衆議院

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第28号 平成19年6月13日(水曜日)

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平成十九年六月十三日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 河本 三郎君

   理事 木村  勉君 理事 後藤田正純君

   理事 戸井田とおる君 理事 西村 康稔君

   理事 平井たくや君 理事 泉  健太君

   理事 松原  仁君 理事 田端 正広君

      赤澤 亮正君    江藤  拓君

      遠藤 武彦君    遠藤 宣彦君

      小野寺五典君    岡下 信子君

      木原 誠二君    倉田 雅年君

      木挽  司君    柴山 昌彦君

      杉田 元司君    高木  毅君

      谷本 龍哉君    寺田  稔君

      土井  亨君    中根 一幸君

      中森ふくよ君    長島 忠美君

      丹羽 秀樹君    林田  彪君

      松浪 健太君    村上誠一郎君

      市村浩一郎君    小川 淳也君

      岡本 充功君    河村たかし君

      佐々木隆博君    細野 豪志君

      馬淵 澄夫君    横山 北斗君

      渡辺  周君    石井 啓一君

      吉井 英勝君

    …………………………………

   国務大臣

   (内閣官房長官)     塩崎 恭久君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長) 溝手 顕正君

   国務大臣         高市 早苗君

   内閣府大臣政務官     岡下 信子君

   内閣府大臣政務官     谷本 龍哉君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 荒木 二郎君

   政府参考人

   (警察庁生活安全局長)  片桐  裕君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    縄田  修君

   政府参考人

   (警察庁刑事局組織犯罪対策部長)         米田  壯君

   政府参考人

   (警察庁交通局長)    矢代 隆義君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    米村 敏朗君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 新保 雅俊君

   政府参考人

   (財務省大臣官房参事官) 森川 卓也君

   政府参考人

   (水産庁資源管理部長)  山下  潤君

   政府参考人

   (国土交通省道路局次長) 原田 保夫君

   政府参考人

   (国土交通省自動車交通局次長)          桝野 龍二君

   政府参考人

   (国土交通省自動車交通局技術安全部長)      松本 和良君

   政府参考人

   (海上保安庁警備救難部長)            石橋 幹夫君

   参考人

   (日本大学名誉教授)   長江 啓泰君

   参考人

   (飲酒事故被害者遺族)  井上 郁美君

   参考人

   (国立大学法人熊本大学大学院医学薬学研究部脳機能病態学分野教授)     池田  学君

   内閣委員会専門員     堤  貞雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十三日

 辞任         補欠選任

  嘉数 知賢君     小野寺五典君

  木原 誠二君     中根 一幸君

  寺田  稔君     倉田 雅年君

  松浪 健太君     柴山 昌彦君

  佐々木隆博君     河村たかし君

  馬淵 澄夫君     横山 北斗君

  渡辺  周君     岡本 充功君

同日

 辞任         補欠選任

  小野寺五典君     高木  毅君

  倉田 雅年君     寺田  稔君

  柴山 昌彦君     松浪 健太君

  中根 一幸君     木挽  司君

  岡本 充功君     渡辺  周君

  河村たかし君     佐々木隆博君

  横山 北斗君     馬淵 澄夫君

同日

 辞任         補欠選任

  木挽  司君     長島 忠美君

  高木  毅君     江藤  拓君

同日

 辞任         補欠選任

  江藤  拓君     杉田 元司君

  長島 忠美君     丹羽 秀樹君

同日

 辞任         補欠選任

  杉田 元司君     嘉数 知賢君

  丹羽 秀樹君     木原 誠二君

    ―――――――――――――

六月十二日

 総合研究開発機構法を廃止する法律案(内閣提出第六一号)(参議院送付)

同日

 韓国・朝鮮人元BC級戦犯者と遺族に対する立法措置に関する請願(泉健太君紹介)(第一五六七号)

 ともに生きる社会のための公共サービス憲章の制定を求めることに関する請願(古賀一成君紹介)(第一六〇七号)

 同(下条みつ君紹介)(第一六〇八号)

 同(川端達夫君紹介)(第一七〇七号)

 同(田嶋要君紹介)(第一七〇八号)

 同(馬淵澄夫君紹介)(第一七〇九号)

 同(松原仁君紹介)(第一七一〇号)

 同(山口壯君紹介)(第一七一一号)

 レッド・パージ犠牲者の名誉回復と正当な国家賠償に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一六九八号)

 同(石井郁子君紹介)(第一六九九号)

 同(笠井亮君紹介)(第一七〇〇号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一七〇一号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一七〇二号)

 同(志位和夫君紹介)(第一七〇三号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一七〇四号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一七〇五号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一七〇六号)

同月十三日

 ともに生きる社会のための公共サービス憲章の制定を求めることに関する請願(吉良州司君紹介)(第一八二九号)

 同(柚木道義君紹介)(第一八三〇号)

 同(内山晃君紹介)(第一九六五号)

 同(渡部恒三君紹介)(第一九六六号)

 憲法九条を守り、世界の平和に生かすことに関する請願(塩川鉄也君紹介)(第一八九〇号)

 憲法改悪反対に関する請願(塩川鉄也君紹介)(第一八九一号)

 憲法の改悪反対、九条を守ることに関する請願(塩川鉄也君紹介)(第一八九二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 道路交通法の一部を改正する法律案(内閣提出第五七号)(参議院送付)

 内閣の重要政策に関する件及び警察に関する件(銃器対策)


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     ――――◇―――――

河本委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、参議院送付、道路交通法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、日本大学名誉教授長江啓泰君、飲酒事故被害者遺族井上郁美君、国立大学法人熊本大学大学院医学薬学研究部脳機能病態学分野教授池田学君、以上三名の方々から御意見を承ることにいたしております。

 この際、参考人の皆様に一言ごあいさつ申し上げます。

 本日は、大変お忙しいところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。本案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきまして、審査の参考にしたいと存じておりますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 長江参考人、井上参考人、池田参考人の順に、お一人十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。

 なお、参考人各位に申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、長江参考人にお願いいたします。

長江参考人 おはようございます。

 現在、提出されています道路交通法の一部改正に関する法律案に関しまして、これが成立の運びになるよう望んでおります。

 この件につきましては、参考人としての陳述理由とその考え方を述べさせていただきたいと思います。

 もう既に御承知だと思いますが、車社会あるいは国民皆免許時代を迎えた今では、運転そのものが国民生活と密着した生活行動となっております。しかし、モータリゼーションの進展というのは、生活の利便性を図るための諸施策が必要であると同時に、影の部分とも言えます交通事故を抑止し、安全、安心な交通社会の構築もまた必要であることは論をまたないところだと言えます。

 交通安全対策と申しますのは、御承知のように、三Eから構成されると言われております。すなわち、エデュケーションの教育、それからエンフォースメントの規制、それにエンジニアリングの技術、こういうことを意味するわけですが、実は、これらはお互いに連携を図り、交通安全確保という同一目的に向けて進められる、いわば一種のシステムであると言えます。

 御存じのように、そのシステムというのは、どれか一つがよければすべてがよくなるという話ではなくて、システム全体のいわゆる限界といいますか、あるいはその効果といいますか、そういうものは、基本的にはそのシステムを構成している要素、すなわち、ここで言うと三Eですが、これの中の一番低いところで決まる、こういうふうに言われております。

 生活様式あるいは社会的規範や個人の規範の変化に応じて、最も適した三Eを常に見直し、これを推進するということは重要な要件でもありますし、コンプライアンスプログラムにとって不可欠なものであると言えます。しかし、現実面では、教育、規制というものは往々にして後追いになりがちであると言われております。罰則や法規制の整合も時代の流れに追いつかないことは決して珍しいものではないという事実もあります。

 今回、提案されております、第一の、悪質、危険運転者対策の推進を図るための規定の整備、あるいは、第五番目のその他については、従来の法律、罰則の整合を図り、悪質、危険な運転というものを防止することを目指すものと理解しております。もちろん、罰則の強化あるいは厳罰化だけで抑止効果が持続し得ないということは当然でありますが、法の網をくぐり抜ける行為は許されず、真の規範意識を確立するための安全教育と相まって、安全、円滑な交通社会を実現するための大きなインパクトになることは間違いないところだと考えております。

 それから、第二番目の高齢運転者対策等の推進を図るための規定の整備は、今後ますます高齢化社会が進展する中で、安全に運転ができ、生活が営めるための防衛策として提案されたものであります。これらの施行に当たっては、人権、プライバシーへの配慮を十分にする必要があるというふうに思いますが、同時に、未然に運転不適格者を発見する、いわば早期発見のための法制化でもあると思っております。

 高齢化社会、特に運転者の高齢化社会というのは、日本は世界で群を抜いております。したがって、いわゆる運転者の高齢化の問題について世界にその前例を見ようとしてもなかなか見当たらないというのが現状だと思います。同時に、日本も初めて出会うようなことでございますので、したがって、これを進めながら、どういうふうな形をしていったらいいのかと考えることが本来だと思います。

 それから、表示の義務づけの点については、最近の車というのは、安全まくらというのがシートの後ろについております。前の人がどんな人で、どんな運転をするかということが非常にわからない、わからないと後続の車はいらいらする、そういうふうな意味でいうと、いわゆる高齢者あるいは聴力障害者の方々が運転しているんですよということを表示するということは、ドライバー間同士でのいわゆるあつれきを減少させるということで非常に有効だろう、こんなふうに考えております。

 第三に、自転車利用者対策の推進を図るための規定の整備、これは、これまで自動車運転者に対する対策に力点が置かれ過ぎていた感じがあります。自転車利用者といういわば個人のモビリティーのある意味ではマジョリティーである自転車利用者に対して目を向けた法整備であると思います。ここでも大切なことは、取り締まりありきではなく、いかに指導しやすい法整備と、自転車も一人前の車両であり、交通社会におけるパートナーの一人として行動できるための意識づけが必要であるということの教育あるいは広報が必要であるということは言うまでもありません。

 第四の被害軽減対策の推進を図るための法整備については、前席のシートベルトの効果に疑いがないにもかかわりませず、後席シートベルトの装着率が上がらない現状を踏まえた規定の整備であり、時宜を得たものと理解をしております。

 いずれにしましても、法規の適切な整備は必要であり、厳罰化も重要でありますが、同時に、二度と事故、違反を起こさないための問題意識の形成、あるいは行動変容、協力、協調が実践できるいわゆる規範確立という個人個人の心への働きかけにも力点を置いてほしいと考えております。

 以上の事由によりまして、現在審議されておられます提出法案が成立する運びになることを望んでおります。

 以上でございます。(拍手)

河本委員長 ありがとうございました。

 次に、井上参考人にお願いいたします。

井上参考人 御紹介いただきました井上郁美と申します。

 一九九九年十一月二十八日、今から七年半前になりますが、東名高速で酒酔い運転のトラックに追突されて、私たち夫婦の目の前で、三歳と一歳の娘二人が焼死するという事件に遭いました。

 当時は、業務上過失致死傷罪と道路交通法違反、酒酔い運転という罪名でしか起訴されませんでした。刑事裁判が行われ、求刑五年という当時の業務上過失致死傷罪の最高刑が求刑されましたが、判決は懲役四年でした。異例の控訴をしていただきましたが、その判決は覆りませんでした。

 裁判を傍聴しながら、なぜ常習的に飲酒運転を繰り返していた人に対してでも、不注意による事故、不注意によって人を死傷させてしまったという業務上過失致死傷罪という罪名でしか裁けないのかということが大きな疑問になり、同じように、悪質な被害、飲酒運転、危険な運転によって家族を亡くされた被害者遺族らとともに全国的に署名活動を展開し、そして国が私たちの声を受けとめてくださって、二〇〇一年の十一月二十八日には刑法が改正され、危険運転致死傷罪が成立しました。

 これによって、懲役十五年という、それまでの上限を大幅に超えるような厳罰化が進み、そして、故意に危険、悪質な運転をした場合には、もはや過失犯ではない、傷害罪に準ずる故意犯であるという位置づけをしていただくことができました。

 そして、その翌年に施行されました道路交通法の改正と相まって、飲酒運転、悪質、危険な運転というのは、数字にもよくあらわれましたように、ぐんぐん減っていきました。私たちは、この二つの大きな法律の改正が悪質、危険な運転を抑止する効果につながっているという確かな手ごたえを感じておりました。

 私、地元が千葉なのですが、千葉では松戸というところ、そして松尾町というところで、不名誉なことなのですが、これまで危険運転致死傷罪の裁判としては、その当時、その都度最高刑である懲役十五年、懲役二十年といった判決も出されております。それぐらい悪質な事故というのはその後もやはり発生しました。

 また、先日の委員会質疑でも先生方がおっしゃっていましたように、一杯三十万円といったような、非常に人の関心を引く、目を引くようなコマーシャルなども効果を奏して、もはや軽い気持ちで飲酒運転をしている人たちというのは、三十万円はちょっと勘弁してほしいという意味で、違反を犯したら一回で懲りてしまう人がふえたこともあって、飲酒運転の検挙数も検挙される人も減っていきました。

 ところが、二〇〇二年、二〇〇三年、二〇〇四年になるにつれて、私たちの方にも被害者遺族から悲痛な声が聞こえてきました。それはどのような事件の被害者遺族かといいますと、明らかに大量のお酒を飲んで事故を起こしたのにもかかわらず、事故現場から逃走して何時間もたってから出頭する、あるいはひどい人は五日もたってから逮捕される、そういった加害者、あるいは、お酒を飲んで、現場を逃走してコンビニに駆け込んで、その場でワンカップを買って店員の目の前でワンカップを飲み干し、飲酒事故前に飲酒していたわけではない、事故後に気が動転して飲酒してしまったのだ、だから酒による影響はなかった、酒のための事故ではないというふうに飲酒運転の事実をごまかしたり、アルコール濃度をごまかすといったような卑劣な行為をする加害者が急激にふえてきました。

 残念なことに、危険運転致死傷罪が施行される前の二〇〇〇年の件数から、二〇〇四年に比べてひき逃げの件数は四二%もふえてしまった、明らかに逃げる人がふえてしまったということを知り、また、そのような被害に遭って最愛の家族を亡くされた方々から、井上さん、何とかしてください、これは危険運転致死傷罪や道路交通法が厳しくなったために新たに出てきた課題です、さらなる法改正を求めているのですが、現場の人たちに訴えて、検事さんがどんなに同情してくれても、警察官がどんなに私たちの気持ちを思いはかってくださっても、今のこの法律のもとではアルコール検知もされていない加害者に対して危険運転致死傷罪の適用はなかなかできない、残念ながら、業務上過失致死傷罪と救護義務違反の併合罪でも最高で七年六カ月という刑を求刑することしかできませんというふうに言われました。

 そして私たちは、約三年前から、そのような被害者遺族らの方々とともにさらなる法改正を求めて、この社会問題化している逃げる人たちがふえる現象、逃げ得ということを何とか法律の中でも、逃げたら得ではなくて逃げたら損になるということがわかるような法律にしてもらいたいということを訴えて、法務省、警察庁に要望を出してきました。

 署名活動を全国で展開しましたが、特に昨年の八月二十五日に、私たちがまさにその翌朝から札幌で街頭署名活動をしようとしている直前に起きてしまった福岡での四歳、三歳、一歳のお子さんたちがやはり両親の目の前で水死してしまうといった飲酒ひき逃げ事故、これが起きてから、私たちの署名活動の勢いも急速に伸びていきました。それまでは、二日間で三千名、四千名の署名数しか集まらない、しかではないんです、非常に多くの方に署名していただいていて、本当にたくさんの声を受けとめているのですが、その後、あの事故の後、約一カ月後に福岡でやった署名活動、そしてことしの一月に行いました上野公園前での署名活動、そして先月行いました仙台での署名活動では、一万六千、一万三千、一万、一万を超える署名数が毎回毎回集まるというぐらい世の中の人たちはこの問題に対して本当に大きな関心を持っていらっしゃいます。

 今回の道路交通法の改正によって、思い切った改正だと私たちは本当にありがたく、大変ありがたく、感謝しておりますし、まさかまさか、本音を申しますと、救護義務違反が業務上過失致死傷罪の最高刑を超えて懲役五年から一挙に懲役十年まで引き上げられるということは、私たちは夢にも思っていませんでしたので、うれしい誤算でした。

 そして、ひき逃げだけではなくて、飲酒運転の罰則、酒酔い運転も酒気帯び運転もそれぞれ引き上げられる。そして、非常にいいところに目をつけられたなというふうに思っておりますが、もはや飲酒運転をした本人だけではない、必ず飲酒運転による事故には、その背景にそれを助長していた人、それを容認していた人、それを見て見ぬふりをしていた人たちが何人もいる。その人たちが、何もしなかった、あるいはとめなかったことの罪というのは本人と同じぐらい重たいということを、今回の法律の改正では、いわゆる飲酒運転、加害者の周辺者の人たちに対しても厳しい罰則が適用されるような法律の改正の内容になっていることについては、本当に高く評価し、私たちも本当にありがたく感じております。

 ただ、残念ながら、まだそれでも逃げる人、果たして酒酔い運転をしてまともな運転ができないような状況で事故を起こし、人をはねたのにもかかわらず、厳罰を恐れて現場を逃走して、何とかとにかく二十四時間以上逃げればいいんだという気持ちで現場を逃走した人、アルコール検知ももちろん意味がないことなので今はされていないのですが、そのような人たちが、仮に今回改正される道路交通法の新しい刑、そして昨日施行されました改正刑法の自動車運転過失致死傷罪の上限、それをもってしても、併合罪をもってしてもまだ懲役十五年にとどまってしまいます。

 もし危険運転致死傷罪が適用されるような現行犯で逮捕できていたら懲役二十年といった刑もあり得たはずなのに、逃げた人の方がまだ理論的には最高刑がどうしても五年短い。この差をどうしても私たちは埋めてほしい、むしろ逃げた人の方が二十五年、三十年といった厳しい罰が適用される、だから絶対に逃げちゃいけないのだ、絶対に飲酒運転の事実をごまかしてはいけないのだということがわかるような法律にしていただきたいという思いで、まだまだ私たちは活動を続けていきたいというふうに思っています。

 昨日も、福岡で三児死亡事件の初公判があり、私たち夫婦も、そしてこちらにおります私たちの仲間たちも七人ほど傍聴席を求めて、幸いみんな入れまして、初公判をすべて傍聴させていただきました。まさに非常に悪質な事件、逃げてしまって、でも被告は水を大量にがぶ飲みしたというふうなことによってアルコール濃度も〇・二五しか検知されなかったことにより、弁護側は全面的に危険運転致死傷罪の適用について争っています。

 でも、私がきょう最後に言いたいのは、そもそもお酒を飲んで運転するというふうな行為が、どうしてすべての飲酒運転の事故に対して故意犯という言葉が使えないのか。どうして、過失か故意犯なのか、あるいは業過なのか危険運転なのか、殺人なのか事故なのかという、そういう使い分け、そんなところが議論されないといけないのか。私たちには議論の余地はないと思っています。

 いろいろな対策、厳罰化以外にも飲酒運転を撲滅していくための対策というのは、本当に私たち、日々考えております。

 まだまだ本日は述べたいところですが、きょうは時間が限られておりますので、以上とさせていただきます。

 どうもありがとうございました。(拍手)

河本委員長 ありがとうございました。

 次に、池田参考人にお願いいたします。

池田参考人 私は、熊本大学の神経精神科を担当しております、精神科医の池田と申します。よろしくお願いいたします。

 私は、平成十五年から三年の間、前任地の愛媛大学の精神科において、厚生労働科学研究費補助金をちょうだいし、認知症高齢者の自動車運転と権利擁護に関する研究の主任研究者をさせていただいておりました。この班研究を申請させていただいた当時は、認知症の患者さんで自動車運転免許を保有する人が全国で三十万人前後いらっしゃると見積もられておりました。

 そして、平成十四年の改正道路交通法の施行により、認知症が運転免許取り消し要件として取り上げられたものの、実際の運転能力評価や運転中断の方法がはっきりしなかったため、運転継続を望む認知症患者と、中止させようとする家族や中止を指導する医師、警察官との間に関係の悪化が見られたり、危険を承知の上で、交通手段のなくなる家族が認知症患者の運転を黙認し続けたりと、臨床現場では大変な混乱が起こっておりました。

 しかし、班研究としての三年間とその後の研究活動を通じて、多くの行政関係者、現場の医師や警察官、認知症の患者さんの御家族、マスメディアの方々がこの問題に関心を持ってくださり、ようやく具体的な法律改正案が提出されたことに対し、関係各位に敬意を表したいと思いますし、認知症の自動車運転の問題における大きな第一歩であると評価しています。

 その上で、長年この問題を研究してきた精神科医並びに研究者の立場から、何点か改正案に対して私見を述べさせていただきたいと思います。

 その第一点は、七十五歳以上の更新時に認知機能検査を受けなければならないという年齢制限の規定です。

 我々の研究では、若年性認知症、すなわち、六十五歳までに発症する若い認知症に多い病気の方が重大な事故や違反を起こす確率が高いことが明らかになっています。したがって、コストの問題もあるかと思いますが、今後、新しい法律が施行された後もデータをぜひ収集していただき、必要であれば、認知症の検査を実施する場合の年齢を引き下げていただきたいと思います。認知症患者の運転による重大な事故を防ぐためには、少なくとも五十歳以上くらいまでは年齢を引き下げる必要があると考えております。

 第二点は、今回導入予定の認知機能検査で異常と判定された場合、すなわち認知症が疑われた場合で、半年以内に事故を起こしていた人に対して公安委員会から医師の診断書の提出を求めることになるようですが、最終判断はぜひとも免許センターでの実車運転検査で下していただきたいと思います。

 なぜなら、今回の認知機能検査や我々専門医の診察では、認知症かどうかは判定できたとしても、その人の運転が本当に危険かどうかはわからないからです。もちろん、我々の研究でも欧米の研究でも、中等度以上に進行した認知症の運転では事故のリスクが極めて高いことが示されています。

 したがって、ある程度進行した認知症の患者さんの場合は医師の診断書で免許更新を認めなくてもよいと思いますが、ごく軽度の認知症の場合は、あくまでも実車運転、実際の自動車運転の能力で運転の専門家が最終判断すべきです。欧米諸国でも、ごく軽度の認知症の場合は、最終判断は路上運転で運転のプロが見きわめるシステムになっています。そうしないと、まだまだ安全に運転できる人の運転の権利を奪ってしまったり、逆に、認知機能の障害は軽いけれども、運転行動は極めて危険な認知症の患者さんを見逃してしまうリスクが高くなると思われます。

 第三点目は、この改正案が可決された場合には、ぜひ国民への啓発を積極的に進めていただきたいということです。

 平成十四年の道路交通法改正後に、千七百名の都市部に住む高齢者と千名の山間部の高齢者にアンケート調査を実施し、認知症患者の運転免許が取り消しになる可能性があると法律で新たに定められたことを知っていますかという質問をしたところ、二〇%前後の高齢者しかこの改正案の内容を知りませんでした。高齢者の生活を直撃するような重要な問題ですから、ぜひとも啓発活動を行って国民に周知徹底を図りコンセンサスを得ておくことが、今後の改正案の円滑な運用にも重要かと思います。

 最後に強調しておきたい点は、運転中止を余儀なくされた認知症高齢者やその家族に対する支援を強化する施策をぜひ打ち出していただきたいということです。

 今述べました一般高齢者へのアンケート調査では、確かに九〇%前後の人が、認知症になったら運転をやめるべきだと答えてくださいましたが、その一方で、自分が運転を中止させられたら非常に困ると答えた免許保有者は、都市部で四〇%以上、山間部では八〇%以上に上り、地域による意識の差もとても大きいことが明らかになりました。

 どちらの地域も、運転の目的は買い物や通院、家族の送迎という答えが多かったのですが、さらに、山間部では、毎日仕事に使うという答えが多数ありました。例えば愛媛のミカン農家では、山のミカン畑に出勤するにも、農協にミカンを出荷するにも自動車運転が欠かせません。通院や買い物にしても、公共交通網が年々貧弱になっている地域では、高齢者は自動車を手放せない状況に追い込まれています。認知症患者の運転を中止させるだけでは、本人のみならず、その配偶者までが社会から孤立し、その多くが施設入所に追い込まれ、結果として地域社会が崩壊してしまうことは簡単に予想できます。

 これは認知症だけの問題ではなく、高齢者の運転全体の問題でもありますので、ぜひ、地域社会資源の整備あるいは地域の町づくりという高い視点から、行政の支援を御検討いただきたいと思います。

 確かにコストがかかる問題ではありますが、認知症高齢者が重大な交通事故を起こしてしまったり、あるいは運転を中止してすぐに入所してしまったりするコストに比べればはるかに低いコストだと思いますので、介護保険などを使った、買い物や通院のサポートなどもぜひとも御検討いただければと思います。

 特に最後の点をお願いして、私の意見陳述を終わりにさせていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。(拍手)

河本委員長 ありがとうございました。

 以上で各参考人からの御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

河本委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中森ふくよ君。

中森委員 おはようございます。自由民主党の中森ふくよでございます。きょうは本当にありがとうございます。

 一昨年、私も、歩道を歩いていた父親が車に飛ばされまして帰らぬ人となったわけでございます。そのときに父が、私は年だからもういい、君は若いんだから今後の人生を大切にするようにと言って死んだようでございますけれども、その言葉を盾にされて、保険の問題もあって、なかなか謝ろうとしなかった。大変寂しい思いをした経験を持っております。

 したがいまして、被害者、また加害者にさせたくないという思いから先生方に御質問をさせていただきたいと思います。

 今、井上郁美さんのお話をちょうだいいたしました。そんな中に、きのう第一回の公判を迎えました、福岡の、福岡市職員による飲酒運転で、海の中へ投げ出された三兄弟が亡くなった事件がありましたけれども、そこでもやはり、どうやって法の網をくぐり抜けるかというようなことがちらちらと見えておりまして、被告側は、飲酒はしていたが、わき見運転が直接の原因だと主張したという報道が流されました。

 今回のこの道路交通法の改正で飲酒運転関係の罰則の強化が図られたわけでございますが、刑法の危険運転致死傷罪、飲酒、ひき逃げと合わせますと最高三十年の刑となり、かなり厳しくなるわけでございます。今後、罰則という形での飲酒運転の防止が図られることになると思いますけれども、三先生のこの御所見をお伺いしたいと思います。

 またあわせて、今回、飲酒運転を行おうとする者に車両の提供そしてお酒の提供をした場合の罰則が明記されることになりました。特に、お酒が懲役三年、五十万以下に対しまして、車の提供が懲役五年そして百万以下ということで、車の提供の方がより重たいという罰則となる予定でございますけれども、この点についての御意見があればお聞きしたいと思います。

長江参考人 ただいまのことなんですが、私は、基本的に、自己責任という概念が日本ではなかなか通りにくい、したがって、飲酒運転をやめさせようとするためには、本人だけでなくて、周りの人たちもそれに協調していかなければいけないだろう、これは日本独特の一つのシステムだろうと思いますが、そういうような意味でいうと、私は、やむを得ない措置なのかな、こんなふうに考えております。

 それから、基本的には、今もう御案内だと思いますが、飲食店なんかでいきますと、車を運転する人にはジュースを無料で提供する、そしてお酒を出さない、こういうようなこととか、あるいは、キーを預かって、飲酒した場合には運転代行者を頼んで、来てもらったらば割引券を出し、そしてそこにキーを渡すというような、そういうことも既にやっておられます。

 一番大事なことは、罰則強化も非常に大事なことですけれども、まず、飲んだら乗らない、乗るならば飲まないというようなことをきちんと実際の行動の中で生かせるような一つの規範づくりというようなことをきちんとやっていかないと、過去に、そういう飲酒運転の厳罰化というようなことがあって効果を示したんですが、長続きしなかったという例もあります。

 そういうふうな意味でいうと、相まってやっていかなければいけないのではないかな、こんなふうに考えております。

井上参考人 私たちも各地で講演などをさせていただいているんですが、この半年間で顕著な傾向が見えます。

 それは、大企業さんあるいは大きな団体さんで、千人、二千人あるいは本当に何万人もの車通勤者、あるいは業務のために車を使われているその社名が入った車を社員、職員に使わせないといけないというふうなところが、やはり大きな団体であるだけに、どうしても酒気帯び運転で検挙される職員、社員が出てきてしまっている。何度言っても、誓約書を全員に書かせても、あるいは処罰規定を厳しくして、たとえ人身事故を起こさなくても、物損事故であっても、あるいは検挙されただけでもあなたは懲戒免職になります、御了解くださいというふうなことを厳しくしても、やはり、ある確率で酒気帯び運転、飲酒運転をやっている人たちというのが残念ながら最後まで残ってしまっているという事実があります。

 ですから、厳罰化というふうなこと、そして、この半年間で見られますように、社会の認識、意識も大分変わってきたなというふうに思っておりますが、処罰規定を厳しくするあるいは厳罰化というふうなことを進めるだけではなくて、やはり、周りの環境から飲酒運転をさせない、酔っぱらった人に絶対車を提供しないということを法的にもきちんとうたってくださっているというふうなことは、非常に大きなことだなと思っています。

 とりわけ、私たちの仲間たちが被害に遭っておりますような事件を見ておりますと、泥酔運転をしていた人というのは、大概一人では泥酔していないんですね。大体飲み仲間がいます。そしてそれは、自宅だけで飲んでいるわけではなくて、大体、居酒屋、スナック、それを何軒もはしごして飲み仲間とともに泥酔状態になって、どっちが運転しても、させてもおかしくないような状況、どちらがどちらの車を運転していようが、どっちも酔っぱらい運転をするであろうというふうな中で、たまたま事故を起こした者がその日は運転するというふうなことになったというような事案が多いことからして、同罪だなと。そのような酔っぱらった人たちに車を運転しろというふうに言う仲間というのも、本当に殺人者を育て上げているなというふうな気がいたします。

 福岡の昨日の事件でも、一軒目はタクシーを使って飲み仲間と居酒屋に行ったわけですね。でも、二軒目のときには、ナンパをしたくなった、ナンパをするために車が必要だと思った、だから、わざわざ自分の車を仲間とともにとりに帰って、スナックに行ってさらに飲んでというふうなことをしているという意味では、本当に、殺人を犯しかねない者に包丁が渡ってしまうというふうな状態だと思っていますので、車の提供については特に厳しくしていただきたいと思っています。

池田参考人 お二人の参考人とほぼ同じ意見ですけれども、認知症の患者さんの運転と違って、飲酒運転の場合、やはり御本人に判断能力があるわけですから、厳罰化はやむを得ないという意見であります。

 ただ、お二人もおっしゃったように、それだけでは恐らくストップがかからないと思うので、周りの環境整備と、それからやはりふだんからの教育、それを徹底していただきたい。認知症の場合も、なってからではなかなか判断できませんので、若いうちからの教育ということがとても大事かなと思っています。

中森委員 ありがとうございます。社会でのモラル、そして若いころからの教育と取り組みということの今お話をいただいたと思います。

 それでは、次に進ませていただきます。

 自転車関連についてお尋ねをいたしたいのでございますけれども、現在、歩道を走る自転車に歩行者が接触する等のトラブル、事故がふえていると聞いております。したがいまして、今回の法案では、自転車は車道通行を原則とし、ただし、例外を設けて、児童等が乗る自転車や危険な場合は歩道の通行を可能にしますというものでございます。

 確かに、今長江先生がおっしゃったように、自転車のマナーは悪くなりました。教育の問題もあろうかと思います。しかし、自転車は、ここがちょっと参考人の先生と違うのでございますが、私は、車というよりも、実は歩くための補助機械であると考えているんですね。ですから、歩く補助機械とこう定義いたしますと、自転車を車道に入れるのではなく、歩行者の一部として、歩道を拡張して自転車道を確保すべきではないかとこう思っているのでございますけれども、長江先生の御所見をお伺いしたいと思います。

長江参考人 実は、二十年ぐらい前にフランスで国際会議がありましたときに、フランス・パリの交通の中で非常に自転車が困っているので、車道を走らせたらどうかという提案がありました。オランダが大変に反対をしまして、そんなばかなことはない、基本的には自転車は自転車道を走るべきである、こういうふうな言い方をしました。

 しかし、もともと歩道を走ることが許されるというのは、車道を走ると非常に危険である箇所については、標識があるところでは歩道を走ってもいいというのがこれまでの法律だったんですが、何となくそれがきちんと徹底していなかったんですね。

 ましてや最近は、自転車の性能も上がってきたせいかわかりませんが、基本的には歩道を走って、そしてお年寄りだとかそういう方たちと接触をするとか、それによって転倒するとかというようなことが出てきている。

 そこで、きちんと今度は自転車が走れるところを決めてやろうとか、あるいは、基本的には歩道というのは歩行者が歩くところであって、自転車に乗っている人が歩道を走るときにはきちんとスピードを抑えて走りなさいとか、そういうような指導も、あるいはその指針をきちんと出そうというのが今回の案だと思います。

 私は、本来、もっと教育の中でそれをきちんとやるべきだろうと思いますけれども、例えば、幼稚園、小学校では割と自転車の乗り方については熱心に教えておられますが、中学、高校になると実はほとんどその教育がされていない。むしろ先生方から言わせると、自転車に乗れるのに何を教えるんですかという言い方をする。自転車の正しい利用の仕方とか、あるいは、交通社会の一員として相手を思いやる行動をとるためにどうしたらいいのかということこそ、実は、中学、高校生というのは行動範囲が広がるわけですので、そういうところで教えるべきだろうと思うんですが、いわゆる法律を決めるということと教育というのがきちんと連携していないと、先ほど申し上げましたシステムというのがうまく機能しない。

 この辺もあわせてどういうふうにしたらいいのかということなんですが、基本的には、私は、これまでないがしろにされていたとは言いませんが、余り手をつけられなかった自転車の利用に関してまず一歩踏み出したのかなと。これをもとにしてやっていくうちに、どういうふうな形でそれを具体化していけばいいのかということがまた出てくるだろうと思います。

 ほかの国のように、車道、歩道、自転車道というふうにきちっとすみ分けができるような整備が日本ではされていないところが非常に多いものですから、こんなような形になっているんではないのかな、こんなふうに考えております。

中森委員 ありがとうございます。

 確かに、この三つ、すみ分けができていると一番問題ないんですが、ただ、どうしても日本の場合は、戦後、経済優先で車道が主になっておりまして、歩道もないというところが非常に多いわけでございます。

 そんな中で、何とか私としては、自転車にとっては、歩道から車道を走ることで、歩行者にとってはよい結果が出る反面、逆に、自動車と自転車の致命的な事故がふえないかという心配がつきまとうわけでございますが、最後に長江先生とそして池田先生にお伺いできればと思います。

 ほかに池田先生に用意してきたんですけれども、ちょっと時間がなくなってしまいました。

長江参考人 済みません、もう一度その最後の御質問をお願いしたいんですが。

中森委員 自転車が歩道をほとんど走らなくなると歩行者にとってはいい結果が出ると思います。ただ、自転車にとりましては、自動車との接触事故等大きな取り返しのつかない事故に結びつくような気がいたしまして、そこをとても心配をしております。何か対策があればありがたいと思います。

長江参考人 実は、そういう場所については、逆な言い方をすると、自転車専用道路の線を引くということがあるんだと思いますが、基本的にこれは、違法駐車がありますとそれができなくなるんですね。ですから、自動車側もそうですし、実は、従来、京都でそういうことがあったんですが、違法駐車がなくなったらば、自転車が、歩道を走るよりも車道を走った方がいいというので、逆走する自転車が出てきた。

 これは、皆さんやはり自分のことだけ考えてやっているんですが、自転車に乗る人は歩行者のこと、自動車のことも考えなきゃいけない、自動車を運転する人は歩行者あるいは自転車に乗る人のことを考えなきゃいけないという中で、先ほど私ちょっと申し上げましたが、道路整備ができるところはきちんとそれをやって、そうでないところは、逆に言うと、歩道を走らせるというようなことでまずやっていったらどうなのかな、こんなふうに考えております。

池田参考人 先生の御指摘のとおりだと思います。特に、高齢者とそれから子供たちが自転車で車道を走った場合には、とても危険な、よくない結果が出てくると思いますので、遠回りかもしれませんが、長江先生がおっしゃったように、三つの区分け、歩行者と自転車と自動車の区分けをぜひ進めていただきたいということと、それからもう一つは、やはり中学生、高校生の教育ということだと思います。確かに小学生までは教育が徹底していると思うんですが、それからは僕自身もほとんどされた覚えがないので、そこはとても大事だと思います。

中森委員 時間です。申しわけありません、お世話になりました。ありがとうございます。

河本委員長 次に、市村浩一郎君。

市村委員 民主党、市村でございます。

 本日は、お三人の参考人の皆様には貴重な時間を賜りまして、心から御礼を申し上げます。十五分と限られた時間でございますが、早速質疑に入らせていただきます。

 まず、井上参考人の方にお聞きしたいと思います。

 井上参考人、先ほどお話にもありましたように、本当に御夫妻、貴重なとうとい幼い命を失われたということ、心からお悔やみを申し上げます。それで、しかしながら、その後、御夫妻の本当に懸命な活動によりまして危険運転致死傷罪ができ、道路交通法も改正され、そして確実に交通事故の死者は減っているということであります。お二人のとうとい幼い命のおかげで多くの命が救われている、私はこういうことだというふうに思っております。本当に心から御夫妻の活動に感謝と敬意の気持ちを表するものであります。

 特に、御主人さんも事故で大けが、大やけどを負ったということで、皮膚の五〇%を事故そして手術で、発汗機能を失ったりという状況の中で活動を続けていらっしゃること、本当に私なんかまだお二人の活動のごく一端しか知らないわけでありますけれども、本当にありがたいというふうに思っております。本当にありがとうございます。

 そして、今、いよいよ、お二人だけじゃありません、もっと多くのまた犠牲者の方、また御遺族の方、そうした皆さんのお気持ちが一つの結実となって今回の道路交通法改正もあると私は認識しております。そもそも、先ほどおっしゃったように、飲んで車に乗ったこと自体が私も故意と考えるべきではないかというふうに思うわけでありますが、この点に関して、井上参考人の方からお考えをお聞かせいただきたいと思います。

井上参考人 私も、最初のみずからの事故の刑事裁判の時に、どうして過失犯としかとらえられないのかというふうなことを、何とか検察を説得しようと、控訴してもらおうというふうに思ったりしているときに、いろいろと知人を通じて、アメリカの例あるいはイギリスの例などを調べていただいたりしました。そうしましたら、やはり諸外国では、日本のような、道路交通法、刑法という二つの法律の体系そのものが非常に珍しい法で、飲酒運転による事故というのは、もうアクシデントという言葉は使っていない。私も間違えて、アメリカの方に対して、私の娘たちは飲酒運転の事故によって亡くなりましたと言ったら、今アクシデントという言葉を使いましたかというふうに聞かれたんですね。何というふうに言っているんですかと言ったら、飲酒運転による事故というのは、事故とは、うちの国では、アメリカでは言っていません、これは犯罪、クライムという言葉を使っていますというふうに、明らかにその言葉遣いからして、もう違う。

 ですから、飲酒事故と言うと皆さん違和感を示されるというほど、言葉の使い方からして、また法律でのあり方、殺人罪、殺人罪にも幾つかの種類があるようですが、殺人という言葉が明確に使われるような、その法律名からして違うというふうな意味では、私たち、どうしても、飲酒あるいは本当に危険な運転によって人を死傷させているのにもかかわらず、今回、刑法も改正されましたが、なぜ法律の名前に過失という言葉が残ってしまうのだろうか。自動車運転をして悪質な例については七年まで科せられるようにしましたというふうに法務省は説明されましたが、それでも、どうして自動車運転致死傷罪ではなくて自動車運転過失致死傷罪というふうにその言葉が残ってしまうのだろうかというふうなことに対して、とても抵抗を持っております。

 実際に、交通事故というのは、本当に、過失と故意の差というのは極めて境界があいまい。私たちも川口の事件を、初公判を傍聴したりしましたが、警察や検察、あるいは法務省は、裁判では確かにあれはわき見運転というふうに処されてしまうかもしれません。でも、半年間で百回も、もはやほとんど毎日のようにわき見運転。しかも、一秒、二秒、わき見運転をしているというのではなくて、そのまま、高速度のまま百メートルも走るというような運転をいつもいつもやっている。そして、あの川口での事故を起こす三カ月前には、同じようにウォークマンの操作をしていて追突事故を起こしてしまった。そんな常習的にわき見運転をしている事犯に対しても過失という名前の法律しかつけられないのか、使えないのかという意味では、御遺族でなくても、私たちが聞いていても、これは過失犯とは言えない。この前科、この運転癖、本当に危険な運転をしている被告に対して、法律はどうしてわき見イコール過失という言葉をつけてしまうのかというふうに思ったぐらいですから、飲酒運転になったら、これがどうしてすべて危険運転という言葉を使えないのかというところでは、まだまだこの国の法律、法律家の方々に頭を柔軟にしていただいて、諸外国の例あるいはその考え方、あるいは運用の面で柔軟な運用というふうなことも視野に入れて検討していただきたいなというふうに思います。

市村委員 ありがとうございます。

 この間、私は、やはり、逃げ得ということがあるという認識で、これまで、三年近く、いろいろと警察庁の皆さんとも議論してまいりました。最初のころは、警察庁の方も、逃げ得は実は少ないというような話だったと私は思います。ところが、今、井上参考人が先ほどおっしゃっていただいたように、この三年間の間、また、いろいろな大事故も起きた中で、やはり逃げ得はあるんじゃないかということが、だんだん認識が高まってきたんじゃないかというふうに思っております。

 これは必ずしも専門ではないかもしれませんが、せっかくですから、お三人の参考人に、今回の法律改正で逃げ得は全く解消するとは言えないと思いますが、かなり改善されるのか、それともやはり足りないのか、この点についての御見解をお伺いしたいと思います。お三人、一人ずつお願いします。

長江参考人 おっしゃるとおり、私は、逃げ得が許されるようなものは非常にまずいと思っています。

 それで、実は、今回の法律改正のときにいろいろ伺ったんですが、法律を扱っておられる方には法律のあり方というのがまたある。だけれども、私は、実はエンジニアなものですから、少しずつ改善をするということが結果的にいいところへつながっていくんじゃないのか。したがって、法律を扱う、法律を業としておられる方にはそういう意見があるけれども、周りではそうでない意見もある。それをどういうふうな形で埋めていくかというようなことは、もう少し時間がかかるのかなと。

 しかし、基本的に、先ほどもお話がありましたが、今回のことでもちょっと逃げ得になる可能性はありますけれども、一番大事なことは、やはり、逃げてはいけないんだということを運転者教育の中できちっと言っておくということも必要だろうと思いますし、それによって大変罰が重くなるんだというようなことをやっていけば、今回の法律改正で、私は、少なくとも、従来のような逃げ得がふえるとは思いません。むしろ減るのではないだろうかな、こんなような気がいたします。

井上参考人 私たちも、この三年近く活動をしている中で、この逃げ得という言葉が報道されればされるほど、ああ、そうか、そういう手があったんだというふうに気がついてしまう加害者予備軍という人たちが、ブラウン管を通じて、おお、そうか、そうか、お酒をさらに後から飲めばいいんだ、あるいは、助手席に二リットルのペットボトルを常に置いておいて、もし飲酒運転で警察に捕まったら、その場でがぶがぶ飲めばいいんだ、そういった手口を知らしめてしまうのではないか。これが報道されてほしい、私たちの訴えが世の中に知れ渡ってほしい、だけれども、それがかえって加害者をふやすことにもならないか、そういったジレンマを常に感じながらやってきました。

 ただ、あるところから、少し開き直った感がいたしております。それは、やはり、この人たちというのは、どんなに法律を厳しくしても、これからはもう、ひき逃げをしたら、五年ではなくて十年という刑が最高刑で科されるようになります。さらに、業過ではなくなって、自動車運転過失致死傷罪の七年までありますので、ひき逃げをした場合には懲役十五年まであるのです。ただ、逃げなくて直ちに救護したより、比べて、七年と十五年、どっちを選びますかというふうに、そういった明快な法律の位置づけ、意味合いを一般の人にわかりやすいように知らしめてくだされば、この法律の改正の効果というのは目に見えて出てくるのではないかと思っています。

 ただ、私たちが問題にしているのは、どうしても悪質な人たち、非常に法律の裏知識といいますか、穴を見つけることが本当に早い人たちというのは、どんなに厳しくしても、やはり抜け穴、さらなる悪質な手口を見つけ出してしまうだろう。それは時間の問題かもしれないと思ってもいます。新たな課題が出てきたら、やはり、三年、四年といった通常の法改正の更新期間というものを待たずして、直ちにそれを国会の方でもまた取り上げていただきたいと思っております。

池田参考人 僕は専門ではございませんが、ただ、改正案を見せていただく限り、明らかに逃げ得に関しても一歩踏み込んだ法案だと思っています。ただ、井上さんも言われたように、これは基本的にわかりやすい形で啓発を徹底しておかなければ、先ほども認知症のところで申し上げましたように、前回の改正案もほとんどの国民、対象となる高齢者が知らないというような事実がありましたので、ぜひとも交通教育の部分で国民に周知徹底をしていただきたいと思います。

市村委員 啓発の大切さ、本当に同感でございます。

 もう時間も限られていますので、池田参考人に最後にお聞きしたいのは、さっき池田参考人の中で、結局、地域による意識差があるということで、大変それは重要だと思うけれども、自分に降りかかると、都会の方は、四〇%はちょっと難しいな、これが地方に行くと八〇%だと。そのときに、池田参考人の方から、やはり車がないと地域社会が崩壊する可能性もあるというような話もされたんですが、私は、ちょっとあえてお聞きしたいんですが、むしろ、車がなくても地域社会が崩壊しないような地域社会づくりというのも私はあるんだ、このように思っているんです。もともと車はなかったんです、みんなに。それでも地域社会は大変幸せな地域社会を築けていたかもしれないわけですね。だから、これから二十一世紀の社会というのは、むしろ、そういう地域社会というのもまた模索し、方向性として見出していくべきだというふうに僕は思っておりまして、そこについて池田参考人の御意見をお聞きしたいと思います。

池田参考人 全く先生と同感でございます。実際に、地域によっては、既に、認知症に限らず、一般の高齢者で免許を返納された方に対して、さまざまな、タクシーの補助券を出すとか、商店街の割引を出すとか、公共のバスを半額以下にするとか、取り組みを始めている地域があります。そういう地域の場合には、返納率もとても高いんですね。ですから、ぜひとも先生方にイニシアチブをとっていただいて、地域社会できちんと高齢者が住めるような仕組みをつくっていただきたい。

 認知症だけではなくて、御存じのように、これからどんどんまだ高齢化が進みます。ですから、高齢のドライバーはどんどんこれからもふえると予想されていますので、その方たちが、認知症に限らず、身体的な要因等々でどこかで運転を中止せざるを得ません。これはもう明らかなことですので、その後、安心して地元で住める仕組みというのを、今からぜひとも積極的につくっていただきたいと思います。

市村委員 では、あと一分半あります。最後に、井上参考人、実はさっき、埼玉の事件の例を挙げていただきました。あれは、飲んでもいない、スピード違反も起こしていない、ひき逃げもしていないということで、業務上過失致死罪ということで五年となったわけであります。こういった事例についても、やはりこれから私たちは、本当にこれが過失なのか故意なのかということは、おっしゃったようにしっかり考えていかなくちゃいけないと思いますが、それについての御見解を最後にお聞きして、私の質問を終わらせていただきます。

井上参考人 私たちは、法務省、警察庁、検察の方々だけではなくて、裁判所にもっと足を運んでいただきたいなというふうに思っているのです。机上では、過失犯というふうなことで、うっかり見落としだとかわき見だとか、ブレーキとアクセルをちょっと間違えちゃったというふうなことが典型的な例として挙げられますが、やはり裁判を聞いていきますと、この人は起こすべくして事故を起こしている、いずれこういう事故が起きる運命にあったというようなドライバーが少なくありません。

 そういう意味では、過失だ故意だ、そういうふうなことで、故意犯は重く、過失犯は悪気がなかったんだから、そんなに厳しい上限を設けるわけにはいかない、そういった法律家の方々の御意見ももっともなんだと思うのですが、それを変えてくださいというわけではなくて、交通事故に限っては、裁判所に行って傍聴をもっともっとしていただくと、現場の方々の感じているフラストレーション、こんなに悪質なドライバーなのに業務上過失致死傷罪という罪名でしか裁くことができないというふうないら立ち、物足りなさというものを感じ取ることができるのではないかなというふうに思います。

 以上です。

市村委員 以上で終わります。ありがとうございました。

河本委員長 次に、田端正広君。

田端委員 公明党の田端でございます。

 きょうは三人の参考人の先生方、どうもありがとうございます。本当に貴重な、また体験といいますか、実体験の中から生まれてくる本当に切実なお話もいただきまして、大変感動しているところでございます。

 つまり、交通事故というのは、これはもう絶滅するのが理想であります。しかし、絶滅といえども、なかなか難しい。だからこそ、目標を掲げて、いろいろな形でやっていっていると思いますが、まず、三人の先生方にお伺いしたいのは、今回、政府が平成二十四年までに交通事故死者数を五千人以下にするという一つの大きな目標を掲げて、その中の流れの一つとして今回の法改正もあったんだと思いますが、この点について、まずそれぞれ御意見をお伺いしたいと思います。

長江参考人 私は、たしか第三次の交通安全計画のときから専門委員を仰せつかっていますが、当時、八千人という目標を立てたんですね。ところが、なかなかそれが達成できなかった。そのときに、私が一つ提案したのは、世界で一番安全な国、例えば当時、犯罪も少なかったんですが、実は交通事故死者数も少ない、そういう国づくりを目指してはどうなのか、したがって、最初に決めた目標八千人というようなものにこだわる必要はないんじゃないのかというようなことを申し上げたことがありまして、一時期、ちょっと変わったことがあります。

 今回、五千人、そのために、ではどうすればいいのか。主に、今やっている対策というのは、車だとかそういうものの機器のいわゆるハイテクを利用した事故防止、あるいは事故軽減というようなことをやっていますけれども、今回の法改正の一つであるいわゆるシートベルトの着用とかあるいは自転車、これに関しては、年間の自転車の事故件数をやはり減らしていかないと五千人というような目標は達成できないだろうというようなこともあって、こういうようなことになってきたのだというふうに解釈をしています。

井上参考人 平成二十四年ということですから、まだ五年あるという意味では、厳罰化も大事なんですけれども、やはり長期的な視点に立って、若い人たちから安全運転の大切さということ、つまり、車の免許なんか取る前の小学生、中学生、高校生、特に高校生なんかは、早い学生さんですと、次の春休みから免許を取りに教習所に通いに行ってしまうというような、本当に逼迫した近い将来の話でもありますので、とりわけ学校での教育のあり方というのがもっともっと充実できないものか。

 アルコールについての、あるいは飲酒運転についての授業を受けるというふうなことは、何も教習所で初めて聞けばいいというものでもなくて、あるいは二十歳になってお酒が飲めるようになってから聞けばいいというふうなものではない。むしろ、小学生、中学生から、それが当たり前のこと、何度も何度も繰り返し学校で聞かされたこと、だから、大きくなっても、僕は、私は飲酒運転なんて、そんなことしないよ、それから、お父さん、お母さんにもお酒を飲んで運転しちゃだめだよというふうなことを伝えてくれるような、そういう副次的な効果もねらえるのではないかと。

 そういう意味では、五年間というふうなのはかなり、私は目標を完全に達成できると思っているのですが、さらにその後、さらにさらに減らしていくためにも、本当に教育の重要性というふうなのを感じています。

 ちょっと済みません。もう一言言いますと、スウェーデンとかでは、事故をゼロにすることはできない、でも、重大な結果を招くような事故というのをとにかく減らしていこう、そういう視点に立って、交通安全対策、道路の構造、それから教育というふうな面に非常に力を入れているのとともに、重大な結果をもたらしてしまった事故の捜査というふうなものを非常に厳密に、綿密にやっているというふうに聞いております。ですから、そういう諸外国の取り組みで、本当に成功して、見る見る数字が改善されているような国の政策についても、もっともっと参考にしていいのではないかと思っています。

池田参考人 この問題は、警察の方々やあるいは関係者の方々の努力で、御存じのように、交通事故の、特に自動車の運転中の死者数は、たしか減ってきていると思います。

 ただ、全国的にも、それから私自身がかなり細かい分析に携わった愛媛県のデータを見ても、自動車運転中の事故で、高齢者の運転事故だけがふえております。特に、後期高齢者の自動車運転中の事故死というのはウナギ登りです。ですから、先生がおっしゃった目標を達成するためには、何としても高齢者の交通安全対策というのを全面的に打ち出していただくということが目標達成の一番のキーポイントかと思います。

 以上です。

田端委員 ありがとうございます。大変貴重な御意見でございます。

 それで、まず、井上参考人、本当に大変な御尽力で、そしてまた、苦しみを乗り越えて危険運転致死傷罪の創設にまで頑張っていかれたという先ほどのお話、感銘深くお伺いさせていただきましたが、そういう意味では、飲酒運転に対しての対応もだんだんと、一歩一歩進んできているかと思います。

 結局、法改正、法改正と積み上げていって、厳罰化、厳罰化、こういうことは、これはこれで大事な視点だと思いますが、しかしこれは、では、どこまでいったらいいのかという、そこのところもあるんだなと。では、その一歩、何が足らないのか、何をする。今、子供の時代から教育だというお話をいただきました。それも大事だし、もう一つは、例えば社会として、飲んだらタクシーというものを使うとか、あるいは代行運転とか、こういう仕組みをもっと柔軟に、もっと理解を持って、お互いに、幇助罪も必要ですけれども、しかし、あなた、飲んだんだから、きょうはもう代行運転にして帰りなさいとか、こういう社会の仕組みそのものももっと大事ではないかなというふうにも感じるのですが、井上参考人の御意見をお伺いしたいと思います。

井上参考人 私たちがとりわけ危惧しておりますのは、なかなかまだ意識を変えようとしない人たち、一体どういう人たちがいるのかといいますと、こんな大ざっぱな分け方はいけないのかもしれないのですけれども、悪気はない、けれども、ドライバーにも平気でお酒をもってもてなしてしまうという人たちが、まだ相変わらずいます。ちょっと差別的な感じかもしれませんが、どちらかといいますと、地方の年齢がある程度高い方々ですね。特に、飲酒運転の温床になっているのは冠婚葬祭の場が非常に多いのではないか。

 つまり、結婚式、お葬式、法事、そういったところで、主催者側として、施主として、自分が小さいときから見てきた光景というのは、自分のお父さんやおじいちゃんが、とにかく、家に来た、冠婚葬祭の場に来てくれた遠方からの客には、車で来ようが何だろうが、お酒を振る舞って振る舞って振る舞うことが最高のもてなしだというふうに思って、それを信じて刷り込まれてきた人たちというのが、なかなかその癖が抜けないというふうに思っています。

 再教育の場というのをどういうところで提供できるのかといいますと、なかなか免許更新などだけでは限界がありますので、やはりその冠婚葬祭の場を提供している場所の方、ホテルですとか斎場ですとかあるいは飲食店、そういったところで飲酒運転をさせないようなインセンティブをもっとつけてもらえたら、つまり、お酒を飲ませません、でも、かわりにソフトドリンクはドライバーの方々にはただで御提供いたしますとなりますと、そのお店のイメージもよくなるかと思うんですね。そういった、ただ厳しくするあるいは我慢してもらうといったマイナス面だけを殊さら挙げるのではなくて、お酒がなくても楽しい宴会ができるような、そういった環境づくりというのが大事じゃないかなと思っています。

 実際は、欧米人はほとんど一〇〇%の人がアルコールを分解する酵素を持っているんですけれども、日本人は一〇%は完全に酵素を持っていない、いわゆる下戸の人たちで、あと三、四割はその酵素の力が非常に弱い、一杯飲んだら真っ赤になってしまう方々が多いという、すごくお酒に弱い国民性があるのにもかかわらず、飲んでいる量は、例えば四十代の男性ですとアメリカ人の倍も飲んでいるんですね、平均値でいっても。それぐらい、ちょっと飲み過ぎなんじゃないかなということも、健康の面からも危惧されるというのがあります。

 ですから、お酒を飲める人も飲めない人も、必ずみんなが楽しめるような宴席がどこでも開催できるような、そういったシステムが必要なんじゃないかと思っています。

田端委員 ありがとうございました。

 ちょっと話がかわりますが、長江参考人が先ほど自転車のことをおっしゃられました。今回の改正で、つまり、例外規定と言ってはおかしいのかもわかりませんが、自転車に歩道というものを要件として認める、こういうことであります。しかし、逆に言うと、この辺、周辺の都会で歩道を自転車、これはもう今でも本当は、通行している歩行者から見ると迷惑な話であって、だから、どっちがいいか悪いかということはなかなか難しいし、また地域によっても全然違うんだろう、こう思います。

 しかし、この自転車の接触事故等を含めて非常に多いことも事実である。ところが、この自転車がまた便利だから、また環境にもいいから、ちょっと出かけるときには自転車ということで、手軽であるという意味でも自転車というのは非常に使い勝手がいい、ここのバランスがなかなか難しいんじゃないかと。

 この前も議論させていただきました。しかし、なかなかこの線引きが難しいと思いますが、何かいいお考えといいますか、一つのルールというようなものがあればちょっとお教えいただきたいと思います。

長江参考人 おっしゃるとおりで、今回の法律改正ですべて自転車が歩道を走るということには必ずしもならない。従来あるところをさらに補強して、歩道のところで線引きをして自転車の走るところと歩行者が歩くところと分離するとか、そういうようなことを実は考えておられるのがこの趣旨だと思います。

 私は、自転車に関しては中国がいわゆる自転車先進国であるだろうと思うんですが、これは分離をしているところと分離していないところとがあるんですが、一様に見えるのが、逆行していないんですね。要するに、例えば右側通行だったらみんな走るときに右側通行をやる、その流れの中を逆に走ってくるという自転車はいないんですね。これが、ベトナムへ行くと多少逆行する自転車があったりオートバイがあったりするんですが、それがそうでないということで、狭い歩道を利用するんだったらば、いわゆる相互通行ではなくて一方通行のような、自転車は軽車両ですから、そういうふうな意味では左側通行するようなことで利用すれば、もう少し今とは違った形になるんじゃないのかな。

 この辺は、一番大事なことは、実は乗っておられる方が、どういうことが危険でどういうことをしてはいけないのか、どういうふうにしなければいけないのかということをはっきり理解されていないで自転車を利用している。

 先ほどもちょっと申し上げましたが、中学生とか高校生に対していろいろな教育は、やっているところはやっているんです。例えば、ヘルメットをかぶりなさい、それから横断歩道を渡るときには自転車からおりて押して歩きなさい、そういうふうに教えられた人はそうやるんですが、そのわきを、いわゆるおばさんだとかおじさんだとかいう人たちはおりないですっと渡ってしまう、何で私たちだけがそういうふうに守らなきゃいけないのかという疑問を若い人たちが抱く。要は、自転車利用者がやはりある意味での決められたルールなりマナーをきちんと守って利用すれば、若い人たちも、当然のことですがそれに従ってくれるだろうと思います。

 そういう意味で言うと、今回、法律改正の中の一つに、いわゆる地域の交通安全の指導というような問題が織り込まれていますので、その辺に大いに期待をしているところであります。

田端委員 ありがとうございました。それぞれ大変貴重な御意見に心から感謝申し上げます。

 以上で終わります。

河本委員長 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。

 きょうは、三人の参考人の皆さん、大変貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございます。

 私は、飲酒による本当に悪質、危険な運転を繰り返して多数の被害者、犠牲者を出しているような、そういう事故を見るたびに本当に怒り心頭に発すという思いです。ですから、今回の法律改正に賛成するという立場をとっているものです。

 その上に立って参考人の方にお伺いしたいんですが、既にこれまでの質問者の方から出されておりますので、重複を避けまして、最初に三人の参考人の方お一人お一人からお考えを伺いたいと思いますのは、例えば、先ほど井上参考人の方から、加害者が飲酒が常習の人だったというお話がありましたけれども、私がかつて住んでおりました近くにも、タクシー運転手の方でアル中の方がいらっしゃったわけです。ふだんは非常に人のいい方で、小鳥が好き、花が好きという優しい方なんですが、酒を飲んだら人格が変わってしまって、本当に暴力で家族も地域の周辺の人も大変ひどい迷惑を受けるという、そういう方もおられました。同時に、私の知人の中では、アル中ということを自覚してからなんですが、断酒会へ行って随分努力しているという人もおりました。

 ですから、飲酒による悪質、危険運転に至る前に、そういうアル中とかアルコール依存症、アルコール常習者、こういう人たちに対する特別な医療プログラムというものをきちっとつくって、それを実施していくということが非常に大事になっているんじゃないかと思うんですが、この点、三人の方からそれぞれのお考えを伺いたいと思います。

長江参考人 おっしゃるとおりだと思います。

 今回の法律改正の中で認知機能の問題がありますが、同じように、実は飲酒、特にいわゆるアルコール中毒と称する人たちがいるということは、お医者さん方、皆さんそういうふうにおっしゃっております。

 ですから、そういう意味でいうと、飲酒をして運転をした結果がどうのこうのじゃなくて、その前に、いわゆるアルコール依存症の人たちは運転はできないんですよというようなことをやって、断酒会だとかそういうところに通って、それがある意味では治ったというときに初めてもう一度免許の再交付をするとかいうようなことは必要だろうと思います。

井上参考人 先生、とてもうれしいです、一つだけどうしてもお話ししたかったことがありますので。

 昨年の八月の事件以降、連日のように飲酒運転、飲酒事故の報道が続いて、メディアの方も、それでも何で減らないんですか、まだあるんですよ、まだ出てくるんです、どうしてでしょうね、井上さんというふうな質問を投げかけられていらしたんですね。

 とどのつまり、本当に軽い気持ちでやっている人たちは、もうあんなばかなことはやっちゃいけないというふうなことはわかるんですけれども、やっちゃいけないということがわかっていてもやめられないという人たち、依存症になっている人たち、それから本当にその一歩手前の人たちというのが、数字では四百四十万人もこの国ではいる。先ほどの、認知症になられているドライバーの方々、その中で本当に危険な運転をするかどうかというふうなのはまた別問題でありますが、それが三十万人だというふうに言われている中で、依存症の人、依存症の一歩手前の人たちが四百四十万人。しかもそれは、依存症は別に高齢になってからなるということとは限りませんで、早い人は二十代からでも依存症になったりします。

 その人たちの問題は、医療プログラムというふうに先生おっしゃいましたが、みずからは絶対に病院に行かない、家族が引っ張って引っ張って、それでも行きたがらない。自分はアル中じゃないというふうな、否認の病気と言われているほど、最後の最後まで、もう末期的な症状を示してしまうほどになるまで自分ではその病気を否定するという厄介な病気だと思います。

 ただ、必ず周りの人はその兆候に気がついているし、家族も、それから隠し切れなくなってきますと近隣の人とか、それから職場の人、同僚に始まって上司、そういったふうに周辺の人が、あいつはふだんはいいやつなんだけれども、酒が入るとどうも人格が変わる、何か酒臭いにおいをして朝から出勤してくるとか、いろいろな兆候が出てくるんですね。しまいには仕事にも支障を来したり家庭に支障を来したりするようになってくるという意味では、これは、まず周りの人たちが、依存症という病気をよく知らないといけない。どういうふうに対応したらいいか、内科に連れていけばいいということではなくてアルコールの専門医に連れていかないといけないとか、そういった基本的なことからもっともっと多くの人が、この四百四十万人の周辺にいる何千万人という人たちが知らないといけない病気だと思っています。

 昨年の秋に、私自身もアメリカに行きました。アメリカでは、厳罰化だけではなくて二本立てでやっている。ほとんどの州でやっているんですけれども、DUI、ドライビング・アンダー・インフルエンスというプログラムを、切符を切られた段階で裁判所の命令で受けないといけない。初犯でしたら三カ月ぐらい、でも累犯になってきますと九カ月とか十八カ月コースとかあるんですね。

 その中で、長い期間、毎週毎週、例えば月曜日の夜八時に、仕事の後にそういった学校に通ってアルコールについての勉強を、系統立った教育を受けて、お互い、自助グループで、自分の行動と思考にどういう問題があったかというふうなことを話し合っていくことによって、少しずつみんな自分のことをわかってきて、ああ、悪かったのは、警察があんなところにいたから、取り締まりがあんなところで行われていたからではない、自分の問題だったんだというふうなことに気がつくようになるような、そういう仕組みがありまして、国家公安委員長様の方にも、この視察にまず行ってくださいというお願いを昨年秋させていただいたんですが、先日、まだ視察の計画は立っていないんですかというふうにどちらかの議員の先生にしていただきました。それで、行くというふうなお答えをいただきましたので、ぜひ警察庁、法務省、それから、やはり依存症という病気なので、医療の方の観点からも厚生労働省の方々、並びに国会議員の先生方で御関心のある方に、ぜひアメリカでの取り組み、ドイツでの取り組みなどを見に行っていただきたいと思っています。

池田参考人 先生がおっしゃるとおりでありまして、この問題は、やはり予防教育的な観点から取り組まないととても難しいです。今も御議論がありましたように、アルコール中毒の場合は、依存症の場合は、これはなかなか手ごわい病気で、私ども精神科医が一つの専門家と言われていますけれども、そう簡単には解決できる問題ではございません。ですから、徹底的な教育、それから周りの人も含めた教育ということが大事であります。

 それから、もう一つは、その教育に関して言えば、医療の現場と、それから警察、行政の皆さんとの協力ということがやはり不可欠かと思います。

 例えば認知症に関して申しましても、警察官の方は、主治医が警察に通報すればいいじゃないか、非常に危ないと思えば教えてくれればいいというふうにおっしゃる方もいらっしゃるんですが、これは御存じのように、日本の医師法ではドクターは患者さんの情報に関して守秘義務がございます。これはほとんど万国共通でございまして、例えばアメリカのカリフォルニア州なんかの場合には、この認知症の運転に関しては、ドクターは守秘義務に縛られることなく、非常に危ないドライバーに関しては交通行政機関に知らせる義務が逆にあるということを法律化してございます。

 ですから、そういうバックグラウンドがあればドクターの側からの積極的なアプローチはできますが、今のところはそこまで積極的な踏み込みは医師の側からはできませんので、一番よい解決法としては、やはり警察、行政関係と医師関連の人たちが協力して教育をするということが一番大事かと思います。

吉井委員 次に、長江参考人にお伺いしたいんですが、三Eというのを挙げていらっしゃいまして、私もその三E、全体として大事だと思うんです。

 例えば技術的な面を中心に考えますと、今はコストの問題が一つあるんですけれども、飲酒感知のインターロックの開発と普及、かなりめどが出てきているわけですから、例えば乗用車について言えば、酒気帯び運転で一度捕まった人については、免許の条件にインターロック車でないと運転できませんという制約を課すとか、あるいはトラックやバスについては、だれが運転するにしても、このインターロックのシステムをきちっとつけないと、酒を飲んだ人でも飲んでいない人でも、車がそもそも動かないようにするとか、やはりそういうことを考えるということは大事じゃないかなというふうに思っているんですが、この点についてのお考えを伺いたいと思います。

長江参考人 おっしゃることはよくわかります。

 実は、その前に、昔、シートベルトがありまして、シートベルトをしていないとエンジンがかからない。どうしたのかというと、皆さん、座らないうちにシートベルトだけ差し込んで、それでエンジンをかける。今回のいわゆるアルコールのインターロックの話もそうなんですが、技術的にはそれができますし、経済的にはその数がふえれば安くはなるだろうと思いますが、問題は、それを使う人たちの心なんですね。

 したがって、それを全部につければいいという話よりは、例えば、もし飲酒運転をして、そして、捕まったといいますか、その事実があったときには、その後はそれを個人の負担でつけなきゃいけない、そして、常にそのチェックを受けながら運転をしてくださいみたいな形ならば何とかいくかなと思いますけれども、多分、その裏をくぐり抜ける方策を皆さん考えるだろうと思います。

 それからもう一つは、技術的にちょっと問題なのは、今、血中アルコール濃度が決めてありますけれども、これが本当に、今度、個々の製品でそれだけ精度が出るかどうかという問題がまたあるんだろうと思いますが、これは技術的な解決はできるだろうと思います。

 以上です。

吉井委員 時間の関係で最後の質問になろうかと思うんですが、池田参考人に伺いたいんです。

 認知症のことで、私も家族におりまして、古い記憶は結構しっかりしていて、新しい記憶はさっぱりということがありますが、認知症の結果として判断能力が落ちてくるとか運動機能が低下してくるとかという場合と高齢に伴う運動機能の低下、危ないというときに反射神経が働くような、ブレーキを踏むとか、そういうことができなくなる認知症の場合とそれから高齢に伴う運動機能の低下とはまた違う面があると思うんですが、この二つの違いと、それぞれに対応した免許の扱いとかあるいは交通安全対策というものをどのように進めていくといいのかということについてのお考えを伺いたいと思います。

池田参考人 とても重要なポイントだと思います。

 認知症の方の場合、先生がおっしゃるように、当然、リスクは高まります。大体、今までの研究でいくと、二・三倍から四・七倍ぐらい同じ年の高齢者よりもリスクが高いという結果が出ております。

 ただ、おっしゃるように、非常に軽い、軽度の認知症の方の場合に、一般高齢者よりも自動車運転が危険かというと、必ずしもそういう場合だけではございません。ですから、先ほども強調させていただきましたように、微妙な方の場合には、最終判断を、ぜひ免許センター等の実際の自動車の運転で運転のプロが決めていただきたい。我々医師は、認知症かどうかということはわかっても、その方の運転が本当に一般の高齢者に比べてどのくらいリスクがあるかというのはわかりませんので、その点をぜひ注意していただきたいというのが一点でございます。

 ただ、一般の高齢者の老化による運転とそれから認知症の場合と一番違う点は、御本人が自分のハンディキャップを意識しておられるかどうか、自分のハンディキャップをわかっておられるかどうかという点が一番違います。一般高齢者の方の場合には、恐らく大部分の方が自分の運転の衰え等を認識しておられます。ところが、認知症は、ある程度進みますと御自分の運転の危険性がわからなくなるというのが特徴でございますので、これまで行われていたような自己申告制ということに関しては、認知症の場合にはほとんど有効性がございませんので、今回の法改正案の方向性でよいのではないかと思っています。

吉井委員 本日は、貴重な御意見、大変ありがとうございました。時間が参りましたので、終わらせていただきます。

河本委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、一言ごあいさつを申し上げます。

 このたびは、貴重な御意見をお述べいただきまして、本当にありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。(拍手)

 参考人の方々は御退席いただいて結構でございます。ありがとうございました。

    ―――――――――――――

河本委員長 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として警察庁刑事局長縄田修君、交通局長矢代隆義君、警備局長米村敏朗君、国土交通省道路局次長原田保夫君、自動車交通局次長桝野龍二君及び技術安全部長松本和良君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

河本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。柴山昌彦君。

柴山委員 自由民主党の柴山昌彦でございます。

 私どもの党では、飲酒運転根絶プロジェクトチームを結成して、今参考人の皆様からお話があったような悲惨な事故の予防策の策定に取り組んでまいりました。その一員として、先日、法務委員会の方でも質問をさせていただいたわけですけれども、きょうは、こちらの内閣委員会で引き続き質問をさせていただきたいと思います。

 きょう、まず取り上げたいのは、そちらのPTでも提言をさせていただいた酒類提供罪、要するに、飲酒運転をする可能性のある方にお酒を勧める行為自体を処罰するという規定でございます。

 従前、こうした行為は酒酔い、酒気帯び運転の教唆、幇助犯として取り締まりがされていたわけですけれども、これまでのこうした取り締まりの実績、検挙件数について、冒頭、お伺いしたいと思います。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 教唆、幇助ということになりますと、その本犯があるわけでございますが、酒酔い運転、酒気帯び運転の検挙件数は、平成十七年が、酒酔い運転千六百七十五件、酒気帯び運転十三万九千百九十八件、また平成十八年は、酒酔い運転が一千四百七十八件、酒気帯び運転が十二万三千六百九十八件でございます。

 これに対しまして、飲酒運転に係ります教唆、幇助の検挙件数でございますが、平成十七年、教唆が二十四件、幇助百五十一件、また平成十八年は、教唆三十六件、幇助二百九十一件でございます。

柴山委員 今御指摘があったように、平成十七年から平成十八年にかけては、報道等でも明らかなとおり、こうした酒酔い、酒気帯び運転の合計の数は減っているわけですけれども、教唆あるいは幇助の検挙件数はふえているという結果だと思いますが、これはどのような背景に基づくものでしょうか。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 飲酒運転の検挙件数が減少するのに対して教唆、幇助の検挙件数が増加したという点でございますが、これはある程度警察の取り締まりの姿勢が反映しているものと考えております。

 本犯がありまして、その後、教唆、幇助がございますが、昨年八月二十五日の、この委員会でも指摘がありましたあの痛ましい事故でございますが、これも契機といたしまして、飲酒運転取り締まりに際し、教唆、幇助の存在が疑われる場合には、これを積極的に厳正に捜査するということで都道府県警に対しまして指示いたしまして、取り組みが強化されました。

 したがいまして、数字を見ますと、教唆につきまして、昨年一年間では三十六件でございますが、実はこのうちの二十三件が九月以降のものでございまして、また、三百二十三件が幇助でございますが、このうち百八十四件はやはり九月以降の検挙でございまして、そのことをうかがわせるものでございます。

    〔委員長退席、西村(康)委員長代理着席〕

柴山委員 取り調べを強化したというお話がありましたけれども、それでも、十二万件以上の総数のうち、こうした教唆、幇助犯の検挙件数は三百件ちょっと。割合にすれば、トータルの中でわずか〇・三%未満という件数なわけですね。

 そこで、今回、酒類提供罪等の新設を見たわけですけれども、先ほど冠婚葬祭のお話もございましたけれども、例えば、冠婚葬祭あるいは会社の新人歓迎会などで、車で会場に来た人に対して、いやいや、ちょっとぐらい飲んだって大丈夫だから場を盛り上げるためにも酒を飲めというように勧める行為は、この条文で処罰されることになるんでしょうか。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、酒を提供し、または勧める行為でございますが、勧める行為につきましては、道路交通法ではこれはしてはならないとなっていますが、今回の御提案申し上げております改正案については、勧めることは対象としておりませんで、提供したということにしております。

 提供したと申しますのは、そのお酒につきまして処分権限を持っている方が、自分で管理するものを、これを相手方に、飲める状態に置く、そういう概念でございます。

 したがいまして、今例示がありました冠婚葬祭あるいは歓迎会などの席でございますが、例えば歓迎会でございますれば、全部自分持ちで、酒を本人に対して提供するということを自分の責任であるいは自分の処分権限の中で行っている、そういうことですと提供ということになり得るわけでございますけれども、たまたまそこにあるものを飲んだり飲ませたりした中で、たまたま勧めたというだけですと、これは対象外というふうに考えております。

柴山委員 まず問題なのは、お酒の処分権限ということがなかなか十分明確ではないということ。

 それと、あと、お酒を飲む方の側が、自分はきょうは車を置いて帰ろうというように思っていた場合、こうした飲酒運転を想定していない方にお酒を勧める行為、この行為は今回の条文で処罰されることになるんでしょうか。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 なお、一点訂正させていただきたいと思いますが、先ほど、幇助の検挙件数、十八年につきまして三百二十七件と申し上げましたが、二百九十一件ということで訂正させていただきます。

 それから、ただいま御指摘の点でございますが、これは、飲酒運転をすることとなる者に対しまして酒を勧め、あるいはその他の幇助行為をするということが今回対象でございますので、飲酒運転をするつもりがない人に酒類を提供して飲酒運転をする意思を生じせしめて運転させるという場合には教唆犯ということになりますので、これは道交法六十五条第一項の教唆犯に該当するというふうに考えております。

柴山委員 ただ、この条文を見ると、何人も、第一項の規定に違反して車両等を運転することとなるおそれがある者に対して、酒類を提供し、飲酒を勧めてはならないという条文になっているんですね。これは、運転をすることとなるおそれがある者に対する酒類提供を処罰するわけで、別に、飲酒運転をするつもりである人に対して酒類を提供し、飲酒を勧めてはならないと書いてあるわけではないわけです。

 つまり、そういう飲酒運転をするかもしれない人に対してお酒を提供する行為を処罰しているのに、その方がたまたま飲酒運転を、いや、自分は本当はするつもりはなかったという場合には、教唆犯ですから、酒気帯びあるいは酒酔い運転と同じ刑で処罰される。だけれども、そうしたことをしようというように決意をしている人に対しては、お酒の提供をした人は、例えば酒酔い運転の場合の酒類提供であれば、上限三年の懲役ということで軽く処罰をされる。これは、ちょっと条文の書き方としてはなかなかわかりづらいところではないかということだけ申し上げておきたいと思います。

 また、今御指摘があったように、酒類提供をした場合に、それが教唆犯に当たるような場合、あるいは今回の条文に規定されていない形での幇助、手助けになるような場合については、結局、明文の規定というものは設けられないことになってしまうわけですけれども、そういうようなことでこうした飲酒運転関与ということが適正な処分を図れるのか。特に、一番最初に数字を御指摘いただいたように、こうした事案は極めて検挙件数が少ない、もうゼロと言っても過言ではありません。取り締まりを強化してもこういうような状況なのに、本当にこうした飲酒運転の関与ということがしっかりとした処罰がされるのかということについて、国家公安委員長の御見解を伺いたいと思います。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のように、今回の改正法は、幇助行為の中から一定の悪質な類型のものを取り出して、これを正面から処罰の対象とし、かつ処断刑を重くするというものでございますので、したがいまして、それ以外で、非定型的なもので、しかし幇助行為に当たるという場合には、従来同様に幇助犯に該当いたしますし、また教唆に該当する場合にはもちろん教唆犯として該当するわけでございます。

 したがいまして、今後、法改正がなされますと、特に悪質な車両等提供あるいは酒類の提供、それから一定の同乗行為でございますが、これに対しまして、捜査上、そういうことがないかということを正面から捜査していくと思いますし、また、今回、全体として飲酒運転に対する重罰化が図られてまいりますので、したがって、それに該当しない場合であっても、教唆ないしは幇助になっていないかどうか、こういうことも含めて捜査するわけでございますので、その数字がどこまで出てくるかというのは一概には言えませんが、少なくとも、積極的な取り組みによりまして、責任追及というものが進んでいくものであろうというふうに考えております。

柴山委員 次の質問に移りたいと思います。

 今回の改正法では、免許証の提示義務についても大きな変更が加わっています。従前は、無免許などが客観的に明らかな場合にだけ免許証の提示義務というものが課されておりました。しかし、今回、道交法違反ですとか交通事故を起こした場合には、今申し上げたような要件なしに免許証の提示義務が課されることになったわけでございます。この趣旨を簡単に御説明いただきたいと思います。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、道路交通法の規定では、第九十五条でございますが、免許証の携帯義務が定められておりまして、違反に対する制裁もございます。実際に免許を持っているかどうかということにつきましては免許証を見て確認するわけですけれども、その提示を求めることにつきましては、現在は、基本的には運転者が任意で免許証を提示していることを前提として成り立っておりまして、走行状態から明らかに無免許等であるという、つまり、一定の場合に限って運転者に免許証の提示義務を課しております。これに違反しますと制裁がある、こういうことになっております。

 近年は、交通違反の取り締まり現場では、警察官が運転者に対して免許証を提示するように任意の協力を求めましても、その法的根拠は何か、あるいは任意であれば応ずる必要はないなどと申し立てて、これを拒否する事案が少なからずございます。

 一方、平成十三年の改正によりまして、飲酒運転その他、制裁強化がなされましたことから、免許を取り消され、長期の欠格期間を指定される者が増加しておりまして、いわゆる潜在的な無免許運転のリスクのある層が増加しているわけですが、今回の改正によりますと、さらにこれが増加するという見込みでございます。

 そこで、この無免許運転、これはひき逃げの動機にもなっておるわけですが、これに対応するために、第六十七条第一項で規定されます事由、一定の場合でございますが、これに加えまして、車両等の運転者が道路交通法の規定に違反している場合、つまり交通違反のあった場合や、交通事故を起こした場合には、この者に対しまして免許証の提示を求めることができるということにしようとするものでございます。

柴山委員 要するに、免許禁止期間が今度の改正法で延びるわけですから無免許のリスクというものが大きくなる、そのことも踏まえて今回免許提示義務というものを強くしたというようなお話があったかと思いますけれども、それでは、例えば、今回対象となる交通事故において、車両が大破してしまって、もうその車にはこれ以上乗れないというような場合には、運転者は免許の提示を拒否できるということでよろしいでしょうか。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 そのとおりでございます。現在の免許証の提示につきましては、危険防止の措置として、それ以上運転させていいかどうかということを確認するわけでございますので、そのような事例で、車が大破していてもう運転することは事実上ないということになりますと、この六十七条第二項で想定しております事由から外れてまいりますので、その場合には、この条文に基づく提示義務はないということになります。

柴山委員 ただ、一般的な常識からして、交通事犯として非常に重いものを犯しておきながら身分を明かすことを免除されるというような規定のあり方というものが本当に妥当なのかどうなのかということについては、ぜひ検討をしていただきたいというように思っております。

 次の質問に移ります。

 改正法は、七十五歳以上の高齢者に対して、認知機能の検査を義務づけるなど、規制を強化しております。そして、聴覚障害者に関しては、一定の標識の表示を義務づける一方、これまで免許取得を制限していたのをどのように改めることになるのか、御説明をいただきたいと思います。

矢代政府参考人 申し上げます。

 聴覚障害者の方につきましては、現在の制度は、これは欠格条件から外してはおるわけですけれども、その適性として、一定の聴力があるかどうかというのを検査いたしまして、それ以下の場合には適性がないということで免許が不合格になる、こういうことでございます。

 それで、現在制度改正を進めようとしていますのは、聴力に係る適性基準、聞こえ方の程度でございますが、現在の基準に合致しなくても、ワイドミラーを装着した車を使うことによりまして慎重に運転してもらえばいいということで、まず、ワイドミラーを装着した車を運転することを条件に、それからもう一つは、今回法律でお願いしようとしているわけでございますけれども、聴覚障害者が普通自動車を運転するときに聴覚障害者標識を表示していただくということを義務づける、そういう条件で免許を与え、運転していただく、そういうふうになってまいります。

柴山委員 ワイドミラーをつけて、そして車には聴覚障害者であることの標識をつける。これによって、ただし、全くクラクションが聞こえない、また、物が倒れてくるときのような音も聞こえない、あるいは、自転車や自動車のブレーキ音、急ブレーキ音も聞こえないという方々に免許を付与することについて、十分安全性が図れるのか。要するに、そうしたワイドミラー等の装着によって、外部から音として入ってくる情報がないことの代替手段になり得るのかということについてどのような調査をされたのか、お聞かせいただきたいと思います。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 まさにその点が、平成十三年にその問題を御指摘を受けながら、調査研究に時間を要し、現在の制度提案になったということでございます。

 この間、私どもは、聴覚障害者の方々で、現在、補聴器をつけますとその基準を満たす人がおられますので、その方々の協力を得まして、補聴器をとった状態で運転するということをやっていただきました。つまり、音が聞こえない状態でございます。これによりまして、さまざまな交通の場面、死角のある場面でございますとか、あるいは車線変更その他でございますが、実験いたしました。その結果、ワイドミラーを活用することによりまして慎重な運転をいたすれば安全に運転できるという結論に達しました。

 あわせて、この間、諸外国の、聴覚障害者に対する免許付与の状況を見ておりますが、諸外国でも、多くの国では普通自動車につきましては無条件で聴覚障害者にも運転免許を与えている国が多いわけでございますけれども、その国における考え方なども参考にしながら結論を得たわけでございます。

 これがこれまでの検討の状況でございます。

柴山委員 確かに、バリアフリーに対して思いをいたすことはとても大切なことだと思いますし、諸外国との比較ということもしっかりと行っていただいたことはよいことだと思っております。ただ、諸外国が本当に日本のような非常に交通状況が悪い国と同一の形で論じられるのかどうかということについては、もう少し検討が必要かなというように思っております。

 そして、何よりも、今、例えば東京都の道路交通規則の八条三号では、大音量でカーラジオをかけて走行することを禁止しているわけですね。これが一体どういう規制になるのか。また、今、道交法の五十四条では、山道とか見通しの悪い場所、こういうところでは警笛鳴らせという標識が立っていまして、そこに来ると、危険回避のために警笛を鳴らすことを義務づけているわけですね、法律上。

 これで、健常者の方と聴覚障害の方とが上りと下りの道を走っているような場合は、両方が警笛を鳴らせば、どちらかが健常者ですから危険回避の措置をとれるわけですけれども、両方とも聴覚障害の方が走っておられるような場合には危険回避の措置がとられないわけですね。こういうようなこともきちんと調査されて結論を出したのかどうかということについて、ぜひ御説明をいただきたいと思っております。

    〔西村(康)委員長代理退席、委員長着席〕

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 その点も、私どもが調査研究に手間取った一つのポイントでございます。警音器使用というのは、今御指摘のようなケースで必要なわけでございますが、端的に申し上げまして、聴覚障害者の方は警音器の音はとれません、聞こえません。それを前提で安全が確保できるかどうかということでございました。

 それで、聴覚障害者の方は、実は警音器の使用について十分な経験がないので、御自身で使ったことがないんですね。それで、それをまず使えるかどうかということで、これは実際にやってみました。どういうふうにして、どの程度の音を、どのくらいの時間鳴らすのだ、こういうことでやりました。それから今度は、音を御自分でとれないわけでございますけれども、見通しのとれないカーブ、あるいは交差点なんかでも一緒でございますけれども、そういう場合の見通しのその線のとり方、それから、相手に自分の車を見せる、前部をどういうふうに見せていくか、そういうところがポイントでございますが、そういったところについての教育が可能であるかどうか、こういうことで実験してまいりました。

 結論的には、一定の訓練は必要なのでございますけれども、それは充足できるということでございます。

 それから、一部の公安委員会、地方の公安委員会規則で、確かに、音または声が聞こえないような状態で運転してはならないという規定がございますが、これは運転者の遵守事項でございますけれども、これは健聴者の方々について、この方々は通常、音が聞こえるわけでございまして、音が聞こえない状態というのは通常ない状況になるわけでございますが、そういう状況で運転してはならないということでございます。聴覚障害者の方々は、通常、音が聞こえない状況で生活しておられますので、実質的な問題としては、これと同列には評価する必要はないだろうという実質的な判断がございます。

 また、規則自体の理解といたしましても、これは、健聴者の方がカーラジオあるいはその他の音で必要な音または声が聞こえないような状態をつくり出して運転することを禁じているものであるので、したがって、この規則そのもの自体が私どものこれからやろうとすることと抵触するものではないという理解をしておるわけでございます。

柴山委員 ぜひ慎重に検討をしていただけたらと思います。

 もっとたくさん質問を用意してきたんですが、時間がございませんので、最後の質問とさせていただきます。

 この改正法の施行期日なんですけれども、特に、運転免許の取り消しを受けた方が再度免許を取得できるまでの期間を大幅に十年間と延長したわけなんですけれども、これの施行が公布後二年となっているんですね。なぜこうした行政処分の強化を行うのに二年の施行期日という大変長期を要するのかということについて、しっかりと御説明いただきたいと思います。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 これは、率直に申し上げまして、運転者管理システムの改修の問題でございます。

 今回の一連の改正でも、できるだけ急ぐということで、制裁強化につきましては三カ月以内ということで御提案を申し上げているわけでございますけれども、免許の処分関係につきましては、膨大な資料を運転者管理システムで処理しておりまして、これによりまして、運転免許証の交付あるいは更新、あるいは免許証の取り消し、停止、あるいはその他のさまざまな講習の区分などでございますが、これはさまざまな要素の組み合わせで、期間計算も相当複雑になっております。

 したがいまして、これまでの経験からいたしますと、これを間違いないものとして運用しようといたしますと、二年をいただかないと自信を持ってプログラム改修できないということでございまして、したがいまして二年とはいたしておりますけれども、当然のことながら、用意ができる見込みがつけば、できるだけ早く施行したい、そういう考えではございます。

柴山委員 一刻も早く施行していただきたいのと同時に、先ほど御説明があったように、免許証の提示義務については、これは欠格期間が長引くことによって免許提示義務の規定を強化したわけでして、この罰則はもう公布から三カ月後には施行になるわけですから、そこはやはり論理的な矛盾というか不合致というものが生じているのではないかということを最後に指摘させていただきまして、私の質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

河本委員長 次に、遠藤宣彦君。

遠藤(宣)委員 自由民主党の遠藤宣彦でございます。

 まず、この質問に先立ちまして、私の地元であります福岡市で昨年、飲酒運転によっての事故があった。そういった方々を初めとして、すべての交通事故による犠牲者の方々に深く哀悼の意をささげたいと思います。

 そしてまた同時に、昨日、その福岡の事故についての公判が始まりました。そういった意味で、きょうの質問は、あくまで今後のそういった悲劇をなくすための立法論として、国会の立場で質問をさせていただく、そういうスタンスで臨みたいと思います。

 まず冒頭、自動車事故、これについての思いをちょっと述べさせていただきたいと思います。

 先ほど申し上げましたように、福岡での昨年の事故、私の選挙区の東区の海の中道というところで、飲酒運転の自動車に追突されて、ガードレールを突き破って海に転落をする、子供が一歳、三歳、四歳、死亡する。ちょうどその三日前に私も六歳の娘と家内とそこを通ったばかりでありました。今も毎回、そこを通るたびに手を合わせております。

 これは人ごとではありません。交通事故というのは、すべての人がいつ被害者になるかわからない。すべてのドライバーがいつ加害者になるかわからない。私は家族を見送るときに、必ず心の中で念じながら、気をつけてという言葉をかけるようにしています。

 そしてまた、子供が道を歩くとき、子供に何と言うか。どんな人が運転しているかわからないんだよ、運転が下手な人もいる、不注意な人もいる、ひょっとしたらお酒を飲んでいる人もいるかもしれない、何かをしながら不注意で事故が起きる。こういった、一見、車自体からわからない、運転者がどういう人かわからない人がいっぱいいるんだよ、こんなことを諭しながら、歩道があれば歩道に、手をつなぐのを車道側ではなく歩道側に変える。そういった思いをいつも持ちながらやっています。

 また、私自身の話になりますけれども、私は免許を取ったのは学生時代の最後でした。どうしても学生はやはり何か気持ちが浮かれているんじゃないか、自分みたいなのは。現に、夏のクラブの合宿とかに行くと必ず、飲み会の後にどこかに行こう、お酒を飲んだまま車を運転するやからが必ず出てくる。田んぼのあぜ道を通って、田んぼにおっこちる。現にそういったことがあります。

 そして、私のある先輩などは、公務員試験を前にして飲酒運転の事故を起こした。将来がパアになった。つまり、車の事故というものがその人の人生にもたらす甚大な影響というものがあるということを、今改めて、ドライバーを初めとして、すべての方々が再認識することが必要である、そして今回の法改正がこの意義を十分に知らしめるということが何よりも重要だと思います。

 この点について、まず大臣の御決意、御所見をお伺いしたいと思います。

溝手国務大臣 お答え申し上げます。

 一瞬の交通事故が、加害者と被害者の両方の人生を全く変えることになってしまうということであろうと思います。このため、一件でも多くの交通事故を防止するということが我々の責務だと考えております。

 交通事故を防止するためには運転者の意識が重要であることは言うまでもございませんが、今回の道路交通法改正では、飲酒運転を絶対にしないという国民の規範意識を確立するため、飲酒運転の罰則を引き上げることとしており、改正の意義を十分に知らしめることは極めて重要である、このように考えております。

 また、飲酒運転を防止するためには環境づくりも大切であり、飲酒運転を絶対にさせないという国民の規範意識の確立のためには、飲酒運転の周辺者に対する制裁の強化についてもその意義を十分に周知して、交通事故の防止という目標を達成するために努力をしてまいる必要があると考えております。

遠藤(宣)委員 ありがとうございます。ぜひその認識をすべての国民が共有することがまず第一歩だと思います。

 そして、次に触れたいのは、被害者の感情と刑罰についての考え方であります。

 私も、国土交通委員会の方で、被害者家族との、飲酒運転の根絶のプロジェクトチームに入って、きょうお見えになっている参考人の井上さんたちを初め、いろいろな方とも意見交換をさせていただきました。

 私は、誤解を恐れずに申し上げれば、もしも自分の愛する家族がこういった目に遭ったときには、衝動的であるにせよ、その相手に、本当に死刑にしてもらいたい、こんなことを思ってしまうかもしれない。つまり、刑罰というものは、刑法の理論にも書いてあるかもしれませんけれども、応報刑、つまり、個人で罰することができないから、その思いを国家がしっかりと受けとめる。だから、刑罰権が国家に独占をされている。飲酒運転事故だけでなく、殺人事件、さまざまな事件において、もしも被害者の感情あるいは市民感情からかけ離れた刑罰しか用意されていないとするならば、多くの被害者あるいはその家族は、みずからの手で思いを晴らしたいという衝動をひょっとしたら持ってしまうかもしれない。これは国家の根幹にかかわる話だと今改めて認識をしなければならないと思います。

 そして、自動車事故について、この特徴は、先ほども触れましたけれども、特に殺そうと思って殺したわけではない。しかし、ある日突然、平和に暮らしている人が、家族が、不注意きわまりない運転で突然命が奪われる、こういったことが起き得る以上、飲酒や不注意に対して厳重な注意義務と厳罰を用意しなければならないと私は思います。

 そして、後で述べますように、車というものは千キロぐらいの、いや、それ以上の鉄の塊が走っている凶器にほかならない。だとするならば、殺意のない人間が突然殺人者に転じてしまう。加害者も被害者も悲劇です。だからこそ、加害者になり得るドライバーとその周辺に対しては、ほかの一般の犯罪とは別の視点と思考が間違いなく必要となると思います。

 しかしながら、日本の刑罰というものは、これはここの委員会で取り上げることではないかもしれませんけれども、ある犯罪者の、自分は日本の刑務所は居心地がいい、ホームレスになるより刑務所に行った方がいい、まじめに刑務所で過ごせばすぐ出てこられる、そんなことが出てくる。モラルが低下すれば、善良な一般市民の安全を守るには刑罰を強化するしかないと私は思います。

 市民感情からややもすれば離れつつあるような気配があるこういったものについて、被害者の感情面から、また、国家が真に守るべきは、もちろん加害者の人権もあるかもしれない、しかし、最も守らなければならないものは、平和に、善良に暮らしている一般市民であるというその認識から、刑罰を被害者のみならず一般市民が納得のいくような方向で、将来、場合によってはさらなる厳罰化を検討するべきと考えますが、大臣のお考えを伺いたいと思います。

溝手国務大臣 一般に、刑罰については、その行為の反社会性や結果の重大性に応じた処断がなされるべきだということにつきましては御指摘のとおりで、制度を考える上で極めて重要な要素であると思っております。

 今回の道路交通法改正は、そのような点も考えて御提案したものでございます。当然、今後の社会情勢や世論の動向を見ながら、必要な改正ということは検討していくことはあり得る、このように認識をいたしております。

遠藤(宣)委員 改めて自動車というものについて考えてみたいと思います。

 そもそも、車とはどんなものだったのか。ちょっとした本を読みますと、フォードが、お母さんの危篤のときに馬を駆って駆けつけたけれども間に合わなかった、馬よりも速い乗り物が欲しい、そんな思いから車がつくられ、そして大衆車になっていった。ドイツにおいても、フォルクスワーゲン、国民車という位置づけで大量につくられるようになった。今、日本においてもリーディングインダストリーになっている。

 初めは一部の人が持てるぜいたく品だった時代から、だれもが持ち得る存在になってきた。一定年代の方々は、自分もマイカーを持てるようになったと喜んだ時代があった。今や、免許を取ったらすぐ、ローンを組んででも、親に頼んででも、デートに、あるいはさまざまなレジャーに車は必需品だ。すべての人たちが持ち得る便利な移動手段になった。ということは、先ほどの論理からいえば、だれもが犯罪者に転化し得るような状況で車が今配置をされている、そして、車はすてきなものだ、あるいは便利なものだというところから、改めて車の弊害も考えなければならない時期に入ってきたと私は思います。

 車のメーカーがスポンサーの番組では、車の事故の場面を極力避けるといいます。いいイメージをつけなければならない、格好いいものというイメージをつけなければならない。例えば、若い人間がお酒を飲んでいて、海が見たくなった、行こう、こんな話がどんどん出てくる。そして、おれはもう十年も車を運転しているから、多少飲んでいても大丈夫だよ、だれもがやっている車の運転、だから自分は大丈夫だ、こういったなれが、危険性についての認識、車というものは実は走る凶器であった、こういったことの認識が今鈍っているのではないかというふうに危惧をしております。

 そして、今回の飲酒運転、私自身も、家族あるいは自分がその被害者になる可能性が常にある、そして、私の選挙区でもああいうことが起きた、こういった思いの中から、自分たちが、すべての人たちが被害者になるかもしれない、そういった認識と目線で、事故をどの段階で防止していくか、それを述べたいと思います。

 まず一つは、車、つまり道具ですね。先ほど申し上げようと思ったんですけれども、車が凶器と位置づけられるとするならば、例えば、便利であるけれども危ないもの、包丁を持って酔っぱらいが道を歩いていたら、みんなが危険と思うのと同じ。使い方はきちっとしなきゃいけない。包丁自体もちゃんとカバーをつけるなりなんなりしなきゃいけない。道具それ自体についての安全性を確保しなきゃいけない。

 例えば、昔オートマの事故がいっぱい出た、車自体が改造されて随分なくなった、エアバッグが入れられるようになった、ドライバーは随分安全になった。しかし、先ほど答弁にもありましたように、飲酒をした人間それ自体が車を運転できなくなるような仕組みというものをこの文脈の中でまずひとつ考えていっていただきたい。

 これは技術の進歩にもよると思いますけれども、今の時点で考えられるものがありましたらお答えをいただきたいと思います。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 安全を支える技術、これはさまざまなものが検討されておるわけでございますが、私ども、現時点で最も期待しておりますのは、新しい技術を用いて衝突を回避し、あるいは被害を軽減するようなシステムでございます。

 特に警察の関係で申し上げますれば、光ビーコンを使うセンサーで、これは車を感知できますので、これを活用いたしまして、見通しのきかないような場所、周辺の交通状況、これを視覚、聴覚情報で車に提供して危険要因に対する注意を促すというようなものでございます。また、車自体で申し上げますと、衝突が避け切れないというような車間距離になってまいりますと、前を走る車との距離を計測して、そのような場合に自動的にブレーキをかけて衝突の被害をなくするあるいは軽減する、そういうことでございまして、これは既に実用化されておるわけでございます。

 こういうようなものが今後大きく展開して事故抑止に役立つということを期待しておりまして、また、期待できると考えております。

遠藤(宣)委員 先ほど申し上げたように、見方を変えれば車自体が凶器であるというのが被害者の方から見た率直な気持ちだと思いますので、それ自体の凶器性を少しでも減らすという努力がまず一つ必要だと思います。

 そして二番目に、交通法規あるいは使い方、使用方法。この使用方法について、車の免許あるいは先ほどの認知症の問題もあると思いますけれども、モラルが廃れると法規で取り締まる以外にない。駐車禁止についても、いろいろな不満あるいは手直しをしなきゃいけないところが指摘されながらも効果が上がっている。こういった点で、運転資格の厳格化、飲酒運転者などの免許の停止、先ほども答弁がありましたけれども、場合によっては永久に車が運転できないとかハンドルが握れない、車自体乗るな、そのくらいまでいってほしいという思いが世の中にはあるということ、これが二番目です。

 そして三番目、使う環境。福岡の事故も、ガードレールが丈夫だったらこんなことにならなかった。私は国交委員会ですからそういったことも今言っておりますけれども、また国土交通省の方でもその努力をしておりますけれども、下手な運転をする者が存在するということを前提に車の関係のインフラをつくるべきだと思います。ぜひともこの点については国交省初め関係各省と相談をしていただきたい、これを要望したいと思います。

 さて、一番の問題は、どんなにその部分で努力をしたとしても、運転手それ自体がこういった事故を起こしてはならない、こういった事故を防がなければならないという認識をどういう形で担保していくか。使う者の資質と状況。

 例えば高齢者の方々、これについては議論がありました。しかし、車のドライバー、精神状態が不安定なとき、そして今回のポイントでありますお酒を飲んだときは気が大きくなっている。しらふで法律を読んでいる。しかし、飲酒している人間が思い出してはっと酔いがさめてしまうぐらいのものを用意しておかなければいけない。

 そして、体調というものもあります。世の中にはお酒に強い人と弱い人がいる。体調によっても、おれは日本酒何合までいける、何杯までいけるといっても、そのときによって体調が違う。あるいは運送業者、タクシーの方々、睡眠時間をきちっと確保していたか、こういった点に目を向けなければなりません。そしてまた、保育園児か幼稚園児のところに突っ込んだ。カセットを入れかえようとしていた。

 今、携帯電話が禁止されておりますけれども、私自身は、安全確保の観点から、運転中のながら行為を原則禁止にしたり、あるいは睡眠時間の確保、そういった運行の関係の業者に徹底をする、そういったことが今検討されるべきと思いますが、大臣の御所見あるいは警察庁の御所見を伺いたいと思います。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のように、人に対する安全対策としては、運転者本人の自覚あるいは行動パターンの問題、それから本人の周囲、特に業者の場合でございますと従業員管理の問題がございます。

 運転者本人に対しましては、御指摘のようなものを踏まえながら、最後は交通安全教育あるいは指導取り締まりということになります。

 それから安全運転管理ということになりますと、現在の制度では五台以上の車を持っております業者は安全運転管理者の選任が義務づけられておりますが、これらの安全運転管理者によります安全運転管理、規律の維持というものが万全になるようにということが重要でございます。

 引き続き、指導してまいります。

遠藤(宣)委員 私は、今回の法改正というのは飲酒運転あるいはこういった不注意の運転の根絶の一里塚にしかすぎないと思いますので、必要とあらば、さらなる改正をするときにそういった視点をぜひ込めていただきたいと思います。

 そして次に、飲酒。これが今回の一番のコアでありますけれども、私は、お酒が原因で、ほかの事故で友人を失っています。大学時代に、山中湖でボートが転覆をして、大学生が五人乗っていて、そのうち四人が亡くなった。そのうちの二人が高校時代の友達でありました。今まで冷静で鳴っていたその二人の友人がなぜお酒をいっぱい飲んでボートを乗り出したのか、今でも残念でなりません。

 お酒というものは自分の気が大きくなると同時に、周りがあおる、だれもとめられないという雰囲気が出てきてしまう。だからこそ、飲酒に関しては、火事と同じで、初めの段階でとめる人間が出てくるような動機づけをしなければ防げない。

 まず一つは、飲まないのが一番いい。しかし、そうもいかない。飲んだら運転をしない。しかし、今問題になっておりますように、飲酒したけれども酔いはさめていた、こういう言いわけがある。結果犯として、あのときはもうアルコール濃度は下がっていたはずですと。そうではなくて、先ほどの、酔った人間が包丁を持って町に出たらだれもが恐ろしいと思うのと同じように、これは結果犯ではなく危険犯だと思います。つまり、何が言いたいかといえば、お酒を飲んだ、そして車のエンジンをかけてアクセルを踏んだ、その時点でアウト、こういう形にしなければ、いろいろな言い逃れが出てきてしまう。

 先ほど申し上げたように、お酒に強い人も弱い人もいる。ウイスキーボンボンを食べただけで真っ赤になる人もいる。私はよく神社に行きますけれども、お神酒をもらうときに車じゃないですよねと必ず確認される。そのくらいの神経を使っているのが当たり前。そしてまた、飲食の場所においてももちろんですけれども、親戚の集まり、久しぶりに会ったら、まあ一杯ぐらい大丈夫じゃないかと。学生はよくあるように駆けつけ三杯、一気一気、こうやられる。通常の判断力よりも著しく低下をしている中で、どんどん法規範が下がっていってしまう。だから、初めのところでやらなければいけない。

 そのために具体的にどうするべきか。一つは、運転事故あるいは飲酒運転についての事故履歴を何らかの形で表示する。法律で取り締まれないのであれば、社会的制裁が待っているよと。例えば、行き過ぎと言われるかもしれないけれども、刑罰を受けなくても、飲酒運転で点数が減った人をホームページ上で公開する、あるいは会社に通知する。

 そして、これも一つの話ですけれども、私はいまだにたばこを吸っています。たばこに関しては未成年についても厳しい。しかし、先ほど国交委員会の仲間とたばこを吸いながら言っていた。たばこも間接喫煙で人の命を害することがあるかもしれないけれども、お酒に関してはダイレクトに人の命を奪う。だとするならば、もっと厳しくしてしかるべきだ。場合によっては、飲酒をするお店に行ったときに、これはいろいろ言われるかもしれないけれども、今まで飲酒に関して事故がなかったというIDカードを出すぐらいの仕組みがもはや必要ではないか。お酒飲みにとって何が一番きついか。お酒が飲めなくなることです。これは大体家庭の中で奥さんとかに行使される権限ですけれども、実際にそういったものの仕組みが必要になってくるんじゃないか。

 そして最後に、飲んだときに、タクシー代がもったいないから、こんな思いで大丈夫だろうと乗っちゃうケースがある。だとするならば、代行サービスの割引が今あります。あるいは、タクシーの乗り場を方面別に分けてあげて相乗りができるようにする。飲食業に影響が余り行かないようにすることによって、この法律、飲酒運転の罰則というものが理解が得られると思います。

 これらの考え方について、大臣あるいは当局の考えを伺いたいと思います。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 事故防止のためにはさまざまなポイントでの対策が確かに必要でございます。

 今回、飲酒運転が相当減っております一つに、社内の従業員管理あるいは処分などの強化もございます。また、飲食店が、お客さんが車で来たかどうかを確認するというような取り組みもなされております。また、代行運転でございますとか、あるいはその他の代替手段などもいろいろ出てきております。このようなものを順次十全に機能するようにしていくということが重要でございます。

 また、何よりも、運転者本人につきましては、事故を自分で直接体験してからでは後の祭りでございます。疑似体験あるいは間接体験、人の体験を自分のものとするということが重要でございまして、運転者育成の段階からそのような工夫をしてまいることが重要であると考えております。

遠藤(宣)委員 お酒の場というのは本当に気持ちが開放的になって、ついついというのがありますけれども、それを、酔いをさますぐらいのものを用意しなきゃいけない。

 私の地元で、その事故のあった市、忘年会、新年会、車に乗ってきた方々はシールを張る、私には飲ませないでください。その中にはどういう思いがあるか。私を犯罪者にしないでください、そういった思いが込められています。

 先ほど参考人の方もおっしゃられたように、今の刑法の体系が、故意犯と過失犯で随分違う。しかし、車を運転する、凶器となり得る、いや、凶器そのものである車をお酒を飲んで運転するということ自体はいわゆる未必の故意ではないか。そして、エンジンをかけた時点で実行の着手になったんじゃないか。こういったことを市民感情に、被害者感情に、いや、一般のだれもが被害者になるであろうこの時期に、改めてタブーなく議論をしていかなければならないと思います。

 今回の改正は、冒頭申し上げましたように、飲酒運転というだれもが被害者になる可能性がある、だれもがその危険性がある、そういった悲劇を根絶するための第一歩、一里塚にしかすぎません。したがいまして、今回の法改正の結果を見て、効果を見て、必要とあらば、私たちはさらなる厳罰化も含めた対策を講じていかなければならない、そのように思います。

 大臣におかれましても、その決意を最後に伺って質問を終わりたいと思いますが、どうかよろしくお願いします。

溝手国務大臣 お答え申し上げます。

 酒がもたらす弊害というのは先生御指摘のとおりで、さまざまな段階でさまざまな問題が提起されております。日本の規範意識の中にも酒というものが随分入り込んできている、それからまだ脱却できていないのが今の世の中ではないかと思います。

 私も酒をよく飲む方ですが、十分自覚しておりまして、そのかわり、免許は取らないことにしました。船の運転もしておりましたが、この免許も破って捨てました。ということで、みずからをどれだけ律していくかという個人の考え方も重要な要素だろうと思います。

 しかし、社会全体を、例えば運転代行のシステムをつくっていくとか深夜バスを出していくとか、とにかく車に乗らなくてもいいようにいろいろなシステムを考えていくことも行政の大切な役割だろうと思います。そういう意味でいいますと、いろいろな知恵を集めて、酒を飲まなくても、あるいは飲んでも運転をしなくていい社会の仕組みを知恵を出し合ってつくっていく、こういう努力はこれからも惜しんではならない、努力を継続しなくてはいけない、こんな思いでおります。

遠藤(宣)委員 すべての方々が気持ちよくお酒が飲めて、すべての方々が安心して道を歩ける、そして被害者の家族の方々の思いが無駄にならないように私たちは一層努力していきたいことをお誓い申し上げまして、質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

河本委員長 次に、松原仁君。

松原委員 飲酒の問題というのは大変に社会に不幸を与えることであります。お酒を飲むという行為自体は古来あったわけでありますが、車と結びつくことによって、飲酒ひき逃げ、こういった大変に不幸な事件がたくさん発生をしているわけであります。

 実は、御案内のように、福岡の元市職員今林被告の初公判が十二日、福岡地裁で開かれたわけであります。彼がこの危険運転致死傷罪に関してどういうふうなことを言うのか注目されたわけでありますが、今林被告は、アルコールの影響で正常な運転が困難だった点と時速百キロだった点については否認しますと述べ、危険運転致死傷罪を否認した、こういうふうに新聞に載っております。

 これは通告にはありませんが、このことに関して、国家公安委員長、所感というか感想があれば、まずお伺いをいたしたいと思います。

溝手国務大臣 お答え申し上げます。

 私の個人的な率直な印象ですが、やはり法律の立て方に問題があるんだろうというのが第一印象でございました。そんな理屈が世の中に本当に通るんだろうかなというのが第一印象でございます。彼の刑を軽くしてやろうというのは弁護士、弁護人としては当然の責務でございますから、ああいう論理構成をして答弁したんだろうと思いますが、逆のサイド、被害者側から見ると、とんでもない発言だと受けとめたのではないかと拝察をしているところでございます。

松原委員 大変に歯にきぬ着せず、私はそのとおりだと思っております。

 国民の多くが、もしこれが危険運転致死傷罪でないということになるならば、この危険運転致死傷罪というのは一体何なんだ、日本の国は平和に生活をする人間を法によって守るのか、大きな疑問を感じるのではないかと思っております。この危険運転致死傷罪が扱われるかどうかはこれからのまた裁判の行方ともかかわってくるわけであります。

 私は、今林被告は大変に日本国民として恥ずべきであるというふうに思っております。その理由は、御案内のとおり、自宅や居酒屋などで約四時間、しょうちゅう九杯、ブランデーの水割りを飲んだ、実際どこまで飲んだかというのはわかりません、もっと飲んでいるかもしれないだろうし、それはわからないと思いますが、事故後、知人に身がわりを頼んだ。許せないなと思うんですが、このことについては、国家公安委員長、どういう所見をお持ちでしょうか。

溝手国務大臣 事実関係の問題はこれからさらに解明されることだと思いますので、そういう報道があるということは承知をしておりますし、松原先生の気持ちと受けとめ方は大差ないんじゃないかと思っております。

松原委員 要するに、証拠隠滅であります。初めから証拠を隠滅しようとした。

 その後に至っては、水を一リットル持ってこさせ、飲んだ、約四十分後に飲酒検知を受けたら、アルコール分は酒気帯びに当たる呼吸一リットル中に〇・二五ミリグラムだった。これはかなり悪質だと私は思うんです。

 先ほど遠藤議員の質疑の中で、故意犯と過失犯というのが、日本では故意犯の罪刑というか罪は重い、過失犯は少ないというけれども、このことが認定されれば後づけの故意犯ですよ、後づけの故意犯。全くもって過失犯ではなくて、彼自身は、つまり、行為をしようと思って人を殺したのと、そういう意識はなくて人を殺しても後でその行為を隠そうとしたのと、私は同じではないかというふうに認識として持っておりまして、とんでもない話であります。

 その観点でいったときに、果たして今回の道交法の改正というのがどこまでその効果を上げられるのか、これが議論となってくるんだと思います。

 まずお伺いしたいわけでありますが、二〇〇一年度、厳罰化されました、その後どのような効果があったか、これをお伺いいたしたいと思います。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 平成十三年に道路交通法の改正をしていただいたわけでございますが、この飲酒運転の罰則強化によりまして、飲酒運転によります交通事故で申し上げますと、平成十二年は二万六千二百八十件発生しておりましたけれども、平成十七年には一万三千件余、また、昨年は一万一千件余となっております。また、これに伴います死亡事故ですが、平成十二年は千二百七十六件でございましたが、平成十七年には七百七件、また、昨年は六百十一件まで減少しているところでございます。

松原委員 当初は大変に効果があったわけでありますが、当然厳罰化というのはゼロを目指すわけであって、この厳罰化によってこの程度減ればいいだろうという議論では全くないわけであります。

 なぜ効果が、特に十七年から十八年にかけて思ったより薄れてきたのか、のど元過ぎれば熱さ忘れるという言葉がありますが、そういうことなのか、含めてお伺いしたい。

溝手国務大臣 本件については御指摘のとおりで、十六年以降、飲酒事故の発生件数というのは、減少が非常に鈍化してきているというのは事実でございます。当初は、罰金三十万というのは極めて衝撃的なインパクトがあったということはよく記憶しております。そうだったんだろうと思います。そのことが社会に大変大きな影響を与えたことも事実でございまして、飲酒運転防止のための社会環境の変化というのは、私は確実に起こったと思っております。

 しかし、それが一通り波及が一巡するとなるとまだ、結局、もっとずばり言いますと、飲んだ人間を全員捕まえていたらもっと別の効果があったでしょうが、やはり陰で運転をしている人間はたくさんいたと思うんですね、捕まっていないで逃げているやつが。これをどう評価するかですが、改善されない社会環境が残っていたと申し上げていいのかと思います。そういう気持ちを持っている人間も残っていたということで、のど元過ぎれば少し鈍化をしていったんじゃないかと私は思っております。

 これからも物を考えていく場合に、そういう人間をさらに追い込まなくてはいけないというんですか、そういう社会環境をつくっていかなくてはいけない。それが我々の仕事だろうと思いますし、今回の改正は、そういった社会的な環境づくりに対して大きな効果が出るのではないか。今度は、罰金だけでいいましても、三十万じゃなくて百万、五十万というようなことでございますし、また指導取り締まりというのは従来以上に徹底をしなくちゃいけない。それから、世論も、先ほど先生から御指摘があったように、随分、あの当時よりはもっと強い世論が巻き起こっている。それを背景にした法改正でもあるというように受けとめております。

 できるだけそういった効果を持続させていくのが警察当局の仕事であろうと思いますし、公安委員会としてもぜひ後押しをしてまいりたい、そのように考えているところです。

松原委員 先ほど遠藤委員からの質問で、私がこれは大事なポイントだと思うのは、厳罰化によってどこまでいけるのか。今、国家公安委員長からお話があったように、三十万で、一台に四人乗っていると百二十万だというふうなこともよく言われました。しかしながら、現実には鈍化し、先ほどの話だと一万一千件、こういうことであります。死者六百十一名と。

 私は、厳罰化による限界というのがあるのかなという気がしているんです。厳罰化である程度いけるんだったら、そこまでは一気に、こんなものよりもっと強くした方がいい。被害者の方々は、今回の法案ではまだ不十分だ、甘い、こう言う人もたくさんおられるわけでありますので、これをもっと初めから厳しくするべきだと私は思っておりますが、それだけでは基本的な問題の解決にならない。

 では、何が大事なのか。やはり抑止力を持つにはどうしたらいいかということでありまして、これはこの委員会での質疑になじむかどうかわかりません。しかし、私は、先ほど遠藤さんがおっしゃった、ホームページ上でそういった飲酒をやった人間の名前を全部列記する、もしくは、そういった人間に関しては、わかるようなIDをつくるとか、わかるような免許証にする。つまり、そのことによって、日本は恥の文化と昔から言われておりますが、罰金を払う、罪に服するというのとは別に、社会の中で、あいつはそういうことをやったとんでもないやつなんだという、率直に言えば烙印を押させるような、そういう直接的な刑執行、罰則とは違う要素がなければならないのかもしれぬということを思うわけであります。

 というのは、今言ったように、二〇〇一年の厳罰化以降もその効果が国家公安委員長が御指摘のように極めて乏しくなってきた中において、私はそういうことも、将来的にというか早い段階で検討課題に入れるべきだ。それは、交通事故、飲酒運転撲滅を目指す警察としては、当然、こういった直接的な罰則とは別の、名誉にかかわる部分で恥に訴える、こういったことを、さっき遠藤さんがおっしゃった部分、私は存外重要なポイントかなと思って聞かせてもらいました。

 法整備ではないけれども、こういったものの必要性を考えて行動するということは私はあっていいと思うんですが、このことについての国家公安委員長の所感をお伺いしたい。

溝手国務大臣 大きくとらえれば、社会規範が味方をしてくれるような道路交通法であるべきだということだろうと思いますが、氏名の公表とか、プライバシーのこれも一つの暴露でございますので、かなり大胆な御提案だと思いますが、やはり、さはさりながら、守るべき法益と守られるべき法益とのバランスというのは絶えず考えなくてはいけないだろう、これについては社会的な制裁を全く考慮に入れないというような立場をとるわけにはいかないだろうと私は思っております。あらゆる点を考慮して、飲んだら絶対に運転をしないんだというコンセンサスができるように努力をしなくてはいけないんだろうと思います。

 警察としては、それぞれのプライバシーの保護とのバランスをどう見るかという基本的な問題はございますが、それだけが方法ではないだろうと思います。前半部分の、免許をもっと取りにくくした方がいいとか、とにかく酒を飲んで運転しないことが一番よろしいわけですから、そのためにあらゆる手段を駆使するということは、十分叱咤激励を受けた、御指摘を受けたと受けとめて、これからも対応してまいりたい、このように考えております。

松原委員 個人のプライバシーというのは私は尊重するべきだと思っておりますが、被害者の命というのはもっと尊重するべきであろうというふうに思っておりますので、私は、少なくともその抑止として、飲酒運転をさせないということであれば、飲酒運転をした人間は、彼のプライバシーを守るよりは、それをしたことに対して公にされ、そして面目を失いというような、一つの、直接罰金を払うとか免停になるとかということではないそういうことをやらないと、今申し上げたように厳罰化以降もその効果が薄れてきているような状況の中では、やはりそういったものも必要になる、もう恐らく今この段階で必要なんだろうと思っております。ぜひ、守るべきものは何かということも含め、御賢察をいただきたいと思っております。

 さて、この福岡市職員、今林被告でありますが、ちょっとお伺いしたいわけであります。

 危険運転致死傷罪というのは立証が難しいということもありますが、飲食店が、幇助罪というのが今回新設、前もあったわけでありますが、懲役刑まで入るということであります。この場合、自宅や居酒屋などで四時間、しょうちゅう九杯、ブランデーの水割り数杯を飲んだということでありますが、自宅は本人個人で飲んだのかどうかわかりませんが、居酒屋等、しょうちゅう九杯。この居酒屋は常識的に考えれば幇助罪に当たるのかどうか、お伺いしたいと思います。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 幇助罪は、そういう行為を容易ならしめるということで、かなり不確定な概念ではございますが、ただ、やはりそういう行為が行われるであろうということを知りながらこれを助けるということが必要でございます。したがいまして、居酒屋の方で、その者が酒を飲んで車を運転するであろうということを十分認識しておって、それを承知で酒を提供しておったかどうか、こういうところがポイントになろうかと思います。

松原委員 非常に物理的な話でありますが、客が入ってくる、あなたは運転していますか、していませんかと非常に不粋なことを居酒屋は聞かなきゃいけないのかどうか。それから、運転していませんよ、怪しいなと外に行って、あの車はあなたの車ですか、そういった不粋なことをすることが可能なのかどうか。どういう形の中で、飲酒運転がされるかどうかを居酒屋は確認するのか、お伺いしたい。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 今回御提案申し上げております制度改正との関係で申し上げれば、居酒屋あるいは飲食店が、その者が車で来ているかどうか、あるいはその可能性があるかどうかを確認すること、あるいはそのような作業をすることを義務づけるものではございません。

 想定していますのは、通常の営業の過程で、通常の流れの中で酒が提供されていくわけでございますけれども、その事実を一つ一つ拾い出したときに、実は、いろいろな事情があると思いますが、例えば一番典型的なものは、常連客でいつも車で帰っていると承知しながら酒を提供することが一番わかりやすいわけでございますけれども、そういう事情があり、それを承知しながら酒を提供したということが認定される場合に幇助罪が成立する、こういうことでございます。

松原委員 ちょっとそれは論理矛盾があるので。毎回酒を飲みにその居酒屋に来る人間がいつも車を運転して来ているのを知っていてなんといったら、それはいつも違反をしているのを知っているということだから、論理的にはあり得ない。だから、来るときは歩いて来るという話になるわけなんだけれども。

 そうすると、今回の福岡市の今林被告のケースは、彼が車で来たかどうかわからない、車で既に飲酒で来たのかもしれないから何ともこれは微妙なんだけれども、このケースの場合は、車に乗っていることを知らなければ、当然その飲み屋さんは幇助の対象にはならないですよね。それだけ確認したいです。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 今回のケースの具体的な詳細な事実経緯は私も承知していないのでございますが、ただ、福岡県警では、さっき私が申し上げましたような考え方によりまして、幇助罪が立つかどうかということで事実関係を究明しておりますが、その結果、幇助罪の立件は難しいということで、今回は幇助罪の立件はしていないということでございます。

松原委員 ここの部分というのは、幇助罪の立件は難しいと福岡県警が判断した理由というのをやはり今度教えてもらわなきゃいかぬと思うんですよ。今わかったら教えてほしいんです。なぜかというと、つまり、飲み屋さんの側だって、ここまでいったら幇助罪だ、ここからは幇助罪じゃないという一つの判断基準があって、その判断基準の是非というのも一つあるんですよ、それが本当に法律の効果を実効あらしめるかどうかという点において。しかし、やはり基準というのはどういうものかというのは知らしめなきゃいけないので、もしそれがわかれば今しゃべってください。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 いわゆる幇助は助長する行為でございます。その行為自体はさまざまでございますので、これをすべてをきれいに説明するのはやや困難でございますが、ただ、少なくとも、その事実を、その状況を知った上でそのような助長行為をする、これははっきりしております。

 したがいまして、私ども、もし制度改正がなされますと、これからさまざまな広報やあるいは説明、キャンペーンなどをやってまいりますけれども、その中で典型的なものを例に出しながら、つまりこういうことだということがわかるようにやってまいりたいと考えております。

松原委員 これはきっちりやっていただかないと、よくわからないことになってしまう、精神的な条文だけという話になってしまうので、きちっと事例で、これはどうなんだ、このケースはどうなんだ、そして、この福岡の元市職員の今林被告のケースはこうなんだ、そのときの飲み屋はこうなんだ、やはりそれはきちっと速やかに出して、公にするべきだと思います。

 そこで、酒気帯びと飲酒の区別というのは、私は、今回の今林被告のこの話は、後で水を飲んで酒気帯びに下げた、警察がいろいろと検証して、いや飲酒なんだ、こんな議論が今あるわけでありますが、酒気帯びだから刑が軽くなるというから水を飲むんですよ。水を飲んで逃げ切ろうなんということは、酒気帯びと飲酒の区別がなかったら、そんなのはないんですよ。つまり、犯罪者に何か犯罪から逃げる口実を与えるようなこういう区別というのは、その正当性があるのかどうか、どうもわけがわからない。何でこれは区別する必要があるんですか。私はするべきではないと思うんですが。

 今回の今林被告みたいな件はどんどん出てきますよ。水を飲んでおけばいいんだから。さっき参考人の方がおっしゃっていましたが、隣にペットボトルを置いてがあっと飲んで、何かそれこそサウナにでも入って汗でアルコールを出してオーケーみたいな。そういうのは、こういう区別があるから逃げようとするんじゃないですかという話があるわけですよ。これについて率直なわかりやすい答弁をいただきたい。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国の刑罰法規は、ある意味で非常に緻密に、あるいは詳細に分類して処断刑を設けていくということで、その一つのあらわれでございます。

 まず、酒酔いの方ですが、これは、酒に酔っている状況というのが外形的に明白で、危険も高いわけですが、これは、そういう状況であればだれでも同じような危険になるはずだ、こういう考え方なんでございます。

 それに至らない酒気帯びでございますけれども、これは、どの人であっても一律、一定濃度でもって処罰の対象といたしますが、厳密に言いますと、実は、同じ濃度でも、酒に強い人弱い人ということで個人差があるわけでございまして、しかし、それにもかかわらず、定性的にこのような危険があるはずだということで、これを罰しておるわけでございます。

 したがいまして、そのように二つの処罰の考え方がございますので、またその違法性も違いますので、そのところを分けて処断刑を設けているわけでございます。

松原委員 多くの国民は、今の答弁を理解できないと思いますね。

 私が申し上げたいのは、酒気帯びであろうと、酒酔いであろうと、その車によってひき逃げをされる人間は同じなんですよ。命をとられるという点では、相手が酒気帯びだったから命がとられてもいいとか、相手が酒酔いだから命をとられたらけしからぬとかという議論じゃなくて、酒酔いも酒気帯びも、酒を飲んでいたという点では、これは未必の故意じゃないですか。

 私は、そういった意味で、この区別というのは全くもって理解されないし、しかも、殺された側、それによって負傷をした側にとっては、くどいようでありますが、相手が酒酔いか、酒気帯びかは関係ないんですよ。酒を飲む行為をしたという未必の故意が問題なんですよ。これを分けることによって、分けてもらってありがとうと言う人間は、初めから飲むつもりの人間ですよ。多少飲んでやろう、これは酒気帯びでいけるよ。彼らに対して、その酒を飲むための勇気を与える、飲酒運転に対する勇気を与えるのが酒気帯び運転というこの項目ではないかと私は思っております。

 これは答弁は結構です。答弁は結構ですが、私は、これはどうしても理解できない。この条項によってメリットを得るのは、酒を飲もうという未必の故意による行為をしようとする人間以外あり得ない。この程度でいいと思って飲む人間ということであります。

 時間がないので、次の質問に参ります。

 飲酒運転防止装置、いわゆるインターロックについての質問をしたいと思いますが、今、このインターロックの研究はどのようになっているか、お伺いいたします。

松本政府参考人 インターロックの検討状況でございますけれども、一月の三十日に、国内の検討を進めるために、法務省や警察庁にも参加いただいて、あるいは自動車メーカーの専門家にももちろん入っていただきまして、インターロック装置の技術課題検討会を立ち上げて、検討しているところでございます。

 現状の技術でございますけれども、欧米で一部実用化されておりますが、それは呼気の中のアルコール濃度を検知して血中アルコール濃度を推定する、こういうものでございますが、本人確認が大変難しいということ、あるいは耐久性が十分でない、さらには不正改造対策が難しいなどの課題がございます。これらの課題につきまして、技術的にどうやって対応したらいいかということを、今、検討、議論を進めているところでございます。年内に、今申し上げましたような現状の技術をベースにいたしまして、飲酒運転常習者への活用、こういうものを念頭に置いた技術的要件の整理をしたいというふうに考えております。

 それから、将来的な技術でございますけれども、これは各メーカー、取り組んでおりますが、現状ではまだ調査研究段階でございます。これを一般車両などでの活用に向けて開発を進めるために、この検討会で技術的な課題を明確にして、開発の方向性を示す、こういうことによりまして、技術開発を促進していきたいと思っております。

 最初に触れました、外国における実用がありますと申し上げましたけれども、アメリカにおきまして、飲酒運転違反者に対する制裁の一環といたしまして、一定期間、このインターロック装置がついた車でなければ、運転する場合には運転を認めない、こういう制度が現在四十六の州で導入されているというふうに聞いております。

 それから、スウェーデンにおきまして、新車に一般的にインターロック装置を義務づけるということを法制化しようという動きがあるようでございますが、申し上げましたような技術的課題が大変多いということで、具体化にはまだ至っていないというふうに承知しております。

松原委員 私は、このインターロックというのは極めて有効ではないかと思っております。そして、飲酒をした人間に関しては、インターロックつきの自分の車以外は運転できないという厳しい条件も課するべきだと思うし、それでもさらに飲酒をするようだったら、これは超厳罰というものがあってしかるべきではないかと思います。

 米国等においては、車がないと生活できない広大な国土の中で、そうはいっても、飲酒をした人間、それに対してインターロックということで、きちっとした処遇をし、指導をするということになっておりますが、ぜひともこの問題に関しては、その実用化に向かって、私は、警察庁も、そして他の省庁と一緒に頑張っていただきたいと思うわけであります。

 とにもかくにも、先ほどから申し上げておりますように、どのようにしたらこういった犯罪が減るのか。それは厳罰化だけではなくて、プライバシーの問題よりもっと大事なものがある。人の命を奪うことに対して、それを許さないという思いが強いということと、それから、飲酒と酒酔いとの違いが私はあるべきではないということをさまざま申し上げました。私は、そういった意味で、この法案自体はそれは必要だろうと思いますが、まだまだ不十分だと思っておりまして、引き続き、この問題については議論をしていきたいと思います。

 最後に、国家公安委員長の御決意をお伺いして、質問を終えたいと思います。

溝手国務大臣 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、今回の改正が、一〇〇%を期してやっておりますが、それは一〇〇%というのはなかなか難しい問題があるかと思います。御指摘の点は虚心坦懐に受けとめて、今後の糧にしてまいりたいと思っております。

 いずれにしましても、人命尊重の精神というのが、酔っぱらい運転をする人に理解をしていただかなくちゃいけないわけでございまして、あらゆる努力を続けてまいりたいと思っております。

松原委員 終わります。

河本委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時九分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時四分開議

河本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。河村たかし君。

河村(た)委員 河村たかしです。

 まず、道交法をやりまして、最後に、愛知県の長久手で起きました立てこもり発砲事件について、ちょこっと触れたいと思います。

 まず、交通事故統計ですが、これはここにお見えになります小川淳也さんが一遍質問されておりますけれども、日本はいわゆる二十四時間死という単位をとっておるようですけれども、日本以外に二十四時間死で統計をとっておるところは、どこかありますか。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国は、二十四時間以内死者と三十日以内死者の二本立ての統計をとっておるところでございますが、我が国のほかに三十日以内死者の統計以外のものを使っているところは、まず、ポルトガルとトルコが二十四時間以内死者の統計をとっております。それから、イタリアが七日以内の死者をとっております。それから、フランスが六日以内の死者、オーストリア、韓国が三日以内の死者でございますが、その他は三十日以内の死者が通例かと思います。

河村(た)委員 一晩で調べられたようで、えらい御立派でございます。しかし、端的に言えば、グローバルスタンダードといいますか、統計の書類だけは、三十日ということの書類だけは日本とほかを比較しておりますけれども、一般的な交通事故死亡者については二十四時間を使っておるんだな。これはどう見たって、あたかも少なくするように見えますよ。わざわざ対比した書類を日本国民の皆さんが全員見るわけじゃないですから。これはわざと少なく見せかけている。だから、それはやはりグローバルスタンダードで三十日に、一本に絞るのは必要じゃないですか。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 二十四時間以内死者ですと大体翌日にはわかるわけでございますが、三十日以内死者となりますと一カ月ほど様子を見る必要がございます。したがいまして、例えば、昨年の交通事故で、その後三十日以内に亡くなった死者の数というのは、統計が出ましたのは三月の中旬でございまして、これは公表しております。警察庁の方では、いずれも、二十四時間以内の死者を一月の早い段階に、それから三十日以内の死者につきましては三月の中旬ごろに公表しておるのでございますけれども、マスコミ等の取り上げ方から、やはり最初の方を取り上げるので、そのような印象を与えているかと思います。

 したがいまして、国際比較やその他必要なときには常に三十日死者を使いますし、それからもう一つ、あるいは御指摘の中で該当しますのは、政府の交通安全基本計画の中で二十四時間以内死者を採用しておりますので、その点があろうかと思います。

河村(た)委員 国民の皆さんがぱっと感じたときに、どっちの数字をとるかがでかいので、そんなものいけませんよ、中の中の書類の中に一部書いてあるとかいうのは。これはちゃんと直してくださいよ。一般的に、交通死亡事故何人と言うでしょう、ぱっと。あれを三十日に直してくださいよ。

矢代政府参考人 その数字をどういう目的でどういう場合に使うかということによって、やはり違ってくるものでございます。

 それで、私どもが出しておりますいろいろな資料は、常に二十四時間以内死者と三十日以内死者を同時に出すようにはしております。ただ、これはあくまで対策を進める上で統計をとっていくわけでございますので、そうすると、事故がふえた、減った、あるいはどうなったというときには、やはり早い段階で把握できる数字が必要でございます。

 それから、通年、比較する場合でも、我が国は戦後一貫して二十四時間以内死者の数字を使っていますので、この方が利便なのでございまして、それ以上のものではございません。

河村(た)委員 あなたのところは不便がないかわからぬけれども、国民の皆さんの方は誤解しておるぜ、これ、世界標準の場合と。ですから、直してちょうだいよと御要望しておきます。

 では、次は、これはいわゆる神話ですけれども、何か、取り締まりを強化すると事故が減るというふうになっておりますけれども、これは本当にそうなのか。取り締まり強化と交通事故が減るということは、因果関係が本当にあるのかということについて。

 十四年六月に厳罰化しておりますわね、これ。それから十六年まではふえておりますけれども、そういうことを考えると、ここではっきり、取り締まり強化と事故が減っていくということは因果関係がなくて、それは単なる神話であるというふうに言い切れますか。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 交通取り締まりと交通事故の関係でございますが、死亡事故とそれから交通取り締まりとの過去の統計を見ていきますと、取り締まり件数が増加しているときには死者が減少し、逆に、取り締まり件数が減少しているときには死者数が増加するという一定の相関関係はあるのでございます。

 それで、今御指摘の、近年、交通事故がふえる中で交通事故の死者は減った、取り締まりはその間少しずつふやした、この関係でございますけれども、例えば、平成五年ぐらいから交通事故の死者が相当減っておりますのは、そのちょっと前からシートベルトの着用の取り締まりを相当強化したということが反映しておるのでございます。

 全体としての事故、つまり、死亡事故以外全体としての事故でございますと、追突事故でございますとか、それから出会い頭事故などでございますが、これらにつきまして、交通量がふえますとどうしても事故はふえるわけでございますので、そういうところについて取り締まりの効果が十分に今出ていないところもある、こういうことでございます。

河村(た)委員 私も、せっかく質問するということで、ちょっと調べてみた。「平成十八年中の交通事故の発生状況」、これは警察庁交通局のもので、この中の二十一ページに、自動車一億走行キロ当たりの交通事故件数の推移というのがありますけれども、これを見ておると、取り締まり強化が十四年にあったとしますと、これから走行キロ当たりだとふえておるんですよね、これを見る限り。だから、全然関係ないんでないの、これは。それより、むしろその後、十七年、八年ぐらいから減っておるのは、これはガソリン代が上がって、皆、生活防衛で走らぬようになったんじゃないか。

 だから、どうも取り締まり強化というのは、御省の膨大な人間を、人間と言うと感じが悪いですけれども、お役人さんを食わせるための壮大な何かビジネスみたいなものでないか、こういうふうに思えるんですが、どうですかね、これ。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 今の御指摘の期間につきまして、一億走行台キロ当たりの交通事故は確かにふえております。交通量がふえるというのは、車の台数がふえるということでございまして、そうしますと、交通事故、典型的には車同士がぶつかるわけでございますので、そのぶつかるもの同士がふえますと、片方が二倍、片方が二倍になりますと、実は、ぶつかるリスクは、掛ける四倍になるわけでございます。したがいまして、交通量がふえるというのは、交通事故がふえるリスクが増大するということになるのでございます。ただ、取り締まりその他の効果によりまして、それをできるだけ抑えていくということでございます。

 それで、ちょっと繰り返しになりますけれども、ただいまのは交通事故全体でございますけれども、そのうちの重大事故につきましては相当減っておるのでございます。取り締まりが一番効く部分でございます。

 それから、最後の、交通事故全体がこの二年ほど減っているのはどうかということにつきましては、全く御指摘のとおりでございまして、このところ交通量の伸びはほぼ頭打ちになってきております。そうしますと、対策の効果が直に効いてまいります。したがって、少し減少しているということでございます。

河村(た)委員 ちょっと時間もありませんけれども、とにかく神話ですね、取り締まり強化は事故が減るんだというのは。わしも何か洗脳されておったかしらぬけれども、そう思っておったけれどもね。

 だから、そこをちょっと、資料を、うちでもええですから、その因果関係を、いや、うそじゃないよというのを、ちょっとわかりやすく、持ってきてもらえますかね。それだけをちょっと言ってちょうだい。

矢代政府参考人 直近で言いますれば……(河村(た)委員「いや、資料を持ってきてくれればいいの」と呼ぶ)はい、資料はお持ちいたします。例えば携帯電話がいかに減ったか、あるいは飲酒運転がいかに減ったか、あるいはシートベルトがいかに効果したか、そのようなものをお持ちしたいと思います。

河村(た)委員 それでは次の、免許提示義務というやつ、これはずっと法務委員会で矢代さんとよく話をさせていただきました。なかなか矢代さんも人格者のようでございます、まあそれはええんだけれども。

 要するに、今回、提示義務がふえましたわね。これはしかし、僕からすれば、去年の四月ですか、免許を提示しろと言われて――提示義務というのは、実は限定なんですね。四つだったか、五つだったか、六つだったかな、限定なんですよ。その場合は一方通行の逆走でしたか、だからそんな提示義務はないというふうに、彼はそれが動機で手錠をかけられてしまったということで、とんでもないじゃないかという話をして、そうしたら今度、そういうものまで、交通違反全般、それから事故があれば提示義務を課すということにした。もともと違法だったからこれはしようがないもんで、矢代さんが、変な質問をされるとどうもならぬので、この際全部一くくりにして、違法だったものを合法化しようとした。焼け太りでないか、そういうふうにしか思えぬだわ、これ。

 この辺は、本当に免許証を提示せないかぬ何か立法事実でもふえたんですか。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 今回、運転免許証の提示義務につきまして拡大をするということで見直しを御提案申し上げておりますが、その背景には、やはり今ほど委員御指摘のような事情が一つにはございます。

 それで、もう少し長い状況で申し上げますと、現在の法制では、免許証の携帯義務は運転者に課されております。ただ、これを警察官が提示を求めたときに提示に応ずる義務は、今御指摘のように、無免許運転、それから飲酒運転等、限られたものに限定しておるわけでございます。

 それは、免許証の携帯義務を課すということは、これを見せてくださいと言えば当然見せるものである、そういうことで実際にそうなってきたわけでございます。したがいまして、それを拒否するかもしれないが、そういう一定の状況、あるいは必要な状況については、これはきちんと制裁を科しても免許提示義務を課す、そういうことで来たわけでございますが、このところ、特に十三年の制度改正で、罰則強化などによりまして、免許を取り消された後の欠格期間が相当延びておりまして、それで実際に無免許状態の人というのは相当ふえてきておるんですが、この無免許というのはひき逃げの大きな一つの動機なんでございますけれども、これをどうするかというのが問題になっております。

 それで、これからさらに制裁を強化いたしますと、このような状態の者がさらにふえるわけでございます。したがいまして、今回は免許提示義務については正面の方からきちんと書いて、違反があった場合、あるいは事故があった場合には提示してもらう、こういうことでございます。

河村(た)委員 ちょっと確認していかないかぬので、さっきの方へ行きますと、提示義務にとどまっておりまして、いわゆる提出は義務づけられておりませんね。ちょっと確認。

矢代政府参考人 御指摘のとおりでございます。あくまで提示でございますので、示してもらえばいいわけでございますが、通例は渡して見せてもらうことが多いと思いますけれども、必ずしも手渡ししてもらう必要はなく、きちんと内容を確認できる程度に見せてもらえば結構ということでございます。

河村(た)委員 そうすると、IC免許証なんか今やっておるらしいですけれども、あれもいいですか。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 IC免許につきましても、券面にほぼ同様の内容が記載されますので、基本的にそれで足ります。

河村(た)委員 本籍だけはなくなるらしいんですけれども、ICのところはね。いわゆる提出は義務づけられないということで確認していただいた。

 ここはなかなか、矢代さん、大変正直な方だと思いましたけれども、いわゆる提示義務を拡大したところですね、これ。去年の、御指摘の御事情もございましてというふうに今答弁されましたけれども、本当にそうですか、これ。だから、僕があのときに言ったものだから、提示しないのが何だかんだもめまして彼が手錠をかけられたということだから、その捜査というか、警察官の職務執行は違法でないかという話になって、だったらこの際全部提示義務をつけようというふうに言ったことを認めることになりますけれども、いいですか、それ。

矢代政府参考人 正確に申し上げますと、現場で免許証の提示を求めた場合に、免許証の提示を求める法的根拠は何か、もし任意であればこれに応ずる必要がないから見せる必要はないというようなケースは、実は、委員から御質問がある以前からずっとあったことでございます。

 それで、現場では、その中で今の制度を前提とした運用をしてきておりますが、ただ、その問題の所在について私も以前から気がついておりまして、それで、かなり重罰化されますので、今後さらに、無免許状態の者が、取り消しがどんどんふえていくな、こういうことで、そうすると、交通行政を十全に運営していこうと思うと、単に免許を携帯する義務だけでなくて、ちゃんと見せてもらうこと、提示することについてもきちんと書く必要がある、こういうふうに判断したわけでございます。

 そういう意味では、正確に申し上げますと、そういう問題があってということはそのとおりでございますが、委員から御質問があったのでそのためにということではございません。

河村(た)委員 いやいや、そういう感じではないな、これ。本当に何か焼け太りみたいなもので、何のために質問したかしらぬ、そういうふうに思いますが。

 もともとそれは、導入当時に、やはり警察に対する権力の抑制性とか、そういう一つの謙譲の精神があったんじゃないですか、その当時は。幾ら携帯しろといっても、見せろという話はまた別だわねと、本人確認はそればかりじゃないですから。

 だから、その際、そういうような謙譲の美学というか、公権力の発動はやはり慎重にせよという精神が変わったということだね、これは、矢代さん。

矢代政府参考人 御指摘のような側面も多分あっただろうと思いますし、これからもその考え方は変わりません。

 恐らく両面ございまして、そのことと、それから、当時からの我が国民の遵法意識からしましても、見せてくださいと言えば当然見せてもらえる、そういう状況がずっと続いてきたと思いますが、その状況が昨今ちょっとさま変わりしてきたということでございます。

 そこで、私ども考えますに、免許の携帯義務があるわけでございますので、もう事故、違反のあるなしにかかわらず常にその提示を求めるということも考えてみたのでございますけれども、しかし、今申しましたように、警察の職務執行というのは基本的には謙抑的になされるわけでございますので、このたびは、違反、事故があった場合、つまり、運転者側にも何かの事由があるというような場合にとどめて、限定的に制度改正をしたらどうだろうかということで御提案を申し上げているわけでございます。

    〔委員長退席、後藤田委員長代理着席〕

河村(た)委員 自分の質問がとんでもない焼け太りになったかしらぬと思うと泣けてきますけれども、この問題はまたにしたいと思います。

 それでは最後に、私どもの愛知県ですけれども、長久手で立てこもり発砲事件がありまして、林さんという若いお巡りさんが亡くなられた。さぞかし無念だと思います。御冥福をお祈りしております。それから、木本さんですか、この方も一刻も早く元気になられるように祈っております。

 それで、五時間の間に、五時間というのは、木本さんが撃たれましてから救出されるまでですけれども、その間何をやっていたんだという批判がある一方、中に人質もいるし、それから木本さん自身も、もし何かがあったら撃つぞと犯人が言っておったということもあり、やむを得ないことがあるんじゃないかと、両方から指摘がされておるんだけれども、この場合、察庁は、現場の愛知県警、実際に指揮をとっておったのは一課長と刑事部長のようですけれども、そこに何らかの指示をして、それから支援をしたのか、察庁と県警それから現場の連絡体制はどういうふうだったのか、ちょっと聞きたいと思うんです。

縄田政府参考人 お答え申し上げます。

 愛知県の今回の事案につきましては、これは委員御案内のとおり、愛知県警察がその責任を負っているところでございまして、愛知県下で発生した個別具体の事件につきましては、捜査の最高責任者である愛知県警察本部長の指揮によりまして、具体的な状況を踏まえながら、最終的な方針が決定され、捜査がなされるものと承知をいたしております。

 特に今回のような事案の場合、今委員も御指摘がございましたけれども、現場の状況、被疑者の状況、それから説得の状況、それからまた木本巡査部長の傷害の程度の把握の状況等々、瞬時動く中で判断をしていくということでありまして、現場での的確な指揮、判断が大事なものであろう、こういうふうに認識をいたしております。

 警察庁におきましては、一般論で申し上げますと、都道府県警察から、過去の事例や訓練によって得られました効果的な捜査手法につきまして報告を受けております。これは、警察庁が主催する訓練等も年間何回かございます。こういったことで情報提供を受け、また、事案によっては、警察庁から担当官を派遣して関係県との連絡調整にも当たらせる、また、複数都道府県にまたがるような事案につきましては、関係都道府県警察が連携して当たる必要があることから、当該都道府県警察官の円滑かつ効果的な協力がなされるよう必要な調整を行っているところでございます。

 今回の事案につきましては、このような観点から、愛知県警察とさまざまな情報交換を行うとともに、今回の場合は、大阪府警察への部隊派遣要求に関しまして、これら府県警察との必要な協議、調整を行ったところでございます。また、警察庁から担当官を現地に派遣いたしまして、愛知県警察との連絡調整の任務に従事させた、そういうところでございます。

河村(た)委員 どなたか行かれたと。後でその名前も聞きたいんですけれども。

 一応、具体的な指示とか、察庁の方からこうしろとか、そういうのはないんですね。

縄田政府参考人 先ほども申し上げましたけれども、こういう現場を踏まえまして、その場の状況あるいは周辺の情報等を全部総合的に判断していく話であります。

 警察庁から、こういった事案についてそもそも指示をするとか指揮をするという権限もございませんし、現場も見ず、かつリアルの情報も一〇〇%得られない状況下で、こういった事案につきまして物を申すということはございません。

河村(た)委員 そうしたら、これは名古屋ですから中日新聞、愛知県ですとここがやはり取材網が多分相当強力だと思うんですけれども、これは五月二十五日の記事ですね。

 きのうちゃんとファクスで送りましたからあれですけれども、一つは、「「国民がテレビを見ている。いつまで木本を放っておくんだ」。警察庁からは矢の催促が来ていた。」まずこれが一つあります。これは、本当にこういうことがあったのかなかったのか。

 それから二番目に、「指揮本部L1は警察庁警備局からの電話にうなっていた。」警備局ですから局長さんのところだね、これは。「「SATの狙撃隊を引き揚げよ」との指示。」これはずばり警備局と書いてありますから、これがまず本当かうそか。

 それからもう一つ、「狙撃隊をもぎ取られた県警は作戦を組み替えざるを得なかった。警察庁からは「突入しろ」とも。」こういう記事があるんですけれども、これは本当でしょうね。

縄田政府参考人 先ほども申し上げましたが、愛知県警察とは、先ほどのような状況で情報の交換といいますか意見の交換等を行うことはございまして、現実にそのようなことが行われたのは事実でありますけれども、その具体的な中身につきましてお答えすることは、捜査運営にかかわることですので差し控えたいと思います。

 ただ、「国民がテレビを見ている。」とか「いつまで木本を放っておくんだ」という、私自身こういう傍観者的な発言をした記憶はございません。

 それからもう一つ、最後、突入すべきだどうのこうのということでございますけれども、当時私どもがお聞きしている感じでは、これもまさに現場で説得活動をかなりやられる中で、説得がうまくいかない場合は、これは常識的には何らかの時点で解決策を講じなきゃいかぬということで、さまざまな検討がなされておったということは承知はいたしておりますけれども、先ほども言いましたけれども、私どもの方から、現場の状況もわからず、このような具体的な物言いというのはなかなかしかねるところでございます。

河村(た)委員 いや、きのうの話とまたこれはえらい違ってきたんだけれども、私は中日新聞の書いたことはうそではないかもしらぬと思って、うそだったらこれはえらいことだね。

 では、もう一回、限定的に行きましょうか。この指揮本部L1は、警察庁警備局ですから、これは局長さんのところですから、ここで「「SATの狙撃隊を引き揚げよ」との指示。」があったと。これは本当ですか。

米村政府参考人 お答えをいたします。

 私ども警察庁の警備局と愛知県警との間で、現場にSATが投入されているわけでありますから、そのSATの運用に関連してやりとりがあったのは事実であります。ただし、これは、現場でまさに事態が動いている中で具体的な運用のやり方についてのやりとりでありますので、その詳細についてはここで明らかにすることは差し控えたいというふうに思いますが、いずれにしても、SATが引き揚げたという事実はございません。

河村(た)委員 いや、これは本当にいけませんよ。ちょっと理事、松原さん、これは一遍ちゃんとここのところは、こういう危機があったときに、今度また質問の時間があるらしいですけれども、こういう銃の事件があったときに、どうやって察庁と現場の警察は連絡をとってくれるんだろうかという、これは国民にとっては、少なくともそういうシステムというか、どういうことがあったのかというのは知らなきゃ困っちゃいますよ。

 それと、うまくいっておりゃよかったんだけれども、今回は不幸にしてああいうことになっちゃったんですが、そういうふうになったときに、それこそそれは現場の人がたまらぬじゃないですか。上の人がこういうことを言ったなら言ったで、それはきちっと謝って、これはこうすべきだったということで検証できなきゃどうなるんですか。

 時間がないので、それと、何か県警の方に、こうなってしまった以上、おまえら責任とれ、やめろと言ったという話があるんですけれども、それは本当か。

 それからもう一つ、もう一問、今の経過ですね、察庁とどういう連絡をとってどうであったか。こんなこと秘密にすることじゃないですよ。当然知らせないかぬですよ、それは。失敗があったら失敗があったでちゃんと言わなあかんで、理事さん。だからこれは、ちょっと委員会に報告してください。

縄田政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の捜査の過程で、愛知県の捜査にかかわって本部長とか幹部について、やめろとかなんとか、私どもそういう無責任かつ不穏当な言動をしたことはございません。

 こういった事案につきましては、今委員御指摘のとおり、五時間も要してしまった、これは本部長以下、現場の刑事部長以下、断腸の思いだったと思います。また、殉職事案も出してしまったということでございまして、こういったことにつきましては何とかできたんではないかということで、将来に向かってこれは生かしていかなきゃいかぬ問題でございますので、今、これにつきまして、十分検討も踏まえながら、私どもといたしましては、それを十分吸収して、全国の警察の財産にしたいというふうに思っております。(河村(た)委員「いや、報告してください」と呼ぶ)

 それから、報告の関係は、先ほど私どもあるいは警備局長の方からもお話しいたしましたけれども、これは実際の捜査の運営にかかわることですし、やりとりの中身というのは愛知県の捜査の状況とのやりとりの話でございます。この件につきましては、対外的に公表することは今後の捜査の支障にもなると思いますので、差し控えさせていただきたい、こういうふうに思います。

河村(た)委員 最後にしますよ。

 その点について、ぜひ委員会で検討していただきたい。

後藤田委員長代理 理事会で協議いたします。

河村(た)委員 以上でございます。

後藤田委員長代理 次に、岡本充功君。

岡本(充)委員 民主党の岡本でございます。

 きょうは、道路交通法の一部を改正する法律案についての審議でございますが、私からも一言述べさせていただきたいと思います。

 私も愛知県出身でありまして、ただいまお話のありました長久手町における立てこもり事件で殉職をされました林一歩警部の出身地というか、地元美和町御出身の警部でありました。そういう意味で、この事件に対して大変悲しい思いで報道に接しましたし、また、亡くなられました林警部の御冥福を心よりお祈りしたいというふうに思っています。

 公安委員長もたび重ねて発言をされていることは存じておりますけれども、この件に関して、公安委員長として御見解、また、林一歩警部に対する思いがありましたら、お答えをいただきたいと思います。

溝手国務大臣 私も、現場に参りまして、入院中のお見舞いに行ったり、お通夜の前段を務めさせていただきましたが、全く、涙が出そうな大変な事態であったと思います。

 こういう事態が起こってはならない、先ほど来議論がありましたが、いろいろな要因がかみ合って複雑な背景もあるようですが、我々としては、二度とこんな事件が起きないように頑張ってまいりたい、このように思っております。

岡本(充)委員 負傷された巡査部長の一日も早い回復はもちろんでありますけれども、同じような事案が起こらないようにするための努力は傾注していただきたいと思いますし、これから先、同様の事案が起こること自体もできる限り抑制をしていくということが重要でありまして、きょうの議題ではありませんけれども、銃刀の所持の検挙、そして摘発といった分野にもお力を入れていただきたいと思うわけでございます。

 それでは、早速道路交通法の一部改正についての審議に入らせていただきたいと思います。

 まず、これまでも再三指摘はされてきておりますけれども、なぜ今のタイミングでこの道路交通法を改正していくのかという観点、とりわけきょうは、一番目に厳罰化の話について触れていきたいと思います。

 道路交通法自体を厳罰化するということに必ずしも反対をしているわけではありませんが、死亡事故の件数は減ってきていますし、また、飲酒運転による死亡事故に限ってもその件数が減ってきている。また、ひき逃げに関して言えば、若干前年より減ったのかもしれない程度ではありますが、横ばいか減りぎみである。

 こういった中でいわゆる刑事罰を重くしていくというタイミングは、正直言うと、世論の盛り上がりだとか関心、こういったこと、そしてまた、交通事故死を平成二十四年までに五千人以下にする、政府としてのこういう目標に沿うためだという答弁をされるのかもしれませんけれども、もう少し前回の法改正の効果を見るという選択肢もあったであろうと私は思っているわけでありますが、このタイミングで厳罰化を出したという経緯について御答弁をいただきたいと思います。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 交通の安全対策は刑罰の厳罰化だけでやっておるわけではないということは、御指摘のとおりでございます。私どもも、交通安全施設の整備や安全教育、あるいは、人に対する対策、車に対する対策、道路に対する対策ということで総合的に進めてきておるわけでございます。それで、この制裁の強化もその中の対策の一つでございます。

 なぜこの対策を進めるかということでございますが、これは御提案申し上げておりますほかのテーマも共通なのでございますが、確かに、交通事故が減少に転じ始め、また、交通死亡事故については相当減ってきているという中で、さらにこれを減少させていくためにどうしたらいいだろうかということを私ども考えました。その幾つかの点が、今回提案申し上げております飲酒運転等の悪質、危険運転者対策であり、あるいは自転車対策であり、高齢運転者対策であり、シートベルト着用の問題でございます。

 そこで、この飲酒運転あるいは悪質、危険運転者対策だけ取り出して申し上げますと、確かに、平成十三年の法改正をやっていただきまして、相当程度の効果が上がってきております。また、これを運用することによりまして、恐らく、さらに減少させることも可能であろうと思います。ただ、昨年の上半期までの状況を見ますと、実は、飲酒死亡事故あるいは飲酒事故の減少がほぼとまりまして、上半期だけ見ますとむしろ上昇に転じておる、そういう状況がございました。

 そこで、これをどうするか。そうしますと、今の法制度の取り締まりをさらに強化し、あるいは広報活動を行い運用していく、これは確かにあります。これは、実はその前年からいろいろ工夫してまいりました。取り締まりのやり方も、どうも警察の取り締まり時間帯以外のところで、朝帰るとか、そういうことで取り締まり効果がうまく上がらないということでこれを変えたり、さまざまな工夫をしてきたのでございます。

 そこで、その幾つかの対策のうちの一番大事なうちの一つがこの悪質、危険運転者対策、飲酒運転対策である、こういうことで、そこで、対策の一番象徴的なところでございますが、厳罰化というものをさらに打ち出すことによって、これまでの制度改正ではまだ改まっていないドライバーの意識ないし行動パターンというもの、あるいは、社会に残っておる何がしかの状況というものを打開していくということで御提案申し上げているわけでございます。

 したがいまして、くどくなり、繰り返しになりますけれども、この改正によりまして単に厳罰化だけをやろうとしているわけではありませんで、あわせてさまざまな社会環境の改善のための取り組みも行うわけでございますし、それから手法も、取り締まりだけではなくて、広報啓発も含めてやるわけでございます。

 私どもの考え方は以上でございます。

岡本(充)委員 広報啓発については後ほど触れたいと思いますが、今回の法改正の案件を見ると、高齢運転者対策、そして悪質、危険運転者対策、自転車利用者対策、被害軽減対策、どれもいろいろな意味で、刑罰だけではありませんけれども、より基準を厳しくしていく方向になっている。むしろ、交通利用者または通行者の方にさまざまな厳しい措置を講じる一方で、では、行政側としてこういう対応をしていこうという政策が実際に概要の中に盛り込まれているかというと、私には見受けられないわけですね。

 例えば、こういう施策をつくっていったらどういう効果が見込まれるか、私はきちっと評価をして行っていただきたいと思いますし、飲酒運転だけで懲役五年まで最高刑が引き上がるということは、他の犯罪と比較して本当にバランスがとれているのかどうかということも十分な検討をしていただきたいというふうに思っているわけです。

 実は、質問通告しておりませんから答弁していただけないのかもしれませんが、例えば、後部座席のシートベルトの着用の義務づけという話であります。では、義務づければどれだけ後部座席に座っている人たちのけがが防げるのか、もしくは死亡が減らせるのか、考えて検討してやっていただいているのか。それからまた、後部の座席でシートベルト着用を義務づけるというのは、他の国のタクシー等に乗っていてもなかなかない話でありますから、こういった意味での検討をどういうふうに警察庁としては考えてきたのか。そういうところをもし今お答えいただけるのなら、お答えいただきたいと思います。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 例えば後部座席のシートベルトの着用でございますが、シートベルトの着用は、これは事故そのものを防ぐのではなくて、被害を軽減させるものでございます。私どもの試算では、シートベルトを後部座席でしておれば、ある事故が起きたときの死亡事故になる割合、いわゆる致死率でございますが、おおむね四分の一以下になるであろうというふうに見ております。それで、私ども、前席、運転者、助手席などでございますが、そちらの方をずっと見ておりますと、大体致死率が十分の一以下になるわけでございます。

 それに比べますと、四分の一ということで、その手当てが少しおくれてきておるわけでございますけれども、諸外国の例で申し上げますと、これはもう既にEUの統一指令などでは早くから、前席、後部座席含めて着用義務化をすべしということで、先進各国はほとんどもうそれを実施しております、EU関係。我が国は、シートベルトの着用義務の導入などは随分早かったのですが、この義務化ということについては少しずつおくれてきていまして、各国を見ると、どうも、主要なところでは我が国だけというような状況でございます。

 それから、自転車のヘルメット着用について、これは幼児、児童でございますが、これは努める義務ということでお願いしようとしておりますけれども、自転車の事故の四割は、これは頭を打って死傷するわけでございまして、一番大事なところでございます。そうしますと、そこの幾つかの実験をやっていただきますと、ヘルメットの着用が着実に衝撃を吸収し、ダメージを和らげるという実験結果を得ております。

 それらのものを踏まえながら御提案申し上げているわけでございます。

    〔後藤田委員長代理退席、委員長着席〕

岡本(充)委員 後部座席といっても、座る座席によって影響が大きく違います。真ん中に座っている人は前に飛び出していってフロントガラスにぶつかる率が高い、例えばそういう検討をし、横の座席、左側ならどうなんだ、一番安全だと言われているのが、どうやら前席の後ろの座席だとよく言われておりますけれども、例えば、そこでは死亡率がどう変わるのか、どういう傷害が起こるのか、そういうデータは多分国内では持ち合わせていないんじゃないかと思うんです。

 そういう意味で、四分の一という数字は非常にラフな数字を出されているのではないかというふうな懸念を私は持っていまして、そういう意味で、精緻に検討をなされているのかということを端的にお答えいただきたいと思います。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 そのようなデータを、先生のその御注文にぴったりと一致するものかどうかはわかりませんが、今お話しのような内容でありますとデータがございますので、お示しできると思います。

岡本(充)委員 では、後刻それは説明に来てください。

 その上で、ちょっと通告をしていた質問の方にまた戻りますけれども、こういった死亡事故を減らしていくという取り組み、厳罰化をするだけで本当にいいのか。私は、例えば自動車の方の安全対策を講じていく方がより効果が高かったりする面もあると思うし、後部座席の、特に運転席の後ろ、助手席の後ろの座席であれば、側面衝突からの影響が大きいとするのであれば、シートベルトは効果がないということも想定はされるわけでありまして、そういう意味では、こういった事案についての検討を重ねていると言われておりますので、それはそうだとしても、しかし、そのハード面での改良も私はこれから必要だと思っています。

 また、これは指摘をさせていただいている話でもあります、役所の方に指摘をしましたけれども、では、どういうふうなときに飲酒として検知をされる可能性があるのか。例えば、昼の法事に出て、もう大丈夫だと思って夜運転したら捕まって、ひどい場合は懲役五年、もしくは免許の取り消し等を含む欠格期間十年、こういう話になってくるという話になると、これは驚くほど重い刑罰だと感じる人もいるかもしれない。例えば工夫の一つとして、ポスターを張るだけでなくて、啓発グッズの中に、簡易に自分で呼気中のアルコール量を測定できるような器械を普及させるだとかいうことも一つの取り組みだと思っています。

 そういうような普及啓発活動をこれからしていっていただけるお考えがあるかどうか、お答えをいただきたいと思います。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 普及啓発活動というのは本当に重要だと思います。私どもも、結局のところ、運転者及びその周辺者の意識を変えるということ、これが一番重要で、そのための制裁でございます。したがいまして、飲酒運転とはどういうものなのか、どういう結果になるのかということにつきまして、そのことを広報、啓発していくというのが非常にこれは基本的なことで、引き続きやっていくつもりでございます。

 また、そのためにどうするかということでいろいろなやり方があると思いますが、測定器、検知器を警察の方で用意するというのはなかなか手に余るとは思いますが、企業は、やはり自分のところの安全管理の一環としてそういう検知器を既に導入して、それで始業前に確認させるなどのこともやっております。

 そういうことで、国民の間に、飲酒運転はしないということと、それからさせないということと、そのためにそれぞれ自分たちができることをきちんとやるということの意識が浸透していくならば、その中で、そういう器械なども必要なところにおいては活用されていくものであると考えております。

岡本(充)委員 私が言っているのは、この改正をもって法の抑止効果をねらって、国民が飲酒をするということ自体に萎縮をするということがあってはならないと思っているんですね。それは、飲食業の各地からの要請もあるし、どのくらい飲めばどのくらいの呼気中のアルコール度数になるかは人によって千差万別であり、場合によっては、犯意がなくても法を犯してしまうということを私は懸念しているわけであります。

 例えば、反射材なんかを交通安全協会が販促グッズとして、販促グッズとは言わないですね、別に商売じゃありませんから、ただ、普及啓発の一環としてつくるというようなことがあるのであれば、同じように、例えば呼気を吹きかければ色が変わるような紙をつくるだとか、この程度の開発ができれば、簡単に、簡便に、ああなるほど、まだ私残っていますということがわかれば、飲酒運転を恐れるが余り、もしくは、それによって社会活動自体が萎縮をするということを私はやはり懸念しているわけでありまして、その点についてきちっと対応していただきたいというふうにお願いをしているわけです。

 それについてもしあわせてあれば、後でお答えください。

 それからもう一点、高齢者に対するいわゆる認知機能検査の件でありますが、この認知機能開発のための線引きというのが、今回、七十五歳を一つ目安にして引かれました。

 七十五歳がなぜかというのはもう既に参議院で審議をされておるようでありまして、その場においては御答弁をされておりまして、そこは恐らく交通局長が答えられていると思います。七十五歳から七十九歳の高齢者の運転の層、これが第一当事者になった事故が、初心運転者の免許保有当たりの死亡事故よりも七十五歳から七十九歳の方が多くて、一・五倍ほどになるわけであります、したがって七十五で切ったと言っているんです。

 七十五で切るか七十四で切るか、一歳刻みで刻むにもかかわらず、これは層別で五歳単位で見て、大変ここだけラフなんですね。それで七十五だという話になっていますが、では、何で七十四か、七十六はだめか、こういう意味で、もう少し細かにこれは調べられた方がよかったんじゃないかというふうに思っています。これで七十五歳だという線引きの指標にしましたと言うのにしては、階層が五歳という幅は余りに広過ぎます。

 特に、高齢者になられればなられるほど一歳当たりの変化もそれぞれ大きく出てくるわけでありまして、ここを若い三十歳から三十五歳、三十五歳から四十歳と同じように五歳単位で調べたということに私は精緻度が欠けるということを指摘しているわけでありまして、この点についてももし御答弁があれば、お答えください。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 最初の方の、簡易な検知器あるいは検知材ということでございますが、これは、なるほど、私どもそのような発想がちょっとありませんでしたので、私どもがやるかどうかは別にしまして、飲酒運転防止のための一つのやり方として、恐らくいろいろな団体が参考になると思いますので、どのようなものができるかいろいろ提案もしてみたいと思います。

 それから、高齢者の認知機能検査の刻みの点でございますが、これは、御指摘のような側面は確かにあると思います。認知機能の低下の状況によりましても、これはほぼ連続的に、少し速度は速まるといたしましても、明確にどこでその段差が出るというわけではありませんし、それから、交通事故の発現率といいましょうか、そのリスクというものも徐々に高まるのでありまして、ここで閾値のようなものが生ずるということでは確かにないわけでございます。

 それを前提といたしましても、やはり、制度を仕組むといたしますとどこかで線を引かざるを得ないということで、これは実は、これを検討していただきました懇談会におきましてもいろいろな意見がございまして、刻みの問題というよりは、むしろ、もっと早い段階から認知機能低下がある人もおるわけであるから、もっと早い年齢からやったらどうかでありますとか、あるいは、制度的に見ると高齢者講習という制度が七十歳となっておるわけだから、それと整合性を持たせてやったらどうかでありますとか、そういう意見がございまして、もちろん、七十五歳という意見もあったわけでございます。

 それで、私ども、この制度を考えますと、最後はやはりドライバーの方に検査を受けていただくという何がしかの負担をお願いするわけでございますので、そうすると、その目的が交通事故防止のためでございますから、先ほど委員から御指摘がありましたような危険率というものを見ていきまして、それは七十四歳から刻み直してやるというのもあったかもしれませんが、これまで大づかみに大体五歳でずっと見ておりますが、それでいわゆる後期高齢者と言われる七十五歳の方々について見ると、さっき御指摘がありましたような危険が確かに高いということははっきりしているということで、それではその範囲でどうだろうかということで御提案申し上げた、そういう経緯でございます。

岡本(充)委員 時間が短いので、ちょっと簡潔に答弁ください。

 そして、この認知機能低下の検査ですけれども、詳細は伺いました。これが本当に適切かどうかということはいろいろ異論もあると思いますし、認知機能検査開発のための委員会の委員はみんな東京近郊の方でありまして、地方における車のニーズ、地方の高齢者の皆さん方の思いを反映するべく、そういう地域の皆さん方にもぜひ参加してもらいたかったなという思いはあるわけでありますけれども、これは指摘をしておくにとどめます。

 では、年間八十万人ほどいると言われる七十五歳以上の高齢者のうち、実際に一体どのくらいの人数の方が今回の認知機能低下の検査で第一分類と分類をされ、結論として臨時適性検査を受けなければいけない状況になるのか。大体試算を昨日出していただいていると思います。その試算についてお答えをいただきたいと思います。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 今ほどお話しのありましたように、七十五歳以上の免許保有者の方、約二百四十万人でございます。三年に一回の更新ということで、年間約八十万人ということになります。この方々が認知機能検査を受検するということになります。

 この検査を実施した結果、認知機能の低下があり、認知症の疑いのある方という方、これが恐らく約三%と見ておりまして、約二万五千人ということになります。その余の七割弱の方は問題ないわけでしょう。三割の方は、認知機能の低下はあるとしましても、認知症の疑いがあるとまでは言えないということでございます。

 それで、その二万五千人の方のうち、これは免許の管理ファイルから抽出することになると思いますが、過去一年間に一定の事故や違反、事故の場合にも実は違反がありますので違反ということでよろしいですが、一定の違反がある方を抽出して、この方にお医者さんの診断を受けていただくということになりますが、この割合が、計算しますと約三千人弱というふうに見込まれるところでございます。

岡本(充)委員 この違反というのは、そちらから御提示をいただいたのは、信号無視、通行区分違反、指定場所一時不停止等、交差点優先車妨害、優先道路通行車妨害等、交差点安全通行義務違反、横断歩行者等妨害等、徐行場所違反、安全運転義務違反、以上の違反が今回の臨時適性検査に回る違反であって、これ以外の違反については臨時適性検査となる違反ではないということを確認したいと思います。一言でお願いします。

矢代政府参考人 最終的には政令を定める段階で確定したいと思いますが、私どもが検討しているのはそのとおりでございます。

岡本(充)委員 こういう形で認知症の高齢者の方を運転をする社会からある意味御退場いただくという形に実質的になっていくわけでありますけれども、私が大変危惧しているのは、確かに安全な車社会をつくることは重要だけれども、であれば、今後、警察庁としては、ほかの疾患も同じように、安全運転に障害がある疾患は除外をしていくという話になるんでしょうか。

 例えば、これまでも委員会で指摘をされておりますけれども、聴力障害のある方についても、諸外国で聴力障害を運転免許証のいわゆる交付しない理由の疾患にしている国はそうあるわけではありませんし、また、今後同じように懸念を示されるとすれば、高血圧だとか高血糖だとか、こういうことで意識障害が起こる可能性があるということになると、これまた同じように、安全運転を心がけてもらうために、気づいてもらうためだと称して適性検査をしていくような形になるんでしょうか。

 こういう形になっていくと、規制が強くなる一方で大変不便な生活を強いられる方がたくさん出てくる。その方々の生活の交通手段をどのように確保していくのか。大臣、こういうことをしっかり検討してもらわないと、こういう方針だけでは困るわけであります。今後のこういった他の疾患に関する取り組みと、あわせて大臣の決意をお聞かせいただいて、私の質問を終わりたいと思います。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 どのような病気があるのかというのは、直ちに現時点で私ども承知しておりませんし、また、そのような御提案もいただいておりませんが、制度的には、自動車の運転に支障を生ずるような、つまり安全に運転できないというような定型的な病気があれば、同様の手当て、同様の手当てと申しますのは、臨時適性検査を行うなどしてしかるべき処分を考えていくということになるわけでございます。もし将来、そのようなものが問題として出てくるようであれば、その時点で考えたいと考えております。

溝手国務大臣 お答え申し上げます。

 新しい問題は次から次へ提起されることになろうかと思いますが、後手後手にならないように、今局長が申し上げましたように、積極的に対応していかなくちゃいけない、科学の進歩にもしっかりついていかなくちゃいけないと思っております。

岡本(充)委員 ぜひ、管理し過ぎる社会にならないようにお願いします。

 終わります。

河本委員長 次に、市村浩一郎君。

市村委員 民主党、市村でございます。

 午前中に引き続きまして、午後もお時間をいただきまして質疑をさせていただきます。

 国家公安委員長、午前中に松原委員の質問に対しまして、危険運転致死傷罪に対しまして、私の耳では、法の立て方がおかしいという御見解を述べられたというふうに私は思いますが、この法の立て方がおかしいというのを、もう少し具体的に国家公安委員長の思うところを少しまた教えていただければと思います。

溝手国務大臣 お答え申し上げます。

 おかしいと言ったんじゃなくて、あの松原先生の御指摘を聞いた途端、そこに問題があるんじゃないか、直観的にそんな感じがしたということは申し上げました。

 法律というのは、やはり私なんかよりうんと賢い人が長い間かかってきっちり組み立てていますから、理屈はちゃんとついているんですね。ただ、実感として、そんな感じがしないことはないなということを申し上げたというふうに理解していただけますか。

市村委員 国家公安委員長は、何といっても、私たち国民の立場に立って警察を指導監督するんでしょうか、そういう立場だと思います。私は、率直なお話だったと思って、大変うれしくお聞きしておりました。

 ですから、国家公安委員長として、ではこの危険運転致死傷罪についてももっと改善する余地があるというお気持ちがあってこその、もしくは危険運転致死傷罪そのものではなくて、危険運転致死傷罪を含めた今のいわゆる飲酒ひき逃げ、または飲酒運転に対するいろいろな法律に対してもう少し整合性をとっていくとか、きょうも参考人質疑にありましたように、危険運転致死傷罪がやはり一番重い罪でありますけれども、ここと今回の道路交通法改正案の間にはまだ五年間の差があるということもあって、これがその意味での逃げ得をまた誘発するおそれもあるというような意見もあったわけですから、そこに関しまして、国家公安委員長がやはり何かしらの疑問を持って言っていただいているんじゃないかという私なりの思いがあってお聞きしておったわけであります。

 ぜひともその辺をもっと具体的におっしゃっていただければ、きょうは午前中の与党の方からの御質問の中にも、やはりこういうものはまたすぐ必要だったら変えていこうという御発言もあったと思いますので、国家公安委員長のそういった意味での思いをもう少し具体的にお聞かせいただけたらという思いがあります。

溝手国務大臣 あのとき申し上げたのは、弁護人の立場でおっしゃっているからああいう発言になるんだろう、それもわからないことはないけれども、第一印象としては、やはり法の立て方に問題があるんじゃないかな、こういう申し上げ方をしたと思うんですね。

 それで、危険運転致死傷罪、また今の刑法の分野になりまして、まことに御期待に沿えなくて申しわけないんですが、我が社専属の話でもございませんし、なかなかかたい法律ですから、もう少し、これをどうこうつつこうとする場合は相当勉強して発言をしなくちゃいけないと思いますが、そういう感じはわからぬことはないということを申し上げたというように理解していただけませんか。

市村委員 この間の委員会でも申し上げましたが、私たちは弁護士ではないので、国会議員であり、立法府でありますから、やはり国民の負託にこたえて必要な措置をとっていく、しかも迅速にとっていくということが求められているわけでありまして、そういった意味では、繰り返しになりますけれども、国家公安委員長の率直な御発言というのは大変国民の立場に立ったものであると私は思っておりますので、その立場からぜひとも警察庁の方も御指導、監督をいただきたい、こういうふうに思うわけであります。

 それで、この間の委員会でも国家公安委員長もかなり強調されておりましたが、去年の交通事故数、やはり九月以降がたっと減ってくるんですね。何が起きたかというと、八月に、この場でも何度も出てくるあの福岡の悲惨な事件、お子さんが三人亡くなられるという事件があった後のこの九月、十月、十一月、十二月ということについては、もうがくっと減るということであります。つまり、これは何かといいますと、もちろん法律を厳罰化することは大切なことなんですが、そうはいっても、何といっても国民の関心、きょうも大分ありましたが、啓発、教育というようなこともありました、やはりこうした国民の関心が高まり、かつ、警察が、多分これは大変強化された。特に、去年の年末のあの飲酒運転の検問をしてしっかり取り締まったということについては、私も実態を見ていまして、力の入れようがすごかった。だからこそ交通事故数も減る、かつ、これに比例して恐らく死傷者数も減っているだろう、このように思います。

 ですので、あの力の入れようをずっと続けられるのかどうかは別としまして、やはりそれぐらいの気持ちで常にいていただけるとこれだけがくっと減っているということになりますが、平成十九年度もこの傾向はまだ続いているんでしょうか、まずちょっと局長の方からお願いします。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 飲酒運転事故の発生、それから死亡事故の発生状況は、ことしに入りましてからもおおむね同様の状況で、対前年で四割減程度でずっと推移しているところでございます。

市村委員 一つには、取り締まりが強化されたこともあって、それが一般国民の中にも浸透して、やはり気をつけようという意識になっているんだろうと思います。

 ただ、きょうもいろいろ議論がありましたけれども、こういうのもまた、のど元過ぎると熱さ忘れるという言葉もありますように、忘れてしまうとまたふと、ふととなってしまってはいけないということもあって、その場合、きょうも大分議論がありましたけれども、もともと、そもそも飲んで運転すること自体が問題であるんじゃないか。

 松原委員の方からも御指摘がありましたように、酒気帯びと飲酒運転、これを分けると、結局、では一杯ぐらいいいのかなと。今で言えば〇・〇一五でしたかね、にならなければ、つまり〇・〇何ぼぐらいだったらいい。つまり、コップ一杯ぐらいは飲んでいいのかなというような意識にもなるということでありまして、たしかアメリカあたりも、私の記憶だと、あそこは体重と身長で何か飲める量が決まっていたような記憶もあります。今どうなっているか、もし御存じだったら後で教えていただきたいんですけれども、そうすると、まあコップ一杯ぐらいいいかという気持ちで、私もアメリカにいるころは飲んでいたこともあります、今はもう絶対これはやめなきゃいけないという思いでおりますけれども。

 やはりこういうふうに、一杯ぐらいいいかというと、これが一杯で済むならいいんですけれども、一杯が二杯になり、二杯が三杯になりと、結局、一人で飲んでいるんじゃなくて大勢で飲んでいると、まあまあもう一杯、もう一杯、こうなってくる。もちろん、これで自分としては大丈夫だろうと思って乗ってみると、とんでもなかったというふうになり得る余地を残しているということであります。

 これはどうでしょうか、やはり飲んで運転する、まずは局長に、今アメリカは変わったのか変わっていないのか、ちょっともし御存じだったら教えていただきたい。委員長、済みません、さっきおっしゃっていましたけれども、やはりまず飲んだら乗っちゃいけない、これを徹底する意味でのもっと徹底した法律の改正というのも必要じゃないかというふうに私は思うんですが、後ほどちょっと御見解をお聞かせいただきたいと思います。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 米国で飲酒運転の処罰対象となるアルコール濃度でございますが、これは〇・四〇ミリグラム・パー・リットルとする州が十九州で多いと思います、まあ、州で違うと思いますが。

 それから、酒気帯びと通称酔っぱらいでございますが、これは酒気帯び自体も違反でございまして、酔っぱらいの状況に至るとさらに加重されるということだけでありますので、したがって、飲酒運転する方からしますと、つまり飲酒運転してはならない、こういう命題ではいわゆる共通だと思います。それはやってはいけない。

 もう少し言いますれば、道路交通法の六十五条は、政令基準値を抜きにして、そもそも酒気を帯びて運転してはならないということを規範としては命じておりますので、したがいまして、私どもはそのように訴えているということでございます。

溝手国務大臣 今の、特に松原先生の御指摘があった件ですが、私もそういう理解をしておるんです。飲んだらもう罰がついているわけですね、日本の法律は。だからだめなんですよ。酔っぱらっていたらますますだめだというのが今の立て方だと思います。

 だから、もしさらに議論をするのであれば、酒気帯びをもっと厳罰にしろという話なら次の発展があるんじゃないか、こういう思いで聞かせていただいております。

市村委員 では日本、以前はたしか、何か〇・何ぼの部分が少しあって、さっき申し上げたように、アメリカの場合だったらコップ一、二杯ぐらいはたしか違法じゃなかったんですよね。だから飲んでいたんですよ。今はどうなっているかお聞きしたかったんですけれども、では、日本の場合をもう一遍確認しますが、一滴でも飲んでいるとこれはだめだという認識で、今でもそうであるということでいいですね。これを確認させていただきます。一滴でも飲んではいけないと。

矢代政府参考人 規範としては、道路交通法第六十五条で、酒気を帯びて運転してはならないということでございますが、酒気帯びの程度について、罰則の対象となるのは、政令で〇・一五ミリグラム・パー・リットルということで定めておるわけでございます。

市村委員 だから、そこなんです。では、その〇・一五にいかない場合は、人によっては体質もありますけれども、いかない場合は今の法では、まだ飲んでいても酒気帯びに達しないということで、まあいいんじゃないかという余地は残っているんですよね、今でも。どうなんですか、それをちょっと確認したかったんです。残っているのか、残っていないのか。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 飲んだら乗るなということで、規範としては、また警察から訴えていますのは、酒を飲んだら運転をしないようにということでございます。ただ、処罰の対象とならない部分が残っているかというと、確かにその部分は残っておるわけでございます。

市村委員 そこでなんですね、だから処罰の対象にならない部分が残っているんですね。恐らく、その部分についてももう少し考えていって、要するに、ではまあコップ一杯、多分日本のあれでも、人による、体調とかアルコール分解の度合いが人によっては大変違うということですから、結局、ある人によってはちょっとコップ一杯ぐらいだったらまあ出ないぞという、私なんかは飲んだらすぐ真っ赤になりますから、すぐわかっちゃいますけれども。人によっては全く顔にも出ない、一杯ぐらい飲んだって呼気中のアルコール濃度が〇・〇一とかで済む、〇・〇二とかで済むという人は、まあ一杯ぐらいいいよ、このコップ一杯ぐらいなら大丈夫だよ、こういう余地がまだ残っているんだと思うんですよね。

 だから、これもいろいろ、すぐにということじゃありませんけれども、今後、やはり飲んだら乗っちゃいけないという、そもそもそうしておけば、つまり、運転席に座ってエンジンをかけた途端に、これは基本的にあかんぞ、だめだぞというようにしておけば、例えば周りの人も、だめだぞ、乗っちゃだめだ、もう飲んだだろう、コップ一杯、もう口をつけたじゃないかというふうにもなる。だから、そもそもそこで防げる。そこでまず第一の段階のバリアがあっていける、皆さんも、ちょっと乗るな、もうあなたは飲んだだろう、口をつけただろうという話になる可能性があるんですね。

 だから、そこまでもう考えていった方がいいのではないかというふうに思うところがあるんです。やはり余地を残していると、まあ一杯ぐらいいいかというのが、一杯が二杯になり、二杯が三杯になって、ちょっと自分では大丈夫だと思っても実は大変だったと、さっき申し上げた余地が残っていますので。

 国家公安委員長、これからの検討として、今すぐどうのこうのというのではありませんが、この流れの中で、飲酒運転に関してはやはり厳しくというのがほとんど大勢だと思いますので、そこまで、〇・〇一だから二だからいいんじゃないかということじゃなくて、もう一滴でも飲んだらこれはいかぬぞというぐらいの厳しさを持って対処した方がいいんじゃないかと私は思うんですが、国家公安委員長のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

溝手国務大臣 先ほど局長から答弁したとおりですが、とにかく規範として、酒を飲んで運転しちゃいけないというのは事実でございます。そういうふうに法律に書いてある。だから、それが罰せられようがられまいが、それはいけないことなんですね。これはもう大前提です。

 ですから、酒気帯びと酔っぱらいでインチキをしようという不逞のやからがいるということを考えた場合に、先ほど私が申し上げたのは、今のやっちゃいけないという規範とその罰則の関係、それから酔っぱらいとの関係をこれから議論していくということになるのではないか、こういうことを申し上げたわけで、当然それは議論としては、そこを議論するのならいろいろまた出てくるんだろう、このように思っております。

市村委員 規範ということでありますが、本当に規範で皆さんがルールを守るのであれば、本当にそれで幸せな、いい世の中だなと思うんですが、なかなか規範だけでは皆さんは守らないということもあって、こういう状況に、こんな議論になっていると思わざるを得ませんので、そこのところはこれからの議論の課題として考えていくべきことじゃないかなと思います。

 それで、さっきも河村代議士もお話しされていました免許証の提示なんですが、今回、義務化ということで厳しくなっているということであります。もちろん、必要なときに免許証の提示を求めるということはあるべきことだとは思うんですが、今、警察に対する我々国民の思い、一般国民の思いというのは、やはり警察というのは権力者でありますから、警察に、おい、免許見せろと言われたら、多分、多くの方は法律がある、なしにかかわらず見せていると私は思うところがあります。

 そのときに、あえて見せないというようなことがある場合は、もちろん何かの気まずいことを隠したいという思いの方もいると同時に、やはり人権意識というか何か自分のプライバシー保護という思いがあって、それを警察に見せたくないという思いもある方もあると思います。ですから、こういう場合は、プライバシーの保護と特に危険防止、犯罪防止等々の観点からの議論があるわけでありますが、どちらかというと私なんかはプライバシーをなるべく保護していくという考え方に立っておりますので、義務化をされるというのは私自身は余り好ましいものではない、こう思っております。

 ただ、必要があったということでありますが、今回そのプライバシーをある種侵してまででもこの義務化を強化するということにつきまして、もう一たんその理由を簡潔にここでお話しいただければと思います。局長からで。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 免許証の提示義務ですが、私ども、プライバシーを侵しておるというところまでの認識は実はないのでございます。免許証は携帯義務がございます。何のために携帯しているかといえば、これは必要なときは見せるためでございまして、したがって、そのこと自体が特にプライバシーを侵害するというようなことに該当するとは考えておらぬのでございます。

 ただ、従前ですと、そういう携帯義務があれば、普通の人は見せてくださいと言えば見せてくれましたし、それでずっと来ておったわけでございます。ところが、現在の法制は携帯義務と提示義務を書き分けているものですから、そうしますと、その提示を求める法的根拠は何ですかという質問をして、これは任意で見せてもらうものです、そうすると根拠が、法的な義務がないのであれば見せる必要はないというようなことのやりとりが、少なからず昨今はやはりあるのでございます。

 そうしますと、警察といたしまして、法に基づいて職務を執行しようと思いますと、やはりそういう根拠というのはそれでは明確にしておいた方がいいか、こういうことで御提案申し上げているんです。ただ、その際に、それに対して罰則がつくわけですので、そうすると、それを求めるのは、今回御提案申し上げていますのは、運転者側に違反や事故があって、それなりの事由があるというような事情のところでどうだろうか、こういうことでございます。

市村委員 結局、義務がない場合、では見せたくないというのは、さっき申し上げたように、何か後ろめたいことがあるという場合ももちろんあると思いますが、単に、今初めて会った警察官の方に自分が何者であるかを別に知られる必要もないということもあると思うんですよ。だから、それがある意味では私が申し上げているプライバシーの保護なんですよね。あなたは何者だ、名乗れと言われて、名乗る必要がないときに名乗りたくないと言うのは、ある意味でいえば極めて健全な権利だと私は思いますので。だから、そこを侵すことはあっちゃならないという思いなんですね。

 だから、その辺のところは非常に微妙なところなんです。警察の方は、何かちょっと聞きたいぞ、何かおかしいぞ、変だぞ、こういうふうな思いがあって聞くんでしょうけれども、こっちの方は、何も犯してないのに、何でこんな一々一々免許提示を求められるんだ、こういうふうに思うところもあるわけですから、そのところの部分に関して、強制的に、おい、おまえ、何かおかしいぞ、名乗れというようなことをさせないようにはぜひとも気をつけていただきたい。

 これはやはり、警察の皆さんは、その辺のところの非常に微妙なところに現場はいらっしゃるとは思いますが、その辺は丁寧に、あと、高圧的に見せろということじゃなくて、どうしても今こういう状況があって、あなたのお持ちの免許証を見せていただけないかという、あと、その現場の言葉遣い、対応の仕方によっても全然違ってきますから、その辺のところは丁寧にやっていただきたいという思いがあります。

 それで、聴覚障害ということでも今度運転をできるようになるということであります。大変喜ばしいことだと思いますが、先ほどからいろいろ疑問点も出されておるということもありますので、またさらにこれは議論を深めていただきたいと思うわけであります。ちょっとこれもきょうは指摘だけにとどめさせてください。

 あと、実は、後部座席のシートベルトの義務化なんですけれども、うちも子供が三人おりまして、シートベルトをしてほしいんですけれども、これは法律になる前から、危ないので、後ろもちゃんとシートベルトをしなさいといつも僕は言っているんですが、チャイルドシートを一個載っけると、何か真ん中の方は非常にしづらくなるというふうに私は認識しているんですね。あと、車の形態によってもいろいろ違うと思うんです。

 今回、努力義務なのかもしれませんが、もっとそういうことの啓発に努めていただいて、最初から、何かこれについて厳しく、ちゃんとやりなさいと言われても、なかなかできないところもある。ただ、もちろん私も自分の子供を守るためにはやれと言っておりますけれども、なかなか物理的にできない場合もあるということもありまして、その辺についても、きちっとこれから現状を見ながら対応していただきたいと思いますが、国家公安委員長、これについて、現状を見ながらの対応についてぜひとも一言お願いします。

溝手国務大臣 先ほど来局長からいろいろ統計の問題とかデータの問題をお話ししまして、必要性については申し上げたところでございます。

 私も、実は毎日締めておりまして、初めは嫌だなと思ったんです、正直なところ。ところが、やっていますとなれてきまして、今はどこへ行くときも締めるようになった。だから、締めなくちゃいけないんだ、締めた方が得なんだというような感じを皆さんにより多く持ってもらうように警察は努力をしていくべきだろうと思います。そういう啓発活動というのはしっかりこれからやっていかなくてはいけないのではないか、こう思っております。

市村委員 もう一点だけ。済みません、すぐ終わります。

 最後に、今回、パーキングメーターまたはパーキングチケット発給設備を選択して設置することができるとなっていますが、これまではどうだったのかだけ最後にお聞きして、質問を終わりたいと思います。これまでどうだったのか。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 これまではパーキングメーターが原則でございまして、これが不都合な場合にパーキングチケットの発給設備を設置するという建前でございました。

市村委員 それでは、質問を終わります。

 ありがとうございました。

河本委員長 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。

 道路交通法のそもそもの法目的ということに戻りますと、第一条に示されておりますように、「道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、及び道路の交通に起因する障害の防止に資する」というのがもともと法律の目的です。これに照らして、前回は、私は、飲酒事故と罰則及び抑制する取り組み、それから酒類提供の問題について取り上げましたが、きょうは、最初に、自転車利用対策のことから伺っていきます。

 自転車は、現在、原則車道通行ということになっておりますし、都道府県公安委員会指定の標識のある歩道のみ自転車走行可としているわけですが、今度の法案で、小学生以下の歩道走行を全面解禁する、それから、例外的に、車道の危ない場合、自転車の歩道上走行を可とするわけですが、自転車は現在八千六百万台、この十年間にも一千万台増加しております。その中で、自転車と歩行者の事故件数が四倍にふえている。まず、歩行者と自転車の事故の最近の実態、それを伺っておきたいと思います。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 自転車の事故、対自動車の事故は、平成十八年度発生件数は十四万四千五百三件で、十年前の約一・二倍でございます。自転車と歩行者の事故の発生件数、平成十八年は二千七百六十七件、御指摘のとおり、十年前の約四・八倍となっておるところでございます。

吉井委員 それで、自転車と歩行者の事故でもやはり死亡事故が発生しているんですね。昨年でいいますと、二千七百六十七件の事故の中で六人の方がお亡くなりになって、それは、年によっては自転車も歩行者も両方とも、いずれかで死亡される方が出たりしておりますが、昨年の場合は、歩行者の方で六人の方がお亡くなりになっておられるとか。

 もちろん、今度、では、歩道の上を自転車が走ったりすると危ないからということで、車道ということになりますと、今もお話しありましたように、大体十四万件前後、最近でも事故が発生しておりますし、自動車による自転車の利用者の死亡事故というのは、大体、昨年で七百三十九人ですか、その前の年で七百七十人台とか、随分たくさんの方が自転車に乗っていて事故に遭ってお亡くなりになるということですから、私は、やはり交通事故の多い都市部ほど本当はこの対策をとらなきゃいけないと思うんですが、道路状況が悪くて歩車道分離がなかなかうまくいっていない。

 歩道でも自転車の走る部分と人の歩く部分を分離しているところがありますけれども、少なくて、その分離が十分できていないために、歩行者の事故が随分多い。私も、歩道を歩いていて後ろからやってくる自転車にひっかけられて足をけがしたことがありますけれども、実際そういう事故というのは多いんですね。この自転車専用道というのは、実のところ、まだまだ整備が十分じゃないと思うんです。

 私、以前住んでおりました大阪の堺市にあります泉北ニュータウンというところでは、歩車道分離で車道と歩道を分離しているだけじゃなしに、歩道の方は緑道で、その緑道の中には、人だけの専用道と、横に並んで自転車専用道をきちんと別の道路として設けるとかありますが、サイクリングロードなど一部のところを除いて、自転車専用道路というのは日本の場合は非常に少ないわけですね。

 都市部ほど実際につくるのは難しいという都市の構造上の問題ももちろんあるわけですが、イギリスなどでは、都市部の中にも、ところによっては車専用と、馬車や馬専用道路があって、自転車道があって、歩道がある。信号機まで、車用の信号と、馬車や馬用の信号と、自転車の信号と、人の信号があるというふうに、道路も信号機も四つあるというのが都市の中心部でもあるところがあります。そこまではすぐには簡単にいく話じゃないにしても、やはり、歩車道分離ということと、少なくとも歩道の上の自転車と人の分離に取り組むということをやらないと、自転車を運転している人の事故も減らない。

 歩道を安心して歩いていたら、普通だったら前を向いて歩いておったらいいんですが、自転車が走るところなんか、私は前も後ろも見ながらでないとなかなか歩けないという、目は前と後ろにはありませんけれども、きょろきょろしながら歩かぬといかぬという大変な思いをしますが、やはり、そういう歩道上の自転車と人の分離をきちっとやっていくこととか、そういうことをやらないことには、道交法では安全をうたっていても法目的というのはなかなか達成されないと思うんですね。

 そこで、全国の道路の中で何%が大体分離可能なのか、それに対してどういう計画で進捗させていくか、そういう具体的な取り組みに当たっての考え方といいますか、方策というものを伺っておきたいと思うんです。

原田政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、自転車の走行空間につきましては、昭和四十五年に初めて道路の構造基準で位置づけました自転車道と自転車歩行者道がございます。このうち、自転車道と自転車歩行者道を合わせた延長距離は約七万九千キロメートルでございまして、自動車専用道路を除いた全体の道路延長の中で約七%ということになっております。また、そのうち自転車だけが専ら走れる自転車道等の整備延長は約二千キロでございまして、先ほど申し上げました自転車走行空間のうちの約三%という状況でございます。

 我々としましては、こういった自転車道等の整備の状況でありますとか、あるいは、先ほど御指摘になりました最近十年間で歩行者と自転車の事故が大きくふえているということなどから見ますと、道路管理者として取り組むべきさまざまな課題があるというふうに認識をしておるところでございます。

 こうした中で、先般、警察庁と合同で、新たな自転車利用環境のあり方を考える懇談会というのを設置いたしまして、自転車の走行空間を確保するための具体的な方策について今御議論をいただいているところでございます。我々としましては、こういった懇談会での提言を受けまして、安全で快適な自転車の走行空間の確保ということにこれから積極的に努めていきたいというふうに考えております。

吉井委員 ここで大臣に伺っておきたいんですけれども、二〇〇五年四月二十八日に閣議決定した京都議定書目標達成計画で、自転車利用促進というのをうたっているわけですよね。政府としては地球温暖化対策からも自転車利用の促進ということをうたっているわけですが、その取り組みを積極的に進めていくことに非常に私は大事な意味を見ているんですが、それには同時に、自動車の乗り入れ規制、自転車利用の推進を図る。そういう自動車の都市部への乗り入れ規制自身が温暖化対策になりますが、そうなれば、当然自転車を使うこととか、利用促進を図るという必要が出てきますが、閣議決定して一般的な推進計画を口にするだけじゃなしに、本当に実現していくには具体的な対策が必要になってきますね。

 それは、自転車利用の比率を幾らにするか、何万台、何百万台あるいは何千万台、どういうふうにふやすかということも一つありますし、それから、自転車がふえれば当然、駅前自転車駐輪場の整備などをきちっと図らないことにはうまくいきませんし、それから、歩車道分離をどうするのかとか、自転車専用道路をどうするのかということを、やはりこれは政府自身が、こっちは環境省の問題だ、ここは国交省だ、ここは警察庁だというふうな、そういうやり方ではなかなかうまくいかないわけで、閣議決定を本当に生きたものにするためにどういうふうに進めていこうという考え方、計画を持って取り組んでいるのか、伺います。

溝手国務大臣 大変難しい問題だと思います。

 今我々が承知をいたしておりますというか、オーソライズしましたのは閣議決定の段階で、各省それ以降については具体的な進展が、現在議論の段階を出ていないというように承知をいたしております。しかし、御指摘の点については、自転車に移行する、できるだけウエートをこれからふやしていくということは、私も全く賛成でございます。

 地方自治体におりました関係上、気になっていることは、駐輪場の整備というのはそんなに難しい話ではないんですが、道路の自転車と歩道との間を、これは地方自治体の道路管理者として見た場合極めて難しいということで、先ほど原田局次長から話がありましたけれども、これから相当議論を詰めないと大変なことだな、重い荷物だなと思っております。

吉井委員 自転車利用促進賛成だというお話ですが、これは賛成というより、閣議決定です。大臣が、時は違うかもしれないけれども、閣議決定というのは大臣も入っての決定なんですからね。だから、これは賛成という話じゃなしに、ただ決定しただけじゃなしに、その決定を本当に生かしていく取り組みというものについて、これはここの、環境省の問題だとか振り合うわけじゃなくて、とりわけ自転車を推進したときの自転車や歩行者の安全、その安全を道交法の面から法目的をきちっと達成していくために取り組む大臣としての決意というものがやはり必要だと私は思うんです。

 大臣、今の話、もう一遍お答えいただきたいんですが、あわせて伺っておきたいのは、自動車排ガス対策という点では、自動二輪も非常に意味があるわけですね、燃料消費量が少ないですから。しかし、さっきの自転車の駐輪場の話じゃありませんけれども、自動二輪の駐車場問題というのは非常に深刻なんですね。東京都下でもほとんどないわけですよ。では道交法違反で摘発だというだけにはいかないわけで、しかし、それは現実には東京都下でも周辺部でも、例えば公園の中に割り込んでいって駐車をするとか、自動二輪の駐車対策もまたおくれている。

 ですから、地球温暖化対策ということで閣議決定して取り組むことは非常に大事な方向なんですが、それを実際に進めていく一つ一つの具体化の取り組みというものが、自転車にしてもあるいは自動二輪の駐車場問題にしても非常におくれていて、しかも、それはそれぞれの省があるにしても、大臣の担当するところででも具体化をきちんと進めていくという課題に今迫られていると思いますから、それに取り組む大臣の決意というものを、やはりしっかりやってもらう必要があると思いますので、伺います。

溝手国務大臣 御指摘のとおりでございまして、COP3のとき、受けて閣議決定をいたしておるわけですから、政府を挙げてやっていかなくちゃいけない。加えて申し上げますと、私は当時通産政務次官でございまして、現地において京都議定書の締結に立ち会った立場でございますので、よく頭に入っております。

 また、自動二輪の問題について申し上げますと、最近急に自動二輪がふえてきたというのは、やはり国民が自然と省エネ、省マネー化という傾向に動いている結果だろうと思います。その結果、駅前地区を含めて、ターミナルで駐車場、いわゆる二輪車の駐車場が不足して問題が起こっていることは承知いたしております。何とかこの対策を具体的にとっていきたいということで、国土交通省とも連携を図りながら、また自治体等の御協力を得ながら全力で取り組んでまいりたい、このように考えております。

吉井委員 とりわけ自動二輪は、私も若いころ乗りましたけれども、重たいんですね。倒れてしまいますと、特に、子供たちの場合には倒れてきた自動二輪で大きなけがをしたりとか大変なことにもなりますから、そういう面からも、安全対策という点でも、これはきちんと進めていくように取り組んでもらいたいと思います。

 次に、ことしの二月十八日に、長野から大阪を結ぶスキー客を乗せたツアーバスが、私は大阪ですが、吹田市の道路脇のコンクリート柱に激突をして、乗務員が死亡、スキーツアー客も二十六人が重軽傷を負うという大事故が起こりましたけれども、直接の原因というのは、運転手が疲労を蓄積したまま十分な睡眠もとらずに乗務をしていた、そういうところに原因がありました。運転手は業務上過失致死傷と道交法第六十六条違反、これは過労運転の禁止という六十六条に違反するということで逮捕されたわけですが、この事故の問題について、我が党の小林美恵子参議院議員が三月八日の参議院予算委員会で取り上げて、運転手の労働時間などの実態把握などの一斉調査を求めました。国交省は、貸し切りバス事業者に対して監査を行い、六月一日に貸し切りバス事業者に対する重点監査の実施結果を発表しましたが、国交省の方からその概要を聞かせていただきたいと思います。

桝野政府参考人 委員御指摘のように、本年の四月に、ツアーバス事業者や、それから貸し切りバス事業の規制緩和以降に新規参入をいたしましてまだ監査をしていなかった事業者三百十六事業者につきまして、監査を行いました。結果は、全体で六五%の事業者に過労防止義務や運行指示書未作成等々何らかの法令違反があり、ツアーバスと言われる事業者につきましては、八十四事業者中六十八事業者、約八割について法令違反があったという結果でございました。

吉井委員 今、国交省から数字の方をさらっと言ってもらったので、さらっと聞き逃しがちなんですが、実態、これはすごいんですね。三百十六の事業者を調べて六四%、二百四者が法令違反なんですね。特に、ツアーバスの事業者は八一%が法令違反。業界に法令違反が横行しているという状態ですが、道交法違反がこれだけ横行しているということは、私は大変な問題だと思うんですよ。もちろん、この法令違反というのは、全部が道交法違反にかかわるものばかりじゃなくても、実際に事故をやったときは、その法令違反の結果としてこの間のような道交法六十六条違反、過労運転の禁止を全く無視して営業されていたとか、それによる事故というのが多いわけですが、警察庁はこの結果についてどういうふうに見ておられるのかを伺います。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 数字を申し上げまして評価にかえさせていただきたいと思いますが、過労運転が主な原因で起きております人身事故、これは平成十七年中が六百十五件、平成十八年中が五百五十七件でございます。これは人身事故でございますので、物損事故につながったような場合には、これは過労運転ということで検挙いたしますが、十七年中が五十八件、十八年中が四十八件でございます。

 このような事案がございますと、その背後の責任はどうかということで状況を見てまいるわけでございますが、事業者や使用者等に過労運転等の下命、容認の事案があって、それらのものを検挙している件数ですが、平成十七年中が四件、平成十八年中が九件でございます。これは、あくまで事故が起きた後の捜査が主になりますので、このような数字になるわけでございます。

吉井委員 今のお話にもありましたように、事故が起きた後の数字をいろいろきちんとカウントして中身を分析しても、それは物事の入り口なんですね。本当は、そういうことが起こらないようにするためにどうするかということがやはり求められてくると思うんです。

 国交省に重ねて伺いますが、調査に入ったツアーバスを実施している貸し切りバス事業者数というのは八十四事業者となっていますが、これはわかっている限りの数字なんですね。要するに、旅行社なんかが企画をしたという形をとって、実際には高速夜行路線バスと変わらないような営業が行われていたりして、非常に価格が安い、だから、そこへ勢い飛びつくと言ったら変ですけれども、そういうこともあるわけですけれども、素人目に見たら、実際、駅のターミナルへ行って、どっちがちゃんと免許を受けた高速路線バスなのか、どれはツアーバスなのかわからないというのが実態なんですね。

 ですから、先ほど伺ったのは一部の調査報告なんですが、やはりこの運行実績をきちんとつかむ必要があると思うんです。それで、どう対応するのか。そのことをきっちりしないと、ことしの吹田であったような事故を本当の意味でなくしていく、犠牲者が出ないようにする、被害者が出ないようにするということになりませんから、また道交法の法目的が達せられません。

 ですから、今回の調査はもともと全国全部の事業者を対象とはしておりませんから、小林議員が求めた貸し切りバス事業者の全国一斉調査とバス料金の一斉調査、大体どう考えても常識ではこれは無理だろうと思われるような低価格で、それは低価格は、安ければいいという面もあるかもしれないけれども、しかし、その結果、安全がどんどん切り捨てられて、利用者も知らない間に危ないところに乗せられておった。乗務している人たちも本当に命がけ、道交法六十六条違反の過労による危険運転は当たり前というのは、これは本当に大変な事態ですから、私は、そういう全国一斉調査というものを、料金等についても一斉調査を国交省の方で改めてやっていただくことが必要だと思うんですが、伺います。

桝野政府参考人 委員御指摘のいわゆる路線バス、高速路線バスと、それから貸し切りバスを通じたツアーバスと言われているもの、これについては、見分けがつかないとか、若干それにアンバランスがあるのではないかという御指摘がありまして、私ども、その辺は認識をいたしております。

 そういう意味では、基本的にはイコールフッティングで競争をしていただくということが必要だと思っておりまして、貸し切りバスにおきましては着地における休憩施設などの確保の指導をするとともに、路線バスの方についても運賃・料金の変更を届け出制とするなど軽減を図り、競争条件の平準化を図っております。

 一般論として、先ほどの監査の結果、非常に高率の違反があった、これからどうしていくのかということでございますが、私どもは、基本的には監査処分を厳格にしていく。特に、ツアーバスと言われる事業者につきましてもこれをきちんと対応していく、さらに、ツアーバスというのが一体何なのかわからないところもあるものですから、省令を改正いたしまして、引き受け実績報告の義務化などを行い、きちんとした数の把握を行うとともに、先ほど申し上げた睡眠施設の確保などの義務化も処理していきたいと思っているところでございます。

吉井委員 六月の調査結果では、全事業者の結果じゃありませんが、ツアーバスの実態のひどさがこれを見ればよくわかります。法令違反状況の割合は全体平均で六五%ですが、ツアーバス事業者に限ると八一%ですね。道路運送法の過労防止義務違反は特に問題ですよ。全体の平均は約二九%ですが、ツアーバス事業者の場合は四八%、業者の半分は過労防止義務違反をやっておる。こんな状態では事故が起こって当然なんですね。

 ツアーバスの過労防止違反件数の内訳を見ると、拘束時間違反が百二十三件、休息期間違反が三十件、連続運転時間違反が七十一件、合計二百二十四件、貸し切りバス事業者全体で過労防止違反件数四百七十一件ですから、半分がツアーバス業者の違反、こういうふうになってきます。報告でも、過労防止事項別違反件数を見ると、拘束時間と連続運転時間違反が多く認められたと述べていますね。

 二月の大阪のツアーバスの事故原因も、バス運転手はほぼ連日わずかな仮眠時間と長野―大阪間を夜行で運転し、事故当日までの一カ月間に連続した休息は三回しかなかった、超過密、過酷な労働だったことが報告で明らかにされております。

 本当の事故原因というのはやはり過労運転、それをわかっていてそれを強制した企業に責任があることは、調査の結果を見ればはっきり裏づけられていると私は思うんですが、この点、認識は同じだろうと思うんですが、どうですか。

桝野政府参考人 監査の結果については発表し、ただいま先生に読んでいただいたとおりでございます。

 私どもは、貸し切りバスの問題、ツアーバスの問題について、実は一つではなくていろいろな局面、要素があると思っております。例えば、バス会社の方が主体になっていわゆる高速バスと同じような行動を行うような貸し切りバスもございますし、ツアーバスもございますし、旅行エージェントが圧倒的な力を持つ中で下請として物を輸送する、そういうバスもございまして、これもツアーバスでございます。

 そういう意味では、いろいろな局面があるものですから、この六月から、私ども国土交通省とバス事業者、旅行業者、このような方たちを構成員とする検討会を立ち上げておりまして、貸し切りバスにまつわる安全規制のあり方やバス事業者と旅行業者との契約のあり方、その現状等も踏まえまして、貸し切りバスに関します安全性の確保、質の向上のための方策を検討するということで勉強会を始めておりまして、そういう中で十分検討してまいりたいと思っております。

吉井委員 あと時間が二、三分になってきましたから、最後に大臣に伺っておきますが、このツアーバス、貸し切りバスの重大事故というのは、二〇〇〇年二月から貸し切りバス事業の参入に関する規制緩和が行われて、需給調整規制が廃止されて免許制が許可制がなったことが背景にあります。

 実は、九〇年代中ごろには国会にも規制緩和特別委員会がつくられましたけれども、この中で、規制緩和をやる、競争で価格が下がる、消費者利益だという消費者利益論が随分展開されました。そういうことをやれば安全対策はおろそかになるということを私は主張したんですが、参考人で来ていただいた内橋克人さんと私ぐらいしか批判する者がいなくて、規制緩和万能の、言ってみれば、オウム真理教の信者になったかのごとく、わあっとマインドコントロールにかかったような状態が続きましたけれども、その結果、貸し切りバス事業者数は、二〇〇〇年三月の二千三百三十六事業者から二〇〇五年に三千七百四十三事業者へと、業者もぼんとふえたんです。それから、営業収入というのは一方で減りましたから、その結果、過酷な状況が現場の人たちにしわ寄せされてきております。

 貸し切りバスの台数は十年間で一・四倍にふえているんです。貸し切りバスの事業参入はふえているものの輸送人員が伸びませんから、業者間で過当競争、旅行会社と契約したツアーバスを運行する貸し切りバス会社は、旅行会社間の値引き競争のあおりで激しい競争が強いられる。それが運転手、乗務員の過労防止違反と道交法違反が生まれるような過酷な実態が出てきて、典型的なのが吹田の事故だったんです。

 そこで、大臣、実態調査はそのことをはっきり裏づけていますから、調査をし、改善指導するのは当然なんですが、問題の大もとにある、破綻したこういう何でも安全にかかわるものまで規制基準を取っ払ってしまう、そういうやり方から国民の安全を守る方向にやはり大もとのところでかじ取りを切りかえていくということを内閣を挙げてやらないと、吹田のような事故は、幾ら道交法だといったって、そもそも道交法違反が横行しているわけですから、私はなくならないと思うんですね。この点は、国民の安全を守るという方向へ大臣としてきっちりかじ取りを切りかえていくという方向でやってもらいたいと思うんですが、大臣、どうですか。

溝手国務大臣 御指摘の、自由化によりまして過当競争を招き、過労運転を含めて重大事故に直結するさまざまな事件を起こしているということは、大いに反省の余地はあろうかと思っております。

 運行管理を担当いたしております国土交通省もそれなりの努力をされているわけでございますが、これは一つに国土交通省の問題としてとらえるのではなくて、我々警察庁の関係者も、さらにそれ以外にもいろいろ関係各省庁が手をつないで、こういった事件が続発することがないように努力をしていかなくてはいけない、そういうテーマであろうと考えております。

 警察庁としましては、運転者の検挙とかあるいは背後にある使用者の背後責任については、しっかりこれに厳しく対応していくというところから突破口をまず切り開いていかなくてはいけないのではないか、こんな思いで話を聞かせていただきました。

 いずれにしても、関係各省庁が連携をとりながら、過労運転で代表される過密な運転スケジュールを持ったこの問題については対応をしてまいりたい、このように考えているところでございます。

吉井委員 取り締まりもさることながら、やはり大もとにある規制緩和を万能とするということで、こういう過当競争、そして現場で過労運転とかこういう異常事態を起こすようなことを大もとからやはり切りかえていくということをしないことには交通の安全を守れないということを重ねて申し上げまして、時間が参りましたので、質問を終わります。

河本委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

河本委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、参議院送付、道路交通法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

河本委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

河本委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、西村康稔君外二名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。泉健太君。

泉委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、その趣旨を御説明いたします。

 その趣旨は案文に尽きておりますので、案文を朗読いたします。

    道路交通法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずべきである。

 一、国・地方公共団体は、関係法令の適正かつ厳格な運用を行うとともに、飲酒運転・危険運転等根絶に向けて、飲酒に寛容な社会の意識改革を国民に求め、その違法性及び危険性をさらに周知徹底させるべきである。

   また、飲酒運転するおそれのあるものに車両を提供する等の飲酒運転の周辺者への取締りについては、適正かつ公平に行うこと。

 一、製造者の責務として、自動車の元来秘める危険性及び使用方法について、改めて国民に説明を徹底させ、特に飲酒運転防止のためのアルコール検知機能付「インターロック装置」、交通事故前後の画像を保存する「ドライブレコーダー」をはじめ事故を未然に防止するあらゆるシステム開発を促進させるよう、当該業界に指導徹底するとともに、その普及等に向けて積極的に検討を行うこと。

 一、飲酒運転の根絶をさらに進めるため、密閉されていないアルコール飲料を車両等に積載して運転する行為の禁止について検討すること。

 一、高齢運転者の事故防止に当たっては、講習内容の充実、自主的な免許返納への優遇措置、代替交通手段の確保等の各種施策を総合的に検討し、効果的な対策に努めること。

   また、高齢運転者に対する認知機能検査については、具体的な手続きや内容を適切なものにし、高齢運転者に過度の負担とならないものとするよう配慮すること。

 一、聴覚障害者が普通自動車を運転する際の標識の表示義務については、周囲の運転者が聴覚障害者に配慮すべきことを周知徹底させるとともに、今後、聴覚障害者団体や関係者等の意見に十分留意し、必要に応じ見直しを検討すること。

 一、聴覚障害者に対する普通自動車免許の付与条件の妥当性については、諸外国の状況に配意し、引き続き聴覚障害者団体や関係者等との意見交換を実施し、必要に応じ見直しを検討すること。

 一、児童・幼児の自転車乗用時の乗車用ヘルメットの着用について、教育機関等と連携し、保護者や児童に広く周知し、その促進に努めること。また、今後の着用率の推移を見ながら、義務化について、引き続き検討を行うこと。

 一、国は、交通事故を減少させ、道路交通の安全を確保するために総合的な交通安全対策をさらに積極的に進めていくこと。

以上でございます。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。

河本委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

河本委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。溝手国家公安委員会委員長。

溝手国務大臣 ただいま可決されました附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

河本委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

河本委員長 次に、内閣の重要政策に関する件及び警察に関する件、特に銃器対策について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、政府参考人として内閣府大臣官房審議官荒木二郎君、警察庁生活安全局長片桐裕君、刑事局組織犯罪対策部長米田壯君、交通局長矢代隆義君、外務省大臣官房審議官新保雅俊君、財務省大臣官房参事官森川卓也君、水産庁資源管理部長山下潤君及び海上保安庁警備救難部長石橋幹夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

河本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田端正広君。

田端委員 公明党の田端でございます。

 きょうは、銃器の問題について質問させていただきます。

 先般来、長崎の市長の事件、そしてまた長久手における事件と大きな事件が相次ぎました。そして、この事件というのは非常に厄介といいますか、日本では製造されていないのにそういう銃器が日本にあって、そして犯罪に使われるという意味では大変厄介なものだと思います。

 警察庁がまとめた平成十九年版のパンフレットを見ますと、銃器犯罪でこの十年間二百十九人が亡くなっている、そして、国内で押収されたけん銃は八千丁ということを明記されているわけでございますが、一枚めくってみますと、ここに長崎市長の銃撃事件の写真があり、その下には東京西麻布の暴力団幹部の事件があり、そして神奈川県相模原の暴力団員の銃撃事件、あるいは福岡、佐賀の暴力団連続発砲事件、仙台での暴力団組員の事件というふうに、結局、凶悪犯罪、銃器による犯罪の大半が暴力団関係であるという意味では、まさにこれは、その点をどうするか、暴力団と銃器との関係、ここの対策をどうするかということが一番大事になろうかと思います。

 それで、国家公安委員長、そういう意味では、まず基本的といいますか、銃とのかかわりという意味では、暴力団の問題、組織的犯罪ということが一番大事だと思いますので、これに対して国家公安委員長としてどういう御決意であるのか、まずお伺いしたいと思います。

    〔委員長退席、戸井田委員長代理着席〕

溝手国務大臣 銃器の問題というのは、すぐれて暴力団あるいはその関連のレベルでの話というように考えております。暴力団の対策をしっかりやっていくことがこの問題の解決と連動しているという受けとめ方をしておりまして、厳罰化とか法律改正、いろいろ考えられる方策を駆使してこれに対応してまいりたい、このように考えております。

田端委員 それで、長崎市長の事件の直後に政府においては銃器対策推進本部を開催して、本部長が塩崎官房長官で、副本部長、高市内閣府特命担当大臣ということで、あるいは溝手国家公安委員長ということで、対策本部において、十九年度の銃器対策推進計画というものがここで確定されたわけでありますけれども、そういう意味では、事件直後にそういう形で開き、そしてまた長久手の後でももう一度開かれたというふうに伺っておりますけれども、大変タイミングよく対応された、こういうふうに思います。

 そこでお尋ねしたいことは、銃器対策本部の本部長が塩崎官房長官なんですが、内閣の中で銃器対策の特命担当大臣という立場が高市大臣だというふうに伺っておりまして、副本部長も兼ねているからいいじゃないかということにもなると思うんですが、役割をどういうふうに分担されているのか、推進計画を決定して、副本部長という立場、あるいは特命担当大臣という立場、両方あるかと思いますが、どういう御決意で取り組まれようとされているのか、まずお伺いしたいと思います。

高市国務大臣 政府の銃器対策推進本部でございますが、おっしゃるとおり、塩崎官房長官が本部長、そして溝手国家公安委員長と私が副本部長ということでございますが、この銃器対策推進本部は平成七年に設置されまして、それ以降ずっと、銃器対策推進要綱、これも平成七年に決定された要綱の中にあるそれぞれの政策の柱ごとに、毎年、銃器対策推進計画を策定しております。

 先生がおっしゃった四月二十五日の会議では、平成十八年度の計画に基づく行動の効果をきちっと報告していただき、そして新たな推進計画を策定したわけなんでございますが、その中で私の役割というのは、事務的な調整ということになるかと思います。当然、本部のトップは官房長官でございますので官房長官と御相談しながらですが、関係省庁は非常に多うございますし、また、本部員は官房長、局長クラスでございます。それぞれの省庁と連絡をとり合いながら、この施策を組み上げていくといった事務的な取りまとめをさせていただいております。

 今回、平成十九年度の銃器対策推進計画を策定したばかりなんですけれども、それでも、長崎市長の銃撃事件ですとか愛知県のけん銃発砲立てこもり事件も起きました。まだまだ、要綱の中にある柱立てに従っての推進計画だけで十分なのかどうか、そういった思いがいたしましたので、五月十八日に、関係省庁の課長クラスから成るプロジェクトチームを立ち上げまして、そこでさらに一歩踏み込んだ銃器対策を今検討中でございます。六月末を目途に取りまとめの予定でございます。

田端委員 ぜひ積極的に、前向きにお取り組み願い、そしてまた各省庁お取りまとめをいただいて、よろしくお願いしたいと思います。

 例えば、けん銃を使った事件の認知件数を見てみますと、平成九年から十七年までは二百以上といいますか、二百件を超える認知件数がありまして、平成十八年に百八十二件と、去年は減りました。いい傾向かなと思っていたところに、ことしまたいろいろな大きな事件が起こった、こういうことかと思います。

 それで、けん銃そのものは、これはどう見たって密輸入しかないわけでありますから、密輸入のルート、あるいはその手法というんですか、やり方というんですか、そこをどう押さえるか、摘発するか、防ぐか、これが最大のポイントだと思います。

 それで、例えば、八千丁押収した、こう言いますけれども、恐らくその五倍ぐらいは隠れているんじゃないか、隠れているというか、既に隠匿されているといいますか、日本に入っているんじゃないか、こう思うわけであります。だから、いかにルートを解明するか、そして供給先に対する対策とか、あるいは隠匿されているけん銃に対しての対応とかいろいろなことがあると思いますが、そういう意味では、まず、実態、今どのぐらい推定できるのか、今どういう対応をしているのか、実態と対応について警察庁の方にお願いしたいと思います。

米田政府参考人 確かに、委員御指摘のとおり、けん銃は大半が外国製でございまして、特にアメリカ、フィリピンといったところが最近では多いわけでありますけれども、これらは、製造国から直接ということもあろうかと思いますが、他国を経由して、そして大量の貨物の中に紛れ、あるいは国際郵便等々で入ってくる、あるいは税関を通らずに漁船等で陸揚げをされるというものもあるというふうに承知しております。

 これまで、過去の捜査におきまして、米国ルート、フィリピン・ルート、ロシア極東ルート、南アフリカ・ルートなどを解明してきたところでありますけれども、その多くに暴力団等が介在をいたしまして、そして国内に持ち込んで他の暴力団等にも売りさばく、こういうことをやっておるわけでございます。

 国内における隠匿されている銃の数というのは、これはなかなか推定が難しゅうございます。いずれにいたしましても、最近、暴力団が組織的に管理しております銃は非常に厳重に隠匿をされておりまして、その隠し方も大変巧妙でございます。

 警察といたしましては、情報収集体制を強化して、さらに、いろいろな暴力団関係の犯罪から銃の摘発につなげるということで、隠匿されている銃の摘発に全力を尽くしたいと考えております。

田端委員 日本では一般に市販していないわけですから、それは密輸入しかないわけでありまして、海外から入ったものをどう防ぐかということになりますと、今お話ございましたが、例えば、船の中の荷物、特に砂利とかあるいは海産物とか、大量に何かが入ってくるときに紛れ込んでいた場合、なかなかこれは発見しづらいんだろう、そういう大型貨物といいますか、こう思うわけであります。あるいは、日本海の近海まで寄ってきた船にこちらから近づいて、そこの船の上で、あるいは船と船が接触しながら取引するとか、麻薬なんかのときのことも想定しますとそういうこともあろうかと思います。そういう意味では、漁船を使った手口、そういうことも考えられると思います。

 したがって、海産物業者とか漁業関係者とか、こういったことを念頭に置いたけん銃の密輸入に対する検挙対策というのが大事になろうかと思いますが、その点、警察庁にお伺いしたいと思います。

米田政府参考人 水際対策というのがやはり銃器対策では非常に重要でございます。

 漁船、海産物等々でございますけれども、まず、漁業で生計を立てておられる方々に協力を求めて、そこからの情報というのをいただいております。それから、税関はもちろんそうですけれども、海上保安庁とも、本省レベルだけではなくて現場レベルでも連携をしながら、水際で押さえるべく努めておるところでございます。

 それから、こういう密輸入につきましては、外国からの情報というのは大変大事でございまして、外国当局にいろいろ働きかけて情報をとるように努めているということでございます。

田端委員 そういう意味で、例えば、この前、北朝鮮からの脱北者が日本の陸にたどり着くまで日本の関係者はだれも発見していなかった、こういうことでありました。しかし、そういうことがたびたび起こるというのは、今言う水際作戦といっても、素通しで人が来ているわけですから、これは大変な問題だと思います。だから、水際の監視体制、ここをしっかりとしなきゃならない。それから、今もお話があったように、海上保安庁に頑張っていただくしかないし、また、漁業関係者とか、そういった意味で農水省の関係のところにも周知徹底していただいて力を合わせるとか、こういうことも必要かと思います。国交省そして農林水産省からもきょう来ていただいていると思いますが、どういう水際作戦で今お考えになっているのか、お願いしたいと思います。

 それからもう一つは、きょうは税関の方、財務省の関係の方にも来ていただいていると思いますので、税関関係は今どういう対応をして強化しているのか、その点、それぞれお願いしたいと思います。

石橋政府参考人 海上保安庁では、洋上取引の可能性の高い海域などにおける巡視船艇、航空機による監視警戒を実施しております。また、現在、監視警戒体制を強化するため、老朽、旧式化した巡視船艇、航空機の代替整備を緊急かつ計画的に進めているところでありますが、これについても、今後、今回の小型船を発見できなかった事案を踏まえながら進めるなど、水際における監視警戒体制の強化に努めてまいります。

山下政府参考人 水産庁におきましては、外国の港に入港する可能性のありますマグロ漁業の関係団体及び地方公共団体の漁港関係職員に対しまして、銃器の密輸防止を推進するため、漁業関係者からの情報提供等の協力を依頼するとともに、銃器問題に関する広報活動を積極的に行うよう要請しているところであります。

 今後とも、こうした取り組みを通じまして、水際対策を推進し、銃器の密輸等が行われないよう積極的に協力してまいりたいと考えておるところでございます。

森川政府参考人 お答えいたします。

 税関における銃器対策への取り組みでございますけれども、銃器対策におきまして水際対策が非常に重要だという先生の御指摘はまことにそのとおりであると思いまして、税関におきましても、銃器あるいは不正薬物を含めました、我々社会悪物品と言っておりますけれども、これの密輸入阻止というのを最重要課題の一つとして位置づけて取り組んでいるところでございます。

 具体的な取り組みといたしまして幾つか申し上げますと、一つは、まず検査が前提でございますので、エックス線検査装置の増配備等、取り締まり機器の増強というのを図っております。それから、何よりも、今の国際物流を考えますとすべての貨物を検査するというのは困難でございますので、情報を獲得する、それによって絞り込むということが重要でございますので、警察あるいは海上保安庁等の国内の関係捜査機関それから外国の税関と連携して情報交換を促進する。それから、先ほど先生の御指摘にもございましたように、開港だけではなくて不開港ないし洋上取引、その他の海岸から密輸されるケースもございますので、漁業関係者等の民間協力者からも情報をいただく、そういうような取り組みも進めております。それから、警察、海上保安庁と連携した船内検査等の合同取り締まりの実施というのを行っております。

 さらに、本年の関税法の改正におきまして、銃器等を密輸した場合の罰則を関税法上五年以下の懲役から七年以下の懲役というふうに引き上げております。こういった制度改正も活用して、今後、取り締まりを強化してまいりたいというふうに考えております。

田端委員 いろいろ今御回答いただきましたが、そういう意味ではいよいよ銃器対策推進本部が連携をとりながら、連携を密にしながら対応するということが本当に大事だ、こう思いますので、ぜひ国家公安委員長それから特命担当大臣、どうぞよろしくお願いしたいと思います。

 それで、実は私は大阪でも西成区というところに住んでおりますが、例えばこの十年間を見てみますと、全国で発砲事件が千三百四十三件、そして大阪で起こったのが九十四件、そして西成区では九件。つまり、大阪九十四件のうちの一割が西成区、私の地元で起こっているわけでありまして、これは確率としたら大変高いというふうに思います。ここにある全国地図の中でも大阪は青い色になっておりまして、東京、大阪等が非常に事件が多いという印になっておりますが、その多い大阪の中でも、大阪における一割が西成区で起こっている。

 なぜ起こっているかといいますと、これは国家公安委員長にはぜひ知っていただきたいと思いますが、あいりん地域というのがありまして、そこには、三十二ぐらいあると思いますが、暴力団の事務所があります。それが集中しているわけですが、そういう意味では、ここ十年間で九件起こっている、これはもうほとんど間違いなく暴力団同士の抗争なりなんなりで起こった事件だと思います。

 そうしますと機動隊が来て通行どめしたりいろいろなことをやるわけでありまして、そこは全く普通の市民が住んでいる、全く普通の町の中に暴力団の事務所があるわけですから、住民にとれば非常な緊張感、非常におびえる状況になるわけでありまして、暴力団におけるいさかいがそういう形で発砲事件につながりますと、そういうことで地域は大変迷惑な話になります。

 したがって、暴力団同士の抗争とかそういったことに一般市民が巻き込まれることのないように、これこそが一番大事な対策ではないか、こう思うわけでありまして、暴力団対策そして法整備も含めた今後の対応のあり方ということについて国家公安委員長にお尋ねしたいと思います。

溝手国務大臣 暴力団の対立抗争等に基づく銃器発砲事件は、国民に不安を与える極めて悪質な犯罪であると認識いたしております。

 警察といたしましては、先ほど申し上げましたように、暴力団の弱体化及び壊滅というのを究極の目的として、まず第一に暴力団犯罪の取り締まりの徹底、第二に暴力団対策法の効果的な運用、第三に暴力団の排除活動等を軸に活動を推進してまいりたいと思います。特に暴力団の排除活動等については、犯罪対策閣僚会議の暴力団資金源等総合対策ワーキングチームの場などを活用しながら、関係省庁及び官民が連携し、社会全体で暴力団を排除し、その資金を遮断するために効果的な施策を推進する必要があると考えております。

 今後とも、対立抗争の防圧を図りつつ、暴力団への打撃にはその資金源遮断が最も重要であるという観点から、暴力団排除の機運を高めるとともに、暴力団の資金源に打撃を与えるような取り締まりを推進するよう警察を督励してまいりたいと考えております。

田端委員 大臣の答弁としてはそういう形になろうかと思います。

 しかし、現実、例えば暴力団そして対策として資金源ということになれば、これは薬物と必ずつながってくるわけですね。そういう意味で、では薬物対策はどうなっているかというと、進んでいるようでなかなか進んでいないというのが実態である。したがって、そういう組織的な犯罪に対しての対策はいろいろなことを努力はしていただいています。しかし、こういうふうに事件がいっぱい起こるということは、なかなか困難な面がたくさんあるということの一つのあかしでもあろうかと思います。しかし、私たちの日本は世界一安全な国、治安対策がすばらしいと言われる、そういう日本を築いていく、そのためにもここはしっかりと手を打っていただき、またきめ細かく対策を練っていただかないとそういった意味ではなかなか進まない、こう思います。

 正直言って、今申し上げましたように、私の地元では薬物の取引というのは我々市民の前でやっていることがもう目の前であるわけでありまして、それは何とかしてもらいたいと一貫して言ってきているんですが、なかなか、売人というのは幾らでもいるわけでありまして、根っこをやっつけないと下っ端は幾らでもいる、こういうことであります。本当にいかがわしいことだと思いますけれども、しかしそういうことが現実に目の前にあればこれは困るし、住民にとれば耐えられないわけであります。だから、そういう意味で資金源ということをおっしゃるなら、これはそっちの薬物対策に対してもしっかりと対応していただくようにお願いしたいということを申し上げておきたいと思います。

 それで、例えば、今まで平成五年、七年と銃器犯罪の撲滅を目指して銃刀法の規制強化を二回行ってきたと思いますけれども、それは形といいますか、効果というものは数字の上か何かで出ているんでしょうか。私は、今大臣がおっしゃったように、いろいろな対策はしている、しかし、本当に、こういうふうに減らしてきたぞ、十年間でこういうふうに減ったということが言えるのならいいんですが、なかなか横ばいでずっと来ているところにそういう危惧をしているわけでありまして、これから、ではどうするかということとあわせて、今までやってきたことがいい面でこういうふうに出ているということがあるのならまたお教えいただいて、そして次への手を打っていただきたい、こう思うわけであります。

溝手国務大臣 御指摘のとおり、平成五年及び平成七年に、当時の銃器情勢を踏まえて取締法を改正したところでございます。

 具体的には、平成五年にけん銃等の加重所持罪やけん銃等の譲り渡し、譲り受け罪を、平成七年にけん銃等の発射罪をそれぞれ設け、重い罰則を設けたところでございます。これらの改正によりまして、改正前には年間二百件以上発生しておりました銃器発砲事件については、改正後の平成七年には百六十八件と減少し、昨年には五十三件となり、平成七年以降、減少傾向にはあるというように認識しております。

 これらの情勢を踏まえますと、一連の法改正により、銃器犯罪対策、とりわけ銃器発砲事件の抑止には一定の効果があったと認識をいたしております。これからの問題はまた新しい本部で頑張ってまいりたいと考えております。

田端委員 効果があったということですから、ぜひ次へのステップにしていただきたいと思います。

 もう一つは、国際的な情報の交換とか、国際的な協力、枠組みというものも大変大事かと思いますので、きょうは外務省にも来ていただいていると思いますが、銃器議定書の締結に、国内法をきちっと整備した上でのことになりますけれども、日本はやはりそういう対応をすべきだ、こう私は思いますけれども、ただ、残念なことは、アメリカとかイギリスとかフランスとか、そういった国々がこの議定書に入っていないんじゃないかということもあって、どこまで効果があるのかなという不安感はあります。しかし、やはり一歩でも二歩でも前進させるべきだ、こう思いますので、外務省のお考えをお伺いしたいと思います。

新保政府参考人 銃器議定書についてでございますが、外務省はこれまで、その締結に向けまして、議定書の条文を踏まえまして、その国内担保法の内容等につきまして関係省庁とともに検討を進めてまいりました。

 外務省といたしましては、銃器議定書の可及的速やかな国会提出、これを目指しまして、引き続き鋭意検討を行っていく所存でございます。

田端委員 ありがとうございました。

 この問題はもう本当に根気よく、しかも前向きに取り組んでいくしかないと私は痛切に感じておりますので、高市大臣、そしてまた溝手大臣、どうぞよろしくお願いしたいと思います。

 ありがとうございました。

戸井田委員長代理 次に、遠藤宣彦君。

遠藤(宣)委員 自由民主党の遠藤宣彦でございます。

 午前中に引き続き、午後は銃の取り締まりについて御質問させていただきたいと思います。

 まず、質問に先立ちまして、先日、愛知で命を落とされた警察の警部の方に、心から哀悼の念をささげたいと思います。

 この質問時間は一時間いただいておりますので、日本における銃の位置づけあるいは歴史的背景、日本の中での特性、そういったものに触れつつ質問させていただきたいと思います。銃取り締まりと安倍内閣が目指している美しい国との関係、あるいは、使用者自体をどのように取り締まって、使用自体をどう抑制するのか、そして最後に、入手ルートをどう根絶していくか、こういった組み立てで質問させていただければと思います。

 午前中に質問させていただいた車、車自体は凶器になり得るものだと申し上げましたけれども、銃に関しては、それ自体がもう正真正銘の凶器である、そして、車はひょっとしたら人の命を奪うかもしれないけれども、銃に関しては、その意思さえあれば確実に相手の命を奪う、そういった大きな問題があります。

 先ほど触れましたように、相次ぐ銃に関する事件によって日本の安全神話というものが陰りが出ている。本当に日本は安全な国なんだろうか、こんな事件がいっぱい起きるようになった、昔と随分変わったな、こういうような声が市民の間あるいは有権者の間から聞こえてきます。

 愛知の立てこもりの事件、警官が亡くなられた。あるいは四月の下旬に、長崎市長選挙のさなかに事務所の前で長崎市長が、候補者であったようですけれども、撃たれて命を落とされた。民主主義の最大の脅威といいますか、選挙という言論で戦う場面でも、銃によってその民主主義の根幹が破壊されるということが公然と行われる。

 そして、三番目に挙げたいのが、アメリカで韓国系の学生が大学で乱射をした。理由はささいなことだったようであります。冷たくされた、ばかにされた。しかし、これがもしも二〇〇一年に起きた大阪の池田小事件、この前死刑になりましたけれども、宅間守、刃物でなくてけん銃を持っていたら、一体どれだけの子供がさらなる犠牲者として上がってきたのか。

 けん銃というものが確実に人を殺す道具である、そういった観点から、アメリカと日本の違い、アメリカではだれもが手に入るけれども、日本では、後で申し上げますように、普通の人は手に入らない。こういった悲惨な事件が相次ぐ中で、今改めて銃の規制というものをやっていかなければ、安倍内閣の求めている、目指している、真に「美しい国、日本」というものにはほど遠いものになってしまう。

 先日、六本木かいわい、西麻布で暴力団の発砲事件、射殺事件がありました。私が通っていた中学校、高校のそばであります。おちおち遊びにも行けない。だれがけん銃を持っているかわからないような社会になれば、外に行くわけにいかない。そして、逆にアメリカのように、自衛のためにけん銃を持とう、持った方がいいんじゃないか、そんな議論さえ出てくる可能性があります。

 けん銃、銃というものが社会を変えてきた。日本の歴史の中でも、一五四三年に種子島に鉄砲が伝えられた。信長が天下を統一する大きなきっかけとなった長篠の合戦、これも、武田の騎馬隊を破ったのは鉄砲をうまく利用したから。そして、ここが一番日本の国にとって大事なところですけれども、豊臣秀吉が一五八八年に刀狩りというのを行った。一般の人間は武器を持ってはいけない、大仏をつくるために刀を全部出しなさい。つまり、国家が武器を独占する、国家権力が武器を独占する、それが日本の特徴であったわけでありますけれども、その背景には、日本の国家権力は平和に暮らしている市民に武器を向けない、つまり、アメリカと比べて国家権力に対しての信頼を持っている、そういった国である。その意味で、日本という国、今安倍内閣が掲げている美しい国づくり、これの重要な要素をなすものがこの銃規制であると思います。

 そこで、安倍内閣の閣僚であります官房長官、そして担当大臣であります高市大臣に、この美しい日本というものが日本のよき伝統と特性を生かした国ということになりますと、世界で最も安全な国という意味も当然のことながら含まれます。日本の威信と尊厳をかけて、この美しい国づくりの重要な要素に、安全そしてこの銃の規制の取り組みということが当然のことながら含まれると考えますけれども、その関係、そしてまたそれに対しての取り組みの御決意についてお伺いをしたいと思います。

    〔戸井田委員長代理退席、委員長着席〕

塩崎国務大臣 今、遠藤先生御指摘のように、安倍内閣は美しい国づくりを目指しております。「美しい国づくり」プロジェクトというのを、平山郁夫先生を初め有識者の先生方にも集まってもらって今いろいろやっているわけでありますが、その中で、日本には長い間美しさとして大事にしてきたものがあった、そしてまた、そういうものが少し美しさに欠けてきて、もう一回美しさを取り戻さなければいけないというようなものもある。そういう中に、今先生御指摘になりました安全というか、安心して暮らせる日本、社会、そういうものがあったと思うわけでございます。

 伝統的に我が国は厳しい規制の中で銃器の保持は禁止をされてきたということで、禁止というか非常に厳しい規制を受けてきたわけで、そういう中で我が国の安全というものが守られてきたわけでありまして、それはまさに、ソフトとしての美しさの一つである安全というものが我が国の誇りでもあったわけでございます。

 ところが、先ほど来お話が出ているように、長崎でも、あるいは長久手町でも信じられないような事件が頻々として起きるということは、我々としては、この美しさを失いつつあるというふうに考えるべきだろうと思うんです。

 そういう意味で、不法な銃器の使用、所持、これを撲滅しなきゃいけないのはもう言うまでもないわけであって、私が本部長を務めております銃器対策推進本部、平成十九年度の銃器対策推進計画を策定いたしまして、今、各省が緊密に連携して銃器対策について推進をしているわけでございます。

 高市大臣が関係省庁から成るプロジェクトチームを立ち上げて、銃器対策の、今後何をさらに追加的にやらなきゃいけないのかということを検討していただいておりまして、この計画に加えて、今後そのプロジェクトチームでの検討の成果も生かしながら、政府が一丸となって一層努力して銃器対策を推進し、先生御指摘の日本の美しさをもう一回取り戻すということをやっていかなければいけないという覚悟でいるところでございます。

高市国務大臣 私は、たくさんの御先祖様が営々とつないでくださったかけがえのない一人一人の命を奪う、そしてまた他人様の身体を非合法な行為によって傷つける、それ自体が美しくないと思っております。許されざるべき行為だと思います。

 そして、日本はこれまで、国民の生命を守るために銃器を所持されるそういった職業にある方、そしてまた猟銃など、猟をするために持っていらっしゃる方はおいででも、一般国民は持ってこなかった。これがまた日本の誇りであったと私は思っております。

 今、塩崎官房長官から答弁がございましたけれども、私のもとにつくりましたプロジェクトチームで今検討しておりますのは、銃器議定書締結のための国内担保法の整備ですとか、あと、銃刀法の罰則の強化ということも含めて、さらに法令を見直す可能性、そして水際対策の一層の強化、それから、政府の銃器対策推進本部では文部科学省はこれまで御参加いただいていなかったんですが、やはり、国民全体が銃を持つこと、使うことを絶対許さない、こういった世論の啓発ということを考えますと、学校教育が果たす役割も非常に重いと思いましたので、このプロジェクトチームには文部科学省にも御参加いただいて、さらにできることの検討を進めております。

 何とか今月末には結論を出して、しっかりと国民の安全を守れるように頑張ってまいりたいと思っております。

遠藤(宣)委員 ありがとうございます。

 本当に官房長官、高市大臣がおっしゃられたように、今回のこの銃規制というものは美しい国をつくるための非常に大きな柱をなすものだ、そういった決意をいただいて、私たちも、今おっしゃられたような、少しでも省庁をまたがって、日本国民すべてが銃は絶対許さない、私も先祖が奈良にいるものですから、ずっと連綿と続いてきた人間の生命、それを脅かすものについてはこの日本においては許さない、こういった気持ちを共有できるようにすることが「美しい国、日本」をつくる第一歩だと思います。

 今、長崎市長の話がありました。歴史の話にまた触れますけれども、大坂城が落城して、元和偃武という言い方をしまして、もう武器を捨てて平和な国をつくろう、厭離穢土欣求浄土、家康も言って平和な国をつくってきた。

 しかし、対してアメリカとの比較を銃についてはしなければなりませんけれども、アメリカは、国民の統合の象徴である大統領でさえ凶弾に倒れている。古くはリンカーンが銃弾で撃たれて、二十代目のガーフィールド、二十五代目のマッキンレー、レーガンも狙撃されている。もちろんケネディもいます。日本は、東京駅で暗殺された原敬は刃物だった。しかし、一九三〇年代の浜口雄幸は銃弾だった。

 権力にある者に対して銃を向けても、銃を持つことを許容しているアメリカという社会、これはもうずっとアメリカの中で議論されていることでありますけれども、これは繰り返しになりますが、日本においては国家権力が独占することを許しているということ、だからこそ、一般市民、普通の日本人すべての人たちを守る、そのためには、あらゆる手段を使って持たせない、つくらせない、そして流通させない、こういった決意がより必要だと思います。

 ちなみに、後で触れますけれども、今、銃がどこから一番来ているか。その一つにアメリカというのがあります。せっかく時間をいっぱいいただいて歴史の話を今していますから、明治維新、長州戦争で幕府軍をはね返した大村益次郎、ミニエー銃というのはどこから来たか。一八六一年から六五年に南北戦争があったアメリカから大量に余った銃が上海に来た。それを坂本竜馬が買いつけて渡した。つまり、銃というのは、いい意味でも悪い意味でも社会の基盤を変えてしまう。

 こういったことをまず強く認識した上で、次の質問に入りたいと思います。

 銃撃事件がなぜ起きるのか。なぜ銃を使っていろいろな事件が起きるのか。その使用者をどうやって取り締まるべきなのか。いただいた資料では、厳罰化を進めて、摘発を徹底的にやって、水際でとめて、そして国際連携をして、銃を持つことを許さない社会をつくろうというふうになっています。

 一方、私の選挙区は、福岡一区という福岡市内の博多区と東区でありますけれども、うちの選挙区だけではなくて福岡県全部を見ると、発砲事件が実は福岡県が一番多いというデータをいただきました。港があるからではないかなという気もするんですけれども、まず、ここについて伺いたいと思います。なぜ福岡県が最も発砲事件が多いのか、考えられる理由をひとつちょっと教えていただければと思います。

米田政府参考人 昨年、銃器の発砲事件は全国で五十三件、そのうち福岡が十二件ということで、確かに、大変福岡が突出して多かったわけでございます。

 ただこれは、全体で数十件のレベルでございますので、何か一つの出来事があるとはね上がるということでございまして、昨年の場合は、福岡で指定暴力団の道仁会という暴力団がございますが、これが内紛で二つに割れております。その関係で銃撃が連続してありまして、それが最も大きな要因であると考えております。

遠藤(宣)委員 これはうわさのレベルでありますけれども、私の福岡県のある県議などは、防弾チョッキをつけて活動しているとか事務所に銃弾が撃ち込まれたとか、そんなような話もちらちら聞こえてくることでありますから、福岡県選出の人間としては人ごとではない。空港をおりてから、本当に緊張感を持って活動しなきゃいけないという思いもないわけではありません。

 今、お答えをいただきましたように、暴力団の関係ももちろんありますけれども、港が近い。そして、抗争があったときにやはり暴力団同士が使う。密輸で入手をしたり国内で製造したり、そういったことがある。一般市民の巻き添えのおそれがある。

 暴力団自体の抗争というのが、文字どおりけん銃の引き金を引くその原因となる最も大きな理由の一つでありますけれども、暴力団自体の抗争を取り締まるということは、西麻布の事件を見てもそうだと思いますが、言うまでもなく重要だと思います。抗争自体をなくすという観点で、現在の暴力団等への対策、対応状況についてお伺いをしたいと思います。

米田政府参考人 暴力団の対立抗争は、近年、いろいろな抑止策の中で昨年までは減少傾向を続けておりました。

 これは、一つは、銃刀法の重罰化というのが確かに効果を上げていると思います。それから、ボディーガードが銃を持っていると、それは組長にまで共同所持が及ぶということで、山口組の最高幹部を連続して三人検挙いたしまして、うち二人は刑が確定し、うち一人は現在も刑務所に入っている。これは、現在の山口組組長の司忍こと篠田建市であります。このように、ボディーガードが銃を持てなくなるということは、激しい対立抗争をするのにやはり非常に支障が生じているだろうと思います。

 それから、平成七年にいわゆる藤武事件というのがありまして、これは、京都府警の警察官が暴力団抗争の警戒中に暴力団と間違えられて射殺をされたということがあったわけでありますが、これで、最高裁判決で山口組の組長が使用者責任を問われるということがありました。

 こういうような抑止策が効いておりまして、昨年中は対立抗争事件はゼロになったわけであります。

 しかしながら、これは暴力団が別に方針を転換したわけではございませんで、こういう暴力団側にとってリスクが高いから、戦術として今はちょっと当面控えておこうという程度でございまして、現に、ことしになって既に二件発生をしておるわけでございます。

 したがいまして、私どもは、こういう対立抗争の抑止策を進めながら、やはり暴力団そのものの壊滅を目指さなければならないだろう。そのためには、最も効くのはやはり資金源対策であろうということで、政府で暴力団資金源等総合対策ワーキングチームというのをつくりまして、各省連携して、さまざまな場面から暴力団の資金を遮断するという対策を現在最も力を入れて進めているところでございます。

遠藤(宣)委員 一般市民からすると、とにかく暴力団の抗争自体がまずなくなってもらいたい、そして、その存在自体についてももちろんのことであります。私たち政治家は、選挙のときに連座制というのがあります。今御指摘されたように、それがあったときにまず自動的に暴力団の関係者に責任を問うとか、そういった視点も絶対必要だと私は思います。

 これは次の質問に関係することなんですけれども、ある人が言うには、暴力団に属している、組織に属している人間よりも抑えがきかないのは、元暴力団、要するに、組織のコントロールがきかなくなった人間の方が怖い。例えば、絶縁状を突きつけられた。しかし、組から預かっていたけん銃を回収されなかった。入手ルートを知っているために、自分で売人と話をつけて手に入れた。けん銃を持ったまま絶縁状を突きつけられて、けん銃が残っている。いろいろな恨みを持っていたり、あるいはよくあるように、復縁を迫って、男女のもつれがあって相手をやってしまう。語弊があるかもしれませんけれども、組織的に取り締まれない分だけ怖いという話をよく聞きます。一匹オオカミの方が怖い。

 そこでお伺いをしたいんですけれども、外国なんかでは、これは銃犯罪ではなくて、性犯罪者の所在地を公開するなどの方策をとっている国があります。その観点でいえば、銃を持っている可能性がある元暴力団員について、一般市民よりも銃を入手しやすい、あるいはまだ持っている可能性が高いという意味において、警察はある程度把握をしておくべきと考えます。もちろん、せっかく更生してまともな市民になっているので、またそういう疑いの目をかけられるのは嫌だということがあるかもしれません。一般に公開するというのは行き過ぎですけれども、少なくとも警察の限りでは、ある程度の身元把握、そういったものが必要と考えますけれども、そのあたりについてはどういうふうにされているか、お伺いしたいと思います。

米田政府参考人 現在の法制度では、さまざまな許認可法規におきましていわゆる人的な欠格事由が定められております。これは、暴力団員だけではなくて、暴力団員でなくなってから五年を経過しない者とか、そういうふうに、元暴力団も一応法的にはやはりちゃんと把握しておかなければならないという仕組みになってございます。

 その五年という期間にかかわらず、暴力団を離れたというだけで私どもがその監視の対象から除くということは、やはりそれはあってはならないことでありまして、暴力団を離れても、暴力団の周辺にいる、あるいは、そういう凶悪な犯罪を犯したり違法な資金源活動をしているということがあるわけでありますので、ここは実態把握を常に継続してまいりたいというふうに考えております。

遠藤(宣)委員 本当に繰り返し申し上げますけれども、守るべきは一般市民の安全と人権でありますので、憶することなく、必要とあらばそういった議論をしていかなければならないと私は思います。

 そしてまたちょっとつけ加えますけれども、麻薬患者、前後の見境がなくなって、そしてそこに銃があった、そういったこともありますので、麻薬の常習犯についても、一般市民の立場としては、ぜひとも把握をしていくことが、銃犯罪、いや、一般の犯罪の防止にも役に立つと私は思います。今、個人情報だとかプライバシーとかそういったことがすぐに出てくる。加害者にも人権があるんだ、そんな議論が出てきますけれども、繰り返し申し上げます、守るべきは一般市民の人権だ、そのことをぜひとも頭に置いて、タブーなく議論をしていただきたいと思います。

 そして、今の話に関係することですけれども、暴力団から例えば絶縁状を突きつけられて組を離れた者がいた場合、暴力団自体が、いや、彼に渡してあるんですよとは絶対言わない。しかし、もしも元何々組の組員がけん銃を持っていて発砲事件を起こした、そうしたときに、先ほど触れた連座じゃないですけれども、ある暴力団に所属している者が離れた後に犯罪をした場合、その暴力団を例えばほかの手続よりも楽に捜査ができるとか、あるいは、その組から入手したものじゃないですよという立証の責任の一端をそういった組織にもしも負わすことができれば、これは非常に回りくどい言い方かもしれませんけれども、暴力団自体に、銃を回収する、あるいは銃拡散防止の動機づけというものができるんじゃないかというような考えを私は持っています。

 そういった方策についてどう思われるか、御所見を伺いたいと思います。

米田政府参考人 法制度を設計する場合に、だれにどの程度の責任を負わせるのか、これはなかなか難しいところがあろうかと思います。委員御指摘の点も参考にさせていただきながら、やはり、効果的な銃の取り締まり、暴力団の取り締まりに関しましては、幅広く制度の研究、検討をしてまいりたいと考えております。

遠藤(宣)委員 そういうような話をすると行き過ぎとかこっけいとか思われるかもしれませんけれども、私が常々思っているのは、警察権力というのは常に抑制的にしなきゃいけないという視線が集まっている、しかし、それで本当に実効のあるものができなくなるのであれば、一番の犠牲者は一般市民でありますから、私たちのこの世界においても、タブーなく、そういったちょっと行き過ぎじゃないかなという議論もしていった上で、実態を見ながら将来において考える必要があるんではないかなというふうに思います。

 そして三番目。今まで、暴力団自体が所持している場合、元暴力団員が所持している場合、そして最後に、一般人が入手をするケースというものが考えられます。

 一つは、暴力団の知り合いから譲渡。暴力団の末端にいる人を兄貴と言っている不良がけん銃をもらう、預かる、借りる、そんなようなことがないわけではない。後で申し上げますけれども、二番目が、インターネットの発達で一般人も入手ルートというものができた。

 まず、一番目の暴力団の知り合いから譲渡でありますけれども、どうも、自分が銃を撃ったら、あるいは持っていたらまずいと思いますけれども、間を取り持つというところにどのくらいの罰があるのかというのは、一般の人たちは余り知らないケースが多いと思います。

 そこでお伺いしたいんですけれども、銃の譲渡自体を、さらに、これは大変なことなんだよ、あるいはもっと厳しくするというようなことをしていく必要があると私は考えますけれども、いかがでしょう。

 例えば、例えはあれですけれども、売春防止法でも、あっせん自体を取り締まるということが実は強化につながりますから、このあっせんの段階で取り締まりが厳しいんだよということを示すことが銃規制の一つのポイントになると思いますけれども、御所見を伺いたいと思います。

溝手国務大臣 現行の銃刀法の取り締まりでは大変厳しい規制が既に行われていると考えておりますが、けん銃等の譲り渡し、譲り受けについては一年以上十年以下の懲役で、これを営利目的の場合には、三年以上の有期懲役、これに五百万円以下の罰金が併科される、こんな状態になっております。

 しかしながら、けん銃を使用した凶悪事件が発生等をしている最近の情勢をかんがみると、私は、もう少しこれを強化しなくてはいけないと思っております。いずれ、このプロジェクトチームも必要でございますし各省の調整も必要だろうと思いますが、高市大臣のところと十分調整をとって、これはさらなる強化をしていかなくてはいけないだろうと。

 また、暴力団の一員が持っているというケースが一番多いわけですから、当然、先ほど話がありました使用者責任の問題、それから、これはしっかり億単位で罰金を、課徴金をつけたらどうかというような議論も出ているわけでございます。

 それから、さらに申し上げますと、先ほど話がありましたが、暴力団周辺が持っているというのは、元暴力団が暴力団時代に入手しているということで、これも時効の話があるとかいろいろなことがあろうかと思いますけれども、要するに、暴力団員が取得しているということにもう少し着目をした法律の点検を行っていく必要はないか、そんなことを検討していかなくてはいけない、そう思っているところでございます。

遠藤(宣)委員 やはり、午前中に車の質問をしました。車の場合には、それ自体が凶器になるかもしれないという位置づけでしたけれども、銃の場合にはもろに凶器ですから、ポイントは、持つことが割に合わない、つまり午前中の質問では、厳罰化を進めるといろいろな影響が出るとか、あるいはこんなことでも罪になっちゃうとか、ちょっと飲んで、しばらく時間がたったから大丈夫と思って乗ったら知らないうちに取り締まられたとか、そういった議論が起きる余地がありましたけれども、銃に関してはその余地はありませんから、所持すること自体、あるいは譲渡すること、保管すること、さまざまな部分において絶対に割に合わないということを厳罰化によって実現をしていけば、私は実効性が上がると思います。

 先ほど申し上げた一般人においても、よく私も海外に行くのが好きで、最近は余り行けていませんけれども、ツアーのパンフレットを見ると、あなたも銃を撃ってみませんか、グアムとかハワイに行くと銃が撃てる。それで、人間の衝動というのはおもしろいもので、持つと使ってみたくなる、撃ってみたくなる。こういったある種の好奇心といいますか興味といいますか、銃自体を持ったら撃ってみたくなる、だから持たせないことがもうとにかく先であると私は思います。

 こういった銃を入手するルートの最後として、インターネットがあります。最近、インターネットを通じて手に入らないものは何もないと言われるぐらい、もういろいろなものが入ってくる。これは内閣委員会で扱う話ではないかもしれませんけれども、プロバイダーやサイト運営者の規制というのは、銃だけでなくて有害サイト全般の問題でありますけれども、通信の自由やあるいは個人情報保護の行き過ぎというものが、一般人の安全を脅かすものまで許容されていいはずがありません。

 インターネット上での銃の入手ルートへの抑止策について、今、サイバー犯罪に関する条約で、プロバイダー等に対して捜査機関がログの保管を求めることができるように必要な措置をとるようにしていかなければ、やはりこれは取り締まりはなかなか難しい。それで、我が国だけが法整備を行っていないとしたら、外国の捜査機関から密売事件についての捜査に非協力的であると言われてしまう。そしてまた、国内においての取り締まりも、あるいは外国のそのものについての取り締まりも実効性が上がらない。

 したがって、この条約についても、実効性あるようなものの形で日本も早くやらなければならないと思います。それを、この場ではありませんけれども、別の機会でやっていきたいと思います。

 先ほど、持っている人間が使いたくなる、こういった衝動を持ちかねないということを申し上げました。最後に、瑣末な話かもしれませんけれども、モデルガンの改造というものがあります。モデルガン購入者等についても、場合によっては、登録とか、あるいは所持していることがわかるようにする、そういったことも一般市民の安全を考えるという観点からは視野には入れておくべきと考えますけれども、そのあたりについてはいかがでしょうか。

片桐政府参考人 お答え申し上げます。

 いわゆるガンマニアについてのお尋ねでございますけれども、いわゆるガンマニアが本物のけん銃を不法に所持するといった事案は、現にこれはございます。

 ただ、他方で、今御指摘があったモデルガンを持つ方が一般にそういった本物を持つという傾向があるのかどうかというと、我々はそこまでの根拠も今は持っていないという段階でございます。したがって、御指摘のような登録制を設けるとかということについては、現段階では考えていないということでございます。

 ただ、なお、モデルガンは銃砲には当たりませんけれども、これが犯罪に使用されるおそれが高いものが中にはあるわけでございまして、こういったものについては、現行の銃刀法で必要な規制を行っている。例えば、けん銃に著しく類似するものは、模造けん銃としてその所持を禁止しております。また、けん銃に改造することが可能、容易なものは、模擬銃器としてその販売目的の所持を禁止している、こういうことになっています。

遠藤(宣)委員 次の質問にも関係することなんですけれども、私もよく漫画を読みます。「ゴルゴ13」という漫画がありまして、専門家がやれば、部品を集めて組み立てられるんですね。どこかの外務大臣も愛読しているみたいですけれども。テロリストが部品に分けて、家電製品のサンプルと称して送られてきたものを組み立ててできる。もしも日本の中にそういった技術を持っている人がいれば、組み立て専門家、部品をばらばらにして持ってくる。

 話は飛びますけれども、外国のある機関なんかは、秋葉原を一周すればいろいろな武器ができちゃうというんですね、部品だけ買い集めていって一周すれば。日本はもうこんなにスパイ天国だし、秋葉原を一周すればこんないい部品が全部手に入る。持ち帰ってそこで組み立てる。これは今行われているかどうかわかりませんけれども、けん銃については、一つは密輸、もう一つは、部品に分けて、中で組み立てに物すごい技術を持っている人間を置いておけば、これはいろいろな部分で問題が将来的に出てくるんじゃないかというふうに思いますので、これも一つ視野に置いておいていただければなというふうに思います。

 そして最後の、入手ルートの根絶、どの場所で取り締まるのか。

 日本という国は四方が海に囲まれております。テロの対策から、空からのチェックは比較的厳重、靴まで脱がされてえらい目に遭う。かなり余裕を持って行かないと空港は大変だということになりますけれども、問題はやはり海ですね。私の選挙区も博多港がありますので、主にやはり海上からのルートを根絶する必要がある。当たり前の話ですけれども、外国でつくられて、海を渡って港に入る。

 港のところからお伺いをしたいと思います。港において、水際対策という言い方をしておりますが、これもとっぴな話かもしれませんけれども、どういう形で取り締まるのか。私は素人考えかもしれませんけれども、一つはエックス線、もう一つは、麻薬犬があるように、けん銃をかぎ当てるような犬はいないのか、そんなようなことも思っています。麻薬犬ほど今は需要がないから、けん銃をかぎ当てるような犬という話はマイナーな話かもしれませんけれども、素人的にはそんなこともある。

 それから、もう一つ大事なことは、警察全般に言えることだと思いますけれども、私の友達なんですけれども、ある地区の税関の部長さんと話をしました。情報公開そして機密費の減少で、東京税関なんですけれども、密輸の急増が起きた。先ほど、答弁の中に、情報が大事なんだということがありました。犯罪の片棒を担いでいる人間が情報をくれるのに、領収書なんかもらえませんから、何でやるか。機密費しかないんですね。それか、使命感を持っている警察の方が自分のポケットマネーを出すしかない。

 一部の好ましくない使われ方でいろいろな非難がありますけれども、この機密費というものが真に国家と一般市民の安全を守るために必要であるとするならば、改めて平場で堂々と言って、しかるべき機密費というものをストックして、しかるべきときに使って、結果として日本が安全であるならば、私は、胸を張ってそれは増額した方がいいと思っています。

 今回はこれが本筋の話ではありませんから質問を続けたいと思いますけれども、今触れました、水際でチェックをするには、コンテナエックス線というのがあるそうです。しかし、私の地元であります博多港、おとといも行ってきました。物流が増加すればするほど、いいものも入ってくるけれども、悪いものも、混在している割合からすれば、比例してふえるんですね。

 とするならば、かつて田中角栄さんが、自動車の重量税、とん税とかもろもろつくりました。理屈はどうだったか。道路を走るときに重い車は道路の摩耗を進めるから、その重さに応じて税を負担してもらう。これも素人の発想かもしれませんけれども、だとするならば、貨物の量がふえればふえるほどそこに入っている可能性がふえるんですから、そこの港湾の取扱量に比例して、有害なものの輸入阻止のためのコストを分担してもらうべきじゃないかという考え方が私は成り立つと思います。この取扱量に応じた応分の負担を求めるべき、例えば治安対策港湾特別税とかそういったものは考えられないかどうか、これについての見解をお伺いしたいと思います。

米田政府参考人 税の世界の話でありますので、ちょっとこれは警察からなかなかお答えしにくい面はありますけれども、ただ、委員御指摘のとおり、水際が大変重要でございまして、特に大量の貨物が通る、今委員がおっしゃいましたように、「ゴルゴ13」ではありませんが、やはり銃は分解して密輸されることが多いわけでございまして、それをもちろんエックス線装置等で把握をするということもありますけれども、やはり、外国当局との連携、そして、その国内の密売組織をこちらが視察をして、できるだけ情報を得て取り締まりを進めていく。

 その過程で、先ほどおっしゃいました麻薬犬のようなものというような犬でございますけれども、これは現に警察でももう一部使っておりますけれども、そのようなものの活用もまた考えてまいりたいと思っております。

遠藤(宣)委員 次に、海上においての取り締まり、これは国交委員会でもやればいいと思うんですけれども、過去に例えば麻薬やけん銃が発見された船舶、その国家の船舶、特定国家の船舶については、海上において通常よりも臨検がしやすくするようにするべきではないかと私は思っています。これは国交の問題でありますから答弁は要りませんけれども、やはり、ある種の抑止効果、目をつけられているんだ、そういうふうに思わせることが一つの抑止効果になるんじゃないかと思います。

 そしてまた最後に、海外の取り締まりを強化するためには、製造国において先ほど申し上げたサイバー条約の適用ができるようにすることを急ぐべき。

 そしてもう一つ、けん銃を持っていることによって日本はかなり刑罰が重い、しかし、殺人とかもろもろの犯罪を犯したときには、自分の出身の母国で裁かれる方がきついケースがある。刑法の関係とかもろもろの問題がありますけれども。例えば、外国の人間が日本に来て何かやったときには、刑務所も結構居心地がいいものだから、また出てくればいい、本国に送られるのが一番怖い、こういったこともありますので、これはけん銃にかかわらず、その犯罪を犯す人間が、これは割に合わないと思うような抑止力を持てるような形を、今、こういう美しい国をつくろうとしている段階ですから、憶することなくやっていただきたいと思います。

 最後に、冒頭申し上げたように、「美しい国、日本」という名に恥じないためにも、近世以来一般市民が最も安心して暮らせる国家、国家を信頼しているからこそ国家権力に武器を独占させることを違和感を持たずにやってきたこの日本という国、加害者の人権を含めてさまざまな人権が強調されていますけれども、最も重視されるべきは、ごく普通に暮らしている一般市民が安全に暮らせるその人権だと思います。その意味で、一般市民の安全はすべてに優先すると言っても過言ではないと思います。

 警察当局においては、そしてまた担当大臣におかれましては、この観点で、権力の介入とかプライバシーの侵害を持ち出しての抵抗に憶することなく、堂々と正論と主張を、安心、安全な国家、「美しい国、日本」の実現のために尽力をしていただきたいと思いますので、最後にその御決意を両大臣にお伺いをしたいと思います。

高市国務大臣 先ほど委員が御指摘になりましたとおり、交通事故の場合は本当に自分の過失であったりといったようなケースもあるわけですが、けん銃の所持ということに関しましては、一般の方に関しては、だれかを殺傷する目的、意図があると思わざるを得ないと私は考えています。

 ですから、厳罰化も含めてさまざま既に御批判も一部あったりもいたしますけれども、憶することなくしっかりと取り組んでまいりたいと思っております。

溝手国務大臣 御指摘の点をもう十分かみしめて、銃器対策、暴力団対策のために全力を挙げてまいりたいと思っております。

遠藤(宣)委員 本当にこの銃の対策、警察の名誉のために申し上げておきますけれども、相当一生懸命やっていらっしゃることはもう私はわかっております。しかしながら、規制を強めようとすると、すぐに必ずいろいろな話が出てくる。しかし、私たちの今の国家目標、美しい国をしっかりつくるという大事な柱でありますから、一応有権者の意を体してこの場にいる国会議員が国会の場において憶することなく議論をしていき、本当にいい国をつくるそういったきっかけになればいいと思っております。

 そのことを念じまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

河本委員長 次に、土井亨君。

土井(亨)委員 自由民主党の土井亨でございます。

 もう、きょう最後の質問でございますので、皆さんお疲れだというふうに思いますので、重複する質問は省かせていただいて、なるべく簡単に早く終わらせたいと思いますので、大臣、よろしくお願いをいたします。

 銃器対策の質問をしなければならないんですが、重要施策ということで、一点だけ、交通局長においでをいただいております。

 先ほどの道交法の改正におきまして、委員の皆さんから飲酒運転について大分議論がございました。認識ということだけでちょっとお伺いをさせていただきますが、今アルコール検知器というのが大分流通しているようでございまして、一般の人がそういうものを持って、みずからアルコール検知をしながらというふうな話もあるんですが、これについて、よしあしはあると私は思うんですが、それも含めての認識をまずお伺いしたいと思います。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 市販のアルコール検知器を少なからぬ企業で導入して従業員の飲酒運転防止に役立てているというふうに聞いておりまして、喜んでいるところでございます。

土井(亨)委員 機会があれば、この点、もうちょっと議論させていただきたいのでありますけれども、そういう段階ではないというふうに私は思っております。

 いわゆる酒気帯びということで、〇・一五ミリ・パー・リットルですか、これ以下であれば飲んでも差し支えないとみずから判断すること自体が私は問題があるのではないか。乗るなら飲むなという形で、飲んだら絶対運転しないという形で頑張っているということであれば、そういう器械がどう使われているかということをしっかり認識していただきたいというふうに思っております。これは、あとは結構でございます。

 それでは、銃器対策の方に移らせていただきたいと存じます。

 平成七年に銃器対策推進本部が内閣に設置されました。このときには、その当時の銃器情勢というのがあったのだろうというふうに思っております。その当時の銃器情勢にかんがみての設置でありますから、そのときから十二年たっているわけでありまして、そのときの情勢、そして十二年たった現在の情勢というものをどうとらえていらっしゃるか、まずお伺いしたいと思います。

荒木政府参考人 お答えを申し上げます。

 平成七年、警察庁長官に対する銃撃事件や、あるいは八王子のスーパーマーケットにおきます高校生のアルバイトの方が射殺された事件、さらに、京都における暴力団事務所警戒中の警察官に対する射殺事件などなど、暴力した銃器使用の凶悪事件が続発をいたしましたことから、平成七年九月、閣議決定によりまして銃器対策推進本部が設置されたところでございます。

 同本部におきましては、銃器対策の推進要綱を制定いたしまして、銃器摘発体制の強化、銃器に対する取り締まり、あるいは水際対策の推進等を柱とする推進計画を毎年度策定いたしまして、銃器犯罪根絶のための施策を政府を挙げて推進することとしております。

 以上でございます。

土井(亨)委員 端的にお答えいただきまして、ありがとうございます。

 ただ、私もいろいろ調べさせていただきましたのですが、平成七年当時は一般人を巻き込む事件というのが大変多かったということだというふうに思っております。そういう意味で、十八年度、一般人を巻き込むそういう事件というものが減っていればいいんでありますけれども、その辺もお聞きしたかったわけでありますが、まあ、そういう対策を講じてこられたと。

 対策本部は当該年度年度で推進計画をつくられるわけでありますけれども、十八年度の推進状況を見させていただいて、なおかつ十九年度の推進計画を両方照らし合わせて見ましたところ、字句の変更はあったにせよ、ほとんど中身は同じではないかなというふうに思っております。そういう意味で、推進計画における効果、実績等々、また、反省すべき点があれば、お伺いをしたいと思います。

高市国務大臣 平成十八年は、銃器発砲事件は、発生件数が五十三件ということで、前年比二十三件減少して、死傷者数も十九人と、前年比三人減少で、いずれも過去最少を記録いたしております。

 それから、この推進本部をずっと続けてきた一つの大きな効果として、各関係省庁間の連携が非常に進んだ。情報の共有、それから共同の訓練、そして、ともに協力し合いながら捜査、摘発をするということで、例えば警察と税関などの連携で、暴力団幹部らによりますフィリピンからのけん銃等密輸入事件、それから英会話塾の講師によるアメリカからのけん銃等密輸入事件、これを検挙するといったことで、水際対策の分野で効果が出てきているんじゃないかなと思っております。

 それで、十八年度分と十九年度分を見比べていただいたということなんですが、私も十九年度の計画を取りまとめるに当たりまして、やはり一歩でも前進ということ、ここは重視をしたところでございます。

 例えば、新たに銃器等の輸入してはならない貨物に係る罰則水準、これは引き上げたということで、これまでの取り組みとは変わっておりますし、また、本邦への、日本への入港前に報告された船舶、航空機の旅客及び乗組員に関する情報、これが事前に入るようになりましたから、これを活用して、検査対象を効果的に絞り込んで、それで携帯品をエックス線にかけるとか、こういったことも新たに前進したところでございます。

 また、ことしの二月一日から事前の報告がありますので、三月にさらに法改正もして、六月一日から必要に応じて個々の貨物に関するより詳細な情報を事前に求めることができるようにしたとかいうことで、毎年柱立てはほぼ変わりませんが、これは平成七年の時点での要綱にしたがって政策の柱を組んでおりますので、ただ、着実に前進はしてきていると思いますので、さらに足りないところを六月末までに一歩踏み込んでまとめるということで努力をいたしております。

土井(亨)委員 もう水際対策につきましては御質問いたしません。ただ、やはり国内、暴力団含めて、銃器の押収、摘発というのは、警察庁、しっかりやられているというふうに思っておりますし、連携をとりながら頑張っていらっしゃるというふうに思っております。そういう意味では、重点的に水際対策というものをしっかり、関係省庁含めて、六月でしたか、出すものに対しまして、水際対策というものを重点でぜひお願いしたいと私は思っております。

 次に移らせていただきます。

 従来ですと、銃器を持っているというと、やはり暴力団関係者ということであったのだろうというふうに思っておりますが、現実的には、大変残念でありますが、今、一般市民、一般の皆さん方も安易に銃器を入手することができるような社会になったんではないかというふうに思っております。

 そういう意味で、一般の市民の皆さんが所持をする、この認識、そしてまたインターネットで容易に入手できるというこの現実を、研究例も含めてどのように分析されているか、お話をいただきたいと思います。

米田政府参考人 暴力団員等以外から押収しましたけん銃、過去五年間を見てみますと、大体総数の五〇%をちょっと超えるぐらいでありまして、むしろ押収総数からすると暴力団以外の者の方が多いということでございます。では暴力団以外の者の方が多く持っているかというと、それは必ずしも言えないわけでありまして、暴力団の場合は武器庫として非常に厳重に巧妙に隠匿をしておりますので、そこはわかりませんけれども、かなりの数があるだろうというように思います。

 それから、インターネットにつきましては、平成十四年に百十五丁、インターネットでの密売を検挙いたしました。それから平成十五年に二百一丁。しかし、だんだんネットに対する監視もこちらも厳しくしておりますので、このあたりをピークとして下火になりまして減ってまいりまして、昨年は二十八丁でございます。インターネットに関しましては、暴力団の関与が極めて少なくて、これは一般のいわゆるマニアであろうと思います。

 そういうことでありますけれども、マニアであるからいい、暴力団だから悪いということはありませんで、私ども、暴力団の武器庫も含めまして、一般市民の間に潜在しております違法銃器の取り締まりにも全力を挙げてまいりたいというふうに考えております。

土井(亨)委員 ぜひよろしくお願いいたします。

 一点だけ、先日、青森県に北朝鮮の脱北者が沿岸に漂着をいたしました。幾ら海上保安庁等々頑張っていらっしゃると言われても、日本という国はまさしく、小船であったり、いろいろな意味で漂着できる国なんだなというのを私改めて認識したところなんですけれども、ぜひ、そういう事例を踏まえて、現実をどういうふうに考えられているか、お話しいただければと思います。

石橋政府参考人 国内で押収される銃器の多くが外国製である実態を踏まえますと、水際での摘発、非常に重要な課題であると認識しております。

 今回、海上保安庁として、青森県で発生した事案につきましては、洋上で小型船を発見できなかったことを真摯に受けとめており、今後、今回の事案を踏まえながら、水際における監視警戒態勢の強化に努めてまいります。

土井(亨)委員 ぜひその辺、水際対策、質問しませんということでお話ししましたので、よろしくお願いいたします。何か、そういう意味じゃだれでも漂着で日本に入れる、そういうものがあるうちは密輸入というのは常に頭にあるんだろうと思いますので、ぜひその辺も集中的にお願いしたいというふうに思っております。

 次に、今回の小型船も含めて、漁協やら市民の皆さん、民間の皆さんとの連携というのが私は大変重要だというふうに思っておりますし、やはりその地域地域によって民間の皆さんと連携しながら情報を素早くお寄せいただくということが大変大切だと思いますが、民間等の協力関係についてどのように対応されておりますか、ぜひお伺いしたいと思います。

米田政府参考人 では、警察におきます民間協力の関係をお答え申し上げます。

 まず、銃器に対する啓発といいますか広報、これを活発に行わなければならないということで、毎年、銃器犯罪根絶の集いというものを、これは特に銃という関係で関心の深い都道府県を選びまして開催をしております。それから、ストップ・ガン・キャラバン隊などの民間ボランティアとの連携、さらには、今、ほかの先生方が御質問の際にお持ちだったパンフレット等々で、まず一般にそういう広報をやっております。それから、銃器一一〇番ということで民間からの情報を受け入れているとか、それから漁業をやっておられる方等々に協力を求めて、その水際での情報も収集をするというところでございます。

土井(亨)委員 警察庁の対応というものはお聞きしましたけれども、推進本部としてこの民間等の協力関係というのをどう進めていらっしゃるか、お話しいただければと思います。

荒木政府参考人 銃器対策推進本部において毎年策定しております推進計画におきまして、六本の柱がございますけれども、その中の大きな柱といたしまして「国民の理解と協力の確保」を掲げております。

 先ほど警察の関係については御紹介がありましたけれども、そのほか、やはり民間の方から不審者情報、密輸入情報等をいただくということが大変重要でありますので、特に水際関係で、日本貿易会あるいは日本荷主協会などの外国貿易関係団体、あるいは漁協などの漁業関係団体、運輸関係団体、通関業者等々の業者に対しまして、そういった通報の要請等を行っているところであります。さらに、航空会社とか旅行会社等に対しましても、海外旅行者の銃器持ち込み防止の広報の協力要請を行っております。

土井(亨)委員 本当に、先ほど申しましたとおり、青森県の事例を見ても、やはり民間の皆さんの情報というのがいち早く問題の解決につながったというふうに思っておりますので、もっともっと、公的機関含めて、大きな機関だけではなくて、地元の漁協含めて、小さなそういう機関にも積極的に私は協力要請をしていただきたいというふうに思っております。

 けさの毎日新聞に「徹底的に銃の取り締まりをせよ」という投稿、これは下山さんという七十四歳の愛知県の方の投稿なんですけれども、長崎県や愛知県での事件を踏まえて、しっかり銃器対策、取り締まれという投稿の文なんですけれども、これを読ませていただいて、せっかく内閣の中に推進本部をつくって、十二年間も一生懸命銃器取り締まりを含めて頑張ってこられた、そういうものが国民の皆さんに余り知られていないのかなという思いをいたしました。啓蒙、広報活動というのは、やはりもっともっと重要だなというふうに思っております。

 そういう意味で、国民の皆さんに対して、この銃器対策、しっかり取り締まるんだということも含めて、広報啓発活動が十分行われてきたのかというような思いも持ちましたので、その辺、どうこれまで取り組んでこられたのか、そしてまた今後どういうふうな広報活動を推進していかれるか、お伺いをさせていただきたいと思います。

高市国務大臣 最近ちょっと、政府広報に関しましても、適正なコストで必要なことをということで、チェックの目もむしろ厳しいんですが、国民の命、安全にかかわることですから、これはやはり積極的な広報啓発をしなければならないと思います。

 例えば、テレビ、ラジオ、新聞等による広報や、ポスター、それからリーフレット、ビデオの作成配布などを行ってまいりました。特に新聞広報などは、枠組みがとても小さかったりして余り目立つようなものがつくれなかったと私は理解しておりますけれども、今後、銃器対策のさらなる施策検討のためのプロジェクトチーム、今検討中のところでございますが、さらに一歩踏み込んだ施策というものを今まとめておりますので、でき上がった、六月の末にまとまりました結果を踏まえて、国民の皆様にやはりお知らせをしていく、そして協力をしていただく。先ほど先生おっしゃったように、水際対策にも十分に協力をしていただく、細かい情報でも捜査機関にお知らせをいただく、そういった取り組みの一環としても、広報活動の充実を行ってまいりたいと思います。

土井(亨)委員 ぜひ努力をして、一生懸命取り組んでおられますので、多くの国民の皆さんにその努力というのを知っていただきたいというふうに思っております。

 警察庁では、こういう「NO!GUNS」という本当に見てわかりやすいパンフレットをつくられておりまして、ただ、やはりお金のかかることですから、余り一般の皆さんには配布できないんだろうというふうに思いますが、それこそ推進本部で、内閣挙げて取り組んでいるものでありますから、広報という、啓蒙活動という意味では、もう少し国民の皆さんにわかりやすく、取り組んでいる現実、またその決意というものを知らしめるためにも、ぜひしっかり取り組んでいただきたいというふうに思っております。

 若干早いのでありますが、重複する質問はすべてカットしましたので、時間的に余裕がありますが、これで終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。

河本委員長 次回は、来る十五日金曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時五十三分散会


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