衆議院

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第13号 平成21年5月29日(金曜日)

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平成二十一年五月二十九日(金曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 渡辺 具能君

   理事 加藤 勝信君 理事 渡海紀三朗君

   理事 西村 明宏君 理事 平井たくや君

   理事 平田 耕一君 理事 泉  健太君

   理事 大畠 章宏君 理事 田端 正広君

      あかま二郎君    赤澤 亮正君

      宇野  治君    浮島 敏男君

      小里 泰弘君    大高 松男君

      大塚  拓君    岡本 芳郎君

      上川 陽子君    木挽  司君

      河本 三郎君    佐藤  錬君

      篠田 陽介君    中山 成彬君

      並木 正芳君    馬渡 龍治君

      松浪 健太君    市村浩一郎君

      逢坂 誠二君    楠田 大蔵君

      佐々木隆博君    西村智奈美君

      平岡 秀夫君    山田 正彦君

      笠  浩史君    池坊 保子君

      高木美智代君    吉井 英勝君

      重野 安正君

    …………………………………

   内閣府大臣政務官     宇野  治君

   内閣府大臣政務官     岡本 芳郎君

   内閣府大臣政務官     並木 正芳君

   参考人

   (公文書管理の在り方等に関する有識者会議座長)  尾崎  護君

   参考人

   (弁護士)

   (獨協大学法科大学院特任教授)          三宅  弘君

   参考人

   (政策研究大学院大学教授)

   (日本計画行政学会常務理事兼行政手続研究専門部会長)           福井 秀夫君

   参考人

   (独立行政法人国立公文書館長)          菊池 光興君

   内閣委員会専門員     島貫 孝敏君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十九日

 辞任         補欠選任

  木原 誠二君     木挽  司君

  長島 忠美君     浮島 敏男君

  吉良 州司君     逢坂 誠二君

同日

 辞任         補欠選任

  浮島 敏男君     長島 忠美君

  木挽  司君     小里 泰弘君

  逢坂 誠二君     吉良 州司君

同日

 辞任         補欠選任

  小里 泰弘君     木原 誠二君

    ―――――――――――――

五月二十八日

 戦時慰安婦問題の最終解決を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第二九七六号)

 同(石井郁子君紹介)(第二九七七号)

 同(笠井亮君紹介)(第二九七八号)

 同(穀田恵二君紹介)(第二九七九号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第二九八〇号)

 同(志位和夫君紹介)(第二九八一号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二九八二号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第二九八三号)

 同(吉井英勝君紹介)(第二九八四号)

 同(小宮山洋子君紹介)(第三〇六三号)

 憲法の改悪反対、九条を守ることに関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第三〇六一号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第三〇六二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 公文書等の管理に関する法律案(内閣提出第四一号)


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     ――――◇―――――

渡辺委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、公文書等の管理に関する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、公文書管理の在り方等に関する有識者会議座長尾崎護君、弁護士・獨協大学法科大学院特任教授三宅弘君、政策研究大学院大学教授・日本計画行政学会常務理事兼行政手続研究専門部会長福井秀夫君、独立行政法人国立公文書館長菊池光興君、以上四名の方々から御意見を承ることにいたしております。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。本案について、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 尾崎参考人、三宅参考人、福井参考人、菊池参考人の順に、お一人十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。

 なお、参考人各位に申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、尾崎参考人にお願いいたします。

尾崎参考人 公文書管理の在り方等に関する有識者会議で座長を務めております尾崎でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 本年は、行政情報公開法が公布されましてから十年ということでございまして、まことに記念すべき年にこの公文書管理法が審議をされているわけでございますけれども、私、実は、平成七年に行政改革委員会に行政情報公開部会というのが設けられまして、そこの委員を務めさせていただきました。自来、公文書問題とはずっとおつき合いしているわけでございますけれども、ようやく情報公開法ができて、いろいろな手当てが行われてまいりまして、現在ここで審議されております公文書管理法ができ上がりますと、一応制度としては整ったということになるんだろうと思います。大変ありがたいことであると存じております。

 また、その機会にここで意見を述べさせていただきますことは大変光栄でございまして、厚く御礼申し上げます。

 しかし、その間、情報公開法ができまして、あれはやはりかなりのショックを行政の世界に与えたというように思います。いろいろ行政内部におきましても改善が進められてまいりまして、その後、個人情報についての法律の整備もできましたし、だんだんとよくはなってきていると思うんですけれども、まだまだ不十分なところがございまして、そのためにいろいろ文書に関連した不適切な事例が散見されるという状況がなかなか改まらないのでございますけれども、この法律ができますと、そこは一つまた新しい段階を迎えることになるのではないかと期待をいたしているわけでございます。

 やはり最大の問題は何かといいますと、公文書というものに対する公務員の心構えといいますか、意識といいますか、そういう問題であろうと思います。何か日本の公務員の文化を変えるというものがこの公文書管理法ではないかというように考えておりまして、これを機会に、先進諸国あるいはアジアの諸国に劣らないような公文書管理が実現することを期待いたしているわけでございます。

 まず、ちょうど第一次世界大戦が終わりまして、ロシアのツァーが去り、ドイツの皇帝が去りというようなころから、近代的な国家の骨格というのがだんだんはっきりしてきたといいますか、いろいろ議論が進められてきたわけでありますけれども、その中で、いわゆる文書主義といいますか、文書に基づいて行政をとり行うということが、終始一貫、強調されてきたわけでございますが、我が国ではそれが法律上はっきりしているものがございませんで、今回の法律によりまして文書作成の義務というものが法律上明らかにされるということは、これは非常に大きな話であるというように思います。文化を変えるという意味で、これがやはり出発点であろうかと思います。

 それから、今までは、それぞれ次官会議その他で相談をして各省庁の統一をとる、内閣府とか総理府が中心になってそういうようなことを進めてきたわけでございますけれども、現実には、各省庁それぞれのやり方で文書管理を行っておりましたから、どうも統一がとれていない。これは、逆に言いますと、国民の側から見ますと、いろいろ情報公開法で文書の開示を要求するというようなときにも不便なことでございまして、各省庁の文書が統一的にできておりますと、検索もそれだけ容易になりますし、アクセスが非常に楽になるということがあろうかと思います。

 やはり、文書管理の共通のルールというものを定めるよう今回の法律ではっきり書いていただいておりまして、具体性は政令を見るまでははっきりしないというところもあるのでございますが、とにかく共通のルールを法律上つくろうというわけですから、これは今までとは格段の差があるわけでございます。これも私ども有識者会議としては非常に期待した一つのことでございまして、その実現を目指していただいているということは大変ありがたいことでございます。

 それから、それでは各省庁が本当にその定めを守っているかという、いわゆるコンプライアンスの問題につきましても配慮がなされておりまして、定期的な報告でありますとか、臨時の実地調査を行うとか、改善の勧告を行うとか、そこにも目配りが行き届いておりまして、それも大変結構なことだというように思っております。

 体系的に整えるといいますか、一つのシステムとして共通のものにしていくということは非常に大切なことでございますし、特に各文書の保存に際しまして、メタデータというんでしょうか、これがどのようなときに、どのようなところで、だれによってつくられて、どういう内容のもので、これは将来廃棄するのか、それとも歴史的資料として公文書館の方に引き渡すのかとか、そういうようなデータが全部はっきり示されるということになりますと、これは実は行政の生産性が非常に上がるんじゃないかなというように私ども考えております。

 かつてのように、それぞれが、各省庁共通していればまだいいんですけれども、各局各課でもって文書管理の方法が違っていたりしますと、転勤して異動したりして、そこにある文書を使いこなすまでに、やはり少しなれなくてはいけないということがあるわけですけれども、そこの統一がとれますと、異動した途端に少なくも過去の文書を引き出して参考にするということができるわけでありますから、そういう意味で非常に生産性が高まる。これは、文書管理と言っておりますが、同時に非常に大きな行革ではないかというように見ております。

 特に、新しい試みといいますか、別段先進諸国より新しいという意味ではないんですけれども、レコードスケジュールというのをつくりまして、それぞれの文書、ファイルごとにその記録をずっと残していく。それによって、いつ作成され、どこに保存され、そして将来どうするのかということまでがわかるようになるわけでありますから、これはとても役所としても便利なんだろうと思うわけです。

 これがございませんと、果たして歴史的文書としてそれを残すかどうかという判断をその文書の作成にかかわったことのない人がやるというようなことになるわけでございまして、それをきちんと決めろと言われても、実際にこれはなかなか判断がつかないんですね。それで、いろいろ先輩に対する遠慮もありますし、結局判断がつかないでそのまま保管しているというようなことになるわけですが、そのつくった本人が将来のあり方、スケジュールを決めてやって、それを見れば非常に参考になるわけでございます。途中でその文書に対する考え方が変わったり価値が変わったりして、廃棄する予定が保存することになったり、もちろん変わっていくことはあると思いますけれども、しかし、それがあるとないとでは、後世、後輩たちが非常に楽であるということもあります。これも行政の効率を上げることではないかというように思います。

 しかも、歴史的な公文書、歴史的に価値のある文書につきましては原則すべて移管するということになっております。これは我々非常に望んでいたことでございまして、長い目で見て、各省庁が資料を抱え込んでしまうということは非常によくない、本当に、その時期が来たら公文書館に引き渡して、だれでもそれを見ることができるというような体制にしなくてはいけない、そこも確保されているわけであります。また、その段階からは、御承知のとおり、立法府、司法府からの移管もされることになっておりまして、三権全体にわたる文書がそこで保存されているということは、国民にとっては大変ありがたいことであるということでございます。

 現在も実は制度としてはそうなっているわけなんですが、さっぱり進んでいないというのが実情でございます。これは立法府にも関係することでございますので、この法律を機会にぜひ立法府から公文書館への移管というようなこともどんどん進めていただきたいとお願い申し上げます。

 先ほど、公務員の文化の話だと申し上げましたが、職員の意識を改革してやるということが非常に大切なことであると思います。そうしますと、自分がこの仕事にかかわってこのような努力をしたということが文書として将来に残るわけでありますから、公務員にとっても張り合いのあることであります。

 そのためのスキルを向上させていくという手段として、研修のようなもの、これを非常に重視した方がいいと思うわけでございます。率直に言いまして、現在の中堅から上の公務員というのは文書管理についてほとんど関心を持っていなかった人たちでございまして、むしろこれからの若い人たちに新しい公務員文化を築いていただくということからも、研修をきっちりやることが大切ではないかと思っております。

 実は、人事院の国家公務員初任者研修の中に一こまこの問題を入れてほしいということをお願いいたしまして、昨年から入っているわけでございます。そして、もう最初、公務員になりたてのころから、文書というものは大切にしなくてはいけないし、これを将来にきちんと残さなくてはいけないということを徹底的にたたき込むことが必要ではないかと思っております。ぜひその点につきましてもお力をおかしいただけたらありがたいと存じます。

 それと同時に、先ほど申しましたように、先輩のつくった文書をどのように処理するかというような問題は、なかなか現役の人にとってはつらい決定をしなくてはいけないということもあるわけでございます。そのときにだれか相談相手がいてくれたら非常に助かるわけでございまして、実は有識者会議のヒアリングでも、各省から意見を聞きました中にやはり、相談相手がいてくれたらありがたい、そういう意見がございまして、俗にアーキビストと言われますが、そういう文書に関する専門家というものを育てていく、これも非常に大切なことではないかというように思います。

 この問題、実は公務員の仕事そのものでありまして、どういうような制度にするかということについては本当は公務員の中から声が出てくるというのが理想であると思うわけでございますが、制度の整備に当たりましては、公文書館の設立以来、議員立法で行っていただいていたわけでございます。今回は閣法で法律ができるようになりまして、それも非常にいいことであるなというように思っております。

 公文書館法、公文書館の設立以来、立法府からはいろいろと御協力をいただいております。例えば国会図書館などは、皆さんのお力で、定員で九百人、公文書館は四十二人でございますから、それで、予算で約二百億円、公文書館は二十億円ぐらいなんですね。そういうような格差がある状況になっております。このパワーを持っていらっしゃる皆さんに、ぜひ公文書館にももう少しお力をおかしくださいまして、定員の充実、施設の充実等も、これは法律の外の話でございますが、皆さんから御声援がいただけたらというように思います。

 また、そういうことによって公務員の意識が高まってくるのではないかというように思っております。どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)

渡辺委員長 ありがとうございました。

 次に、三宅参考人にお願いいたします。

三宅参考人 公文書管理法の審議において参考人として意見を述べる機会をいただきましたことを、まず感謝いたします。

 今お話にありましたように、十年前、情報公開法の制定に当たり、私は日本弁護士連合会の対策本部の一員として、情報公開法と車の両輪というべき公文書管理法の制定を強く求めましたが、衆参両院の各委員会における附帯決議にあっては将来にわたる課題とされました。それから十年目のことし、公文書管理法案が上程され審議されることは、まずもって積極的に評価されるべきことであると考えております。

 もっとも、この十年間において、政府においては情報隠しと言われかねない事態も生じました。社会保険庁における年金記録の不適切な管理や、C型肝炎の関係資料の倉庫への放置などが代表例です。

 私も情報公開法に基づいて裁判を幾つかいたしておりますが、財務省が編集する公の経済歴史というべき「昭和財政史」のうち、沖縄の返還の章に関しましては、執筆の原資料が、情報公開請求に対してもない、財務省は文書不存在、では行政文書ファイル管理簿、これは情報公開法に基づいてつくられるべきものなんですが、そこへの登載もない、廃棄文書のリスト、これもない、そういうような事態が明らかになりました。公式見解としての財務省の歴史の原資料をたどることができない、こういう事態もあるということをまず念頭に置いていただきたいと思います。

 情報公開法が制定されて、国立公文書館に移管される公文書の数がかえって減ってしまうというようなことがございまして、二〇〇三年から、国立公文書館の有識者会議の委員や、また、当時の福田官房長官主宰の公文書の管理、保存、利用の懇談会の委員として、事あるごとに公文書管理のあり方について発言してまいりました。この経験を踏まえて意見を述べさせていただくということをあらかじめ私の立場として明らかにしておきます。

 お手元に「衆議院内閣委員会参考人意見骨子」というものを用意いたしました。

 「はじめに」のところは今お話をしたとおりでございますので、この中で一つつけ加えておくとすれば、福田官房長官の計らいで、アメリカの国立公文書館とカナダの国立公文書館・国立図書館を視察するということもさせていただきましたので、きょうは、そのことも踏まえて、少しばかりアイデアをも述べさせていただきたいと考えております。

 お手元の資料の次にポンチ絵を用意しました。日弁連の案を少し図にしたものでございますが、意外と総花的ではございますけれども、これは、公文書管理の在り方等に関する有識者会議の、先ほどお話しになりました尾崎座長のもとでの最終報告、それを踏まえて、できる限り私どもも支援していきたいということでいろいろ考えた結果でございますので、積極的にできる限り取り入れていただきたいということを図示したものでございます。

 「基本的な考え方」といたしましては、有識者会議の最終報告にも一つの考え方として述べられておりましたように、政府部内に公文書管理庁を設けて、文書の作成、保存、移管、廃棄という文書のライフサイクルを通じた管理を適切に行わせるとともに、行政機関本体から距離を置き、立法府、司法府からの文書をも含め、その移管を適切、円滑に受ける特別の法人としての国立公文書館であるということを、私どもも積極的にそうあるべきだということで意見を述べてまいりました。

 もっとも、今回の法律案は、そういう特別の法人という位置づけにはなっておりませんし、行政文書の管理についての作成義務にとどまっておりますので、かなり小ぶりになったという感じがいたします。そこの点は、できる限り国会の御審議の上で最終報告に近づけ、またプラスアルファしていただいて、できる限りいいものとして当法案を通していただきたいと考えているところでございます。

 そこで、考えました修正の条項を少し文書にしましたので、ポンチ絵の次に新旧対照表の形で用意しましたのが、日弁連の改正を文書にしたものです。以下、これを比較しながら意見を述べさせていただきたいと思います。一応、法文の修正の形にしましたが、法文修正がいいのか附帯決議がいいのか、その辺は国会の審議で十分御検討いただいて、充実したものにしていただければと思うところでございます。

 まず、先ほど文書の作成義務のお話がございました。これは多分、法案の四条のところでございますが、法案の方は、この比較対照表の下で申しますと、意思決定と事務事業の実績ということになっておりますので、結果についての文書は歴史的な文書として保存しようというニュアンスが強くあろうと思います。

 でも、意思決定の過程の文書の中にも重要なものもあると思われますし、個人的なメモはそういうところに意外とあるのではないかと思いましたので、ここのところは、情報公開法の規定を援用しまして、地方公共団体、国の機関等の「内部又は相互間における審議、検討又は協議について、」これは情報公開法の五条の規定でございますので、それをそのまま持ってくれば意思決定過程の情報についても十分作成義務を課すことができるということが言えると思います。情報公開法の対象になっていますので、当然、作成の義務としてはあり得るものと考えております。

 それから、今回、保存期間と保存期間の満了する日を決める、先ほどレコードスケジュールのお話が出たところでございますけれども、この点につきましては、三十年ルール、これは菊池館長の方がお詳しゅうございますが、国際公文書館会議で決議された国際的慣行ということで、先ほどちょっと御紹介しました、私も委員として属しておりました懇談会では報告書に書いておりますけれども、この三十年の原則を法文の文字で明らかにするということがやはりあった方がいいのではないかと考えております。

 そういう意味では、五条の一項のところに、「保存期間を最長三十年とし、」というのを入れるべきではないかと考えているところでございます。情報公開法の施行令では、三十年の後ろに「以上」とついたものですから、その「以上」で永久保存と同じ取り扱いになってしまっているというところがありますので、やはり三十年ということを明確にする必要があると思います。でも、それ以上に長くなる保存の必要性もあるではないかということがございますので、五条の四項あたりに五年ごとに見直す規定を入れたらどうかというようなことを提案させていただいているところでございます。

 その他、本法案には政令委任事項や規則委任事項が非常に多うございますが、先ほどの尾崎座長のお話にもありましたように、各省でばらばらのものにならないように、内閣府でこれは責任を持って規定を一本化するというところをぜひともお願いしたいところでございます。

 中間書庫につきましては、国立公文書館法の中に権限として入っていますけれども、これは今までの有識者会議や懇談会の報告ではもっと中核のものとして位置づけられたはずですので、この公文書管理法のもとにも条文として入れたらどうかということで、六条の二項のような規定を考えているところでございます。附帯決議等でも結構でございますので、御勘案いただければと思います。

 それから、政令委任とかに当たっての一番大事なところは文書の廃棄の手続でございますが、これにつきましては、やはり最終的には内閣総理大臣の承認を得なければ廃棄できないような形にすべきではないかと思います。

 これは、アメリカの国立公文書記録管理局制定の処分許可申請手続というところで、こういうものを処分しますということを明らかにすると国民が意見を述べるという手続がアメリカにはありますので、こういうところはぜひ日本でも参考にしていただければと思いまして、八条、九条のような規定を考えたところです。特に九条三項のような規定で、何人も意見を述べることができると。

 多分、想定しますのは、いろいろ管理状況の報告等が上がりますが、これをホームページに出して、そのときに廃棄予定文書をホームページ上にリストとして掲載して国民の目に触れるようにする。そのリストを見て、ああ、これはひょっとして大事なものじゃないかということで、メールでこれは処分してほしくないと送信できるような、そういうシステムがあればこれは可能ではないかと考えているところでございます。

 それから、国会や裁判所の公文書につきましては、行政文書と同様の管理ができるということに今回なっておりませんけれども、これにつきましても、ぜひ、小ぶりの法律にとどまらないで、国会と裁判所の文書についても行政文書と同じような管理ができるように、ここでは附則で一年という規定にしておきましたが、何年か後には必ず行政文書の管理と同じようなことが国会や裁判所の文書でもできるようにお願いしたいと思います。

 特に、研究者の中で議論していますのは、立法関係の資料がなかなか研究者の手に入らないと。特に、今、議員立法が多くなっておりますが、閣法の資料につきましては情報公開法でとれるんですけれども、議員立法の資料がなかなか手に入らないという困った問題が上がっておりますが、これはぜひ国会の文書管理の中できっちりしていただきたいところだと考えております。

 それから、特定歴史公文書の利用請求については、裁判で争えるようになったところは大変結構なところだと思いますが、でも、利用を拒否できる事由として情報公開法の規定が十六条の一項一号等に挙がっております。これによりますと、私、いろいろ裁判例等を見ますと、なかなか厳しいところがございます。つまり、公文書館には移管されるけれども国民の目には触れない感じになるんだろうと思います。

 そういう点では利用拒否事由の限定ということが必要だと考えますけれども、一つの考え方としては、十六条二項にある時の経過を考慮して、なるべく公開しましょうというところにつきましては、十六条四項のように、三十年以上経過した文書については情報公開法の非公開の理由に該当しないものと推定すると、少し立証を軽目にしていただいて、役所の方が厚目の立証をしないと非公開にできない、利用拒否できないという形の規定が本当は必要ではないかと思います。

 でも、ここはお役人は一番抵抗するところではないかと思いますので、なかなか難しいところもあるかと思いますが、参考にしていただければと思います。

 それから、刑事確定記録や軍法会議の記録というのは刑事確定訴訟記録法に基づくことになっていますが、この法律ではコピーができません。ですから、二・二六事件の記録を見に行った人は、手書きで写し取ってきて、それで本を書くというような形になっていますが、ここのところは、附則の七条が、刑事確定訴訟記録法はそのままということになっていますので、これは国会や裁判所の記録とともに少なくとも国立公文書館に移管されるべきだと考えております。

 ロッキード事件の記録につきましても、閲覧請求した人は毎日足しげく通って書き写してきたという経過がございますので、このあたりは十分審議していただいて、この法律で十分できるかどうかという問題もありますけれども、今後の課題として挙げておいていただければと思うところでございます。

 それから、今回大事なところは、公文書管理委員会がいろいろな意見を述べるというところでございますが、できる限り公文書管理全般について建議できるような権能、運用改善についての意見を述べる機会、権能を公文書管理委員会に与えていただければと思います。

 それから、地方公共団体につきましてでございますが、今は、公文書館法の附則の二条で、専門職員を当分の間置かないでいいという形になっていますから、なかなか地方で進みません。ですから、ここの点は、この附則を撤廃していただいて、少なくとも一人置いていただくような手続にしていただければと思います。専門研修につきましては、国立公文書館や市町村の職員研修所、私も講師をさせていただいておりますけれども、十分可能だと思います。

 それから、地方ではお金がないから公文書館ができないということもあろうかと思いますが、カナダでは公文書館と図書館が一つの建物に入っておりました。これはアイデアとして非常にいいことだと思いますので、こういうところも、財政難の地方公共団体で公文書館を設置しやすくなるような扱いを考えていただきたいと思います。

 あとは、電子文書による原本取り扱い等につきましては引き続き検討していただきたいこと、目的規定に国民の知る権利を入れていただきたいこと、それから、言いました利用請求における利用拒否事由関係もありますから、本来的には情報公開法の改正も必要だということをつけ加えさせていただきまして、終わらせていただきたいと思います。

 最後になりますが、アメリカの情報自由法は、一九六六年の制定の後、七四年、九六年、二〇〇七年、ブッシュ政権においても改正されておりまして、非常に使いやすいものになっております。十年を迎えました情報公開法の改正についてもぜひ御検討をいただけるようにお願いしたいところでございます。

 以上でございます。(拍手)

渡辺委員長 ありがとうございました。

 次に、福井参考人にお願いいたします。

福井参考人 公文書管理に関して意見を述べる機会を与えていただきましたことを光栄に存じます。

 私こと建設省に約十五年間勤務した経験がございまして、その間、収用、河川管理、都市計画、公共事業予算等を担当いたしました。例えば成田空港訴訟や長良川水害訴訟などの国の代理人も務めましたが、それらの経験をも踏まえて申し上げます。

 一般的に、行政訴訟では、過去の行政文書の存否や内容が論点となることが多くあります。ただ、証拠等の提出を当事者の判断にゆだねるという当事者主義の行政訴訟制度のもとでは、みずからに不利となる資料やデータは、仮にそれらが存在していたとしても、行政側から積極的に法廷に提出するということは一般的に行われていないのが実態であります。

 もっとも、訴訟については、法廷での攻撃、防御を通じまして文書の存否や所在が明らかになる場合も多く、その場合は、証拠提出命令などの司法権の介入で文書が明らかになることもあり得ます。しかし、国会や一般国民からデータや資料を要求した場合には、論点が顕在化しにくく、請求者の目的や意図にもよりますけれども、基本的にはできるだけ不親切にする、提出を実質的に拒むか、そうでなくても、何らかの批判を浴びる可能性がある論点についてはあいまいな形で提出するという傾向があります。

 また、多くの行政庁職員の実感を聴取いたしましても、行政庁内部の情報は必ずしも、十分に整理、分類されて、組織として管理し、だれもが検索できるような体制にはなっていないと認識されています。実際、組織的に業務上作成した文書であっても、個人のファイルだけにおさめられ、担当者がかわると廃棄されたり行方不明になることが多くあるわけであります。

 実は、行政の意思決定は、その結果以前に、それに至るプロセスに非常に意味がある、特筆すべき場合が多くあります。しかし、そのようなプロセスが行政文書として保存されることはほとんど望めないのが実情です。本来は、行政の透明性、公正性を確保する観点からは、明確な基準を設けて、プロセスについてもガラス張りに匹敵する透明度の高いものとし、後世の人々だけでなく、現在を生きる国民に情報が同時に共有できるようにすることが望ましいと考えます。

 このような問題意識のもとで、日本計画行政学会では、昨年十月、提言を取りまとめました。配付させていただいております。それを踏まえ、今後のあり方について、以下に考えるところを述べることといたします。

 まず、基本的視点、三点です。

 第一に、行政情報は、行政機関のためのものではなく、国民一般のために活用されるべきものであります。その意味で、公共財と言っても過言ではありません。法律による行政の原理という憲法上の要請からも、国会で作成された法や予算を憲法や諸法令に基づき忠実に執行するという機能が行政に期待されているはずです。しかし、実際には、行政は、必ずしも法の忠実な執行者にとどまらず、実質的に政治的な意思決定に影響を与えたり、法の趣旨を独自の立場から読みかえることも多く見られます。

 しかし、行政機関や行政庁職員の利害で情報が操作されたり、または政治的、組織的利害で影響されるということはあってはならないはずであります。行政内部の意思決定プロセス情報の国民一般への十分な提供や詳細な公文書の開示の仕組みが存在するのであれば、行政の意思が特定の利益集団や政治的利害とシンクロすることは起こりにくくなります。

 第二に、行政情報は、後世の人々による歴史的検証の対象とするにとどまらず、当該情報が蓄積された同時代の国民にとって意味を持つものにしなければなりません。行政の意思決定を事前に法の趣旨に基づいたものとすることは、終了してからの開示によって担保することはできないのであります。

 公文書管理の主たる目的は、なされてしまった行政執行を学術的に、歴史的に検証するということよりは、まさに行われようとする行政執行をより適切なものにするために機能することであると考えなければならないと思います。

 第三に、行政情報は、国民にとって、それを加工、検索することが容易で、実質的に意味を持つ形で開示されなければなりません。

 例えば、大規模な公共事業などで、着手時点に事業の費用対便益の検証など、一種の事業評価を行政が行いますが、その後、事業の完了に至るまでには長時間を要します。ところが、事業継続中の段階で当初の情報あるいは分析の資料要求を行っても、既に三年の文書保存期間を過ぎたといった理由で、文書が不存在だという回答が行政側からなされることがしばしば見られます。これは、私も国会の議事録等でも随分事例を調べました。

 しかし、継続中の事業の正当性を支える根拠データが終了もしていないうちに廃棄されるとは信じがたい話でありますけれども、仮に事実であるとすれば、そのような保存のあり方、公文書管理の規律そのものに重大な欠陥が存在すると考えなければなりません。

 そのような意味で、公文書管理は情報公開制度と車の両輪であり、文書の作成義務や保存義務も含んで、情報公開制度と表裏一体の統合的な仕組みとして構築されなければならないのであります。

 以上の基本的視点を踏まえ、改革課題を八点申し上げます。

 第一に、行政庁は、アプリオリに、先験的に公益を体現しているという前提をとらず、行政は一利害当事者としての側面を強く持つという実態を踏まえて制度設計を行うべきことであります。その観点からは、公文書の作成範囲、保存期間、保存形態、提供基準等について、行政庁と利害関係のない第三者が責任を持って行うべきであります。公文書の内容いかんによっては後に批判を浴び、または裁判の被告となり得る当事者に対して管理の責任を担わせるということは、人間の自然の動機づけに反するものであります。

 第二に、本来、だれにとって意味を持ち、だれに不利益をもたらす情報であるのか、だれのための情報や公文書であるのかなど、情報の性質や機能に着目した管理でなければなりません。

 例えば、刑事司法の場面で、刑事事件の被害者がみずからの供述調書の閲覧を求めたときに、加害者の氏名、住所の開示が拒否されたという事例をヒアリングで聴取したことがあります。結果的に相手方を特定できず、民事訴訟の提起に支障を来したという奇妙な実態があるわけであります。しかも、被害者がみずからの供述調書のコピーを求める場合ですら、一枚四十五円程度の手数料がかかる。刑事被害者を守る視点、あるいは刑事被害者の権利行使をサポートするという視点が刑事関連文書の管理方針において欠落しているのではないでしょうか。

 第三に、事業進行や行政目的達成途上において、それに関連する文書が廃棄されることはあってはなりません。どのような文書をどの程度の期間保存すべきであるかは、第三者が基準をつくり、判定も行うべきでありますし、また、少なくとも、行政目的が完成しない間に行政裁量で文書がなくなったり、なくなったことにされてしまう事態は法的に阻止すべきであります。この点については、作成や保存にかかわる公務員に対して法的に実体上の義務と責任を課して、違反に対しては刑事罰を含むサンクションを科すべきであると思われます。

 第四に、情報公開や公文書の保存、提供形態は、それらを必要とする人の利便に最もかなう形式でなければなりません。表計算ソフトなどで作成し保存している統計情報や公共事業関連情報が多々ございます。これらは、当該ソフトで操作可能な形態で提供されなければ意味がないのでありますが、実際には、PDF化した電子ファイルや紙の複写で開示して、何の意味もない紙の束が提供されるというようなことが実際に行われております。このような実質的な嫌がらせに等しい恣意的な提供形態を許すべきではないと思います。

 この点に関連して、昨年六月十九日の圏央道東京高等裁判所判決は、計算に使用されたプログラムとデータを開示し、図などで必要な説明をすることなくしては、推計結果の妥当性を第三者が客観的に評価することができない、みずからの行った推計結果の正確性、妥当性を部内で点検するためにも、専門知識を有する第三者から検証によって明らかにするためにも、使用したプログラムと使用したデータを保存、開示することが必要であり、控訴人らの開示を求めたデータのすべてが必ずしも保存されているものではないにしても、使用したデータを保存することに意味がないとの被控訴人らの主張は採用することができないと述べておりまして、公文書管理形態に対して極めて示唆に富む法律論を展開しております。

 公文書管理に関する行政庁に対する実体的な行為規範の立法に当たりましては、このような考え方を明確に反映すべきであると考えます。

 第五に、情報通信技術の急速な進展を踏まえ、保存対象となる行政文書は、意思決定途上のものも広く含め、大幅に拡充すべきと考えます。この観点からは、現在の法案では、保存対象となる行政文書を「当該行政機関の職員が組織的に用いるもの」と限定しており、組織共用文書に限定していることは、文書の範囲が狭過ぎ、妥当でないと思われます。

 しかし、実際上、行政文書は、公式会議で配付される段階に至ったり、あるいは決裁の途上にある段階では、実質的に組織の内外での利害調整を終えてしまっており、事実上、最終意思決定に近い場合が多いのであります。それらのみが開示されることによって、行政の本来の意思や行動原理をうかがい知ることは困難と言えます。

 実質的な担当者が作成した職務に関する覚書といった資料の中でこそ、意思決定の背景や政治的配慮も含めた真の意図が読み取れる場合が多いのであります。執務時間中に業務に関連する文書を作成した場合、その成果物は公共財でありまして、組織共用文書に限定することは妥当でないと思われます。同じ規定が情報公開法にもありますが、やはり妥当でないと考えます。

 また、公文書の保存スペースに限界があり得るということを理由に、公文書の範囲を広げることは物理的に困難で、管理体制にも問題が残るという議論も広く見受けられますが、理由がないと考えます。

 昨今の情報通信技術を踏まえれば、対象文書を抜本的に拡大することは容易に可能であります。しかも費用もほとんどかかりません。検索や加工のためには逐一原本を取り寄せる必然性はなく、一たん原本性を確認した後、文書のリアルタイムによるデジタルアーカイブ化を行って、原本は保管コストが問題とならないような遠隔地に保管する、電子情報はインターネット等を通じて全国の一般国民からのアクセスを可能にする、こういったことは十分可能でございます。

 第六に、情報公開や公文書としての保存対象の範囲が広がるほど、文書作成をそもそも避けるというインセンティブを行政機関や職員に与えてしまいかねないわけです。このような弊害を抑止するため、一定の節目の情報については、行政機関、公務員に文書の作成義務を課すべきであります。

 公文書管理法案、情報公開法ともに、対象は「当該行政機関が保有しているもの」と限定されており、そもそもどのような情報が文書化されねばならないのかという基準がございません。一定の重要な情報は、文書化を義務づけるとともに、紛失や廃棄が起こりにくいようなチェック措置を設けなければなりません。

 第七に、公文書の適正管理に関して、自治体に関しての努力義務規定が法案には設けられております。しかし、司法権、立法権についての法的規律が存在いたしません。情報公開法も同様ですが、本来、情報や文書の公共財的性格は、行政権にとどまらず、司法や立法も共通です。判決に関する合議といった領域を除き、司法権や立法権についても、情報開示と公文書管理に関して開かれた通則法を制定することが望まれます。

 最後に、第八ですが、公金が投入されて、その対価給付として作成された文書や情報は、広く公文書に含めるべきです。例えば、国から補助金や委託費が投入されたのに、その成果物たるデータや報告書が行政機関に存在しない、しかも受託者が民間であるとの理由で開示が阻まれる例すら見られます。国民負担で作成された情報については、一部補助といった形態も含め、広く管理、開示対象とすべきと思われます。そのため、外部発注等については、成果物として、結果のみでなく、根拠データ、関連文書等の提供を義務づけることを入札または契約で措置するなど、情報の漏れや偏在を防止することが適切と思われます。

 以上でございます。(拍手)

渡辺委員長 ありがとうございました。

 次に、菊池参考人にお願いいたします。

菊池参考人 ありがとうございます。

 独立行政法人国立公文書館の館長を務めております菊池光興でございます。

 本日は、現場からの意見陳述の機会を与えていただきましたことに対して、心からお礼を申し上げます。また、内閣委員会という極めて権威ある委員会におきましてこの法律案が審議されるということについて、大変光栄に存じます。

 また、今回の法律につきましては、私ども国立公文書館の関係者はもとよりですが、広く公文書あるいは行政にかかわる者たちが大変熱い期待を寄せているということをぜひ御認識いただいて、この法律の成立についてお願いをしたいというふうに思うところでございます。よろしくお願いいたします。

 まず最初に、現在の国立公文書館について現況の御報告、あるいは我々がどういう仕事をしているかというところを簡単に御説明申し上げたいと存じます。

 国立公文書館の職務でございますが、歴史資料として重要な公文書等の保存及び一般に対する利用に供することを通じて、現在及び将来の国民に対する政府の説明責任を果たしていくということがまず第一点、中心となっておりますが、私どもの仕事をしていく上の意識では、やはり、日本の先人が残してくれたさまざまな知的な情報資源というものをできるだけ多くの方々に使っていただくということによりまして、歴史、文化、学術研究等に寄与することはもとより、一人一人の国民にとって、我が国と我が国社会の歩みというものを跡づけていただいて、広く国民のアイデンティティーを形成していく上で貢献することができればと思って、私ども日々の仕事を行っているわけでございます。

 現状でございますが、国立公文書館は昭和四十六年に設置されました。世界の各国では、公文書館というのは、図書館あるいは博物館、美術館と並んで三大文化施設、こう言われているんですが、我が国の場合は、残念ながら、昭和四十六年になって初めて国立公文書館というのができたという状況でございます。

 そういうことでいいますと、帝室博物館でありますとか帝国図書館というのが明治の初めのころにできた。明治の初めに岩倉使節団というのが米欧を回覧したわけでございますが、そのときに帰国途上で、一番最後のころでございますが、イタリアのベネチアにみんな行きました。三つに分かれて行きまして、一番最初に福地桜痴が行きまして、次に木戸孝允が行って、一番最後に岩倉、大久保という人たちが行って、みんなベネチアのアルヒーフというのを見て感心をしている。ところが、図書館や美術館、博物館は明治に導入されたんですが、公文書館というのは明治時代導入されなかった。これが百年たった昭和四十六年に設立されたということは、まさに百年おくれの我が国の公文書館制度というような状況でございます。

 四十六年にできて、それから先人も努力したんですが、平成十三年度からは独立行政法人となりました。それ以降私は公文書館に関与しているわけでございますけれども、法人となった特質を生かして、自律性をできるだけ生かす、効率的、弾力的な業務運営をするということで、主務大臣たる内閣総理大臣から示されます中期目標というものを確実に達成する、そのために中期計画、年度計画というものを策定いたしまして、効率的な業務運営、目標でございます国民に提供するサービスの質の向上というものに努めてきたところでございます。その結果、幸いにも、毎年度、独立行政法人評価委員会の評価では非常に高い評価をいただいているということでございます。

 具体的にどんな取り組みをしてきたかというところでございますけれども、現在、私ども、所蔵資料が百十七万冊ございます。各省庁から移管されてくるものの中には、非常に劣化しているもの、あるいは、戦中戦後の悪いわら半紙なんかでもってできたものというのは本当にばりばりに破れそうなものがございます。そういうようなものについて補修をしたり、酸化防止などもやっております。

 かつてはそうじゃございませんでしたけれども、私が行きましてから、二〇〇二年からはすべての所蔵資料についての目録を公開して、しかも、各省庁から受け入れた文書につきましては一年以内には必ず目録を公開して、これは公開できるものか、これは非公開部分を含むかというようなことも表示して公開をしております。

 閲覧業務ということで、毎年多くの方々に来ていただきますけれども、これは比較的昔からのスタティックな形でございます。とにかく、東京に来てくれ、あるいはつくばの分館に来てくれということでは国民サービスの向上ということは達成できませんので、最近では、インターネット等を使いましてデジタルアーカイブというものに大変に力を入れております。

 今も福井先生からお話ありましたけれども、デジタル化というようなこと、これは意外に金はかかります。ただじゃないので大変な金がかかりますけれども、まずマイクロフィルムに撮って、それをデジタル化してインターネットに載せていく、そしてインターネットに載せることによって、いつでもだれでも、世界じゅうどこからでもただで公文書館の所蔵資料というものを見ていただける、利用していただけるというような形でございます。

 公文書館のみならず、私どもの方で管轄しておりますアジア歴史資料センターというところで、明治以降終戦までの我が国と世界各国とに関係するような基礎的な資料をやはりインターネットで公開して、既に千八百万画像の公開が進んでおります。これは、中国や韓国あるいはアメリカ等、大変各国からも評価をされているという状況でございます。

 そのほか、私どもがやっておりますのは、我が国の中核的な機関として、地方公共団体あるいは関係団体、関係機関、それから学会等に対する連携協力、それから研修等を通ずる専門的、技術的支援というものをやって努めております。

 それでは、これまですべて円滑にいっているかというと、これまでの法律の体系と制度運用上の課題というところでございます。まさにそれを踏まえて今回の法律案が提出されているというところでございますけれども、各行政機関で利用しています現用文書と、それから保存期間が満了して私どもの方で、公文書館で受け入れるいわゆる公文書との間で、全く文書管理体系というものが分断されております。

 現用文書の管理というのは、先ほどから話が出ていますように、行政情報公開法で規定されている。そこで定める各省庁が決める保存期間が満了したもののうちから、歴史的に重要だろうなというもの、しかも、それは内閣総理大臣と各省大臣との間で合意が成立されたものだけが公文書という形でもって私どもの方の管理に入ってくるということでございます。公文書管理というのが情報公開法に従属する形でもって規定されておった。今回の法律の中は、文書というのを、作成から保存期限満了、公文書館における公開、利用まで、一つの一貫した体系でもってつくっていただいているというところが、これは私どもにとって大変大きな喜びとするところでございます。

 それから、公文書館への移管の障害というところは、先ほど申しましたように、移管には内閣総理大臣と各省大臣の合意が必要ということでございますけれども、その前提として、行政文書がそもそも的確に作成されていないんじゃないか、先ほどから御指摘のようなことがございます。今回の法律の中には、行政文書を作成するための共通ルール、基準というものをつくろう、作成した文書については日本版レコードスケジュールということで、いつ保存期限が満了するのか、満了した暁にはそれは公文書館に移管するのか廃棄するのかというようなことを、作成時点でつくってしまう、決めてしまう。

 確かに、三十年の保存ルールというのを考えると、三十年というのは公務員が採用されてからある程度幹部になって、あるいは場合によると退職する。今から三十年前というとちょうど第二次オイルショックのころだろうと思います。第二次オイルショックのころの文書が果たして重要かどうかというのを今の文書管理をやっている人たちに判断しろといっても、これはなかなか難しい。場合によると、もっと昔のものがある。

 やはり初めに、鉄は熱いうちに打てじゃないんですけれども、まだ事態が熱いうちに、これは保存しよう、これは保存しなくてもいいねというところをそこで振り分けをしていくということができる、しかも、それは単に行政庁の担当官の恣意によるのではなくて、基準というものがきちっとあり、そういうようなものについて、私ども国立公文書館の専門職あるいは公文書管理委員会の先生方も含めて、いろいろな形でもってチェックしながらちゃんとレコードスケジュールの運用をしていくということができれば、大変大きな進歩になるだろうというふうに感じております。

 そういうような意味で、今回、国立公文書館の現用文書、単なる保存期間が満了した歴史公文書だけではなくて、現用文書に対しても実地調査をするとか中間書庫の規定が設けられる、それから、各省庁、各行政機関に対する助言あるいは研修を行うというような権限が、権限が欲しいから言っているわけじゃございませんが、そういうことで関与できる余地が非常に広まったということは、我が国の公文書を保存していくという目的に対して大変大きな力になるものだというふうに私ども喜んでおります。

 今回、こういうような形で法案を御審議していただく過程の中で、今も話がございましたが、公文書館の職員は四十二人だ、これについては、また定員削減がかかるような形になっておりますから、いずれまたそれがもうちょっと減るということになりますけれども、そういう状況。それから、予算も二十億ちょっとだということも話が出ました。そういうことで、現在の公文書館の非常に貧弱な体制ということについても皆さんに御認識いただきましたし、また、我が国全体としてこういう問題にきちっと真正面から取り組んでいかないと、日本の文化、社会が厚いものになっていかないということについての関係方面の御認識が非常に深まったんじゃないか。この法律を提出していただいて御審議いただくということが、私ども関係者にとってどんなに力強いことであるかというようなことがわかります。

 特に、今回の法律の中には、努力規定だけですけれども、地方公共団体、あるいは企業なんかも大変立派なアーカイブズを持っているわけですけれども、そういうものが本当に会社の栄枯盛衰の中でどういうふうな形でもって保存されていくのかというようなこともあります。そういうようなことで、地方公共団体や民間団体における文書管理、こういうものに対する励ましとなり激励となるということであれば、大変ありがたいことだと思います。

 公文書館を支える社会的基盤というのが我が国は学界も含めてまだ非常に弱体でございますので、そういうことも、今後、法制面以外の期待としてぜひお願いしたいと思います。

 いずれにしても、制度をつくってもそれを動かしていくのは、先ほどからお話がありますように、公務員の意識を最初にして、まずそれを動かす人たちの努力と意欲だろうと思いますし、トライアル・エラーみたいなものが絶対必要だと思いますから、そういうことで私たち自身も最大限努力してまいりますけれども、これから折々、こういう制度については、まず運用をして、その中で直すべきものは見直しをしていくというような態度で臨むことが一番妥当なのではないかな、こう思います。

 ぜひ、先生方のお力でこの法律を成立させていただいて、よりよい、我が国が世界に誇れるような、記録を残し公文書を残すという文化を育てたいものだと思っています。よろしくお願いします。(拍手)

渡辺委員長 ありがとうございました。

 以上で各参考人からの御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

渡辺委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。加藤勝信君。

加藤(勝)委員 自由民主党の加藤勝信でございます。

 きょうは、参考人の皆さん方、大変お忙しい中をこうして私どもの審議にいろいろと御協力をいただくというか御啓示をいただいていますこと、まず心から御礼を申し上げたいと思います。

 公文書等の管理に関する法律、一般の国民の皆さんから見ると割と地味な感じの法律だというふうにも受けとめられますけれども、今お話がありましたように、また、当委員会でも、参考人の方にも来ていただいて審議をするという意味では大変重要なものというふうに位置づけているわけでありますし、私も、歴史と言うとちょっとオーバーかもしれませんけれども、事の経緯を踏まえた行政を実施していくという意味と、また同時に、その行政が、現在もそうですが、将来に向けての評価にたえ得るような行政をしていくという意味からも大変重要なものではないかな、こういうふうに認識をしております。

 まず最初に、既にお話の中にございましたけれども、今回の公文書の管理に関する法律をいわば制定する目的というか、意味というか、期待について、一言でそれぞれの皆さん方にちょっとまとめていただきたいと思います。

尾崎参考人 私は、一言で言うとしたら、やはり、しっかりとした文書管理制度をつくるということは民主主義の基盤をつくるということであると思っております。

 アメリカの公文書館のモットーというのが、デモクラシー・スターツ・ヒア、ここからデモクラシーが始まるということだそうでございますが、私も、そこから話を始めるべきではないかというように思います。

三宅参考人 先ほど冒頭で説明しましたが、情報公開法と公文書管理法は車の両輪である、民主主義が情報公開によって達成できる、よりよいものになるためにはまず文書が保存されていないといけないということで、いわば情報公開法は民主主義の通貨であると言われましたが、この法律はその通貨の作成に当たる部分だと考えております。

福井参考人 一言ということで申し上げますと、法律による行政の原理を補完する、内在化させるという上で大変重要な意味があろうかと存じます。

菊池参考人 冒頭申しましたように、私ども日本人の先人が営々として築き上げてきた今日の社会、残してくれた知的情報資源というものをどうやってみんなで共有し、その中で、それを踏まえて、国民一人一人が日本の歴史というものを把握できるようにするかということ、その面で、今回の公文書等の管理法案は大変意義があると思います。

加藤(勝)委員 ありがとうございました。

 一言で言っていただいて、よりクリアに整理ができたのではないかというふうに思っております。お話がございましたように、民主主義の基盤である、あるいは日本の歴史把握、あるいは行政の原理の内在化、こういうことで大変重要な事柄であります。

 そういう中で、私も二十年近く行政をしておりまして、先ほどの尾崎参考人のお話の中で文化を変えるというお話があったわけでありますが、確かに、物をいたずらに廃棄するとかそういうレベルではなくて、日々の仕事をしようとすると、それに没頭する中で、それが終わるとまた次の話が出てくる、かつてのものを管理するということになかなか時間的な余裕、精神的な余裕がない。しかし他方で、仕事をする上で、過去のものがきちんと整理されているとまたこれが非常にやりやすいわけですね。

 過去のものを集める時間が非常に手間取る、ある意味では、かなりの時間をそれに費やしてきている、特に行政の場合は前例というのが大変重要視される部分もこれあり、そういう意味では、行政に対するかなりの効率化というのもこれによって期待をされるんですけれども、そうはいっても、今ある仕事をやっていこうという意識が非常に強い。

 そういう意味で、研修も含めて文化を変える、こういうことではないかなと私は認識をしたんですけれども、そこのところをもう少し、どういう文化からどういう文化へ変えていこうというのか、その辺を少しお示しいただきたいと思います。

尾崎参考人 私自身の経験を申し上げますと、まことに恥ずかしいことであるんですが、私が若いころは文書整理週間というのがございまして、ある週、みんなで文書を整理しようということなんですね。

 それは、山のように積んであった文書を崩して、一応眺めていって、それで整理して保存すればいいんですけれども、整理すなわち廃棄というようなところがありまして、結局、もう今要らないものは捨ててしまう、そういうような文書の管理の仕方をしていたと思います。もちろん、非常に大切なもので、指定されていて、例えば決裁文書でありますとか、そういうものは別途きちんと保存されているわけですが、その他の文書につきましては、もうほとんど、後世のために貴重な資料として残そうというような意識が率直に言ってございませんでした。そういうものが残った、そういう心構えのままで幾ら規定を変えてもやはりだめだと思うんですね。

 だから、公務員である以上、自分たちのしたことがどういうことで、それはどういう目的のためになされたかというようなことがきちんと後世に伝わるような文書を、忙しいのは確かに忙しくてなかなか大変なんですが、やはりつくる習慣というのを若い人たちには身につけてほしいと思っているわけでございます。

 先ほど、今の公務員の上の方の人たちはちょっと今から無理だと申し上げましたのは、若い人たちにそういう文化を持ってほしい、そのためには研修が大切じゃないかな、こう思っているわけでございます。

加藤(勝)委員 ありがとうございます。

 ある意味では、整理をする、廃棄するということよりも、しっかり残していくということだということでございました。

 そういう意味で、今回、「管理」という中の最初に「作成」というところが出てくるわけでありまして、つくったメモとかいろいろな種類の文書、それをどう保存するかというのは次の問題として、文書化されていないものでも残しておかなきゃいけないものというのは当然出てくると思うんですが、この辺の範囲というものをどう規定していくのか。

 なかなか文言で書くのも難しいのではないかという気はしますけれども、イメージとして、現状に比べてどういうものが少なくとも作成はされなければならないのか、特に、通常作成されているもの以外のものとしてどういったものが想定されてくるのか、その辺に対する御認識をそれぞれの皆さんにお示しいただきたいと思います。

尾崎参考人 文書の範囲を考えてみた場合に、保存すべき文書の範囲ですが、やはり公私の別というのはあると思うんですね。私のためにつくった文書がそのまま保存されて後世に歴史的な文書として伝えられてしまうというようなのは非常におかしな話でありまして、したがいまして、それはやはり個人じゃなくて組織、公の世界でつくられたものを残すべきだろうというように私は思います。

 個人的なメモ、皆さんそうだと思いますけれども、ふと思いついたことなどをメモしておいたりしますけれども、それは単なるメモで、そのまま消えてしまうようなものも紙に書いた形で引き出しの中に入っているということはあるわけでございまして、それを公文書だと言うのはちょっとやはりまずいんじゃないかなというように思います。

 もちろん、決裁印が押してあるものでなくちゃいけないという意味じゃございません。そうじゃなくて、その他のものでも結構なんでございますが、やはり組織の中で、行政として、行政体として、その一部に入るような文書でなくてはいけないのではないかというように思います。

三宅参考人 文書の作成義務と文書の保存義務の関係で申しますと、公務員が文書を作成することについては情報公開法が前提になっていますから、いわゆる組織共用文書という情報公開法二条に基づく文書がまずありますね。それは、決裁、供覧文書に限らず、会議で配られるものとか部内での打ち合わせに使った文書で、決裁印の欄はないけれども重要なものだというような形で、個人のメモを除くという意味合いにおいて組織共用文書としてあるわけですから、これが公文書管理法における文書作成義務のまず大事な範囲になってくるのだろうと思います。

 その中には、先ほど申しましたように、事業の実績とか意思決定というもの以外に意思決定過程情報もございますので、やはり、公文書管理法における文書作成義務の範囲の中には、情報公開法とパラレルに考えるには意思決定過程情報も入れないと、ここは、情報公開の請求対象情報から、公文書管理法の適用になるときに意思決定過程文書が除外されてしまうという危険が解釈上あり得ると考えます。

 そうしますと、残るは個人的メモですが、この個人的メモも、非常に重要なものとしてたまたま残っているものとか、あるいは、その当時は人には渡さなかったけれども、十年、二十年たってみると、やはりあのときメモをとっていたものが非常に大事だということが出てきますから、そういう個人的メモについても保存ができるような、これは、文書の保存義務の方でそういうものも含まれるような規定が望ましいのではないかなと考えております。

福井参考人 保存対象としてあるいは管理対象として重要な区分は、公的な文書か私的な文書か、まず原理的にはそういうことだと思います。

 では、私的文書あるいは公的文書の境目は何かということでございますけれども、私的か公的かというのは、公務員が、いや、これが私的だと自分で言い張るものが私的であってはならないということでございます。すなわち、給与の対価として作成されたもの、執務時間中に作成されたものは、幾ら本人が私的だと言い張っても公的文書だということは当然でございまして、その観点から、情報公開法と公文書管理法ではそういった基準を明確にするということが将来の課題だと考えます。

菊池参考人 どういうものが組織共用文書でどういうものが私的な文書かというところは、これは、もちろん大きく分ければ分かれますけれども、ボーダーラインのところは、結局はその当事者がどう考えるかというところにかかっていますから、ここをぎりぎり詰めても余り有益ではないんじゃないかな、こう思うんです。

 私どもの方の実際に公文書の保存をしている立場からいいますと、これは大変よく文書が保存されているなというようなものもございますし、これは非常にお粗末だなというところがございます。やはり、きちっと残ったものというのは、見ると頭が下がるようなものがあります。

 私、もしかすると記憶違いかもしれませんけれども、戦後の割合早い時期に労働基準法をつくったときの労働省のつくったファイルというのは大変なものでございまして、その法律案についても、単に閣議請議案をとじているだけというようなものも場合によるとあるんですけれども、そうじゃなくて、第一次案、第二次案、なぜこういう労働基準法のこの規定を置くかというようなこと、逐条ごとに例えば資料がついていて、こんな厚さのものが三分冊か四分冊ぐらいある。これをつくった労働省の人たちというのは、多分、自分の仕事に誇りを持って、自分たちのやっていることをぜひ後世の人たちに見てもらいたい、参考にしてほしいということでつくっているんだろうなと実感できるようなものが残っています。

 そういうような形で、自分に誇りを持てるような仕事を公務員がしていくということが記録を残していく上でのまず根本になるべき話なんだろう、こう思いますから、文書をどういうものを残すかということよりも、まず残すに値するだけの仕事を皆さんやるようにしましょうということを、意識を高めていくことにぜひ力を注いでいくということもあわせてやっていかなければいけないんじゃないか、こう思っております。

加藤(勝)委員 大変ありがとうございます。

 まさに、そういう面では立法府にも広げて、我々もしっかり後世に残す仕事をしていくということにつなげていかなければならないと思います。

 また、残りも少なくなりましたので、最後に教えていただきたいと思います。

 こういう形で文書管理を進めていこうとすると、今とはまた違う形でいろいろな、例えば労力も、もちろんコストもかかっていくというふうに思うのでありますけれども、公文書館というだけではなくて、通常の行政においてもやはりそれなりの配慮をしていかないと、今の仕事に加えてこれもやれと言うのは簡単ではありますけれども、言っただけじゃできないのでありまして、やれるようにしていかなきゃいけない。そういうことも含めて、行政全体としての、そういう意味では、人的な、コスト的な支援も含めてどういった対応が必要なのか、行政経験も長い尾崎参考人にその点をお聞かせいただきたい。

 引き続きまして、菊池参考人に、公文書館の関係で、先ほどちょっと参考人の中から、地方で図書館と公文書館を一緒にしたらどうかというお話もございました。そういうことも含めて、これから公文書館の位置づけが大きくなる、しかし、いろいろな意味で、行政改革は進めていく、予算の規模も限られていく、そういう中で、その辺はどのようにお考えになられるのか。先ほど、文化三大施設とかに切り分けておられましたので、それを二大にしていいのかどうかなんということもございますけれども、その辺のお考えも含めてお示しをいただきたいと思います。

尾崎参考人 やはり、この公文書等管理法がもし法律として成立いたしましたら、そのときがいい機会だと思います。何か役所の中にある仕事のプライオリティーとして、この管理、保存、作成、そういう問題を大いに高いところに上げていただいて、そのために時間を割く。やはり、その点についての上司の理解というのは必要だと思いますね。

 それから、今度の法律では、今度は法律で決まるわけですから、コンプライアンスの問題としてそれを内閣府が見ていくことができるようになります。それもやはり一つの大きなインセンティブといいますか強制になるのではないかというように思って、それに期待をいたしております。

菊池参考人 地方公共団体におきます公文書館のあり方ですが、これも、参議院に籍を置かれまして、茨城県知事をなさった岩上二郎先生が議員立法で公文書館法というのをつくって、国立公文書館も、私どもも含めてですけれども、地方の公文書館のあり方について基本の法律をおつくりになっておられます。これによりますと、地方自治体は条例で定めるところにより、これは必置規制じゃございませんので、任意につくるということになっています。

 確かに、今御指摘のように、カナダの例もございますが、もう既に国内でもそういうところがございまして、奈良県なんかは、図書情報館というような形でもって、図書館と行政情報の公文書館、両方あわせた形のものをつくっております。別に、三大文化施設と言ったから三つ別々につくらなければいけないということではなくて、カナダの例は、ライブラリー・アンド・アーカイブズ・オブ・カナダ、LAC、こう言っていますけれども、そういうものがございます。

 ですから、そういうような形で、どうされるかというのはまさに地方自治体の自主的な判断でお決めになることだと思いますけれども、ただ、いずれにしても、公文書館的な、きちっと記録を残していくという機能だけはどこでもある方がいいなと思います。残念ながら、まだ都道府県の中で三十ぐらいしかない、まだないところがたくさんございます。政令市の中でも半分以下というような状況ですから、そういうようなものをぜひ整備していただきたいなと。

 どういう形でもいいんです。中越地震でもって被害を受けたところは、廃校になった学校の校舎をまずとりあえず村役場の資料を入れるところにしよう、保存場所にしようということでもって一生懸命頑張られたところもございますから、そういうような形でいうと、決して箱物をつくれとか何かということじゃなくて、児童が少なくなってきた学校のところでまず保存しようということがあってもいいし、そこをお決めになるのはまさに自治体、それぞれの自治体の当局者と住民の方々だ。私どもはそれに対してできるだけの支援をしていきたい、こう思っております。

加藤(勝)委員 どうもありがとうございました。

 以上で質問を終わらせていただきます。

渡辺委員長 次に、佐々木隆博君。

佐々木(隆)委員 民主党の佐々木でございます。

 きょう、四人の参考人にはいろいろ貴重な意見を賜りました。これから我々のこの法案審議に当たって、きょうの提言などを踏まえてしっかりとやっていかなければならないと改めて考えさせていただいたところでございます。

 余り時間を与えられておりませんので、早速質問をさせていただきたいと思うんです。

 私は、常日ごろといいますか、この課題にかかわらず、今までの行政、役所というところは入り口規制をずっとしてきたわけですね。いわゆる許認可という入り口規制をしてきて、八年から十年ぐらいかけてですが、その規制を緩和したわけです。ところが、もともと入り口規制、事前規制の国でしたから、行政の中に事後監視の体制というのが余りとられていないんですね。だから、事前を緩和したわ、事後も規制はしなかったわというところに、今、例えば食品安全の問題とか、いろいろな問題が出てきている。

 私は、この文書管理もある意味で、これは入り口規制も何もあったわけではありませんけれども、行政が事後規制をどうする、事後監視をどうするというところに踏み込んでいかなきゃならない時代を迎えていて、その一つとして当然出てくるべくして出てきた課題なのではないかというふうに思っておりまして、そういった意味でも、行政の公文書管理というのは極めて重要な法律だというふうに私は思っております。

 先ほど尾崎参考人から公務員の意識、文化を変えるというお話がありましたが、私もまさにそうだと思うんです。そういう意味で、尾崎参考人が有識者会議の座長もされておられましたので、その報告書をまとめられた立場も含めて、今度出てきた法案との関係をちょっとお伺いしたいというふうに思うんですね。

 最終報告では、「国民の貴重な共有財産」それから「国民の知的資源」というようなことを言われているわけでありますが、そのことが必ずしも今度の法律の中に表現されていないのではないかというふうに私は思っているんですが、そのことについてお伺いをいたします。

 もう一つは、作成文書の定義と、先ほど来話が出ております意思形成過程等の文書作成の義務、これについて、最終報告書では、「作成・整理・保存」の「方向性」で、経緯も含めた意思形成過程や事務、業務の実績を跡づけができるようにするというふうに提言されているわけですが、まずこの二つのことについて、今度の法案と見比べて、尾崎参考人の御意見をいただきたいと思います。

尾崎参考人 私どもの有識者会議では、全部公開でいたしまして、それで、本当に自由に発言をして、まとめ上げた意見というのも、できるだけ委員の生の声に近いものでまとめたいと思いました。したがいまして、あそこに書いてある報告と法律用語は違うと思います。

 私どもが法律用語で議論をしていましたら本当に有識者の会としての意味がないというように思いましたので、できるだけ委員の生の声を使って報告を書くというようにいたしました。それが、行政の世界で見ると、やや違和感があるのかもしれません。しかし、私たちの意図を酌み取っていただいて、それでその法律を書いていただく、それは法律をつくるところの仕事である。私どもは、どういうことが我々の関心事であり、どういうことをしてほしいと思っているかということを私たちの言葉で言うということでございました。

 それから、意思形成過程について、これは本当に強い意見でございました。したがいまして、意思形成過程というのは、皆さん圧倒的にそういう意見でございましたから、かなりはっきりと書いてございます。これは、有識者会議ではこういう意見であった、しかもそれは非常に強い意見であったということを御承知の上で法律をつくっていただきたいというのが私どもの考えであります。

 ただ、現段階では政令や何かにまだいろいろ任されておりますので、これから政令をつくるときに、今までは、意思決定の経緯については余り文書にされていない例もあると思うんですね。今度は、新しくそういうものを文書にする、必ずそういうものを文書として残すという文化ができるような、そういう手段を講じていただきたいと存じております。ぜひお願いいたしたいと思います。

佐々木(隆)委員 時間がありませんので、次に移らせていただきます。後ほど時間があればもう少しお伺いしたいと思います。

 三宅参考人にお伺いをさせていただきます。

 今、尾崎参考人にも一条にかかわる貴重な共有財産、公共財の話についてお伺いをさせていただきましたが、三宅参考人は、市民、国民という立場で意見書をまとめられたというふうに思うんです。その中には公共財ということにプラス説明責任というのが書かれているんですが、説明責任というのは、これは行政側の話でありまして、国民の側から言ったら知る権利ということになるわけですけれども、このことなどを含めて、第一章の部分の内容が意見書の意思が反映されているというふうに思っておられるのかどうなのかということについてお伺いをしたいと思いますし、決定した政策はもちろんですけれども、今もお伺いいたしましたが、立案形成過程ですね、そのことについての知る権利についてどうお考えになっておられるのか。

 それから、保存期間、移管、廃棄の権限というのが時々この法律の中で出てくるので私は非常に気になるところなんですが、行政機関の長にゆだねられているという仕組みになっているわけでありますが、このことについて。

 この三点、お伺いをいたします。

三宅参考人 先ほど加藤議員の、制定の目的、意義のところで民主主義の通貨であるということを申しましたが、最終報告ですとこれは国民の共有財産という言葉で、最終報告は法律的な文言にとどまらずお書きになったということですけれども、私、先ほど申しましたように、法案になったときに最終報告とずれができて、いささか小ぶりな法律になったということを申しました。

 そういう意味では、手がたい官僚的文章が一条になっているんだろうと思うんですが、少なくとも、国民の共有財産、知的資源とか公共財、そういうようなところをできる限り従前の法律に照らしてもう一つ入れていただいて、市民の立場から、説明責任というと役所の義務のような形ですが、責務ですから義務ほど強くありません、努力精神条項というような形のものになっておりますので、国民主権の理念に基づきというところがございますが、やはり公共財なり知的資源としての公文書の保存をするんだという視点をしっかり入れていただきたいと思いますね。

 先ほどカナダの話が出ましたが、知的資源を総合的に保管、保存、利用するためのものとして、図書館と公文書館を統合するということが一つのポリシーになっていると調査のときに思いましたので、そういうところを一つ入れていただければと思うところでございます。

 それから、作成文書の件ですが、条文上では「意思決定」になっているものですから、決定後のものという解釈になるとやはり非常に狭いだろうと思いまして、先ほど御提案しましたように、情報公開法の五条のいわゆる審議、協議、検討の文書ということを明記することによって、これはできればやはり法案に入れていただいた方がはっきりすると思うんですが、そういうところで、意思決定過程の情報も本来作成しなきゃいけないんですということをはっきりさせておく必要があろうかと考えております。

 それから、保存、移管、廃棄の権限ですが、先ほど、財務省の沖縄返還の記録について原資料がなくなっているのは大変残念だということを申しましたが、行政機関側が、これはもう要らないだろう、新しい歴史の本も書けたんだからもう要らない、捨てちゃおうというところに、後世の歴史家が、いや、ちょっと待ってくれ、検証したいんだということがやはり出てくるんだろうと思いますので、そこのところを内閣総理大臣の方が廃棄についての最終の承認をするような手続をぜひ入れていただいて、いわゆる第三者の機関のチェック、それで、内閣総理大臣のもとには公文書管理委員会が今度できますから、公文書管理委員会に諮問するような手続も入れていただいて、第三者のチェックが内閣総理大臣の名のもとで入るような形の制度にすると、いたずらに文書が廃棄されるということはなくなるのではないかと考えているところでございます。

佐々木(隆)委員 今、三宅参考人からお話のあった、管理委員会にかかわってもう一点お伺いしたいんですが、公文書管理推進会議というのを提唱されておられるというふうに思うんですが、このところを通じて、さっきから話の出ております、行政だけでなくて各方面との協議だとかということについての運用などをしていってはどうかということについて、もしもう少し具体的に御提言があれば伺いたい。

 もう一つは、特別の法人にするべきだということも提言されているわけでありますが、ここについて、なぜそうなのかということについて。

 この二点、お伺いをいたします。

三宅参考人 実は、尾崎座長のもとでの有識者会議には国会や裁判所のメンバーもオブザーバーとして参加したということを聞いておりますが、一堂に会して国の公文書のあり方について協議できたことは大変よかったということを司法の者からも聞いております。

 それが、今回この法律で一段落してしまって、国会や裁判所の公文書の管理がとまってしまうのは非常に危惧をしたところでございまして、男女共同参画会議のように国の三権を問わず広く議論できる場をさらに残したらどうかということで、それは、一応、日本司法支援センターなどは裁判所のメンバーも入って、法務省所管の独立行政法人ですが裁判所の関係者も入って検討するというものもありますので、ぜひそういう、それができなければ、公文書管理委員会にオブザーバーで参加できるようなものでもいいかと思うんですけれども、やたらと機関、組織をつくって、ずうたいが大きくなると国の財政上ちょっと大変だというような議論にもなるとすると問題の点はあるかもしれませんが、やはり機能としては、国の三権で公文書の管理を扱うということをぜひしていただければと思うところでございます。

 そういう意味では、独立行政法人としての国立公文書館というものが、三権の一翼を担う行政の一末端組織というよりは、国会や裁判所の方でも情報提供がよりしやすいようにするには、特別の法人というものの方がいいのではないかと考えたところでございます。

佐々木(隆)委員 次に、福井参考人にお伺いをいたします。

 福井参考人は、先ほど、行政経験もおありだというお話と、今は学者の立場でいろいろ提言をいただいているわけでありますが、その中で、先ほど来もかなり厳しい提言をされてこられましたが、公共財の保存方法とかアクセスとかということについて八点ほど述べられました。

 その中で、特に、第三者機関の問題とか、プロセスの記録、今の立案プロセスということになるんだと思いますが、それと生データについても触れておられました。その点について、できれば簡潔にお願いをいたします。

福井参考人 お答え申し上げます。

 第三者機関についてでございますが、第三者機関の場合のやはり立場が非常に重要でございまして、現在は行政機関内部でのチェックということになっています。行政機関内部の場合にも、当該官庁が行う場合とほかの官庁が行う場合、これは後者の方が当然望ましいと思いますが、本来は、例えば行政のそういった情報開示やあるいは公文書保存に関する最終的な意思決定は、議院内閣制でありますので、国会に直属の形で機関が設けられるのがファーストベストではないかと思います。ただ、できるだけ利害関係を遮断するという観点が、仮に行政内部に置かれる場合にも非常に重要でありまして、そういった運用上の行為規範についてもできるだけ実体化することが望ましいと考えております。

 第二に、プロセスに関する情報でございますが、これはもう私るる申し上げたとおりでございますけれども、勤務時間中あるいは執務の一部として作成した文書が公のものでないということは、私にはちょっと常識的に考えられないわけでございます。あとは、それが公共財であることは当然として、そういったものを余りに細かいものまで保存対象にすると、それは費用がかかり過ぎるという問題は当然考慮すべきでございますが、個人的だと本人が言い張るからというような、そういう議論はやはり通用しないのではないかと私は存じます。

 それから、生データでございますが、この生データの問題も、一種の費用対便益といったことは当然考える必要がありますけれども、生に近いデータが加工、検索しやすい形で手に入るということは、やはり国民が行政を検証する上で大変重要な観点でありまして、そういう意味で、できるだけオリジナルに近いものも極力残す、情報開示の対象にするということの枠組みは重要かと思います。

佐々木(隆)委員 ありがとうございました。

 時間がなくなってまいりましたので、菊池参考人にお伺いをいたします。

 私も、この公文書管理法というものが、先ほどお話がありました、公務員の意識を変える、文化を変えるという意味で、本当に非常に重要だというふうに思っております。

 文化を変えていくためには何よりも人材だと思うんですね。これは二つ私は考えなければいけないんだと思うんですが、公文書管理をする側のいわゆる専門家をどうやって育てていくのかということと、もう一つは、行政側の、そこを担当する人たちの意識をどう変えていくのかという二つの課題、これは同時にやっていかなければいけない課題だと思うんですね。

 そういうことの必要性といいますか、本当のプロを育てなければ、もう一点、中間書庫のことについてもお聞きしたいんですが、例えば中間書庫というものをいずれつくるようになっていくとすれば、私は、そこに基本的にすべてのものが行って、そこで専門家が必要かどうかということを判断するということが一番望ましい形だと思うんです。そういった意味で、先ほど事前規制から事後監視に変わったと言ったのは、入り口というのは五人ぐらいいれば許認可ですから大体間に合うんですけれども、事後監視というのはもっと、その三倍ぐらい人がいなきゃ本来だめなものなんですね。

 そういった意味でいっても、中間書庫についての必要性についてのお考えと、その人材をどうやって育てていくのかということについてお伺いをいたします。

菊池参考人 大変ありがたい御指摘をいただきました。私、先ほどちょっと申し述べるのをはしょったものですから、そこの部分は十分じゃなかったと思います。

 国立公文書館、私どもの方の施設とそれから人員を強化していただければそれでうまいかというと、そんなことはなくて、実際は、各省庁で毎日毎日あるいは毎年毎年文書管理に携わってくれる人たち、各省庁にもきちっとしたそういう体制ができないと、とてもいい仕事ができるわけじゃございません。そういうような面でいうと、公文書館サイドでの専門家とは別に各省庁にも人が要るだろうという御指摘は、まさにそのとおりでございまして、ありがとうございます。

 それから、中間書庫にどの程度の専門家が要るかというのは、中間書庫のあり方についてどのくらいの機能を持たせるかというところのやり方だと思うんです。アメリカなんかでも、二千五百人ぐらいいるぞと言うんですけれども、中間書庫をレコードセンターというふうに言っています。そこはどちらかというと工場みたいな形の、保存施設であり工場であり、そこでは余り評価、選別というのはやっていないんですね。ですから、そういうふうな意味でいうと、どちらかというと、そこはテクニカルな人たちがたくさんいるというような状況です。

 我が国の中間書庫をどういう形でもってこれから組み上げていくかによって、そういう中間書庫にどういう人を何人ぐらい配置するかということが決まってくると思いますけれども、いずれにしても、今、我が国全体としてこういう仕事に携わるような人がいません。

 私どもも、そういうことでもって、ここのところ、公文書館でも研修とか職員養成というのに力を大変入れていまして、地方公共団体あるいは独立行政法人、国立大学法人なんという方たちも来てくれるようになりまして、大変需要がふえてきていますけれども、まだまだとても足りません。大学なんかでもアーカイブ専攻なんというのがやっとでき始めたところでございまして、そういうような面でいうと、私どもも努力しますけれども、もう少し日本の各方面でも人の養成ということを大学等とも手を携えてやっていきたいと思いますし、ぜひ御支援を賜りたいと思います。

佐々木(隆)委員 ありがとうございました。

 時間でございますので、終わらせていただきます。

渡辺委員長 次に、田端正広君。

田端委員 公明党の田端でございます。

 四人の参考人の先生方、きょうは大変にありがとうございます。非常に触発される御意見をいただきまして、心から感謝申し上げます。

 最初に、まず菊池参考人にお尋ねいたします。

 先ほど、日本は百年おくれているという、本当に実感のこもったお話がございました。そういう意味では、ようやく欧米並みに、まず一歩その途についたのかなという思いもいたしますが、だからこそ、非常に大変大事なテーマだと。

 それで、実は、まず国立公文書館法との関係で、この国立公文書館法でも、第一条のところで「国の機関の保管に係る公文書等の保存のために必要な措置等を定めることにより、独立行政法人国立公文書館又は国の機関の保管に係る歴史資料として重要な公文書等の適切な保存及び利用」云々、こうなっています。ここでは、一貫して「歴史資料として重要な公文書」、こういう表現でこの法律は成り立っていると思いますが、そういう意味では、今回のこの法律と整合性がちゃんととれているのかどうかというのが私の尋ねたいところでありまして、ここで言うところの歴史的に重要な公文書という位置づけが何か少し限定されているような気がしてならないんですが、その点、いかがでしょうか。

菊池参考人 これは「歴史資料として重要な」というところで非常に幅広く読んでいるんだろう、こういうふうに私どもは思いますし、そう言わざるを得ないというのが実の立場です。

 私個人としては、歴史資料というのは歴史家のためだけではなくて、先ほど申しましたように、国民一人一人が日本の国、社会の歴史、歩みというものを実感でき、把握できるようなもの。そういうような意味でいうと、歴史資料というのは決して乾いた、古びた書類、資料だということではなくて、文化の薫り豊かなものも中にはあると思いますし、それをよく見ることによって学術研究に結びつけることができるというものもありますし、ああそうか、あのころの人というのはこういう物事の考え方をしていたんだなということが後になってわかるというようなものもある。そういうものの総体を含めて、歴史資料として重要なということ。

 だから、決して歴史学のためにだけ奉仕する公文書館ではないということをぜひ御理解いただきたいと思います。

田端委員 ありがとうございます。

 そうしますと、個人あるいは民間と言っていいのかもわかりませんが、例えば政治家が回顧録とかそういったこと等々、今までもたくさんそういう例があります、あるいはまた新聞、雑誌等、過去にさかのぼってのそういう歴史資料を積み重ねた論文を発表されたり書かれたりとか、こういうことも広い意味では歴史資料になり、広い意味では公文書ということにもなっていくのではないのかな、こんな思いもしますが、その辺はどこからどこまでという線がどこで引けるのかというのは非常に難しいかと思いますけれども、その点、重ねてちょっとお伺いしたいと思います。

菊池参考人 「歴史資料として重要な」というのが非常に幅広いというのは、確かに御指摘のとおりです。

 公文書という形で公文書館に入ってくるものは、各行政機関あるいは国会や司法府も含めて国の機関から移管という形で入ってくるという形が原則なものですから、そういう意味でいうと、やはり基本的に言うと、全く個人が書いた日記だとか何かというのが果たして入るのかどうかというところは、そこまでは広がらないというのが通常の公文書の範囲だろうと思うんです。公的機関から移管されてくる公文書の中には、なかなかそういうものは入りにくいかなと。

 ただ、今回の法律の中には、私ども国立公文書館には、寄贈や寄託で文書が入ってくるというようなものも私どもがお預かりすることができるように法律で規定していただきましたから、そういうものが将来は入ってくる余地があるということでございます。

田端委員 ありがとうございます。

 そうしますと、私は、国会図書館等との関係がそこのところは非常に大きくなっていくんだろう、こう思います。

 それで、有識者会議の座長ということで、尾崎参考人にはきょうは議論のおまとめの中のお話を実感こもっていただきまして、大変ありがとうございます。お話を伺っていて、私も、今回のこの法律の制定が公務員の意識改革、そして大きく文化を変えるあるいは行革に通じるということは、大変格調が高いといいますか目標の高い、すばらしいことだ、こう思います。

 そういう目標を高くすればするほど、果たして現実が、例えば公務員の意識改革、これから行くんだから、まだそこまで行っていない、だけれども目指さなきゃならない。そういう意味で、一応法律はここででき上がったというか、これからそれが実施される。これから何が足らないんだろう、この法律が仮に施行になって、本当の意識改革あるいは文化の改革にまで本当に行くだろうか、ちょっと悲観的かもわかりませんが、そういう思いがしています。

 座長としてまとめられた御意見の中で、そこはどういうふうな御認識で、そして法案との関係で、その思いが法案の中にどういうふうに出ているのか、その辺のところをお願いしたいと思います。

尾崎参考人 確かに、公務員の文化を変えるというのは、そう急速にできるかどうか。法の制定というのは非常にいい機会になると思います。これで随分進歩すると思います。

 先ほど、私どもの若かったころの大変恥ずかしい話を申し上げたわけでございますけれども、情報公開法などを経まして、現在の役所のレベルはそこまでひどいというものではなくなっている、それなりにやはり向上をしているわけでございます。

 特に、有識者会議が創設されました直後に、ただいまお席にいらっしゃいませんけれども、初代の上川陽子大臣が全部各省を回ってくださいまして、そして各省の文書管理のあり方を実際に直接職員に当たって聞いてくださった。これで随分雰囲気がぐっと締まってきたという感じを受けました。

 そういうことで、法律の中には、コンプライアンスで内閣から勧告したりできますから、そういうようなことを重ねていけばやはり文化は次第に変わってきて、自分たちの大切な仕事として公文書管理の問題があるんだということが自然と理解されてくる。それが身についた公務員を育てなくちゃいけないと思うわけですね。そこで、研修というのが非常に大切で、初任者の段階から何回かに分けてやはり研修をしなくてはいけないんじゃないか。中間管理職になったとき、管理職になったとき、やはりそれぞれに研修が必要ではないかというふうに思っております。

 それと、やはりそういうことを世の中が評価してくれないと張り合いがございませんので、そこは私は実はマスコミに期待をしておりまして、こういう情報管理の問題はまさにマスコミの仕事と隣り合わせでございますので、ぜひこの点について公務員を励ましてやっていただいて、新しい文化が行き渡るように御協力いただけたらと思っております。

田端委員 ありがとうございます。

 それで、実は先ほど三宅参考人のお話の中で、福田官房長官の御指示でしたか、アメリカ等を視察されたというお話がございまして、そういった先進国におけるすぐれた体制といいますか、それを目の当たりにされていろいろなことをお感じになられたということでございます。

 三宅参考人のお話をずっと聞いていたり、このチャートを見ていますと、公文書管理担当大臣があって、そして公文書管理庁がそこにあって、その上に内閣総理大臣が総まとめという形でいる、こういう一つの、まさに行政改革そのものに当たる大変大きな視点に立ったことをベースにお考えになっているということがよくわかります。

 それはつまり、視察をされ、あるいは当時の官房長官の福田前総理の意識の中にも果たしてこういうことがあったのかな。ということは、先ほど尾崎参考人がおっしゃっているような、大きな行革であり文化を変えるんだということとここは話が一致してくるんですが、三宅参考人は実際にそういった関係の中でここにずっと携わってきて、まだこの法律ではそこまでは行っていませんが、しかし、やがて将来はこういう大きな構図を持ってやっていきたいんだ、こういう思い、そして、最初にこのことを発案といいますか発起された福田前総理の思いとその辺はつながっているというふうに理解していいんでしょうか。

三宅参考人 たしか福田前総理は、御自分が主宰された懇談会の席でも、よく三十分とか、あいさつだけではなくて会議にそのままおられて非常にお話をされていた。また、御自身がアメリカの公文書館で、たしか空襲で焼ける前の郷里の地図をまだ民間人であった若いときにいただいた、そういうアメリカのお話をされたりしておりまして、やはり先進国と肩を並べられるだけの公文書館のあり方ということを構想されていたと思うんです。

 最終報告の中にも、考え方の一つとして、公文書管理庁と、先ほど申しました特別の法人のような組織が本来あるべきだということになった思いは、やはりそういうところに最終報告でも含まれていたと思うんですが、いささか小ぶりの法律になった。

 先ほど申しましたけれども、公文書管理委員会とそれを担当する事務局の職員は十名程度の、十名になるかならないかぐらいのものだということで、小さく生まれるというところのようなものですから、本当は大きく産んでほしいところですが、少なくとも、小さく産んでも大きく育てられるような手がかりをぜひ国会の中で入れていただいて、福田前総理の思いを実現させていただくことは日本の国民全部の思いだということにつながっていくと思いますので、ぜひともこの点は、この審議の中でも御反映させていただきたいところだと考えております。

田端委員 よくわかりました。

 私も、実は今回、この法律について少し皆さん方からも勉強させていただいて、初めて、この奥の深さといいますか、そういうことを今実感しているわけでございます。そういった意味では、ぜひ小さく産んで大きく育てる方向に我々も努力していきたい、こう思います。

 さて、それで、三宅参考人のお話の中に、中間書庫を設置して将来的にはこれを、それこそ大きく育てる。そして、例えば、これは公文書管理庁の所管ということに図式ではなるんだろうと思うんですけれども、そうなっていけば確かに公務員の意識は大きく変わるんだろう、こう思います。だから、そういう方向を目指さなければならないなということもよくわかりますが、各省の中にそういうものをつくるという、この意味の大きさというのは大変なことだと思うんですけれども、その辺のところはどうでしょうか。

三宅参考人 先ほどの中間書庫の件でございますが、これは、私も委員を務めさせていただきました懇談会の中では、霞が関に近いところに一つ大きなものをつくるという話とともに、各省庁の中にも中間書庫のようなものをつくって、外の書庫に入れるか、各省庁の中の中間書庫的なものに入れるか、その両方があってもいいんじゃないかという議論をしたことを覚えております。

 そういう意味では、各省庁の中にも中間書庫的なものをつくる、あるいはこれを中間書庫の一翼を担うものとして位置づけるということが法文上でもはっきりしますと、これはやはり、先ほど尾崎委員からもありましたように、公文書の管理が役所の中の業務として非常にステータスの高いものになろうかと考えているところでございますので、各省の中にも中間書庫をつくるような方向づけで検討していただくことは大変いいことではないかと考えております。

田端委員 それで、福井参考人にお尋ねしたいと思いますが、福井参考人は大変お詳しくて、いろいろなことを御研究なさっているということでございます。

 私は、将来的にはやはり、国会図書館がいいのかどうかわかりませんが、立法府の公文書、そして司法の関係の公文書、公文書も三権整えなければ、今回は行政でいっていますが、将来的には本当の意味の公文書というのはそういう形が必要なんだろう。そうすると、相当時間は先のことになるのかなとは思います。しかし、その第一歩が行政の中でしっかりとここで位置づけられるということは大変大きいと思っておりますが、福井参考人の御意見をお願いしたいと思います。

福井参考人 全くおっしゃるとおりと存じます。

 今回の第一歩は大変大きいことはもう間違いないわけでございまして、ただ、方向としては、国家機能が立法、司法、行政と三権にわたりまして、しかも、そのそれぞれが極めて重要な役割を果たしていることからいたしますと、国民にとっては、情報開示の点でも公文書の保存の点でも、やはり同様にアクセスができるということは望ましい方向でありまして、ぜひそのような方向を目指していっていただければと存じます。

 その判断は、やはり直接には立法府が行うことになるものだと思います。

田端委員 ありがとうございます。

 まだまだお尋ねしたいんですが、時間が来たようでございます。

 菊池参考人、これから体制づくり、また研修とか職員の質の向上とか、いろいろとまだ大変御努力いただく必要があろうかと思いますが、ぜひ頑張っていただいて、法律の施行と相まって、どうぞまた、より高い理想に向かって御健闘をお願いしたいと思います。

 きょうは先生方、どうもありがとうございました。以上で終わります。

渡辺委員長 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。

 きょうは、四人の参考人の皆さんには大変貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございます。

 それで、四人の皆さんにそれぞれのお考えというものを伺いたいんですが、伺いたい内容につきましては、一つ、尾崎参考人も、昨年学習院大学で開かれた記録管理学会で講演されたものとか、それから、三宅参考人のお書きになった、市民の権利、自由を広げることに関する図書の中でお述べになったものなど、中間書庫の問題についていろいろ論じておられますが、例えば日弁連の方の意見書では中間書庫については非現用文書、三宅参考人の方は現用文書を含めてのお考えを、お書きになったものでは書いておられました。

 私、現用文書も非現用文書も含めて、ここのところの考え方というものをお聞きしておきたいのは、各省庁が持っている文書を、省庁の判断だけで、これは残しましょう、廃棄しましょうというふうに簡単にいくと、やはりまずいと思うんですね。それは、どういう形にしろ中間書庫で一度預かって、中間書庫ともう一つ大事なのが、基準の作成だと思うんですね。

 第三者機関等で基準を作成して、その基準に基づいて評価をして、これは原本は例えば公文書館が持っていたとしても、コピーは、やはり現用文書の場合ですと当然必要なわけですから、あるいはそこまで現用文書を中間書庫へ移すかどうかということはありますが、原本というものは各省庁の方で、使わないと仕事になりませんから、それは戻すとか、これは廃棄するとか、これは三十年保存にするのか、あるいはさらに永久保存という扱いにするのかとか、判断基準を設けてきちんとした判断をする。それは、できるだけ客観的立場で判断できる委員会がいいと思うんですが、その判断をして、それに基づいて大事なものは公文書館できちんと管理していくというふうな、そういうことが大事なのではないかなというふうに思うんです。

 この中間書庫と、基準をどうつくるか、基準に基づいてどう判断するのかということについて、四人の参考人の方からそれぞれのお考えというものを伺いたいと思いますので、よろしくお願いします。

尾崎参考人 先生のおっしゃりますとおり、中間書庫の果たす役割は非常に大きいと思います。

 今回の法律では、最初に文書を作成しましたときに、先々のスケジュールまで作成者が考えてつくるわけでございますね。そういうデータがついてファイルが保存されることになるわけでございますが、例えば、そこで十年先に廃棄あるいは十年先に国立公文書館の方に移管するとか、そう書いてあったとしても、実際に現用文書として使っておりますときに、もうこれは公文書館に渡してしまっても大丈夫だというようなことも起こり得るわけですね。ですから、中間書庫に一遍入れまして、そこで検討して、場合によっては、もう各省庁が抱え込んでいないで公文書館に渡すというような判断もあり得るわけでございます。

 そこで、その際に各省庁が自分で判断するのがなかなか難しいところがございますので、いわゆるアーキビストと言われておりますような方、専門家を養成して、そういう方々が公文書館なら公文書館に籍を置いて、出かけていって相談できるような体制、そのぐらいの陣容を持っていれば中間書庫というのは生きるのではないかというように考えております。

 中間書庫は非常に大切な問題であるというように考えておりまして、ぜひ実効性のある、いい中間書庫をつくっていただきたいと存じております。

三宅参考人 日弁連の意見書の中では、六ページで、「内閣府または国立公文書館が、各行政機関の非現用文書をすべて受け入れることができる中間書庫」ということでまず書いておりますが、これは、要らなくなったと行政機関が考えたものは、基本的に全部まずそこに入れるべきだと考えたところの意味でございます。

 現用の文書の中で、今回の法律によりますと五条五項で、レコードスケジュールを立てて移管するものと廃棄するものの二つに分ける。その分けたところのものが、国立公文書館法の十一条一項二号で「行政機関からの委託を受けて、行政文書の保存を行う」ということで、移管の措置をとるべきことが定められたものに限るということで、ここは現用文書のものも含んでいるということです。

 私どもは、現用文書で、まず廃棄すべきものを廃棄する、廃棄すべきものは除いて移管すべきものだけというところは少しまだ問題があるのではないかと考えておりまして、とにかく廃棄については内閣総理大臣の承認を得るべきだと。それで、それ以外のもので、要らなくなった、役所にあって今は使わないというものはとにかく一たん倉庫に入れるという形で、やはり現用の文書も中間書庫に入れるという形をとるべきではないかと考えております。

 意見書の中ではちょっとその辺が、せっかくの考えが全部、要は法案に書かれたものに即して考えておりますが、昨年の十月の意見書の中では、最終報告に反映させていただくべく、もう少しその辺のことを踏まえて考えておりますので、日弁連のホームページ等で参考にしていただければと考えております。

福井参考人 中間書庫に関しましても、現用文書も含め、幅広く残すということが適切だと考えます。

菊池参考人 確かに、文書の種類によって三十年の保存とかの保存期間が設定されて、それはレコードスケジュールで設定されるわけですけれども、それでは、その役所の中でもって三十年間ずっと持っていて常時活用するかというと、そうじゃなくて、情報公開の請求が出てきたときには、作成、接受官庁としてそれを国民に対してお示しする。これはまさに、公文書館で閲覧請求に対応して閲覧に供するというのとはまた違う意味の情報公開法に基づく。では、その間の管理というものをずっと各省庁の現用文書の書庫の中でやるかというと、これはまたその必要性もないかもしれない。だから、そこは中間書庫で見る。

 それで、中間書庫に持っていくのは、将来いずれ公文書館に移管すべきものというような限定でもって多分やることになると思いますから、そういう意味でいうと、まだあくまでも現用文書だぞということが一つの前提だと思います。

 中間書庫をどういうふうな制度設計にするか。中間書庫についてどこまで、どのくらいのものを義務的に設置するのか。先ほど三宅参考人がおっしゃったように、各省庁にも書庫があるんだから、そこできちっと分別、管理してもらえれば、それをもって中間書庫と言ってもいいじゃないかという考え方もあります。これは経済効率性でいうとそういうことだろうと思いますけれども、いずれにしても、これからよく考えていかなければならないことだと思います。

 これは基本的には、長い保存期間中にちゃんと国民からの開示請求にこたえられるような体制をとっておくということが一つと、保存期間中に散逸したり滅失したり誤廃棄されたりすることがないようにというところがまさに主眼でございますので、そういう形での制度設計が考えられるべきだと思います。

吉井委員 今、中間書庫の問題とともにもう一つお聞きしておきたかったのは、要するに、廃棄するのか保存するのか、その保存が三十年なのかいわば永久保存になるのかとか、それから廃棄する以前の段階でも、廃棄までに短い期間、三年か五年かとか、どういう基準を設けるか、この基準をやはり客観的な機関でまず作成すること。

 それから、中間書庫で預かっているものについても、それをどうするのかについての判断をどういう機関でもって行うのかということで、それは第三者機関的なものを考えてつくることが適切なのかどうかとか、もちろん、そのときには司書資格とか学芸員資格とかいろいろなことも、あるいは多方面の有識者の方ということもかかってこようかと思います。

 どういうふうにして基準をつくるのかということと、基準に基づいてどう評価するのか、その点についてのお考えというものを四人の参考人の方から伺いたいと思います。

尾崎参考人 現在でも、この種の文書は何年保存であるという基準はあるんですね。それが十分かどうかという問題はあるわけですが、恐らく、現在存在する基準をもとにして、新しい目で新たな基準がつくられるのではないかというふうに思います。その場合には、公文書管理委員会に当然相談なさることになりますから、そこでいろいろ、第三者といいますか有識者の意見も反映されるということになるのだろうと思っております。

三宅参考人 現行の法律案によりますと公文書管理委員会がございますが、文書の廃棄、保存の基準等につきましては、公文書管理委員会が諮問を受けて、十分そこで検討していただいて基準をつくっていただくということがやはり大事ではないかなと考えております。

 私どもは、その背後に公文書管理についての推進会議のようなものを考えておりまして、そこで国民の意見も反映できるような、バックアップのようなことができるものがあった方が、国民、日本国全体で公文書の管理という文化レベルを引き上げるための後追い、フォローアップができるようなものがあっていいのではないかなと考えて、推進会議的なものを提案させていただいたところです。

 それから、廃棄と保存の基準ですが、今も情報公開法の施行令に基づいて、各省庁が廃棄するもの、一年以内に廃棄してもいいものと、一年保存、三年、五年、十年、三十年とございます、行政ファイル管理簿でこういう文書を保管していますということをするんですが、問題なのは、行政文書管理簿のタイトルで検索しても出てこないという問題があります。行政文書ファイル管理簿のつくり方のようなものもきっちりやらないと、例えばC型肝炎の資料とかいっても出てこないというようなことを学者の意見として聞いたことがございますが、タイトル名をなかなか検索できないように書いてしまうと、検索できない問題がある。そういう具体的なところも詰めていく必要があるんだろうと考えています。

福井参考人 文書の保存、廃棄は、やはりできるだけ客観的基準で、事の軽重に応じてということが一般論としては重要かと思いますが、ただ、保存、廃棄の問題を考えるときに、先ほども申し上げましたが、電子化技術の進展を踏まえますと、原本の保存、廃棄の問題と、電子化されたものの保存、廃棄の問題は全く次元が異なると思います。

 原本は、これだけの技術の進展のもとでは、ほどほどに廃棄するということはそれほど支障がないと思うんですね。むしろ、原本の保存コストの観点から短く設定せざるを得なかったということを電子化で代替させるのであれば、相当幅広い文書、これまでは捨てていたようなものでも電子化情報としては永久保存するということは、技術的にもコスト的にもこれまでよりははるかに容易なわけですから、そういう区分した考え方で保存、廃棄を考えていくことが適切だと思います。

菊池参考人 行政文書ファイルのつくり方とか保存期間だとか、それから保存期限が終了した後の処理の方法だとかということについては、基本的に、多くの事項についてちゃんとした基準を政令によりつくって、それでそういうようなものにのっとって処理されるようにする。しかも、その制定に当たっては、内閣総理大臣が主務大臣としてちゃんと公文書管理委員会なりに意見を聞くというような形のことをやって、そういう仕組みもあちらこちらに入っておりますので、そういう面で全くずさんな形になってしまうということはないのではないか、こういうふうに考えています。

吉井委員 この問題、どういう基準をつくってどう評価するかということの大事さについては、実はこの間この委員会でもやったんですけれども、アメリカの公文書館では三十年たって公開されて、日本の方にあるはずなのに不存在だと。ですから、そういう点では、これからやはりその基準をきちんとし、基準に基づいての評価をきちんとしないと、先ほど福井参考人からもお示しいただいたようないろいろな事例が出てまいりますから、そこは非常に大事なところではないかというふうに思っているんです。

 菊池参考人にお伺いしておきたいのは、やはりこういう問題になりますと、中間書庫にしろ公文書館にしろ、専門家ですね、司書資格を持っている方とか、歴史にしろ美術にしろ学芸員の資格を持っている方、どれだけ専門家をきちんと抱えていくかということと、もちろん養成するということも大事なんですが、そういう点で、体制をちゃんとしないと、箱は立派なものができたんだけれども中身はさっぱりだということになってしまっては余り意味がありませんから。

 そういう点で、どういう専門家を、現在非常勤の方が多くて常勤が少ないという問題もありますし、ですから、どれぐらいの規模の体制を考えて取り組んでいくべきかということについて、日ごろ館長としていろいろ御苦労いただいていると思いますので、お聞かせいただければというふうに思います。

菊池参考人 大変御理解のある御質問を賜りまして、ありがとうございます。

 まさにそういう専門家、司書ですとライブラリアンとか、それから美術館なんかの学芸員なんかですとキュレーターという、英語で言いますとアーキビストというんですけれども、アーキビストに対応する日本語訳がまだ確立していないというような状況でございます。

 そういうことで、司書養成課程とか、学芸員の資格を付与するための大学での教育課程、そういうような形のものができていない。やっと幾つかの大学ないし大学院ででき始めたという状況。そこから私どもも何人か採用させていただいたりしているわけですけれども、まだ今のところは、司書資格を持ったり学芸員資格を持ったり、あるいは大学院レベルで歴史研究をしてきた、歴史文書を読むことが得意だとか、あるいは中世文書の宿場の文書を読むことができる、そういう人たちがまだ多くて、体系的な形での教育体制というのができていません。そういうことも当然考えていかなきゃいけませんけれども、すべてを公文書館でやるわけにもまいりませんし、国がやるべき話、必ずしもそういうことでもない。

 だから、私が言っていますのは、教育機関であるとか関係団体であるとか、あるいは、場合によれば企業、団体等も力を合わせて、どういうふうにやっていったらいいのか。私ども自身としては、今の形ではなくて、この間の有識者会議の提言にもありましたように、数百人規模というものをぜひとも実現したい、そうしなければいけない、こう考えておりますので、よろしく御支援を賜りたいと思います。

吉井委員 時間が参りましたので、質問を終わります。どうもありがとうございました。

渡辺委員長 次に、重野安正君。

重野委員 社会民主党の重野安正です。

 参考人の皆さんにおかれましては、本日、大変御多用な時間を割いて、この公文書管理に係る審議に対する貴重な御意見を述べられました。私どもの審議に大変参考になるお話がたくさんございました。そのことにつきまして、まず冒頭に厚く御礼申し上げたいと思います。

 時間が限られておりますので早速質問に入りますが、まず尾崎参考人にお伺いいたします。

 有識者会議の座長として最終報告を取りまとめられました。その中で、私は注目している文言があるんですが、締めくくりのところに、国民の貴重な財産という表現、文言がございました。まず、国民の貴重な財産と述べられたその理由、なぜにそういうことを言っておられるか、その点についてお伺いします。

尾崎参考人 公文書は現用文書としても大切なものでございますし、また歴史的文書として長く後代に伝えられるものでございます。そういう意味で、国民に共通する貴重な財産であると私ども考えております。

 全く法律的な意味で言っているわけではございません。その意図するところは、大変大切なものであり、しかも、表題に「時を貫く」と書いてございますが、時代を超えるものであるということを言いあらわしたというようにお考えいただけたらと存じます。

重野委員 ということでありますけれども、この法律をずっと読んでみましても、今尾崎参考人が申されましたような趣旨を体した表現、国民の貴重な財産なんだという、公文書に対する、ある意味最も重要な表現だと思うんですが、これが法律の中に取り入れられていないと私は見るわけです。

 担当に聞いてみましたら、「国民主権の理念」というその中に入っている、こういう説明でありました。私の主張する国民の貴重な財産という意味と、担当が言う「国民主権の理念にのっとり、」という、ここは私は同一視できないんですね。

 その点について、先生どのようにお考えでしょうか。

尾崎参考人 私どもの報告をどのように法律上表現するかということは、いわば立法に当たる方のお考えによるわけでありまして、そこまで一々申し上げるのもどうかと私どもとしては考えておりますけれども、もしもその担当の方が「国民主権の理念にのっとり、」というところに国民共通の財産という意味まで含めているんだということであれば、そういうことこそ記録にきちんと残しておいていただきたいというように思います。

 法律に何もかも書けとか、あるいは法律用語としてどうかという問題はあるのだと思います。しかし、私どもの報告した心は理解をしているんだということをぜひ記録にとどめていただきたいと思います。

重野委員 ありがとうございました。

 それでは、三宅参考人にお伺いいたします。

 まず、十六条一のハ、ニで「当該特定歴史公文書等を移管した行政機関の長が認めること」、これを削除するという理由ですね、その点をひとつ聞きたい。まず、それをお答えください。

三宅参考人 十六条一項の「行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある」、ここは私の意見書の骨子に少し書いておきました。先ほどちょっと時間の関係で説明をはしょりましたが、三ページのところに、例えば防衛外交情報で申しますと、一九五六年十月の河野外相とソ連・フルシチョフ第一書記との会議とか、一九六〇年、藤山外相とマッカーサー米国駐日大使との会議、これは、主要な部分は全部、情報公開法でも非公開になっておるわけですね。その理由はということになると、いや、それは外務大臣の判断でこれは出せないからですよ、そう言われると、裁判所は、外務大臣はそう言っているんだからだめですよという話になるので、ここのところは非常に、情報公開法の中でいうと、防衛外交情報が公開されない一つのネックになっているんですね。

 情報公開法のそういう問題がありますので、今出せなくても、残しておいて、将来きっと出してもらえるようなものとして公文書管理法というものもあると思うんです。でも、将来ということで期待しても、情報公開法と同じ文言だとすると、公文書館には移管されたけれども、役所が言うからやはりだめですよという話にやはりなりかねなくて、ほとんど、五十年たったものも今まだ出ない、こういう実情がありますので、ここのところは、情報公開法の文言の調整ということもございますが、公文書管理法は一歩進めて、本当は行政機関の長の判断ということだけで利用拒否ができるような文言にしない方がいいのではないかと考えたところでございます。

重野委員 次に、二十五条、これについてちょっと見解をお聞きしたいんですが、二十五条は、特定歴史公文書として保存されている文書が歴史資料として重要でなくなったと認める場合には、内閣総理大臣に協議、同意を得て当該文書を廃棄することができる。これは国民の知る権利、例えば、歴史資料として重要でなくなったと判断するのは資料を持っている側であって、知りたいあるいは見たいという立場の側の思いというのは、この中には盛り込まれていないんですね。

 その点について、修正というか、先生の違いを見ても、この部分も同様に、そのままいくんだ、こういうことになっているんですが、そこら辺の判断基準というのは一体どういうところにあったんでしょうか。

三宅参考人 法案が公表されて、短期間で意見書、日弁連の会でまとめることでちょっといろいろ対応したんですが、確かに二十五条も、私、公文書館の有識者会議の委員も務めさせていただいておりますので、この適正な判断は十分できるんではないかとつい思ったんでございますが。

 現業の機関において、移管すべきものと廃棄すべきものについて第三者機関の意見を聞くという観点からしますと、二十五条につきましても、「内閣総理大臣に協議し、その同意を得て、」というところの関係で、その際、内閣総理大臣が公文書管理委員会に諮問して、歴史資料として重要でなくなった、国立公文書館の長が、こういう申し入れがあったけれどもこれでいいかということを公文書管理委員会で審議、検討していただいて、かつ、その委員会の議事が公開されることによって、国民も、大事じゃなくなったと言っているけれども、そうではないでしょうということが言えるような、そういうルールづくりが修正でできるともっとよくなるのではないかと、今考えたところでございます。

重野委員 次に、先生の案を見ますと、附則七条を削除する、こういうことになっているんですが、なぜ七条を削除するのか、お聞かせください。

三宅参考人 附則七条は、刑事確定記録と軍法会議記録ですね。これには特別の思いがございまして、十年ぐらい前に澤地久枝さんが「雪はよごれていた」という、二・二六事件についての、保管されていない、裁判担当者がお持ちになった資料で本を書かれたことがございました。今の東京地検の地下に二・二六事件の記録はばっとファイル化して置いてあるわけですから、本来、そういうものは、国民がだれでもそこにアクセスできるという形がとられなければ昭和史の検証などはできないと考えておるんですが、残念ながら、今回のこの法律では、刑事確定訴訟記録法は法務省の所管ですので、これはもう別扱いという格好になって、タッチされていない。刑事記録というのは、重要な事件についてはやはり残されているわけですから、削除することによって、本来はこれも国立公文書館に行政文書として移管されるべきだということをはっきりさせた方がいいのではないかと考えたところでもございます。

 いろいろ、関係省庁の調整もございますでしょうが、その辺は十分検討していただいて、この辺についてもはっきりした御見解を委員会で出していただければと考えているところでございます。

重野委員 ありがとうございました。

 それでは、次に福井参考人にお伺いいたします。

 現在の行政の文書管理ですね、万般にわたりまして、福井参考人はどういう所見を持っておられるか、ちょっと大きな話になるんですが、お聞かせください。

福井参考人 残念ながら、まだ十分な基準が確立されているとは言えず、また、担当者にとりましても文書管理というのは頭の痛い課題ではありますけれども、どれをどれぐらい保存するのかということについて、十分な、徹底した厳格な管理がなされているという状況ではないと思います。

重野委員 そういうところから出発して、今回のこの法案に対する福井先生の意見が述べられてくるわけですね。

 そこで、今回の法案が、行政の側の意図的な廃棄あるいは怠業を十分に防げる内容となっているかどうか、その点についての御感想をお聞かせください。

福井参考人 一部イエスで一部ノーだと思います。

 といいますのは、こういった保管のルールができることは、やはり重要な情報が散逸したり廃棄されることを防ぐ非常に大きな武器になるという点は間違いなく、その点では大きな前進だと考えますけれども、先ほども申し上げましたように、どのような文書が保管されねばならないのかという点の実体規範は、この法案では残念ながら含まれておりません。この点は情報公開法も共通の課題でありますけれども、いかなる文書が保存対象になるべきなのかというところが余りに行政裁量の中に埋め込まれてしまうことは望ましくなく、この点は将来の重要な立法課題かと思います。

重野委員 加えて、第四条、軽微なものを除くとあるんです。これはどのようにも解釈できるんですね。その解釈する人によって相当にばらつきがあるんだろうと思うんですが。この軽微なものという文言を理由にして文書の廃棄が行われることだってあり得ると思うんですね。そういう点を非常に危惧するのでありますが、その点については先生はどのようにお考えでしょうか。

福井参考人 やはり、軽微か重大かといったようないわゆる不確定概念による基準は、できるだけ、可能な限り法案の要件に持ち込まないことが望ましいと思います。

 その意味で、どう書けばいいのかという客観基準はなかなか難しいといえば難しいんですけれども、その事案の軽微さ、重大さの内容や程度についてできるだけ細則的なものが設けられて、仮に今成立するにしても、その中身が何か、どういう基準なのかというところが実体化されることが非常に重要だと思います。可能であれば、条文の中あるいは政省令も含めて、法の修正といったことはより望ましいことだと考えます。

重野委員 次に、法案では行政機関の長という言葉が間断なく出てくるのであります。その行政機関の長が、保存期間や廃棄、移管などを定める、こういうことになっているんですが、この点についての所見はいかがでしょうか。

福井参考人 この点につきましても、先ほども申し上げましたが、行政機関の長が仮に最終判断権者である場合であっても、できるだけ第三者の判断をかませるといったような工夫が行われることがより望ましいと考えています。

重野委員 ありがとうございました。

 次に、菊池参考人にお伺いいたします。

 国立公文書館として、現在の人員あるいは独法としての位置づけ、それが十分だというふうに認識されておるか、あるいは今後整備していくとした場合に必要性が高いものというのはどういうものが考えられるのか、そこについてお聞かせいただければありがたい。

菊池参考人 これから整備していかなければならないのは全般的でございますけれども、先ほどからの御議論がありますように、今の日本の社会で非常に不足しておりますのは、言ってみますと、公文書の評価、選別とかいうような面で、各省庁に対して、何を残し何を廃棄するかということについて専門的知見からアドバイスするだけの資質を持っている、各行政機関に対してアドバイスしたり指導助言をしたりすることができるような内容を持っている人を育てるということが一つ必要です。

 ただ、逆に、また別の面からいいますと、非常に多様なんです。というのは、ただ保存して国民に利用していただけないのでは公文書館としての意味がございませんから、やはり利用していただくためには、目録をつくって、それを例えば、インターネットでも今やっていますけれども、検索ができて、それでもって、わざわざ国立公文書館まで来なくても画像も見ていただける、そういうような形にしていくためには、そうすると、やはりコンピューターだとかそういう情報処理の専門家というのも必要になるわけですから、そういうような面でいうと、いろいろな多種多様な能力を持った人、一人の人が全部カバーすることはできませんから、そういうような形での人が必要で、現在の状況でこれを賄うということはとてもできませんので、できるだけ早くに充実強化をしていただきたい、こういうのが私どもの要望です。

重野委員 それぞれ参考人の皆さん、貴重な御意見をいただきまして本当にありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。

 以上で終わります。

渡辺委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、一言ごあいさつを申し上げます。

 参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十六分散会


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