衆議院

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第10号 平成14年11月21日(木曜日)

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平成十四年十一月二十一日(木曜日)
    午前九時二十二分開議
 出席委員
   委員長 佐々木秀典君
   理事 逢沢 一郎君 理事 青山  丘君
   理事 小野 晋也君 理事 渡辺 博道君
   理事 伊藤 忠治君 理事 細野 豪志君
   理事 河合 正智君 理事 西村 眞悟君
      大村 秀章君    奥山 茂彦君
      嘉数 知賢君    亀井 久興君
      木村 隆秀君    小西  理君
      菅  義偉君    高木  毅君
      高橋 一郎君    谷川 和穗君
      近岡理一郎君    林 省之介君
      石毛えい子君    岩國 哲人君
      小沢 鋭仁君    大畠 章宏君
      山内  功君    山花 郁夫君
      山元  勉君    横路 孝弘君
      赤羽 一嘉君    吉井 英勝君
      北川れん子君
    …………………………………
   内閣総理大臣       小泉純一郎君
   国務大臣         鴻池 祥肇君
   内閣府大臣政務官     大村 秀章君
   内閣府大臣政務官     木村 隆秀君
   政府参考人
   (内閣官房内閣審議官)  中城 吉郎君
   内閣委員会専門員     小菅 修一君
    ―――――――――――――
委員の異動
十一月二十一日
 辞任         補欠選任
  金子 恭之君     小西  理君
  谷本 龍哉君     高木  毅君
  岩國 哲人君     小沢 鋭仁君
  山元  勉君     山内  功君
  太田 昭宏君     赤羽 一嘉君
同日
 辞任         補欠選任
  小西  理君     金子 恭之君
  高木  毅君     谷本 龍哉君
  小沢 鋭仁君     岩國 哲人君
  山内  功君     山元  勉君
  赤羽 一嘉君     太田 昭宏君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 構造改革特別区域法案(内閣提出第六九号)


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     ――――◇―――――
佐々木委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、構造改革特別区域法案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官中城吉郎君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
佐々木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
佐々木委員長 この際、本案に対し、山内功君から修正案が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。山内功君。
    ―――――――――――――
 構造改革特別区域法案に対する修正案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
山内(功)委員 民主党の山内功でございます。
 ただいま議題となりました構造改革特別区域法案に対する修正案の提案理由を説明いたします。
 真の構造改革を推進するためにも、規制改革の大胆な推進は時代の要請であることは言うまでもないことでありますが、既得権を手放したくない官僚組織や族議員の抵抗により、遅々として進んでいないのが現状であります。
 本来ならば全国一律で規制改革を断行すべきところですが、地方のアイデアと主体性を生かし、進捗がおくれている分野について、特区を設けて規制改革を試行的に実施していこうという法案の趣旨は、現状に照らせば一定理解できるものであります。ただし、特区における特例措置の評価をきちんと行い、効果が上がったものについては迅速に全国展開していく体制の確立がなければ、特区そのものが規制緩和・撤廃の動きをおくらせる隠れみのに使われかねないおそれがあるのであります。
 この点、政府原案は、関係行政機関の長による、規制の特例措置の適用状況にかかわる調査と推進本部への報告義務等が盛り込まれておりますが、評価体制や構造改革特別区域推進本部長である内閣総理大臣のイニシアチブが明確になっておりません。
 また、今回盛り込まれている特例措置は質量ともに不十分であるほか、特区において実施する特定事業の実施期間が明確でないこと、規定の解釈について関係行政機関の長が回答をする、いわゆるノーアクションレターの規定に不備があること等の問題点を抱えております。
 このため、民主党は、官から民へ規制改革の流れを加速化する立場から、本修正案を提出することといたしました。
 次に、本修正案の概要を御説明いたします。
 第一に、構造改革特別区域基本方針に定める事項に、構造改革の推進等の効果の定期的かつ客観的な評価に関する基本的な事項を追加するとともに、規制の特例措置の見直しについては、関係行政機関の長による評価を義務規定として追加、また、調査や評価を踏まえて、内閣総理大臣が関係行政機関の長に対し、規制の廃止を含めた見直しについて意見を述べることができる旨を盛り込み、総理のリーダーシップがより発揮されやすいよう改めております。
 第二に、地方公共団体と民間業者が、新たな特例措置について内閣総理大臣に提案することができることを明記しました。
 第三に、特別区域計画の認定に際し、開始の日だけでなく、実施期間を定めなければならないことを追加しました。
 第四に、ノーアクションレター規定について、地方公共団体への回答は、書面または電磁的方法により十四日以内に行わなければならない旨を盛り込みました。
 以上が、ここに修正案を提出する理由及び修正案の概要でございます。
 何とぞ、委員各位の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。
佐々木委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
    ―――――――――――――
佐々木委員長 これより原案及び修正案を一括して質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、これを許します。山花郁夫君。
山花委員 山花郁夫でございます。よろしくお願いいたします。
 まず、原案について質問をいたします。
 ただいま修正案の提出者からも、原案については、この法律の位置づけとして規制緩和ということを特区という形で行って、これがもしうまくいったらそれを全国的なものに展開していく、本来そうあるべきなんじゃないかという話があって、ただ、今回の法案では必ずしも明らかでない点が見られるというような趣旨の説明があったわけであります。
 改めまして、今回この法案の目的と申しましょうか、位置づけについて、もちろん今までも質疑がございましたし、冒頭で当然趣旨の御説明があったわけでありますけれども、私といたしましては、今回の特区の法案が、本来、今申し上げたような趣旨だと思いますし、単なる何か地域振興であってはいけないと思うのですが、もう一度改めて、この法案の位置づけについて大臣に確認を求めたいと思います。
鴻池国務大臣 改めて目的はいかがであるか、こういうことでございますので、今から申し上げたいと思います。
 構造改革特区は、規制は全国一律でなければならないという考え方から、地域の特性に応じた規制を認めるという考え方に転換を図り、地域の特性に合わせた規制改革を通じて、一、特定地域における構造改革の成功事例を示すことにより、全国的な構造改革を加速させ、我が国全体の経済活性化を加速させること、二、地域特性に応じた産業の集積や新規事業の創出により、地域経済を活性化させることを目的といたしております。
 すなわち、地域の活性化のためだけではなく、全国規模の規制改革の突破口として構造改革特区を導入するものであります。
山花委員 そういった御趣旨であるということでございますけれども、結果として地域が活性化するとか、そういうことはあり得るかと思いますけれども、あくまでも本来の目的は、そのような全国一律の規制ということから地域に応じた規制ということで、パイロットケースなどを試した上で成功と評価されることがあったら、それが広がっていくものであるという位置づけであるという御答弁だと思います。
 ところで、大臣は五日の閣議後の会見で、私自身すっきりとしないと述べたというような報道もされておりますけれども、この委員会の質疑の中でも、他の副大臣の方とちょっと意見が違うのかなとお見受けするところもあったわけですけれども、ここはぜひしっかりとリーダーシップをとっていただいて、そういう方向でやっていただきたいと思う次第でございます。
 ところで、今回のこの法案の中で、修正案も提出をされているところでございますけれども、私自身、そういった大臣の意気込みがまだはっきり書かれていないのかなというところがあるものですから、ちょっと確認をさせていただきたいんですけれども、このように、例えば地域の特性に応じて規制緩和をする、規制改革を行った場合に、それを調査するという形で法律には書いてあるわけでございますが、この調査ということは一体どういう意味なんでしょうか。つまりは、どのようにこの調査を行うんでしょうか。
 そしてまた、調査をするということは、私は、当然、その調査を行った後に一定の評価をして、これは成功例であるという評価があって、かつ、本来はあるべき規制ではなかった、あるいは当初は目的があって規制がされていたんだけれども今の社会に対応する規制ではないというような評価がされた上で、そうであれば、むしろ逆に全国一律に規制緩和しようというような話になるケースも出てくるんだと思うんですが、ただ、今回のこの法律には調査という言葉で書かれているわけでありまして、この調査ということの意味についてちょっと確認をさせていただきたいと思います。どういう意味でしょうか。
鴻池国務大臣 まず、委員に御激励をいただきましたことに厚く感謝を申し上げながら、しっかり受けとめさせていただきたいと思います。
 調査ということでありますが、事務的な答弁で恐縮でありますが、申し上げたいと思います。
 法案第三十六条第一項において、関係行政機関の長は、規制の特例措置の適用状況について定期的に調査を行い、その結果を構造改革特別区域推進本部に報告することとされております。また、法案第三十六条第二項において、この調査結果や地方公共団体等の意見を踏まえ、必要な措置を講じることとしており、全国的な展開もそこで検討されるということであります。さらに、法案第三条に基づいて閣議決定される構造改革特別区域基本方針において、関係行政機関の長からの報告も踏まえ、特区において規制改革の評価方法等について定める予定でございます。
 このように、適切な評価体制を確立するとともに、全国における規制の見直しを行うなど、フォローアップに努めてまいりたいと存じております。
山花委員 そのことと関連するんですが、例えば、幾つか自治体などが手を挙げて、そして中には一つこれでうまくいきそうだというのが出てきたときに、後発的にまた手を挙げるところも出てくるかもしれませんし、あるいは同時に今手を挙げている中で、極めて類似の内容を有するものもあろうかと思います。例えば、やはりサンプルというのは複数あった方が比較はしやすいわけですし、たまたま一カ所うまくいかなくてもうあれはだめだったという評価になってしまってもいけないのかなというふうに思うわけでありますけれども、場合によってはその複数地区をテストケースとして指定するということもあっていいのではなかろうかと思っております。これは申し上げるだけにさせていただきたいと思います。
 ところで、修正案の提出者にお伺いをしたいと思います。
 今、原案のことにつきまして大臣から、評価というのは後できっちりやるんだというお話がございました。後で方針などもしっかりとやるということがありましたけれども、ところで、今回の修正案の方には、法案の第三条の二項というところですか、基本方針に定めるべき事項といたしまして、構造改革の推進等、定期的かつ客観的な評価に関する基本的事項を追加するというふうにあります。評価という言葉がこちらでは出てくるんですけれども、このように評価の項目を基本方針に盛り込む理由というのはどういった理由なんでしょうか。今私が大臣といろいろやりとりしているときに申し上げたようなことなのかどうなのか、その点について御答弁をお願いいたします。
山内(功)委員 特区に限り規制の特例措置を導入するということは、構造改革の推進のためには一定の意義のあることだと考えます。しかし、それが真の意味での構造改革、すなわち全面的、全国的な規制緩和につなげていくためには、導入した規制の特例措置がどのようなメリットを生み、またどのような弊害を生じさせるのかを厳密に評価することが大切だと考えています。
 しかし、政府原案では、基本方針に定める事項の中にこのような評価に関する項目が含まれておりません。唯一、三十六条において、関係行政機関の長が規制の特例措置について調査を行うとされているのみでございます。当該措置がどのようなメリットを生み、またどのような弊害を生じさせるのかを評価するには、これでは不十分だと言わざるを得ません。
 この点につき民主党の修正案では、まず、大もととなる基本方針に評価に関する基本的事項を定めることで、適正な評価を行うことをしっかりと担保しております。さらに、三十六条一項にて、関係行政機関の長が評価を行い、その結果を少なくとも年一回以上本部に報告させることを義務づけておりまして、政府原案より一歩進んだ内容となっていると考えております。
山花委員 私は、そのように評価ということをはっきりとやはり法律上規定しておいた方が、後で行政の方に任せるということよりもそちらの方が適切なのではないかと思います。
 ところで、大臣はただいま、私の調査ということの意味はどういうことだという問いに対しまして、やり方など御説明いただきまして、その上で、また事後的に、実質的には評価と言っていいようなことを後でやった上でさらには全国展開へつなげていくんだ、そういった御説明がございましたけれども、お気持ちとしてはよく理解はできるんですが、ただ、法律の条文を見る限りは、今回出された法案が、これが全国展開へつながっていくものだということは、必ずしも条文をひっくり返して読んでも明らかでないように思われます。
 御答弁で担保されるという趣旨なのかもしれませんけれども、ただ、やはり、法律というのは一回つくってしまいますと、実際動き出してから後でやはりまずかったということになってはいけませんし、冒頭にも申し上げましたように、これが単なる地域振興策になってしまったりであるとか、もっと言えば、結局、地元の選出の議員が動いて地元に利益誘導を図るような、それで終わってしまうようなことがあってはいけないと思うんですけれども、改めまして、全国展開へつなげていく、こういうことが少なくとも条文上は明らかでないようにお見受けするんですが、この点についていかがお考えなんでしょうか、どういう形で全国展開へとつなげていくということなんでしょうか、お願いいたします。
鴻池国務大臣 法案第三十六条第一項において、関係行政機関の長は、規制の特例措置の適用状況について定期的に調査を行い、その結果を構造改革特別区域推進本部に報告することとされております。また、法案第三十六条第二項において、この調査結果や地方公共団体等の意見を踏まえ、必要な措置を講じることといたしております。さらに、法案第三条に基づいて閣議決定される構造改革特別区域基本方針において、関係行政機関の長からの報告も踏まえて、特区において規制改革の評価方法等について定める予定であります。こうした規定によって御指摘の点につきましては原案でも明確になっておる。こういう形どおりの答弁で恐縮でございますけれども。
 これは、委員がお考えのところと私も似たところがあります。ただ、今回はまずやってみるということでありますから、これっきりというものではないんです。第二弾もあり、第三弾もあるわけでございますので、これを見ながらいろいろな意見交換をしていく可能性というのは随分あるということを御理解いただきたいと思います。
 この構造改革あるいは特区の構想については、頭から否定をする政党、あるいは個人的にも私はいらっしゃらないと思います。例えば日本の歴史観、こういったことについてはいろいろな考え方があろうかと思いますけれども、日本列島の中で今、沈滞ムードと申しますか、閉塞感というものを破るためには規制改革をやらなきゃいかぬ、みんなが思っていることであります。その中で、特区という構想を全国に披瀝して、そして全国各地から提案を受けてくる、こういうことについても否定をされるところも少ないと思いますので、これを継続していって、いろいろな御議論を重ねてよりよきものにしたい、このように思っております。
    〔委員長退席、細野委員長代理着席〕
山花委員 大変熱意のある御答弁だったと思いますけれども、ここで私も、その方向性については賛成をするものでありますし、また、ぜひそういうふうになっていくべきだと思います。
 ただ一方で、今御答弁にもございましたように、やってみなければわからないようなところもありまして、ここはちょっと悩ましいところなんですけれども、例えば、やってみた結果、これはちょっとまずかったんじゃないかというケースも中には可能性としては出てくるかもしれません。つまりは、規制緩和をした結果、する前よりも悪くなってしまったとか、あるいは、ほかの地域と比べたら、ほかの方がまだいいぐらいで、緩和しなかった方がいいと評価、評価とはおっしゃらないのかな、調査した結果、事後的であれ何であれ、そういうふうなケースも中にはあるかもしれません。こういうときは、一回特区として認めた後、実際少し動かしてみたらどうもあんばいがよくないなというとき、これはどういう措置なり手だてなりを講じられると考えていらっしゃるんでしょうか。
木村大臣政務官 この法案を成立させていただきましたら、所定の手続をして認定の申請を受けるわけですけれども、そこの計画は間違いないようにしっかりしたものを出してくれるとまず期待をした上でお答えをしたいと思いますけれども、計画どおりにちっとも進まないというときには、しっかり計画どおりやりなさいよという指導もさせていただきますし、また、計画をちょっと修正した方がいいんじゃないかという場合が出れば、やはり柔軟に対応していくことも考えていかなきゃならないと思っています。
 それをした上で、やはり所期の目的が達成できそうもないということが起きますれば、認定の一部または全部を取り消すことができるということもこの法案にうたっているところでございますので、そのようになるものと思っております。
山花委員 別に引っかけをしようと思ったわけでも何でもないんですけれども、ちょっと聞いていただきたいんです。
 先ほど鴻池大臣が言われたような御趣旨もよく理解できますし、ただ、先に地方分権一括法というもので、今地方分権がどんどん進んでいっております。これからもっと分権化で、私は財源ももっと渡すべきだと思っていますが、地方に割といろいろなことをゆだねていくという方向性で、大方そういう流れができているんだと思いますけれども、より一層分権というのを進めていったときには、この特区という構想も、実は特区なんじゃなくて、自治体が自分たちの選択でこういうことをするんだ、国の規制はそこまで及ばないんだ、将来的にはそういう絵も描いていっていいんだろうなというふうに思います。
 その上で、今回この特区を実施してみて、今の御説明ですと、当初の計画どおりやっていないであるとか、あるいは、計画どおりなんだけれどもうまくいっていないというケースについて何らかの指導をされる。私はそれはそれで結構だと思うという前提の上で、これも要望ですけれども、余り過度に地方の自主性というのを害するようなことのないような形で指導を、指導という言葉がございましたが、そこの点はちょっと悩ましい話かと思いますけれども、御配慮をいただければと思います。これは要望として申し上げたいと思います。
 ところで、修正案の提出者にお伺いしたいと思います。
 今、全国展開の議論というものをさせていただいたんですけれども、今回、この特区に限って規制の特例措置を導入することになるわけでありますが、今申し上げましたように、本当に真の意味での構造改革ということにつなげていくためには、特区の枠に限られず、全国的な規制緩和の流れにつなげていくということが必要なのではないかということで今質疑をさせていただいております。今回の修正案につきましては、こういった趣旨を踏まえてのものだと私は認識をいたしておりますが、修正案の方では、どのような形で全国的あるいは全面的な規制緩和へと発展させよう、そういった仕組みとなっているのかということについて御説明をいただきたいと思います。
    〔細野委員長代理退席、委員長着席〕
山内(功)委員 民主党の修正案では、規制の特例措置の適用状況について、その効果や弊害を適正に評価するとともに、年次的に本部へと報告することを義務づけております。さらに、内閣総理大臣は、報告に基づき、規制の特例措置を全国展開することが妥当であると判断できるものについて、関係行政機関の長に対して意見を述べることができ、関係行政機関の長が必要な見直し措置を行うこととしています。
 先ほど大臣も言明されますとおり、当然、ここで取り上げられております規制の特例措置については、全国展開をにらんだ試行的な位置づけであることが前提とされておりますので、当該の特例措置が著しい悪影響をもたらすなどの評価を下されない限りは、内閣総理大臣においては極力、全国的な規制廃止の方向へと意見を述べることになろうかと考えるところでございます。
山花委員 また大臣にお伺いしたいと思います。
 先ほど、今回の特区の話はこれで終わりじゃないんだ、第二弾、第三弾と、第三弾まで言われましたけれども、やってみたいというようなお話がございました。今回のは八月に募集をかけたものについてのものという認識をしているんですが、どうも一月十五日を締め切りとして、第二弾があるやに聞いております。
 この位置づけなんですけれども、つまり、第二弾、第三弾、本来は私も、規制緩和を特区の形でパイロット的にやってみて、うまくいくかどうかということは、これはいつまででおしまいということはないんじゃないかと思っておりますけれども、少なくとも今まではっきりとお話が出ているのは、一月十五日に締め切ってもう一回ということで、今第三弾という話もありましたけれども、今後の位置づけについて確認をさせていただきたいんです。
 一月十五日にまた募集をかけるものについては、少なくともこの法案が直接適用されるということではない、仮に成立したとして、と思いますが、恐らく、第一弾、八月のと、来年一月のが違ったスキームでやられるということになると、これも変な話ですし、今回についてはもう財政的な措置は行わないということで何度も確認をされておりますけれども、後から出てきた、後出しの方が何か財政措置がついたりとかそういうことがあってはおかしいと思います。この点について確認をさせていただきたいんです。
 基本的には、今後行うのも同じようなスキームで行うというふうに理解してよろしいでしょうか。
鴻池国務大臣 委員の御指摘のとおりだと思います。
 それで、第一次提案募集は、御存じのとおり、七月にこの構想が決まり、そして八月三十日締め切り、私が担当大臣になりましたのが九月三十日、こういう状況下でありましたが、振り返れば、この短期間に随分多くの提案が出てまいりましたし、各省との調整の結果、一歩前進、二歩前進、三歩後退ではありませんが、私は、進んでいるというふうに思います。
 ですから、今のお話のように、一月十五日締め切りで第二次の提案を募集しておりますが、ここへまた、いい、きらりと光るような御提案を地域から企業から出していただきたい。ただ、PR不足であったことは反省材料の一つでございますので、私も、時間のある限り精力的に各地に参りましてこの構想についての御説明をさせていただきたい、このように思っております。
 スキームにつきましては、当然、一回と二回と違うということはおかしなことになりますので、それは守っていかなければならない、このように思っております。
山花委員 そこもぜひしっかりとやっていただきたいと思います。地方からせっかくきらりと光るものがあって、それを磨いていただくのがお仕事だと思いますけれども、どうも、よその省庁から、磨くのが目が粗いもので何か傷がついたりとか、結局曇りガラスみたいになったものが出てくるようなことがあってはいけないと思います。
 ところで、修正案の提出者にお伺いをしたいと思いますけれども、政府の方は、法案の策定に先立ちまして、講ずべき規制の特例措置について、地方公共団体や民間の事業者からの提案を受けたという御説明も今あったわけですけれども、さらに、今大臣は第二弾、第三弾というふうに言われていますけれども、今回の民主党の提出した修正案では、今後も引き続きこれら地方公共団体や民間事業者からの提案を受け付ける旨を、これは条文上も書かれているわけであります。これを法律上明確にするということの意義についてお聞かせいただきたいと思います。
山内(功)委員 規制改革等を通じた構造改革の推進のためには、国から押しつけられるような形での改革ではなくて、地域の事情に精通している地方公共団体や民間事業者の発意による、いわば下からの改革が重要です。政府は、本法律案の作成に先立って、自治体や民間事業者からの提案を受け付けるとともに、さらに今後、第二ステップとして、来年一月十五日を目途として第二次の追加提案を受け付けるとしています。これも恐らく、このような趣旨に基づいて行われるものであろうと理解しています。
 しかし、政府原案の条文を見る限り、そのような趣旨、すなわち、地方や民間の自助努力や発意によって規制改革、構造改革を推し進めていくんだという精神を感じ取ることはできません。第二次の追加提案を受け付けるというのであれば、少なくとも、本法案の中にその制度を書き込むべきではないでしょうか。
 民主党は、今後も恒久的にこれらの要望を受け付け、それに基づいて基本方針を修正するシステムを法律の上で明確にすべきと考えています。そのような考え方に基づき、修正案では、三条三項において、地方公共団体及び民間事業者の提案を受け付ける旨を規定するとともに、同条四項に、その提案に基づいて基本方針を変更できる旨を盛り込んだところでございます。
山花委員 次の質問に移りたいと思います。いわゆるノーアクションレターの問題であります。
 このノーアクションレターについてなんですけれども、今回の政府の原案では、法令の解釈について関係行政機関の長に対し確認を求めることができる旨の規定がございます。これに対する行政の側の回答が、ノーアクションレターで、先日岩國哲人委員からもいろいろ質疑がございましたけれども、問い合わせをした以上はノーリアクションであってはいけないんでしょうけれども、ただ、一方で、あいまいな回答をされたりであるとか、あるいは、口頭で言って、いや文書でくださいと言ったにもかかわらず、もう説明したんだからいいじゃないかというようなことがあったとしても、少なくとも法文上はそれで事足りてしまうように読めるんです。
 この点について、不誠実な回答、例えばいつまでたっても答えない、引き延ばしをしたりとか、そういうケースもあろうかと思いますけれども、こういうような不誠実な回答があった場合にはどうされるおつもりなんでしょうか。
木村大臣政務官 今、先生の、ノーアクションレター制度についてでございますけれども、これは、閣議決定をいたします基本方針の中で、しっかりと書面で行うこと、そして回答期限も設けていくということを定めていきたいと思っております。
 ただ、回答期限につきましては、目標を定めて行いたいと思っております。と申しますのは、質問によりましては、技術的なことで時間を要するもの、即座に回答できるもの、いろいろございますので、ある程度の目標を明示して弾力的に運用していきたいというふうに考えております。
山花委員 今、閣議決定の中で定めていきたいという御答弁があったわけでありますが、これに対しまして、民主党の修正案の方では文書の形式で回答する旨を義務づけておりますが、この点についての趣旨の御説明をお願いしたいと思います。
山内(功)委員 今回のいわゆるノーアクションレター制度の意義につきましては、法令の規定の解釈について、関係行政機関が回答しなければならないことを義務づけることにより、関係行政機関の恣意的な裁量の余地を退けるとともに、特定事業の実施が円滑に行われるための便宜を図ることにあります。
 しかしながら、その回答の形式や期限が明確に特定されていないことから、恣意的な側面が完全に排除されたとは言えません。関係行政機関があいまいな回答を行ったり、あるいは恣意的に回答の期限をおくらせるなどの行為に及ぶことにより、特定事業の円滑な実施が妨げられるケースが容易に想像できるところでございます。
 民主党の修正案では、このような弊害を避けるため、回答は文書の形式により行うことを義務づけることにより、当事者のみならずあまねく第三者にも理解できるような形で、証拠で残すべきという考え方に基づいています。さらに、十四日以内と期限を区切ることによって、特定事業の円滑な実施を妨げることのないように配慮しているところでございます。
山花委員 続けて修正案の提出者にお伺いしたいと思います。第四条の第二項のところでありますけれども、構造改革特別区域計画の策定に当たって、実施する特定事業の実施期間を定めるか、または見直しに関する事項を定めるという形にされておりますけれども、つまりは、原案では開始の日しか規定されていないものに対しまして、期間を定めるというような形での修正がなされております。この点は、どういった理由に基づくものでしょうか。
山内(功)委員 引き続いてお答えいたします。
 特定事業の実施に当たっては、それが特区という特定のエリアにて行うがために、一部地域の既得権益となってしまうおそれもあります。今回の法律で導入される規制の特例措置については、本来は全国的な規制改革に向けた先行実施的な色彩を持つべきであって、特定エリアの既得権益として定着するのは必ずしも好ましいことではありません。つまり、必要な規制改革について、特定エリアにとどまることなく全国へと展開させる流れを定着させるべきだと考えています。
 ですので、構造改革特別区域計画の認定に当たって、事前に特定事業の実施期間を明確にするか、あるいは見直しに関する事項を明らかにすることによって、特定地域の既得権益化することを防ぐとともに、全国大への規制改革へとつながる機運をつくり出す旨が、今回の修正の趣旨でございます。
山花委員 つまりは、今回のこの特区をつくったことによって、一定の地域が既得権益を持つような形になってはいけないということだと思います。
 大臣、この点について、原案は期間の定めがないわけでありますけれども、恐らく御答弁はいろいろなケースがあるからというお話なんでしょうけれども、最後に、決してこれを既得権益化させないという御決意をいただいて、質問を終わりたいと思います。
鴻池国務大臣 そういう決意であります。
山花委員 質問を終わります。
佐々木委員長 以上で山花郁夫君の質疑は終了いたしました。
 小泉総理大臣、おはようございます。御苦労さまでございます。
 それでは、これより内閣総理大臣に対する質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小野晋也君。
小野委員 小泉総理におかれましては、政権を担われましてよりこれで一年半余り、新世紀の日本に必要とされる改革の方向を示し、着実にその成果を一歩ずつ上げられておられますことに深く敬意を表し、また、高く評価をいたしたいと思っている次第でございます。
 今、この内閣委員会で取り上げられております構造改革特別区域法案におきましても、この日本の国が新しい時代に対応していくために必要とされる規制改革を実現していく上で、国民の理解を得ながら、それを着実に推進していく政策であると私は思っているわけでございます。
 ところで、最近の議論を拝聴させていただく中において、小泉改革というのが、よくその大きなビジョンが見えないということを指摘される方がたくさんおられます。国会の中での議論においてもそういう趣旨の発言がよくなされているわけでありますが、私は、総理の発言をずっと追いかけさせていただきます中に、当初より非常に明確にその方向が打ち出されているという印象を持っているものでございます。
 例えば、最初の施政方針演説を行われました折に、既に、「新世紀を迎え、日本が希望に満ちあふれた未来を創造できるか否かは、国民一人一人の改革に立ち向かう志と決意にかかっています。」こういうふうなことを総理は述べられまして、国民の意識改革を伴いながら、このダイナミックに動く時代のあらしの中を日本丸が進んでいこうではないか、こういうことを描いておられるわけでありまして、その改革の方針といたしましては、私は三つのものが浮き彫りにされてきているような気がしているわけであります。
 その一つは、自立自助の精神をこの日本の国にきちんと植えつけていこうということでございまして、他人依存、また、なれ合うような体質の中ではなかなか新しいことに対する知恵が生まれてこないのではないか、だから、日本国民はみずからの足で立つ国民になろう、こういう点を第一点目として指摘されているように感じております。
 それから、第二点目は、潜在力を活用できる国になろうということでございます。よく、失われた十年というようなことが言われるわけでありますが、日本人がこの十年間寝ていたわけではない、それぞれにそれぞれの努力をしながらこの十年を過ごしてきたとするならば、この国の中にいろいろなものが生まれているはずなんだ。ただ、日本人は、新しい時代に何が必要かということについてきちんとした認識を持てないがゆえに、それがいつまでも地中に潜んでいて表にあらわれないがゆえに、日本の国を動かす力になってこないのではないか。だから、潜在力をもっともっと引き出す国になろうではないか、こういう意識を日本人の中に持とうではないかというのが第二点目のような気持ちがいたしております。
 それから、第三点目は、もっともっと人間が輝く日本の国にしようという思いがあるような気持ちがいたします。いろいろな不平や不満を持ちながら、限られた形の中で生きようという日本人ではなくて、もっと自由奔放に、自分自身の夢を持ちながら、希望を持ちながらやっていこう、こういう国を目指すべきだ、こんな思いを持っているように私はこれまでの発言の中から感じさせていただきました。
 こういう点につきまして、総理の自由な御意見をお聞かせいただければありがたいと思います。
小泉内閣総理大臣 日ごろ私が思っていることをよく御理解いただき、要約していただきましたことを激励と受けとめて、御礼を申し上げたいと思います。
 まさに一番大事なのは、洋の東西、時代を問わず、国家を問わず最も大事なのは、人だと思います。その中で何が一番大事か。みずからを助ける精神とみずからを律する精神。これは、明治の初めに「セルフ・ヘルプ」という本が日本訳されまして、明治の時代には知識層の間にベストセラーになった。このみずからを助ける精神とみずからを律する精神、これを持っていろいろ頑張ってくれたからこそ、日本というのはここまで発展してきたんだと思います。
 要は、自助自律の精神を持った人が多ければ多いほど、自分の力だけではどうしても助けられないような人をまた助けることもできる社会になると思うんです。逆に、何でも依存する、お上がやってくれる、他人がやってくれるということになると、その大事な意欲の芽をなくしてしまう、気力をなくしてしまう、依存心が多くなってしまうということで、国というのは発展しないのではないか。そういう観点から、私は常に、みずからを戒める気持ちにおきましても、まず、人に助けを求める前にみずからを助けよう、みずからを律しようと。
 私は、いろいろな世の中を見ていまして、みずからやる気のある人に対しては、必ず他人が手を差し伸べると思います。身近な例を見ていただけば、あの人はよくやっているな、黙々と努力しているなという人に対しては、必ずだれかが援助の手を差し伸べるはずであります。そういう例を見ましても、私は、どんな時代にあっても、この自助の精神と自律の精神が基本だと。
 そういう中で、政治として、そういう意欲のある人が活躍できる場をいかに確保するか、そういう環境を整えるかというのが政治でも大事ではないか。日本にとりまして、やはり人間力といいますか、人の重要性、そしてそのような創意工夫、個人の創意工夫を生かすような環境を政治がつくっていく、体制をつくっていく、制度を整えていく、これがやはりその国の発展を興すために非常に重要ではないかなと思っております。
小野委員 質問を終わります。
佐々木委員長 以上で小野晋也君の質疑は終了いたしました。
 次に、小沢鋭仁君。
小沢(鋭)委員 民主党の小沢鋭仁でございます。
 小泉総理並びに鴻池担当大臣に御質問を申し上げます。
 まず、今回の構造改革特区でありますが、私は、二つ大きなポイントがあるのかなと思って読ませていただきました。
 その一つのポイントは、ある意味では地域が独自のプランを立てるということ、それから、この組み方として、地域が考え、もちろん担当大臣等といろいろな協議をしながら、最後は総理が決断する、そういう形になっていること、この二つ。もう一回繰り返しますと、地域が独自のプランを立てる、そういう仕掛けが入っている、それから、総理が最後にそこで決定権を持って、そしてある意味では、先ほど来我が党のいわゆる修正案を申し上げておりますが、特区での改革を全国に広げていくためのリーダーシップ、それを総理が最終的に持つ、その二つがポイントかなと思って私は読ませていただきました。
 改めて冒頭に、繰り返して恐縮でありますが、総理の、この構造改革特区法案への意義、その思いを述べていただきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 規制改革あるいは規制緩和という言葉が盛んに言われておりますが、規制というのは、ある面においては人を保護する規制もある、あるいは競争の波に洗われる業界を保護するという面もあると思います。しかし、これが行き過ぎますと、新たな意欲をそぐ面も出てくる、いわゆる弊害も出てくる。
 そういう中で、私は、地方の意欲とか民間の活力を、今の規制の中で、取っ払うとどういう新しい芽が出てくるかということに着目しまして、むしろ今の官から民へ、中央から地方へというこの時代の流れというものを考えながら、地方独自の、今の規制ではでき得ないもので、こういう規制を外してくれればもっと地方として独自性が出せる、仕事ができると。まあ民間におきましても、いろいろ仕事をやるにしても規制があってやりにくい、この規制を外してくれれば参入できるというものを独自に、中央が押しつけるんではなくて、地方なり民間がみずからの発意でこうやりたいと。これは、今のところ全国的に規制の網がかぶっていますから、当然反対論が出てきます。
 しかし、ある地域、意欲的に自主的にやるというんだったらば、これが、言われている規制を外すと弊害が出るんだという心配をなくす面に作用すれば、ああ、杞憂に終わったなと。むしろ規制改革をすることによって、規制を緩和することによって、当初思われていた弊害がそんなにないじゃないかという例を一部の地域で出してくれれば、これは将来全国的に広まっていくかもしれない。あるいは、この時代においてこういう規制は改めて必要なかったのかな、むしろ、規制を外したために新たな産業が出てきたな、新たな仕事が出てきたな、新たな雇用が出てきたなということになれば、これは各地域に、地方に広がっていく、全国的な規制緩和につながるかもしれない。
 そういう独自性を喚起したいという意味も込められているということを御理解いただきたいと思います。
小沢(鋭)委員 まさに総理がおっしゃるところ、私も賛成でありまして、従来型の手法でありますと、大体一つの条件をつくって、それに合致したところにいわゆる補助金だとか金融の措置がいく、こういう話でありますが、そういう意味ではこの法案は、今総理がおっしゃったように、全然発想が違うという意味では私は大変評価をしているんです。
 しかし同時に、先ほど申し上げたように、二つのポイントがあるということの後半の部分を総理はお落としになったわけですが、要は、試されるのは、今総理がおっしゃった地方の構想力と、もう一つは総理のリーダーシップ、そこが私は重要なんじゃないかと先ほど申し上げました。
 そのリーダーシップという観点でお聞かせをいただきたいと思うんですが、リーダーシップには、ある意味では一般的に二通りあるとよく言われていると思います。一つは、オピニオンリーダーといいますか、突破口を開いていくリーダーシップ。それからもう一つは、最後まとめて仕上げていくリーダーシップ。ある意味では、政治のリーダーシップというのは、どちらかというと今までは、後者の方が多かったのかもしれません。小泉総理はもしかしたらその前者なのかもしれません。
 しかし、この法案の中身で考えると、最後は総理の決断によるところが大変大きいですから、総理がリーダーシップを発揮しないとまとまらない、そういう問題が大変多くなっております。現に、先ほどの鴻池大臣との我が党の質問の中でも、鴻池大臣も、まだまだ不足していると思う、それから、すっきりしない、そういう話を再度おっしゃいました。ここは総理、リーダーシップをきちっと発揮する場だと思っています。
 そこについて、具体的にお聞かせいただきたいと思います。
 株式会社による病院経営参入の容認、それから株式会社による学校経営参入の容認、この二つが落ちたという話が出ています。総理御自身のお考えをお聞かせいただきたいのと、最後まとめるリーダーシップをどう発揮するのか、お考えをお願いしたいと思います。
小泉内閣総理大臣 これはいろいろ議論のあるところだと思いますが、地域から具体的にまだ手を挙げていないんですね。そういう地域の手を挙げたところに対しては検討していこうと。私は、最初からこれやれ、あれやれと言うのは余り好ましいものではないと。いろいろ各担当大臣がいるわけですから、その中でどうしても判断がつきにくいというときに、どっちがいいかというときには私が判断します。最初からあれやれ、これやれと――総論的な方針は出しますけれども、でき得れば各省の担当大臣でまとめていただきたい。
 そういう状況の中で判断していかなきゃならないと思いますので、その具体的な提案につきまして、今のところ、地方の自治体としてこの特区を認めてくれという点については出てきていないということであります。出てくれば私は検討したいと思っているんです。
小沢(鋭)委員 大臣、どうですか。ちょっともう一回確認しておきます。そういう構想がなかったかどうかという点を鴻池大臣にお聞かせいただきたいと思います。
鴻池国務大臣 医療の分野に株式会社参入、あるいは教育の分野に株式会社参入、これにつきましては、提案はございました。ただ、今総理が御答弁申し上げましたように、地域からは医療の分野についてはございません。
 これは、いわゆる民の病院経営者が株式会社で先端医療をやりたい、こういう提案でございました。私は、これは十分真摯に検討すべき問題であるということで、厚生労働大臣との意見調整を図りましたけれども、今は激変に至ることは非常に難しいということで、総理に御報告を申し上げました。その後は、ひとつ今後も検討するように、調整するようにという御指示をいただいているところでございます。
 なお、第二次募集をいたしておりますので、恐らくそういった具体的なものが再び提案がされるものと私は期待をいたしておりますので、これにつきましても今後の検討課題としていきたい、このように思っております。
小沢(鋭)委員 規制改革に関して総理と大臣でかなり温度差が違うのかな、こう聞いておりましたが、今、一つ具体的な提案もあって総理にも上申された、こういう話もありました。その分だけでも、総理御自身のお考えをぴしっと一言、きちっと言ってくれませんか。大臣からの上申、先ほどはなかったんだというお話がありましたが、一つありましたと、こういうことですね。
    〔委員長退席、細野委員長代理着席〕
鴻池国務大臣 今申し上げましたように、地方公共団体から医療に関しての特区構想というものは出ておりません、こういうことでございますので。なお、私個人といたしましても、担当大臣といたしましても、これが第二次募集で出てくることを期待いたしておるということを申し添えたわけであります。
小沢(鋭)委員 わかりました。
 ただ、要は、今回の法案の枠組みの自治体から出てこない、こういうことですね。それはわかりますが、そこは総理ももうおわかりのように、もしかしたら途中でつぶれるのかもしれない、つぶされているのかもしれません。そこのところは、それも含めて、総理、ここはびしっと方針は言っておいていただかないといけないんじゃないですか。もしそういうものが上がってきたらどうするか、こういう話を。次を期待している、そこまで大臣は言っているんですから。総理、どうですか。
小泉内閣総理大臣 私も、地方から積極的にそういう意欲があり、実現可能性も含めて、手を挙げてきてくれるということを期待しております。
小沢(鋭)委員 恐らく地域もあるいはまた民間も、今の答弁にある意味では意を強くして、次の第二次募集や何かに参加をしてくる、こういうふうに思いますので、ぜひしっかりした対応をお願いしたいと思います。
 それからもう一つ、民主党の修正案の中で、先ほど担当大臣の鴻池大臣にも申し上げましたが、さっきも総理の答弁にもありましたが、この特区構想をやはり全国に広げていく。いわゆる構造改革特区という名前ですから、全国に広げていかないと構造が変わったという話にならないんだと。鴻池大臣は、全国規模での展開の構造改革の突破口にしたい、こういう話でありましたが、それでよろしいですね。総理の決意をお願いしたいと思います。
小泉内閣総理大臣 この法案を提案しよう、構造改革特区構想というものを実現してみようじゃないかという段階で、既に、法案になる前に全国規模で規制改革しますという動きが出てきたということは、私はいいことだと思っています。法案提出するまでもなく、もういいです、やりますから特区にしないでいいですというのが出てきているんです。具体的なことは恐らく鴻池大臣御存じだと思いますけれども、そういう一つの提案をしただけで規制改革の必要性を各役所はわかってくれたということは、大きな前進だと受けとめております。
小沢(鋭)委員 総理の弁論術が大変すぐれているので、一歩先の話をおっしゃるのであれなんですが、一応ここは確認をしておきたいのは、現段階で特区で出てきたような話を全国規模に展開していく、その突破口にしていく、そういう考え方でいいんですねということを確認したいので、これは一言でいいですという話であればそれで結構なんですが、お願いしたいと思います。
小泉内閣総理大臣 はい。これが、特区が全国規模に広がりたい、を受けたということになれば結構だと思います。
小沢(鋭)委員 であれば、ぜひ、民主党はそういう修正案を出しておりますので、また与党の皆さんにも御検討をいただけるとありがたい、こういうふうに申し上げておきたいと思います。
 さらにもう一つ、民主党が主張しまして、先ほどもお話が出ておりました件で、ノンアクションレターをいわゆる書面または電磁的方法において回答してもらうということを申し上げてきました。これは私流に言えば、ある意味では、ここも役所の皆さんいらっしゃいますが、霞が関のいわゆる裁量的な話をできるだけ明示的にしていかなきゃいかぬ、こういう話なんだと思います。
 裁量行政あるいはまた行政指導という言葉はもう世界語にもなっているようなわけで、ある意味ではそういう霞が関の皆さんの、それは全部悪意だとは全然思いません、善意に基づいているものであったとしても、言ってみれば不明朗、不透明な決定というのがある。そういうものを今日の時代はしっかりと明らかにしていくことが必要だ、こういうことなんだろうと思います。
 そういう提案をさせていただいておりまして、これについての総理の御見解をお聞かせいただきたいと思います。
鴻池国務大臣 この法案を御審議いただく中で、随分ノーアクションレター制度というのが議論の中で浮上してまいりました。今の委員のお話も十分理解をいたしております。
 そこで、この法案を成立していただきました後、閣議決定をされます構造改革特別区域基本方針、この中において書面ということを織り込んでこの方針をつくっていきたい、このようにお約束を申し上げたいと思います。
小沢(鋭)委員 すっきりした答弁ですから、総理ももちろん御了解だ、こういうふうに理解してこの件に関しては進めたいと思いますが、そういうことであれば、これもまたたびたびで恐縮でありますが、民主党の修正を受け入れてくれるとさらにいいのにな、こういうふうに申し上げておきたいと思います。
 もう一つ御質問申し上げます。
 今回は、先ほどのような、従来型の手法でないということもあって、予算とか補助金、税、金融という話の措置が入っていないわけですね。それは、仕組み方として私も理解できないわけではありません。
 しかし、例えば具体的なケースでいうと、特養のケースを考えてみますと、今までの福祉法人というところは補助金が入るわけですね。今回の公設民営という形でもしやるとすればそれは入らないということですから、要は競争条件が違っちゃうわけですね。そういうケースがこれから出てまいります。そういった場合には、今後予算だとか税とかを考える、そういう展開はないのかという点を御質問しておきたいと思います。
鴻池国務大臣 この財政措置等について考えはないかというのも今回随分御議論をちょうだいいたしたところでございますが、今の時点では、従来型の財政措置は行わないということで進めたいと存じております。
 ただ、委員がただいま例としてお話しになりました、地方公共団体が自発的にそういう各省庁の予算を効率的に使っていこうということにつきましては、より地域の活性化の効果を高める方法であることも間違いないことだと認識をいたしております。
小沢(鋭)委員 ぜひまたいろいろな方面からも御検討いただきたいと要望申し上げておきます。
 新聞に、日経新聞の十月十二日ですが、「アイルランド特区立国狙う」こういうタイトルなんですね。特区立国とあります。今回の特区は、先ほど来話が出ているように構造改革特区という性質ですから、ちょっとこういったいわゆる一般的な経済特区とは違うな、こうは思います。しかし、底流で共通するものはかなりあって、それは、既得権を打破して、そしてまさに新しい時代にふさわしい制度をつくっていく、そこのきっかけにしていきたいという意味では私は同じなんだろう、こう思っています。
 そういう目でやはり、特区ということを一般的に考えてみますと、例えば、イギリスというのがイギリス病で落ち込んでいた一九八〇年代、サッチャーさんが、まさに金融のビッグバンと一緒にドックランドの開発というのをやりまして、ドックランドという地域のある意味では特区構想で、まさにロンドンの金融センターとしての位置を改めて確立したわけですね。今、御承知のようにイギリスはユーロの通貨圏ではありません。しかし、ロンドンは依然としてヨーロッパの金融センターですよ。そういう話をサッチャーさんは仕掛けてきた。
 そして、たまたま私、今年の夏行かせてもらったんですが、隣のアイルランド、まさにこの記事ですけれども、アイルランドというのは三百七十万の人口の島国であります。日本に比べると大変小さな国でありますが、ここはアイルランドの金融特区というのをやりまして、そしてロンドンのまさにセンターとアイルランドのある意味ではその一部を担うという形ですさまじい成長をしたんです。例えばアイルランドというのは、EUのお荷物と言われていた国がまさに大変な成長をし、失業率が一六%もあったのが、最近ではもうだあっと下がって三、四%台まで来ている。やはりこれは、考えてみますと、各国いろいろな知恵を出しながら、情報だとか金融だとか医療だとか、そういった成長産業を呼び込んでいく、取り込んでいく、そういう工夫をしているんですね。
 翻って、我が国は空洞化で悩まされているわけです。出ていってしまっているわけです。総理、私は、やはりまさにこういう閉塞感のある時代こそそういうプランをしっかりつくる、それが大事なんだろうと思うんです。呼び込む、空洞化で出ていくんじゃなくて、人が来る、お金が来る、情報が入る、そういう構想をつくっていかなきゃいけない、こう思っているんですね。
 総理が好きなオペラの例をとりますと、たまたま私のところにあるんですが、こういう構想もあるんですね。例えば、これはオペラハウスの入り口がこうやって四つのバーチャルな映像で仕組まれている。これはプランですよ。こういう夢のあるプランをつくっていけるような特区構想をしないと、このダイナミックでグローバルな時代はだめなんじゃないか。どうですか、総理。
小泉内閣総理大臣 各地域が特色を出そうということで、それぞれの構想を温め実現するというのは、夢があっていい話だと思います。
 今、アイルランドの話におきましても、金融特区構想ですか、かなり成功している例を挙げられましたけれども、日本も沖縄振興の一環として金融特区はどうだろうかということも考えてやっているわけですが、今回の特区構想というのは、まず財政措置をしないという原則があるわけですね。財政措置してくれる、これをやるとまたお上からお金が降るのか、優遇してくれるのかということだと、従来型のまた補助金頼りみたいになってはいかぬ。まず、今の規制改革によって新しい仕事、地域の発展に資するものはないかという、いわば地方の意欲を、自分の力でやるんだ、自分の発想でやるんだ、お上には頼らないという意欲を持ってもらうのが大事じゃないかということで、今回は財政措置を講じないというのが原則になっております。
 これが、実際特区が出てきて、従来型の財政措置とどう違うのか、あるいは重なり合う面があるんじゃないかというのが出てくれば、これは重なり合う場合も出てくると思いますが、今回の特区構想というのは、まず財政措置を検討しないということでありますが、今例を出した、その地域によってそれぞれやり方は違いますので、今言ったそれぞれの人、物、情報をどうやって自分のところに呼び寄せようかという意欲が今後も出てくることを期待しておりますが、現実の問題になりますと、その地域の中でも、せっかくうまくやっているのに、より激しい競争は嫌だというグループもあるのも事実なんです。人が参入してくるのは嫌だ、せっかく今の状況で売れているのに、また新しい安い物が入ってくると自分たちの商売がだめになる、こういう反対運動も必ず出てくるわけです。
 そういう点で、両面あるものですから、そういう弊害よりもプラスが多いんじゃないかという意識を持って手を挙げてきてくれた方に、まずはその意欲を買って実験的にやってもらおう。これが弊害の面がなくてプラスが多ければ、その地域ではますます繁栄するし、また、よその地域がまねして出てくるところもある。あるいは、こんなのは全国的に広げてもいいんじゃないかというのが出てくればなおいい。まずは一地域の意欲と発想を喚起するような形に仕上げていきたいなと思っております。
小沢(鋭)委員 今回の構造改革特区が今総理のお話にあるような性格だというのは私も承知していますが、今申し上げたのは、そういう話とはまた別に、例えばアイルランドがやっている、あるいはロンドンがやったというような、ある意味では国民に夢を与えるような、そういった形の構想もお考えになったらどうですか、こういうふうに申し上げたつもりでおります。
 これは引き続き、閉塞感のある時代ですから、やはり国民に夢を、それもビジュアルに与えていけるものをぜひ取り組んでいただきたい。これは構想力が勝負ですから、やはりもう都市間競争ですし、今言ったように地域間競争の時代ですから、本当に知恵で勝負するしかないですよ。その百花繚乱のプランがどうも最近、総理、少ないような気がするものですから、そんなことを申し上げました。
 ということの中で、少し視点を広げさせていただいて、こういった特区構想が出てきたことも含めて、今の日本経済のあり方、閉塞感、そういったものがあろうと思います。そういった点、せっかくの機会ですから、総理のお考えをぜひ聞かせていただきたいということで御質問申し上げたいと思います。
 まず、内閣府の経済社会総合研究所長の浜田宏一先生、いらっしゃいますね。この前、総理とお食事という話が新聞に出ておりました。そこでオペラの「愛の妙薬」が話題になった、こういうふうに聞いております。浜田先生は、ある意味では政策的インプリケーション、含蓄を込めて申し上げた、こういうことでありますが、総理はどのようにその経済政策的意味を受け取られましたか。
小泉内閣総理大臣 浜田先生はエール大学でも教鞭をとっておられまして、経済、金融問題の非常に見識のある方であります。最近の経済情勢を伺いながら食事をする機会があったわけでありますが、その中で、今指摘されました「愛の妙薬」というオペラの話題が出まして、人間、思い込みによって変わる場合もあるんだ、悲観的になる、自信を失うと、思っている人に対して自分の思いを伝えられない。ところが、「愛の妙薬」みたいに、これはたしか、間違っていたらごめんなさい、ほれ薬というんですかね、にせ薬ですよ、そして思い込ませるわけです。これを飲むと大丈夫だと言うと意外と勇気が出てきて、自分はあの人に好かれているんだ。嫌われているんだと自信をなくすけれども、好かれているんだと思うと、結構自信を持って自分も率直に思いを打ち明けることができる、そういう楽しい、きれいな、おもしろいオペラなんですよ。
 そういう話から、やはり人間というのは自信を持たないとだめなんだ、悲観的なことばかりじゃだめなんだ、にせ薬でもいいからとは言いませんでしたけれども、国民に対して明るい気持ちを持たせなきゃだめだ。暗い面暗い面、だめだだめだというようなことはかえって落ち込ませる。そういう明るい面を引き出せるような、強調するような、ああ、日本は何かできるんだな、日本は大したものだな、ノーベル賞だって一年に今回二人出たじゃないか、日本の学者はだめだとか日本の基礎物理学はだめだということでもなかった。そういうだめだだめだと言われた分野からもノーベル賞が出ているんだから、日本ももっと自信を持って、明るく、前向きに、希望を持てるようなことを考えた方がいいですよと私は助言をされたわけであります。なるほどなと思いました。
    〔細野委員長代理退席、委員長着席〕
小沢(鋭)委員 総理の自信だけを回復されても困るわけで、今総理が言ったように、国民が自信を回復することが重要なんです。
 大体浜田先生の意図も伝わったのかもしれませんが、もうちょっとここは補足させていただきますと、要は、経済学でエクスペクテーションの訳で期待というのを使っています。要するに、ここの問題は、今日本国民は、一言で言うと、いわゆるデフレ期待、デフレの予想と言いかえてもいいんですが、それが実際現実にデフレが進行していまして、デフレ期待を強く持っている。ここのデフレ期待がある以上はどんな需要追加策をやってもなかなか効かないんだというのがここ最近の経済学のスタンダードになっているわけです。そういう意味で浜田先生はその話をされたというふうに思っていまして、そのデフレ期待、これをどう変えていくかというのがすごくポイントなんですよという話でおっしゃったというふうに私は承知しているんですね。
 さて、そこで、そのデフレですが、総理にお尋ねしたいと思いますが、デフレは国民にとって望ましい、そういう見解があります。なぜこんなことを改めて聞くかというと、政府の総合デフレ対策、この間出ましたが、あの中にデフレを阻止するという言葉は一回も出てこないんですね。そして、漏れ伝わるところで、政府部内でも、やはり内外価格差を埋めるためのデフレというのはしようがないよなとか、世界的傾向なんだよなという話が出てくる、経済財政諮問会議でもそういう意見がかなりある、こういうふうに聞いています。もしかしたら総理も、物価下がっていいよな、こういう思いの発言もあったやに聞いています。
 デフレは望ましいという意見に対する総理の見解をお聞かせください。
小泉内閣総理大臣 このデフレに関する問題についてはよく議論しています。専門家同士でも、あるいは与党の中でも、議員同士でも、経営者の間でも、あるいは学者の間でも議論するんです。
 私も、率直に言って、私の三十年間の政治生活の中でいつも言われていたことは、物価の下がる時代が来ればいい、土地の下がる時代が来ればいいけれども、そんな時代は来ないだろうというのが、私が三十年前当選してから、常にそういう中で政治問題が議論されておりました。
 事実、日本は戦後、インフレ、物価が下がる時代じゃなかったんですよ。だから、インフレを抑制することに主眼が置かれた。常にドイツは物価が安定している、ドイツの優等生みたいに物価を抑えていかなきゃならない。そういうことから、物価が下がるということに対して歓迎する人も、現在でもたくさんいます。
 先日も経済財政諮問会議で話題になったんです、デフレイコール不況じゃないと。デフレは不況だと思ったら間違っていますよという話も出たんです。デフレ下の中で繁栄というのは十分あるんだと。むしろ人間の歴史の中で、経済史の中で、インフレは短期であって、デフレの方が圧倒的に長い期間だと。たまたま戦後日本がデフレを経験していないからインフレが当たり前だと思っているけれども、長い目で見ればそうじゃないと。しかしながら、個人的にデフレがいいといっても、全体から見ると、マクロ経済全体を見るとやはりデフレというのは好ましくないんだというような結論になったと思うんですが、では、どういう場合にデフレがいいかというと、それは職を失っていない人、給料が安定している人、そういう人は、いろいろな物価が下がっているんですから、全然困らない。百円ショップへ行けば一万円近いものでも何でも手に入る。外へ行っても、安いレストラン、お店がたくさんある。自分は職を持っている、安定している。給料は上がらなくても、ちゃんと自分が生きがいを持って仕事をしている人にとっては全然困らない。そういう人たちが日本においてはかなりいるだろうと。逆にそれは、職を失った人にとっては、特に借金を抱えている人、ローンを抱えている人、こういう人にとってはもう大変悲惨だ。
 両面あるけれども、個人個人はともかく、現在の状況を考えれば、経済全体を考えるとデフレを抑制していかなきゃならない。世界的な流れを見てデフレ状況だから、すぐデフレが直るという状況じゃない。中国でさえも、最近は経済成長を遂げているけれども物価が下がっているんだということを考えると、これは容易なことじゃないということでありますけれども。
 物事には、過ぎたるは及ばざるがごとしという言葉があります。物価が安定しているのはいいんだけれども、下がれば下がるほどいいというのはインフレの時代だった。という状況であっても、いざ下がってみると、ああ、そうでもないんだなというところにみんな気がついてきたのではないかという状況だと思っております。
小沢(鋭)委員 一応最後は、マクロ的にはうまくないんだという話をおまとめになりましたが、途中の過程を聞いていますと、歴史的にデフレのもとでずっと成長してきた国もあるとか、どうも総理の気持ちの中に、悪くないんじゃないかという思いがまだ依然として僕は残っているような気がするんですね。一応見解の上では、最後、マクロ的にはまずいんだね、こういう話をおっしゃったのは事実ですけれども、だから、やはりそういう話が伝わるものですからデフレはとまらないんですよ。さっき言った期待、国民の期待というのは、この不況の中で政府も本気になっていない、こういう話になるんですよ。
 だけれども、いいですか総理、総理がよく言う、今の不況に対して従来型の政策が通じない、これは正しいですよ。なぜ通じないか。デフレだからですよ。デフレをとめないから従来型の政策は通じないんですよ。そこのところを総理、ぜひ本当にわかってもらわないと、経済政策の根本が違うんです。浜田所長もそれをおっしゃったはずなんです。日銀は全力を挙げてもらわないと困るんです。それは、幾ら財政拡大したってだめですよ。そこの根本が違うというところを本当に真剣に考えていただかないと、やはり今の答弁では、みんな、ああ、デフレはいいところもあるな、こう思っちゃう。
 それで、総理、デフレスパイラルというのは、一九三〇年代を思い出してください。みんな多くの人たちも心地よいと思いながら、デフレスパイラルで要は恐慌まで落ち込むわけですよ。今、日本はそれの本当にスパイラルに入っているんですよ。それで、世界的な同時デフレ恐慌の引き金を引くかもしれないんですよ。
 そういう話を、どうかもっと深刻に考えていただきたいということで、私は、構造改革というのは、本当に日本のある意味では経済力をもう一回再生する、強くする、競争力をつける。賛成ですよ。だけれども、構造改革だけだとだめなんですよ。このデフレの話を、デフレ対策をしっかりやらないとだめなんですね。それは、単に痛みを和らげるというセーフティーネットだけの話じゃなくて、根本策を私は申し上げていて、それには、正攻法は金融政策です。これしかないんです。
 それで、世界じゅうの恐らく七割、八割の経済学者は金融政策のことをコメントしている。日本の金融政策がおかしいと言っている。しかし、何も議論が日本の中でなかなか出ない。与党・政府の中でも、国債枠三十兆、補正の話はきょうも出ているけれども、金融政策の話をまともにしているところなんかないじゃないですか。
 そういう話をここはぜひしっかりとやってもらわなきゃいけなくて、大胆かつ柔軟に、それに加えてスピーディーに。金融政策は、決めたらもうその日からできるんですよ。税とかそういうのは時期が来ないとできませんけれども、金融政策はそれができるんです。世界じゅうの、とにかくオーソドックスな経済学者はこの議論ですよ。
 総理、金融政策に関してコメントいただきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 金融政策も、既にゼロ金利、戦後最大の低金利政策、しかも資金供給も緩和しておりまして、これ以上やった例は戦後ないと言ってもいいくらいな手を打っているわけであります。それでもまだ不十分だという声はよく承知しております。
 そういうことから、今回、十月末に経済対応策をまとめたのも、政府と日銀一体となってこのデフレに取り組むということでありますし、金融政策は日銀の自主性、独立性が大事でありますが、それはやはり政府としても日銀に対して協力してもらわなきゃならないということで、私は金融政策の重要性も認識しながらこのデフレ対策に取り組んでいかなきゃならないと思っております。
小沢(鋭)委員 ぜひ今の発言をもっと大きな声で、改革なくして成長なしという話と同じくらい大きな声で言ってもらわないと、今のようなぼそぼそぼそだと日銀まで伝わらないような気がして仕方がないですが、ぜひお願いしたい。
 それから、総理、戦後これまで金融緩和した例はない、こうおっしゃいましたね。確かにそうかもしれません。それは、戦後、先進国が経験したことのない状態だからですよ。ゼロ金利なんていうのも、まさにそういう意味では初めての領域だからですよね。それはそのとおりなんです。だけれども、例がないからといってやらないのでは小泉総理じゃないじゃないですか、こんなもの。
 日本の経済は今瀕死の状態ですよ。それで財政は既にもうぎりぎりで、なかなかきかないと言っている。小泉さんのおっしゃる不良債権処理も、私は必要だと思うけれども、そればかりやっていたらデフレ圧力が高まっちゃう。第三の道なんですよ、今。この第三の道が最も正攻法だと世界じゅうの経済学者が言っているんですよ。何でそこを、第三の道を選択しないんですか。
 少なくとも総理に最後にもう一回、デフレはとめるんだ、その決意を私は聞かせてもらって、質問を終わりたいと思います。お願いします。
小泉内閣総理大臣 日銀における金融政策の重要性、皆さんよく理解しているからこそいろいろな提言がなされているんであって、政府部内でも今までにない、日銀としても潤沢な資金供給を行っております。じゃぶじゃぶだと言われるぐらい資金供給をやっているわけですけれども、肝心の借り手がない。健全な金融システムの問題も出てくるんだと思いますが、しかしながら、金融政策の重要性というものを十分認識しているからこそ、我々としては、政府、日銀一体となっているという異例の表現を入れながら、お互いこのデフレ対策に取り組まなければならないということを言っているわけでありまして、何もしていないというどころか、今後さらに日銀には一踏ん張りしてもらおうという気持ちも込めての表現だということを御理解いただきたいと思います。
小沢(鋭)委員 時間ですから終わりますが、ぜひ、愛の妙薬ならぬデフレ対策の妙薬、これが必要なものですから、本当に決意をしっかり持ってもらって頑張っていただきたいと思います。ありがとうございました。
佐々木委員長 以上で小沢鋭仁君の質疑は終了いたしました。
 次に、赤羽一嘉君。
赤羽委員 公明党の赤羽一嘉でございます。
 総理、きょうは大変お忙しい中、また大変お疲れの中、当委員会に御出席いただきましたことを心からまず感謝申し上げたいと思います。
 きょう、何しろ与えられた時間が八分でございますので、余り細かいやりとりではなくて、今回の構造改革特別区構想がこれからよりよきものになるようなやりとりをさせていただきたいと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。
 まず、今回のこの法案がいよいよ大詰めを迎えるに当たりまして、私、個人的には大変感慨深いものがございます。といいますのは、八年前の阪神・淡路大震災で、神戸の町はぼろぼろになり、その後、実は神戸市が、要するに何もなくなった神戸だからこそできる提案ということで、今この町を、地域を区切って規制改革の新しいゾーンをつくろうじゃないかという提案をしたんです。名前はエンタープライズゾーン。ところが、当時の政府は、国は全く取り合っていただけなかった。それは、例えば、所轄官庁がない、旗を振るところがないんだ、経済産業省でも国土交通省でもどこでもないみたいな話があったり、一国二制度をつくるのはいかがなものか、こういった主張が強かったり、また、やはりその裏には既得権益という問題もあったりと、実は全くはしにも棒にもかからなかった提案だったんですが、それと少し中身は違うところもございますけれども、そういった地域政策、構造改革特別区構想というのが今回こういう実現の運びになろうとしているというのは、私は率直に申し上げて、やはり小泉総理が総理大臣になられた、小泉政権だからこそできたものだというふうに高く評価をしたいと思います。
 やはり、あの総理だから、今まで官僚の常識では何かできないんじゃないか、日本の常識じゃないんじゃないかと思っていたのが、一丁やってやろうか、こう言って、内閣府の事務方の皆さんも大臣の指示のもとに一生懸命やった、大変な規制改革の案が出てきた。全国の地方自治体も、それを意気に感じて、よし一丁申し込んでみようということで、一月の間に四百も五百もの提案が出てきた。これは私は率直に言って高く評価をしたいと思いますし、この法案が兵庫県選出の鴻池さんが大臣のときにでき上がるというのは私は大変うれしいことだと思います。大臣は、自分がなる前にでき上がった法案だというような気持ちもあるかもしれませんが、今後フォローしていただいて、やはり小さく産んで大きく育てていただきたいな、そういうふうに思うわけでございます。
 その中で、私がちょっとこれについて思うことがあります。というのは、中国に私、商社マンで駐在していましたので、シンセンとか上海の浦東区とかの経済特区をよく見ていまして、やはりちょっと日本の今回の構造とは違うな、ねらいも違うんだと思いますが、どちらにしても、やはりこの法案の目的である「経済社会の構造改革を推進するとともに地域の活性化を図り、」云々というこの目的に資する内容にしていくような努力が今後も必要なんじゃないか、私はそう思うんですね。
 そのためにやはり考えなければいけないことは、地域が決まった、そこに参入しようという民間事業者が、出てきたいと思う人たちがどれだけいるのか。やはり今は日本全体、日本というのは投資するに値しない国だと思われていると思うんです。だから需要がなかなか上がらない。逆に、日本という国は本当に投資に魅力があるんだ、こういう状況であるならば、需要不足というのはあっという間に解消できると思うんです。そこはもう本当に一つの政策だと思うので、この案はすごく大事なことだと思うんですが、どうしても、今までのいろいろな政策を見ていますと、お上がつくるものというのは、民間事業者はやはり使い勝手が悪いということが多いんだと思うんですよ。どうしてもそこが非常に、スピーディーでもないし、いろいろな難しさがある。
 カスタマー・イズ・オールマイティーという、商社マンではこれは当たり前なんですね。お客様は神様です、お客様の言うことに合わせて制度をつくっていく、これが当たり前のことなのであって、ですから、今回は地方自治体からの意見が大半だったと思いますが、一月十五日に第二次目を募集する、こういう案も聞いておりますが、まず民間事業者の声をぜひ聞いていただきたいのが第一点なんです。
 もう一つ、第二点目は、今回は税制、財政の支援をしなかった、これはよくわかるんです。税制、財政と出すと、先ほど言われたように補助金のかさ上げになるというような非常に安易な話になるので、それじゃ余りおもしろくないというのはよくわかりますが、しかし私は、投資税制とか、やはり税制というのは、頑張ったところにメリットがあるから税制のよさだと思うんですよ。補助金とはまた違うと思うんですね。ですから、やはり頑張ったところ、一度テークオフして、いいじゃないか、民間事業者も出てくるじゃないか、もっと出そうよといったときには、その段階ではぜひ税制の支援策というのも禁じ手にしないでほしいな、そこもやはりするかどうかというのを考慮するということをぜひ考えていただきたいというのが二点なんです。
 それから三つ目は、法案の中で見直しというのが出ていますね。これは役所が見直すということになっています、関係の長が見直すということになっていますが、やはり僕は結果がすべてだと思うんですよ。これをやった、そこにどれだけ民間事業者とかが参入できたか、規制緩和が進んだか、これがやはり掛け値なしで明らかになるような評価制度をしていただきたい。それは大臣、意欲もあるようにも確認をしておりますので、この三点を私はぜひ提案をしたいというふうに思っております。
 きょう、済みません、大村さんに来てもらって、沖縄の支援策についても本当はやりとりしたかったんですが、ちょっと時間がないかもしれませんが、沖縄がすごく鳴り物入りでやっているんですが、沖縄の基本的なファンダメンタルの問題とかもあって、多分これからまたなかなか芳しくないという状況があるかもしれない。
 そんなことも踏まえて、今回の、全国一律、平等というこれまでの発想を変えるような画期的なこの構想をぜひ柔軟なものにして、よりよいものにしていただきたいということを私から強くお願いをし、それに対する総理の御決意をいただいて、多分もう八分になってしまうと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
小泉内閣総理大臣 実際の神戸の例を出されて、特区構想に対して期待している、この期待を、現実、特区が成って、期待どおりにいくように我々も努力していかなきゃならないと思います。
 また新たな発想なり意欲が出てくるような申し出がなされればこれにこしたことはありませんし、同時に、今御提言の中で税の優遇とか話がありましたけれども、これは、私は、地方分権の中でも考えていかなきゃならない問題だと思います。地方分権、今、補助金と交付税と税財源、一体となって考える、三位一体となって来年度に芽を出すようにということでやっておりますが、これは要約すれば、もっと地方に裁量権を与えろということなんですね。だから、地方がどういうことをやりたいか、税の優遇なりやりたいと、地方も考えるようにしていかなきゃならない。
 日本人は特に外国企業が出ると嫌がる傾向がありますけれども、必ずしもそうじゃない。外国が投資してくれるという状況はむしろ好ましいと考えなきゃいけないという点も考えて、私は、今の御提案を踏まえまして、地方が本当に意欲が出るような、また提案をすることができるような、この意欲を阻害しないように中央の官庁でも対応しなきゃいかぬと思っております。
赤羽委員 ありがとうございます。
 地方の裁量が広がらないところで地方でやれと言われたのが実は神戸でして、そうすると、もう細かいところの地方税制の優遇みたいなところでしようもない話になってしまったので、今言ったように、地方の裁量を与える中で柔軟に考えていただきたいということを重ねてお願い申し上げまして、私の質問とさせていただきます。どうもありがとうございました。
佐々木委員長 以上で赤羽一嘉君の質疑は終了しました。
 次に、西村眞悟君。
西村委員 自由党の西村でございます。
 先ほどから、財政、金融に話題が、当然ながら、世上、集中するわけでございますが、それを前提にして、私の観点から総理にお答えいただきたいと存じます。
 税を納める国民がなければ国家の財政が成り立つはずがない、これは自明のことでありまして、税を納める国民がなければ規制緩和も経済活性化もないわけでございます。したがって、伝統をたっとんで教育を正して盛んにすれば、国家、郷里を愛するよき納税者が育つ、国家、郷里を愛するよき納税者が多く育てば、将来の国家財政は安泰となる。この論に総理は御賛同いただけるかどうか、お答えをお願いします。
小泉内閣総理大臣 それは、国民が意欲を持って税を納めるという意識を持ってもらうことがまずは発展の基礎であるということに対しては、同感でございます。
西村委員 そこで、一国の総理である小泉さんにどうしても覚えておいていただきたいことがございます。
 それは、総理が長岡藩の故事を出した、その長岡藩の河井継之助の師匠である山田方谷という学者のことであります。この方は、「理財論」というものを著しました。それは、藩、国家の財政が逼迫して、十年、二十年、為政者がそれに神経を集中しても、なぜ国家の財政はますます逼迫していくのかという問題に関して答えたことでありまして、それは、よく天下のことを制する者は、事の外に立って、事の内に屈せずだと。財政だ、金融だと、この問題ばかりにかかわっておれば、それに関連するその外の大いなる動きが見えなくなる。したがって、事の内に屈してしまう。方谷は、事の外に立ってというものはどういうことであるか。これは、人心がよこしまになり、風俗が薄くなり、官吏が汚れ、文教が廃れ、武備が、軍備が緩む、こういうことを放置して金融も財政もない。義理をまず明らかにすれば、この義理を明らかにすればというのは、私の解釈では、国家の大道を示して国民の誇りと生きがいを明らかにすれば、結局はついに経済も救われるんだということを「理財論」の中で言っております。
 私は、現下の状況を見て、また小泉内閣の状況を見て、この方谷の考え方は、古色蒼然たるものとして排斥されるべきものではなくて、現在の為政者として生かすべき考え方も多く含まれているのではないか、このように思いますが、総理は、今突然質問しただけでありますが、どのように思いますか。
小泉内閣総理大臣 山田方谷の話は、私も書物で読んだことがございます。
 今のお話で、要約しますと、大局的立場から物を考えろということだと思います。財政逼迫している、財政だけのことを考えるというよりも、もっと全体の経済のことを考えろ、あるいは、経済だけでなくて、よく人間のことを考えろ、志のことを考えろと。いわば、広く大きな立場で物事を見る必要があるというふうにも受け取れるんじゃないかなと思っております。
 今の時点におきましても、山田方谷の考え方というのは、大いに参考すべき点、多々あると思っております。
西村委員 結局、国家というものは一つの大きな活物でありまして、相互関連の中で全一的存在としてあるわけであります。冒頭御質問した教育というものを国家運営の観点から考えますと、つまり、国を愛するよき為政者を育てれば将来は安泰だ。近き将来も、国家の財政、今、財政の問題が非常に焦眉の急のように言われていますが、実は、財政を立て直すのも、教育の大道を歩むことが財政を立て直すことにもつながるんだという意味でお聞きしたわけでございます。
 その相互関連する、広い立場に立って国家を治めねばならないという観点からするならば、実に惜しいことだと私は昨年思ったんですが、八月十五日に総理は必ず靖国神社に参拝する、だれが何と言おうとも参拝する、これを言われましたけれども、これは、総理の個人的思惑をはるかに超えて、実は国民のスピリットに関与することであったなと私は思います。この問題は、舌は一枚だが耳は二つだということで回避できない問題であったのではないか。今申し上げた山田方谷の言う、事の外に立ってよく天下のことを制する者の姿がここにあったのではないか。事の外にあって財政をも立て直す為政者の姿がここにあった。
 昨年のことは御承知のとおりでありますが、仮に、八月十五日に総理がその言のとおり靖国神社に参拝し、青少年に対して、国のために亡くなった英霊に対する感謝の念を忘れず、日本人として誇りを持って勉学に励んでくれ、仮にこのような声明を発せられたとするならば、いかほど我が社会に活力が戻ったかと思うのであります。
 したがって、私の質問の締めくくりでございますが、今、靖国神社は東アジアの焦点にもなっておるわけでございます。実は、日本人のスピリットを日本人が失うのか失わないのか、つまり、天下のことを制する者が極めて大切にしなければならない象徴的な場所になったのでございますから、今後、外国に行かれても、また国内においても、靖国神社に参拝されるということを総理が仮に発言なされましたならば、どうかそのとおり参拝していただきたい、このようにお願いしますが、総理の御見解はいかがでございますか。
小泉内閣総理大臣 私が靖国神社に参拝するというのは、これは、私自身の心の問題でもあると思います。心ならずも戦場に立たなければならなかった、家族のきずなを断ち切らねばならなかった、あるいは、死ぬかもしれないという思いがありながら戦争に行かざるを得なかった心情を思うと、大変胸が痛むのは私だけじゃないと思います。そういう時代にめぐり合わせた方々、戦争が終わって、今、そういう方々の苦労を忘れている方が多いわけでありますが、今日の日本の繁栄があるのは、そういう方々のとうとい犠牲の上に今の平和があるんだ、こういう方々に対して敬意と感謝を忘れてはならないな、これは政治家として、私は、自分の心情の問題であります。
 ですから、私は、八月には靖国神社に参拝をいたしましたけれども、内外から、国内も含めまして、多くの批判を浴びました。しかし、これを私が人に奨励するとか、私の参拝を見習ってほしいとかいう気持ちは全くないんです。自分の心の問題である。人に参拝しなさいとか言う気持ちはありません。自分の心の問題として、政治家として、また、二度と戦争を起こしてはいけない、反省も込め、同時に、そういう過去の歴史において犠牲になった人の上に今の日本というのは成り立っているんだということを忘れてはならないという気持ちから参拝しているのでありまして、この気持ちは、今後も私は変わりありません。
西村委員 最後に、内外の困難は存じておりますが、事の外に立って、よく天下のことを制する者の姿が靖国神社に参拝される総理の姿である、私はこのように思います。総理、どうか覚えていただきたいと思います。
 質問を終わります。
佐々木委員長 以上で西村眞悟君の質疑は終了いたしました。
 次に、吉井英勝君。
吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。
 私は、最初に、規制緩和についての総理のお考えを伺っておきたいと思うんです。
 大型店規制の法律を緩和、廃止した結果、全国で中小小売店の倒産、廃業が相次ぎました。各地どこへ行っても商店街はシャッター通りになったというところが随分あることは、総理も御承知のところだと思います。フランス、イギリス、イタリア、ドイツなどヨーロッパの方では、どこでも大型店規制を、経済的規制とそれから社会的規制を組み合わせて実施して、商店街も町並みも文化や伝統も守っている、こういう実例を見ることができます。
 それから、農業の分野では、牛肉、オレンジ、米輸入自由化に続いて、大商社などが海外に直接投資する外為法の規制緩和の問題とともに、開発輸入が野放しとなった結果、生鮮野菜まで外国でつくった、実質的には日本商社製の野菜というのが海外から入ってくる。これは、農家経営が危機に追い込まれている大きな要因の一つにも今なっています。ヨーロッパの方では、食糧自給率の引き上げを図っているわけですが、これらとは随分大きな違いがあると思うんです。
 政府が言うように、規制緩和を促進することが経済を活性化させ、国民生活を向上させるとは簡単には言えないという問題がやはりあるわけですね。ですから、ヨーロッパの動きなどに学ぶならば、規制緩和万能主義の弊害を是正するということも考えなきゃいけないと思うんですが、この弊害の是正という問題について、総理のお考えを最初に伺っておきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 物事に両面があるのは、何事においても事実だと思います。片方で前向きのプラス面が出てくるとマイナス面も出てくる、弊害も出てくるということでありますので、私は、この規制改革というのは、場合によっては規制強化する特区が出てきてもおかしくないと思うんです。
 というのは、町並み保存なんかは、古都なんかにおいてどんどん規制が外れちゃうと、伝統的な古い町並みがなくなっちゃう。規制改革が必ずしも規制緩和とは限らない。昔の町並みを残したいという地域が出てくれば、これは逆に規制強化になるのかもしれません。
 そういう意味において、規制というのはいろいろな問題をはらんでいきますから、ただただ緩和すればいいんじゃない。緩和した場合の弊害をどのように最小限に食いとめるかという視点も大変重要だと思っております。
吉井委員 次に、先日の本会議で私が例を取り上げましたのは、三河湾の方の国際自動車特区構想の方でしたが、あの場合、過大投資の代名詞になっている第二東名や中部国際空港等の建設が一体となって今進行中です。
 一方、北九州市では、響灘ハブポートプロジェクト等、国際物流特区は一体のものとして進んでいます。響灘ハブポート計画というのも、全国二十三カ所指定の大深度大型港湾建設と競合するうちの一つです。ですから、なかなか採算の見通しも厳しいという問題があります。
 現在、この地域では、関係して、福岡空港、北九州空港があるのに、海上に新北九州空港も建設中。それから、既にFAZ法でつくった小倉駅前のAIMなどは破綻して、北九州市の借金で見ますと、この十年間で三・七倍の一兆二千億円に急増しています。
 総理は、この間、十月十八日の所信表明のときには、「日本で最大級の容積率となる名古屋駅前の再開発ビル計画など、合計約七兆円の民間事業投資が予定されています。波及効果なども含めると、二十兆円に上る経済効果が見込まれます。構造改革特区とあわせて活用することにより、経済の活性化につなげてまいります。」と述べておられましたが、結局、従来型の大型公共事業が特区で温存、助長されるということになってくるのではないか、こういう問題があると思うんですが、この点についての総理のお考えを伺っておきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 名古屋駅前の再開発ビル、これは民間が独自に考え出してやっているものであります。私は、これは一つの民間の活力のあらわれだ。税金を使わないで民間事業者が新しいビルを建設する。それに付随して多くの関連中小企業も参加してくる。同時に、名古屋におきましては名古屋市独自が、この民間の活力をどうやって生かそうかということで、独自に地方自治体が地域の活性化に取り組む。私は、いい面の再生事業だと思っております。
 これと特区構想、これが結びつくかどうかというのは地方自治体の考えであります。もし特区構想に乗って、それに民間が参入してくるんだったらそれでよし。地域がその特区構想をどのように生かしていくかということだったらそれでもよし。別に、特区があるから財政的措置を講ずるということじゃないんです。特区構想というのは、まず原則として財政措置を講じませんから。
 こういう規制が改革されますよ、その改革姿勢を見て民間が、ああ、それだったらおれはやってみたい、今までの規制があったらこれは採算がとれないかもしれない、商売合わないかもしれないけれども、こういう規制がなくなれば自分たちはやってみたいなという意欲が出てくれば、これは特区構想の一つのいい点でありますので、そういう点は、各地域の発想を生かしながら考えていかなきゃならないなと思っております。
吉井委員 これは、民間が一〇〇%の話じゃなくて、地方自治体の財政負担は随分大きいものですから、特区が大型公共事業の温存、助長の問題と結びついているということについては、やはりきちんと見ておかなきゃいけないと思います。
 次に、医療への株式会社参入の問題について伺っておきたいと思うんです。
 総合規制改革会議の七月二十三日の中間取りまとめでは、今後規制緩和を進める分野として、福祉、教育、農業、医療を挙げておりますが、先日の参考人質疑のときに、このメンバーの一人でもある宮内氏は、特区の本当のねらいとして、医療、教育などの分野への株式会社参入を可能とするという問題について明言をしておられました。
 これに対して、医療関係者もそうですが、厚生労働省などは、医療、福祉への株式会社参入の弊害の方については、医療や福祉は、金次第の社会に国民をほうり込むだけでなく、地方では、採算がとれる病院がふえる一方で、精神科や小児科など採算のとりにくい病院は姿を消すことになるという問題を指摘しています。
 本会議で私が質問したときに、総理は、国民の生命、身体などの安全確保について、当然ながら十分に配慮するという答弁でしたが、利潤追求第一の株式会社参入では安全確保に十分の配慮という余地はほとんどないといいますか、非常に厳しいものがあって、一体どういう配慮を求めていかれるのか、それを伺っておきたいと思うんです。
小泉内閣総理大臣 医療の分野に株式会社を参入させるということについては、激しい賛否両論がございます。現実に、株式会社の病院もあるわけです。
 しかしながら、株式会社が利潤追求で生命をおろそかにするんじゃないかという危惧の念もあることは事実でありますが、一方においては、果たして株式会社がすべて利潤追求ばかりを考えているかというと、そうじゃない。株式会社というのだって公共の利益、生命を重視しながら経営はできるんだという考えもありますので、私は、両面よく考えながら、よく検討を続けるようにというふうに指示をしております。
吉井委員 総理もよく御承知のように、医療法五十四条で、「医療法人は、剰余金の配当をしてはならない。」と。もともと、医療機関というのは営利の追求を目的としないというのは、それは、生命とか健康、安全の問題と両立しないという基本的な問題があるからであります。
 ですから、私は、医師会の代表の方が、生命、身体、健康を犠牲にしても経済活性化を図るという考え方については我々は容認できず断固反対していくというふうに述べておられますが、やはり、こういう分野に利潤という発想を導入することについては許されない問題だということを申し上げまして、時間が参りましたので、質問を終わります。
佐々木委員長 以上で吉井英勝君の質疑は終了いたしました。
 次に、北川れん子君。
北川委員 社民党・市民連合の北川れん子と申します。
 特区というのは経済の活性化の実験場、それと農業の営みとが両立できるのかという視点でまずお伺いしたいと思うのですが、首相が考える農業の活性化とはどういうものであるかというのをお伺いしたいと思います。
小泉内閣総理大臣 現在、農業の担い手が減ってきております。そして、農地も、利用されていない農地が随分あります。そういう中で、株式会社形式でやればもっと農業の担い手も出てくるんじゃないか、あるいは今考えられないようないい商品も出てくる可能性がある。
 現に、最近は、デフレ下で、安売り競争といいますか、安ければ安いほどいいという状況が一方である中で、例えて言えば、中国からネギが大量に入ってくる。しかも、日本の野菜農家、ネギを産出している農家は、こんな安い野菜が入ってくればもう壊滅的打撃を受けるという悲鳴を上げているのも事実であります。しかし、一方では、群馬県の下仁田みたいに特別なネギをつくっているところでは全然影響を受けない、価格で負けても質で負けないという農業もあるわけです。
 日本国民の中にも、安ければ安いほどいいという面と、多少高くても安全なものを食べたい、おいしいものを食べたいという人がふえてきたのも事実であります。
 卵など、戦後一貫して安定して、十円、二十円程度。あるところに行けば、サービスで、どうぞ自由に召し上がりくださいといって、幾つ食べてもただですというようなところもあるぐらい、安定した商品なわけです。
 ところが、そういう安くて栄養価が高くていいという卵の世界にも、最近では、一個二百円、三百円、場合によっては一個五百円の卵が出てきて、それが売れているというんですから、これは人間社会というのは不思議だなと。なぜ、五円でも十円でも手に入る卵があるにもかかわらず、五百円の卵を手に入れる人がいるのか。
 あるいは、かつては、野菜というのはきれいなものがいいと。磨いて、泥がついていないと喜ばれたんですけれども、最近は、むしろ泥がついて汚らしい、それが安いとかじゃない、高くて、それをまた好む消費者がいる。今までの想像を超えたような消費者の嗜好が出ているわけですね。
 それを、農業の場においても、私は、株式会社によって農地を利用したいというのが出てきて、地域がそれを進めるというんだったら認めてもいいんじゃないかということで、今回、農業にも株式会社形式が参入してもいいんじゃないかということで、この案を出しているわけであります。
北川委員 いろいろ食べ物の世界に関心をお持ちの首相の姿が見えたわけです。
 日本古来の種子、そういうものを関西でも、京都でも、品質を保持して、外来種ではない日本の古来の種子を使って農業をやろうという人たちとか、いろいろな方たちが多様化、それで消費者も多様化している。ただ、資本主義経済ですので、お金を持っている量に従って五百円の卵と十円の卵に殺到する。どちらかというと二極分化をするという点において、安定した食料としての提供というのが第一だと思うのです。
 特区構想の中にいわゆる耕作者主義ということがあって、日本の、大型化をしていく中で、借地で中規模の農家がいらっしゃるわけなんですが、今回の特区構想が入り口になって、農地を売ることが可能になることへ限りなく道が広がる。そうすると、借地でやっている中程度規模の方が、これは自分たちへの圧迫になるんじゃないかという懸念とかが出ているんですが、そういう面に関しては、首相はどうとらえていらっしゃいますでしょうか。
小泉内閣総理大臣 これは地域の発想を生かそうということで、私は、地域の問題で、賛否両論がある中で、地方自治体は考えながら提案してくると思うんです。その提案をよく見て判断すべき問題じゃないかな。私は、地域によって違うと思います。荒れ地がある、こういうことに対して、農業従事者においても反対がないところもあると思います。あるいは、特区構想について反対の農家がある地域もあると思います。それはケース・バイ・ケースじゃないかと思っております。
 日本におきまして、今、棚田を保護しようという動きも、農業関係者以外の間にも広がっております。だから、農業は農業だけ、今の農業従事者だけが農業の担い手だということじゃなくて、農業に関心のある者、そういう方も農業に参加してくるという方法を考えてもいいのじゃないかなと思っております。
北川委員 それは、もう本当に多くの方が言っていらっしゃる視点です。ですが、利益を上げるという企業化構想の中に特区の活性化が込められているものですから、それと農業においての二律背反の面をどう担保していただけるのかといった点においてお伺いしていたわけです。
 例えば、企業がやれば、赤字が出る、そうしたら即引き揚げていこうと。かなりの農地面積を開拓したけれども、今は売ることはできません、借地であるということは前提として、今回の特区構想の中にも押さえがあるわけですけれども、では、赤字が続くから引き揚げよう、そういった場合に、ただ企業が残していったつくりかけの農地が残る。それで、結局企業が雇うサラリーマン農業者になるわけですから、企業は、倒産したり引き揚げたりしたら労働者とともにいなくなるわけですが、荒廃といいますか、そういう点に関してはどういうふうなイメージをお持ちになっていらっしゃるんでしょうか。
小泉内閣総理大臣 今御指摘のような弊害が予想されたからこそ、株式会社の参入を認めなかったんだと思います。
 しかしながら、時代の趨勢に合わせて、株式会社でもそのような弊害面を除去するように考えれば可能ではないかという点で、全国に広げるんじゃなくて、まず特区からやってみようということだと思います。十分両面を見ながら、地域がよく考える必要があるなと思います。
北川委員 二、三年前の農地法の改正のときに、耕作者主義における農業への参入についての議論が、かなり激論があったというふうにも聞いております。先日の参考人招致のときに、特区構想の失敗と成功の物差しは何だと思いますかというふうにお伺いしましたら、多くの方が、全国に広がることが成功の一つの目安になるというふうに言われたのですが、首相は、特区構想の失敗と成功というのは、どういうふうに物差しを持っていらっしゃるんでしょうか。
小泉内閣総理大臣 全国に広がるということは、ああ、規制を緩和しても弊害はなかったなということだと思うんです。そういうことになれば望ましいし、現に、この特区構想を考えた時点で、ああ、これだったらもう全国へ広げますから、あえて特区法案に出す必要はないですよという動きも出てきているわけですから、それは実態の経緯を見て判断すべきものだと思っております。
北川委員 農業においては担保があるということにおいて、かなりの特区の中に閉じ込められたものであるという規定がもしかしたらあるのかもわかりませんが。
 農業というのは国の礎という考え方がありますが、首相はこの考えに賛同されているかどうか、どういうお気持ちを持っていらっしゃるか、最後にお伺いしたいと思います。
小泉内閣総理大臣 農業は国の基と言われているように、人間世界にとって、食を与えてくれる、人間において一番大事なものの一つだと思っております。食べないと人間は生きられないんです。しかも、自然の恵み、太陽の恵み、水の恵み、土の恵み、これは合理性以前の問題です。自然を大事にしないと人間が生きていく食を得ることはできない。大変大事なものだと思っております。
北川委員 ありがとうございました。
佐々木委員長 以上で内閣総理大臣に対する質疑は終了いたしました。
 これにて原案及び修正案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
佐々木委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に入ります。
 討論の申し出がありますので、順次これを許します。西村眞悟君。
西村委員 自由党として、反対の立場から討論をいたします。
 本法案は、我が国の歴史を踏まえても、日本人の誇りの観点からも、賛同することができません。
 そもそも我が国は、国民の自由な活動を確保することによって、人心をうまさずに活力ある国家社会を建設しようとする理念によって近代化を始めたのであります。明治維新の五カ条の御誓文には、「官武一途庶民に至るまでおのおのその志を遂げ、人心をして倦まざらしめんことを要す。」「旧来の陋習を破り、天地の公道に基づくべし」と宣言されておるのでございます。
 小泉総理が言う構造改革とは、旧来の陋習を破ることであるとするならば、総理が政治家として決断すべき道は明らかでありましょう。にもかかわらず、何を今さら、もはや行き詰まった共産国のまねをして特別区をつくらねばならないのでありましょうか。
 その理由として弁明するところは、一挙に全国展開するには抵抗があるというものであります。つまり、我が国には、共産国と同様の動かしがたい旧来の陋習があるというのであります。しかし、それゆえに、その陋習を破ることができないので、共産国のまねの特別区をつくるというのは、屈辱的であります。我々は、歴史を持たない誇りなき国家ではないのであります。
 なぜ、初心に返って旧来の陋習を破ろうとしないのか。それこそ、政治の責務ではありませんか。現代における旧来の陋習を破って明らかになる天地の公道は、何も奇想天外でびっくりするようなものではなくて、まさに、我が国と同じ国家運営の理念を持つアメリカやイギリスやイタリアが、あるいは規制を撤廃し、あるいは地方自治を充実させ、あるいは教育を盛んにして実施してきたことではありませんか。
 この天地の公道を行くことを回避し、旧来の陋習を破る気力なく、特別区をつくるというやり方は、一見よく工夫された奇策に見えますが、しょせん、小知恵におぼれるたぐいであり、政治的使命感とリーダーシップの片りんが見えないのであります。特別区を全国展開の突破口にするとの弁明もありましたが、政治は気合いであります。一たびたじろいだ切っ先は鈍り、そこから陋習を破る太刀先は生まれようがありません。
 以上、我が国の近代の歴史を踏まえても、日本人の誇りからしても、賛同できないゆえんであります。
 さて、本法が実施された姿とは何でありましょうか。一定の要件を満たせば構造改革特別区が認められるため、多くの構造改革特別区域が日本に成立することになります。しかも、この構造改革特別区域は、必ずしも地方公共団体が単位でなくともよいため、国民の多くは、自分の居住地域がどのような特別区域になっているかわからず、社会が混乱するおそれがあります。一つの国の中に無数のルールの異なった区域が生じることは、まるで近世以前の中世的、ギルド的な様相ではありませんか。法のもとの平等の観点からも容認できるものではありません。
 また、この特別区域が構造改革、経済成長、規制緩和の何を目的としているのか不明で、まちまちであります。
 さらに、予算と税制に関することに一切触れないまま、特定の地域においてのみ一部の法律、政省令、通達の規制緩和を行うことが、日本経済の活性へ向けた大きな柱になるとは到底思われません。
 これは、まさに小泉総理の唱える構造改革というスローガンに対して、官僚がつじつま合わせのためにやむなく作成した法案で、政治家がそれに乗せられて弁明に努めているだけでございます。
 ところで、そもそも、法律、政省令、通達というのは、日本国民が平等なルールのもとで社会経済活動を行うために、国が統一的なルールとして制定しているものであり、原則として全国一律であるべきものでございます。地方公共団体が申請すれば特定の地域について規制緩和を認めるというのは、規制緩和の趣旨を取り違えた考えであり、原則は、不要な法律等を全国一律に改正、廃止し、規制緩和し、後は地方自治にゆだねるだけの話なのであります。
 自由党は、民間の経済活動が自由に公正な競争のもとに行われ、かつ、何人にも開放されるべきであるとの理念に基づき、経済活動における自由な競争の促進と経済の活性化を図ることを目的とした民間の事業活動の規制の廃止等に関する法律案を提出しています。この自由党案は、明治以来累積された規制を一挙に撤廃して、旧来の陋習を破り、自由な大地を広げる真の構造改革の名にふさわしいものでございます。
 よって、国家の将来のために、この自由党案の早期の審議を求めて、私の反対討論を終わります。
佐々木委員長 次に、吉井英勝君。
吉井委員 私は、日本共産党を代表して、構造改革特別区域法案及び同民主党修正案に対して反対の討論を行います。
 まず、政府原案に反対する第一の理由は、構造改革特区が、疲弊した地域経済の活性化につながらないばかりか、住民への負担と犠牲を一層強めることになるからであります。
 今日、経済を疲弊させている原因は、規制緩和のおくれにあるのではなく、不良債権の最終処理を最優先させて、倒産、失業を激増させていること、社会保障の連続改悪、負担増や庶民増税をねらう小泉構造改革そのものにあります。この小泉構造改革路線の転換なくして経済活性化はありません。
 第二は、構造改革特区は、大型開発事業と一体で進められ、新たな浪費と財政危機を一層深めるものとなるからであります。
 自治体提案の特区構想の特徴の一つは、規制緩和を経済活動と結ぶために、大規模な基盤整備とセットで計画されていることです。一方、政府は、従来型の財政措置を講じないとしていますが、国土交通省の来年度予算概算要求では、構造改革特区を支える基盤整備のために必要となる連携事業を強力に進める、計画連携等推進費二千五百億円を要求し、特区関連事業への優先的予算配分を準備しています。巨大プロジェクトと一体で進められる特区は、地方財政の破綻を一層深刻にし、住民の暮らしを押しつぶすものとなります。
 第三は、大企業の活性化のために、国民の生命、健康、環境などを守る規制を、特区を突破口に緩和、撤廃しようとしていることです。
 法案は、農地法の規制を緩和し、株式会社の農業経営参入に道を開いていますが、資金力の弱い小規模農家は、優良農地から締め出され、激しい価格競争で経営は苦境に追い込まれます。
 特別養護老人ホームの設置主体、経営主体にも株式会社が参入できるようにしています。福祉の増進と利益追求とは矛盾があり、入所者のサービス低下と負担の増加は逃れられません。
 今、日本経済を地域から再生させる上で必要なことは、大企業の活性化を図る規制緩和ではなく、大企業の横暴から国民や中小企業を守る民主的な規制を確立することであります。
 なお、民主党提出の修正案は、さきに述べた政府原案の誤りを根本から正すものとなっておりませんので、賛成できません。
 以上の理由を申し上げ、反対討論を終わります。
佐々木委員長 次に、北川れん子君。
北川委員 私は、社会民主党・市民連合を代表し、ただいま議題となりました構造改革特別区域法案につきまして、政府原案及び民主党提出修正案にいずれも反対の立場で討論を行います。
 反対の第一の理由は、規制緩和や構造改革特区という手法で本当に経済活性化、雇用創出につながるか疑問であるからです。
 国土の均衡ある発展はもう終わりにしよう、最後の護送船団で甘えるなとして、地域間の競争による活性化をあおり、自治体にも自助努力、自己責任を貫徹し、競争原理を持ち込もうという小泉流構造改革は、都市と地方の不毛な対立をあおり、地方を切り捨てるだけとなっています。しかも、この間の経済の悪化、生活の不安の深化はすべて小泉改革がつくり出したものではないでしょうか。私は、旧来の自民党流の利権ばらまき論でも、小泉流の競争原理・自己責任論、都市再生・規制緩和で経済活性化というのでも、人間の共生、連帯の場である地域コミュニティーの再生は実現できないと考えます。
 第二の理由は、構造改革特区は、地方から手を挙げさせるなどと分権・自治の衣を着ていますが、真の分権・自治にかなうものとは到底言えないことです。
 例えば法案では、地方公共団体の自発性を最大限に尊重したいと言いながら、内閣総理大臣が認定しなければいけないとなっています。また、画期的と自画自賛されているノーアクションレターにしても、機関委任事務制度の廃止、国の関与の縮小を初めとする今次分権改革によって拡充された自治体の法令解釈権と条例制定権の意義を無にするものにほかなりません。自治体の第一義的な法令解釈権が拡充されたにもかかわらず、相変わらず国にお伺いを立てる発想自体ナンセンスであると言わざるを得ません。構造改革特区という発想ではなく、課税自主権を人々の暮らしに近い小さな自治体に認め、国家の権力、干渉を一切受け付けない地域の主権こそ確立すべきではないでしょうか。
 第三の理由は、政官業の癒着の拡大のおそれがあることです。
 民間事業者からの提案は、必然的に当該事業者の利益拡大を第一義的に考えたものとなりかねません。ある規制を緩和するのは、その規制があることによってその事業者の利益追求の障害になっているからです。特区の提案、申請を通じた民間事業者と自治体の癒着が懸念されますし、一部事業者の利益のために住民全体の公益が損なわれる危険性があります。
 第四の理由は、歯どめなき規制緩和につながることです。
 総合規制改革会議の議論でも明らかなように、今回の特区は、企業、財界側から見ると、参入したい分野の障壁について、進まない規制緩和をとにかく実施して、一点突破で既存のしがらみを打ち破り、その成果を全国に波及させようという規制緩和の実験場となることが見え見えです。港湾や農業、医療等の分野を初めとする、労働や安全、環境、消費者保護などの社会的規制の緩和の全国的拡大は到底容認できません。
 以上の理由で政府原案に反対するものですが、特区の規制緩和を全国に拡大するとともに、規制緩和の内容の追加拡大をもたらし、また地方分権改革の意義を骨抜きにすることにつながるという点で、民主党提出の修正案には賛同できないことを申し添え、反対討論を終わります。
佐々木委員長 これにて討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
佐々木委員長 これより採決に入ります。
 内閣提出、構造改革特別区域法案及びこれに対する修正案について採決いたします。
 まず、山内功君提出の修正案について採決いたします。
 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
佐々木委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。
 次に、原案について採決いたします。
 これに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
佐々木委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
佐々木委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、逢沢一郎君外二名から、附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。細野豪志君。
細野委員 ただいま議題となりました附帯決議案について、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党の各会派を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。
    構造改革特別区域法案に対する附帯決議(案)
  政府は、本法の施行に当たっては、抜本的な規制改革及び地方分権の推進の観点から次の諸点に留意し、その運用について遺漏なきを期すべきである。
 一 規制の特例措置の適用状況について、少なくとも年一回以上、その効果、影響等を評価すること。その結果、当該規制の特例を全国的に展開すべきとの結論に達した場合には、速やかに所要の措置を実施し、規制の特例措置が特定地域の既得権益とならないよう配慮すること。
 二 本法成立後においても、講ずべき規制の特例措置の項目について、追加の提案を地方公共団体及び民間事業者から定期的に受け付けるとともに、それに応じ構造改革特別区域基本方針の変更等の必要な措置を実施すること。
 三 地方公共団体より構造改革特別区域において実施し又はその実施を促進しようとする特定事業及びこれに関連する事業に関する規制について規定する法律等の規定の解釈について確認を求められた場合は、書面又は電磁的方法により回答すること。
以上でございます。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
佐々木委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
佐々木委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
 この際、政府から発言を求められておりますので、これを許します。鴻池国務大臣。
鴻池国務大臣 ただいま御決議のありました附帯決議につきましては、その趣旨を尊重し、本法案の実施に努めてまいりたいと考えております。
 ありがとうございました。
    ―――――――――――――
佐々木委員長 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
佐々木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
    ―――――――――――――
佐々木委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午前十一時四十七分散会


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