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第10号 平成15年5月14日(水曜日)

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平成十五年五月十四日(水曜日)
    午前十時一分開議
 出席委員
   委員長 佐々木秀典君
   理事 逢沢 一郎君 理事 小野 晋也君
   理事 星野 行男君 理事 渡辺 博道君
   理事 中沢 健次君 理事 山内  功君
   理事 遠藤 和良君 理事 西村 眞悟君
      大村 秀章君    奥山 茂彦君
      金子 恭之君    亀井 久興君
      木村 隆秀君    菅  義偉君
      高橋 一郎君    谷川 和穗君
      谷本 龍哉君    近岡理一郎君
      林 省之介君    山本 明彦君
      石毛えい子君    大畠 章宏君
      平野 博文君    横路 孝弘君
      吉井 英勝君    北川れん子君
      江崎洋一郎君
    …………………………………
   国務大臣
   (構造改革特区担当大臣) 鴻池 祥肇君
   内閣府大臣政務官     大村 秀章君
   内閣府大臣政務官     木村 隆秀君
   文部科学大臣政務官    池坊 保子君
   政府参考人
   (内閣官房内閣審議官)
   (内閣府大臣官房審議官) 中城 吉郎君
   政府参考人
   (内閣府政策統括官)   山本繁太郎君
   政府参考人
   (総務省自治行政局公務員
   部長)          森   清君
   政府参考人
   (文部科学省大臣官房審議
   官)           金森 越哉君
   政府参考人
   (文部科学省高等教育局私
   学部長)         加茂川幸夫君
   政府参考人
   (厚生労働省医政局長)  篠崎 英夫君
   政府参考人
   (厚生労働省職業安定局次
   長)           三沢  孝君
   政府参考人
   (厚生労働省雇用均等・児
   童家庭局長)       岩田喜美枝君
   政府参考人
   (国土交通省大臣官房審議
   官)           松本  守君
   政府参考人
   (国土交通省大臣官房審議
   官)           石井 健児君
   政府参考人
   (国土交通省港湾局長)  金澤  寛君
   内閣委員会専門員     小菅 修一君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月十四日
 辞任         補欠選任
  嘉数 知賢君     山本 明彦君
同日
 辞任         補欠選任
  山本 明彦君     嘉数 知賢君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 構造改革特別区域法の一部を改正する法律案(内閣提出第一一三号)


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     ――――◇―――――
佐々木委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、構造改革特別区域法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官・内閣府大臣官房審議官中城吉郎君、総務省自治行政局公務員部長森清君、文部科学省大臣官房審議官金森越哉君、文部科学省高等教育局私学部長加茂川幸夫君、厚生労働省医政局長篠崎英夫君、厚生労働省職業安定局次長三沢孝君、厚生労働省雇用均等・児童家庭局長岩田喜美枝君、国土交通省大臣官房審議官松本守君、国土交通省大臣官房審議官石井健児君及び国土交通省港湾局長金澤寛君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
佐々木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
佐々木委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。谷本龍哉君。
谷本委員 自由民主党の谷本龍哉でございます。
 構造改革特別区域法の一部を改正する法律案について、質問をさせていただきます。
 この構造改革特別区域法、我が国経済の活性化のために、また、規制改革を行うことによって民間活力を最大限に引き出し、民需を拡大する、このために昨年の平成十四年十二月十八日に公布された法律でございます。
 私は、日本という国は、長年、自由民主主義の国といいながら、経済分野においては特に、国の主導あるいは行政の主導のもとに、社会主義的な計画経済というべきようなやり方が長らく続いた国だというふうに考えております。
 それは、当時、うまく事が運んだ時代もありました。しかしながら、どんどんと国際競争力、そういうものが必要とされるようになる中で、守られ、護送船団で画一的な発展を遂げてきた分野については、現状では非常に苦しい状況がたくさん生まれてきている。これをしっかりと競争力のある、活力のある状況に持っていくためには、やはり国ががんじがらめにしてきた規制というものを、外せるものはどんどん外して、自由にやれる部分は自由にやっていく、こういうことが非常に大事だろうというふうに思っております。
 その中で、なかなか一斉に改革、規制緩和が進まない、それを部分的にでも成功事例をつくって全国に広げていこう。なかなか苦しいやり方ではあるとは思うんですけれども、それで成果を上げることができるなら、これも一つの方法かなというふうに見ておりますが、その中で今回、昨年以来、一次認定、二次認定と進んでくる中で、教育や農業といった今までなかなか規制緩和が進まなかった分野におきまして一定の成果があったと私は思っております。しかしながら、医療の分野など、いろいろな意味で抵抗の存在する分野もまだあるのではないか、そういうところでは十分に規制改革が進んでいないというふうな思いも持っております。
 今後、この規制改革を進めていく上で、この構造改革特別区域法に従って進める中での大臣の御決意をお伺いしたいと思います。
鴻池国務大臣 本日、五時間のコースでございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。
 今、委員が冒頭お話しになりましたように、官が主導して日本の国を引っ張っていった、そういう時期も確かにございました。明治維新が成り、日露戦争を経て、日本の国、国威発揚した時期も、官主導のもとに大変よかった時代ではないかと私は思います。しかし、それがまた間違った方向で太平洋戦争に進んでいった。これも官主導の間違いであったと思います。
 戦後、日本が焼け野原になってみんなが焼け出され、飯が食えない、あるいは医療が受けられない、そういうときにやはり官が主導で全員に、医療、教育あるいは食料の分野で満遍なく行き渡るようにしてきたというのは、やはり官のよきところであったと認めなければならないと私は思います。
 しかし、委員がただいま御指摘のように、今の時代になって日本列島の閉塞感ということから考えた場合、官から民へ、中央から地方へというこの思いというのは、小泉総理だけではなく、与野党問わず大変大事な哲学になっていると思います。そういった中で、大変大きなところの規制改革というものをやはり全国的にやっていきたい、これはだれしも思うところで、経済界だけではないと思います。
 しかし、なかなかこれが進まない。そこで、構造改革特区という構想が生まれて、一点集中、出島のごとく、あるいは楽市楽座のごとくやってみようというのが本日に至ったところでございました。しかし、今御指摘のように、なかなか前に進まない分野が多々ございます。しかし、これに対しまして、各省庁の御理解を得ながら、突破口として、今までなかなか進まなかった分野にこれからも取り組んでいかなければならない、これが国家国民のためになる、そういう信念を持って進んでまいる所存でございます。
谷本委員 力強い答弁をありがとうございます。しっかりとこれを前向きに進めていけるよう、我々もしっかり協力をしていきたいと思いますが、何よりも大臣の前向きな、しっかりした意思が一番大事だと思いますので、よろしくお願いをいたします。
 続きまして二問目に移りますが、この四月に、五十七件、第一次認定が行われました。既に特区というものは動き出したということだと思いますが、もともとの構想として、一部地域に特区として認める、それが、事後評価をして、うまくいくという判断がなされれば、それを速やかに、全国にできるだけ早く広げていく。本来であれば、全国一斉がいいものであるという考えのもとにこれは進められているというふうに理解をしております。
 この第一次認定を終えまして、これから、特区でそれがどのように動いているか、そういう実施状況を評価していかなきゃいけないと思うんですが、できるだけこれを速やかに行っていくためにどのように、私は速やかに、早くできるだけ全国に広げられるのが一番だと思いますが、それに対する対応というのはどのようにお考えなのか、お聞かせください。
鴻池国務大臣 御存じのとおり、第一次提案四百二十六件がございました。第二次提案を募集いたしましたところ、六百五十一件になりました。そこで、合計提案数が一千七十七件。そして、特区で実施となりました規制の特例措置は百四十件、全国で実施となった、全国対応しようということでなりましたのは百八十八件に上りました。いい意味でこの特区の構想が各省庁に御理解をいただき、全国で百八十八の規制を緩和あるいは撤廃するという副産物ができたと承知をいたしているところでございまして、これが四月の二十一日に総理官邸で認定式を行いました。その瞬間から特例が動き始めました。
 例えば港でありますとか、例えば農業でありますとか、そういったところで、私は、いい意味でよきものは飛び火していくということに期待をいたしているところでございますが、この七月に評価委員会というのをつくらせていただく予定にいたしております。これは、民間を中心にやりたい、人選をしたい、このように思っているところでございますが、その評価委員会をもって、大変すばらしいことであるということで、全国展開すべきというような話が進めば、恐らくそのように進んでいくであろう、このように理解をいたしているところであります。
谷本委員 この特区構想の中で提案されるいろいろな規制改革は、本来であれば、一部ではなくて、本当に大臣言われるとおり、全国で一斉にやれるのが一番いいんですけれども、なかなかそれが難しい中で、一部地域だけでスタートしたものに対してはやはり一刻も早く評価を下していって、中にはなかなか全国になじまないものも出てくるかもしれませんが、できるだけできるものは全国でやっていく、それのスピードをできるだけ速めていっていただきたいというふうに思います。
 それでは、最後の質問になるんですけれども、特区構想と言いますが、この構造改革特区を進めていく中で、どの規制を対象にするか、どういう形で特区を、特例を実施していくか、これは各大臣が出席する構造改革推進本部において決定されたものでありますが、聞くところによりますと、どうもこれに対して、一部、抵抗ではないんですけれども、例えば、大臣がそれを決めた、しかしながら省庁内で、例えば局長通達であるとか課長通達であるとか、そういった通達によってその特例の内容を骨抜きにしようとするかのような、そういう通達が出されようとしたことがある。そのような例があるやに聞いているんですけれども、せっかくこれだけみんなが力を合わせてこの構造改革特区を進めようとするときに、表面上はそれが進んだように見せて中でそれを阻害するような要因が出てくる、こういうことでは非常に困ると思うんです。
 そういうことに対しまして、大臣、どのように把握をされて、それにどのようにこれから対応されようと考えていらっしゃるのか、そのお考えをお聞きしたいと思います。
鴻池国務大臣 内閣総理大臣が一つの方針を定めて、馬に乗って東を向いて走ろうと。我々閣僚は同じスピードで走らなきゃならぬと思っております。恐らくほとんどの閣僚がそういうふうに思っておられると思いますけれども、一部、一緒に東を向いて走ろうとしている中で、牛に乗って西を向いて走ろうという省庁があることは事実でございます。これからいろいろと議論の中であぶり出てくるだろうと思います。しかし、それをどう抑えるかは担当大臣のリーダーシップにかかる、このように私は思っておるところであります。
 ただ、今の御質問の、いわゆる通達等によってせっかく規制緩和したものをもう一度後ろから網をかぶせるようなことをするのではないかということに関しましては、一応、構造改革特区基本方針におきまして、通達等によって付加することができないという旨のことが明確に定められておるということも現実として御承知をいただきたいと思いますし、また、規制の特例措置を定める法令等の案を作成するに当たって、内閣官房と、基本方針に即したものであるかどうかという観点を調整していく、こういうことであります。
谷本委員 質問は以上でありますけれども、今まで非常に規制緩和が進みにくかった、特に教育の分野あるいは農業の分野、教育改革また農政の改革、非常に今問題をたくさん抱えている分野でもあります。また、医療の分野も同じだと思います。そういう分野につきまして、やはり少しでも穴をあけるといいますか、あけることによってその状況を打破して、そして、目指すべきあるべき改革というものを早急に進められるように大臣のリーダーシップに御期待を申し上げまして、質問を終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。
佐々木委員長 以上で谷本君の質疑は終了いたしました。
 次に、大畠章宏君。
大畠委員 おはようございます。民主党の大畠章宏でございます。
 構造改革特区法案について質問をさせていただきます。
 冒頭に鴻池大臣に申し上げますが、実は、私、この質問をするに当たっていろいろな資料を集めさせていただきまして、週刊誌ですとか経済誌、いろいろありましたが、構造改革特区の内容というよりも、鴻池大臣と各省庁あるいは各関係団体との壮絶な闘いというのがずっと羅列されておりまして、本当に久々に政治家の姿勢を見る感じがいたしました。私は、与党、野党を問わず、本当に国民のための政治を行う、そういう姿勢をぜひ貫いていただきたいということを冒頭に申し上げさせていただきます。
 なお、きょうはネクタイが、何か勝負ネクタイというのをいつも準備しておられるという話でありますが、その志でこれからも本当に国民のための改革を実施していただきますよう、冒頭に要請しておきたいと考えるわけであります。
 さて、そういう状況でありますが、実際に改革を進めようとするときには、いろいろな制約、いろいろな環境がありまして、なかなか進まないというのが率直な大臣の心中ではないかと思うんです。特に今回、第一回、第二回合わせますと、千七十七件の特別区の提案があったと伺っておりますが、これまでの第一次あるいは第二次の全国各地からの提案というものを受けて、先ほども委員からの御質問に答えておられましたが、改めてこの改革に取り組む国務大臣としての決意と、今回の改正案についての所感をお伺いします。
鴻池国務大臣 御激励をいただきまして、ありがとうございます。
 きょうは、勝負ではなくて、この法案が一刻も早く成立をしていただきますようにお願いを申し上げる立場でございますので、静かな星の模様で、思いを星につなぐような、そういう気持ちで参りました。冒頭から冗談で恐縮でございます。
 今お話しのように、全国から一千七十七件の御提案がございました。これはもう既に委員の皆様方に申し上げることではございませんが、特区室あるいは特区担当大臣がこれはよしとして決めていくのではございません。この我々の町にある、あるいは我々を取り巻く環境にある規制を緩和するあるいは外していただくことによって、私たちの地域が、あるいは我々を取り巻く経済基盤が活性化するんだという御提案をどうかひとつお出しをいただきたいというのが特区の構想でありまして、そして、それを規制しておる役所、省庁にほうり上げて、これをひとついかがでしょうかと、このような民からの力強い、あるいは地方からの力強い御提案を受けとめていただけぬだろうか、こういうことでございます。
 この姿勢は、大変私はすばらしいものだ、また、私どもはいわゆる調整役としてこの任に当たってまいりまして、これが役所の、規制省庁の御理解をいただく、あるいは御理解をいただけない、しかし、これについてよきものであれば一生懸命粘ってこれからも進めていかなければならない、このように思っております。
 なぜ全国展開できないかという御意見もございますけれども、できないのです。いかに小泉総理が、両手を挙げて規制改革なくして成長なし、こうおっしゃっても、なかなか進まない。そこでこの特区の構想が出てきたということでありますので、任にある限り、我々わずか三十名の役所でございますけれども、その仕事に邁進をしていきたい、このように決意を新たにいたしております。
大畠委員 大臣の心中の御決意の一端を伺ったわけでありますが、本来であれば、もっと関連法案等々も、改正案を出したいと思っておられたんでしょうけれども、今お話しのように、いろいろな制約、いろいろな環境からなかなかできなかったけれども、今回七件に法改正をまとめて出されたということだと思います。
 私は、今回この提案をずっと見ていまして、地域力というのですか、やはり地域の社会というのはすごいなと思いましたね。これだけの提案を出してくるんですね。これまではどちらかというと、補助金とか、あるいはこういうリゾートをつくりませんかとか、いろいろ国の中央から提言されては地域がその提案に乗るという形が多かったわけでありますが、どうも国の中央からの提言に地域が乗るという方式は、残念ながら余りうまくいっていないんですね。
 逢沢自民党の筆頭がおられますが、かつて経済産業といいますか商工委員会で一緒にリゾート地といいますか、あるいは工業団地のところを訪ねていっても、全然売れないんです、債務がかさむばかりで非常に困っていますという村もかつてありました。そういうことから、逆に、国の中央から云々するのじゃなくて、地域から知恵を出してほしいというのが今回の構造改革の特区だと考えるわけであります。
 今回の法改正は七件ということでありますが、この法律案の内容を見ますと、認定は総理大臣ということになっておりますが、ここら辺、私は、総理ではなく鴻池大臣が認定します、あるいは各都道府県の知事に認定権を与える、このくらいやってもいいのではないか。すなわち、原則禁止、例外認可の行政の裁量権というのがいろいろ災いを呼んだことも大臣御存じのとおりなんですね。したがって、なぜ総理大臣の認定という形に今回の法改正はまとめたのか、その背景と大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
鴻池国務大臣 ただいまの委員の御発言どおり、もはや今の日本は地方から、民からの活力を期待せざるを得ないと私自身も強く思っておるところでございます。
 それゆえに、民の意思を素早く、地方の意思を素早く吸い上げるために総理認定以外の方法はないかというお話でもあったかと思いますけれども、ただいまは、私が内閣総理大臣を助け、その命を受けて内閣府設置法に規定する事務を行う立場でございまして、今が大変幸せな立場でございます。
 もう一つ、知事、いわゆる地方公共団体の長がこれを認定してはどうかという御意見でもございますけれども、ただいまの時点の特区構想というのは、知事も市長もみんな提案者側で、提案ができるということに相なっておりますので、提案をしてみずから認可するということもいかがなものか、こういう考えの範囲の中で、現在とりあえずは、昨年五月に構想が発足いたしまして以来約一年間、ここまで来ておる、こういう御理解をいただきたいと思います。
大畠委員 ちょっと前後するかもしれませんが、現状はそういうことでまずやりたいというのはよくわかるわけでありますが、実は私、第一次提案のときの採用件数が五十七件、それから今回もかなり採用しようという項目があるんですが、ずっと見ていますと、例えば子供が、あれもやりたい、これもやりたい、いろいろな夢を持っているんですね。ところが大人が、あれをやっちゃだめ、これをやっちゃだめ、これしかだめなのよというのでどんどん制約して、余りいきますと、提案してもこれはもうなかなか難しいわいというので、地域の方でも最初のころは非常に意欲的だったんですが、だんだん、三次、四次という提案を募集することを考えておられるというのですが、途中経過を見ますと、鴻池大臣がかなり頑張っているのにもかかわらず、どうもいま一つブレークスルーしていない。
 私自身も、あるいは民主党としても地方分権を進めることが日本改革の大もとになるという考えを持っているわけでありますが、もっと大臣に頑張っていただいて、もうちょっと私はこの採用件数をふやすべきだと思うんです。
 今回、法改正七件ということになってしまったんですが、これはほかの提案等々については法改正しなくてもできるというのか、あるいは、現状は絞って七件になったけれども、今後もまた検討していって、さらに関連する法案を改正しようという形で継続して法改正が出てくるのか、そこら辺の今後の見通しについて大臣の御見解をお伺いします。
鴻池国務大臣 少ないではないかという御指摘あるいは御心配を賜っておりますが、四十七項目、計百四十項目について特区において規制の特例措置を実施可能にしておるわけでございまして、四十七件のうちの七件を法改正しなければならない、これを御審議をお願いいたしているところでございまして、残る四十項目につきましては、今後の構造改革特別区域基本方針の決定を行いまして、これに即して政令や省令等の所要の整備を行うことといたしておるところでございます。
 なお、第三次はどうか、第四次はどうかと。継続して御提案をちょうだいすることになっておりますけれども、私は、第一次認定の結果、既に四月二十一日からこれが発効しておりますけれども、この結果を隣の町が、隣の県が見て、恐らく我も我もということになってくるのではないかという期待を実はいたしております。
 港一つとりましても、御提案の十港に限りましたけれども、当然、シンガポールや釜山がやっておりますように、三百六十五日休みなし、二十四時間必要に応じて役所をあける、通関業務をやる、植検業務をやるといったような当然やっておかなければならなかったことが四月二十一日にオーケーになったわけでございますので、例えばそういったことから経済の活力とかそういったものが生まれてくるのを隣の港が見て、ぜひとも我々もやろうじゃないかといったようなことに、何度も申し上げております、いい意味で飛び火していくものと私は期待をいたしております。
 なお、我々特区室といたしましても、内閣府と十分連絡をとりながら、いわばPRと申しますか、私自身も、任のある限り各地に出向きましていろいろないい特例をPRいたしまして、また地方の活性化につなげていく、この作業を精力的にやっていきたい、このように思っております。
大畠委員 非常に私自身も同感な感じのお話をいただきました。
 それで、ちょっと次に具体的な話を質問させていただきます。
 今大臣からやって当然じゃないかというものはやるんだという話がありましたが、質問通告の順番は逆かもしれませんが、労働省、きょう来ていますか。労働省、来ていますね。
 実は大臣、私は前回の構造改革特区の法律案の質問のときに、私の地元で大手の企業が倒産しました、失業者が町にあふれたんですね。その町の中では一番の企業だったですから、それで職業安定所、ハローワークに押しかけたんですね。ところが、ハローワークは土日休みなんですよ。夕方は五時で終わり。それで、いろいろとハローワークも努力したのかもしれませんが、なぜ五時で終わりなんだ、それから土日に何でやってくれないんだという不満が失業者の間から大変ふえたんですね。
 いろいろ厚生労働省に話を聞いたら、十九カ所で土日、土曜日とかあとはやっているんですと言うのですけれども、私はそこら辺、例えばその地域の大きな企業が倒産した場合には、その地域のハローワークは土日も営業します、あるいは時間外、五時で切りません、八時ぐらいまで延長して職業あっせんをしますというくらいの行政サービス精神があってもいいと思うんですが、前回質問したにもかかわらず、全く検討が進んでいないという中間報告を受けたんですけれども、ここら辺、厚生労働省は、今の大臣の基本的な考え方を受けて、どういう検討をしてきたのか、お伺いしたいと思います。
三沢政府参考人 お答え申し上げます。
 昨年の十一月二十日、当委員会でハローワークの時間外延長のお話についての御質問をいただきました。
 私ども、先般、先ほど先生からもお話ありましたように、十九カ所で時間外あるいは土曜日の営業をやっております。これは、東京とか大阪とか、求職者の方が非常に多い地域を中心に行っているというところでございます。
 我々としては、安定所のサービス、利用者の利便の向上を図る、これは、我々サービス行政ですから、先生おっしゃるとおり、基本的な問題だと思っています。その際、どういう方法で安定所に来られる方々、利用者の方々のサービスの向上を図るか、こういう問題だと思います。
 この点については、先般来も御質問のあったハローワークインターネットサービスの企業名公開の問題、これは、先生から、ことし一月一日というお話もございましたけれども、我々、いろいろ鋭意努力いたしまして、一月の十四日から企業名の公開をやっております。そのことによりまして、今、安定所に求人が大体三十九万件ぐらいあるんですけれども、そのうちの半数ぐらいは企業名が公表されていまして、公表によりまして、一日のアクセス件数が十六万七千件ということで、公表前のほぼ倍増ということで、非常に利用が進んでいるんじゃないか。インターネットは、別段安定所に来られなくても、自宅で、時間に関係なく深夜でもいつでも見られる、曜日に関係ないということで、そういう利用の利便を図るということです。
 それからもう一点、安定所の利用者のところに自己検索パソコンというのを導入しておるんですけれども、安定所に来られた方が、自分でパソコンの前に座って、自分の希望する労働条件を投入することによってそれに合った求人案がたちどころに出てくる、こういうシステムなんですけれども、この配置を進めておりまして、ハローワークの高萩、ある大手の、たしか紙のメーカーか何かですけれども、そこの倒産がありまして、その当時は高萩には自己検索パソコンが導入されておらなかったんですけれども、この四月一日から二十台配置するというようなことで、利用者の利便の向上に努めているということでございます。
大畠委員 いろいろ努力をされたというのは理解いたします。しかし、新聞のところにも、時々、投書欄があるんですが、ハローワークのテーブルの内側の職員の人は失業の可能性ゼロ、テーブルの外側の人は、失業、まさに一〇〇%ですよ、そこにやはり、何か、もうちょっと行政ならば温かい気持ちで、温かいサービスを提供したらどうかという投書なんかもあるんです。
 私は、インターネットは、これは努力していただいて、どこでも見られるように改善したという話をいただきまして、それは感謝申し上げますが、さらに一歩進んで、十九カ所だけじゃなくて、全国各地の主な企業、大きな企業が倒産した場合には、緊急事態、すなわち、事故対策と同じなんですよ。だから、ハローワークも、土日も営業します、あるいは、営業時間も五時で終わらないで八時ぐらいまで延長します、せめてそういうことをやるのが血の通う行政だと思うんですが、再度、この件について、今後検討するつもりは全くないのか、これから検討しようと思うのか、そこら辺、ちょっと答弁をお願いします。
三沢政府参考人 お答え申し上げます。
 再度の御質問で大変恐縮なんでございますけれども、私ども、利用者の利便の向上を図る、これはサービス行政の第一でございますので、そういう大きな企業倒産等ありました場合、わざわざ安定所に出向いていただくということもなかなか困難な場合もあるので、そういう場合は、直接そういう企業に私どもが出向いて、そこで直接相談を受ける、そういう形で、情報提供なり、職業相談なり、カウンセリングなり、求人情報の提供なり、こういうことをやって早期の再就職につなげていきたい、こう思っているところでございます。
大畠委員 それは存じ上げているんですよ。しかし、それでもハローワークの駐車場はいっぱい、人があふれているのが実態なんですね。それは、事業所のところへ行っていろいろ親切にやっていただいているのはわかっているんです。しかし、それでも、それでも対応は十分でなかったわけですよ。ですから私申し上げているんであって。
 だから、今、いろいろな規制改革の問題がありますが、ハローワークだけが職業あっせんという形になり始めているんですけれども、私は、やはり競争がないところに、そういう悠長な話をしているんですよ。おれら十分やっているんだ、十分やっているんだからこれでいいんだという話じゃなくて、実際にそういうところに行ってみてくださいよ。なかなか駐車場に車が入れない、部屋の中に入るとたくさんの人がいる、三十分過ぎたんだからあなた早くかわりなさい、おれが今度は見るんだといって、そこでもうあと少しでというときにまたかわらなきゃならない。そういう実態を見れば、それは、今の倒産した企業のところでちゃんとやっていますからというだけではもう済みませんね。
 ちょっと、そういうのを検討するつもりもないかのどうか、再答弁を求めますよ。
三沢政府参考人 再々まことに恐縮でございますけれども、私どもとしても、サービス行政が基本でありますので、いろいろな事態が生じた場合には、それに臨機応変に応じるようなことは当然検討していかなきゃいかぬと思っています。
大畠委員 大臣、こういう状況ですから。臨機応変といったって、十九カ所しかやっていないんですよ。構造改革特区の対象にするまでもないのかもしれぬけれども、そういう地域のニーズに合った形で行政体が臨機応変に、もちろん倒産企業に行ったりなんかはしているんですけれども、私は、当然、土日も営業する、あるいは八時までやってくれ、ああ、ハローワークの厚生労働省も、我々のために一生懸命頑張っているというのがわかるわけですよ。
 だから、私は、そこら辺は、大臣、また厚生労働省にちょっとハッパをかけていただきたいと思うんですが、大臣の所感をお伺いします。
鴻池国務大臣 厚生労働行政に物申す立場ではございません。しかし、今委員が思いを込めて発言をされていることに関しましては、同じ政治家としてやはり賛同するものでございます。行政は、やはり現場をしっかりと見詰めて行為を行っていただきたい。同じ思いでございます。
大畠委員 そういうことですから、厚生労働省も、ぜひ、そういう紋切り型の話じゃだめなんですよね。だから、よく坂口大臣とも話をして、ある程度の考え方をまとめてください。その状況については、機会があればまた質問させていただきます。
 それでは次に、この法案の対象となっております幾つかの課題について質問させていただきます。
 公有水面埋立法特区というものが提案されました。この法案、実は民主党内でもいろいろ論議をさせていただきましたが、大臣御存じのとおり、これまで随分公有水面を埋め立ててきたんですね。とにかく用途はこうだということで、無理やり、住民の反対等もありながらも、埋め立てたところもある。ところが、埋め立ててみたらなかなか有効に使うことができない、そういうところが全国で六千ヘクタールあるというんですね。
 今回のこの特区も、こういう従来の、目標を持って埋め立てたんだけれども、従来の方法では、目的では活用できないのでこれを転用しようということで、公有水面埋立法の特区という考えが出されたのではないかという懸念を持っております。
 そこで、最初に、国民の共有財産である公有水面の埋め立てには相当の公益性が必要であり、その公益目的のために埋め立てが認められたのであって、安易に用途変更を認めるべきではないという意見が大変強くあります。今回は、権利の転用、設定、用途の変更の許可が必要な期間について、竣功認可の告示後十年であるものを五年に短縮するという内容でありますが、当初の目的とは異なる用途に安易に変更されてしまうんじゃないかという懸念を強く持っているところでありますが、この件について見解をお伺いします。
金澤政府参考人 お答えを申し上げます。
 港湾を核といたしまして臨海部は基幹産業が立地しておりまして、我が国の経済社会を支えてきたというところでございます。ただ、昨今のバブル崩壊、あるいは我が国の産業構造の変化、アジア諸国の経済の急激な発展、さまざまな要因がございまして、もともとの工場が中国に移転していくとか、あるいはその用途を変更するとかというようなことがございまして、いわゆる民間が所有しております臨海部の工場用地等が低・未利用地化したり、あるいは利用の転換が見込まれている用地が、先生御指摘のように、約五千ヘクタールほどございます。
 特に、いわゆる埋め立ての場合に、自分で利用するものもございますが、民間企業に譲渡するとかあるいは賃貸をするなどの処分を行うことを目的として、バブル期に計画して着工された港湾におきます埋立地につきまして、いわゆる製造業用地とか保管施設用地というふうに免許で用途を定めたものなどが利用できずに遊休地化しておりまして、港湾の開発や利用にいわゆる支障を来しているというものが見受けられるところでございます。
 今回、こうした状況に直面している、特に横浜市などの地方公共団体からの非常に強い要望がございまして、そういうものを踏まえまして、いろいろさまざま検討したわけでございますが、特区に限りまして、権利の移転期間を十年から五年に短縮化するということとしたところでございます。
 国土交通省といたしましては、本特例措置を活用いたしまして、港湾におけるそういう埋立地の有効かつ適切な利用を図るということで、埋立地を含む港湾の再開発を促進して、我が国経済の振興というものを図ってまいりたいと考えております。
 そこで、本制度が乱用されて、当初の埋め立ての目的と異なる用途に安易に変更されるという先生の御懸念に対してでございますが、その点に関しましては、特区計画と申しますのは、地域を限定いたしまして、特例的な制度ということで、国土交通大臣の同意が必要、同意を得て内閣総理大臣が認定を行う、また地方公共団体がその責任と判断で推進するということになっております。これが一点でございます。
 また、個別の特区において講じられた規制の特例措置につきましては、その効果とか影響などにつきましては、所管省庁の長、私どもで申し上げますと国土交通大臣が毎年度調査を行いまして、特区推進本部に御報告をし、本部に設置されます評価委員会におきましてその評価が行われることとされております。これが二点目。
 さらに三点目といたしましては、本特例措置が創設後でございましても、新たに免許を受けて埋め立てを行う場合には、これまでどおりのいわゆる埋立法に基づきます出願事項の告示、縦覧、地元市町村長からの意見徴取、利害関係者からの意見書提出といった公正かつ厳正な手続が必要でございます。
 このような点から、本制度が乱用されて、当初の埋め立ての目的と異なる用途に安易に変更されてしまうということはないものというふうに考えております。
 国土交通省といたしましては、本特例措置の効果や影響等に関する毎年度の調査などを通じて、本特例措置の厳正かつ適正な運用に努めてまいり、我が国の経済の活性化に資してまいりたい、かように思っている次第でございます。
大畠委員 今いろいろとそういう懸念がない形でやりたいという答弁があったんですが、一言で言うと、むだに使って、それを勝手に転用するんじゃないかという懸念というか問題意識を持っているわけですよ。
 これまでも、本当に使うの、本当にそれは有効に使えるのという疑念がある埋立地も随分ありました。つくってみたら、今の五千ヘクタールですか、そういうものがあるんだけれども、それを有効に活用していないんですよ、転用したいという、ここのところに私は政策的な問題点があったんじゃないか。それを今度は何とか使わなきゃならないというので転用するという、安易な転用というのは問題ではないかという指摘なんですね。それに対して、今、大臣ですとかあるいは市町村ですとか、そういうところから十分意見を聞きながら、そういう安易な形に転用することはしないということを明言されたわけですね。
 もう一度、今私が申し上げたように、一言で言えば、何かわからないけれども、計画段階から非常にむだな埋立地がたくさんあった、これを今度は、つくってみたらやはり使い道がないので転用しようというんだけれども、では何のために、公共用として埋め立てたんだけれども、それを私的にとかあるいは別な目的にという、そういう安易な転用ではない、させないということかどうか、もう一回、ちょっと、非常に長かったんですが、端的に言うとどういうことかというのをもう一回答弁してください。
金澤政府参考人 港湾における埋立地と申しますのは、いわゆる地方公共団体あるいは港湾管理者が埋立造成するというものが、特に民間に譲渡したり移転したりする場合は。そもそも埋立法の規定でそうなっております。民間が埋め立てをする場合は、自社利用の場合にのみ限られております。
 それで、この場合は、転用するということが課題でございますから、地方公共団体が埋め立てをしたものでございます。地方公共団体が埋め立てをしたり、あるいは特に港湾管理者が埋め立てをする場合は、港湾計画という、別途、港湾法に基づく手続がございまして、これは港湾の計画の中身についてよく審議し、いわゆる地方議会の審議にかけられました、そういうよく審議をしたものとして計画がされております。そういう面でもチェックがかかっております。
 それから、なお、埋立法の規定におきまして、先ほど申し上げましたように、告示、縦覧が行われたり、利害関係者の意見を聞いたりする、そういうことによって厳正な審査を行ってきております。
 したがいまして、確かに五千ヘクタールほどの未利用地が出てきておりますが、こういうものは、先ほど申し上げましたように、日本国全体の経済社会のバブル化でございますとか、産業構造が大幅に変化したということによる結果だというふうに思っておりまして、昨今、埋立地そのものの認可件数も、バブルの以前に比べますと随分少なくなっております。例えば、バブル前後は二百件から三百件の埋立認可をしておりましたが、昨今は百件ぐらいに、あるいは八十件、昨年度は八十件ぐらいだったですか、かなり減ってきております。
 そういうふうに非常に厳正な審査をし、なおかつ、今この経済状況を考えたときに、では、十年で許可していたものを五年に縮めようということは、五年ぐらいを過ぎて利用転換をすれば、非常に有効に利用できて、まさにこの特区法が定めております、地方公共団体の自発的思いによってその地域をよくしていこうというところにきちっと対応できるのではないかということでございますので、五年ぐらいに認可期限を少し短くしようという趣旨でございます。
 それが安易に行われないように、繰り返しになりますが、大臣が、私どもも見させていただきますし、それから地方公共団体そのものが、安易な転換が行われないように、自主的に、自発的に判断されることでございますから、例えば、民間の、何と申しますか、いいかげんな用途に変えていくようなことは決してないものだというふうに信じておりますし、私どももちゃんとそれは検討してまいりたいと思っております。
大畠委員 いわゆる公益目的以外には転用することはないという今の答弁だと受けとめます。
 それから、そもそも公有水面埋立法で、竣工後十年以内の埋立地の譲渡等について免許権者の許可を必要としている趣旨はどういう意味でしょうか、これを伺うのと同時に、今回の特例を認める理由として、遊休地の有効活用を掲げておりますが、そもそもの目的の利用ができなかった責任についてどのように考えるのか、あるいは、遊休地の有効活用であっても、国民の共有財産を埋めた土地であって、公益性などの審査を厳格に行うべきではないかと考えますが、この二点について質問いたします。
金澤政府参考人 まず第一点目、公有水面の免許権での許可を必要としている趣旨ということでございますが、公有水面埋立法におきましては、埋立地の権利の設定等について免許権者の許可を必要としております。そもそも公有水面と申しますのは、国民共有の資産である貴重な公有水面、そういうものを埋め立てていく、特定の者に土地の造成を認め所有権を与えるというようなことがございますので、利権化とか乱開発、そういうものを防止する要請が極めて高い、そういうことから一定の期間は免許権者の許可が必要であるというふうに考えられるためでございます。
 それから次に、用途の変更等に当たって公益性などの審査を厳格に行うべきではないか、なぜこう遊休地ができたんだ、その責任はどうかというような御質問でございますけれども、繰り返しの答弁になって恐縮でございますが、埋立地の目的というのが利用できなかった責任ということですが、埋立地の目的は、先ほども申し上げましたように、港湾管理者が埋め立てる場合は港湾管理者が審議会等に諮ってきっちりとした対応を図ってきたわけでございますが、バブル崩壊後の国際競争力の低下とか産業構造の大幅な転換、そういう原因によりまして、埋立免許の時点で想定し得なかったやむを得ない事情で、民間企業に譲渡や賃貸などの処分を行うことを目的とした埋立地が、製造業用地や保管施設用地など免許どおりの用途に利用できずに遊休地化してしまっているというふうに考えております。
 国土交通省としましては、これまで公有水面の埋め立てが、国民共有の資産である貴重な公有水面を埋め立てて特定の者に土地の造成を認めて所有権を与えるものであるという点を踏まえまして、公有水面埋立法の二十七条あるいは二十九条の許可制度を厳格に運用してきたところでございます。利用用途の転用に対する制限でございますとか、そういうことでございます。
 本特例措置につきましても、このような点を踏まえまして、本特例措置の効果や影響等に関する毎年度の調査などを通じまして、厳正かつ適正に運用に努めてまいりたいと考えております。
大畠委員 それからもう一つ御質問させていただきますが、このような特例制度ができた場合に、先ほどの転用の話と重複いたしますけれども、公益性は高いけれども実現性の低い土地利用を目的に埋め立てを行って特区申請して別な目的に使う、いわゆる悪用されるようなことはないのか、そういうことで歯どめはどうなのか。先ほど、地元の自治体で議会等でも十分論議していただいて、転用に当たっては公益性を損なわない形にしたいというお話がありましたが、その件についてもう一度考え方を御説明願います。
金澤政府参考人 繰り返しになりますが、恐縮ですが、特区計画は、地域を限定した特例的な制度でございまして、国土交通大臣の同意を得まして内閣総理大臣が認定を行う、それから地方公共団体がその責任と判断で推進するということとされておりますので、そういういわゆる歯どめがかかっております。また、個別の特区に講じられた規制の特例措置の効果や影響等は、所管省庁の長が毎年度調査を行って特区推進本部に報告し、本部に設置されます評価委員会によって評価が行われる。問題のあるような転用あるいはそういうことであれば、そこで御議論になると思います。
 またさらに、本特例措置の創設後でありましても、新たな免許を受けて埋め立てを行う場合には、これまでどおり出願事項の告示、縦覧、地元市町村長からの意見徴取、利害関係者からの意見提出といった公正かつ厳格な手続が必要でございます。このような点で、本制度が悪用されることはないというふうに考えております。
 ただ、国土交通省としましても、本特例措置の効果や影響等に関する毎年度の調査などを通じまして、なお本特例措置が厳正かつ適正に運用が行われますよう努めてまいりたい、かように思っております。
 それから、一つだけ付言させていただきますが、先ほど私御説明申し上げましたが、公的利用のみに転用されるというふうに先生御理解されたようでございますが、利用の用途を転用される先は、民間企業が例えば商業施設をつくるとか、そういうことに対する用途の転用というものももちろんございます。
大畠委員 今のお話でも、その場合においても、安易な形ではなく、地方自治体あるいは県、そういう委員会で転用については審議して方向づけをするということですか。もう一度答弁をお願いします。
金澤政府参考人 地方公共団体が委員会をつくって議論する、あるいは議会にかけるということについては私は承知しておりませんが、いずれにいたしましても、特区制度の趣旨は、地方公共団体からの要請に基づいて動いておりますから、そこから先、地方公共団体がどういうふうな対応をとられるか、それは地方公共団体のまさに自主性の問題であると思っております。
大畠委員 わかりました。
 それでは次に、教育特区の課題に入ります。
 保育園と幼稚園の合同施設というものが出てまいりましたが、これは私もいろいろと調べてみますと、あれなんですね。保育所というところが戦後の混乱期、これを一元化しようとかいう話もあったんだけれども、とりあえず時間がないので云々ということで今日の形になったということでありますが、保育所、どちらかというと戦後のベビーブームのころ保育所が大変不足したということから、保育所の充実、児童保育という話もあるぐらいで、十八歳といいますか十五歳ぐらいまでは保育というのも絡んでいるというので、この辺、保育所と幼稚園の一元化というニーズが非常に出てまいりました。
 国土交通省さん、結構ですよ、もう。どうぞ。
 そういうことで、保育園と幼稚園の合同施設について質問させていただきますが、まず教育者の資格というのはどういうことになるのか。あるいは、一元化、文部省管轄と厚生労働省管轄ということなんですが、一元化になりますと、どういう形になってくるのか。助成金についてはどうなのか。あるいは、特別養護老人ホームなどとの併設も教育的効果あるいは社会的効果があるんじゃないかということでありますが、こういう問題はどうなんだろうか。さらに、無認可保育園というのが非常に今使い勝手がいいというので住民からも非常に要望が強いわけでありますが、ここら辺をほっておいていいのかどうかなんですね。
 従来の、いわゆるこれだけなければだめだ、これを満たしていなければだめです、そういう規制もやはり住民のニーズに合った形にそろそろ切りかえていくべきじゃないかという意見があるわけでありますが、そこら辺を含めて一括して質問をさせていただきます。
岩田政府参考人 保育所と幼稚園について、助成金を含め今四点ばかり御質問いただきましたけれども、まず、基本的にぜひ御理解いただきたいというふうに思いますのは、保育所と幼稚園のそもそもの機能の違いのところでございます。
 保育所は、親が働いているなど家庭で保育を行えない、そういう児童について、家庭にかわってといいましょうか、家庭の養育を代替する、補完するものでございまして、いわば養護と教育を一体的に行う子供のための児童福祉施設の一つでございます。幼稚園は、親の希望によって就学前の教育を行う教育施設である、こういう基本的なそもそもの役割の違いがあるというふうに思います。
 また、特に近年は働く女性がふえ、その本格的な就労がふえ、また就業形態が多様化しておりますので、九時から五時まで働くということばかりではございません。早朝働く方、夜間働く方、休日働く方、そして病気のお子さんの保育の問題、そういったようなことも含めて、非常に長い時間帯、休日も含めて、年間を通じて保育サービスが求められているということもございますので、幼稚園との差はむしろ拡大しているという面もあるというふうに思っております。
 このように、就学前のお子さんに対する子育ての支援ニーズというのは多様でございますから、何か一つの制度、一種類の施設があればいいということではなくて、多様な施設が多様なニーズにその地域でいかにこたえられるかということであろうかというふうに思っております。
 ただ、地域によりましては、子供さんの数が減っているということもありますので、保育所と幼稚園をそれぞれ別々に設置、運営するというのがなかなか難しい、効率が悪いというようなところもあるというふうに伺っております。そういうことで、文部科学省と、従来から施設を例えば併設するとか合築するとかという形で、いかに相互にそれを共有することができるかということについて進めてまいったところでございます。
 今般は、それに追加をいたしまして、構造改革特区においては、施設の共有だけではなくて、保育そのものを合同で実施することも認めてまいりたいというふうに思っております。そういった地域のニーズに的確に対応しながら、制度を運営してまいりたいというふうに考えております。
 個別具体的なことの御質問でございますけれども、資格の問題については、そういう異なる制度の職員でございますし、特に保育所の保育士の資格というのは、保育所だけではございませんで、乳児院とか児童養護施設、母子生活支援施設といった児童福祉施設において子供にかかわる、そういう職員の共通する資格でございますので、幼稚園の教諭と資格を統一するというのは無理ではないかというふうに考えております。
 なお、しかしながら、先ほど申し上げましたように、幼稚園と保育所を連携して運営する、併設するというような動きもございますし、そういった観点から、保育資格と幼稚園の教諭の免許をできるだけ同時に取得することができるようにということで、例えば、保育士の養成課程、カリキュラムの見直しも十四年度から行いましたし、また今年度は、既に幼稚園の資格を持っておられる方が追加をして保育士の資格取得を、いかに容易に取得しやすい方策が考えられるかということについても検討してまいりたいというふうに考えております。
 保育所と特別養護老人ホームなどの併設は、子供の例えば高齢者に対する理解や思いやりを育てるという意味から申し上げましても、大変注目すべきいい試みであるというふうに考えております。公立であれ、私立であれ、老人ホームと保育所を併設することについての制度的な障害は何もございません。
 現に、少し古い数字ですが、平成十二年十月の時点では、全国で五百六十四の施設が老人の施設と保育所の施設を併設しております。こういういい取り組みは、ぜひ情報を関係者に周知をして、さらに取り組みを進めたいというふうに思っております。
 最後に、認可外保育所についてのお尋ねでございました。
 基本的には、児童福祉施設、最低基準を満たす認可保育所が保育サービスを提供すべきであるというふうに思っておりますけれども、そういう考えに基づいて、認可外保育施設が認可保育所に移行しやすいように、そのための手だてを講ずべきであるというふうに考えております。
 二つのことをやってまいりました。
 一つは、認可の基準の規制緩和でございまして、例えば、従来は自治体か社会福祉法人しか保育所の設置ができませんでしたけれども、設置の主体制限をすべて撤廃いたしまして、どなたでも、株式会社でも個人でも保育所が設置できるようになりましたし、建物や土地も賃貸でもいいということにいたしましたり、さまざまな緩和をしてまいりました。
 もう一つは、平成十四年度から、認可外保育所を認可に転換する、そのことを私どもとしても支援しようという、その支援のための補助の事業も設けたわけでございまして、認可外保育施設にはできるだけ認可化の促進という方向で取り組んでまいりたいと思っております。
大畠委員 時間が参りましたのでこれで終わりますが、実は、最後に外国人の医者の問題ですとか企業の経営する病院の問題について少し論議をしたかったわけであります。これについても関係する皆さんとかあるいは大臣のお考えもいただきたかったんですが、この件についてはまた別の機会に論議させていただきます。
 大変ありがとうございました。
佐々木委員長 以上で大畠君の質疑は終了いたしました。
 次に、石毛えい子君。
石毛委員 民主党の石毛えい子でございます。
 特区の指定ということは、申し上げるまでもなく、現場の仕事の仕方を変えていくということでありますから、その特区指定を受けました地域に暮らす住民の方々、あるいはそれにかかわって仕事をされる、現場の働いている方々にとっては、大変大きな影響を及ぼしていくことだというふうに私はとらえております。
 そこで、本日は、総論といいますよりは、今回の改正法案に盛り込まれております条文の中身につきまして、少し具体的に質問をいたしたいと思います。
 その前に、前臨時国会におきましてさまざまな特区構想の内容が審議されたわけですけれども、その一つにハンディキャブによる有償運送という事項がございました。この件に関しまして、その後、ことしの四月には特区の認定もされているわけでございますけれども、認定の状況と、それから認定のポイントはどのようなところにあるのかということを、ごく簡単にお示しいただきたいと思います。
中城政府参考人 お答え申し上げます。
 ボランティア有償輸送の件でございますけれども、特区計画の認定に当たりましては、構造改革特別区域法の定めに基づきまして、まず第一といたしまして、構造改革の推進等の意義、目標に合致していること、それから二番目に、特区計画の実施が当該区域に対して適切な経済的、社会的効果を及ぼすものであること、それから三番目に、計画の円滑かつ確実な実施が見込まれることといった認定基準に沿って判断することとしております。
 御質問のボランティア有償輸送に関する特区計画につきましては、これらの認定基準について判断するということでございますが、特にボランティア輸送については利用者への十分な配慮が必要であるということで、運営協議会の設置など運行管理体制が整っているということなどの要件が整っている場合に当該特区計画の認定がなされるということでございます。
 四月の第一弾の認定でございますけれども、神奈川県の大和市以下四地域についての特区がこの概念で認定されたところでございます。
石毛委員 続けまして、今四地域というふうに御指摘いただきましたけれども、既に特区としての実際の活動が開始され始めているということでございますので、その実施していく際の妥当性などの検証はどのようになされますか、その点についてお尋ねいたします。
石井政府参考人 お答え申し上げます。
 NPOのボランティア輸送に係る実施結果の検証についてのお尋ねでございますが、今般の特区におけるNPO等によるボランティア輸送に係る特例措置におきましては、地方公共団体が制度の運営において責任ある役割を果たすこととしておりまして、当該地方公共団体を初めといたしまして、学識経験者、地方運輸局、利用者代表等から成る運営協議の場を設けて、実施の管理を行わせることとしております。
 お尋ねの実施結果の検証につきましては、この運営協議の場を積極的に活用することとしておりまして、検証のポイントでございますけれども、輸送実施に伴う利用者からの苦情や安全上の問題の有無等の状況を定期的に報告させまして、輸送の安全、利用者利便、こういった重要なポイントが十分に確保できているかどうか等についてチェックを行いますとともに、こうした検証の結果を踏まえまして、必要に応じて運行管理体制等の見直しが可能となるような仕組みを整えているところでございます。
 国土交通省といたしましては、こうした実施結果の検証、フィードバックを通じまして、安全で安心して利用できるボランティア輸送の実現に努めてまいりたいと考えているところでございます。
石毛委員 ハンディキャブの運行といいますのは、既に成立しております交通バリアフリー法の附帯決議におきましてもその検討ということが記述されていることでございますし、それから、ハンディキャブを御利用される方は原則的にどこの自治体にもおられるということですから、そもそも特区としてあるということ自体に疑念があるというふうに申し上げても言い過ぎではないというふうに思います。
 とはいえ、実際はNPOによる有償運送はもう随分長い歴史を持っているわけですから、一日も早く特区から外れて、利用者の利便性を確保し、なおかつ安全に運行できる、そうした送迎のシステムのあり方ということを普遍化していただくように私からは要請申し上げたいと思います。
 それでは、今回の改正法案の内容に関してでございますけれども、改正法案十六条におきまして、市町村の保育の実施に係る事務を教育委員会に委任することができるようにするというのが一つの内容でございます。
 保育事務は基礎自治体におきましては市長部局に属しているわけでございますから、私は、全国三千三百近い自治体でしょうか、その自治体に全部教育委員会が存在するのは当然でありますが、教育委員会はどの自治体でも設置しておりましても、就学前の子供の幼稚園を全教育委員会が所管というのでしょうか、しているとは限らない。公立幼稚園がないところはたくさんあると思いますし、私立の幼稚園は認可は都道府県の仕事だと思いますので、教育委員会には幼稚園事務を持っていないところもあるわけですし、そもそも所管部局が違うという問題がございますけれども、このことを実際に遂行していく場合に、市長部局と教育委員会で委任に関してどのような協議がされるのでしょうか。あるいは、委任の是非を決定していく場合の認定のメルクマールとしては、どのようなことを考えておられるのでしょうか。そのことをまず内閣府の方からお答えをいただきたいと思います。
中城政府参考人 お答え申し上げます。
 市町村長は、保育の実施に係る事務を教育委員会に委任するに当たっては、地方自治法の第百八十条の二の規定によります、教育委員会と協議を行うということにしております。
 保育の実施に係る事務の委任を受けた教育委員会が事務を実施するに当たりましては、予算面それから人員面の措置がなされることが必要でございますけれども、これについては、事務委任の際の市町村長と教育委員会との協議において取り決めを行うということなど、市町村において適切に対応すべきものであるというふうに考えております。
 実際に地方自治体から特区の申請があった場合には、その実施主体である教育委員会の意見を聞いたかどうかというようなことについて確認をすることといたしております。
石毛委員 今、予算面と人員面というふうにお答えをいただきましたけれども、当然、予算、人員の中には仕事の中身も入っているわけですけれども、教育委員会との間で、仕事を遂行するだけの能力といいますか、キャパシティーがあるかどうかということも、当然のことながら確認の中に入っているというふうに理解してよろしいでしょうか。もう一度御答弁をお願いいたします。
中城政府参考人 お答え申し上げます。
 先生御指摘のように、予算面、人員面を含めまして、そうした事務がきちんと適切に対応できるかということを見るということでございます。
石毛委員 それでは、具体的な中身に少し触れて質問をいたします。
 十六条は教育委員会へ委任することができるという規定でございますが、この委任する保育の実施に係る事務というのは具体的には何を指しているのかということを御答弁願います。
岩田政府参考人 今般、特区において市町村長が教育委員会に委任できることとしている事務は、児童福祉法の第二十四条に規定する保育の実施に係る事務でございます。
 具体的には四つございまして、一つは保育所の入所の決定、二つ目には保育所の定員を超える場合における入所の選考、そして三番目には保育所への入所申し込みの勧奨、これは保護者に対する勧奨でございます。そして四番目には保育所の設置者、設備、運営状況などについての情報の提供、これらの事務でございます。
石毛委員 今御答弁の中に、広域入所についてお触れになっていらっしゃいましたでしょうか。ちょっとその点の確認をもう一度お願いいたします。境界域に住まわれる方とか仕事の都合で違う自治体に入られるという、そういう場合もあると思いますので、そこをもう一度お願いいたします。
岩田政府参考人 居住地の自治体ではない別の自治体の保育所を利用したいといった場合の広域入所の件でございますが、たしか平成九年の児童福祉法の改正で、そういう場合に自治体が調整をしないといけないということになっております。
 したがいまして、先ほど入所の決定と申しましたけれども、入所の決定の事務の一環として、他の自治体との調整ということも行っていただくということでございます。
石毛委員 その点は確認をさせていただきましたということで、今の御答弁の中に、児童福祉法第二十四条第四項の保護者への勧奨という点もお触れになりました。これは、児童福祉法の第二十五条の二の第三号の規定として福祉事務所長のとるべき措置が規定されていて、また二十六条の第四号では児童相談所長のとるべき措置ということで、子供の福祉にかかわって、福祉事務所長や児童相談所長が、保育を必要とする子供がおられた場合にその子供さんについて保育を受けるようにという保護者への勧奨を行っていくという、ややこしいという表現は余りいい表現だと思わないで今使っておりますけれども、本当にシンプルな事務ではなくて、相互の機関の連携ですとか、それからまさにそうした親子、家庭がいらっしゃるというそうした確認をしながらの複合的な自治体の児童福祉にかかわる仕事になっているというふうに思いますけれども、そうしたある意味で大変な仕事も教育委員会への委任ということになっていくわけです。
 その実務能力と体制がある教育委員会だったらいいのかもしれませんけれども、もしそういう体制がなければ、そうした大変複雑で重い課題を背負っている子供さんの保育というのはもしかしたら埋没させられてしまうかもしれないという、そういうおそれがあると思います。
 例えば、この保育の委任の事務にかかわって、そうした複雑で多くの課題を持っている子供さんの立場も踏まえて保育を実施していくような推進の仕方ができるというような意味で、私は、例えば教育委員会に子供担当のケースワーカーの配置というようなことは、大事なこの件にかかわる課題ではないかというふうに考えるわけですけれども、いかがでしょうか。
岩田政府参考人 今先生がおっしゃいました児童福祉法第二十四条第四項に規定しております保護者に対する入所勧奨と申しますのは、保育に欠ける子供が発見された場合に、福祉事務所や児童相談所が市町村に報告をする、その報告を受けた市町村は保護者に対して保育所への入所申し込みを勧奨する、こういう仕組みでございます。
 今回の特区の特例を受けて教育委員会に委任するということであれば、この事務も含めて委任されるということでございますけれども、今回の児童福祉法の特例の中にも規定されてございますように、児童の福祉に関する機関との密接な連携のもとに移管をしていただくということにしておりますので、特にこういったようなケースについては、例えば生活保護とか母子家庭対策ですとか、そういった政策との連携が必要であるというふうに思いますので、市町村におけるこういう他の福祉事務の施策を実施している機関との連携が特に必要な分野であるというふうに考えております。
 今先生が言われましたように、教育委員会の体制をどうするかということでございますけれども、これは一義的には教育委員会が責任を持って体制を準備するということだと思いますけれども、そこに子供の福祉の問題について長い経験を持たれるような方を配置するというのも一案ではないかというふうに考えております。
石毛委員 先ほど来、私の質問の中に少し発言を含んでおりますけれども、私は、ちょっとこの質問に先立ちまして、全国の市町村自治体で公立の幼稚園を設置している自治体がどれぐらいあるかということを確認しておりませんので、特区の申請をして認定をされる自治体は、当然、就学前の子供の幼稚園教育といいますか、実践方針の表現は保育になっておりますけれども、それについて経験があるところでしたらば、幼稚園の内容にかかわって熟知している職員がおられると思うんですけれども、小中という義務教育を所管している、その所管に限定されている教育委員会でしたら、就学前教育に対しての経験も、それからスタッフもまだ持っていないというところですので、特区の認定はそういうところはきっとされないんだというふうに思いますけれども、もし、先ほど来、保育の実施が必要であるという子供がおられた場合には保護者への勧奨をしていくというような、そうした仕事を遂行できるスタッフがいなければ、教育委員会が実際に保育の事務の委任を受けていくということには困難が伴うだろうというふうに思われましたので、今のような質問をいたしました。
 岩田局長の御答弁は、教育委員会の方にまではなかなか踏み込んでは御答弁されにくいのかと思いまして、経験のある方というふうにおっしゃられましたけれども、もう一つの局面の福祉行政の方には、生活保護あるいは母子家庭の相談等々に応じる専門スタッフとの連携というふうにお答えくださいましたけれども、私としましては、ぜひ、教育委員会の方にも相応する機能がきちっと準備されていかなければ、本当に保育をきちっと遂行していくということには困難が伴うだろうし、問題を見落としかねないというようなことがあるのではないかということを指摘したいと思います。
 続けますけれども、ただいま局長が部分的にお触れくださいましたけれども、この改正法案十六条は、委任に際しましては「児童の福祉に関する機関との密接な連携の下に」という、こうした文言が入っております。
 そこで、この点に関しましても具体的に確認をしたいと思いますけれども、連携の対象となる機関はどのような機関というふうに理解していいのか。それから、その場合に、公的ボランティアであります民生委員、児童委員との連携も含まれるかどうかということ。それから、密接な連携とありますけれども、密接な連携というのは具体的にはどのような内容を指しているのか。少し踏み込んで御答弁をいただきたいと思います。
岩田政府参考人 児童の福祉に関する機関とはどういう機関をいうかというお尋ねでございますけれども、保育の実施に係る事務を委任した市町村の長、そして福祉事務所、児童相談所、保健所、そして、お尋ねの児童委員、民生委員、これらがこれに該当するというふうに考えておりまして、これらと連携をしていただくことが必要であると思っております。
 密接な連携というのは具体的には何かというお尋ねでございますけれども、保育の実施についての事務の委任を受けた教育委員会が、今申し上げましたような児童の福祉に関する機関との間で、定期的に、あるいは必要な都度、連絡調整、情報の共有を行うということであろうと思います。
 結果として、従来、市町村の長が行っていた保育所、保育に関する事務の実施が教育委員会に移管されたということでその内容が低下をするということがあってはなりませんので、そういうことがないように、児童の福祉に関する機関としっかり連携していただきたいということでございます。
石毛委員 今の御答弁ともかかわりますけれども、待機児童がおられる地域ということもございます。児童福祉法二十四条三項は公正な方法による選考ということを規定しておりますけれども、この公正な方法による選考を、委任を受けた場合には教育委員会がしていくということになるわけですけれども、その際にも、児童の福祉に関する機関との密接な連携のもとにこの公正な方法による選考ということが実施されるのか否かということを確認したいと思います。
 といいますのは、子供の保育といいますのは、保育所における保育も無論でございますけれども、児童福祉法第七条に定められました児童福祉施設、障害をお持ちのお子さんが通所をする施設ですとか、それから、この間、虐待を受ける子供さんについても大きな社会問題になりまして、このお子さんについては養護の自立支援というようなことで、そうしたところにおられるお子さんもいらっしゃいますでしょうし、保育所にお入りになるお子さんは、施設をかえて入ってこられる場合もあるわけですし、さまざまな保育所の入所のルートというのがあると思いますので、公正な選考というのも、例えて言えば、希望の多い、AならAの保育所で、多い子供さんをただ単純に選考すればいいというわけではなくて、さまざまな子供さんの要件をきちっと把握するというようなこと、あるいは、きちっと話し合いを進めていくというような、そうした複合的な選考の仕方が公正な方法による選考ということでも大事な点になってくるかと思いますけれども、その点はどのように認識したらよろしいでしょうかということをお尋ねしたいと思います。
岩田政府参考人 待機児童がいる市町村においては、入所の選考に当たって公正な選考を行うために、客観的な選考基準を定めていただくようにお願いをしてございます。選考基準としてどういう項目を基準にするのか、それを点数化して、その点数によって優先順位を見ているというのが多くの自治体のやり方であるというふうに理解をしております。
 今お話の中に出てまいりました障害児の保育ですとか、また母子家庭のお子さんの保育でありますとか、そういったお子さんについては、通常、優先すべき要素として、点数化するときに高い点数がつくような選考基準になっているというふうに考えております。
 したがいまして、この入所の手続を教育委員会が行う場合にあっても、同様の選考の手続、選考基準を決め、必要に応じてそれを点数化し、そういう選考基準であるということを住民の皆さんによく周知して、その上で、個々具体的なケースがどの選考基準に合致するかといったことを一人一人丁寧に見ていただくということが必要であろうかというふうに思っております。
 障害児の保育ですとか母子家庭のお子さんの保育などについては、既に福祉部門で、例えば福祉事務所でかかわっておるケースが少なからずございますので、そういったような場合については、福祉事務所など児童の福祉に関する関係の機関とよく連携をとっていただきながら、公正な入所の選考をお願いしたいというふうに考えております。
石毛委員 関連しまして、もう一点だけお尋ねしたいと思います。
 教育委員会に保育の事務を委任した場合に、保育所の入所事務ということと、それから小学校一年生に就学する子供さんたちの就学時健診ですとか、就学通知の発送の事務ですとか、さまざまな事務が季節的に重なるわけなんですけれども、本当に大丈夫なのかしらという、とてもシンプルですけれども、そうした率直な疑問がわいてくるんです。教育委員会でそれを本当に実施できるのかしらというような、そんな疑問がわいてまいりますけれども、繁忙期が重なるというような点はどのように御認識されていらっしゃいますでしょうか。
岩田政府参考人 この特区についての特例を認めるとしております事情といいましょうか目的は、それぞれの自治体がそういう形で教育委員会に移管する方が事務を効率的に実施できるということで移管されるケースであるというふうに思います。入学時の事務の繁忙の問題も当然含めて、そういったことも念頭に置いた形で教育委員会の体制をどうするかといったようなことを手当てしていただくということであろうかというふうに思います。
 具体的には、事務委任をしますときに、先生の冒頭の御質問にもございましたけれども、地方自治法に基づきまして市町村長と教育委員会が協議をするという手続がございますので、その協議において、こういった体制の問題をどうするのか、特に入学時の繁忙時期、どういう体制でそれに対応するかといったようなことも含めて、しっかり協議していただくということであると理解しております。
石毛委員 いずれにいたしましても、特区ということでございますから、そこでの実践の経過を見て、内閣府としてもその評価委員会において評価がなされていくということがこれからの推移というふうに理解をいたしますけれども、地域によりましては子供さんが大変減っているというようなことで、特区の指定地域がこれからふえていくのではないかというような、そうしたことも予測されるところでございますから、十分に中身をきちっと精査しまして、教育委員会としての仕事も、それから子供の保育を確実に保障していくという側面からも、何よりも子供たちにとってきちっと保育が実現していくというそのことを大事に、これから見ていっていただきたいというふうに申し上げたいと思います。
 それでは、次は、地方公務員法の特例ということが第二十条で規定されておりますけれども、そのことに関しまして何点か質問をいたします。
 まず、大変基本的な認識の仕方ということをお尋ねしたいわけですけれども、地方公務員法は、戦後、憲法に基づく地方自治制度の確立に伴って、地方公務員に関する統一的かつ基本的な法律を制定することが不可欠、こういう立場から制定されたというふうに理解をしております。ですから、言いかえますと、同法の規定といいますのは、その全般にわたって全国的に統一された制度であるわけです。
 その観点からすれば、地方公務員法の諸規定を構造改革特区に該当する規制の対象とすること、そのこと自体が、もともと全国的に統一的な、基本的な制度であるという認識に立つならば、今回の特区の規定の仕方というのは重大な疑義が存在するのではないかという理解の仕方もありますし、私はそういうふうに受けとめたわけですけれども、統一的な制度を構成している地方公務員法に、規制という概念から見て例外を認めるということの法理論上の根拠がどのようなことであるのかということを、まず基本認識としてお尋ねいたします。
森政府参考人 お答えいたします。
 構造改革特別区域法におきましては、各地方公共団体の要望を踏まえまして、広く社会的、経済的活動一般に関する事柄につきまして、地域の特性に応じた区域を設定して、その範囲内で特例措置を設けるというものでございます。
 この地方公務員法の特例につきましても、各地方公共団体の要望を踏まえて、地域に不足しがちな人材に係る有資格者を確保する等の一定の要件に該当する場合に限って一年を超えた臨時的任用を認めるものでございまして、現実のニーズのある特定の地域において、しかも一定の措置を講じた上で、いわば試行的に導入するものでございます。
 したがって、これをもちまして、地方公務員に関する統一的かつ基本的な法律でございます地方公務員法の趣旨が損なわれるというものではないと認識しております。
石毛委員 地方公務員法の統一的、基本的な法律としての性格は変わるものではなく、この特区法に基づく特定の地域に関する特例である、しかもそれにはさまざまな要件がある、そういうとらえ方であるというふうに私は答弁を理解いたしました。
 そのことを踏まえまして、次でございますけれども、地方公務員法の第二十二条における臨時的任用といいますのは、地方公務員法上は十七条の正式任用の特例として行うことができるというふうにされております。具体的に、この二十二条の臨時的任用に関する特例というのは三つの場合を想定しておりまして、第一には緊急の場合、それから第二点は臨時の職に関する場合、それから、第三点として任用候補者名簿がない場合、これが第二十二条の特例としての規定でございます。しかも、この臨時的任用は六カ月以内、一回限りの更新ということで、期間限定というふうになっております。
 これが現行の地公法上の特例でございますが、期間任用六カ月以内、一回限りの更新という、こうした規定の仕方は、地公法が本質的に臨時的任用が恒常化、拡大することを認めていない、つまり二十二条は例外であるのだということを規定しているわけです。
 その規定をさらに超えるような、三年までは六カ月任用を更新できるというのが今回の特区改正法案の地方公務員法に係る法案の中身でございますけれども、一年限りということを三年限りに延ばしていくという今度のこの法案と、それから現在の地公法の特例に関しまして、どのような整合性が立つのか、その点をどう考えたらいいのかということをお尋ねします。
森政府参考人 特区におきます今回の臨時的任用期間の延長に係る特例措置においても、その臨時的任用という性格は変わるものではないと考えております。
 臨時的任用が無原則に恒常化、拡大化することを認めるものではなく、一定の要件を満たす場合に限って臨時的任用期間の延長を特例として認めるという趣旨でございますので、整合性にかかわる問題はないものと考えております。
石毛委員 一定の任用にかかわる特例という御答弁で、そこで次の質問になるわけですけれども、三年を超えない範囲の期間にかかって更新できるというその職につきまして、第二十条の一項が限定を設けております。
 第一の限定の仕方が資格要件ということで、これは二十条一項一号ということになります。それから、第二号が特定の分野を法的に規定しております。それから、第三号が職制または定数の改廃等というふうに規定をされておりまして、そして第二項におきまして、具体的には人事委員会規則に委任するというふうに規定をされているわけです。
 先ほどの御答弁もありましたように、地方公務員法二十二条の臨時的任用がそもそも限定的なものであるわけですから、それに重ねる今度の特区法の改正案に盛られたこの規定はさらに限定的なものだというふうには、一般論として理解はいたしますけれども、具体的に、この第一項一号、二号に規定をされております資格要件、特定の分野、また、職制または定数の改廃等というのはどのように理解をしたらいいのかということを、少し現実的な理解が可能なように説明をしていただきたいと思います。
森政府参考人 三つの認定要件についてでございますが、第一の要件につきましては、特区における人材の需給状況等にかんがみ、現行の臨時的任用の期間満了後において必要な資格要件を有する後任が確保できない場合ということでございまして、例えば、保育業務等の需要が一時的に増大した場合に、専門職でございます保育士を必要なだけ配置しようとすると、資格職ゆえに人材が必ずしも確保できない場合等を想定しております。
 それから、第二の要件につきましては、実務に従事させることによって特区における特定分野の人材育成に資すると認められる場合ということで、一年を超えた臨時的任用が必要なときということでございまして、例えば、二年間の臨床研修が義務づけられている医師を公立病院において臨床研修医として受け入れるような場合などを想定しております。
 それから、第三の要件は、特区における事務事業の見直しに応じた業務量の一時的な変化による職制または定数の改廃等に対処する場合に、一年を超えた臨時的任用が特に必要なときということでございまして、例えば、事務事業の見直しを計画的に推進するに当たりまして業務量が一時的に変化するような場合に、正規職員の増減によることなく臨時的任用職員を弾力的に活用するような場合等を想定しております。
石毛委員 先ほど触れましたけれども、こうした資格要件、分野、それから職制または定数の改廃等に関しまして、特区として臨時的任用を行う場合には、人事委員会があるところは人事委員会規則に委任ということでございますので、人事委員会で公式にきちっと審議をされて特定されていくという関係にございますという理解なんですけれども、伺うところによりますと、自治体の中で人事委員会が設置されているのはわずかに六十二自治体にとどまっていて、圧倒的に多くの自治体が人事委員会による承認の省略になって、任命権者自身がこの判断をしていくということに帰属をしていくのではないか。
 実態はそういうふうにしていくというふうにそれがなっていく、それが事実だとしますと、自治体に対する、構造改革の特区ということと、それから地方公務員法の特例の特例ということになるんだと思いますけれども、その運用の徹底ということをしていかないと、自治体現場では、非常に安易にと申しましょうか、こうした三年までの更新は可能なんだというような、ある意味ではバイアスのかかった理解の方が広がっていくということも懸念されるわけでございますけれども、そうしたおそれが生じないようにしていく仕組みとしてどのような手だてを考えていくのかという、そのことについての御答弁をお願いいたします。
森政府参考人 法律の運用の徹底の問題でございますが、任期の更新の際にも、特区法に定める要件を満たすことを求めてまいりますし、また、特例の適正な実施を確保するための措置としまして、任命権者に対しまして、臨時的任用の状況の公表その他必要な措置を求めることにしております。
 具体的には、特例により臨時的任用をされた職員数の公表のほかに、人事委員会を置かない地方公共団体におきましては、採用しようとする職の資格要件を任命権者が定める等の措置を想定しているところでございますし、また、これらの措置の確実な実施について国においても確認することとしておりまして、これらによりまして当該特例が適正に運用されるものと考えております。
石毛委員 第二十条の第六項が、当該臨時的任用の状況の公表その他の必要な措置という今の御答弁の根拠かと受けとめましたけれども、ぜひ適切な運用がなされるような担保の仕方ということを実際に適用していただきたいというふうに申し上げたいと思います。
 もう一点でございます。
 地方公務員に適用される共済組合制度については、常勤職員の勤務時間以上で勤務した日が十八日以上、そして、引き続き十二カ月を超えるに至った者の適用対象というふうにございます。
 地公法の二十二条職員は適用外とされて、今度の特区では十二カ月を超えると適用になるということで、これは明らかに地方公務員共済組合法ですとか、あるいは地方公務員災害補償法等の適用において整合性が欠けているのではないかというふうにとらえられるわけですけれども、その点についていかがでしょうか。
森政府参考人 この地方公務員等共済組合法の適用につきましては、従前から、これまでも職員の勤務形態に応じて法の適用関係を判断しておりまして、常時勤務に服することを要しない地方公務員の場合でございましても、その勤務形態が常勤職員に準ずる一定の職員については適用対象としております。
 具体的には、今先生が申されたとおりでございまして、雇用関係が事実上継続していると認められる場合において、常時勤務に服することを要する地方公務員について定められている勤務時間以上勤務した日が十八日以上ある月が引き続いて十二月を超えるに至った者というのが適用対象でございます。
 したがって、現行の地方公務員法第二十二条によって臨時的に任用された職員については適用がないわけでございますけれども、今回の構造改革特区法の特例によって、任用期間が一年を超えることとなった臨時的任用職員については、その超えることとなった時点から地方公務員等共済組合法の適用を受けるようになるということでございまして、この点は地方公務員災害補償法も全く同一でございまして、従来からの運用と全くそごはないものと考えております。
石毛委員 この点に関しましては、いろいろと論議を深める点があるというふうに考えているところでございますけれども、それはまたの機会ということにさせていただきたいと思います。
 残された時間で一問だけ、学校教育法の特例に関しまして簡潔に質問をして、御答弁をいただきたいと思います。
 今回の改正法案は、学校経営に株式会社及び特定非営利活動法人の参入を認めておりますけれども、義務教育段階におきまして株式会社あるいはNPO法人による学校運営が経営破綻した場合に、その際、この認定を行っている認定地方公共団体が子供たちの義務教育の遂行について責任を果たすのかどうかということをきちっと確認しておいていただきたいと思います。公教育としての義務教育の責任が地方公共団体にあるという確認を、この際ぜひしておく必要があると思います。
 学校教育法のこの法文の書きぶりというのが、文言の使い方としまして、第十二条七項の書きぶりが必ずしも、公教育としての、実施の地方公共団体による責任というような書き方にはなっておりませんので、確認をして、質問を終わります。
加茂川政府参考人 お答えをいたします。
 学校教育におきましては、児童生徒の修学の場を確保して教育を継続することが大変大事だという御指摘、先生御指摘のとおりでございます。
 そこで、この特区法案におきましても、仮に特区構想がうまくいかない場合、先ほど経営の破綻と先生はおっしゃいましたけれども、経営が悪化をいたしまして、十分な教育サービスの提供ができなくなってしまう、もしくは中止せざるを得なくなってしまうといった場合に、今申し上げました修学の場をどう確保するかというのが大きな課題になるわけでございます。
 まず第一には、設置者である株式会社等が責任を負うべきだと思っておりますけれども、特区法の趣旨にかんがみますと、申請をしました地方公共団体も適切に対応する必要があると私ども考えておりまして、先生御指摘のございました、御審議いただいております法案の十二条第七項におきましても、当該学校の経営に支障が生じた場合あるいは生ずるおそれがある場合には、特区認定自治体が当該学校に在学する児童生徒等が適切な修学を維持することができるよう、転学のあっせんその他の必要な措置を講じなければならないと規定をしておるのは、その趣旨でございます。
 ただ、この特区の制度とは別に義務教育制度がございますので、義務教育の学齢児童生徒につきましては、当然に住所地の最寄りの小中学校に就学をする機会が確保されております。その制度とこのいわゆるセーフティーネット、地方公共団体が特別な修学機会をあっせんすることとの調整が課題になろうかと思っておりますが、基本は、住所地における小中学校への修学機会は当然のように確保されておる。
 それから、この特区制度のもとでやむを得ず転学せざるを得ない場合には、その就学制度を前提にしながら、例えば、子供もしくは保護者の希望を最大限聞きながら、就学校の指定の変更という手続も別途ございますので、そういった中で確保する。
 いずれにしましても、子供の義務教育を受ける機会は確実に確保されるわけでございます。
石毛委員 ありがとうございました。終わります。
佐々木委員長 以上で石毛えい子君の質疑は終了いたしました。
 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午前十一時五十六分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時開議
佐々木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。横路孝弘君。
横路委員 最初に大臣に、きょうは不登校児童の教育を行うNPO法人による学校の設置を認められたこの法案について主としてお尋ねしたいと思うんです。
 いろいろ何かこれを認めるに当たっては大変大臣も苦労されたようですけれども、しかし、今不登校児がふえて、それに対して親の人たちを中心に、非常に苦労されながら、フリースクールも全国にあちこちいろいろな形で存在をしています。それを正面から認めたということで、関係の人たちは非常に喜んでおられるわけなんですけれども、まず、今回この設置を認められた理由というのを大臣からお答えいただきたいと思います。
鴻池国務大臣 午後からもどうぞよろしくお願いを申し上げます。
 この特区構想というのは、何度も申し上げておりますように、特区担当の私どもあるいは室の者は、政策の決定ということの、思いはございますけれども、決定をする権限はございません。地方からあるいは民間から特区構想について理解を示されて、そして例えば、不登校の子をNPOでやりたい、あるいは株式会社で学校をやりたい、そして今の教育になきものをつくっていきたい、こういう構想が出てきたものを文部科学省の方に持ち上げまして御理解を求める、こういうことでございました。
 しかし、戦後教育の中で文部科学省が果たしてきた役割というものについて極めて強い御自信もおありのようでございまして、なかなか難しい場面もございました。しかし、最終的には文部科学大臣あるいは副大臣等のお骨折りによりまして、このNPOで学校設立、あるいは株式会社で学校設立が可能になるという運びに相なったところでございまして、私、政策に関与しないということでございますけれども、政治家としてこんなにうれしいことはないということもつけ加えておきたいと思います。
横路委員 文部科学省にちょっとお尋ねしますが、フリースクールなどの民間のさまざまな教育施設について、実態調査というのは必ずしも十分に行われていないようですけれども、NPO法人としての資格を持っているフリースクールなど、不登校児の教育を行う民間施設というのはどのぐらいあるんでしょうか。
金森政府参考人 お答えを申し上げます。
 不登校対策として民間が行っておりますフリースクールでございますけれども、そのうち私どもが不登校児童生徒の原籍校が出席扱いとした実績のあった民間施設に対しまして、平成十四年十一月に全国の百二十一施設を対象に実施した調査によりますと、百二十一施設のうちNPO法人が十六施設、全体の一三・二%ということになってございます。
横路委員 一定の実績を持つものを認めるということなんですが、ちょっとこの法律案についてお尋ねしたいと思います。
 これは十三条の二項ですか、ここで、不登校児を対象として、その特区に所在する学校の設置者による教育によっては満たされない特別の需要に応ずるための教育を行うものとして、次に掲げる要件のすべてに適合していなければいけないということで、四つの要件がございます。文部科学省の方で、特に四つの要件のうちの最初の「文部科学省令で定める基準に適合する施設及び設備又はこれらに要する資金並びに当該学校の経営に必要な財産を有すること。」とありますけれども、この内容は具体的にどういう内容なのか、お答えいただきたいと思います。
加茂川政府参考人 お答えをいたします。
 まず、文部科学省令で定める基準に適合する施設及び設備についてでございますが、これは学校種ごとに定められております設置基準、具体には、高等学校の場合には高等学校設置基準、中学校の場合には中学校設置基準、学校種別ごとに定められておりますが、この施設設備に関する基準を指しております。
 また、この資産につきましても、学校が安定的、継続的に運営できますために必要な資産を求めておるものでございまして、具体には、今回、特区の場合には、その認可権者になります各地方公共団体の長が判断をする余地があるものでございます。
横路委員 この法律で言うこれらに要する資金並びに学校の経営に必要な財産というのは、どういう中身なんですか、この法律二項の一号の要件について。前段はお話ありましたが、あとの資金と必要な財産というのは、これはどういう内容になっているんでしょうか。
加茂川政府参考人 お答えをいたします。
 具体には、設置基準に規定されました必要な校地、校舎、設備等がまず求められるわけでございます。原則といたしましては、校地、校舎等につきましては、先ほど申しました学校が継続的、安定的に運営されますためには自己保有が原則とされておりまして、言葉をかえますと、借用ではないものが求められるわけでございます。
 また、運営に必要な財産、先ほど認可権者が判断をすると申したわけでございますが、学校経営に必要な金銭等の資産を指しておるわけでございまして、これは認可長によっても定め方が異なっておりますけれども、実際の運用を見てみますと、学校経営に必要な経常費として、数カ月あるいは一年分程度の資金の確保を求めているというのが実態でございます。
横路委員 この法律案でNPO法人の学校設立が認められるということはみんな非常に喜んでいるんですが、この要件ですね。
 この要件でいきますと、今それでなくても不登校児を扱っているフリースクール、NPO法人のとっているもの、とっていないものもありますが、いずれもやはりお金の面で大変苦労されているわけでございまして、そういうNPO法人から、ここの要件、これは法律でこのように書いてあるわけですけれども、これではとてもじゃないけれども、できますよと言うけれども、実質的にはできないということで、幾つかの要請が来ています。
 今、私持っているのは東京シューレというNPO法人の要望ですが、例えば、運動場や体育館の保有の要件、これをやはり要件としないようにしてほしい。それから、校舎面積の特例、これも、そんなことを当てはめられたのでは、従来の、中学校をつくる、小学校をつくる、高等学校をつくる要件を当てはめられたのでは、該当するNPO法人はありませんよと。あるいは、免許の問題とかいろいろな要望が出ておりますし、資金だって、とてもじゃないけれども、一年分の運営の資金を持てと言われたって、そんなお金を持って余裕のある運営をしているところというのはございません。非常に苦労されながらやってきているわけですね。
 したがって、私はこの法律でいきますと、大臣のお気持ちはわかるけれども、実際はこの文部省令でがちがちに縛られてしまって、結局は実現しないということになるおそれが今のお話を聞きまして、いただいたその基準を見ますと、これは無理だなという思いがするわけです。
 ですから、それをどうお考えになるんですか。これですと、実際問題、できませんよ。
鴻池国務大臣 ただいまの委員の御指摘のように私も実は思っておるところでございます。
 ただ、戦後の学校教育、公教育というところから、NPOあるいは株式会社で学校が設立可能になるということが文部科学省の御理解を得ながらここまで一歩が進んだということについては、これはやらなければ百年たってもできなかったことであろうかと思います。
 そういう意味で、今回はこれで進む。一歩進んだから百歩一遍に進めということは極めて難しい状況であるということは、御理解いただけると思います。次の提案というものもいろいろとお聞かせをいただいておりますので、順次、NPOで学校設立あるいは株式会社で学校設立ができる、可能な状況に、私どもは、努力をして、文部科学省と十分な打ち合わせをしたいという思いを新たにいたしておるところであります。
加茂川政府参考人 設置基準のことについて付言をさせていただこうと思っております。
 認可権者、今度の場合、特区の場合には、その地方公共団体の長、都道府県知事であったり市区町村長であったりするわけでございます。具体の学校認可をします際に設置基準が適用になると先ほど申し上げましたけれども、例えば小学校の設置基準で申しますと、必要な校地、校舎、運動場の面積は定めておりますけれども、運用上、かなり弾力的に適用できる規定があわせて規定されております。設置基準の規定を読み上げますと、地域の実態その他により特別の事情があり、かつ、教育上支障がなければ、この限りではないといった条項も規定されておりまして、認可権者が弾力的に設置基準の適用をする判断余地が、裁量余地がございます。
 また、先ほど運営資金につきましても例を申し上げましたけれども、具体には、認可権者で、この特区の趣旨を踏まえて、かなり弾力的に学校認可の際に判断できる余地があることを付言しておきたいと思います。
 ただ、学校として経営をしていただくためには、そこに学びます児童生徒のことを考えますと、安定的、継続的に学校経営をしていただくことがやはり必要でございますから、原則としては、それぞれ必要な基準あるいは資金を求めておるものでございます。
横路委員 この文部省令で定める基準というのは、今既にある基準のことを言っておるわけでしょう。これから新しくつくられるんですか。
 何か、今回、こういう新しい法律案をつくったという意味でいうと、いろいろな基本方針をこれからつくられていくんだというように承っております。そういう中で、今の要件、株式会社の場合は、これはお金がありますからそこは余り議論しなくてもいいんだろうと思うんですが、NPO法人、不登校児に対するNPO法人の場合は、やはり相当要件というか基準を緩和して認めてあげるということをしなければ、一歩一歩だとおっしゃったって、この法律、つくったけれども運用できないというのじゃ困るわけでございます。
 今、それぞれ市町村でも、今度都道府県ばかりじゃなくて認められるようになったから、そこで、基準は地域の実情に合って緩和できるという規定もあるということなんですが、これは、特区の中でこの法人が認められたら、大臣として、そこのところをやはり明確に、新しい基準をつくるぐらいの気持ちでやらなかったらこれはできないと思いますよ。せっかくこういう規定をつくったわけですから、後で不登校児の問題を議論しますが、大変深刻な事態になっています。ですから、ぜひ、それは基準をもう一度見直して、やはり不登校児のNPO法人について新しい方向性をぜひ出していただきたい、そうしなければ実現しないと私は思うので、大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
鴻池国務大臣 先ほど申し上げましたように、第二次提案の段階で具体的にこの要件緩和が出てきておりますので、校舎の所有地その他の問題につきましては、NPOで学校設立が可能なようにやっていかなければならないと思うし、そのように進めたい、このように私は思っております。
横路委員 これは、進めたいということなんですが、文部科学省の方も、それを受けて、今までの考えは考えであるわけですが、しかし、今、不登校児の実態というのは、後で議論しますが、本当に深刻な状況で、その中でフリースクールというのは一生懸命頑張ってきたわけですね、民間の施設。せっかく、今回、これで我々の努力が政府で認めてくれるといって喜んでいるときに、この要件ですとなかなか厳しい。
 今、鴻池大臣から、ともかく設立に支障のないような基準の緩和を文部科学省の方と話をしていきたいというお話がございましたが、ぜひ、その呼びかけにこたえて文部科学省としても努力をしていただきたいと思いますが、この点、いかがお考えですか。
池坊大臣政務官 委員がおっしゃいましたように、NPOが今まで不登校児、ADHD、LDなどの子供たちに果たしてきた役割は大なるものがあるというふうに思っております。
 ただ、今お話がございましたように、学校経営には公共性、継続性、安定性が求められると思いますので、今までやってきたそういう実績を踏まえて、そのような事業をやってきたNPO、あるいは、今委員がそれは厳し過ぎるよとおっしゃいましたので、また特区の大臣とも相談いたしまして緩和をしたいとは思いますけれども、やはり最低限度の施設設備及び経営に必要な資産は有していなければならないのではないかというふうに思っております。
 また、学校の経営を担当する役員が、学校経営に関する知識または経験を持っていることも大切だというふうに思っておりますし、そのようなNPO法人の役員、社会的信望を有しているそういう人たちによって経営されていくべきだというふうに考えております。
 ですから、何も厳しくしてNPOを学校法人にしないということは考えておりませんけれども、やはり子供たちには安定した環境の中で継続性を持って教育をしていく場が必要というふうに思っておりますので、このNPO法人を認可いたしました場合にも、業務や財務情報の入学希望者等への公開、あるいは認定地方公共団体による学校についての評価、あるいはまた、設置者の経営状況の悪化などにより学校経営に支障が生じた場合には、学校の認定地方公共団体による学生たちのセーフティーネットが必要だと思います。
 ですから、特区は地方公共団体から上がってまいりますので、やはり地方公共団体にもしっかりとしたそういう認識、担保を持ってやっていただきたいというふうに思っております。
 もちろん、文部科学省は、全面的に協力する、バックアップするつもりではございます。
横路委員 お答えを聞いていると、どうもこれは本当に実現するのかどうかという心配がございます。
 そこで、基本のところの、今回の特区のポイントを幾つか見てみますと、一つは、やはり都道府県のほか市町村にも学校設置の権限を認めたということだと思うんですね。私学審議会というのがありまして、ここに諮りますと、いろいろな関係者が出ているものですから、やはり新しい試みというのはなかなか認められづらい環境というのが現実の行政の中にございますので、市町村が設置を認めることができるようにするというのも一歩前進ではないかと思っています。
 これは、一つ、NPO法人というのはいずれも財政が大変厳しい状況にあるんです。もし市町村の方から設立が認められたという場合には、学校法人になった場合には多分私学と同じような助成金が出るんだと思うんですけれども、そうでない場合は、これはバックアップする仕組みというのは何か考えられるんでしょうか。
 では、今のNPO法人を含めて、こういう不登校の民間施設に対して地方公共団体で何らかの支援をしているところというのはありますか。その実態というのはおわかりでしょうか。
金森政府参考人 お答え申し上げます。
 都道府県におけるフリースクール等に対する支援策につきまして、その全容については私ども承知をいたしておりませんが、自治体によりましては、教育委員会や学校、適応指導教室などがフリースクールと積極的な連携を行っているところもございます。
 例えばある県では、これは十五年度からでございますけれども、不登校児童生徒の支援活動を行うNPO法人に対しまして県立の青少年教育施設の一部を提供いたしましたり、県の教育相談担当センターと連携して支援事業を実施するところもございます。また、ある県では、不登校の解消に向けて、民間施設などにおける学校復帰につながる適応指導のあり方についての調査研究を、民間施設に委託して実施したところもございます。
横路委員 これは、文部省としては何らかのバックアップをするというお考えはないんですか。
池坊大臣政務官 これは、学校教育法にのっとりまして、学校法人になりました場合には助成はいたします。このままNPO法人の場合には助成はできかねるというのが今考えているところでございます。
横路委員 NPO法人への支援というのも、こういう形で、ある意味で言うと表から政府は認めたわけですから、ぜひ今後検討していただきたいというように思います。
 NPOといいますか、不登校の民間に通っている人たちから、前からこういう要望がございまして、小中学生の場合は、フリースクールの要請によって、文部省と運輸省が合意をして、通学定期が適用されて出されているんです、小学校と中学校の場合は。ところが、高等学校の場合は通学定期が適用になっていないんですね。それで、関係者が期待しているのは、今回の教育特区構想の中で認められたということで、この点も一歩前進するんじゃないかという期待をされています。
 結構遠いところから通っておられまして、その実態調査ですと、平均の定期券が月に一万七千円ほどになるそうで、これが、通学定期、学割の定期が認められた場合は月八千円になるということで、負担の軽減にもなるということから要望が出ていまして、これも、これを機会にぜひ実現をしてほしいというささやかな要望がフリースクールの人々の中にあるんですが、この点について、いかがでしょうか。せっかくのこういう機会でございますから、これは文部省が運輸省と相談してということになるんですが、大臣としての決意もちょっと聞かせてください。
鴻池国務大臣 当然、学校ということになれば、平等の施策というものが行き渡らなければならないというふうに私は思っております。今委員おっしゃいましたように、文部科学省と運輸省との話し合いによりますけれども、閣僚の一人として、私自身も、そのような方向であるべきではないかという発言はしてまいりたいと思っております。
池坊大臣政務官 私も長らく文部科学委員をしておりましたので、通学定期の要請はもう何回も受けておりまして、子供たちに通学定期を与えることができたらどんなにいいだろうかというふうに思っております。今、特区の大臣も、強力に推し進めると言っていただきましたので、連携を図りながら、国土交通省とも連携してまいりたいと思います。
 そして、先ほどのフリースクールでございますが、文部科学省としては直接支援をいたしてはおりませんけれども、今、フリースクールは、都道府県で大変に積極的な連携を図っております。そして、例えば、ことしからは、特に不登校の生徒に対してはネットワークの整備を図ることといたしておりまして、適応指導教室などの活用などもとるようにというふうにいたしているところでございまして、都道府県においては、フリースクールの活用を積極的に今支援しているのが現状でございます。
横路委員 ぜひそのように実現するように御努力いただきたいというように思います。
 あと、教育特区のところ、一つは、不登校児、不登校等ということで、特に定義をしていないわけで、これはかなり幅広く、オールターナティブな教育団体にも機会が与えられたものというように受けとめております。もちろん、地方公共団体の長が認めた場合に限るわけですけれどもね。そのように、かなり幅広く認めたものだとこの法律の趣旨を理解してよろしゅうございますか。
鴻池国務大臣 それで結構だと存じます。
横路委員 それで、不登校の現状についてお尋ねしていきたいと思いますが、登校拒否というのが顕著になって、教育界のみならず社会的な問題になりましてから、そのようにクローズアップされてから、もう本当に十年、二十年とたっているわけであります。その原因は何かということで、それは、社会的あるいは個人的に考察されたいろいろな意見が述べられてきましたけれども、決定的にその原因というのは解明されないまま今日に及んで、物事はかなり深刻になってきているということであります。
 原因の究明が十分でないとしても、この登校拒否という現象を解消していこうということで、公的な立場や私的な立場、いろいろな立場、親の立場から、多くの人が努力を積み重ねてきましたけれども、しかし、残念ながら、見るべき成果が上がっていない。まことに事態は奥深く、解決は困難になっていると思います。
 平成十三年の学校基本調査を見ますと、不登校の小中学生が全国で十三万九千人、小学校は二百七十五人に一人、中学校は三十六人に一人ということですから、ほとんどもう中学校は一学級に一人不登校の子供がいるという状態で、十年前に比べて二倍以上になっています。また、不登校児が在籍している学校の割合も、もう最近では半分を超えているというのが調査の結果明らかになっているんですね。
 文部省も、適応指導教室でありますとか、あるいはスクールカウンセラーの設置などといろいろやってはこられておりますけれども、しかし、歯どめになっていないわけですね。なぜ不登校の子供がふえていって歯どめがかからないのか、まずその基本のところをどのようにお考えでございましょう。
池坊大臣政務官 確かに、不登校の問題は、今学校教育が抱えている最大の問題だというふうに認識いたしております。
 これは、一つの原因があるというのではなくて、私は複合的にさまざまな問題が絡み合っているのではないかと思っております。
 例えば、家庭の問題とかあるいはまた学校のあり方の問題、それから子供たちが抱えているさまざまな悩みなどによるのではないかと思っておりますけれども、その背景には、例えば、社会における学びの場としての学校の相対的な位置が変化してきたということもあると思います。その変化に伴って、学校に対する保護者や子供自身の意識も変わってきたというふうに思っております。かつては、不登校というのは、特別なというふうに言われておりました。今は、いつ、どこの子供にも起こり得る問題になってきたのだと思っております。
 文部科学省といたしましては、まず、学校現場の中で、例えば、子供たちがいじめに遭って、それで行かなくなったということがある、それからまた、授業がわからなくて行けなかった、あるいは心のいろいろな問題を抱えている、それを解消するようにということで、今、家庭、学校、地域の連携の強化ということを図っているところでございます。今までの、ただ不登校児が学校に行くようになる状況まで待とうという状態ではなくて、早期の直接的な、もっと積極的な関与、対応が必要じゃないかということで、そのような体制を組もうとしているところでございます。
横路委員 不登校になったきっかけは何かという、これは皆さん方の調査を見てみますと、中学校の場合は、割と学校生活に起因する要素が多いんですね。小学生の場合は、家庭生活に起因する要素が多いんです。
 この推移を見てみまして、これは文部省の調査だと思います、協議会で議論したときに添付されていた資料なんですが、これは三つに分けていますよね。学校生活に起因する、家庭生活に起因する、それから本人の問題に起因する。本人の問題に起因するというのは、意外と高いウエートなんです、そういう調査をしますと。
 しかし、本人に尋ねた不登校のきっかけというのを聞いてみますと、友人関係が一番ですね、それから学業の不振が二番ですね、三番目が教師とのトラブルですね、それから、クラブ活動、部活動の問題とか、学校の中の問題が圧倒的に多いんですね、本人に聞いたきっかけというのは。そのことと、学校生活、家庭生活、本人に起因するという三つの区分との間に、何か結果に相当な差があるんですね。
 私、よくわからないのは、家庭生活と学校生活に起因したという理由はわかるんですけれども、本人の問題に起因したという、この分類というのはちょっとよくわからないのですね。これはどういう要素なんですか。
 三つに分けていますよね。その本人の問題に起因するというのがよくわからないということが一つと、本人に尋ねた不登校のきっかけというところの中には、本人も思い当たることはないというのが一〇%ほどあるんですけれども、それなのかなと思いますが、それにしても、差が非常にひどいですね。本人に尋ねた結果と、それから、別にこれは、いろいろな要素を分析した結果なんだと思いますが、そこの食い違いというのはどういうことでしょうか。
金森政府参考人 お答え申し上げます。
 不登校となりました直接のきっかけについて調査をいたしますと、先生御指摘のように、公立小中学校全体では、友人関係をめぐる問題など学校生活に起因するものが三六・二%、それから本人の問題に起因するものが三五・〇%、親子関係をめぐる問題など家庭生活に起因するものが一九・一%となっているところでございます。
 このうち、本人の問題に起因するものといたしましては、病気による欠席、それからその他本人にかかわる問題というのが含まれておりまして、その他本人にかかわる問題の中には、極度の不安や緊張、無気力等で、特に直接のきっかけとなるような事柄が見当たらないというものが含まれているところでございます。
 また、これとは別に、不登校のきっかけにつきまして本人に直接聞いた調査もございますけれども、こちらにつきましては、複数回答可ということでございますので単純な比較はできないのでございますけれども、御指摘のございましたように、学校生活に起因するというところが、本人に聞いた場合にはふえているというのが傾向でございます。
 恐らく、小学校などでは、母子分離の不安や甘えの依存などから親子関係や本人の問題に起因するものが多く見られると思われます一方、中学校になりますと、思春期に入りまして友人関係に悩みましたり、また、小学校に比べて学習内容が難解になりますために学業不振の割合が高くなるなど、そういった学校生活に起因するものが多くなるのではないかと考えているところでございます。
横路委員 その調査の結果、例えば、本人にかかわる問題というのは、極度の不安や緊張、無気力などで、特にきっかけとなることが見当たらないということなんですが、その極度の不安や緊張というのは、授業がわからないとか、あるいは学校に行ったらいじめに遭うとかいうような要素があるわけですね。
 ですから、ここで区切ってしまうと、何となく本人が悪いんだという感じになって、責任の所在と問題の所在が不明確になるんじゃないかと。ですから、この本人に尋ねた不登校のきっかけを見ると、やはり学校に問題があるというのが圧倒的に多いんじゃないかと私は思うんですよ。いじめばかりじゃなくて、教師との関係そのほか、いろいろあるでしょう。学業の問題も含めて、学校生活に起因する要素が多いんじゃないですか。違いますか。
金森政府参考人 お答え申し上げます。
 公立小中学校におきまして不登校が継続している理由などを調査いたしますと、いろいろな要因が絡み合っていることではございますけれども、例えば、嫌がらせをする生徒の存在や、教師との人間関係など、学校生活上の影響から登校しないといった、学校生活上の影響が理由と考えられるもの、あるいは遊ぶためや非行グループに入ったりして登校しないといった、遊び、非行が理由と考えられるものなども見られるところでございます。
 したがいまして、直接に不登校となりましたきっかけにつきましては、先ほど申し上げましたような結果でございますけれども、その背景といたしましては、学校生活におけるさまざまな要因が影響しているものと考えているところでございます。
横路委員 もちろん、これは複合的な要素、要因があるわけなんですが、しかし、最初のきっかけのところをうまくバックアップして解決できる仕組みがあれば不登校にならないで済む。不登校になってしまった場合に継続していく、そこをまた、それは不登校になった理由によるわけですね。ですから、かなり複合的ではありますけれども、不登校を解消していく努力というのは、やはり個別的に対応していかなければいけないということだと思うんですね。
 私、この不登校の経験者がどういうことを求めていたのかというのを見て意外に思いましたのは、中学校三年生のときにどんなことで相談や手助けをしてくれるところがあればよいと思いましたかという、経験者の答えを見ていますと、やはり心理相談なんですね。気持ちがいろいろと動揺している、その相談相手、つまり相談相手が欲しいということが一つですね。
 それからもう一つは、出会いの場、つまり学校関係とまた違ういろいろな、憩いの場所、フリースクールというのはまずみんなが集うところだというところからスタートしているわけですが、そういう憩いの場を求めている。
 それからもう一つは、やはり学習指導、技術指導なんですね。つまり、学校の学習についてバックアップしてほしいという要望ですね。これが中学校三年生のときの要望なんです。
 中学校を卒業してから現在までの生活の中でどのような相談や手助けをしてくれるところがあればよいと思いますかという質問、これを見ていますと、やはり同じように、心理的な相談とか出会いの場とか技術指導。技術指導というのは、技術や技能の習得ということですね。ですから、知識ばかりじゃなくて、いろいろな、生活していく、生きていくための技術や技能というものを手助けしてくれるところがあればよかったという答えになっていまして、これも我々が対応しなければいけないところを極めて強く示唆しているのではないかというように思いますが、こういう調査の結果についてどのように思いますか。
池坊大臣政務官 確かに、おっしゃいますように、個人が抱えております問題がやはり大きなウエートを占めていくと思います。
 私どもは、委員でありましたとき、スクールカウンセラーを設置するようにいたしました。それによって、スクールカウンセラーがきちんと置いてある学校はやはり不登校児が少ないというような現象もあるように思っております。
 やはり学校というのは、まずすべての児童生徒に対して、楽しく魅力あるものでなければならないんだと思います。私は、これが一番の予防策であって、まず不登校児をつくる前にどのように予防するかといったら、今委員がおっしゃいましたように、学校に行くのが楽しい、それによって、自分がちょっと悩みがあってもむしろ解消されるような場であるのが学校には必要だと思います。
 そのことのためには、指導する先生の力というのが大なのではないかと思いますので、きめ細かい、教科の指導もさることながら、やはりその子の普通の生活指導ということに対しても力を置いていかなければいけないというふうに思っておりますし、また、さっき委員がおっしゃいましたように、授業についていけないから不登校になったという子供もあると思います。そういうのを考慮いたしまして、課外授業というのも行っております。
 そういう意味では、なるべく多くの子供たちが授業がわかるようにというきめ細かい授業の指導も行っておりますし、また昨年は教育改革をいたしましたけれども、いじめをする子供たちへの対処も必要だというふうに思っておりますので、学校現場の中でいじめがないようにすることなどが、やはり不登校の子供たちに対しては予防する点で必要なのではないかというふうに思っております。
 不登校になってしまった子供たちに対しましても、それは今までですと、先ほども申し上げましたように、積極的な関与というのは少なかったんですけれども、これからは学校外の学習との積極的な連帯を図りながら、子供たちに学校外あるいは空き教室で授業を教えていくとか、あるいは、お母様やお父様方、保護者との連携を強化する、教育相談にも積極的に乗る。それから、どうしようもないときには、クラスを変えるだとかあるいは転校の措置というようなこともするようにというふうにいたしておりまして、この問題は文部科学省、本当に今力を注いでいるところでございます。
 本年三月に不登校問題に関する調査研究協力者会議というものの報告も受けまして、私たち、学校におけるこれらの取り組みの充実のため、指導資料の作成などを積極的に行っているところでございます。
 不登校の問題は学校が占めるウエートというのは大きいと思いますので、やはり家庭との連携それから先生の指導のあり方というのが極めて重要だというふうに思っております。
横路委員 今おっしゃるように、やはり魅力ある学校づくりをするということですね。きめ細かい教科の指導も必要ですし、子供たちが安全で安心のできる学校の環境整備をするとか、開かれた学校を目指して頑張っていただきたいと思うんですが、しかし現実はなかなかそうなっていなくて、毎年毎年不登校児がふえている。
 フリースクールに通っている子供の親たちの話を聞きますと、やはり不登校のなり始めというのは、親も子供もみんな苦しむわけですね。そして、何とか学校に行かせたいという思いで、なかなか不登校の子供自身を受けとめられるという人はいないようでありまして、どうしてもやはり学校に対する信仰というのがありますし、どんなに問題がある学校だってみんな通っているじゃないか、あなたのところの子供が通えないのはやはり子育てが悪かったんだとか、いや、子供が弱いからだとか、周りからはそういう目で見られます。そうすると、親は行け、子供は行けないというので、今度は家庭内暴力が生まれたり、引きこもり、閉じこもりといったようなことが生まれたりするんですね。
 親やフリースクールに通っている子供さん方の話をしていると、親の方が変わって、では、そういう子供を受けとめようというように気持ちを変えて、学校に行かないということを否定しないで受けとめていくようになると、子供というのは大分落ちついてくるんだそうです。そして、そのうちに、自分の方から出会いを求めていく、あるいは憩いの場所を求めるというようなことでフリースクールに通い始めたというケースが多いようでございますが、この社会の中は、まだまだフリースクールに対するいわば偏見というのも、学校の中にもあるんですね。そこで皆さん方は、非常にやはり苦労しているわけであります。
 不登校という現実は、ともかく小中学校合わせて十四万おって、毎年毎年ふえているというわけで、先ほど言いましたように、それは複合的な要素、要因があるというわけであります。不登校児童生徒に対する対応についても、フリースクールの中だっていろいろな意見があるわけです。それから、そういうフリースクールの活動に対する偏見というのも、最近は大分なくなってまいりましたけれども、行政サイドにもありますし、教育界の中にもかなり強くあるというように思うんですね。しかし、そういう中で、それぞれのフリースクールは、理念、方針を持って、それは違いますよ、それぞれまた信念も持ってやってきているという今日の状況にあるわけです。
 ですから、冒頭議論いたしまして、大臣も文部省の方も、積極的にフリースクールというのをある意味では評価して認めていこうということなので、お願いがあるのは、もう少し実態の調査をしっかりやっていただきたい。先ほど子供の原籍があるものについては調査ができたというように言われましたけれども、ひとつ実態調査をもう少ししっかりやっていただきたいなというように思います。
 それに伴って、先ほど、地方自治体の方ではいろいろな支援をしているということでございました。これから適応指導教室との関連とかいろいろな問題も生まれてきますし、ネットワークを組むという課題もありますので、こういうフリースクールの実態調査、特にフリースクールに通っている子供や子供を通わせている親のそういう意見というのもひとつしっかり聞いていただきたい。これは、従来から、フリースクール側から文部省の方にも要望しておられるようでございますが、やはりそういう声を聞いて、学校教育の問題がどこにあるのかということをそちら側から把握するということも必要ではないかというように思いますので、全国の状況はどうなっているのか、ぜひ、しっかりとした調査をやっていただきたいというように思いますが、いかがでございましょうか。
金森政府参考人 お答え申し上げます。
 不登校への対応のあり方につきまして、私ども、不登校問題に関する調査研究協力者会議を昨年九月に発足させました。ことしの三月にその報告を取りまとめたところでございますけれども、その中で、不登校問題の実態の分析でございますとか学校における取り組みのあり方、学校と関係機関の連携のあり方、その他不登校問題に関する事項について、総合的、専門的な観点から調査や検討を行ったところでございます。
 その間、フリースクールの方々の御意見をお伺いしたり、またさまざまな実態調査も行ったところでございますけれども、文部科学省で実施する調査や、また各都道府県、各団体で把握しているいろいろなデータがございます。そういったものをしっかりと把握してまいるように、今後とも努めてまいりたいと存じます。
横路委員 「今後の不登校への対応の在り方について」ということで、本年新しい方針が出されましたが、十年前の協力者会議の報告ということは、先ほどお答えにありましたように、登校拒否というのはだれにでも起こり得るものと考えて、学校復帰が前提ではあるけれども、より緩やかな形で民間施設も視野に入れるということで、親の会やフリースクールの人たちが非常に努力されて、今日の結果、大きな成果を生んできていると思うんです。
 今回、見ていてちょっと気になるのは、不登校の容認が行き過ぎているのではないかと。前の報告は別に容認をしてきたわけではないわけで、不登校の子供の学校復帰を強化するという考えが何か強くなってきているように思いまして、その点で不安の声がございます。ただ待っていたとか、ただほってきたということは今までだってないわけでして、問題はやはり、親は子供を学校に行かせたい、子供は学校にいろいろな事情があってなかなか行けないという葛藤から、いろいろな不登校というのが生まれてきているわけです。
 そこで、私が、当事者である子供や親が何を求めているのか、それはある意味では我が国の不登校政策を考える場合の原点だから、そこをぜひしっかり踏まえてほしいと言うことは、そういう意味であります。
 もう時間もありませんから、一つ、国立教育政策研究所の調査、あれは適応指導教室とフリースクールについての比較が出ていまして、これを見ていますと、適応指導教室も広がってきているようでありますが、問題もあるなという感じもいたします。
 適応指導教室とフリースクール、これは九百五十九と九百四十七ですから、かなりたくさんを対象とした調査になっています。例えば、できるだけ早く学校復帰させなければ子供は幸せになれない、適応指導教室ですと三九%がそうだ。ところが、フリースクールになると四%から二六%ぐらいと、非常に低いんですね。それから、学校以外の学びやに長くいることは望ましくないというのが、やはり、適応指導教室の場合は七割ぐらいで、フリースクールになると、いや、そうではないですよということで、これが低くなっています。子供が幸せになるなら学校に行かなくても構わないというのは、適応指導教室は三四%ぐらい、フリースクールになるとそれが七割から八割ぐらいになるということです。
 適応指導教室も、割と校長先生のOBの方が多いというように聞いています。子供に対する割と否定的な認識が前提となって、親に対する批判も強いんですね。つまり、子育てをおまえたちは間違えているという親に対する気持ちが、適応指導教室の中では非常に強いというように思います。
 適応指導教室が全部だめだと私は言っているわけじゃなくて、やはりフリースクールのいいところもありますので、それを取り込んで、例えばNPO法人に適応指導教室を委託するというようなことをもっと積極的にやってほしいと思うんですね。そうすると、それは財政的なバックアップにもつながっていくわけです。
 OBの校長先生を集めてやって、それはそれなりに、そこを経過して学校に戻っている人もいます。もちろん、フリースクールも、絶対学校に戻るなと言っているわけじゃなくて、多くの人が学校に戻っているんですね。中学校を卒業した段階で高等学校に入学したりしていまして、それはどうもフリースクールに対する誤解があるようで、かなりの子供が学校に戻っていっています。ただ、戻らなきゃだめよ、だめよとは言わないで受け入れていて、本人がその気になって、意欲を出して行くようにしているというのが、どちらかというとフリースクール。適応指導教室の方は、かなり指導を行っている。これはこれで、不登校の原因によってはそういう指導の方が効果がある場合もありますから、一概にどうこうは言えませんけれども、もっとフリースクール、NPO法人などに適応指導教室を任せていくということもまた必要じゃないかというように思いますが、いかがでしょうか。
池坊大臣政務官 委員がおっしゃいますように、二十一世紀は多様な価値を容認する社会になってまいりますから、多様な価値を持った子供たちをはぐくみ育てていくことが必要かというふうに思っておりますので、今までも、百七十二のフリースクールが学校と連携をとっております。適応指導教室はどうしても、学校に行かせなければ、行かせたいなという思いの方が強くて、そのような教育方針になってしまうのだと思いますけれども、柔軟な性格を持ったフリースクールにどんどん委託するような傾向に都道府県はなってきておりますし、私たち文部科学省も、そのようにしていきたいと思っております。
 一昨年できました子どもの読書活動に関する推進法も、それから私、二〇〇〇年からずっと、子供の読書を推進しております。朝の十分間の読書というのを推進して、全国にそれを提言しております。今、一万七千校がその十分間の読書をするようになりましたし、保健室にしか入れなかった子供が教室に入れるようになったというような事例も出ております。
 これから積極的に、あらゆる問題を模索しながら、だめだと言うのではなくて、もっと積極的に子供たちが学校に行くような方法というか、楽しみをたくさんつくっていきたいというふうに思っております。
横路委員 せっかくこういう形で教育特区がスタートするわけでございまして、ひとつ大きな成果を上げますように、文部科学省としても御努力いただきたいということを申し上げて、私の質問を終わります。
佐々木委員長 以上で横路孝弘君の質疑は終了いたしました。
 次に、遠藤和良君。
遠藤(和)委員 私の質問の持ち時間は十五分でございますので、ポイントを絞りまして、鴻池大臣と一問一答させていただきたいと思っております。
 まず、今回五十七特区を第一弾として認定されたわけですけれども、この目玉というのはどこでしょうか、それから、今後どんなことを期待しているか。少し見通しも含めまして、最初にお聞きしたいと思います。
鴻池国務大臣 最初、第一弾認定というのは数件ぐらいかなと思っておりましたんですが、五十七件に上りました。これは甲乙つけがたき御提案でありますので、目玉というのは、もうマスコミ報道にお任せしなきゃいかぬだろうというふうに思います。
 ただ、今後でありますが、四月二十一日に総理官邸で御認定を総理からしていただきました。これが、もう既に、認定を受けた地域でぴんぴんとはねてきておる状況だと私は理解をいたしておりますので、それがいい意味で、隣の町に、隣の県に飛び火していくことを期待するところであります。
遠藤(和)委員 まあ、すべてが目玉だというふうな認識ではないかと思いますけれども。
 それでは、きょう審議をしております改正案の方ですけれども、この改正案を提案されるに当たって、大変な御苦労があったと思っていますけれども、自分で採点をするとすれば、この改正案は、百点満点で何点ぐらいのものかと。
鴻池国務大臣 私はいつも申し上げておりますように、私が政策をつくってこれを実行していく、特区として実現していくという立場じゃありません。
 そういう意味で、地域からの御提案あるいは民からの御提案を、規制省庁にお願いして、調整をして、それを御理解の上で、特例として規制の緩和あるいは撤廃をしていただいておりますので、それこそ、あなたの役所は何点つけますかと、私の方から厚生労働省なり文部科学省に聞きたいぐらいでございまして、私の点数につきましては、みずからというよりも、点数に値する立場ではないということを御理解いただきたいと思います。
遠藤(和)委員 それでは、各省庁と個別に交渉に当たられたわけですけれども、それぞれ交渉に当たって各省庁、恐らくかたい、やわらかいところは余りなかったんじゃないかと思いますけれども、大臣の方から各省庁の点をつけるとすればどの程度でしょうか、印象のようなものでも結構ですが。
鴻池国務大臣 規制というものに対して、随分思い入れの深いところが各省庁にあります。それなりの歴史、あるいはそれなりの理由というものが各省庁にあろうかと思いますけれども、歴代総理大臣が、規制改革をしようじゃないか、中央から地方へ、官から民へと、歴代総理が、平成になりましてから十一人かわった。「モーニング娘。」よりもかわり方が多いわけであります。みんな言ってきたんですよ、みんな。ところが、なかなか進まないわけです。
 そういった中で、各省庁の甲乙つけがたき規制に対する思い、あるいは権益に対する強い思いというものが私はあると思います。これをどう打破するかというのが、お互い政治家の力、協力であると思っております。
遠藤(和)委員 そういう意味では、今回この改正案が出たところは、それぞれ、穴があいたといいますか、鴻池さんの努力が実って、各省庁の方々も理解をしたということなんでしょう。
 ちょっと具体的にお聞きしますけれども、例えば、株式会社が大学を開設できる、こういうふうな特区ができるわけですけれども、このことができても、実際に開設できるかどうかというのは、これは文部科学省が大学設置基準に合っているかどうかという判定をするわけですね。特区として認定するのは総理がするわけですが、総理が特区として認定をし、大学の開設を期待している。それで、例えば、この法律が通ると、十月に施行されますから、ことしの十月から申請受け付けがされるとすれば、早ければ来年四月の開校もあるのではないかと思いますけれども、こういうことで理解していいのかどうか。
 ちょっと具体的なお話で、浜松に浜松ホトニクスという会社があります。これは光学機械をつくっている会社ですけれども、今度ノーベル物理学賞を受賞した小柴先生の研究に対して、神岡で研究されたわけですけれども、光学機械をそこでつくられて、使っていただいた。大変光学機械のメーカーとしては有名な会社ですが、そこが、光に関する大学を開設したい、こういうふうな希望を持って今度の特区の申請をしたということを聞いているんですけれども、この法律が改正されると来年四月に大学ができる、このように理解してよろしいんでしょうか。
鴻池国務大臣 具体的には文部科学省に対してどういう相談が寄せられておるかということは把握をいたしておりませんので、私自身、十分な御答弁ができないところでございますが、委員御指摘のように、特区の認定を受けた後の株式会社立大学の設置認可につきましては、今回の特区法案に定める要件以外は、通常の大学と同じ基準で設置認可することを予定しておるようであります。
 なお、株式会社による大学設置について提案がなされているただいまの、静岡県において、浜松ホトニクスをも視野に入れつつ現在検討しておる、このように聞いておるところであります。
遠藤(和)委員 それでは、文部科学省にお聞きしますけれども、大学設置基準というのは、株式会社が開設する大学であっても、大学設置基準の上乗せはしない、一般の大学設置基準と同水準のものにする、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
加茂川政府参考人 お答えをいたします。
 大学の設置認可につきましては文部科学大臣が権限を持っておるわけでございますが、その際の基準等につきましては、学校法人立の大学を設置認可する際の基準を基本的には適用いたしたいと思っておりますし、株式会社であるがゆえにこれをかさ上げするということは、現在考えておらないわけでございます。
遠藤(和)委員 そうすると、もう一遍、念を押して聞きますけれども、タイムテーブルですけれども、十月にこの法律が施行されて、そこから申請を開始する。そうすると、特区に認定をする。その後、例えば大学というのは普通は四月開校ですよね。四月開校ということも一番早い段階ではあるんでしょうか。
加茂川政府参考人 お答えをいたします。
 先ほど大臣の御答弁にもございましたが、今回の特区は、特区に定めますのは、その設置主体として株式会社が新しく大学設置に参入できるという例外でございますので、それ以外の要件につきましては、通常の大学、先ほど学校法人立のことを申し上げましたけれども、通常の大学と同じ基準で設置認可をすることを予定してございます。
 ですから、手続につきましても、提案段階で株式会社立の大学または大学院を構想しておられた方々が今どの程度準備を進めておられるか、私ども承知をしておりません。相談がございませんために承知をしておりませんけれども、それにかかってまいりますけれども、一方、手続では、従来の手続ですと、大学・学部の場合には四月末までに設置認可の申請を行う、大学院については六月末までに設置認可の申請を行うというのが通常の手続でございます。
遠藤(和)委員 では、鴻池大臣にもう一つ、違った観点ですけれども、株式会社による病院の開設の問題ですけれども、これは今回の法律には載っていないんですね。これから要するに議論をして、六月に成案を得て、臨時国会になりますかね、臨時国会にこの特区法の改正案のようなもので出るんでしょうか。そうすると、それが成立をすると、実際は来年の四月以降ということになるんでしょうか、そうした株式会社による病院というのが誕生するのは。そういうふうなことでしょうか。
 それで、あと、自由診療に限っているわけですけれども、なぜ自由診療だけなのかという点も踏まえて、ちょっと御答弁願いたいと思います。
鴻池国務大臣 今の日程につきましては、ほぼそのようなことでございまして、ただ、募集をします、この法律が通れば。十月の中ごろをめどに、先月やりました、官邸で行わせていただきました総理認定という運びに相なろうかと思います、今度は官邸でやるかどうかは別にいたしまして。ですから、先ほどの文部科学省のあれもそこから進んでまいるということであります。
 それから、株式会社で病院経営参画ということは、自由診療のみという前提をもって、総理の御決断、そしてまた御党の坂口厚生労働大臣の御決断によって、これが一歩前進したということでございまして、どうして自由診療だけかということにつきましては私も疑問を持っております。保険診療の部分があってもいいのではないか、あるいは混合診療があってもいいのではないか、個人的にはそのように思っておりますし、このあたり、どうしてだろうということで、絶えず担当を離れましても勉強をしているところでございますので、もし御同意でございましたら、ぜひとも坂口厚生労働大臣とお話し合いを党内で前向きにお進めいただければ、大変ありがたいところでございます。
遠藤(和)委員 私は、鴻池さん自身のあるべき医療の姿といいますか、今、診療報酬体系というのは統制経済ではないのかという議論もあるわけでございまして、そうした議論についてどういうお考えなのかということも含めて、これは党の中で議論するというよりも、一政治家として、本当にあるべき医療、要するに、患者の立場に立って医療を考える、そして、医療を提供する人たちがお互いに切磋琢磨できるような姿というものを追求していくことが大事だと思うんですね。ですから、ぜひそうした議論を絶やさないで、国民のためにどうあるべきかということを追求すべきではないのか、こういうことを考えておるわけですね。
 それから、もう時間がなくなっちゃったんだけれども、今回の法律案に、ここは法律案にならなかったけれども、本当は、ならなかった部分の方に大きな魅力のある今後の課題が残されているのではないかと思うんですね。むしろ、今回結論が出なかったけれども、今後徹底的に議論をして、それが結実すれば大変大きな実りがある。それは、国民にとっても大きな実りであるし、例えば日本をもう一回元気にする、あるいは経済が活性化する、そういう意味でも大きなきっかけになるものがまだまだ残っているのではないかと思うんですけれども、そういう宿題について、鴻池さんが思っている、思いのたけをしゃべってください。
鴻池国務大臣 残っておるものは何かということでございますが、確かに、御指摘のようにあると思います。例えば、幼保一元化の問題、幼稚園と保育所の一元化の問題等についても、何となくすっきりしないものがございます。その他、いろいろ御提案をいただいた中で、今なお省庁の御理解をいただけないものもたくさんございます。しかし、これは向こう五年にわたって続く構想でございますので、いつまで私がこの任に当たっているかわかりませんけれども、任に当たっている限り、またこの構想が続く限り、努力していかなければならないと思っております。
 また、株式会社が教育の中に入っていく、NPOが入っていく、あるいは株式会社が医療の分野に入っていくといったことについては、今先生御指摘のように、私も、政治的な信念を持ってよきことであるというふうに思っているところでございまして、その理由は何かといえば、やはり税を払っている主体は選択肢が多くなければならない、教育の分野におきましても。父兄は税金を払っております。子供たちも、買い物をすれば消費税というものがかかっておるわけであります。ですから、やはり税の公正な配分というものは、教育の分野においてもあるべきだと思いますし、医療の分野におきましても、保険制度というのは非常に大事です。
 その保険制度は、これは官僚制度であると、どこかの医師会の親玉がそういう話をしているのをテレビで見ましたけれども、大きな間違いでありまして、世界に冠たる保険制度を守っていくために、今後とも、どのようにしていくべきかということを医療関係者また我々政治家は考えていかなければならないと思います。
 我々が毎月掛けている保険というのは、これは財産であります。ですから、それを、この分野に使っていけない、この分野に使っていけない、段階的にはあるかもしれませんけれども、高度な医療を、粒子線でがんを治療する、そういったときに、今でしたら二百八十八万かかるわけですから、それをある部分保険できくようにやはりしていかなきゃいかぬのではないか。
 そういったことを、大きく厚生労働省や関係者と議論をしていき、役所を守る、規制を緩和しないでとにかく権益を守るという姿を変えていただく。そして、国民が何を期待しているかということに視点を置かなきゃいけない。若いお父さん、お母さん方が、幼稚園と保育所というものをどのようにしてほしい、みずからの幼子をどのような形で教育してほしいか、そういう視点で我々は考えていく必要があると思いますし、その視点の真っ先に我々は立たせていただいて頑張っていきたい、このように思っているところでございますので、御理解をいただきたいと思います。
遠藤(和)委員 では、今後の健闘を祈りまして、質問を終わります。
佐々木委員長 以上で遠藤和良君の質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――
佐々木委員長 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、政府参考人として内閣府政策統括官山本繁太郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
佐々木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
佐々木委員長 次に、西村眞悟君。
西村委員 法案審査に入る前に、大臣は防災対策の大臣でございますからちょっとお聞きしたいと存じます。
 と申しますのは、我が国では、ミサイルが我が国に落ちればこれは災害対策で対処するんだと言った閣僚もおられるわけですね。この瞬間、我が国の災害対策と国防というのはどういう関係になっているんだと。私は、ミサイルが我が国に落ちる前から防衛出動だと思っておったのでびっくりしたわけですね。国家が対処できるのか、どこを鴻池大臣は担当されておるのかわからなくなってくると。
 それと同時に、もう一つ問題がある。予告された災害というのが近づきつつある。今、東京電力の原子炉は一つしか動いておりません。この夏、猛暑が襲い、すべての家庭でクーラーを使い始めたときに、首都圏で大停電が起こる可能性があります。
 こういうことで、法案審査の前に、防災というものについての大臣の御覚悟を少々聞きたいなというふうに思っております。予告された災害というものは、これは現実的ですから。
 さてそこで、災害対策の災害、防災、これは何が含まれておるのだろうかということであります。
 疾病、火災、原子炉火災等々、いろいろなことがありますけれども、例えば山手線に天然痘の病原菌を持たせた者を一人通勤時間帯に乗り込ませて二時間ぐるぐる回らせれば、この潜伏期間が過ぎた七日後あたりから首都圏の機能が麻痺する、つまり原爆を落とされた以上の機能麻痺が起こってくるわけですね。これも災害だと思うんですが、政府内で、ミサイルが落ちたら災害対策でいくんだと言う人もおるぐらいですから、災害としては、大臣はどの範囲を見て自分の出動だというふうにお考えか、概略、ちょっとお答えいただけますか。
鴻池国務大臣 私が担当いたしておりますところは、暴風、豪雨、洪水、高潮、地震、津波、火山噴火、異常な自然現象による被害、それプラス大規模な火事、爆発その他の大規模な事故による被害、これ以上は違うよ、このように言われております。
西村委員 ということは、天変地異等々、それから火災ですが、予告された災害としての停電に基づく大混乱というのは入らぬのですか。
    〔委員長退席、中沢委員長代理着席〕
鴻池国務大臣 ここからはまだ私の頭の中の答弁でございますので、お許しをいただきたいと思いますけれども、そういった、予測をされた、されないということを別にして、そういうことが実際に起きた場合には、いわゆるどのあたりが大変かどうかというのはこれからの話ですけれども、これは大変だといったような、例えば神戸の阪神・淡路大震災のような状況が首都圏で起きたり各地で起きたりした場合には、総理大臣が対策本部長となられるはずであります。そこに至るまでの事務的補佐、それ以降の補佐というものが防災担当大臣が行うべきものではなかろうかと思っております。
西村委員 それらが、当初は大火災だ、しかし、それはテロによって起こったんだ、だから本来テロ攻撃に対する部署が動かねばならないのはわかったんですが、これは、災害対策としては、その体制はずっととり続けるということなんですね。
鴻池国務大臣 災害というのは、今私の範囲内というのは申し上げましたけれども、それプラスこの国家に対する大変な状況下も災害の部分に大いに入ろうかと思います。
 いずれの場合におきましても、防災担当大臣と同時に、そういう肩書をいただいている者として、すぐ総理のそばで、どういう事態になろうとも補佐を務めるということに、覚悟は変わりございません。
西村委員 いずれにおきましても、政府において、何が起こるかわからないこの時代でございますから、どうか防災ということ、つまり国民の命を守るということですから、どうかおさおさ怠りなく、待ち構えていると言ったらおかしいですが、一挙に対処できるようにやっていただきたい。特に、停電の問題は人ごとではない、本年の夏は人ごとではないと私は思っていますので、病院における手術等々に直ちに影響を与えるということですから、どうかその点も政府部内において準備を怠りなくやっていただきたいと存じます。
 法案の方に移りますけれども、先ほどの御答弁を聞いておりまして、思いは同じだと思います。歴代総理が規制緩和を言っていた、これを特別区で突破口を開いていくということなんですね。そこで、そうであれば、歴代総理が言っていた規制緩和を特別区という形でやらざるを得ないという我が国の現状を、立場、政治というものに携わっている以上、お聞きしておかないかぬな、こう思います。
 それで、話題を広げ過ぎても仕方がありませんから、今法案として出ている七項目についてお答えいただくだけでいいんですが、これはすべて全国一律にすることが何ら差し支えない。例えば、地域のニーズに応じた多様な教育が提供できるようにする、これは当たり前じゃないですか。何でこれは特別区やないとあかんのかということがあります。
 七項目について、ちょっと煩瑣になるかと思いますが、なぜこれは特別区を設けなければならなかったのか。先ほどの御答弁によりますと、お父さん、お母さんが子供のニーズに応じた多様な教育を受けさせる、国民、納税者の権利でもあると。これをなぜ特別区でなければならないのかと、七項目についてお答えいただけますか。
鴻池国務大臣 全部役所が反対しているんですね。ですから、私に聞かないで役所に聞いていただいた方がいいと思うんです。
 私は全部全国で対応すべきだと。日本の文化、伝統、あるいは国柄を壊すような規制改革は、委員と同じ気持ちですから反対でありますけれども、それ以外の規制は、民でできることは民で、総理がいつもおっしゃっているように、地方でできることは地方ですべてやるべきだと。私はそういう信念は変わりありません。しかし、それができないんですね。できないんです。
 なぜできないか。やはり官側の、どう言うんでしょうか、思い、規制に対する思い、あるいは自分たちの目の届く範囲内で国民は生きていくべきだという、そういう思い上がりが私はあると思います。
西村委員 今の答弁を聞いたら、もう質問せぬでも、終わってもいいぐらいですね。
 それで、やはり官の抵抗でできないと。そして、この法律があります、改正案が今出ていますが。この法律の執行を託された実務、つまり大臣のもとにおる実務家は、だから大変ですな、本当に。政治が決断するかわりの、その領地争いのようなことをやらざるを得ない、こういうことになるんですね。
 それで、今おおよそのことの、官のということで、できないんだと言いましたけれども、お答えいただいたらもうそれで私はほぼわかるんですが、やはりこれは法案審査の記録に残すという部分もありますので、例えば、地域のニーズに応じた多様な教育が提供できるようにする、これが全国であるのが、国民がひとしく法のもとで等しい処遇を受ける、納税者である限りは同じ処遇を受けるというこの原則をゆがめざるを得ないのかということについて、煩瑣でありますが、七項目について、こういう措置をされたんだと何かあれば、お答えいただけますか。
鴻池国務大臣 煩瑣という意味ではございませんけれども、七項目全部につきましては、今申し上げましたように、全国で対応をすべき規制であるというふうに何度もお答えを申し上げたいと思います。
 しかし、これがなかなか進まないということの御懸念もございます。七月に、評価をするための委員会というものを、民間の人を中心に、この特区の規制改革をうまく進めているか、いいものであれば全国に広めていこうじゃないかといった、発言権のある委員会を立ち上げるつもりでおります。
 まずは、四月二十一日から動き出しておりますので、これを評価して、よりよきものは全国に広げようという、すなわち政治的運動をやっていく必要がある、このように考えておるところでございます。
西村委員 よりよきものを全国に広めるということは、国民ひとしくよりよき体制の中で生きるということですから、ちょっと大臣の答弁で質問の矛先がそがれてしまいまして、もうこれでほぼお聞きしたなという感じになってきたんですが、細かく聞いても仕方がありませんな。
 やはり要するに、大臣、これは政治の決断力がいわゆる行使できない体制の中にあるというふうに理解してよろしいですか。大臣御自身は、例えば先ほどから例を挙げている教育、自分の子供の、いろいろな、一人として同じ子供はいないんですよね。その子供に本当に沿った教育の提供を受ける。これは特区じゃなくて全国に広めるべきだと思っているけれども、政治の決断によってこの規制を一挙に解除することができない状態にある、その理由は官の抵抗である、残念ながら官の抵抗を今直ちに撤廃することはできないというふうにお聞きしてよろしいですか。
鴻池国務大臣 御党の組織につきましては勉強不足でございますけれども、自由民主党というのは、やはり自由濶達、また民主的という、いい意味でいい組織、考えようによっては随分時間のかかる意思決定というものがございます。これは当然、私は自由民主党の党員、議員でございますので、十分理解をいたしているところでございますし、また、総理も自由民主党党員でございますから、そのように理解をしているところでございますが、今委員御指摘のように、進まなければならないところはやはり政治の決断として進むべきである。
 例えば、担当閣僚とすれば、閣議で合意できたものが、合意の結果、また違う意見を言う、あるいはみずからの部下が違う行動に出る、これは、自由主義、民主主義とはまた違うところの組織論であります。ですから、私はそういう意味で、この構造改革につきましては、政治家としての技量というものの十分なる発揮を、総理以下、御期待申し上げなければならないことであるというふうに思っております。
西村委員 この特区の推進を未来永劫続けるわけにはまいりませんですね。いつか決断をして、よきものは全国展開にする、そして必要な規制は残す、そして、真に特区というべき特区を見つけ出さねばならないこともあろう。
 大臣の考え方、これはお答えにくいと思いますが、特区の法に基づく特区づくりは規制緩和の全国展開への突破口として位置づけられている以上、政治家の決断としては、何年ぐらいこれをやるか、あとは決断して全国一挙だ、こういうめどはどういうふうに持っておられますか。
鴻池国務大臣 この期間につきましては、法律におきまして、五年で見直す、こういうことになっておりますので、長いか短いかは別にいたしまして、これが継続していく、このように御理解をいただきたいと思います。
西村委員 見直すということは、もう政治の決断で五年で特区をやってその状態を見て、あとは全国展開、この法案の任務は終わったという意味なんですか。
鴻池国務大臣 あと五年、私はどこで息をしているかちょっとわかりませんので責任あることは申し上げられませんが、五年たって継続してやっていくか、今委員がおっしゃいましたように、ここで打ち切ってすべて全国で行こうというのか、これはそのときの状況によろうかと思いますが、いずれにいたしましても、五年で見直すということに相なっておることを御承知いただきたいと思います。
西村委員 細かいことはもうお聞きいたしません。だから、質問も早く片づけようと思います。
 ただ、先ほど言いました、これは規制緩和の一環としてやるんだと。この進みが、つまり官から民へ、いかにして国民が生きるか、いかにして事業を起こすかということを移していくんだというこの流れが、特区という規制強化そのものの中に入っていくパラドックスを秘めておるんです。
 なぜなら、隣の特区の人は自分の子供のニーズに即した教育を受けられるのに、そこから離れた私の子供は、同じ教育を受けねばならないと親は思うのに、官による規制というか特区という規制において、そのサービスを受けられない。ある意味では、等しからざるを憂えるということが一番の国民の不満になり得るわけでありまして、特区であれば、政治がよきものだということを判断すれば、直ちに全国展開の決断をしなければ、国民にその政治の責務を果たしたことにはならないな、このように思いますということを大臣に申し上げておきます。
 それから、この自由な社会において、特区のモザイクをつくることは我々の目的ではございませんね。しかし、この自由な社会の中で特別区と称して設置してもいいものがありますね。つまり、カジノであるとか遊郭であるとかいうことですね。私は、国民の倫理観の確保の観点から、これは議論してはならない領域だと思って手を触れずに行くのではなくて、これは議論してもいい時期に来ているのではないかなと思っています。なぜなら、禁酒法におけるやみの犯罪がはびこったように、今、青少年のいわゆる倫理観、そして、裁判官さえもいわゆる援助交際と称する買春に手を染めるようになっている。この状態を我々は見て見ぬふりをして通り過ぎることができますでしょうかという段階に来ていると思うんですね。
 これは大臣に申しませんが、例えば一等地に、不況であっても何であってもパチンコ店が大駐車場を擁してできていき、そして、子供たちが通学に通うこの横で開店を待つ大人の長蛇の列ができておる。これが我が都市の中心部の姿であろうか、このように思いますときに、それを全面的に禁止すればやみがはびこる。したがって、カジノという特区を設けて、そこへ行ってやれということは、自由主義社会における必要な政治の知恵ではないかというふうに思いますが、大臣のお考えはいかがですか。
    〔中沢委員長代理退席、委員長着席〕
鴻池国務大臣 結論から、私の個人的プラス特区担当大臣といたしましても、カジノというものについては否定するものではありません。既に、全国から八件、九件のカジノに対する思い入れの御提言をいただいております。
 ただ、私、ここで特区として取り扱うかどうかということをちょっと一考いたしました、個人的に。これにつきましては、カジノという、ばくちという言葉がいいんでしょうか射幸性というか、そういうものを、パチンコ屋さんとかいろいろなところと比べずに考えた場合におきましても、やはりこれは賛否両論が今のところあります。江戸時代からばくち打ちという言葉が何となく嫌われておったように、この状況につきましては、やはりもう少し熟成する必要があるのではないかと私は個人的に判断をいたしました。
 しかし、カジノが日本にあってはならないという思いは一切ございません、あってしかるべきであるというふうに思っております。ただ、やりたいという地域あるいは日本全土でカジノやってしかるべきという、構わぬじゃないかという世論が五割以上確認できたときにやはりもう一度検討すべきじゃないか、このように思っております。
 自由民主党の中にカジノ推進議員連盟というのが誕生いたしました。そこで、推進をしようじゃないかという勉強会が始まっておりまして、担当の役所がまだ決まっておりませんけれども、いろいろな相談というか便宜を図っていく、相談に乗っていくという部分につきましては、内閣府で受け持ってもらおうではないかというところまで話が来ておるわけでございます。
 ぜひとも、そういった悪くはないという啓蒙運動につきまして御理解をちょうだいしたいと思います。
西村委員 我が国は、もはや発展途上国型の国家ではなくて成熟社会の段階にあって、官から民へ、発展途上国型追い上げをしているときの体制を移していかねばならない。この意味で、この特区という問題を通じて一刻も早く全国展開をできますように、大臣の御奮闘を期待して、私の質問を終えます。
 ありがとうございます。
佐々木委員長 以上で西村眞悟君の質疑は終了いたしました。
 次に、吉井英勝君。
吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。
 私、最初に、地方公務員の臨時的任用の延長問題について質問したいと思います。
 最初に、政府参考人の方に伺います。
 現行の地方公務員の臨時的任用の任期というのは最長一年となっているわけですが、これを特区では最長三年まで延長できるようにしようというものですね。初めに、この非常勤、臨時的任用職員の全国の実態がどうなのかということですが、今、臨時職員は全国でどれぐらいおられますか、それから平均的な勤務年数はどれぐらいと把握しておられるか、お答えいただきます。
森政府参考人 お答えいたします。
 臨時任用職員あるいは非常勤職員の実態ということでございますけれども、例えば勤務形態一つとりましても、勤務日が不定期の方とか、あるいは月または週に数日勤務という方とか、非常に多様でございますし、また、地方公共団体における任用の状況とか職種等も非常に多岐にわたっておりまして、また、地方公共団体によってとらえ方も異なっておりまして、全国的な職員数などの把握は行っていないところでございます。
 なお、毎年度実施しております地方公務員給与実態調査におきましては、常勤職員に準ずる職員、すなわち、常勤職員について定められている勤務時間以上勤務した日が十八日以上ある月が引き続いて十二月を超える職員でございますが、その数につきましては調査しておりまして、平成十四年四月一日現在で四千七百八十一人となっているところでございます。
吉井委員 要するに、一年以上の臨時職員はいる、そういうふうに答えられたと理解していいですね。
森政府参考人 私が申し上げましたのは、臨時任用職員とか、それから非常勤職員、全部トータルで申し上げましたので、先生お尋ねの臨時任用職員につきましては、法律上一年未満のものばかりでございます。
吉井委員 それは建前でありまして、実態としては、任用形態は地方公務員法で決まっているわけですが、総務省は、一年以上の臨時職員が大勢いる実態をよく知っているわけですよね。
 私も長いこと地方自治体でかかわってきましたから実態をよく知っておりますが、大阪府あるいはその周辺の都市の場合ですが、更新、更新で十数年勤務している臨時職員の方が大勢おられることを知っています。特に、保育士、給食調理、本庁事務、学童保育指導員などの業種に多くて、圧倒的に女性です。本庁事務の職員の中には、二カ月ごとに職場を回っていくジプシー職員と呼ばれている人もおります。雇用の継続のために一カ月あけたり二カ月あけたりして続けているという実態もあります。そして、正規職員と同じ仕事をしながら、賃金は正規職員の六割から七割程度、他の労働条件も非常に悪い。
 こういう状況は、大阪だけではなくて、東京であれ、全国でもこれが問題ですが、実際には、これはせんだって新聞にも紹介されておりましたが、非常勤、臨時職員は全国で三十万人とも三十五万人とも言われているわけですね。そして、数年あるいは十数年、実際は正規職員と同じなのに臨時職員という扱いを受けている、そういう人はたくさんいる。
 まず、この事実を把握しておられるのかどうか、伺います。
森政府参考人 先ほど申し上げましたように、臨時任用職員あるいは非常勤の職員、非常にさまざまな雇用形態がございまして、なかなかその実態がつまびらかにできない、私どもとしても承知、把握できないというところでございます。
吉井委員 それは、もう昔の自治省の時代からずっとそれをプロでやってこられてよく知っておられるのに、建前として、建前があるものだから、結局よく把握できないというお話なんです。
 こうしたことがなぜ起こってくるのか。それは、自治体が臨時職員を積極的にふやすようになったのは大体十数年前ぐらいからですが、住民サービスがふえる反面、財政削減が求められて、正規職員の採用はふやすことはできない、その穴埋めを臨時職員で賄ってきたという実態があります。この点では、こういう実態を招いた国の責任というものは極めて大きいと私は思うんです。
 地方自治体で、一年以上の非常勤、臨時職員が圧倒的に多い。中には二、三十年という方もおられますが、臨時職員の任期を最長三年にするということは、現在三年以上の臨時職員の雇用どめを図るということになりかねないという問題があるんですね。これは大臣も、普通に考えたらなりかねないなということだと思うんですが。
 そこで、最長三年以上の非常勤、臨時職員を雇用どめしないということが約束されるのかどうか、ここのところは大臣に伺っておきたいと思います。
森政府参考人 お答えいたします。
 臨時的に任用されている職員とか非常勤職員など、期限つきに任用されております職員と申しますのは、本来、任用期間終了後はその雇用が保障されるものではございませんので、任用期間終了をもって職員としての身分を失するというふうに解されているところでございますし、また、最高裁判例でも確立されているところでございます。
吉井委員 実務的なことだったら政府参考人に伺うんですが、私は、現在三年以上の非常勤、臨時職員を雇用どめしないと約束できるのかということを、この辺のところはやはり大臣に聞いておきたいということで伺ったわけです。
鴻池国務大臣 これは特例としての、特区としての三年ということでありますので、それ以外のことにつきましては、表現とすれば大変冷たい表現になるかもしれませんけれども、私どもの特区室ではあずかり知らないことであります。
吉井委員 さっき政府参考人の言った話というのは、かつてこういうこともあったんです。
 例えば、今のようにパソコンに入力していない時代、年度初めなどに、税務の通知、あて名書きで二カ月、三カ月パート的に臨時職員を雇う、そういうことがありました。しかし、実際には、保育の職場だとか多くの職場で数年にわたって臨時雇用の継続、実態としては正規職員と同じ仕事をやるという方が、また、その方なしには役所の仕事そのものがそもそも成り立たない、それが現実の姿としてあります。ですから、さっき政府参考人の言った、短い者の期間が来たらというのは私もわかった上なんですよ、そういうものもありますから、アルバイト的に、あて名書き程度のもの。
 臨時職員はなぜ最長三年かということなんですが、現行法の一年では職員が十分に仕事を覚えられない、それでは業務に支障が出る。三年なら仕事を覚える必要な期間が使えるし、三分の一ずつ入れかえをすることで業務の支障も解消できる。これは、使用者の側から見れば非常に使い勝手のよい仕組みなんですね。正規の職員を減らして使い勝手のよい臨時職員を安上がりに使うということになってくるわけで、総務省の検討会報告でもそういう方向が出ているのは私も読みました。
 そういうことになると、地域の雇用が不安定化する雇用の悪化とか、経済の活性化どころか経済にとってマイナスになることも出てきます。労働法制の仕組みは、やはり長期安定で将来に希望を持って職務に専念できる、そういう労働法制が期待するところが崩されて、雇用そのものが不安定化している。若者もパート化ということになってきますと将来不安ということにもなりますし、社会そのものが不安定化するという問題を抱えていると思うんです。
 やはりこういう点では、目指すべき方向としては、継続、安定した雇用と社会の安定化を目指すということ、大臣としてもその方向は全体としては考えるべきだというふうに思われると思うんですが、ちょっと伺います。
鴻池国務大臣 私の担当外でございますから、発言は差し控えなきゃいかぬと思いますけれども、しかし、過去、人を雇用して、中小企業でございますけれども、仕事をしておりました身とすれば、そういう方向というのは非常に大事なものであると思います。
 ただ、今回のこの特区につきましては、具体的に申し上げますと、埼玉県の鴻巣市というんですか、保育士など必要な資格要件を必要とする職の後任が見つからない、特区として認めてほしい。あるいは小田原市は、臨床研修などの特定の分野における人材の育成が必要な場合でございますので認めてほしい。川口市、春日部市等は、事務事業の見直しによる組織や定数の改廃等が完了するまでの間、行政サービスが低下しないように、一定のノウハウの蓄積のある前任者を継続して任用するために特区として認めていただけぬだろうか。こういう御提案、地方の、いわゆる地域のニーズを吸い上げた、こういうことでございますので、ぜひとも御了解をいただきたいと思います。
吉井委員 定年退職になった方がさらに二年、三年と継続してその場所で頑張っていただくという場合と、そうじゃなくて、非常に若い方なんだけれども、仮に臨時職員で入ったとしても長期安定した雇用に移っていくということ、そこは若い方たちの場合には大事なことで、本来、公務で働く職員は継続して安定的に業務を行う、そのことはまた民間での安定雇用の道を促進していく。国公法にしても地公法にしても、そういう趣旨で法律はつくられております。
 最高裁判例を見てもこういうのがあるんですね。この判決というのは、最高裁第三小法廷、六二年六月十八日付の判決ですが、その判例そのものは、期限つき任用職員の解雇を認めた、私などからすると不当な内容を持っているというふうに思う判決ですが、その判決の中でも、一般職の職員について、常勤、非常勤を問わずその任用につき期限を付することは一般的には許されず、一般職の職員の任用につき期限が付せられた場合、その期限の定めは無効である、しかし、職員の任用を無期限のものとする地公法の右の建前は、職員の身分を保障し、職員をして安んじて自己の職務に専念させる趣旨に出たものであるから、職員の期限つき任用も、それを必要とする特段の事由が存在し、かつ、それが右の地方公務員法制定の趣旨に反しない場合には許されるということで、この判決の場合は私からすると不当な面があると思います。しかし、その判決でもそのことは非常に重視して指摘しているところでありますから、ここのところを踏まえた取り組みが大事だと思うんです。
 現行の地公法二十二条の臨時任用というのは、十七条の正式任用の例外規定として設けられておりますが、今回の措置はこの例外規定のその例外。ですから、構造改革特区の名のもとで法律の趣旨をねじ曲げるということになったらこれは大変な問題でありますから、地方公務員に不安定雇用の拡大を招くとか、公務部門内に待遇の劣悪な職員をふやす、地方公共団体の公共的責務の遂行にも悪影響を及ぼすというものになってはいけませんし、地域の雇用の悪化を招くようなことにもなってはいけませんので、私は、こういう点では、任期付採用の方が将来的に正規雇用になる道を前提としてのものではなくて、それが雇いどめというふうな形になるようなものについては考えを改めるべきだ、もし雇いどめということでいくものであれば、そういうものは撤回するべきだと思うんです。
 ここの部分については、最後に鴻池大臣に伺っておきます。
鴻池国務大臣 先ほど、地域の名称を申し上げて御説明申し上げましたように、これはあくまでも特区でございます。特区において特例を役所が認めた、総務省が認めたということでございますので、そういう認識を改めていただきたいと思います。
 ただ、委員の今の御発言につきましては、各方面、十分御参考になるようなところもあろうかと思いますので、今後の雇用に関して、それぞれが御参考にされるところであろうかと思うということを申し上げておきたいと思います。
吉井委員 この部分については、やはり、雇いどめ、特区といえども、雇いどめ、こういう形にならないようにするべきものだということを申し上げて、文部科学省の方、来ていただいておりますので、次に、教育特区の問題について伺いたいと思います。
 今度の法案では、教育特区において、学校法人でない株式会社にまで学校設置を認めるというものですが、しかし、現在でも、株式会社が学校法人になることは可能なんですね。例えば、トヨタは、トヨタ学園、学校法人を設立して、豊田工業大学をつくっておりますし、ダイエーは流通科学大学、京都の島津製作所は京都医療技術短期大学、コニカは東京工芸大学、日通は流通経済大学、ソニーも湘北短期大学など、約十四の企業が学校法人の資格を取得して学校を運営しています。
 今回の法案で認められた株式会社の学校は、これらの学校法人とどの点が異なるのか、また、設置が認められる手続にどんな違いがあるのか。これは政府参考人の方に伺っておきたいと思います。
加茂川政府参考人 お答えをいたします。
 御指摘のように、株式会社も、学校法人を設立することによって、学校法人立の学校、私立学校を経営することは可能なわけでございまして、例も、御指摘のように十数件あるわけでございます。
 今回、特区に株式会社立の学校設置を認めますことは、特区における特別な教育ニーズに対応するものではございますけれども、株式会社が参入することによってのメリットも考えられるということを私ども考えたわけでございます。
 すなわち、株式会社の場合には、株式、社債など多様な資金調達が可能でございまして、必要な資金の確保が容易であること、あるいは、積極的にむだなコストを省く等、効率的な経営が期待できるという面があるわけでございまして、この点が、学校の設置、運営で私どもが大変大事だと思っております公共性、継続性、安定性を確保する上でプラスに働くことが考えられるわけでございまして、学校法人でなければならない分野というのが、必ずしもあるわけではございませんけれども、株式会社と比較しました際には、株式会社の今申しましたメリットを生かした学校経営が可能であるであろう、そういうことを十分に期待をしておるわけでございます。
吉井委員 メリットの話があったんだけれども、デメリットの話もあるんですね、両方、当然ながら。
 メリットで言われたような資金調達に関して言えば、これは現在の学校法人でも、債券発行、資産運用、収益事業の実施、出資による会社設立、資金調達の方法も多様に今認められているわけですね。ですから、そのことがメリットだということで強調するということには当たらないわけで、逆に、株価の暴落によって経営破綻で学校が簡単につぶされてしまうという、株式会社立による学校のデメリット、その危険性もきちんと考えなきゃいけないわけで、ですから、なぜ利益を追求する株式会社の直接参入なのか。
 そこは本当は、先ほども議論ありましたが、NPOの皆さんが不登校児の教育に当たっておられる、そういうことを、うんとその取り組みを生かしていくという面での、それは学習指導要領の改正や、私たち、学校法人の設立要件の緩和、全部緩和すればいいという立場じゃありませんが、学校法人の要件緩和などによって達成できる話が、株式会社の参入そのものを認めるということでいくということは、これは、本来学校法人の持っていた意味である教育的配慮、この教育的観点を捨てて、利益追求が主目的だと言われても仕方のない話になってくるわけですね。
 文部省は、昨年、株式会社参入について懸念を表明されたわけですが、そのときたしか、一つは、利益の追求と私的分配が中心となり、教育研究への還元は二次的なものとなるおそれがある、二つ目には、大出資者の意向により、教育方針等が安易に変更されたり、極端な資格試験対策など目先の利益に走った教育が行われるおそれがある、三つ目に、業績悪化による大学の差し押さえや廃止などの不安定性がある、四つ目に、最低資本金一千万円以上により設立可能であることから、学校の経営基盤が脆弱かつ不安定となるおそれがある、こういうことを、たしか第四回総合規制改革会議への提出資料などでも指摘してこられたと思うんですが、これを指摘されたことは間違いありませんね、今の点。
加茂川政府参考人 御指摘のとおりでございます。そのような懸念を持っておりました。
吉井委員 それで、その懸念についてどういう検討をされて、それぞれの項目について、これで懸念がクリアされたという判断をされたのか、そこを伺います。
加茂川政府参考人 お答えをいたします。
 先ほど申しましたように、学校の設置、運営のためには、公共性、継続性、安定性といった要素が求められる、私ども大変大事な項目だと思っておりますが、委員御指摘のような観点から、株式会社の学校経営参入、学校設置参入には懸念すべき点があったわけでございます。
 ですから、経緯的に申し上げますと、この構造改革特区の第一次提案時点におきましては、先ほど申し上げました懸念について私ども十分検討した結果、その懸念を払拭するような要件を設定しないことには、すなわち、学校法人の設立要件に相当するような、株式会社のメリットも生かしながら、そういった制度設計ができないことにはこの問題を解決できないであろうと、鋭意検討を進めたわけでございます。
 私どもの検討を後押ししましたのは、さきの臨時国会での御検討、御審議でございますとか、総合規制改革会議におけるさまざまな議論があったわけでございます。その際にも、株式会社による学校設置につきましては、例えば、情報公開でありますとかいわゆる第三者評価、さらにはセーフティーネットを構築するなど、そういった制度設計、条件を整えることによって懸念がある程度払拭できるのではないか、検討し得るのではないかという議論、御指摘が多々あったわけでございます。
 私どもも検討を進めてまいりましたけれども、このような議論、経緯を踏まえますと、今度の第二次提案におきましては、数多くの、株式会社等による学校の設置についての提案があったわけでございまして、そういった事実も踏まえながら、さまざまな観点から検討しました結果、特区制度の趣旨を最大限尊重し、いわゆる特区申請自治体の取り組みを最大限尊重する中で制度設計をしていくことによって、先ほど申しました、幾つも懸念すべき点がリストアップできるわけでございますけれども、相当程度そういった懸念が払拭できるような仕組みになったのではないか、こう思っておる次第でございます。
吉井委員 特区でなくても、全国で、株式会社が学校法人をつくって、参入はできているわけなんです。ですから、別に新たに特区制度を設けなくても、全国で、特区じゃなくて全国で、学校法人で現に参入しているわけです。できているんですね。
 今、結局、挙げておられた懸念がどう払拭されたかということについてはほとんどないわけですが、検討の過程で、例えば、財務情報の公開などについて、設置後、事後チェックまでの間の大学の質の制度的保障はない、だから、当該大学の提供する情報の信頼性、確実性の担保もなく、消費者たる学生が安心して的確な情報を確実に取捨選択することは困難になるおそれがあるということも指摘されたと思います。それから、つぶれた場合の転学先確保の、だから、アフターケアの話も今あるわけですけれども、しかし、これは他大学への転学に係る時間的、金銭的負担等の甚大な不利益を学生がこうむるおそれがある。また、この不利益は、その性質上、事後的回復になじむものではなく、当然人の人生にかかわりますから、金銭賠償によって容易に解決されるものではない、改めて他大学に入学したくとも、その時点での個人的事情等により不可能な場合もあり得る。さらに、これらの損害は、すべて自己責任により学生に帰着すると考えることは不適切であるというのが、文部科学省の、これはことしの四月段階での回答でもあったと思うんですが、そういう指摘をしていることは間違いないと思います。先ほどのお話を聞いていまして、この指摘とこの懸念が払拭された話とは余り結びつかないんですが、少し説明していただきたいと思います。
加茂川政府参考人 お答えをいたします。
 御審議いただいております法案の十二条の各項にその制度設計の中身が盛り込まれておるわけでございますが、委員が御指摘なさいました、まず業務、財務情報の公開の規定でございます。それから、学校について、大学も含めてでございますが、認定自治体による評価の制度、さらには、設置者の経営状況の悪化等によって学校経営に支障が生じた場合には、何より学生等の修学機会を確保するためのセーフティーネットの整備を自治体に義務づける制度設計、こういった、主にこの三点の仕組みによりまして、当初学校経営に求められる安定性、継続性等の要件、これが揺るぐ場合には懸念も生じるわけでございますけれども、今申しました大きな三つの制度によって、特に学校の責任ある運営の期待ができるということを私どもは総合的に判断をしたわけでございます。
 特に、学生等の修学機会の確保をスピーディーに行う必要が、何より教育の特性からいってあろうかと思います。簡単にやり直しのできない、またやり直しをした場合にも何がしかの不都合、不利益が学生に生じるおそれが多分にございますので、この転学機会の確保についてはスピーディーに対応する必要があるわけでございますが、何より特区の場合には、株式会社だけでこの特区に申請をし、実施をできるわけではございませんで、地方自治体が申請をし、地方自治体といわば一緒になって特区事業が実施できるものと考えております。
 特にセーフティーネットについて申しますと、この特区自治体、地方公共団体にその義務を課してございますので、地方公共団体がこの義務を十分に果たすことによって、先ほど委員御指摘なさいました学生等の不利益を最小限度に抑えることができるということを私どもは期待しておるわけでございます。
吉井委員 不利益が出ることを想定しての検討もしておられるんですが、そこで、鴻池大臣、株式会社の参入と学校教育、これは現にその株式会社が学校法人の資格を得て参入しているわけなんです。ですから、それは可能なことなんですね。
 私、この前も、十二月でしたか、大臣と議論したときにお話ししましたが、私は規制緩和がみんなだめと言っているんじゃないんです。当然、明治以来の古ぼけた、実態に合わない規制もあるわけです。こんなのを廃止するのは当たり前なんですね。しかし同時に、人類の知恵で生み出してきたルール、規制もあるわけです。維持すべきものもあるんです。ヨーロッパなどの基準に比べて日本の基準がおくれているものについては、さらに世界的な状況やら我々の経験も踏まえて、新たに生み出すべき規制もあるわけです。
 野球に例えれば、阪神・巨人戦で、巨人がボールを打ったら一塁へ走るが、阪神は三塁へ走る、これじゃ全然野球にも何にもならないわけで、ですから、規制というものについては、全部を取っ払って緩和すればいいというものじゃなくて、一つ一つきちんと考えなきゃいけない世界だと思うんです。今横行しております規制緩和万能の発想というのは、言ってみれば数年前のオウム真理教のマインドコントロールみたいなものじゃないかと私は思っているんですが、やはりヘッドギアを外さなきゃいけないですね。
 何は撤廃すべき規制か、何は今もきちんと維持すべきものか。そういう点では、特区で教育分野にはなじまない市場原理を持ち込むという発想というのは、これはやはり市場原理ということでもって子供たちや障害者児が犠牲になるおそれもあるじゃないか、あるいは株式会社のことですから、もうかるときもありますが、大体株主利益率中心に今は経営する時代ですから、破綻したときに簡単に学校解散だと言われたんじゃ困る人もたくさん出るわけですからね、人生をかけて学生たちは学ぶわけですから。やはりそのことはきちんと考えなきゃいけない。そういう点では、私は特区というのは教育の分野ではなじまないということを大臣としても考えられる必要があるんじゃないかと思うんですね。大臣の答弁を伺います。
鴻池国務大臣 何度もいつも申し上げておりますように、特区というのは、全国で展開をした方がいいというものは全国展開した方がいいと思います。しかし、特区でとにかく試してやってみようというものは思い切ってやる必要があると思っております。
 教育の分野に株式会社が入る、NPOが入るということは、決して悪いことではないと思います。委員の基本的なお考えの中には、株式会社性悪説というものがあるように見受けられていたし方ありません。株式会社があるがゆえに自由主義社会の多くの人々はそれで糧を得て、そして子供を教育しておるということもお忘れになってはならないことではなかろうかと思います。それゆえに、私は、株式会社が教育の分野に入っていく、NPOが入っていく、そして、親御さんたちもお子さん方も教育を受ける者も、多様化された中で選択をしていく。
 御心配の向きのような学校ができれば、それはそれでだれも行かなくなりますから、それこそが自由主義社会の大変大事な部分であるということも御認識を改めていただきたいと思います。
吉井委員 私は株式会社が悪なんというようなことを言っていないんです。資金調達のその道の一つだということも考えております。ただ、それが教育の分野でいいのかどうかということと、今実験というお話がありましたが、そもそも教育の分野で経済原理優先の実験をしてはならないというところが大事だということを言っているわけであります。
 そこで、実際にこれは総合規制改革会議のものを読んでおりましても、実際にアメリカでなかなか教育事業がうまくいかなくて、株式会社が撤退したり、学校が閉鎖するというのが一割近くある。二千八百七十四校中のチャータースクールのうち二百七十一校が、実は契約が取り消しになったり、学校閉鎖になっているということも紹介され、学校の場合には、失敗したからもう一回学校に入り直しましょう、そういう方もいらっしゃるかもしれないが、しかし、教育という特殊性は、そこで教育サービスを受けるだけでなく、人生のある大事な時期に学問をし、研究し、保護者として見れば親権を行使しなければならない時間をどう確保するかというときに、単純にやり直せばいいというだけじゃ済まない部分が教育についてはあるんだということが、これはたしか文部科学省としてもそういう指摘をされたと思うんですが、この点は政府参考人にちょっと確認しておきます。
加茂川政府参考人 お答えをいたします。
 今手元に詳しい資料がございませんので、少し大まかなお話になろうかと思いますが、アメリカの例として、先生御指摘のように、株式会社が学校経営に参入した際に、必ずしもうまくいかずに一部撤退をしたチャータースクールの話、今ございましたけれども、チャーターを返上することになってしまったケースがあったということは聞き及んでおるところでございます。
吉井委員 私は、株式会社は経営破綻で退出できると思うんです。実際に退出するわけですね。しかし、子供の人生は退出できないんですね。教育は無責任な退出を許さないというのが教育の非常に大事な、我々が責任を持たなきゃいけないところではないかと思うんです。
 これは商法でも定められているわけですが、やはり、株式会社の場合、株主に対する責任があります。これは当然だと思っているんです。それは、きちっと株式配当ができるような経営を行っていく、それは株式会社の経営として私は当然のことだと思っているんです。
 ですから、営利を追求して、私はそれを悪いと言っているんじゃないんです。ただ、教育の世界でそのことが、営利優先となれば、教育内容は低下する可能性もありますし、アメリカの例で見られるように、給食やスクールバスの廃止とか他校との合同行事やスポーツ、文化活動などの課外活動の制限が行われるような事例が出てきたり、経費削減のために古い機械工場など安全性に疑問のある建物が校舎に利用されているところもある。
 これは、実は私が勝手なことを言っているのじゃなくて、日経新聞のこの間の三月二十二日付で、例えば「現地の新聞で学区の状況を調べると、教員の定着率の低さや障害のある生徒を避ける傾向、在籍者数や出席率の水増し、テスト中の不正行為などが指摘されている。」というのが紹介されておりましたし、日経ビジネスの、二年前になりますが、〇〇年二月二十一日号でも、かなり詳しい教育分野での紹介がありました。
 そこには、例えば、アメリカ、アドバンテージ・スクールズが運営するアビー・ケリー・フォスター・スクールの学校舎は古い機械工場だ、改装にはわずか二百五十万ドルしかかからなかった、学校施設として十分か、安全かなど、疑問があるという指摘があったり、アメリカ、チャーター・スクール・USA社は、小学校校舎の建設資金を出資した企業、これはトラック輸送大手のライダー・システム社なんだそうですが、そこの従業員の子女を優先的に小学校に入学させる措置をとった、これに対しては、私企業が公立学校に入学する権利を買うことになるという指摘もあるとか、いろいろな、やはり既に外国でそういう事例のあるものについて、株式会社が教育の分野に参入するものについて、そういう指摘とか懸念の声があります。
 そこで、私、これについての意見の当否は別として、鴻池大臣に伺っておきたいのは、そういう事例についての研究や検討はどのように進めてこられたか、これを伺いたいと思います。
鴻池国務大臣 ただいまアメリカのいろいろな例をるる述べられましたけれども、私自身、全く興味のない話でございますので、ほとんど聞いていませんでした。
 私は、日本の教育をどうすべきかということの視点に立って、日本の子供たちがどういう教育を受ければいいか、親御さんたちがどのような教育を受けさせたいかという視点に立って、政治的に物を判断しなきゃいかぬと思っております。心配事ばかり並べられまして、随分御心配性でいらっしゃるなというふうに聞いておりましたけれども。
 この特区の案につきましては十分セーフティーネットがつくられておるわけでありますし、また、学校法人がすべからくよしとおっしゃっていますけれども、学校法人で、つぶれていった学校というのはたくさんあります。また、とんでもない、寄附金を集めてどこかに逐電してしまったのもある。いろいろありますよ。しかし、この自由な日本の国で、株式会社であれ、NPOであれ、教育の分野というものの選択肢が、父兄あるいは子供たちがどれを選択できるかという選択肢を広げることは今後の教育に明るさが差すものだと私は信じながら、この特区構想というのを進めておるつもりでございます。
 ぜひとも、その辺もひとつ御研究の対象にしていただきたい、このように思っております。
吉井委員 私、もちろん日本の教育を頭に置いての議論なんです。同時に、株式会社が教育の分野で参入している事例についてはいろいろな研究をそれはそれでやはりきちっとしないといけませんから、別に心配性で言っているんじゃないんです。さっきも冒頭に議論していましたように、資金調達のメリットの面もあれば、しかし、営利追求していく過程で、株主利益率中心に経営していく中で株価が暴落して経営破綻、そのとき簡単に学校解散というわけにいかない世界なんです、これは。そのときにどうするのか。
 セーフティーネットというお話もありましたが、しかし、それを考えられたんだけれども、それだけでは子供の将来、人生にかかわる大事な問題をクリアすることはできないということもまた検討されてきているところなんです。ですから、私は、鴻池さんの思いは思いとしてお話は伺っておくにしても、教育という分野がそう簡単に扱われては困る世界だ、このことを指摘しまして、時間が来たということですので、質問を終わります。
佐々木委員長 以上で吉井英勝君の質疑は終了いたしました。
 次に、北川れん子君。
北川委員 社民党・市民連合の北川れん子なんですけれども、今私は、前段の吉井委員の御発言に対して鴻池大臣が、いや、まあそういう悲観主義的なところは聞いていなかったと言われたのをちょっとどきっとして思ってしまった。(鴻池国務大臣「そんなこと言っていないよ、外国の話を聞いていなかったと言ったんだ」と呼ぶ)ああ、そうですか、外国の話は聞いていなかった。
 トータル的に、ぜひ一人一人の委員が言う発言に対しては、聞いていなかったと言われると何を質問してもしようがないというふうにも思わざるを得ない面もありますし、今、もう本当に委員の皆さんもいらっしゃらないぐらいのところでの審議というところで、五、六名の委員しか聞いていただけないというところがありますので、大臣、四月一日から特命大臣にもなられたということでもございますし、いろいろな、意気込みがお強くいらっしゃるのはわかるんですけれども、ぜひトータル的に聞いていただきたいということを申し上げておきたいと思うんです。
 今回、学校設置会社の設置する学校それから学校設置非営利法人が運営する学校とが特区では認められて、自治体が申請をすれば稼働するというふうになると聞いているんです。先ほどの要件のところなんですけれども、要件が、非営利法人の方は、「特定非営利活動の実績が相当程度あること。」ということがついているわけですが、あとは私学と同じ要件になっているというふうにお伺いしているんですが、構造改革特区の特例措置の第二次提案追加分の中には、両者とも「地方公共団体が教育上特段のニーズがあると認める場合には、学校法人の寄付行為の認可にあたり、小学校等の校地及び校舎については自己所有を求めないものとする。」というふうにあり、学校法人の場合もそういうふうに書いてあるんです。先ほど横路議員におっしゃっていたのは、自己所有でなければいけないんだというふうにお答えになっていたと思うんですけれども、これとの整合性をまずちょっとお伺いしておきたいと思うんです。
加茂川政府参考人 お答えをいたします。
 特区の第二次対応といたしましては、委員御指摘ございましたように、学校法人の設立の要件緩和がございます。それは、基本財産、土地建物自己保有の要件を撤廃するというものでございまして、株式会社にいたしましても、NPO法人等にしましても、学校法人を設立する際に、特区においては要件を大幅に緩和して学校法人を設立しやすくしようというのが一点でございます。
 一方で、例えばNPO法人等がNPO法人のままで学校を設置するというのを認めるのは、今回御審議いただいている法律の内容に盛り込まれている事項でございまして、その際には、学校の設置主体としての必要な要件を、法律事項にもございますように、資産要件もございます。もしくは、学校を設置する際には、別途設置基準等の要件をクリアする必要がございまして、それは原則、学校法人立に求められる設置者要件と同程度のもの、学校設置のために必要な設置基準の要件も同程度のものを求めるわけでございます。
 ただ、特区はそれぞれ、先ほど申しましたように、学校法人の基本要件、基本財産の自己保有の要件を撤廃するという特例もございますので、あわせて活用いたしますと、NPO法人のままでも、かなり弾力的な設置主体の認可が所轄庁の判断によってなし得るのだろう、こう思っておるわけでございます。
北川委員 いや、端的に言って、先ほどは借用であってはならないと、今の私学法人の内容で認めていくというふうにおっしゃったと思うんですが、今は緩和できているんだということでありますよね。そうすれば、先ほどから御心配になっていたNPO法人なんかが運営する場合には、土地とか建物とか、そういうものは、別に借用であったり借地であったりしてもいいというふうに受け取る方は受け取ってよろしいんでしょうかということなんです。
加茂川政府参考人 特区の二次対応としては二つの要素がございまして、委員おっしゃいましたように、いわばダブルで、重層的に二つの特区を適用しますと、NPO法人の設立要件についても、かなり弾力的な、すなわち、基本財産の自己保有についての特例といった形での参入も可能になろうかと思っております。
 ですから、これは、特区申請をする自治体が、両方の特区申請をするか、それともまた別な判断をするかということにかかわってくるんだと思っております。
北川委員 裁量は地方自治体判断だということであるわけですか。地方自治体の裁量というよりは、今回の特区の規制緩和がされたわけで、その中に、別に借用の資金というか、校舎とか先ほど言った土地とかですが、それはもう借用であっていいと自治体が読めばいいことではないわけですか。
加茂川政府参考人 お答えをいたします。
 自治体の申請のもとに特区としての認定が総理からなされた場合には、御指摘のようになろうかと思います。
北川委員 それではNPOの、先ほども名前も出ておりましたけれども、東京シューレの皆さんが心配しているようなことというのは、範囲の中には入らない心配事であるというふうに思っていいことになるんでしょうか。
加茂川政府参考人 その点は、何度も申し上げておりますけれども、特区は、何より地方自治体がまず手を挙げる、判断をする必要があるわけでございます。自治体が特区の申請をして、特定のNPO法人もしくはその他の団体と十分な連携のもとに特区申請をすれば可能になるというわけでございまして、ある団体だけの判断でできる事柄ではないのでございます。
 地方自治体が、きちんとした責任のもとに、ある要件のもとで特区申請をするかどうかの判断を総合的にする、それがまず大前提かと思うわけでございます。
北川委員 あと、学校法人にするときには私学審議会というところなんですけれども、その審議会云々の話もあったと思うんですけれども、自治体裁量になるということを御判断いただいたということでお伺いしておきたいと思います。
 そうすると、自治体の長の判断というのが極めて、以降の運営に対してどういうふうに、かかわっていくことを継続してやるかというところの担保が必要だろうと思うんですけれども、その辺も、以降のことは、文科省としては自治体判断だというふうになっていくわけでありましょうか。
加茂川政府参考人 学校の設置、運営でございますから、基本的には、学校教育法体系についての基準と要件とを満たしていただく必要があろうかと思っておりますが、特区の場合には、基本的には地方の責任のもとに裁量、判断を最大限尊重するということでございますから、その趣旨を各地方にもいろいろな機会に徹底をさせていただいて、御趣旨のようなところが実現するように努めたいと思うのが私どもの基本的な立場でございます。
北川委員 そういう段階では文科省としては余り介入をしないといいますか、自治体の自由な裁量を、運用に関しては大きく見ていくということだと理解してよろしいんでしょうか。
加茂川政府参考人 基本的にはそのように運用したいと思っております。
北川委員 それで、今回、株式会社と、不登校児等ということで、等のところにいろいろ入るんだということなんですけれども、現実に運営されてきたNPOとの格差もあると思うんです。
 どうしても資金的な面で脆弱でありながらも、過去二十年ぐらい、先達的にといいますか先駆的に不登校児の問題等にかかわってこられた人たちに対しての助成、私学法人になれば、学校法人になれば助成が出るということなんですけれども、学校法人にしない段階なんですけれども、NPOが運営する場合、助成をするということは自治体裁量ですから、自治体がすることはどうぞおやりくださいということになろうと思います。国として、特区構想を推進して稼働させる初めとして、内閣府としてと言ったらいいのでしょうか、別に文科省に聞く必要はないかもわかりませんけれども、いかがでしょうか、大臣。
 やはり、随分株式会社は資金も潤沢だしいい面がいっぱいあるんだという、大臣はすごく株式会社に対しての信頼度が高いというふうにもお見受けしたんです。しかしながら、非営利でありながらも先駆的な仕事をやってきたということにも目を光らせて、アンテナを張っていらっしゃると思うんですが、そういう部分はどうしても資金が脆弱になってしまうというのは、資本主義社会の中でのありようの面としては否めないところがあると思うんです。
 今後、文科省がとかという意味合いではなくても、助成をすることに関して、今回の部分が、税の措置も移行したわけでもないしというのを、前段で私なども反対した理由の中にも入れさせていただいたんですけれども、助成をすることとかそういう面に関しての御関心といいましょうか、その辺は大臣、いかがでいらっしゃるんでしょうか。
鴻池国務大臣 もとより、この特区の構想というのは、あらゆる分野で、税制上の優遇措置でありますとか従来型の予算をつけるといったことは、基本というか下敷きとしてそれはなしで、御提案をいただいて、そして規制省庁にお願いをして外していただく。そのことによって、地域とかいわゆる民間ベースが活気づくといったことがこの特区構想で、委員御存じのとおりだと思います。
 ただ、教育に関しましては、公立、公教育でありましても、学校法人、私立学校でありましても、いわゆる税からの補助が御存じのとおり当然出ておるわけであります。これが、株式会社による学校でありましょうとも、あるいはNPOでできた学校でありましょうとも、私は、ひとしく親が税金を払っている立場でありますし、先ほど申し上げたように、お子さん方も、物を買えば消費税を払っている立場でございますから、これはこれで、今後の議論の対象になるのではないか。また、三次提案でも、これは等しくしていただく必要があるという御提案もあるようでございますので、文科省とまた意見のやりとりをしながら調整を図っていきたい、このように考えております。
北川委員 多少は前向きな御意見をいただいたと思うんです。
 これは、幼稚園なんかでよく見られるケースなんですけれども、募集にかなり派手な宣伝ができるか、募集広告に大きなお金を張れるかどうか、生徒さんになっていただく方に知らす手段も大きく張れるかどうかということで、人数のかき集め方と言うと申しわけないんですが、少子化傾向の今、日本においては、多数の人たちのパイを分配するのではなくて、小さいパイの中でのとり合いということがあります。これは、幼稚園でよく言われている、極端から極端になるという話になっていくと思いますので、そんな中で、やはり、光が当たらないけれども先駆的にやってきた部分への助成というものに関しては、ぜひ御関心を持って見ていただきたいと思うんです。
 それで、先ほどアメリカの事例などはというお話も出ていたんですけれども、実は、兵庫県の加美町にあります野球専門学校で、学校法人アスピア学園、関西野球専門学校ということで、これは初の野球の専門学校だというふれ込みで、十六歳から二十三歳までを募集して、一九九八年に開校になりまして、建物は町有地をお貸しになっているというふうに聞いております。当初からグラウンドや宿舎の確保が未解決になったまま募集に踏み切って開校して、ことしで五年目なんですね、まだ運営もされているというところなんですが。
 実は、二〇〇一年三月に、もう既に一週間でやめてしまう生徒さんも出てくるとかというのが現実にあったようなんですが、大阪地裁に提訴をされて、この五月九日に判決が出て、入学金と授業料を加えた総額約千八百九十万円を支払うように命じたというのがあります。ちょっと控訴をされているかどうかが、時間的な関係、二週間が限度ですので、まだ二週間になっていないので控訴されるかどうかはわからないということなんですけれども、「案内と実態に大差」というふうに新聞でも書かれていて、テレビなんかでも報道された事例なんです。やはり立ち上げのときがどうであるかというのが、四、五年後、結果としてこれは一つ出ている、結果が四年後には出るというふうになった事例だろうと思うんですけれども、昨今はこういう事例が日本の中にもあるということを、大臣などは御関心を持って見ていただけているのかどうかというのを、少しお伺いしたいと思います。
鴻池国務大臣 ただいまの委員の事例のお話、極めて興味を持ちました。
 ただ、私、今初めて聞いたことでございますので、十分調べまして、また別の場所で、事例の進み方、そして今後どうなっていくか、そしてこれが全体に、教育に及ぼす影響等について勉強をしたい、このように思っております。
北川委員 兵庫県の問題だったので、記憶にとどめていただけているかなと思った事例であったんですけれども……(鴻池国務大臣「加美町」と呼ぶ)加美町なんですよ。前段で、こういう学校が自分の町に来ましたというのは、あるときは大きく宣伝をしてみたり、だんだん引いていくと、いや、私のところは別に、町としては余り関係はしておりませんという話になったりというぐらいに、ぶれるわけですね。だから、ぶれない部分でのサポートが、私は、やはり教育の分野や医療の分野に、一定程度、今までなかったものを入れていく、規制を緩和するということに関して、慎重であろうという立場というのはもっともだろうと思うんですね。
 でも、何か、大臣の御見解は、慎重であることがいけないんだ、大胆にやろうというところだろうと思うんですけれども、ぶれない部分として、じっくり、特に、子供たちということもありますし、教育では取り返しのつかない、三、四年とか五、六年とかというふうになっていくわけですので、取り返しのつかない時間を奪うわけですから、そういう点において、ぶれないものとして何があるべきかという議論がもう少し深まった方がいいと思うんです。
 大臣、例えば、ぶれないものとしての存在は何だというふうに思われますでしょうか。
鴻池国務大臣 先に、ちょっと、うなずくだけで結構なんですけれども、その加美町の話ですね、それは、学校法人が五年目につぶれたということなんですか。(北川委員「いや、ちょっと、では」と呼ぶ)いいですか、済みません。
佐々木委員長 では、北川さん、今の御質問、大臣はもうちょっと趣旨が明確でないようですから、含めて、質問してください。
北川委員 済みません、つぶれたのではなくて、今も募集はしています。でも、もう開校から三、四年たつと、せっかく在校していた方が、自分が在校した学校を相手に損害賠償を求めないといけないと。募集をしていたときの内容と、現実に自分が入ったときとは違うからと。それも、だから、保護者と元在校生、生徒さんが、七人ぐらいで提訴をされた事件であって、今も募集はされているんですけれども、定員がなかなか集まらない状況であるというふうにお伺いしているケースを御紹介したわけですね。
 だから、何が言いたかったかというと、三、四年で結果が出るわけですので、そのもとのときに、やはり慎重になるべき部分が必要ではないかと。そこのところで、やってみなきゃわからないという、先ほど実験という言葉があったんですけれども、その実験というところを教育の中に盛り込むにはかなりの慎重な議論の積み重ねがあったがゆえであるからということで、先ほども、いろいろな、言ったら失敗例の検証というのはされているんですかということだったろうと思うんです。
 では、自国内での失敗例を含めて、やはり特区室では、大臣ともども、けんけんがくがくの議論があったのかというふうにお聞きした方がいいのであれば、そういうふうに置きかえたいと思います。
鴻池国務大臣 こちらから御質問申し上げて、大変失礼をいたしました。
 その学校法人というのは、四年前か五年前かにできたものは、兵庫県知事また、たしか私学審議会、そして文部省の認可を得てできたはずですね。だから、少なくとも、三つ、四つの責任というものを経て出てきておりますから、その辺の責任を問うには、その三つ、四つの責任範囲に御質問されるがいいと思います。
 私は、試してみるとか、そういうことを当然言葉として表現しております、特区というのはそういう部分もありますから。大胆に試すことも、これは非常に大事なことだと思いますが、しかし、その前段として、慎重に事を計画していくということも非常に大事だと。後者の方を忘れて、大胆にだけいこうというような思いは決してございません。特に、教育、医療、こういった分野につきましては、極めて大事な部分でありますから、しかし、大事な部分ゆえに、考え方を閉塞してしまう、固めてしまうということも、これは非常に危険なことだと私は思います。
 そういう意味で、大胆かつ慎重にこの特区構想というのは進めなきゃいかぬ、このように思っております。
加茂川政府参考人 お答えをいたします。
 委員御指摘の事例について、詳細を把握しておりませんけれども、専門学校という名称であります場合には、多分、いわゆる各種学校でありますとか専修学校でありますとか、いわゆる幼稚園から大学までの一条学校とは違った学校の種類ではないかと思います。
 その場合には、認可を行います者が、例えば高等学校の場合には都道府県知事でございますけれども、それとは違った、基本的には知事所管の法人になろうかと思いますが、学校の設置主体については一条学校とは違った場合もあり得るということを、ちょっと蛇足ながらお話をさせていただきたいと思っております。
北川委員 設置の関所がどれだということでの今の御答弁だろうと思うんですけれども、しかしながら、教育に携わる者に、全般的な、最低限の倫理というか、そういうものを打ち立てていくというのは必要だろうと思いますので、そういうふうに言われる面というのは、私なんかからすると、ちょっと、どうしてそういう御答弁をいただくのかなというふうに思うんですけれども。
 現実に、やはりそれでも、そこに、若い人たちはいろいろな思いを持って、学校として飛び込んでいくわけですから、そういうところを含めて、今ある事例の中での失敗事例とか、なかなかうまくいかないのはなぜなのか。大体それは、でも、もともと、心配な面というのが、結局払拭し切れていないままゴースタートした場合に出てくるということもありますので、ぜひ、その辺などは厳密に、しばらくは見ていく機関というものも、評価機関ですか、民間が評価機関をやるということも聞いておりますけれども、教育の場面では、厳しくその点などを見ていく機関として存在するものもつくっていただきたいというふうに思うんです。
 学校の部分で、結局、もし倒産とか解散とかなった場合には、セーフティーネットとして、学校に戻すということをきっちりやっていくと言われているんですが、例えば、今ある、既存の学校だとなかなか行きにくいという人たちが集まっている不登校児等の学校の運営の主体においては、では、逆に言うと、戻すところがもとの既存の学校であるということになると厳しいと思うんですけれども、その辺などはどういうふうに見ていこうというか、さらなるセーフティーネットが必要ではないかという気がするんですけれども、その点などはいかがでいらっしゃるんでしょうか。
加茂川政府参考人 何度もお答えしておること等の繰り返しになろうかと思いますが、それは特区を申請します自治体が総合的に判断すべき事柄ではないかと思うわけでございます。特区の主体になる自治体におきましては、この特例を使う際には、セーフティーネットについても、みずからが責任を負う、すなわち特別なニーズに基づく特別な教育サービスを提供する。それが万一実施できなくなった場合には、セーフティーネットを張る義務を自治体は負うわけでございますから、そういった責務を果たすことができるかどうかといったことも、事前に総合的に判断すべき要素等、勘案しながら御判断をいただくことになるわけでございます。
 ただ、何より大事なのは、特区が認められた場合に、そこに学んでおる子供の修学機会でございますから、先生おっしゃいますように、特別な配慮が必要な、特別な指導が必要な子供については、できれば同程度の修学機会を確保するのが一番望ましいわけでございますけれども、事柄によっては容易ならざる場合が考えられますので、事前に、そういったことまで含めて責任を果たせるかどうかの総合的な判断を自治体に期待したいのでございます。
北川委員 すべてが自治体に期待とか自治体の責任になるというところを、ぜひ自治体の皆さんにも、あなたたちが申請する場合はそうだということを明確にしていただきたいというふうに思います。
 次に、地方公務員法の特例ということで、三年の限度で任用できるというふうにする特区を設けるということなんですけれども、自治労の組織局が去年の四月にアンケートをとったということで、その結果を教えていただいているんです。「臨時・非常勤職員は、自治労が二〇〇〇年に加盟組合を対象に実施した組織基本調査では三十一万千七百六十七人と報告されており、この二十年の間に約二十二万人増えている。自治体財政の悪化のもとでの採用抑制の影響が大きい。」ということで始まる文書なんですけれども、その後、返ってきたアンケートの結果の一つ一つを報告してある文であるんです。
 先ほど来からの議論を聞いておりますと、どうも総務省は、余りこの臨時任用職員制度の問題点に対して認識をお持ちじゃないようにお伺いをしたんですけれども、今、この臨時任用職員制度の問題点に対する認識というものはいかがな形になっているのか、教えていただきたいと思います。
森政府参考人 地方公共団体が、簡素で効率的な組織を維持しながら、一方で、行政ニーズの変化とかあるいは多様化に的確に対応するためには、事務の種類や性質に応じて臨時任用職員あるいは非常勤職員を適切に活用するということは、有効な方策と認識しております。
 ただ、臨時任用職員あるいは非常勤職員というのは、その勤務形態、職務の内容が非常に多様でございますし、また、制度の検討を行っていく場合においても、社会経済情勢が極めて厳しい中で、国民の理解と納得が得られるものとしていくということが必要だと思っておりますので、総務省といたしましては、こうした社会経済情勢等も踏まえながら、民間部門の動向等もまた一方で勘案しながら、こうした問題については引き続き検討を行ってまいりたいと考えております。
北川委員 先ほど来から聞いておりますと、保育士さんという資格が出てきました。医師というのも出てきました。あと、とりあえず全部挙げていただけるとしたら、今回も前段でお伺いをしますと、資格要件とか必要要件をつけているから大丈夫なんだという御発言があったんですけれども、どういう資格の方を対象にこの三年というものをお決めになったのか。一つ一つ、先ほどの事例以外のも多分あると思いますので、とりあえず念のためにお伺いをしておきたいと思います。
森政府参考人 臨時的任用職員の要件は、二十条第一項に三つございますけれども、一つ目の要件に該当する人としては、先生おっしゃいました保育士以外に、例えば看護師さんとか、そのような方が該当すると思います。それから、二つ目の要件につきましては、別の法律で定められております、二年間の臨床研修が必要な医師の場合が該当するかと思います。それから、三つ目の要件の場合は、これはいわゆる業務改革に属する場合でございますので、特段の資格というようなものはないと思いますけれども、正規職員の増減によらないで臨時的任用職員を弾力的に活用するような場合が第三号だというふうに考えております。
北川委員 では、具体的にお伺いしたいと思うんですけれども、今、一つ看護師さんというのが出てきただけなんですが、あと、指導員とかホームヘルパーさん、寮母さん、図書館司書とか調理師さんとかですね。それと、あと、業務量の変化によってということになると、事務職もというふうに思ってよろしいのでしょうか、どうでしょうか。
森政府参考人 御指摘のとおりでございます。
北川委員 ということになりますと、実態どおりというところになっていくんだろうと思うんですけれども。
 では、明確な資格要件といっても事務職も入るわけですから、今のような、通常、別に何らかの資格があるからということではなくて、事務職員としても、その第三要件に合えば任用して、今は一年だけれども、特区では三年というところになるというふうに理解してよろしいんでしょうか。
森政府参考人 基本的にはそういうことでございますけれども、今回の臨時的任用期間の延長に係る特例措置につきましては、構造改革特区に限って、後任が確保できない場合、あるいは特定の分野の人材育成に資する場合等の一定の要件を満たす場合に限って認めるものでございまして、その任用期間の上限も三年ということでございますので、多分、御心配のような、臨時的任用を無原則に恒常化するとか拡大化するとか、そういったものではなくて、常勤職員に代替させようとするようなものではないということについては御理解いただきたいと思っております。
北川委員 今の現状の分は、常勤職員の代替というふうに逆になると思っていらっしゃるというふうに理解してよろしいんでしょうか。これから始まる特区の分はそうじゃないという意味なんでしょうか。
森政府参考人 現行法の地方公務員法二十二条におきますところの一年以内の六カ月二回という臨時的任用職員の場合については、その範囲内での地方自治体での雇用という、ニーズに応じたものになるわけでございますが、今回の特区における三つの要件の場合には、それ以外に、三つの要件に関していろいろ要件がついておりますけれども、その特別の事情のある場合について、二十二条のさらにまた例外を認めていく、こういう考え方でございます。
北川委員 例外になっていくということなんですけれども、今、問題点を認識はしていらっしゃらないのですかという質問の中には、具体的にこのアンケートに答えていらっしゃるのは、臨時職員では平均勤続が四・三年、非常勤、嘱託では六・二年で、十年以上が二五%いるということなんですよね。
 つまり、厳密に言えば法律からは違反した、脱法行為が継続的に行われているというような認識は、総務省はお持ちにはなっていないんでしょうか。
森政府参考人 総務省といたしましては、正規の職員を配置する必要のない事務について、その性質に応じていわゆる臨時職員を活用することは有効であるとは考えておりますけれども、その任用に当たりましては、当然、地方公務員法が遵守されるべきものというふうに考えております。
 昭和三十年代初めごろに制度の安易な運用が行われて、いわゆる常勤的な非常勤職員とか、あるいは定数外の職員が数多く生まれたということで、その是正措置に取り組んだわけでございまして、その場合、いろいろな、職員を定数化する場合の運用基準としまして、相当長期間勤務していること、勤務実績が良好であること、任用しようとする職の職務遂行能力を有することが適正な方法により実証されることという三つの点を示しておりまして、これをもとに、こうした常勤的な非常勤職員の発生を防止するということ、そして、定数化を計画的に進めるということをやってきたわけでございます。
 こうした経緯にかんがみまして、臨時的に任用された職員等が繰り返し任用されるということによって事実上常勤の職員と同一の勤務形態となるような事態は、防止されてきていると考えているところでございます。
北川委員 と申しましても、やはり年々ふえているということでありますし、二〇〇〇年の新聞の中では、勤務十カ月、失業手当、それを受給二カ月というのが繰り返し行われているというような六県庁の臨時職員のありようとか、それとかまた、兵庫県の宝塚とかでは、雇用されている側にとっても不幸なんですね。毎回、延長されるかどうかという不安とかがありながら、正規の職員と三十分しか違わないのに、正規の職員だったら一千万近くなのに、御本人の年収としては百七十万であるという、図書館司書の御意見とかというのが新聞でも掲載されるぐらい身近な問題、逆に言うと、市民にとっても身近な問題としてこの問題は見ているというところをぜひ御理解いただきたいんです。
 ならばこそなんですが、逆に言うと、自治体職員という方たちの労働条件というのはやはり民間のモデルになるということで、できるだけ民間のありようをよくしていくためにも自治体職員が頑張ってきたという歴史があるというふうに思うわけですが、あと三年後ですね、二〇〇六年には公務員制度の改革が一定程度の決着を見るというところに来ると思うんですけれども、こういう行方を見守ってから、まずは今のありようの改善ということ、そして定期的な安定した雇用というのを公務員の人たちにまず提供するということをやってからというのでいいのではないかというふうに思うんですけれども、その辺、大臣、いかがでしょうか。
 あと三年限度ということで取り入れて、特区でやって、どこかの自治体が申請すれば動いていくんだろうと思うんですけれども、この問題というのは、やはり今は公務員制度の改革ということでかなりマスコミも関心を持って見詰めていた、二年前は石原大臣のもとでもってやっているもので、今段階的に見直していっているところでございますよね。さもありながら、去年の十一月にはILOから、日本のこの公務員制度のありようの改革というのは全くもって勧告に値するものであるというような内容にもなっているというところでの攻防もあります。
 ですから、ここで今、やはり三年任用という、逆に言うと脱法である、一年の限度というのを超えてやっていくという特区を持ち込むのはかなり乱暴になっていくのではないかと思うんですが、もう少し時間を慎重に置いた方がいいと思うのですが、いかがでいらっしゃいますでしょうか。
鴻池国務大臣 先ほども御答弁申し上げましたように、特区というのは地域の強いニーズによって誕生してきたものでございますので、今委員が御指摘のように、公務員改革と直接連動するものではないというふうに思っております。
 また、この公務員改革につきましては、石原担当大臣も極めて前向きにやっておられることでありますし、総務省あるいは当該労働組合等のいろいろな話し合いの中で進んでいくものと思っております。
 特区室としては、特段コメントは申し上げるものではない、このように思っております。
北川委員 では、今総務省の方も手を挙げていただいていたんですけれども、総務省としては、その点などはどういうふうにお考えになっていらっしゃるんでしょうか。
森政府参考人 地方公共団体において任用されております臨時職員とか非常勤職員につきまして、任用等の実態と現行の制度との間のいろいろな問題があるという御指摘があることは承知しておりますけれども、これらの問題の解決に当たりましては、まず現行制度上、いろいろ任用の根拠があるわけでございます。地方公務員法三条に言う特別職でありますとか、あるいは地方公務員法十七条に言うところの一般職の非常勤職員でありますとか、それから、今回の特例の大もとになっておりますところの地方公務員法二十二条に言うところの一般職の臨時的任用、いろいろな分類がございますので、これについて、本来の趣旨に沿った運用を徹底するということを一方でやりながら、今回のその臨時的任用期間の延長に係る特例措置につきましては、地方公共団体において、地域固有の課題に即した効率的かつ弾力的な人事行政の実現ということで、その実現を図るために構造改革特区に限って、いろいろな要件を満たす場合に限って認めるものでございます。
 また、これを更新する場合、六カ月を超えて更新する場合でも、この要件をさらに満たすことを求めるとともに、特例による臨時的任用の適切な実施を確保するための措置といたしまして、臨時的任用の状況の公表あるいはその他の必要な措置ということを講ずるように求めることとしておりますので、手続の面からも適正な運用となるように定めを設けているというふうに考えております。
北川委員 時間が参りまして、国土交通の松本官房審議官の方には質問という形で回ることができなくて申しわけなかったんですが、やはりいろいろ心配な点ということに関してともに取り組むという大臣の姿勢を出していただくということをお願いしまして、心配な面にも一緒に考えていこうという姿勢をお持ちいただくということをお願いしまして、私の質問を終わりたいと思います。
佐々木委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
 次回は、来る十六日金曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後三時五十六分散会


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