衆議院

メインへスキップ



第18号 平成19年5月11日(金曜日)

会議録本文へ
平成十九年五月十一日(金曜日)

    午前九時三分開議

 出席委員

   委員長 河本 三郎君

   理事 木村  勉君 理事 後藤田正純君

   理事 戸井田とおる君 理事 西村 康稔君

   理事 平井たくや君 理事 泉  健太君

   理事 松原  仁君 理事 田端 正広君

      安次富 修君    赤澤 亮正君

      新井 悦二君    宇野  治君

      遠藤 武彦君    遠藤 宣彦君

      岡下 信子君    嘉数 知賢君

      木原 誠二君    新藤 義孝君

      谷本 龍哉君    寺田  稔君

      土井  亨君    中森ふくよ君

      丹羽 秀樹君    萩生田光一君

      林田  彪君    松浪 健太君

      松本 洋平君    村上誠一郎君

      茂木 敏充君    市村浩一郎君

      岩國 哲人君    小川 淳也君

      岡本 充功君    小宮山洋子君

      近藤 洋介君    佐々木隆博君

      細野 豪志君    三日月大造君

      横光 克彦君    渡辺  周君

      石井 啓一君    吉井 英勝君

    …………………………………

   国務大臣

   (少子化・男女共同参画担当)

   (食品安全担当)     高市 早苗君

   国務大臣         渡辺 喜美君

   内閣官房副長官      下村 博文君

   内閣府副大臣       平沢 勝栄君

   内閣府副大臣       林  芳正君

   内閣府大臣政務官     岡下 信子君

   内閣府大臣政務官     谷本 龍哉君

   厚生労働大臣政務官    菅原 一秀君

   経済産業大臣政務官    高木美智代君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  山浦 耕志君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  河  幹夫君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  原  雅彦君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  小滝  晃君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  坪井  裕君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  刀禰 俊哉君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房政府広報室長)          高井 康行君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   丸山 剛司君

   政府参考人

   (内閣府男女共同参画局長)            板東久美子君

   政府参考人

   (内閣府食品安全委員会事務局長)         齊藤  登君

   政府参考人

   (総務省大臣官房総括審議官)           久保 信保君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 門山 泰明君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 伊原 純一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房広報文化交流部長)        山本 忠通君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長)   中根  猛君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           板谷 憲次君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           宮坂  亘君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           村木 厚子君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局食品安全部長)       藤崎 清道君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           貝谷  伸君

   政府参考人

   (農林水産技術会議事務局研究総務官)       伊地知俊一君

   政府参考人

   (経済産業省製造産業局次長)           内山 俊一君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           辻原 俊博君

   政府参考人

   (国土交通省自動車交通局次長)          桝野 龍二君

   政府参考人

   (国土交通省国土地理院長)            藤本 貴也君

   参考人

   (食品安全委員会委員長) 見上  彪君

   内閣委員会専門員     堤  貞雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十一日

 辞任         補欠選任

  嘉数 知賢君     宇野  治君

  木原 誠二君     新井 悦二君

  谷本 龍哉君     萩生田光一君

  土井  亨君     松本 洋平君

  林田  彪君     茂木 敏充君

  松浪 健太君     新藤 義孝君

  村上誠一郎君     丹羽 秀樹君

  市村浩一郎君     三日月大造君

  小川 淳也君     細野 豪志君

  小宮山洋子君     近藤 洋介君

  佐々木隆博君     岡本 充功君

  横光 克彦君     岩國 哲人君

同日

 辞任         補欠選任

  新井 悦二君     木原 誠二君

  宇野  治君     安次富 修君

  新藤 義孝君     松浪 健太君

  丹羽 秀樹君     村上誠一郎君

  萩生田光一君     谷本 龍哉君

  松本 洋平君     土井  亨君

  茂木 敏充君     林田  彪君

  岩國 哲人君     横光 克彦君

  岡本 充功君     佐々木隆博君

  近藤 洋介君     小宮山洋子君

  細野 豪志君     小川 淳也君

  三日月大造君     市村浩一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  安次富 修君     嘉数 知賢君

    ―――――――――――――

五月十一日

 地理空間情報活用推進基本法案(額賀福志郎君外九名提出、第百六十四回国会衆法第三九号)

は委員会の許可を得て撤回された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 地理空間情報活用推進基本法案(額賀福志郎君外九名提出、第百六十四回国会衆法第三九号)の撤回許可に関する件

 内閣の重要政策に関する件

 栄典及び公式制度に関する件

 男女共同参画社会の形成の促進に関する件

 国民生活の安定及び向上に関する件

 警察に関する件

 地理空間情報活用推進基本法案起草の件

 地理空間情報の活用の推進に関する件


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

河本委員長 これより会議を開きます。

 内閣の重要政策に関する件、栄典及び公式制度に関する件、男女共同参画社会の形成の促進に関する件、国民生活の安定及び向上に関する件及び警察に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、参考人として食品安全委員会委員長見上彪君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として内閣官房内閣審議官河幹夫君、原雅彦君、内閣府大臣官房政府広報室長高井康行君、男女共同参画局長板東久美子君、食品安全委員会事務局長齊藤登君、総務省大臣官房審議官門山泰明君、外務省大臣官房参事官伊原純一君、大臣官房広報文化交流部長山本忠通君、厚生労働省大臣官房審議官宮坂亘君、村木厚子君、医薬食品局食品安全部長藤崎清道君、農林水産省大臣官房審議官貝谷伸君及び国土交通省自動車交通局次長桝野龍二君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

河本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松浪健太君。

松浪(健太)委員 おはようございます。自由民主党の松浪健太でございます。

 本日は道州制一本でやらせていただきたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。

 さて、この道州制なんですけれども、大臣は特区法が成立した後に道州制担当大臣になられましたので、まだ突っ込んだ議論というか、本格的な議論がなされていないと思いますので、きょうはよろしくお願いをいたします。

 私は、この道州制という政策、特区法だけではなくて今後の日本の行く末を考えるにつけ、一政策ではなくて、まさに日本の国柄を決める、そしてシステムを根本的に変える、国民生活へのインパクトという点で考えますと、これは憲法改正にも匹敵するような問題であると思っております。

 この道州制、ただ一政策でないというのは、やはり我が国のパラダイムを考えましても、二百六十年続いた幕藩体制に続きまして、百二十年、二還暦を超える中央集権体制、我が国が敗戦を経てもなお中央集権でやってきたけれども、これが人口減少社会、少子高齢化社会にもうそぐわない、地方分権社会にパラダイム転換するんだという上で、まさに我々は今、歴史のうねりの中で転換点にいるものであると私は考えております。

 こうした中で、国民の皆さんが道州制という言葉を大分お知りになるようにはなってきておりますけれども、これが導入されて一体どうなるのかなというメリットというか、この説明というのがまだまだ浸透していないなと思っております。

 私は、いつも申し上げているんですが、道州制は、究極の構造改革でありますけれども、我々国会議員の身分、国会の仕組み、地方議会、これを含めて究極の政治改革、そして地方支分部局等も含め中央省庁の再編を含めた究極の行政改革、そして、やはり道州という新しい我々の地域に対するアイデンティティーをつくる、そしてまた政治のダイナミズムを感じるという上で、やはり究極の日本人のマインド改革であると私は思っております。

 その上で、やはりどういったことが国民の皆さんにメリットになるのかというのをわかっていただかなきゃいけないと思っております。私は、道州という新しい経済圏を確立して、行政コストを削減して、そして何よりも、将来世代のために、国民負担率もこれによってやはり相乗効果で下がっていくんだ。私は地元でよくこの話をするんですけれども、まさに道州制は将来世代への、子供たちへの最高の贈り物なんだという言い方をいたしております。

 こうした考え方が道州制に対する私の考え方でありますけれども、大臣も、今回、私見でよろしいので、この歴史的意義、また文明的意義、そういった広い御視点から、この道州制ということについての御所見を伺いたいと思います。

渡辺国務大臣 松浪委員が道州制伝道師をやっていただいておりますことは、私にとっても大変に心強い話でございます。道州制、私も大臣になる前は深く勉強したことは正直ございませんでした。大臣になりまして、この問題の重要性をおくればせながら認識をしたところでございます。

 委員御指摘のように、まさしくこれは国家のあり方を大転換する、フルモデルチェンジの試みだと私も考えております。中央集権体制がまさに今の日本の閉塞状況の大きなハードルの一つであるとするならば、やはりこれを突破していかなければなりません。私は地方分権改革の総仕上げであると常々申しております。委員が御指摘のように、構造改革の総仕上げという側面も大いに考えていかなければならないと思っております。

 やはり日本が今、かつては成功体験をもたらした旧来型の制度や慣行が大変時代おくれになってしまっている。安倍総理の言葉で言えば戦後レジーム、これをやはり大転換をしていくことこそが我々政治家の使命であろうかと思います。まさしく中央集権体制や各省割拠主義、こういったものが今我々の目の前に岩盤のように立ちはだかっている大問題であるわけでありますから、これをいかに突破をしていくかということを考えるべきだと思います。

 道州制というのは、まさに地域の住民にとって、国民にとってより大きな豊かさをもたらすものである、そして、将来世代へのツケ回しが行かないようにする、さまざまな観点からこの問題を大いに掘り下げていくべきであると考えております。

松浪(健太)委員 ありがとうございました。

 特に、やはりこの道州制を導入しますと都道府県の規模というのが変わってまいります。

 考えてみれば、明治二十一年の市町村制の導入から都道府県の数は四十七で変わっていない。明治、昭和、平成の大合併を経て、七万一千あった市町村が今千八百にまで減ってきた。当時と比べますと、役所というのは身近な存在だった。まずは徒歩で行ける距離、そして、交通手段がいろいろ変わって、車で行ける距離とか、そういったような感じで基礎自治体は変わってきていると思うんですが、都道府県だけはおよそ百二十年たっても姿を変えていない。

 まさにこれは、我々の生活圏がどんどんと拡大する、通勤圏が拡大する中で、また地域経済という面から見ても、今の都道府県の大きさというものが果たして妥当なものか。とてもそうは思えない中で、まさに、私の選挙区があります関西ではGDPがカナダと同じ程度あって、特によく言われますのは、九州なんかはオランダと同じ大きさで、同じGDP規模を誇る。

 特に、こうした地域を経済ユニットとして見た場合に、やはり、九州だからこそアジアと関係をもっと深く持っていこうとか、一地域でも国に匹敵する、先進諸国に匹敵するGDPを誇るわけでありますから、こうした独自の政策というのもやっていけると思います。

 そしてまた、道州ぐらいの大きさになるからこそ、税制などでも、法人税の上がりにくいところは法人税率を下げるとか、いろいろな工夫も今後できていくのではないかなと思います。

 そういった視点から、経済に非常に強い大臣であられますので、こうした地域の経済ユニットを道州という観点から見た場合に、今後どのような展望があるのか、伺いたいと思います。

渡辺国務大臣 今、世界経済は大変な勢いで成長を続けております。特に、BRICsと言われる新興諸国の成長ぶりは目覚ましいものがございます。

 安倍内閣においては、アジア・ゲートウェイ構想を進めております。つまり、アジアの成長と日本の成長をドッキングさせてしまおう。オープンとイノベーションという観点から、さらにこのゲートウェイ構想を深く掘り下げていく方策を今具体的に検討中でございます。恐らく、近々、根本補佐官のところでこの取りまとめが行われるものと思います。

 まさしく、アジアに向かってオープンという体制をつくることができれば、例えば、福岡と香港の距離なんというのは非常に近いわけですね。香港あたりで牛乳を飲みますと、余りおいしくないんですね。これはどこから持ってきたんですかと聞くと、モンゴルから持ってきたと。私は馬乳かと思ったんでありますが、これは牛乳だということでございました。

 そんなにおいしくない牛乳を飲んでいるんだったら、ぜひうちの、福岡が近いにしても、栃木の牛乳もおいしいですよというので、ある香港の食材業者にお勧めしたら、見に来てくれたんですね。栃木から牛乳を香港に持っていくと二週間ぐらいかかっちゃう、一般の消費者の口に入るのに。ついては、ロングライフ加工をしてくれないかということでございました。残念ながら、そういった加工施設が私どもの地元にないものですから、そういうことはうまくいっていないんですね。

 一方、台湾あたりでは、おすし屋さんというジャパニーズソフトパワーのおかげで、お米が何とキロ千円で取引をされている。一俵六万円ですから驚きますよ。大体、一俵一万二千円ぐらいですよ、いろいろな諸経費を差っ引くと、一俵当たり八千円とか七千円ぐらいになっちゃうのが普通なんですね。それが、何と一俵六万円で取引をされる。こういう時代になっているわけですね。

 したがって、これはまさしく、こういったアジアの経済と日本の成長をドッキングさせるということは、日本の経済にとっても極めて大事なことであると思います。

 一方、北海道あたりは、アジアというよりはむしろロシアがすぐ隣にあるわけですね。ある自動車メーカーの重役に聞きましたら、今一番もうかっているのはロシアだというんですね。ロシアでは高級車が飛ぶように売れている。確かにロシアは、御案内のように鉱物資源や原油で相当稼いでいる国でございますから、こういったエネルギー、素材価格が高騰すれば、それだけ実入りも大きくなるということなんですね。ですから、そういうお金持ちが相当ふえてきているということなんでしょう。北海道あたりは、まさしくロシアン・ゲートウエーみたいな構想を進めたらいいと思うんですね。

 したがって、そういうそれぞれのブロックといいますか地域ごとにそれぞれの経済活性化の戦略と方策があり得るわけでございまして、ぜひそういう体制をつくっていくべきだと思いますし、道州制の議論というのは、まさしくこういう方向性に向かって、国民の認識を喚起しながら、それぞれの地域や国の政策にも大きな影響を与えていくものになるかと存じます。

松浪(健太)委員 ありがとうございます。

 多様な地域ごとの経済戦略なくして、本当に、二十一世紀の日本経済、また安定成長、そしてまたこれによって支えられる社会保障ということで、すべてが連関している話であると思います。よろしくお願いをいたします。

 続きまして、道州制特区法案も通りまして、その後、政府の中でも多くの議論等も、ビジョン懇等も立ち上がりましていろいろ活動されていると聞いておりますけれども、現段階での政府のお取り組みを伺いたいと思います。

河政府参考人 今御質疑にもございましたとおり、道州制の導入の議論というのは、非常に幅広い、また重要な議論でございますので、国民生活に大きな影響を及ぼすということも含めまして、国民的な論議をきちんとしていかなきゃいけないというのが私どもの理解でございます。

 あわせまして、今御指摘ございましたように、昨年成立させていただきました道州制特区推進法の制度というものも、まさにこの検討に資する取り組みでもございますので、これらについてきちんと国民の方々にわかっていただくための御説明を続けていくということも重要な課題でございます。

 そのようなことから、この一月、二月におきましても、担当の林副大臣に北海道、岡山に、あるいは岡下政務官に京都に行っていただいて、各界の方々と幅広く御議論、意見交換をしていただいたところでございます。

 また、今御指摘ありましたように、道州制ビジョン懇談会が二月に発足しておりまして、かなり頻繁な審議をお願いしているところでございます。そこに道州制協議会というものもつくらせていただきまして、道州制協議会のメンバーが十一名いらっしゃいますけれども、その方々に、それぞれの地域の経済界の代表の方々が多く参加していただいておりますので、それぞれの地域でシンポジウム等を開催していただこうということをお願いさせていただいております。月内にでも第一回のシンポジウムをできれば北海道で開かせていただこう、あるいはそのようなことで開いていただこうということを、今準備を進めさせていただいているところでございます。また、できれば渡辺大臣にもその場に御出席いただければというふうに事務方としては思っております。

 いずれにいたしましても、先生御指摘のように、幅広い議論を国民の方々に喚起し、あるいは、私どもの今考えていることを少しずつでも御説明していただくという努力を地道に、また活発に続けていきたいと思っておりますので、御指摘のように、幅広い形での御議論が国民の中に巻き起こるように、それから、私どももそれに向けていろいろな御意見を伺うことができるように、準備を進めていきたいというふうに思っております。

松浪(健太)委員 どうもありがとうございました。

 多様な識者の御意見等、非常に参考になるものが多いと思いますので、ビジョン懇は三年で道州制ビジョンをつくるということになっておりますけれども、その前に中間まとめをしっかりと、そして迅速にお取りまとめをいただくようお願いを申し上げます。

 そしてまた、道州制というのは、国会の仕組みとか、そして大きな国と地方の関係を変えるものですから、高度に政治的なものであります。我々も自民党の中で、ことしになりましてから調査会の中に五つの小委員会を設けまして、さまざまに議論をしているところでありまして、この二月、三月にも月に十数回の小委員会を開いているところであります。特に、国と地方の関係という面から見ましても、地方七団体はもちろん、経済団体等三十六団体からのヒアリング、アンケート等もしっかりと今行って、政治が先にリードをしようということで、我々も鋭意努力をしているところであります。

 そして、小委員会、種類がいろいろあるわけです。区割りの問題とか、また二つには国と地方の関係、三つには国の組織、権限、四つには道州と市町村の関係、また五つ目に税財政というような分野から、さまざまに議論をしているところでありますけれども、こうした議論の中で、論点があるところ、そしてまた論点の分かれるところ等々出てきております。

 そして、今論点として浮かび上がっているのが、やはり地方の力をこれから伸ばしていくためには、我々の道州制は、第二十八次地方制度調査会の答申と同じところは、いわゆる連邦制はとらない、つまり司法は国が持って、この狭い国土で一体的な国民の精神性があるというところで、私は、これは地方制度調査会の答申は妥当なものであると思っております。

 しかしながら、やはりこれから地域の力をいかに持ってもらうのかということで、条例の制定権の問題というのがあると思うんですが、今後、立法権は国にあるにしろ、条例制定権を拡大していくにはどのような方策があるか、伺いたいと思います。

門山政府参考人 条例制定権の拡大につきましてのお尋ねでございます。

 道州制を考えてまいります上で、自治立法をどういうふうに考えていくか、道州の自主立法というものをどういうふうに考えていくかということは、非常に重要な論点だという認識でございます。

 現在、憲法九十四条に基づきまして、地方公共団体は、法律の範囲内で条例を制定することができるとなっているわけでございますが、平成十二年の地方分権一括法によりまして機関委任事務を廃止したことに伴いまして、ほとんどの事務が地方公共団体の事務となりまして、それによりまして条例制定権の範囲が相当広がったということはあるわけでございます。

 今後の問題としまして、第二十八次の地方制度調査会におきましても、「事務事業の執行方法・執行体制に関する国の法令は、地方公共団体の自律性を高める内容とすべきである。特に自治事務については、国は制度の大枠を定めることに留め、地方公共団体が企画立案から管理執行に至るまでできる限り条例等により行うことができるようにすべきである。」ということで、言ってみますと、国の法令の規律の密度を下げて、条例で制定できる範囲を拡大していくということの必要性の御指摘をいただいたわけでございます。

 具体的な進め方につきましては、今後、検討が必要なわけでございますが、いずれにいたしましても、自主性、自律性を高めるという観点では、国の法令によります規律というものを緩めて、条例の制定範囲を一層拡大する方策というものを検討していかなければならないというふうに認識いたしております。

松浪(健太)委員 ありがとうございました。

 北海道では上書き権等の意見も出ておりますし、またビジョン懇の方では、先日は、省令はもう全部やめて政令のみにするべきだなんという議論も出ていると聞いております。これにはいろいろなハードルがあるかと思いますけれども、やはり規律密度というものを、網の目を広げていくという工夫は、我々政治家も含めて抜本的なアイデアをつくっていかなければいけないのではないかと考えている次第であります。

 次に、やはり道州制を導入した場合に基礎となるのは、これはあくまで基礎自治体であります。千八百まで減ってきたとはいえ、これからの分権にたえ得る規模があるのかどうかというのはまだまだ大きな論点であろうかと思います。特に、平成の大合併は一万人という基準を目途に行われてまいりましたけれども、しかしながら、今後、小さな基礎自治体にも、せめて中核市レベルの事務移譲というものもやっていきたいなというような思いも我々は持っております。

 しかしながら、そうしたときに、小さな自治体では本当に専門性のある職員の数等もかなり限られているわけであります。こうした抜本的な、本当の意味での地方分権を行うために、適当な基礎自治体の規模というのは職員の配置等も考えてどのように考えられるか、伺いたいと思います。

門山政府参考人 市町村の規模につきましてのお尋ねでございます。

 現在、市町村合併につきましては、お話しいただきましたように、相当進展してきたところでございますけれども、進捗状況は地域ごとに相当異なりますし、また小規模な市町村もたくさん存在しているという実態がございます。このため、合併新法に基づきまして、引き続き市町村合併を積極的に推進していきたいと考えているところでございます。

 いずれにいたしましても、道州制を考えます場合にも、今後の市町村というのは行財政基盤を一層充実強化する必要があるということでございますが、例えば、御指摘ございました中核市ですと、人口が三十万以上ということが要件となっておりまして、これは保健所の設置といったようなことが権限として加わってくるわけでございます。

 こういった人口規模と専門的な事務能力ということで考えますと、例えば、保健所とかかわりの深い保健師さんにつきましては、人口十万人以上の都市を見ますと、ほとんどのところで十人以上配置されておりますけれども、一方、例えば町づくりに不可欠な土木技師さんですとか建築技師さんという方々に注目いたしますと、十人以上配置されているのはおおむね人口二十万以上の市であるというふうに、かなりばらつきがございます。

 したがいまして、基礎自治体として求められております事務能力という点から考えますと、相当の人口規模がないと専門的な職員の方の配置が必ずしも十分できない、こういう面があるわけでございまして、こういった点も踏まえまして、どの程度の規模が適正かというのは非常に難しい問題でございますけれども、いずれにしましても、基礎自治体のあり方ということにつきましては、今後とも十分検討を行ってまいりたいというふうに考えております。

松浪(健太)委員 ありがとうございました。

 合併につきましては、やはり地域ごとに知事さんの意向が大きく働いたりとかで、進んでいるところと進んでいないところが極端に分かれているというようなこともありますので、今後、地方分権を行う際に、道州制も見据えながら、やはりある程度行えるような施策をとっていただきたいと思うわけであります。

 続きまして、先ほど申し上げたように、道州制の導入については論点があるなし、いろいろあるんですけれども、やはりこれは肝だなと思うのは地方支分部局の問題であります。

 自衛官を除きました国家公務員三十三万人のうちの二十二万人がまさに地方支分部局におられて、国税庁なんというのは五万人を超えられるので、これを全部移すというのもなかなか、国が本当にやらなければいけない仕事というのも多数ございます。しかしながら、地方の今までの公共事業に携わった部分とか、それから福祉、そうした面では、多くの権限、財源の移譲というのが考えられると思います。

 そして、私は、三位一体の改革を見ていても、権限、財源の移譲というだけではやはりなかなか物が動かない。やはり組織というものを一緒に移譲をしなければ、これは機能しないのではないかと思っております。

 特に、私たち自民党で行っております調査会におきましても、また一般の有識者の皆さんにおきましても、地方支分部局を基本的に道州に移管するというところは論点がないものと思います。しかしながら、これは大きな痛みも伴いますし、そして私は、何よりも懸念をしなければいけないのがやはり人の問題であるとも思いますけれども、特に、この地方支分部局を地域に移管する、道州に移管するということに関しての大臣のお考えを伺いたいと思います。

渡辺国務大臣 先ほどのお話のように、今都道府県がやっている仕事は、分権改革を進めれば市町村に移っていくことになります。国の役割と地方の役割を根本的に見直すというのであれば、当然のことながら国から道州に移す仕事はたくさん出てくるかと思います。当たり前のことでございますが、地方支分部局というのはまさに道州に移管をする最も肝の部分であるという委員の御指摘はそのとおりであると考えます。

松浪(健太)委員 力強い御答弁、ありがとうございました。きょうの御答弁の中で一番見出しになる部分かなと思います。

 移管をするに当たって、やはり公務員の身分の問題というのがございます。公務員の身分を道州に移管する、国家公務員がいわゆる地方公務員になるわけでありますけれども、私がここで懸念をいたしますのが、公務員の皆さんが、こっちで企画立案ができるから道州に行きたい、ここでおれたちの力が発揮できるんだ、そしてまたそれにふさわしい報酬もあるんだという、やはり公務員の皆さんが本当にやる気になっていただくような、そういう身分の転換システムというようなものが私は必要であろうかと思います。

 もっと拡大して考えれば、アメリカなんかは、行政のトップは皆さん、リボルビングドアで、政権のたびにかわるわけですから、まあちょっと政権かわられても困るんですけれども、政権がかわらない中でも、そうした民間の方を入れていくという仕組みも私は非常に重要かと思います。特に大臣の、今後公務員の身分を変えていくというのは、これは大きな法改正が必要だと思いますけれども、こうしたことに関するお考えをお伺いしたいと思います。

渡辺国務大臣 私は、国、地方の行政改革と同時に公務員制度改革も担当しておる人間でございます。道州制を導入するということになれば当然、国、地方のスリム化は避けて通れない課題でございますし、国家公務員が道州公務員になっていくということも大いにあり得る話でございまして、そういったことを聖域なくして考えていきたいと考えております。

松浪(健太)委員 ありがとうございました。

 これまた本当に力強い御答弁をいただいたと思いますけれども、この道州の移管の問題と、あと一点、地方制度調査会では、道州制が導入されたときに知事というものは直接公選をするということになっているわけでありますけれども、我々の議論の中では、今これに対してはいかがなものかなと。憲法改正なくしてできるという点ではいいわけでありますけれども、本当に何百万、何千万になるような大きな、国にも匹敵するような自治体道州の中で、そのトップが今のような強い権限を持っていていいのか。また、これが一人何百万票もとるような知事が生まれた場合に、独裁に陥ったりポピュリズムに陥ったりとかいうような懸念があろうかと思います。私見で結構ですので、大臣のお考えを伺いたいと思います。

渡辺国務大臣 今現在、地方自治体の首長さんは直接選挙で選ばれているわけでございますから、その延長線で道州のトップを考えるとするならば、やはり今自治体において起こっている弊害というのは大いに失敗の教訓として考えるべきだろうと思います。すなわち、多選による弊害というのがあるのだとすれば、それは多選禁止というのを盛り込んでいくのは当然のことであろうと考えます。

松浪(健太)委員 ありがとうございました。多選の禁止はこれぐらいになれば当然であると思いますけれども、数百万票もとる知事が出た場合に、議院内閣制の総理大臣の正統性との面で比べた場合、今後いろいろな論点が出るかと思います。

 今後とも道州制に大臣の力強い邁進をお願い申し上げまして、時間が参りましたので、質問を終わります。ありがとうございました。

河本委員長 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。

 私は、この前の二月二十一日の当委員会で、政府広報の契約、タウンミーティングの問題で林副大臣などに質問いたしましたが、その際、最初の二〇〇一年度の前半は電通との随意契約であり、随意契約はタウンミーティングの経費を非常に高価格にした要因だということなどを指摘しました。

 政府は、随意契約の後は企画競争を取り入れたという答弁でしたが、企画競争とは、競争の文字は入っているが競争契約ではなく、随意契約の相手を決める方法の一つで、結局これは随意契約であるということですが、この点は間違いないですね。まず最初に政府参考人に確認します。

高井政府参考人 お答え申し上げます。

 企画競争、御指摘のようにこれは随意契約の一方式でございますけれども、内容といたしましては、相手方を決定するに当たって競争性、透明性を確保するため、事前の公募により複数の者から企画案の提出を求め、その内容等について審査を行い、最もすぐれた提案をした者を契約の相手方とする方式でございます。

 御指摘の二〇〇一年度の後期のタウンミーティングの運営の請負契約については、当時、運営業務に関する知見が十分蓄積されておらず、よりよい手法を検討していく中で、直ちに運営業務を定型化して一般競争を行わず、企画競争による業者選定に基づいて契約を行ったところでございます。

吉井委員 要するに、企画競争といっても随意契約だということですね。これは予備的調査の調査報告の中でも、衆議院調査室がまとめておりますが、企画競争によるものとして、そして契約は随意契約ときっちり書いてありますから、それは間違いないですねという確認です。もう一度確認しておきます。

高井政府参考人 随意契約においては間違いございません。ただし、企画競争性のある随意契約という認識でございます。

吉井委員 何か企画競争と聞けば、みんな競争していると思うんですよ。競争契約かと思ったら全然そうじゃなくて、随意契約だと。そのことを聞いたわけです。

 タウンミーティングの企画競争について、企画競争に参加した企業とそれから見積書の金額を明らかにされたいということをずっと求めてきたわけですが、見積書は、企画競争のコンペが終わった後に電通からだけはとってあっても、毎回必ず他社から見積書をとったということにはなっていないと思うんですね。だから、見積もりの金額も予定価格も落札率も要するによくわからない、こういうふうになっていると思うんですが、企画競争の後、電通だけじゃなくて必ず他社から見積書をとっていますか。

高井政府参考人 御指摘の十三年度後期でございますけれども、企画競争に参加した企業、十社でございます。その中でこの企画競争を行って、当時電通が最も優秀であるというふうに審査をしたものでございまして、その後、見積書を電通からとったということで、電通だけとっておるということでございます。

吉井委員 普通は、これは国土交通の場合であれどこであれ、競争入札をやったら全部明らかにするわけですよ。予定価格はどうであったか、落札率は幾らであったかも全部明らかになるのです。企画競争だと言いながら、要するに、電通と随意契約して電通の分だけが出てきて、あとのものは見積もりもとっていない。この契約のあり方というものは余りにも異常だということをまず言わなきゃいけないと思うんです。そして、これは今からであっても、きちっと各社の見積もりをとって、改めて提出をしていただきたいと思います。

 二月のこの委員会でタウンミーティングを取り上げたときに、政府広報の契約のことについて、公益法人契約の政府広報というのをこのときやったわけですが、きょうは、新聞による政府広報、広告代理店、広告掲載企業との契約について伺いたいと思います。

 政府広報のうち、新聞というメディアを使ったものは予算的にかなり大きいものと思いますが、どのくらいの割合を占めていますか。

高井政府参考人 政府広報予算のうち、新聞に係る、予算に占める割合でございます。

 当初予算を見ますと、平成十七年度で三一・一%、十八年度三四・一%、十九年度三四・八%となっております。

吉井委員 それで、新聞による政府広報というのは一般競争入札で行っているわけですが、入札案件は各年とも、記事下というのと突き出しという二種類がありますが、この二つの掲載方法と契約方法の違いについて伺っておきます。

高井政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、記事下広告でございますけれども、新聞の紙面の記事の下に掲載される広告でございます。一方、突き出し広告と申しますのは、新聞の紙面の左とか右下の隅の方に小さく掲載される広告、小スペースの広告ということでございまして、契約内容、方法につきましては、記事の下の方の広告につきましては、広報する内容と実施時期を決定した上で随時掲載するということであるのに対して、突き出し広告は、一週間を単位として、各新聞、特定した曜日に定期的に掲載するという内容でございます。

 契約の方式でございますけれども、記事下広告は、契約をする時点で年間の実施計画を確定させることが困難でありますので、広告、新聞一段当たりの単価で年間契約をする。一方、突き出し広告は、年間の実施回数が確定しておりますので、年間の総価で契約をしているわけでございます。なお、契約につきましては、記事下広告及び突き出し広告それぞれについて、また新聞ごとに、ただし地方紙は地域ブロックになりますけれども、そういう一般競争入札を行っているところでございます。

吉井委員 要するに、記事下は単価契約で、突き出しは総額契約ということです。

 資料一をごらんいただきたいと思うんですが、これは内閣府政府広報室からの提出資料を整理したものです。二〇〇一年度から二〇〇五年度までの五年分の新聞による政府広報の契約をまとめたものですが、五年間合計は、記事下については、これは一段当たりの総額は八十九億九千万円、記事突き出しは約四十二億四千万円で、総計百三十二億三千万円というのが年間の新聞広告の政府広報の契約額ですが、この中で電通は四十九億七千四百万、全体の三八%、約四割と断トツなんですね。二位の博報堂は二十四億七千万円、全体の一九%、大体二割。あとの企業は、どれも契約額全体の一けた台。新聞による政府広報は電通と博報堂の二社独占という状態ですが、実質、言ってみれば電通の独占体制。

 そこで、林副大臣に伺っておきたいと思うんですが、こういう資料を見たときに、競争といっても実際は随意契約、いろいろなところで行われてきて、そして、実質的に新聞広告なども四割は電通とか、これは、適正に競争入札が行われた結果こういうふうになっているというふうにお考えかどうか、伺います。

林副大臣 お答え申し上げます。

 今、吉井先生から資料を出していただきましたけれども、平成十三年度から十八年度の、今御指摘のありました政府広報の新聞広告の掲載の契約は、電通が四七・四、博報堂が一五・〇ということで、二社独占ではないわけでございますが、電通との契約に大きな割合が占められているというのは御指摘のとおりだと思っております。

 各年度ごとに見ますと、例えば十三年度は、電通が五〇・三に対して博報堂はゼロだった年もございますし、一方、その次の十四年度は、電通が一一・一で博報堂が三七、こういう年もありましたので、各年度ごとに見ると、いろいろばらつきもあるわけでございます。

 一般競争入札で新聞広告掲載の契約はきちっと行っておるものでございますので、電通、博報堂を含めた各広告代理店による適正な競争の結果であるというふうに認識しておるところでございます。

吉井委員 企画競争といっても、名前に競争がついているだけで、実際に随意契約であったりとか、この実績を見ても、これは余りにも異常な事態ということをはっきり読み取ることができます。

 そもそも、広告掲載業者の業務というものはどういうものなのか、広告制作業者とどう違うのかを、これはごく簡潔に、政府参考人から説明してもらいたいと思います。

河本委員長 高井室長、わかりやすく説明してください。

高井政府参考人 はい。まず、広告掲載業務でございますけれども、先ほどの新聞記事下、突き出しに広告を掲載するということで、そのスペースを、新聞の広告枠をとるということが一つの業務です。それから、この広告の原稿データ、実際に載せるものを受け取って、それを新聞社の方に送って載せてもらう。それで、その載せたことを確認するという、掲載について行うのが広告掲載業者でございます。

吉井委員 要するに、制作業者の方が新聞社の仕様に合わせて政府広報室と協議して原稿をつくるわけですよ。広告掲載業者というのは、要するに枠取りをしておいて、制作業者がつくった製版を政府広報室にとりに行って、それを各新聞社に送るということであるわけですから、政府広報を掲載する新聞社は現在、自社の広告掲載料を公開しておりますから、電通や博報堂などの広告掲載業者というのは、広告制作業者がつくった広告を運ぶだけという仕事で、中間マージンを取っているだけということになってくると思うんですね。

 そうすると、政府広報室というのは、直接、広告を制作業者に発注すれば、相当額をきちっと、もっと安いものにできるということになってくるんじゃありませんか。

高井政府参考人 ここは一般競争入札をいたしておりますので、そういう業者はとれると思ったら入ってくるということで、これは競争をしているわけでございますので、その中での結果であるというふうに認識しております。

吉井委員 ところが、いろいろなところでよく一般競争入札というお話はあっても、予備的調査の報告書を見ておりましても、随意契約の場合には、予定価格と落札率一〇〇%というのは出てくるんですが、一般競争入札の場合には予定価格も落札率も何も出てこない。私たち、求めてもなかなか提示をされないわけです。これは結局、予定価格と落札価格が同額か、ほとんど同じ、一〇〇%に近いということがあって、そもそも一般競争入札といいながら、その札入れの価格を示すこと自体、非常に不都合なことがおありなんだろうということを思わざるを得ません。

 資料一で引き続いて見ていただきたいのは、新聞による政府広報で不可解なのは、入札には来ておきながら入札を辞退する、こういう広告掲載業者が余りに多過ぎるという問題です。

 入札辞退件数という、一番右端を見ればわかるわけですが、新聞社ごとに入札の札を入れるわけですが、辞退件数は、日本経済社が百十一回、オリコムは九十回、読売エージェンシー八十回、名鉄エージェンシー七十九回も入札辞退ということになっています。そこはまた落札件数が非常に少ないわけですが、落札件数が少ない会社が入札辞退の件数が多いということを明瞭にこれで読み取ることができます。

 新聞広告による政府広報入札は、すべて一回の札入れで落札者が決まっていて、再入札の例は一例もありません。再入札の場合には勝負にならずと見て辞退する例も結構あるんですが、それにしても、辞退件数がこんなに多いという状況、これで一般競争入札と言えるのかどうかということなんですが、これは不自然と思いませんか。

高井政府参考人 この辞退理由については個々の入札参加業者の判断であると考えておりますけれども、補足いたしますと、入札方式について見ますと、新聞記事下、突き出し両方につきまして、業者の負担軽減、事務簡素化の観点から、一回の入札で、この新聞の記事下、突き出し、しかも中央紙、ブロック紙、地方紙、欄にしまして三十一カ所、欄が現在あるわけでございますけれども、それを一回で入札することになっております。

 ということになりますと、やはり、業者によっては地方紙は落とそうとか、あるいはこの部分を重点的にやろうというような業者がおられるということで、これは辞退と書いてございますけれども、そういうことで重点的に入札をしているという業者の結果もあるんではないかなというふうに推察しております。

吉井委員 資料二をごらんいただきたいと思うんですが、黒いのがずっとあったりするものですね。これは、二〇〇一年度から二〇〇七年度まで、新聞による政府広報の入札状況調書を年度別に整理したものなんです。

 上の段は、記事下一段当たりの単価契約をやったものです。下の方は、記事突き出しの契約の方なんですが、二重丸は落札した広告掲載業者、黒塗り部分は入札辞退社なんですね。空白は、入札したが落札できなかった会社ということになりますが、これを見れば明白なように、電通と博報堂の独占受注というのは一目瞭然ということになるんですが、これは出してきている例が二〇〇六年度とか二〇〇七年度とか部分的なものでありますが、この資料全体を見れば、これは電通、博報堂の独占受注ということになっています。

 特に地方紙は完全に電通一極支配というふうになっているんですが、このように電通が新聞各紙の独占的落札、記事下の方ですから、例えばこういうふうなものですよね。「所得税は一月から、住民税は六月から納税額が変わります。」とか、「これまで、全国の特区は八百四十七件! 広がっています。あなたから始まる構造改革。」とか、大体新聞の半分を使っての広告ですが、「特区 あなたのアイデアが、地域を変える。」というものを電通が枠取りをする。別なところで制作業者がやるわけですが、独占的に落札できるのは一体どうしてなのか。政府参考人に簡潔に、わかるように説明してほしいと思うのです。

高井政府参考人 先ほども申しましたように、ここは応札業者の考え方によるものと思っております。といいますのは、確かに先生御指摘の二〇〇六、二〇〇七はこのようになっておりますけれども、かつて二〇〇一年から二〇〇四年を見ますと、地方紙も含めていろいろな会社が入札、応札、落札をしているという状況でございまして、そういう一般競争の中で競争が行われて、結果的にこのようになっているというふうに認識しております。

吉井委員 結果的にというお話なんですけれども、結果的に電通の独占落札というのは、この姿自身、何か異常だ、おかしいというふうには考えませんか。

高井政府参考人 もちろん、競争入札でございますので、極端に言うと談合とかがありましたら我々は当然それを調査するということになりますけれども、我々としては、緊張感を持ってこの入札についてウオッチをしているということで、適正に行われているというふうに認識をいたしております。

吉井委員 緊張感を持ってウオッチできていないというのが、こういう事態がずっと続いているということにあらわれているんじゃないかと思うんです。

 資料二の入札辞退社の部分を見ると、例えば、二〇〇六年度で見ますと、フジサンケイアドワーク、日本経済広告社、日本経済社、オリコムなどはほとんどすべて真っ黒。ずっと入札辞退なんですね。二〇〇七年度を見ても、フジサンケイアドワーク、日本経済広告社、日本経済社、日経広告などはほとんどすべて真っ黒で、入札辞退。対照的に、ほとんどすべてを電通が落札している。主要大手新聞社の広告部門でもあるような会社も、入札に来ておきながら札を入れない。しかも、札を入れない競争入札の参加業者の組み合わせまで同じ。これは余りにも不自然だと思うんですね。

 電通の一極支配構造を維持するための広告掲載業界ぐるみの談合、そういう疑いといいますか、疑惑といいますか、懸念といいますか、そういうものもまた出てくると思うんです。そこで改めて伺いますが、電通の落札率一〇〇%、もしくはそれに近い数字ではないかと思うんですが、これは違うと断言できますか。

高井政府参考人 予定価格は今後の入札に影響いたしますので申し上げられませんけれども、一〇〇%にはなっておらないということでございますし、それから先ほどの、いろいろ、一部だけ入札している業者がおられるという御指摘でございますけれども、よく見ますとその新聞社の関係会社であったりするわけでございますので、やはりそれぞれの会社の方針があるというふうに思っております。

吉井委員 入札予定価格は明らかにできないと言っているんだけれども、予備的調査を見ると、予定価格、例えば、テレビ特別番組「日本列島おいしい夢紀行 食育最前線」の制作というのは、事業委託で電通と随意契約となっていますが、これは予定価格三千二百万円とか落札率一〇〇%とか、ちゃんと書いていますよね。

 これは、落札率一〇〇%というのは先に相手に、これは三千二百万円で予定していますからと教えてあげないことには一〇〇%にならないし、だから私はタウンミーティングの問題で冒頭に申し上げたんですけれども、相手の方から企画書なり仕様書なりが出てきて、それでこれをやろうと思ったらこれだけかかりますということを相手が言ってきて、それをそのまま予定価格だということにしない限り一〇〇%にならないし、皆さんの方が予定価格を決めておったら、幾ら随意契約といえども、相手の方からうちはこれだけでできますということを言ってきて、しかも企画競争入札もやっているんでしょう。これを見ていると、企画競争入札の結果によるものと書いていますね。

 企画競争入札というのは、企画競争で、企画の中身と金額を皆入れての話なんです。だから、全部が予定価格一〇〇%なんというのはあり得ない話なんですね。それなのに何で予定価格が明らかにされないのか。しかも、必ずしも一〇〇%というものじゃないというわけですけれども、実際に発表されているものは一〇〇%。一体これはどういうことなのかということになってくると思うんですね。

 だから、やはり入札予定価格というものをきちんとそれぞれについて明らかに示していく。それから、札入れした額がそれぞれどうであったのか、やはりこれを明らかにしないことには、こういう異常な事態はいつまでも続くんじゃないですか。

高井政府参考人 御指摘の企画競争について申し上げますと、やはり予算の枠もございますし、経費の概算の上限額を示して企画を募るということを行っているところが多くございます。そういうことでそういう数字が上がっているのかなと一つ思います。

 それから、一般競争の方でございますけれども、やはり今後も毎年続いていくわけでございますので、予定価格を公示するということは今後の入札に影響するということでございますけれども、先生御案内のとおり、入札調書につきましてはすべてオープンにしておりまして、各社がどのように入札しているかという数字はオープンにしているという状況でございます。

吉井委員 入札の調書について、予定価格、落札率、これは一般競争の分については報告の方では真っ白で、明らかにされておりません。

 それで、予備的調査報告書を見ると、これは林副大臣に伺っていきますけれども、電通と博報堂は落札率一〇〇%となっているのが掲載されておりますが、入札予定価格が漏れているんじゃないかという問題とか、あるいは談合入札の疑念がぬぐい切れないという問題があります。

 この間の経験が示しているのは、談合入札の裏には官僚の天下りがあるというのはかねてから取り上げられてきました。そこで内閣府の方に伺って説明を伺うと、電通には内閣府の経済社会総合研究所次長を最後に退職した牛嶋俊一郎氏とか、博報堂には経済社会総合研究所総括政策研究官を最後に退職した丸岡淳助氏の二人の天下りがあるということになっておりますが、しかし、実際はもっと多いんですね。

 衆院調査局の中央省庁の補助金等交付状況、事業発注状況及び国家公務員の再就職状況予備的調査によれば、国家公務員退職者は二〇〇六年四月時点で、電通に十二人、うち常勤が七人、博報堂には五人、うち常勤三人、東急エージェンシーには一人で常勤のみというふうに、天下りという問題があります。

 そこで、副大臣、公務員制度改革を今政府として口にしているときですが、公務員制度改革を口にするなら、こうした天下りの内訳とか談合入札の疑惑ないしは疑念について、きちんとした詳細な説明や報告というものをやるべきだと私は思うんですが、あなたにそれを伺っておきたいと思います。

林副大臣 大事な御指摘だと思います。

 今まさに委員から御指摘がありましたように、三月の二十九日だったと思いますが、衆議院の調査局が、これは電通と博報堂の両社から回答があったというベースでございましょうけれども、予備的調査をやって、今先生御指摘の人数が上がったわけでございます。そのうち、内閣府の元職員は今の二名だったということでございます。

 まず、現在、この二社とかそこにおられる方は、退職してすぐ行かれた方と、そうでない場合があり得る、こういうふうに思っております。今、総務省では、退職して再就職した、それを各省で取りまとめをして、総務省で数を取りまとめておりますけれども、それを含む、例えばやめて何年もたった方まで全部、元公務員ということで再就職を全部把握するということは大変に膨大な作業になりますので、これは適当ではないと考えておりますが、まさに今委員が御指摘になりました国家公務員法等の一部を改正する法律案、国会に提出させていただいておりますが、これには、管理職の職員が離職後二年間に営利企業等の地位についた場合には届け出を行うとはっきり定めまして、この内容を取りまとめて公表する、こういうふうにしております。新しい法案の中にはそういう枠組みをつくって、きちっと、そういう疑念みたいなものを抱かれないようにしていく、こういう姿勢を示しておるところでございます。

吉井委員 これからこうするとかああするとか、いつもこういう話になると出てくるんですけれども、一番大事なことは、まず解明だと思うんですね。実際に、政府広報を契約する内閣府の人が天下りをしていっている。そして、この入札の一連のいろいろな問題の中で、いろいろな疑念とか疑惑、そういったものが持たれるものについて、やはりまずこれを徹底的に解明する。そのことなしに公務員制度改革を口にするということは、私は、かなり筋が違うんじゃないか。改革を口にするんだったら、まず実態の究明、解明だということを言わなきゃならぬと思うんです。

 一般に広告代理店として知られている広告掲載業者というのは、政党の宣伝とか広告業務を請け負ってきております。それで、政府の方がまとめて出していらっしゃる政党交付金に係る報告書というのを見ておりますと、自民党の方は二〇〇一年から二〇〇五年までの五年間に、業界最大手の電通に宣伝事業費として約二十六億八千万円支払っているわけですね。民主党の方は同じ期間に、業界第二位の博報堂に宣伝事業費約七十三億三千六百万円を支払っていらっしゃるわけです。要するに、政党助成金というのは税金なんですが、この税金が、電通、博報堂の利益の源泉になっているという問題もあります。

 政府企画のタウンミーティングから政府広報、それから政府の新聞広告の仕事をとることで、新聞支配といいますか、要するに、広告料というものによって、テレビを含むマスコミへの広告料収入を通じた影響力の行使、さらには電通の政治ビジネス、政治関与、政治支配という政治的影響力の行使というものは、私は、これは日本の民主主義にとっても非常に懸念される問題だと思うんです。

 時間が来たという札が来ましたから、時間がありませんからきょうはこれでおいておきますが、電通の広告をめぐるこの異常契約の問題というのは、ただ単に広告の問題とか契約の問題にとどまらない、日本のマスメディアから政治への関与とか影響力行使とか、民主主義にかかわってくる非常に重要な問題を今抱えてきている。このことを引き続きまた取り上げていきたいということを申し上げて、本日の質問を終わります。

    〔委員長退席、戸井田委員長代理着席〕

戸井田委員長代理 次に、岩國哲人君。

岩國委員 民主党の岩國哲人でございます。

 本日は、渡辺行革担当大臣に今後の公務員制度のあり方について、特に今、世間一般で問題になり、先ほど吉井委員からもいろいろ関連質問がありました天下りを中心として、この天下りというものをどういうふうに改革しようとされているのか、その改革の実効性について本当に確信の持てる機構というのは考えておられるのかどうか、そういったことについて、大臣御自身のお考えあるいは理念というものをただしたい、そのように思います。

 まず最初に、こうした日本の経済あるいは官僚の仕組みというのは、外国から取り入れ、そしてそれを育ててきたものですけれども、この天下りという弊害的に使われる言葉、これはどこの国が最もひどい、天下りといえばあの国が一番ひどいんだというのはどことどこですか、まずそれをお話しください。

渡辺国務大臣 天下りの比較社会学というのがあれば、そういうことも明らかなのかもしれません。しかし、天下りというのは、これは私の方が逆にお聞きしたいんですが、英語で何と言ったらいいんでしょうか、恐らくこれは、日本の公務員、とりわけ国家公務員の世界に特有のプラグマティックルールではないのかというのが私の感想でございます。

 私流に天下りを定義いたしますと、各府省庁が予算と権限を背景に人事の一環として行う再就職のあっせん、あっせんによる再就職を天下りというべきものかと思います。

 したがって、これは人事の一環でありますから、本人ももういや応なしに行かざるを得ないわけですね。また、受け取る方の受け皿も、これは人事の一環で来るわけですから、だれが来てもこれはまあしようがないか、こういうことになるのではないでしょうか。したがって、受け取る方にしてみれば、これは言ってみれば、だれが来てもしようがないわけでございますし、何かメリットがないとやってられないよなということになるわけでございますから、当然、そこの出す方と受け取る方との間で、言ってみれば子会社、関連会社的な関係ができてしまうということになるような気がいたします。

 そういたしますと、これはもうまさしく癒着の構造でありますから、そこにおいて最悪のケース、官製談合などということが行われたりするのではないでしょうか。

 したがって、今回の改正では、そうしたプラグマティックルールを根本的に変えちゃおう、人事の一環をやめてもらおうということで、各府省庁の再就職あっせんを全面的に禁止するものでございます。

岩國委員 こういう問題が、なぜ先進国あるいは資本主義の枠組みの日本でだけ行われておって、同じような環境にあるアメリカで、イギリスで、フランスで、ドイツで行われていないのか、そういうことの解明なくして、この問題は私はとても解決できないと思うんです。

 日本では、年金の問題だろうと農業の問題だろうと近代化の問題だろうと消費税の問題だろうと、何か新しい問題あるいは外国で既に行われている問題があるならば、すぐに視察団が飛んでいくでしょう。行かなくてもいいような視察団まで飛んでいく。今度の場合に、この天下り視察団というのは、どこの国を目指して飛んでいったのか。そういう調査、分析、解明はできているのか。それもやらないで、とにかくおざなりの答案さえつくろうということであって、どこの国が一番悪いのか、どこの国をお手本にしたらいいのか、そういう調査報告書というのはどこにできているんですか。だれが、いつ、どこへ調べに行ったのか、もっと具体的に答えてください。

渡辺国務大臣 日本では、明治時代に、民法はフランス人に書いてもらいました、刑法はドイツ人が書いたものをモデルにしたわけですね。憲法は、アメリカ人が書いたものを戦後、モデルにしてつくったわけでございます。したがって、委員御指摘のように、公務員制度もどこかがモデルになっているんだろう、だったら、これを改革するのも、どこかの国へ調査に行って、それをモデルにしたものをつくったらいいじゃないか、こういう御発想かと思います。

 冒頭私が申し上げましたように、天下りという問題は、恐らく日本に特有の慣行、プラグマティックルールとしてあるのではないかと私は申し上げたわけでございまして、とするならば、これはどこかの国がモデルということよりは、日本の制度のどこが問題なのかを追求した方が解決策が早く出てくるわけですね。

 天下りを出す一つのメカニズムというのは、年功序列制度にあるわけでございます。つまり、二十二、三で大学を出て国家公務員になる、そうすると同期は、1種、2種の採用区分に従って、これは法律に書いてあるわけじゃございませんけれども、一斉に同じようなポストについていく。今でも、例えば本省課長になるのにそう何年も差がつかないわけですね。しかし、指定職になりますとポストが足りなくなっちゃうというところで、肩たたきが起きてくるわけでございまして、当然、肩たたきというのは、これは人事の一環でやるわけでありますから、次の再就職先はここだよという受け皿を決めた上で肩たたきをやるわけですね。

 これが各府省庁ごとに行われ、なおかつ、その府省庁の中のこれまたいろいろなセクションごとに行われてきている、こういうところに問題の根本原因があるわけでございますから、だったらここを変えればいいじゃないか。別に、どこかの国に調査に行ってまねしてこなくたって、根本問題は、日本のこの制度のどこに問題があるかを突きとめることは簡単にできるわけでございます。

 したがって、我々は、まさしくこの年功序列制度、各省縄張り主義、この二つから打破をしていこうというので、今回の国家公務員法改正案を考えたわけでございます。年功序列主義を打破するには、何といってもこれは能力・実績主義を導入する。もう今はその評価はやっていますけれども、評価が給料とポストに結びついていないということなんですね。しかし、今回の改正案では、能力・実績主義、評価が昇進と給料にストレートに結びつく、そういうことを提案しているわけでございますから、これが導入されて、しんを食って運用されるようになりますと、当然、年功序列が崩れていくようになるわけでございます。

 ですから、今事務次官になるのに何年かかってなるんだ、大体三十五年ぐらいかかるんじゃないんですか。(岩國委員「もっと簡潔に答えていただけませんか」と呼ぶ)ですから、そういう年功序列をやめさせる、各省縄張り主義を打破するというところに、もうまさしく今回の改正案の肝があるわけでございます。

戸井田委員長代理 簡潔にお願いします。

岩國委員 失礼ですけれども、大臣の漫談のようなお話ばかり聞きに来るために私はここに立っておるんじゃないんです。いいですか、もっと端的に。

 今までに年功序列の問題があれだけ言われながら、依然として改まらないのはどこにあるのか、省庁の縦割りという問題はどこにあるのか、そういうことは同じような公務員制度をとっている国に発生しなかったのはなぜなのか、あるいはどの国において発生しているのか。そういうことを、私は何でも外国のまねをしろと言っているんじゃないんです。まねをしていい問題と、まねをしては悪い問題とあります。しかし、少なくとも、同じような環境のあの国においてなぜ発生しなかったのか、どこにそれは原因があるのか、そういうことを謙虚に学んで、その中から公務員制度改革に慎重に手をつけるべきだと私は思うんです。

 私は、公務員制度改革に賛成の方向ではありますけれども、よその国がどういう間違いをしたかということもよく調べないで、自分の思い込み、思い込みというよりも思い違いだけでどんどこどんどここの公務員制度改革をやられたのでは、日本の大切な官の仕組みというものを殺してしまうことになると思うんです。

 私は予算委員会でも加藤寛教授とも議論いたしましたけれども、何でもかんでも民間に任せればいいという考えに私は反対です。

 渡辺大臣は、民の世界で人事をおやりになったことは何年ぐらいおありですか、官の世界で人事を直接おやりになったことは何年ぐらいおありですか。私は両方の世界でそれをやってきました。人の使い方の難しさ、そしてその大切さ、官には官の、民には民の、それぞれの違いというのがあります。アメリカで、イギリスで、フランスで、日本で、私はそういう世界を見てきました。官の世界の人事の経験もなし、民の世界の人事の経験もなしに、ただそういう一つの思い込みだけでこの公務員制度改革に大声を上げられては、とてもたまったものではない。私はそれを見ておるんです。

 どれだけの経験を持ってやっておられるのか。経験もなく、外国の勉強もせず、経験なしに、勉強なしに、この我が国の大切な問題をどうやって手がける。大臣としての資格を私はまず問いたいと思っているんです。

 OECDの中で一番この天下り問題に苦しんだ国はどこだったのか、それぐらいのことは答えられるでしょう。あるいは、外国においてもそういう例があるならば、英語としての表現もあるはずです。その表現もないのはなぜなのか。そういったことについて、もっと説得力のあるお答えをいただきたいと私は思います。

 もう一度お答えください。どの国について御自身が勉強されたのか、あるいは中心になっている官僚の方が、どの国について、この国のことだけはまねしちゃいかぬ、いい反面教師になると思っているのはどの国なのか。世界じゅうに反面教師は一人もいなかったのか。どうぞ。

渡辺国務大臣 冒頭申し上げましたように、天下りという英語を私は存じません。恐らく、天下りというのは、津波とか改善とかいう日本語と同じように、そのまま表記されるようなものになっているのではないんでしょうか。したがって、諸外国の調査をした上でこの改革に取り組めという御指摘は、私はちょっと当たらないような気がするのでございます。

 日本固有のプラグマティックルールが、かつてはうまくいった制度がたくさんございます。いわゆる戦後レジームというものでございます。しかし、その戦後レジームが、残念ながら今、時代おくれになり、我々の改革の行く手に巨大な岩盤として立ちふさがっているという現実を目の当たりにして、何としてもこの岩盤を突破していかなければいけないというのが我々の思いでございます。

 私個人が、おまえは人事やったことないじゃないかと言われましても、これは私個人のプランではないんです。安倍内閣として、政府が政府案として考えてきたものでございまして、その点を、あたかも私が一人で突っ走って勝手につくったような誤解を与えるような表現はやめていただきたいと思います。

岩國委員 今度の公務員制度改革、いわゆる新人材バンクの中心になっておられるのはだれとだれか。渡辺大臣と安倍総理大臣でしょう。これは、新聞も何回も何回も繰り返して言っておるじゃないですか。それ以外の人のことを言っているのではなくて、中心になる人は、少なくとも、直接的な体験なり経験なりをある程度持っていなければ、説得力のある、そして、国民を納得させるような案というのはできるはずがないと私は思いますよ。勉強もせず、そして経験もなし、その中心に二人がなっているからこそ、我々国民の大多数も、そして、一番対象とされる公務員が心配しているのはそこにあるんです。

 経験や体験がなければ、勉強してくださいよ。なぜ勉強することを避けるんですか。どこの国はなかったということさえも言えないでしょう。調べてもいないからですよ。何も、外国のまねをするんじゃなくて、外国にはそういうものがないんだということをまず確認して、我が国独特のものであれば、独特の体系でもってやっていきましょう。我が国独特のものでなくて、こういう中央集権の国家においては、先進国の中でもあの国とあの国はそういうことがよくあった、どのような方法でもってそれを防ぐことができた、民間業界はそのときにどういう協力をしたのか、どういう新しい法律をそのときにつくったのか、もっとそういうことを、我々も含めて国民にも、そして公務員にもわかるような説明というのができなければ、とにかく旗を掲げてこうやればいいんだ、ああやればいいんだというだけでは、私はこの大きな仕事を成功させることにならないと思うんです。

 公務員制度改革はぜひ実現し、そして、それを定着させていただきたい。そのために、もう少し具体性のある発言というものなり、調査なり事例というものを参考にしていただきたい。それを私はさっきから繰り返し繰り返し言っているわけです。そういうことはもう既に進められておるのか。その調査報告書、ブレーンになる方はどういう研究をされているのか、どの国を参考にしておられるのか、どの国が反面教師なのか。何回質問してもそれは出てこないじゃないですか。

 年功序列制度というのを持っているのは我が国だけですか。それだけでも答えていただけませんか。

渡辺国務大臣 諸外国の比較研究は、事務方でやっております。

 では、どこの国の制度をモデルに改革をやっていくのか。それは、先ほど来申し上げておりますように、我が国特有の慣行が大変な弊害をもたらしてしまっている、そういうことをわかっているがゆえに、まず、その肝になるところから改革をしていこうというのは決して間違いではないのではないのでしょうか。

岩國委員 事務方が調べたという報告書を出してください。私はきのうも聞きました。ないじゃないですか。あるあるあると言う。どこかのテレビ番組じゃありませんけれども、あるあると言いながら実際にはない。なぜ、そういうものを出してもらえないんですか。

 それから、我が国特有と大臣は何度も断定されますけれども、我が国特有という根拠はどこにあるんですか。お調べになった上でおっしゃっているのか、思い込みと思い違いでそうおっしゃっているのか。これは、この問題の出発点だと私は思うんです。年功序列は我が国だけのものだ、あるいは、よその国にもあるならば、よその国はなぜそれは出てこなかったのか。ぜひ、それをお答えいただけませんか。新人材バンクというものについて、私は、いろいろな疑念も、また提案もあります。その議論に行く前に、大臣自身の認識が、あるいは、事務方とおっしゃいましたけれども、その事務方とおっしゃる方たちがどういう調査をされたのか。要求しても出てこないというのは、これはどういうことですか。

渡辺国務大臣 平成十八年の十一月十七日、行政改革推進本部第四回専門調査会に提出された資料がございます。これは人事院が作成をしたものでございまして、この専門調査会は主に基本権を中心に議論をしておりますので、そのたぐいの記述が多うございますが、諸外国の国家公務員の任用、それから、評価、身分保障、退職関連、給与等々について、この資料では記述がございます。(岩國委員「再就職についても書いてありますか」と呼ぶ)再就職、「退職関連」という項目がございます。

 また、これは天下り問題を扱ったものではございませんけれども、季刊行政管理研究、二〇〇三年三月のナンバー百十七、公務員制度改革、上級管理職制度の意義と課題、ごめんなさい、これは下だな、二〇〇六年九月、ナンバー百十五、それから百十七ですね。上下にわたって、信州大学の田中秀明非常勤講師がかなり膨大な論文を書いております。

 これ以外にも、事務方が調査研究しているのはたくさんあるはずでございまして、全く何にもやっていないなどということはあり得ません。

    〔戸井田委員長代理退席、委員長着席〕

岩國委員 全く何もやっていないということはないということは、大臣、どうやって確認されたんですか。一遍でもごらんになったことがあるんですか。私がきのうも要求して、そういう具体的な外国の事例は調べたことはございませんと私は言われているんです。それを大臣があるあるとおっしゃるのは、関西テレビか何かと同じように、あるあると言いながら実際にはなかったというのでは、この大きな問題の出発点として私はいかがなものかと思うんです。

 まず足元、それから事例を固めた上で、どういう議論にもたえられるような出発をしていただいて、それから、この新人材バンクというものが本当に機能として機能するのかどうか。私は、民の経験、官の経験、両方から見て、この新人材バンクというのは非常に内部的におかしな機構になってしまう、いわゆる天下りというものを正当化し、あるいは、マネーロンダリングと言えば失礼ですけれども、人材ロンダリングをするためのブラックボックスになりかねないという懸念が、今現在得ている情報ではあります。

 これはまた別の機会に質問させていただきたいと思いますので、きょうは、その出発点において、私は何よりも、失礼ですけれども、渡辺大臣、いろいろな発想をたくさん持っていらっしゃると思いますけれども、しかし、新しい、いい発想の出発点は、常に事実をきちっと調べていただいて、思い込みと思い違いを取り外してから国民に、そして、特に日本の国を支えてきた公務員の全員が、そこまで調べ、外国の悪い例もきちっと参考にして、それでできているのがこの法案なんだというふうに説得する必要が私はあると思うんです。

 公務員の皆さん、一人一人心配していますよ。自分たちは、これから、やる気を出してもっと国に仕えたいと思っているような、その気持ちを育てるような公務員制度改革であってほしい。あるいは再就職についても、公明正大な仕組みができるならば、それは歓迎するでしょう。そのためにも、外国ではどうなっているかということはさっぱりわからないし、安倍総理大臣も渡辺行革担当大臣も、民間企業でも官の役所でも人事というものを直接責任を持ってやったこともない、そのお二人が中心ということでは大変心もとないということを申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

河本委員長 次に、小宮山洋子君。

小宮山(洋)委員 私の持ち時間は三十分でございますが、少し欲張っていろいろなことを伺いたいと思っておりますので、ぜひ簡潔明瞭な御答弁をいただければ幸いでございます。

 まず最初に、男女共同参画についてちょっと伺いたいと思っています。

 この男女共同参画社会、男女ともに生き生きと個性を発揮して生きる社会の推進ということは、超党派でつくりました基本法の前文にもありますように、党派を超えて取り組むべき最重要課題だというふうに思っております。そしてまた、これは最近非常に問題になっております少子化への対応とも両輪をなすものだと思っています。

 先日、この内閣委員会で、少子化と男女共同参画専門調査会の国際比較調査が取り上げられましたが、この調査で本当は何が明らかになったのかを大臣に伺いたいと思います。

高市国務大臣 この国際比較報告書でございますけれども、これによりますと、国民一人当たりGDP一万ドル以上のOECD二十四カ国で見ると、まず、出生率と女性の労働力率の関係は、時系列的に変化しておりますけれども、二〇〇〇年の時点では、女性の労働力率が高い国の方が出生率が高いという傾向が見られました。それから、女性労働力率を上昇させながら出生率も回復している国では、男性を含めた働き方の見直しや保育所整備等の両立支援などが進んでいるとの特徴が見られました。

 また、翌年の国内分析報告書でも同様の傾向で、女性の有業率が高い都道府県の方が出生率が高い傾向、そしてまた、働き方の見直しや地域における子育て支援体制の構築などが、子育てと女性の就労の双方にプラスの影響を及ぼす可能性が示されました。

 結論を申し上げますと、仕事と家庭の両立支援や働き方の見直しなど、男女共同参画に関する施策の推進は少子化対策にも資するということであると思います。

小宮山(洋)委員 こちらの参画局が出されましたリーフレットにも載っておりますけれども、働き方が柔軟でライフスタイルの選択が多様な国の方が、仕事をしている人も多いし子供の数も多いということなのかなと思います。

 最近、ワーク・ライフ・バランス、仕事と生活の調和ということがキーワードになっております。子どもと家族を応援する日本重点戦略検討会議の働き方の改革分科会の論点整理でも、このことが中心になっていると思います。ところが、実態はといいますと、日本ではまだまだそうはなっていません。子育て支援等に関する調査研究というところを見ましても、仕事と育児を同時に重視したいという母親が五八%、父親は五一%いるのに対して、現実には母親の八割近くが家事、育児に専念、あるいはそちらを優先している。そして父親は、仕事に専念か優先しているということが七五%となっているんですね。

 ですから、本当に生き生きと、女性も男性も、生きやすい生き方をして、持ちたい数の子供も持って生きていくためには、このワーク・ライフ・バランスをいかに実効性を上げて進めるかということだと思うんですけれども、一つは、企業の側も、女性がやめてしまうよりも働き続けてくれた方が企業にとっても得ですよということがないと、なかなか本気で取り組まないのではないか。そうしたデータが、日本にはまだないか少ないかというふうに思っております。

 私が手元に持っておりますのは、いつも御紹介するアメリカのAT&T社で、女性で働いていた人がやめてしまうと企業の損失が一五〇%、ところが一年で育児休業をとって帰ってくると損失は三〇%と、五分の一で済むというようなデータもアメリカなどにはあるんですね。ぜひ、政府のシンクタンクとか民間のシンクタンクとかいろいろな研究所とかございますけれども、そういうところで、ワーク・ライフ・バランスを実現することが企業にとってもいいということをもう少しそろえる必要があるのではないかと思いますが、大臣、いかがでしょう。

高市国務大臣 その点は同じように考えております。

 今、男女共同参画会議の少子化と男女共同参画に関する専門調査会の報告で明らかにしているんですけれども、仕事と子育ての両立支援ですとか仕事と生活の調和が図られるような取り組みというのは、未婚であるか既婚であるか、もしくは男性、女性を問わず、仕事の意欲や満足を高める、それから仕事の進め方の見直しにつながる、効率的に仕事を進めていくというようなことで、職場にとってもメリットがあるということが示されたばかりでございます。

 それから、過去の研究、調査におきましても、女性管理職比率の高い企業ですとか比率が上昇した企業に関しましては、成長性や総合経営判断を示す指標がおおむね高い傾向が見られておりますので、両立支援と人材育成を組み合わせた取り組みというのが企業業績にプラスの影響が見られるという結果は、日本でも得られつつございます。

 ただ、このアピールがまだまだ足りないと思います。今、経団連等大きな経済団体の方でも、こういった取り組み、特に経営者の意識改革に関しては前向きに取り組んでいただいておりますし、やはり女性を活用する、そして、しっかり企業で培ったノウハウを、子育ての期間一時中断したとしても、また新しく視野を広げて帰ってきてもらう方が企業にとっても大いにメリットがあるんだ、こういった意識が私は強くなってきていると思いますので、こういったメリット、そして調査結果の広報というのが非常に大切だと考えております。

小宮山(洋)委員 最初のデータの読み方のところでも申し上げたように、専業主婦で自宅で子育てをしたいと御本人、女性が思って、夫もそれでいいと言えば、もちろんそれはそれでいいわけなんですね。ところが、日本の女性は、潜在就業率という、本当は働きたいと思っている人が欧米と同じように八割ぐらいいるのに、依然として、底が上がったとはいうものの、子育て期の女性の就業率というのはM字形カーブで下がっているという現状がありますので、ぜひ、少子化への対応ということと、やはりこの男女共同参画、女性も男性も生き生きと生きて、ワーク・ライフ・バランスが、これは男性ももちろん図られるようにしていくということは、本当に日本にとって大切な問題だというふうに思っています。

 高市大臣は、御就任以来、非常にそれを力強く進めていただいていると思って本当に心強く思っているんですけれども、この男女共同参画とワーク・ライフ・バランス、そのための施策をこれからも推進していかれるという御決意を伺いたいというふうに思います。

高市国務大臣 私も就任時にも申し上げましたとおり、あくまでも、女性であれ男性であれ、その能力に応じて適切に、平等に評価をされるということがまず大事だということ。それからもう一つは、昔と違いまして、今、サラリーマン家庭の五三%が共働きというのが現状でございます。そしてまた一方で、子供も育てたい、自分の自己実現、社会的自己実現ということで仕事も続けたい、そういう夢を女性も男性も持っておられる。この両方を、やはり、たった一回の人生だから実現したいな、その阻害要因になっていることを取り除きたいなというのが私の思いでございます。

 非常に都市化も進んでいますし、核家族化も進んでいますから、私が育った子供のころの時代とは随分環境が変わってきておりますので、両方の夢を実現するための環境整備を進めたいということ、これは男女共同参画にも少子化対策にも資することであると考えております。

 そして、日本のこれからの経済の成長ということを考えますと、労働力人口の確保というのもやはり必要でございますので、努力をする、能力のある女性の活用、そして働き続けていただくための環境整備というのは非常に重要だと考えております。ちょうど、子どもと家族を応援する日本重点戦略会議、こちらでもワーク・ライフ・バランスの議論を続けていただいておりますし、男女共同参画会議の方でも続けていただいております。二つの結論が出てまいりますので、両方しっかり生かしながら体制の整備に努めてまいりたいと思っております。

小宮山(洋)委員 ぜひ、この基本法をつくったときと同じように、これは最初に申し上げたように党派を超えて取り組むべき日本の重要課題だと思っていますので、ともに進めていければというふうに思っております。

 次に、久しぶりにたばこの話、禁煙の話をさせていただきたいので、お忙しい中、下村官房副長官にも十時五十分までというお約束で、ちょっと順番が途中で変わるかもしれませんが、それまでには御退室いただけるように伺いたいと思います。

 たばこ規制枠組み条約が二〇〇三年に採択されまして、日本は二〇〇四年三月に署名、六月に批准をいたしましたが、その実効性を上げるための国の取り組みが、どうも余り熱が入っていないというか、腰が入っていないのではないかというふうに思っております。

 国内計画の策定とか実施のスケジュールというのはどうなっているのかを伺いたいと思います。

宮坂政府参考人 たばこの規制枠組み条約につきましては、御指摘のとおり、平成十五年五月にWHOの総会で採択をされまして、我が国は平成十六年三月に閣議決定をし、同六月に批准をし、翌年二月に条約全体として発効したという状況でございます。

 まず、条約の批准に当たりまして、条約上の締約国の義務とされました受動喫煙防止等の事項につきましては、厚生労働省を含めた関係省庁におきまして既に必要な対応を講じているところでございます。また、平成十六年六月、条約の内容を踏まえまして、関係省庁の密接な連携のもとにたばこ対策を推進するため、関係省庁連絡会議を設置したところでございます。

 一方、厚生労働省といたしましては、たばこ対策に関してさらに効果的、計画的な実施のため、健康日本21の中で、喫煙が及ぼす健康影響についての十分な知識の普及、未成年者の喫煙の防止等々を柱といたしまして、総合的なたばこ対策等につきまして目標なり目標達成の手段を明確にして対策に当たっているところでございます。

小宮山(洋)委員 やはり、この条約に基づいてきちんと国内計画をつくって実施をしていくべきなのではないかというふうに思っております。

 その推進のための体制ですが、たばこ対策関係閣僚会議というのがありますけれども、これは年に何回ぐらい開いて、どう機能しているのか。また、対策室というのが設けられましたが、ここにはたばこ専門官一人しかいない、これでは余りに取り組む体制が少ないのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

宮坂政府参考人 まず、関係省庁連絡会議でございますが、たばこの規制枠組み条約の内容が厚生労働省のみならず関係省庁にかかわるということで、これらの緊密な連携のもと、たばこ対策を実施する必要があるということで、平成十六年六月に設置をいたしております。

 今まで二回開催を行っております。一回目の連絡会議でございますが、条約発効直前の平成十七年の一月十八日に開催をされまして、未成年者喫煙防止対策ワーキンググループの設置などが検討されました。二回目につきましては、第一回の締約国会議が昨年の八月に開かれまして、それ以後に一回開催をいたしておりまして、そこでは、たばこに関する健康増進策といたしまして、ニコチン依存症管理料の新設等について報告がなされたという状況でございます。

 次に、たばこ対策専門官についての御質問がございました。

 厚生労働省といたしましては、条約の批准が平成十六年六月でございますが、それ以前から、健康日本21等の生活習慣病対策の中でたばこ対策を実施していたところでございます。さらに、たばこの規制枠組み条約の批准を前に、たばこ対策をより一層推進するため、平成十五年、厚生労働省の生活習慣病対策室に、たばこ対策の取りまとめを行いますたばこ対策専門官を新設いたしまして、たばこ対策をさらに推進するよう講じたところでございます。

 一名では少ないのではないかという御指摘がございましたが、たばこ対策を推進する上ではこのたばこ対策専門官のみで対応するということではもちろんありませんで、生活習慣病対策室におきまして関係課室との連携のもと、たばこ対策に取り組んでいるという状況であります。

小宮山(洋)委員 私が不思議だと思うのは、喫煙率の数値目標ということが再三話題になりながら、これが決められないわけですね。先ほどおっしゃった健康日本21をつくった二〇〇〇年に、男女とも半減という案が撤回をされました。そして、中間見直しの昨年暮れにも、二〇〇四年の喫煙率である男性四三・三%、女性一二・〇%を踏まえて三つの案を出して、禁煙希望者がすべて禁煙した場合の男性三〇%、女性一〇%が支持されたのに、再び撤回をされた。これはなぜでしょうか。

 官房副長官のお時間がちょっと迫っておりますので、簡潔にお答えいただいて、また副長官からも伺いたいと思っております。

宮坂政府参考人 簡潔にということでございますので、昨年の中間見直しの際には厚生科学審議会で御議論賜りました。その中では、そもそも今の健康日本21には成人の規制に関する目標というのがないという状況である、それから、国民運動としてより多くの方が賛同し得る目標が望ましい、それから、たばこはやはり嗜好品ではないかという側面があるということから、やめたい人を増加させ、その方々の禁煙を積極的に支援するということが重要ではないかというような御意見を踏まえまして、昨年末に、喫煙をやめたい人がやめるという目標を設定するという結論が出されたところであります。

小宮山(洋)委員 ちょっと急がせて済みませんね。

 それで、下村官房副長官に伺いたいんですけれども、この後、実はがん対策推進協議会の、そこにも喫煙率削減の目標はどうも明記されないだろうということですとか、公共の乗り物のタクシーの禁煙についても諸外国に比べて取り組みがおくれているとか、全体にやはりおくれていると思うんですね。これは、たばこ税の税収二兆円ということで、たばこ事業法が財務省の所管だというようなことが非常に大きな理由なのではないか。

 先ほどのいろいろな戦略会議というか対策の会議にしても、財務省の協力を得て厚労省がやりなさいと言われていて、この条約批准のときも、超党派の議連で随分いろいろな働きかけをしましたが、省庁の力の差と言っては申しわけないんですが、やはりお金を握っているところが強いわけですよ。ところが、医療費とか労働の面でのいろいろな削減されるものを入れますと、二兆円の三倍ぐらいのロスというかマイナスがあるという事実もわかっておりまして、各国はやはり政府がリーダーとしてやっている。

 ですから、官邸にそういう会議を設ければ進むという話ではありませんが、ほかの多くのテーマと同じように、やはり多くの省庁を束ねるかなめである内閣官房のところで、もう少したばこの問題、医療費の問題や未成年者の喫煙の問題とか、本当に大きな問題だと思いますので、しっかり取り組むということができないのかをぜひ伺いたいと思います。

下村内閣官房副長官 お答えいたします。

 委員の御指摘は、今後の重要な課題であるというふうに思います。

 ただ、今お話がございましたけれども、たばこというのは、麻薬や覚せい剤などと同類の社会的禁制品ではなくて、アルコールなどと同様の合法的な個人の嗜好品ということでございますので、目標を定めても今の答弁のようなことにもなってくるかと思います。ただ、財務省それから厚生労働省だけが取り組むということではなく、御指摘のように政府全体で、やはり国民の健康の視点から、できるだけ禁煙率を高めていくということは大変重要なことであるというふうに思います。

 こういう観点から、日本政府も、先ほど御指摘がありましたように、平成十六年にたばこの規制に関する世界保健機構枠組み条約を批准したところでございまして、当然、批准された条約について誠実に履行していく必要があるわけでございます。そのために、関係省庁においてたばこ対策関係省庁連絡会議をつくって、密接な連携をとりながら、これから今まで以上に適切に対応していくということが当然望ましいわけでございます。

 とりあえずは、措置すべき内容について明確に定めて、この条約に基づいてそれぞれの省庁が責任を持って対応することが必要であるというふうに思いますけれども、しかし、今後、この条約の履行を初め、たばこ対策の推進については、御指摘のように政府が一丸となって取り組むことが必要でございますので、まずは、各省庁において緊密に連携をしていただいて対策をしていただく。その中で、政府全体として適切なさらなる施策を推進していくように検討して考えていきたいと思っております。

小宮山(洋)委員 ありがとうございます。

 ぜひ官房副長官下村さんに伺いたいということで、無理をして時間をつくっていただきました。十八歳に投票年齢を変えることとか、超党派でいろいろなことも御一緒していて、意欲的に取り組んでくださると思いまして、塩崎官房長官は今お忙し過ぎるようでございますので、また六月に締約国会議もありますから、引き続き、このことは下村副長官とお話をさせていただきたいと思います。ぜひ積極的なお取り組みをお願いいたしまして、お約束の五十分でございますから、どうぞ御退席ください。

 引き続き、政府委員の方に聞きたいと思いますが、先ほどちょっと頭の振りで言いましたけれども、直近では、ことしの五月七日に、厚生労働省がん対策推進協議会が、がんの死亡率を十年間で二〇%程度減らす目標を基本計画に入れることで大筋合意をいたしました。大枠を決めましたが、がん対策基本計画にも喫煙率削減の目標値はどうも明記されない可能性が高いと報じられています。これはなぜですか。

宮坂政府参考人 がん対策の推進基本計画につきましては、昨年、全会一致で議員立法をいただきましたがん対策基本法に基づきまして、がん対策推進協議会においてまずは議論するということで、現在御議論いただいているところでございます。この協議会におきましては、御指摘のように、がんの死亡率の減少なり、すべてのがん患者の苦痛の軽減等を全体目標として掲げるべきであるとの御意見が出されているところでございます。

 全体目標に関連をいたします個別の目標のうち、たばこ対策につきましても、協議会においても種々御意見が出されているところではございますが、引き続き協議会において御議論いただきまして、こうした御議論を踏まえまして検討してまいりたいと考えております。

小宮山(洋)委員 やはり、先ほど申し上げたように、少なくとも禁煙を希望している人たちのパーセンテージぐらいは目標値に入れるということが、わかりやすい取り組みになるのではないかと思うんですね。ぜひそういう方向でお願いをしたいと思います。

 もう一点、たばこについて、タクシーの禁煙のことを伺いたいと思います。

 タクシー以外の公共交通機関というのはほぼ禁煙化をされておりますし、アメリカ、イギリスなど多くの欧米諸国、アジアでも中国、台湾、韓国、タイなどでタクシーは禁煙になっています。

 県単位で全面禁煙を進める動きがありますけれども、平成十七年、東京地裁でも、禁煙化訴訟の判決で、事業者の自主性に任せず、国による適切な対応が期待されると判決が指摘をしているんですね。これは国として取り組むべきではないかと思いますが、いかがでしょう。

桝野政府参考人 タクシーの禁煙化につきましては、今小宮山先生御指摘の裁判におきましても、行政側にはそれをする権限はないとも書いていただいていまして、私どもとしては、基本的には、タクシー事業者の経営判断によって自主的に取り組まれるべき課題であるとは思っております。おりますが、私ども、例えば喫煙者の方をタクシーに乗せないとなると乗車拒否ではないかという議論もある中で、そういう議論も昔はあったのでございますが、タクシー事業者において禁煙化を選択するためには、こういうことをできるような標準約款というのをつくりまして、そういう法的枠組みを整備するとともに、導入するための手続の簡素化等に努めてまいっております。

 最近では、各地域におきましてタクシーの禁煙化の動きが非常に推進されておりまして、御指摘のような県における全面的な禁煙の導入ということも行われております。数字を少し申し上げますと、十六年度、二年前には、全体のタクシーの中で一・九八%であったものが、今現在、名古屋を入れまして、大体七%強。あと、これはまだ報道段階ですが、これからのことでございますが、神奈川県でもやるという話がございまして、これを入れますと大体一三%を超える。台数にして、この二年間ちょっとで大体七倍増という形での禁煙タクシーが走ることになります。

 私どもは、このような状況、社会的な評価等を見きわめながら、今後とも見守ってまいりたいと思っております。

小宮山(洋)委員 七倍増といっても七%しかないわけですよね。私も探して東京で乗ろうと思うと、ほとんど会いません。これはやはり、タクシーのドライバーの人たちの受動喫煙の問題もあるし、喫煙者が乗った後というのはその煙があるので、ほかの乗降客の問題もありますので、ぜひ、これもまた後日いろいろ伺っていきたいと思います。

 最後に、もう残り時間が少なくなりましたが、放課後子どもプランについてちょっと伺いたいと思います。

 今取りまとめているところということですけれども、各地でいろいろな問題がやはり心配したとおり起こっているんですね。前回の質疑のときに、民間団体が直接委託を受けて行ってきたものが補助事業でできなくなっているところが多い、特に奈良では、民間が五六%やっていたところがゼロになるかもしれないと言ったときに、高市大臣が、地元なので調べてみるとおっしゃいました。きのう質問取りに来た政府委員は、五月末で締め切りなので、まだわかりませんというんですが、締め切っちゃってゼロだったら間に合わないわけですよ。どういうふうに今取り組まれているかを伺いたいと思います。

高市国務大臣 三月九日の衆議院内閣委員会で小宮山委員から御指摘をいただきました。その後、すぐに指示を出しまして、三月十九日に厚生労働省に対しまして、そしてまた二十日に文部科学省に対しまして、内閣府から申し入れを行いました。

 内容は、放課後子どもプランの推進に当たって、放課後子ども教室と放課後児童クラブ、これを無理に一体化しないといったことなど、現在各地域で実施されている放課後対策の実態ですとか、それから、親御さんのニーズを踏まえて事業の円滑な実施に努めていただきたいということ、それから、十八年度までの地域子ども教室で国から委託を受けてきた民間団体が引き続き活動できるためにも、各地方公共団体が十分な財政措置を講じるように、制度の周知に努めていただきたいということでございます。そして、私どもが文部科学省、厚生労働省に対して行いました申し入れを、その後のフォローができますように今後も情報提供をお願いいたしまして、了承をしていただきました。

 早速ですけれども、この委員会での御指摘もあったことを受けてかと思いますが、文部科学省において、放課後子ども教室実施の推進に当たって、従来の受託団体との連携を積極的に検討するようにということで、地方公共団体あてに通知も発出していただいております。

 確かに、補助金交付の申請、五月末ですので、正確な状況というのが上がってくる、実施箇所の取りまとめが数字として出てくるのは五月末以降の時期になりますけれども、今、その施行に当たりまして不便のないように、委員の御指摘を受けましての対応を行っております。

小宮山(洋)委員 ぜひ子供たちが、そして保護者が困らないように、よろしくお願いしたいと思います。

 残り時間が少なくなりましたが、もう一点、やはり現実に起こっている問題として、豊島区の長崎小学校で、心身障害学級のすぐ隣に、この計画にのっとった子供の遊び場としての、豊島区独自の事業の子どもスキップというのが計画をされておりまして、この夏に工事開始ということになっています。

 文部科学省の指針でも、音に対して過敏な児童生徒など、聴力や発声に障害のある児童生徒等には特に好ましい学習環境を確保する必要があると言っているのに、余裕教室の定義がはっきりしないせいか、そういう身障学級のお子さんたちの学習環境が悪くなるという心配を保護者の方がされております。また、豊島区では、二十三校すべてで児童館をなくして、スキップ事業ということで学校の中につくろうとして、三分の一ぐらいの学校の校長先生が反対をされていたり、またそのスペースが、広さが狭いので、学童のスペースが大変狭く、これまでお昼寝とかできていたのができないんじゃないかとか、大変そういう心配な例もあるんですね。

 国の意図したこととは違うと思いますが、こういうような事例が起こっていることに対してはどういうふうに取り組まれるのか、伺いたいと思います。

村木政府参考人 御指摘の放課後子どもプランの関係でございますが、特に小学校内での実施を原則としているところでございますが、これは、子供たちの安全な活動場所をできるだけ早く確保しようという目的でそういう制度にしたところでございます。したがいまして、一律に小学校内への移転を目指すものではありません。各自治体において、地域の実情や利用者のニーズ、それからこれまで実施してきた事業との継続性などを十分勘案した上で、児童館を含めまして最も効果的な場所で実施をするということが望ましいというふうに考えているところでございます。

 この点につきましては、自治体の担当者を集めた会議等を通じて周知を図っているところでございます。また、個別に御指摘があったような自治体に対しても、改めまして先ほどの趣旨をお伝えしているところでございます。

 今後とも、事業が効果的に実施をされるように努めてまいりたいと考えております。

小宮山(洋)委員 おっしゃるとおりに、そういう指導はぜひしていただきたいと思うんですね。

 趣旨と違う形で、やはり身障学級のお子さんたちに影響が出るのはもちろんよくないし、豊島区の場合は区の行財政改革プランに、児童館を廃止して、その資産活用を図るとか、行革の視点でやっているとちゃんと明記してあるのです。これは本末転倒というか趣旨が違うので、子供の安全とかそういうことを確保する、子供たちのために、余裕教室があれば学校も利用しましょうということなので、その趣旨をぜひ徹底していただき、このケースについてはもう夏から工事に入るというので、大変関係者は心配されていますので、適切な指導をしていただきたいと思っております。

 ありがとうございました。

河本委員長 次に、渡辺周君。

渡辺(周)委員 おはようございます。民主党の渡辺でございます。

 十一時十五分まで官房副長官がいらっしゃらないということで、残念ながら、前半の質問は外務省の政府参考人に伺うこととなりました。内閣官房の意見を聞きたいということで質問にエントリーしたんですけれども、それでは、前半は外務省の方に伺いたいと思います。

 外務委員会でも、先般、麻生外務大臣出席のもとで質問をさせていただきました。御存じのとおり、中国が今、我が国の戦争中の残虐行為について非常に、いわゆる南京事件からことしの十二月で七十年ということで、今、南京におきます記念館を増築している。たしか委員会のときには私は、世界遺産に登録をするんだというふうな中国側の報道に対して、世界遺産になり得るのかというようなお尋ねをしました。そのときには、中国の報道等を見ておりますと、これは広さが必要なので、その面積を拡大し、広さを得るためには拡張しなきゃならぬということでしたけれども、ユネスコの方の見解では面積は関係ないというような御答弁をいただきました。しかも、そこには真実性というものがやはりなきゃいけないんだということで、この点について質問したんです。

 重ねての質問になりますけれども、日本政府として、この南京問題について日中間で話し合ったというこれまでの経緯はどうなっているのか。今までの、両国にまたがり、そして繰り返し言われてきたこの問題につきまして、学術界では、御存じのとおりたくさんの諸説がありまして、それぞれの先生方が研究をされているわけですけれども、中国政府と日本国の間でこの問題について話し合ってきたこと、どのようなレベルでどのように行われてきたのかということについて、ちょっとお尋ねをしたいと思います。

伊原政府参考人 いわゆる南京事件に関連して、例えば南京の大虐殺記念館の展示物につきまして、私どもの在外公館員が視察をして、おかしいもの、明らかに間違っていると思われるもの、そういったものがございます。

 それは、例えば一つ例を挙げますと、二〇〇五年の時点で、局長レベルで、例えばパネル表示で、ライフ誌に掲載された写真は明らかにこれは対日プロパガンダに利用された写真だ、こういうものを掲示するのはおかしいのではないかとか、また、先生から以前御指摘もありました、アサヒグラフに掲載されたような、女性とか子供がずっと写っている写真ですね、あれも、連行されている写真ではない。あるいは、パネル以外に記述についても、不必要にむごたらしい記述をしているようなところもあるというふうな、個々の展示物の事案について、局長レベルで具体的な例を示して申し入れを行ったというふうなこともございます。

 それから、より一般的には、当時の町村大臣、あるいは先般の安倍総理の訪中において、こういった問題全体について、中国側により配慮を求めるといったことも行っております。

 さらに、これは直接政府間の話ということではございませんけれども、委員も御存じのとおり、日中の両政府間の合意の上で今、日中の歴史共同研究がスタートして、既に二回の会合を行ってきております。これは来年中には成果をまとめるということで、近現代史とそれよりも以前の歴史の二つに分けてやっておりますけれども、この中で、例えば近現代史の部分では、南京事件も含めて、大きな歴史の流れの中で、日中両国の研究者の間で意見交換をし、できるだけ認識の差を縮める努力をする、そういったことも政府の主導のもとで民間の研究者の方によって今行われている、そういうことでございます。

渡辺(周)委員 今、民間レベルでも、一つ一つ個々の展示物について、先日も指摘したような、あるいはこの委員会でもかつて、戸井田議員でしたか、たしか指摘をされました。まさに、南京虐殺の写真で見る、あの検証をすると、これはとても証拠として採用できるような写真はない。もっと言えば、これは匪賊、いわゆる山賊の処刑シーンまでが、日本の軍の人間によって銃剣で突きつけられているというような、既に使い回しされているような写真が幾つもあるんだというようなものまで使われていた。

 いわゆる「レイプ・オブ・南京」の中に出てくる写真の一つ一つについても、検証すれば、これはとてもじゃないけれども真実として認められないものがある。中には、どう見たっておかしい、影の長さが違うとか、あるいは足の向きが一つだけひん曲がっている、どう見てもこれは後からくっつけたような写真が、偽造写真というのか捏造写真というのか、こんなものまでが実は使われていたということを一つ一つ検証された本を私も丹念に読みました。

 この個々のものについておかしいということについての根拠は、日本政府、日本の局長レベルで申し入れたということは、おかしいということについての根拠をかなり持っているということだと思うんですね。それに対して一つ聞きたいのは、局長レベルで申し入れた、だれに申し入れをしたのかということを伺いたいと思いますし、また、歴史の共同研究の話、今されているということは先日の別の委員会での質問でも答弁がありましたが、だとすれば、ある程度結論が出るまで、こういうものを展示することは見合わせるべきじゃないかということは当然言っているのか。

 つまり、結論が出ていないものまでも一方的に、今指摘したような、この点については見合わせるべきだ、事実に基づかないとこちら側が少なくとも主張しているものに対して、あるいは物証としてあるものに対しては、これは出すべきじゃないと言うべきだと思いますが、そういう話はしているんでしょうか。いかがなんですか。

伊原政府参考人 先ほど私申し上げました、局長レベルで展示物の不適切な点等について申し入れを行ったというのは、平成十七年の六月の日中のアジア局長間の協議でございます。

 それから、例えば中国人民抗日戦争記念館というのが、これは既にリニューアルされた北京にある記念館だと思いますけれども、こういった際にも、館員が出かけていって、展示物にどういう変更があったのかとか、おかしいところがないかとか、そういうことは常にチェックをしておりますし、そういった点で明らかに真偽について疑義がある、問題があるといった点については、中国側に指摘をしているということでございます。

 今後も引き続き、そういった中国側の展示物については大使館員あるいは総領事館員がフォローして、明らかにおかしいもの、そういったものについては適宜適切に中国側にも指摘をしていくということを続けたいというふうに思っております。

渡辺(周)委員 では、その指摘した結果はどうなっているんですか。つまり、当事者間の事務レベルの協議の中だけで、これはおかしい、これはおかしいと言っても、結果、それが例えば撤回された、あるいはキャプションが変更された、あるいは写真を外した、展示物はこれはおかしいということで言ったけれども、では中国側はどう対応したのか、あるいはするのかということについて、その結果はどうなっているんですか。

 つまり、一方的に言って、向こうは聞く耳を持たなかったら、結果としても、言っただけ、言うことは言いましたで終わってしまうんですね。この点について、今どうなっていますか。その辺の結果についてはどうなっているんですか。

伊原政府参考人 なかなか、直ちに結果を出すというのは難しい話かと思いますが、そういったこともあるので、むしろ今回のような日中の歴史共同研究等を通じて、日中双方が客観的にお互いの歴史認識を協議し、その溝を埋めていく、そういった努力が必要なのではないかというふうに思っております。

渡辺(周)委員 歴史認識というのも、これも中国側は今までずっと一貫してやってきた歴史をひっくり返すわけがないんですよ、はっきり言って。ですから、溝は、もう多分どんなに協議していっても、太古の部分については埋まっていくでしょう、しかし、この近現代の百年に関しては、まずこれはもう埋まらないだろうなというふうに見ておくことの方が私は常識的だろうと思うんですね。指摘をした結果というものが、やはり当事者だけで議論していっていたらもういけないと思うんです。史実について、これは我が国はこうだというふうに言っているのだと。

 このアイリス・チャンなる人物が書いた文章、あるいは出てくる写真についても、こうだということを当事者に言うのではなくて、やはりそれを彼らがやる理由というのは、これから北京オリンピックがまずある、そして上海のエキスポが行われる中で、いかに日本の名誉を損ねて道徳的な優位に彼らが立つか。そして、それを見に来た何も知らない日本人の青少年たちが、我が国の先祖は何とひどいことをしたのかと。

 残念ながら、私もそうでありますけれども、日本の戦後教育を受けてきた中で、その辺の知識というのが極めて学校教育の中では得られていない。どちらかというと、歴史の授業というのは、年号と人の名前を覚えて入試にさえパスしてしまえば、学問というよりも、教養というよりも知識の部分。最低限知っておかなきゃいけない知識じゃなくて、何か膨大な数を覚えて、上の学校へ行くための、本当に一つのカリキュラムの中で位置づけられてしまった中で、中国側からそのような説明をされる、あるいは中国側からそのように洗脳されてしまえば、私たちの国の先祖は何とひどいことをしたんだということで、非常にこれは間違えた歴史観を日本の国民が、日本の中で知らずに中国の中で、しかも政治的な意図を持った謀略の中で歴史認識を刷り込まれてしまうという非常に悲惨な結末、我が国にとって恐ろしい結果になる。そのことを何度も指摘をしました。

 ですから、この問題について、ぜひ日本の外務省のホームページの中で、ここにありますけれども、歴史問題についてどう認識していますかとなると、もう本当にわずかに、「「南京大虐殺」に対して、日本政府はどのように考えていますか。」たった二行です、「歴史問題Q&A」「日本政府としては、日本軍の南京入城後、多くの非戦闘員の殺害や略奪行為等があったことは否定できないと考えています。」「しかしながら、被害者の具体的な人数については諸説あり、政府としてどれが正しい数かを認定することは困難であると考えています。」その根拠は何なのか。その諸説というのは例えばどういう説があるのか。そういうことについては、少なくとも何らかの形で引用してヒットできるようにすべきだと思うんですね。

 これはホームページを例に挙げましたけれども、我が国として、やはり国際的に、中国側が指摘しているということに関しては、これは事実でない、これの出典は実はこういう全く違うところから出てきたもので、捏造されたものだということを私は全世界どこからでもアクセスできるようにすべきだと思うんですけれども、こういうことについてのお考えは今どうなんでしょう。

 つまり、我々が個々で、幾ら館員の方が一生懸命足を運んで、これは違う、これは間違いだ、これは捏造だといったところで、当事者間でしかわからない話でありまして、そうしている間にも、そこを訪ねてきた世界各国の人間が、日本という国は何とひどい国なのかということに、まさに、我々としては、戦争というのは、銃弾でなくても、宣伝は銃弾にまさるという言葉もありますけれども、まさにこうやって謀略戦争、一日一日たつうちに敗北をしていくわけであります。

 この点について日本政府はどうするか、外務省に、そして官房副長官がお戻りですので、この点についてどうお考えなのか続けてお尋ねしたいと思います。

伊原政府参考人 先ほど申し上げましたように、二〇〇六年の十月の安倍総理の訪中において、総理より、中国の愛国主義教育に関連して、日本関連の教育や歴史展示物について中国の適切な対処を要請していただいておりますので、そのフォローアップとして、外務省としても、今後この問題に真剣に取り組んでいきたいというふうに思っております。

下村内閣官房副長官 お答えいたします。

 御指摘のように、例えば「ザ・レイプ・オブ・南京」のような映画がつくられるということがあり、また、いわゆる南京事件においた記念館がつくられるということの中で、事実と違っている部分については、日本はきちっと指摘をし、また訂正を求めることは必要であるというふうに思います。

 そういう中で、今御指摘の外務省のホームページ、特にこれから、注目をされるような南京事件についてのいろいろなことが映画や記念館等で出てくるでしょうから、より詳しく事実関係を踏まえて指摘をし、そして間違ったことが中国国内の中でも広がらないような努力をすることは当然であると思いますし、このことについては、今まで以上に詳しく調査をしながら、正していくところは正していくということが必要であるというふうに思います。

渡辺(周)委員 例えば、さっき話がありましたライフ誌に掲載された写真でありますとか、あるいはアサヒグラフに出てきた写真でありますとか、いわゆるトリック写真の、見ようによってはキャプションをつければどうにでも誤解できるような、トリミングをしたり、要は、あるところだけ拡大して後ろの背景や人物が写らないようにしてしまえば、いかようにでも言うことができる。実際、もうこれは実は出典はここであるということを認めているような写真も幾つもあるわけなんですね。

 それに対して、やはり私は、一つ一つの写真を、例えば、南京虐殺記念館の中に現時点でこういうものが展示してあります、しかしこれは、もとはこういうところから出たもので全くのでたらめですと。言葉はもうちょっと品のある言葉を使ってもいいと思いますけれども、これは実は違うんですよということは、見た方がわかるような形で説明をしないと、そうした、東中野先生たちが研究をされているあの分厚い本、一つ一つを見て、なかなか一般の書店で一般的に置いてある本じゃない、かなり専門的な本でしょうし、中には、目も背けたくなるような写真があることはもう御存じだと思います。

 ですから、それに対して、もしこの問題に対して関心を持ったら、外務省の、あるいはどこか政府の機関があって、そこにアクセスをすればこれについてお答えしましょうということを、こんな「歴史問題Q&A」の二行や四行の話ではなくて、ぜひともそういう形で、その中国側のプロパガンダに対して、事実でないことに対してはやはり私はやるべきだと思うんです。その辺を、先ほど真剣に取り組むというふうに外務省からお答えありましたけれども、そういうことも考えるということでいいのか。

 それから、官房副長官は、この問題について、外務省のホームページにまで言及されたのかどうかわかりませんけれども、やはり日本政府として、これは我々日本国民みんなそうですけれども、事実に基づく批判であるならば、それは謙虚に受けとめるし、それに対してはやはり反省すべきでありますし、謝罪もする。しかし、いわれなき問題に対しては、あるいは、もう間違いなくこれは捏造だということにまで、いつまで私たちはおとしめられなきゃいけないのかという思いは一緒だと思いますので、その点について、この一方的な内容で責められてきた問題、どのようにしてこれから、余りおどろおどろしい言葉は使いたくありませんけれども、反撃をするのかということについての官房副長官の御見解をいただきたいと思います。

伊原政府参考人 私ども、外務省のホームページあるいは在外公館がつくっておりますホームページというのを広報等に今後とも積極的に活用していきたいと思っておりますので、今の先生の御指摘、そのような観点から、中で検討させていただきたいというふうに思います。

下村内閣官房副長官 御指摘の点は、もっともなことだというふうに思います。

 今までの記念館についても、外務省の方で一つ一つについて、事実でないと思われることについては中国側に対して指摘をして、局長レベルで話し合っているという話がございましたが、これは改めて、新たな記念館ができましたら、もう一度すべてのことについて、我が国にかかわる事実でないことについては全部精査をして、まず事務レベルできちっと中国側に、もしそういうことがあれば正してもらうように、修正をしてもらうように事務レベルでやっていくということがまずは必要だというふうに思います。その上で、新たな記念館において日本の主張が反映されるのであれば、その時点で一つ一つ変えていくということが一番現実的であるというふうに思います。

 また、そういう経過について、ホームページが適切かどうかというのはいろいろあるかもしれませんが、しかし、日本政府が新たな記念館について間違いは正しているということを内外にわかるような形で明確にしていくということは、当然必要なことだと思います。

渡辺(周)委員 たまたまホームページに言及したのは、余りにも外務省の「歴史問題Q&A」というホームページが、根拠もなければ、「諸説」というふうに触れられた諸説すらも載せられていない。見たって全然わからない。ホームページというツールが、ある意味では世界じゅうからアクセスをする上で、当然のことだが一番最初に情報を得られるものだろうとして挙げたわけですけれども、これは日本政府として、あるいは日本国として、二カ国間の協議の中で指摘をしていくなんというのんきなことを言っていたら、もう膨大な反日的組織がロビイストとしてアメリカの中にもある。だからこそ、今度のような、アメリカの下院の決議が行われるようなことになってきているわけであります。

 この点に対して、やはり政府として、黙っていたらいずれ落ちつく問題だ、最近ちょっと鎮静化してきたから、この機会に乗じて、余りこちら側からもう一回蒸し返すようなことをしない方がいい、だから、何となくおさまってきたので、しばらく様子を見ようなどといって通り過ぎるのを待っていれば、間違いなく、この問題、またどこかのタイミングで当然再燃をする。

 そして、国際的なイベントが開かれる中において、またこうした記念館が観光施設として今度は公開されたことによって、その中身を見た人は、全くわからない。例えば、欧州や北米から来た人たちが、同じような顔をした民族の国の中で何かいろいろあるけれども、こんなことは当然歴史の中であったんだろう、日本という国が当然それぐらいのことをしたんだろう、その程度で眺めていってしまったときに、やはり、我が日本の国がありもしないことで批判を受ける、あるいは軽蔑をされるということだけは何が何でも避けたいなと思うわけであります。

 これは二国間で詰めていく、ただしかし、その場合には、先送りされてしまえば、事実として認められないものがずっと蓄積されていってしまうわけであります。ぜひその点については、正しいことについては我が国としての発信をもっとすべきだと思うんですけれども、その点について政府としてどうなんですか。これはホームページに限らずですけれども、やはり世界に対して、時にはアメリカの新聞に、全国紙に意見広告を出すなり、私はそのぐらいのことをしていいと思うのです。

 今回の慰安婦の問題でも、いわゆる二十万人が性奴隷にされたという見出しで四月の二十六日に、あれはニューヨーク・タイムズだったでしょうか、私も全面広告を見ました。その中には、路上や家から強制的に連れていかれて、そして船に乗せられて各地に送られたんだというようなことが書いてあるわけなんです、これはごらんになったと思いますけれども。

 こういうことを一方的に言われておいて、日本は謝罪をしていますと。きょうは時間がないからこれ以上言いませんけれども、何に対して謝罪しているかについても、残念ながら安倍総理は訪米ではっきりと言われなかった。その時間もなかったのかもしれませんけれども。

 ですから、やはり日本の国として、認めるべきことと認めないことははっきりと分けて、世界に向かって発信をしていかないと、いわれなき批判だけがどんどん戦略的に波状攻撃を受けて積み重なっていく。その中で、我が国としての歴史の問題に対しての、日本側が、私たちの国が日本の名誉と誇りにかけて一生懸命積み上げてきた研究成果、学術界の方もいらっしゃる、政府としてもたくさんの資料がある、私は、やはりそれをもとにして世界にちゃんと言うべきことは言うべきだと思うんですけれども、政府としてはどうお考えですか。

 慰安婦の問題に限らず、南京もそうでありますけれども、これからこうした諸外国に対して、本当に、これはこういうことなんです、我が国として、現時点ではこういう認識ですということに対して、やはり何らかの形で発信し続けるべきだと思うんですけれども、政府としてはいかがなんですか。

下村内閣官房副長官 まず、南京大虐殺記念館についてでありますけれども、これは、昨年の十月、安倍総理が訪中をいたしまして、中国との間におきましても専門家による歴史研究をこれからしていこうということになりました。この中で、南京事件についても取り上げて、日中のそれぞれの歴史専門家の中でまずきちっと議論をしてもらう。当然この中で、記念館についての、史実に基づいているかいないか、どこがどうなのかということについては専門家の方々に議論していただいて、そしてそれを公表していただくということが、これがある意味では政府的な関係の中で今後やるべきことだというふうに思います。

 それから、アメリカにおける従軍慰安婦問題等については、これは政府というよりは、特に中国、韓国系のNPO関係団体、世界三十幾つを超える団体がネットワークを組んで、あのようなキャンペーン的なことを含めて進めてきて、そして、新聞の広告記事もそういう観点から出されているということがございます。

 ですから、ぜひ、日本国内のそのような認識を持った民間団体やNPO団体等にも、日本の事実のところはきちっと世界で主張するということについてもお願いしたいなというふうに思いますが、しかし、日本としても、世界において事実でない歴史観が語られるとしたら、これは日本の国益に反することでありますから、今後、戦略を持って情報的なものも含めて取り組むということが必要になってくるというふうに思います。

渡辺(周)委員 慰安婦の問題については、もともとの話というのは、強制連行というものがあったということから始まって政治問題化したわけです。慰安婦という方もいたし、慰安所というところもあった。当然、その移送や管理、許可に関しては、関与といえば、これはもう軍部が関与していたことは当然だ、これはだれも否定をしておりません。

 ただ、そもそもの問題というのは、工場から連れ去られたり、先ほど申し上げたように、路上や家から銃剣で突きつけられてそういうことにつかされたということに対しては、いまだに証明するような事実やエビデンスは出てこないじゃないかということに対して、私たちはやはり主張すべきだというふうに思うんです。

 そういう方々、戦時下とはいえ、そのような職業につかなければいけなかった女性の身の上に対しては本当に同情しますし、もう二度とこんなことがある社会であってはならないという世の中だということは、日本の一つの宣言としてやるべきだと思いますけれども、過去の問題を、政治的に真実性があるかないかという中で裁かれるという、それが政治利用されてきたことに余りにも今まで政府が事なかれ主義で来たんだということに対して、ここまで問題が大きくなったんだと私は思っております。

 結びに一言言って終わりにしたいと思いますけれども、いわゆる百人切りということが報道されたことに対して、戦争時の報道とはいえ、あれは実はほら話だったということがあった。実は昨年の十二月に裁判があったんですね。名誉回復は成らなかったけれども、裁判所の、東京高裁の判決の中で、百人切りが行われたという記事については信じることはできないんだというようなことを司法の場で認めたんです。そのときに、一貫して訴えてきた遺族の方の中で、百人切りが真実ならどんなことでも耐えますが、うそなのです、汚名を着せられ歴史に残るのは残念ですというコメントが、当時あるところで紹介されていました。

 私たちは、あったことは率直に認めるし、謝罪をし、また当然償いをしなければいけないと思いますけれども、なかったことを、政治利用された結果によって歴史の中で汚名を着せられていくことがやはりあってはならないということを最後に申し上げまして、またこの点につきましては質問をさせていただきたいと思いますので、これで終わりにしたいと思います。

 ありがとうございました。

    ―――――――――――――

河本委員長 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として農林水産技術会議事務局研究総務官伊地知俊一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

河本委員長 次に、岡本充功君。

岡本(充)委員 民主党の岡本でございます。

 きょうは、高市大臣にもお越しをいただいて、食の安全、とりわけ米国産牛肉のBSEの問題、国内のBSEの問題、牛肉の食の安全について、時間の許す範囲で少し話をしたいと思います。

 まず最初に、一昨日、新聞等にも載りましたけれども、平成十八年度厚生労働科学研究報告書にも載りましたけれども、動物衛生研究所が分担研究者となり、プリオン病センターで研究をなされた「牛海綿状脳症プリオンの生物学的性状と種の壁のメカニズム解明」というこの報告書をもとに、新聞で、「二十一・二十三カ月 BSE牛 感染性確認できず」こういう報道が躍りました。「輸入条件影響も」とも書いておるわけでありますけれども、この研究報告について厚生労働省はどのように評価をし、この研究結果というのはいかなるものであったというふうにお考えになられているのか、まずは御答弁をいただきたいと思います。

菅原大臣政務官 今委員から御指摘の新聞報道のもととなりましたこの結果につきまして、平成十八年度のこの報告書の中で、二十一カ月齢、二十三カ月齢のBSEの牛につきまして、異常プリオンたんぱく質のマウスへの伝達性は確認されていない、このように記載をされております。

 一方で、これらの牛につきましては、異常プリオンたんぱくが検出をされておりまして、BSEと確定診断されたものであり、伝達性試験の結果が陰性であったとしても確定診断結果は変わらない、このように厚生労働省としてはとらえております。

 あわせまして、BSEと確定診断された牛につきましては、と畜場法に基づいて焼却処分をすることになっておりまして、食用には用いていない、こういうことになっております。

 また、伝達の試験の内容についてお話を申し上げますと、本試験につきましては、我が国で診断されました現在三十二のBSE事例のうち、八例目並びに九例目の異常プリオンたんぱく質の量が、通常のBSE感染例のものと比較して五百分の一から千分の一と極めて少ない状況にございまして、この性状解析には増幅が必要となったわけでございます。このため、牛の異常プリオンたんぱく質への感受性が高いいわゆるトランスジェニックマウスへの脳内接種を行いまして増幅試験を行ったものでございます。

 そういうような一連のことが、今回の報告書の中に途中経過として取りまとめられている次第でございます。

岡本(充)委員 ちょっと確認をしておきたいんです。私の言っていることが厚生労働省の見解として正しいのか正しくないのかというところを確認したい。

 まず、今回の実験は、そもそも、脳乳剤という、脳から生成した液体を脳内接種した、その量で、要するに体積でその実験の公平性、公正性を担保しているわけでありまして、その中に含まれているプリオンの量をそろえたわけではないわけですね。まずそれが一点目。つまり、その中のプリオンの量が、二十一カ月、二十三カ月齢というのは少なかったということでこの実験はそもそもスタートしているということ。

 それから、このプリオンの量に差がある中で、確かに、今回、伝達性の確認をすることができず失敗をした、また、二十一カ月、二十三カ月齢から得た異常プリオンが増殖できなかった、そして、人への一般化が難しい、こういったことが事実だというふうに私は考えておるわけでありますけれども、以上のことがイエスであるかノーであるか、それだけでいいです、答えてください。

菅原大臣政務官 前段の、プリオンの量につきましては、先ほども答弁申し上げましたように、通常のBSE感染例のものと比較して極めて少ない、こういう状況がございます。それによって、この試験、実験というものが妥当であるかどうかということは、あくまでもこの量が少ないという状況の中でやらざるを得なかったという状況があったというふうに認識をいたしております。

 また二つ目、人への影響につきましては、御案内のとおり、マウスへの脳内接種については、当然これは試験の中で可能であるわけでございますが、実際に牛の異常プリオンたんぱく質を人に接種するということは、今現在では非常に実現困難、難しい状況でございます。感染性の評価の手法が確立されていないという現状の中で、人への接種、そしてそれに関して感染性がどうであるかということは、実際のところ、今お答えするに至らない状況にございます。

岡本(充)委員 人への接種は困難じゃなくて、やってはいけないことなんですよ。

 政務官にお問いかけしていること、イエスかノーかで結構なんです。私が先ほど聞いたことが、この実験の結果として正しいのか正しくないのか、それだけでいいです。お答えをいただきたい。

菅原大臣政務官 イエスでもありノーでもあるような気がいたします。いろいろと広範にわたって、この研究、途中経過でございますので、今のところこのようなお答えしかできません。

岡本(充)委員 これは科学的な見地なんだから、イエスかノーかしかないですよ。そんな、大臣、きちっとレクを受けてくださいよ。これがノーだという部分があるんなら、では、ノーだという根拠を今から示してください。

藤崎政府参考人 担当部長としてお答えさせていただきます。

 イエスかノーかということで科学的なことをお答えするのはなかなか難しい局面もございますが、まず最初の、今回の実験が感染性が確認されていないということについて、これはいわゆるもともとのプリオンの量が少ないからそのような結果になるのではないか、それはイエスかノーかという御質問かというふうに理解いたして……(岡本(充)委員「いや、違いますよ」と呼ぶ)そうではないんですか、失礼しました。そういう趣旨ではないんですか。

岡本(充)委員 では、もう一回聞き直します。

 そういう、原因と結論を、こうだからこうだじゃないんです。私は結論だけを聞いています。考察じゃないんです。いいですか、部長、申しわけないですけれども、もう一回言いますよ。

 今回の実験は、そもそもプリオンの量に差がありましたよね。脳内接種をした実験系ですけれども、プリオンの量に差があった、これはイエスなはずです。それから、伝達試験に失敗をした、これもイエスなはずです、結論ですからね。それで、二十一カ月と二十三カ月齢から得た異常プリオンは増殖できなかった、これもイエスなはずです。人への一般化が難しい、これもイエスなはずです。これでノーだという部分が政務官があると言うから、それは一体どこにあるのかと聞いているんです。

藤崎政府参考人 私どもがレクチャーをさせていただいた立場でございますので、御迷惑をおかけしてはならないという意味で私の方から御説明させていただきますが、今先生おっしゃった四点につきまして、伝達試験を失敗したと見るか、それは感染性が確認できなかったというふうにとるかという表現上の問題もあるのではないかなと思いますので、これを、研究そのものが失敗したとか、そういうとらえ方がなかなかできないという意味において、必ずしもその全部をイエスと言い切れないというふうに政務官が御判断されたのではないかなというふうに私はそんたくいたしますけれども、今先生が私に確認の意味で四点言われたことにつきましては、失敗したかという表現はともかくとして、その事実関係については、先生がおっしゃるようにイエスであるというふうに事務当局としては判断いたしております。

岡本(充)委員 ここまでにこんなに時間がかかると思いませんでした。しっかり厚生労働省、国会答弁、時間が限られているんですから、これは確認するときのう通告しているんですから、それはちゃんと答弁をしてもらえるようにしておいてもらわなければ困ります。

 続いて、二十一カ月、二十三カ月齢の牛の処分、今回の実験を踏まえて、今回の牛の処分が適切だったと先ほど御答弁をもういただいておりますけれども、今後とも、若齢牛であれ非定型であれ、BSEの牛は国民の食卓の上にはのせないという意欲を、高市大臣と食品安全委員長にそれぞれその決意をいただきたいと思います。

高市国務大臣 これまでも、食品安全委員会で公正中立な立場から、そして科学的知見をもって牛肉の輸入条件に係る判断もさせていただいております。危険な牛肉を国民の食卓にのせないという強い思いを持って取り組んでまいります。

見上参考人 お答えします。

 要するに、BSEの検査をやって陽性だったものは食卓にのせないという、御趣旨はそうですよね、そのとおりでございます。

岡本(充)委員 大臣、危険な牛じゃなくて、BSEの牛、BSE感染だと確認をされた牛は当然食卓にのせない、こういうことです。危険な牛というふうなあいまいな表現じゃなくて、BSEの牛とはっきり言ってください。

高市国務大臣 BSEに感染が確認された牛は国民の食卓にはのりません。

岡本(充)委員 御答弁をいただいたところで、今度は、同じく新聞報道等にも載っておるわけでありますけれども、米国から牛肉の輸入条件の緩和の要求があると私は聞いております。今、それぞれ要求が来る中で交渉をされているんだろうと思いますが、今度は厚生労働省、農林水産省、どちらでも結構でございますけれども、どういう条件になれば食品安全委員会に輸入条件緩和の諮問をするのか。今の段階で想定するのは難しいと言われるような気もしますが、しかし、何らか、例えばこういう条件が整えばというものがあると思います。それは一体どういうような条件なのか、お答えください。

藤崎政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま先生御指摘のように、どういう条件かということを今の時点で明確にお示しするということはなかなか難しいわけでございますが、現在の米国からの要求といいましょうか、言われていることにつきましては、まず、OIEにおけるステータスの申請をしておりますので、それがOIE総会で仮に米国の主張するような形で管理されたリスク機関に認定されるということになりますと、それをベースに、国際基準に従って日本の輸入条件を緩和するようにということが当然要求されてくるんだろうと思います。

 また、もう一方で、現在、昨年の七月に輸入を再々開いたしましたときに、検証期間として、きちんとしたアメリカの輸出条件のプログラムが機能しているかどうかを検証するということがございますので、この検証期間が終了しないことには、私ども、そういうお話が来ても新たに協議に入るということはできないというふうに申し上げておりますので、それが終了するということを前提にして、仮にそういうお話が来ればということになろうかと思います。

 私どもリスク管理機関としては、厚生労働省、農林水産省、それぞれいろいろと、そういうことがもし要求が出てくれば、どのようなことを検討した上で食品安全委員会に諮問が可能なのか、つまり、こういう形で検討をお願いいたします、そしてその検討の結果がこうであれば私どもリスク管理機関としてはこのように対応してまいりますというようなことを整理してお話しすることになろうかと思います。

 そういう意味では、やはりこれまで、リスク評価機関としての食品安全委員会で、御指摘になられましたような米国における飼料規制のあり方の問題、あるいはサーベイランスの状況等々、こういうものを勘案しながら、私どもとして米国の要求するような条件緩和ということをリスクを評価していただくという意味において、食品安全委員会に諮問できるかどうかということを検討していくことになるのではないかなというふうに考えております。

岡本(充)委員 それは最後の方に聞こうと思っていたんですけれども、本来であれば、例えば、米国で懸念をされている、今部長が言われましたサーベイランスの問題、それから飼料規制の問題、それからもっと言えば、米国がやるやると言っていてなかなか進んでいっていないように見えるアニマルIDの話、それからSRM除去についても一部不安が残っているという話、肉質判別のA40、これが本当に今の線引きとして妥当なのかどうかのフォローアップ調査も、これは懸念が残っている。指摘をすれば幾つもこれは懸案があるわけであります。

 この一つ一つをきちっと片づけてからでなければ、当然、三十カ月齢に上げる云々以前の問題として、今の検証期間も終えられないんじゃないかと私は思うわけなんでありますけれども、この検証として、これから米国に行って工場の中の手続はどうやら見てくるようでありますけれども、こういった飼料規制のあり方、サーベイランスのあり方、もっと言えば、先ほど指摘をした個別の事案についても含めて、きちっと米国で今回の査察、チェックをしてきてほしいと思うわけでありますが、こういった観点も当然チェックをしていただけるんですね。

藤崎政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の査察は、先ほど申し上げましたように、検証期間の終了が可能かどうかということでございまして、その検証期間の終了とは何かといいますと、対日輸出条件のプログラムが機能しているかどうかということ、システムとしての評価を行うということになってまいりますので、それは何かといいますと、二十月齢以下のものが入ってくる、そういうような形になっているかどうかということでありますし、また、SRMがきちんと除去されているかということを見てくるということになっております。

 そういう意味では、必ずしも今の時点で、飼料規制がどうかということが今回の査察の対象になるということではなく、今先生おっしゃったように、広い意味で、今後の日本に対する輸出条件の緩和要求をしてくる中で、我々としてどういうことをデータとしてお示しいただくかという中では当然に含まれてくる話ではないか、そのように考えております。

岡本(充)委員 今回のいわゆるテスト期間終了というのは、二十カ月齢以下の品が日本に届いているのかどうか、多分、工場内の手続、プログラム、それから書類、これをチェックしてくることがメーンなんだろうと思っているというか、これしかチェックしてこないんだろうと私は正直にらんでいます。

 しかし、そもそも米国産牛肉の安全性という観点でいえば、この二十カ月齢が適切であるのかどうか、A40が適切であるのかどうかというそもそも論についても、本来はこれからのフォローアップが必要だと明確に指摘をされているわけであって、それについてのフォローアップもなされない中、本当に今のテスト期間を終えていいのかどうか、こういう疑問が生じるわけなんですね。

 ここで、農林水産省に一点確認をしておきたいんです。かねてより私が指摘をしております肉質判別のフォローアップ、これはいつになったら出てくるんですかね。

 日本政府は、外交でも、例えば北朝鮮の問題と比較するのも失礼であるから言いたくもないけれども、比較をすれば、外交においては、例えばいつまでにという条件をつけてくるのが、時間がたてば至極当然のことです。相手のあることですから、これでずっといけるのであれば、それは相手の言うことをただ聞いているだけにすぎなくなってくる。いつまでにこの資料を整えさせるのか、整えてもらえるように返事が来るのか、せめてそこだけでも明確な期日をお示しいただきたいと思います。

貝谷政府参考人 お答えいたします。

 今先生御指摘のA40の問題、これはかねてより先生からも御指摘をいただいております。二月にも委員会での御指摘ございました。私ども、それ以前にも、査察の際なりさまざまな機会を通じまして米国側には督促を行ってきているところでございます。

 A40そのものにつきましては、専門家の検討の結果、判別の方法としては極めて精度の高いものだというような見方をいただいた上で、さらにフォローアップというのは今先生御指摘のとおりでございますが、今現在、米国からは、これについてのフォローアップ報告書は来ておりません。

 私どもといたしましても、米国側に対しまして、今先生はいつまでにということをおっしゃいましたが、提出可能な時期の明示を求める、今後そういう形で行っていきたいと考えておりまして、早急に報告書を提出するよう強力に働きかけていきたいというふうに考えております。

岡本(充)委員 その報告、どうだったかぐらいは、いつまでに私に教えていただけますか。

貝谷政府参考人 これは、私ども大変米国側に対しても強く言っているところでございますし、さらに今後それを米国側にも強く言っていくということでございますので、状況に応じまして、先生の方にも御報告できるようにしたいというふうに思っております。

岡本(充)委員 その結果すらいつ報告してもらえるかわからないというのでは、これは大変残念でありますし、そういうことであるから、逆に言えば、本当に一生懸命やっているのかなという疑いすら持っちゃう。見えないわけですからね、私の方からは。ぜひこれは早急に報告をいただきたいと思います。

 続いて、食品安全委員会にもう一度ちょっと戻ります。

 日本へ牛肉を輸出している、十三カ国ほどあると聞いておりますが、BSEのリスク評価、みずから評価をしていくということが一部報道され、これから検討していくという話でありましたが、そろそろどういう方向性を出すのかというのが決まってくるんじゃないかと思うんです。今後のみずから評価に向けての方針なりが、今お示しできればお示しをいただきたいし、お示しいただけないなら、いつごろまでにその方向性を発表されるのか、その議論の過程だけでも御説明いただけますか。

見上参考人 本来だったら高市大臣がお答えした方がいいような気がするんですけれども。

 どういうステップで今まで来ているかをちょっと言いますと、既に、まず最初はプリオン専門調査会から、みずから評価で十三カ国やるということが調査会で決まって、それで食品安全委員会の中でそれを話して、次のステップとしてリスコミをまずやって、それを四回やって終了して、その次のステップとしてパブコメを今現在やっている最中でございます。それが終わったら、食品安全委員会として、みずから評価を本当にやるかどうか最終決定をしまして、それでプリオン調査会等とも相談してやっていきたい。

 現時点においては、最後の、食品安全委員会でのそれは終わっていませんので、パブコメが終わり次第やりたいと思いますが、将来ですけれども、多分そういう方向づけになるとは思いますけれども、同時に現在、資料を並行して集めています。

 以上が経過でございます。

齊藤政府参考人 済みません、ただいま見上委員長からお答えしたのが基本的な流れでございますが、ちょっと一点だけ。委員長から御訂正いただいた方がいいのかもしれませんが。

 プロセスの中で、意見交換会を実施しました。それは、四月二十三日から二十七日にかけて意見交換会を実施しておりますけれども、意見交換会を実施することで皆さんの意見を聞くということで、これについてパブリックコメントは特段とらない、この意見交換会をもって次の委員会での検討に進む、そういうふうに予定しております。

岡本(充)委員 どちらにしても、方向性としては、みずから評価をやるという方向性は今委員長からお示しをいただいて、うなずいていただいていますからそれは事実でしょうから、きちっとやっていただきたい。

 それからもう一つは、米国産牛肉のリスク評価も、再度、もしかしたら諮問される可能性があるかもしれません。その中でぜひお願いをしたいのは、リスクの評価をするのが食品安全委員会の仕事だといっても、例えば米国の牛肉の安全管理体制についてリスク評価をするというのも、これはリスク評価の対象になり得るわけですよね、安全管理体制。

 例えば、これはもう前回の結論が出たときにも、安全管理体制に懸念を示しながらも、そこの部分はリスク管理官庁に任せる、そういう整理で評価をしていました。しかし、安全管理体制が本当に守られているかどうかをチェックするのはリスク管理官庁であったとしても、この体制自体が本当に食品に対するリスクとしてどうなのかということを評価するのは食品安全委員会の仕事であると私は思うわけであります。

 そんな中、先ほども出ましたサーベイランスの状況、そして飼料規制のあり方、それからアニマルIDの問題、こういったものがありますけれども、例えばSRM除去、また飼料規制の今の現状など、こういったものを組み合わせたリスク分析などは今後なされていく御予定があるのか。もし再諮問をされたときには、そういった部分にも十分なお力を注いでほしいと思うわけでありますが、委員長として御答弁をいただきたいと思います。

見上参考人 それは非常に難しい問題で、食品安全委員会はあくまでも管理に関しては一切入り込まないというのが哲学でございまして、仮に今議員が御指摘の点等を考えても、あくまでも管理省庁がそれはやるべきことであって……(岡本(充)委員「管理はそうです」と呼ぶ)それで、管理がどういうふうに行われているかというのも食品安全委員会でチェックはできません。人もいないし、何もいないし。それはあくまでも厚生労働または農林水産省がやるべきことであって、我々はやるつもりはございません。

岡本(充)委員 違うんです、委員長、何も管理ができているかどうかをチェックしろと言っているわけじゃないです。管理の体制がどうなのかというのは、これは評価の対象になるんじゃないですか。今、人がいないと言われたけれども、人がいればできるのかどうかは別の段として、評価の対象として、こういう管理体制がいいのかどうか。管理ができているかどうかじゃないんですよ、管理体制はどうなのかということが評価の対象になるんじゃないですかと聞いています。

見上参考人 ごめんなさい、そうですけれども、それはもう既にアメリカ、カナダ産の牛肉の同等性をやったときに、十分評価機関としてプリオン専門調査会がそれをやりました。

岡本(充)委員 ただ、最終的な結論の中には、一部懸念が示されている、そういう結論であったことはもう委員長も御承知のとおりであります。

 したがって、今管理体制がどうなっているのかについて食品安全委員会としてもフォローアップをしていく、そういう必要性が、次の諮問のときなのか、時期はいずれにせよ、出てくるんだというふうに私は思うわけなんですよ。今すぐやれと言っているわけじゃない。ただ、そういう機会を見つけて安全管理体制ということについてのリスク評価もぜひやっていただきたいし、その中では、SRMの除去と飼料規制の状況をどのように組み合わせたら例えばどういうようなリスク評価になるのかというような部分についても、これはぜひ評価をしていただきたい、こういうことをお願いしています。

 今、単品で評価しているんですよ、これまでは。SRMの除去の状況はどうだとか、飼料規制の状況はどうだとか、こういうふうにやっている。例えばこういう飼料規制でこういうSRM除去、これだとこういう評価だ、こういうようなコンビネーションでの評価を十分なされていないと私は見ておりますので、そういった部分についてもぜひ評価をいただきたいということをお願いしているわけであります。

 それについて委員長から、もちろん中身を、これもやれ、あれもやれと私が命ずる立場でもありませんが、やっていただきたいという要請でありますので、それについては御検討いただけるかどうかだけでもお返事いただけますでしょうか。

見上参考人 私の立場から、正式にそういうものが来た場合にプリオン専門調査会の評価チームとも相談しながらやるということで、この場で議員の御指摘の点をやりますともやりませんとも、そういう御返事は差し上げるわけにはいきません。(岡本(充)委員「努力はしてもらえますか」と呼ぶ)先ほど申し上げたとおりです。

岡本(充)委員 努力はしてもらえるということですから、それを大いに期待したいと思います。

 これできょうの質問は終わります。ありがとうございました。

河本委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午後零時三分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時二分開議

河本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 この際、お諮りいたします。

 第百六十四回国会、額賀福志郎君外九名提出、地理空間情報活用推進基本法案につきまして、提出者全員から撤回の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

河本委員長 内閣の重要政策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官山浦耕志君、内閣参事官小滝晃君、坪井裕君、刀禰俊哉君、内閣府政策統括官丸山剛司君、総務省大臣官房総括審議官久保信保君、外務省総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長中根猛君、文部科学省大臣官房審議官板谷憲次君、経済産業省製造産業局次長内山俊一君、国土交通省大臣官房審議官辻原俊博君及び国土地理院長藤本貴也君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

河本委員長 地理空間情報活用推進基本法案起草の件について議事を進めます。

 本件につきましては、西村康稔君外五名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の共同提案により、お手元に配付いたしておりますとおりの地理空間情報活用推進基本法案の起草案を成案とし、本委員会提出の法律案として決定すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。西村康稔君。

西村(康)委員 地理空間情報活用推進基本法案の起草案につきまして、提案者を代表して、その趣旨及び内容について御説明申し上げます。

 平成七年一月、私の地元で発生いたしました阪神・淡路大震災以降、政府において、地図データと地図上に位置づけられるさまざまな情報を用いて、視覚的な表現、高度な分析、迅速な判断を可能とする地理情報システム、いわゆるGISを推進しており、道路などの位置、土地の境界に至る基本的な国土における地理空間情報は次第にデジタル化されつつありますが、同じ基盤的なデータがさまざまな機関や団体により重複して整備され、互いに重なり合わない等の現状があります。そのため、各システムの連携の強化を図り、さまざまな情報の重ね合わせを可能とするため、より高精度で新鮮な共通白地図が必要となっています。

 また、人工衛星を使った米国の全地球測位システム、いわゆるGPS等の衛星測位は国民生活や国民経済に深く浸透し、重要な社会基盤となっているとともに、我が国でも準天頂衛星システム計画が推進されています。

 平成十四年の測量法改正等により、日本測地系から世界測地系への移行が行われ、これら地理情報システムに係る施策及び衛星測位に係る施策の連携の可能性が拡大しており、二つの施策の相乗効果等を柱とした立法を行うことは時宜にかなうものとなっております。

 本法律案は、このような状況を踏まえ、地理空間情報の活用の推進に関する施策に関し、基本理念を定め、並びに国及び地方公共団体の責務等を明らかにするとともに、地理空間情報の活用の推進に関する施策の基本となる事項を定めようとするもので、以下、その概要について御説明申し上げます。

 第一に、米国等では、地理空間情報の活用に関する技術、人材、制度等を包含する概念を国土空間データ基盤、すなわちNSDIと称しておりますが、我が国においてもこれに対応する国土空間データ基盤を形成するため、総合的、体系的に施策を実施し、関係する施策の相乗効果を発揮すること、信頼性の高い衛星測位サービスを安定的に享受できる環境の確保、その他防災対策の推進、行政運営の効率化、高度化、多様な事業の創出、民間事業者の技術提案、創意工夫の活用、個人の権利利益及び国の安全への配慮等の基本理念を定めることとしております。

 第二に、国及び地方公共団体並びに関係事業者の責務について規定しております。

 第三に、政府は、これらの基本理念を実現するため、地理空間情報活用推進基本計画を新たに策定し、地理空間情報の活用の推進に関する施策を総合的、計画的に推進するとともに、計画の策定及び施策の実施に関し、関係行政機関の協力体制の整備をすることとしております。

 第四に、国は、地理空間情報の活用の推進に関する施策全体に関係するものとして、政策研究、知識普及、人材育成、行政における地理空間情報の活用、個人情報の保護のために必要な施策を講じることとしております。

 第五に、国は、地理情報システムに係る施策として、電子地図上における位置を定めるための基準となる情報で電子化されたものであり、道路や鉄道の位置、三角点などのようにさまざまな情報の位置決めの基準となる基盤地図情報の整備や地籍や登記などの行政の各事務と基盤地図情報の相互活用、国が保有する基盤地図情報等の原則無償提供などに関する施策を推進することとしております。

 第六に、国は、衛星測位に係る施策として、GPSを運用している米国政府等の地球全体にわたるシステムの運営主体との連絡調整、衛星測位に係る研究開発、技術実証、利用実証、その成果を踏まえた利用促進を推進することとしております。

 これらの施策の実施により整備される地理空間情報を活用して、例えば、社会的弱者に対するより効果的な行政サービスの実施、災害時におけるより迅速、正確な対応、民間事業者による新たなサービスの創出など、国民生活の向上に寄与するものと期待されるところであります。

 その他、附則において、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行するものとしております。

 以上が、本起草案の趣旨及び主な内容であります。

 何とぞ速やかに御賛同いただきますようお願い申し上げます。

    ―――――――――――――

 地理空間情報活用推進基本法案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

河本委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 本件について発言を求められておりますので、順次これを許します。平井たくや君。

平井委員 自由民主党の平井たくやです。

 この法案の起草については、まことに意義深いものであると考えており、動議には全面的に賛成であります。また、法制定後の政策展開をより充実したものとするためにも、その立法趣旨や法案の基本的な性格に関する理解を深めて、執行に向けた議論を行っていくことが重要であると思っております。そうした観点から、何点かお尋ねをさせていただきたいと思います。

 地球上あるいは地球外のすべての生物や物、すなわち森羅万象には位置と時刻があります。もちろん人間にも位置と時刻があります。あらゆる情報を効率的に活用していくためには、位置と時刻を軸として情報を管理していくことが非常に有効な方法であると言えると思うのであります。このように考えますと、地理空間情報の活用技術は、位置と時刻を軸とする情報の管理にほかならず、本格的な情報化社会への扉を開く基本ツールにほかならないと思います。

 世界的科学誌ネイチャーでも、スペーシャル・インフォメーション・テクノロジー、地理空間情報技術は、ナノテクノロジー及びバイオテクノロジーとともに、将来が期待される三大重要科学技術分野の一つとされております。科学技術創造立国日本の将来の浮沈を左右すると言っても過言ではない重要分野であると思います。

 今回の法案は、新産業、新サービスの創出、国民生活の安全、安心、利便性の向上、行政の効率化、高度化、弱者保護の強化、国土の利用、整備、保全などに大きく貢献するものであり、我が国の人口が増加しない時代にあっても、地理空間情報技術を駆使して豊かな暮らしを実現できる空間情報社会の実現という大きな夢や可能性を持つすばらしい政策を提案するものであると思います。

 そこで、まず、地理空間情報を高度に活用することは我が国の経済社会にどのように貢献すると期待されるのか、地理空間情報を高度に活用できる社会とはどのような社会をイメージすればよいのか、国民生活の利便性の向上や安全性はどのようになるのか、提案の議員にお尋ねをしたいと思います。

新藤委員 平井委員にお答えする前に、まず、私ども、自民、公明、民主三党でこの法案を提出することができました。国家の基盤を整えるという意味において、国家的な大義において各党が意識を共有できたこと、そしてまた、本日この法案審議に至るまでの間、いろいろな御努力、御尽力を賜りましたことを、まず提案者の一人として御礼申し上げたいと思います。また重ねて、委員長に御礼を申し上げたいというふうに思います。

 そして、何よりも国家的な基盤を整えるという意味において、今委員が御指摘いただきましたように、これからの期待される世界三大技術のうちの一つでもある、この地理空間情報を世界に先駆けて実用化できるならば、これはまず第一に、我が国の国民、市民社会、そしてまたそれは世界に対して大きなビジネスチャンスを得られるだろう、このように期待しているわけでございます。具体的に申しますと、皆様御案内のように、最近のブロードバンドインターネット、それからGPS機能つき携帯電話など、いろいろとITの高機能化が始まっております。そして、そういうものの高性能化によりまして、いろいろなサービスが始まっているわけでございます。

 でも、最大の問題は、森羅万象すべてに位置と時刻と高さがあるわけでございます。これを正確に把握する。そして、それがどう移動したか、どう移動しているか、これを特定することによって、それをいろいろな行政サービスやビジネスチャンスに結びつけようじゃないか。これが、電子白地図である、国土を碁盤の目に電子的に切って、まず基盤の図面をつくり、そこに衛星測位によって正確な位置と高度、時刻を与える、これを二つ合わせることによってサービスができるということでございます。

 これは限りなくいろいろな可能性があると思っておりますが、少なくとも今もう既に始められつつありますのが、要するにマンナビゲーションと言われる、人がどこにいるか。例えば、弱者、高齢者の保護のためのいろいろなサービスができると思います。それから、子供の位置通報サービス、警備会社への現場急行サービス、こういったものももう始まっております。

 それから、交通につきましては、まさに乗客の要望に応じたバスやタクシーの運行管理だとか無人運転だとか、こういったものがさらに正確にできるようになる。それから、地域の住民、事業者がこの情報を共有することによりまして、観光だとか文化情報、インターネット上の地図を共有できるだとか、いろいろなサービスができるだろう。さらには、貨物の位置をリアルタイムで把握することになれば、これは物流の革命が起こるだろう。それから、災害のときに交通不能地区をいち早く察知できるだとか、幾らでもできる。

 町や村の各種の情報をいつでもどこでもだれでもが享受できることになる、これが今回の地理空間情報の活用の最大の効果ではないか。私たちの暮らしに大きな変化が訪れるんじゃないか、まさにこれもイノベーションだというふうに思って期待をしているところでございます。

平井委員 お話しのとおり、国民生活や経済社会に対する影響が非常に大きいというのは、私もイメージすることはできました。

 本案によって推進される政策は、国家戦略として推進されるべき高度の重要性を有するものではないかと考えるのでありますが、そうした国家的な施策としての重要性をどのように認識されておられるのか、官房副長官にお聞きしたいと思います。

下村内閣官房副長官 お答えいたします。

 御指摘のように、本法案によって推進される施策は、豊かな国民生活の実現やその安全の確保、経済社会の活力の向上と持続的な発展など、我が国にとって極めて重要な取り組みであると考えております。地理空間情報の活用に関し、地理情報システムと衛星測位に関する施策を総合的、体系的に推進することは重要な国家政策であると考えます。

平井委員 ところで、そういった重要な国家政策の推進に当たって、今回は、閣法ではなく議員立法という形で枠組みをつくる必要性や意義はどうであったか。また、あえてこの時期に本法律を制定する必要性をどのようにお考えであるのか。提案議員の皆さんに質問させていただきたいと思います。

茂木委員 地理空間情報の利活用は、私が科学技術担当の大臣時代から取り組みをさせていただいておりまして、きょうこういった形で議員立法として内閣委員会において審議をいただく、大変感慨深いものがございます。

 国家戦略として推進ということでありますけれども、これは閣法とそれから議員立法、どちらがどうなるか、特定の規定があるわけではありませんが、恐らく非常に先進的なテーマを扱うものと、現実に見えるある程度普遍的なものを扱うものによりまして仕分けというのはおのずから私はできていけるのではないか。この問題につきましては、相当長い将来まで見据えて、まず政治としてリーダーシップを示す、こういう意味から議員立法という形をとらせていただいた、こういう形であります。

 アメリカのテレビドラマの人気シリーズの「トゥエンティーフォー」ではありませんけれども、やはりこの分野というのはアメリカが一番進んでおるのは間違いないわけであります。この地理空間情報、この基盤につきまして、アメリカでは国土空間データ基盤、ナショナル・スペーシャル・データ・インフラストラクチャー、こういう言い方をしております。まさにこれはナショナルインフラストラクチャーなんだ、こういう思いを持っているということでありまして、それを推進するためにも、今回基本法として提出をさせていただきました。

平井委員 次に、政府参考人に具体的な施策について何点かお尋ねしたいと思います。

 一九九五年一月の阪神・淡路大震災以降、関係省庁による連携のもと、地理情報システムに係る施策が推進されたと聞いておりますが、これまでの地理情報システムに関してどのような取り組みがなされ、また、その結果得られた課題を踏まえて今後どのように進められるのか、政府にお尋ねしたいと思います。

小滝政府参考人 お答えいたします。

 一九九五年、平成七年の阪神・淡路大震災後、地理情報システム、GISが推進されてまいりまして、さまざまな地理空間情報は次第にデジタル化が進んでおるわけでございます。しかしながら、地理空間情報には、同じような種類のデータがさまざまな測量主体によって重複的に整備されている、あるいはそれらが互いに重なり合わないといったような現状があると認識しております。

 こうした状況のもとで、政府では、関係省庁が合同しまして、GISアクションプログラム二〇一〇というのを去る三月に決定いたしまして、さまざまな情報の位置決めの基準となる基準点や道路、河川などの位置情報、これを基盤地図情報と言っておりますが、そうした情報の整備水準の向上に取り組むこととしているところでございます。

 これに加えまして、本法案が成立いたしますと、基盤地図情報の精度管理や作成方法の基準が定められることになる、あるいは国が保有する基盤地図情報をインターネットで無償提供する、さらに、地籍、登記などの行政の各事務と基盤地図情報の相互活用が推進されるということになってまいりまして、この結果、地理空間情報の整備や重ね合わせが一層促進されることになるのではないかと認識しております。

平井委員 国や地方公共団体が地理空間情報を積極的に提供して民間においても地理空間情報を活用したサービスが提供されることは、国民にとって大変有意義なことであることは間違いありません。一方で、国の安全に対する影響についても配慮する必要があります。すなわち、武力攻撃の対象となるおそれがあるような施設について高解像度の航空写真がインターネットで流通してしまうような場面を想定すると、地理空間情報が際限なく流通することが国家の安全に影響を及ぼすことも考えられるわけであります。

 そこでお尋ねいたしますが、地理空間情報が広がることにより国家の安全に対する懸念はないのでしょうか。政府の御見解をお聞かせ願いたいと思います。

山浦政府参考人 地理空間情報の活用は、国民が安心して豊かな生活を営むことができる経済社会を実現する上で極めて重要である一方、過度に詳細な情報が不適切に流通することとなれば国の安全にも影響が及び得ると考えております。そのため、政府としては、法案成立後に策定する地理空間情報活用推進基本計画において政府による取り組みの基本的考え方を明らかにするとともに、同計画に基づく措置を適切に講じていくことが必要と考えております。

 例を挙げて申し上げますと、これは現時点での考え方でありますけれども、例えば、重要な施設について一般に公開されている以上に詳細な情報が開示され、テロリスト等に攻撃のヒントを与えてしまうような情報とか、あるいは有事の際の自衛隊等の行動が明らかとなってしまうような情報については国の安全を害するおそれがあると考えておりまして、こうしたものにつきましては、今後、詳細に検討した結果、規制すべき情報があれば適切な方法で規制を行う必要があると考えております。

平井委員 先ほどお話がありましたとおり、IT、インターネット、ブロードバンドの施設の普及とか、そういうものと相まって利便性が向上する一方、個人のプライバシーとか個人情報というものの観点から考えると、懸念材料がないわけではありません。そういう利便性というものには光と影があるというのは当然のことでありますが、政府として個人情報保護の観点からどのようにお考えなのか、またどのように取り組んでいかれるのか、ちょっとお考えをお聞かせ願いたいと思います。

小滝政府参考人 本法律案におきましては、国、地方公共団体は、個人情報の保護のため、その適正な取り扱いの確保等の必要な施策を講ずるというふうに、第十五条という条文でございますけれども、規定をされているところでございます。

 具体的に申しますと、国、地方公共団体が地理空間情報を利用、提供するに当たりまして、GISの上で情報を重ね合わせて照合されることによって間接的に個人が識別されるようになるような場合も含めまして、どういった範囲の地理空間情報が個人情報に該当するか。あるいは、個人情報に該当する地理空間情報につきまして、個人情報保護法制に照らして実務上どういった加工処置でありますとか提供制限などの措置が必要となってくるか、こういった点につきまして具体的な判断指針が必要ではないかというふうに考えているところでございます。

 そうした観点から、地理空間情報の活用に際しての個人情報の取り扱いに関するガイドラインの策定を行ってまいりたいというふうに考えているところでございます。

平井委員 確かに個人のプライバシーとか個人情報の保護については万全な配慮をしていかなきゃいけないんですが、一方で、余りにもそちらの方ばかり重視して、本当の利便性であるとか新しい取り組みというものがなかなか前に進まないということにならないように、角を矯めて牛を殺すようなことをよくやってしまいますので、そういうことがないようにここは、つまり世の中に一〇〇%というものはない、新しい科学技術でそういうものは何もないわけで、それを乗り越えていくのが我々の英知であり、勇気であり、そして我々がやらなきゃいけないことだと考えておりますので、十分に配慮しながらも、前向きに取り組んでいただくようにお願いをしたいと思います。

 次に、衛星測位に関して伺います。

 我が国では、米国の衛星測位システムであるいわゆるGPSを、カーナビやGPS機能のついた携帯電話などを通して広く利用しております。宇宙における衛星そのものは米国のシステムですが、地上におけるGPS利用という面では我が国は世界最大の利用国であるとの指摘もあり、一方、他国に目を転じますと、EUでは、独自に三十機の測位衛星から構成されるような衛星測位システムであるガリレオ計画を進めており、ロシア、中国でも独自の測位衛星を打ち上げています。特に中国では、ことし二月と四月に続けざまに四機目、五機目の測位衛星を打ち上げるなど、諸外国においても積極的に取り組んでいると聞いています。

 我が国でもカーナビ等のように衛星測位が既に国民生活に深く浸透していますが、政府では、米国のGPSを補完するとともに、より高度の測位を可能にする補強信号を出すような、いわゆる準天頂軌道の衛星から高精度の衛星測位信号を出す準天頂衛星システム計画を推進しているわけでありますが、これが現在のGPSのみの利用に比べてどのようなメリットをもたらすのか、準天頂衛星システム計画の意義、概要についてお尋ねしたいと思います。

板谷政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の準天頂衛星システムでございますけれども、御指摘のとおり、日本付近で常に天頂方向、ちょうど真上の方向に当たるわけでございますけれども、そこに一機の衛星が常に見えるように、三機の衛星を準天頂軌道に配置した衛星システムによりまして、先ほど御指摘のございましたGPSシステム、これを補完、補強し、山の陰であるとかそれからビルの陰であるとかといったものに影響されないで高精度な測位を可能とするものでございます。

 この準天頂衛星システムでございますが、GPSの利用に仮に制限が生じるなどの不測の事態においても十分な測位を可能とする将来的な、そして自立性を持った衛星測位システムを構築すること、そして二つ目が、災害時等におきまして、救援、対処作業において被災地点などの高精度の位置情報の把握が有益でございますけれども、この準天頂衛星システムは、官民の安全、安心に係る社会基盤として期待されているといったような意義を有していると考えております。

 平成十八年の三月に測位・地理情報システム等推進会議において策定されました準天頂衛星システム計画の推進に係る基本方針を踏まえまして、文部科学省が準天頂衛星初号機によります技術実証そして利用実証の取りまとめ担当となっております。総務省、経済産業省、国土交通省の協力を得て、現在、準天頂衛星初号機の開発を着実に進めているところでございます。

平井委員 大変重要なことであると認識しますが、初号機の開発が予定どおりで進んでいるのか、そしてちゃんと予定どおりにまず打ち上がるのかということについてお尋ねしたいと思います。

板谷政府参考人 お答え申し上げます。

 準天頂衛星の開発につきましては、平成十八年十一月に宇宙開発委員会の評価を得まして、総務省、経済産業省、国土交通省の協力のもとに直ちに衛星の開発に着手し、各種モデルシステムの開発であるとか試験、こういったものを実施するなど、着実に開発を進めてきております。平成十九年度には衛星の基本設計段階から詳細設計段階に進めることとしておりまして、平成二十一年度の打ち上げを目標に開発を進めているところでございます。

平井委員 今お話がありましたとおり、準天頂衛星初号機の平成二十一年度の打ち上げ目標に向けて政府は着実に取り組んでいただきたいと思っております。

 また、衛星測位により得られる地理空間情報の活用推進のために、準天頂衛星初号機の次の段階にも非常に重要にかかわってくるわけであります。法案第二十一条において、まず、「衛星測位に係る研究開発並びに技術及び利用可能性に関する実証を推進する」とありますが、これは初号機のことを指しており、後段の「衛星測位の利用の促進を図るために必要な施策を講ずる」ことが二号機、三号機の運用を含む実用段階に向けた取り組みを指しているということと思いますが、この衛星測位の利用促進について、政府において責任を持って取り組んでいただけるのか、また、どのように進めていかれるのか、お尋ねしたいと思います。

坪井政府参考人 御指摘の法案第二十一条の衛星測位の利用の促進につきましては、「衛星測位に係る研究開発並びに技術及び利用可能性に関する実証」の「成果を踏まえ、」とされておりますので、まず特に準天頂衛星に係る研究開発を進めまして、初号機による技術実証、利用実証に全力を挙げ、次の段階の三機の準天頂衛星によるシステム実証の段階に向けまして、十分な成果が上がるように施策の推進を図ることが肝要と考えております。

 また、利用実証に関しましては、民間の側で、本年二月に財団法人衛星測位利用推進センターが設立されまして、衛星測位のさまざまな利用開拓に関して民間の知恵を集約できる体制が整えられてきているなど、官民が連携協力して衛星測位の利用の促進を図っていく基盤ができていると考えております。

 今後とも、内閣官房が総合調整の役割を担いまして、関係省庁間の連携協力を図りながら、必要な施策が適時的確に進められるよう努めてまいりたいと思っております。

平井委員 最後に、この法案によって地理空間情報を高度に活用できる社会が実現することにより、行政、産業、国民生活の各分野において、例えば新産業、新サービスの創出、国民生活の安全、安心、利便性の向上、弱者保護力の強化などの国家の基盤となる分野に大きく貢献するものと考えられます。そのような地理空間情報の活用推進に係る施策は、国家戦略として高度な重要性を有する一方で、多岐にわたるものであるため関係省庁が十分に連携する必要があると考えます。

 内閣の重要施策として、政府一丸となって各省の十分な連携を図っていただく必要があると思うわけですが、官房副長官の御見解をお尋ねしたいと思います。

下村内閣官房副長官 御指摘のとおりでございます。地理空間情報の活用は我が国の国家を支える基盤的取り組みでございまして、まさに内閣の重要施策として確実に取り組む必要があると考えております。

 このため、現在、内閣官房に関係省庁の局長級の測位・地理情報システム等推進会議を設置しているところでございますけれども、本法案が施行された後には、閣議口頭了解によりまして閣僚会議の設置等をいたしまして、内閣主導で協力連携の体制をさらに充実してまいりたいと考えております。

平井委員 ありがとうございました。

 これは内閣主導で進めていかなきゃいけない非常にいろいろなテーマがあると思います。特に、行政の効率化、高度化という言葉は、いかに省庁横断的に進めていくかということと表裏一体であると思います。地図に関して言うと、私もいろいろな地図を今まで見てまいりましたが、登記情報システムや、国や自治体、また行政の各部署において保有する地図が違ったり、世の中には本当に星の数ほど地図の種類があるというような、いわば非常に非効率的な状況があるように思います。

 ここで、せっかくですから、国のリーダーシップによってそういうものを統一できるものは統一して、利便性を向上させていただくようなことを進めていただきたいというふうに思っています。同時に、行政の効率化という面でも、これを契機にそういう問題に取り組んでいただければというふうに思っています。

 国家的に重要な課題として着実に取り組んでいただかなきゃいけない問題ですから、ぜひ内閣の総合調整機能を最大限、フルに発揮していただきまして、リーダーシップを発揮していただくことをお願いして、簡単ですが質問とさせていただきます。ありがとうございました。

河本委員長 次に、近藤洋介君。

近藤(洋)委員 民主党の近藤洋介でございます。

 今回、議員立法の地理空間情報活用推進基本法案の質疑をさせていただくわけでありますが、私も、この問題を考えるときに、人間の歴史を考えますと、古今東西、よりよい正確な地図を持つ、こういうことは治世の基本でありました。また、人々の生活や経済行為を行う上でも、その土台になってきたわけであります。

 近年、情報通信やコンピューター、そして衛星といった最新の技術を駆使したいわゆる地理空間情報を持って、そして広く国民が活用する体制を整えるということは、先ほどの平井委員からもお話がございましたし、政府また法案提出者の方々からも同じ御認識でございましたが、私も、これは国家の戦略分野だろう、こういう認識に立つものでございます。

 したがいまして、民主党としても、この法案の議論を党内で行わせていただいて、その重要性を認識して現在に至ったわけでございますし、私としてもその一人としてこの重要性を強調したい、こう思います。

 ただ、せっかく与党の先生方も大変努力をされ、また我々もそこにかかわり、努力をし、この法案をつくるわけでありますから、実効性のあるものにしなければいけない。仏つくって魂入れずでは困りますので、こういう観点から、私は、政府の姿勢、そして我が国の体制についてお伺いをしていきたい、こう思います。

 まず最初に、今回の地理空間情報活用推進法案、すなわち地図情報を電子化して共通化して、そして新しい測位衛星を使って基盤を整える、こういうことで、先ほど来、災害の情報であるとか行政サービスの向上が図れる、と同時に、あわせて、この基盤をつくってさまざまな新産業、新サービス、民間の活用分野も広がる、こういうことが期待されているわけであります。

 そこで、経済産業省、政務官に来ていただいておりますが、この分野の具体的な経済効果はどの程度あるんだろう、どの程度広がると推計しているか、概数でも結構ですからお教えいただけますか。

高木大臣政務官 お答えさせていただきます。

 まず、結論から申し上げまして、現時点でわかる範囲内での数字でございますが、衛星測位の直接間接の経済波及効果は、日本航空宇宙工業会の試算によりますと、平成十七年度で約一兆一千億円に及ぶとされております。恐らくさらに多いことは十分見込まれますが、把握しております数字は以上の数字でございます。

 恐らく今までの審議の中であったかと思いますが、この衛星測位は、人工衛星によりまして正確な位置、時刻、移動の経路を把握することができます。また、地理情報システムによりまして、各地点のさまざまな情報であります住所とか周辺施設であるとか天候等、提供されるシステムによりまして、連携によって高度なサービスの提供が可能でございます。具体的には、現在、カーナビゲーションシステムのほか、航空機や船舶の位置の把握、また宅配便やタクシーなどの物流の状況の管理、また携帯電話端末を利用した位置の把握等、多様な産業利用が進んでおります。

 また、今後さらに、福祉、介護、そしてまた観光等、幅広い分野での活用が期待されておりまして、この衛星測位は高い経済波及効果を持つものと考えております。

近藤(洋)委員 ありがとうございます。

 今お話があったように、現時点でも一兆一千億円ある。考えてみますと、カーナビがここまで広がるとはだれも思わなかったわけで、かつ今、携帯電話にも広がっている。恐らく、この基盤が整えば、産業革命と言うと言い過ぎかもしれませんが、ただ、さまざまな意味での物流革命であるとか生産の変容、生産、流通も大きく変わるでしょうし、そして民間事業者がさまざまなサービスを考えるんだろうということが期待できるわけでありますね。その意味では、産業のインフラ、電気、ガス、通信といった社会インフラになるんだろう、こういう思いであるわけでありますが、その全体の仕組みを支える大きな柱が、一つに測位衛星であろうかと思います。

 そして、日本は、この衛星を、米国の衛星システム、GPS、これは軍事衛星でありますけれども、これを活用しておる。日本政府は、米国のこのGPSシステムを無償で利用させてもらっているということであります。これは、一九九八年の小渕・クリントン会談の共同声明という形で合意をし、そして毎年事務レベルの会合を開いて、継続的な利用を確認しているということで伺っております。

 そこで、外務省にお伺いをいたします。

 この日米間の合意というものは共同声明という形ですが、これは、どういう場合に米国がこの利用を、ただで日本は借りているわけですけれども、認めなくなる、利用を中断する形になるのか。その手続はどうなるのか。例えば、文書なり協定で具体的なその取り決めがあるのか。現在は共同声明という形で毎年確認をしていますが、それが中断する場合の具体的な手続というものは示されているのかどうか。裏を返せば、無償でこのサービスが継続することの保障というものは、政府間でしっかりした取り決めというものがあるのかどうか、お伺いしたい。

中根政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま先生より御指摘がございましたように、この問題につきましては、九八年に日米間で取り交わしました共同声明において、アメリカから継続的かつ全世界的に利用者に対する直接課金なしにGPSサービスが提供されること及び日米両政府として民生利用を不当に中断または劣化させることを避ける必要性があることについて記述がございます。

 日米共同声明でございますけれども、両国の首脳が発出をしたという意味で、大変高い意味のある文書だと思っております。

 また、これも先生の方から御指摘ございましたように、共同声明に基づいて開催されてきております日米GPS全体会合におきましても、日本側としては、継続的、安定的な提供を米国側に求めてきております。これまでの協議等を通じまして、万が一GPSサービスが利用できなくなる場合は、外交ルートを通じて速やかに詳細情報が提供されるということになっております。

 ただし、今のところ、かかる手続について明文化されたものはございません。こうした問題については、今後の検討課題として我々としては考えていきたいと思っております。

近藤(洋)委員 今お話があったとおり、明文化した規定はないんですね。この共同声明の日本語訳を見ても、中断または劣化することなくGPS及びその補強システムの誤用、悪用を避ける必要があることを確信している、両国政府は確信しているというこの声明文はあるけれども、具体的な、どういう状況下に置かれたらば中断するのかというものはない、こういうことであります。

 そこで、副長官にお伺いしたいのですが、仮に、日米両国の関係が悪化していなくても、GPSは軍事衛星であるわけですから、何らかの有事の際に民生部分が使えなくなる、こういう可能性もあるかと思うんですね。また、もちろん事故で使えなくなる可能性もありますが、軍事衛星としてふだん使っているものに民生がオンしている、乗っかっているわけですから、有事は軍事が優先するということも当然想定されるわけであります。

 今、日米間の取り決めは、明文化することは検討課題だという外務省の御答弁がありましたが、これは、これだけ重要なインフラになっているわけですから、そしてこれからするわけでありますから、少なくとも危機管理として、こういった状況を、使えなくなったらどうなるんだ、どうするんだということを検討すべきかと思いますが、現在検討しているのか、または今回の基本法の成立を受けて政府として検討するお考えはあるかどうか、お伺いしたい。

下村内閣官房副長官 お答えいたします。

 委員御承知のことでございますけれども、これは、GPS、衛星でございますので、世界的なシステムということでございますので、御指摘のような万一の不測の事態になる場合のこの影響というのは、基本的には、我が国だけの問題ではなくて、米国を含め世界全体に及ぶということが考えられるわけでございます。

 我が国としては、現時点では、米国側の事情でこのGPSが全面的に利用できなくなるような不測の事態というのは想定しにくいというふうに考えております。

近藤(洋)委員 副長官、私は、想定しにくいというレベルのものではだんだんなくなる、これからなくなってくると思うんですね。

 すなわち、これだけ国家戦略としてやるという法律をつくって、そしてさまざまな、もちろん行政サービスのある意味では根幹になり、そしてそれを利用したサービスも出てくる。それがシャットダウンする可能性もあるということを、常に、補完の安全ネットというのを考える必要があるんだろう、こう思うんです。

 そこで、副長官もお話しでございましたが、全世界の衛星システムでありますからということですけれども、現在、米国は、GPSシステムを運用するために、測位衛星を二十四機飛ばして全世界をカバーしている、こう聞いております。

 仮に、日本国だけを網羅するシステムをつくろうとすると、推定で何機程度の測位衛星が必要になるのか、これは内閣府だと思いますが、お答えいただけますか。そして、その費用は大体どれぐらいになるかも含めて。どうぞ。

丸山政府参考人 お答え申し上げます。

 内閣府総合科学技術会議におきまして、今先生御指摘のありました衛星測位の問題は、平成十六年九月に、我が国における宇宙開発利用の基本戦略というものを取りまとめた中で検討を行った経緯がございます。

 そのときの結論は、衛星測位システムについて、当面の目標としては、国はリスクの高い測位補完、補強などにかかわる研究、開発、実証を着実に推進するという方針が出されまして、自立性を持った相互補完関係を有する地域衛星測位システムについては、長期的な目標だという位置づけがなされました。したがって、今御指摘のありました、日本として自立的な衛星測位システムの構成、あるいは衛星は幾つ要るのかという点について、具体的な結論は出されておりません。

 ただ、その検討の過程に至る段階におきましてさまざまな案が検討されまして、先生御指摘の自立性を持った衛星測位システムをつくる例を検討いたしましたけれども、その中では、衛星を六機あるいは七機使用するような複数の案というものを想定いたしましたけれども、具体的な費用の試算には至らなかったというのが経緯でございます。

近藤(洋)委員 今御答弁のとおり、六機から七機だ、こう仮定しますと、人工衛星、仮に打ち上げ費用も含めて三百億円必要だと想定すると、少なくとも一千億円台の後半から二千億円というコストがかかる、こういうことだと思うんですね、衛星を飛ばすだけで。

 副長官、現実問題として自前の測位衛星を、日本国だけをカバーするものを飛ばすというのは、私はそこまでする必要はない、こう思います。ただ同時に、重要なインフラであるがゆえに、そのバックアップの備えはどうしても必要なんだろう、こう思います。

 ですから、重要なインフラだから、アメリカがGPSで軍事衛星で回しているけれども、同時に、欧州があり、自分で考えよう、中国もつくろう、そしてロシアもつくる、インドも計画をする、こういうことで、主要国は、この測位システムについて自前のものをつくろうという動きを、今各国、各地域がしているわけでありますね。

 そこで、お伺いしたいんですが、具体的には、欧州のガリレオ計画、こういうものがあると聞いております。日本は、正式にヨーロッパ側から首脳会談で、このガリレオ計画に参加しないかという打診を受けていると聞いております。

 ガリレオ計画は、純粋の、これは軍事衛星ではなくて民生用の衛星の構想であるわけでありますし、その意味でも使い勝手がいいのではないか、こう思います。政府として、米国のGPSの、今ただだろうというものの保険という意味も含めて、補完という意味も含めて、このガリレオ計画に参加するお考えはありませんか。いかがでしょうか。

下村内閣官房副長官 今御指摘がございましたように、欧州のガリレオ計画に参加するということは、資金分担を伴うということになるわけでございます。

 このGPSは、今お話がございましたように、直接課金がない、無償でということで利用しているわけではございますが、今、我が国としては、GPSを補完、補強する意味で準天頂衛星システム計画を推進しているところでございます。そのような政策の整合性。それから、先ほど御指摘がございましたが、現時点で、我が国として、米国側の事情でGPSが全面的に利用できなくなるような不測の事態というのは想定しにくいと考えておりますので、GPSを補完する形、補強するような形で取り組んでいきたいというふうに考えております。

近藤(洋)委員 副長官、ただほど高いものはないと思うんですよ。ただだから今はいいんです、こういう話じゃないと思うんですね。国家戦略としてやる話ですよ。おっしゃった準天頂衛星、これは私も必要だと思います。ただ、これはあくまで、ベースとなるGPSといいますか、幾つかの衛星の、私も専門家じゃないからわかりませんが、その精度を高めるために準天頂衛星を上げましょう、こういう話でありますから、ガリレオ計画にも参加しても、準天頂衛星を飛ばすこととの整合性は当然とれるわけであります。

 ここは、想定問答としてそれはまだ考える必要はないというのもあるかもしれないけれども、想定しがたいという答弁はいかがかなと。やはり国家戦略としてやるのであれば、そういうことも含めて、せっかくその思いで我々は基本法をつくっているわけでありますから、ガリレオ計画に参加しなさいということを私は言うつもりはありません。ただ、そういったことも含めて国家として考える時期ではないですか、共同声明という紳士協定に頼っている状況ではもうないんじゃないんですかということを指摘しているので、もう一度御答弁いただけませんでしょうか。

下村内閣官房副長官 お答えいたします。

 政府答弁ということで御理解いただきたいと思いますが、今の状況の中では不測の事態については予想しがたいと思っておりますので、今の政策の中で当面粛々と進めていきたいというふうに考えております。

近藤(洋)委員 非常にこれは心もとないということを、あえてこの場では指摘をさせていただきたいなと思います。

 そこで、申し上げたとおり、測位衛星の精度を高めるために準天頂衛星計画を我が国としては検討している、こういうことでありますが、先ほども御答弁ございましたが、平成二十一年度に打ち上げる計画だ、こう聞いております。一機三百三十億円かかる、こういう話であります。

 それでは、二号機、三号機はいつ打ち上げるのか、全体のシステムをいつまでに完成させるのか。これは科学技術担当副大臣、お忙しいところを来ていただいておりますが、通告をしておりますので、きょうは高市大臣もお忙しいということでありましたので、お答えいただけますでしょうか。(下村内閣官房副長官「私が」と呼ぶ)では、副長官がお答えいただけるならば。

下村内閣官房副長官 私の方からお答えさせていただきたいと思います。

 この準天頂衛星は、二十四時間で日本上空からオーストラリア上空を8の字形で周回する人工衛星でございます。したがって、常に日本上空に衛星がとどまるためには三機の準天頂衛星が必要となるわけでございます。

 昨年三月に内閣の測位・地理情報システム等推進会議で取りまとめました準天頂衛星システム計画の推進に係る基本方針におきまして、まず第一段階として、一機目の技術実証、利用実証のための衛星を打ち上げ、その結果を評価した上で、追加二機の準天頂衛星を打ち上げるような第二段階のシステム実証段階に移行する計画としております。

 いずれにしても、本法案を踏まえまして、準天頂衛星システム計画を着実に進めていきたいと考えております。

近藤(洋)委員 委員長のお許しを得て、資料を配付させていただいております。

 着実に実施するという話でございましたが、我が国の宇宙開発の推進体制と予算を示したペーパー、これは出典は文部科学省でございますが、これを見ますと、一番右手の棒グラフが宇宙開発予算でありますが、着実に実施するというお話、本当に着実にできるのかという危惧を感じざるを得ないわけであります。

 平成十四年から平成十九年まで、これは役所がつくったペーパーですから「五年ぶりに増加。」というところにだけ線を引いていますけれども、問題とすべきは、小泉改革で激減をしてきた、こういうことなんですね。宇宙開発予算はもう坂道を転げ落ちるように落ちてきた。宇宙開発の予算だけじゃありません。研究開発予算というのが小泉政権下において非常に冷遇されてきた、こういうことが言えようかと思います。

 こういう状況で、果たして、一機三百三十億円かかる、こちらの方はまずやるということでありますが、二号機、三号機のシステムが完結できるんだろうか。宇宙予算は総額で現在二千五百三十三億円ありますが、衛星だけではありません。準天頂衛星だけではない、さまざまなことをやらなきゃいけない、ロケットもある、こういうことであります。

 そこで、平沢剛腕副大臣に来ていただいておりますけれども、その剛腕ぶりを発揮して、どうやってこの予算を確保する道筋を立てるのか、資金を確保する道筋を立てるのか、お答えいただきたいのですが。

平沢副大臣 御指摘のとおり、宇宙関係予算、棒グラフにございますように、平成十四年から減ってきているわけです。これはなぜ減ったかと聞いてみましたら、平成十四年から十五年は宇宙研究開発機構の統合結果のようですけれども、その後は、ロケットの打ち上げに成功したときはふえ、失敗したときは次の年は減らされている、こういうことのようです。

 おっしゃるように、宇宙関係予算の確保というのは極めて重要なことでございまして、今後、宇宙開発につきましては、先端的な研究開発、宇宙産業の競争力強化とともに、総合的な安全保障を含めた幅広い宇宙利用の推進を図ることが重要でございますので、重点化を図りつつ、真に必要な予算につきましては確実な予算措置が講じられるよう全力で取り組んでいきたいと思いますので、委員の御支援の方もぜひよろしくお願いいたします。

近藤(洋)委員 そうすると、副大臣、この準天頂衛星計画は、今回基本法をせっかくつくるわけでありますから、真に必要な開発計画だ、こういう御認識でよろしいでしょうか。準天頂衛星の開発については真に必要なものである、こういう認識で政府はよろしいですか。

平沢副大臣 その辺も含めて、私たちは前向きに検討していきたいと思っています。

近藤(洋)委員 ちょっと弱いですよね。これは基本法をつくるんですよ、国家戦略だと。今この委員会で、国家戦略だと。これは与党の茂木前科学技術担当大臣も、国家戦略だ、こういうことで、科学技術関係の閣僚経験者の方も提案者になってのプロジェクトです。我々も賛成をし、かかわっている。これだけ院から、国会から言われているわけでありますから。もう国会の御議論というわけじゃなく、国会からはやれということが出ているわけであります。それをやれということを言われての答弁ですから、もう一回、真に必要だ、こういうことでよろしいでしょうか。

平沢副大臣 限られた予算の中でどういうように予算を配分するかという問題でもございますが、委員の御指摘はよくわかりますので、予算確保に向けて全力で取り組んでまいりたいと思いますので、ぜひ御支援のほどをよろしくお願いいたします。

近藤(洋)委員 予算が厳しいのは百も承知しているわけであります。全体の中で厳しいのは百も承知しています。だから知恵を出す必要があるんだろうな、こう思うわけであります。

 そこで、経済産業政務官にお伺いしたいんですけれども、そもそもこの準天頂衛星開発計画は、当初は官民共同のプロジェクトだったわけです。それが、経緯があって、民間が抜けて官のみのプロジェクトになった、こういうことであります。最初の実証研究ですから、官が主導するのはいいでしょう。だけれども、一号機は国がやるにしても、じゃ、二号機、三号機は事業の一部を民間に入っていただく。これは先ほど政務官もおっしゃったように、大変経済波及効果の広い、ビジネスとしても広がる分野でありますから、民間の方にも入っていただく、加わっていただく、こういう知恵もあっていいのではないか。そういう形で、ある程度期限を区切ってこの計画をどんどん進めていく、こういう姿勢も政府として必要かと思いますが、いかがでしょうか。お答えいただけますか。

高木大臣政務官 今お話がございましたとおり、衛星測位は多様な産業利用が可能なことから、政府としまして、準天頂衛星システム計画を推進するに当たりまして、平成十四年に発足しました協議会におきましては、民間事業者にも入っていただきまして緊密に連携を図ってまいりました。

 この計画への参加につきましては、平成十八年三月、協議会での基本方針に基づきまして、初号機の開発、打ち上げは国が行う、民間事業者はその利用実証に参加するというふうになっております。具体的には、経団連が中心となって設立いたしました財団法人衛星測位利用推進センター等が準天頂衛星の利点を生かしまして実証事業を行うことになります。

 まず、初号機の実証の評価を行い、その上で三機の衛星によるシステム実証の段階に進むわけですが、その時点で民間事業者が測位サービスを事業化するという判断をした場合には、事業内容と規模等に相当する資金負担を行うこととなっております。

 まず、経済産業省といたしましては、第一段階として、民間事業者が準天頂衛星の初号機を利用した実証事業を着実に実施できますように、関係府省とともに、民間事業者と引き続きしっかりと連携をしてまいりたいと考えております。

近藤(洋)委員 ぜひそういう形で、民間企業を加えながら開発を進めていく作業、これは重要だろうと思います。

 そして、同時にやはり国としてやるべきは、私は、先ほどのGPS補完にこだわるわけではないですけれども、拠出金を出す。出すからこそ自分の地位も確保されるわけでありますし、例えばガリレオ計画に拠出金を出す形で研究開発計画にも乗れるわけでありますから、私は、そういう部分というものも含めて、やはりこれは政府で研究していただきたいな。その開発の知恵を世界で分け合う、こういうことにも、開発にもプラスになるんだろう、こう思います。

 最後に、官房副長官にお伺いします。宇宙の平和利用についてであります。

 御案内のとおり、昭和四十四年の国会決議で、宇宙の平和利用、こういうことが決議の中で打ち出されて、その後も、政府も宇宙の平和利用の方針を堅持している。私もこれは賛同するものであります。ただ、問題は、ここでちょっとお伺いしたいのは、平和利用という文言の解釈であります。

 政府の解釈は、昭和四十四年の答弁以降、平和利用とは非軍事である、こういうふうにしております。しかし、当時、昭和四十四年から今まで来ますと、非常に技術も進んで、宇宙の利用も進んできた。宇宙関連技術が民生に転用される、こういうことも日常的に起きている。かつ、人工衛星自体も利用されている。GPSなどは典型例であります。軍事衛星を利用しているわけであります。

 そうなると、我々がカーナビで走っているのは、軍事衛星の技術のおかげで走っている、こういうことも言えるわけであります。そうなると、この非軍事という解釈が現実と必ずしも一致しない部分というのが出てくる、今も若干出てきているし、これからも出てくるのではないか、こういうことであります。

 私は、ここのところで、平和利用は非侵略とするかどうか、これはちょっとまた議論のあるところではありますが、しかし、その解釈も含めて再検討するということもこれから必要なのではないかと思いますが、副長官、いかがでしょうか。

下村内閣官房副長官 先生の問題提起はそのとおりだというふうに思います。ただ、これは今御指摘がございましたように、昭和四十四年の国会決議がございまして、その国会決議の中の、平和の目的に限るという、その文言の解釈が非軍事だというふうに常識的になされている、そういう議論が今までされてきたのではないかと思います。

 ですから、政府としては、宇宙に関する現在の施策というのは御指摘の国会決議を尊重して行われているところでございますので、この国会決議の解釈を見直すか否かにつきましては、まずもって国会の中で議論していただければ大変ありがたいというふうに思います。

 ちなみに、現在、与党においても宇宙基本法に関する議論、検討がなされているということでもございますし、ぜひ各党においてこのような議論がされますことを政府として関心を持って見守ってまいりたいと思っております。

近藤(洋)委員 この問題は大事な問題なのでまたの機会に譲りたいと思いますが、ただ、私がこの場で申し上げたいのは、我々も真剣にこの問題を民主党としてこれから議論していく、こういうことになろうかと思いますけれども、ただ、国会決議だから国会でというのではなくて、これを伺ったのは、やはり解釈は政府がしているわけですから、まさにその解釈を、政府の問題として、政府の姿勢として、それは政府としても検討できる部分もあるのではないか。国会に投げるだけの話ではないだろう、こういうことだけは指摘をしたいと思うわけであります。

 この非常に重要な法案を今回こういう形で提案をし、議論がされているわけであります。くどいようですが、仏つくって魂入れず、こうならないように。我々民主党もしっかりこの分野について政策を提言していくということを申し上げ、時間ですので終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

河本委員長 次に、細野豪志君。

細野委員 近藤委員に引き続きまして、GIS基本法について質問させていただきたいと思います。

 このGIS基本法につきましては、私も、大変これはいいものができたなというふうに思っております。GISシステムという地理情報のシステムをきちっと運営していくということと、もう一つは、測位衛星のシステムをきちっと打ち上げて、その整合性をとっていくという、言うならば、二つの大きなシステムを統合する、そういう意味もございますので、大変私も関心を持って見てまいりました。きょうこれから採決、衆議院通過ということになろうというふうに思いますので、そのことについては大変喜んでおります。

 もう一つ、私はこの問題を議論するときにしっかり踏まえておきたいと思っておりますのが、我が国においては宇宙に関する法律がほとんど存在をしないということなんですね。一部、JAXA法という法律がありまして、そこで宇宙のことをやるんですよということを書いた法律はあるんですが、宇宙そのものについてきちっと規定をした法律というのは我が国に存在をしておりません。

 今回のGISシステムの法律というのは、その意味では、そこだけに焦点を当てたものではありませんが、大きな一歩を踏み出すものであるというふうに思っておりまして、特に、宇宙開発の部分について、提出者の皆さん、そして政府に対して質問していきたいというふうに思います。

 まず、実はこれは通告はしていませんが、せっかく近藤委員の方から極めて本質的な質問がありましたので、平和利用についてお考えを提出者にお聞かせいただきたいと思います。

 宇宙開発については、基本的に、二つの大きな制約が日本にはあります。一つは国会決議の平和利用の問題、もう一つは日米の衛星合意、三〇一条に基づく衛星合意、これは後ほど聞きます。

 大きな制約の一つである平和利用の問題について、与党内でもいろいろ議論があろうかと思いますので、これはどなたか、そこはお任せをしますが、まずその点についての質問をさせていただきたいと思います。

西村(康)委員 先ほど来議論のありますとおり、国会決議で平和利用に限られているわけでありますけれども、昨今のさまざまな世界情勢の変化等にかんがみて、宇宙利用を促進していこうということで、我々、与党内でも宇宙基本法の策定を目指して勉強を進めているところでありますし、民主党におかれましても非常に関心を持っていろいろな研究をされているというふうに伺っております。

 時代に応じていろいろな考え方があるんだと思いますので、我々としては、ぜひ一歩前進をさせたいなという気持ちでおりますけれども、この法律は、今までの国会決議の範囲内、平和利用の範囲内のものでありますので、直接関係のあることではありませんけれども、ぜひ今後議論を深めて、与党内、そして民主党の皆さん方、野党の皆さん方とも議論を深めて、ぜひいい形での宇宙の利用ができるように我々としては頑張ってまいりたい、そんなふうに考えております。

細野委員 そちらにだけ聞いておいてこっちが答えないのもなにかと思いますので、私の考え方を若干申し上げると、日本が自衛のために情報網をきちっと持って耳を大きくしておくというのは、これは防衛上必要だと思うんですね。ですから、軍事利用の中の自衛の部分はどこなのかということを探って、それに基づいて、今の国会決議というのはいいのかどうかという議論の整理は私はどこかで必要なんだろうというふうに思っております。我が党内でもその議論はそろそろ始めたいと思いますので、そのことについてはこの場をかりて申し上げておきたいというふうに思います。

 宇宙に関するもう一つの大きな制約が、冒頭でも申し上げましたが、日米衛星合意でございます。

 今回、二十一年に打ち上げると言われておる測位衛星、準天頂衛星は、実用衛星ではなくて実証衛星、つまり研究開発衛星ということですから、この日米の衛星合意の範囲外ということでありますが、必ず二機目、三機目、実用衛星としてしっかりと打ち上げということになると、この合意の部分が必ず問題になってくる。

 答弁者の皆さんはもう釈迦に説法だと思いますが、要するに、実証衛星、実験用にやる衛星であれば国産でできるんだけれども、実用衛星になった瞬間に調達を自由化しなければならない。実質的に調達を自由化すると必ずアメリカの会社が持っていくというのが今までの日本のやり方でございまして、必ずどこかでここは制約が出てきます。

 まず、答弁者に伺う前に政府に確認をしておきたいんですが、一九八九年に、アメリカのスーパー三〇一条に基づいて、我が国の衛星調達が外国の貿易慣行としてふさわしくないという話が出てきた。それに基づいて、一九九〇年に、我が国は非研究開発衛星の調達について、アクション・プログラム実行推進委員会というのをつくって、そしてこれを内外に、無差別にやるということを宣言しています。この文書が私の手元にも来ておりますが、ここで言う「非研究開発衛星の調達手続」というこの文書は、法律的にはどういう意味があるんでしょうか。

刀禰政府参考人 お答えいたします。

 ただいま御指摘のありましたものにつきましては、アクション・プログラム実行推進委員会というところの決定でございますけれども、これは閣議決定により内閣に設置された組織でございまして、全省庁の参加を得て開催されております。そのため、同委員会の決定というものは、全省庁の合意により形成された政策を対外的にお示しするという性格のものでございます。

 この法的な位置づけというお話でございますけれども、閣議決定により内閣に設置されました委員会の決定というものでございます。

細野委員 下村副長官もよく御存じだとは思うんですが、このアクション・プログラム実行推進委員会自体は確かに閣議決定されて設置をされているんですね。ただ、そこで出されたこの調達手続の文書自体は法的には全く位置づけられていないし、この手続自体も別に閣議決定されているわけではないんです。ただ、もう十七年たっているんですか、ここで合意をされたこの文書にずっと我が国は従って海外へ開放してきたというのが経緯ですね。この文書に関しては、法的な位置づけはありません。

 もう一つ申し上げると、もう余り詳しく申し上げる意味はないのかなとも思うんですが、一九八九年というのは、ジャパン・アズ・ナンバーワンと言われて、我が国が貿易黒字を稼ぎまくって、アメリカからいろいろたたかれた時代にできた文書ですね。この文書をつくる次の日には、ヒルズUSTR代表に対して、当時の村田特命大使の名前で、こういう合意をつくりましたから大丈夫ですよという文書までわざわざ送っているんですね。そして、それに対して、よくそういう文書をつくってくれました、日本はよくやりましたという文書が我が国に返ってきている。こういう経緯をそろそろ我々はしっかり振り返って、今何が必要かということを考えるべきだと思います。

 もう一つ付言をいたしますと、一九九〇年以降、これは数字がはっきり、すべて明らかになっているわけではないんですが、私がカウントした限り、二十四機の実用衛星が打ち上げられています。一年一機から二機打ち上げられていますが、そのうち我が国が受託したのはたった一機。これは二〇〇六年、昨年初めて国産機になっていますが、この一機だけ。実質的にはすべてアメリカが二十三機は受注をしてやっています。

 要するに、実証衛星というレベルの低い実験衛星については国産だけれども、レベルの高いものになってくるとすべて国際調達、すなわちアメリカに持っていかれているというのが今のところのこの衛星合意の結末なんです。

 官房副長官にも後ほどお聞かせいただきたいと思いますが、まず、せっかくですから提出者に、測位衛星をこれからやっていくということもあるわけですから、この合意についてそろそろ見直す。法的には意味がありませんから、いや、この手続はもう改めますと言えばそれで終わりなんですが、外国に対して宣言をしていますから、恐らく通告はしなければならないと思います。この文書についてそろそろ見直す時期に来ていると私は思いますが、いかがでしょうか。

新藤委員 まず、細野委員には、この地理空間情報については大変御理解いただいて、また御尽力いただいていることを仲間の一人として御礼を申し上げたいと思います。それから、今お話のありましたことは、問題意識は共有できる部分もございます。

 ただ、私の理解によれば、非研究開発衛星の調達手続というのはWTOの政府調達協定にのっとってやっている、WTOの協定がベースになっているというふうに私は理解をしております。ですから、それにのっとって、透明、公開、無差別を原則とした手続を行うんだということにおいては、日米の文書以前にWTOの政府調達協定があるんじゃないか、私はそういう理解で、また政府としては、ここを原則として今後も調達をしていかなければいけないというのが基本だというふうに思っております。

 一方で、やはり国産衛星事業の国際競争力の確保、向上、これはとても大事なことだと思いますし、それからもう一つ我々が考えなければいけないのは、このWTOの協定の中でも、国の安全保障にかかわるものは適用除外となっている、こういうルールがあるわけです。

 ですから、いろいろなものを考えながら私どもはこの問題に取り組んでいかなきゃいけないんじゃないか、こういうふうに思っています。

細野委員 新藤議員は御専門でもあるので、これはもう改めて申し上げるまでもないと思うんですけれども、今新藤委員が引用された政府調達協定についても、安全保障上の目的の場合には国産でいいですよと書いてあるんですね。各国はこれを最大限に活用していまして、実用衛星はほぼ例外なく国産にしています。

 要するに、衛星の分野というのは、測位衛星もそうですし通信衛星も情報通信衛星もそうなんですが、これが軍事でこれが非軍事ですなんてはっきり分けられないわけです。そこを全体をとらえて、衛星は国産でほとんど調達しているんですよ。ですから、これに基づいてやっているのではなくて、協定の上にわざわざこの調達の手続の文書をつくっているからやっているんです。そこは認識をぜひ改めていただいた方がいいと思います。

 その上で、十分趣旨は御理解をいただいていると思いますのでこれ以上聞きませんが、官房副長官に、これから測位衛星をどんどんやっていくわけです。副長官はこういう、それこそ国益にかかわることについて極めて強い御関心と御決意を持っていらっしゃる方だと信ずるものですが、そろそろきちっとこれを見直してやっていくのはどうか。

 アメリカの一つのシグナルでもあるんじゃないかと実は思っているんですよ。数年前であれば、恐らく、GISのシステムはいいとしても、測位衛星を日本が打ち上げるということに関しては、GPSがあるからいいじゃないかとアメリカは言ったのではないか。ここへ来て日本でもどんどんやれと言ってきているのは、やはり一つのシグナルではないかというふうに思っていまして、そろそろ政府としてこの見直しにぜひ取り組んでいただきたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。

下村内閣官房副長官 お答えいたします。

 認識については共有する部分がございます。

 ちょっと事実関係の、経緯だけ確認の意味でもう一度整理して申し上げたいと思いますが、非研究開発衛星の調達手続は、御指摘のように、一九八九年、米国がスーパー三〇一条に基づき優先外国貿易慣行に指定したことを一つの契機として、日米間で行われた協議も踏まえて、一九九〇年、第十四回アクション・プログラム実行推進委員会において、我が国の自主的措置として決定をいたしたものでございまして、先ほど委員が御指摘のとおりでございます。そのことをもって我が国が書簡を米国に通報したものでございまして、これは、交換書簡、一方的な我が国からの通報でありまして、特に国際的な約束ということではございません。

 一方、この手続におきまして、非研究開発衛星を調達するための透明、公開、無差別を原則とした競争的手続を定めておりますけれども、政府としては、これまでもこの手続にのっとって非研究開発衛星の調達を行ってきておりますので、引き続きこれらの原則にのっとった調達を行うということが現在においては適切であるというふうに考えております。

細野委員 官房副長官のその御答弁を聞くとがっかりしちゃうんですが、では、ちょっとさらに聞きます。

 これも通告してあるので副長官にお答えをいただけると思うんですが、では、この測位衛星、準天頂衛星と言われる二機目以降の衛星も、これも実験衛星、研究開発衛星ということで打ち上げるんですか。

下村内閣官房副長官 御指摘のように、一機目については、内閣の測位・地理情報システム等推進会議で取りまとめて、準天頂衛星システム計画の推進の基本計画において、技術実証、利用実証の結果を評価した上で、基本的に官民が協力をして追加二機の準天頂衛星を打ち上げる、第二段階のシステム実証段階に移行するということでございまして、二機目以降の準天頂衛星、必ずしも実用衛星と呼べるものではないというふうに考えております。

細野委員 副長官、ぜひ御認識いただきたいんですが、そうやって日本はごまかしごまかしやってきたわけです、実用衛星に該当するようなものもJAXAが打ち上げる研究開発衛星として。私はJAXAという組織自体にも若干疑問を持っているんです。文科省の下にある独立行政法人ですから、そこで取り仕切って、まあ、これは実用衛星にするといろいろ問題が出てくるので、研究開発衛星と位置づけるということで、だましだましやってきたんですね。その手法は、そろそろ私は限界に来ているというふうに思っています。

 先ほど近藤委員の質問でも民間を参加させてという話がありましたね。民間を参加させれば、利用の面の参加だけではなくて打ち上げに参加させれば、おのずとまた実用の部分というのはふえてくるわけですよね。そのときに、二機目もそういう研究開発衛星でやり続けて、唯々諾々とこの手続に従うんですというのは、少しやはり政府としては、せっかくこれだけ大構えなことをやっているのに、私はもったいないなというふうに思います。

 政府と比較すると自由な立場にあるのが提出者の皆さんだと思いますので、どうでしょうか、二機目、三機目に合わせてこの衛星合意についても見直すことを与党の側としてぜひ御検討いただく、それぐらいぜひ答えていただきたいと思うんですが、これは、では西村提出者にぜひお願いします。

西村(康)委員 非常に思いは共通の部分が本当に多いのでありますけれども、御案内のとおり、安全保障にかかわるもの、あるいは研究開発にかかわるものは抜けてありますから、現実問題、衛星を飛ばす際に、我々、そういう解釈をして理解を対外的にも求めていくということは可能だと思います。

 今回も実証という形で三機飛ばす格好になると思いますけれども、当面そのような形で進めていくということになりますので、少し、WTOのルールの範囲内で何ができるのか、どこまでできるのかを含めて、そしてまた国際競争力をいかにこの日本の衛星ビジネスでつけていくのかということも真剣に考えながら、幅広い視点でさまざまな事柄について議論を進めて深めていくということが大事だと思いますので、民主党の細野委員の御意見もしっかり踏まえて、これからいろいろな形での宇宙の利用のあり方についてしっかりと勉強をしてまいりたいと思います。

細野委員 だんだん二機目、三機目に向かって技術も上がってくるんでしょうし、ただその一方で、日本の場合は、地理情報と言っているからには、これはやはり軍事とかかわるんですとはなかなか言いにくいですよね。情報収集衛星は軍事で一応縛っているんですが、あれもかなり際どい線で、まあ一応安全保障に関係ありますからということでやっているわけですよね。ここは、要するに二つの制約がある中で辛うじてそこをやっているというのが今までのやり方ですから、そろそろやり方自体を考えるべき時期に来ていると私は思っています。

 もう一点お伺いをしたいのが国際的な協力なんですが、私もちょっといろいろ選択肢を考えました。近藤委員が指摘をされたように、ガリレオに参加をしてリスクヘッジをすることも必要かもしれない。中国の衛星破壊の問題なんかもありますから、GIS自体もある部分で脆弱性を持っているかもしれないので、自己完結できるような六機体制、七機体制も考えるべきではないか。いろいろ考えましたが、さはさりながら、我が国の今の予算の制約を考えると、そんな簡単なものではない。ですから、三機体制である程度きちっと回していくことを先行すべきではないか、今の時点では私はそう考えています。

 その上でお伺いをしたいんですが、この準天頂衛星は8の字形で上を回るわけですが、ちょうど南半球のオーストラリアの上を通るわけですよね。時を同じくして、オーストラリアとは安全保障についての協力関係も結んでいるわけですし、我が国の重要な資源もエネルギーも依存をしているパートナーでもあるわけで、オーストラリアと協力体制を結んでいくということに関しては比較的制約は少ないのではないかというふうに思っております。

 政府としてその問題についてどのようにお考えになっているか、これは官房副長官にお伺いします。

下村内閣官房副長官 御指摘のとおりでございまして、準天頂衛星システムは米国GPSの補完、補強を行うために、そのような形をとることによってオーストラリアの上空を通過するということでございまして、これからオーストラリアなどのアジア、オセアニア地域における国際協力というのは大変重要でございます。

 そういう意味で、今後、オーストラリア等との間で衛星測位の利用面などの協力について検討を進める必要があるというふうに承知しております。

細野委員 この問題は政治的ないろいろな交渉にもかかわりますので、提出者にもお伺いをしたいと思います。

西村(康)委員 御案内のとおり、オーストラリアとの関係は非常にいい関係で進んでおります。ハワード首相が来られたときも、安倍首相との間で、安全保障も含めて、幅広い経済関係の中で両国間の関係を強化していこうということで合意をしておりますし、FTAの交渉なんかも進んでおります。

 そういう観点から、オーストラリアとは宇宙利用の面でも一緒にやれる分野があるのではないかというふうに思いますし、特にこの準天頂衛星は、御指摘のとおりオーストラリアの上を通りますので、オーストラリア側でこの電波を受けて利用してもらうことも可能でありますから、そういった面で、一緒になってこの準天頂衛星のことも、共通の形で何かできることはないかということは検討に値するというふうに思います。

細野委員 この点は双方から非常に前向きな御答弁をいただきましたので、ぜひ期待をしたいと思います。

 続いて、GISのシステムの個人情報のあり方について一問だけ質問させていただきたいと思います。

 ガイドラインをつくって個人情報をやるということなんですが、私が一番心配していますのは、やはりデータマッチングの問題。これは、相当のシステムがこれからこのGISシステムに積み重なっていくでしょうし、そのことによって飛躍的に情報マッチングというのが進むんだろうというふうに思うんですね。個人情報というのは、本当に、一つの情報であればさして価値はないんです。それが積み重なることによって、さまざまな個人を識別しやすくなると同時に、識別されたときに、それらの情報が総合されると相当個人のプライバシーが暴かれるというところに問題があるわけですよね。

 そこで、平成十五年の四月十七日に出ているガイドラインを見たんですが、これでは非常に心もとない。個人情報の保護について書いてあるんですが、「特定の個人を識別することができるようになる情報もあるので注意を要する。」と書いてあるだけで、具体的に何をするとは全く書いてないわけですよね。これは、ガイドラインをつくるときにやはりデータマッチングに注意をして、新しいデータが入ったときには、それによって個人情報がそれこそ流出する懸念はないのか、流出した場合にそれが個人を識別される可能性はないのかということについてはかなりきちっと検証する。検証することがきちっとできれば、逆に利用もできるわけですから、そこはぜひ踏まえていただきたいというふうに思うんですが、ではこれは、まず官房副長官からお答えをいただきたいと思います。

下村内閣官房副長官 議員御指摘のように、既存のガイドラインについては不十分な面があると思います。

 国、地方公共団体が地理空間情報を利用、提供するに当たりまして、具体的に、御指摘のように、GIS上で情報を重ね合わせて照合することにより間接的に個人を識別できる場合を含め、どういった範囲の地理空間情報が個人情報に該当するのか、また、個人情報に該当する地理空間情報については個人情報保護法制に照らして実務上どのような加工処理や情報制限などの措置が必要となるのか、このようなことについて、情報の種類や個々の場面に応じた取り扱いに関する具体的な判断指針が必要と考えられます。

 こうした観点から、地理空間情報の活用に関しての新たな個人情報の取り扱いに関するガイドライン、この策定を行っていきたいと考えます。

細野委員 さっきの方の質問でも、平井さんの方にも同じ御答弁をされているので、さらに、要するにデータマッチングの問題について対応できるようなガイドラインをつくってくださいという質問をしたんです。わかりました。やられる、ガイドラインをつくるということはわかりましたので。

 では、提出者に聞きます。

 この問題についての対応を提出者としてはどういうふうにお考えになっているでしょうか。

泉委員 この法案、昨年から与党の方でずっと議論が進んできた法案ですが、我々民主党も、今回共同提案をさせていただくに当たりまして、特に個人情報の保護というところには重きを置いてこの法案を見させていただきました。

 委員御指摘のとおり、先ほど平成十五年の四月十七日のガイドラインというのがありましたが、実は、個人情報保護法が、その次の月、五月に成立をしているということもありまして、この時点では、個人情報保護法の観点からは、実は余りガイドラインというのは作成されていないという問題点がございました。

 例えば、このガイドラインでいうと、「情報の提供に関するガイドライン」ということで、そもそも情報の保護に関するガイドラインということになっておりません。あるいは「提供に際し留意すべき点」という書き方になっておりますが、やはりそれでは弱いというふうに思っておりまして、こういった観点を個別具体的に、情報の重ね合わせによる、どのような実例が挙がってくるのかということも一つ一つ確認をしてガイドラインをつくっていきたいと思います。

 時期については、我々提案者の方としては、やはり成立後早急にということを政府の方には要請をしていきたいというふうに思います。

細野委員 官房副長官、今のが私の懸念なんですよね。ガイドラインをつくるのは政府ですから、個人情報保護法ができている中で、利用するたびにどういう制約があるのかということについて、ぜひ早急に御検討いただきたいというふうに思います。私もそこは注視をしていきたいというふうに思っています。

 もう時間もなくなってきましたので、最後、ちょっとデブリの問題について、少しこの法案とは離れますが、質問させていただきたいと思います。

 資料を配っていますので、ちょっとそれをごらんいただけますでしょうか。二つ資料をつけさせていただいているんですが、グラフの方をごらんいただけますか。これが宇宙のデブリの数です。一番上が、登録された物体ということですから、全体の数ですね。真ん中が落ちたもの、差し引くと、一番下、軌道上の物体が一番下のものです。

 よく見ていただくと、一番最後のところでグラフが高騰しているのがわかると思うんですが、これは何かおわかりでしょうか、上がっているのは。一番最後に上がっているのがごらんいただけると思うんですが、これは、中国が風雲一号という衛星の破壊をしたときにこれだけ上がったんです。日本ではこれは余り大きく報道されなかったんですが、アメリカでは大変な問題になりました。中国との宇宙の協力関係についても破棄をすべしという議論まで出てきたぐらい大変な問題になったんですね。

 私も、宇宙関係者とこの問題を随分議論いたしましたが、ちょうどこのデブリが出てきている軌道は、高度でいうと八百六十五キロ前後ということで、そこにこれだけ宇宙のごみがたまるということは、宇宙開発に決定的なダメージを与えるんですね。

 その現状を示したのが地球儀の方でして、一九六〇年からどういう形でデブリがふえてきたのかということを模式的に示してあります。一番近々のが二〇〇〇年のデータですが、二〇〇〇年の時点でもうこれだけデブリがあるわけですね。

 この問題に、やはり日本はもっときちっとメッセージを出すべきだ、そして国際的なルールづくりについても前向きにやっていくべきだというふうに私は思っています。

 外務省からも御答弁いただこうかと思ったんですが、済みません、時間がもうありませんので、この問題に対して、少し政府としてきちっと取り組んで、国際的なルールづくりにもぜひ前向きにやっていただきたい。

 ただ、ちょっと時間もありませんので、では、そういう必要性、あと、それについて立法機関としても取り組むということについてどのようにお考えになるか、提出者にお伺いしたいと思います。

    〔委員長退席、戸井田委員長代理着席〕

新藤委員 これは、国際社会が共有をしなければいけない問題だと私も思っています。そして、中国のこのデブリ、人工衛星の破壊実験の直後にちょうど私も中国に行っておりました。額賀元防衛庁長官とお邪魔したわけです。そして、あちらの国防大臣ともお話をしております。ただ、悔しいことに、我が国はこれを正式に確認していないんですね。それを確認するすべがない。ここからまず始めなければいけません。

 そして、このスペースデブリの問題は国連のあらゆる委員会において我が国も積極的に発言をしております。そしてまた、さらにこれから強力に私どももやっていかなきゃいけないし、今回の宇宙基本法の中にもこういう問題も入れ込むべきではないかなと思っておりますし、これは人類共通の課題としてしっかりと取り組んでいきたい、このように思っております。

細野委員 最後に宇宙基本法の話が出ましたので、この問題、これからだと思うんですが、せっかく通告しているので最後に、では宇宙基本法についてどういうことをお考えになっているか拝聴して、質問を終わりたいと思います。

新藤委員 これは現在、自民党においてはプロジェクトチーム、また自民と公明党とのプロジェクトが設置されておりまして、同法案の検討を行っているところでございます。

 その趣旨は、科学技術の進展その他、内外の諸情勢の変化に伴って、宇宙の開発及び利用の重要性が増大している。これにかんがみ、我が国における宇宙開発利用のあるべき姿を示すことと、そして、我が国において宇宙開発の果たす役割拡大を活発化して実りあるものとすることを目指しているということでございます。

 そして、主には、宇宙戦略本部を設置する、それから、産業振興と汎用化についてきちんと位置づけよう、さらには、国の責務の明定と活動法をきちんとつくっていこう、こういうことでございまして、先ほど委員がおっしゃったように、宇宙に関する法律がございませんでしたので、これを基本として推進できるように頑張っていきたい、このように思っております。

細野委員 これもまた個人的な意見なんですが、GIS法案よりは、どっちかというとそっちが先にあった方がやりやすかったんだろうと思うんですね。我が党内の議論はこれから、いろいろと議論は積み重ねてきておりますので、個人的には、この問題についてもきちっと議論をさせていただいて、私どもなりの見解を明らかにして、できましたら何らかの協議ができれば、そんなふうに思っておりますので、最後にそのことを申し上げて、質問を終わりたいと思います。

 どうもありがとうございました。

戸井田委員長代理 次に、三日月大造君。

三日月委員 民主党の三日月大造です。

 この地理空間情報活用推進基本法案、私も、二つの理由でこの法案に対して大変期待をし、賛同しているんですけれども、一つは、地理空間情報というものを国のインフラとするんだ、また、その整備をすることは国家戦略なんだ、こういう位置づけをすることは大変重要だというふうに思っています。

 またもう一つ、これを整備、活用するということもさることながら、産官学連携して、官民挙げて人材育成、研究開発も含めて取り組んでいくんだということを包括的に定めた法律ということですので、この間、御検討いただいた関係各位、提出者初め皆様方に、まず敬意を表したいと思います。

 期待をし賛同しながら、私は特に、国土交通分野から懸念される点や期待される点、法の趣旨、現状、目指すべき姿について確認をさせていただきたいと思います。若干順番を入れかえてお聞きをしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。必要に応じて政府参考人にも確認をしてまいりたいと思います。

 まず一つ目、今、国会で、参議院先議なんですけれども、測量法の改正法案が審議をされております。これも、インターネットで地図情報、地理情報を活用していくんだという、よく似た枠組みの法案だと理解をしているんですけれども、この測量法との関係について、どのようになっているんでしょうか。

西村(康)委員 委員御質問の測量法との関係でありますけれども、御案内のとおり、参議院で既に可決をされました測量法の改正でありますが、これは、既にある地図の情報を、御指摘のとおり、インターネット等を通じて流通を促進していこう、利用を促進していこうというものであります。

 それはそれで、もう既に測量の成果をどんどん世の中に生かしていくという意味で大事なことだと思うんですが、今回、我々、この法案、地理空間情報活用推進基本法案でやろうとしていることは、さらに、衛星測量を使っていわゆる地図情報をより正確なものにしていこう、基準も統一をし、それぞれいろいろなところにある地図情報を重ね合わせるようにしていこう、より精度の高いものにしていこうというものでありますので、測量の成果と相まって、この地図情報が整備をされて、それをまた今回改正がなされる予定の測量法の新しい法律によってさらに流通を促進するということで、両方の法律が相まって地理空間情報の活用が促進される、そういうふうに期待をしているところであります。

    〔戸井田委員長代理退席、委員長着席〕

三日月委員 今言われたように、この法律は、より測量の精度を高めていくものだというお話がありました。そうしますと、この法文の中にも出てまいります基盤地図情報、この基盤地図情報を整備したり、また更新をしたりということで大変重要な役割を担うであろう国土地理院、また、衛星も含めて地球全体、日本上空、その周辺、そういったところの気象等を観測、伝達する気象庁、この気象庁や国土地理院という組織に期待される役割や機能というものはどのように変わっていくのか、また、変えようとするのか。

泉委員 御質問ありがとうございます。

 国土地理院と気象庁という二つの観点からの御質問でありますけれども、国土地理院については、我が国の測量、地図作成を所管しておりまして、位置情報の基準を定める、そしてまた、その管理、提供を行うということで国民から期待をされている。この法案によって、国土地理院は、地理空間情報の位置の基準となる基盤地図情報の基準を策定し、その整備、更新を促進するということでいえば、非常に重要な役割がこれから高まっていく。ただ、もちろん、行政改革の観点でいえば、この国土地理院そのものも定員は増という形にはなっておりませんでして、定員の方は少なくしていくけれども、しかし、重要な役割を担っていく。

 そして、気象庁についても、特に災害という観点からいえば、やはり非常に重要な役割はあるということでありますけれども、この法律の成立によって新しい役割が付加をされる、新しい機能が追加をされるということではないということでございます。

三日月委員 国土交通省の方にも御出席をいただいていると思うんですが、今話題にしました基盤地図情報、これについては、詳細を国土交通省令で定めていくんだということで、測量の基準点、海岸線、公共施設の境界線、行政区画その他ということで例示がされておりますけれども、どのようなものが省令で定められる予定なんでしょうか。

藤本政府参考人 お答えさせていただきます。

 先生御承知のとおり、基盤地図情報というのは、地理空間情報の中で、いわゆる電子地図上における地理空間情報の位置を定めるための基準となる、先ほどおっしゃった海岸線とか、そういうたぐいの位置情報を定める、いわゆる白地図のようなもの、こう思っております。本法の二条三項の方に、国土交通省令によって基盤地図情報の位置を定めるための基準となる項目、そしてもう一つは、その項目の位置情報が満たすべき基準、この二つを省令で定めるというふうになっております。

 具体の項目につきましては、今後、関係機関と協議、あるいは関係筋と協議をしながら決めていくことになると思います。先ほど先生、法文をお読みいただいたわけであります。そういう海岸線とか公共施設の境界線、あるいは行政区画等ということであります。その中で、例えば公共施設の境界線という意味では、道路ですとか鉄道ですとか、あるいは河川、そんなようなものが当然想定されるのではないかなというふうに考えております。

 それからもう一点、項目の位置情報が満たすべき基準、これもこれから関係機関と御協議しながら決めていくことになると思いますが、これは、位置の精度をどういうふうに守っていくかという基準をもう一方で決めていく。例えば、都市部においては二・五メートル以内の精度にしましょうというふうに決めるとなりますと、例えば二千五百分の一の地図でいうと一ミリの誤差までしか誤差は許さない、そんなような基準を、これも省令の中で定めていこう、こういうふうに思っております。

 いずれにしましても、本法の成立した後、速やかにこれらの省令を定めるということによりまして、それとあわせて広く関係者の意見も聞きながらこういう省令を定めていきたいというふうに思っております。

三日月委員 もう一点確認したいんですけれども、今御答弁いただいたように、基盤地図情報には、位置情報と、そしてその位置情報が満たすべき基準を定めていくことになるんだというお話でした。これは国にとって大変重要なデータインフラストラクチャーだと位置づけるのであるならば、こういうデータの更新、これのリニューアルというのが極めて大事なことになってくると思うんですけれども、これは、どの主体がどのような対策を講じながら更新というのが行われていくことになるのか。これは提出者にお伺いしたいと思います。

泉委員 この法律においては、国、そして地方公共団体、事業者、それぞれ責務ですとか努力というものが書かれているわけですけれども、例えば、道路、河川、それぞれ、さまざま情報の更新というものがなされると思います。現場から情報が上がり、それを集約し更新をするということでいえば、それはやはり国の責務であるというふうに思っております。

 ただ、一つ一つの情報を現場まで行って確認して国が主体的に更新をするのかですとか、地方公共団体との役割分担ということについては、これから、今後の詰めになっていくというふうに思います。

三日月委員 今、答弁の最後に言われた、現場から情報を、日々業務の中でいろいろな更新される情報があって、それを国がまとめ上げるのか、自動的に上がってくるのかしながら、地方公共団体と国とが連携してその更新に取り組んでいくんだというお話がありました。私は、このあたりをきちんと整理することが極めて大事だと思うんです。国がやるのか、地方公共団体がやるのか、はたまた事業者にどこまで求めるのかということが、この法律の特に地理空間情報の高度な活用という面で肝になる部分だと思うので、改めてちょっと突っ込んでお伺いしたいと思うんです。

 法文の中にも、国、地方公共団体、事業者の努力という、四条、五条、六条のところで定めがあります。国は総合的なことをやるんだ、地方公共団体は国との適切な役割分担で遂行していくんだ、事業者に至っては、良質な地理空間情報の提供にみずから努めるとともに、国または地方公共団体が実施する施策に協力するよう努めるということになっているんですが、特に、国と地方公共団体との間の適切な役割分担というのは、どのようなことが想定されるんですか、どのような状態が。

泉委員 まず、国自身は、全国さまざまな地域がございますので、共通のルール、そしてデータ整備のシステム、これをつくるということが大切な役割かと思います。根幹的なデータの整備、先導的な分野の調査研究、そして委員が冒頭におっしゃられました人材育成、こういうものはやはり国の役割であるというふうに考えております。

 一方で、地方公共団体の役割は、その地域の特性に応じたデータ整備のルールをつくるとともに、具体のデータ整備や地域におけるデータ利用の推進を行うということであると思います。

 一方、事業者の方でありますけれども、事業者の方は、その地域の中でさまざまなデータが整備をされていく中で、その利活用を推進していくということが大きな観点かと思います。もちろん、十五条に書かれているように、個人情報保護というところは大変大きなところだと思いますが、さまざまな地図データ、基盤情報をより多くのサービスに創造していくというところで高度な事業展開を図り、ひいては国民の利便性の向上に寄与をするというところが事業者の役割かというふうに思います。

 その意味では、六条が、事業者の責務ということではなく努力ということで書かれているわけですけれども、そういった理由があるというふうにお考えいただければと思います。

 そして、この地理空間情報の活用は、国、地方公共団体、関係事業者、大学等の研究機関、いわゆる産官学ですね、これが相互に連携しながら協力することで情報の共有化が進展するなど、効果的な推進が図られると考えているということで、この法案では、関係主体の連携強化についても国が必要な施策を講ずるということを求めている。

 先ほど、一番最後の御質問でありますけれども、国と地方公共団体の適切な役割分担ということでいえば、改めてになりますが、国が、統一的に適用されるべき基準やガイドラインを策定する、そして基礎的、横断的な調査研究を行う、そして全国的な見地からの施策を講じるのに対し、地方公共団体は、その地域における行政課題の状況に応じて必要な施策を講じていくという役割分担になります。

三日月委員 せっかくたくさんの政府参考人の方にもお座りいただいていますので、ちょっと通告にはなかったんですけれどもお伺いしたいと思うんです。

 これまでは、手間はかかったけれども、地図なり地理情報をつくった人とそれを利用する人とがかなり近いところで、比較的フェース・ツー・フェースでわかりやすいところにいたので、その情報に対する問い合わせだとか内容の確認というのは比較的しやすい状態にあったと思うんです。それを、高度に、どこでもいつでもだれでもインターネットを通じて無償で利用できるようになるということは、そうしたつくった人、もともとそのデータがつくられたところとそれを利用する人とがちょっと離れたところになる状態というのが想定されるし、また、それを一方では目指しているというところがあると思うんです。

 そうなると、今も問いました国と地方公共団体との役割、それらの地理情報というのをつくる、データを積み重ねていくというのが地方公共団体にあるけれども、それを一元的に更新したりまとめたりして発信していくのは国であったりするわけで、そのあたりの役割分担というのは今まで以上により重要になってくると思うんですけれども、国として、このあたりはどのような対策を講じていくおつもりか、お伺いしたいと思います。

藤本政府参考人 先生おっしゃられたように、そういう基盤地図がいろいろな形で活用されるようになると国民との距離がむしろ遠くなるのではないか、こういうお話なんですが、逆に我々は、こういう法律ができまして、政府全体が一緒に取り組む、そして国と地方と民間が連携しながら取り組んでいくという意味で、むしろ、一体として取り組む情勢も醸し出されるのではないかというふうに思っております。

 それともう一点は、国がこの基準をつくる場合に、先ほどもちょっとお答えさせてもらったんですが、できるだけ幅広く意見を聞いていく。要するに、皆さん方のニーズにこたえられるように、いろいろな、さまざまなニーズがあると思いますので、そういうものにこたえられるように、幅広く御意見を聞きながら基準をつくり、あるいは、我々も一部基盤地図の作成に関与させていただく部分がありますので、その際にもいろいろな方の御意見を聞いて、皆さんが使いやすいようなものをつくるように努めてまいりたいというふうに思っております。

三日月委員 ぜひよろしくお願いしたいと思いますし、これは、成立後、三月を超えない範囲内で施行されるということです。もう既にさまざまな準備、関係者からのヒアリング、そしてニーズの把握等々されていると思うんですけれども、今申し上げたような懸念については、取り組まれる過程でぜひしっかりと対応していただきたいというふうに思います。

 ちょっとここで各論といいますか突っ込んだ話をさせていただきたいと思うんですけれども、この基本法が都市政策ですとか交通政策また海洋政策に与える影響や効果について問いたいと思います。

 その前に、せっかくですから提出者の皆さんに感想をお聞きしたいと思うんですが、先ほど下村官房副長官の御答弁の中でGPS、衛星測位を利用しての中で、それが例えば有料になった場合、誤作動をした場合の懸念について、同僚委員の方から問い合わせがありました。そういう場合は想定していないんだというお話がありましたが、私は、これからお伺いする都市政策や交通政策の分野の中で、こういうアメリカの持っているGPSを利用した衛星測位やその各種政策というものについても、今申し上げた誤作動の問題、有料化になった場合の問題、そうならないようにするための一定の政府の対応は必要だと思うんですけれども、どのようにお感じになっていらっしゃいますか。提出者としての考えを。

泉委員 まず、GPSについてなんですが、確かに、GPSそのもの、本体の大きなトラブルというものは、我々も想定はしておりませんが、あるかもしれない。

 ただ、事実上そのサービスにおいて、例えばカーナビ、これは経路案内というようなものをしておりますので、カーナビが故障したからといって、前の車と衝突をするとか間違って路肩に落ちるとか、そういう状況ではないということを考えれば、GPSそのものの誤作動があったとしても、イコール事故ということではまずないということかというふうに思います。

 そしてもう一つ言えば、やはり今の我々、我が国ができるということでいえば、データのバックアップをしっかりととっておくということが非常に重要なのかなというふうに思っておりまして、例えば国土地理院でいえば、もちろん国土地理院本体でのデータの保護ということをしておりますけれども、それ以外に、つくばですとか千葉県の鹿野山というところにデータを分散して、複製をして保管をしているというようなこともありますので、そういった意味でのバックアップ機能というものは整備をさせていただいているというふうに認識をしています。

三日月委員 今、提出者の方からは、カーナビとかに使われているので、GPSが壊れたからといってすぐに衝突したりするものではないというような御見解も示されましたけれども、必ずしもそのようなものばかりではないと思うんです。

 例えば、海洋におけるGPS、衛星を利用した位置情報、また航空に至っては、MTSATによって管制間隔を縮めて、より多く飛行機が飛べる状態や何かももう既に導入がされているわけなんですね。

 したがって、このGPS、衛星測位を活用したこうした交通管理システムがこれだけ普及してきている以上、それらをより高度に、より密に使えるようにしようと進めるに当たっては、その誤作動やフェールセーフの原則からいって、安全対策をより強化していくべきではないかと私は考えているんです。単なるデータのバックアップシステムだけでは私は足りないのではないかと思うんですが、そのあたりの御見解はいかがでしょうか。

泉委員 すべてにお答えをできるかというところはありますけれども、確かに御指摘のとおり、航空機や船舶という場合には、技術の進展もありますし、また一方で、技術が進展をして、その技術すべてに頼ってしまうということが逆に危険を伴うということもございます。

 その意味で、特に航空機や船舶という人命にかかわるシステムにおいては、その信頼性を両方からサポートしていくということで、衛星測位情報の活用をこれからも進めていくことは当然でありますけれども、やはり地上の無線等の施設の活用ですとか、そういったことも含めて航行の安全確保というものを行っていかなければなりませんし、今御指摘のあったさまざまな技術を利用して、より一層複合的に安全を確保していくためには努力をしていきたいというふうに思います。

三日月委員 提出者でも、また政府参考人でも結構なんですが、このGPSの利用が有料化された場合、有料になった場合、もちろん、そうならないように日米間の交渉をきっちりするんだというような御答弁もありましたが、そうなった場合の費用負担や混乱に対してどのように備えていらっしゃるのか、また備える必要があるとお考えなのか、お聞かせください。

泉委員 このGPSなんですが、運用をされている米国との間で、平成十年の九月に日米間の共同声明という形で出されておりまして、「合衆国政府は、平和的、民生的、商業的及び科学的利用のために継続的かつ全世界的に利用者に対する直接課金なしにGPS標準測位サービスの提供を継続する意向を有する。」ということで、明確に声明が出ております。その意味では、今後においても、GPSの利用が有料化されるような事態というのは、現時点では想定し得ないというふうにも考えております。

 ただ、いずれにしても、この御懸念がないようにしていきたいというふうに思っておりまして、アメリカとの連絡調整ということについては、今後も引き続き密接にやっていかなければならないというふうに思っています。

三日月委員 今の質問、政府からもちょっと答弁を求めたいんですが。

坪井政府参考人 まさに泉先生が言われたとおりでございまして、このような日米間の合意がありますので、有料化されるような事態は現時点では想定できないだろう。ただ、まさにこの法案の中に、信頼性の高い衛星測位によるサービスを安定的に享受できる環境を効果的に確保するためとして、GPSを運営する米国等と必要な連絡調整を行えという規定があるものと理解しておりますので、政府も、そのようなこの法案の趣旨にのっとって対応してまいりたいと考えております。

三日月委員 もう一つ、私ども国土交通分野で、地籍整備。六本木ヒルズの再開発のときにも地籍整備が進んでいないがためにいろいろ余分な時間とコストがかかったということがあり、また、都市部を中心にこの地籍整備がまだまだ進んでいないエリアがたくさんあります。この地理空間情報の活用推進がこれまで進んでこなかった地籍整備の推進に、また精度を高めるという点で与える影響、効果というものをどのようにとらえていらっしゃいますか。

西村(康)委員 地籍調査、全国で平均しますと進捗率は十七年度末で四七%ということで、この推進が大きな課題となっているのは御指摘のところであります。

 本法案に基づきまして、先ほど来御議論をしていただいておりますけれども、基盤地図情報の整備が進むということでありますので、地籍調査を実施する場合に、資料収集作業が効率化される。基準点情報の地籍測量への活用、あるいは街区の情報、そういったものの地籍図策定過程での活用が図られることが期待されますので、地籍調査がより効率的に、より円滑に進むということを我々は期待しているところであります。

 いずれにしましても、これらの効果を通じて、基盤地図情報の整備と地籍調査とが、着実な実施によって双方相まって推進されるということを期待しているところであります。

三日月委員 もう一点、最後に確認をしたい、またお伺いをしたい。

 私は広げていくべきではないかという観点からお伺いするんですが、こうした地理空間情報の活用を推進していくということが日本の海洋政策に与える影響。とかく地理空間情報というと、国土の陸の上だけの情報、またその活用だけだという理解をすることがあるんですけれども、この対象となる地理空間情報には海洋領域は含まれるんでしょうか。

茂木委員 当然、陸上であっても海上であっても、そういったものは含まれてくる、こんなふうに考えております。御案内のとおり、この国会で海洋基本法を成立させていただいたわけでありますけれども、海洋におきましても、正確にその位置であったりその情報を把握しておく、このことは我が国の国益からも必要だ、こんなふうに考えておりまして、当然、概念として含まれてくる、このように理解をいたしております。

三日月委員 そうしますと、この基本法により、またGPSの活用や衛星測位の活用によって、海洋権益ですとか資源の調査、探査、保全にどのような形で資することになっていくのかということについて、期待やまた認識、御見解をお聞かせいただけますでしょうか。

茂木委員 今御答弁申し上げましたように、海洋政策の推進に当たりまして、海洋に関する正確な情報の把握、これが必要である。例えば、大陸棚の限界の画定、こういう調査を行っていくということは、海洋権益を考える上でも極めて重要になってまいります。また資源、これを考えましても、どこにどれくらいの範囲でその資源が、例えば水産資源であってもそうでありますが、鉱物資源でありましても、分布しているか、こういうことをきちんとつかんでいく意味からも、この地理情報は大変重要だと考えております。

三日月委員 ありがとうございました。ぜひこの法案に載っております趣旨、さまざまな挑戦をする法案だというふうに私は思っています。

 先ほど来議論がありました個人情報の問題、こういったところに対策を講じていくということと、加えて、この地理空間情報が活用されることによってより進むであろう都市政策ですとか交通政策、こういったところに安全面でのフェールセーフの対策がきちんととられていくことを今後とも私自身確認をしっかりとさせていただきたいという旨を申し上げまして、少し早いですけれども、私の質問をこれで終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

河本委員長 次に、佐々木隆博君。

佐々木(隆)委員 民主党の佐々木でございます。

 五人目ぐらいになりますと大分同じ話の繰り返しになることは、お許しをいただきたいというふうに思います。

 私は、この基本法は推進する立場であります。ではありますが、先ほど平井議員だとか細野議員などからもありましたが、要するに、進めるに当たって、とりわけ個人情報の保護などということが非常にきちっと守られていくことが推進に役立つという視点で少し論議をさせていただきたいなと思っておりますので、よろしくお願いを申し上げたいというふうに思います。

 今までの地理情報というものが、それぞれ個別に進めてきたために共通のものにはまだなっていない、そこをまず共通にしよう。それにもう一つ、GPSという空からの情報も入れよう。要するに、三次元をきちっとしよう、それに四次元も入れよう、こういうことでありますので、それ自体は非常にすばらしいことだというふうに思うんです。その相乗効果も期待できるところであるんですが、そういうサービスを享受するということになれば、その反対側にやはり被害を受ける人が出ないとは限らないわけでありまして、法律をせっかくつくるわけですから、法律には権利と義務が必要なように、推進と保護という両面がきちっとそろっていなければならないのではないか。

 そういった意味で、最初に提案者にお伺いをしたいんですが、この法案を策定するに当たって、いわゆる活用推進という基本法なんですが、そこにおける留意点といいますか、セキュリティーの部分についてどのような検討がなされてきたのかについてお伺いをいたします。

新藤委員 まず、個人情報というのをどこの時点で保護しなきゃいけないか、これは先生御理解いただいていると思いますが、私どもそこからまず始めなきゃいけない、こういうふうに思っています。

 基盤地図情報、共通の地図ですね、基盤地図情報は、これは基準点や公共施設等の位置を示すまさに公共的な情報でございまして、そこには基本的に個人情報を認識するものを含んでいないわけです。ですから、基盤図面まではオーケーだ。しかし、それにいろいろなものを重ね合わせて活用していこうとするときに、個人情報を保護しなきゃいけない問題が出てくるというふうに私ども思っております。

 ですから、例えば登記地図だとかそういったものも、個人の情報が入っていても公開されているようなものもございます。これは仕分けをきちんとしなきゃいけないわけです。しかし、いろいろなものをさらに重ねていったときに侵してはならない個人の情報がある、これをガイドラインをつくってしっかりと保護していきましょう、これを十五条にうたっております。

 あわせて、先生から御指摘いただきましたように、個人情報保護以外に、著作権などの知的財産、こういったものも、知的財産保護に関するガイドラインを別途つくらなきゃいけないだろう、このように思っていますし、それをやらなきゃなりません。

 さらに、重要な施設、国の安全に影響を及ぼす場合、例えばテロリストに攻撃のヒントを与えてしまうだとか、有事の際の自衛隊の行動が明らかになってしまう、こういったような問題も、これは規制すべきものについては適切な処置を行うように検討していくということでございまして、個人情報以外にさまざまな問題について必要な措置を講じていきたい、こういうことが法律の趣旨でございます。

佐々木(隆)委員 そこで、各省庁にかかわる部分について少しお伺いをしていきたいというふうに思うんですが、最初に総務省にお伺いをしたいというふうに思います。

 総務省でも、地方自治体のいわゆる電子自治体というのを進めてこられたと思うんですね、今日まで。そこを推進してきているんですが、電子化の進んでいる今の状況と、そのときのセキュリティーについてどんな対策がとられてきたのか。

 実は私がインターネットで調べたのではちょっと古い資料しか出てこなくて、自治体における情報セキュリティー監査の現状ということでインターネットで調べますと、ほとんどの自治体で行われていないんですね。そんなことも含めて、現状とセキュリティーについてお伺いをいたしたいと思います。

久保政府参考人 地方公共団体におきます電子自治体への取り組みについてでございますけれども、平成十三年一月にIT戦略本部がe―Japan戦略を策定いたしまして以来、着実に進展していると考えております。

 例えば、昨年でございますけれども、平成十八年四月現在で、地方公共団体における庁内LAN、これは、都道府県におきましては一〇〇%、市町村におきましても九九・一%の団体で構築をしているということになっております。また、職員の一人一台のパソコンの整備につきましても、都道府県では一〇〇%、市町村でも八二・一%の団体で実現しております。

 また、本法案に関係いたします地理情報システムでございますけれども、これにつきましては、統合型GISの導入ということにつきまして、都道府県におきましては二九・八%、また市町村では一五・八%で導入済みということになっております。

 御指摘にございました、電子自治体が進展をいたしますとともに情報セキュリティー対策、これは非常に重要になってくると考えておりまして、各地方公共団体におきましても、近時、その取り組みというのは強化をしていると考えております。

 同じく平成十八年四月現在でございますけれども、個人情報保護条例、これはすべての地方公共団体で制定済みとなっておりますし、情報セキュリティーポリシーにつきましても、都道府県で一〇〇%、また市町村でも九六・二%の団体で策定済みということになってございます。また、情報セキュリティー監査でございますが、都道府県では七八・七%、そして市町村でも二九・一%の団体で実施されているという状況になってございます。

 私どもといたしましては、今後とも、地方公共団体のこうした取り組みを積極的に支援してまいりたいと考えております。

佐々木(隆)委員 今の数字を聞いて大分安心したんですが、私の手元にある資料だと、もうほとんど一〇%未満みたいな、二〇〇四年と二〇〇二年の資料なんですが。

 ただ、各自治体で、とりわけこれは地図情報でありますけれども、さっき地図情報で二二%ぐらいとか一八%ぐらいと言っていたんですが、進めるに当たって、いわゆる個人情報との関係だとか、どこまで載せるかとかいうのは、まだまだ悩ましい状況にそれぞれの自治体があるというようなことも報じられております。とりわけ今度の場合には、先ほど一番最初に提出者から説明があったように、地図情報というのは一番もとのもとになる情報で、それにいろいろなものが載っかる可能性がどんどん出てくるわけですよね。そういった意味でいうと、自治体では取り組みたいけれども悩ましいというようなところもたくさんあるようでありますので、ぜひその辺はこれからも留意をしながら進めていっていただきたいというふうに思います。

 次に、国土地理院にお伺いをしたいと思うんです。

 今まで地図並びにGISを推進してきた立場にあるわけでありますが、その地図をつくるに当たって一番かかわりが深いのは測量協会とか測量設計協会というところだというふうに私は思うんです。今までの推進の状況の中でそういうところとどんな話し合い、とりわけセキュリティーについて、業界が自主的な取り組みをしているところもあるのかもしれませんが、そんなことも含めてお聞かせをいただきたいというふうに思います。

藤本政府参考人 測量関係のいろいろな団体での取り組みでございますが、特にやはり個人情報関係が非常に悩ましいということで、関心が高いわけでございます。

 今のそういう測量業界団体の取り組みということでは、最近の話なんですが、ことしの三月に、財団法人の日本測量調査技術協会というのがございます、そこが高解像度航空写真に関する自主研究会、こういうのをつくりまして、そこで一定の成果を得たようでございます。その成果を踏まえまして、会員企業にいろいろな周知をしておる実態がございます。具体的には、高解像度の航空写真につきまして、無秩序な一般公開については歯どめが必要であり、インターネットでの公開には、解像度の調整、少し見にくくするというようなことでございますけれども、調整などの適切な処置を求める旨の注意喚起を会員企業に行っているというふうなことがございます。

 我々地理院の方でございますけれども、我々の測量行政について提言をしていただくための、有識者から成る測量行政懇談会というのがございます。そこでも提言をいただいておるんですが、我々がいろいろ提供する場合の話になりますけれども、国土地理院や公共団体が得る測量成果、これは、非常に基礎的かつ重要な社会基盤だ、国民の共有の財産として広く活用されることを原則とすべきである。ただ、そうはいいながら、個人情報や国の安全が害されるおそれのある情報が含まれる場合があることから、特に影響の大きいインターネットでの情報の公開等に関しては必要な措置を検討すべきではないか、こんなようなお話もいただいておりまして、我々も検討を進めているところでございます。

 これまでのことでございますが、私ども地理院が直接いろいろな提供をする中で、航空写真、空中写真と言っておりますが、そういうものにつきましては、現在刊行しているものでいいますと、その解像度からいいますと、個人が識別できるような状態にはなっていないというようなことから、個人情報の問題が指摘されたということはこれまではなかったわけでございます。

 ただ、これからは、解像度の高い空中写真というものをインターネットでだれでもアクセスできるというふうにする場合には、やはり個人情報に関する問題が出てくる可能性もあるということもございますので、その場合には少し解像度を下げるだとか、そういうことの検討をしていきたいというふうに思っております。

 また、先ほど来話が出ておりましたが、地理空間情報全般の議論になりますと、この法案成立後に地理空間情報活用推進基本計画、これをつくるわけでございます。それを検討する中で、関係省庁等とも連携をしながら、先ほど来出ておりましたが、個人情報の取り扱いに関するガイドラインの策定、こんなようなことにも適切に対応していきたい、こういうふうに思っております。

佐々木(隆)委員 地理空間情報、今度は地上というものも入ってきて、その部分について改めてお伺いしようと思ったら今の答えの中にあったようでありますので、そこは省きますが、今お話をいただいた一般公開規制については、解像度について、これはいわゆる自主規制をしているということですよね、協会の方が。

 ただ、私も余り専門家でありませんのでテクニカルな話はわかりませんけれども、共有できる地図ができて、そこにどんなものがこれから載ってくるのかわかりませんけれども、そうなってきたときに、こういう協会があるところは協会の自主規制ができるからいいと思うんですけれども、そういういろいろな、どんな人たちが入ってくるのかもちょっと今のところは想像がつかないんですけれども、そうしたときに、政府がつくるといっても政府の職員がつくるわけじゃありません、技術屋さんがつくるわけですから、そういう人たちがどんどん入り乱れてくるわけですよね。そういうところで、どこまでそこら辺を整理していくのかということも一つ課題なのかなと。これは後ほどお伺いをしたいというふうに思います。

 そこで、今のようなお話があったわけでありますが、そういうものの全体を束ねているのは内閣官房だというふうに思うわけであります。政府全体として今までも情報セキュリティーについていろいろ取り組んでおられて、政策会議とか内閣官房情報セキュリティセンターというようなものがあって、今までもそういうもの全体に取り組んでこられていたと思うんです。今までの取り組みの状況と、それから、今度この法案ができることによってどういうセキュリティーの体制というものをつくっていくのか。先ほど来ガイドラインというお話がありましたが、今までのやり方と今度のやり方でまた少し変わってくるんだと思うんですね。その辺を含めてお伺いをしたいというふうに思います。

下村内閣官房副長官 お答えいたします。

 今御指摘がございましたように、政府は、情報セキュリティー対策の中核機関として、平成十七年の四月二十五日に内閣官房に情報セキュリティセンターをつくりまして、同じく、同年の五月三十日に、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部のもとに内閣官房長官を議長とする情報セキュリティ政策会議を設置いたしました。この情報セキュリティ政策会議では、平成十八年二月二日に我が国全体としての情報セキュリティー対策に関する中長期戦略である第一次情報セキュリティー基本計画を策定するとともに、年度ごとにセキュア・ジャパンを策定いたしまして、政府全体として情報セキュリティー政策を推進しているところでございます。

 例えば、第一次セキュリティー基本計画においては、政府機関の情報セキュリティー対策のレベルを技術や環境の変化を踏まえつつ世界最高水準とする、そういうふうに位置づけております。

 今回、政府における地理空間情報の活用に当たっても、このような視点とレベルを持って十分配慮していくことが必要であると認識し、そのように推進をさせていただきたいと思っております。

佐々木(隆)委員 この課題に当たって政府として、内閣官房として今までもかなり取り組んでこられていたんだなということを改めて私も認識したんですけれども、ぜひ進めていただきたいというふうに思います。

 たまたま、これは経産省ですけれども、企業における情報セキュリティーガバナンスのあり方というかなり分厚いものが出ていまして、企業に対して、第一段階ではここまでやれとか、第四段階ぐらいまであって、かなり細かく、事細かにというか、こういうレベルで上げていったらセキュリティーはきちんと守られますよというのを片っ方でつくっていたり、政府としてもあちらこちらでかなり取り組んでおられるんだなということを改めて認識したんですが、リービッヒのおけという法則がありまして、これは中学ぐらいの教科書に出ていたんではないかと思うんですが、一番少ない栄養素のところの分しか作物は成長しない、たるがあって、どこか一つ低いとそこから水が流れてしまうということ。

 これは、昔は作物学として習ったつもりだったんですが、このごろはセキュリティーのところにリービッヒのおけという言葉がしょっちゅう出てくるようになった。いろいろなセキュリティーを組んでも、どこか一カ所が弱ければ今の情報というのはすぐに漏れてしまうんだというので、リービッヒのおけというのは今やセキュリティー用語になっておりまして、そういった意味でも、セキュリティーというのは高度になればなるほど大変難しいので、ぜひお取り組みをいただきたいというふうに思います。

 そこで、提案者にお伺いをしたいんですが、今、各省庁からそれぞれ地域の取り組みなどを含めてお伺いをしてまいりました。新しい法律を今つくろうとして、法律は、利用する人々の利便というのと同時に、享受するというか主体的に享受したいという人と、受動的に享受してしまう形になる人と、いろいろいるわけですね、一つの法律が動き出すと。逆に言うと、そういう人たちの保護とか安心というものもやはり同時に考えていかなければならない課題だというふうに思うんです。

 先ほど、一番最初にも十五条にそのことを含めて書いてあるというふうに言われたんですが、この一つの条文からそのすべてを読み取るには少し私としては物足りないかなという気持ちがあるんです。今までの政府の皆さん方の答弁なども含めて、提案者として、セキュリティーについて十分というふうに考えているかどうか。私は一層強化が必要かなと思うんですが、お伺いをいたします。

泉委員 議員御指摘のとおり、確かに、情報が集約されればされるほど、その活用は特定の人間しかできなくなる、一般の国民からは離れていく、そうすると、安心が担保されないということもあるかと思います。一方では、先ほど平井委員からもお話がありましたが、利便性というものを高めていかなければならない。その両面をどう両立させるかというのが非常に大事かというふうに思います。

 この法案においては、地理空間情報の活用ということを通じて、利便ということで言えば、やはり多様なサービスをいかに多くの国民に享受していただけるかということになると思います。この多様で高度なサービスということ、もう一つつければ、廉価でそのサービスを提供、普及していくことが利便性を高めるということになると思います。

 実は、この法案をつくるに当たってさまざまな具体ケースというものも想定をしているわけですが、その利便性の中にも安全、安心というものがかなり含まれている。高齢者の徘回防止あるいは子供たちの位置の特定、これもプライバシーには十分配慮をしていかなければならないものですけれども、そういった社会的弱者の安心、安全をしっかりと守っていくという意味では、利便性の中にも安心というものが含まれるんだということも今回の法案では私たちは訴えていきたいというふうに思います。

 もう一つ、やはり今おっしゃいました個人情報の保護という観点であります。御安心をいただきたいのは、基盤地図そのものにおいては個人情報は含まれていないということを改めて皆様にもお伝えしていきたいというふうに思います。あくまで、基盤地図というのは特定の個人に視点を当てたものではありません。

 その基盤地図を使って、その上にさまざまな統計データを載せていくわけですけれども、その統計データを載せていく際にも、例えばハードの面の統計データであれば、どこどこでどれぐらいの、例えば老朽化した水道管がこことここにあるとか、まだまだ強度の弱いガードレールはここの場所にあるとか、あるいは、私も委員の地元の北海道にお伺いをすると、千歳空港におりると倒木の被害が最近、昨年、おととしぐらいですか、非常にひどいものがありましたけれども、そういった倒木の分布図みたいなものを基盤地図情報に重ね合わせて、災害復旧ですとか自然の保護というものに役立てていく。

 そういうことに関しては、これは個人情報が伴わないものですけれども、先ほど申しましたように、それぞれ個人の生活にかかわる、緊急で、災害が起こったときにまず人命を救助しなければならない、その対象者となる方々の分布図。そういった分布図も、分布図としてただポイントに印があればいいんですが、例えば、大きな住宅街であれば、ポイントがたくさんあるのでだれかわからないという話かもしれませんが、集落の中で一つだけポイントがつけられていれば、それは自動的に個人を特定してしまうということにもなるわけです。

 こういった個別具体的な一つ一つのケースを含めて、やはり今後政府の中で十分な検討を続けていきたいというふうに思います。

佐々木(隆)委員 今回つくろうとする共通の白地図について言えば、それは確かにまだそれこそ真っ白なわけで、何もないんですが、ある意味で利便性ということは僕も十分に理解しているつもりなんです。例えば、今、行政、自治体でも、税金を実施しているところと、経済のどこかを扱っているところと、農業のところとのデータが全部違って、これが重ね合わさらないから非常に不便だというような話があります。特に、その中で今、IT業界でみんなが一番求めているのが地図データと言われるものであることも事実であります。

 それだけに、地図情報をなぜみんながそんなに求めているかというと、だからこの法律をつくってきちっとしなければいけないという意図だということも十分知っているつもりでありますが、それに載っかる情報によっては、徹底的に個人の情報が出てしまうという危険性を同時にはらんでいるものなんですね。今整備するのは真っ白い地図ですけれども、それに個人の所得から家族構成から略歴から載っけていくことによって、地図に載っけていくことによって、すべてがわかってしまうということの便利さと危険性を同時にはらんでいるということで、私はきょうはセキュリティーについてだけお伺いをしたわけであります。

 非常に便利であるということは私も十分認識をしています。便利であることは非常に危険だということの背中合わせであるということがあるものですから、きょうはそういうことに限ってお伺いをさせていただきました。

 最後にお伺いしたいんですが、これは初めての法律であって、この法律がスタートすることに私は非常に意義を感じていますが、逆に言うと、今言ったIT技術の開発というのは非常にスピードが速いという状況の中で、これをスタートさせることは、それはそれで私はぜひそうすべきだというふうに思っていますけれども、ある種、試行的なものでもあるわけで、できるだけ早い機会にやはり見直しをしていくということ。こんなところが足りなかったということも含めて、付加していくことも必要ではないかというふうに思うんですが、そういった見直しなどについての考え方があれば、提案者に最後にお伺いをしたいと思います。

泉委員 ありがとうございます。

 確かに、初めてこうして制定をされる法律ですので、見直しということは大変重要かと思います。もちろん、改めるべきものは改めるということで、これは期日というか期間を問わず、改めるべきところは改めるということだと思うんです。

 まず、今回の法律が基本法であるということ、そして関係閣僚会議というものはあるわけですけれども、これまでの立法の事例なんかもずっと見させていただきますと、大体、明確な本部機能を置いているような法律の場合には見直し規定というものを置くケースが多い。しかし、置けなくもないんですが、こういった本部機能が特段置かれていない法律においては、見直し規定を置かない例も多々あるということをまず一つの理由としてお挙げをしたいというふうに思います。

 さらに言えば、科学技術の進展ということで、そういう意味からは三年の見直しもというお話もある一方で、プロジェクト自体は非常に大きいということもございまして、GISアクションプログラム二〇一〇というものが政府の中でつくられているわけですが、その基本的な方針の中で、二〇〇六年度からおおむね五カ年という形で計画が定められておりまして、その意味では五年ごとに自動的に見直しをしていくような形に既になっているということもございます。

 そういった意味で、委員の御指摘の趣旨は十分に踏まえながら、私たちは、この政府の基本計画というものに基づきながら、おおむねこの法律の施行後五年以内程度で法律の施行の状況について検討を加えて、その結果に基づいて、計画に基づく具体的な施策の点検、見直しなど必要な措置を講じていくということが適当ではないかというふうに考えております。

佐々木(隆)委員 これで終わらせていただきますが、新しい技術でありますので、みんなで推進をしていくということの中で、新しいものだけにいろいろなところに注意も配らなければいけないのかなということも最後に申し上げさせていただいて、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

河本委員長 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。

 最初に提出者に伺っておきますが、政府は、阪神・淡路大震災の一九九五年に地理情報システム関係省庁連絡会議を設置して、一定期間ごとに計画を立てながら地理情報システムを整備し、現在は地理情報システム等推進会議で施策を進めているところです。地理情報システムの整備自体は、この基本法が制定されなくても推進できる体制になっているというのが現状です。

 そこで、本法案は自民党、公明党、与党の共同提案で始まったものですが、与党なら政府提出法案にして出していくということができたわけです。しかし、百六十四国会に議員立法でお出しになったわけですが、なぜ議員立法の形にしたのか、これを最初に伺いたいと思うんです。

茂木委員 吉井委員の方から、例えば新しい法律がなくてもこの地理情報システムの整備はできるのではないかと。確かにそういう側面はありますが、きょうの質疑の中でも、今回、衛星測位も含めて物事をしっかりと進めていく。恐らく、スピード感、また一体性、そして計画性を高めていくという意味から、今回の基本法が私は必要だ、こんなふうに考えております。

 そして、なぜ閣法ではなくて議員立法か。別に、何を閣法にして何を議員立法にしなけりゃいけない、こういう明確な定義があるわけではないんですが、恐らく、地理情報システムの問題、そして空間の利用の問題につきましては、現在の問題でもありますが、相当将来にわたるような幅広い課題を含んでいる。法律によりましては、もっと現在に近いところの具体的な施策を取り扱うものも多いのではないかな。

 したがいまして、そういった将来を見据えた上で政治がまさにリーダーシップをとって取り組むべき課題だ、こういう意味から、議員立法として提出をさせていただいております。

吉井委員 次に、提出者に法案の第三節、衛星測位に係る施策について伺いますが、法案に出てくる衛星測位の人工衛星というのは、アメリカの衛星測位システムGPSと、それから日本の準天頂衛星ということと理解していいですか。

茂木委員 恐らく、宇宙というものはこれから、単に開発する時代から、まさに利活用を中心に考えていく、こういう時代になってくると思います。

 そういった観点から、衛星測位の人工衛星として、現時点で実際に使われております、また幅広く利用されておりますのは米国のGPS、こういうことになってまいりますし、近い将来で申し上げますと、我が国で開発を進めている委員御指摘の準天頂衛星、こういうことでありますので、その二つが当然視野に入ってくるということだと考えております。

 ただ、今後の利活用を考えてみますと、さまざまな衛星測位システムが今後利用される可能性、こういうものは否定できないわけでありまして、そういった場合には新しいシステム等々も本法案の対象になる、このように考えております。

吉井委員 あわせて提出者に伺いますが、日本の宇宙政策は、一九六九年の宇宙の平和利用決議、国会決議にのっとって進められております。準天頂衛星システムも、当然その趣旨に沿って運用されるものと考えていいものだろうと思うんですが、確認をしておきます。

泉委員 先ほども御質問がございましたけれども、昭和四十四年、一九六九年の五月九日に国会決議として平和利用というものが定められております。「平和の目的に限り、」というところで、これが非軍事ということでこの決議が上げられているわけですが、今回の準天頂衛星システムも、委員御指摘のとおり、当然にその趣旨に沿って運用されることになるというふうに考えております。

吉井委員 次に、政府参考人に伺いますが、我が国が運用する人工衛星は、これまで全部で何機あるのか。人工衛星打ち上げの一機ごとに法律を制定したという例を私は知らないわけですが、打ち上げごとに制定した法律というものがあったのかどうか伺います。

板谷政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の我が国の人工衛星、打ち上げたものでございますが、一九七〇年以降に打ち上げました、「おおすみ」以降、国内、国外で打ち上げたものを合わせまして百十九機ございます。

 衛星の研究開発につきましては、委員御承知のとおり、宇宙航空研究開発機構が機構法に規定された業務に基づき取り組んできたところでございます。

 法律の要否につきましては、個別具体的に判断されるべきと考えておりますが、これまでは、個別の衛星の研究開発に関し法律を策定したことはございません。

吉井委員 あわせて政府参考人に伺いますが、準天頂衛星システムだけ法律をつくって運用しなければならないという何か特別の理由というものはありますか。なければないで結構なんですが。

坪井政府参考人 今回の法律案では、地理情報システムに係る施策と衛星測位に係る施策を連携させて推進することにより地理空間情報の活用の推進を図っていこうという法律と理解しております。

 このような中で、衛星測位に係る施策の一つとして準天頂衛星システム計画が存在しているものであると理解しておりまして、あくまでも本法案の中心的な目的は地理空間情報の活用の推進である、このように理解をしております。

吉井委員 特にこれをつくらなきゃできないという理由というのはないわけですね。

 提出者に伺いますが、法案二十条に「地球全体にわたる衛星測位に関するシステムを運営する主体との必要な連絡調整その他の必要な施策を講ずるものとする。」と規定しています。これは具体的にはどういうことを意味しているのか、伺います。

新藤委員 これは、まさにこの文言のとおりに、地球全体にわたる衛星測位に関するシステム、これを現在有効的に運用されておりますのは、米国が打ち上げた全世界的衛星測位システム、GPSというのは、これはグローバルポジショニングシステムといいますが、これがあるわけです。

 このGPSに対しましては、一九九八年、日米首脳会談において日米首脳がGPSの標準測位サービスの利用における共同声明を出した、それ以来の活用を行っておりまして、この討論をする全体会合というものを年一回これまでも開催しているところでございます。

吉井委員 次に、政府参考人に伺いますが、準天頂衛星システムというのは、二〇〇一年七月に経団連が政策提言した宇宙の産業化ロードマップ、ここで打ち出したものですが、官民共同で始まったものですよね。しかし、その後企業側は実行本体から撤退したと思うんですが、その理由はなんですか。また、そのとき、その民間企業は何という企業で、出資者はどこであったのか、これを伺っておきたいと思います。

坪井政府参考人 準天頂衛星システム計画につきましては、平成十三年に経団連からの提案があり、これを受けて、官民共同プロジェクトとして、国の側では研究開発を始めますとともに、民間側では、通信、放送、測位、このような複数の機能を擁する衛星システムの研究開発等を目的とする新衛星ビジネス株式会社というものが平成十四年に設立されておりまして、電機、機械、自動車、電力、通信などの企業約六十社が出資していたというふうに承知をしております。

 その後、昨年の二月に、この会社から、通信・放送ネットワークなどの急速な発展など準天頂衛星システム計画を取り巻く環境の変化により、民間単独による通信・放送事業というのはなかなか難しいというお話があったということでございます。

 しかしながら、この衛星測位の重要性や測位補完に対して官が果たすべき役割を踏まえて、技術実証、利用実証のための準天頂衛星計画を今、測位ということで進めているというものでございます。

吉井委員 ですから、その準天頂衛星システムというのは、もともとは、今おっしゃったASBC、新衛星ビジネスを設立して、これは人工衛星メーカートップの三菱電機が約五割、四九・六%を出資してつくったんですが、結局、インターネットや地上デジタル放送網の普及でビジネスとしては見通しが立たないということで、企業側は実行本体からは撤退、この会社は解散ということですね。

 各省庁が出した測位、準天頂衛星システムの利活用の状況等という資料を見せていただいておりますが、現在、アメリカの衛星測位システム、GPSを十省庁が測位やナビゲーションに利用しているわけですね。ところが、準天頂衛星については、十省庁のうち九省庁がコストなどを理由に消極的だと。出ている資料を見ればわかりますが、測位の精度は現行のGPSで支障なしというところもあって、必ずしも要らない、こういうふうに言っているところがあります。これは、GPSによる測位やナビゲーションで不都合が起きていないということを示しているんじゃないかと思うんです。

 民間大手も撤退する、別段、十省庁中九省庁は必要なしと理由が消極的なんですが、それなのに国が準天頂衛星に非常にてこ入れしているということは、これは昨年の十一月十五日の毎日新聞の「理系白書」というのでも紹介されたりもしていましたし、いろいろなものに紹介されておりますが、なぜそこまでてこ入れをするのか、その理由というものを政府参考人に伺っておきます。

坪井政府参考人 衛星測位ということにつきましては、非常に今、基盤というふうに重要で、国民生活に広く浸透している。

 システムとしては、四つの衛星の測位信号を受信して測位ができるわけでございますが、日本は非常にビルなどの遮へい物も多いところもあります、また山陰なども多いところがありますが、そういうところでは、なかなかGPSだけでは十分な測位ができない地域もある。そのような中で、準天頂衛星は、ビル陰などの影響を受けないで非常に測位の精度の上がるような、測位補強のできる機能ということもあります。このような点を評価して、非常に重要だと判断して推進をしているという理解でございます。

吉井委員 各省庁の方で、測位補強とかそういうものについての必要性のアンケートについては、必要なしとみんなは答えているわけですね。

 それから、既にマスコミ等でも紹介されておりますように、官民共同衛星でやって税金七百五十億円、もたれ合いで頓挫したというので、民間の方はさっきも言ったように撤退したり会社は既に解散というところもあるという中で、今残って一生懸命やっているのは官だということが紹介されております。

 二〇〇六年三月に、内閣官房の測位・地理情報システム等推進会議は準天頂衛星システム計画の推進に係る基本方針というのをまとめていますが、本法案はこの基本方針に法的保障を与えようとするものではないかと考えられるものです。

 そこで、準天頂衛星システム計画の推進に係る基本方針について伺っておきますが、第一段階として、国が全額負担で二〇〇九年度に準天頂衛星一機を打ち上げ、実証を行う。その結果を見て官と民により第二段階に進み、二機の準天頂衛星を打ち上げる。民間は、実証の結果を評価して事業化の判断を行い、めどが立てばの話ですけれども、その場合、相応の負担をするという計画。

 ですから、準天頂衛星システムを完成するまでには各省が必要とする経費はかなりのものになると思うんですが、第一段階、第二段階、それぞれ幾らを見込んでいるのか、また民間の負担割合は幾らなのか、既に昨年度までに支出した額は各省幾らになるのか、これを伺っておきたいと思います。

坪井政府参考人 第一段階の準天頂衛星、初号機のプロジェクト経費は約三百三十億円と見積もられております。このほか、平成十五年度からの研究開発費の累計が約四百二十億円と見積もられまして、第一段階は、これらを合計すると約七百五十億円と考えております。

 第二段階、いわゆる準天頂衛星三機体制のプロジェクト経費の正確な見積もりを行うことは困難でございますが、昨年三月に試算、概算というものとしては、三機体制で約九百五十億円、これと研究開発費の累計五百億円を合計しますと、千四百五十億円という試算が一つあるということでございます。

 なお、民間の割合というもの、先ほどはプロジェクト全体の経費を試算しているものでございまして、第二段階の民間の負担割合というものは現時点で決まっているものはありません。

 各省の平成十八年度までの準天頂関係の予算ということでございますが、総務省が約八十億円、文部科学省が約百十七億円、経済産業省が約八十五億円、国土交通省が約二十一億円となっております。

吉井委員 8の字形に上げてということなんですけれども、しかし、実際にそれはまだ実証できているものではなくて、これからの技術ということなんですね。幾らかかるかということについては、今のお話を聞いておっても青天井であって、ですから、「理系白書」の中では「「自前で衛星を」と始動した官民共同の国家プロジェクト「準天頂衛星」が今、七百五十億円の税金を投じて無用の長物になりかねない」という評価をされるぐらいのところに来ているわけであります。

 私、次に政府参考人に伺っておきたいのは、日本が開発したH2Aロケット、これは国から三菱重工に移管されるということになっていますが、三菱重工が打ち上げサービスを事業として展開するということにこれからなっていくわけですね。これから、国、JAXAは、三菱重工に仕事を発注というか持たせる。安全性の確保など、そうしたことを含めた仕事、そっちの方は自分も持ったりして、国、JAXAが三菱重工から打ち上げサービスを購入するという形になってきます。

 H2Aロケット開発は宇宙開発事業団設立以来、開発費総額は約八千億円ですね。開発費だけ国が約八千億円投じて、つくり上げた技術を三菱重工は国から丸ごと譲り受け、商業ベースでの打ち上げを行う。種子島にある打ち上げ射場の維持と打ち上げコストは国、JAXA持ち。だから、金のかかる打ち上げ部分の数十億は国に見てもらう、そうしておいて、さらに、打ち上げ一機当たりに要する百億円にかかってくる消費税分は非課税扱いにしてもらう、こういうことになっているようですが、これら、かなり次々と国の方にも財政負担がかかってくるわけです。

 この取り決めというのは、いつ、だれの権限で行ってきたのか、政府参考人に伺います。

板谷政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国の基幹ロケットでございますH2Aロケットの民間移管でございますけれども、平成十四年六月に、宇宙開発委員会などによりまして、民間の効率的かつ迅速な経営手法によりコスト低減そして信頼性向上を進めるとの方針に基づき実施しているところでございます。

 具体的には、平成十四年十一月に当時の宇宙開発事業団、現在の宇宙航空研究開発機構でございますが、当時の宇宙開発事業団が、あらかじめ選定基準を定めて公開した上で、移管を希望する企業からの申請を募るなど、公開性、透明性を確保しつつ移管先を選定し、技術移転を進めてきているところでございます。

 そして、衛星輸送サービス、打ち上げが衛星輸送サービスということになるのでございますが、これの消費税法における扱いでございますけれども、これにつきましては、国内以外の地域への……(吉井委員「宇宙」と呼ぶ)宇宙のことですが、への貨物の輸送ということでございまして、消費税が免税されることにされております。したがって、宇宙空間への衛星打ち上げも消費税法における輸出免税に該当すると承知いたしております。

 このような民間移管を通じまして、我が国が開発した基幹ロケットが十分な国際競争力を持ち、経済社会の発展に資することを期待いたしております。

 それから、委員御指摘のH2Aロケットの開発費総額八千億円ということでございますが、これはこれまでの、H1、それからN2、N1、こういったロケットの開発費も含んだ総額でございます。

吉井委員 消費税に関しては、打ち上げたものが宇宙へ行くから消費税がかからないという、何ともおもしろい御説明なんですけれども、さっき言われた透明性の話にしても、実はその前段がありますね。

 民間へ移すということで、ロケットシステムをつくったんですね。そのロケットシステムがJAXAなどからの発注を受けて、それはただ丸投げする丸投げ機関だったということを私は何度か国会でも取り上げましたけれども、ロケットシステムがいつの間にか消えてしまって、民間移転でつくったはずのロケットシステムが消えて、今度は三菱重工一社になってしまった、何か意味があるんですか。

板谷政府参考人 三菱重工が責任を持って行うという、まさにプライム化ということに尽きると思います。

吉井委員 そうすると、国が旗を振ってつくったロケットシステムというのは、全く、安全、信頼等の保証できない妙なものをつくったということをみずからおっしゃったことになると思います。

 次に、準天頂衛星計画は、あくまでアメリカのGPSの補完で、GPSを使わなければ、準天頂衛星を打ち上げてもそれだけでは十分機能しないというのはもう明白な話ですが、我が国は、自立した衛星測位システムを持つわけでもないわけですね。

 アメリカのGPSを構成する人工衛星の名前は何というものなのか、何機で運用しているのか、これまで何機打ち上げが行われているのかを伺います。

板谷政府参考人 御指摘の点でございますが、米国のGPSを構成いたします衛星の正式名称でございますが、ナブスターということでございます。ナビゲーション・システム・ウイズ・タイミング・アンド・レンジングでございまして、現在、三十機で運用されております。うち六機が予備機でございまして、二十四機ということになります。

 米国政府からの通算の打ち上げ総数ということでございますけれども、これにつきましては、総数という形では公表はされておりませんが、私どもが公表されている情報、いろいろな種々の情報を累計いたしますと、一九七八年以来、現在までにナブスターとして打ち上げられた機数は通算五十五機でございます。

吉井委員 次に、現状では、日本がアメリカの衛星測位システムから自立して独自のシステムを構築するということは非常に困難なことだと思うんですが、中国は独自のものをやりながらガリレオ計画に参画していくとか、ヨーロッパはガリレオ計画とか、各国いろいろな取り組みがあります。日本は、GPS利用促進のために米国とともに密接に活動すると記載された日米両国政府間のGPS利用に関する共同声明、それから、同日米協議、共同声明二〇〇六年では、GPSと準天頂衛星システムは完全に相互運用性及び共存性を持って設計されていると結論づけたと、一体性をまず確認しているわけですね。

 このことは、準天頂衛星の情報をアメリカが軍事にも利用できるということにつながるものではないかと思うんですが、日本は非軍事なんですが、アメリカの軍事利用には使われないという保障はあるわけですか。

坪井政府参考人 準天頂衛星から発信されます衛星測位信号、これはGPSの民生用の信号と同等の補完信号や補強信号でございまして、GPSの民生用信号が地上でだれでも受信することが可能であるのと同じように、準天頂衛星からの信号もだれでも地上で受信できるものでございます。

 したがって、特定の利用者を排除するということは技術的にも困難なものでございます。

吉井委員 つまり、軍事にも利用できるというお話なんですから、聞いたことに素直に答えてもらったらいいわけです。

 ところで、少し話はかわりますが、ことし二月八日の共同通信の配信記事を見ておりまして、JAXAの立川敬二理事長が同日の記者会見で宇宙の軍事利用について、宇宙でできることの範囲を少し広げるということ、世界常識に合わせるのでいいのではないかと容認したとありました。この発言は、宇宙開発の平和利用を定めた国会決議に合わないものです。反するものであり、政府の宇宙政策の基本からも逸脱する重大な発言であると思うんです。

 そこで、本来、ここへ理事長に来てもらって御本人から伺った方がいいんですが、何か理事長は来にくいらしいので、板谷審議官の方から、記者会見での発言は事実なのかどうかを確認しておきます。

板谷政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の点につきまして、宇宙航空研究開発機構に確認をいたしましたところ、二月八日の理事長の記者会見において、議員立法である宇宙基本法について、記者から、宇宙の平和利用についてどのように考えるかとの質問があり、これに対して立川理事長から、宇宙でできることを少し広げようということ、世界標準にしたらどうかということだと聞いている旨答えた上で、個人の見解と断りつつ、世界常識でよいのではないかとお答えしたということでございました。

吉井委員 私は、いろいろな人がいろいろなことをしゃべるのはあり得るわけなんです。しかし、JAXAの一番の責任者が、日本の宇宙の研究開発はどういうものであるかということについては、これは国会決議を踏まえてというのがこれまでから政府の明らかにしてきたところでありますし、そのことが、宇宙物理などを含めて日本の宇宙科学の発展をうんと促進して、国際的にも高い評価を受ける、これは技術的な面でもまた宇宙物理その他の科学の面でも、日本は大きく国際貢献をしてきたわけです。その責任者の方がそういうふうな御発言をされるということ自体が非常に驚きであるわけです。

 そこで、官房副長官の方に改めて、先ほど来議論がありましたけれども、重ねて伺っておきたいのは、私は、やはり政府はきちんとして態度を貫く。政府は、国会決議に基づいてということを今までから繰り返し言っているわけですから、それをやらないと、JAXAの理事長発言のように、やはり国会決議からの逸脱も出てくるわけです。

 ですから、政府として、平和目的に限るという宇宙研究開発の立場、国会決議の立場で臨むんだということを改めてやはりきちっと言っておくことが私は大事なことだと思いますので、伺います。

下村内閣官房副長官 お答えいたします。

 先ほども答弁させていただきましたが、宇宙に関する現在の施策は、御指摘の国会決議の趣旨を尊重して行われているところでございます。この決議につきましては、これまで、その解釈につき御議論なされてきたものと承知しておりますが、まずもって国会において御議論いただくべき事柄と認識しております。

吉井委員 最後に、この発言というのは、決議ですから、討論じゃなくて意見は最後に表明をするようにというお話ですから、簡潔に申し上げておきます。

 やはりこの法案については、一つは、地理情報システム整備に名をかりた宇宙ビジネス優先の準天頂衛星システム計画を継続的に推進するために法的根拠を与えようとするという内容のものであるという点、準天頂衛星システム計画の推進に係る基本方針は、国民にリスクと財源を負担させ、民間企業にはリスクを負わずに事業化のめどが立ったら参加し、利益だけは得ていこうとするものであり、しかも、事業費の総額もわからず、官民の負担割合もわからないもので、そういうやり方に巨額の税金を投入するという計画を実行に移そうとしているというものでありますから、日本共産党はこれを認めることはできないという考えであります。

 それから、現状では日本がアメリカの衛星システムから自立した独自システムを構築することは困難でありますが、これは先ほど述べたことですが、アメリカがGPS利用を停止したときには、日本の通信が不能になるとか、そういった問題があり、では、ガリレオ計画等に参加して共同した道を進んでいくのかということについては、日米間の協定の問題等もあり、非常に難しいという問題を抱えているということがありますから、いずれにしても、私は、アメリカのGPSはもともと軍事から始まっておりますから、そういうものにはよらない、国際的にも共同した、自立した形での科学技術の構築というものを進めていくべきである、このことを申し上げまして、したがってこの決議には反対だということを表明して、意見表明を終わります。

河本委員長 これにて発言は終わりました。

 お諮りいたします。

 本起草案を委員会の成案と決定し、これを委員会提出の法律案と決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

河本委員長 起立多数。よって、そのように決しました。

 なお、本法律案の提出手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

河本委員長 この際、西村康稔君外二名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の共同提案による地理空間情報の活用の推進に関する件について決議すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。泉健太君。

泉委員 ただいま議題となりました地理空間情報の活用の推進に関する件につきまして、提出者を代表いたしまして、その趣旨を御説明いたします。

 その趣旨は案文に尽きておりますので、案文を朗読いたします。

    地理空間情報の活用の推進に関する件(案)

  政府は、地理空間情報活用推進基本法の施行に当たり、次の事項に十分配慮すべきである。

 一 地理空間情報の活用の推進に当たっては、産学官一体となった取組や民間活力の積極的導入により、民間の産業育成を旨として関係する施策を推進すること。

 二 関係閣僚会議の早期設置等により関係省庁間での十分な連携を図るとともに、国、地方公共団体、関係事業者間の適切な役割分担により地理空間情報の活用の推進のための効果的な施策を講じること。

 三 インターネット等による地理空間情報の流通の拡大に伴い、国の安全を害することのないよう措置するとともに、国民の人権が侵されることのないよう個人情報保護などの観点から十分に配慮すること。

 四 国が保有する地理空間情報の提供に当たっては、国民に対して、可能な限り、無償又は低廉な価格で提供されるよう配慮すること。

 五 地理空間情報の活用の推進に当たっては、我が国独自の衛星測位に係る技術基盤の確立を目指すこと。

 六 本法の施行後五年以内に、この法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講じること。

  右決議する。

以上でございます。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。

河本委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

河本委員長 起立総員。よって、本件は委員会の決議とすることに決しました。

 この際、本決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。下村内閣官房副長官。

下村内閣官房副長官 ただいまの御決議につきまして、その御趣旨を十分尊重させていただき、地理空間情報の活用の推進に努力してまいる所存であります。

河本委員長 お諮りいたします。

 本決議の議長に対する報告及び関係政府当局への参考送付等の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時八分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.