衆議院

メインへスキップ



第4号 平成15年4月2日(水曜日)

会議録本文へ
平成十五年四月二日(水曜日)
    午前十時二十分開議
 出席委員
   委員長 佐々木秀典君
   理事 逢沢 一郎君 理事 小野 晋也君
   理事 星野 行男君 理事 渡辺 博道君
   理事 中沢 健次君 理事 山内  功君
   理事 遠藤 和良君 理事 西村 眞悟君
      大村 秀章君    奥山 茂彦君
      嘉数 知賢君    金子 恭之君
      亀井 久興君    木村 隆秀君
      菅  義偉君    高橋 一郎君
      谷川 和穗君    谷本 龍哉君
      近岡理一郎君    林 省之介君
      石毛えい子君    大畠 章宏君
      仙谷 由人君    平野 博文君
      横路 孝弘君    太田 昭宏君
      吉井 英勝君    北川れん子君
      江崎洋一郎君
    …………………………………
   国務大臣         谷垣 禎一君
   内閣府副大臣       根本  匠君
   農林水産副大臣      北村 直人君
   内閣府大臣政務官     大村 秀章君
   内閣府大臣政務官     木村 隆秀君
   厚生労働大臣政務官    渡辺 具能君
   農林水産大臣政務官    熊谷 市雄君
   政府参考人
   (内閣官房内閣審議官)  小川  洋君
   政府参考人
   (内閣府国民生活局長)  永谷 安賢君
   政府参考人
   (厚生労働省医薬局食品保
   健部長)         遠藤  明君
   政府参考人
   (農林水産省大臣官房長) 田原 文夫君
   政府参考人
   (農林水産省総合食料局長
   )            西藤 久三君
   政府参考人
   (農林水産省生産局長)  須賀田菊仁君
   内閣委員会専門員     小菅 修一君
    ―――――――――――――
三月二十五日
 国民のための民主的な公務員制度改革に関する請願(児玉健次君紹介)(第一一〇四号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 参考人出頭要求に関する件
 食品安全基本法案(内閣提出第二七号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――
佐々木委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、食品安全基本法案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官小川洋君、内閣府国民生活局長永谷安賢君、厚生労働省医薬局食品保健部長遠藤明君、農林水産省大臣官房長田原文夫君、農林水産省総合食料局長西藤久三君及び農林水産省生産局長須賀田菊仁君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
佐々木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
佐々木委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。金子恭之君。
金子(恭)委員 おはようございます。自由民主党の金子恭之でございます。
 本日は、食品安全基本法案につきまして質問をさせていただきます。
 国民の食生活を取り巻く環境が大きく変化する中で、一昨年の忌まわしいBSEの発生を初めとしまして、昨年には、外国産野菜における農薬の残留とか、国内においては無登録農薬の使用など、食品の安全にかかわる問題が相次いで発生いたしました。食品の安全性の確保に対する国民の不安、関心というのは、従来にも増して高まってきているわけであります。
 消費者におきましては、食品の安全性についての認識を新たにしていただいた。そして、生産者、特に農家におきましては、これまで外国産の安い農産物に対抗するべく頑張ってこられたわけでありますが、今回のこのことにおきまして、ある意味では、日本の農業の方向性といいますか、値段ではなくて、安全で安心でよいものをつくるということが農家に対して課されたのではなかろうかなということで、私は、これは逆にチャンスだということで、農家の方も励ましているわけでございます。
 このような状況に対応すべく、自由民主党では、食の安全確保に関する特命委員会を設置して検討を進めました。昨年六月には、与党三党で、食の安全確保に関する提言を行っております。これを踏まえて、小泉内閣では、食品安全行政に関する関係閣僚会議におきまして、「今後の食品安全行政のあり方について」を取りまとめました。
 食品安全基本法案は、こうした我が党、政府が一体となった取り組みの具体的な成果として評価するべきであると思います。改めて、この場で政府の考えをお伺いいたします。
 まず、食品安全基本法案のねらいと目的につきまして、大臣のお考えをお伺いいたします。
谷垣国務大臣 今金子委員がおっしゃいましたように、BSE以来いろいろな事件がございまして、私どもとしては、もう一回食品安全行政に対する国民の信頼を取り戻さなければいけないし、国民の方々に安心して毎日食事をとっていただけるということでなければいけないということで、いろいろな分野で、いろいろな方面でいろいろ御検討があったわけでありますけれども、こうして食品安全基本法を提出して御審議をしていただける運びになりました。
 そこで、この食品安全基本法のねらいでございますけれども、食品の安全性の確保に関しまして、まず第一点として、国民の健康の保護が最も重要であるということを基本理念としてこの法案に書き込みました。これが第一点でございます。それから第二点として、リスク評価を科学的に実施して、その科学的なリスク評価に基づいていろいろな施策を策定しなきゃならない。さらに、各方面といわゆるリスクコミュニケーションを促進していこう。こういったいわゆるリスク分析手法を取り入れて基本的な方針を定めるということが第二点でございます。それから三番目に、リスク評価の実施を主たる内容とする食品安全委員会を新たに内閣府に設置する。
 このような、一応、三つの柱と申し上げてよろしいと思いますが、こういう柱で食品の安全性の確保に関する施策を総合的に推進しようとするものでございます。この基本法にあわせまして、この内容に即して各種の施策が行われていくように、今国会では、食品衛生法の改正など、所要の法律案が提出されているところでございます。
 今後は、こういった法律に基づきまして、生産から販売までの各段階において安全性を確保するということが大事でございますから、それを行いますとともに、安全委員会が行う科学的な評価に基づいて行政が必要な措置を講ずる体制を確立する、こういうようなことを通じて食品安全行政に対する信頼を取り戻して、国民の皆様に日々安心して食事をとっていただけるようにしよう、こういうことでございます。
金子(恭)委員 ありがとうございました。
 続きまして、食品安全の確保というのは、国、地方公共団体、事業者、消費者といった関係者がそれぞれの責務、役割を果たすことによって初めて可能になると考えられます。輸入食品の増加など、国民の食生活が多様化する中、この法案ではこれら関係者の責務や役割についてどのように位置づけをしているのか、具体的な内容についてお伺いいたします。
根本副大臣 金子委員は、ただいまいろいろお話ありましたように、農業問題を初め食の安全に大変熱心に取り組んでいただいておりますが、現在、国民の食生活が非常に多様化しておりまして、したがって、委員がまさに今御指摘いただいたように、食品の安全性、これは、国、地方公共団体という行政だけではなくて、事業者、消費者といった民間も含めた関係者がそれぞれの立場で取り組むべき事柄を的確に果たす、こういうことによって初めて確保されるものと私は考えております。これは、委員御指摘のとおりであります。
 こういう考え方に立ちまして、今回の食品安全基本法案、これにつきましては三点ほど申し上げたいと思います。
 一つは、国及び地方公共団体の責務として、国においては、国でありますから、総合的に施策を策定、実施する。一方で、地方公共団体においては、その地域の実情に応じた施策を策定、実施していただく。こういうことを規定しております。
 それから二つ目でありますが、食品を消費者に提供するのは事業者でありますので、食品関連事業者の責務、これをきちんと位置づけまして、食品の安全性の確保についての第一義的責任がある、つまり事業者は第一義的責任があるんだ、これを規定しております。
 それから三点目でありますが、消費者につきましても、食品を最終的に消費するという立場で、食品の安全性を確保していく上で、知識や理解を深めていただき、そして施策に意見を表明することが非常に重要だ、こういう消費者の重要性を踏まえまして、これらを法律上、消費者の役割として規定しております。
金子(恭)委員 一連の偽装表示の問題によりまして国民の食品に対する信頼が失墜したことは、憂慮にたえません。
 表示は、食品の安全確保のみならず、消費者の商品選択に役立つことなど多面的な役割を担っていますが、国民の安心と安全を確保する上で、法案では食品表示の問題についてどのように位置づけているのでしょうか。私は非常に、この食品表示の問題というのは基本にあると思います。これが揺らぐ以上は、このシステムは機能しないと思います。そのことについて、この食品表示の問題の位置づけについて、御答弁をお願いいたします。
根本副大臣 委員御指摘のとおり、食品の表示、これは私も大事なポイントだと思います。
 食品の表示は、一つは、消費者に対して食品の安全性や品質などに関する情報を提供し、食品の安全性の確保や、あるいは、委員も今御指摘になりましたが、消費者の選択の機会の確保を図る上で重要な役割を果たしていると認識しておりまして、食品衛生法、いわゆるJAS法、景表法などにおいて、それぞれの観点から、現在、表示の制度が定められております。
 今回の基本法案におきましては、食品に関する正確かつ適切な情報の提供を、まず食品関連事業者の責務として位置づけております。また、食品関連事業者により提供される情報も踏まえて、食品の安全性の確保に関する知識と理解を深めるとともに、施策に意見を表明するように努める、これは先ほども申し上げましたが、消費者の役割として規定しております。
 一方、食品の表示制度、これは、複数の法律にわたりまして、消費者、事業者双方にわかりにくい、こういう指摘もあります。こういう責務や役割を果たすためには、表示制度の適切な運用などを行って情報を正確に伝達すること、これが重要となっていると思っております。こういう見地から、本法第十八条におきまして、食品の表示の制度の適切な運用だけではなくて、その他の情報を正確に伝達するために必要な措置を講じなければならない、こういう規定をこの法案で置かせていただいたところであります。
金子(恭)委員 この法案では、今後の国の食品安全行政のかなめとなる組織として、先ほど大臣からもお話がありました、食品安全委員会を設置することが規定されております。食品安全委員会の役割は何でしょうか、これにより現行のシステムはどのように改善されるのでしょうか、また、そのためにも、委員会による関係各省に対する勧告の実効性はどのように確保されるのでしょうか、大臣にお伺いいたします。
谷垣国務大臣 先ほど、食品安全基本法では消費者の健康保護を最優先にしてリスク分析の手法を取り入れているというふうに申しました。委員会の審議は最初でございますから、ちょっとくどくなるかもしれませんが、いわゆるリスク分析手法というのには、三つの面と申しますか要素がございます。まず、食品の持っている健康に与えるいろいろな影響、そのリスクをどう評価していくか、この法案の中では食品健康影響評価というふうに言っておりますが、その問題。それから、そういう評価に基づいて具体的な施策を行っていく、いわゆるリスク管理と言われる面。それから、そういういろいろな問題を幅広い関係者相互間で情報や意見を交換して認識を深めていく、いわゆるリスクコミュニケーションという三つの面があるわけでございます。
 この食品安全委員会は、まず食品健康影響評価、いわゆるリスク評価を科学的に行う、これを一つの責務とするわけであります。それから二番目に、今申し上げたリスクコミュニケーション、これも、科学的な評価を行うとともに、幅広い関係者との間で意見を交換し、認識を共有していくというようなことを進めていく、これが二番目でございます。それから三番目の責務としては、重大な食品事故などが起こりました場合のいわゆる緊急時対応、こういうものもこの委員会が行うことになっております。
 具体的には、関係大臣の諮問に応じる、あるいは、諮問がなくてもみずから進んでいく場合もあるわけですが、食品健康影響評価、リスク評価を実施するということが第一。それから、その結果に基づいて関係大臣に勧告をするということが第二。それから三番目に、その勧告、食品健康影響評価の結果に基づく施策の実施状況を監視して関係大臣に勧告していく、これが三点目でございます。それから四番目に、食品安全行政に関し、関係行政機関の長に意見を述べる。五番目、調査研究の実施。それから六番目に、先ほど申し上げたリスクコミュニケーション、あるいは関係行政機関のリスクコミュニケーションに関する事務の調整。こういったような事務を所掌することになっております。
 そうすると、何が今までと変わってくるかということでございますが、結局、BSE以来のいろいろな問題に対処していく中で、何が従来の行政の反省点であったかと申しますと、リスク評価とリスク管理の両方の機能が区別されないで、混然一体として実施している、これが唯一の問題点とは申しませんが、根本的な問題点がここにある。これが、今までの一連の過程をかんがみての、従来の食品安全行政に対する反省点のポイントでございます。したがって、科学的に食品健康影響評価、リスク評価を行う機関を独立したものとして、独立した行政機関として、専門家、科学者によって客観的そして中立公正に科学的評価が行われるように制度を整えていく、これが今回一番大きく変わる点でございます。
 それから、では、そういうことをやって実効性はどう担保されるのかというお問いかけでございました。食品安全委員会が、実際に対策を実施していくリスク管理機関に対して勧告を行うことができることになっておりますが、これは内閣総理大臣を通じて行うこととしておりまして、その勧告の内容もすべて公表することとしております。そしてまた、勧告に基づく措置についても、関係各大臣は委員会に報告をするということになっておりまして、こういう内閣総理大臣を通じた勧告、それからその公表、そしてそれに基づく措置の報告、こういうことを通じまして、勧告の実効性というものが担保される仕組みになっているということであります。
金子(恭)委員 丁寧にわかりやすく御説明いただきまして、ありがとうございました。
 そういう意味では、この食品安全委員会がいかに機能するかということがやはり大切なことだと思いますので、大臣、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 続きまして、先ほども述べましたとおり、食品安全の確保における消費者の役割というのは重要であると考えておりますが、食品安全委員会の活動におきまして、消費者の参加はどのような形で実現されるのでしょうか。そのことについてお答えをお願いいたします。
根本副大臣 委員御指摘のとおり、食品安全の確保における消費者の役割は非常に重要だと考えております。法案の具体的な消費者の役割の規定ぶりを改めて申し上げたいと思いますが、消費者の役割につきましては、法案におきまして、食品の安全性の確保に関する知識と理解を深めること、及び、食品の安全性の確保に関する施策について意見を表明すること、これらによりまして食品の安全性の確保に積極的な役割を果たすと、法案できちんと規定しております。
 今お尋ねの、食品安全委員会の実際の活動において消費者の参加はどのような形で実現されるのかということでありますが、一つは、ホームページなどを活用しまして、食品健康影響評価、要はリスク評価、この対象のどういうものを優先順位にするか、あるいは、それぞれの個別の評価の内容、こういうものにつきまして、幅広い国民との間で十分な意思疎通を図りたいと思っております。それから二つ目は、リスク管理機関と共同いたしまして、総合的な、全体的なリスクコミュニケーションを図るという観点から、消費者、生産者など幅広い関係者の参加のもとに、意見交換会、こういうものを実施したいと考えております。さらに、食品安全行政につきまして意見を提出する食品安全モニター、これは仮称でありますが、こういうものを設置したい。今、現段階でこういう取り組みを想定しておりまして、こういう取り組みを通じまして、食品行政への消費者の積極的な参加を促進してまいりたい、こう考えております。
 それから、食品安全委員会のもとに設置される予定の企画専門調査会あるいはリスクコミュニケーション専門調査会、こういう専門調査会を食品安全委員会の下に置こう、こう考えておりますが、この専門調査会等につきまして、消費者関係や、あるいは生産、流通業界の関係者、こういう方々も参加してもらう方向で現在検討しております。
金子(恭)委員 今、副大臣から御答弁されましたように、いろいろな形で消費者の参加をしていただくようになっているようでございますので、そのことについても十分配慮していただきたいと思う次第でございます。
 続きまして、食品安全行政の改革というのは、今お話がありました食品安全委員会の設置のみによってなし遂げられるわけではなく、リスク管理を行う関係各省における取り組みも重要であると思います。食品安全基本法の制定を踏まえ、関係省庁でございます農林水産省や厚生労働省では、食品安全の確保のため、どのような取り組みをこの法律のもとで行われるのか。これは非常に、この管理ができるかどうかというのは大きゅうございますので、そのことについて詳しく御答弁をお願いしたいと思います。
西藤政府参考人 御説明申し上げます。
 先生御指摘のとおり、食品の安全問題、BSE、あるいは無登録農薬問題、あるいは輸入野菜の残留農薬問題、そのほか食品の不正表示の多発等の状況があり、それを踏まえた形で食の安全、安心を確保するということは極めて重要だと私ども再認識をさせられている状況にございます。
 そういう状況の中で、今まで御論議がありましたように、基本法の設置あるいは安全委員会の設置という取り組み、そういう体制整備が行われるわけでございますが、私ども農林水産省は、消費者、生活者という視点を忘れて食料の安定供給、生産ということはあり得ない、そういうことから、一つは、リスク管理のための施策体系の見直し、もう一つは、私どもの組織、中央、地方あわせて組織を総合的に見直していくという取り組みを行いたいというふうに考えているところでございます。
 具体的に施策の関連で申し上げますと、肥料、農薬、飼料等の生産資材の適正な使用の確保等を図るということで、農林水産物の生産過程における食品の安全性を確保する、そういうために、肥料取締法の改正など関連法案を今国会に提出させていただいているところにございます。
 組織問題につきましては、本省におきまして、産業振興部門から独立して食品分野における消費者行政とリスク管理を一元的に担う消費・安全局、仮称でございますが、これを設置するとともに、先生御指摘のとおり、万全を期していくという観点で、食料の生産、消費、全国津々浦々で行われている状況にございます、地方においても、まさに現場における食品のリスク管理が重要でございます、そういう点で、そういう地方の食品のリスク管理業務を行う地方農政事務所を設置する。そういうことで、本省、地方を通じたリスク管理体制の整備を図っていくというふうに考えております。
 私ども、施策の見直し、組織体制の見直しを通じまして、先ほど来御論議がございますように、国民の健康の保護を第一に食品の安全性の確保を図っていく、そういう点で、国民各層、生産者、流通関係者、事業者、消費者の意見を十分聞きながら、今後の行動指針として、食の安全・安心のための政策大綱を現在取りまとめ中でございます。これに基づきまして、食の安全、安心に対する国民の信頼回復に努めていきたい、安全行政に万全を期していきたいというふうに思っております。
遠藤政府参考人 御指摘のとおり、食品安全委員会の設置により、今後、食品の安全についてのリスク評価は食品安全委員会が行うこととなり、リスク管理は厚生労働省及び農林水産省が行うこととなります。
 このような役割分担を踏まえ、今般、厚生労働省では、リスク管理の体制を強化するため、食品衛生法等の抜本改正案を国会に提出したところでございます。
 法案におきましては、食品の安全についてのリスク管理の目的が国民の健康の保護であることから、目的規定に、食品の安全性の確保により国民の健康の保護を図る旨を明記するとともに、国、地方公共団体及び事業者等の責務の明確化、国民等からの意見徴収、いわゆるリスクコミュニケーション規定の創設を行うこととし、また、具体的な施策として、残留農薬等のポジティブリスト制の導入等、規格基準の見直し、国または都道府県による監視指導指針及び計画の策定及び公表など、監視検査体制の強化、食中毒等、飲食に起因する事故への対応の強化、食品衛生法等の違反に対する罰則の強化など、リスク管理の施策全般を見直すものでございます。
 また、これらのリスク管理を行うため、本年度、検疫所における食品衛生監視員の増員、HACCP承認施設の監視等を行う地方厚生局の食品衛生監視員の増員、国立医薬品食品衛生研究所等、国立試験研究機関の食品分野の充実など、体制の強化を行うこととしております。
 これらにより、食品安全委員会等と連携しながら、リスク管理機関としての責務を全うしてまいりたいと考えております。
金子(恭)委員 どうもありがとうございました。
 先ほどから何度も申し上げますが、せっかく、今回、食品安全行政のかなめとなる組織として食品安全委員会ができるわけでありまして、そういう意味では、関係各省庁がきちんとその勧告に基づいて動いていただかなければいけませんので、その部分は重々認識した上で、きちんとした行政をやっていただきたいと思う次第でございます。
 続きまして、今後の食品安全行政におきまして、食品安全委員会が中心となり、関係各省、地方公共団体、消費者、事業者などの間で情報、意見の交換、いわゆるリスクコミュニケーションを行いながら進めていくとのことであります。
 先ほどから何度も御答弁をしていただいているわけでありますが、これが最後の質問になりますが、このリスクコミュニケーションを具体的にどのような方法で進めていくこととしているのか、最後にお伺いいたします。
根本副大臣 リスクコミュニケーションについてのお尋ねでありますが、食品安全委員会におきましては、食品健康影響評価等に係る関係者相互間の情報及び意見の交換、これがまさにリスクコミュニケーションですが、これをみずから企画し、実施するとともに、関係行政機関が行う食品の安全性の確保に関する関係者相互間の情報及び意見交換に関する事務の調整を行う、全体として事務の調整を行うということとしております。
 具体的にどのような方法でということでありますが、一つは、食品健康影響評価、要はリスク評価、この対象の優先順位をどうするか、あるいは、個別の評価の内容等々につきまして、ホームページを活用して国民にできるだけわかりやすく説明し、また、国民の皆様からも幅広く意見を聞いていきたい、こう思っております。さらに、リスクコミュニケーションに関してリスク管理機関との調整を行いますし、リスク管理機関も参加していただく意見交換会の開催等も行いたい。
 現段階でこういったことを想定しておりますが、今後、外国の事例あるいは有識者等の意見を踏まえまして、この具体的な内容、あり方についてはさらに検討を深めてまいりたいと思っております。
金子(恭)委員 ありがとうございました。
 国民が生活していく上で一番重要なのは食だと思います。その食の安全が脅かされているという状況を早く克服していただいて、今回の基本法案を早期に成立させていただいて、谷垣大臣がそのトップとしてリーダーシップを発揮していただいて、国民が安心して暮らせるような食品行政が行われるようにお願いを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
佐々木委員長 これにて金子恭之君の質疑は終了いたしました。
 次に、山内功君。
山内(功)委員 民主党の山内功でございます。
 まず、大臣、一昨年以降のBSEの発生、食品の虚偽表示、残留農薬、無登録農薬問題などが連続して起こりました。国民の食に対する信頼を失墜させたのは、リスク評価とリスク管理の混同、農水省と厚生労働省の縦割り構造、輸入産品への対策の欠落、生産者優先、消費者軽視など、これまでの日本の食品安全行政のゆがみがもたらした、まさに歴代の内閣、政府の失政の産物だと考えますが、大臣の認識から伺いたいと思います。
谷垣国務大臣 一昨年のBSE問題をきっかけとしまして、農水大臣と厚労大臣の諮問機関としてBSE問題に関する調査検討委員会というものが設けられまして、いろいろ御検討の末報告書を出されておりますが、それを読ませていただきますと、今までの食品安全行政の問題点としていろいろな御指摘がありますが、みんな重要なことばかりなんですが、私は三つ重要なことがあるというふうに思っております。
 一つは、農林水産物の生産から食品の販売までの各段階で安全性確保のための措置を講じていくという、いわゆるフードチェーンの考え方が弱かった、これが第一点であります。それから第二点、今委員も指摘されましたけれども、リスク評価が産業振興の機能も担っているリスク管理機関においてリスク管理と混然一体として行われていて、分離されていなかった、これが二点目でございます。それから三番目は、これも縦割り行政ということで表現をされましたけれども、リスクを管理していく機関相互間での連携が不足していたということ。報告書はこの三点を挙げておりまして、私もこの三点をきちっと克服しなければならないというふうに考えております。
 こういう認識のもとで、今の報告書の提言も踏まえまして食品安全基本法を提案させていただいているわけでありますが、そこでは、第一に、食品供給行程の各段階で食品の安全の確保のために必要な措置を適切に講ずる、これを一つの基本理念とし、それから第二に、リスク管理とリスク評価が混然一体として行われたというのを是正するために、リスク管理機関から独立した食品安全委員会を内閣府に設置して、リスク評価を客観的かつ中立公正に、しかも科学的に行っていくという体制をつくる。それから三番目に、関係者相互間の情報、意見交換、あるいは関係行政機関の密接な連携、リスクコミュニケーションを促進していくということを規定しておりまして、それにあわせて、この国会では、食品安全基本法に則して行政が行われるように、食品衛生法の改正など所要の法律案が出されているわけであります。
 こういうふうに新しく制度をつくりまして、要は、それらの制度がなれ合いに陥らずに適切な緊張感を持って、しかも全体としては一体とした食品安全行政を行っていけるようにやっていく、こういうことではないかと思っております。
山内(功)委員 私は、今大臣がるる述べられたけれども、消費者から見た食の安全ということについて明確に話をされないということが、まずそもそもこの法案の問題点だろうと思っています。
 さきの委員会で、谷垣大臣のこの法律の提案理由説明を聞きました。提案理由説明にはこう書いてあります。「食品に関する科学技術の発展、食品流通の広域化、国際化が進展するなど、我が国の食生活を取り巻く環境は、近年大きく変化しております。このような変化を背景として、」本法を制定するというようなことなんですね。
 これは、さっき言われたような、まず消費者から見た農業、あるいは食の安全、命、あるいは輸入産品をどう考えるか、新しい組み換え食品についてどう考えるのか、縦割り構造についてはいかにメスを入れるかということをまず反省した上でこの法律を提出しますというような問題意識が全然ないじゃないですか、提案理由説明を見て。これはどういうことなんですか。
谷垣国務大臣 御提案をしている制度を前提に説明いたしますと、先ほどのような形になる。しかし、今申し上げましたように、それから、この制度の立て方として、BSE以来の一連の過程を振り返って、そこでいろいろ反省点があることを見据えながら、どう制度をつくっていけばいいか、こういうつもりで制度設計をしたところでございます。
山内(功)委員 そうすると、今までの制度設計ではBSE等々の発生を防げなかったので新しく仕組みを整えるという意味では、今までの農業政策あるいは消費者政策、そういう問題については今までの政府の失敗であったということはお認めになるんですか。
谷垣国務大臣 問題点は、先ほど申し上げたように、生産者優先の思想がやはりあったんだろうと思います。そこで、今度の法案でも、消費者の健康というものを第一に考える、こういう観点からこの法案を提出させていただいたということであります。
山内(功)委員 なかなか失政ということを言われないので。
 この法律をなぜ提案するのかとか、なぜ食品安全委員会をつくるのか、そういうこと一つ一つが、従来の行政の厳しい総括あるいは反省の上に立って提案をしていきますという思い入れが大臣になければ、やはりこの法律というのはなかなか、これから指摘しますけれども、不十分な点が見られるんじゃないかなと思っています。
 今答弁にもありましたけれども、BSE調査検討委員会の報告がこの基本法と安全委員会をつくろうという端緒だったわけですね。しかしながら、当初は小泉総理も、省庁の枠にとらわれず、食の安全についての各省庁の部局を組織改編してもいいのではないかなどと発言をし、食品安全庁のような独立した強力な組織をイメージしていたはずなんです。国民も、今度はかなり、おっ、違う組織ができるぞと期待した。ところが、ふたをあけてみたら、何と予算二十億、委員七人、職員五十人、食品安全委員会だったわけでございます。BSEで失敗したイギリスが、きちんと自己批判をして、六百人以上の組織で百七十二億円の予算を持つ食品基準庁をつくったのと全然違うレベルの話じゃないかと思うんですが、どうですか。
谷垣国務大臣 食品安全行政の組織、役割、形態をどういうふうにしていくかということは、それぞれの国の歴史や伝統、問題点によっても違うと思います。
 今、山内委員は、イギリスの例をお出しになって、強力な食品安全庁をつくったではないかというふうにおっしゃいましたけれども、先ほど申し上げましたように、我が国の反省点、非常に大きな反省点は、場合によっては産業振興機能も担っているリスク管理機関がリスク評価もあわせて混然一体と行っていた。それを独立させてきちっと科学的に行われるようにしなきゃいけない、それに基づいてリスク管理も行われるようにしなければいけない、こういうことで食品安全委員会は科学的にリスク評価を行う機関として整理をした、制度設計をしたわけでございますので、今委員がおっしゃいますように、イギリスのように六百人を数える組織というよりは若干小規模ではございますけれども、それぞれの持っている役割、機能というのは違っているんだというふうに思います。
山内(功)委員 だとすれば、リスク評価だけを行う食品衛生安全庁をつくったフランスは多分日本に似ているんでしょうけれども、それでも、フランスの組織を見ても、定員が五百五十人、予算も、計算が間違っていなければ百億円近い予算です。どう見ても、金と人の配分の仕方が全く外国と違うんじゃないですか。
谷垣国務大臣 先ほどちょっと、英国の場合を私はどう申し上げたのか、評価と管理を英国は両方やっているというふうに、イギリスの場合はそれは両方をやっているという機関ですね。
 それで、つまり、余り人も金もかけないでやるんじゃないかというお問いかけですが、やはり人員、組織というのは体制の違いによって大きく異なると思うんですね。ですから、我が国の食品安全委員会は、委員七名のほかに延べ二百名程度の専門委員が参加していただくということにいたしますし、委員会事務局は、事務局長以下五十四名の体制で行う、それから技術参与二十五名で構成する予定である。予算については約二十一億円でございますけれども、これらによって、先ほど申し上げたリスク評価あるいはリスクコミュニケーションの展開など、十分な活動を行い得るというふうに考えております。
山内(功)委員 BSEを日本で発生させた最大の原因は、リスク管理体制が農水と厚労省に分かれてうまく機能しなかったということだと思うんですけれども、今回の法案でもリスク管理体制は一向に改まっていない、そのままになっているということ。この点は不備な点の一つだと思うんですけれども、どう考えたらいいんでしょうか。
谷垣国務大臣 確かに、おっしゃるように、リスク評価を分離させるだけではなくてリスク管理機関が頑張らなければいけないという御指摘は、私はそのとおりだと思います。
 しかし、この点に関しても、今回、食品安全基本法とあわせまして、食品衛生法であるとかあるいは農薬や飼料などの生産資材の規制に関する法律の改正も提案されておりまして、農林水産省においては、さらに、生産振興とリスク管理部門を分離するといったような行政組織の充実もやられているところでございます。
 先ほど申しましたように、リスク評価とリスク管理が混然一体となっていることが問題点として評価されたわけでございますので、委員の意識の中には評価から管理まで一貫して行う食品安全庁というものがあるのかもしれませんが、私どもはその考え方をとっていないということでございます。
 現在提案している仕組みにおいても、食品安全委員会は、評価と勧告に加えて、その内容の公表や施策の実施状況の監視とか報告聴取などができることとされておりますので、任務を遂行するために必要な権限は十分与えられているというふうに考えております。
山内(功)委員 大臣は法案に対するパブリックコメントを読まれたと思いますけれども、たくさんあった中で、例えば、安全委員会の権限は勧告ではなく命令にしなければいけないというような点とか、委員会はリスク管理部門を傘下に置くべきだ、あるいは、実施部隊を持たない小規模な組織では設立する意義は薄いんじゃないか等々のコメントが数多く寄せられたんですが、その点については、こういうコメントを読まれてどう思いましたか。
谷垣国務大臣 それぞれのお立場で、意味のあるコメントだと私ども思います。
 まず、勧告権というものでは不十分なんだ、命令権を与えなければいけないという御指摘ですが、勧告をするのは、先ほど申し上げましたように、内閣総理大臣を通じて勧告する、リスク管理機関の大臣に対して勧告をして公表するという体制をとっております。
 それで、私も我が国の法制に全部通暁しているわけではもちろんございませんけれども、担当の大臣が他の大臣に命令するというような仕組みというのは、多分我が国の法制度の中にないのではないか。やはり総理大臣を通じて担当大臣に勧告するというのは、我が国の法の仕組みの中では、行政の仕組みの中では極めて重い仕組みをとっているというふうに私は思っておりますので、まず、これはこれで十分ではないか。
 それから、リスク管理機関を安全委員会は傘下に置くべきであるという御指摘でありますけれども、これは先ほども申し上げましたように、管理と評価を分離するという思想に基づいておりますので、全然別な立法政策をとれば、もちろんそういう手法もございますけれども、私どもは二つを分離するという基本姿勢で制度設計をしたということであります。
山内(功)委員 では、勧告について、それに反対をリスク管理部門がするということはあるんですか。
谷垣国務大臣 勧告は、確かに委員のおっしゃるように命令ではございませんので、論理上は、あくまで勧告は勧告でございますから、場合によっては拒否をするということは、論理上はそれはあり得るのだと思います。しかし、内閣総理大臣を通じて他の大臣に勧告したときに、それが実効性を持たないという事態は、極めて考えにくい事態ではないかというふうに思います。
山内(功)委員 私は、今の大臣の発言は少し気になるんですけれども、勧告でも従わなくてもいい場合があるような言い方をされるというのは、そもそも今の安全委員会のシステム自身を疑問視するような発言じゃないんでしょうか。
 勧告について反対することは、論理的にはあり得ても内閣総理大臣を通じて行われるから実際にはないと思うと言われるんだったら、勧告について拘束力があるということで、そうだとすれば、表現が、八条委員会から、例えば大臣を持つ農水省や厚労省に命令をするというのが今の法体系ではどうかなというような格式張った話ではなくて、勧告について反対することがないんだったら、あるいは勧告について、リスク管理機関が、それについて間違っていますよ、安全委員会に対して、あなたの勧告は間違っていますと言う権利がないならば、それは従いますということで、命令という表現でもいいんじゃないですか。
谷垣国務大臣 ちょっと先ほど申し上げるのを忘れましたけれども、勧告をする、それから実施状況を監視していく権限を食品安全委員会は持っているわけですね。それで、勧告に基づく施策が適切に行われていない場合などで必要があると認めたときは、食品安全委員会は再度の勧告もできる、こういう仕組みになっております。こういう再度の勧告などを通じて……(山内(功)委員「条文にないですよ、再度の勧告」と呼ぶ)再度の勧告を行うこととしていると……(山内(功)委員「ない、ない」と呼ぶ)条文にもあると思います。今ちょっと何条かすぐ引けませんが、そういう仕組みになっておりますので、まずこれでもって機能しないということは私は考えにくいと思っております。
山内(功)委員 しかし、BSEが発生したのは、例えばイギリスとかEUですごく蔓延していたのに、日本はそういう事態にはならないだろうとたかをくくっていたということや、もう一つ大きな問題は、これは報告書にも指摘をされていますけれども、日本も危険度が高いですよということをわざわざEUから指摘されていたけれども、それを無視した農水省の態度が、今七頭も発生している。それで全頭検査が、きょうからですか、始まっているわけですよね。だとすれば、へい死牛を含めて全頭検査を行えば、まだまだ出てくるのじゃないかと言われているわけです。
 こういう大きな問題を生じたわけですから、だから、確かにEUの委員会からの話は農水省は無視したかもしれないけれども、この安全委員会の勧告については、七人の偉い学者の先生方が言われることについてはきちんと聞きますよ、そういう仕組みが何か伝わってこないのですけれども。
谷垣国務大臣 山内委員が問題にされていることは、私、決して理解できないというふうに申し上げているつもりではありませんで、こういうことじゃないかと思うんですよ。要するに、山内委員は、安全委員会が科学的に評価をして、例えば農水省なり厚労省にこれでやれと、勧告ではなしに命令権を与えて、きちっとその食品安全委員会の科学的な評価がリスク管理に生かされるようにせよという御発想だと思うんですね。そういう問題の立て方も、私は場合によってはあり得ると思います。
 しかし、これは先ほどから申し上げていることの繰り返しになりますが、リスク管理機関とリスク評価機関を分けようということになりますと、評価機関のやったとおり命令でやってしまうということになると、それは突き詰めていけば、上意下達と言うと言葉は悪うございますが、要するに一つの組織としてつくっていく発想につながっていくのだろうと思います。
 確かに、勧告でございますから、命令のように、それに従わなかった場合の罰則とか、そんなものがあるわけではもちろんありませんし、上官としての命令権限を食品安全委員会が持っているわけではありませんけれども、この制度の立て方の思想は、制度を分離することによってお互いの間の緊張関係をやはり保っていくことによって、今山内委員が指摘されたような、そういう海外からの貴重な情報がありながら結果としてそれが生かされないような体制を変革していこう。我々の考え方は、委員会、リスク評価機関とリスク管理機関の適切な緊張関係を保つというところに我々の制度の立て方のねらいがあるわけであります。
山内(功)委員 厚生労働省と農水省にリスク管理部門が今まで分かれていた。これからも分かれてはいるんですけれども、分かれていたということが、つまり省庁間で、あなたの役所はこういうところがおかしいのじゃないかとか、そういうことを言い合わないのが美風だみたいな遠慮し合うような関係があったということも、私は食の安全についてしっかりとした議論ができなかった原因だと思うんですよ。だからこそ、安全委員会の勧告というものが本当に実効性が担保されていないと、今までと大して変わらないと思うんです。
 もしされていると思うんでしたら、ではこう聞きましょうか。勧告をして、では、それについて厚労省なり農水省なりはいつまでの期間に施策を実行に移す義務があるんですか。そういうことを書いていないですよね。では、不十分な取りまとめをするということは全く考えられないのですか。例えば、安全委員会が三つの施策が必要だと思いますということを勧告したときに、管理部門としては一番見やすい、一番たやすい施策を採用して実行する、こういうおそれがある場合に、どういうふうに、それはいけないんだぞ、一番厳しい施策を実行しなさいというようなことを担保できているんですか。
谷垣国務大臣 先ほどの繰り返しになりますが、勧告をした場合には、その勧告は公表されるわけですね。それから、委員会の職責として、リスク管理機関が講じられる施策の実施状況を監視するというのが責務ですね。それで、勧告に基づく施策が適切に行われていないという場合など、必要があると認めたときは再度の勧告も行い得るわけですね。それで、公表されるというのは国民が審判者として見ているわけですね。
 それで、期限というと、これはケース・バイ・ケースでつけることもあるのかもしれませんが、全体の仕組みとしては、勧告は総理を通じて公表される、そして再度の勧告もできる、それを国民も見ている、こういう状況でございます。
 さらにぎりぎりまで詰めますと、食品安全委員会も国家の行政組織であります。リスク管理機関も行政組織であります。それぞれが全くあさっての方向を向いて食品安全行政がなかなか一体化しない、これは最後はやはり閣内できちっと統一をしなければならない、こういうことではないかと思います。
山内(功)委員 たびたび外国の例を出して恐縮ですけれども、例えば、EUでは当初、欧州食品安全庁構想に関して、アメリカの食品薬品局に比べてきちんと機能するのかというような不安の声が上がっていたんです。それはやはり、欧州食品安全庁が諮問機関にとどまる一方、アメリカの食品薬品局は強力な調査・検査体制を有しているからだ。
 だから、普通に考えて、日本の食品安全委員会は本当にうまく機能するのか。勧告をする安全委員会側からのことばかりおっしゃいますけれども、例えば、それを受けた農水省なり厚労省なりが施策を検討する段階に、その状況について、今度はそちら側の役所がきちんと国民に対して公表していくというような仕組みは考えないのですか。
谷垣国務大臣 これは、リスクコミュニケーションを行うのは食品安全委員会だけではございませんで、リスク管理を行う機関も当然リスクコミュニケーションを行っていくべきものであります。そして、そういうリスク管理のリスクコミュニケーションを適切に行うことによって、今委員がおっしゃったような問題点は克服されるのではないかというふうに思います。
山内(功)委員 安全委員会が自前の試験研究機関を持っていませんよね、この法案では。だとすれば、リスク評価に必要な調査、分析などは外部機関への委託がほとんどになるわけです。委託先がリスク管理機関の関連機関である場合には、リスク評価とリスク管理をきちんと分離するというような法の趣旨に全く反すると思うのですが、どうですか。
谷垣国務大臣 その点は、食品安全委員会は、関係行政機関に資料の提出等必要な協力を求める、あるいは関係研究機関などに対して緊急時に調査などを要請できるということにしておりまして、独自の試験研究機関を設けなくても、担うべき役割は十分に果たすことができるのではないかと思っております。
 といいますのは、食品安全委員会が担当する分野は極めて幅が広いわけですね。そして、既存の多数の研究機関にまたがっております。かつ、それらの研究機関というのは、同時にリスク管理にも必要なものである場合が通常でございます。そうしますと、リスク評価に必要な研究機関を全部食品安全委員会のもとに設けるというようなことは、行政の肥大化防止という観点からも、なかなかそこは現実にはいかないな、既存の研究機関の機能を活用していくべきものではないかな、こういうふうに思います。
山内(功)委員 行政の肥大化については極力避けなければいけませんけれども、先ほどからお話ししておりますけれども、リスク評価とリスク管理をはっきり分けるというやり方も一つの立派な考え方としてあるとは思います。しかし、日本での今までのやり方を見ていると、リスク評価がきちんとできても、リスク管理を担当する農水省や厚労省が大丈夫なんだろうかという不安が消費者にあるわけですよ。
 ですから、勧告をどれほど、何か尊重する、どうのこうのと先ほどから言われていますけれども、そこには、後でまた触れますけれども、消費者が何かを言っていくということが全く仕組みとしてこの法案にはできていませんので、だから、施策の検討状況について、今度は勧告を受けた役所側からのきちんとした国民に対しての説明責任というのがあるんじゃないかというような指摘も先ほどさせていただいたわけなんですよ。
 生産者優先、消費者軽視の農政を展開してBSEを防げなかった農水省、これはそうですよね。業界の利害を優先して薬害エイズ事件を起こした厚生省、厚労省、これも間違いないですね。この二つがリスク管理がきちんとできると言われること自体が不安なんですよ。リスク管理の体制が確立していなければ、幾らいいリスク評価をしても絵にかいたもちになると私は危惧するんですけれども、この国民の危惧についてどうこたえられますか。
谷垣国務大臣 これも、委員と先ほどから議論させていただいて、先ほど申し上げたことの繰り返しで恐縮なんですが、それはやはり、産業振興の役割を担いながら、リスク管理をやっていくところが評価もしている、そこをきちっと分離していくことがまず第一ではないかというふうに思います。
 それから、先ほど申し上げたように、リスク管理機関の中でも、産業振興を行う部分とリスク管理を行う部分を分けていこうとかいういろいろな試みがございますので、私はその点は克服できるものだというふうに思っております。
山内(功)委員 農水省でいえば、生産局という業界振興の部局を抱えています。リスク管理をやる消費・安全局を新しく独立して新設しますといっても、同じ農水省で、大臣も同じ。リスク評価とリスク管理の混同が起こることはなくなっても、リスク管理と今度は業界の論理の混同が依然として残る、起こり得ると私は思うのですが、もし混同が起こらないというなら、その担保は何なのか。農水省、お願いします。
北村副大臣 先生も専門的な御意見をお持ちですから、先生の御意見、もっともだなと思って聞いております。
 ただ、今、先生と大臣とのお話の中で、今回の食の安全ということについて、私は、農水省の中で、あるいは国の中で欠けていたのは、やはりリスクコミュニケーションというところが非常に行政の中で欠けていたなという思いがございます。
 リスク分析の中には、先生御承知のとおり、リスク評価とリスク管理とリスクコミュニケーション、その三つがうまく機能しなければ、リスク分析というのは成果が上がらないわけであります。そういう意味では、リスク評価、専門家の人方のリスク評価をいただく、それに基づいてリスク管理をしていく。しかし、それが、消費者の方々を含めた、流通者あるいは生産者を含めた、そういう人方のところできちっとリスクコミュニケーションがとれていなかったのではないか。私は、これが非常に大きな問題点として、一昨年来のBSEの問題を含め、あるいは無登録農薬の問題等々のことを考えたときに、もっともっとそれぞれの省庁の中でリスクコミュニケーションということをしっかりやっていかなきゃならない、こう思っております。
 そして、その上で、先生からの御指摘のとおり、我が省は、確かにリスク評価とリスク管理をやってまいりました。先生御指摘のように、BSEで非常な大きな社会問題になったわけでありますので、BSEの検討委員会で出されたその意見というものを本当に真摯に受けとめて、我々は、リスク評価というところを、ここからリスク管理を全く分けて、新しく我が省の中にリスク管理をする、まさしく消費者の方々に軸足を置いた、仮称ですが消費・安全局というものをつくって、そこで明確にリスク評価をいただく七人の専門家の人方の勧告を、それはもう真摯に受けとめて、それをしっかりと管理していく。
 しかし、それだけでもだめだ。先ほど言ったように、我が省の中にもリスクコミュニケーションというところをきちっとつくらせていただいて、その中で消費者の方々のきちっとした意見を聞かせていただいて、それをリスク管理の中にも、これも効果を上げさせてもらう。あるいは、場合によっては、そういう意見を逆にリスク評価のところに提言もしていく。
 そういうようなことを含めていって、国民の健康を保護する、こういう意味でこのリスク分析というものを、今回の内閣府の中につくらせていただける新しい委員会を一つの拠点として、本当に消費者の方々に軸足を置いた、そういう行政が行われていくことが望ましいし、また、そうすべきであるというふうに農水省は考えております。
山内(功)委員 谷垣大臣、BSEの調査報告書にこういうことが書いてあるんですよ。肉骨粉を禁止せず、行政指導で済ませたくだりについて、「委員会の質問にも役所側からの説明はほとんどなく、局議の記録も存在しないとされ、きわめて不透明である。」こういう指摘があるんですよね。これを読まれて、どう思いましたか。
谷垣国務大臣 私もそのくだりを読みまして、委員も先ほどから御指摘の点ですけれども、やはり、この報告書の中にもございますけれども、食糧難時代からの生産重視というような物の考え、惰性から抜け出られていないのかな、こういう気持ちを、こういう感想を私も持ったわけでありますので、それに関しては、先ほど申し上げたように、評価というものと管理、あるいは産業振興、それぞれ適切な役割分担というものを考える必要があるな、こういうふうに思ったわけであります。
山内(功)委員 ですから、例えば、法案で、食品安全委員会が関係行政機関の長に対し、資料の提出あるいは意見の表明、説明、その他必要な協力を求めることができると二十五条でうたっていますけれども、こういうことを規定したって、行政機関側は今度はこれをサボタージュする。そういうことを、肉骨粉を禁止しないで行政指導で済ませたときにはしていたわけです。ですから、こういう体質が一掃されないリスク管理機関に、かなり大きな裁量権が与えられているんじゃないかと思うんです。
 例えば、農水省がリスク管理について定義した書面があります。これには、リスク評価を実施するかどうかの判断もリスク管理に含まれると。リスク評価の結果を踏まえて、消費者の健康保護を第一の要素として、それぞれの選択肢のコストと便益、技術的達成可能性その他の諸要素を総合的に考慮してリスク管理をする、これをリスク管理というというんですね。
 ですから、コストと便益、その他の諸要素をどう総合的に考慮するかは、かなり大きな裁量の余地があると私は思っています。例えば、消費・安全局と生産局の利害が完全に反した場合なんかに、農水大臣はどういう判断をされるんですか。
北村副大臣 私は、食の安全というのはグレーゾーンはないと思っております。
 つまり、我々、口に入れる、健康にいいものを食べる、それは食べられるか食べられないか、そういう判断をすべきだと私は思っております。つまり、グレーゾーン、灰色的なものというのは、これはもうあってはいけない。つまり、疑わしきものはすべて焼却する、そのくらいの気持ちで、消費者に軸足を置いた安全行政をやっていかなければ、日本の食の安全というものについて消費者の方々の理解は得られない、こう思います。
 ですから、そのときに、新しい、何だかわからない、いわゆる世の中に初めて出てきたようなそういう物質のときに、それをきちっと分析して、それを管理して、どういう手法でそれを克服できるかということがなかなかわからないというときには、私は、まず第一にそれは食べさせない、こういう行政をさせることの方がまず第一であって、その上で、研究機関等々でやっていく。若干の時間的なものはあってもそれはやむを得ない。しかし、緊急かつ速やかにそういうものもきちっと研究をしていただかなければなりませんけれども、そういうことというのは今後そんなに大きな数として上がってはこないであろう、こういうふうに私は思います。
 ですから、今大体世の中にあるものについて、先ほど来大臣がおっしゃっているとおり、七人委員会のところ、あるいはその下にある専門委員の人方が勧告をされて、それに従ってきちっと管理をしていけば、何度も言うようですけれども、リスクコミュニケーションをきちっとやっていけば、私は消費者の方々にも理解が得られるものである、その方向で農林水産行政をやってまいりたい、このように思っております。
山内(功)委員 そうは言われますが、この法律の第一条の目的規定がありますよね。そこに、国民とか消費者の健康とか命を守るためにこの法律を制定しますという言葉が一切入っていないんですよ。だから、幾らそういう答弁をされても、本当に消費者の生命や健康を守った食品安全行政をやってくれるのかなという感じがちょっと私はするんですけれども。
 では、消費者という言葉にちょっと絞って何点かお聞きします。
 第九条なんですが、国の責務、地方公共団体の責務、事業者の責務と来て、突然「消費者の役割」と書いてあるんですね。消費者の役割というのは、中の言葉が抜けていて、消費者が果たすべき役割だと思うんですが、何で、消費者が果たさなければいけない、また、果たさなければいけない役割を法律で規定されるんですか。
根本副大臣 今のお尋ねに対してお答えしたいと思います。
 この法律の全体の考え方、私はこれが大事だと思います。ただ、食の安全性は、この法律全体の考え方でありますが、国、地方公共団体という行政だけではなくて事業者も第一義的責任がある、こう書いておりますが、事業者や消費者、こういう民間も含めた関係者がそれぞれの立場で取り組むべき事柄を的確に果たしていただく、これによって初めて確保される、こういう考え方にこの法律の中では、構成、立っております。
 具体的には、先生も今お話がありましたが、この法案の中で、まず国及び地方公共団体の責務ということで、国においては総合的に施策を策定、実施する、公共団体においてはその地域の実情に応じた施策を策定、実施する、これを規定しておりますし、食品を消費者に提供するのは事業者であるということを踏まえまして、食品関連事業者の責務として食品の安全性の確保についての第一義的責任があるということを規定し、そして消費者につきましても、食品を最終的に消費するという立場で、食品の安全性を確保していく上で知識や理解を深め、施策に意見を表明することが重要という観点で、これを消費者の役割として規定したものであります。
山内(功)委員 しかし、消費者は食品の安全性の確保に関する知識と理解を深めなさいと書いてあるんですよ。食品の安全性の確保に関する施策について意見を表明するように努めなさいと書いてあるんですよ。何で消費者はこういう役目を負わされるんですか。消費者というのは、安全なものを食べさせていただく権利を持っている権利者じゃないんですか。
根本副大臣 繰り返しになって大変恐縮ですが、要は、食の安全を確保するためには、国、公共団体という行政だけではなくて、事業者も消費者もそれぞれの立場で取り組むべき事柄を的確に果たすことによって初めて確保される。こういう観点で、消費者にも知識や理解を深めてもらって、そしてリスクコミュニケーション、この法案の魂はリスク評価、リスク管理、リスクコミュニケーションですから、リスクコミュニケーションの中で施策に意見を表明してもらいたいという意味で、消費者の役割というのを規定しております。
山内(功)委員 もしそういう解釈だとすれば、食品の安全性の確保について消費者が知識と理解を深めなさい、意見を表明しなさいというような役割を果たさなければ、消費者の安全性が損なわれても消費者としては文句が言えないんですか。
根本副大臣 そういう反対解釈的な話をされますとそういうことになると思うんですけれども、要は、消費者というのは、やはりみずから自分の責任でいろいろなものを食べるということも必要だし、そこは知識と理解を十分に深めていただいて、そしてこの食品の安全性を全体として担保しようということであれば、やはり、国、公共団体の責務、そして事業者の第一義的な責務、そして消費者も、こういう世の中ですから、積極的に消費者としての役割を果たしてもらうということが、私は何よりも大事だと思いますけれども。
山内(功)委員 いや、私も本当にそう思っているわけじゃないんですよ。だけれども、その書きぶりが、何でこう、消費者から見た農政とか、食品安全行政を確立するというんだから、消費者や国民の権利ということを書かれたらどうなんですかと私は思うんですよね。
 それに、もし、知識と理解を深めなさい、意見を表明しなさいというんだったら、その前に消費者に対しての具体的な教育とか学習ということがきちんと確立されていなければ、私はこの九条が求めるような役割も負うことはできないと思うんですが、食品についての教育をしっかり国として、地方公共団体として取り組みますというような思いがこの法案にないじゃないですか。
根本副大臣 先生の今の御指摘の点は第十九条に、この法案は、私、随分いろいろと考えて構成していますので、第十九条で「食品の安全性の確保に関する教育、学習等」ということで、具体的に一項起こしております。
 具体的に読み上げさせていただきますと、「食品の安全性の確保に関する施策の策定に当たっては、」と、この食品の安全性の確保に関する施策の策定に当たって幾つかの条項をずっと置いてきておりますが、「食品の安全性の確保に関する教育及び学習の振興並びに食品の安全性の確保に関する広報活動の充実により国民が食品の安全性の確保に関する知識と理解を深めるために必要な措置が講じられなければならない。」ということを規定しておりまして、その意味では、先生御指摘のように、我々は体系的に位置づけているつもりであります。
山内(功)委員 この問題はこれからも法案の審議でさせていただこうと思うんですけれども、「消費者は安全な食品を十分な情報を得た上で、選択できることを保証される権利をもっている。」と、この法律を制定する上で一番参考にされた調査報告書にも書いてあるわけですよ。だから、BSE問題や農薬問題など食に関する失政を再び繰り返さないようにするための基本法であるならば、消費者の権利ということを明確にすることが当然ではないかと思うんですけれども、大臣、どうなんですか。
谷垣国務大臣 権利という問題の立て方もあるのかもしれませんが、今、根本副大臣から御答弁いたしましたように、それぞれが食品の安全を確立するという役割を担って積極的に参加し、あるいは発言していただかないと、やはり行政というものも、そういう消費者や国民の参加がなければ、私はこういう大きな食品安全行政の転換というものを乗り切れないと思います。
 ですから、その意味で、山内委員がそれならもっと教育などをきちっとやれとおっしゃったのも私はよくわかります。そういう点が必ずしも今まで十分ではなかったという反省のもとに、今、根本副大臣が引かれた条文もあるわけでございまして、そういうやはり全体的な構想の中でやっていく必要があるというふうに私は思います。
山内(功)委員 食品安全委員会のことで三、四点聞きます。
 食品安全委員会は、委員については、食品の安全性の確保に関してすぐれた識見を有する者のうちから任命するとありますけれども、これは、なおかつ消費者の利益の保護について理解のある者のうちから任命するというように、少し文句をつけ足していただくというような修正は考えてもらえませんか。
谷垣国務大臣 消費者利益保護に理解があるということは、私どものつもりとしては、三条に「国民の健康の保護が最も重要であるという基本的認識」と書いてありまして、そのもとにいろいろな施策が講じられなければならない。このことは、「食品の安全性の確保に関して優れた識見を有する者」という委員の資格については、「国民の健康の保護が最も重要であるという基本的認識」を踏まえていただかなければ、すぐれた識見を有するとは言えないという意味が含まれているというふうに私は考えておりまして、委員の問題意識は十分この基本法の中に含まれているのではないか、生かされているのではないかと思っております。
山内(功)委員 委員七人のうちの一人については消費者代表を入れるとか、あるいは消費者や消費者団体が推薦する方を委員に任命するということまでは考えていないのですか。
谷垣国務大臣 この食品安全委員会の所掌事務は、主として食品の人の健康へ及ぼす悪い影響、リスク、これを科学的、客観的に評価するということにあるわけで、つまり、純粋に科学的、専門的な知見に基づいて、いわば客観的、中立公正にやっていただく必要がある。したがって、そこで生産者対消費者というような形で利害調整を行う場ではないというのが私どもの基本的な認識でございますので、消費者代表であるとか、あるいは生産、流通関係者の代表であるとかという形で委員に入っていただくことには、これは我々はよほど慎重に考えなきゃいけないんじゃないかなと思っております。
 ただ、消費者意識とか消費行動というものに関するものも、食品の安全性の確保に関するすぐれた識見としては必要ではないかということを考えておりまして、こういう分野を専門的に研究しておられる学者、研究者、こういう分野の方に委員に加わっていただくという方向で検討しております。
 それから、委員会の下に置かれる専門調査会については、年間計画の検討とかあるいはコミュニケーションのあり方など、こういうことを消費者の意見も踏まえながら議論していただくべき事項でありますので、こういう専門調査会には消費者の意見を代表する者にも加わっていただいたらどうかということで、今検討しております。
山内(功)委員 内閣官房の職員の方にいろいろ質問した中に、先ほどの中立性、消費者は入れないけれども中立性を確保した組織にするということを言われたから聞くんですが、この五十人ぐらいの事務局の職員のうち、農林水産省から二十五人ぐらい、半分農水省から出向で行くんじゃないか。それから、五十人のうち、厚生労働省から十五人ぐらい出向で行くんじゃないか。そうすると、単純に足せば、五十人中の四十人ぐらいが産業振興省からと言うと失礼ですかね、そういうところから行くわけですよね。リスク管理部門から行く。出向者が非常に多いと思うんですよ。だから、出向した職員はもう絶対に農水省や厚労省へ返さぬ、出向した職員が再び両省に戻ることがないようにする考えとかはないんでしょうか。
 ちょっと時間がないのでまとめて聞きますが、そういう問題点とか、あるいは、委員や事務局員には事業者とか大手の販売業者などと関係のある者は除くとか、あるいは、これはEUが採用している制度だと勉強したんですけれども、農水省などからの出向とか異動は一〇%の人員以内に限る、そういうような仕組み、システムは考えられませんか。
谷垣国務大臣 今まで、先ほどの言い方で言えば混然一体とした機関でやっておったので、それを新たに分離していこうという場合に、いろいろ悩みもありまして、今までの経験のある方をやはり使わないというわけには、なかなか難しいということは率直に言ってございます。
 それから、事務局は五十人ぐらいの機関でございますので、ここで、まあ言葉は悪いですけれども塩漬けにするというようなことは、士気を維持していくとかいうことでも実はなかなか難しいことがございまして、やはりそこはなかなか難しいなと思っております。
 ただ、技術参与というようなことで、いろいろな方が、民間の方も入っていただくわけですが、食品関連業者等の関係営利企業との兼業は認めないといった、組織の中立性が疑われることのないような配慮は、十分行っていかなければいけないなと思っております。
山内(功)委員 安全委員会に対して消費者が公聴会を開いてくれという請求をする権利や意見については、どんどん自由に申し述べていく権利、そういう規定を設けるべきだと考えますし、委員会についても、例えば少数意見も含めて議事録を公開する、そういうような運営方針を立ててもらえないか。大臣、お答え願います。
谷垣国務大臣 食品安全委員会の運営に関して必要な事項は政令で定めることになりますし、細部については、委員会ができてから、委員長が委員会に諮って定めるわけです。それから、関係者相互間の情報とか意見の交換の促進を図るために必要な措置の実施に関する基本的事項は、食品安全委員会の意見を聞いて、内閣総理大臣が案を作成して閣議決定後公表することにしておりますけれども、今おっしゃった反対意見を含めてどうこうということは、審議会の運営に関する指針にのっとって、原則として会議の開催を公開にする予定にしておりますので、委員のおっしゃったような少数意見がどうであったかということは十分外から見える形になると思っております。
山内(功)委員 私は、この安全委員会が、従来の縦割り行政のいわゆる審議会、そういうふうにならないことを祈っています。
 委員会ができること自体には、私は、いろいろ問題点は指摘しましたけれども、異論はございません。ただ、アジアにおいてBSE唯一の発生国ですから、委員会がいろいろな国際機関や主要国との連携とか調整機能を十分に強化されて、国際貢献もしていくというぐらいの気構えで充実した委員会になることを期待し、祈念もし、質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
佐々木委員長 以上で山内功君の質疑は終了いたしました。
 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午前十一時五十一分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時開議
佐々木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
 本案審査のため、来る九日水曜日、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
佐々木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
佐々木委員長 質疑を続行いたします。石毛えい子君。
石毛委員 民主党の石毛えい子でございます。よろしくお願いいたします。
 この間、さまざまな食品の安全性に関する消費者の不安が続いてまいりました。午前中からいろいろと指摘をされておりますので、改めて私から申し上げるまでもないわけですけれども、思い返してみますと、遺伝子組み換え食品の安全性に関する不安が、かなり長い間、消費者の方にとって、今も続いておりますけれども、大きな疑問であり関心であり、そこに本当に衝撃的なBSEの問題が重なり、あるいは農薬問題、食品の表示の偽装の問題、これでもか、これでもかというように続きまして、そうした経緯の上で今回の食品安全基本法案の策定というところまで至ったというふうに認識をしております。
 そこで、この食品の安全に関する基本法案が最も実現しなければならない本旨は、この間ずっと生じてまいりました食品の安全性に関する不安を本当に解決していける、そのために役立つ法律であるのかどうかということが、言うまでもなく最も問われていることだと思います。
 そうした観点から見ますと、この間起こっている食品の安全性に関する不安、問題といいますのは、主として輸入食品が非常に多い。何しろ、御存じのとおり、日本に暮らす方々の食生活上、輸入食品の割合は六割に達しているという実情です。この法案が、そうした輸入食品の安全性に関して本当に有効性を発揮し得るのかどうかということ。それから、しばしば指摘をされております、関係する省庁としましては最も重要な農水省、厚生労働省、その間のそごというものが、連携の不備というものがこの法案できちっと解消されていく、連携が保たれるというふうにつくられていくのか。
 そして、何よりも最も大きなポイントになりますところは、私は、BSE調査検討委員会報告が指摘をしておりますように、あるいは午前中の議論でしばしば指摘がなされましたように、これまでの関係省庁の行政施策は生産者に傾きがあり、消費者の保護あるいは消費者の権利という視点から見れば弱いところがあった。そうした観点も共通しているところだというふうに思います。
 このBSEの調査検討委員会報告の中で、これは法案の中に実現されなかったのですけれども、「消費者の安全な食品へのアクセスの権利が位置づけられなければならない。」というふうに記載されてございます。この安全な食品へのアクセスの権利を権利として法文上明記するかどうかは別にいたしまして、ただいま申し上げました、例えば省庁間の連携の問題ですとか、それから、リスクコミュニケーションにかかわりまして、消費者のアクセスの保障というものが実体的にこの法案の中にどのように規定されているのか。
 この法律の内容は、より一層明確な意味をアピールしてほしいというふうに思いますので、そうした観点から、ありていに申し上げますと、私は、この食品安全基本法案はできばえが甘いのではないかという思いを持っておりますので、もっと確たる内容にしていただきたい。そうした考え方に基づきまして、以下何点か質問をさせていただきます。
 まず最初に、法文の第五条でございますけれども、「国民の健康への悪影響の未然防止」というこの条文には、食品の安全性の確保が「国際的動向及び国民の意見に十分配慮しつつ科学的知見に基づいて講じられる」というふうに、まず前段は規定されております。ここで、私が大変関心を持ちますのは、「科学的知見に基づいて講じられる」ということは当然であるとしましても、その前段のところが「国民の意見に十分配慮しつつ」という規定の仕方になっております。
 そこで、例えばですけれども、科学的知見に基づいて、一定の基準値が仮に客観的に、中立的に安全性を示すといたしましても、その基準値に国民が納得しないとき、基準の設定は国民の納得を勘案してなされるというふうに私は理解いたしますが、そのような理解でよろしいでしょうか。その確認をまずさせていただきたいと思います。
谷垣国務大臣 この法案では、今石毛委員が指摘されましたように、基本理念として、必要な措置を国際的動向それから国民の意見に十分配慮しつつ科学的知見に基づいて講じる、こういう規定ぶりになっているわけですね。
 それからまた、基本的な方針として、食品の安全性の確保に関する施策をつくっていくについては、国民の食生活の実情と申しますか状況と申しますか、そういういろいろなもろもろの事情を考慮しながら、食品健康影響評価に基づいて施策の策定を行う、そして関係者相互間の情報及び意見の交換の促進を図る、こんなふうな規定になっております。
 ですので、科学的評価において、ここで妥当なんだ、適切なんだという基準値、これは、委員会のリスク評価機関の方はそういう基準値を出しますが、そういう基準値につきましても、今度は管理する機関の方が、科学的知見を基本としながらも、国民の食生活の状況とか関係者の意見などいろいろな事情を考慮した上で、個別具体的に判断することは十分あり得る仕組みになっているということだろうと思います。
石毛委員 ありがとうございました。
 科学的知見ということ自体が一義的な結論を得るとは限りませんし、やはり、実験方法が違ったりですとか、いろいろな見解に基づいて、知見自体が単一の結論に帰結するとは限らないということもあるんだと思いますけれども、そうした議論を尽くした上で科学的知見が得られたとしましても、やはり、国民の食生活上の慣習ですとかあるいはそれぞれの健康状態ですとか、いろいろなことがあると思いますので、ぜひ、この「国民の意見に十分配慮しつつ」という規定の仕方というのは、この第五条の中で大事にしていただきたい点だと私は思いますので、確認をさせていただきました。
 次の質問でございますけれども、同じ第五条の中に、「食品の安全性の確保は、」「国民の健康への悪影響が未然に防止されるようにすることを旨として、行われなければならない。」というふうにしております。
 この未然防止、ここも非常に大事な規定だというふうに受けとめておりますけれども、これは例えばですけれども、データの不足ですとかあるいはばらつきなどがあって評価になお不確実性が残るとしても、大筋、悪い影響があるのではないかというように予測されると申しましょうか、そういうことが考えられる場合にはその不確実性に配慮した基準設定を行うということ、いわゆる予防原則ということでございますが、この未然防止ということに予防原則が含まれているというふうに理解をしてよろしいのかどうか、これも確認させていただきたいと思います。
谷垣国務大臣 この法案の十二条で、人の健康への悪影響の防止、抑制という観点から、国民の食生活の状況そのほかの事情を考慮して施策を策定するということになっておりますが、食品健康影響評価の結果、仮に明確な結論が得られなかった場合においても、リスク管理機関が必要な施策を講じ得るというふうになっているわけですね。
 そしてまた、その前の十一条におきまして、人の健康に悪影響が及ぶことを防止し、または抑制するために緊急を要する場合で、あらかじめ食品健康影響評価を行ういとまがない場合には、評価を行うことなく食品の安全性の確保に関する施策を策定することができる。十一条、十二条はそんなふうな仕組みになっております。
 したがって、今委員は予防原則ということをおっしゃいましたけれども、私の理解では、予防原則は必ずしもまだ国際的に十分その概念といいますか定義が定まっていないところがあるようにも思いますが、それぞれいろいろなことで使っておられる場合があるような気がいたします。しかし、そういう用語は用いておりませんけれども、悪影響を未然に防止、抑制するという観点から必要な施策を講じることについては、この法案でそういう仕組みができているというふうに考えております。
石毛委員 食品の安全性評価といいますのは、安全であるということの証明は無論のことでございますけれども、安全であるということが健康に悪影響を及ぼさないということで、そこに、わざわざ第五条では「未然に」という三文字が記載されているということが大変重要だというふうに私は認識をしております。
 ですから、安全性の確保という表現だけだったらわざわざ書かなくてもいいのかもしれませんけれども、果たして一〇〇%安全であるかどうかということが立証できないとしても、大筋、さまざまな条件を勘案して、恐らく悪影響があるのではないかというようなことが予測をされる場合には、「未然に」ということですから、私は、予防原則と表現するかどうかは別にしまして、予防的な意味合いを十分に持っている。大臣が御指摘くださいましたように、十二条等々を勘案して理解すれば予防的な措置が含まれているということを、やはり私の方からも改めて確認を今させていただきましたということを申し上げさせていただきたいと思います。
 それで、大臣も、予防原則自体はまだ国際的にも議論があるようだというふうに御指摘になられまして、これからそれは恐らくWTOでも大きな議論になっていくところかとは思いますけれども、もう御承知のとおり、EUの食品安全法では第七条で予防原則が明記されていますということをつけ加えさせていただきたいと思います。
 念のために読ませていただきたいと思いますけれども、「利用可能な情報の評価の後に健康に対する有害な影響の可能性が認められるが科学的不確実性が存続する特別の状況においては、一層包括的なリスク評価のためのさらなる科学的情報を待ち、」、これはEUですから、「欧州共同体において選択される高レベルの健康保護を確保するために必要な暫定的なリスク管理手段を採択する」、こういう規定になっております。
 当然、二項では、絶えず評価自体は見直されるべきことでありますから、妥当な期間内に見直されなければならないということをつけ加えておりますけれども、そうした予防原則がEU食品安全法では既に規定されているということをここでつけ加えながら、第五条は、原則と言うかどうかは別にして、予防的な措置を含むという御答弁をいただきましたというふうに私の方は整理をさせていただきたいと思います。
 続いて、第十二条でございますけれども、これも大臣が今お触れになられましたけれども、第十二条は、「国民の食生活の状況等を考慮し、」というふうに書かれています。ここで、施策の策定に当たっては、食品を摂取することにより人の健康に悪影響が及ぶことを防止し、抑制するため、国民の食生活の状況その他の事情を考慮するとしておりますけれども、ここで言う「国民の食生活の状況」また「その他の事情」というのはどういうことを指しておりますか。具体的に御指摘ください。
谷垣国務大臣 今の点は、社会的、経済的な事情とか、あるいは国際貿易ルールとの整合性とか、いろいろな事情が対象となると考えておりますけれども、一番基本的な点は、国民の健康保護が最も重要であるというこの法律の基本理念と申しますか、そういう基本的な認識に立って、健康への悪影響を防止、抑制するという規定の趣旨に即して考慮されることになるんだろうと思います。
石毛委員 もう少し具体的に、悪影響を防止するというところはおっしゃるとおりだと思いますけれども、ここでも重要なのは、「国民の食生活の状況その他の事情を考慮する」と規定しているこの「国民の食生活の状況」というのは、例えばリスク評価あるいはリスク管理とどのような関係になっていくのか、あるいは「その他の事情」というのはどのように理解したらいいのか、私がお尋ねしているのはそういうことなのですけれども。
谷垣国務大臣 リスク評価そのものは科学的なプロセスということでありますから、社会経済的事情、国際貿易のルールということと必ずしも関係してくるというふうには私は思っておりません。
 ただ、先ほども申しましたように、リスク管理の局面ではこういう問題がいろいろ勘案されることがあり得るということではないかと思います。そこで、そこをもう少し具体的に言えという御趣旨なのかもしれませんが、ちょっとさっき漠然と申しましたけれども、社会経済的ないろいろな事情というものがやはりあると思いますし、国際貿易ルールといったようなものも場合によっては入ってくるのではないかなというふうに思います。
石毛委員 何か言葉の押し問答をしているようになるかもしれませんが、「国民の食生活の状況」というのは、確かに六割が輸入食品に依存しているこの国の食生活では、国際貿易の影響とか、いろいろあると思いますけれども、そうしたものの規定を受けて、「国民の食生活の状況」あるいは「その他の事情」というのは、具体的に例えばどういうことを言われるのか。
 それから、これはレクのときにも内閣府の事務方の方に確認しなかったんですけれども、リスク評価、リスク管理、リスクコミュニケーションというふうに簡単に言ってしまいますけれども、一つの食品に関してどこまでがリスク評価でどこまでがリスクマネジメント、リスク管理で、リスクコミュニケーションというのはどういう関係になるかというのは、必ずしも私は、質疑の場合に大臣と私との間で共通認識になっているかどうかというのもまだ確かめさせていただいていませんけれども、リスク評価という場合も、大変客観的、抽象的、どこかに公正中立に科学的知見に基づいて行うと書いてありますから、あるものに関して科学的、公正中立にリスク評価がなされたとしても、その基準値の設定というのは、それを摂取する方のさまざまな要件、環境的要件もあれば生活習慣もあれば、その方の内的な、健康状況とか生育段階とか、いろいろな要件によって基準値自体は変わってくるということが当然あるわけですね。その変わってくる基準値の設定までを評価というふうにとらえれば、これは食品安全委員会の果たすべき責務になってくるんでしょう。
 そうすると、管理の部分が、例えば厚生労働省あるいは農林水産省で管理をするときに、確かに食衛法なんかを読み直しますと、規格、基準の設定という法文はそのまま食衛法には残っていますから、そちらの基準とこちらの、内閣府が、食品安全委員会が所管する基準のどこがイコールフッティングする部分であって、どこが違うかというのは、これからまた精査されていくんだと思いますけれども、でも、食品安全委員会が行う評価というのは、少なくとも悪影響を及ぼさないために「国民の食生活の状況その他の事情を考慮する」というふうになっているわけですから、そこのところはどういうふうに与件を設定するかによって、評価の内容といいましょうか、範囲といいましょうか、それが変わってきて、基準、規格の設定に対して大変重要な論点になるところだというふうに私はここの部分を読んでいるわけなんです。漠とした話ではなくて、当然のことながら、「施策の策定に当たっては、」ということですので、大変重要なポイントだと思います。
谷垣国務大臣 まず、先ほどの十二条の国民の食生活の状況、そのほかの事情というのは何だということですが、これは包括的に全部私、ちょっと申し上げられるかどうかわかりませんが、例えば、日本の中でも地域によってこういう食品はよくとっているとか、この家庭では例えばこういう食品をよその家庭に比べてたくさんとっているとか、いろいろなそういう事情が違っていると思います。そこで、十二条はリスク管理の規定でございますけれども、そういうやはりいろいろな社会経済上の事情、さっき言ったことの繰り返しになりますが、そういうような実態をやはり考慮して行いなさい、こういうことになると思います。
 そこで、先ほどお尋ねのリスク管理とリスク評価の境界線みたいな話ですけれども、例えば私なら私が何かの食べ物が好きでそればかり食べているというような問題は、科学的なリスク評価そのものの問題というよりも、そういう食生活の実情を考慮してどういうふうに判断していくかということはリスク管理の問題に入るのではないかと思っております。
石毛委員 私は、この法案をずっと読んでいきながら絶えず念頭にありましたのは、遺伝子組み換え食品の安全性と、それから表示の問題でございました。消費者問題特別委員会は今残念ながらないわけなんですけれども、消費者問題特別委員会での一番最後の時期の議論は、専らこの遺伝子組み換え食品の表示の問題に集中して質疑がなされまして、そして表示を義務化するという施策に至ったわけで、それはそれで大変有意義な委員会での議論ができたというふうに思っていますけれども、その前段で、遺伝子組み換え食品の安全性ということが随分議論になりました。
 結局、安全性に関する議論というのはかなり交差しまして、単一の結論にみんなが納得するというふうにはいかなかったわけですけれども、私どもの委員の側から提起しました疑問は、遺伝子組み換え食品は、組み換え前の例えば大豆ですとかトウモロコシと、それから遺伝子組み換えを行った後のトウモロコシや大豆は、トウモロコシはトウモロコシであり、大豆は大豆であるということにおいて実質的同等性が保たれていて、そして、私も科学的な素養は乏しいですから、それほど詳しく御説明させていただけるわけではないんですけれども、組み換えによって生ずるたんぱくは、これは消失していくものであるので人体に影響はない、健康に影響はないというのが認める側の方の、厚生労働省の側の方の評価指針の内容だったというふうに思います。
 ですけれども、私ども委員がたくさん疑問を呈しましたのは、例えば胃を切除した方で腸で消化をされる方にとって本当にいいと言えるのかどうかとか、それから、胎児や生まれたばかりの赤ちゃんや幼い子供、つまり細胞分裂が激しくて発育盛りの子供にとってはどうなんだろうかとか、何よりも、長期的な摂取による影響はどうなのか、そういうことの実証データはなかったわけなんですね、当時。今はそのデータが重ねられているのかどうかというのは私は確認してございませんけれども、当時の議論の中ではなかったんですよね。
 そうしますと、客観的、中立的に一つの基準値が設定されたとしても、食品ですから、摂取する方の健康状態、先ほど来何度か繰り返していますけれども、健康状態ですとか、さまざまな状態によって違ってくるでしょう。例えば、特定の食品が個人的に好きでそればかり食べるという方は、個人の注意の範囲なのかもしれませんけれども、でも、子供ですとか、健康状態ですとかというようなことから考えれば、かなり、グルーピングというか、ある層の方々にとって社会的な意味を持つ基準というのは、一つの基準をブレークダウンしていかなければならないんだろうというふうに考えられると思います。
 恐らく、この影響評価のところまでは、リスク評価、リスク管理、リスクコミュニケーションに関する総括的な規定なのでしょうから、全部、リスク管理も含まれているんだと思いますけれども、それを含んでもなおかつ、評価自体にも、この「国民の食生活の状況その他の事情を考慮する」という部分が、私が今申し上げましたような意味で、具体的な食生活を営んでいく上で大変重要な意味を持っている。食生活は何も抽象的にあるわけじゃありませんから、個別具体的、個々の人間、個々の事情があって食生活があるわけですから、そうした個々の事情に配慮した緻密なリスク管理が行われる、そういうことを意味してこういう「国民の食生活の状況その他の事情を考慮する」という規定ぶりになっていると私は受けとめているわけですけれども、大臣にも御賛意をいただけますですねという、今度は、済みません、こういう表現に変えますけれども。
谷垣国務大臣 私はどうも委員ほど緻密に理解できているかどうかわかりませんが、お話を伺っておりまして、この十二条や何かの規定ぶりは、大体委員のおっしゃっているような方向のものではないかと思っております。
石毛委員 ちょっと本論から外れる発言に、質問ではございません、なるかと思いますけれども、食生活といいますのは、私が改めて申し上げるまでもなく、元気で健康な状態で、何を食べても、まあ何を食べてもというより、総じて安全なものを食べていれば大丈夫だという方が多分大数観察的には一番多いのでしょう。でも、日本は高齢社会化がどんどん進んでいますし、それからアレルギーの方がどんどんふえていますし、いろいろな個人がそれぞれの状況の中で食生活を営んでいて、この際ですから申し上げさせていただきますけれども、やはりアレルギーの子供さんを育てている若い親御さんにとりましては、遺伝子組み換え食品の大豆でつくった油が、たんぱくが検出されないから実質的同等性を保っていて大丈夫だ、安全性評価指針では大丈夫だというふうになっているわけですけれども、大丈夫だと言われても、やはり自分の子供がアレルギーの場合、本当に安全なものを食べさせたいと。
 今、アレルゲンのものは、卵がどうとか小麦がどうとかという表示になっていますけれども、やはり食生活というのは切なる思いを持って営んでいる人たちがたくさんおられるので、ぜひぜひ、そういう食生活の個別性といいましょうか、嗜好の話ではなくてもっと原理的な、健康上の問題で個別性があって、その人たちにフィットする食品の安全性の確保でなければ、あえて言えば意味がないというふうに申し上げても言い過ぎではないと思います。
 普通、こういう文章というのは何げなく読んでしまうところだと思いますけれども、私は、この食品安全基本法の中で科学的知見という言葉だけがひとり歩きして、評価で動いていくということに対して、もしそういうことが起こるのであれば大変危険であり、それは食生活の安全性に対する不安を解決するものではないということをぜひ申し上げたいというふうに思いましたので、今までの質問で余りきっと注目されないのかもしれませんけれども、こういう「意見の表明」ですとか「食生活の状況その他の事情」というようなところを大方の消費者、たくさんの方が注目しているということをあえてつけ加えながら質問をさせていただきました。
 それから、次の質問ですけれども、第十三条です。これはリスクコミュニケーションに関連する規定だというふうに理解をしております。
 この中で、「施策について意見を述べる機会の付与」というのは、これは意見を述べる機会の付与があるということで評価をすべき規定だと思いますし、つけ加えれば、意見の機会は、例えば公聴会の開催ですとかワークショップを持つとか、それから、この間、政府ではパブリックコメントを求めるのが通常の方法になっておりますけれども、多様な機会があるんだと思いますけれども、どうもこの十三条ではっきりしないのは、消費者から、公聴会など意見を述べる機会を開催するように、持つように、そうした要請ができるのかどうかということが明確ではない。これは何か循環的な記述であって、だれが発意してやっていくのかということに関して必ずしも明確には規定されていないというふうに思います。
 私は、食品に対する安全性が本当に安全なのかどうなのかということに、本当に心配をしたり、疑問を持ったりする、その主体というのは消費者だというふうに思います。生産者の方も、安全性が疑われる食品で大きな被害をこうむることはもちろんありますけれども、でも、最もやはり原則的に不安を持ったり危険におびえたりというのは消費者なわけですから、リスクコミュニケーションの発議といいますか発端も、やはりそこに消費者がきちっと位置づけられていないと、消費者が行政やあるいは生産者の中のワン・オブ・ゼムの中に入ってしまうと、消費者の本当に疑問とか気持ちとか、そうしたことを発揮するチャンスが確実に保障されるということがないんじゃないかというふうに思えてしまう。
 そこで、この十三条の「意見を述べる機会の付与」というのは当然そのとおりだとしましても、意見を述べる機会を消費者の側が求めることができるという、そこの制度化というのをぜひきちっと考えていただきたいということと、それから、それに重ねまして、政府側がきちっとそれに応答するという応答義務といいましょうか、そういうことももっと書き込んでいただきたい。
 私は、リスク評価、リスク管理、リスクコミュニケーションの中でどこが、リスク分析の手法でこの三要素があるわけですけれども、その三要素の中で一番ベースになるというのはリスクコミュニケーションだろう。リスクコミュニケーションがベースにあってリスク評価が行われ、リスク管理が意味を持ってきて、絶えずその評価も管理もリスクコミュニケーションにまた規定されながらダイナミズムに動いていく、こういう関係なんだというふうに思いますけれども、リスクコミュニケーションを消費者の側から発議できるという規定をどこかにきちっとしていただきたい。
 十三条が本当に、「情報の提供」とか「意見を述べる機会の付与」とか「関係者相互間の情報及び意見の交換」とか、いろいろ規定していただいていますけれども、さらに踏み込んで、消費者は意見を述べる機会の付与を求めることができるというような規定のしぶりに踏み込んでいただきたい、これは要請でございますけれども、そして、政府の側の応答責任も明記していただきたいということでございます。
谷垣国務大臣 食品安全基本法では、五条でしたか、国民の意見に十分配慮することを基本理念に明記しておりますし、そういう基本理念にのっとって施策を策定、実施することが国の責務だと一方で定めている。これを踏まえた基本的な方針として、施策の策定に国民の意見を反映して、その過程の公正性や透明性を確保するために、いわゆるリスクコミュニケーションの促進を図るために必要な措置を講ずべき旨を規定しているわけですね。
 だから、関係者間において情報や意見の交換、リスクコミュニケーションを行う方法というのは、施策の内容とか緊急性とかでさまざまな場合があって、それに合った手法を工夫していかなきゃならないんだろうと私は思うんです。そこで、これは基本法でもあるということもあって、この法案では、公聴会の開催要請など定式化なんかはしないで、その状況に応じて適切に情報、意見の交換を促進すべきである、こういう組み立てといいますか規定ぶりにしております。
 ですから、今、消費者から求められるということを明記せよという御意見ですが、消費者からの意見の提出のありようですね、これもいわば柔軟に考えていこう、そして、これに対する行政の対応についても、リスクコミュニケーションの一環として柔軟に、柔軟かつ効果的に行っていけという組み立ての仕方にこの法案はなっている。私は、それでこの基本法としてはよいのではないかというふうに考えているところでございます。
石毛委員 ここはもうちょっとこだわりたいと思うんです。
 要するに、食品安全委員会でも、それから、ちょっと質問の時間が足りないと思いますので触れませんけれども、内閣総理大臣が基本的施策を定めていくことになっておりますから、場合によっては内閣総理大臣が意見を聞くということもなしとするわけではないかなとか、いろいろありますけれども、意見を聞く主体については書かれているんですね、法律が。食品安全委員会は国民の意見を尊重しつつでしょうし、政府は尊重しつつでしょうし。
 だけれども、その意見自体が、政府なり食品安全委員会なりが投げかけた主題に対して意見を聞くというのと、それから、消費者が食生活上何らかの疑問を感じた、その課題、主題について、こういうことをぜひ食品安全委員会で取り上げていただきたいとか政府は取り上げていただきたいとかという発議ができるかどうか。意見を聞かれるというのはもう十分、十分か、それなりに書かれていると思います。だけれども、それは絶えず消費者は受け身なのかどうか。もちろん、リスクコミュニケーションだから応答の過程では双方向になっていくでしょうけれども、でも、何かの問題を受けとめたときにそのことを提起していくことができるのかどうか。
 要するに、提起する主体は食品安全委員会であったり政府であったり、と同時に消費者もそれができるというそのことの、できると書いてあるんですけれども、それは応答関係の中でできると書いてあるんですけれども、それを発議していくことができるかどうかというのは、私はすごく大事なところだと思うんです。
谷垣国務大臣 これは基本法だということもありまして、この法案は、一つ一つの権利のいわば主張の仕方とその答え方を全部子細に規定しているわけでは必ずしもないわけですね。ただ、九条をごらんになっていただけると、「消費者の役割」ということで「食品の安全性の確保に関する施策について意見を表明するように努めること」、こういう表現になっているわけですね。
 ということは、随時食品安全委員会の方に、あるいは、食品安全委員会でなくても、リスク管理をするそれぞれの省庁に当然いつでもボールを投げていただくことができるわけですし、その答えも、こういう中でボールを投げていただいたのをいつも無視してしまうとか、この法律が、基本法がそういう方向であるわけでは当然ないのでありまして、そういうボールを投げていただいたら、これはたくさんある場合にどうするかといういろいろな技術的な問題はあるかもしれませんけれども、当然誠実に、受けた球は何らかの仕方で返さなきゃいけないんじゃないでしょうか。
石毛委員 今の大臣の御答弁を大事にさせていただきたいと思いますけれども、私が冒頭、この法案は全体としてできが甘いのじゃないかというふうに申し上げましたのは、いろいろ書いてあるんですけれども、でも、ちょっとありていに表現すれば、逃げようとすれば逃げることができる、そういうふうにも読めなくもない。だから、裁量によって動いてしまうというのは、法律とすれば大変困るわけですし、それから、何よりもこの法律の策定の趣旨は、第三条に明記されていますように国民の健康の保護ですけれども、まあこの国に暮らす人々の健康の保護だと思いますけれども、その健康の保護の主体は消費者ですから。そうですよね。それは、健康の保護に協力する第一義的な責任は生産者とかにありますけれども、だれの健康が保護されるかというのは消費者の健康の保護ですから、消費者が可能なこと、できることというのは、私は、もっと明確にどこかで表記をしていただきたい。
 この法律だと、全体的に倒置法になっていて、コミュニケーションですから双方向で倒置法だということはあるんでしょう。でも、やはり一番大事なのは消費者の健康の保護ですから、消費者が何ができるかということで、「意見を表明するように努める」などという何か消費者の側に課せられたような努力規定みたいなのではなくて、あえて私は権利というふうには申しませんけれども、意見の表明ができる規定ぐらいにはしていただきたいというふうに考えるわけですけれども、先ほどの大臣の御答弁にもう少し上乗せをしていただくことは、いかがでしょうか。
谷垣国務大臣 石毛委員から詰められまして。
 ただ、先ほどおっしゃった、一番大事なのは消費者の健康である、これは三条に「国民の健康の保護が最も重要であるという基本的認識」というふうに書いてございまして、国民と先生がお使いになった消費者と、若干違うといえば違うのかもしれませんが、本質においては私は変わらないと思います。
 それから、これも基本法でございますから、コンクリートな権利と義務というような形では確かにこの法案は余りでき上がっていないところが多いのは事実でございますけれども、私、基本法をすべてそらんじているわけではもちろんありませんけれども、多くの場合、基本法で決められている精神に基づいて、具体的な問題に関しては具体的な権利義務を定めるような法律ができていくのが一般だろうと思います。
 したがいまして、今の委員のおっしゃった消費者と申しますか、あるいは国民の側といいますか、そういう方に当然、いろいろな問題を提起していく、委員は権利とおっしゃった、権利と言ってもいいのかもしれません、そういうものがあって、それに対して行政主体は当然誠実にこたえなきゃいかぬというのはこの法案の中にきちっと組み込まれていると私は思います。
 したがいまして、個々の具体的な権利はどうかというような問題は、さらにこれを具体化していく法律の中に定められるべきものではないかなというふうに思います。
石毛委員 それでは、次の質問でございます。
 第十五条ですけれども、ここは、「関係行政機関の相互の密接な連携」ということです。
 確かに、例えばBSE問題などで端的にその問題が表出したわけですけれども、ここでは「関係行政機関の相互の密接な連携の下に、」というふうに記載されておりますけれども、もっと具体的にここは規定すべきではないか。例えば、相互の密接な連携のもとに覚書を締結し、公表し、進めるものとするというように。「相互の密接な連携の下に、」といいますと、連携の覊束力がどれぐらいあるのかというのが読めない。ですから、抽象的な推奨事項として読まれかねないというリスクがこの文章では含まれているというふうに思います。
 表現はどういうものでもよろしいのです。私は、例えば覚書の締結による公表を行うというような、それこそこれは法文の全体がリスクコミュニケーションを可能にするようにつくられるべきだというふうに思いますし、覚書の締結と公表というようなことを私は考えるわけですけれども、いかがでしょうか。
谷垣国務大臣 十五条は、「密接な連携の下に、」と、そういう関係行政機関の相互の密接な連携を規定しているわけでありますけれども、今般、これと同時に、関係行政機関の密接な連携が可能になるように、農薬取締法とかあるいはと畜場法、いろいろな関係各法の改正法案で、関係大臣間の連携について具体的にいろいろ規定があるわけですね。私、もちろんそれらの条文を全部そらんじているわけでもないんですが、おおむね委員がおっしゃった「関係行政機関の相互の密接な連携」という規定ぶりになっておりまして、私どもは、法の規定としてはこれで十分なのではないかというふうに考えております。
 それで、具体的な連携のあり方については、この食品安全基本法に基づいて政府が策定する基本的事項の中で、国における関係省庁間、あるいは国と地方、都道府県等との間の連携について定めますし、また、食品安全委員会とリスク管理機関との間で取り決めを締結、公表するというようなことでもう少し明らかにしていくこととしておりまして、こういうことによって連携の確保を積極的に進めていきたいと思っております。
石毛委員 基本的施策においてその連携の具体的な担保の仕方が記載されるというふうに理解させていただきました。
 質問通告をしていませんので恐縮ですが、午前中の山内議員の質問に関連しまして、確認をさせていただきたいと思います。
 第二十三条、食品安全委員会が厚生労働省や農林水産省に対して、あるいはその所管の大臣に対して、どのように、勧告なのか命令なのかということで大きな論争がなされましたけれども、その第二十三条の第四項で、関係各大臣は、「勧告に基づき講じた施策について委員会に報告しなければならない。」というふうに記載されていますので、関係各大臣は応答の義務、責任があるのは当然なんですけれども、その報告も公表をされるというふうに理解してよろしいですか。
谷垣国務大臣 これは、情報公開法等ございますから、委員のおっしゃるような方向で当然処理をされるということだろうと思います。
石毛委員 もう時間がありませんので、さらにというわけにはいかないのですけれども、一々情報公開法で請求があれば公表ということですか、自動的に公表ということですか。
谷垣国務大臣 議事録は公開するということで考えております。
石毛委員 それでは次の質問ですけれども、ちょっと戻りまして十七条なんですけれども、これは「内外の情報の収集、整理及び活用等」という、この部分です。
 それで、私は、ぜひこれも実現していただきたいということなのですけれども、何しろ日本の食品は、何度も繰り返しますけれども、六割が輸入であるわけですね。ですから、内外、特に海外の情報というのは非常に重要だというふうに思います。改めてここで指摘をさせていただければ、BSEの問題も、EUによるステータス評価が、それこそ一部の担当者によって隠ぺいされることがなくて、少なくとも農水と厚生労働との間で公開され、さらに国民に公開されていれば、これほどの大きな問題になるということはなかったであろうということで、情報へのアクセスというのはリスクコミュニケーションの上で大変重要だというふうに思います。
 そこで、あえて具体的にお尋ねいたしますけれども、こうした内外の情報、特に海外の情報といいますのは、翻訳をされて、そして絶えずやはり公開、公表をされている必要があるというふうに私は考えるわけですけれども、いかがでしょうか。
谷垣国務大臣 結論から申し上げると、おっしゃるとおりだと思うんです。それで、今委員がおっしゃったように、内外の情報は、リスク評価をしていく場合にもリスク管理をしていく上でも重要ですけれども、委員が強調されたように、リスクコミュニケーションのやはり基礎となる資料だろうと思います。
 そこで、この法律は、リスクコミュニケーションの促進も積極的にやれと言っている中には、当然その材料も提供しながらやらなければ、コミュニケーションしろしろといっても、材料なしでというわけにはいきませんから、その一環として、収集した情報についても、当然、もちろんいわゆる情報公開のルールの中で、プライバシーの問題とかいろいろあると思いますから、そういう問題は適切に考えなきゃいけませんけれども、適切に公表をしていくということで運用はやっていくことで今考えております。
石毛委員 それでは次ですけれども、ちょっと質問の順序が後先になりますけれども、第七条に地方公共団体の責務規定がございます。
 ごく簡単にお伺いいたしますけれども、この地方公共団体の責務規定を生かすために、地方自治体が自主的な条例を制定していく積極的な取り組みが望ましいというふうに私は理解をしておりますけれども、条例制定に関しては当然であるという認識でよろしいのですか、御確認ください。
谷垣国務大臣 この七条の責務を果たすためにいろいろな方法があると思いますけれども、条例制定というのも当然一つの方法であるというふうに思います。
 ただ、これは、私が当然だとか当然でないとか言う以前に、そういう条例の手法が適当かどうかというのは、地方公共団体でまず判断していただかなければいかぬことだろうと思います。
石毛委員 もう一問でございます。午前中の山内議員の質問とも重なりますけれども、食品安全委員会の委員の任命ですけれども、第二十九条は「優れた識見を有する者のうち」というふうになっております。
 この安全委員会がリスク評価の対象品目等々を確定していくわけですから、生化学や食品衛生学の専門家が大変重要であるということは無論ですけれども、きょう私の冒頭の質問から、かなり食生活というところに関して注目して、例えば食生活に関する国民の意見ですとか、そういうところを注目してきたわけですけれども、例えば、食生活に関する文化人類学や家政学の研究者の方ですとか、それから、やはり食生活への不安というのは、先ほど来繰り返しておりますけれども、消費者問題に携わっている方が一番ビビッドに、センシブルに受けとめるという、そうした危機意識の強さと言ったらいいでしょうか、そういうこともあると思いますから、この委員の構成というのは、化学者だけではなく、人文科学、社会科学、消費者問題等々に精通した方、そうした方からも選ばれるべきだというふうに考えるわけですけれども、この点に関してはいかがでしょうか。
谷垣国務大臣 七人の委員というふうに定めておりますし、機動的に意思決定をしていただくという意味からしますと、おのずから人数は限定があるのはやむを得ないところで、御理解をいただかなきゃいけないわけですが、消費者の意識とか、それから、特に先ほどからの御議論のリスクコミュニケーションのあり方というのも、当然のことながら食品安全と非常に大きくかかわっているわけでありまして、ですから、化学物質とか微生物に関する専門家というだけではなくて、もちろんそういう方も必要ですけれども、消費者意識とか消費者行動とか情報交流、こういうものを専門的に研究しておられるような方に入っていただく必要があると思っております。
 それから、あとは専門委員等で、今おっしゃった多様な分野の方がいらっしゃいますから、専門委員などにお入りいただいて、その辺も補っていくということが考えられるなと思っております。
石毛委員 質問時間が終了いたしましたので、数点質問を残してしまいましたけれども、また機会をいただきたいと思います。大臣には、私としましては、前向きな御答弁をいただいたというふうに理解をさせていただいておりますので、ぜひ、もっといい法案になりますようによろしくお願いいたします。
 ありがとうございました。
佐々木委員長 以上で石毛えい子君の質疑は終了いたしました。
 次に、大畠章宏君。
大畠委員 民主党の大畠章宏でございます。
 食品安全基本法案について質問をいたします。
 きょうは、事前に幾つか質問項目を通告してございますが、そういうものを中心として質問をさせていただきますが、若干前後する、あるいはまたその範囲を超えることがあるかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします。
 最初に、ちょうど大臣、この食品安全基本法案というものをつくるきっかけになりましたいわゆるBSEの問題について思い起こしていただきたいんですが、私自身も、その当時を思い起こそうとして、二年前の私のウイークリーリポートというのを持ってきたんですね。十月二十日発行のウイークリーリポートですが、ちょうど九月十一日にアメリカの同時多発テロが起こりまして、アフガンの方にアメリカ軍が地上兵を投入するという情報も、この時点で伝わってまいりました。
 そういうときに、二〇〇一年九月十二日、ちょうど私も国会におりましたが、電話を受けました。あるお肉屋さんなんですが、日立市内のお肉屋さんから、大畠さん、もうどうしようもない、客が少なくてこれ以上商売を続けられない、農水省や厚生省の対応も本当に現場のことを知ってやっているのか全く理解に苦しむ、この現場の問題や不満をどこにぶつけたらいいんだよという電話があったんですね。
 そういうことから、十六日そして二十日と、私も、いろいろ関係省庁の話を聞きながら、現状、こういうことをやろうとしているんだという話をしたんですが、まことにその当時は、肉屋さんの前になかなかお客さんがあらわれない。商売をやろうとしたって、肉はいつも仕入れなきゃなりませんから、仕入れる、しかし売れない。仕入れたら、ちゃんとお金を払わなきゃならない、その運営の資金もなかなか滞りがちだ、売り上げがないんですからね。そういうことから、このBSE対策が社会的な問題化したわけでありますが、このBSE、日本国内におけるBSEというものは、何が原因でこういう社会的な大混乱につながったのか、ちょっと大臣、最初にそれを伺いたいと思うんです。
谷垣国務大臣 いろいろな観点から、当時のあの事象を総括するということができると思います。
 一つは、先ほどから申し上げているように、生産を奨励していくのとリスク管理と一体になって、しかもそれが科学的なリスクの評価と混然一体となっていた。その背景には、戦後の食糧難の時代以来の生産優先という、生産を重視するという姿勢があったということもあると思いますし、それから、省庁間の縦割りというのもやはり私はあったんだろうと思います。
 それから、これも縦割りと関連してまいりますが、やはり危機管理をどうしていくかというようなことについても、必ずしも、経験もなかったのかもしれませんけれども、日ごろの意識というのも十分でなかったのかなと。
 もっといろいろ反省する点はございますけれども、今、委員のお話を聞きながら、そんなことが差し当たって言えるかなというふうに思います。
大畠委員 おおよそ大臣のおっしゃったような背景があると思うんですが、ここに、実は、BSE問題検討委員会の委員長の高橋さんという方の談話が、言葉が、ある記事に載っていました。官僚も政治家も企業の幹部も、仲間内でしか通用しないゆがんだルールを是認し合って表面を取り繕ってきた、このシステムが破綻しつつある今、外部に開かれたシステムに変えて、情報をきちんと公開すべきである、こういうふうな談話だった。
 私も、実はこの食品安全委員会という名称を聞いたときに、谷垣さんも科学技術にも精通されておりますが、原子力安全委員会というものが頭に浮かんだんですね。実は、原子力も今、非常に混乱し始めました。原子力委員会、原子力安全委員会、文部省、それから経済産業省の中の保安院、一体どこが原子力政策について責任を持つ部署なんだというのがよくわからないんですね。
 それで、今、ちょっと混乱し始めていますが、これは急いで体制を整えなければ、日本のエネルギー政策も大変困難に陥っていますから、それを整えるとして、この食品問題、まさにこの食品安全基本法というものの前文を、大臣のお言葉といいますか、先ほどの提案理由説明を読ませていただきましたが、非常に広範なところまで踏み込んでいます。
 第一は「国民の健康の保護が最も重要であるという基本的認識」、それから「食品の生産から販売に至る供給行程の各段階における適切な措置」、三番目には「国際的動向及び国民の意見に十分配慮しつつ科学的知見に基づいて措置を講じることによる国民の健康への悪影響の未然防止」、非常にすばらしい理念が入っていますし、二点目には、施策の策定とか意見交換、食品健康影響評価の実施、体制の整備、連携、実にきめ細かく、そういうものを何とかしようという思いがここにあらわれています。ただ、三番目の「内閣府に学識経験者による合議制の機関として食品安全委員会を設置し、」ここのところが、どうも前段の第一、第二に比べては非常に小さくまとまっちゃっているのではないかという感じが私はするんですよ。
 そこで、先ほど大臣がおっしゃいましたけれども、私は、この食品の安全行政の、このBSEの基本的なキーワードは何かというと、消費者の視点が抜けていたということですね。要するに、先ほどの話じゃありませんが、企業の幹部、官僚、政治家、もちろんこれは家に帰れば消費者になるわけでありますが、何かそこら辺で、仲間内でしか通用しないゆがんだルールを是認し合って表面を取り繕ってきたという仕組みに問題があったと思うんですね。そこに抜けているのは何かというと、消費者の視点。この高橋さんも指摘しておりますが、消費者の視点をどうやってこの仕組みに入れるかというのが、私はこのBSE問題の一番のキーポイントではないかと思うんですよ。
 そこで、何点か質問をさせていただきたいと思うんですが、私は、谷垣大臣に、きょうはもうちょっと心をリラックスしてもらって、法案にとらわれて答弁しようとすると、先ほどからの話のとおり、升目から一歩も出ないんですね。それでは委員会の意味がない。この法案がもうパーフェクトでないというのはみんなわかる。どんな法案だって、百点満点の法案なんかないんですよ。だから、委員会で、こういう点はどうですか、こういう点はどうですかと論議しながら、よりいいものにしようというのが委員会じゃないですか。もしも百点満点だったら、何にも審議なんかする必要ないんだ。百点満点だから、全部百点です、百点です、あなたの意見も入れています、あなたの意見も入れています、そうしたら、委員会は、何のために、時間を費やして、こうやってみんなで委員会をやっているのかわからなくなっちゃう。だから、そういう意味で、大臣、心をリラックスして、本音で議論しましょうよ。そうじゃないと、これはお互いに人生の時間のむだですよ。
 そこで、大臣に申し上げますが、要するに、今申し上げましたように、私は、このBSEの日本における大混乱の大もとは、いわゆる生産、販売、それから消費といいますか、あるいは輸入もあったでしょう、その中に消費者の視点が抜けていたということが私は一番のキーポイントではなかったかと思うんですが、この件について大臣はどうお考えになりますか。
谷垣国務大臣 その点はおっしゃるとおりだろうと思います。
 今までの、先ほどちょっと申し上げたことでありますけれども、生産というようなところに、あるいは生産を奨励するというようなところに少しウエートがかかり過ぎていたんではないかなと。それから、これは先ほどおっしゃったBSEの報告書の中にも出ておりますけれども、生産から消費者の手に渡るまでのいろいろな段階で食品の安全を考えていくという発想が乏しかったのも、生産というところにやはり力点が置かれていた物の考え方、こういうものがあった、その点はもうおっしゃるとおりだと思います。
大畠委員 私もおっしゃるとおりだと思うんですね。そうなりますと、いかに消費者の視点、いわゆる利害に絡まないと言うのはおかしいんですかね、一番安全に敏感な消費者の意見といいますかセンサーといいますか、そういうものを中枢に持ってくるというんですね。いわゆる先ほどの、官僚も政治家も企業の幹部も、仲間内でしか通用しないゆがんだルールを是認し合って表面を取り繕ってきた、このシステムからこういう問題が起こったと思いますが、ここにどういう仕組みを入れたらいいかというと、ここに学者というのが入っていないのかもしれませんが、学者が中枢に入れば物事が解決するんだったら、私は、原子力委員会とか原子力安全委員会、いろいろ学者の方入っていますが、特に私は、原子力委員会の木元教子さん、あの方は学者ではないんですね。しかし、あの方は非常にすばらしい、いい意味での波紋を広げているんですよ。ちょっと待って、あなたの言うこと、何かよくわからないんだけど。そこからまたいろいろな議論が始まる。ところが、学者同士だと、みんなベースを知っているから、そんなことは当たり前だよねというので通過してしまう可能性があるんです。
 私どもといいますか、原子力関係者の一番の反省点は、一般の人に通じない言葉で、一つの安全機構体というのをつくり上げましたね。ところが、なかなか国民に伝わらないということで、今回、一連のトラブルといいますか事故もあって、大変な不信感を生んでしまったんですが、そういうことから、私は、先ほど申し上げましたように、キーワードは消費者という視点をどうこの仕組みの中に入れていくか、これがポイントだと思うんです。
 そういう意味では、先ほどの大臣のこの法案の一番最初の、三つ挙げられておられますが、一番、二番はわかるんですが、三番目に、学識経験者による合議制の機関としての食品安全委員会を設置するという、ここがどうも私は腑に落ちないんです。本当にこれで国民の信頼を回復し得るのかどうかなんですよ。
 この法案を見ると、この委員会というのは大変な権限を持つんですね。例えば、第二十四条でいいますと、「関係各大臣は、次に掲げる場合には、委員会の意見を聴かなければならない。」というんです。大臣はこの委員会の意見を聞かなければならない。これは大変な大きな権限を有するわけですね。
 ですから、今回のBSE問題を発端として、あるいは野菜のいわゆる農薬問題もありますが、国民の不安を解消する頂点に立つ委員会なんですね、これは。その委員会の中に、学者だけの委員会で、本当に大臣、国民を納得させられるようなメッセージがこの委員会から発せられると思いますか。
谷垣国務大臣 先ほど原子力のことをおっしゃいまして、大畠先生も茨城の御出身だし、また御専門家でもあります。もうよく御承知ですから、酷似しているところもあり、また違うところもございます。
 ただ、この食品安全委員会の最大の職責は、食品の健康影響評価、これを科学的に行うというところが最大の責務ですので、おのずからここが科学者を中心に成り立つというのは、私はやむを得ないことだというふうに、やむを得ないというか、そう仕組まないと全体の仕組みはうまくいかないのではないかというふうに思います。
 もちろん、食品の安全に関するところはこの安全委員会だけではございませんで、リスク管理機関もございますし、それから食品安全担当の閣僚というものも置かれまして、今おっしゃったメッセージ性というところですと、やはり私は、今は私が担当でございますけれども、私が頑張らなきゃならないところも随分あるんだろうというふうに思っております。
 しかし、それと同時に、この法案の中にも、これは場合によっては御批判も受けるわけでありますが、国や、あるいは関係の事業者や、それから特に消費者の責務というそれぞれの責任がやはりあるじゃないか、それぞれ役割分担をして確立していこう、こういう思想が入っておりますのも、私は、今委員のおっしゃったような消費者の視点を入れてくるということにつながっているこの法案の考え方だと思います。
大畠委員 今のお話の中で、消費者の責務というものが、確かに事業者の責務とか消費者の責務というお話がございました。
 実は、私もこの法案のところを読んでみますと、第六条は国の責務、それから第八条は食品関連事業者の責務、それから第九条が消費者の役割というんですか、あるんですが、何か、国の責務とか地方公共団体の責務というのは非常にふわっとしているんですね。国の責務というのは、「国は、前三条に定める食品の安全性の確保についての基本理念にのっとり、食品の安全性の確保に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。」何だかよくわからない。最高責任を持つということかもしれません。地方公共団体もしかり。だんだん、食品関連事業者の責務になってくると、非常に詳しくなってくるんですね。「肥料、農薬、飼料、飼料添加物、動物用の医薬品」どうのこうのという。それから消費者は、一言で言いますと、いろいろ勉強して、「食品の安全性の確保に関する知識と理解を深めるとともに、」勉強しなきゃだめですよという話。
 私は、先ほどの一番最初の話に戻りますが、BSEのときの大もとは何かというと、これは事業者もあるいは農家の方もいろいろあったのかもしれない。しかし、そういうことを、肉骨粉なんかを牛に食べさせたりなんかするといろいろ海外では起こっていますよという情報は、農水省は少なくたってキャッチしていたわけですよ。私たちもニュースで見ていました、イギリスでああいうことがあったんだという。しかし、まさか日本に来るとは思わなかったんですね。ところが来てしまった。しかし、そういう情報というのは、流通経路を通って、農水省だって厚生省だって察知していたわけですよ。私は、業者の、肉業者とか、あるいはまた消費者の責務というものがあってもいいでしょう。しかし、一番厳しく責任を問われなければならぬのは農水省と厚生労働省じゃないんですか。その反省が、どうもこの法案を見るとよくわからない。だれも責任者が出ない。そして、責任は、このいわゆる業者と消費者ですよというようにしか見えないんですが、そこら辺、基本的な考え方は、何かこう、少し道が間違えているんじゃないかと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。
谷垣国務大臣 大畠先生の鋭い質問にうまくお答えできるかどうかわからないんですが、私は、今おっしゃった行政の責任という観点からいえば、今までの行政に大きな責任があったことは事実だろうと思います。
 それで、その反省点というのは、これもるる申し上げているところですけれども、リスク評価をやるところと、それから産業の振興も考えながらリスク管理をやるところと、それが混然一体となっているというのがやはりここの根本的な原因で、しかもそれが縦割りの弊を乗り越えていられないというところが問題なので、したがって、ここのところの責任と対策を明らかにするということになると、科学的な評価を行うところと管理を行うところをやはり分離していく、そして、管理を行うところも、できれば産業振興と管理とを分けたような部署でやってもらう、こういうこと。
 それで、しかも先ほど申し上げましたような、縦割りの弊を乗り越えていない、今度も結局、機関を分けたけれども、さっき先生がおっしゃったように、原子力もいろいろあるけれども責任の所在がないようじゃ困るということでありますから、先ほどからも、これもるる山内委員からも御指摘をいただきましたけれども、勧告とかあるいはいろいろな連携義務も定めておりますし、私は、きちっとこれを運用すれば、縦割りの弊を乗り越えて、お互い部署も違いますから、緊張しながらやっていくという体制が基本的にできると思うんです。
 しかし、ではそういうことをやったからすべてよくなるというわけにはなかなかいかないのでありまして、それはやはり現実に生産し、あるいは輸入し、販売をし、あるいは調理をする、こういう業者、こういう方々が、自分たちが消費者のもとに食べ物を届けているんだ、こういうやはり自分の職業に対する誇りと責任感がもしなかったとしたら、これは幾ら行政にあれしたってできるわけではありませんので、そういう意味では、この法律が第一義的な責任というか、安全を確立する第一義的な責務は事業者にありますよというのは、私は、ある意味で間違った認識ではないと思っているんです。
 それに加えて、先ほどから委員が非常に重点を置いておられます、では消費者の役割は何かというと、ある意味では、消費者は最後の、やってきたものを食べる立場でありますから、それだけとらえれば受け身にもとられかねないけれども、やはり消費者が意識を持ってある意味で発言もし、それだけの目もなければ、それはやすきになずんでしまうところがあるよと。そこで、やはり最後は自分の身に一番降りかかってくる消費者が勉強もし、発言もしていただかなきゃいかぬのじゃないかということだろうと思うんですね。
 だから、そういう意味では、委員からどうも思想が少しゆがんでいるんじゃないかという御指摘だったと思いますけれども、そんなにプロポーションは私はゆがんではないんじゃないかというふうに思っております。
    〔委員長退席、中沢委員長代理着席〕
大畠委員 ゆがんでいないというお話ですが、私が申し上げたいのは、本来、私もずっといろいろ技術畑を歩んできましたが、何か事故があったときには、徹底して、なぜ事故が起こったのか、原因は何か、体制に問題があったのか、システムに問題があったのか、そういうのを一つ一つ検証しながら、二度とそういうことが起こらないようにというので、それをずっと一つ一つつぶしていくんですね。
 そういう意味では、大臣はそうおっしゃいますが、では、あの当時の農水省のそういうさまざまな不手際もありました。厚生労働省も関連してあったでありましょう。そういうところが、今回、五つですか六つですか、法律案が出されまして、そういうところもずっとつぶすような話なんですが、その頂点に立つこの委員会でありますけれども、どうもいわゆるセンサー部分、一番重要なのは、回転音がおかしいとか、何か変な音がするとか、温度が上がってきたとかという、センサー部分というのが大切なんですね、これは。頭でそのセンサーを感知するんでしょうけれども、センサーが麻痺していたら、どんなにいい食品安全委員会をつくったって、情報が流れてこなければどうしようもないですね。このセンサーの部分というものを農水省と厚生労働省に任せているでしょう、この食品安全委員会は。そこのところが、それでいいのかという思いがあるんですよ。
 私はやはり、できれば私どもが基本的には食料安全庁というものをつくって、センサー部分、要するに、そういう海外の情報とか国内情報とか、何かこれはおかしいなという、そういう情報も含めて一省庁で取り組むべきぐらいの、BSEの問題というのは国民にとっては大変な大きな問題だったですね。これはエネルギー問題もそうですし、食料問題あるいは軍事的な危機問題もそうでありますが。
 そういう意味では、何か厚生労働省と農水省の、そこの部分はまあちょっと何か変えるという話でありますが、その上に食品安全委員会というのをちょっと乗っけて、五十人ぐらい乗っけてこれで今後やるんですというにしては、二〇〇一年の十月の時点の、あの一億二千万の国民がみんなもうこれは困ったという状況に対する対応策としては、何か大がかりを反対にすれば小がかりというか、のど元過ぎれば熱さ忘れるで、ちょっと何かいま一つ腰が入っていないんじゃないかと。
 いわゆる省庁の弊害なんかどうでもいいんですよ、縦割りも何もないんだ、国民から信頼を失ったら国家だってなくなっちゃうんですから。農水省だって、厚生省だって、我々政治家もそうですが、国民からの信頼を失ったら国家だっておかしくなるんですよ。
 そういう意味では、国民の信頼を取り戻すために、まさに省庁の縦割りなんかほっておいて、本来、日本の国民に対する食料の、大臣が目標とされています生産、販売それから消費、あるいはまた外からの輸入、いわゆる対象物としてはすべての飲食物というんでしょう、これは日本の国の防衛と同等の大変な役割なんですよ。それにしては、この食品安全委員会というのをちょっと乗っけて、それでそこに学者を七人集めて、そこで判断しますから、優秀な頭脳が来ますからというんだけれども、どうも全体的にセンサーとか、センサーの責任があったわけですよ、これはBSEでいえばセンサーの責任が。感知したって行動しないんだもの。
 だから、そういう意味では、何かトータル的な仕組みとして私は思想的に抜け落ちているところがあるんじゃないかということを申し上げたわけですが、もう一度大臣のお考え。
谷垣国務大臣 要するに、いろいろなセンサーが抜けておって感度が鈍い、鈍かったという御指摘は、先ほど農水省の北村副大臣もおいでになって、それで何が足らなかったかというと、リスクコミュニケーションというものが不十分だったということを北村さんなりに力説をしておられました。先ほど石毛先生のお話もそうですけれども、要は、機構といいますか役所をちゃんとつくっても、その役所が何か感度が鈍い役所じゃどうしようもないというのは、私はそのとおりだと思います。
 そこで、いわゆるリスク分析という中で、石毛先生も一生懸命おっしゃっていましたけれども、リスクコミュニケーションをどうやっていくかというこの工夫がやはり私は非常に重要になってくるんじゃないかなと思いますね。ここのところはまだ、今までも必ずしも全くなかったわけではないと思いますが、必ずしもそういうことが意識的、意図的に行われたわけではありませんから、やはり、これからリスクコミュニケーションをどう実質化して感度をよくしていくかというこの工夫がなかったら、私は、幾ら組織をつくっても、仏つくって魂入れずということになると思いますね。ですから、その工夫がやはり大事だろうと思います。
 それから、今委員のおっしゃった中で、何か最初の構想からするとえらくシャビーなものをこしらえているんじゃないかという御趣旨だろうと思います。
 これは制度の設計の仕方があるんだと思います。ヨーロッパでも、またイギリスでもアメリカでもいろいろな制度の立て方がありまして、これはもう委員も御承知のとおりだと思います。そこで、リスク管理とリスク評価を分けるというのは一つの制度の立て方で、これ自体が決して間違っているというわけじゃないと思います。
 そこで、委員のお話は、ではリスク評価機関というけれども、結局それの試験をしたり情報を集めたりするというのはリスク管理機関に頼らざるを得ないんじゃないか、そうすると、結局のところ分離した趣旨が十分に生かせないんじゃないか、こういうことであろうかと思いますが、これも、研究も、では研究だからといって無色透明、全く中立というわけでは必ずしもないということは私も承知をしておりますが、ここの世界はやはり客観的な、政治的な判断ということではなくて、本来客観的な評価を確立していくという性質のものですから、それで、現実に食品安全委員会の所掌している領域というのは、では、その研究機関を全部ここに集めようということになりますと、私は膨大なものにならざるを得ないと思うんですね。ある意味では、日本の国立研究機関みたいなものを一堂に集めるとまでは言いませんけれども、あれも関連する、これも関連するという世界で、それが全くそんなことは事実上不可能だとまでは申しませんけれども、なかなか実は難しい。そうすると、やはり今までの経験を持ったところと連携をしながら、しかし、そういうところもリスクコミュニケーションをしっかりやってもらって、外部の風にも当たりながらというようなことが今度の物の考え方なのではないかと思います。
 ちょっと、さっきから本音で話せと大分大畠先生から挑発を受けて、挑発と言うと失礼ですが、大畠先生からいろいろ鋭いお話があるわけですが、私は今度のシステムはそんなふうなものだろうと思っております。
大畠委員 ぜひ、本音で話をしないと、これだけ国民が社会不安もあるし、将来不安もあるし、経済不安もあるし、食料不安というのも、一応戻ってきていますが、まだ不安を持っているんですね、基本的に。だから、そういう意味では、やはり政治家がこういうときに本音で話をするというのは私は大変大事だと思うんです。そういうことで、ちょっといろいろぶしつけな御質問もさせていただいておりますが、ただ、本音で私も質問させていただいていると受けとめていただきたいと思います。
 そこで、今のお話の中でいわゆるリスクコミュニケーションという話がございましたが、実は、大臣、私たちもよく使ってしまうんですが、リスクコミュニケーションという言葉を使うこと自体が危機感を失わせてしまうんですね。片仮名になっちゃうと、何か別なところの言葉、これはまさに危機の情報の交換という意味ですか、あるいは危機に関する情報をいろいろ交換しようということでしょう。だから、リスク評価とかリスク何とかと言うんじゃなくて、リスクというのは危機ですよね、まさに。だから、リスクと危機という語感が、全く私は受けとめが違うと思うんですね。危機というと危機なんですよ。これは経済危機、あるいは食品の安全性に関する危機、あるいは武力の危機。やはりここのところは危機なんですよ、これは。あるいは危険ということでしょうね。
 危機とか危険とか、そういうものをどうやってみんなで力を合わせて防ぐかということなので、これは地元の商店街からも、最近国の方から発せられる言葉は何か片仮名語が多くてよくわからない、お客さんに、ポスターを張っておいても、一生懸命PRしようとするんだけれどもわからないということもあるので、ぜひこれは大臣、一つは、PRとか何かには片仮名語は使わないでいただきたいと思うんです。この委員会の間も、やはりお互いに日本人ですから日本語で。日本語がなければ別ですよ。でもちゃんと日本語があるんですから、日本語でぜひそういう議論ができるようにひとつお願いしたいと思います。
 そこで、幾つか体制の話をしてまいりましたけれども、大臣がおっしゃるように、この委員会というものはそういうおざなりなものではないというお話でございますが、ヨーロッパの欧州食品安全機関なんというのは、理事十五人中四人は消費者問題及び産業問題の知見を有する者。学者の方も多いんですが、学者の方に失礼かもしれませんけれども、世間のことに疎い学者さんもおられますからね。そういう意味では改めてこの委員の七人の中に、まあ七人の中に毒性の問題、微生物、有機化学、公衆衛生、食品、消費者意識の専門家とか何かが入っていますが、私はどうしてもこの委員会で申し上げさせていただきたいのは、学者だけではだめ。学者だけで日本の国民の食料の安全がキープできるか、あるいは確保できるならばいいですよ。だから、センサーの部分、あるいはそういう消費者の、私冒頭に申し上げましたが、この問題の基本的な起こりは消費者の視点が抜けていた、流通の仕組みとか生産の仕組みとか、そんな仕組みの中に消費者の視点が抜けていたというのが一番の大問題になった原因じゃないかと私は思うから申し上げたんですよ。
 それで、そのいろいろな対策をやる頂点に立つ委員会の中に、学者ばかりで委員会をつくって、大臣に指示をする、あるいは総理もこれは多分、総理との関係も出てきていますが、その委員会の中に消費者の関係者が一人もいないなんというんじゃ、私は何か、これで皆さん、一億二千万の皆さん、食品安全委員会というのをつくりましたから安心して消費してください、食べてくださいと本当に言えるかどうか、ここのところが一番の問題点だと思うんです。
 大臣が、わかりました、では七人じゃなくて八人にして消費者一人入れましょうとなかなか言えないかもしれませんが、しかし、きょうこの委員会が終わってから、帰ってから、どうなんだ、一人ぐらい入れたらどうかというような話はしてみてくださいよ。私は、学者の方はすばらしい人いますよ。しかし、学者の方七人集まって本当に一億二千万の――毒性の学者とか何かいますよ。でもやはり消費者の代表者を一人入れて、原子力委員会でいえば木元さんのような方を入れて、そこから何げない、学者同士じゃ当たり前のことかもしれぬけれども、ちょっと疑念を持ったら、これはどうなのという、そういう発言がこの委員会の中で波紋を呼びながらそれを乗り越えていくという、それで本当の意味での委員会の役割が始まるんだと私は思うんですよ。ですから、ぜひそれを検討していただきたいと思いますが、もう一度、大臣の率直な、余りとらわれない御発言をお願いします。
    〔中沢委員長代理退席、委員長着席〕
谷垣国務大臣 大畠先生から大変熱心なお問いかけでありますけれども、食品安全委員会が頂点に立つんだという表現をされまして、確かにここは重要な権限を持っているんですが、上下とかいう、例えば管理をする機関と評価をする機関と上下関係に立つというわけでは私はないだろうと思います。ここは科学的な判断を中心に行うところであるというふうに私たちは考えて制度設計したわけですから、学者の方を中心に科学的な判定をするという体制はこの制度に合したものじゃないかと思うんです。
 ただ、先ほど申し上げましたように、もちろんリスク管理機関もリスクコミュニケーションをやりますけれども、リスク評価のところもやはり学者の知恵だけではなくて、リスク評価をリスクコミュニケーション、横文字を使うな、こういうことでございますけれども、やはり消費者との対話とかそういうものが当然なければおかしくなってしまいますから、それはやはり十分にやらなきゃいけませんし、専門委員の中には当然そういうことをやってこられた方にも入っていただく、これは現段階での考え方でございます。
 どうも委員の意にはちょっと沿うような答弁ではないかもしれませんが、あしからず。
大畠委員 微妙な言い回しの中にも、消費者のそういう感性を持った方もこの委員会の一人として――私は、学者というのは確かに専門知識があるということは学者なのかもしれない。機械工学の学者、原子力の学者、食品に関する学者。でも、消費者というのもある意味では学者なのかもしれないんですよ。いろいろなことを、町のそういうものに精通している、あるいは奥様方とか消費者の方のいろいろな意見を聞いている、これは情報をたくさん持っているわけですから、ある意味では学者と言ったっておかしくないんですね。ですから、そういう意味で、先ほどの大臣の御答弁の中に何か少し透けて見えるような発言もございましたので、それをより一層濃くしていただきますよう要望して、次の質問に入りますが、あと、根本副大臣もおいででございますので、ちょっとお伺いをさせていただきます。
 情報公開について御質問させていただきますが、とにかく情報がなければ国民は判断できない。食品関連の事業者の方とか消費者もそうなんですが、やはり町の中で商売をやっていますとなかなか情報がないんですよね。消費者だって、さっき大臣がよく勉強しなさいと言うんだけれども、なかなか勉強する材料がなければ勉強しようとしたってできない、教科書がなければ。
 そういう意味では、情報を提供する、言ってみますと、この委員会等々でも評価されるということでありますから、現状はこうだというような評価とか、あるいは世界の情報はこうですとか、これが入ってくる可能性があるとか、そういうものをやはり国民に提示するということが必要でありますし、それから国会に対しても、その状況については適時報告をすること。
 それから、やはりそういう意味では、大臣も何度もおっしゃっておりますが、消費者の声もきちっと聞きますよと言っているんですが、そこら辺、総じて、根本副大臣としての情報公開に関しての御意見をお伺いします。
根本副大臣 私もこの法案を担当していて、今回の食品安全基本法十三条、情報及び意見の交換、リスクコミュニケーションという言葉は使わないようにしますけれども、これは非常に私は画期的な条文だと思っているんですね。食品安全委員会においても、食品の安全性の確保に関する施策について、関係者相互間の情報及び意見の交換の促進を図るために必要な措置を講ずる必要がある、こういう条文を置いたのは、確かにこの法案の大きなポイントだと思います。
 こういう観点から、食品安全委員会においては、審議会の運営に関する指針にのっとり、要は会議の開催は原則として公開する、こういうことをやりたいと思っています。それから、わかりやすく提供という意味では、食品健康影響評価のどういうものを優先順位にするか、あるいは個別の評価の内容、これはホームページなどを活用して、できるだけ国民の皆さんにわかりやすく提供したいと思っていますし、それから国民の皆様の意見も幅広く聞きたい、こう思っていますし、それから意見交換会の開催なども行う、こういうことを想定しております。
 それから、委員からお話があった海外情報等でありますが、食品安全委員会が収集しました海外情報などについては、まずこれをきちんと分析し、整理する、これを食品健康影響評価や緊急時対応、これは当然食品安全委員会で役立てるわけでありますが、この情報の提供も適時きちんとやって、食品の安全性の確保に関する関係者相互の情報及び意見の交換にもこの海外情報を積極的に活用していきたいと思います。
 それから、国会への報告を義務づけたらどうか、こんなお話もありましたが、実は、このリスクコミュニケーションの促進を図るというのが、今申し上げましたように今回の法案の大きな特徴で、まさにリスクコミュニケーションというのを前提にしていますから、要は、情報、意見の交換というものを前提にしていますから、食品安全委員会では日々いろいろなテーマが生起するわけですね。それをホームページ等を通じてどんどん連続的に公開していきますから、私は、これは改めて何か白書みたいなものにまとめて報告する、ほかの基本法で、施策の実施状況を、講じた施策を国会に報告しなさい、こういう基本法の体系もありますが、これはいろいろな施策があって、それの実施状況あるいは講ずべき施策という意味で国会に報告する、半年後ぐらいに報告する、こうやっているようですが、むしろこれは日々、言ってみれば国会に報告しているようなもので、情報公開でどんどん出していきますから、むしろこの委員会の特徴というのはその辺にあるのではないか、こう思っております。
大畠委員 最後の質問に入ります。
 現場の声なんですが、大臣、私たちは確かに永田町というところでいろいろな質疑をやったりなんかするのは、現場の声というのが一番大事なんですね、やはり地域で生活しているのですから。そこで、その声を大事にしていただきたいと思うのですが、商店の方では、何かいろいろな法律がたくさんできるようだけれどもどれがどれなんだかさっぱりわからない、現場のお店なんかでは混乱しているよという話があるんですよ、一つは。したがって、そういうものはぜひ、この審議等々を通じて整理して、わかるようにしてもらいたいということが一つ。
 それからもう一つは、日本語の問題。
 やはりお店とか物を売っている人がちゃんとわかるように、片仮名語じゃなくて日本語でちゃんと説明するようにしてもらいたいということと、それから消費者に対して、現状こうやっていますよということをきちっとやっていただかないと、お店の方で、罰則が強化されたものだから、何をやったらいいんだろうと、いろいろ牛の鼻紋を押して飾ってみたり、だれだれさんの牛ですとやると、あそこの牛、この肉そうなの、かわいそうねと逆に消費者の人が何か嫌がるという傾向もあるというので、非常にそこら辺、現場がちょっと混乱し始めていますので、この法案全体を通して、消費者によくわかるように、事業者と消費者に説明していただきたいということを要望し、そして大臣から、もしもお考えがありましたらお話を伺って、終わります。
谷垣国務大臣 今おっしゃった点二つ、一つは、こうやって食品安全行政の体系が大きく変わってまいりますけれども、その趣旨をよくかみ砕いて国民あるいは消費者、生産者にも伝えていくように、おっしゃるとおりだろうと思います。もちろん、これは食品安全委員会の仕事の部分もあり、農水省や厚労省の部分もあろうかと思いますが、それはそれぞれ努めなければならないと思います。
 それから、やはり先ほどおっしゃった言葉の問題。私も何とか日本語でわかりやすく表現するようにと、この法案の中では片仮名は避けておりますが、それも、食品健康影響評価なんというのも何となく舌をかむような用語でございまして、もう少しわかりやすい言葉はないかなと思うのですが、これは試行錯誤をしながら工夫をしなければいけないのかなと思いますが、現時点ではこんなところで御勘弁をいただきたいと思います。
大畠委員 ありがとうございました。
佐々木委員長 以上で大畠章宏君の質疑は終了いたしました。
 次に、太田昭宏君。
太田(昭)委員 公明党の太田昭宏です。
 この二年ぐらい、食をめぐるさまざまな事件がございました。何とかしなくてはいけないということで、思い起こしますと昨年のちょうど今ごろ、四月の初頭でありましたが、衆議院では大変な事態に、政局的にはなっておりまして、私たちはこのBSEをめぐる問題について、農水省の責任問題ということで相当強く要求したことがございました。
 そしてその中で、私は特に、安全というのを一元化していかなくてはいけない。厚生省と農水省と、そして今度は流通段階になると経済産業省というようなことであってはならないということも指摘をされましたし、どこまでも、生産者ということよりも、消費者ということが大事だと。
 また、危険性を評価するという、まあ大畠章宏さんは私と同じような名前になっていますが、英語を使うなということで、私もそう思いますよ。危険性という言葉を本当は使った方が国民にわかりやすいというふうに思うのです。この危険性ということについては、やはり専門家も大事だし消費者も大事だし、食品安全委員会というのを設置すべきであるということを強く主張させていただいて、私は小泉総理にも直接そういうことを申し上げたということもございました。
 そして今、八本の法案という形で、ちょうどアンブレラのような、この基本法があり、そして農水、厚生関係のさまざまな法案合計八本、この国会で提出できるというところまでこぎつけたということは、私にとりましても、また我が党が特にそうしたことを強くやりましたものですから、大変意義のあるものであるというふうにまず評価をしたいというふうに思っております。
 その上で申し上げたいのですが、昨年の秋、読売新聞が世論調査をいたしました。その中で、食品の安全性ということについて不安を感じているという人が何と八七%。そして表示に、半数の人、ちょうど五〇%の人が不信感を抱いている。
 同時に、食品安全委員会というものができ上がるということになって、これでいいですかねという問いかけに対して、四四%の人が期待をしないという答えをしている。まだ法案が定かではない時点ではありますけれども、私はこの国民意識というものはそのままあるんだというふうに思っております。その意味で、八七%の人が食品の安全性に不安を感じ、そしてさまざまな形で八本の法案を今回つくり、その骨格が今回の理念法的なものも含めてこの基本法案になるわけですが、食品安全委員会というその骨格のところに四四%の人が期待をしない。なぜ期待をしないのかというところにきちっとこたえるということがあって初めて私は国民の人が不安を払拭していただけるんだというふうに思います。
 私は、正直言って、この二年間ぐらい、政治家も役人も信頼ができないという声がある。もっと消費者の声を聞けという、消費者から、生産者よりも消費者という角度もある。そうしたことが、本当に、四四%が期待しないという答えを出しているということに対して、この法案が果たしてこたえているものであろうかということが、私、非常に大事だというふうに思うんです。ここを丁寧に、この法案とそしてほかの法案合わせて八本が、不安がなくなりましたねと言えるところまで、どこまでこぎつけていくかというのが、私は、この国会というものとそして現場の方たちとの落差を埋めるというのは、まさに四四%の不安という人、期待をしないという人に対してどうこたえるかということであろうというふうに思うんです。
 まずその辺について、私は、消費者の角度というのはもっと入れなくてはいけないということを申し上げたいし、そして役所の信任というものをどう獲得するかということに努力をいただきたい、この二点をまず冒頭申し上げたいと思いますが、いかがでありましょうか。
谷垣国務大臣 今太田先生、アンケート調査の結果で、八十数%ですか、食品の安全性を信頼していないということは、これは大変なことでございまして、何とかして安心感、それから信頼感、こういうものを取り戻さなければいけないと思います。
 そこで、私、この仕事を担当しましてから、これは日本だけではありませんけれども、食品を取り巻く状況というのが、なるほど、こういう問題は、やはり小学校のころどういう教育を受けるか、小学校で食料生産とか食品のあり方、どういうふうに教わってきたか私自身振り返ってみましても、やはり小学校教育って大きいんですね。しかし、その小学校のとき教わったイメージから見ますと、今の食料の状況というのはもう甚だしく違っているなというのを今度勉強してみて痛感しました。これは答弁資料に書いてあるわけでもない、全く私の個人的な考えですけれども、三つあると思います。
 一つは、先ほどからおっしゃっている、科学技術がすごく発展して、その中には遺伝子組み換えなんかの問題もあると思いますが、農薬や何かもどんどん進展してくる。そういう中で、何が安全なのかという、これをなかなかきちっとつかみにくくなっているということが一つあるかと思いますね。
 それから、やはりボーダーレスになって、世界のどこから食料が来ているのかわからない、こういうようなことがあります。隣のおじさんが一生懸命つくったトマトだというようなものではなくなっておるということがあるかと思いますね。
 それから、これは私たちの食生活もそうでございますが、大量消費、大量生産で、農業も、牧歌的な農業というよりも、工場で生産するような農業になっていて、そこでどういう生産過程を経てきたものかよくわからぬというようなことがあって、こういう我々の食料を取り巻く状況というものが数十年の間に大きく変わって、それに対応できているのかどうかということが私は根本にあるような気がいたします。
 それで、そういう問題を分析していくと、これも横文字使うなというので、リスク分析、こう言っておりますが、食品の持つ健康に与える影響、危険性、こういうものをどう評価し、そういうものを管理し、そういうものをまた消費者との間で理解を高めていくかという、いわゆるリスク分析の手法を取り入れてこういう問題を克服していこうというのが今度の構想の核にあるんだろうというふうに私は思います。
 そういう中で、太田先生のおっしゃった、一つは役所の信頼を取り戻せ、これも、役所の信頼性を取り戻すためには役所のそれぞれが頑張るということももちろん大事でございますけれども、先ほど申しましたように、行政を推進していく体制、それぞれの職責と役割というものをもう一回定義し直す、やはりこういうことが今回のかなめの一つになっております。
 それからもう一つは、消費者の視点をもっと入れろという太田先生の御意見、これはもう先生に限らず、先ほどからの御質問に共通するテーマかと思いますが、これをやるには、先ほど来のやはりリスクコミュニケーションといいますか、そういう交流といいますか、意見をお互いに共有し、見解をぶつけ合っていくというような過程がないとなかなかできないんだろうというふうに思います。
 一応、制度としてはそういうものができる体制を私たちは今御提案をしていると思っておりますけれども、問題は、それを、仏つくって魂をどう入れるかということにあることも十分承知しております。
太田(昭)委員 まさに魂を入れるということが大事だと思いますが、同時に、せっかく、大臣、そうおっしゃっているという、なかなかこういう基本法案というときしか質問ができないものがあると思うんですね。果たして日本の食の方向はこれでいいのかという問題です。
 野菜の消費量は減少し、今大臣おっしゃったように、以前は生鮮野菜というと国内の近場で全部調達していた。これがもう輸入まで含めて物すごくある、そうした事態になっているし、また生産者の側からいくと、重いキャベツや何かを運ぶというようなこともなかなか高齢化の中でできないというような状況もあったり、そして消費者の側からいきますと、見ばえのいい野菜とか傷まないということが一方では求められたり、一方では、そうじゃなくて、曲がったり虫がつくというのがいいんだというようなこともあったりして、しかし全体的には規格化がされ、そして個性のない、しゅんがいつかわからない、そして本当にビタミンがそこには含まれていない、こういうような大きな構造変化というのが例えば野菜の世界でもある。
 あるいは、魚といっても、成田は今、人というよりは、漁港というような、成田漁港という言葉があるようで、そこに輸入の魚がどんどん入ってくるというような状況がある上に、国内でも、本を読みましたら、岐阜県の山の中でヒラメが生産されているというようなことがあったりして、では一体どうやって、これ、生産地はどこですかということが果たしてどういう意味を持つのかということが一方では出てきたりする。
 本来は草を食べたり、そういうような牛が、共食いだと言われたけれども、肉骨粉というものを食べるというようなことが大きな原因であるということを言われたり、そうしたことの大きな変化、しかも健康体のものを食べるというよりも、不健康の方がおいしいからということで値段が高いというようなことで、あえてそれを売るというような異常な事態というのが現状の中にはあると思います。
 ですから、それを我が国としては、ここで、基本的な物の考え方として、そうした自然と共生するというか、自然の中でできたものというようなものではなくて、このまま、なすがままに持っていったら、生産も、そして消費、流通、そうしたことが、私は本当に食というものが、基本的に、何かを検査したり、農薬を使う、使わないという以前に、健康な食物というもの、健康な畜産というものが本当に得られるかどうかという方向性を、農水省も内閣も、これからの食というのはどういう方向でやるのかということが私は非常に大事だ。
 そういう意味では、私は、今の方向には少し歯どめをかけたりというような努力が必要で、また、むやみに何でも歯どめをかければいいというのではなく、これはかくかくしかじかでだめです、こういう方向に食というのは持っていきましょう、自然との関係はこういうものにしましょうという、そうした理念というものを私はこの基本法案というものの論議の中でやるべきだというふうに思いますが、今の方向は異常か異常じゃないかというような二者択一では答えにくいんですが、今のような問題意識で、どのように食というものの安全とか食そのものについてお考えか、お聞きをしたいと思います。
谷垣国務大臣 答弁原稿も何もない質問を太田先生にぶつけていただきまして、この問題は、しかし、先ほど私も今の食料を取り巻く環境が昔と大きく変わっているということを申し上げましたけれども、やはり一種の文明論みたいなところもございますし、環境論みたいなところもございますし、それから、我々の地域、地域でどう人が生活しているのか、また生活していかねばならないのかといったような問題もみんな含んでおりますので、一刀両断にばさっと切ることが実はなかなか難しい問題だというふうに私は思います。
 しかし、委員のようなお考え、いろいろな形でそれぞれ運動になっていると思いますね。やはりできるだけ自分の地場で食べるのが一番おいしいじゃないかというような運動もあったり、あるいは有機農業というものをもっと推し進めようじゃないかという運動であったり、いろいろな運動がそれぞれの意味を持って展開されておりまして、私はこれは、自分が今食品安全担当ということを離れまして、一人の人間、一人の政治家として考えますときに、やはり自然との共生というようなことを考える必要があるなということは痛切に私も思います。
 しかし、では現実に、今私がこの法案を提出し、与えられる職責から考えますと、やはりそれはまず、今のおっしゃったようなことを全部、では基本法案だといって書き込むことはなかなかこれは難しゅうございまして、やはり科学的な手法を確立して、安全なものと安全でないもの、危険性がどのぐらい、安全性、全く問題ないものというのはないんだろうと思います。私はそばが好きでございますけれども、そばを食べてもそばアレルギーで非常にひどい目に遭うという方がいらっしゃるわけですから、やはりそういう、どれだけ人の安全性に影響があるかということを科学的に評価するシステムを確立していく、そこから始めるのかなとは思っておりますが、委員の問題意識は、やはりみんなで受けとめて考えていかなきゃならないことだなと思います。
太田(昭)委員 そうした生産、消費、流通という各段階の大きな変化とともに、やはり遺伝子組み換えであるとかゲノムとかあるいはクローンとかサプリメントとか、さまざまな大きな変化というのがあるわけで、私としては、そういうことも含めた幅広の、翼を広げた形の食品安全ということについての体制というものにぜひとも踏み込むようにお願いをしたいというふうに思っております。
 さて、具体論で申し上げますと、この二年ぐらいに起きた事件、不信感を払拭するという、私は二つあると思うんですね。牛肉偽装事件を初めとする企業のモラル、こうした問題をどうするのか、そして二番目には、基準以上の農薬とか、認可されていない添加物とか、使ってはならない組み換え品種など、消費者に健康被害を及ぼす事件、この二つに分けられると思いますが、これがこの二年間の中に大きく起きてきた。これに対して、今回のこの基本法並びにそのほかの法案について、ここで論じていいのかどうかわかりませんが、私はセットで、どういう形でこれらの二年間の事件、大きく分けると二つに対して対応するという体制が今回の法律でできるのかどうかということについてお伺いしたいと思います。
谷垣国務大臣 他省庁の法案まで私、十分答弁する用意、能力はございませんけれども、先ほど申し上げたように、今の食料を取り巻く状況、私は三つ申したわけですが、グローバライゼーションとか、そういうものに対応していくやり方が、一つはリスク分析の手法である。そういう中で、それぞれが役割、ふさわしい省庁の体制をとり、そして消費者や何かとの対話、情報の共有、こういうことを繰り返して、外部の風も入れながらやっていこうという体制で、私は体制はこれで一応できるんだと思います。
 しかし、今おっしゃったモラルの問題ということになりますと、これは法律を一遍つくったからモラルが急によくなるというわけでは、なかなか難しいところが正直言ってあろうかと思いますが、今度の法案は、やはりそういう意味でのモラルの基礎となることを幾つか入れていると思います。
 一つは、国民の健康が最優先であるということで、いろいろな施策を進めていくんだ、それが基本認識だというのは、やはりモラルの根源だろうというふうに私は思います。
 それから、先ほど来の御議論ですけれども、役所もそれぞれの職責というものを明確に分析して、明確に分担して、それぞれお互いにいわば緊張感を持ってやっていくということも、役所のモラルという意味で私は大事なことだろうと思います。
 それから、提供する、いわゆる業界と申しますか、生産から流通まで、国民のテーブルに届けるまで、それぞれの業者がまず安全なものを提供する第一義の責任を負うんだということも明記している。
 そして、国民も、ただ受動的にいればいいというわけではないんだと。先ほど委員がおっしゃった、形のよいものでなければだめだとか、いろいろな意識がございますけれども、やはり明確な、安全性に対する、あるいは食料問題に対する認識を持って国民も臨んでいただくべきではないか。
 そういうような職責を明らかにしていくということで、モラルの確立に向けても、私は、基礎はこれで一応提供しておるので、あとは、これはもう先ほどの繰り返しになりますが、こういうものをいかにうまく運用して仏様の魂を入れていくか、こういうことかなと思います。
太田(昭)委員 安全については担当大臣でもあると思いますから、そういう点では、モラルも含めてしっかりお願いをしたいというふうに思いますが、食品安全委員会のいわゆるリスク評価ということで、まず、これはデータの収集というのがしっかり行われるのか、その体制は一体どうなっているのか、これが一つ。
 それから、その分析ということなんですが、絶対に客観性というのを担保しなくてはいけない。この客観性の担保というものが極めて大事なんですが、初めに方向ありきでは当然ないと思いますが、私は、そういう客観性の担保というのは非常に大事だ。
 それから同時に、昔、低線量被曝問題を二十年ほど前に私は扱ったことがあったりしまして、食品というものの、ADIといいますか、そうした、いわゆる一般でいえば閾値と、こういいますが、どこまでならという、微量であっても影響が蓄積されてあるという判断か、そうではないというものなのか、そういう閾値とか、あるいは、私、昔、学生時代に耐震工学を専攻していて、大学院の時代に、谷垣大臣のふるさとの京都の山科のあたりで、それでいわゆる発破をかけた。そうしたら、それが振動が起きる。その振動というものを調査して、それが果たしてその地域の人に対して受忍限度以内のものかというような測定をしたことがあるのですね。非常に難しいのですよ。難しいのですよ。病人にとりましては耐えがたい。一般の人では気にならない。それをどういうふうに判断するかという、そうした、この食品の問題も、私は、単なる客観性の担保というけれども、その閾値とか受忍限度とか、そこのあたりの物の考え方というのはきちっとしておかないと、何のためにやったのか。
 大畠さんが先ほどおっしゃったけれども、私も、ペーパードライバーみたいな学者に任しちゃいかぬ。同じデータが出ても、ある学者はこう判断し、これは受忍限度内だなと。私の学生時代のそういう経験でも、どうでも判断できるという部分が、ある意味ではそこのグレーゾーンが存在する。そうしたことが、この七人の侍によってびしっと決まるかどうかということの中にも、私は、消費者の観点というのは、まさに、この体の弱い人はどう受け取るかというようなことも含めてやらなくてはいけないというふうに思うものですから、自分の経験も含めて、閾値とか、あるいは受忍限度とか客観性とか、そしてデータの収集性、こういうものについて、私はきちっとした体制をとらなくてはいけないと思いますが、その点、いかがでしょうか。
谷垣国務大臣 リスク評価に関してのデータの客観性と申しますか中立性の問題と、それから、その判断のときに非常にデリケートな難しい問題があるのではないかということでありますが、あとの点は非常に科学的なことで、必ずしも私がうまく御答弁できるかどうかわかりませんので、事務局から答弁をさせますが、安全委員会が行うリスク評価の基礎となる必要な資料、そのうち毒性試験といった科学的データについては関係行政機関にデータを求めるということになるわけですが、必要な資料が提出されない場合や委員会みずからがリスク評価を行う場合に、委員会みずからがデータを用意するということも考えておりますし、それから、通常は食品安全委員会からいろいろな研究機関に、国立の場合もありますし、民間の場合もあると思いますが、調査委託等をするわけですけれども、緊急時の場合は国の試験研究機関に対して要請を行ったりすることができる。
 これは、国の機関が国の機関に要請する場合には、その所管大臣を通じて要請するというのが普通でありますけれども、緊急時には大臣を飛び越して、安全委員会が直に何々省の研究機関にもこれはどうだというような、これは日本の行政の仕組みとしてはある意味では非常に珍しい仕組みだろうと思います、そういう手法。あるいは、もちろん大臣を通じてやる方法もございますが、そういうことによって必要なデータは集められると思っております。
 それから、特に国内のデータだけではなくて海外のデータも必要でございますから、これは事務局に情報の収集、分析をする一つの課を置きまして、内外の学術誌やいろいろなリスク管理機関等の情報を収集させるということにしております。
 そうすると、問題はデータの信頼性と評価の中立性をどうするかということでございますけれども、きちっとしたところに依頼しますと、先ほど先生はなかなか難しいんだということでございましたけれども、きちっとしたデータが出てくるということを前提に想定しておりますけれども、しかし、こういうデータの信頼性とか妥当性について、やはり委員会において疑問に思うという場合も当然あるだろうと思います。その場合は、データの信頼性の確認を委員会として行わなければならないわけですが、これは、七人の委員も大部分はこういう科学的な問題の専門家でございますし、専門委員である各分野の専門家の英知を集めるということだろうと思います。
 さっきおっしゃった受忍限度とかそういう問題については、ちょっと私、十分にはお答えできませんので、室長から御答弁をさせます。
小川政府参考人 食品安全委員会が行います影響評価、その技術的なやり方でございますので、私の方からお答えさせていただきたいと思います。
 食品安全委員会が行います評価のときの手法でございますけれども、食品に含まれておりますハザードといいますか危害が化学物質なのかあるいは微生物なのか、その含まれる物質、評価対象によりまして危害、影響が違ってくるわけでございます。どのような危害でありましても、データ集め、それからアンテナを高くいたしまして、その時点におきまして国際的に到達しております水準の科学的知見に基づき、客観的に評価をやっていきたい、努めたいというふうに考えております。
 事例を申し上げますと、農薬や添加物の成分となります化学物質でございますけれども、このリスク評価を行います場合の標準的な手法について御説明させていただきます。
 まず、実験動物を用いまして毒性試験結果を得ます。その結果から、その化学物質が有害な作用を示さない最大量、無毒性量といいますが、悪さをしない最大の量というものを設定いたします。その次に、この値を、無毒性量を、人と実験動物、実験動物の毒性試験の結果でございますので、人と実験動物の種差、それからその種の間での個体差というものを考えまして、安全係数、先生の御指摘の安全係数というものが用いられてございますが、その安全係数でもって無毒性量を割るわけでございます。これを、先ほどお話がございましたADI、一日摂取許容量ということで出すわけでございまして、認められるような健康上のリスクがそこに伴わない、人が生涯にわたって毎日摂取できる体重一キログラム当たりの量として設定をしたい、そういうふうに考えているわけでございます。
 いずれにいたしましても、専門家委員及び専門調査会のメンバーの方々の英知を結集しまして、先ほどの御指摘の客観的、また標準的な作業というものに努めていきたいというふうに考えております。
太田(昭)委員 時間がなくなりましたので、最後に簡単に、リスク管理ということについて、縦割り行政の弊害ということをここで除去できるという体制が果たしてできているのか。それから、その取り組みが各省庁が不十分なときに、食品安全委員会はどういう対応をとるのか。そして、リスクコミュニケーションという、そうした立場からいきますと、食品安全委員会、厚生労働省、農水省、こうしたところにまたがるコミュニケーションというのは私はちょっと弱いという感じがしてならないわけでありますが、パブリックコメントや食育とかさまざまなことについて具体的に展開をしなくちゃいけないというふうに思っておるわけですが、これらのコミュニケーションをどのように総合的に進めていくのか。ちょっとまとめてでありますが、最後の質問にさせていただきます。
谷垣国務大臣 手際よくお答えできるかどうかわかりませんが、まず、縦割りを乗り越えられるかどうかでありますけれども、これは十五条で、関係行政機関の相互の密接な連携ということをうたっております。
 それで、これは具体的には、農薬取締法とかと畜場法など関係各法の中でもさらに具体的な、何々大臣と何々大臣は密接に連携せよというような規定があって具体化されているところでございますけれども、具体的な連携のあり方については、この法律に基づきまして基本的事項というものを政府が決めるわけですけれども、その中で、国の関係省庁間、あるいは国と都道府県、こういったものの連携を定めて、それから、我々の委員会でいえば、農水省であるとか厚生労働省との間でどういう取り決めをしていくかというようなことを締結してこれを公表する、こういうようなことを今考えておりまして、連携の確保というものに意を用いていきたいと思っております。
 それから、食品安全委員会がきちっと科学的に危険性というものを評価したときにそれが生かされるかどうかという問題は、これは先ほどからも御議論になっておりますけれども、評価をした場合には、それを関係大臣に通知しなければならない。それから、さらに必要な場合には内閣総理大臣を通じて勧告をする、そしてそれはまた公表しなければならないということになっております。勧告を聞いたときは、関係大臣はその勧告に基づいて施策をして、それを委員会に報告しなければならないということになっておりますし、先ほどから申し上げておりますが、さらに、それが十分でないと思ったときは再度の勧告をすることもあり得るという体制でありますから、それを同時に公表していくということでありますから、私は、こういうものを適切に使えば、省庁間の縦割りでうまく物事が進まないということは克服できるというふうに思っております。
 それから、リスクコミュニケーションが大変重要で、それを具体的にどうするかというお問いかけでございますが、食品安全委員会では、自分のやっているリスクの評価に関してコミュニケーションを行うというだけではなくて、関係行政機関が行う食品安全に関する関係者相互間の情報や意見交換について、事務局の役割も食品安全委員会が果たさなければいけないことになっておりますので、いろいろなやり方があると思いますが、まず、ホームページやいろいろなものを通じて、国民、消費者、先ほどのお話のように生産者という場合もあると思いますが、施策の内容や評価の内容をまずわかりやすく説明していくという努力が基本的に必要だろうと思うんですね。
 それから、どういうふうにそういう関係者間の話し合い、コミュニケーションを持っていくかということに関しては、リスク管理機関、農水や厚労省との調整も行わなければならないと思いますし、それから、意見交換会というような、これは消費者が参加したり関係機関が参加したりするというような意見交換会を行うとか、さらには諸外国とどういうふうに交流をしていくのかといったような点もいろいろこれから検討していって、やはりそういうことを通じて、先ほど、専門家はどうもおかしなことがあるという御批判もありましたけれども、外の風を十分に当てられるような工夫をこれからしてまいりたい、こう思っております。
太田(昭)委員 ありがとうございました。
佐々木委員長 以上で太田昭宏君の質疑は終了いたしました。
 次に、西村眞悟君。
西村委員 自由党の西村です。
 大臣の担当で、今の法案とは違う分野のことについてから質問を始めたいと思いますが、まず、北朝鮮の日本人拉致について、アメリカの、これはアーミテージそれからモリアティ、国防、国務両省の幹部ですからアメリカ政府の見解と言ってもいいんですが、これは明確にテロであると言っているわけですね。核の問題と同等に処理しなければならないテロであると。
 さて、我が国の川口外務大臣は、テロの定義はない、したがってテロであると言いにくい、法的に詰めていくと難しいと言って、テロであるかどうかの言明は避けておるわけですな。
 しかし、そもそもテロかテロでないかという問題は、定義があって言っている問題ではない。定義がないから言えないと言った外務大臣自身が、記者会見で、外務省の構造改革の発表の際にも、テロの問題、拡散の問題、環境の問題、いろいろありますので、そういった意味で新しい国家的枠組みの構築というのがあります、外務省はこういう問題に対処しなければならないという外務省の改革の問題を語ったり、また、大量破壊兵器がテロリストの手に渡る、こういう世界は続くだろうと記者会見で語ったりしている。定義がないから言えないと言った外務大臣自身が、テロの問題、テロリストという言葉は使っておるわけですね。
 さはさりながら、被害者の家族は、テロという言葉を用いた場合に、国内社会また国際社会でそれと闘わねばならない、そういうことを許してはならないという前提を持っておるので、アメリカでテロという言葉であらわされた日本人拉致というものを、日本国政府もともに、この問題は二度と起こしてはならないんだ、こういう問題を起こさないような体制にしなければならないんだという決意を固めていただく意味で、テロという言葉にこだわっておるわけでございます。
 そこで、国家公安委員長にお伺いしたいんですが、警察では、北朝鮮による日本人拉致をテロと認定しておりますのかどうか、そして、アフガニスタンやイラクへの対応と同じように、国際社会と協力して北朝鮮の拉致を解決するための努力をする御意思があるのか否か、これについてお聞きいたします。
谷垣国務大臣 川口大臣は、テロリズムについて、国際法上確立された定義が存在するわけでないとおっしゃったということは私も承知しておりますし、私自身も、どういう定義があるのかなと、定義自体はまだ十分ではないのではないかというふうに思います。
 理屈をこねますと、要するに、先ほど委員もちょっとおっしゃいましたけれども、テロだと認定をした場合に、ではどういう、法律効果と言っていいのかわかりませんが、やはりどういう効果が生ずるのかという問題なんだろうとこれは思うんですね。
 そこで、法的な見解というわけでは必ずしもありませんが、お尋ねの北朝鮮による日本人拉致というのは、国民の生命身体に危険を及ぼす、そういう意味で治安上極めて重大な問題である、こういうふうに考えますと、これはやはりテロに含まれ得るものというふうに私は、私はと個人で申し上げているわけではなくて、警察としても、国家公安委員会としても認識しているわけであります。それで、平成十四年版の警察白書でも、日本人拉致容疑事案について、「北朝鮮による国際テロ等」という中に記載をしているわけであります。
 いずれにせよ、警察は、北朝鮮による日本人拉致容疑事案について、今後とも、関係者と密接な情報交換、関係各機関ですね、機関だけとも限りません、機関等と協力して、緊密な情報交換を行いながら、必要な捜査を最大限の努力をもって行うべきもの、また行わなければならない、こう思っております。
西村委員 要するに、外務省というものは、日本人の拉致の問題を、国際社会と協力して立ち向かわねばならない問題であると表明するのは嫌なんですな。極めて反国家的な官庁ですな。その官庁の大臣と閣僚席を同じくする、行政権は内閣に属するの内閣の一員でありますので、こういう反国家的な官庁と同席するのを潔しとせず、外務省の認識を変えさすべく、国家公安委員長として御努力いただきたいと存じます。
 さて、次は、北朝鮮による拉致被害者に関する情報の収集についてお聞きしますが、今、反国家的官庁であると。川口さんなどは、もとの酒屋の社員に戻っていただきたいんですが、イラクの人間の盾になっている日本人に関しては、今何名がおって、説得しておるから、けれども、説得を無視して何名がおるとかいうことをやっておるわけですね。私から見れば、その者たちは自分の意思で行っているんだから、子供ではなかったら、外務省は別に国費を使っていろいろ説得する必要なし、こう思うんですよ、いろいろな意見があるのが我が日本の姿ですから。
 そうであるのに、外務省は、みずからの意思ではなくて、北朝鮮の国家権力に、国家公安委員長いわくのテロ行為で向こうに引っ張られ、きょうでもあすでも向こうが殺そうと思えば殺せる状態にされている日本人の安否の収集については、全く無関心であると私は思っておるわけですよ。
 外務省に与えられている機密費は、こういう情報収集のために使われるべきである。なぜなら、毎年一万人の在日朝鮮人が北朝鮮に戻り、またこちらに再入国してきているわけですから、彼らが情報の運び屋であるとするならば、機密費を使って、外務省は彼らから日本人の安否と北朝鮮内部情報を収集すべきである、このように思いますが、外務省はしていないようであります。
 そこで、大臣にお聞きいたしますが、我が国が独自に拉致被害者に関して北朝鮮の内部情報を取得する御意思があるか、あるいはそういう作業を既に行っているかどうかについてはあえてお聞きしません。あるということはどうか、お聞きしたいと思います。
谷垣国務大臣 拉致、いわゆる北朝鮮による日本人拉致容疑事案を解明していくために、亡命した元北朝鮮工作員を含む関係者からの事情聴取とか内外の関係各機関との情報交換等、関連情報の収集、証拠の積み上げといいましょうか、そういうことは警察として努めているところでございます。ただ、その具体的な内容については、秘密保持という観点がございますので、お答えは差し控えるべきものと思います。
西村委員 我が国の現体制では、情報は、前も言いましたかどうかわかりませんが、盗むか、交換するか、金で買うか、この三つしかないわけですね。
 交換する、金で買うの話ですが、金で買わねばならないという情報に宝の山があるとするならば、大臣が御努力なさって、私はどういう仕組みでそれができるかどうか知りませんが、予算で、外務省に機密費なんか渡すよりも、警察が情報を金で買う機密費は大量に用意していただかなければ日本人の安全は維持できない、このように思います。
 それを強くお願いしながら、次の質問ですが、これも、本年三月初めに、アメリカの国家安全保障会議のモリアティ上級部長は、今まで行ってきた北朝鮮に対する情報収集の努力を今後強化して、拉致の被害者に関する情報がアメリカに集まれば、日本政府を通じて家族にも伝える、こういうふうに明言してくれておるわけですね。そこで、アメリカは北朝鮮に拉致された日本人の情報を収集して日本政府を通じて伝えると言ってくれたけれども、アメリカは、情報提供対象国の情報管理レベルを必ず点検して、情報がだだ漏れなら情報は提供しない、提供する情報の質と量を露骨に変化させる、こういう国なんですよ。これは当たり前のことです。
 そこで、北朝鮮に拉致された我が国の国民の安全のためにも、アメリカが我が国に情報を提供しやすいように、我が国の情報管理、国家機密保護の体制の確立がどうしても国民の命の保障のために必要だと思われます。
 再度、またお聞きしますが、国民の命の安全のためにアメリカが持っている巨大な情報を我が国が得る必要があるというこの問題に遭遇しておりますから、大臣は、機密保護法、スパイ防止法の制定に積極的にならねばならない責務を負っておられる。単に、食い過ぎれば腹が痛くなるからどうしようという、食品安全も必要ですが、それ以上に、もう一つの立場で、現実に拉致されている人たちの安全の確保のためのスパイ防止法、機密保護法はそれに役立つんだという観点から、この法案を直ちに策定して、国会に諮る責務を負っておられると思うんですが、制定についてはいかがお考えでしょうか。
谷垣国務大臣 アメリカの情報をきちっと得ることが、国民の安全を維持する上でも、守る立場からも必要ではないかというお問いかけですが、必要な連携というものは、アメリカの関連、関係機関との間に日本の警察も行っているわけであります。
 そこで、議員お尋ねの、情報管理が甘ければ向こうも気を許さないではないかということだろうと思うんですが、国家公安委員会委員長としては、捜査上の秘密の保持の観点からも、これは大変大事な問題だというふうに思っております。
 今まで警察では、いろいろな法令を駆使して、情報謀略活動等にかかわる、いわゆるスパイ事件と言っていいと思いますが、この取り締まりをやってきておりますが、その結果、戦後でおよそ七十件の検挙例というものがございます。
 そこで、機密保護法といいますか、そういうものが必要ではないかというお問いかけですが、これはどういう法制にするかということによっても理解がうんと違ってくると思うんです。他方、どういう法制にするかによって、また国民の基本的権利にも大きくかかわってくる問題であろう。いろいろな御意見があると思います。国民の十分な理解が得られることが望ましいわけでございますから、広く国会等の場で議論されることが必要ではないかなと思っております。
 その際に、ではそういう法を仮につくるとすれば、実効性を確保するために警察としてはどう考えるか、第一線の取り締まりに当たる警察の立場から見るとどう見えるかという意見は、我々は申し上げなければならないと思っております。
西村委員 戦後七十件の検挙という努力に関しては、それは報われなかったという意味で非常に残念なんですね。外国人登録証の不所持であるとか、密入国であるとか、あるいは執行猶予、あるいは起訴猶予で放さざるを得なかった。その者がいかなる目的でそういう所為をしたことは全く関係なく、それによって戦後日本人が、我々の推計では百名を超える数が拉致されて、その人生がずたずたになった。それが国民にわからないものですから、国内ではのうてんきに人権擁護、人権擁護と叫んでいながら、拉致問題が最大の人権侵害であるということについては、政治も社会もマスコミも全く知らないできた。
 これは、本当に残酷なホロコーストですな。無知によって人間が残酷になれる日本国は残酷である。平和を望み、人権を望むという日本国が、まさに最大の侵害を見て見ぬふりをしてきた、こういう国家は道義的に許されないと私は思います。
 したがって、どうしても我々の世代で、個人の情報保護が必要なら、国家があって個人の権利が守られるということは、拉致事件が最大のいわゆる教訓を残してくれているわけでありますから、個人の情報保護も必要なら、それ以上に国家の情報保護が必要だという認識がなければ、アンバランスであり、無責任であると思います。
 さて、正田邸取りつぶしの問題、これはかわった問題の最後になりますから、質問の最後になりますから。
 内閣総理大臣は天皇に任命されるんですね。谷垣大臣は総理大臣に任命されたんですね。そして、天皇に認証されたんですね。我が国家の内閣の体制は、天皇の存在と密接不可分ですな。
 さて、私は、正田邸を取り崩すのが、正田邸に価値があるのかないのか、これを大臣には御質問いたしません。ただ、十万の人間がわざわざ署名して、旧正田邸を残していただきたいと言い、日本建築学会が正田邸は特に保護すべき優秀な作品であるということを言っておるということを申し上げるだけにとどめますが、あなたを大臣に認証された方の、我々の言葉で言う奥さんの実家が解体される場合に、解体業者が、質問取りに来た方には写真を見せておりますが、解体作業のナンバープレートにガムテープを張って、周辺の住民にわからなくして解体をしている。これは異様だ。なぜこういうことまでして解体をするのか。国有財産の管理をする財務省は狂っているのかと。
 私に言わせれば、バーミヤンの石窟を破壊したタリバンと同じなんです、今、正田邸を解体している財務省の役人は。国民が価値があると思っている国有財産を、価値がないと自分で独断して解体車両のナンバープレートまで隠して解体を急がしているわけですから、これはアフガニスタンのタリバンと同じなんですな。
 しかし、法治国家としてこれは許せますか。皇后陛下の御生家、つまり、ある意味では国民に、解体するにしても惜しまれて、本当にさよならのパーティーを開いて、静々と我々の視界から去っていくべきものを、覆面をした解体業者がナンバープレートを隠した解体車両に乗ってきて強引に解体していく、これは文明国で起こるべきことでもないし、法治国家でも起こるべきことではないのです。解体業者に、運転手になぜナンバープレートを隠すのだと言ったら、財務省の指示で隠しましたと言うんですよ。この真偽はここでは申しませんが、真偽を調べて、法治国家にあるまじき皇后陛下の御生家の解体をやっているこの事態に対して、公安委員長としての御意見をいただきたいと思います。
谷垣国務大臣 今、トラックがナンバーを隠ぺいして通行した、解体作業に従事しているトラックがナンバーを隠ぺいして通行したというお話でございますが、これは、三月二十六日の午後六時ごろ、旧正田邸の解体作業に従事しているトラックがナンバーを隠して通行したという通報があったというふうに承知しております。
 これは警視庁の所管でありますから、警視庁が事実関係を調査した上で適切に対処するものというふうに考えております。
西村委員 本法案の質問に移らせていただきますが、私自身の不勉強もこれありまして、本法案に関しては、非常に質問しにくいという印象を受けております。
 その理由を見ますと、二つの可能性がある。本法案は非常によくできておるので質問の余地がない、これが一つ。もう一つは、本法案が通っても通らなくても何が変化するのかわからない、だから何を質問していいのかわからないということですね。
 その理由は、本法案が望んでいるのは国民が食べる食品の安全性の確保であろう、そして現状では不十分だという問題意識は持っているんだろう、これは本法案が提出されたということ自体でわかります。わかりますけれども、では、それを具体的に、安全性を増進さすためにいかにすべきかといえば、私の意見からすれば、各機関の責任を明確化させること、責任を明確化させずして未然に食品被害を防止するすべなしと思うわけです。
 しかしながら、この法案で責任が明確化されておるのかどうかということについては、これは質問しなければわからないのでこれから質問いたしますが、字句が非常に抽象的であるということについて、この責任の明確化という問題意識が、切っ先がとがっているのかとがっていないのかということが少々わからないなという感じがいたします。
 例えば、アメリカは肉骨粉の輸入を禁止しておりました。しかし、日本の農水省は承認して、十万トンをEUから入れました。これが失政である、ここにミスがあったということはわかっておるのでございます。本案で、仮に本案が当時存在したとして、失政と指摘されたこの段階で、いかなる責任が明確になり、いかなる責任追及が可能なのかということについて、大臣、お答えいただけますか。
谷垣国務大臣 私も頭を切りかえて、食品安全の方の御答弁を申し上げます。
 この法案が通った場合、BSE問題でどういう責任がはっきりするのかというお問いかけですが、これは過去にさかのぼって責任を発生させるというたぐいの法案ではありませんで、今後どういうふうにすれば安全性が確保できるのか、そのための関係機関の職責は何なのか、あるいは事業者の職責は何なのか、国民は何をすべきかということを定めたわけでありまして、ちょっと委員のお問いかけに正面からお答えすることは難しゅうございます。
西村委員 法案審議にはやはりケースメソッドというのが必要なんですね。判例学習というのが必要で、判例学習なき法律学習はないわけです。これは別に社会的な、哲学の訓練とか論理学の訓練をしているわけじゃないですから。
 だから、この法案が存在して、そして今、肉骨粉がEUからどんどん入ってきている、こういう状態を想定すればいかなることができたのであろうか、狂牛病発生が防止できたのであろうか、こういうことをお聞きしているわけです。
谷垣国務大臣 全く今まで経験していない食品から生ずる病なり健康被害というものが生じたときに、今まで知見がない場合、直ちに対応できるかどうかということは問題があろうかと思いますが、肉骨粉の場合には、海外においては肉骨粉を飼料として使用することの問題性はつとに指摘されておった。現実にBSEの問題が起こって、それぞれの国で対応に非常に苦慮されたという例があったわけでありまして、そういう知見がありながらそれを十分に生かせなかったということは、日本の場合に現実にあったわけであります。
 そうすると、この法案で何ができるかということになりますが、なぜそれができなかったのかという過去の例を顧みての反省点は、要するに、産業振興をやる部門と科学的に危険を判定する部門、そういうところがいわば混然一体としてやっておったことに問題がある。こういう認定のもとに、それぞれの職責ある役所を分離しよう、こういうことでありますから、現在でありますならば、そういう海外において科学的知見がある、いろいろな例もあるという情報があった場合には、現実に日本に問題のあった過去の時点に比べて、より臨機な対応がとれる体制になっているというふうに私は思います。現在、この体制のもとであるならば、そういう知見をもとにしかるべき手が打てたであろうというふうに思います。
西村委員 それを明確におっしゃっていただければ、私はこの法案の意味はわかります。アメリカが肉骨粉輸入禁止時点、もしくはそれより以前に、この法律があれば我が国は禁止できたんだということなら、この法律の存在意義はある。ただ、食肉産業保護の行政が同時に国民の健康を保護すべき責務を果たさせるには無理があるから、この法案をつくるという前提、そういう前提があるので、当時の農林省の輸入を漫然と十万トン入れ続けた者たちの責任が免責されるということにはならない。
 これは、高速道路で、百キロで目的地まで走行する業務車は、同時に、前方に人間がいるかどうかを注視して、前方の人間をひき殺さないように注意する義務がある、これは一般市民なら当たり前のことなんです。食肉を入れ、人々の口に欲する肉が供給されるようにすべき業務を負っている者は、同時に、毒を入れてはならない、当たり前の話なので、これからそういうことは繰り返しがたい体制をこの法律でつくりますよと言われる前提に、過去を不問に付してはならない。過去を不問に付せば、注意義務違反はとめどなく生まれ、その注意義務違反が生じるたびに我々は基本法の審議をしなければならないということになるのではないかなと思います。
 私は、責任の追及は追及として、当時も注意義務を果たせば、人の安全を確保するわけですから自動車運転者の注意義務を果たせばと言いましょうか、肉骨粉は入らなくて済んだんだというふうに思っております。そういう私の前提からすれば、この法案の存在意義はないなと。だから、質問しにくいなと思っているわけであります。
 そこで、消費者の役割、責務とは書いていないから役割なんでしょう。これは、消費者を主体として位置づけているのかな。主体ではなくて、何か役割はあるんだと。ともかく、さはさりながら、消費者は知識と理解を深めること、施策について意見を表明するように努めることによって、安全の確保に積極的な役割を果たすと書いてある。いかにして、例えば、やせ薬を飲めば下痢が激しくなって何か体に脱力感が出てきた、こういうふうな消費者は、どこに、この法律によって、何か意見を表明する場所とか、それによって積極的に役割を果たすような意見の表明、そしてそれに対する応答が何か新しく生じるわけでしょうか。
谷垣国務大臣 この法律はいわゆる基本法というものでありまして、具体的な権利義務というのをこれによって直ちに設定するといいますか、そういう構成には必ずしもなってないわけですね。ですから、今、消費者が主体として位置づけられているのか、役割なのか、権利なのかということをおっしゃいましたけれども、そこらあたりは極めて法律的な権利義務として構成されているわけでは必ずしもありません。
 先ほどからいろいろな委員との御議論の中で申し上げているように、行政は行政としてそれぞれの役割をきちっと果たさなければいけない。しかし、私が委員の認識と若干違いますのは、確かに、行政であろうときちっと注意義務を果たしていれば防げたかもしれない、それは私もそう思います。
 しかしながら、行政を取り囲んでいる日本の食料の状況というのは、先ほど太田議員に、世界じゅうのどこから入ってくるかわからない、それから科学技術も進展して、今までにないような薬が使われたり何かする、場合によっては遺伝子組み換えということもあるだろうと。それから、大量消費、大量生産というようなことで、これも技法の問題としてもありますけれども、やはり、食品をめぐる環境が大きく違っているときに、単に注意義務を尽くすということだけで防げるのだろうかという問題意識もこの法案の背景にはございます。
 そういうことをやっていった場合に、行政も、それぞれの責任をきちっと明確に把握し、それぞれの持っている権限を明確に把握して職責を果たさなければならないことはもちろんでございますし、幾ら行政が頑張ったところで、肝心の食品の生産や流通に携わる人たちが信念も使命感もなく仕事をしておられるというようなことであれば、これは幾らやったってできるはずがありませんから、当然、食品の供給に関連する方たちの使命感というものも必要でしょう。
 それから、消費者は、ここに役割と書いてございますが、単に机の前に並べられた食品を受動的に口にすればいいというものではないですよ。やはり、健康な食品というものはどういうものなのか、食品に対してどういう問題意識を持って接すればいいのか、そういうあたりの、広く言えば教育だと思いますが、そういうものがなければ、かつてのような牧歌的な時代の食品生産と大きく変わってきた現代において食品の安全は確保できない、こういう問題意識に立つものでございます。
 ちょっと委員のお問いかけに対して迂遠な答えになったかもしれませんが、そういう認識のもとにこの法案はつくられているというふうに考えております。
西村委員 繰り返しの質問になるかもしれませんが、これは各段階で、例えば中国野菜残留農薬問題、それから今の例のやせ薬という健康食品が入ってきて、輸入の段階があって、流通、販売の段階があって、使用の段階になる。さっきの繰り返しですが、この法律で、国の責任、流通、販売の事業者の責任、消費者の役割、これをプロセスに分けてわかりやすく説明していただければイメージがわくのですが、この安全基本法の枠組みの中で。
谷垣国務大臣 今、海外から輸入された食品を例にお挙げになった、あるいは健康食品のようなものも例にお挙げになったと思うんですが、海外で生産されている食品、日本の行政機関が海外に直接行って規制権限を振るうということはできませんので、通常の場合は水際をどうするかということになってくるだろうというふうに思います。
 つまり、入れるときの、まずここで、第一義的に輸入業者がやはりきちっと自分が輸入するものの安全性というものに対して的確な認識を持ってもらわなければなりませんし、定められた基準値を超える食品を承知して輸入した者は食品衛生法に基づいて責任を問われるということがあると思います。
 それから、検疫というものがあるわけですね。そういうものでおかしなものが入らないようにするということがございます。
 もっとも、先ほど、外国まで行って検疫をするというような、日本の行政が権限を振るうことはできないというふうに申し上げましたけれども、例えば野菜、食品なんかでミバエとかああいうものの弊害が予想されるような場合には、日本の検疫の担当者がそこへ出かけていって、日本へ輸出するものについてあらかじめ検疫をするというような場合ももちろんあるわけでございますけれども、通常は輸入食品の場合にはそういう水際でございますから、やはり輸入業者の調査それから検疫、こういうことになろうかと思います。
西村委員 そこで、具体的に国の責務ということについていいますと、施策を総合的に策定、実施するということでありますから、危険な農薬が残留している野菜についての国の施策は、本件に関しては輸入禁止だ、この輸入禁止の施策をとっていない国の責任は結果責任として追及し得る、こういうふうにこの基本法は定めておる、具体的に事例に適用すれば。
 事業者はそういうものを、事前に危険な残量農薬があるものを輸入してはならない、これはもうもちろんですが、先ほど大臣自身が認められたように、それのみに期待することはできないんだ、役所も、農水省だけに期待することはできないんだ、この基本法における安全委員会が必要なんだとおっしゃった前提からは、国が最終的な最大の責任を負う。この場合は、輸入禁止だ、輸入禁止の措置をとらなかった国は責任を追及されるんだ、その立証責任は国に移転して、国は無過失の立証責任を負わねばならない、こういうことになるんですか。
谷垣国務大臣 今の点に関しては、ある地域で日本では使用が許されないような農薬を使って農産物を生産している、あるいは使用が許されていても、日本ではそこまで使ってはいけない量を使って農産物を生産しているということになれば、輸入禁止の措置をとることができるわけであります。
 これは食品衛生法の改正で定めていただいたわけでありますが、問題は、今おっしゃったように、その情報が入手できなければなかなか実効ある措置はとることができませんし、そういう情報が入手できない場合に、今委員がおっしゃるように、無過失、無限定の責任を負うというのも、なかなか実は難しゅうございます。したがいまして、やはりこれは諸外国との情報の交換というようなものを熱心に行うことが必要なんだろうと私は思います。
西村委員 私がお聞きしたのは、被害者の救済という観点。あの加工食品なり、もう世界から物が入ってくるという中で、結局、消費者が被害者になっていく、我々も含めて。そのときに、いわゆる行商のおばちゃんから購入した、おばちゃんが悪いものを売ったと言っても、資力がない。そこで、この法律ができて、安全委員会があって、そして第三者として、輸入を促進する行政でもなく、国民の食生活に大量のものを輸入する責務を負った行政でもなく、そこから離れた第三者が安全性を確認する体制を、基本法体制をつくりましたと言う以上、国は、いかなる注意義務を払ってもその危険性を予見することはできませんでしたという証明をするまで責任を負わねばならないというふうな効果をこの法律は与えるものなのかどうかですわ。
谷垣国務大臣 この法律は、国の責務として、食品の安全性の確保に関する施策を総合的に策定、実施しなければならない、こうしておりますが、これはいわゆる基本法ですので、直接に国民の権利義務にかかわる事項を盛り込むというような形には必ずしもなじんだ法体系になっておりません。むしろ、そういう言い方が適切かどうかわかりませんが、あえて言えば訓示規定みたいなものになるだろうと思います。
 したがいまして、今委員が、いかなる予見可能性もなければというふうな表現をされましたけれども、例えば国賠法訴訟が提起されたようなときにこの法律がいかなる裁判規範として働くかということは、今行政にいる私どもとしては、一義的になかなか申し上げにくいところがございます。裁判所においてこの法がいかなる法規範性を持つかという、裁判所の判断にまたなければならないところがあるだろうと思います。
西村委員 責任を負うということは、文字どおり責任を負うことであって、業務に心棒が入りますわな。ある意味では、日本国民が日本国内で口に入れるものの安全については、国家が原則として責任を負うと。そうなら、いかなる現時点における科学的知識を総動員してもそれは予見し得ないものであったということを国家が証明しろ、というのは消費者から見たら言いたいところですよな、そのための行政組織をつくるわけですから、安全保障。
谷垣国務大臣 ちょっと、そこは委員の御認識と私が若干違って考えておりますのは、もちろん、国民の安全を確保するために、これだけ大量に生産されて、世界じゅうから集まってきて、大量に消費される、そういう食品に対してどうやって安全を確保できるか、そのための最適な行政はどうあるべきかということを考えてつくったわけであります。
 しかしながら、現実に生産をし、輸入をし、そういう方々がやはり一番情報はある意味で豊富に持っているわけでありまして、先ほどから、それぞれの権限なり責任なり役割ということを申し上げました。それぞれがやはり権限と役割を担っているんだろうというふうに私は思います。全部国家が、第一義的にすべての食品の安全性に万全の責任を持つという、これは、そう口で言うことはあるいは簡単かもしれませんけれども、なかなか、先ほど申し上げたような大量消費、大量生産、世界じゅうから輸入されるという状況では難しい。そのために最善の手法はどうしてとり得るかという法体系になっている、私はこういうふうに考えております。
西村委員 まあ、結局、質問しがたい理由が案外わかってきた。この法律が通っても余り変われへんということですな。
 ただ、大臣、我々国家行政組織、気宇が小さくなったね。我々は、世界で一番豊かな食生活を楽しむ、申しわけないですが、楽しむ国になった。したがって、今後、世界の人が口に入れるものが安全か、量はこれだけにしたらいいのか、将来、漫然と食べていたらこういう障害が起こる可能性があるのか、日本は国家の意思として世界に提供しますよ、その志を決めたんです、こういうふうな壮大、強力な行政組織を発足させる、そのための基本法だと。世界から称賛されますよ、世界から。
 一部の、ヨーロッパかスイスかでやっている何かバイオの会社が、ばかもうけするための薬もねらうわ、食品もねらっているわけですな。この暴れ馬の手綱を引いて、我が日本の目の黒いうちは、おまえたちが金もうけ本位で、多国籍企業になって、子供の味覚を撲滅しつつ、子供の骨の発育を阻害し、なおかつ、子供が麻薬のように親にそれを食いたい食いたいとせがむような食品は日本がいる限り許しませんぞという、壮大なやはり志を持たなあかん。毎日食うているものの安全に関しては、そこまでやらないかぬと思いますな。
 時間がなくなってしもうた。どうですか、何か。それで、やはり気宇が小さ過ぎる、行政組織の。
佐々木委員長 お答え、必要ですか。
西村委員 いや、お答えされたいみたいですから。委員長の采配で許しますか。僕の時間はなくなったんです。
佐々木委員長 では、時間が来ていますから簡単に。
谷垣国務大臣 壮大な気宇を持てと叱咤していただいたわけですが、私は、政治の場あるいは行政、壮大な気宇を持つことも大事だと思います。しかし、国民が、みずからの食べるもの、安全は自分も関与して守る、こういう気概もともになければならないと私は思います。
西村委員 だから、国民が税金で運用させているあなた方の組織がその志を持つことが、日本国が世界から称賛されること、国民が世界から、その責務を果たしたと、日本人の存在が高くなることです。
 済みません。
佐々木委員長 以上で西村眞悟君の質疑は終了いたしました。
 次に、吉井英勝君。
吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。
 私、食品の安全についての国の責務と消費者の権利という問題について質問したいと思います。
 この法案は、国の責務について、「基本理念にのっとり、食品の安全性の確保に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する」と、要するに、一般的に規定しているだけなんですね。本会議でも、谷垣大臣は一般論に終始していたと思います。
 国の責務は、要するに、具体的にどのようなものを考えているのか、このことを最初に大臣に伺っておきたいと思います。
    〔委員長退席、中沢委員長代理着席〕
谷垣国務大臣 吉井委員のやや抽象的なお問いかけですので、どういうふうに答えたらいいか、実は迷っているんですが、国の責務は、結局、BSE等の過去の経験に学びますと、やはり一つは、科学的知見を確立する、そして、その確立した科学的知見に基づいていろいろな施策、管理を行っていく、そして、それを実効的に達成していくためには、消費者そのほかとのいろいろな意見の交換や意見の共有ということが必要である、そういう体制をつくる、そして、そういう体制にのっとって施策を実行していくということが国の責務ではないかと思います。
吉井委員 六条で国の責務、九条で消費者の役割とあるわけですが、九条の方では、「消費者は、食品の安全性の確保に関する知識と理解を深めるとともに、」云々等から始まっているわけですが、私も消費者ですから、特に東京で暮らしているときは自炊をしておりますからね。ですから、やはり安全なものを摂取するように随分神経を使っているわけですよ。大阪の方から、契約栽培をしている、堆肥を中心にして農薬を極端に少なくして、そういうもので安全なものを手に入れるようにしながらも、全部賄えるわけがありませんから、東京の近くのスーパー等でも買うわけです。そうすると、そこには何が入っているかは、これは幾ら安全性の確保に関する知識と理解を深めようと努力してみたところで、まずわからないんです。
 一つ一つの食品で、生鮮食品などで輸入物も随分あります。これは、結局、基準を決めるのも検査をするのも、その仕組みをつくって実際に検査をして、そして食品について我々消費者が安全に供給を受けるということについて、やはりきちんと国がその点での義務を果たしてもらう。そこを確立しないと、消費者の役割というようなことを幾ら言ったって、消費者としては、憲法二十五条から始まって、やはり本当に健康な生活を営む権利、それはもちろん、言葉をかえれば安全な食品の提供を受ける権利であり、そしてどんなものが安全なのかという情報を受ける権利であり、そのことを本当に実現していくために、消費者として参加する権利というものが片方にはきちんとあって、それにこたえて、国の方にはきちんとそれを果たしていく義務というものがやはり果たされないことには、安心して私も東京のスーパーで食べるものを買えないですよ。
 ですから、やはりその点では、国としてそういう義務を果たすために努力を尽くすということ、それが示されないと、基本法をつくったからといって私の安心が得られるわけじゃないので、この点を大臣にきちっと聞いておきたいと思います。
谷垣国務大臣 今おっしゃった点は、消費者の役割と書いたからといってできることは限られているじゃないかということだろうと思うんですね。
 例えば、BSE問題なんかを前提としたときに、ではそれに対して消費者が何の責任があるか、役割が果たせるかといって、私は消費者にその責任がある、この条文がそんなことを考えているとは、当然のことながら全く思っていないわけであります。
 そこで、具体的には、委員がおっしゃいましたように、やはり情報を十分提供していく、そして、そういう情報提供やいろいろな認識を共有するような機会を設ける。ここで、先ほど来申し上げている言葉を使えば、リスクコミュニケーションをどう工夫してやっていくかということでもあり、教育の問題でもある、こういうことになるのではないかと思います。
吉井委員 少し具体的に見ておくと、例えば、残留農薬とか残留ホルモンにかかわるような残留医薬品とか、新しいウイルスなど微生物菌や発がん性のカビだとか、ダイオキシンを初めとする化学物質が、輸入農産物にも加工食品にもあるいは輸入飼料にも入っていないということを、私がそのことを証明するなり確認するなり、これはできるわけはないんですね。そして、安全なものを確信を持って手に入れる、これはなかなか簡単にできる話じゃなくて、そこはやはり、情報と規制権限を持つ国の方が可能なわけですよ。また、それは国の義務でもあるわけですね。
 だから、その点では、やはり国の義務というものとしてそこをきちっと確立することと、そして消費者には、食品の安全の保障を求めていく、安全なものを摂取するためにその権利があるんだ、そういうことをまずきちんと明確にすることが大事だと思うんですね。この点を大臣に伺っておきたいと思います。
谷垣国務大臣 今委員がおっしゃったことは、どういう内容の食品であるか、これは、十八条に食品の表示が大事であるという規定がございますが、この表示をきちっと適切に運用していくというのは当然政府の責務であろうと思います。
 それから、先ほどから申し上げておりますが、まず第一次に生産し、流通を行い、テーブルに物を運んでいく食品関連事業者が一番情報を持っているわけでありますから、その情報を同時に適切に提供しなければならないという義務が八条二項に定められているところであります。
吉井委員 例えば、これは農水委員会でも取り上げられた問題の中にあるんですが、家畜への抗生物質投与の問題がありますね。EUは、家畜への抗生物質投与を禁止しているんです。抗生物質が投与された家畜の輸入も禁止しているんです。「食品の安全性の確保に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務」という国の責務なんですが、こうした具体の問題について、国の責任で禁止措置等改善をするということをやらないんだったら、消費者には安全確保を保障することはできないわけですね。つまり、国の責務を果たすということにならないわけですから。
 ですから、国の責務ということをうたうからには、やはり、例えばEUがやっているように、家畜への抗生物質投与を禁止する、投与された家畜の輸入も禁止する、そういうことをきちんと明らかにするとか、そういう施策と結びつけてやっていかなかったら、これは余り意味を持ってこないと思うんですね。どうですか。
谷垣国務大臣 食品の安全に関しては、いろいろな問題があると思いますが、例えば肉骨粉のようなものでありますと、既に法で禁止をしているということがございますし、要するに、科学的に安全性に問題があるということが明らかになれば、それをもとに施策を立てて、具体的には今おっしゃったような禁止措置なり制限措置なり、そういうものをとっていく必要は当然あると思いますね。
吉井委員 例えば、今挙げました抗生物質、こういう場合はどうなんですか。
谷垣国務大臣 要するに、この法の仕組みでいいますと、それが抗生物質であるかどうかは別として、人体、健康に対するどういう影響があるかというのは、やはりまずきちっと科学的に判定する、それをもとにリスク管理を行うところが具体的な措置をとる、食品安全委員会は、そういう措置が不適切であればそれの勧告を行う、こういうような仕組みで全体の施策を進めていくということだろうと思います。
吉井委員 EUが禁止している。日本はリスク評価をされるなりなんなりにしても、科学的に安全が確認されるまでは、諸外国等で禁止されているものについては禁止するとか、その措置をまずとるということをやらなかったら、国として、国民の安全を保障するという責務を果たすことにならないんですね。これはどうなんですか。
谷垣国務大臣 先ほども御答弁申し上げましたけれども、科学的という場合には、確かに因果関係とかそういうものが明確にならないと、科学的な結論が出たということにはなかなかなりません。ただ、科学的な知見を尽くしても、なかなかまた結論がよくわからぬという場合もあり得ると思います。
 そういう場合に、リスク管理機関はしかし適宜な措置をとり得るということになっておりますし、緊急時には、結論がわからなくても今おっしゃったような禁止措置とかそういうものがとれるということに、この法律上なっております。
吉井委員 これは、今後また詰めた議論を進めていきたいと思いますが、今の答弁からしますと、抗生物質の投与された家畜等については、まず安全が確認されるということについては、今後影響評価をされるにしても、現時点については、EUは、危険だという判断で禁止措置なんですね、日本はまだ禁止措置をしていない。しかしこれは、この法律をつくるのと並行して禁止措置に踏み込んでいかれるというのが国の責務を果たす意味なんだろうと、私は今の御答弁を伺っておって受けとめました。
 これは今後また詰めた議論をしますが、次に、例えば畜水産食品中の残留ホルモンの問題ですね。これは九九年に、ヒトの健康に及ぼす影響に関する研究で、「エストラジオール―17βの発がん性については、医療目的の使用に伴う乳がん、子宮内膜がん、卵巣がんのリスクの上昇等、ヒトの疫学的データから十分な証拠があり、動物実験においても長期間投与による発がん性陽性の十分な証拠があるとみなされており、この点については国際的な合意が得られている。」というのが九九年の報告であります。
 それで、この報告で、日本側の対応としては、家畜における適正使用規範に従って使用するという原則が厳守されるという条件で、エストラジオール―17βの使用はヒトに対する健康リスクを増加する要因にならないという方策をとる方が妥当であろうとの合意に達したとされている問題なんですが、政府はホルモンの残留基準を二品目にしか設定していないわけです。動物用医薬品、抗生物質と合成抗菌剤を除くものの中で、残留基準が設定されていないものは、現在全く規制されずに野放し状態なんですね。EUは、リスク許容度をゼロとして輸入禁止を貫いているんです。
 午前中からもずっと議論がありましたが、何しろ日本は食品の六割を輸入に頼っているわけですから、こういうものをまず――EUはリスク許容度をゼロとして輸入禁止を貫いている。これからこれも健康評価をいろいろされて、科学的知見も得て、その評価をしていくにしても、EUの諸国が禁止措置をしているように、日本でも残留ホルモンの問題についてやはりまず禁止措置をとって、そして長期的影響として問題になるものですから、国民の食の安全を守るということに取り組む、これがやはり国の責務の内容を実現することにまずつながると思うんですが、これはどういうふうに考えていることなんでしょうか。
谷垣国務大臣 今の問題は、私、具体的にお答えする材料を今ちょっと用意しておりませんが、原則に返りますれば、今のような問題が科学的に問題があるかどうか、これは当然、食品安全委員会として、必要があれば調査をして、必要があればいろいろ知見を求めて、結論を出さなければいけません。それで、その結論に基づいて、農水省なり厚生労働省なり、必要な措置を、食品安全委員会としてはこういう見解であると、そういう通知をします、場合によっては勧告をします。そういうことによって解決を図っていくということであります。
吉井委員 私、余り個々具体の話に入り過ぎると、大臣も大変だろうと思うんですけれども、ただ、結論が出るまでの緊急措置をきちっととって、時間のかかるものもあるんですよ、いろいろな問題、実際にどうなるのかとか。基準を定めたらいいという問題だけじゃなくて、基準を定めたつもりが、もっと低いものでも長期にわたる摂取によって影響の出るものとか、あるいは、いわゆる残留ホルモンの問題でのさまざまな問題とか、何世代にわたっての後に影響が出るというものもありますから、それは簡単に科学的知見を集めて結論が出るというものじゃない。ただ、そういうものについては、やはり、だからこそヨーロッパ等では輸入禁止の措置をとったりしているんですから、それは、そういう立場で、まず結論が出るまで禁止措置をとる、こういうふうなことをやらないと、国の責務を果たすということにはなっていかないということを申し上げておきたいと思うんです。
 そして、この問題では、やはり国は食品の安全性について最も重い責任があるんだと。さっき、途中の業者のお話もありました。私、業者の責任を軽く見ようというわけじゃありませんが、しかし、食品添加物とか残留農薬、残留抗生物質、残留抗菌剤とか残留ホルモンなどの規格基準は国が専権的に定めるものなんですね。それから、輸入食品の検疫は国の専権的行政なんです。さらに、食品の安全性に関する情報は国が最も広範囲に持っているわけです。もちろん、部分的には業者の方が流通過程で詳しい場合もあるでしょうし、ただそれらは、やはり全部国が取り入れて、さらに広い情報としてつかむこともできるし、またつかむ必要があるんですね。
 ですから、私は、この点では、国の責務というのは、まさに食品の安全に関する国の役割、国の義務というのは第一義的なものだということをまずきちんと確立して、その上に立って考えていかなきゃいけない問題だということを申し上げておきまして、次に、もうちょっと、現状について、これは政府参考人の方から幾つか伺っておきたいと思うんです。
 食品の輸入監視に当たる職員の方たちの数ですね。確認しておきたいんですが、食品衛生監視員を一九九六年に随分、随分と言ったら語弊がありますが、わずかなんですが、ふやしたことがありました。このときの届け出重量に比べて、今現在どうなっているか。
 まず、一二七%に届け出重量がふえている。それから、一人当たり重量で見ますと一二四%ふえている。つまり、食品輸入監視に当たる職員の方たちに比べて、検査すべき輸入貨物量はどんどんふえている。一人当たりの検査の量が、これはまた二割を超えるほどふえているわけですから、ですから、どうしても、非常に心配なのは、これは手抜きになっていく。別に担当者に悪意があるわけじゃないです、一生懸命頑張っているのは私もよくわかっていますから。ただ、一生懸命やろうと、まじめに検査しようとすればするほどジレンマに陥るぐらい、今そういう状況になってくると。
 現状、食品衛生監視の状況は、まず、いただいた資料で計算したら、とりあえずは、九六年と今との比較ではそういう数字だと思うんですが、ちょっと確認しておきたいと思います。
    〔中沢委員長代理退席、委員長着席〕
遠藤政府参考人 一九九六年の食品衛生監視員数でございますが、二百六十三人ということでございます。その前の年、一九九五年が二百九人でございましたので、一九九六年に五十四名の増員があったということになります。
 職員一人当たりの届け出重量を見ますと、一九九六年には九万九千トンということになっておりまして、平成十三年では十二万三千トン、食品衛生監視員数は二百六十四人というふうになっております。
吉井委員 ですから、これは、この割り算は、簡単な数字ですから、今言った数字を割り算すれば、要するに二割を超えるふえ方なんですよ。ですから、それで十分な輸入食品の監視ができるのかという問題をまず見ておかなきゃいけないと思うんです。
 次に、もう一つ確認しておきたいんですが、冷凍ホウレンソウですね。この輸入検査の検体数と摘発数の資料をいただいたので、少し見てみますと、昨年の三月二十日から四月五日の間、検体数は一ロット当たり、二千個中、八個の開封検査。これは、検体数は一だったんですが、八個ですね、違反率が三・三三%という数字をいただきました。四月二十六日から六月三日には、検体数を二にふやした。つまり十六個の開封検査をやったんですが、その結果、七・七一%にふえた。六月四日から六月十三日は検体数を四に、つまり三十二個の開封検査をやったら一四・二九%へと。
 つまり、検体数をふやせばふやすほど、違反しているものがどんどん見つかってくる。それは、ある意味ではよく検査をやっていただいているんですから、いいことなんですね。つまり、サンプリング検査にしても、わずかの量だったらなかなか見つからなかったものを、やはりたくさん調べたら随分たくさん違反のものが見つかってきた、こういう傾向を読み取ることができると思うんですが、これも少し確認しておきたいと思います。
遠藤政府参考人 冷凍ホウレンソウの検査結果でございますけれども、昨年三月二十日から四月二十五日まで、この間は一ロット当たりの検体数一ということで九十件の検査を行い、三件の違反を見つけております。四月二十六日から六月三日までは、一ロット当たり二検体、トータルの検査件数が四百二十八ということで、違反件数三十三。六月四日から六月十三日までは、一ロット当たりの検体数四ということで、検査件数三十五に対して違反件数五。六月十四日から七月九日までは、一ロット当たりの検体数八に対して検査件数五十五、違反件数は一というふうな状況になっております。
吉井委員 ですから、今、生の数の方でお話があったんですが、いただいたものの方では、違反率で出してもらっているのでもっとわかりやすいんですね。つまり、検体の数をふやす、開封検査をする割合を二倍、四倍とすればするほど、違反率は三・三三から七・七一、一四・二一と、いわば倍々に違反の摘発ができていっている。
 だから、衛生監視の職員の方の数をきちんとふやして、そしてもっとしっかり開封検査等、検体の数をふやして取り組むという体制をとれば、もっと違反を見つけて、つまりそれは、私たちが、私が東京の赤坂のスーパーマーケットで買う輸入野菜なんかは、より安全なものが入手できるようになるんですね。この検体の数をふやしてチェックするというのは、私にはできないわけですよ。しかし、その仕事は国の仕事であるわけですね。国の責務というふうに法律ではうたっておりますが、これはやはり、義務としてそういう体制を組んでやるべきだということをここから見なきゃいけないと思うんです。
 小麦の残留農薬の基準設定数とモニター検査対象についても、〇〇年、〇一年、〇二年、〇三年というふうに数字をいただきましたが、例えば〇二年について、基準設定農薬数の累計が二百二十九農薬。これに対してモニター検査対象は四十三農薬ですから、二〇%しか検査していないんですね。百八十六農薬、つまり八〇%は、基準は設定したんだがモニターをしていない、これが現実だと思うんですが、どうですか。
遠藤政府参考人 モニタリング検査の対象となっております農薬数の年次推移でございますけれども、平成十一年二十四農薬、平成十二年二十三農薬、平成十三年四十四農薬、十四年四十七農薬、十五年度六十三農薬というふうな状況でございます。
 この品目数につきましては、違反の状況等にかんがみまして、順次検査項目の拡大を行ってきているところでございます。
吉井委員 検査項目の拡大はまあいいとして、実際にどれぐらい検査が行われているか、それは大体二割なんですね。八割は、基準設定したけれども検査していない。こういう状況ですから、実際には残留農薬はどれぐらい食卓に回ってきているか、それ自身わからないという状態。
 それで、あわせて、輸入総量と計画輸入のものとの関係がありますから、これで伺ってみたら、計画輸入の方は六百九十五件、これは〇一年ですか、四百五十九万トンだ、物すごい量が輸入されているんですが、計画輸入については無検査という状態だと。
 それで、輸入大豆については、届け出三千八百三十四件中百六十八件の検査だけで、これは四%という状態なんですが、しかし、四百六十九万トンのものについては、これは計画輸入で検査なしというふうになっていて、要するに、輸入の小麦も輸入大豆も残留農薬についてはほとんど検査されないということになっておるのが実態ではありませんか。
遠藤政府参考人 小麦の残留農薬の検出状況でございますけれども、平成十三年で見ますと、輸入届け出百六十三件、五百十二万トンのうち、六十六件、三十九万トンについて検査を実施いたしております。
 残留農薬を検査しておりますのが四十三件でございますけれども、このうち二十件につきましては微量の農薬を検出しておりますけれども、これらはいずれも残留基準未満でございまして、違反事例はございませんでした。
吉井委員 今の数字、初めて数字を聞くとなかなかわかりにくいんですが、要するに、輸入している全体量からしたら、わずかしか検査していないんです。ほとんど検査されていないというのが実態なんですね。
 それで、例えば私の方でつかんでいるもので見ると、これは〇一年にやったもので、クロルピリホスメチルが〇・一〇ミリグラム以上残留しておったものが、三十五回検査した段階では十一回見つかっているんですね。これは、やはりポストハーベスト農薬で問題になっているものですが、この量そのものが、生物連鎖の問題もあれば、その影響が体内に蓄積されるということもありますので、今のお話のように、基準すれすれかどうかというあたりで、とにかくちょっと下回ればいいとか、そんな簡単な話じゃないということをまず見ておかなきゃいけないと思うんです。
 アメリカは、基準設定していない農薬が検出されたら、即時輸入、流通禁止ですね。日本の消費者は、基準を設定した残留農薬の基準を超えるもの以外ならどんなものでも輸入され、国内流通がまかり通っているために、安全な食品にアクセスするということが非常に厳しい。私なんかは、赤坂のスーパーマーケットで買うときは、本当に安全な食品にアクセスするというのは大変なことなんですよ。その大変な苦労をしないと自炊することはできないという状況に私も置かれているわけです。
 ですから、消費者の役割ということを九条でうたっていっても、国の方がアメリカのようなポジティブリストのやり方に変えていかなかったら、まあ今度は措置を考えているようですが、安全な食品を手に入れようと考えても、これは役割を果たすといったって役割の果たしようがないんですね。やはり一番大事なのは、国の義務として厳しい基準設定と検査体制の強化を図っていく。
 そこで、大臣、やはりこの法律をつくることとあわせて、本当に食品の安全については、これは計画輸入だとか、これは規制緩和論から出てきていますけれども、食品に関してはそんな簡単なものじゃない、やはり基準を厳しくすることと検査体制を強化するということ、本当にきちんとこれをチェックして、安全を確認する。それから、まだ確認されていないものについて、しかし問題があるというものについては、それは、先ほど来議論のありますリスク評価をやって、評価の結果、本当にどの角度から見ても大丈夫となるまでは、とりあえずは輸入禁止措置をとるとか、国民の安全を守るために国としての義務を本当に果たす、そのことが大事だということを、今の事例からしても私は思うわけですが、この点について、そんな長い答弁は要りませんが、一言聞いておきたいと思います。
谷垣国務大臣 委員のおっしゃるとおり、きちっと科学的に評価をして、そしてその評価に基づいた適切な管理を行う、場合によっては輸入禁止ということも考えなきゃならない場合があるでしょう、私もそれはそう思います。ただ、前提は、やはり科学的にきちっと判定するということがなきゃいかぬ。
 しかし、もう一つの問題は、先ほどおっしゃったように、科学的に判断してもなかなか結論が出ない場合とか、緊急の場合はどうするんだということでありますが、それは第十一条において、先ほどから議論もございましたけれども、EUの、予防原則という言葉は使っておりませんが、それに思想的には似たような仕組みが取り入れられている、それも有効、適切に使っていく必要がある、こういうことだろうと思います。
吉井委員 今、予防原則というお話が出てきましたので、私もちょっと質問する順番を変えてそこを聞いておきたいと思うんですけれども、この法案では、食品健康影響評価の結果に基づき施策を策定すること、施策に国民の意見を反映すること、策定過程の公正性と透明性の確保などを規定していて、一定の改善と言える面があるということは私、見ているんです。
 しかし、例えばこの食品健康影響評価について、科学的評価が未確定な物質もあるというのはこれまでから私が述べてきたとおりです。そうした場合には、評価が確定するまで使用を中止する、これはいわゆるこの予防原則を取り入れるということなんですね。この点について大臣は、本会議答弁では、「国際的に概念の定まっていない予防原則という用語は用いていないものの、悪影響の未然防止という考え方は法案において適切に位置づけられている」と、今もおっしゃったところなんですよ。答弁がありました。
 それでは、悪影響の未然防止というのは、評価が未確定の物質については評価が確定するまで使用を中止する措置を含む、いわゆるヨーロッパなんかの予防原則というのはその考え方に立っているわけですが、評価が確定するまで使用を中止する措置を含むというふうに解していいですか。
谷垣国務大臣 その評価がわからないとき必ず中止するかどうかは別として、いろいろな事情を勘案して、その場合にストップをかけることができる、それはこの法案の仕組みの中にございます。
吉井委員 そうすると、次に、例えば輸入農産物の残留農薬問題、さっき触れましたけれども、現在、複数の農薬を同時使用した場合の影響というのはほとんど明らかになっていないんです。こうした問題については、この法案が通ったときに、つまり、この予防原則の考え方からすると、複数の農薬の同時使用というものについては、私はやはり、当面まず食品として摂取することについて、そういう複数の農薬が検出されたような食品等についてはまず輸入禁止の措置をかける、これがまず大事なことだと思うんですが、これは、この法案が通った場合はそういう対応をするんですか。
谷垣国務大臣 先ほど申し上げましたように、仮にまだその因果関係なり科学的知見が明らかでない場合であっても、リスク管理機関において、予防原則という言葉は用いておりませんが、未然防止という観点から、そういう措置はとり得るということであります。
吉井委員 これは、とり得るという段階の話じゃなくて、実際にその評価委員会、幾ら議論してみたって、まずその安全の確認というものが随分時間がかかるわけですから、そうすると、その場合には、まず予防原則を適用して、それは輸入禁止措置をとるなりそういう対応をきちんとやるべきだと思うんです。
 九九年の厚生科学研究の複数農薬の残留実態に関する調査研究では、「食品衛生法では、現在百九十八農薬の残留基準値が定められているが、残留基準値設定に際しては、複数農薬を同時使用した場合の影響はほとんど評価されていない。しかし、現実には、殺菌剤、殺虫剤、除草剤等が同時に使用される結果、複数農薬の残留は生じる。」という指摘をしています。
 九六年、七年に実施されている厚生科学研究の残留農薬安全対策総合調査研究事業によると、「研究の結果、ATP受容体活性が生体内の亜鉛イオンや農作物中にも存在し得る環境汚染物質カドミウムイオンなどにより増強作用を受けることがわかった」として、「今後複数の農薬によってATP受容体を介するシナプス伝達がより複雑に影響される可能性は大である。」という指摘をしております。
 ですから、複数残留農薬の問題、今聞いているわけですが、今回の食品衛生法で規制が強化されるのは、農薬等の残留規制の強化、ポジティブリスト制の導入などはあるんですが、複数農薬の問題については未着手なんですね。ですから、この複数農薬の問題について、これまでから厚生科学研究などで報告もあるわけですから、やはりまず、そういうものが検知された場合には輸入禁止措置をとるとか、そういうことをやってこそ予防原則に立った、国が義務を果たす、責務を果たすということになると思うんです。この点はどうなんでしょうか。
谷垣国務大臣 今の具体的な問題については、私、今お答えする用意はありませんが、要は、有害な結果を、有害な効果を及ぼすある程度の特定性と、それからやはり緊急性というものがある程度あって、EUの場合の予防原則というのもあると思います。
 日本の場合も、日本のこの法案の十一条、あるいは未然に防止というのも、ある程度の特定性とそれから緊急性というものはやはり必要なんだろうと思いますが、そういうものが満たされれば、私は、しかるべき措置をとり得る、こういうふうに考えております。
吉井委員 この点については今後ともまた引き続いて取り上げさせていただくとして、予防原則という問題は、これは本当にその立場に立ってやらないと、何しろ国の基準と検査頼みで私なんかは生きているものですから、谷垣さん頼みで私も東京で暮らしていますから、あなたのところでしっかりやってくれぬと安全な食品を摂取するということはできないわけですから、やはりこれは安全性が確認できるまでは予防原則の適用だと、そこはきっちりやってもらわぬと困ると思うんです。
 多分、最後のテーマになると思います。先ほど来触れてきましたが、消費者の役割の問題なんです。
 消費者が消費者の権利として食品検査の強化と情報公開を求めた場合、国は、消費者の食品安全を守る国の義務として、安全のための検査の強化などそういう役割を、つまり、消費者の権利と国の義務なり責務との関係というのはまさにそういう関係だと思うんですね。消費者が食品安全についていろいろなことを学び、考えれば考えるほど、自分で安全なものを得たいと思ったって、何しろ権力を持っているわけじゃありませんから、基準を勝手に決めるわけにいきませんから、なるべく危ないものは摂取しない、消極的防衛はできても、なかなかそこは大変なわけですね。そうすると、消費者の権利として、食品の検査の強化とか情報公開を求めてくる、そういう消費者の声にこたえて、国の方は、消費者の食品安全を守るための義務という立場からも、今度は安全のための検査の強化など役割を果たす、その関係をきちんと明確にして取り組むということがこの法律をつくるからにはやはり大事なことだと思うんですが、この点は大臣と考えは違わないと思うんだけれども、確認しておきます。
谷垣国務大臣 消費者の権利という表現はしておりませんけれども、例えば、意見を述べるように努めなければならないというような表現をしているということは、いろいろな今の安全に対して問題意識があって問いかけがあった場合に、やはりそれは国も誠実に答えなければいけないということを当然中には含んでいると思います。
吉井委員 BSE問題に関する調査検討委員会の報告書では、「消費者は安全な食品を十分な情報を得た上で、選択できることを保証される権利をもっている。」「食品の安全性の確保に関する基本原則として、消費者の健康保護が最優先に掲げられ、このような消費者の安全な食品へのアクセスの権利が位置づけられなければならない。」つまり、この報告書の中では、基本的な考え方は、やはり消費者の権利という考え方があるわけですね。
 それが、法案になりますと、この報告書から後退してしまって、報告書の指摘どおりに、消費者の権利を明記するということになっていないんですが、これはやはり、本来、消費者の役割というよりは消費者の権利、こういう言葉でもって、きちんと消費者を尊重したものに考えるべきだと思うんですが、この点、大臣、どうですか。
谷垣国務大臣 その点は今回の御審議の中でたびたび御議論になっておりますが、私はこの法案は、それぞれのいわばプレーヤーと言っていいのかどうかわかりませんが、政府もあるいは事業者も消費者も、それぞれの役割がある、いわば主体として位置づけられているんだろうと思います。
吉井委員 時間が参りましたから、締めくくりの発言だけして終わりたいと思います。
 それで、やはりこれは憲法二十五条を中心として、ここを出発にして、食品の安全、その安全を通じて、健康で文化的な生活を営むということにつながってこようかと思うんです。
 全国消費者大会の昨年の秋のアピールでは、食の安全確保は消費者の権利ということがうたわれておりますし、日弁連の昨年の暮れのこの問題についての意見書の中でも、やはり、消費者の役割ではなく、消費者の安全な食品の提供を受ける権利、適切な表示、広告を受けて、安全な食品を選択する権利、食品安全行政に参加する権利、その点を宣明する必要があるということを指摘しておりますし、生活協同組合連合会も、この基本法案骨子案に関する意見の中で、基本理念に、食品の安全性の確保は消費者の利益、権利であるとの趣旨を明記することということを求めております。
 やはり私は、これからも継続して議論してまいりますが、消費者の権利、それは大体、日弁連ほか皆さんが言っているその内容を持ったものとして、消費者の権利を尊重すること自体が、消費者も参加した食品安全の方向に進むものであろうということを述べまして、あとの問題は次回以降にまた議論させてもらうとして、きょうは質問を終わります。
佐々木委員長 以上で吉井英勝君の質疑は終了いたしました。
 次に、北川れん子君。
北川委員 社民党・市民連合の北川れん子といいます。
 私は、まず私の立場というか、どういう考え方で次の議論を進めるかというのを申し上げたいと思うんです。
 第一次生産物というのは、自然の状態を尊重した生産を実現することを目指して、そこから供給できたものを供給する責務というのを国が持つべきである。
 例えて言えば、もう一つ言えば、環境は複合汚染で汚染しないように、いろいろな、大気の中の環境とか土中の環境とか、それもリスクを下げていく、危険度を下げていくというのを国の責務とするべきである。
 もう一つは、今回、健康という言葉がすごく取り上げられているんですが、昨年、健康を維持するのは国民の責務というふうに規定した健康増進法というのができました。私は、この考え方は間違っているというふうに思っているんですね。健康で生きたいと思っていても、自分の努力義務では解決できない場面というのが多々あります。例えば高血圧などでも、今は遺伝子の問題までさかのぼって、自分の生活習慣病の改善とかだけでは治していくことができない、そういうことまでわかってきているわけですね。
 ですから、どちらかというと、やはりこれからを議論する場合は、社会環境の方を悪くしている政治のあり方というのを再検討する、そういう立場で次の質問を進めていきたいんです。
 例えば、一九五五年が森永砒素ミルクです。五五年が水俣病、六八年がカネミライスオイル、いわゆるカネミ油症という形で、事件が続出するわけですけれども、この食品安全基本法が当時もしできていたならば、例えば、私は今回、カネミ油症の点で聞きたいんですけれども、PCB、PCDF、今だとダイオキシンとか環境ホルモンであると命名されているものなんですけれども、これが健康食品と言われるオイルに混入されていたわけです。
 具体的なことでお伺いしたいんですが、この法律ができたらこれは事前防止ということができたのかという点と、被害が出た場合、出た後のことで、特定できた場合に、営業停止をかけるとか、事業者の責務が第一義だとおっしゃいました、そこに対する権限のありようができるのか。そしてまた、当事者や消費者が申し立てをする機会を安全委員会に持つことができるのか。そして、一番の第一次責任である事業者に対しての、危険なものを取り扱うときのありよう、それの周知、広報などを徹底するとか、そういう権限があるのかどうか。その辺をお伺いしたいと思います。
谷垣国務大臣 今、過去の具体的な事件についてお触れになりましたけれども、私も、大分前の議論でございますので、個々の問題点を必ずしも明確に今お答えする用意がありませんので、当時この法案ができたらどうなったかというようなことをちょっとお答えする材料はないんです。
 ちょっと今手元に資料がございますO157のような例で申し上げますと……
北川委員 いいです。私は通告のときに事前にお伺いしていたんですよ。そちらは、担当者の方が、予防できるとおっしゃったんですよ。では、どう予防できるのかというのをお伺いしたくて、今具体的な自分の事象を三つ挙げて、そちらは予防できるとおっしゃったので、どう予防できるかというのをお伺いしてみたかったわけで、O157も、原因究明というのは今のところまだできておりませんよね。という点におくと、私はなかなか難しいのではないかなと思いますし、過去の事例が現在にあったならばどうだったかということで通告も出していたと思うんですけれども。
佐々木委員長 答弁の用意はありますか。――できていない。何か答弁の準備ができていないようですね。
北川委員 そうですか。私のところでは、今は予防できる体制をつくることができるというふうにおっしゃっていたんですけれども。
 これなども、実は当時、食品衛生法の第二十七条の二項に基づく保健所による食中毒実態調査、こういうこともされなかったんですね。ですから、今三十年以上たっても体から外へ出ていかないということは、もちろんもう三十年たってわかっています。疫学調査をすることができなかったので、治療も全然、有効な治療が、手だてがなく、今、自分から被害者であるということがやはりこの社会の中で言いにくいということを抱えていらっしゃる方や、それから子供さん、二世、三世の問題なども解決されないままあるわけです。
 私は、ここに国の食品に対する安全についての直接的な責任が、では、食品安全基本法ができたら三十年前とどう変わるのかといった点では、どなたかもおっしゃっていましたが、やはり何も変わらないのではないかなという立場をとっているものなんです。
 一つお伺いしたいんですが、これと同時に食品衛生法が変わりますよね。法案の説明をお伺いしましたら、第四条の第二号では「人の健康を害う虞がない場合を定めようとするとき、」、また、例えば第六条、添加物の販売禁止なんですけれども、「人の健康を損なうおそれのない場合を定めようとするとき、」に厚生労働大臣が食品安全委員会の意見を聞かなければいけないというふうになっているんです。従来からの食品衛生法でも、実態的には、先ほど御紹介した事例でも二十七条二項に基づくやらなければいけないことをやっていなかったというものもあり、今回改正になるんですけれども、これは、禁止を求めるときに聞くのではなくて、安全性を確認するときにのみ委員会の意見を聞かなければいけないというふうになっているんです。
 大臣、どうでしょう、先ほどから聞いていると、施策が下まで、末端まで行くように施されているから大丈夫なんだというお答えばかりが返ってきていたんですが、こういう体制でよろしいのでしょうか。
谷垣国務大臣 委員のお尋ねは、食品衛生法の規定が十分に活用されていなかったということですか。
北川委員 それは、先ほど言ったのはカネミライスオイルのときのことで、あのときでも、別に食品衛生法の条文にのっとって適切にそのときの保健所が動いていれば、もっと早くに被害を食いとめるとか、被害者の状況を改善するとか、治療に今後有用な方向性が出せるとか、そういうことができたけれども、全く、あのオイル自身を回収しちゃうわけですよね。ですから、現物がないというとこら辺から、なかなか実態が、裁判でも進まなかったとも聞いております。
 そういうことを私はお伝えして、今言ったのは、今回、食品衛生法が変わりますよね、健康増進法も一部変わります。その中でのありようが、私は、もうどちらかというと、せっかく、食品安全基本法ができてからいろいろ勧告とか体制がとれるので、この食品衛生法も食品安全基本法ができた段階で改正すればいいなと思ったんですが、同時に並行してやるというわけなので少し戸惑ったんです。それで、中身を見てみると、今言いましたように、禁止を求めるときに安全委員会の意見を聞くのではなくて、安全性、だから、人の健康を損なうおそれがない場合を定めるときに安全委員会の意見を厚生労働大臣は聞かなければいけないとなっている。こういう法体系でよろしいのでしょうかという点をお伺いしているんです。
小川政府参考人 法案の二十四条の、いわゆるリスク管理機関が具体的な基準、規格を策定する、具体的な規制行政をやる、その引き金となるような行為をするときに、先ほど来御議論がありましたように、リスクの評価と管理を分ける。今まで一体となってやっていたところを、その基準、規格に当たって評価があったわけでございますが、そこの部分を安全委員会が担う。それがゆえに、関係大臣は、具体的な基準、規格、規制行政を行おうとするときには、必要的に委員会の意見を聞いていただく、そういう仕組みを二十四条に用意させていただいたわけでございます。
北川委員 二十四条に伴って、例えば、厚生労働省の食品衛生法を変えるときには勧告ができるとか、変更しようとするときには意見が言えるとか、そういう体系になっているんですが、既に同時にこれは審議しちゃうので、この場面がなく食品衛生法が変えられていくのであえてお伺いしたんですが、ちょっと明確な御回答がなかったんですけれども。
 それでは次に、ずっとどの委員もおっしゃっていたんですが、未然防止と予防原則、これは明らかに違うんですね。大臣の先ほどのお言葉を引き取って言うと、この食品安全基本法が日本で初めて予防原則を取り入れた法案だと第三者に説明していいのか、諸外国に説明していいということなのか、そしてその根拠は何条をお指しになっているのか、教えてください。
谷垣国務大臣 予防原則という言葉は、先ほどからの御議論のようにEUの規定の中にあるわけですけれども、そういうものが、国際的に予防原則という言葉はいろいろな理解があると思いますので、私どもは必ずしも予防原則という言葉を使っているわけではありません。
 しかし、十一条、十二条の規定が、十二条で、人の健康への悪影響の防止、抑制という観点から、国民の食生活の状況そのほかの事情を考慮して施策を策定するというふうにしておりますし、十一条で、人の健康に悪影響が及ぶことを防止し、または抑制するため緊急を要する場合で、あらかじめ食品健康影響評価を行ういとまがない場合には、評価を行うことなく食品の安全性の確保に関する施策を策定することができる、こう書いているのが、全く同じかどうかは別としまして、思想的には近いものだというふうに考えております。
北川委員 やはりそれは逃げだと思うんですよね。健康の問題とか医療の問題のときには、言葉の定義がとても大事だというふうに思っています。
 もう大臣も御存じだろうと思うんですよね。未然防止の定義はちゃんと決まっているし、予防的措置の定義というのは、リオ宣言の原則十五にちゃんと書いてあるんですよ。だから、今この食品安全基本法が、諸外国に対して、予防原則が入った日本で初めての法案なんだと言えないということを、用語が、定義があいまいだから、入っているようなところもあるのでというふうに逃げられたと思うんです。
 未然防止は、化学物質や開発行為と影響の関係が科学的に証明されており、リスク評価の結果、被害を避けるために未然に規制を行う、これは予防原則とは明確に区別されると学者の人たちもちゃんと言っているんですね。日本の概念はここまでなんですよ。リオ原則の十五にはきっちりと予防原則の概念が書かれてあり、先ほどからも皆さんがおっしゃっている、予防原則の概念には、科学的に因果関係が証明できないが、予防的に規制した方がよいと判断できる場合にという形で文言が提起されていくんですね。ここは、食生活の問題や安全性の問題にこの間日本の中で長年携わってこられた市民や市民団体の皆さんから、もう具体的に、こういう予防原則の条文を入れたらどうですかというふうな御提起もあるんですね。
 いかがでしょうか、大臣、やはり未然防止と予防原則は違います。この十一条、十二条を担保する意味で、予防原則の項がとても必要だと思うんです。
 その人たちはすごくうまく考えてくださっていまして、少しだけ御紹介すると、前段、「認められ、かつ、当該悪影響の発生が確実であると認められない場合においても、当該悪影響が発生したとすれば人の健康に係る重大な被害が発生するおそれがあると認められるときは、当該悪影響を未然に防止する観点から必要な措置を講じなければならない。」その「必要な措置」というのは、わからないけれども、後日、相当の期間、科学的知見に基づく検討がずっとその後つけ加えられていって、わかったときには書きかえていく、こういう本来の意味の予防原則を押さえたものを条文に入れないことには、きょうほかの委員の皆さんもずっとここのところも焦点となっていたと思うんですが、未然防止ではない予防原則の条項立てというのを御検討いただけないかということでお伺いしたいと思うんですが、今、大臣のお気持ちはいかがでしょうか。
谷垣国務大臣 お気持ちというより、十一条の一項三号に、人の健康に悪影響が及ぶことを防止し、または抑制するため緊急を要する場合で、あらかじめ食品健康影響評価を行ういとまがないときは、食品健康影響評価を実施せずに施策が行われるという規定ですね。これはかなり、全く同じかどうかは別として、委員がお引きになったEUの規定と思想的に非常に近いものと私は思うんです。違いますでしょうか。
北川委員 そこはやはり全然違うと思うんですよね。例えばリオの十五だと、費用対効果の大きな対策を延期する理由としては使われてはならないということもありますし、これが、未然防止なのに、外に対して予防原則なんだということであれば、では先ほどの吉井委員等が言っていらっしゃった輸入規制に本当に入るということを国はやろうとしているんだと、先ほどの議論を聞いていると明言されませんでした。それはあくまでも未然防止という日本の対応の中であるから、諸外国からの輸入に対してやられないんだなというふうに私は理解したんですけれども。
 では、もう一度かぶせて、吉井委員もお伺いになっていましたけれども、輸入は禁止するというふうに言われるんでしょうか。成長ホルモンなどについてどう考えていらっしゃるんでしょうか。
谷垣国務大臣 それは、ここの要件がある場合、緊急を要する場合、それから、先ほど申し上げましたように、ある程度の、原因であるとかいう特定性が明らかになっていないのは、EUの場合もそうでございますから、そういう要件が日本の場合にも必要だろうと思います。
北川委員 私が理解するところは、予防原則というのは緊急ということを眼目に置かない、予防なんですから。日本の今回のもよく見ていると、緊急緊急というのが結構出てくるんですけれども、何となく安心してしまうところがどこかあります、緊急だったら対応してくれるのかなと。でも、緊急にならないように予防原則があるという担保がなければ、やはり食品の安全というのは三十年前、四十年前と状況は変わらないのではないかと思うんですが、ここはぜひ谷垣大臣だからこそ考えていただきたいなと私は思いますので、ぜひ考えてください。
 私がなぜこうやってしつこく言うかというと、私も、カネミ油症の問題、余り深く知らなかったんですが、九八年以降も、今までも物すごく大変な状況に置かれていらっしゃったというのを少し知って、もう御存じだろうとは思うんですけれども、カネミライスオイル被害者の方々の体内に抱えるPCBの量と、油症と全く関係ない普通の日本に住む人々から検出されるPCBの量を比べると、今もう変わらないんですよね。だから、私たちもいつ油症を発症するかはわからない。それぐらい日本では、母乳や血液などのダイオキシン汚染というのは七〇年代から検出されているんですが、九〇年代に入ってかなり大きく数値が出て、ちょっとショッキングな新聞となって表現されています。
 現在、体重三キロの赤ちゃんだとTDIを超える約八十ピコグラムTEQ・パー・キロ体重・パー・日、もうこれはいわゆるTDIというのを超えているというふうになります。なぜかというと、やはり私は、食べ物、今回、一世代だけの健康ということにすごく眼目を置いていらっしゃるのではないかなというのをすごく気にしているわけなんです。
 それで、健康という言葉なんですけれども、有害物質は世代を超えて影響を及ぼすのはもうわかってきています。胎内被曝の恐ろしさというのも、暴露の恐ろしさというのもわかってきているわけなんですけれども、今回健康は持ち出されているんですが、ある時点から命の概念というのが抜け落ちてしまうんですね。
 それをちょっと先日お伺いしておりましたら、去年の六月十一日の食品安全基本法(仮称)の概要では「国民の生命及び健康の保護」となっていたんですね。閣僚会議の皆さんへの御説明の文書にもちゃんとそういうふうに、第三回食品安全行政に関する関係閣僚会議資料でも「国民の生命及び健康の保護」となっていたんです。去年の四月二日のBSE問題に関する調査検討委員会の報告でもありました。そうなっていたんです。国民の生命及び健康の保護となっていました。けれども、法文では生命の方がなくなっているんです。なぜかとお伺いしたら、健康が保護されれば生命は保護されている。何かクイズみたいですけれども、健康が保護されていたら生命が保護されている。なので、法文化するときに、重複しているからいいんじゃないかという指摘があったので、そんなに意図はなく落としましたというふうに言われたんです。
 私は、先ほどの予防原則の意義も含めてなんですが、食べ物の被害というもののありようというのは世代を超えていきます。そういう点から、今回、生命の方を、あえて、重複しているからより安全なんだというふうに私なんかはとるんですけれども、大臣、いかがでしょうか。
 大臣はこれをお気づきになっていたかもわかりませんけれども、私は、もう一度、理念のところの生命と健康と二つ、二段構えで、二段構えというか並列でもいいんですが、文言を、生命を持ち返してくるべきだと思うんですが、この点のお考えはいかがでいらっしゃいますでしょうか。
谷垣国務大臣 生命と健康、両方必要だという御主張は一つの御主張ですが、私のもう一つの仕事であります国家公安委員会、警察の方ですと、生命とそのほかはよく分けて議論いたします。それはなぜかというと、生命が対象になると殺人罪だからです。それから、身体が対象になれば傷害罪とかそういうことでありますから、生命と健康なり身体というものは明確に区別する意味が刑事法の場合にはあるわけですね。
 ここでは、食品の安全性をどう確保するかという問題でございますから、国民の健康を第一に考えるというのは、三条の中にも規定しておりますけれども、そこで言う健康の中には人の命というものも含まれた概念ではないかなというふうに私は理解しております。
北川委員 そこが、谷垣大臣はすごく優秀でいらっしゃるので、二つの大臣があるとき一緒になってうまく何か説明されてしまって、私は、そこのところは、国家公安委員長としての大臣の顔はスイッチもオフにしていただきたいなと思うんですよ。やはり安全でも、少し違うと思うんですね。
 では、刑事事件的に、殺人された親を持っても、別に次の子供が何らかの命の保証が、例えば十八歳未満だと生きていくのにしんどいとか、そういう社会的、経済的な要因というのはあると思うんですが、そうではなくて、胎内での暴露、被曝とか、母体というのを通して子供ができてきますので、そういう意味での遺伝子への損傷とか被害とか、そういう点は刑事事件ではないと思うんですよ。
 なので、もう少しこっちの方に引っ張っていただくと、今あえてそっちを例えに出されたという点では、食品の方ではどうもうまい言葉が見つからなかったから出されたのだとすれば、私は、やはり命というところを持ってきていただきたい、もう一度、一番初めに説明しようと概念の中に入れていらっしゃった文を立ち返らせていただきたいなというふうに思います。これはまた要望という形にさせていただきたいと思います。
 次は、今回も、評価と管理を分けるからいいんだとよくおっしゃるんですが、では例えば、医薬局食品保健部長の私的検討会に残留農薬安全性評価委員会と残留農薬調査会というのがあるらしいんですが、これは厚生労働省の中の、農薬のリスク評価、ADIを設定するところらしいんですけれども、そうすると、こういう部門というのはすべからく、おっしゃっていた専門調査会の構成、延べ二百人、この中に組み込まれて吸い上げられていくんでしょうか。評価と管理が分かれるので、こういう農薬のリスク評価などをしている私的検討会は、こういうふうに専門委員会の構成の中に入るのかどうか、お伺いしたいと思います。
遠藤政府参考人 薬事・食品衛生審議会におきましては、残留農薬部会残留農薬調査会というものを置いておりますが、食品安全委員会の設立後は、リスク評価の部分について食品安全委員会の方に移すということでございまして、リスク管理についての残留農薬部会の仕事は残りますので、そこは評価と管理を分けるという観点から整理をしていこうと考えております。
 具体的には、リスク評価はむしろ、毒性部会という、薬事・食品衛生審議会の中に毒性部会というものが置かれておりまして、そこでリスク評価を行っておりましたので、ここの業務が食品安全委員会の方に移っていくというふうに理解をしております。
北川委員 では、本当に細かく見ていくと、やはり厚生労働省の中にちっちゃな評価の部分と大きな管理の部分は残るというふうに理解すればよろしいんでしょうか、私の言い方がすごく稚拙だったかもわかりませんけれども。
遠藤政府参考人 緊急の際の評価に関しては、食品安全委員会に諮問するいとまがない場合というふうなことで、厚生労働省側で評価をすることもあり得るのだろうと思いますが、一般的には、評価の部分を食品安全委員会へ、管理の部分を厚生労働省側で実施するということでございます。
北川委員 でも、やはり少しは残るということを先ほど言っていらっしゃっただろうと思うんです。
 これは私的検討会ということなんですが、お伺いをしていると、議事の要旨しか公表されていなくて、ちょっと離れますけれども、この委員会自身の問題をお伺いしているんですけれども、どういう数字が出されているかどうかは第三者は検証する機会がないとも教えていただいた調査会だったんですね。それも残るとおっしゃいました。
 例えば、では今後、やはりもう明らかに情報公開というのがいろいろな段階で踏まれていくと思うんですけれども、ここの議事の公開、そして、その数字をやはり出していくわけですよ、その数字を表に公開していくとか、そういう姿勢は厚生労働省としては、食品安全基本法ができた以降何か考えているところがあるのか、今のような対応なのかといえば、どういうふうになっていくんでしょうか。
遠藤政府参考人 食品安全委員会設立後は、リスク評価の部分、現在薬事・食品衛生審議会が行っておりますいわゆるADIの設定の部分に関しては食品安全委員会の方に移しますので、その部分に関しては食品安全委員会の方の取り扱いになります。
北川委員 ちょっと今、議事の公開等とかには御判断をいただけなかったんですけれども。
 そこで、大臣にお伺いしたいんですが、専門委員会ができるんですが、多くの人が心配しているのが、すべて非常勤のチームで、それで、私的検討会、先ほどは部長さんの私的検討会だというふうに言われています。そうすると、業態別にはリスクの評価と管理を分けるんですが、人間が一緒であってはいけないとか重複してはいけないとかいうことがやはりあろうかと思うんですね。
 それで、人選の基準とか、もしくはまた公募の導入ですね、こういうものはどのようにお考えになっているのか。そして、すべて非常勤で兼務というふうなことで対応ができると本当にお考えになっているのかどうかをお伺いしたいと思うんです。
谷垣国務大臣 まず第一に、ちょっと今の御質問から少しずれるかもしれませんが、食品安全委員会は、原則として公開であるということを考えております。
 それから、食品安全委員会の専門委員等がどうなるのか。
 食品安全委員会の委員につきましては、リスク評価とリスク管理からの独立性、両方は独立しなきゃならないという観点から、リスク管理機関の、例えば厚生労働省の方の機関の審議会等の委員をやっておられる方が食品安全委員会の委員になるということは、原則としてそういう兼務はしないという方向で検討しております。
 それから、専門委員につきましては、議決権もなく、それから各分野ごとでやはりすぐれた識見を有する科学者等を任命する必要があるということから、リスク管理機関の審議会の委員と兼務することもあり得るのかなというふうに考えております。
 それから、そういう方々の知見を使わせていただくということが、二十四時間、常にあるわけではありませんので、私は、これは非常勤で十分やっていただけるというふうに考えております。
 それから、公募につきましては、類似の性格を持つような委員会でも必ずしも採用されておりませんし、それから、専門的知識を有する方々を幅広く選ぶという観点からも、必ずしも適切ではないのではないか。そこで、人格、識見ともにすぐれた専門家を候補者としてリストアップして、政府が責任を持って選考していくという体制で臨みたい、こう思っております。
 それから、先ほど、委員、常勤、非常勤とおっしゃったのは専門委員の方ですか、それとも……(北川委員「そうです、専門委員の方」と呼ぶ)専門委員の方は非常勤で考えております。
北川委員 私は、やはり物事を動かしていくのは人間なんですよね。いつでも人間が何らかの形でミスを犯すことのブロックをどうかけていくかということになると思いますので、やはり専門委員の皆さんの非常勤ということに対しても、もう少し議論が必要かなというふうに思いますし、いろいろな諮問委員会や審議会がありますが、これはぜひ同じ人を専門委員のメンバーにしないことという形で人選の方の基準をつくっていただきたいというふうに思います。
 なぜかといいますと、特に最近、常に新しい事象というのが起きてくるんですね。これからクローンの問題、クローン牛はもう発売になったというふうに言われていますから、クローンの問題なども、科学的知見ができる専門家もまだ少ないだろうと思いますし、聞いたところによると、今回のプリオンですけれども、プリオンも専門家が少ない。今一番みんなが焦点を当てて関心を持っているところが専門家が少ない。なので、どうしたって重複するというふうにもお伺いしているんですけれども、この点などはやはり管理と評価を分けるべきだというふうにあえて言わせていただきたいので、もう一度、専門性における人材の登用をもう少し幅広く、では、外国の方も含めて呼びかけてみるとかいいんじゃないかというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。
 それと、先ほど安全委員会は公開だとおっしゃったので、その前に、議事録は公開ですと。だけれども、これは本会議での答弁だったと思うんですけれども、傍聴は最終的に委員長判断だ。これは今の審議会の立場がまだ払拭されていないんですけれども、議事録の公開以前に傍聴システムを、委員長判断というよりはもっと前向きな御検討が内部でされているのかどうか。そして、専門調査会は公開に関してはどういうスタンスをおとりになっているのかをあわせてお伺いしたいと思うんです。
谷垣国務大臣 今おっしゃった、公開か非公開か、あるいは委員長判断かということですけれども、議事自体を公開する方向で今は検討しております。
 それから、要するに、専門委員とリスク管理機関の委員と兼ねてはいかぬ、厳密に区別しろという御趣旨でした。
 私も、常に兼務するなんというふうに申し上げているわけではないんですが、先ほど委員もおっしゃいましたように、分野分野によってはなかなか適切な専門家を得がたいところもございます。もちろん、そういう人材が得られるところであれば兼務しないという方向をとるのが二つの分離の観点から見れば適切ですけれども、分野によっては、あの方にお願いしないとにっちもさっちもいかぬというところがやはりあるんだろうと思うんですね。
 そういうこともあり得ると思いますので、御答弁としては、兼務すると申し上げているんではなくて、兼務することもあり得るというふうに申し上げているわけです。
北川委員 やはり今まで、体制的にはリスクの管理と評価が分かれているからというのを強調されていて、では、人材が一緒だったんだったらというのは、どうしても納得というか説得力がないように思うんですが、兼務をできるだけしないような方向でやろうとしているのか。兼務は、先ほどあらかじめ私も言われていたんですね、専門性が少ないところはしようがないんだとおっしゃっていたんですが、では、今兼務がありきのところがどれぐらいいらっしゃって、兼務なしでやれるところはどれぐらいあるとかというのはすみ分けができているんでしょうか。
谷垣国務大臣 まだ、どういう方にお願いをするかということはリストアップの最中ですので、この方は兼務で、この方は兼務でないなんということを今の段階で明確に申し上げることは難しいんです。ただ、そういう人材が、自由にと言うとちょっと語弊がありますが、十分に得られる場合であれば、それは、リスク管理とリスク評価を分けたという今度の考え方にのっとって人材が得られる場合であれば、当然それは分離して考える、兼務ということは避ける方向で検討していくというのが当然のことだろうと思います。
北川委員 兼務の方は避けるというところまで言ってくださいましたし、ぜひ、管理と評価を分けたことがすごく大きな意味があるんだと言われた点が本当に生きてくるような人材配置でお願いしたいと思いますし、これは専門委員会においてもそうなんですが、議事の傍聴はぜひできるようにしていただきたい。
 そして、常に、他の委員が原子力安全委員会との比較でおっしゃっていましたが、ここでもいつも問題になるのが生データなんですよ。生データの数字をやはり表に出さないと検証できないんですね。そこになると、これはいろいろな秘密事項等々も含まれますし、企業秘密になっていくので、生データの公開をしていないというのがいつも原子力安全委員会が答弁する答えなんですけれども、生データ、いろいろなデータが記録されたものが上がってくるところは食品安全委員会だろうと思うんですが、いろいろ入手されている生データの管理、公開においてはどのようなスタンスをお持ちになっていこうとしていらっしゃるのか、教えていただけますか。
谷垣国務大臣 これは、できるだけ公開の方向で考えていくのは当然のことですが、ただ、今までの情報公開ルールというものもプライバシーとか企業秘密というものに配慮して決めるということになっておりますので、そういう情報公開のルールにのっとりながら、これからできるだけ公開の方向で検討したいと思っております。
北川委員 先ほど、国賠訴訟における国の責任というのは、裁判判定を待たないと仕方がないというお言葉にもあったんですけれども、上がってくるデータというのはすべての共有財産であるという見方もできる面があると思うんですね。その辺なども、どうも分野の専門性は少ないというふうにおっしゃるんですが、もう自分で分析したり、その数字を見て検証できる人たちも育っているというのが食の現場であります。この食品安全委員会を検証する第三者機関をつくろうと呼びかけている消費者グループもありますね。もう新聞で御存じだろうと思うんですが、ぜひこの辺などはポイントで、お考えいただきたいと思います。
 そして、今回は谷垣大臣が大臣になっていてくださっているわけですけれども、今後なんですけれども、この食品安全委員会、原子力委員会と原子力安全委員会には大臣がいないわけですね。それで、この継続性なんですよ。大臣がいらっしゃらないと、どうも聞くところによると、閣議でほかの農水とか厚労の大臣に少なからず接触を持つ機会というのがそがれていくとも聞いておりますし、食品安全委員長という立場ではなかなかほかの大臣に言うとかというのも難しい点があると思うので、大臣を頭に、ヘッドに置く。
 例えば、本当は私は、食品安全庁とか何かそういうのがいいのじゃないかという提案もいただいており、その辺なども考えていきたいなと思う一人なんですけれども、大臣の、ヘッドの継続性なんですけれども、その辺などはどのようなスタンスでいらっしゃるのか、ルールなどがあるのかどうかを教えていただきたいと思います。
谷垣国務大臣 私は、今食品安全委員会(仮称)担当、こういうことになっておりまして、食品安全委員会が具体的に成立しましたときには、食品安全委員会担当という大臣ができるんだろうと思うんですね。それで、そのとき仮称がついたものがどうなるかは、これは小泉さんというか、総理の判断でございます。
北川委員 それは、谷垣大臣ではない、谷垣さんという個人の役職ではないかもわからないけれども、担当大臣というのはポストとしてありますよということですか。
谷垣国務大臣 これは、担当大臣を置いて、できたときには仮称を外した担当大臣を置くわけです。そして、食品安全委員会の所掌事務に関して、内閣の一員として国会に対して責任を負う、それから、緊急時はこの食品安全委員会は緊急対応をすることをしなきゃなりませんので、緊急時における関係省庁との間の総合調整というものを行うわけですので、担当大臣が置かれる、こういうことであります。
北川委員 ちょうど時間も参りました。これからも、何とぞよろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。
佐々木委員長 以上で北川れん子君の質疑は終了いたしました。
 次回は、来る九日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時四十分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.