衆議院

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第10号 平成15年5月7日(水曜日)

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平成十五年五月七日(水曜日)
    午前十時一分開議
 出席委員
   委員長 山本 有二君
   理事 佐藤 剛男君 理事 塩崎 恭久君
   理事 園田 博之君 理事 吉田 幸弘君
   理事 河村たかし君 理事 山花 郁夫君
   理事 漆原 良夫君 理事 石原健太郎君
      太田 誠一君    小西  理君
      左藤  章君    笹川  堯君
      下村 博文君    中野  清君
      平井 卓也君    平沢 勝栄君
      保利 耕輔君    星野 行男君
      保岡 興治君    吉川 貴盛君
      吉野 正芳君    鎌田さゆり君
      中村 哲治君    日野 市朗君
      水島 広子君    山内  功君
      木島日出夫君    春名 直章君
      保坂 展人君    徳田 虎雄君
      山村  健君
    …………………………………
   法務大臣         森山 眞弓君
   法務副大臣        増田 敏男君
   法務大臣政務官      中野  清君
   最高裁判所事務総局総務局
   長            中山 隆夫君
   最高裁判所事務総局民事局
   長
   兼最高裁判所事務総局行政
   局長           園尾 隆司君
   最高裁判所事務総局家庭局
   長            山崎  恒君
   政府参考人
    (内閣官房内閣審議官
    兼文化庁長官官房審議
    官)          森口 泰孝君
   政府参考人
   (司法制度改革推進本部事
   務局長)         山崎  潮君
   政府参考人
   (警察庁警備局長)    奥村萬壽雄君
   政府参考人
   (法務省大臣官房司法法制
   部長)          寺田 逸郎君
   政府参考人
   (法務省民事局長)    房村 精一君
   政府参考人
   (法務省刑事局長)    樋渡 利秋君
   政府参考人
   (公安調査庁次長)    栃木庄太郎君
   政府参考人
   (特許庁長官)      太田信一郎君
   参考人
   (毎日新聞社論説委員)  三木 賢治君
   参考人
   (弁護士)        杉井 厳一君
   法務委員会専門員     横田 猛雄君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月二日
 辞任         補欠選任
  樋高  剛君     山田 正彦君
同月七日
 辞任         補欠選任
  後藤田正純君     平井 卓也君
  不破 哲三君     春名 直章君
同日
 辞任         補欠選任
  平井 卓也君     後藤田正純君
  春名 直章君     不破 哲三君
同日
 理事樋高剛君同月二日委員辞任につき、その補欠として石原健太郎君が理事に当選した。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 理事の補欠選任
 政府参考人出頭要求に関する件
 裁判の迅速化に関する法律案(内閣提出第九八号)
 民事訴訟法等の一部を改正する法律案(内閣提出第六六号)
 人事訴訟法案(内閣提出第六七号)


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     ――――◇―――――
山本委員長 これより会議を開きます。
 理事の補欠選任についてお諮りいたします。
 委員の異動に伴い、現在理事が一名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 それでは、理事に石原健太郎君を指名いたします。
     ――――◇―――――
山本委員長 内閣提出、裁判の迅速化に関する法律案、民事訴訟法等の一部を改正する法律案及び人事訴訟法案の各案を議題といたします。
 本日は、各案審査のため、参考人として、毎日新聞社論説委員三木賢治君、弁護士杉井厳一君、以上二名の方々に御出席いただいております。
 この際、参考人各位に委員会を代表して一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。
 次に、議事の順序について申し上げます。
 まず、三木参考人、杉井参考人の順に、それぞれ十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。
 なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得て発言していただくようお願いいたします。
 それでは、まず三木参考人にお願いいたします。
三木参考人 毎日新聞で司法などを担当しております論説委員でおります三木賢治でございます。きょうは、よろしくどうぞお願いいたします。これまで事件や裁判を取材してきた私なりの経験をもとに私見を述べさせていただきたいと思います。
 用意した原稿を読ませていただきます。
 昔から、裁判の長きはなきに等しいと言われてまいりました。この間、最高裁を初め関係機関が開廷期日の間隔を短くしたり、集中審理などによって短縮化を図る努力を重ねてきたことは十分承知いたしておりますけれども、それでもまだ依然として長期化する裁判が少なくないのが実情だと思います。
 つい最近も、オウム真理教による一連の事件の首魁とされる教祖、麻原彰晃こと松本智津夫被告の論告求刑公判が開かれたばかりですが、求刑までに初公判から七年、逮捕からですと八年が既に経過しております。来年の早い段階で判決が言い渡される見通しとはいえ、極刑が予想される事件だけに控訴、上告が当然見込まれるところであり、確定判決が下されるまでには優に十年以上の年月を要することは必至の情勢であります。
 御承知のように、刑法には公訴時効の規定があり、年月の経過とともに法的安定性が回復されたり、証拠が散逸することなどを理由に刑罰権が消滅するとの考え方が定着しております。時効期間は、死刑の場合、犯行時から十五年です。その時効成立に匹敵するような年月をかけなければ確定判決が得られない刑事裁判が法治国家においてまかり通っている現実は、不可思議であり、理不尽としか言いようがありません。
 被害者救済の観点からも、司法にはでき得る限り早い決着が求められております。事件の被害者や最愛の家族を失った遺族の方々が、遅々として進まぬ裁判をどのような気持ちで見守っているかと考えただけで心が痛みます。
 それなのに、法曹関係者の間では、松本被告の事件については、十三もの罪で起訴され、しかも被告人が否認している割には裁判の進行がスムーズだとする見解が少なくないのが実情なのですから、一般の市民としては、いよいよやりきれません。
 こうした法曹人と一般市民との意識の乖離の解消こそ、現在政府が進めている司法制度改革の中で真っ先に解決されねばならない問題であります。そのためにも、裁判の迅速化は避けては通れない問題です。
 政官財界を巻き込んだ戦後最大級の疑獄とされるリクルート事件の主役、江副浩正被告の公判も、起訴から一審判決まで十四年がかかりました。一国の首相を退陣に追い込んだ疑獄にもかかわらず、事件の風化が叫ばれる中での断罪となったことは、返す返すも残念でなりません。汚職事件で期待される一罰百戒の効果も、長引いた裁判のおかげで薄らいでしまったと言わざるを得ません。
 一昨年のデータによりますと、刑事訴訟全体の平均審理期間は三・三カ月で、否認事件に限っても九・七カ月となっております。また、審理期間が二年を超した事件は、被告人数にして〇・四%にすぎないそうです。
 この数字を根拠に、裁判迅速化法案に対しては立法事実がないとの反論があることを承知いたしておりますが、だからといって、決して刑事裁判が全般的に迅速に処理されているわけではないことに御注視いただく必要があると思います。
 刑事事件の圧倒的多数を占めているのは、窃盗、覚せい剤取締法違反など、言ってみればありふれた犯罪です。これらは、法の適用などに大きな問題があることは少なく、基本的には開廷回数が二、三回で判決が言い渡されております。自白事件の平均開廷回数は、一昨年の場合、二・四回だったとのデータもございます。
 しかしながら、新聞、テレビのニュースをにぎわし、社会の関心を呼んだ事件についての裁判は決して速やかには進行されておりません。起訴後、初公判までの準備期間に半年、結審後、判決までに半年はかかるのが常ですし、死刑が予想されるような凶悪事件で被告人が否認したり、政治家の汚職事件では、審理期間が優に一年を超しています。いわゆる大事件の裁判では、法案が目安とするところの二年間をクリアしていないケースが少なくないのです。
 結局、圧倒的多数を占めるありふれた事件の裁判が短期で終わるために、全体の審理期間の数値を押し下げておりますが、注目すべき事件の公判ほど長期化しているわけです。和歌山のカレー事件の裁判も、既に初公判から三年七カ月が費やされております。
 民事訴訟でも、似たような傾向が指摘できようかと思います。
 一昨年の統計では、民事訴訟全体の平均審理期間は八・五カ月であり、事実関係に争いがあって証人調べが行われたような事件に限っても十九・二カ月で審理が終了しております。審理期間が二年を超えたものは全体の七・二%にすぎません。
 そこで、刑事訴訟同様に立法事実がない、わざわざ裁判迅速化法をつくる必要はないとの意見も生まれるわけですけれども、これも、争いの少ない事件数が大多数を占めているがために、平均審理期間の数値を引き下げていることを見逃してはなりません。医療過誤や建築関係の訴訟など判断に専門知識を必要とするような事件では、裁判が長期化する傾向が否めません。
 口頭弁論を傍聴しますと、審理そのもので時間がかかるというよりも、弁護士らの多忙を理由に裁判が遅延する傾向もうかがえます。
 と申しますのも、裁判長が原告、被告双方の代理人の弁護士の都合を聞きながら次回口頭弁論の期日を決める際のことですが、双方が不都合を連発するために、たちまち次回期日が一月も二月も先に設定されてしまうことが珍しくありません。法曹関係者、とりわけ一部の弁護士が、裁判をスピードアップしようとの意欲を欠いており、そのために裁判が長引く傾向も否定できないと思います。
 民事訴訟の場合は、紛争の当事者に、我が国の裁判制度がはなから期待されていない側面があることも見逃すわけにはいきません。よい例が、貿易に絡むトラブルが起きた場合、大手企業の訟務担当者の多くは、相手が外国企業ならば、日本国内で訴訟を起こすことにこだわらない。訴訟システムについての知識があり、弁護士の選任が容易な米国などならば、むしろ相手国での裁判を優先するとさえ言われております。
 日本の裁判は時間がかかり、弁護士費用もかさむから、米国などで争った方が得策という考え方ですが、法治国家の国民が自国での裁判を選ぶことにちゅうちょしている現実は明らかに異常ですし、情けないことでもあります。その昔、先達先哲が裁判権を獲得するために重ねた労苦を踏みにじる行為とも言えましょう。自国民から信頼されぬ裁判制度は抜本的に問い直されてしかるべきなのです。
 国内での貸し金や手形をめぐる紛争では、本来原告となるべき立場の人や企業が、解決を裁判所に求めず、サルベージ屋と言われる取り立て業者に債権の回収をゆだねる傾向があることもゆゆしき問題です。一般に、サルベージ屋は債権額の半額を手数料としていると言われます。つまり、百万円の回収を頼み、うまく回収できたところで、債権者には五十万円しか入らない。それでも、いつ終わるかわからない裁判で争い、弁護士に報酬を支払うよりはましだとの考えが広がっているわけです。
 当然のことながら、サルベージ屋の多くは暴力団と何らかの関係があると言われておりますが、バブル経済時代には、名の通った企業までが、みずからの利益のためにサルベージ屋を頼み、結果的に暴力団につけ入るすきを与えたり、経済やくざと呼ばれる暴力団を肥え太らせる役割を果たしてきたと指摘されております。一部企業と暴力団との間には昔からのくされ縁もあり、すべてが裁判のあり方に起因しているとは申しませんが、裁判が信頼されていないために、結果的にアングラ勢力を助長してきた側面も否定できないと思います。
 市民感覚で申せば、裁判がどのぐらいの期間で決着するのか、あらかじめ提示されないと、不安で提訴がしにくいものなのです。長引けば、その間いろいろと煩わしい思いをしなくてはならないというばかりでなく、費用もかさむと考えられているからです。
 その意味でも、裁判迅速化法によって大方の裁判がスピードアップすることになれば、裁判所は信頼を回復することが可能だと考えます。一審判決まで二年というめどについては、一年については審理不尽となる事件が少なくないように感じられますし、三年となれば迅速化にならないと映ることを勘案すれば、妥当な線と言ってよかろうかと思います。
 もちろん、迅速化に重きを置く余り、審理や証拠調べが不十分な手抜き裁判がまかり通るようでは言語道断です。裁判所はかえって国民の信頼を失うこと必定です。昨今、訴訟件数の増加を背景に、証人調べや鑑定が十分に行われていないとの批判もあるだけに、日弁連などが、迅速化ではなく拙速化だと懸念するのは無理からぬところです。法案審議に当たっては、迅速化と充実化がセットにされねばならないことを改めて確認しなければなりません。
 要するに、黒白のはっきりしている事件はいたずらに審理が引き延ばされないように努める、争いが複雑多岐にわたり、二年では到底終結しない事件は、長期化することを明確にし、あらかじめ判決言い渡しの予定期日を示すことが肝要と考えます。二年は大切な努力目標ではあるが、拙速を招く懸念があればこだわらないというのが原則でなければならないと思います。もっとも、上訴を踏まえれば、一審の二年という期間も決して短くはないということも忘れては困ります。
 裁判の迅速化を図るには、何よりも法曹人の意識改革が必要です。松本被告の事件で七年で論告求刑まで行けば上々という浮世離れした感覚は改めてもらわなくてはなりません。その上で、裁判所の体制や訴訟の進め方の改革を進めなければなりません。現状のままでスピードアップだけを目指せば、それこそ拙速化を招きます。
 何はさておき、裁判官の大幅増員が不可欠です。東京地裁の場合だと思いますが、裁判官一人の手持ち事件が平均百八十件にも達しているようなありさまでは、遅滞は避けられません。もちろん、裁判官だけでなく、それに伴って、検事、弁護士もふやさなければなりません。
 裁判所の運営にも工夫が必要で、今後、刑事裁判に裁判員制度が導入され、職業を持つ市民が裁判に参画することを考えれば、現在のように土曜、日曜、祝日に開廷しないでいてよいとも思えません。休日開廷は、夜間の審理とともに、検討すべきテーマと思います。
 刑事訴訟については、刑事訴訟法の改正作業が始まっていますが、迅速化のために、初公判前に争点を整理し、当事者間で立証、反証の計画を明らかにする努力が必要だと思います。
 また、否認事件の多くで自白調書の信用性が争われている現実に照らせば、取り調べ室にビデオカメラを持ち込み、取り調べの状況を撮影して透明化を図るといった工夫も求められます。検察庁でもいろいろと検討されているようですが、捜査段階からの思い切った改革が不可欠です。
 民事訴訟では、提訴予告通知制度の新設などが検討されておりますが、当事者が事前に証拠を開示し合うシステムや、ADR、裁判手続外の紛争解決手段の導入なども推進して、全体の訴訟件数を抑制する工夫も欠かせないと思います。裁判所の敷居を低くするためには、提訴手数料の引き下げ、弁護士報酬の明瞭化などもあわせて進めなければなりません。
 結局、裁判迅速化法は、裁判のスピードアップを図るための基本方針を定めたものにすぎないと位置づけられねばなりません。刑事訴訟法、民事訴訟法など関係法令の改正、整備、さらに、法曹人口の大幅増員などの司法制度改革と相まって、初めて裁判迅速化は実現へと動き出すのです。
 私は、司法改革は富士登山のようなものだと考えています。吉田口、須走り口など数ある登山口のどこから登ろうが、登りきわめれば同じ頂上にたどり着く。ロースクール開設という登山口から登っても、裁判員制度導入という登山口から登っても、目的とする山頂は裁判の民主化であって、法曹人に専横的にゆだねられてきた裁判を市民に開かれたものに改めることであらねばならないのが改革の定めです。どのコースをたどろうと、登山中は、裁判を市民のものとするための努力が求められているのだと思います。
 裁判迅速化法もまた、司法制度改革につながるメーンの登山口の一つだと思います。目指すのはスピードアップのようでありながら、実際に求められているものは、閉ざされていた裁判を市民に大きく開くための努力であると思います。
 その意味でも、最後になりましたが、法案で最高裁が行うことになっている検証につきましては、法曹人だけにゆだねるのではなく、一般の市民の目でも、迅速化が関係者の怠慢の隠れみのにされていないか、迅速化をさらに推し進めるために講ずるべき手だてはないかといったことを点検するシステムを確立することが肝要だと思います。
 以上で終わります。(拍手)
山本委員長 ありがとうございました。
 次に、杉井参考人にお願いいたします。
杉井参考人 日弁連の司法改革実現本部事務局長をしております杉井でございます。よろしくお願いいたします。
 裁判の迅速化に関する法律案外二案についての意見陳述ということですが、特に今申し上げた裁判迅速化法案に中心的に意見を申し上げさせていただきまして、あとは質疑に応じさせていただいて、民訴法改正、人訴法などについて述べさせていただきます。
 まず第一に申し上げたいのは、この裁判迅速化法案につきましては、裁判の適正、充実と迅速化を一体として実現する法律に修正していただきたいという点であります。
 日弁連は、このたびの司法制度改革に当たりまして、司法制度改革推進本部が審議会意見書に基づいて行う諸立法を積極的に推進する立場で取り組んでおります。司法制度改革推進法は、推進本部の行う司法改革立法について、司法制度改革審議会の意見書の趣旨にのっとって行われる司法制度改革と基盤の整備と定めております。すなわち、推進本部の立案する立法は、審議会意見書にのっとったものであることが必要であります。
 ところで、審議会意見書は、お手元の参考資料五号の十五、二十四ページにありますように、民事裁判制度については、まず適正、迅速かつ実効的な司法救済という観点から民事裁判を充実、迅速化すること、あるいは、刑事司法の目的は、公正な手続を通じて事案の真相を明らかにし、適正かつ迅速に刑罰権の実現を図ると述べています。また、同じ資料の二十八ページには閣議決定された司法制度改革推進計画がありますが、民事司法制度の改革も刑事司法制度の改革も、いずれも第一は「民事裁判の充実・迅速化」「刑事裁判の充実・迅速化」とされております。
 さらに、同じ資料の六十四ページに審議会会長で推進本部顧問会議座長の佐藤幸治先生の新聞インタビューが載っておりますが、「充実と迅速は表裏一体の関係にあり、決して矛盾するものではない。充実なくして迅速なし、迅速なくして充実なし。」と述べておられます。
 充実と迅速は相反するものではありません。充実をこの法案に入れたら迅速があいまいになるというものでもありません。ぜひ法案一条の目的条項の「迅速化」を「充実・迅速化」という形に修正いただくようにお願いしたいと思います。
 二番目に、長期化している裁判を充実、迅速化するためには司法インフラの拡充と法制度の整備、改革が不可欠であることについて申し上げたいと思います。
 この点では、まず裁判の審理期間について正確な現状を認識いただいて、これに基づいて裁判を充実、迅速化する方策を立てていただきたいと考えます。
 今の三木参考人からも御意見がありましたが、マスコミなどによって取り上げられる事件は、社会的影響の大きな事件です。したがって長期裁判が多いことから、一般には裁判は長いものだというふうな印象を与えています。しかし、多くの裁判は迅速に解決されております。資料の六十一、二ページにありますように、世界的に見ても決して長いということはありません。二年を超える事件は、先ほども話がありましたが、民事事件で七・二%、刑事で〇・四%というわずかな事件です。
 もう一つ注目していただきたい数字は、資料の一ページにありますが、民事事件の全事件の平均審理期間は、平成十四年には八・三カ月、十年前に比べて約二カ月短縮しております。また、人証調べをした民事事件、つまり争いのある事件の審理期間の平均も十九カ月です。刑事事件では、平成十四年の全事件の一審平均審理期間は三・二カ月になっています。つまり、すべての事件を平均しても、既に審理期間は二年を大幅に下回っていて、しかも短縮化の傾向にあることは間違いない事実であります。
 このような審理期間の短縮化は関係者の努力や工夫によるもので、歓迎すべきものではありますが、他方で、運用改善だけによる審理期間の短縮化を図る余り、裁判の適正、充実や当事者の納得のいく裁判という点では弊害が生じていることも事実です。この点は、お手元にお届けいたしました当連合会の作成した資料集六ページにおいて、大阪における例を挙げて具体的に説明しております。一言で言えば、事件数はふえて裁判官の数は減る中で審理期間が大幅に短くなっているというものです。本人尋問や証人尋問をしない事件がふえ、検証と鑑定は三分の一になった、裁判の手抜きによる迅速化ではないかという御意見であります。
 裁判の中には、どうしても時間のかかる事件があります。これは、医療過誤訴訟や建築紛争、知的財産権訴訟、そして公害や薬害、原発訴訟、行政相手の訴訟などをお考えいただければわかると思います。もともと多数の当事者がいたり、複雑、専門的な事件ですので、当然に多くの時間がかかります。のみならず、証拠が偏在しているということで実質的に当事者が対等でないという状況の中で、できるだけこれを平等に扱う配慮が必要です。これらの事件を一律に二年以内のできるだけ短い期間内に終わらせるということにすれば、当事者の納得が得られないだけでなく、正義に反する結論あるいは間違った結論を導く可能性があります。
 私どもは、このような長期化している裁判をまず充実、迅速化する方策を具体的に定めていただきたい。この法律はそういう法律であるべきだと思います。
 まず第一に、先ほど三木さんも言いましたが、裁判官、検察官の増員を初めとした裁判所、検察庁の人的、物的体制の拡充をして、体制的に充実、迅速化できることにすることが不可欠です。
 第二に、証拠の偏在を正す法制度の整備、改革が必要です。民事裁判でいえば、民事訴訟法改正で検討されている提訴予告制度に基づく証拠収集活動に加え、文書提出命令の改正、あるいはさらなる証拠収集手続の拡充が必要です。刑事裁判でいえば、検察官の手持ち証拠の開示によって争点整理を充実すること、あるいは捜査の可視化による捜査機関の作成する調書に関する争いをなくしていくこと、公判中心主義に基づいた調書に頼らない審理手続に変えることなどが法制度改革の中心だろうと思います。
 そういう意味で、この法律は、裁判を充実、迅速化するための裁判所、検察庁の司法インフラの拡充と法制度の整備、改革を、少なくとも第二条の期間目標の施行と同時に実施していただく法律にする、そのための条文を法文上に明らかにしていく必要があろうと思います。
 三番目は、当事者の責務規定の削除の問題であります。
 法案二条一項は、第一審の訴訟手続については二年以内のできるだけ短い期間内にこれを終局させることを迅速化の目標としていますが、この期間目標をすべての裁判にしゃくし定規に当てはめるということでは、審理不十分なまま切り捨てるという大きな弊害が生ずるおそれがあります。特に二条一項の裁判期間の目標が、第六条の裁判所の責務、第七条の当事者等の責務の規定に取り入れられて、これらの責務とされている点についてはさまざまな問題があります。
 法案の六条は、受訴裁判所は可能な限り裁判の迅速化に係る第二条第一項の目標を実現するよう努めるものとするとしています。他方、本日審議されている民事訴訟法改正案では、複雑な事件などにおいて裁判所は審理計画を定めなければならないということになっています。そして、これに反した攻撃防御方法を却下できることになっています。この二つの規定の関係はどうなるのでしょうか。少なくとも民訴法上の審理計画の運用に当たっては、裁判所が本法案六条に定められた責務を盾にして、事件の内容にかかわりなく、すべての事件に画一的に二年以内のできるだけ短い期間に判決言い渡しまでできる審理計画を立てるようなことがあってはならないと思います。そのための具体的な手当てをしていただく必要があります。
 当事者の責務の問題に関して法案七条は、当事者、代理人、弁護人は可能な限り裁判の迅速化に係る第二条一項の目標が実現できるよう手続上の権利は誠実にこれを行使しなければならないとしています。これは立法当局の御説明にあるように、刑訴規則一条二項の、「訴訟上の権利は、誠実にこれを行使し、濫用してはならない。」及び民訴法二条の、「当事者は、信義に従い誠実に民事訴訟を追行しなければならない。」を取り入れた規定です。
 御案内と存じますが、この刑訴規則と民訴法二条の規定は訴訟法上の信義則規定と言われ、既にこれまで、具体的な要件のもとに、申し立てや攻撃防御方法の却下など、具体的な法的効力を認める判決も出されています。刑訴規則一条二項については、最高裁の確定した判例もあります。そういう意味では、本法案七条が、右の刑訴規則一条二項と民訴法二条における当事者の信義誠実義務に関する新たな要件を定めることにならないか、このような点が心配になります。この点の手当てが必要です。
 なお、立法当局は、本法案七条の合憲性について、この規定は刑訴規則で既に定められているから問題ないというふうに答弁していますが、しかし、刑訴規則一条二項は抽象的な信義誠実義務を定めているだけですが、本法案七条は、これに「迅速化に係る第二条第一項の目標が実現できるよう、」という具体的な期限目標を実現することを誠実義務の中身としていますので、刑訴規則の規定をはみ出した部分があります。したがって、刑訴規則一条二項が既にあるからというのは合憲性を説明する理由にならないと思われます。
 この規定は、証拠が一方の当事者に偏っているさまざまな事件の当事者や、死刑判決も考えられる重罪事件で無罪を主張する被告人、そしてこれらの弁護人、代理人に対して極めて過酷な裁判を強いることになります。したがって、日弁連は、少なくとも当事者に対してこのような責務を課すということはぜひやめていただいて、削除していただくようにお願いしたいと思います。
 最後に、八条の検証規定ですが、検証は今後大変重要な制度となると考えます。したがって、これは最高裁だけでなく、裁判官、検察官、弁護士、学識経験者から成る機関を設置して、しかも内容については、裁判の運用面だけでなく制度や体制面の整備状況を含めて、総合的、多角的、客観的になされるような必要があります。
 私たち日弁連も、この法律が成立すれば、五条によって弁護士の体制の整備について責務を負うことになりますから、そういう意味では、検証の当事者の一人としてぜひ参加させていただきたいと思います。
 裁判の独立を確保する上で最高裁がこれを行うのが当然であるとか、進行中の裁判資料を外部に出すわけにいかないという御説明がありますが、個別の裁判官や裁判体の具体的な裁判の状況を検証する場合、最高裁であっても裁判官の独立を侵さない調査の仕方が必要です。逆に、検証の対象は現在進行中の事件だけでなく、制度、体制の充実度や裁判を利用する市民の満足度などに及ばなければなりません。そういう意味では、法曹三者はそれぞれの立場から、また学識経験者は裁判を利用する市民の立場から、検証に参加していただく必要があろうと思います。そういう意味では、ぜひ、この検証につきましても、今言った趣旨の法案を修正していただくようにお願いいたします。
 民訴法改正、人訴法の問題につきましては、別紙のレジュメを用意させていただきましたので、これをごらんいただくことによって御質問があればお答えすることにして、私の意見陳述を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。(拍手)
山本委員長 ありがとうございました。
 以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。
    ―――――――――――――
山本委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。星野行男君。
星野委員 自由民主党の星野行男でございます。
 両参考人には、ただいま貴重な御意見を賜りまして、まことにありがとうございました。
 裁判の迅速化に関する問題点を余すところなく摘出をし、それぞれ御見解をお示しいただいて、質問は蛇足にすぎないという感じもいたしますけれども、何点か御質問させていただきます。
 御案内のとおり、裁判所において裁判を受ける権利は憲法が保障しているところでございますが、一般国民は、権利や利益が侵害されても、裁判においてこの救済を求めるということについては、お金とそれから時間の関係でしり込みをし、泣き寝入りをする場合が多いのでございます。
 このうちお金、すなわち裁判費用につきましては、法律扶助制度の拡充等によりましてかなり改善されていると思いますが、裁判に時間がかかるということは国民の一般的な認識であろうかと思うのであります。
 ところで、お話のございましたように、地方裁判所第一審訴訟の現状は、平成十三年度の実績で見ますと、平均審理期間が、民事事件では八・五カ月、刑事事件では三・三カ月と、欧米諸国の第一審訴訟の審理期間と比較をいたしまして決して遜色はないのでありますけれども、目まぐるしく時代が変化し、あるいは国民の権利意識が高揚されている中で、迅速な裁判に対する国民のニーズ、期待が高まっていることも事実でございます。また、お話がございましたように、公害訴訟とかあるいはオウム裁判等々、民事、刑事で非常に長く時間がかかっている事件があることも事実でございます。
 そういう状況の中で、裁判を可能な限り迅速にやるということについては、憲法の要請でもあり、特に刑事被告人については、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受けるということは、これは権利として保障されるところでございます。そういうことで、小泉内閣の構造改革の一環といたしまして、司法制度改革、なかんずく裁判の迅速化を進めよう、こういうことで、今回の裁判の迅速化に関する法案が提出をされ審議されている、こういう状況でございます。
 両参考人にお伺いいたしたいのは、こういう裁判の迅速化の必要性、そしてまた迅速化を妨げている原因は一体何であるか、その二点につきまして、それぞれもう一度お話をいただきたいと存じます。
三木参考人 私は、もう一つ大事なことは、今実際に日本で起きている訴訟件数だけでなくて、もう少し潜在的な紛争の実態について検討してみる必要があろうかと思っております。
 確かに今、数値的には欧米に比べても裁判が比較的スムーズにいっているような印象を受けますけれども、先ほども申しましたように、この社会の中に潜在的に潜んでいる紛争というのは、今の実際の訴訟件数の倍や三倍どころではない。実際には紛争を抱えていながら、裁判に頼る人が限定されている、あるいは、知り合いに弁護士もいないような方は、民事紛争を抱えても、どこへ相談していいのかわからない。
 もちろん、弁護士会はそれぞれに相談窓口を設けて受け入れ方に努力をされていることは承知しておりますけれども、一般の人にとってみれば、知り合いのない弁護士事務所の門をたたくというのは、高級すし屋で時価のおすしを食べるような思いでありまして、なかなか勇気を持って弁護士を頼むことができない。そういった潜在的な紛争をすくい上げて、不幸にして起きた不幸は司法によって解決していくんだというのが民主主義社会の根幹の考え方であろうかと思います。
 その実現のためには、やはり、まず、裁判というのは短期間で済むものである、裁判費用もリーズナブルなものしか必要としないで解決できるんだ、間違っても暴力団などに取り立てを頼んではいけないんだという社会共通の常識をもう一度確認していくような手だても必要になるわけですが、その基本的な努力目標として、まず、裁判はスムーズに終わるんだということを印象づける、そして紛争の掘り起こしを図って司法での解決を広げていく、ここに目的があるのではないか、このように考えております。
杉井参考人 先生がおっしゃられたとおり、裁判の迅速化ということは私ども大変重要な課題だと思っています。法律に書かれた権利も、それが現実にならなければ絵にかいたもちだと言われますが、そのとおりであります。しかし、また一方で、先ほど申しましたように、裁判は適正、充実してなされなけりゃいけない、この二つの要求をやはりきちっと一体のものとして実現する、それが裁判制度であろうと私ども考えております。
 やはり長期化する裁判というのは、この委員会でも御議論されているようですが、類型的には大体わかっております。最高裁の御説明でも、民事であれば、先ほど言いましたような証拠の偏在している事件、公害とか行政相手の事件とか労働事件とか、そういう事件がありますし、刑事でいけば、否認事件の重罪事件であります。
 先ほど三木さんの話もありましたが、全体としては短くなっているんですが、こういう長期にかかる事件というのは、やはりそれだけの制度的な、また人的、物的、体制的な手当てをしなければ、すぐにはいかない問題があるわけですね。ですから、私どもとしては、先ほど申し上げたように、充実して迅速化していくということと同時に、長期化している裁判、それに対応する制度的な、また人的、物的な体制をつくる、そのことが必要だというふうに考えて申し上げているつもりでございます。
星野委員 裁判の迅速化の問題につきましては、お話がございました充実した裁判を迅速にやるということでございますが、しかし、裁判の充実と迅速は一体として考えなきゃなりませんけれども、現実的にはやはり矛盾するような要素を含んでいる、こう申し上げても過言でないと思うのであります。事件は激増しております。しかもまた、非常に処理の難しい事件もふえているわけでありますが、そういう中で、裁判官、検察官の増員がなかなか思うように進んでいない。
 御案内のように、裁判官の定員は、判事、判事補の合計で十年間で二百八十七人、増加率が一二・五九%、検察官も、検事、副検事合わせて十年間に三百人、増加率が一一・三一%ということであります。
 こういう法曹人口の増員ということはどうしても必要であろうかと思うのでありますが、このこととあわせましてもう一つは、裁判の迅速化で、手続面での、今回民事訴訟法の一部改正が提出されておりますけれども、その中で注目すべき工夫がなされておりまして、御案内のように、いわゆる計画審理、当事者の協議によってあらかじめ口頭弁論の終結と判決の言い渡しの予定時期を定めるというようなこと、あるいは起訴前の証拠収集を可能にする提訴予告制度、それから裁判官を補佐する専門委員の制度、これらを導入するということは極めて重要なことではなかろうか、こんなふうにも考えておりますが、裁判の迅速化のための今回の民事訴訟法の改正につきまして、御見解を承っておきたいと思います。
三木参考人 この間、最高裁を先頭に、随分少ない人数の裁判官をやりくりしながら増加する紛争に対する処理をスムーズにしようという成果は随分上がってきている、それが先ほど来の数値だと思います。
 具体的には、知的所有権の問題とか、破産法の関係だとか、そういった専門部を東京地裁に集中させて、そこに裁判官を集めて処理をてきぱきとしていくような形で処理を進めてきた。これで大いに成果が上がっているわけですが、一方で、全体の裁判官の数が限られているものですから、例えば地方の支部の裁判官が一人で何百件も事件を抱えるというような状況になっている。全国的に見るとそういったアンバランスも出ていて、やはり人数をたくさんふやしていかなきゃ解決できないんだと思っております、基本的には。
 しかしながら、迅速化と充実化というのは必ずしも相反する理念だとは私は思っておりません。というのは、今までの日本の裁判のあり方というのは、限られて特権的だと自認している法曹界の法曹三者が、自分たちででき得る限りの裁判だけをこなしていけばいい、市民のニーズよりも自分らでこなせるもの、こなせるキャパシティーが先にあって進められてきたのが今までの裁判のあり方だ。それを本来市民のニーズに合わせる形に変えていこうというのが司法制度改革のあり方だと思うわけで、これまで、自分らだけでこなしていけばいいというためにスピード化も重視しない、先ほども申したように、民事の口頭弁論の期日は本当に二月先になり、三月先になるような、僕らからすればスローモーな審理展開をしてきたところがあるわけです。その辺の意識改革をすることによって、必ずしも充実化と迅速化は相反しない。
 さらに、民事訴訟法の改正によって、訴訟のあり方をやはりリーズナブルに、市民の目にもわかるような形にしていくことが必要であろうか。今までの訴訟を見ておりますと、どこか当事者同士がお互いに隠し球を持っている、その隠し球をどこで出そうかというような裁判の争い方をよく目にしてきました。これからはそういう時代じゃない。持てる証拠はお互いに、刑事も同じことでありますが、あらかじめ持てる証拠は出し合ってむだな争いはしない、限られた争点の中できちっとした審理を尽くしていく形に変えていくということだと思いますし、その意味で今回の民訴法は、まだまだ不十分だと思いますが、一つの道筋を立てる改革になろうかというように理解しております。
杉井参考人 私も、先生がおっしゃられたように、充実と迅速というのは矛盾する要素がないというわけではないのですが、裁判においてはその両者をどうしても両立させる、そういう手続がやはり必要であって、私どもとしては、充実、迅速を本当に一体化させるためには、先ほど言った制度、それから人的体制、物的体制、こういうのも整備しつつ充実して、しかも速くやれる、こういうことをやる必要があろうというふうに考えておりますので、そういう面では、矛盾させてはならない、こういうふうに考えております。
 それから、民訴法改正の点につきましては、今回の民訴法改正、先生がおっしゃられたような、かなり証拠収集の点でも専門委員の点でも、長期化している裁判に対する対応としてのものは持っています、前進面があると思います。
 ただ、やはりこの民訴法改正は今回の迅速法を考えてつくったものではありませんので、今言われたように、一定の、まだこれからもっと進めなきゃいけない面がある。例えば、提訴前予告制度についても、これは裁判所が関与するようになったという面では前進面なんですが、もうちょっと実効性を持つ、強制力を持つという面でいえば、アメリカのディスカバリー制度なども含めて、そういう方向に向かった検討がやはり必要ですし、文書提出命令などについてももっと実効性を持たせることが必要だろうと思います。ですから、もうちょっと、試行錯誤的ですが、進めなきゃいけない。
 それから、人的な点について申しますと、私ども、お手元に、裁判官の倍増計画というのをつくらせていただきました。これを見ていただければ、日弁連は各地裁、本庁、支部ごとにこれだけふやしてほしいというのを具体的につくっています。
 私どもとしては、こういう地図をつくることによって、各地の住民の皆さん方の要望に応じた裁判官を各地で確保して広げていくということをやはり最高裁にもやっていただきたい、計画的に、年次的に裁判官をふやすということをぜひ実現していただきたいと考えておりますので、おっしゃるように、ぜひ御努力をしていただきますとありがたいと思っております。
星野委員 どうもありがとうございました。
山本委員長 次に、日野市朗君。
日野委員 民主党の日野でございます。よろしくお願いします。
 今、お話を伺っておりまして、特に三木さんのお話を伺っておりまして、三木さんが一般の人を代表しておられるというふうに考えてみますと、これほどまでに不信は根深いのか、裁判に対する不信は根深いのかというふうに思ったんですね。私なんかも、考えてみますと、裁判をできるだけ迅速にということでは人後に落ちず頑張ってきていたと思います。しかし、三木さんのお話を伺っておりまして、とてもとても、次元が違うくらいの考え方の乖離というものがそこにあるという感じがいたします。
 我々、随分努力しているんですね。例えば、サルベージ屋というお話が出てまいりましたが、これだって手形訴訟で一カ月以内に決めてしまうというような努力もしておりますし、それから法曹人の不足ということについても、司法書士さんにも今度は簡裁の事件については参入していただくとか、それからいろいろな努力をこうやってやってきているんですが、そういった努力の延長線上ではとてもこの裁判のおくれという問題を解決できないというふうにお考えなんでしょうか。
 この問題については、私、非常に不満です。裁判官が少ない、法廷も少ない。日弁連でおつくりになった「裁判官増員マップ」、それから検察官、「検事増員マップ」ですか、これなんかを見ると、人的な不足というのは目を覆うばかりですね。
 しかし、こういうことをいろいろと問題化しながら、人もふやしていく、それから法廷なんかもふやしていく、そしていろいろな人が、例えば司法書士さんの簡裁事件への参入であるとか、いろいろな努力がなされておりますが、その延長線上では、三木さんが持っておられる問題意識、これを解決することはできないとお考えですか。
三木参考人 私は、解決できると思って、今こそこの政府が進めている司法制度改革に大いに期待しているところなわけですが、これまでの裁判で、法曹関係者が今まで例えば惰眠をむさぼっていたという印象を受けているわけではない。それなりに一生懸命改革を続けてこられたんだけれども、やはり権威によって裁くという印象が一般の市民にはまだまだ根強い、特別なものであって自分たちの裁判ではないという意識が根強く横たわっているのが、裁判所の敷居を高くしている一因なんだと思うんです。
 かつて、権威で裁いていた時代はそれでよかったんでしょうが、今ちょうど過渡期だと思いますし、これまで、例えば、裁判所よりもサルベージ屋が頼まれてきた現実の背景には、市民の誤解もあったんだと思う。しかし、それにも増して、権威主義的な司法のあり方が、信頼をかち取れない最大の元凶だったように思っております。
 今、この司法制度改革によって、民主主義国家での司法というのは、市民のためにあって、市民が参加するんだということが実現できれば、将来の展望は大きく開けてきて、司法関係者の努力が実を結んでくるんだと私は確信しております。
日野委員 今、市民の認識というお話がありました。特に、三木さんはマスコミ人でございますから、市民の感覚についていろいろ我々は訴えなければならぬことはあると思いますけれども、やはり、その考え方がマスコミ等によって少しゆがめられているのではないかという感じを、私、持たざるを得ないんですよ。
 今、これからどんどん司法修習生もふえてまいりますし、それから法曹界に参入する人もふえてまいります。そうすると、市民により身近なところで司法というのは営まれていくというふうに私は思っています。また、そうしていかなくちゃいかぬ。
 ただ、この促進化法案で問題なのは、二年以内でできるだけ早い期間、こういうふうな決め方をされてしまうと、特に裁判所、裁判官のキャリアシステムでは、二年以内に何でもかんでも決めるという考え方、これが醸成されていくだろう、このことを私は非常に心配するんです。古い例で申しわけありませんけれども、松川事件であるとか八海事件であるとか、いろいろ、個人の人権をいかにして救済するかということが問題になった事件がありました。それは二年という時間では到底賄い切れない、そういう時間であります。そういう問題についてどうお考えになるか。特に、現在の裁判所のキャリアシステムということをお考えになりながら、ひとつお答えいただきたいと思います。
三木参考人 私も、今の最高裁による司法行政の中に官僚主義的なにおいが感じられないわけではありませんので、二年ということが殊さら強調されて、迅速迅速ということばかりが前面になった場合に、多分、まじめな裁判官の方々が、スピードアップばかり念頭に入れた訴訟指揮を行う傾向が出てくることもあり得るだろうと大いに懸念しております。
 先ほど来申しているように、これはあくまでも、充実しながら迅速化を図らなければいけないわけですし、一つは、事件の形態によって峻別していく、これはもう二年は到底無理だという見立てを早い段階でつけて、長くかかるものは十分に審理していくということを分けて考えていく。いたずらに訴訟遅延を図るような事態をなくしていくだけで、法の求めるところはかなり実現できていくんではないか。
 本来、審理を十分に重ねる必要がある事件、とりわけ人権にかかわる事件は、どんなに時間がかかっても充実した審理を行っていくべきは当然のことでありますし、それを検証するシステムがやはり必要になってくる。そこに、最高裁、これは裁判の独立の問題があってなかなか難しいんだと思いますが、何としても市民の目を入れて、そういった拙速化が図られるようなことがないように一方で注視していくシステムをつくり上げなければ、きちっとした保障は、その拙速化を防ぐ防波堤にはならないというように思います。
日野委員 両参考人に伺いますが、この検証、私も、裁判所の中だけで検証させる、こういうやり方には賛成できません。では、積極的に、どういう検証のあり方であればいいのか、どういう人たちを入れるべきなのか、御両人にひとつ積極的な御提言をいただきたい、こう思います。
三木参考人 私は、今の考え方だと法曹人プラス有識者というようなことになっていますが、むしろ、一般市民の代表が入っていくようなシステムをつくらなければいけないんじゃないか。それと、片や、司法改革で、刑事裁判に対しては裁判員制度の導入がある、そこで市民が加わっていくことによって、また今までの訴訟指揮のあり方とは違ったものも出てくるというように期待しておりますし、あくまでも、一般市民の目にさらすということだと考えます。
杉井参考人 私どものレジュメにも申し上げておりますが、一つは、法曹関係者としての裁判官、検察官、弁護士、これが参加する必要はあると思います。しかし、それだけでは十分でない、利用する市民の立場に立った、やはり市民が参加するということが重要だろうと思っております。言葉としては学識経験者という言葉になっていますが、法律用語としてはこういうことがいいんだということで書いています。
 ただ、この言葉としては、本来、マスコミとか、あるいは裁判を利用する一般の市民の方々が入って、裁判の満足度などについて意見を出して検証していく、そういう市民も参加した制度によって、最高裁からは一定程度の独立を持った機関をつくっていただく。これが、先ほど申しましたように、単に迅速化しているかどうかという時期だけの問題ではなくて、制度も整備されているか、人的、物的体制も整備が進んでいるかどうかという、そういう体制の整備とか制度の整備ということも含めて検証していく、そういうことにしていただけたらありがたいと思っております。
日野委員 どうもありがとうございました。
山本委員長 次に、漆原良夫君。
漆原委員 公明党の漆原でございます。きょうは大変ありがとうございました。
 まず、両先生に共通の話をお伺いしますが、三木参考人の方から、先ほど、長い裁判として、オウムの裁判七年、リクルート十四年、こういう例が挙がりました。この長い原因は一体何なのかな。弁護士の方が何かめちゃくちゃな訴訟をやったのが原因なのかな。あるいは、本人が無罪を争っているわけですから、ある意味では、もし無罪であれば、これは大変な人権問題になるわけですね。無罪かどうかは判決をもらなきゃわからない。そうすると、弁護人としては、最大限の争いをしなくちゃならぬ、最大限の努力をしなくちゃならぬ。
 こういう観点から見てみますと、この二つの事件、確かに、長いということは裁判なきに等しい、そのとおりだと思うんですね。ただ、無罪をかち取るためには、検察官が膨大な調書を持っているわけですから、それに対して、それを打ち砕いていかなきゃならぬ弁護士さんの努力というのは物すごいものがあると思うんですね。まず、訴訟も、開廷日もどんどん何日も前に決めていますから、一般事件の受理もできないぐらいの御努力をされていることだと思うんですね。
 余り長い長いと言うと、悪いやつなんだから早く処罰すればいいじゃないかという声をよく聞くんですね。そこにやはり一種の人権闘争がなされているわけですから、今回、七年、十四年という二つの事件を挙げられましたが、どんなところに長引いた原因があるとお考えなのか、どんなふうにすればいいというふうにお考えなのか、その辺を両参考人にお尋ねしたいと思います。
三木参考人 松本被告の裁判では、最初に私選弁護人を解任したり、いろいろトラブルもあった。それから、片や、冷静に見詰めれば、被告人は視覚障害者ですし、普通の健康な人以上に人権上配慮しなければならないところがあるので、あの事件をもって迅速化法にのっとって二年以内でやれなんという暴論は到底考えちゃいけないわけで、充実した裁判を行わなきゃいけないんですが、やはり、最初から訴訟のそれぞれの当事者に最終的な目標値が、判決をどのくらいの期間で言い渡すか、早目に出そうという意識があれば多少変わったんだろうと思いますし、証拠の不同意も、これも一つの被告人の防御権だとは思いますけれども、本来争わなくてもいいところでまで不同意が随分あったのではないか、あらかじめ争点の整理がなされていたならば、もう少しスムーズにいったんではないか、事前の訴訟計画をどう打ち立てるかという準備が足りなかったんではないかというような気がしております。しかし、弁護団もそれなりに反証の期間を短くしたり、努力されていることは認めますけれども、もう一努力が必要だったんだろうと思うわけです。
 江副さんの方の事件も同じですが、当然の防御権の行使という言い方もできましょうが、私は、例えばリクルート事件の場合には、江副さんという有能な経営者が十四年も裁判に時間を費やしてしまった。もしこれがスムーズだったならば、もっと違う形で社会にまた貢献していただくこともできたのにと思うと残念なわけで、もう少し訴訟を速めるという出発点があったならば違う展開になったんだろうというように思います。
杉井参考人 個別の、現在進行中の事件ですので、日弁連としての正式な意見の表明は差し控えさせていただきますが、感想的に、あるいは弁護団からいろいろ出されている今の問題について申し上げます。
 一つはオウム事件ですが、やはり私ども考えますに、地下鉄サリン事件だけでも三千人から四千人の被害者がいるわけで、これに関する調書は膨大な数になるわけですね。そうすると、これ一つ一つを検討して、被害者一つ一つやるというようなことをやるとなったら、やはりかなり時間がかかる。そういうことについて、やはり我々弁護人としては、仮に社会的に人道に外れたと言われるとしても、やはり憲法や法に基づいた被告人としての権利をきちっと守ってあげるというのが民主主義社会の弁護人の役割と考えていますので、そういう面では、幅についてはいろいろな意見があると思います。そういうことはあるにしても、やはり弁護人として努力しているという点については御理解いただきたいということと、もう一つ、やはり被告人と弁護人の信頼関係というのは、我々は、弁護人というのは網を隔てて被告人と最初から会うわけで、形成するのが大変難しいという状況もあります。そういう、外から見ている問題ですが、やはりそういうことについて十分考慮した審理期間というものが得られなければいけない。
 リクルート事件についていえば、私どもの調査では、やはり証人や被告人の調書の信用性ということが非常に長時間争われています。こういうことがやはり裁判全体を長引かせる原因になっていて、やはり被告人や証人の取り調べということをできるだけビデオなどで可視化していくということで、争いをできるだけ透明化して見やすくしていくという努力をするなどが必要だろうと思います。
 そういう面でいいますと、今、争点整理をもっときちっとしろというお話がありましたが、争点整理をするというためには、検察官の手持ち証拠を事前に出していただかないと、弁護人としてはやはりどういう点に争点を絞って争っていくかということが決められなくなりますので、そういう面では、争点整理ということも含めて、これらの事件ではやはり事件を長引かせる原因になっている。
 例えば、ちょっと時間がかかりますが、和歌山のカレー事件は三年七カ月、埼玉の本庄の保険金詐欺事件は一年半で初公判から済んでいますが、いずれの弁護団も、検察官の方が証拠開示をしてくれたからこれだけの期間で済んだんだということを言っております。
 やはり、そういう格好で、証拠をきちっと出していただくということによって、争点整理もされ、審理も速くなるということができるんではないかと思っております。
漆原委員 先ほどお二方とも申されておりましたが、迅速化と充実化というのは、これはもう大変重要な話でして、どっちか一方だけ追求しちゃいけない、私もそう思っております。
 この法案では、二年以内のできるだけ早い時期に終局をさせるというふうになっておるんですが、三木参考人おっしゃったように、刑事では〇・四%が二年を超えている、民事でも七・二%にすぎない。これは、二年以内のできるだけ早い時期というと、もうほとんど二年以内に終わっているにもかかわらず、さらに裁判所、当事者、訴訟代理人に責務を課するということになりますと、充実化という点について、裁判官は速くやらなきゃいかぬという気持ちだけが先立って、場合によっては検証の対象になるのかもしれないというふうなことで、充実した審理というよりも、早く終わらせようというところに意識が走るんじゃないか。
 したがって、私は、ある意味では二年以内のできるだけ早い時期なんて言わないで、二年をめどにというふうに言った方が弊害がないんじゃないかなという率直な気持ちを持っているんですが、両参考人の御意見をお伺いしたいと思います。
三木参考人 文言の話になると、ちょっと私、今迷いますが、私も先生と同じように、意図するところは二年をめどにということだと思います。大多数の事件は二年以内に終わっていることも踏まえれば、とにかく速く裁判をしなきゃいけないという意識革命を促すことにつながればよいのではないか。もちろん、そのかわりに拙速化を招いちゃいけないわけで、二年をめどというのが法の趣旨だと理解しております。
杉井参考人 私たち日弁連も全く同じことを考えております。
 やはり、二年以内のできるだけ短い期間内にということになると、限度がないわけですよね。当初の推進本部の案は二年以内ということになっていたんですが、どうも私どもの方ではできるだけ二年以内にというふうに申し上げたら、二年以内のできるだけ短い期間にと、こう変わっちゃったというような経過もありまして、ちょっと何かやぶ蛇だったようなこともありまして、本当に私どもとしては、今言われたように、この二年以内のというのが裁判の期限になってはいけない。裁判はやはり迅速化されなければいけません。しかし、裁判に期限を設けて、それができなかったら権利の実現はもう終わりだよというようなことはあってはならないと思うんですね。
 その点はやはり、目標というものは定めてもいいかもしれませんが、期限にしてしまって、それで切っちゃうよというようなことは、やはりやってはいけないわけであって、そういう意味の期限ということでなくて、努力目標。しかも、努力目標についてはやはり、現実の裁判を見て、できるだけ二年以内という格好に修正していただけたらば、私は本当にありがたいと思っております。
漆原委員 以上で終わります。どうもありがとうございました。
山本委員長 次に、石原健太郎君。
石原(健)委員 本日はどうもありがとうございます。
 既にお話、十分されたわけでありますけれども、改めて、今回の改正の全体的な評価をどうされておるのかということと、いろいろ御要望とか御指摘もあったわけでありますけれども、ここはどうしても改めなければいけないなというようなことをお感じになっている点、二、三お聞かせいただけたらと思います。両参考人にお願いします。
三木参考人 先ほども申しましたように、私、裁判の迅速化というのは、司法制度改革という大きな、百年に一度の改革の大きな登山口、一つのアプローチの仕方だと思うんです。
 この迅速化をきわめていくためには、法曹人口をふやしていかなければならないということになりますし、市民を参加させて拙速化に陥らないように留意しなければならないということにもなる。これは、別の登山口である。例えばロースクールの開設から始まっても、同じように法曹人口の増加だとか、あるいはそれに伴う訴訟手続の改善といったものにつながってくる。結局同じことに結びついてくると思うんですが、目指すところは、要は、裁判は民主主義社会の中で市民に開かれたものでなければならないということでありまして、国内外で紛争が起きたら、それはできるだけ司法での解決を求める、司法に頼らない人たちをなくしていけるような改革につなげていかなければいけない。
 真に市民のための司法を実現するために結びついていくための中で位置づけていきたい法案だと思っておりますし、スピードアップを図るということが市民には一番理解しやすい具体的なアプローチになろうかというように考えております。
杉井参考人 私どもが修正をお願いしたいと考えていますのは、先ほど申しました、一つは、第一条の関係で、「迅速化」あるいは「迅速」という言葉が三カ所出てきますが、これをぜひ「充実・迅速」「充実・迅速化」という格好に改めていただきたいというのが第一点です。
 二番目は、この法律を、充実、迅速化のための司法のインフラ整備、それから制度改革ということを実現するための法律であるということを法文上明記していただきたいというのが第二点であります。
 第三点は、先ほど申し上げました、当事者の責務という規定はやはり当事者に大変過酷な規定になります、二年以内に済まないということもありますので。そういう面では、これはやはり外していただいて、我々弁護人は、本当は本人との間で矛盾が起こりますから困るんですが、法曹人として協力しましょう、しかし、当事者とかこういう方々に対して責務を課すことはぜひ削除していただきたい。
 第四点は、検証の問題であります。検証について、ぜひ市民も参加し、我々も参加した機関を設けてやっていただきたい。
 この四点でございます。
石原(健)委員 検証等につきまして、あるいは裁判について、市民に開かれたもの、市民に溶け込んだものというような御意見だと思いましたが、先のことだとは思うんですけれども、裁判員制度というのが検討されていると思うんです。
 そういうふうになりますと、さらに一層市民に開かれたものになっていくと考えますけれども、両参考人はこの点についてはどうお考えになっているか、お聞かせいただけたらと思います。
三木参考人 刑事裁判に裁判員制度を導入すれば、今よりも市民に開かれたものになるのは当然なんですが、迅速化法も裁判員の制度を導入することを前提に考えなきゃいけない。
 例えば、今のように七年、十年かかっている裁判に一般の市民が裁判員になってずっとつき合ってくれるものなんだろうか。もちろんこれは国民としての責務だから責任は果たさなければいけないというのは建前でありますけれども、民間の企業で、例えば毎週一日、あるいは集中審議で一日、本庄の保険金殺人事件は一週間にたしか二回期日が入って迅速化が果たせたんだと思いますが、週に二回も裁判員を集めるということが現実的に可能なんだろうかと考えますと、ただ単にそういった詰め込みで迅速化を図ったんではだめだ。今回の迅速化法をもとに、訴訟システム全体の見直しを進めていくということを伴わないと、裁判員制度もうまく機能していかない。
 裁判員制度も、市民に開かれた裁判を実現するために何としてもなし遂げなければならないとしたら、この迅速化法との関連において、ただ迅速化だけを決めるんではなくて、この迅速化法を基本に据えながら諸整備を進めていく、そのための大前提としてとらえるべきだというように思います。
杉井参考人 私どもも、今回の司法制度改革の中で、司法をやはり市民に開かれたものにしていくという制度をつくっていくということが非常に大きな課題だと思っています。
 裁判員制度はやはり、裁判というものを市民が自分自身主権者としてやるということでありますから、大変大転換であります。それだけではなくて、やはり裁判所の中のいろいろな活動についても透明化する。我々弁護士会の中の諸活動もやはり市民に中に入っていただいて透明化していく。そういう意味では、すべての司法というものが市民の目の中にさらされて、その意見も反映しながらいくという制度をつくっていくということが大変重要だと思います。
 そういう面では、今回の検証の制度につきましても、やはり最高裁だけが、言っては悪いですが、お手盛り的にやっては困るわけで、やはり市民の、利用する方々も参加してやる制度をぜひつくっていただきたいと思っております。
石原(健)委員 どうもありがとうございました。
山本委員長 次に、木島日出夫君。
木島委員 日本共産党の木島日出夫です。
 お二人の参考人の先生、大変ありがとうございました。迅速だけをいたずらに求めて拙速化になってはいけない、充実、適正な、かつ迅速な裁判が今求められているという点ではお二人の参考人の意見は一致していたと思いますし、私もそれが一番必要なんだろうというふうに思うわけであります。
 そこで、現状をどう見るかということなんですが、一部には大変、御指摘されたリクルート事件の裁判その他その他、余りにも長いではないかという国民の批判がある一方、裁判を実際に受けた、裁判を利用した当事者の気持ちがどうかということを調べてみますと、例えば大阪弁護士会の調査があるわけであります。
 大阪地裁では、民事事件がこの十年間で二割増加したけれども、裁判官の手持ち事件は減った。それはなぜか。裁判が速くなったからだ。どうして速くなったか。証人調べを行う事件が減少した、証人調べを行う場合でも証人の数が減った。検証と鑑定に至っては十年間で三分の一に減ってしまった。大阪高裁でも、民事事件が一・五倍になったにもかかわらず、証人調べが急減した。検証はほとんどゼロになったという状況がある。そのために一審判決の質が落ち、誤判が多数生じている、一審判決のうち二割の判決が間違っているという恐るべき大阪高裁裁判官の指摘もあるという状況があるわけです。そして、こうした裁判の現状に関して、裁判を利用した当事者のうち満足と答えたのはわずか一八・六%。審理の充実度については、否定が四三%、肯定が三五%、こういう状況だ。
 そうすると、今の日本の裁判の現状は、一部非常に長期化して国民の批判が集中しているものがある、それがマスコミに載って、ほとんど日本の裁判がそうじゃないかというふうに誤解をされている面がある一方で、圧倒的多数は、裁判当事者から見ると、拙速だ、まともに証人も調べてもらえなかった、鑑定、検証もやってもらえなかった、誤判もあるんじゃないか、そういう、圧倒的多数の部分は、むしろ充実化がないがしろにされているというところにこそ今の日本の裁判の問題点があるんじゃないかというふうに私は思います。
 そうしますと、この法案で迅速化だけがどうも前に出てきたんじゃないかと思えてならないわけであります。私は、現状はむしろ充実化こそがまず前面に出てこなきゃいかぬと思ってならないんですが、その心配が大変あるんですが、それについてのお二人の参考人の率直な御意見をお聞かせください。
三木参考人 先生おっしゃった、調査だと思いますが、そういった批判、指摘があることも承知しております。
 この間、最高裁を先頭にかなり従前から迅速化に努めてこられた、一部でその弊害が出ているという指摘はかなり弁護士会からも聞こえてまいります。これはもちろん、迅速化を図って、証人調べが十分でない、鑑定も少なくなっているというような事態が起きてしまったら元も子もない。
 迅速化、すなわち充実化を伴っているものであるかどうかは自明の理でありまして、今まさに日本の裁判が国民の信頼を回復するかどうかという試金石としてこの迅速化法案を御審議されているわけで、それは当然にして充実化を伴っていなければ国民の信頼の回復はあり得ないわけでありますし、今後、検証制度によって、市民の目を入れていくことによって拙速化はある程度は防ぎ得るんだろう。
 やはり、市民とは遠いところで裁判が行われてきたことが、指摘されるような拙速化の側面も引き起こしていた面は否めないんだろうと思います。少なくとも、市民に全部さらけ出したときに、証人調べを手を抜いていくというようなことは断じて許されないわけだろうし、食いとめることは可能だし、食いとめていかなければいけないことだと思っています。
杉井参考人 これは、我々法曹関係者の中の運用努力として、従来、民事裁判においても刑事裁判においても、迅速化の努力はしてきた。例えば、裁判所は、昭和六十二年ごろからだと思いますが、裁判充実化方策というものを出しました。充実化と言っていますが、実は迅速化のための方策だったんですね。例えば、争点整理をするとか集中証拠調べをするとか陳述書を使うとか、そういう格好でずっと全国でやられ、我々弁護士会もそれと協議しながらやってきたんですが、本来これは充実のためにやるはずだということだったんですが、どうしてもそれが裁判官の感覚になると、迅速の方に力が向いてしまう。その中で、今回のようないろいろな問題が全国で起きているということがあります。
 一番の問題は、この法案もやはりちょっと心配を感じるんですが、当事者とか裁判官とか我々関係人を、責務を課して、しりをひっぱたくという形でやるというのは、運用努力としては必要です。しかし、それだけに頼った迅速化、充実化では、やはり本来的に拙速になってしまう危険がある。やはり制度を整備し、人的体制を整備するということによって充実、迅速をやる、そういう基本方針に立つ。我々は、制度の整備、体制の整備それから運用の改善を三位一体のものとして進めなければ裁判は充実し迅速にならないよということを申し上げてきたんですが、そのあたりのところが、やはりこれまでの我々も含めた法曹関係者の努力が足らなかったというふうに考えています。
 そういう面では、この法律が今言ったような迅速だけに偏った運用努力による法律にならないように制度を整備していただく、体制を整備していただくということをぜひお考えいただけたらありがたいと思っております。
木島委員 ありがとうございます。
 そういう面で、前提たる充実化のための方策がまだ我々に提示されていない。特に刑事裁判については全く、まだ司法審で審議中、民事についてはこの国会に民事訴訟法の一部改正案として提示はされてきたんですが、私はそれを見ますと、裁判提訴前の証拠収集制度の導入ぐらいなもので、逆に、計画審理化、そして一定の時期に証拠申請をしないと時機におくれた証拠方法として却下されるというようなことが入り込んできているわけですね。そうすると、この迅速化法とこの民訴法の改正案がドッキングすると、私は、証人調べ申請が却下される、拙速化につながっていくんじゃないかということを大変心配しておるということだけ指摘しておいて、もう一つの心配は、やはり検証なんですよ。
 特に、今度の法案は、最高裁判所による検証でしょう。私、裁判というのは、民事でも刑事でも、基本は事実認定だと思うんです。事実認定と法律の適用で判決が下されるわけですが、圧倒的多数の部分は事実認定ですね。真実の発見ですよ。特に、刑事事件で真実の発見ができなければ、それは冤罪になるわけです。民事事件で真実の発見ができなければ、権利者が権利救済されなくなるわけです。そういう面で、私は、裁判官が一番苦労しているのは真実の発見だと思うんですね。
 そうすると、刑事でも民事でも、もっと証人調べをやりたい、もっと鑑定、検証もやりたい、そういう段階のときに、二年以内のできるだけ短い時間に判決を下せというふうなことがありますと、微妙なところで証人調べをしないで終わりにせざるを得ない。それが、最高裁による検証という形で本当に入り込んできましたら、私は、裁判の独立が根幹のところで崩されてしまうんじゃないかと思わざるを得ないんです。
 ですから、私は、最高裁による検証から、法曹三者プラスアルファによる検証でも危ないんじゃないかと思えてならないんです。そういう本当に微妙な事実認定について第三者が入り込めるのかどうなのかという根本のところにも疑問を持っているわけなんですが、少なくとも今度の法案は、最高裁による検証は本当に危ないと思わざるを得ないんですが、それについてお二人の参考人の率直な意見を聞かせてください。
三木参考人 検証が大きな役割を果たす、かといって、一方では裁判の独立を脅かすような事態があってはいけないというなかなか矛盾する中で何とか市民の手による検証を実現させなければならないと考えているわけですが、法案の中に、先ほども私申しましたように、学識経験者という言葉を使っていますと、これは僕らの認識だと法曹関係者ということになろうかと思いますが、やはり法曹人だけで独占していたのでは、今のようなその懸念は払拭できない。やはり一般の、広い市民の代表が参画した検証が行われていくことによって、充実化の道筋を促していくことが初めて可能になるんだというように理解しております。
 御懸念は、私も同様に懸念しているところであります。
杉井参考人 今おっしゃられたように、最高裁判所による検証というのは、一番の問題は、やはり最高裁判所が裁判官に対する人事権なり処遇を決めていく権限を持っていて、これと連動する格好になるという危険があったらだめだと思うんですね。そのあたりが一番問題であって、私どもとしては、やはり裁判を迅速、充実にやるということの検証は、裁判所が現実にやってくれないとできないという面があって、裁判所がやってはいけない、最高裁がやってはいけないということまでは申し上げにくい。
 しかし、今申し上げた意味で、最高裁の人事権等と連動させない独立した制度として機関を設けてやっていただくということをきちっと裁判官にもわからせる。裁判官にわからせるといっても、裁判官の方は自分の方から心配しちゃうわけで困るわけですけれども、そういう面でいったら、今のような手当てをしながら、やはり最高裁のもとに独立した機関としての検証機関を設けていくという格好でやるのが適当ではないかというふうに考えておりまして、先生の御心配は、大変私どもとしても共感する部分はあるんですが、そういう制度として設計していただくのがいいのではないかと思っております。
木島委員 終わります。ありがとうございました。
山本委員長 次に、保坂展人君。
保坂(展)委員 社民党の保坂展人です。
 私は、民事裁判の実は当事者として少年時代から青年時代の終わりころまでを過ごしたという、終わりというんですかね、十六歳から三十二歳までで、十六年かかる裁判をした当事者でございます。
 お二人の先生方のお話を聞きながら、さすがに長かったなという思いと、特に当事者として、十六歳の少年が高校に入る際の内申書に、思想、信条等々、政治活動という、触れることを書かれたことが憲法違反に当たるかどうか、裁判を支援する皆さんは、これはもう大問題だ、徹底的にやろうということでございまして、本人の方は、早く決着をつけてくれという思いもあったんですね。それで大変悩んだ時期もあることを思い出しました。
 結果として、七年後に東京地裁判決が出て、これは私の方が全面的に勝ったものですから、さらに長引いたわけですね。そして、八二年に逆転敗訴判決が高裁で出て上告をしたところ、またこれが最高裁も延々とやっていまして、八八年、これは上告棄却ということで、この上告棄却の判決言い渡しをぜひ聞きたいものだと。いや、そのときは棄却とはわかっていなかったわけですけれども。まさに不親切なところでして、いつあるかわからないと言うんですね、当時の最高裁は。週に二回紙を張り出すからそれを見に来い、三十分後に出す、こういう対応でありまして、意地でも見てやろうということで、その三秒の、本件上告を棄却するというのだけを聞きに行った。民事判決の言い渡しに本人が入ったというのは、最高裁のあの法廷ができて以来のことだ、あの新しい建物では、そういうこともございました。
 確かに長かったんですけれども、今振り返ってみると、幾つかの重要な論点が提出されました。それは、子供の側の学ぶ権利、学習権ということは、一体この国の憲法上の位置づけはどうなっているんだろうか、新しい概念の提起です。あるいは、内申書という個人情報はだれに帰属するのか。このために、弁護団は、アメリカまで派遣しまして調査をしてまいりました。それで、意見書を出しました。また、憲法学者、教育学者などさまざまな専門家が次々と法廷に出て意見を開陳するということがございました。
 ただ、こういった行政訴訟の場合は、常にそうだと思うんですが、争う当事者間に、まず議論はかみ合わないんですね。訴えている側は大事だと言い、訴えられている側は、何のことはない、普通の評価だということで、重要度の認識が違うということもあります。
 このような裁判、つまり今、今後将来にわたって、これまで議論されたことのないような裁判が提起されたとき、あるいは今のお話をお聞きになって、この迅速化、二年を基本にということの枠からはみ出すのか、それとも、それでも二年で議論すればよかったというふうに思われるのか、お二人にちょっと体験者として御意見を伺いたい。
三木参考人 私は裁判所クラブにおりましたときに先生の事件も取材させていただいた経緯がございまして、教科書訴訟、今思い起こしておりました。
 先ほど来申しているように、二年というのはあくまでも努力目標の数値で、本来速やかに終わるべき裁判をだらだらと引き延ばすところに問題がある。もともと論点の多い、先生が起こされたような訴訟の場合は到底二年で終わるはずもないと常識的に判断できますし、その判断をやはり市民の目で点検していくシステムが担保されれば無用な拙速化は避けられるのではないか。二年というのは目標だというように私は心得ます。
杉井参考人 私どもとしては、先生のような事件こそもっと迅速化して早く出すと。二年でやれという趣旨ではない、しかし、行政に対するいろいろな責任追及の事件などは長期化しまして、これはやはり証拠収集を原告側にできるようにするとかそういうことで、もっと速くしなきゃいけないと思います。
 ただ、先生もおっしゃられましたけれども、実質は、裁判官も新しい法理論を研究しなきゃいけない、我々弁護士の方も今までやってきていない教育の分野の問題とか先生がおっしゃられた問題を勉強しながら、また外国の文献とか外国の学者とか、日本の中でもいろいろな、国会へ行ったりあそこへ行ったりという格好で調べなきゃいけませんので、そういう面では、やはり新しい分野の法形成に裁判が役立つという面では一定の時間が必要になる。
 それの上で、やはりできるだけ速くやるということを私どもとしては努力していくことが必要だと思いますので、単純に二年という格好ですべての事件を一律に決めるような格好ではいけないのではないかというふうには考えております。
保坂(展)委員 この最高裁の判決が出るころになって子どもの権利条約がいよいよ日本の国会でもそろそろ議論になり、この中には意見表明権などの概念があって、逆にその辺から始まったのであればもう少し議論も整理されたろうというふうには思いますけれども、これからも思いも寄らなかった訴訟というものが、特に行政を相手に、非常に情報を持っている行政機関を相手に民間一個人が行う。私の場合は、応援をしてくれた方が五百円単位で総額三千万円の訴訟費用をみんな基金で賄うという大変すばらしい体制が組まれたんですが、なかなかそういうことは一個人には難しいだろう、大変幸運だったと思うんですけれども。
 専門委員の制度が民事訴訟の中に出てきますよね。お二人に伺いたいんですけれども、真っ先に危惧するのは、恐らく医療などの場合に、どうしても業界のギルドといいましょうか、特に地方都市に行けば、大体名前も顔も知っているというような世界の中で、どうしても専門的に知見を持っている者の仲間が事件として訴えられるというようなケースの場合、公平性を担保できるのかどうか。あるいは公害の事件などでも、例えば化学物質過敏症でシックハウス症候群が学校に出たといってきょうニュースでやっていました、子供が教室を移動しています。そういうことを訴えた場合に、建築の専門家というのは、えてしてやはり業界の利益の中で生計を立てておられる。この辺の公平性の担保について、お二人に伺いたいんです。
三木参考人 先生がおっしゃるとおりに、複雑な問題が訴訟の場に待ち込まれる事態になったときに、専門家と呼ばれる人がどういう形で選ばれたら公平な判断ができるのか。
 今回の考え方では、訴訟の争点を整理するに先立っての知識を専門家から教授されたいというところに趣旨があるんだと思いますが、やはり忌避だとか、裁判官忌避に似たような制度で、不審な点があった場合には、公平性に疑問が生じた場合にはやはり別の方にかわっていただくような制度をきちっと担保しておかなければいけないし、登録される専門委員の方もなるべく複数の方をあらかじめ登録しておいて、公平性に疑問が生じ次第、次々に多くの方の意見を聞いていくというようなことが行われなければならないでしょうし、それもまた検証の対象にしていかなければ公平性が担保できないというように思います。
杉井参考人 先ほど申しましたように、現在の裁判で長期化している事件はやはり専門性がある事件が多いので、専門家の協力をいただくということが必要なんですね。そういう面でいうと鑑定制度というものが今ありますけれども、やはりそれだけではちょっと硬直的で、もう少し柔軟に専門家の協力を得たいというこの制度自体は、私ども、必要だというふうに思っています。
 ただし、今言われたように、医療過誤事件などは例えば患者さんと病院側ということで、お医者さんが専門委員に選ばれる場合が多いでしょうから、やはりそういう面で公平性の問題がある。そういう面では、この法律にも書いてありますが、一つは、当事者の意見をやはりきちっと聞いて採用を決めていく。それから、中立性、公平性をちゃんと確保して当事者とも協議しながら裁判官が人選をしていく。さらに、専門家の意見を聞く場を、裁判官が自分だけわかる場所でやっては困るわけであって、どういう意見があって、それが裁判にどう影響を持つかということを両当事者にきちっと公平に伝わるような透明性がある意見の収集をしていただくとか、そういうことを含めてきちっと制度をつくっていく。
 もう一つ、最後に言いますと、裁判官はどうしても専門家が入ると専門家に頼っちゃうんですね。よくわからないし、それの方が楽ですから。だから、そういうことにならないように、裁判官自身が専門家の御意見もきちっと聞きながら、自分自身も主体的な判断ができる体制をつくっていただく。そういう面では、運用的に公平を担保し実行する大変重要な制度だと思いますので、そういう努力は必要であろうと思っております。
保坂(展)委員 ありがとうございました。終わります。
山本委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人各位におかれましては、貴重な御意見をまことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。
 参考人の方々は御退席いただいて結構でございます。
    ―――――――――――――
山本委員長 引き続き、内閣提出、裁判の迅速化に関する法律案、民事訴訟法等の一部を改正する法律案及び人事訴訟法案の各案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 各案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官兼文化庁長官官房審議官森口泰孝君、司法制度改革推進本部事務局長山崎潮君、警察庁警備局長奥村萬壽雄君、法務省大臣官房司法法制部長寺田逸郎君、民事局長房村精一君、刑事局長樋渡利秋君、公安調査庁次長栃木庄太郎君及び特許庁長官太田信一郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
山本委員長 次に、お諮りいたします。
 本日、最高裁判所事務総局中山総務局長、園尾民事局長兼行政局長及び山崎家庭局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
山本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐藤剛男君。
佐藤(剛)委員 自民党の佐藤剛男でございます。
 裁判迅速法、これは小泉内閣の改革の大きな柱になっておるわけでありまして、ここまでまとめていただきました関係各位に敬意を表する次第でございます。
 思いますには、ここに一番我々市民、国民が感じますのは、オウムの問題があったはずであります。そのオウムについての求刑、松本に対します求刑があったときに総理は、いかにも七年は長いぞと、求刑で。これから判決があり、さらに上訴という手続がある。あるいはまた、最高裁まで行きますれば、まさしく時効の十五年ぐらいまでいっちゃうというような話では、これは国民の信頼というものを損なうわけであるわけであります。
 そういう意味で、私は、この迅速というものは、富士山の登山で吉田口から上がる、あるいはロースクールから上がっていく、しかし、最終的な頂上というのが国民に開かれた司法である、こういう意味を私は持っておると思っておりますし、また、そういう意味において、これからインフラの整備であるとか、それから当事者の正当な権利、利害を害さないよう、人権も、私は人権尊重派の政治家でありますが、そういう当事者の防御権も損なうことのないよう十分な配慮を加えたり、あるいは裁判官、検察官、関係職員の増員、それから裁判所の施設の拡充、こういうような人的、物的のインフラストラクチャーの整備促進の必要な予算措置を講ずる、これは国を挙げての重要なる課題であると思います。
 そして、この二年間について、二年以内に事実の関係を決めるということについての最高裁判所の指揮権といいますか、検証する場合においては、当然、法曹三者の協力に加えて、先ほど来委員の方々からありましたが、外部有識者の関与を認める、こういうようなことは私は必要な措置であると思っているわけであります。
 それと同時に、重要なることは、やはり犯罪というようなものを未然に防いでいく、犯せないように。あのオウムの事件というのは、これが一番私は、あのときにもう少し早く、坂本弁護士の家族が殺された、そういうようなことについてスタートをして捜査の端緒というものが出ていたら、あれほど、五千人に余る被害者というサリンの問題というのは出てこなかったはずだというようなことで、非常に残念なわけであります。
 それに関連しまして、ここ、今連休のところで、テレビをあけますと出てくるのが、あの白装束の団体ですね。山梨のドームの施設を目指すという、千乃裕子さんを会長といたしますいわゆるパナウェーブ研究所、こういう問題について私は関心を持たざるを得ないわけでございます。
 それで、このパナウェーブの研究所につきましては、もともと、会長といいますか、開祖さんが宇宙を支配する法則の伝道者、こういう信奉をするメンバーで組織された集団なんですね。これは宗教法人でもない、任意団体でありまして、これは福井にあるんですね、住所が。そして、今、何なのかというと、教祖の体が悪くなった、これは何なのか、有害の電磁波によって攻撃を受けた、こういうところから、防御のためのキャラバン活動が動いているというのが実態である。
 それで、いろいろなケースがあるんですね。四国の香川で、何か電柱が倒れちゃった。僕はそれを聞きたいと思っているんですが、これは、電柱とかあるいはガードレールとか、これを白い布で覆うという特色を持ってキャラバン活動がなされている。それから、岡山県では、往来妨害罪というふうなことで捕まっているんですね、捕まって罰金を受けているんですね。
 それで、私は、こういう流れを見ていますと、テレビなどを見ていますと、一体何で現行法できちんとしたことができないのか。できなかったら、これは法律を直さなきゃいかぬ、法律をつくらなきゃいかぬ、これが我々の仕事だと思うんですね。一人一人が、一人が例えば駐車違反だったときには、あるいは偉い人が成田から着いた、そうすると、車をとめる、後ろまであけてくださいとやるでしょう。なぜそういうようなことが、集団になって白いものが集まってくるとできないのか。
 私は、そういう意味において、警察庁警備局長、まず本件について、なぜそういう一つの行為、あれだけのものについて、私は人権擁護派ですよ、人権尊重しますよ。しかし、問題は、あのオウムのときにも、オウムの体質が、毒ガスの攻撃を受けた、こういうところから始まったんですね。そして、一般社会との対決姿勢を示したのがオウム真理教だった。そういう意味においては非常に何か似ているところがあるんですね。
 電磁波が来た、スカラー波というんですな、そういうところでキャラバンに行って、さらには場所がもう決まっていまして、スポンサーの、ファッションをやっている社長の森谷栄太郎さんというのは、自分でみずから言っているから公表していいと思いますが、LRという出版を出している社長さんが、本年六月に山梨県の、今建設中になっておる、こういうふうな問題に、もし会長さんが、この会長さんというか、さんをつけさせていただきますが、体のぐあいが悪かった、もし死んでいるかもしれない。新聞によるとだれかインタビューしたというんだけれども、あるいは、そうじゃなくて文書で、ここまで言っているんですね、私、見て驚いているんだけれども、タマちゃんの会というのがあるんですね、タマちゃんのことを想う会、これとの関係があるというんですね。本当ですか、それ。
 そこで、こういうふうな問題について、公安調査庁、どのような調査をしているか。警察庁警備局長、いらっしゃっていますか。それで、この問題についてなぜ捜査のあれが動かないのか、そういうことについて、あるいは法律の欠陥があるならどこに欠陥があるのか、そこのところの問題をまずお聞きしたいと思います。これは、私は、裁判迅速の問題について欠かせない問題のことであるから御質問するわけであります。
栃木政府参考人 公安調査庁といたしましては、破壊活動防止法、それに、無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律に該当する疑いのある団体を中心とする諸動向につきましては、幅広い関心を持って情報を収集している次第でございます。
 このパナウェーブ研究所につきましては、平成五年に福井市に設立されましてから、平成七年四月以降、車両を連ね、あるいは白装束で全国各地を転々としたりいたしまして、先ほど先生が御指摘のように、公道を占拠するなどの特異な団体行動を繰り返しておりまして、オウム事件等の教訓にもかんがみまして、将来公共の安全を害する可能性も認められたため、その当時から動向については重大な関心を持って見守ってきていたところでございます。
奥村政府参考人 お答えをいたします。
 御指摘の団体につきましては、御案内のとおり、白装束で非常に異様な外観の集団でございまして、これが十数台の車両に分乗いたしまして、岐阜、長野等の山中の道路に駐留をいたしまして、地域住民の方々が大変不安を感じられまして、一一〇番通報が寄せられるなどのトラブルが生じているところであります。
 警察におきましては、五月一日にこの集団のメンバー九人に対しまして、道交法違反で反則告知を行ったところでありますし、また、検問も行っておるところであります。この団体につきましては、過去にも各地で同様のトラブルを起こしておりまして、平成三年以降、警察といたしましては、三件の事件で逮捕等、強制捜査を行ってきたところであります。
 警察といたしましては、まず何よりも住民の方々の不安を解消するということが第一と考えておりますし、また、御指摘のとおり、過去、オウムのように、トラブルを起こしておりました団体がテロ組織に変質した例もありますので、この団体につきましても今後とも十分に注意を払っていきたいと思いますし、そして、違法行為につきましては厳正に対処をしてまいりたいというふうに考えております。
佐藤(剛)委員 私は、何か現行のあらゆる法律が適用されないような感じであるなら、きちんとした法律をつくらなきゃいかぬ。一人の場合にはできていて、多数が集まると何もできないで。しかし、そんなもの、私は人権擁護ですよ。しかし、死んでいるかもしれないですよ、会長さん。そのときにどうするんですか。そういうことをやったら保護するとかということだって大義名分が立つだろうと私は思っております。きょう、この問題は、後ほど、常に引き続きまして注視いたしますので、本件についてはここまででございます。
 それから次は、時間がありませんので、民事訴訟法の問題について質問をいたします。
 民事訴訟法の改正で、関係者の努力によりまして、このたび、知的財産について、東京と大阪の裁判所というのがなった。そして、専属管轄で、あらゆる地域から東京に来る。これは、関係各位、それから、私は小泉内閣の非常に大きな功績であると思っております。なかんずく、太田特許庁長官、らつ腕の長官でありますし、そういう中で今回のあれが入ったということは、私は高く評価するわけであります。
 しかし、形式だけじゃだめなので、これは、実際には実体法というのが僕は必要なんじゃないかということを考えます。それは、なぜそういうことを説明するかというと、裁判官をふやそうといったってなかなか限りがありますから、その意味において、できるだけ裁判に件数が上がらないようにするという意味で、例えばオリンパス問題というのがありましたね。研究者、日本に研究者は二十万人いる。その研究者が、企業の中で働きながらやっている間に、出るわけですね、発見するんですね。ところが、それが非常に高いものであったときには訴訟問題としておりて、オリンパスの場合には会社が負けたわけですね。
 そういうふうなケースというのがあるわけで、私は、それは、特許法三十五条に書いてある問題は削除すべきだという論でありまして、なぜ削除するべきなのかというと、アメリカもそうなっているし、それから文化庁、文化庁は長官官房審議官の森口さん、来ていますけれども、お聞きしますけれども、これは著作権法にはないですよね、そういう規定。
 だから、私は、ここら辺は、内閣の知的集団の事務局ができているわけですから、そこら辺調整をとって、しかるべきことをやってもらいたいと思います。アメリカがこういう問題はないわけですから、私は、日米というのは、著作権についても特許についても、もうできるだけ同じようにするということが知的戦略の国家戦略で重要な課題だと思っておりますので、そういう問題について御質問したいと思っているんですが、あのオリンパスと同じようなものが、最高裁、おられますか、最高裁判所、どのぐらいの件数が係属されていますか。
園尾最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
 特許権に関する民事訴訟事件の一年間の新受件数は、平成十四年には百六十五件となっております。その中に、特許法三十五条に関して争われた事件がどの程度あるかにつきましては、正確な数値は現在把握しておるわけではございませんが、幾つかの裁判所に問い合わせるなどして調査いたしました結果によると、少なくとも数件程度は係属しておるという実情でございます。
佐藤(剛)委員 特許法につきましては、このたび、民事訴訟法の改正で、いわゆる合意管轄、あるいは東京と大阪にできた。
 それから、著作権の関係で、今どういうふうな状況になっていますか、訴訟の関係。それから、当然、著作関係で紛争問題というのが起きていると思いますけれども、そのあたりについてお答えください。
森口政府参考人 お答え申し上げます。
 著作権に関しましては、いろいろな紛争、当然あり得るわけですけれども、大きく分けまして、高度なコンピュータープログラムに関する訴訟、そういった専門的な対応が必要なものと、それから、いわば日常的に起こるコンピューターとかインターネットでの利用に係る小規模な紛争、そういう二つございます。
 前者につきましては、今回、今御審議いただいております民事訴訟法の改正の中で、プログラム著作物については専属管轄ということでお願いしておりますが、後者の方の、いわゆる日常的な小規模な紛争につきましては、全国各地で起こり得るということもございますので、それぞれの所管の裁判所で御審議いただく、そういう方向になってございます。
佐藤(剛)委員 後者の問題なんですが、私は、そういう意味で、司法改革の中に、裁判外の問題についての、これは来年の国会に出てくると思いますが、例えば弁理士とか行政書士とか、あるいは家屋調査士とか、あるいは司法書士の方々の活動を広げて、そして、いわゆる隣接の分野についてやるということで、こういう地域のような、キャラクター商品とかいろいろな問題は、私は、ADRにちょっと先に、よりももっと近接的な、お話しする、御相談ですよ、弁理士のところに行って、あるいは行政書士のところに行って、どうなんですか、嫁しゅうとの御相談みたいな話なんだ。そういうようなことを私はやるべきだろうと思っておりますが、そこら辺について、司法制度改革推進本部の山崎局長、どのようにお考えになっていますか。
山崎政府参考人 ADRの充実につきましては、現在、私ども、今検討会で詰めている段階でございます。個別のADRについてどうするかという検討というよりも、ADRに共通したいろいろの手続とか、そういうものを今構築しようということで考えておりますし、また、隣接の職種の方々、これの活用の方法、これも今検討中でございます。来年には御承認を得たいというふうに思っています。
佐藤(剛)委員 そのような形のADR問題、それからADRよりも一歩手前、前の方、そういうふうな問題を拡充することによって、余り裁判所に負担をかけないような形を持ってくる。和をもってとうとしとなすというのが日本の原則なので、何もグローバルスタンダードばかり従うことはない、ダブルスタンダードだって私は構わないと思っておりますし、そういう面で、そのときに、弁理士だとか行政書士とか関係者を、内閣で審議会なり委員会なりやっておると思いますから、その中には極力入れるように、そして、そういう中において、そういう審議の過程から通じてやっていただくことをお願いしまして、時間でございますので、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。
山本委員長 漆原良夫君。
漆原委員 公明党の漆原でございます。
 本法案、裁判の迅速化という命題そのものに反対する者はいないと思います。本法案は、裁判の迅速化を図って、二年以内のできるだけ短い期間内にこれを終局させるというものであります。
 しかし、十三年度の民事、刑事裁判における審理期間の現状を見ますと、その期間が二年を超えた割合は、民事では七・二%、刑事では〇・四%にすぎない。数量的に言うと、二年以内という本法案の目的は既に達成されているんじゃないか。そういう意味では、本法案の立法事実はないのではないかという疑問を感じます。
 その点について、立法事実は何なのか、また、本法案提出の意義は何なのか、お答えいただきたいと思います。
山崎政府参考人 ただいま御指摘の、現在の民事、刑事の裁判の状況はそのとおりかと思います。
 私ども、全体として、日本の裁判、迅速化が図られているというふうに考えておりますけれども、例えば、当事者間に争いがあって、人証調べをするような事件、それから複雑、専門的な事件、あるいは国民が注目をいたします重大事件でございますけれども、こういうものに関しまして、やはり依然として長期間を要するもの、これがあるわけでございまして、少なくないという状況でございます。
 それと、そういう点について、必ずしもやはり国民の納得が得られていない。ここ最近の新聞、テレビ等の論評とかそういうものをお聞きいたしておりましても、やはり納得がされていないという状況があるわけでございます。
 そこで、この法案は、このような事件を含めまして、第一審の訴訟事件を初めとする裁判の一層の迅速化を図ろうということでございまして、その基本的な枠組みについて規定をするというところに意義があるというふうに考えております。
漆原委員 裁判の迅速化と裁判の充実化というのは、この二つは司法に対する国民の信頼をつなぐという意味では、私は車の両輪だというふうに思っております。
 しかし、この二つの命題は、迅速化すれば形骸化していく、充実化すれば長期化という、ある意味では二律背反の関係にあるんじゃないかと思います。裁判の迅速化の大前提として、私は、裁判の充実化が図られていなきゃならないというふうに思っているんですが、この点はいかがでしょうか。
山崎政府参考人 ただいま御指摘の点、そのとおりでございます。私どもも、そういう点を考えて、この法案の二条一項及び六条、こういう条文においてこの趣旨を明確にする、充実な手続を行わなければならぬというその前提をきちっと法文にうたい上げているというところで御理解を賜りたいと思います。
漆原委員 本法案の二年以内ということ、この数値目標の設定自体がいささか唐突の感じがしております。裁判の充実化という観点から、どのような検証がなされて二年以内という目標が設定されるようになったのか、その辺の経過を、どのような検証をされたのかどうか、また、二年以内ということに決めたというその理由をお尋ねしたいと思います。
山崎政府参考人 この問題の最初のきっかけでございますけれども、私どもの顧問会議、その顧問のアピールというところで二年という目標が提示されたということでございます。それに伴いまして、小泉総理大臣も二年という目標をアピールされたわけでございます。これに伴いまして、私どもの方で、これを端緒といたしまして検討をいたしました。
 それで、二年というのは本当に妥当なのかどうかということでございますけれども、まず二つポイントがございまして、国民が納得できる合理的な期間内に裁判が行われなければならないという、国民の納得というものが一つございます。それと、制度、体制、これの整備を通じても実現可能な期間でなければならない、こういう二つの要素がございます。そういうところからいろいろ勘案していきますと、やはり二年というのが妥当であるという結論に達したわけでございます。
 御存じのとおり、この法案は第一審の裁判、これについて二年ということを申し上げておりまして、本当の紛争の解決が最初から最後までどのぐらいの時間がかかるかということは、もう少し時間がかかるということになるわけですね。これは一審の話でございますから、例えばこれが控訴審に行ったときにどのぐらい時間がかかるか、それから権利行使のための強制執行でどのぐらいの時間がかかるか、こういうことを全部トータルして考えますと、一審としてはこの程度の期間で行うことがやはり国民の納得が得られる期間である、こういう結論に達したわけでございます。
漆原委員 民事でも、証拠調べが行われた事件では十九・二カ月、それから、刑事裁判では否認事件でも九・七カ月で終局しているわけです。
 二年以内のできるだけ短い期間内にというふうになっているんですが、まあ時に長いのもある、ほとんど二年以内に終わっているわけですから、何も二年以内のできるだけ短い期間内、それは一年か半年かわからないけれども、そこまで対象にしなくても、二年以内を目途に終局するようにというふうな法律構成にできなかったんでしょうか。
 私なぜこんなことを言うかというと、普通に行われている裁判でも、一年ぐらいで行われている裁判でも、裁判官の意識としては速くやらなきゃいかぬという、この数値目標が頭に、目に見えるわけですから、また場合によっては最高裁の検証の対象になるんでしょう、二年以内の事件でも。そうすると、何とか速くしなきゃいかぬ、自分の能力が問われるみたいなことで、早く終わらせよう終わらせようというところに裁判所の訴訟指揮が流れていきやしないのかなという心配なんですね。
 したがって、二年以内であれば国民が納得するということであれば、何も二年以内のことについてまで言う必要はない、二年以内を目途に終局するようにというふうな規定ぶりでもよかったんじゃないかなというふうに今思っているんですが、この点はどうなんでしょうか。なぜ二年以内のできるだけ短い期間内というふうにしたんでしょうか。
山崎政府参考人 ただいま御指摘の点でございますけれども、裁判の迅速化をするに当たって、それでは二年以内であればあとどのぐらい時間がかかっても問わないという形をとりますと、これは本当に国民の期待にこたえているのかなという問題点もございますし、それではとにかく二年以内におさまればもうあとはゆっくりやってもいい、二年以内ならということにもなるわけでございまして、果たしてそれで国民の期待にこたえられるのかということでございまして、やはり、充実した手続を行って、それなりの合理的な手続を行って、速く進むんだったら速い方がいいというのが国民の希望だろうというふうに私ども思います。
 そういう点から、これを、二年以内のできるだけ短い期間というものを入れさせていただいたわけでございまして、これによって、では裁判所はそれでいろいろ、それがあることによってどういう影響を受けるかということでございますが、この法案の六条、これは受訴裁判所の責務でございますけれども、ここでも、充実した手続を実施することにより、可能な限り裁判の迅速化に係るその目標を実現するように努めるということをはっきりうたっておりまして、可能な範囲でやりなさいということでございまして、不可能なやり方をしろということを言っているわけではない。ここはきっちりその法案の趣旨を周知いたしまして、そういうような運用にならないようにしていただきたい、そういうふうに期待をしているというところでございます。
漆原委員 一年で終わるものを無理無理二年に引っ張っていく裁判官もいないし弁護士もいないのであって、二年と決めたから二年まで引っ張られるということはまずないだろう。むしろ私は、二年以内ということ、二年以内のできるだけ短い期間ということによって、関係当事者の責務、全部かぶってくるわけだから、それによって裁判の充実という点が損なわれる心配があるという、むしろそっちの方の危険度の方を危惧しているわけですよね。
 逆な言い方をしますと、裁判によっては、当事者が多いとか事案が複雑だとか、いろいろなケースがあると思うんですね。そういう意味では、一生懸命やっても、とても二年では終えられないというケース、これはあると思いますね。
 したがって、充実した裁判をやるためには、裁判官は場合によっては二年を超える裁判をする勇気を持つことも必要だというふうに思うんですが、この点はこれでいいですか。
山崎政府参考人 まさに御指摘のとおりでございまして、必要なものはやるということでございますので、二年を超えても必要なことはきちっとやるという勇気は必要だというふうに思っております。
漆原委員 次に、当事者の責務、七条に規定されておりますけれども、民事訴訟の当事者あるいは刑事訴訟の被告人については正当な手続上の権利の行使、これを妨げるようなことがあってはならないと考えますが、この点について確認のため御答弁を願います。
山崎政府参考人 七条の趣旨につきましては、後段で「手続上の権利は、誠実にこれを行使しなければならない。」ということをはっきりうたっておりますので、当事者の正当な権利利益が害されてはならないということになります。
 一般的には二条の三項にこの規定がございまして、この規定の趣旨が当然ここにも適用になるというふうに考えております。
漆原委員 裁判の迅速化については、これまでも裁判官の訴訟指揮で随分頑張ってこられたわけですね。今後は、訴訟指揮だけにゆだねるということではなくて、充実した手続を実施することが大変重要だというふうに思いますが、どんなことを今、今後の課題として考えておられるのか、お聞きしたいと思います。
山崎政府参考人 この法律は裁判の理念をうたっているわけでございまして、個別の手続については、それぞれの手続のところで制度を改正していくということでございます。
 民事関係でいえば、今御承認をいただこうとしております民事訴訟法の改正、人事訴訟法の改正、こういうものがその制度に当たるわけでございます。刑事につきましては、現在、私どもの検討会の方で、裁判員制度とそれから裁判の迅速化について検討を重ねております。この点について、来年の通常国会には改正案を御承認いただこうという手はずで今鋭意検討中でございます。そのように、各手続等については各個別の法律で改正をしていくという考えでございます。
 それ以外に、では、体制の整備をどうするかということでございますけれども、これも八条に検証の規定がございますけれども、こういうような検証を経て分析をして、それによって手続を変えてみる、変えても、まだそれでも十分に期間が短縮できないという場合には、それは人の問題、あるいは施設の問題とかを含むそういう人の問題、これが足りないということであれば、そこの充実を図っていく、こういうようなことになるわけでございます。
漆原委員 最後に最高裁にお尋ねしますが、検証については、そもそも最高裁がなぜ検証するんだという問題点があります。なぜ最高裁が検証しなきゃならないのかということが一点。それから、検証に当たっては、法曹三者あるいは学識経験者などの協力、関与が不可欠ではないかというふうに私は思っておりますが、この点についての最高裁のお考えをお尋ねしたいと思います。
中山最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
 検証の結果、いろいろな施策が必要だということになってまいりますと、それは予算をとって実行していかなければならない、そういった実施責任というものがございますし、また、それがなぜ必要かということについての国民に対する説明責任という観点もございます。そういうことを考えますと、やはり検証の最終的な責任主体は国家機関である最高裁判所、こういう位置づけでこの法律はできてきているのではないかな、提出されているのではないかなというふうに私どもとしては受けとめております。
 しかし、この検証というものは最高裁だけでできるというものではございません。仮に、最高裁が自分たちだけで結論を出したにしましても、他の検察官、弁護人の、法曹二者の協力がなければ迅速化というものは絵にかいたもちになってしまうわけでございます。
 例えば、データの収集をどうやっていくか、検察庁、弁護士会にも協力を求めなければなりませんし、分析の仕方、視点、そういったものについての意見も聞かなければならないと思っております。また、分析の結果についてどう見るかといったところも、またこれも意見をお聞きしなければならないだろうと思っております。さらにはまた、統計の専門家といった学識経験者からの御助力も必要であろうと思っておりますので、そのあたりの適切な仕組みというものをきちんと考えていきたいというふうに思っているところでございます。
漆原委員 以上で終わります。ありがとうございました。
山本委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時十三分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時一分開議
山本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。日野市朗君。
日野委員 きょうは、迅速化法、これを中心にしながらいろいろお話を進めてまいりたいというふうに思います。
 まず、裁判の目的というのはいろいろあると思うんですね。主な目的の中には、それを迅速にやろうという目的は余り古典的なものじゃないんですよ。それが大問題になってきたのは、最近になって、余りにもおくれがひどいじゃないかということをマスコミに取り上げられるような事件、例えばオウム事件であるとか、それとかまあいろいろありましたが、そういう事件で、特にオウム事件なんかはこれは余りにもちょっとひど過ぎる、こういう話がありました。
 しかし、気の毒なんですね。たしかオウム事件は、あれは弁護人さんたちは国選弁護じゃなかったかな。どう、わかりますか。わかったらちょっと教えてください。
中山最高裁判所長官代理者 被告人松本智津夫の事件についてお尋ねかと思いますが、国選弁護人が十二人でございます。
日野委員 国選弁護人というのは本当に嫌な立場でして、国選弁護で手を抜いたと言われるのが嫌だからみんな一生懸命やらざるを得ないんですよ、国選弁護というのは。私もその経験がありますけれども。松本智津夫の事件なんかは、手を抜いたと言われたくない、そのために一生懸命やる、そうするといろいろな問題点が出てくる、それを一つ一つつぶしていくともう大変な時間がかかる、こういうことにならざるを得ない。弁護人さんたちには非常にこれは気の毒な話だな、私はこう思っているんですね。
 それで、国選弁護人の話が出たついでにちょっとお話ししておきますが、今刑事事件なんというのは特殊な事件を除いてはほとんど国選じゃありませんか、特に地方なんか。どうですか。最高裁、答えられたら答えてください。私の地方なんかは全部国選だ。私選なんか頼む人はいない。
中山最高裁判所長官代理者 突然のお尋ねで正確なところではないかと思いますが、地裁事件でありますと、約七〇%が国選弁護人であったというふうに承知しております。
日野委員 この話に深入りするつもりはないんですが、訴訟費用をやはり被告人にもあれは負担させなきゃだめだ。被告人は、訴訟費用を負担しなくたっていいと思うから、私選弁護を頼むよりは国選弁護を頼む。国選弁護人の方が一生懸命やる。これは被告人にとってみれば、それは国選でやった方がいい。どうですか。ここまでわかるかどうか。わかったら答えてください。国選弁護で訴訟費用を被告人に負担させている事件はどのくらいありますか。大ざっぱなところでいいです、ここらになったら。
中山最高裁判所長官代理者 後ほど訂正させていただくかもしれませんけれども、記憶では、有罪を受けた被告人のうち二五%が訴訟費用負担であったと思っています。
日野委員 それ以外は訴訟費用負担なし、こういうことですね。
 この点は、ちゃんとしないと、本当に世間の疑惑を招きますよ。松本智津夫の弁護人なんというのは、あれは一体何だ、と極悪人みたいに言われる。それから、著名事件の弁護人、それも恐らくは国選でやっているに違いない。そういうのは極悪人であるかのように世の中やマスコミからののしられる、ののしられる。こんなばかな話ないんですから、これはきちんとやはり被告人に訴訟費用を負担させて、こういうものなんだということをちゃんとわかるように、一般の人たちがわかるようにしておかなくちゃいかぬです。どうも、ちょっと済みません、別の話に飛んでしまって。
 結局、一番大問題は何なのか、裁判における重大問題は何か。それは、きちんとした事実認定、実体的な真実、それが何かということ、これを認定していくこと。具体的な、実体的な真実の発見、これが裁判の非常に重大な役割であったし、重い重い課題だったんですね。ところが、私は、この実体的真実を発見していくというためにはある程度裁判に時間がかかる、これはしようがないなと思うんですよね。大臣、いかがですか。
森山国務大臣 おっしゃるとおり、事実の確認ということが重要な要素でございまして、そのためにある程度の時間がかかるということは現実であり、やむを得ないことかと思います。
 しかし、それが余りにも長くかかりますと、仮に後で事実が長い間かけてやっとわかりましても、その結果余り実益がないというようなこともあることもあるんじゃないかというようなことがありまして、世の中が大変忙しくなっておりますので、非常に結論を急ぐという人が今はふえてきているのではないかというふうに思います。
日野委員 まず、問題を刑事事件に限ってみようと思いますね。
 昔の話で恐縮です。でも、大臣はこの事件のことは知っていると思う。松川事件なんというのがありましたね。それから、八海事件なんというのもありましたね。いずれもこれは再審で無罪になっています。これが再審で無罪になるためには、再審以前の裁判、一審、二審、三審、これは非常に時間をかけて、非常に丁寧な審理をやった。これが、最終的に再審が認められて被告人たちが無罪になっていったということと関係があると私は思うのですよ。やはり、二年というような決め方というのはいかがなものか、こう私は思わざるを得ないです。
 大体、司法というのは回顧的なものです。司法というのは回顧的です。少なくとも、リアルタイムで裁判が発生するなんということは、これはないわけでありまして、ある事件が起きる、しばらくしてそれが発覚をする、民事でいえば問題化してくる。そういうことですから、どうしても後ろ向き、回顧的であること、これは司法の宿命だ、そう私は思っておりますが、こういう回顧的なもの、しかも、それが個人の人権にかかわっていき、世の中の正義にかかわっていく、そういうことになると、これはもう時間がかかる、事件によっては時間がかかっていく、これはしようがないことだと思いますが、大臣もそうは思いませんか。
森山国務大臣 おっしゃるように、事実を解明して確認をするということが何よりも大事であって、そのために、いろいろな方向からいろいろな証人を立て、いろいろな証拠を調べて調査をする、審査をするということになりますと、時間がかかるのはある程度はやむを得ないことだと思います。
日野委員 そのある程度が問題なんだな、そのある程度というのがね。どこをもってある程度とするのか。
 この条文の決め方を見てみましょう。二年以内のできるだけ早い時期に、こういうふうになりますわね。条文によりますと、「第一審の訴訟手続については二年以内のできるだけ短い期間内にこれを終局させ、」となっている。これを「目標として、」というふうになっていますが、そもそも、これはどういう意味です。
 日本語の通常の用語例から見ると、二年以内に決めなさい、しかもできるだけ早く決めなさい、こういう読み方ができるのですよ、これは。そう思いませんか。
山崎政府参考人 この二条一項の意味でございますけれども、二年以内ということがまず目標でございますが、その中でも、なるべく、できる限り短い期間ということでございまして、委員御指摘の意味合いと同じでございます。
日野委員 私は、この第二条の読み方というのは、とにかく二年以内は、二年というのは最高限度ですよ、それ以内に決めなさいよ、こう読めますよ、こう言っているのですが、事務局長、今の答えでいいのかな。
山崎政府参考人 これは目標でございますので、まず二年以内という目標、これが一つの目標でございます。その中でもできる限り短くしなさいという目標でございます。
日野委員 目標にしなさいということですな。この目標という言葉の意味ですが、二年を目標にしなさい、それより先は認めませんよというふうにも、目標という言葉はとれませんか。どうでしょう。
山崎政府参考人 目標は、それを目指せということでございます。ですから、ほかの条文のところでも、「可能な限り」とかそういう文言を使っていると思いますけれども、目標はあくまで目標でございます。
日野委員 目標はあくまでも目標だ。じゃ、この目標というのは、容易に、簡単に動かすことができるのかどうか。どうですか。
山崎政府参考人 これは、それを目指して目標にしなさいと言っているわけですので、そう簡単に動かすということではないというふうに理解をしています。
日野委員 そうすると、二年以内のできるだけ短い期間、これを目標とすべきだ、こういうふうに読めるんですね。それとも、二年が目標なんですか。二年以内のできるだけ短い期間が目標なんですか。
山崎政府参考人 まず、二年を超えるような事件が仮にあったとして、まず第一の目標は、二年以内におさまるように努力をする、これを目標にしなさいということでございます。
 その目標を達したら、じゃ、二年ぴったりでやればいいのかということではございませんで、その中でも努力してできるだけ短い期間でやるようにと。
 それからもう一つは、今、二年以内におさまるであろうという事件もあるわけでございます。こういうものに関しましても、充実した手続をすることが前提でございますけれども、その中でもいろいろ努力をしてなるべく短い期間でやってほしい、こういう二つ、目標が掲げられているということでございます。
日野委員 今ずっと山崎事務局長の言われた答弁というのは、私を納得させていません。私はあくまでも、日本の通常の用語例からいって、私が今述べたように、二年というのは上限である、それ以上は許しませんよというふうにも読めますよ、こういうふうに主張している。その方が日本語の通常の用語例からいったら正しいと私は思っているわけですね。
 まあ、それはそれとして、じゃ、事務局長の言われるような解釈に基づいたといたしましょう。これが裁判官の官僚組織、あえて私は官僚組織と言いますよ、キャリアシステムとよく言われるものの中に取り込まれたとき、どういう意味を持つというふうにお考えになりますか。
山崎政府参考人 これが現実の裁判に投影されたときでございますけれども、裁判官としては、一応この目標は二年でございますので、その二年で審理が十分終われるかどうか、そういうところで目標を立てるということには当然なろうかと思います。
 ただ、事件は、じゃ、その二年以内に何でもかんでも終わらせればいいということを言っているわけではございませんので、この二条の一項でも、「充実した手続を実施すること」ということが前提が入っておりますし、また、受訴裁判所の責務として六条の規定もございますけれども、ここでも、「充実した手続を実施することにより、」ということと「可能な限り裁判の迅速化に係る」「目標を実現するよう努める」と言っているわけでございまして、そういう意味で、目標にはいたしますけれども、実体的な真実、その発見をきちっとやってそこに達しなかったもの、これはこれとしてやむを得ないということでございます。
日野委員 現在の裁判所の組織というのはそうはなっていないんですよね。裁判官は一人一人独立だといいながら、実際は上命下服。下の方の裁判官が上の方の裁判官に逆らうというようなことなんかできない。しかも、国の方からこうこうこうだよと言われればそれに右向け右で従っているというのが裁判官の現状でありますね。あなたも裁判官出身だからあなたもそうやっているのなんていうやぼな聞き方はしませんが、そういうものが現実だと私は思っていますし、皆さんそう思っておられるに違いない。だから、この第二条の文言を見れば、二年以内にとにかく決めてしまわなくちゃいかぬ、裁判官としてはこういう発想になるに違いない。こういう危険をあなたは考えませんか。
 第六条を今あなたは引きました。第六条についてこれからまた質問しますが、二年以内というふうに決められたら、二年以内にみんな決めてしまおうということで裁判官は動き出すだろうというふうに私には思えるわけでありますが、どうでしょうか。
山崎政府参考人 今、裁判官といいますか、裁判所についての御指摘がございましたけれども、私の認識としては、必ずしも委員が御指摘のような実態というふうに理解はしておりません。
 それからまた、国の言い分がこうである、AならAということであればそのAの結論になるというような御指摘もございましたけれども、私、訟務局長を経験しておりますけれども、国が随分負けております。そういう実態にもございます。負けるべきものは負けるということでございまして、決してそういう実態にはないのではないかというのが私の認識でございます。
 ただ、ここで今二条の問題について御指摘がございますけれども、先ほどちょっと申し忘れましたけれども、この二条の三項もございまして、「裁判の迅速化に当たっては、当事者の正当な権利利益が害されないよう、手続が公正かつ適正に実施されることが確保されなければならない。」これもございまして、当事者の権利も確保をきちっとしなければいけない。それから、やはり六条のように、可能な範囲でやりなさい、最大限努力をしなさい、こう言っているわけでございまして、目標は目標として、その目標がひとり歩きしないような手当てをこの法律の中できちっとしているというふうに御理解を賜りたいと思います。
日野委員 それで、まずここで二年という期間、これからこれを問題としながらずっと私の質問が続くわけだが、この二年というのを決めたのは、だれが決めたんですか。大臣、どうですか。二年というのを決めたのは、だれが決めたのか。非常に大事なことですよ、これは。
 さっき私は言いましたね。この迅速化というのは古典的な裁判の一つの命題ではないと私は言いました。だれですか、この二年というふうに決めたのは。
山崎政府参考人 午前中にも答弁させていただきましたけれども、きっかけは、私ども本部のところにございます顧問会議、この顧問の方々、八人でございますけれども、その一致した見解として、二年以内にということが提唱されました。その顧問会議の席上で小泉総理大臣も同様に、二年以内に終局するようにという御発言がございました。これをきっかけに検討が始まったということは間違いございません。
 その検討していく段階で、これが本当に二年が適当なのかどうかということを我々事務局の方でまず判断いたしました。これに関しましては、まず国民が納得する期間というポイントが必要であることが第一点でございます。それから、現実に国民が納得するといっても、これが実現できないような期間であればこれはまた問題であるということで、やはり実現可能性という問題も考えたわけでございます。
 ここの審議でも再三出ておりますけれども、民事事件それから刑事事件についてはかなりの程度、これは二年以内を達成しているわけです。そういう実態から見ると、もうちょっと努力をすればそういうものは二年以内におさまっていく、そういうような発想でございます。
 仮にこれが一年となりますと、とてもじゃないけれども一年ですべての事件をというのは不可能でございます。では、これを三年というふうに考えたときに、三年が、これは一審だけでございますので、果たしてそれが国民が納得していただけるかどうかというポイントがひっかかってしまうということでございます。
 これが、例えば控訴されまして最終的にそこで確定をしたとしてこれが執行に移っていく、そのときの全体の長さを考えたときに、国民が、その紛争が生じて解決するまでにどのぐらいの期間が必要か、どのぐらいなら忍耐が可能であるか、こういう全体を考えながら行いますと、一審、少なくとも二年、そこを目標にしてもらわなければならない、こういう結論に達しまして、内閣の方でお決めをいただいた、こういうことでございます。
日野委員 やはり今の説明を聞いていて、私はどうかなと思いますよ。例えば手形訴訟なんかは一カ月。一カ月だったかな、ちょっと忘れちゃったが、非常に短い期間ですわな。とにかく、日本の裁判が経済の動きについていっていないことだけは間違いない。もしこれが経済の動きを追いかけての話であれば、これは一年、大体一年ということになるでしょうね。
 それから、三年では長過ぎるという話がありましたが、今だって三年なんてかかっている訴訟というのはそんなにないんじゃないですか。どうなんでしょう、そこいらは。
山崎政府参考人 三年を超える事件ということで、民事で考えますと、三年以上四年以内という件数が全体の一・六%ということでございます。それから、四年から五年の範囲内が〇・七%、五年以上が〇・七ということですから、全部で三%という数字でございます。
 刑事で考えますと、全体として〇・二%という件数でございます。
日野委員 お話を聞いていますと、三年以上が一・五%、四年から五年が〇・七%、こういう数字でございますから、三年以上だってそんなに違いやしないじゃないの、こういう感じがするんですね。
 何で私、特に強くそのことを考えるかというと、よく数字を挙げられる場合に、二年以下の場合は何%と、こう言いますね。しかし、特に問題は民事ですね、民事でいうならば、欠席裁判で決まってしまうもの、それから和解で決まってしまうもの、そういった短時日で決まってしまうものも全部入っている。つまり分母は、そういうものが非常に多くて、多くの数がそういう事件で含まれているわけで、三年以上の一・五%だって、現在言われている何%と言ったかな、それと私はそう大差ないというふうに思いますが、どうでしょう。
山崎政府参考人 パーセンテージで申し上げれば、先ほど二年以上のもの七・二%ということでございますから、その半分ぐらいという形に、半分弱ということになりまして、それは見方によっては大差がないというふうに御指摘もございますけれども、これは全体の分母で掛けていきますと、七・二%というのは一万一千四百件ぐらいでございますから、その半分弱としても結構な件数があるわけでございます。
 こういうものについて、それはどんどんどんどん、じゃ四年にしたらどうかという、五年にしたらどうかという、計数上はそれほど大きな開きはないかもしれませんけれども、何か紛争が起こって、最終的にこれが解決して新しい出発をできるというために、それで一審だけで三年ということになりますと、三年かかる事件というのは、多分かなり複雑な様相を呈している事件だろうと思います。そうすると、控訴審に行ってまた時間がかかる、執行でも時間がかかるということで、現在の時代が、かなり速くなっている時代に、一審で三年ということが果たして正しいかどうかは、これはもう考え方の相違だろうと思いますけれども、私はそれでは長過ぎるというふうに考えております。
日野委員 これは考え方の相違というよりは感じ方の相違だと思うな。今、事務局長、複雑な様相を呈している事件、三年以上かかっているのはそういう事件だというふうな言い方をされましたね。私もそうだと思うんですよ。
 そうすると、二年以上かかるというのもやはり複雑な様相を呈する事件なんじゃないんですか。それ以外の事件はぱんぱんと決まっていくわけだ。欠席、認諾、和解、そうやって決まっていくわけで、私はここで二年と決めることが非常に問題だというのはさっきも言いましたが、裁判官に与える影響、それから、代理人に与える、弁護人に与える、それぞれ二年と決めることによる影響というのが出てきます。そうすると、私は、さっきから言っている実体的真実の発見ということと二年と決めることがここでかなり衝突するんじゃないか。そのことを私は心配しているんですね。
 だれですか、この二年と決めたのは。それは顧問会議がそう決めたというのは、これは形式です。結局は総理大臣のあいさつがあるわけですね。ここで総理大臣が、二年ということを、数字を言ったからそう決まったんじゃないんですか。どうですか。
山崎政府参考人 先ほどもお答え申し上げておりますけれども、顧問会議の顧問の方々の発言、それから小泉総理大臣の発言、これがきっかけになったことはそのとおりでございます。
 ただ、この問題は司法、いわゆる裁判のやはり独特の場面の問題でございます。ですから、私どもとしては、また独自の検討をいたしまして、最終的には結論が一致したということでございますが、この案文に関しましては、私ども事務局の方で責任を持って二年ということで内閣全体の方に御承認をいただいたということでございまして、最終的に決めたのは内閣全体だということでございます。
日野委員 それは、二年にその焦点を決めて、二年ということに合わせようと言えば理屈は幾らでもつくんだよね。だから、二年に決めるか、一年にするか、一年半にするか、二年半にするか、三年にするか、ここいらは政治的な判断だ、私はそう思うんですな。私は、この二年というのは非常に重いと思う。
 ぜひ、これを決めた人にここに来て、そしてそれを説明してもらおうじゃないの。どうですか、皆さん。二年に決めた人に、二年と、最初にそう言った人、つまり内閣総理大臣だ。ここに来て、ちゃんとそれ、説明してもらおうじゃないの。これ以上、私、この二年というのは非常に大事な問題だから、ちょっとそれ、やってくださいよ。
山本委員長 ただいまの御要請につきましては、理事会でしかるべく検討させていただきます。
日野委員 私、今何回も言ったように、二年というのは大事なんだ。しかも、これは実体的真実の発見と矛盾する、私はそう思う。だから、これは、裁判に携わってきた人間とすれば、実体的真実をいかに発見していくかということについて、二年と限られたら、これはたまったものじゃないんだね。
 ですから、私は、二年と決めた理由を、ちゃんと内閣総理大臣にここに来て説明してもらいたいと思う。そうでなければ、私、これから先の質問できません。
山本委員長 質問者に申し上げます。
 ほぼ与野党の合意で、総理が当委員会に出席をするという方向で合意しておりますので、その旨、御了承ください。
日野委員 内閣総理大臣がこれは責任者ですよね、この司法改革の。だから、ここにちょっと顔を出して、顔を出して顔を立てれば事は済むという問題じゃない。これは我が党の理事にも申し上げたい。節目節目に来ることが大事なんだ。そして、大事な問題に答えることが大事だ。私は、この司法改革の問題については、節目というのは幾つかある。しかし、最も大事な問題は、この二年の問題と、もう一つは裁判員の問題だ、こう思っているわけね。そこに来てもらわなくちゃいかぬよ。顔を出してもらったぐらいじゃ、とても納得できることじゃない。ちょっと協議してください、みんな。
山本委員長 速記をとめておいてください。
    〔速記中止〕
山本委員長 速記を起こしてください。
 質問者からの御要請の趣旨を踏まえて、副本部長たる法務大臣が総理の意を体してお答え願いたいと存じます。
森山国務大臣 先生の御疑問はよくわかります。
 総理が二年という言葉をお出しになったときのことも、私もたまたま同席しておりまして、総理の考えもわかっているつもりでございます。
 その理由は、この法案で申しますように、裁判の迅速化ということが非常に世間、国民の求めるものの重要なテーマであるということがありまして、しかし、そのために拙速になってはいけない。裁判の迅速化の趣旨に関しまして、裁判の迅速化に当たっては、当事者の正当な権利利益が害されないように手続が公正かつ適切に実施されるということが確保されなければならないというふうに法案にも書いてございますように、そのようなことも含めて総理は言われたのだと私は思っておりますし、先ほど、なぜ二年かということについて事務局長が御説明を申し上げました。合理的な範囲で、できるだけ内容を充実させたもので、できるだけ早くということで、また国民が納得できる長さというようないろいろなことを考えられ、そして現実に実現できるかどうかというようなことから二年という言葉が出たのだと思います。
 しかし、その二年というのが絶対的なものであって、すべての裁判官あるいはあらゆる裁判所をこれで拘束するというものではございませんで、事務局長が申しましたように、できる限りの努力をして二年を目標として短縮するというような趣旨であると私は考えておりますし、総理の御趣旨はそのような気持ちであろうというふうに考える次第でございます。
日野委員 まあいいか。
 しかし、私の問題意識は御理解いただいたと思いますから、これは法務省も、それから最高裁判所も、この法律の運用に当たってはしっかりした、人権を守るという意識、実体的真実発見のために努めるという意識、これをはっきり持ってもらわないと大変困ったことになると私は思いますね。
 何でもかんでも二年以内に決めちゃうんだからなというようなことでどんどん訴訟手続が進められては、裁判が裁判ではなくなっちゃう。裁判というのは、そもそも王権の横暴に対していかに人民を守るかというところから始まっているわけですから、そこが忘れ去られるようなことになる、そんなことには絶対ならないようにひとつ最高裁も、後でまた聞きますが、検証なんということもやるわけだから、そのときにこれが三年かかったのはけしからぬじゃないかなんということにならないように、ぜひともその点は心して法の運用に当たっていただきたい、こういうふうに思います。
 では次に、第二条の、やっと第一項が終わりました、第二項に移ります。
 これは非常に、読み上げますよ、この第二項。「裁判の迅速化に係る前項の制度及び体制の整備は、訴訟手続その他の裁判所における手続の整備、法曹人口の大幅な増加、裁判所及び検察庁の人的体制の充実、国民にとって利用しやすい弁護士の体制の整備等により行われるものとする。」まあそうなんでしょう、客観的に見れば。一体だれですか、これをやるのは。責任者はだれか。
山崎政府参考人 この責任者、複数ございます。
 この後の三条、国の責務がございます。それから四条が、これは政府の責務でございます。五条が日弁連の責務というふうに順番につながってまいりますけれども、ここに書かれていること、全面的には、まず政府の責務がかぶってくるということでございます。もちろん、それから三条の「国」もそうで、国の中には立法府も含みますし、裁判所も当然含まれるということになります。ですから、国、政府は全面的にかぶってくるということでございます。
 それとともに、弁護士体制ですね、「国民にとって利用しやすい弁護士の体制の整備」。ここは、法案のようなものに関しましては確かに政府の責任になりますけれども、これができた後、実際にそれをどのように運営していくかという問題につきましては、日弁連の責務という問題があるということでございます。
日野委員 そんなことであれば、これは、三条、四条、五条、ここいらとのかかわりでもっと別の書き方があったんじゃないのという、そこいらはまあいいとして、この責任ですね。これは容易なことじゃないんですよ。
 なぜかというと、今まで我々は、裁判を迅速化するためには、まず法曹をふやさなくちゃいかぬ、それから裁判所の建物、特に法廷、これをふやさなくちゃいかぬ、今も裁判所で行われている一日おきの勤務、宅調なんという制度、これをなくさなくちゃいかぬ、こういうことをずっと言ってきたわけですね。ところが、なかなかそれが前に進まないでここに来た。
 これからそういった努力が、どうなんですか、それぞれの責任者によってしっかりと行われるという保証はどこにあるんですか。
山崎政府参考人 まず、責務を法律で課しているわけでございますから、これを当然履行するということは、その法律で決められている話でございます。一つそこの問題がございます。
 ですから、やらざるを得ないということと、もう一つは、後ほど出てくることかもしれませんけれども、八条で検証がございます。検証に基づいて、やはりどういう制度が足りないのか、改正をしなければならないのか、あるいはどういう体制をつくり上げていかなければならないか、こういうことが検証されるわけでございます。その検証された結果に基づいてまた責務に戻ってまいりますので、それに基づいた責務を果たすということになるわけでございまして、そういうことでその責務を果たしていく、こういう仕組みになっているわけでございます。
日野委員 言うなれば、ここに書いてあることは言わずもがななんですよ。随分今まで、ここに書いていなくても、努力はしてきたと私は思うんですよ。裁判所における手続の整備であるとか、法曹人口の大幅な増加であるとか、人的体制の充実、国民にとって利用しやすい弁護士の体制の整備、こんなことは言わずもがな、この法律がなくたって当然今までもやってこられなければならなかったし、これからもやらなければならないこと。そうじゃありませんか。
山崎政府参考人 御指摘のように、当然やるべきことはやらなきゃいかぬ、法律があろうがなかろうがやらなきゃいかぬということになろうかと思います。
 ここの法律の意味は、二年という目標を立てるわけでございまして、その目標を立てながら、実際に検証をしてみて、そこに至らないのはどういう原因があるのかということを具体的に出すわけでございまして、今までは具体的な目標よりも割合抽象的な目標でございまして、例えば人をふやそうということで、では具体的にどういうふうにふやしていくかというようなところはなかなか出てこなかったわけでございます。
 これで目標はできますので、その目標に向かって何がどのぐらい足りないかということが現実に出てくるわけで、それに向かって具体的な努力をきちっと法律で決めてやっていきましょうということでございまして、事実上今までずっとやってきたこと、これをきちっと法的に正式なものにして、かつ具体的な目標を持って具体的に進んでいく、こういうことを可能にする法律だということでございます。
日野委員 そうすると、今まで我々は随分主張をしてきた。まず法廷をふやしなさい、裁判官をふやしなさい。まず、法廷がなければ裁判は開けないわけだから、法廷をふやしなさい、それから裁判官をふやさなくちゃとてもやっていけませんよと。こういうことを主張してきたが、なかなか国の予算として、法廷を新設する予算なんというのは聞いたことがない、ここのところ。それから、裁判官、これは定員法でちゃんと決まっていて、その定員法での増員も微々たるもの。これをちゃんとやっていくということを約束できるんですか、どうですか。法務省。
山崎政府参考人 この法律では、八条でそういうような検証をしていただきまして、具体的に何がどれだけ足りないかというところまである程度出していただいて、それに伴った実現、これにつきましては、国、政府含めて、最大限の努力をするというシステムでございます。
日野委員 いや、私も随分、最高裁の方々やそれから高裁の長官だとかそういう人たちといろいろ裁判の迅速化のための話をしてきたんですが、彼らが言うには、現在の裁判官の定数、法廷の数、それから下級審の裁判官の数、これをアプリオリなものとして、もう議論以前に決まっていることだ、ここは動かせないとして議論するのね。だから、それじゃ議論は進みようがない。
 ちゃんと大胆に、裁判官をふやしましょうよ、法廷の数もふやしましょうよ、こういうことをこの法律によってできるようになるのかどうか。検証によってなんというと、裁判官、最高裁の裁判官なんというのは特におかたい、おかたいと言ったらいいのか憶病と言ったらいいのか、なかなか前に一歩踏み出そうとしないが、一歩も二歩も踏み出して裁判の迅速化のために人も物もふやしていくという努力ができるのかどうか。特にこれは法務省なんかにもぜひ伺っておきたい、検察官のこともありますから。いかがですか。
寺田政府参考人 おっしゃるとおり、これまでも、検察官を含めました国の側の体制の整備につきましては、しばしば御議論をいただきましたし、また、しばしば具体的にどう変わる必要があるのかという御指摘もいただいているわけでございます。幸いにいたしまして、私ども、この法務委員会での御議論もいろいろとバックアップということに位置づけさせていただいて、今年度の予算にもかなりの人的な体制の整備としての増加を図らせていただいているわけでございます。
 ただ、今までの体制整備は、どちらかといいますと漠然と、人が足りない、もう少し人をふやすということになればもう少しスピードアップするだろうというレベルにとどまっているわけでありまして、一体どういう構想でこれから司法全体の体制整備をしていくかという位置づけがなかったわけでございます。
 この法案は、強いて言えば、そういうところに非常に大きな意味づけを、これから私どもの人的体制の整備について与えてくれるだろうというように確信しているわけでございます。
日野委員 今まで漠然としていたと言うけれども、手のつけようがなかったというのがむしろ正しいんですよ、言い方として。大体もう、午前中にも話が出ていたけれども、一人の裁判官が何百件も事件を持つ、一人の弁護士も百何十件も事件を持つ、こういうことじゃなかなか手のつけようがないというのが現状だった。しかも、物的な施設も少な過ぎて、月、火、水はどの部が法廷を使う、火、水、木はどの部が使う、みんなこう決められていて、もうとても手のつけようがなかったというのが私は本音だろうなというふうに思います。
 今度こういう条文ができたんですから、これをよりどころにしていろいろ応援しましょう、裁判所にも検察庁にも。応援していくことにやぶさかではありません。これが十分に効果を発揮することをひたすら祈ってやまないというところであります。
 では、今度は第三項に行きます。
 さっきから私が心配しているのは、二年という期間を決めることによって当事者の正当な権利利益が害される心配、手続が公正かつ適正に実施されることが確保されない心配、これを私は言ってきたわけですね。
 ところで、「手続が公正かつ適正に実施されることが確保されなければならない。」こう書いてあるわけなんですが、さて、それを担保するものは何ですか。
山崎政府参考人 この点につきまして、現実に当事者の権利利益が害されるおそれがある事態が生じるとした場合には、まず個別の事件で当然問題になるわけでございまして、一般的に問題になるわけではございませんので、まずその訴訟手続内でこれを救済していく、異議申し立てとか不服申し立て、これは当然ございますので、まずそれを第一次的には活用していただきたいということでございます。
 それで、どうしてもそれで承認が得られなかったということになれば、これは上訴しましてそこで是正をしていただくという、これがまず、裁判制度は三審ございますので、そういう中で救済をしていくというのが第一次的な救済方法だということでございますし、また、この法律で、当事者の権利利益を害してはならないということをはっきり書いているわけでございまして、それの周知徹底ということですね。
 それで、皆様にこういう考え方、当事者の権利利益を害してはならないという考え方で運営をしていただくということがまず大前提になりまして、いろいろな問題が起これば、それは個々の手続内でも解決をしていただくということになろうかと思います。
日野委員 既存の手続をちゃんと使いなさいということを言われたわけですね、もちろんそれは必要なことでありますが。
 ここで私も考えなくちゃいけないのは、裁判所が訴訟手続をするに当たって、当事者主義というものをきちんと守っていくこと、これが大事だと思うんですが、この二年という期限を決める、一応二年というのは決まっているわけですが、さらにそれを超える事件があったりなんかすることは、これはいっぱいあり得るわけです。何もこれは世間の耳目を聳動する事件ばかりじゃなくて、もっと地味な事件でも、法理論的に難しい点がある、それから事実認定が非常に難しい、それから証人が遠隔の地にある、例えば外国にいるとか、そういうことによって難しいことが予測される。そういうとき、裁判官それから両方の当事者、それらの間できちんとした共有がなされるということが必要だと思うんですが、いかがでしょうか。
山崎政府参考人 確かに、訴訟の進行に関して、これは裁判所だけが一方的に決めるという話ではございません。もちろん、民事でいえば原告、被告ございますし、刑事でいえば検察官、被告人、両方、弁護人も含めてあるわけでございまして、それぞれのいろいろな協議に基づいて、最終的にはそれは裁判所が判断するということになろうかと思いますけれども、少なくともそれぞれの意見をきちっと聞いた上で決めるというのは当然であるというふうに思います。
日野委員 そういう当然なことを当然のこととして行われなくなるのではないかというのが私の心配なんですね。もう二年と決まっているんですよ、あなた何言っているんですか、こういう訴訟指揮をやられたらたまったものじゃない。
 そういう訴訟指揮は行われないのだということを、あなた、ここではっきり断言できますか。
山崎政府参考人 今委員の御指摘の心配があるということから、私どももそこは意識して、六条の受訴裁判所の責務、この中に、充実した手続を実施しなければならぬということと、可能な限りその目標を達成できるように努力をするということを書いているわけでございまして、これは法できちっとうたっているわけでございます。まずこの周知徹底が一番重要であるというふうに私は思います。
 それぞれみんなこの条文をきちっと意識をしていただいてその運営に当たっていただきたいということでございまして、制度をつくるときに、これを破る人たちがたくさんいるということの前提で考えるわけではございませんで、まず、つくったらそのとおり守ってもらう、こういうところからスタートをしたいというふうに思っております。
日野委員 私も何度も何度も言いますが、まあ何というかな、まじめ過ぎる裁判官のキャリアシステム、そういうものがやはり私は気になって気になってしようがない。ですから、今の答弁のようなこと、これが本当は正しい解釈なんですよということですな。万が一にも二年以内に全部決めてしまおうということではないのですよということを、はっきりとこれは周知徹底をするということ、これが必要なんだと今おっしゃった。
 それを、裁判所も法務省も、弁護士会もですが、これをちゃんと徹底するような努力をするということを今お約束いただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
中山最高裁判所長官代理者 先ほど来からの委員、先生方からの議論をお聞きしておりますが、裁判所にとって裁判の適正というのはいわば生命線であります。これをゆるがせにして何の迅速化だと思っております。
 迅速にはなったけれども粗い審理であるというようなことになると、これは論外でありますので、今回の御議論あるいは法の精神というものについては、裁判官でそれぞれ自戒しながらきちんと認識を深めていくようにしていきたいというふうに考えております。
寺田政府参考人 かねてから裁判の迅速化ということについて、検察側も、あるいは司法制度をつかさどる法務省といたしましても、非常に関心が強かったところでございます。今回、司法制度改革の一環としてこのような法案ができたということは、全国の検察あるいは法務省のこぞって重大な関心事となっております。この法案がいかなる趣旨であるかということは、当然のことながら、私ども十分に部内にも徹底をさせたい、このように考えております。
日野委員 弁護士会はおりませんが、弁護士会もちゃんとその趣旨を体しておやりになるというふうに思います。
 それで、ちょっと観点を変えるんですが、弁護士会から資料が出ているんです。その中に、本人も証人も調べない裁判がふえているんだというようなことが書いてあるんです。私も、一体これは何のことだろうと思って、聞いてみました。そうしたら、あるんだそうですな。どういうことかと思ったら、証人調べも本人尋問もやらないで、陳述書みたいなものを出させて、それによって物事を決める、判決をしていく、そういう裁判が何かこのごろあるんだ、こういう話なんですな。
 私としては非常にこのことは理解しがたいことなんですが、このことについて、最高裁は御存じになっているところはありますか。
園尾最高裁判所長官代理者 ただいまお尋ねの点に関しまして、私の認識をしておるところを申し上げたいと思います。
 私は、この九年余り東京地裁の民事部で裁判長をやっておりましたが、確かに、そこでの経験によりますと、御指摘のようなお話を弁護士の方から聞いたことがございます。ただ、最近におきましては、争点を整理して、絞り込まれた争点について必要にして十分な人証調べをするというような動きもあることも事実でございまして、その結果、人証調べの人員が絞り込まれておるということもございます。
 具体的な事件につきましては、必要にして十分な人証調べの人員数がどの程度かということにつきましては、訴訟指揮にかかわることでございますので、最高裁の事務当局がこの点についてせんさくをすべき事項ではないというふうに考えておるところでございますが、今後とも、必要にして十分な人証調べというのはどのようなものかということにつきまして、各裁判体において当事者との議論もよくしながらしっかりと検討されるべき内容であるというように認識をしております。
日野委員 今のお答えですと、やはり大事なことについては証人なり本人なり調べて、そしてそこで心証を得るということでありましょうから、今お答えになった点で問題はないというふうに私は思うんですね。
 あとは、何を調べるかなんというのは、これは十分性の問題ですから、訴訟指揮で十分問題は解決できるわけでありますが、私、心配するのは、迅速化の問題とこの問題はかかわり合ってくるということですね。裁判を迅速にするためには、もう人証はいいから陳述書でも出しておきなさいというようなことで決まったら、これもやはり裁判としては非常に重大な問題を含んでいる、制度として重大な問題を含んでいるというふうに思わざるを得ない。
 なぜかといいますと、やはり裁判が信用される、裁判は実体的真実の究明をやっているということが一応信じられるということにならなければ、裁判に対する信頼性というのは失われるわけですね。
 ですから、実体的な真実の究明、これが行われているというのは何をもって行われているかといえば、独裁者がこれが真実だと言って真実だというふうに真実が確定される国では日本はないですから、そこではやはり当事者主義で、お互いに当事者主義でやっているから、尋問をし、反対尋問を行い、また最終尋問を行いというような形で当事者主義が守られているから、だから一応裁判というのは真実を追求しているということがわかるわけでして、もし訴訟の迅速化ということのためにこの人証を外してしまうなんということがあったら、これはもう大変裁判そのものが信頼を失いますので、そのことは裁判所には十分に認識してもらいたい、こう思います。いかがですか。
園尾最高裁判所長官代理者 ただいまの御指摘をいただいた点に関しましては、私も裁判官といたしまして、まことにもっともなことであるというように考えております。そのような事実の認定が、必要かつ十分な人証調べが、これが相当な事案についてはそれが行われるというような裁判が行われるべきであるということについては、全く同じ認識でございます。
日野委員 そこで、今度はちょっと民事訴訟法がここに入ってきます。
 民事訴訟法では計画審理をやる、こういうことになりますね。そうすると、計画審理の場合、争点整理の時期、証拠調べの時期、それから裁判の時期、判決の時期、こういうふうになってきますが、これに間に合わせるために、特に人証なんかで、なかなかそれまで得られなかった人証というのはあるものですよ。何度言っても証人に出るのは嫌だと言っていた人が急に、では出ましょうかと言ったりなんかするなんということは、これはざらにあることでして、特に攻撃防御方法提出の時期について、陳述書で間に合わせるというようなことが出てきたら大変だな、こう私は思うんですが、その点についてはいかがお考えになりますか。
房村政府参考人 御指摘のように、今回の民事訴訟法改正につきましては、複雑な事件については審理の計画をあらかじめ立てていただく。それに、計画の中で、争点整理の期間、証拠調べの期間、また判決の言い渡し時期、こういったようなものを定めることとしております。
 しかし同時に、御指摘のように、訴訟というのは、その進行に伴って状況が変化するということは間々ございます。その場合に備えまして、今回の条文におきましても、一たん定めた審理計画につきまして、審理の現状、当事者の訴訟追行の状況その他の事情を考慮して必要があると認めるときは、当事者双方と協議をし、その結果を踏まえて審理の計画を変更することができる、こういうことになっております。
 また、最初の審理の計画についても、そういう当事者との協議を踏まえて実情に合った計画を立て、ただいま申し上げたように、事情の変更があれば、それを踏まえて改めて当事者と協議をして変更していくということによって柔軟な審理計画が立てられるものと思っておりますし、そういうことによって充実したかつ迅速な審理が実行できる、こう考えております。
日野委員 民訴法の問題についてもうちょっと深入りさせてもらいますが、計画審理を立てて、ずっと訴訟の計画どおりに動かしていくわけですが、これは法律上、この法案上でも、どういう事件ということについては、こういう事件は計画審理になじむ事件だなというのは一応わかる。しかし、それ以外にも、一般の民事事件でも、事案がこれは複雑だな、立証がなかなか難しいな、こういう事件というのはあるものですよね。そういう事件についてはどうなりますか。何かそういう場合に備えて指針とか基準のようなもの、これをおつくりになるんですか。
房村政府参考人 この条文上は、審理の計画を立てるべき事件としては、「審理すべき事項が多数であり又は錯そうしているなど事件が複雑であることその他の事情によりその適正かつ迅速な審理を行うため必要があると認められる」、こうなっておりまして、典型的なものは大規模な公害訴訟とかあるいは複雑な医療過誤事件、こういったものがすぐ念頭に浮かぶわけでございますが、事件の性質というのはさまざまでございます。御指摘のように、一見ごく平凡な事件に見えるものが相当複雑な事情があって、その主張の整理とか立証のために相当多岐にわたる論点が出てくるというようなこともございます。
 したがいまして、法律では、そういった個々の事件の特性に応じて裁判官が適切に判断をしてこの必要性を認定して、当事者との協議を踏まえて審理の計画を立てていただく、こういうことを考えております。
日野委員 きょう特許庁にもおいでいただいていますが、私は、特許の関係で日本はえらく国際競争におくれた、特にアメリカとの関係でですね、思っているんですよね。
 民事訴訟法がこのように改正されるわけですから、スムーズにこれを運用していってもらいたい、こう思っているんですね。それをスムーズに運用していくための準備はどのようになっていますか。
太田政府参考人 お答えいたします。
 知的財産立国の実現というのが国の国家的な目標になっております。そのために、知的財産権の侵害に対して適切かつ迅速な司法的救済が講じられることが、生じた損害に対する補償のみならず、侵害の予防の観点からも重要であると考えております。
 そういう観点から、今回、裁判所の専門体制の強化を図る専属管轄化については、これは特許制度の利用者からも非常に強い要望がございます。そういう要望も踏まえて、特許庁としても、今回の法制審議会の議論にも積極的に参加して、その実現を支持してきたところでございます。今回の専属管轄化により、裁判所の専門的体制が強化され、侵害訴訟における判断の的確性と迅速性が向上し、知的財産の保護と活用が一層図られることを期待しております。
 それから、裁判所のまさに審理でございますが、私ども特許庁の方からも、現在、東京地裁、大阪地裁、東京高裁に調査官を派遣させていただいております。技術的な知識等を提供させていただいておりますが、いずれにしても、私ども、先生御指摘のように、特許について、大きく負けているとは思いません。ただ、進んでいるとも言いがたい状況にございます。そういう観点も踏まえて、しっかり裁判所とも協力しながら取り組んでいきたいと思っているところでございます。
日野委員 特に、私、地方の中小企業、いい技術を持っているところがありますね、こういうところに対する手抜かりがないようにということを強く希望して、その点について頑張りますという一言を言ってください。
太田政府参考人 知財を生み出すのは、当然、大企業だけではございません、大学だけでもございません。まさにベンチャー的な中小企業が頑張らないと、日本の知財戦略もうまくいかないと思います。
 そういう観点から、我々もかねてより、例えば特許の審査請求料について、中小企業のある一定の要件を満たしたものについてはそれを半減するとか、そういう措置を講じてきておりますし、現在、そういう措置をさらに拡充して、中小企業の知財戦略、特許戦略をさらに応援していきたいというふうに考えているところでございます。
日野委員 では、どうもありがとうございました。特許庁、結構ですから。
 また余りおもしろくない法律の方に移ります。
 民主主義社会における裁判というのは、信用されるというか、あそこは一生懸命頑張っているというふうに国民から思われるには、やはり当事者主義それから対立構造に基づく裁判の運営、こういったものが非常に大事なこと、これは言うまでもないと思いますので、それを殺してしまうような裁判の迅速化には絶対になってもらいたくないということを強く要望をしておきたいと思います。
 それでは、余り時間がなくなってきちゃったんですな。今度は第六条に移ります。
 「充実した手続を実施することにより、可能な限り裁判の迅速化に係る」云々、こう書いてありますが、充実した手続を実施する、さて、どこまでが充実した審理なのかというのは、実はこれが大問題なんですよね。充実した審理手続を実施しているかどうか、これを一体だれが判断するんですかね。
山崎政府参考人 まず、個別の事件であれば、その個別の事件として足りるところまでやっているかどうかという問題は、それはまた先ほど申し上げましたけれども、上級審等、ここで是正されていくという問題だろうと思います。
 ただ、一般的な問題として、充実した手続かどうかという問題に関しましては、これにつきましては、いろいろ検証の問題等がございますけれども、そういう中で、必要なものであるかどうかという点もある程度考慮に入れながらその検証をしていくということになろうかと思います。
日野委員 上級審で問題にするんだろうということになれば、上級審で破られたものは、充実した審理手続をしていなかったということになる。まことに何か答えとしてはおもしろくない答えなんですが。
 ここで、そうすると、充実した手続を実施する、これは、その手続の正当性、このことを言っているということになりますかね。
山崎政府参考人 手続の正当性、そういうことを意味しているということよりも、その事件の審理として、あるいはその解明、解決について必要なものはやってほしい、それを前提の上で迅速化を図るようにということを言っているわけでして、その事件として必要なものはやるというのが充実した手続ということでございます。
日野委員 何かちょっと、私もそう開き直られると混乱しちゃうんですが、そうしたら、これは何も、裁判所としてはちゃんと訴訟法に基づいてやっていれば、そして迅速、充実した、迅速化に努力した、そういうふうに言われるようにしなさいよ、それだけの問題かな。一条上げるまでもないような感じがしますがね、これは。わざわざこれを書いた理由、そんなことでいいのかしら。
山崎政府参考人 この条文の意義でございますけれども、三条からずっと始まります、それから七条まで参りますけれども、責務でございまして、国、政府、日弁連、それから受訴裁判所と当事者、それぞれがみんなこの目標に向かって努力をしましょう、そういう責務があるということをうたっているわけです。
 その責務を果たすについて、迅速迅速というその命題が余り前へ出ますと、充実した手続が行われないということになってもいかぬということを注意的に入れているわけでございまして、当然、充実した手続をした上で迅速化するということ、これは前提でございますけれども、それを注意的にきちっと述べている、こういうことでございます。
日野委員 何か審理不尽という言葉がありますけれども、そう言われないようにしなさいよみたいな話なのかもしれない。まあ、いいや。
 それでは次に、検証の話に移ります。
 何で最高裁でなければいけないのか、検証は。やはり、これは、もっといろいろな人を入れて、検証すべきじゃないんですかね。
山崎政府参考人 八条の検証でございますけれども、これは、現実に進行している事件、こういうものがすべて対象になるということでございます。それについていろいろな調査分析を行うわけでございますけれども、これにつきましては、手続を実施する裁判所、これが一番よく収集することができるということ、それからもう一つは、現実に進行している裁判についても調査をしなければならないということでございますので、裁判の独立という点は十分に尊重しなければならないということになるわけでございます。
 そうなりますと、やはり裁判の、もちろん秘密の問題もいろいろございます、非常に微妙な問題を抱えるということから、これは組織内の最高裁の方にお願いをする、これが適切であるというふうに考えるわけでございます。
日野委員 裁判所の独立とか裁判官の独立とか秘密にわたることを漏らしちゃいかぬとか、こんなことは常識で、何も最高裁でなければこういうのは守れないというものじゃないでしょう。それよりは、この法律案は迅速をうたう、そのためにはむしろ、最高裁を頂点とする裁判所の部内にどのような問題点があるのか、これを指摘するところにうまみがあるんじゃないか、そうすれば第三者を含めた方がもっといい、私はそういう観点に立つべきだというふうに思いますが、いかがですか。
山崎政府参考人 これを制度として設けるにつきましては、今私が申し上げましたような形から、最高裁判所にお願いするのが適切であるというふうに考えますけれども、運用上の問題としまして、現実にいろいろ調査分析を行うわけでございますけれども、これにつきましては、裁判所以外の法曹あるいは学識経験者、こういう方々の意見を聞く場を設けることはやはり必要になってくるだろうというふうに思いますし、調査の実施等についてもそれぞれ御協力をいただくという場面もあろうかと思います。
 運用上の問題としてそういう点はきちっと配慮をしていただきたいということで、裁判所の方にもお願いをしているところでございます。
日野委員 今、私は、部外者も入れた方が、裁判所という一つの組織に対してちゃんとした、そういう者も入れた方が、裁判所だけでやっているということじゃなくて、あっちの方の見解が入ってきてベターだ、こう言った。
 それにもう一つ、私は、こういうふうにしちゃいかぬという観点で申し上げたい。
 私、さっきからずっと言っているように、裁判所におけるキャリアシステム、これが変に下手に作用したら、この迅速化法が大変悪い方向に転んでいく、こう思います。しかも、検証を最高裁だけでやるということになると、まさにこれは裁判官に対する調査機関みたいな役割を果たしちゃうんじゃないか、そうするとますます裁判官は萎縮してしまって、迅速化法がますます悪い方に行く、そういう悪循環に陥るんじゃないか、こう思いますけれども、お考えを聞かせていただいて、私の質問を終わります。
山崎政府参考人 確かに、御指摘のような点がもし起これば、これはゆゆしき問題であるということになろうかと思います。
 私どもも、これを立案するにつきまして、裁判所の方にもいろいろお願いをこのごろしておりますけれども、やはりこういうシステムをつくり、検証をして国民に明らかにしていく、そういうシステムでございます。万が一にも先ほど委員が御指摘のような点があったら、それはもう裁判の否定につながっていく重大な問題でございます。
 私どもは、この法案を立案したからといって、そういうことについては絶対あってはならないということで考えておりますし、また、裁判所の方にもそういう点については十分配慮を願いたいということで、お願いをしております。
日野委員 終わります。
山本委員長 次に、山内功君。
山内(功)委員 民主党の山内でございます。
 今回の民訴法の改正は、この作業をすることによって裁判の充実、迅速化を図って、より国民に親しまれる司法を目指すということだと考えているのですが、実際に使っている者にとって使いづらいものであっては、また改正の趣旨にそぐわない内容になると思います。
 以下数点、論点を絞って聞くこととさせていただきます。
 まず、この法律で計画審理ということが挙がっておりますけれども、その対象事件として具体的にどのような事件を想定して、この計画審理を推進していこうというふうに考えておられるのでしょうか。
房村政府参考人 計画審理を立てる対象となるべき事件としては、法文上は、「審理すべき事項が多数であり又は錯そうしているなど事件が複雑である」ということを典型例として挙げておりますが、こういうものに該当する具体的な事件としては、大規模な公害事件であるとか、あるいは専門的な事項が争点となる難しい医事関係事件あるいは建築関係事件というようなものが想定されます。
 ただ、もちろんそれに限定されるわけではありませんで、やはり、当事者の主張等からその裁判官が、争点が多い、あるいは複雑である、専門的な知識が要求される、そういうようなことを判断して当事者と協議をして決めていただく、こういうことになろうかと思います。
山内(功)委員 労働事件、行政事件、知的財産権、交通事件、会社訴訟、税務訴訟、消費者事件、こういうのも含まれるんでしょうか。
房村政府参考人 もちろん、事件の種別としては、審理の計画を立てる対象となり得る事件でございます。
山内(功)委員 一般の通常事件についても、複雑性があればこれに該当すると考えていいんでしょうか。
房村政府参考人 法文上は特に事件の種類を限定しておりませんので、ごく通常の事件であっても、複雑な争点を含んでいるというようなものについては、審理の計画を立てる対象の事件となり得るわけでございます。
山内(功)委員 複雑な事件にしか適用されないということはわかっているんですが、例えばの例として、お金を貸したという事件があって、お金を貸したというふうに言っているのに、借りていないと抗弁するんですけれども、借りていないと抗弁していても、返したと言うときもありますね。それから、お金を請求されていて、借りていないんだけれども、もうそれは時効だと言う場合もありますよね。
 そういう矛盾したようなことを言っている人に、一体どっちなんだともう一番最初の時点からぎりぎり詰めると、やはり事件というものは生き物ですから、だから、最初の入り口から計画審理に応じなさいということでどれか一つに決めなさいというような運営をされると、やはり当事者としては戸惑うこともあるんじゃないかと思うんですが、その点はどうでしょうか。
房村政府参考人 例えば、ただいま御指摘のような、主張が矛盾しているようにも思える、こういうような場合は、まさに当事者の主張を整理するためにある程度の期間が必要になる事件だろうと思います。
 そういうことも踏まえて、当事者の言っていること、あるいは既に出ている証拠等を見て、その事件の主張を整理するために、ある程度の期間をかけて準備を準備手続等を活用してきちんとやっていくということが必要な事件であれば、まさにそういう計画を立てて、その計画に従っていただく。
 その計画を立てる、例えば主張の整理のための期間というのは、そういう主張を整理してきちんとしたものに仕上げるための期間ということですから、裁判所が一方的に押しつけるというようなものではなくて、まさにそのためにこそ当事者との協議が必要とされているわけであります。
山内(功)委員 その協議は訴訟のどの段階でやるかも含めて柔軟な対応をされないと、やはり最初から迅速審理ということで、まだ弁護士なんかも、当事者も弁護士もなれていない審理計画を立てられると大変窮屈な訴訟になるんじゃないかとも思って質問しているわけです。
 もう一つ心配なのは、新たな攻撃防御方法の却下の規定がありますので、これもフルに使われると、やはり戸惑いが実務の中に生じるのではないかと思うのですが、運用については大体どういうふうに考えているんですか。
房村政府参考人 まず、この審理計画は、当事者と協議をいたしまして、争点整理の期間を定め、それから証拠調べ期間を定め、言い渡し時期を定めるというのがまず最初でございますが、その後、訴訟の進行につれて、例えば、争点整理期間を三カ月なら三カ月ととって、その中で主張を整理していくうちに、特定の争点についての主張は、じゃ、これはいつまでにやってくださいというような計画を立てることになるだろうと思います。
 そういうぐあいに、訴訟の進行に伴って審理計画もより具体化して、特定の事項についての攻撃防御方法の提出時期、こういうものまで裁判所が決める段階になる、にもかかわらず、当事者が相当な理由もないのにその時期を守らなかった、こういう場合に初めてこの攻撃防御方法の却下ができるということになっております。
 したがって、単に計画を定めて、その時期にちょっとでもおくれたらすぐ却下するというようなものではなくて、具体的な特定の事項についての攻撃防御方法の提出すべき期間が定められて、しかもそれを守らなかったことについて相当の理由があれば却下はされないわけでございますので、そういう意味で、今御心配のような、これが乱用されて、当事者が自由な主張、立証ができなくなる、そういう懸念はないだろうと思っております。
山内(功)委員 当事者の訴訟活動については余り懸念がないとは言われますけれども、例えば、複雑な事件については、多分合議事件になるでしょう。そのときに、右陪席の人はもちろんですけれども、左陪席のようについ最近裁判官になった人とも一緒になって、右や裁判長のやり方を見ながら、修行というか、積んでいくわけですよね。そういう複雑な事件であればあるほど裁判長から教えてもらうことも多いでしょうし、それに日々訴訟の中で出てくる資料とか、いろいろな知識を自分なりにも勉強して左陪席はしっかりとたくましくなっていくんでしょうし、当事者や訴訟代理人も多分そうだと思うんですね。
 だから、新しい論点というのは、そういう訴訟の過程とか勉強の過程でまた新たに論点がぽっと出てくることもあると思うので、そういう意味でも、余り最初に、こういうことを決めます、あるいは、もう判決の時期を決めていますので、この時期までには争点整理で、攻撃防御方法についてはこの時点までしか提出を許しませんよというようなぎすぎすした訴訟になると、やはりそれは真実の発見からしてもちょっと遠い運用になるんじゃないかなというおそれを持っているのですが、もう一度その点をお願いします。
房村政府参考人 御指摘のように、確かに訴訟というのは生き物のような面がございます。当事者あるいは裁判所が予想しないような事態が途中で生ずるということもございますので、そういう場合に備えて、今回の法案でも、一たん定めた審理計画につきまして、審理の現状及び当事者の訴訟追行の状況その他の事情を考慮して必要があると認めるときは、当事者双方と協議をして審理の計画を変更できる、こういうことをして、裁判所がそういう変化に対応して柔軟に訴訟追行が図れるようにということを条文上もうたっておりますし、また、御指摘のような合議体であれば、ベテランの裁判長もいることですし、適切な運用が可能になるのではないか、こう思っております。
山内(功)委員 計画審理の問題にしても、あるいは当事者照会制度を訴え提起前にも認めるというような、後で質問するような制度を新たに設けるということ自体も、最初の、訴訟の初期の段階から充実した迅速化の図れる訴訟を目指そうということでとられている手続、採用された手続ですよね。
 しかし、一番最初から充実した双方の攻撃防御を期待するんだったら、もっと早く裁判所の方で、積極的に証拠開示の理念を持って、積極的にもう一回目から隠さず書証は全部出しなさいよ、証人も全部出しなさいよというようなこと、書証についても、例えば行政訴訟にしても消費者の訴訟にしても、相手方の方がたくさんの書類を持っているわけですから、そういうものを積極的に出しなさいよというような証拠開示を積極的に発動するということの方が、私は、最初からの訴訟の充実という観点からすると、証拠開示という問題についてもっと積極的に法文化した方がいいと思うんですが、例えば大臣、どうお考えでしょうか。
森山国務大臣 御指摘のように、計画審理を実施する上では、当事者が訴えの提起前において必要な証拠や情報の収集を適切に行うことができるようにすることが重要であると考えられます。
 そこで、この法律案におきましては、訴えの提起前における証拠収集等の手続を拡充いたしまして、相手方に対して主張、立証の準備に必要な事項を照会することができる手続や、文書の所持者に対して文書の送付を嘱託することができる手続などを設けることにしているわけでございます。
山内(功)委員 いや、その証拠開示をするということの条文化が、民事事件でも刑事事件でも今回法定化されてないんですよね。その辺はどうなんですかね、もっと積極的に証拠開示に取り組むというようなことは言っていただけないんですかね。
房村政府参考人 今回の法案におきましては、ただいま大臣から答弁いたしましたように、訴え提起前の証拠収集の手続を整備したわけでございます。
 御指摘のような、例えばアメリカのディスカバリー、こういう制度の導入ということになりますと、これは、アメリカにおいても、その手続に多大な費用や時間がかかるということから弊害も指摘されているところでございますので、日本においてそのアメリカのディスカバリー制度に倣ったような証拠開示手続を設けるかどうかということについては相当慎重な検討が必要である、こういうぐあいに考えております。
山内(功)委員 だとすると、先ほど大臣がおっしゃった、証拠開示のような規定の理念が、例えば証拠収集手続というか、訴え提起前の当事者照会制度の理念として反映していると言われたと思うんですけれども、もしそうだとしたら、証拠収集手続の拡充についてその趣旨を伺いたいと思います。
房村政府参考人 今回、特に訴え提起前の証拠収集手続を拡充いたしましたのは、委員から御指摘のありましたように、訴訟を提起した場合に、早期の段階から充実した審理計画を立てて進行するというためには、当事者の訴え提起前に証拠等を入手して十分な準備ができるようにする必要がある、こういうことから、特に訴え提起前の証拠収集手続についての整備をしたわけでございます。
山内(功)委員 プライバシーや営業機密について保護するというような規定があるんですけれども、ちょっと具体的なイメージは、どういう場合にそういうことが問題となって、そういう営業機密やプライバシーは守らなければいけないというようなことが出てくるんでしょうか。
房村政府参考人 例えば訴え提起前の当事者照会の場合ですと、主張、立証の準備のために必要があることが明らかな事項について問い合わせをすることができることとなっておりますが、その中には、例えば相手方の私生活にわたるような場合、これは、例えば離婚訴訟等を考えればそういった質問が出てくる可能性もあり得るわけでございますし、あるいは、取引に関連して相手方の営業秘密にわたるようなことを聞くという場合もあり得るだろうと思います。
 したがって、問い合わせを受けたものがそういうプライバシーに関する事項であるとか営業秘密に関する事項であるときには、その照会に応じなくてもよいということをあらかじめ法律で定めておくということでございます。
山内(功)委員 証拠収集手続については、これからもさらに拡充していく方向で検討されているんでしょうか。
房村政府参考人 これにつきましては、今回この改正をお願いしているわけでございますが、当然、その使用状況等を見まして、必要があればさらに検討を加えるということになろうかと思っております。
山内(功)委員 心配なのは、例えば改ざんとか証人威迫が起きやすくなるということは考えられないでしょうか。
房村政府参考人 提訴予告通知をしたことをきっかけに改ざん等がされるおそれというのは抽象的にはございますが、本当に改ざん等のおそれがある場合には現在の証拠保全手続が活用できますので、そういう形で、本当にその危険がある場合には、証拠保全手続を活用していただいて証拠の保全を図るということが可能でございます。
山内(功)委員 これは訴えを起こさなくても結果的にはいいわけですから、今度は反対に、乱用されるおそれもないのかなという心配もあるんです。照会を受けた側にとっては、裁判を起こされたのと同じくらいの労力を使って相手方の照会の文書をつくったりしなくちゃいけないときもあると思うんですよね。だけれども、一生懸命やったけれども、四カ月たっても何の返事もない。
 だから、例えば乱用防止と言うと、何かできる前から言うのもおかしいかもしれませんが、そういう懸念はないんですかね。
房村政府参考人 訴え提起前の証拠収集については、まだ訴えが提起されておりませんので、当事者間で解決しなければならない。そういうことから、当然、その乱用の防止を考えなければいけないというのは御指摘のとおりだろうと思います。
 ただ、例えば、当事者照会をいたしまして、その結果を見て訴え提起を断念することもございますので、予告通知をして当事者照会等をしたら訴え提起を義務づけるというわけにはまいらないわけでございます。そういうことから、提訴予告通知をしてから四カ月にこの利用を限っております。そういうことによって、余りに長期間にわたって負担をかけることのないようにという配慮をしております。
 それからまた、答える者が不相当な手数がかかるというような場合には、例えば裁判所からの調査嘱託等でも採用しないということができるようにしておりまして、当事者の負担が過重なものにならないような配慮もしております。そのほか、先ほど申し上げた秘密の保護とか、そういう乱用に対する対策も十分考えたつもりでございます。
山内(功)委員 次に、専門委員制度を採用することになっているようですけれども、この専門委員については、裁判所はいつの段階の、どのような場面で専門的知見を補完することを想定しているのでしょうか。
房村政府参考人 これは、裁判所が専門委員を活用する場面としては、まず争点もしくは証拠の整理、その段階で専門委員の意見を活用するということが考えられております。それから次に、さらに進んで、証拠調べをするに当たって、訴訟関係あるいは証拠調べの結果の趣旨を明瞭にするために専門委員を使うということも考えております。また、訴訟の過程において和解の試みをする場合に、和解の試みをするに当たって専門委員の専門的知識を活用する、こういうことも考えておりまして、以上のような、訴訟の進行状況に応じて、それぞれの場面で専門委員を活用するということが想定されております。
山内(功)委員 例えば内臓の手術で、背中からメスを入れる手術方法が正しいと思っているお医者さんと腹からメスを入れる手術が正しいと思っているお医者さんがいて、専門委員は例えば腹からの手術派で、それから例えば鑑定人は背中から手術すべきだったというような事件があったとします。そうすると、鑑定人は宣誓をした上で真実を鑑定したり述べたりしていますよね。専門委員は宣誓はもちろんないわけですし、そういう場合に、裁判官はどっちの言うことを尊重するんですか。
房村政府参考人 鑑定人はまさに証拠方法としてでございますので、裁判官としては、果たして背中から切る方がいいのか、腹から切る方がいいのかということについて、その鑑定人の意見等を証拠として判断していくことになろうかと思います。
 専門委員に期待されているのは、どちらがいいかということを裁判官が知るということを期待されているわけではなくて、まさにその手術について、背中から切るという考えを持っている人もいればおなかから切るという考えを持っている人もいる、あるいは、そういうことについて、それぞれどのような文献があり、どのようなことが論争されている、そういったことを知識の補充として与えてもらって、裁判官がそのどちらの方法がいいのかということがこの事件の争点である、そういうようなことを理解する、そういう争点整理。あるいはさらに、出てきた証拠について、この証拠はどういう意味がある、その言われていることはどういうことなんだということを補充するという、まさに直接専門委員の説明から心証をとるわけではなくて、その事件の争点の整理であるとか証拠の意味をわかるという、そのための、知見を補うという役割でございますので、期待されている役割が相当違うということになろうかと思います。
山内(功)委員 確かに専門委員制度を採用すると、そういう理念は絶対に大切にしなければいけないとは思いますよ。だけれども、専門委員についても鑑定人に対しての尋問権があるわけですから、そうすると、例えば自分が学生時代から、指導教授の教えを守って、ずっとそれが正しいと思って、自分の学問として確立した、そういう人が専門委員となって、鑑定人が全く違う、非常に危険な手術方法を、これがいいとさも言う。そういう法廷の中での現場で、その専門委員が自分と全く違う危険な手術を推奨するような学者に対して尋問をするときに、果たしてそんな高邁な理念とか理想に基づいた尋問ができるんですかね。
房村政府参考人 これは運用の問題ではございますが、しかし、役割として期待されているところは、先ほど申し上げたとおり、専門委員の説明というのは、それに基づいて裁判官が心証を形成するものではないわけでございますので、その説明を受ける裁判官も当然そういうことを念頭に置いて発言をしてもらうということになりましょうし、また、専門委員の意見は、当事者のいる期日あるいは書面ということで述べますので、これについては当事者も、専門委員がどういうことを言っているということについて直ちに反論をしようと思えばできるような状況でございます。
 特に尋問に関しては、両当事者の同意を得た上で行う、こういう形になっておりますので、この専門委員の役割がきちんと裁判官、両当事者に理解されていれば御指摘のような懸念はないのではないか、こう思っております。
山内(功)委員 いや、民事局長が言われるようにそういう懸念がないならいいんですけれども、例えば、専門委員で尋問を聞く側がどこかの大学の助教授で、鑑定人が教授だったとか、それは法廷の中の現場ですからね、何であなたにそんなことを聞かれなくちゃいけないんだとか、そうでなくても、鑑定人の人格まで攻撃することがその鑑定をつぶすための尋問、テクニックでもあるわけですから、私は本当に希有なことを考えているだけだと言われればいいんですけれども、少し心配もしています。
 それでは、裁判所の中に専門委員の名簿というのはどういうふうにつくっていくんですか。
園尾最高裁判所長官代理者 これからその内容について、最高裁の事務当局、それから高裁、地裁、そういうような裁判の担当者とさらに協議を続けていくということになりますが、現状といたしましては、できるだけ公平にかつ適正な専門委員を選ぶという意味で、専門委員の給源というところにも公平さを考えながら幅広い検討をしていくというようなことで、検討対象についてはできるだけ広く対象にした。しかも、その内容につきましては、これは高度な専門知識に関する補助を得るということでございますので、そのようなものにふさわしい、そういうような専門委員の推薦を受けるというような情報収集体制を整えていくというような検討を現在しておるところでございます。
山内(功)委員 私は、もし最高裁の方でそういう名簿をつくられるのでしたら、裁判所の中だけではなくて、今まで非常にいい鑑定の実績を上げたとか、世界的に認知された学問を積んでいる方だとか、最高裁判所の中だけでリスト化するのではなくて、法務省とか弁護士とかマスコミ関係者とか、そういう人たちを含めた選定委員会みたいなものをつくっていただいた方がいいのではないかと思っています。
 法文の九十二条の二に、専門委員を選任するときには当事者の意見を聞いてとあります。これはつまり当事者双方が同意しなくてもいい場合もある書きぶりなわけですから、原告、被告のうち、例えば被告がその専門委員について非常に問題である、そう思っていても、裁判所が決定を出せば、その専門委員が始終裁判官の補助役として出てくる、登場してくるということになって、当事者の納得ということからすると随分当事者の意向とずれが生じるのではないかと思うのですが、そのあたりはどう考えたらいいんですか。
房村政府参考人 今回の専門委員の関与につきましては、基本的にまず当事者の意見を聞いて、その上で決めるということにしております。その中でも、特に先ほども話題に出ました、証拠調べに関して専門委員が発問をするというような心証形成と非常に密接に結びつくような場面については、当事者の同意を得た上で行うとしておりますし、また、当事者の合意が非常に必要な和解手続に関与する場合にも、その同意を得てとしております。
 ただ、それ以前の争点の整理、あるいは証拠の趣旨を明らかにする、こういうような関係で専門委員を使う場合には当事者の意見は聞きますが、裁判所としてどうしても趣旨を明瞭にするためにその専門家の知識が必要だという場合には、同意が得られなくても使うことも可能なような仕組みにはしてございます。ただ、訴訟の円滑な進行ということになれば、十分当事者と協議をした上で円滑に進行を図るということが期待はされていると思っております。
山内(功)委員 最後になりますが、特許権等に関する訴訟の管轄の問題についてでございます。
 結局、日本じゅうを知的立国、知的財産権立国というんですか、IT国家を目指そうということで、それが東京や大阪に住んでいる人だけじゃなくて、日本じゅうをそういう国にしようというのが多分今の内閣の方針だと思っていたんですが、そのことと、例えば先ほど日野議員が言われましたように、田舎の中小企業の経営者でも、どっこいしっかりとした発明を持っている、発明家がいるよと先ほどおっしゃったんですけれども、そういう場合もそうですし、例えば北海道の航空会社からベンチャー企業を目指すとか、そういうベンチャーの育成ということもやはり重要な日本を再生するためのテーマだと思うんです。
 そういうことからすると、管轄を狭めるというのは確かに専門化して特化して判断も統一になっていいことなんでしょうけれども、その一方では、そういう日本が目指す理想の国家のあり方とちょっと違うような気もするんですが、それはどう考えたらいいんですか。
房村政府参考人 御指摘のように、現在、特許権等をてことして企業の発展を図るということは、非常に重視されております。そういう意味で、特許に関する紛争というのは、企業にとってますます死命を制するような重要なものになってきているわけでございますし、また、特許の性質からも、非常に早く解決をすることが求められている。そういう意味では、特許に関する紛争というのは、今まで以上に適正にかつ迅速に解決をしてもらうということが、特許権等を活用する企業にとってもますます重要なことになっている。これは東京、大阪にある大企業に限らず、地方の中小企業にとっても同じだろうと思います。
 そういう意味で、今回、特許権に関する訴訟を専門的な体制の整っている東京、大阪に集中するということにいたしましたのは、そのような社会の要請にこたえて専門的な体制を整えたところで適正かつ迅速に特許に関する紛争を解決するということを目指したものでございまして、これは多分、長い目で見れば地方の中小企業にとってもその方がメリットが大きいだろう、こう思っております。
 また、地方にあるがゆえに、東京、大阪で行うことによって余りにも損害が生ずるということであれば、これはその地方の裁判所へ移送をするという移送の規定も整備をして、余りにも大きな損害をこうむるということのないような配慮はしておりますので、この両規定、また、そのほか、電話会議システムであるとかテレビ会議システムというようなものを活用して、遠隔地においても訴訟追行が可能なような仕組みも整いつつありますので、そういったものを活用することによって、地方の企業が余りにも負担を負うということは避けられるのではないか、こう思っております。
山内(功)委員 ありがとうございました。
 法律の運用を変えていくとか、あるいは制度を立て直していくというようなことも必要かもしれませんけれども、要は、最後は、人的、物的な体制を拡充することがやはり一番充実かつ迅速な裁判につながるのではないかと思いますので、これからも大臣には積極的な対応をお願い申し上げまして、質問を終わります。ありがとうございました。
山本委員長 次に、石原健太郎君。
石原(健)委員 統計を見る限り、日本の裁判が諸外国と比べて特に長くかかるというわけではないと思うんですけれども、中に七年、八年あるいは十年以上もかかるケースがあるのは、それはどういう理由によるものか、わかりやすく説明していただけたらと思います。
山崎政府参考人 これは一般的に言われていることでございますけれども、まず、事案の内容が複雑である、それからかなり高度の専門的な知識を要する、それから当事者が多数であるというような、事件の属性に伴うものが一つ原因として考えられるだろうと思います。それから、やはりもう一つの側面は、当事者の協力がなかなか得られないという場面もあろうかと思います。それと、やはり裁判所の方の最初の争点の絞り方等、この辺のところが十分にいかなかったという、三者の原因がそれぞれあろうかと思います。
 それがどういうふうに出てくるかは、個々の事件の性質によって変わってくるということでございます。
石原(健)委員 そうしますと、今のような長期にわたってかかるような裁判が、今度の改正によってどのように処理の方法が変わっていくのか、その点について御説明いただけたらと思います。
山崎政府参考人 この法案につきましては、二年を目標に、二年内のできるだけ短い期間内に事件を終局させていく、こういうことを目標に審理を進めていくということを言っているわけでございます。ただ、やはり、個別の事件等につきましては、やるべきことはやらなければならないということでございますが、やるべきことをやった上で、かつ能率的な、効率的な運営をやっていかなければならないということをうたっているわけでございます。
 現在、かなり長くかかっている事件、こういうものにつきまして、それは数は多くないのかもしれませんけれども、やはり国民がその事件を見るときに納得できない、それから事件が風化してしまう、それから、やはり熱いうちに結論を出してそれにどういう対処をしていくかということを問わなければならないのに、長くたってしまってそれを問うということもいかがなものか、いろいろな御批判もございます。そういう点も、やはり裁判というのは国民の納得も必要でございますので、そういう長い事件についても二年を目標にやっていこうということでございます。
 これにつきましては、事案によってはできないものもあるかもしれません。そういうものは、どういうところにその原因があるのか、それから、それをもっと短くすることが可能なのか可能じゃないのか。これは、裁判所の方の、最高裁の方で検証をいただいて、その上で、本当に可能なものは、もう少し手続を変えたり、あるいは人をふやしたり、そういうことで実現可能になるようにやっていこう、そういうシステム化をするものでございまして、そういう検証とそれに伴う現実の制度の改正、体制の整備、こういうことを繰り返しまして、より理想に近づけよう、そういうものでございます。
石原(健)委員 特に質問通告はしてなかったんですけれども、今理想の体制に近づけていくんだというお話ですが、大体何年間ぐらいを想定されておられるんでしょうか。
山崎政府参考人 これは、将来予測でございますので、必ずしもどういうふうになるかということを完全に見通すことはできないわけでございますが、まず、八条で検証は二年ごとにお願いをするということになっておりますので、二年ごとに分析の結果が出てまいります。それを政策に投影させるということになります。これを何回か繰り返していくということになりますが、附則で、この法律について十年後に見直しをしていく。これは、達成していれば必要なくなるということもありますし、達成できてなかったら、またどういう手当てを加える必要があるかとか、そういうような見直しの条項が入っておりますけれども、少なくともそれが一つの目安になるというふうに考えております。
石原(健)委員 検証もその手段の一つだとは思うんですけれども、二年以内に判決を出すということで審理が十分尽くされないことが心配される、そんな考えを持つ人もおるようでありますけれども、そうした心配に対してはどのような配慮がなされているのか、御説明ください。
山崎政府参考人 ただいま御指摘の点、大変重要な点でございまして、これは、私どもが政策を立案する段階でもさまざまなところからこのような御指摘がございまして、そういう関係から、例えば二条の一項でございますけれども、「充実した手続を実施すること」、そういう文言を入れておりまして、そういうことによって行われるんだよということをはっきりうたっております。それから、同じような文言は六条にもございまして、これは裁判所等の責務でございますけれども、充実した手続を実施することによって、可能な限り目標に近づくように努力をしなければならないとうたっております。
 それ以外に、やはり当事者の正当な権利、これを害してはならないということもございますので、二条の三項に、当事者の正当な権利利益が害されないようにしなければならないということ、このような手当てを加えて、やることはやった上で、手続を効率化して迅速を図っていく、こういうことをうたっているわけでございます。
石原(健)委員 先ほど、民事訴訟につきましては証拠の開示についてお話があったわけでありますけれども、やはり刑事事件なんかも迅速に行うには証拠の十分な早期の開示が必要というふうにも思われますけれども、この点についてはいかがお考えでしょうか。
山崎政府参考人 ただいまの刑事の証拠開示の点でございますが、私どもの前身でございますけれども司法制度改革審議会、ここの意見書がございますけれども、その中で、刑事裁判の充実、迅速化を実現するための方策の一つとして、第一回公判期日の前から、十分な争点整理を行うことができるよう、新たな準備手続を創設すべきである、それから、充実した争点整理が行われるには、証拠開示の拡充、ルールの明確化、これが必要である、こういうふうにうたわれているわけでございます。
 これを受けまして、現在、私どもの方で検討会を設けているわけでございますけれども、その検討会で証拠開示のルールの具体的なあり方について検討中でございます。これにつきましては、来年の通常国会には改正案の御審議を願いたいというところで、今進めているところでございます。御理解を賜りたいと思います。
石原(健)委員 次に、選挙で選ばれる人の裁判等はできるだけ早く判決が出ることが望ましいと思うんです。といいますのも、選挙民に対して正しい判断材料を提供するという意味からも、また税金が正しく使われるべきだという点からもそう考えられるわけであります。起訴されて、裁判が始まって確定する前に二度も有権者から認められて当選をしてくる、結果的に、最終的に有罪になって資格をなくすというようなケースもあったようですけれども、こういう点については、裁判所としてはどのような考えをお持ちになっているんでしょうか。
中山最高裁判所長官代理者 刑事事件の被告人が選挙で選ばれているという場合に、被告人は国やあるいは地方公共団体の権限の行使に直接かかわる地位、立場にあるわけでありますし、また、国民の関心も非常に高いものがありますから、迅速に審理を進めて判決を言い渡す必要があるということは議員御指摘のとおりだと考えております。
 ただし、現実問題として、なかなかこの種事件では、起訴から確定までかなりの期間を要しているといった事件も少なくございません。そうした事件は、事実認定上の問題あるいは法律上の争点というものが非常に多岐にわたる、あるいは、ロッキード事件でいいますと第一審だけで百九十一回の公判、先般の中村喜四郎元代議士の事件では七十七回の公判といったように、公判回数が非常に多数、ロッカーいっぱいの訴訟記録といったような非常に大部なものになる、そういった事件が多いというところが長期化の主要な原因になっているわけであります。
 これに対する特効薬というのは、これはなかなか実際ございませんで、裁判所としては、早期に争点を確定して、審理計画を立てて、必要な公判期日をできる限り一括指定した上、争点を中心にした証拠調べを集中的に行うといった、ほかの刑事事件にも通ずる地道な努力をしなければならないということでありますが、率直に申し上げまして、これでそれじゃ本当に皆いい結果が出せるかというと、現行制度のもとではなかなか難しい面があるように思われます。
 先ほど改革推進本部の事務局長からも説明がございましたけれども、今本部の方で検討されている新たな事前準備手続の創設、その前提として、議員から御指摘のありました証拠開示制度の抜本的な拡充、あるいはこういった弁護体制といいますか、連日開廷を可能とするような公的弁護制度といった弁護体制の整備、そういったものが絶対的に必要であるというふうに考えており、そこに期待をしているところでございます。
石原(健)委員 そうしますと、今度の改正によって、ロッキードとかその中村前代議士のこととかリクルートのこと、そういうものも大分期間は短縮されるだろう、こう予測していてよろしいんでしょうか。
中山最高裁判所長官代理者 先ほど山崎事務局長の方からも答弁がございましたけれども、今回は、八条で、最高裁判所が検証するということになっております。迅速化を阻害している要因は何か、もちろんこれは充実が前提でございますが、そこのところをその隘路、問題点というものを洗い出し、そしてそれを制度の問題として結びつけていかなければならないというふうに考えておりまして、現在もう既に、ある意味で先行的にそういった検討作業が行われておるわけでございますけれども、そこの部分のところが新たな制度手続として見直しがきちんとなされますれば、今まで以上の結果が出てくるんではないかというふうに思っているわけであります。
石原(健)委員 人事訴訟の裁判が家庭裁判所で行われるようになりますと、それに伴って、家庭裁判所の裁判官の人員の増強が必要になったり、施設の拡充も必要になってくると思いますけれども、どのように対応されるお考えなのか、お聞きします。
 また、従来、審理件数の増加に比例して、十分な施設の拡充とか人員の増員が行われていたのかどうか、これまでの経緯とその努力などについてお聞かせいただけたらと思います。
中山最高裁判所長官代理者 人訴移管に備えた人的、物的体制のところからまずお答え申し上げます。
 人的体制の整備としましては、家庭裁判所調査官について、家裁への人事訴訟の移管ということで新たに人事訴訟に関与することになりますので、今国会において三十人の増員をお認めいただいたところであります。また、裁判官、裁判所書記官につきましては、これは、これまで地裁で人事訴訟を行ってきたわけでございますから、地裁から家裁へ機動的に人員をシフトする、マンパワーをシフトするということで基本的には賄える、対応できるというふうに思っております。加えて、裁判官あるいは調査官、書記官等がそれぞれの立場でどのように人事訴訟にかかわっていくことが有用であるか、こういったことについても研究会等を設けまして検討を進めていきたいと思っております。
 物的体制の整備としては、既存の物的設備を有効に活用するための方策を検討するのは当然でありますけれども、必要な庁につきましては、法廷の整備、改修、あるいは新たに導入すべき設備、これは電話会議システム等が考えられますが、そういったものの整備も早急に図っていきたいと考えているところであります。
 新受事件の増加に対応してこれまでどんな人的体制をとってきたかというところでございますが、平成十年から平成十四年度まで五年間で、例えば裁判官でありますと、百九十五人を増員してまいりました。これら増員分は東京等の大都市部を中心に配置してきましたので、バブル崩壊後、一時期裁判官の手持ち件数が東京地裁で三百件になるというようなことがございましたけれども、これが今現在百七十件というところになってきております。百七十件でも非常に多いじゃないか、こういうふうに思われるかもしれませんが、実は、そのうちの三分の一はまだ争点が確定していないもの、始まったばかりの事件であり、それから、争点整理中のものが二分の一、残りの六分の一が証拠調べ、あるいは判決ということになります。
 そういう意味でいいますと、三十件ほどは証拠調べを行っているもの、あるいは判決書きを書かなければいけないものということでありますが、概して言えば、判決書きはそのうちの三分の一ぐらいかなというところでありますので、往時に比べると相当裁判官の余裕が出てきたというふうに考えております。
 今年度は四十五人の裁判官の増員をお認めいただいたところでありますが、これは全国で三番目に大きいと言われております横浜地裁本庁と同規模の増員でございます。
 そういうことで、裁判所の方は、これはもちろん裁判所書記官等についても当然でありますけれども、着実に体制の整備を図ってきているということで御理解いただきたいと思います。
石原(健)委員 人事訴訟案件を家庭裁判所で裁判するに伴うどういうメリットがあるのかを御説明いただけたらと思います。
房村政府参考人 今回の人事訴訟法案では、御指摘のように、人事訴訟、従来地方裁判所で扱っておりましたものを家庭裁判所で扱うということとしております。
 これは実は、例えば離婚訴訟を取り上げますと、離婚をするためには、まず家庭裁判所に行きまして、調停を申し立てて調停をする。そこで話し合いがつけばいいわけですが、そこで話し合いがつかない、そうなると初めて訴訟を起こす。ところが、この訴訟は、現在は地方裁判所に行かなければいけない。同じ事件なのに、調停のときには家裁、訴訟になると地裁という別の裁判所に行かなければいけないということで、当事者にとっては非常に使いにくい、こういう御指摘がございました。
 また、離婚訴訟につきましては、離婚の際の財産分与であるとか、子の監護者の指定、あるいは親権者の指定というような付随の処分がございます。これらの処分は、本来は家庭裁判所が審判で行っているわけです。ところが、離婚訴訟を起こしますと、それに伴って、今言ったような処分も地方裁判所で行うということになります。ところが、家庭裁判所ですと、家庭裁判所の調査官がおりまして、その専門的知識を活用しまして、そういった例えば財産分与とか子の監護者の指定についての判断が適切にできるわけでございますが、地方裁判所で人事訴訟とあわせてやるときには調査官が使えませんので、ある意味では非常に裁判所にとってやりにくい面がございます。
 このようなことから、人事訴訟を家庭裁判所に持っていきますと、家庭に関する事件を調停から訴訟まで一貫して、まさに家庭に関する専門裁判所である家庭裁判所で扱うことができ、そこの調査官など専門知識を持った人が活用ができるようになる、こういうメリットがございます。
石原(健)委員 それから、家庭裁判所で調停時に作成された調査報告書等は訴訟においては利用すべきではないというような意見もあるようですけれども、この点についてはどうお考えでしょうか。
房村政府参考人 家事調停の記録は、その後人事訴訟が起きた場合、当然に資料となるわけではございませんので、当事者が改めて証拠として提出をしない限りは、人事訴訟における証拠になるわけではございません。
 ただ、先ほども申し上げましたように、人事訴訟の場合、付随処分、例えば子の監護者の指定あるいは親権者の指定などございますが、こういうものについては、今回の法案で、人事訴訟において裁判所はこういう付随処分については事実の調査をすることができる、こうしておりますので、その事実の調査の対象として、そういう過去の家事調停の記録を調査するということもございます。
 ただ、これも、事実の調査としてどういうことを行ったかというのは記録にとどめられますので、当然に資料となるわけではなくて、事実の調査の対象として取り上げられた場合に初めて資料となる、こういう関係にございます。
石原(健)委員 従来、家庭裁判所の調停により養育費等の支払いなどが決定されても実行されないケースが多くあると聞いております。こうしたことはどのように受けとめておられるのか、またどのように今後取り組んでいかれようとしているのかをお聞かせください。
房村政府参考人 御指摘のように、子供の養育費等について当事者間で話し合いが調って、にもかかわらず現実にその支払いがなされないということが間々見受けられるようでございます。これにつきましては、現在も家庭裁判所で履行勧告を行うというようなことで当事者に履行を促すような方法も用いられておりますが、それではやはり決め手に欠けますので、今回、実は、担保・執行法の改正をするときに、こういった養育費の強制執行を容易にする新しい取り組みをしております。
 これはどういうことかと申しますと、養育費というのは、大体月に数万円程度の支払いでございます。現在の執行法でいきますと、この強制執行をするのは、それぞれの毎月の費用の支払いを怠った場合に初めて強制執行ができる。したがって毎月毎月強制執行しなければならない、これでは余りにも当事者の負担が重い、こういうことから、今回の担保・執行法の改正におきましては、一回でも支払いを怠ったら、将来分も含めて、相手方の、例えば給料債権のような定期的に入ってくる債権を差し押さえてしまう。そうしますと、毎月の養育費の支払い期が来て次の月給日が来ますと、その月給の中からいわば毎月分を取り立てることが可能になる、一回の申し立てでそれが可能になる。こういう方法を新しく設けることによりまして、養育費の強制執行を容易にするということを考えております。
石原(健)委員 話し合いのときは支払う能力があって約束しても、リストラに遭ってしまったとか倒産してしまったとか、これはどうしようもないことだとは思うんですけれども、そんなことはどういうふうにお考えでしょうか。
房村政府参考人 確かに現実的にお金がなければこれは執行のしようがないわけですが、ただ、最高裁判所において養育費の支払い等について調査をいたしました結果によりますと、相手方が、資力があるにもかかわらず、例えば嫌がらせであるとか感情の行き違い等から支払っていないという事例も相当数ございますようですから、そういう場合には、このような新しい執行方法を簡易にするということによって対処できるのではないか、こう思っております。
石原(健)委員 次に、少額訴訟が適用される事件の訴額の上限を六十万円に改めるようですけれども、その六十万という根拠は何なのか、御説明ください。
房村政府参考人 簡易裁判所というのは簡易迅速に事件を処理するわけですが、その中でも特に簡易迅速に、いわば一日で解決をしよう、こういうものとして少額訴訟を考えて、現在訴額三十万円以下の事件について特則を設けているわけでございます。これは非常に利用者から評判がよくて、もっと利用できる事件の額を上げてほしい、こういう要望が強かったものですから、今回この上限額を六十万円に上げるということとしたものでございます。
 六十万にした根拠でございますが、諸外国の例を見ましても、このような簡易な手続による上限額というのは三十万から五、六十万までが多い、こういうことが一つございます。それからもう一つは、簡易迅速な手続ということから、例えば、取り調べられる証拠も制限しておりますし、さらに、控訴審での審理ができない。少額訴訟の判決がありますと、異議申し立てはできますが、異議申し立てで簡裁で判決をしますとそれに対する控訴はできない、こういう制限も課しております。
 したがって、余り高額な事件についてそういう制限を課すというのは適切でないだろう、このようなことから、六十万円ということといたしました。
石原(健)委員 大臣にお尋ねしたいんです。
 裁判の迅速化というのも確かに必要で、いいことだとは思うんですけれども、司法行政の迅速化ということもぜひ考えていただけたらと思うんです。とりわけ、最近問題になっております刑務所の処遇の問題とか刑務所内における医療の問題とか、そういうことには早急に取り組んでいただきたいと思うんです。
 そのことを御要望申し上げ、今回の法改正、せっかく法を改正するわけですけれども、どのようにこれを国民に周知徹底させていかれるのか、その辺についてお考えをお聞かせいただけたらと思います。
森山国務大臣 御指摘のとおり、例えば、例に挙げられました刑務所の問題等につきましても、できるだけ早く対処しなければいけないと考えておりまして、早速行刑改革会議を始めておりますし、また、私自身も、この五月の連休のときを利用いたしまして、現場をつぶさに視察してまいりまして、それを生かして、できるだけ早く改善に向かって前進したいと考えております。
 なお、後の方で御指摘になりましたこの法律案でございますけれども、民事訴訟の充実とか迅速化を図るためのさまざまな新しい制度が設けられるわけでございます。これらは、国民にとってより利用しやすい民事裁判を実現するために設けるものでございますので、国民に知られなければ意味がないわけでありますので、新しい訴訟手続が国民に十分理解されまして、円滑に実施されるようにすることが必要だというふうに考えております。
 法務省といたしましては、法律案の成立後は、これらの新しい制度の趣旨及び内容につきまして、いろいろな方法で十分な周知の努力をいたしたいというふうに考えております。
石原(健)委員 どうもありがとうございました。終わります。
山本委員長 次に、木島日出夫君。
木島委員 日本共産党の木島日出夫です。
 四月十八日に続きまして、裁判の迅速化に関する法律案について、きょうは具体的に条文に即してお聞きをしたいと思います。
 最初に、第八条、最高裁判所による検証でありますが、提案者に聞きますが、調査対象となる事件は何なんでしょうか。すべてなんでしょうか、特定された事件なんでしょうか。
山崎政府参考人 八条につきましてです。
 裁判の迅速化を推進するため必要な事項でございまして、十分にこの趣旨に沿って事件を行っていると思われるものは別でございますけれども、それ以外のものはすべて対象になるということでございます。
木島委員 よくわからない答弁なんですが、調査対象となる事件をえり分けるんですか、それとも全部ですか。
 では、もう一つ聞きましょう。現に進行中の事件もすべて調査対象か、えり分けるのか。
山崎政府参考人 ちょっと不正確だったかもしれませんが、裁判の迅速化を推進するため必要な事項を明らかにするために、必要な事件は調べる、調査の対象になるということでございまして、これは、終了した事件、それから現に進行中の事件、その区別は問わないということになります。
木島委員 そうすると、修飾がついていますから、調査対象になる事件と調査対象から外れる事件はもっと明確に、非常に大事なところですから、答弁してください。
山崎政府参考人 この八条で明確に書かれておりますけれども、裁判の迅速化を推進するために必要な事項を明らかにするため、裁判所における手続に要した期間、状況、その長期化の原因その他必要な事項についての調査分析、これを行うということでございます。したがいまして、それに関連する事件については行うということになるわけでございます。
木島委員 全然わかりませんね。
 すべての事件、悉皆調査しなければ。今やっているんでしょう。最高裁はもう統計を持っているでしょう。一審判決の事件がどのくらいかかっているか、この種の類型の事件はこのくらいかかっているが、この種の類型の事件はこのくらいかかっていると、いろいろ千差万別でしょう。全体としての統計が集約されてきて、全体の何%が何年以内だという数字も出てくるわけでしょう。それで評価するわけでしょう、全体の評価は。今の答弁じゃ全然わかりません。
 全部対象になるんじゃないですか。対象にしなければ、この法の目的である分析やら多角的な検証やら、その結果に基づく国の施策の策定、実施に当たって、適切な活用を図れないじゃないですか。
山崎政府参考人 確かに、調査して分析をしていくという対象として、すべての事件が対象になる。しかし、現実にどこに問題があるかということについては全部の事件が対象になるわけではない、こういうことでございます。
木島委員 ですから、私は、どんな事件が調査対象になるのかということと、調査対象になる事件についてどんな調査の内容をやるのか、調査の中身ですね、それはおのずと違ってくると思うんです。貸し金請求で簡単なクレサラ事件なんというのは数だけで結構だ、何カ月かかっているというだけの統計的な数字だけで結構だ。しかし、医療事件等については、中身にまで深く立ち入らなければ長期化の原因が判断できないわけですから、そういうことを聞いているんです。
 ですから、対象は全部だ、そして、現に生きている事件も対象だと聞いていいですね。じゃ、もう一回確認します。そうですね。
 それと、もうちょっと。一審が終わって上級審に係属中の事件の一審がどうだったか、長過ぎたかどうか、それも調査対象であること、間違いないですね。
山崎政府参考人 係属中の事件すべて対象になるということは間違いございません。
 ただいま御指摘がありましたように、控訴審に行っているもの、これは第一審が終わっているわけでございますけれども、これも対象になります。
木島委員 では次に、調査の中身についてお聞きいたします。
 先ほど私からいろいろ言ってしまいましたが、調査の中身については違うのかもしれません。一体、調査の中身は何を考えているんでしょうか。
山崎政府参考人 まず、先ほど言われましたように、全般的に調査はいたします。その中で、対象外になるようなものもあろうかと思いますけれども、そうではないものについては、大体、まず、実際どのぐらいの期日がかかっているのか、それについてはどういうような手続が行われて何が原因かというところ、そこを調査するということで、それについてのまた分析を行っていく、こういうことでございます。
木島委員 一応この迅速化法は、民事、刑事、二年以上かかった事件だけがこの法律の対象じゃないんですよね。二年かかっていない事件についてもこの法律の対象であって、より短くしろというのがこの法案ですからね。
 そうすると、どうなんでしょうか、余り深く立ち入って調査しない事件と、あるいは、二年以上かかっている事件は特に掘り下げて、証人の採用された数とか鑑定の有無とか検証の有無とか、そんなことまで立ち入って調査することになるんでしょうか。要するに、事件の種別によって、期間だけでそれ以上突っ込まない場合と、ある種事件についてはより立ち入った調査をする、そういうことに、現実にはなるんでしょうか。まずそこを聞きましょう。
山崎政府参考人 確かに、おっしゃいますとおり、事件の種別によっては、それから、二年以内におさまっていても、通常このぐらいの事件であれば普通はこのぐらいで終わる、それなのにかなり時間がかかっているというものがあれば、二年以内のできる限り短い期間ということがこの目標でございますので、それについてはやはり原因を調べて分析をするということになろうかと思いますし、超えているものについてはほぼみんな対象になっていくだろうというふうに思います。
木島委員 そうすると、これから具体的に私から特定して聞きますから、イエスかノーかで結構です。
 主に、今の答弁でいくと二年以上かかっているような事件かもしれませんが、個別事件についての調査の中身ですが、証拠採用の可否、内容、これは調査の対象になるのですか。
山崎政府参考人 手続について、その当否というのは……(木島委員「当否はともかく、事実」と呼ぶ)事実は、調べるということになります。
    〔委員長退席、園田委員長代理着席〕
木島委員 どういう証拠を採用したかは調べると。当然、どういう証拠申請があったが却下されたということも調査の対象になるわけですね。
山崎政府参考人 私どもが実施するわけではございませんので、なかなか答えにくいところがございますけれども、それは、どういう申請があってどういう採用になったかということがわからなければ、全体としてはわからないだろうと思います。
木島委員 お認めになりました。
 では次には、裁判長による、あるいは単独の裁判官による期日指定の間隔、長いとか短いとか評価は別にして、次回期日の指定の間隔がどのぐらいだったか、調査対象ですか。
山崎政府参考人 それも対象になるというふうに思います。
木島委員 次には、今度の新しい民訴法の改正法案に出てくる百四十七条の三、審理の計画、これを事件によっては裁判所は定めなければならないという条文になっておりますが、審理計画が定められたか否か、当然、調査対象ですね。
山崎政府参考人 審理に伴ういろいろの手続、これについては当然対象になっていくというふうに思います。
木島委員 それからついでに、民事訴訟法改正法案の九十二条の二、専門委員、これを選任したか選任しなかったか、あるいは、裁判所は選任しようと思ったが、当事者の意見を聞いたら反対だということで選任しなかったとか、そういう選任したか否か、選任手続の経過、これも調査の対象ですか。
山崎政府参考人 専門委員制度、これを導入して審理をするについて、そういう事件であるかどうかとか、やはりその事件の内容とか、そういうものに関連してまいりますので、これも対象になるだろうというふうに私は思っています。
木島委員 そうですね。今私が指摘したようなことを調査しなければ、長過ぎるかそうではないか、適正だったか、判断もできないわけであります。
 では、逆の視点から聞きましょう。
 個別の裁判官がどのくらい一年間に事件を落着させたか、あるいは地方の裁判所のある支部がどのくらい事件を落着させたかとか、今でも最高裁はやっているんだと思うんですが、そういう個別の裁判官ごとの落着の状況、手持ち事件数は当然調査の対象ですか。
山崎政府参考人 個別の裁判官がどれだけ事件を決着したかということよりも、全体として一人どのぐらいの負担になっているかということですね、裁判所全体としての事件がどのぐらいで、一人頭どのぐらいの負担になるかというような点ですね。
 これについては、やはり審理が可能かどうか、二年以内に審理をしていくことが可能なのかどうか、もっと人をふやさなきゃいかぬかどうか、こういう点からは当然対象になるだろうと思います。
木島委員 そうなんですね。裁判官が足りないか多過ぎるか、あるいは裁判所の設備が足りないかどうか、そんな観点から調査をしなければ迅速化の施策がつくれない。そうすると、個々の裁判官、個々の裁判所の全体の審理状況をつかまなければ施策に反映できないということになるんですね。そういうことになると思うんです。
 そこで、全体を聞きますが、どういう調査の仕方をするか、それはこの法律に全然書かれていないんですが、最高裁が自主的に決められるという性格のものなんですか。それは最高裁規則で決めるんですか、それとも法務省がこの裁判の迅速化に関する法律案で政令みたいのをつくるんでしょうか。それとも、もう一切そういうことはつくらずに、この条文だけで、後は運用は最高裁に任せる、そういうシステムなんでしょうか。非常に大事なところなので、お聞きをしておきます。
山崎政府参考人 この八条の条文をごらんいただけばおわかりかと思いますが、これに関して例えば政令で細かいことを定めるとか、それから最高裁の規則で定めるという場合には法文にうたうことになろうかと思いますけれども、ここではうたっておりません。したがいまして、運用上お願いするということで考えております。
木島委員 そうしますと、今私が聞いただけでも、本当にこの八条に記載された調査を本格的にやろうとしたら、ある面では、すさまじいばかりの個別裁判に関する立ち入った調査をしなければできるものではありません。刑事事件について、調書が否認された。そして、それを調書にかわる証人として採用したか、するしない、その他その他その他。民事もそうです。鑑定人を採用したかしないか、現場検証をしたかしないか、それらも全部調査の対象になっていかざるを得ない。
 そうすると、まさに、個別の裁判所の訴訟指揮のあり方、証拠採用のあり方そのものが必然的に調査の対象にならざるを得ない、迅速化のためだといったらならざるを得ない、そして、それを評価せざるを得ないと私は思うんです。そんな鑑定採用は必要なかったじゃないか、審理計画、つくるべきだったのに、つくらなかったのはけしからぬ、そういう評価をせざるを得ない。
 結局は、生きた事件もやるというのでしょう。現に係争中の、裁判中の事件も調査の対象だと、さっき答弁しましたでしょう。そうすると、もうそのことそのものが、裁判そのものに対する介入とは言いませんが、調査、批判の対象になりはしませんか。法務大臣、こんなことを最高裁事務当局にやらせていいんでしょうか。
山崎政府参考人 お言葉を返すようでございますが、具体的な事件の調査に入るということがどうしても必要になるわけでございます。したがいまして、そういうものについて裁判所以外のところにお任せをするというのは極めて問題があるということでございます。
 こういうシステムでやっていかざるを得ないということと、もう一つは、先ほど介入とおっしゃいましたけれども、これはただ調査をするだけでございまして……(木島委員「介入とは言わない」と呼ぶ)介入じゃございませんか。調査をするということでございまして、それ以上、最高裁の方から個別の事件について、ああしろ、こうしろと言うことは一切ないというシステムでございますので、そこのところはきちっと御理解を賜りたいということでございます。
木島委員 しかし、この法案は、当然の前提として、裁判所の迅速化に対する責務が規定されておるわけです。それから、「当事者、代理人、弁護人その他の裁判所における手続において手続上の行為を行う者」。これはもちろん検察官であり、弁護人であり、被告人であり、原告、被告であり、その他その他、裁判手続によって関与する者の責務も書き込まれているわけで、「誠実にこれを行使しなければならない。」というのが第七条にあるわけなんです。
 そういうことを全部調査して、これは長過ぎる裁判だ、これはよう短く頑張ったという評価をして、どこに問題があったかということを結論づけて、それを分析というんですが、その結果を国の施策の策定、実施に活用しなきゃいかぬというわけですね。そうすると、私は、このシステムそのものが人事権を持っている最高裁事務当局によって行われたら、今答弁は介入ではないと言いましたが、そういう調査をすること自身が裁判所の独立、裁判官の独立に対する大変な介入になるんじゃないでしょうか。
 昔、浦和充子事件というのがありまして、これは三権分立の関係でありますが、刑事裁判が適切だったかどうかを調査したこと自体が当然論評になるわけでして、それは国会がやったから問題になったわけですが、私は、人事権を持っている最高裁がそれをやったら、もう個々の現場の裁判官は萎縮するに決まっていると思うんです。裁判官は上を見ざるを得ないと思うんです。人事権にはね返ってくるわけですから、配置転換にはね返ってくるわけですから、大都会でやりたいと思っていた裁判官が小さな田舎の裁判所に配置転換されてしまうおそれもあるわけですからね。そういうおそれを排除できる制度的担保が、この法律にはありますか。
山崎政府参考人 少し前提が違うのではないかと思うんですが、それは個々の事件でいろいろバラエティーがあろうかと私は思いますけれども、検証をして、最終的には、こういう検証を通じて、今の手続ではこれ以上はやっていけない、短縮も無理だ、新しい手続をどこかで創設しなければならないとか、そういうような施策を分析して浮かび上がらせて、必要なものは改正を加えていく、改正だけでは足りないものについては、人的、物的な充実を図って、裁判を理想的なものに近づけていこうということでございます。
 そういう意味では将来の施策につなげるということでございまして、個々の事件について、それが一々どうであった、こうであったというよりも、何が足りないか、どういうところに問題があるか、そういう制度面に結びつける役割を果たすものでございますので、御理解を賜りたいと思います。
木島委員 いや、だから、そういうふうに運用されるのか、あるいは、調査分析を強めていったら、どうもこの裁判官は証人調べが多過ぎる、やたらと鑑定し過ぎる、現場検証をやり過ぎる、だから時間がかかっているんだ、いかがなものか、そういう人事評定につながらないという、つなげないという制度的保障がありますかという質問ですよ。質問に答えていないんです。
山崎政府参考人 裁判の独立に影響を与えてはならないということは、これはもう当然の前提、あるいは当然のこと、憲法上も当然でございます。そういう点では、憲法上でもきちっとした担保はあるということで、法律上もあろうかと思います。
 ですから、それを守るか守らないかということでございますが、守らなかったら司法権全体の信用失墜になる話でございます。ですから、ここに具体的に書いていなくても、別の法律できちっとそこはうたわれておりますし、それを守らないことは司法の否定につながるということで、そこは当然きちっと守っていただけるということで、この法案を考えているわけでございます。
木島委員 私がなぜこんなにしつこく制度的保障、制度的担保があるかということを問うているのは、こういう法律がない現在でも、事実上最高裁事務総局によって個々の裁判官に対する評価が行われている。この裁判官は丁寧過ぎるというようなことで、それで審理が長引いている、そういう事実上の評定がなされ、それが人事に結びついて絶対いないという確信がないからであります、私は。実際逆じゃないかと見ているからであります。
 それが、こんな法律ができて、合法的に最高裁が調査権を与えられるわけですね。徹底して調査をやればやるほど迅速化に役に立つわけですから、それが人事にはね返らないはずがない。そうなったときに、恐るべき、これは最高裁事務総局による、事務当局による個別裁判官に対する、個別裁判に対する影響になってしまうのではないか、その疑念が今の答弁ではぬぐえないということだけ私は指摘して、次の質問に移ります。
 迅速化法案の第七条、当事者の責務でございます。これまで山崎さんは、法的効力はないという趣旨の答弁を繰り返しております。それは違うんじゃないですか。訴訟手続上の権利は、誠実にこれを行使しなければならぬという責務ですよね。既にもう論議がされておりますが、この条文がない現行法でも、民訴法二条は民事裁判について、刑事訴訟規則第一条二項は刑事裁判手続において、訴訟当事者の手続上の諸権利は、信義誠実に行使しなければならないという責務の一般的な規定があるんですね。
 この規定がどういうふうに作用しているかといいますと、既にもうたくさんの裁判が集積されておりますが、証拠申請をしても、この民訴法二条違反、違反といいますか、民訴法二条によって、あるいは刑訴規則一条二項によって証拠申請が却下される、そういう形であらわれているんですよ。そういう判例はたくさんあるんです。
 そういう現状の上に今度この迅速化法七条が持ち込まれて、当事者の責務として、やはり二年以内に事件を終わらす目標を与えられるわけでしょう、当事者も。そうなりますと、やはり手続法上の信義誠実の義務としてこれは具体的な裁判に影響を与える、そういう意味で法的効果はあるんじゃないですか。法的効果がないという答弁、撤回してもらいたいんです。
山崎政府参考人 前にお答えした点についてもう一度繰り返させていただきますが、私、考えていることは、例えば審理として、この審理として必要な手続が絶対あるということで、これを二年を超えるということですね、こうなっても別に何もない、訴訟法上の効果はないということを申し上げているわけでございまして、これが権利乱用、あるいは信義誠実の原則に反するやり方をしたという場合、この点について何もないかということを申し上げているつもりではございませんで、それは、間接的にこの問題が訴訟手続上の問題に反映されること、これは現在の民事訴訟法の判例でもあるわけでございますので、乱用にわたるものについてはチェックを受けるという可能性は当然あるというふうに考えております。
木島委員 お認めになりましたが、だから、こういう条項を新たに入れることによって、今の民訴法二条や刑訴規則一条二項は一般規定ですよ、今度は具体的な、二年以内に終わらさなきゃいかぬぞという責務が入り込んでくるわけですから、よりこの規定は当事者の証拠申請に関して影響を与える、裁判所がそれを採用するか却下するかに大きな影響を与える条文になるのではないかということを私は大変危惧しているということだけ述べておきたいと思うんです。
 次に、民事訴訟法改正法案についてお聞きをいたします。百四十七条の三、審理計画についてであります。先ほど同僚委員からの質問に民事局長が答えて、個々の事件の特性に応じて、この審理計画をつくるべき事件かそうでないかは決まるとおっしゃられました。
 そこでお聞きをいたしますが、行政事件訴訟とか労働訴訟とか税務訴訟、医療過誤訴訟は恐らくそういう事件にはなるであろうという答弁はありましたが、この法律が成立したと仮定して、その後、民訴規則とかその他によって、計画審理すべき訴訟の類型化など、指針はつくるんでしょうか。
    〔園田委員長代理退席、委員長着席〕
房村政府参考人 直接的に規則を制定するのは裁判所でございますが、先ほども申し上げましたように、審理すべき事項が多数であり、または錯綜しているなど事件が複雑であることその他の事情により、適正かつ迅速な審理を行うために必要があるかどうかというのは非常に事件の個別的な特性に左右されるところが大きいと思いますので、なかなかそういった形での基準を定めるのは難しいのではないか、こう思っております。
木島委員 では、確認しますが、そういう類型化のための諸規則は最高裁はつくるべきではない、個々の受訴裁判所が決めるべき問題であるとはっきり答弁していただけますか。
房村政府参考人 先ほど申し上げましたように、規則を制定するかどうかは最高裁判所において判断をされることでありますし、条文の考え方から、私が申し上げたのは、非常に個々の事件の特性に左右される性質が多いので、一般的な基準を定めようと思ってもなかなか難しいのではないかということを申し上げているわけでございます。
木島委員 最高裁に規則をつくることがまだ認容されているとなると、なかなか危ないんじゃないかと。
 それでは、今度は百四十七条の三の条文について聞きますが、裁判所は審理計画を定めなければならないという条文なんですね。義務規定になっているんです。
 そこでお聞きしますが、その前提として、当事者双方と協議し、その結果を踏まえて審理の計画を定めなければならないという義務規定になっています。そこで聞きます。当事者一方が、そういう審理計画をつくることには反対だという意見を表明したときには、この義務は解除されるんでしょうか。
房村政府参考人 この条文にありますとおり、双方と協議をして、その結果を踏まえて審理の計画を定めなければならないとしておりますので、その協議の結果、適正かつ迅速な審理を行うために必要があると裁判所が認める場合には、一方が反対をしていても、審理の計画を定めるということになります。
木島委員 そうすると、なかなか厳しい条文になりますね。
 裁判所の判断で審理計画がどんどんとつくられていく、そして、争点、証拠の整理を行う期間、証人、当事者尋問を行う期間、結審の予定時期、これなどがぴしゃぴしゃと決められていく。そしてその中では、特定の事項についての攻撃防御の方法を提出するべき期間も、これはもう当事者の意見は聞くけれども、その意見が理がないと裁判所が判断すれば、反対をしていてでも特定の事項について証拠提出の期間、攻撃防御方法を提出するべき期間が定められるということになっていくわけです。
 そうしますと、この条文が、百五十七条の二、審理計画が定められている場合の攻撃防御方法の却下の条文と連結をしてまいりますと、却下されてしまうんですね。そういうことになるおそれを私は感じるんですが、それを歯どめをかけるような条文はありますか。
房村政府参考人 歯どめといいますか、基本的に、この審理の計画を定めますのは、事件を適正かつ迅速に進行させるということでございますので、一般的に言えば、当事者の協力を得ながら進めるという方向で協議がされるわけでございます。
 ただ、ぎりぎりの場合、どうしても同意はしてもらえないけれども計画を立てて進行をする必要があると裁判所が判断すれば、それはそういう場合に、ぎりぎりのところ、反対をしていてもできるということを法律上は書いてございます。
 ただ、現実に訴訟を円滑に進行させようと思えば、それは当事者と十分な協議をして、その同意を得ながらやるというのが通常の運用になるだろうということは、裁判実務に携わっている者であれば当然そう思うわけでございます。
 それから、却下につきましても、当然、その当事者との協議をした上で、特定の事項についての攻撃または防御の方法を提出するべき期間を定めて、しかもその期間を守れなかったことについて相当の理由があるということを当事者が疎明をすれば、これは却下できないわけでありますので、この点は当然上訴審での審査の対象にもなるわけでございますし、そういう意味で、条文上もそれなりの配慮はしてございます。
木島委員 私が一番心配なのは、現状を見ますと、民事事件で非常に時間がかかっているのはやはり難しい事件です。再々ここで質疑者から提起されているとおりです。行政事件とか公害事件とか医療事件とか、ほとんど原告側には証拠がない事件ですよ。被告が国、地方自治体、大企業、たくさんの証拠は被告が持っている。しかし、なかなか証拠が出てこない。現行民事訴訟法の証拠法ではなかなか証拠がとれない。それで苦労している、それで時間がかかっている。
 刑事事件でも否認事件でしょう。自白調書はつくられた、いろいろの証人の警察官調書がつくられた。それは否認したい、そして真実を明らかにしたい。しかし、なかなかそれがうまくいかない。そういう事件が時間かかっているわけですね。
 そういう事件、これは民訴法ですから、刑事事件は別にいたしましても、そういう性質の事件が長期化しているというときに、裁判所の都合で計画審理になり、特定の事項について攻撃防御方法の提出すべき期間が定められ、そして、時機におくれたといって証拠申請が却下されてしまうと、結局、力のない者が真実を引き出すことができないという裁判になるんじゃないか、そういうふうにこの仕組みが使われるんじゃないかと私は危惧しているわけですね。そうならぬという制度的保障が見つからぬので、今聞いているわけですが、次に移ります。
 専門委員の制度と鑑定人の制度なんですが、ちょっともう時間がありませんから、先に事実だけ確認しておきますが、今度のこの法改正によって、鑑定人に関する条文ですが、二百十六条が変えられましたね。現行は鑑定人に対しても証人尋問の規定が準用されて、鑑定書を出した鑑定人を法廷で尋問できるわけです。原告なり被告なり裁判長も尋問できるわけです。
 しかし、今度の民訴法改正によりますと、鑑定人に対する質問ができるのは、鑑定人が口頭で法廷で陳述したときにのみ当事者が質問できるという条文になっているんですね。鑑定人が、普通、書面ですよ、鑑定書というのを出したときには、今度の民訴法体系では、改正法案では、鑑定に対する直接尋問ができない。もっと言うと、弾劾できない、直接弾劾できないような構造になっているんです。
 そこで、一点だけお聞きしますが、今度のこの民訴法の改正で、鑑定人に対する証人申請はできなくなってしまうんですか、それとも、鑑定人に対する証人申請は法律上は許されるということ、現行法どおりなんですか。
房村政府参考人 今回の法案の二百十五条の二で、「鑑定人に口頭で意見を述べさせる場合には、鑑定人が意見の陳述をした後に、鑑定人に対し質問をすることができる。」こう書いてありますが、これが想定しておりますのは、一般的に、鑑定人は鑑定書を出します。鑑定書だけでは不十分なので、口頭で説明をしてもらう必要がある。
 そのときに、従来のやり方では、鑑定人に対して証人尋問と同じ形で、当事者が先に質問をして、しかも非常に攻撃的な質問をすることが多い。そのようなことから、鑑定人が十分自分の意見を法廷において述べられない、こういう指摘があったものですから、鑑定書を出したその鑑定を口頭で補充してもらうときに、まずはその鑑定人に口頭で補充する部分を意見を言ってもらって、その後に質問をしよう、そしてその質問の順番も、通常の証人尋問とは異なって、裁判長が先に行う、そういう形をとる。
 ですから、証人尋問の規定を準用しなくなったのは、鑑定人に対するいわば反対尋問といいますか、弾劾の機会を奪うという趣旨ではなくて、形を鑑定人質問で行っていただく。その内容的に、鑑定人の口頭の意見あるいは文書による鑑定意見について疑問点あるいは弾劾すべき点があれば、それは当然この質問の中で行うことができる。その点は、従前、証人尋問の形で行ったものがこの鑑定人質問の形になって順番が変わるというだけでございますので、そこは法律的な反対尋問の機会を奪うというような性質のものではございません。
木島委員 いや、ですから、この二百十五条の二は、「裁判所は、鑑定人に口頭で意見を述べさせる場合には、鑑定人が意見の陳述をした後に、鑑定人に対し質問をすることができる。」ということでしょう。鑑定書が立派なものが出てきた、もう意見を聞く必要がないと裁判所が判断してしまったら、鑑定人は意見を述べる機会がないわけですね。そうしたら、原告、被告は弾劾する機会を奪われるということになりはしませんかという質問なんです。
房村政府参考人 これは鑑定人におよそ聞く必要がなければ、それは改めて口頭で意見を述べさせる必要もないわけですが、文書だけで済む場合というのは、それは実際の実務としてはほとんどない、裁判所としても直接聞きたいと思うことが通常でありますし、当事者双方からそういう申し出があれば、それは当然、裁判所はこの鑑定人質問の形で鑑定人に質問するということになるわけでございます。
木島委員 それなら、この法律に、当事者から鑑定人に質問したいという申し出があったら鑑定質問の場をつくると、一項目書いてくれればいいんですよ。それは書いていないんですよ、書いてありますか。
 もう時間ですからこれで質問を終わりますが、それがなくて、裁判所が、もう鑑定書が出たから意見を聞かなくてもいいと言ったときに、当事者の直接鑑定人に質問する場が奪われるようなことだったら、これは大問題ということだけきょうは指摘だけしておいて、終わりますから。
房村政府参考人 鑑定人に聞く申し立てですが、二百十五条の二項で、「申立てにより又は職権で、鑑定人に更に意見を述べさせることができる。」ということがありますので、先ほど申し上げたように、申し立てがあれば、通常はその必要性を認めればやる。ただ、申し立てがあっても必要性がなければやらないのは、これは証人尋問でも同じことですから。
木島委員 きょうのところは終わります。
山本委員長 次に、保坂展人君。
保坂(展)委員 社民党の保坂展人です。
 基本的な問題なので、まず最高裁に伺いたいと思います。
 今回の迅速化法案の審議に当たって、いろいろ本委員会で議論されておりますが、手続を迅速化するについて、当事者の正当な権利利益が害されないよう、当事者の人権に十分配慮し、当事者の防御権を損なうことがないように十分な配慮をしてほしいという声が上がっていますけれども、最高裁としてはどういう見解ですか。
園尾最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
 その点につきましては、まず審理の充実が肝要であるということを考えております。迅速というのは、充実した審理の上に迅速にする目標を掲げていくということでございますので、迅速な審理のまずその前提として、充実した審理があるというように考えております。
保坂(展)委員 いや、その際に、その充実の中に、当事者の人権とか、またその権益を不当に損なうことがないようにしっかりやってくれという声が上がっているんですが、それについてはどうですかと聞いているんです。
園尾最高裁判所長官代理者 この点につきましても、当事者の権利を害さない、あるいは当事者の権利を守っていくということが裁判所の責務でございますので、この点については、当事者の権利について配慮をした運営をしていくということを考えております。
保坂(展)委員 それでは伺いますが、本法案も内閣司法制度改革本部から提出をされて審議をされているわけですが、最高裁判所としては、司法の世界で、国会における法案審議、経過論点など質疑そのもの、これについてどのように受けとめているのか。また、附帯決議が付されるような場合がありますけれども、その場合はどうなのか、お答えください。
園尾最高裁判所長官代理者 国会での審議それから決議というものは、裁判所がその後法律を適用する際に大変貴重な資料であるというように考えておりますので、これが裁判官に参照されるというような形で検討をしていきたいというように思っております。
保坂(展)委員 それでは、国会での審議もまた附帯決議も同様に司法の現場でも生かされているということでしたけれども、今私が冒頭にお聞きしたような、迅速化に当たってはまず充実とおっしゃいました、その際には当事者の人権や権益を害さないようにと。こういうやりとりの質問と答弁というのは、何か訴訟指揮をゆがめたり悪影響を与えたりするようなことはありますか、どうですか。
園尾最高裁判所長官代理者 もとより、それは法律の目指すところということでございますから、これは、裁判所がそのようなことを考えて運営していくということは、むしろ訴訟運営上必ずやるべきことというように考えております。
保坂(展)委員 その答弁ですと、附帯決議にこういう一般の原則が盛られても、何ら困惑するところではありませんね。
園尾最高裁判所長官代理者 附帯決議に関しましては、まだ、裁判所としまして、その点についての内容ということに関しまして意見を述べる立場にはないというように考えておりますので、その点についてはよろしく御理解をお願いしたいと思います。
保坂(展)委員 そういうことじゃなくて、最初に私聞いたんですよ、迅速化に当たって、当事者の人権なり権益を害することがないようにしっかりやってほしいという声が国会審議の中で上がっている、それで答弁はいただいた、同様のことが附帯決議に盛り込まれた場合に、訴訟指揮をゆがめたりあるいは何か悪影響をもたらしたりということが、ないだろうと思うんですが、そこはどうですかという話です。
園尾最高裁判所長官代理者 先ほど申しました原則ということであれば当然のことでございますが、なお、附帯決議の内容がどうかという点に関してお聞き及びでございますので、その点につきましては、むしろ後に法律が成立し、あるいは附帯決議が成立したとした場合にその運営に当たる裁判所といたしましては、その点については論述を差し控えたいという趣旨でございます。
保坂(展)委員 委員長、ちょっとやりとりしていてもわかりませんので、ぜひこれは理事会で協議していただいて、国会の場で意見を司法に対して述べることが訴訟指揮にかかわっていろいろな害悪をもたらすなんということがもしあるのであれば、全部法務大臣が答えなきゃいけなくなるんですね、この審議も、最高裁によく言っておきますと。ですから、しっかりちょっと議論をしていただきたいと要望します。
山本委員長 その点につきましては、理事会で協議させていただきます。
保坂(展)委員 それでは、専門委員についてお聞きをしていきたいと思いますけれども、専門的知識、知見を有する事件のジャンル、これは民事局長の方に伺いましょうか、なるべく多目に挙げてほしいんですけれども、どういうジャンルを想定されていますか。
房村政府参考人 これはいろいろあるだろうと思います。例えば、典型例としては、医療過誤事件におけるような、医療に関する知識というものもございますが、これも医療といいましてもそれぞれ科が分かれておりますので、細かく分け出せば、それぞれの専門ごとにということになりましょうし、建築紛争等についてもございますでしょうし、特許等のことになれば先端部分の科学に関する各分野ということになりましょうし、そのほか、事件の種類によっては、労働関係の事件でもそういう専門的な知識が必要とされるような事件もあるかもしれません。
 そういう意味でさまざまなものがございますので、そういうある程度専門家がいて、訴訟が比較的起こりやすい、その専門家の知識を活用する必要があると思われるような分野というのは、理念的には常に専門委員選定の対象にはなり得るのではないかと思っております。
保坂(展)委員 それで、この法案の中に、九十二条の二のところに、事前の場合でも、「当事者の意見を聴いて、」という記述がありますよね。それから、証拠調べをするに当たっても、専門委員が手続に関与するについては、「当事者の意見を聴いて、」こうありますけれども、その「当事者の意見を聴いて、」というのはどの程度聞くんでしょうかね。これは、やはりこの専門委員というのは、もう到底御免でございます、だめですということであれば、無理に押しつけるということはないんですか。
房村政府参考人 これは運用の問題でございますので、法律上はあくまで「意見を聴いて、」で、同意が要件とはされておりませんが、あくまで訴訟を円滑に進行させる、そういうことのために専門委員を選ぶわけでございますので、当事者の対応によってかえって、専門委員を選んでも、およそスムーズに進行しないというのでは困るわけですから、そこら辺は、裁判所がしかるべく当事者の意見を聞いた上で適切な判断をして運用していただける、こう思っております。
保坂(展)委員 この専門委員について、先ほどなるべく広くというふうに言ったのは、例えば医療はこの部分この部分という意味ではなくて、多分社会的にまだ十分判明していない事実あるいは被害、公害の問題なんかでもそうですよね。例えばきょうのニュースで、午前中も言いましたけれども、新校舎に子供たちが入ったらどうも調子が悪い、それで旧校舎の方にランドセルをしょった子供たちが移動していく、これは今、シックスクールなんてニュースに出まして、なるほど、シックハウス、シックスクール、そうなのかとわかりますよ。しかし、五、六年前はまだそんな認識はそう広がっていなかったように思いますね。
 これは法律にもなっているので大分共有をされてきたと思うんですけれども、まだ十分に社会的に共有されていないけれども一部の被害者にとっては非常に深刻、そしてまた、少数の専門家が、そういった問題について、極めてこれは深刻という意見を表明しているけれども、他方、こういった訴訟の場合、例えばシックハウスなりシックスクールでもいいんですけれども、建設の専門家ということになると、そういった問題、基本的には、業界全体としてなかなか認知をしていない。今の時代は違いますけれども、まだ最初に出だしのころは、そういう問題、その訴えている方の体質の問題じゃないかとか、言ってみれば、そういう認識が業界という側では弱い場合がございますよね。
 そういう専門委員のジャンルなんですけれども、なるべく全体を見渡して、もう既に定立をした、先ほど言われたような、金融だとか労働だとか医療だとか、そういう分野以外にも広げていくべきではないかと思うんですが、いかがですか。
房村政府参考人 御指摘のような、新しいタイプの問題、これについては、そもそも、まず専門家がいるかどうか、また、どういう専門家が必要かということを裁判所が適切に判断できるかという問題はございますが、ある意味では、そういう新たに起きた問題ほど、当事者の主張の整理等について専門家の知識をかりないと、裁判所としても適切に対応できないという問題ではありますので、それは積極的に、そういう新しい問題についても専門委員にふさわしい人を探す努力は必要だろうと思っています。
保坂(展)委員 それでは最高裁の方に伺いますけれども、例えば医療、典型的に議論されていると思いますが、医療で、しかも大都会じゃない地域で医療の専門委員を選ぶ場合に、係争当事者の、訴えている側の医師と顔見知りであったとか、先輩、後輩関係であったりとか、いろいろな縁でつながれているということがありますが、こういったことを配慮して、どのように公平な人材をつくり上げていくのかということについてはどう考えていますか。
園尾最高裁判所長官代理者 それぞれの専門分野に関して特色がございますので、医療の分野あるいは知的財産権の分野、それぞれの分野に関して適した検討をこれから鋭意進めていくという考えでございます。
 特に、医療に関しましていいますと、御指摘のように、他の専門訴訟の分野とは違った特殊性がございます。特に、医療機関が被告になるという場合に、専門委員というのは常に医師であるということで、その被告と近い関係にあるのではないかということが常に問題になる特別な分野でございます。他の分野には、このように、一方の当事者に定型的に近しい関係にあるというような議論がされる分野はございません。
 したがいまして、この分野に関しては、特に公正さに気をつけながら専門委員を選んでいかなければいけませんし、現実に、専門委員に関与していただく場合に、ある一方の当事者と大変近しいというような問題がありますと、その手続がその後うまく進みませんので、今、裁判所といたしましては、幅広く、広域なところから専門委員の候補者を選べないものだろうかとか、さまざまな、ただいまのような、御指摘のような公正さということに関して検討を重ねておるところでございます。
保坂(展)委員 もう一度裁判所に聞きますけれども、さすがに先ほどのシックハウスはもう既にこういう問題があるということをはっきり認識されていると思いますけれども、まだあるかどうかについて争いがある、例えば、今電磁波を逃れて白い装束で動いている方たちがいますが、確かに、欧米から来たNGOの方で、あるんですね、携帯電話、いろいろはかってみると、すごいこれは電磁波浴びますよ、健康に障害が出てきますと。訴訟もアメリカなんかで起こっているでしょう。それから、高圧電線下における発がん率とか、あるいは精神疾患の発生率が高いんじゃないかとか、これは例えば電磁波とかですね。
 水質の汚染も最近単純じゃなくなってきた。化学物質が多様になって、これまでのはかり方じゃ検出されないようなものが、ごく微量のものが、環境ホルモン等いろいろ言われています。それから、クローン牛なんかが認可されましたよね。そうすると、その肉が本当に人体に健康被害をもたらさないのかどうかとか、あるいは遺伝子組み換え食品なども流通していますけれども、そういうもの、挙げていくと、結構、まだ議論している最中のものというのが多いと思うんですよ。
 最高裁判所の裁判官は忙しいんですね。一人平均百七十件ですか、抱えて、新聞ぐらいはお読みになる、テレビぐらいは見るかもしれないけれども、とてもじゃないけれども、全領域の社会現象をリサーチして歩くことはできないだろう。
 そうすると、最高裁判所は、今現代社会に起きている現代型訴訟の類型になるようなことをあらかじめリサーチする機能というのはあるんですか。
園尾最高裁判所長官代理者 大変分野が細かく分かれてまいりますので、それぞれについての検討というのは一つ一つ進めなければいけないという難しいところがございます。
 例えば、知的財産権の分野、特許訴訟ということに限りましても、新しい、最先端の技術あるいはノウハウというものが出てきてまいりまして、そのような最先端部分について裁判所としてさまざまな方々からの情報提供をいただいて、鋭意、専門委員に選任する、その給源について検討するというようなことをやっておりますが、そのような一つ一つの作業を進めていかなければいけないというように承知をしておりますので、今後の課題として、そのような一つ一つの検討を進めていきたいというように思っております。
保坂(展)委員 法務省の方、どう考えていますか。
 要するに裁判所が全部やることは難しいんじゃないかと僕は思うんですね、実際のところ。ただ、そうであれば、こういうジャンルについて司法は備えてほしいという、あらかじめ予見できる、あるいは今日本では問題になっていないけれども海外で非常に問題になっている問題などについて、いわばその準備をするというか、そういう専門家とのパイプを司法がつなぐということを、この専門委員の創設に当たって、どの程度意識したのかというところはどうですか。
房村政府参考人 専門委員の任用は最高裁判所の方において行っていただきますので、どういう形で行うのかということですが、私どもとしては、やはり裁判所においてしかるべき準備をして、ある程度幅広に専門家を確保しておく、また新しい、そういう事態が生ずれば、それに対応して準備をするということが期待されているだろうと思いますし、また、そういう方向で、現に準備をしているのではないかと思っています。
保坂(展)委員 もう一度、では法務省に聞きますけれども、九十二条の三で、音声による送受信により、まあ電話でやりとりをすることができる、こういうふうに書かれていますよね。これ、テレビ電話などはどうなんですかと聞いたら、テレビ電話も音声があるからオーケーだということなんですが。
 ちょっと考えてみますと、先ほど裁判所側から答弁のあった、例えば知的財産権の先端部分、これはもう専門家といっても日本に二人しかいないとか、いろいろな細分化された分野の中で、どうしてもこの人という、そういう方は大体いつでもどうぞというわけにいかない。非常に忙しい。来週は、この一カ月、ニューヨークに行っていますというときに、では国際電話でやりとりすることもありますか。
房村政府参考人 遠隔地という、特に限定はしておりませんので、技術的に可能であれば、その専門委員がたまたま海外にいる場合においても、こういった装置を使って手続を進めるということは可能だと考えております。
保坂(展)委員 今度百五十七条の二の関係なんですが、これはこの当事者が「期間内に当該攻撃又は防御の方法を提出することができなかったことについて相当の理由があることを疎明したときは、この限りでない。」これは、「相当の理由」というのはどういうことなのか。例えば、妻が倒れて、看病と家事、仕事でどうしようもなかったというときはどうなのかとか、あるいは精神的に大変うつ状態が続いてすべてに気力が起きなくて現在加療中である、こういう場合はどうなのか。いかがですか。
房村政府参考人 ここで期間を守れなかったことについて相当の理由があると言うのは、社会的に見て守れなかったことについてもっともだという了解が得られるようなことでございますので、ただいま御指摘の、まさにうつ状態に陥って現に加療中である、そういう状態で準備ができなかった、あるいは家族が倒れてその看病のために間に合わなかった、こういうような場合には当然相当な理由があるという場合に当たると思っております。
保坂(展)委員 これは法務省の方にもう一回伺いますけれども、今度、百四十七の三の関係で先ほどから議論になっている、要するに、争いが多岐にわたってまた錯綜している事件について審理計画を立てるということなんですけれども、実は、先ほど列挙した、電磁波もそうですし、いろいろな新しいジャンルの係争というのは、そもそも訴えている側は大変多岐にわたって複雑だと主張し、訴えられている側は、例えば行政だったとしましょう、それは従前どおりに事を行っているので全然複雑なことではないと。複雑なのか単純なのかについてやはり争いがあるケースがあると思うんですよ。これはどういう基準で決めていくのでしょうか。
房村政府参考人 ここは、裁判所がやはり両当事者からその事情を聞き、あるいはその主張等を見て適切に審理を進めていくためには、例えば主張の整理にある程度時間をかけて行う必要がある、あるいは立証の準備も立証計画を当事者にきちんと立ててもらう必要がある、こういう判断をするかどうかということにかかっているわけでございます。
 一般的には、そういう複雑な事件になれば両当事者の認識が一致するのが通常だろうと思いますが、中には、一方は非常に複雑だと思い、片方は極めて単純だということもあろうかと思います。そういう場合は、それぞれの意見を聞いて裁判所として適切な審理を行うために、当事者が非常に複雑だと言っているけれども実際の問題点はごく簡単だ、こう思えば無理に審理計画を立てる必要はありませんし、逆に、片方が簡単だと言ってもやはりきちんと整理するには相当時間がかかる、実は相当隠された争点があるのではないか、こう思えば審理の計画を立てる複雑な事件として扱う。
 やはり、最終的には裁判所がそれを判断するということになろうかと思います。
保坂(展)委員 山崎事務局長にちょっと、専門委員の話をさっきずっとしましたので、総括的に伺いたいのですけれども、開かれた司法、国民に開かれた司法、しかも現代的な要素で非常にドラスチックに動いている現代社会に対応する司法というのが改革の論議の柱になったかと思うんですが、それらの問題を敏感にキャッチするのは、やはり個人だったり、小さなグループだったり、少数の学者だったり、ジャーナリストだったりするわけですね。そういう人たちがまさに司法システムの場に、こういうジャンルについて準備をしてくださいよというような仕組みをつくる。
 例えば、専門委員という具体的な制度が出ていますけれども、その前提としての議論の中に、司法の外からまさにこういう問題が大事ですよということをインプットしていけるような仕組みは議論されなかったんですか。どういう問題意識ですか。
山崎政府参考人 大変残念ながら、そういう議論はございませんでした。
保坂(展)委員 大臣、どのように思われますか、副本部長として。お願いします。
森山国務大臣 おっしゃるように、社会は非常に変化しつつありまして、いろいろ今まで全くだれも知らなかったようなものが大きな問題に急になるということがございます。ですから、常にそういうものを把握して、適当な専門委員をお願いできるように準備しておくということが一番理想的だと思いますが、なかなか現実にはそこまで及ばないというところは大変残念でございますが、せいぜいこれからも努力いたしまして、そういう問題が起こらないようにしたいというふうに思います。
保坂(展)委員 それでは、人訴法の方に行きたいと思います。
 二条の「定義」のところでちょっと伺いたいと思いますけれども、人事訴訟の定義について、「次に掲げる訴えその他の身分関係の形成又は存否の確認を目的とする訴え」とあるんですが、この「その他」というのは具体的に何を指していますか。
房村政府参考人 ここで言っている「その他」の典型例は、親子関係の存否確認の訴訟でございます。
 これは、従来解釈上認められていたわけでございますが、今回条文にそれを「その他の身分関係」ということで明示して、人事訴訟として扱うということにしたものでございます。
保坂(展)委員 それでは、参与員の問題に行こうと思いますけれども……
房村政府参考人 ちょっと訂正いたします。
 「その他」は、親子というより姻族関係でございますね、これの確認でございます。
保坂(展)委員 参与員の方に移りたいと思いますけれども、これは現在でも全国六千人、家事審判法三条一項によって参与員になるべき人たちがいますと裁判所から伺っております。
 その人がどのように選ばれるかをちょっと裁判所に聞きたいんですけれども、人望があって、社会人としての健全な良識がある人ということなんですが、職業の例として弁護士、公認会計士、不動産鑑定士などの専門的な資格がある人や大学教授が挙げられていますね。それから、地域社会に密着していろいろな活動をしてきた人などと書いてあるんですね。
 これは、いろいろな活動をしてきた人の具体例を、どういう方を裁判所が、余り地域に密着して裁判官が動いているようにも思えないので、どういう方にこれをお願いして、選んでもらっているのか。実態はいかがですか。いろいろな活動の中身です。
山崎最高裁判所長官代理者 現在の家庭裁判所における参与員となるべき者の選任につきましては、具体的には、全国の家庭裁判所が各地方公共団体とか弁護士会あるいは医師会、そういうような機関、大学も含みますが、等に幅広く推薦を依頼する、そして、その推薦を依頼された参与員候補者の中から書面で選考し、また面接でどういうような活動をしてこられたかというようなことも把握した上で、家事審判事件は多様でございますので、その多様なことに対応できるように職業や専門的分野、その構成が全体として適正になるように配慮して選任しているところでございます。
保坂(展)委員 平均年齢と性別の割合はどうですか。
山崎最高裁判所長官代理者 参与員の平均年齢については統計がございませんが、年齢別構成については、四十歳以上が一・六%、五十歳以上が一四・〇%、六十歳以上が四五・九%、七十歳以上が三八・五%となっております。これは平成十五年の二月一日現在の統計でございます。
 男女別の状況ですが、男性が、約三千五百人、五八%になります。女性が、約二千五百人、四二%というような割合でございます。
保坂(展)委員 そうすると、大分やはり六十代以上の人が、六十代が四五%、七十代以上が三八%ですから、八割方が六十代以上ということになりますよね。最高年齢はどのくらいなんでしょうか。まあ、それはいいですけれども。
 今、例えば離婚の問題とかでいろいろ相談事が持ち込まれる。そして、家裁で、今回いろいろ、場合によっては地方裁判所から移って、これまでの調停そのものの手続から転換するというようなケースの中に、大変若い人たちの離婚だとか、さまざまなトラブルが多く出てくると思うんですが、余りに年齢が離れている方だと、例えば、今、この国会にも出会い系サイト規制法案なんというのがかかっていますけれども、何だろう、それというところから話をしなきゃいけないということになると、やはり年齢がもう少し、二十代は無理にしても、せめて三十代ぐらいからしっかりバランスをとった方がいいんじゃないかと思いますけれども、どうですか。
山崎最高裁判所長官代理者 委員御指摘のように、年齢構成が上の方に偏っていることは事実でございまして、やはり、事件が多様でございますので、おっしゃるとおり、年齢構成をもう少し幅広く、若年の参与員を選任することも今後努力してまいりたいと考えております。
保坂(展)委員 それと、家庭裁判所の調査官の役割が大変重要になってくると思うんですが、少年事件などでも大変活躍をしていますし、また、その調査官も非常に忙しいというふうに聞いています。
 二つお聞きしたいんです。一つは、家裁の調査が重要になるということにおいて、当事者が手続に関与するというところは十分手当てはされているのかどうかということと、もう一つは、予算面や人員面の増員という必要はないのか。二点、お願いします。
山崎最高裁判所長官代理者 まず、当事者が手続に関与するということですが、当事者ですから、事件処理に当たって、いろいろな意見あるいは要望等を事実の調査あるいは証拠調べ等の中で述べていただくという形での関与が通常でございます。それから、家庭裁判所調査官が現実に当事者の自宅等に赴いて調査をする、その際に意見を聴取するということもございます。
 そして、家庭裁判所調査官が、家裁への人事訴訟の移管に伴って新たに人事訴訟に関与することになりますので、今国会において、それも踏まえて、三十人の増員を家庭事件処理の充実強化ということでお認めいただいたところでございます。
 裁判所といたしましても、家庭裁判所における人事訴訟の審理のあり方、あるいは、家裁調査官の専門性を生かした事務処理のあり方等について検討を引き続き行いつつ、所要の人的、物的体制の整備に努めてまいりたいと考えております。
保坂(展)委員 法務省の方に伺いますけれども、四条とか三十一条で、例えば家庭の中のドメスティックバイオレンスなどの件で、妻が居場所を知られたくないということに配慮をして管轄のことを工夫したというふうに聞いていますが、具体的に。
房村政府参考人 管轄で、ただいま御指摘のドメスティックバイオレンス等に配慮したものとしては、まず第一に、現行法では、第二順位の管轄として、夫婦が最後の共通の住所を有した地の地方裁判所の管轄区域内に夫または妻が住所を有するときにおけるその住所地、こういうのがございます。これを今回廃止しております。
 これは、想定しております例としては、いわゆる家庭内暴力で妻がその家を出た。しかし、その出た家と同じ管轄内の別のところで生活をしている。それで、夫がやはり出てしまって、別の管轄区域のところにいる。こういう場合になりますと、現行法でいいますと、最後の共通住所地で、しかも妻がいますので、その妻の住んでいるところを管轄する地裁が管轄裁判所になります。
 そうなると、妻は、訴訟を起こすときに自分の住所を明らかにして、そこに起こさなければいけない。ところが、そういうことをしますと、相手方に自分の住所を知られてしまう、こういうことがありますので、今回、これを思い切って廃止いたしました。
 そうしますと、共通住所地で、しかも自分がいるところでないわけですから、夫のいるところの今度は家庭裁判所、そこに訴訟を起こせる。そのときには、自分の住所を明らかにしないで、例えば訴訟代理人の事務所を送達場所として届け出る、こういうような形によって、自分の住所を知られないでも訴訟が起こせる、こういうことがございます。
 それから、三十一条に関しましては、やはり子供の扱いをどうするかということが非常に重要でございますので、子供の住所地を配慮して決めるべきであるというようなことをやっておりまして、これもやはり、妻が子供を連れて出てしまっているというようなときに、子供の、一緒にいる自分のところを管轄にしてもらいたい、こういう要望にこたえられるように、こういうことでございます。
保坂(展)委員 それでは、最後になるかもしれませんが、裁判所に伺います。
 三十九条の履行の関係で、命令を出し、そしてまた、これに従わないときには十万以下の過料ということで、現行でも、家事審判等で履行の勧告とか命令、どのくらいの数が出ているのか。また、従わないというのは、ここのところ大体どのぐらいの、過料を科した件数ですね、もしわかったら、強制執行までどの程度至っているのか。人訴法改正によって、その辺の扱いが何が変わるのか、運用の面でよりスムーズになるのか。それについてお答えください。
山崎最高裁判所長官代理者 現在の履行勧告の実情ですが、平成十四年には一万四千九百九十六件が履行勧告の件数としてございます。対象となった事件が、婚姻費用、財産分与、子の養育費等の金銭債務の支払い、不動産の明け渡し、動産の引き渡しなど、財産上の給付を対象としたものが合計一万四千百七十九件と、全体の九四・六%を占めております。その履行状況ですが、全部履行されたものは三千八百五十七件で、二五・七%という数字になっております。
 それから、履行勧告のほかに履行命令というものが委員御指摘のようにございますが、これは数が少なく、平成十四年に履行命令が出された件数は十二件にとどまっております。
 それ以降の過料の件数とか強制執行の件数については、ちょっと把握しておりません。
保坂(展)委員 それで、本法によってその辺の実態は変わるのかどうかというのはどうですか、運用する側として。
山崎最高裁判所長官代理者 これまでの実績から見ますと、大きくは変わらないのではないかと思いますが、ただ、今度、担保・執行法の改正が行われまして、養育費については強制執行が非常に容易になるということがございますので、そちらの方で実現を図るという方向が示されてくるのではないかと思います。
保坂(展)委員 最後に大臣に伺いますけれども、私も前からこれは、日本の男性社会の中で離婚した場合の養育費というのは非常に水準が低いですよね、まず第一。数万円ですというふうにおっしゃるけれども、数万円ではなかなか育てられないですよ。その数万円さえ払わない人が多いんですね。今、数字を示してもらっても、後は知らないよという人が非常に多いわけです。そしてまた、命令まで至っているのは十二件しかない、過料についてはわからない、運用は余り変わらないという、このあたりは、強制執行をどんどんかけろということにいきなり飛ばないんでしょうけれども、どういうふうにお考えですか、感想を求めて終わります。
森山国務大臣 私も、長い間女性の問題を扱ってまいりまして、今御指摘のようなことが非常に大きな問題だというふうに認識しておりました。
 ですから、今回の改正は、そう目立った大幅な改革になるとは思えないのかもしれませんけれども、まず改革のための第一歩として、少しでも女性及び残された子供にとってよい方向に動いていく第一歩となればいいというふうに考えております。
保坂(展)委員 以上で終わります。
山本委員長 次回は、来る九日金曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時散会


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