衆議院

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第11号 平成14年5月17日(金曜日)

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平成十四年五月十七日(金曜日)
    午前九時一分開議
 出席委員
   委員長 大畠 章宏君
   理事 逢沢 一郎君 理事 小島 敏男君
   理事 渡辺 具能君 理事 渡辺 博道君
   理事 野田 佳彦君 理事 細野 豪志君
   理事 河合 正智君 理事 工藤堅太郎君
      岩崎 忠夫君    小野 晋也君
      奥山 茂彦君    嘉数 知賢君
      亀井 久興君    実川 幸夫君
      谷川 和穗君    谷本 龍哉君
      近岡理一郎君    西川 公也君
      宮本 一三君    望月 義夫君
      石毛えい子君    後藤  斎君
      藤村  修君    山花 郁夫君
      山元  勉君    横路 孝弘君
      太田 昭宏君    吉井 英勝君
      北川れん子君
    …………………………………
   総務大臣         片山虎之助君
   国務大臣
   (内閣官房長官)     福田 康夫君
   国務大臣         竹中 平蔵君
   内閣府副大臣       松下 忠洋君
   総務副大臣        若松 謙維君
   内閣府大臣政務官     奥山 茂彦君
   内閣府大臣政務官     嘉数 知賢君
   政府参考人
   (内閣官房内閣審議官)  藤井 昭夫君
   政府参考人
   (総務省行政管理局長)  松田 隆利君
   政府参考人
   (総務省自治行政局長)  芳山 達郎君
   内閣委員会専門員     新倉 紀一君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月十七日
 辞任         補欠選任
  古賀 正浩君     宮本 一三君
  仙谷 由人君     後藤  斎君
同日
 辞任         補欠選任
  宮本 一三君     古賀 正浩君
  後藤  斎君     仙谷 由人君
同日
 理事阪上善秀君四月二十六日委員辞任につき、その補欠として小島敏男君が理事に当選した。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 理事の補欠選任
 政府参考人出頭要求に関する件
 個人情報の保護に関する法律案(内閣提出、第百五十一回国会閣法第九〇号)
 行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案(内閣提出第七〇号)
 独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律案(内閣提出第七一号)
 情報公開・個人情報保護審査会設置法案(内閣提出第七二号)
 行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第七三号)


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     ――――◇―――――
大畠委員長 これより会議を開きます。
 理事の補欠選任についてお諮りいたします。
 委員の異動に伴い、現在理事が一名欠員となっております。その補欠選任を行いたいと存じますが、先例によりまして、委員長において指名するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
大畠委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 それでは、理事に小島敏男君を指名いたします。
     ――――◇―――――
大畠委員長 第百五十一回国会、内閣提出、個人情報の保護に関する法律案並びに内閣提出、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案、独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律案、情報公開・個人情報保護審査会設置法案及び行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の各案を一括して議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 各案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官藤井昭夫君、総務省行政管理局長松田隆利君及び総務省自治行政局長芳山達郎君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
大畠委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
大畠委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。後藤斎君。
後藤(斎)委員 冒頭の質問でございます。幾つか基本点についてまず御確認をしたいと思います。
 きょう、マスコミの方もたくさんいらっしゃいます。私は、今一括して審議をされようとしているこの法案の処理そして必要性がまだメディアの皆さん初め国民の皆さんにも十二分に理解されないところもあり、そして、その必要性について、この何日か、また大きな国民的な議論を巻き起こしているというふうに思っています。
 一九八八年、もう十四年前に、行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律というふうなものが制定をされ、その当時は、まだコンピューター社会とは到底言えない、まさに電子計算機という中での対応でございました。そこで初めて個人情報の保護という法律の枠組みがスタートしたというふうに認識をしております。今、それから十四年、私が言うまでもなく、政府でも、電子政府、IT大臣もおられ、世界の有数な最高水準にITの水準を目指していくという中で、この個人情報保護が一括、行政、基本法を含めて本委員会にかかっております。
 三年前を私は思い出しながらこの議論を進めてまいりたいと思っています。三年前、住民基本台帳法、ちょうど五月か六月の当時の地行委員会だというふうに記憶をしておりますが、審議が進められ、その中でも、住民基本台帳法にかかわる問題としてプライバシーの保護等々が大変大きく国民的な世論を喚起し、そして当時の与党の大きな力の中で本案を修正し、住民基本台帳が八月五日に実施をされようとしています。
 まず、冒頭お尋ねをします。
 なぜこの時期に、大きな国民的な御批判が新聞、メディアを通じてある中で、この五法案を一括して内閣は提出をされ、そしてこれが国民的な生活にどんな意味合いを持っていくのか、その部分について、きちっとこの委員会でまず御説明を承りたいと思います。
竹中国務大臣 お答え申し上げます。
 もう言うまでもないことでありますけれども、日本は今まさに官民一体となりまして世界最高水準のIT国家を目指しているというところであります。IT担当大臣としてその任に私も当たらせていただいております。その基盤の法制として本法案の整備が急務になっているというのが基本的な認識でございます。
 平成十一年の住民基本台帳法改正法案の国会審議の際に、附則第一条第二項で、御承知のように、「この法律の施行に当たっては、政府は、個人情報の保護に万全を期するため、速やかに、所要の措置を講ずるものとする。」という旨の規定が追加をされました。民間部門を含みます包括的な個人情報保護法制の検討が国会の意思として政府に求められたというふうに認識しているところであります。
 したがいまして、今回立案をいたしました個人情報保護関連の五法案は、このような背景、経緯のもとで、官民を通じたいわば整合性のある個人情報保護制度を構築しようというものでありまして、そのIT社会のもとにおける緊要性というものを御理解いただきたいというふうに考える次第でございます。
後藤(斎)委員 小泉内閣、もうスタートして一年ちょっとになるわけですけれども、官房長官、小泉内閣は、官というよりも、官から民へ、国から地方へ、そして個人の尊厳や自律を積極的に支援するお立場にある内閣であるというふうに私は個人的に思っております。むしろ、それは所信表明や一連の大臣、官房長官の御発言の中でも明確であります。
 ただ、今ここまで官が、政も含めてかもしれませんが、国民から信頼性を失い、そしてこの個人情報保護法案や行政機関も含めて官の裁量権をむしろ増している、すなわち、細かい条文はきょうは御質問いたしませんが、行政府における目的外利用をかなり大きく認めている、それは私は小泉内閣の一貫した姿勢とある意味では違っているんじゃないかな。要するに、国民の危惧や国民の懸念というものを払拭して国民の自律を支援していく、プライバシーを保護していくというのが私は一貫した小泉内閣の姿勢だったというふうに理解しております。そして、今竹中大臣が、速やかに、包括的に、整合性を持ってという、必要性についてお話がありましたが、では、この個人情報保護法案、一括して提案をされているものがこれからの国民生活の中でどんな形で小泉内閣として生きていくのか、その点について官房長官にお尋ねをしたいと思います。
福田国務大臣 ただいま竹中大臣からも答弁ございましたけれども、この個人情報保護法案を含みます関係五法案、これは、コンピューターやネットワークを利用して大量な個人情報が処理されておりまして、個人情報の大量流出とか個人上の情報が売買される、そういうようなことが社会問題となっているわけでございます。そういう社会の不安感が広がっている中で、個人情報の取り扱いのルールを定めるということによって個人の権利利益を侵害することを未然に防止する、これが一番の目的なんであります。
 御懸念の官庁と申しますか、公の、公権力の裁量権が広がるのではないかというようなことを御指摘なさったのでありますけれども、このことにつきまして、各主務大臣による関与というものは、法の適正な運用に必要なもう最小限度にとどめるということになっておりまして、権限の恣意的な運用を認めるというものにはなっていないのであります。その点はこれからの審議を通じて明らかになるだろうというように思いますけれども、そういうことでこの法律はできているということをぜひ御理解をしていただきたいと思っております。
後藤(斎)委員 幾つかまず基本的な点について整理をしていきたいと思います。
 冒頭御指摘をした、今回の個人情報保護法案と三年前の住民基本台帳法の改正、これはある意味では今回の法律が必須条件であるというふうに認識しておりますが、この両法は具体的にどういうふうな位置づけになるのか、お尋ねをしたいと思います。
松下副大臣 本法案は、個人情報の適正な取り扱いに関する基本原則や国等の責務など、基本となる事項を定める基本法としての性格を有するとともに、個人情報取扱事業者に関する一般法としての性格を有するものである、こういうことでございます。また、本法案においては、個人情報の性格、それから利用方法などにより格別の措置が要請される場合には、個別法などにより必要な措置を講ずべき旨を定めているところでございます。
 したがって、住民基本台帳法は、住民データ等の個人情報の取り扱いについて一段と厳格な措置を規定するものでありまして、個人情報保護法案に対して個別法という位置づけになる、このように整理をしております。
後藤(斎)委員 今のようなお答えでは、先ほど竹中大臣がお話をされた、住民基本台帳法の国会の意思の中で今法案も提出がされてきたという点についてのお触れがなかったんですが、その点については、松下副大臣、いかがでしょうか。
松下副大臣 それはもう大臣のお話のとおりでございまして、平成十一年八月に住基法の一部が改正されまして、住基ネットの整備とか住基法上の個人情報保護措置というものがなされたわけでございまして、個人情報保護の万全の措置をとっていくということも含めて、個人情報保護の基本法というふうな一般法としての役割を持っている、こう思っております。
後藤(斎)委員 今のような流れで、今法案というのは、基本的にはその時代の、IT社会という流れもありますが、住民基本台帳法、三年前の国会の意思というものが大きく反映されているという松下副大臣、竹中大臣からのお話でありました。
 総務大臣、今、地方公共団体がこの住民基本台帳ネットワークシステムを進めているというふうに言われておりますが、昨年、日弁連が十二月末に調査をした中では、ことしの八月、まだちょっと難しいというふうな自治体が五割弱いるというふうな話もあります。総務省として、本当に全国一律で、このまま推移が進み、法案の処理としてはまだ着地点はわかりませんが、今のいろいろな自治体の動き等々を見て、八月五日からネットワークシステムが基本的に進んでいくというふうに本当に思っておられるんでしょうか。
 そして、今まで三年あったわけですよね。その中でどんな対応をなさっていたのか。半分の自治体が、いや、まだちょっと準備ができないかもしれないというふうな中で対応をなさっていく。その思いというのは、国と地方の関係はまだ必ずしも本当に分権が進んでいると言えませんから、総務省に聞かれれば、はいと言わざるを得ないのかなという点もあると思うんですが、その点はどうでしょうか、大臣。
片山国務大臣 今政府は、e―Japan戦略というのをつくりまして、それに基づくアクションプランというのをつくっていろいろなことをやっているんですね。その中の大きなテーマは、電子政府、電子自治体ですよ。国も地方も、申請、届け出をインターネットのオンライン化しよう、それで十五年度中にやろう、こういうことなんですね。半分は十四年度中にやろうと。恐らく十五年度末には、私は、国は九八%ぐらい、地方の方は九五%ぐらいオンライン化が進むのではなかろうか、こう思っております。
 そうしますと、オンラインに進むためには、結局、住民は本人確認が要るんですよ。本人確認を何でやるかというと、やはり行政機関が指定情報処理機関に確認をする、そこが住基のネットワークの利用になるんですよ。そこで、恐らく前よりはずっと各地方団体も本気になって準備に大わらわになったのは、この電子政府、電子自治体のことが一つ私はあると思うんです。
 今いろいろ聞いてみますと、指定情報処理機関においては、全国ネットワークの整備、ソフトウエア開発はほぼ終わった。また、各都道府県、市町村では、都道府県が都道府県ネットワークの責任を持ちますから、それももうほぼ終わりかけている。あるいは、既存の住基のシステムを直さにゃいけませんね、つなぐわけですから。これは市町村がやるんですけれども、これも、それに伴うテストをおおむね終了した。
 こういうことですから、私は、八月五日のこの施行は十分順調に行われていくのに違いない、こう思っておりまして、これから何カ月かありますから、最後の詰めをしっかりやりたい、こう思っております。
後藤(斎)委員 今いみじくも大臣がおっしゃられたように、この住民基本台帳ネットワークシステムは、基本的な本人確認というか住民票の写し的なもの、かなり限定された情報処理というので三年前スタートをしたというふうに認識しております。まさに、電子政府、電子自治体の中でほかに利用が広がっていく、これは当時の委員会、衆参含めて、政府が将来利用拡大を図ろうとしているのではないかという懸念の議論があったというふうに、当時私はいませんでしたけれども、お聞きをしております。
 まさに、大臣、そこの部分が一番、これだけ国民的な関心を呼んで、先ほどもお話ししたように、官だけではなく政の部分もそうかもしれませんが、その懸念が払拭されない。私は、個人情報保護の審議を実質きょうからスタートする、この部分は、三年前の部分とまさに、同じ議論ではありませんが、その部分よりもますます官や政の信頼性が失われている。ですから、冒頭、私は竹中大臣に、なぜこの時期に、三年後にというのがありましたけれども、三年ぎりぎりになって、いつもばたばたばたばたするという認識がやはり私は国民の方々からはあるのではないかなと思います。
 その点、大臣、必要な情報というものが、電子自治体、電子政府というものはわかるんですが、本来の住民基本台帳から逸脱は絶対しないんだということをこの場でお約束できますか。
片山国務大臣 個人情報保護法は一年前に出ていますよね。そういう意味では、今じゃないんですね。今出したのは、行政機関や独立行政法人が保有する個人情報の保護に関する法案、私どもの四法案を今回出させていただいたわけですけれども、そういう意味では、個人情報保護法制については一年前から御提出いただいて御審議をお願いしている、こういう状況です。
 そこで、このコンピューター社会、インターネット社会をどう考えるか。これを利用しない手はありませんよね、民に限らず、行政サイドも。そこで、私どもの方はしっかり、目的外利用を禁ずる、妙なことはやらせない、こういう担保があれば、できるだけこの本人確認を行政機関と指定情報処理機関でやってもらうのはいいことではなかろうか。この辺は、今までの考え方を少し修正していただく必要があるのではなかろうかと私個人は思っております。
 ただ、我々は目的のことしかやりませんから、目的外はやらせないということが、この住基法でも、今回の私どもの方の公的個人情報保護法でも、これは一貫しておりますから、そこの点はもうはっきりお約束いたします。
後藤(斎)委員 ちょっと申しわけありませんが、住基法の細かい点について、今回の個人情報保護法案との関係を整理させてもらいます。
 住民基本台帳法の中に地方自治情報センターの規定がございます。そして、そのデータベースが国の情報機関とネットワーク結合された場合、センターから本人確認情報の提供を受ける行政機関に対して、この行政機関の個人情報保護法案が適用されないのではないかという疑いというか懸念がございます。この点について若松副大臣、法律の中身、そして主としたこれからの運用について御答弁をお願いします。
若松副大臣 まず、ただいま御指摘のありましたいわゆる指定情報処理機関、現実には財団法人の地方自治情報センターが情報を管理するわけでありますが、住民基本台帳ネットワークシステムが保有する情報といたしまして、氏名、生年月日、性別、住所、住民票コード及びこれらの変更情報ということに限られておりまして、また、これらの情報の提供を受けた行政機関につきましては、法の別表に規定されております事務の処理以外の目的のために本人確認情報の全部または一部を利用してはならないと規定をしておりまして、先ほど申し上げました限られた情報の利用ということに限定されている制度でございます。
後藤(斎)委員 もう一点、細かな点について入らせていただきます。
 この住基ネットの導入によって、警察、これは行政機関であります。警察庁が各行政機関とネットワークを結合させて犯罪捜査以外に個人情報のデータベースすべてを検索されてしまう、それに対する懸念もあわせて指摘をされております。先ほども御指摘をしたように、行政機関の個人情報の方でも、行政機関内の利用ないし行政機関の間の相互の個人情報データベースの提供というのが、ややもすれば非常にノーズロに勝手にされてしまうという懸念が正直言ってあると思います。
 本当にそれを厳格にしていくという、先ほど若松副大臣、総務大臣もお答えをいただきましたが、特に警察との関係も含めて、もう一度御答弁をお願い申し上げます。
若松副大臣 まず、いわゆる個人情報、先ほどの地方自治情報センターが管理するところの情報でありますが、この個人情報保護のための必要な措置が、地方自治情報センターの業務をしっかりやるような観点からその措置が講じられているということは、先ほど申し上げた次第であります。
 さらに、行政機関が地方自治情報センターから提供を受けた本人確認情報、これにつきましては、住民基本台帳法の保護措置の対象になるとともに、行政機関等の法制の保有個人情報に該当しまして、行政機関等法制の規律による保護対象となっております。
 そして、今御懸念の現行の住民基本台帳法でございますが、本人確認情報の提供先といたしまして、警察庁や犯罪捜査の事務を規定しておりません。よって、警察庁が住民票コードを手がかりに行政機関の個人情報データベースを検索することはできないもの、このように理解しております。
後藤(斎)委員 今回の個人情報の保護制度の体系というのは、先ほどお話がありましたように、基本法、民間部分も含んだもの、そして行政機関、独立行政法人、そして地方公共団体の条例ということでピラミッド型の法体系ということで、これは総務省の方も整理してあるところ、これは何度か理解をしているところなんですが、実際、これがどんどん審議が進み、一方で、一番重要である地方公共団体の条例の部分、これは先ほどもお話をした日弁連のアンケート調査によると、個人情報保護の条例をきちっと制定をしている自治体はわずか二%。今後検討予定だというところも含めても検討中というのが三%。まさにこの五%という中で、政府が今お考えになられている基本法制、行政機関、独立行政法人、そして、一番国民生活に近い自治体の部分が、これからのきちっとした検討も含めて条例制定をするというところが五%しかないわけです。この部分がもしすぽんと抜け落ちて、このまま自治体でも個人情報保護の条例制定をしないというふうなことにならないように、やはり総務省も政府全体としても働きかけもしていくべきだと思うんですが、その点、総務大臣、どんなふうにお考えでしょうか。
片山国務大臣 何を条例の中身に決めるかということですね。法令で担保できないものは条例で決めなきゃいけませんが、それ以外の規則でも、あるいはほかの形もあります。
 ただ、この八月五日から住基システムに対する行政機関の本人確認が始まるんですが、これはもっとわかってもらわにゃいかぬと私は思っています、国民の皆さんにも地方団体の責任者にも。そういう意味で大いにPRいたしたいと思いますし、必要があれば条例制定を地方団体に指導いたしたい。ただ、そのためには何をどういうふうに地方団体で決めてもらうかということをまず検討いたしたい、こういうふうに考えております。
後藤(斎)委員 まさに今片山大臣がお話をされたように、今まで例えば三年間、当時総務省というのはありませんでしたが、住基ネットについても今回の個人情報保護法についてもそうですが、基本法についてはもう一年前に出して継続になって、新しく行政の方もいろいろな各審議会を通じて対応なさっていることは十分承知しています。
 この間、じゃ、政府として、住基ネットに懸念があるという国民の懸念、それはもしかしたら一部かもしれません、大臣のおっしゃるように。ただ、自治体の方も含めて十二分な理解がいまだできていないというのも私は事実だと思います。そして、個人情報保護法案の、行政も含めたものですが、この内容、趣旨についても、一般の国民の方、メディアの方も含めてそうかもしれませんが、きちっとした議論をする場、政府の意図をきちっと周知をする場をつくったりする努力というのが少な過ぎたんじゃないかと私は思うんです。
 それぞれ担当が違うので、簡潔に若松副大臣と内閣の方から、なぜこの場になっていろいろ言われながらやるのか。多分、官房長官や竹中大臣や総務大臣も若干ちょっと違うのではないかなという思いがあるのかもしれませんけれども、どういうふうにこれまでやってきたのか、きちっと説明を求めたいと思います。
若松副大臣 住民基本台帳ネットワークシステムの広報についてのお尋ねでございますが、現実に、平成十一年度の後半におきましては、まず、パンフレットを作成しまして各市町村等に配布させていただいております。また、政府広報の活用ということで、政府広報誌「フォト」への住民ネットに関する論文掲載を平成十三年度中にもさせていただきましたし、また、テレビ広報をテレビ東京で昨年の十二月に放映させていただきました。あわせて、各種イベントの活用ということで、これも昨年の十月でありますが、片山総務大臣出席のもと、日経新聞社の主催によります電子政府戦略会議の開催等、また、二十一世紀地域活性化フォーラム、第八回ICカード国際会議シンポジウム等ございまして、私どもといたしましては、さまざまな広報誌を活用しながらPRを行ってきたところでございます。
 そして、いよいよことしの八月からの住民基本台帳ネットワークシステムの実施を控えまして、住民向けパンフレットやポスターの作成、地方公共団体の広報誌等を通じた広報の強化等を地方公共団体と協力して実施しておりますし、さらに政府広報の活用も検討することとしておりまして、このシステムに対する国民の理解をさらに深めるべく努力してまいりたいと考えております。
藤井政府参考人 基本法制についての検討経過とPRの状況についてのお尋ねでございます。
 政府として基本法制の具体的な検討を始めたのは平成十一年からでございます。まず、骨格づくりの段階には、二回ぐらいの民間有識者等にお集まりいただいた検討のための会議を設けているということです。そういった会議の中で、まず、関係団体の方々からのヒアリング等を何回かやっているだけじゃなしに、会議自体、可能な限りメディアに公開するとか、あるいは議事録、関係資料、そういったものも公開するとか、あるいは、しかるべき段階、例えば中間報告とか報告書が取りまとまった段階には、パブリックアセスメントですか、それから記者に対する御説明、それから論説懇、そういったものをするとかいう形で進めていただいていたところでございます。
 また、法案が政府の中で立案された段階でも、その内容については、関係団体に御説明するなり、あるいはホームページに、QアンドAとか法案の概要とか、いろいろそういったものを載せるというような形で、できるだけ国民の皆様方に御理解いただけるように最大限の努力をしてきたと思っております。
 ただ、お尋ねのように、一般国民にまでこの法案の内容が支持されているかと言われると、そこはまだまだ内容の的確な御理解が進んでいるとは考えておりません。これからも、関係団体とか国民の皆様方に対するPRについては努力をしてまいりたいと考えておるところでございます。
片山国務大臣 先ほどちょっと、委員の日弁連の数字で五%というあれですが、平成十三年四月現在で、地方団体においては約六〇%が個人情報保護条例を制定しているそうだ、規則やその他を含めますと八〇%、こういうことでございますから、日弁連の数字はちょっと古いんじゃないでしょうかね。
後藤(斎)委員 その点はちょっと私、もう一度確認をしますが、最後に、官房長官、三年前、小渕総理は、住民基本台帳ネットワークシステムの実施は民間も対象とした個人情報保護に関する法整備を行うことが前提であるという国会でのお答えをされております。
 三年間たってしまったんですが、仮にぎりぎりの中でこの法案が通らなければ、住民基本台帳ネットワークは政府としては実施しないんでしょうか。それとも、法案が成立しなくても住基ネットは八月五日から実施するんでしょうか。それで、もし法案が通らないような場合は、内閣としてどんな形で責任をとられるんでしょうか。
福田国務大臣 平成十一年の改正住民基本台帳法案の国会審議におきまして、「住民基本台帳ネットワークのシステムの実施に当たりましては、民間部門をも対象とした個人情報保護に関する法整備を含めたシステムを速やかに整えることが前提である」、こういう総理答弁があったわけでございますね。したがいまして、住民基本台帳ネットワークシステムの実施に際し、個人情報保護法は成立していることが望まれているというところでございまして、法案の早期成立を図っていきたい、こういう考えでございます。
 このシステムの実施につきましては、改正住民基本台帳法それ自体は、公布の日から三年以内に実施すると規定してございます。また、全地方公共団体で本年八月の施行に向けて着実な準備が行われているというところでございまして、施行のおくれは大きな混乱を生じさせるということにもなりますので、そういうことから考えまして、改正住民基本台帳法の規定どおり、本年八月に住民基本台帳ネットワークシステムを実施する必要があるもの、こういう認識をいたしております。
後藤(斎)委員 質疑時間は終了しているんですが、官房長官、個人情報保護の法案の有無にかかわらず、成否にかかわらず住民基本台帳ネットワークシステムは実施するということなんですね。
福田国務大臣 我が国におきますIT化の進展は非常に目覚ましいのでございまして、この法律を整備することは急務でございます。よく御審議をいただいて、ぜひともこの国会で成立をお願いしたい、このように思っております。
後藤(斎)委員 答えていませんが、時間ですからルールどおりやります。来週、またきちっとお話をさせてもらいます。
大畠委員長 これにて後藤君の質疑は終了いたしました。
 次に、逢沢一郎君。
逢沢委員 自由民主党の逢沢一郎です。
 連休前に、個人情報保護法案、また、行政機関が持つ個人情報をいかに保護するかの法律案の提案理由説明を当委員会で行いました。連休を挟んだとはいえ、少し時間がたったわけでありますが、満を持してのいわゆる実質審議入り、こういうことでございます。
 国民も注目をしている今度の法律案、十分この委員会で審議を尽くして、今なぜ個人情報の保護が国を挙げて、官民挙げて必要であるのか、そのことを正しく国民、各界各層に理解をいただく、審議を通じて理解をいただく、そういう姿勢を大事にしていきたいというふうに思いますし、何といってもITの時代ですよね、ネットの時代。これにしっかり対応できる個人情報保護のシステムを立派につくり上げてまいりたい、そう心から願っているわけであります。
 実は、私的なことで恐縮ですが、私、自由民主党の情報化小委員長という仕事をやっていまして、けさも朝八時から党本部で半導体関係の方々と勉強会をしていまして、九時からのこの委員会でありますので中座をして急いでこちらに来たわけであります。産業の米と言われている半導体、今ちょっと韓国や台湾に押されてかつての勢いがないわけでありますけれども、情報家電なんという、将来の日本の産業を、あるいはまた経済や国民の所得を支えるとも期待をされている、そういう期待をされる分野がありますけれども、それにいかに半導体産業として対応していこうか、そんな議論をいたしておりました。
 とにかくITが物すごい勢いで、しかも世界規模で私たちの世の中といいますか社会を変えつつある、これはもう紛れもない事実だろうというふうに思うんです。人間には、いろいろな価値観とか人生観とか人生の目的とか、そういうものはもちろんあるわけでありますが、とにかく、産業の高度化、あるいは私たち国民の生活の利便を増すということを考えると、このITネットを生かしていくあるいはネットを活用する、そういう国づくり、また、社会の仕組みをしっかりつくり上げていく、これは、政治はいろいろな役割を負っておりますけれども、実は最も大切な、また喫緊の政策課題だ、そんなふうに認識しています。
 最近、もうホームページを持たない会社というのはちょっと珍しいですね。例えば、就職関係の資料を請求するのでもメールでやりとりをする。大学の入学願書のそれなんかも、何か手紙を書いてみたいな時代ではなくなってきた。本当に世の中は変わったなと思うし、政治家も、片山大臣も、竹中大臣はどうかあれですが、ホームページを持っているし、不肖私も逢沢一郎のメルマガというのをやっていまして、時々、きょうの内容は官邸のそれよりちょっといいんじゃないかなと思うようなこともあるわけでありますが、我々政治家の政治活動も、やはりネットの時代に対応してみずからその姿を随分変えつつある、これも事実なんだろうなというふうに思う。
 今から十年前、電子商取引なんと言ったってだれもぴんとくる人はいなかったんだろうと思うけれども、それが、企業の生産や、あるいはまた販売、流通、もう格段に生産性を上げる大変なツールとして脚光を集めています。
 長々と申し上げてまいりましたけれども、そういうことをつっと考えてまいりますと、いかにこれからのネット社会あるいはIT社会に日本が対応できるかどうか、これはもう二十一世紀の日本の、ちょっと大げさな表現になるかもしれないけれども、盛衰を決める、そうとらえてもいいんではなかろうかというふうに思います。
 そういう意味では、経済財政諮問会議でも、IT関連に投資をすれば減税をする、きょうのここのテーマにはちょっと外れますけれども、そういうことを考えていただいている。これはもう必要なことであるし、党の立場からも精いっぱい支援をしていきたい。そこに大変な眠れる需要があるし、それを引っぱり出していかなきゃいけない、当然雇用もついてくるということで、自信を持ってそこのところは進めていきたい。
 先ほど片山大臣も、中央だけではなくて地方のいわゆる電子政府化、これも進んでいるんだ、サポートしている、そういう御発言をいただいたわけでありますが、いわゆるe―Japan計画、その先頭にいわゆる電子政府づくりを走らせようということでやっている。適切な判断であるというふうに思っています。
 しかし、そういう時代になってくると、既に今でも、行政機関にも、あるいは、民間あるいは民間事業者と言ってもいいかもしれない、そこにさまざまな大量のデータといいますか情報が蓄積をされている。その中に、いわゆる今ここで議論をまさに始めようとしている個人情報もいろいろな形で実は蓄積がされているわけでありまして、それを適切に利用する、そしてまた的確に保護をしていく、ITが進めば進むほど、ネットの時代になればなるほど、その必要性、大切さ、これを疑う方は恐らくいらっしゃらないだろうというふうに思います。
 時々、テレビや新聞をにぎわわすニュースの中に、いろいろな顧客名簿がたくさんに流出した、あるいは、古いパソコンを買ったら中に昔の方が使っていた情報が残っていて、その中に病歴というのですか、あるいはどんな薬がなんて、そういうことも報道がされる、さまざまな事故と言っていいんでしょうか、あるいは問題と言っていいんでしょうか、そういうものが社会の中に散見をされる、そういう時代になってまいりました。したがいまして、官民両方でこの個人の情報というものをいかに保護をしていくか、そのことは喫緊の課題であるということを改めて申し上げておきたいというふうに思うのです。
 そこで、具体的な質問に入ります前に、とにかく国民的な注目が高いということもあって、いろいろな方がいろいろな意見をおっしゃっていただいている。それは必要なことだし、結構なことだと思う。某全国紙、有力紙も、具体的な形で、むしろ法案はこうあるべきではないか、そんな記事も掲載をされた、そういう経緯を承知しているわけであります。そのこと自体は私は必要なことだし、結構なことだと思うのだけれども、いよいよきょう、まさに三十分前に法案の審議が始まったばかりでありますが、ちょっと新聞報道を見ると、総理を初め政府の立場のある方が、ちょっと勇み足じゃないかなと思えるような発言をなさっているかの報道がなされているわけであります。
 官房長官は今ちょっと退出されているわけでありますが、しっかり原案を通したいと考えている、そう発言をなさっておられる。一方、大変この問題を熱心に考えていただいており、評価をしたい。熱心に考えていただいているということを評価したいという趣旨でおっしゃっておられるんだろうというふうに思うわけでありますが、一方、総理が担当大臣等々に幾つかの発言をなされている、あるいはまた幾つかの指示をしているんではないかというふうにとれる報道もあるわけでありますが、これは非常に大事なことでございますので、竹中大臣、片山大臣、総理あるいは官房長官の、この法案の審議に入る前に、何か個別具体的な指示なり示唆なり、そういうものがあったのかどうか、最初にちょっと確認、ただしておきたいというふうに思います。
竹中国務大臣 まず、ITに関しまして、その重要性を御指摘いただきまして、IT担当大臣としては大変大きな激励を受けたというふうに思っております。
 お尋ねの報道の件でありますけれども、一連の報道は十三日であったと思いますが、総理の発言をめぐってのものであるというふうに思います。
 この発言の趣旨は、前日の十二日に読売新聞に掲載された個人情報保護法等の修正試案に関して、その御趣旨は、非常に前向きに熱心に御議論をいただいている案である、よく勉強していくようにというような内容であります。この点については、十四日夕方の記者との懇談で、総理自身も、法案の修正を指示したものではないというふうに明確に述べていらっしゃいますし、同じ日の記者会見で、私自身も、勉強しておきなさいというお話をいただいたということを明確にさせていただいております。本日からの委員会の審議をしていただくことに備えまして、政府としても、読売新聞を初め関係方面から提出されている修正意見について十分勉強していくということは当然のことであるというふうに思います。
 現在の案は、政府として最大限の努力を講じた最善のものとして御提案申し上げているものであるということは言うまでもございません。
片山国務大臣 総理なり官房長官から私の方には何の話もありません。私の方の行政機関や独立行政法人が持つ個人情報保護法制につきましては、私どもは最善の案だ、こう思っておりますから、ぜひこのまま御審議の上、御採択賜るように心からお願いしております。
逢沢委員 両大臣からはっきりとした答弁をいただいたわけであります。
 この法律案は、前の前の国会に提出をされた、そういう経緯がございます。もちろん、与党としても、政府からの提案を受け、あるいは与党は与党として、いかに個人の情報を保護するか、そういうことについて党内で精査をした、そういう経緯があります。そのことをしっかり踏まえて今後の審議に臨んでまいりたい、そのように発言をしておきたいというふうに思います。
 さて、改めて担当大臣竹中大臣から、大臣の言葉で、今なぜ個人情報保護なのか、そのことについて国民にわかりやすく解説をしていただかなくてはならぬと思います。IT社会、ネット社会というものが将来どのような形になるか、それを大臣も頭の中に想定をされて今度の法律提案ということでありましょう。あるいは、OECDの理事会勧告、OECDが示している八原則というものもございます。まあ、世界の常識と言っていいんでしょうか、世界の潮流と言っていいんでしょうか、そういうものも恐らく念頭に置いての今回の法律提案であろうかと思いますが、それを踏まえてよろしくお願いをいたします。
竹中国務大臣 先ほど逢沢委員が、IT社会の重要性、その意義について非常に詳しく御説明をくださいました。まさに、ITの時代というのは、別な言い方をすれば、私たちの情報をデジタルな形で持って、デジタルな形で送って、デジタルな形で処理するということが技術的に極めて容易になった時代であるということに尽きているのだと思います。そういった観点からいいますと、個人の情報というのがデジタルに容易にだれにでも処理されるような環境が出現したことによって、個人の人格権というものを本当に問い直さなければいけない時代になったということが、世界的にこれは共通の認識として持たれたということなのではないかと思います。
 したがいまして、一九九〇年代に入って、アメリカ、ヨーロッパ、アジア等の多くの国で、そうした意味での個人の人格を守るための法整備が必要だ、法的枠組みが必要だということが非常に広く認識されるようになったということだと思っております。同時に、しかし、私たちの社会には、表現の自由、報道の自由、守らなければいけない重要な価値があるということも十分に認識をしております。個人の人格権を守る、しかし、報道の自由等々と両立させる、その非常に狭い道を探らなければいけない。これは大変難しい問題でありますが、各国が共通して直面している問題であるというふうに思うわけでございます。
 そうした観点からいいますと、今回の法案といいますのは、その狭い道を一生懸命模索した結果であって、先ほど申し上げましたように、政府としては最善のものと考えるものを出させていただいているということでございます。
逢沢委員 ありがとうございました。
 平成十一年に住民基本台帳法の改正案が成立をいたしたわけであります。随分あのときも議論がありまして、時間もある程度かかったわけでありますけれども、一生懸命審議をしてこの法案を通した。先ほど片山大臣が、官の側、行政の側もしっかりとしたネットワークを活用する、そのことがいわゆる行政の効率といいますか、生産性を上げていく、ひいては国民の利益に供する、そういう趣旨の御発言をいただいた。その趣旨に沿った住民基本台帳法の施行でなくてはならぬ、そんなふうに思っているわけでありますが、その法律案を審議する過程で、こういう住民基本台帳法が動くということになれば、それに相呼応する形で、やはり個人情報というものがしっかり保護されなきゃいけないじゃないか、こんなふうな議論が、当時の地行委員会なんでしょうか、間違っていたらちょっと訂正をいただかなきゃなりませんが、与野党挙げてのそういう認識であったというふうに私どもは認識をいたしているわけであります。
 改正住民基本台帳法を議論した際の経緯、そこから、ある意味では個人情報保護法という考え方、あるいはこれはどうしてもやらなければいけないという政府の姿勢というものがスタートしたと言っても過言ではないというふうに認識をいたしておりますが、改めて政府側からその経緯について説明をいただきたいというふうに思います。
竹中国務大臣 経緯についてのお尋ねでございます。
 委員御指摘のように、法案を立案することとなった一つのきっかけは、平成十一年の住民基本台帳法改正法案の国会審議の際に、先ほども申し上げました附則第一条第二項に次のような旨の規定が追加されたことでございます。「この法律の施行に当たっては、政府は、個人情報の保護に万全を期するため、速やかに、所要の措置を講ずるものとする。」この附則の措置は、同法の問題とは別に、民間部門における個人情報保護法が整備されていないこと等を背景に、民間分野をも対象とする包括的な個人情報保護法制の検討が求められたものであるというふうに理解をしております。これは、先ほど御指摘ありましたように、国際的にも整合性を持った個人情報保護法の整備が急務になっているという背景もございます。
 これらを踏まえまして、平成十一年七月に設置されました個人情報保護検討部会及び平成十二年一月に設置されました個人情報保護法制化専門委員会において専門的な検討を進めまして、その結果を最大限尊重しつつ、この法案を立案したところでございます。
逢沢委員 ありがとうございました。
 改めて、今法律案の提出に至る経緯について確認ができたというふうに思います。
 どうぞ参議院の方に対応ください。
 担当両大臣が参議院に対応されるわけでありますが、引き続き質疑を続行させていただきたいというふうに思います。
 さて、そこで、ではどんな手法、手段で個人情報をしっかり保護していくのか、いわゆるシステム設計、そのことに議論を移してまいりたいというふうに思います。
 先進諸外国、さまざまな法制を持っているようでありますけれども、伺うところによりますと、いわゆるEUに代表される包括立法方式、オムニバス方式、それからアメリカに代表される個別立法方式、大別すればこの二つの形態があるというふうに解説をされているようでありますけれども、我が国がいよいよこれから法制化しようとしている個人情報保護法案はどんなシステム設計になっているのか。EU型に近いのか、あるいはそうでもないのか、両方のいいところをミックスしているのか、そのことについて確認をしておきたいというふうに思います。
 また、やはりいろいろな考え方があると思うのですね。個別の業法でしっかりその中に書き込んでおけばいい、むしろその方が実用的であるといったような議論もあるということは承知をいたしているわけであります。今回我々が議論をしている法案はそういう形になっていないというふうに承知をしておりますけれども、どうしてそういう手段をとらなかったのか、あえてそのことについても明確な答弁を求めたいというふうに思います。
松下副大臣 個人情報保護制度の立法形式、今逢沢委員のお話しのとおりでございますけれども、諸外国の例を見てみますと、事業分野を特定せずに包括的に立法するEU型のオムニバス方式というのがございます。これは、一つの法律で公的部門と民間部門の双方を対象とするということですけれども、それと、もう一つは、個人情報の保護の必要性の高い特定の事業分野ごとに立法するアメリカ型のセクトラル方式が見られるわけであります。
 我が国では、IT化は社会全般にわたり進展しているというふうに認識しておりまして、セクトラル方式では個人情報の保護に欠ける分野が生じてしまうことになるというふうに考えました。このために、まず、民間のあらゆる事業分野を包括的に対象として必要最小限度の規律を設けることとして、その上で、保護の必要性の高い分野については、本法の規律を上回る措置を講じるための個別法を組み合わせるなどの、それぞれの分野の保護の必要性に応じた包括的でありながら多段階の実効的な制度を整備することとしたわけでございます。
 加えて、民間部門の制度につきましては、個人情報取扱事業者の自律性、それから民間団体による自主的な取り組みを尊重した制度としているということでございます。
逢沢委員 ありがとうございました。
 次に、監督機関のあり方について、これも確認をいたしておきたいというふうに思います。
 ここもいろいろな立場の方から議論をいただいているところというふうに承知をいたしておりますけれども、考え方の一つとして、新しいいわゆる第三者機関を設置して個人情報取扱事業者の監督に当たった方がいいのではないか、そういう議論がある。議論があるということは承知をいたしておりますけれども、あえてその第三者機関を置かない。これは行革という一つの大きな思想といいますか考え方もあるんだろうというふうに思いますけれども、そうではなくて、いわゆる業界、業を所管する事業所管大臣を主務大臣として今回の個人情報保護法の実効性をあらしめるという体系といいますか、考え方に法律は整理をされているわけであります。
 なぜこのような体制をとるということを選択なさったのか。非常に大切な部分だというふうに思います。それぞれの大臣のグリップの握りかげんに差が出てくるかもしれない。あるいは、大臣とて永久、永遠、不滅ではありませんよね。一内閣一大臣なのかわかりませんけれども、個人差というものがあってはならない。そういうものをどういうふうに確保、担保していくか。もちろん、そういうことを考えれば、第三者機関においても人が変わるという面では同じかもしれません。
 メリット、デメリット、あるいは両方の方式に、この部分ではこっちが有効だ、ここはちょっと課題があるけれどもこんな手段でカバーをすべきではないか、恐らく政府内でもそういう議論があったはずでございますけれども、国会に対し、国民に対し、わかりやすくそこのところを説明いただく必要があろうかと思います。よろしくお願いをいたします。
若松副大臣 まず、先ほど、官房長官または竹中大臣等から個人情報保護を中心とする説明がなされましたので、私どもは、行政機関に対する個人情報保護について説明をさせていただきまして、そして松下副大臣から同様の補足的な説明をさせていただきたいと思います。
 いわゆる個人情報保護と行政機関ということを比較いたしますと、個人情報保護法は当然民に関係するものでありまして、行政機関の方は官ということで、よく受ける批判が、民に厳しく官に甘くというふうに私どもは理解しております。
 それではそうなのかということでありますが、まず行政機関等の法制につきましては、民に比較いたしまして、まず、対象となる個人情報が、ペーパー、紙にいわば散在しているわけでありますが、そのような散在的に記録されているものにも拡大しております。そして、二番目といたしまして、行政機関の長の判断基準、手続を明確かつ厳格に定めております。三番目といたしまして、個人情報ファイルごとの区分管理を求めているなど、公的部門にふさわしく厳格に制度化している。
 それで、ちょっと関係している質問なので、後ほど松下副大臣からありますので。
 かつ、罰則でありますが、一番目といたしまして、行政機関につきましては、まず、個人情報のうちの個人の秘密漏えいに関しては、既に国家公務員法に守秘義務と罰則が設けられておりまして、これは国家公務員法第百九条で一年以下の懲役、それに対して民がこの法律の第六十一条の六カ月以下の懲役という形で、国家公務員に対する罰則規定も大変厳しく取り扱っております。
 一方、民間につきましては、いわゆる一般的な守秘義務はなくて、漏えい行為等に対しても、まず自主的な是正を求めておりまして、直接罰則で担保する仕組みは設けていない。
 以上の観点から個人情報保護及び行政機関の個人情報保護の比較をさせていただきました。
松下副大臣 本法の義務規定では、各事業者がその事業活動の遂行に際して遵守すべき個人情報の取り扱いを規律するものである。これは何回も申し上げたところであります。
 我が国では、既に各府省はそれぞれの所掌に応じて各事業者の活動に関する行政事務を分担しているところでありまして、事業活動に伴う消費者等の個人情報の保護に関する事務は、既存の事務と一体的に遂行することが合理的かつ効率的である、こう考えております。
 なお、新たな第三者機関の設置については、これは、既存の行政機関と事務が競合する、屋上屋を架することとなるのみならず、責任関係も不明確になるおそれがある。加えて、地方組織を含む膨大な組織の整備は行政改革の方向性にも反するということで、現在のような形にしたわけでございます。
 欧米等の事例もいろいろ研究しておりますけれども、裁判制度等の基盤となる制度も異なっておりまして、事前規制、届け出登録制度をとっているところもあるということで、各国によりいろいろな対応があるように聞いております。
 以上でございます。
逢沢委員 行政機関が持つ個人情報の保護に関することで、若干、先ほどの若松副大臣の答弁と重なるところがあろうかとも思いますけれども、大事なところでありますので、あえて質問を続けさせていただきたいと思います。
 いわゆる行政の民間との比較ですよね。ここのところが随分議論になっていると思うんです。民間部門に対する規律とどこがどういうふうに違うのか、きちんとここは整理をしておく必要があるんだろうというふうに思います。
 例えば、民間は何が規律の対象になるのか。端的に言えば、いわゆるデータベース化された個人情報ですよね。一つ一つの、個別のばらばらじゃなくて、体系的に整理をされた、データベースになった個人情報というものが言ってみれば対象なんだということがはっきりしているというふうに理解をいたしております。
 じゃ、行政機関の場合は、その対象というものがどういう整理になっているのか。そこはやはりきちんとしておく必要があると思うし、国民の間に誤解があってはならない。もちろん、行政機関で活躍される方の間に誤解があってはならないことは当然でありますけれども、そこを副大臣、明確にしておいていただく必要があると思う。
 あるいは、民間の場合は、先ほど申し上げたデータベース化された個人情報全体の包括的な利用目的等を公表する制度という位置づけでございますけれども、じゃ、行政の場合はそこがどうなのかということもはっきりしていただく必要がある。不開示等の基準、あるいは開示請求の手続、このことはどうなっているんだろうかということについても、あわせて御答弁をいただきたいというふうに思います。
若松副大臣 先ほど、民間部門と行政機関等の包括的な説明をさせていただきましたが、今逢沢委員の方からいわゆる個別的にということで、基本的な考え方、対象となる個人情報、規律の対象者、または開示、訂正、利用停止請求制度の基準、こういった観点から比較の説明をさせていただきます。
 まず、基本的な考え方でございますが、民間部門というものに対しては、個人情報の取扱事業者の自主性、自律性を尊重する、かつ、個人情報保護の観点から必要かつ最小限の規制を確立、このような観点に立っております。
 行政機関等につきましては、行政の公開性、透明性の向上の観点を加味いたしまして、個人情報の取り扱いに関し、個人情報保護の観点から厳格に制度化しております。
 対象となる個人情報でございますが、民間部門は、一定規模以上の体系的に整理された個人情報、いわゆるデータベース化された個人情報が中心となるということでありますが、行政機関等につきましては、行政機関の保有するすべての個人情報、先ほども御説明しました散在情報も含まれております。
 規律の対象者につきましては、個人情報取扱事業者ということで、これは報道機関等は適用除外となっております。それに対して、行政機関等は、すべての国の行政機関及び独立法人等というふうになっております。
 そして、開示、訂正、利用停止請求制度の基準等でございますが、民間部門は、必要かつ最小限の不開示等の基準、手続、具体的には事業者が定める、このようになっていることに対しまして、行政機関等は、不開示等基準、請求手続等について、透明性の向上の観点から明確化している次第でございます。
逢沢委員 整理をして体系的に御答弁をいただいたというふうに思うんですが、もう一つ、重ねて申し上げておかなくてはならないことは、いわゆる個人情報取扱事業者、民の方、民間の方は罰則があるんですよ。きちんとこれは、個人情報取扱事業者の義務ということで、時間の都合もありますので長々とは申し上げませんが、いわゆる義務規定に違反した場合は主務大臣による勧告、命令、命令に従わない場合の罰則を規定する、そういうことになっている。
 それに対して、行政機関というのは罰則がないではないか、民にはこういう罰則があって、罰則があるのは民だけでいいのかと。民と行政は、もちろんその性格あるいはまた活動の目的は違うわけでありますけれども、しかし、こんなことがあってはならぬわけでありますけれども、何か悪意を持って対応する公務員がいないとも限らない。そういうことは国民はすぐ想定をするわけであります。
 そういうところから、やはりどうも国のやることは民にきつくて官に甘いのか、ちょっと短絡的な受け取り方ということになるのかもしれないけれども、一般にどうもそういう誤解を与える危険性もある。誤解があるとすぐその誤解を解かなきゃいけないわけでありまして、そこの部分についてきちんとした説明をしていただかなきゃならない。別のことで何か担保されているのか、そういうことについてはっきりとした答弁をお願いいたしたいと思います。
若松副大臣 罰則に関する民間と行政機関の比較の説明でございまして、これは大変国民の皆様の関心があるところでありますので、先ほどの説明と重複するところがあるかと思いますが、重要な点ですので、再度説明をさせていただきます。
 まず行政機関についてでありますが、まず個人情報のうち個人の秘密の漏えいに関しましては、先ほど申し上げました国家公務員法等に守秘義務と罰則が設けられております。あわせて、個人情報そのものの漏えいを本法案で禁止しておりまして、その違反は国家公務員法等に基づく懲戒処分の制度で担保されております。
 一方、民間につきましては一般的な守秘義務はございませんで、漏えい行為等に対しても、まず自主的な是正を求めておりまして、直接罰則で担保する仕組みは設けておりません。
 以上の点を比較いたしますと、行政機関に対してより厳格な制度をしいていると私どもは理解しておりまして、官に甘いとのいわゆる一般で言われているような指摘は当たらないと理解しております。
逢沢委員 行政の方には、個人情報の漏えいに関しては、既に国家公務員法にきちんとした守秘義務があるし罰則もあるんだという御答弁をいただきました。大切なところだろうというふうに思います。当然のことでありますが、国家公務員法がきちんとワークをする、そういう仕組みといいますか体制づくり、しっかり対応をいただきたいということを指摘いたしておきたいと思います。
 さて、我が党の持ち時間、あと三十分弱ということでございますが、渡辺先生にかわる前に、最後の質問をさせていただきたいというふうに思います。
 いわゆる、今議論をいたしております個人情報保護法案、行政機関が持つ個人情報を保護する法律案とメディアとの関係であります。
 若干、冒頭、竹中大臣が答弁の中で触れられたわけでありますけれども、個人情報の保護、あるいは言い方を変えればプライバシーの保護と、いわゆる報道の自由、表現の自由、自由な取材、あるいはまた言論の自由、そういう表現もあろうかと思います。これをいかに両立させていくか。非常に大事な観点でありますし、また、この部分について国民の各界各層からさまざまな議論が沸き起こっている、あるいは、率直に申し上げて懸念もいささか表明をされておるということは、私も承知をいたしておりますし、両副大臣初め政府側もそのことは十分認識をされておるというふうに思います。
 もちろん、法律の中にはきちんと、報道や政治、宗教、まあ学究、研究、そういうものは義務規定は適用除外をされている、そういうこともきちんと法律には明記がされているわけでありますが、なおその上でという議論が非常に厳しいということは率直に指摘をしておかなくてはならぬというふうに思います。
 この個人情報の保護といわゆる表現の自由、報道の自由をどうやって両立させていくか、また、両立ができるという判断、あるいはまた法律の体系になっているというふうに承知をいたしておりますけれども、どうぞ的確に、そしてまた簡便に、このことについてきちんと国民に説明をいただきたいとお願いをいたしておきたいと思いますし、また、この部分については、恐らく今後もこの委員会審議の中で、お互いもう少し突っ込んだやりとりを、与党の立場としてもしていかなくてはならぬという思いも持つわけでありますけれども、まず、審議冒頭といいますか審議初日に、このことについてきちんとした答弁を求めておきたいというふうに思います。
松下副大臣 大変大事なところでございます。
 この法案は、さきの本会議におきましても小泉総理も答弁されているとおりでございまして、表現の自由を侵害するものでもなく、またメディアを規制するものでもないということでございます。
 この法律案は、IT化が進展して個人情報がITにより処理されている状況下におきまして、個人情報を利用する有用性に配慮しつつも、個人の権利利益を保護することを目的としたものでございます。憲法十三条でも個人の人格権尊重がありますし、二十一条で表現の自由の保障ということがあるのも、このことを申し上げているところでございます。
 法案においては、メディアを含む万人を対象とする基本原則を定めておりますが、これは各人による自主的な努力を求めるにとどめておりまして、公権力による関与や罰則も一切ございません。また、報道分野につきましては、事業者に対する義務規定や主務大臣の監督を一切排除しているとともに、取材の相手方等に対する主務大臣の監督に関しても、表現の自由を妨げることがないよう配慮義務を明記してございます。
 このように、本法案は、表現の自由を侵したり、またメディアを規制するものでは全くないというふうに考えております。
逢沢委員 ありがとうございました。
 それでは、同僚議員に交代をさせていただきます。
大畠委員長 これにて逢沢君の質疑は終了いたしました。
 次に、渡辺具能君。
渡辺(具)委員 自民党の渡辺具能でございます。引き続き、与党として質問させていただきます。
 逢沢委員の質問の最後に、表現の自由と、人権といいますか、基本的人権といいますか、あるいは人格権という言い方も最近あるようでございますが、この二つの調整というか、そういう問題について質問がありました。私は、今回の法律の一番基本はこの論点ではないかというふうに思うわけです。いろいろな個別の話が出たとしても、最後は、この二つに対してどういうふうに考えていくかということがこの法律の議論の一番根本をなすものだというふうに思っております。
 そして、その点について、今この法律が提案された中で、いろいろな議論がなされております。特にマスコミはそういう観点から反対のキャンペーンを張っていると言ってもいいぐらいであります。私は、こういうことによって国民的な議論になる、議論が深まるということは大変いいことだというふうに思っております。
 ただ、難しいのは、表現の自由側の当事者がまさにマスコミでありまして、マスコミを使って国民的議論をする中で、マスコミ側が当事者であるだけにこの問題の難しさがあるのではないかというふうに思うわけです。したがって、マスコミも大変この記事の書き方については難しいというか、慎重にやっていただいているんだろうというふうに思うわけであります。
 国の法律を今から決めるわけでありますから、法律というのは、なるべく一人でも多くの方々の賛成を得ながら制定されるべきものだというふうに思うわけでありますが、今の状況を見ますと、少し残念な感じがするわけであります。いろいろな人がいろいろなことを言っておりますが、議論が深まるというよりは、言いっ放しじゃないかな。それに対する議論が深まるというところまではなかなかいっていない。特に、この法案を提出された役所側とマスコミ側の議論が深まることが一番いいことだというふうに私は思っております。
 したがって、最初に今回のこの議論について率直な感想を申し上げると、マスコミと政府がもう少し対話を深めることができないんだろうかという思いがするわけでございます。この法律の趣旨なり具体的内容について理解を深めるために、マスコミと政府がもっと対話できないだろうかということを思うわけでありますが、このことはまた後でお尋ねしたいというふうに思っております。
 先ほどから申し上げておりますように、この法案の基本的な論点は、憲法十三条に言われておる基本的人権と、二十一条ですかね、表現の自由、あるいはその周辺もありますが、この二つの衝突の問題であります。この二つの価値はどちらも重要であります。表現の自由が侵された社会というのはまさに暗黒の社会であります、恐怖の社会であります。したがって、特に当事者であるマスコミが心配し過ぎるぐらい心配するのも、私はむべなるかなという感じがするわけであります。しかし、また一方、基本的人権の重さも、これは比ぶべくものもないぐらいに重いわけであります。
 したがって、我々ははたと困るわけでありますが、こういう言葉がありますね。ペンは剣よりも強しというふうに言いますが、だからといって、ペンは基本的人権よりも強いというふうに言えるでしょうかということがこの法律の論点ではないかというふうに思うわけです。したがって、この委員会の場を使ってその点に関する十分な議論をすべきではないかというふうに私は思います。
 ところが、今マスコミの論調は、非常な反対の論調であります。しかし、マスコミの方々も、自主規制は必要である、あるいは、自主規制といいますか、先ほど申し上げている二つの大切なことについて調整を図る法律の制定も必要であるということをその公器の中で言っておられるわけであります。ところが、そういう立場に立ちながら、どうも論調は、政府が提案している法律をはなから問題にしないというか、出直してこいというような論調があるのはいかがなものか。
 これは、政府もいろいろな専門家を交えて、いろいろな専門家の意見を聞いて、長い時間をかけて、脂汗を流しながらこの法律案をおつくりになったんであろうというふうに私は思うわけです。したがって、せっかくこうやって努力の末提案された法律案に対しては、やはり具体的に、建設的に、この論点を明らかにしながら議論を深めることが大切ではないか。はなから問題にしないとか出直してこいとか、そういう論調があるとすれば、私は、ややどうかなというふうに思うわけであります。
 そういう意味で、先般、読売新聞がかなり具体的に、自分のところの提案も含めて提案がありました。私は、この提案は、この論争というかこの議論に一つの潮目をつくることになるのではないかというふうに思います。非常に議論が具体的、建設的になるという意味では極めて大きなきっかけになるのではないかというふうに思い、また評価もするわけであります。
 今まで私が申し上げてきたような論点で一番問題になるところは、この個人情報保護法案の四十条が一つの大きな精神になるというふうに私は思います。
 この四十条について、先般の読売新聞は具体的に提案をしておりまして、四十条は、政府の原案でいくと、表現の自由などを妨げてはならないことに「配慮しなければならない。」というふうに配慮義務規定になっているわけでありますが、読売新聞は、この「配慮しなければならない。」というところを切って、「妨げてはならない。」というふうに断定的にすべきであるという提案がなされておりました。
 私は、先ほどからくどく申し上げているこの二つの大切な権利についての議論でありますから、この辺についてぜひとも政府側の見解を示していただきたいと思うわけであります。
 先に、私の感じでありますが、読売新聞の提案である「妨げてはならない。」という断定的な言い方をしてしまうと、私は、やはり基本的人権の重さをやや軽く見ることになりはしないかという心配があるわけであります。しかし一方、「配慮しなければならない。」というふうに言うと、マスコミが心配だというふうにおっしゃるのは、やはりそうかなという気もしないわけではありません。
 我々は、いろいろな議論を聞いて、国民の負託を受けた議員として賛成か賛成でないかを決するわけです。私は正直に申し上げて、議員としても、賛成であるか賛成でないか、一〇〇%賛成だとか一〇〇%反対だとかいうことではなくて、やはりその中で葛藤しながら、どうもこの部分はどうかなということもありながら、最後はやはり大切なものを考えながら我々としても意思を決定するわけであります。
 そういう意味で、この辺は、いずれにしても、表現の仕方としてなかなかどちらがいいということは難しいところがある。だからといって、「配慮しなければならない。」よりももっといい表現があるかなと言われると、私もなかなか具体的には思い当たらないわけであります。そういう大変難しい問題だというふうに思うわけであります。
 そこで、この辺で質問にさせていただきますが、今まで私が申し上げたこと、いろいろなことを申し上げましたが、表現の自由と基本的人権の対峙の問題、あるいはマスコミの論調の問題、特に、この四十条において、「主務大臣は、」云々について「配慮しなければならない。」というふうにしておりますが、この条文に決定されるまでに至る背景だとかこの条文に込められた意図とか、そういうものも私はこの大変大切な論点であると思うだけに、この辺についてしっかりした政府の答弁をいただきたいというふうに思います。
松下副大臣 渡辺委員御指摘の憲法十三条の個人の人格権尊重の問題、そしてまた二十一条による表現の自由の保障の問題、これは大変本質的で大切な問題であるというふうに認識をしております。そういうことで、この法案の第三条には、基本原則の性格として、個人情報が個人の人格尊重の理念のもとに慎重に取り扱われるべきものであるということにかんがみて、個人情報を取り扱う者は、以下に規定する基本原則、五つございますけれども、にのっとり、個人情報の適正な取り扱いに努めなければならないというふうに書いてあるわけでございます。
 我が国憲法のもとでは、保障された表現の自由、学問の自由、それから信教の自由、及び政治活動の自由が尊重されなければならないということは、これは当然のことであるわけであります。この第四十条は、主務大臣がこれらの自由を妨げるような報告の徴収、助言、勧告または命令を行ってはならないということを定めたものでございます。
 本条におきましては「配慮しなければならない。」との文言を用いておりますけれども、これは、国の関与が直接表現の自由等の侵害をもたらす場合のみならず、これらの自由を妨げる可能性がある場合には主務大臣が権限の行使を行うことのないよう幅広く主務大臣を制約しようとするためのものでございまして、憲法十三条に言う個人の人格権尊重、二十一条の表現の自由の保障、これは大変大切なものとして認識している、そういうことでございます。
渡辺(具)委員 法律の制定もさることながら、私は、やはり運用上も十分慎重に、気をつけて、大いなる覚悟を持って、仮にこの法律が制定されたとすれば事に当たっていくべきだというふうに思います。
 この問題について、先ほど私も申し上げましたが、メディアも自主規制が必要だということで、もう十年ぐらいになるんでしょうか、そういう流れの中で努力をしてこられたというふうに思うわけであります。私は、本当を言うと、この自主規制の努力がもう少し進んでおったら、また別の展開にもなったのではないかという気もいたします。また、メディアの方も、こういう法律は必要だ、自主規制を促すような法整備も必要だということも言っておるわけであります。
 そこで、今回の個人情報保護法案は、五つの基本原則というものを書いて自主的な取り組みを求めるという形になっております。これは努力規定でありまして、私は、そういう意味では、マスコミが言っておられる自主規制の実態と基本的な部分についてはそれほど変わらないのではないかというふうにも思うわけです。自主規制しなけりゃいけないというふうにおっしゃっているわけだから、この基本原則を守ることについては、私は、実態的にはそんなに大きな差がないのではないかというふうに思います。
 しかし、そうはいいながら、こういう法律を書くということはある種の法的効果がないわけではないわけであります。仮に、この法律が制定されて、基本原則の努力規定に関して訴訟を直接起こすとか、そういうことは私はないんだろう、できないんじゃないかというふうに思うわけですが、その辺に関する政府の考え方を聞かせていただきたいというのと、しかし、何らかの法的効果はあるわけで、どういうところにそういう法的効果があらわれるのかというところをやはり我々としては考えていかなきゃいかぬ。
 例えば、ほかの法令に基づいて訴訟になった場合に、今回の法律がやはり裁判を進めていく上でかなり影響力があるかないかとか、どういうところに影響力があるのかとか、そういうことを慎重に考えておく必要は、私はこれだけの法律を、さっき私が申し上げたように、憲法に規定されている二つの衝突の問題であるわけでありますから、そういう難しい問題についてもぜひ検討を加えておく必要があると思うんですが、その辺について政府はどういうふうにお考えでしょうか。
松下副大臣 基本原則の問題でございますけれども、先ほどもお話し申し上げましたけれども、報道目的を含めた個人情報の有用性に配慮しつつも、個人情報を取り扱うすべての者が個人情報の適正な取り扱いについて自主的に努力することを求めるものであるということを書いてあるわけでございまして、何回も申し上げておりますけれども、この基本原則に基づいて具体的な義務が課されたり、公権力の関与や罰則が適用されるものではないということを繰り返し申しているところでございます。
 それからまた、基本原則によって、取材源の開示等の問題もお話がありますけれども、具体的な義務が課されるものではないことから、報道機関の取材それから報道活動の制限となるものではないというふうに考えておりますから、よろしく御理解いただきたいと思います。
渡辺(具)委員 今の答弁のほかにもう一つ、他の法令に基づいて訴訟が起きた場合、この法律の法的効果はどういうふうに考えておられるかという点については。
藤井政府参考人 努力義務違反があった場合に訴訟を起こすことができるかどうか等についてお答えいたしたいと思います。
 今副大臣から御答弁があったとおり、基本原則に違反したといってもそれは努力義務違反になっただけでございまして、それでもって具体的な権利義務関係が新たに発生するものではないというふうに考えております。したがいまして、それに違反したからといって直接だれかが権利利益侵害されたわけじゃないものですから、一般的にそれをもとに訴訟を直接起こすことはできないというふうに考えております。
 ただ、従来、別途プライバシー事件が既に発生していて、その事件に基づいて、例えば民法上の不法行為に基づいて損害賠償が請求されていたりあるいは刑法に基づいて名誉毀損の訴えがなされていたりする場合がございます。
 そういった中で、争点の一つとして、例えば取材方法が適法であったか、適正であったかということが挙がっていたりする場合は、学者の方の中には、そういった場合は裁判所の解釈原理になるのではないかというような御指摘があります。そういうことは私どもあり得るとは思っておりますが、ただ、いずれにしても、それは取材等が違法であったかどうかという場合の一つの判断根拠であって、それをもって即損害賠償請求あるいは名誉毀損というようなものの法的効果の構成要件に影響するというものではないというふうに考えております。
渡辺(具)委員 最後は裁判権にゆだねられるとは私も思いますけれども、そこがやはり国民にとっても非常に関心事でありますし、できたらまた次の機会にもう少し深めた議論を私はやる機会を持ちたいなというふうに思っております。
 それから、私は最初に、国の法律をつくるわけですから、一人でも多くの方々の賛成を得てこの法律は制定されなきゃいけないと思っているというふうに申し上げました。そういう意味で、今のマスコミとの対立と言うと言葉が悪いのかもしれませんが、そういう関係になっているのはやはり悲しむべき状態であるというふうに思うわけであります。
 そういう意味で、もっと政府はマスコミの方々などと、ほかにもあるかもしれませんが、対話を深めていくことが本当にこの法律を制定させる意味で大切なことではないかというふうに私は思うんです。今までは言いっ放しで、どちらかというと、マスコミはその手段を持っておられますので、やや一方的かなという感じがして、政府の見解がなかなか伝わりにくいということもありますが、この両者が対話を深めるということが大切ではないかというふうに思うんです。
 これまで、この法律案をつくる上で、一生懸命対話を進められたと思うんですけれども、どんな対話を進められてきたか、あるいは今後さらに対話を進めて理解を求めていかれる決意があるかどうか、この辺について伺いたいと思うんです。
 それで、今マスコミの方でもいろいろなシンポジウムなんかを開いて、有識者あるいは国民代表みたいな方もあるのかもしれません、あるいは政府も時には加わっておられるようでありますが、そういうシンポジウムが開かれております。そういうものは大変いいことだし、これからも大いにやっていただきたいというふうに思いますが、私は、先ほども申し上げてあるんですが、この問題で大変難しいのは、マスコミが当事者なんですよね。マスコミが当事者であるところに国民的な議論を展開する場所としてのメディアの使い方が非常に難しい、使われ方と言った方がいいかもしれませんが、非常に難しいと思うんです。
 だから、ちょっとくどいようですが、例えば新聞社がシンポジウムをお開きになるのももちろんいいんだけれども、それはやはり当事者が決めた場所とメンバーと箱の中というか、そういうところじゃない、第三者的な方々がそういう対話を深める場所を持つことが大切ではないか。我々もこの委員会で参考人質疑をすることにもなろうかと思います。我々としてもそういういろいろな方々の意見を聞く機会もあるんですけれども、それも必要でありますが、私は、政府とマスコミの対話を何らかの方法で深めることができないか。そして、まず我々のこの委員会でこの法律に賛成するかどうかを決める。我々はその委員であるわけでありますから、この両者の対話を我々が直接見たり聞いたり考えたり、あるいは参加できるというようなことが、これだけの重要法案ですから、あればいいなというふうに私は思うわけであります。
 そういう政府とメディアの対話を深めていくことについて、これまでどういう努力をしてこられたか、今後どういう決意で、この法律をつくるためにどんなつもりでお臨みになるつもりか、その辺についてお伺いしたいと思います。
松下副大臣 大変大事なことだ、そう考えております。この法案は、マスコミのみならず、広く国民の理解を得ていくということが大事だというふうに考えておりますし、今後とも、メディアの人たちとの対話、それから国民の方たちに理解していただくような、そういう努力というのはあらゆる機会をとらえてやっていきたい、こう考えております。
 今までの法案作成過程におきましても、高度情報通信社会推進本部、現在、これがIT戦略本部に改組されましたけれども、そのもとに置かれておりました個人情報保護検討部会それから個人情報保護法制化専門委員会を通して、計三度にわたってマスコミ関係団体からヒアリングを行ったというふうに聞いております。また、各団体に対しましても、大綱でありますとか法案の内容について、これは個別に数度にわたり十分な説明、意見交換を行ったというふうに伺っております。
 法案が、広く国民の理解を得ることが必要だ、メディアの理解も得ることが重要であると考えておりますから、今提案のありました、政府としても積極的に対応してまいりたいというふうに考えております。
渡辺(具)委員 これまでも努力をしてこられたということは理解できますし、これからも時間のある限り、この法律の制定のために、そういう実りのある対話を進めていただきたいというふうに思います。
 それから最後に一つ、先に個別法をやるべきだという話がありますが、私は、やはりこういうものは、最初に基本的な理念になる基本法を定めて、その後に、そういう基本理念が十分議論が尽くされた後で個別法というものを決めていく必要がある。特に十二条ですか、保護のための具体的な基本方針を施行までに定めることになっているようでありますが、そういう基本方針なども参考にしながら個別法というのは考えていかれるべきだというふうに私は思いますが、その点についてどうでしょうか、お答えいただきたいと思います。
 この質問をもって私の質問を終わらせていただきます。
松下副大臣 委員御指摘のとおりに、やはり一般法としての基本的な考え方、理念、そして基本原則といったものをまずきちっと整理していくということから個別に入っていくということは非常に大事だ、こう考えております。
渡辺(具)委員 ありがとうございました。
大畠委員長 これにて渡辺君の質疑は終了いたしました。
 次に、細野豪志君。
細野委員 竹中大臣、福田官房長官、大変御苦労さまです。片山大臣も御苦労さまでございます。
 きょう、個人情報保護法案の最初の質疑になるわけですけれども、三大臣、皆さん本当にお忙しく、出たり入ったりという若干落ちつかない委員会運営になっておりますが、実は、この委員会を始めるに当たりまして大変な議論がございました。この法案の基本法の部分の担当は竹中大臣、そして行政の部分は片山大臣がやられる。ただ、この個人情報保護法の持つ重要性を考えると、ぜひ福田官房長官にも御出席をいただきたいということで、この三大臣の方が、皆さんがそろうのを待ちに待った委員会の開催であるということを、ぜひ三人の皆さんに御理解をいただきたいというふうに思います。
 加えまして、初めに、私の方からこれは要望なんですけれども、きょうは、この三大臣の方に苦労して来ていただいたという経緯がございますので、私の質問は大臣に限らせていただきます。副大臣の方に来ていただいているんですが、大変恐縮なんですが、御質問はいたしませんので、ぜひ御理解をいただきたいと思います。要求していないのに必ず副大臣が来られるというのは、事情はよくわかるんですが、きょうはそういう出発点があったということをぜひ御理解いただきたいと思います。
 まず、福田官房長官に、改めて理事会の経緯というのを説明させていただきたいというふうに思うんです。なぜ福田官房長官に来ていただきたいかという点、これは理事会の中でさんざん議論いたしましたが、一言申し上げたいというふうに思います。
 まず、個人情報保護法は、これは必ずしもITに限った話ではございません。もちろん、データベース化されてそこで大量の情報が蓄積をされれば、それはパソコンの中に入るなりネットワークでやりとりをされるということでITとかかわりがあるわけですが、実際、紙ベースの情報も含めて個人情報というのは極めて価値が高いんだ、そういう認識においてはこれは必ずしもITの部分に限るわけではない。この点で、福田官房長官に一点、出てきていただきたいという要望をいたしました。
 二点目が、実はこれはメディア規制にかかわる部分が大変いろいろ議論を呼んでまいりました。今、福田官房長官は記者会見にも出てこられたわけですけれども、まさに政府の広報官としてメディアを担当されているのが福田官房長官でいらっしゃるわけですね。ここの部分で責任ある答弁をいただくのは、やはり御出席いただかなければいけないのではないかという議論がございました。
 三点目が、逢沢委員の方からも御質問がございましたけれども、主務大臣の関与というのがこの法案では大きく問題になってまいります。すなわち、それぞれの分野においてそれぞれの大臣がどういう御判断をするのかというのが、民間でも問題になるし、行政の方でもこれは問題になるわけですね。そういうものを総括的に、やはり共通の基準を持っていくためには、当然、官房長官のある程度の御判断が必要である。この三点でございます。
 竹中大臣がいらっしゃるので、若干ぶしつけな話になるかもしれませんけれども、初め、正直言いまして、私は、この個人情報保護法案が竹中大臣の御担当であるというのを聞いてびっくりいたしました。といいますのは、そもそも竹中大臣がITを御担当されているというのを、私はこの法案が出てくるまで知らなかったものですから、経済財政の専門家で、そこでまさに専門的な力を発揮されていた、それがメーンの方がITも担当されていた、しかも、それはそれでやっていただいたのなら結構なんですが、個人情報保護法という、メディア規制というのがこれだけ大きくなっている問題がなぜ竹中大臣の担当なんだろうかと率直に疑問を感じたんですね。
 これは、竹中大臣はお答えしにくいと思うので聞きませんが、福田官房長官、今の経緯を踏まえて、ぜひこの内閣委員会に、理事会の中ではこういうことになっているんです。要求があれば官房長官は必ず出席する、この与野党一致の理事会の声にこたえていただきたい、このことを最初に要望させていただいて、御答弁をいただきたいと思います。その意気込みを一言お願いします。
福田国務大臣 おっしゃること、よくわかります。よくわかりますけれども、今回は、竹中大臣に担当していただく。竹中大臣は、IT戦略を担当していらっしゃるということもございますので、IT戦略を推進する上でこの今回の法案というのは極めて大事なものである、この法案なくして日本のIT戦略というものは進まないだろう、こういうように考えまして、今の事態は極めて深刻な事態であるということもあわせ考えてそのような形にさせていただいておるわけでありますけれども、お話もよくわかりますので、私も時間がありますれば、都合がつけば、極力出席をさせて答弁をさせていただきたいと思います。
細野委員 もう一度改めてお伺いします。
 今からこの法案の担当をかえろというようなことはさすがに申し上げません。ただ、少なくとも、内閣委員会から要望があれば時間をつくって福田官房長官に出席いただけるとお約束いただけますね。
福田国務大臣 必要あれば参上させていただきます。
細野委員 例えば、日本国憲法にはこう書いてあるのですね。六十三条、国務大臣は、「答弁又は説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない。」これは私どもだけの要望ではなくて、理事会として、総意として要望した場合は大臣は出席しなければならないという義務が憲法上書かれているのです。
 改めて伺いますが、要求があれば出席していただけますか。しつこいようですが、これは非常に重要な点ですので、御答弁いただきたいと思います。
福田国務大臣 これはまさに委員会で秩序を決めていただいておるわけでございますので、委員会でお決めくださったことには従わなければいけない、これは義務であると考えております。
細野委員 ようやく明快な御答弁をいただきましてありがとうございます。要求があれば出席をするということを官房長官に確約したことを、ぜひこの委員会の皆様にも認識をいただきたいというふうに思います。
 続きまして、後藤議員の質問、最後少ししり切れトンボになってしまったところがありますので、そこをしっかり確認させていただきたいと思うのです。
 小渕総理が在任中に、住基ネットのスタートは個人情報の保護法案の制定、これが前提条件であるという答弁をされました。先ほどの官房長官の御答弁、個人情報保護法案が制定されなくても住基ネットがスタートすることがあり得るのかどうか、ここは明確に御答弁ください。
福田国務大臣 今回、この法案を提出させていただきましたけれども、タイミングとしては、まさに時間の限りあると思っております。そういう意味で、ぜひこの国会で成立をするように御理解をいただきたいと思います。
細野委員 もちろん、政府として法案の成立に努力するのは、これは当たり前の話なんです。仮の話をしています。仮にこの法案が通らなかった場合、これは十分あり得る話です、これだけ国民的な議論を巻き起こしているわけですから。住基ネットと個人情報保護法案のこの制定はセットなのかどうかというところを明快に御答弁ください。
福田国務大臣 何度も同じことを繰り返しますけれども、ぜひこの国会で成立をさせていただきたいと心からお願いを申し上げる次第でございます。
細野委員 この点は国民的な関心事なんですよ。我々も個人情報保護法は必要だと思っているのです。ただ、この政府の出してきている案は極めて問題が多い。この法案には賛成できないという立場です。
 さらに言うと、後藤議員の質問にもありましたとおり、住基ネットの準備が各地方自治体でできてないという現実も、これはもう既に明らかになっているのです。この延長を求めています。私は、整合性のある議論を野党としてはしているつもりでいるんです。政府としてここはしっかり御答弁いただきたい。
 委員長、非常に重要な点ですので、改めて答弁いただきたいと思います。仮にこの法案が通らなかった場合に、住基ネットはそれだけで単独でスタートするのかしないのか、御答弁ください。
福田国務大臣 この改正住民基本台帳法、これはもう三年以内ということが決まっておりますし、規定どおり本年八月にはこのネットワークシステムを実施する必要があるものである、こういうふうに考えておりますので、そういうこともあわせ、この国会でぜひ成立するようにお図りをいただきたいと思っております。
細野委員 今の大臣の御答弁というのは、住民基本台帳法の方の改正はもう既に成立をしているのでこの法案とは別ですよ、すなわち、住基ネットは八月必ずスタートしますよということでよろしいわけですね。
片山国務大臣 今、委員、地方の準備が進んでいないということを言われましたけれども、後藤委員にもお答えしましたように、もう十分進んでいるんです。もうスタンバイしているんです。しかも、条例につきましても、条例は必ずしも必要じゃないんですよ。六割の地方団体が条例をつくり、さらにプラス二割は規則やその他でいろいろなことを決めているのですね。必ずしもこれは必要じゃないんですよ。ネットワークや何かについては全部終わっているので、これは法律が決めているとおり、八月五日から施行させていただく、こういうことでございます。
細野委員 私、官房長官に聞きましたので、先ほどの質問に対して答えてください。
福田国務大臣 今まさに総務大臣がお答えになったのと同じことでございます。
細野委員 今の二人の大臣の答弁は、私、大変問題だと思いますよ。住民基本台帳法の制定時に、我々は、この法案は問題が多いということで反対をいたしました。それで、住民基本台帳法は一応改正はされたのですけれども、そのとき与党で合意をされるときに、また国民に対して説明されるときに、個人情報保護法の制定が条件だとおっしゃった。今の片山大臣と福田官房長官の御発言は、その発言をほごにするという意味です。仮に、これは分けて考えることになれば、当然それが前提条件にならないわけですよ。これは、私、国会答弁で、これからまたこれを機会に住民基本台帳法の問題についてやっていきますが、非常に重い答弁であるし、問題のあるテーマであるということを、冒頭ですけれども、申し上げておきたいというふうに思います。この問題はこれ以上はやりません。
 早速、個人情報保護法の問題、個人情報というものについて入っていきたいというふうに思います。
 きょう、朝からの答弁を聞いておりまして、特に竹中大臣の御答弁を聞いていまして、こう私は感じました。高度情報化社会ができて、そして個人情報があちこちで流れるようになった、その個人情報を守るためには個人情報保護法が必要なんだという御認識がたびたび示されました。それは確かに一つのお考え、私も賛同いたしますが、この法案を見ていまして、私、一つ欠けている部分があると思うのです。
 というのは、個人情報そのものの価値です。個人情報といってもいろいろあります。昔であれば、出生地であるとか生年月日であるとか、例えば学歴であるとか職歴であるとか、大体履歴書に書くぐらいのことが個人情報であったかもしれない。しかし、今は個人情報といえば、例えば所得であるとか買い物歴であるとか、最近注目されていますのは、通話歴であるとか、あとインターネットでどうやってアクセスをしたか、どこにアクセスをしたか、これなんかも個人の嗜好や価値観をはかる上で極めて重要な個人情報なんですね。
 さらには、今究極の個人情報と言われているのは遺伝子情報ですよ。この個人情報自体が本当に今重要性を帯びている。これがどこに帰属するかということが、ある部分、個人の命運も握るし国家の命運も握るんだということに対する御認識が竹中大臣にはおありでないのではないかというふうに私は感じるのですが、この問題、竹中大臣、きちっと御認識いただいているかどうか、御答弁いただきたいと思います。
竹中国務大臣 まさに、デジタルな時代における個人情報の有用性の問題というのは、この立法の大変重要な背景であるというふうに認識しております。であるからこそ、この法律の第一条に、個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利を保護するんだということを明記しているというふうに私は認識をしております。
 重要性、有用性、どういう観点から議論するかということにもよりますが、個人情報が大変有用なものになっている、であるからこそ、それを使う、使いたい、使おうとする非常に大きな社会的な力が今もう既に動き出しているのだというふうに認識をしております。そうした中で個人の権利を守るということの必要性が生じている。これが九〇年代において生じてきた世界的な認識であるかというふうに私は思っております。その意味で、今委員御指摘のような個人情報の有用性というのは、私自身、十分に認識しているつもりでございますし、そういった趣旨が法案の第一条にも反映されているというふうに考えております。
細野委員 有用性というのは、利用する側からの観点なんですね。価値というのは、個人に帰属する個人情報自体の重要性。個人情報というのは、これは全部並べると人格すべてなんですよ。これを握られれば、例えば遺伝情報なり病歴なりそういうのを握られれば、個人は全くもう発言できないわけですよ。例えば竹中大臣、竹中大臣の遺伝情報なり病歴なりをだれかが情報を持っていて、場合によってはそれを使って、竹中大臣は実は、ちょっと物騒な話ですけれども、先が長くないんですよというような情報が流れたら、大臣としても政治家としても生命が終わるわけじゃないですか。有用性の話とは全く違うのですよ。そういう個人情報の価値について、私、この法律は余りに粗末に扱い過ぎだと思うのです。
 先ほど逢沢委員から、半導体が産業の米だという話がありました。大変失礼ながら、これは五年ぐらい前の議論だと思うのです。今は、産業の米は個人情報なんです。個人が生きていく上でも重要、また、今各業界が血眼になって個人情報をどうやって集めようか考えているのですよ。その中で出てきている法律だということを、余りにこの法律は粗末に扱い過ぎています。
 その一番端的な例が主務大臣の関与なんですよ。この法律を見まして、私は驚きました。三十七条から、主務大臣に対して報告をしなければならない、助言もできる、勧告も命令もできる。主務大臣がこれだけ大きな権限を持って、ただでさえ業法で抑えつけているのに、その業界に流れている個人情報をこれだけ強い権限を持って左右できるような法律、私は、この法律が個人情報の価値というものを全くわかっていない法律だということを一番端的にあらわしているというふうに思っております。
 この問題に関しては、三大臣それぞれに御答弁いただきたいと思いますので、まず竹中大臣、お願いします。
竹中国務大臣 先ほど私が申し上げました個人情報の重要性につきましては、先ほど申し上げたとおり、第一条さらには第三条にそういった点が明記されているというふうに私は認識をしております。
 それで、主務大臣の考え方でございますけれども、第五章の義務規定の順守、これは第一次的には個人情報取扱事業者の自主的な措置によって図られるものであるということであります。主務大臣の関与は、したがって、個人情報の取り扱いに関して当事者間で争いが生じた場合などにおける事後的な関与に限られているという点は、大変重要なポイントであろうかというふうに思っております。関与のあり方につきましても、義務規定の施行に必要な限度において、緩やかな、報告の徴収でありますとか助言を基本としているものであります。
 また、なお勧告は、個人情報保護取扱事業者が第五章の義務規定に違反した場合において具体的な個人の権利利益の侵害のおそれがあり、その保護のために必要があるときに限られていると、非常に幾つかの限定をつけております。
 法律上の強制力がある命令という点もございますが、これについては、事業者が正当な理由がなくて勧告に係る措置をとらなかった場合において個人の重大な権利利益の侵害が切迫しているとき、または個人情報の漏えい等が既に生じている場合において個人の重大な権利利益を害する事実があるため、緊急に措置をとる必要があるときに限られている。その意味では、繰り返し申し上げますが、そうした関与は極めて限定的なものであるというふうな配慮、努力をしております。
細野委員 竹中大臣の答弁は物すごい性善説に立っているんですね。それぞれの主務大臣が抑制的で、本当に必要なときだけちょっと助言する。
 主務大臣というからには役所がかかわるわけですよ。今の役所の情報管理、そんなふうになっていますか。厚生労働省の薬害エイズ、そして農水省のBSEの問題、すべて情報が非常にいいかげんに扱われてきて、それがこれだけ社会的な大きな問題になったわけです。この部分に対して、官が今これだけ問われているときに、主務大臣が抑制的にかかわりますみたいな、この法律を読んでそういうふうに解釈する人はいないんですよ。
 この部分に対する役所全体としての取り組み、そして今この法律を出してくる意味、それについて、福田官房長官、どうですか。本当に個人情報の有用性、有用性というのは政府の言い方ですけれども、そして我々の観点からすると個人情報の価値に対して、主務大臣をこれだけ関与させることがあり得べき情報化社会の姿だというふうにお考えですか。
福田国務大臣 主務大臣による関与、これは法の適正な運用に必要な最小限度のものとするということで、権限の恣意的な運用を認めるということにはなっておりません。また、法案が成立して施行するという段階では、厳正な運用を図っていくことは当然のことでございます。そのようなことで、御懸念のことはないものと私は考えております。
細野委員 先日の本会議での小泉総理の答弁はこうなっているんです、この部分、主務大臣の関与について、既に内閣を構成する各大臣が分担している各事業者の活動にかかわる事務と一体的に遂行することが合理的かつ実効的であります。ここには、個人情報の価値を主務大臣に握られることに対する懸念に全く答えようとしてないんですよね。合理性と実効性のためにやらせるんです。さらに行革の観点から、第三者には情報を渡せないんです。そんな指揮官はつくれないんです。こんな答弁を聞いていて、私はちょっと信じがたかったんです。
 この点は、これから委員会の質疑を通じてさらに深掘りしていきますが、ぜひ竹中大臣、特に深刻に受けとめて、何を各省庁がやっていくのか。場合によっては各省庁の大臣に来ていただいて、あなたの省庁ではどういうふうにやるんですかということを聞かないと、安心してこんな法律通せないですよ。そのことも含めて、これは委員長に御要望ですけれども、各主務大臣を要求した際には誠実に対応していただきたいというふうに思います。
大畠委員長 今のお申し出については、理事会で協議いたします。
細野委員 片山大臣に具体的な事例を挙げてちょっとお伺いしたいと思います。
 片山大臣、桶川事件というストーカー事件、覚えていらっしゃいますでしょうか。九九年に起こった事件でありまして、ある女性がストーカーに遭って大変な恐怖心を抱いた。電話で脅迫され、家にまで押しかけられた。その状況を事前に警察に対して、私はこういう状況にあるんですというのを知らせていたんです。しかし警察は、これは事件性がないということで取り合わずに、最終的にその女性は亡くなりました。
 思い出しましたか。そこまでは結構です。ここで聞いてもしようがないんです。
 この事件で、結局この女性は亡くなりまして、女性の遺族が今県警に対して国家賠償請求を起こしているんです。しかし、今県警が何をやっているか。事件が起こった直後には、県警は捜査ミスを認めているんですね。実際に、自分たちの捜査の不手際が殺人を起こした可能性があるということを正式に記者会見して認めているにもかかわらず、国家賠償請求をしてきた遺族に対して、それまでに集めた遺族の遺書と手帳と電話の記録など、これを、警察は悪くないんだ、加害者が余りストーカー的な行動をしていない、普通の人間であった、警察には関知できなかったという部分だけ前面に出して、証拠として挙げてきているんです。
 これは法律的にどうかという議論はいろいろあると思いますが、私は、一度警察がこういう情報について捜査上で得たものを、国家賠償請求の中で自分たちを守るのにそのまま利用している、これは本当にけしからぬことだと思うんですね。
 例えば、じゃ、今回の行政機関の個人情報保護法で、こういうものって取り締まれるんですか。こういうものが取り締まれないようじゃ、私はこの法律の意味はないというふうに考えますが、片山総務大臣の御見解を伺います。
片山国務大臣 私どもの方で出している法律は、これは目的外に利用するということは禁じているんです。
 だから、今、桶川事件ですか、具体的な内容を必ずしも詳しく承知しておりませんから、そのケースがどうこうということは言えませんけれども、一般論としては、今私が言いましたように、目的外利用は禁じておりますし、それに係る個人の情報等を漏えいすることはまたこれも禁じておるわけでありまして、そのためにいろいろな手だてを一応とっております。
細野委員 じゃ、もうちょっと具体的に言いますね。
 刑事上で得た証拠を、訴えられた場合に国家賠償請求で利用することができるのか。これは極めて具体的な話ですね。言うならば、確かに大臣おっしゃるとおり、行政機関の個人情報は目的外使用は認められていません。しかし、法律にこう書いてある。当該保有個人情報を利用することについて相当な理由があるときは利用できる。こんなのざる法ですよ。相当な理由というのが何なのか。この場合に、果たしてこれは相当な理由となるのかどうか。これは極めて私は重要な問題だと思いますよ。お答えください。
片山国務大臣 相当な理由というのは、これは一次的には当該行政機関が判断せざるを得ないんですが、それについてはいろいろ争うことができますから、そのためのいろいろな手だてをとっておりますし、今の刑事訴訟法との関係では、法律に書いてなければそれに使えない、こういうことであります。法律上そういうことができると書いてなければ、法律上の根拠がなければできない、こういうことであります。
細野委員 大臣、訴訟になればそこでまた法律で解釈もされるんですというんじゃ話にならないんですよ。
 じゃ、ここの相当の理由というのは、法律の根拠があるときだけということなんですか。行政上の必要性が生じてその場限りで対応することは絶対ないと言い切れますか。
片山国務大臣 今の答弁は、刑事訴訟法の話とは別に前半は申し上げたので、相当な理由等の判断は、今言いましたように一次的には行政機関がせざるを得ませんけれども、しかし、それについて不服があれば申し立てができますし、あるいは訴訟も起こせる。国民といいますか、その方がそういうことができるし、また、個人の情報の差しとめ請求等も一定の場合にできますから、そういうふうな措置を講じておるということを申し上げたわけであります。訴訟の方は根拠が要るということを申し上げたのです。
細野委員 いや、ちゃんと聞いてくださいよ。相当の理由というのは法律の根拠がなければだめなのか、法律の根拠がなくても利用できるのかということを聞いているんです。
片山国務大臣 相当の理由というのは、法律上の根拠がなくても相当の理由があると判断すればできる、こういうことであります。法律の根拠がある必要はない。
細野委員 いや、もう何でもできるという話じゃないですか。基準を示してくださいよ。今のちょっと納得できませんよ。相当な理由というのはどういうケースを法律の担当大臣として総務大臣お考えなのか、お答えください。
片山国務大臣 相当な理由は、何度も同じことを言いますが、一次的には行政機関が行うこととなりますが、事案ごとに、個人情報の性質、利用目的に即した具体的かつ明確な理由であるとともに、客観的であることを求めており、恣意的にできるということは許していない。しかし、それは、何度も言いますけれども、最終的な担保は、場合によっては不服申し立てや訴訟になる、こういうことであります。
細野委員 いや、こんないいかげんな法律通して、最後は裁判で争ってください、国民の権利は裁判官に守ってもらいなさい、そういう答弁ですよ、今のは。
 ちゃんと改めて、相当の理由は何なのか。行政の必要性ですかなんか聞いてもすっと抜けちゃいましたけれども、そんな理由じゃなくて、どういう根拠に基づいて、あらかじめ予見可能な形で示すのか、これをきちっと答弁してもらわないと話になりませんよ。
片山国務大臣 一般的なことを申し上げたのです。行政が得る情報というのはいろいろありますよ。いろいろなものがある。それを、これはこうだ、これはこうだというのは、その都度判断するよりしようがないので、私が言ったのは、今、一般的な考え方、原則を申し上げたので、行政機関は恣意的な判断を当然するものだという前提でお話をされたら私は困ると思う。今言ったものは、一般的な原則の上で、個人が困る場合には差しとめ請求ができるんですし、あるいは不服申し立てができるんですから、そういうことを申し上げているんですよ。
 相当な理由、特別の理由を全部書けと。書けるわけはありませんよ、法律で。それは一般的なことを書く。相当な理由、特別な理由というのはほかの法律でもいっぱいあるわけであります。
細野委員 わかりました。総務大臣はお答えにならない。
 じゃ、もう、それぞれ大臣に来てもらいましょう。それぞれの省庁で主務大臣が何を判断基準にやられるのか。そうじゃないとこんな法律通せないですよ。個人情報保護法じゃなくて、個人情報を好きに流用できるという法律になっちゃっているじゃないですか。――いや、お答えは結構です。これ以上お答えいただいても総務大臣にきちっとお答えいただけないと思いますので、この点に関しては、さらにそれぞれの省庁について我々は聞いていきます。そのときに、総務大臣の御答弁と、それぞれの主務大臣はどうお考えになるのか、それは我々としては大きく問題にしていく部分だということだけ申し上げておきたいと思います。
 本法の方に戻ります。
 なぜ桶川事件の例を出したかというと、竹中大臣、この法律、実はもう一つ大きな問題があるんです。最終的にこの法律は、国家公安委員会、警察ですよね、警察にこの主務大臣を任せることができる。
 四十一条にこう書いてあるんです。「内閣総理大臣は、この節の規定の円滑な実施のため必要があると認める場合は、」、この節というのは個人情報取扱事業者の義務規定です。「円滑な実施のため必要があると認める場合は、」、ちょっと省きますが、「国家公安委員会を主務大臣に指定することができる。」と書いてあるんですね。円滑な実施のために必要があると認めるときは。
 これは、さっき言いました個人情報の有用性、そして個人情報の価値、国際的に広がっているわけですよ。その個人情報が日本においては総理の一言で警察の手に渡ってしまう可能性がある。警察の範囲に入ってくる可能性がある。これは余り議論されていませんけれども、昔は報道の自由に対する検閲があったかもしれないけれども、今、今回この法律で、我が国は個人情報に関する検閲を公的に認めることになる。私は大きな問題だと思いますよ。
 竹中大臣にこの点についての御答弁を求めます。
竹中国務大臣 情報に関する検閲という御心配は当たらないと思います。
 今お尋ねの、第四十一条に、確かに国家公安委員会という名称が出てまいります。この法案の第四十一条に規定する主務大臣については、基本的な考え方は、各事業を所管する大臣である、各事業を所管する大臣を主務大臣とするという考え方を基本にしております。
 その点で、警備業とか自動車教習所業などの業は都道府県の公安委員会が業の監督主体になっているということでありまして、これらの警察所管事業について警察運営をつかさどる国家公安委員会を主務大臣とする、そういう趣旨で書かれているものであります。
 したがいまして、この法案で国家公安委員会の関与は、専ら業所管の観点、業を所管するという観点からでありまして、法案第五章の義務規定の遵守に関する場合に限られる、そのように御理解をいただきたいと思います。
細野委員 いや、これも竹中大臣、性善説に立っているんですよ。総理大臣は、例えば警備業とか警察の所管の部分に関してのみ国家公安委員会を指定すると。
 戦前も、例えば新聞紙法とかそういうメディア規制法というのはあったわけですよね。その時代も、これは明治の時代からあったにもかかわらず、大正デモクラシーという自由を謳歌した時代もあった。それが、昭和に入ってだんだん暗黒の時代に入ったのは、為政者が、政治にかかわる人間が、この新聞紙法というものを利用して国家の情報を統制しようとしたから、ああいう暗黒の時代が来ちゃったんじゃないですか。
 この法律を、未来永劫、総理大臣が国家公安委員会にかかわるのは警察の所管しているところだけだということを絶対守るという保証が、竹中大臣できるんですか。この法律は、円滑な実施のために必要があると認められる場合は国家公安委員会を主務大臣に指定することができるというのは、政治的な意図があれば簡単に突破できる法案なんですよ。
 私は、竹中大臣は自由主義者だというふうに考えています。自由主義者であるならば、とにかく最悪の場合に備える、こういう検閲にかかわるような法律は、プリペア・フォー・ワースト、それに備えるのは当然の竹中大臣のとるべき姿勢だというふうに私は思っています。
 改めて伺いますが、この部分、本当に竹中大臣、危険性をお感じになりませんか。
    〔委員長退席、野田(佳)委員長代理着席〕
竹中国務大臣 基本的には、人格権を守るということを実現するために、必要最小限の関与というものはどこかでやはりせざるを得ないのだと思います。その場合に、民主主義社会において選出された政府の責任者がそれに当たる。それで、それに当たっては、そうしたことを担保するために、問題を生じないことを担保するために、先ほど片山大臣からもお話がありましたように、さまざまな司法の制度も準備されているというのが、この社会の、民主主義の仕組みであろうかというふうに思います。
 それで、プリペア・フォー・ワーストという考え方は、理解できないわけではありませんが、今まさに私が国会で法案作成者の趣旨として御答弁申し上げていること自体が一つのその歯どめであるというふうにも思います。
 繰り返し申し上げますが、専ら業所管の観点からということに限られる、そのような趣旨でこの法案はつくられているということでございます。
細野委員 私は、竹中大臣がそこまで責任をとれるとは思っていません。この法案を通して、十年後、二十年後、どういうふうに運用できるか。大臣はもう政治家じゃなくなっているかもしれませんね。経済学者として、本当に責任持てるんですか。国会答弁で枠をはめられるんですか。ゆっくり考えていただきたいと思います。
 私は、自民党内でいろいろ出ている議論、けしからぬところがあると思っているんです。例えば、城山三郎さんであるとか桜井よしこさん、この法案を批判されています。正面から批判されている。新聞紙上で読むと、城山三郎さんは自分のやっていること自体が言論統制だとわかっていないというような発言が出たという発言があります。だれか、ぼけているという発言までしている。違うんですよ。官に対する無謬性を前提として、しかもこういう危険な部分を残している。保守系の自由主義者だからこそ出てくる発想なんですよ。決して、メディアに加担して、自分たちが情報をとるのが難しくなるとか、そういうレベルの話をしているんじゃなくて、これはまさに国家観にかかわる点から懸念を表明されているのが城山三郎先生なんですよ。
 福田官房長官、この点の懸念に対して、この法案、本当にこたえられるとお考えでしょうか。お答えください。
福田国務大臣 やはり、個人情報を守るという観点からこの法案を提出させていただいておるわけでございまして、このことが城山三郎さんなどが懸念されておられるということについては、これは懸念でございます。この懸念を解くためにいろいろとこれからこの審議を通じて御理解を深めていただく、このことが求められているわけでございますので、ぜひそういう意味においてこれから真摯な討議を進めていただきたいと思っておるところでございます。
    〔野田(佳)委員長代理退席、委員長着席〕
細野委員 官房長官の御答弁も、そして竹中大臣、片山大臣の御答弁も、余りに、こういう問題に関して、何というんでしょうか、若輩の私が言うのはなんですが、無邪気といいますか、お気楽といいますか、今日本が抱えている状況、それに対してこたえなきゃならないその問題を目の前にして、本当に今の答弁で皆さんいいと思っているのか。これは正直言いまして、今回明らかに疑問として大きくなりました。
 我々は、これから建設的な議論をもちろんしていこうと思っています。絶対、この主務大臣という業法の部分で縛っている、そして個人情報もごっそり持っていくというような仕組みじゃなくて、第三者機関をつくろうじゃないか、そういう提案もしていきます。この法律では、私、絶対だめだと思いますよ。この点に関してはこれぐらいにしておきますが、ぜひ、特に御担当の竹中大臣、よく考えてください。よろしくお願いします。
 では、次に行きます。
 時間も大分たってまいりましたので、冒頭の質問ですので、まず、個人情報保護法案の制定の経緯について少し確認をして、その議論の中でどういう動きがあったのかということについて竹中大臣に御答弁をいただきたいと思います。
 先ほど来、個人情報保護検討部会と個人情報法制化委員会ですか、この二つの部分が出ておりますが、竹中大臣としてこの部分の経緯を改めて、短くで結構ですので、どういう経緯でこの個人情報保護法案が最終的に法案として提出されたのか、御説明をいただきたいと思います。
竹中国務大臣 経緯のお尋ねでございますけれども、まず個人情報保護検討部会、これは、現在中央大学教授の堀部先生を座長とする検討部会でありますけれども、これが平成十一年の七月に、内閣の高度情報通信社会推進本部のもとに置かれまして、これには各界各層の代表がそのメンバーとして参加しまして、日本における個人情報保護システムのあり方を検討していただいたということであります。この検討部会はちなみに、十一年十一月に、包括的な基本法の制定が必要であるという旨の中間報告を取りまとめております。
 これが九九年、平成十一年の七月でありますけれども、他方、個人情報保護法制化専門委員会が設置されまして、これは、委員長は園部元最高裁判事でいらっしゃいますが、検討部会から提言された基本法につきまして法制的観点から専門的に検討をするために、法曹の実務家を中心に設けられました。平成十二年一月でございます。同年の十月に、個人情報保護基本法制に関する大綱を取りまとめたということでございます。
 この会議は、それぞれの役割を持って設置されまして、緊密に連携を保つ、具体的には、堀部座長が法制化の委員会にもお出になったというふうにお伺いしておりますけれども、連携を保ちながらこの法案の基礎となる考え方をおまとめいただいたというふうに認識をしております。
細野委員 竹中大臣に確認したいんですが、この個人情報保護検討部会と個人情報法制化専門委員会ですか、要するに、ここで議論を尽くしてこの法案が出てきたという理解でよろしいわけですね。
竹中国務大臣 そのように認識をしております。
細野委員 それでは、中の議論について若干お伺いしたいと思います。
 実は、この検討部会と法制化専門委員会の議論の過程で、メディア規制の部分に関してトーンが徐々に変わってきております。きょう、私の方から「個人情報保護法案制定の経緯」ということで紙を配らせていただいておりますので、それも参照しながら議論に入っていきたいと思うんですが、実は、一九九九年の十一月に出た、堀部座長のもとにできた個人情報保護検討部会では、基本原則の部分についてこういう規定があるんですね。「各原則の適用除外の要否等について、法制的に検討する必要がある。」分野の例として報道、出版というのが挙げられています。基本原則について例示した後、その適用除外について書かれた部分があるんです。
 さらに言うと、この先に行きまして、法制化専門委員会の方ですね、この部分の大綱を見ますと、「個々の基本原則は、公益上必要な活動や正当な事業活動等を制限するものではない。」「この趣旨は、報道分野における取材活動に伴う個人情報の取扱い等に関しても同様である。」法制化のときに例外を設けなければならないというところからは、実はここでトーンダウンしている。トーンダウンはしているけれども、一応、報道分野においても同様であるという規定がある。例外規定にもなりそうな非常に中途半端な書き方になっているんですね。
 この議論の経緯、基本原則を適用除外するかどうかというのは大変な議論になったところだと思うんです。竹中大臣、この議論の経緯、なぜ変わったのか、そして法制化されたときには基本原則の報道機関に対する適用除外はなぜすっぽり抜け落ちたのか、この点について御答弁をお願いします。
竹中国務大臣 ちょっと細かいお尋ねでございますけれども、検討部会の中間報告では全分野を包括する基本法制の整備を提言した。同時に、基本原則の法的性格、適用除外のあり方、開示、訂正等の制度化、罰則、第三者機関等の問題については、引き続きその後の法制面からの専門的な検討にゆだねることとしたというふうに承知をしております。メディアに対する基本原則の要否等については、事後の法制的な検討が必要とされていたところであり、適用除外とすることが決まっていたわけではないというふうに認識をしています。
 同報告を受けて設けられた法制化専門委員会においては、個人情報保護検討部会と連携を図りながら、これは先ほど申し上げましたけれども、連携を図りながら関係各方面から意見聴取を行って、中間報告で指摘された諸問題について具体的な検討を進めた。その結果、努力義務としての基本原則、開示、訂正等の制度化、主務大臣の事後的な監督の仕組み及び間接罰、報道等分野に関する義務規定の適用除外など、基本法制の具体的方策を内容とする大綱が取りまとめられたということだと思います。
 したがいまして、大綱は、検討部会の中間報告を踏まえて法制的観点から具体化したものでありまして、その趣旨を変質させたものではないというふうに認識をしております。
細野委員 どなたかが書かれたのを一生懸命読まれましたけれども、これは大事な問題ですよ。当初は、基本原則の適用除外を法制的に検討する必要があるというのは、よく聞いてくださいよ、法制的に検討する必要があるというのは、必要性をにおわした文章なんですよ、堀部教授のときは。それがなぜ変わったのか。検討は先延ばししたんですというのではなくて、ここの部分で法制的に検討をする必要があるという文章が出ているのに、なぜ消えたのか。これは竹中大臣、非常に重要な経緯なんですよ。なぜ必要ないんですか。必要ないという議論になったんですか。
竹中国務大臣 この辺の検討の経緯は、当時の責任者ないしは当時の専門家の意見をお伺いする必要があると思いますが、私の認識しているところでは、適用除外とすることが決まっていたわけではないということだと思います。
 先ほど申し上げましたように、メディアに対する基本原則の要否等については、事後の法制的な検討が必要とされていたところであって、適用除外とすることが決まっていたわけではない。その意味では、今委員御指摘のように、中間報告から大綱に行く過程で何か基本的な変質があったというふうには私は認識をしておりません。
細野委員 ちょっと待ってください。大臣、今重要なことを言われましたよ。この部分の経緯についてはかかわった方に聞く必要があるとおっしゃいましたね、専門家に。先ほど竹中大臣はこう答弁された。この検討部会と専門委員会で法律は決まったんだ、ここで議論は尽くされたんだとおっしゃいましたね。竹中大臣、堀部教授そして園部委員長と当然会って話を聞かれていますよね、この経緯について。確認させてください。
竹中国務大臣 堀部教授とは以前から面識もありまして、これのお話は伺ったことがございます。園部座長とは、この問題について直接議論をさせていただく機会は残念ながらございません。その法制化のメンバーには遠山現大臣が入っておられまして、遠山大臣から少しお話を伺ったことはございます。
 先ほど申し上げましたのは、私の基本認識ないしは政府の基本認識は私がもう何度も答弁したとおりでございますけれども、そうではないというふうに委員がおっしゃるのでございましたら、それはそれで、そういった当事者の御意見があるのかということで、そういった御意見を伺うというふうに申し上げたまででありまして、私自身の認識では、これは、特に堀部教授からもお伺いしておりますが、その中での変質はない、なかったというふうに認識をしております。
細野委員 ゴールデンウイークのときに、竹中大臣はヨーロッパに行く予定があったのにそれを中止された、それで勉強されているという話を聞きました。それはいいことだなというふうに思っております。
 ただ、じゃ、だれの話を聞いたんですか。検討部会と専門委員会の間に、実は内閣官房の中に個人情報保護担当室、これが発足しているんですね。その前のときは堀部教授を中心に議論がされていた。ここで担当室ができて、そちらにいらっしゃる藤井審議官もおつきになって、そして役所ベースの検討が始まった。竹中大臣、そのお休みのときに、藤井審議官だけから話を聞いて、私は極めて基本的だと思うんですよ。堀部教授とそして園部委員長に休みの間にちゃんとお聞きになったんですか。これは極めて重要だと思います。この経緯について御理解をいただくために重要だと思うんですが、竹中大臣、御答弁いただけますか。
竹中国務大臣 私が役所の外でだれと会ってどのような勉強をしたかということは、これはこういう場で申し上げるべきことではないと思います。私なりにしっかりと勉強させていただいたと思っております。
 さらには、さまざまな検討会の経緯というのは既にウエブ上で公開されておりますので、そういうものに関しましては、これはかなり幾つかのものがございますけれども、基本的に目を通させていただきました。
 ちなみに、あえて御質問がありましたので、堀部先生とは以前から大変親しいものですから、お話を伺っております。
細野委員 私は、私的に会ったか会っていないかというのを聞いているんじゃないんです。職務として、きちっと担当大臣としてこの部分についてヒアリングをされたかどうか聞いているんです。竹中大臣、この部分は極めて重要なんですよ。
 我々は、これをひっくり返して過去どういう経緯があるかと見ているんですよ。これにきちっと、この二人にお話を聞いていないんじゃ、答弁にならないですよ、本当に。お会いになったんですか、大臣として。
竹中国務大臣 基本的には、繰り返し申し上げますけれども、そうした議論の経緯というのは大変詳細にウエブ上に公開されておりますので、それで勉強をさせていただきました。会ったか会わないかということをいろいろ聞かれますので、先ほども申し上げましたように、以前から面識があって、プライバシーとかさまざまな基本的な考え方について御指導を受けております堀部先生にはお話を伺いました。
細野委員 この部分で、ウエブ上にある情報だけで大臣が満足しているとしたら、こんな答弁、話にならないですよ。私、この問題は非常に重要だと思うんです。この部分についてきちっと話を聞いて過去の経緯を御理解いただいた大臣じゃないと、とても質問できない。この経緯について聞いていないことに関しては、非常に問題だと思います。これ以上質問できないですよ。
竹中国務大臣 情報の収集の仕方には、それこそこのITの時代、いろいろな問題がありますから、私なりの情報の収集はさせていただきました。
 細野委員、具体的に私の例えばどの部分について基本的な情報収集が欠けているかとか、やはりそういう問題点をできれば御指摘いただきたいと思います。あとは、例えばの話でありますが、御当人にお目にかかっても、その議論の詳細全部を恐らく覚えていらっしゃるわけではないでしょうから、さまざまな形でこれは、そのときに出席していたか、事務方から詳細な意見を聞く、ウエブ上のデータを利用する、また、参加していて私自身が比較的お目にかかりやすい方からお話をしていただく、これはもういろいろなやり方があるのだと思います。
 その意味では、それの経緯について私なりに承知をしているつもりでございます。
細野委員 この変質の理由、では、ちゃんと聞いておいてください。当然ですよ。ここでの議論の経緯があって徐々に法案の形が変わってきたんですよ。特にメディア規制の部分に関しては、ここの部分で明確に書いてある。これはだれでも読めるんですよ。それが、検討が先延ばしされたから検討会の委員会の方で否定をされて必要がなくなりましたという答弁では、とても納得できないですよ。当事者からちゃんと話を聞いて、どういう経緯でこの部分が消えてうせたのか、これは次回までに、竹中大臣がウエブ上でしか調べられないのであれば、きちっと御当人に聞いていただきたい、そう思います。
 では、これは次の機会に譲るとして、私が配った資料に基づいて、もう少し、今度は与党と政府がどういう関係にあったのかということについて伺っていきたいと思います。資料、よろしいでしょうか。
 これは、私なりにまとめた個人情報保護法案の制定経緯であります。この一番初めに書いてある「報道を監視するための報道モニター制度創設」という部分に代表されるように、四角で囲ったものが自民党の動き、そして四角で囲っていないもの、これが政府の動きであります。
 九八年の十月に報道を監視するための報道モニター制度というのが自民党内にできています。これは、その直前にありました参議院選挙で自民党が惨敗した後にできた制度であります。どういう報道モニターをされていたのかは私も詳しくは存じませんが、何らかの選挙の報道に関してモニターをされていたんでしょう。そして、その経緯で、次の年の八月に検討委員会ができて中間報告ができています。
 そして、その経緯で、次にできているのが、いいですか、報道と人権等のあり方に関する検討会なんです。その資料を読みまして、なるほどなと私は思いました。
 この報告書の最後にこういうくだりがあります。根拠となる総括的なプライバシー保護法的な法的整備を推進する必要がある。いいですか、報道と人権等のあり方に関する検討会でプライバシー保護法が法制化が言われているんですよ。総理は、国会答弁の中で、メディアの活動を規制しようとする意図は全くありませんとおっしゃっているけれども、この九九年十一月に個人情報保護検討部会ができる直前に出た提案なんですよ。全くこれが関連しないと思う方はほとんどいないです。
 しかも、この部分で非常に私がアンフェアだと思うのは、この報道の部分から出ているプライバシーの議論を、この九九年の十月にはITの範疇に一気にとどめてしまっている。この経緯、竹中大臣、きちっと御理解されていますでしょうか。
竹中国務大臣 これは、IT担当大臣として、特にそういう認識を、正直言いまして、今まで十分に認識していたわけではございません。特にこれは党のお話等々であると思いますので、私としては必ずしも十分認識する立場にはなかったというふうに思っております。
細野委員 報告書はちゃんとごらんになりましたか。
竹中国務大臣 概要だけ報告を受けておりますが、隅から隅まで読んだというわけではございません。
細野委員 自民党の報告書というのは短いんですね。たった二枚なんですよ。隅から隅も、見るも、これを読めばいいだけですね。これは、竹中大臣お得意のウエブ上に載っています。これを読んでいらっしゃらないのは怠慢だと私は思いますよ。しかも、私、質問通告してあるんですからね。
 では、まあ、竹中大臣は自民党と直接かかわらないというふうにおっしゃるのであれば、福田官房長官に伺います。
 先ほど、事前の経緯については御説明いたしました。ちょっと紙を見ていただけますか、配った紙。私が資料としてお渡しした紙です。
 下の部分では、個人情報保護法案が閣議決定される前後には、放送活性化検討委員会というのも発足している。そして、四月には、報道番組検証委員会というのも発足している。ちょうど一年ちょっと前ですね。
 この時期というのは、言うまでもなく、森政権がいろいろなスキャンダルにまみれて、報道機関とまさに本当に大変な勝負になっていた時期です。参議院選挙の後に、報道規制の部分からプライバシー保護法の話が出てきて、議論がスタートをして、提出をされた時期に森政権がスキャンダルまみれで、自民党の中でこの報道被害、報道問題に関してさんざん議論がされていたという経緯、福田官房長官、この関連性についてきちっと考える必要があると思いますが、どうお思いでしょうか。
福田国務大臣 今御指摘の党の方のいろいろな議論というもの、これはあったと思います。私、関係していなかったので、どういう議論かわかりませんけれども、議論があったということは承知しております。
 しかし、このことと個人情報保護法の制定の経緯とどういう関係があるか。時期的に接近しているからかということなのだと思いますけれども、例えば報道と人権等のあり方に関する検討会、これは自民党でこういう検討会があったわけでありますけれども、ここでは、報道と人権とのかかわり方などについて、どういうあり方かというその基本的な考え方を検討した、それも広範に検討したというものでございまして、法案に関係する決定機関ではない、このように承知をしております。
細野委員 政府の側としては、確かに、直接自民党の案をそのままのんだと言うわけにはいかないでしょうから、今の福田官房長官の御答弁になるのかもしれませんが、この時系列の流れを見ていて、自民党の動きと個人情報保護法案の動きが全く別だと考える方はいないんですよ。だからこそ、今、この自民党の部分に関してもきちっと見ていかなきゃならない。一番初めの部分で、検討会でプライバシー保護法というのを初めて提案されている、この重みというのもきちっと政府として受けとめていただきたい。
 そして、きょう私は、この部分での自民党サイドの動きを一番御存じの方が内閣委員会にかかわっているところにいる、ぜひ御答弁をいただきたいということでお願いをいたしました。それが、理事会でもお話をしました熊代副大臣であります。
 この時系列の中でも書かせていただいていますけれども、二〇〇一年の二月にできた放送活性化検討委員会の中で、熊代委員長、今副大臣をやられていますけれども、当時委員長をされていた。そして、その前も、この自民党のメディアの規制に対していろいろとかかわってこられたという経緯があります。
 官房長官、覚えていらっしゃいますでしょうか。ことしの三月に大畠委員長のもとで委員長招待がございました。官房長官もいらっしゃいましたね。もしかしたらもうお帰りになっていたかもしれないですが、熊代副大臣がこういう発言をされました。あしたかあさって、民放の番組に出るんだ、そして、やはり放送、マスコミというのも、きちっと政治家として言うことを言っていかなきゃならない、自分は闘っているんだというような発言をされていました。実際に、番組に出て、個人情報保護法にかかわって、巨大権力マスコミを人権擁護の治外法権に置けない、そういう発言もされているんですね。これは、私は、見方によっては、明らかに、メディア規制の意図は全くないと言われた小泉総理の見解とは異なる見解だ。
 今回、私、委員会の席にこの内閣府の副大臣としてぜひ御出席をいただきたいというお願いをいたしました。政府としてどう考えるか、お聞かせいただきたいんですが、メディアに出て御自身の考えを発言される、委員会では答弁できない。これは、やはり国会を考えたときに、国民を考えたときに、おかしい、ばかにしている話だ。政府に対してこの熊代副大臣がきちっと答弁に立つことを要望しますが、官房長官、どうお考えでしょうか。
福田国務大臣 熊代副大臣が委員長招待の会でどのような発言をされたか、私全く承知していないのでありますけれども、熊代副大臣がこの委員会に出て答弁をすることができるかどうか、こういうことであります。
 理屈を申し上げますと、内閣府設置法の第十三条第三項、ここで、内閣府副大臣の行う職務の範囲については、内閣総理大臣の定めるところによる、こういう規定がございます。この規定に基づいて、総理から熊代副大臣に対して、内閣府本府の事務のうち規制改革、沖縄及び北方対策を担当するとともに、内閣府に係る道路四公団民営化推進委員会、これは仮称でありますが、関係の政策を担当していただきたいというような指示が総理からあったわけでございます。個人情報保護法に関する事務については、職務の範囲に含まれていないということで熊代副大臣は答弁はできない、こういうことになっておるわけでございます。
細野委員 官房長官、それはおかしいのですよ。今までの議論の経緯でいっても、ほかの省庁の副大臣も要求があればこれはきちっと出てきたんですよ。ほかの省庁の副大臣がこの委員会に出て答弁して、何で内閣府の副大臣が答弁できないのですか。政府としてこれはぜひ答弁すべきである。本当に内閣一体でこの法案をやっているのであれば、当然そういう答弁があってしかるべきじゃないですか。
福田国務大臣 これは今お答えしたとおりでございまして、この個人情報保護法案に対する質疑のこの場に出席することは、担当外であるということでできないのであります。
細野委員 官房長官、国会で呼んで、それで内閣が答える準備がないというのじゃ本当にどうしようもないですよね。
 私、実はきのう、熊代副大臣のきょうのお仕事についても聞いています。担当の行革推進室の方が来られて、直接話をして、今、有識者のヒアリングをされているということでした。ただ、要望があれば三十分だけ抜けて来ますよ、時間を指定してくださいということで、一たんお帰りになったのですよ。そうしたら、すぐ帰ってこられて、いやいや、出れないことになりました。なぜ出れないのですか。一たん出るとお約束されて、業務上も、それは一たん休んでいただかなければならないかもしれないけれども、出る段取りをしますよと言って帰った方がいるのに、なぜ出れないのですか。お答えください。
福田国務大臣 そもそも、この法案審議に当たりましては、松下副大臣が担当でございます。これはもう松下副大臣就任時の総理からの担当分野の指示において、内閣府に係るIT関係の政策を担当する、こういうことになっているので、松下副大臣が担当副大臣でございます。
細野委員 理由は明らかなんですよ。副大臣がメディア規制に今まで取り組んでこられたから答弁させたくない。これは自民党の皆さんにもぜひ言いたいです。内閣委員会の中でだれを呼ぶかということを、所管の副大臣について国対に相談しないと決められないというのはどういうことですか。この部分に関しては、いわゆるメディア規制の部分で議論をしてきた自民党の経緯を私もさっき説明しましたけれども、できるだけ隠ぺいしようという意図が明らかなんですよ。
 さらに言うと、もう一つ、私は皆さんに申し上げたい。内閣委員会の理事会で、阪上理事が独自の主張をされました。極めて興味深く私は拝聴いたしましたけれども、阪上理事が興味深い発言をされました。しかし、その後、理事からはいなくなられた。自民党の中でも幾らでも異論が出ているのじゃないですか。自民党の中でこういう議論をしてきたことをできるだけ隠して全部政府に押しやって、そしてITの看板を掲げて何とかこの法案を通そう。さっき国民的な議論をしようとおっしゃった方がいらっしゃいましたけれども、全然そういうふうになってないじゃないですか。福田官房長官、どうですか。
福田国務大臣 それは、党の方でいろいろな議論をします。ですけれども、ここは国会でございまして、国会の委員会でございまして、この委員会において答弁する者は、担当がしっかり決まっているわけでございますから、その者にお尋ねをいただきたいと思っております。
細野委員 官房長官から極めて後ろ向きな御答弁をいただきました。
 そもそも、ほかの省庁の副大臣も呼べるという現状の中で副大臣を呼べない、このことは極めて問題だというふうに思います。きちっと委員会の中で呼んで御答弁をいただくのが筋ですが、仮にそれができないのであれば、参考人として熊代副大臣に来ていただく必要がある。
 さらに言うと、先ほどプライバシー保護法について言及をした報道と人権等のあり方に関する検討会、これは、委員でもいらっしゃいます谷川座長がやられていたということを聞いています。この方についても参考人として聞く必要がある。
 さらに言うと、当然この間、経緯として、理事会からいらっしゃらなくなった、そして、漏れ聞くところによると、お一人でなったから自由に発言できるから個人情報保護法案について発言するよとおっしゃっている阪上理事についても、その辺の事情については参考人としてきちっと話を聞く必要があると私は考えます。委員長に要望させていただきます。
大畠委員長 今のお申し出については、理事会で協議いたします。
細野委員 言論統制の体質について、この部分できちっと自民党サイドで答えを出されることを非常に強く期待をしております。
 次に、そろそろ時間も少なくなってまいりましたので、逢沢理事からも御質問がございました修正の部分について、さまざまな議論について伺いたいと思います。
 私は、今回の経緯、いろいろ報道ベースでされているのを見ておりまして、当初から、例えば公明党の冬柴幹事長がこの法案は問題があるという発言をされたり、麻生政調会長が修正に前向きな発言をされているのを聞いてまいりました。いろいろ御意見はあるかもしれませんけれども、与党サイドから国会審議を通じてこの法案を修正しようという動きが出てくるとしたら、それは必ずしも悪いことではない、むしろ国民の前で議論を明らかにして、そして修正をするのであればいいことだと思うのですね。
 ただ、問題は、今回、いわゆる政府の中から修正論議が出てきているということなんです。しかも、国会審議に入る直前の十二日、十三日、十四日と続けて、きょう国会審議に入ったわけですから数日前ですよ、修正について議論があったという部分に関して、これは極めて問題だというふうに私は思っています。
 まず、福田官房長官、十二日に某新聞社から案が出てまいりまして、その翌日に記者会見されていますね。この部分の真意、改めて伺います。
福田国務大臣 某新聞がその一面トップで大々的にその新聞の案というものを掲載されたということでありまして、そのことについて記者会見で、どう思うか、こういうふうに問われたわけでございます。私は、そのときにお答えしたのは、そういうように出ていることについて、それはその社の、会社の考え方である、その考え方について、これは研究するということは、それは構わないのではないですかという程度のことは答えたと思っております。
細野委員 もう一度お願いします。読売案をどうするのですか。
福田国務大臣 検討というのは、研究してもよろしいのではないかということを申し上げたのです。
細野委員 竹中大臣、十四日に、さらに竹中大臣は記者会見で言われている。念のためそのまま読みますね。「昨日、総理にお目にかかりましたときに、非常に前向きに熱心に議論を、これ、いただいている案だなと。よく検討しておくようにというふうな話を総理からいただいております。」という御答弁をされている。さっき、勉強とおっしゃいましたけれども、検討とおっしゃっているのですね。総理からそういう話をもらったのは事実ですか。
竹中国務大臣 今委員お読みいただきました記者会見の私の議事録でありますけれども、その後も読ませていただきますと、「我々としては、もちろん政府案がベストだというふうには思っておりますけれども、よく勉強しておくようにというような総理のご指摘もありましたので、」というふうに私自身申し上げております。基本的には、いろいろ御答弁させていただいておりますけれども、人格権と表現、報道の自由とを両立させる非常に狭い道を探らなければいけない、その狭い道を探るということを熱心にこの案も検討してくださっているなということで、総理が、これからいろいろな議論が国会で出てくるであろうからこういうものをよく勉強しておくようにというふうに御指示がありました。これは、私自身、よく検討しておくように、よく勉強しておくようにという御意味であるというようなことを記者会見で述べさせていただいております。
細野委員 官房長官も竹中大臣も、焦点をぼかしていると思いますよ。読売案を検討しておくという話があるわけですね、読売案を検討する。読売案というのは何ですか。これは全条文の中の二つの条文だけを修正するという案なんですよ。修正案を検討するというのは、とりもなおさず修正を検討するということじゃないですか。(発言する者あり)そうですよ。一般的な問題じゃない。まさに法案の修正を検討しているということですよね。
 これは、私、本当に、一年間たなざらしにしておいて、皆さん熱意もなくだらだら来て、内閣委員会の中で議論しようという機運もなく来て、ようやく出てきたと思ったら、修正を政府の中で検討している案を今我々に押しつけてきているわけですよね。我々は政府案を前提に議論するんです。その前提が政府の中で崩れる可能性があるとしたら、こんな議論というのは成立しないんですよ。少なくとも政府の中で、与党は結構です、政府の中で修正について議論をしていただきたい、それがけりがつかない限り、我々は何を議論していいかわからないんですよ。これができないと意味がないということを申し上げたいと思います。
竹中国務大臣 繰り返しますが、修正を検討するとかということを総理は一切言っておられませんし、官房長官も私も一切そういうことは言っておりません。これからいろいろな議論が出てくるであろう、国会でいろいろな議論をいただくであろうから、こういうことも含めてよく検討しておけと。それでありますから、別に修正でも何でもない。
 繰り返し、記者会見の場ではっきり申し上げさせていただきましたように、私たちは、人格権と報道、表現の自由の非常に狭い道を探るという上で、政府案がベストなんだと思ってこの法案の御審議をいただいております。
細野委員 ぼかしちゃだめですよ。与党の中で議論するという話じゃなくて、よく聞いてくださいよ、竹中大臣、あなたは法案の提出者なんですよ。法案の責任者なんですよ。その上にいるのは小泉総理なわけですよ。その小泉総理が読売案について検討するようにと担当大臣に言ったということは、政府の意思として、読売案、すなわち修正を検討するということじゃないですか。そのものですよ。こんなのは、本当に私は怒っているんですよ、この部分に関しては、けしからぬと。一年間たなざらしにしておいて修正含みの案をここに出してくる。
 さらに言うのであれば、竹中大臣、この法案を担当されて、そして過去の経緯もほとんど研究されてきていない。自民党のサイドのことは自民党サイドで考えてください。きわめつけは、この修正、これがこれからどうなるか、与党の中でも、その前提として政府の中でもわからない。こんな国会をばかにした話はないですよ。この前提をクリアしない限り、私は、特にこの修正の部分、政府内で検討が終わらない限り、質疑できないと思います。
竹中国務大臣 いや、ちょっと今の細野議員の論理は余りに無理があるのではないのでしょうか。
 これは私は、修正という言葉は、総理からも、官房長官からも、私からも、一言も出ていないし、そういう案が、これだけ話題になっているんだから、しかも大新聞の一面に載ったものでありますから、それをそれなりに勉強しておけ、検討しておけというのは当たり前な話でありまして、それだけこの政府の案を通すために気を引き締めて審議に当たれという総理からの指示だったというわけでありますから、そういうことを言ったから修正だというのは、これはちょっと論理の飛躍であると思います。(発言する者あり)
大畠委員長 ちょっと速記をとめてください。
    〔速記中止〕
大畠委員長 速記を起こしてください。
 それでは、ただいま細野委員の質疑の最中でありますが、政府はいわゆるこの法律案の修正を検討しているんじゃないか、そういう修正を検討しているような法案について質疑させるというのはおかしいじゃないかということでありますが、改めて、政府の方として、総理の発言等々もございますが、この法律案について、修正というものを検討している、検討していないといろいろありますが、ちょっと整理をして答弁をいただきたいと思います。(細野委員「委員長、改めて聞きます」と呼ぶ)
 それでは、細野君。
細野委員 端的に聞きます。もう一度伺いますが、読売案を検討しろという話が総理からあったというのは事実なんですね。この点をお答えください。
竹中国務大臣 ちょっと整理をさせていただきます。
 十三日の総理の発言でございますけれども、発言の趣旨は、まず、十二日の読売新聞に掲載された修正試案に関して、非常に前向きに熱心に御議論をいただいている案である、よく勉強しておくようにということでございました。この点については、十四日夕方の記者との懇談で、総理自身も、法案の修正を指示したものではないことを明確に述べているところであります。
 この委員会で審議を始めていただくことに備え、政府としても、読売新聞を初め、各方面から提出されている修正意見について十分勉強していくことは当然でありますけれども、現在の案は、政府として最大限の努力を講じ、最善のものとして御提案申し上げているものであるということは言うまでもありません。政府として修正を検討しているということはございません。
細野委員 読売新聞の案は検討するということになっているんですね。その部分についてきちっと答えてください。読売新聞の案を政府内で今検討しているのですか。政府の中ですよ。いろいろな人がじゃない。総理と竹中大臣が読売案を検討しているのかどうか、答弁ください。
竹中国務大臣 読売の案等を含めていろいろな議論があるということを知っておかなければ国会での審議が十分にできないということでありますので、その意味において勉強し、検討しているということでございます。
細野委員 検討するというのは、読売案を検討する、修正案を検討する、修正を検討するということじゃないですか。それ以上とりようがないですよ。
 じゃ、竹中大臣がこの案をベストだというふうにおっしゃるんであれば、修正というのは検討する余地がないはずですね。本当にそれでいいんですか。政府としてはベストの案だと。
 きょう私が言った主務大臣の関与、竹中大臣は国家公安委員長に関与させるんですか。すべてこのまま通すんですか。基本原則のメディア規制の部分に関しても、これも外さないということなんですか。そこの検討を始めたんでしょう、政府が、小泉さんから指示を得て。どうなんですか。
竹中国務大臣 繰り返し申し上げますが、我々は政府案がベストな案であるというふうに思っております。そうした考えに基づき、閣議決定をして、法案の御審議をお願いしているところであります。
 繰り返しますが、修正案を、修正を政府が検討しているということはございません。
細野委員 じゃ、もう一度確認しますが、小泉総理から竹中大臣に対して読売案の検討を指示されたわけですよね。今竹中大臣が一生懸命総理の意向を話をされましたけれども、総理がどういう気持ちでそれを言ったのか、検討というのはどういう意味で言ったのか。みんなそう受け取っているんですよ。
 我々は竹中大臣が絶対の責任者だと思ってここで聞いているんですよ。それを、総理からの指示で読売案という修正を検討しているんじゃ、検討していないと今おっしゃったけれども、少なくとも、総理の指示で、修正について何らかの指示があったとしたら、これは、少なくとも総理に政府内での修正の状況についてこの委員会に説明してもらわない限り話にならないですよ。それが大前提ですよ。
竹中国務大臣 何度も申し上げますが、総理自身、記者レクでそういうことはないということを明言していらっしゃいますし、私もそういう指示は受けておりません。
 繰り返し、私も官房長官も、政府でそういう修正を検討するということはしていないというふうに申し上げている。これは、いろいろな意見があるから、そういったものについてはまあ勉強しておけば、そうしないと国会の審議は十分にできない、当たり前のことだと思います。
細野委員 わかりました。竹中大臣は、もう修正を検討していないと。修正を検討していないとよくわかりました。
 だから、少なくとも、それを指示した、検討を指示した小泉総理がここの場に来て、政府内では検討していないということについて、修正について言及していないということを答弁いただくまでは、この委員会での実質的な責任者として竹中大臣をみなすことはできない。(発言する者あり)
大畠委員長 速記をとめてください。
    〔速記中止〕
大畠委員長 速記を起こしてください。
 それでは、総理に真意を聞かないといけないという話がございましたけれども、この件については理事会で協議をさせていただきます。
 そして、もう一度、政府の方からは事実経緯を明確に答弁していただきたいということですから、もう一度整理をして竹中国務大臣から答弁をいただきます。
 竹中国務大臣。
竹中国務大臣 もう一度申し述べさせていただきます。
 十三日の総理の発言をめぐっての議論でございますけれども、発言の趣旨は、その前日、十二日の読売新聞に掲載された修正試案に関して、非常に前向きに熱心に御議論いただいている案である、よく勉強しておくようにということでありました。この点について、十四日夕方の記者との懇談で、総理自身も、法案の修正を指示したものではないことを明確に述べていらっしゃいます。
 したがいまして、この委員会の審議を始めていただくことに備えて、政府としても、読売新聞を初め各方面から提出されている修正意見について十分勉強しておくことは当然であるというふうに思っております。
 もちろん、現在の私どもが提出している案は、政府として最大限の努力を講じ、最善のものとして御提案申し上げている、この点は言うまでもございません。
細野委員 今後のために、今後この議論をきちっとしていくために、じゃ、一言一句ちょっと確認をさせてください。
 これは記者会見の資料を、インターネットに出ているものですが、大体そのまま出ていますので、ほとんどこれを利用して皆さん考えている文章です。
 「経済財政担当大臣」とありまして、「昨日、総理にお目にかかりましたときに、」竹中大臣、全部これをチェックしてくださいね。よろしいですか。「昨日、総理にお目にかかりましたときに、非常に前向きに熱心に議論を、これ、いただいている案だなと。よく検討しておくようにというふうな話を総理からいただいております。で、我々としてはもちろん、政府案がベストだというふうには思っておりますけれども、よく勉強しておくようにというような総理のご指摘もありましたので、これはしっかりと検討はしたいと思います。」
 しかも、もう一度記者がだめ押しで聞いています。「読売新聞の報道の案についてしっかり検討しておくようにと。」「ええ、そうですね。それについて検討しておくようにということです。」、こうあるんですね。勉強ではないんです。検討なんですよね。
 これ以上この部分に関して質疑を続けてもしようがありませんので、私、総理から少なくともこの指示があったことというのをきちっと明らかにしてほしいと思います。今の読んだとおりの発言が公式見解ということでよろしいですか。
竹中国務大臣 さっき答弁したとおりでございます。
 私もその中で言っていますけれども、勉強しておくようにという意味であるという趣旨の答弁をさせていただきました。
 ちなみに、この質問に、この記者会見でこれを私が申し上げたのは、たしかその前の日の総理の発言をめぐって、総理が修正を指示したというような新聞記事が出ておりましたので、そうではないですという趣旨で、この十四日の記者会見で、勉強しておくようにというふうな趣旨のことを私の方から申し上げた次第でございます。
細野委員 先ほども申し上げましたとおり、私は、竹中大臣に対して小泉総理はこういう指示をされたんだとすれば、竹中大臣の当事者能力というのが今疑われてきているというふうに思います。少なくとも、総理に、この部分に関して政府内部で、特に委員会の質疑の前にどういう議論があったのか、何をお考えなのかというのを答弁いただかない限り、今回竹中大臣にこれ以上質問しても意味がないというふうに考えます。
 加えまして、繰り返しになりますけれども、過去の経緯も含めて、竹中大臣、余りに危機感がなさ過ぎます。この法案に関して、きちっと過去の経緯も調べてください、そして、どこに問題があるのかも御自身で認識してください。
 そういう意味で、私、きょうの答弁を聞いていまして、竹中大臣を初め、政府の側の危機感が余りに薄い、だからこそ、こんな修正案に対してうだうだうだうだという話すら出てくるということを申し上げて、理事会の中であとは、総理の出席を前提とするということを私の主張として貫いていきたいと思います。
 以上で終わります。
大畠委員長 これにて細野君の質疑は終了いたしました。
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時二十一分散会


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