衆議院

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第21号 平成13年6月22日(金曜日)

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平成十三年六月二十二日(金曜日)

    午前十時一分開議

 出席委員

   委員長 保利 耕輔君

   理事 奥谷  通君 理事 塩崎 恭久君

   理事 田村 憲久君 理事 長勢 甚遠君

   理事 佐々木秀典君 理事 野田 佳彦君

   理事 漆原 良夫君 理事 西村 眞悟君

      太田 誠一君    熊代 昭彦君

      栗原 博久君    左藤  章君

      笹川  堯君    鈴木 恒夫君

      棚橋 泰文君    谷川 和穗君

      西川 京子君    西田  司君

      平沢 勝栄君    松宮  勲君

      山本 明彦君    吉野 正芳君

      枝野 幸男君    日野 市朗君

      平岡 秀夫君    松本 剛明君

      水島 広子君    山内  功君

      上田  勇君    丸谷 佳織君

      藤井 裕久君    木島日出夫君

      瀬古由起子君    植田 至紀君

      徳田 虎雄君

    …………………………………

   法務大臣         森山 眞弓君

   法務副大臣        横内 正明君

   法務大臣政務官      中川 義雄君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    古田 佑紀君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房商務

   流通審議官)       杉山 秀二君

   法務委員会専門員     井上 隆久君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月二十二日

 辞任         補欠選任

  荒井 広幸君     西川 京子君

  中川 昭一君     栗原 博久君

  渡辺 喜美君     平沢 勝栄君

  山花 郁夫君     松本 剛明君

  上田  勇君     丸谷 佳織君

  不破 哲三君     瀬古由起子君

同日

 辞任         補欠選任

  栗原 博久君     中川 昭一君

  西川 京子君     荒井 広幸君

  平沢 勝栄君     渡辺 喜美君

  松本 剛明君     山花 郁夫君

  丸谷 佳織君     上田  勇君

  瀬古由起子君     不破 哲三君

    ―――――――――――――

六月二十一日

 国籍選択制度・国籍留保届の廃止に関する請願(阿部知子君紹介)(第三二八九号)

 同(今川正美君紹介)(第三二九〇号)

 同(植田至紀君紹介)(第三二九一号)

 同(北川れん子君紹介)(第三二九二号)

 同(東門美津子君紹介)(第三二九三号)

 同(保坂展人君紹介)(第三二九四号)

 同(大島令子君紹介)(第三四八〇号)

 同(中川智子君紹介)(第三四八一号)

 同(山内惠子君紹介)(第三四八二号)

 同(横光克彦君紹介)(第三四八三号)

 同(重野安正君紹介)(第三五九三号)

 同(日森文尋君紹介)(第三五九四号)

 同(山口わか子君紹介)(第三五九五号)

 民法改正における選択的夫婦別氏制度の導入に関する請願(赤松広隆君紹介)(第三二九五号)

 同(石毛えい子君紹介)(第三二九六号)

 同(永井英慈君紹介)(第三二九七号)

 同(菅直人君紹介)(第三五九六号)

 治安維持法犠牲者国家賠償法の制定に関する請願(肥田美代子君紹介)(第三二九八号)

 同(牧野聖修君紹介)(第三四七八号)

 同(山口わか子君紹介)(第三五八九号)

 国民がより利用しやすい司法の実現のための裁判所の人的・物的充実に関する請願(平岡秀夫君紹介)(第三四七九号)

 同(佐々木秀典君紹介)(第三五九一号)

 同(日野市朗君紹介)(第三五九二号)

 法務局、更生保護官署及び入国管理官署の増員に関する請願(日野市朗君紹介)(第三五九〇号)

同月二十二日

 国籍選択制度・国籍留保届の廃止に関する請願(金子哲夫君紹介)(第三六八〇号)

 同(辻元清美君紹介)(第三六八一号)

 同(土井たか子君紹介)(第三六八二号)

 同(菅野哲雄君紹介)(第三七六九号)

 選択的夫婦別姓の導入など民法改正に関する請願(田中甲君紹介)(第三七四八号)

 法務局、更生保護官署及び入国管理官署の増員に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第三七四九号)

 同(石井郁子君紹介)(第三七五〇号)

 同(上田勇君紹介)(第三七五一号)

 同(小沢和秋君紹介)(第三七五二号)

 同(大幡基夫君紹介)(第三七五三号)

 同(大森猛君紹介)(第三七五四号)

 同(木島日出夫君紹介)(第三七五五号)

 同(児玉健次君紹介)(第三七五六号)

 同(穀田恵二君紹介)(第三七五七号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第三七五八号)

 同(志位和夫君紹介)(第三七五九号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第三七六〇号)

 同(瀬古由起子君紹介)(第三七六一号)

 同(中林よし子君紹介)(第三七六二号)

 同(春名直章君紹介)(第三七六三号)

 同(藤木洋子君紹介)(第三七六四号)

 同(松本善明君紹介)(第三七六五号)

 同(矢島恒夫君紹介)(第三七六六号)

 同(山口富男君紹介)(第三七六七号)

 同(吉井英勝君紹介)(第三七六八号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 刑法の一部を改正する法律案(内閣提出第五八号)(参議院送付)




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     ――――◇―――――

保利委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、参議院送付、刑法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として法務省刑事局長古田佑紀君及び経済産業省大臣官房商務流通審議官杉山秀二君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

保利委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

保利委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上田勇君。

上田(勇)委員 公明党の上田勇でございます。

 限られた時間でございますので、早速質問に入らせていただきます。

 今回のこの法案は、まさに今、日本の社会というのはカード社会と言われているように、そうした中でいろいろな犯罪なども増加しているということが見られておりますので、まさに時宜にかなった提案であるというふうに思っております。

 今、クレジットカード、プリペイドカード、それから最近はデビットカードというようなものも広く普及するようになりまして、その中でも特にクレジットカード、私自身は一枚しか持っておりませんが、何か二枚、三枚持っているのが普通だというような社会にもなっているというふうにも聞いております。

 最近のこうした支払い用のカードの普及の状況とその偽造犯罪の情勢について、まず法務当局の方から御説明をいただければというふうに思います。

古田政府参考人 まず、カードの普及状況について概略申し上げますと、クレジットカードにつきましては、その発行枚数が平成十一年で約二億五千万枚になっておりまして、十年間で約一億枚増加しているという状況と承知しております。

 また、デビットカード、これは銀行のいわゆるキャッシュカードで、デビット契約というのが付された場合にそれがデビットカードと呼ばれるわけですが、そういうふうにしてデビットカードとして使えるキャッシュカード、これが昨年十月の時点で約三億二千万枚という状況でございます。

 それから、プリペイドカードにつきましては、これはいろいろな種類がございますので、すべてについて把握することが困難ではございますけれども、カード発行の専門会社が発行しております主なカードを見ますと、年間の発行高、金額にして約十五兆円で、発行枚数が約四十七億枚に及んでいると聞いております。

 次に、このようなカードの偽造犯罪に関する情勢でございますが、クレジットカードにつきましては、偽造カードを使った犯罪による被害が、平成九年では約十二億円、十年では二十八億円、十一年は九十一億円、十二年は百四十億円と、非常に急増を続けている状況という調査がございます。

 プリペイドカードにつきましては、そういうまとまった調査がございませんので、その被害額の把握が大変困難ではございますけれども、テレホンカードやパチンコカードなど、これは昔よく偽造があったものですが、最近、ハイウエーカード、オレンジカード等につきましても偽変造被害が拡大している状況にあるように見受けられます。

上田(勇)委員 最近そうしたカードの偽造にかかわる犯罪が非常に急増しているという説明をいただいたんですけれども、最近、それを裏づけるように、よく新聞記事なんかでもカードの偽造に係る事件の報道が行われているんですが、そうした偽造カード事犯、大まかに言ってどういうような手口で行われているのか、その辺の実態をもう少し詳しく御説明をいただければと思います。

古田政府参考人 クレジットカードについて申し上げますと、最近は、クレジットカードの裏につけられております電磁的記録、これの情報を電子機器を用いましてそっくりそのまま複写してしまう。これはスキミングと呼ばれている方法でございますが、カードが事故カードでないかどうかを確かめるためのCATというものが最近よく利用されておりますが、そこで読み取った電磁情報をそっくりそのまま、こっそりICチップなどを使いまして、その中にため込んで、それを取り出してその情報を使って電磁的記録をつくり、カードをつくるというふうな手口が非常に多いと聞いております。

 そのほか、プリペイドカードで申し上げますと、これはいろいろな形態があるわけですけれども、よく見られましたのは、既に使ったプリペイドカードを、裏の電磁的記録部分をもう一回いわば書きかえまして、それによってまた使えるようにしてしまうというふうな手口のほか、全くそっくりそのままのようなものを新しくつくり出すというような手口も最近出てきているように承知しております。

上田(勇)委員 今大変な状況になっているということは御説明をいただいたところなんですけれども、こうした犯罪行為について、今回新しい法律を提案されているんですけれども、今の法体系の中でもこれに対する規制、罰則というのはあるんだというふうに思うんですが、現行法で処罰され得る行為というのはどういうものがあるのか、また、新たな法律を提案するわけでありますので、今の法律では不十分な部分というのはどういう点にあるのか御説明をいただければと思います。

古田政府参考人 いわゆるカード類も、これは、文書ないし有価証券に既に当たるとされていたものもあるわけです。そういう意味では、例えば、カードを勝手につくり出しますとこれは文書偽造、あるいは、その裏の電磁的記録については電磁的記録の不正作出罪が適用できるわけです。また、それを使いますと、これはそういうようなものの行使あるいは供用罪。さらには、財産的利益をそれによって得れば詐欺なり窃盗罪なりそういうものが成立するということで、そういう意味では処罰が可能なことにはなっていたわけです。

 しかしながら、こういう事件では、よく問題になりますのが、発見しても使う前はなかなかそれで手が打てない。つまりは、持っているという行為だけでは処罰ができなかったことから、持っているのを見つけてもそこでは手が打てないというふうな状態もあったわけで、この辺が非常に大きな問題になっていたわけでございます。

 もう一つ、クレジットカードの偽造でスキミングという方法を先ほど御説明いたしましたけれども、それをやっただけでは必ずしも犯罪にならないというふうな問題もあって、これがかなり組織的に分業してされているというような実態もあるようでございますので、そういうような点について処罰法規を整備する必要があると考えたわけでございます。

上田(勇)委員 今の御説明ですと、これまでいろいろな犯罪がふえていたのだけれども、やはり現行法ではなかなか十分に対処できないところが余りにも多過ぎるということで、今回そういったすき間をきっちり埋めようという趣旨であるというふうに思います。

 法務省からいただいた資料、また、いろいろ調査室で調べた資料などを見てみますと、諸外国はもう既にそういう法整備が整っている、主要先進国については大体整っているんじゃないのかなというふうに見受けたのですけれども、そうした国際的な動向というのはどのような感じになっているのか、また、今回これで法改正をすることによりまして、国際水準とほぼ同程度の法整備ができたというふうに考えておられるのか、御見解を伺います。

古田政府参考人 諸外国、まあ主要先進国でございますけれども、ほかの国では、大体一九八〇年代の末ごろから一九九八年ごろまでにかけまして、こういうたぐいの、カード類についての犯罪に対応するための法整備が順次行われてきております。大体基本的には、先ほど申し上げましたような単なる偽変造のほか、情報を取り出す行為あるいは所持する行為、こういうものについて何らかの形で処罰ができるような法整備が行われていると承知しております。

 今回御提案申し上げております刑法の一部改正法は、これらを踏まえまして、最も網羅的にこういうカード犯罪をめぐるいろいろな不正行為について処罰ができるようにするものでございまして、ほかの国の整備の状況と比べて十分なものであると考えております。

上田(勇)委員 従来から、特にアメリカや西欧諸国では、カード社会と言われているように、もう随分前からカードによる決済が一般的に行われておりまして、そういう外国に行ってみると、やはり利用者の方々も、それから加盟のお店の方々も、そういう犯罪行為に対しては非常に神経を使っておられる。それだけ犯罪が多かったということなのかもしれません。

 幸い日本では、カードの普及率というのもそれほど多くなかったということもあるのでしょうが、そういった犯罪というのは、最近になるまでは余り聞かずに済んできたのですけれども、それでも従来から、偽造テレホンカードというような事件も大きく報道された時期がございます。そういう意味では、諸外国の相当そういう問題もわかっていた、日本でもカードが普及するということも予想された、そういう事例もあったわけでありますので、もう少し早く、こうした犯罪についての法整備を行う必要があったんではないかというふうに思いますけれども、この点については、その対応は本当に適切だったのかどうか、御見解を伺いたいというふうに思います。

古田政府参考人 確かに御指摘のように、かつてテレホンカードについて非常に変造違反が多かったことがございまして、そのころそういうものに対する対応を考えるべきだという御議論もあったことは事実でございますが、当時から、先ほど申し上げましたように、有価証券の偽変造ということで相当程度は対処できていたということと、もう一つは、当時としては、テレホンカードという、ある特定のものについての問題だったわけでございます。

 そういうことから、全体の法体系等も考慮して、その時点では対応というのを、検討はしたものの、特に行わなかったわけですが、その後、カードがいろいろなものが出てくる、それからクレジットカードの実際の偽変造というのが非常にふえてきた、そういうようなことから、日本においてもやはり法整備が必要な状況になってきたというふうに考えたわけでございます。

 刑事法の場合に、どこまで、いわば先を読んで整備するかということは、実際のいろいろなそういう不正行為というものがどの程度起きるかというようなこと等も考え合わせながらやっていかなければならないという問題もございまして、そういう点で、先取り立法的なことが一般的にはやや困難な面があるということも御理解いただければと思います。

上田(勇)委員 もちろん、刑事法でありますので、その制定や運用というのは慎重にならなければならないという点は理解するのですが、これはやはり相当前から、諸外国ではカードが普及していて、当然日本でもそういうような状況になるだろうということが想定されたのでありましょうし、犯罪というのも、一つのところで起きていると、必ず、今のこういうグローバル化した経済の中では、これは人も物も動くわけでありますので、当然のことながらそういったものも入ってきてしまう。仮に日本の中でそういう犯罪が出てこなかったとしても、外国からも人が来るし、変な言い方をすれば、そういうノウハウも伝わってくるというようなことが当然予想されたので、そういう意味ではもう少し迅速な対応があってもよかったのではないかなというのが率直な意見でございます。

 次に、法案の中身について若干御質問をいたしますが、この改正法案の条文を見てみますと、電磁的記録の部分をとらえた条文になっております。しかし、これはもっと単純にカードの偽造というようなことで法律を構成した方がわかりやすかったのではないかというふうに思うのですけれども、その辺、御意見を伺いたいというふうに思います。

古田政府参考人 確かに御指摘のようなところはあろうかと思いますが、何かうまく包括的にとらえられないかということも検討した次第ですが、御案内のとおり、カードの偽造となりますと、いわば表の部分、文字で書いてあるような部分も全部ひっくるめて考えなければいけない。しかしながら、実際のカードは裏の電磁的記録だけあればほとんど使えるという状況でございまして、いわばポイントになりますのがこの電磁的記録部分である。そこで、その電磁的記録部分にターゲットを当ててこういう犯罪の要件を決めていくのが目的を達する上で一番適当だということから、こういうふうなことになったわけでございます。

上田(勇)委員 カードにかかわる犯罪というのは、個人の財産という意味では相当な金額に及ぶものもたくさんあるわけであります。そういう意味で、今回この法律が整備されるに至るわけでありますので、あとはそうした個人の財産が守られるような適正な対応、運用というのをぜひお願いをしたいというふうに思いますし、また、これは法律ができただけで、それに対する取り締まりといったものにきっちり対応してもらわなければ犯罪の防止には役立たないし、また、個人も安心してカードを利用する、これは非常に便益があるものですから、そういう社会をつくっていくためにも、ぜひまた当局として全力を尽くしていただきたいというふうに思います。

 それで、最後でありますが、そのこととも関係するのですが、今回のこうした改正によりまして、そういう法律が整ったということになれば、これは、今強力に推進しているIT革命、これを推進するための前提条件の一つであるのではないかというふうに思います。そういう意味で、今回のこの法案がIT革命推進の観点からも大変意義あることであるというふうに私は考えておるのですけれども、副大臣、ひとつ御所感をお願いいたします。

横内副大臣 今回の法律の改正は、現金や小切手にかわって国民の間に広く普及しておりますカードにつきまして、社会的な信頼性を確保するために罰則を強化するというものでございまして、この種のカードに対する社会的な信頼を確立するということは、国民の日常的な経済活動の安全性という観点から不可欠なものであるというふうに考えております。

 同時に、委員がただいま御指摘になりましたように、現在急速に発展、普及しておりますIT、情報技術を活用したさまざまな決済システムができてきておりますけれども、こういったものの安全性や信頼性の基盤を確立するというものでもありまして、御指摘のように、IT革命推進の観点からも大変に大事なものというふうに考えております。

上田(勇)委員 今度の法律は、まさに国民の安全、安心を守るために非常に重要な法整備であるというふうに思いますので、これが成立しまして、その後の適正な運用、また取り締まりに努めていただくことを重ねてお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

保利委員長 次に、植田至紀君。

植田委員 社会民主党・市民連合の植田至紀です。

 今回の改正案につきましては、私ども、賛成しておりますので、簡単に幾つか、その中で疑問に思ったことだけお伺いさせていただきたいと思います。

 今回、いわゆるクレジットカード、プリペイドカード等々が対象になっているわけですけれども、量販店等でよくポイントカードというものが使われておるわけですが、これが対象にはなっていないということでございますので、今回、その対象と非対象をどういう基準で、物差しでお分けになられたのかということをまず御説明いただければと思います。

古田政府参考人 今回対象といたしましたカード類は、例えば、物の代金でありますとかサービスの対価、こういうものを支払うということを目的としてつくられているカードを対象としたわけでございます。

 今御指摘のありましたポイントカードにつきましては、これはある一定のポイントでそれの割引をするという割引カードということで、それ自体が対価の支払いということにはならないということで、その対象とはしなかったということでございます。

植田委員 ポイントカードの場合は支払い用のカードではない、支払い用のカードが対象になっておるので、対価の支払いということで仕分けされたということで、それは理解するわけですが、今回、法制審の刑事法部会でこれに向けての議論がなされたと思うのですが、参考までに、もしわかればですが、ポイントカードの扱い等について具体的な議論等があったのかどうなのか、その辺、お教えいただければと思います。

古田政府参考人 法制審の刑事法部会におきましても、ポイントカードとかあるいはマイレージカードとか、こういうようなものをどうするのかという議論はありました。しかし、その議論の結果、先ほど申し上げましたように、要するに支払いという機能を持つカードを対象とすべきであるという意見となったということでございます。

植田委員 実際、私も、きのうになってからもう一回議事録をざあっと見たわけなんですが、特にポイントカードについても、確かにほとんど議論はなされていないのですが、若干出てきている部分でも、それぞれ論じておられる方々も、そもそも今回の法案ではポイントカードは対象外やなということは、どうも暗黙の前提で論じられていたんだなという印象を受けるわけで、そういう意味では、そもそも対価の支払いということが一つの前提で了解されていたのかなというふうに思うわけです。

 ただ、例えばクレジットカードの場合でも、いろいろサービスを受けたり物を買ったりしたときにポイントがついていくのってありますよね。要するに、ポイントカード的な役割も果たしておる。クレジットカードは対価の支払いで使うわけですけれども、そういうポイントが加算されるようなものも出回っているわけですよね、クレジットカードという範疇の中で。そういうものも一応今回は対象にはなっているという理解でいいのでしょうか。

古田政府参考人 クレジットカードとかそういうものに仮にそういう機能が付加される、それがトータルとして対価の支払いに使われるカードという性質を持っております限りは、そういう限度では対象になり得ると思います。

植田委員 要は、クレジットカードでそういうポイントカード的な役割を果たす部分はおまけの部分ですから、要するに、クレジットカードとして対価の支払いの機能を持っていれば、そこでまず網がかかる、そういう理解なわけですね。

 ただ、実際、こういうクレジットカードでも、いわゆるポイント、例えば、何とかカメラなんかのポイントカードなんかは簡単につくれますし、そして簡単に偽造して、何万というポイントを偽造することも、これは技術的には可能だろうと思うのです。

 そういう意味で、例えばプリペイドカード、地下鉄なんかで、最近私も、議員になってからただで乗せてもらっていますので、余りカードは使わないのですが、ほとんど、それは一万円台とかありますけれども、よく駅のところで売っているのは、三千円とか、そういう数千円台のものだと思うのですよね。

 ただ、ポイントカードの場合、物やサービスを購入すれば次第に加算されていきますから、何万円という、数万円というポイントが記入されている方も、そういうポイントカードを持っておられる方も決して少なくはないと思うわけです。

 そういう意味で、そういう他人のポイントカードを拾ったり、また盗んだり、そういうことで、しかも、実際、ポイントカードというのは簡単につくれますから、例えば植田というのがこしらえたカードなんやなというのを確かめようもないわけですので、実に簡単に手に入っちゃうわけです。

 そういう意味で、確かに、対価の支払いで対象、非対象を分けたということは十分了解、理解しつつも、一方で、そういう数千円のプリペイドカードは対象になります、一方で、実際数万円が記入される、しかも偽造も可能だというポイントカードがなかなか対象になり得ないというのは、法律の専門家からすればどこかで切らなきゃいけないと思うのですけれども、どうもちょっと不合理じゃないかなという気もするのですけれども、その辺はいかが御見解をお持ちでしょうか。

古田政府参考人 ポイントカードを例えば偽造する、あるいは変造する、それによって、その割引を受けた値段で物を買うというようなことがあれば、これは現在、電磁的記録の不正作出、供用、あるいは詐欺とか、そういうことで処罰はもちろん可能なわけでございます。

 それに加えまして、ほかのクレジットカードなどと同じように、例えば所持罪をつくるべきかどうかとか、そういうことになりますと、これはまたちょっと、ポイントカードがどういうふうに利用されるのかとか、そういう問題も現時点で不明確なところが非常に多いわけでございます。

 ただ、将来、いろいろなカードが出てまいりまして、もっと総合的な機能を持ったものになるとか、いろいろなことも考えられるわけでございまして、そういうような事態ができますれば、またそれに相応した対応ということを考えていかなければならないと思っております。

植田委員 もちろん、私も、今の刑法の改正でポイントカードの所持罪をこしらえてほしいなんて、そういう要望をしているわけでは決してございません。そんなのはとんでもない話でございますので、今の状況の中で。

 ただ、実際、ポイントカードも、顧客と特定のお店、それはガソリンスタンドであったり、カメラ屋さんであったり、スーパーであったりすると思うのですけれども、その顧客と特定のお店の間では、実際、現金等のかわりで使用することはできるわけですよね、たまったポイントで買い物ができるわけですから。

 私もスーパーなんかでよく買いますけれども、その都度その都度、千円買ったら何ぼのポイントだ、一万円買ったら何ぼのポイントということで、実際そのポイントカードを使えば、サンマ一つとかネギ一本二本ぐらいがその都度その都度買い物をするたびに得をするような、そんなポイントカードで買い物をさせていただいているわけですが、ただ、その場合、現金を使わぬと物やサービスを購入することができるわけです。ネギとかサンマぐらいだったらかわいらしいわけですけれども、実際金額が大きくなる場合も、これは電化製品とかになるとかなりの金額になるかと思うのです。

 そういう意味で、確かに、ある意味で対価の支払いということではなかなかないのかもしれへんけれども、いわゆる地域通貨とかエコ通貨のような疑似通貨とよく似た経済価値をポイントカードが持ち始めている。しかも、お使いになる人が多いわけですから、そういう経済価値を持っているんじゃないかというふうに私は思います。

 そういう意味で、あくまで閉鎖的な中での話なんですが、特定のお店と顧客という関係性の中ですから、普通、大体わかると思うんですね。いつも来る、いつも毎度という感じでやるわけですから、顧客との関係ですからそんなに広がりはないにしても、通貨がわりで使用されている側面というものは否定できへんということを考えた場合、今後、ますます広範にみんな扱うようになるでしょうから、不正使用を防止するための保護の対象をきちっとするとか、また不正使用された際のリスクにちゃんと対応するそうしたことが将来必要になってくるんじゃないのかなというふうに思うんですけれども、その点についての展望等についてはいかがでしょうか。

古田政府参考人 委員御指摘のとおり、カードの利用形態それからカードの機能というのは非常に発展性があるといいますか、いろいろ変わり得るものだと考えております。

 今委員御指摘のような場合に、例えば、発行者の方でどの顧客の分かという顧客管理と申しますか、そういうようなものとの組み合わせとかいろいろな問題はあろうかと思いますけれども、いずれにいたしましても、カードの機能の今後の発展、利用状況等を勘案しながら、必要な法整備というのをその時点において考えていきたいと考えております。

植田委員 いずれにしても、日進月歩の世界でございますので、これからもお考えいただけるかと思うわけです。

 今申し上げましたみたいに、ポイントカードの場合、確かに特定の顧客と特定の店という特定の範囲に限定されるわけですけれども、そこの間ではクレジットカードとさして変わらない決済手段としてやはり意味を持っておると思うわけなんです。

 そういう意味では、むしろこれからのこうした法改正、また新たなそうした課題に対応するために、一番最初に、対価の支払いで今回は対象、非対象を切ったということは十分わかっているんですけれども、判断基準としてそうした経済価値にも着目した検討のあり方というものもあっていいんじゃないかと思うわけですけれども、その点はいかがでございますでしょうか。

古田政府参考人 その点につきましては、御指摘のとおりと考えております。クレジットカードなども、現在ほとんど小切手とかそういうものよりはるかに便利に使われるようになった、そういうことを踏まえて、有価証券並みに扱うべきだということでございます。

 ですから、御指摘のようなカードにつきましても、今後の利用形態や機能がどうなるかというようなことも勘案して、その状況に応じたいろいろな整備というのをまた考えるべき時期も来るかもしれないと思っております。

植田委員 では、法務大臣もお越しになられましたので、二つぐらい大きな話だけお伺いして終えたいと思うんです。

 昨年、IT基本法ができまして、これは私ども反対やったんですが、IT先進国化を目指しているというトータルな方向性としては私どもも大賛成なんですけれども、電子商取引の拡大というものは十分予想されるわけですから、そういう状況の中で、特に消費者保護という観点から、この点について、新たな法整備を含めた制度の整備が必要になってくると思うわけですけれども、現状での整備状況と今後の検討課題、また検討の状況等についてお願いできますでしょうか。

森山国務大臣 法務省では、インターネット社会における電子的な取引の基盤を整備しまして、その安全を確保するためにさまざまな施策を進めてまいりました。

 まず、民事の分野につきましては、電子署名の民事訴訟における取り扱いや民間の電子認証機関のあり方に関して定める電子署名及び認証業務に関する法律がこの四月一日から施行されているところでございます。

 また、インターネット技術を利用した電子取引等における契約ルールを整備するために、経済産業省を中心として準備を進め、電子取引における契約の成立の時期などについて定める電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律案を国会に提出し、御審議いただいているところでございます。

 他方、刑事の分野につきましては、今回の法改正により、支払い用カードに対する社会的信頼を確保するための罰則を整備するほか、電子商取引の拡大を初めとするIT革命の進展の中にあっては、ハイテク犯罪に的確に対処し得るための法整備が不可欠であると考えておりまして、ハイテク犯罪に対する罰則の整備やコンピューターネットワークに関する操作手続の整備等の検討を行っているところでございます。

植田委員 もう一つ、今回のいわゆるカードにかかわってですけれども、特にクレジットカード等々の犯罪被害というものは急増しているわけですけれども、犯罪自体も一向に減る傾向にはないわけでございます。しかも、プリペイドカードの発行状況なんかは、いろいろな業種また種類ごとにかなり拡大している傾向にもありますし、大臣がお越しになる前に刑事局長に幾つかお伺いしておったんですが、ポイントカードについても、今回は対象にはなっていませんが、各企業が、会社なりお店が、顧客のサービスという観点でかなりいろいろなポイントカードを採用している企業もふえてきているという状況の中で、特にこの点についても、被害者救済、消費者保護という観点から見たカード犯罪の防止、対応、またそうした救済にかかわる、いわばカード化社会に対応する総合的な法整備という点もこれから必要になってくるんじゃないかというふうに思っておるわけですけれども、その点についての御所見はいかがでございますでしょうか。

森山国務大臣 この法案は、支払い用カードを構成する電磁的記録の不正作出、譲渡、所持等の行為及びこれら電磁的記録の不正作出の準備のための行為に対する罰則を整備することによりまして、支払い用カードに対する社会的信頼を確保するために刑法を改正するものでございますが、先生おっしゃいますように、その他の法整備ということも必要であろうと思います。今後とも、関係省庁とともに、この種の取引の実情等を踏まえながら、検討すべきものは検討してまいりたいというふうに考えております。

植田委員 ありがとうございました。

 ですから、今回は支払い用カードということでございますから、私もポイントカードについて冒頭申し上げましたが、この法律が不備じゃないかという視点よりは、むしろ、支払い用カードということで対象、非対象を分けるとそういうものはこぼれ落ちてきますから、特にこれからカード化社会の中でそうしたさまざまなそういうカード、商品も登場してきますので、そうしたものについての対応方も急ぐ必要があるんじゃないか、そういう意味での私なりの問題提起ということでお受けとめいただければありがたいと思います。

 時間はありますけれども、もうあと数分ですが、この法案については私ども社民党も賛成であるということだけ申し上げまして、質問を終わります。

保利委員長 次に、山内功君。

山内(功)委員 民主党の山内功でございます。

 今回の刑法改正に至った経緯、背景あるいは理由などについて、まず大臣からお伺いしたいと思います。

森山国務大臣 クレジットカード、プリペイドカードなど、コンピューター処理のための電磁的記録を不可欠の構成要素とする支払い用のカードは、国民の間に広く普及いたしまして、今日では通貨、有価証券に準ずる社会的機能を持つに至っておりますが、最近、これら支払い用カードの電磁的記録の情報を不正に取得いたしましてカードを偽造するというような犯罪がふえております。国際的な規模でそれが行われたり、また組織的に敢行されるというようなことも少なくない状況でございます。

 現行法上、このような偽造カードの所持やカードの電磁的記録の情報の不正取得などの行為が犯罪化されておりませんので、この種事犯に対して適切な処置を行うことが非常に難しいという状況でございます。また、現に果たしているその社会的機能の共通性にもかかわらず、適用される条項がカードの種類によっていろいろでありまして、その内容も有価証券等に関する罰則との均衡を欠くに至っているということなど、これら支払い用カードに対する不正行為に的確に対応できる法整備が必要でございました。

 そこで、このような状況を踏まえまして、支払い用カードに対する社会的信頼を確保するために、刑法を改正いたしまして所要の罰則整備を行いたいと考えたものでございます。

    〔委員長退席、奥谷委員長代理着席〕

山内(功)委員 偽造カードの所持罪を設けることになっておりますけれども、偽造文書の所持については処罰の対象としていないという現行刑法の体系と整合性があるのかについて、当局にお願いします。

古田政府参考人 確かに、現在、一般の偽造文書等については、その所持罪は設けられておりません。しかしながら、クレジットカードでありますとかプリペイドカード、こういうものは、その特徴として、反復していろいろな買い物だとかそういうものに使うことができるわけでございまして、普通一回だけの行使で終わってしまうような偽造通貨でありますとか偽造有価証券とは性格が違うところがあるわけでございます。

 そういうところから、何回も反復使用ができることから生ずる一種の持っていることの危険性、これに着目することは必要ではなかろうかということが大きな理由でございます。

 それから、また一方で、この手のものにつきましては、所持罪を設けておきませんと、それを持っているのを発見してももちろん犯罪にはならないわけで、そのカードをいわば差し押さえるというふうなこともできない、もちろん検挙もできない。こういうことから、不正行為に対応する上で非常に大きな問題があるという実際的な理由もございます。

 そういうことから今回所持罪を設けるに至ったわけでございますが、刑法とのいろいろな整合性という意味で申し上げれば、反復使用が可能な有価証券あるいは通貨類似のものという特徴にかんがみて設けることとしたもので、それが整合性を直ちに欠くということにはならないと考えております。

山内(功)委員 今の見解ですと、例えば、組織性とか大量性ということは所持罪の要件とはならない、たった一枚でも犯罪として成立するということになるのでしょうか。

古田政府参考人 御指摘のとおりでございます。

山内(功)委員 偽造支払い用カードに係る多くの態様の行為が処罰の対象となっておりますけれども、いわば国際的な犯罪にもつながろうかと思うのですが、輸出が処罰の対象となっておりません。この点についてはなぜなんでしょうか。

古田政府参考人 まず、輸入罪があって輸出罪がないのはどうもおかしいなという感じがあるいはあるのかもしれませんけれども、輸入罪を設けた理由は、こういう偽変造のカードを日本の国内に存在するに至らしめる、ですから、つくり出すのと日本の国という目で見れば同じような危険を生ずるということで、輸入罪を設けたものでございます。

 一方、輸出罪と申しますのは、日本の国内から外に持ち出すという行為でございまして、そういう新たな危険を発生させるという行為ではない。ただ、一方で、そういう場合は所持罪とか、あるいは人に譲り渡して持ち出させるというような場合は譲り渡し罪とか、そういうようなものも成立するわけでございまして、輸出のような行為につきましては、その限度で対応をすることで足りるであろうということでございます。

山内(功)委員 今の輸入と輸出という問題については、ほかの場面でもございまして、例えば偽造カードの譲り渡しあるいは貸し渡しについては処罰をしておりながら、譲り受けあるいは借り受けについては処罰規定がございません。その必要性などについて検討はなされたのでしょうか、お伺いします。

古田政府参考人 御指摘の譲り渡し、貸し渡し罪を設けた理由につきましては、これは、ほかの人に移転させることによってまた別途の危険を生じさせるということでございます。

 しかし、譲り渡しを受けた者あるいは借りた者、これにつきましては、そのことによって以後所持罪が成立するということになりますので、譲り受ける行為あるいは借り受ける行為自体を処罰するという構成要件をつくるまでの必要はないということであったわけでございます。

山内(功)委員 偽造カードを作成するための器械や原料を準備する行為が幅広く処罰の対象とされておりますので、例えばハンディースキマー、これは市販もされているそうなんですが、それを所持しているだけでも処罰対象となるというようなことになるのでしょうか。

古田政府参考人 偽造カードを作成するための器械や原料の準備でございます。

 御指摘のハンディースキマーというのは、そのつくる前の段階の、情報を盗み取るための、スキミングのために利用されるということになろうかと思います。したがいまして、こういう行為は、不正作出そのものの準備行為と申しますよりは、その前のカード情報の不正取得罪の準備行為になる。そういうことで、いわば準備行為のさらに準備行為ということでございますので、それだけではまだ支払いシステムの信用という保護法益を侵害する危険は低いということから、今御指摘のような行為については、これは準備罪には当たらないというふうに考えております。

山内(功)委員 この改正案では、現代型犯罪としての処罰の必要性をうたう余り、今おっしゃいましたように、予備罪の予備罪あるいは予備罪の未遂罪など、構成要件に該当するかどうかいささか問題となるような、私はちょっと危惧もしているのですけれども、感じております。罪刑法定主義についてはぜひとも厳格な適用をお願いしたいと思っています。

 今回の改正法の対象には、ローンカード、ポイントカードあるいは紙の商品券は含まれないのでしょうか。今後の問題としてそれらを対象とする必要性とか法制化についてはどのようにお考えなんでしょうか。

古田政府参考人 まず、ローンカードにつきましては、これはいわばお金を借りるためのもので、支払い用のカードという性格はないわけでございます。それからまた、ポイントカードにつきましては、先ほども申し上げましたが、割り引きを受ける、そういう特典をためているということで、これ自体も対価を払うという性質のカードではない。そういうような点から、今回、支払い機能をもともと有するカードに限定する、それを有価証券あるいは通貨と同じように、類似の機能を持つということに着目して罰則を整備することとしたものでございます。

 それと、商品券につきましては、電磁的記録ではなくてペーパーのもの、これにつきまして、現時点でも有価証券偽造それから行使、交付とか、こういう罪で処罰が可能でございます。さらに、それに加えて所持罪のようなものを設けるということが現時点で必要かということになりますと、有価証券、ほかの小切手とかそういうふうなものもございますので、それとのバランス等も考慮しなければならない。したがいまして、いろいろな角度からの検討が必要であろうと思っております。

 しかし、いずれにせよ、今後どういうふうにカード類などが利用されるようになっていくか、これもなかなか予測がつかないことでございますので、今後の展開を見ながら検討は加えていきたいと考えております。

山内(功)委員 刑法の問題では、昔から保安処分を創設するという議論もなされてまいりました。大阪教育大学附属池田小学校の児童等殺傷事件はとても残念な事件だったと思うのですが、法務省は、かつて二回にわたって保安処分の導入を提案されました。その後、これについてどのような検討を経て、現在ではどういうふうに思っておられるのか、大臣の認識を伺いたいと思います。

森山国務大臣 精神障害によって犯罪行為をした者の処遇につきましては、その原因である精神障害について早く適切な治療を行うということがまずもって大事であると思います。そのような犯罪の被害者を可能な限り減らして、また、精神障害のために不幸な事態が繰り返されないようにする、患者にとっても不幸な事態でございますので、そのようなことがないようにするための対策が重要であるというふうにまず考えるわけでございます。

 そのためには、その原因である精神障害について早く適切な治療が確保できるようにする必要がまずあるわけでございまして、精神医療や犯罪の実情などさまざまな観点から調査検討を続けてきたところでございますが、今後とも、厚生労働省とも協力いたしまして、各方面の御意見を伺いながら、早急に検討していきたいというふうに考えております。

 刑法の全面改正の際に議論された保安処分、何年か前にそういうことが検討されたようでございますが、当時の外国の法制度を参考にしながら検討されたのではないかと思いますけれども、いずれにせよ、精神障害によって犯罪行為をした者の処遇につきましては、精神医療ということをまず大切に考え、それと密接な関連を有するさまざまな問題がございますので、精神医療や犯罪の実情を踏まえて、どのような措置が最も適切か、さまざまな角度から検討しなければいけないというふうに思っております。

    〔奥谷委員長代理退席、委員長着席〕

山内(功)委員 先ほどおっしゃいました中に、触法精神障害者の処遇の問題について、大臣が厚生労働大臣と一緒に新法制定の方向で合意したという報道に接しておりますけれども、これは事実なのでしょうか。

森山国務大臣 事実ではございません。

山内(功)委員 犯罪行為をした精神障害者に対する精神鑑定を含む刑事上の手続とか、入院を含めた処遇のあり方などにつきまして、どのような点に問題があると考えておられるのか。これは事務当局にお伺いしましょうか。

古田政府参考人 大変広範囲にわたるお尋ねでございますので、端的に、一つ一つ的確に申し上げることが困難なところもございますが、刑事手続におきましては、精神障害が一番問題になるのは、何と申し上げましても責任能力の有無、その程度ということになるわけでございます。

 したがいまして、この点についての的確な精神鑑定が行われる必要があるというのは、これはもう申すまでもないことでございまして、この点につきまして、今までずっといろいろな精神鑑定などが行われており、全体としてもそれは適正に行われていると考えておりますけれども、やはり今、そういうような的確な精神鑑定ができるように、さらに充実を図っていくということが一つの課題であろうと考えているわけでございます。

 それから、不幸にして犯罪行為に至りました精神障害者で、不起訴あるいは無罪になった場合に、こういう人たちに対して、現在は都道府県知事におきます、いわゆる自傷他害のおそれがある精神障害者の措置入院の制度がございますが、これが、医師の診察の結果に基づいて入退院の判断がなされているわけでございますが、その判断の際に、例えば捜査の結果わかったこと、あるいは裁判の過程でわかったことなどが必ずしも十分反映される仕組みにはなっていないように見受けられる点もございます。

 それから、重大な犯罪行為をした精神障害者で、無罪あるいは不起訴になった場合に、今後どういうふうにそういう人たちに対して対応していくのかという、いわば決定の仕組みといいますかその手続といいますか、そういうものが、重大な行為に対する社会の関心という目から見て、それに十分にこたえる仕組みとなっているかどうかというふうな点については、いろいろな御議論があり得るのではないかと思っております。

 そのほか、主なことを申し上げますと、退院後、治療が中断してしまってまた問題行動を起こすに至るというようなケースも間々あるように見受けられるという問題もあろうかと思います。そのほかに、重大な犯罪行為をしたけれども、責任能力がないということで無罪になった、あるいは不起訴になったというような方たちの中には、ごく普通の精神病院では、その病院にとって処遇が重荷になるというような場合があるようにも思われる、そういうふうな問題もあろうかと考えております。

山内(功)委員 例えば、この問題に関しまして、国立大学の医学部の附属の精神科とか特別な施設へ収容を特化させていく、あるいは、入退院の手続とか処遇のあり方などについて、司法あるいは第三者機関が判断を下す仕組みを考えていく、多くの問題点がいろいろ指摘をされておりますけれども、大臣として、今後どのような検討をしていかれるおつもりなんでしょうか。

森山国務大臣 たまたまこの一月の終わりから、厚生労働省そして法務省の担当者が、どういう問題があるか、そしてどう対処すべきかということについて勉強を始めようということで、勉強会をしております。もう三回か四回やったかと思いますが、いろいろな関係者の方にヒアリングをいたしまして、さまざまな御意見を承っている段階でございます。

 おっしゃいますように、触法精神障害者の処遇を適切に行うためには、本当にさまざまなことを配慮しなければなりませんし、関係するところもたくさんございますので、そのような方々の御意見を承り、そして、触法精神障害者にとっても最もよい方法で、また被害を繰り返さないようにするためにもどうすればいいか、多方面から考えて検討していかなければいけない。結論にはまだ至っておりません。

山内(功)委員 先ほど、厚生労働大臣と新法の制定ということは合意していないということをお伺いしたのですが、今おっしゃいました今後の予定といいますか、結論を得る時期、具体的にお聞きしますと、例えば、秋の臨時国会には何らかの提案があるのかとか、あるいは次の通常国会なのかを含めて、教えていただけたら、お願いします。

森山国務大臣 今申し上げましたように、非常に多岐にわたる、また難しい問題がたくさんございますので、今ようやくその勉強会がスタートしたばかりでもございますし、一部の新聞には臨時国会とか書いておりましたけれども、それはちょっと到底考えられないと思いますし、その後の日程につきましても、今はちょっと申し上げることができません。

山内(功)委員 精神病患者の方が他人を殺傷する事故を起こしたことによって、病院や医師が責任を問われる事例というのがふえているということも聞いております。措置入院した方を治療する病院側としても、凶悪で面倒な患者とは関係を絶ちたいというのが本音だと聞いたこともあります。もしそれが事実とすれば、措置入院から退院をさせてしまうという傾向にもなっていくんじゃないかと思っております。大変難しい問題であるなと私も思っております。

 精神障害者による犯罪の問題につきましては、医療の充実がもちろん第一ではありますけれども、例えば医療を充実しても、精神障害者が犯罪行為をすることもあると思います。その場合の処遇のあり方については、精神障害者の人権にも配慮しつつ、医療関係者や一般の国民にも開かれた議論をしていかなければならないと考えておりますが、最後に、大臣の所見を再度伺いたいと思います。

森山国務大臣 おっしゃいますとおり、非常に難しい、多岐にわたる問題でございます。国民及び関係者の理解と支持を得なければ結論を得ることはできないと思いますし、ましてその実効を上げることはできないと思いますので、今後とも、各方面の御意見を承り、早急に、しかし慎重に検討していきたいと思います。

山内(功)委員 こうした問題を議論すること自体が、大多数の一般の精神障害者の皆さんに対しての差別や偏見の助長につながってもいけません。しかし、平穏に暮らす人々を守っていく、それができないという国は近代国家ではないとも思っております。措置入院した人が退院した後も、例えば相当期間は通院をする、それを守らなければ再び入院の措置をとる、こういうような考え方もできるのではないかな。私もまだ勉強中なんですけれども、例えばそういう議論をしますと、それでは退院した人に通院義務まで認めるのかという反論も当然考えられるわけですので、大変難しい問題だと思っております。

 いずれにしましても、安全な国家をつくっていくことは国家の責務だと思いますので、今後とも大臣と議論を深めてまいりたいと考えております。よろしくお願いします。

 ありがとうございました。

保利委員長 次に、西村眞悟君。

西村委員 おはようございます。

 今のお話の保安処分については、我々も、昭和五十六年に法務省が発表されたことをも踏まえて検討してみたいと思いますので、後日また質問の機会があろうかと思います。

 本件、刑法の一部を改正する法律案でございますが、速やかなる成立と、そして法適用による犯罪の防止、鎮圧等を期待しております。したがって、この法案に関してとりたてて質問ということはないのでございますが、私の世代でいえば、同世代の人に失礼なのですが、電磁的記録というのは何かというのがどうもわからない。例えば本件の刑法で電磁的記録というのは、例えばこのノートの、ここにあるバーコードの記録等は電磁的記録ということになるのかどうか、御説明いただきますように。

古田政府参考人 電磁的記録と申しますのは、刑法の七条の二で定義がございまして、「電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録」ということになっておりますので、バーコードは目に見えるものでございますから、これは電磁的記録ではございません。

西村委員 高速道路の運賃支払いシステムに関して、車に取りつけたものとゲートのものが反応して、通過するだけで料金が自動的に引き落とされるというシステムが考えられておるようですが、このシステムを何か操作しまして、十回通っても一回しか通らないようなことになるとか、そういうことで、これはどういうふうな財産的利益を取得するのかどうか。支払いを免れるということにおいて財産犯の範疇に属すると思うのですが、これは、本件刑法の今の改正案で捕まえられる網の中にあるわけでしょうか。

古田政府参考人 ただいま御指摘のシステム、私自身も詳しく承知しておりませんので、正確なことを申し上げにくいわけでございますが、恐らくそのチップの中にある一定の、通行料が幾ら分というふうな情報が例えば入っている、そしてそれがどこかからか提供されるもので、それを車に備えつける、それを使ってというようなことになりますれば、そこの情報を改ざんいたしますと、そしてそれで高速道路等を通行して通行料金を免れたということになりますと、刑法の二百四十六条の二、電子計算機詐欺という規定がございまして、財産権の得喪、変更をあらわす電磁的記録を不正につくったりいたしまして、それで、それを使って財産上利益を得た場合に、これは詐欺と同様に扱うということになっておりますが、それに当たる場合もあり得るのではないかと思っております。

西村委員 本件改正案は、具体的に損害が発生してきたという現状を踏まえて出されております。しかしながら、私も余りハイテクの分野、中学生が政府中枢の情報を抜くとかいうことが伝えられるに及んで、全く未知の世界だ、今の技術になれた者の予測し得ない犯罪が起こり得る領域だな、このように思います。

 捜査当局におかれては、既に発生した犯罪があったからこの法律をつくるという今までのパターンから抜け出て、事前に、ここの部分に将来こういうふうな、一年前では想像できないような犯罪が起こる可能性がある分野だ、ハイテク技術を駆使した犯罪が起こる分野については研さんを積まれて、そして未然に防止し得るような立法上の検討等々を開始されておると思うのですが、より充実していただくようにお願い申し上げます。

 その点についての体制の御説明をいただきます。

古田政府参考人 いわゆるハイテク犯罪と申しましても、実際に何らかの被害が起きたときには、これはほとんどの場合が処罰は可能な状況ではあろうと考えております。

 ただ、問題は、その手段、やり方とか、こういうものがこれまでとは全く違ったやり方でやる。そうすると、一つ問題になりますのが、どうやって捜査をするか、これが非常に難しい場面が出てくるということでございます。

 それからもう一つは、ある不正行為を事前に防止するために、今までは犯罪とされていなかったことを何か犯罪にする、それが不正行為の的確な取り締まりの上で重要だという問題もあるわけでございます。

 今回、クレジットカード等について所持罪の新設を御提案申し上げているのもそういうような観点であるわけでございますが、そういうふうな実体法とそれから手続法と両方の面からこういうハイテク犯罪についてはいろいろな検討が必要であると考えておりまして、法務省におきましては、基本法制整備プロジェクトということで、こういう問題についても対応していこうと考えておるわけでございます。

 もちろん、その過程では、こういう分野の専門家等からも、いろいろな技術的なアドバイス、あるいは今後予測されるいろいろな問題、こういうことについても十分お伺いした上で作業を進めていきたいと考えております。

西村委員 御答弁ありがとうございました。質問を終えます。

保利委員長 次に、瀬古由起子君。

瀬古委員 日本共産党の瀬古由起子でございます。

 現代社会はカード社会と言われており、決済機能としての各種カードが重要な役割を担っております。カードの偽造、変造による被害額はここ数年特に激増して、昨年は百四十億に達しようとしていると言われております。決済機能としての安全性、社会的信頼性の確保のために、偽造カード防止への対応として、今回の刑法改正は妥当な改正であると思います。

 そこで、まず経済産業省にお聞きしたいと思うんですけれども、クレジットカードの犯罪防止、不正利用の防止に関して、新聞報道などを通じてカード利用者への注意喚起もされていると承知はしております。クレジットカードが他人に不正利用された場合、これは偽造である場合もない場合もありますけれども、その分の利用代金はだれが負担することになるんでしょうか。名義人、カード会社、加盟店が考えられますけれども、利用者が負担させられるということはないと受けとめてよろしいでしょうか。

杉山政府参考人 お答え申し上げます。

 いろいろな不正形態があると思いますが、まず、偽造クレジットカードが使用されるという場合でございますが、この場合にはいわゆる消費者に負担がかかることはございませんで、クレジットカード会社がその損害の負担をするというのが実態でございます。

 それから、クレジットカードを紛失したりあるいは盗まれたりした場合による、それに伴う不正利用でございますが、この場合には、その利用者に故意とかあるいは重大な過失がなければ、それによって生じた損害は、消費者でなくクレジット会社が負担をするという状況にございます。

 それでは、故意や過失がある場合にはどうかということになるわけでございますが、一般的に、消費者に故意または重大な過失があるという場合には消費者が負担することになるわけでございますが、ただ、立証責任というのはクレジットカードの会社側にございます。

 したがって、会社の方は、消費者の故意あるいは重大な過失ということが立証が難しいというふうに判断をした場合には請求をしないというのが実態になっておりまして、そういう意味では、本当に悪質なものというものは別といたしますと、実態的には会社の方が負担をしているというような状況になっているというふうに承知をいたしております。

瀬古委員 この故意または重大な過失という場合に、全くそうでない過失、そういうものとの境界といいますか、それはどういうように決めていくのかという問題なんですけれども、当然、利用者の故意でない、善意もしくは無過失という場合はカード会社が負担するわけですけれども、なかなかカード会社が認定したがらないということがあるんじゃないかと考えられるわけですね。それで、善意の無過失と過失、重過失、故意の解釈の食い違いをめぐってトラブルがあるんではないかというふうに思うんです。

 例えば、これは平成十二年の一月二十三日に日経で出された記事なんですけれども、免許証を入れた財布とともにカードを盗まれて、生年月日を組み合わせたカードの暗証番号で、暗証番号が多分免許証の生年月日だろうというので入れられて現金を引き出された場合、こういう場合は利用者の負担になるんじゃないかという問題をめぐっていろいろ議論がございます。

 それから、表示が外国語で理解ができなかったり、見逃してしまう、通知がおくれる、こういうケースも国民生活センターなどに寄せられているわけですね。こういう場合は重過失と判断される可能性もあるというふうに言われているんですけれども、ある意味ではカード会社の裁量に任せられているという指摘もあるんですけれども、その辺はいかがでしょうか。

杉山政府参考人 どういう場合に故意あるいは重大な過失になるかということは、最終的には裁判所の判断あるいは裁判所の判断の積み重ねというようなことで、具体的な対応の仕方というのがだんだんだんだん明確になってくるというようなことではないかと思います。

 例えば、今先生から具体的に御指摘のありました、暗証番号が盗んだ人に容易に知れてしまって、それを使ってお金が引き出されるというような場合につきましては、判例上は過失があるというような判例があると承知をいたしておりますが、クレジットカードの場合には、なお、余りそういう判例がないようでございまして、そういったほかのカードの事例の積み重ねなどを見ながら、具体的に故意、過失がどういう場合になるのかということが事例として積み重ねられるかと思います。

 ただ、いずれにしましても、そういった個別の具体的な問題につきまして、消費者が無用のトラブルを起こしたり、あるいは無用の負担、過重な負担を強いられるということは避けなければいけないと思っておりまして、そのためには、例えば通産省の相談窓口だとか、あるいはほかの窓口がございますが、そういったところでの相談体制の充実というのは引き続き図っていきたいと思っております。

瀬古委員 同じ日経新聞でこういう項目がございます。

 「自分のクレジットカードの利用・保管状況をもう一度チェックしてみよう」というのがありまして、その中に、「カードを利用する際は常に目の前で決済してもらうよう心がけている」イエスかノーか、こういう問いがございます。店員に手渡したクレジットカードが返されるまでの間にスキマーにかけられてカード情報が盗まれてしまうというのが実態のようでございます。

 飲食店、店舗など、レジがお客さんの目の前であるところは目の前で決済されています。確認もそれはできるんですね。しかし、デパートなどでは概してレジが引っ込んだところにあって、そういうのが多くて、カードを店員に渡す、そして、お預かりしますと言って店員が持っていってしまうわけですね。そういう場合に、もちろんお客さんへの接客のサービスとしてはそういうふうにしているんですけれども、そのカードで果たして情報が盗まれないだろうかという問題も実際にはいろいろな現場では出てくるわけですね。

 カード会社や協会が、割賦販売法だけでなく、消費者保護基本法、また消費者契約法にも規定されている消費者保護の観点から、私は、これはどう取り扱うかということがやはり大事だと思うんです。

 そういう意味では、お客さんの目の前で決済するようにするとか、さらにそのための設備もきちんと整備するとか、きちんと位置づけて、カード決済の信頼性の向上、またそのお店の安心さを向上する、こういうことが図られることが必要だと思うんですけれども、その点いかがでしょうか。

杉山政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま御指摘のございましたようなケースというのは確かにあると思います。

 ただ、例えば、レストランで座ったまま支払いをしたいというようなケースもありますでしょうから、そういう場合の加盟店のいわば顧客サービスとして行われるという面もございまして、一律にそういうのを全部やめるというのもなかなか難しい面もあるかと思います。

 ただ、先生御指摘なさいましたように、消費者に対して注意を喚起したり、あるいは協力を求めるというのは大変重要なことでございます。したがいまして、私どもといたしましても、クレジット業界に対しまして、消費者の啓発だとかあるいは加盟店指導というものを通じまして、そういった無用の混乱、トラブルあるいは犯罪に消費者が巻き込まれないように、そういった犯罪対策に取り組んでいくように指導いたしております。

 クレジット業界も、消費者に対しまして、クレジットカードを利用する場合には、実際にカードから目を離さないように、あるいは加盟店の行います本人確認というものに消費者の方も御協力をいただきたいというようなお願いをいたしておりまして、そういった啓蒙普及活動といいますか、そういうことは、例えばいろいろなインターネットのホームページを使うとか、そういった機会を利用しながら協力を求めているというところでございます。

 先生御指摘のように、消費者の保護を図るというのは、便利で安全な消費生活を実現していくという意味で大変重要なことだということは、私ども、そう認識いたしております。そういった観点から、クレジットカードの安全な使用の仕方ということについては、加盟店、消費者あるいはクレジット業界、そういったところと総合的な取り組みを進めるように、私どもも引き続き指導をしていきたいというふうに考えておるところでございます。

瀬古委員 国民生活センターのクレジットカードに関する苦情相談件数なんですけれども、平成十年度が二千六百十九件、平成十一年度が二千九百二十七件、平成十二年度が三千五百六十八件とずっとふえております。

 それから、相談の内容も、例えばこういう場合があるのですね。利用していないクレジットカードの請求が来た、その日は別の場所でカードを使って買い物をしている、カード会社は一たん払ってくれと言っているけれどもどうしたらいいか。それから、クレジット会社から利用した覚えのない代金を請求された、海外でも利用できる信販会社の名前の入っているカードだ、不審な請求はインターネット関係でドルでの利用になっている、信販会社に問い合わせたが調査に四カ月もかかるという。それから、海外旅行中、旅行代理店でカードを使用した、帰国後二重請求された。こういう幾つかの、内容も大変複雑化してきているわけですね。

 今、クレジットカードだけでも二億数千万枚、子供を除けば一人当たり三、四枚と言われているわけですけれども、先ほどもお話ありましたように、昨今は、クレジットカードにメンバーズカードが付随した、見かけ上はメンバーズカードにクレジットカードが小さくくっついているみたいな、こういう状況のものも多く出ております。利用者への注意喚起はもとより、クレジットカードの決済機能としての社会的信用性が維持され、安全性が確保されるようにぜひ取り組んでいただきたいし、消費者保護を第一義的には図るべきだと思うのです。

 そういう観点からも、先ほどお話がありました、トラブルやいろいろな相談が起きたときに、機敏にきちっと消費者の立場で相談できる窓口というものがどうしても必要だと思うのですね。先ほど通産省も窓口をつくっているというふうに言われていましたけれども、実際にはなかなか、今の複雑な、そういう新しい相談に応じた体制というのはもっと充実しなきゃならないし、窓口もきちっとそれに応じたものにしなきゃならないのじゃないかというふうに思うのですが、その点での改善の方向はどのように考えていらっしゃいますか。

杉山政府参考人 ただいま御指摘がありましたように、トラブルといいますか、そういった不審なことが起こった場合に、それに対してきちっと対応できるような相談窓口といいますか、そういったところをいろいろなところでもって充実をさせていくということが重要だと思っております。

 私どもも、各企業の相談窓口を充実するように指導をいたしておりますが、それだけではございませんで、例えば、クレジット産業協会とか日本クレジットカード協会にも、そういった消費者相談窓口をつくり、それを充実するようにというようなことを要請してきております。また、そういった業界だけではなくて、国も、先ほど申しましたように、経済産業省の場合には、本省と全国八カ所の経済産業局に、これはクレジットカードだけではございませんが、消費者相談窓口を設置いたしておりまして、そういった面での充実も図っていきたいと思っています。

 また、我が省だけでなくて、例えば、御指摘ございました国民生活センターとかあるいは地方自治体のいろいろな消費生活センターなどございますが、そういったところとの連携というものも一層強めていきたいというふうに考えております。

瀬古委員 法案の中身に少し触れたいと思うのです。

 百六十三条の二、百六十三条の三では、いずれも、「人の財産上の事務処理を誤らせる目的で、」とございます。いわば悪用する目的であることを規定しているのですけれども、なぜこの目的の規定があるのでしょうか。

古田政府参考人 例えば文書偽造の場合も、行使の目的といって、その文書を使うという目的、あるいは電磁的記録の不正作出の場合も、それを使って事務処理を誤らしめる目的ということを要件としているわけでございまして、これも、それと同様の趣旨でそういう要件を加えたものでございます。

 端的に申し上げますと、単にいたずらでつくってみたとか、そういうふうな場合というのもこれを処罰するということは適当ではない、そういうことでございます。

瀬古委員 特に所持についてなんですけれども、例えば運び屋とかあるいは宅配業者の場合はどのような対応をすることになるのでしょうか。中身を知らないということもあるわけですけれども、その点、いかがでしょうか。

古田政府参考人 もちろん、自分が運んでいるものがこういうふうな偽造のクレジットカード等であるということを知らなければ、それは犯罪は成立いたしません。

瀬古委員 特にプリペイドカードの場合なんですけれども、現在世に出ているプリペイドカードすべてが、テレホンカードのように穴あけ方式というわけじゃないのですね。ハイウエーカードだとか、私が住んでおります名古屋の地下鉄のカードなども、裏に印字されるだけのものもございます。クレジットカードの場合は記名式ですから、所持者本人が偽造のものかどうかわかるはずです。しかし、プリペイドカードは無記名式ですから、そして多種類ございます。

 参議院の法務委員会で刑事局長は、実際に変造されたプリペイドカードなどは結構穴があいた状態のものが多いと述べて、さらに、穴と残度数の表示が合わないことにたまたま気がついた後も使うつもりで持っておられれば、犯罪に当たるとしております。特に、穴あけ方式でない種類のプリペイドカード所持者はどうすればそれが偽造品だと見分けられるのでしょうか。

古田政府参考人 参議院の法務委員会で申し上げたのは、昔、典型的にありましたのがテレホンカードの偽造でありましたので、それを例に申し上げたわけでございます。

 それ以外のプリペイドカード、例えば今御指摘のありました交通関係のカードなどは、使った場合には、裏面に、いつ幾ら使ったかというような記録ができていくわけでございまして、仮に使用済みのカード等を使って変造をしたというふうな場合でありますれば、外形的に、先ほどのパンチの穴とか、あるいはそういう使用の記録などが残っていっているはずでございまして、そういう場合には、比較的容易に判別はつきやすかろうと思います。もっとも、全くカード自体、そっくりそのまま一からつくり出した、こういうことになりますと、確かに、おっしゃるとおり、その外形自体からは直ちにわからないという場合も、それはあり得ないわけではないと思います。

 実は、プリペイドカードに限らず、ある文書等が偽造であるかどうかということにつきましては、基本的に同じような問題というのは常にあるわけでございます。結局、例えばどういう経路、どういう理由で入手したのか、特にプリペイドカードなどの場合には、だれから、一体幾らで入手したのかとか、そういうふうな入手の状況など、これを総合的に判断をして、偽造の認識があるかどうかということを実際には判断していくということになろうかと思います。

瀬古委員 偽造品かどうかというのをなかなか所持者が見分けがつきにくいということになりますと、この今回の法案が、本来悪を取り締まるということが目的なのに、善良な市民の生活にまで入り込んで、おいこら式というか、カードを見せよみたいな、こういうことになるんじゃないかということが危惧されるのですけれども、そのための歯どめというのはどのように考えていらっしゃいますでしょうか。

古田政府参考人 先ほども申し上げましたとおり、ある文書等、あるいはこういうカード類が偽造かどうかということにつきましては、その認識が本当にあるのかどうかということは、今までもしばしば起こる共通の問題でございまして、そういうふうな認識があるかどうかということにつきましては、先ほども申し上げましたとおり、入手経路とか使用の状況とか、そういうふうなことを総合的に判断し、本人が仮に、偽造であるという認識はあるという供述、あるいはないという供述、いろいろあるとは思いますけれども、その信用性を確かめながら判断をしていくということになると考えております。

瀬古委員 クレジットカードのキャッシング機能や、キャッシングカード、デビットカードについては、金融庁または総務省が所管をしております。プリペイドカードは非常に種類も多く、多省庁が関係しているわけです。関係省庁の連絡協議会というのも設けられていると聞いておりますけれども、取り締まりだけでなく、省庁が連携して、消費者の保護と安全性を高める努力、こういうものをしていかなきゃならないんじゃないかと思うのです。その点での大臣の所見、見解を最後に伺いたいと思います。

森山国務大臣 支払い用カードの安全性を確保するということは、日常の国民の生活に、また経済活動に大変重要な意義があると思います。そのためのいわば基盤整備として不可欠なものでございまして、このことは同時に、消費者の保護という観点からも大変重要な課題でございます。今後とも、このような問題に対しまして、支払い、決済システムの発展や犯罪情勢などを見守りながら、関係省庁とも適切に対処してまいりたいと考えております。

瀬古委員 以上。終わります。ありがとうございました。

保利委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

保利委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、参議院送付、刑法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

保利委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

保利委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

保利委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時三十四分散会




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