衆議院

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第13号 平成26年4月16日(水曜日)

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平成二十六年四月十六日(水曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 柴山 昌彦君

   理事 関  芳弘君 理事 平  将明君

   理事 橘 慶一郎君 理事 西川 公也君

   理事 平井たくや君 理事 近藤 洋介君

   理事 松田  学君 理事 高木美智代君

      青山 周平君    秋葉 賢也君

      大岡 敏孝君    鬼木  誠君

      勝俣 孝明君    川田  隆君

      小松  裕君    新谷 正義君

      田所 嘉徳君    田中 英之君

      高木 宏壽君    豊田真由子君

      中谷 真一君    中山 展宏君

      長島 忠美君    福山  守君

      山田 美樹君    吉川  赳君

      大島  敦君    奥野総一郎君

      後藤 祐一君    津村 啓介君

      若井 康彦君    鷲尾英一郎君

      渡辺  周君    岩永 裕貴君

      杉田 水脈君    中丸  啓君

      山之内 毅君    輿水 恵一君

      浜地 雅一君    大熊 利昭君

      赤嶺 政賢君    村上 史好君

    …………………………………

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長) 古屋 圭司君

   外務大臣政務官      牧野たかお君

   政府参考人

   (警察庁生活安全局長)  辻  義之君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    栗生 俊一君

   政府参考人

   (警察庁刑事局組織犯罪対策部長)         室城 信之君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    高橋 清孝君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 杵渕 正巳君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 広瀬 行成君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 下川眞樹太君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 河野  章君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           成田 昌稔君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           古都 賢一君

   内閣委員会専門員     室井 純子君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十六日

 辞任         補欠選任

  後藤 祐一君     鷲尾英一郎君

  津村 啓介君     渡辺  周君

  若井 康彦君     奥野総一郎君

  遠藤  敬君     岩永 裕貴君

同日

 辞任         補欠選任

  奥野総一郎君     若井 康彦君

  鷲尾英一郎君     後藤 祐一君

  渡辺  周君     津村 啓介君

  岩永 裕貴君     遠藤  敬君

    ―――――――――――――

四月十六日 

 株式会社地域経済活性化支援機構法の一部を改正する法律案(内閣提出第六三号)(参議院送付)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 重大な犯罪を防止し、及びこれと戦う上での協力の強化に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定の実施に関する法律案(内閣提出第三五号)


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     ――――◇―――――

柴山委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、重大な犯罪を防止し、及びこれと戦う上での協力の強化に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定の実施に関する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として警察庁生活安全局長辻義之君、警察庁刑事局長栗生俊一君、警察庁刑事局組織犯罪対策部長室城信之君、警察庁警備局長高橋清孝君、法務省大臣官房審議官杵渕正巳君、外務省大臣官房審議官広瀬行成君、外務省大臣官房参事官下川眞樹太君、外務省大臣官房参事官河野章君、厚生労働省大臣官房審議官成田昌稔君、厚生労働省大臣官房審議官古都賢一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

柴山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

柴山委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高木宏壽君。

高木(宏)委員 おはようございます。自由民主党の高木宏壽です。

 二〇〇一年の米国同時多発テロから早いもので十三年が経過しようとしておりますが、その間、テロ対策の一環として、米国では、情報機関改革及びテロリズム防止法など、さまざまな法律が制定されてまいりました。二〇〇七年の九・一一委員会勧告実施法もその流れで、その趣旨を踏まえて、米国向けのコンテナなど、物流のセキュリティー対策措置の強化などが図られてきたと承知しております。

 今回、この法案のもとであります日米重大犯罪防止対処協定もこの九・一一委員会勧告実施法の趣旨を踏まえたもので、この内容は、指紋情報等の交換制度を柱としております。そして、これを、アメリカの査証免除プログラムの利用国に対して締結を求めている。

 この査証免除プログラムというのは、有効な旅券そして航空券を保有していて、滞在目的が短期の商用それから観光のものに限って九十日以下の滞在をビザなしで認めるというものでありますが、この利用国のうち、三十七カ国一地域と理解しておりますけれども、日本がこの最後になっている。二十四年、前政権の十月に、意図表明の文書に前政権で署名をしております。そして、ことしの二月に、古屋大臣が、三ッ矢外務副大臣とともにこの協定に署名しているということでございます。

 この協定の前文に、重大な犯罪、特にテロリズム、これと戦う、防止する、これが非常に重要であるということが掲げられております。

 米国は、三十数カ国の指紋データベースにアクセスできる。一方で、日本はアメリカの指紋データベースにアクセスできるだけ。日米間の、この日米捜査共助の指紋のやりとりというのは、年に数件しかないわけなんですね。ということは、米側のメリットが非常に大きく見えるわけで、査証免除プログラムを利用するためにやむなく締結するのかなとも見えるわけなんですけれども、改めて、この協定締結の意義について、まず初めにお伺いしたいと思います。

古屋国務大臣 委員御指摘のように、このPCSC協定は、長い時間かけて、日米双方で捜査関係者、政府が議論して協定をしてきたものであります。

 協定をしたからには、やはり、我が国にとっても捜査上のメリットがあるという必要があります。そういった視点から、重大な犯罪に関与している具体的な疑いがある者に対して、日米の捜査機関の相互協力における指紋情報を、今まで以上に迅速に対応することができるんですね。今言った、かつては年間数件とか十件とか、そういう単位でしたけれども、さらに迅速に交換をするということができるようになります。

 そうなりますと、いわゆる重大犯罪の防止とか、捜査にも有益な状況がもたらされてきます。結果として、我が国の安全を強化することにつながる。こういう認識で私たちは協定にも合意をさせていただいて、今般、この法案を提出させていただいているということでございます。

高木(宏)委員 今、大臣から、日本側のメリットというものについても言及があったと思いますが、ただ、この協定を結んで国内の実施法を制定するわけですから、やはり日本側のメリットというのも必要なわけです。

 私、以前、警察本部の刑事企画で、来日外国人犯罪捜査、国際捜査共助の実務を担当しておりました。国際捜査共助、外交ルートとICPOルートがございます。特に、外交ルートの方は、外務省、在外公館、そして相手方の外務省を通すわけで、国によっては半年以上かかる国もございました。

 もし、この指紋交換制度を構築されれば、現在アメリカとの間では日米捜査共助で一月ぐらいかかっておりますけれども、これが数日に短縮されるということで、捜査情報の入手が極めて迅速化されるという大きなメリットがあると思いますけれども、重大な犯罪の防止、捜査に、この指紋情報交換制度はどのような影響、効果があるのか、日本の捜査機関にとってのメリットというのを大臣にお答えいただきたいと思います。

古屋国務大臣 具体的なメリットとか、そういうのは捜査の具体的なことでございますが、刑事局長が控えておりますので、答弁を刑事局長にさせたいと思いますけれども、今、私申し上げましたように、やはり、まず、スピーディーにやれるということが大きく変わりますよね。これは大きなメリットだというふうに思います。それから、今申し上げましたように、結果として重大犯罪の防止につながっていくということがあるというふうに考えております。

 具体例については、刑事局長から答弁をさせます。

栗生政府参考人 お尋ねの、この協定がどのように具体的に捜査に生かされるのかということについてお答え申し上げます。

 例えば、犯罪捜査の場面を想定いたしますと、警察が被疑者を逮捕している場合、それから、捜査を煮詰めていって逮捕に向けて近づいている場合、こういうような場合がございますが、例えば、逮捕の場合を考えてみますと、逮捕された者が氏名を黙秘している場合や、また、偽造パスポートを持っていて本人が申告する氏名の真偽が必ずしもはっきりしない、こういう場合がございます。

 その場合に、逮捕した被疑者の指紋のデータを米国側にこの協定を用いて送りまして、そして、米国のデータベースにその者の指紋画像が存在すれば、人定事項などを一連のプロセスを経て得ることができる。そして、その人定を用いて犯罪の立証をしていく。このように活用することが想定されるところでございます。

高木(宏)委員 この法律が成立しますと、国民の指紋データというのが容易にアメリカに受け渡されるということになるわけで、幾つかちょっと懸念があるんですね。

 協定の前文で、基本的な権利、自由を尊重しますと。そして、罪刑法定主義の視点からも、犯罪というのが特定されていることが重要なわけであります。

 この協定では、「重大な犯罪」というのを、死刑、無期もしくは三年以上の拘禁刑、または、死刑、無期もしくは一年以上の拘禁刑で附属書1に定めるものと規定をしております。附属書1には、三十四種類の犯罪の類型が明記されております。

 この中に、例えば「文化的な物品の不正な取引」、これが果たして重大な犯罪なのかなと思うものもありますし、御承知のように、アメリカというのは各州が強い権限を持っております。刑法は一部を除いて州法なんですね。州法の中で一体何が刑法三年以上の拘禁刑を構成するのかというのを政府が全部把握しているかといったら、決してそうではないと思っております。

 そういう意味で、我が国は、例えば警察統計上は、凶悪犯とか粗暴犯、窃盗犯とか分けております。重要犯罪は何かといったら、凶悪犯の殺人、強盗、放火、強姦、それから、それに略取誘拐とか人身売買、強制わいせつを加えたものが重要犯罪。重要窃盗は、凶悪犯につながるおそれのあるひったくり、すり、自動車盗、侵入盗。重要犯罪については全て三年以上なんですね。

 そういう意味で、我が国の法令の犯罪との関係をどう整理するのか、そのあたりについての警察としての考え方をお聞きしたい。

 あわせて、この制度を活用する上で、具体的な嫌疑ということなんですけれども、具体的な嫌疑というのはどういうことなのか。

 例えば、通常逮捕の場合の「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」、漠然とした犯罪じゃなくて特定の犯罪で、これを犯したことを思わせる客観的そして合理的な嫌疑、それと同じレベルなのか。あるいは、緊急逮捕のときのように「充分な理由」、「相当な理由」よりもより高度な嫌疑性が求められるのか。その辺の考え方をお聞きしたいと思います。

栗生政府参考人 二点について御質問をいただいたと理解しました。

 一つ目のお尋ねは、米国にも、州法もあり、さまざまな犯罪があって、法定刑もいろいろあるだろうということでございました。

 基本的に、この協定の締結に当たっては、米国が日本に先んじていろいろな国と、非常に多数の国と協定を結んでまいりました。その考え方といたしまして、重大な犯罪というものが出てきたわけでございます。

 今まで結んだ既存の協定を見ますと、一年を超える刑に処せられるべき犯罪について重大な犯罪として相互に照会をし合うということになっておるわけでございます。したがって、一年を超えるものについて重大な犯罪として米国はそれぞれの国と理解をしてきたようでございます。我々、後で交渉に参加いたしましたので、重大な犯罪というものについて、基本的には同じような理解を持ってこの協定を締結したというふうに考えております。

 したがいまして、法定刑が一年を超えますので、それが一つ一つ個別に見て重大かどうなのかということについては余り問わずに、その法定刑によって考えているということでございました。

 二つ目の御下問をいただきました。

 非常に実務に詳しいことを前提に聞かれておりますけれども、具体的な嫌疑があると私ども申しております。相手方に頼む、要請する、照会する理由があるときというふうにも協定上はなっておりますけれども、逮捕する要件までは至らないけれども、やはり犯罪の何らかの端緒があって、捜査を相当な理由に至るまで深めていく、疑いを濃くしていくような必要がある場合というふうに申し上げておきたいと思います。

 ちょっと、お答えになりましたかどうか。

高木(宏)委員 時間がないので、ポイントの質問をしたいと思います。

 指紋データというのは、これは終生不変、万人不動ということで、犯人を特定するのに極めて重要な資料で、全警察的な財産だと私は思っています。この警察庁にある指紋データ、被疑者遺留指紋、被疑者も、在宅で書類送致した者から起訴猶予、不起訴処分になった者、微罪処分あるいは無罪確定者もそうですし、誤認逮捕で拘留中に釈放になった者、そうした指紋も当然含まれているわけで、こうした膨大な指紋を、今回の指紋情報等交換制度で、照会専用のデータベースの構築というものも含めて、どのようなシステムを想定されているのか。

 そして、先ほど申し上げた無罪確定者の照会対象外の指紋、これをどうやって取り除くのか。もし間違って照会してきてそれがヒットしてしまったら、個人情報上も大変問題があるわけで、その辺の取り扱いを含めた、システム設計を含めた考え方をお伺いしたいと思います。

古屋国務大臣 お答えをいたします。

 今御指摘のように、指紋の照合のときに、アメリカと情報交換のときに自動の識別システムを活用するんですけれども、非常に大切なことは、適正にそういった情報が取り扱われるようにしていくということが極めて大切ですね。そういった意味から、指紋等の情報のみを記録した独立のもの、要するにスタンドアローンという形で対応して、セキュリティーには十二分に配慮して照会を適正に行うことができるようなシステムにすべきというふうに考えています。

 特に、外部からの不正アクセスによる指紋情報等の漏えいを防ぐための措置、これは必ずとらなくてはいけません。そのほかに、特に特定の者を識別して行われる照会と特定の者を識別しないで行われる照会を混同して処理することが絶対にないように、それぞれの照会の対象となるデータベースをシステム上明確に区分して管理することが極めて重要であり、そういった対策をとらせていただきたいというふうに思っております。

 また、もう委員御承知のように、都道府県警察がこの協定を利用する場合は警察庁を通じて照会をすることになりますので、警察庁内部においても、照会が適正なものであるのかどうか、こういったことも確認をするということにいたしております。

 補足については刑事局長から答弁させます。

柴山委員長 間もなく質疑が終了します。

高木(宏)委員 指紋情報というのは個人情報の中で最も慎重な取り扱いを必要とする情報ですので、これを他国にさらすことになるわけですから、そして、アメリカが七千五百万件ですか、我が国の方は約千四十万件という膨大な量の指紋情報をネットワークでつなぐわけですので、不正アクセスによる漏えいだとか、そうした保護対策、そして、こうした指紋情報が悪用されないように、システム設計を含めた厳格な運用の確保をしっかりやっていただきたいということをお願いして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

柴山委員長 次に、鷲尾英一郎君。

鷲尾委員 民主党の鷲尾でございます。

 内閣委員会で初めて質問をさせていただきます。特に、古屋大臣に質問をさせていただくのは大変貴重な機会をいただいているなと思っておりまして、昨年、古屋大臣が拉致担当大臣になられて、実は、拉致問題特別委員会は一度も開けなくて、古屋大臣に質問する機会がなかったんですね。そういう意味でも、古屋大臣に質問できるのを大変うれしく感じているところでございます。きょうはよろしくお願いいたしたいと思います。

 今ほどの高木委員の質疑にもございましたが、システムの設計等は大変厳重に行わなければいけないところが多々あるんだなということを後ろで聞きながら感じたところでございますが、それこそ、このもともとの協定でございますけれども、同盟国アメリカに協力するわけですから、当然、ぜひやっていただいて、また国内の法律整備ということでぜひやっていただきたいというふうに思っております。

 今回のシステムでございますけれども、指紋を自動識別して、照会を行った場合は自動的に回答する、ある意味、人の手を介さないというところが、今般の実施法においては大変重要な点だとお聞きしております。

 先ほど来の質疑の状況もかんがえて思いますのは、セキュリティー、それから、外部からの侵入ですとか、侵入されてデータが改ざんされるとか、こういったことがあると大変でございますけれども、指紋に関するシステムですから、言ってみれば大変特殊な、汎用性というのは全くないシステムになろうかと思います。

 特に、汎用性がないというところでいきますと、実はシステムを組むには相当お金がかかるんじゃないかと思っております。これは汎用性がないのでというのが決まり文句のように、物の単価がどんどん上がってしまう。何を一つやるにしても、これは汎用性がないものですからという形で上がってしまう。

 私も政権与党時代に一度、衆議院の登院掲示盤がございますね、この登院掲示盤の見積もりをぱっと見たときに、汎用性がないからという理由で物すごい高い予算を見せられたことがございます。もちろんそれをカットしたわけでございますけれども、そういった汎用がきかないシステムということで極めて予算がかかるのではないかと心配をしておりますが、この予算規模というのは大体どれぐらいのものを想定されているのでしょうか。

古屋国務大臣 委員御指摘のように、この協定実施のためには、いわゆる自動指紋識別をするシステムを根本から設計して、そしてそれを整備していく、このためには予算が必要である、論をまたないところでございます。

 ただ、日米間で、どういった形で自動指紋識別システムをつくり上げていくか、それから通信回線はどんな仕様にするのかとか、あるいは、今、前の高木委員の答弁でもさせていただいたように、セキュリティーシステムをどういうふうな基準でやっていくのか、こういった協議を綿密に行っていく必要があります。

 その結果、どういったシステムを構築するか、そして、そのためにはどれぐらいの予算措置が必要なのかという答えが出てくるわけでありまして、現時点でどれぐらい予算を見込むというのは、これはなかなか難しいというふうに考えております。

 いずれにしても、やはりそのシステムを組み上げるためには、そういった懸念事項、いわゆるセキュリティーの徹底、そしてやはり相互の信頼というのがしっかり構築されるようなシステムをつくり上げていく、そのための設計というのは綿密にやっていきたい。その結果、幾らになるかは今申し上げるわけにはいかない、こういうことであります。

鷲尾委員 大臣がこの法律を所管されて成立させるわけでございますから、もちろん、現時点ではなかなかわからないということであろうと思いますけれども、やはりその予算規模というのも、ぜひ、野方図に広げることのないように、古屋大臣の強力なリーダーシップを責任者としてお願いしたいと思います。

 そのシステムを、では、組みましたとしましょう。当然組むことになるわけですけれども、組んだとして、そうしたら、実際どれぐらい利用されるのかというところも重要な観点でございまして、国民の血税を使って、さんざん予算を使ったあげく、まあ、ろくに使われませんよとなりましたら、これはやはり国民の側も、おいおい、そんな税金、ちょっと待ってくれよ、もうちょっとちゃんとした想定のもとで予算をかけてもらわないと、そういう思いに恐らくなってしまうんじゃないかと思うので、どういった使われ方といいましょうか、どれぐらいの想定をされているか。

 今の現状が、今も日米間で指紋のやりとりというのはされていると思いますけれども、こういったある種自動認証のシステムをつくることによって、恐らく件数はふえてくると思います。そういう意味では、先ほど私が申し上げた批判は少し薄らぐのではないかというふうに思いますけれども、どういった状況を想定されているのかということについてもコメントをいただきたいと思います。

古屋国務大臣 まず、今何件ぐらい照会があるか、やっているかというのは、数件ですよね。これはやはり時間的な制約があるんですね。要するに、速やかに対応ができないという現実がありますので、そういった状況です。

 では、協定が結ばれて自動照会が可能になってくれば、間違いなく照会の頻度は上がるというふうに思いますけれども、ただ、現実に、米側からどういう要請があるのか、あるいは対象となる事案の発生状況がどれぐらいになるのかということを確実に予測するということはできませんので、現時点で大体何件くらいという見込みを私の方から申し上げるのはちょっと控えさせていただきたいというふうに思います。やはりそれは困難ですからね、正確な数字を言うのは。しかし、間違いなくその照会の頻度は増加をする。

 こういったシステムを構築した以上は、やはり国民の税金を使ってシステムをつくり上げるわけですから、それなりに、犯罪防止に対する効果ということも含めて、効果が上がっていくというふうに考えております。

鷲尾委員 もちろん、使われるかどうかもそうですし、今大臣がおっしゃったように、それがしっかりと犯罪抑止につながっていく、犯罪防止なり検挙なりにつながっていくということが一番だとは思います。ぜひ大事に、上手に使っていただきたいなという思いでございます。

 それから、次の質問に移らせていただきたいと思いますけれども、協定の目的に、基本的な権利及び自由、特にプライバシー及び個人情報の保護を担保する措置や運用上留意すべき事項というのがございます。これに関連して質問をさせていただきたいというふうに思います。

 指紋情報の自動照会並びに追加情報の要請というのがこの協定で定められているわけでございますけれども、この協定の実施法三条でございます。「刑事上の手続による身体の拘束を受けたことのある成人であって、当該身体の拘束を受けることとなった事件について」、「現に被告人である者」及び「逮捕状が発せられており、かつ、所在が不明である成人のうち国家公安委員会規則で定めるもの」の特定指紋情報、これは刑事訴訟法の規定により被疑者から採取された指紋に係る指紋情報ということでございますけれども、等の提供が定められているということでございます。

 これは、言ってみれば、すなわち、現に被告人の者は通報の対象になります。しかし、その後に判決が下されて無罪となった場合において、相手側に対し、無罪となった旨の通報の義務、その義務がない。その人物がアメリカに入国する際に、あるいはビザを申請する際に、被告として相手方に指紋登録されたことに基づき不利益をこうむることを予防する措置がないとも言えるのではないかということでございます。

 そこで、大臣に御答弁をお願いしたいのは、協定に基づいてアメリカに提供された指紋情報や犯罪経歴の情報がアメリカに蓄積されてしまうということになりますと、情報提供された方、特にアメリカへの情報提供後に無罪判決が確定した方が、その後アメリカに入国するに当たって不利益な取り扱いを受けてしまうのではないかという心配がございます。

 こういうことがないように、協定ではどんな工夫がなされているのかということについて、御答弁をいただきたいと思います。

河野政府参考人 お答え申し上げます。

 今、委員から、この協定に基づいて共有された情報が、それが米国によって蓄積されることとなって、後にそれが入国の際に不利な扱いにつながるのではないかというふうなお問い合わせでございました。

 まず、PCSC協定と呼んでいますこの協定に基づいて、指紋情報についての自動照会を行うことができる局面でございますが、これは協定において、ちょっと長くなりますが、「状況から判断して、ある個人が重大な犯罪を実行するか又は実行したかについて調査する理由がある場合」に限られる、これは言いかえますと、特定の個人が重大な犯罪の関与について具体的な疑いがある場合についてのみ照会がかけられるということになっております。

 したがって、日本人の渡航者、その方が特段このような嫌疑がない方である場合には、そもそもこの協定に基づく指紋照会の対象とはなりません。

 具体的な嫌疑がある場合に照会がされた場合、その指紋について、あるなしということをまず第一次的な照会において答えるわけでございますけれども、この第一次の照会において提供される指紋というのは、次に、ある場合に、その指紋の持ち主の人定は何でしょうかという二次的な追加情報というものを求めるためにのみ利用されるというふうに規定しております。したがって、第一次情報でやりとりをされる指紋というのは、その二次的な照会をするためにだけ使われて、それが行われたところで、もうその指紋情報は削除されるということで、蓄積されません。

 この二次照会において回答された追加的な人定情報というものも、これは、初めに申し上げた、具体的な犯罪の嫌疑の捜査のためにおいてのみ使用されて、その限りにおいて利用され、保管されるというふうに協定で定められております。したがいまして、この協定に基づきましてやりとりされた情報が、特定の犯罪の捜査の目的を超えて蓄積され、将来的に何か入国の際に利用されるためにアメリカ側で保管し続けるということは、認められないという仕組みになっております。

栗生政府参考人 若干、国内的なことを補足いたします。

 二次照会によって得られた人定事項、それから犯罪経歴等の情報につきましては、具体的な捜査のために使われます。具体的には、警察庁がもらいまして、それを捜査している都道府県警察において使うということになります。捜査が終わったりした場合には、それは当然蓄積されないということになります。

 以上であります。

鷲尾委員 蓄積されないということがもちろん厳格に担保されているのであれば、今私が申し上げた懸念というのもないのかな、御答弁いただいてそう思った次第でございます。

 それから続きまして、情報の目的外使用及び第三国等への提供でございます。

 提供国政府の書面による事前の同意があれば、提供を受けた国が実施することができることになっているというのが協定八条と思っておりますけれども、これを受けた実施法では、同意の決定について警察庁長官が行うことになってございます。これは五条でございます。この規定に従った場合、情報の目的外利用及び第三国への提供の可否については、国家公安委員長にすらチェックの権限がないということになっております。

 警察庁長官による法執行上の利益の判断のみで、個人に関する情報が拡散する心配があるわけでございまして、こういったことを制限する制度的担保があるいは必要なのではないかと思っているわけでございます。

 そこで、大臣に質問させていただきたいのは、この協定八条の情報の目的外利用や第三者への提供でございますけれども、この目的外利用というのは、どういった場面があるということなんでしょうか。

河野政府参考人 お答え申し上げます。

 今お問い合わせいただきました目的外使用につきましては、委員御案内のとおり、協定第八条に規定がございます。

 基本的には、この協定、先ほど申し上げたとおり、特定の具体的な疑いのある犯罪についての捜査、その特定の目的のためにこの情報を使用するということになっておりまして、協定の中でも、この協定におきまして相手国から提供された情報の利用目的というのを、先ほど申し上げた第二次照会にかけるときに必要とした捜査のための目的と、あるいは、この協定に書いております第八条5の(1)に規定しております三つの、重大な犯罪の捜査、自国の公共の安全に対する重大な脅威の防止、出入国管理に関する目的に限定して、こういうふうに、情報の使える範囲というのを協定上限定しているというのが原則となっております。

 その上で、それらの目的以外のために提供された情報を利用する必要性が出てきた場合、それは、相手国に対して書面により事前の同意を求めるという必要がございます。

 どのような場面でこういう必要が生じるかについては、すぐにこれといった例がなかなか出せないんですけれども、実際の運用において個別に判断されることとなります。

 いずれにしましても、そういった例外的なケースにおきましては事前同意がなければいけない、ですから、あくまでもそれは例外であって、そのためには同意を必要とするということを明記した規定でございます。

鷲尾委員 そうしたら、これが警察庁長官のみの判断で、その同意で構わないかという点、個人情報保護という観点で問題があると存じますけれども、この点はいかがでしょうか。

古屋国務大臣 こういった目的外利用についての御質問でございますけれども、警察庁長官の判断のみで同意しているのではないかという御下問だと思います。

 実際には、相手国に提供した情報について、それを利用するということを求められるケースがあると思いますけれども、そういった場合でも、まず、国家公安委員会の管理のもとで、警察が個別の事案ごとに目的外利用の可否について判断をしていくということでございますので、あくまでも、国家公安委員会の管理のもとで対応しているということです。

 したがって、協定の運用についても、我々国家公安委員会の中で、その適切な運営が図られるよう、警察に適切に指導し、また監督をしてまいりたいというふうに考えております。

鷲尾委員 了解しました。

 それでは、続いての質問に移らせていただきたいと思いますが、せっかく古屋大臣がおられるので、最近、日朝協議も盛んに行われているようでございますから、それに関連して幾つか質問させていただきたいと思います。

 古屋大臣とは、二〇〇八年にアメリカがテロ支援国家指定を解除する際に、一緒にワシントンにお伺いして、それで、御一緒にいろいろな活動をさせていただいたという記憶もございます。

 その二〇〇八年には、アメリカは金融制裁という圧力をかけ、一方で、テロ支援国家指定を解除しますよという話をしながら、核計画を全てなしにしなさいとか、プラス日朝協議を進めなさいといったアメリカ側の圧力もこれあり、二〇〇八年八月の日朝協議が調った。しかし、それは、総理がその後すぐに交代したことによって、全く白紙に戻ってしまったというふうに思っております。

 一方で、今、日朝協議が何度かされているという状況にもなってございますが、大臣から、今回の日朝協議に対する期待とか、あるいは、なぜ今のこの時期に日朝協議がまた再スタートすることになったのかというその背景を、大臣なりのお言葉でお答えいただけたらなというふうに思います。

古屋国務大臣 委員とは、拉致議員連盟で何度かワシントンにも訪問させていただいた。そういう意味では、拉致問題を解決しようと党派を超えて取り組んでいる仲間である、そういう認識をいたしております。

 今回、日朝協議が一年四カ月ぶりに再開をされました。では、実際、今後どういった協議をしていくのかとか、その評価については、ちょっと私から具体的なことを言うことは控えさせていただきたいというふうに思いますが、しかし、現実にそういう動きが始まったということですね。やはり、その背景はいろいろあると思います。

 今御指摘があったように、二〇〇八年に、再調査をするというときに政権がかわったということ、その後、毎年政権が、残念ながら、我々の党の時代も御党の時代もかわっていった、これはある意味で、拉致問題解決に向けては決していい材料ではなかったというふうに思いますね。これは恐らく同様の御意見だというふうに思います。しかし一方では、やはり、今こういう形で政権が安定をしてきたということが客観的事実としてあると思います。

 それからもう一つ、やはり、世界各国に対して、国連の場あるいは総理の首脳会談の場等々で、この拉致問題について相当熱心に、そして我が政府、日本としてのスタンスを強く訴えさせていただいている、こういうようなことも、結果として、例えばCOIがあれだけ厳しい中身で決議をされたということもあろうかというふうに思います。

 だから、全体的なそういう大きな流れ、北朝鮮に対する圧力というものは、恐らく北朝鮮側も感じているというふうに思います。だからこそ、こういう協議が再開をされたということで、一定の評価はしておりますけれども、御承知のとおり、あの北朝鮮という国は普通のまともな国ではありませんので、やはり、しっかりそういったことを我々も十二分に認識して対応していく必要があるというふうに思います。

 御家族の皆さんももう御高齢でございますので、時間がないというのは事実だと思いますけれども、一方では、御党の大臣をされていた松原仁元拉致問題担当大臣も、時間がないのは北朝鮮も一緒だ、拉致被害者の御家族がいなくなった後解決してもそれは解決にならない、永遠に残る二国間の問題だと、非常にこれは思い切って発言されましたね。やはりそうなんですよ、現実には。私どもも、その考え方はそっくりそのまま引き継いでおります。

 いずれにしても、安倍総理は、自分の内閣のときに必ずこの問題を解決する、多くの国々の首脳と会談をしたときにもそのことを必ず言及しています。また、いわば首脳会談の協定書、そういった中にも必ずこの拉致問題を入れています。そういった動き一つ一つが効果というか、そういう日朝協議の拉致問題解決のための動きになりつつある、環境はそういう方向に向かいつつあると思う。引き続き、まなじりを決して、強い態度と覚悟で、この拉致問題解決に向けて私も拉致問題担当大臣として全力で取り組んでいきたい。

 ぜひとも、御党におかれましても、また委員におかれましても、お力添え、御協力をいただくようにお願いをしたいと思います。

柴山委員長 拉致担当大臣としての御所見をいただきました。

 では、鷲尾君、質疑時間が終了しております。

鷲尾委員 質疑時間が終了ということでございます。

 聞きたいことがちょっと聞けなくて、本当に残念だったんですけれども。日朝協議が再開した背景には、私は、北朝鮮と中国の関係というのはどうしても抜きがたいものがあると思っていまして、北朝鮮の体制の中で張成沢氏が処刑された、それがやはり中国との関係に非常に変化を生み出しているのではないか。ちょっとそこら辺の話を聞きたかったんですが、それは拉致特別委員会においでいただいて聞きたいなというふうに思います。

 ありがとうございました。

柴山委員長 次に、渡辺周君。

渡辺(周)委員 民主党の渡辺でございます。

 それでは、残りの我が党の持ち時間の中で引き続き質問をさせていただきます。

 まず最初に、この法律案について数点お伺いをいたします。

 日米査証免除制度の維持と迅速な情報交換を通じた重大な犯罪の防止、捜査が目的でございますが、現在、どれぐらいの人がこの査証免除制度を利用しているのかということをお尋ねすることが一点。

 また、この制度を利用して私もアメリカ本土に行ったことがございますけれども、どのような恩恵がもたらされているかということにつきまして、そもそも論でございますが、まず冒頭伺います。

河野政府参考人 お答え申し上げます。

 日米の査免制度の現状ということについてのお問い合わせというふうに理解いたしました。

 現在、我が国と米国との間の査証免除制度というのは、相手国の発給する旅券を所持する相手国民が観光、商用等を目的として九十日以内の短期滞在のために自国を訪問する場合に相互に査証を免除している、こういう仕組みでございます。

 この仕組みを使いまして、二〇一二年に米国に渡航した日本人全体は約四百十万人でございましたが、このうち約三百万人がこの日米間の査証免除制度を利用して渡航しておられます。また、同じく二〇一二年に米国から日本に渡航してきた米国人、これは全体として七十五万人でございましたが、このうち六十五万人が日米間の査証免除制度を利用しております。

 その恩恵という話でございますけれども、この日米間の査証免除制度は、査証なしでの人の行き来ができるということで、日米双方の観光客の増加、あるいはビジネス面での利便性の向上といった効果を持っており、日米間の人的交流あるいは経済関係、さらに相互理解、こういったものを促進する上で極めて重要な役割を果たしていると考えております。

渡辺(周)委員 これは自分の経験からしても、例えば、プライベートで知人を訪ねて米国本土に行くときは非常に簡単に行けるんですが、公用パスポートで議員として行くとなると大変膨大な資料を作成しなければならなくて、驚いたのは、父方の祖父の職業は何だったかとか、そんなのも全部書くんですね、母親の出身学校はどこだとか。もちろん本人でしか知り得ない情報ではあるんだけれども、本人もよく調べなければわからないようなことが、ある意味では家族のルーツまで調べなきゃいけないようなところまで立ち入るのかなという思いがあるわけです。

 そこで、ちょっとお尋ねしたい。

 これは一般論として、ここまで情報提供するという、この情報が相手国の中にストックをされることになれば、我々は公人でございますので、ビザの形態によって書いて出すものが、日本国内でも保管されていないような個人情報、個人データが、相手国に提出をしなければいけない、ストックされるということになるんでしょうか。こうした、例えばビザ申請のときに書き込んだあらゆる資料というのは、一体どのような形で相手国に残るものなのか、その点についてお答えいただけますでしょうか。

河野政府参考人 お答え申し上げます。

 議員が渡航される際に書類にいろいろとチェックしたような情報というものが米国の中でどのように取り扱われるかということでございますが、恐れ入ります、それは米国内での情報の処理ということになると思いますので、具体的にどのように蓄積され、どのように利用されているかということについて、申しわけございませんが、それは、日本政府として詳細を承知しているとしても、なかなか申し上げられないところでございます。恐縮でございます。

渡辺(周)委員 いや、私が聞いているのは、一般論でいいですよ。それは、アメリカが情報として持っているということですか、わからないということ、知らないということですか、どっちですか。知らないなら、それならそれで、次にまた外務委員会でもやるかもしれませんが、例えばこういうものを確認して後日お答えするというなら、それはそれでいいんですけれども。

 これは多分、公務員の皆さんもそうだと思うんです。公用パスポートで行ったときの方が、家族で例えばハワイやカリフォルニア州に行くよりも、はるかにいろいろな情報を提供しなきゃならない。

 たまたま自分の秘書に、何か代理店を通すと随分お金が高いものですから、これを個人でやったらどうなるんだろうかとちょっとやらせてみたら、とんでもないボリュームで、もうほとんどぐあいが悪くなるぐらいやっていたんじゃないかと思いますけれども。いや、本当にびっくりしたんです。こんなことまで書かなきゃいかぬのですかねというぐらい書くんですね。うなずいていらっしゃる方は御経験があるのかもしれませんが。

 つまり、ここまでして出したデータというのは一体どこでどうなっているのか、情報ですね。それは、もし今ここでお答えできなかったら、別に困らせるつもりはありませんから、後日調べて御報告をどこかの委員会でするなりしていただければ構わないと思いますが、いかがですか。

河野政府参考人 お答え申し上げます。

 申しわけございません。今申し上げたとおりでございまして、そのような格好で米国が得た情報というものを米国国内でどのように利用し、蓄積しているかということについて、ただいまちょっと申し上げられるだけの材料を持ち合わせてございません。ちょっと調べさせていただいて、またお答えさせていただきたいと思います。

渡辺(周)委員 これは別にけちをつけるつもりはないんですけれども、観光で行く場合は非常に、ビザも要らずに自由に、フリーな立場で行くことができて、入国できるんですが、例えば国会議員として我々がそれなりの立場で行くときの方が実は大変だという、その方が非常に手続が面倒だという、ちょっと逆に腑に落ちなくて、公的な仕事をしているほど信頼性が高いから、かえってビザを免除されてもいいんじゃないかなと私は思うんですが、その点についてはまた改めて議論をしたいと思います。

 この質問に関連するんですけれども、今回、指紋情報等の個人情報を米国に提供するということで、やはりこれは重大な犯罪の防止や捜査に何らかの寄与をすることができるんだろうということですが、この点についても伺いたいのは、こうした情報はどのような形でデータとして共有されるのかどうか、この点についてはいかがでしょうか。

河野政府参考人 お答え申し上げます。

 いわゆるPCSC協定に基づきましてやりとりされる情報というのは、まず初めに、指紋についての適合する情報を持っているかどうかということ、その指紋が第一次照会というふうに呼んでおりますけれども、それがあった場合に、その持ち主についての人定あるいは犯歴などについての情報を求めるというふうになっております。

 そのうち、指紋情報につきましては、あるなしだけを答えることになりますけれども、これは、協定上、ヒットするものがあった場合、次の人定事項等について問い合わせをするためだけにのみ使われる。それが終わった段階で、この指紋情報というのは削除されるということになっておりまして、これは蓄積されないということになっております。

 さらに、第二次照会として提供した個人に関する人定あるいは犯歴などについては、それを必要とする具体的な犯罪の疑いについての捜査に限定して、その限りにおいて使用され保管されるというふうになっておりまして、それを超えて蓄積されるということは、この協定上、認めるということになっておりません。

渡辺(周)委員 このことについては、アメリカも、九・一一以降、自国を守るためにはかなりの情報収集をしてきた。だからこそ、他国の元首の電話の通話のやりとりも情報収集の対象であったのではないかとか、いろいろ言われていること、ウィキリークスであるとか、きのう、たしかピュリッツァー賞を獲得したワシントン・ポストの方ともお会いをしましたけれども、内部告発をしたスノーデン氏のような事案を見ると、やはりそういうことは行われてきたのかなということでございます。

 それはそれとして、我々もどこか覚悟をして、国際治安というものの厳しい現状の中で、我が身として考えておかなければならない、ある意味での国家防衛のためにはそうしたことが行われていることを前提に、どこか覚悟しておかなければいけないところがあるんだろう、そういうことは承知をした次第でございます。

 それで、ちょっと大臣に伺いたいんですが、先般、ソチ・オリンピックが行われました。その前には、テロリストが外に向かって、我々はテロを起こすというようなことを、犯行声明を事前に行っておりましたけれども、そこは、治安当局のかなり厳しいチェックもあって、事なきを得たわけでございます。

 二〇二〇年の東京オリンピックに向けて、我が国が、今後、大勢の外国からの観光客、今、ビザなし渡航もどんどんふやして一千万人突破した、それはそれでさまざまな効果もあらわれているんですが、反面で、このオリンピックに向けて、ボストンのマラソンでも爆弾テロがありましたけれども、こうしたテロという事案を今後念頭に置いて考えていった場合、例えば、今回のソチ・オリンピック、どういう警備体制をとったかということで、将来的な日本のオリンピックという舞台に向けて、我が国の警戒警備、犯罪捜査ということについて何か得るものがあったかどうか、この点について、何か御所見があれば伺いたいと思います。

古屋国務大臣 東京五輪でどういう対策を講じるかという趣旨のことについては、もう既に一月の下旬に、警備局長を長とする準備室を立ち上げています。

 この二〇二〇年オリンピック・パラリンピックは、国際的に注目を非常に集める大会ですので、やはり治安をまずしっかりする、これは極めて大切です。まず、いろいろと、例えば、ソチ五輪でも具体的な警備を取り組んだということを承知しておりますので、そういったことをしっかり検証して、また参考にしながら、今後とも、二〇二〇年のオリンピックに向け、万全の対策を講じていく。特にテロ対策ですね。こういったものも含めて対応していく必要があると思いますので、警察挙げて、そして政府挙げて取り組んでいくように、私も国家公安委員長として強く督励をしてまいりたいというふうに思っています。

渡辺(周)委員 ぜひ、その点は、これは国家を挙げて備えていかなければいけない課題であるということは共有していると思います。

 いわゆる防衛装備品の三原則の見直しのときに、私どもも、与党にいたときにも手がけました。

 その際に、これは一つ例として挙げられたのは、例えば自爆テロを未然に防ぐために、微量の火薬であっても、それを探知するようなセンサーを実は開発している会社がある。実際、例えば駅の構内だとかバスだとか、そういうところで身につけた火薬を判断して、例えばセンサーが反応するような、こういう技術が実は開発途上にもあるといいますし、また実用化されようとしている。これは、どちらかというと防衛というよりも治安維持のために、そういう見本市に行くとそういうものが出されたという記事を読んだことがあるんです。

 こういうテクノロジーといいますか、技術の開発においても、ヒューマンパワーはもちろんなんですけれども、そういう面においても世界内外の最新例を参考にしながら、必要なものには予算をつけて、いいものについては後押しをするということもぜひ取り組んでいただきたいということを申し上げたいと思います。

 そこで、今度は拉致問題担当大臣としてぜひ御質問をさせていただきたいのですが、先ほども鷲尾委員からお話がありました、御答弁の中にもありましたけれども、いわゆるこの人権問題が、もはや拉致問題は二国間の問題ではなくて、これはもう国際社会の問題であるということを、先般も北朝鮮担当のダルスマン特別報告者、この方がはっきりとおっしゃいました。国際社会全体の問題だということをおっしゃったわけで、私どもの取り組みが、この拉致の問題はもちろんですが、脱北者の問題、強制収容所の問題、公開処刑の問題、こういう、今どき二十一世紀の世の中で信じられないことがいまだにまかり通っているというかの国の異常性については、世界がだんだん具体的な事例を知ることによって、教育ができたわけであります。

 そして、その第一歩として、先日も大臣がおっしゃいました、今度はオバマ大統領が来日をされます、その際に横田めぐみさんの御両親を含めた家族会の皆さんとぜひ会う機会をつくりたいということを会見でもおっしゃっていますが、オバマ大統領と会う機会はありますでしょうか、また今どれぐらい手応えを感じていらっしゃるか、その点についていかがですか。

古屋国務大臣 今、拉致問題担当大臣としてという御質問があったので、実は、私の拉致問題担当大臣としての委員会は拉致問題特別委員会なので、それで、御党が与党のときの協定でも、私はこの内閣委員会では拉致問題は一応答えられないことにはなっているんですけれども、ほかならぬ渡辺先生と拉致問題を一緒に取り組んできたということなので、やや控え目に答弁をさせていただきたいと思います。

 まず、北朝鮮の人権問題、これは、やはり今この政権が、もちろん、前の政権のときにも国連等と世界各国に北朝鮮の人権問題について働きかけていただきましたけれども、やはり総力戦でやった結果、今度のCOIの報告書も、今、マルズキ・ダルスマンのお話もありましたけれども、見事に報告書を出していただいた、そして決議もされた。

 今後は、やはりこれは国際社会が連携をして、いかにフォローアップしていくかということですね。これはマルズキさんとも、あるいはキング大使とも私は個別的に話をしていますよ。それで、ポイントは、どこにリエゾンオフィスなり活動の拠点をつくるか、もう一つは、どういったスタッフ、人材をそこに提供するか、この二点だと思いますね。こういったことについても、実は話はさせていただいております。具体的な中身については、ここではちょっと御勘弁をいただきたいんですが。

 また、十七日には、きのうテレビでも流れていましたけれども、家族会の事務局長増元さんをニューヨークに派遣させていただきまして、アリア・フォーミュラで意見陳述もしていただくことにしています。これは我々政府もしっかりバックアップをさせていただいて、そういうフォローをさせていただいております。

 やはりこの北朝鮮の人権問題については、世界各国が、それも拉致問題ということを具体的に取り上げて、世界がこの問題について北朝鮮に厳しく迫っていく、これが極めて重要だと思いまして、日本としても、その主導的な役割をこれからも果たしていくべきだというふうに考えています。(渡辺(周)委員「オバマ大統領はどうなの」と呼ぶ)

 オバマ大統領の問題については、私は、会見で申し上げましたように、キング特使が来日をしたときに、その重要性についてはお話をさせていただきました。むしろ、私からは、大統領が会いましょうという発言をされることが、非常に、日米同盟についても、それから拉致問題についても、日本の国民の皆さんの関心を高めるには効果があるのではないでしょうかという趣旨のことは言いましたけれども、あくまでもこれは米側が決断をする話でありますし、または、外交チャンネルを通じて対応していると思いますので、私はこれ以上のことは申し上げるわけにはいきません。

渡辺(周)委員 拉致特と内閣委員会のすみ分けといいますか役割分担があるということは聞いてはおりますが、大臣とは、昨年のゴールデンウイークにも一緒にワシントンとニューヨークに行って、拉致のシンポジウムにも一緒に出た間柄でございます。ですから、正直、拉致の、特別委員会という性質上、なかなか頻繁に開かれるわけではないので、今非常にホットなテーマがある以上は、やはりそれはこの場で大臣の目を見ながらぜひ質問をしたいということで、あと数分ありますので、質問をさせていただきます。

 これは一般論でも結構なんですが、では、今度の法案にありますような、テロ対策も含めて、いろいろな、人の往来というもの、査証、ビザなしのやりとりを認めてきた。

 今回、例えば、北朝鮮に対する制裁の緩和ということがとみに最近クローズアップされていますが、では、今、北朝鮮側が求めているような、万景峰号の再開であるとか、あるいは北朝鮮の公務員の行き来について、我々は、先ほどテロ支援国家という名前がありましたけれども、我が国としては、北朝鮮の拉致について、これは重大なテロであるということを日本政府としても言っているわけでございます。だからこそ、この制裁が行われている。

 そうすると、またここで、国交なき関係の中で、正直、万景峰号が特例として行き来をするようなことになるのか、あるいは朝鮮総連の幹部が行き来をするようになるのかということについては、今、例えば、韓国で、北朝鮮は認めていませんけれども、無人偵察機がおっこった、日本製の部品がどうも使われているではないか、このことについて、北朝鮮は認めていないんだけれども、韓国は大変な衝撃を受けている、日本としても韓国から情報提供を求めているということまでは国会でもやりとりをしています。

 例えば、こういうことがまた起きる、しかし反面、日朝協議の中で、これが進むかもしれないという中で、片っ方で条件闘争をすると非常に板挟みになるということは、厳しい立場だということはわかるんですが、問題は、よく言われているような、制裁の緩和は条件である、再調査を検討するというんだけれども、その再調査の中身もわからない中で、先にこちらがカードを切ってしまって、再開をしたけれども、再調査したけれども、結果としては、今までとお答えは変わりませんでしたということになりはしないかということになるんです。

 それで、結果的に、制裁を緩和したことだけの実利を向こうがとってしまって、我々として得るものがなかったということが繰り返されることがあってはならないと思うんですが、その点については、日朝協議において、拉致問題における再調査、どこまである程度確信を握れているかどうか、そこはいかがでしょうか。

 それから、あわせて、制裁緩和というのは万景峰号の再開ということが入るのかどうか、その点についてはいかがでしょうか。

古屋国務大臣 確かに、日朝協議が三十日と三十一日で再開したことは事実です。これはもう公表しているとおりですね。

 今委員もちょっと新聞記事を持っておられましたけれども、一部の制裁緩和をするとかいう記事が躍っていますけれども、現実に、一切、そんなようなことを政府の中で議論しているということもございませんので、これはぜひ御理解をいただきたい。これは、私も官房長官も、あるいは外務大臣も、既に昨日の閣議あるいは定例の会見で、そういう趣旨の話はさせていただいております。

 やはり、私たちは、拉致問題の解決というのは、もう御承知のように、拉致の被害者、政府の認定の有無にかかわらず全員戻すということが我々の大方針であります。当然、その中で、北朝鮮と日本との関係は、拉致、核、ミサイルを包括的に解決するというのが我々の基本スタンスでありますが、日本と北朝鮮とは、拉致問題という二国間の問題を抱えていますので、この拉致問題を解決するために、二国間で主体的にこの議論をする、解決に向けての話をするということは当然あり得る話でございまして、これはもうアメリカも十分そのことは理解をいたしております。

 いずれにしても、安倍内閣のもとで必ず解決するという強い決意のもとで取り組んでいくべきだと。ぜひ、渡辺委員におかれましても、拉致議員連盟の同志としての御協力をお願い申し上げたいと思います。

柴山委員長 質疑時間が終了いたしました。

渡辺(周)委員 時間が参りましたから、終わりにします。

 いずれにしても、相手は、瀬戸際外交をもう半世紀以上にわたってやってきた、したたかな国でございます。どうぞ国際社会の足並みを乱さぬよう、しかし、やはり被害者の家族の方々の希望が大きくなりますよう、そのためにも御尽力いただくことを心からお願いして、私の質問を終わります。

 以上です。

柴山委員長 次に、中丸啓君。

中丸委員 おはようございます。日本維新の会、中丸啓でございます。

 きょうは、非常に長い法案名の、重大な犯罪を防止し、及びこれと戦う上での協力の強化に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定の実施に関する法律案について、御質問をさせていただきたいと思います。

 質問に入るに当たりまして、この協定を組んでいくのに当たって、いろいろ、警察庁の方、外務省の方、さまざまなところから意見をお伺いしたんですけれども、これまでは、ICPOを通じて、この問題についてはその資料収集をやっていたということで、大体、一件当たり数週間、やりとりするのにかかっていた、非常に大きな問題があったというふうに伺っています。

 今回の協定をやり、当然、それなりの整備をし、結果としてどれぐらい時間短縮も含めて行うことができるのか、お尋ねしたいと思います。

河野政府参考人 お答え申し上げます。

 これまで、この協定の運用段階につきまして、米側とのやりとりを通じまして我が国から照会をかけた場合の米側からの回答につきまして、指紋情報に関する自動照会につきましては数十分程度、第二次照会、人定等の追加的な情報でございますが、こちらの回答については数日内には得られるだろうということが見込まれております。

 したがいまして、先ほど委員からも御指摘ございましたけれども、こういった点につきましての回答が得られるまでの時間というのは、大幅に短縮されることが期待されております。

中丸委員 従来を考えれば相当な時間短縮になるということで、大きなメリットがお互いに、日米両国にあるんだろうというふうに思われます。

 ただ、一つ残念なのは、米国とこの署名を行い、この方向に進んでいる国が、我が国だけでなく多数ありまして、その中で、現実的に言えば、署名するのが最後になっている。一番どんけつだということなんですけれども、これは非常に大事で、犯罪というのは、特に犯罪者を一日も早く逮捕、拘束するというのは非常に大事なことだと思うんですけれども、それが最後にまでなってしまった理由というのがあれば教えてください。

河野政府参考人 お答え申し上げます。

 この協定は、もう既に委員はよく御承知のとおり、システムを日米間に設定して、その中で、自動的なやりとりを含め、情報のやりとりをするというふうな内容になっております。このような協定というのは、我が国がこれまでに締結した国際約束には例を見ない、非常に新規のものであったというのがございます。かつ、その中でやりとりされる情報は個人情報でございますので、そういう個人情報の保護などの観点から、やはり慎重な検討を要するというふうな判断がございました。

 そのために、アメリカとの交渉におきましては、この個人情報の保護という観点から、どういった規定が必要かということにつきまして、我が国が重視する点などについて、さまざまな議論を行ったということがございます。

 また、先ほど、我が国が一番最後になってしまったという御指摘がございました。アメリカは、ほかの国との間では、先に同種の協定というものを結んでおりましたので、我が国が検討する過程におきまして、米国がほかの国との間で署名、締結しつつあったこの同種の協定というものも参考にしながら、その上で、我が国として重視する個人情報の保護等について、より配慮した内容とするということで、結果として、米国と第三国との協定には一般には含まれていないような要素も盛り込む、そういったことも含めて、粘り強い交渉というものを行ってきた次第でございます。

 このため、交渉妥結のために時間を要したのは事実でございます。ただ、日米間で数十回以上、非常に詳細な議論というものを積み重ねてまいりました。それによりまして、個人情報の保護等につきまして、より配慮のある、適切な内容の協定をまとめることができたというふうに考えておる次第でございます。

    〔委員長退席、平委員長代理着席〕

中丸委員 もちろん、その個人情報保護への配慮というのも必要なんですけれども、個人情報保護法におきまして、犯罪捜査への協力とか、こういったことは基本的には除外事項というふうに考えていいものだと思いますし、今回、さまざまな、そういう詳細なところまで踏み込まれて協議を行われたということはすばらしいことだと思います。

 ただ、やはり、だからといって遅くていいということにはならないと思いますので、今後また、これは協定だけで終わるものではなくて、そこから先がまた大変なわけで、ぜひとも、焦るのではなくて、急ぐべきところは急ぐということは申し伝えさせていただきたいというふうに思います。

 この協定を活用していくに当たって、どういう場面が想定されるかというようなことをお伺いしたら、やはり入国時、空港等でそういうのがあるということなんですけれども、紛失、盗難を通じた偽造パスポートの問題というのがあると思うんですね。

 こういう偽造パスポートももちろんなんですけれども、国内に一旦入ってしまえば、実は最近、やはり実例としてあるというのは、身分証明書として、運転免許証の偽造。要は、外国人なんだけれども、特に見た目が似ている国の人とかが、日本人のふりをするために偽造免許証を持っている人もいる。そういう身分証明書の偽造、パスポートもそうなんですけれども、そういうものが結構あるというふうに聞いております。

 そういう偽造事件の事件数、検挙人数とか事件の具体的な例を、平成二十五年の数字があれば教えていただきたいと思います。

室城政府参考人 お答え申し上げます。

 平成二十五年中の旅券、在留カード、あるいは運転免許証も含みますが、偽造の検挙件数は百十七件、検挙人員は百六人となっております。

 具体的な検挙事例といたしましては、インターネットを通じて入手しました偽造在留カード一枚と偽造旅券一通を身分証明として雇用主に提示をし就労していた中国人を、平成二十五年十月までに、入管法違反及び有印公文書偽造罪で逮捕したものがございます。

中丸委員 結構、百件以上のこういう、これは実際に検挙された数がということですから、実際に暗躍しているものはもっとあるはずなんですよね。

 やはり、もっと踏み込んで取り締まりも強化していただきたいですし、この間ニュースで見ましたけれども、にせ米ドル札の物すごい精巧なものができていたりとか、公文書偽造とか、こういうものというのは今どんどんどんどんハイテク化して、取り締まるのも大変だと思いますけれども、その分しっかりと知識を蓄えていただきまして、強化をしていただかないといけないというふうに思います。

 せっかく指紋認証とかこういうことをやっていっても、国内にもう入られてしまって、偽造されたもので正々堂々と暗躍している連中がいるというのは大きな問題だと思いますので、今後ともよろしくお願いします。

 先ほど、ICPOに照会したときに比べると大きく期間短縮ができるということなんですけれども、今まで、ICPOを使った捜査共助として情報を提供したり、してもらったりということがあったと思うんですけれども、この協定と、ICPOと行っているルール、ガイドラインの違いというのはどういうところにあるか、教えていただけますか。

栗生政府参考人 お答えいたします。

 今回のPCSC協定とICPO、いわゆる国際刑事警察機構を通じた情報提供の違いであります。

 これは、提供する情報が、現にその警察が保有しているものに限られるか、そうではないか、ほかのものも含まれるかということの点で異なります。

 具体的には、PCSC協定は、重大な犯罪の防止、捜査のため日米双方の当局が現に保有する情報であって、被疑者の指紋や犯罪経歴等一定の情報を提供するものでございます。一方、インターポール、ICPOを通じた情報提供は、刑事事件の捜査のため双方の当局が保有する情報を提供するものではございますけれども、これには、その時点で保有するもののほか、その頼まれたことのために新たに取得した情報も含まれる。提供する情報には、指紋、人定事項、犯罪経歴といった限定はございません。

中丸委員 わかりました。そう言いつつ、わかったようなわからないような気がするんですけれども、やはり、ルール、ガイドラインというのは、二国間でこれからまだ詰めて協議していく事項というのはあると思いますので、従来の捜査との違い、せっかく二国間で結ぶわけですから、中身が今までと一緒だったら本当に意味のないことだと思いますし、さらに踏み込んだ内容で、実態の捜査にさらに役立つように一歩また踏み込んでいって、今もやっておられるとは思うんですけれども、さらに踏み込むというふうに考えていただければと思います。

 そして、いろいろなルールを決めつつも、これは警察だけではなくて、先ほど、空港というか入管の問題、それから外務省、法務省、さまざまなところがかかわってくる問題だと思います。特に、捜査になれば、こういう国際的に暗躍しているのを見ると、やはり、海上保安庁が水際での捜査も当然やられていると思いますし、麻薬取り締まり、ドラッグの問題も出てくると思います。こういうところとの連携というのはどういうふうに考えられていますか。

古屋国務大臣 今御指摘の海保だとか厚労省の麻取部門等々を初めといたしました捜査機関が重大な犯罪捜査等のために対象者の人定等を把握したいといった場合には、従来のいわゆるICPOルートによる照会と同様に、警察庁がこれに協力をして協定に基づいて米国当局に照会をするというふうになっておりまして、これらの捜査機関とも連携して、重大な犯罪の防止、捜査に取り組んでいくことといたしております。

 したがって、今後とも、協定の実施の場面だけに限ることではなくて、通常の捜査活動においても、こういったこれらの国内機関と相互に密接な連携をとり、協力関係の強化を図っていく、これは極めて重要であると認識をいたしております。

中丸委員 ぜひとも連携強化をよろしくお願いしたいと思います。

 今、麻薬の問題とかいろいろ出たので、この法案自体だけではなくて、外国人犯罪について少しお伺いしたいと思います。

 警察庁の方からデータをいただいたんですけれども、平成二十五年度の、特に、凶悪犯とかもあるんですが、それから刑法犯の粗暴犯、窃盗、知能犯、特別法犯、特別法犯というのは売春とかそういうのも入ってくるんですけれども、そういう中で、国別上位六カ国のデータをいただいたんですが、実は、総合一位、全部一位、全て金メダル、悪の金メダルですね、やっているのは中国です。それから、特に売春とかそういうのを入れれば二位は韓国。このワンツーフィニッシュがいまだに続いている。

 そういう中で、ちょっと私、特別法犯の数字を見て一つ着目した点がございます。

 皆さんが日々、捜査活動、検挙活動をやっておられることは重々承知しております。そういう中で、全体の犯罪数というのがなかなか削減という方向には行かない、全体横ばいの中で、各国、減っている国もあるんですけれども、その中で、何と中国は一・六倍、二十四年に比べて。その前の年とは横ばいなんですけれども、平成二十五年に非常に急激にふえているんですね。

 そういう中で、観光立国というのがあったり、経済的なものもあって、中国人の人にどんどん来てくださいと。どんどん来てくださいはいいんですけれども、どんどん来てどんどん犯罪がふえるのはいかがなものかと思うんですけれども、中国人の犯罪がこんなに急激にふえているというのは、特にこの特別法犯に関して、どういった傾向があるのか教えていただけますか。

室城政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま御指摘のございました来日外国人検挙件数の中で中国人の占めるもの、中でも特別法犯という御指摘でございました。

 平成二十三年、二十四年、二十五年ということにつきまして数字を申し上げますと、二十三年が千六百五十四、二十四年が千六百三十六、二十五年が二千百六十七ということで、確かに増加の傾向にあるというふうに考えております。

 その詳細につきましては、ケース・バイ・ケース、いろいろなものがあると思うんですが、ちょっと今手元にございませんので、お答えはできないのでございますが、どうか御容赦いただきたいと思います。

中丸委員 また後日で構いませんので、分類したものがあれば持ってきていただきたいと思います。

 その一つの例として、今中国と韓国というのを名指しであえて挙げさせていただいたのには理由がございまして、最近テレビのニュースなんかでも少し出ていたんですけれども、偽造のED薬品、この問題、健康被害も含めて非常に出ている。偽造バイアグラと言われるものですね。個人輸入代行とか、持ち込んで、そういういろいろな夜な夜なショップで、裏側で販売していたりとか。

 これの何があれなのかというと、実はこれをずっと追っかけて調べていたのは、医薬品の四社で合同調査というのをやっていまして、ファイザー株式会社、バイエル薬品、日本イーライリリー株式会社、日本新薬。

 これを調べている企業さんにもヒアリングを行って聞いたんですけれども、日本という枠を超えて、つくっているところの現場は中国だと。薬に色をつけるのに工業用の塗料を使っているので、もう人間の口に入れるようなものじゃないわけですよ。すごいのは、この中にももし使われている方があったらあれですけれども、バイアグラというのは基本的に青い錠剤なんですけれども、何と、正規の会社でつくっていないゴールドバイアグラという金色にしたバイアグラとかも売っているんですよね、さらに効くとかといって。もう中身は、本当にこれはとんでもない代物であるというようなものが。

 しかも、日本国内は、当然、これは医師の処方がなければ使えないものなんですね。それが個人輸入代行という、個人が外国に行って勝手に買って帰ったというレベルではなくて、実質上、私もネットとかで見ましたけれども、完全な通信販売になっているわけですよね。これは当然、処方箋も要りませんし。病院の先生によっては、これは場合によっては死に至る可能性もあると。にせ薬品という、にせブランドバッグとかというレベルではなくて、これはしかも組織的にやっているものだと。これは大問題だと思うんです。

 今まで、これは実際に韓国の警察と、この四社の合同調査をもとに内偵を行って、組織に踏み込んで、その工場、それからパッケージをしているところと見て、いろいろやったデータというのを見せていただいているんですけれども、ネット上とかで流通している実に五五・四%、半分以上が偽造品なんですね。ほとんど偽造品です。これも、日本だけじゃなくて、タイに至っては六七・八%が偽造品、こういう実態で、非常にパッケージも巧妙にできていまして、一見しただけじゃわからないようなものになっている。

 普通にお医者さんにかかって、処方をいただいて、処方箋薬局からもらえば、当然、正規品が来るわけですから全然問題ないんですけれども、このネット通信販売、それから、そういうところでやっている、本当に、これは写真を見たらびっくりします、つくっている現場。とても薬品をつくるようなところじゃない。セメント工場みたいですよ、これは本当に。ぜひ興味のある方はまた、資料で配付するのもあれかなと思ったので配付しなかったんですけれども、これは本当にひどいので、これはぜひ。

 この偽造品のルートが、もちろん、ネット販売ですからサーバーを通じてやるんですけれども、サーバーの所在国が中国、日本、米国にもあるんですよね、これは。商品を、偽造品を発送しているところはタイ、中国、しかも、これは日本からもやっています。購入者が日本人が多いということにもなっています。

 これは、サーバーの所在地とかも、民間が、企業が自分たちの企業防衛のためにこれだけの活動をしていて、韓国の警察と一緒に日本人の人たちがやっているわけです。日本の警察として、こういう問題をどういうふうに捉えられていますか。

辻政府参考人 お答えいたします。

 私どもも、模造医薬品、これにつきましては、国民の深刻な健康被害の発生を招くおそれのある重大な問題であるというふうに認識をいたしておるところでございます。

 警察では、この種の模造医薬品の取り締まりでございますけれども、主に、無許可で医薬品を販売等する行為を規制いたします薬事法の第二十四条第一項、または、模造医薬品そのものを販売等する行為を規制いたします薬事法第五十五条第二項を適用して取り締まりを行っているということでございまして、模造医薬品に係るものも含めまして、平成二十五年中でございますが、これらの規定を適用して検挙いたしました医薬品販売等事犯、検挙件数は六十一件、検挙人員は七十名というところでございます。

中丸委員 ちょっと今細かい数字を出していただいたので、通告はしていないんですけれども、それだけの検挙数がある中で、日本国内での外国人グループとか外国人というのはどれぐらいいるんですか。

辻政府参考人 お答えいたします。

 ただいま手元に、その中の外国人、検挙されました者が外国人か日本人かという統計はちょっと持っておりませんけれども、内外のことで申しますと、ちょっと別の統計になるんですが、平成二十五年中に検挙いたしました医薬品の広告・販売事犯ということで見まして、この医薬品の仕出し地、どこから入ってきたか、その仕出し地が国外と判明いたしました事件が三十二事件ございました。そのうち、十七事件が中国本土を仕出し地といたしておりまして、四事件がアメリカを仕出し地といたしまして、二事件がインドを仕出し地とした、その他の国もございますけれども、多い順で言いますと、そのような状況でございました。

中丸委員 それだけ正確に検挙の中から把握をされていて、当然、外務省とかと連携をされて、その対象国に対して何らかのアクションというのは今まで起こされているんでしょうか。

辻政府参考人 お答えいたします。

 先ほども答弁をさせていただきましたけれども、この模造医薬品の事犯といいますか、これにつきましては、国民の深刻な健康被害の発生を招くおそれがある重大な問題であるというふうに認識をいたしております。

 それで、このような医薬品につきましては、これらの広告が掲載される日本語のウエブサイトを通じて注文がなされまして、外国から国際郵便で日本の購入者に届けられるという形態で流入するものが多く見受けられるところでございます。

 そこで、警察におきましては、関係省庁等と情報交換をするなどして模造医薬品の販売等を厳正に取り締まるとともに、国内外の違法な広告サイトにつきましてICPO等国際機関とも協力しながらその削除を要請しているところでございまして、今後とも国内外の関係機関と緊密な連携を保ちつつ、この種事犯の取り締まりを推進してまいりたいというふうに考えております。

中丸委員 協力していただくのは当然なんですけれども、私が言うのは、パッケージするのに韓国がやっていたり、その工場はセメント工場みたいな薬品工場が中国にあって、そういうことに対して中国の警察とか中国政府とか、あそこの国の警察はどれぐらいちゃんと稼働しているかわからないですから、言ってもしようがないのかもわからないですけれども、そういう意見を我が国として、これは日本人の国民の健康被害につながるわけですよ、もちろん、買っている人にも問題がありますけれども。ただ、そういった抗議というのをきちんとやれるような体制になっているんですか、それとも今まで何もそういうのはしていないんですか、どうですか。

辻政府参考人 個々のことについてはあれでございますけれども、ICPO等、他国といろいろな捜査につきましては協力するような形になっておりますので、事件をやっていきます中で必要に応じまして協力を求めていくというようなことでやってきているところでございます。

中丸委員 要は、直接相手国というより、ICPOを通じてしか今現状ではできないということでよろしいですか、理解としては。

辻政府参考人 基本的にICPOというのが中心になりますけれども、国によりまして個別にそのような協力関係が構築されておれば、またそういうようなルートも通じてお願いしていくということになろうかと思います。

中丸委員 なかなか中国とそういう協力関係を築くというのは捜査上は難しいのかもしれませんけれども、であれば、さまざまな外交的なものも含めて今後これに対応していかないと、今はバイアグラですけれども、しばらくすると、またほかのも出てきますよ。よくわからない、どこまで真実かわかりませんけれども、とてもこの場では言えないようなものを使った薬とかをつくっているらしいですから、ああいう国は、気をつけないと。ぜひとも徹底的に取り締まりをして、そういう違法がないようにしていただきたいというふうに思います。

 今ちょっとそういう話が出ましたけれども、今回アメリカと結ぶ、もうこれはすごい大事だと思います。でも、さっきのICPOも含めて、もっと我が国は来日してくる外国人に対して、もちろん、ほとんどの他国の人は、純粋に観光であったり、食事であったり、ショッピングであったり、日本文化を楽しむ、そういうことで来られるわけですけれども、一部、こういう意図的に悪い形で私腹を肥やすというようなことを考えている人たちも多数いるんだというやはり厳しい目も持っていないといけないと思います。

 今度、また東京でオリンピック・パラリンピックもあるわけですから、より世界じゅうから人が入ってくることを予想されて、それはもう今から準備しても間に合うかぐらいの年月しかないと私は思うんですけれども、テロだけじゃなくて、ひどい組織性でいうと、ベトナムのグループで実際にあった某日本のユニクロさん、某じゃないですね、集団万引きとかですね。手口を聞いたらすごいですよ。店員に片言の日本語で声をかけて、それをやっている間に別のグループがスーツケースを持っていって、万引きって、一枚、二枚じゃないですからね、かばんに入るだけ全部入れて持っていくのは、これは完全なただの窃盗ですよ。そういうことをやっているグループとかもやはりいるわけですよね。

 何で私は問題意識をするかというと、これは個人がやっているのではなくて、共犯率が非常に高くて、グループで組織的にやっているというようなことがあるんです。こういうものを、さっきも言いましたけれども、前回は売春の話、売春グループの話を持ち上げて古屋大臣にも御回答いただきましたけれども、そういうさまざまな犯罪に物すごく広がっていまして、水際対策も大事なんですけれども、実は、一つ、私はきょう提案があります、せっかく大臣に来ていただいていますので。

 私が二〇〇三年にイラクに行っていたときに、当時、陸上自衛隊がサマワに入ったときに、事前に、自衛隊が来る数カ月前に私は行っていたんですけれども、そのときに現地の部族の人たちと話をしたときに、日本の自衛隊はヤバーニの国だからしっかり俺たちが守ってやる、自衛隊を現地の人たちが守ってやるとおっしゃっていました。というのは、結局、イラクの場合は部族、部族というのは、要は親類縁者なんですよね、その町に住んでいる人が。そういうグループがあって、それ以外の人が町に入ってきたらすぐわかるというんですよ。ふだんここに住んでいないやつが入っていると、あいつは誰だということがすぐわかると。

 これは実は防犯上非常に大事なポイントだと私は思っていまして、今の外国人のこともそうですけれども、どこどこのマンションに、よくわからない国の人が五、六人集まって夜な夜な何かやっているとか、そういうのは、実は警察だけではやはり限界があると思います。

 民間事業者とか民間の人たちと協力して情報収集をする仕組みというのをどういうふうに構築したらいいかというのがあるんですけれども、そういうのをお考えになられたことはありますか。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 民間との連携ということで、まず、テロの未然防止ということで民間との連携はどのようにしているかというふうにお答え申し上げたいと思いますけれども、やはり未然に防止するためには、警察の力だけでは十分ではないというふうに認識しております。そういうことで、民間の事業者あるいは地域住民の方々と緊密に連携して、官民一体の日本型のテロ対策というものを今現在進めているところでございます。

 例えば、近年、我が国におきましても、市販の化学物質から爆発物を製造する事案が発生しております。そういうことで、警察としましては、爆発物の原料となりますものを販売している事業者に対して、販売時の本人確認でありますとか販売記録の保管、あと不審情報の通報などを要請しておりまして、事業者と連携してこういう不審者への販売防止等に必要な取り組みをやっております。

 それからもう一つは、テロの容疑者等に悪用される可能性のあるホテルとか旅館、レンタカー、あるいはネットカフェ、こういう事業者に対しても同様の措置を講じて連携体制を構築しているという状況でございます。

中丸委員 ぜひ地域の住民の方とも、やはり警察機関の方が町内会とかそういう方々とのコミュニケーションを密にしておくと、そういうこともどんどん情報として入ってくる、入ってきた情報を集約してきちんと対応するという仕組みも我が国にはやはり必要だというふうに思いますので、なかなか一般市民からすると、車を運転していて後ろにパトカーにつかれると、何となく背筋が張って、ああ、シートベルトはしているなとか、そういうことを気にする方がやはり強くて、何となく敷居が高いんですね。

 そういう意味では、住民から歩み寄ってくるのでなくて、警察機関の、警察職員の方から住民に歩み寄るという姿勢をしっかりやっていただくことがまたこういう犯罪防止に役立つというふうに思います。

 今、外国人のテロというのがあって、テロというのは、爆弾とかそういうものだけではなくて、今度、東京でもオリンピックがあるわけですが、以前、長野でオリンピックがあったときに、聖火リレーを非常に妨害した、何か赤い旗を振っていた軍団がいて、この人たちはもう立派なテロですよ、はっきり言って。

 当時、あれだけもめたわけですよね。今回、東京でオリンピックを行うに当たって、そういう交通整理も含めて、こういうのを防止するとかということは考えておられますか。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 今委員御指摘の件は、北京オリンピックのときに長野で聖火リレーが行われて、その際に中国人が多数集まってという事案だと思いますけれども、それにつきましては、事前の情報収集によりまして混乱も予想されたということもありますので、かなり異例の態勢でありますけれども、当時、約三千名の態勢を長野県警は確立しまして、警備を実施いたしました。

 やはりこういう、オリンピックもまさにそうなんですけれども、大規模のイベントを安全かつ円滑に進行させる、確保するというためには、やはり事前の情報収集等が非常に重要でありますし、そういうことを踏まえて、万全の態勢で警備をやっていきたいというふうに思っております。

中丸委員 もちろん、万全の態勢で警備をやっていただくというのは当たり前なんですけれども、これは警察だけではなくて、さっきも住民の人もありましたけれども、さまざまな協力を得ながら、あと、やはり、国として、オリンピックというのは世界の本当の平和の祭典でございますので、そういう席で、政治的なものとか、自分の国をスポーツで誇示するのは幾ら誇示してもらってもいいですけれども、そういった、聖火リレーのときを利用したりとか、応援席でいろいろなものを振り回したりとか、非常にセンスのないというか、民度の低いというか、そういうことをやる国が実際にあるわけで、そういうものに対して啓発活動みたいなことも、これはちょっと警察庁さんの仕事じゃないかもしれませんけれども、これはやはり、本当に世界で一番すばらしいオリンピックを東京でやろうとしているわけですから、世界で一番すばらしいのは、施設がすばらしいだけではなくて、おもてなしと言っているわけですから、ホスピタリティーというのは、治安それから道徳観、倫理観も含めて世界一でないといけないと私は思うんです。

 ちょっと通告ではないんですが、古屋大臣、どのようにお考えですか。オリンピックのときのそういう治安とか風紀とか、そういうものに対して。

古屋国務大臣 委員御指摘の二〇二〇年のオリンピック・パラリンピックは、国際的な注目度が非常に高いですよね。なおかつ、オリンピックが決定したのは、日本は、東京は世界一安全な国であるというのがアピールの一つでしたよね。滝川クリステルさんが、三十億円のお金を落としても戻ってくると。あのプレゼンテーションのときに場内がざわめいたそうですね。それぐらい驚異を感じる。だからこそ、この治安責任、大きな責任があるというふうに思っております。

 そのためにも、我々、既に、警備局長を長にして、二〇二〇年オリンピック・パラリンピック東京大会準備室を設置しております。特に、大会の組織委員会とか関係機関とも緊密な連携をとって、二〇二〇年に向けてもう作業が始まっています。治安維持、万全の対策を講じて、このオリンピックの成功につなげていく、極めて重要であるという認識のもとに、私も国家公安委員長として警察をしっかり督励してまいりたいというふうに思います。

    〔平委員長代理退席、委員長着席〕

中丸委員 ありがとうございます。

 私、古屋大臣には本当に期待しておりますので、くれぐれもよろしくお願い申し上げます。

 そういうところで、最近の国際テロ情勢についてもいろいろお伺いをしてみたんですけれども、やはり依然として高い。アルカイダだけではなくて、今、ローンウルフと言われる存在もたくさん出てきている。そういう意味では、本当に多様化して難しくなっているというのがありまして、さっき水際という言葉も出ましたけれども、そういう意味では、入管における取り組みというのは非常に大事だと思います。

 入国管理局の、テロ防止等のための取り組みの現状について、簡略に説明をしていただけますか。

杵渕政府参考人 お答え申し上げます。

 入国管理局では、これまで、テロを未然に防止するためのさまざまな取り組みを実施してきておるところでございまして、例えば、関係省庁との協議に基づいて、法務大臣がテロリストとして認定する者について退去強制ができる法整備をいたしました。その上で、我が国に上陸する一定の外国人に指紋及び顔写真の個人識別情報の提供を義務づけ、その活用を図っております。

 また、テロリストは、紛失・盗難旅券を使用することが多いと推察されるところでございますが、諸外国の紛失・盗難旅券に関する情報を迅速に入手し、入国審査の際に活用することができるよう、ICPO、紛失・盗難旅券データベース情報といったものを活用して、紛失・盗難旅券の行使者の入国を水際で阻止しているところでございます。

中丸委員 後で聞こうと思っていた答えまで答えていただきまして、ありがとうございました。

 顔写真にしても、ICPOから紛失旅券とか盗難旅券の情報もしっかりもらった上でやるということなんですけれども、ICPOもすばらしい組織だとは思いますけれども、やはりアメリカというのはすごい情報を持っているんですよね。そういう意味で、今回の協定によって、国内の連絡部局と米国との照会というのは可能になるんでしょうか。どうですか。

杵渕政府参考人 お答えいたします。

 入国管理局におきましても、重大な犯罪の防止を目的といたしまして、本協定を利用する国内連絡部局となる予定でございまして、必要な場合には、米国に対して照会を行うことを想定してございます。

中丸委員 ありがとうございます。

 これだけのものをやっていこうと思うと、今、でき得ることというのがたくさん出てきた。非常にそれが有効な手段であるということは委員の皆さんにも御理解いただけたと思うんですけれども、ただ、これは実際、システムでやるわけですから、一次照会と二次照会、特に遺留指紋についてちょっとお尋ねしたいと思うんですけれども、個人情報の保護にもちろん配慮するわけですが、米国から照会対象とした指紋を限定するというふうに聞いていますけれども、特定の者を識別しない、要は、遺留指紋なので、その指紋が誰のかわからない指紋なわけですから、特定の者を識別していない照会の対象とする指紋に限定しておらず、無罪が確定していた、もともと犯罪候補というか、容疑者であっても無罪になる人も当然いるわけで、そうすると、データベース上だけで言えば、無罪が確定したような指紋とも照合することになってしまうと思うんですけれども、もしこのような人の指紋の照会が来た場合には、アメリカに対して情報を提供するのかしないのか。いかがですか。

栗生政府参考人 お答えいたします。

 米国が特定の者を識別していない照会をしてきた場合には、御指摘の無罪判決確定者の指紋も第一次照会の照合対象には含まれるものの、その後の第二次照会に対して対象者の人定事項等の個人情報を提供することについては、慎重な判断を要するものと考えております。

中丸委員 慎重な判断を要するのは当然でございますので、そういうところも、またこれからルールとしてもつくり上げていっていただきたいというふうに思います。

 特に、無罪が確定した人とか、本来そうあるべきじゃなかった人たちの情報まで、誤解されるように、ほかの犯罪者と同じようにデータが行ったり来たりするようなことになると、またあらぬ疑いをかけられたりということもありますので、ぜひとも慎重に対応していただきたいと思います。

 先ほどちょっと、アメリカに入国する場合に公用パスポートで行くと物すごくいろいろな質問、あなたはテロリストですかとか、あなたのお父さんはテロリストですか、そういう、何か、はいと答えたらどうなるんだろうみたいなのを私もこの間、昨年行くときに三時間ぐらいかけてやりましたけれども、そういう中で、普通に、公用じゃなくて通常のパスポートで行けば米国に入国するときに指紋を採取されるという状況になっていると思うんですけれども、この協定により、要は、アメリカに入国するときに、全ての日本人の指紋の照会が行われることになったりする可能性があるのかないのかが、まず一点。また、それによって、この協定により、今まで入国できていた人が入国できなくなるなんという可能性があるのかないのか、この二点を教えていただけますか。

河野政府参考人 お答え申し上げます。

 PCSC協定を活用した情報のやりとりの話でございますけれども、このPCSC協定に基づいて、いわゆる指紋について自動照会を行うことができるのは、引用になりますが、状況から判断して、ある個人が重大な犯罪を実行するかまたは実行したかについて調査する必要がある場合。これは、すなわち、特定の人に関して、その人が重大な犯罪への関与というものが具体的に疑われる場合、そういったケースにおいてのみこの仕組みを使うことができるということになってございます。

 したがいまして、通常、米国に入国される日本人、そのような嫌疑を持たれる人の方が少ないと思うんですけれども、そういう一般の日本人の渡航者について一律に自動的にこの協定に基づく照会が行われるわけではございません。

 また、この協定により米国に入国できない日本人がふえるのかというふうなお尋ねがございましたけれども、この協定はあくまでも情報のやりとりをするということを定めておるだけでございまして、この協定が今、日米いずれの国におきましても入国審査において用いられているいろいろな条件というものに新たな条件を付加するということはございません。

 したがって、現在、適正に、適法に米国に入国されている方がこの協定によって入国できなくなる、そういうふうなことはございません。

中丸委員 それを聞いて少し安心しました。

 先ほどもちょっと質問でも出ていましたけれども、システムを構築するのは、今、要は、日本の警察が管理しているシステム、データベース、アメリカのやっているデータベース、記録方法からプログラム、システム、全部違うわけですよね。これをやはり同期させるというのはゼロから何かを立ち上げるより難しい話になるわけですね。全く違った開発したものを今度合致点をつくっていかなければいけない。こういう意味で予算も非常にかかるという話もありましたけれども、それはお金はかかると思います。

 非常に重要なんですけれども、これをやっていくのに、今この協定を結ぶ、さっきも言ったようにいろいろな課題があって、ガイドラインも含め、そういうシステム構築、今からそれをつくっていくわけですけれども、既存の組織で片手間でできるようなことではないと思うんですね。かなりの労力を割かないとできないものだと思うんですけれども、十分機能さすために、政府においても、昨年十二月に「世界一安全な日本」創造戦略という閣議決定の中で「関係国内法令制定を始めとする協定実施のために必要な基盤を整備する。」というふうになっているんですが、組織、人員についてもそれぞれ裏づけが必要だと考えるんですが、私も、この制度を実効的に運用するために本当に必要だと思います。

 古屋大臣、それについて教えてください。

古屋国務大臣 委員御指摘のように、このPCSC協定が承認され、法律の成立の後、やはりまず日米間で、システムの仕様をどういった形にしていくのか、それから、一番重要な部分だと思いますけれども、セキュリティー対策をどういう基準にしていくか、あるいは全体の運用体制等に対して協議を行わせていただきたいというふうに思っております。

 そういった協議を踏まえて、この協定が的確に実施することができるような必要な予算の確保、あるいは運用体制を確保するために、私、国家公安委員長としても警察をしっかり督励してまいりたいというふうに思っております。

 重要であるという認識は全く委員と共有をいたしております。

中丸委員 ありがとうございます。

 その中で、一つ提案も兼ねて申し上げたいと思いますけれども、警察庁が現在も捜査で活用しているデータベースと今回の協定による照会に回答するデータベースとをリンクさせていくわけです。そういう中で、照合用電子計算機というふうに用語では呼ばれるそうなんですけれども、そういうリンクさせたものをシステム上つなげてしまうというのは、ウイルスもそうですが、さまざまな面で危険度がどんと増すわけですね。だから、基本的にはシステム上は分離すべきであると私は考えます。

 それで、しかも、システム上分離した上で、お互い照会をかけるわけですから、そのときに、サーバー上直接つながるのではなくて、当然、整合性を保つためもあるんですけれども、クライアントという存在を間にお互いに入れて、そこが全ての窓口になって、サーバーには絶対直接入れないという状況にしておかないと、これがオンラインでつながってしまうと、今度はバックドアの問題とかも出てきますから、そういうのを含めて、クライアントを必ず経由させることと、バックドア対策も含めて、こっちはオンラインではなくてオフライン状態に置く。

 これ以上のセキュリティーは逆にないと思うんですけれども、そういうことも含めて考えていただけるかどうか、教えていただけますか。

古屋国務大臣 委員はITの関連の社長もされておられましたので、こういったことは非常に造詣が深いというふうに私も認識いたしております。

 まず、最初の御質問のシステムについては、スタンドアローン、独立型であるということは絶対だというふうに思っておりまして、今後の取り組みにおいても、そういった独立型のものになるというふうに考えています。

 それからもう一つ、セキュリティーに関してですけれども、今、統一基準とか運用指針を策定して、政府を挙げて、情報セキュリティー全体の取り組みの強化を図っているところでございまして、私も国家公安委員長をしていて、常に警察には、最先端の取り組みを必ず行っていく、これはやはり日々進歩して、変化していますので、そういったものをしっかりキャッチアップをしていけということで、私も督励をいたしております。

 具体的に、このPCSC協定の運用に当たって、今後、関連システムの整備とか、今申し上げましたように、米国当局とのやりとりが必要でございますけれども、こういったときには担当の職員を配置して、システムの設計の段階から情報管理の専門職員を投入いたしまして、実際の運用段階においても専門職員にチェックさせる機能を充実させて、情報セキュリティーの万全を確保していく必要があるというふうに考えておりまして、しかるべく対応をさせていただきたいと思います。

中丸委員 しかるべく対応ということで、非常に心強いお言葉をいただいたと思うんですけれども、システムを構築するときももちろんなんですが、今度は運用する上での管理というのが必要になりまして、実は、そういう俗に言うハッキングとかではなくて、こういう運用で情報漏えいとか情報改ざんで一番怖いのは、ヒューマンエラーなんですよね。要は、内部の人が行うこと、これが一番怖いのであります。

 時間も来たので、最後の質問で、簡潔に大臣に答えていただきたいと思うんですけれども、その運用管理を行うのは警察庁、指導監督する部署もしくは組織、人員が必要だと思うんですが、そういう監査体制といいますか、チェック体制についてお考えがあれば、教えていただきたいと思います。

柴山委員長 古屋大臣、時間になりましたので、簡潔にお願いします。

古屋国務大臣 今、若干、後段で答えさせていただきましたように、まず、運用段階でも実際にチェック機能を充実させる、極めて大切でございますので、そういった専門職員の確保とともに、そういった運用をしていきたいというふうに考えています。

柴山委員長 終了でございます。

中丸委員 はい。ありがとうございました。

柴山委員長 次に、大熊利昭君。

大熊委員 みんなの党の大熊利昭でございます。本日もよろしくお願いをいたします。

 まず、今回の法案、そのもとになっている協定ですか、この説明を事前に事務方の皆さんからお伺いしたときに、重大事件ということで、かつて有名になった、今でも未解決の世田谷一家殺害事件というのがありまして、私、近所に住んでおりまして、大変な衝撃を受けた記憶がありまして、こういった事件の解決に少しでもというより十分に役立っていける、そういうことなのかどうか、そういう期待も込めてお話を伺っていたわけでございます。

 そうした中で、まず大臣に、委員長に、今回の協定及び法律、重大な犯罪を防止というふうに頭書きであるんですが、警察としては、どのような形で防止に役立てていけるのか、一言お願いいたします。

古屋国務大臣 警察といたしましては、被疑者の検挙によって、その検挙された人間が計画をしていた、例えば次なる犯行を防止する、こういう意味、すなわち、捜査を通じて犯罪を防止するという形でこの協定を活用していきたいというふうに考えております。

大熊委員 犯罪の連鎖を防ぐんだ、そういうふうな理解をさせていただきました。

 具体的に、法律及び協定、特に協定の方を中心にお伺いさせていただきます。外務省さんにお伺いさせていただきますが、これは、法律の名称もそうなんですが、協定の中に、この「防止」の後、「及びこれと戦う」と。しかも、この漢字が、戦の「戦う」、こういう名称になっている。恐らく、英語を訳したからこうなっているんだろうと思われますが、これは普通、犯罪を防止して、残念ながら起きてしまった場合は検挙をするとか、そういった日本語になるのではないかと思うんですけれども、この「戦う」ということにならざるを得ないのは、これは、訳であるからという以外に、どういうふうに考えればいいのか、一言お願いいたします。

河野政府参考人 お答え申し上げます。

 この協定あるいは本文の中で使われている「戦う」という言葉でございますけれども、委員御指摘のとおり、この「戦う」という言葉は、英語の中でのコンバットという言葉を訳したといいますか、これに当てた言葉でございます。

 これは、これまで日本が犯罪関係の国際約束である協定、条約というものを結んでおりまして、その中で、英語でコンバットという言葉とクライムが結び合わさった場合、これは必ず、犯罪と戦うというふうな格好での言葉を当ててきております。

 ちなみに、米国がほかの国と結んでおります同種の協定においても、コンバットという言葉を使われておりまして、これがテロなどの重大な犯罪に取り組むという姿勢を示す上での適切な表現ということと考えております。

大熊委員 ちなみに、国内法上、これはちょっと法制局の方に来ていただければよかったのかもしれませんが、法令上、「戦う」とした、そういう用語、用例というのはあるものなんでしょうか。これは通告外なので、もし可能であれば教えていただけますか。

河野政府参考人 国内法についてのお問い合わせでございますが、申しわけございません、私が持っておりますのは、いわゆる協定に関するものだけで、協定に関して申し上げれば、例えば、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約でありますとか、あるいは、米国との間、刑事に関する共助に関する日本国とアメリカ合衆国との間の条約、こういった犯罪関係の条約について、コンバットとクライムという言葉があるときに、「犯罪と戦う」、「国際的な組織犯罪を防止し及びこれと戦う」というふうな格好で用例がございます。

 いわゆる法文に関しましては、法体系の中での整合性ということが重要と思いますので、このような先例といいますか用例というものを踏まえて、こういった言葉を当てているということでございます。

大熊委員 ある程度、外から来たものをどうやって整合させるかということで、いたし方ない面もあるのかなということで理解をいたしました。

 続いて、この協定の中身についてなんですが、第四条でございますが、一番で、重大な犯罪の防止、先ほどからも防止とございます。そうすると、これを拡大して解釈してしまいますと、何にもない状況の中で情報提供が可能になってしまうのではなかろうか、こういう心配をするわけなんでございます。

 その先の「特定の状況」というところも含めてでも結構なんですが、この「特定の状況」というのは一体何であって、その判断基準というのは一体どんなものなのか、まず外務省さんにお答えいただければと思います。

河野政府参考人 お答え申し上げます。

 協定の第四条の規定についてのお問い合わせでございますけれども、この協定の第四条におきまして、いわゆる指紋に関する自動照会を行うことができるのは、この四条の3に規定がございますけれども、「特定の状況から判断して、ある個人が重大な犯罪を実行するか又は実行したかについて調査する理由がある場合にのみ、」これを「開始することができる。」これを言いかえますと、ある個人について、具体的な重大な犯罪についての嫌疑がある場合ということになります。

 そのような具体的な嫌疑がある場合についてのみ照会をかけられるということでございますので、何もないような状態において、いわば予防的にこの仕組みを使って指紋情報について照会をかけるということは許容されておりません。

 「特定の状況」というのは、具体的には、重大な犯罪の具体的な疑いがあって被疑者を逮捕したようなときに、自動照会で情報をかけるということが想定をされます。

 また、重大な犯罪が実行される前、防止する観点からそういったこともあろうかと思いますけれども、その場合であっても、重大な犯罪に関与しているという具体的な疑いというものはやはり必要でございます。

 したがって、本日の審議でも既に何度か出ましたけれども、例えば、アメリカに日本人が入国するような際に、そのような具体的な嫌疑が何もない方について、アメリカの当局がこの協定の仕組みを使って指紋情報を照会するということは認められないということでございます。

大熊委員 そうであれば、具体的な嫌疑があるときというふうにこの協定に条文を追加すべきであると申し上げたいと思います。これに書いていないですよね、おっしゃられたことが条文上書いていないので、これはおかしいんじゃないかなというのが一点。

 もう一つ、伺っていて思ったのは、これを見て、第四条の3、「ある個人が」という主語を特定されております。先ほどの質疑で、組織がという場合について、個人は特定できないけれども、ある疑わしい組織がの場合は適用されないと。これは条文上、適用されませんよね、どう見てもというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

河野政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げました第四条3の「特定の状況から判断して、ある個人が重大な犯罪を実行するか又は実行したかについて調査する理由がある場合にのみ、」というのは、今まさに委員の御指摘のあった、具体的な嫌疑があるということを意味しているということでございます。

 それから、「ある個人が」というふうに書かれてございますけれども、犯罪捜査におきまして、いろいろな組織犯罪につきましても個人について捜査が行われるというふうに理解しておりますので、そのような観点から……(大熊委員「個人または組織はになっていないはずです」と呼ぶ)

柴山委員長 まだ答弁が途中ですので、まず答弁を聞いてから再質問してください。

河野政府参考人 ここは、要するに、先ほど申し上げた、この協定の基本的な構造というのは、まさに個別具体的な案件があった場合に情報の共有、交換を行い、それによって得られた情報というのは、個別具体的な案件の捜査において必要な範囲内において利用する、要らなくなればそれを削除するというふうな、そういった基本的な考え方に立ってつくられておる協定でございます。

大熊委員 私、ざくっと言うと、右寄りの話と左寄りの話を同時に聞いているわけなんですが、やり過ぎちゃ困りますよという話。つまり、具体的な嫌疑があるときというふうに条文で明記されていないので、これはおかしいんじゃないかという点と、一方、俗に言う右寄りに寄せる、もっと強めろという主張としては、「ある個人が」とだけ特定されているので、個人が特定されない、いかがわしい組織犯罪については、これは条文上明記されていないので、組織または個人がとすべきではないかというふうな、クリアに言うとそんなことなんですね。

 この点、もう一言だけ、この両面について、両方を聞いているわけなんです。これを手短に、確認でも結構なので、お願いいたします。

柴山委員長 では、以上の二点について、明確に御答弁ください。

河野政府参考人 恐れ入ります。

 個人か組織かという話でございますけれども、この協定におけます情報の共有のシステムというのは、指紋、例えば日本からアメリカに対して照会する場合には、日本が持っている指紋というものをアメリカが持っている指紋に対して照会をかけるということになりますが、組織といった場合には、組織の指紋というのはございませんので、あくまでもそれは個人ベースでの情報ということになります。

 そういったことになりますので、ここの規定におきましては、組織ではなく個人にならざるを得ないということだろうと思います。

柴山委員長 前者の方、具体的な嫌疑。

河野政府参考人 具体的な嫌疑というのは、確かにその言葉は書いてございませんけれども、先ほど申し上げた四条の3の「特定の状況から判断して、」かくかくしかじかの「重大な犯罪を実行するか又は実行したかについて調査する理由がある」、まさにそのような疑いがあって、その人についての事実関係というものを調査する理由があるというのは、まさに具体的な嫌疑がある場合ということを意味しているという理解でございます。

大熊委員 まず後ろの方から。

 であれば、この嫌疑ということ、言葉というのは大事ですから、しかも書いたものが残る条文というのは大事ですから、嫌疑というのは明記すべきだろうというふうに思います。

 前者については、逆のケース、アメリカから来るケースは必ずしもそうではないんじゃないかなと。日本のケースは、日本から提供する場合はそうでしょうけれども、逆のケースは必ずしもそうではないんじゃないかなということを指摘して、ちょっと次に行かせていただきます。

 そうしますと、また警察、委員長の方に戻りまして、今回のシステムを整備するに当たって、大体これは幾らぐらい、先ほどの中丸委員の方からいろいろなシステム上の注意点といいますか、ありましたけれども、おおよそ幾らぐらいシステム整備にはかかるものなのか、お願いいたしたいと思います。

古屋国務大臣 結論から先に申し上げると、今、幾らかかるのかということは、はっきりとした数字は、現時点ではちょっと申し上げられないです。

 まず、自動識別システムをどういう設計にするのか、それから、どういう整備を行っていくのか、それから、通信回線をどの程度のスペックにしていくかとか、あとは、セキュリティー基準はどうすべきか、これは両国間でしっかり協議をしていかなきゃいけないので、その協議がまとまれば、その中身に基づいて予算措置をしていくということになりますが、そういうステップを踏んでいかないと、今の時点で幾らというのはなかなかちょっと申し上げるわけにいかないのかなという状況でございます。

大熊委員 わかりました。

 わからないということで、これは法律が通った後、いろいろな形で積み上げていくんだろうということで理解をいたしました。

 続きまして、また協定の方に戻りまして、四条の次の五条ですね、この五条、追加情報提供の条文も、これも、やはり訳しているからなのか、なかなか理解ができない部分がありまして、一方の国で犯罪を構成していなくても、他方の国で犯罪を構成していればいいというふうな理解でも実はないんですよね。よろしいでしょうか。そういう理解は間違っている、そういうことでよろしいでしょうか。

河野政府参考人 お答え申し上げます。

 協定の第五条の趣旨に関するお問い合わせでございますけれども、特にその中で、委員御指摘のあったのは協定の五条の3かと存じますが、「情報については、照会する締約国政府による防止、探知又は捜査の対象となる行為が照会を受ける締約国政府の国内法令によれば犯罪を構成するか否かにかかわらず、提供する。」こういう規定になっております。

 ここの「犯罪を構成するか否かにかかわらず、」という部分についてのお問い合わせと思いますけれども、これは、この協定の構造についてはもう既に御案内のとおり、一次照会で指紋がヒットした場合、その人について二次照会をかける。それで犯歴なんかを照会することになりますけれども、ここで照会をする契機となった重大な犯罪というのが、相手国の国内法令によれば犯罪になっていない、そういったケースにおいても、聞かれた側は情報を提供すべきであるということを書いてある。つまり、アメリカで犯罪になっていて日本で犯罪になっていないことについて問い合わせを受けた場合であっても、日本から要請された情報というのは提供するということになります。

 これはすなわち、この協力に当たって、双罰性、両方の国で罰せられるという、その要件は課さないということを明確にするために置いてある規定でございます。

大熊委員 それは当たり前なんですが、私が心配しているのは、両方の国で両方とも犯罪になっていないのに情報提供が行われるんじゃないかということを聞いているわけなので、その心配は引き続き残ったという、そういうことで理解させていただきます。

 あと時間がないので、どんどん進みますと、第七条の、これはちょっと事前に事務方の方ともちょっと議論がかみ合わなかったんですけれども、第七条、まずこれは主語が「国内連絡部局は、」となっていて、相手方が「国内連絡部局に対し」となっているんですが、国内の部局同士のことだと読んだんですが、けさのお話ですと、日本の警察からFBIに対してのだという御説明なんですが、まず、これはどっちですかね。

河野政府参考人 お答え申し上げます。

 協定第七条の規定でございますけれども、これは、情報を受領した国内連絡部局が、要請があった場合に、情報を提供した国内連絡部局、つまり、例えばアメリカの国内連絡部局が日本の国内連絡部局に対して、提供された情報の利用について、その結果を通報する。国内でやるというわけではなくて、日本とアメリカの連絡部局同士の連絡としてやる結果の通報でございます。

大熊委員 この条文上が、「国内連絡部局は、」で、「国内連絡部局に対し」ということなので、済みません、ちょっと私は短時間で理解ができていないんですが。

 今の御答弁どおりだとした場合に、そうすると、仮に、この情報、追加情報がたまたま特定秘密情報になっちゃった場合に、外国に提供しなければならないことになるんですよね。「結果を通報する。」と条文上書いてあって、結果を通報できるじゃないですから。「結果を通報する。」と。

 だから、たまたま特定秘密情報になっちゃった場合には、通報しなきゃいけないことになってしまうので、これはおかしいのではないか、日本国の国内法上でおかしくなるのではないかというふうに思うんですが、どうでしょうか。

河野政府参考人 お答え申し上げます。

 ここで定めておりますのは、例えば、日本から提供した情報というのがアメリカの国内当局に渡っていて、ここで日本が、その情報をどう使ったのですかというふうに聞いた場合に、アメリカ側から、提供された情報を使って国内の犯罪捜査においてこれこれこういった罪状で起訴をしました、あるいは、しませんでした、そこに至りませんでした、そのような、その情報の利用の結果について通報をするということでございますので、いわゆる特定秘密にかかわるような話がその中に含まれるというのは、通常であれば余り想定されないかなというふうに思います。

大熊委員 通常では考えられませんが、一〇〇%ないとは言えないですよ、そういうことで。情報そのものと、情報の利用の結果は違いますから、利用の結果でたまたま入っちゃうことだって理論上あり得るので、これはやはり法制上おかしいと思いますよ。

 ちょっと時間が終わっちゃったんですが、ここはおかしいと指摘して、終了させていただきます。

 以上です。終わります。

柴山委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 法案について聞きます。

 今回の法案では、アメリカからオンラインで指紋の自動照会を受ける仕組みを導入するものですが、この照会は、特定の者を識別した照会と、特定の者を識別しない照会の二通りあります。

 アメリカが照会をかける対象となるのは、それぞれの場合で何人分くらいになりますか。

栗生政府参考人 お答えいたします。

 まず、特定の者を識別して行われる第一次照会につきましては、被疑者指紋約一千四十万人分のうち約三百万人分が対象となります。

 次に、特定の者を識別しないで行われる第一次照会については、被疑者指紋の全てが対象となります。約一千四十万人分でございます。

赤嶺委員 特定の者を識別した場合、アメリカが照会できる三百万人、この指紋情報について聞きますが、具体的に、どういう人たちの指紋情報ですか。

栗生政府参考人 お答えいたします。

 米国から特定の者が識別されている照会を受けましたときに対象とされる指紋情報は、協定の附属書2の1(1)と法案第三条第一項に規定されております。

 具体的に申し上げますと、有罪判決確定者、また、逮捕された成人のうち公判中の者、起訴猶予処分を受けた者、捜査中の者、さらに、指名手配被疑者でありまして、これらの種別とともに、協定上の自動指紋識別システムに記録されているものでございます。

赤嶺委員 つまり、アメリカが、特定の者を識別して照会した場合、照会の対象となる三百万人とはという場合には、有罪になった人や捜査中の人たちなどということですね。

 それで、アメリカが特定の者を識別しないで照会した場合、その照会の対象者は、先ほどの答弁では約一千四十万人ほどだということでありました。そのうち三百万人は有罪が確定した人たち、残りの七百万人の中には、判決での無罪確定者や、嫌疑不十分で不起訴となった者、そういう人たちが含まれているのではないですか。

栗生政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねの約七百四十万人分の指紋情報の内訳につきましては、主な者としては、身柄不拘束の被疑者のうち起訴猶予処分を受けた者、捜査中、公判中の者、また、少年法による保護処分等を受けた者、さらには、起訴猶予以外の理由による不起訴処分を受けた者、無罪判決確定者でございます。

赤嶺委員 無罪確定者や不起訴の人たち、要するに罪に問う嫌疑がなかった者たちも含まれているという答弁です。

 七百万人の中には、そういう罪に問う嫌疑がなかった人たちがかなり多いんじゃないかと私は思うのですが、その人たちも含めて、個人が特定されないで照会を受けた場合、アメリカからの照会の対象となるんですか。

栗生政府参考人 お答えいたします。

 米国から、特定の者を識別しないで照会をしてきた場合、端的に言えば、犯罪現場に残された遺留指紋について米国から照会が来た場合には、お尋ねの約七百四十万人分の指紋も自動照会の対象となります。

 したがいまして、身柄不拘束被疑者のうち起訴猶予処分を受けた者、捜査中、公判中の者、少年法による保護処分等を受けた者、起訴猶予以外の理由による不起訴処分を受けた者、無罪判決確定者といった指紋情報も自動照会の局面では対象となります。

赤嶺委員 先ほどの質問でも、無罪になった人たちも対象にするのかという質問がありました。無罪だった人たちが自動照会を受け該当した場合は、アメリカから追加情報を要請されることになります。その人たちの個人情報などの扱いはどうなるんですか。

栗生政府参考人 お答えいたします。

 米国が特定の者を識別しないで照会してくる場合には、無罪判決確定者等の指紋も、先ほど来御答弁いたしましたとおり、第一次照会の照合の対象には含まれるものの、その後の第二次照会に対して対象者の人定事項等の個人情報を提供することについては慎重な判断を要するものと考えております。

赤嶺委員 慎重な判断はそれは必要ですよね、個人情報ですから。私が聞いたのは、そういう無罪の人たちも、個人情報を提供する、追加情報としてアメリカに送ることがある、そういうことですね。

栗生政府参考人 お答えいたします。

 まず、第一次照会で、個人を識別しない、すなわち、遺留指紋など指紋だけが日本側に照会が来るわけでございます。そのときの第一次照会に対する自動回答は、日本の電子計算機、データベースにそれが記録されているか記録されていないか、それが記録されている場合には指紋を送るということになっておりまして、それ自体は、個人を特定する情報が自動回答で返るわけではございません。

 次に、私が先ほど慎重な判断を要すると申し上げたのは第二次照会でございまして、例えば、提供される場合ということなんですが、例えば米国から、テロリストのアジトから採取された遺留指紋が照会されてきた場合というようなことが考えられます。そのようなケースについては人定事項を提供することはあり得ると考えております。

赤嶺委員 無罪であった場合でも、アメリカからテロリストだという疑いを持たれたら、それは個人の情報も提供する。それに限定するんですか。

栗生政府参考人 お答えいたします。

 人定事項といった個人情報を提供するような場面は、テロなどの人命にかかわる事案を除いて想定しがたいと考えております。

 いずれにいたしましても、個別の事案に応じまして慎重に判断してまいりたいと考えております。

赤嶺委員 最初から限定されているわけではないんですね。個別の事案に応じて検討していく、そういう流れの中で、無罪の人たちの個人情報も提供していく。私は、そういう人たちも提供の対象となることがやはり問題だと思っております。

 次に、それでは、日本の指紋情報の取り扱いについて聞きます。

 現在、日本の指紋情報の取り扱いを具体的に規定しているのは、国家公安委員会規則第十三号の指掌紋取扱規則、これになっていますね。

栗生政府参考人 お答えいたします。

 質問の御趣旨を正確に捉えているかどうか、お答えになるかどうかですが、まず、指紋を持っている根拠という観点から申し上げますと、都道府県警察は、被疑者の同一性を特定することを目的といたしまして、刑事訴訟法の規定に基づき指紋を採取し、そして保管をしております。

 また、被疑者の同一性を特定するための指紋の照合を効率的かつ効果的に行うために、各都道府県警察が同一の方式により指紋に係る資料を作成し、これを全国的な規模で運用する必要がございます。このため、警察庁は、警察法の規定に基づき、都道府県警察に同一の方式により指紋情報を作成させ、送付させ、これを保管、運用しております。

 言及のございました国家公安委員会規則につきましては、そういった今申し上げたような法律の根拠に基づく指紋の保有について、具体的な取り扱いについての細則を定めたものでございます。

赤嶺委員 指紋の取り扱い、これも警察法に基づいているという意味ですか。

栗生政府参考人 お答えいたします。

 委員御下問の指紋の取り扱いという言葉にかかわるわけでございますけれども、先ほど私が御答弁申し上げましたのは、保有し、目的のために保有するわけですけれども、それを使うことについて警察法に規定がございまして、それは、警察法五条二項の十九号に「犯罪鑑識施設の維持管理その他犯罪鑑識に関すること。」という規定がございます。

赤嶺委員 指紋の保管や記録の作成、そういう運用手続、これも警察法に根拠がある、そういうことなんですか。

栗生政府参考人 警察庁が犯罪鑑識に関する事務を行うことについて、警察法の先ほど申し上げた規定が根拠となっているということでございます。

 そして、その所掌事務を、犯罪鑑識という、指紋取り扱いを含む犯罪鑑識という所掌事務を遂行するために、国家公安委員会規則でその実施に関する細則が定められておりまして、具体的な取り扱いについて定められております。

赤嶺委員 指紋の保管、記録の作成、運用手続、先ほどから私は繰り返し質問しておりますが、それは国家公安委員会の内部規則で決められていると。

 データベースからその記録を削除する、これはどういった場合ですか。

栗生政府参考人 お答えいたします。

 削除は、指紋の取り扱い、別の表現で言いますと指紋の保管、管理に当たりますけれども、その保管、管理につきましては、警察法の規定に基づきまして、これは国家公安委員会規則でございますが、指掌紋取扱規則を定めまして、その規則に基づいて運用を行っているところでございます。

 指紋情報を抹消し、または廃棄する場合につきましては、指掌紋取扱規則の中に具体的な規定がございまして、まず、被疑者指紋につきましては、指紋を採取された被疑者が死亡したとき、指紋情報等を保管する必要がなくなったとき、また、遺留指紋につきましては、当該事件について確定判決を経たとき、当該指紋情報等を保管する必要がなくなったときと規定されてございます。

赤嶺委員 その保管の必要がなくなったときというのは、具体的にどういうことですか。

栗生政府参考人 お答えいたします。

 例えば、遺留指紋につきましては、事件の時効が到来したときでありますとかがその保管の必要がなくなったときに当たると思われます。ちょっと例が少なくて申しわけございません。

赤嶺委員 事前に伺ったところによりますと、九十九歳を超えたときとか、違法に指紋採取が行われた場合など。何で九十九歳を超えたら削除するかといえば、データに三桁では入れられないから、そういうお話を聞いて、わかったようなわからないようなものですが。

 ただ、無罪確定者、嫌疑不十分で不起訴となった人、こういう人などはデータベースから削除されないのですか。

栗生政府参考人 お答えいたします。

 被疑者の指紋につきましては、捜査の記録として警察において保有しておりまして、その中には、結果として無罪になった方のデータも含まれております。

 ただし、誤認逮捕など、指紋採取に至る捜査手続に瑕疵があった場合には、これらを抹消しているところでございます。

 先ほどの御答弁は、失礼いたしました、一定の年齢に達したときでございました。

赤嶺委員 違法に指紋採取が行われた場合、削除するのは当然ですが、無実の人でも、一度嫌疑を抱かれて指紋を採取されたら、ほとんど一生涯記録が残される、そういうことですね。

栗生政府参考人 お答えいたします。

 その期間はともかくといたしまして、まず、警察は、刑事訴訟法に基づきまして、都道府県警察が被疑者の人定を確認するために指紋を採取し、保管しております。これは逮捕時点の話なんですが、その結果、無罪判決が確定した方の指紋も捜査の記録として保有することになるわけでありますが、無罪が確定したというだけで、直ちに当時の指紋採取自体が違法になるものではないわけですから、このような指紋を引き続き保管することに法的な問題はないと考えられます。

 被疑者の同一性を特定するために指紋の照合を効率的かつ効果的に行うため、警察は、警察法の規定に基づき、各都道府県警察に同一の方式により指紋情報を作成、送付させ、これを保管、運用しているところでございます。

赤嶺委員 大臣に最後に伺います。

 無罪になった人たちの指紋もずっと記録が残される、日本ではそういう仕組みになっておりますが、イギリスでも同様の仕組みがあったときに、欧州人権裁判所から、訴追されなかった者及び訴追されたが有罪とされなかった者の資料等の保有は、私生活の尊重を受ける権利への不均衡な干渉となり、民主的社会に必要なものとみなすことはできず、欧州人権条約第八条違反があると判断して、その後、削除に至ったというぐあいに聞いております。

 日本でも、無罪が確定した者の指紋はデータベースから削除するべきではないかと思いますが、いかがですか。

柴山委員長 古屋委員長、質疑時間が終了しておりますので、端的に御答弁ください。

古屋国務大臣 今、栗生局長も答弁しましたように、刑事訴訟法の規定に基づき、保管をいたしております。無罪が確定した者の指紋も捜査の記録として保存をしていますが、無罪判決が確定をしたからといって、直ちに指紋の採取自体が違法になるものではありません。したがって、この指紋を保管するということ自体は法的な問題はないと考えています。

 また、警察法の規定に基づき、各都道府県警察に同一方法により指紋情報を作成、送付させ、これを保管、運用しています。したがって、警察庁の指紋の保有根拠については、現行の警察法に基づいてやっているということであります。

柴山委員長 質疑が終了いたしました。

赤嶺委員 終わります。

柴山委員長 次に、村上史好君。

村上(史)委員 生活の党の村上でございます。

 前段の方では、この法案の背景について何点かお尋ねをして、後段では、法案の具体的な問題について質問をさせていただきたいと思います。

 今までの議論でも明らかになってはおりますけれども、この協定が結ばれるその契機となったのは、もちろん、九・一一のアメリカでのテロでございます。しかし、あれからもう十数年が経過をいたしております。なぜ今このタイミングでこういう形で協定並びに法案が出てきたのか、御説明をお願いしたいと思います。

牧野大臣政務官 村上委員にお答えをさせていただきます。

 この協定は、我が国がこれまでに締結した国際約束において例を見ないものでありまして、特に、個人情報の保護などの観点から、慎重な検討を要するものでありました。このため、米国との交渉においては、こうした観点についてさまざまな議論を行いました。

 我が国といたしましては、米国が第三国との間で署名、締結しておりますPCSC協定も参考にしつつ、個人情報の保護などにより配慮した内容とするために、米国と第三国との協定には一般的に含まれない要素、例えば、一次の自動照会の後に二次照会がなかった場合に自動照会をした目的の説明を求めることができることや、自動照会の対象となる重大な犯罪というものも、原則長期三年以上の拘禁刑以上といった点でございます。

 こうした要素を盛り込むことを含めて、粘り強い交渉を行ってまいりました。そのために妥結まで時間がかかりましたけれども、数十回以上の詳細な議論を積み重ねることによって、個人情報の保護などにより配慮した適切な内容の協定をまとめることができたと考えております。

村上(史)委員 ありがとうございました。

 まさに、私も後ほど触れますけれども、いわゆる個人情報をいかに保護していくかに苦心をされたということだと思います。

 ただ、この問題は、我が国にとっても必要性のある問題だと思っております。アメリカから要請を受けなくても、日本側としても、そういう自主的な判断でこの必要性をもう少し強調する、あるいは提起をする余地があったのではないかな。

 といいますのは、二〇二〇年には東京オリンピックがございますし、その前にはラグビーのワールドカップもあります。そして、二〇一六年には日本でサミットも開催される予定になっております。そういう面では、まさにテロ対策として日本も真剣に取り組まなければならない課題であると思います。

 その点について、アメリカとの交渉をされてきた外務省として、どのように見解をお持ちでしょうか。必要性について、我々、我が国としてどれだけ必要性があったかということをお尋ねします。

河野政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員御指摘のとおり、この協定につきましては、テロを初めとする重大犯罪について、防止あるいは捜査について協力するという必要性というものを日本としても認めて、それがゆえに締結するという判断に至ったものであります。

 その過程におきまして、繰り返しの答弁になって恐縮でございますけれども、先ほど政務官からお答えいたしましたとおり、これまで類を見ない内容の協定であり、やはり、個人情報のやりとりがあるというところから、その点についてのしかるべき手当てが必要である、そういう強い問題意識を恐らくほかの国よりも強く持ってアメリカと交渉したことによって、結果的にちょっと時間がかかってしまった。ただ、その内容につきましては、これらの十分な配慮をしたしかるべき内容になったというふうに考えておる次第でございます。

村上(史)委員 そういう慎重な交渉の中で今日に至ったということは重々わかるんですけれども、この間にテロの形態というものも大きく変わってまいりました。あのときは、九・一一の場合はいわゆるアルカイダ型とよく言われますけれども、今は個人のテロも十分想定をされる。また、東アジアにおいては、あってはならないと思いますけれども、国家によるテロということも考えられます。

 そういう面で、テロに対する認識を再度確認したいと思います。

牧野大臣政務官 お答えいたします。

 二〇〇一年の米国同時多発テロ発生当時に比べ、アルカイダ本体は弱体化をしております。そうした過激派組織は、組織的に見ると弱体化しているということでありますが、委員の御指摘のとおり、昨年の四月のボストン・マラソンを狙ったテロ事件に見られるように、最近は、テロ組織とは直接かかわりのない個人が過激化して引き起こす個人テロが各地で起きております。

 このように、国際的なテロの脅威は拡散しており、依然として深刻であると考えております。このような個人レベルのテロの背景には、アルカイダを初めとするイスラム過激派組織が、インターネットなどを効果的に利用して過激な思想を伝播させている、広げているという現状があるものと認識しております。

 このような認識に基づき、我が国は、今後とも、国際社会と連携をして、テロ対策支援に積極的に取り組んでいく考えであります。

村上(史)委員 特に、我が国にとって、いわゆる核及び核施設、また核物質の管理、それに対するテロ、これについては、再三アメリカ側から、日本の対策はちょっと緩いのではないかという指摘も受けております。

 先般、四月十一日に、私は本会議で安倍総理に、核施設へのテロの関連につきまして質問をさせていただきました。

 その安倍総理の御答弁をちょっと申し上げますが、核セキュリティーサミットの際、高速炉臨界実験装置にある高濃縮ウランとプルトニウムを全量撤去の上、米国に移送し処分する日米合意をした、これは、核テロ対策の強化と研究開発の推進を両立させるのが目的だというふうに御答弁をされ、テロ対策上の必要性を総理自身もお認めになりました。

 そういう日米合意を受けた後、また改めてアメリカの方から核物質の保管管理に対する懸念が示されているということで、日本とアメリカと共有した認識をお持ちなのかどうか、そのことも不安になってまいります。

 あわせて、テロ対策として、どのように対応していくか、今の対応で十分なのかどうか、確認をさせていただきたいと思います。

広瀬政府参考人 ただいま委員が御指摘になりました、核セキュリティーサミットの際に合意をしました、日本の高速臨界実験装置から核物質、高濃縮ウラン及びプルトニウムを全量撤去するという合意につきましては、まさに今先生御指摘になりましたように、日米両国の協力によって、核テロ対策の強化及び研究開発の推進を両立することを目的としたものでございます。

 米国につきましては、機微な核物質をより機微でない形に転換する能力を持っており、また、各国の機微な核物質を受け入れているところでございます。

 日本におきましては、核物質の防護につきましては核物質防護条約を締結し、また、この国会にもその改正についてお願いをしているところでございますけれども、日米とも、この核セキュリティーについては、核テロ対策の強化ということで認識は一致しているものと思っております。

村上(史)委員 それでは、背景について、最後の質問をさせていただきたいと思います。

 今回の協定は、アメリカとの協定でございます。ただ、テロは日米だけの問題ではありません。やはり、ヨーロッパ諸国との問題もございます。

 今後の問題ではありますけれども、今後、EU諸国と同じような形の協定が結ばれていくのかどうか、先の見通しについてお伺いしたいと思います。

牧野大臣政務官 お答え申し上げます。

 今のところ、米国以外の外国との間でPCSC協定を締結する予定はございませんが、我が国における外国人による重大な犯罪の発生状況、そして、米国と各国との間のPCSCのシステムの運用実績などを見きわめつつ、必要に応じて検討していきたいと考えております。

村上(史)委員 ありがとうございました。

 それでは、法案の内容について伺ってまいります。

 まず、今のさまざまな法案の背景をお伺いした上で、改めてお伺いをしたいと思いますが、この協定の締結の意義、そして我が国にとってのメリットを明確に御説明いただきたいと思います。

河野政府参考人 この協定の締結によりまして、日米間の査証免除の制度のもとにおける安全な渡航というものを維持するということとともに、重大な犯罪に関しまして日米間で効果的な協力をする、そういうことを可能にする協定というふうに考えております。

村上(史)委員 それでは、連絡部局は具体的にどこになるんでしょうか、日本側、米国側。

河野政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国におきましては、この連絡部局は警察庁及び法務省の入国管理局だと。また、アメリカの方では、連邦捜査局、いわゆるFBIと国土安全保障省、DHSというところが国内連絡部局となる見込みでございます。

村上(史)委員 それでは、警察庁にお伺いをしたいんですが、この協定締結のメリットをどのように活用していこうとされているのか、お尋ねをします。

栗生政府参考人 お答えいたします。

 まず、この協定は、来る東京オリンピック・パラリンピック大会に向けた国際犯罪、テロ対策の強化に効果があるものというふうに見込んでおります。

 具体的な活用についての御質問がございました。

 犯罪捜査の場面について申し上げますと、被疑者を逮捕している場合や被疑者の逮捕に向けて現に捜査をしている場合に、協定に基づいて米国に照会をすることが想定されます。例えば、逮捕された者が氏名を黙秘している場合や、偽造パスポートを所持しており、本人が申告する氏名の真偽が判然としない場合に、この協定により照会をして氏名等の人定情報を入手することなどが考えられます。

村上(史)委員 ありがとうございました。

 それでは、指紋照会の基準でありますけれども、具体的にどのような基準で実施をしていくのか、お尋ねをします。

河野政府参考人 お答え申し上げます。

 この協定上、相手国への照会ということがございますけれども、協定の第四条3のところに、特定の状況から判断して、ある個人が重大な犯罪を実行するかまたは実行したかについて調査する必要がある場合にのみ、この指紋情報に関する自動照会を開始することができるということを明記してございます。

 これを端的に申し上げますと、ある個人について重大な犯罪について捜査をする具体的な嫌疑がある場合、そういったときに限って自動照会を行うことができるとなっております。

村上(史)委員 ありがとうございます。

 それでは、この法律で、あるいは協定で一番大きな問題となった基本的な権利及び自由、特にプライバシー及び個人情報の保護の尊重について、具体的にどのように担保するということになっているのか、お尋ねをしたいと思います。

河野政府参考人 この協定は、先ほど申し上げた具体的な嫌疑がある場合について、その必要の限りにおいて情報の提供、情報のやりとりをするということになっておりますけれども、その提供された情報の保管期間あるいは利用目的というものは、その照会の原因となった捜査の必要性に限ってのみ使用できるというふうな規定になってございます。

 さらに、第三者への開示というのは認められませんし、それから、情報の提供に際して条件をつけることが認められますけれども、その際にはこの条件に従うということが協定上義務づけられております。

 そのような情報の保護、保全のための措置というものを協定上盛り込んでおりまして、さらに、先ほど出てきた指紋の照会の際に、第一次照会において指紋があったとした場合に提供された指紋というのは、第二次照会で人定を聞くか聞かないか、それを決めた時点で削除する、すなわち、必要がなくなったら削除する、そういった規定が盛り込まれております。

 さらに、例えば、第一回目の指紋情報についてヒットするものがあったのに、通常であれば人定事項の照会があるはずなのになかった、そうしたら、何でなかったんだということが聞ける、そうすることによっていわば乱用を防止することができる、これはほかの国との協定にはない、日本独自の規定でございますけれども、そういった規定を置いております。

 包括的には、協定の中で、この協定の実施、運用について問題がある場合には協議するということがありますので、もし何か、今言ったようなさまざまな情報の保全、保護の措置について問題があるというような場合には、そのような協議を通じて、必要に応じて是正を求めていくということになると考えております。

村上(史)委員 日本側の意思はよくわかります。

 ただ、日本からアメリカに情報を提供する、アメリカの方の取り扱いの適正性といいますか、アメリカが本当に、情報の蓄積を、どういう形で処理をするのか、あるいはどの時点で削除をするのか、そういうことへの担保というのはとれているんですか。今のお話は日本側としての対応なんですけれども、それはきっちりとアメリカに同じような形で守ってもらえるのかどうかということなんですけれども。

河野政府参考人 お答え申し上げます。

 今申し上げた協定上の規定というのは、協定の当事者として日本もアメリカもともに拘束されるということになります。

 先ほど申し上げたとおり、もし情報の保全のやり方などについて、この協定にもとるようなことがあるのではないかというふうな問題があったようなケースにおきましては、協定上予定されております協議などを通じてまさに議論を行い、もし問題があった場合には是正を求めていくということになりますので、そういったものを通じてアメリカ側にも、万一ですけれども、万一、協定に従っていないようなことがありましたら是正を求めていくということになります。

村上(史)委員 ということは、実際にこの法律が運用されて、現実の問題が起こったときに、そのときに対応、もしそういう問題が惹起されれば二国間で協議をするということで、システム上、法律上担保されているわけではないということでよろしいですか。

 今、問題が起こったときに協議をして対処していくというふうにおっしゃいましたけれども、制度上はそれが担保されているわけではないんですねというお尋ねです。

河野政府参考人 お答え申し上げます。

 そもそも協定として約束をするわけでございますので、基本的には、その協定に書いてある保全措置あるいは取り扱いについて、その協定に従うというのが当然でございまして、まずは、前提として、お互いがそれを守るということが前提になります。

 その上で、万一、仮にそうでないような事態があった場合には、先ほど申し上げた協議などを通じて是正していくということでございます。

村上(史)委員 終わります。ありがとうございました。

柴山委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

柴山委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。赤嶺政賢君。

赤嶺委員 私は、日本共産党を代表して、日米重大犯罪防止対処協定実施法律案に対して反対の討論を行います。

 今回の法案は、アメリカからオンラインで指紋の自動照会を受ける仕組みを導入するものです。

 対象となるのは、日本の捜査当局が保有している約一千四十万人分に上る被疑者指紋のデータです。その七割強、およそ七百万人は、無罪確定者、嫌疑不十分等での不起訴になった者などの指紋です。

 しかも、日本の指紋取扱規定には、無罪確定者や不起訴になった者の指紋をデータベースから削除する規定がありません。これは、世界の流れに反するものです。

 また、個人情報である指紋の具体的な管理が、欧州諸国では常識となっている法律によってではなく、国家公安委員会の内部規則となっていることも大きな問題です。

 このように、極めて問題の多い指紋情報データベースにアメリカがオンラインでアクセス可能とすることは、国民の人権保護の観点から見ても重大な問題があります。

 政府は、国際的な犯罪に対応するためにと言いますが、二国間及び多国間での国際捜査共助の協力を行う制度は既にあります。日米間においても、日米刑事共助条約によって、重大犯罪の捜査のための指紋情報の交換が既に行われています。実際の指紋の照会は年に数件程度であり、自動照会を導入する必要性はありません。

 以上、今回の法案で、網羅的かつ容易に大多数の無罪確定者等へも照会を可能とする自動照会の仕組みを導入することは、人権保護の観点から看過できません。このことを強く指摘し、反対討論とするものです。

柴山委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

柴山委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、重大な犯罪を防止し、及びこれと戦う上での協力の強化に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定の実施に関する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

柴山委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

柴山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

柴山委員長 次回は、来る十八日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時八分散会


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