衆議院

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第2号 平成13年10月19日(金曜日)

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平成十三年十月十九日(金曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 保利 耕輔君

   理事 奥谷  通君 理事 塩崎 恭久君

   理事 田村 憲久君 理事 長勢 甚遠君

   理事 佐々木秀典君 理事 平岡 秀夫君

   理事 漆原 良夫君 理事 西村 眞悟君

      荒井 広幸君    太田 誠一君

      熊代 昭彦君    左藤  章君

      笹川  堯君    鈴木 恒夫君

      棚橋 泰文君    谷川 和穗君

      松島みどり君    松宮  勲君

      山本 明彦君    吉野 正芳君

      枝野 幸男君    日野 市朗君

      肥田美代子君    山内  功君

      山花 郁夫君    青山 二三君

      藤井 裕久君    木島日出夫君

      瀬古由起子君    植田 至紀君

      徳田 虎雄君

    …………………………………

   法務大臣         森山 眞弓君

   法務副大臣        横内 正明君

   厚生労働副大臣      桝屋 敬悟君

   法務大臣政務官      中川 義雄君

   最高裁判所事務総局民事局

   長

   兼最高裁判所事務総局行政

   局長           千葉 勝美君

   政府参考人

   (警察庁生活安全局長)  黒澤 正和君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    吉村 博人君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    漆間  巌君

   政府参考人       

   (法務省大臣官房訟務総括

   審議官)         都築  弘君

   政府参考人       

   (法務省大臣官房司法法制

   部長)          房村 精一君

   政府参考人       

   (法務省民事局長)    山崎  潮君

   政府参考人       

   (法務省刑事局長)    古田 佑紀君

   政府参考人       

   (法務省矯正局長)    鶴田 六郎君

   政府参考人       

   (法務省人権擁護局長)  吉戒 修一君

   政府参考人       

   (法務省入国管理局長)  中尾  巧君

   政府参考人

   (公安調査庁長官)    書上由紀夫君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長

   )            工藤 智規君

   法務委員会専門員     横田 猛雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月十九日

 辞任         補欠選任

  渡辺 喜美君     松島みどり君

  不破 哲三君     瀬古由起子君

同日

 辞任         補欠選任

  松島みどり君     渡辺 喜美君

  瀬古由起子君     不破 哲三君

    ―――――――――――――

十月十八日

 司法制度改革推進法案(内閣提出第一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 司法制度改革推進法案(内閣提出第一号)

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件




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     ――――◇―――――

保利委員長 これより会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として警察庁生活安全局長黒澤正和君、警察庁刑事局長吉村博人君、警察庁警備局長漆間巌君、法務省大臣官房訟務総括審議官都築弘君、法務省大臣官房司法法制部長房村精一君、法務省民事局長山崎潮君、法務省刑事局長古田佑紀君、法務省矯正局長鶴田六郎君、法務省人権擁護局長吉戒修一君、法務省入国管理局長中尾巧君、公安調査庁長官書上由紀夫君及び文部科学省高等教育局長工藤智規君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

保利委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

保利委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所千葉民事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

保利委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

保利委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。左藤章君。

左藤委員 おはようございます。自由民主党の左藤章でございます。

 それでは、早速ですが、質問をさせていただきたいと思います。

 まず、司法制度改革関連でございますが、ことしの六月に司法制度改革審議会の答申を受けて、昨日本会議で司法制度改革推進法の法案が上程されました。

 我が国社会の将来の展望を開く上で大変重要な司法制度改革を推進していくに当たって、本部長小泉総理のもとに、内閣の一員であり、司法制度を所管する法務省の責任者としての法務大臣にお伺いします。目的とこれに対する御決意をひとつお願い申し上げたいと思います。

森山国務大臣 左藤委員御指摘のとおり、ことし六月の十五日に、司法制度改革審議会の意見を最大限に尊重いたしまして司法制度改革の実現に取り組むという旨の閣議決定をいたしまして、九月二十八日に、同審議会意見の趣旨にのっとって行われる司法制度改革を総合的かつ集中的に推進するために、司法制度改革推進法案を国会に提出させていただきまして、昨日本会議におきまして趣旨説明を行ったところでございます。

 この法案に示されておりますとおり、司法制度改革は、国民がより容易に利用できるとともに、公正かつ適正な手続のもと、より迅速、適切かつ実効的にその使命を果たすことができる司法制度を構築いたしまして、高度の専門的な法律知識、幅広い教養、豊かな人間性及び職業倫理を備えた多数の法曹の養成及び確保その他の司法制度を支える体制の充実強化を図り、国民の司法制度への関与の拡充等を通じて司法に対する国民の理解の増進及び信頼の向上を目指し、より自由かつ公正な社会の形成に資することを基本として行われるものでございます。

 内閣の一員といたしまして、かつ司法制度を所管する法務省の責任者といたしまして、我が国の社会の将来にとって極めて重要な課題である司法制度改革の実現に向けまして、全力で取り組んでまいりたいと考えております。

左藤委員 本当に今強い決意と、我々国民にとって大変ないい話だと思いますので、ぜひしっかりと進めていただきたい、このように思う次第であります。

 次に、人権擁護関係についてお尋ねをさせていただきたいと思います。

 実は私は、以前から非常に地元でいろいろな問題がありまして関心を持っている問題で、ホームレスの方々とその移住地付近の住民との人権問題がありまして、ちょうど地元の大阪市は、ホームレスの方々が全国で最も多い、十二年度は八千人、今は五千人と言われております。

 そこで、先月、九月二十二日に、ホームレス問題委員会という我々の勉強会をしておりまして、私の地元大阪市の四カ所に、東京の国会議員、川崎の国会議員もおられました、都議会議員、区議会議員等々、先生方が視察に参りました。

 その中で、私のちょうど選挙区でありますけれども、東住吉区に長居公園というのがありまして、ちょうど昨年十二月に、それに対処するために、無料宿泊施設として仮設の一時避難所が公園内に設置されました。大阪市さんの努力で、四百五十八あったテントというか仮宿舎といいますか、これが今や十六軒になり、今そこにいるのはどうも五人のようでございます。

 このように頑張っておるのですが、従来から同公園内で野宿するホームレスの方々の行為によって、公園周辺の一般住民の方々の平穏な生活が乱されるという事件が実は起きております。近隣住民の方々の人権問題が生じた、いろいろなそういう話も聞きます。こうしたこともあって、昨年の無料宿泊施設建設の際には、近隣の住民から、それをつくったらさらに環境が悪くなるのじゃないかという懸念や、また逆に、ホームレスの人権はどうなるんだ、こういうことがありまして、建設に反対する人があったのですけれども、結果的には先ほど申し上げたようにいい方向に進んでまいりました。このようなホームレスの方々の人権問題は、近隣住民の方々の人権との関係もあって非常に難しいわけです。

 私は、このホームレス問題というのは、我が国の経済情勢の悪化が反映して、先ほど言った大阪だけじゃなくて全国に広がっておりまして、ますます深刻化していくのではないかと非常に憂慮しているのであります。

 最近、内閣府が発表しました月例経済報告では、八月の完全失業率が前月比同水準の五%と過去最高水準で推移しております。最近の雇用情勢も非常に厳しい、また、企業の倒産件数も依然として非常に高いレベルで推移をしていると聞いております。このように雇用問題が深刻化する中で、倒産、リストラ、それによって職を失った人たちがやむなくホームレスになることも多々あると聞いております。

 そこで、このホームレスの問題に関して、人権擁護の観点から、人権擁護行政を所管する大臣として、どのようなお考えでどのように対処したいとお思いですか、お聞きしたいと思います。よろしくお願いします。

森山国務大臣 ホームレスの方々の問題につきましては、住居とか雇用、福祉などに関する人権の問題がございます。おっしゃいますとおり、ホームレスの方々と近隣住民の方々とのトラブルもございまして、近隣の皆さんの人権ということも考えなければならない。非常に複雑ではないかと思うのですが、法務省の人権擁護機関におきましても、ホームレス及び近隣住民の方々双方の人権に配慮しながら人権相談等に適切に対処することはもとよりでございますし、関係機関と十分連絡しながらこの問題について対処してまいりたいと考えております。

 法務省だけで解決できるものでは到底ございませんし、むしろ、おっしゃいますように、雇用問題、経済問題、非常に広い大きな問題が背景にございますので、それらを頭に置きながら、福祉あるいは雇用、職業訓練、その他さまざまな問題をあわせ考えていかなければいけないと思いますので、法務省も、人権という立場からこれからも努力をしていきたいというふうに思います。

左藤委員 ぜひそういういろいろな、法務省だけではなくて、地域住民、そして市とかまた警察の方々に御協力を賜りたい、このように思います。

 それで、警察庁にも一つお伺いをさせていただきたいと思います。

 今申し上げたように、公園の近所にお住まいの方々、また散歩する子供や女性の方々、こういう方が安心してできるように、現在そういうことで不安になっている方が非常に多うございますので、これらの治安対策、警察としては大変努力をしていただいていると思いますけれども、どのような状況になっているか教えていただければありがたいと思います。

黒澤政府参考人 ホームレス問題につきましては、警察としても大きな関心を持っているところでございます。関係行政機関で構成されておりますホームレス問題連絡会議によりまして、平成十一年の五月でございますけれども、第四回連絡会議で取りまとめられておりますホームレス問題に対する当面の対応に沿って、各種の対応をいたしておるところでございます。

 特に、警察といたしましては、委員御指摘のように、地域社会の安全確保のためのパトロール活動、これを行いますとともに、地域住民に危害を与えるような事案につきましては、検挙措置等を講じているところでございます。

左藤委員 どうもありがとうございます。ぜひ、そのようにパトロールをしていただきながら、やはり国民にとっては安心して暮らせるというのが最大の幸せでありますので、ぜひひとつこれからも、警察の方々には大変でございますけれども、よろしくお願いを申し上げたいと思います。

 次に、入管に関して御質問をさせていただきたいと思います。

 最近、非常にさまざまな凶悪犯罪が多発しておりまして、世界一安全な国日本に対する国民の信頼が低下しているんじゃないか、このような心配もしております。また、残念なことですが、九月の十一日、ニューヨークでテロの事件がありまして、国際的な犯罪組織によって敢行される凶悪犯罪が多発していることは、私としても非常に危惧しているところであります。

 その中、政府内に設置されました国際組織犯罪等対策推進本部は、本年八月の二十九日、国際犯罪対策の今後の取り組みについて本部決定されたと承知しております。同本部決定において、法務省は、不法入国、不法滞在者対策の中で、出入国管理体制及び取り締まりの強化、装備資機材及び施設の充実、法令の整備を図るとされています。そこで、本部員でございます法務副大臣に対して、まことに恐縮ですが、これらの取り組みの実施状況をひとつお伺いをさせていただきたいと思います。

横内副大臣 お話しになりましたように、国際組織犯罪対策推進本部は私がメンバーになっているものですから、私からお答えをさせていただきます。

 最近、重大な犯罪が、とりわけ外国人による重大な犯罪が急増をしておりまして、治安上大変に大きな問題になっているわけでございます。

 そういうことで、ことしの六月ですけれども、副大臣会議で、これはやはり内閣に省庁横断的なしっかりした組織をつくって、各省協力して、とりわけ外国人犯罪問題に対応する必要があるんじゃないか、そういう提案をいたしました。幸い皆さんから賛成をいただいて、官房長官を本部長として、それから国家公安委員長を副本部長とするこの国際組織犯罪等対策推進本部が発足をしたわけであります。二回会議を開きまして、御指摘がありましたように、八月の二十九日に取り組みについての決定をしたわけでございます。

 その取り組みの状況についての御質問でございますけれども、まず第一点として、日韓ワールドカップサッカー大会におけるフーリガン対策の一環として、出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案を今国会に提出をする予定であります。

 さらに、今御指摘がありましたけれども、体制の整備をしなければならないということでございまして、最新鋭の偽変造旅券等の鑑識機器の導入を、合計四十四機器導入をしたいということで、現在進めております。

 それから同時に、これは来年度の定員増の要求でありますけれども、入管職員の大幅な増員を図りたいということでございます。

 それから同時に、現在進めておりますが、東京入国管理局の収容施設の拡大を図る。現在、建築中でございます。

 そういうようなことをいたしまして、この外国人犯罪の急増に対するしっかりした対策をとっていきたいというふうに考えております。

左藤委員 どうもありがとうございます。

 今おっしゃられるように、不法入国対策としては、偽変造文書の対策が一番大事である。偽造パスポートですね。それに四十四とおっしゃいましたけれども、本当にその四十四がどのようにどうなるのか、また、現在どこまであって、新たに四十四という意味なのか、その件を含めまして、済みませんが、入管局長からひとつ教えていただければありがたいと思います。

中尾政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、偽変造文書等による不法入国事案については、入管といたしましても、水際で阻止することは私どもに課せられた重大な使命だと思って、精いっぱい頑張っているところでございます。

 先ほど御指摘いただいた四十四台の件でございますけれども、ことしの七月に、成田空港を初めといたします全国の主要空海港に、最新鋭の偽変造文書鑑識機器を二十一台既に配備したところでございます。さらに、この関係の整備の一層の強化に努めるために、同型の機械を二十三台、今後早急に国際定期便等を運航している空港等に配置したいということで、本年度の予算要求で要求しているところでございます。

左藤委員 今お話聞きますと、主に飛行場ということに相なるかと思いますね。ということは、港湾はどうなっているのかなと、ふと思うわけであります。

 やはり、不法入国しようとする人たちは、そういう機器が整備されていないところをねらって来るというのは当たり前のことなんですが、今後、この偽変造文書鑑識機器をどのように整備、どのような計画をお持ちになっているか、お伺いをしたいと思います。

中尾政府参考人 お答え申し上げます。

 海からの関係でございますけれども、一番大きなところは博多港でございます。博多港につきましては、飛行場と同様の最新の機器の整備をする予定にはしております。その他の海港につきましては、海上保安庁等の関係機関と緊密な連携をとりながら、水際で密航者等の不法入国の防止に努めたい、そういうふうに考えておるところでございます。

左藤委員 なるほど、わかりました。

 しかし、先ほどお話ありましたワールドカップにもそういう支障のないように、早くひとつよろしくお願いを申し上げたいと思います。

 そういう状況はわかりましたが、やはり、安全な我が国、日本の信頼を回復するためには、不審な外国人の入国を阻止するということを考える、また、不法滞在外国人を退去させるということが国家の喫緊の課題であります。これはもう皆様御存じのとおりだと思います。入国管理体制の充実強化に向けて、先ほど副大臣から、入管の増員等々というお話がありましたけれども、平成十四年度の予算要求はどのようになっているのか、ひとつお伺いをしたいと思います。

中尾政府参考人 お答え申し上げます。

 入管体制の強化ということで、関係御当局の御理解を賜りながら、私ども努力をしているところでございますが、当局関係の平成十四年度増員要求の概要について簡単に御説明申し上げます。

 成田空港、羽田空港及び地方の海空港におきます出入国審査要員等といたしまして、入国審査官八十名、また、議員御指摘いただきました治安悪化の要因となっております不法滞在者対策ということで、首都圏及びその周辺における摘発体制の強化というようなことで入国警備官八十名の、合計百六十名の増員要求をしているところでございます。

左藤委員 今お話お聞きしますと、入国審査官が八十名、また入国警備員が八十名の要求とお答えになりました。でも、入管行政が今非常に厳しい、非常に重要だということを考えますと、これではちょっと不十分じゃないかな、このように思います。この辺について、大臣として、これでやれるのかなと私は不安になるんですが、それについての御見解を、我々は充実強化をしていただきたい立場ですが、どのようにお考えになりますか。よろしくお願いを申し上げます。

森山国務大臣 確かにおっしゃいますとおり、これで百点満点とは言いかねると思いますが、一方において、行財政改革の時代でもございますし、目いっぱい、要求できるだけ要求をさせていただいて先ほどの数でございます。しかし、それが実際にそのとおりに認められるかどうかはこれからの話でございまして、ぜひ先生にも応援していただきたいと思いますが、その人数も含め、これから安全な社会を確保するという一つの重要な柱でございますので、入管体制につきましては、さらに努力をしていきたいというふうに考えております。

左藤委員 どの程度を目標になさっているんでしょうか。

森山国務大臣 目標は、要求した数目いっぱいなんですが、できるだけそれに向かって……(左藤委員「今年度だけでなくてその後」と呼ぶ)その後ですか。ことしどのぐらい認めていただけるか。そして、その上でどのような状況に、社会全体の状況もございますし、考えますと、来年度、再来年度については、その時点でまた精いっぱい考えていきたいというふうに思います。

左藤委員 大臣、ぜひ頑張っていただきたいし、我々も一生懸命頑張らなきゃならないと思うんですが、やはり、さっき入管局長がおっしゃった、水際で不法な人たちを入れないというのが一番国の安全になるわけです。今、テロの事件とかいろいろあるわけですから、余計そういうことをしっかりやらなきゃならない。そのためには、確かに全体の公務員数を減らさなきゃならないということはありますけれども、国民の生命財産を守るということにとっては一番大事な最初の人員だと思いますので、ぜひひとつ、八十人、八十人の要求だけでなくて、来年、再来年も含めて、私は、全体的にあと千人ぐらい何とかならないかな、このように勝手に思っておるんですが、ぜひそのように、我々も頑張らなあかんなと思いますので、法務当局もひとつよろしく御努力をお願い申し上げたいと思います。

 それでは次に、矯正関係についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 先ほど副大臣もちょっとおっしゃっていたんですけれども、入管の関係で東京の施設をふやす、こういう話がありましたけれども、一般的に受刑者の数が最近ふえているように思います。収容人数がもう一〇〇%を超す、こういう現状が出ていると聞いておりますし、きょうの犯罪白書にもそのような資料が出ておりました。これの状況ですね、行刑施設における最近の現状はどうなっているのか。また、嫌な話ですが、今後これはどのような見込みがあるのか。この辺について法務当局からひとつお答えをお願い申し上げたいと思います。

鶴田政府参考人 お答えいたします。

 収容状況につきましては、平成十年度以降から急激な増加に転じておりまして、ことしの八月末では、総定員数を超えるということで、人数にして六万四千七百人になっております。収容率で一〇〇・六%になっております。これは、昭和四十一年以降、三十五年ぶりのことであるわけですが、特に受刑者の収容が非常に増加しておりまして、全国には刑務所及び刑務支所が七十二ございますけれども、そのうち医療刑務所とか交通刑務所等を除きまして大体六十一庁において過剰収容ということになっております。また、被告人等のいわゆる未決の関係でも、都市部を中心にいたしまして、拘置所等も非常に過剰収容になっておるわけです。

 将来の予測ということもなかなか難しいわけですけれども、ここ一、二年の収容数が大体月平均で三百ないし四百といった数字で増加しております。このまま推移すれば、本年度末には六万六千、来年の十四年末には七万一千人くらいを超えるのではないかといった予測をしております。

左藤委員 そういうことになると、これは大変な問題ですね。これは施設の問題もありますけれども、これのふえる原因、それから、これに対する対策をどう講じておられるのか。済みませんが、御回答をお願い申し上げたいと思います。

鶴田政府参考人 お答えいたします。

 増加の要因、いろいろあるかと思いますけれども、やはり犯罪発生件数の増加に伴う新受刑者、特にこれまで受刑の経験のない、私どもでは初入と言っていますけれども、そういった初入の受刑者の増加が大変多くなっているところが一つ大きな原因ではないかと思います。そのほか、外国人受刑者、高齢受刑者、それから女子受刑者の増加もあります。また、やはり犯罪の凶悪化ということに伴って刑期が長期化しているということも一つの要因ではないかと思います。

 そのほか、背景といたしましては、社会環境の変化とか、あるいは国際化、あるいは経済の不況の長期化というようなこともいろいろ考えられる事情があろうかと思いますけれども、しばらくこういう状況は続くのではないかというふうに考えております。

 そういった中で、どういう問題があって対策をとるかということですが、問題の一番大きいのは、やはり被収容者が寝起きする居室、それから刑の執行として刑務作業を科さなきゃなりませんが、その場である工場の不足ということが一番問題です。それから、食料費等のいわゆる生活関連経費も確保しなければなりません。それから、収容がふえますとどうしても関連業務がふえますので、職員の負担の増加というようなことが考えられます。

 私どもといたしましては、今、雑居房も含めて、居室の定員を超えた形での被収容者の収容とか、あるいは、集会所とか倉庫等がございますので、そこを改修しまして居室とか工場に転用する、そういったいわば応急措置と申しますか、それで急場をしのいでおりますが、そのほか、財務当局等の御理解も得まして、余裕のある施設につきましては、居室等の増築というようなことも進めております。また、率直に申し上げまして、最近の急激な収容増になかなかそれでも追いつかないということがありますし、また、これ以上収容が続きますと、やはり収容者の生活空間が非常に狭くなる、ストレス、不満が高じる。その結果として、規律違反とか事故等が懸念されるわけです。

 改めて申すわけではありませんけれども、私ども行刑施設の使命は、収容をしっかり確保して、改善更生、社会復帰を通じて、いわば法秩序の最後のとりでとして、安心して暮らせるような安全な社会の実現に寄与するというところにあるわけですが、そういった使命を達成するために、今後とも、業務の効率化や合理化に努めていきたいと思いますが、それと同時に、施設の増改築を含めまして、必要な予算あるいは職員の確保に引き続き最大限の努力をしていきたいと考えております。

左藤委員 おっしゃるとおりだと思います。本当に新受刑者もふえたり、外国人犯罪者がふえている。現場は本当に大変だろうと思いますし、今おっしゃった施設の問題、人員の問題、これも含めて、行革とは反対方向になるような感じがしますけれども、やはり国の安全ということを含めると、当然そこでふやさなきゃならないな、このように改めて理解をしたところであります。

 今、普通の、一般の受刑者の話をしましたが、少年犯罪というのが実は増加をしております。少年施設の収容人数もどうなのかなと非常に心配であります。これは、大人と違いまして、また将来矯正をして立派な社会人になってもらわなきゃならない。先ほどお話ありました、ストレスがたまったりいろいろ精神的に不安になってしまうというのは非常に問題でありますが、このような現場の施設の状況というのはどのようになっておられるか、それも改めて聞かせていただければありがたいな、このように思います。

鶴田政府参考人 先ほども申し上げましたとおり、成人受刑者等の成人の被収容者も増加しておりますけれども、少年施設の方の収容人員も急増しております。

 数字的に申し上げますと、少年院、少年鑑別所とも新収容者は平成八年度以降一貫して増加しておるわけでありまして、平成十二年度の新収容者数は、平成七年と比較いたしますと、少年院及び少年鑑別所とも約一・六倍に及んでおります。その結果、本年八月末現在の収容定員を超える収容を余儀なくされている施設は、少年院、少年鑑別所合わせて十九施設、それが今の実状でございます。

左藤委員 時間になりましたので終わらせていただきたいと思いますが、先ほどお話がありましたワールドカップ、来年あるわけであります。フーリガンの問題、これは、法務当局、また警察当局におかれましては大変な厳しい仕事だと思いますけれども、やはり安全でワールドカップができるように、今から対策も含めてよろしくお願いを申し上げて、質問を終わらせていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

保利委員長 次に、青山二三君。

青山(二)委員 公明党の青山二三でございます。本日、初めて法務委員会で質問をさせていただくことになりました。

 今回は、選択的夫婦別姓について、それに絞って質問をさせていただきたいと思いますので、どうかよろしくお願いをいたします。

 二十一世紀は女性の世紀と言われております。昨年十二月には政府の男女共同参画基本計画が策定されるなど、男女平等の施策づくりが進んでおります。その中で少しも進んでいないものがございます。それが、夫婦が同じ姓を名乗るのもいい、また、結婚前の姓を別々に名乗るのも自由とする、いわゆる選択的夫婦別姓制度の導入問題でございます。

 五年前の一九九六年二月、法務大臣の諮問機関であります法制審議会が、一九九一年から五年間の歳月をかけて、法曹界など関係各方面の意見も聴取いたしまして、国民世論の動向も考慮しながら見直し作業を行い、選択的夫婦別姓制度の導入を答申に盛り込んだわけでございまして、この意義は大変大きいものであると思います。

 私は、二十世紀中にはこの選択的夫婦別姓制度の導入がなされると考えておりましたけれども、政府からの改正案は出されず、その後、議員立法による改正案が提出されてきたものの、残念ながら実現に至らないまま新しい世紀を迎えてしまいました。公明党は、さきの国会でも選択的夫婦別姓制度の導入を柱とする民法改正案を国会に提出いたしましたが、継続審議になっているままでございます。

 そこで、まず初めに、時代の要請であると思われますこの制度の導入が今日までなされなかった理由について、大臣の御見解を伺いたいと思います。

森山国務大臣 この問題が議論されるようになりましたのは、今先生がおっしゃいましたとおりの経緯でございまして、平成八年に法制審議会の答申が出てからかなりオープンな議論が始まったというふうに承知しております。

 その法制審議会の答申を受けまして法務省もいろいろ検討をしたようでございますけれども、あの時点ではまだ大方の理解を得るというところまで結局行くことができないままに時間が経過してまいりました。

 同じ平成八年に世論調査を当時の総理府でやっておられますけれども、そのときの世論調査の結果ではまだ反対が賛成よりも多かったということもございまして、世間全体の理解がまだ十分ではなかったということも大きな理由ではないかと思います。

青山(二)委員 去る十月十一日でございますけれども、内閣府男女共同参画会議基本問題調査会が、この選択的夫婦別姓制度について、「民法改正が進められることを心から期待する」という中間報告を取りまとめました。

 また、本年八月の初めに発表されました内閣府の世論調査によりますと、選択的夫婦別姓の導入に賛成の人は四二・一%に達しておりまして、反対の二九・九%を大きく上回っております。前回の一九九六年の調査と比べましても賛成が一〇ポイントふえまして、通称を含めて結婚後も別姓を名乗れる何らかの法改正に賛成する人は六五・一%になって、逆に反対は一〇%も減っております。一九七六年以来の政府の世論調査で、今回初めて賛成が反対を上回った結果となりました。

 また、民法改正を期待するとの中間報告が出されましたことは、まさに時代の流れが選択的夫婦別姓の導入への民法改正に向けて大きく動き出している、このように思うわけでございます。実際に別々の姓を名乗っている夫婦がふえましたことや、女性たちが生き方の規制緩和を求めているあらわれであると考えるわけでございます。

 今回の世論調査の結果の分析と調査会の中間報告についての御感想を森山大臣にお伺いしたいと思います。

森山国務大臣 青山委員がおっしゃいますように、この五年の間にこの問題に対する理解が大変進んだと申しましょうか、世の中が動いたのではないかなという感想をまず持ったわけでございます。世論調査の数字だけが唯一の根拠というわけにはいきませんけれども、それは非常にはっきりとした世論の変化を示しているというふうに思いますので、私といたしましては、世の中の価値観が大変多様化した今日、そういう生き方を選びたいという女性がふえ、また、それに対する周囲の理解も多くなってきているのではないかというふうに感じているところでございます。

 さらに、それを受けまして、男女共同参画会議の専門調査会がその他さらに専門的な研究をされました結果、もうそろそろこの時期ではないか、潮どきではないかということを示していただきまして、ぜひその面の法改正をするように心から期待するという言葉をちょうだいいたしましたのは、大変心強いことでございます。

 私といたしましては、かねて個人としてはぜひそういうふうにするべきではないかというふうに思っておりましたので、さらに努力を続けまして、このような新しい制度ができますように作業を進めてまいりたいというふうに考えております。

青山(二)委員 森山大臣の大変心強い御答弁をいただきましたので、私どももこれからしっかりと頑張ってまいりたいと思っております。

 次に、選択的夫婦別姓を求める女性の現状についてお伺いをしたいと思います。

 最近の女性の社会進出に伴いまして、働く女性が改姓によって不便あるいは不利益を受けるケースがふえております。

 実際、制度が実現していないために、旧姓を通称として使用する人がふえておりまして、旧姓使用を認めている自治体や、また民間企業も今や珍しくないとも聞いております。しかしながら、戸籍名だけしか認められていない健康保険証、それから運転免許証、パスポート、印鑑証明など、通称を使っておりますと、記名と違うというようなことで、身分証明が難しくなるということで、旧姓の自分を証明するものが手元になくなることで日常生活に困難が生じているようでございます。

 このように別姓を望んでいるのは、働く女性ばかりではございません。専業主婦からも、親しんだ姓を変えることへの疑問、また、夫の姓への吸収合併では夫婦間の平等が保ちにくいというような声も聞かれます。姓を変えてしまうことへの疑問や抵抗感を持つ人々が数多くいるということは事実でございまして、この制度の実現を待ち望んでいるわけでございます。

 制度導入へ期待をしているこのような女性の現状につきまして、大臣の御認識を伺いたいと思います。

森山国務大臣 青山先生のおっしゃったとおりでございまして、最近は、女性が職業を持つということはもう当たり前の話になっておりますから、仕事をして、自分の今までの名前で五年、十年の実績を積んで、その上でその後結婚するというケースが少なくございません。そうしますと、結婚後も仕事を続けたいという人がこれまたふえておりますので、仕事の今までの実績というものと切り離されてしまうような感じがして、大変職業上の不利に結びつくということを心配する方が多いと思います。

 そればかりではなくて、少子化時代ですから、一人っ子同士の結婚ということも少なくございませんので、そういう場合には、御本人だけではなくて、周りの親族、御両親等がそれを懸念される、自分の家族、氏が消えてしまうということを心配されるということも少なくないわけでございます。

 いろいろな理由でぜひ今選択できるようにしてもらいたいという声が大変最近は多くなってまいりました。私のところにも個人のメールがたくさん届いたり、また、もちろん反対のメールも時々ございますけれども、非常に多くの方が最近関心を持たれて、そのまた多くの方が実現のために期待していらっしゃるということを実感しているようなわけでございます。

青山(二)委員 それでは次に、人権という点からひとつお考えを伺いたいと思います。

 我が国も批准しております女子差別撤廃条約の第十六条第一項に、「締約国は、婚姻及び家族関係に係るすべての事項について女子に対する差別を撤廃するためのすべての適当な措置をとるものとし、特に、男女の平等を基礎として次のことを確保する。」という規定がございます。その細目に、「夫及び妻の同一の個人的権利」が挙げられております。この個人的権利には、姓及び職業を選択する権利を含んでいると認識しておりますけれども、この条約を守る義務からも、選択的夫婦別姓制度に向けて政府は積極的に取り組む必要があると思いますけれども、この点の御所見についてお伺いしたいと思います。

森山国務大臣 現在の民法の規定は、第七百五十条に、「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。」と書いてございまして、この法律自体は平等な建前でできているわけでございます。つまり、婚姻をする当事者が話し合って選択をするということになっておりますので、男女平等の理念に反するというわけではないと思いますが、実際に、事実として、九七%のカップルが夫の氏を称するという結果になっているということから、それに社会的な拘束を感じて、非常にこれでは困ると思う人が少なくないというのが今日の現象ではないかと思います。

 したがって、両方が相談してどちらかに決めなければいけないというのを、それもそれで結構なんですけれども、そのほかに別々の名前を名乗るということも選択できるという、その選択肢をふやしてほしいということなのではないでしょうか。

青山(二)委員 ところで、この制度の導入で一番問題になっているのが子供の姓の問題ではないかと思っております。

 この点は、それぞれの子供の出生時に夫婦の協議で決め、成長してから子供の意思で変えられる可能性を残しておけばよいと思いますけれども、一つ懸念されますことは、親と子の姓が違う、それを特殊なケースと見る固定観念が日本の社会に残っておりますために、子供がかわいそうだという、そんな意見があると思います。

 ですから、そのかわいそうだという前に、考え方の根底にある固定観念を変えていく努力が必要であるのではないかと思っているわけでございますけれども、この制度を導入した場合の問題点あるいは課題等がございましたら、御説明いただきたいと思います。

森山国務大臣 おっしゃるとおり、確かに、子供の氏というのは一つの大きな、重要な問題だというふうに思います。子供の氏を決定する時期、あるいは、複数の子供がいる場合に子供の氏は統一するべきであるかどうかというような問題がございまして、これらを慎重に検討する必要があるというふうに考えております。

 そんなことを考えまして、賛成論がある一方で、子供の気持ちあるいは子供の福祉ということを考えたときに、これは問題ではないかということで反対なさる方もいらっしゃるわけでございまして、国民各層あるいは関係方面での議論をさらに深めていただかなければなりませんし、法務省といたしましても、この制度の趣旨に関する情報を細かく提供させていただきまして、国会でも議論をしていただきたいというふうに考えております。

青山(二)委員 問題点とか課題はさまざまあるかと思いますけれども、制度導入の反対意見は、同じ姓を名乗るという慣習が家族のきずなを強めており、夫婦別姓が導入されれば、一体感が崩れ、家族の崩壊につながる、こんな意見がまたあるようでございます。それから、夫婦別姓には国民世論の反対が強いなども挙げられております。

 要するに、姓は家族のきずなであり、別姓になれば家族制度が揺らぐ、こういうふうにおっしゃる方がいるわけなんですけれども、しかしながら、この姓というものを歴史的に見ますと、明治以降のものでございまして、それ以前の庶民に姓はなく、武士など一部支配階級の特権であったようでございます。

 こうした事実からもわかりますように、別姓であるからといって家族のきずなが失われるというようなことは私はないと思っております。むしろ、別姓をとることができた夫婦は、互いに自立をいたしまして、相手を尊重しているという点で、家族のきずなはより強くなるものとも考えるわけでございます。

 要するに、多様な価値観、多様な生き方を認めようというのが選択的夫婦別姓制度の導入でございます。別姓を強いるものでもなければ、同姓を強いるものでもない、あくまで選択制であり強制でない、選択肢をふやすのが目的であるということを反対している人にはしっかりと理解をしていただきたいと思っているわけでございます。

 森山大臣も、先月の二十日の小泉内閣メールマガジンで、「一般の国民はもとより、国会議員の中にもまだ誤解している人がいます。」こういうことが出ておりましたね。ちょっと御紹介いたしてみますと、

  現に最近あるベテラン国会議員が「私は保守派でね、夫婦別姓には反対なんですよ。特に必要な場合は別ですけどね」と言われたので、「選択的夫婦別姓とは正にそういうことなのですよ」と私が言いますと、「あっ、そうなんですか」とびっくりした顔をされたので、こちらがびっくりしてしまいました。

このように出ておりましたね。ですから、誤解をされている方を含め、反対論者に対する御見解と、今後これらの方々に御理解をいただくための方策についてどのようにお考えでしょうか。

森山国務大臣 おっしゃるようなことを確かに書かせていただきました。そのような経験をいたしましたので、まだ十分に御理解をいただいてない方が国会議員の中にもいらっしゃるのだなと思いまして、ちょっとびっくりしたものですから。

 確かに、この問題について、深い御関心をお持ちの方はたくさんいらっしゃいますし、よくわかっていただいている方もいらっしゃるんですけれども、中には、御自分が直接その問題に直面しているわけではないということもあり、縁のない方は、ただ新聞の記事などを斜めにお読みになったくらいで中身はよくわかっていらっしゃらないという方もまだいらっしゃると思うのですね。

 そういう方々に選択的夫婦別姓という言葉がまた難しいのですよね。普通の人の会話の中に出てこないし、舌をかみそうな発音ですから。だから非常にわかりにくいのもまた理解できるんですけれども、実際には、今のような制度がいいという方はもちろんそれで結構なんだし、いや、それでは大変不便だし、非常に困るんですよという方には選ぶ道をつくるということなので、そのようなことを多くの方に理解をしていただけば、さらにこの問題が前へ進むのではないかというふうに思いまして、誤解を解かなくてはいけないというふうに思って、そんなつまらないことを書きました。

 しかし、現実にはそういうことがまだまだ残っていると思いますので、青山先生にもぜひお力をかしていただきまして、できるだけ多くの方の正しい御理解が進みますように努力していかなければいけないというふうに思います。

青山(二)委員 一生懸命私も頑張ってまいりたいと思います。

 それでは次に、この諸外国の例を見てまいりたいと思います。

 夫婦の姓の決め方につきまして、各国の状況はさまざまでございますが、特に欧米諸国では夫婦別姓容認が大勢でございます。例えば米国では、一般的な慣習として自分の姓は自由に選ぶ権利があるとされまして、同姓、別姓、あるいは夫の姓と妻の姓の結合姓から選択できるようになっております。また欧州では、一九七八年に、各国が選択的夫婦別姓を認める法改正を行っております。

 一方、日本では、民法七百五十条で、「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。」このように定めておりまして、夫婦同姓でなければならないと強制をしているわけでございます。夫または妻の姓を選択できる、すなわち夫の姓でも妻の姓でもいいわけですけれども、実際は妻の改姓が九八%と圧倒的に多数を占めているのが現状でございます。先進国の中でも同姓の強制は日本くらいでございまして、大変おくれをとっている現状でございます。この点、大臣はいかがお考えでしょうか。

森山国務大臣 夫婦の氏についての法制に関しましては、日本のように同氏同姓のみを認める国や別氏のみを認める国、それぞれ国によって違いますが、多くの国において同氏と別氏の選択を認めているというふうに承知しております。

 私が承知している範囲では、選択を認めている国として、ドイツ、デンマーク、スウェーデンなどがございます。また、アメリカやイギリスなどは、おっしゃいましたように、原則として、不当な目的がない限り自己の氏を自由に選択する権利があるというふうにされているそうでございまして、先日私もヨーロッパに参りましてちょっと勉強してまいりました中で、そういう話が出ましたときも、イギリス、ドイツ、スウェーデンでございましたが、既にその問題は解決済みであるという話でございました。

 夫婦同氏しか認めていないという日本のような国は、探してみましたところ、見つかったのが、インド、タイ、トルコというようなところでございました。そういう国がどういうわけでそうなっているのかは私もよく存じませんが、だんだんとそういう国は少数派になりつつあるようでございます。

青山(二)委員 トルコとインドと日本だけということでございますので、先進国日本としてはやはり一刻も早く欧米に倣ってこの選択的夫婦別姓の導入をされますことを本当に期待するわけでございます。

 新しい二十一世紀の共生社会を構築していくためには、人々を画一的な枠にはめ込むのではなくて、個人の多様な価値観や生き方を認め合う法制度の整備が不可欠でございます。また、現実にふさわしい法を整備することは、社会に新たな活力をもたらすものと私は確信をいたしております。

 ただいま申し上げてまいりましたように、時代の進展の中で夫婦別姓への国民の意識は大きく変化しつつあります。別姓を希望する人がいるのであれば選択肢を広げていくのが政治の責任であると私は考えております。女性の世紀である二十一世紀、女性が能力を発揮できる環境を整備し、女性の社会参加を積極的に推進していく時代でございます。婚姻によって必ず夫婦同姓となるこれまでの制度のあり方を見直しまして、選択的夫婦別姓制度を導入するべきときが来ていると私は思っております。森山大臣の強力なリーダーシップによって、今臨時国会において選択的夫婦別姓制度導入のための民法改正を一刻も早く提出していただきまして、実現されますことを心から期待しているわけでございますが、大臣よりその御決意をお伺いいたしまして、これで私の最後の質問にさせていただきたいと思います。

森山国務大臣 青山先生から大変心強い激励をいただきまして、ありがたく存じます。

 しかし、この臨時国会で必ずとおっしゃられますと、御存じのように会期は限られておりますし、テロその他の問題に関するさまざまなものがございますし、また、この法務委員会も大変たくさん宿題を抱えております。ですから、先生方の御協力によりましてそのようなことができれば大変ありがたいと願ってはおりますが、なかなか物理的にも難しいかなという心配もございますので、鋭意実現できますように努力をしていきたいというのが私の気持ちでございます。

青山(二)委員 ただいまの森山大臣のお言葉では、今の国会は難しいけれども次の国会ならば何とかなるのではないか、そのように受けとめさせていただきまして、質問を終わらせていただきます。

 大変ありがとうございました。以上でございます。

保利委員長 次に、山花郁夫君。

山花委員 民主党の山花郁夫でございます。

 ただいまも御質問がございましたが、引き続きまして同様の問題について御質問申し上げたいと思います。

 できるだけ重複は避けたいと思いますけれども、今の質疑の中でもございましたけれども、夫婦の氏のあり方については、夫婦の同じ氏を強制する、同氏を強制するという国で、日本、インド、タイ、トルコという国が紹介されました。また、原則自由にしている国ということで、イギリスであるとかアメリカ。また、選択を自由にしている国ということで、スウェーデン、デンマーク、ドイツという御紹介がございました。もっと言えば、オーストラリアであるとかほかの国でも採用されております。

 ただ、夫婦の氏のあり方は、もちろん歴史的な状況であるとか文化的な状況を反映して違うのでしょうけれども、ほかにもバリエーションがあり得ると思います。別氏を原則とするという国もございます。全く別の氏を原則としているという国。あるいは、これはちょっとどういう事情かよくわからないのですけれども、夫の方は氏を変えないで、妻の方が夫にするか妻にするかを決めることができるという国もございますけれども、そういった国の代表的な例をちょっと御紹介いただけますでしょうか。

森山国務大臣 夫婦同氏の原則を採用していない外国の例といたしましては、まず第一に、夫婦ともに選択を認めて原則自由にしている国として、ドイツ、デンマーク、スウェーデン。それから、夫の氏は変えなくて妻のみ選択を認める国として、フランス、イスラエル、ハンガリー。それから、別氏を原則とする国として、スペイン、中国、韓国などがあると聞いております。

 なお、アメリカやイギリスなどでは、原則として、不当な目的がない限り自分の氏を自由に選択する権利があるというふうになっているそうです。

山花委員 先ほども、この委員室の間でちょっとざわざわといたしましたけれども、夫婦同氏を強制している、原則としているという国は大変少のうございまして、私も大臣と同様、調べた限り、日本とインドとタイとトルコというぐらいしかないわけでありまして、日本に住んでいて、生まれて育っていると、同じ氏を称するのは、そういうものかなという感じの感覚の方が大変多いような気がいたしますけれども、実際は、むしろグローバルスタンダードからすると大変変わった制度なんだなと思っております。

 私ごとで恐縮ですが、私も結婚をするときには、連れ合いとどっちの氏にしましょうかという相談をして、向こう側は向こうの親御さんとも何か相談してなんということをやったことを覚えておりますが、私は、先ほど来審議の中でも出ておりますけれども、価値観の多様化している現代の社会において、氏をどうするかということについても選択させた方がいいという判断がいいのではないかと思っております。

 また、先ほども御紹介ありましたけれども、内閣府がやっております世論調査でも数字が出ておりますけれども、実際、九七%が女性の側が氏を変えているわけですから、ほとんどが女性の方だと思いますが、氏を変えたことによって何か自己を喪失したような感じを持ってしまう人とか、あるいは、もっと言えば、本当に個別のケースですけれども、それが原因で離婚してしまったりとか、数は本当に少なくはないわけでありまして、そういうケースもありますので、ぜひともそういった方向で御検討いただきたいと思います。

 さて、先ほど御答弁の中で、内閣府が行いました世論調査についてお話がございました。メールマガジンの御紹介もありました。ちょっと正確にはどういう言葉でおっしゃったかメモをとれなかったのですけれども、要するに、信念を持って反対されているというのも一つの御見識だと思いますが、そうではなくて、理解されていない方もいらっしゃるというお話の中で、切実な利害関係という言葉を使われたかどうかちょっと、そんなような趣旨のお言葉で、切迫していないものですから余り正確に理解をされていないような方も中にはいらっしゃるというお話がございました。

 改めて伺いたいと思いますが、内閣府のこの世論調査についてどのように受けとめておられるかということ。

 そして、そういう形でしか通告をしていないのですけれども、もうちょっと言えば、切実にそういう利害関係を持っていると思われる世代に関して言えば、別姓にした方がいいという人が過半数を超えていると言ってもよろしいかと思います。

 先ほどの質疑の中では、全体の中で四〇%を超えて、過半数までは行っていないけれどもそれに近いというお話だったわけですけれども、例えば二十歳から二十九歳ぐらいまでの人でいうと、男性でも五一・四%が別姓でいいではないかと。だめだというのは一五・八%にすぎないわけです。男性ですから、三十過ぎてから結婚する人もいるでしょうけれども、三十過ぎた人の方がむしろ多くて、五二・七%が別姓でいいではないかと言っている。女性についても、二十代、三十代、同じような数字で、二十から二十九歳だと五二・一、三十から三十九だと五二・九と過半数を超えているわけでありますけれども、この数字について、どういった受けとめ方をされていらっしゃるのでしょうか。

    〔委員長退席、奥谷委員長代理着席〕

森山国務大臣 先生おっしゃいましたとおり、年代別に見ますと、若い人、二十代、三十代、現実にこれから結婚する、あるいは今、最近していろいろ不都合を感じているというような方のグループでは、別姓に賛成という方が過半数でございます。四十代、五十代は四七とか四二%程度でございますが、六十代が三四%、それから七十代が二〇%ということで、やはり現実の問題としてその問題に直面しているという方々が非常に変化を要望していらっしゃるのではないかなというふうに受けとめております。

山花委員 ぜひ、こういった数字を重く受けとめていただきたいと思いますとともに、早い段階で国会の方で、こういった委員会で審議ができるように御努力いただきたいと思います。

 そこで、この問題について最後の質問にしたいと思いますが、これは、ことし五月十八日に行われました当委員会におきまして、我が党の水島広子議員からの質問に対してお答えされているところであります。先ほどのお話と関連するのでありますけれども、選択的夫婦別姓という言葉がかたいし、理解するのも難しいということで、大臣は「法務省としては、皆さんの御理解を得るためにいろいろ努力はしてきたようでございます。わかりやすく解説したパンフレットを作成して配ったり、また、答申を現在も法務省のホームページに掲載したり、その内容を広く公開いたしまして、世論調査の結果をまた公開するなど、いろいろの努力をしてきたようでございますが、」と言って、中は省略しますが「希望する人がその道を選ぶことの可能性を開くという趣旨なのだということをもっとよくわかりやすいように、強くPRをするべきだと私は思っております。」と答弁されております。

 メールマガジンも一つのPRだと思うのですけれども、そのほかに具体的なPR活動について特にこの後何か行われているのかどうか、また今後行うおつもりはあるのかということについてお聞かせください。

森山国務大臣 今先生がお読みくださいましたようなことは引き続きやっておりますし、その後、タウンミーティングというのがございますが、そこへ行きますと、必ずその質問もございますし、また私の方からお話しすることもございまして、一般市民の方にも御理解いただくように努力しております。また、いろいろな雑誌に対談を頼まれて話をいたしますときにも必ずこのテーマを取り上げて、できるだけ多くの方に読んでいただきたいというつもりでやっておりますし、その他あらゆる機会をとらえて、私が、選挙区あるいはそれ以外のところでも、機会がありますたびにこの話を取り上げてお話ししております。

山花委員 この問題については、与党の方でも賛成をしていただける方も中には、中にはというか結構いらっしゃると思いますので、ぜひとも御努力いただきたいと思います。

 さて、次のテーマに移っていきたいと思います。

 昨日いわゆるテロ特措法なども衆議院の方で採決がございましたが、今、タリバンというグループないしは政権、呼び方はいろいろあろうかと思いますが、国民の方も関心を持っておられるようですし、テレビ報道などでもいろいろやっていますが、そうした映像の中で、最近比較的ショッキングな映像があったように思っております。つまり、あの政権では、公開の場で裁判にかけて、銃殺をしたりあるいは首をつって、要するに処刑をするというシーンなんかが、テレビですからモザイクがかかったりいろいろしているのですが、衝撃的な絵がテレビなどで報じられております。

 私、率直に言って大変残虐なことをしているように感じるのでありますが、ただ、冷静に考えたときに、公開の場で処刑しているから残虐なのか、そうではなくて、公開しているというのは別の話であって、ああやって要するに首をつって人を殺す、殺すと言うとちょっと価値判断が入っているかもしれませんが、人の生命を奪うということが残虐なのか。

 つまり、人の首をつって命を奪うということが法のシステムとして採用されていて、それが公開されていようがされていまいが私は残虐なことなのではないかというふうに思っているわけでありますが、比較的、最近、最近といってもここ十年、二十年の単位ですけれども、死刑制度が廃止されていく傾向にあると私は認識しているのですが、タリバンの話題から入っていきましたので、アフガニスタンのすぐ近くでありますけれども、ヨーロッパのあたりの諸国で、現在でも死刑を存続させている国というのはあるのでしょうか。あるとすると、どれぐらいあるのでしょうか。

    〔奥谷委員長代理退席、委員長着席〕

森山国務大臣 一九九九年十二月時点を基準にいたしました国連事務総長報告書によりますと、いわゆる旧ソビエト連邦に所属していた国ではかなり死刑がまだ残っているようでございます。おっしゃるように、ヨーロッパ諸国では死刑が廃止されているということを承知しています。

山花委員 もうちょっと広げていきたいと思いますが、ヨーロッパの国ではもうほとんど、ほとんどというか、死刑は廃止されているわけであります。ドイツなどでは、一九四九年のボン基本法ですから、もう五十年以上前。イギリスでも一九六五年。フランスでは一九八一年。このときは世論はかなり存置論の方が多かったようでありますけれども、ミッテラン大統領が決断をして廃止という方向に行ったということで、これは考え方によりますから、世論があった方がいいと言っているのに廃止したというのをどう評価するかは分かれるかもしれませんけれども、そういった状況にあるわけであります。

 もうちょっと広げまして、国連加盟国あるいは地域全体に広げますと、母数がどれぐらいなのか、地域をどれぐらい含めるかにもよるでしょうし、あるのでしょうけれども、国連という枠で含めますと、大体どれぐらいの国が母数になって、どれぐらいの国が廃止をしているのでしょうか。

森山国務大臣 先ほど申し上げました国連事務総長報告書、一九九九年十二月の時点を基準にしたものですが、それによりますと、すべての犯罪について死刑を廃止した国と地域というのが第一グループで、第二グループは通常の犯罪について死刑を廃止した国と地域、これは軍法会議とかそういうときのは別なんだそうですけれども、普通の場合は死刑を廃止しているという地域が第二グループ、第三に事実上死刑を廃止した国と地域ということで、その三つを足しますと合計百二十三であるというふうに言われております。

山花委員 母数の数え方によって多少数字が変わることもあるのですけれども、国連加盟の国、地域、百八十を超える地域がありますが、そのうちで百二十三が全く廃止あるいは平和時の犯罪については廃止であるとかあるいは事実上廃止ということで、もう既に半数を超える国が廃止をしているわけであります。

 どうしても、ヨーロッパではとかあるいはあっちの方ではという話をすると、ちょっとアジアは違うから、日本は違うからというような話になりかねないのですが、最近韓国の方で大変死刑廃止の機運が高まっていたりであるとか、あるいはカンボジアでもう既に、これも最近の話でありますが廃止をされております。

 欧州評議会、ヨーロッパ評議会であるとかヨーロッパ会議であるとか、いろいろな訳され方をされておりますが、カウンシル・オブ・ヨーロッパ、CEと呼ばれますけれども、そのCEの方に日本はオブザーバー参加をしておりますが、要するに、ヨーロッパの価値観からすると、死刑というのは何で日本はまだ存置しているのと驚くのですね、向こうの人は。驚くだけじゃなくてけしからぬぐらいの話になっておりまして、ことし六月の欧州評議会におきまして、二〇〇三年の一月一日までに日本が死刑を廃止または停止しない場合には、オブザーバー資格を剥奪するかどうかを議論する、そういった決議が採択をされたわけでありますけれども、率直な御感想はいかがでしょうか。

森山国務大臣 おっしゃるとおり、ことしの六月に、欧州評議会議員会議におきまして、二〇〇三年の一月までに我が国において死刑廃止に関して重要な進展が見られない場合には、欧州評議会における日本のオブザーバー資格の継続を問題とするということなどが盛り込まれた決議が採択されたということを聞いております。

 しかし、死刑制度の存廃の問題については、基本的には、それぞれの国が犯罪情勢とか国民感情とか刑事政策のあり方などを踏まえて独自に決定するべきものであるというふうに考えております。また、我が国におきましては、世論調査などをいたしましても、重大凶悪犯罪が少なくなっているわけではございませんし、そういう犯罪の発生状況もかんがみまして、刑事責任が著しく重大な凶悪犯罪を犯した者に死刑を科することもやむを得ないということが一般国民の世論であるというふうに思われます。

 ですから、死刑制度との関連で欧州評議会が我が国のオブザーバー資格を云々するということであるとすれば、それは双方にとって非常に残念なことだというふうに思いますが、今後とも欧州評議会のさまざまな活動に協力して友好関係を保ちながら、死刑制度をめぐる論議に関しましては、我が国の実情、考え方について理解を得られるように努力していきたいというふうに思います。

山花委員 時間が来ましたので最後にいたしますけれども、凶悪犯罪も減っていない、あるいはふえているという表現があったように思いますが、今存置している状態でそうなっているのであって、抑止力がどうこうというのは、これはもう机上の空論なので、ある、ないという話をしようとは思いませんけれども、ただ、よその廃止された国なんかのケースでいいますと、それが直ちに日本に直接言えることかどうかはまた評価の分かれるところだと思いますが、おおむね、なくしたところでも、死刑がなくなったことによって犯罪がふえたというケースは余り見当たらないので、先ほどの民法の話じゃないですけれども、この点についても、私の価値観からすると日本は大変おくれていると考えておりますが、ぜひ今後こういったことについても検討していただきますようお願いを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

保利委員長 次に、山内功君。

山内(功)委員 まず、法務省のテロ対策の問題についてお聞きしたいと思っています。

 九月十一日に起きましたアメリカを襲った同時多発テロ。私は、日本も、主要国あるいは国連と協調しながら、米軍の後方支援に憲法の枠内でできる限りの応援をすべきであると考えています。

 しかしながら、私たち民主党が、基本計画の国会の事前承認を得ること、そしてシビリアンコントロールについて確立をしていくこと、そのことを政府・与党の皆さんに要求したのですが、認めていただけませんでした。私は、こういう大きな問題については、国民の広範な勢力の同意を得ること、少なくとも、大きな野党第一党の賛成を得るなどして、国論が分裂しているという印象を諸外国に与えないこと、そのことが大事だと思い、今回の事態を大変残念に思っております。

 この党首会談が決裂した原因の一つに、国益よりも連立の枠組みを維持したいという報道がございました、残念なことですが。もし、国益よりも政局を大事にするというのが今の政府・与党の考えだとしたら、それは無責任きわまりない、そう思っております。民主主義あるいは法治国家を実現していく第一の責任が法務省そして法務大臣に私はあると思っておりますので、冒頭、この点だけは指摘させていただきました。

 続いて、質問に入らせていただきます。

 アメリカにおける同時多発テロの発生以来、法務省としてはテロ対策についてはどういう方途をとられたんでしょうか。大臣、お願いします。

森山国務大臣 法務省では、ことし九月のアメリカにおける同時多発テロ事件の発生以来、関係部局等におきまして、警戒態勢の強化、情報収集等を鋭意進めてきたところでございますが、今月の八日、十月の八日になりましてから、米国等による攻撃を踏まえまして、内閣に緊急テロ対策本部が設置されたこと等にかんがみまして、法務省における緊急テロ対策を総合的かつ効果的に推進するために、十日、事務次官を本部長とする法務省緊急テロ対策本部を設置いたしまして、当省におきまして緊急にとり得るテロ対策のための措置等について協議などしております。

 各局における具体的な取り組みといたしましては、まず、入国管理局におきまして、厳格な出入国管理のさらなる徹底を全国の地方入国管理局に指示いたしました。それとともに、成田空港等の主要な空海港に職員を応援派遣する緊急措置を講じました。加えて、不法入国防止等対策の一環といたしまして、既に全国の主要空海港に配備済みの最新鋭の偽変造文書鑑識機器二十一台のほかに、さらに同じ型の機器二十三台を国際定期便の運航している全空港等に早急に更新配備することにいたしました。

 また、公安調査庁におきましては、今月八日に長官を本部長とする緊急特別調査本部を設置し、テロ関連情報収集体制の一層の強化を図っておりますとともに、検察庁におきましても、今月九日、次長検事を本部長とする最高検察庁テロ対策本部を設置いたしまして、全国検察庁における警戒態勢の強化の徹底等を図っております。

山内(功)委員 九月十一日のテロの発生から十月十日の法務省事務次官を本部長とする法務省の緊急テロ対策本部を設置するまでの間に一月もかかっています。大臣、遅いのですよ。九月十一日の事件発生後速やかに、日本の治安を守る最高、最後のとりでである法務省として速やかに設置をし、ほかの省庁をリードするぐらいの気構えが必要なんじゃないでしょうか。

 今いろいろな入管の問題とかお話をされましたけれども、例えば厳格な出入国管理のさらなる徹底とか、あるいは情報収集体制の一層の強化とかおっしゃいましたけれども、これは何か今までの既成のメニューに多少色をつけたというだけのような印象が否めないんですけれども、少し危機管理が足りないんじゃないんでしょうか、どうでしょうか。

森山国務大臣 事件が起こって直ちに内閣の対策本部ができました。それのメンバーとして私も参加させていただいております。その中で決められました項目の中の一番トップだったと思いますが、入国管理体制のさらなる厳重な管理ということがうたわれたはずでございまして、それを受けまして、実際には、法務省としての対策本部を立ち上げるまでもなく、現場においてはその即日、厳格な体制を早速実施するようにいたしておりますし、また応援態勢も追っかけて発動しているわけでございます。

 アメリカによるアフガンに対する攻撃が行われましてから、さらに法務省としても全体として総合的にやる必要があるということで、入管、検察庁、あるいは公安調査庁等の総合的な対策を考えるために本部をつくったというのがいきさつでございます。

山内(功)委員 少し個別の論点についてお話を伺いたいと思います。

 まず、入管体制の整備についてでございますが、テロの防止策において入国管理体制が果たす役割の重要性についてはどう認識しておられるのでしょうか。

森山国務大臣 入国管理局におきましては、国際的なテロリストの動きやそれに関連する各種の動向等について各国と必要な情報交換を行い、また、危機管理に当たる国内関係機関と相互の連携を図っております。

 当局には、これらから収集した情報を積極的に活用するとともに、入国審査における偽変造文書の確実な発見等によりましてテロリストが国内に侵入することを防止し、テロ行為の発生を未然に防ぐという重要な役割が課せられていると考えております。

山内(功)委員 例えばソウルの仁川空港と成田空港とで、仁川では入国審査官が一人当たり約三万人の出入国者の審査をする、ところが、大臣、成田は六万数千人を一人で対処するという計算になるんです。もちろん、我が国の入管の職員の皆さんも大変な、懸命な御努力をされていることは重々承知はしておるのですが、これだけ差があると審査の結果に影響が出てくると思うのですが、どう思っておられますでしょうか。

森山国務大臣 外国との単純な比較というのはなかなか難しいと思いますが、おっしゃるような違いが数字の上にあらわれていることは承知しております。

 我が国におきましても、御存じのとおり、かねてから出入国管理体制の強化に取り組んできたところでございまして、先ほど来の御質問にたびたびお答えしておりますように、増員とか機器の整備とかいうことについては引き続き努力しているわけでございまして、今後ともそれらの強化に努めていきたいというふうに考えております。

山内(功)委員 来年度の概算要求について、審査官を八十人、それから入国警備官を八十名、合わせて百六十人の増員の要求をされていますが、これは、もし満額百六十人認められたとして、純増はどれぐらいの人数なんですか。

森山国務大臣 平成十四年度の増員要求といたしましては、御指摘のように、入国審査官八十人、入国警備官八十人、合計百六十人を要求しております。ただ、本省及び地方を合わせて二十人の定員削減が予定されておりますので、仮に要求がすべて認められた場合には百四十人の純増となるという計算でございます。

山内(功)委員 ことし五月の本委員会での質疑で、長勢甚遠委員が定員あるいは増員計画について省の態度をただされた中で、毎年五百人ずつふやしていってもいいんじゃないか、そういう提言もあったと思います。

 五月というのはテロの発生以前なんですね。そうすると、今回テロが発生して、日本も米軍等の支援をしていくということも表明しているわけですから、新たな事態が生じたと思います。しかも、来年六月にはワールドカップサッカーが行われるわけで、それに向けて、これから本大会に向けて関係者等の出入国、出入りも激しくなると思っています。そういうテロの問題、ワールドカップの問題などを含めると、例えばワールドカップの問題では、四十三万人の人が出国あるいは同数の人が入国するということも指摘をされております。

 入管対策としては、この間の決定的な事情変更に対して今の増員幅では対応できないと思うのですが、どうですか。

森山国務大臣 確かに、これで一〇〇%全く問題がないというふうには言い切れないと思いますが、一方におきまして、財政事情、行政改革というようなことを考えますと無限にお願いするというわけにもまいりませんで、精いっぱい要求をさせていただいたというのが今の数字でございます。

 なお、その前に、平成十三年度、今年度でございますが、五月以降、七月に、特別の措置といたしまして定員を二十七人増員していただくということができましたし、機器の整備についても特別の予算を見ていただくということができまして、これらは先生方の御支援もいただいたおかげでございまして、それらもあわせ、さらに体制の強化に今後とも努めていきたいというふうに思っております。

山内(功)委員 これまでテロの安全とか治安の面からお聞きしたんですけれども、もちろん、事件に関連していわれなき人権の抑圧とか差別が行われてもこれもまた困ると思うんです。

 アメリカで、イスラムの方あるいはアラブの方々に対して、いろいろちょっとした迫害をされているというニュースも見たのですが、我が国についてはそういう事態は生じているのでしょうか。政府参考人でも結構ですが、お願いします。

吉戒政府参考人 お答えを申し上げます。

 委員御指摘のような事態が生じたといたしますと、これは人権擁護の観点から到底看過できないものと思っております。

 私どものところで今承知しておりますのは、実は先日、これは鹿児島県の地方新聞でございますけれども、その地方新聞の報道によりまして、イスラム圏から鹿児島の大学に留学中の学生さんに対しまして、過激派軍隊のメンバーではないのかというようなからかわれの事案があった、これによって非常にショックを受けたというような報道がなされております。

 こういうふうな報道に接しておりますので、私どもの方としては、現地の人権擁護機関に対しまして、さらなる調査の指示と、それから適正な対処ということを指示いたしております。

山内(功)委員 その点はしっかりと行っていただきたいと思っています。

 先日、報道の中で、アフガニスタン人が不法入国の疑いで、十一名ですか、拘束をされたという報道がありましたけれども、これも、アフガニスタン人だからということでそういう拘束をしたのではないかと指摘する向きもございますが、その点について、明らかにできる範囲で確認を求めたいと思います。

森山国務大臣 その前に、先ほど、十三年度中の、特に七月の人員増は二十七人と申しましたが、二十人の間違いでございました。失礼いたしました。

 今お話しの事件は、十月三日に、東京などにおいてアフガニスタン人と思われる者十一人を入管法の違反によりまして摘発の上、収容した事件だと思われます。

 しかし、この具体的な事件の調査の現状につきましては今ここで詳しく申し上げることは差し控えたいと思いますが、一般論で申し上げれば、入管局では、外国人による入管法違反事件については特に国籍に関係なく摘発を行っているのでございまして、その点は御了解いただきたいと思います。

山内(功)委員 わかりました。

 これから、テロからの安全を求める以上、私たち国民も何らかの不便には耐えなければいけないこともあるかと思いますが、やはり、私たちがそういう不自由を強いられるということ自体もテロの集団の目的かもわかりません。しかし、私たちの社会がより不自由になるということはテロリストのねらいでもあるわけですから、いわれなき人権侵害はあってはならないと思いますし、あくまでも、安全と自由な生活、そして人権の擁護が確立された視点が不可欠だと思うのですが、最後に大臣としてのお考えをお願いします。

森山国務大臣 確かに、そのような人権侵害あるいは差別といいますか、そのような不当な待遇が現に行われては大変いけないことでございます。

 先ほど局長からも御紹介したようなことがあったようでございますけれども、そのようなことは大変心の痛むことでありまして、そんなことがないようにということで、人権擁護を担当する法務省の各地方組織に対しまして、事件の発生防止及び事件の発生時の迅速な対応に努めるように特に注意をいたしているところでございまして、今後もその趣旨を徹底したいと思っています。

山内(功)委員 夫婦別姓の問題もそうですけれども、テロの問題など新しい問題について果敢に取り組んでいただくように念願をいたしまして、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。

保利委員長 次に、肥田美代子君。

肥田委員 民主党の肥田美代子でございます。森山法務大臣には初めて質問させていただきます。よろしくお願い申し上げます。

 私は、現在大変厳しい状況にございますアフガンから日本に救いを求めてきたと思われる人たちのことについて質問をさせていただきたいと思います。

 まず、今、同僚議員からもございましたけれども、東京、千葉に住むアフガニスタン人の九名が出入国違反で家宅捜索をされ身柄を拘束されたと報道されておりますけれども、この報道では、全員がハザラ人であり少数民族である、タリバン政権の迫害を受け身柄を拘束された経験を持つということになっております。恐らく、私は、アメリカで起きた同時多発テロ、これがアフガンからの不法入国者の摘発強化につながったんではないかということを想像しておりますけれども、この九人の中にテロ関連を疑わせる人物は存在しましたか。

中尾政府参考人 具体的な事件の調査内容について個別に申し上げることは差し控えたいと思っておりますけれども、現下の状況にかんがみまして、委員の、そういうテロ関係の関係者が含まれているかどうかという点についてでございますが、私どもの現時点の関係では、そのような者が含まれているという事実は確認しておりません。

肥田委員 この人たちは難民認定を申請中と聞いておりますけれども、過去にこの申請中に強制収容された例はございますか。

中尾政府参考人 お答えを申し上げます。

 退去強制手続と難民認定手続とは別個独立の手続でありまして、退去強制手続は身柄を収容して行うことが原則とされている状況でありますので、従来から、難民認定手続が行われている場合でありましても、退去強制手続は法的にこれと並行して行っているところでございます。

 したがいまして、難民認定申請中の者を収容令書でもって収容した事例は過去にございますけれども、御質問のような区分で統計をとっておりませんので、具体的な人数については把握しておりません。

肥田委員 私、これは極めて異例なことだと思うんですね。なぜ身柄を拘束したんですか。不法入国ということですか。

中尾政府参考人 先ほど申し上げたようなことで、不法入国ということも含めまして、入管法違反の容疑者として所定の手続をとっている、こういうことでございます。

肥田委員 難民条約では、難民は、正規のパスポートやビザを持たずに逃げていることを前提としており、不法入国、不法滞在などを理由に刑罰を科してはならないと書いてありますけれども、これとの整合性はどうですか。

中尾政府参考人 お答え申し上げます。

 それは、あくまでも難民として認定された者についての問題でございます。それとは関係なしに、個々の不法入国という入管法違反の事件につきましては、所定の退去強制手続によって所定の手続をとる、こういうことで、別個のものと考えておるところでございます。

肥田委員 そうしますと、強制収容をされますと、この後どうなるのですか。

中尾政府参考人 議員御指摘の、事件の具体的な処理の最終結末の状況のものについて申し上げることは、個別事件でございますので差し控えたいと思いますが、一般的に申し上げれば、当該収容中の者がその収容の係る容疑事実を認め、退去強制事由に該当するということで認定をいたしますと、最終的には退去強制令書が発付されまして、退去強制令書に基づいて所定の送還先に送還される、こういう手続が進む、こういうことでございます。

肥田委員 そうしたら、この場合、送還先はアフガニスタンということになるのですか。

中尾政府参考人 これもあくまでも一般論として申し上げざるを得ないわけでありますけれども、送還に関しましては、出入国管理及び難民認定法五十三条に規定がございます。この規定によりますと、退去強制を受ける者は、原則といたしまして国籍国または市民権の属する国に送還されることになっております。

 ただし、これらの国に送還することができないときには、本人の希望によりまして、幾つかのところに、それぞれの個別的な案件に応じて送還することになります。まず、我が国に入国する直前に居住していた国、我が国に入国する前に居住したことのある国、我が国に向けて船舶等に乗った港の属する国、出生地の属する国、出生時にその出生地の属していた国、最後に、その他の国、このいずれかのところに本人の希望により送還されることになるようになっております。

肥田委員 まだ事例がございます。大阪では、タリバン政権下で迫害されて日本に逃げてきた四人の男性が早く難民認定をしてほしいということで待っているのですけれども、もう二年半たっている。それで今入管に申し入れているわけです。

 日本の難民受け入れ数、これは諸外国に比べて本当に少ないはずですけれども、ちょっと数をおっしゃってください。去年で結構です。

中尾政府参考人 過去の合計数で申し上げたいと思います。難民認定制度が開始された昭和五十七年以降、平成十三年の九月末までに私どもの方で難民認定をして難民として認定した者の数は合計二百七十名でございます。

肥田委員 昨年の申請は二百十六人ありますけれども、認定されたのは何人ですか。

中尾政府参考人 これは申請とイコールその中での処理というのは結びつきませんけれども、平成十二年度中に私どもの方で難民として認定した者の数は二十二名でございます。

肥田委員 そのうちアフガニスタン人の数はどうなっておりますか。出ておりますか。

中尾政府参考人 平成十二年のアフガニスタン人として難民認定した者の数でございますけれども、三人でございます。

肥田委員 一年以上、在留資格がないままに宙ぶらりん状態でこの認定を待っている人は現在どのぐらいいらっしゃいますでしょうか。

中尾政府参考人 お答え申し上げます。

 議員御質問の形での資料を、私、ちょっと今手元に持ち合わせておりませんので、まことに申しわけないのですけれども、平成十二年度で難民認定のあった者についての処理件数が百八十五件ございます。議員の関係で、一年以上というお話でございましたので、そのうち一年以上経過した者について認定、不認定の処理を行った者は四十五件ということでございますので、大体そういう感じでお受け取りいただければありがたいと思います。

肥田委員 難民認定申請が却下される理由、幾つかあると思うんですけれども、もし内部で基準がつくられていましたら、そのこともあわせてお答えいただきたいと思います。

中尾政府参考人 まず、難民ということになりますと、難民の地位に関する条約等に定めますところの難民に該当するかどうか、こういうことになります。それが一つの基準といえば基準ということになろうかと思います。

 それによりますと、人種、宗教、国籍、特定の社会的集団の構成員であることまたは政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるか否か、こういうことで判断することになろうかと思います。これに該当すると判断すれば難民と認定する、こういう取り扱いになっております。

 ただ、却下の理由、不認定の理由等についてのお尋ねですので、その点についてお答え申し上げたいのですが、難民申請につきましては、個々の難民申請者の申し立ての理由は極めて多岐にわたります。必ずしも一つのものでもありません。なおかつ、いろいろな国情等がございますので、複雑に絡み合っているのが実情でございます。

 したがいまして、難民認定の許否を決する場合におきましても、これらの申し立ての個々の理由をいわば総合的に判断せざるを得ないということになりますので、委員御質問の難民不認定の理由について、個別に取り出してこれをこういうことであるというようなことで申し上げるのはちょっと困難だろうと思います。

肥田委員 大阪のこの四人の男性が一回不認定の結論を出されまして、その後異議申し立てをしているんですね。これもさらに却下されたわけです。

 異議申し立てをしてその決定が覆された、そういう事例はございますか。もしあったら、何件かということだけお答えください。

中尾政府参考人 今手元に資料がございませんので、正確にはお答えすることができないので申しわけございませんけれども、もちろん異議の申し出という制度はございますし、異議の申し出に基づいて、それに従って審査判断をやり直して、それが覆った例はもちろんございます。その辺の関係の件数等につきましては、また後ほど、委員の方からお話がありましたら個別に調査いたしまして御返事させていただきたいというように思います。

肥田委員 私の調査では十九年間で五件だというふうに出ておりますので、恐らくその数は間違いないと思います。随分少ないと思います。

 しかも、異議申し立てをするのが同じ役所なんですよね。ですから、同じ結論が出て本当は当たり前じゃないかというふうにも受け取られてしまうわけです。やはり私は第三者機関が異議申し立てを受けるべきだと思っております。

 さらに、大阪の事例でもう一つお尋ねしたいのですが、アフガニスタン人の男性が難民認定申し立てを却下され、異議申し立ても却下されて、今強制送還の瀬戸際にある、そういうことなんですけれども、この難民条約三十三条にございますノンルフルマンの原則、この原則はもちろん御存じだと思いますけれども、この三十三条と今回の強制送還、これとの関連はどういうふうに考えたらいいのでしょう。

中尾政府参考人 お答え申し上げます。

 委員の、具体的な案件の関係でどうだということになりますと、これはちょっとお答えするのは差し控えさせていただきたいと思います。

 委員御案内のノンルフルマン原則の関係のことは私どもの方も承知しております。もちろん、具体的な送還に当たりまして、当該送還先の国がそれに該当する場合かどうか、あるいはその他人道上の配慮とか、いろいろ諸般の事情を考慮せざるを得ないと思いますが、そういうようなことを踏まえて適切に対処したい、そういうふうに考えているのが現状でございます。

肥田委員 私、心配するんですけれども、この男性が強制送還される先はやはりアフガニスタンになるんですか。強制送還というのは、これはもう決まってしまったものですから、そんなに長く日本に置いておけないですね。どうなさいますか。

中尾政府参考人 退去強制令書が発付され、そしてそれにつきまして送還先が特定の国ということに決まりますと、その関係で送還の条件が整えば送還するということになります。

 したがいまして、送還するのには相手国の受け入れの関係もございます。送還の際に、それぞれの旅券等の取得等で、在日の大使館等でパスポートの申請等、いろいろなことの条件が整えば、その段階で送還の最終的な手続に入る、こういうことになろうかと思います。

肥田委員 まだちょっと私の危惧にお答えいただいていないのですが、それでは、送還先はまたアフガニスタンということが第一義になるんですか。

中尾政府参考人 お答え申し上げます。

 これはアフガニスタンということで決めてということでお答えすることは差し控えたいと思いますが、ある特定の国ということで送還先が決定しても、それはそれとして、絶対的に、半永久的にそうだということではございません。いろいろな関係で変更すること、更正することは可能でございます。

肥田委員 あと数分残されましたので、大臣とちょっとお話しさせていただきたいと思うんです。

 実は、今聞いていただいていて多分大臣は理解してくださったと思いますけれども、難民支援につきましては、外の難民を支援することももちろん大切だと私は思うんですけれども、やはりこの国に助けを求めに来る難民、その人たちについて、もうちょっと我が国は温かくしなければいけないと思うんです。

 それで、私は、先ほどから局長さんのお話を伺っておりまして、一生懸命、入管の御苦労されているのがよくわかります。ただ、一方で、やはり人道上の温かい配慮でもって保護しなければいけないというもう一つの仕事があるわけですね。ですから、法務省の入管の中で二つの全く違った業務をしていただくことに大変無理、矛盾があるんじゃないかと私は実感したのですけれども、大臣はどう思われますか。

森山国務大臣 肥田先生がおっしゃいます難民とそれから避難民というのはちょっと違うものなんですよね。

 難民というのは、法律上あるいは条約上に言うところの難民でありますから、その難民として認定するあるいは受け入れるというためにはいろいろな条件があって、それに合致していなければいけませんし、合致しない場合は受け入れられないという決まりになっているわけです。

 避難民というのはまた全く別のもので、例えばアフガニスタンが非常に混乱して、その状況から避けようとして隣国へ出てくるような避難民、あるいは、前にはそういう例がありましたが、ベトナムとかカンボジアあたりの方々が船に乗って逃げ出して、それが日本に何十人、何百人という単位でおいでになったというようなケースもございました。それは、難民ではなくて避難民なわけでございます。

 ですから、難民の処理については今局長が申しましたようなプロセスでやっておりますが、避難民という皆さんに対する温かい手を差し伸べるというのは、法務省だけではなく政府全体として考えるべきことではないかというふうに考えます。

肥田委員 ありがとうございます。

 避難民という概念でもって、今、法務大臣が率先して省庁横断的に、例えばインドシナ難民がたくさん出ましたときに日本が閣議決定でもってやったように、大きなシステムをダイナミックにつくって今おっしゃる避難民を受け入れていく、そういう提案もぜひしてほしいと思います。

 もう一度大臣、お答えください。それで終わります。

森山国務大臣 今のところまだ、その状況がどうなるかはっきりしたことがわかりませんが、大量の避難民が出てくるというような状況になりました場合には、そういうことも検討しなければいけないかなというふうに思います。

肥田委員 ありがとうございます。終わります。

保利委員長 この際、休憩いたします。

    午後零時二分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時五十九分開議

保利委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。西村眞悟君。

西村委員 二十分間御質問しますが、実は、今我が国の国民の一番の関心事は治安であろうかと思いますね。午前中は、夫婦別姓がどうかと、世論調査のことお詳しいのはよくわかりました。反対は理解を示していないというお考えもよくわかりましたけれども、法務大臣マターとしては今治安であろう。だから、日本国民の安全をいかに守るかという観点からは、ニューヨークでのテロで日本人が二十数名死んだということが真実なのかどうか、風聞によると二百五十名以上が実は死んでおるのではないか、領事館等々に日本人の身元の照会が絶無なのかあるのか、あるとすればその所在はわかったのか、そして実数何名の日本人が死んでおるのかということについても、法務大臣としては関心を示していただきたい。

 さて、治安ということについて、なぜこの治安が悪くなったのかということについては、やはり出入国管理が今の体制ではだめだという問題があります。いずれ、私の入手する統計と法務大臣が持っておられる統計を突き合わせたいと思いますが、東京都の警察が強盗を追いかけた、追い詰めた。四人を追い詰めたけれども三人は逃げた。四メートルの塀をよじ登って逃げた。コンクリートで一センチぐらいのびょうが出ている、そのコンクリートの塀を素手でよじ登って三名が逃げた。これは、明らかに特殊訓練をされた者が強盗団として東京都にあるということであります。

 出入国管理という観点につきましては、今までどおりの体制ではだめだ、警察を前面に出して出入国管理をさせなければだめだというふうな問題意識は私はここで申しておきたいと思います。質問ではありませんけれども、この出入国管理は、警察を前面に出して主体的にやらなければもう日本の治安は守れない状態に来ているという問題意識はどうぞお持ちの上、法務大臣としての職責を果たしていただきたい。

 さて、ニューヨークのテロという問題に関連して、実は、アメリカさんのどこにあるかわからぬ後方でちょろちょろするという法案に神経を集中しておりましたけれども、我々は、今、テロリストの目をもって、我が国のどこを襲えば我が国の機能を麻痺できるのかという観点から日本の治安というものを考えなければならない。

 その意味で、具体的なことについてお聞きしますけれども、我が国には、有事法制というふうに、それを推進しなければならないと言っている意見はありますし、我が自由党も有事法制推進には熱心であります。しかし、有事というものは何かということの中身については、文明論的ないわゆる考察は、テロリストの目をもってはなされていない。有事とは、戦車が出動して兵隊さんが鉄砲を持って何かを防ぎに行くという古典的な有事しか思っていないのではないか。

 実は、有事とは、平時であるか有事であるか全くわからない、事故であるか人為的なテロであるかわからないけれども、新幹線が倒れた、石油備蓄基地から石油が海に流れ出し始めた、どういうわけかわからない、事故であるか原因はわからぬけれども官庁を初め通信はすべて途絶えた、こういうことが有事なんだろう。そうであれば、今やるべきことは、警察というものの、治安を維持するその組織の柔軟な運用と、柔軟な運用を可能にする体制、法整備を整えることであろうかと思います。

 この観点から、ちょっと具体的なことについて大臣の所見をお伺いしますが、実は、我が国の国内において七件十名の日本人が北朝鮮に拉致されておるというのは政府の見解ですが、総数は七件十名に限るのか。どうしてもこれが限られていると到底思えない。南米及びヨーロッパにおいて行方不明になった日本人、その総数。

 それから、よど号の妻たちが帰ってきて、ぼつぼつ週刊誌等に、ヨーロッパから例えば有本恵子さんを拉致したのであるというふうなことが出ておる。これは、日本国民の安全を確保すべき法務大臣として、七件十名にとどまるのか、それとも、今巷間言われているように、百四十名を超える日本人が拉致されているのかどうか。

 この点については、確定した数字は七件十名という政府のお答えがある以上、余り言えないかもしれませんが、七件十名で済んでおるのかどうかということについての御認識は、お持ちならばお聞かせください。

森山国務大臣 北朝鮮による日本人拉致事件と言われるものが問題になっておりまして、警察庁によって指摘されました事案は七件十人というふうに発表されております。北朝鮮によるとの疑いがあるというわけでございますが、仮に、外国の機関が我が国の領域の中で日本国民を拉致してよその国へ連行するというようなことがあったとすれば、当然被害者の人権をじゅうりんする極めて悪質な犯罪でございますし、我が国の主権に対する重大な侵犯であるということでございますので、到底許されるべきことではないと考えております。

西村委員 私がお聞きしたのは、有本恵子さんという方がおりまして、ヨーロッパで拉致されたと赤軍派の妻たちが帰ってきてしゃべり始めたという事態に対して、把握されているならば、決して七件十名ではおさまらぬだろう。人権擁護の観点から、これは重大な問題である。

 もう一つ、これが北朝鮮という国家において行われたものなれば、これは国家のテロだ、このように認識しますが、いかがですか。国家によるテロだと思われますか。政府が言うように、単なる人道的問題ですか。日本に生まれて、北朝鮮国籍だから向こうに帰っていって、二度と再び日本にいる親戚には向こうの政府の許可がないので会えない、これは人道的に問題でありましょう。しかし、無理やり日本から北朝鮮という国家が連れていったのならば、国家によるテロだ、こう思いますが、いかがですか。人数も含めて。

森山国務大臣 先ほど申し上げました警察庁の調べによってわかりました七件十人というもの以外にもいろいろなケースがあるらしいという話は、新聞とか週刊誌その他のもので私も見たり聞いたりはいたしておりますが、それ以上の確たるものは承知しておりません。

西村委員 夫婦別姓について踏み込んだ発言をされる以上、それ以上にこれは人権侵害だ、それ以上に人権侵害なことを、耳で聞いているからということよりも、法務大臣なら法務大臣でやはりそれは把握されるべきでしょう。週刊新潮に出ているんですから。

 それで、これも出入国管理の問題です。日本国内に拉致を可能にする組織があって、そしてその日本国内において拉致された人物が我らのわからぬうちに北朝鮮におるわけですから、出入国管理の問題だ。日本国内にそういう拉致というかテロをする組織があるということは確実であるということです。

 次に、数年前に新幹線の犬くぎが抜かれる、新幹線のレールにチェーンが巻かれる、そして送電線の鉄塔が倒される、こういう犯罪がありまして、これもテロです。新幹線が二百キロ以上のスピードで脱線転覆すればどういう惨事になるか。送電線は既に倒されておる。これをやる組織が日本にあるということですね。

 これが、どういうふうな捜査を尽くされても、まだどういう組織がやったか全貌がわからないということも現状なのですから、この捜査の状況及び現状、うっすらとこの組織の実態がわかっておるのかどうかについては御答弁いただけますか。

森山国務大臣 今先生が御指摘なさいました事件については、いずれも捜査当局において鋭意捜査を進めておられるわけでございますが、犯人の特定に結びつく証拠が少なく、現在までのところ犯人を検挙するには至っていないと承知しております。

 しかしながら、いずれの事件につきましても、その重大性を考えますと、捜査当局において今後も犯人を検挙するための努力を鋭意継続していくものと考えられます。

西村委員 こういうことをやる組織はテロ組織だ、起こった事態は今回のニューヨークと規模はともかくテロなんだというふうに、そして、犯罪だという御認識では平時であろうという認識だろうと思いますが、実は、来るべき有事というのはこういうことの中で国家、社会機能が麻痺することだと思いますので、重大な問題だ、こう思いますわね。

 次に、具体的な事件ですが、新しい歴史教科書をつくる会というのがありまして、その事務所が放火された。そして、新しい歴史教科書の採択に関して、例えば杉並区役所が人間の鎖というデモで包囲されて、冷静に教育委員が採択の可否を議論、決断する事態は訪れなかった、阻害された。これは、例えば全国各地の教育委員に採択を阻止するようにと電話がかかる中で、放火及び人間の鎖のデモ、執拗なる電話、これが繰り返されますと自由な言論に対する抑圧である。全体としてこの事態が起こっている。

 実は、千葉県においても、土地収用委員会が開かれないのは、この法治国家においてそういうふうな圧力があって、それに対して我が国家は無力であるのか。法治国家、法で治められるんじゃなくて、放置する放置国家なのかということについて判断は迷うんですが、このような事態は、人間の人権及び国家また教育という重要な問題に関する意思決定が阻害されておるのではないか、これもある意味では人権に対するテロであると私は思うが、大臣はいかが認識をお持ちでございますか。

森山国務大臣 先生が御指摘されました放火事件につきましては、捜査当局において所要の捜査を行っているものと承知しておりますが、捜査中のことでございますので、その具体的な内容について今コメントをすることは差し控えさせていただきたいと思います。

 なお、一般論として申し上げれば、ある書物の出版等を暴力的な手段によって封じ込めようとする犯罪がなされたときには、国民の表現の自由の重要性ということに照らしまして、検察当局において厳正に対処しているものと承知しております。

西村委員 表現の自由に対する一つの圧迫というふうな事態を全体に見ればそこに放火もあるということですな。放火というのは重要な犯罪なんですね。そういう中で、単に、正論を吐く人間が少ない、向こうは数多い、それで圧迫を受けたというんではなくて、これは明らかに暴力を背景に持った人権侵害だということであります。一種のテロですな。

 それで、革マルという組織がありまして、これは国会で質問したらえらい無言電話がかかったりする組織なんですよ。しかし、これを放置したら放置国家、放置する国家になるんですね。だから、これは歴代大臣も答弁されているし、警察も明確に公的に認められたことですから、今から申し上げることは、これはこのまま放置できないのかどうか、放置できなかったらどうするのかという大臣の御所見を伺いたいと思います。

 過激派の革マルというところのアジトを平成十年から摘発しましたら、警察無線の盗聴器、解読機が出てきたり、六千本に及ぶ合いかぎや、そして多数の印鑑がまた別の場所で出てきたり、また別の場所では鉄パイプ、サバイバルナイフ、それからなた等の、まあ武器ですわな、武器の集積所が摘発されたりしております。

 こういうふうな組織は、個々の犯罪ではなくて、先ほどの歴史教科書の例でもわかりますように、総合すれば我が国に極めて社会不安を起こすに足る能力を持った組織であると私は思いますが、大臣の認識と、これから法務大臣としていかにこれに関心を持続し、対処しなければならないのかということについて御答弁をいただきます。

森山国務大臣 暴力によって民主主義的国家秩序を破壊することを容認する危険ないわゆる過激派団体のアジトから、盗聴用の道具や人を殺傷する凶器にもなりかねない刃物などが押収されましたことは、まことに憂慮すべき問題であると考えます。

 したがいまして、治安維持の観点から、今後とも過激派団体に対する調査を鋭意推進いたしまして、その実態の把握に努めますとともに、また、こうした団体の構成員による不法事案について、その背景事情も含めて徹底的な捜査により解明し、厳正な対処がなされるようにと期待しております。

西村委員 徹底的な捜査、それは、昔の帝国陸軍の参謀が、徹底的に戦え、鉄砲も三八式歩兵銃のままだ、そうして、作戦が思ったようにできないのは現場に勇気と敢闘精神がないからだと言ったようにちょっと聞こえますな。

 これほどの問題が起こっているわけです。捜査はもう必死にやられたと思う。しかし杳としてわからない。捜査方法。先ほど出入国管理を言いましたね、あんなもの今までの体制ではだめだと。金正男もばっと追い返してしまうような政治でもだめですけれども、体制自体がだめなんです。警察の全面的な関与が必要だ。そして、今三つの例を挙げた問題に対する対処は全くできていないんだ。つまり、できていない体制にあるんだ。何のために政治があるのか、立法府があるのか、行政府の大臣がいるのかといえば、できる体制をつくるということですね。

 その意味で、今ある日本の情報収集のシステムは、本当にこれは作動していませんね。アメリカはオサマ・ビンラディンがやったんであろうと直ちに察知しましたな。通信、やはり彼らはそこから情報を収集する手段を持っておるからですな。それから、一たん収集した情報を保持する、漏れてしまわない。日本には妙な外務大臣がおりまして、国務省が移転したらその移転場所をぺらぺらしゃべってしまう。これはもう外務大臣の資質の問題ですな。

 私が今言っておるのは、スパイ防止法等の機密を保持するその法制がない、そして、情報収集する手段もない、こういう中でこういう問題が起こり、テロリストの目から見れば、したがって日本は極めてテロを惹起する、そして日本の機能を麻痺させる、非常に安上がりで最大の効果を発揮させ得る国家であるというふうなイメージが浮かび上がってくるわけね。したがって、スパイ防止法、また情報収集の捜査について、今の法律でいけますんですか。それとも、大臣としてはこれは考えないかぬなというふうにお持ちなんですか。夫婦別姓であれほど言われた以上、この法律についても言っていただきたい。

森山国務大臣 治安を確保し、法秩序を維持する責任を果たしますために、いわゆる組織的犯罪対策三法や団体規制法等の各種法令を整備いたしまして、その適正かつ効果的な運用を図っているところでございますが、犯罪情勢に対応したことを考えますと、さらにいろいろな法整備も検討を進めなければいけないかという感じもいたしております。

 もちろん、現行法規におきましてもいろいろな規制、罰則等はございますけれども、例えば、先ほどお話しくださいました入管の体制の充実強化というようなことも目標でございますし、法律だけではなく、さまざまなそのような体制をさらに充実していくべく努力を続けなければいけないと思っております。

西村委員 今後、一般質疑ではまた奇想天外な提案もさせていただきますので、どうかよろしくお願いします。

 質問を終わります。

保利委員長 次に、瀬古由起子君。

瀬古委員 日本共産党の瀬古由起子でございます。

 ハンセン病国賠訴訟の熊本地裁の歴史的な判決が出ましてから早くも五カ月がたちました。控訴断念に至るまで、法務大臣自身も原告に直接会われ、元患者さんたちの一人一人の背負った歴史の悲惨さについて聞いていただきました。控訴断念の日、あすから人間として生きていける、こうして原告たちは高らかに叫びました。しかし、その叫びを打ち消すかのように、政府は、この判決のうち、立法不作為責任を認めた判断、除斥期間に関する判断について、これを否定するような政府声明を出したわけでございます。

 まず、最高裁判所にお聞きしたいのですけれども、この政府声明で判決の効力はなくなるのでしょうか、いかがですか。

千葉最高裁判所長官代理者 裁判所といたしましては、政府声明の効力についてコメントする立場にはございませんけれども、委員御指摘の熊本地裁の判決言い渡しがありまして、控訴提起がされないまま確定をして、効力が生じているというふうに承知しております。

瀬古委員 判決は確定をしたわけです。幾ら政府が往生際悪く声明を出したとしても、判決の内容は変わらない、確定している。結果としては、国会は、その責任を認めて謝罪決議を上げたのですから、立法不作為責任を認めたわけですね。除斥期間についても、一九九六年のらい予防法を廃止するまで人間らしく裁判を受ける権利がなかったと、裁判所から厳しく指摘をされていたわけです。

 法務大臣、あなたがもう一度裁判の蒸し返しを望んでおられないなら、判決の重要な判断を否定するような政府声明は撤回すべきだと思うのですけれども、いかがでしょうか。

森山国務大臣 ハンセン病訴訟の熊本地裁判決につきましては、いろいろ法的な問題点がございます。ですから、本来ならば控訴すべきものという意見も有力なのでございますが、ハンセン病対策の歴史と、患者、元患者の皆さんが強いられてきた幾多の苦痛と苦難に思いをいたしまして、極めて異例の判断といたしまして、控訴しない、そしてこれを確定させるということにしたわけでございます。

 そこで、その判決を確定させるに当たりまして、訴訟の当事者としての立場から、政府の法律上の基本的な考え方を政府声明として明らかにしたものでございまして、このような方法をとりましたことは、この案件の解決策として妥当であったと考えております。

瀬古委員 私は、そういう姿勢が、やはり本当に反省がない今の政府の姿勢にあらわれていると思うんです。おまえたちが気の毒だから控訴はしないけれども、判決には納得しないぞという態度だと思うんですね。人権を守るべき法務省が確定した判決結果を尊重するという態度をとらないで、どうして長い間人間扱いを受けてこなかった元患者さんたちの政府への不信を取り除けるだろうか、私は本当に残念に思います。

 具体的にお聞きしたいと思うんですけれども、国家賠償請求権を有していたハンセン病の元患者がその権利を行使しないまま亡くなった場合、相続人である遺族の賠償請求権はどうなるんでしょうか。遺族が提訴した場合、時効や除斥期間の問題を除外すると、当然賠償請求権は認められると思うんですけれども、法務省の見解を伺いたいと思います。

都築政府参考人 一般的にお話し申し上げます。

 不法行為による損害賠償請求権のうち、被害者の慰謝料請求権につきましては、被害者固有の慰謝料請求権と、被相続人の慰謝料請求権の相続の場合がございます。お尋ねの御趣旨は、遺族側の状況といいますか事情がその請求権にどのような影響を与えるのかという御質問かと承知いたしますが、前者につきましては、固有の問題でございますので影響があろうと考えております。後者の場合につきましては、相続法理の適用でございますので原則的に影響はないもの、かように承知いたしております。

瀬古委員 相続法理に基づいて、生前有していた元患者のその相続ということが当然できるわけです。

 そこで、七月二十七日、熊本地裁が、遺族原告については相続法理にのっとり、また、入所歴なき原告については、熊本地裁判決に従えば入所歴なき原告も国家賠償請求権を有するとして、和解に関する所見を出したわけでございます。ところが、国は和解を拒否して、裁判による決着にしたいとずるずると解決を今引き延ばしています。厚生労働大臣は、家族にも患者さんを熱心に支えた家族もあれば何の音さたもない家族もあるから一律に扱えないというのがその理由だということを説明されておりました。

 しかし、考えてみましても、何の音さたもないということ自身が、家族自身がいろいろな偏見、差別を受けた被害の結果でもあるという場合はあるわけですね。そういう意味では、それを考えただけでも、本来家族にも国がちゃんと責任を償わなきゃならないと私は思っています。

 しかし今回、熊本で原告となっています遺族提訴者は、法的には生存原告と同じ請求権がある、どんな家族だったということは条件にはならないと思うんですね。裁判で争う余地はないと、もうはっきりしている。それをともかく裁判でといって解決を引き延ばす、一体こういうやり方で争う意味があるのかと私は思うんですね。やはり今、熊本地裁が出していますように、和解にきちんと応じるべきだ、このように思うんですけれども、いかがでしょうか。

桝屋副大臣 お答えをいたします。

 瀬古委員におかれましては、その後においても、ハンセン病対策協議会、三回やってまいりましたけれども、常に傍聴していただいて、熱心に見守っていただいているということを、まず敬意を表したいと思います。

 さて、今お尋ねのございました、七月二十七日に熊本地裁から、遺族原告、それから入所歴なき原告について和解に関する所見が示されたところでありますが、政府といたしましては、この件について、五月十一日の熊本地裁の判決でございますが、この熊本地裁の裁判については、遺族原告あるいは入所歴なき原告の方はまだこの時点では加わっていなかったわけでありまして、したがいまして直接に司法の判断がされていないということがございます。

 そして、今委員からもお話がございましたが、その置かれた状況というのはさまざまでありまして、どのような共通の損害があるのか、これは明らかではないという状況がございます。さらに、入所歴のない方は、入所者と異なり、らい予防法の適用により療養所に隔離された事実がないということもあるわけでありまして、私どもといたしましては、裁判の中で御議論をいただき、判断をぜひいただきたい、それが必要であるというふうに考えて、判決を求めることにしたところでございます。

瀬古委員 家族の置かれた状況はさまざまであっても、きちんと国家賠償請求権を有している、いろいろな家族の事情があっても、それは遺族としてきちんと請求権があるんだということは、もう法的な相続法理にのっとっているんだ。そしてまた、今副大臣が言われたように、入所歴なき原告についても、確かに隔離されたという事実はないけれども、熊本地裁の判決の精神によれば、隔離されていなくても、偏見、差別で本当に苦労して、実際には入所していないけれども、この病気を隠して隠して苦労された人たちの、そういう経過があるんだ、そういう被害があるんだということは地裁判決の中でもはっきりうたわれているんですね。そういう精神にきちっとのっとれば、たまたまそのときにそういう原告がいらっしゃらなかったからまた裁判で争うんだということにならないだろうと私は思うんですね。

 さきの判決でも、控訴断念された、そういう場合でも百二十七名の個別の事情に対しては、政府は何ら反論もしていないわけですね。損害額についての判断が下れば、それ以上争う余地というのは私はないと思うんです。そういう意味では、今後の問題としてですけれども、今後さらに裁判所からの何らかの勧告があった場合、あるいは判決が下った後、これらの原告についての和解協議をする用意があるのか、意思があるのか、その点を伺いたいと思います。

桝屋副大臣 これからのことについては、なかなか予断を持って今語ることは難しいわけでありますが、今委員の方から、これから和解勧告が改めて出た場合、あるいは裁判の結果が出た場合のお話をいただきましたけれども、私どもとしても、五月十一日の判決については、これは重く受けとめているわけでありますし、さらにはまた相続法規等についても十分了知をしているわけでありますが、しかし、先ほど申し上げた理由から、私どもとしても、委員も御承知のとおり、議員立法でつくっていただきました補償法の中でもこの部分は触れられていないわけでありまして、そういう意味では、私どもは、ぜひとも司法の判断をいただきたいというふうに考えておるところでございまして、判決を求めていくという姿勢でございます。

 そして、仮に国敗訴の判決が出された場合には、その時点で、関係機関とも協議の上、適切に対応してまいりたい、このように考えております。

瀬古委員 これで長々とまた最高裁まで引っ張って、ともかく裁判の最終決着が出るまでやるんだということではないですね。それは誠意を持ってきちっと対処していただくということでよろしいですか。大臣、副大臣、いかがですか。

桝屋副大臣 今申し上げたとおりでありまして、ただいまのところ、私どもは判決を求めていくという姿勢でございます。御理解いただきたいと思います。

瀬古委員 長々とやらないですかということです。熊本判決を重く受けとめているということについては私も理解をしていますし、そういう立場からこの判断をぜひ下していただきたいというふうに思います。

 では、時間がございませんけれども、ハンセン病の元患者さんたちの残された人生をどう豊かなものにしていくのか。一日も早く失われた青春と人間の尊厳を取り戻す取り組みが全国で今始まっている、そういう点では大変私もうれしく思っています。

 栗生楽泉園の浅井あいさんという方なんですが、歌人で八十一歳です。旧石川県立師範尋常高等小学校、現在金沢大学の教育学部附属中学校で学んでいたときにらい病と診断され、直ちに退学するように言われ、退学届を出しました。そして、教師の道が断たれました。当時の学校は真っ白になるまで消毒されて、たくさんの友人に取り囲まれていた浅井さんの友情もそれで断ち切られました。石川県に、金沢市に帰りたいと、浅井さんの思いは募るばかりです。そして、そのふるさとには浅井あいさんを温かく迎える会もつくられました。しかし、家族は今なお、長い間の偏見、差別に苦しんできたため、まだ乗り越えられない困難をたくさん抱えておられます。

 そこで、浅井さんがふるさとに誇りを持って帰る第一歩として、師範学校の学籍の回復措置を講ずることができないかということです。九月七日付で文部科学大臣あてに既に要請書が出されております。幸い、年老いた当時の校長先生もまだ御存命でいらっしゃる。同級生、現在の学校関係者も、何とかその実現に向けて尽力を今していただいているところでございます。この二十六日に浅井さんはふるさとの母校を訪れます。目も耳も体も不自由な浅井さんは、唯一舌で本を読む、そして、今大変な苦労をされて歌も詠み、エッセーも書いておられます。きょう、この本を持ってまいりましたけれども、大変苦労されて今日まで頑張っていらっしゃいました。その浅井さんが学籍を取り戻し、卒業証書授与など適切な権利回復はできないでしょうか、こういう内容でございます。

 一九九〇年に石川県を訪問したあいさんは、このような歌を詠んでおられます。

  名を呼びて迎えてくるる一人もなし我が故郷の街金沢駅に

 そして、それから十年たちました。今回の訪問は、まだ家族は迎えていただけません。しかし、石川や金沢の皆さんがあいさんを温かく今迎えてくれます。待っておられます。どうか希望ある配慮をぜひお願いしたいと思います。

 きょうは、文部科学省に来ていただいていますので、よろしくお願いいたします。

工藤政府参考人 児童生徒の学籍を作成し管理しますのに、教育委員会が作成します学齢簿というのと、それぞれの学校が作成いたします指導要録というのがあるのでございますが、残念ながら、戦前の、長い年月がたっておるものでございますから、いずれの書類も見当たらないのでございます。

 それと、お話がありましたように、この方は戦前の石川県女子師範学校の附属小学校高等科ということでございましたが、幸い同級生だったと思われる方に接触できまして、書類の上での確認はできないのでございますけれども、確かにそういう方がいらっしゃったという信頼できる証言もございます。この御指摘の浅井さんは、それによりますと、昭和八年の四月に同小学校高等科に入学されて、昭和九年九月にハンセン病と診断されたために退学されたというふうに推定されるところでございます。

 ただ、御指摘がありました学籍の回復というのは、今申しましたように、そもそも学籍簿等がございませんのでそれは難しいのでございますが、卒業証書の授与などできないかというお話につきまして、四角四面なことを言いますとややこしいのでございますけれども、患者さん、元患者さん方の苦難と苦痛を考えますと、御希望に沿う形での円満な解決を図りたいと思ってございます。

 ただ、今のところ御本人との意思疎通ができてございませんで、支援団体の方からの御要請なんでございますが、近々校長の方から御本人の意思確認をいたしまして、どういう御希望であるか、可能なことをさせていただきたいと思っております。

瀬古委員 ぜひ温かい御配慮をお願いしたいと思います。学籍回復は、ふるさとへの熱い思いを持っている全国のハンセン病元患者さんたちに希望をもたらします。また、浅井さんのように、ふるさとで学籍を奪われ、学校を真っ白に消毒されて追われ、学ぶ機会を失った元ハンセン病の患者さんたちの名誉回復や学籍回復は、今日、偏見、差別をなくす、そして人権を考えることのできる大切な私は教育でもあると思うんですね。パンフレットを配布するよりももっと生きた教育にもなります。今後、希望者には教育現場での取り組みなどぜひ進めていただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

工藤政府参考人 先ほども申しましたように、戦前と、あるいはその当時の学校と違っていたり、制度が変わったりということがございますので、学籍の回復という形式的なことはなかなか難しい面がございますけれども、少なくとも、例えば義務教育段階でまだ修了していらっしゃらないでまた学校にということであれば、学校においでいただくという可能性もございますし、あるいは卒業証書等の御希望があれば、それぞれの設置者の御判断で適切な対応をしていただきたいと思ってございます。

 さらに、せっかくの苦難の道を歩まれたわけでございますので、そういう体験を学校等の御判断で講師にお迎えしてお話しいただくとか、いろいろな形でお迎えするような機会があるのではないかと思っております。

瀬古委員 ありがとうございました。これで終わります。

保利委員長 次に、植田至紀君。

植田委員 社会民主党・市民連合の植田至紀です。

 きょうは、関西の方では結構新聞等でも出ておるんですが、公安調査庁による外国人登録原票の請求にかかわる問題について何点かお伺いしたいと思っております。

 私が、その事実といいますか、報道で知りましたのは朝日新聞の大阪版なので、こっちでは一面では出ていないと思うんですが、関西では一面トップでしたが、「公安庁、外登票を収集」というのが八月十七日に出ました。これの中でいきますと、京都市在住の在日韓国・朝鮮人八十七人の外国人登録原票の写しを取り寄せたというその事実が、事実として報道されておるわけですが、その後、他の報道等でいけば、四百人以上そういう形で全国でそういう取り寄せ、収集が行われているということが、今度八月二十五日、これは東京でも出ていますけれども、朝日新聞でそういう記事も出ています。

 そこで、まず事実関係の確認だけさせていただきたいわけですが、この八月二十五日付の朝日を見ましても、朝日新聞の取材に対して、公安調査庁が、「「報道されていることが事実かどうかも含め、調査上のことはコメントできない。法に基づいて職務を執行している」と話している。」と記事では書いてあるわけですが、きょうは公安庁さんにもお越しいただいておりますけれども、そもそもその詳細について私は聞くつもりではございませんが、かかる調査をしたという事実があるのかないのか、それを端的にまずお答えいただきたいと思います。

書上政府参考人 お答え申し上げます。

 公安調査庁におきましては、従前から、破壊活動防止法に基づきまして、破壊的団体の規制に関して必要な調査を行っておるところでございますが、外国人登録原票写しの交付請求は、こういった調査の一環といたしまして、調査対象団体に対する調査の遂行上必要な人物を把握する目的で行っているものであります。

 したがいまして、巷間言われるように、外国人一般あるいは特定国の方だけに限って交付請求を行うということではございませんで、あくまでも対象団体に関係する人の特定、把握のために行っているんだということを御理解賜りたいと思います。

植田委員 その点は後でもお伺いいたしますが、要するに、この朝日のコメント、取材については、取材ではあるともないとも言えないという趣旨の、正確にどういうコメントをなされたのかはわかりませんが、調査の一環としてかかる調査をやっていることは事実でございますというふうに受けとめます。

 その上で、それはお答えできへんと言うんでしょうが、いつごろからそういう込み入った調査をやってはるのかということなんですが、実は少なくとも、例えばおとついの神戸新聞では、尼崎でも、これは記事で出ていますから固有名詞を挙げてもいいでしょうが、金成日さん、漢字で書くと日成の逆ですね、金成日さんという方が条例で開示請求すると、九九年から二回にわたって請求がされて、交付がされておるということが報道されているわけですし、また、実際、昨年の十二月二十六日付で、法務省の入管局登録課補佐官名で、東京都の区市町村の外国人事務主管課長あてで「公安調査庁から登録原票の開示請求があった場合の取扱いについて」という文書が発せられている。

 ということは、当然、法務省さんも、そういう公安調査庁の調査がかなり広範に行われているということを前提に、そのときこういうことが来ればこういうふうに対処しなさいよと、その取り扱いの徹底を図ったというふうに私理解しておりますが、公安調査庁さんには、少なくとも、最低でも二、三年前からこれはやっていることは事実として掌握できるわけですが、いつごろからそういうことをやっているんですかということをまず伺います。

 その上で、いずれにしても、昨年十二月段階ではこういう通知が法務省から各自治体の担当者あてに出ているわけですから、当然、法務省さんとしては、その便宜を図るといいますか、不明な点があればまずいだろうからということでこういう取り扱いの周知徹底を図るために出されたんですねということは法務省さんに確認したいと思いますが、お願いいたします。

中尾政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の文書でありますが、これは当時、東京都下の地方公共団体の方から、公安庁から登録原票の開示請求があったといたしまして、その取り扱いに関して当局の助言を得たいという要望があったことを踏まえて発出されたものでありますので、そのような開示請求があったと御理解いただいて差し支えないものと思います。

植田委員 では、何年前からこういうことをやっているんですか。これは調査庁さんに聞くと言ったから答えてください。

書上政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほども御説明いたしましたが、従前から私どもではそういうことをやっているということは、これは事実でございます。ただ、それがいつごろかということにつきましては、交付請求につきましては、私ども当然のことながら控えというものがあるわけでございますが、これの保存期間が非常に短期でございまして、したがって、どの程度、過去がどうだったかということについては確たることがわかりませんので、その点についての答弁は差し控えさせていただきたいと思います。

植田委員 ちなみに、保存期間は何年ですか。

書上政府参考人 私どもの保管している控えの保存期間は一年間でございます。

植田委員 ですから、一年たったらほかすということですから、最低一年前からはやっている。それで、事実関係からすれば、私の知る範囲では、九九年からやっていることは事実として明らかだ、それよりもずっと前からやってはるのかもしれませんが。

 その上で、先ほどちょっと調査の趣旨等にかかわって御説明いただきましたけれども、調査の法的根拠について御質問をさせていただきたいわけですが、これは公安調査庁さんのものじゃないわけですが、九七年十二月六日付で、当時の入管局登録課長の名前で、東京都の総務局の行政部長あてに「小平市における捜査関係照会の取扱について(指示)」という文書が出されているわけです。これはどういうことかというと、小平市で、警視庁の小平署が慣例として多くの外国人の登録原票の関係書類を閲覧した、そういう問題が生起をした。

 そこで、実際にこの外国人登録事務取扱要領では、照会または請求の対象となる外国人が特定されていない場合は、また、法の目的に照らして不特定の者にかかわる照会または請求を行うことについて合理的な理由が認められるときに限りこれに応じることとするとされておるわけですけれども、この案件については、法務省さんは、合理的な理由があると認められへん事案だと、だから適正じゃないよという趣旨がこの指示には述べられているわけです。

 そこで、法務省さんにお伺いしたいんですが、公安調査庁の交付依頼というものは、これには抵触しないで適正に行われたというふうに御認識されているんでしょうか。

中尾政府参考人 お答えする前にちょっと申し上げておきたいわけでございますけれども、お尋ねの文書の関係でございますけれども、これは、多分平成八年十二月六日付の東京都あてに発出された、当時の私どもの登録課長名義の指示文書のことだろうと思いますが、それを前提として申し上げれば、おおむねそのような、委員おっしゃるような、合理的な理由なく適正でないというような趣旨にとれます内容の文書であったということ自体はそのとおりでございます。

 ただし、この文書自体は、それ自体もう効力のなくなっておる文書でございまして、平成十二年四月に外国人登録法が改正されて登録事務が法定受託事務になりましたものですから、その以前の文書でありまして、法定受託事務として登録原票等の開示に係る規定が明文化されて、その明文化される以前の、規定のない状態での指示文書でございますので、それに基づいて委員御指摘の案件についてどうだああだということはちょっと、コメントをすることは適切でないというふうに考えております。

植田委員 国と地方公共団体との関係について、機関委任から法定受託事務に変わって全部法律に書き込むことになった。だから、恐らく出す側においては、この案件については外登法の四条の三の四項で、それを根拠に出しておるということだろう、その話は後で伺いますけれども、一応確認させていただきました。

 ちなみに、外国人登録原票は、戸籍謄本と違いますから顔写真もあるわけです。顔写真や家族構成、生年月日、個人情報が満載されておるわけですが、法務省は、やはりこの種のことについては個人情報保護の観点から、請求理由を具体的に明らかにしなければならないとしてきたはずだと私は理解しておりますが、破壊活動防止法二十七条に基づく破壊的団体規制に関する調査ということのみで、請求理由を具体的に明らかにできたというふうに法務省さんはお考えでしょうか。

中尾政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御案内のとおり、平成十二年四月以降につきましては、外国人登録原票の開示請求に応ずるか否かにつきましては、その基本的な判断は関係法令に基づきまして各地方公共団体が行うということになっておりますし、具体的な案件について各地方団体の方で、委員御案内の、請求として理由が明らかな場合等々の要件があるかどうかを判断して適正にやるということになろうかと思います。

植田委員 今聞いているのは破防法二十七条の話でして、公安庁さんが請求するのは別に外登法に基づいて請求しているわけじゃないですね。この破防法二十七条に基づいて調査をされている。それだけいうことで、請求理由を具体的に明らかにしているのですかということを私は聞いているわけです。外登法の話は後で聞くと申し上げました。まず、そこの具体的な理由があるのですかということを私は聞いているのです。そのことにお答えいただけますか。

中尾政府参考人 基本的には個々の案件ということになろうかと思いますけれども、一般論で申し上げれば、委員のおっしゃるような破壊活動防止法第二十七条に基づく破壊的団体の規制に関する調査のために必要であるということ、そういう記載があれば、基本的には外国人登録法四条三の六項に言う請求を必要とする理由が示されているものと考えてよろしいかというふうには思います。

植田委員 この二十七条では、必要な調査に関しては、あくまでも三条に規定する基準の範囲においてとあるわけですから、ならば、こういうかかる調査というものが必要な最小限度においてのみ行われたものなのか。そしてまた、自由と権利を不当に制限するものではないんだ、要するに、実際に請求されて、知らぬ間にそんなものを公安庁に持っていかれた人の、例えば先ほど尼崎の方は固有名詞を挙げましたけれども、そういう方がそのことによって自由と権利が不当に制限されていないという理由はどこにありますか。そんな難しいこと聞いていませんよ。

中尾政府参考人 その点の御質問について私の方からお答えすることが果たして適切かどうかわかりませんけれども、あえてお答えするということになりますと、つまり、破壊活動防止法に関する調査という問題につきましては、一般的には、その調査そのものが、職務上、当該公安庁等の国の機関等が必要性があって、必要な調査だということがあるがゆえに調査をされるというふうには一般的に考えることだろうと思います。したがいまして、市町村側におきましても、当該公安庁等の機関側においてその調査そのものが職務上必要があるという観点でやられているという判断に基づいて、外登法上の請求に関しての適正な判断がなされている、そういうふうに理解すべきものと私の方では考えさせていただきたいと思います。

植田委員 時間がありませんので、通告で用意した質問は次週に回させていただきますが、時間の限りでもう一、二点お伺いしたいと思います。

 判例では、一九六九年の十二月の最高裁判決、「憲法第十三条は国民の私生活上の自由が、警察権等の国家権力の行使に対しても保護されるべきことを規定している」、こういう判例があるわけですが、私、素直に読めば、公安庁の調査というものは少なくともそれを越えておる、少なくともこの判例には反するのじゃないか。それでも、もし仮に顔写真まで含めて持っていく、こういう登録原票を請求して、もらっちゃった、こういう調査をやったとしても、私生活上の自由がそれでも十分保護されているとされるのであれば、その理由はどうなんですかということをまず伺います。それと、在日外国人であるから私生活上の自由は保護されなくてもいいともし認識されるのであれば、そうとお答えいただいても結構です。

 いずれにいたしましても、かかる調査をされてしまった個人が、そのことにおいても人権は侵害されていない、自由も制限されていない、そして私生活上の自由がそれによっても保護されているという理由はどこに見出せばいいんでしょうか。お答えいただけますか。

書上政府参考人 お答え申し上げます。

 その前に、先ほど、破壊活動防止法の二条と三条の必要最小限の原則ということのお尋ねがございましたが、これは私どもが行っております二十七条の必要な調査全体にかぶるわけでございまして、外国人登録原票の写しの交付のところだけにかかっているわけではございません。したがって、私どもも、調査活動の一環といたしまして、調査活動は非常に多岐にわたる活動があるわけでございますが、その一環として原票の写しを交付請求する場合には、この二条、三条ということを十分検討した上で、個々具体的に必要かつ最小限のものということで請求をさせていただいているということをまず御理解を願いたいと思うわけでございます。

 それと、四十四年の最高裁の判決の関係でございますが、これは日本の国民だけでなく日本に在住する外国人にも当然のことながら及ぶ趣旨だろうという理解はしておるわけでございます。

 ただ、言うまでもなく、憲法にも、そうした個人の生活上のプライバシーだとか名誉とかそういったものにつきましては、公共の福祉の範囲内でという条項がもう一つございます、ちょっと正確には今覚えておりませんが。その範囲内で法令が、破防法二十七条の必要性の規定を設け、かつ外国人登録法で新しく法改正がなされているということでございますので、運用もきちっと、それに反することなく適法かつ適正に行ってきているものと私どもでは考えている次第でございます。

植田委員 余りきょうは時間がありませんので、もう一点だけ聞きます。二点になるかな。

 一々立っていただかなくても結構ですが、要するに、今回、そうした調査をしてもその対象たる個人の人権は一切侵害されていないというふうにお考えなんですね。それぞれ各人の、その調査票、原票を持っていかれた人の私生活上の自由というもの、人権というものは一切侵害をしていないと公安庁さんではお考えなんですね。どうなんです。

書上政府参考人 お答え申し上げますが、国が行う一定の作用につきましては、非常にプリミティブな意味でいいますと、人権侵害に当たるのではないかと思われるような場合がないわけではないと思います。

 ただ、必ずそれは公共の福祉とのバランスの関係で法的な手当てがしているわけでございまして、必ずそこはその法律に従って適法であるという限度において、憲法もそういった私生活上の保障というものをやっているものという理解を私どもはしているわけでございます。

植田委員 要するに、公共の福祉のために申しわけないがその人権を侵害させていただいた、そういう御答弁だということで伺っておきます。

 時間が来ましたのできょうのところはこれまでということで、次週もちょっとこれはやらせていただきます。きょうは終わります。

     ――――◇―――――

保利委員長 次に、内閣提出、司法制度改革推進法案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。森山法務大臣。

    ―――――――――――――

 司法制度改革推進法案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

森山国務大臣 司法制度改革推進法案について、その趣旨を御説明いたします。

 新世紀を迎えた我が国におきましては、社会の複雑・多様化、国際化等に加え、国の規制の撤廃または緩和が一層進展し、社会が事前規制型から事後監視型に移行する等の内外の社会経済情勢の変化に伴って、司法の果たすべき役割はより一層重要になると考えられます。

 この法律案は、このような状況にかんがみ、司法制度の改革と基盤の整備について、その基本的な理念及び方針、国の責務、その他の基本となる事項を定めるとともに、司法制度改革推進本部を設置すること等により、これを総合的かつ集中的に推進することを目的とするものであります。

 以下、法律案の内容につきまして、その概要を御説明申し上げます。

 第一に、司法制度改革は、国民がより容易に利用できるとともに、公正かつ適正な手続のもと、より迅速、適切かつ実効的にその使命を果たすことができる司法制度を構築し、高度の専門的な法律知識、幅広い教養、豊かな人間性及び職業倫理を備えた多数の法曹の養成及び確保その他の司法制度を支える体制の充実強化を図り、並びに国民の司法制度への関与の拡充等を通じて司法に対する国民の理解の増進及び信頼の向上を目指し、もってより自由かつ公正な社会の形成に資することを基本として行われるものとした上で、司法制度改革に関する国等の責務について所要の規定を置いております。

 第二に、司法制度改革は、基本理念にのっとって必要な制度の整備等を図るとの基本方針に基づき推進されるものとし、政府は、基本方針に基づく施策を実施するため必要な法制上または財政上の措置その他の措置を講じなければならないものとしております。

 第三に、政府は、司法制度改革に関し講ずべき措置について司法制度改革推進計画を定めなければならないものとし、この計画の作成等について所要の規定を置いております。

 第四に、司法制度改革を総合的かつ集中的に推進するため、内閣に司法制度改革推進本部を置くこととし、その所掌事務、組織、事務局等について所要の規定を置くとともに、その設置期間を設置日から三年間とするものとしております。

 以上が、この法律案の趣旨であります。

 どうぞ、慎重に御審議の上、速やかに可決くださいますようお願いいたします。

保利委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

保利委員長 次に、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 ただいま議題となっております本案審査のため、来る二十四日水曜日、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

保利委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、来る二十四日水曜日午後零時五十分理事会、午後一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時七分散会




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