衆議院

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第13号 平成27年6月10日(水曜日)

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平成二十七年六月十日(水曜日)

    午前八時三十分開議

 出席委員

   委員長 井上 信治君

   理事 秋元  司君 理事 亀岡 偉民君

   理事 田村 憲久君 理事 谷川 弥一君

   理事 中山 展宏君 理事 河野 正美君

   理事 高木美智代君

      青山 周平君    穴見 陽一君

      池田 佳隆君    石崎  徹君

      岩田 和親君    越智 隆雄君

      大隈 和英君    大西 英男君

      岡下 昌平君    加藤 寛治君

      金子万寿夫君    神谷  昇君

      木内  均君    武部  新君

      寺田  稔君    中村 裕之君

      長尾  敬君    長坂 康正君

      平口  洋君    ふくだ峰之君

      松本 洋平君    宮崎 政久君

      若狭  勝君    阿部 知子君

      近藤 洋介君    佐々木隆博君

      鈴木 貴子君    津村 啓介君

      古本伸一郎君    宮崎 岳志君

      山尾志桜里君    小沢 鋭仁君

      高井 崇志君    初鹿 明博君

      升田世喜男君    輿水 恵一君

      濱村  進君    池内さおり君

      塩川 鉄也君

    …………………………………

   国務大臣

   (内閣官房長官)     菅  義偉君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長) 山谷えり子君

   国務大臣         山口 俊一君

   国務大臣         甘利  明君

   総務副大臣        二之湯 智君

   法務副大臣        葉梨 康弘君

   厚生労働副大臣      山本 香苗君

   内閣府大臣政務官     越智 隆雄君

   内閣府大臣政務官     松本 洋平君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  向井 治紀君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  谷脇 康彦君

   政府参考人

   (内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局次長) 麦島 健志君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 中川 健朗君

   政府参考人

   (警察庁交通局長)    鈴木 基久君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    高橋 清孝君

   政府参考人

   (特定個人情報保護委員会事務局長)        其田 真理君

   政府参考人

   (総務省大臣官房地域力創造審議官)        原田 淳志君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 上冨 敏伸君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 富山  聡君

   政府参考人

   (国税庁長官官房審議官) 上羅  豪君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房情報政策・政策評価審議官)  安藤 英作君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房年金管理審議官)       樽見 英樹君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           大西 康之君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           苧谷 秀信君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           吉田  学君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房統計情報部長)        姉崎  猛君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房物流審議官)         羽尾 一郎君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           宮城 直樹君

   政府参考人

   (国土交通省総合政策局公共交通政策部長)     藤井 直樹君

   政府参考人

   (国土交通省道路局次長) 黒田 憲司君

   政府参考人

   (環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長)   鎌形 浩史君

   参考人

   (日本年金機構理事長)  水島藤一郎君

   内閣委員会専門員     室井 純子君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十日

 辞任         補欠選任

  池田 佳隆君     穴見 陽一君

  加藤 寛治君     金子万寿夫君

  若狭  勝君     長坂 康正君

  緒方林太郎君     宮崎 岳志君

  津村 啓介君     鈴木 貴子君

  小沢 鋭仁君     初鹿 明博君

同日

 辞任         補欠選任

  穴見 陽一君     池田 佳隆君

  金子万寿夫君     大西 英男君

  長坂 康正君     中村 裕之君

  鈴木 貴子君     津村 啓介君

  宮崎 岳志君     阿部 知子君

  初鹿 明博君     小沢 鋭仁君

同日

 辞任         補欠選任

  大西 英男君     加藤 寛治君

  中村 裕之君     若狭  勝君

  阿部 知子君     緒方林太郎君

    ―――――――――――――

六月八日

 特定秘密保護法を速やかに撤廃することに関する請願(藤野保史君紹介)(第一五一五号)

 韓国・朝鮮人元BC級戦犯者と遺族に対する立法措置に関する請願(近藤昭一君紹介)(第一六三六号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 道路交通法の一部を改正する法律案(内閣提出第三八号)(参議院送付)

 内閣の重要政策に関する件(年金情報流出問題・サイバーセキュリティについて)


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     ――――◇―――――

井上委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、参議院送付、道路交通法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局次長麦島健志君、内閣府大臣官房審議官中川健朗君、警察庁交通局長鈴木基久君、法務省大臣官房審議官富山聡君、厚生労働省大臣官房審議官大西康之君、厚生労働省大臣官房審議官苧谷秀信君、国土交通省大臣官房物流審議官羽尾一郎君、国土交通省大臣官房審議官宮城直樹君、国土交通省総合政策局公共交通政策部長藤井直樹君、国土交通省道路局次長黒田憲司君、環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長鎌形浩史君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

井上委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

井上委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。河野正美君。

河野(正)委員 おはようございます。維新の党の河野正美でございます。

 ただいま議題となっております道路交通法の一部を改正する法律案につきまして、維新の党を代表いたしまして、六十分質問をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 まず、交通事故の現状についてお尋ねをいたしたいと思います。

 平成二十六年の交通事故死者数は四千百十三人ということでございます。十四年連続して減少しております。最悪であった昭和四十五年の一万六千七百六十五人に比べ、約四分の一に減ったということになっております。

 昭和三十年代の終わりから四十五年にかけては、東京オリンピック、それに合わせて東海道新幹線、首都高速など、東京を中心に町の形が変わっていった時代ではないかなというふうに思っております。そして昭和四十五年というのは、一九七〇年ですけれども、大阪で万国博が開かれた年であります。

 私は、議員になる前に、精神科医としてうつ病や自殺対策の講演を頼まれることが多く、この交通事故の死亡者数というのを引用させていただいておりました。

 昭和四十五年といえば、私は東京で小学生だったんですけれども、まさに高度経済成長で、甲州街道の近くに住んでおりましたので、大きなトラックが排気ガスや砂じんを巻き上げて走る、そういった時代だったと記憶しております。当時、交通戦争という言葉が新聞紙上などに躍り、何とかしなければならない、そういったことから、大きな交差点に積極的に歩道橋が設けられたり、小学生がランドセルに黄色いカバーをつけたり、あるいは通学路に緑のおばさんと言われた方々が立つなど、さまざまな取り組みが行われたというふうに思っております。その結果、死亡者数が減少してきたということであります。

 若干、話が前後しますけれども、私、精神科医として自殺の講演を頼まれたときに、この交通戦争で亡くなる方より実に二倍の数の三万人が自殺をされているということを講演でお話をしていたところであります。

 ちなみに、東京マラソンというのがすごい人数で走っておられますけれども、あれも三万人ぐらいですので、まさに年間、あれぐらいの数が自殺をしているということを講演でお話をさせていただいておりました。こちらの方も、平成十八年、自殺対策基本法が制定され、さまざまな取り組みによって今、減少傾向にあるところは御承知かと思います。

 話がいろいろとそれましたけれども、政府として、ここまで着実に減少してきた要因についてどのように評価しているかを山谷国家公安委員会委員長に伺いたいと思います。

山谷国務大臣 交通事故死者数は、昨年まで十四年連続して減少しておりまして、平成二十六年の交通事故死者数は四千百十三人となったところです。

 近年の交通事故死者の減少の要因としては、飲酒運転や速度違反など、死亡事故となる可能性の高い悪質な違反を伴う交通事故が減少したこと、シートベルト着用率や自動車の安全性能の向上により、事故の際の被害が軽減されていることなどが挙げられるものと考えております。これは、関係機関、団体が連携し各種交通事故防止対策に取り組み、国民の安全意識や規範意識が向上した結果と考えております。

 他方で、最近は、致死率の高い高齢者の人口が増加していること等を背景として、交通事故死者数の減少幅が縮小する傾向にあり、今後さらに交通事故死者を減らすためには、関係機関、団体との連携を強化しながら、なお一層の取り組みが必要と考えているところでございます。

河野(正)委員 ありがとうございました。

 山谷大臣におかれましては、しっかりとこういった取り組みを続けていただきたいと思います。

 きょうは、ちょっと細かい点をいろいろと伺おうと思いますので、政府参考人の方に答弁をお願いしております。山谷大臣、よろしければ、もう退席されて結構でございます、どうぞ。(山谷国務大臣「法案審議なので席にいます」と呼ぶ)適宜、休憩されて結構です。

 ところで、交通事故の発生件数を見ますと、昭和四十四年ごろから一つの山があり、その後急減したものの、昭和五十年代に入ってから再びふえ続け、平成十六年に、九十五万二千七百九件と過去最悪の件数を記録しています。また、平成二十六年は、五十七万三千八百四十二件と大きく減らしてきております。

 死者数と異なり、大きく二つの山が生じているわけですけれども、この間の経過についてどのように分析しているのかをお聞かせいただきたいと思います。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 戦後の自動車保有台数や交通量の急激な増加に伴い交通事故が増加し、交通事故発生件数は昭和四十四年には七十二万八百八十件に上るとともに、死者数については、昭和四十五年に、過去最も多い一万六千七百六十五人となったところでございます。

 このような状況を踏まえ、昭和四十五年に交通安全対策基本法が制定され、国や地方自治体の交通安全対策の体制が整備されるとともに、官民を挙げての交通安全対策に取り組んだところであり、その結果、発生件数、死者数ともに減少に転じたところでございます。

 しかしながら、高度経済成長や国民皆免許時代の到来による乗用車の普及等を背景として、交通量が一貫して増加を続ける中、昭和五十年代の中ごろから、交通事故発生件数、死者数ともに増加に転じたところでございます。

 昭和六十三年から平成の初期にかけては、再び事故死者数は一万人を超える状況となりましたが、シートベルトの着用義務化による被害軽減対策、飲酒運転の罰則引き上げや著しい速度超過等の違反に対する取り締まりの強化等の悪質、危険運転者対策など、特に交通死亡事故の抑止に重きを置いた対策を推進した結果、死者数については平成五年以降減少に転じたところでございます。先生御指摘のとおり、発生件数については引き続き増加の一途をたどり、平成十六年には九十五万二千七百九件とピークに達したところでございますが、交通量の増加が頭打ちとなったことや、その後の各種の交通事故防止対策の効果もあって、それ以降は減少に転じ、現在に至っているものと認識しておるところでございます。

河野(正)委員 では次に、高齢者の事故について伺いたいと思います。

 我が国は、超高齢化社会を迎えるとともに、いわゆる団塊の世代の方々が高齢者となられます。かつてのお年寄りは運転しない方も多かったと思いますが、これから高齢者になられる方々は、高度経済成長の時代に成人となられ、いわゆるモータリゼーション世代の方々でもあるわけであります。したがいまして、歩行者として交通事故被害に遭う方ばかりではなく、みずからが運転する側となられて、いわゆる加害者になってしまうケースも少なくないというふうに思います。

 高齢運転者による交通事故については、その発生数や事故の態様など、さまざまだと思われます。これまで交通事故の発生件数が多かった時期において、高齢運転者による交通事故にどのような特徴が見られたのかを伺いたいと思います。

鈴木政府参考人 まず、高齢運転者による事故の発生状況についてお話をしたいと思います。

 昨年の原付以上を第一当事者とする交通事故件数は、全体では五十四万四千二百七十九件であり、平成十六年と比較して約〇・六倍と減少しております。ところが、平成二十六年中の七十五歳以上の高齢ドライバーによる交通事故件数は三万三千九百五十五件でございまして、平成十六年と比較して約一・四倍に増加しておるところでございます。

 また、平成二十六年中の七十五歳以上の高齢運転者による交通死亡事故件数は四百七十一件であり、若年運転者による事故件数を超えているほか、年齢層別免許保有者十万人当たりの死亡事故件数を見ると、七十五歳以上の高齢運転者では十・五件であり、七十五歳未満と比較して約二・六倍となっておるところでございます。

 また、法令違反別で特徴を見ますと、七十五歳以上の高齢ドライバーは信号無視が七十五歳未満の運転者と比較して一・六倍、指定場所一時不停止等が一・六倍というふうな特徴を有しておるところでございます。

 このように、高齢化により今後また高齢者の免許保有者数が増加することも予想されるところであり、高齢運転者の交通事故防止対策が急務というふうに認識しておるところでございます。

河野(正)委員 そういったことであえて高齢者運転対策をされているというふうに認識いたしました。

 報道などでは、高齢運転者によるブレーキとアクセルの踏み間違いによる交通事故が多く報じられております。これは、認知機能にとどまらず、車の構造上の課題とも言えるかもしれません。近年はオートマチック車が多く、アクセルペダルとブレーキペダルの二つでありますし、クラッチがないことで、ドライブレンジに入っていればアクセルを踏むだけで思いっ切り加速して飛び出してしまうといったことになります。

 こうしたブレーキとアクセルの踏み間違いによる事故について、その構造上の対策が必要ではないかというふうに考えます。最近は、衝突被害軽減ブレーキというものが開発され、国内外の自動車メーカーで予防安全技術の向上が競われているように思います。このように、車両の側の新しい技術開発は交通事故被害を抑える意味でも重要と考えますけれども、政府の取り組みをお示しいただきたいと思います。

宮城政府参考人 お答えを申し上げます。

 アクセルとブレーキの踏み間違いでございますが、これはドライバーの操作ミスによるものでありまして、まずはドライバー自身が十分注意をして運転をしていただきたいというふうに考えてございます。

 しかしながら、高齢者を含めまして、絶対にミスをしない人間はおりません。そこで、車両側でも対策を講ずることが有効ではないか、このように考えてございます。

 具体的には、最先端の技術を駆使いたしまして事故を未然に防止する技術、これを、先ほど先生がおっしゃられたとおり、予防安全技術と申します。その開発普及を進めてまいりたいと思っております。例えばでございますが、駐車中や発進中にアクセルとブレーキを踏み間違えても、これを誤った操作というふうに感知いたしまして急発進をさせない、このような技術が実用化されております。また、近年普及が進んでおります、道路走行中に前方の車両等を感知してブレーキをかける、自動ブレーキでございますが、こういったものも効果があるものと期待しております。

 国土交通省におきましては、自動車のアセスメントにおきまして、これまでは専ら衝突時の安全性能評価というものをしてございました。これに加えまして、昨年から、事故を未然に防ぐ予防安全技術、これを評価し公表する制度を創設してございます。これにおきまして、まず緊急の自動ブレーキや、車線を超えて逸脱するときに警報する技術、こういったものの評価結果を公表いたしました。

 今後、この制度を充実いたしまして、予防安全技術の普及を一層促進することによりまして、運転操作ミスによる事故の防止に努めてまいる所存でございます。

河野(正)委員 今、盛んにテレビのコマーシャル等で、そういった衝突を未然に回避するといった車のコマーシャルをやっているかと思います。何か、本とかを見ていますと、メーカーによってかなり差があるというようなことも報道されているところでありますけれども、こういった一定以上の基準をつくっておいて、それを満たしてあるものであれば装着を義務化するなどという考え方もあるんじゃないかなと思いますけれども、この点はいかがでしょうか。

鈴木政府参考人 交通事故抑止に資する自動車の安全技術が開発普及されていくということは、交通の安全と円滑にとって望ましいものであると認識しております。他方、これらの技術の性能やコストも一様でないと考えられるところ、そうした技術を用いた車両の利用の義務づけについては、国民の皆様方の負担等も考慮し、慎重に検討していく必要があると認識しております。

 ただ、先進技術を活用して交通事故等の抑止を図っていくことは重要であるというふうに考えておりまして、そうした技術の開発状況等について、警察といたしましても注視してまいりたいというふうに考えておるところでございます。

河野(正)委員 ありがとうございました。

 次に、道路の逆走という問題について伺いたいと思います。

 本改正案が議論された段階では、特に高速道路を中心として、逆走対策の必要性が叫ばれていたのかと思います。そこで、逆走がどれだけ発生しているのかを伺いたいと思いますが、まず、これまでの発生件数の推移をお知らせいただきたいと思います。そして、高齢運転者だけが逆走をされているわけではないと思いますので、七十五歳以上の高齢者がどの程度含まれているのか、そういったことを含めて、その特徴や実態をお聞かせいただきたいと思います。

鈴木政府参考人 警察が把握しております高速道路における逆走事案でございますが、発生件数、平成二十六年は二百二十四件でございまして、そのうち七十五歳以上の運転者によるものが百六件、四七・三%を占めておるところでございます。

 推移ということで、若干さかのぼりますと、平成二十五年は、発生件数は百五十九件、うち七十五歳以上が七十七件、四八・四%、それから平成二十四年は、発生件数が二百二十七件、七十五歳以上が九十二件ということで、割合にして四〇・五%が高齢ドライバーの方によるものでございます。

 それから、特徴としては、昨年中のデータでございますが、本線上での逆走事故を把握したもののうち、追い越し車線上で生じたものが七二%という状況を把握しているところでございます。

河野(正)委員 大体、高齢者が半分弱ぐらいですかね。若い方も多いということは、やはりこれは何らかの対策をしないといけない、看過できない数かなというふうに思います。

 道路の逆走の発生要因というのは、端的に言えば運転者のミスに起因するんだと思いますけれども、そもそも間違いを起こしやすいといった道路構造上の問題も考えておかなければならないのではないでしょうか。逆走が生じやすい道路構造上の問題についてどのような認識をしておられるのか、逆走事案の考察というのもされていると思いますので、教えていただきたいと思います。

黒田政府参考人 お答え申し上げます。

 道路での逆走は、重大事故につながる可能性の高い、非常に危険な事象であると私どもも認識をいたしておるところでございます。

 高速道路を例にとりますと、警察庁からの情報の提供もいただき、国土交通省と高速道路会社で分析をいたしました結果、高速道路での逆走事案といいますのは、故意にUターンをして逆走を開始するといったこと、あるいは、錯誤により誤って進入をした結果、逆走を開始するといった原因があるということを把握しているところでございます。

 そして、このような認識を踏まえまして、各高速道路会社におきましては、道路をUターンしにくい構造にしていく、故意による逆走を未然に防ぐといった観点、あるいは、誤って進入するといったことを防ぐ、そういった観点から、物理的な対策、例えば合流部でラバーポールを設置するといったことですとか、あるいは視覚的な対策、注意喚起をする看板を大型化していく、そういった対策を講じることとしてございます。

 既に、昨年度までに、逆走が複数回これまで発生している全国三十三カ所につきましては、対策を完了いたしたところでございます。そして、今年度は、新たに三十四カ所を対象にしましてこうした対策を講じることといたしております。

 それから、あわせまして、対策の内容という点につきましても、医学ですとか交通心理学の有識者の方々から御意見をいただいて案内表示の内容を改善するといったことでありますとか、あるいは、誤って進入することが多いのは、高速道路の出口、一般道との接続部でございますけれども、そういった点の案内表示を改善していく、こういった点につきまして、警察庁など関係機関とも連携しながらしっかりと対応を進めてまいりたいと考えてございます。

河野(正)委員 いろいろ対応されているということで、複数回起こったところは三十三カ所、既に工事をされたということですけれども、そういった対応をされて、効果というのは今の時点でどうなんでしょうか。

黒田政府参考人 お答えを申し上げます。

 まだ対策を講じてそれほど期間がたっておるわけではございませんが、既に対策を講じたところでは、新たな逆走事例というのは生じていないというふうに承知しております。

河野(正)委員 では、今のところは効果があっているというふうに受けとめたいと思います。引き続きよろしくお願いいたします。

 本改正案によって、七十五歳以上の者が認知機能が低下した場合に行われやすい一定の違反行為を行った場合、臨時に認知機能検査を行うこととするというふうにされております。この一定の違反行為というのがどのようなものか、具体的にお聞かせいただきたいと思います。あわせて、この行為は常に見直しを行いながら運用していく方針なのか、お聞かせいただきたいと思います。

鈴木政府参考人 今回の改正により、七十五歳以上の運転免許保有者が認知機能が低下した場合に行われやすい一定の違反行為をした場合には、臨時に認知機能検査を受けてもらうということになります。

 現在、医師の診断が義務づけられる要件として、認知機能が低下した場合に行われやすい信号無視等の違反行為が定められておるところでございますが、御指摘の一定の違反行為については、現行法において医師の診断が義務づけられる要件としての違反行為を参考としつつ、認知症の専門医を含めた有識者の知見を踏まえながら、対象者を適切に選定できる基準を定める予定でございます。

 なお、この違反行為の内容については、改正法の施行後においても、施行状況を見て、必要があれば見直すこともあり得ると考えております。

河野(正)委員 認知機能の低下というのは、必ずしも七十五歳以上の方だけに生じるものではございません。若年性アルツハイマーであるとか、より若い年齢層でも認知機能の低下というのは起きます。

 若年発症の認知症の場合、その初期に認知症と理解することは極めて至難のわざになると思いますし、また、こういった場合は、働き盛りであったりもしますので、職業を持っている方も多くおられると思います。こういったことから、運転の機会が多い方がこういった若年性の認知症にはおられるんじゃないかなというふうに思っております。

 こうした若い運転者の認知機能をどのように把握していくのか、対策を含めてお聞かせいただきたいと思います。

鈴木政府参考人 現行の道路交通法においては、介護保険法第五条の二に規定する認知症について、運転免許の取り消し等の事由とされておるところでございまして、認知症の方については、年齢を問わず運転を認めないこととしておるところでございます。

 また、現行法においては、年齢のいかんにかかわらず、認知症の疑いがある場合には、医師の診断を受けさせることができることとされておるところでございます。

 警察では、七十五歳未満の方も含め、認知症に該当している方やその家族等からの相談への対応を行っているところであり、こうした機会や、免許更新手続その他の警察活動を通じて認知症の方を把握した場合には、運転免許の取り消し等の適切な対応を行っているところでございます。

 引き続き、七十五歳未満の方を含め、認知症の運転免許保有者に対する適切な対応が図られるよう、都道府県警察を指導してまいりたいと考えております。

河野(正)委員 初期の認知症というのを判断するのは非常に専門医でも難しいと思いますし、なかなか簡単にはいかないというふうに思います。後からまたこの点はお話ししたいと思います。

 認知機能検査を受けた者が一定の基準に該当した場合、臨時適性検査を受けるか、内閣府令で定める要件を満たす医師の診断書を提出することとされています。

 内閣府令で定める要件は今後検討されるというふうに聞いておりますけれども、どういったふうに想定されているのか。内閣府令の検討過程では、専門医等、医療現場の意見を丁寧に反映し、実効性ある制度にしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

鈴木政府参考人 今回の改正により、認知機能検査の結果、認知症のおそれがあると判定された者については、違反の状況等にかかわらず医師の診断を受けていただく制度を設けるものでございますので、改正後は、年間約四万人から五万人の方が医師の診断を受けることとなると推計しておるところでございます。

 この診断書の提出命令を受けた方が提出すべき診断書の要件については、診断の正確性を担保するとともに、診断ができる医師の体制に支障が生じないよう、認知症の専門医等の意見も踏まえながら今後検討してまいりたいというふうに考えております。

河野(正)委員 認知機能を診断する専門医というのは、そう多くはございません。むしろ、極めて少ないんじゃないかなと思います。

 以前、私、法務委員会の方にお邪魔して質問させていただいたんですが、覚醒剤事犯の刑を一部猶予して社会で見ていこうというような法案ができました。その方が長く刑務所にとどめておくよりも社会復帰に向けて有利だろうというようなことでつくられたというふうに認識しております。

 しかし、現実には、覚醒剤を見られる専門施設、覚醒剤のフォロー、出所した後の方の面倒を見ていける施設というのはほとんどありません。覚醒剤依存症を診ることができる専門医師なども本当にごくごく一部であると思います。

 同じように、認知症を診てもらうといっても、専門医は少なく、地域的な偏在も見られます。医師の診断に大きな差が生じてしまっては、制度の公平性、信頼性を損なうこととなります。この点をどのように考えるのか、教えていただきたいと思います。

鈴木政府参考人 現行制度上、臨時適性検査の対象となった者の利便を図る観点から、主治医の診断書の提出を求めているところでございますが、この主治医の診断書の正確性を高めるため、認知症専門医を含む調査研究を踏まえ、主治医の記載する診断書のモデル様式の普及を図っておるところでございます。

 御指摘のとおり、診断の正確性や公平性を担保することは重要であるというふうに認識しておりまして、引き続き、医師の方の認知症対応力の向上に係る施策が推進されるよう関係機関に働きかけを行うとともに、関係団体等の意見も伺いながら、診断書の様式の使用をさらに促進することも含め、専門医以外の医師による診断の正確性の向上に向けた検討を進めてまいりたいというふうに考えております。

河野(正)委員 本当に専門医というのが少ない現状をおわかりいただきたいと思います。私も、老年精神医学会の指導医まで持っていますけれども、本当に認知症をしっかりと診られる方というのは少ないという現状をわかっておいていただきたいと思います。

 現場を知らないと、なるほどだ、もっともだというような、うなずくような法律がたくさんあるかと思います。現実には対応できる体制がないということを、今お話ししましたように、委員各位にも御理解をいただいておきたいと思います。

 そして、医師には多くの文書作成が期待され、その負担も無視できません。三分診療などとやゆされることもありますが、極めて多忙な診療現場で複雑な文書を作成するということは極めて大きな負担になると思います。そして、私も診断書を何度も書いておりますけれども、医師が診断書を書くということは、場合によっては仕事を休んで法廷まで出ていき証言をしなくてはいけないというような責務を負った上で書いているわけでございます。こうした負担が診察に影響することは最小限にとどめておかなければならないというふうに思います。

 こういった負担について、配慮はあるんでしょうか。

鈴木政府参考人 今回の改正により、医師の診断を受けていただく方、先ほど申し上げたとおり、改正後、年間四万人から五万人の方が医師の診断を受けていただくことになろうかというふうに考えております。

 これに対し、私どもが把握しております認知症の専門医の方は全国で約千五百人程度いると承知しております。正確な診断ができる医師の体制が不十分であるとまでは考えておりませんが、先生御指摘のように、地域の偏在の問題等もございます。

 このたび政府で取りまとめた新オレンジプランにおいて、かかりつけ医の認知症対応力の向上あるいは認知症サポート医の養成等が掲げられておりまして、これらの施策が推進されることにより、さらに体制の整備が進むというふうに認識しております。

 今後、医師の負担にも配慮しつつ、関係機関等と連携しながら適切な制度の運用に努めてまいりたいというふうに考えております。

河野(正)委員 一口に認知症、認知機能障害といっても、その程度はさまざまであり、できること、できないことに大きな差があると思います。また、ちょっと専門的になりますけれども、シュードディメンシア、仮性認知症、偽痴呆などというものや、トリータブルディメンシア、治療可能な認知症というのもあります。こういった方々は、認知症の症状を呈していても、治療によって改善するというタイプの方々であります。

 一旦免許の効力を停止し、その後の認知機能の経過を見ながら再度免許を獲得できる免許停止というような仕組みができないのか、お尋ねをいたしたいと思います。

 先ほどお話ししましたように、認知症の専門医というのは非常に少ない数ですので、診断によっては、後からよく診たら治ったというようなこともあり得ると思いますので、この点、いかがでしょうか。

鈴木政府参考人 先生御指摘のとおり、認知症の中には、治療により症状が改善するものもあるということは承知しておるところでございます。

 そのため、現行制度におきましても、認知症と診断された方々が六カ月以内に回復する見込みがある、こういった場合には、一旦運転免許の効力を停止し、その後、再度医師の診断を受けていただき、認知症に該当しないこととなった場合には運転の継続を認めることとしておるところでございます。

河野(正)委員 現実に即した制度にしていただきたいなというふうに思います。

 次に、認知機能検査を受けた者が一定の基準に該当すると、その結果に基づいて高齢者講習を行うこととなります。

 一般的に、免許の更新時講習は、多くの受講者に一方的に講義されるものであり、形骸化しているというような指摘も聞かれるところであります。

 高齢者講習はどのような内容で行われるのか、実際に運転するような実技講習もあるのかどうか、実情を伺いたいと思います。

鈴木政府参考人 現行の七十五歳以上の高齢者講習においては、講義、運転適性検査器材を用いた検査、実車指導を行っておるところでございます。

 制度改正後は、これらに加えまして、実車指導時に記録したドライブレコーダーの映像を活用しつつ、個人の運転能力に応じた個別指導を実施するなど、七十五歳以上の高齢者のうち、認知機能が低下しているおそれがある者に対して行う講習について、その内容の高度化を図ることを検討しておるところでございます。

 この点、臨時高齢者講習において、このような高齢者講習のうち、認知機能とかかわりの深い項目について、受講者の最新の認知機能検査の結果に応じた安全教育を行うことを検討しております。

 具体的には、実車指導、実車指導時に記録したドライブレコーダーの映像を活用した個別指導等を内容とする講習を実施することを予定しておるところでございます。

河野(正)委員 また、今までお話を伺ってまいりまして、認知症患者さんの運転だけが、とりわけ危険のように扱われている気がいたします。

 人間は、加齢によって、誰しも身体能力が低下してきます。いわゆる運動神経がすばらしいと若いころ言われていた方でも、どうしても反応時間が遅くなります。危険を察知してからブレーキを踏むという行動に出るまでに、残念ながら、御本人はなかなか自覚していないかもしれませんが、時間がかかってしまう、ブレーキを踏みおくれるというようなことがあると思います。

 認知機能障害とは別に、身体能力が低下したであろう高齢者への対策というのは何か考えられているんでしょうか。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 高齢者は、一般に、加齢とともに視力や反応速度等の身体機能が低下し、自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある場合もあるというふうに認識しております。

 そのため、現行制度においては、運転免許証の更新期間が満了する日における年齢が七十歳以上の高齢者については、高齢者講習の受講が義務づけられておりまして、自動車の運転等を通じ、加齢に伴う身体機能の変化を自覚してもらい、安全運転の方法を具体的に指導する内容の講習を実施しておるところでございます。

河野(正)委員 ところで、高齢者にとって自動車は、買い物や病院などへの通院のため、暮らすために欠かせない移動手段となっているかと思います。特に離島や山間部、いわゆる僻地と言われる場所では、自動車利用は欠かせないというふうに思います。今回の改正で運転できなくなる高齢者がふえてしまうということで、その方にとって暮らしの質の確保が難しくなる可能性もあるかと思います。

 笑えないような笑い話でありますけれども、認知症の患者さんは、しばしば外来診察に配偶者と一緒に来られます。例えば、認知症のおじいちゃんが高齢の奥さんに付き添われてやってくる。そのときに乗ってくる車ですが、これを患者さんである旦那さんが運転して帰るというふうなことも、決して臨床の現場では珍しくないことであります。これが、我が国の地方都市における認知症診療の現実ではないかなというふうに思っております。

 高齢者から免許証を奪うことになれば、やむを得ず、介護施設あるいは福祉施設に入らざるを得ない方も出てくるかもしれません。こうした施策の必要性というのは十分認めるわけでありますけれども、あわせて、高齢者の移動手段の確保を進める取り組みが不可欠であるというふうに思います。それぞれの担当省庁が別々に施策を進めていくのではなく、連携した取り組みが必要なんじゃないかなと思います。

 生活のための移動手段の確保についてどのように対応しているのかを伺いたいと思います。

藤井政府参考人 お答えいたします。

 今委員御指摘のとおり、高齢化の急速な進展の中で、地域で今中心的な移動手段となっております自動車になかなか頼れない、その場合に足をどう確保するのかということが非常に大きな課題になってきていると認識をしております。

 この二月に政府は、交通政策基本法に基づきまして、交通政策基本計画を閣議決定いたしました。この中で、基本的な方針、三つございますけれども、その第一に生活交通の確保というものをまず掲げているところでございます。その上で、自治体を中心として、コンパクトシティー化などの町づくり施策と連携をして地域の交通ネットワークを再構築する、あるいは地域の実情を踏まえた多様な交通サービスの展開を後押しする、こういったことを目標として掲げて、必要な施策を政府一丸となって講じていくということにしたところでございます。

 具体的には、昨年改正をされました地域公共交通活性化再生法に基づいて、自治体にそれぞれの地域の交通に関する計画を策定していただいて、そこに盛り込まれた内容について国が一丸となって必要な支援を行っていく、こういった取り組みを進めたいと思っているところでございます。

河野(正)委員 法の趣旨は十分認識しているところでありますけれども、近年の在宅医療、介護を進める考え方の一方で、生活するための移動手段を奪うことは矛盾と言えるのかもしれません。

 自治体を中心に、高齢者を対象として、運転免許を自主返納してもらおうという取り組みが進んでいることかと思います。そこで、例えば福岡では、免許の自主返納の際に発行される運転経歴証明書によってバスやタクシーの料金が割引される仕組みがございます。

 高齢者の運転免許の自主返納の実態について伺いたいと思いますが、あわせて、自主返納の数には都市や地方といった、今、公共交通機関の話も出ましたが、地域差が見られるのかどうか、政府の把握している実情をお示しいただきたいと思います。

鈴木政府参考人 運転免許を受けた方は運転免許の取り消しを申請することができることとされており、それがいわゆる自主返納でございます。

 平成二十六年中の自主返納、申請取り消し件数でございますが、二十六年中、年間で二十万八千四百十四件でございますが、そのうち七十五歳以上の方によるものは九万六千五百八十一件でございまして、全体の四六・三%でございます。これは年々増加傾向にございます。

 それで、地域別という御質問がございました。都道府県別のデータしかございませんが、六十五歳以上の運転免許保有者に係る返納率を都道府県別に比較いたしますと、返納率が高いのは大阪府、東京都、静岡県等が高く、逆に低いのは三重県、福島県、茨城県等となっておるところでございます。

河野(正)委員 それを見ていますと、大阪とか東京、やはりそういった公共交通機関が充実したところで返納率が多いのかと。一方で、三重、福島ということですので、交通機関が厳しいのかなというふうに思います。

 自主返納の機会に公共交通を利用してもらうよう積極的に促していく仕組みが必要だと思いますが、そうした施策を進められているのかどうかをお聞かせいただきたいと思います。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 運転に不安を覚えるなど、運転免許を返納したい方が安心して運転免許を返納できる環境を整備することは、道路交通の安全を確保する観点からも重要な課題であると認識しておるところでございます。

 警察といたしましては、これまでも、関係機関等に働きかけ、運転免許を返納した方に対する公共交通機関の運賃割引等の支援措置の充実に努めてきたところでございますが、今後、地域公共交通の充実に向けて、自治体や関係機関等との連携を強めるなど、高齢者の移動手段の確保に向け、なお一層取り組んでまいりたいというふうに考えております。

河野(正)委員 ありがとうございます。

 政府として何らかの方向性を示して、しっかりと対応しておく必要があるかと思いますので、よろしくお願いいたします。

 日本創成会議がことし六月四日に示しました提言では、急速な高齢化で医療や介護の体制が追いつかない東京などの都市部から地方への移住を解決策にと訴えられています。東京圏高齢化危機回避戦略ということだそうです。

 しかし、地方では、先ほどもありましたように、都市部ほど公共交通が発達しておらず、先ほど来お話ししていますように、生活するための移動手段としては自動車の役割が極めて大きいのかなと思います。

 地方移住にはこうした課題があると思いますが、これらについて政府の見解を伺いたいと思います。

麦島政府参考人 お答え申し上げます。

 地方創生の取り組みの中で、地方への移住という御指摘がございました。

 地方への移住を進めるに当たりましても、昨年度行いました移住の意向に関する調査におきましても、移住する上での不安とか懸念点という中で、働き口が見つからないとか日常生活の利便性に次いで挙げられているのが公共交通の利便性という点でございます。その意味でも、移動手段の確保というのは地方創生の中でも非常に重要な課題であるというふうに考えてございます。

 過疎地域を含めまして、輸送需要が少ない地域におきましては、いわゆるバス路線だけではなくて、例えば、予約制で自宅と病院などを直接移動するようなディマンドタクシーの導入など、多様な交通サービスを組み合わせる形で公共交通網を確保するということが重要であろうと考えてございます。

 地域におきましてこのような多様な交通サービスを組み合わせた持続可能な交通ネットワークが確保されるように、公共団体が計画策定時等に必要な情報を提供するとともに、丁寧に対応するということなど、関係府省と連携して支援をしてまいりたいと考えているところでございます。

河野(正)委員 高齢者にとっては、医療、介護の体制が充実しているということも大変魅力だとは思いますけれども、今お話がありましたように、やはり、多様な生活であるとか生活の質の向上という意味では、交通機関をしっかりと担保していかなければいけないというふうに思います。

 先に行きたいと思います。

 次に、薬物乱用者についてお尋ねをいたしたいと思います。

 認知機能に問題を抱えた者が運転することは、その人自身はもちろん、周囲の車や人を傷つける大きなリスクであり、できるだけ少なくしていかなければなりません。

 その観点で、薬物、危険ドラッグなどの使用者による交通事故というのは、その者自身の判断に基づく行為によりあえて認知機能を低下させた上での運転であり、厳しく取り締まり、罰しなければならないと思います。

 現状、こうした者による交通事故の実態についてお示しください。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 平成二十六年中の、道交法第六十六条違反の薬物運転による交通事故件数でございますが、八十七件であり、前年比五二・六%の増加となっておるところでございます。

 特に、昨年は、危険ドラッグを使用した上での交通事故が多発しており、警察においては、蛇行運転等の異常な運転行為やこれに伴う事故については、薬物の影響によるものであることを念頭に、道交法第六十六条の薬物運転や危険運転致死傷罪等の法令の適用を視野に入れた厳正な取り締まりや交通事故事件捜査を推進しているところでございます。

 また、これらの違反行為が認められる場合には運転免許を取り消すなど、薬物使用者に対する厳正、適切な行政処分によりこれら運転者の排除に努めているほか、危険ドラッグ等の危険性について広報啓発活動を推進しているところでございます。

 警察といたしましては、危険ドラッグを含め薬物を使用した上での運転を防止することは重要な課題であるというふうに考えておりまして、引き続き取り組みを推進する所存でございます。

河野(正)委員 よろしくお願いいたします。

 高齢者の方は、病気というか病的状態によってそういった事故が起きやすい状態になっているわけですが、薬物、危険ドラッグ等は、自分がみずからそういった状況に置いた上でやっているということですので、きちんとやっていただきたいと思います。

 本改正案では、運転免許の効力の仮停止の対象を広げる規定が設けられていると思います。今回、酒気帯び運転、過労運転等の違反行為で交通事故を起こし、人を傷つけた場合もその対象とするというものであります。

 これまでは、死亡させたときのみであったと思います。これまで死亡のみを対象とし、今回、対象を負傷にまで広げたのはなぜか。教えていただきたいと思います。

鈴木政府参考人 道路交通法上、仮停止と申しますのは、事前の意見陳述手続を経ないで行う緊急の処分であることに鑑み、その対象を、悪質重大な交通事故を起こし、将来の危険性が極めて高いと認められている者に限定しておるところでございます。

 この点、今回の改正に係る酒気帯び運転または過労運転等の禁止の規定に違反する行為については、無免許運転等の悪質重大な違反行為と罰則や行政処分の基礎点数が同水準であるにもかかわらず、仮停止の要件がより厳格なものとなっておりまして、不均衡が生じていたところでございます。

 そこで、今回の改正では、酒気帯び運転または過労運転等の禁止の規定に違反した場合については、酒酔い運転や無免許運転等と同様に、人を傷つけた場合であっても仮停止することができるよう、運転免許の仮停止の対象範囲を拡大するものでございます。

河野(正)委員 交通事故の被害を受けた方にとりましては、加害者自身が飲酒や薬物等により意図して認知機能を下げた場合、その者は二度と運転すべきではないと考えるのが人情ではないかという意見があります。

 現状、こうした加害者が再度運転できるようになるのかを伺いたいと思います。

 人権上極めて繊細で難しいと思いますし、一旦処罰を終えた者は再チャレンジできるべきであると思います。その上で、被害者心情として、違反の常習性の高い者は二度と運転できなくなるような仕組みというのが考えられているのかどうか。政府としての見解を確認したいと思います。

鈴木政府参考人 運転免許の行政処分制度は、悪質、危険な運転者を道路交通の場から一定期間排除することを目的としております。

 例えば、飲酒運転等の悪質な交通事故を起こした者については、非常に危険な運転者と評価することが適当と考えられますが、他方、これらの者に対する行政処分制度のあり方については、車社会が進展した今日、自動車等を運転することが必須の生活手段であるということや、他の法令に基づく許可制度とのバランスについても考慮に入れる必要があるものと考えております。

 悪質、危険な運転者に対しては、取り消し処分者講習や停止処分者講習において、交通事故の悲惨さや飲酒運転の危険性を認識させるなど、処分を受けた者が再び違反を行わないような教育を実施しているほか、平成十九年の道路交通法改正により、平成二十一年六月から、運転免許の欠格期間、取り消し後の欠格期間でございます、これを上限五年から十年に延長したところでございまして、今後とも、安全教育や迅速的確な行政処分の一層の充実に向けて努力してまいりたいというふうに考えております。

河野(正)委員 次に、運転免許の区分が変わる点についてお尋ねをいたします。

 準中型免許を新設する改正案について伺いますが、まず、その趣旨をお聞かせいただきたいと思います。

鈴木政府参考人 準中型免許の創設の趣旨についてのお問い合わせでございます。

 最近の交通事故情勢を見ると、貨物自動車を中心とする車両総重量のより大きい車両の方が、一般的な乗用車に比べ、死亡事故発生の頻度がいまだ高うございます。

 他方、集配等で利用頻度の高い、物流の中心的な立場にある最大積載量二トンの貨物自動車が、保冷設備等の架装により車両総重量五トン超となることが多くなっておる現状にございます。現行、中型免許の取得可能年齢が二十歳であることから、これらの車両を高等学校を卒業して間もない者が運転することができないため、これらの者の就職にも影響を及ぼしているなどの指摘があり、全国高等学校長協会、全日本トラック協会等から制度の見直しについての要望も寄せられておるところでございました。

 これらを踏まえて、今回の改正では、貨物自動車に係る事故防止対策を一層推進しつつ、社会的要請にも応えた制度とするため、車両総重量が三・五トン以上七・五トン未満の自動車の区分を設け、これらの自動車を運転するには、準中型免許を要することとして、貨物自動車を使用した試験、教習等を行うこととするとともに、取得可能年齢を十八歳以上とするなど、免許制度の見直しを行うこととするものでございます。

河野(正)委員 ところで、免許の種類、区分が細分化し過ぎているようにも感じるところであります。

 現行の普通自動車は十八歳以上、中型自動車は二十歳、二年以上の方、大型自動車は二十一歳、三年以上の方ということでありますけれども、今回、普通自動車、準中型自動車、中型自動車、大型自動車というふうに細分化されます。

 免許取得後、私もですけれども、数十年たった人間にとっては極めてわかりにくいというふうに思います。通常、普通車しか運転していなくて、たまたま引っ越しであるとか何か業務があってトラックなどを運転しなければいけない場合、自分がどの車まで運転していいのかということが非常にわかりにくいんじゃないかなと思います。

 たび重なる制度改正は、本当にそういったことが生じると思いますが、自分がどの車まで運転していいのかといったことに対する啓発というのはどのように考えられているんでしょうか。

鈴木政府参考人 免許制度は、交通事故実態や自動車の普及、利用実態、自動車の運転特性等を踏まえて区分されておるものでございまして、今回の改正において、貨物自動車に係る事故防止対策及び社会的要請を踏まえ、四輪以上の自動車の免許を四種類に区分することは合理的であると考えておるところでございますが、改正後の新たな免許区分や取得要件等については、広く国民の皆さん、ドライバーの皆さんに周知を図る必要があると考えておるところでございます。

 今回の改正法については、公布の日から二年を超えない範囲内において施行することとされておるところでございまして、施行までの間に、警察庁や都道府県警察のホームページへの掲載はもとより、国土交通省等の関係機関や自動車教習所、トラック協会等の関係団体等を通じて、新たに免許を取得しようとする方、あるいは既に免許を取得している方に制度が周知されるよう、しっかりと広報してまいりたいというふうに考えております。

河野(正)委員 免許更新などの際に、あらかじめしっかりとそういった啓発をしていただかないと、トラック協会の方とかは専門職ですからわかるかと思いますが、一般の方が、さて、自分がちょっと何かでトラックを運転しなきゃいけないときに、どこまで運転していいのかというのは本当にわかりにくいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 また、そもそも、中型免許創設の際の趣旨は、普通免許で運転できる自動車のサイズが大きくて、未熟な運転者が大きな車を運転し、事故が多発したからというようなことではなかったんでしょうか。

 そうなると、前回、中型免許を創設した際に、今回の改正案のような指摘がなされていなかったのかどうか、伺いたいと思います。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 現行の中型免許制度でございますが、平成十六年の道路交通法の改正において設けられたものでございます。これは当時、改正前の道路交通法の普通免許で運転できる自動車のうち大型の車両総重量五トン以上八トン未満のものと、大型免許で運転できる自動車のうち車両総重量十一トン以上のものについて、車両保有台数当たりの死亡事故件数が顕著に高かったことなどを踏まえ、免許制度の見直しを行ったものでございます。

 また、当時、全日本トラック協会さんからも、当時の改正内容と同様の改正をすべきとの要望が寄せられておったものでございます。

 他方、今回の改正でございますが、車両総重量三・五トン以上五トン未満の自動車の交通事故実態や、近年の集配等で利用頻度の高い、物流の中心的な立場にある最大積載量二トンの貨物自動車が、保冷設備等の架装により車両総重量五トン超となることが多くなっている現状等を踏まえて、この範囲の貨物自動車に係る事故防止対策を一層推進しつつ、若年者の就職支援の必要性という社会的要請にも応えた制度について免許制度の見直しを行うものでございまして、対象とする自動車の範囲が異なるということでございます。

河野(正)委員 では、今回の改正案によって、未熟な運転者による事故が多発するといった影響については検討されているんでしょうか。伺いたいと思います。

鈴木政府参考人 今回の改正は、貨物自動車が大部分を占める車両総重量三・五トン以上七・五トン未満の自動車の運転免許について、貨物自動車を用いた試験、教習を行うこととするほか、取得時講習制度や初心運転者期間制度等の運転免許制度上の安全対策を導入するなどにより、貨物自動車に係る事故防止対策を一層推進しようとするものであり、交通事故防止に資するものというふうに考えております。

 ですから、今回の改正によりそういった若い方による交通事故が増加しないように、しかるべき対策を講じてまいりたいというふうに考えております。

河野(正)委員 教習所等でしっかり対応されるということでございますが、では仮に、仮にですけれども、法改正後に十代の運転者による事故が多く発生した場合、また再び免許の種類を改めることになるのかどうか、見解を伺いたいと思います。

鈴木政府参考人 先ほど答弁させていただきましたとおり、今回の改正は、全体として、貨物自動車に対する事故防止対策を一層推進しようとするものであり、交通事故防止に資するものと考えております。

 今回の改正により交通事故が増加することのないよう、関係機関等と連携しながら、貨物自動車に係る事故防止対策に取り組んでまいりたいというふうに考えております。

 また、一般論として申し上げれば、免許制度の見直しについては、制度の安定性の観点についても考慮する必要があるというふうに考えておりまして、交通事故が増加しないように対応をしてまいりたいというふうに考えております。

河野(正)委員 今回の改正案は、先ほど来お話がありましたように、高校卒業者が就職先で五トントラックを運転できない現状への問題意識があって、高校の校長先生たちからもいろいろ要望があったというふうに伺いましたし、またトラック業界の方からも要望があったというふうに認識をいたしております。

 戦後七十年を経まして、やはり我が国のシステムはさまざまな分野で制度疲労を来しているんじゃないかなと私は思っております。やはり、現実に合った、現場に即した法改正というのは極めて重要だなと思います。

 物流、運輸業界の要望、期待も高い制度であるというふうに思いますが、では、具体的にどの程度需要があるとされるのか、本改正案によりどのような効果が期待されるのか、具体的にお聞かせいただきたいと思います。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の改正は、貨物自動車の死亡事故の発生割合が高い実態等に鑑み、貨物自動車に係る運転免許制度の在り方に関する有識者検討会による報告書を踏まえ、貨物自動車に係る事故防止対策を一層推進し、この種の自動車による事故を効果的に抑止するために行うものでございますが、若年者の就職支援等の観点で、全国高等学校長協会、全日本トラック協会等から同内容の制度見直しについての要望も寄せられておるところでございます。

 警察としては、具体的な需要については把握しておるわけではございませんが、今回の改正について、トラック業界を所管する国土交通省において、若年ドライバーの採用の促進に資するとの見解が示されているというふうに承知しておるところでございます。

河野(正)委員 ここで、トラックによる物流の現状について伺いたいと思います。

 私もなかなか買い物に行く時間がとれなかった場合、しばしばアマゾンなどで商品を購入することがあります。今、こういったネット販売によってトラック物流が非常にふえているというふうに言われているかと思います。そして、これらは配送料もかなり安いんじゃないかなと思います。こういったことは、厳しい労働条件につながっていくと思われますし、過労運転なども危惧されるのではないかと思います。

 こういったことに何らかの対策を進められているのか、あるいは行われていることがあるんでしょうか、教えていただきたいと思います。国土交通省の方に。

宮城政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま御質問がありましたように、非常に今、トラックの輸送の現場では、一つは高齢化でございます、もう一つは若年層の大変な減少ということがございます。

 こういったことにつきまして、現在、そういった人たちが入ってこられるように、特に若い人が入ってこられるように、例えば、きちんと料金、運賃、運送料、それからいろいろなかかった費用というのを回収できるように、いわゆる荷主と一体となって働きかけをする、こういったことを行ってございます。

 こういったことを、全体を含めまして、広い形で、いわゆるトラックの運転者の方々の待遇を上げる、こういった形の作業をすることによりまして、今回の物流といいますか、こういったものの健全化、それからまさに国民の皆さんに問題が生じないような形で処理してまいりたい、このように考えております。

河野(正)委員 やはり、運転している現場の方にしわ寄せが行かないように、しっかりと考えていただきたいと思います。

 最後の質問になりますけれども、今回の法改正によって、若年層のトラック講習やあるいは高齢者講習など、現場の負担は極めて大きくなるのかなと思います。自動車学校や自動車教習所等の対応が十分に可能なのかどうか、制度が変更されることによって現場が混乱することがないのかどうかを確認させていただきたいと思います。

鈴木政府参考人 今回の改正により、新たな免許区分を創設するものでございますので、施行までには教習所の教習施設改修やカリキュラムの改定、教習車両の整備等を全国的に実施する必要がございます。

 また、高齢運転者対策に係る改正についても、臨時高齢者講習のカリキュラムの策定や教習所等による臨時認知機能検査及び臨時高齢者講習の実施体制を整備する必要がございます。

 改正法は、公布の日から起算して二年以内に施行することとされておりますところ、国民に対して制度の十分な周知を図るとともに、現場で混乱が生じないよう、教習所等の関係機関と連携して、円滑な施行に向けた着実な準備を進めてまいりたいというふうに考えております。

河野(正)委員 今回の法改正によりまして、交通事故の被害者あるいは加害者が減り、経済的にも前向きな成果が得られることを願って、質問を終えたいと思います。

 ありがとうございました。

井上委員長 次に、佐々木隆博君。

佐々木(隆)委員 道路交通法の一部を改正する法律案について御質問をさせていただきます、民主党の佐々木でございます。

 最初に、高齢運転者対策の推進を図るための規定の整備についてお伺いをいたします。

 認知症機能の検査というのが、今回大きなテーマとして取り上げられているわけであります。交通事故そのものは、平成元年、七年ころのピーク、百万件ぐらいあったのが、皆さん方の御努力で相当減少しているということについては、皆さん方の御努力を多とさせていただきたいというふうに思いますが、その中でも、特に高齢者の事故死率というのは、依然としてまだ高い状況にあるというふうに私も認識をしております。

 一つお伺いしたいのは、高齢者の免許取得の比率というのは今全体でどのぐらいの割合になっているのかということについて、まずお伺いしたいと思います。

鈴木政府参考人 昨年末の運転免許保有者数、全体では八千二百七万六千二百二十三名でございます。同時点の七十五歳以上の高齢者の運転免許保有者数でございますが、四百四十七万四千四百六十三名でございまして、運転免許保有者数全体の約五・五%に当たります。

佐々木(隆)委員 もう一つですが、今回、高齢者対策の中で、認知症について特に対策を打つわけでありますが、認知症ということに着目したその理由についてお伺いをしたいと思います。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 平成二十六年中の交通事故について、法令違反別の割合を見ますと、七十五歳以上の高齢運転者は、七十五歳未満の運転者と比較した場合、信号無視が一・六倍、指定場所一時不停止等が一・六倍、ハンドル操作不適が一・七倍多くなっておるところでございます。

 認知機能が低下した者は、認知機能が低下していない者と比較して、信号無視、一時不停止、運転操作不適等の危険な運転行動をとる割合が多くなっているという調査結果、こういったことを踏まえれば、加齢による認知機能の低下が高齢者の交通事故に相当の影響を及ぼしているというふうに認められるところでございます。

 また、認知機能検査の結果ごとの一万人当たりの交通事故件数を見ますと、認知症のおそれがある者は認知機能が低下しているおそれがない者と比較して、一万人当たりの事故件数が約一・九倍高くなっておるところでございます。

 さらに、平成二十六年中の七十五歳以上の高齢運転者が第一当事者となった交通死亡事故のうち約四割が、認知症のおそれがある者または認知機能が低下しているおそれがある者によるものでございました。

 こういったことから、認知機能の低下に着目した対策を講じることが高齢ドライバーの交通事故防止に資するものというふうに考えて、対応をしておるものでございます。

佐々木(隆)委員 厚労省にお伺いしたいんですが、機能低下ということが今理由になって、認知症もその一つでありますけれども、機能低下対策というのは、厚労省としてどう取り組まれていて、そして、ほかの省庁というか、今、警察との連携などもとられているんだろうと思いますが、その辺についてお伺いをしたいと思います。

苧谷政府参考人 お答え申し上げます。

 厚生労働省といたしましては、いわゆる団塊の世代が七十五歳以上となる二〇二五年を目指しまして、認知症の方の生活全般を支える観点からの取り組みを総合的に進めるべく、警察庁も含めました関係十一省庁と共同で、本年一月に、認知症施策推進総合戦略、いわゆる新オレンジプランを策定したところでございます。

 この新オレンジプランにつきましては、まず一つ、普及啓発、二つ目が医療、介護、三つ目、若年性認知症、四つ目が介護者支援、五つ目が地域づくり、六つ目が研究開発、七つ目、本人、家族の視点、こういった七つの柱に沿って施策を総合的に進めることとしております。

 このうちの五番目の柱でございます認知症の人を含む高齢者等に優しい地域づくりの推進、この中で、認知症の方の交通安全の確保といたしまして、認知症の方や認知機能が低下している方による交通事故を未然に防止するための制度を充実すること、これを盛り込んでおりまして、今回の道路交通法の改正法案はこれに位置づけられるものと承知しております。

 引き続き、警察庁を初めとする関係省庁と連携しながら、認知症施策推進総合戦略を進めてまいりたいと考えております。

佐々木(隆)委員 ぜひとも、高齢者対策というのはありとあらゆる場面で今重要な対策でありますので、ほかの省庁との連携をさらに強めていただきたいというふうに思います。

 これは公安の方に伺いたいんですが、先ほど来お話もありますように、高齢者対策といいますか、高齢者の機能低下というのは認知症に限った話ではないわけでありますので、とかくこのテーマでばかりではなくて出てくる団塊の世代、私もその尻尾の方におりますので余り人ごとでもない話になってきているんですけれども、高齢者対策全般、認知症以外で、とりわけ運転に関してそのほかにどんな対策を考えておられるのか、あるいはとっておられるのかについてお伺いします。

鈴木政府参考人 御指摘のとおり、高齢運転者対策といたしましては、認知機能以外の身体機能の低下への対策も重要であると認識しております。

 運転免許証の更新期間が満了する日における年齢が七十五歳以上の者については、優良運転者であっても運転免許証の有効期間が三年、五年ではなくて三年とされ、三年に一度、視力等の適性検査を受けていただくこととなっているほか、高齢者講習の前に認知機能検査を受検していただき、この検査の結果に基づいてきめ細かな安全教育を実施しておるところでございます。

 また、運転免許証の更新期間が満了する日における年齢が七十歳以上の高齢運転者については、高齢者講習の受講が義務づけられており、夜間視力、動体視力等の検査を踏まえた指導を行っているほか、自動車の運転等を通じ、加齢に伴う身体機能の変化を自覚してもらうとともに、安全運転の方法を具体的に指導させていただいているところでございます。

 なお、高齢運転者等が身体機能の低下等を理由に免許証の返納を希望する場合には、申請に基づき免許を取り消す制度もあるところであり、自主返納したい方が自主返納しやすい環境の整備にも努めておるところでございます。

佐々木(隆)委員 ちょっと今の点でお伺いしたいんですが、七十歳以上は機能検査を義務化されているわけですね。そのときに、要するに、本人がどこまでそれを自覚できるのか。本人はまだまだ大丈夫だという思いが多分あるんだと思うんですが、それは、どのようにして本人にもう機能が低下していますよというのを、ただ検査の結果を伝えるだけで、みんな、はい、わかりましたよということになればいいけれども、そうはならないですよね。その点の対策は何かされているんですか。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 認知機能検査の義務づけをしておりますのは七十五歳以上の方でございます。先生御指摘のとおり、七十歳以上の方には高齢者講習ということで、免許の更新のときに特別の講習を義務づけております。

 対象の方々は非常に幅広うございますので、高齢者の方もまさにさまざまでございまして、なかなか御自覚のない方も確かにいらっしゃいますが、そういった方々も、その講習の過程で、個別に運転指導をすることによってだんだんと自覚していただくように指導しておるところでございます。

佐々木(隆)委員 すばらしい説得力だと思うんですが、後ほどまたちょっと触れさせていただきます。

 その中で、先ほどもテーマになっておりました高齢者の移動手段の関係で、国交省が担当になろうかと思いますが、地方創生の委員会で私も大臣とその点やりとりをさせていただきましたが、コンパクトビレッジという構想の中で、どのぐらいの範囲を想定しているんですかというと、昭和の大合併前の町村ぐらいを意識しているというお話がございました。

 昭和の合併前の町村の区域というと、相当広いです。小学校区ぐらいならまだしも、合併前の町村ということになると相当広い区域で、そこを、高齢者の皆さん方、とりわけ機能低下の皆さん方の交通手段として、公共性の高い交通機関というものをどう確保していくのかというのは非常に重要なテーマだと思うんですね。

 そういった意味で、国交省が今考えておられることについて、地方創生の部分も含めて、ぜひお答えいただきたいと思います。

藤井政府参考人 お答えいたします。

 高齢化の進展の中で地域交通の確保の重要性は言うをまたないところであると考えております。特に、今委員御指摘のとおり、地方創生の中で人々の移動手段を確保するということは、人々の地域での生活を成り立たせる意味でも非常に重要なことであるというふうに考えているところでございます。

 私ども、昨年、地域公共交通活性化再生法の改正をいただきまして、その改正法の中で、自治体が先頭に立って地域公共交通に関する計画をつくっていただくという仕組みづくりをしていただきました。

 これは、原則としては、市町村が、まさに地域を面的に見た上で、人々のお住まいの地域あるいは拠点の集積、そういったことを考えながら、交通の計画を考えていく。その中で、なかなか路線バスが厳しくなっていくようなところにつきまして、ディマンド交通でありますとか、あるいはNPOの方々による輸送、そういった新しい手段も組み合わせながら、公共的な交通を確保していくという計画をつくっていただこうということでございます。

 委員御指摘の小さな拠点というのは、まさにそういった計画の中の一部分に当たることになろうかと思いますけれども、これは、まさに地域の実情に合わせまして、先ほど申し上げましたようなさまざまな交通手段をどうやって組み合わせていけるのか、こういったことを関係の事業者の方々あるいはNPOの方々、あるいは公安委員会の方々にもメンバーにということになっておりますけれども、そういった中で、地域の自主性を発揮しながら地域の足をいかに確保するかということをしっかりと考えていただき、それに対して国が所要の支援を行ってまいる、こういったことで地域の足の確保を進めたいと考えているところでございます。

佐々木(隆)委員 今、公共交通とディマンドみたいな例とを出されたんですが、ディマンドはディマンドでそれなりに、余り便利はよくないんですよね。こっちから申し込んで、ずっと回ってもらってというので、私もそういうところに住んでいますからよくわかるんですけれども。

 もう一つは、公共交通の、平たく言うとバスですが、バスの補助事業というのをずっと国交省でやっていたと思うんですね。都道府県がやっているのと国交省がやっているのと両方あると思うんですが、あの制度というのは今どのようになっていて、今でもそういう過疎地域に対する手当てとして続いているのかどうか、ちょっとお伺いします。

藤井政府参考人 お答えいたします。

 路線バスにつきましては、赤字の路線で一定の規模の人員の方が乗っておられる、そういった前提のもとで、赤字に対する二分の一の補助という国の制度がございます。これについては今も引き続き行わせていただいているところでございます。

 さらに、路線バスに加えまして、フィーダーの輸送、これはまさにコミュニティーバスのような形でありますけれども、そういったことにつきましても支援をあわせて行うという形で、総合的な面的な交通ネットワークの維持を図ろうとしているところでございます。

佐々木(隆)委員 地方のバスにおいて、これはまさに公共性の高い輸送手段でありますので、赤字だからといってすぐやめるわけにはいかないわけですよね。それ以外に交通手段がないというところがたくさんありますので、そういった意味では、この過疎バスの補助というのは大変ありがたい補助なんですね。そういった意味では、一〇〇%国が持てとは言いませんが、できるだけ地域の足を守るという意味で続けていただきたいなというふうに思います。

 それと、先ほどちょっと触れましたが、実は私の親も免許を持っていて、返納させるのに大変苦労しました。なぜかというと、町中で自転車を押しているお年寄りがたくさんおられると思うんですが、あれは何のために自転車を押しているかというと、つえがわりなんですね。あれがないと歩くのが大変なんですよ。だから、つえのかわりに自転車を押している、そのために自転車を押している方がたくさんおられたり。私のところは町から八キロぐらい離れていますから、おやじにとっては車はまさに足なんですね。やはりこれを取り上げるというのは大変私も苦労をいたしました。最後に口説いたのはかみさんで、私がずっと送り迎えをするからと言って、やっと返納をしたんです。

 この返納、機能検査をして、ちゃんと伝えれば返納していただけると先ほど答弁になられたんですが、警察の方が説得力があるのかどうかわかりませんが、現実には相当難しいと思うんですよ。地方にとっては本当にほかに手段がなくなりますから。特に、歩くのが大変だから余計車に乗りたがるんですよね。

 そういうことも含めて、この返納についてこれからどういう対策でやっていこうとされているのか、お聞かせいただければと思います。

鈴木政府参考人 私どもの運転免許相談の窓口においても、返納をさせたいとかいう御家族からの相談、高齢者の方が御家族の説得に応じないのでということでの相談も多数あるというふうに承知しております。

 これは、あくまでもやはり御本人の意思を尊重して返納していただくしかないわけでございますが、私どもといたしましては、やはり、先ほど先生御指摘の公共交通の整備も初め、返納しても移動に困らないような手段をできるだけ整備してさしあげる。そのために、警察ができることは限りがございますが、関係の地方公共団体とか関係機関に働きかけることによって、そういった個別のドライバー、高齢者の方に働きかけをしてまいるということかと存じております。

佐々木(隆)委員 そういった意味でも、これは運転という話ではありますけれども、全体、連携をしないとなかなか大変だというふうに思いますので、ぜひ頑張っていただきたいというふうに思ってございます。

 もう一つのテーマであります運転免許区分の改正についてお伺いをいたします。

 前のいわゆる中型というものができたのが平成十九年ですから、あれからもう八年というのか、わずか八年というのかでの改正になっているわけであります。三・五トンから七・五トンというのは、わかりづらいんですけれども、いわゆる二トン車から四トン車の手前までということなのかな、そうだと思うんですが、この部分のところを、準中型という新しいシステムをつくったわけです。

 先ほども御答弁にありましたが、高校の校長会などからも要請があって、その中でも特に、そういう子供たちについて、大変、そうだなと思ったんですが、就業を目指す生徒の多くは、経済的な負担力にも乏しく、中には奨学金の返納義務を負っている生徒もいます、こうした生徒のためには、一人でも多く、一社でも多くのところに就職させてあげたいということと同時に、もう一つ、EU等の諸外国における免許区分と取得年齢なども参考として御検討いただきたい、こういう高校からの要請があったと思うんです。

 一つは、この準中型をつくった背景みたいなものと、今のEUの事例をもし紹介していただければ、参考にとここへ書いてあるので。これは通告していなかったので、わかる範囲で結構でございます。それと、この免許は年齢とか経験年数は不要なんですよね。年齢というのは、もちろん十八歳は必要ですけれども。その辺も含めてお願いいたします。

鈴木政府参考人 最近の交通事故情勢を見ますと、貨物自動車を中心とする車両総重量のより大きい車両の方が、一般的な乗用車に比べ、死亡事故発生の頻度がいまだ高うございます。

 他方、集配等で利用頻度の高い、物流の中心的な立場にある最大積載量二トンの貨物自動車が、保冷設備等の架装により車両総重量五トン超となることが多くなっているという現状がございます。

 中型免許の取得可能年齢が二十歳であることから、これらの車両を高等学校を卒業して間もない者が運転することができないため、これらの者の就職にも影響を及ぼしているなどの指摘があり、全国高等学校長協会、全日本トラック協会等から制度の見直しについての要望が寄せられているというのは、先生御指摘のとおりでございます。

 こういったことを踏まえまして、今回の改正では、貨物自動車に係る事故防止対策を一層推進しつつ、社会的要請にも応えた制度とするため、車両総重量が三・五トン以上七・五トン未満の自動車の区分を設け、これらの自動車を運転するには準中型免許を要することとして、貨物自動車を使用した試験、教習等を行うこととするとともに、取得可能年齢を十八歳以上とする、しかも普通免許の免許経験を問うことはないというふうな免許制度の見直しを行うこととするものでございます。

 なお、この車両総重量の三・五トンそれから七・五トンというふうな区切りについては、EUで一般的にとられております免許制度を参考とさせていただいたものでございます。

佐々木(隆)委員 今、運輸業界では人手不足ということがよく言われてございまして、私もトラック関係者からよく人手不足だという話を聞かされます。その実態を恐らく国交省では調べておられるんだと思うんですが、まずはその実態と、それから、それについて何か対策を打たれているのかということについて、お願いをいたします。

宮城政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、トラック運送業におきましては、二十九歳以下の若年層の割合、全産業では一五%でございますが、これが一〇%にとどまるという状況にございます。

 また、有効求人倍率でございますが、全産業で今一・〇〇倍でございますが、これが一・五五倍ということで、非常にいわゆる人手不足感が高まっております。

 また、こういった場合に女性の進出ということを我々考えるわけでございますが、全産業では四三%の就業率に対しまして、トラックの方は二・四%、このような状況になってございます。

 国土交通省といたしましては、我が国の経済と国民生活を支える物流の担い手を確保することは非常に重要と考えておりまして、人材確保に向けた諸対策を推進しております。

 トラックドライバーの確保につきましては、まずはトラックドライバーの労働条件の改善が重要でございます。そこで、適正な運賃の収受など、トラック産業の健全化に向けた対策を推進してまいります。

 加えて、先ほど申し上げました、余り採用が進んでいない若者、女性の定着それから活躍に向けまして、例えばこれは女性についてでございますが、トラガール、トラックのガールという形のキャンペーンを張るなど、若者、女性へのアピール、こういったものに取り組んでございます。

 なお、本改正案によりまして、車両総重量七・五トンまでの車両を十八歳で運転できるということになりますので、これによりまして、先ほどもお話に出ております高校卒業直後の若年ドライバー、こういった方々がいわばコンビニの集配などにつくことができるということで、これは非常に業界それから国民のためによろしいことではないかというふうに考えてございます。

 国土交通省といたしましては、今回の措置でございますが、若年ドライバーの採用の促進に資するものといたしまして、今後ともトラック業界の人材確保等に頑張っていきたい、このように考えてございます。

佐々木(隆)委員 今、トラガールの話が出たとき、大臣はちょっとぽかんとされておられましたが、真面目に国交省が取り組んでおられるということを私もきのう聞いて、トラックガールを略してトラガールと言うんだそうであります。

 国交省が真面目に取り組んでいるんですが、肝心のトラック業界と連携しないとPRにならないわけですから、どういうPRか、詳細は私も存じておりませんけれども、八年とはいいながら制度がたびたび変わる、そして、片方で人手不足というようなテーマがある中で、これは大臣にお答えいただきたいんですが、しっかりPRをしていく、そして制度を徹底していくということでなければ改正した意味がありませんので、その点について、大臣のお考えを伺いたいと思います。

山谷国務大臣 改正後の新たな免許区分や取得要件等については、広く国民に周知を図る必要があると考えております。

 今回の改正法については、公布の日から二年を超えない範囲内において施行することとしているところであり、施行までの間に新制度についての十分な広報に努め、警察庁や都道府県警察のホームページへの掲載はもとより、国土交通省等の関係機関や自動車教習所、トラック協会等の関係団体等を通じて、新たに免許を取得しようとする方に制度が周知されるように警察を指導してまいりたいと思います。

 また、制度の円滑な施行により悲惨な交通事故を減らすことができるように、引き続き、関係機関、団体とも連携を密にし、貨物自動車に係る事故防止対策にしっかりと取り組んでまいります。

佐々木(隆)委員 ぜひ、この制度がしっかり周知をされると同時に交通事故が減るように、皆さん方の御努力を期待して、終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

井上委員長 次に、古本伸一郎君。

古本委員 おはようございます。民主党の古本伸一郎でございます。

 きょうは、大臣にもお越しをいただいておりまして、どうぞよろしくお願いします。

 まず、北海道で大変悲惨な交通事故があったわけでありまして、もうニュースで随分報道されていますので、大臣も委員の皆さんもよく御案内だと思います。

 きょうは警察に来ていただいていますけれども、危険運転致死傷罪、これは、創設されて、平成二十二年、三百五件あったという資料をいただいていますけれども、平成二十六年、去年でこれは減っているんですか、ふえているんですか。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 最近の危険運転致死傷罪の適用状況についての御質問でございます。

 危険運転致死傷罪の適用件数は、平成二十年以降、おおむね年間三百件台で推移していたところでございます。平成二十六年は四百九十一件ということで、これは、平成二十六年五月に法改正により危険運転致死傷罪の適用範囲が拡大をされておりますので、そういったこともございまして、四百九十一件ということで、平成二十六年は増加したということでございます。

古本委員 つまり、ふえているんです。特に薬物の影響が、平成二十二年は十九件だったのが、昨年度は五十三件という資料をいただいていますけれども、大変小さなお子さんを持つ親御さんやら、一般の何の罪もない歩行者を巻き込んだり、北海道の事案はまだ捜査が進んでいるようですから軽々には申しませんが。

 では、大臣。事前に、この手の危険運転致死傷罪を犯すやからは、そういう疾病という観点から何か共通の特性があるのかというお尋ねをしたんですけれども、実は、それはないという答えを事前にいただいています。

 これは、先ほど来、認知症と疑われるお年寄りを、今回の道交法改正でドクターの検査を義務化させるということで、大変厳格な運用になるわけでありますけれども、一たび事が起これば大変悲惨な交通事故になる可能性という意味では、認知症のお年寄りが高速道路を逆走して入ってくるというケースばかりクローズアップされ、あたかもそのことが、大変、交通事故の悲惨な部分のある意味でのコアのように報道されるものですから誤解があるんですけれども、これも事前にデータをいただいたら、わずかに一割なんです、認知症と疑われる方の逆走事案というのは。それに比べれば、あの北海道の事案、聞けば、いたいけな少年を、一・五キロですか、六キロですか、引きずって走ったというじゃないですか。

 これは、警察御当局ですけれども、新たに発覚免脱罪というのもつくられていますね。つまり、アルコールの検知を逃れるために家に帰り、そして一夜酔いをさまし、そしてアルコール検査から逃れるころに殊勝にも出頭する、自首する、そのときにはアルコールの検査は出ない。逃げ得は許さないということで発覚免脱罪も新たな類型としてつくられたと思うんですけれども、例えば今回のような事案でいけば、一・五キロも六キロも引きずって、これは未必の故意があったんじゃないか。これはもっと踏み込めば殺人ですよ。

 こういう事案が起こるたびに、警察御当局の交通安全の啓発活動やら日ごろの交通安全のパトロールやら、いろいろなことに感謝しつつ、また起きるのか、どうして起きるのかという思いを禁じ得ないわけでありますけれども、北海道で起きた事案について大臣の感想があれば。

山谷国務大臣 北海道砂川市、六月六日午後十時三十四分ごろに発生したと思われます大変痛ましい事案でありまして、本件捜査を進め、原因を解明しているところでございまして、今後同種の事案が発生しないように、防いでまいるように頑張ってまいりたいと思います。

古本委員 免許を取り上げるかどうかで、先ほど、維新の党の河野先生、同僚委員からも、なかなか難しい話だという医学的な話やら、佐々木委員の、なかなかお年寄りは免許を、実は私も、おやじが八十二ですけれども、いいかげんに免許を返したらどうだと言ったら、人を年寄り扱いするなと言われましたから、これは大変な問題なんですよ。

 したがって、これは憲法に保障される、場合によっては、免許を取る自由、どこを往来する自由、いろいろな問題にさわってくると思うんですね。閣法で縛っていくというその大前提に、やはりそういう憲法で保障されている国民のいろいろな権利というところもよく見ながらやっていかないと、本当に、俺は免許は返したくないという方がいらっしゃったときに、これは大変なことになると思うんですね。

 そこで、きょう、せっかく大臣に来ていただいていますから、私は憲法審査会委員でして、先日の参考人のときに、参考人の答弁をつぶさに拝聴していまして、お三方に共通していることは、やはり、立憲民主主義を議論するということでやっていたんです、だから、船田先生もいろいろ大変だったというふうに報道で読みましたけれども、立憲民主主義の議論の中で、お三方とも、憲法とは何か、そして、その憲法のもとにある今回の平和法制はいかにあるべきかという議論の中で出てきたんです。

 私は、もともと大臣と出自は、先祖をたどれば同じ民社系でして、ミッドライトだと自分では思っているんですけれども、正面からいくのであれば、九条をきちんと改正した上でこの議論をすべきだったということでお三方は共通していたと思うんですよ。

 免許を縛る、取り上げるというのも、行き着くところ、憲法の議論になるかもしませんよ。最高裁まで行って、免許は返さないという人がいるかもしれませんよ。

 ぜひ、今大変話題になっている平和法制、やるのであれば、九条改正、本来なら正面からきちっとやるべきだったんじゃないか、私はそう思っていますけれども、大臣の御所見があれば聞かせてください。

山谷国務大臣 基本的人権、平和主義、国民主権、そうした考え方というのは大切であると考えております。

古本委員 先ほど、ずっと政府委員とのやりとりを聞いていて、大臣が手持ち無沙汰な感じもいたしたので、いろいろと舞台をおつくり申し上げようと思っているんですけれども、では、余り気を使わないようにします。

 先ほど河野先生の話であったんですけれども、自主返納率が非常に低い、茨城、三重、福島とおっしゃいましたか。実は、自動車が一家に一台、保有率が一番高いのは茨城県です。つまり、車がないと生活できないエリアなんですね。これは如実にあらわれていますね。

 と同時に、実は、逆走事案数が都道府県別にどうなんだというデータも調べていただいたら、やはり地方の方が多いということが出ています。それぞれ、東北ブロックから九州ブロックまで、層別してデータをいただいています。

 つまり、相当な何か安心させてさしあげるものを用意しなければ、公共交通機関のないところに住むシニアの皆様は、どうして日々の暮らしを営めばいいんだろうかということは、これは必ずパッケージだと思います。先ほど佐々木委員は、お嫁さんが運転して送迎することを約束にしたということでしたけれども、あそこに一つのヒントがあると思いますよ。

 何もお嫁さんと言わず、コミュニティーバスのような、何もそんな大きなバスじゃなくていいんですよ、小さなミニバンでいいと思うんです。五人、六人乗れる小さなミニバンで、そのミニバンを、本当に自治区単位というんでしょうか、部落単位というんでしょうか、そういう小さな単位できめ細かに回す、そのためには財源もいとわない、きちっとそれをやるので、免許をもうそろそろ返していただけないかと、これはパッケージでやらないと話にならない。

 国交省からコミュニティーバスの導入状況のデータをもらっていますけれども、大変失礼ながら、寂しい限りですよ。私はそう思います。これで国交省は満足されていますか。もっとふやしましょうよ。

 そのための財源は、そういった車両の提供ということももちろんあるんでしょうけれども、ドライバーの確保。元気なシニアがそうじゃないシニアをお乗せするということだってあると思うんですよ。だから、そういう人材活用なんかに国を挙げて取り組まないと、免許を返したくても返せない人がいるということなんです。

 国交省はこの現状をどう評価し、そして、免許を取り上げるぞという法案を今通そうかというわけなんですから、国交省を挙げて予算をつける。道路ばかりつくったって、その上を走る人口が減っていくんですから、道路もつくるしコミュニティーバスもやる、両方やらなきゃだめです。非常にこのバランスを国交省の中で、原局がもし肩身の狭い思いをしているのなら、山谷大臣から国交大臣に言ってもらえばいいですよ。

 予算はどうなんですか、ついているんですか。国家的な補助を入れないと、シルバー人材センターでやってくれなんて、それはお金も人材も足りませんよ。それとパッケージじゃなきゃ絶対だめですね、これは。国交省。

藤井政府参考人 お答えいたします。

 今委員御指摘の、地域公共交通の確保は高齢化の中での生活の足の手段の確保という点で重要であるという点、改めて言をまたないことであると思っております。

 そのための措置としまして、私ども、地域公共交通確保維持改善事業という形で国の予算の枠を確保しているところでございます。二十七年度の予算の額は二百九十億ということでありますけれども、こちらで、先ほど御指摘もありました赤字バスの補助、さらにはバスの車両の購入の補助、そういったことを含めて対応しているところでございます。

 これにつきましては、当然国の補助もございますし、さらには自治体とあわせた形での補助もぜひお願いしたいということで、交付金での措置ということにつきましても、関係省庁との連携のもとに充実を深めているところでございます。

 このような制度、金銭的な支援に加えまして、先ほども申し上げましたとおり、地域公共交通についての計画づくりを自治体にしっかりとやっていただく。そういう中で、委員御指摘のようなコミュニティーバス、あるいはNPOによる輸送、共助というような形での輸送も含めた総合的な面的な交通手段の確保ということを、政府一体となって確保してまいりたいと考えているところでございます。

古本委員 例えば、地域で、ある集落で、三十代、四十代、五十代の元気な人が全くいないかといったら、いろいろな限界集落でもそれなりにいらっしゃるとすれば、例えばその三十代、四十代、五十代、その人らは共通して多分消防団をやっていますよ、あるいは地域のいろいろな係に大体ついていますよ、イメージ。私も選挙区に山が多いものですから、イメージがわかりますよ。

 では、その三十代、四十代、五十代の中にミニバンに乗っている人がいないかといったら、いますよ、家族連れが多いですから。では、そのミニバンの重量税や自動車税を減免したらどうですか、あるいは免除したらどうですか。そのかわり地域でボランティア車両で提供してくれというような、発想の転換ですよ。

 今、国交省の答弁を聞いていると、胸がわくわくする感じがしませんね。大臣、そのくらいの大胆な政策を打たないと、本当に車がないと暮らせない茨城、三重、福島、こういうところで、本当に車がないと生活できないというところを取り上げようというわけなんですから、だったら、そのくらいの、税は社会をつくる力がありますから、自動車重量税、自動車税、自動車取得税、各種税を取りも取ったり、取りまくっていますけれども、そういう減免を思い切ってするというようなことも新たに創設をするということを、例えば閣議で提案してもらったらどうですか、大臣。そういうことをやれば、地方に住んでいるシニアと現役世代のお互いの支え合いになりますよね。

 にわかのお尋ねで恐縮ですけれども、大臣とそういう話ならかみ合うと思ってお尋ねしているんですけれども、いかがですか。

山谷国務大臣 税制のありようについて私がここで急にコメントというのは所管外だと思いますけれども、ただ、地方創生ということも含めまして、今後、地域公共交通の充実に向けて自治体や関係機関等との連携を強めるなど、高齢者の移動手段の確保に向けて一層取り組んでまいりたいと思います。

古本委員 ありがとうございます。

 ただ、大臣はいろいろとわかっていただける人だと思っていますので、そういうことを申しておったと、内々、麻生財務大臣、国交大臣とランチのときにでも会話をしていただいたらありがたいと思いますね。そうでもしないと、また市町村にお願いしてとか、また補助金がとか言っていたら、もう日が暮れちゃうと思いますね。政治の大胆な資源配分の転換の一つのきっかけとして、地域でそういうことを、税を通じた政策提言というのはあるんじゃないかなと思います。

 さて、自動運転ができれば、もっとシニアの運転が安心になるというわけなんですね。政府を挙げて日本の技術革新にいろいろな政策を打っておられると思いますけれども、とりわけ高速道路でのいろいろな重大事故が多いということを考えると、まずは基幹道路からの自動運転ということになろうかと思いますけれども、将来的な夢は、本当にこの地球上から交通事故のない社会になる、それが技術的に可能になればいいなという夢があるわけであります。

 この自動運転の導入のめど、そのための国の支援について、政府の見解を求めます。

鈴木政府参考人 自動運転についてのお問い合わせでございます。

 現在ドライバーが行っている運転を自動車のシステムが行うということになれば、運転者の負担は減る余地があり、システムに応じて運転者に求められる技能が変わっていくということになると考えております。

 ただ、自動運転と一概に申しましても、システムが要請したときには運転者は運転操作をしなければいけないシステム等については、運転者が適切に運転操作をすることができるよう準備しておく必要もございます。そして、システムが対応できない場合の危険回避等を行わなければいけないということであれば、ドライバーには危険回避のための高度な運転技能が求められるというふうなことがございます。

 いずれにしても、自動運転というふうな世界が入ってきた場合に運転者に求められる運転操作がいかなるものであるべきかということについては、今後開発されていくシステムの内容にもよるものでありまして、また、事故時の責任関係、それからドライバーの義務をどういうふうに位置づけるか、こういった内容等もあわせて検討する必要があろうかと思います。

 ただ、安全運転を支援するシステムが導入されること、それが自動運転につながることというのは、これは交通の安全を考えましても非常に重要なことでございまして、警察といたしましても、自動走行技術の開発動向を注視するとともに、国際的な動向も踏まえまして、自動運転に関しても必要な検討を進めてまいりたいと考えておるところでございます。

古本委員 自動運転の話は警察が担当でいいんですか。それを聞いたつもりなんですけれども。短目にお願いします。

中川政府参考人 研究開発の動向についてお答え申し上げます。

 科学技術イノベーション政策の司令塔でございます総合科学技術・イノベーション会議、こちらにおきまして、平成二十六年度に新たに設置されました戦略的イノベーション創造プログラム、SIPにおきまして、警察庁、総務省、経済産業省、国土交通省等、関係省庁連携のもとで、自動走行システムの研究開発及びその社会実装に向けて取り組んでいるところでございます。

 このプログラムでは、人々に笑顔をもたらす交通社会を目指して、まさに先生御指摘の、国際連携も図りながら、国家目標である交通事故死亡者低減あるいは交通渋滞の低減の実現に向けた研究開発を行っております。また、都市や地方を問わず、地域のニーズに合った、高齢者を含めた全ての人に優しい移送手段の社会実装を目指しておるところでございます。

 こうしたSIP、戦略的イノベーション創造プログラムを中心に、関係省庁のそれぞれの関連施策を連携させながら、この自動走行システムに関する研究開発を一体となって着実に進めているところでございます。

古本委員 正直、自動化運転を導入するには年月と技術とコストがかかるわけで、ただ、一方で、そこに技術革新があれば、それがデファクトスタンダードになれば、これはまた新しいジャパンの強みになるわけで、この分野を国としてどれだけ本気で考えているのかということをお尋ねしているわけです。

 そうすれば、シニアの皆さんも、実は夢のようなドライブに出かけることができるかもしれませんね。選挙区でも、お年寄りのおばあ様が、死ぬまでにあと一回だけ名古屋の方に遊びに行きたいと手を握って言われた言葉、忘れられないことがあります。山奥なので、そこから名古屋に出るのに二時間ぐらいかかるわけです。やはり、運転というのは、若いころしていた人ほどつらいでしょうね、できなくなると。

 一方で、そのお年寄りが都会に出ていって、あるいは温泉地に行って温泉につかって帰ってくるということが、自動化運転なり、運転補助システムなり、あるいは若い衆の代行運転サービスというか、そのかわり、そういう人らに、民の力で、物すごく自動車関係諸税を減免するぐらいの思い切った大胆なことを導入することによって、ボランティア車両として登録してもらうとか、全ての政策を総動員しなければ、これは、迫りくる超高齢社会の中で、やがては三人に一人が六十五歳以上になるわけですよね。ますます今回の道交法改正の趣旨とする免許を返納してほしいという対象者がふえるというわけなんですから、この分野は実はピンチであってチャンスですよ。成長の可能性がありますよ。

 そこに政府を挙げて、財源も、技術革新する民間を支援することも含めて、ぜひやるべきだということを提言しておきたいと思いますので、関係の皆さんはそれぞれ引き取っていただければありがたいなというふうに思います。

 今回、準中型免許というのもできるわけなんですが、同僚議員がもう言い尽くされましたので、私からは一点だけ。

 実は、運転手不足の背景がどこにあるかということをトラックの専門家に聞くと、今オートマチック車になってしまったために、クラッチ車両になれずに乗用車でデビューした人が、大型のクラッチというのは苦手だということを言う人もいますね。でも、大型もオートマチックもありますから、必ずしもそうではないと思うんですけれども。

 つまるところ、やはり取るときの自動車教習所代というんですか、人口が減ってきているので、今、教習所も大変ですよ。もう生き死にがかかっています。生徒の数が減っていますから、それで、結果として、一人当たり単価が上がるという悪循環があるような気がしていて。

 運転免許のその分野を、免許を取りやすくする、補助金で支援するという考え方はないんですか。そうしたら、ドライバー供給ができますよ。上流をたどらなければ、ドライバーをふやしますとか、そういうかけ声だけでは、観光にしたって物流にしたって、我が国の物流の根幹を支えてくれているのは大型ですよ、観光も物流も。大型のドライバーが人手が足りないなんていうのは死活問題ですね。

 場合によっては、そのぐらいの補助金を創設して、自動車教習所の支援をするという考え方だってあると思うんですけれども、いかがですか。

宮城政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま御質問にございました、免許を取得する者に対する補助という形の制度がございます。これにつきましては、現在、厚生労働省が中心となりまして、いわゆる新卒、新規の学卒者を中心にいたしました実践型人材養成システムということで、これに対しまして、一人一時間当たり八百円の補助金を出す。それから、例えば免許の取得等につきまして言えば、免許を取得するに当たってかかった費用というものをある程度補助するという形でございます。

 我々としては、この制度をもう少し理解していただいて、広めたい、このように考えております。

古本委員 ぜひ、制度をさらに充実する、あるいは拡大することを、業界や高校三年生の皆さん、あるいは専門学校生たち、大学生たちにも宣伝していただきたいなと思いますね。

 あと、免許の仮停止。現状、そういうことで停止になった方も運転して帰れるんですか。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 仮停止制度でございますが、悪質重大な交通事故を起こした者について、速やかに道路交通の場から排除することを目的とした緊急の処分でございますが、処分に当たっては、交通事故と違反行為との因果関係を明らかにするなどの必要があることから、必ずしも事故発生の現場で仮停止をするかどうかについて判断ができるわけではございません。

 もっとも、仮停止の対象となるような悪質重大な事故を起こした者の多くは、酒酔い運転でありますとか無免許運転等の運転を継続させることができない違反行為をしておりますことから、こういった者が運転して帰宅するということは、警察としては認めていないところでございます。

古本委員 つまり、現場検証なりなんなりが終われば、運転して帰るということはないということですね。一件もないんですね。

鈴木政府参考人 個別の事故捜査にかかわることでございますので、それぞれ、場合場合でございますが、基本的には、身柄も、刑事手続に入るようなケースがかなりあるということでございますし、そうじゃないケースも、例えば御家族の方にお迎えに来ていただくとか、そういうことをとって、以後、危険な運転がその者によってされないような措置をとるということでございます。

古本委員 あと自転車のこともお尋ねしようと思ったんですが、もう時間が来ましたけれども、実は今回、六月から、改正道交法で、自転車のいわゆる右側通行であったり、一通の逆走行であったり、時として大変傍若無人な自転車の運転ぶりに腹を立てていたドライバーの皆さんもいらっしゃると思うので、ぜひしっかり取り締まってもらえればと思うんですけれども、自転車の免許をつくる気はありますか。

鈴木政府参考人 自転車に運転免許制度を導入するということは、免許を有さない者には自転車の利用を禁止するということでございます。

 現在、子供からお年寄りまで幅広い年齢層の多くの人々に利用されております乗り物である自転車に運転免許制度を導入した場合には、自転車が利用されづらくなり、かえって制約となるということでございますし、また、新たな免許制度を導入するために多大なる行政コストも発生することから、これは慎重な、大変慎重な検討が必要になるというふうに考えております。

古本委員 もう時間が来たので終わります。また当委員会で議論させていただきたい。

 ありがとうございました。

井上委員長 次に、山尾志桜里君。

山尾委員 民主党の山尾志桜里です。

 私は、まず最初に、高齢の認知症の方の運転の対策ということで、まずはこちらの方から質問したいと思います。

 どういう観点で御質問したいかというと、私自身は検察官を以前やっていて、実際に犯罪をいろいろ見てまいりました。一般人がある日突然犯罪者になる一番顕著な例が交通犯罪です。そしてまた、誰もが年をとるわけですけれども、高齢になって、本来は福祉で支えるべき方が刑務所に行くということは、本人にとって、御家族にとって、そして社会全体にとって、非常に不幸な状態になるという、この二点がございます。

 この二点からすると、本当に今回の法改正というのは重要だと思っていまして、まさに、これまで真面目に働いて、生活をして、一生を送ってきた高齢の方が、認知症になって、そして、御自身ではなかなかそれを受け入れることができなかったり、その特性上、御自身では気づくことができない中で、運転を続けて交通事故を起こす。そして、その事故で、本当に一般の真面目な方が突然、他人の体を傷つけたり、場合によっては他人の命を奪ったりということで、刑務所に行く。

 そして、刑務所の中でさらに認知症が進んで、その刑務所から出てきたときには、もはや、支えるべき家族との関係もなかなかつなぎ切れないというようなことですとか、本当にこういうことがあってはならないし、社会の中で、制度上でできるだけのことがあれば、こういうことを本当に起こさない、減らすというような気持ちで今回の改正を見ていきたいなというふうに思っております。

 まず最初に、基本的なことですけれども、警察庁にお伺いをします。

 現在、そして改正後もだと思いますけれども、運転者が認知症で、回復の見込みがない場合は、その免許証は原則としてどうなるべきものでありましょうか。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 介護保険法第五条の二に規定する認知症は、道路交通法第九十条第一項第一号の二において、運転免許の拒否等の事由として規定されており、また、第百三条第一項第一号の二において、運転免許の取り消し等の事由として規定されているところでございます。

 認知症に該当することが判明した方で、回復する見込みがない方についてのお問い合わせでございますが、その場合には、運転免許を取り消すこととされておるところでございます。

山尾委員 回復の見込みがない場合は取り消し、そして、半年以内に回復の見込みがある場合は停止ということになっております。

 では、実際に今、認知症を患っている方で運転免許を持っている方の推計は、どれぐらいになりますでしょうか。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 認知症の有病率についての厚生労働省の研究によりますと、七十五歳から七十九歳の方で一三・六%、八十歳から八十四歳の方で二一・八%が認知症であると推計されているというふうに承知しております。

 高齢者全体の有病率と運転免許保有者の有病率を同一であるというふうに仮定した場合には、七十五歳以上の運転免許保有者のうち認知症に該当する者は約七十五万人というふうに推計しております。

 また、この調査のうち、日常生活自立度二以上の者ということで、日常生活に支障を来すような症状、行動や意思疎通の困難さが多少見られても誰かが注意していれば自立できる状況、こういうふうな状況である者は運転免許を保有していないというふうな仮定のもとで推計いたしますと、二十九万人というふうに推計しておりまして、七十五歳以上の運転免許保有者のうち認知症に該当する者の数は二十九万から七十五万人程度ではないかなというふうに推計しておるということでございます。

山尾委員 幅のある数字ではありますけれども、二十九万から七十五万人という方が、本来であれば取り消しあるいは停止の対象となるべきなのに、ならずに、運転免許を持って運転可能な状態に今この瞬間もあるということだというふうに思います。

 この方たちに今帰責があるとは私は全く思いませんけれども、ただ、こういう中でも、今運転している方がいるかもしれない、そして、こういう方が交通事故を起こして、刑務所に行くことがあるかもしれない、こういう問題意識のもとで問いますが、これは法務省に伺います。

 交通事故で収監された刑務所における七十五歳以上の被収容者の数と割合というのは、今いかほどになっているんでしょうか。

富山政府参考人 平成二十六年に新たに刑事施設に収容されました受刑者の統計の速報値でお答えしたいと思います。

 最初にお断りいたしますのは、七十五歳以上というのが実は統計にございませんで、七十歳以上の数値でお答えをさせていただきたいと思います。

 いわゆる交通事故にかかわるような犯罪といたしましては、罪名としては危険運転致死傷罪、過失運転致死傷罪、それから道路交通法違反、この三種類が該当するかというふうに考えてございます。

 それぞれですが、平成二十六年の新受刑者の数値は、危険運転致死傷が六十名、過失運転致死傷が二百八十六名、道路交通法違反が千三十二名となっております。それぞれ、そのうち七十歳以上の者の人数は、危険運転致死傷についてはゼロ、過失運転致死傷については十三名、これは四・五%でございます、それから、道路交通法については六十七名、六・五%というようになっております。

山尾委員 ちょっとこれは通告していないんですけれども、こういった高齢の方々の中で認知症が原因と思われる交通事犯について、割合だとか数だとかというものは統計上把握されているんでしょうか。

富山政府参考人 まことに申しわけございませんが、刑事施設に収容されております受刑者で認知症が原因での交通事故といったものは、現在、統計として持っておりません。

山尾委員 統計としては持っていないということですけれども、相当数そういったものが原因になっているということは、共通の認識としてあり得るんだろうと思います。

 それでは、刑務所において、最近は、認知症の予防で任天堂のDSを使い始めた大分刑務所の例だとか、あるいは、東京地検では、社会福祉士を迎え入れて司法と福祉を橋渡しするような努力をしているだとか、それぞれの施設で努力をされているというのは仄聞をしているんですけれども、今、刑務所において、認知症を進行させない、そういったものの対策というのは、どういった形でとられているんでしょう。

富山政府参考人 お答えいたします。

 刑事施設におきまして、認知症あるいは認知症の疑いがあるというように診断された者につきましては、例えば、少数の集団を編成いたしまして、作業時間を短縮して紙細工などの軽作業をさせる、あるいは、集団で処遇する機会を設けることで、身体機能の低下、認知症の進行などをおくらせるといったような処遇上の配慮をしております。

 また、当然、医師が診察をして、必要な治療がある場合には、投薬その他の治療等を行っているというのが現状でございます。

山尾委員 一定の努力はされているんでしょうし、これからもしていただく必要はあると思うんです。

 二〇一三年までの二十年間で、六十五歳以上の受刑者が何倍になったか。これは五倍以上になっています。二十年で五倍です。これは認知症ということに限りますけれども、これからの十年で、社会全体で認知症は二百万人ふえて七百万人になると言われています。あと十年後には、六十五歳以上の方の五人に一人が認知症になるということになってまいります。

 そういう中で、やはり事前に、そういう方に、本当に認知症を患ったからには運転を中止していただく方策も大事ですし、一方で、刑務所の中での方策というのも事実上は必要になってくるんでしょうけれども、やはり、私が冒頭申し上げましたように、社会の制度の中で、認知症の方が御自身で気づけなくても、周りや制度の仕組みの中で運転中止にスムーズに移行できるような仕組みを、今、この改正を機にしっかりつくることが、さきに申し上げた、本当に今まで真面目に生きてきた方が、高齢になって突然犯罪者になり刑務所に行く、そういうようなことがなくなる一番大事な視点だというふうに思っております。

 運転中止というのは、確かに本人にとって、生活の非常に大きな転換を伴ったり、あるいは、やはり心理的に、自分が認知症であり、いわゆる運転を諦める状態になるということを認めることのつらさは、自分が想像してみても本当にわかるんですけれども、でも、やはりそれが御本人にとって最終的には一番厳しい状態を回避するという確信を持って、これから運用していただきたいというふうに思っております。

 ここから、またちょっと細かな質問に入るんですけれども、今までは、免許更新の際が認知症把握のきっかけの機会であった。今回、それがさらに、更新のときだけではなくて、一定の違反行為をした場合にも、それに気づくきっかけとなるという点で大変大きいと思いますし、あるいは、そのきっかけによって認知機能検査を受けて、その結果、いわゆる認知症のおそれがある、第一分類に当たるというふうになった場合には適性検査が義務づけられる、あるいは、それにかわる診断書の提出が義務づけられる。こういう意味で、この二点で、大変大きな前進だというふうに思っております。

 そこでちょっとお伺いをしたいんですけれども、今申し上げた、更新のときではなくても、一定の違反行為があったときには臨時の検査を受けてくださいというふうになるわけですが、その一定の違反行為というのはいかなるものなのか。今、現行の道交法の三十七の七ですか、基準行為というのがあると思うんですけれども、それをそのまま敷衍するのではなくて、そこを多分踏まえてなんでしょうけれども、今回、政令で新しく定めていくというふうになっておりますが、それはどういった観点で、どういう行為を定めようとされておられるのか、お伺いします。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、医師の診断が義務づけられる要件である基準行為として、先生御指摘の政令により、認知機能が低下した場合に行われやすい信号無視等の違反行為が定められているところでございます。

 この基準行為についてでございますが、これはそれなりに合理的なものだというふうに考えておりますが、改正後は、違反行為が、医師の診断が義務づけられる要件ではなく、臨時認知機能検査の要件として定められるということになりますので、そういったことも踏まえ、この一定の違反行為については、現行の政令の基準行為を参考としつつ、認知症の専門医を含めた有識者の知見も踏まえながら、対象者を適切に選定できる基準を定めるべく検討しておるところでございます。

山尾委員 ぜひ専門医の知見というのを十分に活用して定めていただきたいというふうに思います。

 これは次の質問にかかるんですけれども、つないでいただきましたが、これはちょっと疑問なのは、認知機能検査をして認知症のおそれがあるというふうにされた場合、検査を新たに受けていただくか、診断書を持ってきてもらうことになる。でも、新たに受けていただく検査の医師の要件と、御自身で持ってきていただく診断書をつくることができるお医者さんの要件が法文上違う。前者については、専門的な知識を有すると公安委員会が認める医師に検査を受けてもらうということになっておりますが、御自身で診断書を持ってきてもらう場合は、その要件がいわばちょっと緩いというんですか、その理由とされる事由に係る主治の医師というふうに幅が広くなっております。

 理屈からいうと、ここにそごがあるというのは非常に気持ち悪いというか、なかなか合理的に説明がつきづらいなと思うんですけれども、その点、いかがでしょうか。

鈴木政府参考人 臨時適性検査につきましては、その正確性を担保する観点から、専門的な知識を有すると認める医師に限るというふうにしておるところでございます。

 他方、現行法では、臨時適性検査を受けることとされている方々の便宜を図る観点から、かかりつけ医等が作成した診断書を提出することも認めておりまして、そのため、診断書を書くことができる医師を主治の医師というふうに規定させていただいているところでございます。

 なお、この主治の医師については、一定の病気等に該当しないと認められるかどうかの判断をすることができる医師である必要があるということでございます。

山尾委員 主治の医師がそういう要件に該当する医師であるかどうかということは、誰が何を基準に判断をするんでしょうか。

鈴木政府参考人 主治の医師は一般的なかかりつけ医ということで、主治の医師ということで診断書を提出していただくところでございます。

 ただ、出された診断書が専門的な知識に裏づけられているものかどうかということは公安委員会としても重要な関心を持っておるところでございまして、提出された診断書が必ずしもそういった知識に基づかないものになることのないよう、基本的な診断書に踏まえるべき事項については、専門医からの御指導もいただきながら、医者の皆様方にもお示ししておるということでございます。

山尾委員 ちょっとよくわからなかったんですけれども、重要な関心を持っておられるということですけれども、診断書が出たときに、お医者さんのバックグラウンドを見るんでしょうか、それとも診断書の記載内容を見るんでしょうか。そして、その診断書が、まさにそういう知見に基づいて書かれた診断かということは、一つ一つについて誰かが何かを基準に、制度的に担保されているんでしょうか。もう一度お伺いします。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 診断書につきましては、専門医からの御指導も受けまして、モデル様式を示させていただいているところでございます。基本的には、出されました診断書を、モデル様式にのっとったような形でしっかりとした診断書が出されているかどうかということを公安委員会としてもチェックをさせていただいて、それが不十分な場合には専門医の診断をお願いするということでございます。

山尾委員 残念ながら、今の答弁を聞くと、ちゃんとした知見を持っている医師の診断というのは制度上全く担保されていないように正直感じます。モデル様式をそういった医師の方にお渡しをするんでしょうけれども、要は、形式上、最低限の様式、形式が踏まえられているのかどうかというところは見るんでしょうけれども、実際にその判断に至った診断の経過というものは恐らく出てこないんだと思うんですよね。

 私がそこですごく気になっているのは、二点あります。

 一つは、やはり地域のかかりつけのお医者さんにとって、ふだんから診ている人に対して、あなたは認知症であり、ちょっと運転が難しい状態ですという診断をするのは、いろいろな意味で非常に葛藤を迫ることだと思います。

 そういうこともあって、今現在の法の仕組みの中では、これは逆コースですけれども、お医者さんが、患者さんが認知症である、そしてまたその患者さんが運転免許を持って運転しているということを知る、ではそれを警察庁に届ける必要があるか、この方は認知症を持っていて運転できる状態ではありませんということを届け出る義務があるかというと、今これは任意になっているわけですよね。

 それはやはり、かかりつけ医といいますか、常日ごろ信頼関係の中で、医者と患者という状態の中でいろいろな治療をしていく中で、なかなかそれを義務づけるということは、認知症自身の治療にとってどうなのかということも含めて、あるいは、患者さんが認知症の不安があっても、そういうことを思ってかかれなくなってしまうんじゃないかとか、いろいろな葛藤の中で任意ということになっているんだと思います。

 なので、そういう現状もありながら、このことについてはまさに、お医者さんの偏在もある、なかなか専門医がいないところもある、地域のかかりつけ医しかいないところもあるという中で、ではその人に一応様式を渡すからそれでお願いしますといっても、本当に重大な判断なわけですよね、この方が認知症なのかどうなのかということは。それが担保されないで、しようがないから地域のかかりつけ医でよしというのは、私は、やはり今回の制度をスタートするに当たってちょっと詰め切れていない部分のような気が非常にしています。

 もう一つ申し上げますと、やはり初期の判断というのは、これはとても大事なわけです。

 仮に、認知症でない人を認知症であるというふうに間違えて診断をしてしまうケースもあるわけです。これは、初期の認知症の場合は正常な老化での物忘れとかうつ病というのとなかなか紛らわしい、ここを除外していく診断というのはなかなか気をつけなきゃいけないよということがもう一般的に言われておりまして、そこの最初の段階で、でも認知症ではないのに認知症と言われてしまったら、その方は本当に大きな生活の困難、転換を迫られてしまうことになる。

 一方で、逆に、認知症であるにもかかわらず認知症でないというふうにされてしまったら、これまたさっき申し上げた、やはり大変な事故につながる危険、新たな被害者を。

 そういうことでいくと、さらに、初期でそのことを診断されることが、進行すればするほど、なかなか御自身でもそれを受け入れるのが難しくなり、理解するのが難しくなり、運転中止ということが難しくなるので、本当に初期のこの段階でどういうお医者さんにかかってどういう診断を受け、その後、ただただ運転免許を中止するだけじゃなくて、家族とともに、地域とともに、そのお医者さんとともに、どういうふうにその人の人生をみんなで支えていくかという、ここの段階での専門医の関与というのは非常に大事だと思っています。

 この二点から、やはり、専門医を義務づけるのは難しいからかかりつけ医でいいよというこの制度のたてつけについては、もう少し検討していただきたいなというふうに思うんですけれども、委員長、聞いていただいていて、御感想やコメントがあればいただきたいんです。

鈴木政府参考人 先生の御指摘の、診断書の提出命令を受けた者が提出すべき診断書の要件については、診断の正確性を担保するとともに、診断ができる医師の体制に支障がない、その体制の問題もまさにございますので、これも認知症の専門医の方々の意見も踏まえながら、今後検討してまいりたいというふうに考えております。

 診断の正確性や公平性を担保するということは、今回の制度をちゃんと動かすために極めて重要であるというふうに私どもも認識しておりまして、引き続き、かかりつけ医の方々についても認知症対応力向上に係る施策が、これは警察でできる話じゃございませんが、関係機関の方で、関係団体等も含めましてできますように、そういった関係の皆さん方の意見も伺いながら、専門医以外の医師による診断の正確性の向上というものも検討を進めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。

山谷国務大臣 今局長が答弁いたしましたけれども、診断の正確性を担保するとともに、診断ができる医師の体制に支障が生じないよう、認知症の専門医等の意見も踏まえて今後検討してまいりたいと思います。

山尾委員 私も、地域の一般のかかりつけ医と言われる方が、これを機にやはり認知症についての知見を深めていただく、専門性を深めていただくということは、さきに申し上げた十年後の社会を見据えると非常に大事なことだとも思いますので、さっき関係機関という話がありました、ぜひ大臣におかれましては、厚労省を含めた関係機関との連携をこの問題意識を持って深めていただいて、大きな問題意識を持って取り組んでいただきたいなというふうに思います。

 あともう一点なんですけれども、今回、最初に検査をして、認知症のおそれがあるよとなった、でも、その後結局、免許を更新できるよという状態になる場合もあるわけです。

 そういうときに、一律三年の有効期間ではなくて、検査を踏まえた専門家の知見があれば、やはりその次が三年後というのは不安だね、場合によっては二年後に診よう、一年後に診よう、何かしらもうちょっと柔軟な枠組みがあってしかるべきだと思うんですけれども、その点、委員長、いかがでしょうか。

鈴木政府参考人 認知機能検査は簡易のスクリーニングでございまして、認知機能検査により認知症のおそれがあると判定された者であっても、認知機能の低下の程度には個人差があることから、一律に運転免許証の有効期間を短縮することは、高齢ドライバーの負担が過大となり、適当でないというふうに考えております。

 他方、本改正により、認知機能が低下した場合に行われやすい一定の違反行為をした高齢ドライバーに対しては、臨時認知機能検査を行うこととしておりますので、タイムリーに医師の診断や講習を受けていただくことが可能となるところでございます。

 また、認知機能検査で認知症のおそれがあると判定された者等に対しては、現在でも、認知機能の状況に応じた実車指導を行っているところでございまして、さらに、今回の法改正にあわせて、高齢者講習において、その者の認知機能の状況を踏まえた個人指導等を行うこととしていることから、個人の運転能力に応じたよりきめの細かな対応が可能になるというふうに認識しておるところでございます。

山尾委員 今、個人差という言葉が出ましたけれども、本当にこれは、個人差があるからこそ一律三年というのはいかがなものかというふうに申し上げているわけです。

 そしてまた、一定の違反行為がそれを知る一つのきっかけに入ったということは、私も大変前向きに評価をしているんですけれども、一定の違反行為というのは、ヒヤリ・ハットじゃないですけれども、一定のはっとする危険と思われる行為があったときがきっかけなわけで、やはりそれがない段階で、できるだけできるだけ前倒しで知る機会ということを含めると、必ずしも三年ということよりは、もう少し柔軟な考え方もあるんじゃないか。

 高齢者の方の負担になるというふうに親心で言うことが、高齢者の方をむしろ交通事件の加害者にしてしまって、最も大きな人生の重荷を背負わせてしまってはいけない、これが最初からきょうずっと私が申し上げているところです。

 今、高齢者講習という話が出ましたけれども、高齢者講習、一月以内にやらなきゃいけない、一月以内にやらなかったら取り消しとか免停があり得る、これだけの義務を課しているわけですが、これは参議院でも指摘されていましたけれども、高齢者講習、今、実際に一月で受けられるような状態になっていないんじゃないのか、場合によっては三カ月、半年待たされているようなところも今現在あるんじゃないのか、そういう中で、この一月以内というのを課しておきながら体制が整っていなかったら、これは制度上問題だよという指摘がありました。

 改めて、このことについて、どういった形で今後新たに取り組みをしていくのか、教えてください。

鈴木政府参考人 今回の制度により導入いたします臨時高齢者講習の受講者数でございますが、年間おおむね約四万から五万人というふうに推計しております。現在の制度での高齢者講習を受講しておられる方は年間約百五十万人の方でございまして、今回の講習の導入により教習所等の受け入れに新たな大きな負担になるというふうには考えておりません。

 また、今回の改正にあわせて、七十五歳未満の者に対する高齢者講習の時間を一時間、七十五歳以上の者のうち臨時認知機能検査で認知機能が低下しているおそれがない者に対する講習の時間を三十分短縮することを予定しているところでございまして、この点からも、教習所等による受け入れ体制に、より大きな負荷がかかるというふうには考えておりません。

 しかしながら、この臨時高齢者講習をちゃんと一カ月以内に受けていただくことを担保することは極めて重要であるのはまさに指摘のとおりでございまして、都道府県警察自身が直接、臨時高齢者講習を実施すること、それから、自動車教習所等に対して臨時高齢者講習の受講者が速やかに受講できるように働きかけることなどの措置を講じるようにして、円滑に制度が運用されるように指導してまいりたいというふうに考えております。

山尾委員 ぜひお願いしたいと思います。

 そして、副大臣におかれましては、済みません、事務方の答弁で終わらせてしまいました。申しわけありませんでした。

 ありがとうございます。

井上委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 道路交通法改正案について質問をいたします。

 最初に、山谷国家公安委員長にお尋ねいたします。

 今回の法改正は、自動車の種類として準中型自動車、免許の種類として準中型自動車免許の創設を行うものであります。

 今回の法改正の背景ですけれども、全日本トラック協会など、トラック業界の要望もありました。トラック業界における人手不足解消のために、配送の主体である積載量二トン程度のトラックを十八歳の者でも運転できるようにしてほしい、こういう要望に応えるものというふうに受けとめておりますが、それでよろしいでしょうか。

山谷国務大臣 最近の交通事故情勢を見ますと、貨物自動車を中心とする車両総重量のより大きい車両の方が、一般的な乗用車に比べて、死亡事故発生の頻度が高いということでございます。

 他方、集配等で利用頻度が高く、物流の中心的な存在である最大積載量二トンの貨物自動車が、保冷設備等の架装により車両総重量は五トンを超えることが多くなっている現状にございます。

 そのような中で、こうした車両について高等学校を卒業して間もない者でも運転できる制度とするよう、全国高等学校長協会、全日本トラック協会等から、貨物自動車に係る免許制度の見直しについて要望が寄せられているところであります。

 これらを踏まえまして、今回の改正では、貨物自動車に係る事故防止対策を一層推進しつつ、社会的要請にも応えた制度とするため、車両総重量が三・五トン以上七・五トン未満の自動車の区分を設け、これらの自動車を運転するには準中型免許を必要とすること、貨物自動車を使用した試験、教習等を行うこと、準中型免許については十八歳以上で取得可能とすることなど、免許制度の見直しを行うこととするものでございます。

塩川委員 今制度の説明をいただきましたけれども、要するに、トラック業界における人手不足というのも背景にあるということは、その点はよろしいですか。

山谷国務大臣 はい、全日本トラック協会等から要望が寄せられたところでございます。

塩川委員 そこで、トラック業界の人手不足なんですけれども、なぜ人手不足なのか、この点について国交省の方にまず確認をしたいんですけれども、トラックドライバー不足と言われる理由は何なのか、お答えください。

宮城政府参考人 お答えを申し上げます。

 現在、トラック業界におきましては、特に二十九歳以下の若年者の割合が一〇%、これが全産業に比べて大分低いということ、こういったことを含めまして人材不足感が高まっております。その背景の一つには、ドライバーの長時間労働、低賃金の問題があるというふうに認識しております。

 具体的な数字を申し上げます。

 平成二十六年の中小型トラックのドライバーの年間の労働時間でございますが、これは二千五百八十時間でございます。これに対しまして全産業平均は二千百二十四時間というふうな、差が生じてございます、四百時間長いということでございます。

 もう一つ、年間所得でございます。これも同じように、中小型トラックドライバーについて比較いたしますと、このドライバーにつきましては年間の所得が三百七十五万ということで、これが全産業平均の四百八十万から約百万低くなっている。

 このような状況がトラックドライバーの不足の原因になっている、このように考えてございます。

塩川委員 長時間労働であり、かつ低賃金だというので、数字もお示しいただきましたが、労働時間でいえば、年間で四百時間も全産業との比較で多い。給与についても、年収ベースで百万円の差がついている。これでは、実際に人手不足というのは解消もままならないということであります。こういうトラック労働者の低賃金と長時間労働の深刻さの一端をあらわすものであります。

 次に、厚生労働省に確認をいたしますが、トラック労働者の労働災害も極めて重大だということがあります。

 厚生労働省の脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況、平成二十五年度における労災認定件数と、その中に占める自動車運転従事者の件数が何件となっているのか、このことについてお答えください。

大西政府参考人 委員御質問の、平成二十五年度における脳・心臓疾患の労災認定件数でございますが、全体で三百六件でございます。そのうち自動車運転従事者につきましては九十三件、自動車運転従事者のうちトラックに関しましては八十三件ということになっておるところでございます。

 また、精神障害の労災認定件数でございますが、全体で四百三十六件でございまして、そのうち自動車運転者につきましては二十六件、さらにそのうちでトラックの運転者の方につきましては二十件ということになっておるところでございます。

塩川委員 自動車運転従事者の中には、トラック労働者だけではなく、タクシー、バスの運転手の方も含まれております。そういう中でも、トラックのドライバーの方のこういう労災の件数が非常に高いということであります。また、全産業との対比を見ても、大体、トラック運転手だけでも脳・心臓疾患八十三件というお答えがありました。

 トラック労働者の人数は、道路貨物運送業というくくりの中では百三十六万人。その中には会社の事務の方なんかも含まれますから、実際にドライバーの方は八十四万人ぐらいとかとも言われています。全労働者の四千六百万人との対比でトラック労働者八十四万人ということになりますと、二%に満たない。二%に満たないトラック労働者の重大な労災というのが、脳・心臓疾患では全体の三割に及ぶような状況になっている。

 二%に満たないトラック労働者の脳・心臓疾患の労災認定というのが三割近くに及んでいるというのは、極めて劣悪な労働環境にあるということを示すものではないでしょうか。

 山谷大臣に、感想で結構なんですけれども、今言ったように、この法案の背景にはトラック労働者の人材不足があります。その人材不足の背景といえば、こういう低賃金、長時間労働がある、今の労災の状況もあります。こういう状況の深刻さについて、大臣としての御所見をいただければと思っております。

山谷国務大臣 労働環境の改善というのは必要だと考えております。委員御指摘のとおり、運転者の労働条件の適正化によって交通事故の抑止を図っていくということは重要だと思っております。

 警察としては、過労運転等をした運転者の取り締まりにとどまらず、これらを下命、容認していた使用者等の検挙、使用者に対する自動車の使用制限命令等、背後責任の追及を行っているほか、安全運転管理者に対する指導等の対策を講じているところであります。

 また、今回の改正にあわせまして、国土交通省において、長時間運転が生じやすいトラックを適切に運行管理するための運行記録計の普及拡大や、トラック運転者への指導監督の強化、教育の充実等を内容とする総合安全対策について検討がなされているものと承知しておりまして、引き続き、関係機関、団体とも緊密な連携をして、貨物自動車に係る事故防止対策に政府一丸となって取り組んでまいりたいと考えております。

塩川委員 警察としての取り組みのお話をいただきました。労働環境の改善が必要だという点での御認識を伺ったところであります。

 このようなトラック労働者の劣悪な労働実態の背景には、私は、荷主の責任が大きく問われると思っております。トラック運送事業者に対して強い立場にある大手メーカーなど荷主の、率直に言って横暴勝手というのがあるんじゃないのかと思うんですけれども、国交省としての認識はいかがですか。

宮城政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、トラックドライバーの長時間労働、低賃金の背景には、荷主に対しまして立場が弱いために、附帯作業、運送以外の附帯作業でございます、こういった附帯作業などについて適正な料金が収受できないこと、それから、手待ち時間、車が到着してもすぐに積み込めない、すぐに配達に移れない、こういった時間、これによって長時間の労働になっているということがございます。

 このため、こういったことに対しまして、本年二月に、トラック運送業における下請・荷主適正取引推進ガイドラインというものを改正いたしました。ここにおきまして、手待ち時間の改善に関する項目を追加いたしますとともに、必要なコストについてはこれをきちんと価格に転嫁する、こういった項目を記述してございます。

 また、厚生労働省、国土交通省、荷主、トラック運送事業者などにより構成されますトラック輸送における取引環境・労働時間改善協議会、これを中央及び全都道府県に設置いたします。この協議会におきましてロードマップをつくりまして、関係者一体となりまして取引環境の改善及び長時間労働の抑制に取り組んでまいりたい、このように考えてございます。

塩川委員 今お答えがありましたように、荷主に比べてトラック事業者の立場が弱い、附帯作業などの適正な運賃の収受がなされていないという現状があるということであります。その点で、ガイドラインの話ですとか協議会の御説明がございました。

 手待ち時間の御説明もありましたけれども、実際、待たされるという場面が非常に多いということですよね。この点について、日本路線トラック連盟での荷主庭先実態調査というのがあると伺っています。そこでの手待ち時間の実態がどうなっているかについて紹介してもらえますか。

宮城政府参考人 お答え申し上げます。

 今お話に出ました日本路線トラック連盟におきまして、昨年十月に荷主庭先実態調査を行いまして、それを公表してございます。

 ここに長時間の手待ちの発生状況を示しておりますが、具体的には、一時間以上の手待ち時間が発生する割合につきまして、集荷時、荷物を入れるときです、このときは七・四%。一方、配達時でございますが、これにつきましては二四・五%、これぐらいが一時間以上の待ち時間が生じているということであります。さらに、配送センター、大手の場合は配送センターを使います、こういったところにおきましては四五・二%、このぐらいの割合が一時間以上の手待ち時間が生じている、このような状況になってございます。

塩川委員 荷主の大手メーカーなどがジャスト・イン・タイムなどをやっていて、定時に持ってきてくれとなりますと、ずらっと並ぶわけですよね。その場合に、なるべく早く搬入しようと思うと早く待っていないといけない。結局は手待ち時間が長くならざるを得ないし、後ろになればなっただけおくれるし、その先の輸送先への着時間がおくれるということにもつながりかねないという点でも、こういった手待ち時間を初めとした荷主の対応というのがやはり厳しく問われていくところであります。

 そういった手待ち時間の発生が荷主の責任だということが問われるわけですけれども、その点で、荷主に対して、トラック事業者への適正な運賃確保と労働時間短縮の対策を具体的に求めるべきだと思っております。先ほど言ったようなガイドラインですとか協議会の立ち上げでこれが可能となるんでしょうか。

宮城政府参考人 お答え申し上げます。

 国土交通省といたしましても、御指摘の、荷主の都合による手待ち時間、それから附帯業務などの運送以外の役務につきましては、運賃とは別に、例えば車両のとめ置き料でありますとか附帯業務料、こういった形で適切な料金を収受すべきというふうに考えてございます。

 このため、こういった考え方を踏まえまして、昨年一月に、書面化ガイドライン、これは要するに、荷主と運送事業者との間でちゃんと書面を交わして、金額とか役務の内容を決めるということでございます。そのガイドライン及び標準貨物運送約款におきまして、車両とめ置き料、附帯業務料等を明記する、こういった改正を行ったところでございます。

 これらの施策によりまして、今先生御指摘のありましたような形の、少しでも解消を図りたい、このように考えてございます。

塩川委員 労働時間の短縮と適正な運賃の収受が可能になるような仕組み、今、手待ち時間の話がございました。これ自身が短縮されれば労働時間の短縮にもなるでしょう。

 あわせて、本来、手待ち時間が発生しているのは荷主の責任ですから、その荷主に対して改善を求めていく。それが一定時間に及ぶようであれば、当然のことながら運賃の一部としてこれをきちんと受け取るという仕組みが必要だと。その例として、トラック運送業における書面化推進ガイドラインの説明がありました。手待ち時間がトラック事業者の負担となっている商習慣を踏まえて、手待ち時間の改善について記述をしたということです。

 その点で、車両とめ置き料の話が今ありました。この書面化における記載事項の一つとして車両とめ置き料というのがあるわけですけれども、これが手待ち時間分を運賃に反映させるものだ、こういったものを、書面化推進ですから、書面として交付するということを求める、この点については、荷主に対してこの点をきちんと果たしてもらうということを迫っていくというのが国交省の立場ということでよろしいですか。

宮城政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げたような書面化、それからきちんとした費用の収受ということにつきまして、まずは、荷主を含めて、事業者それから関係機関等を含めまして、中央及び地方でいろいろな協議会をつくってございます。そういった協議会で理解を求めて、その意味では、全体として荷主の方々にそういった認識を持っていただく、こういったことに努めてまいりたい、このように考えてございます。

塩川委員 その点については、顔を合わせて協議して、トラック事業者の窮状について荷主さんもよく理解してください、こういう話なんだと思うんですけれども、ではそれで通る話なのかという点も問われてくるわけであります。

 そういう意味では、ガイドラインにおいても、物流、トラック事業において、元請、下請関係についていえば、迅速な独禁法の適用にも当たるような下請法もあります。もともと荷主との関係では下請法の適用になりませんから、荷主とトラック事業者との関係においては、物流における特殊指定もあるわけであります。

 こういった、実際に大手メーカーなどの荷主に対してしっかりとその責任を果たさせるということについていえば、物流の特殊指定など優越的地位の濫用を是正するようなこういう積極的な取り組みが必要なんじゃないのかと思うんですが、この点はいかがでしょうか。

宮城政府参考人 ただいま御指摘のありました独禁法における優越的地位の濫用、こういった事案をもちろん認知した場合には、私どもとしては、積極的にそういった形で取り組んでまいりたい、このように考えてございます。

塩川委員 その上で、実際に適正な運賃を受け取るような環境づくりということが必要であります。

 そういう意味では、運輸分野では、この間、安全対策や経営環境の改善の観点から政策の見直しが行われてまいりました。バスあるいはタクシーにおきましては、このような安全対策、経営環境の改善などについての運賃制度の見直しも行ってきたところであります。

 トラックにおいても、こういった例えば幅運賃制度のような一歩踏み込んだ対応というのが必要なんじゃないのかと。標準運賃のような目安を示していく、そういった適正な運賃が収受できるような環境づくりをする上でも、標準運賃などを設けるようなそういう改善策に踏み込む、そういうときに来ているんじゃないのかと。

 バスやタクシーなどで今までのやり方を見直したと同様に、トラックの分野においても必要な運賃確保ができるような仕組みの見直しという点での標準運賃などを考える考えはないのかということをお聞きします。

宮城政府参考人 お答えを申し上げます。

 標準運賃というお話でございましたが、タクシー、バスのように一般の消費者の方々とちょっと違いまして、いわゆるBツーBと申しまして、企業間の取引ということになります。そうしますと、これは一種、自由契約の中で決まってくる話かと思います。

 ですが、先ほど申し上げましたように、その中で著しい優越的地位の濫用等々があった場合についてはきちっと対応する、それから、先ほど申し上げたような約款の話でありますとか、こういったことを徹底することによりまして、少しでもそういった障害といいますか、まずい点を直してまいりたい、このように考えてございます。

塩川委員 いや、バスやタクシーは、安全対策や経営環境の改善ということで顧客の方に負担をお願いするという仕組み、でも、トラックの場合には荷主にお願いする、それが困難だということなわけですよね。

 でも、本来、こういうトラック事業者の経営環境が悪化をしてくれば、荷主にとっても結果としてはマイナスになるんだろうという問題であるわけで、そういったときに、今のように、どんどん若い人も入らない、人手不足が深刻だといったときに、結果として荷主にもしわ寄せが行かざるを得ないような、そういう事業環境を改善するという点でいえば、荷主にしっかりと責任を果たしてもらう、こういうことに踏み出すことが必要なんじゃないのか、そのやり方として標準運賃などを今具体的に考える必要があるんじゃないのか。改めて、いかがですか。

宮城政府参考人 繰り返しまして申しわけないんですが、基本的には、運賃というもの、こういった価格というものは、いわゆる市場の中で、マーケットの中で決まってくるということでございます。ですので、適正な運賃というものは、できればそういったマーケットの中で、それぞれ皆さん問題意識を同じにする中で、話し合いで決まってくるものではないかというふうに考えてございます。

 現在の段階で標準運賃という形のものを考える、適用するということはまだ少し慎重であるべきだ、このように考えてございます。

塩川委員 この間の議論というのは、もともと労働基準法の今度の法案の中に、中小企業における残業時間の割り増し率を上げるということが前提になっているわけです。これはこれとして求められることでしょうけれども、しかし、そもそもの全体の事業環境の改善なしにはそれすらも達成できないだろうという問題なんです。(発言する者あり)おっしゃるとおりと言うとおりでありますから、そういった点でもう一歩踏み込んだ対応が求められているんじゃないのかということを重ねて申し上げます。

 かつては、もちろん、トラック事業におきましても、規制緩和前は運輸省が決めた許可運賃の制度などもあったわけで、労働条件の改善につながるような運賃政策を実施すべきだ、こういうことを改めて強く求めておくものであります。

 その上で、長時間労働が野放しになっているという点では、私は行政の責任も大きいと思います。

 厚生労働省のトラック運転者の労働時間等の改善のための基準、改善基準告示があります。厚労省にお尋ねしますが、この改善告示では、一日の拘束時間を原則十三時間、最大十六時間以内、月間で二百九十三時間以内、年間では三千五百十六時間以内と定めています。拘束時間といっても、実質的には、とめ置かれるわけですから、労働時間と変わりがないというのが実態で、週四十時間で換算すれば月に百時間前後の時間外労働が可能となる。ということは、過労死認定基準である月八十時間も超えるような実態が容認をされることになる。

 改善基準告示を厚労省が示しているわけですけれども、これが結果として長時間労働の温床にもつながっているんじゃないのか、厚労省の責任も問われると思うんですが、どうですか。

大西政府参考人 委員御指摘の改善基準につきましては、トラックを初めとした自動車運転者の業務の特殊性でございますとか、あるいは長時間労働の実態があるということでございますので、そういった点の改善というか、労働条件の向上を図るために定めたものでございます。これにつきましては、そういった業務の特殊性を踏まえまして、関係者の御意見を聞きながら定めたものでございます。

 そのほかに、もちろん、先ほど委員御指摘もありました労働基準法という法律もございまして、こういったところで、法定労働時間や割り増し賃金、こういった規制は当然、自動車運転者の方にもかかっているところでございます。

 私どもといたしましては、自動車運転者の長時間労働につきましては大変重要な問題というぐあいに捉えておるところでございますので、自動車運転者の労働条件確保を労働基準監督署が監督をする際にも重点対象ということにさせていただいておりまして、労働基準関係法令の違反、あるいはそういった改善基準違反については厳しく取り締まっているというところでございます。

塩川委員 実際、このような改善告示さえほとんど守られていないという実態もあるわけです。厚労省が統計をとり始めた一九八九年の違反率は五二・一%と聞いています。二〇一三年の違反率が六五・五%で、高まっている。そういう点でも国の責任は極めて重大であります。

 この改善基準告示が関係者で決めたもの、政労使で決めたということもあるという説明もありましたけれども、先ほど言ったように、トラックの事業環境そのものの改善ということがやはりトラック労働者の労働条件改善なしには達成できないんだというのは、いわば共通の認識だろうと思っております。

 そういう点でも、今述べたような拘束時間を、時間外で月百時間になるような、こういう枠組みそのものも見直すことを通じて、労働者の労働条件の改善につなげていく。例えば、一日の拘束時間を十一時間以内にするなどの改善措置をとるべきだということを求めたいと思います。

 それと、もう一つ指摘をしたいのが、このようなトラック労働者の労働条件悪化の背景には、国の規制緩和政策もあります。一九九〇年施行の物流二法は、トラック事業を免許制から許可制に変えたことで新規参入が容易となりました。運賃は、許可運賃制を廃止して自由化をしました。企業の零細化により、運賃のダンピングによる過当競争が激化し、荷主からの値下げ強要に対応できず、事業者の経営が圧迫をされ、労働条件が悪化をし、ひいてはトラック運輸産業そのものの存立が脅かされることになっています。

 国交省にお尋ねしますけれども、こういった規制緩和政策の結果というのがトラック運輸産業そのものの存立を脅かすような状況になっているんじゃないのか、この点についての認識を伺いたい。

宮城政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘のありました平成二年の規制緩和によりまして、明るい面といいますか、そういう意味では、サービスの多様化でありますとか競争により運賃・料金が低下し、利用者の利便が向上したということはございます。

 一方、特に事業者数の増加によりまして競争が激化いたしまして、事業者は大変厳しい経営環境にあるということがございます。先ほど出ました、荷主に対して弱い立場にある、それからもう一つ、法令遵守でありますとか安全運行に対する意識が低い事業者、こういったものが入ってきた、こういった状況も見られます。

 このため、先ほども申し上げましたが、荷主との適正取引の推進に向けまして、先ほど申し上げたガイドラインの改正でありますとか、それから、国、地方におきます取引環境、長時間労働改善協議会の設置などによりまして、適正な運賃の収受でありますとか手待ち時間の削減等を図ってまいりますということでございます。

 あわせまして、先ほど申し上げました不適正な事業者の排除及び参入の防止、こういったものが労使の関係で一番足を引っ張ります。これにつきまして、適正化実施機関が悪質な事業者を運輸局に速報するなどによります監査、速報制度の効果的な運用でありますとか、それから、新規の許可時におきます社会保険加入状況などの事前チェック、こういったものを図ってまいりたいというふうに考えます。

 こういったことによりましてトラック産業の健全な市場環境を整備し、もってドライバーの労働条件の改善を図っていく、今このような考えでいるところでございます。

塩川委員 この間の一連の規制緩和政策で、実態とすれば、荷主にとってはメリットがあったかもしれない。しかし、大手の荷主にとっては、事業者がふえるわけですから、そういった値下げ競争、ダンピング競争をあおるようなことで、結果とすればメリットがあったかもしれないけれども、そのことによってトラック事業者そのものが非常に疲弊をするという状況が生まれたということが一方であります。

 今、トラック産業での状況も、例えば配送の事業者のトラックなどもふえるような、そういう面での環境の変化も生まれています。大手のそういった物流業者においては、海外のいわば不動産資本などがつくるような大手の流通資本が進出をしてきて、そういう意味でも、そういった大手との関係でもトラック事業者というのはなかなか困難な環境に置かれているという新しい環境変化も踏まえた対策が求められているときで、やはり、この間の規制緩和政策の問題点について、きちっと総括をした新たな対策をとることを求めておくものであります。

 最後に、山谷国家公安委員長にお尋ねをいたします。

 やはり、道路交通の安全を守るためには、ドライバーの労働条件の改善は不可欠であります。交通安全対策基本法の三十一条には、国は、車両等の安全な運転の確保を図るため、運転者等の労働条件の適正化等必要な措置を講ずるとあります。

 道路交通安全対策を所管される大臣として、国が責任を持ってトラック労働者の賃金、労働条件を定めていく、改善を図っていく、そういう決意について、ぜひお答えいただければと思います。

山谷国務大臣 運転者の労働条件の適正化によって交通事故の抑止を図っていくということは本当に重要なことだというふうに思います。今委員がお読みになられました交通安全対策基本法第三十一条もございます。

 悲惨な交通事故を減らすことができるよう、今回の法改正の円滑な施行に努めるとともに、引き続き、関係機関、団体とも連携を密にし、貨物自動車に係る事故防止対策に政府一丸となって取り組んでまいります。

塩川委員 トラック労働者の労働条件の改善を求めて、質問を終わります。

井上委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

井上委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、参議院送付、道路交通法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

井上委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

井上委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、亀岡偉民君外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、維新の党、公明党の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。亀岡偉民君。

亀岡委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明いたします。

 案文の朗読により趣旨の説明にかえさせていただきます。

    道路交通法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たっては、次の諸点に留意し、その運用等について遺憾なきを期すべきである。

 一 臨時認知機能検査等を行う旨を通知するに当たっては、プライバシー等に十分配慮しつつ通知の内容が的確に高齢者に伝わるよう努めることにより、対象者の確実な受検等を担保すること。

 二 高齢者講習については、その受講者数の増加等により、一部の地域では受講を申し込んだ者が受講まで長期間待たされたり、不便な場所で受講せざるを得ないなどの問題が生じていることに鑑み、指定自動車教習所等が行う受講者の受入体制の拡充ができるよう適切に支援すること。特に臨時高齢者講習の実施に当たっては、受講者の負担をできる限り軽減するため、実施場所、実施方法等について検討を加え、適切な措置を講ずること。

 三 臨時適性検査等における認知症に係る診断については、受診する医師によってその診断に差異が生じることがないよう、専門的知見による検討を加えた上で適切な措置を講ずること。

 四 臨時適性検査等の対象者の大幅な増加が想定されることから、同検査等を実施する専門医の確保に努めること。また、医師の数が少ない地域の臨時適性検査等の対象者には、認知症に係る診断を行うことができる医師の紹介を行うなど、その実情に応じきめ細やかな運用を行うこと。

 五 運転免許の自主返納制度について、その周知や相談体制の充実等を図るとともに、認知機能の低下等により運転免許の自主返納が困難な場合には、家族等周りの者の負担が過度にわたることのないよう配慮しつつ、社会全体で取り組むべき問題であるとの認識の下、必要な措置を講ずること。

 六 運転免許の自主返納等の理由で自動車等を運転することができない高齢者の移動手段の確保については、地方自治体等とも連携しながら中長期的な視点も含め適切に対策を講じていくこと。

 七 若年性認知症の者など、認知機能の低下は高齢者に限られないことを踏まえ、それらの者への安全対策も十分に検討すること。

 八 準中型自動車免許を受けようとする者への教習に当たっては、交通死亡事故件数に占める十六歳から二十四歳の年齢層の割合が高いこと等を踏まえ、指定自動車教習所等とも連携し、安全性を確保するに十分かつ効果的なものとなるよう適切な措置を講ずること。

 九 準中型自動車免許を受けた者の初心運転者標識表示義務に係る規定及び初心運転者標識を表示した準中型自動車に対する保護義務の在り方に関しては、本法施行後の事故の発生状況等を分析し、その結果に基づき、速やかに必要な見直しを行うこと。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をよろしくお願いいたします。

井上委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

井上委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。山谷国家公安委員会委員長。

山谷国務大臣 ただいま御決議がありました附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

井上委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

井上委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

井上委員長 午後零時五十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時三十七分休憩

     ――――◇―――――

    午後零時五十分開議

井上委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 内閣の重要政策に関する件、特に年金情報流出問題・サイバーセキュリティについて調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として日本年金機構理事長水島藤一郎君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として内閣官房内閣審議官向井治紀君、内閣官房内閣審議官谷脇康彦君、警察庁警備局長高橋清孝君、特定個人情報保護委員会事務局長其田真理君、総務省大臣官房地域力創造審議官原田淳志君、法務省大臣官房審議官上冨敏伸君、国税庁長官官房審議官上羅豪君、厚生労働省大臣官房情報政策・政策評価審議官安藤英作君、厚生労働省大臣官房年金管理審議官樽見英樹君、厚生労働省大臣官房審議官吉田学君、厚生労働省大臣官房統計情報部長姉崎猛君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

井上委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

井上委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高井崇志君。

高井委員 維新の党の高井でございます。

 先日に引き続いて、この年金情報流出問題、質問の時間を与えていただき、ありがとうございます。

 二十分という限られた時間なので、早速質問に入ります。

 今回、百二十五万件というこの被害の数字がもう何か確定したかのように新聞報道などでは書かれていますが、私は決してそうではないと。今捜査中だと思いますけれども、複数のサーバーにこれが感染をしているわけでございまして、ウイルスのサイバーセキュリティーの専門家に聞きますと、どのサーバーに感染しているかによって被害はもっともっと大きくなる可能性があるということでございます。

 やはり、国民の皆さんにとっては、どれだけ漏れているのかということを心配しているわけでございますから、なかなか捜査中のことを言えないということもわかりますけれども、しかし、可能性として、このサイバーセキュリティーの被害百二十五万件がさらにふえるという可能性についてお答えください。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 現在、警視庁では、日本年金機構からの情報流出の状況を具体的に把握するため、所要の捜査を鋭意推進しているところであります。

 一般論として申し上げますと、この種の事案では、国内外の複数のサーバーが踏み台として利用されることが少なくなく、特に海外のサーバーに対しては国際捜査が必要となることから、全容の解明には相当程度の時間を要するものと承知しております。

 いずれにしましても、警察としましては、引き続き、日本年金機構から協力を得つつ、関係機関とも連携して、本事案について捜査を早急に進めてまいりたいというふうに考えております。

高井委員 NISCはどうでしょうか、この情報というのは把握されていますでしょうか。

谷脇政府参考人 お答え申し上げます。

 五月の二十九日でございますけれども、厚生労働省から今回の事案について報告を受けたところでございます。これを受けまして、六月の一日、NISCの中にも原因究明チームを組成いたしまして、現在、機構等から資料を取り寄せるなど、原因究明を急いでいるところでございます。なるべく早く全容を解明できるよう、私どもとしても努めてまいりたいというふうに考えております。

高井委員 両者、お答えいただけなかったんですが、これは、捜査中のことは言えないのはわかりますが、しかし一方で、国民の大変な関心事でもあります。これはやはり、国家公安委員長あるいは官房長官が、もちろん報告は上がっているんだと思いますから、そのどこかの段階で、可能性だけれどもというようなことでも結構ですので、しっかり国民の皆さんに伝える義務があると思います。これはよろしくお願いいたします。

 それでは、続いて、今回の事案、年金機構が非常にずさんだ、これについてはもっともっと徹底的に究明しなきゃいけないんですが、一方で、最も悪いのはこの犯人、容疑者なわけでございます。この容疑者が、ある意味、愉快犯なのか何なのか、その辺もまだ特定できていないと思いますが、しかし、これだけの事案を発生させておいてどのような罪になるのか。

 この罪が軽いようだったら、どんどん同じような事案が出るんじゃないかと思いますが、これはどういう罪に当たって、そしてどのような罰則になるんでしょうか。

山谷国務大臣 具体的な適用罪名については、警視庁において今後の捜査により事実関係を明らかにした上で検討することになるものと認識をしておりますが、例えば刑法の不正指令電磁的記録供用罪といった容疑が考えられるものと承知しております。

 この不正指令電磁的記録供用罪の罰則ということで申し上げれば、三年以下の懲役または五十万円以下の罰金とされているところでございます。

高井委員 これだけの甚大な被害で国民の皆さんの不安をあおった事件であっても三年以下の懲役、五十万円以下の罰金というのは、これは罰則として軽くないですか。

上冨政府参考人 不正指令電磁的記録供用罪といいますのは、いわゆるコンピューターウイルス等による害悪を社会に拡散させる行為を処罰するものでございます。

 そして、この供用罪が成立するためには、いわゆるコンピューターウイルス等を情を知らない第三者の電子計算機で実行され得る状態に置くことで足り、コンピューターウイルス等が実行されて現実に何らかの被害が生じる必要はないものとされております。

 そして、その法定刑につきましては、刑法に定められている他の罪、具体的には電磁的記録不正作出供用罪、これは、重要な事項を内容とする電磁的記録を現に不正に作出するという形でその証明機能に対する社会の信頼を直ちに害する行為を処罰対象としておりますが、この罪の法定刑が、当該電磁的記録が公務所または公務員によりつくられるべき場合は十年以下の懲役または百万円以下の罰金、私人によりつくられるべき場合は五年以下の懲役または五十万円以下の罰金とされていることや、人の業務に使用する電子計算機に現に使用目的に沿うべき動作をさせず、または使用目的に反する動作をさせて業務を妨害するという電子計算機損壊等業務妨害罪の法定刑が、五年以下の懲役または百万円以下の罰金と定められていることなどを参考にして、三年以下の懲役または五十万円以下の罰金としたものでございます。

 したがいまして、本罪の法定刑はほかの罪の法定刑との均衡を保った適正なものであると考えているところでございます。

高井委員 笑いも漏れましたけれども、本当に時代が変わっています。このウイルスの被害というのは物すごく甚大なものですから、今刑法だから法務省にお答えいただきましたけれども、例えば不正アクセス禁止法だったら警察であったり、いろいろ所管も分かれると思いますし、いろいろな罪が考えられるわけですが、やはり、これは政府全体としてサイバーセキュリティーを、守るという観点からも、しっかり犯罪として犯罪者を特定する、それからその罰則というのをやらないと、どんどんどんどん不安は広がりますから、これはぜひ官房長官、御検討をお願いしたいと思います。

 ちょっと時間がないので、次々行きます。

 それでは、先日もお聞きしたんですが、地方自治体。私は、今回の事案が、神戸市長が、たまたま見て、これはもう年金機構どころじゃない、地方自治体の方がもっと個人情報をたくさん持っているんだ、これはしっかりやらなきゃというふうにおっしゃっています。

 いろいろこの間調べてみますと、NISCというのは、基本的には各省庁に対して勧告権限であるとか報告聴取とかいろいろな権限がある。しかし、その他の自治体やあるいは、今回の年金機構はちょっとまた特殊なんですが、いわゆる重要インフラと言われる電力とかガスとか鉄道とか、そういったものについては各省庁からしかそういう勧告権がないんですね、直接何かやれないという規定になっています。

 そういう意味で、私は、地方自治体を所管する総務省が極めて重い責任を現行法上は負っていると思うんですが、今回のような事案が地方自治体でもし発生したときに、総務省それからNISCも、それぞれどういう対応をとるんでしょうか。

原田政府参考人 お答えいたします。

 地方公共団体に対するサイバー攻撃によりまして個人情報が漏えいした場合につきましては、当該団体は、都道府県を通じまして総務省へ報告することとされておりまして、総務省は、その報告を受けまして、NISCへ報告を行うこととされているところでございます。

 また、自治体から協力を求められた際には、NISCと連携しながら、要請に基づきまして、情報提供や助言等を行い、協力を行うこととしているところでございます。

 以上です。

谷脇政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま総務省からも御答弁申し上げましたように、地方公共団体において同様の事案が発生した場合には、まずは総務省に報告が行われ、その旨総務省から私どもNISCに連絡が行われるということでございます。

 NISCにおきましては、平素からさまざまな情報提供を行っておりますけれども、委員御指摘のような事案が発生した場合には、総務省、または総務省を通じて、地方公共団体からの求めに応じて助言等を行うということにしてございます。

高井委員 これは、先日もお聞きしたんですけれども、では、総務省がどういう体制になっているかというと、地域情報政策室でしたかね、という室に七名の課員がいて、セキュリティーのわかっている人はいますかと言ったら、ゼロですという御答弁でした。

 総務省、私も総務省出身なので、技術がわかっているCIO補佐官というのがいます。たしか三、四名いるんですけれども、しかし、このCIO補佐官は、総務省の中の業務についてのセキュリティーの担当などをしていますけれども、地方自治体に対する助言とか、そういったことをやる仕組みにはなっていないです。私は、やはり、今回の年金機構のときもそうなんですが、もっともっとNISCが前に前に出ていってもいいんじゃないかと。

 これは、ウイルスセキュリティー会社のホームページに、今回の事案についてちょっとコメントがあったので読ませていただきます。

 ウイルス対策ソフトは、一日に百万件近くも生み出されるウイルスを全て防ぐことは困難です。一日に百万件ですよ。セキュリティー監視といったプロの取り組みにおいても、標的型サイバー攻撃を確実に発見することは困難です。つまり、狙われた場合には避けることができないと考えた方が論理的です。標的型サイバー攻撃を防げないとしたらどうするか。被害を最小に抑え、重要な情報を窃取される前にゲートを閉じて原因を追及するのですというふうに書いています。

 ですから、もう事後対策しかないんです。しかし、それが、今の総務省の体制、あるいはNISCが直接なかなか出ていけないという体制では、これはまた同じことが起こりかねない。そして、地方自治体というのはもっと脆弱な体制で、職員の意識だってそんなにセキュリティーに関しては高くないと思います。

 そういうことを考えますと、総務省、きょうは副大臣に来ていただいています、それから、NISCについての最高責任者は菅官房長官ですから、それぞれ、今のこの体制で、特に地方自治体、地方自治体以外のことでも結構ですけれども、これで十分だと考えておられるのか、御答弁をお願いします。

二之湯副大臣 地方公共団体は個人情報を多く取り扱っていることから、十分な安全管理措置を実施することが行政の信頼性を確保するためにも非常に重要である、そういう認識をしております。

 今後は、総務省といたしましても、NISC、内閣サイバーセキュリティセンターと連携して、地方公共団体におけるサイバーセキュリティー施策の実施状況や、国に対する支援のニーズを把握して、国民が安全で安心して暮らせる社会の実現を図ってまいりたいと思います。

 その上、総務省においては、情報セキュリティーに関する専門的な知識及び経験を有する最高情報セキュリティアドバイザーを独自に設置しており、今後、自治体に対しセキュリティー対策に係る助言等を行う場合には、このアドバイザーを活用することを検討してまいりたいと考えております。

高井委員 同じ質問というか、NISCとして、やはりもっと地方自治体にも前向きに出ていく、あるいは、今回も真っ先に年金機構に乗り込んでいくべきだったんじゃないか。それは、各省がやることになっているんですけれども、今言ったように、総務省の七人の地方自治体の担当は誰もセキュリティーの専門家じゃないし、それから、厚生労働省だって今回対応した人はそんなに専門家ではないということを考えると、もっと政府全体としてそういう取り組みが必要じゃないかと思いますが、官房長官、いかがでしょうか。

菅国務大臣 今回の事案ももちろんですけれども、海外でもいろいろなことが発生をしております。そういう全体を考えたときに、NISCの体制を充実するということは、これは極めて大事だというふうに私は再認識をいたしております。

 それと同時に、地方自治体でありますけれども、地方自治体というのは、なかなか専門家の方が少ないところも多いだろうというふうに思います。しかし、それぞれ個人情報をしっかりと保有しているところでありますので、総務省と連携をしながら、その啓発だとか助言だとか、そういうことは当然NISCでもできる体制にありますけれども、さらにこのNISCの業務というんですか体制を強化していく中で、そうしたこともしっかり行うことができればなというふうに思います。

高井委員 端的に言うと、私は、やはり人をもっともっとふやして、それから、総務省に常駐させるのか、あるいはNISCが直接やるのでも、それは政府の中ですからどっちでもいいですけれども、もっとセキュリティーがわかる人間を置いて、千七百の自治体から何かあったときに応援してくれと言われたらすぐ駆けつけられる、そういう体制をとらないとまずいんだろうと思います。

 そういう意味では、きょうは山口大臣にも来ていただいていますが、山口大臣の方がよりITの専門として直接やっていただいていて、かつ、サイバーセキュリティ本部の副本部長でもあられますので、今回の事件を受けて、やはりこのセキュリティー対策、私は、特に人員をふやす、あるいは予算をふやすということをしっかりとセキュリティ本部として取り組んでいただく必要があると思うんですけれども、いかがでしょうか。

山口国務大臣 いろいろ御指摘をいただきましたように、本来、やはり、サイバーセキュリティー、これがしっかりしておりませんと全体がうまく回っていかないというふうな中で、御案内のとおりで、政府におきましても、現在、サイバーセキュリティ戦略、この策定に向けて作業を進めております。

 そのさなかに今回の事案が起こったわけでありまして、そういった今回の事案をしっかり重く受けとめて、今回のさまざまな検証結果等々を受けて、サイバーセキュリティ戦略、この内容についても見直しを行っていく必要があろうというふうに考えております。

 また、NISCは、省庁横断的な立場からサイバーセキュリティー対策を推進するために設けられたというふうなものでありますが、我が国のサイバーセキュリティー対策をより一層強化するという観点からは、やはりその活動を適宜見直していくというふうなことも必要なんだろう。

 同時に、前々から高井先生に御指摘いただいておりますように、人員あるいはシステムの強化、これにつきましても、ただ、今のGSOCはもう四年目になります、これもやはりしっかりしたものに強化をしたい等々いろいろあるわけで、これから予算の獲得に向けてしっかりと官房長官の御指示をいただきながら取り組んでいきたい、より強固なものにしていきたいと思います。

高井委員 本当に関係省庁は多岐にわたります。きょうは三大臣に来ていただいておりますので、ぜひ財務省にしっかり予算要求をして、人員を大幅にふやすということをお願いしたいと思います。

 最後に、山口大臣、ちょっと通告していないんですけれども、けさの朝日新聞に、今回の件を受けて、第三者機関にこういった権限を集中させるという記事が、IT担当相の意向だというふうに出ておるんです。

 私は、やはり、個人情報保護委員会が来年一月にできますけれども、しかし、このサイバーセキュリティーという極めて専門的な分野をそこに、第三者機関だからといって持っていくのはナンセンスだと思っていて、NISCがしっかりやるべきだし、だからこそ、そこの人員をふやさなきゃいけない。これをばらばらに分けるということはあり得ないと思うんですけれども、これはどういう意図なんでしょうか。

山口国務大臣 どういう記事か、ちょっと拝見をしておりませんが、基本的に、今回お願いをしております個人情報保護法並びにマイナンバー法の一部改正、これによって、今回、個人情報保護委員会というのができます。これは、あくまで個人情報をいかに守り、利活用を進めるかという中でやるわけで、今回のようにいわゆるサイバーテロで情報が漏出をした、これに対してという話じゃなくて、出た個人情報云々に関して、今回、法改正がもし成立をしますと、個人情報保護委員会が一元的にその問題に取り組むということで、今回の漏えい事件とは直接つながりがある話ではありません。

 漏えいに関しては、もう御指摘のとおり、いかにNISCをしっかり強化し、同時に、各省庁あるいは地方公共団体も含めて再度見直し、点検をしていただき、同時に、しっかりと自覚を持っていただくというふうなことが大事なんだろうと思います。

高井委員 もう時間が来たので終わるんですけれども、冒頭申し上げた、被害百二十五万件にとどまらないんじゃないかということは非常に重要なことだと思いますので、国家公安委員長、菅長官とよく御相談いただいて、今回のように全てがわかってから出すということではなくて、可能性のある段階でも広く国民の皆様に知らせる必要があると思いますので、そこは重ねてお願いをして、質問を終わります。

井上委員長 次に、初鹿明博君。

初鹿委員 初鹿明博です。

 高井議員に続いて、また年金漏えいの問題について質問をさせていただきます。

 まず最初に、今回流出した個人情報、百二十五万件と報じられておりますが、まだまだふえるかもしれないということであります。

 この百二十五万件については全て年金番号を取りかえるということが表明をされていて、現在は、百二十五万件の方々について、あなたの情報が漏えいしましたよというのを通知している、そういう段階でありますよね、それでいいんですよね。

水島参考人 まず、昨日、参議院の厚生労働委員会におきまして、私の答弁が原因で審議が混乱いたしましたことにつきまして、深くおわびを申し上げます。

 昨日の審議で議論となりました五月二十九日以降のインターネットへの接続の有無に関してでございますが、統合ネットワークを経由いたしました……(発言する者あり)ちょっとおわびをさせていただきたいと思います。

 接続を二十九日以降につきまして……(初鹿委員「では、早くしゃべってください、早く答えてください」と呼ぶ)はい。異なる回線を用いてインターネットメールを行っていたことは事実でございます。深くおわびを申し上げます。

 その上ででございますが、現在、百二十五万件の方々に関しまして、少なくとも今月中に御通知を申し上げられますよう、努力中でございます。

初鹿委員 これ、百二十五万件、手紙を出すだけでも、これを封入するだけでも大変ですよね。大変ですよ。次に、では、年金の番号を通知します、これも、今度は個人情報だから業者に頼むというわけにもいかなくなりますよね。さらに、年金の証書も変える、年金手帳も変えることになるんですよね。違いますか。そうですよね。

 年金証書や年金手帳、また年金番号の通知も、これは普通郵便というわけにはいかないですよね。当然、書留か何かで送る、そういう計画で、予定でいるということでよろしいですか。

水島参考人 現在、百二十五万人の方々が最終で、人数ベースでどのような人数になるかということを精査中でございます。

 この方々に、流出の旨、おわびと通知を申し上げまして、その上で、御指摘のように、基礎年金番号の変更を行ってまいります。これに関しましては、やはり個人情報でございますので、特に基礎年金番号の御通知に関しましては慎重な対処が必要であるというふうに考えております。

初鹿委員 慎重な対処というのがどういう意味なのかよくわかりませんけれども、書留で送るとして、百二十五万件に書留で送ったら、五、六百円かかるとしたら、それだけで億単位になるわけですよ。封入の作業をするのにどうするんですか。今の職員でやれますか。多分やれないですよね。そうすると、紙台帳と突合したみたいに、では、臨時のアルバイトを雇う、それでもまた経費がかかってくる。

 では、この費用は一体どこから出すつもりなのか、今どのようにお考えになっているのか、お答えいただけますか。

水島参考人 現在、各種施策が進行中でございまして、最終的にどの程度の費用になるかということについては、まだまだこれから精査をしていかなければならないというふうに思っています。

 この費用についてでございますが、厚生労働省ともよくお打ち合わせをしながら、御指導をいただきながら進めてまいりたいというふうに考えております。

初鹿委員 まさか年金保険料からこの費用を出すということはないですよね。

 現状を申し上げると、年金保険料は、これはさまざま批判があって、本来だったら保険料の支払いにだけ使うべきだと私は思うんですけれども、年金事務については一部年金保険料から出せるように今なっておりますよね。

 この漏えい問題について、新たな番号の通知をするのは、これは年金事務ですか。これは何ですか、年金事務ですか。ちょっと、早く答えてくださいよ。

水島参考人 その点もあわせて、厚生労働省とよく打ち合わせをしながら、適切に対処してまいりたいというふうに考えております。

初鹿委員 これを年金事務だから年金保険料から出すと言ったら、国民はみんな怒りますよ。

 これまでの対応を見ていても、皆さん方の対応のまずさによって被害が拡大したと言われてもおかしくない状況なわけですよ。それを年金の保険料から支払うということになったら、国民の怒りは多分おさまらないと思います。

 きょうは副大臣に来ていただいておりますけれども、副大臣、これは年金保険料から出さないと明言していただけますか。

山本副大臣 日本年金機構を監督する立場といたしまして、まず今回のおわびを申し上げたいと思いますが、今御指摘いただきました件につきましては、今機構の理事長からもお話ありましたとおり、全容がまだ明らかになっておりません。そうした中で、またしっかりと機構と検討させていただきたいと思っております。

初鹿委員 全容が明らかになろうがなるまいが、これは明らかに年金機構に非があるんだから、保険料からは出さないとはっきり宣言していただきたいと思いますが、いかがですか。

山本副大臣 御質問でございますけれども、とにかく、全容もそうでございますが、検証もしなくてはなりません。その上で検討させていただきたいと存じております。

初鹿委員 これ以上言っても答えは進まないと思うので、では、今度は全容解明のことに移っていきます。

 先ほど年金機構の理事長からきのうの答弁の謝罪がありましたけれども、これは、六月四日に出した、厚生労働省と日本年金機構のこの事案の経緯というペーパーをきょうは資料で出させていただいていますけれども、二十九日のところでインターネット接続を遮断と書いてあるのに、実は遮断していなくて、メールのやりとりは続いていた、そういうことですよね。だから、ここに書いてあることが信用できるかどうかというと、信用できなくなっちゃっているわけですよ。

 これは、厚生労働省と日本年金機構と二つの名前を書いているんですけれども、どちらに責任の所在があるんですか、お答えください。

水島参考人 本件に関しましては、悪意を持った攻撃による結果であるとはいえ、私どもの対応に種々の問題点があったことは確かでございます。その意味で、日本年金機構といたしまして極めて大きな責任を感じております。

初鹿委員 このペーパーについてどちらが責任があるのかということを言っているんで、では、ちょっと答えてください。

樽見政府参考人 日本年金機構は、年金業務の実施、私どもの委託を受けてやっておられるということでございますし、私どもは委託をし、また年金機構という組織を監督しておるという立場でございますので、両方ということでございます。

初鹿委員 両方なんだけれども、二十九日にインターネットに接続をしたままだったということを厚生労働省は知らなかったという報道がされているんですが、それは事実ですか。そうだとしたら、日本年金機構は厚生労働省に対して本当のことを伝えていなかったということになるんですけれども、そういう理解でよろしいんでしょうか。

山本副大臣 本件につきましては重ね重ね心からおわびを申し上げたいと思いますが、昨日の参議院の厚生労働委員会におけます審議の際に、我々もそのときの答弁で知ったというのが事実でございまして、その後に事実関係につきまして詳細に調査を行わせていただきました。

 日本年金機構のLANシステムにおきましては、統合ネットワークのほかに旧社会保険庁時代から独自のインターネット回線というものが存在しておりまして、五月二十九日、統合ネットワークへの接続を遮断しましたけれども、その後においても当該インターネット回線は遮断せずに、六月四日の十九時までメールの送受信に使っていたということが判明いたしました。

 日本年金機構の説明によれば、厚生労働省に対して、統合ネットワークシステムからの遮断をもってインターネットからの遮断と報告したとのことでございますが、この説明は極めて不正確なものであり、我々としても非常識なものだと考えております。

 これを受けまして、厚生労働省といたしましても、先ほど資料で出していただいております事案の経緯の記述のうちで、日本年金機構からの報告に基づいて記載した部分につきましては、改めて事実関係の点検を行いまして、追記、修正を行わせていただきたい。

 また、五月二十九日から六月四日までの間の感染の有無というものをチェックいたしまして、その間の安全性についても確認を早急に行わせていただきたい。

 また、機構の業務全般に対する監督指導体制の一層の強化を図りまして、本事案の対応に万全を期す等の措置を講じていく所存でございます。

 正確な情報が厚生労働省に伝わらず、このような事態が生じたことは本当に申しわけない限りでございまして、おわび申し上げたいと思います。

初鹿委員 本当に話にならないと思うんですけれども、そもそも、僕はこのペーパーを見た瞬間に、何だこのペーパーはと思ったんですよ、全然正確なことが書いてないなと。

 皆さん、見てください、五月八日のこの記述のところの二番目の丸、「機構、年金局の指示により、不審メールを受信したPC一台を特定、LANケーブルを引き抜き、回収。」と書いてあるんですけれども、不審メールを受信したということなんですか。

 私もEメールを公開しているから、たくさん不審なメールが来るんですよ。不審なメールが来ますよね。それは削除すれば問題ないんで、これは不審メールを受信したことが問題じゃなくて、不審メールについている添付ファイルを開封したことが問題なわけじゃないですか。不審メールの受信と添付ファイルの開封とは全然違う次元のことだと思うんですけれども、何でここを、一番重要なことを正確に書いていないんですか。これを素通りして認めている厚生労働省も厚生労働省だと思うんですけれども、いかがですか。

水島参考人 そこの記述の意味は、御指摘のとおり、不審メールで添付ファイルを開封し、ウイルスに感染したというのが正確な表現でございます。

樽見政府参考人 事実関係は今理事長からお答え申し上げたとおりでございます。

 その意味でいいますと、書きぶり、ちょっとこの際、機構から確認して、直すべきところはきっちり確認をしたいと思います。

初鹿委員 それで、五月の九日にウイルスを検出したということがわかりました。この報告が二日たってから厚生労働省に行くわけですよね。この二日間というのも非常に遅いと言わせていただきます。

 では、まず、添付ファイルを開いてウイルスに感染をしましたというこの事実、そしてウイルス自体が検出されたということをNISCに報告しましたか。厚生労働省、どうですか。

山本副大臣 五月八日にNISCから厚生労働省に対して不審な通信を検知したという旨通知を受けた後でございますけれども、適宜、厚生労働省とNISCの方では連携をとらせていただいております。

 ちょっとその詳細なやりとりについては答弁を差し控えさせていただきたいんですが、八日の段階で、対応についてNISCへの報告をきちっと実施しておりまして、不審な通信は検知されなくなっていた、そのことから、改めてその後にこのことについてNISCに報告したという事実はなかったわけでございます。

 報告を行わないとなぜ判断したのかということだと思いますが、これは情報セキュリティーポリシーに即して担当が判断したということでございます。

初鹿委員 本来だったら、ここは報告すべきだったと思うし、NISCの方も確認をするべきだったと思います。

 では、次に移ります。

 十八日の日に、今度は、機構の複数の職員から、不審メールらしきメールを受信したとの報告があったということですが、このメールを受信したというのは、メールが来たということで、これは添付ファイルを開いたということではないという理解でよろしいんですか。

水島参考人 御指摘のとおりでございまして、五月十八日に受信したメールは不審メールでございますが、添付ファイルを開いたかどうかは確認をされておりません。

初鹿委員 ちょっと待ってください。確認をしていませんというのは、開いているかもしれないということですか。

水島参考人 十八日には少なくとも開いていないと思います。

初鹿委員 それで、十九日の日に高井戸警察署に相談に行って、捜査の依頼をするわけです。

 捜査依頼をする判断をした理由についてお答えください。

水島参考人 先ほど申し上げましたとおり、五月八日に不審メールが参りまして、それを開封し、ウイルスに感染をいたしました。その後、それに対するワクチンを作成いたしまして、全体に対して対処を行ったという経緯にございます。その後、十八日でございますが、十八日になりまして、複数の不審メールが送られてまいりました。それを踏まえて、高井戸警察署に協力のお願い、要請をしたわけでございます。

初鹿委員 このメールですけれども、厚生年金徴収関係研修資料とか、給付研究委員会オープンセミナーの御案内とか、医療費通知とか、そういうタイトルがついた標的型のメールだったという報道がされておりますけれども、そういうメールだったということでよろしいんでしょうか。

水島参考人 大変申しわけございませんが、メールの内容につきましては、どのようなメールであったかということに関しましては、捜査上の観点からも、御返事を申し上げていないということでございます。

初鹿委員 答えられないということですけれども、報道されていることが事実であるならば、サイバーテロじゃないか、そういう疑いを持って警察に相談に行ったと理解するのが通常だと思うんですよ。多分、そうなんですよね。

 それを厚生労働省の年金局に報告した後、では、年金局はどこまで厚生労働省の中で上に上げているんでしょうか。十九日の段階で、どこまで知っていたのか。

樽見政府参考人 十九日の段階では、担当者のレベルということでございます。

初鹿委員 担当者のレベルって、警察に捜査を依頼するということは、これはサイバーテロにかかわらず、よくあることなんですか。年金機構の業務で、例えば窓口でお客さんとトラブルになった、警察に届けることはよくありますか。ないでしょう。非常にまれなことをしているんですよ。それで厚生労働省は年金局でとまっている。これはおかしくないですか。よく警察に相談するんですか。これは珍しいことでしょう。

山本副大臣 その点は御指摘のとおりでございまして、我々としても、この点は反省すべきだということで、しっかりと検証させていただきたいと考えております。

初鹿委員 では、これは、これだけのサイバーテロになるような問題ですから、特定重大事象だと言ってもいいわけですよね。

 NISCには報告をしたんでしょうか、警察に届けましたということを。

山本副大臣 情報セキュリティーインシデント対処手順書というものがございまして、そこには、警察への通報に関しては、必ずしもNISCへの報告というものが必要とされておりません。

 しかしながら、このNISCとの一連の情報共有の中で、報告する機会があったにもかかわらず報告しなかったということは、やはりまずいことだったと思いますので、今後しっかりと、こうした場合には、きちっと緊密な連携を図っていく必要があると考えております。

初鹿委員 では、ここで、サイバーセキュリティ戦略本部の本部長である官房長官にお伺いしますけれども、警察に捜査の依頼をするというのは、やはり相当まれなケースだと思うんですよ。それをNISCに報告をしないで内部で済ませられるような、そういう基準というのはいかがなものかなと思うんです。

 御所見をお伺いいたしますが、いかがですか。

菅国務大臣 今、この事案について、厚労大臣のもとで第三者の検証委員会を行っています。その検証の報告を受けて、これだけ大きなことに発展をしましたので、どの段階でやるべきかということもしっかり精査をして、二度と再びこうしたことが起こらないような体制をつくっていきたいと思います。

初鹿委員 これはやはり、政府で統一の基準をきちんと設けておく必要があると思うんですよ。これは明らかに特定重大事象だと思いますよ。少なくとも、警察に届けた時点で、その疑いがあるから届けているんだから、これを報告しないというのは僕はあり得ないと思いますので、きちんと政府で統一基準をつくるようにしていただきたいと思いますが、いかがですか。

菅国務大臣 そこはしっかり対応したいと思います。

初鹿委員 では、よろしくお願いします。

 それでは次に、五月二十日に、また不審メールらしきメールを受信という報告がありました。この受信というのは、先ほど言ったように、受信をしたということなのか、添付ファイルを開封したということなのか、どちらなんでしょうか。

水島参考人 不審メールを受信したということでございます。

初鹿委員 では、この時点でも、まだ開封したかどうかは確認をしていない、確認できていないということですね。

 それで、二十二日になると、今度は、またNISCから、不審な通信を検知したという通報があるわけですね。そこで、機構の方で、不審な通信が確認をされた特定の地域ブロック本部でインターネットの接続を遮断したということなんですが、添付ファイルが仮に開かれていなかったとしたら、五月八日に感染したウイルスが、実際には外部への通信は行わない、外部への情報の漏えいのないタイプだというウイルス除去会社の報告があったけれども、そうじゃなくて、外部に情報を発信するタイプだったのかもしれないということを普通推測しますよね。

 そうなったら既に、LANでつながっているわけだから、受信をしたパソコンから、接続を遮断する前に、LANを通じてほかのパソコンにウイルスが感染をしていたと考えるのが私は普通だと思うんですよ。そうなったら、不審な通信が確認されたところだけのインターネットの接続を遮断するのではなくて、やはり全て遮断をしておかなければいけないんだと思うんですけれども、なぜこのような判断をしたのか、お答えください。

水島参考人 五月二十二日に、厚生労働省年金局を通じまして、機構から不審な通信を検知しているとの連絡がございました。

 不審な通信が確認されました特定地域のブロック本部、これに関しまして、この全てのパソコンを統合ネットワークシステムとの接続を遮断する対応を行いました。これに伴いまして、当該新種ウイルスに対応したウイルス対応ソフトの更新版を入手後、五月二十七日に機構内の全パソコンにインストールするなどの対策を実施したところでございます。

 当初から全て遮断すべきだったとの御指摘でございますが、結果としてこのような事態が発生をしているということを考えますと、重く受けとめなければならないというふうに考えております。

 今後、日本年金機構不正アクセス事案検証委員会におきまして、この対応についても検証されるものと考えております。

初鹿委員 二十三日の土曜日に、次の日には、十九台のPCから大量発信がされるということが確認されるわけです。

 では、この十九台のパソコンというのは、インターネットの接続を遮断したパソコンですか、遮断していないパソコンですか、どちらですか。

水島参考人 これは遮断をしていないパソコンでございます。

初鹿委員 つまり、この一日の間に、遮断をしなかったことによって大量発信が続いていたことになりますよね。違いますか。

水島参考人 この点に関しましては、やはり事後的な検証におきまして、どのようなウイルスがどの時点で感染し、どのように拡大をしていったかということについては、きちんとしたログの検証も含めて行われる必要があるというふうに思っております。

初鹿委員 これは、十九台とここでは書いていますが、最終的に二十七台なわけです。

 二十七台のパソコンが感染をしたということがわかっているわけでありますから、では、そのパソコンを使っている職員がメールを開封したのかどうかの確認は簡単にできると思うんですが、それは確認をして、開封をしていないという答えが来ている、そういう理解でいいんですか。

水島参考人 その点に関しましては、個別のパソコンについてどのような対処を行って、どういう結果であったかということでございますので、大変申しわけございませんが、この点に関しましては回答を差し控えさせていただきたいというふうに思います。

初鹿委員 いや、ここが実は重要なところですよ。

 一回、五月の八日にメールの添付ファイルをあけてしまって、それで全職員に対して通知を出しているわけです。こういうことが起こりました、二度とないようにしましょうという通知です。その通知を職員が受けていたのに添付ファイルをあけてしまって、そして感染が拡大をしているということになったら、では、職員への指示の徹底がきちんとなされていないということになるわけであって、それと、五月八日に感染したのが残っていてこうやって情報発信されたというのと、全く質が違うと思うんですよ。

 だから、これは二回目が、本当に開封をして、そして感染をしたのかどうかをきちんと確認をしないと、この問題の根本的な原因がわからないと思うんですけれども、その点はいかがなんですか。

水島参考人 その点に関しましては、現在まさに解明を進めているところでございまして、御指摘のとおり、極めて重要なポイントだというふうに考えております。それだけに、現状も含めて、ここで申し上げることは難しいというふうに考えております。

初鹿委員 いや、もう職員はある程度特定できるんだから、その人たちがパソコンの添付ファイルをあけてしまったかどうか確認をするのがそんなに難しいことだとは思えませんよ。それで、そこを隠しているというのは一番問題だと思いますけれども。これは、年金機構が最初の事象が発生した後にどういう対応をとったのかというのが今問われているわけで、そこに一番かかわるところですよ。それを何で答えられないのか、私は到底理解できないし、国民の皆さんも不信感を持つと思いますが、違いますか。

水島参考人 この点に関しましては、私どもといたしましては、私どものと申しますか、私どもが運用を委託いたしております会社も含めまして、どういうような解析能力を持っているかということを結果として示すことになるというふうに思っております。

 したがいまして、セキュリティー上の観点からも、開示を差し控えさせていただきたいというふうに思っております。

初鹿委員 今後、そういうわけにもいかなくなってくると思いますので、この調査の結果を見ていきたいと思いますけれども、私は、ここは非常に重要なところで、機構そのものの体質にもかかわるところだと思います。職員に対する指示が徹底していない、また、下からの意見が上にきちんと上がっていない、そういうことを示す一番わかりやすいところだと思いますので、これはきちんと明らかにしてもらわないと、とても国民は納得できるものじゃないということをあえて言わせていただきます。

 次に進んでいきますけれども、では、二十五日の月曜日に、ウイルスに感染した一台をさらに確認して、警視庁に対して経緯を説明して、また、厚生労働省の年金局に対しても報告をしたということですが、厚生労働省は年金局どまりなんですか、上まで上がったんですか。副大臣、これは聞きましたか。

山本副大臣 二十五日の段階で、年金局の幹部、またCIO補佐官等には連絡が入っておりますが、我々政務の方にはそれが上がっておりませんでした。

初鹿委員 では、もう一個確認するんですが、この二十五日の段階になって、情報も大量発信されているというのが確認をされている段階で、警察に捜査の依頼をしているということは副大臣は御存じでしたか。

山本副大臣 事案自体を存じ上げておりませんので、警察に対してそうしたことを言ったということも存じ上げておりません。

初鹿委員 これは厚労省の年金局に聞くんですけれども、隠したんですか。

樽見政府参考人 お答え申し上げます。

 まさに二十五日に、私まであの話を聞いたわけでございます。それで、私のところまで話を伺って、要は、これまでにないようなことが起きているのではないかなという感じを持ったのは事実でございますが、五月八日のときから始めて、やや異常な行動を起こすパソコンが見つかって、それについては、抜いたり、線を切ったり、それからまたワクチンを使って除去するというようなことを一つ一つ、それなりの合理性のあることをやってきたということでございましたので、その時点においては、大量の情報が漏えいするというようなことについて、起きているというような認識はなかったということでございます。

 今から考えると、この辺は反省すべきかなというふうには思っておりまして、厳しく検証していただくことであろうというふうには思っております。

初鹿委員 今、審議官は、このときに初めて私のところまで上がってきたと言いましたけれども、では、二十五日までは正確なことを聞いていなかった、警察に通報しているということも聞いていなかったということでよろしいんですか。

樽見政府参考人 そういうことでございます。

初鹿委員 これも非常に問題ですよね。

 副大臣、問題だと思いませんか。

山本副大臣 省内のこの連絡体制というか報告体制のあり方は物すごく問題があると思っておりまして、大臣からも厳しく、この点については改善したいと。

 現段階におきましては、NISC等からそういった通知がありましたら、大臣の指示で、すぐ大臣まで上げる、そういう体制をとらせていただいております。

初鹿委員 大体、二十一日の日にサイバーセキュリティ対策推進会議というのが開かれているわけです。そこに厚生労働省からも人が出ているんです。そこの議題、何だったか御存じですよね。政府機関における標的型攻撃を初めとした高度サイバー攻撃から重要な業務、情報を取り扱う情報システムを守るための取り組み状況の報告というのが議題の中に入っているんですよ。まさに、標的型攻撃を受けている当事者と言ってもいいですね、厚生労働省の担当は。それが、そのことを知らないで、のこのここの会議に出ていって、本当にばかにされていると言ってもいいんじゃないかということだと思いますけれども、審議官、そう思いませんか。

樽見政府参考人 大変恐縮でございますが、客観的に見ますと、大変、何といいますか、いわば恥ずかしいことだなというふうに思います。

初鹿委員 いや、本当に恥ずかしいですよ。正直、出ていた本人は、官房長ですか、官房長は気の毒ですよね。本当に滑稽だと思いますよ。自分のところでこんな大事な、重大な事件が起こっているのに、本人は知らないで、取り組み、ちゃんとやりましょうみたいなことを言っているというのは本当に滑稽だと思います。

 いかに厚生労働省の内部での対応がひどかったかということを少し認識しておいていただかないと、この先、同じような問題が出たときに、また繰り返すことになるので、ぜひここは心しておいていただきたいと思います。

 さて、二十八日の日になって、警視庁から、データが流出しているということが発見をされたということで、機構から年金局に対してもこれを報告し、やっとここで大臣に伝わったということであります。そして、二十九日には、その情報というのが個人情報だということがわかった。

 では、この段階で、なぜ大臣は記者会見をするなりして個人情報が流出したという事実を公表しなかったんですか。

山本副大臣 今お話しいただきましたとおり、警察から、機構から流出したと思われるデータを発見したという第一報があったのが五月二十八日の午後でございます。そして、大臣に上がったわけでございますが、二十九日に個人情報ということが発覚したわけでありますけれども、五月三十一日までは、流出した可能性がある情報の内容や件数の分析を行わせていただいておりました。その後、問い合わせ対応等の準備をした上で、六月一日夕方に公表を行った。

 仮に、五月二十八日やまた二十九日の段階で公表した場合に、お問い合わせをいただいても、その場で、その方の個人情報が流出したかどうか、それにお答えできないという体制にございました。六月一日までの間に、その当該の方が対象かどうかという、端末でわかるような仕組みというものも準備をさせていただいておりましたわけでございまして、その段階で、もし二十八とか二十九でやったら混乱を招きかねないということで、これは、厚生労働省と日本年金機構の方でしっかりと協議をいたしまして、この時点では公表しないことが賢明ではないかという判断をさせていただいたものでございます。

初鹿委員 私は、明らかに判断を間違っていると思いますよ。少なくとも、個人情報が流出したという大問題ですよ、この事実はきちんと公表をして、ただ現在、その情報の中身、そして件数については確認中だから、追ってわかり次第きちんと報告しますと。ただ、現状では、NISCからもCYMATの派遣も受けているわけですよね。CYMATの派遣を受けて、二度と同じことが起こらないような対策も講じていますと言って表明をする方が、よっぽど国民は安心をするし、信頼をするんじゃないかと思うんです。

 私は、完全に判断を間違えたと思いますよ。この判断は、官房長官も御存じだったんですか。

菅国務大臣 私の秘書官から私に上がってきたのが二十九日です。

初鹿委員 記者会見をこの日はやらないで先延ばしにするという判断を厚生労働省がしたということを官房長官は把握していたんでしょうか。

菅国務大臣 私は、秘書官からこの話を聞いたときに、第一次政権のときに社会保険庁のこうした事案が発見をされて、次から次へと違う事実がぼろぼろ出てきた経緯がありましたので、すぐに、厚生労働省だけでなくてNISCも入れて、まず全容を解明して二次被害を防ぐことに全力を挙げるべきだということをそのときに指示いたしました。

初鹿委員 つまり、官房長官も、この時点での記者会見はしないで、もう少し全容がわかってからでいい、そういう指示を出したということでよろしいんですか。

菅国務大臣 まず、全容について、私は不信感がありましたので、そこをやはりはっきりさせると同時に、二次被害を起こさないようなことに、まずNISCを入れてやるべきだというふうに私は判断をいたしました。

初鹿委員 すっきりしない、釈然としない感じはするんですけれども、まだまだ、ちょっと厚生労働省の対応、年金機構の対応には不信感が拭えないわけでありますから、もう時間ですので、きょうの質問は終わりますけれども、今、党としても予算委員会での集中審議を求めておりますので、ぜひ与党としてもこれを受け入れていただいて、しっかりこの問題が決着がつくまできちんとした審議を行うように求めて、私の質問を終わります。

 ありがとうございます。

井上委員長 次に、阿部知子君。

阿部委員 民主党の阿部知子です。

 本日は、私は厚生労働委員会にも所属しておりますが、民主党として、この年金問題、大変に国民の不安も大きいものですから、厚生労働委員会でまずきちんとやっていただきたい旨、理事会でも繰り返し要求いたしましたが、かなえられず、私どもといたしましては、もう一方の派遣の問題が審議のテーマに上がりましたけれども、その重要性は知っておりながら、やはり今の国民の不安を一日も早く解消するために、この年金問題の審議が第一と考えております。

 その観点から、この内閣委員会が本日このような形で集中審議を行っていただいたこと、大変に時宜を得て適切だと思いますので、まず委員各位にお礼を申し上げます。

 その上で、実は、先ほど来、年金機構の水島理事長の御答弁、そして山本副大臣の御答弁を聞きながら、一つ二つ確認をしたいと思います。水島理事長はおいでにならないので、申しわけありませんが、私の方で参考人登録しませんでしたから、山本副大臣にお願いいたします。

 先ほどの御答弁ですと、いわゆるインターネット接続の遮断というのは、もう一つの回線、すなわち、社会保険庁であったときから続いている方の回線で専ら組織内の通信をしておったので、そちらは遮断された状態ではないということで、この間つくられた厚生労働省と日本年金機構のペーパーの中で遮断と書いてあるのは、統合ネットワークの方に入った方の情報であるという御答弁でありました。

 私はこれを聞きながら、逆に、社会保険庁のころから使っている方のシステムはNISCの監視下にはないということでしょうか。今回、日本年金機構の方でサイバーテロ攻撃がわかったのは、NISCの監視下にあったわけであります。従来から、社会保険庁時代から使っていたものはその監視下になく、しかし、組織の中ではそれが並行して使われていたということでしょうか。確認をしたいと思います。

樽見政府参考人 NISCの監視のところについては、政府のいわばシステムの外の出口のところを見ておりますので、そういう意味でいいますと、社会保険庁のときからの独自のインターネット回線というところについては、NISCが見ているところではなかったというふうに承知をしております。

阿部委員 山本副大臣に伺いますけれども、私は、やはりこの二重構造というんでしょうか、非常に国民は不安だと思うんですね。少なくとも、NISCの監視というのは、こういう貴重な情報を扱う場合に重要な部分で、そこについては全く、社会保険庁時代からのものだから監視がなくていいとなると、一体、情報はどこまで漏れていたのだろうと新たな不安がよぎるわけでございます。

 この点、今の段階で何かお考えがあれば、お述べいただけますか。

山本副大臣 おっしゃるとおりでございまして、私どもといたしましては、統合ネットワークにつながっているものだけが存在すると思っておりました。きのうの段階で、メール回線、メールしか使っていない専用回線があるということになりまして、今、そこのところは六月四日の段階で閉じてしまっておりますから通信は途絶えているわけでございますけれども、こういうことはあってはならないということで、大臣の指示も受けまして、今、詳細を確認しながら、そういった御懸念がないような体制をとらせていただきたいと思っております。

阿部委員 もちろん、懸念がないような体制をつくるのは当然ですが、これまでずっとそういう構造であったということで年金を扱っている。社会保険庁時代の、内部の通信だけとは限りません、メールというのはいろいろなところと交信しますから、私は、これは非常に重大な事態が発覚していると思います。

 あわせて伺いますが、厚生労働省と日本年金機構のクレジットのついたこの「不正アクセス事案の経緯」というもの。六月四日に衆議院の厚生労働委員会の方にお示しいただいたものが、先ほど、初鹿さんの御質疑の中で、幾つも問題ではないかという指摘があった中だと思いますが、であれば、そもそも厚生労働省として、この文書を出すときの最終チェックというのは誰がやったんでしょうか。

 この間、厚生労働省が出す文書が、派遣法でも極めて問題が大きく、誰がチェックしたかわからない、そして、いいかげんな表現が使われる、本当に省庁として私は自覚が薄過ぎると思うのですね。

 副大臣、これは誰が最終確認してこの名前で、「厚生労働省」ですから。誰がチェックしたのですか。

山本副大臣 厚労委員会の別の一〇・一ペーパー等々の部分につきましては、また、厚労委員会での御質疑を伺っておりまして、十分反省してやっていきたいと思っておりますが、今回のこのペーパーにつきましては、厚生労働省と日本年金機構の間で事実確認をすり合わせてつくらせていただいたものでございます。我々政務もいろいろな形で確認をしながら出させていただいたものでございます。

阿部委員 私の今伺ったことに的確に答えてください。

 最終責任、これでいいよと。だって、これで理事会に出しましょうというすごく重要な文書だと思います。ここからいろいろなことがひとり歩きして、実は衆議院の方では、五月二十九日にもう遮断されているという前提で、みんな質問をしたわけです。みんな議事録を修正しなきゃいけないような事態が起きてしまったわけです。

 この文書の最終責任、厚生労働大臣と言われれば、そうです。でも、誰が確認をして、所在はどこにあるのですか。もう一度明確にしてください。三役であれば、政務官のどなたかなのか、副大臣なのか、大臣なのか。

山本副大臣 我々も見ておりますが、最終的には大臣の決裁で出させていただいております。

阿部委員 そういたしますと、これは大臣の責任は極めて大きいと思います。随所で責任があるということはおっしゃっていますが、国会の審議がこういう事実ではないペーパーに基づいて行われる、それだけの時間がロスになるわけです。

 そして、先ほど申し上げましたような、社会保険庁時代の情報管理システムがきちんとしたチェックも受けずに動いているということがここに来るまでわからないということは、国民から見ると年金の不安と不信が非常に大きくなる事態だと私は思います。

 だからこそ、厚生労働委員会は、まずその責任の上からも本日は審議をすべきであったと私は思いますし、その旨、大臣にも副大臣からぜひお伝えをいただきたい。

 そしてその上で、一体、新しいペーパーはいつ示していただけるのか、これが審議の前段。参議院もこれでとまっておりますし、衆議院もそうです。それで国民の不安は増大する。いつお示しいただけるのか、御答弁をお願いします。

山本副大臣 厚労委員会で午前中にもそういった御質疑がありまして、大臣の方からも、本当に可及的速やかに、機構からの報告に基づいて記載した部分について、改めて事実関係の点検を行って対応したいという答弁をさせていただいております。

 いつかというのをちょっと具体的に申し上げられなくて大変申しわけございません。

阿部委員 副大臣はそうおっしゃいますが、御存じのように、六月十五日というのは年金の支給日であります。それから、海外のサーバーも含めて年金情報が流出しているのではないかという指摘が随所でございます。また、社会保険庁時代のシステムもどのように監視が行き届いていたかわかりません。

 となると、全容が百二十五万件であるかどうかということは、全く保証がありません。少なくとも、早くします、早くしますとおっしゃるんじゃなくて、国民に向けたメッセージで、六月十五日の年金受給は、あなたの年金は誰かにだまし取られることはないんですよということを明確におっしゃるべきだし、万が一、万々が一そのような事態が起きたら、それは補償をいたします、そこまでおっしゃらないと、年金というのは国民の財産ですよね、国は国民の生命財産を守るための働きをすべきであって、この年金問題における非常に人ごと感というのは、年金受給者にとってはいたたまれない事態だと思います。

 六月十五日、不正な受給は一件も起こらない、万々が一起きた場合は確実にその方に補償する、この二点、いかがですか。

山本副大臣 五月十九日までに口座変更の届け出がなされた場合には、六月十五日の定期支払いから口座が変更されることになりますが、年金の支払いは、御存じのとおり、本人名義の口座に振り込むこととなっております。

 仮に、年金の振り込み先の金融機関を変更する場合には、金融機関の証明印などで本人の口座であることを確認するために、流出した情報だけで年金の振り込み口座が変更されて年金が横取りされるようなことはないと考えておりますが、万々が一のときに備えまして、いわゆる成り済ましにより不正に口座が変更されたものであるか確認をするために、今、百二十五万件の対象になった方のうち、金融機関の口座変更の手続をされた方につきましては、戸別訪問をもう既に実施を、スタートさせていただいておりまして、御指摘の定期支払いの六月十五日より前に行うことで万全を期してまいりたいと思います。

 もう一つ、おっしゃった二点目のところでございますけれども、二次被害が起きないようなことを最大限頑張るわけでございますが、仮にもし今回の情報流出の対象である方へ、何かそういった、過失がない、成り済ましのような年金の支払いが起きた場合でも、正しい年金記録に基づいて確実に支払うような形をとらせていただきたいと考えております。

阿部委員 当然といえば当然で、そして今、副大臣お答えになりましたが、百二十五万件しか視野にないんですね。その中で住所変更をされた方という意味の御答弁であれば、私は、裾野はもっと広いかもしれないという構えを厚生労働省がお持ちじゃないと、この問題は解決を見ないと思います。それくらい火急的で、なおかつ深刻だという事態であります。

 菅官房長官に伺います。

 一枚目の参考資料、私がつくりましたものをごらんになっていただきたいと思います。

 ここにはチャート図を作成いたしておりますが、「サイバーセキュリティ推進体制」といたしまして、今、サイバーセキュリティ戦略本部、これは、官房長官が本部長で、山口IT担当大臣が副本部長、そして、そのもと、事務局としてのNISCがございますが、先ほど初鹿さんの御質疑で出ておりました、CISO、サイバーセキュリティ対策推進会議というのは、いわば戦略本部の直属のというか、実際の各省庁間の連絡を担うところと思います。

 先ほどの初鹿さんの御質疑にもありましたように、五月二十一日にこれが開かれておりますが、誰一人、この厚生労働省の預かる年金局の中で起きた事態について、知らされず、知らず、会議をやり、結果、国としての危機意識が非常におくれた。結果です、あくまでも。やはり政治は結果ですから。

 ここで菅官房長官に伺いますが、もちろん厚生労働省は問題です、日本年金機構も問題です、でも、私は、現状において、菅大臣が本部長を務められるこの体制自身がワークしていなかった、働いていなかった、この責任について明確に認めていただきたいが、いかがでしょう。

菅国務大臣 委員は全てのことを承知の上での質問だろうというふうに思います。

 NISCでは、五月八日に不審な通信を感知して以降、厚生労働省に対して、被害拡大の防止や早期復旧のための措置について、これは必要な助言を行ってきました。また、同省が講じた措置について報告を求めたところでありますけれども、五月十九日に警察に相談したことについては、五月二十一日のCISO等の連絡会議、この前には報告を受けておりませんでした。会議の前に報告を受けていれば、会議の議題になる可能性はあったというふうに思います。

 いずれにしろ、今、厚生労働大臣の責任のもとに第三者委員会をつくって検証いたしておりますので、その検証報告を受けた後にしっかりとした対応策をとることができるように、私たちも全力で取り組みたいと思います。

阿部委員 もちろん厚労省から報告が上がっていないことが最大の問題ですが、現状でこれだけの組織図をつくりながら、私は、働いていないじゃないかと。これは、国民から見れば、サイバーセキュリティー対策は、何だ、この程度のものかと。また、ハッカーの方もそう思うでしょうね。思われてしまうということが国家的危機であり、問題なんだと申し上げているのであります。

 大臣、はい、どうぞ。

菅国務大臣 少なくとも八日の日に、厚生労働省を通じて年金機構にそうした疑いがあるということを指摘したわけでありますから、まさに基本的には、これはそれぞれの団体が自己責任のもとで負うことがまず基本なんです。

 ですから、そこについて、NISCから警鐘を鳴らしておいて、その報告が上がっていれば当然その会合にはかけたわけですけれども、まだ知りませんのでかけていなかった。結果的に責任があると言われれば、どの時点でかければよかったのかも含めて今検証が行われていますから、その検証を受けた後に、ここも私たちは、今後の盤石な体制をとるには何が必要かということをもう一度しっかり考えまして、対応していきたいというふうに思います。

阿部委員 何度も申し上げますが、やはり、体制の不備の結果が、ここに至って国民に甚大な不安を与えているということですので、その総司令塔の菅官房長官には、ぜひ自覚と認識を強く持っていただきたいと思います。

 では、なぜ滞ったのかというので、これも私の方で二枚目、図をつくってみました。

 一部、私の方で追い切れなかったこともあるので、適宜伺ってまいりますが、ここではまず、先ほどの大臣の御答弁でもございましたが、五月八日、NISCから情報政策担当参事官室に対して、不審な通信があるということを通知いたしましたが、結果的に、警察に年金機構が捜査依頼を出したのが五月十九日ですが、逆に、この破線の点々で、情報政策担当参事官室からNISCに対して報告が最初に上がったのはいつでしょうか。

安藤政府参考人 お答え申し上げます。

 五月八日に、NISCの方から、厚生労働省の統合ネットワークで不審な通信を検知したというお話がございまして、担当部局に必要な連絡をとって、結果、機構ということが判明いたしました。機構の方では初動の対処を行ったということでございまして、その結果につきましては、同日中に、私どもの方からNISCの方には、こういう対応をとりましたという御報告をいたしました。

阿部委員 私は今、NISCに質問をしました。

 NISCはいつ、情報政策担当参事官室から、例えば高井戸署に五月十九日の捜査依頼が出ているということを聞いたのですかという質問です。

谷脇政府参考人 お答え申し上げます。

 警察に対する捜査依頼を出したということにつきまして、私どもNISCにおきましては、五月の二十九日にその報告を受けたところでございます。

阿部委員 少なくとも、そこに十日間のタイムロスがあります。

 では、情報政策担当参事官室は、一体誰から、五月十九日、年金機構が警察に捜査依頼を出したというところはいつだったんでしょうか。情報政策担当参事官室が、いつ、誰から、年金機構が警察に捜査依頼を出したということをお聞きになりましたか。ここで私がはてなとしてありますが、このようなルートだったのか。

安藤政府参考人 お答え申し上げます。

 五月十九日に機構から伺いました。

阿部委員 私が今確認したかったのは、では、五月十九日から二十九日、NISCに行くまでの十日間のロスは、情報政策担当参事官室で十日間温めたわけですね。年金機構は、警察に捜査依頼を出しましたということを情報政策担当参事官室に十九日に伝えました、ところが、NISCに行くまでは、十日間、ここが情報を温めておった。その程度の認識なんですね、情報政策担当参事官室は。

 私は、この情報政策担当参事官室というものの動きがよく見えませんよ。だって、NISCは当然ここに、あっ、不審な情報がありますよと投げたんですよ。そして、そこから年金局へ行って、年金機構に行きました。年金機構から、やはり事態が重大だから警察に行ったんだと思いますよ。警察に行きましたという情報をもらったんですよ。十日間、何をしていたんですか。

安藤政府参考人 お答え申し上げます。

 私どもがこういったインシデントに対する対応をしておりますのは、情報セキュリティーインシデント対処手順書というものに基づいてございます。この手順書におきましては、警察への通報を必ずしも明確に位置づけていなかったということがございまして、NISCへの報告がおくれたというふうに認識しております。

 こういったことは大変問題であろうと存じますので、今後、緊密な連携を図っていく必要があると考えておるところでございます。

阿部委員 先ほど来の御答弁、皆さん、このインシデント対処法、対策に述べられていなかったとばかりおっしゃるんですけれども、私は、最後の資料に、「政府機関の情報セキュリティ対策のための統一基準」「情報セキュリティインシデントへの対処」という政府がつくった文書を添えてございます。これをよく読むと、今までの御答弁とはやはりちょっと違うと思うんですね。

 下から六行目あたりでしょうか、ここは、「当該情報セキュリティインシデントの内容に応じ、警察への通報・連絡等を行うこと。さらに、国民の生活、身体、財産若しくは国土に重大な被害が生じ、若しくは生じるおそれのある大規模サイバー攻撃事態等においては、」と続いていくんですけれども、この警察に通報するときというのは当然次の、さらに起こり得る重大事態への構えを持てという並びでこの文書はつくられているんですね。

 大体、いつインシデントと受けとめたんですか。インシデントと思ったのはいつですか。そして、これにのっとってやれば、私は、当然NISCにもっと早く情報を返すべきだったと思いますが、インシデントと認識したのはいつですか。

山本副大臣 厚生労働省のセキュリティーポリシーにおきまして、情報セキュリティーインシデントというものは、情報セキュリティーに影響を与える、または与えるおそれのある事故や事件の発生、予告等とされております。

 今回の事案につきましては、五月八日にNISCから不審な通信の検知の連絡があった時点では、内容が明らかではございませんでした。その内容を判明させる過程におきましてインシデントという形で位置づけておりますけれども、今回の事案につきましては、どの時点でインシデントと位置づけたのか、これを明らかにすることによりまして政府の検知能力というものを明らかにしてしまうおそれがございます。セキュリティー上の観点から、お答えを差し控えさせていただきたいと存じます。

阿部委員 それではセキュリティーにならないんですよ。いつインシデントと認識したかもわからない。認識したならば、当然踏むべきプロセスの次の予測がないんですね。それは対処とか対策とか言わないんですよ。

 いつ重大事態と認識したかも恐らく、菅大臣、おわかりですか。ここで言う重大事態、インシデントの次のステップだといつ認識されましたか。

菅国務大臣 私は二十九日にその報告を受けまして、これはまさに特定重大事象であると判断をその場でいたしました。ですから、NISCに対して、まさにCYMAT、そしてまたNISCで原因究明する本部をつくったということです。

 そして、先ほど来申し上げていますけれども、この報告を受けたときに、その全容をやはりもう一度NISCを踏まえて解明しなければこれは大変なことになってくるだろうというおそれというものを私は感じました。それと同時に、やはり二次被害を避けることも極めて大事なことでありましたので、そういう中で重大事象判断ということを私がその時点で判断したということであります。

阿部委員 恐らく、重大事態と認識されたのは、今の菅官房長官のお答えでは五月二十九日。私は、当然ながらその前にも厚生労働省で、山本副大臣は明確にお答えになりませんでしたが、物事はやはり、インシデントであるという認識がいつからかというのは大事なんですね。セキュリティー上言えない問題ではないのです。どのような構えが、インシデントとして認識されるのかです。

 私の資料のページの終わりから二枚目を見ていただきますと、「厚労省の情報セキュリティ体制」というものを、これも一部私の方で加工しながらつくってみました。

 そういたしますと、情報セキュリティ委員会の中で、最高情報セキュリティ責任者、これは大臣官房長で、この方が五月二十一日の会議に出ておられますが、何にも知らないと。大臣官房参事官、今おられますが、この方は、統括情報セキュリティ責任者でありますが、この方もたしか五月二十五日まで知らない、先ほどの大臣官房長は五月二十八日まで知らないと。知らない、知らないでは、インシデントというふうに認識もできないし、急に重要事態として勃発するということになるんですね。

 私が申し上げたいのは、やはりその前の段階で手順を踏んで、大ごとに至らないための対策を持っていないと、予防もできないんです。

 今私が申し上げた認識でよろしいですか。ここの、大臣官房長は五月二十八日、大臣官房参事官は五月二十五日、これは、先ほど来の答弁を私の方で当てはめてみましたが、よろしいですか。

安藤政府参考人 お答え申し上げます。

 先生の御指摘のとおりでございます。

阿部委員 では、安藤審議官、済みません、も一つ。

 いつインシデントと認識しましたか。

安藤政府参考人 この問題につきましては、NISCから御連絡をいただいたということをもちまして、私どもとしてはインシデント対処手順書にのっとった対応を始めました。

 ただし、先ほども申し上げましたとおり、必要な報告等が非常に手ぬるかったということだと存じます。

阿部委員 申しわけないけれども、五月八日にNISCから連絡が来たときにインシデントだと思ったのなら、「遵守事項」の(2)の(b)、「最高情報セキュリティ責任者に速やかに報告すること。」、全然速やかじゃないですよね、五月八日に来て。

 今、安藤さんが答弁されたのは、五月八日にインシデントだと思ったと。思ったら速やかに上げていただけませんか。そうじゃないと、インシデント対応とこのペーパーにのっとっても言えませんよ。

 そして、ずっと下って(f)、CSIRTと書いてあるところ、情報セキュリティーインシデント対処体制は、「速やかに、内閣官房情報セキュリティセンターに連絡する」、これもできていない。上にも上げていない、情報セキュリティセンターにも返していない。

 自分たちだけインシデントだと思って、このペーパーにものっとらずやっていたことになりますが、副大臣、いかがですか。

山本副大臣 まず、大変不十分であったという御指摘はそのとおりであると思っております。そもそもその判断をする人のところまで上がっていない、そういう状況でこういった事態が生まれているわけでありまして、検証委員会で厳しく検証していただきたいと思っております。

阿部委員 インシデントと認識しても手順書にものっとれない体制というのは、もうどうしようもないんですね、それでは。申しわけないが、手順書は、やはりそれどおりにやっていただかないと、手順書じゃないわけです。

 副大臣にお願いがありますが、一体部局内では、もうみんな係長のせいにされちゃうんですね、年金係長、あるいは情報政策担当参事官室係長。係長、係長。係長は今お休みされているんですね。本当にやぶの中になっちゃいます。厚生労働省として責任を持って、係長からその上の人にいつ上がったか、伝達ゲームではありませんが、これを時系列でおつくりいただきたいんです。

 私は、今わかる限り、自分でこういう図をつくってみました。でも、係長からその上にどうやって行ったんだろうというのが、まるで見えないんです。それでは、幾ら検証、検証といっても、検証のしようもないし、これは、インシデントと五月八日に認識したのであれば、それに対応したアクションがちゃんととられていたかという問題なんですね。これを時系列でつくっていただきたいが、いかがでしょうか。

山本副大臣 今、その事実確認も含めて、どういう形でできるか、ちょっと勉強させていただきたいと思います。

阿部委員 では、副大臣、副大臣も、五月八日、インシデント認識でいいですか。いつインシデントと認識しましたかと、さっき、安藤さんは五月八日とお答えなんですけれども、お考えは同じですか。

山本副大臣 私、五月八日の時点で存じ上げませんが、今の段階で判断すれば、その時点でインシデントというような判断をしてもおかしくなかったのではないかと考えております。

安藤政府参考人 私が申し上げましたのは、手順書にのっとって対処を始めたということでございます。インシデントかどうかという認定をしたというわけではございません。

阿部委員 何をとぼけたことを言っていますか。これはインシデント対策の手順書ですよ。違うものを見てやったら困るでしょう。何でそんなとぼけた答弁をするんですか。インシデント対策の手順書でしょう。それでは何の手順書にのっとってやったの。

安藤政府参考人 お答え申し上げます。

 インシデントとなる可能性が高いということで、その危険性を考えて、これにのっとって対処を始めたということでございます。

阿部委員 では、ますます出してもらいましょう。インシデントになる可能性が高いと認識して何をしたのか、どこでインシデントになったのか、インシデントに準拠して、対策、遵守するべきプロセスを踏んだのか。そういうふうにおっしゃるなら、逐一。

 本当に、例えば重要事態法とかもそうですが、誰が、いつ、どこで認識したかが一番大事なんです、後々の検証で。そんなもの、ずるずるずるっとして、気がついたら重要事態だったといったら、国防もできないし、サイバーテロにだって対処できないんですよ。

 菅さん、いかがですか。インシデントになりそうだったから、では、何に準拠してどう行動したんですか、インシデントと思ったらどう行動したんですか。その結果、重要事態になるんですよ、物事ですから。これが、全くこの手順が踏めていなければ、国家安全保障だって困るんですよ。今の答弁、どうお聞きになりましたか。

菅国務大臣 いわゆる初動から今日に至るまで、全体について、今大臣のもとで、第三者委員会でこれを検証しますので、そうしたことも含めて、やはりしっかりした検証の報告を受けて、これは国として、全体を見る中で、しっかり対応していきたいと思います。

阿部委員 誰もしっかり対応してくれるなとは思っていないんです。だけれども、余りにもこういう、言葉がひとり歩きして、実際が伴わないで、対策が打たれないでというのが、一番、国民の不安のもとだし、守られていないんですよ。

 冒頭申し上げましたが、国民の生命財産を守るのが政治の役割なんですね。年金は財産なんです。それが守られていないという事態が、こんな答弁で繰り返されるということが、私は本当に残念でならない。そんな対処しかしていなかったのかと思うと、大変に憤りを持つものです。

 さっき大臣がおっしゃった第三者委員会、今確かに厚労省は、塩崎大臣がおつくりになりましたが、この第三者委員会の検証結果は厚労省に上がるという形で、NISCあるいは菅官房長官のところに直接ではないと思うんですね。私は、今回の事態は他の安全保障体制を考えるにも極めて重要な参考になると思うんです。単に厚労省内の第三者委員会にとどめないで、NISCとの直接のいろいろな教訓の交換、情報交換をなさったらいかがでしょうか。

菅国務大臣 私もそのように思っています。ですから、この検証委員会にNISCからも全面協力するような指示をしています。

阿部委員 続いて、この問題をきっかけに、さまざまな不安が国民の中にはあるわけです。

 今回は年金でありましたが、そして、年金は統合ネットワークの中に入っておりますが、医療保険や支払い報酬についてはこのネットワークの外であります。しかしながら、同じようなサイバー攻撃は、今、例えば健康情報とかいろいろな健康保険情報というのは非常に狙われやすい分野であります。これのセキュリティー体制がどうなっているかというのも連動して大変不安になります。

 副大臣、この件についてはいかがでしょう。先ほどの医療保険や医療関連の支払い情報は、この統合ネットワークには入っておりません。しかし、ここもまたサイバーテロになったら、今のような厚労省の体制ではひとたまりもないと思います。インシデントになりそうだ、でも、いつからインシデントかわからない、ああ、重大事態になっちゃった、さあどうしよう、漏れちゃったと。本当に深刻と思いますが、他の、この統合ネットワークに入っていない、しかし、国民の生命や健康を守るに大事な情報を厚労省は管理しています。そのことについて認識を、今どう思っておられますか。

山本副大臣 統合ネットワーク外のという話でございますけれども、厚生労働省がかかわるそうしたさまざまなネットワークにつきましては、官房からの御指示もありまして、総点検をさせていただく、そしてきちんと安全性を担保していくという方向で今やっております。

阿部委員 申しわけないけれども、余り頼りがいのある御答弁じゃなくて、国民から見て大変不安な思いが強くなります。

 最後に、官房長官に伺いますが、いわゆるGSOC、先ほどもちょっと出ました政府機関情報セキュリティー横断監視即応調整チームですが、この監視対象として、今申し上げましたような医療保険等々も当然あるものと思いますが、マイナンバーも始まりますし、そうしたことも含めて、個人情報の流出等、非常に重要なセキュリティー問題というのはあると思いますが、この辺についての認識、機能強化の御認識はお持ちであるか。これで最後の質問にします。

菅国務大臣 例えば今回の年金機構、これについては、特殊法人という形の中で、NISCの監査とか、そういう対象に実はなっておりません。厚生労働省を通じて今行っているところでありますので、もう一度こうしたことは洗い直しをして、国民の皆さんにとって極めて重要な部署についてはNISCがしっかり対応できるように、ここは対応してまいりたいと思います。

阿部委員 国民への攻撃は、武力だけではなく、こうしたソフト分野が非常に多くなりますから、きちんと国民が守られる体制をお願いしたいと思います。

 終わります。

井上委員長 次に、近藤洋介君。

近藤(洋)委員 民主党の近藤洋介であります。

 本日は、いわゆる漏れた年金問題についての集中討議であります。

 これまでの質疑で、本件の背景といいましょうか起きた要因が幾つか明らかになってまいりましたけれども、いずれにしましても、現時点で判明しているだけでも百二十五万件に及ぶ大量な個人情報が流出してしまったという、前代未聞の事案であります。

 また、その事件の対処をめぐっても、年金機構、さらには厚生労働省の対応についても、維新の初鹿議員、そして我が民主党の阿部議員の質疑でも明らかなように、またこれまでの民主党の調査によっても、大変お粗末な実態、大きな問題が明らかになっております。

 まず、菅官房長官にお伺いをいたします。

 今回の年金漏れ問題でありますけれども、いわゆるサイバー攻撃に端を発した本件でありますが、確かにこれはサイバー攻撃ではありますけれども、サイバーの問題であると同時に、これは、その対応、今までこの質疑でも明らかになってきた幾つかの対応のことを、この議論を聞いても、これはいわゆる国の信用にかかわる失態ではないか、私はこういう思いであるわけでありますが、そういった認識はお持ちですか。

菅国務大臣 日本年金機構は、年金記録をめぐるさまざまなずさんな問題が発生をし、国民の皆さんに大変御迷惑をおかけして、そして解体的出直しを図るということで、五年前に組織がえして再出発をしたところでありますけれども、今回、このような個人情報を流出したことについては、極めて遺憾であって、私も、国民の皆さんには大変申しわけないというふうに思っています。

近藤(洋)委員 まさに五年前のいわゆる消えた年金に続いて、今回、こういったことになってしまったということであります。ですから、この国会の場においても、しっかりきちんと解明、検証しなければいかぬ、こう思うわけであります。

 委員長のお許しを得て資料を配付させていただいております。これまでの委員とも重なる資料でありますが、厚生労働省、年金機構が連名で発表した六月四日付の資料。

 先ほどの答弁で、この文書は、最終責任は、塩崎厚生労働大臣の責任において作成をされた文書であるということとなりましたが、塩崎大臣が責任を持ってつくられたこの文書によりますと、最初のページでありますけれども、五月の八日時点で、厚生労働省にNISC、内閣サイバーセキュリティセンターが不審な通信を検知したとの通報をしております。

 そこで、NISC、参考人に伺いたいんですが、NISCが本件について厚労省に通知をしているわけですが、これが年金機構への不正アクセスであると認識したのはいつですか。

谷脇政府参考人 お答え申し上げます。

 私どもNISCにおきまして、五月の八日及び二十二日に、厚生労働省に設置をいたしましたセンサーにおいて不審な通信を検知したわけでございます。しかしながら、厚生労働省、それから年金機構のシステムが一体的に運用されておりますので、私どもから、そのいずれであるかということを判別することはできないわけでございます。

 委員御指摘の点につきましては、私どもは、五月二十二日の夜、厚生労働省より、不審な通信を検知したのが日本年金機構であるとの報告を私どもの担当者が受けたというのが事実でございます。

近藤(洋)委員 そうなんですね。

 すなわち、厚生労働省は、当初、このことをNISCから通報を受けて、先ほど来の質疑で、いかにも年金機構への攻撃があったことを頻繁に連絡をとったかのような答弁をされておりますけれども、NISC側に年金機構への攻撃であったということをきちんと伝えたのは何と五月の二十二日だった、こういうことでありますね。そのことが確認をできました。

 ここはもう既にお答えいただいていますから改めて御答弁は結構でございますが、もう一度確認です。官房長官がこの事態を最初に聞いたのは、正真正銘二十九日のその日に聞いたのが初めてであるということでよろしいわけですね。五月の二十九日であるということでよろしいですね。

菅国務大臣 そのとおりです。

近藤(洋)委員 本部長である官房長官は、五月の二十九日に最初に聞いた、こういうことであります。

 厚労副大臣、五月の八日にNISCから通知を受けて、警告も受けて、またさらにNISCから五月の二十二日にも警告を受けて、ようやくその段になって、これが実は年金機構なんですという、相手のことをようやく伝えている、こういう状況になっているわけであります。

 もう一度確認ですが、副大臣自身がきちんと話を受けたのは二十五日ということでよろしいわけですか。もう一度お答えください、正確に。

山本副大臣 私が連絡を受けましたのは、五月二十五日ではございませんで、六月一日の記者会見の前にお伺いしました。

近藤(洋)委員 六月一日、記者会見の直前に副大臣自身はこの話を聞いた、こういうことですね。わかりました。

 大事な点であれですが、そうすると、大臣御自身が聞いたのはいつだということでよろしいんでしょうか。

山本副大臣 五月二十八日に警察から第一報が来た後に、大臣が最初に伺ったと聞いております。

近藤(洋)委員 となると、政務三役自体は、官房長官の聞くほとんど直前でしか、いわゆる大臣、副大臣のかかわりはなかった、それまでは役所の中で事を進めていたということであります。

 これ自体、安倍政権の仕事の進め方なのでしょうけれども、基本的に、我々、私どもからすると考えられない、こう思うわけであります。

 副大臣、このサイバーセキュリティ戦略はお読みになりましたか。この事案があってからでも、結構、お忙しかったかと思いますが、これは本部でつくられたセキュリティ戦略でありますが、今パブコメに付されていますけれども、読まれたかどうかだけ。読まれましたか、これは。

山本副大臣 その現時点のものは読んでおりません。

近藤(洋)委員 そうですか。

 このサイバーセキュリティ戦略、菅官房長官のもとでつくられた本部決定、閣議決定をされる戦略でありますが、添付資料の九ページ目に、原則等々が書いてあるわけですが、ちょっとそこの抜粋をさせていただいておりますけれども、「国民が安全で安心して暮らせる社会の実現」という項目の冒頭部分にこう書いているわけです。「重要インフラや政府機関の機能やサービスは、それ自体が経済活動・国民社会を支える基盤となっており、」云々というところで下線を引いていますが、「業務責任者(任務責任者)がシステム責任者と重要インフラや政府機関の機能やサービスを全うするという観点からリスクを分析し、協議し、残存リスクの情報も添えて経営者層に対し総合的な判断を受ける機能保証(任務保証)の取組が必要である。」、こう書いているんですね。

 要するに、経営者層の判断が必要である。先ほどの阿部議員の質疑にもありましたけれども、このインシデントがどうであるかということの判断を経営者層がきちんと判断せよということをこのセキュリティ戦略できちんと書いているんですよ。書いているんです。このことにのっとってマニュアルもできているわけでありまして、要するに、それにのっとったことを厚生労働省はちゃんとやっていないということが今の御答弁で明らかになりました。

 こういうことだから今のような状況になるということは言わずもがなでありますが、ちょっとNISCの方にお伺いしたいと思います。

 さて、NISCでありますけれども、五月八日以降、警告をした。五月二十二日にも二度目の通報をされました。五月八日の対応、そして五月二十二日に警告を発して、五月八日以降何もなかったわけでありますけれども、この時点で少なくともNISCは相手が年金機構であるということはわかったと、二十二日以降は。このタイミングで例えば対応チームを派遣するとか、何かのアクションをとるということも私はできたのではないかと思うのですが、これは検討されなかったのですか。

谷脇政府参考人 お答え申し上げます。

 私ども二度目の通報でございますけれども、五月二十二日の通報に対しまして厚生労働省からは、端末の切断等を同日中に行ったという報告がございました。NISCにおきましても、検知、つまり外部に対する不審な通信がとまっているということを確認したところでございます。それ以降もNISCにおきまして監視を継続いたしておりました。

 二十五日に八日の検知連絡以降の状況についての資料提出を厚生労働省に対して求めたほか、二十七日に厚生労働省にヒアリングの実施を申し込み、二十九日の金曜日にNISC担当者が厚生労働省に出向き、ヒアリングを実施し、同日午後でございますけれども、厚生労働省の審議官から内閣サイバーセキュリティセンター長が情報流出の報告を受けたという流れでございます。

 この経緯につきましては、今後、検証の過程で、改善すべき点につきましては必要な見直しを図ってまいりたいというふうに考えております。

近藤(洋)委員 では、また谷脇さんに伺いますが、警察への依頼を厚生労働省はしているわけでありますけれども、確認ですが、厚生労働省が警察当局に通報しているという事実はNISCは当初から把握をしていたんですか。

谷脇政府参考人 お答え申し上げます。

 私どもがその事実について御報告をいただいたのは五月の二十九日でございます。

近藤(洋)委員 そういうことなんですね。

 これも、先ほど来、マニュアルに必ずしもなかったからという御答弁なんですが、私は、副大臣、改めて、五月十九日に機構が高井戸警察署に相談、捜査依頼した際に、NISCにもこの情報を提供すべきではなかったか、こう思うわけであります。副大臣がこの事案を知ったのは六月一日でありますから、副大臣の判断を責めるわけにはいきませんが、しかし、これは厚生労働省を代表して、厚生労働省として、ここは私は判断のミスがあったのではないかと思いますが、いかがですか。

山本副大臣 おっしゃるとおり、警察への通報をなされた後にNISCへ報告をしなかったということにつきまして、不十分だ、問題があったのではないかと思っております。

近藤(洋)委員 国家公安委員長、お伺いします。

 警視庁は通報を受けて捜査に着手をするわけでありますが、この標的型メール攻撃、罪状は、不正指令電磁的記録供用罪ですか、という罪になるわけですが、メール攻撃は送った時点で犯罪、こういうことになるわけですね。

 私は、この事案、まず、国家公安委員会というか警察としては、こういった場合、NISCに対して、こういう通報が来ていると、NISC側と連携をとる必要性が警察としてあったのではないか、こう思うわけですけれども、いかがでしょうか。

山谷国務大臣 罪名につきましては、まだ捜査中でございますので、確定しているというわけではございませんが、警視庁では、五月十九日に、日本年金機構から、標的型メール攻撃により職員の使用する端末が不正プログラムに感染した旨の通報を受けたことから、サイバー攻撃捜査に係る技能と経験を有する捜査官等が配置されたサイバー攻撃特別捜査隊を中心に、まずは被害者である同機構の協力を得て捜査を進めてきたところであります。

 その後、本件情報流出が確認されたことから、NISCとの間では、同機構から外部に対する不審な通信の接続先に関する情報を共有するなど、同種被害の拡大防止に資する協力を行ってきたところであります。

 引き続き、NISCを初めとする関係機関と緊密に連携し、本件事案の解明及び被害拡大防止に取り組むように警察を指導してまいりたいと思います。

近藤(洋)委員 公安委員長、いわゆるサイバー犯罪ですけれども、資料の六ページ目をごらんいただければと思うんですが、いわゆる標的型メール攻撃の件数であります。平成二十六年上期と下期を合わせますと約千七百件を超える件数、こういうふうになっています。非常に急増をしておるわけですね。

 次のページをごらんいただければ、字が小さくてまことに恐縮ですが、大変多くの事案があるにもかかわらず、検挙件数ですが、平成二十六年、不正指令電磁的記録供用罪の検挙はわずか十六件にとどまっておりますね。要するに、我が日本の警察、大変優秀な警察でありますけれども、残念ながら、攻撃をこれだけ受けながらも、検挙に至るというのは非常に難しい、こういうことなんですね。

 だから、何を言いたいかというと、やはり、いかに防御をするかというのが非常に重要であって、攻撃と防御というのはある意味で一体なんだろう、こう思うわけであります。

 ですから、やはりここは、警察といわゆる防御部隊のNISCは、ある意味で一体運用が必要なんじゃないか、こう思うわけですね。ですから、捜査をする部隊であるからなかなかNISCと連絡をしにくいという事情はわかるんですけれども、できる限り、まず、通報を受けたらばNISCと連絡をするという体制を早くとった方がよいのではないか、こう思うのですが、改めて、いかがでしょうか。

山谷国務大臣 サイバー攻撃に適切に対処するためには、警察による取り締まりのみならず、官民連携のもとに被害の未然防止や拡大防止を図ることが重要であると認識をしております。

 警察では、本件事案においても、捜査の進展に応じて、NISCとも情報を共有し、被害の拡大防止を図ってきたものでございます。

 今後とも、NISCを初めとする関係機関等と一層連携し、サイバー攻撃の未然防止及び被害拡大防止を図るとともに、サイバー攻撃の実態解明及び厳正な取り締まりに取り組むよう、警察を指導してまいります。

近藤(洋)委員 これは本気でやってもらいたいんですね。

 というのは、サイバーセキュリティ基本法という法律がございます。これは議員立法で、さきの国会で成立をしたわけでありますが、この内閣委員会で提案をさせていただいたわけでありますけれども、自民党は平井先生が、公明党は高木先生なり遠山先生、民主党は原口先生、私も実務者としてこれにかかわって、つくらせていただきました。その上で、NISCの強化なりを、議員立法としてつくった人間です。その思いもあって、今回の事案を見ると非常に、もっときちっとつくっておけばよかったなという気持ちも半分持ちながら、今この場に立たせていただいております。

 そこの条文で、四ページの十六条にきちんと、関係各府省の連携の強化ということは基本法ですから書いているわけでありますけれども、少なくとも、厚生労働省の今回の対応は、このサイバー基本法にも入らないお粗末な対応ぶりですからこれはもう話にならないんですけれども、警察当局においてもぜひそこは意識をしていただきたい、こう思うわけであります。

 ぜひ、官房長官、厚労省が今回端緒になったわけでありますけれども、この関係機関の連携強化について、法律にはもうちゃんとこう書いているわけですから、きちんとやらせるということを取り計らっていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。

菅国務大臣 私は、委員を初め議員立法でこの基本法をつくっておいていただいて、本当によかったと思っています。

 この法律をつくっていただいたことによって、さまざまな、監査権限だとか、いろいろなことをNISCは持つことができましたし、それと同時に、NISCとして、陣容も、まだ百二十名でありますけれども、それなりに体制を整えることができました。

 そして、今回、残念ながらこのような事案が発生してしまったわけですけれども、今検証作業を進めている中で、NISCの対応についても指摘をした。そこは、そういう意味で、五月八日に指摘をしていますから、その後、例えば、NISCとして年金機構には直接今できない仕組みになっていますから、そういう中にあっても、報告を受けるとか、報告を求めるだとか、そういうことも含めて、できなかったのかなという思いを今私が持っていることは事実であります。ですから、検証を受けた中で、そこはしっかり対応したいというふうに思います。

 ただ、言わせていただくならば、これはやはり厚生労働省がまず省内でしっかりすることも、これがまず第一義ですから、それぞれの省庁には、しっかり、体制も含めて、セキュリティセンター、NISCでもう一度見直しをする必要があるだろうというふうに思っています。

近藤(洋)委員 ありがとうございます。

 この件は本当に大事な点で、勧告、報告についてはもう一回ちょっと根拠の話を伺いたいと思うんですが、多少はできるようにつくった構えなんですけれども、まだ運用の段階で、もう少し見直しの余地もあるのかなという気も私もしているわけでございます。

 さて、長官もおっしゃった、そもそもの厚労省の体質の問題なんですけれども、この委員会の場でも問題になりました、参議院でも問題になりました、遮断の話であります。

 要は、このペーパーの二ページ目で幾つか出ている、五月の二十二日にインターネット接続を遮断と記載をし、五月の二十九日も機構本部、全拠点のインターネット接続を遮断と書いてはおりますが、結論から言うと、メール接続はできていた、こういうことなわけです。一般常識では、これは遮断とは言いません。これはどう見ても接続しているわけでありますから、これを遮断と言うのはいかにもおかしな話であります。

 水島理事長、これは虚偽の発表をされたという認識は今の時点でございますか。お答えください。

水島参考人 先ほども申し上げましたが、昨日、参議院の委員会におきまして、私どもの案件によりまして大変御迷惑をおかけしましたことを心からおわび申し上げたいというふうに思います。

 その上ででございますが、私どもは、実は、インターネットと申しますか、外に開いている回線は二本持っております。一本はいわゆる統合ネットワークにつながるものでございます。もう一本は、従来から、先ほど副大臣から御説明ございましたが、社会保険庁時代から持っているものでして、これは実は五メガ程度の比較的小さなものを運ぶインターネットのものでございます。

 実は、統合ネットワークに結ばれておりますものは、これはいわゆるウエブ通信でございますとかデータ通信に主として対応したネットワーク回線でございまして、実は、いわゆるデータの流出は、この回線を通じてデータが外に流出したということになります。

 そういう意味で、まず、インターネットとの遮断と申し上げましたのは、実はこの統合ネットワークからインターネットに出ておりますので、この環境を遮断して、大量のデータがウエブ通信やデータ通信という形でいわゆる流出をしないようにという意味で、そのネットワークを遮断したわけでございます。

 同時に、実は、インターネットに関しまして維持をいたしましたが、このインターネットに関しましては、これはメールだけしか使えないネットワークになっています。この回線でございますが、添付ファイルも入ってまいりますが、実は、この回線からデータが出る場合には全部暗号化されるようになります。その暗号化の際にパスワードを、その後、送った人がパスワードをメールで送るという仕組みになっております。

 したがいまして、一〇〇%ではございません、もちろん可能性は、懸念はあるわけでございますが、私どもといたしましては、インターネットの回線のところに関しましては、実は、これを切りますと業務上非常に不都合が発生するということもございまして、これは私の責任でございますが、その説明を受けて、一定の範囲でインターネットメールの環境を、やむを得ないというふうに私自身、最終的に判断いたしました。そういう意味で、私の責任でございます。

近藤(洋)委員 そうすると、理事長の責任で一部回線を残してこういう対応をとられた、こういうことですね。

 この文書自体は、先ほど、厚生労働省部分も含めてなんですけれども、最終責任は塩崎大臣の名においての発表文である、文書であるという御答弁を副大臣からいただきましたが、年金機構分の部分については、水島理事長の責任における文書だということでよろしいですか。

水島参考人 そのとおりでございますが、実は六月四日にインターネットのいわゆるメールの回線も遮断をいたしました。

 二十九日から六月四日までの間の経緯でございますが、塩崎大臣から大変厳しい御指導を頂戴いたしておりまして、その中で、はたと、やはりここの部分は、インターネット環境を遮断していると言う限り早期に遮断すべきであるというふうに認識をいたしまして、遮断をした次第でございます。

 そういう意味で、このような事態を招きましたことに関しましては、日本年金機構、特に私の責任でございます。

近藤(洋)委員 要するに、全体の対処については、理事長の判断を大臣の指導で変えたということですね。

 私が今伺ったのは、この文書自体の最終責任、この文書は、遮断という発表をされたのは、年金機構側が遮断ということは、理事長の責任において発表された、こういうことなんじゃないですか。

水島参考人 遮断というふうに発表いたしましたのは、六月一日に記者会見で公表させていただきましたときに遮断という表現を使わせていただきました。それは、私の責任で使わせていただいております。

近藤(洋)委員 これは、明らかに国民の皆さんにとって誤解を招く表現なんですよね。それを御自身がわかっておきながらこういう誤解を招くということは、極めて問題じゃないですか。だから、塩崎大臣は恐らく、何だこれはということであります。これは当然の塩崎さんの判断だと思いますよ、その点においては。その判断だけは。あとの判断は問題ですけれども。それは、水島さんの、理事長の発表は虚偽の発表にとられかねないからです。少なくとも、一般的には虚偽の発表ですよ、それは。ですから、問題なんですよ。

 この責任は、私は重大だと思いますし、混乱を招かれたんだろう、こう思うんですね。

 水島理事長、私は、理事長は大変立派な御経歴をお持ちの方だと認識をしております。三井銀行に御入行されて、三井住友銀行の副頭取までやられたお方であります。法人営業でも大変辣腕を振るわれたことは、私も十分存じておりますし、ガバナンスということも十分御理解をされている方だ、こう認識されて、安倍政権において請われてこの重責を担われている方であります。

 その水島さんにお伺いしますが、本件において、二十二日に理事会を開かれておりますが、この二十二日の理事会でこの事案は議論をされましたか、確認をしたいと思います。

水島参考人 二十二日の理事会は定例の理事会でございましたが、議題といたしておりません。

近藤(洋)委員 これだけ重要な事案を、なぜ理事会で議論しないんですか。なぜですか、理由をお答えください。

水島参考人 まず、まだ流出が確認をされている状況ではございませんでした。そのような中で、定例の議題で理事会を開かせていただきましたが、そういう意味で、御指摘のように、理事会にその時点で御報告すべきであったかと今反省をいたしております。

近藤(洋)委員 理事長が本件を認識したのはいつですか。

水島参考人 五月八日、本件の一連の事案が発生いたしましたその日でございます。

近藤(洋)委員 警察に通報したのも、では、当然御存じのはずですね。

水島参考人 はい。私が、警察に届けることについて承認をいたしております。

近藤(洋)委員 そのはずですね。三井住友銀行の副頭取まで務め、しかも現場の銀行員としてまさに経験を積まれた方であれば、本件がどれだけ重要な案件かというのは、骨身にしみて知っているはずです。

 経営の最重要課題であるという認識は、当然、理事長、お考えでしたよね。

水島参考人 いわゆる不正アクセスを受けていたということに関しまして、いかにこのシステムを守っていくかということが極めて重要な課題であるということは、もちろん認識をいたしておりました。

近藤(洋)委員 金融機関であれば、金融システムについてこうしたことが起こるということは、最悪の事態のはずなんですよ。そのことをわからない銀行マンなんか一人もいないはずです。少なくとも経営陣であれば。あればですよ。

 まさにこの状況がわかっている人が、なぜこのようなことをするのか。いや、もしかしたら、事の重大性を知っているから、わけのわからない発表をしたのかと疑いたくなるぐらいの不手際ですよ。

 これは、理事長、責任を感じられますか。きちんとした御自身の責任を感じられますか。いかがですか。

水島参考人 かかる事態を招きましたことに関しましては、重い責任を感じております。

近藤(洋)委員 私はこれは、年金機構の体質であると同時に、先ほどの阿部委員からも御指摘あったように、係長の責任に何か厚生労働省もされている、これは非常に憤りを感じますね。まさに体質の問題ですよ。大臣の名前のペーパーなんです。そして、機構のトップ判断で行った問題なんですよ。まさに体制の問題なんです。それが、一係長が病欠だから話ができませんだとか、調査中だから話ができませんとか、一個人の問題に罪をなすりつけようとしていることは、私はとても許されないことだ、こう考えますし、当然、大臣の責任は重いですし、まさに年金機構の理事長の大きな責任の問題である。

 その大きな責任の問題だという認識が、官房長官、おありになりますか、いかがですか。

菅国務大臣 まず、今回の事案について、厚生労働省の日本年金機構に対する指導監督が十分であったのかどうか。さらに、厚生労働省内における連絡体制が適切であったのかどうか。こうしたことが、今までの議論の中で浮き彫りになってきています。

 こうしたことも含めて検証委員会で当然しっかりと検証をしますので、そうしたものも含めて、今後、この問題を解決していくには極めて重要な部分だろうというふうに私は思います。

近藤(洋)委員 でも、官房長官、検証委員会は厚生労働省内につくられるんじゃないんですか。そうですよね。厚生労働省内につくられる検証委員会は、この間の外務省のISIL問題じゃないですけれども、申しわけないですけれども、役人のお手盛りの調査になるのが、これはもう結果は最初から明らかじゃないでしょうか。

 政務三役も飛ばして、大臣にも副大臣にも知らせないで、勝手に自分たちで事を進めてしまってこういう状況になってしまっているんですよ、これは。申しわけないけれども、水島理事長は御自身で判断した、その御自身で判断した問題の、資質の問題です、これは。理事長の問題です、資質の問題です。監督責任は当然問われます。大臣の監督責任、そして年金局長の監督責任、さらに言えば、官房長なりの組織的な問題。

 それを、厚生労働省が、まさに自分で自己批判なんかできるはずがないじゃないですか。それは官房長官御自身が常識的にお考えになりませんか。これはぜひ、きちんとした別の調査機関をつくられたらいいんじゃないでしょうか。

菅国務大臣 ここは、事務局も含めて、極めて独立性の高い委員会であるというふうに私、これは厚生労働省につくりますから、どうしてもそういう目で見られますけれども、そこは厚生労働省の人間は誰一人入れていません。それぐらい大臣も、今回のことについては、大臣に上がってきた部分、また年金機構とのさまざまな問題、こうしたことを十分認識しておりますので、そこは極めて独立性の高い委員会である、こういうふうに私自身思っていますし、包み隠さず、徹底して検証した報告が上がるものと思っています。

近藤(洋)委員 しっかりそのことは我々もチェックをしなきゃいかぬと思います。

 率直に申し上げて、菅官房長官、しっかりしたものができるかというのは、今の時点では、私はちょっと眉に唾をして見なきゃいけない、こう思いますね。

 残念ながら、これは厚生労働省、毎日きっちり我々民主党の調査本部を開いておりますが、口を開けば、課長補佐が、課長補佐がと。こんな大事な問題を課長補佐の責任にしている役所ですよ。あり得ません。こんな責任回避のことをする官庁というのは、もうそれはどういうものかというわけであります。

 しかも、大事な年金を扱う組織として、私は率直に申し上げて、今の厚生労働省は、まあ隣に田村前大臣がいるので大変恐縮でありますけれども、信ずるにあたわず、こう思いますし、大臣みずから、これは、大変、大臣の適格性も含めて、しかも年金機構の理事長も、まさにこうしたわけのわからない発表を判断された、こういうことでありますから、これはもう本質的な見直しを迫られるということでありますので、これは国会において、徹底的に厚生労働省の体質問題は見直さなければいけないということだろうと思うわけであります。

 NISCについてお伺いしたいんですが、この基本法では、年金機構は特殊法人でありますから、その勧告、報告及び資料提供は、直接的には厚生労働省なんですね。ですから、調査権限というのは、条文上は、なかなか根拠条文はこれは読み切れない部分もあるんじゃないかと思うんですが、これはいかがなんでしょうか。

谷脇政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、基本法におきましては、特殊法人に対して直接には、サイバーセキュリティ戦略本部長による勧告ですとか、この勧告に基づいて実施した措置についての報告徴求、あるいは本部に対する資料提供を義務づける規定というものはございません。必要な協力の求めができる規定のみでございます。

 しかしながら、本件の事案につきましては、厚生労働省と機構が一体となって年金事務を行っており、監督官庁である厚生労働省に対して資料提出を義務づけることが、本件に関する資料を明らかにするために最も適切であると考えまして、六月一日、基本法第三十条第二項の規定に基づきまして、厚生労働大臣に対して本事案に関する資料提供を要請したところでございます。

近藤(洋)委員 ぎりぎり読み込める、こういうことなんでしょう。法制局的にはぎりぎりの世界なんだと思うんです。ただ、そこは、運用しながら、何も法改正が全てだとは言いませんが、必要に応じて見直していく、こういうことだろうと思います。

 官房長官には最後の質問なんですが、係長への責任という部分、ちょっと私はこだわるんです。今回の厚労省の問題は厚労省の体質なんですけれども、実はサイバー問題は比較的、係長問題と言われるようであります。なぜかというと、専門が非常に細かいので、係長に任せる、係長に任せる、係長問題、こう言われる傾向が強いようであります。

 ですから、まさにサイバーセキュリティ戦略でも書いているように、経営が判断する、役所の経営というんでしょうか、トップが判断するという形、その意味においては、年金機構は水島理事長が判断されている意味においては、水島さんは民間出身で、適切な判断かどうだったかは別にして、その部分においてはよかったわけです。

 しっかり経営が判断する、責任を持って判断する、その判断の可否を内閣人事局において評価する、官房長官が評定する、局長の人事の評点にするということを、セキュリティーの評価をきちんとする、各所がやっているかどうか。官房長官ないしは人事局長が判断するというふうにされたらいいと思いますが、いかがでしょうか。

菅国務大臣 当然、加藤人事局長のもとでしっかり判断をすることになります。

近藤(洋)委員 菅官房長官は一番霞が関で恐れられていますから、ぜひよろしくお願いをいたします。

 どうぞ官房長官、御退席、結構です。

 山口大臣、済みません、お伺いしたいんですが、サイバーセキュリティ戦略、今パブコメ中でございますが、今回の事案を受けて、ぜひもう一段ブラッシュアップをされたらよいのではないか、こう思いますし、もっときちっとつくり込むべきところはつくり込み、とりわけ必要なところを直されてもいいのではないか、こう思います。

 また、さらには、東京オリンピックを控えたこともございます。今回の厚労省の案件は、率直に言ってサイバー攻撃はきっかけであります。枝野民主党幹事長の言葉を言わせれば、窓をあけて印鑑と通帳をそのまま置いていたというような事案でありますから、はっきり言って、サイバー攻撃を受けたけれども防御を全くしなかったということです。

 ただ、国全体としてはやはり大事な話だと思います。ぜひ、監視システムのGSOCの更新等々、強化をしていただきたい、こう思うわけでありますが、この見直しも含めて、いかがでしょうか。

山口国務大臣 先ほど来るる御指摘をいただいておりますように、やはりどんどんどんどん進んでいくこのICT、IT社会、これは、ぜひともこのサイバーセキュリティー、セキュリティーがしっかりしておりませんと、とんでもないところへ行ってしまう話にもなりかねません。

 そういう中で、今お話がありましたように、今、サイバーセキュリティ戦略の策定に向けて作業を進めておるところでありますが、今回のような重大事案が発生をした、これを受けて、何とか、政府機関、対策にかかわる部分を含めて、戦略の内容について見直す必要があろうと思っております。

 今もお話しいただきましたが、NISCによるGSOC、この監視機能も、御案内のとおり、もう四年経過をしていますし、ぜひとも、この際、さらにブラッシュアップをしてきちんとしたものをつくりたい。もう御存じと思うんですけれども、何かが出ておるのはわかるんですけれども中身はわかりません等々、そういったことがございますし、また、人員等につきましてもさらに強化をしていきたいというふうなことでございます。

 いずれにしても、今回の事案をしっかりと教訓として、御指摘の東京オリ・パラも控えております、しっかりとした体制をつくることができますように、戦略の見直しも含めて検討していきたいと思います。

近藤(洋)委員 ぜひ、よろしくお願いいたします。

 厚生労働省において、今回の事案が、大臣にも五月二十八日、発表の直前、副大臣に至っては六月の一日にしか報告がなかった。もうこれは完全にお役所が自分たちの中で物事を済ませようとしている。これは考えられないことであります。

 安倍政権において官僚の皆さん方が大変張り切られるのも結構ですけれども、政治のチェックを経ないでどんどんどんどん間違った方向に物事を進められては困るなという危惧を申し上げるのと同時に、こうした年金のセキュリティーをしっかり保つことが極めて重要であるということを重ねて申し上げて、時間ですので質問を終わります。

井上委員長 次に、池内さおり君。

池内委員 日本共産党の池内さおりです。

 きょうは、年金機構の個人情報流出問題、これに関連をして、マイナンバーを扱う公的機関のセキュリティーについて質問をいたします。

 百二十五万件に及ぶ個人情報流出、この重大な事態を引き起こした日本年金機構というのは、マイナンバーを付番する個人情報を大量に保有している機関です。

 マイナンバーの安全性の根拠の一つに、マイナンバーを付番し情報連携の対象となる個人情報は日本年金機構のような公的な機関が保有するということが挙げられていましたが、今回の日本年金機構の個人情報流出というのは、この点を根底から突き崩している問題だと思います。

 まず、山口大臣に確認をいたします。

 山口大臣は、六月二日の内閣委員会と財政金融委員会の連合審査のときに、年金機構とマイナンバーの連携について、年金機構と連携するということについては、もう少ししっかり調査をして、原因究明を図った上で判断するということになろうかと思いますと答弁されていますが、この見解に変わりはないでしょうか。

山口国務大臣 先日の答弁でございますが、これは、マイナンバー制度のシステムに関して、さまざまな形でセキュリティー対策を講じております。プライバシーの保護には万全を期しておるというふうなことで、制度全体のスケジュールには影響がないというふうなことを申し上げた上で、一方におきまして、今回の事例を踏まえて、年金分野でのマイナンバーの利用開始時期、この影響につきましては、今回の事案の原因究明あるいは再発防止策の検討結果を見きわめて判断をしていく必要があると考えておるというふうなことでお答えをさせていただきました。

池内委員 甘利大臣も、今、山口大臣が答弁されている、マイナンバーと年金機構と連携するということについては、もう少ししっかりと調査して、原因究明を図った上で判断するという見解を同じようにお持ちでしょうか。

甘利国務大臣 マイナンバー制度は、より公平公正な社会保障制度であるとか税制の基盤として、また情報社会のインフラとして、国民の利便性の向上であるとか行政の効率化に資するものでありまして、これは着実に取り組みを進めることが重要であります。個人情報の保護にも万全を尽くしつつ、全体スケジュールに影響のないよう準備を進めていく必要があると考えています。これは、今、山口大臣が答弁をされたとおりであります。

 なお、年金分野でのマイナンバーの利用につきましては、今回の事案の原因究明、再発防止策の検討結果を見て対応する必要がありまして、この点についても山口大臣が同じ趣旨で答弁をされたというふうに思っております。

池内委員 これだけの問題を起こした年金機構とマイナンバーの連携については、原因究明をしっかり行った上で判断するというのは、誰が見ても当然のことだと思います。

 さらに重要なのは、年金機構だけの問題なのかという点です。マイナンバーを付番する個人情報を保有するほかの機関は全く問題がないのか、この点の検証が必要ではないかと私は思います。

 前回、五日の委員会で、私は、年金機構のほかに、協会けんぽ、そして健康保険組合、地方公共団体の基本的なセキュリティーシステムについて質問をしました。

 きょうは、初めに、国税庁と税務署のシステムについて確認をしたいと思います。

 国税庁と税務署では、納税者情報を記録したデータベースを扱う基幹系のシステムと、職員がメールなどを使うインターネットにつながったシステムというのは、物理的に遮断をされているのか、それとも、つながっていてファイアウオールで遮断するシステムなのか、どちらになりますか。

上羅政府参考人 お答え申し上げます。

 国税庁の基幹系システムは、インターネットと物理的に遮断しております。

池内委員 物理的に遮断ということでした。

 納税者情報を記録したデータベースを扱う基幹系のシステムと、職員がメールなどを使うインターネット系のシステム、これがどのように管理されているのかというのは本当に大事な問題だと思います。

 今回の年金機構の個人情報流出問題では、年金に関する個人情報を扱っている社会保険のオンラインシステム、これと切り離された、インターネットにつながっている情報系システム、ここに保存をされていた個人情報が流出をしたということになっています。

 国税庁に確認しますが、国税庁、税務署の場合、例えば納税者からさまざまな届け出が税務署に提出をされ、それを受け付けた記録や、郵便物を送ったり、また訂正事項を打ち込むなどのこうした処理などの記録というのは、インターネット系のシステムで処理をするのか、それとも基幹系のシステムで処理をするのか、どちらになりますか。

上羅政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の、提出された届け出などに関する処理につきましては、基幹系システムで処理をしてございます。

池内委員 続けて確認しますが、個人情報を処理するといった場合、インターネット系のシステムを使うことはありますか。

上羅政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の点、インターネットに接続されたパソコンで納税者の個人情報に関する業務処理をすることはございません。

池内委員 次に、年金機構に質問します。

 流出した個人情報についてですが、年金機構には、膨大な個人情報を取り扱っている社会保険オンラインシステム、これが基幹システムと呼ばれます、それと、職員がネットにつないで使っている情報系システム、この二つがあって、この二つは基本的に分離をされているということは前回の質問で確認しました。

 ここまでは国税庁と同じですが、今回、個人情報が流出したのは、繰り返しになりますけれども、情報系システムだとされています。先ほどの国税庁の答弁では、インターネットにつながっているシステムでは個人情報を取り扱わないということだった。問題の一つは、今回流出した個人情報が、ネットにつないで使っている情報系システムで取り扱われた理由だと思うんです。

 あるマスメディアはこのように報道しました。年金の受給額を含めた個人情報は、社会保険オンラインシステムと呼ばれる基幹システムで管理。年金加入者に通知などを送る際、昭和三十九年から稼働するシステムのプログラム上、作業が難しく、一度情報を外に出す必要があるという。このため、機構では、業務に必要な場合に限り、パソコン端末を使ってシステムに接続、対象個人情報を引き出して、職員がパソコンで作業できる仕組みをとった。このように報道がありました。

 流出した個人情報ですけれども、どういう理由でネットにつないだ情報系システムで保存していたのかを説明してください。

水島参考人 日本年金機構のLANシステムの中にございます共有フォルダには、個人情報など情報漏えい対策を必要とする情報は保存しないことを原則といたしておりますが、拠点内や拠点間で情報共有する必要があるなど業務上必要なデータにつきましては、一定のアクセス制限あるいはパスワードの設定など、厳重なセキュリティー対策を講じることを前提に取り扱うことを可能としておりました。

 機構LANシステムの共有フォルダにおきましては、各拠点におきまして、年金記録の確認等の文書をお送りする際の作業に必要なリスト、あるいは、お送りした文書の送付日、受け付け日など、作業の進捗状況の管理表等の資料を一時的に保存し、共有して作業を行っていたということでございます。

池内委員 業務で必要と判断した場合ということで御答弁されましたが、具体的に、情報、流出した中身について確認をしたいと思います。

 朝日新聞の六月五日付を見ると、和歌山事務センターが使った届け書などの受け付け管理簿一万二千人分、沖縄事務センターが使った国民年金の届け書などの受け付け管理簿一万九千人分、沖縄事務センターの年金記録確認のお知らせ文書の送付対象者リスト六十七万二千人分、記録突合センター、これは東京ですけれども、ここの三号不整合問題の対応に係る対象者リスト四十九万五千人分、沖縄事務センターの記録突き合わせ作業に係る補正対象者リスト一万一千人分、沖縄事務センターが使った国民年金の届け書などの受け付け管理簿二千人分、沖縄事務センターの記録突合審査業務の管理簿三万九千人、このように報道がされていますけれども、流出した個人情報というのは、報道がなされているものが流出したという理解でいいでしょうか。

水島参考人 お尋ねの点についてでございますが、この情報に関しましては、犯人と私どもしか知り得ない情報を公にすることになります。今後、捜査や機構のセキュリティー確保に支障を来すおそれがございますので、大変恐縮でございますが、お答えを控えさせていただきたいというふうに思います。

池内委員 この報道されたことというのは、事実ですか。中身はいろいろ言えないにしても、これは事実ですか。

水島参考人 そのことも含めまして、確認を控えさせていただきたいというふうに思います。

池内委員 私が、報道されて、流出したさまざまな資料、この中で非常に重要だと注目をしたのは、届け書などの受け付け管理簿、こうしたものが含まれているということなんです。

 先ほど国税庁の答弁では、国税庁、税務署では、こうした届け出などの管理簿もインターネットにつながっていない基幹系システムで処理をするということでした。年金機構では、こうした届け出などの管理簿は、基幹系システムではなくて、インターネットにつながっている業務系システムのパソコンで処理をしているんでしょうか。

水島参考人 日本年金機構におきましては、情報を共有して仕事をする場合に、機構LANシステムを使うことを許容いたしております。そのために、仕事をするために、拠点間あるいは拠点内で、情報共有のために機構LANにデータを一時的に保存するということを認めていたということでございます。

池内委員 ネットにつながるPCで処理をすることがある、業務で必要と判断すればやるということでした。

 こうした、受け付け簿、届け出という情報ですけれども、今回流出をした個人情報というのは、職員が手作業で打ち込んだ、日常の業務の中でさまざま必要に応じてやった、そういう個人情報もあると思いますし、もう一つ、基幹系のデータベースから抽出をしコピーをとった、そのようなコピーのデータも今回漏れているというふうに私は理解していますが、その理解でいいでしょうか。

水島参考人 御指摘のとおり、職員が自分で作成をした資料もございますし、それから基幹系システムから移す資料もございますが、基幹システムからデータを取り出す際には、ハードディスク、いわゆるオンラインではやっておりませんで、全て磁気媒体を経由して行っております。

池内委員 基幹系からコピーをしたそのデータも漏れたということだと確認されました。

 年金機構としては、今回の流出事件を受けて、業務系のシステム、また基幹系システムの管理について、今後の方針をどうするのかというのがとても重要だと思います。

 今後、業務系のシステムでは個人情報を取り扱わないというふうにするのか、それとも、基幹系以外で個人情報を取り扱う必要がある場合には、そのシステムというのはインターネットにつながない、いわば、業務系のシステムをネットにつなぐものとつながないものに分けるという方針なのかどうか、お答えください。

水島参考人 御指摘のとおりでございまして、個人情報、重要な情報に関しまして、インターネット環境から外して管理をするか、あるいはそのような作業を行うところには個人情報を全く入れないか、そのどちらかだと思います。

 効率性等も、あるいはスピード感も含めて、早急に検討をしたいというふうに考えております。

池内委員 ということは、いずれにしても、どういう形であっても、個人情報というのはネットにつながる環境には基本的に置かない方針であるというふうに理解していいですか。

水島参考人 その方向で種々検討を詰めてまいりたいというふうに考えております。

池内委員 日本年金機構は、今回の流出を受けて、個人情報というのはネットにつながる環境には基本的に置かない方向で調整するということでした。

 私は、五日の内閣委員会で、マイナンバーを付番する健康保険を扱う協会けんぽの基本的なセキュリティーのシステムについて質問をしました。そのときに確認をしたのは、被保険者の情報データベースを含むシステムとインターネットにつながっている業務システムというのはファイアウオールで遮断をしているということでした。

 きょうの質問は、その業務系システムで被保険者の個人情報を扱うことはないのかという点について確認をします。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 協会けんぽでは、加入者の方に特定健診の勧奨を行う場合などで、基幹システムにある個人情報の一部を業務システムに一時的に移管、取り込んで扱うことがございます。この場合、セキュリティー対策として、必ず協会本部の限定された職員のもとで移管するデータを暗号化する、そして、業務システムにおいて個人情報を使用する場合は、その都度パスワード設定などの処理を講ずることを徹底しているところでございます。

池内委員 今の御答弁ですけれども、個人情報というのは、被保険者の個人情報のデータベースから必要な項目をコピーしたものを日常的に使うということでよろしいですか。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 先ほど申し上げましたように、特定健診の勧奨を行う場合などに、個人情報、基幹システムの情報の一部を一時的に移管するということはあるというふうに思っております。

池内委員 それでは、厚生労働省にお聞きします。

 他の健康保険組合では、ネットにつながっているシステムでの個人情報の扱いというのはどのようになっていますか。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 健康保険組合のシステムにつきましては、組合ごとにそれぞれ異なっておりますので、厚生労働省として個々の組合の状況を把握しているわけではございませんけれども、主に資格管理や保健指導などにおいて、業務システム上で個人情報を扱うことはあり得るというふうに思っております。

 そのため、これまでも、個人情報の適切な取り扱いについてガイドラインを示しまして、業務システムを外部ネットワーク等と接続する場合に当たってはファイアウオールを設置する、あるいは、業務システムの上で個人情報を扱う場合にはパスワード設定などの処理を講じるなど、安全管理について随時指導してきたところでございますし、今般の事案を踏まえて、重ねて個人情報の適正な管理の徹底を求めているところでございます。

池内委員 厚生労働省は、今回の年金機構の個人情報の流出という事態を受けて、健康保険組合についてセキュリティーの管理がどうなっているのかという調査を行っていると聞いています。

 これはどのような中身の調査で、対象団体の数、また主な調査項目について説明をお願いします。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 現在、私ども、先ほど申し上げたような個々の健保組合の状況を把握するために、サンプル調査、全体としては千四百余りあります健保組合の一割強について御協力をいただき、調査を実施しているところでございます。

 その項目といたしましては、業務システムがインターネット上の外部ネットワークと接続しているかどうか、接続している場合にはファイアウオール等のセキュリティー対策を講じているか、職員のパソコン端末上で個人情報を取り扱うことができるようになっているかどうか、もし個人情報を個人パソコンで扱うことができるようになっている場合には、パスワード設定など個人情報の流出を防ぐ対策を講じているかなどについて、至急の調査を行っているところでございます。

池内委員 健康保険組合の個人情報のセキュリティーの現状については、厚生労働省は現在調査中ということだったと思います。

 総務省にお伺いしますが、前回の委員会で、地方公共団体の基本的なセキュリティーシステムについて私は質問をしました。

 住民基本台帳、また地方税、国民健康保険など、地方自治体には複数の重要な個人情報データベースがあります。これらのデータベースをつなぐ基幹系システム、そしてインターネットとつながって職員が業務で日常使うシステム、このインターネットとつながって職員が業務で使うシステムというのは、個人情報の取り扱いはどうなっていますか。

原田政府参考人 お答えいたします。

 地方自治体の職員が使用する、インターネットに接続されている業務端末の扱いでございますが、総務省が策定しております地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドラインの中におきましては、個人情報のような機密性の高い情報につきましては、必要以上の複製及び配付の禁止、保管場所の制限、情報資産の運搬時等における暗号化、パスワードの設定や、信頼のできるネットワーク回線の選択等の取り扱い制限を定めているところでございます。

池内委員 そのガイドラインは私も知っているんですが、現場の地方公共団体で職員がインターネットを使う場合、またインターネットとつながっているパソコンでの個人情報の取り扱いはどのようになっていますか。

原田政府参考人 個々の自治体の取り扱いにつきましては、先ほどお話をしましたガイドラインに沿いまして、個々の自治体で適切な手続を踏んでいるものと考えております。

 以上でございます。

池内委員 個々の自治体のことは把握をされていないということだと思います。

 甘利大臣に質問させていただきますが、六月二日の記者会見で、今回の事件は、業務情報のデータベースが職員のパソコンを通して流出したということで、本来、そうであるならば、職員のパソコンにそのデータベースからのデータが移されていくということはあり得ない話だと思います、これはしっかり調査をして、どうしてそういうことが起こったのかということを検証してまいりますというふうに述べていらっしゃいます。

 これまで、きょうのこの質問を通して明らかになってきたと思うんですが、国税庁のように、インターネットにつながる職員のパソコンでは個人情報を扱わないとしているところもあれば、個人情報を扱っているところもあるし、あるいは、どうなっているかすら把握をされていないところもある。地方自治体は基本的に把握がされていません。

 大臣はあり得ないと言われておりましたが、職員のパソコンにそのデータベースからのデータが移されていくということも含めて、マイナンバーの連携機関には年金機構のようにずさんなセキュリティー管理のところがないとは言えないと思いますが、いかがですか。

甘利国務大臣 今回の年金機構における情報漏えいについては大変遺憾であるというふうに思っておりますが、個人情報を含むファイルにパスワードをかけずに取り扱うといったことは、国民の個人情報を扱っている機関の職員として自覚に欠ける行為であると言わざるを得ず、厚生労働省及び年金機構において、徹底的な原因究明と必要な処分、これはパスワードをかけて移動させるという内規に違反しているわけであります、要求されていることすらやっていない、これは厳正な処分をしなければならないと思いますが、再発防止策を講じていただく必要があるというふうに考えています。

 マイナンバー法におきましては、マイナンバーを取り扱う者に対して、その漏えい、不正利用、紛失などを防ぐための安全管理措置を義務づけておりまして、これらの義務に違反した場合には、特定個人情報保護委員会による指導、助言、勧告、命令の対象となるほかに、それに背いた場合には罰則が科せられるなど、マイナンバーの適切な取り扱いを法律上担保しているところであります。

 人的対応や内部管理の問題への対応といたしましては、厚労省における今回の情報漏えい事案の原因究明、再発防止等の検討結果も踏まえつつ、必要に応じ、各種ガイドライン等の見直しを行うとともに、当該ガイドラインに基づく職員への教育、研修が適切に行われるよう周知徹底を図ることによりまして、マイナンバー制度の導入に向け、関係機関を挙げたセキュリティー対策のさらなる強化、徹底に努めてまいりたいと考えております。

池内委員 先ほど特定個人情報保護機関というふうに述べられましたが、日本年金機構を含む公的業務等に関する事務について、常に個人のプライバシー等の権利利益の保護に取り組んでいることを宣言すると言いながら進めている特定個人情報保護評価、このもとで今回の年金機構の問題が起こっているので、新たな検証が必要だということは私は明らかだと思います。

 年金機構の個人情報の流出というのは、ネットにつながった業務系システムで取り扱った個人情報が流出をした。年金機構は、ネットにつながったシステムで個人情報を扱わないという方針を検討している。その一方で、ネットにつながったシステムで個人情報を扱っている機関が相当数あると思うんですね。それすら今政府は把握をされていない。この中には、年金機構のようにずさんな管理のところがないとは言えないということは明らかだと思います。

 今回の年金機構の重大な個人情報流出がなぜ起きたのか、その原因究明を受けて、改めて、他のマイナンバーの連携機関も個人情報のセキュリティーの現状を検証するということは、私は当然のことだというふうに思います。

 次に、山口大臣にお伺いをいたします。

 多くの機関は、個人情報データベースを含む基幹系のシステムと、職員がメールなど業務で使ってネットにつながるシステム、この二つのシステムを基本的に持っています。きょうは、ネットにつながっているシステムの個人情報の扱いについてこれまで質問させていただきました。

 セキュリティーのあり方について山口大臣の御見解をお聞かせいただきたいんですけれども、前回私は、この委員会で、ファイアウオールが突破されて個人情報が流出する心配がないかとお聞きしました。そのとき、大臣の御答弁の中で、このセキュリティーの確保に当たりましては、例えばソフトウエアの更新、あるいはパスワードを入れて暗号化する、そして常に新しいものに切りかえていくということを御答弁されました。国や自治体の情報システムについても、こうした全体的かつ継続的な対策を講ずることによって、セキュリティーの確保に万全を期していきたいというふうにも述べていらっしゃいます。

 一千四百ある健康保険組合、千七百ある地方公共団体、これらのマイナンバー機関で、年金機構のように、パスワードを入れて暗号化していないところとか、あるいはソフトウエアの更新がきちんと行われていないところはないのか。マイナンバーを実施する前提の条件が私は欠けていると思うんですけれども、こうした点検は必要なのではないですか。

山口国務大臣 先般もお答えをしたわけでありますが、ファイアウオールといってもいろいろなレベルがあるのは委員も御承知のとおりで、これをしっかり更新して、同時に、やはりその他の方策も講じていくというふうなことが大変大事なんだろう。ですから、先ほど来答弁もありましたが、基幹系と業務系、それぞれネットはきちっと分けてやっていく、これはいわゆる物理的にしっかり分けてやっていくというのがやはり大事なんだろうなと。

 今回、それぞれ、地方公共団体も含めて、セキュリティーポリシーに沿っていろいろやっていただいています。しかし、内規どおりやっておらないじゃないかというふうなことも今回出てきたわけで、ですから、一方において、そこら辺をしっかりやってもらうための仕組み、やり方、これもさっき御答弁申し上げましたように、戦略の中でまたいろいろ検討していきたいとは思います。

池内委員 今回の原因究明がしっかりとなされるということは、当然の仕事だと思います。このままなし崩し的にマイナンバーを実施するということは断じて許されない、私はそのことを強く指摘して、質問を終わります。

 ありがとうございました。

井上委員長 次に、大隈和英君。

大隈委員 自民党の大隈和英でございます。

 まず、きょうは、質問の機会をいただきまして、ありがとうございました。

 本日は、各委員からさまざまな問題点が指摘されており、あぶり出されてきているのかな、あるいは、つかさつかさにセキュリティーのシステムが存在したというのはわかりましたが、それがうまく機能したのかどうか、あるいは、その解決、改善に向けて近づいているのかなというのがいま一つ実感として乏しい気がいたします。

 私の携わってまいりました医療の世界、特に外科手術の分野では、ヒューマンエラーは大きく人命に影響いたします。そのために、医療安全のシステムでは幾重にも安全管理の努力が払われておりまして、それでも、御存じのように、残念ながら、世界じゅうで医療過誤というのは後を絶ちません。だからこそ、医療安全管理の基本概念には、ツー・エラー・イズ・ヒューマン、人間は過つものだという大前提がございます。

 そこを出発点として厳しい安全管理を磨いていくのですが、今回の一連の日本年金機構の個人情報流出の問題には、当然ながら、前身の歴史的経緯からもセキュリティーの確保には大変腐心をされ、従来から職員に対ししかるべき教育、研修が実施されていたと考えております。しかしながら、やはり問題が生じてしまう。

 やはり人間は過つものというその観点を参考にしていただき、これまで具体的に、そのような失敗するものだという前提においてセキュリティーの教育や研修がなされていたのか、また、今回のような情報流出、大きな事件が起きましたが、これを想定して、起きた場合の安全管理の具体的な想定や対策がなされていたのかという二点をお伺いしたいと思います。

水島参考人 まず、改めまして、かかる事態を引き起こしたことに関しまして、心からおわびを申し上げます。

 先生から今、人間は過つものだという御指摘を頂戴しました。当機構は、旧社会保険庁のいろいろな教訓をもとに、新たに、五年前、五年強前でございますが、出発をいたしました。私も約二年、これで二年になりますが、職員は非常に一生懸命やっているというふうに思いますが、一方で、過去からの旧弊にやはり問題があるというふうには思っております。

 お尋ねのセキュリティー教育に関してでございますが、特に今般発生いたしましたコンピューターウイルスの感染に関する注意喚起に関する研修に関しましては、いわゆる情報セキュリティー研修等を繰り返し実施はいたしております。しかしながら、この研修に関しまして、職員の職種に関係なく、機構の全職員に対してやってきておるわけでございますが、今回の事態を踏まえますと、やはりその研修が具体的にどれほどの効果を持ってきたのかということについては、大いに反省をしなければならないというふうに思っております。

 約二万人の組織でございますが、この中で、ルールを守らせるとか、あるいは、セキュリティーの基礎的なことをきちんとやらせるというようなことに関して、いかにこれを徹底していくかということについては、本当の意味で、経営の重点事項としてこれに当たっていかなければならないというふうに強く今思っているところでございます。

 加えまして、情報セキュリティーの、今回起きました、先ほど来御指摘をいただいておりますが、本当に基礎的な、パスワードをかけないとかアクセス制限ができないとか、こういう今回の事案が発生いたしまして、いろいろ見直しを進めているところがございますが、多々反省するところがございます。

 しかし、この組織、この仕事はなくなるわけにいかないわけでございますから、それを担う職員たちが本当に誇りを持って仕事ができるように、本当の意味で彼らの努力が結果に結びつくようにしてあげなければならない、このように強く思っております。

 ただいま、人間は過つものだということを前提に施策を組み立てるべきだと御指摘をいただきましたが、重く受けとめて努力をしてまいりたいと考えております。

大隈委員 医療事故の場合は、ヒューマンエラーを犯した人間個人を責め立てるのではなく、やはり、そのシステムやエラーに至ったそのプロセス、そこを丸裸にしてまいります。そうでないと、個人攻撃、個人の責任追及というのは、どうしても、報告をしなくなったり、あるいは隠蔽、過小報告、さらなる問題の拡大というのをやはり生んでしまうということなんですね。

 そして、プロセスを丸裸にした中で、問題点と改善点を徹底的に医療界ではあぶり出すわけですけれども、大切なことは、やはり安全性の向上と、それから信頼性の回復だというふうに何より考えております。

 その中で、今回の検証委員会における検討の中でまたいろいろと問題が抽出されてくることを待つことも必要ですが、過去におきまして、年金機構におきましては、厚労省の業務実績評価におきまして、さまざまな評価点がございますが、個人情報の保護に関する事項、そこに関しまして、平成二十一年度から五年連続でC評価を受けておられました。

 理事長は就任して二年ということはございますが、内容を拝見しますと、セキュリティー対策の手引を策定されて、改定を重ねておられます。その内容には、ファイル及び圧縮ファイルへのパスワード設定等々が列挙されております。その一方で、理事長就任前の平成二十一年から二十四年までは、個人情報の漏えい、滅失、毀損の件数は、機構発足以来、増加し続けていましたが、平成二十五年度の件数は減少に転じ云々とございました。

 まず、問題となる事象のうち、今回と同じようなデータ流出というのがたとえ一件でも過去にあったのでしょうか。また、あったなれば、件数の年次推移や、あるいは、特定の部署、問題部署があったのか、それともさまざま別々の部署で散発しているものなのか、少しお教えいただきたいと思います。

水島参考人 私どもの機構には、設立の経緯からして、個人情報の保護に関しましては、特段に重い義務と申しますか、規制、法律上の義務が課されております。そういう意味で、中の個人情報の保護に関する意識は極めて高いというふうに思いますが、一方で、なかなかそれが結果に結びついていないというところに極めて大きな問題があるというふうに思っております。

 御指摘の五年連続Cというところでございますが、ここに関しましては、いわゆる誤送付とかそういうこと、違ったところに、違ったお客様に書類を送ってしまうというようなケースがなかなか減っていかないということが主たる要因でございました。

 これに関しましては、やはり、職員たちがお客様の顔が見える形で仕事をしていく、どれだけ違った方のところに個人情報が届くことが嫌なことなのかということに思いをいたしながら仕事をするということがまず基本だとは思いますが、一方で、やはり大事なことは、経営として、仕組みとしてそれを解決していってあげるということだと思います。

 そこに関して種々の対策をとってきておりますが、こういうような、職員に対して、実態を把握しながら、なぜルールが守れないのか、そこに関して経営としてきちんとコミットしていくということが我々に課せられた課題だというふうに思っております。

大隈委員 私も、診療報酬、医療のビッグデータを大学院の研究室で扱っておりました経験があります。そのセキュリティーのさまざまな、一年間に一回、毎年テストがございまして、それにパスしなければもうデータは扱えない、扱えないとなると研究ができない、論文が書けないということになりましたので、大変厳しいことがございましたが、そういうものも含めてやはり参考にしていただければと思います。

 また、厚生労働省にもお伺いしたいのですが、時間が少しございませんので、やはり、これからの検証結果においてまたさまざまな課題、対策が出てくると思いますので、その点も、人は過つものという点でぜひ御検討いただけたらと思います。

 さて、本日は、山口国務大臣にお越しいただきました。ぜひとも、お願いを込めてお尋ねしたいことがございます。

 先般、ここにおられます多くの党派を超えた議員の皆様の大変長い時間、そして英知をかけた御尽力により、マイナンバー法と個人情報保護法の改正案が衆議院で通過いたしました。医療出身者として私個人も、また医療界も、これらのデータ活用の実現が、今大変な課題を背負っております社会保障制度のみならず、医療の進歩、新薬の開発など、国民の健康と福祉に大きく資するものと期待しております。

 扱うデータは、今回流出した年金加入者の氏名や住所、生年月日、基礎年金番号の四つの情報とは比較にならないほどの非常にセンシティブな個人情報でございます。ちょうど産声を上げる直前のタイミングで本件が発生したのは残念でございますが、先進国では後発でマイナンバーを生むということのタイミングで、何とかこのピンチを、すばらしいマイナンバー、あるいはセキュリティー対策を万全にするための戒めとして、一日も早く必ず国民の幸福に逆転できるよう、ぜひともお願いしたいと思っております。

 その点の決意と、山口大臣のお考えをお伺いしたいと思います。

山口国務大臣 大隈委員さん、大変ありがとうございます。

 この衆議院の内閣委員会におきましても御熱心な御議論をいただいて、ただいま参議院で審議中というふうなことでありますが、あいにくそのさなかに今回の個人情報漏えい事件というふうなことで、私どももこれを大変重く受けとめ、今お話しいただきましたように、当然、この検証とか、検討というか調査等々、やはりしっかり原因究明をやってもらわなきゃいかぬわけであります。

 同時に、我々としても、そうしたことを踏まえて、これまでも、後発ということで、アメリカはどうだ、ドイツはどうだ、韓国はどうだと、いろいろなところも勉強させていただいて、これなら大丈夫だろうというふうなことで法案を出させていただいたわけでありますが、さらに、今回の事例を踏まえまして、セキュリティー対策、あるいはサイバーセキュリティ戦略の見直し等も含めてしっかりしたものにしていく、ブラッシュアップをできるように最大限努力をしてまいりたい。そして、国民の皆さん方にそれこそ安心をしていただくような格好でスタートをすることができたらというふうに思っております。

大隈委員 まさに今大臣がおっしゃっていただきましたような、やはり、今回の問題を糧にして本当に国民一丸となっていいものをつくり上げていく、ベストのものをつくり上げていくという努力こそが求められていると思います。

 まだまだ大変厳しい毎日が続くかと思いますが、水島理事長におかれましても、御健康に留意されて、ぜひとも問題の解決に御尽力いただきますようお願い申し上げまして、私の質問とさせていただきます。

 本日はありがとうございました。

井上委員長 次に、濱村進君。

濱村委員 公明党の濱村進でございます。

 まず、この内閣委員会で、年金の情報が漏えいしている件について質問をさせていただくわけでございますが、最初に申し上げたいことがございます。

 まず、一般的に、セキュリティーインシデントを一〇〇%防ぐということは不可能であるという前提に立つ、事故は起きるものだということを前提にしっかり対策をしていくということが大事であろうということを思います。その上で、また、事実に基づいてしっかりと話をしていくということが大事であろうというふうに思います。

 どういうことかというと、昨日も参議院で理事長がお答えになられて、インターネットは遮断しているけれどもメールはやりとりをしていたということがわかりましたけれども、このこと自体、では、なぜそれができるのか。インターネットのサーバーとメールサーバー、接続先が違えばこういうことは当然やれるわけでございますし、一般的にも、こうしたマルウエア、ウイルスとかバックドアとかいろいろありますけれども、そういうものについて、遮断はしつつもメールはしっかりとやりとりを行うということは可能なわけでございますので、そうしたところをしっかりと冷静に判断していかなければならないんじゃないか、このように思うところでございます。

 そしてまた、今回、年金機構そして厚労省、非常に批判されることばかりではあるんですけれども、今回の事案で、私、いいところを三つほど挙げたいなというふうに思っております。

 まず一つには、NISCのGSOCによる検知でございます。これは本当にすばらしいことでございまして、五月八日にしっかりと検知をして初動を行ったということは大変評価できることであるというふうに思います。

 そして、その上で、年金機構も、非常に改善するべきところは多々あるということは思うんですが、警察にしっかりと、警視庁に届け出をして相談をしたこと、これは実は大変大きなことです。一般企業であったりとかいろいろな機関が、情報が漏えいされた、そのときに、なかなか警察に相談できない、我が社の恥だのようなことを思ってしまう、これが今までの考え方でございましたけれども、いち早く相談すること自体が非常に大事であるということで、今回それを年金機構、遅いじゃないかというような御批判もありますけれども、ちゃんと相談をしたということは非常によかったのではないかというふうに思うわけでございます。

 そして、三つ目には、警視庁の取り組みでございます。警視庁は、連絡を受けて、被害状況がどんなものか速やかに調査をして、百二十五万件、今判明している時点ではという条件つきではございますけれども、よくスピード感を持ってここまで調べ上げられたなというふうに思います。これからふえるであろうこうしたサイバー攻撃に対処するためには、警察においても、サイバー攻撃の分析官をふやしていくとか、こういった取り組みが必要なのではないかというふうに思うわけでございます。

 そしてまた、まだまだ判然としない部分がございます、この事件。あるセキュリティー会社によれば、国内三百カ所であるとか、これはAPT攻撃であって日本に集中している攻撃だとか、そういったさまざまな情報があるわけでございますが、そもそも、これからしっかりまだ調査しなければいけない。そしてまた、きょう午前中には、東京商工会議所が一・二万件流出しているということで、これは情報も多いです。氏名、住所、電話番号、メールアドレス、会社名、こういったものまで漏えいしているということで、ひょっとしたらまだまだ被害は大きくなるんじゃないんですかというところがあります。こうした事態に対して、正しく怖がらなければいけない、私はこのように思います。

 この正しく怖がるという中で非常に大事なのが、マイナンバーについての影響であるというふうに思うわけでございます。

 まず、マイナンバー、この番号が漏れること自体に対して非常に何か大きく危機感を持たれているというような話がございますけれども、そもそも、番号そのものが漏れることと、氏名、住所、生年月日が漏れること、どちらが本来大騒ぎするべきことなのだろうかということなのでございます。当然、漏えいしたときに、番号そのものが漏れた場合と、氏名、住所、生年月日が漏れた場合、そしてさらには、その個人についての付随する情報が漏れた場合、それぞれインパクトは違うと思うんです。番号だけが漏れたときの方がまだましなんじゃないかというふうに私は思うわけでございます。

 アメリカではSSNがあって、これを使って本人確認をしてしまった、こういう悪い運用をしてしまったことで、非常に成り済ましとかが起きました。この成り済まし、本来あってはいけなかったわけでございますけれども、今現在、日本で、どうやって本人確認をしているのか。氏名、住所、生年月日をおっしゃってくださいというようなことが言われるわけでございます。こうしたことからいうと、氏名、住所、生年月日の方がいかに本人確認において大事か、番号だけでは本人確認できませんよということなんです。

 ちょっと前置きが長かったですが、ここで質問です。

 マイナンバーのみで本人確認はできますでしょうか。お答えください。

向井政府参考人 お答えいたします。

 マイナンバー法におきましては、成り済まし対策といたしまして、マイナンバーの授受を行う際には、マイナンバーのみによる本人確認を禁止し、写真つきの個人番号カード等によります厳格な本人確認を義務づけております。

 また、インターネット等で本人確認でマイナンバーを授受する際にも、公的個人認証、マイナンバーカードに搭載されました公的個人認証とパスワードを使って確認することとなってございます。

 したがいまして、万が一マイナンバーが漏えいするなどして悪意を持った者が他人のマイナンバーを悪用しようとしても、マイナンバーだけで各種申請等の手続を行うことはできない仕組みとなっております。

濱村委員 今、マイナンバーのみで本人確認はしないということでございましたが、仮に万々が一ということで、漏れた場合の話をしたいと思います。

 漏れた場合、救済可能性がどこまであるのかという話でございますけれども、漏れて一番困るのは付随する情報なんですね。個人がどういう特性を持っているのか、こうしたものが漏れてしまうと非常に困るわけでございますが、悪い人たちは、それをプロファイリングします。そうしたものを名寄せして、どんどんどんどん、この人はこういう情報を持っている。

 そもそも、本人を識別するというためにはキーとなる情報があるわけでございますが、これを識別情報といいます。識別情報というのは、大体、番号も、氏名、住所、生年月日も識別情報です。その識別情報に対して、付随する情報がその一、付随する情報がその二、さまざま散らばっていたとします。ところが、識別情報が一つであれば名寄せされるということで、この人はその一もあるし、その二もあるんだなということで、プロファイリングがされる。これが、一番想定される、悪い使われ方をしやすいところです。

 そこにおいて、識別情報、これが番号であれば、今回も、年金の場合は基礎年金番号でございましたが、基礎年金番号を変えられますという話です。これはマイナンバーについてはどうなりますでしょうか。マイナンバーがもし漏れた場合、困るので番号を変えてくださいということは可能でしょうか。

向井政府参考人 お答えいたします。

 マイナンバー法第七条二項では、市町村長は、マイナンバーが漏えいして不正に利用されるおそれがあると認められるときには、本人からの請求または職権によりマイナンバーを変更し、速やかにその者に対して変更後の新しいマイナンバーを通知カードにより通知しなければならないとされているところでございます。

 したがいまして、仮に今般の年金不正アクセス事案のような情報漏えいによりマイナンバーの漏えい事案が発生した場合には、この規定に従って適正な対応を行うこととなると考えております。

濱村委員 マイナンバーも変えられるということでございます。

 そうした意味からいうと、ちょっと一問飛ばしますけれども、大臣にお伺いしたいと思います。

 マイナンバー制度の導入それ自体が、すなわち個人情報の漏えいリスクを高めることにつながりますでしょうか。お考えをお伺いいたします。

甘利国務大臣 マイナンバー制度が導入されても、各行政機関の個人情報というのはこれまでどおり各行政機関で分散して管理をされまして、個人情報が同じところで一元管理をされているということはありません。例えば、国税に関する情報は国税庁で、それから児童手当や生活保護に関する情報は市町村で、そして年金に関する情報は日本年金機構等、これまでどおりの管理主体が責任を持って管理するものであります。

 それから、各行政機関で情報提供ネットワークシステムを通じた情報のやりとりをする際には、マイナンバーそのものを連携キーとするのではなくて、情報提供ネットワークシステムから機関ごとに異なる符号を振り出して、当該符号を連携キーとする方式を採用しておりまして、一カ所で漏えいがあっても他の機関との間では遮断されるということになります。

 そのために、マイナンバー制度を導入することによって個人情報の漏えいリスクが増大するというものではなくて、また、仮に一カ所でマイナンバーが漏えいしたとしても、個人情報がいわゆる芋づる式に抜き出せる仕組みとはなっておりません。

濱村委員 ありがとうございます。本当に、各行政機関に既にあるというものをマイナンバーでつなげます、そういう仕組みである、行政の効率化を図るもの、そういうものでございますので、すなわちリスクが増大するというわけではないということでございます。

 最後に、体制について質問をいたします。

 まず、NISCについて、今回私もいろいろやりとりさせていただきましたが、NISCには捜査権限がございません。なので、警視庁がしっかりと捜査をしているということが大事なわけでございますが、NISCの体制を強化することによって犯人捜しの能力が高まるかというと、そうではありません。予防策、そして初動についてのレベルは上げることができるようになる、これがNISCの役割ではないかというふうに思うわけでございます。政府も、そしてまた地方自治体も、全て何でもかんでもNISCが管理するというわけには、監督するというわけにはいきません。ですので、しっかりと監督官庁が責任を持ってセキュリティーレベルを向上していくという取り組みが必要でございます。

 その上で、セプターカウンシルという取り組みがございます。今、サイバーセキュリティーに対して、官房から各省庁に対してガイドラインを出されているわけでございます。今回は、厚生労働省は、年金機構に対して、しっかりとガイドラインに基づいて対策をさせたわけでございますけれども、年金機構については、ほかの政府機関よりも少し情報が多いというところがございます。しっかりと防護しなければいけないんじゃないかというふうに思うわけでございますが、このガイドラインの提示に加えて、実際の運用面における習熟度もしっかりと上げていかなければいけない、これが今回の年金漏えい事件において得られた教訓ではないかというふうに思うわけでございます。

 どのようにして習熟度を上げていくのか。ふだんからしっかりと、こうしたセプターカウンシルのような、重要インフラを守っているというような方々が横の連携をしながら、こういう攻撃を受けている、おたくの業界はどうですか、こういうことを共有し合う、そしてどんな体制づくりをしていますかというような取り組みをすることが必要であるというふうに考えるわけでございますが、これはNISCに御意見をお伺いしたいと思います。

谷脇政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員御指摘のセプターカウンシルでございますけれども、通信、電力、鉄道など十三の分野の重要インフラ事業者等が、インシデント情報をそれぞれの分野を超えて共有することなどを目的として、自主的に設立をし活動しているものでございます。

 こうした体制におきまして、日本年金機構につきましても、セプターカウンシルが目的とする他の機関との情報の共有ですとか、演習、訓練への参加等を通じて習熟度の向上を図ることは望ましいことだというふうに考えております。

 機構における習熟度の向上のため、今委員から御指摘があった点も含め、どのような方策が適当であるか、監督官庁である厚生労働省とも連携をしながら、その具体化に向けて検討をしてまいりたいというふうに考えております。

濱村委員 CISO会議もございますが、セキュリティーレベルを向上させるに当たっては、実務者レベルの日ごろからの情報連携が非常に大事であるというふうに思うわけでございます。ですので、NISCを初めとして、警察、そしてまた海外からの攻撃であれば防衛省も含めて、日ごろから実務者レベルで協議ができる、そういう体制づくりをしていただくことをお願い申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

井上委員長 これにて本日の質疑は終了いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時二十二分散会


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