衆議院

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第5号 平成19年11月2日(金曜日)

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平成十九年十一月二日(金曜日)

    午前九時三十九分開議

 出席委員

   委員長 中野  清君

   理事 江崎洋一郎君 理事 岡下 信子君

   理事 櫻田 義孝君 理事 萩生田光一君

   理事 村田 吉隆君 理事 大畠 章宏君

   理事 平岡 秀夫君 理事 田端 正広君

      赤澤 亮正君    飯島 夕雁君

      遠藤 宣彦君    大塚  拓君

      加藤 勝信君    木原 誠二君

      北川 知克君    河本 三郎君

      高市 早苗君    戸井田とおる君

      土井  亨君    中森ふくよ君

      西村 明宏君    藤井 勇治君

      泉  健太君    市村浩一郎君

      吉良 州司君    楠田 大蔵君

      佐々木隆博君    西村智奈美君

      石井 啓一君    吉井 英勝君

    …………………………………

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長) 泉  信也君

   法務副大臣        河井 克行君

   外務副大臣        木村  仁君

   内閣府大臣政務官     加藤 勝信君

   内閣府大臣政務官    戸井田とおる君

   内閣府大臣政務官     西村 明宏君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 荒木 二郎君

   政府参考人

   (警察庁生活安全局長)  片桐  裕君

   政府参考人

   (警察庁刑事局組織犯罪対策部長)         宮本 和夫君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 三浦  守君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 新保 雅俊君

   内閣委員会専門員     杉山 博之君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月二日

 辞任         補欠選任

  遠藤 武彦君     飯島 夕雁君

  河本 三郎君     北川 知克君

同日

 辞任         補欠選任

  飯島 夕雁君     遠藤 武彦君

  北川 知克君     河本 三郎君

    ―――――――――――――

十一月一日

 国家公務員の再就職状況に関する予備的調査要請書(平岡秀夫君外百十二名提出、平成十九年衆予調第二号)

は本委員会に送付された。

    ―――――――――――――

十一月二日

 憲法改悪に反対し、第九条を守り、生かすことに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第三八〇号)

 日本国憲法第九条を守り、日本と世界の平和に生かすことに関する請願(石井郁子君紹介)(第三八一号)

 憲法改悪反対に関する請願(高橋千鶴子君紹介)(第三八二号)

 同(志位和夫君紹介)(第四一三号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第四一四号)

 憲法の改悪反対、九条を守ることに関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第三八三号)

 同(志位和夫君紹介)(第三八四号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第三八五号)

 同(吉井英勝君紹介)(第三八六号)

 平和憲法の改悪反対に関する請願(笠井亮君紹介)(第三八七号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 銃砲刀剣類所持等取締法及び武器等製造法の一部を改正する法律案(内閣提出第五号)


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     ――――◇―――――

中野委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、銃砲刀剣類所持等取締法及び武器等製造法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣府大臣官房審議官荒木二郎君、警察庁生活安全局長片桐裕君、刑事局組織犯罪対策部長宮本和夫君、法務省大臣官房審議官三浦守君、外務省大臣官房審議官新保雅俊君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

中野委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。藤井勇治君。

藤井(勇)委員 おはようございます。自民党の藤井勇治でございます。

 本日は、貴重な質問の時間をいただきまして、本当にありがとうございました。お礼申し上げます。私は、きょう、このたびの銃砲刀剣類所持等取締法及び武器等製造法の一部を改正する法律案について質問をいたしますので、どうぞよろしくお願いをいたします。

 地域の皆さんが毎日平和で平穏に暮らせる、平穏に生活ができるということは、何といっても治安がよくなくてはなりません。私は、最近の日本の治安情勢は大変厳しい状況下にあると認識をしております。このような情勢のもとに、内閣の最重要課題であります世界一安全な国日本、これを復活させるために、真の治安再生に向けた強力な取り組みを推進していかなければならない、このように思っております。

 警察庁の資料によりますと、我が国では、平成十八年までの過去十年間で、銃器犯罪により二百十九人ものとうとい命が奪われておると発表されております。また、国内では八千丁を超えるけん銃が押収されたと記録されています。一方、近年は一貫して、けん銃の押収数や発砲事件、発生件数、死傷者数など、銃器事件は減少しておるという発表でございます。

 ところが、ことしに入りまして、東京や福岡での対立抗争事件、あるいは愛知県長久手における事件、さらには、この春、統一地方選挙の大変ショッキングな事件でありましたが、長崎市長銃撃事件、これらを初めとして、銃を使用した凶悪な事件が続発をしております。これらの銃器発砲の大半は、暴力団やその構成員により発生したけん銃発砲事件であると言われておりますが、まず最初に、これが本当に主に暴力団が起こしている事件なのか、これをお伺いいたします。

宮本政府参考人 警察庁で把握をしております本年九月末現在の銃器発砲事件発生状況でございますけれども、発砲件数が全体で四十二件、死傷者二十四名でございます。このうち暴力団員等によると見られる事件の割合は六九%、四十二件中二十九件となっております。

 昨年につきましては、五十三件発生をしておりまして、このうち暴力団員等によると見られるものの割合は六七・九%、五十三件中三十六件となっております。

藤井(勇)委員 わかりました。では、大半が暴力団員による事件ということでございますね。

 そこで、このような暴力団による事件を根絶するためには、取り締まりの一層の強化はもちろんでございますが、厳しい制裁が必要であると思います。今回の法改正の最大の柱は、暴力団に対する罰則の強化策、そして、現行の自然人に対する罰金刑では最高額三千万を科すことができるという組織的・不正権益目的加重罪を新設されておりますが、この組織的・不正権益目的加重罪を新たに設定された理由について、説明をまずお願いいたします。

片桐政府参考人 お答え申し上げます。

 今答弁ございましたように、けん銃発砲事案の大半は暴力団である。その中身を見ますと、対立抗争の中で組織的に使われましたり、また、縄張り等の不正権益を維持、拡大するために使われたりといった場合が多いわけでございます。

 そこで、こうした暴力団のけん銃発砲事案の特性にかんがみまして、けん銃の発射罪及びその準備行為ともいうべき所持罪について、組織的にまたは不正権益目的で行われた場合について刑を加重することといたしまして、懲役刑を引き上げますほか、高額の罰金刑をあわせて科することができるようにして、その抑止を図ろうというものでございます。

藤井(勇)委員 わかりました。

 先ほども指摘したのでありますが、近年は、銃器を使用した事件については、発生件数や検挙件数ともに減少していると聞いております。そんな中で、特に目立ちましたのが、先ほども申し上げました長崎市長射殺事件等の事件が何件も発生した、それが今回の法改正の背景であると思います。銃刀法については、これまでも罰則の引き上げを中心とした内容で法改正を行ってこられましたが、まず、その効果はあったんでしょうか。また、今回重罰化することにより、本当にその抑止効果はあるのか。この法改正の実効性について、国家公安委員長の見解を伺いたいと思います。

泉国務大臣 御指摘をいただきましたように、平成三年、五年、七年に、当時の銃器情勢を踏まえまして、銃砲刀剣類所持等取締法、関係法令を改正させていただきました。

 具体的には、平成三年に、けん銃部品の所持及び輸入の禁止、けん銃等の密輸入予備罪の新設をお願いいたしました。五年には、けん銃等の加重所持罪、けん銃等の譲り渡し、譲り受け罪、自首減免規定の新設、七年には、けん銃等の発射罪の新設をお願いしてまいりました。これらの改正によりまして、改正前には年間二百件以上発生いたしておりました銃器発砲事件が、改正後には、平成七年には二百件を切る、昨年は五十三件まで減少してまいっておるわけであります。

 これらの情勢を踏まえますと、一連の法改正によりまして、銃器犯罪対策、とりわけ銃器発砲事件の抑止に一定の効果があったのではないかと考えております。

 今回の改正につきましても、暴力団等によるけん銃事犯の特性に着目した重罰化、経済的打撃を与えるための罰金刑の引き上げなどを内容とするものでございまして、暴力団構成員等を中心に敢行されるけん銃事犯に対して一定の抑止効果がある、このように考えておるところでございます。

藤井(勇)委員 わかりました。

 今回の法改正も、重罰化するという法改正がどうぞ引き続いて実効性のあるものになるよう、大いに期待をしておりますので、よろしくお願いいたします。

 そこで、この銃刀法の罰則の強化もこうして必要なんでありますが、法律を有効に活用することができなければ銃器犯罪を根絶することはできない。暴力団対策法施行前には暴力団同士の対立抗争が頻繁にありまして、そのころは組員一人に一丁のけん銃があると言われていましたので、暴力団の手元には現在でも数万丁のけん銃が隠匿されているのではないかと思われます。最近は、けん銃の隠匿方法が非常に巧妙になったということであります。これらの銃器を摘発する捜査体制や捜査方法も、あわせて構築していかなければならないと思います。

 そこで、今度の法改正の実効性を確保するために、警察における暴力団銃器、けん銃取り締まりの体制はどうなっているのか、この体制についてお伺いいたしたいと思います。

宮本政府参考人 警察庁におきましては、平成十六年四月に組織犯罪対策部を設置いたしまして、また都道府県警察におきましても組織を改編して、これまでそれぞれ異なる部門でありました暴力団対策、薬物・銃器対策、来日外国人対策、こうしたものを一体的に推進いたしまして、戦略的な取り締まりによる犯罪組織の弱体化及び壊滅を図っているところであります。

 こうしたことによりまして、暴力団対策部門と銃器対策部門、これとの間で情報の共有化等の連携強化が図られ、組織的管理に係るけん銃の連続的な摘発でありますとか暴力団が管理する銃器の摘発を端緒といたしまして、暴力団の壊滅がなされるなどの成果を上げているところであります。

藤井(勇)委員 どうぞ、警察の緻密な捜査体制あるいは適切な捜査手法で、暴力団に対して万全のけん銃取り締まりの体制を組んで効果を上げていただきたいと思います。

 さてそこで、銃器犯罪の根絶を目指すことは当然であるわけでありますが、銃器犯罪の根絶のためには、これに深くかかわっている暴力団に対する徹底した取り締まりが必要であります。そこで、暴力団犯罪対策について伺いたいと思います。

 一言で暴力団と言いましても、フロント企業とか舎弟とか何々一家等、いろいろな呼び方があるようでございますが、警察庁の暴力団という概念はどんなものなのか、お尋ねをいたします。

宮本政府参考人 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律、いわゆる暴力団対策法と言われるものがございまして、この法律によりまして、「暴力団 その団体の構成員が集団的に又は常習的に暴力的不法行為等を行うことを助長するおそれがある団体」、このように定義をいたしております。

 なお、暴力団のうち、一定の要件に該当するものにつきまして、この暴力団対策法に基づきまして、都道府県公安委員会が指定暴力団として指定することとされております。

藤井(勇)委員 わかりました。

 それで、現在、警察においてどのくらいの暴力団を指定暴力団として指定しているのか、また、その構成員は現在何人くらいいるというふうに把握されているのか、人数を教えていただきたいと思います。

宮本政府参考人 まず、暴力団につきましては、平成十九年十月末現在で二十一団体が指定暴力団として指定をされております。十八年末現在の数字でございますが、暴力団の構成員数、これは約四万一千五百人でございまして、その九四・二%に当たります約三万九千百人が指定暴力団の構成員であります。

藤井(勇)委員 二十一団体四万一千五百人、かなりの数の暴力団の構成員がいるということでございますね。

 そこで、今回の銃刀法は、高額の罰金刑を科することができて、暴力団の不法収益を剥奪する、そして経済的に打撃を与えることによって暴力団を弱体化させる、こういうねらいがあると思われます。暴力団の収入源、みかじめ料とか覚せい剤の密売とか、いろいろ考えられるようでございますが、暴力団の経済的基盤は今どのようなものがあるのか、これをちょっと教えていただきたいと思います。

宮本政府参考人 暴力団の資金獲得活動についてでございますけれども、今御指摘の、覚せい剤の密売でありますとか、また恐喝、賭博、のみ行為といった行為、伝統的な資金獲得活動と言っておりますが、こういったもののほか、強盗でありますとか窃盗、詐欺といった各種犯罪による資金獲得を行っておるところであります。また、暴力団は、暴力団の威力を示しまして不当に金銭等を要求する民事介入暴力でありますとか企業対象暴力、さらに行政対象暴力といった資金獲得活動も行っております。

 加えまして、暴力団は、みずから経営に関与する企業を通じて、または企業と結託をして、建設でありますとか不動産、金融、こういった各種事業活動に進出するなど、一般の経済取引を装いながら資金獲得活動を行う動きを強めているところであります。

藤井(勇)委員 暴力団の不法な経済活動、これがさまざまあるようでございます。この暴力団の巧妙な経済活動に対しては、今後とも厳しく監視をしていく必要があると思います。

 さて、こうした暴力団に対して、市民の安心、安全を確保するために暴力団の壊滅が必要不可欠であるわけでございます。そこで、暴力団の壊滅を目指して、今後の暴力団対策に向けた大臣の決意をお伺いしたいと思います。

泉国務大臣 暴力団の違法な実態は本当に社会の害悪であるという認識を持っておりまして、また特に最近の暴力団は、関係企業を利用した資金獲得活動を展開する、表づらは別として裏では大変ひどいことをやっておる。しかも、いわゆる潜在化、不透明化の度合いを強めておるということが実態であると思っております。

 このような暴力団に対しましては、資金獲得犯罪に対する徹底した検挙、暴力団対策法の的確な運用はもとよりでございますけれども、犯罪対策閣僚会議の場を活用した、関係省庁が連携した暴力団排除対策を進めてまいりたい、このように思っておりまして、今回の法案改正等によりまして、暴力団の資金源に打撃を与え、その壊滅に向けて全力を挙げてまいりたいと思っておるところでございます。

藤井(勇)委員 大臣の暴力団の壊滅に向けた決意をいただきました。どうぞその揺るぎない決意で暴力団対策に臨んでいただきますよう、期待いたしております。

 そこで、国民が安心して暮らせる社会は、国民生活の基本であります。これらが揺らいだのでは、いかなる政策も実現することが困難であります。国家公安委員長は、先日の所信の中で次のように発言をされております。治安再生の曙光が見え始めているものの、暴力団等によるけん銃を使用した凶悪事件等、市民生活に大きな不安と脅威を与える事件が相次いで発生するなど、依然として厳しい情勢にあると述べられました。

 したがって、暴力団や来日外国人等による組織犯罪に対する強化を図り、治安が間違いなく回復したということを国民の皆さんが実感できるようにしなければならないと思います。世界一安全な国日本、この実現に向けて今後どのような取り組みを進めていくのか、実現に向けた大臣の決意をお聞かせ願います。

泉国務大臣 御指摘をいただきましたように、刑法犯認知件数というような一つのメルクマールを見ますと、今日までの政府挙げての努力の結果、明るさが見えてきておるということも言えるかと思います。しかし、内容を見ますと、まだ社会を震撼させるような少年による事件あるいは暴力団の事件、こうしたものが多発しておるということでございますし、世論調査を見ましても、日本は安全だと思っていただいた時代から大きく後退しまして、治安が悪くなってきておるという不安を抱いておられる結果が出ておるわけでございます。

 そこで、この治安再生の中心的役割を担うのが警察の責務であるということを強く意識しておりまして、今後とも、世界一安全な国日本の復活を目指して、もろもろの施策を着実に進めていきたいと思っております。

 特に、二十九万の警察官一人一人の使命感、社会の安定に掲げていかなければならない使命感をしっかりとよみがえらせて、そして、踏切の中に飛び込んで人命を助けた警察官等の動き、こうしたかがみとなる警察官を顕彰しながら、一体となって取り組んでまいりたいと思います。

藤井(勇)委員 ありがとうございました。

 ぜひとも、世界一安全な国日本、この実現に向けて、大臣のその決意のもとに警察も国民も一体となって、あらゆる暴力団の犯罪を撲滅していく必要があると思います。

 最後に、もう一問質問させていただきますが、国民から信頼される警察のあり方についてお伺いいたします。

 何よりも、市民の皆さん、国民の皆さんから信頼を得た警察でなければ、国民の皆さんから真の正しい情報を得ることはできないと思います。どんなに警察官の数をふやしても、どんな近代的な装備を整えても、市民の皆さんから正しい情報が入らなければそれらは全く機能しないと思います。

 今大臣もおっしゃいましたが、全国の警察職員が二十八万九千八百八十一人おられるとお聞きいたしました。職員の皆さんの毎日の御苦労に心から敬意を表するわけでございますが、同時に、常に国民の皆さんから信頼される警察人でなければ職務は遂行できないと思います。

 そこで、改めて大臣に、国民の皆さんから警察への信頼に向けた大臣の決意をお聞かせ願います。

泉国務大臣 今先生から御指摘いただきましたように、国民の信頼なくして警察行政の遂行は難しい、このように思っておるところでございまして、国民の信頼を基礎として初めて各警察官の努力が実を結んでくると考えております。

 これはやや古い事柄でございますけれども、平成十二年八月に、それまでの幾つかの警察に対する世の批判を受けまして、警察改革要綱というものを作成させていただきました。これに掲げられた国民の信頼を回復するために、今日までも各般の努力に努めてきたところでございますけれども、なお一部の警察官による、あってはならない事件が続いておるのが実態でございます。これはおわびをしなきゃならないと思いますし、本当にまじめに努力をしている多くの警察官に対しても、申しわけないというのが私の率直な気持ちでございます。

 そういうことを考えまして、国家公安委員会としましても、引き続き、警察に対する国民の信頼を回復するために、決意と今申し上げましたような信念を持ちまして警察改革を推進し、警察庁を指導してまいりたいと思っておるところでございます。

藤井(勇)委員 ありがとうございました。

 泉大臣の非常に謙虚な国民に対する姿勢に敬意を表します。ぜひ、世界一安全な国日本、この実現に向けて、二十九万人の職員の皆さんと国民が一体となって秩序ある国づくりをしていくということに引き続いて御努力をいただきたいと思います。

 ちょっと早目でございますが、質問事項が終わりましたので、私の質問はこれで終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

中野委員長 次に、楠田大蔵君。

楠田委員 民主党の楠田大蔵でございます。内閣委員会では初めての質問になりますので、よろしくお願い申し上げます。

 まず、民主党としては初めてのこの銃刀法改正の質問でありますので、改正の目的、意義について、改めて簡単にお答えいただければと思います。

泉国務大臣 最近、けん銃を使用した凶悪事件の発生が相次いでおるわけでありまして、特に本年に入りまして、対立抗争に伴う発砲事件のほかに、けん銃を使用した人命被害を伴う凶悪事件が連続して発生するなど、極めて憂慮すべき状況に立ち至っております。

 これらの発砲事件は、その大半が暴力団構成員等によって発生しておるものでございまして、また、けん銃の発砲は、暴力団同士の対立抗争のみならず、一般社会において暴力団が各種資金や利権をもたらす不正権益を維持、獲得するための手段として行われている傾向がうかがわれるところでございます。

 今回の改正は、このような情勢を踏まえまして、けん銃等事犯に対する抑止力をさらに高めるため、暴力団等によるけん銃事犯の特性に着目した重罰化、経済的打撃を与えるための罰金刑の引き上げ等を内容とするものであり、構成員等を中心に敢行されるけん銃事犯に対して一定の抑止効果が得られるものと考えて、この法律案の改正をお願いしておるところでございます。

楠田委員 けん銃への抑止力というのが主だというお話だったと思いますが、その言葉に尽きるのかもしれませんが、具体的目標、何か数値的な目標というものはおありでしょうか。

泉国務大臣 今回の改正は、今申し上げました背景のもとで緊急に必要と思われ、かつ、立法上可能と考えられるものを盛り込ませていただいておりまして、とりわけ暴力団等の犯罪組織にけん銃の使用を抑止させる一定の効果があるということでお願いを申し上げておるわけでございます。

 これによって、組織的形態または不正権益目的で敢行される事犯の取り締まりの強化、重罰化による長期隔離、先ほど申し上げました罰金刑による経済的打撃、こうしたことを通じて犯罪組織の弱体化、壊滅を図るということで、これまで再三にわたる法改正の中で暴力団によるけん銃によるこうした犯罪が減少しておるのをさらに加速させる、あるいは、これまでなかなか我々の手にかからなかったような隠れた犯罪等に対して、今回の改正を通じてより取り締まりを強化するということをねらっておりまして、具体的な数値、そういうものを掲げておるわけではございませんが、全体的に抑制をしていくというのをねらいにしておるものでございます。

楠田委員 そういう質問をさせていただきますのも、けん銃取り締まりの対策本部、銃器対策推進本部であるとか、ことし改めて、銃器対策の更なる施策検討のためのプロジェクトチームというものも新たに政府内につくられて、けん銃犯罪はもちろんでありますけれども、こうした悲劇が起こらないような総合的な対策をとるべきというそもそもの話があったと私は認識をしておりますけれども、結果的に出てきたのが、こうした銃刀法の改正だけであります。しかも、その中でも非常に一部の改正にとどまってしまったのではないか、そういう認識を私はしておるものですから、改めてそうした話をさせていただきましたが、それは後々の質問の中で明らかにしてまいりたいと思います。

 銃器犯罪に関する現在の情勢認識等も既にお話しいただいたところでありますが、事件という形での発生件数であるとか認知件数であるとか、そうしたものはむしろ年々減り続けているということであります。しかし、では実際のところ、国内に潜在するけん銃というのは本当に減っているんでしょうか、それともふえているんでしょうか。これはどう思われますか。大臣から、一般的な印象でいいですから。

泉国務大臣 私どもが数値の上でけん銃にかかわるものについては減ってきておるというのは、数値上の具体的な数値でございます。しかし、恐らく潜在化したけん銃は、むしろふえておることもあり得るのではないか、こういう思いを持っております。今回の法改正も、そうした認識の中でお願いを申し上げておるところでございます。

楠田委員 正直、正式な数というのはわからないから苦労しているということでしょうが、そうした印象の中で、そうした事件の減少とは裏腹に、自分のすぐそばにも銃器の魔の手が忍び寄っているのではないかという不安感は、むしろ強くなっているんじゃないかと思うんですね。この点に関しては、何かしら理由というのはお感じになられますか。一般的な印象で結構です。

泉国務大臣 先ほど申し上げましたけれども、発射制限違反の検挙数だけを見ますと、決してけん銃によるものがふえておるというわけではございませんが、しかし、過去五年間におけるけん銃の押収丁数は平均六百十六丁でございます。これらの大半が外国製であり、昨年押収したけん銃の中で多いものはアメリカ、フィリピン製などでございまして、直接または他国を迂回して我が国に密輸入されておる。こういうことで、暴力団が隠し持つ銃が非常に巧妙化しておるという実態がうかがわれるのではないか。数値と、それから今申し上げましたような押収丁数、暴力団がどれくらい銃を保有しておるかというようなことから考えますと、大変複雑に、あるいは潜在化しておるということでございます。

楠田委員 非常に質問が漠然としていますので、仕方ないところもあると思います。

 私自身が、こうして改めて最近の数値を見ていましてふと思いましたのが、平成十九年の八月付の警察庁組織犯罪対策部薬物銃器対策課作成の「平成十九年上半期の薬物・銃器情勢」というものですが、皆さんもそれぞれ調査室等の資料で見られていると思いますが、これを見ておりまして、死傷者にしろ事件にしろ、数は減っているんですが、先ほどの最初の質問でもありましたように、暴力団等による全発砲件数というのは、割合としては七〇%前後、七割前後ということで、やはり多くが暴力団等による発砲事件である。

 しかし、その死者に限って見ますと、平成十四年の数は死者二十四人中、暴力団等が十九人、十五年でも三十五人中、暴力団等が二十四人ということで、暴力団以外の市民の被害者というのは二、三割であったところでありますが、平成十七年に四割、昨年とことし上半期に至っては、実に半分が市民の死者になっているという数値が実際あるというふうに感じています。

 いわゆる巻き添え被害、何の罪もない市井の市民が事件に巻き込まれるケースというのが、実はこの数年ふえてきているのではないか。そういうところから、まず私自身は、そうした恐怖感、不安感というのが自分たちにも及ぶのではないか、そうしたことを感じているところであります。

 具体的な話をしますと、四月の長崎市長の銃撃に関しましては、民主主義への重大な挑戦でありますので、これは我々も与野党を超えて闘っていかなければならない、当然でありますが、私の地元、福岡でも、八月に道仁会の会長が射殺されるという、いわゆる典型的な暴力団による発砲事件も起きました。大臣も吉井出身ですから、組織についてはよく御存じだとは思いますが、対立する暴力団の若手組員が相手の組長を銃撃するというもので、しかも、人通りが多い夕方の時間帯にマンションが建ち並ぶ住宅街の一角でこの事件が起こった。即死であったということですが、近くの小学校では夏祭りも開かれていたということで、こうした時、所を選ばない犯罪、発砲件数というのがふえているのではないか。

 そうした観点からいえば、今回の法改正以上に具体的また総合的な対応というのも必要になってくるんじゃないか、そうした認識も持っているわけです。そうした観点から、具体的な中身に入ってまいりたいと思います。

 まず、新しく加わります三十一条二項の関係でありますが、組織的・不正権益目的けん銃等発射罪という名称もつけられております。「団体の活動として、当該違反行為を実行するための組織により」云々という内容ですが、具体的にはどのような事案を想定しているか、これをお答えください。

片桐政府参考人 お答え申し上げます。

 今回、新設をお願いしております銃刀法の、今御指摘の三十一条第二項の組織的けん銃等発射罪でございますけれども、これは、けん銃等の発射行為が団体の活動として、当該違反行為を実行するための組織によって行われたときに成立するものでございます。そして、この「団体の活動」とは、「団体の意思決定に基づく行為であつて、その効果又はこれによる利益が当該団体に帰属するものをいう。」ということとされております。

 こういった組織的発射罪の適用が想定されるケースの一例としまして、例えば、暴力団の組長の命令によって、複数の組員から成る犯罪実行組織が、対立する暴力団の組事務所に向けてけん銃を発射するといったようなことが考えられるわけでありますけれども、この場合に、けん銃等の発射行為が、暴力団の団体としての意思決定を行う権限を有する組長等の決定に基づくものであることが必要でございまして、また、これによって、例えば対立する暴力団の活動を牽制したり、または、みずからの権益を維持、拡大するなどの効果が生じることが必要でございます。

楠田委員 続きまして、そうしますと三十一条三項の、不正権益を得させ、または維持し、もしくは拡大する目的で云々というところは、どのような事案を想定されていますか。

片桐政府参考人 不正権益と申しますのは、第三十一条第三項でございますけれども、「団体の威力に基づく一定の地域又は分野における支配力であつて、当該団体の構成員による犯罪その他の不正な行為により当該団体又はその構成員が継続的に利益を得ることを容易にすべきものをいう。」とされております。

 典型的には、暴力団が一定の地域において、威力を背景として、飲食店等からみかじめ料の獲得によって継続的に利益を得ている場合における暴力団のいわゆる縄張りがこの不正権益に当たるということでございます。

 そしてまた、この不正権益獲得等のための発射行為としまして想定される事案としましては、例えば、暴力団組員によるみかじめ料の要求を拒否した飲食店に対しまして、これを翻意させるために、みかじめ料徴収に係る当該暴力団の不正権益を維持するために組員がその飲食店に向けてけん銃を発射したといったような事案が考えられます。

楠田委員 そうした事案を具体的に例として出していただきましたが、先ほど申しました私の地元の事件であります。

 現時点で、目撃された二人のうち実行犯と目される一人だけが出頭して捕まっているという状況で、背後関係はこれから調べていくという話でありますが、まず、三十一条二項の先ほどの話ですと、なかなか、団体の意思決定があったかというのは非常に認めづらいのではないかという点。あと、複数の実行団があったという観点からすると、一人がこうした犯罪を行っていれば今回の改正は当てはまらないのではないかという懸念を持ちます。

 また、三項の関係にも、こうした観点からいうと当てはまらないのかなという印象でありますけれども、そうした具体的な、単独犯による、しかもいわゆる場当たり的な行動というのを装っての犯行であれば当てはまらないのではないかどうか、この点に関しての見解をお聞かせいただけますか。

片桐政府参考人 確かに御指摘のとおり、単独犯の犯行であれば今回の、いわゆる犯罪の実行組織とは言えませんから、これには該当しないのでありますけれども、ただ、従来の暴力団の犯行形態を見てみますと、単独という事案は少のうございまして、むしろ一定の組織、複数の人間が集まって役割分担のもとに発射行為を行うというケースが多いので、その点に着目して今回はこういった類型を設けたということでございます。

楠田委員 具体的な事案はなかなか難しいのかもしれませんが、では、例えば二人組で一人は運転をしていたという話でも、先ほどの二項は当てはまるという考えでよろしいでしょうか。

片桐政府参考人 個別具体のケースに応じていろいろ事情が違いますので、一概には申せませんが、一般的には、例えば、お互いにその発射行為をしようという共通の意思があって、運転している行為が発射をする行為の人間を助けるという形にある場合には、これは組織ということが言えるのではないかというふうに思います。

楠田委員 そのようなことを改めて具体的にお聞かせいただきますのも、今回の、どうしても地元の件ですから気になりますけれども、今なお、そうした抗争の中で、若い組員が実行するけれども、それに対しての背後関係はなかなか見出しにくい。そして、今回のケースもそうでありますが、一度逃亡した後、二カ月近くたってひょこっとあらわれるというようなことが起こっています。

 いわば、その間の中にさまざま利益考量もしながら、一人だけ実行犯が出頭すれば許されるような、また、けん銃自体ももう海に捨てたと言っておられるようですが、そうしたこと自体も、実際の次の犯行を防ぐということにはなかなかつながってこないのではないかなということを懸念するからこそ、そうしたことを具体的に聞いたわけであります。

 そうした中で、一つの根本的な対策方法としては、やはり発射罪や所持罪にも両罰規定を適用すべきという意見も強くあると認識しておりますが、今回それを盛り込まなかったのはいかなる理由でありましょうか。

片桐政府参考人 御質問の御趣旨は両罰規定という話でございますので、例えば暴力団の組長とかいう首領の責任をどう問うかというお話だというふうに理解いたしますけれども、組織として行ったような場合、または組織の不正権益を維持する目的で発射した場合には、通例は、一般的には、暴力団としての意思決定、首領の意思決定があったというふうに見るのが普通でございます。したがって、我々としてはその辺を視野に入れて、首領の責任を追及するという観点から捜査を進めていくということにやはりなるというふうに思います。

 ただ、御指摘のように、残念ながらその首領の責任まで行き着かない場合というのはもちろんあるわけでございまして、そういった場合に首領の責任をどうとらえるかということは、今回のこの改正に当たって我々も随分検討をいたしたのでございます。

 今御指摘のあった両罰規定についても、適用が可能かどうかということについてずっと検討をいたしたわけでございますけれども、ただ、その検討の過程で、やはり結論としましては、両罰規定というのは、一般の企業活動とか経済活動のような正当な業務を行っているところについて、その業務に関連して違法行為があった場合に、その違法行為を行った従業員に対する法人とかまたは事業主の選任、監督上の過失とかいうことに着目をしてこれを処罰するというものでございまして、そもそもが正業を前提にし、この正しい業務を行う人たちが違法行為をしないようにするということがその趣旨であるというふうな結論となりまして、したがって、暴力団にこの両罰規定を適用するということは難しいのではないかというふうな結論に至ったところでございます。

 ただ、しかしながら、今御指摘のように、では、その暴力団の組員のやった行為について首領が何ら責任を負わなくてもいいのかということは、これまた問題でございますので、その辺の問題意識を我々も十分持ちながら、今後、適切な法制のあり方も含めて検討してまいりたいと考えております。

楠田委員 時間も限られていますが、例えば刑法の教科書的なもので見ますと、この銃刀法のような特別刑罰法規上の犯罪であれば、合目的的な政策的要請の侵害の面が重視されるということも言えるのではないかと思いますし、また、平成十六年十一月十二日の最高裁判決で出ました、民事での使用者責任を暴力団の発砲事件においても認めた、そうした事例が出ております。

 この点におきましては、階層的に構成されている暴力団が、下部組織の構成員に対しても、同暴力団の威力を利用して資金活動をすることなどを容認していたということで、使用者、被用者関係が成立する。また、対立抗争でその構成員がした殺傷行為も、民法七百十五条一項の上で事業の執行につきされたものに当たるという判断も既にされているところであります。

 民法上、刑法上、違いがあるとはいえ、先ほどのお答えによる、正当な業務ではないので当たらないということは、最近の判例の中でも非常に成り立ちやすくなっているのではないかなという私の認識でありますが、この点はいかがでしょうか。

片桐政府参考人 お答え申し上げます。

 今、正当な業務と申し上げましたのは、両罰規定を適用する場合の問題でございまして、では両罰規定を離れてそれ以外の方法で何らかの刑事責任を追及する方法がないかというと、決してないとは言えないのではないか。ただ、それについてはやはり相当な工夫が要るのではないか。

 民事の場合にはああいう形で、使用者責任という形でもって責任が問われたわけでありますけれども、刑事責任の場合には、なぜその人間に責任を負わせるのかという根拠がなければならないということなのでありまして、したがって、その責任の根拠をどう求めていくかということについて、これからじっくり時間をかけて検討したいということでございます。

楠田委員 もう一つ判例を挙げれば、所持罪に対して共謀共同正犯が認められたという最高裁の平成十五年五月一日の、これは決定でありましたか、そうした事例も出てきているということでありますが、こうした中で、黙示的な意思の連絡、実行行為者との間に単なる意思連絡にとどまらない関係を有するということを証明するのは非常に難しい、こうした観点もありますので、やはりこの両罰規定の適用に踏み込むということこそが重要ではないかと私自身は強く感じております。

 こうした議論を聞かれまして、大臣、どのようにお感じになられましたでしょうか。

泉国務大臣 先ほど政府参考人からお答えを申し上げましたように、我々も、この事犯、事案に対して両罰規定があり得るのではないかという考え方を持ってまいりましたし、そうした議論を積み重ねてまいりました。しかし、これを今回の法改正の中に盛り込ませていただくにはもう少し時間が必要であるということで、これからも、組織犯罪対策の重要な事項であるということは認識をいたしておりますので、適切な法制のあり方も含めまして、関係省庁とも引き続き検討してまいりたいと思っております。

楠田委員 先ほど最初の方にも申しましたように、市民が巻き込まれるケースがふえている、そして、先ほど申し上げた事件のように、同じような事件も何度となく繰り返されるという状況でありますから、時間をかけてという余裕も正直ないのではないかという私自身の認識であります。

 そうした中で、今回、こうした事件が常々起こっている、もとから絶たなければならないという中で、総合的な方策という話をいたしましたけれども、きょう法務省の方にもお越しいただいていますので、せっかくお越しいただきましたので、刑事免責や捜査協力者保護等司法取引をすることで、事前に情報を仕入れて武器庫等を一網打尽にするという方策もやはり考えていかなければならないと思いますが、この点に関してはどうでしょうか。

三浦政府参考人 組織性、密行性の強い犯罪につきまして、現在の捜査方法では真相の解明が困難であるといった事犯に対する有効な方策ということで、御指摘のような刑事免責あるいは司法取引といったことの導入を含めまして、種々のものが考えられるところでございます。

 平成十三年に出されました司法制度改革審議会の意見におきましても、現状、従来の捜査、公判手続のあり方では犯罪情勢に十分対応し切れず、刑事司法がその機能を十分発揮しがたい状況に直面しつつあることから、新たな時代における捜査、公判手続のあり方を検討しなければならないというふうにされているところでございます。

 法務省といたしましても、このような制度の導入が我が国の捜査、公判全体に及ぼす影響などを踏まえつつ、犯罪情勢の変化、捜査困難化の実情に的確に対処して安全な社会を実現、維持するため、現在の犯罪あるいは犯罪捜査の実情を調査分析いたしますとともに、諸外国のこういった法制あるいは運用の実情を調査いたしまして、時代に即した捜査のあり方について検討を進めているところでございます。

 そういう意味ではまだ検討途中でございますが、引き続き、必要な検討、調査を行っていきたいと考えております。

楠田委員 時間も参りましたが、やはり今回の改正はまだ対応のスタートにすぎないと思っておりますので、これからのさらなる検討を頑張ってまいりたいと思います。

中野委員長 次に、市村浩一郎君。

市村委員 民主党の市村でございます。三十分いただきまして、議論をさせていただきたいと思います。

 私のきょう議論したいことをまず冒頭で申し上げますと、今回、銃の取り締まりの重罰化、厳罰化をさらに進めようということであります。ただ、これまでの経緯を見ましても、これだけではやはり足りないだろう、不十分である。やはり一方で取り締まりの体制をしっかりと強化していくということがないと、そういう両輪がないと実はうまくいかないということがきょう私が議論したいことでありまして、このことのテーマでいろいろと細かく議論させていただければと思っておりますので、よろしくお願いを申し上げます。

 まず、今回の改正の理由について、これをお尋ねしたかったんですが、先ほど楠田委員がお尋ねされていましたので、これは飛ばします。

 それで、前もお聞きしたんですが、そもそも今この日本に違法な銃がどれだけあるかということでございますが、これまでも警察の方からは、なかなか難しいな、正確にはかるのは難しいと。もちろん正確にということは求めていないんですが、大体ということでも難しいということではありました。

 ただ、いろいろな新聞報道等では、多分組員一人に一丁ぐらいあるんじゃないか、そして、全国の暴力団員は今約四万一千人、準構成員が四万三千人ぐらいいるのであれば、最低八万四千丁ぐらいはあるのではないかと推定されるということでありますが、警察庁の見解を改めてお聞かせいただきたいと存じます。

宮本政府参考人 お答えいたします。

 新聞報道などで暴力団組員一人に一丁というような説があることは承知をいたしておりますけれども、その推計根拠といったことはちょっと私どもわかりかねますので、これがどうかという判断はできかねますけれども、正直なところ、国内に潜在する違法けん銃の総数、それがどのくらいあるかというのは把握が困難であるのが現状であります。

市村委員 把握が困難であることは、大体常識的に考えて難しいだろうなと私も思います。ただ、一般国民からしますと、やはり、いつどこでどんな事件に巻き込まれるかということで、不安が増大しているというのが現状じゃないかと私は思うんです、国家公安委員長。

 例えば、二月に住吉会傘下の組織幹部が何者かに頭部を撃たれて死亡したとか、この四月には山口組系傘下の組織幹部が長崎市長を銃殺したとか、五月には愛知県長久手において元暴力団の組員が警察官や家族に発砲し機動隊員が死傷したとか、それから八月に道仁会会長が福岡市で何者かに頭部を撃たれ死亡したとか、同じく八月には、立川市の警察官が女性を射殺し、みずからも、これは警察官ですよね、けん銃で自殺するとか、九月には元暴力団組員宅に警察官が捜査のため入室しようとしたところ発砲されるとか、同じ九月には、車両強盗を追い詰めたところ、暴力団員であって、銃を発射され警察官が負傷したことがあったとか、十月には東京で元暴力団組織幹部が何者かに銃で撃たれて死亡したとか、もうことしをとっただけでも、これだけ銃犯罪が日常的に、身近なところで起こってしまうような国にこの国もなっているんですね。

 極めて不安な、いつどこで自分も撃たれるかわからないということを、政治家はそれぐらいの覚悟をしておかなければいかぬと私は思っていますが、本当に一般の市民がどこで撃たれるかわからないというような不安を抱えながらいなくちゃいけないというような雰囲気もどうも出てきてしまったというときに、では、一体この国に銃がどれだけあるかということを本当はある程度把握していくことも必要なのかなという気もしております。

 ただ、難しいことはもう今まで警察庁の皆さんがおっしゃっているとおりだとは思いますが、そこの部分を、国民の不安というものに対して、やはりある程度それを、今これだけあるようだと推定されるけれども、警察庁を挙げて取り締まりをしっかりとしていくんだから皆さん安心してほしいし、また、後から議論になりますが、情報提供してほしいということになるべきだと思いますが、せっかくですから公安委員長、ちょっと一言いただければ幸いです。

泉国務大臣 御指摘のように、我々が全体の銃の存在数を把握するということは大変難しいわけでありますが、発生した事件の内容、それから件数等から見ますと、相当数のものがあると予測されるわけであります。ですから、そうした事態で国民の皆さんが不安を抱いておられる、ますます強く抱いておられることは、私どもも十分承知をいたしております。

 そこで、今回の法案の改正、そして従来から取り組んでまいりました警察力を総動員いたしまして、そしてまた関係省庁と一体となってこの銃対策を進めてまいりたい、このように思っております。

市村委員 また、最近の銃犯罪を見ますと、必ずしも暴力団絡みばかりじゃないということでもあると思います。押収されたけん銃の、暴力団絡みかそうじゃないかというのを見ますと、最近の傾向として半々ぐらいになってきているという傾向なんですね。ということは、暴力団以外の方、これは準組織構成員が入るのかどうかわかりませんが、要するに暴力団以外のところにも銃が蔓延といいますか、行っているんじゃないか。

 後で議論しますけれども、昨今、インターネットで銃が売買されている可能性もあるということの中で、一般の人たちに、いわゆる暴力団じゃない人たちにも銃が渡るという可能性も指摘されている。そういう中で今回の法改正というのは、主に組織、団体ということで、暴力団を対象にしたような話でもありますが、実はそこだけじゃなくて、この国は暴力団対策法というまれな法律もある国なので、今までもこれはまた別に議論しておりますけれども、暴力団以外のところにも銃がある程度浸透し始めているということにかんがみますと、暴力団だけのことで本当にいいのかなということを含めて検討せざるを得ないと思いますが、これは御見解を警察庁からお伺いしたいと思います。

宮本政府参考人 御指摘のとおり、押収した銃器、暴力団以外というものもかなりございますけれども、基本的に、やはり発砲事案を起こしておりますのが相当数暴力団であるということ、それから、これは基本的には違法銃器、違法けん銃、密輸に当たるものだろうと思いますけれども、こういう密輸、密売組織というのは、基本的に暴力団ないしはこれと密接な関係を持つものであろうと思いますので、こうした違法けん銃の対策ということでいいますと、暴力団対策というものを中心に据えるのが適当であろうかと思っております。

市村委員 確かに、実際使っている部分はそうだということであれば、全体的にすぐできるかどうかということも含めて考えれば、今の警察庁の対応というのも、まずは最も危ないところからということであれば理解はできますが、しかしながら一方で、先ほどから私が指摘申し上げているように、必ずしも暴力団だけじゃないというところもやはりこれから踏まえて考えていかないと、極めて日本も銃社会に実はなりつつあるのではないかという危惧、先ほど国家公安委員長も、実は潜在化している、もっといろいろな銃がたくさんふえているんじゃないかということもおっしゃっていましたし、そういうことを考えていくと、必ずしも暴力団だけでいいのかということであります。そのことを今から議論します。

 それで、銃の押収量を今調べてみますと、平成七年度で千八百八十丁でありました。しかし、今は、昨年、平成十八年度におきましては四百五十八丁になっているんですね。この原因はどこにあると考えていらっしゃいますでしょうか。

宮本政府参考人 平成七年以降、けん銃の押収量、減少いたしております。これは、特に暴力団員等によりますけん銃などの違法銃器の隠匿方法、これは最近の検挙事例などから見ましても極めて巧妙化いたしております。さらに、暴力団自身も、組織防衛と申しますか、またけん銃に関する情報管理などを厳しくして、そういった情報の入手が困難になってきておる。そういった環境にあるのが実情でございまして、こういった状況が押収丁数の減少に反映しているのかと考えております。

市村委員 今から議論しようということをまた先取りした形で言っていただいたような雰囲気もありますが、まさにこれが、けん銃が減っているから押収量も減っているという相関関係だったら、これはいい話なんですね。ところが、先ほどから国家公安委員長もおっしゃるように、どうもけん銃が潜在化しているんじゃないかと。結局、重罰化によって、とにかく隠ぺいというか、隠すことをもっとやらなくちゃいけないとなってきて、しかも、今もおっしゃったように、情報提供者が少なくなってきた。情報が少なくなってきて、押収量が減っていると。

 しかし、実際はけん銃は潜在的にふえてしまっている可能性があるということであれば、重罰化ということで今やろうとしていますが、さらにこの重罰化を進めることによって、もっと潜在化させようと。大変厳しい状況になってきますから、これはちょっとたまらぬぞということになると、もっと隠すことに一生懸命になってきて、さらにまた情報提供もないということになると、さらにまた押収量が減っていくという可能性もあるというふうに私は思いますが、御見解をお聞かせいただきたいと思います。

片桐政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の銃刀法改正は、暴力団等によるけん銃事犯の特性に着目しました重罰化、そしてポイントは経済的打撃を与えるための罰金刑の引き上げということを行うものでございまして、これによって、摘発されたとすれば非常に大きなダメージを受けるというリスクが高まるということで、結果として暴力団によるところのけん銃の発射ばかりでなくて、持つこと自体についても抑制をすることにつながっていくんではないかということを我々期待をしているところでございます。

市村委員 ありがとうございます。

 十月十七日付ですから最近の報道の中にも、暴力団関係者に取材をしたところ、確かに最高三千万円の罰金は脅威である、懲役も最低五年は厳しい、配下の者が有罪になれば、生活の面倒等は見るであろうが工面が相当な負担になるということを言いながら、一方で、警察は三千万払う覚悟で抗争に銃を使わせる組織はないと考えているだろうが、どうしても消さなければならない者がいる場合、配下組員など使わず、外部ヒットマンを使ったり、けん銃のかわりに刃物を使わせると指摘するということでありまして、結局、これは、警察庁が今考えているような抑止効果が本当にあるのだろうかということ。

 要するに、こっちも考えればあっちも考えるわけでありまして、銃を使わなくて刃物でやってやるわ、こうなってくるのではないかという話になった場合、この効果がどうかということも考えられるんですが、これについての御見解を聞かせていただきたいと思います。

片桐政府参考人 確かに、そういう報道の記事を私も拝見いたしました。ただ、今回の改正によって、物すごく重い、相当に重い懲役刑、また、罰金最高額三千万というふうな極めて重い刑罰が科せられるということになりますので、いずれにしても、やはりそういった犯罪行為を犯すことについては、これを控えるという形につながっていくのではないかというふうに我々は考えております。

市村委員 これまでは、今回の厳罰化というのが果たして本当にそれだけで効果があるのかどうかということを議論させていただきました。これからは、先ほど冒頭に申し上げましたように、厳罰化と同時に、やはり一方で取り締まり体制の強化ということが私は必要じゃないかということを御指摘申し上げましたが、それについてちょっと議論させていただきたいと存じます。

 実は、まず平成四年の改正、重罰化の背景に何があったかといいますと、当時、金丸信自民党副総裁が講演中に発砲されたということがありまして、それから警察当局もかなり力を入れて銃の取り締まりをということになったという背景があります。このときは、警察庁挙げての体制づくりをしようとされたという経緯がどうもあったようであります。例えば、銃器や暴力団とは無関係の公安部門の情報、行動確認要員などを銃器捜査に投入したとか、要するに、このときはこういう事件があって、やはりそういう強化をしたということでその年から飛躍的に押収量が伸びているわけです。

 だから、厳罰化だけではなくて、やはり一方でそういう取り締まり体制の強化ということが伴わない限り、単に潜在化させるような方向に走り、かつ、銃を使わなかったら刃物でいいや、こういう話になってしまったら、これはもともと話が違ってきますので、意図したものとは違う方向に物事を進めてしまうということであります。

 このいわゆる取り締まり体制の強化につきまして、国家公安委員長の御見解をいただきたいと存じます。

泉国務大臣 御指摘のように、重罰化あるいは経済的なダメージを与えるということは、一方では大変この事案に対しては有効な手段だというふうに思っております。またさらに、取り締まる警察力の強化ということ、これは一方では大変重要な御指摘でございます。

 十六年の四月に、警察庁に組織犯罪対策部を設置いたしまして、都道府県警察においても組織を改編して取り組んでまいっております。こうしたことによって、薬物・銃器対策とは異なる部門が行っていた暴力団対策、来日外国人対策を一体的に推進し、戦略的な取り締まりを行うことで犯罪組織の弱体化及び壊滅を図ってきたということでございまして、暴力団対策部門と銃器対策部門との間での情報の共有などの連携強化を図って、組織的管理にかかわる、いわゆる暴力団が持っておりますようなけん銃の連続的な摘発、暴力団が管理する銃器の摘発を端緒として暴力団の壊滅等がなされてきたと我々は一応評価をさせていただいておるわけですが、これからも、警察力の強化を一層進めていくということは、当然取り組まなければならないことだと思っております。

市村委員 ありがとうございます。

 例えば、銃器対策と薬物対策というのは結構似通っている部分がありまして、今、各部門が連携して、協力して取り組まなくちゃいけないということを国家公安委員長はおっしゃっていただきました。

 ですから、例えばそうした、同じように似通ったようなところがありますね。だから、暴力団は暴力団でいいとか、銃器は銃器でいいとか、薬物は薬物でいいとか、あとは、きょうは内閣府も来ていただいておると思いますが、要するに、銃器対策本部ができていますね、内閣府に。こういったところとの連携もどうなっているか。せっかくいろいろな部門で、これは大変重要な問題だということで銃器対策を行わなくちゃいけないということでやっているわけですが、どうもこれが、何かおのおのがやっているようではやはりもったいないですね。それこそ力を合わせるということが大切だと思います。

 これについては、内閣府はいらっしゃっていないかな、それでは、国家公安委員長、このことについて一言いただければと思います。

泉国務大臣 このことについては、前々内閣になりますか、大変この銃器対策を徹底すべきであるということから、内閣に銃器対策推進本部というものを設けて、銃器対策推進計画をつくって進めておるところでございます。

 具体的に幾つか対策として挙げておりますのは、法令の見直し、あるいは体制、装備資機材の充実、さらに水際対策の充実強化、民間協力の充実強化、こうした事柄を挙げて、内閣を挙げて取り組む、連係プレーを進めるようにということで、今、この方向に沿って努力をしておるところでございます。

市村委員 ぜひとも、内閣挙げて取り組んでいただきたいと存じます。

 一方で、最近の傾向としましてどんな傾向かといいますと、かつては警察というのは、ある程度暴力団とも、ある種どこかで内通しながら情報を得てきたという部分もこれはあったんです。ところが、この二年ぐらいの傾向を見ますと、これは私はいい傾向だと思いますが、警察も暴力団ときちっと対峙をしよう、こういう傾向になっております。

 しかし、その結果どうなったかといいますと、暴力団の間で三無主義というのがあるようでありまして、つまり、捜査員に会わない、組事務所に入れない、犯人や証拠を出さない、今暴力団の方ではこういう三無主義ということを傘下に徹底させている。すなわち、警察と暴力団が真っ正面に対峙している状況になっています。これはこれで私はいい傾向だと思います。ただ一方で、その結果どうなったかというと、以前暴力団からも得ていた情報が入らなくなったということで、さらに、けん銃のありかとかが非常にわかりにくくなってしまったということにもなってしまっているんですね。

 では、それを補うような情報収集能力というか情報収集体制といいますか、これは一体どうされているのかということを、おっしゃれる範囲でおっしゃっていただきたいと思います。

宮本政府参考人 確かに近年、暴力団側は組織防衛なり情報管理を強化いたしておりまして、情報収集が困難化しているところであります。警察といたしましては、こういった環境を打破すべく、さらなる情報収集体制の強化が課題でありますし、また、幅広い事件検挙を通じての情報収集ということも図っていかなければならないと思っております。

 そこで、そのため必要な情報収集なりなんなりの捜査技術の向上を図るべく、現場の警察官に対する職場訓練でありますとか職場教育、これらを行っているところでありまして、今後とも、指導教養を強化してまいりたいと考えております。

市村委員 お願いします。

 そのことに関連しまして、今、実は報奨金制度のようなものを、つまり、銃の情報提供者に十万円前後の謝礼金を払うという制度が来年四月から導入されるという報道がありますが、これは、きのう確認しましたところ事実であるということであります。ただ、十万円前後の金額で本当に情報提供されるのかどうかというのは、なかなか難しいかな、こう思います。

 また、これまで公的懸賞金制度も導入されていますが、これが実際どのようになっているかということについても後でお聞かせいただきたいと思いますが、そのことに関連して、この十万円前後で本当に有効かどうか、これについて一言御見解をいただきたいと思います。

宮本政府参考人 現在、御指摘の報奨金の制度を検討しているところでございますけれども、一応、本制度におきましては、一丁十万円としたものを基準として考えているものではございますけれども、ただ、具体的な事案の適用、報奨金額などにつきましては、それぞれの情報の内容でありますとか情報提供者の協力の度合い、こういったものを勘案して加算することなどを検討しているところであります。

市村委員 あと、先ほども申し上げましたが、最近、それこそ、やみの職安とか自殺支援サイトみたいなのもあって、つまり、インターネットで銃の取引がされている可能性もあるわけであります。警察にはサイバーポリスがあります。では、サイバーポリスがどこまでそういうことを今情報をとれているのか。つまり、今、情報を収集するというところでの話なんですが、サイバーポリスがどこまで情報をとれているのか、それについてどれだけきちっとした対策がとられているのかということにつきまして、また御見解をいただきたいと存じます。

宮本政府参考人 インターネットを利用いたしました銃器の違法取引ということに関して申しますと、これまで、十七年に、モデルガンを改造したけん銃、これを所持していたとして逮捕された男が、改造けん銃をインターネットオークションを利用して密売しておりました。それから、十五年、インターネットオークションなどを通じて改造けん銃を取引していた会社役員などを逮捕したところ、関係者宅から改造けん銃十五丁を押収した、こういった事案がございます。

 警察といたしましては、こうしたウエブサイト、電子掲示板等を閲覧して有害情報等の有無を調査するサイバーパトロールを実施しているところでありますが、これらを端緒として違法行為を検挙するとともに、また一方で、プロバイダー、電子掲示板の管理者、こういった者に対しまして削除の要請などの措置を講じているところであります。

市村委員 今は、そういった意味で、あらゆるところでいろいろな危険な情報が飛び交うということであります。一方で、私はインターネットを余り厳しく取り締まることには基本的には賛成ではありません。ただ、そういうところで飛び交う情報について、やはりせっかくサイバーポリスを持っていらっしゃるのであれば、そういうのをもっと強化して活用していくということもあるのではないかという指摘でございます。

 それから、両罰規定についての議論は先ほど楠田委員もされていましたので飛ばしますが、ただ、今回なぜこれが組長に及ばないのかということについて、先ほど答弁もありました。これからきちっとまた研究をしていただきたいと思うわけであります。

 我々政治家は、例えば連座制がありまして、たとえ知らなくても我々に及ぶわけでございまして、知らないからといって許されるのかという話であります。我々政治家は、知らなくともだめであって、だめな場合はやめろと言われるわけでありますから、しっかりと暴力団においてもそういう筋を通していただきたいと私は思うわけであります。

 最後になりますけれども、今回、三千万という罰金であります。この三千万という罰金は極めて重い罰金ということでありまして、罰金額としては現行で最高であるということであります。しかし一方で、兵器の生産に関する法律や化学兵器禁止法での最高額は一千万なんですね。

 この量刑のバランス、私は、だからそれで三千万はだめだと言っているわけじゃありません、いいと思っています。ただ、一方で、私がこれまでこの内閣委員会でもしてきました議論で、飲酒運転の厳罰化については、危険運転致死傷罪の最高刑、二十五年に関して、なかなかこれが、飲酒運転の厳罰化について、まだ十五年ということでとどまっています。

 こっちは、いや、量刑のバランスがありますよというような話をされていながら、こっちでは踏み越えて三千万ということであるわけですから、私は何を言いたいかといいますと、ぜひとも飲酒運転の厳罰化も踏み越えていただきたい。つまり、そんなバランス論を言っている場合じゃないんじゃないかという話であるわけです、私が申し上げたいのは。せっかくこっちでも踏み越えたのならば、飲酒運転の撲滅の方でも踏み越えていただいて、すなわち、厳罰化というのは、必要な場合は必要だ、必要なときにはやると。

 ただ、先ほどから、きょうの議論になりますけれども、厳罰化だけではだめだ。飲酒運転についても、やはり厳罰化すると同時に取り締まりをしっかりとしなくちゃいけないということでありまして、最後に、またこのことを御指摘申し上げて、御見解をいただきたいと思います。それで私の質問を終えさせていただきます。

片桐政府参考人 御指摘のように、今回、懲役刑に併科される罰金額としては最高額の三千万という形にいたしたわけでございますが、その趣旨は、組織的なけん銃の発射等を中心とする銃刀法違反行為が経済的に引き合わないというふうに思わせることによって、その抑止を図ろうというものでございます。

 累次申し上げているとおり、銃刀法違反行為というのは、類型的に、極めて強い利欲性を有する暴力団がその資金獲得活動の一環として行う場合が多いことから、それに引き合わないようにすることを感得させるためにはできるだけ強い制裁をもって臨もうという趣旨で、今回こういった組織的・不正権益目的発射罪を新設し、最高額三千万という形にいたしたわけでございます。

 なお、他の法令でどういう罰則を設けるかについて私が申し上げる立場にありませんけれども、御指摘のように均衡ということは考えながらも、やはりその法律の目的に即してどこまでできるかということを検討されるべきなのかなというふうに考えております。

市村委員 ありがとうございました。終わります。

中野委員長 次に、平岡秀夫君。

平岡委員 民主党の平岡秀夫でございます。

 私の質問は、銃器対策の問題と、それから法案の中身について質問をさせていただきたいというふうに思います。

 まず最初に、銃器対策の方ですけれども、平成十九年度の銃器対策推進計画というのがございまして、そこにいろいろな省庁がいろいろなことをやろうということで書いてあるわけでありますけれども、その中に、銃器犯罪に対する通信傍受法の適用をしっかりやっていくんだと。我々は盗聴法とも呼んでいますけれども、一応、政府の表現に従って通信傍受法というふうに呼びますけれども、通信傍受法の適用をしっかりやっていくんだというような表現があるわけですね。

 私自身は、通信傍受法の問題については、不適切な運用ということがあるのならばそれは大いに問題であるというような視点も持っておりますので、これを積極的に活用してどんどんやれという、そんなつもりは全くないんですけれども、政府がこういうふうに言っておられる以上は、今まで通信傍受法の適用によってどの程度成果が上がっているのかということをまずお答えいただきたいと思います。

泉国務大臣 銃器犯罪捜査におきましては、平成十二年の法施行以来、国会報告を行った平成十八年まで、銃器を使用した組織的殺人一件につき通信傍受法を適用しているわけであります。

 このように非常に少ないというのは、暴力団が銃器に関する情報を厳しく管理し、あるいは隠匿方法もますます巧妙化していることから、犯罪組織の特定、あるいは犯行時期の絞り込み、通信手段の特定等が非常に難しくなって、情報を得るのが困難になってきておるという背景があると考えております。

 通信傍受は、暴力団犯罪、組織による銃器犯罪の摘発に有効な手法と認識をしておりまして、今後とも、当犯罪の端緒の把握に努めるとともに、積極的な情報収集を進めて有効に活用してまいりたい、そのように考えておるところでございます。

平岡委員 有効な方法だと言われたって、今まで一件しか、この一件も、何か聞くところによると、組織的犯罪処罰法の違反のところでついでに何か盛り込ませたような利用の仕方しかしていないという話ですよね。

 だから、私が思うには、どうも通信傍受法の中にこの規定を盛り込ませたのは、ある意味ではちょっと悪乗りじゃないか。ほとんど使えもしないようなことについて、こういうものを盛り込んで、何か適当なときに警察が恣意的な判断でこの規定を使って通信傍受をしようというふうにもしているんじゃないかと勘ぐりたくもなるということであります。銃器対策の問題の重要性にかんがみて、あえてこれ以上は言いませんけれども、通信傍受法の不適切な使用といいますか、乱用というふうなことは決してないように、しっかりと適正な管理をしていただきたいというふうに思います。

 次に、この銃器対策推進計画の中にクリーン・コントロールドデリバリーというのを、またこれをちゃんと使うんだということが言ってあるわけですね。文章の中には、これと並んで、おとり捜査というような言葉もちょっと出ておりますけれども、おとり捜査の問題点というのは、もう私が指摘するまでもなく、いろいろな意味で我が国になじまない部分があるわけですね。そういう視点からすると、これ、ここでどんなことをやろうとしているのかというのがちょっと私にもよくわからないところがあるので、委員長の方から、このクリーン・コントロールドデリバリーというのはどんなことをやろうというふうに考えているのか、この点を教えていただきたいと思います。

泉国務大臣 このクリーン・コントロールドデリバリーというのは、外国から不正に輸入され、あるいはまた国内を不正に移動するけん銃などの荷物を認知した場合に、その中のけん銃を抜き取る、またはけん銃等を他の物品に置きかえて、十分な監視のもとで当該荷物の運搬を続行させて、けん銃等の不正取引に関与した者を突きとめるという、いわゆるコントロールされた中での輸送を通じて犯罪摘発に当たるということでございます。

 念のために、平成十五年以降の実績を申し上げますと、十九年十月末現在、四件、このクリーン・コントロールドデリバリーで摘発した事案がございます。

平岡委員 このクリーン・コントロールドデリバリーも、今言われたような範囲にとどまっているのであれば、あえて目くじらを立てるような話ではないのかもしれませんけれども、やり方によっては、先ほど言ったように、おとり捜査といったようなことにも進展していきかねない、そんな問題もあろうかと思いますので、この捜査についても、適切な捜査ということにしっかりと注意をしていただきたいというふうに思います。

 さらに、平成十九年度の銃器対策推進計画の中には、国際協力の推進ということで、国際組織犯罪防止条約を補足する銃器議定書の締結に向けて、これからいろいろな準備をしていくんだというのがあります。この国際組織犯罪防止条約というのは、実は私がこれまでちょっと法務委員会の方におりましたときに問題となった共謀罪の根拠になっている条約でありまして、共謀罪創設そのものについては、我が国の基本的な刑事法制になじまないということで、大いに法務委員会でも議論をしてきたところであります。

 ただ、銃器規制についていえば、余りまだ国内的に議論がされていないというようなことなので、これからしっかりと議論していかなければいけないというふうに思いますけれども、この議定書では銃器規制に関してどういうことをやろうとしているのか、この点について外務副大臣からお答えいただきたいと思います。

木村(仁)副大臣 お答えいたします。

 銃器議定書は、銃器や弾薬の不正な製造及び国際取引を防止し、これらと闘い、及びこれらを根絶するため、締約国間の協力を促進することを目的としておりまして、具体的には、銃器等の不正な製造及び取引等を犯罪化すること、銃器を特定、追跡するために銃器に刻印をするよう求めること、製造され、また取引された銃器等に関する情報を十年以上保存すること、これを確保すること等について定めております。

平岡委員 今るる紹介していただいたのは項目的な話なんですね、詳細なことはちょっとよくわかりませんけれども。

 我が国の銃器規制というのは、先進諸国の中でもかなり厳しい銃器規制になっているんだろうというふうに私は思うんです。そう見ますと、この銃器規制が、ほかの諸国にも同じような制度ができる、つまり、例えば我が国のような銃器規制が条約の中に盛り込まれていって、世界の各国でそれが批准されていくということができたら、我が国にとっても非常にいいことになるんだろうというふうに私は思うわけですね。

 そういう意味で、我が国と同様の厳しい銃器規制がある先進諸国というのはどんな国があるのか、これは国家公安委員長だったですか、ちょっと教えていただけますか。

泉国務大臣 外国の銃規制の状況、必ずしも詳しく把握しておるわけではございませんが、けん銃の不法所持の罰則に関して例えば申し上げますと、米国のワシントンDCでは五年以下の禁錮または五千ドル以下の罰金、英国では十年以下の懲役または罰金、フランスでは三年以下の禁錮及び約六十万円以下の罰金となっておると承知いたしております。

 これから見ましても、我が国の規制はかなり厳しいのではないかと考えております。

平岡委員 そこで、ちょっと時間がないので一部省略しますけれども、この推進計画を見ると、あくまでもこの議定書を批准しなければいけないので、そのための国内法整備としてこの条約に書いてあるようなことを準備したいんだというふうに書いてありますけれども、私は、必ずしも、議定書を批准するということとは別に、議定書に書いてある、例えば銃器に関する記録の保存であるとか、あるいは刻印をするんだとか刻印の偽造を犯罪とするんだとか、こんな規制というのは独自にでも準備したらいいんではないかというふうに思うんです。

 この点については、国家公安委員長、どういうふうにお考えになりますか。

泉国務大臣 これまでの考え方は、警察庁としては、議定書の締結に向けた国内担保法を早期に整備していただくということで、銃砲刀剣類所持取り締まりを含む関係法令、これは武器製造法等でございますが、改正案について、関係省庁とも準備を進めてきたところでございます。

 現在の状況は、先生御承知のように、議定書の今国会への提出を外務省の方で見合わせておられるということでございまして、担保法の部分も今回は出せずにおる。お話しのように、情報を集めろ、刻印をしろ、あるいはその他の、先ほど外務副大臣が申されました四つの事柄等はできるのではないかというお考えもあるかと思いますが、全体の体系の中で、議定書と一緒に物事を進めさせていただきたい、このように考えておるところでございます。

平岡委員 何か、議定書がなければできないようなことを言われると、本当に銃器対策をまじめにやろうとしているのか、しっかりとやろうとしているのか、その点について非常に不安に感じますね。

 やはりこれは、国内限りでできる話であれば、もう早急にやる、本当は今回の改正法の中であるいは一緒にやるべきであったというふうに私は思いますね。そういう意味では、ちょっと今回の改正については物足りないということを申し上げておきたいというふうに思います。

 そこで、今議定書の批准の話もちょっとされましたけれども、いろいろと議論すると、政府の方では、共謀罪を創設しなければ、先ほどの国際組織犯罪防止条約が批准できないんだというような言い方をされておられますけれども、先進諸国のいろいろな例を見ても、一部留保は必要かもしれませんけれども、現行の国内法制の中で十分これは批准は可能であるというふうに我々としては考えており、そのことを委員会でも主張してきているわけであります。

 そういう状況の中で、私は、今回資料をいただきましたものを見ますと、我が国で非常に多く押収されているけん銃というのは、アメリカとか中国、フィリピン、ロシアで製造されたものだということなんですね。しかし、見ますと、この議定書についていえば、条約の方は批准はしているけれども議定書については締結をしていないというような国々がたくさんあるわけです。我が国としても、銃器規制の重要性にかんがみて、これらの国々に対して議定書をちゃんと締結するように働きかけていくべきだというふうに思うんですけれども、これは外務副大臣、お答えいただけますでしょうか。

木村(仁)副大臣 本議定書は、銃器等の不正な製造及び取引を撲滅するための普遍的かつ効果的な枠組みを創設するものでありまして、我が国を含め多くの国が本議定書を締結することにより、国際社会に存在する銃器等の記録管理が可能となりまして、国際的アプローチによる組織犯罪への対応が一層確実なものとなると考えております。

 我が国は、従来から、国際的な組織犯罪に対処するための国際協力の重要性を訴え続けてきたところでありまして、このような考えに基づいて、我が国は二〇〇二年十二月に本議定書に署名をいたしまして、まず我が国として本議定書を締結すべく、所要の作業を現在鋭意進めているところでございます。

 その上で、我が国が本議定書の締結に至った際には、これまで同様、本議定書の重要性を訴えながら、御指摘のあった国を含め、できるだけ多くの国が締結するよう、国際社会に対して積極的に働きかけていく考えでございます。まず、日本国内の足元を固めたいという考え方でございます。

平岡委員 日本国内の足元を固めるという意味が私にはちょっとよく理解できなかったんですけれども、それは共謀罪をつくるということですか。どういうことですか、足元を固めるというのは。

木村(仁)副大臣 条約及び議定書一体となって国内法を整備するという政府の方針は、御指摘のとおりです。

平岡委員 繰り返しになりますけれども、この条約については、私は、共謀罪をつくらなくても批准することはできる、一部留保は必要かもしれませんけれども。それをすることによって、この議定書への参加といいますか、議定書を批准することも早くできるわけでありますから、一日も早くそういう方向で政府が考え方を改めていただくことを強く要請しておきたいというふうに思います。

 次に、法案の内容についてちょっと入らせていただきたいと思います。

 先ほど、同僚議員の方からも、今回の改正法案の中にあります三十一条の問題について、特に団体の概念等を含めて議論があったわけでありますけれども、私の方からもちょっとこの問題について触れてみたいというふうに思います。

 最初に、この銃刀法の改正法案の文章を見ると、あれ、どこかで見た文章だなというふうにちょっと思いまして、そうすると、やはり組織的犯罪処罰法の中に同様の規定が置いてあるわけですね。実は、この組織的犯罪処罰法の団体概念についても、共謀罪の審議をする際にいろいろ議論が続けられてきておりまして、その積み重ねというのがある程度あるわけですね。そう考えたときに、ここの銃刀法に今回盛り込もうとしている団体概念というのは一体どういう関係なのかというのをちょっと疑問に思ったわけであります。

 まず、端的な質問の仕方をしますと、この改正法案における団体というふうに定義されているものからいえば、会社とか労働組合など、犯罪行為を行うことを目的としていない継続的結合体というのが含まれるように思うんですけれども、それはそういうことなんでしょうか。

泉国務大臣 けん銃等に係る組織的・不正権益目的加重罪、これは、けん銃等の不法な発射または所持という犯罪行為が組織的に、または不正権益目的で実行された場合にこれを加重処罰するというものでございまして、労働組合その他の正当な目的を有する団体が通常行っている活動についてこの加重規定が適用されることはそもそも想定しがたいものであると私どもは考えておるところでございます。

平岡委員 いつも、想定しがたいからこれでいいんだというふうに言われるわけでありますけれども、ちょっといろいろ議論の積み重ねがあるんですよね。

 法務委員会で議論したときに、例えば当時の刑事局長あたりは、「この定義における共同の目的は違法な目的に限られるわけではない、」ちょっと省略しますと、しかしながら、「団体が有している共同の目的が、犯罪行為を行うことと相入れないような正当な目的で活動している団体については、「団体の活動として、」という要件を満たさない、このように考えております。」というような答弁があり、さらに、それについて質問者の方から、「こういう答弁が出ているわけですから、組織的犯罪対策三法の前提となる部分、何が団体で何が組織なのかと、抜本的な修正を求めます。いかがですか。」ということで、当時の南野国務大臣が「しっかりと整理してまいりたいと思っております。」というふうな経緯があるわけなんですね。

 そう考えますと、私は、今回のこの「団体」の中でも、想定しがたいというふうに言われるのであれば、だれも想定しないような規定、つまり、しっかりと組織的犯罪集団であるということを明記していく必要があるだろうというふうに思うわけであります。

 まず、そういう意味でいくと、確認の意味で問いますけれども、今回の銃刀法の改正にある団体の概念と、先ほどから議論しております組織的犯罪処罰法における団体の概念というのは、これは同じなんですか、それとも違うというふうに意識していいんですか。どうでしょう。

泉国務大臣 今回お願いしております組織的けん銃等発射罪等における団体の概念につきましては、銃刀法の三十一条第二項において、「共同の目的を有する多数人の継続的結合体であつて、その目的又は意思を実現する行為の全部又は一部が組織により反復して行われるもの」と定義させていただいておりまして、これは、現行の組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律第二条第一項の団体の定義と同様であります。

平岡委員 同じ文章が書いてあって、同じ内閣が提出した法案と法律で、同じ表現をとってあって概念が違うということは多分あり得ないことなんだろうと思いますから、それはそれとして、同じだと。

 となると、ちょっとこの両者を比較してみると、私は、銃刀法の場合は、今回の改正規定でいけば、発射する行為とかけん銃を所持するとか、非常に行為が明確なものですから、ある程度団体概念が抽象的になっていても、それはそれで悪用的なことはないんだろうかなというふうには思うんです。

 ただ、場合によっては、けん銃が発射されたことをもってしてこの三十一条を適用しようということで、あえて悪意で、こいつはどこかの団体に所属しているんじゃないかということで、会社とか労働組合とか宗教団体に対してこの規定を適用しようというような形で物事が進んでいったら、それはおかしいだろうというふうにも思うので、そこの運用についてはしっかりと、先ほど想定しがたいというような運用ということを念頭に置いてもらわなければいけないというふうに思うんです。

 逆に、組織的犯罪処罰法の方は、非常に犯罪類型が多様にわたっているんですね。さらに共謀罪についていえば、全く多様過ぎて論外なわけなんですけれども、組織的犯罪処罰法についても非常に犯罪類型が多様だ。こうなると、やはり私は、団体概念というのをもう少し明確にするべきだということが言えるんだろうと思います。まさにそのことが、先ほど私が一昨年の法務委員会での議事録を紹介しながら指摘し、そして当時の南野法務大臣も「整理してまいりたい」というふうに答弁されたことだというふうに思うんです。

 どうでしょうか。この際、せっかくこの銃刀法でこういう団体概念についての議論をする機会ができたわけでありますから、組織的犯罪処罰法についても、この団体概念、しっかりと組織的犯罪集団であるということが明確になるように改正していくべきだと思うんですけれども、法務副大臣、いかがでしょうか。

河井副大臣 たしかに、組織的犯罪処罰法第二条は、「「団体」とは、共同の目的を有する多数人の継続的結合体であって、その目的又は意思を実現する行為の全部又は一部が組織により反復して行われるものをいう。」と定義しており、労働組合や市民団体等の正当な目的で活動している団体もこれに該当し得ることとなりますが、しかしながら、このような団体に該当することのみによって第三条の罰則が直ちに適用されるものではなく、殺人等の犯罪行為が団体の活動として当該犯罪を実行するための組織により行われた場合等に初めてその罰則が適用されることとなります。

 そして、団体の活動とは、団体の意思決定に基づく行為であって、その効果またはこれによる利益が当該団体に帰属するものをいい、犯罪行為を実行するための組織とは、当該犯罪行為を実行することが構成員の結合関係の基礎となっている組織であり、いわば犯罪実行部隊のようなものを指します。したがって、労働組合や市民団体等の正当な目的で活動している団体については、このような犯罪行為が当該団体の意思決定に基づいてなされることは想定しがたい上、このような犯罪行為を実行するための組織を有することも想定しがたいことなどから、このような団体の活動にこの罰則が適用されることはないと考えています。

 現に、平成十二年に組織的犯罪処罰法が施行されて以来、正当な目的で活動している団体の活動についてこの罰則が適用された事例はないと承知しております。したがいまして、今平岡先生御指摘のような改正を行う必要はないと考えております。

平岡委員 当時もいろいろ議論はされているんですけれども、結局、想定しがたいということだけで終わってしまったのでは、本来法律が目指していることが読んだだけではしっかりとわからないということだと思うんですよね。やはり、だれが見ても想定しがたいのであれば、想定していないということを前提とした、そういう規定を明確にするということが刑事法制においては必要なことだというふうに私は思いますので、これ以上この問題を議論するつもりはありませんけれども、引き続き、その点についてはしっかりと法務省においても検討していただきたいというふうに思います。

 さらに、ちょっと条文の話に戻りますと、三十一条の第二項の規定の適用がどんな場面にあるのかなということです。先ほど同僚議員も、どんなケースがありますかというのを具体的に例示してくださいというようなことで言っていましたけれども、私は、例示というよりは、むしろ言葉の定義といいますか、言葉の概念としてちょっととらえてみたいと思うんです。

 例えば、三十一条の二項で、けん銃の発射に関する違反行為でありますけれども、これについては、団体の活動として行われる、さらには、その行為というのが、当該違反行為を実行するための組織により行われたときというふうに規定してあるんですね。しかし、考えてみると、例えば暴力団の団員がけん銃を発射しました、この発射した行為が、その発射をするための組織により行われたというのは、やはり言葉の概念としては何かよくわからない。組織の中にいて、組織の一員として発射することを求められるということはあるのかもしれませんけれども、その発射する行為そのものが組織として行われるというのは、概念として私は非常にわかりづらいというふうに思うんです。

 この点については、国家公安委員長、どういうふうにお考えになりますか。

泉国務大臣 今回お願いしております銃刀法三十一条二項の組織的けん銃等発射罪は、けん銃等の発射が、団体の活動として、当該違反行為を実行するための組織により行われたときに成立するものという考え方を持っておりまして、この組織的発射罪の適用が想定される典型的な例としては、暴力団組長の命令により組員数名が対立する暴力団の組事務所に向けてけん銃を発射するような場合が考えられるわけであります。

 団体の活動とは、団体の意思決定に基づく行為であって、その効果またはこれによる利益が当該団体に帰属するものをいうものでございまして、今申し上げました例でいえば、当該発射行為が、暴力団の団体としての意思決定を行う権限を有する組長の決定に基づくものであって、これにより対立する暴力団の活動を牽制し、みずからの勢力を保持することになることがこの要件に該当するものであると考えておるところでございます。

平岡委員 今ので少しわかってきましたけれども、組長の決定によって行われているというのを典型的な例として言われたんですね。

 そうすると、この三十一条の二項が適用されるときは、後ほどちょっと聞こうと思っていたんですけれども、組長に対する処罰というのはどうするんですかという議論が前にもありましたよね。ということは、この規定が適用されるときには、当然その組長というのは、指示した者、決定した者として、共謀共同正犯とかあるいは教唆犯とか、そういうことを問えるということを前提としてこの規定ができているというふうに理解していいんですか。

 ちょっとこれは委員長に答えていただくのはあれかもしれませんので政府参考人でもいいですけれども、そういうことを前提としてこの規定がある、組長については共謀共同正犯とか教唆犯として罪に問えるということを前提としてこの規定があるんだというふうに理解していいですか。

片桐政府参考人 お答え申し上げます。

 おっしゃるとおり、大体のケースにおいては、やはりトップが指揮をして、指示をしてけん銃を撃つという場合が多いわけでございますので、そこの責任を追及するという意味では、一種の共同正犯として責任を追及するということが原則であろうと思っています。

 ただ、組織の決定という場合に、必ずしも組長だけではなくて、その下にいる若頭とかいう者が決定権を持っている場合もございまして、組長が知らないということを言うケースもございますので、そういった場合には、直接的に組長が指示をしていない以上、これを共同正犯として問うことは難しいのではないかというふうに考えています。

平岡委員 今のについてはちょっと私はこだわるんですね。

 団体の活動として、当該違反行為を実行するための組織により行われたときというのにそれは当たるんですか。組長が関与していなくて、何かちょっと下部の、例えば会社でいえば係長クラスとか主任クラスみたいな人がやったというのもこれに当たるんですか。

片桐政府参考人 重要なことは、団体の意思決定権限をだれが持っているかという問題でありまして、意思決定権限を持っている人間が決定をするということがこの要件になるわけであります。ただ、その意思決定権限を持っているのが必ずしも組長だけではないケースもありますので、そういった場合には組長の責任を共同正犯として問い得ないケースはあり得るということでございます。

平岡委員 さらに言うと、では、組織により行われるということは、実行行為者だけじゃなくて、それを命令しただれか、決定権者というのはいろいろいると言いましたね、その決定権者も必ず処罰されるというケースでしかこの三十一条の二項は適用されない、そういう理解でいいですか。

片桐政府参考人 基本的にはそういう形になると思います。

平岡委員 それで、両罰規定の話でちょっとひっかかるんですけれども、先ほど、三十七条は、正業をやっている人たちがやった場合の話としてこう規定してあると。だから、正業をやっているようなケースのところに、両罰規定で今回の、例えば三十一条の二項とか三項みたいなケースを入れ込むというのはなかなか難しいのかもしれません。

 しかし、正業だけに限るというのもまた変な話なんですよね。正業で罰せられるなら当然、悪業といいますか、正業じゃない業をやっている人たちだって適用されておかしくない。にもかかわらず、その点の手当てが全くされていないというのはおかしいんじゃないですか。むしろ、私は、正業か正業でないかというんじゃなくて、組織性がどれだけあるかということにあるような気がするんですけれども、この点は委員長にも質問することになっていましたので、委員長、答えていただけますか。

泉国務大臣 御指摘の点につきましては、関係省庁とともに引き続き検討させていただきたいと思います。

平岡委員 検討すると言われたらあれですけれども、検討してから持ってきてほしいなというのが正直な気持ちです。今からまたやったら、今度国会の議席数がどう変わっているかわからないという状況の中で、いつになるかわからないという問題もあろうかと思います。

 私、ずっと見ていて変だなというか、よくわからないなと思ったので、ちょっと一つだけ答えてください。これは事前通告していないので、どなたでも結構でございます。

 例えば、暴力団組長の愛人宅で他の暴力団の組員が発砲した場合、三十一条の適用、新しくつくられる規定も含めてですけれども、これは適用はあるんですか。どうでしょうか。

片桐政府参考人 愛人宅ということなんですけれども、いろいろな事情が背後にはあり得るんだろうと思いますが、要は、撃った行為自体に、団体の意思決定に基づいて何らかの効果を団体に与えようとか、また団体に不正権益を得させ、または獲得するとかというふうな意図、目的があるかどうかによって、適用されるかされないかが決まってくるのではないかと思っています。

平岡委員 今の答弁は私はおかしいと思うんですけれども。何で私がそのことを言うかというと、もともとの三十一条の一項のところの違反行為というのは、三条の十三なんですけれども、これはある意味では、多数の人たちがいるような場所とか多数の人たちが利用しているような乗り物に向かってとか、あるいは、そういう場所とかそういう乗り物においてけん銃を発射しちゃいけないというふうになっているんですよね。それをもとにして三十一条の二項、三項という規定ができているので、実は、そういう愛人宅みたいに多数の人たちが出入りするというようなところじゃないとか、乗り物じゃないというようなときには、そこでけん銃を発射しても三十一条の規定の適用はないというふうにちょっと読めるので、どうしてなのかなというふうに思って聞いたわけであります。

 確かに政府参考人が言われるように、いろいろな不正権益を目的としているというような場合とか、それはあるのかもしれませんけれども、そもそもの一項の適用があるのかどうかというところについては疑問があるというふうに思うんです。何か答弁しますか。

片桐政府参考人 個別具体的なケースによって違うということで先ほど申し上げましたが、例えば、家の中で撃った場合にはこれは当たりません。ただ、家の外、これは公共の場所である場合に、家の外から愛人宅目がけて撃ったという場合にはこれは該当するということでございます。

平岡委員 その辺もちょっと、どうして違うのかというのは多分考え方があるんだろうと思うんですけれども、愛人宅の中で撃ってもやはり発射罪というのは適用してもいいんじゃないかな、それをすることによってさらに銃器規制においては厳しい規制になっていくんじゃないかなということを指摘して、私の質問を終わります。

中野委員長 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。

 銃刀法改正については、ことし七月二十八日の産経新聞を見たときに、「組員発砲 組長も責任」との見出しで、「政府は二十七日、銃刀法を改正し、拳銃の発射について行為者だけでなく、使用者の責任も罰金刑で追及する両罰規定を新設する方針を固めた。」というふうに報じていました。

 組員の発砲に組長の責任を問うことができれば非常に大きな抑止効果というものが生まれてくるというふうに思うんですが、警察庁は当初はそういうことを検討しておられたのかどうか、これを伺います。

片桐政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のように、組員のけん銃の発射行為について組長に対して何らかの刑事上の責任を問えるかどうかということについては、先ほど来議論が出ております両罰規定の適用を含めて検討してまいったところでございますが、結果として、今回はまだ検討が不十分でございまして時期尚早という結論になったところでございます。

吉井委員 今回の法改正で、法人の代表者等への両罰規定を規定している、そういう銃刀法三十七条改正があるわけですけれども、これで確かに発射についての両罰規定というのは新設されているんですが、この両罰規定で、懸案になっている暴力団組長の使用者責任、これをうまく問うていくことができるのかどうか、伺いたいと思います。

片桐政府参考人 両罰規定につきましては、そもそもこの両罰規定の趣旨が、正当な、正常な企業活動、経済活動の過程でこれに関連して生じる違反行為について、業務主の責任を問うという必要から設けられているということから、今回、この規定を使って暴力団の責任を問うということはなかなか想定しがたいという結論になったところでございます。

 もしそうであれば、次に、ほかの何らかの規定を設けて組長の責任が問えるかどうかということでございますが、これにつきましても引き続き我々検討してまいりたいと思っておりますが、問題点は、なぜ暴力団の組長に責任が問えるのかという問題とか、現行の共犯理論との関係がどうなるかとか、この辺は刑事法制上の非常に広い問題がございますので、そういった中で、若干お時間をいただきますけれども検討してまいりたいと考えております。

吉井委員 次に、銃器犯罪にはいずれにしても暴力団が関与しておりますから、銃器犯罪の防止には暴力団対策ということが不可欠であるわけですね。ところが、今回の銃刀法改正では、組長の責任を問う両罰規定が断念されたということになっておりますから、けん銃の発射あるいは所持していた暴力団の組員にこの条項が適用されて懲役刑とともに高額な罰金刑を言い渡されたとしても、組員にはほとんどその支払い能力が期待できない。

 そうすると、この条項が暴力団の末端の組員に適用されるだけで、いかに金額を高くしても、これによる銃器規制の抑止効果というのは余り生まれてこないんじゃないか、この抑止効果は限定的になるんじゃないかと思うんですが、この点についての考えを伺います。

片桐政府参考人 お答え申し上げます。

 確かに、今回処罰の対象になりますのは組長ではなくて実行行為を行った組員でございますので、そういった意味で組織に対する打撃ということは少ないのではないかという御指摘だと思うんですけれども、それにしましても、その実行行為を行う組員がこの実行行為によって最低短期五年以上の懲役とか三千万以上の罰金を負わなければならないということについての抑止効果というのはやはり相当程度あるのではないか。

 また、裁判所も、組員におよそ払えないような罰金額を科すということは恐らくなくて、その罪状とかその人間の経済状態とかいうことを考えながら、その人間に対して効果的な制裁としてあり得るような罰金額を決めていくと考えられますから、およそ組員が払えない罰金額になるということではないのかなというふうに思っています。

 なおかつ加えて、罰金が払えない場合には労役場留置ということがあり得ますので、最高二年間労役場留置がされるということはございます。

吉井委員 要するに、組の方の指示で鉄砲玉でやったとして、やった本人が刑務所に入るだけじゃなしに罰金も高額になってきたときに、罰金の面倒を見てやるよということがなければ、組のために鉄砲玉をやるようなやつは出てこない、そういうことと結びついた発想もそこにはあるのかなと思いますが、ただ、組長の共同正犯が認定されれば、これは組長にもこの条項が適用される。そうなれば、本当に暴力団そのものへの大きな打撃となって、効果が大なりということは期待できると思うんです。

 それでは、発砲事件で組長が共同正犯で有罪となったケースというのは、これまで実際には何件ぐらいあったんでしょうか。

宮本政府参考人 組長、幹部の責任の追及ということで、できる限り背後関係のある場合にいたしております。

 ちょっと数字的なものについては今把握をいたしておりません。

吉井委員 これは事前に資料もいただいておりますし、たしか一件あって、それは上告中ということでなかったかと思うんですが、どうなんですか。

宮本政府参考人 暴力団組長といった場合に、例えば山口組なら山口組、それからその下の団体、二次団体、三次団体とございます。そういったときに、いわゆる組長と呼ばれておる者、これの責任追及がなされたのは決して一件ということはございませんで、過去何件か、背後責任を追及して、組長と呼ばれる者を追及したことはあるということでございます。

 全体の数字が何件かにつきましては、ちょっと今……(吉井委員「有罪となったもの」と呼ぶ)有罪となったもの。いわゆるボディーガードのような形でけん銃を所持していたもの、これの背後責任の追及ということでございますと、五代目の山口組若頭補佐でありますとか、現在の六代目山口組組長に係るけん銃の共同所持という形で、ボディーガードが持っていたものを、組長の責任を共同所持という形で共謀共同正犯でとらえたという事案はございます。

吉井委員 けん銃発射、要するに発砲事件で幹部が共同正犯で有罪になったケースもあると聞いていますが、けん銃所持に係る事件でも共同正犯で有罪になったというものもありますね。

宮本政府参考人 ございます。ただいま申し上げましたボディーガードに係るものは、けん銃所持の共同正犯でございます。

 それから、発射についても、平成十八年には、元山野会の幹部を射殺した事件、この発射の事件で上部の組長及び幹部が検挙された事例とか、幾つか事例はございます。

吉井委員 実際にそういうふうに共同正犯で有罪となった例があるんですが、率直に言って、この組織的・不正権益目的の立証とか、あるいは組長や幹部の共同正犯の立証というのはなかなか難しい、困難ということもあって、どのように法理論を組み立ててやっていくかとか、それはそれでかなり研究をしてこられて、しかし、それでも今回、使用者責任という形で持っていくところについてはかなり慎重なといいますか、そこが抜けているのかなと思うんです。

 民事の分野では、三年前に、最大勢力の指定暴力団山口組系の組員が起こした射殺事件で、最高裁は上部団体トップの使用者責任を認める判決を言い渡しておりますし、暴力団の上層部の責任を問うということができれば、この銃規制の銃刀法というのは非常に大きな効果が生まれてくると思うんです。

 銃と組織という問題ですけれども、これは一般的に考えると、組織との関係でいいますと、例えば民間企業であれば、会社組織で使っている社員の使うパソコンは、企業の貸与パソコン、それで、そのパソコンによる犯罪が発生したときには、使用した本人とともに組織の側にもいろいろな形で責任が問われてくるということになりますし、今度の場合は暴力団、ピストルですけれども、組織として所持しているからけん銃というのは意味を持ってくるんですね。

 例えば、組長が、自分がけん銃を所持している事実を隠すために、屋根裏のような物理的に隠すこともあれば、自分は持たないかわりに子分に持たせておく。そうすると、屋根裏に隠そうが子分が持とうが、組織として所持しているけん銃の、同じようにそれはけん銃の隠匿行為ということになってくると思うんです。

 逆に見れば、子分が所持しているけん銃というのは組織のものですから、ある意味では組長の所持品とみなすこともできてくるし、組長に隠れて子分が個人で購入したとなれば、そういうことはあり得ると思うんですが、それは法律違反のその子分を破門することで、抱えておったら組長が責任を問われますから、組長の所持品でないと証明することが必要となってきますし、破門すればしたで、今度は組織の弱体化というリスクを負うことになってきます。

 私は、これは泉公安委員長にここで伺っておきたいんですが、組織としてけん銃を所持していることを刑罰で規制するには、組織内の子分のけん銃は組織の所持品として扱えるような、そういう法律上の整備とか、その研究というものを行っていくことが、今回は断念されております使用者責任について問う道も開かれ得るかもしれないし、いずれにしても、やはり使用者の責任、あるいは組織が所持しているんだから組織の責任者の責任という形で問うような道というものをこの機会に研究していくということは必要なのではないかと思いますが、ここはこの問題の最後に公安委員長に伺っておきます。

泉国務大臣 御指摘のような事態が幾つか想定されるわけでございます。

 いずれにしましても、暴力団の首領の責任を問う方策につきましては組織犯罪対策上重要な事項であるというふうに認識しておりまして、適切な法制のあり方を含め、今後、関係省庁において引き続き検討してまいりたいと思います。

吉井委員 要するに、ピストルが不法なんですから、ピストルを所持することが不法なんですから、そのピストルを組織として持っておれば、それは組織としての責任が問われる。そのときに、組織というのは何もない幽霊じゃなくて、組織の長の責任というものはそこにかかってくるわけですから、これはよく研究をしていただきたい。法理論というのはそう簡単な話じゃないのは私もわかりますから、どういう形でやったらいいかというのは簡単にここでお答えできるような話とは私も思っていませんから、よく研究していただきたいと思います。

 次に、この法律を執行していくとなると、やはりつくった法律が生きるだけの取り組みというものが大事だと思うんです。

 実は私、この内閣委員会で、かつて警察庁が準備された風営法の審議をしたことがありますが、そのときに、風営法を改正しても、警察がそれを使って本当にきちっとやらなかったら生きたものにならないんじゃないかということで取り上げたわけです。今度も、この銃刀法を改正しても、その取り組みいかんによっては、とりあえず使用者責任まではいかなくても、どれだけ生きたものになるかどうかというのはここにかかってくるわけですね。

 それで、二年前、私が二〇〇五年十月十四日の委員会で風営法の審議のときに取り上げたのは、偽装ビジネスホテル、ビジネスホテルを装って建築確認その他を強行突破してしまって、実態はラブホテル、だから風営法逃れを考えているという事例を明石市で起こっている問題で取り上げました。

 これは、ビジネスホテルなのにシングルの部屋は一室もないんです、明石で問題になったのは。客室二十八の内訳は、ダブルが十八、トリプルが十。完全に偽装ビジネスホテルで、実態はラブホテルというものなんです。それで風営法逃れを業者の方はやってきたんですが、最近、建物が建ち上がりまして、本当は理事会でちゃんと事前に出しておればパネルにして皆さんに見ていただくこともできたんですが、写真がありますけれども、これは、でき上がったものを見ても、ビジネスホテルなんというようなものじゃないんです。もう完全に周囲のラブホテルと同じ建物なんですよね。だから、地域の人たちは、やはりラブホじゃないかと。通学路、住宅地のど真ん中にラブホテルができるのは御免だと、不安と怒りの声がますます今高まっているんです。

 一昨年の質問のときに、あらゆる法律を駆使して、問題があれば、必要な調査、取り締まりを行って、営業停止や許可の取り消しをするべきだということを私は質問の中で申し上げました。このときに警察庁生活安全局長は、改善の状況がしっかり確認できるように、立ち入り等を通じまして実態の把握に努めてまいりたい、もし法に違反する状況がありますれば、発見できますれば、厳しい行政上の措置を講じてまいりたいと、警察庁としての責任ある答弁をされました。

 地元住民と施主とのやりとりの中では、住民側は設計図を見て、これはどう見てもラブホやないかと言ったら、施主側はとうとう答えられなくなって、回答不能なんだけれども工事を強行する、こういうことで、今のような、今写真で見ることのできるようなものができ上がっているんです。

 それで、私はやはり、偽装ビジネスホテル、実態ラブホテル、風営法に基づいてきちっと対処しておれば、こういう問題は今起こっていないんじゃないか。この風営法を通してください、お願いしますと言っておった方たちが、そのときは厳正に使うんだと言いながら、実際には、この二年間、きちんとしたことができてきていないんじゃないかと思うんですが、これはどうなんですか。

片桐政府参考人 明石市でございますが、管轄は兵庫県警でございますけれども、今おっしゃられたラブホテルということなんでありますが、ただ、ラブホテルについては、風営法とか風営法施行令で設置施設設備、構造の基準が決まっておりまして、これは残念ながらラブホテルには当たらない、ラブホテル類似営業であるというふうに我々は判断をしております。こういうものが今明石市内にどれぐらいあるかということでございますけれども、そういったラブホテル類似のものは合計十数件、私ども把握をしております。

 ただ、警察もこれを黙って見ているわけではございませんで、それらのホテルの営業の実態を随時確認するとともに、旅館業を監督する兵庫県当局と緊密に連携しながら、違法行為が行われないように、警告とか指導を行っているという報告を受けております。

吉井委員 風俗営業法で、許可なくラブホテルはできないわけですよ。ビジネスホテルだったら、ロビーとか食堂、調理場があるかどうかとか、調理師免許を持った人がちゃんと配置されているかとか、性的好奇心をあおるような構造設備でないかとか、そういう観点からきちっとチェックが入るんですね。これは消防やら保健所やらいろいろなところを含めて徹底的にきちっとチェックして、それでビジネスホテルということになる、確認されるわけです。

 問題の明石のビジネスホテルは、今挙げた設備要件が満たされていなかったら、これは風営法上の許可なしに営業はできないし、こういうものについては、まず指導から始まって、違法が繰り返された場合には、これは許可の取り消しとか、そういうところへいくと思うんですが、ここは何かすれすれのところをいっているようなお話でしたけれども、何ら問題ないという認識ですか。

片桐政府参考人 まず、モーテル、ラブホテル、レンタルルーム営業は、店舗型性風俗特殊営業と申しまして、これは許可制ではございませんで、届け出制でございます。ただ、その届け出を受けて、その設置場所が一定の区域にある場合には営業ができませんよというふうな規制をかけているということなんでございます。我々も、こういったことを受けて、ラブホテル類似営業と我々は見ていますけれども、しかし、実際にはラブホテルに該当するのではないかということでもって、相当その実態の把握には努めておりまして、中には不適切な営業形態というものもございましたので、それについては警告をして、是正をさせているということでございます。

吉井委員 二年前に伺ったとき、生活安全局長より、明石には十を超えるビジネスホテルで脱法的偽装ビジネスホテル、実態ラブホというのが運営されている、実態ラブホテルは六件について改善させましたという答弁がありました。ところが、今年六月にまた調査されると、ビジネスホテル十三店調査したところ、その結果、十二店で実態ラブホテル、問題ありといった状態です。つまり、指摘を受けたら、一度改善した形をとるんですね。それで、ああ、静かになっとるなと、警察がノータッチになったと思ったら、またやりよるんです。こういう繰り返しなんです。

 これは警察の方で、指導されても違法行為等を繰り返す者についてはやはりきちんと、許可の取り消し、届け出をしておってもそれは認められないということで厳しい対処をしなかったら、いつまでもこの繰り返しで、実態としては、ずっと実態ラブホテルのまま、子供の通学路、そして一般の住宅地にこれができてくるということになります。

 私は、もう時間が迫っていますから最後に泉大臣に伺っておきますが、改善措置をとらせてもすぐもとの実態ラブホテルに戻してしまう、そういう場合、警察として、地域住民から苦情や調査してくれとか要望があれば即調査に入るというのは当然なんですけれども、待っているだけじゃなしに、違法が繰り返されているわけですから、積極的に立入調査を行って、風営法上の実態をきちんとつかむ。その上で、違反が繰り返されるのであれば、改善や営業停止にとどまらないで、風営法上の許可の取り消しとか、そもそも、住宅地でビジネスホテルを偽装して、つくったら後は実態はラブホテルでやっていくというふうなことがやられているような状態、せっかく風営法をつくっても、審議しても、こういう状態があれば、これは銃刀法であれ、ほかの法も同じことですが、やはりきちっとしたことが貫徹されるように取り組んでもらいたい。

 大臣にそのことについて最後に伺って、質問を終わるようにしたいと思います。

泉国務大臣 御指摘のこのラブホテルの問題に限りません。偽装してそのすき間を、法のすき間をつくような行為があってはならないと思います。

 今回御審議いただいております銃刀法の改正につきましても、成立をお認めいただきました暁には、警察力挙げて銃砲等の取り締まりに全力で取り組ませていただくことを申し上げておきたいと思います。(吉井委員「そのラブホテルの方、しっかりやっていただきたいと思います」と呼ぶ)ラブホテルにつきましては、警察庁の方から過去に御答弁を申し上げた内容をもう一度検証いたしまして、そのお答えを申した実態と違う事態が生じておれば、適切に対応させていただきたいと思います。

吉井委員 時間が参りましたので、終わります。

中野委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

中野委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、銃砲刀剣類所持等取締法及び武器等製造法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

中野委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

中野委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、櫻田義孝君外三名から、自由民主党・無所属会、民主党・無所属クラブ、公明党及び日本共産党の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。平岡秀夫君。

平岡委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、その趣旨を御説明いたします。

 その趣旨は案文に尽きておりますので、案文を朗読いたします。

    銃砲刀剣類所持等取締法及び武器等製造法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たっては、次の諸点について適切な措置を講ずべきである。

 一 本法における「団体」に係る規定の適用に関しては、適切な運用を行うとともに、正当な目的を有する団体の正当な活動を阻害することがないよう十分留意すること。

 二 平穏な国民生活の脅威となる銃の不法所持等の銃器犯罪を適正に取り締まるとともに、銃器の国内での密造や海外からの密輸入阻止のため、関係機関の連携を強化し、水際対策の一層の徹底を図るなど、総合的な銃器対策をさらに進めること。

 三 本法の施行状況を見つつ、罰則の効果等を検証し、必要な場合には見直しを含めた検討を行うこと。

以上でございます。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。

中野委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

中野委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。泉国家公安委員会委員長。

泉国務大臣 ただいま可決されました附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

中野委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

中野委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十三分散会


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