衆議院

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第7号 平成24年5月18日(金曜日)

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平成二十四年五月十八日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 荒井  聰君

   理事 岡島 一正君 理事 後藤 祐一君

   理事 田村 謙治君 理事 津村 啓介君

   理事 若泉 征三君 理事 鴨下 一郎君

   理事 平沢 勝栄君 理事 高木美智代君

      青木  愛君    磯谷香代子君

      江端 貴子君    金子 健一君

      園田 康博君    高井 崇志君

      玉城デニー君    中野渡詔子君

      長島 一由君    橋本 博明君

      福嶋健一郎君    福島 伸享君

      福田衣里子君    細川 律夫君

      松岡 広隆君    村上 史好君

      本村賢太郎君    矢崎 公二君

      山岡 達丸君    伊東 良孝君

      小泉進次郎君    塩崎 恭久君

      下村 博文君    平  将明君

      竹本 直一君    中川 秀直君

      野田 聖子君    大口 善徳君

      塩川 鉄也君    山内 康一君

    …………………………………

   内閣府大臣政務官     園田 康博君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  田中 勝也君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    舟本  馨君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            板東久美子君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           篠田 幸昌君

   内閣委員会専門員     雨宮 由卓君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十八日

 辞任         補欠選任

  石田 勝之君     江端 貴子君

  石山 敬貴君     山岡 達丸君

  畑  浩治君     松岡 広隆君

  森山 浩行君     中野渡詔子君

  湯原 俊二君     細川 律夫君

  徳田  毅君     下村 博文君

  長島 忠美君     伊東 良孝君

  遠山 清彦君     大口 善徳君

  浅尾慶一郎君     山内 康一君

同日

 辞任         補欠選任

  江端 貴子君     石田 勝之君

  中野渡詔子君     森山 浩行君

  松岡 広隆君     畑  浩治君

  山岡 達丸君     石山 敬貴君

  伊東 良孝君     長島 忠美君

  山内 康一君     浅尾慶一郎君

    ―――――――――――――

五月十八日

 死因究明推進法案(下村博文君外五名提出、第百七十四回国会衆法第三〇号)

は委員会の許可を得て撤回された。

四月二日

 子ども・子育て新システムを導入せず保育・幼児教育・子育て支援・学童保育施策の拡充を求めることに関する請願(井上信治君紹介)(第五一二号)

 同(石川知裕君紹介)(第五一三号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第五一四号)

 同(中島隆利君紹介)(第五一五号)

 同(服部良一君紹介)(第五一六号)

 同(吉井英勝君紹介)(第五一七号)

 同(岩屋毅君紹介)(第五三八号)

 同(北村誠吾君紹介)(第五六六号)

 同(吉泉秀男君紹介)(第五六七号)

 同(秋葉賢也君紹介)(第六〇六号)

 同(穀田恵二君紹介)(第六〇七号)

 社会保障・税一体改革の撤回に関する請願(吉井英勝君紹介)(第五三九号)

 社会保障・税一体改革の撤回等に関する請願(服部良一君紹介)(第六二七号)

 障害者権利条約の批准にふさわしい国内法の整備に関する請願(田中康夫君紹介)(第六二九号)

同月五日

 子ども・子育て新システムを導入せず保育・幼児教育・子育て支援・学童保育施策の拡充を求めることに関する請願(小泉龍司君紹介)(第七一三号)

 同(塩崎恭久君紹介)(第八〇九号)

 国民生活を破壊する社会保障と税の一体改革と共通番号制の中止に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第八〇六号)

 同(笠井亮君紹介)(第八〇七号)

 同(穀田恵二君紹介)(第八〇八号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第八六〇号)

同月十九日

 憲法とILO基準に沿った労働基本権の回復を求めることに関する請願(志位和夫君紹介)(第九一〇号)

 国民生活を破壊する社会保障と税の一体改革と共通番号制の中止に関する請願(志位和夫君紹介)(第九一一号)

 同(笠井亮君紹介)(第九四〇号)

 同(志位和夫君紹介)(第九五八号)

 同(阿部知子君紹介)(第一〇二一号)

 暮らし・農業・地域を破壊するTPP参加反対に関する請願(志位和夫君紹介)(第九一二号)

 子ども・子育て新システムを導入せず保育・幼児教育・子育て支援・学童保育施策の拡充を求めることに関する請願(志位和夫君紹介)(第九一三号)

 同(笠井亮君紹介)(第九四一号)

 TPPに参加しないことに関する請願(三宅雪子君紹介)(第九八一号)

は本委員会に付託された。

五月十日

 子ども・子育て新システムを導入せず保育・幼児教育・子育て支援・学童保育施策の拡充を求めることに関する請願(井上信治君紹介)(第五六号)

 同(北村誠吾君紹介)(第三一九号)

 同(井上信治君紹介)(第五一二号)

 同(石川知裕君紹介)(第五一三号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第五一四号)

 同(中島隆利君紹介)(第五一五号)

 同(服部良一君紹介)(第五一六号)

 同(吉井英勝君紹介)(第五一七号)

 同(岩屋毅君紹介)(第五三八号)

 同(北村誠吾君紹介)(第五六六号)

 同(吉泉秀男君紹介)(第五六七号)

 同(秋葉賢也君紹介)(第六〇六号)

 同(穀田恵二君紹介)(第六〇七号)

 同(小泉龍司君紹介)(第七一三号)

 同(塩崎恭久君紹介)(第八〇九号)

 同(志位和夫君紹介)(第九一三号)

 同(笠井亮君紹介)(第九四一号)

 子ども・子育て新システム反対に関する請願(佐藤勉君紹介)(第四二五号)

 同(茂木敏充君紹介)(第四二六号)

同月十一日

 国民生活を破壊する社会保障と税の一体改革と共通番号制の中止に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一号)

 同(笠井亮君紹介)(第二号)

 同(穀田恵二君紹介)(第三号)

 同(笠井亮君紹介)(第三一号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一五二号)

 同(志位和夫君紹介)(第一五三号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一五四号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一六一号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第一八五号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第八〇六号)

 同(笠井亮君紹介)(第八〇七号)

 同(穀田恵二君紹介)(第八〇八号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第八六〇号)

 同(志位和夫君紹介)(第九一一号)

 同(笠井亮君紹介)(第九四〇号)

 同(志位和夫君紹介)(第九五八号)

 同(阿部知子君紹介)(第一〇二一号)

 社会保障・税一体改革の撤回に関する請願(吉井英勝君紹介)(第二三四号)

 同(宮本岳志君紹介)(第三五九号)

 同(吉井英勝君紹介)(第五三九号)

 国民生活を破壊する社会保障と税の一体改革の中止に関する請願(穀田恵二君紹介)(第二八四号)

 社会保障・税一体改革の撤回等に関する請願(服部良一君紹介)(第六二七号)

は社会保障と税の一体改革に関する特別委員会に付託替えされた。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 死因究明推進法案(下村博文君外五名提出、第百七十四回国会衆法第三〇号)の撤回許可に関する件

 内閣の重要政策に関する件

 警察に関する件

 死因究明等の推進に関する法律案起草の件

 警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律案起草の件


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     ――――◇―――――

荒井委員長 これより会議を開きます。

 この際、お諮りいたします。

 第百七十四回国会、下村博文君外五名提出、死因究明推進法案につきまして、提出者全員から撤回の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

荒井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

荒井委員長 内閣の重要政策に関する件及び警察に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣参事官田中勝也君、警察庁刑事局長舟本馨君、文部科学省高等教育局長板東久美子君、厚生労働省大臣官房審議官篠田幸昌君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

荒井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

荒井委員長 死因究明等の推進に関する法律案起草の件及び警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律案起草の件について議事を進めます。

 死因究明等の推進に関する法律案起草の件につきましては、細川律夫君外二名から、民主党・無所属クラブ、自由民主党・無所属の会及び公明党の共同提案により、お手元に配付いたしておりますとおりの死因究明等の推進に関する法律案の起草案を成案とし、本委員会提出の法律案として決定すべしとの動議が、また、警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律案起草の件につきましては、細川律夫君外二名から、民主党・無所属クラブ、自由民主党・無所属の会及び公明党の共同提案により、お手元に配付いたしておりますとおりの警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律案の起草案を成案とし、本委員会提出の法律案として決定すべしとの動議が、それぞれ提出されております。

 提出者から順次趣旨の説明を求めます。下村博文君。

下村委員 おはようございます。自民党の下村博文でございます。

 委員長初め理事の皆様方には、本日、御配慮いただきましたことを、冒頭、感謝申し上げたいと思います。

 死因究明等の推進に関する法律案の起草案につきまして、民主党・無所属クラブ、自由民主党・無所属の会及び公明党の提出者を代表して、その趣旨及び概要を御説明申し上げます。

 本案は、我が国において死因究明及び身元確認の実施に係る体制の充実強化が喫緊の課題となっていることに鑑み、死因究明等の推進に関する施策についてそのあり方を横断的かつ包括的に検討し、及びその実施を推進するため、死因究明等の推進について、基本理念、国及び地方公共団体の責務並びに施策の基本となる事項を定めるとともに、必要な体制を整備することにより、死因究明等を総合的かつ計画的に推進しようとするものであり、起草案の内容は、以下のとおりでございます。

 第一に、基本理念として、死因究明の推進及び身元確認の推進は、死因究明及び身元確認が生命の尊重と個人の尊厳の保持につながるものであるとの基本的認識のもとで行われるものとすること等を定めております。

 第二に、国は、基本理念にのっとり、死因究明等の推進に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有することなど、国及び地方公共団体の責務を明らかにしております。

 第三に、死因究明等の推進に関する基本方針として、死因究明を行う専門的機関の全国的な整備、法医学に係る教育及び研究の拠点の整備、死因究明等に係る業務に従事する人材の育成及び資質の向上等の施策が重点的に検討され、及び実施されるべきことを定めております。

 第四に、政府は、死因究明等の推進に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、基本方針に即し、必要な措置を定めた死因究明等推進計画を定めることとしております。

 第五に、内閣府に、特別の機関として死因究明等推進会議を置き、死因究明等推進計画の案の作成等の事務をつかさどることとしております。

 第六に、医療の提供に関連して死亡した者の死因究明のための制度については、その特殊性に鑑み、政府において別途検討するものとしております。

 第七に、この法律は、施行後二年間でその効力を失う時限法としております。

 以上が、本起草案の趣旨及び概要でございます。

 何とぞ速やかに御賛同いただきますようお願い申し上げます。

    ―――――――――――――

 死因究明等の推進に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

荒井委員長 次に、細川律夫君。

細川委員 皆さん、おはようございます。

 警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律案の起草案につきまして、民主党・無所属クラブ、自由民主党・無所属の会及び公明党の提案者を代表して、その趣旨及び概要を御説明申し上げます。

 本案は、警察等が取り扱う死体について死因または身元を明らかにすることを通じて、死因が災害、事故、犯罪その他市民生活に危害を及ぼすものであることが明らかとなった場合にその被害の拡大及び再発の防止その他適切な措置の実施に寄与するとともに、遺族等の不安の緩和または解消及び公衆衛生の向上に資し、もって市民生活の安全と平穏を確保するため、当該死体について、調査、検査、解剖その他死因または身元を明らかにするための措置に関し必要な事項を定めるものとするものであり、起草案の内容は、次のとおりであります。

 第一に、警察が取り扱う死体であって、犯罪捜査の手続が行われるもの以外の死体を取扱死体と定義し、警察署長は、取扱死体について、その死因を明らかにするため体内の状況を調査する必要があると認めるときは、体液または尿を採取して行う薬毒物検査、死亡時画像診断等の検査ができることとしております。

 第二に、警察署長は、取扱死体について、法医学の専門家の意見を聞いた上で、死因を明らかにするため特に必要があると認めるときは、その必要性を遺族に説明した上で、その承諾を得ることなく、解剖を実施することができることとしております。この場合、警察署長は、一定の基準に該当すると都道府県公安委員会が認めた法人または機関に、解剖の実施を委託できることとしております。

 第三に、警察署長は、取扱死体の身元を明らかにするため必要な措置として、血液、歯牙、骨等の死体の組織の一部の採取や、体内に植え込まれている医療機器を摘出するための切開ができることとしております。

 第四に、警察署長は、一連の措置の結果明らかになった死因が、その後同種の被害を発生させるおそれのあるものである場合において、必要があると認めるときは、その旨を関係行政機関に通報するものとしております。

 なお、警察のこれらの権限については、海上保安庁にも同様に付与することとしております。

 以上が、本起草案の趣旨及び概要であります。

 何とぞ速やかに御賛同いただきますようお願い申し上げます。

 以上であります。

    ―――――――――――――

 警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

荒井委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 両件について発言を求められておりますので、順次これを許します。松岡広隆君。

松岡委員 おはようございます。民主党の松岡広隆でございます。

 質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 我が国は犯罪が少ない安全な国であるということは、世界からも認識されております。これは、世界に誇る交番制度を維持する警察行政の日々の御苦労があってのことだと思っております。

 私は、この死因究明のプロジェクトチームに参加をさせていただいて、また、同時期に自殺対策のプロジェクトチームにも参加させていただくことによって、大変勉強になり、また、解決をしなければならない点が明確になったように思います。

 さて、日本は、皆様御存じのとおり、十四年連続で年間自殺者数が三万人を超えるという大変厳しい現実を抱えております。自殺は、社会構造上の溝に落ち込んだ人が追い込まれる末の死であるということを知り、自殺対策は、また自殺予防は、喫緊の重大な政策課題だと考えるようになりました。

 そこで、死因調査の一環として自殺に至った経過等を追求するためには極めて重要だと思うのですけれども、死因・身元調査法、調査、検査、解剖などの対象には自殺も当然含まれることだと考えますが、細川先生、法律の解釈を、お考えをお答えいただけたらと思います。

細川委員 委員がおっしゃるように、自殺そのものは三万人以上が十数年続いているというようなことで、これに対してのいろいろな対策というのは大変大事かというふうに思っております。また、犯罪を見逃す、そういうことで、自殺そのものについての調査や検査あるいは解剖ということもまた当然必要だというふうにも思っております。

 そこで、今御質問の、本件の法律の調査あるいは検査、解剖の対象ということにつきましては、これは当然、自殺も含まれるということでございます。自殺については当然この法律の対象となるということで、御答弁とさせていただきます。

松岡委員 ありがとうございます。

 では、法律案に関して質問をさせていただきます。

 警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律案について質問をさせていただきます。

 司法解剖及び行政解剖の合計から見られる数字が、全国平均一一%、最高の神奈川県で三六・二%、最低の広島県に至っては一・八%とのことですが、この点、法律案を提案されたお立場としてどのようなお考えをお持ちでしょうか。また、あるべき姿というものもお考えいただけたらと思います。

細川委員 警察が取り扱う全ての死体につきまして死因を究明していく、あるいは身元を調査していく、これは警察が取り扱う全ての死体についてそのようにやっていかなければならない、これが理想であります。

 警察が取り扱います全ての死体につきまして、まず死因及び身元が明らかにされて、市民生活に危害を及ぼすものである場合には被害の拡大及び再発の防止のための措置がとられ、遺族の不安の緩和等が図られる、そして二番目には、そのために解剖などの死因または身元を明らかにするための措置が十分にとられること、三番目には、さらに言えば、それを支える制度や行政の仕組み、人材の予算などが十分に手当てをされるというようなことが理想的でございます。

 先ほど委員から御質問がありましたように、そういうことからいたしますと、日本の解剖数というのは大変少ないわけでございます。例えば、平成二十三年におきます警察が取り扱った死体は十七万三千七百三十五体でありますけれども、解剖が行われていましたのは一一%の一万九千百十七体にしかすぎません。解剖率でいきますと、海外と比べますと、英国では四六%、ドイツは一九%、スウェーデンに至っては八九%など、これらに比べますとかなり低いものでございます。

 そのほか、警察におきまして取り扱う死体に対する死因の調査の多くは体表から、表面からの観察のみにとどまっていること、それから警察の検視体制が十分でない、さらには死体を検案する医師が必ずしも専門家でないということなど、そういう現状で、今現在の死因または身元を明らかにするための措置というのはいろいろな面で問題点があります。

 そういう意味で、これまでに、平成十年以降、四十五件の犯罪の見逃しが明らかになっておりまして、これだけではなくてまだまだたくさんあるのではないかというようなことも予測されるということで、とりわけ保険金殺人とか、そういうことも危惧をされております。

 したがって、この法律案を成立させていただきまして、死因の究明、そして身元の判明、これらをきちっと実現していくということが大変重要だというふうに考えております。

松岡委員 ありがとうございます。

 解剖率を上げるということ、そして地域差をなくすということ、これが非常に大切な点だと私も感じております。

 続いて、遺族の承諾なしに解剖するという点でございますけれども、この法律における解剖は、本法の目的が、災害や事故の防止、犯罪死の見逃し防止、また公衆衛生の向上に資することが明記をされておりますけれども、この点、遺族の承諾なしに解剖することについて違和感を持たれることはないでしょうか。死因究明に不可欠な解剖の必要性や公共性と、それに反して制約される死体に対する遺族の尊重感情やまたは宗教感情が、憲法上の問題になるのではないでしょうか。

 この点に関して、いかがでございますでしょうか。提案者の細川先生、御答弁をお願いいたします。

細川委員 今回の法律案で規定をいたしておりますのは、解剖というものは行政調査でございます。一般に、行政調査につきましては、調査に応じる義務を課するかどうか、こういう点。そしてまた、遺族に対しての承諾を必要としないという、そのためには、一つは、この調査そのものがどういう必要性あるいは公益性があるかということ、そのことと、一方で、調査対象者の利益というもの、これを比較考量して決せられるべきだというふうに考えております。

 本件の解剖について見ますと、解剖の必要性、公益性の点につきましては、死因を明らかにすることによりまして、その死因が災害、事故、犯罪等によるものである場合には再発防止、被害拡大防止のための措置を講ずることにつながりまして、遺族などの不安の緩和やあるいはそれを解消すること、あるいは医学的な知見を集積いたしまして公衆衛生にも寄与するというようなことから、高い必要性、公益性を有するものと言えます。

 また、先ほども申し上げましたけれども、平成十年以降に発覚した犯罪見逃しの事件のうち三十六件、四十五件のうち三十六件は親族や親しい知人等が加害者である、こういうような実態もございます。犯罪防止、犯罪の見逃しを防止するという公益的な目的を達成するためには、遺族の承諾を得ずとも解剖を実施できるようにする必要性が非常に高いというふうに思っております。

 調査対象者の不利益の点につきましては、これは、死体の解剖によりまして一体どういうような不利益があるのか、こういうことになるわけでありますけれども、現在の社会においても、死体に対する遺族の尊重感情というものは、また一方で保護をしなければならないだろうというふうに言われております。

 そういう分析をした、そういう比較考量をしたところで、解剖の必要性、公益性と、それから調査対象者や遺族の不利益を比較してみますと、これはやはり公益性、必要性というものが優先されるという判断が成り立つものだというふうに考えております。

 さらにつけ加えて申し上げれば、解剖につきましては、法医学に関する専門的な知識、経験を有する者の意見をまず聞かなければいけない、そして、特に必要があると認めるときに限定して解剖をするというようなことになっておりますので、承諾ということがなくても解剖ができるということで、憲法上のような問題はないというふうに考えております。

松岡委員 ありがとうございます。

 続いて、死因究明等の推進に関する法律案についてお聞きをさせていただきたいと思います。

 人材育成についてでございますけれども、現在のところ、解剖実施数が少ない原因の一つについて、解剖医の不足が挙げられます。実際に大学で解剖医になりたいと希望する学生が少ない原因には、大学に解剖医を育成する授業や講座、研究室等の圧倒的に少ないことがあると思うのですけれども、実際に人材を育成するための方策についてどのようにお考えか、教育現場の御担当者に御回答をお願いいたします。

板東政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま先生御指摘のように、実際、解剖医、法医学などを志す学生というのが非常に少ないという状況がございまして、いかに学生に魅力ある人材育成プログラムを開発していくのか、構築をしていくのかということが非常に重要になっているわけでございます。

 この点につきまして、文部科学省といたしましては、法医学などを担う人材育成の拠点となるような取り組みを行う大学を支援しておりまして、例えば東北大学、長崎大学などについて、こういったプログラム開発、人材育成の事業をしているところでございます。

 また、法医だけではございませんけれども、基礎研究医養成プログラムの構築を行う大学のすぐれた取り組みを支援しようということで、今年度予算におきましても経費を計上しているところでございます。これについては、大学から関連のプログラムについても今申請が上がっているというふうにお聞きをしております。

 それから、基礎的な教育の中身自体にもこの関連の教育を盛り込むということは重要であるというふうに考えておりまして、医学教育の指針である医学教育モデル・コア・カリキュラムというのがございますけれども、昨年の三月に改訂をいたしまして、法医学などに関します学習到達目標を盛り込んだところでございます。

 文部科学省といたしましては、今後とも引き続きまして、こういった人材育成、資質の向上ということに取り組んでまいりたいというふうに思っております。

松岡委員 時間になりましたのであれでございますけれども、最後に下村先生のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

下村委員 ありがとうございます。

 この人材育成について、今文部科学省から答弁がございましたが、基本方針では、それ以外に、警察等の職員、そして医師、歯科医師等の人材の育成、資質の向上も明示しておりますので、警察庁、厚生労働省も含め、政府一体となった組織対応が必要であるというふうに考えております。

 死因究明等推進計画の作成、施策の実施等の各段階において、きょう委員長提案としてお願いさせていただきました。ぜひ与野党を超えて立法府の責任で政府に働きかけていくように、しっかり我々も対応していきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。

松岡委員 ありがとうございました。

荒井委員長 次に、竹本直一君。

竹本委員 自民党の竹本直一でございます。

 きょうは、死因究明法、それから死体の死因または身元調査に関する法律、この二つを議題としております。ともに目的を同じくしている法律でございますので、両方を頭に置きながら御質問させていただきたい、このように思います。

 我々一般の国民の意識としては、死体の解剖云々ということについて一番やはりこれはどうなったのかなと思わせたのは、いろいろな事件がきっかけであります。

 一つは、平成十九年十月に、愛知県警の管轄内ですけれども、時太山、力士が死亡いたしました。練習中に、相撲をとっているときに亡くなったということですが、後で調査するとどうも犯罪の疑いがある、こういうこと。それから平成二十二年の十一月では、神奈川県警でやはり事件がありました。これは、現場に居合わせた関係者の供述を警察の方がうのみにして事件性がないと判断したんですけれども、後でよく調べると犯罪性があった、こういうことであります。また、有名な木嶋被告の件ですけれども、二十二年十月には、これは結局練炭で毒殺したのではないかと言われておりますけれども、当初は犯罪性を認めていなかった、ところがよく調べるとそうでもなかった。こういう事件がいっぱいあります。

 そうしますと、何でもっとしっかり捜査しないのかという国民の声が上がってきたわけですね。ところが、他方、どうも解剖、解剖と解剖ばかりやるのはどうか、先ほどの質問にもありましたけれども、そういう国民感情も確かにあるんだろうと思いますが、事犯罪の事実を、犯罪があるかどうかの事実を確認するために必要な解剖をやはり当然のことながらきっちりやってもらう必要がある、このように考えるわけであります。

 そこで、警察における取扱死体総数が、平成十四年では十二万五千ぐらいだったのが、平成二十三年では十七万三千体にふえてきている。ところが、これが国際的な標準に比べてどういう状況かとちょっと調べてみますと、解剖率、アメリカが一二・五%、イギリスが四五・八%、スウェーデンが八九・一%、オーストラリアが五三・五%、我が国は一一・二%、アメリカと大体同じような数字なんですが、なぜこのように国によって極端な差があるのか、この原因についてまず聞いてみたいと思います。どなたからでも結構でございます。

舟本政府参考人 お答えいたします。

 私どもで海外調査をした結果の状況の認識でございますけれども、一つは、そうした高い諸外国につきましては死因究明の専門機関があるということ、また、人口比での解剖医の体制が充実しているという我が国との違いがあるというふうに考えております。

竹本委員 ちょっと簡単過ぎるんですけれども。

 おたくでやった、犯罪死の見逃し防止に資する死因究明制度の在り方に関する研究会の報告書ですね。これによると、どうも外国においてはいろいろな死因究明についての制度の違いがあるということを最後に書いています。

 コロナー制度というのが一番有名なようですが、そういう制度をつくっているところもあれば、これは死因究明の権限を一人の人が全部持っているような制度のようでありますけれども、あるいは、国によってはメディカルエグザミナー制度というのを使っているところもある、このように書いていますが、ちょっとその辺のことを詳しく専門家の立場から説明してください。何が違うのか、なぜこういう違いがあるのか。

荒井委員長 もう少し丁寧に答えてください。

舟本政府参考人 お答えいたします。

 今、議員御指摘のありましたコロナー制度でございますけれども、これは、警察への調査指示とかあるいは解剖決定、さまざまな権限を行使して死に至る事実を解明する行政官としての機能と、あるいは、公判に相当する審問を開催するなどして、解明された事実を法的に認定する裁判官としての機能の二つ、こうしたものを備えている、こういう機能でございます。

 それから、メディカルエグザミナー制度というものが導入されているアメリカでございますけれども、これにつきましては、アメリカで始まったわけでありますけれども、法医、病理医としての専門の研修を受けた専門医であるメディカルエグザミナーが、警察から独立した死因究明機関の長等として、解剖を含めた死体に対する調査権を有し、その権限及び専門的知見に基づいて、死因究明の責任者となっている制度でございます。

竹本委員 わかりました。わかりましたが、いずれにしろ、アメリカは日本とよく似ているけれども、ほかの国は、特に北欧の国は非常に高い数値になっている。我が国はこういうことで死体解剖の件数をふやそうとしているんだと思いますが、どの程度までいけばいいと考えておられるのか。概数のめどというか、そういうものをお聞かせください。

舟本政府参考人 特に、犯罪死の見逃しの防止という観点からは、やはりできる限りの解剖率の向上ということを目指すべきであることは当然でございます。

 現状は一一%ということでございますけれども、諸外国の例を見ますと、まず五〇%というものはやはり目標としては目指すべきだと思いますけれども、いろいろな、解剖医の数でございますとか諸外国との制度の違い等ございますので、当面は、一一%から、やはり二〇%というものをこの数年で何とか向上させたいということを目標としてございます。

竹本委員 はい、わかりました。

 それでは、本法案についての質問をしたいと思います。

 この法律案は、内閣府に死因究明等推進会議を設置して議論しまして、最終的には政府として死因究明等推進計画を閣議決定、こうなっておりますが、こういう法律をなぜ必要とするのか、その必要とする理由についてお述べいただきたいと思います。

下村委員 ありがとうございます。

 死因究明は最後の医療であり、死者が生存していた最後の状況を明らかにすること自体が生命の尊厳と個人の尊厳の保持につながるものであるとともに、犯罪や事故の見落としを防ぎ、公衆衛生の向上にも資する公益的な目的、意義を持つものであります。

 また、死体の身元を明らかにすることは、その遺族等に死亡の事実を伝え、葬儀が行われるための前提となり、また、その死体に遺族等がないことが明らかになれば、無縁仏として弔われることにもなります。このように、身元確認も生命の尊重と個人の尊厳の保持につながるものでございます。

 本法案は、死因究明及び身元確認について、実施体制の充実、人材の育成等が喫緊の課題となっていることから、これらの事項を死因究明及び身元確認の推進に関して重点的に検討され、実施されるべき施策を基本方針として定めております。

 また、内閣府に死因究明等推進会議を置いて横断的かつ包括的に死因究明等を推進し、基本方針に即して、政府において、必要な法制上、財政上の措置を定めた死因究明等推進計画を定めることといたしまして、まずはプログラム法をつくり、それぞれの関係省庁も多岐にわたっております、それぞれの中で一層死因究明がしやすい、促進するための法律をまずつくることによって、より究明、解剖率も高めていこうという趣旨で本法律案を提出させていただいているところでございます。

竹本委員 もう一点お聞きします。

 この法案の第六条第一項に、基本方針というのを掲げております。その中で、死因究明を行う専門的な機関の全国的な整備ということをうたっているんですけれども、これはやはり関係省庁の協力が不可欠じゃないかと思いますが、これについてお答えください。

下村委員 おっしゃるとおりでございまして、関係省庁が相当多岐にわたっております。現在において、死因究明を行う専門的な機関が整備されておりません。この機関が整備された場合、そこで死因究明に当たる人材の育成、資質の向上、確保も急務であるということから、機関の整備、そして人材確保の両面で、関係省庁の協力、これはもう不可欠であるというふうに考えられると思います。

竹本委員 もう一点ですが、第二条の基本理念に照らしますと、亡くなられる方全てについて原因究明のあり方を検討していくことが重要と考えられるわけですけれども、第十六条の方において、「医療の提供に関連して死亡した者の死因究明のための制度については、その特殊性に鑑み、政府において別途検討する」。わざわざ「別途検討する」と書いた理由は何なのか、どういうことが背景にあるのかを御説明ください。

下村委員 医療機関における診療行為というのは、人体に対する侵襲、手術等ですね、を前提として一定の危険性が伴うものでございまして、場合によっては死亡等の不幸な帰結につながる場合もあり得るわけでございます。また、診療行為における死因究明は、専門的な証拠や資料に基づき公正に行われる必要があり、臨床、解剖等に関する高度な専門性もさらに求められるところでございます。

 本法は、このような特殊性に鑑みまして、医療関連死の死因究明のための制度、これは、災害、事故、犯罪等で死亡する場合の死因究明のあり方と同列に検討することは適切ではないということで、別途検討することといたしました。

 この別途検討する場として、例えば、現在厚生労働省において、医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する検討部会、これが開催されております。本法に基づく死因究明等推進会議とは別に、このような会議において、医療の提供に関連して死亡した者について取り扱いが検討されるものと考えているところでございます。

竹本委員 警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律に関してちょっとお聞きします。

 解剖そのものは、刑訴法二百二十五条のいわゆる司法解剖と、それから、死体解剖法第八条に基づくいわゆる行政解剖、承諾解剖も入れて行政解剖と言っておるようでありますけれども、この司法解剖、行政解剖以上に警察署長の判断で解剖できるようにしよう、こういうことでありますが、家族の承諾を得なくても解剖できるようにする、そうすると、警察署長は必ずしも医学の専門家ではないですから、やはり専門家の意見を聞く必要があると思います。

 そういう意味において、警察がこの法律を実際に施行していく場合に、医者とか歯科医師のどのような役割を期待しているのか、そういった考え方について御説明ください。

舟本政府参考人 医師につきましては、警察が取り扱う際に必要に応じて立ち会ってもらい、死因について医学的な見地からアドバイスをしていただくほか、検査の実施、また解剖について医師にお願いすることとなるなど、死体の死因または身元が明らかになる場面におきまして、必要不可欠な存在でございます。

 また、歯科医師の方につきましては、法案の四条三項に歯牙の調査に関する規定が盛り込まれておりますように、所持品などから身元を確認することができない場合には、死体の歯科所見により身元を確認することができる場合もございますことから、特に身元確認の場合におきまして、歯科医師が果たす役割は非常に大きいものと認識しております。

 法案成立後、こうした検査、また解剖の要否等につきまして専門家である医師、また身元確認につきまして歯科医師の方々とさらに連携し、御指導いただきながら、犯罪死の見逃し防止に取り組んでまいる所存でございます。

竹本委員 わかりました。

 時間が来ましたのでこの質問で終わりますが、法案の第二条のところで、礼意の保持及び遺族への配慮ということが書いてあります。死体の扱いについて、礼意を失わないように注意するということが書いてありますが、我々は東北の大震災のときにこれは非常に国会でも議論した話でありますが、先ほども話が出ていましたように、宗教が違う場合もある、どういう宗教の方かわからない、そういった場合、この礼意を失しないようにするにはどういうふうにするのか。

 どういう信者であるとか、そういうことがわかれば余り問題ないのかもしれませんけれども、礼意を失しないやり方ということについてはどういうことを考えておられるのか、お答えいただきたいと思います。

舟本政府参考人 まず御遺体につきましては、とにかく生命の最後の場面にあったということでございまして、そうしたものをまず一線の警察職員に周知徹底することによりまして、死体を取り扱う際に対しまして、御遺体に対して本当に畏敬の念を持って当たるということ、これは当然、指導を徹底してまいります。

 それから、そうしたことで身元がわかり、また、そうしたいろいろな宗派等も判明した場合におきまして、そうしたことに基づきまして、御遺族の方々に対しましても適切な対応をするということで、いずれにしましても、御遺体の取り扱いにつきましては、そうした警察職員の姿勢、態度、またいろいろな、死体を収容するひつぎ等々につきましても、あるいはお供えするお花等につきましても、きめ細かく対応してまいりたいと思っております。

竹本委員 万全の注意でやっていただきたいと思います。

 終わります。

荒井委員長 次に、高木美智代さん。

高木(美)委員 公明党の高木美智代でございます。

 本日は、この死因究明等の推進に関する法律案並びに警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律案、三党の協議によりまして成案を得、そしてまた本日、このような形で審議されておりますことに、私も心から安堵している一人でございます。私も終盤でかかわらせていただきまして、感謝申し上げます。

 まず、死因究明等の推進に関する法律案でございますが、平成十八年二月に、パロマ工業製の湯沸かし器による一酸化炭素中毒死であったということが発覚をいたしました。また、平成十九年には大相撲時津風部屋の力士暴行死事件、また、最近の首都圏の連続不審死事件など、遺族の要請による再調査がなければ病死などとして扱われていたというわけで、初めから正確に死因が特定されていれば、こうした事故死については防げたのではないかと言われております。また、警察庁が分析した、平成十年以降に発覚した犯罪死の見逃し等事案四十三件につきましても、解剖を実施していれば犯罪死を見逃すことがなかったのではないかと考えられております。

 公明党も、死因究明は最後の医療行為であり、命の尊厳を守る最後のとりでであるとの視点に立ちまして、マニフェストにも掲げ、また、死因究明制度の抜本的な改革に大口議員を中心に取り組んでまいりました。

 まず、死因究明の推進に取り組んでこられた立場から、二本の法律についての認識につきまして、大口議員にお伺いいたします。

大口委員 お答えをさせていただきたいと思います。

 今、高木委員からも御指摘ありましたように、平成十九年に時津風部屋の事件がありました。あれは、解剖をして、犯罪という形になったわけであります。また、パロマ事件でも、もっと早くこの事故の原因、死因が究明されていれば、繰り返されることはなかった。

 そういう反省に立ちまして、平成十九年から二十年にかけて、衆議院の法務委員会で、当時、下村委員長でございましたが、勉強会ですとか、あるいは委員の派遣等をさせていただきました。また、自公でもって議連をつくらせていただきまして、異状死死因究明制度の確立を目指す議連、これを設置して、専門家からいろいろヒアリングをさせていただきました。また、民主党さんにおきましても、法案を出されたり、今、中井先生いらっしゃいますけれども、あるいは細川先生、これを一緒にやっていこうじゃないか、こういうことであったわけでございます。

 今回、私ども、平成二十二年六月に出させていただきました死因究明推進法案に身元確認も入れて、委員長提案、それと、政府・与党から出されていた警察の取り扱いの死体についての死因究明と身元確認についての法案、これが出されたということでございまして、生命の尊重そしてまた個人の尊厳保持のために、この二法案を精査していただきまして推進をしてまいりたい、こういうふうに思っております。

 以上です。

高木(美)委員 それでは、この法律案でございますが、第六条第一項には、重点的に検討され、及び実施されるべき施策を掲げております。

 まず、第四号に規定されています警察等における死因究明等の実施体制の充実につきまして、現状の問題点と今後の対応について警察庁の認識を伺いたいと思います。

舟本政府参考人 お答えいたします。

 府県警では、警察が取り扱うこととなりました死体に対しまして実施する検視等の専門家として検視官というものを配置してございますが、この検視官の人数は、現在、限りがございまして、必ずしも十分にこの検視官が現場に臨場して死体の検視等を実施するという状況にはなっていないということでございます。

 検視官の体制強化につきましては、平成二十年度は全国で百六十名でございましたが、その後、私ども増員を図っておりまして、平成二十四年度には三百四人となってございます。

 また、あわせまして、検視官が現場に臨場できない場合には、現場で撮影された動画を検視官がリアルタイムで確認をし、事案に即した指導ができるような検視支援装置などの装備資機材の整備も進めているところでございます。

 こうした検視官の体制強化、資機材の整備、これは今後ともしっかりと取り組んでいく必要があると考えております。

高木(美)委員 続きまして、第三号に規定されています人材の育成及び資質の向上のための施策につきまして、現状の問題点と今後の対応への認識を伺いたいと思います。

 厚労省、文科省、警察庁、恐れ入りますが、一分程度でお願いをしたいと思います。

篠田政府参考人 御説明を申し上げます。

 私ども厚生労働省といたしましても、死因究明につきましては、公衆衛生の向上という観点から、非常に大事だというふうに考えております。

 一方で、行政解剖を行う監察医が置かれていない地域というのもございます。そういった地域におきましては、法医学教室の方で解剖していただくとか、あるいは、警察医とか一般の臨床医の方々が警察からの依頼を受けて検案を行っているという状況にございます。こういった場合ですと、一定の知識は当然お持ちでございますけれども、法医学の専門的な知識とかあるいは経験とかが十分とは言えないというようなことが懸念をされるということだろうと思います。

 このために、私どもといたしましても、警察医や一般臨床医の方々の死体検案能力の向上を図らなければいけないということで、平成十七年度から死体検案講習会というのを開催させていただいておりまして、特に本年度、二十四年度につきましては、昨年から予算を倍増させるということで対応させていただいてきているところでございます。

 今回の法案を踏まえまして、今後とも、公衆衛生の向上を図るという観点から、人材の育成あるいは資質の向上ということにつきましては、私どもとしても、これに取り組ませていただきたいというふうに考えているところでございます。

板東政府参考人 まず、現状の問題点ということでございますけれども、法医あるいは法医学を志す学生というのは非常に少なくなっておりまして、二十一年、二十二年の大学院の法医学講座に所属する学生数を見ましても、五十名前後というような状況でございます。

 学生が法医に進むようなインセンティブを与えていくような魅力あるプログラムの開発というのが重要であるというふうに考えておりまして、法医学を担う人材育成の拠点となるような大学に対する支援を行っているところでございます。先ほども例を挙げさせていただきましたけれども、東北大学や長崎大学などでそういった取り組みをしております。

 また、国公私を通じましての基礎研究医養成プログラム、これは法医を含むものでございますけれども、この構築を行う大学につきましてのすぐれた取り組みの支援も今年度から実施をするということでございます。

 また、基礎教育の中におきましても、必ずこういった一定の法医学に関する学習到達目標をきちんと達成していただくということで、モデル・コア・カリキュラムにも昨年盛り込ませていただいたということで、今後とも充実を図っていきたいというふうに考えているところでございます。

舟本政府参考人 お答えいたします。

 先ほど申し上げました検視の専門家である検視官につきましては、現在、警察大学校におきまして専門の教育課程を設けてございますけれども、この中身につきまして、今後ともさらに充実を図っていきたいと思っております。

 また、第一線署におきまして検視業務などに従事する警察官につきましては、現在、検視官が巡回指導をやりましたりとか、あるいは警察学校での講習をやっておりますけれども、これにつきましても、頻度を密にし、また中身をさらに濃くしてまいりたいというふうに考えてございます。

高木(美)委員 以上の答弁を受けて、動議提出者のお考えを伺いたいと思います。いかがでしょうか。

大口委員 今、文科省、厚労省あるいは警察庁から、それぞれの取り組みがありました。我々も委員会でも質問させていただいたり、そういう中で少しずつ改善はされていると思います。しかし、まだまだ、政府全体を挙げてこれに取り組んでいこう、人材育成、教育等に取り組んでいこう、こういうことにはなっていない。そういう点で、死因究明推進法というものを今回出させていただきました。

 とにかく、二年間という期間を区切って、そして死因究明等推進会議で、官房長官がトップになって、政府を挙げて死因究明等推進計画を策定して、閣議決定をして、それで進めていくということを本格的にしていかなければならない、こういうふうに考えております。

高木(美)委員 全くそのとおりかと思います。

 特に、この法律は二年間の限時法という形になっております。果たして、この二年間で急ピッチでそのレールづくりをする、そしてまた、二年たったその先にはどのような体制づくりになっていくのか。恐らく基本法であるとか、また、さらに強固な法整備が必要なのではないかと考えております。

 いずれにいたしましても、今、人材の育成、資質の向上という点から、どうしても、予算と人材の確保がなければこの法案というのは絵に描いた餅になってしまうかと思います。今後、与党として、実効性を持たせるために当然政府に強力に働きかけていただかなければなりませんし、本来であれば、ここのところは官房長官であるとかそういう方の答弁を求めるところでございますけれども、きょうはその出席というわけにはまいらないという状況でございますので、いずれにいたしましても、これは細川議員にお伺いをしたいと思います。

 あわせまして、それでは、それぞれの政策の目標につきまして、どの程度の数値目標を掲げていくのか、また、どの程度の数値目標を進めていけばこの立法の趣旨が達成された、そのようにお考えなのか、伺いたいと思います。

細川委員 高木委員がおっしゃるとおり、予算と人材の確保が何といっても肝要でありまして、幾ら法案が成立をいたしましても、解剖する法医が足りなくては、これは実効性が少なくなってまいります。

 したがって、推進法案では、政府が責任を持って推進計画を立てるということになっておりまして、その計画立案の過程で必要な予算確保にも取り組むということになるかと思いますけれども、この死因・身元調査法、これは主に警察庁及び都道府県警察で死因調査のための予算を措置するということになろうかと思いますので、先ほども答弁がありましたような、警察庁の予算措置はしっかりやらせるということが必要であります。

 また、人材の育成等につきましては、先ほど文科省あるいは厚労省の方からも御答弁がありましたような、しっかりやっていくということでありますから、当然予算の方もまた確保していただかなきゃなりませんし、確保させるためにしっかり与党として努力をしていくということもお約束したいと思いますが、この法案につきましては議員立法でございます。国会の意思として法案が成立をいたしましたならば、これは当然、与党だけではなくて全党で、ひとつ予算確保のためにしっかりみんなで頑張っていきたいというふうに思っております。

 それから、どれくらい進めば大体目標が達成されるのかというような御質問でございました。

 これは死因究明推進法とも相まって、先ほどからこの議論の中で出ておりますように、日本の解剖率というのは大変少ないわけでありまして、これをやはり外国並みに持っていくということが大事かと思いますけれども、なかなかそれまでにはいろいろな過程があろうかというふうに思いますので、推進法のところでの、しっかりした法律をつくり、そしてまた計画を実行していくというようなことと相まって、目標を達成できるように、海外並みにできるようにしていきたいというふうに思います。

 当面の目標というのは、先ほど警察庁の方からお話がありましたように、解剖率二〇%を目標とするということで、それくらいまでいけば、ある程度達成がしていけたというふうに言えるのではないかというふうに思っております。

高木(美)委員 その当面とおっしゃるのが二年間程度なのか、今一一%ですのでもう少し先になるのか。私は、やはり二年程度でそこまでという目標で、人材の確保とあわせまして、まず進めてみるべきと考えます。

 いずれにいたしましても、これは国民の生命を守るための一つの基盤整備という、まさに見えないところですけれども、実に重要なところでございまして、これこそ政治として、与野党を超えて取り組むべきと考えます。またこれからもしっかりと私も携わらせていただきますことを申し上げまして、終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

荒井委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 死因究明関連二法案について、最初に動議提出者にお尋ねをいたします。

 警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律案ですけれども、この概要のペーパーを見ましても、背景として、「時津風部屋力士傷害致死事件の発生 警察が病死と判断した後、遺族の要望により行政解剖を実施した結果、犯罪行為によるものを見逃していたことが明らかに。」ということが書かれているわけです。

 ただ、この法案が新設する解剖の制度の仕組みでは、遺族の要望による行政解剖の制度ということではなくて、遺族の承諾を得ることなく解剖を行う制度ということになっているわけで、この背景となっている事件と法案との関係がどういうふうに説明されるのかよくわからないんですが、その点をまずお尋ねします。

細川委員 今御指摘があった点でありますけれども、法案の背景といたしましては、事故や犯罪の見逃しの発覚を契機といたしました国民的な関心の高まりがあった。時津風部屋の力士の件につきましては、そういういろいろな事件の一例だということで挙げさせていただいております。

 この法案につきましては、警察等が取り扱う死体のうち犯罪によらないで死亡したと認められる死体について、現在、死体を傷つけて死因やあるいは身元を調査する根拠規定というものが必ずしも十分に整備をされていないことから、この整備をするものでございます。

 御指摘のようにこの法案では遺族の承諾がなくて解剖ができるということにしておりますが、これは、死因を明らかにすることによって、その死因が災害とかあるいは事故、犯罪などによって起こるものであるという場合に再発の防止あるいは被害が拡大するのを防止する、そういうための措置を講ずることにつながりまして、遺族などの不安の緩和とか解消、そしてまた医学的な知見を集積いたしまして公衆衛生にも寄与をするものだということで、高い必要性あるいは公益性を有するものだというふうに踏まえたものでございます。

 提案者といたしましては、法案に基づいて適切な調査、検査、解剖が実施されることによりまして、事故や犯罪の見逃しが減少するということを期待いたしているものでございます。

塩川委員 時津風部屋の事件が推進法案の背景として説明されるのはわかるわけですけれども、なぜこちらの方の、警察の死体の死因・身元の調査に関する法案の背景となっているかというのは、直接の御説明になっていないと今お聞きしました。

 それで、そもそも警察が犯罪死を見逃していたというところが問題であるわけで、そこで警察庁にお尋ねしますが、時津風部屋力士傷害致死事件について警察が当初誤って病死と判断した要因、原因は何なのか、同様の誤りを繰り返さない対策はどうしたのか、その点についてお答えください。

舟本政府参考人 お尋ねの事件につきましては、平成十九年六月、愛知県犬山市内の稽古場におきまして力士が稽古中に倒れ、病院に搬送され、死亡した事案であると承知をしております。

 愛知県警におきまして、所轄警察官による現場の実況見分、死体の見分、関係者の事情聴取、また医師によるCT検査等の結果を総合的に勘案し、その死因を病死と結局は判断した、見誤ったということであります。

 本事案は、亡くなられた力士の御両親からの相談を受け、行政解剖の結果、外傷性ショック死と判明し、七名を検挙する傷害致死事件として立件したものでございます。

 本事案を踏まえまして、警察庁では、検視官の増員と積極的な検視官の現場臨場によるきめ細かな検視、また関係者の事情聴取の徹底、また薬物検査キットなど装備資機材の整備、活用、また解剖の積極的な検討の対策につきまして実施をし、そうした犯罪性の有無につきまして慎重に見きわめるよう努めてまいったところでございます。

 今後、引き続き同様の措置を講ずる所存でございますところを、本日御審議いただいております新法に規定する検査、解剖等の新たな措置を効果的に活用し、犯罪死見逃しの絶無を期してまいる所存でございます。

塩川委員 警察が見誤った、警察が行うべき解剖を行わなかったことによって見逃されたもので、その反省なしには、新たな解剖の制度を設けても意味がないわけであります。

 重ねて警察庁にお尋ねしますが、警察庁の方で、犯罪死の見逃し防止に資する死因究明制度の在り方に関する研究会が提言を出されております。その中では、「平成十年以降に発覚した犯罪死の見逃し等事案四十三件についての警察庁の分析においても、「死因について誤った事案」を二十二件確認しており、その大半については、解剖を実施していれば犯罪死を見逃すことはなかったのではないか」というふうに指摘をしております。

 しかし、これは実際に表を見ますと、死因について誤った判断がなされたもの二十二件のうち八件というのは、薬物検査や保険金の照会が行われていれば犯罪死であることを見抜けたんではないのか、つまり、解剖する以前に行うべき捜査、薬物検査ですとか保険金照会が行われていれば犯罪死であることを見抜けたんじゃないかと思うんですが、この点はどうですか。

舟本政府参考人 委員御指摘のとおり、犯罪死の見逃し事案を防止するためには、解剖だけではなくて、いろいろな調査、あるいは、それからさらに犯罪があると思料した場合には捜査ということを徹底しなければならないことは当然でありまして、現在、こうした反省に立ちまして、警察庁としては、都道府県警察に対しまして、保険金照会を初めとしたもろもろの調査あるいは捜査の徹底を指示しているところでございます。

塩川委員 基本的な調査、捜査が行われていれば犯罪死を見抜けた事件でもあったわけで、警察の死因究明に関する能力そのものが問われているということも指摘をしなければなりません。

 次に、動議提出者に、この法案で規定されている検査や解剖の件について、その検査や解剖の結果について警察はどのような遺族への説明責任を果たすのかということについてお尋ねをしたいんですけれども、警察が行った検査や解剖に関する資料、データというのは、これは全て遺族の方に開示されるものなんでしょうか。

細川委員 お答えをいたします。

 本法の第十条に規定をいたしておりますが、これには、死因を明らかにするために必要な措置がとられた取扱死体について、その身元が明らかになったときは、すなわち本法に定める死因及び身元調査が終了した段階では、速やかに遺族等にその死因その他参考となるべき事項を説明し、死体を引き渡すべきことを規定いたしております。

 死因が明らかになった場合においては、遺族がその詳細を知りたいというのは当然のことだろうと思いますので、このような遺族の感情にできるだけ配慮いたしまして、警察における運用において遺族に適切な説明が行われるものだというふうに思います。

塩川委員 遺族の感情に配慮して適切な説明が行われるものと考えるということですけれども、このフローにもあるように、検査とか解剖、このデータというのはきちっと開示される、そういうような情報開示の規定というのはあるのか、それとも今後つくるのか、その点についてはいかがですか。

細川委員 それは、解剖の結果について開示というような直接的な規定はございませんけれども、先ほども御説明いたしましたように、十条では、死因及び身元の調査が終わった段階で速やかに遺族等に死因その他参考となるべき事項を説明しなければならない、こういうことになっておりますから、当然、遺族の皆さんがその結果を要求されれば、開示をするものであると思います。

塩川委員 情報開示の規定がないということなんですけれども、要するに、犯罪の場合で、あってはならないことですけれども、例えば警察がその犯罪に関与しているような場合であって、その警察が検査や解剖を担うといった場合に、その情報がきちっと遺族の方に開示をされることなしに本当の意味で遺族の尊厳というのが保障されるのか、権利利益が尊重されるのかという点だと思います。

 死因究明推進法案の二条にも、死者及びその遺族等の権利利益を踏まえて死因究明についての措置を行うことが必要だという趣旨のことが述べてありますけれども、そういう点でも、警察による検査や解剖の結果についての情報公開の規定を設ける、そういうお考えはありませんか。

細川委員 その点につきましては、今後、この死因究明推進法の方で、二年間という時限法で、理念や基本計画、あるいはそれに伴って実施をしていくというような、そういうことを検討していくということにもなっておりますので、その際に、いろいろと先生が今言われたことについても検討をしていくということになると思います。

塩川委員 しっかりとそういう仕組みをつくるということを求めたいと思います。

 最後に、法案に対する意見を申し述べます。

 死因究明等の推進に関する法律案については、諸外国と比較して解剖率が低いなど、貧弱な死因究明のための組織体制の強化を図ることが急務となっており、そのための総合計画の作成を政府に義務づけることでその改善が期待されるということで、賛成をいたします。

 次に、警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律案についてです。

 遺族の承諾なしに解剖を可能とするなど、警察に新たな権限を付与するものですが、犯罪死体及び変死体以外の死体の解剖には監察医による解剖制度もあり、その制度設計には議論があるところです。警察庁の研究会報告でも、遺族の承諾なしの解剖制度については、そのための専門機関として、警察庁と厚労省共管の法医学研究所を新たに設置することとしています。

 また、法案は、警察に調査、検査などの広い行政警察権限を独占的に付与している点や、遺族に対する情報開示、死因究明を行った結果や資料に対する遺族その他の利害関係人のアクセス権の問題についての論点も提示されており、必要な国民的議論が不足していると考えます。

 死因究明の総合的な施策整備を目指す死因究明等の推進に関する法律案では、死因究明を行う専門的機関の全国的整備を総合的、計画的に進める重点施策としていますが、これから総合的な計画を立てようとする中、議論が不足をしている警察の権限の整備だけを取り出して法制度化することは、全体的な計画をゆがめることにもなりかねません。

 死因究明のための解剖制度は、そのための人員体制が決定的に不足しており、増員強化が可能となるまでは、その限りあるマンパワーを効率的に活用することが求められておりますが、時津風部屋力士傷害致死事件のように、初動で警察自身が誤った判断を行い、みずから死因究明の道を閉ざす失敗をするなど、警察の死因究明に関する能力そのものが問われております。新たな制度の導入を最優先するのではなく、そうした警察の問題も検討の俎上にのせて全体の計画を作成すべきです。

 さらに、今回の法案は、警察官による死因又は死体の身元の調査等に関する法律案として警察庁によって検討されてきたものをほぼ法案化したものとなっています。国民的な議論も不十分な上、閣法として提案されるまで詰め切れていないものをあえて委員会提出の形式で行うことも疑問であり、以上の点を踏まえ、本法案には賛成できません。

 なお、全会派の合意がないもとで委員会提出として扱うことには同意できないという点も申し述べ、質問、発言を終わります。

荒井委員長 次に、山内康一君。

山内委員 みんなの党の山内康一です。

 最初に、死因・身元調査法案の十条について、今の共産党の塩川議員とちょっと重なる部分の質問もありますが、確認のために質問をさせていただきたいと思います。

 その十条においては、警察署長は、遺族に対して死因その他参考となるべき事項の説明を行うという規定があります。この際に、死因のみならず、死因究明のために行った検査、診断、解剖等の数値や画像等を含む情報まで遺族の求めに応じて公開すべきだと考えます。

 なぜ情報公開が必要かというと、もし遺族が不審を感じたときに、セカンドオピニオンを求める、そのためにもデータの開示というのが必要ではないかと思うんですが、この点について、提出者のお考えをお聞きします。

細川委員 お答えしたいと思います。

 提出者、私どもといたしましては、この第十条の「死因その他参考となるべき事項」というところには、委員が御指摘になりましたような検査、診断あるいは解剖など、こういう結果も当然含まれるというふうに考えております。

 死因が明らかになった場合におきまして、遺族がその詳細を知りたいというふうに感じるのは、これは自然であり当然であるというふうに考えます。このような遺族の感情にできるだけ配慮いたしまして、警察におきます運用において、遺族に対して適切な説明が行われるということを期待いたしております。

山内委員 では、警察庁に質問します。

 今提出者の方から説明のあった趣旨をどのように担保していくのかと、どのように情報開示を進めていくのか、そのルールについてお尋ねします。

舟本政府参考人 本法におけます死因とは、例えば一酸化炭素中毒あるいは溺死というように、直接、死の原因となった死因だけではなく、その背景や原因を含めた概念であるというふうに承知しておりますので、当然、御遺族に対しましては、これらの内容を含め説明することはもとよりでございます。

 また、それに加えまして、血液その他体液に係る検査、尿に係る検査、または死亡時画像診断の結果、さらには解剖所見その他解剖に関する結果等につきましても、実施していただいた医師の協力も必要に応じて得つつ、説明することを考えているところでございます。

 こうした説明に当たりましては、御遺族の要望に応じ、適切、十分な説明が行われるよう、全国に通達等を発出することによりまして、現場の警察官に周知徹底を図ってまいる所存でございます。

山内委員 ありがとうございます。

 十分な答弁だと思っておりますが、くどいようですが、確認のためにもう一度別の角度から、別の言い方で再確認の質問をさせていただきます。

 日本医師会から、議連の会長である下村先生宛てに四月四日付の意見書というのが行っているかと思います。その中に、警察、司法機関による死因調査の過程で得られた死亡時画像や解剖所見等の医学的な資料については、捜査等に著しい支障がない限り、原則として遺族に速やかに開示する旨を明記していただきたいという意見が述べられております。

 実際、法案には書けなかったかもしれません、余りにも具体的ということで。でも、趣旨としては、医師会からの提言にあったような趣旨であるという理解でよろしいんでしょうか。提出者と警察庁それぞれにもう一度質問します。

下村委員 お答えいたします。

 日本医師会からそのような提案をいただいております。

 まず、死因究明推進法の中では、これは、プログラム法の中で、この二年間の中で関係省庁の中でさらなる死因究明のための体制整備をする計画をつくるということが前提でございます。その後、基本法のような形でさらにきめ細かく対応するということの中で、次の段階で、御指摘の点も踏まえて細かく法律等に書き込む段階であって、まずは、推進法の中では、基本的な計画ということをプログラムの中で明記するということのみにとどめたものでございます。

舟本政府参考人 繰り返しになりますけれども、そうした点を十分踏まえ、御遺族の要望に応じて、適切かつ十分な開示といいますか、説明をするよう通達等を発出することによって、現場に周知徹底してまいりたいと考えております。

山内委員 丁寧なお答えをいただき、ありがとうございました。

 次の質問に移ります。死因・身元調査法案の方に関して質問をします。

 今回の法改正で、法医解剖という制度が第六条で新たにできるわけですけれども、以前から監察医解剖制度というのが別の法でありました。全国の五つの都市で機能している前からある制度と新しい制度、これが重複するのではないかという意見がありますが、これはどのようにすみ分けというか整理をされるんでしょうか、質問をします。

細川委員 御質問の監察医の解剖につきましては、まず、この目的は公衆衛生向上を図るということになっています。対象となる死体というのは、警察が取り扱う死体であるか否かにかかわらず、伝染病、中毒または災害により死亡した疑いのある死体、その他死因が明らかでない死体ということが、対象となる死体でございます。そして、解剖の主体は、都道府県知事の権限によって解剖を行うということでございます。

 一方で、本法のこの新しい解剖というものは、まず一つ、この目的は、死因を明らかにすることによって、災害、事故、犯罪等の被害の拡大及び再発の防止等の目的を実現するためというのが目的でございます。そして、対象となる死体につきましては、警察等が取り扱う、犯罪によらないで死亡したと認められる死体についてでございます。そして、解剖の主体というのは、警察署長の権限によって行うということです。

 目的、そして対象となる死体、それから解剖の主体というものは、それぞれ違っておりまして、そういう意味で、本法と監察医の解剖というのはすみ分けをできるものと考えております。

山内委員 では、一つの死体をめぐって二つの法でとり合うというようなことは起きないという理解でよろしいんでしょうか。

細川委員 そこは微妙に重なるところがありますので、先生のお考えのような懸念があるかと思いますけれども、そこは、先ほど申し上げましたように、それぞれの解剖の制度の目的、対象となる死体、そして解剖の主体というのが異なっておりますので、そこをしっかりわきまえてすみ分けをしていただく、運用の点でそういうふうにお願いをしたいというふうに思っております。

山内委員 これから運用の部分はいろいろ詰めていかれると思いますので、そこはしっかり警察庁の方でも御検討いただきたいと思います。

 次に、三つ目の質問に入ります。

 死因究明推進法案の中に死因究明等推進会議というのが設けられております。

 事前通告のうち、時間がないので、途中二つ飛ばして、最後の質問に行きたいと思います。

 死因究明等推進会議のメンバーの有識者として、法医学の関係者だけではなくて、もっと広い、医療業界、医療関係者全般をメンバーに含めていく必要があると思っておりますが、その点について、提出者の皆さん、どのようにお考えでしょうか。

下村委員 お答えいたします。

 この死因究明等推進会議の委員は、内閣官房長官以外の国務大臣のうち、内閣総理大臣が指定する者と、死因究明等に関しすぐれた識見を有する者のうちから、内閣総理大臣が任命する者ということになります。死因究明等に関しすぐれた識見を有する者は、法医学の専門家に限られたものではありません。御指摘のように、一般の医療関係者についても該当するというふうに考えます。

 死因究明等推進計画の案の作成、施策の実施の推進等をつかさどる重要な会議でございますので、最も適切な委員が任命されることを期待しているところでございます。

山内委員 では、今の質問にちょっと関連して、掘り下げて、具体的にお聞きしたいと思います。

 例えばオートプシーイメージングと言われる専門職の方がいらっしゃいます。死亡時画像病理診断というそうですけれども、このオートプシーイメージング学会、そういう学会、専門職の団体もあります。法医学者ではないですけれども、そういう新しい技術の専門家の皆さんの意見なども取り入れていく必要があると思います。

 ぜひ、この新しい制度、遺族等市民社会に広く開かれた制度となるように設計していただきたいと思いますので、そういう法医学以外の関係者、具体的にどういう方々が想定されているのか、もしイメージがあればお答えください。

下村委員 お答えいたします。

 基本的に、この死因究明推進法、二年間の時限的な法律の中で関係省庁において体制を整備し、その後、死因究明基本法のような形でさらに着実に達成できるようにしていこうという中でのことでございます。

 最初の死因究明等推進会議は、主に関係省庁の大臣等が中心になって進めていく中で、人材の養成、それからそれぞれの組織の拡充、そういうものが中心的なことになってまいりますので、この死因究明等推進会議の中でどこまできめ細かく、今御指摘の点も踏まえて議論するかどうかというのは現在のところは想定はしておりませんが、その次の段階の基本法等の中で、御指摘の点も踏まえて、かなり関係の専門家の方々の意見を聞きながら、我が国における死因究明のより達成を高めていく、また予算との関係の中でより成果の高い対応をしていくことが望まれるというふうに思います。

山内委員 これまでの質疑を通して、二年間の時限ということで、これから固めていくところが大変多いかと思います。ぜひ、積極的に議論に私も参加したいと思いますが、きちんと詰めて、二年後によりよいものになるように党派を超えて努力してまいりたいと思います。

 ただ、時限で、何年後に改定といって、十年ぐらいほったらかされた法案はほかにもいろいろありますので、皆さん忘れないように、二年後にきっちりと改定できるように党派に関係なく協力をしてまいりたいと思います。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

荒井委員長 これにて発言は終わりました。

 お諮りいたします。

 まず、死因究明等の推進に関する法律案起草の件につきまして、お手元に配付しております起草案を本委員会の成案と決定し、これを委員会提出の法律案と決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

荒井委員長 起立総員。よって、そのように決しました。

 次に、警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律案起草の件につきまして、お手元に配付しております起草案を本委員会の成案と決定し、これを委員会提出の法律案と決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

荒井委員長 起立多数。よって、そのように決しました。

 なお、ただいま決定いたしました両法律案の提出手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

荒井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十時三十二分散会


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