衆議院

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第3号 平成20年3月21日(金曜日)

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平成二十年三月二十一日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 中野  清君

   理事 江崎洋一郎君 理事 岡下 信子君

   理事 櫻田 義孝君 理事 萩生田光一君

   理事 村田 吉隆君 理事 大畠 章宏君

   理事 田端 正広君

      飯島 夕雁君    大塚  拓君

      加藤 勝信君    木原 誠二君

      北川 知克君    河本 三郎君

      佐藤  錬君    高市 早苗君

      戸井田とおる君    土井  亨君

      藤井 勇治君    馬渡 龍治君

      御法川信英君    市村浩一郎君

      内山  晃君    吉良 州司君

      北神 圭朗君    楠田 大蔵君

      佐々木隆博君    園田 康博君

      長島 昭久君    松木 謙公君

      石井 啓一君    吉井 英勝君

    …………………………………

   国務大臣

   (地方分権改革担当)   増田 寛也君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     町村 信孝君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (食品安全担当)     泉  信也君

   国務大臣

   (規制改革担当)

   (国民生活担当)

   (科学技術政策担当)   岸田 文雄君

   国務大臣

   (経済財政政策担当)   大田 弘子君

   国務大臣

   (少子化対策担当)

   (男女共同参画担当)   上川 陽子君

   内閣府大臣政務官     加藤 勝信君

   内閣府大臣政務官    戸井田とおる君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 荒木 二郎君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房公文書等保存・利用推進室長)   山崎日出男君

   政府参考人

   (内閣府原子力安全委員会事務局長)        袴着  実君

   政府参考人

   (総務省自治行政局長)  岡本  保君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          深山 卓也君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           内田  要君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           菊川  滋君

   内閣委員会専門員     杉山 博之君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十一日

 辞任         補欠選任

  赤澤 亮正君     飯島 夕雁君

  加藤 勝信君     北川 知克君

  河本 三郎君     御法川信英君

  中森ふくよ君     馬渡 龍治君

  西村 明宏君     佐藤  錬君

  西村智奈美君     園田 康博君

  馬淵 澄夫君     内山  晃君

同日

 辞任         補欠選任

  飯島 夕雁君     赤澤 亮正君

  北川 知克君     加藤 勝信君

  佐藤  錬君     西村 明宏君

  馬渡 龍治君     中森ふくよ君

  御法川信英君     河本 三郎君

  内山  晃君     長島 昭久君

  園田 康博君     北神 圭朗君

同日

 辞任         補欠選任

  北神 圭朗君     西村智奈美君

  長島 昭久君     松木 謙公君

同日

 辞任         補欠選任

  松木 謙公君     馬淵 澄夫君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 内閣の重要政策に関する件

 栄典及び公式制度に関する件

 男女共同参画社会の形成の促進に関する件

 国民生活の安定及び向上に関する件

 警察に関する件


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     ――――◇―――――

中野委員長 これより会議を開きます。

 内閣の重要政策に関する件、栄典及び公式制度に関する件、男女共同参画社会の形成の促進に関する件、国民生活の安定及び向上に関する件及び警察に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として内閣府大臣官房審議官荒木二郎君、大臣官房公文書等保存・利用推進室長山崎日出男君、原子力安全委員会事務局長袴着実君、総務省自治行政局長岡本保君、法務省大臣官房司法法制部長深山卓也君、国土交通省大臣官房審議官内田要君、菊川滋君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

中野委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。吉良州司君。

吉良委員 民主党の吉良州司でございます。おはようございます。

 きょうは、町村官房長官、そして大田大臣に質問をさせていただきます。三十分と限られておりますけれども、まず、大田大臣にお聞きしたいと思います。

 最初に申し上げたいのは、この通常国会冒頭に大田大臣が経済演説の中で、もはや日本の経済は一流ではないということを言い切って、一人当たりGDPが十八位になったことの懸念を表明された。もちろん、経済担当大臣がみずから一流ではないと言うことのマイナスも一方であろうかとは思いますけれども、それをあえて言って国民全体で危機感を共有して、もう一回経済の立て直しをするんだということを表明したことは、私自身高く評価させてもらっております。

 その中で、三月十九日付の月例経済報告等に関する関係閣僚会議資料というものを見せてもらったわけなんですが、この中には、日本経済の先行きについては、「改正建築基準法施行の影響が収束していくなかで、輸出が増加基調で推移し、景気は緩やかに回復していくと期待される。 ただし、サブプライム住宅ローン問題を背景とするアメリカ経済の減速や株式・為替市場の変動、原油価格の動向等から、景気の下振れリスクが高まっていることに留意する必要がある。」このようになっております。

 日付的には十九日ですが、もう実際は十三日から大幅な円高が進んでいるという状況でありました。この中で、まさに留意する必要があると言ったことが現実になっておるわけであります。

 言うまでもなく、円高は、米国、中国市場に依存している日本の輸出企業にとってみれば、マーケットの縮小も意味するし、ドル建ての価格競争力の低下も意味するし、また円貨ベースの収入減少ということも意味し、これはある意味では、輸出主導と言ってもいい我が国経済にとっては、景気減退または成長の鈍化をもたらすおそれがある。

 また、株安について懸念していますのは、もちろん、そういう輸出主導だというイメージを持たれる日本経済にあって、輸出企業の収益の悪化、またそれに伴う日本経済の先行きに対する不信、また特に外国投資家について言えば、先行きに対する不安と同時に、例えば米国の投資家であれば、自国で損失が出ているその穴埋め、または資本増強、そのためにあえて日本で株を売ってキャッシュをつくって、今言った穴埋め、増強に使うというようなことが出てきているのではないかというふうに思っております。

 そういう中で、先ほど出た、本来なら景気が緩やかに回復すると期待されていたにもかかわらず、この円高、株安というものが直撃しました。その中で、所管される大田大臣とその関係閣僚、また関係ブレーンの間で、この円高、株安に対して一体どういう議論がなされているのか。

 そして、私が知る限り、現時点で為替介入等も一切していない。個人的には私はそれはいいことだと思っておるんですが、この状況を受けて、一体どういう対策があるのか、そのメニューはどういうものなのか、そのメニューのうち一体どういうものを実際採用していくのか。

 どういう議論があったのか、そして、どういう理由で最終的に今為替については介入をしない、それから、もし具体的にこれからとる政策等、採用することが決まったのであれば、その辺についてお聞かせいただきたいと思っています。

大田国務大臣 最近の急激な円高、株安というのは、基本的には、アメリカでサブプライムローン問題に端を発する信用不安がなかなか収束しないということ、そしてアメリカ経済の減速感が強まってきているということがございます。なかなか底が見えない状態にあります。したがって、ドルが各国の通貨に対して下がっている、それが日本の場合は円高になってきております。それから、アメリカ経済の実態も、住宅投資だけではなくて、消費が伸び悩み雇用が減少するという形になっておりまして、今、日本企業にその影響がじわじわと出てきている状態です。実際、アメリカ向けの輸出が減速しているといったようなことがございます。

 これに対してどうするかということですけれども、基本は、この震源地で信用不安を収束させるということがまず大事になってまいります。日本としましては、既に今起こっている企業への、特に中小企業の収益圧迫が顕著になってきておりますので、今起こっていることに対して迅速に手を打っていくということ、それからもう一つは、先行きのリスクに早目早目に手を打つということが必要になってまいります。

 今、中小企業は円高に加えて原油高、原材料高で収益が圧迫されてきておりますので、これに対しては、昨年来、原油高対策あるいは資金繰り対策をとってまいりました。これに加えて、先行きのリスクに早目早目に対応するということで、施政方針演説や成長戦略の中で早期に実施できるものについては四月早々に取りまとめて対応することにしております。

 さらに、このところ急速に円高、株価の変動が進んでおりますので、総理からも、まずこの円高や為替変動や株価の変動が及ぼす影響をつぶさに点検せよ、点検した上で、例えば政府系金融機関の中小企業への融資など、必要な対応を迅速にとるようにという指示が出ております。

 したがいまして、震源地はアメリカですけれども、今日本に起こっていることをまずつぶさに点検し、迅速に手を打っていく、それとリスクに対して早目に手を打つということを今、私どもとしては注力しております。

吉良委員 ありがとうございます。

 本当はその答弁についてもどんどん突っ込みたい答弁ではあるんですけれども、時間が限られておりますので。

 私自身が一番懸念しますのは、今おっしゃいましたが、震源地の問題を解決してもらうしかないということで、日本がアメリカのサブプライムローン問題を独自で解決できるわけではない。ただ一方で、FRBが〇・七五%、一挙に大幅に金利を下げたように、米国あたりはまだまだ金利についても下げたりする余地もある。ところが、日本の場合はもうある意味では影響を受けっ放し、日本独自で、今おっしゃられた先行きに対するリスクというよりも、現実に起こっているリスクに対しても手の打ちようがない、施しようがないという状況になっていると思っています。

 今言いましたように、本当は中身を議論したいんですけれども、これは詰まるところ、やはり八百兆円とも一千兆円とも言われる借金が大きな足かせとなっていて、今、日銀人事問題でもめておりますけれども、実際は、財政政策においても金融政策においても、日本の政策としてとり得る幅に極めて限りがあるというところからきていると思うんですね。

 そういう意味で、プライマリーバランスの黒字化というものを一刻も早く実現すると同時に、名目成長率をある程度の幅でもって上げていく、三・五%でいけば二十年で倍になるということで、当然ながら、GDP比の借金の額も減ってくるわけですから。ただ、最近、どうも一一年度のプライマリーバランスの黒字化についても、実際実現できるのか、また実現する意思がなくなっているのではないかというような、ある意味では改革後退といいますか、そういう声も出ているところなんですね。実際、私もそういうふうに感じることが多々ございます。

 それと、今回の円高、株安が続けば、当然、さっき言った景気後退それから成長鈍化というのは自然の成り行きとしてなってしまうわけでありまして、そういう意味で、この状況下においてもプライマリーバランスを黒字化していくということについての決意と、それから、この状況下でそれをやっていくということの具体的な施策について、お伺いしたいと思います。

大田国務大臣 二〇一一年度にプライマリーバランスを均衡させ、黒字化させるというのは国民に対する約束ですので、これは実行していかなきゃいけない。足元の経済の下振れリスクもありますが、人口減少に日本が今突入しつつあって、その中で財政の姿をつくっていくというのも、これまた大事なことです。プライマリー収支黒字化はその第一歩でありますので、これは何としてもやっていかなきゃいけない。

 そのときに、一つは歳出削減、一つは税収増、これでどうしても足りないときは、税制改革による増税ということになります。まずは、歳出削減というのをしっかりやっていく。それから、今先生御指摘の点は、この第二のポイントの税収増が落ちてくるんじゃないかというところで、この点からも、なるべく景気回復を息長く持続させるように最大限の努力をしていきたい。

 あわせて、成長力を高めるために、グローバル化ですとか、あるいはサービス産業の生産性向上といった構造的な取り組みも並行して行っていきたい、そこは粛々としっかりとやっていきたいというふうに考えております。

吉良委員 まさに今、二番目におっしゃったところが非常に不安なわけであります。今、景気を持続させるとおっしゃいましたけれども、その具体的な手段が大事なのと、今その手段が非常に限られているということを私は申し上げているわけで、ちょっときょうは時間が限られていますので、またこの内閣委員会で引き続いてその辺について議論をさせていただきたいと思いますが、今大田大臣が最後におっしゃられました、景気を回復させる、持続させるための活力をどう生み出すか。その一つとして、必ずしも効率のよくないサービス産業の生産性の向上であるとか、外国の活力を取り入れるということをぜひやっていかなければいけないというふうに思っています。

 この後、入札改革ということで町村官房長官の方にお尋ねをするわけですが、先日、予算委員会で大田大臣にも申し上げましたけれども、私は、入札改革の提案は、単に今の道路財源に関する解決策ということのみならず、各地域地域が世界に窓を開いてその活力を取り入れる、そしてみずからも改革力、競争力を高めて、また地域から海外に打って出るということのための提案でもありますので、また閣内でこの入札改革に対する支援をお願いしたいと思っております。というところで、もう大田大臣の方はこれで結構でございます。ありがとうございました。

 続いて、町村官房長官に対してであります。

 道路特定財源にかかわる議論の中で私自身が問題だなと思っていますのは、お配りしている資料の一番最後、ページ四になるんですけれども、簡単なポンチ絵で、だれでもがわかる話をかいているだけなんですが、今現在の議論が、政府案は、仮の話として、十カ所百億円が中期計画ではかかるんだと。これに対して与党は、では、十カ所やるために百億円かかるのなら、その百億円の税収を確保しなければならないじゃないかということで、暫定税率の維持、そして一般財源化ではなくて特定財源の維持ということを主張されているわけでありますが、民主党は今、暫定税率廃止、そして本則の一般財源化ということを主張しておりまして、加えて最も大事なところは、中期計画の精査をし、本当に真に必要な道路を厳選していく、そうすれば十カ所は要らないのではないか、八カ所八十億円でいいではないかという議論であります。

 ただ、私もこの民主党の考え方に全面賛成でありますが、同時に、大分あたりは、本当に基幹道路、高速道路自体の整備もできていないという状況の中で、本当に真に必要な道路はつくってもいい、つくるべきだと思っております。

 ただし、前あったように、道路工事も欲しいし道路も欲しい、道路が欲しいと同時に工事が欲しい、道路建設を通しながら地場にどんどん高い注文をとらせて、そのことをてこに地域経済の活性化を図っていくということではなくて、そこに書いてあります、八カ所五十億円でやれないのか。場合によっては十カ所全部必要だということであれば、それを六十億円でやれないのか。そうすれば、暫定税率を仮に廃止したとしても、本則の中で真に必要な道路を全部つくっていける。もちろんそれは本則分についてを全部道路に回したらという場合であります。それは各地域地域の自己判断で、道路に使うという場合にそのことが言えると思うんですけれども、このことについての具体的な提案をさせていただくというものであります。

 もちろん、これについて、各論に入れば国土交通省の管轄になるわけですけれども、官房の方で入札改革全般については調整を行っているということであります。と同時に、与党の実力者でもあり、今内閣のかなめであります町村官房長官にここのところをぜひ聞いていただいて理解いただいて、政府内部でも、こうやって真に必要な道路をとにかく限られた財源の中でつくっていくということについての各論の論議に移るべき時期に来ていると思って提案をさせてもらうものであります。

 具体的な提案内容につきましては、総論としてお手元の資料に、ページ一から三まで書かせてもらっております。一言で言うならば、PFI的な発想、手法を利用した入札改革ということであります。

 PFI的手法ということになれば、当然ながら、事業を民間側が提案し、それも、建設から運営、そしてそれにかかわる資金調達を全部民間側がまずは責任を負う、それで提案をする。受注をしたならば、その事業にかかわる収入でもってその投下資金を賄っていく。こういう手法でありますが、道路の建設でありますので、いわゆるPFIと違って、収入については、その道路から収入が上がってくるわけではありません。もちろん、高速道路についても、今どんぶり勘定でやっているわけでありますから、収入があるわけではありません。それは国であり、また自治体の予算、事業者からしてみれば、その予算に基づく支払いが収入原資となるということであります。

 ただ、ここで強調したいことは、民間側から提案をするということであります。それも、ページ一の一番最初に書いてあります、建設、維持補修と金融を一体として提案するということであります。その中で必要なもの、そして安全面においても許容できる範囲のものをいかに安くつくっていくかということの提案を民間にさせるということであります。

 最初に結論を申し上げますと、そのことを通して、道路を安くつくると同時に、こういう提案型の事業を、各地場企業、地場企業が地場の金融機関なりと一緒になって提案をしていくことで、将来的に予想されます、日本はもちろんですけれども、中国、東南アジア、またインドあたりまでも広がっていくでありましょう、いずれはインフラ整備についての財源に限りが出てくるという中で、当然こういうPFI的手法でのインフラ整備が行われていくわけであります。世界の流れがそうなっております。ということで、地場企業の競争力、開拓力もつけていく、一石二鳥、三鳥をねらった提案であります。

 具体的には、さっき言いました建設、維持補修、金融を一体総合事業として入札にかける、そして入札対象はかなり大きなまとまった入札とする。

 例えば、私ども大分でも、今、高規格道路の計画、建設が進んでおりますけれども、全部合わせると例えば一千億円かかるような一本の道路を、それぞれ予算に応じて、また当然ながら用地買収等も、時系列的な問題等も絡むわけですけれども、ぶつ切りにして、ここの工事区間は二百十九億円、ここの区間は三百十六億円というような形で入札がされていっているわけであります。それを、ある意味で全部一本にして、かなり大きなまとまった金額にして入札にかけるということであります。

 なぜ金融一体総合事業とするのかということは、さっき言いましたPFI的に、提案型にすると、とりあえず、一千億なら一千億必要な事業を遂行するための、SPCとよくPFIでは言いますけれども、スペシャル・パーパス・カンパニーが、一千億円全部、調達なら調達をするということが可能になるわけであります。それに対して国なり県なりから支払いをしてくれというのを、工事の進捗状況にかかわりなく、この年度で百億円、この年度で百億円、この年度で百億円という手法がとり得るわけであります。そうすると、今までは予算単年度主義ということの中で、一本一本ぶつ切りにせざるを得なかったという問題も解決をされるということであります。そういうこともあって、かなり大きなまとまりを入札対象とする。

 と同時に、さっき言いました安くつくるという観点からすると、請け負う側から見れば、大きな金額を受注することによって、当然ながら資材調達の面においてもスケールメリットが生かせてくるわけであります。ということで、大きなまとまりの入札とするということであります。

 三番目については、これはいろいろ反対論も多いかと思うんですけれども、国際入札を促すということであります。

 現時点でも、マラケシュ条約という政府調達にかかわる取り決めの中で、国は七億円、地方公共団体二十四億円、それ以上は国際入札にかけるという取り決めがあるわけですけれども、実際のところは、今まででも四件、海外企業が受注したという実績があるのみということで、ほとんど国際入札らしい国際入札にはなっていないということで、これももっと積極的に国際入札を促していく。これは、先ほど言いました、大きな金額になると、当然ながら世界が注目するプロジェクトになってまいりますので、こちらが受け入れ体制さえしっかりすれば、おのずと海外企業も目を向ける素地になるんだというふうに思っております。

 ただ、先ほど言いましたように、この国際入札を徹底していくときに心配されますのが、同じ税金を使ってインフラ整備をするなら、当然ながら日本企業、ましてや地場企業にできたらお金を落としたい、これは政治家もそうでありましょうし、その地域住民にとってもそういう思いがあることは確かであります。ただ、それが行き過ぎて、今まで談合体質、それから高いものになっていた、また、余りにも高いスペックになっていたと私は了解しておりますので、これについて、当面は、入札評価上でありますけれども、地場企業に対する優遇措置を容認していくということであります。

 五番目については先ほどちょっと触れましたのでいいとして、六番の、道路構造令というものを基本とする中で、さっき言いましたように、これは提案型の事業でありますので、提案者に、仮に道路構造令に必ずしものっとらなかったとしても、価格的にこんなに安くできます、安全性は道路構造令を一〇〇とすればこの提案は九五になりますけれども、価格は半分になります、であるならば、この価格半分の案を受け入れてもらえないか、こういう提案を容認するというか、積極的に促すということであります。

 この提案につきましては、今後、内閣委員会及び、できたら国交委員会で時間をもらって、もっと突っ込んだ具体案を提示させてもらおうと思っているんですけれども、きょうは、ちょっと時間が限られて、その入り口ということで、まず町村官房長官に、私が今ざくっと説明、また提案をさせてもらったこの入札改革について、どうお感じになられたか。今、道路ということで出させてもらいましたけれども、今後は、やはり限られた財源の中で必要な施策を打っていく、特に必要なインフラを整備していく中で、この入札改革というのは必須だと思っておりまして、その点について町村官房長官の所見をお伺いしたいと思います。

町村国務大臣 私は、決してこの分野、先生ほど経験もなければ、また詳しくもないわけでございますが、今、大変貴重な御提言をいただいたと思って、率直にお話を受けとめさせていただきたいと存じます。

 公共工事、道路ばかりではございませんけれども、やはり公正性、透明性、そして競争性の確保というのが大事でございましょうし、一定の税金からいただいたお金等々を、どうやって一番価値の高いサービスが提供できるようになるのかということなんだろうと思います。そういう意味で、安ければ安いほどいいというものでもないと思います。同時に、やはり品質もよくなければいけない。価格と品質の言うならばバランスをどうとるのかということなのかな、こう思っております。

 先生も御承知のように、今までも一般競争入札をだんだん拡大してまいりました。また、価格以外の要素も入れて評価をしていこうということで、いわゆる総合評価方式の導入というようなこともやってまいりましたし、また、公共工事の品質確保の法律というものがございますけれども、いわゆる品確法というもの、品質確保も非常に重要だということであろうかなと思っております。

 そういう中で、今先生のお話しになった、いわゆるPFI的発想や手法を利用するということについて、総論的に言うならば、私は大変結構なアイデアではなかろうか、こう思っております。ただ、なかなか、個々の論点にわたりますと、いや、ちょっと待ってくださいよという議論も多分出てくるのかなという印象も受けました。

 例えば、大きなまとまり、先ほど大分県全体とかですね。確かに、今までいろいろなケースで、小さく切れば国際入札にもかけなくていい、一般競争入札にしなくてもいい、だから地元の企業がとりやすくなるというようなことで、過度に小さいロットで発注をするというようなことが行われ、そのことが結果として高いコストの公共事業になってきたという面もあろうかと思います。

 しかし、逆に言うと、大規模なもの、しかもそれにファイナンスもつけられるものということになると、なかなか地場の企業では受けられなくて、ますますある意味ではゼネコン集中型の姿になっていってしまうのではないか。そうすると、いや、地場企業、国内企業に対して入札評価上の優遇措置を容認するといっても、現実、それはもうそもそも不可能なことを地場の企業に要求するということになってしまうのではないかというようなことなどを含めて、個々に詰めていくとまたいろいろな議論があるのではなかろうかと思います。

 ただ、できるだけ少ないコストで、より効果の高い公共サービスを社会資本で提供していこうという大きな発想については、私も賛同しているところでございます。

吉良委員 基本的には評価をしていただけるということで感謝をしますけれども、今幾つか懸念、これは細かくいけば本当に相当な反論も出てくることはもちろん承知で、またそれに対する再反論も私、用意をしておるわけであります。

 一つは、高速道路についても、もう御承知のとおり、PFIというよりBOTという形で、当初、第一号が広東だったと思います。その後バンコク、それから中南米のアルゼンチンとか、このBOT、PFI方式でもう実施済みというのが世界の趨勢でありまして、まず、これは日本流にアレンジし直して十分取り組み可能だということであります。

 今、最大の懸念として表明されました、大きなロットになれば結局大手のゼネコンしか参加できない形になるんじゃないか、今のままではそのとおりであります。だからこそ、やはりそれぞれの地域で知恵を絞っていかなければいけない。その際、今、地域活性化、地域経済に活力をもたらすという施策もいろいろやっておりますけれども、私も大分という地方出身の議員として言えますことは、地域の人も大変頑張っておられるんですけれども、世界との競争というような観点でいくと、圧倒的に人材が不足しております。

 ということで、今までであれば、すぐに大手の企業が元請に入って、地場はその下請、そのさらに地場は第二次下請というようなのが常態であったわけでありますけれども、そうではなくて、地場の幾つかの企業が、例えば地場の金融機関とか、それから、地方の場合は金融機関が多いですけれども、そこがつくっているシンクタンクでありますとかコンサル、そういうところとコンソーシアムを組む、そして、そういうコンソーシアムを組んだところが東京から人材を招聘するということでありますね。

 具体名を出して恐縮ながら、新生銀に移った長銀なんというのは、プロジェクトファイナンスの専門家が山のようにいたわけでありまして、私の知る限り、私の友人たちも、長銀がなくなってからというものは結構散り散りばらばらになっております。この手の手法は、海外とやりとりをしている、海外のインフラ事業に携わっている人たちにおいては、ある意味では共通のノウハウになっております。だから、そういう人たちをいろいろな形で地域に招き入れて、そういう人たちがアドバイザー的な機能を果たせる限り、地場が中心となって請け負うことは十分可能であります。

 そして、さらなる地場といいますか、何とか町、何とか市という企業については、今までの、接待をすることによって見返りとして下請に入れてもらうというようなことから、下請の採用の仕方、これ自体もこの改革によって変わってくるというふうに思っています。地場の上から下という言い方は妥当でないかもしれませんけれども、すべてがやはり競争力をつける、人材力を高めるということに徹しない限り自分たちが受注できないというふうになりますので、そうやって厳しい競争の中でより高度の生産性をつけていってもらう、と同時に、国民から見れば安いインフラが手にできる、こういうふうに思っているところであります。

 もう時間が参りましたので、ぜひ今後も内閣と国交委員会で続けていきたいと思っておりますので、政府においてもこの種の議論を詰めていただきますようにお願いをしまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

中野委員長 次に、大畠章宏君。

大畠委員 民主党の大畠章宏でございます。

 大臣所信に対する質問をさせていただきます。

 通告はしてございますが、大田大臣は五十分に出なきゃならないというので、一番最初に大田大臣のものを集中的にまとめて質問させていただきます。

 まず、これは各大臣に御質問しようと思ったんですが、今の日本国内の地域の方では、これから日本の経済の先行きはどうなるのか、特に、これまで余り想像もしなかったような経済を取り巻く状況も生まれておりまして、ここを各大臣にお伺いしようと思ったんですが、時間等の関係もありますので、大田大臣にのみ質問をさせていただきます。

 先ほど吉良委員からもお話がございましたが、サブプライムローン問題、日本でいえば土地バブルの崩壊と似たようなものでありますけれども、これがアメリカで起きたものですから、大変大規模な金融不安等も生んでおりまして、アメリカ国内でも必死に火消しに回っておりますし、ヨーロッパもそういう状況を呈しております。

 日本の場合には、その被害額が六千億円程度ということで、これも大きいんですけれども、政府の方からは状況を冷静に対処するというほどのメッセージしか出されていないんですが、アメリカのマーケットとか、あるいはこれが中国のマーケットにも影響してきます。日本の国はどうも輸出依存型の経済体質になってしまったんです。自由市場原理主義という政治の考え方をすれば、どうしてもそうなってしまうんですよね。

 ここまで来て、さあ大変だ、内需拡大に転換しなければという話が出ているんですが、どうやって内需拡大に転換したらいいのか。いわゆる自由市場原理主義経済と内需拡大というのはどうも結びついていないんですね。マーケットが世界的にグローバル化した、その中で自由市場原理主義で何とかやっていこう、だめなものはつぶれていくし強いものは生き残る、そういう考え方なんですが、それでは内需拡大というか、内需に限った経済は成り立たないんですね。

 そこで大田大臣、大田大臣もどちらかというと市場原理主義を推進してきた責任者の一人でもあるんです。ですから、今、外需依存型の日本の経済がこういう状況に直面しているんですけれども、この危機に大田大臣としてはどういうふうに対処するおつもりなのか、その覚悟のほどをお伺いしたいと思います。

大田国務大臣 決して市場原理主義、そういうことではなく、これだけ世界がグローバル化している、人、物、金が国境を越えるときですので、グローバルな成長の中で日本も生きていけるような形をつくるということは必要だと考えております。そういう意味で、外のエネルギーを取り込むということは必要だと思います。

 あわせて、国内の需要に依存するような国内型の産業を強くしていくこと、そして内需の厚みをつくっていくということ、これはまた非常に大事なことです。このためには、国内のサービス産業の生産性を上げること、あるいは、働く側にとりましては、この新しい構造の中で最低賃金のあり方を見直す、あるいは非正規労働をなるべく正規労働に変えていくような施策を講じるということ、本格的な職業訓練を行うということ、こういうことをあわせてやっていかなくてはいけないと思っております。

 冒頭に御質問がありました、では、足元のこの経済の混乱の中でどうしていくのかということでございますけれども、今、日本の企業が徐々に体質を強化してきたわけですけれども、ドル安、アメリカの株安といった外的な要因に大きく揺さぶられてきております。まず、その影響が中小企業の収益の圧迫という形でやってまいりました。

 特に、サブプライムローンの金融資本市場の動揺で、投機マネーが原油高にもはね返っております。それから穀物市場にも投機マネーが入って物価が上がるということが起こっておりますので、ここの中小企業の収益圧迫、そして物の値段が上がることへの消費者のマインドの低下というところが今非常にきいてきておりますので、まずは今、中小企業の資金繰りの支援であるとか体質強化というところにできる限りの政策をとっていかねばならないということで取り組んでおります。

大畠委員 決して自由市場、自由万能主義ではないんだというお話ですが、私は、今の御答弁を聞いていましても、例えば穀物の異常とも言える高騰、これの背景には、いわゆるバイオエタノールというもので、食べられるものが燃料化される。そして、これが地球にいいんだというので、みんながそういう流れをつくろうとしているんですが、それはかなり先進国のエゴみたいなものであって、トウモロコシを食べている人から見れば、何で食べ物を燃料にしちゃうんだ、こういうことなんだと思うんですよ。それで結局、物価が上がり始める、世界的に食料が不足し始める。私は、市場原理主義というものは、全否定するものではありませんけれども、やはりどこかにコントロールすべきものがあるはずなんですね。

 これまでの流れの中で、日本という国は何か。確かにグローバル化はしていますよね。でも、日本の国益を考えるのが国なんですよ。その国の中の現状を考えないで、全部原則フリーという話になってくると、確かに、弱い人は市場から退場して、強い者だけが強くなる。グローバル化の、地球上の経済は別に困らないかもしれぬけれども、日本国内で困り始めているんですよ。

 そこが大田大臣、ぜひ大田大臣も、小泉政権時代からは随分かじを切り始めているというんですが、もっと足元を見てもらいたいんですよ。アメリカの企業だって、アメリカ国家は、力を入れて、見えないように保護していますよ。ところが、日本の場合には保護しないんですよ。もうグローバル経済、自由市場から退場する人はしようがないんだ、それが生きていく道なんだ、そんなニュアンスが伝わってくるんです。

 私は、ぜひ大田大臣には、もうちょっと地域を歩いてもらいたい。特に、永田町とか六本木ヒルズとか何かじゃなくて、先生の生まれ故郷をちょっと調べていませんけれども……(大田国務大臣「鹿児島です」と呼ぶ)鹿児島ですか。鹿児島へ行って、見てくださいよ。商店街を歩いたり、そこをサポートしている中小企業のおやじさんに聞いたり、そこでこそ初めて日本の経済がわかってくるんだと思うんです。

 グローバルも結構かもしれませんが、やはり日本の国益を考えることが政府の原点じゃないかということを感じますので、ぜひ、鹿児島に行って地域の商店街とか中小企業のおやじさんの話も聞いて、そして経済政策の中に取り入れていただくということを要望して、お帰りいただいて結構でございます。

 その次に、二番目には、原子力発電所の耐震安全性についてお伺いしたいんです。

 泉大臣の大臣所信を見ていましたら、あっ、泉大臣は原子力もやっておられるのかということで、私はびっくりしたわけです。「原子力発電所の耐震安全性について高い関心が寄せられています。この地震の教訓を踏まえ、原子力安全委員会が改定した耐震設計審査指針に照らした既設の原子力発電所の耐震安全性の確認を進め、安全確保に万全を期してまいります」というんですが、これはどういうことを意味しているのか、泉大臣としての御決意を、この件についても大変大事な問題だと思いますので、お話をいただきたいと思います。

泉国務大臣 原子力発電所の安全確保の視点から見ると、幾つかの問題がございます。その中で、地震国日本にあっては、耐震性、耐震安全性の確保というのが非常に重要な問題である、このように考えておりまして、最新の知見を踏まえて、徹底的な調査あるいは厳格な安全評価を行う必要があると考えておるところでございます。

 原子力安全委員会は、平成十八年の九月に地震学等の最新知見を反映し改定した新しい耐震設計審査指針において、最新の手法による徹底的な活断層調査を、これは柏崎の原子力発電所で行わせていただいておりますが、行った上で、旧耐震指針と比べて一層厳しい地震動を策定し、安全機能が損なわれることのないようにすることを今求めておるわけであります。

 委員御承知のように、原子力安全委員会は、原子力安全・保安院に対しまして、新耐震指針に基づくすべての既設原子力発電所の耐震安全の評価、バックチェックを実施するよう要請しておるところでございます。

 現在、事業者においてこの評価が行われているところでありますが、既に浜岡原子力発電所の三、四号機など中間報告を受けたものもございますが、今月末までに中間報告が行われることになっております。この後、原子力安全・保安院がこの中間報告の妥当性を確認した後、その結果が原子力安全委員会に報告をされる予定でございます。

 これは本当に重要なことでございますので、昨年の十二月に原子力安全委員会では、耐震安全性に関する調査体制を強化するという観点から、耐震安全性評価特別委員会を設置させていただきました。今後、新潟県の中越沖地震で得られた知見なども踏まえまして、原子力安全・保安院の確認結果について、専門的、中立的な立場から厳格な検討をさせていただくことを予定させていただいております。

 政府といたしましては、とにかく原子力発電所の安全というのは何にもかえがたいものでございますので、安全審査に万全を期してまいりたい、そういう思いを所信の一端として述べさせていただいたところでございます。

大畠委員 これも大変大事な問題でありますが、原子力安全委員会の体制というのはもっと強化しなきゃいかぬと思うんですね。今回の場合には地震ですから、なかなか手を打つことは難しかったわけですが、これからもMOX燃料の装荷という時期を迎えています。これは、そういう時期になりますと、どこかで何かトラブルが起こるんです。そうするとまたMOX燃料の装荷というのがなかなか難しくなりますので、事が起こる前に、今こそ原子力安全委員会がしっかりと地域をよく見て、事故を起こさないように、先手管理で行えるような体制をさらに一層、泉大臣のもとで強化していただきたいということを要望しておきます。

 この件についても質問はこれで終わりますので、御退室していただいて結構でございます。

 続いて、岸田大臣に質問させていただきます。

 岸田大臣は、科学技術の分野、たくさんテリトリーがあるんですが、岸田大臣の大臣所信を読んでおりましたら、目についたところが幾つかあるんですけれども、その中で、一つは、「平成二十八年までに自殺死亡率を二〇%以上減少させるための自殺対策の総合的な推進」という文言が目に入りました。さらに、知的財産戦略について、「知的創造サイクルを一層拡大、加速する新たな戦略」というのも目につきました。

 どうやったら日本における三万五千人とも言える自殺の現状を改革していくのか。一番いいのは、政権交代が一番私はいいのではないかと。先ほどいろいろ論議しましたが、いわゆる市場原理主義を強く推し進めているところに、追い詰められて、市場から追い出されて、行くところがなくなって自殺している方も随分いるんですね。これは、小泉さんが総理になる前は大体三万人。たしか五千人ほどふえたはずなんです、私の記憶によると。

 ですから、そういうところはあると思うんですが、これはちょっとこっちにおきまして、岸田大臣としてどうやって二〇%ぐらい減少させるというおつもりなのか。

 それから、知的財産戦略というのは、これは日本にとって非常に大事な問題です。この二つについてお伺いしたいと思います。

岸田国務大臣 まず、自殺対策の方ですが、我が国の自殺者数は、平成十年に三万人を超えまして、以後、九年連続、高い水準が続いております。

 自殺というものは、失業ですとか倒産、あるいは多重債務、さらには長時間労働、さらには家族、友人といった人間関係、こうしたさまざまな要因が複雑に関係をしていると言われております。しかしながら、従来の我が国の自殺対策ですが、自殺を図った方の多くがうつ病等の精神疾患に罹患していたということから、精神保健対策の一環として自殺対策が実施されてきたということでありました。そして、自殺者数の減少を見ることができなかったと指摘をされているところであります。

 ですから、自殺総合対策大綱という大綱を取りまとめることとなったわけですが、この大綱の中で、保健医療機関だけではなくして、事業主、学校及び多重債務、経営問題や遺族支援などに取り組む民間団体等が連携して社会全体として取り組む、こうした認識が示されたところでありまして、こうした社会全体としての取り組みが大切だというふうに考えております。

 具体的には、この大綱の中で九項目四十六の施策を総合的に取り組んだところでありますが、この数値目標としましては、民間の有識者から成る自殺総合対策の在り方検討会の提言を踏まえまして、当面の目標として、自殺死亡率の二〇%減少という目標を掲げたところであります。

 内閣府の中に自殺対策推進会議、有識者のみならず、実際にこういった問題に取り組んでいる、最前線で頑張っている皆様方にもこの会議に入っていただき、そして、関係省庁も一体となって、こうした対策の実施に向けて検討を進める体制、ことしに入ってこういった体制もつくったということで、この目標を実現するために努力していきたいと考えております。

 そして、知的財産戦略の方ですが、知財の方面は、大畠委員、大変見識が深くいらっしゃいますので、私からあえて申し上げることもないのかもしれませんが、イノベーションの連続的な創出を図るためには、知的財産の創造、保護、活用といういわゆる知的創造サイクル、このサイクルを拡大することが重要だと考えております。

 知的財産を創造し、創造された知的財産をしっかりとした権利として保護し、保護された権利を活用し、そして知的財産を活用することによって得た知見ですとかさまざまな成果を創造につなげていく、こういった創造サイクルを拡大していくことが大変重要だというふうに考えております。

 そして、この三つの要素をそれぞれ拡大する、そして全体の輪を拡大する、こういった考え方が大切だと考えておりまして、世界をリードする基本特許をまずしっかり確保していくこと、あるいは、昨今のデジタルネット時代に対応した知的財産の制度をしっかりと支えていくということ、そして、海外に向けてすぐれた我が国の知的財産を展開するために方策を講じなければいけない、こういった点が重要だと考えております。

 六月ごろをめどとしておりますが、知的財産推進計画二〇〇八、ことしの知的財産推進計画、今申し上げましたような考え方をしっかりと踏まえながらこの計画の策定を行って努力を続けていきたい、このように考えております。

大畠委員 いずれも大変大事な問題です。やはり、どんなにすばらしい文化やあるいは経済力があったとしても、自国国民の自殺率が高いなんというのは決してよくないですね。だから、その原点は一体何なのかということをよく突き詰めて、今おっしゃったいろいろな対策があると思うんですが、この自殺防止の施策については、岸田大臣、温かい心を持っていると私も昔から知っておりますが、ぜひ大臣として力を発揮していただきたい。

 それから、知財の問題も、一時大分進みましたけれども、世界の流れの中で日本の知財をさらに一層ブラッシュアップしていくこと。物の輸出も大事ですが、この知財というのがこれから日本が生きていくためにも非常に大事なベースになりますので、ぜひ御活躍をいただきたいということを申し上げて、御退室していただいて結構でございます。

 さて最後に、公文書館についてお伺いしたいと思います。

 上川大臣にこの件についてお伺いしますが、福田総理が、これをしっかりやるんだということで、これは上意下達という、いい意味でのリーダーシップをとってやっておられると思うんですが、実は、この公文書館法というのは私の中学と高等学校の校長先生がつくったんです、岩上二郎先生という参議院議員なんですが。

 事の起こりを見ますと、岩上先生は、校長先生をやると同時に茨城県の知事もされていたんですね。それで、知事時代でも、かなり重要な文書がどんどん破棄され、また公文書なども保管期間が過ぎると廃棄されるという状況を見て、これでよいのだろうかと思った、もう少し文書保管についてきちっとした法制定というものを考えなければいけないのではないかという思いを持ったということで、参議院議員になってから一生懸命公文書の保管についてやったんだけれども、自民党のメンバーも冷たいし、特に参議院ですから、参議院でもなかなか相手にされない、衆議院の方でもなかなか相手にされない。

 そして、委員会で質問をしていたところ、当時の中曽根総理が、君のあの考えはいいじゃないか、やりなさいというふうに言われて、後藤田さんもその当時官房長官をされておりましたが、茨城の水高という学校の先輩なものですから、おれも応援するよということで、元気を出して議員立法を始めたということが事の起こりなんです。

 最初のころは、官庁はみんな反対です。基本的に、そんな文書なんかは使い終わったら捨てちゃえばいいんだと、残すといろいろ問題が出てきますから。どうもそういう感じなんですね。

 この公文書館というのはすばらしいことで、法律は何とかできたんですが、これは第一歩ということで、それからぴたっととまってしまって、ほとんど活用されていない。警察庁なんかでも、あれは保管しなさいと指示すると、どういうことか知らぬけれども一生懸命破棄してみたり、そういうことが過去にありました。

 一体この公文書というのはだれのものなのか、まずお伺いしたいんです。要するに、官庁のものなのか、国民のものなのか、ちょっと御存念をお伺いしたいと思います。

上川国務大臣 御質問をいただきました、公文書はだれのものなのかということについて答える前に、二月の二十九日に総理から公文書の管理担当ということで大臣を拝命いたしまして、この内閣の委員会では、その前だったものですから、所信を述べる機会がございませんでしたので、あわせて、そうした思いも……(大畠委員「あと四分しかないのでごめんなさい、思いはまた聞きますから」と呼ぶ)わかりました。

 公文書につきましては、私は国民共有の財産であるというふうに思っております。特に民主主義そのものの礎というふうに考えておりまして、それぞれの行政の政策立案や意思決定の中で、この公文書の存在というのは、絶えず謙虚にひもときながら、そして政策に生かしていくべきものであるというふうに思っております。

 総理からのことでございますが、思いとして、公文書につきましての管理保存体制を十全に整備していくということが内閣の最大の重要政策の一つであるという御指示をいただきましたし、全力で取り組むようにということでの仰せがございました。総理の思いというのを形にしていくということで、大変大きな責任があるものというふうに思っております。そういう意味で、全力で取り組んでまいりたいというふうに思っております。

大畠委員 時間がなくて申しわけないですね。また改めていろいろな思いはお伺いするとして、実は、公文書館法ができてもうかれこれ二十年たっています、六十二年の十二月に始まっていますから。二十年たつんですが、どうもうまくいっていない。国の方は、こういう立派なパンフレットもつくって、国立公文書館というのが動いているんですが、自治体の方が、ほとんど予算がなくて、どうもうまくいっていない。岩上先生も、その当時、予算づけの法律案というのはなかなか通らないので、努力義務の法律案にしてしまったんですね。でも、これはワンステップだ、非常に大きな一歩だというのでみんな喜んでいたんですが、それからなかなか進んでいないんですけれども、自治体の公文書保管の現状については、どういうふうにして調査して、そしてそれを保管していかれようとしているのか、お伺いしたいと思います。

山崎政府参考人 お答えいたします。

 地方におきます公文書館の実態でございますけれども、現在、五十一館に上っております。都道府県が三十、政令指定都市が七、それ以外の市町村が十四というふうになっております。

 我々、地方公文書館の予算についてもいろいろ調査をしているところでございますけれども、なかなか平均という形でお示しするのは難しいのでございますけれども、例えば都道府県の公文書館につきましては、大体六百万円のものから、多いところでは五億九千万円となっております。ちなみに、茨城県の歴史館におきましては約五億七千万と、全国で二番目でございます。

 また、政令指定都市の公文書館の予算につきましては、大体七百万から九千万、このようにかなりばらつきがあるのが実態でございます。

大畠委員 きょうは総務省の岡本自治行政局長もおいででございますから、参考資料としてお渡しした文書があるんですが、国の方はかなりきちっとしているんですが、自治体はどうかというと、なかなか手に入らなかったんです。たまたま茨城県の歴史館のものが手に入りましたけれども、自治体の現状について今どういう状況にあるのか、改めて岡本自治行政局長にお伺いしたいと思うんです。

岡本政府参考人 今、内閣府の方から御答弁ございましたように、公文書館の整備につきましては、法律に基づきまして、それぞれの県、政令市等で取り組みをいただいておりますが、特に私ども意を用いておりますのは、この平成の大合併におきまして、市町村の合併が起こります際に、重要な公文書等が特に散逸するおそれというものも非常に高いものでございますから、合併が進んでおります平成十四年、十七年、十八年の三回におきまして、公文書の適切な保存について要請をしてまいりました。

 また、その際に、保存のスペースでありますとか、データのデジタル化を図る、あるいは、場合によっては公文書館の整備をしたいという市町村もございます。こういう中で、それに対しましては、合併の補助金でございますとか合併特例債といったものを使って対応していただいているところでございますし、またそういうものの徹底も図ってまいりたいと思っております。

 合併市町村を初めといたしまして、全国の地方団体の中で公文書の適切な保存というものが図られますように、私ども意を用いてまいりたいというふうに考えております。

大畠委員 これで質問を終わりますが、公文書というのは税金でつくっているわけですから、すべて国民のものなんです。それを、単に、これは廃棄していいとか、これは保存すべきだという基準が、どうも私が見ているとはっきりしていないんです。ここのところが問題なんだと思うんです。

 今度また改めて御質問しますが、上川大臣におかれましては、思いのたけと、そしてそういうものに目配りして、自治体を歩いてもらいたいんです。そして、役場でどうなんですかと聞いて、実態に即した形で手を入れていく、ぜひそれもお願いをして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

中野委員長 次に、長島昭久君。

長島(昭)委員 民主党の長島昭久です。

 内閣委員会で初めて質疑をさせていただきます。大畠筆頭初め与野党の理事には、機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

 きょうは、犯罪被害者の支援につきまして、岸田大臣、そして泉大臣にお伺いをさせていただきたいというふうに思います。

 冒頭に、この犯罪被害者の支援という観点からいってきのうは一つのメモリアルデーに当たったのですが、岸田大臣、きのうは犯罪被害者との関連でどういう日であったか御存じでしょうか。

岸田国務大臣 オウムの地下鉄サリン事件の慰霊の行事が行われたと認識しております。

長島(昭)委員 今から十三年前、三月二十日、出勤のラッシュアワーをねらって無差別大量殺りくをもくろんだテロ、まさに国家テロが行われた、こういうことでございます。十二人の方が亡くなって、五千五百人に上る重軽症者を出した未曾有の事件でありました。昨日は、今岸田大臣がおっしゃったように、メトロの霞ケ関駅を初めとして各地で慰霊式を行った、福田総理も行かれた、こういうことでございます。

 オウム真理教をめぐっては、平成八年に破産宣告を受けてから教団の破産手続が始まりまして、元日弁連の会長を務められた阿部三郎先生が破産管財人になられて、これまで十二年間にわたって進めてこられましたが、認定された被害者への賠償総額が約三十八億二千万円、しかし最終的に配当された総額は、寄附金などを含めても全体の約四割にとどまりまして十五億二千万円、未配当は約二十五億円に上る、こういうことでございます。

 まず、岸田大臣に伺いたいのですが、このオウムの無差別テロによる被害者の救済の現状について、担当の大臣としてどのように今認識をされておられるか、ぜひ伺いたいと思います。

岸田国務大臣 オウムの事件における被害者の皆様方に対する支援、犯罪被害者対策を担当する大臣としまして大変重要な課題だというふうに考えております。こうした大規模なテロが発生したということは、我が国社会に大変大きな衝撃を与えたわけでありますが、こうした事件において被害を受けられました皆様方に対する、精神的にもあるいは経済的にも、さまざまな支援が求められているというふうに考えております。

 ぜひ、日本の社会全体としてこの問題を深く受けとめ、そして何ができるのか、担当大臣としましてしっかりと考えていかなければいけない、このように考えております。

長島(昭)委員 オウムのテロが連続して起こった九四年、九五年というあの時期は、まだ被害者支援活動というのがなかなか国内にも浸透していない、そういう時代でありましたから、端的に言って、このオウムのテロ事件の被害者の皆さんというのは、国による支援措置がほとんどなされないまま、ほったらかしにされてきたというのが実は現状なんですね。大臣も今、どういう現状認識ですかという私の質問に対して、これとこれとこれと、こういうことをやってきましたというふうに胸を張っておっしゃることができなかったと思うんですね。そこは私は、きょうこの機会にぜひ改めていただきたい、こう思っているわけです。

 当時、サリンの後遺症というものが医学的に一体どういうものであるかということすら実は不明確だった、そういう時期でありました。したがって、サリンの被害に遭った、そして後遺症に悩まされている、電車にも乗れなくなってしまった、そういう方が、会社の理解を得られないで結局退職せざるを得なくなってしまった、こういう例が幾つも幾つもあるわけですね。それから、何カ月か何年かたってからその後遺症の障害が発症して、苦労されておられる方もいらっしゃる。

 それから、きのうあたりテレビにも出ておられました、妹さんがたまたまその現場に居合わせてサリンの被害に遭って、以来寝たきりになってしまった、それを介護されるお兄様の姿が出ておりましたけれども、結局、その方も障害者自立支援法の適用を受けているわけです。しかし、委員の皆さん御案内のとおり、障害者自立支援法は改正をされて、そして自己負担がふえてしまった。そういう中で苦しんでおられるんですね。

 こういうことも含めて、国がきちんと、被害者救済という観点で、五千五百人の皆様方お一人お一人に対して救済をしていく努力をしていかなければならぬ、こういうふうに思っているんです。

 私、二年前にたまたま被害者の会の高橋シズヱさんと出会ってこの問題にかかわるようになったんですけれども、ちょうど二〇〇五年、今から三年前になりますけれども、アメリカの九・一一テロとこの日本のオウム・サリン事件、両方とも国家規模のテロであります。そして、被害に遭われた方の数はいずれも約五千五百人。死者の数こそ、日本の地下鉄サリンは十二名、九・一一は二千八百八十名と違いますけれども、被害に遭われた方の規模というものはほぼ同じ。それに対して日米両国がどういう対応をしたかということを国会図書館の力をかりて調べまして、私は結果を見て愕然といたしました。

 特に、被害者に対する特別立法あるいは特別な基金という点においては、アメリカでは、アメリカ愛国者法というのがそのとき創設をされて、そして、九・一一のテロの被害者だけに特化した補償基金というものが一週間で立ち上がっているんですね。そして、そこから死亡者二千八百八十人全員に総額で約六十億ドル、日本円にして、今為替レートは随分円高になりましたから約六千億、負傷者二千六百八十人全員に対して約十億五千万ドル。一人当たり平均で大体百二十六万七千八百八十ドル、こういうことであります。一億三千万程度の補償がなされているわけです。

 この考え方としては、国がそういう被害者を守ることができなかった、つまりこのテロを防ぐことができなかった、そのためのコンペンセーション、つまり補償ということでこういう基金や法律が立ち上がって、被害者の皆さんの救済に当たっているんです。

 日本の場合は、もともと連続企業爆破事件があって、一九八〇年にできた犯給法、犯罪被害者等給付金の支給等に関する法律というものに基づいて給付金が支給された方、この地下鉄サリン事件だけに限って言えばたった二人。もちろんあとの方は労災で、労災の適用を受けた方も三千名以上おられるわけですけれども、しかし、犯罪被害者の救済ということについていえば、法律の適用を受けた方はたった二名。そして、その規模も極めて、まあ今回、法改正があって上限が大きくなる、自賠責保険並み、こういうことになるそうでありますけれども、当時はまだ死亡者で約一千五百万円、障害を受けられた方、いろいろな程度にはよりますけれども、大体一千八百万円、こういうレベルにとどまっているんですね。

 この考え方、日本とアメリカの、あるいは日本とヨーロッパの考え方を比べてみて、私、一つ気がついたことがあるんです。内閣府の当時の説明によると、こういう被害者に対する国の救済措置、経済的支援というのは何か、どういう性格のものか。これはお気の毒な皆さんに対する見舞金という性格だ、こういう説明を受けました。例えばドイツは、法律にはっきり、国が国民の安全を守れなかった、守れなかった補償制度であるということを明記しているんですね。この考え方の根本的な違いが、まさに被害者に対する救済の規模に直結しているんだというふうに私は思うんです。

 私は一日も早いこの理念の転換が必要だというふうに思うんですけれども、国務大臣、いかがでしょうか。

岸田国務大臣 犯罪被害者の方々に対する経済的支援につきましては、今委員御指摘のような状況に対しまして、さまざまな議論が今も行われています。

 そして、政府におきましても、犯罪被害者等施策推進会議の中に置かれております三つの検討会のうちの一つ、経済的支援に関する検討会、この検討会におきまして議論が行われました。この検討会の議論の最終取りまとめの内容としましては、やはり犯罪被害者に対する支援、給付制度という形での充実ということになっております。

 こうした考え方に基づいての支援ということになっているわけですが、この支援につきましては、いろいろな形で引き続き充実を考えなければいけない、その充実の中で、実際的な金額とか内容のみならず、哲学の部分につきましても議論は深めていかなければいけない、そのように思います。

長島(昭)委員 岸田大臣、積極的な御答弁をいただきまして、ありがとうございます。

 推進会議でいろいろな被害者の皆さんの声も聞いていただいて、検討会にも、オウムの被害者の会の会長さん、高橋シズヱさん、御主人は御承知のとおり霞ケ関駅の助役さん、最初にサリンのビニールを取り上げられた方で、即死だったということでございますけれども、その高橋シズヱさんも入っておられて、いろいろな意見を交換されたということは聞いております。

 ただ、今、哲学の転換というところまで踏み込んで御答弁をいただいたんですけれども、このオウム真理教の一連のテロ事件に対する被害者の救済というものは、一般の被害者支援における経済的支援のまさに試金石だというふうに私は思っているんですね。

 象徴的な事例だというふうに私は思っていますので、もう一段踏み込んでお考えいただきたいのは、先ほども申し上げました破産手続、これは、事件発生から十年以上経過しても被害者への賠償が四割にとどまる。阿部管財人ももう八十歳を超されて、今月の二十六日に最後の債権者集会を開いてもうこれは終結するということに決まっているそうでありますが、結局、被害者への賠償は進まない。一方で、オウムの残党であるアーレフとかひかりの輪、そういう団体は、一応監視団体の対象にはなっていますけれども、相変わらず活動を続け、資金集めも行っている。こういう状況なんですね。この理不尽な状況に対して被害者の皆さんがどう考えておられるかということをぜひ国として感じていただきたい、こういうふうに思うんです。

 アーレフなんかは、アメリカの国務省にテロリストグループとして指定をされている、そういうグループなんです。したがって、私たちは、国の責任で賠償問題に決着をつけて、そしてオウムの残党にこれ以上経済活動ができないようにしていく方法をやはり我々議員で考えなきゃいけない。

 先ほどお席におられた上川大臣も、もともとこのオウムの被害者に対する救済運動を頑張ってこられた方です。超党派の議員、今自民党でも議論をされている、公明党でも議論が続けられているというふうに聞いておりますが、私ども民主党では、特別立法の議員立法の法案を二月十四日に提出をさせていただきました。その一番のポイントは何かといったら、被害者に対してまだ六割が未配当です、国が未配当の被害額を立てかえ払いして、そして、国がその後オウムの残党から残りの債務を回収していく、こういう特別立法の構成にしているわけです。

 岸田大臣、経済的支援の理念も根本的に変えていかなければならない、そういう御意見も今披瀝をしていただきました。そういう立場も含めて、このオウム真理教による連続テロ事件の被害者に対する特別立法について、現時点での大臣のお考え、どのようなお考えを持っておられるか、お伺いしたいと思います。

岸田国務大臣 まず、政府としましては、犯罪被害者の皆様に対する経済的支援、先ほど御紹介させていただきました犯罪被害者等施策推進会議のもとに置かれた経済的支援に関する検討会において議論を行い、昨年十一月に一応結論を出したところであります。

 その中で、これから将来に向けての支援制度の見直しを盛り込んだところでありますが、このオウム犯罪被害者の皆様に対する救済という点については、今御紹介いただきました民主党での御議論、そしてその他の各党での議論、この議論をぜひしっかりと見守らせていただいて、こういった動きをしっかり注視させていただきたい、このように考えております。

長島(昭)委員 大臣を後押しする意味でも、高橋シズヱさんが去年の十月十日、院内における集会、被害者の皆さんとそれから国会議員、自民党から共産党、超党派の議員が出席をしたその被害者のための集会での御発言を少し引用して読ませていただきます。高橋さんはこんなことをおっしゃいました。僕は初めてこういうことを聞きました。

 十二年にわたって事件を風化させないように奔走してまいりました。振り返ると、結局、自分は夫の死に向き合えていなかったのではないかと最近感じるのです。事件の被害者が十二年も被害の救済を求めてあちこちに頭を下げて回らなければならないようなことが今後ないようにしていただきたいと思っています。こういうお話でした。

 そして、阿部管財人は、もう八十過ぎの御高齢でありますが、この方もそのとき破産手続の御報告をされて、こうおっしゃっていました。

 管財業務を結了するということになりましたが、しかし、これからの仕事は、被害者、弁護団ともども、国会議員の先生方にもお願いした中で、やはり特別法をつくってもらわなければならないと思っています。その作業に私どもも側面から全面的に参加して御協力申し上げたい。したがって、その法律ができるまでは、現在の心境としては、破産業務は結了に至ったとしても思い半ばの気持ちでございます。全くそういう心境でございます。そういうことで、本日のところ、つまりその業務は結了しますけれども、私はこの法律が、特別立法が実現できるまでは、あらゆる手段を尽くして頑張ってまいりたいというふうに思っています、こうおっしゃっておられるんです。非常に重い言葉だと私は思います。

 再度、岸田大臣にお伺いしたいんですけれども、このオウムの連続テロ事件の被害者の救済に対しては、恐らく一般の犯罪被害者との扱い方のバランスに相当苦慮なさっておられるんだろうというふうに思うんです。しかし、この事件というのは三つの点で特別だと私は思っています。

 まず一つは、大量無差別の殺りく行為、この重大なテロ行為というものに対して国はどうするかということが問われていること。それからもう一つは、この被害者の皆さんはどういう方かというと、オウムは国家や社会に対するテロをやったわけです。まさに、国の身がわりになって犠牲になられているわけです。そしてもう一つは、先ほどの高橋シズヱさんのお話にあったように、自助あるいは共助、自分で助ける、ともに被害者の皆さんの間で助け合っている、そういう自助、共助の措置を講じたにもかかわらず賠償の問題で半分以上の配当が残されているように、十分な救済を受けていないんです、損害賠償という点において。

 こういうことをきちんと考慮していただいて、これは議員立法で私どもやっていくしかないと思っておりますけれども、そういうことを政府としてぜひ受けとめて、テロと闘うという思いもぜひ込めていただいて、そして、損害賠償というのは単なる金銭の問題ではありません。これは損害の補てんという意味もありますけれども、もう一つは将来に対する違法行為の抑止という観点もあるわけです。そういうことも踏まえて、もう一言、ぜひ決意をお伺いしたいと思います。

岸田国務大臣 まず、オウム事件の関係者の皆様方の深い思い、この重たい思いはしっかりと受けとめなければいけないと思っております。その上で、この事件に対してどのように対応していくのか。今委員の方から三点御指摘をいただきました。この三点の指摘はしっかりと参考にさせていただかなければいけないと考えております。そして、その上で、各党で行われているこうした議員立法の動き、しっかりと注視していきたいと考えています。

長島(昭)委員 ぜひ、国として、大臣としてリーダーシップを発揮していただきたい、このように思います。

 次に、きょうは泉国家公安委員長にもおいでをいただいておりますので、経済的支援の一環としてもう一点伺いたいんです。

 それは、犯罪被害者給付金制度、この実行の徹底といいますか、私、随分被害者の方とこれまでお話をさせていただきましたけれども、そもそも被害者給付金制度そのものを御存じないという方が結構いらっしゃるんですね。このことについて、恐らく警察が一番最前線で被害者の皆さんと向き合っておられると思うんですけれども、警察として、被害者の権利を被害者の皆さんにちゃんとお伝えをする、そして、中でも経済的支援について、こうこうこういうことになっていますよということをきちんとお伝えをすることの周知徹底はどのようになされているのでしょうか。

泉国務大臣 犯罪被害者給付金制度の周知が十分でないという御指摘でございます。この御指摘は、我々もさらに重く受けとめていかなきゃならないと思います。

 不慮の事故に遭われた方々は、まさにこういう制度を、通常は御承知ない、国民の多くの方々は御承知ない状況の中で不慮の事故に遭われるということでございますので、私どもは、通常、パンフレットでありますとか、あるいはホームページでありますとかポスターなどで広報活動をさせていただいて、広く国民に御了知いただくことに努めさせていただいておるところでございます。

 しかし、問題は、個々の事件が発生いたしましたときに、担当者が、その被害を受けられた方あるいは御遺族の方々に対して、こういう制度がありますよということを申し上げる、周知させていただくということが重要だと思っておりまして、「被害者の手引」という広報用のパンフレットをつくらせていただいて、直接語りかけさせていただいております。

 また、警察官は、採用試験あるいは昇任試験のときに、こういう制度の徹底を図るために日ごろから重要な項目として教育をいたしておりまして、これからもこの姿勢を続けてまいり、周知徹底を図っていきたいと思っておるところでございます。

長島(昭)委員 大臣、周知徹底を図っていくというのはよくわかるんですけれども、それが機能していない部分があるので私は質問しているんですね。

 つまり、制度的に何か担保しないと、昇任のときに、試験のときにきちんと周知徹底しています、警察官にもちゃんと研修やっています、警察官も多分やるでしょうというレベルでは、やはりこれは、被害に遭われた方、私、現に八王子のケースでいいますと、夫が銃撃されて死亡された、相手は暴力団員、残された奥様はもう本当に何が何だかわからない、そういう状況の中で、この犯給法の事実を知ったのは一年三カ月後、こういう状況なんです。それも、自助グループの皆さんたちから話を聞いて、ああ、そんな制度があるんですか、こういう状況なんですね。これは、やはり警察というのは被害者と一番最前線で向き合っている大変重要な方々でございますので、私は、もう少し踏み込んだ制度的な担保が必要だと思っています。

 そこで、言いっ放しであるといけないので、アメリカの例を少し御紹介したいと思うんですが、アメリカもやはり、これはペンシルベニア州ですけれども、こういうパンフレットを被害者の方に差し上げるんですね。それで、まあそのときに恐らく説明するんでしょう。そのときに、このカード、これはちょうど名刺大のカードです、ここに、どの警察官が被害者の方にいつ手渡したかということが記録に残るようになっているんです。警察の控えもある、それから、被害者の方の手元にも、どの方が何月何日何時何分に被害者の権利についてきちんと説明をしたという記録が残っているんです。警察署の側にも残るし、被害者の側にも残る、こういう仕組みになっているんですね。

 これは私、ぜひ参考にしていただきたい。こういう制度的な担保がないと、ああ、あの警察官は熱心にやっているけれども、この警察官はちょっとおっちょこちょいで伝え忘れちゃった、こういうことになりかねません。被害者の皆さんは本当に切実な思いで日々頑張っておられるわけですから、公安委員長として、こういう方法に踏み込む御意思があるかどうか、ぜひ明確にお答えいただきたいと思います。

泉国務大臣 委員今お話しいただきましたアメリカの例は、大変参考になると思って聞かせていただきました。

 先ほど私の方から申し上げました、今被害者の方にお渡ししておりますのはこういうパンフレットでございまして、この中にも、今先生御指摘いただきましたように、担当の警察官がだれであったか、そういうことはメモできるようにはなっておりますが、御趣旨を踏まえまして、さらに工夫する余地があれば工夫をさせていただきたいと思います。

長島(昭)委員 ぜひお願いいたします。

 もう時間が迫っているんですが、もう一点、岸田大臣に伺いたいところがあります。

 それは、十七年の基本法の中にも十八条で明記されている、犯罪被害者の裁判制度への参加の促進であります。

 私、ドイツの方の話を伺いました。ドイツの法廷には三つの席がある。一つは裁判官、もう一つは被告と弁護人、そしてもう一つが被害者の席。日本には今まで二つの席しかなかったわけですけれども、これから裁判への被害者の参加ということの道が開かれれば、法廷の中にもう一つの席が設けられることになると思うんです。そうなったときに、それを支えるインフラといいますか、ハードの面も実は整備しなければならないというふうに思っているんです。これは何かというと、裁判所において被害者専用の控室をつくってほしい、こういう被害者の皆さんの声があるわけです。

 現状、大臣としてどのような認識を持っておられるか、まず御答弁をいただきたいと思います。

岸田国務大臣 まず、被害者の方々に直接接する機会が多い裁判所において、この犯罪被害者等の視点に立った取り組みを充実させていくということは大変重要であるというふうに認識をしております。

 今、被害者の方々への専用の待合室の話ですが、犯罪被害者等からの意見聴取会、これは内閣府におきまして開いている意見聴取会ですが、こうした場、そして、犯罪被害者等施策関係省庁連絡会議、これも年に数回、内閣府において開かれている会議でありますが、こういった会議の場で、専用の待合室の設置の必要があるのではないかという議論が既に行われております。

 そして、そういった議論が行われる際には、最高裁判所からも直接参加をお願いしておりまして、参加をしていただいております。そういった場を通じて、直接こうした要望が伝わるように内閣府としても努めているところでありまして、ぜひこうした要望をしっかり伝えると同時に、裁判所において適切な判断をしていただけるように期待をしたいと思っています。

長島(昭)委員 裁判所に適切な判断をしていただきたい、期待をするという、まあ司法の独立で、なかなか行政府として思い切ったことが言えないのかもしれませんが、犯罪被害者支援というのは国の責務でありますから、裁判所も国家機関の一つなわけですから、ここは、裁判所にしても検察庁にしても、きちんと横並びで対応していただかなければならない。

 委員の皆さんにはなかなかぴんとこないかもしれませんけれども、例えば、八王子にある東京地裁の八王子支部での今の状況をちょっと御説明しますと、法廷の廊下に長いすがあるだけなんですね。そうしますと、この長いすの右端に被害者の皆さんが座る、左端に加害者側の、被告の側の関係者が座る、こういう隣り合わせで座らされるような状況なんです。これも、日本の場合は本当におくれている。アメリカは、法廷の中で日当たりのいい角部屋が被害者の皆さんの控室になっているんですね。それはなぜか、なぜ角部屋かというと、加害者の人たちと顔を合わせないようにするために配慮されているというんですね。

 今確かに、おっしゃっているように、東京と大阪と地裁レベルでもようやく控室が設置されましたけれども、これからまだ五十庁十支部、六十裁判所あるわけですから、そこにやはりこういう被害者の皆さんに対する専用の控室を設置していく、そのことは、国の責務としてぜひ努力をしていただかなければならないということを最後に申し上げて、質疑を終わりたいと思います。ぜひよろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

中野委員長 次に、佐々木隆博君。

佐々木(隆)委員 地域活性化の統合本部について、増田大臣に御質問させていただきたいと思うんですが、地域再生法と合わせて、増田大臣とは三回目のやりとりになるというふうに思います。統合本部が昨年途中から発足をして動き出してきておりますので、少し前にはこれからだという話がほとんどだったんですが、少しは実態も踏まえてお答えをいただけるのではないかというふうに期待をしておりますので、よろしくお願い申し上げます。

 最初に、地方再生戦略というこの冊子、ことしの一月末に改定されていますが、ここの基本理念のところで、「構造改革を進める中で、地域間の格差といわれる問題が生じている。」というふうに書き出されているわけですね。幾つかちょっと事例を申し上げたいというふうに思うんですが、内閣府が調査をいたしました地方再生に関する特別世論調査というのが一月十七日に発表されているんですが、それによりますと、住んでいる地域が元気がないというふうに答えている方が、八・三ポイント上がって五三・一%、元気があるというふうに答えているのが四三・二%。内閣の分析は、二極化が進んでいるという分析をしているわけですね。

 それから、一月二十五日に、これは総務省ですけれども、総務省が出した住民基本台帳人口移動報告によりますと、東京が九万四千人の移入超過、移入がふえている、神奈川県が三万二千人、東京圏で十五万人の転入超過という状況であります。全国の都道府県が出ているんですが、二十八の道府県が転出超過になっているわけでして、昨年は二十六だったんですが、それから見ると、また二つふえているわけであります。

 それから、これは国連の都市人口の推移という報告ですが、一千万人以上の人口のところをメガシティーというらしいんですが、そこでは、東京圏が三千五百七十万人で世界第一位。ニューヨークを抜いて、はるかに抜いているんです、ニューヨークの都市圏で千九百万人というふうに言われておりますので。こんな状況なわけですね。

 人口だけが格差というふうには思いませんけれども、具体的に、政府としてはどんなふうに格差というものがあるというふうにとらえているのか、まずその点についてお伺いをしたいと思います。

増田国務大臣 ただいまの点についてお答え申し上げたいと思いますが、特に先生には、昨年来、こうした問題についていろいろと議論をさせていただいて、御心配もいただいておりまして、そうしたお話を受けて、私も、やはりこの格差の是正という問題に先頭に立って取り組まなければならないと改めて考えております。

 今、人口の動向等について、私どもの住民基本台帳の調査などを含めて御紹介がございましたのですが、そうした人口動向の違いということも一つの材料になるというふうに思っておりますのと同時に、産業構造がそれぞれの地域によって違うことから、いわゆる地域の景況ですね、景気動向、これにも非常に大きなばらつきがある。

 ちなみに、内閣府の方で発表しております地域経済動向の判断でございます、これは御承知のとおり四半期に一度出ているものでございますが、一番最近の判断でございますけれども、何といいましても、力強く回復というのはやはり東海地域になっているわけでございますが、私が以前知事をしておりました東北、あるいは先生の北海道、ここは、持ち直しの動きが緩やかとか、あるいは持ち直しの動きに足踏みといったような、こういう判断になっておりまして、全体として、そうした下方への判断の修正ということが行われているものでございます。

 したがいまして、今、格差ということがございましたけれども、やはりそうした景気の回復を実感できないでいる地域が全国にある、あるいはその差が最近になってまた拡大をしてきているということに対して、緊急に、できるだけ急いで、こうした地方再生戦略に基づいて対策を講じていかなければならない、そして地域の活力を高めていかなければならない、今こういう問題意識を持っているところでございます。

佐々木(隆)委員 大分近づいてきたと言っては怒られますが、ぜひ格差の問題は深刻だということをとらえていただきたいというふうに思います。

 実は、これはきのうの朝日新聞でありますが、「人口流出 第三の波」というタイトルがついてございます。言われるとおり、一番最初の人口流出というのは高度成長期、いわゆる六〇年代の初めであります。二回目が、八〇年代の終わりのバブル経済期であります。そして今回なんですが、ただ、今回は今までとちょっと違って、景気がいい状況の中で人口流出が起きているということではなくて、今大臣からもお話がありましたけれども、少子高齢化という波が一つありまして、いわゆる人口減少期に入っているということが一つ特徴的だと思うんです。

 それともう一つは、超高齢化に向かっていわゆる共同体機能の維持が非常に難しくなっている、流出して。流入した方じゃなくて、流出した方の問題ですが。

 それと三つ目は、自治体の財政が非常に悪化しているということで、例えば雇用の維持自体も非常に難しくなっているというようなことが特徴だというふうに言われております。

 実は、公共事業が地域経済に必ずしもすべてだというふうには思いませんが、ただ、八〇年代の終わりのころに、景気対策として公共事業をどんどん打っていった時代がありますけれども、あれは基本的に私は政策的には少し間違いだというふうに思っていまして、公共事業を発注することが目的になってしまって、公共事業というのは、その成果品が地域経済、地域の発展に寄与するというものが本来なんですが、発注することだけが目的になってしまったというところでちょっと今日的な問題も抱えてきているんだというふうに思います。

 そういうのを受けて、これは総務省ですが、定住自立圏構想研究会というのが、研究が立ち上がっているはずであります。これは総務大臣として増田大臣が担当されているんだと思いますが、大体人口五万人以上の地域を、一時間以内に通えるようにスーパー、高校、病院、雇用を確保するといういわゆる定住自立圏と、さらにそれを幾つか合わせて、一時間以内にアクセスできる高度定住自立圏というのをつくるというふうに言われているんですが、片一方で、過疎町村が七百三十五、ここは、高齢化率が二〇二五年で四〇%を超えるのではないかというふうに言われているわけであります。

 それで、時々このごろ出てくる言葉に、いわゆる限界集落という言葉があります。この前もちょっとそれは触れさせていただいたんですが、これは、国交省は限界集落と言っております。これが七千八百七十三集落あるというふうに言われています。農水省の方は、限界集落とは言っていませんで、無住化危惧集落と言っているんですね。これが千四百三集落あるというふうに言われているんです。

 このごろ、いろいろな場面でこの限界集落という言葉が使われているんですけれども、これからの政策立案の上でも時折出てくるんだとすれば、やはりこの限界集落とは何かというのを統一しておかないと、いろいろなところに出てくるんだけれども、農水省が言っている限界集落と国交省や総務省が言っている限界集落が違うというのでは政策的に統一されないというふうに思うんですが、この点についてどうでしょうか。

増田国務大臣 今の御質問でございますけれども、近年になりまして、こうした非常に過疎化、高齢化が進んでいく上で、地域のさまざまな機能の維持ができないということから、今お話がございました限界集落という言葉、あるいは無住化危惧集落というんでしょうか、こういう言い方も出てきました。

 私は、こうしたところに国民の皆さん方が関心を持ち始めているというか、あるいは行政としても危惧の念を持ち始めた、これは一つの実態を直視するという上で必要なことでありますし、やはりそこを多くの国民、特に都市の皆さん方、都市住民の皆さん方にも十分理解をしていただきたいという意味で、こうした実態を明らかにしていくということはぜひ必要なことだ、こういうふうに思います。

 その上で、限界集落というのは、これは大学の先生が使い始めた言葉でございますが、高齢化率が五〇%を超える、そして、たしか共同体としての機能、冠婚葬祭を初めとした重要な機能の維持がもうできないという意味で、もう限界に来てしまったということで使われ始めたということでございまして、これも一つの大事な定義だと思いますし、農水省の方の定義は私も詳しくは存じ上げませんけれども、やはり非常に危惧されるような状況だろうと思います。

 今、委員の方から、こうしたことをきちんと概念統一すべきではないか、これは重要な御指摘でございます。

 総務省としても、定住自立圏の中で、そういう限界的な地域をきちんととらえなければいけないと思っています。これは各行政の中で多方面にまたがるものでございますので、それぞれがどういう意識で行政の中で見ているかということを考えていく必要があると思いますが、いずれ、政府として一体的な対策が求められるということでもございますので、今の御指摘を重く受けて、私の方でも、こうしたことを政府としてはどういうふうにとらえ直していくのか、問題提起をして、そして、そのことについての概念統一ですとか、大事なことはやはり対策に向けてどういうことが必要になっていくかということでございますので、他の省に対しても問題提起をしていきたい。

 御案内のとおり、定住自立圏の構想を今、検討しておりますが、ここには国交省とそれから農水省の方も入って、それで毎回議論をしてございます。私どもの方からも、今の御指摘を受けて問題提起をして、政府としての統一的な概念の形成ということに努めていきたい、こんなふうに思っております。

佐々木(隆)委員 ぜひお願いをいたします。積極的に頑張っていただけるようでありますので、御期待を申し上げておきたいというふうに思います。

 この再生戦略の中でも、多分、御苦労されたんだと思うんですが、限界集落とは言わないで、「基礎的条件の厳しい集落」という表現をされているんですが、今言われるように、むしろ、わかりやすく政策的に統一されていくということの方がいいというふうに私は思っていますので、ぜひお願いしたいと思います。

 次に、統合本部のいわゆる目玉事業であります元気再生事業について、お伺いをしたいというふうに思います。

 元気再生事業は、ことし、新規に二十五億円の予算が措置をされているわけでありますけれども、この二十五億円という部分は、この本部としての独自の予算だというふうに思うんです。しかし、事業はほとんど連携事業なわけですよね。相談をするだけに二十五億円もかからないというふうに思うんですが、独自事業だとすれば、この二十五億円というのはどういうところを中心に使おうとされているものなのか、まず、そこのところをお伺いしたいと思います。

増田国務大臣 今お話がございました地方の元気再生事業でございますが、おっしゃるとおり、これは統合本部としての目玉事業でございまして、考え方は、これは先生の北海道を初め、各地域で今、地域おこしあるいは地域再生のために懸命に努力をしたいという、そういった市町村なりあるいはさまざまな団体がございます。

 ところが、先ほど先生からもお話がございましたとおり、市町村も今財政状況が大変厳しいものですから、そういう自主的な、これから伸ばしていこうというところになかなか予算が回らないといったような状況もございまして、本来であれば、他との違いで、地域の発想をできるだけ生かしていく、地域をよく御存じの皆さん方が創意工夫を凝らすというところを地域おこしの原点にしなければいけないんですが、そのための財政的な余力が欠けているということがございます。

 それから、あと、地域をいろいろ私が回りますと、どうしてもその道の専門家のような人たちにアドバイスを初めのうちはいただいて、そしてそれを地域の人材育成につなげていきたいとか、あるいは、やはりこういうことが本当に地域で妥当するのか、社会実験のようなことをモデル的に、例えば、北海道の帯広で先般オープンカフェなどをやったようですが、そういったことを一、二回やって、いろいろ皆さん方の反応を見てみたいというお話もございました。

 そういったことに対して、立ち上がりを支援するようなものに対して、財政的にやはり支援するお金が必要だろうということで、二十五億のお金を確保させていただきました。これは、全国でいろいろ有効に活用していただくということでございますので、一カ所当たりにすればそれほど多くないお金でございますが、やはりそういうソフト事業についてのお金が今一番苦労をされているということでございますので、立ち上がり支援ということでこれをぜひ有効に使っていただきたい、このように考えているところでございます。

佐々木(隆)委員 ぜひ有効に使っていただきたいというふうに思うんですが、そこで、この事業を進めるに当たって、この前、論議をさせていただいた時点では、ブロック別担当参事官というのを全国八カ所に設置するというふうにしていたんですが、このたび、それに、地方支分部局に地方連絡室を設置するというふうになっております。

 実は、この中身についてちょっとお伺いをしたいんですが、私は、地方支分部局の人たちが集まってつくる、支分部局の方も集まっていただかなけりゃいけませんし、例えば、東北のようなところに宮城にだけつくっても、ほかの地域もありますから、そういう連絡網も必要だというふうに思うんですが、都道府県とか市町村の担当者が入らなければ、これは余り意味がないのではないかということを思いますので、その点が一つ。

 もう一つ、担当参事官が地域の代弁者として省庁連携をリードしながら政府一体となって施策を推進する、こうなっているんですけれども、特に、省庁横断、施策横断の取り組み、展開というのも大きく取り扱っておられるんです。例えばそれも、農商工連携だとか、都市、農山村の共生・対流、観光立国などは新規事業としても入っているわけでありますが、地方の担当参事官のそうした市町村、都道府県との連携と、もう一つは、こうした新しい連携事業を本庁でやろうとしているのに、本庁自体がどうやって連携するのかということがないと、全部担当参事官ではやり切れないというふうに私は思うんですよね。

 そこで、本庁における連携事業について、連携会議みたいなものが持たれているのか、あるいは何回か実施されているのか、この二つについてお伺いします。

増田国務大臣 今お話がございました担当参事官をしくということまで先般申し上げたわけでございますが、さらにそれを実効性あるものとするために、いわゆる地方の出先機関の中で省庁の枠を超えて連携を進めていくために置いたものが地方連絡室、こういうことでございまして、二月の二十二日に各ブロックごとに設置をいたしました。

 今ある組織というのは、地方支分部局、出先機関も、国交省の地方整備局があったり、国交省の中でも別途運輸局があって、それから経産局があったり、これはさまざま分かれているので、やはり地域で縦割りにどうしてもなってしまっている。何とかそこを、お互いの意見交換をするためにも、きちんとした場所を設けて常にそこを連絡室にして縦割りの弊害をなくしていきたい。

 それから、今委員の方から重要な御指摘をいただきましたが、本来は、それがブロックの、例えば東北なら仙台だけではなくて、いろいろな地域にもっときめ細かくあればいいわけでございますが、当面、なかなかすぐにというわけにいかないものですから、大事なことは、都道府県あるいは市町村などが常にそこに入って議論することでございますので、地域活性化推進連絡会議という場で最終的にその地域のことについての意思決定をすることにしてございますが、まず国の出先機関をそういうふうに地方連絡室に集めた上で、意思決定するその連絡会議にはブロック内の全都道府県あるいは政令都市の部局長級にも入ってもらって、そこで同じ立場で議論した上で物事を決める。

 ですから、どうしても都道府県の施策と合わない、あるいは国の押しつけ的なようなことはそこで排除して、地域に実のあるような意思決定をするようにしていきたい、こういうふうに一つ考えているものでございます。

 それからもう一つの、本省の方が縦割りであっては困るのではないか、農商工連携とか、いろいろ言葉で言っているにしても、本当にどうなのかということでございます。

 これは、当然のことながら、こちらの方の体制もきちんとする必要がありますので、そこでの意見交換を密にするために、例の四本部を一本化した統合本部、これは全閣僚が入って総理が本部長のものでございますが、これをこれまで三回開きました。それから、事務的な会議はしょっちゅう開いておりますが、局長級の会議もこれまで二回開いております。各省を集めた事務的な課長級等の打ち合わせ等はしょっちゅう行った上で、局長級を二回、あと全閣僚が集まったものを三回、こういう形で開きまして、そして、こちらのところもでき得る限り、実際にはやはり省庁は分かれているんですが、その中でできるだけ御懸念の弊害がないような、そういう体制と運用を今行っているところでございます。

佐々木(隆)委員 ぜひよろしくお願いを申し上げたいというふうに思います。

 そこで、この事業の一つの例でお伺いをしたいというふうに思うんですが、この中の生活者の暮らしに関する施策というところに、医療供給体制の整備充実というのがあります。ここでは、厚労省との連携ということになっているんですが、医師の確保とか救急体制とか、これは確かに厚労省の問題ではあると思うんですが、実は、とりわけ公立病院、自治体病院について言うと、これはもはや自治体の努力の限界を超えていると私は言っているんです。これは厚労省の問題であると同時に総務省、ここは大臣が兼ねておられるのでお伺いするんですが、総務省の問題でもあると思うんですね。

 公立病院の役割は、不採算な部分を担うこと、それから医師の供給、救急体制、ガイドラインにそう書いてあります。そのとおりだと思うんです。その一方で、ガイドラインは、効率的な運営を求めるとか、そういうことを提言しているんですね。あのガイドラインは私は非常に矛盾していると思うんです。片方で公立病院の役割はこういう役割だと言っていながら、三つほどあったと思うんですが、求めている改革というのがかなり矛盾していると思うんです。まさにこれなんかは連携事業としてしっかり成果を上げていかなければならない事業だと思うんですが、ここの点について、大臣のお考えをお伺いします。

増田国務大臣 昨年の暮れ、十二月に、総務省として、いわゆる自治体病院、公立病院の改革ガイドラインを出したわけですが、これは、その策定の過程で、今委員からお話がございましたような点もきちんと中に入れる必要があるということで、厚労省の方にずっと作成の委員会に入っていただきまして、そこで意見をいろいろいただきながらつくったものでございます。

 一点だけ御説明させていただきたいのは、確かに公立病院は、大事な役割、特に北海道もそうだと思いますし、私のおりました岩手もそうなんですが、地域にとって欠くべからざる医療を担う。もうそこしかない、公立病院しかない、周りに民間病院もありませんし、そういう僻地医療の中核でありますし、それから救急医療等も重要な役割を担っている。しかも、そこは大体不採算の部分でございますので、当然のことながら、一般会計でいろいろ決められた繰り出しルールによって財政も見ていかなければならない。

 この公立病院については、全国いろいろな地域の状況がございまして、周辺に民間病院等もあって、もっと経営の効率化が急がれる部分、空床などが非常に率が高いようなところもございます。ですから、こういう中で限られた医療資源を効率的に使う、これはお医者さん、先生方の数もそうなんですが、そういうことからいって、ぜひ経営の効率化にもしっかり取り組んでくださいということをその中でうたってございます。

 ただ、その中でも特に申し上げておりますとおり、僻地医療ですとかそういったところを支えているという役割は決してないがしろに、そして忘れてはいけない部分でございますので、その点については私どもも、このガイドラインの中でもきちんと指摘をしてございますし、また、それを受けて、今後、僻地の医療を担っている公立病院についての地方財政措置を充実させる方向できちんと検討する、こういうことでございます。

 限られた医療資源をガイドラインに沿ってできるだけ有効に地域のために生かしていただくと同時に、僻地医療等は私どもも全力で守っていきたいというふうに考えております。

佐々木(隆)委員 そこが、今回の地域活性化統合本部というものをつくって、いわゆる限界集落みたいなところをつくらないということ、あるいは地方を守るということの、私はある種、象徴の一つだというふうに思うものですから、この事例をちょっと取り上げさせていただきました。

 これは質問ではありませんけれども、総務省の話ですけれども、実は、病院事業債にかかわって、補償金免除繰り上げ償還という制度がつくられました。私は、これを非常に評価しております。

 ところが、自治体病院の使命を考えたときに、例えば、建設費の元利償還金が普通交付税に算入されていない病院もあるわけですね。そういったような場合に、資本比率というものが基準になっていて、一〇・九%でしたか、そこに満たないという場合も出てくるわけですね。だから、むしろ不良債権を抱えている病院が対象にならないというような状況も生まれてくるということが一つありますし、もう一つは、国の要請を受けて国の病院を引き受けた自治体があります。そういう病院を引き受けたがゆえに、この基準を下回ってしまったというようなところもあるわけですね。

 そういう一番助けなければいけないようなところがこの基準から漏れてしまうということが現実に起きておりますので、これは質問しませんけれども、ぜひ御検討いただきたいということを申し上げておきたいというふうに思います。

 この本部が目指すべき方向ということについて、最後にお伺いをしたいと思うんです。

 六つほどの視点を挙げておられたのですが、これはこの活性化本部の事業だけの問題ではなくて、どんな事業をやるときもある種当たり前といえば当たり前のことを挙げておられるのかなというふうに思いました。複合的な取り組み、先進、モデル性のある取り組み、持続性のある取り組み、相乗効果、波及効果のある取り組み、主体的な取り組み、計画性のある取り組みというのは、別にこの事業に限ったものではなくて、すべての事業に適用されなければならないというふうに思うんです。

 再びちょっと地方の話に戻らせていただきますが、日本世論調査会というところが地方自治に関する全国面接世論調査というのをやっておりまして、自分たちの自治体の将来に不安を感じるという答えを出された方が、大都市圏で五三%ぐらいなんですが、いわゆる小都市にいきますと七〇%を超えるわけですね。不安の理由としては、一番多いのは、実は自治体の財政状況というのが四〇%ぐらいありまして、その次に人口減や高齢化というのが三九%、そして、その次が医療や福祉サービスというのが三六%。やはりここでも限界集落ということの不安というのが指摘をされているわけです。

 実は、これは二月二十六日の新聞なんですが、給油所過疎という言葉が今あるのだそうでありまして、ガソリンスタンドが域内に三カ所以下の町村、別に今ここでガソリン税の問題を取り上げるつもりはありませんが、要するに、ガソリンスタンドがいわゆる自由競争のあおりを食って、系列化されていっているということが一番大きな理由らしいんですが、ピーク時の四分の三程度に今なってしまったそうであります。こういう地方の状況というものを、この事業を通じてどう打開していくかというのが私は一つの大きなテーマだというふうに思います。

 そういった意味で、私は地方、地方とこのごろ地方を安売りされているのではないかと言っているんですが、二〇〇一年、いわゆる小泉政権が誕生して以来、再生と地方という冠をつけた事業がどんどんどんどんふえておりまして、二〇〇七年にはもう十ぐらいあるんですね。これは、格差を一番言われたころだったというふうに思うんですが。そういうことで、ただただ地方という冠をつければいいというものではなくて、このことを通じて、私はこの事業は将来の分権に進むためのステップだというふうに思うんですが、その辺を含めて、大臣の決意をお伺いします。

増田国務大臣 やはり、今先生お話ございましたとおり、本当に地域を豊かにしていくためには、分権をして、地域の発想を自分たちの力で生かす、そして、そのための地域間の財政調整は一方で国の責任において交付税などでしっかりと措置をしていく、こういう形にしていかないといけないのではないか。

 今回、地方の元気再生事業とか地方再生戦略、まさに今、いろいろ地方とか再生とかという名前のついている事業がいっぱいあるということでございましたが、今起きている、冒頭御質問のございました格差の問題、これに早急に対応していかなければならないということで、私も就任以来、まさに緊急のものとしてすぐにそれを打ち出したわけでございます。

 それから、あと一方で、交付税等の額を確保するためのそういった措置などをとりあえずまず急いでやらないと地方が倒れてしまう。その上で、今先生お話ございましたとおり、実のある、実効性の上がる地域をつくっていくためには、これを分権につなげていく、これを確実に行っていかなければならないわけで、そういう緊急的な地方再生戦略の上で、ことし、今後、分権委員会で今している議論を踏まえて勧告をいただいていくことになりますので、これをまさに分権をつくっていく上での第一歩というか端緒とさせていただいて、地方の元気を、そういうことで本当に地域の力によっての地域再生につなげていきたい、そのために全力を挙げていきたい、このように考えております。

佐々木(隆)委員 終わります。ありがとうございました。

中野委員長 次回は、来る二十六日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時十三分散会


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