衆議院

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第6号 平成13年3月21日(水曜日)

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平成十三年三月二十一日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 横路 孝弘君

   理事 植竹 繁雄君 理事 小野 晋也君

   理事 阪上 善秀君 理事 横内 正明君

   理事 島   聡君 理事 中沢 健次君

   理事 河合 正智君 理事 塩田  晋君

      岩崎 忠夫君    上川 陽子君

      亀井 久興君    川崎 二郎君

      古賀 正浩君    谷川 和穗君

      近岡理一郎君    中本 太衛君

      西川 公也君    根本  匠君

      平沢 勝栄君    三ッ林隆志君

      渡辺 具能君    井上 和雄君

      石毛えい子君    大畠 章宏君

      細川 律夫君    山花 郁夫君

      山元  勉君    太田 昭宏君

      松本 善明君    北川れん子君

    …………………………………

   議員           細川 律夫君

   議員           平岡 秀夫君

   議員           佐々木秀典君

   議員           植田 至紀君

   議員           保坂 展人君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     福田 康夫君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長) 伊吹 文明君

   内閣官房副長官      安倍 晋三君

   内閣府大臣政務官     西川 公也君

   内閣府大臣政務官     渡辺 具能君

   政府参考人

   (警察庁長官)      田中 節夫君

   政府参考人

   (警察庁長官官房長)   石川 重明君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    古田 佑紀君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    鶴田 六郎君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局国

   際社会協力部審議官)   天野 万利君

   内閣委員会専門員     新倉 紀一君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十一日

 辞任         補欠選任

  小西  哲君     中本 太衛君

  根本  匠君     上川 陽子君

同日

 辞任         補欠選任

  上川 陽子君     根本  匠君

  中本 太衛君     小西  哲君

    ―――――――――――――

三月十九日

 宮内庁法の一部を改正する法律案(内閣提出第四九号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 犯罪被害者等給付金支給法の一部を改正する法律案(内閣提出第一四号)

 犯罪被害者基本法案(細川律夫君外四名提出、衆法第六号)

 宮内庁法の一部を改正する法律案(内閣提出第四九号)




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     ――――◇―――――

横路委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、犯罪被害者等給付金支給法の一部を改正する法律案及び細川律夫君外四名提出、犯罪被害者基本法案の両案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として警察庁長官田中節夫君、警察庁長官官房長石川重明君、法務省刑事局長古田佑紀君、法務省矯正局長鶴田六郎君及び外務省大臣官房審議官天野万利君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

横路委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

横路委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山花郁夫君。

山花委員 民主党の山花郁夫でございます。

 質問に先立ちまして、冒頭、六年前、昨日に当たりますけれども、地下鉄のサリン事件で亡くなった方々の御冥福をお祈りいたしますとともに、現在もなおその被害で苦しんでおられる方がいらっしゃいます。心からお見舞いを申し上げる次第でございます。

 私ごとで恐縮でございますが、そのころ、私もこの近くの赤坂のアークヒルズというところに勤務いたしておりまして、私の妻は、国会議事堂の駅まで丸の内線に乗ってきまして、赤坂の駅まで通勤をしていたわけでありますけれども、ちょうどその電車に乗り合わせておりました。国会議事堂の駅から赤坂方面へ、千代田線に乗りかえようとしますと、御利用された方はわかると思うのですけれども、ちょうど進行方向に向かって一番後ろの車両になります。当時、電車がなかなか来ないので待っていたのですが、一回その電車に乗りました。そういたしますと、どうも様子がおかしくて、何か先頭の方の車両で薬品がまかれたようであるという車内のアナウンスがあっておろされた、その後のやってきた電車に乗って会社に到達したわけであります。たまたま被害には遭わなかったのでありますが、昨日もニュースを見ておりまして、恐ろしいねなどということを話をしておりました。

 そこで、石川官房長、質疑通告をいたしておりませんので、わかる範囲で結構でございますのでお答え願いたいと思います。

 昨年まで内閣総理大臣あるいは官房長官が関係する駅のところに花束を持っていかれていたようでありますが、ことしは行かれなかったということが昨日のニュースで報じられておりまして、私もそれで知ったのですが、ことし行かれなかったことについて何か理由があるのでしょうか。あるいは、もう六年たってしまったので行かないということに決まったのでしょうか。わかる範囲でお答え願えればと存じます。

石川政府参考人 私ども、その詳細について承知をいたしておりません。

山花委員 通告をいたしておりませんでしたのでいたし方ないのでありますが、現在、こういった犯罪被害者給付金の支給法を改正しているときでありまして、また犯罪被害者基本法案をこうやってこの委員会で審議しているときでしたので、大変残念に思っております。

 それでは、質問に移らせていただきたいと思います。

 九〇年代に入ってからのことだと認識いたしておりますけれども、犯罪被害者の法的地位のような議論というものがされるようになりました。私、大学の法学部を八九年に卒業いたしておりまして、提出者である植田先生と同じ大学で同じころ在籍しておりましたけれども、そのころ学部でも、刑事法、刑事訴訟法の領域でも、犯罪被害者の地位に着目した議論というのはたしかなされていなかったように思います。ですから、比較的最近の議論だと思うわけでありますが、そうした中でも少しずつ、その法的地位に対する法的整備というものがなされてきたように思われます。

 昨年の通常国会において、刑事訴訟法及び検察審査会法の一部を改正する法律であるとか、犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律というものが成立しております。また、臨時国会においても少年法の一部改正ということがございまして、その内容については、部分的には私個人としては疑問に思うところもないわけではありませんけれども、被害者に対する法的地位の保障という点では強まってきたように思われます。

 さて、その刑事訴訟法の改正であるとかあるいは刑事手続に付随する措置に関する法律の際に、これは自由民主党、民主党、公明党・改革クラブ、日本共産党、保守党、自由党、社会民主党・市民連合の共同提案ということで、衆議院の法務委員会において附帯決議というものが付されております。そこに、

  政府は、犯罪被害者等が、個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障されるべき存在であることにかんがみ、関係省庁の密接な連携及び民間支援組織との協力の下に、犯罪被害者等が受けた被害の回復及び社会復帰を支援するため、犯罪被害給付制度の拡充、民間の被害者支援組織等への援助、犯罪被害者等に対する相談・カウンセリング体制の整備等の精神的支援、経済的支援などを含めた総合的な犯罪被害者対策の推進に努めること。

という第四項がついております。今回、政府提出の犯罪被害者等給付金支給法の一部を改正する法律案も、この附帯決議の趣旨を受けたものと理解いたしております。

 そこで、衆法の提出者の方にお伺いしたいと思います。

 今回の犯給法の改正などで伊吹大臣などからも御答弁がございまして、今は個別法の積み上げによっていくべきだというようなお話があったわけでありますけれども、この犯罪被害者基本法によりますと、こうした個別法の積み上げという方法ではなくて、いわゆる基本法というものをつくるという方向を志向されているようでありますけれども、どうしてこのような基本法が必要だとお考えになって提出をされたのでしょうか。また、こうした基本法が提出された場合、現在提案されている犯罪被害者等給付金支給法などのような個別法との関係はどのような位置づけになるのでしょうか。御答弁いただきたいと思います。

細川議員 お答えをいたします。

 先ほど山花委員からお話がありましたように、サリン事件から丸六年たちましたけれども、あのサリン事件での被害者が後遺症でまだまだ苦しんでおられるというようなことは新聞、マスコミ等で報道されたとおりでありまして、犯罪被害者の置かれております状況というのは大変悲惨でございます。そういう点につきましては、この委員会の委員の皆さんも共通の認識であろうというふうに思います。

 今委員からは、個別法がいろいろ積み上げをされてきているというふうにお話がございました。確かに、警察庁では相談支援団体と連携をいたしましてさまざまな事業にも着手をされておりますし、今度のこの犯給法におきましてもいろいろと御努力をいただいております。また、昨年、犯罪被害者保護法案、二つの法律が成立をいたしまして、法務省の方でもいろいろな、また積極的な被害者保護に向けての努力もされておられる。そういうことについては私も評価するわけでありますけれども、しかし、残念ながら、被害者の方々あるいはまた遺族の方々が望んでいるところからはほど遠い状況だというふうに言わざるを得ないと思います。

 そこで、私たちは、基本法を制定しなければいけないというふうに思いまして、本法案を提案したところでございますけれども、それでは、どういうようなことで基本法を考えたかということを三点申し上げたいと思います。

 まず一つは、犯罪被害者の権利の根拠、これを明らかにするということと、それから被害者対策、この基本的な理念を明確にしたい、こういうことでございます。

 私たちは、憲法十三条の個人の尊厳あるいは二十五条の生存権、これらの保障の規定に基づきまして、国と地方公共団体が、犯罪被害者等が受けた犯罪の被害の回復そして社会復帰、これを支援する義務がある、責務があるということを明らかにするために規定をいたしましたのがこの法案の第二条でございます。

 この二条には、「犯罪被害者等は、個人の尊厳が重んぜられ、被害の状況等に応じた適切な処遇を保障される権利を有するものとする。」こういうふうに規定をいたしました。そして第二項では、「何人も、犯罪被害者等の名誉及び生活の平穏を害してはならない」ということで、プライバシーの尊重を規定したところでございます。

 二点目といたしましては、犯罪被害者の支援の施策を行う場合に、しょせん継ぎはぎだらけではだめだということでございまして、計画的、総合的にやらなければいけないという点でございます。

 省庁の縦割り行政には限界があると言わざるを得ないと思います。そういう意味で、この法案に基づきまして犯罪被害者の支援の基本計画というものを立てまして、経済的な側面とかあるいは精神的な側面、あるいはまた刑事司法の側面とか、いずれを見ても統一的、総合的なものをつくる必要があるというのが二つ目の理由でございます。

 三つ目としましては、国際的な要請というものがございます。

 委員も御承知のように、一九八五年には国連の方で犯罪被害者人権宣言というものが採択をされました。それに基づいて欧米の各国では犯罪被害者の権利が確立をされまして、法整備も順調に進んでおります。そういうことで、我が国といたしましても、きちんと国際的な情勢に対応するように、他の先進国にも劣らないようにきちんとした犯罪被害者の基本法をつくって、そして悲惨な状況に置かれております被害者、遺族の人たちのためにきちんとした施策をしていかなければいけないというふうに考えた次第でございます。

 以上が、基本法をつくろうということで、三点ばかり理由を申し上げました。

 したがって、今回、この委員会に付託をされて審議をしております犯給法につきましては、基本法との関係でいえば、基本法と基本法に基づいた施策を行うその個別法というように認識をしていただければよろしいかと思います。

山花委員 今の御答弁でありますけれども、対症療法というと言葉が悪いかもしれませんけれども、そういった対症療法的な形で対処するのではなくて、基本法というものを制定することによって、いわばしっかりとした一つの思想であるとか指針というものを持った上で国とか自治体また関係諸団体というものが進んでいくことが必要である、そういった趣旨であると承りました。

 ところで、十六日、金曜日でありますけれども、本委員会におきまして、犯給法に関連いたしまして伊吹大臣に私、質問をいたしました。中身として、過失犯による被害者は原則として給付金を受け取れないということになっているのでありますけれども、その点について問題はないかということで所見を伺ったわけであります。

 その後だったからかもしれませんけれども、質問時間の終わりのあたりに、私、犯罪被害者基本法についての所見、いかがでしょうかということを伺いました。そういたしましたところ、もし過失犯についても広く国の代位責任というものを認めるような趣旨であるとすると、これは賛成できないというような趣旨の御答弁があったわけであります。

 今手元に、未定稿ですので多少後で変更があるところもあるかもしれませんけれども、一応それを読み上げますと、これが御答弁のところです。

 一つは、もし御提案の犯罪被害者基本法の一番底に流れる社会システムを考える理念が、加害者にかわって国家が代位弁済をするという観点であるならば、私たちはこれに同意することはできません。しかし、結果的に、非常にお困りの方、被害者の方と加害者との関係において、お互い共同社会を営んでいく者としてそれを助け合っていく、そして個々のいろいろな、今回の法律もそうですが、生活保護費であるとか、あるいは医療に対する補助であるとか、子供たちの教育の問題とか、そういうものを総合的に考えるような法律に将来つくり上げていこうというのであれば、私は大変それはいいなと。しかし、一番最初に理念が違うのなら反対だとは申し上げておりますけれども、民主党あるいは社民党という党の理念としては御立派な案だと私は評価しているということですという答弁がございました。

 私、そのときちょっと気にはなったのですけれども、そのときは閣法に対する質問ということでしたので、衆法提出者には質問させていただくというわけにはいかなかったんです。

 今、細川委員より御答弁ございましたけれども、あくまでも犯罪被害者基本法というのは基本法であって、犯給法はそれの個別の法であるということであれば、仮に犯給法の方で過失犯を給付の対象とする、あるいはしないという議論があったとしても、そのこととは別の次元の問題ではないか。つまり、この犯罪被害者基本法というものは、個別法においてさらに個別の、過失を含むとか含まないとか、そういった議論とはいわば中立的な法制ではないかと私は考えているのでありますけれども、その点いかがお考えでしょうか。

細川議員 大変基本的な質問になろうかと思います。

 私もせんだっての委員会で伊吹大臣と議論をしたところなんですけれども、犯給法での給付金の性格をどういうふうにとらえるのか、こういうことでございます。基本的にはそこだと思いますが、これは、これまでずっと政府の方ではいわば見舞金だ、こういうふうにしてきたわけです。今回、医療費の請求もできる、こういうことになってまいりましたから、そう考えますと、いわゆる見舞金ではなくて損害賠償の一部を国が負担するのではないか、こういうようなことで質問をさせていただきました。

 したがって、国の方でも、これは正確には損害賠償の一部を補てんする見舞金的な言い方をしているようですけれども、私はずばり損害賠償の一部を補てんする性格のものなんだという考えでいいと思います。

 なお、過失犯の問題が出ましたけれども、それは対象をどういうふうにするか、こういうことだろうと思います。その点につきましては、私どもは、基本法に規定をしておりますように審議会を設置して、その審議会でいろいろなこと、基本的な計画などについて議論をしていただくということになっておりますから、その中で個別法としての犯給法についての性格づけなんかもしていただくというようなことにもなろうかと思います。審議会でいろいろその点も議論していただければいいと思っています。

山花委員 要するに、審議会でその内容について個別に決めていくということであって、過失犯についてまで代位責任を認めるということは反対だという人も、この犯罪被害者基本法ということについては、審議会でそういう議論も、私は賛成はいたしませんけれども、なされる余地はあるわけですので、そうだとすると、伊吹大臣の御答弁の条件つきの部分はとれて、大変立派な案であるというふうな御評価をいただいたと考えてよろしいかと思います。

 さて、今細川委員からも御答弁ございましたけれども、国連被害者人権宣言について法務省にお伺いをいたします。

 一九八五年の第七回の国連犯罪防止会議において採択されて、第九十六回の国連総会において採択されたものであります。一般には、国連被害者人権宣言あるいは犯罪及びパワー濫用の被害者のための司法の基本原則宣言というふうに呼ばれているものであります。

 この宣言に含まれる規定というものを実効あらしめるために必要な措置をとるように、加盟国に要請をしているところでありますけれども、ところで、この決議の採択に当たって日本の政府は、この決議を非常に重要な決議の一つと評価いたしまして、各国の意見の一致に向けて努力を払ったというふうに伺っております。これは第百四十七国会ですから、さきの通常国会ということになろうかと思います。平成十二年の四月十四日、臼井法務大臣からそういった答弁がなされております。

 正確に申し上げますと、

  同国連犯罪防止会議におきましては、三十二に上る多数の決議が採択されたわけでございますが、

ここからであります。

 我が国は、同宣言の決議を重要な決議の一つと評価いたしまして、各国の意見の一致に向けて努力を払ったものと承知をいたしております。同国連犯罪防止会議におきまして、我が国を含む各国が意見の一致に向けて努力を払った結果、我が国を含む参加国の全会一致で採択されたものと承知をいたしております。

と答弁されているわけでありますけれども、これは間違いないことと考えてよろしいのでしょうか。

 つまり、消極的に、よその国から言われたから仕方なく賛成したということではなくて、我が国もこのように各国の意見の一致に向けて努力を払ったということで、積極的にアプローチをしたという認識でよろしいのでしょうか。確認いたしたいと思います。

古田政府参考人 ただいまのお尋ねにつきましては、我が国におきましては、昔から実務的な慣行等で種々被害者に対して配慮を払ってきていたわけです。この国連宣言が国連で議論されるに当たりまして、当時の世界各国におきます犯罪被害者の実情やそういうことを踏まえまして、やはり犯罪被害者に対してきちっとしたいろいろな保護が与えられるべきである、こういう考え方につきましては日本ももちろん賛成でございました。

 ただ、その決議につきましては、御存じのとおり、世界各国いろいろな国があるわけでございまして、そういうことでなかなか意見の一致が見られないようなところも現実問題としてはあったわけです。そういう点につきまして、日本政府としても各国が受け入れられるようなものになりますよう意見の調整に最大限の努力を払った、そういうことでございます。

山花委員 この宣言の内容は、被害者の権利といたしまして、大きく分けますと、知る権利、あるいは司法制度に参加する権利、そして被害から回復する権利ということで、三つのことを大きな内容として規定いたしております。

 この宣言を受けて法務省は今までどういった施策を講じてこられたのか、また今後講じるつもりであるのかということについて、法務省にお答え願いたいと思います。

古田政府参考人 先ほども申し上げましたとおり、我が国の刑事手続はほかの国の手続に比べましてかなりいわばフレキシブルに対応ができるという特徴を持っておりまして、そういう意味で、実務上、いろいろな被害者に対する配慮、これは慣行上行われてきていたわけでございます。

 しかしながら、それだけではやはり足りないところがあるであろう、そういうことから、先ほど委員も御指摘がありましたけれども、昨年、刑事訴訟法等の一部改正あるいは犯罪被害者の保護のための刑事手続に付随する措置に関する法律等の御制定をいただいて、被害者の立場の方の刑事手続などにおける地位を明確化するとともに、その中で今まである程度慣行的に行われてきたことについても法律上明文化する、あるいは、証人尋問の方式等で、その保護を十分にするための法律でないと非常にやりにくいような問題についてこれを制定していただく、そういうふうなことをお願いしたわけです。

 そのほかにも、運用上の問題といたしましては、被害者の方々の御要望を伺って、つい最近では、刑務所からの出所情報の一定範囲の提供、それから被害者のプライバシーに非常にかかわるような証拠物の廃棄についての御希望がある場合の立ち会い、その他個々にさまざまな措置を講じてきたわけです。

 そのほかにも、昨年も申し上げたところでありますけれども、犯罪被害者支援員制度の整備あるいは犯罪被害者の方に対する情報提供のシステムなどを整備してきたわけでございます。

山花委員 それでは、内閣官房副長官にお伺いをいたします。

 今お尋ね申し上げております国連犯罪被害者人権宣言でありますけれども、この十四項から十七項にかけて、例えば十四項、「被害者は、政府・ボランティア・コミュニティに基礎をおく機関、および地域固有の機関などから、物質的、医療的、精神的、社会的に必要な援助を受けることができる。」であるとか、あるいは十五項、「被害者には、医療サービスや社会福祉サービス、その他の関連援助について知らせ、すぐに利用できるようにしておかなければならない。」であるとか、あるいは十六項、「警察、司法、健康、社会サービス、その他の関係担当者は、被害者のニーズに適切に対応し、適切な援助を迅速に行なうためのガイドラインについて、トレーニングを受けなければならない。」といったようなことが規定されているわけであります。

 これは、中身に照らしてみますと、例えば総務省であるとかあるいは厚生労働省などが連携して取り組まなければならないようなことがこの内容となっているわけでありますけれども、本年の一月六日から省庁再編が行われまして、内閣官房の機能の強化ということが言われております。こういった各省庁間の取り組みに対しまして、内閣官房というところは積極的な取り組み、役割を果たすことが可能になったのではないかと考えられるわけでありますけれども、どのような取り組みをなされているのか、またなされる予定なのでしょうか。お願いいたします。

安倍内閣官房副長官 犯罪被害者に関する問題につきましては、今委員が御指摘されましたように、広範かつ多岐にわたるわけでありまして、特に関係する省庁も幾つかの省庁にまたがるということでございますので、まず省庁間の連絡を密にする。そしてまた、その観点から、政府としても必要な対応を検討するために、一昨年の十一月に古川官房副長官を議長に関係省庁の局長級を構成員といたしまして、内閣に犯罪被害者対策関係省庁連絡会議を設置いたしまして、検討を進めてきたわけでございます。

 現在までのところ、この連絡会議のもとに置かれました幹事会におきまして、実際に犯罪の被害に遭った被害者の方々やまた有識者の皆様から意見を聴取するなど、具体的な検討を行ってまいりました。その結果を踏まえまして、昨年の三月に、この連絡会議におきまして、各省庁が実施する当面の犯罪被害者対策に関する報告書の取りまとめを行ったわけでございます。

 そして、ただいま委員が御指摘されましたように、本年に省庁再編が行われたわけでございまして、この省庁再編に対応いたしまして二月から新しいメンバーの幹事会を開催いたしまして、各省庁から犯罪被害者対策の進捗状況についての報告を求め、また報告書の内容のフォローアップを行っているところでございます。現在、各省庁において関連施策を鋭意推進していることを確認いたしておるところでございます。

 もちろん、この省庁再編におきまして官邸においての一層のリーダーシップの発揮が求められておりますので、副長官を中心に、さらに諸施策が実りあるものになるように努力をしていきたい、こう考えているわけでございます。

 今後とも、同連絡会議の場を中心に、関係省庁相互の連絡を緊密にしながら積極的に犯罪被害者対策を推進していきたい、このように考えております。

山花委員 リーダーシップの発揮ということに対しては、ぜひ御努力のほどをよろしくお願い申し上げたいと思います。

 さて、警察庁にお伺いしたいと思いますけれども、一九九〇年、第八回の国連犯罪防止会議というものがございました。ここでも、各国の政府に被害者保護のための法整備を促進することを促す決議というものをいたしております。九三年、スペインのオニャティにおけるワークショップでは、それを実施するためのマニュアルとかガイドづくりを行うということが決議されまして、被害者問題専門家会議というものが組織されております。そして、九五年から九八年にかけてハンドブックづくり及びガイドブックづくりというものが行われまして、今手元にもいただいておりますけれども、こういったものがつくられております。

 このハンドブックの「発刊にあたって」というところを拝見いたしますと、欧米諸国と比べて二十年おくれていると言われる日本の被害者対策も急速に発展しつつあるが、これは一時期の一部の者のみによる取り組みではなく、国際的な潮流の中の一環をなすものであり、今後、社会に根づき、より発展していくべきものと考える、そして本ハンドブックが、警察のみならず関係機関、民間被害者援助団体等でも活用され、我が国における被害者支援の発展に大きく寄与するものとなることを期待していると書いてございます。

 ところで、このハンドブック、余り見なれないような気がするのですけれども、果たしてこれは本当に活用されているのでしょうか。中身の問題ではなくて、まさかとは思いますが、つくっただけでどこかに積み上げられているなんということはないのでしょうか。ちょっと確認をしたいと思います。

石川政府参考人 今お尋ねの「被害者のための司法のハンドブック」というものでございますけれども、これは、委員が今御指摘になりましたように、一九八五年の国連総会で採択をされました犯罪及びパワー濫用の被害者のための司法の基本原則宣言というものを受けまして、これを各国が導入していく、その指針のような形で、一九九八年の国連専門家会議におきましてマニュアルとして作成をされたというものでございまして、国連犯罪防止刑事司法委員会にその年に提出をされたというものでございます。

 警察庁におきましては、このハンドブックは、そこの導入部に書いてございますように、今後の被害者援助のあり方を検討する上で大変貴重なものであるというふうに考えまして、これを翻訳をして冊子にまとめたわけでございます。そして、作成した冊子につきましては、各都道府県警察に配付をいたしまして、被害者援助に関する警察学校における教育あるいは職場における教育、こういうものに際して、担当者からその宣言の内容について周知をするということを行ってまいりました。また、警察庁からいろいろなシンポジウムとか講演という形でこの問題について啓発の場に出る場合があるわけでございますが、そういう場合においても、このハンドブックに書かれた内容といったものを紹介しながら対応してきているということでございます。

 また、これは警察のみならず、先ほど官房副長官から御答弁がございましたが、被害者の問題に関する関係省庁連絡会議のメンバーでございます行政機関あるいは民間被害者援助団体等に配付をさせていただきました。広くその活用が図られるように期待をしてきておるということでございます。

 どのぐらい配ったかということなのでございますが、当時約一千部ほどこれを印刷いたしまして、先ほど申しましたような警察のそれぞれの機関あるいは関係団体あるいは民間の被害者援助団体に配付をして活用していただいている、こういう状況でございます。

山花委員 千部程度ということですので、やや少ないのではないかなという気がいたしたところであります。その点はこれぐらいにいたします。

 衆法の提出者の方にお伺いいたしたいと思うのでありますけれども、これは九八年四月という日付になっていますが、このように九五年からこういったガイドブックづくりなどが行われたりなどしているわけでありまして、八五年の国連被害者人権宣言というものを受けて、より詳細な基準ということが国際的にも認められつつある状況にあるわけであります。

 ところで、欧米などでは、犯罪被害者の権利について、被害者憲章であるとか犯罪被害者権利法であるとか、名称はさまざまでありますけれども、いわゆる基本法のようなものを制定するというのが一般的な動向のように存じますが、この犯罪被害者の権利にかかわる各国の動向についてどのようになっているのか、お答え願いたいと思います。

細川議員 お答えいたします。

 現在、被害者の権利につきまして、憲法上あるいは法律上の根拠を持つ国というのは大変ふえておりまして、例えばアメリカの多くの州あるいはドイツでは、憲法そのものに国家の保護義務が規定をされております。またアメリカでは、九八年までに、すべての州で被害者権利章典が制定をされまして、二十九の州では憲法上の規定が与えられております。

 それからイギリスでは、一九九〇年に政府が被害者憲章、そして九六年には新被害者憲章を発表いたしております。この憲章は、刑事司法機関や犯罪被害者援助機構等の実務規範となって、事実上の規範力、拘束力を持っております。イギリスでは、犯罪被害者補償制度、これが大変充実をしておりまして、そのことでも有名でございます。

 オランダでは、一九九五年に、被害者援助法などによりまして刑事手続や支援組織との連携を深めて、被害者に対してはさまざまな救済のプログラムを実施いたしております。

 このように、規定の仕方は異なりますけれども、欧米のいわゆる先進国のほとんどが、基本的な権利を規定いたしております憲法とかあるいは章典、法律が存在をするというふうに言ってもいいものと思います。そういう意味では日本は大変おくれているというふうに言っても過言ではないと思います。

山花委員 欧米諸国のみならず、九八年には台湾において、また韓国でもそうですし、アジアでも多くの国において基本法のようなものを制定するというのが一般的な動向になっているわけであります。

 そこで、法務省あるいは警察庁、いずれの方でも結構なんですけれども、このような世界的な動向からすると基本法を制定するというのが一般的な動向になっている、それにもかかわらず今まで個別法を積み上げるという方策をとってきたのでありますけれども、このような方策をとるということについて、何か合理的な理由はあるのでしょうか。

石川政府参考人 先ほど来委員からも御指摘がございますように、この犯罪被害者にかかわる問題というのはいろいろな関係機関がございます。また、いろいろな施策が総合的に講じられるということが最も望ましいことであるわけでございます。

 警察庁といたしましては、この問題につきまして、まずもって個々具体的な施策を積み上げる必要があるということで、現在御審議をいただいております犯罪被害給付制度の拡充とか、あるいは警察が行うべき援助の措置あるいは民間援助団体の活動の促進といったようなことについて、法制度の面で制度を確立したいということで考えておるところでございます。

 基本法の制定につきましては、先ほど申しましたようなことでございますので、警察庁のみならず政府全体として、さらには国会における幅広い御議論がなされるべきものだというふうに考えているところでございます。

山花委員 幅広く議論が必要ということでありますけれども、衆法の提出者にお伺いいたしますけれども、犯罪被害者基本法によりますと、犯罪被害者支援対策審議会というものを内閣府に設置するとしているわけであります。恐らく、いろいろな議論をするにはそれが適切だという趣旨のように思うのでありますけれども、そういった理解でよろしいのでしょうか。

細川議員 犯罪被害者の支援のための施策を総合的に検討するためには、個別省庁を前提とした縦割り組織による協議的なものでは限界があるというふうに考えております。

 今回、省庁再編によりまして内閣府というものにより強い総合的機能を持たせるというようなことでつくられましたので、特にこういう犯罪被害者、いろいろな関係各省にわたりますので、ぜひそういう意味では、内閣府に審議会を置きまして、そこで統一的あるいは計画的な、総合的な被害者対策を検討していただく、こういうことで考えたのが私どものこの法案でございます。

山花委員 総合的な対策を検討というお話でありましたけれども、刑事手続については、昨年いわゆる閣法の被害者二法によって、また、先ほどもお話ございましたけれども、少年法などによって一定の前進を見たと考えることができますけれども、そのほかにどのような施策が必要だと考えておられるのでしょうか。衆法の提出者にお伺いいたします。

平岡議員 お答えいたします。

 少年事件被害者の少年事件手続への関与の整備あるいは刑事訴訟法における被害者の地位の明確化、通知制度等情報開示の体系的整備など、まだ議論すべき点は非常に多いというふうに考えております。

 起訴から判決確定までにつきましては、昨年の刑事訴訟法の改正なりあるいはいわゆる犯罪被害者保護法の制定によりましてかなりの改善が見られましたけれども、被疑者の逮捕から起訴、不起訴処分までにはまだいろいろな手続上の問題があろうかと思っております。

 特に具体的な内容としては、不起訴の通知とその詳細な理由の説明、あるいは検察審査会への拘束力の付与。この問題については現在も司法制度改革審議会におきまして議論が進められておりまして、一定の拘束力を付与する方向で検討が進められているというふうに聞いておりますけれども、こうした問題、あるいは不起訴記録の当事者閲覧権の拡充といったような問題については、被害者、遺族の方々も多く望んでいるというふうに聞いております。

 それから、将来的な問題だろうと思っておりますけれども、いわゆる附帯私訴の導入という問題もございます。民事、刑事というものを同時に取り扱うという制度は現在でも外国にありますけれども、我が国において導入する場合には相当な制度変更が必要となってまいりますけれども、被害者からの要望も強うございますし、あるいは被害者の置かれている状況を考えてきますと、その実現は前向きに検討していかなければならないというふうに思っています。

 こういう問題について、この法案では、第六条において政府において法制上の措置を講ずる義務、あるいは第十八条において犯罪被害者等支援対策審議会を設置してこうした基本的な問題についても検討をするというような位置づけがありまして、ぜひ、この法案が成立することによって前向きに積極的に取り組んでいかれることを希望しておるところでございます。

山花委員 それでは、時間も押してまいりました。最後になりますけれども、これは基本法ということで、今までの個別法にはないような文言が出てまいります。例えば第一条と第二条でありますけれども、個人の尊厳にふさわしい処遇を保障される権利であるとか、あるいは犯罪被害者等の名誉及び生活の平穏を害してはならないというような文言も出てくるわけでありますけれども、これは具体的にはどのような内容なのでしょうか。衆法の提出者の方にお伺いいたします。

細川議員 憲法の十三条におきましても、すべての国民は個人として尊重されるというふうに規定をされておりまして、一人一人が人間として最大限尊重されなければならないということはまず当然のことでございます。

 しかしながら、犯罪被害者の置かれている状況を見ますと、これらの人々は、理不尽な犯罪行為によって人間としての価値を踏みにじられる、しかもその後世間の好奇の目で見られるというようなことで、二次、三次の被害もまた起きて人権が侵害をされる。そこで私たちは、犯罪被害者が個人として尊重されるべき存在であるということを確認するとともに、犯罪行為によって傷つけられた尊厳を回復してさらなる人権侵害から保護されるべき権利があるということを明確にすべきだというふうに考えたところでございます。

 このような観点から、犯罪被害者等の人権の回復のために、犯罪被害者等であることを理由に不当な差別を受けない、こういうことはもちろんでありますけれども、犯罪被害者が受けたさまざまな人権侵害、すなわちその生命、身体、財産に対する直接的な被害の回復、あるいはプライバシーの侵害等の精神的損害の防止のために、その被害の状況に応じて適切な支援を受けることが必要不可欠であるというふうに考えて、こういう規定をしたところでございます。

山花委員 持ち時間については石毛委員にバトンタッチをしたいと思います。どうもありがとうございました。

横路委員長 石毛えい子さん。

石毛委員 民主党の石毛えい子でございます。まず、犯罪被害者基本法案、衆法についてお尋ねしたいと思います。

 この法律は、犯罪被害者の方、その個人の尊厳が重んぜられ、尊厳にふさわしい処遇を保障される権利、これを規定し、実現していこう、そしてその実施に当たりましては内閣総理大臣が犯罪被害者等支援基本計画を策定して進める、こういう構成になっております。これが、法の第十八条、十九条のところで規定されておりますけれども、この規定の進め方と申しましょうか、その点についてお尋ねしたいと思いますけれども、支援基本計画を策定する際に、内閣総理大臣は審議会に諮問をすることができるという構成になっております。

 審議会はしばしば、表現が少し行き過ぎるかもしれませんけれども、何か制度をつくる隠れみの的な審議会というようなことも間々ございますので、この第十九条で、審議会は委員十人以内で組織し、委員としては、犯罪被害者等、それから犯罪被害者等の支援に関する業務に従事する者、それから関係する学識経験のある者のうちから総理大臣が任命するというふうになっておりますけれども、ここをこのように規定されました理由についてお尋ねしたいと思います。

佐々木(秀)議員 私からお答えをいたします。

 今もお話がありましたように、従来、ともすれば政府関係の審議会というのはどうも政府の考えにお墨つきを与える傾向、そしてそのために委員の選任も、例えば元官僚の方、官僚のOBだとか、学者の方は当然入れられているわけですけれども、そういう傾向にあったのではないかとよく言われております。

 しかし、私どもとしては、こういう犯罪被害者の支援のためということになると、やはりどうしても、その犯罪被害者の気持ちだとか置かれている実情だとか何を求めているのだとか、そういう体験を通して得られたことを基本にして対処していくことが大変大事なことだと考えたわけです。特に、先生も加わっていただきましたけれども、この法案作成審議の中で、そういう犯罪被害者、当事者の方だとか、あるいはその方々とともにその支援のために活動されている方だとか、そういう方々からの御意見も承って、私どもとしてはその点を非常に強く感じたわけですね。

 そういう点から、この法律案では、十八条から二十一条で審議会について定めておりますけれども、特に審議会の委員の構成については十九条で、御指摘のように、犯罪被害者等、それから犯罪被害者等の支援に関する業務に従事する方、そして学識経験者、中立的なというか大所高所から物事を考えていただく、そして専門的な知識を持っている学識経験者の方々、こういう方々に委員になっていただくのが一番いいのではないか、そしてまたそうした方々の御意見をもとにしてこの制度の実効性を上げる、そしてまた政策立案などについても提案していただくということが有効である、また適切であるという考えからこういう構成にしたいと考えている次第でございます。

石毛委員 ありがとうございました。

 そこで、関連質問を警察庁の方にさせていただきたいと思いますけれども、このたびの閣法の犯給法案につきましてはどのようなプロセスを通じて策定されましたのでしょうか。そこのあたりを少し解説していただければと思います。

石川政府参考人 今回の犯罪被害者等給付金支給法の改正作業を進めるに当たりまして、警察庁におきましては、まず御自身が犯罪被害に遭われた、遺族としての立場にもあられる方、あるいは被害者に直接接して被害者の支援に深く携わってこられた方々を含めます有識者によります犯罪被害者支援に関する検討会におきまして、昨年来いろいろ御検討をいただきました。そして、昨年の十二月に犯罪被害給付制度その他犯罪被害者支援のあり方に関する提言というものをいただきまして、作業の参考にさせていただいたということがまず一つございます。

 それから、昨年の十月に、民間の調査機関に委託をいたしまして、被害者等と接しておられる民間援助団体、あるいはその支援を受けた被害者の方々からのこうした被害者支援の活動実態あるいは要望というものについてのヒアリングを含む調査を実施いたしました。

 こういったことを今回の改正案の内容に反映するように、特に今御質問の犯罪被害に遭われた当事者の方々の御意見といったようなものも反映するように努めたところでございます。

 また、昨年の七月に、これはその被害者の方直接ということではございませんけれども、約三千三百人の一般の国民の方を対象に犯罪被害給付制度に関する意識調査を実施いたしました。また、昨年の九月に総理府において犯罪被害者に関する世論調査が実施をされましたが、これを参考にいたしております。

 その他、インターネットに警察庁のホームページがあるわけでございますが、そういうところで随時いろいろな御意見を承っておるといったようなことでございまして、こういったことを今回の法改正の内容に反映をさせていただいたということでございます。

石毛委員 官房長、引き続きもうちょっと教えていただきたいと思いますけれども、最初に御指摘いただきました検討会の構成、御遺族の方、それからその支援にかかわってこられた方、それから学識経験者、そのメンバー構成はどのぐらいの人数、人数、人数になりますでしょうか。

石川政府参考人 委員は七人から成ってございまして、その方々のいわゆるバックグラウンドと申しますか、内容は、被害者学の研究に長く携わってこられた大学の教授、この方は犯罪給付の専門委員もいたしておられます、それから民間の被害者支援都民センターというところの理事長をしておられる、こういう立場の方を座長といたしまして、このほかに、大学の教授であり、かつ京都における犯罪被害者支援センターの理事長をしておられる方が座長代理ということでございます。

 それから、弁護士会所属の弁護士で犯罪被害者の会の代表幹事をしておられる方が委員ということでございます。あとの三人の先生方はそれぞれ大学教授でございますけれども、法学部の教授、社会学部の教授それから医学部の教授ということで、この中にはやはり全国被害者支援ネットワークの会長をやっておられるといったような方もございます。それから、犯罪被害者と日常接しておられる弁護士の方、これらの方々が委員でございます。

 このほか、外国制度の専門委員といたしまして三人、それぞれ大学の教授にこの検討に参加をしていただいた、こういうことでございます。

石毛委員 犯罪被害者の方、あるいは犯罪被害に関する研究にかかわっていらっしゃる方が多く御参加されているということは教えていただきましたけれども、やはり犯罪被害者の方、その方々が、時間を少し経過して御自分の体験を昇華されてといいましょうか、そして整理したお気持ちやらお考えやらシステムのあり方等に対する発言をされていくということは大変重要だというふうに思います。

 ちょっと審議会等と性格が違うかもしれませんけれども、アメリカの障害者の自立生活センターの理事会などは、障害者の方が理事メンバーの半数を超えなければならないというような規定があるほどに、当事者の方の意見表明、参画ということは重要な意味を持つというふうに考えられるようになっていますし、私もそう思いますので、この衆法の方の審議会の設置と、それから審議会自体が検討会よりは公性を持つものでもございますし、こういうところをぜひとも受けとめていただきたいと要請いたします。

 次の質問、衆法に対してでございますけれども、犯罪被害を受けた方が心的外傷を負った場合には、この犯罪被害者基本法によりますと、具体的には、閣法では給付金支給の中に一部心的外傷への手当等が含まれるやに御答弁いただいておりますけれども、具体的なフォローの中身としましてどんなふうに変わってまいりますでしょうか。その点をお願いいたします。

佐々木(秀)議員 さまざまな犯罪において被害を受けた方々の損失というのは、もちろん経済的な損失もありますけれども、それ以上に私は、心的傷害というか心の傷というか、それの痛みが大きいんだと思います。特に、傷害事件などでは被害者の方が直接に自分が損害を負うわけですけれども、例えば犯罪によって家族などを殺されたというような方、御親族の心の痛みというのはこれまた大変なものだと思いますね。したがいまして、私どもとしては、これは生存している場合ですけれども、被害者本人、そしてその家族を含めて、その心的傷害の重さということを重視し、それに対する対策というのをしっかり立てていく必要があるだろうと思っておるわけです。

 したがいまして、犯給法でももちろん考慮があるわけですけれども、そういう給付金だけでは賄い切れないものがある。それからまた、給付金の制度では、先ほどもお話がありましたけれども、例えば過失犯などによる被害の場合には給付を受けられないというようなこともある。そういうような場合に対する対処も考える必要があるだろうと思うんですね。そこで、この法律が、私どもの衆法がつくられてそれに基づいて審議会ができるということになると、その審議会での検討課題の中には、この心的傷害に基づく障害に対してどういう支援措置を組み立てていくべきかということが非常に重要なテーマとして議論になっていくのは間違いないだろう、私はこういうように思っております。

 そしてまた、いろいろなこれに対する手当てですけれども、心的な傷害というのが病的な障害にもなってあらわれることもあるわけですね。ですから、いわゆるPTSDなどについての症例、これを全国的にも、それからまた外国の症例なども十分に調査をし、検討をし、研究をし、そして医療機関などによっても御協力をいただいて研究をするということが非常に大事だろうと思いますし、そういうことを通じて心的障害の被害回復に向けて公的などういうような施策が立てられるかということを講じていくことができるだろう、私はこう思っております。

 それからまた、事件直後にどういった支援措置ができるかということは、先ほどからお話に出ております民間の支援団体の方々でも非常に実績を積まれておるところがあるわけですので、そうした実績に基づいて議論することもできるんじゃないだろうかと思っております。

 心的障害の問題についてもいろいろなアプローチの仕方があると思いますけれども、犯罪被害者が個人の尊厳を重んじられ、被害の状況に応じた適切な措置を総合的かつ計画的に受けられることになる、その際、犯罪被害者が適切な処遇を受ける権利を有する、これがこの法律案の基本的な精神になっているわけですけれども、これに基づいてそういう施策がこの審議会の議を経てとられていくことは間違いないだろうし、その点で非常に積極的な意義があるものと私どもとしては考えております。

石毛委員 先日、議員会館で、犯罪被害者の方の課題とは内容を異にしますけれども、引きこもりと言われている方々の関係者、御家族の方から勉強させていただく機会がございました。その際にもやはり、今御指摘いただきましたPTSDとしてとらえてきちっと対応できる専門家を養成していかないと、とてもいろいろな場面で起こってきていますこの課題に対して対応していけないというふうにおっしゃっておられました。

 今回この法律は、犯罪被害者の方に関する基本法を制定しようという案件でございますけれども、心的ケアといいますか、心のケアを必要とする事柄というのは多面的に今日本の社会にわたっていますので、ぜひそうした視野の広がりも持ちながら、でありますからこそより早急に基本法を実現していく、そういうとらえ方をしていただければありがたいというふうに私は思います。

 官房長、大変恐縮でございますけれども、ちょっと質問通告していなかったんですが、伺いますところによりますと、四月に、地下鉄サリンの事件に遭われた方に対して調査をされました調査結果がもう一度報告になるというふうに伺いましたけれども、その調査結果を見まして、今の心的外傷の問題なども含めましてサリン事件に対してどういう方向をとられるか、簡単に御答弁いただけたらと思います。恐れ入ります。

石川政府参考人 地下鉄サリン事件で被害に遭われた方についての調査は、警察庁、二回目の調査を今実施中でございまして、取りまとめ中でございます。私どもその結果を見まして、なお、法制面というよりも、これからこういったような方々また現実に苦しんでおられる方々に対して、警察としてあるいは関係機関として今後どういうことが必要なのか、その結果をそういう今後の施策に反映をしてまいりたいというふうに考えております。

石毛委員 調査結果を私も拝見したんですけれども、やはり少し各省庁にまたがるところで足りないところがあるのではないかというような思いもいたしました。内閣委員会で審議をしているこの法案でございますので、ぜひとも総合的な取り組みをしていただきたいというふうに要請して、衆法に関して次の質問に移らせていただきます。

 衆法には、支援に携わる民間団体についての規定がございます。民間団体の活動に対する支援の内容として資金の融通というような点も触れられてございますけれども、具体的にはどんな施策をおとりになられるのか、その点をお願いいたします。

細川議員 犯罪の被害者を支えている民間団体の皆さん方、大変よくやっていただいていると思っております。ただ、会を運営するとかいうような形ではまた資金といいますかお金も必要でありまして、そういう団体にどのように支援をしていくかということが大変大事なことだろうと思います。

 そこで、今度のこの委員会にも付託されております閣法によりますと、経済的な支援、そういうことはしないというのが先週の審議の中で出てまいりました。現在でも地方公共団体の中には個々にいわゆる支援団体に援助しているというようなところもありますけれども、国の方ではそういう面で積極的な推進は一切ないということでございます。

 むしろ、この問題は憲法二十五条の生存権にかかわる事項でもございまして、行政ができないところを民間の団体が行っていくというならば、それは国の責任で、財政上あるいは金融上の手段によってその民間の団体が犯罪被害者を支援するその活動が十分に行えるように援助するということ、そういう措置は講じなければならないのではないかというふうに考えております。

 具体的には、法案の中にあります審議会、この審議会の中で議論をするということになろうかと思いますけれども、考えられますことは、自治体の方から直接その団体に援助する、それを国の方が支援をするという方法もあろうかと思います。また、政府系の金融機関からいろいろな融資といいますか、優遇的な低利の融資をするとか、あるいはまた、何らかの方法で犯罪被害者支援基金というようなものをつくって、その運用によって資金を調達していくというようなことも考えられるというふうに思っております。

石毛委員 先ほどの心的外傷への周辺的なフォローアップとかそういうことを考えますと、本当に民間団体が活動される場合に、経済的な基盤が最低限整備されていないとなかなか実効性が上がらないと思いますので、方策は大変工夫が必要なのかと思いますけれども、ぜひともこれも実現したいことだというふうに私も考えるところでございます。ただし、やはりお金は大変魔物でもございますので、透明性高く、情報公開もきちっとしていただいてということが前提条件であるかとは思いますけれども、どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは最後の質問でございますけれども、先ほどもちょっと引きこもりというようなことに触れましたけれども、犯罪被害者の方に対する支援というのは、経済的な支援のほかに、ケアを通じたサービス、こうした支援といいますのは、犯罪被害者の方だけではなくて、例えば災害で被害に遭われた方、さまざまな広がりを持つと思いますけれども、システムを共有していく、そうした連携をとっていくというようなことにどういう方向性を展望しておられますか、その点についてお答えいただきたいと思います。

細川議員 災害、特に自然災害によりまして被災を受けた方、こういう方が悲惨な境遇に置かれるということにつきましては、これは神戸の震災だとか三宅島の災害だとか、いろいろな災害で経験をしているところでございます。

 そういう被害者というのは、特に精神的なケアとか早期の支援ということが大変大事だろうと思いますし、その点については犯罪被害者の支援と共通なところがあるというふうに考えております。したがって、そういう共通なところを考えながら、犯罪被害者の枠組みといいますか、それを災害の被災者にも適用することができないのかというように考えております。

 それは、例えば、民間の犯罪被害者支援組織というものが活動している。災害が起こったときには、それを急遽改編いたしまして災害被災者を援助する組織にいたしまして、そして国や自治体がその団体と連絡をとり合って事に当たっていく、そういう仕組みができないかなというふうに考えているところでございます。

 分野は多少異なりますけれども、この基本法ができまして犯罪被害者支援の組織というものが全国にきちっと張りめぐらされるような形になっていけば、どこでどういう災害が起こっても、その組織を転換して、そして早期のケアあるいは早期の支援というのもできていくのではないかというふうに考えているところでございます。

石毛委員 ただいまの細川委員の御答弁を伺っておりまして、私は、犯罪被害者の方に対する施策が、経済的な援助と同時に、やはり心的外傷に対する支援ですとかあるいはさまざまな支援というようなこと、それともう一つ大変重要なのは、知る権利等々を含めて、あるいは申請をする手続的な権利などについての十分な周知というようなことも含めて、この犯罪被害に対する救済を構成する要素として心的外傷に対するケアというのは大変重要な位置づけを持つということをますます確信いたしましたし、同時に、今大変日本は災害が頻発しておりますし、これからもその危惧は消えることがないわけですから、大きく社会的な広がりを展望し得る、その核になる施策としてもこの基本法は重要な意味を持ち得るということを改めて認識をしましたということを申し上げさせていただいて、私の質問を終わります。どうもありがとうございました。

横路委員長 井上和雄君。

井上(和)委員 おはようございます。民主党の井上和雄です。休日明けということでお疲れの方も多いようですけれども、頑張って質問させていただきます。

 私、昨年の六月の衆議院選挙で初めて当選させていただきました。それ以前から、政治家になったら一つの問題に取り組んでいこうというふうに考えていたのですね。これは交通事故の問題なんです。

 年間一万人ぐらいの方が交通事故で亡くなっている現状があるにもかかわらず、どうも十分な対策というものが国によってとられていない、私どもそういう認識を持っておりまして、ぜひこれはやらなければいけないというふうに思っておりました。

 また、委員の方も覚えていらっしゃるかもしれませんが、一昨年になりますか、十一月ごろ、東名高速道路で幼いお子さんが二人乗っていた車が酔っぱらい運転のトラックに追突されて二人のお子さんが炎上するという交通事故もありました。

 そういった意味で、私は当選後、交通事故の問題に過去九カ月ほどになりますが取り組んでまいりました。その一環として、超党派の交通事故を減らす議員の会というのがあるのですが、それが少し休眠状態にあったということで、私は事務局長を引き受けさせていただきまして、会長には自民党の逢沢一郎先生がなりまして、再出発をいたしました。

 先月、この交通事故を減らす議員の会の総会を行いまして、その際には、先ほど私が申し上げました、一昨年の東名高速の交通事故でお子さんを亡くされた井上御夫妻、またそれ以外にも、遺族の会というのがございまして、交通事故遺族の会の会長さん、そしてまた交通事故で後遺症を受けた方の団体がございまして、その団体からも代表の方が出席いただきました。そして、いろいろな御要望をお聞きしたわけですね。

 交通事故の被害者の方も、現在の法律的な枠組みとか現在の被害者対策というものに非常に御不満を持っている。そういった観点から、ぜひこの基本法を成立して、交通事故の被害者の方にもやはりきちっとした救いの手を差し伸べるような体制ができるということを私は期待しております。

 本日、交通事故の観点からまず二点ほどお伺いしたいのです。

 この基本法の対象には当然交通事故被害者も入るというふうに考えますけれども、一般の刑法犯の被害者と異なり、過失犯ということで、裁判もごく簡単に終わり、量刑も非常に軽いというのが現実です。先ほどの東名高速の事件でも、酔っぱらい運転をしてトラックで追突して二人のお子さんを死に至らしめたという事件にもかかわらず、懲役四年だったと思うのですけれども、そういう一般常識から考えても非常に軽い判決だったということで、被害者の方も本当に御不満であるということを私どもも伺いました。

 最近は告知制度というものができて、知らない間に判決が出ているというようなことは余りないようです。しかし、損害賠償請求のための民事訴訟ということを起こすとなると、これがまた非常に大変で、刑事事件の証拠をそのまま民事に使えないために時間もかかって、被害者の方の負担も非常に大きい。被害者の方はぜひ民事と刑事の裁判を一緒に行う附帯私訴、こういった制度をつくってほしいということを要求されているのですけれども、この点に関しては、衆法の御提出者の方、御意見はいかがでしょうか。

細川議員 交通事故の被害者のことをいろいろお話しされまして、本当に悪質な運転によって致死傷に至らしめるというような犯罪が起きて、しかもその刑が軽いということについてはいろいろな批判も出ております。それはそれで、それに対する対応というか、法律的なことはまた別の形で考えていかなければいけないと思いますけれども、今言われました交通事故の被害者が刑事裁判の進行とともに民事の方も一緒に訴えることができるような、そういう附帯私訴はどうなのか、こういう御質問でございます。

 これにつきましては、この制度ができれば犯罪の被害者にとりましても、まず時間的なものあるいは費用的なもの、あるいはまた精神的な苦痛も短い期間に終わるというような、そういういろいろな負担の軽減が考えられます。

 しかし一方、今の日本の制度そのものは民事裁判と刑事裁判というのは峻別をされておりますから、したがって、附帯私訴をやるには法律の大きな改正が必要になってまいります。そうしますと、そのほかの制度への影響なんかもいろいろと考えてみなければいけないということになろうかと思います。

 したがって、この基本法の方では審議会というものが設置をされることになっておりますから、この審議会の中でこの附帯私訴の問題も検討をしていただくということになろうかと思いますけれども、いずれにしましても、犯罪被害者の権利をどのようにして保護するのかという観点とほかの法的な制度との均衡といいますか、そういう点から議論をしなければいけないのだろうというふうに思っております。

井上(和)委員 こういう附帯私訴の制度をつくってもらいたいという要求が出ている背景には、今細川委員もおっしゃったような悪質な交通事故が非常に軽い量刑で済んでいるという現在の実態があって、遺族の方が本当にもうやりきれない気持ちで、それならとにかく民事ででもちゃんと結論を出したい、責任をとってもらいたい、そういうお気持ちで民事訴訟を起こされる方が非常に多いわけです。

 そういう意味でも、今社会的にも悪質な交通犯罪の厳罰化というものを望んでいる声が非常に大きいということをぜひ今回の提出者の方にも御理解いただいて、また、私も細川委員が中心になって議員立法を考えておられるということも聞いておりますが、ぜひ厳罰化に向けて一歩前進をしていただきたいと思います。

 次に、法務省にちょっとお伺いしたいのですけれども、きょうは刑事局長いらっしゃいますので御答弁をお願いいたします。

 これも交通事故のことなのですけれども、最近、交通事故の起訴率というものがどんどん下がっている、送検されてもほとんど刑事訴訟されていないという事実があります。私の手元にデータがあるので、ちょっと御紹介いたしますけれども、自動車等による業務上の重過失傷害で起訴された起訴率ですか、昭和六十一年が起訴率四八%、これが平成十一年になりますと重過失傷害で起訴率が八%、四八%から八%に下がっています。業務上過失傷害を見てみますと、昭和六十一年は起訴率が七三%、平成十一年でいきますと一一%です。これは一体どういうことなのでしょうか。ちょっとこの点に関して、検察の方針というものに関して御説明いただきたいと思います。

古田政府参考人 自動車等によります業務上過失致死傷事件、交通事件と一般に呼んでおりますが、これにつきましては二つに分けてお考えいただきたいと思っております。一点は、まず致死事件、つまり死亡に至らせた事件、これにつきましては、起訴率は大体六〇%から七〇%の間を推移しておりまして、これについて特に起訴率が極端に低下しているとかそういうことはございません。起訴率が低下いたしましたのは、傷害にとどまる場合でございます。

 これはどうしてかと申しますと、委員御案内のとおり、こういう車社会と呼ばれる時代になりまして、日常生活の中で一般の市民の方々が時として起こしてしまうという、そういうふうな事故が大変ふえているわけでございます。その非常に多くは、実はかなり軽微な傷害にとどまるわけでございます。一方で、物損あるいは傷害の結果について示談などができ、保険でカバーされる、被害者の方々も処罰を望んでいないというケースが大変多いわけです。そういう場合にこれを一々取り上げて起訴をするということになりますと、ふだん善良な社会生活を送っておられる方に前科をつけてしまうというふうな問題もあるわけでございまして、そういう点を考慮いたしまして、軽微な傷害にとどまって話し合いがついている、こういうふうな事件については、これは起訴をしないという運用をしている。そのために傷害にとどまる場合の起訴率が低下しているということでございます。

井上(和)委員 今御説明あったように、重過失致死に関しては起訴率がそれほど下がっていない、ほとんど従前と比べて同じであるということは確かだと思いますので、御説明、十分納得はできるんですが、それだったら、どうせ起訴をしないんだったら、例えば軽微な事件に関してはもう行政処分にとどめて検察に送らないような制度をつくればいいんじゃないでしょうか。送検しておいて起訴率が非常に低いというのはちょっと不合理に思うんですが、その辺はいかがでしょうか。

古田政府参考人 確かに、軽微な事故につきまして、これはいろいろな意味でどうこれを処理を考えるべきかということは非常に重要な検討課題だというふうに考えているわけです。

 ただ、今委員御指摘のような行政処分にとどめるというのも、実は一見軽微な事故の中でも、過失が非常に重い事件とか、あるいは被害者の方が納得できない事件とか、いろいろあるわけでございます。そういうふうなものにつきましては、これはやはり刑事処罰の道というのも考えておかなければならない場合があるわけで、そういうことを含めまして、軽微な事件についてトータルとしてどういうふうに取り扱うのが適当なのかということについて、実は私どもとしても前々から考えており、また警察御当局とも今いろいろ意見を交換して、いい知恵を出したいと思って努力しているところでございます。

井上(和)委員 では、同じ問題に関して衆法の提出者の方にお伺いしたいんですけれども、不起訴の場合は普通、検察審査会に訴えたとしても、審査会の方で起訴相当という議決が出ても、検察審査会自体に法的拘束力がありませんから、結局、再度検察が不起訴を決定すればそれでおしまいということになります。そうしますと、やはりもう少し別の制度というんですか、そういうものが必要じゃないか。

 例えば、私人に起訴権を与えるべきだとかそういう議論もありますが、そこまでいかなくても、少なくとも検察審査会の決定に拘束力を持たせるべきじゃないかということを私は思うんですけれども、この辺の議論とこの基本法の関係はどうなるか、お伺いしたいと思います。

佐々木(秀)議員 私からお答えをさせていただきます。

 委員御指摘のように、特にこの交通死亡事件などについて被害者の被害感情が非常に強い、特に子供さんを殺された親の気持ちなどというのは、先ほどもお話しいたしましたように非常に大きなものがあることは御承知のとおりですけれども、そういう場合でも、その事案の内容をもちろんいろいろな証拠を総合して捜査をして、最終的には検察官が処分を決定するわけですけれども、その結果、不起訴になったという事例があるわけですね。そうすると、遺族の方々から、どうしても納得ができない、それで検察審査会に対して申し立てをするというケースがこれまでも、一再ならずあったことはあったわけですね。

 御承知のように、実は、今の我が国の司法制度の中で国民が司法手続に参加する機会というのは極めて限られております。外国では、アメリカなどもそうですけれども、陪審制がありますね。それからドイツでは参審制などもとられております。かつて日本でも刑事事件の陪審制というのは法律で制定されたことはあるんですけれども、現に、これも法律が残っているんですけれども、有名無実になって全然使われていない。

 そこで、今司法制度改革審議会でこの国民の司法参加のあり方について熱心な議論が行われて、非常に積極的な御提言がありますから、恐らくこの点については改革が進むだろうと私は思っておりますが、現状で、特に刑事事件というか刑事手続について国民の参加があるというのは、辛うじてこの検察審査会だけなんですね。それだけに、検察審査会というのは非常に地味ですし、知られていない存在だけれども、かつてそれがテレビドラマなどにもなって非常に反響を呼んだこともあった、それなりに大きな役割を果たしていると私は思うわけです。

 しかし、御指摘のように、検察審査会の決定には拘束力がありません。したがって、そこで検察官の処分が不当だ、起訴すべきだという決定を出しても、さらに再度捜査をして、また再び不起訴ということになるケースというのはこれまた間々あって、これはなかなか国民感情からいって納得がいかないという思いがするのは当然だと私は思うんですね。

 そういうことを意識されて、実はこの点についても司法制度改革審議会の中でこれまた議論になっておりまして、一定の場合に拘束力を与えるべきだという御提言がなされているようにも私は聞いております。

 それから、法務省の方でも、実は、きょう午後からは法務委員会がありまして、福岡で起こった例の次席検事の捜査情報の漏えい事件ですね、高裁の裁判官の奥さんがストーカー行為の容疑者として調べられている事件について、夫である裁判官に情報を漏らしたということで、双方問題になっている。検察官、裁判官、そして検察庁、裁判所、ともに問題になっているわけですけれども、これについて実はきょう午後の法務委員会で集中質疑を行います。

 この事件については、それぞれ裁判所それから法務省、検察庁で調査委員会がつくられておりまして、法務省のこの調査結果の報告が三月の九日に発表されたんですが、その際に、高村法務大臣が意見を述べておられるんですね。書面にもなっておりますけれども、この中で法務大臣もこの検察審査会のあり方に触れられておりまして、検察審査会の一定の決定に法的拘束力を与えることもこの際検討すべきだ、これは国民の司法に対する信頼を取り戻す方策の一環としてということで述べられているんですね。

 ですから、恐らく法務省の中でも、これから具体的にこの点については検討が進められていくだろうと思っておりますし、そのこと自体は結構なことだろう、私どもとしてはそういうふうに考えております。

 今度の犯罪被害者基本法案との関係ということになりますと、直接のかかわりはないにしても、この犯罪被害者の基本法が犯罪被害者の気持ちを大事にしなければいけないということを言っている以上、そういう観点からこの検察審査会の決定などという問題もやはり考慮をされてこなければならないだろうと思います。

 それから、委員からも御指摘がありましたように、重大な、悪質な例えば酒酔いとかあるいは無免許とか、そういうことによって起きた傷害致死の交通事犯については、やはり軽微に過ぎるということがあってはならないのではないかということでの検討、そういう法案についても今検討されていることは御承知のとおりですので、こういうこともあわせて考えていく必要があるだろうと思っております。

井上(和)委員 残念ながら、今福岡の事件なんかで、やはり司法に対する国民の信頼というのは本当に緩んでいる時代です。政治、行政は以前から余り信用がなくなっていますけれども、ついには司法も今、大きな信頼をなくすようなことが起こっているということで、ぜひこの法案が国民の司法に対する信頼を回復するような役割を果たしていただければと思います。

 それでは、次の質問に移りますけれども、私、先日、閣法に関してこの委員会で質問させていただいたんです。内容的には、私自身が、犯罪被害者給付金というふうに、以前からそういう制度があることは知っておりました。イメージ的に、何か犯罪に遭ったら、例えば命を落としたという場合には一千万ぐらいくれるんじゃないか、そういうイメージを持っていたわけですね。

 ところが、現実によく伺いますと、これまでは二百万円、今後、今回の改正によって三百万円というふうに最低額が上がると聞いてちょっとびっくりしたんです。恐らく私と同じように、多くの国民の方が額がかなり大きいんじゃないかというふうに誤解していたんじゃないかと思います。

 そこで、政府の方では、この給付金の意味というものが、損害賠償とか代位弁済ということじゃなくて、見舞金としての性格であるということを答弁しています。この基本法に基づいて犯罪被害者に経済的な支援を行う場合、この給付金の意味というものに関して提案者はどういうふうにお考えなのか、ちょっとその辺を御説明いただければと思います。

細川議員 犯罪被害者に支給されます給付金というものが一体どういう性格のものなのかということについては、これは非常に大事な質問であろうかと思います。

 これにつきましては、政府の方では、見舞金だ、こういうふうにずっと言われてきておりまして、正確には、純粋な見舞金ではなくて、連帯共助の精神に基づく損害の一部補てんの要素も含む見舞金的なものというふうに政府の方は考えておられるようでありますけれども、今回の法案につきましても、私の方からせんだってちょっと質問をいたしまして、医療費なんかも全部支給をするというようなことになってまいりますと、これはもう損害賠償を国家が一部補てんするんではないかというふうに申し上げて、そういう方向ではないのかということも申し上げました。

 私たちが考えておりますのは、損害賠償を国の方で加害者にかわって支払う、こういうことでございますけれども、しかし、それでは被害者が受けた損害のすべてを国の方から支給するのかということになりますと、それは決してそうではございません。例えば、これは性格は違いますけれども、自賠責保険などありますけれども、この自賠責なども、それでは交通事故の被害者が受けた損害すべてを自賠責で払ってくれるかというと、そうでもないわけです。そこには一定の限界といいますか、制限があるわけなんです。国が被害者のすべての損害を支払うというようなことは、これはもう法的にも法理論的にもそういう理論はとれないと思いますし、また、国民の皆さん、納税者の皆さんからも納得されないんではないかというふうに思っております。

 そういう意味では、損失を考える場合、例えば高額所得者が犯罪の被害に遭って、そしてその損害全部というようなことになれば、一億円とか二億円とかそういうのを払うとかいうようなことは、これはもうとてもとてもそういうようなことは考えられないわけでございます。

 それでは、一体、国が加害者にかわってどこまで弁済をするのか、ここが一番大きなポイントだろうというふうに思いますので、御説明申し上げますと、なぜ国が加害者にかわって支給をするのかということは、やはりこれは犯罪被害者の人権に求めるのが妥当だというふうに私は考えております。

 この法律には、個人の尊厳が重んじられて被害に応じた適切な処遇を保障される権利、こういうふうに規定をしております。したがって、このような考えでまいりますと、給付の意味というのは、政府も考えておるように、損害の一部補てんというふうに考えていいんではないかというふうに思います。そこで、金額的なものは、個人の尊厳にふさわしい処遇ということで金額も決まってくるものだと思います。そういう点については審議会のところでじっくりと議論もしていただくというようなことになろうかと思います。

 以上でございます。

井上(和)委員 どうもありがとうございました。

 時間が来ましたので、私の質問を終わらさせていただきます。どうもありがとうございました。

横路委員長 塩田晋君。

塩田委員 まず、提案者にお伺いいたします。

 提案されている基本法に当たるものが諸外国にあるかどうかということ。先ほども一部答弁が出ておりました憲法とか憲章といったものがある国があるということを言われましたが、はっきりと基本法として制定されている国があるかどうか。英米法系と大陸法系と若干事情も違うかもわかりませんが、その辺の事情について御説明を願います。

細川議員 犯罪被害者に関する法律、これの基本的なところというと、被害者の権利を保障する、権利を明確にしてどういう施策をとるか、そういうような理念的なもの、そういうものが規定された法律があるのかどうなのか、こういう御質問だろうと思います。

 日本では、御承知のように、個別的な形でいろいろ規定されている。これは個別法としてあるわけですけれども、そういう被害者の権利を認めて理念的な施策について規定した法律はないわけなんです。

 そういう意味から申しますと、世界には基本法的な法はたくさんございます。先進国ではほとんどの国ができているというふうに考えていいと思います。アメリカでは、二十九の州で憲法で規定されております。それから、ドイツでも憲法でございます。また、アメリカのすべての州では、被害者の権利章典として制定をされております。これはまさに権利を明確に規定している、こういうことになりまして、まさに基本的な法だ、こういうことでございます。そのほか、先ほども申し上げましたけれども、オランダでは被害者援助法、これは刑事手続とか、あるいは支援組織との連携を深めて、被害者に対してさまざまな救済対策をしていくというようなプログラムを規定して、それを実施しているというような法律もございます。

 そういう意味では、欧米の方での先進国につきましては、そういう被害者を権利として規定をした憲法なり権利章典なり法律なり、そういうものがほとんどでき上がっているということでありまして、先ほども委員の質問にありましたように、日本はそういう意味では基本法がないという意味で相当おくれている、こういうことであります。

塩田委員 憲法とか憲章とか、そういう形で行われているものが多いのか、個別法と基本法二本立てでちゃんと整理しているところ、これをお聞きしているわけです。日本も、憲法には関連すべき条項もあるわけですね。宣言は、児童憲章その他はありますけれども、これはないということは言えますが、先ほど言いました基本法と個別法、並立してちゃんとやっているところ、これから日本でこの基本法を制定しようというのは、そういう二本立てといいますか、基本法あって個別法、こういうことになるわけですね。それをはっきりとやっているところの国の例をお伺いしているわけです。

細川議員 私どもの方ではそこまでまだ調べていないところもありまして、ちょっとお答えできませんけれども、基本法的な外国の法律ができているところは少なくとも犯罪被害者についての施策も進んでおることは事実でございますから、その施策が進む上でのいわゆる根拠法としての個別法ができているということについては、これは想像にかたくないというふうに思っております。

塩田委員 この問題は一応おきまして、法律の条文等に関しまして御質問をしたいと思います。

 この犯罪被害者等に対する救済、保護の法律、制度が我が国でも創設され、また二十年にわたって行われているということでございます。これは、やはり犯罪の加害者に対しましてはかなり個人の尊重という面から制度的には進んでおるわけでございまして、それとの関連におきまして、犯罪被害者は余りにも保護あるいは救済がなされていないじゃないかという国民的感情、あるいは世論の結果、今日このような基本法が出されてきたり、あるいはまた今回の犯給法の改正が行われるということになったと思うので、このこと自体は非常にいいことだと思っております。

 そこで、この基本法につきまして、今御説明がありましたように、第二条では基本理念というのが書かれておりますね。そして、そこでは、すべての犯罪被害者の適切処遇を受ける権利ということをうたってあるわけですね。すべてのというところと、そしてその中には被害の状況等に応じてという要件も入っているわけですね。そこで、このすべてのというところに問題があるんじゃないかということを一つ問題にしたいと思います。

 それから、第三条から四条にかけましては、国と地方公共団体の責務ということがうたわれておりますね。責務として国、地方公共団体は犯罪被害者に救済の措置をしなければならぬ、こういう規定でございます。また、国民の責務としても第五条に規定されておるわけでございますが、片や犯罪被害者は受ける権利である、国及び地方公共団体は責務である、こういう規定ですね。これはこの基本法の骨格だと思うんです。

 そこで、それは考え方としては、先ほども申し上げましたように大きな前進であるし、その方向はいいとは思うんですが、それを実際、個別に具体化していく場合に、すべてのというところでいろいろな問題が起こってくるんじゃないか。故意か過失かという問題も含めまして、すべての犯罪被害者に対しての救済措置じゃないといけないということですから、そこに問題があるんじゃないか。

 これは今の被害の状況等の中に入っているのかわかりませんけれども、例えば非常にいじめを受けた、個人的にいじめを受けておる、それによって相手を傷つけた、こういった場合、その加害者はもちろん刑事訴追されるでしょうけれども、被害者に対しても、どういう原因であろうと、いじめが原因であってそういう問題が起こったとしても、やはりすべての被害者として救済を受ける権利があるのかという問題。それから、それと同じような関係では、団体同士の出入りがありますね。その場合でも、加害者か被害者かどっちかになるわけですから、加害者は刑事訴追されて被害者は救済される権利がある、こういうことになっていろいろな問題が起こるんじゃないかということ。これについてお伺いいたします。

細川議員 今先生の御指摘のこの犯罪被害者基本法の対象はまずどういう対象なのかという点につきましては、これは非常に大きなといいますか、重要な問題だというふうに私どもは考えております。

 それで、先生の出されましたいじめの問題、あるいは先生からもいろいろさらに聞いてみたいと思われているのは、例えば経済犯の問題とかいろいろあろうかというふうに思いますけれども、この犯罪被害者基本法というのは、いずれにしましても、犯罪によって受けた被害者、この人たちは個人の尊厳が重んじられて、そして被害の状況によってその状況に応じた処遇を受けるという権利があるんだということは、これはいわば抽象的にきちんと規定をして、そして具体的にどういう人あるいはどういう範囲の、あるいはどういう被害の方法をとるかというようなことについての問題は、いわゆるこの法律でいきますと審議会によっていろいろと議論をしていただく、こういうことになってくると思います。

 したがって、そういう場合の被害の額の問題について、これは当然、支給する金額がどういうふうな形になるのかとか、あるいはどういう形で支援をしていくかというようなこと、あるいは先ほどのいじめの問題なんかも、加害者、被害者、ちょっとよくわからないような状況の場合に、果たしてどういうふうに被害者についての支援をしなきゃいかぬかということについても、これはよりいろいろな分野の審議会の委員の皆さんによって議論をしていただくということで決めていく、そこで個別法が出てくるというふうに思っております。

塩田委員 国が加害者にかわって被害者に対して代位弁済をするという基本的考え方、それは、加害者がどんな動機であろうと、どういう状況、背景があるにしても、とにかく被害者になっているという客観的事実、それに対して補償を国がする、こういう基本的立場ですね。ですから、団体同士が抗争をして、そこから生じた被害者、加害者という関係であっても、とにかく結果を見て、被害を受けた犯罪被害者に対しては国が代位弁済する、こういうことですね。ちょっとその辺が、この基本法、すべてのと書き、国の責務である、あるいは被害者は受ける権利がある、こういうことで一般的に言ってしまって、まだ問題があるんじゃないか。

 犯罪等は、国の治安が、警察がしっかりしてやっておればそういう犯罪は起こらない。それを、無過失でありますけれども、そこで犯罪が起こった、被害者が出た、そこに国が責任として弁償する、こういうことでいいのかどうか。

 それから、問題は、各種損害保険制度がありますね。これとの関連なんかももう少し整理しないと、ただ権利として、あるいは国は責務として補償しなきゃならぬという、そういうことを言ってしまう十分な検討はまだなされていないんじゃないかな、このように思いますが、いかがでございますか。

細川議員 確かに、先生の言われたすべての人ということについての問題については私どもの法案に対していろいろ御批判もあるところではありますけれども、しかし、個別法のところでどのような救済をしていくかということで議論をしていけば、そこには制限を設けることはできるのではないかというふうに私は思っております。

 それから、保険との関係でございますけれども、今回なんかも、犯給法のあれでは対象も金額も広がったわけで、それは私もそれでいいと思っております。しかし、犯給法でいけば、公的な保険でされれば、これは控除されるということになるわけですね。

 では、基本法で、任意の保険を掛けていた場合にはどうなるのか、こういうことにつきましては、これはその人が従来から自分なりの計画を立てて自助でやってこられたことでありますから、それは控除されない、関係ないという形で処理できるのではないかというふうに思っております。

 あとは健康保険の問題だとかいろいろな関係もありますけれども、そういうところについては、犯給法なんかのことも含めましてですけれども、審議会の中で御議論をいただいて、均衡ある、ほかとの調整もきちんとしながら、そこはいかにして犯罪被害者の被害が回復をされていくかという観点から議論をしていただくということになろうかと思います。

塩田委員 時間が参りましたので終わりたいと思いますが、ただいま御指摘を申し上げました件について、この基本法でなお検討すべきところがあるんじゃないかと思いますので、御検討をお願いいたしまして、終わります。ありがとうございました。

横路委員長 松本善明君。

松本(善)委員 まず最初に、基本法の提案者に伺います。

 我が国の犯罪被害者の権利保障は今非常に重要な問題になってきて、政府もいわば対症療法的といいますかそういう形で法案を出して、今回もかかっているわけですけれども、やはり国際社会から非常に立ちおくれているということはもう間違いない事実だろうと思います。そういう点で犯罪被害者の権利をはっきり決めた基本法の制定が必要であると私ども考えており、そして提出の法案については基本的に賛成であります。

 共同提案するについての協議の時間が十分とれないということでございまして、今回は共同提案になりませんでしたけれども、国連のいわゆる犯罪被害者人権宣言、これは国連総会で最終的に決まって、約百二十カ国、これが出ていますし、それにほぼ沿う形で日本弁護士連合会の基本法案要綱も出ている。言うならば超党派でこの基本法をつくるという、いわば国際的にも国内的にも条件ができてきているんじゃないか。

 そういう点でいえば、私は、いろいろ御意見が与党の方にはあるかもしれませんけれども、国連の人権宣言が理念と違うというふうにはなかなか、おっしゃっているのかどうかわかりませんけれども、そういうことではないのではないかなというふうに、善意にといいますか解釈をしているんです。そういういろいろな協議を通じて、やはり基本法を早く超党派的に成立させるような努力が必要ではないかというふうに思いますが、提案者はいかがお考えでしょうか。

細川議員 この基本法を早く早期に成立をさせなければいけないということについては、委員の皆さん方も大体一致をしているのではないかというふうに思っております。私どもも、この基本法をいわば超党派で成立させていただくということが一番いい形だというふうに思っております。

 それには、私どもは、この委員会でいろいろと議論をしていただきまして、修正すべきということならば、もちろんそういうことにも応じたいと思いますし、できるだけこの法案そのものが今国会でぜひ成立をさせていただけたらと思っております。

 まだまだ会期も十分ございますから、この委員会で参考人を呼んでいただくとかいろいろな形で審議もしていただき、そして最終的には皆さん全員で、超党派でひとつ御成立をということでお願いしたいと思っております。

松本(善)委員 外務省に伺います。

 この犯罪防止及び犯罪者処遇に関する第七回国連会議、コングレスで、再々この委員会でも問題になっております犯罪及びパワー濫用の被害者のための司法の基本原則宣言、いわば国連の犯罪被害者人権宣言が採択され、その後十回まで開かれているということであります。一回から六回までは法務省が参加をし、その後は、第七回からは代表団が発令をされて今回に及んでいるということですが、そのとおりであるかどうか、その経緯とそれから第七回以後の代表団の構成、こういうものについて伺いたいんです。

天野政府参考人 お尋ねのございましたコングレスに対する代表団の対応ぶりでございますけれども、基本的に、おっしゃいましたとおり第一回から第五回まで、正確に申し上げますと第二回からなんでございますけれども、当初、これは非常に専門的な会合だということで、法務省を中心に、法務省だけでなく警察庁の方も御出席になっていたと思いますけれども、十名程度の代表団を組んで出席をされていた。第六回の会合以降でございますけれども、多国籍企業の問題等、やや政治的といいますか、そういった問題が出てくるようになるという見通しがあったものでございますから、第六回以降は政府の代表という形にステータスを変えまして、それで対応してきているというところでございます。

 それから、出席の団の構成でございますけれども、調べましたところ、第一回は最高検察庁の刑事部長の方がヘッドになりまして六名ぐらいの代表団でございます。第二回も法務省の刑事局長、第三回は検事総長がヘッドになっておりまして十名内外の代表、第四回は法務事務次官がヘッドでございます。第五回は法制審議会の委員をされている方がヘッドになりまして団を組んでおります。第六回は名古屋の高検の検事長が首席代表ということでございます。

 以下、首席代表という政府代表の発令がある七回以降でございますけれども、第七回、先ほどのお話にございましたこの宣言が採択されたコングレスでは、当時の江幡検事総長がヘッドで十三名程度の代表団。ここでは法務省、警察庁それから現地、これはミラノで開かれましたのでミラノの総領事館、外務省からも担当者が出ているということでございます。以下、八回、東京高検の検事長の方が首席代表になっておられてやはり二十名近い代表、第九回は法務大臣が首席代表でございます。そして、一番最近の二〇〇〇年に行われました第十回は北島検事総長がヘッドで、このときは三十名程度の代表団になっております。構成は同じ、第七回以降、法務省、警察庁そして私ども外務省、あと民間の学者の方なども構成に入っておる、こういう状況でございます。

松本(善)委員 伺いますと、やはり法務省が中心的にこの会議には参加をしていたようです、もっとも警察庁も関与をしていたようですけれども。

 法務省刑事局長に伺いますが、この宣言には、国内法の規定に従って受けた被害の回復を受ける権利があるというふうに言っております。それから、いわゆる補償の問題については、わざわざ被害補償について一項起こして、

  次の被害者が、犯罪者またはそれ以外から十分な弁償を得られない場合には、国家は、経済的補償を行なうよう努力しなければならない。

  (a)重大な犯罪の結果、身体にかなりの被害を受け、または身体や精神の健康に損傷を受けた被害者

  (b)そうした被害のために死亡したりまたは身体的および精神的不能になった者の家族、特に被扶養者

ということで、やはりこれは見舞金というような考え方ではないというのが国際的な到達点ということではないか。アメリカもイギリスもその他の諸国も基本法を持っていますので、私は、我が国で基本法をつくらないということが理念的にあり得るとは到底思わないのですけれども、その辺はどのように理解をしているのでしょうか。

古田政府参考人 まず、犯罪被害の補償の問題についてでございますけれども、これは、この宣言が採択された当時のいろいろな世界各国の状況を前提としておりまして、やはりいろいろな国があるわけで、国によっては損害賠償制度が必ずしも整備されていない国やあるいはその周知が行われていない国、こういうふうなものもいろいろあったわけでございます。そういうことで、この損害賠償の問題というのは非常に重要な問題ということで、この宣言の中に取り込まれているわけです。

 また、ただいまお尋ねの補償のいわば政府による補てんのような点ですけれども、これはこの宣言自体にも一種の努力義務という形で規定されておりまして、そういう意味では、損害の賠償を受けられない場合に、国としていろいろな手段を使ってそれの補てんをするように努力するということでございますので、必ずしもかわって損害賠償をするというようなシステムということを予定しているものとは考えていないわけです。

 また、基本法についてのお尋ねですが、ただいま御審議中の法案につきまして法務当局としてコメントすることは差し控えたいと思いますが、私どもの考えといたしましては、やはり被害者の方々の現実のニーズ、これは多様なものがあるわけです。私たちの立場としては、やはりその現実のニーズというのをいろいろ伺って、それに実際的にできるだけこたえるということが私たちにとっては優先課題というふうに考えているわけでございます。

 また、この問題は非常に多岐にわたるわけでございまして、社会福祉の問題でありますとか教育の問題でありますとか、そういうような観点で、何かそういう分野でいわば社会的なリソースをフルに活用するというような観点もまた必要であろう。そういうふうな現実のいろいろな今ある制度を、さらに足りないところについてはこれを補っていくということが、まず現実問題としての被害者の方々のニーズにこたえていく上でぜひ必要だというふうに考えているということでございます。

松本(善)委員 私も、加害者にかわって国が完全に損害の補償をしなければならぬというふうには思いませんけれども、やはりこの宣言でも決めているような、いわば犯罪被害者の人権という観点からの施策というのは国際的水準がここまで来ているので、やはり日本の政府としてもそういうところまで行かなければならぬのじゃないかというふうに思うのです。これは条約ではありませんが、百二十数カ国が参加をした国連総会で決めている宣言ですから、やはり日本政府としてはそこへ到達するように努力をしていかなければならぬと思うのです。

 それで、警察庁に伺いますが、どうも法務省が中心だったようですが、警察庁も最初から参加もし、それから代表団が結成されるということになってからはきちっとメンバーにも入ってきたわけですから、やはりこの宣言を尊重するといいますか、その国際社会の到達した水準に近づいていくという努力をしなければならぬと思うのですが、今回の犯給法、犯罪被害者等給付金支給法の一部改正案を提案するときには、これは視野に入れて被害者の権利の問題も検討したのでしょうか。

田中政府参考人 先ほど来委員が御指摘の国連の基本原則宣言に設けられた事項に関しまして、警察庁といたしましても従前から、被害者対策要綱に基づきまして被害者の立場に十分配意した警察活動を行いますとともに、犯罪被害者等給付金支給法を適正に運用することなどにより、被害者に対する支援を図ってきたところでございます。

 さらに、今回の法改正につきましても、犯罪被害者給付制度を拡充するとともに、警察や民間援助団体による援助措置のための規定を整備することによりまして、被害者等に対する一層の支援を行うこととしております。今回の改正につきましては、これは国連の基本原則宣言に十分沿うものというふうに考えて、国会に提出した次第でございます。

松本(善)委員 政府案、閣法も一歩前進ということで私どももちろん賛成なんですけれども、ただ、やはり権利宣言をするということは非常に大事なことだと思うのです。憲法も、言うまでもありませんけれども、基本的人権の保障を明記し、そして二十五条では健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を保障しているというならば、やはり、憲法上の立場からも、この国連の人権宣言、犯罪被害者の人権宣言の方向で基本法が必要だと思います。

 その基本法が必要だと思うかどうか、あるいはそれは必要ないと思うかどうか、それは今提案されている基本法に賛成かどうかということではありませんよ。いろいろ中身を詰めた上で、そういう国連宣言に沿う形の基本法が必要だと思っているのかどうか、聞きたいと思います。

田中政府参考人 基本法につきまして、先ほど来法務省からもいろいろ御答弁ございましたように、いろいろな複雑な問題が絡み合っておりまして、これをどういうような形で全体として仕組みとして構築するかということにつきましては、社会保障制度の枠組みでございますとかいろいろな問題がございますので、これは、今、国会にも提出されております基本法がございますけれども、国会で具体的にいろいろなことで御議論を賜るべきものだというふうに考えているところでございます。

松本(善)委員 それは、法案を提出するにはいろいろな観点から議論するのですけれども、政府の考えの中に、犯罪被害者の人権、権利を規定した基本法、国連の人権宣言に沿ってそういうものをつくる、これは賛成してきているんだからね。さっきも答弁がありましたけれども、ほかから言われたんじゃなくて、自主的に賛成の立場で発言しているんですから、それを否定する考えがあるのかどうか、そのことを聞きたいのですよ。

田中政府参考人 先ほど来申し上げておりますように、この基本法の制定につきましては、政府全体として、さらには国会において御議論をいただく問題であるというふうに考えておりまして、現段階におきましてこれを否定するというようなことについては私どもは考えておるところではございませんで、これは真剣に御議論していただく問題だというふうに考えているところでございます。

松本(善)委員 日弁連なども改善意見も出して基本法の意見を出していますし、いろいろな意見を出していますので、それらの各界の意見を取り入れて基本法制定という方向に努力をしてほしいと思います。

 この際、ちょっと警察庁長官に伺っておきたいのは、奈良県警の贈収賄事件の問題で、前回の委員会で井上議員がかなり激しく警察庁長官を追及された。警察庁長官の答弁をお聞きしていると、ほとんど全面的に奈良県警の対応を擁護するという答弁でした。私はそんなことでは到底だめだと思って聞いておりましたけれども、当日、国家公安委員長に、逮捕もしないで贈収賄罪の捜査をするなんというのはもう常識外だと言ったら、国家公安委員長も同じ見解で、常識から外れていると言って批判をされました。

 その後の全国紙の社説も厳しい批判です。詳しくは紹介しませんけれども、朝日は「これで幕引きにするな」でしょう。毎日は「「警察再生」はかけ声倒れか」、読売は「これで警察改革ができるのか」、産経は「甘い捜査は警察崩壊招く」ですよ。みんな非常に激しい、この対応についての厳しい批判ですよ。その後も、神奈川県警の婦女暴行事件だとかそれから覚せい剤を持っていたとか、警察の不祥事は相次いでいる。

 私は、警察庁長官がこういう前回の委員会で述べたような態度でいたのでは、これは絶対だめだ。どのような反省をしていられるか、ここで答えていただきたい。

田中政府参考人 御指摘の奈良佐川急便にかかわりますところの奈良県警職員にかかわる不祥事案につきましては、先般のこの委員会でもいろいろ御指摘がございました。問題の提起もなされたところでございます。

 この事件につきましては、本年初めに奈良県警におきまして端緒情報を入手いたしまして以降、鋭意、調査及び捜査の両面から事案の解明に努めてまいりました。これまでに警視二名にかかわる不祥事を解明し、一名については懲戒免職、他の一名については停職六カ月の懲戒処分を行いますとともに、事案を検察庁に送致したところでございます。

 この事案は、奈良県警の……

松本(善)委員 前回以降の反省ですから……

田中政府参考人 後で申し上げます。

 この事案は、奈良県警の幹部職員が、奈良県内の運送会社から給与名目で長期にわたり、かつ多額の振り込み入金を受けておりました。そして、一昨年来の警察不祥事の中でまさに組織を挙げて改革に努めているさなかに、依然として根拠のない入金を受けていたということで、まさしく常識では考えられない不祥事案でございまして、一昨年来の一連の警察不祥事によりまして国民から非常に厳しい批判を受けている中でございますので、非常に残念でありまして、極めて深刻に受けとめておるところでございます。

 御指摘の国家公安委員長の御答弁につきまして、ビデオ等で再現してみました。また、公安委員長からもお話を伺いました。これは、警察の刑事訴訟法あるいは刑法上の扱い、いわゆる刑事手続につきましての論及という側面よりも、むしろ、事件そのものが常識外れとの趣旨の御発言であるということでありまして、警察庁としても国民の常識として重く受けとめておるところでございます。

 現在、奈良県警はさらに調査を継続して行っておるところでございますが、警察庁としては、国民の理解が得られるよう、徹底した調査を行うよう奈良県警を指導してまいりたい、かように考えておるところでございます。

松本(善)委員 私も速記録を読んでいますけれども、国家公安委員長の発言は、やはり奈良県警の対応、これを厳しく批判をしているということは極めて明白ですよ。私は、今程度ではだめだと思うな、反省の程度が。それは警察の不祥事、後を絶たないですよ。贈収賄の捜査なんかもう警察はやらぬ方がいいわ、そんなやり方なら。

 率直に言って、警察庁長官がこの間のような発言をするのは、私は、職にそのままとどまれるかどうかというくらいの大問題だと思いますよ。下の方の警察官がどう思うか。それは、まじめに一生懸命やっている警察官もたくさんいるでしょう。私は、トップがそういう姿勢だったら、それは内輪の贈収賄罪なんてとてもとても捜査なんかできないと思いますよ。

 もう一回、ちゃんと答弁してください。

田中政府参考人 今回の奈良県警の具体的な事件につきましての刑事手続についてのお尋ねだと思います。

 これにつきましては、法と証拠に基づきまして厳正に対処すべく捜査を進めてまいりました。捜査を遂げた結果、本件につきましては、金銭等の収受は認められましたものの、具体的な便宜供与の事実が認められないことに加えまして、贈賄側の中心人物が病気の後遺症のため事情聴取ができなかったこと等の事情から、収受した金銭等のわいろ性、すなわち職務との対価関係を認定するに至らなかったという報告を受けているところでございます。

 しかし、警察官が被疑者の事案であることから、犯罪の成否について厳正な判断を求めるため、検察庁に送致したものでございまして、今後は、検察庁とも協議しながら、必要があれば補充捜査を進めるものと承知しておるところでございます。

 なお、逮捕等につきましては、先ほどお話がございましたけれども、刑事手続の上でその理由があり必要性があれば、当然にそれは一般論としては逮捕するものでありますけれども、今回はその判断に至らなかったということでございます。

松本(善)委員 今、永田町の常識は世間の非常識という言葉があるんだけれども、警察の常識は世間の非常識ということになりそうですよ。私は、そういう態度では警察の今までの不祥事を一掃するというようなことは到底できないということだけ指摘をしておきましょう。

 提案者に最後に伺いたいと思うんですが、今ずっとやってきましたように、犯罪被害者の国連人権宣言、これは非常に重要で、ここに書かれているように、やはり権利として、犯罪被害者の権利をきちっと明文化したそういう基本法がどうしても必要だろうと思う。いろいろな各党の合意が必要でしょうから表現その他はいろいろあると思いますけれども、やはりそういうような基本法が必要だと思いますが、その権利の問題、特に犯罪被害者の人権の問題について提案者はどのようにお考えか、伺いたいと思います。

細川議員 これは、国連の被害者人権宣言も参考にいたしまして、いわゆる被害者の権利ということにつきましては本法の法案の第二条に、「犯罪被害者等は、個人の尊厳が重んぜられ、被害の状況等に応じた適切な処遇を保障される権利を有する」、こういう規定をいたしております。この権利とともに、その権利をいわば保障するということは、一方で国あるいは地方自治体にもその施策をきちんと実現する責務がある、こういう形で規定をしておるところでございます。

松本(善)委員 終わります。

横路委員長 北川れん子さん。

北川委員 社民党・市民連合の北川れん子といいます。よろしくお願いいたします。

 月刊世論調査というのが二〇〇一年三月号で犯罪被害者のことをアンケートした冊子を見せていただきました。そこで数字を見てびっくりしたんですが、現在、犯罪被害を過去五年間受けたことがあるかというふうに聞いた設問では、三三・九%がある、受けたことがないという人が六五%だったんですね。

 そこで、設問の項目立てを見たんですが、今、法案を提案しようと準備しているものに家庭内暴力があります。そして、去年制定されたものに児童虐待防止法等があります。そして、先ほども他の委員からありましたが、いじめの問題がありますね。例えば学校でのいじめや体罰の問題、そして企業やまた行政、働く場所でのいじめや暴行の問題等々を設問に挙げていくと、私は、この三三・九%被害を受けたことがあるという数字がもう少し上がるのではないか、そういう時代に日本が入ってきたということと、この犯罪被害者の基本法ができ得る背景というものを踏まえて御質問をさせていただきたいと思っています。

 まず、個々の条文の中の十二条に訓練及び啓発というのがございました。犯罪被害者やその親族ら当事者の声に真摯に耳を傾け、彼らが真に必要としていることに寄り添ったものでなければいけないと思うわけですが、具体的に衆法の提案者にお伺いいたします。訓練及び啓発とはどのようなものを想定されていらっしゃるんでしょうか。

植田議員 お答えいたします。

 今まさに北川さんおっしゃいましたように、訓練及び啓発というものは、当然、犯罪被害者、その親族、当事者の声に真摯に耳を傾けて、そして彼らが真に必要としていることに寄り添っていく、そういうことを具体的に現場でやっていかなきゃならないということに尽きるんじゃないかと思います。

 私どもこれまで、片山隼君の交通死亡事故や改造RV車の藤原裕喜子さんの交通死亡事故や、さまざまな犯罪の被害者のお話等々、またその状況などを見ておりますと、やはり、犯罪被害者に対応する刑事司法機関に対していろいろな疑問も出てくる。特に、例えばいわゆる刑事手続等の過程でも、被害者の心情、そういうことを踏まえて適切に対応しているか。例えばよく性犯罪で、やはり聞かれることは非常にしんどいわけですよね。そういうことを根掘り葉掘り聞くようなところで、それはまさに考えてみれば二次被害と言えるようなものもたくさんあると思うんです。

 そういう意味で、先ほどから何度も話題に出ておりますような国連で採択されましたいわゆる国連被害者人権宣言の中でも、警察職員、司法職員、保険職員、社会保険職員等に対して、被害者の要望に敏感になるよう訓練を受け、また、適切、迅速に援助をするためのガイドラインを作成すべきことというようなことも述べられておりますから、そうしたことも踏まえながら専門のプログラム等を、特に、今般の犯罪の状況、またその被害者の状況を踏まえて、早急にスキルをしっかりつくっていく必要があるんじゃないかというふうに考えているところです。

    〔委員長退席、中沢委員長代理着席〕

北川委員 いろいろ具体的にお答えいただいたんですけれども、この世論調査の中にもあったんですが、一番不安を感じるものの中に交通事故に不安を感じる人の数字が高かったということが現実にあります。交通事故の問題を犯罪と規定して見る社会に入ってきているということも含めて、今の御答弁、これからスキルを上げていくということでお伺いいたしました。

 次は、では警察庁の方にもお伺いをしたいと思います。

 家族のほかに、次に保護や救済、支援の手だてとして、市民、特に被害に遭った者として手だての窓口とされているのは警察でありますし、被害者の方も、警察や警察官というふうに二次的に家族の次に置いています。しかしながら、犯罪被害の警察への届け出、これは面倒だとか、しても仕方がないだろうということで、届け出をしない割合も八・二%と、約一割近くはしない。

 先ほど、提案者の植田委員の言葉の中にありましたが、性犯罪についてはなかなか親告するのが難しいということもありますが、この条文、十二条におきまして、今現在の訓練と啓発はどのようになっているのかをお伺いしたいと思います。

石川政府参考人 被害者に対する警察活動を実施する上での配慮の問題でございますけれども、これにつきましては、「捜査を行うに当たつては、被害者又はその親族の心情を理解し、その人格を尊重しなければならない。」ということを犯罪捜査規範に規定いたしております。そして、そのほか幾つかの犯罪被害者と警察が対応する場合の基本的な事項を定めておるわけでございますが、こういったような内容を第一線の警察官に徹底することが大変大事だということで、警察の学校教育あるいは職場教育の場におきまして被害者の心理やさまざまなニーズについて教養を実施しておるわけでございます。

 また、個別に、性犯罪捜査とかあるいは少年が被害者となった場合に、被害少年へどういう形の対応、支援をするか、あるいは被害者に対するカウンセリングをどうするかといったような事柄につきましては、専門的な知識を必要とする分野でございますので、そういう職務に従事する職員に対しましては、警察大学校等におきまして特別な訓練や研修の機会を設けているところでございます。

 このほか、警察署あるいは警察本部に有識者等をお招きいたしまして特別講演を伺う、あるいは被害者支援シンポジウムや被害者対策に関する部外研修会に警察職員が参加をさせていただくといったようなことで、各種機会を通じて警察職員に対する、被害者対策と私ども申し上げておりますけれども、そういう問題に対応するときのあり方について指導、啓発に努めているというのが実情でございます。

北川委員 今るるお答えいただいたのですけれども、現在、特に警察官になろうという気持ち、志を持つ方の場合、自分がある時点で被害に遭った、こういう理不尽は許せないから、僕は、私は警察官になろうということがあるかもわからないというふうに、今の御答弁をお伺いしていてふと思ったのです。

 今、警察大学校の中にはそういうプログラムがあるということなのです。行政の中でもキャリア、ノンキャリアの問題が出されていますが、警察の中にもキャリア、ノンキャリアの問題があると思うのですが、警察大学校の中ではあるということなのですが、自分が被害者に立ったケースを経験している、そういう警察官というのはアンケートをおとりになった実績というのはおありになるのでしょうか。具体的にちょっとお伺いしてみたいと思いますが、いかがでしょうか。

    〔中沢委員長代理退席、委員長着席〕

石川政府参考人 そうしたことをシステマチックに調査とかアンケートという形で行ったというのを私は承知をいたしておりません。

 ただ、承知をいたしておりますのは、警察を志望する若い方々の中に、自分もしくは自分の身の回りで犯罪が発生をして被害を受けられた方があって、それに対して警察がいろいろな対応をしたということについて、自分もそういう形で社会のためになりたいというようなことを胸に抱いて志望してきている人がいることは事実でございます。

北川委員 そこら辺が本当に大事なポイントだろうと思います。

 今、被害と加害の輪というものがありまして、加害者にいろいろ話を聞いていけば、以前に被害に遭ったことがあるというケースが多いということも含めまして、被害と加害の連鎖を切るということで、私は、社会の中のそれぞれの権利意識、加害者の権利意識、被害者の権利意識を、ともに被害者にも加害者にもならない時代というものをつくりたいという思いでこの基本法には賛成しているということで、ぜひ具体的な対応策としての訓練、啓発をお願いしたいと思います。

 次に、十三条には教育と啓発というのがございました。それで、また提案者の方にお伺いいたします。「犯罪被害者等の権利に関する国民の関心と理解を深めるために必要な教育及び啓発に努める」とありましたが、具体的にはどういったものを想定していらっしゃるのでしょうか。

植田議員 お答えいたします。

 まず、いわゆる犯罪被害者を守る国民的合意というものがやはり必要だろうというのが問題意識の根底にあります。といいますのは、必ずしもそれが合意されていないのじゃないかという、要するに、被害者が御遺族を含めてさまざまな被害を後で受けるような、そういう事例というものが私たち承知していることはたくさんあると思うのです。

 例えば、埼玉の桶川市で起こったストーカー殺人事件。これは、事件発覚後、テレビや週刊誌がばあっとやってきて、葬式にだってカメラの放列が並んで、実際の参列者の方が行けないような、そんな状況もありましたし、また、東電OLの殺害事件では、個人のプライバシーがいろいろな形で暴かれて、要するに、犯罪の被害を受けた方がそれこそ自分の今住んでいたところに住んでおられないような状況になってくる。周囲がやはりそういうことで好奇の目で見てしまう。特に、恐らくこういう意味では、女性の方が被害者になった場合、よくこういう話があると思うのです。彼女にもすきがあったからこういう目に遭ったのだみたいなことが平然と語られるようなことがまだ十分払拭されていない、そういう背景があると思います。

 そういう意味で、この教育、啓発というものは、先ほども申し上げましたけれども、そういうスキル、また、先ほどお役所の方からもお話ありましたけれども、そうした専門の人材の育成、また要員の確保等々含めて、また、社会教育、学校教育の中で、いわゆる人権教育の中にも、そうした犯罪被害による被害者の人権の確保というものについてやはりカリキュラムの中にきちっと入れていくことが必要だと思うのです。

 それと同時に、やはり我々が認識しなければならないのは、いわゆる犯罪の被害というものは、何も必然的に被害者になるということではなしに、いつ偶発的に、突発的に、例えば私があしたどこかで車にはねられるかもしれへんし、北川さんにひょっとしたらストーカーがいるかもしれない、そんなことがあるかもしれないわけです。そういう意味でだれしもが当事者になる。そうしたところから、やはり学校教育、社会教育の中できちんとそういうものを人権教育の枠組みの中にも位置づけていくということがまず一番最初に必要なことではないかと考えているところです。

北川委員 学校教育の中に入れていただくということで、先ほど私も言いましたように、学校の現場の中にいじめと体罰の問題があります。すごい教材という意味からしても、具体的に学校の中に犯罪というものが起こり得る土壌ができているということでは、学校の中でこの教育、啓発をどう行うかというのは重要なポイントだろうと思いますので、ぜひ議論を深めていった施策を持ち込んでいただきたいと思っています。

 先ほど植田提案者の話をお伺いしておりまして、私も思い出したのは、美人女子高生コンクリート殺人事件というのがありました。女性の場合は、被害者になっても美人か美人でないかということが大げさに報道されるような、そういうまだ日本の女性の人権がおとしめられている状況であるということも含めて、被害においては女性、男性は関係ないということを明確にできるような時代を私は女性の立場からもつくっていきたいとも思っています。

 そこで、先ほど、被害の親告をしない人が約八・二%、一割いるということの中に、自分にも落ち度があるのではないかというふうに錯覚してしまうような社会のシステムがあるのですね。ということで親告しない人もあるし、起訴、不起訴までがすごい長い時間がかかるということもあると思いますので、次に、法務省の刑事局長へも関連質問をしたいと思っています。

 去年、二〇〇〇年の五月に被害者保護法が二法できたわけですが、これを知らないと答えた人も、逆に言えば、このアンケート調査の中に四一・四%というふうに出ていました。一年弱ということになりますが、まだまだ周知徹底がなかなかできていないというのが日本の中の現状ではないかと思います。国会の外に法案が歩かない、そういう状況が特にあるのではないか。特にまた、犯罪被害に対しては、自分の方が悪かった、悪いのではないかと思うような錯覚に陥るという土壌がこの日本の国にはまだまだあるということも含めて、法務省の中ではこの教育、啓発にどのように取り組もうとされているのか。

 そしてまた、警察以外への要望の中の第一位、四七・九%が被害補償に関する手続の教示や援助を教えてほしいというのがありました。これも多分法務省管轄だろうと思いますので、あわせて、教育、啓発についてはどのような施策を今現在お持ちなのか、お伺いしたいと思います。

古田政府参考人 まず、ちょっと一般的な話になりますけれども、御存じのように、法務省は、いわゆる人権擁護もその所管事項に……(北川委員「声が聞こえなかったので」と呼ぶ)人権擁護です。失礼しました。そういう観点から、特にいろいろな意味での人権、これを大事にしていかなければならない。この中には当然、犯罪によって被害を受けた方の人権ということも含まれるわけでございますが、そういう意味での啓発活動というのは毎年行っております。また、社会を明るくする運動というのをずっとやっておりまして、これも、特にこれは少年非行に絡むことではありますが、要するに犯罪のない社会、したがって犯罪の被害に遭わない社会、そういうようなものをつくるためのいろいろな啓発活動というのもやっているわけでございます。

 そういうような点で、法務省といたしましては、いろいろな観点から犯罪の被害の深刻さということは訴える、そういう啓発活動を続けてきているわけですが、それに加えまして、被害者の方等につきまして、例えば法務省、検察庁で実施しておりますいろいろな通知制度、その他の周知徹底を図るためのパンフレットの配布とか、そういうようなこともやっております。

 それと、ただいま御指摘がありました、犯罪の被害の実態について、暗数がどの程度あるかという調査をしたり、あるいは犯罪被害についての世論調査等もお願いいたしまして、こういうふうないろいろなアンケート調査それから世論調査、こういうことがまた一方で国民の皆様がその問題を考えていく契機になると考えておりまして、そういうような努力を重ねているところでございます。

北川委員 今、あらゆる人権を法務省は確立しないといけないので大変だというのが前ぶれにあったような気もしたわけですが、よく人権啓発の期間ということで、十月ごろですね、されますが、地方にいると感じるのは、もうとても形骸化した、民生委員や担当の人権擁護委員や、各地のそういう既存の人たちを集めての講演会を一回持てば、それでとりあえず啓発、教育をやったというような感じの法務省の姿勢というものが、私などは地方に住んでいて思うものですから、時代が新しくどんどん動いている中で、新しく躍動感を持って、人間になるためには何が必要かということだろうと思うのですね。

 犯罪というものが人間的な要素を疎外する要因になるという立場に立てば、では、犯罪を起こさないようにするにはどうすればいいかということも含めて、学校の中でのいじめやいろいろな問題が無視されていく中で、口だけ人権と言う法務省の言葉がむなしく感じるようなことも日々生活実態としてはあるということも考え合わせると、今の御答弁の中では、具体的には施策が余り持ち得ていない、特にこの犯罪被害においての施策というものは持ち得ていないのだなという気がいたしましたので、ぜひこの充実に努めるということと、学校現場での問題を解決するには法務省としてはどういうふうな取り組みが必要かということも、あわせて具体的に考える時代を迎えていただきたいという気がいたしました。でも、次に質問がありますので移りますので、今のは要望だというふうにお受けとめいただければ結構です。

 提案者にお伺いします。

 第十四条に調査研究の推進というのがありました。犯罪被害者への対策を検討、推進するため、基本的理念や総合的、統一的対策を確立していくことが必要となるが、これらのために犯罪被害者等に関する調査研究が犯罪被害者支援に欠かせないというふうに思います。いわゆるどのようなものを想定していらっしゃるのか、これも具体的にお伺いしたいと思います。

植田議員 いわゆる日本で犯罪被害者学と呼ばれる分野では、やはり欧米に比べて二十年は出おくれているということが先ほどの議論の中でもあったと思います。よくそう言われております。ですから、諸外国での研究成果等々も、やはり日本の現状に反映していくことも必要だろうと思うのです。

 ただ、この提案者になるに当たりまして、結構意外と、法務省さんの法務総合研究所研究報告なるものもありまして、なかなか大部なもので、私などは日ごろ法務省さんの人権擁護行政に余り敬意を払ってへん方なんですけれども、この研究については非常に私は重要なものだと理解しておるのです。ただ、数値だけではなくて、例えば被害者、またその御家族等々に直接面接調査をするとか、なかなかつらいことかもしれませんけれども、そうした実際のところにやはりフィールドを生かしながらやっていくことで、事例を積み上げながらやっていく研究調査というのも必要になるかと思うのです。

 先ほど北川さんからお伺いありました訓練、啓発、教育、啓発というものについても、ここでの調査研究によってきちんとしたスキルを開発して、そしてそれを踏まえていわゆるそうした相談、ケア、リハビリの体制、そしてその人員の確保というものはできるわけですから、そしてその結果、教育、啓発なり訓練、啓発というのは具体的に展開されるということになりますから、この調査研究というのは、かなりこれから細部にわたって詳細な対応、個々の事例によってやはり違ってくると思いますので、そうしたことを踏まえてきっちりとやっていくべきだというふうに考えています。

北川委員 諸外国のをそれぞれ検討してという御提案もあったのですが、私は、それも必要であろうと思いますが、日本の中での差別構造、差別構造が生む犯罪というものが確かにあるわけですから、独特の日本の中での風土というものの分析も諸外国との対比の上で行われていくのであろうと思いますが、ぜひその視点も持ち合わせて進めていっていただきたいと思います。

 では、同じ質問なんですが、法務省と警察庁の方にお伺いしたいのですが、調査研究の推進ということについては、メディアやマスコミ対策ということも重要なポイントになろうと思います。

 先ほどの桶川のストーカー事件や、いろいろ二次的や副次的な被害というものが具体的に、女性が被害者になれば特に起こるという事態にもなっています。そういう意味でも支援や対策の調査研究は必要と思いますが、具体的に今現在はどういう調査研究、先ほど、すごい法務総合研究所研究報告なるものが出ているということなんですが、これを具体的に市民社会生活に持ち込むというか、市民がわかりやすく理解でき得るものにしていただかないと、こういう報告書はある専門家の中だけの生きたものにしかならないと思うのですね。それを含めて、今現在の調査研究についてどのように励んでいらっしゃるかをお答えいただきたいと思います。

石川政府参考人 被害者あるいはその御遺族、御親族、そういう方々の置かれた状況を把握いたしまして、そのニーズに合った施策を推進していくというためには、各種調査研究は大変大事なものだというふうに認識をいたしておりまして、従来から、学識経験者あるいは実務家の方々とも連携をいたしまして、諸外国における犯罪被害者対策に関する調査研究というのを基礎的研究としてやってまいりました。また、個別の類型別の研究といたしまして、殺人とか性犯罪等の被害類型ごとの研究も行っているところでございます。

 警察庁には科学警察研究所という研究機関がございますが、ここにおきまして、平成十年と平成十二年の二回にわたりまして、先ほどもちょっと御答弁申し上げましたけれども、地下鉄サリン事件の被害者あるいは御遺族の方々の被害実態に関する調査を実施したというようなこともあるわけでございまして、こういう個別事件についての調査研究をも通じまして、より実践的なと申しますか、機能するような被害者支援のあり方についていろいろ勉強してまいりたい、今後そういう調査研究を充実してまいりたいと考えておるところでございます。

古田政府参考人 法務省におきます犯罪被害の実態等の調査研究でございますが、これは、先ほど提案者の方からも御引用のあった、法務総合研究所でやっておりますこの研究が最も膨大なものでございます。

 その一環といたしまして、具体的に犯罪被害者、犯罪に遭われた被害者の方々にアンケート調査を実施する、あるいは先ほど申し上げましたように、暗数を含む犯罪被害の実態調査を実施する、こういうふうなことをいろいろ積み重ねておりまして、その結果につきましては、全貌をまとめたのが先ほど御引用のありました研究報告でございますが、その中で重要なポイント、これにつきましては、よりわかりやすくするために犯罪白書がございますが、いわばこれに要点をよりわかりやすい形で掲載して、国民の皆様の御理解にできるだけ資するように努めているところでございます。

北川委員 人生において、警察や例えば裁判所に自分が何らかの形でかかわるという一生を送るなどというのは、余り普通は思わないで過ごすということだろうと思いますが、昨今になって、警察や例えば裁判所等にかかわる前向きなかかわり方ということも、実践的にやっていらっしゃる方から学ばせていただくという時代にも入ったという点からも、先ほど言われた犯罪白書等の活用の仕方なども、ぜひ教育現場などにも持ち込んで、犯罪を起こすことがどういうことにつながるかということの意味づけも含めて、そういう義務教育年代の若い世代に向けての発信も警察、法務省等々にお願いしたいということを要望に挙げておきたいと思います。

 では次に、今回の基本法の中に民間の団体に対する支援と施設等の整備という問題が含まれていますので、それをあわせてお伺いをしたいと思います。

 NPOやNGOの民間団体が犯罪被害者等の支援に重要な役割を果たしてきましたし、実績を積み上げてきました。国は、これらの支援団体に対しての資金の融通など必要な支援を講じる必要があると思いますが、提案者の方はいかがでしょうか。

 また同時に、施設の整備というものが重要であろうと思います。特に、家庭内暴力における暴力事件や、そしてまた恋人や元恋人からの暴力事件、ストーカー事件など、反復継続して被害に遭ってだんだんと自分の人間性が失われていくというケースがあるわけですが、被害者の精神的な不安が解消されないものが多く事件としてあります。このような状況に対応するための施設などの整備をどのようにお考えになっているのか、あわせてお伺いしたいと思います。

植田議員 お答えいたします。

 まず、民間の団体に対する支援にかかわってでございますけれども、具体的な中身については、当然この基本法で規定されております審議会の中でいろいろな議論をしていくことになろうかと思いますけれども、おおむね考えられるところでいけば、いわゆる自治体からいろいろなそういう団体に対して支援措置をしていることについてきちんと国が支援する方法であるとか、財政的な、税制上の優遇措置を一定の水準を満たせば考慮するであるとか、また、何らかの形でそういう支援基金をつくる、そしてそれを運用するような、そういうふうに資金を確保する等々のことは考えられると思います。

 そして、その中で特に私どもが考えております再犯防止、阻止システムとして、民間で尽力している例えばアミティであるとかダルク、こうしたものへの支援というものも射程に入れていくべきなんじゃないかなというふうに考えているところです。

 続いて、施設の整備にかかわってですけれども、やはりこうした施設、例えばDVとかそういうことになってきますと、そんなのはいつ何どき起こるかわかりませんし、大体そういうのは昼間起こりません。晩になりますよね。では、すぐにやはり駆け込めるようなところにそういう施設がないといけないわけですね。それこそ縁切り寺東慶寺みたいに、山越え野を越え川越えて、何日もかかって行ってやっとそこに逃げ込んだというような昔のような状況ではだめなわけでして、やはりすぐ行けるようなところに、しかも周りから見て余り目立たないような施設の方が私はいいと思うので、これは個人的な見解ですけれども、そういう意味で、民間シェルターみたいなものをつくって、緊急な場合、そこに駆け込めるような体制をつくっていく。そしてまた、カウンセリング、ケア、リハビリを行うような施設もきちっとこしらえていく。

 それらは必ずしも大きなセンターということではなしに、一つ一つのNPOが、それぞれの地域地域で、それぞれの地域の状況に応じてきめ細かな対応、また地域社会生活を支えていくようなものとしてつくっていくことが一番理想なんじゃないか。そして、そうしたものを直接間接問わず、これは先ほどの民間への支援にもまた戻るわけですけれども、そうしたものへの支援措置というものもその中でいろいろなケースごとに考えていくべきじゃないかと思います。

 いずれにしても、やはりすぐに駆け込める、そしてすぐに何らかの形で対応ができるような、そういう身近な施設というものはこれからかなり必要になってくるという認識でいるところです。

北川委員 どうもありがとうございました。

 時間が来たということで、法務省矯正局の方には再犯防止についての受刑施設内の取り組みということでお伺いをしたかったのですが、申しわけなかったです。またお伺いをしたいと思いますので、よろしくお願いします。

 どうもありがとうございました。

横路委員長 ただいま議題となっております両案中、内閣提出、犯罪被害者等給付金支給法の一部を改正する法律案に対する質疑はこれにて終局いたしました。

    ―――――――――――――

横路委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 犯罪被害者等給付金支給法の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

横路委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

横路委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、小野晋也君外五名から、附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。小野晋也君。

小野委員 ただいま議題となりました自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、日本共産党及び社会民主党・市民連合の各派共同提案に係る附帯決議案につきまして、提案者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 まず、案文を朗読いたします。

    犯罪被害者等給付金支給法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たっては、次の事項に配慮すべきである。

 一 重傷病給付金の創設等を始めとする今回の改正内容を踏まえた犯罪被害給付制度等全般について、国民への周知徹底を図ること。

 一 過失による犯罪被害や外国における邦人間の犯罪被害等に係る犯罪被害給付制度の適用については、今後引き続き注視していくこと。

 一 親族間の犯罪に係る支給制限については、深刻化するDV(ドメスティック・バイオレンス)等の現状及びこれに対する世論の動向を踏まえつつ、今後慎重にその在り方について検討を行うこと。

 一 犯罪被害に係る民間援助団体への被害者に係る情報提供に当たっては、プライバシーの保護に十分留意すること。

 一 犯罪被害者等に対する施策のさらなる充実のため、関係行政機関、民間援助団体等による総合的支援体制の推進に努めること。

 一 犯罪被害者等の福祉の増進を図る観点から、諸外国における例も参考にしつつ、犯罪被害者等に対するさらなる施策の充実について検討を行うこと。

 本案の趣旨につきましては、当委員会における質疑を通して既に明らかになっていることと存じますので、説明は省略させていただきます。

 よろしく御賛同くださいますようお願い申し上げます。

 以上です。(拍手)

横路委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

横路委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、政府から発言を求められておりますので、これを許します。伊吹国家公安委員会委員長。

伊吹国務大臣 ただいまの附帯決議の御趣旨を尊重し、委員会での御審議の内容を参考にいたしまして、本法律案の実施を初めとする犯罪被害者対策を円滑に推進するよう警察を管理運営してまいりたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

    ―――――――――――――

横路委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

横路委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

横路委員長 次に、内閣提出、宮内庁法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。福田内閣官房長官。

    ―――――――――――――

 宮内庁法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

福田国務大臣 ただいま議題となりました宮内庁法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 改正の第一点は、香淳皇后崩御に伴い、皇太后に関する事務をつかさどる皇太后宮職を存置しておく必要がなくなりましたので、同職を廃止することであります。

 改正の第二点は、皇太后宮職の廃止により、同職に置かれる皇太后宮大夫を廃止することであります。

 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。

 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願いいたします。

横路委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

横路委員長 本案に対しては、質疑、討論ともに申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 宮内庁法の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

横路委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

横路委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

横路委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十一分散会




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