く見えてこないのであります。リーダーシップが見えない、これこそ今ある閉塞感の元凶であることを指摘して、質問を終えます。(拍手)
    〔国務大臣塩川正十郎君登壇〕
国務大臣(塩川正十郎君) お尋ねのまず第一点に、五年前の九兆円の増税路線への転換が、それまでの三、四%に迫る成長を遂げていた日本経済を一挙にマイナス成長に突き落とした要因ではないか、私の認識を問うということでございます。
 増税路線への転換がマイナス成長の要因ではないかというお尋ねでございますけれども、我が国のその当時におきます医療保険制度の安定した運営のための給付と負担の見直し等を行い、我が国の将来にとって極めて重要な改革であったと考えておりますが、これらと並行して行われた措置でございまして、また、平成九年度以降における経済の低迷については、同年秋以降の金融機関の相次ぐ経営破綻やアジア地域におきます通貨、経済の危機などが実体経済に大きく影響を及ぼしたことに留意する必要があるとも思っております。
 その意味におきまして、この平成十年度以降におきますところの、五年前の九兆円の増税路線というものは、いろいろな悪要件が重なったものと同期的に行われたものでございまして、今、顧みまして、非常に困難な時期であったと思っております。
 次に、増税路線に転換しても、予想に反して税収はふえなかったのではないかという御質問でございます。
 確かに、平成十年に二度にわたって実施された所得税の特別減税や、平成十一年度より実施されておる所得税、法人税の恒久的減税等の大規模な減税を重ねてきたことは、大きい原因であると考えております。
 過去数年にわたって公共事業に巨額の金を投入してきたが、効き目は目に見えてこなかったがという質問でございます。
 確かに、過去におきます需要追加を目的とした公共事業の拡大は、短期的には経済の下支えをいたし、一定の効果があったことは事実でございますが、他方におきましては、生産性が低く、効率性の劣る分野を温存する結果となり、必ずしも持続的な経済成長につながらなかった面があると認識しております。
 政府といたしましては、このような認識のもと、公共投資の配分につきまして、整備水準も踏まえつつ、重点七項目への重点化を進めていこうとするところであります。
 次の問題といたしまして、減税についての御指摘でございます。
 民需主導の持続的な成長のためには、その一環といたしまして、あるべき税制の構築に向けて、現在、税制全般にわたる諸課題について検討を進めているところであります。
 また、消費活性化のための減税につきましては、平成十一年度における六兆円を相当程度上回る恒久的な減税の継続等、近年、累次にわたりますところの減税が行われてきておりまして、この結果、我が国の租税負担率はG7諸国の中で最低の水準となっていること等を考えれば、今後とも、慎重に取り扱うべき問題ではないかと思っております。
 税制全般についてのお尋ねがございました。
 二十一世紀においては、税制は個人や企業の経済活動における自由な選択を妨げない中立的な税制が基本であり、ひいては、これが産業の活力を高めることにつながるものであると考えております。また、経済活性化のためには、先導的産業の育成が必要でございまして、これに対しましてはさまざまな政策手段を集中していくべきものであり、また税制も、この点に重点を志向すべきものであると思っております。
 連結付加税についてのお尋ねがございました。
 まず、その導入理由は何かということでございますが、連結納税制度の導入に伴いまして生じる税の減収については、厳しい財政状況を踏まえまして、法人税の枠組みの中で補てんすることとし、退職給与引当金の廃止等を行うこととするほか、連結納税制度を選択する企業にも相応の負担を求めるという観点から、連結付加税等の措置を講ずることといたしたのであります。
 このように、連結付加税は連結納税制度と一体のものとして措置されるものであります。連結納税制度は、我が国経済の構造改革に資するものであり、ひいては、我が国の経済産業の活性につながるものと考えております。
 また、経団連の方との意見の交換の際には、連結納税制度について、連結納税法案の今国会中の成立が重要であり、付加税については、制度の実施状況を踏まえて、そのあり方をどうするか考えたい旨を申したのでございまして、付加税について、それ以上のことを申しておるものではございません。
 連結付加税は、厳しい財政状況を踏まえまして、二年間の措置としておるものでありまして、二年後におきまして、制度の実施状況やその当時の財政状況等を踏まえまして、そのあり方を見直すことといたしておりまして、したがって、法案成立前の見直しは考えておりません。
 さらに、連結納税制度の導入に当たり課税ベースの見直しを行った理由は何かということでございます。
 現下の厳しい財政状況においては、連結納税制度の導入により生じる税収減に対しまして財政措置を講ずることが必要であり、連結付加税等の措置に加えまして、法人税の枠組みの中での増収措置といたしまして、退職給与引当金の廃止等の課税ベースの見直しを行うこととしたものであります。この見直しは、法人税率の引き下げのみを実施した平成十一年度改正以後、残されていた課題に対応するものであります。
 なお、二十一世紀のあるべき税制の姿についてどういう考えかということでございますが、これは、目下、政府におきますところの税制調査会あるいはまた政府の経済財政諮問会議等におきまして、六月中に結論を出すべく、鋭意勉強し、努力しておるところでございまして、もうしばらくの間、お待ちいただきたいと存じます。(拍手)
    〔国務大臣森山眞弓君登壇〕
国務大臣(森山眞弓君) 西村議員にお答え申し上げます。
 北朝鮮に滞在する日本人全員に自由が与えられるまで、在日朝鮮人の再入国を禁止すべきではないかとのお尋ねがございました。
 特別永住者である在日朝鮮人に対する再入国許可につきましては、その歴史的経緯及び我が国における定住性等にかんがみ、いわゆる入管特例法により、それらの者の我が国における生活の安定に資するよう配慮した上で行うこととされておりますので、一律に再入国許可を認めないということは困難であると考えます。(拍手)
議長(綿貫民輔君) 財務大臣から答弁を補足したいとのことであります。これを許します。財務大臣塩川正十郎君。
    〔国務大臣塩川正十郎君登壇〕
国務大臣(塩川正十郎君) 大変失礼いたしました。
 冒頭に、今回の瀋陽日本領事館事件を契機に、ODA四原則にのっとり、対中ODAを見直すべきであると考えるが、財務大臣の見解はいかがかというお問い合わせが実はございました。
 ODAの実施に当たりましては、ODA大綱の四原則において、基本的人権及び自由の保障状況等に十分注意を払うよう、うたわれております。
 今回の瀋陽日本総領事館事件につきましては、国際法上及び人道上の観点から、毅然として対処しつつ、早期解決に向けて全力を尽くす方針と認識しております。今後の対中ODAの実施につきましても、このたびの事件の推移やODA大綱を踏まえつつ、二国間関係等も総合的に勘案しながら検討していくものと考えております。
 以上であります。(拍手)
議長(綿貫民輔君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
議長(綿貫民輔君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後一時四十七分散会


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