衆議院

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第15号 平成14年5月31日(金曜日)

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平成十四年五月三十一日(金曜日)
    午前九時十二分開議
 出席委員
   委員長 園田 博之君
   理事 佐藤 剛男君 理事 塩崎 恭久君
   理事 棚橋 泰文君 理事 山本 有二君
   理事 加藤 公一君 理事 平岡 秀夫君
   理事 漆原 良夫君 理事 西村 眞悟君
      荒井 広幸君    太田 誠一君
      後藤田正純君    左藤  章君
      笹川  堯君    下村 博文君
      鈴木 恒夫君    中川 昭一君
      西川 公也君    西田  司君
      馳   浩君    平沢 勝栄君
      保利 耕輔君    松島みどり君
      柳本 卓治君    吉野 正芳君
      岡田 克也君    鎌田さゆり君
      佐々木秀典君    日野 市朗君
      水島 広子君    山花 郁夫君
      石井 啓一君    藤井 裕久君
      木島日出夫君    中林よし子君
      植田 至紀君
    …………………………………
   議員           平岡 秀夫君
   議員           水島 広子君
   法務大臣         森山 眞弓君
   法務副大臣        横内 正明君
   法務大臣政務官      下村 博文君
   政府参考人
   (警察庁長官官房長)   石川 重明君
   政府参考人
   (法務省大臣官房訟務総括
   審議官)         都築  弘君
   政府参考人
   (法務省刑事局長)    古田 佑紀君
   政府参考人
   (法務省矯正局長)    鶴田 六郎君
   政府参考人
   (法務省入国管理局長)  中尾  巧君
   政府参考人
   (外務省大臣官房領事移住
   部長)          小野 正昭君
   政府参考人
   (厚生労働省大臣官房審議
   官)           伍藤 忠春君
   法務委員会専門員     横田 猛雄君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月三十一日
 辞任         補欠選任
  中川 昭一君     西川 公也君
  不破 哲三君     中林よし子君
同日
 辞任         補欠選任
  西川 公也君     馳   浩君
  中林よし子君     不破 哲三君
同日
 辞任         補欠選任
  馳   浩君     中川 昭一君
    ―――――――――――――
五月二十八日
 裁判所法の一部を改正する法律案(平岡秀夫君外五名提出、衆法第一八号)
 検察庁法の一部を改正する法律案(平岡秀夫君外五名提出、衆法第一九号)
 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律案(水島広子君外五名提出、衆法第二〇号)
 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律案(内閣提出第七九号)
同月二十一日
 夫婦別姓制度の導入を図る民法改正反対に関する請願(山口俊一君紹介)(第二九九八号)
 治安維持法犠牲者国家賠償法の制定に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第二九九九号)
 同(家西悟君紹介)(第三〇〇〇号)
 同(石井郁子君紹介)(第三〇〇一号)
 同(今川正美君紹介)(第三〇〇二号)
 同(植田至紀君紹介)(第三〇〇三号)
 同(小沢和秋君紹介)(第三〇〇四号)
 同(小沢鋭仁君紹介)(第三〇〇五号)
 同(大幡基夫君紹介)(第三〇〇六号)
 同(大森猛君紹介)(第三〇〇七号)
 同(鍵田節哉君紹介)(第三〇〇八号)
 同(金田誠一君紹介)(第三〇〇九号)
 同(鎌田さゆり君紹介)(第三〇一〇号)
 同(木島日出夫君紹介)(第三〇一一号)
 同(桑原豊君紹介)(第三〇一二号)
 同(小林憲司君紹介)(第三〇一三号)
 同(児玉健次君紹介)(第三〇一四号)
 同(穀田恵二君紹介)(第三〇一五号)
 同(佐々木憲昭君紹介)(第三〇一六号)
 同(志位和夫君紹介)(第三〇一七号)
 同(塩川鉄也君紹介)(第三〇一八号)
 同(瀬古由起子君紹介)(第三〇一九号)
 同(田中慶秋君紹介)(第三〇二〇号)
 同(中西績介君紹介)(第三〇二一号)
 同(中林よし子君紹介)(第三〇二二号)
 同(中村哲治君紹介)(第三〇二三号)
 同(永井英慈君紹介)(第三〇二四号)
 同(鉢呂吉雄君紹介)(第三〇二五号)
 同(春名直章君紹介)(第三〇二六号)
 同(伴野豊君紹介)(第三〇二七号)
 同(日森文尋君紹介)(第三〇二八号)
 同(平岡秀夫君紹介)(第三〇二九号)
 同(不破哲三君紹介)(第三〇三〇号)
 同(藤木洋子君紹介)(第三〇三一号)
 同(松本善明君紹介)(第三〇三二号)
 同(松本龍君紹介)(第三〇三三号)
 同(矢島恒夫君紹介)(第三〇三四号)
 同(山口富男君紹介)(第三〇三五号)
 同(吉井英勝君紹介)(第三〇三六号)
同月二十三日
 治安維持法犠牲者国家賠償法の制定に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第三二二二号)
 同(井上和雄君紹介)(第三二二三号)
 同(家西悟君紹介)(第三二二四号)
 同(石井郁子君紹介)(第三二二五号)
 同(今川正美君紹介)(第三二二六号)
 同(植田至紀君紹介)(第三二二七号)
 同(川内博史君紹介)(第三二二八号)
 同(玄葉光一郎君紹介)(第三二二九号)
 同(志位和夫君紹介)(第三二三〇号)
 同(塩川鉄也君紹介)(第三二三一号)
 同(東門美津子君紹介)(第三二三二号)
 同(日森文尋君紹介)(第三二三三号)
 同(藤木洋子君紹介)(第三二三四号)
 同(前田雄吉君紹介)(第三二三五号)
 同(矢島恒夫君紹介)(第三二三六号)
 同(山内惠子君紹介)(第三二三七号)
 同(山元勉君紹介)(第三二三八号)
 同(横路孝弘君紹介)(第三二三九号)
 同(川内博史君紹介)(第三二八一号)
 同(重野安正君紹介)(第三二八二号)
 同(鈴木淑夫君紹介)(第三二八三号)
 同(牧義夫君紹介)(第三二八四号)
 同(石井紘基君紹介)(第三三二一号)
 同(川内博史君紹介)(第三三二二号)
 同(熊谷弘君紹介)(第三三二三号)
 同(五島正規君紹介)(第三三二四号)
 同(重野安正君紹介)(第三三二五号)
 同(横光克彦君紹介)(第三三二六号)
 同(大石正光君紹介)(第三三五五号)
 同(大森猛君紹介)(第三三五六号)
 同(奥田建君紹介)(第三三五七号)
 同(児玉健次君紹介)(第三三五八号)
 同(渡辺周君紹介)(第三三五九号)
同月二十九日
 夫婦別姓制度の導入を図る民法改正反対に関する請願(杉浦正健君紹介)(第三四四九号)
 同(森田健作君紹介)(第三五〇五号)
 同(岩屋毅君紹介)(第三五四四号)
 同(林田彪君紹介)(第三五四五号)
 同(武藤嘉文君紹介)(第三五四六号)
 法務局、更生保護官署、入国管理官署及び少年院施設の増員に関する請願(木島日出夫君紹介)(第三四八六号)
 同(鎌田さゆり君紹介)(第三五〇八号)
 同(赤嶺政賢君紹介)(第三五四七号)
 同(石井郁子君紹介)(第三五四八号)
 同(漆原良夫君紹介)(第三五四九号)
 同(小沢和秋君紹介)(第三五五〇号)
 同(大幡基夫君紹介)(第三五五一号)
 同(大森猛君紹介)(第三五五二号)
 同(木島日出夫君紹介)(第三五五三号)
 同(児玉健次君紹介)(第三五五四号)
 同(穀田恵二君紹介)(第三五五五号)
 同(佐々木憲昭君紹介)(第三五五六号)
 同(志位和夫君紹介)(第三五五七号)
 同(塩川鉄也君紹介)(第三五五八号)
 同(瀬古由起子君紹介)(第三五五九号)
 同(中林よし子君紹介)(第三五六〇号)
 同(春名直章君紹介)(第三五六一号)
 同(平岡秀夫君紹介)(第三五六二号)
 同(藤木洋子君紹介)(第三五六三号)
 同(松本善明君紹介)(第三五六四号)
 同(矢島恒夫君紹介)(第三五六五号)
 同(山口富男君紹介)(第三五六六号)
 同(吉井英勝君紹介)(第三五六七号)
 同(佐々木秀典君紹介)(第三五八八号)
 同(水島広子君紹介)(第三五八九号)
 治安維持法犠牲者国家賠償法の制定に関する請願(土肥隆一君紹介)(第三四八七号)
 同(大島敦君紹介)(第三五〇六号)
 同(三村申吾君紹介)(第三五〇七号)
 同(石井一君紹介)(第三五八七号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 国際受刑者移送法案(内閣提出第六七号)(参議院送付)
 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律案(内閣提出第七九号)
 裁判所法の一部を改正する法律案(平岡秀夫君外五名提出、衆法第一八号)
 検察庁法の一部を改正する法律案(平岡秀夫君外五名提出、衆法第一九号)
 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律案(水島広子君外五名提出、衆法第二〇号)


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     ――――◇―――――
園田委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、参議院送付、国際受刑者移送法案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房長石川重明君、法務省大臣官房訟務総括審議官都築弘君、刑事局長古田佑紀君、矯正局長鶴田六郎君、入国管理局長中尾巧君、外務省大臣官房領事移住部長小野正昭君及び厚生労働省大臣官房審議官伍藤忠春君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
園田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
園田委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。吉野正芳君。
吉野委員 おはようございます。自由民主党の吉野正芳でございます。
 この法案について総論的な観点から質問をさせていただきます。
 過日、ここにおられる委員の皆様と仙台、福島へ行ってまいりまして、福島刑務所を調査してまいりました。その後、新宿にある更生保護施設等も見学をしてまいりました。
 福島刑務所を見て感じたことを、ちょっと申し述べてみます。
 まず、部屋が狭い。例えば定員四人のところに七人くらい入っていたと思います。ひどいところは、二部屋か三部屋ぶち抜いて大きな部屋にして、十二人くらい入っていて、そこにトイレが一個しかない。毎朝、十二名の方々が一つのトイレを奪い合うようにという言葉が適切かどうかわかりませんけれども、大体一人頭畳一畳くらいのスペースしかない、そんな点も感じてまいりました。そして、外国人、これがいかに多いかというところも見させていただきました。もう一つは、高齢者が多かったんです。それも、一たん出て、そしてまた罪を犯してまた入ってくる、そういう再犯を繰り返した高齢者が多かった、そんなところも感じてまいりました。
 また、新宿の更生保護施設を見たときに、ここは親鸞上人の教えのもとでやっているところでありますけれども、いかに社会復帰ということが難しいかというところも教えていただきました。
 実は、ここの施設がモデルになって小説が書かれて、吉村昭さんの「仮釈放」という小説をそこでいただいたんですけれども、私、すぐ全部読ませていただきました。社会復帰をする、更生していくということがいかに大変だか、本人も大変なんですけれども、いわゆる周りの方々、足を引っ張ろうと思ってやっているのではないんだけれども、結果的に足を引っ張ってしまうようなことになっていく、そんなところもこの小説の中から感ずることができたわけです。
 そういう中で、私、素朴に疑問に思うんですけれども、罪と罰という問題なんです。
 罪を犯せば罰を与えていく、これは当たり前のことですけれども、死刑及び死刑以外の刑。罰の中で死刑という罰は、もう社会復帰とか真人間になってほしいとかという思想はこれっぽっちもない。罪を犯したんだから、その反対として死刑ということがあるんですけれども、死刑以外の罰というのは、根本目的は、やはり最終的に真人間になってほしい。そのために罰を与えて、その罰を理解することによって最終的に真人間になってほしいという意味がやはりそこの罰の中に込められていなければならないと私は思います。
 そういう意味で、宗教分離の原則があろうかと思いますけれども、やはり私たち人間にとっては、宗教という役割というものを外して真人間になるということはなかなか難しいと思います。そういう意味で、刑務所の役割、及び、もっと宗教を活用してはいかがかと思うんですけれども、その辺の考え方を聞きたいと思います。
鶴田政府参考人 お答えいたします。
 刑務所は、主に、裁判により懲役または禁錮に処せられた者を収容し、処遇する施設でございますが、ただいま委員が御指摘になりましたように、その刑罰を執行するために、その身柄を社会から隔離して確保する、そういうことと同時に、受刑者に対しまして、刑務作業のほかさまざまな働きかけを行いまして、健全な市民として社会生活を送れるよう、その改善更生と円滑な社会復帰を行っているところである。一言で申し上げれば、刑の執行の場であり、それと同時に矯正の場でもあるというふうに考えております。
 そして、先生も御指摘になりましたように、受刑者を教育し、改善更生させることは刑務所の重要な機能でありまして、その中で、宗教教誨ということでございますけれども、これは受刑者の改善更生を図る上で重要な役割を果たしているというふうに私どもも考えております。
 この宗教教誨というのは、希望する者に対しまして、宗教の教義に基づきまして、教え諭したり、あるいは礼拝、儀式等を授けるものでございますが、政教分離のもとで、現在は教誨師さんという民間の宗教家によって行われております。
 宗教教誨は、受刑者に対しまして、信教の自由を保障し、受刑者の宗教的欲求の充足と心情の安定を図り、将来への希望を与えることによって、改善更生への意欲の促進に大きく寄与するものと考えております。
 現在は、福島刑務所もしかりですけれども、全国、過剰収容という状況になっておりまして、受刑者にとっても、ややもするとストレスが蓄積し、いろいろと心情の安定を欠くということも懸念されます。また、生命のとうとさとか心の豊かさに触れる教誨師の方々の御協力がますます重要になってきますので、今後とも、民間のボランティアである教誨師の協力を得ながら、充実した宗教教誨活動を行えるよう努めてまいりたいと考えております。
吉野委員 積極的に、受刑者に対しての宗教というものを今以上に活用されることを望みます。
 次に、国連の人権委員会から日本の人権問題に対して勧告がされております。これは一九九八年に出されたんですけれども、この中で、男女共同参画型社会を目指した日本政府は偉い、こういうふうにお褒めの言葉も三つくらいは書いてあります。残り二十九項目、これは、いわゆる大きな懸念を持っている、ここを改善してほしいという勧告をされているわけであります。例えば、これは質問じゃないんですけれども、裁判官とか検察官になる方々の教育の中に、この国際基準というものを勉強させていないのではないのか、もっとこの中身を裁判官とか検察官になる者には勉強させたらいいだろうというところも書かれています。
 それで、その中で、やはり刑務所の待遇といいますか行動基準、これは、人権という立場から見て改善すべきことがたくさんあると、六つの事項を指摘されているわけですけれども、この勧告に対しての対応といいますか、そういうものがなされているのかどうか、その辺をお聞きしたいと思います。
鶴田政府参考人 お答えいたします。
 国連人権委員会の見解に対しましては謙虚に受けとめておりますけれども、その点で指摘された我が国の行刑施設における所内規則とか規律違反等に対する懲罰等につきましては、刑務所というところが大勢の被収容者による集団生活の場でございますので、適切な処遇を行うには所内の安全が確保されていなければなりませんし、また、受刑者の改善更生及び社会復帰を図るためにも必要なもので、その内容も合理的なものであるということで、私どもでは、指摘のあったように、過酷とかそういうようなものではないというふうに考えておるわけです。
 しかしながら、当局においては従来から、受刑者の人権に配慮してその処遇をより一層充実するために、いろいろ、施設内での動作規制の見直しとか、あるいは革手錠等の使用とか、そういう面について逐次所要の改善措置を講じておるところでございます。今後とも、そのように努めてまいりたいと考えております。
吉野委員 「仮釈放」という小説の中にも、刑務所から仮釈放の後は、出てきても、日常の道路を歩く姿勢もきちんと行進をして歩くような、そんな行動がもう身についているという場面も書かれていました。まさに指示待ち人間、何かの指示がなければ何もできないというような、今の行動規範といいますか、行動を見ていますと、そんな気がいたします。普通の歩き方まで行進の歩き方が常に身についているような、そんなことでは私はいけないのではないのかなと思いますので、ぜひよろしくお願いします。
 日本の矯正保護に関して、平成十二年十一月に矯正保護審議会から提言がなされております。二十一世紀における矯正運営及び更生保護の在り方という形で提言がなされていますけれども、この中で、矯正の一番の根本法、基本法となっている監獄法がございます。
 これは、今から百年近く前、一九〇八年につくられました。明治四十一年につくられています。古くて、今の時代には全く合わない法律です。それが矯正に関しての基本法となっているわけで、この提言の中でも、この監獄法を改善すべきだ、こう言われているんですが、いまだに改正されておりません。どうしてなんでしょうか。
鶴田政府参考人 お答えいたします。
 監獄法を全面改正するということで、法制審議会の答申を受けて刑事施設法案を策定したわけですけれども、そして、昭和五十七年の四月と昭和六十二年の四月、平成三年の四月の三度にわたりまして国会に提出いたしましたけれども、いずれも衆議院の解散等により廃案となり、現在に至っております。
 廃案となりました直接の理由は衆議院の解散でありますけれども、実質的に最も焦点になっている問題は、いわゆる代用監獄制度の廃止の問題でございまして、やはりこれに対して弁護士会等を中心とする反対があったというふうに承知しております。
 しかしながら、今先生が御指摘になりましたように、監獄法は明治四十一年に制定されたものでございます。内容、形式とも時代に適応しなくなっているところもありますし、その改正する必要性は現在も少しも薄れていないというふうに考えております。
 ただいま御指摘になりました矯正保護審議会の御提言もいただいておることですので、関係者の御理解を得ながら、引き続き検討を進めてまいりたいと考えております。
吉野委員 監獄法改正のために我が委員会が積極的な活動をすることを委員長にお願い申し上げます。
 最後に、国家主権の問題であります。
 今度のこの法案は、外国にいる日本人を日本へ、また、日本にいる外国人を外国へという形でやるわけですけれども、いわゆる刑罰権というのは、やはり日本の国の主権を構成する一つの役割、属性があるのかなと私は思っています。そういう意味で、その刑罰権を外国に任せるというところは日本の主権に抵触する部分があるのかなと私は疑問に思うわけでありますけれども、その辺についての御見解をお願い申し上げます。
横内副大臣 委員の御指摘のように、刑罰権は一国の主権に属するものでございまして、今回の国際受刑者移送というのは、決して刑罰権を外国に移譲するということではなくて、受刑者の改善更生、社会復帰を促進するために、より適切にそれを推進していくための国際協力というふうに位置づけております。
 したがいまして、受入移送の場合には、外国で自由刑が確定した裁判そのものを我が国で執行するわけではなくて、その外国がそれを執行するその共助、協力ということであります。また、送出移送についても、我が国の刑罰執行権自体を外国に移譲するということではございませんで、あくまでも我が国の懲役、禁錮の確定裁判の執行を外国が共助する、協力をして支援をするという考え方でございます。
 この受刑者移送というのは、あくまでも、そういう国際協力の一環、国際司法共助の一環でございまして、双方の国の主権と受刑者の改善更生及び社会復帰を促進するという刑罰の一つの目的を調和的に実現していくやり方ということでございまして、国の刑罰権の行使のあり方として問題になることはないというふうに考えております。
吉野委員 ありがとうございました。これで質問を終わります。
    ―――――――――――――
園田委員長 この際、森山法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。森山法務大臣。
森山国務大臣 質疑者の御了解を得ておりますが、閣議のために出席がおくれました。
 この際、三井環前大阪高等検察庁公安部長による事件について御報告いたします。
 三井元検事による事件につきましては、大阪地方検察庁におきまして、昨日、収賄及び公務員職権乱用罪により、大阪地方裁判所に公判請求いたしました。現職幹部検事が、暴力団関係者と私的に交際した上、このような不祥事を起こしたことはまことに遺憾であり、国民の皆様に対し、改めて深くおわび申し上げます。
 昨日、私から小泉総理大臣に対しまして、本件事案の概要等について御報告し、法務大臣として責任を痛感していると申し上げました。小泉総理大臣からは、検察に対する国民の信頼が著しく損なわれたことはまことに遺憾であり、法務大臣として、再びこのような事態を招かないように、検察が厳格な綱紀の維持を図り、万全な再発防止策を講ずるよう適切に対処されたい旨厳重に注意されました。私はこれを厳粛に受けとめております。
 そこで、今回の事件を反省し、このような事態の再発を防止するために、検事総長に対しまして、検察庁職員の綱紀の保持を徹底すること、検察官の人事評価のより一層の適正化を図ること、検察組織の再点検を行うことを指示したほか、前科照会の事実を事後的に確実に把握できるよう、関係する例規を改めるなどいたしました。
 職員の処分について申し上げます。
 三井元検事の犯罪は、収賄及び公務員職権乱用という職務に関する犯罪であり、三井元検事に対する指揮監督が十全でなかったと言わざるを得ず、その監督責任は免れないものと考えます。
 そこで、大塚清明大阪高等検察庁次席検事については、監督責任として三月間俸給の月額百分の十の減給処分とすることとしたほか、原田明夫検事総長及び東條伸一郎大阪高等検察庁検事長については、それぞれの監督責任につき、懲戒処分として、原田検事総長を戒告に、東條検事長を一月間俸給の月額百分の十の減給に処する旨が本日の閣議において決定されました。
 本件は、三井元検事という特異な資質の人物が引き起こした犯罪とは考えられますが、検察官は、国民の負託を受けて犯罪を捜査し訴追するという重大な責任を担っているものでありまして、私は、検察に対し、本件を教訓として、高い倫理観を持って職務に励み、国民の期待にこたえることを求めたところであります。
 以上、御報告申し上げます。
    ―――――――――――――
園田委員長 漆原良夫君。
漆原委員 公明党の漆原でございます。
 私の方からは、受刑者移送に関する要件について少しお尋ねしてみたいと思います。
 まず、第五条の第二号でございますが、「十四歳に満たないとき」というふうに要件になっておりますが、実際に年齢十四歳未満の者が海外で刑の執行を受けているかどうかわかりませんが、仮にこういう人がいたとしたら、むしろそういう少年こそ更生保護の対象にすべきではないのかなという感じがします。
 それで、条約を見ましても、この条約では「犯罪を構成すること」というふうになっているわけですね。日本では確かに十四歳というのが刑事責任年齢でございまして、十四歳に満たない者は犯罪成立しない。ただ、作為または不作為が犯罪を構成することですから、犯罪が成立する必要はないわけでございますので、条約から考えてみて、条約の文言から見ても必ずしも成立とは書いてないわけですから、これは十四歳未満の者であっても移送の対象としてもいいのではないかというふうに考えるのですが、この点についての御意見を聞きたいと思います。
鶴田政府参考人 お答えいたします。
 平成十三年一月現在の外務省による調査では、外国で服役する十四歳未満の日本人受刑者は確認されていないというふうに承知しておりまして、十四歳未満の日本人少年が外国の刑務所に収容される例は極めてまれではないかということが一つ考えられます。
 また、現在の我が国の法制におきましては、我が国の刑務所、また、一昨年の少年法改正で少年院収容受刑者を収容する場合には少年院となっておりますが、こういった刑務所とか少年院で十四歳未満の少年を収監するということは現在の法制上あり得ませんので、幾ら執行の共助ということとはいえ、このような少年を収監するということが我が国の公権力の行使のあり方としていかがなものだろうかといった問題もございます。
 またさらに、矯正処分の観点から見ますと、いろいろ悪風感染というような弊害も考慮しなければなりません。そういったことから、そういった少年を他の受刑者と接触させずに単独で処遇をしなければならないということになるわけですけれども、そのような処遇方法が果たして低年齢の少年にとって好ましいかどうかといったような問題もいろいろあります。
 そういったことを考慮いたしまして、ただいま御指摘のございましたように、現状におきましては、十四歳未満の受入移送をして我が国においてその刑の執行を共助するというのは大変難しいなというふうに考えた次第でございます。
漆原委員 それでは、同じく第三号でございますが、先ほど申しました条約では、単に犯罪を構成すれば移送が可能である、こうなっておりますが、この法案では、禁錮以上の刑に当たることまで求めて要件としておりますが、そういう理由はどんな理由なのか、お尋ねしたいと思います。
鶴田政府参考人 委員御指摘のとおり、この双罰性に関しましては、条約第三条の一のeというところで、移送の要件として、刑を命ぜられることの理由となった作為、不作為が、執行国の法令により犯罪を構成することまたは執行国の領域において行われた場合において犯罪を構成することとしておりまして、いわゆる双罰性があることを規定しているわけですが、恐らくその趣旨は、およそ犯罪とされていない行為を基礎として執行国で自由を剥奪するというようなものは適当ではないのではないかというふうに理解しております。
 本法案では、さらに、受入移送の双罰性の要件として、禁錮以上の刑が定められた罪に当たる場合ということに限定をしております。その理由は、我が国において罰金や科料などおよそ自由刑の対象にならないような犯罪について受入移送を実施し、受入受刑者を我が国の監獄に拘置するということも、やはり公権力の行使のあり方としては適当ではないというところから、御指摘のような要件とした次第でございます。
漆原委員 続いて、五条四号ですが、この四号で三つの類型が制限事由として挙げられておるんですが、少しこれはわかりにくい。これをちょっと具体的に、この三つについてそれぞれ事例に基づいてどんな場合のことを言っているのか説明していただきたいことが一つと、なぜこの三つの例を制限事由としたのか、その理由をお尋ねしたいと思います。
鶴田政府参考人 お尋ねにきちっと的確な御答弁ができるかどうかちょっと自信がありませんが、法案第五条四号は、受入移送を実施するに当たりまして、その犯罪に係る事件が我が国の裁判所に係属し、または既に判決が出されている場合に関する制限要件を定めているものでありまして、その趣旨は、一つには、受入移送により外国判決の執行を共助することにより、受入受刑者が同一事実について我が国の公権力による二度の拘禁を強いられることとなる場合、あるいはそのような場合が生じ得る場合にこれを制限としたものでございます。
 また、そのほかに、受入移送犯罪について無罪判決が確定している場合も受入移送の制限要件としておりますが、この場合は同一事実について二度の拘禁を強いられるという状況は生じませんが、我が国の裁判所が無罪としている犯罪行為につきまして、幾ら外国で有罪になっているからといって、その受刑者を受け入れて刑務所で拘置するというのはやはり公権力のあり方として適当ではないというふうに考えて、このような要件を設けたものでございます。
 具体的にどのような事例が該当されるかということで、ただ、余りなかなか想定されませんけれども、同一事実について我が国の公権力による二度の拘禁を強いられる場合が生じる例としましては、例えば、我が国で懲役刑の執行を受けていた受刑者が、懲役刑の執行を停止されまして、その停止中に海外へ逃亡した、その逃亡中に外国で同じ犯罪により実刑の判決を受けて服役するというようなことが想定されます。
 極めてまれなケースではないかと思いますけれども、一応理論的にはそういうことが考えられますので、無罪の場合等も、恐らくまれなケースだとは思いますけれども、一応要件として掲げたものでございます。
漆原委員 この受入移送の要件の判断に裁判所を関与させているわけなんですが、逆に送出移送の場合には裁判所は関与していない。このおのおのの理由と、それから、一方で裁判所を関与させて一方では関与させないその理由は何なのか、お尋ねしたいと思います。
鶴田政府参考人 お答えいたします。
 受入移送につきましては、本来、法的な性格は行政処分ということになろうかと思いますが、そういった意味では、行政庁限りでその許否を決定することができると考えられますけれども、しかし、受入移送の場合、その対象者が外国で拘禁されている受刑者とはいえ、我が国にとりましては初めて公権力によりその者の自由を制限するということになるわけです。したがいまして、慎重を期して、行政庁だけの判断ではなく、移送要件の該当性につきまして、公正中立な裁判所による審査を必要といたしました。
 一方、送出移送の場合は、送出受刑者の身体の自由を制限することに関しましては、既に日本国での本来の刑事裁判において司法の判断を経ておりますので、送出移送の実施に当たって重ねて司法判断を求める必要がないということで、今御指摘のあったような取り扱いにした次第でございます。
漆原委員 次に、日本と外国では刑の内容に違いがある場合が多いんじゃないかな、こう思っておりますが、その場合に、共助刑の執行方法についてどのようになっているのか、御説明いただきたいと思います。
鶴田政府参考人 お尋ねの点は、法技術的には非常に難しい問題でございます。しかし、この点については、条約で、刑の執行の共助の方法として第十条及び第十一条で刑の執行継続という方法と刑の転換という二つの方法を定めておりまして、私どものこの法案におきましては刑の執行継続という方法を採用しております。
 刑の執行継続というのは、執行国の自国の刑罰法令に照らしまして裁判国の刑全体の執行を請け負うといった考え方でございまして、法案では外国刑の法的性質及び期間をそのまま受け入れることを原則といたしまして、ただ、外国刑と我が国の刑の内容等の相違によりましてそのまま受け入れることが困難な場合には、我が国の既存の法制度の範囲内で外国刑の執行共助を行うための必要な修正を加えるという考え方で成っておるわけです。
 具体的に申し上げますと、共助刑の執行方法に関しましては、法案の十六条によりまして、受入移送犯罪に係る確定判決で言い渡された外国刑の法的性質に応じまして、それが懲役刑に相当する場合は懲役刑、禁錮刑に相当する場合は禁錮刑とみなしまして、それぞれ刑の執行と同様に行うこととし、共助刑の期間につきましては、法案の十七条におきまして、有期刑の場合、刑法が定める上限である二十年、二十歳に満たないときに外国刑の言い渡しを受けた場合には十五年ということで、その限度で執行を共助するということにしております。
漆原委員 受入移送また送出移送は、法五条または二十八条に規定する要件を満たして、かつ法務大臣が相当と認めたときに行われる、こうなっておりますが、この相当性判断の中で法務大臣はどのような事項を考慮するのか、教えていただきたいと思います。
横内副大臣 この受刑者移送は、外国で服役をしている受刑者をその母国に移送することによって改善更生や円滑な社会復帰を促進するということを目的とするものでありまして、この相当性の判断に当たってはそういう受刑者移送制度の趣旨が生かされるように十分配慮する必要があることは言うまでもないことでございます。
 そこで、この相当性の判断について具体的な事例でございますけれども、外国で服役をしている日本の受刑者を受入移送する場合は、例えば一点目として、その者の家族関係とかあるいは生活歴というようなものから見て、その者の家族が、例えば親族とか配偶者が日本にいるとか、その者の生活基盤みたいなものが日本にある、したがって、日本で刑を執行した方が改善更生に役立つというような事例があれば、それはやはり相当と認めるというようなことになると思います。
 またもう一点、刑法五条との関係がございまして、委員も御案内のように、刑法五条は、外国で刑の判決を受けた、裁判を受けた者についても再度日本で処罰することができることになっております。そこで、受入移送をせずにもう一回やはり我が国で刑罰を科すべきだというときには、やはりこの受入移送はしない方がいいという判断になると思います。そんなことが受入移送の相当かどうかを判断する際の判断の事情になるというふうに思います。
 また、我が国で服役をしている外国人受刑者を送出移送するという場合には、その者の改善更生や社会復帰の促進と同時に、我が国の裁判所が言い渡した刑罰の持つ応報機能や抑止効果が損なわれるようなことがないように留意しなければならないわけでございます。
 具体的に考慮すべき諸事情といたしましては、その受刑者の犯した犯罪の内容とか、あるいは被害の程度とか、あるいは被害者感情というようなことがございます。その者の犯罪が日本人を被害者とするような犯罪で、仮に外国へ送り出した場合に、その被害者の家族の被害者感情というものを著しく損なうというような場合には、送り出しをするというのは相当ではないというようなことがあると思います。
 また、まだその者の犯罪について余罪を捜査中である、まだ引き続き余罪があるかもしれないというような場合とか、あるいは、その者が将来場合によっては証人として出廷をさせる可能性があるというような場合には、送り出すことは相当ではないというようなことになると思いますし、それから、相手国の刑罰執行法令の内容も関係をしてまいりまして、送り出したはいいけれども直ちに仮釈放されてしまうというようなことではこれはまずいものですから、そういう場合は相当ではないというようなことになると思います。
 そういうもろもろの諸事情を勘案して、具体的な事案ごとに相当かどうかを判断するということになると思います。
漆原委員 最後に、一点だけお尋ねしたいのですが、刑法五条が今出てまいりましたが、四十一条は刑法第五条ただし書きの特則を設けています。犯人が既に外国において言い渡された刑の全部または一部の執行を受けた場合には、刑法五条は刑の必要的な減免事由としている。しかし、本法では刑の必要的免除事由としている。この理由についてお尋ねしたいと思います。
鶴田政府参考人 法案の四十一条に刑法五条のただし書きの特則を設けております。その設けた理由について御説明いたしますと、受入移送を実施しようとする場合には、我が国においても受入移送犯罪を訴追する必要があると認められる場合、例えば先ほど副大臣から御説明がございましたように、裁判国の量刑が著しく軽いというようなことで、我が国で同じ事実について二度の拘禁を回避するために、受入移送は不相当であるというような判断をされる場合があり、それはそれでよろしいんですが、受入移送を実施した時点ではそのように訴追の必要はないと考えたものの、受入移送実施後に、事情の変更等によりまして訴追が必要になるという場合も考えられるわけで、そういうような場合に一体どのように取り扱うのがいいかというふうなことがちょっと問題になります。
 受入移送をした以上およそ訴追ができないということになりますと、検察官の公訴権を過度に制約することになって適当ではないわけです。さはさりとて、受入移送後に、移送犯罪に係る同一事実について刑罰を科して、それを執行するということになりますと、この条約の関係でそういう取り扱いをしている主要国は余りありませんで、特に、その中の国には、そういう国とは受刑者の移送はしないというふうに宣言している国もありまして、そういったような取り扱いもできない。
 今言った二つの事情を調整するということで、受入移送しても訴追することはできるけれども、ただし、訴追した場合でも刑は全部免除します、裁判でいえば、懲役何年という刑を言い渡されますけれども、それについての刑の執行は免除するということで、その間の二つの要請を調整したということでございます。
漆原委員 以上で終わります。どうもありがとうございました。
園田委員長 山花郁夫君。
山花委員 民主党の山花郁夫でございます。
 今週の月曜、火曜と、司法人権セミナーを開催させていただきまして、法務委員長、法務大臣、ごあいさついただきまして、ありがとうございました。法務大臣のごあいさつの中身は、ちょっと気になるところもあったわけでありますけれども。
 あと、副大臣も、二日間にわたりまして本当に長時間、本当はこちらの本意でないような運営のところもちょっとございまして、何か二日間、委員会におつき合いをいただいたような感じにもなってしまいましたけれども、感謝を申し上げたいと思います。
 その司法人権セミナーは、欧州評議会の議員の方々をお招きして開いたわけでありますが、この国際受刑者移送法案というものも、欧州評議会のマルチの条約に基づくものだと承知をいたしております。
 受刑者については、刑が確定して拘置所から振り分けられますときに、A級、B級、C級という形で審査をして振り分けられるものと承知をいたしておりますが、外国人については、いわゆるF級と呼ばれるもののようであります。
 少し、この法案のバックグラウンドについて質問を申し上げたいと思いますけれども、現在、日本におきまして受刑をしているF級の受刑者の収容人員の推移であるとか、あるいは収容施設の状況についてお尋ねをしたいと思います。どれぐらいの人が現在収容されているのか、あるいは、ふえているのか減っているのか、そういったことについて、法務当局、お願いいたします。
鶴田政府参考人 お答えいたします。
 我が国で受刑しております外国人受刑者の総数は、平成十三年末で三千五百五十七人ですが、そのうち、日本人と異なる処遇を必要とする、ただいま御指摘のありましたF級受刑者につきましては、平成四年末が三百四十三人であったのが、十三年末には約六・七倍の、二千三百十五人に増加しております。
 このF級受刑者を収容する施設ですが、これは基本的には東京の府中刑務所と大阪の大阪刑務所でありますが、そこだけで収容し切れませんので、現在ではそれも含めて十九の施設、具体的に北から申し上げますと、札幌、福島、黒羽、前橋、横浜、横須賀、新潟、甲府、静岡、名古屋、京都、神戸、広島、高松、福岡で収容しておりまして、そのほか女子収容施設として、栃木刑務所、和歌山刑務所でF級の女性受刑者を収容しております。
山花委員 大変ふえておりますね、平成四年に三百四十三人だったのが、十三年のところで二千三百十五ということですから。
 私、府中も選挙区でして、この法案の質疑をさせていただくに当たりまして府中刑務所の中の施設などを見させていただきました。収容の状態も大変厳しいんだなということがよくわかりました。
 ただ、今回この法律が成立をいたしますと、既に収容されている人が本国の方に帰っていくようなケースも出てくるわけであります。ただ、この法律あるいは条約の中身ということになりますと、実際にその対象となるのは欧州評議会の条約締約国の出身の者ということになりますが、この締約国出身で日本における受刑者数はどれぐらいでしょうか。あるいは、締約国にいる日本人の受刑者の数というものは一体今どれぐらいいるのでしょうか。
鶴田政府参考人 お答えいたします。
 我が国で受刑しております締約国の国籍を有する外国人受刑者数は、平成十三年末で百三十二人であります。
 一方、締約国で受刑している日本人の数は、平成十三年一月一日現在で三十二人となっております。
山花委員 日本で受刑している欧州評議会受刑者移送条約締約国の出身者数が百三十二で、欧州評議会受刑者移送条約国における日本人の受刑者数が三十二ということでよろしいんですね。
 ただいまそういう数字がございましたけれども、これで現実に、例えば身柄が本国に戻る、あるいはこっちに帰ってくるケースもあるかもしれませんけれども、その数というのは、二千三百十五という先ほどの全体の数字からすると、かなり少ないわけでありまして、今回この法律が成立して、例えば、過剰収容の状態だからどんどん本国に送り返すというようなことをしたとしても、余り収容の状況というのは変わらないわけであります。
 外国人のそういった人がふえているというだけではなくて、府中の刑務所に行ったときには、要するに定員の数をオーバーしているんだという御説明がありました。私は、オーバーしているということが当初よくわかりませんで、つまり、部屋の数というのは当初決まっているわけですから、それはどうやって人が物理的に入っているんですかということをお尋ねしたところ、例えばこちらですというふうに案内されて、昔ここは囲碁か何かをやる教室だったところをつぶして、そこに布団を敷いて入れていたりであるとか、あるいは、本来であれば一人部屋のところに、かなり狭そうでしたね、二つ布団を敷いて入ってもらったりであるとか、そういったようなところを見てまいりました。
 あちらの現場の方のお話ですと、もともと一人部屋に入れるということは、それなりの理由があってそこに入れておこうということになるわけだから、例えばいびきがうるさいとかあるいはちょっと人と接するといろいろと問題があるとか、そういう理由でもともとそこに入れているわけだから、その数が足りなくなっちゃうというのは大変なことだし、またやはりトラブルの原因にもなりやすいので、そこは本当に気を使うんだというような話をされておりました。
 府中だけじゃないと思います。この委員会でもかつてほかの委員の方が質疑されていたことがあったように記憶をしておりますけれども、我が国の行刑施設は大変今過剰収容の状態となっているというふうに承知をいたしておりますけれども、法務当局、矯正局として、その原因については、何でこんなことになっているのかということについて、どういう認識かお尋ねをします。
鶴田政府参考人 お答えいたします。
 統計的なことをまず申し上げさせていただきますが、行刑施設、刑務所と拘置所を一緒に含めているわけですけれども、その収容人員はここ数年大変急激な増加が続いておりまして、本年四月末には約六万六千五百人、収容率にしまして一〇二・八%となっております。特に、受刑者等の既決被収容者だけ見ますと、収容率は一一二・三%となっておりまして、そのため、行刑施設の本所七十四庁中五十七庁におきまして、収容人員が定員を超過する過剰収容というふうになっております。
 それでは、なぜこのような収容人員が増加したのかという点につきまして私ども矯正の立場から考えておりますのは、一つには、新受刑者、新しく実刑判決を受けて刑務所に入ってくる新受刑者の増加でございまして、平成十三年の新受刑者数は、十年前の平成三年に比べまして約七千四百人増の約二万八千五百人となっております。また、新受刑者中の有期刑の平均刑期というものも、同じく十年前と比べまして約四・六カ月長い二十七カ月となっておりまして、これは昨今の犯罪の凶悪化を反映した刑の長期化傾向を示すものではないかというふうに考えておりますが、その背景には、社会環境の変化とか国際化とか経済不況の長期化等の影響が考えられまして、これらの事情が複合的に作用しまして刑務所等の行刑施設の収容人員が増加し、過剰収容になっているのではないかというふうに私どもでは見ているところでございます。
山花委員 この過剰収容の原因ということで、今、新受刑者がふえているということ、あるいは平均の刑期が延びているというお話がございましたけれども、私は、恐らく背景に、ここのところ厳罰化という風潮があって、裁判所が言い渡す刑も少し延びているような印象を持っておりますし、また、無期刑による服役者についての仮釈放が非常に厳しくなっているというふうに私は認識をいたしております。
 ここ十年ぐらいで仮釈放が認められる件数が非常に減ってきておりまして、そういたしますと、結局、末端といいますか、つまり、ある事件が起きて、逮捕されて、起訴されてという過程の中で、例えば、留置場にいた人が拘置所に行って、最終的に刑務所に行くわけですけれども、刑務所のところに、要するに出ていく人が減っているわけですから、そこで過剰収容ということが生まれてきているのかな、そういうふうに思っているわけですけれども、その中で、特に無期刑のところについて少しお尋ねをしたいと思います。
 ここのところ仮釈放が認められづらくなっているというふうに私は思っているんですが、一部でこういう議論があります。例えば、死刑と無期懲役との間にすごくギャップがあって、死刑というのは命を絶たれるのに対して、仮釈放なんというと十数年で出てきちゃうじゃないかというような議論が一部あるようですが、十数年どころか、今二十年を超える平均服役期間であると思っているんですが、この平均服役期間についての推移ということを少し御報告いただけないでしょうか。
鶴田政府参考人 お答えいたします。
 最近五年間の仮釈放となった無期懲役受刑者の平均服役期間の推移でございますが、平成九年中に仮釈放となった無期受刑者は十二名でございます。その平均服役期間は二十一年六月となっております。以後、平成十年は十五名で二十年十月、平成十一年は九名で二十一年四月、平成十二年は七名で二十一年二月、平成十三年は十三名で二十二年八月というふうになっております。
山花委員 ですから、一部議論される方の中で、十数年で出てきてしまうというようなことを言われる方もいらっしゃるんですけれども、ここのところ二十年を超えているということは明らかだと思いますし、また、今五年間の御報告がありましたけれども、仮釈の数でいいますと、かつてと比べると半分以下になって、十数年前から比べると落ちてきていると思っております。
 また、服役期間の計算の仕方ですが、要するに、仮釈放になって出てきた人がそれまで何年いたかという形での平均の出し方だと思うんです。つまり、今ずっと入っている人についてはまだ平均の中にカウントされていないわけでありまして、言ってみれば、ちょっと比喩としてはおかしいかもしれないですが、平均寿命みたいなものであって、これから無期懲役の判決を言い渡された人が果たしてどれだけ入っている可能性があるんだろうという平均余命みたいなものは、この数字からは見えてこないわけでありまして、本当はそういうところの数字というものも計算して出す必要があるのではないかと思っておりますが、これはちょっと感想めいたものということです。
 ところで、一部の方だけではなくて結構こういう認識を持っている方も多いと思うんですが、無期刑というと大体平均が二十年ぐらいだという話を聞くと、大体二十年ぐらいで、その前後ぐらいで出てくるのかなと。大きな誤解だと思うんですが、無期刑で服役している受刑者の長い方は本当に長いですよね。亡くなるまで恐らくいるんじゃないかと思われるぐらい長期にわたっていますが、現在無期刑で服役している受刑者の服役期間の長いものを順に、上位五つぐらいで結構ですので、それをお答えいただきたいと思います。
鶴田政府参考人 ことしの二月末日現在、無期懲役受刑者で最も長く服役している者は服役期間が五十二年十月となっております。以下、長く服役している者の服役期間を順次挙げれば、五十二年ゼロ月、四十八年三月、四十八年一月、四十七年二月というふうになっております。
山花委員 一番長い人で五十二年入っているというわけですから、いつの時点での犯罪を犯された人かわかりませんけれども、刑務所に入るということで、十八ないし二十歳ぐらいであったとしても、もう七十、八十というような年の方なんだろうなと思うわけであります。また、上位の数字を五つほど挙げていただきましたけれども、四十年、五十年と入っている方たちがいるわけであります。したがいまして、無期刑といってもすぐ出てきちゃうじゃないかという議論は、私は間違っているのではないかという印象を持っているわけであります。これは感想めいたものということであります。
 そこで、そうやって無期の人でも仮釈が余り認められなくなってきていたりであるとか、あるいは刑が長期化しているということによって、結局、刑務所が今非常に過剰な収容の状態になっているわけであります。そうすると、結局、ある事件に関して、被疑者の身柄を確保してから最終的に行き着く刑務所のところ、出口というか入り口というか、そこが詰まってきているわけでありますから、例えば拘置所において移送待ちをする人がふえてきているのではないかという懸念を持っているんです。
 つまり、裁判所で判決が言い渡されて、刑が確定します。そうすると、どこに送ろうかなという話になったときに、どこの刑務所も、いや、こちらはいっぱいでございますなんという話になれば、なかなか送れないんじゃないかというふうに思うわけでありますけれども、このあたりの事情はどうなっておりますでしょうか。
鶴田政府参考人 お答えいたします。
 委員御指摘のとおり、刑務所が過剰収容になっているのはそのとおりでございますが、刑が確定してから拘置所において移送を待っているという、いわゆる移送待ちの受刑者につきましては、一部の拘置所で移送待ちの受刑者の滞留が増加する懸念がありましたので、刑が確定してから、どの刑務所に、そしてどういう処遇をするかという分類調査をする必要がありますが、そういう分類調査の終了後は速やかに移送が実施されるよう現在努めておるところでございまして、最近では、移送待ちの受刑者が増加しているという状況にはないというふうに承知しております。
山花委員 法務大臣にお尋ねをしたいと思いますが、このように、刑務所のところで非常に人が、あふれていると言うとちょっと大げさかもしれませんけれども、タイトになっているわけです。先ほど、収容率でいうと一〇二・八%であるとか一一二%だとか、そういう数値が出ておりますけれども、見た目の数字以上にこれはかなり深刻なようですね。
 つまり、例えば、部屋がある程度、あと二人、三人入れるような部屋であったとしても、男性と女性一緒に収容するわけにはいきませんから、一つの部屋に女性が一人いて、あと四人入れるじゃないかといっても、数字で見るとあいているわけですから、そういうのも含めて一〇〇%を超えているという状況ですから、実際はかなり刑務所の方でもタイトになっていると思っておりますし、また、ここのところ、犯罪白書などを拝見させていただいても、そもそも犯罪者の数も全体として少しふえているというような状況にあるようであります。
 ところで、もう釈迦に説法だと思いますが、事件があって、被疑者が逮捕されて、勾留されて、そして勾留期間を経過すればもう本来は拘置所の方に身柄が行くべきというふうな形になるわけでありますが、こうなってきますと、拘置所の方も非常に人員の面でタイトになってくるということは容易に想像がつくわけであります。また、この点も法務省の方でも御努力いただいていることは承知しているつもりではあります。
 法務大臣の前に、まず法務当局の方にちょっとお尋ねをしたいと思いますが、今、東京拘置所を建てかえておりますね。修繕ということではなくて、新たなものを一つ建てるということで、現在、東京拘置所については、今の定員よりも収容定員が八百名程度増加するというふうに承知をいたしております。ただ、今の収容状況からすると、ここのところ、だんだんやはり拘置所も人数がふえてきていますから、収容能力の増強であるとか、あるいは新設ということが必要だと私は思います。
 そこで、このことについて法務省の方といろいろやりとりをさせていただきますと、少し私の問題意識と当初はずれていたようなところがありまして、拘置所というのはもっと、要するに、極端に言えば、東京拘置所がありますけれども、第二東京拘置所というのをつくらないといけないぐらい、本来であればなきゃいかぬのではないですかということを少しやりとりさせていただくと、いやいや、八百名ふやせばとりあえず当面は対応できるということになっておりますというお答えになるんです。
 私の問題意識というのは、代用監獄のところがありまして、本来であれば代用監獄というところに収容されるのはもっと解消されるべきであると思います。こういう議論をすると、いやいや、御案内かと思いますけれども、監獄法に規定がございまして適法ですという話をするんですが、私は適法かどうかという話をしたいわけじゃないんですよ。本来であればどうかということであって、あくまでも代用ですから、これはもう国際的にも、ダイヨウカンゴクというローマ字のつづりで、もう国際的にも有名な言葉になってしまうぐらい問題になっていることでありますから、適法かどうかということは捨象して、本来あるべき姿ということでいえば、もう一つぐらいつくって、今代用監獄に収容されている人を拘置所の方に移すというぐらいのことをやって、代用監獄についての、そこに収容されている人というのを少しでも減らしていくという努力が必要だと思っておりますが、その上でお尋ねします。
 そうすると、東京拘置所を建てかえておりますけれども、それだけではなくて、さらに拘置所の収容能力の増強であるとか、あるいは新設も含めて検討すべきではないかと思いますけれども、この点、いかがお考えでしょうか。
鶴田政府参考人 お答えいたします。
 まず、現在の状況について御説明させていただきますと、御指摘いただきましたように、東京拘置所は、現在、改築工事により、収容定員が約八百四十名増加して三千人ということになりまして、大幅な収容緩和が見込まれますので、一日も早くこれを完成すべく、目下最大限の努力を傾注しているところでございます。
 しかしながら、他方で、昨今の全国的な犯罪の増加傾向に伴いまして、東京以外の大都市圏に所在する拘置所、それと大半の刑務所も過剰収容になっておりますので、未決拘禁者の収容能力の増強とともに、やはり、拘置所から刑務所への身柄の移送が円滑に行われるように、全国的な見地から、拘置所とともに刑務所の収容能力を拡充することが喫緊の課題であるというふうに考えております。
 現在、未決関係では、東京拘置所のほか、岡山刑務所の拘置監等五庁において、また、既決関係では、静岡、長崎、松山等十刑務所におきまして増築工事を実施し、その早期完成を目指しているほか、施設内の模様がえ工事等も進めるなどいたしまして、収容能力の増加を図っているところでございまして、今後とも、行刑施設の収容能力の拡大に努めてまいりたいと考えております。
山花委員 今後とも努力をされるというお話ですけれども、代用監獄のことでいうと、確かに、監獄法に基づけば適法であるということはよく承知をいたしておりますが、ただ、今、刑務所の話と拘置所の話をさせていただきましたが、留置場の方も大変過剰な収容の状態になっているというふうに思うわけであります。
 大臣にお尋ねする前に、警察庁の方にちょっとお尋ねしたいと思いますが、留置場も今非常に過剰なようですね。つまり、逮捕はしたものの、身柄を、さあどこに入れようかぐらいのことになっているというような話を聞いたことがありますけれども、この現状について御説明いただきたいと思います。
石川政府参考人 お答えいたします。
 平成十三年中の状況でございますが、全国の警察で留置をいたしました延べ人員、これは、毎日の被留置者の数を、三百六十五日、一年間足した数、人日で出すわけでございますが、これが約四百四十四万人日でございまして、男女別では、男性が約四百二万人日、女性が約四十二万人日となっております。また、少年は約二十四万人日、外国人は約六十九万人日、これは内数でございますが、そういう状況でございます。
 平成十三年中のこの状況というものを平成四年当時と比較をいたしますと、全国の留置延べ人員は約二・一倍となっております。中でも、女性の被留置者が約二・七倍になっておりまして、外国人につきましては約四・四倍となっておると、特に増加が顕著でございます。
 一方、平成十四年の五月二十日現在の一日の数字でございますが、全国の警察の留置場の収容率、これは、収容の基準定数がございますが、それに対する被留置者数の割合、これが、オールジャパンでございますが、約七六%という収容率になっております。ただ、七六%というのは全国全部平均をしたものでございまして、東京とか神奈川、愛知、大阪といったような大都市圏あるいはその周辺の県につきましては特に収容率が高うございまして、一部の都府県では一〇〇%を上回っている、こういう状況でございまして、留置環境という意味では大変厳しい状況になっております。
 また、先ほどもちょっと委員からお話がございましたが、収容率が一〇〇%を下回っている府県にありましても、少年被留置者は原則として成人と隔離して留置をしなければならないということがございますし、女性被留置者は男性と別の留置室に入れなければならない。また、共犯多数といったような場合もあるわけなんでございますが、遠隔地の留置場に分散して留置をすると、現実に捜査の期間が非常に長くなるといったような、あるいは捜査がしづらいといったようなこともございまして、実態としましては、特に都市部でございますが、多くの府県にあっては各警察署の留置場というものは満杯に近い状態にあるんじゃないか、こういう認識をしているところでございます。
山花委員 結局、拘置所に行かないで留置場で、じゃ、とりあえず代用しておこうかと思っても、このような状況なわけですよ。これも重ねて申し上げますが、本来であれば拘置所というところに身柄を――もちろん代用監獄に入っているからといってそれ全部がいけないのではないんだと思います。本犯のほかに共犯事件があるだとか、あるいは、同一人物について、被告人としての立場もあるけれども違う事件について被疑者としての身分も併有しているケースであるとか、そういうのは除いたとしても、それにしても、本来であれば拘置所に行くべき、適法かどうかという話ではもちろんないですよ、本来であれば、取り調べの機関が所轄しているのではなくて、別の機関である拘置所というところに行くべき人というのは今後もふえてくるのではないかと思いますし、また、代用監獄に収容されている人を少しずつ減らそうということは、そうしちゃいけないという話はもちろんないわけであって、これは進めていくべきことだと思っております。
 ただ、拘置所を増強するであるとかあるいは新しくつくるなんという話になりますと、当然予算措置が必要となってくるわけでありまして、何か、聞いたところによりますと、例えば一つ新たに東京拘置所みたいなものを、二千人規模ぐらいのものをつくると年間三百億ぐらいかかるんだなんという話も聞いたことがあります。ただ、この話を法務省の方といろいろすると、いや、行革の流れもありますし厳しいんですよなんて話をされますが、確かに行革の問題もあるかもしれませんし、予算というか財政が非常に厳しいことは承知をいたしておりますが、ただ、これは国家の刑罰権という、本当に治安の重要な問題ですから、そういたしますと、ある程度そこは法務省も頑張っていただいて、当委員会で議論すべきことではありませんけれども、何かむだなお金が使われているように思われるところもあるわけです。北方支援委員会ですか、あれで二百数十億なくなって浮いたなんという話も聞きますが、こんなにお金かかるんですよと法務省の方は言われるんですけれども、裏を返せば、ああいうお金でつくれるじゃないですか、一つぐらい。毎年毎年そういうことに使っていたのであれば。
 法務大臣としてはそれについてどうですとはお答えはもちろんできないでしょうけれども、しかし、やはり本当にこれは新しくつくるなり増設するということで、拘置所の方にというのが基本的には行くべき道だと思いますので、八月に予算の概算要求を出されるわけですから、そこのところは、もうこれはしっかりやるんだぐらいの御決意を表明いただきたいんですけれども、大臣、いかがでしょう。
森山国務大臣 おっしゃるとおり、治安に責任を持っている法務省、そして、安心して暮らせる社会ということを求めている国民のことを考えますと、おっしゃるようなことが基本的にとても必要だと思います。それで、法務省もそのことは重々承知しておりまして、今までもたびたび予算のときには大変努力をして、少しずつではありますが増築あるいは新設について要求もいたしまして、そのうちの幾らかは実現しているわけでございます。
 東京拘置所の増築、あれはほとんど新しく建てるのと同じようなものですが、そのようなものも思い切って要求いたしまして、今半分ぐらいでき上がりつつございまして、あと一年もたてば使えるのではないかと思っておりますが、そのような努力を続けつつあるわけでございます。
 私も、着任以来、今一年ちょっとしかたっておりませんが、その間の予算要求あるいは補正予算のときなどにも特別力説いたしまして、総理も財務大臣も基本的には賛成していただきまして、大変協力していただいているというふうに思っておりますが、これからも一生懸命努力していきたいと思っております。
山花委員 今までも御努力をいただいていることは理解をいたします。
 私は法務委員でありますとともに内閣委員でもありまして、内閣委員会の方でつい少し前に道路公団の民営化推進委員会の設置法案というものを議論していたときに、東京湾アクアラインですとか本州四国のあの道路にあれだけのお金を使っていて何でこういうことに使わぬのかということをあのときも思っていましたが、あちらでは言いませんでしたけれども、ですので、御努力いただくということですけれども、ぜひそこのところは取り組んでいただきたいと思います。
 また、拘置所については、収容能力をふやすということだけではなくて、新設ということもぜひ御検討いただければと思います。新しくつくらないと、ちょっとこのままでいいのかなという思いがありますので、これは要望ということで受けとめていただければと思います。
 ただ、この手の施設ですけれども、本当に必要ですし、私は、これは国にとっても絶対なきゃいけないものだと思うんです。といいますのも、例えば収容がいっぱいになってしまっているから、あるいは逮捕して捕まえてきても入れるところがないからということで、現場の、例えば警察官、司法警察職員であるとかそういった方がお目こぼしをするようなケースがあってはいけないと思うわけであります。つまり、本来なら逮捕まで行くべきところを、まあちょっと今回は注意だけしておくから勘弁してやるわみたいな形になってしまってはいけないと思いますし、やはり適正なそういう執行というものが必要だと思っているわけです。
 治安を維持するという観点からいいますと、何か犯罪がふえているという話になると、すぐ、では厳罰化しましょうという議論が出てきたりするんですが、私は、方向性としては、例えば罪を重くするということが、それは抑止力がそんなにあるのかということについては大変疑問を持っております。実際に、犯罪者、捕まった人たちなどに対する研究をされている人がいて、そういった人の話を聞きますと、犯罪をする人は、刑がどれぐらいの重さであるかということについては余り決定的な動機となっていない、抑止するかあるいは実行するかについて。もちろん考えることもあるようですが、より重要なことは、その犯罪を犯したときに確実に捕まるかどうか。要するに、やる人は、大丈夫だろう、見つからないだろうと。思わずかっとなって何かという激情型の犯罪は別ですよ。そういうことのようなわけであります。
 先ほど外国人の犯罪がという話がありましたけれども、例えば、よその国と比べて日本は、やってもうまく逃げおおせるからやり得だなんという話になれば、やはり治安は悪くなると思いますし、日本という国はやればほぼ確実に捕捉されるんだということになれば、治安の維持にとってはそちらの方が好ましいことだと思うわけであります。
 そういった意味においても、今の留置場も過剰収容で、拘置所もいっぱいで、刑務所もいっぱいというのは、これはとても今後の見通しとしては非常に心配になってくるわけであります。だからこそ、今は拘置所の話をしました、この後、刑務所の話もさせていただきたいと思いますが、こういった施設というものについては、改修だとかあるいは増設というようなこと等言われましたけれども、例えば、犯罪者がというか刑務所に送られる人がこのペースでいくと、毎年千人、二千人規模で増強していかないといけないわけですよ。そうすると、刑務所一つ分ぐらいの話ですから、新設をしていかなければいけないと思うわけです。
 ただ、少し一般的に言いますと、矯正施設という形で言いますと、矯正施設なんかについて例えば改築をするであるとか、あるいはすぐ近くに、東京拘置所がその例かもしれません、今の土地から少し横のところにつくるであるとか、あるいは、そうではなくて、全く新しいところ、土地を探して、立地条件など調査して、ここがいいかなという話になったときに、やはり付近の地元の住民にとってみると、何か刑務所とか拘置所とかは非常に印象がよくないわけですね。
 確かに小菅なんかで、朝の八時、九時のところをごらんになったことがあるかどうかわかりませんが、行くと、明らかにそれと見て、ああ、そういう関係の人たちだなという車が並んでいたりして、ちょっと不安になるということは理解できなくもないわけであります。ただ、そういうものをつくるに当たっては、やはりしっかりと地元の住民の理解だとか同意を得る必要があると思いますが、これは事実関係だけちょっとお尋ねしますが、矯正施設を建設するに当たって、地元住民の同意を得ないで建設したとか、こういった例はございますでしょうか。
鶴田政府参考人 矯正施設の建設に当たりましては、当然のことながら、地元住民の理解と協力が不可欠でありまして、施設を新設、移転する場合はもとよりですが、現在地で改築する場合においても、事前に地元住民に工事内容等を納得の得られるまで説明し、要望等も伺いながら工事に着手することとしておりまして、そういった同意を得ないで建設した例はないというふうに承知しております。
山花委員 そうあるべきだと私も思います。
 今後恐らく、拘置所なり刑務所なりについては新設ということを本当に真剣に検討しなければいけない時期が来るのではないかと思っております。
 ただ、つくるということになりますと、先ほども、お金のかかる話ですから、箱をつくるだけじゃなくて、物をつくればそこに人も要って、その人件費がということで、もう何百億という話で、財務省がいい顔をしないかもしれないけれども、そこは本当に頑張っていただきたいということを申し上げながら、ただ、新たにつくるということになると、今までも頑張ってきたということですが、これからつくるに当たっては、やはりそうやってつくるケースが出てきたとすると、やはり地元住民と十分に協議をしたり、あるいは理解を得て行う、今後もそういった形で行うということでよろしいでしょうか。
鶴田政府参考人 お答えいたします。
 今後とも、矯正施設を増設あるいは新設するという必要が生じた場合につきましては、先ほど申し上げたような、地元住民の了解を得た上で工事を行う、そういった姿勢をもって臨みたいと考えております。
山花委員 ぜひそうしていただきたいと思います。
 ところで、これは警察庁にお尋ねをしたいと思いますけれども、今、警視庁がつくろうと考えているのかどうかよくわかりませんが、聞くと、まだコンクリートされた話ではないというようなお答えしかいただいておりませんけれども、東京の渋谷区原宿ですね、社会福祉事業大学の跡地がありますが、あそこが今、少し騒ぎになっていると言うとちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、大変な反対運動ができている問題があります。
 これは、公の、つまり東京都がこういうことをやりますよという発表をしたんじゃなくて、たしか最初は新聞のスクープか何かで報じられたんだと思います。原宿に六百人規模の大規模留置場建設というような、ちょっと今手元にないですが、そんなようなタイトルのものが発表されまして、それを契機に、地元の住民、あるいは渋谷の区議会なども、渋谷の区議会については全会派が一致してこれは問題だという話をしていますし、東京の都議会でも問題とされております。
 経緯についてはいろいろあって、もともとはそういうことに使うんじゃないというような、地元の方はそういう認識でいたにもかかわらずということで非常にもめているわけでありますが、今のところ、六百名規模なのかどうなのかということについてはまだ決まっていないようでありますが、ただ、そこに警察署をつくるということは計画としてあるのではないかという話になっております。
 今のところ、私は最初警視庁にお話を聞きたいと思っていたのですけれども、いや、まだそういう段階ではなくて、東京都の財務局から話を聞いてくれということで、財務局から今までの経緯についてこうでございますという話を聞いただけで、まだコンクリートされた話ではないようです。
 確かに、留置施設も、こういう状況ですから、ある程度必要なんだろうなということは総論としては理解はできるのですが、ただ、六百名というのはちょっと異常ではないかな。六百にするかしないかということではなくて、仮定の話でちょっと感想を申し上げますと、留置場というのは警察の附属施設ですから、一番大きいのが、たしか新宿で百名強留置できる施設があると思いますが、それが六百ということになりますと、かなり大規模なものでありますし、また、それだけの要するに人も置かなければいけないということになるわけであります。皮肉めいた言い方をすると、留置場の附属施設として警察があるような、そんなような建物になってしまうのではないのかな、こんな気がしております。
 ただ、今、非常に地元の住民の方々はこの問題について関心が高まっておりますし、また、反対運動も起きておりまして、渋谷の小倉区長も東京都に対して申し入れをしたりであるとか、あるいは、私は現場に行ったわけではなくて、テレビで後で拝見したんですが、区長がみずから先頭に立ってその反対の集会に出て、鉢巻きをして反対なんてやっていましたけれども、そういうような問題が起きているわけです。
 留置場をつくるに当たってという言い方をすると、恐らく、いやいやあれは警察署でございますという話になるんでしょうけれども、そういった警察署の建設に当たっても、地元住民からしっかりとした理解とか同意を得るようにすべきである、このように考えますけれども、一般論としてお尋ねを申し上げます。個別の話になりますと、これは東京都と渋谷区との話ということになりますでしょうから、一般論としてお尋ねしますが、警察署のような、そういった施設を建設するに当たって、地元住民からやはりしっかりとした理解とかあるいは同意というものを得るようにすべきであると思いますけれども、この点、いかがお考えでしょうか。
    〔委員長退席、山本(有)委員長代理着席〕
石川政府参考人 警察施設の新設とか移転新築とか、あるいはその場での改築工事が必要になるといったような場合には、従来から各都道府県警察におきまして、地元で説明会を実施するといったようなことで、地元の住民の方々の御意向を踏まえて対応しているというふうに承知をいたしております。
 いろいろな状況があろうと思いますが、いずれにいたしましても、よく理解と協力を得るための説明をし、誠意を持って対処をしていくというふうに、また、そうしておるというふうに承知をいたしております。一般論でございます。
山花委員 今、一般論としてということでありますけれども、こういう施設をつくるに当たっては、やはりしっかりと理解をしていただくということが本当に必要だと思いますので、警視庁もそういうふうな形でやっていただきたいなと思っております。
 ここに、これは国会の会議録ではなくて、ことしの三月十四日に行われました東京都議会の予算特別委員会の速記録というものを持ってまいりましたが、この中で、野田警視総監が、原宿については、「とりあえず原宿に、今は六百ということで考えておりますけれども、いずれ警察署の改築が進んでいく過程では、」云々というような話が出てきておりまして、警視庁としてはやはり六百人規模というものを考えているように思われるわけであります。全体として留置場もある程度収容力を高めなければいけないということは理解をしながらも、ちょっと原宿のケースについてはどうかなと思っております。
 ただ、この点についてなんですが、法務当局にお尋ねしたいんですが、都議会で石原知事はこの問題についてこういうふうに言っております。この委員の指摘に対して石原知事ということで、途中は省略しますが、「ただ、おっしゃるとおり、これは本来、国が刑務所なり、拘置所というものを十分に設置していくべきものでありますが、国の行政がおくれている限り、その被害というものを都民が集約して受けるのは、私は許せない。」と。いいんですか、こんなことを都知事に言わせておいて。このような指摘があるわけですけれども、ただ、私は、先ほど言いましたように、やはり行刑施設については、ちゃんとつくっていかないとこういった問題も起きてくるわけでありますが、この点についていかがお考えでしょうか。
鶴田政府参考人 お答えいたします。
 当局といたしましては、行刑施設の増設及び収容能力の増強に努めて被勾留者を警察留置場に収容する例を漸次少なくするという監獄法改正に関する法制審議会の答申の趣旨を尊重いたしまして、従来から未決拘禁者の収容能力の増強に努めておりまして、東京拘置所についてもそういった意味で約三百名の収容体制が確保できるようにこれまで努力したところでございます。
 今後とも、刑務所の収容能力の拡大とともに、拘置所の収容増強を図り、御指摘のような批判を受けないようできる限りの努力をしてまいりたいと考えております。
山花委員 従来より努力されているということはそれなりには理解をいたしますし、法務大臣も頑張るという御発言がありましたけれども、ただ、もう少しペースを上げていかないと、要するに都知事が言うには、国がやってくれないからその被害を都民が受けているんだというような表現なわけです。
 ただ、蛇足ですが、この後の都知事の発言を見ますと、「皆さん、勘違いしていらっしゃるのは、あそこに何も網走の、要するに、番外地が引っ越してくるわけじゃないんです。ぜひごらんいただきたい。」何か写真を示したようですが、「これ、マンハッタンのチャイナタウンの裏側です。マンハッタンのまさに目抜きのところに、こうやって、これは拘置所です。つまり、容疑者じゃない、告発された犯罪の容疑者が、」「そうなんです。この横に裁判所がある。」とか言っているんですが、要するに、都会のど真ん中に拘置所があるじゃないかということを一生懸命言っているんです。私、都知事は、今留置場をつくろうという話をするときに、拘置所があるんだなんということを一生懸命力説されていて、拘置所と留置場の違いをわかっていらっしゃるのかなというぐらいの感じを持っているんです。
 ただ、これは石原都知事がどうのということではなくて、地方の自治体の首長から、一般化して言えば、国のそういった行政がおくれているではないか、そしてそれについて国の対応が悪いからという言い方をされているんです。私は、こんなことを言われていいんですかということで言いましたけれども、半分は当たっているところがあると思うんですよ。先ほども申し上げましたように、やはり刑務所なり拘置所ということをしっかり、設備の増強であるとかそういうことをどんどんやっていかないと、ちょっと言い方は私は問題があるような気がしますが、こういった指摘をされることが出てくるわけでありますから、こういったことについては、本当に今後ともしっかりと進めていかなければいけないと思います。
 そこでですけれども、このように東京都からもそういった指摘があるわけですが、法務大臣、刑務所とか拘置所が過剰収容の状態にあって、代用監獄が適法だということはよくわかっておりますが、本来拘置所に送られる方が好ましい人が、つまり行刑施設に収容すべき人まで留置場に収容せざるを得ないような状態となっているわけでありますけれども、国の治安対策という観点からしますと、行刑施設の拡充であるとか、そうすると、先ほども少し申し上げましたが、箱だけつくればいいという話では当然ないわけですよね。そこには人が配置をされます。過日府中の刑務所に行ったときに、現場の方からやはり言われましたよ。よくわかってほしいことがあるんだけれども、収容状態がこんなだ、いっぱいだと。いっぱいだということは、入れられている人の人権の問題ということはよく関心を持たれる方がいるけれども、我々のことも考えてほしいと。
 つまり、収容の定員よりいっぱいであったとしても、職員の数というのはもともと決められてこの数なんだ、そうすると、要するに一人当たりの見る人間がふえるわけですから、しかも、先ほどもお話をしましたように、一人部屋に二人入れなきゃいけないところで何か気を使ったりだとか、それはそれは大変なんだという話がございました。
 私は、別に陳情を聞きに行ったわけではないんですけれども、恐らく現場の方は、そういう苦労というのは本当に大変だと思いますよ。直接、監督とか所轄しているわけじゃないでしょうけれども、今、司法改革の議論をしているじゃないですか。そこで、検察官の増員だとか裁判官の増員だとか、そういうことが非常に議論されておりますけれども、弁護士がふえて、検察官がふえて、裁判官がふえて、非常に司法の流れがスムーズになったとしても、結局、行き着く先のところで詰まっちゃったらこれはどうもならぬわけですから、私は、その司法改革の議論の中で、行刑施設の拡充のことだとかあるいは職員の増員ということももっともっと議論されてしかるべきだと思います。
 直接そこに参加されて物を申すという立場ではもちろんないでしょうけれども、その辺は、法務省としてもそのことについてちゃんと問題意識を持って、それなりに意見が反映されるように御努力をいただきたいと思うわけでありますけれども、法務大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
    〔山本(有)委員長代理退席、委員長着席〕
森山国務大臣 今までいろいろお話がございましたように、行刑施設におきましては、近年、収容人員が急激に増加しておりまして、現在でも過剰収容の状態が続いております。ですから、受刑者にとって大変ストレスが厳しくなるということもありますけれども、職員も非常に負担がふえて大変であるということは、私も、府中を初め幾つかの刑務所を訪ねまして、その実態を見たり話を聞いたりしておりまして、まさに先生が今御指摘になったような問題が非常に厳しいということをよく承知しております。
 このような状況がこのまま推移いたしますと、三、四年後には行刑施設の収容人員が八万人を超える可能性があるということも言われておりまして、行刑施設が法秩序の最後のとりでともいうべき場所であることにかんがみまして、行刑施設の拡充及びこれに伴う要員の確保に努めて、国の治安の維持に万全を期していきたいというふうに思う次第でございます。
山花委員 刑務所に行きましたときに、お話を聞いてああそういうことなのかなと思ったことがあるんですけれども、刑期を勤め終えて送り出すときには、お世話になりましたと頭を下げて出ていく。その人たちが本当にちゃんと社会復帰できるように今まで矯正の現場の方が努力されてきて、送り出すときは一つ感慨深いものがあるんだけれども、半分ぐらい帰ってきちゃうんだという話なんですね。ただ、半分帰ってきても、逆に言えば、送り出したうち半分ぐらいは真っ当な道を歩んでいくんだなということを思いながら送り出すんだという話を聞いたんです。
 だから、結局、やはり矯正の理念としては、収容された人がしっかりと社会復帰ができて、先ほど「仮釈放」という小説を引用されながら更生保護施設の話もありましたけれども、そうやってまた同じところに帰ってこない、同じ道を歩まないというふうにされることが本当に理念としてとうとばれるべきだと思いますが、その現場の人が担当する人数が多過ぎて目が届かなくなっちゃってということになると、これは、治安の面からもそうですし、あの人たちの仕事の動機づけという点でも好ましくないと思いますので、そこのところは本当にしっかりと対応をしていただきたいと思います。
 ところで、またこの国際受刑者移送法の方に戻ってまいりますが、先ほど、百三十一名の受刑者がいて、外国には三十二名というような数字も挙げて御説明をいただきましたけれども、今回のこの法律というものは、欧州評議会のマルチの条約に基づくものですが、今後、アジア諸国との二国間、マルチのものではなくて個別の二国間条約のような形で受刑者移送という形も検討されていくべきではないか。
 要するに、恐らく、今回こういうのは初めてだと思うんですが、今後これを契機にして少しずつ広げていこうという方向ではないかと思うんですけれども、この点、どのようにお考えでしょうか、法務当局の方にお尋ねをいたします。
鶴田政府参考人 お答えする前に、先ほど、東京拘置所が完成した場合の収容定員について三百というふうにお答えいたしましたけれども、三千の間違いですので、訂正させていただきます。
 それでは、受刑者移送に関係いたしましてお答えいたしますと、外国において受刑している者の改善更生及び円滑な社会復帰を促進する、これが受刑者移送の刑事政策的な意義になるわけですけれども、こういうことにかんがみますと、できる限り多くの国との間で受刑者移送を行うことが望ましいわけでございます。
 我が国の刑務所に収容している外国人受刑者のうち多数を占めるのはアジア諸国の受刑者でありますので、こういった国との間で受刑者移送を行うことは意義があると考えております。
 ただ、しかしながら、受刑者移送の本質が自由刑の執行に関する国際共助の一態様である、そういうことにかんがみますと、受刑者移送を実施するためには、我が国と相手国との間の刑事司法制度にある程度の共通性が存在することが必要だと思います。この点について留意する必要はあろうかと思います。
 法務当局としては、そういった事情も踏まえまして、欧州評議会の受刑者移送条約による受刑者移送の実績、成果等を見きわめながら、外務省とも連携をとりながら、アジア諸国の受刑者の扱いについて検討を進めてまいりたい、かように考えております。
山花委員 少し技術的なことについてお尋ねをしたいと思います。
 この受刑者移送法ということなんですが、法文は、もちろん手続的なことも書いてございますが、いわば実体的な要件についてが中心となっております。例えば送出移送をするときに、移送の端緒は一体どこなのかだとか、あるいは告知はいつの段階で行うのだろうかとか、その手続についてちょっとわからないところがあるんですが、具体的にはどういった手続を経て送出移送がされるのか、あるいはどういった手続を経て受け入れの移送がされるのかということについて御説明をいただきたいと思います。
鶴田政府参考人 まず、送出移送の一般的な手続について御説明したいと思います。
 刑が確定した場合には、その段階で、条約の内容についてこういうものだということを告知するというのが最初にあるわけですが、そういった告知を受けた後で、我が国の刑務所で服役している外国人受刑者から送出移送の申し出があった場合、まず、法務大臣が、送出移送ができる場合に該当するかどうか、かつ相当であるかどうかということを検討しまして、それが認められたときには、執行国に対しまして送出移送の要請をすることになります。
 そして、二番目の段階として、執行国から、要請に応じますよ、そういった旨の通知があった場合には、送出移送の決定をいたします。これは法案の三十四条第一項に書かれておるところですが、それと同時に、送出受刑者が在監する監獄の長に対しまして引き渡しを命ずるということになります。これは同条の第二項になります。
 引き渡しの命令は引渡状を発して行いまして、法務大臣は、引渡状を発するとともに、外務大臣に対しまして受領許可状を送付いたしまして、受領許可状を受領した外務大臣はこれを執行国の方に送付いたします。
 そして、引き渡しの交付を受けた監獄の長は、執行国の官憲から、先ほど申しました受領許可状というものを示されまして送出受刑者の引き渡しを求められると、これに応じて送出受刑者を引き渡すということになります。
 送出受刑者の引き渡しを受けた後は、執行国の官憲は速やかに送出受刑者を執行国に護送することになるのは、これはもとよりのことでございます。
 次に、受け入れの方の場合の一般手続ですが、条約内容の告知は、裁判国、外国の方で行われると思いますが、そういった外国にある裁判国から受入移送の要請があるというのがまず始まりだろうと思います。そういった場合、法務大臣は、裁判国から送付された書類によりまして、法案の第五条に受け入れの要件が記載されておりますが、その要件に該当するか否かということを検討し、かつ、要請に応ずることが相当であるか否かということを判断いたします。
 次に、要件に該当し、また相当と認めた場合には、原則として裁判国に駐在する大使、公使、領事官等に委任いたしまして、その受刑者の同意を確認させます。
 その次の段階が、その受刑者が移送に同意しまして、その旨の書面が到着いたしますと、法務大臣は、東京地方検察庁検事正に対しまして関係書類を送付いたしまして、受入移送ができるかどうかの審査請求を東京地方裁判所にするように命じます。
 そこで移送ができるという決定があったときには、その後特に事情の変更がないかどうかを考慮した上で、その締約国に移送の要請に応じますよという回答をいたしますとともに、東京地方検察庁検事正に対しまして受入移送を命ずる、そういうふうな流れになると思います。
 なお、受入移送を命じたときには、受入受刑者に対してもその旨を通知するという取り扱いにしております。
 以上が大体一般的な流れでございます。
山花委員 済みません、通告していないんですが、移送の際に、出すときも入れるときもそうなんですけれども、飛行機代がかかりますよね。旅費はどこが負担するんですか。
鶴田政府参考人 受入移送に関しましては、法案の第四十三条にその費用の関係の規定がございまして、裁判国から受入受刑者の引き渡しを受けた場合において、裁判国から日本に護送するために要した費用につきましては、日本国が支出した受入受刑者に係る交通費は受入受刑者の負担とする、ただし、法務大臣は、受入受刑者が貧困のためこれを完納することができないことが明らかであるときは、その全部または一部を免除することができる、そういったような形で行うことにしております。
 出す方は、これは執行国の方の負担というのが原則になっているというふうに承知しております。
山花委員 移送については、例えば、こういう制度があります、移送を希望しますかというときの、あなたの身柄を移送するとすると旅費も自分の負担ですよというのも要するに告知の中身となっているというふうに考えてよろしいわけですね。
鶴田政府参考人 お尋ねの点は、条約内容をその外国人受刑者にどう告知するかということだろうと思いますが、我が国で服役している外国人受刑者につきましては、その点について、第二十九条というところに規定されております。監獄の長は、そこに在監する締約国の国民に対しましての裁判が確定したときは、速やかに、その者に対しまして条約で定める事項のうち重要なものを告知しなければならないということになっておりますので、条約内容を告知することになりますが、その内容は、既に欧州評議会においてその様式というものは大体決まっておりまして、ちょっと正確ではありませんけれども、ほとんど条約内容を網羅した形の一つの様式がございますので、それを使いまして、ある程度翻訳する場合もあろうかと思いますが、そんな形で、この制度の告知というか、それをしていくこととしております。
山花委員 今回の国際受刑者移送法案というものは、既に刑が確定していて、これの執行、先ほど、自由刑の執行についての国際共助の観点からというお話がございましたけれども、国際共助というお話でいいますと、今後、受刑者だけではなくて捜査共助などについても検討されていくべきではないかと思いますが、今後、この捜査共助についての姿勢であるとか取り組みについて、どのようなスタンスで臨まれるのか、お答えいただければと思います。
古田政府参考人 犯罪の国際化は大変顕著でございまして、そういう意味で、捜査段階あるいは裁判の段階等での国際的な協力、これは非常に重要性が増しているのは御指摘のとおりでございます。
 この問題につきましては、実は相当前からいろいろな形で対応を図っておりまして、日本の場合は、大変柔軟に外国からの要請に対応できるような引き渡し法、それから共助法、これを既に制定済みでございまして、これをこれまで十分活用して、その国際的な協力の実現に努めてきたわけでございます。
 ただ、その一方で、国際協力がさらに進展するに従って、場合によっては条約があった方がいい、こういうようなケースももちろん出てまいりますので、そういうような点につきましては、これは外務当局ともよく御相談しながら、さらに充実を考えていきたいと思っているところでございます。
山花委員 今のことと少し関連するんですが、ちょっと事実関係について確認をしたいことがございます。
 一九九二年四月のことですが、東京都渋谷区のマンションでスタイリストが殺害されるという事件が起きております。警視庁が、国際刑事警察機構、いわゆるICPO、これを通じて指名手配をしたイラン人が容疑者としてスウェーデンで身柄を拘束されて、日本の捜査当局が身柄の引き渡しを求めたんだけれども、だめだ、最終的にそういう結論になったという事件があったと思いますが、この点について、どういった事件だったのか、事実関係について教えてください。
古田政府参考人 ただいまのお尋ねは、事件そのものの内容ということでございましょうか、それともスウェーデンとの引き渡しの関係……(山花委員「はい」と呼ぶ)
 これにつきましては、警察当局において捜査をしていた事件でございまして、スウェーデンに対して犯人の身柄の引き渡しを請求したものでございますが、スウェーデンの場合には、法律上、死刑の言い渡しをしない、あるいはその執行をしないという保証がない場合には引き渡しができないということで、引き渡し自体は実現しなかったわけですが、スウェーデンにおきまして、当該外国人について訴追をし、刑に処せられていると承知しております。
山花委員 この問題で、被害者の遺族の方も大変憤っているところもあるんですが、今も御説明がありましたけれども、私が承知しているところによれば、スウェーデンに対して身柄をよこせということを言ったんだけれども、スウェーデンは、日本に送ると死刑になるかもしれないからということで、だめだということになったんですね。
 日本の恐らく法務省が多少関与していたんだと思いますよ。日本政府も、いや、日本の殺人罪で訴追されたからといって直ちに死刑になるんじゃなくて、めったなことじゃならないから、この人も多分ならないんじゃないかみたいなことを言って説得しようと思ったんだけれども、スウェーデンの当局は、いや、これは絶対に死刑にならないということを確約しないと引き渡しはできないということを言って、これは日本だけじゃないと思いますが、裁判所が判断するわけですから、政府が、いや絶対そんなことありませんとは言えないわけで、結局引き渡しができないということになったわけですよね。
 法務大臣にこの話をすると、またこの話かと思われるかもしれませんが、ただ、今回のこの国際受刑者移送法案というのは、もともと欧州評議会の条約に基づいているものですし、このスウェーデンも欧州評議会加盟国ですから、実際にこういった問題も起こり得るわけです。
 これは少しお話をしたいんですが、以前当委員会で法務大臣に対して、昨年、ストラスブールで欧州評議会から、アメリカと日本については、二〇〇三年一月までに死刑制度について廃止ないしは停止、モラトリアムなどのそういった成果がない限りはオブザーバー資格については検討せざるを得ないという決議までされているわけであります。
 ここのところ、ロシアとクロアチアは、クロアチアについては廃止をしました。ロシアについては、今モラトリアムをやっております。ロシアについては、死刑についてモラトリアムをやっている結果、国民からも、もう一回復活させた方がいいんじゃないかというような声もあるんですが、プーチン大統領はテレビで、いや、そういう声があるのは承知しているけれども法制度としてはこちらの方が正しいんだという演説を一席ぶったようです。
 つまり、欧州評議会に加盟するためにかなり今ハードルが高くなっていて、それを本当に条件として、そうしないと入れないよという姿勢を強くやっているんですね、現在。恐らく日本が加盟したときにはそこまでハードルは高くなかったんだと思います。もちろんこれだけが条件となって欧州評議会に加盟するかしないかという話ではなくて、幾つかある中の一つの問題としてこういうことがあるということで加入をしたんでしょうけれども、ここのところ、そういったハードルがだんだん高くなっている上での昨年の決議だということは、考えなければいけないことではないかと思うわけです。
 ではどうするんですかと聞いても、恐らく日本の政府としての従来のお答えということになるんでしょうが、ただ、法務大臣は、日本の法務省のトップであるという立場もございますが、それとは別に、日本政府の内閣の、キャビネットの一員としての立場もあるわけです。また、こういったことがあって、外務省だってそれなりに、欧州評議会の問題ということになると、別に死刑だけのことじゃなくて、外交的なところでも一つの障害になってしまうわけですから、このことについて、法務大臣としてというよりもキャビネットの一員として考えなければいけないと私は思うんですけれども、この点についての御所見をいただきたいと思います。
森山国務大臣 私も、欧州評議会というものの存在の重要性ということはよく承知しておりますし、日本がそのオブザーバーの資格を持っているということも大変大事なことだとは思っております。しかし、死刑の存廃の問題は、今まで申し上げておりますように、非常に国際社会の関心を集めている問題ではございますけれども、基本的に、各国において、それぞれの国の国民意識とか犯罪情勢とか刑事政策のあり方などを踏まえて慎重に検討して、独自に決定すべきものだという考えは変わりません。欧州の各国と情報を交換し、意見を交換し、仲よくやっていくということはとても大事ではありますが、それとこれは別の話だというふうに思います。
 再々申し上げておりますように、我が国では、国民世論の動向や凶悪犯罪の頻発というようなことがございまして、著しく重大な凶悪犯罪を犯した者に死刑を科するということはやむを得ないというのが死刑制度に関する国民の一般的な考えとして広く存在していることでございまして、そのようなことを考えますと、死刑の執行を停止するとか死刑の制度を廃止するということは適当ではないというふうに思います。
山花委員 この点については何度かやりとりをさせていただいておって、大体言われることはそういうことかなとは思っておりましたが、ただ、国民世論についても、私は世論の設問の立て方も少し問題があると思っているんです。といいますのも、要するに、設問の立て方が、どんな場合であっても死刑は廃止すべきかというのが一つあって、場合によってはやむを得ないというのが二つ目にあって、確かに究極の選択としてはそうなり得ますが、設問の立て方を、例えば、冤罪のおそれがありますけれどもそれでも死刑は必要ですかという立て方をしたら、全然答えというかパーセンテージは変わってくると思いますし、そこのところは少し私は異論があります。
 また、凶悪な犯罪という話がありましたが、実証的な研究によって、死刑制度を存置することによって、残虐性助長効果と申しまして、これは心理学の方の話ですが、あることによって残虐な犯罪を誘発するというようなケースもあるわけです。アメリカでは、自分が死刑になってみたくて人を殺したというケースも報告されておりますし、今後当委員会でも議論になると思いますが、もし池田小学校のあの事件の犯人が言っていることが本当だとすれば、あの幼い命は死刑制度があることによって奪われた、ちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、そういうふうにも考えられるわけでありまして、その点については私はそういう意見を持っておるということを申し上げたいと思います。
 また、冒頭、司法人権セミナーでごあいさついただいたことにお礼は申し上げましたが、ちょっとその中身について気になったところがあるので最後にこれも申し上げたいと思いますが、日本には昔から、死んでおわびをするという言い方がございますというようなお話がございました。死んでおわびをするということは、確かに日本には切腹という文化があったかもしれません。ただ、考えてみれば、切腹というのは、国家権力が無理やり命を絶つという死刑ではなくて、自分で自分の命を絶たせてあげるということですから、どういう比喩なのかなと思ったということが一つ。
 あと、日本古来の文化ということでいえば、「日本刑事法史」という、これはコピーですが、石井良助先生の御著書で、これはこの問題に、この問題というのは死刑関係の問題に関心のある方の間では有名な話ですが、日本古来の文化ということでいえば、日本というのはほかの国と違って、恐らく人類史の中で最も死刑をやらなかった国だということが言えるかと思います。
 日本では、平安時代から実に三百四十六年間、死刑の執行が停止されていたという時代があるわけであります。歴史の教科書を見ますと、五刑といって、笞、杖、徒、流、死といって、死罪というのがあったわけですが、実際は、刑はあったけれどもそれは執行しない。保元、平治の乱のときに、最後は親子供、末代までも、そういう形になって崩れるまでは、平安時代から三百四十六年間、日本という国はやってこないという文化と伝統を持った国だったということを申し上げまして、質問を終わりたいと思います。
園田委員長 西村眞悟君。
西村委員 自由党の西村です。
 これから法案について少々と他の問題について、三十分おつき合いいただきますようにお願い申し上げます。
 まず、当局から受入移送、送出移送の見込み人数をお聞きしようかなと思っておったんですが、人数が法案の参考資料の中に出ております。出ておりますから、この中で、この条約及びこの法案の恩恵を受けない十四歳以下の少年が外国でどれほど拘留、拘禁されておるかということがわかりましたら、それだけで結構でございますから、冒頭、そのことについてお伺いいたします。
鶴田政府参考人 私の承知している限りでは、そういう者はいなかったというふうに承知しております。
西村委員 我が国においては、十四歳以下の少年が外国で拘留されておる場合にも、この法の趣旨を生かして日本の本国の方に戻すことができない。なぜなら、十四歳以下は我が国の法令では罪にならない、触法になっても罪にならないからということでございます。そういう日本国民がいないという現状はある意味ではほっとするんですが、もしおった場合には、凶悪な、世界をまたにかけた悪人がこの法案の恩恵にあずかりながら、たまたま外国で日本と同じような行動をして、そして日本とは違う刑罰制度のもとで刑に服さざるを得ないという十二歳、十三歳を救えないという事態、これがあるということは、我々法務委員会としては認識しておかねばならないな、このように思いました。
 それで、この法案の受刑者の服役というのは国家の刑罰権の執行に基づくものだと私は思います。この刑罰権の執行に基づく服役をしている受刑者の移送とは、刑罰権の観点から見れば、この法律は共助という言葉を使っておりますが、本質は刑罰権の受け入れ国への移譲、また我が国が受入移送をする場合は譲り受け、こういうことになるのではないかな。概念的なことについてお聞きしますが、いかがでございますか。
横内副大臣 委員も御指摘のように、刑罰権は、一国の主権の属性としてその国により実現されるというのが原則であります。
 この法案の受刑者の移送というのは、刑罰権を移譲するということではなくて、受刑者の改善更生、社会復帰を促進するために、刑罰権の執行を国際的な協力のもとに行うということでございます。
 具体的に申しますと、受入移送については、外国で自由刑の確定裁判があった者について、それを我が国が執行するということではなくて、その執行の共助を行う、外国のその執行を協力支援するということであります。また、送出移送についても、我が国の刑罰執行権自体を外国に譲り渡すということではなくて、我が国が懲役、禁錮の確定裁判の執行を行うのを、外国に共助を受けることをお願いするといいましょうか、嘱託するというものだというふうに理解をしております。
 このように、国際受刑者移送は、刑事に関する国際共助の一環として、双方の国の主権と受刑者の改善更生、社会復帰を促進するという刑罰の目的の実現との調和を図るというものであります。
西村委員 移譲ではなくて、嘱託なんですか。
 共助という場合は、日韓のワールドカップの共同開催とか、遭難者の救難を共同してやるとか、双方いずれが行ってもよい場合を共同してやるという場合、または、双方が同等の権利を持っており、それを実現するために双方が協力するか単独でやるか、協力する場合を共助と言うということですな。
 ただ、裁判における刑の執行というのは、裁判国と執行国が同一であることが原則であって、それをともに助け合うという概念は急にはない。移譲して、かの国も同様に刑の執行ができる用意があって、したがって双方が一つの刑の執行ができるようになるから共同してやりましょうかということなんですな。直ちに嘱託というのはできないと私は思うんです。まあ、これはともかく、私がこれを聞いたのは、刑罰権というのは、国家というものと不可分に結びついておる。したがって、この条約では、「刑を言い渡された者については、次の条件が満たされる場合に限り、この条約に基づいて移送することができる。」「a 当該者が執行国の国民であること。」これがあるのに、なぜ我が国のこの法律は外国人も我々は受け入れるのか。平和条約における国籍失効者の中での特別永住資格を持った者、しかし、外国人であることは確かだ。彼は日本人ではない。日本人は嫌だと言っている人間をなぜこの条約に反してまで受け入れるのかということについてはどうですか、大臣。大臣か、副大臣、どうですか。移譲じゃない、助け合いだと自分で言っているんだから。
鶴田政府参考人 受け入れの要件に関する法律の考え方ですので、私の方から先に御説明させていただきたいと思いますけれども、今回の法案の国際受刑者移送制度の目的は、第一条に掲げられておりますように、外国で自由刑の刑を受けた者につきまして、外国で服役する場合には言葉の問題とかいろいろありますので、それを……
西村委員 ちょっと待って。
 我が国において、条約と国内法の効力は条約が優先する。この条約には、我が国が受け入れられる、受入移送をなす者は我が国の国民であるに限られておる。しかしながら、我が国は、日韓併合時代でもなく、韓国、北朝鮮は我が国とは全く別個の国であり、台湾も別個の国であるにもかかわらず、あたかも他国人を我が国国民と同じように扱っておる。これは、日韓併合及び台湾は我が領土という昔の意識そのままに我が国がこの法律をつくっても、この法律は条約に反するからこの法律は無効である、こういうことになりますな。
 だから、私は、無効な法律を議論するつもりはないので、なぜこうなのか、クリアできる理屈はどこなんだということを今お聞きしておるわけでございますが、前置きが長いので私は割って入りました。なぜこれが有効な法律になるのかということです。
鶴田政府参考人 受入移送の対象に特別永住者を含めておるわけですけれども、今回の欧州評議会の受刑者移送条約では、移送の対象となる者を執行国の国民と規定しておりますが、いずれの国も、欧州評議会事務局長あてに宣言すれば、条約中の国民の範囲を定義することができるというふうになっておりまして、我が国は、この宣言を行って、日本国籍を有する者のほか、日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者の出入国管理に関する特例法に定めます特別永住者も我が国の条約上の国民というふうに定義いたしました。
 特別永住者は、その歴史的な経緯から、我が国に生活の本拠を有している者でございまして、我が国における生活の安定に資するという趣旨で上陸審査の特例が認められ、特別永住者が外国で刑に処せられたとしても、我が国に上陸するときは旅券が有効であることをもって上陸を許可されている。そういった特別永住者の地位、身分に照らしますと、受刑者移送の目的である改善更生及び社会復帰の促進という観点からは、日本国民と同様の取り扱いをするのが相当ということで、今回の法律では、特別永住者について受入移送の対象としたものでございます。
西村委員 長々お聞きしましたが、要するに、我が国は、外国人も含めて我が国の国民と思っているという法律をつくっておるということであります。これがええのか悪いのかは我々立法府の議員諸兄姉が決めることでありますが、そういうことであります。
 次に、我が国においては、出入国管理の方にまた話題を移すわけですが、私がかねてから、特別永住者であれ何であれ、日本人が北朝鮮から帰れないのに、なぜ、毎年一万人以上が向こうに行き、また向こうから帰ってくるのか。そして、ある意味では日本の豊かさを享受しながら行き来を自由にしておる。我が国国民は、配偶者も含めて、拉致された日本人はもちろん一切帰ってこない。こういうことを放置しておる。
 さて、フーリガンに対する入国禁止は、いかなる根拠においてなされておるんですか。
森山国務大臣 フーリガンに対する入国の拒否は、昨年十一月の入管法の一部を改正する法律におきまして整備いたしました入管法第五条第一項第五号の二の規定に基づいて行うものでございます。
 この規定は、ワールドカップサッカー大会など、国際的な競技会等の平穏な実施を確保するため、当該競技会等の円滑な実施を妨げる目的をもって暴行等の行為を行うおそれがある外国人の上陸を拒否するということを目的にしたものでございます。
西村委員 出入国の許可は国の裁量行為であるという答弁はいただいております。高度の国策に基づいて、一定の基準で、許可するか許可しないかは国が決められるんだと私は思います。
 このフーリガンに対する一律の入国拒否は先ほどの立法措置をとらなければ不可能であったのですか、どうですかということを、私、聞かざるを得ないのですが、裁量行為である許可の本質に照らして、本件フーリガン入国拒否も立法行為なくしては不可能であったという御見解ですか。
中尾政府参考人 お答え申し上げます。
 これはフーリガンそのものを一律にという趣旨じゃなくて、フーリガン行為というか、そういう行為を行うおそれというものを限定いたしまして、その限定した範囲内で一律に上陸を拒否する。この上陸の拒否の問題は、覊束行為ということで法定されておりますので、一定の要件がある場合には許可をしなきゃならない。上陸の拒否も、一定の要件のそろうものについては上陸を拒否しなきゃならない、こういうことになっておりますので、その限りにおいては、こういう形の立法をしない限りはそういう状態のものは規制できない、こういうことになろうかと思います。
西村委員 我々立法、行政の意識から全く欠落しているのは、ある意味では、英米法的な事後司法審査ということでありまして、行政も立法も、特に行政、例えば、大臣が決断して、これは許可なんだから、許可するか許可しないかは当局が決める。その決める考慮の中に、拉致された日本人、また多くの日本人配偶者が一切帰られずに、どういう待遇をされているかわからない、瀋陽で領事館に逃げ込んだ五名などはまだ天国であって、日本人こそ拘禁状態の最たるものである、こういう前提があるのに北朝鮮人だけが自由に行き来することは我が国民感情として許されないんだ、一律禁止だとやったら、ややこしいですけれども、事後司法闘争になりますよね。それで判断をする。それが立法、行政のダイナミックな一つの姿だと私は思いますが、そのように申し上げておきます。
 原田検事総長が懲戒処分を受けた旨の報道がなされました。監督責任というものでございます。非常に重いものでございまして、こういう事態になっておりますので、私は、自分の友人に降りかかった一つの、刑事司法は大丈夫なのか、監督しなければならないのではないか、ここにその一つの具体的なケースがあるということをお知らせして、お考えをお述べいただきたいと思います。
 当初、三井検事が逮捕されたときに、ネガティブな情報ばかりが説明としてありました。したがって、私は、大阪高検のナンバースリーがそこまでつまらぬ人物であり、彼が言おうとしておった内容がとるに足らない、それを取り上げればマスコミも議員も恥をかくんだというふうなマイナス評価があった以上、そのような人物をなぜ大阪高検のナンバースリーで二年間も仕事をさせておったのか、この責任は必ず問わねばならない、このように思っておりました。
 さて、司法の適正、妥当性の確保は、ある意味では、刑事司法の発達の歴史を見てもわかるように、我々の社会がある限り永遠の課題であります。したがって、現在、この手続が刑事訴訟法に乗って、令状主義に乗っておるから、それですべては大丈夫なんでございますという形式論的立論は、堕落をさせるもとでございます。明らかに、今回の検事総長の処分ということがそれを示しているわけでございます。
 検察に与えられた起訴便宜主義、また起訴独占主義は、極めて大きな裁量と大きな権限を検察に与えておるものですから、このものが乱用されていないか常に我々は監視しなければなりません。一つの政治勢力と結託して、微罪を積み重ねて、その政治勢力の反対意見を持つ者を拘禁する、また、自分の個人的な観念に固執する余り、微罪を重罪扱いして省みない、このようなことはなされていないのかということで、私の友人二人が関与した一つのケースを取り上げます。
 私は、具体的な進行している事件でございますから、この場で取り上げるのはなにかなと思っておりましたけれども、三井検事の逮捕等々の経緯を見て、これは取り上げて本当にこの際考えるべきことだと思ったわけでございます。
 さて、事件は、昨年七月七日、神奈川県民センターにおいて、神奈川県日中友好婦人連絡会の集会で起きました。これは、女性国際戦犯法廷というものが一昨年の十二月にございまして、いわゆる従軍慰安婦を世界に向かって宣伝して日本政府に補償を求める、そして昭和天皇を有罪であるとする法廷でございました。この法廷のビデオを上映しながら第三部でフリートーキングをするという会が、昨年七月七日、開かれたのであります。
 フリートーキングでありますから、私の友人二人を含む四名は、それに参加し、機会あれば反論をしたいという思いで参加しております。この思いは四人共通しております。ビデオが上映されたときに、我慢のならない証言、我慢のならない発言があったので、この二人はやじを飛ばした。ビデオの最後の場面は、「天皇ヒロヒト有罪!」というふうに映し出されましたが、主催者側男性が立ち上がって、ビデオ中に少々やじをした自分たちの方を向いて勝ち誇ったように拍手をした。そしてまた、続いて別の女性が立ち上がって、自分たちの方を見て勝ち誇ったように拍手をした。私は、私はというのは川久保という私の友人、被告人ですが、思わず飲みかけのお茶の缶を投げつけてしまったということであります。
 天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であるというのは憲法第一条に書かれており、この天皇が侮辱された場合に怒るのは日本国民として正常な反応であり、フランスのシラク大統領は、フランスの国歌の最中にブーイングが起きた一事をもって激怒してサッカーの試合を中断させたほどでございますから、普通の国民として当たり前の反応だ。国の象徴、国民の象徴が侮辱されたら怒る。特に外国人と日本人共催によるこの集会においては怒らねばならなかったということ、私は正常な反応だと思います。
 さて、その後、謝って、三千円をお渡しして済みませんと言いました。その女性は、いいですよと言ってお金を受け取りませんでした。私たちはそれで済んだものと思っておりました。主催者側から外に出るように言われたので、外に出ました。そうすると、警察官が待っておって、その場で私たちは住所、氏名、すべてを警察官に告げました。これが七月七日の話であります。
 終わったと思っておった四カ月後の十一月十四日、忘れたころになって警察官が自宅に訪れ、私たちは逮捕されました。十一月十四日逮捕されて、十一月二十五日拘置所に移され、第一回公判は二月十三日、保釈は三月二十九日。実に数カ月にわたって拘禁されているわけでございます。
 罪名は、四名共謀して威力業務妨害、川久保という缶を投げた男だけが傷害というのがつけてあった。警察からも、これは微罪だから略式だ、罰金だと。弁護士も警察からそう言われたんですが、ふたをあけてみると、七月七日の事件が、十一月十四日の逮捕、四カ月後の逮捕になって、そして十一月十四日から三月二十九日まで出られなかった。保釈もままならなかった。フリートーキングの会において反対論を展開するというのは国民の当然の権利であり、これだけをもって業務妨害とできないと私は思うんですが、まさにそれをやっておる。そして、こんなのは、缶を投げた人間がおったとしても数日の勾留で、やはり略式だと私は思うんですが、数カ月の勾留だ。
 この間、川久保さんは、東大を出てコンピューター会社に勤めておったけれども、平成八年から学習塾をやっている方なんですが、この当時に私は知り合ったんですが、学習塾の生徒が半減して生活の危機に直面した。
 栗原さん、この方も私と親しい人ですが、建築会社に管理職として勤めておりますが、家庭の事情が、この方は知恵おくれの妹さんの世話をしておって、五十歳ぐらいの妹さんですが、二歳ぐらいの知能しかないわけです。兄さん兄さんと言って、四六時中この兄さんが横にいなければ精神的な均衡が保てないという人なんですね。こういう家庭の事情があるにもかかわらず、我々議員でも議員を辞職したら社会的制裁を受けたとかいろいろなことで情状をしんしゃくされるにもかかわらず、この家庭を持ち生活をしている人間にとって極めて残酷な五カ月を拘禁されておるわけでございます。
 今二人の例ですが、あと二人はどうなったかというと、あと二人は、驚くべきことに、初公判は五月二十日でございます。十一月十四日に逮捕されたこの事件の初公判が五月二十日だ。どういう別件があったのか。
 この時期、思い起こしてください。扶桑社の教科書採択で大騒動しておりました。東京のある区役所は、人間の鎖と称するデモで取り囲まれて、教科書採択を審議する場に非常な物理的圧力がかかっておった。新しい教科書をつくる会の事務所は過激派に放火されておった。各地における教科書採択に携わる教育委員のもとには、かみそりを送られ、脅迫の電話がかかっておった。
 このような騒然たるものであり、日本の教科書が、正しい、日本人のものにならねばならないと思っている私の友人を初め本件の被告人たちは、例えば他の二人は、岡山県華僑総会が脅迫、嫌がらせを行ったことに対し、西村修平、これも被告人の一人ですが、電話、ファクスで抗議した。もう一件は、この新しい教科書の採択に肯定的な教育委員を解任しようとする国立市の上原市長に対し同調する動きをとった自民党市議に対して、加藤哲史、福島達樹が自宅を訪問、電話、ファクスで同調してくれるなと思いとどまるように説得した。こういうふうなことで、別件でこれも逮捕されておるわけですな。
 新しい教科書をつくる事務所が放火され、かみそりを送り、人間の鎖で自由に議論されるべきものに圧力を加え、これらの者はすべて何ら捜査の対象にもならないのに、国民の象徴が侮辱されて怒る真っ当な常識的な日本人は、このような五カ月、六カ月における拘禁の末の裁判にいまだ縛られておる。
 これは、我が国は法治国家なのか、それとも、検察官、裁判官は、大学紛争及びその後の左翼的風潮の中の学園で学んで司法試験に通って、後は検察、裁判の世界に封印されて、優越感を持って、人権の観念もなく、左翼的な観念で、ただ左翼の運動の手助けになるように刑事司法を操っておるのか。それが起訴便宜主義、起訴独占主義の陰に隠れた彼らの一つの傾向ではないか。三井の問題があれば、この問題もあるのではないか。こういうふうに私は思って、この場で御紹介させていただきました。
 法務大臣、いかが御感想を持たれますか。安心し切っておったら我々も刑事司法も人治に堕落する、このような思いがいたしておりますので、御紹介申し上げました。いかがですか。
森山国務大臣 お尋ねの事件につきましては、横浜地裁におきまして、被告人五名を威力業務妨害罪等によって公判請求いたしまして、うち二名については、ことしの四月九日、横浜地裁におきまして、威力業務妨害罪等により有罪判決が言い渡され、被告人らが控訴しております。
 他の共犯者三名については、同地裁において審理中でございまして、いずれも裁判係属中でございますので、コメントは差し控えたいと思います。
西村委員 もちろんそう言われると思いました。そのとおりでいいので、私も今までそれは言わなかった。しかし、私がある意味では尊敬する正木ひろしという弁護士、この方は、首なし事件とか、いろいろな戦前の官憲による人権侵害を手がけた方で、思想的には、この方は左翼で、私ははるかに右ですから、違うんですけれども、弁護士としては尊敬しています。この方は「裁判と悪魔」という本を書いておる。裁判をするのも人の子、人ですから、その人の心の中に宿る悪魔が異常な苦しみを裁判を受ける被告に与える場合がある、こういうことを書いておるわけでございます。
 刑事局長におかれては、私が今申し上げた横浜地裁平成十三年(わ)第二千九百六十一号、威力業務防害、傷害被告事件については、このたび、この検事総長の処分があったことを踏まえて、重大な関心を持って、捜査に偏向なかりしかどうか、監督していただきたい、このように思います。
 時間が来ましたので、あと一問残しておりますが、通告のみで、これで終えます。ありがとうございました。
園田委員長 中林よし子君。
中林委員 まず、法案に沿って二、三問質問をさせていただきたいというふうに思います。
 この法案は、欧州評議会の刑を言い渡された者の移送に関する条約をアジアで初めて推進して、受刑者本人の意思に基づいて本国での受刑を可能とすることによって、受けている刑を改善したり、あるいは受刑者の改善更生、社会復帰の関連に寄与するものであるというこの認識、これは、我が国の矯正の基本的理念や今後進むべき方向、それに合致しているというふうに私も思います。
 そこで、まず、ちょっと数字的なことをお聞きするわけです。
 来日外国人受刑者の人数、この推移はどのようになっているのか、また、本国はどこが多いのか、それについて簡単にお答えいただきたいと思います。
鶴田政府参考人 お答えいたします。
 外国人受刑者のうち、いわゆる来日外国人受刑者の数字で申し上げますと、平成八年末に九百八十五人であったのが、十三年末には二千四百六十人となりまして、この五年間で約二・五倍になっております。
 国籍の関係で申し上げますと、やはり一番多いのは中国でございまして、その次がイラン、ブラジルといった順になっております。
中林委員 今お答えいただいたように、来日受刑者は大変急増しているということなわけです。二千四百六十人いるというお答えをいただいたわけですけれども、この法律が成立した暁に適用できる条約締結国、この国籍を持った受刑者は、これは資料をいただいておりますので、百三十二名しかいない、こういうことになっているわけですから、これが成立した後も、この趣旨だとか理念、それを本当に実効性のあるものにすることが、すぐは難しいのではないかというふうに思っております。
 この法案が成立、施行された後、実効性を担保するために、日本は今後どのような働きかけをされていくのか、これは大臣のお答えをいただきたいと思います。
森山国務大臣 外国で受刑している者の改善更生及び円滑な社会復帰を促進するという受刑者移送の刑事政策的な意義にかんがみますと、できる限り多くの国との間で受刑者移送を行うことが望ましいと思います。
 我が国の刑務所に収容する外国人受刑者のうち多数を占めているアジア諸国との間で受刑者移送を行うことも意義があるというふうに考えます。
 しかしながら、受刑者移送の本質が自由刑の執行に関する国際共助の一態様であることにかんがみますと、受刑者移送を実施するためには、我が国と相手国との間の刑事司法制度にある程度の共通性が存在するということが必要でございまして、この点について留意しなければならないと思います。
 法務省といたしましては、これらの事情も踏まえまして、欧州評議会の受刑者移送条約による受刑者移送の実績、成果などを見きわめながら、外務省とも連絡をとりまして、アジア諸国の受刑者の扱いについて具体的な検討を進めていきたいというふうに思っております。
中林委員 それで、実際に外国人受刑者を本国に移送する際に、被害者の感情の問題、これは考慮されなければならないというふうに思うのですね。被害者の中には、なかなか納得しがたいというような状況も生まれると思うのですけれども、その被害者の感情についてどのような対策をお持ちでしょうか。
森山国務大臣 確かに被害者の中には、そのような心配といいますか懸念をお持ちの方もあるでしょうし、処遇の状況について関心を持つという方がいらっしゃいますが、一方、事件につきましてもう触れてほしくないという気持ちをお持ちの方もいらっしゃるのではないかと思われます。
 そのような被害者の気持ちにも配慮しながら、被害者において通知を希望しているような事情がある場合には、その必要性、通知する時期、内容などを含め、どのような対応をするべきか、今後十分に検討してまいりたいと思っております。
中林委員 大臣が今後検討するとおっしゃった被害者等通知制度、これは、二〇〇一年三月から国内の受刑者についてはもう既にやられているし、それは被害者の方が選ぶ、自分が希望すればということになっているわけですから、この外国人受刑者の問題についても、いろいろな状況はあるとは思いますけれども、やはり被害者の感情というものを考慮していただいて、ぜひ前向きな検討をいただきたいということを強く要望しておきたいと思います。
 私は、今回、この受刑者移送にかかわる法案を考えてきたときに、どうしてもやはり法務大臣に考えていただかなければならない問題があるというふうに思っております。
 それは、先般、ハンセン病患者、元患者の皆さんの追悼集会がございました。それで、この追悼式に、坂口厚生労働大臣それから森山法務大臣、献花をされて本当によかったなというふうに私も参加して思いました。そこに参加されたハンセンの患者の皆さん、元患者の皆さんが、やっと第一歩が踏み出せた、大臣たちと席を同じくすることができるという思い、本当に感慨深いものがあるというふうに思いました。
 控訴を国が断念したのがちょうど一年前でしたですね。同じく一年前、六月一日、韓国の被爆者の郭さんの大阪地裁の判決が出ました。多くの皆さんが、やはりハンセンと同じように控訴を断念してほしい、こういう人道的な立場から要請をいたしましたけれども、残念ながら控訴をされてしまいました。私はつくづく、この違いは一体どこにあるのだろうかということを思わざるを得なかったわけです。
 外国人の受刑者の更生だとかそういう方向を今回は考える、そういう法案なんですけれども、それとは全く違う。何も悪いことをしていない、日本で被爆した、そういう外国にいる被爆者に対する手当てというものが余りにも惨めな状況になっているというふうに思います。
 広島、長崎で原爆を受けたうち今国が把握しているのは、韓国の二千二百人近い人たちを初めとして、約五千人だと言われております。これは三十三カ国にも上っているわけです。
 私は、昨年、在外被爆者に援護法適用を目指す議員懇談会のメンバーの一人として韓国を訪問して、韓国の被爆者の多くの方々にじかに御要望を伺ってまいりました。その中で、多くの声を聞いたわけです。涙なしにはとても聞けないような悲惨な状況でした。八月六日までは、内戦一体、おまえは日本人だ、お国のために働け、命をささげろ、こう言われて働いていた。しかし、被爆した途端に、朝鮮人に治療する薬はない、本国に帰れ、このように言われてしまったというわけですね。被爆者というのは、日本にいれば被爆者だけれども、外国に出れば被爆者でなくなるのか、そういうことはあり得ないという声がありました。
 今、皆さん高齢になられて、もう余命幾ばくもない、せめて日本の被爆者と同じ扱いをしてほしい、こういう切実な声を上げていらっしゃる。このことに対して、大臣、ぜひ人道上の手だてをする必要があるのではないかというふうに思うんですけれども、どのようにお考えでしょうか。
森山国務大臣 被爆された方には大変お気の毒だと存じますけれども、在外被爆者の方に対して被爆者援護法の適用があるかどうかという問題につきましては、現在争訟中でございますので、裁判所の判断を仰がなければならないと思います。
中林委員 お気の毒ではとても済まないような状況があります。係争中のものがいろいろあるわけですけれども、少なくとも、勝利判決というか、被爆者にとっての勝利判決というのが幾つも出ております。
 では、具体的にお伺いしますけれども、昨年六月一日の、ソウルの郭貴勲さんの大阪地裁判決、それから十二月二十六日、釜山の李康寧さんの長崎地裁の判決、これはどんな判決だったか、簡単にお答えください。
都築政府参考人 お尋ねの二つの地裁判決の趣旨はほぼ同一のものと理解しております。複数の訴訟上の請求がございますので、簡潔に申し上げたいと思います。
 まず、事案の概要でございますが……(中林委員「概要はいいです」と呼ぶ)はい。裁判所の判決は、被爆者援護法が社会保障法と国家補償法の性格を有する特殊な立法であるということを主たる理由といたしまして、在外被爆者にも被爆者援護法の適用があると解した上で、未払い健康管理手当の請求を認容したものと承知しております。
中林委員 大阪地裁も長崎地裁も、今述べられたような趣旨で判決が下りました。二つの地裁で判決されている。あるいは、さかのぼれば一九七八年、もう最高裁判決も下っているわけですね。そういうものを国が控訴するということ自体、本当に許されないことだというふうに私は思います。
 さらに、これは韓国の方だけではありません。ことし三月一日、ブラジル原爆被爆者協会会長の森田隆さん、この方も、国と広島県を相手に提訴されました。被爆者健康管理手当の受給資格の確認と、不支給の百三十七万円の支払いを求める、こういう内容です。
 森田さんはこうおっしゃっているんですね。母国を訴えるということは仕方がなかった、もう我慢の限界だ、同じ苦しみを持つ海外の被爆者のためにも、一日も早く裁判で決着をつけたいと。
 森田さんは現在七十七歳です。広島で被爆をされて、被爆後、被爆者ということで差別も受けて、なかなか生活が大変だった。そういうときに、行け行け海外へというスローガンのもと、国策でブラジル移民をしたという状況です。ブラジルへ永住権は持っていらっしゃるわけですけれども、日本国籍の方です。日本で固定資産税も支払っている、選挙権もある。こういう方にも適用されないということですよ。そして、ブラジルから日本に来るのは二十四時間かかる、もう自分の体力の限界で、これが最後、命がけのことだというふうにおっしゃっているんですけれども、こういう韓国とはまた違う立場の人にも援護法の適用がないということについての大臣のお考え、いかがでしょうか。
森山国務大臣 御指摘の森田さんという方につきましては、現在、訴訟が係属している状況でございますので、ここで詳しく申し上げることは差し控えたいと存じます。
中林委員 私は、いつもこの委員会では、係争中のものはなかなか答えられないと言われるんだけれども、やはりそこを乗り越えた、人間森山大臣の言葉を聞きたいというふうに思っております。だから、また最後にお伺いしますので、そこはぜひ率直なお考えを聞かせていただきたいというふうに思っております。
 大阪地裁でも、長崎地裁判決でも、政府の言い分、控訴した理由、いろいろあるんですけれども、しかし、その言い分は全部論破されております。実は、厚生労働省は、控訴したことと引きかえのように、在外被爆者に関する検討会、これを昨年設置して、十二月十日に報告が出されました。この検討会の報告、そこでは、委員によって示された「共通の認識」という項目がございます。この共通の認識とは、「人道上の見地からは、その現在の居住地によって援護の程度に差をみることは不合理であるというのが、各委員共通の考えである。」というふうに言っているわけですね。もうどこに住もうが援護法の適用はしなければならないというのが、わざわざ厚生労働省が検討会を開いて、最後の報告になっております。
 だから、私は、当然これに沿った形の具体的な施策が出てくるのかということを期待したんですけれども、大きくそれは裏切られました。「在外被爆者の援護に関する当面の対応」というものが厚生労働省から示されました。これは本当にひどい中身です。予算は五億円ということになっているんですけれども、これを具体的にやっていけば委員共通の不合理を解決することができると、厚労省は自信を持って言えるのでしょうか。
    〔委員長退席、山本(有)委員長代理着席〕
伍藤政府参考人 昨年十二月に取りまとめられました在外被爆者に関する検討会報告書の中で、先生御指摘のように、人道上の見地からは、現在の居住地によって援護の程度に差を見ることは不合理であるというのが委員共通の考えであるというようなことが言われておりますし、別のところでは、「在外被爆者に関しては、今日まで日本国民全体が、国内被爆者に比し人道上、その援護についてやや無関心であった感は否めない。」こういったことも言われておりますし、こういった考えがベースになっておることは事実でございます。
 ただ、この検討会の中におきましても、今の被爆者援護法の適用をめぐっていろいろ議論がなされました。現行法の解釈ということにつきましては、国家補償あるいは社会保障、その他いろいろな観点から委員から御議論がございましたが、いずれの解釈論をとるにいたしましても、現在の被爆者援護法を直接に海外に居住する被爆者に適用するにはさまざまな困難な点があるというような点においてもおおむね委員の認識は一致をしておるということは、この報告書を読んでいただければおわかりになると思います。
 そういうことで、この報告書の中では、具体的にとるべき緊急の課題として、「在外被爆者が渡日して、必要な原爆医療を受けられるような条件整備を図るべきである。」こういったことでありますとか、「とりわけ、経済的事情で渡日が困難な者等に対する配慮が必要である。」こういったことを含めてさまざまな提言がなされておるわけでございます。
 こういった点を踏まえて、私ども、こういった被爆者が渡日をする際の旅費等を補助することも含めてさまざまな新たな施策の枠組みを平成十四年度からスタートさせたいというふうに考えておるところでございます。
中林委員 私の質問に答えていないんですよ。これでもって不合理を解決することができるとあなた方は自信を持っているのかと聞いているんですよ。
伍藤政府参考人 海外の被爆者にどういうことまですべきかということ、いろいろさまざまな議論があると思いますし、現在国内の被爆者に対して行われております施策が医療を中心にして、医療を提供する、そのための関連する健康管理に要する経済的な支援も行う、こういう枠組みになっておりますが、そういったことを踏まえて、海外の被爆者にどこまですべきかということは大変難しい問題がございます。
 そういったことを、現実問題として何ができるかということを考えて、今言いましたような、渡日をしていただいて、経済的な旅費等を支給しながら被爆者手帳を交付し、日本において必要な医療給付を行う、そうしたことを通じて被爆者を把握することを通じまして、これから、海外にいる被爆者にも、例えば日本の医師を派遣して海外で診療するといった海外の被爆者にふさわしい施策を講じていこう、そういうことの第一歩というふうに認識をしておるところでございます。
中林委員 やはり自信を持ってはあなた方は言えない分野があるというふうに思いますよ。
 それは、今回こういう政策が出たときに、韓国の被爆者協会の人は受け入れがたいということで実は受け入れを保留されています。これでは被爆者の皆さんの思いが実現できない。なぜならば、日本にとにかく旅費を上げるから健康管理手帳をとりに来いというようなことで、韓国に帰ったらその効力は停止してしまう、そういう考えをあなた方はお持ちなんです。
 被爆者援護法そのものは、国外に出たらその援護法の適用はないなどという規定はどこにもありません。あるのは一片の通達でしかない。これは一九七四年、局長通達というのが出されたわけですよ。何の効力もない通達ですよ。それを盾にしながら、援護法の適用を国外に出た場合は適用除外にするなどというようなことを言い続けてまいっております。
 あるいは、援護法をつくるときに日本共産党は対案を出しました。そのときに日本共産党は、在外の方々にも適用するようにという中身を持ったものを出したことについて、当時は厚生省ですけれども、厚生省の答弁は、在外の人には適用しないものだというようなことで、その国会のやりとりをもって海外の人には適用できない、そういうことになってしまっているんだというようなことをおっしゃっている。しかし、純然たる今ある援護法、これはどこにもそういう記述はありません。
 そこで、実はこの検討委員会を受けて、厚生労働省が出した「在外被爆者の援護に関する当面の対応」のところに、今係争中であるにもかかわらず、被爆者健康手帳が国内のみ有効であることの明記を法令上の整備の中で行うということを出されました。これは、係争中であるにもかかわらず、既成事実を法令上つくってしまおう、今の援護法の規定では全くそれが書いてないから、わざわざやろうという物すごく冷酷なものをここに盛り込もうとしたわけですけれども、聞きましたら、これは今回は書き込まなかったということになっているんですけれども、その事実、それで書き込まなかったのはなぜ書き込まなかったのか、その理由、その点を伺いたいと思います。
    〔山本(有)委員長代理退席、委員長着席〕
伍藤政府参考人 被爆者健康手帳を保有している方々が海外へ転出する場合、あるいは海外に転出した後また国内に転入してくるような場合、そういったことをそもそもこの法律が想定をしていなかったといいますか、今規定が全くないわけでありますので、そういったことを少しでも明確にするという観点から、本年四月一日に政令を改正し、それから、本日付で省令を改正いたしまして、そういう国内と海外との転出入の場合の必要な届け出規定等を整備する規定の整備を行ったところでございます。
 その検討の中で、今御指摘のありましたように、被爆者手帳に、この手帳が国内でのみ有効であるということを明記するかどうかということも、従来の私どもの解釈論といいますか立場からいたしますと当然検討課題の一つではございましたが、御指摘のとおり、被爆者援護法の国外適用の問題につきましては現在司法上のいろいろな争いが係属をしているところでもございますので、こういったことを配慮いたしまして引き続き検討することが適当ということで、今回はそういう規定を明記することは見送ったわけでございます。
中林委員 これは、在外被爆者の人たちを支援する多くの皆さんや、それから議員懇の中でも、こんなひどいことを書き込むなということを再三厚生労働省の方にも申し入れてまいりました。書き込まれなかったのはいいかもわからない。しかし、厚生労働省としては、七四年の通達を盾にとってやはり適用しないというこの立場をいまだに持ち続けているということは、本当に許されないというふうに思っております。
 韓国の原爆被爆者協会が今回の厚労省の提案の受け入れを保留したその理由として、一番苦しんでいるのは病気で日本にも行けない被爆者たち、この人たちとともに生きていくために、ともに援護と補償を受け取るためには受け入れることはできない、こういうふうに言っております。五月十四日から十六日まで、韓国の被爆者の方々二十人以上が来日されて、各方面へこの訴えをされました。
 その中で、特に一九九二年に日本政府の拠出した在韓被爆者医療支援金四十億円、これが二〇〇四年には枯渇するということになっているわけですね。だから、追加支援として九十億円の支援をしてほしいという要望をしておられるわけですけれども、厚労省はこれを前向きに検討されるおつもりはありますか。
伍藤政府参考人 御指摘の四十億円の被爆者拠出金につきましては、これは一九九〇年に当時の海部総理から盧泰愚大統領に対しまして、両国の将来に向けての友好と協力の象徴として提案をされました。いわゆるODA、経済協力の一環として実施をされたものであるというふうに承知をしております。
 この基金が今枯渇をしておる、十億円程度に目減りをしておるということも聞いておりますが、こういった従来の経緯から、この問題につきましては、基本的には外交上の問題でありまして、今後外務省において引き続き韓国政府あるいは大韓赤十字社との間で今後のことについて相談をされるものというふうに伺っております。
中林委員 将来に向けての前向きな支援のお金を、これはいわば政治的判断の中で四十億円というものの支援金が準備をされました。これは、私も行っていろいろお伺いしましたけれども、被爆者の方は、大体月一万円にもならないそういうお金ですけれども、しかし、大変喜んでいらっしゃる、枯渇することを大変心配もされております。
 そこで、大臣に最後、こういうふうに、いわば政治的な判断なんですよ。私は、昨年韓国に行ったときに、韓国の赤十字社総裁が言われた言葉が忘れられません。それは、日本人として天皇の名のもとで強制連行をされて、そして被爆をした、そうであるならば日本人として解決ができないものだろうかということを、韓国ソウルの赤十字社総裁がそのようにおっしゃいました。そのとおりだというふうに思うんですね。
 きょうはワールドカップ開催の日でもございます。そういう記念の日に当たり、森山大臣が、本当にこの被爆者の方々、もう高齢ですよ、座して死を待つのか、このようにおっしゃっている、そういう思いを受けとめていただきたい。韓国では毎年百人亡くなっていっているわけですよね。だから、国は控訴をいたしましたけれども、この控訴をぜひ取り下げていただく、きょう記念の日ですから、そういう決意を述べられると本当に日韓の友好が図られるのではないでしょうか。
森山国務大臣 日本人としてというお話がございましたが、先ほど先生の御質問の中にもありました森田さんのように、日本人の方でも在外の方には適用されないという事情もございまして、そこのところが大変難しい問題だと思います。
 昨年の二つの判決につきましては、国の主張が認められないということで控訴いたしましたが、この問題について国の主張に沿った判決をした広島地裁の判決もございます。したがいまして、高等裁判所の判断を仰ぐ必要があると思います。
中林委員 だから、私は大臣に、係争中はそういう答弁しか出てこない、そうじゃなくて、人間森山大臣としてのお考え、これはどうなんですか。本当にそういう被爆者の方を放置しておけないでしょう。いかがですか。もう一度だけその点をお伺いします。
森山国務大臣 大変お気の毒だとは思いますけれども、法律の問題というのは最終的には裁判所の判断を仰ぐというのが筋でございますので、先ほどの御答弁を変えるわけにはまいりません。
中林委員 終わります。
園田委員長 植田至紀君。
植田委員 社会民主党・市民連合の植田至紀です。
 きょう案件になっています国際受刑者移送法案については私どもも賛成でございますけれども、参議院での質疑等、議事録等も読ませていただきまして、若干疑問点等お伺いしていきたい、法案に即して、時間の許す限りでお伺いさせていただきたいと思います。
 まず、法務大臣の移送の判断、手続等についてですが、まず受入移送にかかわって、受入受刑者の同意、十四歳以上云々と四項目あるわけですけれども、法務大臣が相当と認める判断基準というのはどういうものなのでしょうか。
鶴田政府参考人 お答えいたします。
 受入移送の場合の相当性の判断についてでございますが、外国で服役している日本人受刑者の家族関係、生活歴等、あるいは対象受刑者の改善更生及び円滑な社会復帰の促進に関係する事情のほか、受入移送をせず、刑法五条を適用して我が国がみずから処罰すべき犯罪かどうか等についても考慮をしまして、個々具体的事案ごとにその相当性の判断をするということでございます。
植田委員 お伺いしたかったのは、参議院で、四月の十一日ですけれども、私ども社民党の福島議員の方から、本人が移送を希望しておって、なおかつ条件が整っているのに、相当でないという判断が生ずることはないだろうかという質問を、答弁されたのは鶴田局長ですからよく御承知だと思いますが、そこで、今具体的判断基準を幾つか御紹介いただきましたが、局長がこうおっしゃっているんですよね。「今、考えられるのは、例えば日本国籍を有すると、一応当該受刑者が日本国籍は有するものの、ほとんど生活の本拠地がその外国であって、家族もその外国に住んでいて、我が国とのつながり、結び付きが余りないと。本人は希望はしているんですけれども、実態を調べてみたらそういう場合というような場合も一つ考えられると思います。」と。
 恐らくこの種の場合、実際、資料にありますから頭数は聞きませんけれども、数は限られている方が、受刑者の数、何千人、何万人といるわけじゃないので、個々のケースごとにそれぞれ検討されると思うんですが、「余りない」というケースというのはどんなケースなんだろうかな。
 例えば、日本国籍は有しているんですけれども、実際の生活基盤は外国にあって、ほとんど結びつきがない。ただ、罪に服しているその人物が、これを機会にもう一度日本でやり直したいななんという希望を持たれる方もいらっしゃるだろうと思うわけですけれども、例えばこういうケース。そもそもの法の趣旨であるところの改善更生もしくは社会復帰の促進に資するんじゃないだろうかと思いますけれども、恐らく個々の事例に即して判断されるんだろうとは思いますが、いろいろなケースがあると思います。例えば今私が申し上げたようなケースなんというのは、どんな情状が判断されるんでしょうか。
鶴田政府参考人 委員が御指摘になりましたように、最終的には個々の事案ごとに判断しなければなりませんが、この法律の目的が改善更生と円滑な社会復帰ということですので、その受刑者がどこに社会復帰するのか、そこで健全な市民として立ち直っていくか、その判断が最後は一番重要ではないかと思いまして、そういうことを判断する上で、本人のこれまでの生活歴とか家族は一体どこなんでしょうか、そういったもろもろの事情を考慮しまして、最終的にはそういう基準で相当性の判断をするのが肝要ではないか、そういうふうに考えております。
植田委員 恐らく、本人の希望等々の要件を満たしておって、そうそう恣意的にだめだという判断はないだろうとは思いますけれども、ここは、例えば生活基盤も何もないけれども、御先祖さんの墓を守りながら最後の余生は日本で暮らしたいというようなこともあるだろうと思いますし、それは個々のケースごとではあるにしても、そうしたことについての判断というのにやはり配慮というものを加えていただきたいな。まずは、基本は、やはり本人がどういうこれから将来の生活設計をするのかというところに一つ視点を据えていただきたい、見据えていただきたいと思うわけです。
 ついでに聞くというわけではないんですが、今度は、では送出移送について、これは六項目ぐらい法案で要件がありますけれども、その際の法務大臣の判断基準、及び、仮に送出移送をやはりこれは相当と認められないと判断するケースというのはどういうものが想定されるのか、御教示いただけますか。
鶴田政府参考人 まず、一般的な送出移送の相当性に関する考え方ですけれども、我が国で服役している外国人受刑者の送出移送の場合は、やはりその者の改善更生、社会復帰の促進と同時に、他方で、我が国の裁判所が言い渡した刑罰の持つ応報機能や抑止機能が損なわれないように留意するということも一面あるわけであります。そこで、受刑者移送の目的や刑罰の機能等がよりよく発揮されるよう、関係する諸事情を勘案して、個々の事案ごとに相当性を判断するということになろうかと思います。
 それで、お尋ねの、どういう場合が相当性がないというふうに判断される可能性があるかということですが、送出受刑者について、我が国で捜査中の余罪があるというような場合は、それを処理してからでないと送出移送はできないということになりますし、また、被害者感情という問題がございまして、送出移送を必ずしも容認していないなというところの場合は、やはり相当慎重に判断せざるを得ないと思いますし、また、執行国に送り出してみたところ、何か著しく刑期が短縮される、早期に仮釈放されちゃった、そういうことが相当予想されるというような場合も、やはり移送は不相当というふうに判断をされる場合があるというふうに考えております。
植田委員 次に、受刑者の同意にかかわってお伺いしたいわけですが、手続にかかわる話はまた後でお伺いしますが、条約では受刑者の法律上の代理人が移送に同意していればオーケーということなんですが、この法案では本人ということになっているわけでございます。
 この点も、鶴田局長、御答弁されていますので御記憶かと思いますが、これは参議院の、同じく四月の委員会で公明党の浜四津先生がお伺いされたところなんですが、ここで鶴田局長は浜四津先生の問いに対して、「受入移送に同意するか否かの判断は、我が国に移送されて我が国の法令により外国刑にかかわる確定裁判の執行の共助を受けることを承諾するというものですから、さほど高度な判断能力を要する事柄ではない」、だから代理人ということじゃなくても本人ということで十分だ、そういう趣旨で「あえて代理人による同意制度を設ける必要がないというふうに考えたものでございます。」ということでございます。
 そういうことだろうというのは議事録を読んでいて理解はするわけですが、例えば、受刑者に同意の意思能力がない場合というのが全く想定できないのかということがあるかと思うのです。その場合、恐らくこの法律の構成でいけば、そもそも同意というものがないわけですから条件クリアできへんよということになるのですということになるのかもしれませんが、例えば疾病、病気等で判断能力がないんだけれども、その当該裁判国で治療を受けるよりは日本の医学水準の方がいいんではないか、どう見てもこれは日本に帰してやって治療を受けた方が適切ではないかということが、少なくとも客観的に考えられるケースなんというものがないんだろうかなと私はちょっと疑問に思ったわけなんですよ。
 そうなると、こうした場合も、実際この法律でいくと、本人の同意がないんだから、そもそも法務大臣に上げる以前の段階でそれは要件を満たしていないということになるのかもしれないけれども、こうした今私が申し上げたケースなんというのは恐らくレアケースだと思いますけれども、そういう場合は、同意がありませんから要件を満たしたということにならないのでそもそも話の俎上に上ってきませんよということになっちゃうと、これまた、法の趣旨であるところの改善更生、社会復帰の促進という観点からすると、やや反するようなケースになってしまうんじゃないのかなと。
 だから、そうした代理人というものが必要になるケースがまるっきり想定できないのかどうなのか。人道的に見てですよ。場合によっては、例えば今申し上げたようなケースもないことはないだろうと思うんですが、その辺いかがなんでしょうか。
鶴田政府参考人 お答えいたします。
 同意の代理について検討するときに、委員御指摘のように、病気というか精神的な障害で判断能力がない場合はどうするかというようなことも検討いたしました。
 ただ、心神喪失者の場合、刑事訴訟法四百八十条により必要的に刑の執行が停止されることになりますので、そういう精神状態で、心神喪失にあるという場合には、結局、我が国で受け入れるということが非常に難しい、不可能であるということから、制度としては代理人による同意というのは必要ないということで本案をつくりました。
 ただ、現実の問題として、精神状態により十分な同意能力がないのではないかという疑いのあるケースも、そう多くはないと思いますけれども想定はされる場合もあります。そういった場合には、必要に応じましてその本人に条約の内容、移送後の執行共助の方法等を説明して、本人が十分理解した上で同意を行うことができる能力があるか否かということをよく見きわめまして、その能力がないと認められるときには、その受刑者の取り扱いにつきましては、関係機関とも協議することなどいたしまして、個別事案ごとに適切に対応していきたいと考えております。
植田委員 一つはいわゆる心神喪失、精神的な面で御病気の方の場合もわかりますが、最後におっしゃった個々のケースごとに誠実に対応していきたいとはどういうことかということを聞きたいんです。
 というのは、病気等と私がお伺いしたのは、例えば、別にそういう精神的な問題ではなくて、病気にかかっていて、実際、もう意識がもうろうとしていて判断をすることができないというケースもあるんじゃないかということなんですね。あすをも知れぬ命だったら、最期は日本でいまわのときを迎えてもいいじゃないかというようなケースもあるかと思うのです。だから、何も心神喪失とかそういうことに限らずに、重要な病気にかかって、どうも治療の面でも大変だし、もうきょうあすかというような方もいらっしゃるでしょう、そういう場合どうするのかと。
 やはりどこかで法のすき間でこぼれ落ちてしまう人が出てくるんじゃないのかな、せっかく条約ではそうなっているのに、わざわざ日本の法ではこういうふうにしちゃったというところがちょっと疑問だったので、もう一回その辺、個別のケースにわたって申しわけないんですが、ちょっとお答えいただけますか。
鶴田政府参考人 お答えいたします。
 先ほどの心神喪失というのはある程度常態的に判断能力がないということでしょうけれども、一時的に病気になったといたしましても、回復すればある程度同意の判断ができる場合があると思いますので、そういったときには、本人の同意を得るべく対応するということになろうかと思います。
植田委員 何か話が非常に細かくなっちゃって申しわけないんだけれども、だから、今御答弁いただいたようなケースが想定できない場合もあるでしょうと。後で回復して聞けるんだったら回復を待てばいい、でも、どうもそんな状況じゃないよという場合、やはり人道的配慮というのは必要になるんじゃないですかということをお伺いしたんですよ。お願いできますか。
鶴田政府参考人 この法律の運用の問題というより、もうちょっと幅広いような感じがいたしますけれども、御指摘ですので、今後、法運用の過程でいろいろ考えてみたいと思います。
植田委員 ぜひ、個々のケースごとに判断する案件であるがゆえに、個々のケースが不利益をこうむらないような、そういうことをこれから検討していただかなければならないというふうに思うわけです。
 時間が五十三分までですか、もう一つ二つお伺いしたいわけですが、たしかきょうの質疑でもあったように思うんですけれども、いわゆる我が国の矯正内容に問題がないのかという点で、恐らく今規約人権委員会からどういう意見が出ているかということはもう御承知でしょうから申し述べません。それを受けとめて、それはそれとして、革手錠の話やら何やらということもいろいろと改善も図っておられるというお話でございますけれども、これは送り出し、また受け入れるわけですから、よその国との関係があるわけですから、実際、母国なり生活環境の同じところで受刑者の更生を図りやすくするということは重要なんですけれども、そもそも、その母国で人権が侵害されるようなことでは、これは相互でありますけれども、送り返しても、また受け入れても意味がないということになってしまいますし、実際、日本のそうした行刑施設での状況が、更生の実効性が薄い、人権保障も疑わしいということになると、なかなか応じる国が少なくなってしまうじゃないかという疑問も出てくるわけです。
 今回の法案を成立させ、施行させることを契機に、改めてそうした問題について、また九八年の規約人権委員会でも意見があったと思いますけれども、そのことを再度検証してもう一度洗い直してみるおつもりはないんでしょうか。
鶴田政府参考人 お答えいたします。
 人権委員会からいろいろ指摘された点につきましては一つの意見として謙虚に受けとめておりますが、その中で、所内規則等々の関係につきましては、我が国の刑務所におきまして、所内の安全を確保したり、また適切な処遇を行うという上でやはり必要、合理的なものもありますので、それについてはそういうものとして考えております。しかしながら、矯正の処遇は、常にいろいろな意見を聞きながら、改めるべき点があればそれは改めるという不断の努力を続けなければいけないところですので、常にそういった気持ちで対応していくというふうに考えております。
植田委員 教科書的な御答弁なんですが、要は、実際この法律が執行されて、かかる日本における受刑者に対する処遇に問題があるから、こっちが受け入れさせてくれ、帰らさせてくれといっても、嫌やという国があったら、これは本当にみっともない話になりますよね、そういうことが理由にされたら。そういうことがくれぐれもなきよう不断の努力をお続けになるということでございますので、不断にそれはチェックをしていただきたい。
 そういう意味で、かかる法案が出た以上は、今おっしゃった点で一点ひっかかりますのは、意見は意見として受けとめておくという趣旨で聞こえましたけれども、こうした規約人権委員会等の意見というものが、聞きおいておくというレベルで済まされない、現実問題起こってくるだろうということもやはり念頭に置いておいてほしいなと思います。それはもう結構です。
 あと、国外の受刑者の処遇にかかわってですけれども、法務省さんとしては、海外で犯罪を犯した者について実情をどこまでまず把握されていますか。ちょっと抽象的で申しわけありませんが。
鶴田政府参考人 お尋ねに直接かどうかわかりませんけれども、海外でどういう処遇がなされているのかといったことでお答えさせていただきたいと思います。
 海外で受刑する日本人の実情というのは必ずしも十分に把握しているわけではございませんが、一般的な外国の行刑処遇について申し上げますと、欧州の刑務所におきましては、各国によって多少の違いはありますけれども、警備度とか開放度に応じた数種のものがありまして、我が国の刑務所と異なりまして工場が少なく、収容区域は、多くの場合ワンフロアに居室と共有場所を設けた構造になっているというふうに承知しております。
 所内の生活では、外部交通、食事、衣類、行動規制の面では我が国よりも比較的自由ではないかと思いますが、また規律も厳しくないようですけれども、逃走とかあるいは暴力行為等の保安事故が多く、薬物使用も行われるような状況にある、一般的にはそういうふうな状況にあるのではないかというふうに承知しております。
植田委員 こちらも抽象的にお伺いしたので、そういうお答えなんでしょうが、それは言ってみれば地理のお勉強みたいな話でして、じゃ、具体的にこういうふうに聞けばお答えいただけるのかな。というのは、なぜ聞きたいかということを先に言っておきますね、時間もありませんから。
 要するに、実際、そうした海外で受刑をされている方の公判状況の把握や適切な必要なサポートを行っているのかどうなのかということを聞くための前段の質問としてお伺いしておったわけですが、具体的に、法務省から在外公館に出向している職員、そして現在法曹資格を持っている在外公館の出向者は何人かということをまずお伺いします。
 その上で、まとめて聞きますが、そうした方々が、今私が申し上げました公判状況の把握であるとか、そうした受刑者のニーズに合わせた必要なサポートというものを行っているのかどうなのかということ、二点お伺いいたします。
鶴田政府参考人 本年四月一日現在で、在外公館に出向している職員は五十六名でございまして、そのうち法曹資格を有している者は八名で、すべて検事出身者であります。
 海外で受刑する日本人に対する援護については外務省において領事業務の一つとして行っているものと承知しておりますが、なお、今申し上げました在外公館へ出向している法務省職員についても、ちょっと個々具体的なものまで把握しておりませんけれども、その職務に応じてそういった援護活動に従事しているというふうに承知しております。
植田委員 これも先月の参議院の法務委員会で矯正局長が、この種の質問に対して、「外国にいる日本人受刑者ということになりますと、その保護とかそういう問題はむしろ領事関係の事務として取り扱うべき話ではないかなという感じがします。日本のこの刑務あるいは矯正がそこまで職責権限が及ぶかということについては、ちょっと違うんではないかなという感じを持っています。」というふうにおっしゃいました。
 恐らく、そもそもそこまでいくと法務省というよりは外務省の領事関係の事務の一環だということなんでしょうが、仮にそうであれば、この法律を法務省が責任を持って出されているわけですから、少なくとも、例えば海外受刑者の個別の状況もわからないままで、六条に書いていたように、こういうのがありますから同意されますかといって、いきなり行って判こをぽんと押してもらうような話じゃないでしょう。実際、その受刑者の個別の状況を把握しているということが前提になるわけですから。そうでなければ、状況もわからずに同意もヘチマもないわけですので、少なくとも、今私が申し上げたような公判状況の把握や必要なサポートというのが当然、必然的に必要になると私は思います。
 今、それは領事関係の実務として取り扱うべきことだという話がありますけれども、それだったら、法務省としてこういう問題意識を持っておるんだがどうだと、外務省と調整すればいいだけの話なんじゃないでしょうか。そういう必要なサポートをやったらあかんのやったら別ですけれども、どうでしょうか、局長。
鶴田政府参考人 先ほどお答え申し上げましたとおり、日本人受刑者の保護につきましては、外務省において領事業務の一つとして行っているわけですけれども、法務省といたしましても、協力できることがあれば、外務省とも連携しながら可能な範囲で対応してまいりたいと考えております。今後どのような協力が可能であるかについては、よく外務省と十分協議した上、検討してまいりたい、かように考えております。
植田委員 そこで、外務省にもお伺いしますけれども、今まで領事関係の事務として、今私が申し上げたような、要するにそうしたそれぞれの受刑者に対するサポート、オランダであるとかスウェーデンであるとかでは、場合によっては収監されている方をお見舞いに行ったりとか、また訴訟援助もしているというような話も聞いておるわけですけれども、現在やっていないからけしからぬとかけしからなくないとかという話じゃなくて、そういう問題意識をまず外務省は領事関係の事務においてこれから必要な課題だなと認識されているかどうか。
 そして、法律をお出しになった法務省さんから、こうしたことについて考えなければならないなということの御相談があればちゃんと相談に乗って検討されるかどうか、その点だけちょっとお願いできますか。
小野政府参考人 お答えいたします。
 邦人が海外で逮捕、拘禁されたという場合に、まず、我が国在外公館では、直ちに、現地関係に対しまして事実関係を確認いたします。それから、当該邦人への面会等を行いまして、不当にその自由を奪われたりあるいは基本的人権を侵害されたりしていないか、あるいは、定められた法令に基づいて、きちっと司法手続にのっとって司法判断が下されているか等を確認することとしております。これは一応、マニュアルといいましょうか、赴任前の研修等を通じて、そこのところは徹底してきているわけでございます。
 それから、本人の希望、例えば、弁護人や通訳の紹介の要否、それから家族等関係者への通報、面会あるいは差し入れの希望等、これも聴取することとしているわけでございます。当局による取り扱いの状況ですとか健康状況、これも調査するという措置を講じてきております。
 先生御指摘のように、本条約の締結に伴いまして、海外邦人の受刑者の支援体制に遺漏なきを期すよう、今後とも、法務省と協力しながら対応していきたいというふうに考えております。
植田委員 幾つか質問やり残しましたが、最後、一問だけ法務大臣にお伺いして終わりたいわけです。
 今の部長さんのお話、これは本来、領事事務ということですから外務省さんにお願いしたわけですけれども、ここは、国際受刑者移送法ができますと、最終判断するのは法務大臣なわけですから、外務省の領事事務ではございますけれども、こういうふうに私ども矯正局としては把握しておりますという話をこれからはせなあかんわけですよね。それは、それぞれの施設がどんな状況になっているかということについて知っていますということじゃなしに、個々の事例についてそういうふうに聞いておりますということを知っておかないことには、少なくとも判断の素材を法務大臣に提供することはできないわけですから、そこはやはりこれから緊密な連携をとっていただきたいわけですが、今御説明のあった水準のフォローでいいかどうかも含めて、かかる法案を出した以上は、今後、検討していかなければならない課題があるかと思います。
 これは福島さんも参議院で紹介しておった、例えば、オランダの保護観察所でいろいろなサポートをしている事例でありますとか、スウェーデンで外交官が収監されている同国人を見舞ったりしている事例。しかも、今お伺いしますと、領事事務とはいいましても、この種の問題は、やはり一定の法曹資格を持った方、そうしたプロが対応してあげないことには行き違いもあるかもしれません。そうした人員の配置の体制も含めて、今後、検討すべき課題はあるかと思います。その点についての法務大臣のお考えをお伺いできますか。
森山国務大臣 御指摘のようないろいろな問題が考えられると思います。外務省ともよく連携をとりまして、十分に行き届きますように努力したいと思います。
植田委員 簡単な答弁でしたけれども、行き届くように努力すると。その経過についてはまた聞く機会があるかもしれませんが、この法案については基本的に賛成でございますので、以上で終わらせていただきます。
園田委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
園田委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
 内閣提出、参議院送付、国際受刑者移送法案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
園田委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
園田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
     ――――◇―――――
園田委員長 次に、内閣提出、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律案、平岡秀夫君外五名提出、裁判所法の一部を改正する法律案及び検察庁法の一部を改正する法律案並びに水島広子君外五名提出、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。
 順次趣旨の説明を聴取いたします。森山法務大臣。
    ―――――――――――――
 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
森山国務大臣 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。
 心神喪失または心神耗弱の状態で殺人、放火等の重大な他害行為が行われることは、被害者に深刻な被害が生じるだけではなく、精神障害を有する者がその病状のために加害者となるという点でも、極めて不幸な事態です。このような者につきましては、必要な医療を確保し、不幸な事態を繰り返さないようにすることにより、その社会復帰を図ることが肝要であり、近時、そのための法整備を求める声も高まっております。
 そこで、本法律案は、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者に対し、その適切な処遇を決定するための手続等を定めることにより、継続的かつ適切な医療の実施を確保するとともに、そのために必要な観察及び指導を行うことによって、その病状の改善とこれに伴う同様の行為の再発の防止を図り、もって本人の社会復帰を促進しようとするものです。
 この法律案の要点は、以下のとおりです。
 第一は、処遇の要否及び内容を決定する審判手続の整備についてです。
 心神喪失等の状態で殺人、放火等の重大な他害行為を行い、不起訴処分をされ、または無罪等の裁判が確定した者につきましては、検察官が地方裁判所に対してその処遇の要否及び内容を決定することを申し立て、裁判所におきましては、一人の裁判官と一人の医師とから成る合議体が、必要に応じて精神障害者の保健及び福祉に関する専門家の意見も聞いた上で審判を行うこととしています。この審判におきましては、被申立人に弁護士である付添人を付することとした上、裁判所は、精神科医に対して被申立人の精神障害に関する鑑定を求め、この鑑定の結果を基礎とし、被申立人の生活環境等をも考慮して、処遇の要否及び内容を決定することとしています。
 第二は、指定入院医療機関における医療についてです。
 厚生労働大臣は、入院をさせる旨の決定を受けた者の医療を担当させるため、一定の基準に適合する国公立病院等を指定入院医療機関として指定し、これに委託して医療を実施することとしています。指定入院医療機関の管理者は、入院を継続させる必要性が認められなくなった場合には、直ちに、裁判所に退院の許可の申し立てをしなければならず、他方、入院を継続させる必要性があると認める場合には、原則として六カ月ごとに、裁判所に入院継続の必要性の確認の申し立てをしなければならないこととし、あわせて、入院患者側からも退院の許可等の申し立てができることとしています。
 また、保護観察所の長は、入院患者の社会復帰の促進を図るため、退院後の生活環境の調整を行うこととしています。
 第三は、地域社会における処遇についてです。
 退院を許可する旨の決定を受けた者等は、厚生労働大臣が指定する指定通院医療機関において入院によらない医療を受けるとともに、保護観察所に置かれる精神保健観察官による精神保健観察に付されることとしています。
 また、保護観察所の長は、指定通院医療機関の管理者及び患者の居住地の都道府県知事等と協議して、その処遇に関する実施計画を定め、これらの関係機関の協力体制を整備し、この実施計画に関する関係機関相互間の緊密な連携の確保に努めるとともに、一定の場合には、裁判所に対し、入院等の申し立てをすることとしています。
 以上が、この法律案の趣旨であります。
 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに可決くださいますようお願いいたします。
園田委員長 水島広子君。
    ―――――――――――――
 裁判所法の一部を改正する法律案
 検察庁法の一部を改正する法律案
 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
水島議員 ただいま議題となりました精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律案並びに裁判所法の一部を改正する法律案及び検察庁法の一部を改正する法律案の趣旨を説明いたします。
 ノーマライゼーションは二十一世紀の日本における重要な課題です。本法案は、大きく立ちおくれた我が国の精神保健福祉施策を推進し、司法と精神医療の連携を改善することによって、ノーマライゼーションの実現に寄与しようとするものです。
 以下、本法案の内容を簡単に御説明いたします。
 第一に、起訴前、起訴後の精神鑑定の適正な実施を目的として、最高裁判所と最高検察庁にそれぞれ司法精神鑑定センターを設置し、鑑定人の選定事務、個別の精神鑑定に係る情報または資料の調査研究及び分析等を行います。
 これにより、鑑定人の選任に関して裁判官や検察官の負担を軽減することができるとともに、鑑定精神科医の偏りや鑑定結果のばらつきなどを防ぐことができると考えます。また、情報の収集や分析によって、より高度の精神鑑定技能を開発していく道を開くことも期待できます。
 第二は、判定委員会の設置です。
 都道府県に新たに判定委員会を置くものとし、精神保健指定医のうちから都道府県知事が任命する委員で構成します。委員二名の合議体で、措置の入退院、措置解除の判定を行い、委員の意見一致が条件になっております。
 第三に、現行の措置診察が極めて限られた情報の中で慌ただしく行われているという現状を踏まえ、精神保健福祉調査員を新設し、措置診察の必要性を判定するための調査及び判定委員会の求めに応じたさまざまな調査を専門的な立場から行い、より厳格な措置入院の判定をサポートします。
 第四に、人員配置基準の低い精神科の病棟では、人手の少なさゆえに十分な医療を施すことができないため、精神科集中治療センターを指定します。
 これは、通過施設として位置づけられ、重大な犯罪行為の有無や再犯のおそれを要件とするものでなく、あくまでも治療上の必要から手厚いマンパワーで医療を提供する精神科ICUです。
 第五に、社会復帰支援体制の強化として、精神障害者の保健及び福祉に関する業務を行う者の相互連携を図ります。
 日本にも真のノーマライゼーションが一日も早く実現するよう、何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますことをお願い申し上げまして、趣旨の説明といたします。
園田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後一時三分散会


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