衆議院

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第9号 平成28年3月25日(金曜日)

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平成二十八年三月二十五日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 西村 康稔君

   理事 亀岡 偉民君 理事 平  将明君

   理事 武井 俊輔君 理事 中根 一幸君

   理事 平井たくや君 理事 緒方林太郎君

   理事 柿沢 未途君 理事 佐藤 茂樹君

      青山 周平君    池田 佳隆君

      石崎  徹君    岩田 和親君

      大隈 和英君    岡下 昌平君

      神谷  昇君    木内  均君

      北村 茂男君    笹川 博義君

      高木 宏壽君    武部  新君

      中山 展宏君    長尾  敬君

      ふくだ峰之君    牧島かれん君

      松本 洋平君    宮崎 政久君

      若狭  勝君    阿部 知子君

      大串 博志君    逢坂 誠二君

      岸本 周平君    小宮山泰子君

      後藤 祐一君    高井 崇志君

      古本伸一郎君    江田 康幸君

      濱村  進君    池内さおり君

      島津 幸広君    河野 正美君

      鈴木 義弘君

    …………………………………

   国務大臣         岩城 光英君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     菅  義偉君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長) 河野 太郎君

   国務大臣         島尻安伊子君

   国務大臣         石原 伸晃君

   国務大臣         遠藤 利明君

   内閣府副大臣       松本 文明君

   農林水産副大臣      伊東 良孝君

   内閣府大臣政務官     牧島かれん君

   内閣府大臣政務官     酒井 庸行君

   内閣府大臣政務官     高木 宏壽君

   外務大臣政務官      山田 美樹君

   文部科学大臣政務官    堂故  茂君

   厚生労働大臣政務官    太田 房江君

   衆議院警務部長      近藤 博人君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    横畠 裕介君

   会計検査院事務総局次長  田代 政司君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  渡辺 一洋君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  澁谷 和久君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  田中 勝也君

   政府参考人

   (内閣官房内閣人事局人事政策統括官)       三輪 和夫君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 福井 仁史君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 増島  稔君

   政府参考人

   (宮内庁次長)      山本信一郎君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    沖田 芳樹君

   政府参考人

   (消費者庁審議官)    井内 正敏君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 高嶋 智光君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 垂  秀夫君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 佐藤 達夫君

   政府参考人

   (文化庁長官官房審議官) 磯谷 桂介君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           堀江  裕君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           伊原 和人君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局次長)           苧谷 秀信君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         佐藤 速水君

   政府参考人

   (農林水産省生産局農産部長(政策統括官付))   天羽  隆君

   政府参考人

   (農林水産省生産局畜産部長)           大野 高志君

   政府参考人

   (観光庁審議官)     古澤 ゆり君

   内閣委員会専門員     室井 純子君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十五日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     笹川 博義君

  後藤 祐一君     逢坂 誠二君

同日

 辞任         補欠選任

  笹川 博義君     青山 周平君

  逢坂 誠二君     後藤 祐一君

    ―――――――――――――

三月二十四日

 サイバーセキュリティ基本法及び情報処理の促進に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第一一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 会計検査院当局者出頭要求に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 サイバーセキュリティ基本法及び情報処理の促進に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第一一号)

 内閣の重要政策に関する件

 公務員の制度及び給与並びに行政機構に関する件

 栄典及び公式制度に関する件

 男女共同参画社会の形成の促進に関する件

 国民生活の安定及び向上に関する件

 警察に関する件


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     ――――◇―――――

西村委員長 これより会議を開きます。

 内閣の重要政策に関する件、公務員の制度及び給与並びに行政機構に関する件、栄典及び公式制度に関する件、男女共同参画社会の形成の促進に関する件、国民生活の安定及び向上に関する件及び警察に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官渡辺一洋君、内閣官房内閣審議官澁谷和久君、内閣官房内閣審議官田中勝也君、内閣官房内閣人事局人事政策統括官三輪和夫君、内閣府大臣官房審議官福井仁史君、内閣府大臣官房審議官増島稔君、宮内庁次長山本信一郎君、警察庁警備局長沖田芳樹君、消費者庁審議官井内正敏君、法務省大臣官房審議官高嶋智光君、外務省大臣官房審議官垂秀夫君、外務省大臣官房審議官佐藤達夫君、文化庁長官官房審議官磯谷桂介君、厚生労働省大臣官房審議官堀江裕君、厚生労働省大臣官房審議官伊原和人君、厚生労働省職業安定局次長苧谷秀信君、農林水産省大臣官房総括審議官佐藤速水君、農林水産省生産局農産部長(政策統括官付)天羽隆君、農林水産省生産局畜産部長大野高志君、観光庁審議官古澤ゆり君の出席を求め、説明を聴取し、また、会計検査院事務総局次長田代政司君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

西村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

西村委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高井崇志君。

高井委員 岡山から参りました高井崇志でございます。

 先週に引き続き質問の機会をいただき、ありがとうございます。

 先週の子ども・子育て支援法の質疑でちょっと一問聞きそびれた件がございまして、子供の医療費の無料化について。

 きょうは太田厚生労働政務官にお越しいただきまして、ちょうどよかったと思ったんです。実は、岡山の話をちょっとさせていただくのですが、太田政務官は副知事を以前されていて、副知事退任後に、私は岡山県庁で働かせていただいた、そういう縁もございます。

 実は、岡山市では、この子供の医療費の無料化というのが小学校入学前までなんですね。実は私、二年半前に岡山市長選挙に立候補いたしまして、そのときに、この子供医療費の無料化を一番に訴えました。

 というのは、隣の倉敷市や瀬戸内市といった隣接する市は、中学校三年生まで無料にしているところが多いんです。そうしますと、岡山市のお母さんが、小学校の入学と同時に引っ越しをする。わざわざ転校させてまで、引っ越しをしてまで子供医療費の無料化を受けたいということで、そのくらい、やはりお父さん、お母さんにとっては切実な問題です。今の市長がようやく重い腰を上げていただいて、ことしの四月から小学校六年生まで、しかし一割負担です、無料化にはなっていません、一割負担ということを決めました。

 そもそも、私は、自治体間が今競い合って子供の医療費の無料化をやっていますけれども、こういった分野で自治体が競い合うというのはいかがなものかなと。さっき言ったように、わざわざ岡山市から倉敷市に引っ越しをするような家庭が後を絶たないというようなことは決して健全な姿だと私は思っていなくて、かつ、今、国は、無料化をする自治体に対して、ペナルティーと言うとちょっと言い過ぎかもしれませんが、国民健康保険の公費負担を減額する、そういう措置をしています。

 私は、こういった措置もやはりおかしい、頑張っている自治体に対してわざわざ公費負担を減額するというのもおかしいし、もっと言えば、こういったことは市町村に競争させるような分野ではなくて、国が一律、せめて就学までは無料にするとか、一定の基準までは一律無料にするべきでないかというふうに考えておりますが、厚生労働省の見解をお伺いします。

太田大臣政務官 お答え申し上げます。

 御指摘の減額調整措置でございますけれども、地方団体からも強い要望が出てきております。そういうこともあって、現行制度の趣旨それから国保財政に与える影響等を考慮しながら、これからどうしていくべきかということは検討しなくてはいけないということは十分認識をいたしております。

 御指摘のように私も岡山県庁におりまして、この制度の下地をつくった時代に乳幼児の医療費助成を担当させていただきました。また、その後八年間、大阪で府知事を行いましたときにも、大変財政が厳しい中ではありましたけれども、乳幼児の医療費助成については、これをぜひ守りたいという立場から頑張ってきたつもりでございます。こういう経験も踏まえて、この問題には対処したいと考えております。

 一方で、厳しい財政状況、あるいは子育て支援全体のあり方というような問題もございますので、厚労省では、昨年九月から、子どもの医療制度の在り方等に関する検討会を鋭意開いてまいりまして、子育て支援等の幅広い観点からこの問題を捉え、どうするべきかということを検討してまいりまして、三月二十二日の時点で取りまとめ案が議論されております。

 今後、この検討会の取りまとめも踏まえまして、政府部内で子供の医療のあり方について必要な対応は図ってまいりたい、こう考えておりますけれども、その無料化というところにつきましては、別途、子供の医療費については、入学前の子供について、自己負担を三割から二割に国全体で軽減しておりますし、未熟児や特定の慢性的な疾病を抱える子供の医療費は、さらに自己負担の一部を公費で助成しております。

 こういう中で国としてさらなる支援を行うということになりますと、財政への影響、財源の問題ということをどうしても考えざるを得ませんし、また、他の子ども・子育て関連施策との均衡等にも配慮しなくてはならないということで、無償化ということについては、現時点で課題が多いというふうに考えております。

高井委員 太田政務官は、知事、副知事の御経験があるので、自治体の立場からかなり理解いただいているなとは思いました。

 財源のお話がありましたけれども、実は、子供の医療費と高齢者の医療費、一人当たりの医療費は約十倍違います。それだけ、やはり子供の医療費というのはそんなにお金がかかっていないです。

 かつ、これは加藤大臣がいらっしゃるときに議論したかったんですけれども、まさに一億総活躍社会、希望出生率一・八ということを目指すのであれば、お子さんがいる、特に第二子、第三子を産もうというお母さん、お父さんは、やはり医療費が無料かどうかというのはかなり気にされていて、子供が病気になったときどうしようか、二人も三人もいたら大変だということで、かなりそこが抑制に働いているということもあります。

 それから、反対をする方に、コンビニ受診というか、気軽にみんな行くようになるという議論がよくありますけれども、これも、自己負担をさせるということじゃなくて、もっと教育というか普及啓発を図って抑制するべき話であって、私は、これだけの自治体が、多分半分以上が無料化を、小学校六年生まで、あるいは中学校三年生まで、もっとかもしれません、やっていると思いますので、ぜひこれは引き続き国の方で、特に自治体に非常に造詣の深い太田政務官のリーダーシップで検討いただきたいと思います。

 では、この問題はこの一問だけなので、政務官、どうぞ御退席ください。

 それでは、本来といいましょうか、これも先週お聞きをいたしました政官の接触記録について、河野大臣と横畠法制局長官、お忙しいお二人にきょうもお越しいただいて恐縮ですが、質問したいと思います。

 先週の水曜日の本委員会で、私が、公文書管理法に基づいて、河野大臣が着任された十月以降、半年余りの間で、国会議員と行政職員が接触した記録、これは公文書管理法上作成が義務づけられているわけでありますが、これについて何件ぐらいありますかという質問をしたら、河野大臣が、莫大な資料をひっくり返さなきゃならないので答えられませんというお答えでしたので、きょうはもうちょっと絞って、ことしに入ってから、一、二、三月、まだ三月は終わっていませんけれども、この三カ月弱の間で、かつ、河野大臣の全ての所掌とこの間は聞いたんですが、こちらも絞って、消費者行政と規制改革という二分野に絞ってお聞きをしたら答えていただけるのではないかと思って、改めて御質問いたしますが、この分野に絞って何件ほどあるか、正確な数字じゃなくてもいいです、何件くらいでもいいですので、お答えいただけないでしょうか。

河野国務大臣 本年一月からということでございますが、莫大な量の文書の中からそれが記録されていると思われるものをひっくり返して見つけなければいけないというのはとてもできることではございませんので、部局を限られても、残念ながらお答えすることはできません。

高井委員 同じ答えが予想されますけれども、通告しておりますので。

 それでは、今月、三月に入ってから一カ月まだたっておりません、きょうは二十五日ですね、二十五日間に限って何件程度、約で結構でございます、国会議員との接触記録があるのか、お答えください。

河野国務大臣 繰り返しになりますけれども、莫大な量の文書をひっくり返さなければいけないということでございますので、なかなかお答えすることはできません。

 が、そうは言っても、余り木で鼻をくくったような答弁ばかりでもあれでございますので、高井委員の政と官の接触の概念に合致するかどうかということはあれでございますが、あくまでも一つの参考として、限定的に、ことし、平成二十八年三月一日から二十四日、きのうまでの間に、衆議院、参議院の国会議員から内閣府、内閣官房の国会連絡室に要求があった、私の担当する規制改革の部門でございますが、内閣府の規制改革推進室が担当するいわゆる資料要求や説明要求の件数を国会連絡室からの連絡の記録などをもとに調べると十件程度、また各党の部会などの会議に出席を求められた件数をやはり国会連絡室からの記録をもとに調べると五件程度でございました。

高井委員 消費者行政も、これは政府参考人で結構ですということで通告しているんですけれども、同じように一月以降、もしくは三月以降で何件ありますでしょうか。

井内政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねの件につきまして、先ほどの河野大臣からの御答弁にあった考え方によって、消費者庁分について、今月一日から昨日二十四日までの分をお調べしたところ、資料要求、レク要求につきましてはおよそ四十件程度、各党の会議への出席要請件数につきましてはおよそ二十件程度でございました。

高井委員 大臣にお聞きいたしますけれども、件数は今教えていただいてありがとうございます、これは記録も作成をしているということでよろしいでしょうか。

河野国務大臣 今回お示しをした数字は、国会連絡室に残っている、資料要求、説明要求の記録がどれぐらいあるかということで十件、それから各党の部会などの会議に出席を求められた件数が、連絡室に残っている連絡の記録をもとに調べると五件ということでございました。

高井委員 公文書管理法は、接触があったわけですね、資料要求だと届けるだけかもしれませんけれども、実際に議員と会って何らかのやりとりがあった場合は記録を残す、作成するというのが義務づけられております。

 先般、二月二十五日に予算委員会の第一分科会で井坂委員から河野大臣に質問をさせていただいたときに、河野大臣から、それぞれの行政の長が判断をするんだ、公文書管理法を所管する河野大臣ということじゃなくて、それぞれの行政の長が判断をすることなんだと。ですから、私は今絞って、消費者行政とか行政改革という、まさに規制改革、河野大臣がトップである所掌分野についてこの記録の作成をしているかどうかということを聞いているわけです。

 大臣はこの二月二十五日、大臣がそれぞれこの記録を残すかどうか、あるいは個人メモみたいな、本当は記録に残さなくていい、つまり行政文書ではないものと行政文書の境が曖昧だということを井坂委員は質問して、それに対して、それは大臣が責任を持って判断するんだという答弁をされているわけです。

 大臣、この記録をつくるべきかどうかというのは大臣が判断をすることになるわけですけれども、今回の三月の件について、記録をどういう基準で残させているんですか。

河野国務大臣 先ほど申し上げましたのは、国会連絡室に記録があるかどうかということでございますので、やりとりがあるかどうかを記録しているかどうかを調べたものではございません。

高井委員 私がお聞きしたかったのはやりとりの記録を作成しているかどうかということなので、きょうはもうお答えいただけないと思いますけれども、私は、これは引き続きずっと、これから内閣委員会が開かれて質問の機会をいただくたびに、ぜひお答えいただきたいと思うんです。

 これはやはり公文書管理法で定められた規定でありますから、これについて記録を本当にとっているのかどうかというのは極めて重要な話だと思いますので、とっていないならとっていない理由をちゃんと説明していただきたいですし、とっているなら、やはり何件、全部文書を出してくれと。これは情報公開請求すればいいんでしょうけれども、情報公開請求すると非常に時間がかかって、実際、新聞社とかが情報公開請求していますけれどもなかなか回答が出ませんので、作成した記録の件数ぐらいはこの国会の場でぜひお答えいただきたい。これはやはり公文書管理法を所掌しているという河野大臣の立場もあって、時間がかかっても結構ですから、ぜひそこはお答えいただきたいと思いますが、いかがですか。

河野国務大臣 先ほど調べた件数がありますので、それについてどうなのかというのは少し検討したいと思います。

高井委員 ありがとうございます。最低限やはり件数はまず出していただきたいと思います。

 そこから本質論を、では、どういうときに記録をとって、どういうときは記録をとらないのかというところが非常に曖昧だというところに問題があって、この間の井坂委員の質問に対して大臣は、大臣が個々に判断をするんだとおっしゃいましたけれども、それは到底現実的ではないですよね。幾ら何でも、担当者がつくった記録を全部大臣が、これは行政文書だ、これは個人メモだなんて判断できるわけがないので、やはり何らかの規則とかガイドラインとかそういうものを示して個々の職員が判断できるようにする、そこが所管する大臣の責任、公文書管理法上の大臣の責任だと思いますので、そこについてもぜひ検討いただきたいと思います。これについては引き続きこの委員会で取り上げさせていただきますので、ぜひそこの考え方も整理しておいていただきたいと思います。

 きょうは、限られた時間なので、法制局長官にもお越しいただいておりますので、これも先週水曜日にちょっと聞けなかった話なんですが、二月十八日の参議院の決算委員会で難波委員の質問に答える形で法制局長官は、平成二十五年二月の安保法制懇それから平成二十六年五月から始まった与党協議については、内閣官房の国家安全保障局と法制局の担当者は適宜意見交換をしていたというふうに答弁されています。

 公文書管理法上、当然この意見交換も、省庁間同士のやりとりというのは特に記述するようにという規則にもなっておりますから、この文書は作成をしていないとおかしいと思うんですが、この記録はあるんでしょうか。

横畠政府特別補佐人 ございません。

高井委員 作成していない理由は、なぜですか。

横畠政府特別補佐人 平成二十六年七月一日の閣議決定に関して内閣法制局が行った業務の一環として、御指摘にもありました、同年五月二十日に安全保障法制整備に関する与党協議会の議論が開始された後におきましては、内閣官房から、政府が与党協議会に提出する資料について事前または事後に送付を受け、必要に応じ説明を受けるとともに、担当者間で意見交換をするなどしていたところでございます。

 さらに具体的に申し上げれば、内閣官房から与党協議会に提出する資料について事前または事後に送付を受け、または与党協議会の終盤におきましては、政府から提出した閣議決定の概要等についても送付を受け、内閣官房の担当者に確かめるなどしてその内容の把握に努めるとともに、与党協議会の議論の過程についてフォローしていたところでございます。

 これは、内閣法制局設置法第三条第三号に規定します事務、いわゆる意見事務を迅速かつ的確に行うためのいわば事前の準備、事前の段階の準備的な行為でございまして、その協議、やりとりの内容もただいま述べたとおりのものでございまして、そのやりとりを文書化するまでもなく、内閣官房から取得した文書を行政文書として保存することをもって足りると考えているところでございます。

高井委員 いや、それは公文書管理法の趣旨と違うと私は思いますよ。もらった資料だけを残しておくなんということは何ら公文書管理法は求めていなくて、そんなものは安全保障局側に資料があるわけですから。

 行政文書の管理に関するガイドラインというのがあります。そこにはこう書いています。「法令の制定や閣議案件については、」「最終的な決定内容のみならず、主管局長や主管課長における経緯・過程について、文書を作成することが必要である。」と。それから、「行政機関間でなされた協議」、まさに今回のような協議ですね、については、「実際に協議を行った職員の役職にかかわらず、文書の作成が必要である。」と。

 つまり、担当者であり、あるいは途中の過程の議論というものを残すべきだ、これが公文書管理法の趣旨だと考えますが、法制局長官、違いますか。

横畠政府特別補佐人 当局におきましては、平成二十六年七月一日の閣議決定に関して行った意見事務に関して作成しまたは取得した文書につきましては、公文書等の管理に関する法律の規定や御指摘のガイドラインなどに基づきまして適正に管理をしていると考えているところでございます。

 現に行政文書として管理している文書については、作成文書といたしましては、まさに当該閣議決定について意見がない旨の回答をするに当たって決裁を行った際の決裁文書、これが中心でございます。まさに当該意思決定の当局における責任の所在を明確にしている、かつ手続を明らかにしたということで、それぞれ担当者を始め、私もまさに判をついて、その時点で作成して現に保存しているということでございます。

 それに加えまして、先ほどお答えいたしましたとおり、その事前の準備段階というのがございましたので、その準備段階において用いた資料として、取得文書になりますけれども、先ほどの与党協議に関する資料、閣議決定の案文のたたき台や概要などを当然含んでいるわけでございますけれども、それに加えまして、それより以前の安保法制懇における資料なども含めて、あわせて公文書として管理しているということでございます。

高井委員 事前の準備も含めて、経緯、過程を残せというのが公文書管理法ですから、私は今のお答えは違うと思います。

 もう一つ関連して、これも二月十八日の決算委員会で難波委員の質問で、集団的自衛権の閣議決定、二〇一四年の七月一日の前に想定問答をつくっていたのではないかということが新聞報道されて、そのときのやりとりを見ると、法制局長官は、自分が最終的には了解をしていないんだと。担当者、報道によれば次長まで了解をしているということ、事実はまだわかりませんけれども。

 いずれにしても、部下が作成した過程の文書であっても、長官がたとえそれを了解していない文書であっても残すというのが、先ほどのガイドラインの趣旨からしても、立法の経緯、過程を残せということでありますから、この想定問答も行政文書として残すべきだと考えますが、いかがですか。

横畠政府特別補佐人 報道のありました想定問答なるものでございますけれども、委員御指摘の当該閣議決定に関してつくったものじゃないかということではございませんで、閣議決定後の、当時予定されておりました衆議院、参議院における閉会中審査の準備のために作成しようとしたものでございます。

 いわゆる没になったものについて、とっておくべきかどうかという問題でございますけれども、内閣法制局におきましては、内閣法制局設置法第三条第一号に規定するいわゆる審査事務、法令案の審査でございますけれども、その審査の過程において法律案や政令案について修正が加えられた場合には、まさにその修正それ自体が審査事務の内容をなすわけでございますので、修正前の案文についても審査録に含めて、まさに行政文書として管理しているわけでございます。

 これに対して、国会答弁の資料と申しますのは、国会において答弁者が答弁する内容をあらかじめ準備しておく、そういうものでございまして、当局におきましては、まずは担当者が作成し、部長、次長、長官の了承を得てセットされる、その段階で成立する、そういうものと理解しておりまして、お尋ねのように、国会答弁資料の作成途中の段階におきまして了承が得られず、まさに使用しないとされたものについては、国会答弁資料として成立するには至らなかった、そういうものでございまして、それを組織的に用いることがないということも明らかでありますので、そのようなものまで行政文書に当たるというふうには考えておりません。

高井委員 全く納得できませんけれども、時間が来たので。

 最後に、このガイドラインにはこうも書いています。「当該意思決定と同時に文書を作成することが困難であるときは、事後に文書を作成することが必要である。」と。

 百歩譲って、それが残っていないのであっても事後にぜひつくるべきだということを私は強く申し上げ、そしてまた、この問題は引き続きこの委員会で取り上げさせていただくことを表明して、質問を終わります。

 ありがとうございます。

西村委員長 次に、逢坂誠二君。

逢坂委員 おはようございます。北海道函館から来ました逢坂誠二でございます。

 きょうは、内閣委員会で質問の機会をいただきまして、西村委員長あるいは理事の皆さん、関係者の皆さんに心からお礼申し上げます。

 それでは早速質問に入りたいと思いますが、きょうは、特定秘密保護法について何点かお伺いをしたいと思います。残り時間で公文書管理法についても伺いたいと思っているんです。

 まず最初に、特定秘密保護法の第三条と第十条の関係についてお伺いしたいんです。

 特定秘密保護法の第三条においては、我が国の安全保障に著しい支障を与えるおそれがあるものを特定秘密として指定することになっております。一方、第十条においては、我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがないものを、公益の必要がある場合は特定秘密であっても提供できるとの規定になっているわけであります。

 すなわち、両方に「安全保障に著しい支障」という言葉が入っているわけですが、安全保障に著しい支障を与えるおそれがあるから特定秘密に指定するんだというふうに規定しつつ、提供できる特定秘密は、安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがないものと規定しているわけですね。一方は安全保障に著しい支障を与える、でも、提供できる情報は、著しい支障を及ぼすおそれがないものを提供できると。

 これは、ストレートに読むと、文言上そごがあるように思うんです。実際はそごが多分ないんだろうとは思うんですが、この関係はどうなっているのか、なぜこの規定の中で特定秘密を提供できるのか、その辺の説明を事務方にお願いします。

田中政府参考人 特定秘密保護法第三条は、特定秘密の指定の要件の一つとして、「その漏えいが我が国の安全保障に著しい支障を与えるおそれがあるため、特に秘匿することが必要である」ということを規定しております。

 他方、特定秘密保護法第十条は、行政機関の長が我が国の安全保障以外の公益上の必要により特定秘密を提供する場合について定めておりまして、同条第一項第一号における場合にあっては、我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがないと認めたときに限り、特定秘密を提供するものとされております。

 その漏えいが我が国の安全保障に著しい支障を与えるおそれがあるため、特に秘匿することが必要である特定秘密を提供したとしても、必ずしも我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれを生ずるとは限りませんので、第三条と第十条とは矛盾いたさないものでございます。

逢坂委員 若干納得できないところもあるんですが、これは後でまた詳しく聞きたいと思います。

 それから次に、第十条の規定によれば、我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがあれば、公益上の必要があっても提供できない情報があるとの理解になるけれども、これでよろしいでしょうか。田中さん、お願いします。

田中政府参考人 ただいま申し上げましたように、特定秘密保護法第十条は、行政機関の長が我が国の安全保障以外の公益上の必要により特定秘密を提供する場合について定めておりまして、その場合、同条第一項第一号における場合におきましては、我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがないと認めたときに限りまして特定秘密を提供するものとされております。

逢坂委員 改めての確認でありますけれども、そういうことであれば、提供できない情報があるという理解になりますけれども、それでよろしいでしょうか。

田中政府参考人 特定秘密の保護に関する法律十条一項一号の場合における特定秘密の提供は、行政機関の長が我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがないと認めたときに限り行われる、先ほど申し上げたとおりでございます。

 この限定が具体的に適用されるかどうかにつきましては、特定秘密の内容、入手の経緯のほか、保護措置の度合いなどによるものでございまして、一定の特定秘密の提供が当然に我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすというものではございません。

 したがいまして、一定の特定秘密が当然に提供できないというものではございません。(逢坂委員「できませんということですか」と呼ぶ)

西村委員長 もう一度、最後をちょっと答弁。

田中政府参考人 一定の特定秘密が当然に提供できないというものではございません。

逢坂委員 一定の特定秘密が当然に提供できないというものではございませんということは、裏返して言うと、提供できないものもあるという意味に解していいですか。

田中政府参考人 あるジャンルの情報が提供できないということがあらかじめ決まっているものではございません。

逢坂委員 あるジャンルのものが提供できないとあらかじめ決まっているものではないけれども、全て、一〇〇%提供できるものではないという理解でよろしいですか、特定秘密の。

田中政府参考人 先ほど申し上げましたように、特定秘密保護法十条一項一号の限定が具体的に適用されるかどうかは、特定秘密の内容、入手の経緯のほか、保護措置の度合いなどによるものでございまして、ある一定の特定秘密が当然に提供できないというものではございません。

逢坂委員 非常にわかりにくい答弁なんですけれども、今の言葉は後でまた冷静に分析してみたいと思います。

 私の感覚からすると、今の話だと、特定秘密の全ては提供できないんだというふうに理解せざるを得ない。その理由は何か。あえて三条と十条を書き分けているわけですから、それを書き分ける必要がないんだったら、特定秘密は全て提供できると書けばいいような気がするわけですけれども、これまた後日議論させていただきたいと思います。

 次に、憲法九十条の規定に従って、会計検査院は、国の収入支出の決算は、全て毎年これを検査することになっている。会計検査院に特定秘密を提供できる根拠は、特定秘密保護法の第十条の規定により特定秘密も提供できるということだと理解をしているんですが、それでよいかということと、この際に、法施行令十八条に規定する措置も提供の条件になるのかどうか。後段は実は通告しておりませんので、わからなければわからないでよろしいんですけれども、いかがでしょうか。

田中政府参考人 いずれも御指摘のとおりでございまして、会計検査院に対する特定秘密の提供は、特定秘密保護法第十条第一項の規定によって提供されるものであります。また、政令で定める措置を講じていただく必要がございます。

逢坂委員 ということは、会計検査院は、特定秘密保護法第十条の規定によって情報の提供を受ける。だがしかし、施行令の措置もとらなければならない。

 施行令の措置を見ると、例えば「知る者の範囲を制限すること。」とか、「伝達の方法を制限すること。」とか、「利用の状況の検査の方法を定めること。」ということになっているわけですが、こういう制限を加えることで会計検査の目的を達成できるのかなという疑問を私は持つわけですね。これについてはまた後で少し指摘をしたいと思います。

 また、今回の第十条の規定から判断すれば、会計検査院は、我が国の安全保障に著しい支障を及ぼす特定秘密を入手できる根拠は存在しないように思われるのでありますけれども、まずこの点はどうかということと、存在しないとすれば、会計検査院はどんな理屈で決算に関する全ての特定秘密を入手できるのか、このあたりを御説明ください。

田中政府参考人 先ほどの御説明が若干言葉足らずであったかと思いますけれども、提供の判断をする以前に、我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれのある特定秘密というグループがあるわけではございません。

 したがいまして、会計検査院に対する特定秘密の提供につきましても、特定秘密の提供一般に関する規定に従いまして提供されるというものでございます。

逢坂委員 一般に関するルール、特定秘密保護法の一般的なルールで会計検査院にも情報が提供されることになるということでありますね。

 それでは、会計検査院に伺いたいんですが、決算の中で、特定秘密保護法に関連する決算に関して、何か疑義が生じる不適切な決算があったという場合、これは国会に検査報告をしなければならないわけですね。この際、検査報告というのは、特定秘密の部分を除いてはその事象の説明ができないというような案件が仮にあった場合、会計検査院はどのように国会にこれを報告するんですか。

田代会計検査院当局者 お答え申し上げます。

 具体的な案件がない現時点におきまして検査部分の記述における特定秘密の取り扱いにつきまして確たることを申し上げることは困難でありますが、いずれにせよ、会計検査の結果をわかりやすくお伝えすることと、我が国の安全保障に著しい支障を与えるおそれがないようにすることの双方に留意して検査部分の記述を検討することになると考えております。

逢坂委員 具体的な事象がないから余り答弁はできないんだということでありますけれども、事例としてはいろいろなことが想定できると思うんですね。

 例えば、きのうも役所との議論の中で出てきたんですけれども、戦車の鉄板の厚さ。防衛上非常に重要な情報であって、これは表へ出せないというものが場合によっては特定秘密かもしれない。そうした場合に、戦車を発注した、ところが規定どおりの厚さの鉄板の戦車が入らなかったなんということは想定できるわけですよね。こういう場合も、会計検査院は、鉄板の厚さとかそういうことを明示せずに報告することになるんでしょうか。

 なぜ私がこんなことを言うかというと、自治体の会計検査においてよくあるのは、例えば地下鉄のトンネルを掘ったときに、トンネルのコンクリート厚が、本来十五センチあるべきものだったのが八センチしかなかった、これは不適切だ、補助金返還なんということはざらにあるわけですよね。その場合には非常に詳細に例示をしてやっているわけですけれども、会計検査院、いかがでしょうか。

田代会計検査院当局者 お答え申し上げます。

 会計検査院としましては、個別の案件の事実関係、発生原因などを十分に検査した上で、どのような検査報告の文書を作成するかを検討しているところでございます。

 このようなことから、具体的な案件がない現時点におきまして検査部分の記述における特定秘密の取り扱いについて確たることを申し上げることは困難でありまして、具体の案件があったときにその内容に即して検討していきたいというふうに考えております。

逢坂委員 具体の案件があったときに検討するんだということでありますけれども、それでは、会計検査院に改めてお伺いをします。

 例えば、先ほどの説明によれば、施行令の第十八条の規定も会計検査院に適用されるんだということでしたよね。「当該特定秘密の伝達の方法を制限すること。」とか、あるいは「知る者の範囲を制限すること。」という規定があるわけですが、この規定ぶりについて考えてみると、会計検査報告というのは全て広く国民に周知をする、国会にも報告するわけですから、会計検査報告の性質から見てみると、この規定は会計検査院としては非常につらい規定ではないか、会計検査の目的を達することができないのではないかというふうに私は思うんですけれども、この点はいかがですか。これは具体的な事例ではなくて個別条文の話ですから、答えてください。

田代会計検査院当局者 お答え申し上げます。

 会計検査院におきましては、内部規程を定めた上で、特定秘密保護法第十条第一項第一号及び同法施行令第十八条で定められました保護措置を適切に講じることにしておりまして、特定秘密の十分な保護を図ることとしております。

逢坂委員 改めて会計検査院に伺いますけれども、特定秘密に関する保護措置を十分に講じた上でやるんだということでありますけれども、それで一〇〇%会計検査の役割が果たせる、それを断言できますか。

田代会計検査院当局者 お答え申し上げます。

 会計検査院は、日本国憲法及び会計検査院法に基づきまして検査を実施しております。会計検査院法の第二十六条には、会計検査院から帳簿、書類その他の資料の提出の求めを受けたものはこれに応じなければならないと規定されておりまして、会計検査院はこれまでも、検査上の必要がある場合、検査を受けるものから、安全保障に関する秘密も含めて、秘密事項についても提供を受けてきているところでございます。

 特定秘密の保護に関する法律によりましてこうした従来の取り扱いに変更が加えられるものではなく、同法の施行後も、会計検査院は、検査上の必要がある場合には特定秘密の提供を受けることができるものとされております。また、このことは、内閣官房が昨年十二月二十五日に関係機関に発した通知などにおいても、あるいは政府統一見解におきましても確認されているところでございます。

 したがいまして、検査上の必要により提供を求める情報の中に特定秘密が含まれておりましても、検査に支障を来すことはないというふうに考えている次第でございます。

逢坂委員 残念ながら今のは答えになっていないので、また後日これは詰めさせてもらいますけれども、会計検査報告というのは広くみんなに知らせるのが建前でありますから、その中に特定秘密に関する事項がもし含まれないことによって会計検査の目的が達成されないということは一〇〇%ないとは断言できないと私は思うんですよ。万が一にもそういうことは場合によってはあり得ると私は思うんですね。

 特に防衛装備に関しては、数年前でしたか、さまざま疑義のある案件もあったわけでありまして、さまざま検査をする上で、そういうことを会計検査がやはり言わなかったら、私は、国民の皆さんにどの点が悪いのか伝わらないということは当然あるような気がするんですね。ケースとしては少ないかもしれないけれども、そういうものでも報告しないとなるならば、会計検査の役割が果たせないような気がするんです。

 そこで、今度は特定秘密保護法の担当の方にお伺いしますけれども、会計検査院が会計検査の役割を果たすために会計検査の報告をする際に、特定秘密も含む内容を明示して会計検査報告をしたという場合には、先ほどの話からすれば一般的な法のルールに従って会計検査院にも情報提供するということでありますから、法の第七章の罰則規定は適用されることになりますか。

田中政府参考人 私どもの理解といたしましては、会計検査院に対して検査に必要として提供した特定秘密が検査報告の中にそのまま記載されることは、実務上想定されないというふうに考えてございます。

 会計検査院におきまして、検査報告に記載する内容につきましては、我が国の安全保障に支障を及ぼすことがないよう十分留意するものと承知をいたしております。

逢坂委員 実務上想定し得ないという根拠を述べてください。

田中政府参考人 私どもの理解におきましては、会計検査院におきまして、検査報告に記載する内容につきましては、我が国の安全保障に支障を及ぼすことがないよう十分留意をされるものと承知をいたしております。

逢坂委員 十分留意はするけれども、そこに言及しなければ会計検査の報告、役割を果たせないケースはないということは断言できるんですか。いかがですか。

田中政府参考人 検査の目的との関係につきましては私どもがお答えすべきことではないかもしれませんが、いずれにいたしましても、会計検査院におきまして、十分に検査の目的を達成するために必要な情報収集をされ、その上で検査報告に記載する内容につきましては十分留意されるもの、そのように認識しております。

逢坂委員 きょうは時間の関係もありましてもうこれぐらいにさせていただきますけれども、岩城大臣、今のやりとりを聞いていてわかるとおり、実は特定秘密保護法と会計検査院の関係は、情報提供の上でもいろいろ課題があるということはもうこれまでも指摘をされておりましたけれども、会計検査をした結果の検査報告の点においても相当に課題が多いというふうに私は思います。今、両者の話を聞いていただいて、どちらも最後は限定的に物事を言うことはできないわけですね。

 したがいまして、実は特定秘密保護法については、私は基本的にこれには賛同できないんですけれども、今の法のままではやはり不都合が多過ぎる。

 そして、最後、お答えいただけませんでしたけれども、会計検査院が検査報告の中で特定秘密に触れるようなものをもし書いた場合には、第七章の罰則規定の適用も場合によっては懸念されるかもしれないわけですね。でも、罰則の適用をある種覚悟しながら書かなければ会計検査の報告も達成できないということも場合によってはあり得るかもしれない。ないと一〇〇%言い切れないわけですね。

 だから、私はこの法の不整合をやはり正すべきだと思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

岩城国務大臣 逢坂委員からいろいろ御指摘がございました。

 政府は、憲法上の会計検査院の役割の重要性については十分認識しておりまして、会計検査院への秘密事項の提供に関する取り扱いについては、特定秘密保護法の施行により従来と何らの変更が生ずるものではない、これも確認をしているわけであります。

 したがいまして、これからも、会計検査院において、検査報告に記載する内容等について、我が国の安全保障に支障を及ぼすことがないように十分留意して対応していきたいと考えております。

逢坂委員 残念ながら十分な答弁とは思えないものですから、また後刻これはやらせていただきたいと思います。私は、今の法の不整合を残したままで今後進んでいくと、どこかで現実にそごが生ずるような気がしてしようがありません。

 それでは次に、公文書管理法の関係に移らせていただきます。

 三月九日の法務委員会で、法務省に対して、法務省の公文書管理の現状はどうなっているかということを質問させていただきました。そうしたところ、その際に二点の、まあ二点だけじゃないんですけれども、例示を挙げていろいろ聞いたものですから、二つの書類について、残念ながら適切に管理がされていなかったということが明らかになりました。

 まず一つは株券等の保管及び振替に関する法律に関する文書、これは平成二十六年の十二月末に三十年の保存期間が満了しているものです。もう一方が船舶の所有者等の責任の制限に関する法律の一部を改正する法律に関する文書、これは平成二十五年十二月三十一日に三十年の保存期間が満了しているものでありますけれども、これについて、保存期間満了時に適切に移管、延長の判断をせずに、そのまま放置されていたというふうに承知をしているわけであります。

 その際に、お手元に資料を用意させていただきました、ごらんをいただきたいと思いますが、内閣府に法務省から報告をするわけであります、公文書管理の状況について。今言った二件の文書というのはこの表の中のどこに入っているのか。例えば、行政文書ファイル等の総数の中、一番左の欄に入っているのか、あるいは、そこにも入っていて、さらに延長の欄に入っているのか。このあたりの事実についてお答えください。

高嶋政府参考人 お答えいたします。

 ただいまお示しのありました一覧表でございますが、この一覧表は全府省の総数を記載したものでございます。例えば、平成二十六年度の一番左側にある三百三十一万四百八十一という数字は、その年度の移管、廃棄、延長を合計した数字であります。

 先ほど委員から御指摘のございました、株券等の保管及び振替に関する法律の資料と船舶所有者等の責任制限法改正法の資料につきましては、御指摘のとおり、満了期間が過ぎた段階で延長手続をとっておりませんでした。

 それで、この報告の関係ではどうなっているか、この関係を申し上げますと、法務省から内閣府に対する報告は内閣府からいただいております書式に従いまして報告しておりますが、本来は延長すべきこの二件につきましては報告から漏れております。

 それはどういうことかと申しますと、この報告は、ある一定のカテゴリーごとに、文書の種類ごとに分けまして何々外何件という形で報告しているんですが、その数のカウントにつきましては、法務省内にある電子ファイルの中で延長手続をとっているものをカウントしておりまして、この二件につきましてはとっておりませんでしたので、この数から漏れております。したがいまして、この数には入っておりません。

逢坂委員 これでやめますけれども、河野大臣、お手元の資料は内閣府が発表している資料でありますけれども、今説明のとおり、実は保存期間が満了した行政文書のファイル数というのは必ずしも全体数がここに載っていないということなんですよ。今、法務省のごくごく一部をサンプル的に調べただけでもそれは明らかなんですね。

 したがいまして、ここに移管、廃棄、延長ということを全部足して一〇〇%というふうに書いていますけれども、これは少し再検討する必要があるのではないかと私は思いますけれども、いかがでしょうか。これを聞いて終わりたいと思います。

河野国務大臣 少なくとも法務省の二件があったわけでございますので、各省においてはしっかりと対応してもらいたいと思います。

 法務省も研修にはしっかり出てきていただいているようでございますので、また岩城大臣にしっかり指揮をしていただいて、そうしたことが繰り返されないと期待をしております。

逢坂委員 終わります。ありがとうございます。

西村委員長 次に、大隈和英君。

大隈委員 自由民主党の大隈和英でございます。

 質問の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

 まず質疑の冒頭に、さきのベルギーでの大変痛ましい卑劣なテロがございました。犠牲になられた方々の御冥福を心からお祈り申し上げますとともに、日本人も含めて負傷者の一日も早い御回復をお祈り申し上げて、始めさせていただきます。

 さて本日は、何よりこのテロ対策を中心に、河野太郎大臣にお越しいただき、質問を始めさせていただきます。

 フランスから連続していますイスラム過激派のテロ事件に続きまして、今回はベルギーでのテロがございました。また、中東ではやむことのないテロの連鎖が続いております。既に国際テロは規模の大きさや拡散の仕方からも、旧来の単なる個々のテロ事件ということから、現代においては、テロ組織と国家あるいは市民に対する戦争、それぐらいの認識や定義を改める時期に来ているのではないかなというふうに考えております。

 その点について、河野大臣の御見解あるいはお考えをお聞かせいただきたいと思います。

河野国務大臣 委員の見方を含め、テロの問題についてはさまざまな見解がございます。また、物理的なテロとサイバーテロと、今サイバーの世界でもテロ行為というのが予測されている中で、これをどういうふうに見るかというのはさまざまな議論があるところだと思います。

 いずれにいたしましても、インドネシアの事件あるいはフランス、ベルギーの事件、日本を取り巻く環境というのは今非常に厳しいというふうに認識をしておりますので、四月十日からの外相会議、あるいはサミットを前に、我が国がこうしたテロをしっかりと未然に防止することができるように警察を指揮してまいりたいと思います。

大隈委員 過去に日本国内におきましても、徐々に記憶というものは薄れていくものなんですが、死亡者八名、負傷者三百七十六人の犠牲を出した丸の内での三菱重工爆破事件などの連続企業爆破テロもございました。あるいは、死亡者十三人、負傷者約六千三百人を出した地下鉄のサリン事件は記憶に新しいところでございます。あるいは、主に七〇年代には、日本人グループによる海外での国際テロ事件を引き起こしたという時代もございました。

 戦後、我が国においてテロ事件は未遂も含め何件あり、また犠牲者の数は累計でどれぐらいに上がるのか、実際に教えていただければと思います。

沖田政府参考人 我が国において発生いたしましたテロ事件の戦後からの正確な統計はございませんが、昭和期における極左暴力集団によるテロ事件につきましては、先ほど先生から御指摘のございました三菱重工ビル爆破事件など、凶悪な事件が多数発生しております。こうした極左暴力集団によるテロ、ゲリラ事件としては、統計のある昭和四十七年以降千百六十一件発生し、死傷者数は、昭和五十四年以降九十六人となっております。

 また、右翼によるテロ、ゲリラ事件としては、昭和三十五年、社会党浅沼委員長殺人事件など、凶悪な事件が多数発生しておりますが、こうした右翼によるテロ、ゲリラ事件としては、統計のある昭和六十年以降百九十九件発生し、負傷者数は、平成元年以降八人でございます。

 そのほか、オウム真理教につきましては、平成六年六月に発生した松本サリン事件で死者八人、負傷者約百四十人、平成七年三月に発生した地下鉄サリン事件で死者十三人、負傷者五千八百人以上となっております。

大隈委員 要するに、日本の中でも多数の犠牲者を今まで出しているということですね。そして、そのような中で、一歩間違えれば本当に何の罪もない一般の市民が犠牲者になる、被害者となる可能性があるわけで、活動家のいるような社会の中、例えば学校のキャンパスあるいは企業などの中で、つい隣にいた、平井先生は違いますけれども、本当に何でもない、隣でテーブルを並べているだけの方が加害者になり得るようなことは、やはりこれからも気をつけていかなければならないというふうに考えております。

 その中で、テロリストの特徴としましては、仲間をふやすために思想的洗脳というのが一つの方法として挙げられると思います。かつて、オウムなどカルト宗教でも同じ手口があったというふうに記憶しておりますが、これだけ情報があふれる世の中になりまして、例えば、何も知らない若い学生や家庭の主婦の方ですとかが、純粋な正義感を逆手にとられまして誤った活動に勧誘されるあるいは利用されてしまわないようなことがやはり必要ではないかというふうに考えております。

 アメリカ政府は、グーグルなどIT企業の協力を得ながら、ISの過激思想に対する対抗策として、動画やサイトを作成して今啓蒙活動に努めておられるというふうに聞いておりますが、この点につきまして、我が国政府も、健全な青少年や女性を守る、国民を守るという観点からも、こうした点を参考としながら何らかの対策を打っていくべきではないかというふうに考えております。

 当然ながら、言論の自由と政府の思想統制には一定の歯どめを担保しながら、諸外国の事例を参考にしながら、インターネット、広報活動に関してのテロ対策あるいは過激派対策というものの必要性に関しまして、御見解を伺えたらというふうに思っております。

沖田政府参考人 御指摘のとおり、ISILは、巧妙なメディア戦術等を背景に世界各地から多くの外国人戦闘員を誘引しておりまして、我が国におきましても、ISIL関係者と連絡をとっていると称する者や、インターネット上でISIL支持を表明している者が国内に所在しているところでございます。

 このため、警察におきましては、各種広報資料等におきましてISILの巧妙なメディア戦術等に言及いたしまして、その危険性を十分認識していただけるように努めているところでございます。

 加えて、このたび新たにインターネットオシントセンターを設置いたしまして、こうしたものも活用いたしまして、個人の過激化やISIL活動地域に渡航を企図する邦人に関し、インターネット上の情報等関連情報の収集、分析を行うこととしておりまして、今後ともインターネットを活用したテロ対策を推進してまいりたいと考えております。

大隈委員 ここまで世界の情勢が激動している中で、旧来の法制ではなかなか対応し得ない、あるいは当時想定できなかった時代となってきたというふうに考えております。ぜひとも、法整備も含めて、万全という言葉はやはりないわけですから、特に今、オリンピック・パラリンピックを控えながら、日本人だけではない、世界から日本に訪れる全ての方の命をやはり平等に守っていくということに関しまして、さらなる対策をお願いしたいというふうに考えております。

 先ごろ、衆議院は、議院運営委員会におきまして、警察及び秩序に関する小委員会も、私が所属させていただきまして、参議院同様に、院内の入館者に対する液体検査の検査機を導入することが審議されました。

 院は、国権の最高機関として、言うに及ばず、常時多数の報道関係者や職員、また小学生などの見学者も抱えております。仮にテロ集団が院を攻撃する場合に、爆薬を用いなくとも、例えば、想像もしたくないですが、小学生や女性職員が人質にとられる、いろいろなさまざまな想定が考えられるというふうに思っております。

 院内の基本的な警備体制、特に瞬発的な緊急事態を想定した衛視の方や警察官の役割分担、連携について、特にお聞かせ願えたらと思います。

近藤参事 お答えをいたします。

 院内の警備は、基本的には衛視が行っております。

 国会の開会中は、国会法第百十五条の規定に基づきまして、警察官も本院の警備に当たるというふうになっておりますが、実際には、院内の警備は衛視、警察官は国会の外周を警備するということになっております。

 突発的な緊急事態が発生した場合でございますけれども、衛視と警察官が連携して直ちに対処する必要がございますので、日ごろより、衆議院警務部と警視庁の警備担当者が連絡体制を整備しておるところでございます。

 緊急事態に際しましては、衛視と警察官とが協力して事態に対処いたしますけれども、例えば、銃を所持した者が院内に侵入した場合を考えますと、避難誘導あるいは負傷者の救護などは衛視が中心となって行いますが、侵入者の身柄の確保については警察官が主体となるというふうになります。爆発物が持ち込まれたという場合を想定しますと、爆発物の処理は警察官が行うということになります。

 以上でございます。

大隈委員 今御説明いただきましたとおり、やはり、なかなか瞬間的な事態に即応できるかというと、まだまだこれから課題があろうかと思っております。

 そういう点で、昨年は初めて院内での警備訓練もしていただいたということですが、例えば、我々が本会議中に、爆発物ですとか上からサリンのような化学物質を投げられるようなことも含めて、本会議中の避難、退避のシミュレーションですとか、ありとあらゆることをこれからやっていかなければいけないのではないかということを痛感しておりますので、今後ともぜひよろしくお願いいたします。

 さて、本日は、もう一点、時間も限られておりまして大変申しわけございませんが、中央省庁移転についてお尋ねさせていただきます。

 一昨日、政府のまち・ひと・しごと創生本部が、中央省庁の地方移転に向けて、まず、文化庁を初め地方移転を発表していただきました。

 私も京都に隣接するところで、地元でございますので、心から、京都への文化庁の移転に関しまして歓迎と御礼を申し上げたいと思います。

 その中で、まだまだ課題というものがこれから検討されるかと思います。ぜひともスピード感を持って前進していただきたいと思っておりますが、この機会に、改めて地方創生の観点から、省庁移転の意味、そして京都への文化庁移転に期待される役割などをぜひお聞かせいただきたいと思います。

牧島大臣政務官 お答えいたします。

 政府関係機関の地方移転の取り組みは、地方の自主的な創意工夫を前提に、それぞれの地域資源や産業事情などを踏まえて、地域における仕事と人の好循環を促していくということを目的としており、地方創生に資する政策だと考えております。

 また、大隈委員は関西御出身でございますが、京都、関西といいますと、大変多くの文化財が集積をしている地域でございます。文化庁については、文化財を活用した観光がさらに促進されるといったことも御期待を申し上げているところで、地方創生の視点からも意義が大きいと思っております。

大隈委員 本日お越しの牧島政務官は米国の留学生活もおありですし、また、堂故政務官は、おいしい寒ブリで有名な富山県の氷見市と東京を往復しておられるというふうに聞いております。

 そういう点で、遠くに赴任するという点は、最初は抵抗があるものですが、後で振り返ると、大変得がたい経験であることが多いと思います。その一方で、今までは転勤ということで異動はあったかもしれませんが、省庁の移転となりますと期限つきというわけにはいきませんので、実際問題、職員の方々にはいろいろな戸惑いもあろうかと思います。

 その点について、事前に、例えば職員全体にヒアリングがなされたのか、あるいは調査がどれぐらいされているのか、実際に省庁の職員の本音のところがなかなか見えてこないところがございまして、ぜひそういう点でもその一端をお聞かせ願えたらと思っておりますが、いかがでしょうか。

牧島大臣政務官 御指摘ありがとうございます。

 省庁で働く人々の思いはという御質問でございまして、現時点では一般論となってしまいますが、実際に移転する段階での職員の異動に当たっては、職員の雇用や勤務条件への適切な配慮が必要であろうかと思います。

 また、大隈委員御指摘のとおり、いろいろな場所に行ってみると新たな価値観に触れ合うことができるということもあると思います。

 私も徳島視察をさせていただきましたが、いいところでございますし、働き方の改革にもつながる、また、人生にとって新たなプラス、副次的な効果ということも期待をしていきたいというふうには思います。

堂故大臣政務官 お答えいたします。

 もちろん、職務ですから、決められたことに全力を尽くすのは役人の務めだと思っていますが、こちらとしては十分な配慮もしていかなければいけないと思います。

 その上で、先ほどからちょっと議論いただいておりますけれども、文化を核とした全国の地域の活性化、それから京都からの国際発信力の向上が期待できることから、文化庁の強化を図りつつ全面的に移転することが決定されたものです。

 そういう方向が出ましたので、文科省では、地域における文化財など多様な文化芸術資源が全国に存在する我が国でありますから、この際、文化芸術資源を一層活用し、観光地の魅力や産業の付加価値の創出につなげていくことにより、経済波及効果を生み出すことができるものと考えておりまして、その作業を推し進めておりますが、今、一億総活躍社会を目指す中で、現在のGDP五百兆を六百兆にという目標を持っております。ぜひ、こういう資源を活用してその施策に貢献したいと思っております。そういう意味で、京都への移転は、文化がGDPの拡大にも資する積極的な意義があると考えています。

 このたびの決定が、地方創生の観点はもちろんですけれども、我が国の文化行政のさらなる強化につながるよう、しっかりと進めていかなければならないと思っています。

 以上です。

大隈委員 ありがとうございました。

 そういう点は、非常に今、移転が見送られた自治体の知事さんですとか、あるいは全くリクエストを出しておられなかった知事さんからは不満の点もあるかもしれません。例えば陳情が今度は遠くなるとか、いろいろ意見も批判もあるようですが、そういうことをつぶさに見ていきますと、やはり東京一極集中に我々がもうなれ切っているんじゃないかな、物心両面でかなり依存してきているんじゃないかなということを自省せねばなりません。

 我々国民一人一人の意識のあり方を図らずも露呈したものかなというふうに考えておりますが、そういう点で、ぜひとも、地方自治体の首長さんを初めとした地方側の意識の変え方を、一緒になってまた取り組ませていただければというふうに思っております。

 この手の議論には、総論賛成、各論反対ということがありがちなんですが、このままでは地方が消滅してしまう、あるいは来る大災害の際に首都機能を補完しなければならない。何よりも、先ほど牧島政務官もおっしゃられました、私も経験がありますが、やはり副次的なメリットというのが後からどんどんまた出てくると思うんですね。

 ですから、そういうところも含めて、地方独自の文化、経済を発展させるためにも、今の歩みをさらにダイナミックに、国民がよかったと実感していただけるような政策推進をお願いしたいと思います。

 その点につきましての今後の展望について触れていただければと思います。

牧島大臣政務官 ありがとうございます。

 今回、まち・ひと・しごと創生本部において決定した政府関係機関移転基本方針に基づき、来年度以降、移転に向けた具体的な取り組みを進めていくことになります。まずは、こうした取り組みを着実に実施して地方創生の実を上げていくことが重要であると考えています。

 その上で、そうした取り組みを進める中で、今大隈委員より御指摘あったとおり、東京一極集中の是正に向けてさらにどのような取り組みが必要かなどについては、これまでの取り組みの検証などを行いながら検討してまいりたいと思います。

 いずれにしても、地域の強みを見詰め直したり、受け入れ体制構築のために地域の官民が連携して協力する体制をとってくださったことは大事にしていきたいと思っておりますし、引き続きの御指導をいただければと思っております。

大隈委員 ありがとうございました。

 以上で質問を終わらせていただきます。

西村委員長 次に、鈴木義弘君。

鈴木(義)委員 おはようございます。

 改革結集の会、鈴木義弘、最後の質問になろうかと思いますが、十分の限られた時間でありますので、質問に入らせていただきたいと思います。

 私たち人間は、いろいろなことをつくり出そう、直そうとか、いろいろなことをやって今日まで来ているんだと思うんですね。何を言わんとしているかといったときに、科学技術をどんどん進めていったときに、そこまでやるのかというところまでやらざるを得ない時代に来ているんだと思います。

 一つの例を挙げさせていただくんですけれども、人の精子や受精卵の取り扱い、遺伝情報の利用などに直接かかわる最先端医療技術が進展しています。これは、おととしの山中教授のiPS細胞が一つの例だと思います。

 一九七〇年代初めにアメリカで、バイオエシックス、生命倫理学という言葉が誕生したと聞いています。生命倫理はその後、先端医学、生命科学の進展がもたらす生命に対する新たな人為的介入について、命の尊厳に基軸を置きながら発展してきたと言われています。

 京都大学の加藤教授は、バイオサイエンスの主流は個人主義的自由主義であり、他人に危害を加えたり与えたり迷惑をかけたりしない限り、自分のことは自分で決めることができるという自己決定権がバイオエシックスの原則の大きな柱になってきた、非専門家である患者、私たちですね、市民の視点に立ち、患者の自己決定権に基づいた医師と患者関係、医療倫理が生命倫理の中心とされてきたのであるというふうに述べているんです。一方で、全ては患者個人の自由だと認めてしまうと、逆に混乱が起きかねないという考え方も存在している。この場合は、社会の秩序を維持する上で、社会的合意に基づいて患者の自己決定権に一定の制限を与えることがあるという考えである。

 患者の自己決定権と社会的合意のどちらを優先するのか。これは厚生労働大臣なのかはわかりませんけれども、科学技術を一つの横串として統括する国務大臣に、まず大臣はどちらを優先するのかお尋ねしたいと思います。

島尻国務大臣 鈴木委員からも大変に重い、非常に本質的な御質問をいただいてございます。適切なお答えになるかどうか確信は持てないわけでありますけれども、精いっぱいお答えをさせていただきたいと思います。

 まず、今るる科学技術の進歩に関してお話があったわけでありますけれども、医療に資する技術の研究開発というものは日進月歩であると思っております。

 この研究開発では、もちろん安全性そして有効性の確認を行って、臨床、応用へと進められます。今委員の御指摘の、患者たちの要望というものに応えるためにこれらの研究成果を適切に社会に還元していくということは大変重要だというふうに考えています。

 ただ、他方、技術や研究の内容によっては国民の理解が必要な場合もあるために、実際にこの研究開発が人に適用されるためには一定の社会的な合意というものが得られているということも大変重要だというふうに考えます。

    〔委員長退席、中根(一)委員長代理着席〕

鈴木(義)委員 例えば、今、目の網膜を再生医療としてやっていたり、心臓をつくるとか腎臓をつくるとか、パーツとしてつくるのならいいんでしょうけれども、究極は人間を一つつくってしまう。これは、クローン羊がスタートしたときからも、クローンのドリーちゃんをつくった学者さんが、世の中に出しちゃいけないものを私はつくってしまった、そういうふうに後で述べているんですね。

 ですから、患者のニーズがあるからとか個人の欲望があるから、不老長寿というのは誰だってそうなんです、でもどこかで、ここまでだよねというのは、時代とともに変わるかもしれませんけれども、やはり、今までずるずる、いろいろな意味で、科学技術ばかりじゃなくて、世の中がきちっと国民的なコンセンサスを得ていないで、国会だけで法律をつくって推進してきたり歯どめをかけたりしてきたんじゃないかと思うんですね。

 ですから、科学技術は際限なくやっていかなくちゃいけないんだと思うんですけれども、事人間、例えば種苗みたいな、今は、GM食品については日本は、基本的には人間が直接口に入れるものは入れませんよ、でも、しょうゆをつくったり加工品の原材料として使う分には認めている国なんです。

 ですから、食品はいいんですよ、人間は際限ないんですよ、まあ一緒のことか、逆のことなんですよね。

 そこのところをどこかできちっと知見に基づいて、ここまではいいでしょう、ここまではだめでしょうというのをやらないと、では、ハイリスクな出産を望んでいる女性の方がいらっしゃって、先日も新聞に出ていましたけれども、自分の卵子を冷凍保存するわけです。将来に技術が確立されたときに自分の卵子を使って子供を産みたい、それを認めるか認めないかというのをきちっとやはり議論していくべきだと思うんですね。

 日本の生命倫理の考え方をどちらの方向に大臣はリードしていこうというふうにお考えなのか。それともう一つ、過去に国民を巻き込んだ議論として今日の先端医療技術の推進を図ってきたのかどうか。あわせてお尋ねしたいと思います。

島尻国務大臣 先ほどもお話をさせていただきましたが、研究に係る生命倫理の課題の検討については、先ほどの御質問にあった患者たちの要望と社会的合意についてはどちらも重要であって、そのバランスをとっていくということが大事なんだというふうに認識しています。

 その上で、その判断については、個々の具体的事例あるいは実施される技術の内容について行われるべきであろう、その際、現場の研究者あるいは所属機関による判断の基本となるものが示されているということが望ましいと考えています。

 総合科学技術・イノベーション会議におきましては、生命倫理の観点も踏まえて適切に研究開発、研究活動というものが行われるように、専門家のみでなくて国民の意見も聞きながら、関係省庁とも連携して生命倫理に関する検討を行っているところでございます。

 過去、国民を巻き込んだ議論をした上で今日の先端医療技術の推進を図ってきたのかという御質問でございますけれども、過去の事例として御紹介させていただきたいのが、「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方」というものの策定に当たって、生命倫理専門調査会というものが開かれております。

 そこでは、生命倫理、宗教、生物学、法律学、医学、そして哲学など、幅広い有識者による検討を行った。また、この専門調査会における検討に当たっては、最終的な結論を出すときに、パブリックコメントによって国民の意見を求め、さらには、東京そして神戸において合計二回にわたってシンポジウムを開催して、国民と直接対話を実施して策定を行ったということでございます。

 総合科学技術・イノベーション会議においては、今後も国民との意見の交換も行いながら、先端医療技術に関する生命倫理的な課題について多面的な議論をしていく所存でございます。

鈴木(義)委員 例えば、わかりやすく言えば胃瘻ですね。ヨーロッパは、胃瘻をするかしないか、人間の生命を短くすること、また長くすること、これはしないというルールをつくったわけです。だから、ヨーロッパでは胃瘻を極端にはやらないんです、ある程度の年齢に達した方に関しては。ですから、やはり、そういったものをルール化するのにきちっと方向を出した方がいいんじゃないかという考え方なんです。

 現場に任せますよ、技術でいいですよと。でも、家族もそれでけんかの騒ぎになるわけです。本人は、もう自分は延命治療したくないと言いながら、自分の子供の中で何人かで話をしたときに、やはりもう少し、鼻中でも何でもやっていいから長らく生きていてもらった方がいいという考え方。でも、そこは現場に任せるからといって、二年でも三年でも延命治療が続けられている。誰もどうにも、死なない。

 そうじゃなくて、医療ばかりじゃなくてほかの科学技術も、やはり一つの、ここは越えないようにしましょうよというのをきちっとやらないと、いろいろな方向に皆さんおやりになっていくわけですから、後になって法律をつくって規制する、そういうことになり得るものですから、横串を刺すという意味で、ぜひ大臣に御活躍いただければと思います。

 以上で終わります。

中根(一)委員長代理 次に、武井俊輔君。

武井委員 ありがとうございます。

 自民党、武井俊輔でございます。貴重な機会をいただきました。感謝を申し上げます。

 では、早速ですが、質問をさせていただきます。

 きょうは、安倍政権、なかんずく内閣府が観光立国として大変大きな成果を上げておりますわけですけれども、その中で、迎賓館等の国有施設の活用ということについて、まずお伺いをしていきたいと思います。

 今般、迎賓館、また京都の迎賓館の方につきましても、見学の方法が大幅に見直されるということになりました。年間二百日以上の開放、また人数も相当緩和されるということで、菅官房長官も大変力を入れておられるわけでございます。

 私も先日、赤坂の迎賓館を視察させていただいたんですが、大変荘厳な洋風建築がこの首都の四谷を曲がったところから大きく見えるわけですけれども、中に入りましても、改めて大きさを実感したわけでございます。

 きょうは松本副大臣にお越しをいただいております。副大臣はどうですか、迎賓館を御見学になったことはございますでしょうか。

松本副大臣 何回か視察させていただきました。副大臣になる前から、何回か足を運ばせていただいたところであります。

武井委員 ございましたら、ごらんになっての感想は同じかと思いますが、大変荘厳で、そしてまた調度品も一つ一つ大変美しいわけでございます。これの開放を広くしていくことは大変大事なことでありますけれども、やはり一方では、劣化でありますとか、また調度品が破壊されないであるとか、盗難であるとか、そういったようなことにもしっかりと、より管理をしていかなければならない。また、今は手すりだけをさわっていいといったような話もあるわけですけれども、これからまた、より管理が必要になってくると思います。

 今回の見学の拡充の狙いと、またその対策についてどのように取り組まれるか、お伺いをしたいと思います。

松本副大臣 迎賓館に関心を持っていただきましたことに、まずお礼を申し上げたいと思います。

 その上で、赤坂迎賓館につきましては、明治期の我が国の建築あるいは美術界の総力を結集して、当時の日本人の英知の全てを結集してつくられた建築物でありますし、京都迎賓館につきましては、我が国の伝統的技能が数多く活用をされて、京都の工芸文化というものを色濃く反映したものであります。

 両館ともに非常に価値の高い建造物でありますけれども、こうした歴史や伝統にあふれる我が国の施設は、多くの国民や外国人観光客にとっても大変魅力あるものであります。単にこれを外国からの賓客の接遇だけに使うということではもったいない。こういう思いもございまして、これを大胆に開放して、その魅力を存分に味わっていただくということは、安倍政権が進める観光立国はもとよりでありますが、元気な日本を創出していく上で大変有効な手法だ、こう考えております。

 一方において、先生御指摘いただきました、こうした一般開放をすることによって大切な大切な私たちの国の資産が荒れるというようなことがあっては元も子もないわけでございます。

 赤坂迎賓館、京都迎賓館において、赤坂においては既に済ませたところでありますけれども、実験的に、可能であろうかどうか、どこまでが可能であるかということをやった上で、一日二千人の一般公開、季節を限ってやっていたわけでありますが、四月十九日からは通年で一日三千人の方に見ていただく、まず赤坂迎賓館においてはそのように始めたい、こう考えております。

 京都迎賓館につきましては、四月二十八日から五月九日までのゴールデンウイークに試験公開ということでやらせていただいた上で、今後のことを決めていきたい。事前予約なしの当日受付で、自由に参観可能として、人数につきましても、例年は一日千三百人ということでございましたけれども、それを千五百人から二千人の方の参観をいただいた上で、今後、こうした数字が妥当であるかどうかということを検討して、七月下旬をめどに充実した公開が行えるようにしたい。

 また、一方で、接遇施設としての第一目的、これがゆるがせになるようなことでは困る。この観点も踏まえて対応していくつもりでおります。どうぞよろしくお願いします。

    〔中根(一)委員長代理退席、委員長着席〕

武井委員 ありがとうございます。

 確かに、一義的には接遇施設であることもそのとおりでございますので、また改めて、それを踏まえた上での活用ということになるわけですけれども、前進していただくことは大変ありがたいと思っております。

 その上で、せっかくのあれですから、もう一歩踏み込んだ活用もお願いしたいと思うところでございます。

 例えば、迎賓館の中は大変巨大なホールもあれば、大変美しい前庭もあるわけでありまして、こういった宮殿や美術館のハードを例えばコンベンションとかパーティーに貸し出すこと、これはユニークベニューという言い方をしますが、欧米では大変進んでおります。例えば、ルーブル美術館のパーティーなんというのも一般的ですし、迎賓館に非常によく似ていると言われますウィーンのホーフブルクの宮殿、また、ロンドンにおいては、実際にあのウィリアム王子が居住をしているケンジントン宮殿、こういったようなところも貸し出しをされているということになっております。

 日本でも、このユニークベニュー、少しずつですが、美術館等で進んではきております。当初は、食品衛生法とかいろいろな規則とかでなかなか難しいと、法的な壁も高かったんですが、最近は、JATA、日本旅行業協会、こういったようなところが専門のホームページなんかも出すようになってきたところでございます。

 そういった意味で、先ほど副大臣からもありましたが、迎賓館、その趣旨である賓客の宿泊は年に三、四回ということでありますから、そういった活用もできるんではないかと思っております。例えば、グッチとかエルメスとか、ああいった世界のブランドがパーティーをするとか。そういったようなことであれば、相当な金額でも需要はあるでしょうし。

 よく世界の超富裕層が、東京には我々が泊まるホテルがなかなかないみたいな話がありまして、いろいろ観光業界の方とお話しすると、迎賓館だったら一泊一億円でも泊まるという人は必ずいるんじゃないかといったような話もあるわけでございます。世界にはそういう超富裕層というのはやはりおるわけですね。

 そういった意味では、せっかくの開放ですから、そういったさまざまな可能性、なかんずく、こういったユニークベニューの取り組みもぜひとも鋭意検討を進めていただきたいと思いますが、見解をお伺いしたいと思います。

松本副大臣 先生、大変ありがたい御指摘をいただいているところであります。

 迎賓館というのは、日本国がお招きをした国賓等にお泊まりをいただくということであったわけでありますけれども、我が国にとって大切なお客様ということであれば、ここを御利用いただくということを可能にしようというところで、少しずつ開放に向けてやってきております。

 しかし、まだまだ、民間の企業活動といいましょうか、単なるホテルがわりということで、一億、二億いただけるんだったら誰でもお泊まりくださいというところまで一気に進めていいものかどうかということになりますと、やはり、赤坂につきましては、東宮御所としてお使いいただいた歴史もありますし、今上陛下、そして昭和天皇等々が一時期ここでお過ごしをいただいたというようなこともございます。そうしたことに対する国民感情というのもありますから、そうしたことに事細かく対応しながら、国民の皆さんの、ここまではいいよという了解を得た上でなければ、一気に経済活動を前面に押し出してというような施設ではないということをぜひ御理解いただきたいと思います。

 ただ、もっと手広くここを日本の外交上生かしていきたいという思いは強くありますので、そうした点での改善は少しずつ進めているところであります。

武井委員 ありがとうございます。

 確かに課題があることは十分承知をしておるんですけれども、諸外国ではそういった事例もありますので、ぜひともまた研究をしていただいて前向きにお取り組みをいただければというふうに思っております。

 続きまして、きょうは宮内庁からお越しをいただいておりますが、京都に存する施設の開放についてお伺いをしたいと思います。

 京都迎賓館は内閣府の所管ということで、今副大臣からもお話をいただいたわけですけれども、京都にはそれ以外にも、国家が誇る多くの建物がございます。

 具体的には、京都御所、桂離宮、修学院離宮、仙洞御所、こういったようなものが宮内庁が管理をしているものでありまして、先日NHKでも、「桂離宮 知られざる月の館」と、大変すばらしい映像が流れて感動したわけであります。

 これらにも、もちろん見学は受け付けておるわけでございまして、いろいろと見学の要項などもあるわけでございますが、現在はインターネット予約もできるようにはなっているんです。往復はがきとインターネットということになっていますが、なかなか予約がとれないというのはよく言われておりまして、インターネットの掲示板などを見ても、なかなかどうやったらとれるのかみたいなことがあったりとかする。また、英語向けの予約サイトがないにもかかわらず代理人の予約申し込みが認められていないので、なかなか外国人は現実的に予約が難しいということ。

 一応、あいていれば前日に申し込めるということになっておるんですが、現地に前日に行かないといけないとか、また、平日が基本で、土曜も毎回ではない。また、日曜、祝日は休み、見られないということにもなっております。

 そういった意味では、迎賓館が今こういう形で少しずつ開放にも動いているわけでありまして、こういった宮内庁が管理をされる京都の施設も、これだけ観光にも大きな素材になるかと思います。改善の要があるのではないかと思いますが、宮内庁としてどのようにお考えか、見解をお伺いしたいと思います。

山本政府参考人 お答えいたします。

 宮内庁におきましては、今委員御指摘のように、皇室の御活動や伝統文化に関します国民等の深い理解をいただきますように、京都御所、今お話がございましたさまざまな施設につきまして公開を進めていくということで、いろいろな取り組みをこれまでもやってきたところでございます。

 今般、先ほど副大臣の方からもお話がございましたけれども、政府全体で、国有施設を積極的に公開して内外の方々にごらんいただけるように取り組んでいくということが示されたところでございます。宮内庁といたしましても、従来の取り組みをさらに拡充していきたいと考えております。

 今お話がございました、例えば桂離宮、修学院離宮及び仙洞御所、こういったものにつきましては、土曜、日曜にも参観をこれからやっていく、それから当日受け付けも可能となる方法を検討していきたいということで、今検討いたしております。

 それからまた京都御所につきましても、事前予約不要の、土曜、日曜を含めた一般公開を通年で行う方法を検討するなど、現在、幅広く検討を行っているところでございます。

 それから、今ちょっと先生御指摘いただきました、例えば京都御所ですとか桂離宮に外国の方がインターネットで事前に参観申し込みをするということにつきまして、これはかねてからそういう御要請がございました。したがいまして、現在では、英文でございますけれども、インターネットで参観申し込みができるということにはいたしておりまして、最近は特に外国の方々も多くごらんいただいている現状にございます。さらに努力をしてまいりたいと思います。

武井委員 ありがとうございます。

 一つずつ、またこうして改善の取り組みを、これはまさに内閣府と連携して取り組んでいただきたいと思います。

 最後になりますが、宮内庁に引き続きお伺いをしたいんです。

 私は宮崎県の出身でございまして、宮崎県の中部に西都市というところがあるんですが、ここに西都原古墳群という大変大きな古墳群がございます。三百十一基の古墳が丘の上に、非常に広大な場所にあるわけですけれども、まさに神話の国、宮崎を象徴する場所として、宮崎県も、世界遺産の登録も目指そうということで活動をしておるわけでございます。

 この古墳の中心に、男狭穂塚、女狭穂塚という大きな二基の古墳があるわけでございます。これは、いわれによりますと、アマテラスオオミカミの孫であるニニギノミコトとその奥さんとされますコノハナサクヤヒメの陵墓だということになっております。現在は、皇族の墳墓であると考えられるが、いわゆる被葬者が確定できない陵墓参考地ということで、宮内庁の管理になっておるわけでございます。

 ところが、ほかの古墳、鬼の窟とかいろいろあるんですが、これは非常にいろいろ整備がされているわけですが、こういう形で、実際は、ぱっと見ると、ただ杉が覆った、こんもりした雑木の山みたいな形になっているわけであります。

 創建当時、これはえらい昔の話ですけれども、石でふいていたというふうに言われておりますが、残念ながら、現在そこを見ても、ちょっとそういうものの想像もできないというようなところでございます。

 この場所が日本史の古代史を考えるのに極めて重要な場所であるということは間違いないわけでございます。

 そういった意味で、その古墳の内部についてはまだ調査もできていないというような状況もあるわけでございまして、そういった調査、そしてまた再現も含む、やはりそういったようなことをしていくことで、日本の古代史また歴史もより身近になってくる、また観光にも非常に大きな効果があると考えております。

 もちろん、墳墓でありますから、なかんずく皇族の墳墓でありますから、静謐、尊厳を保つということは当然のことでありますけれども、それを踏まえた上でこういった整備、調査を進めていく必要があると考えますが、宮内庁の見解を求めます。

山本政府参考人 今委員御指摘のように、陵墓及び陵墓参考地につきましては、これは現に皇室において祭祀が行われているところでございまして、皇室と国民の追慕尊崇の対象になっているということでございます。したがって、何よりも静安と尊厳の保持というものが管理上最も大事なことだと、我々心して管理に努めているところでございます。

 ただ一方、陵墓あるいは参考地もそうでございますが、歴史的、文化的価値を有しているということも事実でございますので、これまでも、今先生おっしゃいました西都原古墳群は、宮崎県、地元の西都市、それから関係者がその保存、整備に非常に力を入れておられることはよく承知をいたしております。

 そういう中で、今おっしゃいました陵墓参考地の測量事業、これは県の方でおやりになったわけでございますが、それに宮内庁としても協力をしたところでございます。

 それから、今先生おっしゃいましたように、山のような形になっていて、木が非常に繁茂しているといったようなお話もございました。

 私どもにおきましても、毎年、わずかではございますけれども、間伐などの林相整備にも努めて取り組んできているところでございます。

 そもそも陵墓等におきまして、こういった墳丘上の樹木というものをどのように管理していったらいいのか。余り手を入れますと墳丘自体を傷めることにもなりますし、あるいは、樹木が余り大きくなり過ぎますとその根で墳丘がまた傷つく、こういったこともあろうかと思います。

 そういったことを、それぞれの陵墓の現状を見ながら、どのような樹木管理がいいのかといったようなことにつきまして、地元自治体等とも、よく意見を聞きまして、今後研究していく必要があるなと考えておるところでございます。

 いずれにいたしましても、陵墓の本義といったものを大事に管理していきたいと考えております。

武井委員 ありがとうございました。

 副大臣も最後までお残りいただきましたが、日本の貴重な先人の遺産、こういったようなものをさまざまな形でまた次の世代につないでいく、あわせて、連携して取り組んでいただきたいと心からお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

西村委員長 次に、河野正美君。

河野(正)委員 おおさか維新の会の河野正美でございます。

 本日は、今審議がずっとされておりませんIR法案について、そして関連して依存症対策についてお伺いをしたいと思います。

 短い時間ですので早速入りたいと思いますが、二〇一四年六月に閣議決定されました日本再興戦略において、統合型リゾート、いわゆるIRについて、関係省庁において検討を進めるというふうに位置づけられました。その後、内閣官房に検討組織が設けられ、取り組んでこられたものと思います。

 まず、これまでの検討の経過とその成果について、簡単にお聞かせいただきたいと思います。

渡辺政府参考人 お答えいたします。

 今、委員おっしゃいましたように、IRにつきましては、一昨年、平成二十六年六月の閣議決定「日本再興戦略」改訂二〇一四におきまして、「IR推進法案の状況やIRに関する国民的な議論を踏まえ、関係省庁において検討を進める。」というふうにされたところでございます。

 これを受けまして、同じ年、平成二十六年七月に、内閣官房に特命事項担当の内閣審議官を置き、さらにその下に関係府省庁からの出向者の体制を整えまして、これまで、委託調査事業ですとか関係者からのヒアリング、あるいは海外現地調査などを通じまして、諸外国におけるIRの事例に関する調査検討などを行ってまいりました。

 例えば、IRの諸外国の事例に関しましては、IRが観光振興、地域振興、産業振興などに与える影響、効果ですとか、逆に、犯罪防止、治安維持、青少年の健全育成それから依存症防止、こういった観点から問題を生じさせないための制度上の措置といったことにつきまして、その実態などを調査、情報収集してまいったところでございます。

河野(正)委員 ことし三月二十二日火曜日の読売新聞に、カジノ特命チーム、業務凍結、五輪に間に合わないとの記事が掲載されております。IR開業を二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックに向けた成長戦略の目玉の一つとしていたが、間に合いそうにもないので、一旦チームを閉じるとの趣旨でございました。東京オリンピックにはもう間に合わない、長期の検討課題として練り直すべきであるとの政府高官の発言も紹介されています。政府高官という方がどなたかわかりませんが。

 この記事は事実であるんでしょうか。事実とすれば、IRについて政府のスタンスが変わったと受けとめなければいけないのか。政府の見解を伺いたいと思います。

渡辺政府参考人 お答えいたします。

 そのような報道があったことは承知しておりますけれども、業務を凍結するといった事実はございません。

 私どもとしましては、一昨年の閣議決定、それから同じ趣旨で昨年も閣議決定をされております、この閣議決定に基づきまして政府として必要な体制を整えて関係省庁で検討を進めていく、そういうスタンスには変わりはございません。

河野(正)委員 先ほども紹介しました日本再興戦略では、このIRについて、「観光資源等のポテンシャルを活かし、世界の多くの人々を地域に呼び込む社会」「世界に通用する魅力ある観光地域づくり、外国人旅行者の受入環境整備及び国際会議等(MICE)の誘致・開催の促進と外国人ビジネス客の取り込み」という項目で取り上げられております。つまり、外国から観光客を呼び込む一つの方策として位置づけられているわけでございます。

 現在、外国人の入国者は増加の一途にありまして、二〇一五年は過去最高の千九百七十三万七千人と、前年比四七・一%の増加、一九六四年以降最大の伸び率というふうになっております。

 こうした状況を見ますと、IRの整備がなくても我が国は訪日観光外国人を呼び込む力があるというように考えますが、二〇一九年ラグビーワールドカップや翌二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックを控えまして、より一層訪日客がふえていくのではないかというふうに考えます。

 昨年まで、IRもない中で、訪日外国人客数の増加の理由をどのように分析されているのか、そして今年以降の推移について政府としてどのような見通しを持っておられるのか、伺いたいと思います。

古澤政府参考人 お答え申し上げます。

 訪日外国人旅行者数は、昨年、二〇一五年の年計は、今御指摘がありましたとおり、対前年比四七・一%増の千九百七十三・七万人、ことし、二〇一六年に入りましても、一月から二月までで対前年比四三・七%増の三百七十四・三万人となるなど、引き続き好調となっております。これは、近隣アジア諸国などの経済成長と円安傾向の継続のほか、ビザの大幅緩和や免税制度の拡充、CIQ体制の充実などの政府一丸となった取り組みの推進、さらには継続的な訪日プロモーションの効果などによるものと考えております。

 今後の見通しにつきましては、現在、次の時代の新たな目標設定と、そのために必要な対応について検討を行うべく、安倍総理を議長といたします、明日の日本を支える観光ビジョン構想会議で議論をしているところでございます。この観光ビジョン構想会議において議論された内容を踏まえつつ、さらにレベルの高い観光立国の実現に向け、政府一丸となって取り組んでまいりたいと考えております。

河野(正)委員 私の地元福岡でも、アジアのゲートウエーとして本当に多くの観光客に来ていただいているところでございます。本当に地域経済に活気を与えてくれているというふうに思っているところでありますけれども、一方で、MICEという、いわゆるミーティング、会議であるとか展示会、国際会議、こういったことに関する対応が我が国は極めておくれている、出おくれているんじゃないかなと思います。

 日本最大と言われる東京ビッグサイトに関しましても、お手元に資料を配付させていただいておりますけれども、世界でいえば七十二番目であります。残念ながら、我が福岡県のマリンメッセというのがありますが、今、二つ目をつくろうというふうに検討されていると思いますが、〇・九万平方メートルしかないということで、極めて小さい。

 一方で、見ていただくと、福岡からすぐ近くにありますけれども、中国、上海とかに目を落としますと、極めて大きい。二位にありますけれども四十・三万、あるいは二十万、八・一万と、上海だけでも三つあるということであります。

 整備ができていないことで、福岡でも多くのこういった展示会の申し込みを断っているというふうに聞いておりますし、極めて大きなビジネスチャンスを失っているのではないかなと思っています。

 今後はむしろ、東京オリンピック・パラリンピックの開催後、訪日客を継続して呼び込んでいくための手段として、今我が国にないIRのような施設整備が求められるんじゃないかというふうに思います。カジノ法案という見方だけではなくて、幅広い視点で検討する必要があるんじゃないかと思います。また、これに伴って、犯罪、治安対策や青少年の健全育成、依存症防止などの課題を乗り越えるべく、着実に検討を積み重ねて実行に移していくことが大切であると思います。

 立法府はIR法案の検討を進めることでその役割をしっかりと果たしつつ、行政府においても時期が来れば迅速に検討、実行するような体制が求められますが、政府の見解を伺いたいと思います。

渡辺政府参考人 お答えいたします。

 先ほど申し上げた二度にわたります閣議決定も、政府の中に内閣審議官を置き、さらにその下に体制を整えて、関係省庁において着実に検討を進めていく、そういう目的のために設けられているものでございます。

 政府としては、必要な体制を整えて、引き続き検討してまいりたいというふうに思っております。

菅国務大臣 まず、先ほどの委員からの質問の中で、業務凍結という話がありました。

 事務方が述べたとおり、政府ではそうしたことはありません。政府高官の発言は、少なくとも私でないことは事実であります。

 いずれにしろ、観光立国を目指す我が国にとって、昨年、二〇二〇年目標の二千万まであと三十万ぐらい足りないところまでこぎつけています。これからも外国人の訪日観光客をふやすためのさまざまな施策というのは当然国を挙げて行うわけでありますので、そういうことを考えたときに、このIRというのはまさに欠かすことができないというふうに考えています。

 今、国会に議員立法の中で提出されておりますけれども、そうした中で、成立をした暁にはすぐに対応することができるような状況はしっかりつくっておきます。

河野(正)委員 どうもありがとうございました。

 官房長官はもう退席されて結構でございます。ありがとうございました。よろしくお願いいたします。

 次に、依存症対策について伺いたいと思います。

 私は、精神科医としてさまざまな依存症患者さんの治療に当たってまいりました。我が国の依存症対策というのは極めて不十分であるというふうに考えております。

 IRの議論におきまして、反対という方々の大きな理由の一つが、ギャンブル依存症ということではないかと思います。我が国では、パチンコは遊技という建前だと思いますけれども、一方で、パチンコによってさまざまな問題を生じている方も少なくはありません。

 先日、大分県の中津市、別府市など二つの市が、約二十五年間にわたって実施してきた、生活保護受給者がパチンコなどに興じたことを理由に扶助を停止する措置を取りやめた事例について伺いたいと思います。

 このように、生活保護受給者がパチンコなどにお金を使ったことを理由にして扶助を停止する例が全国でどのくらいあるのか、あわせて、政府が把握している事実関係と、これまで二十五年間実施してきたのになぜこのタイミングで取りやめることになったのか、政府としての認識を伺いたいと思います。

堀江政府参考人 お答え申し上げます。

 生活保護とパチンコ等の依存症の関係でございますけれども、厚生労働省では、生活保護を受けていただいている方が過度にギャンブルなどに依存することは、生計状況の適切な把握、支出の節約を保護を受けておみえになる方に求める生活保護法の趣旨から、望ましくないというふうには考えてございます。

 そうした上で、今般の件でございますけれども、平成二十五年の法改正で、生活保護を受けておみえになる方に健康保持増進、収入、支出等の生計状況の把握の義務をかけているわけでございますけれども、それはあくまで本人の主体的な取り組みを求めるという努力義務として規定しているところでございまして、今回の中津市の件につきまして申し上げますと、それを生活保護の停止の理由として取り扱うような形になって、ちょっと一律的な形になってございましたので、当該処分は不適切だということで大分県を通じて指導したものでございます。

 同様の事例でございますけれども、別府市、中津市それから臼杵市においてあったというふうに存じます。

河野(正)委員 これは本当にさまざまな問題を含んでいる難しい政策課題ではないかなというふうに思います。

 私も、生活保護費の大半をお酒に費やす方々というのを極めて多く見てまいりました。中には不幸な転帰をとった方も数知れずおられます。最近なかなか病院受診に来られないなということで、訪問のスタッフとかが行ってみたらお亡くなりになっていたとか、極めて悲しい事例を見てまいりました。

 いわゆる依存症対策の観点から、生活保護受給者へのこういった生活指導をどのように考えておられるのか、政府の見解を伺いたいと思います。

    〔委員長退席、中根(一)委員長代理着席〕

堀江政府参考人 ギャンブルですとかアルコールですとかそうした依存症は、先ほど来の生活保護の仕組みから申しますと、本人には自覚、努力を求めつつ、ただ、それが依存症というような形になっていた場合には、指導するだけではなくてきちんと医療につなげていく、こういうことが大事なわけでございます。

 生活保護の中には自立支援プログラムということがございまして、いろいろな形で、ギャンブルであれば金銭管理を支援する取り組みを行ってみたり、それから、治療支援を必要とする生活保護受給者に対しましては専門的な医療機関への受診を勧奨したりするといったことをさせていただいております。

 ここで大切なのは、いろいろな専門機関と生活保護の被保護者をどのようにつなげていくかということでございまして、自立支援プログラム実施に当たりましては、ケースワーカーと保健所等が連携するようにさらに福祉事務所を促してまいりたい、このように考えてございます。

河野(正)委員 時間が来ましたので終わらせていただきますけれども、本当にこういった依存症の対策というのは我が国はおくれていますし、専門スタッフも極めて少ないのが現状でございます。今後議論されるであろうIR法案と絡めて、しっかりとこういった問題も解決していきたいというふうに考えておりますので、よろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

中根(一)委員長代理 次に、緒方林太郎君。

緒方委員 民主党、緒方林太郎でございます。

 そう名乗って質問するのもきょうで最後かと思いますと、万感の思いであります。

 きょうは、TPPの国内実施法ということで、石原大臣とはもう何度目になるかわかりませんが、よろしくお願いを申し上げます。この後、TPPの特別委員会でも御一緒させていただきますので、同じく万感の思いで質問をさせていただきたいと思います。

 先般この委員会で、TPPの国内実施法については三月八日に閣議決定したものがこれから委員会に上がってくるわけですが、条約を国会で承認して国内法も成立させた後、追加的な立法措置についていかがですかというふうに石原大臣に質問いたしました。石原大臣は、想定していないとか、含みのある答弁だったり、TPPはガラス細工であると。

 ちょっと再交渉と混乱しておられるんじゃないかという不安を持ったわけでありますが、その後、私、質問主意書を出しまして、この件については追加的な立法措置は不要であるという答弁が返ってまいりました。これはこれでよろしいですね。

石原国務大臣 言葉足らずで通じていなければ恐縮でございますが、そのとおりでございます。

緒方委員 それを踏まえて質問したいと思います。

 TPPを国会承認して、そして国内実施法を可決した上で、ニュージーランドに寄託した後に立法措置をとらないということについてはよくわかりました。

 では、立法措置ではなく、例えば法的拘束力のないサイドレターとか口上書の交換等を通じて相手の要望に応えようという可能性も封じられているということでよろしいですか、石原大臣。

石原国務大臣 この件についても丁寧に答弁をさせていただいてきたつもりでございますし、また、委員からいただきました質問主意書にも、しっかりと答えるようにということで、かなり詳しく書かせていただいたと思っておりますが、委員の問題意識は、違ったら言っていただきたいと思うんです、ニュージーランドに出しました、それで、協定に署名した国からサイドレター、サイドレターも二種類あると思うんですけれども、法的拘束力のあるもの、あるいはないもの等々で、何か新たな要求をされるんじゃないかという認識のもとでの御質問だと思うのでございます。

 これも、何度もガラス細工という言葉を使わせていただいたんですけれども、関税だけではなくて、同時並行で議論がなされてきたわけでございます。そのバランスの中でぎりぎりの合意がなされた協定であり、この協定に沿って国内対策をするための法案、この間、十一のうちの幾つか御紹介させていただきましたけれども、そういう法律案を準備させていただいたわけでございます。

 そういうバランスを考えますと、委員の御懸念のようなことは、国益を害することになるようなことはないというふうに御理解をいただければと思っております。

緒方委員 ちょっと今よくわからなかったんですが。

 まず、もう一度言いますけれども、これは再交渉の話をしているわけではありません。わかっていますね。

 アメリカの国内実施法では、先般も申し上げましたが、サーティフィケーションの仕組みがあって、サーティフィケーションの仕組みを通じてアメリカは、主語は大統領になっていますが、大体その後ろにはコングレスがいて、コングレスから要求があったときに大統領がそれを受けて日本に追加的に、日本の国内法のこことこことここは実はTPPの義務を満たすのに十分ではないではないかという指摘をして、そしてそれが全部きちっとコンプライアンスが満たされた状態のときにだけアメリカは批准書を寄託する、そういうことがあるので、それを通じてアメリカが要求してきたときに日本は追加的な国内法措置を打つことはない、これについては質問主意書で答弁がありました。

 けれども、実は立法措置ではなくて、外務省にいたときの経験でよくあるんですけれども、例えば解釈を確定させましょうというツールを通じて、この条約のここはこういう解釈です、そういう口上書の交換をすることを通じて事実上の国内措置を打つとか、いろいろな手法はあるんです。法的拘束力のないサイドレターを交換することで何らかの措置を講ずる、こういうこともあると思います。

 そういう可能性も含めて、閉じられているということでよろしいですね。

    〔中根(一)委員長代理退席、委員長着席〕

石原国務大臣 ただいま委員が御指摘されましたサイドレターあるいは口上書、こういうものによって協定の解釈をこういうふうに変えろよというようなことが仮に、仮の話ですけれども、そういうことがあるか、そういうことがあったとしても、そういうことには応じません。

緒方委員 では、この件はこの次の質問で終えたいと思います。

 立法措置は不要ということでありますが、立法措置に当たらないものの追加的な措置もやらないということでよろしいですね。

石原国務大臣 緒方委員は例として、委員の御経験の中で、口上書等々を交わして解釈を変えたり、さらに求めたりするようなことが多々してあるので、そういうことが今度のTPP協定においてもあるのかないのかという御質問というふうに理解をさせていただくならば、ございません。

緒方委員 これで終わると一回言っちゃったんですけれども、もう一個思い出したので、もう一つだけ。

 立法措置をやらないということでありますが、例えば政令、省令、さらには予算措置を通じてアメリカの要望に応えるということも、この法律が通ってしまった後は基本的にないということでよろしいですね。

石原国務大臣 基本的にないという解釈でございます。

緒方委員 基本的にが入ったんですけれども、基本的にですか、それともないですか、どちらですか。

石原国務大臣 委員が、基本的にあるんですか、ないんですかという御質問でございましたので、基本的にない、ないということでございます。

緒方委員 ないという答弁があったと理解をいたしました。

 では、この件は次に移っていきたいと思います。

 次は、文化庁と外務省ですが、TPPにおける著作権の法定損害賠償の件です。

 TPPの著作権章におきましては、侵害があった場合、民事上の司法手続において、法定の損害賠償について定めなくてはならない、もう一つは懲罰的な損害賠償ということです。二つ書いてあるんですけれども、事前のレクで懲罰的な損害賠償の制度については採用しないということだったので、法定の損害賠償を定めなくてはならないとなっています。

 今回上がってきた改正著作権法においては、著作権等管理事業者の使用料規程により算出した額で賠償請求が可能ということが書いてございます。

 法定の損害賠償というのは、英語の正文ではプリエスタブリッシュトダメージズとなっています。今回の改正著作権法の中におけるどの部分がプリエスタブリッシュトなんでしょうか、文化庁。

堂故大臣政務官 お答えします。

 TPP第十八・七十四条の6の規定は、著作権等の侵害を受けた権利者が、損害と侵害行為との因果関係の立証をせずに一定の範囲の額の支払い、一定額の支払いを請求できる旨をあらかじめ定めることを求めるものであると解されます。

 したがいまして、請求可能な損害額を特定する一定の基準や方法をあらかじめ定めておくことをもってプリエスタブリッシュトダメージに該当するものと解されます。

 そこで、御質問のありました現行著作権法第百十四条第三項は、著作権等の侵害があった際に、著作権者等が許諾を出していたならば得ることができたはずの額、いわゆるライセンス料相当額を請求可能であるということを定めたものでありますけれども、今回の改正案により新設される第百十四条第四項においては、著作権等管理事業者が管理する著作物等について権利侵害があった場合に、当該著作権等管理事業者の定める使用料規程により算出した額を損害額として請求可能とすることを定めたものであります。

緒方委員 それは単に法律で定めたというだけでありまして、プリエスタブリッシュトの要素がないんだと思うんですよね。

 私は実は、このプリエスタブリッシュトダメージズという言葉のプリエスタブリッシュトを法定と訳していること自体が誤訳じゃないかと思うんですね。どこにも法律のという言葉が出てきません。これは単に事前に定めるところの損害賠償と本来訳すべきものであって、今政務官が言われたのは、単に法律でこういう規定でこういう賠償をとりますということが書いてあるだけであって、プリエスタブリッシュトの要素がどこにもないんですね。

 条約の解釈、正文は英語ですので、法定の損害賠償というふうに日本語で訳されていますが、それに基づいて法律で損害賠償の基準を定めるだけであれば普通の、ただの損害賠償制度を設ければいいわけであって、そこに法定の、英語で言うところのプリエスタブリッシュトというのが入っているということは、何らかの付加価値がつかなきゃおかしいはずですね。いかがですか。

 では、外務省。

山田大臣政務官 お答え申し上げます。

 御指摘のプリエスタブリッシュトダメージズの制度は、侵害行為があった場合に、権利者が、損害と侵害行為との因果関係の立証をせずに侵害者に対して侵害行為の類型に応じた一定の範囲の額の支払いを求めることができる制度でございます。

 侵害行為の類型に応じた一定の範囲の額の支払いを求めることができるようにするためには、その一定の範囲を特定する基準や方法を法定することが必要であり、このような制度を法定の損害賠償と和訳することとしたものでございます。

 なお、一九九五年に発効したWTO協定の知的所有権に関するTRIPs協定の訳文においても、プリエスタブリッシュトダメージズを法定の損害賠償としております。また、二〇一二年に我が国が締結しましたACTA、偽造品の取引の防止に関する協定の訳文においても、プリエスタブリッシュトダメージズを法定の損害賠償としております。

緒方委員 つまり、実際に生じた損害以上の請求をすることができるということを使用料規程を通じて損害賠償として定めるから、だから法定のという要件を満たしているということですか。よろしいですか。

 では、外務省。

佐藤(達)政府参考人 ただいま政務官の方から御説明させていただいたとおりでございますけれども、損害と侵害行為の因果関係の立証をしないで侵害者に対して侵害行為の類型に応じて一定の額の支払いを求めることができる制度、こういった制度をプリエスタブリッシュトの制度というふうに考えてございます。

緒方委員 実際に生じた損害とそれに対する損害賠償の額が、立証しなくて、必ずしもそれに見合わないものであったとしても、そこに推定を働かせる使用料規程があれば、それでプリエスタブリッシュトダメージズだというふうに解釈されるということですか、外務省。

佐藤(達)政府参考人 政務官から申し上げたとおりでございますけれども、侵害の類型に応じて一定の額の支払いを求めることができるようにするために一定の範囲を特定する基準とか方法を法定することが必要でございまして、こういったものを定めているものを法定の損害賠償というふうに考えて和訳しているものでございます。

緒方委員 それは、本来日本語に訳すときは、プリエスタブリッシュトというのは多分、事前に定めるところのという表現ですけれども、その要素ではなくて、単に法律で定めたというだけにしか聞こえないんです。

 法律で損害賠償の基準を定めたことによって、この要件はこの義務が十分に果たされているというふうに外務省は考えているということですね。

佐藤(達)政府参考人 一定の範囲の額の支払いにつきまして、範囲を特定する基準、方法、こういったものを定めることによりまして損害額を権利者が理解することができるということで、それを法定の損害賠償というふうに訳してございます。

 政務官から申し上げましたとおり、これは、WTOのTRIPs協定の場合にも同じような形で使ってございますし、ACTAにおいても同じように、プリエスタブリッシュトダメージズをそのまま法定の損害賠償というふうに訳しているものでございます。

緒方委員 これは条約審議ではありませんので、もう一回議事録をよく見させていただいて検討させていただければと思います。

 もう一つ、改正著作権法の関係で、この法定損害賠償制度は、TPPの協定の中で、将来の侵害を抑止する目的を持っていることを要件といたしております。今回の改正著作権法の規定は、将来の侵害を抑止する目的、目的です、目的を持っているというふうに思いますか、文化庁。

堂故大臣政務官 著作権が守られることによって、そのことが抑止される効果もあると思っています。

緒方委員 効果があるということではないんです。目的を持たなきゃいけないんです。そういう目的のものだというふうに認識をしておられますか、堂故政務官。

西村委員長 ちょっと事務的に先に、磯谷長官官房審議官。

磯谷政府参考人 御指摘の法定損害賠償のTPP協定の目的との関係でございますけれども、TPP協定においては、法定の損害賠償と将来の抑止することについて、それぞれ目的とするということが定められているのは御指摘のとおりでございますけれども、これをどのように実施するかについては、各締約国に一定の裁量が認められております。

 政府の見解といたしましては、将来の侵害抑止を本来的な目的とする制度を定めなくても、将来の侵害抑止の効果が発生することを副次的な目的とする制度を定めることによって、国内の填補賠償原則に整合しつつ、TPP協定における法定の損害賠償に係る制度を定めることは可能であるというふうに考えております。

緒方委員 今、副次的な効果ではなくて、副次的な目的と言われましたね。それはそれでいいですね。もう一度、確認であります。

磯谷政府参考人 将来の侵害を抑止する効果が発生することを副次的な目的として制度設計することが可能であるというふうに考えております。

緒方委員 それは例に例えると、豆腐をつくる目的を持って副次的におからができたというのを後で考え直してみて、実はおからをつくるのが目的だったと言っているのに等しいんですよね。それに近い状況なんです。

 豆腐をつくる目的を持って副産物でおからができました、それをもう一回できた後に見てみたら、実は、いや、あれは豆腐をつくるだけではなくて、おからをつくることも目的でしたと言い直しているに近いんです。

 これは、最高裁判決で、そもそもそういう抑止的な効果を持つことというのは、先ほど、民法七百九条だったと思いますけれども、填補賠償制度との関係で相入れない、そういうものを日本の法制度に入れることはだめだというふうに言われていることとの関係で、副次的な効果として抑止するということを副次的な目的と言いかえることは若干の詭弁ではないかと思いますが、文化庁、いかがですか。

磯谷政府参考人 お答え申し上げます。

 議員御指摘の最高裁判決におきましては、我が国の損害賠償制度が、将来における同様の行為の抑止を本来的な目的とするものではないこと等が判示されておりますけれども、他方で、当該判決は、我が国の損害賠償制度が、将来の侵害を抑止する副次的効果を有することも認めております。

 このことからすれば、将来の侵害を抑止する効果が発生することを副次的な目的として我が国の損害賠償制度を設計することは、最高裁判決との関係においても可能であるというふうに考えております。

緒方委員 いや、それは本当に、さっきの例で言うと、豆腐をつくる目的だったんだけれども、初めから実はおからをつくる目的もあったんだと言っているに等しいと思います。これは法案審議のときにもう一度やらせていただきたいと思います。

 それでは次に、農林水産業。伊東副大臣、よろしくお願いいたします。

 TPPの影響試算では、農林水産品について、生産量の減少がゼロということになっています。米一粒たりともTPPを行った結果として生産量が減りませんというふうに言っておられます。そのために必要な対策とは何ですか。

伊東副大臣 緒方委員の御質問にお答えをいたします。

 今回の試算では、交渉で獲得した措置とともに、体質強化策あるいは経営安定対策、また国内対策によりまして国内生産量が維持されると見込んでおります。これはあくまでもTPPによる関税削減等の措置が国内生産に与える影響を分析したものでありまして、TPPの影響ということでありまして、例えば長期的な米の需要減少など、TPP以外の要因は考慮しておりません。

 対策は、TPP対策と、TPP以外のその他の振興策、対策が二つあるところでありまして、TPPの影響を緩和する国内対策につきましては、昨年十一月の政策大綱、攻めの農林水産業への転換のための競争力強化、体質強化策、また経営安定、安定供給のための備えとして、協定発効に合わせて経営安定対策の充実等を講ずることといたしております。あわせて、農林水産業の成長産業化を一層進めるため、検討の継続項目として掲げました十二項目につきまして、本年秋を目途に具体的内容を詰めていきたいと思います。

 また、TPP以外の要因に対する対策は、また必要があれば御答弁させていただきます。

緒方委員 経営対策をしっかりやっていくと言われました。それでは、牛肉の例を挙げたいと思います。

 牛肉は、TPP発効の直後、即時に三八・五%から二三%まで、一五・五%の関税の削減、関税額として二百億円の減少がございます。副大臣御存じのとおり、牛肉の関税はそのまま経営安定対策の財源として使われております。

 では、この二百億円、少なくとも初年度の二百億円については一般会計から全て補填するということでよろしいですね。

伊東副大臣 牛肉につきましては、オーストラリアとのEPAで、初年度八%、二年目二%、三年目一%、二七・五%に来ますので、それと同時になると思います。また、十六年目に最終税率九%になる話でありますから、長期関税削減期間を確保しているということでもあります。

 また、価格等々、予算のお話でありますけれども、これらの予算、今、二百億というお話がありましたけれども、既存の農林水産予算に支障を来さないよう、政府全体として責任を持って毎年の予算編成過程におきましてこれを確保する、こうなっております。

緒方委員 済みません。先ほど二三%と言いましたが、間違えていました。二七・五%ですね。

 だから、最終的に九%まで下がる。二九・五%下がって、そのときの関税収入の減少というのは六百八十億円です。これから六百八十億円減っていくわけですよね。これが今は全て、経営安定対策ということで、その財源に使われているわけです。六百八十億円は全て一般会計から補填するつもりがおありになりますか、副大臣。

伊東副大臣 先ほども御答弁しましたように、これらにつきましては、毎年の予算編成の中で、既存の農林水産予算に支障を来さないように、政府全体で責任を持って取り組んでいくということでございます。

緒方委員 最後に一問だけ。

 もう一度聞きます。つまり、六百八十億円については、現時点で、絶対にこれは確保するとは言っていただけないということですね、副大臣。

伊東副大臣 政府として、この牛肉だけではなくて、あらゆる関税の減少等々もありますので、そうした影響が出た場合には、毎年の政府全体の予算編成の中でしっかり取り組んでいくということでございます。

緒方委員 よくわかりました。

 ありがとうございました。

西村委員長 次に、濱村進君。

濱村委員 公明党の濱村進でございます。

 きょうは、国際金融経済とTPPについて少しお伺いをできればと思います。

 先ほどの緒方委員とは違って、私はTPP特委のメンバーではありませんので、TPPについて聞くのはこれが最初で最後じゃないかとは思いますが、まずはその前に、前段として、国際金融経済、今の状況について少しお伺いをしたいと思います。

 今、経済を取り巻く環境は、ファンダメンタルズとしては、非常に数字としては悪くないんだということでございます。ただ、一方で、一応G7をしっかりとスコープに入れた上で、政府におかれましても国際金融経済分析会合というものを開かれておられます。どうも報道では、消費税の増税の延期であるとかそういう話ばかりがされるわけではございますが、もっと違うところについても議論をされているというふうに私は思っております。例えば財政出動であったりとかそういうことについては、ほぼ全ての有識者の方々が触れておられるということで、非常に重視をすべき政策なんであろうというふうに思うわけでございます。

 まずは、この分析会合を踏まえつつも、今の経済においてどういう認識なのか。米国において利上げプロセスというのは非常に不透明になっているであったりとか、あるいは、中国を初めとする新興国経済も、一時の成長率からは非常に鈍ってきているというような指摘もございます。原油価格の低迷が非常に経済に影響を及ぼしている点、そしてまたEUにおいても金融リスクがあるというような状況でありますが、これを今政府としてどのように認識されておられるのか、御所見をお伺いしたいと思います。

高木大臣政務官 委員は民間のシンクタンクにおられたということで、経済には精通していると承知しております。

 委員御指摘のとおり、年明け以降、中国の景気減速への懸念、あるいは原油価格の低下等を背景に、世界的に株価の下落、為替の変動等、金融市場の変動が見られる局面がございましたが、二月の二十六、二十七日に開かれました二十カ国財務大臣・中央銀行総裁会議の声明で、最近の市場変動の規模は世界経済の現在のファンダメンタルズを反映したものではないと認識が示されたところでございます。これはまさにG20の声明でございます。

 政府としても、世界経済のファンダメンタルズは大きく揺らいでいると認識をしておりません。世界経済としては緩やかに回復していると考えております。

 また、G20以降も、中国では全国人民代表大会において積極的な財政政策や構造改革等の推進が決定されたこと、さらには、原油価格についても主要産油国が原油市場安定に向け話し合いを行っていること、また、今月の米連邦公開市場委員会、FOMCにおいて利上げの見通しが下方修正されたこと、これら等もあって、最近の金融市場で大きな変動は見られないと認識をしております。

 政府としても、世界経済や金融市場の動向については、引き続き十分注視してまいりたいと考えております。

濱村委員 ありがとうございます。

 基本的な認識をお伺いできましたが、その中で日本経済についてはどういう御認識であるか、続けてお伺いしたいと思います。

高木大臣政務官 日本経済についての現状認識であります。

 これはもう委員もごらんになったと思いますが、三月の月例経済報告、我が国景気の現状について、企業や消費者のマインドにこのところ足踏みが見られる、個人消費は力強さを欠いているなど、このところ弱さも見られるとしているところであります。

 しかしながら、これは総理も国会の答弁で述べられておりますように、企業収益は過去最高、労働市場も二十四年ぶりの有効求人倍率の高さ、全国の全ての都道府県で有効求人倍率が改善している、日本経済のファンダメンタルズはしっかりしていると認識をしております。したがって、企業収益や雇用・所得環境は改善傾向が続いており、緩やかな回復基調が続いているとの認識には変わりはございません。

 今後とも、あらゆる政策を総動員して景気回復を実現してまいりたいと考えております。

濱村委員 今、緩やかな回復基調であるということでありました。

 これは確かに月例でもそのような報告でありましたけれども、国際金融経済分析会合におきましてもいろいろな御意見があるわけですが、その中でちょっと私が気になったのが、スティグリッツ教授が、経常の黒字を開発銀行に回すべきだと、新たな開発銀行の創設などについても触れておられましたが、果たしてこれはどういう御趣旨なのかというのは、会合に出ておられた方においても、短い時間だったのでなかなか全部が全部聞けなかったというふうには御報告をいただいておりますが、開発銀行は確かに大事な取り組みだとは思います。

 開発銀行といえば、昨今でいえば、中国を中心としたAIIBがあるというわけでございます。このAIIB、政府としてはこれを注視するというスタンスであるというふうに理解しておるわけでございますが、現在のAIIBの状況について、政府の現状認識をお伺いいたします。

垂政府参考人 お答えさせていただきます。

 膨大なアジアのインフラ需要に効果的に応えていくことは非常に重要な課題でございます。AIIBは、アジアのインフラ需要にしっかりと応えようとしているという意味では一つの取り組みであるというふうに考えております。そうした観点から、日本政府としても、中国が中心となって立ち上げたAIIBの今後の発展には関心を持っております。

 ただし、AIIBが公正なガバナンスを確立しているのかどうか、借入国の債務の持続可能性や、環境、社会に対する影響への配慮を確保していくかどうか、これは非常に重要な点でございます。その実際の運用を含め、注視していく必要があると考えております。

 日本は、AIIBがこうした国際金融機関にふさわしいスタンダードを備えることにより、アジア地域の持続的な発展に寄与する機関として役割を果たすことを期待しております。

濱村委員 政府は、公正なガバナンスが保たれるのかどうかというところでもやはり懸念があるということで、私はそれは非常に重視するべきことであるというふうにも思います。

 また、これはさまざま各国が出資金を出すわけでございますけれども、それに対する払込金額の状況についても、これも正確な情報なのかどうかというのはわかりませんけれども、払い込みがいまいち進んでいないというような情報もあるわけでございます。そうした趣旨からいいますと、日本はADB、アジア開発銀行を中心として、このインフラ投資あるいは開発についてはリーダーシップをしっかりととっていくべきなのであろうというふうに考えるわけでございます。

 そうした中で大事になってくるのは、経済の政策については必ずしも一国だけでどうこうできるという状況にはないということだと思います。そういう意味からしても、非常にTPPは大事になってくるかというふうに思うわけでございます。

 今後、日本はしっかりとTPPの締約国とともに国際協調をしていくことが大変重要であろうというふうに思うわけでございますが、まずは、この国際協調という観点においてTPPはどのような役割を果たしていくとお考えであるのか、御確認をしたいと思います。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 グローバル化が進展する中で、政策面におきましても国際的な連携が重要だという御指摘はまさにそのとおりだと認識しているところでございます。

 二国間のEPA、FTAとは異なりまして、TPPのような広域経済連携協定の場合は、広域的に一つの経済圏を構築するという目標のもと、さまざまなルールを統一しようとする点が特徴的でございます。

 交渉の現場に立ち会った者として申し上げますと、TPP交渉におきまして、十二カ国でルールを一緒につくり上げていくというプロセスに非常に大きな意義があったと考えているところでございます。TPPの先には、東アジア地域包括的経済連携、RCEP、さらにはアジア太平洋自由貿易圏、FTAAP等、アジア太平洋の国々とともにより大きな経済圏をつくり上げていくことが期待されているものでございます。

 TPPは、今後、我が国が国際協調の取り組み、こうした広域連携におけるルールづくりの中核的存在となる、そういうことを進める上で重要な機会になったものと認識しております。

濱村委員 RCEP、FTAAPは今後の取り組みとしてスコープに入ってくるのであろうとは思いますが、EUとのEPA、FTAについても同時に入ってくるのかなというふうに思います。

 実は、日・EU議連というのがございまして、私もその一員でございますが、この間、去年四月から五月にかけてこの議連でストラスブールに行ってまいりまして、さまざま意見交換をしてきた。EUの議員さんとしっかりとEPA、FTAについて議論をしてきたというわけでございますが、その副団長が実は石原大臣だったんですね。きょうは石原大臣はお忙しいのでなかなかお見えにならなかったわけですけれども、しっかり大臣にこうした取り組みを力強く進めていただきたいというふうに思うわけでございます。

 ちょっと個別具体の話をTPPについていたしますけれども、これは正文は英語であるということはよく認識しておるんですが、英語であると私はなかなかそれを読むのはしんどいなということで、日本語はそれなりに勉強しました。きょうも、四つ目のテキストを、私が一応勉強したあかしで附箋がたくさん張ってあるということを皆さんにお見せするために持ってきたわけですが、中身について、実は十一章の金融サービスについてお伺いしたいわけです。

 二条の「適用範囲」。きょうは一応資料もお配りしておるわけですが、二条の3に公的年金についての記載があります。ここで言う公的年金計画というのは何を指しているのか、確定拠出年金は含むのかどうか、確認をしたいと思います。

伊原政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のありました金融サービス章、第十一の二条の3、「公的年金計画又は社会保障に係る法律上の制度の一部を形成する活動又はサービス」につきましては、この十一章の規定の適用はしないとしております。

 ここに言います「公的年金計画又は社会保障に係る法律上の制度の一部を形成する活動又はサービス」には、我が国の公的年金制度それから確定拠出年金制度、公的医療保険制度などが該当するものと考えております。

濱村委員 金融サービスについて、公的年金についてはTPPは適用しないということになるわけでございます。それをなかなか、この文章を読んで理解をできる人とできない人がいて、ちまたに書かれている本とかで多少誤解をされておられる部分もあるかというふうに認識しております。なので、ちょっとあえて確認をさせていただいているわけでございます。

 日本の公的年金というのはGPIFに寄託をされております。GPIFが運用を行っているということで、それ自体が、二条の3にあるただし書きですね、ただしということで、金融機関との競争を行うことを認める場合には適用するというふうにあるわけでございますが、これについてはGPIFは該当するのであるかどうか確認したいと思います。

伊原政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のありましたGPIFは、厚生年金保険法、国民年金法に基づきまして、厚生年金それから国民年金の保険料を原資とする積立金の管理及び運用を寄託されている、日本における唯一の機関でございます。このほかにこの業務を担う機関は存在いたしません。

 したがいまして、GPIFは、TPP協定の第十一章の二条3ただし書きの対象とはならず、金融サービス章の規定は適用されないと考えております。

濱村委員 十一章二条の3にあるとおりで、ほかに日本においては公的年金を寄託しているようなサービスというのはありません、なので競争的な状況にあるとは言えませんねということで、これは適用外ですということになるわけでございますが、この文章自体をどう読めばいいかということで、非常に、最初、私もどっちなんだろうと思いましたので、確認ができてよかったなというふうに思っております。

 最後にもう一つだけお伺いしたいと思うんですけれども、十五章、政府調達。

 政府調達は、公共工事であったりとかさまざまな調達についての文章でございますが、海外の事業者であったとしても応札できるようにということになるわけでございます。海外の事業者であった場合でもしっかり応札できるということ自体は大事なわけでございますけれども、TPP締結後、どうなるのかということでございますが、十五章について、七条の5、調達計画の公示について書かれております。「各締約国は、調達計画の公示に英語を用いるよう努める。」という努力規定があるわけでございます。

 この努力規定を誰が守らなきゃいけないのかというと、国であったり国の機関、あるいは県や政令市といった地方政府、こういったところがしっかりと守らなきゃいけないというか、努力をしなければいけないというわけでございますけれども、仮に英語を使わずに調達を行ったということになった場合に、海外の事業者さんから、なぜ日本語なんだ、英語じゃないのかということで、締約国の事業者さんから訴訟を起こされるようなこと、そういったリスクについては考えられるのかどうか、この点について確認をしたいと思います。

澁谷政府参考人 御指摘のTPP第十五章七条の5、今先生御指摘のとおり努力規定でございます。英語ではシャルエンデバーと書いてございます。

 努力規定でございますので、仮に調達計画の公示に英語が用いられなかった場合でありましても、協定違反となるものではございません。

濱村委員 協定違反となるわけではございません、そのとおりだと思うんです。

 実は、そもそも調達については、今も既にWTOで規定をされておる。WTOは、ある規模の金額の入札に関しては、しっかりと海外にわかるような言葉で書きなさいと。実は、英語、フランス語、スペイン語で書かなきゃいけないというわけでございますが、これは公示において、むしろTPPよりもちゃんと高いレベルのハードルを課しているという状況であるかと思います。

 そういう意味では、このTPP締約後に日本が著しく政府調達において不利な状況に置かれるとか、そういうことは余り考えられないんじゃないかなというふうに思うわけでございまして、地方の政府においてもしっかりと業務が続けられる、このように考えておるところでございます。

 いずれにいたしましても、TPPというのは、非常に大きな、構造を変える取り組みでありますので、うまく使っていかなければいけないというのが大事な点だと思うんですけれども、なかなかこれが伝わり切っていないというところを感じるわけでございます。

 我々といたしましても、しっかりと国民の皆様にこれを発信しながら、地元の皆様、事業者の皆様とともにこれを活用できるように取り組んでまいりたいと思います。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

西村委員長 次に、島津幸広君。

島津委員 日本共産党の島津幸広です。

 初めに、行革担当の河野大臣にお伺いしたいと思います。

 私は、先日の予算委員会分科会で雇用促進住宅の問題を取り上げましたが、二〇二一年度までに全廃という国の方針のもと、これから先どうなるのかと入居者の方々の不安は募るばかりです。

 雇用促進住宅はもともと、行革、特殊法人改革の中で、当時住宅を管理運営していた雇用促進事業団を解散して、新しい特殊法人、雇用・能力開発機構から、後に独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が運営することになりました。問題は、この特殊法人改革の中で住宅部門を切り離していったことなんです。ここから雇用住宅をめぐるさまざまな問題が生まれています。

 当時の国会議論の中で、私たちは、国民が期待する特殊法人改革とは、無駄な部門は思い切って削減する、しかし同時に、国民生活にとって必要な事業は、公的部門としては拡充、改善することが大切、この立場で議論してきました。

 大臣、行政改革、こういった場合には、多くは行政機構の効率化だとか、あるいは経費削減、公務員の改革などがうたわれているわけですけれども、そもそも行革とは何か、何のための行革か、このことについて聞かれたら、大臣、どうお答えになるんでしょう。

河野国務大臣 行政機能や政策効果の最大化を図りつつ、税金を無駄にすることがないように必要最小限のコストにより政府を運営する、そのための個々の事業や行政の見直しを不断に行っていく、これが行革だと思っております。

島津委員 そういう立場で、やはり忘れてはならないのは国民のことだと思うんです。

 厚労省に、具体的な問題について聞きたいと思います。

 報道によりますと、この高齢・障害・求職者雇用支援機構は、この三月末で、住宅取得の意向を示している一部の自治体を除いて、自治体との取得協議を打ち切り、民間売却を目指して、そしてそれが不調に終われば退去通告する方針だ、こういうふうに報道されています。これは神戸新聞の三月二十二日付なんですけれども、この方針というのは事実なんでしょうか。

苧谷政府参考人 お答え申し上げます。

 雇用促進住宅につきましては、所有者である独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が、平成二十八年度に、入居者の方がお住まいのまま民間事業者へ売却する手続をとっているところでございます。

 売却の手続の一つとして、現在お住まいの方に対する説明会を本年度実施しておりますが、まずは、入居者の方々がお住まいのまま全ての住宅を売却できるよう全力を尽くしてまいりたいと考えてございます。

島津委員 ですから、それが不調に終わった場合には退去を求めるという報道なんですけれども、それはそうなんですか。

苧谷政府参考人 民間事業者への売却におきましては、入居者の方が安心して引き続き住み続けられることを条件とした譲渡を進めておりまして、現時点で退去促進を行う予定はございません。

島津委員 今、各地で入居者の皆さんへの説明会が開かれています。この説明会、資料におつけしましたけれども、売却が不成立の場合には、ここにあるように、平成三十年度から三十一年度の間に退去していただきますというふうに、これは機構の資料でこうなっているんですけれども、これは事実ですね。

苧谷政府参考人 お手元にありますその資料そのものは確かに説明会で配られたものでございますが、機構に確認いたしましたところ、まずは民間事業者への売却を最優先で行っており、平成三十年度から平成三十一年度の中で退去することを現時点で決定してはいないということでございました。話がつかないまま退去促進をする趣旨を書いたものではないということでございました。

 厚生労働省といたしましても、入居者の不安を招かないよう、丁寧な説明を行うように依頼してまいりたいと考えてございます。

島津委員 いろいろ言われますけれども、結局こういう説明をしているんです。ですから、売れない場合には退去していただきます、こう書いてあるわけですよ。そういうふうに入居者の皆さんは受け取っているんですよ。事実上の追い出しなんです。

 民間に売れたとしても、それで問題が解決するわけじゃありません。各地の説明会で、民間売却後十年経過した後も住むことができるのかという質問に対して、機構の方は、購入した民間事業者の判断となりますと回答しています。

 予算委員会の私の質問のときでも、入居者と事業者の間で決められるものだ、こういう答弁がありました。

 結局、民間売却がたとえできたとしても、十年後はどうなるかわからない。これは不安をあおるだけじゃありませんか。どうでしょう。

苧谷政府参考人 お答え申し上げます。

 住民の方は御不安があると思いますので、十年間、賃金も上げない状態で住んでいただけるようにという猶予期間を設けたものでございます。

島津委員 ですから、その十年後に不安だということなんです。

 例えば、兵庫県の伊丹市のある住宅でこんな訴えを聞きました。ハローワークからの紹介で平成二十四年、二〇一二年に定期契約で入居しました、退去の話はそもそも聞いていなかった、これまで民間アパートで六万円の家賃を払っていた、やっとこの雇用促進へ転居して、今家賃が二万三千八百円だ、これで安心しているのに、これ以上の家賃の支払いはできない、十年後はどうなるのかわからない、こういう話なんです。また、民間に売れなかった場合にはもっとどうなるのかという不安があるわけです。こっちの不安の方がむしろ深刻です。

 別の方は、がんの夫を抱えて医療費にお金がかかる、行くところがない、出ていけというのは死ねということと同じです、私はこう訴えられました。

 改めて聞きますけれども、今入居している住宅の引き取り先がない場合、民間に売れない場合、どこにも行き先がない、行く当てがない、こういう人はどうすればいいのか。私が紹介したような事例は数多く聞いています。中には、ブルーシートを用意してホームレスになれというのか、こう憤っている方もいらっしゃいます。

 どう対応するのか、明確な答弁をお願いします。

苧谷政府参考人 お答え申し上げます。

 訂正をさせていただきます。先ほど、十年間賃金を上げないと申し上げましたが、これは家賃を上げないの間違いでございます。申しわけございませんでした。

 それで、この雇用促進住宅にお住まいの方、まずは民間に売却をさせていただきまして、先ほど申し上げましたように、いろいろございますけれども、十年間という期間をとにかく保つ。今現在できるところの精いっぱいのこととしてやらせていただいているところでございます。

 いずれにしましても、今お住まいの方が不安を抱かれないように、きちっと説明を丁寧にしていきたいというふうに考えてございます。

島津委員 十年後のことは、またきちんとしていくようにしてもらいたいと思うんですけれども。

 民間に売却できなかった場合には、先ほどの資料にあるように、説明会を開いて退去してもらうと。そうしますと、そういう入居者の皆さんはどこへ行くのかということになるわけです。そこはきちんとどう対応するのかということを今質問したわけですから、そこをお答えください。

苧谷政府参考人 お答え申し上げます。

 今現在は、民間に売却できるよう一生懸命努力しているところでございますし、また、現に売却も進んでおるところでございます。

 ただ、仮に万一民間事業者へ売却できない場合におきましても、これは、できる限りお住まいの方が困ることがないような方策を検討してまいりたいというふうに考えてございます。

島津委員 先ほど、死ねということかという声を紹介しましたけれども、これは千葉県の銚子市です。県営住宅の強制退去を求められて、強制執行の日に無理心中を図ったという痛ましい事件が起きました。四十三歳の母親が十三歳の長女を殺害した。また、愛知県豊田市でも、ひとり暮らしの七十四歳の男性が、市営住宅を強制退去された後、十六日後に自殺した、こういう事件がありました。

 大臣、これは通告してありませんけれども、国が行革で廃止を決めた雇用住宅でこのような自殺者を出してはならないと思うんです。そして、自殺者を出さないために国が必要な対応をすべきだと思うんですけれども、どうでしょう。

河野国務大臣 現在住んでいらっしゃる方のことを最優先に考えて厚労省が対応されると思っております。

島津委員 この間、厚労省職業安定局長名で、雇用促進住宅廃止に伴う退去者の公営住宅への優先受け入れを要請する都道府県知事宛ての通知が出されています。また、国土交通省からも、やはり都道府県宛てに同様の通知が出されています。しかし、なかなかこれの効果が上がっていない、実際にはうまくいっていない。申し込みの際に多少ポイントを優遇するだとかくじ引きを二回にするだとか、そういう措置がとられているんですけれども、実際には公営住宅の方も応募が殺到していますから入れない、こういう状況なわけです。

 ここまで来ましたら、国が責任を持って、国が決めた廃止決定ですから、雇用促進住宅が民間に売れずに行く当てがない、こういう人は国の責任で公営住宅に入れるようにすべきじゃないんでしょうか。これはどうでしょう。やってくださいよ。

苧谷政府参考人 お答え申し上げます。

 済みません、繰り返しになりますけれども、現在は民間事業者へ売却しようということで努力しておりまして、現に売却も進んでいるわけでございます。

 ただ、万一ということでございますけれども、もちろん、先生がおっしゃったとおり、地方公共団体等への働きかけ等もやりながら、今住んでいらっしゃる方が困らないようにいろいろな方策を講じていきたいと思っております。

島津委員 ぜひ、責任を持って路頭に迷わせないということをやってほしいと思うんです。

 行く当てがない、どうなるかわからない、こういう気持ちで、雇用促進住宅に入居の皆さんは毎日毎日をお過ごしになっているんです。本当に、その気持ちを私も切々と訴えられました。この心配にどう応えるのか、これはやはり政治の責任なんです。

 今大事なことは、国や機構が、退去していただきます、こんな説明を殊さら入居者にするんじゃなくて、不安をあおるんじゃなくて、本当に困っている人たちに対して、安心して暮らせる方向を示すことだと思うんです。

 次に、具体的なもう一つの問題についてお聞きします。

 三重県のある住宅では、定期契約者が二〇一六年四月一日から一八年三月三十一日までの入居の再契約を行った際、機構の側から、あなたは次の更新はありません、こう宣告されたそうです。

 民間に売れるかどうかまだ決まっていないうちから契約しない、つまり、退去しろと迫っているわけです。先ほどの配付資料の日程表から見てもおかしい話です。退去説明もまだやられていない、本当にひどい話です。

 この住宅は、聞きましたら、アンケートで民間売却を拒否する意思を示している、そういう住宅だそうです。それが影響しているのか、それとも、既に二〇一八年度から二〇一九年度の間に退去という既定路線の上に立ってこういう宣告が行われているんですか。これはどうでしょう。

苧谷政府参考人 お答え申し上げます。

 機構にも確認いたしましたけれども、現在、家賃滞納等の再契約における条件を満たさない方、そういう方でない限りは、契約期間満了後の再契約はしない対応というのは行ってございません。

 民間売却を理由とした更新拒否ですとか、あるいは、どうも売れそうもないからということで更新拒否をしたという事実はございません。

島津委員 そうじゃないんですよ。こういうことで実際に再契約拒否が各地で行われているんです。

 かつて、普通契約者、これは二〇〇三年十月以前の契約者ですけれども、あるいは定期契約者に対して事実上の契約拒否が行われたことがありました。こうした乱暴なやり方に対して批判が上がって、この間、事実上こうした契約拒否が撤回された経緯があります。

 今、事実はないとおっしゃいましたけれども、これから、契約拒否しない、こういうことが起こらない、これは約束していただけますね。

苧谷政府参考人 お答え申し上げます。

 家賃滞納等の再契約における条件を満たさない方でない限り、契約期間満了後の再契約はしないというようなことはいたしません。

島津委員 家賃滞納でも、やはり本当に生活に困っている方がいらっしゃるわけですよ。そういう方に対して、家賃が払えないから出ていけと言うのは、先ほど言ったように、それこそ、自殺するんだとか、こういうことになってしまうんですよ。そういうしゃくし定規なやり方でこうした公的な住宅は役割を果たせると思うんでしょうか。どうなんですか。

苧谷政府参考人 家賃滞納の場合も、それはいろいろな状況がございますので、本当に入居者の方が大変な場合等は当然考慮いたしながら、入居者の方が不安を抱かないような対応をとるように、厚生労働省といたしましても機構に対して依頼したいと思っております。

島津委員 この間いろいろ質問する中で、住民の皆さんが不安にならないように丁寧な説明、しっかりした説明ということを繰り返しおっしゃるんだけれども、実際に現場に行けば、住民の皆さんはそういう説明を受けても、不安だ、わからない、こういうことがあるんですよ。ですから、これはきちんと、説明だけじゃなくて実際の対応として、やはり公的な住宅の責任を果たす、厚労省としてそうした皆さんの暮らしを守っていく、居住権を守っていく、こういう立場でしっかりやるべきだと思うんです。

 最後に、大臣に再びお聞きしたいと思うんです。

 冒頭に確認しましたけれども、本当の意味での行革というのは、国民のためになるかどうかが大きな尺度としてやはり大事だと思うんです。

 行革、特殊法人改革の対象とされた雇用促進住宅は、財政的にも黒字で効率的な運営をしてきました。そして、今、民間への売却なんかも進められているわけですけれども、地方自治体への売却、譲渡された、ここでは、住民の定住促進対策あるいは若者対策、いろいろな形で効果的な役割を果たしています。しかし、ここまで見てきたように、行革の名のもとで進められている雇用促進住宅の廃止の方針が入居者の皆さんに大きな不安を与え、実際に困っている、こういうことが起きているんです。

 具体的に言えば、もう廃止するからということで、必要な修繕なんかはやらない。命にかかわる、安全にかかわるようなこと以外は、例えば、階段の手すりを塗装するだとか、階段の滑りどめをやるだとか、こういうことが放置されちゃっている。

 私は、行革の方向が間違っていると思うんです。大臣、こうしてきょうの議論を通じて、この行革の方向は間違っていると思うんですが、どうでしょう。

河野国務大臣 問題意識はよくわかりましたが、この問題は厚労省の所管でございますので、厚労大臣にお尋ねいただくのが適当かと思います。

島津委員 所管が違うのは十分承知しています。ただ、やはり行革担当大臣で、これからも行革を進めていらっしゃるわけですから、感想として、きょうの議論を聞いて、これはおかしいんじゃないかと私は思うんですけれども、どうでしょう。

河野国務大臣 所管しておりませんので、お答えする立場にございません。

島津委員 安倍内閣閣僚の一員としてそういう御回答ですから、なかなか、姿勢が伝わってくるなという思いをしました。

 閣議決定された二〇二一年までの雇用促進住宅の廃止決定は極めて大きな矛盾を広げ、入居者の実態に沿わない理不尽なやり方が進められています。改めて、私は、閣議決定の撤回、入居者の一方的な追い出しをしない、そして、行政改革は国民の立場に立った真の改革になるように求めて、質問を終わります。

西村委員長 これにて本日の質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

西村委員長 次に、内閣提出、サイバーセキュリティ基本法及び情報処理の促進に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。遠藤国務大臣。

    ―――――――――――――

 サイバーセキュリティ基本法及び情報処理の促進に関する法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

遠藤国務大臣 サイバーセキュリティ基本法及び情報処理の促進に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 サイバーセキュリティーに対する脅威の一層の深刻化に鑑み、国の行政機関、独立行政法人及び特殊法人等における抜本的な対策の強化を図るとともに、我が国における専門的な人材の確保を図るため、サイバーセキュリティーに関する知識や技能を備えた高度かつ実践的な人材を育成する等の必要があります。これが本法律案を提案する理由であります。

 次に、法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。

 第一に、情報システムへの不正な活動に対する国による監視及び分析並びにサイバーセキュリティーに関する演習及び訓練について、国の行政機関に加えて、独立行政法人及びサイバーセキュリティ戦略本部が指定する特殊法人等をその対象とすることとしております。

 第二に、サイバーセキュリティ戦略本部の事務のうち、サイバーセキュリティーに関する対策の基準の作成及び当該基準に基づく監査並びにサイバーセキュリティーに関する重大な事象に対する原因究明のための調査に関するもの等について、国の行政機関、独立行政法人及び指定された特殊法人等を対象とすることとし、それらの事務の一部を独立行政法人情報処理推進機構等に委託することができることとしております。

 第三に、情報処理安全確保支援士制度を創設し、事業者等のサイバーセキュリティーの確保を支援することを業とすることを規定するとともに、情報処理安全確保支援士試験及び情報処理安全確保支援士の登録に関する規定等を整備することとしております。

 以上のほか、所要の規定の整備を行うこととしております。

 なお、この法律は、一部の規定を除き、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしております。

 以上が、この法律案の提案理由及び内容の概要であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同を賜りますようお願い申し上げます。

西村委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る三十日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時九分散会


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