衆議院

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第15号 平成15年5月20日(火曜日)

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平成十五年五月二十日(火曜日)
    午前十時一分開議
 出席委員
   委員長 山本 有二君
   理事 佐藤 剛男君 理事 塩崎 恭久君
   理事 園田 博之君 理事 吉田 幸弘君
   理事 河村たかし君 理事 山花 郁夫君
   理事 漆原 良夫君 理事 石原健太郎君
      太田 誠一君    小西  理君
      後藤田正純君    左藤  章君
      下村 博文君    中野  清君
      平沢 勝栄君    保利 耕輔君
      星野 行男君    保岡 興治君
      吉川 貴盛君    吉野 正芳君
      鎌田さゆり君    中村 哲治君
      平岡 秀夫君    水島 広子君
      山内  功君    上田  勇君
      山田 正彦君    木島日出夫君
      中林よし子君    保坂 展人君
      山村  健君
    …………………………………
   法務大臣政務官      中野  清君
   参考人
   (弁護士)        成田  清君
   参考人
   (弁護士)        高中 正彦君
   参考人
   (日本司法書士会連合会会
   長)           北野 聖造君
   参考人
   (毎日新聞社論説委員)  三木 賢治君
   法務委員会専門員     横田 猛雄君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月二十日
 辞任         補欠選任
  日野 市朗君     平岡 秀夫君
  不破 哲三君     中林よし子君
同日
 辞任         補欠選任
  平岡 秀夫君     日野 市朗君
  中林よし子君     不破 哲三君
    ―――――――――――――
五月十九日
 国籍選択制度と国籍留保届の廃止に関する請願(楢崎欣弥君紹介)(第二〇三八号)
 同(葉山峻君紹介)(第二〇三九号)
 同(横路孝弘君紹介)(第二一一二号)
 同(大出彰君紹介)(第二一四五号)
 法務局・更生保護官署・入国管理官署及び少年院施設の増員に関する請願(山花郁夫君紹介)(第二一四四号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 司法制度改革のための裁判所法等の一部を改正する法律案(内閣提出第九九号)


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     ――――◇―――――
山本委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、司法制度改革のための裁判所法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本日は、本案審査のため、参考人として、弁護士成田清君、弁護士高中正彦君、日本司法書士連合会会長北野聖造君、毎日新聞社論説委員三木賢治君、以上四名の方々に御出席いただいております。
 この際、参考人各位に委員会を代表いたしまして一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いをいたします。
 次に、議事の順序について申し上げます。
 まず、成田参考人、高中参考人、北野参考人、三木参考人の順に、それぞれ十分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。
 なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得て発言していただくようお願いいたします。
 それでは、成田参考人にお願いいたします。
成田参考人 私は、昨年度、日弁連副会長として、簡裁の事物管轄の引き上げの問題を担当しました。司法アクセス検討会、自民党の司法制度調査会等で日弁連の意見を陳述する機会をいただいたものでございますけれども、本日は、法案として国会の審議に付されるのを目の当たりにしまして、感慨深い思いがございます。
 私が簡裁の事物管轄の引き上げのことに関してまず申し上げたい点は、第一点は、この問題に対する日弁連の基本的な立場でございます。
 本日配付の資料の一、二ページをごらんいただきたいと思います。日弁連が引き上げ額を百万円という意見を申しました理由は、その一ページの一ないし三項と二ページ記載のとおりでございます。
 まず、簡裁設置の理念から見た上限でございます。市民の日常生活に起きる比較的少額の紛争を地裁のような重厚な手続で解決しようとしますと、解決までに時間も労力もかかり過ぎて、泣き寝入りとなってしまいます。そこで、これを簡易な手続で迅速に解決するのが簡裁の特色でございます。民訴法の二百七十条にそのように書いてございます。
 実際に簡裁の法廷を傍聴していただくとすぐにわかることでございますが、地裁とは審理方式は全く異なります。終了までの弁論の回数も平均審理期間も地裁の半分以下、場合によると四分の一以下でございます。私たちは、このような簡裁のすぐれた機能を損なうことのないように、また、それを一段と発展させていくべきだと考えております。
 では、簡易迅速な手続による解決に適した事件というのは幾らなのか。利用者である市民の感覚からしますと、百万円を超えれば、もはや少額軽微な事件ではなくて、多少時間がかかっても重厚な手続で解決を望むのではないでしょうか。
 また、百万円を超えますと、事件の種類も違ってまいります。最高裁判所が調査しました資料においても、百万円を超えると事件の種類や難易度が一段と高くなる、貸し金、立てかえ金などの定型的な事件の割合が減って、売買代金、不動産、損害賠償など難易度の高い事件がふえてくる、貸し金でも担保や保証の関係するものが多くなって、共同被告事件もふえ、複雑化する、そういうことが統計資料で示されております。これは、私たちの実務体験とも一致しております。それゆえに、百万円を超えると簡易迅速な手続による解決は困難になる、そう考えたのでございます。
 次に、審議会意見書に言う経済指標等、ここに、等というのは簡裁と地裁の事件比率が含まれるわけでございますが、その適用について述べます。
 日弁連は、経済指標の動向等からは、昭和五十七年から平成十三年までの消費者物価指数や土地価格指数にスライドさせて、わかりやすい百万円がよいと考えました。また、簡裁と地裁の事件比率が現在六六・五%対三三・五%と、簡裁に大幅にシフトしている現状、これはきょうの資料の四ページの表で明らかでございますけれども、そういったことも考慮されるべきだと考えました。
 そして、貸金業者の取り立て事件あるいはサラクレ事件、そういった簡裁事件が急増している現状、その現状は、平成十三年の簡裁の民事訴訟の新受件数が三十一万件ございますけれども、これは十年前の平成三年度の比でいきますと二・八六倍にふえております。調停については三十六万件で、十年前の五・〇五倍にふえております。これは地裁の民事訴訟が十年間で一・三五倍にしかふえていないということに比較しますと、恐るべき数字だと私は思います。それに加えて、さらに多大な事件を地裁から簡裁にシフトするならば、簡裁の現状改革の試みとされています少額訴訟への取り組みの妨げにすらなりかねないと考えたからであります。
 私は、現時点におきましても、簡裁の事物管轄の引き上げの上限は百万円であるべきだと確信しております。
 第二点は、司法アクセス検討会でのまとめでございます。
 軽易な手続で迅速に紛争を解決するという簡裁の特質を失わせずに、その特色が生かせる形での機能の充実を図るという点におきましては、日弁連の立場と検討会の立場は同一でございまして、経済指標などのとり方により、百二十万円程度までの引き上げを支持するとの意見が多数でありました。
 与党政策責任者会議司法制度改革プロジェクトチームにおいて、それを超える百四十万円とのまとめがなされましたが、私は、なぜ百四十万円なのかの納得のいく根拠が示されていないのではないかと思っております。
 第三点は、今後の課題でございます。
 仮に百四十万円を上限とするこの法案が可決された場合、本来、簡裁での審理に適さない不動産訴訟やその他の複雑な事件が簡裁に訴え提起される事態が想定されます。その回避策を考えておく必要があると思います。
 不動産に関する訴訟につきましては、簡裁の事物管轄の上限を超えない事件であっても、地裁にも競合管轄がありますから、原告において適切に地方裁判所を選択できるように周知することが必要であろうかと思います。また、簡裁と地裁の役割の違いから、複雑な事件については、民訴法の十八条の簡裁の裁量移送の規定が適切に運用されて、地裁へ移送されるように周知徹底されることが必要であろうかと思います。
 この点につきましては、ぜひ附帯決議をお願いしたいと考えております。
 第四点は、簡裁代理権を取得された司法書士の皆さんとの関係でございます。
 第一点で述べましたとおり、日弁連は、司法書士会と弁護士会との職域の争いではなく、市民への適正な司法サービスの提供という点でこの運動を展開してまいりました。この方針は、五月に全国で一斉に行われました司法書士の能力担保の研修へ、日弁連を通じて多くの弁護士を派遣したことからもおわかりいただけると思います。今後も能力担保の研修は必要であり、日弁連も努力を惜しまない方針であります。
 また、司法書士が受任後、地裁に移送となったり、簡裁の判決に対する控訴審の対応など、司法書士と弁護士との協働関係が必要となる場面が多くなると考えられます。日弁連は、利用者である市民の立場に立って今後とも取り組んでいくものでございます。
 最後に、いま一度、簡裁の理念と特色が今度の改正によって損なわれることがないか、慎重に御審議いただき、簡裁が市民にとって利用しやすく、かつその機能が十分に発揮できるような立法をお願いしまして、意見陳述を終えたいと思います。
 ありがとうございました。(拍手)
山本委員長 ありがとうございました。
 次に、高中参考人にお願いいたします。
高中参考人 本日は、日弁連に対しまして意見を述べる機会をお与えいただきましたことに、厚く御礼を申し上げます。
 私は、日弁連内の弁護士制度改革推進本部というのがございますが、そこの事務局長を務めております。このたびの司法制度改革のための裁判所法等の一部を改正する法律案の中の弁護士法の改正案につきまして、意見を申し上げさせていただきます。
 まず第一点に、弁護士資格の特例拡充の問題についてでございます。
 改正法案を拝見いたしますと、弁護士の資格に関する特例を拡充しております。これには二つの類型がございます。一つは、司法試験に合格した後に国会議員あるいは企業法務などに一定期間従事した者につきまして、司法修習を免除して弁護士資格を与えるというものでございまして、もう一つは、司法試験に合格していないものの、一定の在職を要件として、いわゆる特任検事に対しまして資格を付与するというものでございます。
 日弁連は、法科大学院を中核とする新しい法曹養成制度によって弁護士数が今後大きく増大するということにかんがみますと、司法試験の合格ということと司法修習の終了という弁護士資格の基本に対する例外は不必要に拡大されるべきではないというふうな認識を持っておりますけれども、さまざまな社会経験あるいは職歴を有するという弁護士が存在することは、社会の多様な法的ニーズにこたえるということにもつながりますので、今般の改正につきましては評価をすることができるというふうに考えているところでございます。
 しかしながら、企業法務の従事者あるいは国会議員、特任検事などなどに対しまして、無条件で弁護士資格を付与して、弁護士名簿の登録をすれば直ちに弁護士活動をしてもよいということには問題があるというふうに考えているところでございます。
 弁護士は、言うまでもなく、基本的人権の擁護と社会正義の実現という公共的な使命のもとに、国民の民事紛争あるいは刑事事件などの法律事件を処理する職業でございます。これらの事件を処理するにつきましては、当然ながら、法律知識のみならず、裁判などの実務に関する知識と技能を習得する必要がございます。また、弁護士としての職業倫理についても十分に身につけるという必要がございます。
 そこで、日弁連といたしましては、企業法務の従事者につきましては、事前の研修受講を資格取得要件とするということを主張いたしました。今次の改正法案もそのようになっておりまして、日弁連としては、これを前提に、現在、研修のあり方を検討しているところでございます。
 これに対しまして、司法試験の合格と司法修習の終了という要件を満たさない特任検事につきましては、弁護士実務、特に民事事件の実務の研修が不可欠であると考えております。改正案では、研修受講は資格要件とされず、資格付与後の研修を充実させるということになっておりますが、日弁連としては、この研修を充実したものにする必要があるというふうに考えているところでございます。
 国会議員につきましては、先生方もそうでございますが、立法に携わるものではございます。しかしながら、法制局の参事官などの法律案作成の事務とは若干異なるように思われます。国会議員は主に政策立案の面から法律案に関与されるのに対しまして、法制局の参事官などは、他の法律との整合性なども勘案いたしまして、具体的な条文作成過程に関与するものと認められるからであります。法制局参事官などが修習を免除されるのは、一定期間にわたる法律解釈あるいは立法事務への従事が司法修習に代替し得る価値を持つというふうにされるためと考えられますが、国会議員につきましては、技術的にわたる裁判実務あるいは弁護士実務を体得していただくためには、一定の研修が必要であるというふうに考えておるところでございます。
 次に、弁護士報酬規定の会則記載事項からの削除について意見を申し上げます。
 弁護士会の会則規定事項から、弁護士の報酬の標準を示す規定が削除されております。この報酬規定の削除につきましては、公正で自由な競争によりまして、質の高い法的サービスを低廉な対価で提供させようという目的を持つものでございまして、既に司法書士あるいは税理士などの職種について報酬規定が撤廃されている状況からいたしますと、日弁連としてもこれには反対するものではございません。
 しかしながら、問題は、弁護会の報酬基準規定がなくなった以後、国民が弁護士報酬を予測することをどのようにして可能ならしめるかということでございます。国民の弁護士に対する不満の一つとして、弁護士報酬が不透明であるという意見がございまして、これは日弁連も十分に承知しているところでございます。日弁連も、弁護士報酬に関する情報を広く国民に知らしめるための広報活動などにこれまでも努めてまいりました。日弁連としては、今後もさらにこの広報活動を推進するとともに、弁護士個人による報酬情報の積極的な提供あるいは開示をするような、そういう制度整備に努めてまいる所存でございます。
 しかしながら、弁護士報酬に関する何らかの目安を国民に示すということは何としても必要であると考えております。初めて弁護士に事件を依頼する人々にとって、費用が幾らかかるのかということは極めて切実な問題だからでございます。報酬が不安である、この理由によって裁判を受けられないというようなことがあってはならないと考えております。日弁連としては、現在、全会員に対しまして、典型的な事件例を示しまして報酬額を回答してもらうというアンケート調査を行いました。近々、この結果を公表する予定にしております。このアンケートは、今後も継続する予定になっております。
 次に、公職就任と営利業務等の従事の自由化について意見を申し上げます。
 弁護士が企業あるいは行政庁などに積極的に進出することができるというふうにするために、公職就任に関する制限が撤廃されました。また、営業や取締役の就任などの事前の弁護士会による許可制、これも廃止されまして、事後の届け出制になっております。日弁連は、弁護士の活動領域の拡大を目指す今次の改正につきましては、賛成をするものでございます。
 しかしながら、弁護士が営利業務に従事することは、時として、弁護士の品位保持の面から問題とされることがございます。そこで、日弁連としては現在、弁護士が営利業務につく、あるいは会社の取締役に就任するという場合の倫理規定を鋭意検討中でございます。また、公職を兼任するという場合の弁護士の独立性を担保するための行為規範につきましても、現在検討を進めているところでございます。
 このほかにも、弁護士の懲戒制度の透明化、迅速化、実効化を図るための改正等もこの法律案中に盛り込まれてございますが、時間の関係もあるようでございますので、意見は省略をさせていただきたいと存じます。
 以上で意見の陳述を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
山本委員長 ありがとうございました。
 次に、北野参考人にお願いいたします。
北野参考人 日本司法書士会連合会会長の北野でございます。
 本日は、参考人として意見陳述の機会を与えてくださいまして、ありがとうございます。先生方におかれましては、司法制度改革について御熱心な御論議をいただいておりますことに、改めて敬意を表するものでございます。
 私は、日本司法書士会連合会を代表しまして、今回審議されております司法制度改革のための裁判所法等の一部を改正する法律案につき、特に簡易裁判所の管轄の拡大について意見を述べさせていただきます。
 今般の、簡易裁判所の事物管轄を九十万円から百四十万円とする裁判所法の一部改正につきましては、これにより司法に対する国民のアクセスが容易になると考え、当連合会としましては賛意を表するものでございます。
 この簡易裁判所の事物管轄の拡大は、一昨年六月の司法制度改革審議会意見書において、簡易裁判所の機能の充実に関し、「軽微な事件を簡易迅速に解決することを目的とし、国民により身近な簡易裁判所の特質を十分に活かし、裁判所へのアクセスを容易にするとの観点から、簡易裁判所の事物管轄については、経済指標の動向等を考慮しつつ、その訴額の上限を引き上げるべきである。」と提言され、これに基づき、司法制度改革推進計画に取り入れられたものと承知いたしているところであります。
 また、同時に、少額訴訟手続につきましても、「国民がこの手続をより多く利用しうるようにする見地から、少額訴訟手続の対象事件の範囲については、それを定める訴額の上限を大幅に引き上げるべきである。」との提言がなされ、訴額三十万円を六十万円に引き上げる旨の改正を含めた民事訴訟法等の一部を改正する法律案が、先週、本院において可決されたとお聞きいたしているところであります。
 私どもは、裁判所へのアクセスを容易にするとの改革の理念に賛同すると同時に、簡易裁判所の機能を充実するため、これらの施策を講じることに対し、全面的な協力を行い、また我々に課された役割を十全に担うべく努力するものであります。
 司法制度改革における簡易裁判所の管轄拡大に当たりましては、当連合会は、簡易裁判所が果たしている国民が気軽に利用できる身近な裁判所としての役割が重要と考えております。地方裁判所の厳格な訴訟手続とは違った、迅速な紛争解決を図る、いわゆる市民裁判所として、地域住民のごく近くに存在し、気軽に利用できる裁判所としての役割を発展させるべきであると考えております。
 ところで、簡易裁判所には次のような特色が考えられます。
 簡易裁判所は地方裁判所と比較して全国に広く分布しており、国民がアクセスしやすい裁判所として、まさに国民に近接する裁判所と位置づけられています。また、手続が簡便であり、審理そのものも利用者に理解しやすく、本人による裁判もしやすいなどの特質があります。
 迅速な審理についても司法改革の大きな目標とされていますが、平成十三年の簡易裁判所における第一審の通常訴訟の平均審理期間は二カ月であり、地方裁判所の八・五カ月と比較しますと四分の一弱の期間で審理されています。このような簡易裁判所の特色が、昨今の簡易裁判所の利用が増加している要因の一つでもあると考えているところであります。
 一方、簡易裁判所で取り扱う訴訟事件は、そのほとんどが当事者本人によるものですが、地方裁判所においても、平成九年度において、今回の引き上げ額である百四十万円を含む、訴額が百二十万から百五十万の事件の範囲においては、双方とも本人が訴訟する割合は三六・九%であり、一方のみが本人の場合を含めますと八一・二%となっています。さらに、弁論の回数が一回で終わっているものが五五・五%、本人や証人尋問がないものが四〇・九%、控訴率は七・九%と、比較的簡易と思われる事件が含まれております。
 このような事件が、今回の改正により、簡易裁判所の特質を生かし、簡易迅速に解決されることになれば、国民の利便性に大いに資するものと考えます。
 今後とも、今まで以上に市民間の紛争が簡易裁判所で取り扱われるよう配慮されるべきであり、対象となる事件の範囲については、国民生活や経済指標の動向などを考慮し、継続的、定期的に検討がなされるべきであると考えています。また、事件の増加などに伴う簡易裁判所の人的、物的な充実もなされる必要があると言えます。これにより、利用者である国民にとって、裁判所がより身近で利用しやすい存在となると思うのであります。
 昨年、先生方の御尽力により、司法改革関連の第一弾として、司法書士に簡裁代理権を認めるなどの改正司法書士法を成立させていただきました。本年四月一日に改正司法書士法が施行され、四月十七日には、代理権取得のために必要な能力担保措置たる研修の実施機関として、当連合会が法務大臣より指定を受け、現在、日弁連、最高裁、法務省の御協力のもとに第一回司法書士特別研修を実施いたしております。
 この特別研修は、司法制度改革審議会会長佐藤幸治教授の憲法の講演を皮切りに、四月二十六日から六月一日までの間に百時間の研修として全国各地で実施いたしております。まさに今、研修の真っ最中であります。全国一万七千有余名の会員のうち、約一万人を超えると推測されます受講希望者の中から、第一回特別研修には、北は北海道から南は沖縄まで三千八百五十五名の会員が受講いたしております。六月一日に予定されております法務大臣の考査を受け、七月中には簡裁代理権を取得した司法書士が誕生する予定であります。
 また、本年度中には、簡裁代理権を希望している会員のすべてが特別研修の受講を修了し、新しい資格を取得した司法書士が全国各地において国民の要請にこたえることができるよう、鋭意努力を継続してまいるものであります。
 ちなみに、全国の簡易裁判所は四百三十八ありますけれども、そのうち四百三十三の簡易裁判所の所在地に司法書士は事務所を構えております。その割合は九八・九%を占めているところであります。司法書士が簡裁代理権を行うことができることと相まって、国民の法律家へのアクセスの拡充を担い、いわゆる業者事件に対しましても、司法書士が訴訟代理人として関与することにより、国民の正当な権利実現に寄与できるものと考えておる次第であります。
 当連合会は、司法書士に期待されている司法過疎の解消に取り組み、国民の司法へのアクセスを保障し、国民に身近な利用しやすい裁判所として簡易裁判所の機能の充実に積極的に対応してまいります。そして、簡易裁判所における役割を責任を持って果たせるよう、訴訟代理人としての能力、資質、倫理の向上を図り、着実に実績を積み重ね、国民の信頼を得ていくよう懸命の努力をしていく強い決意を有していることを皆様方に表明し、参考人としての意見陳述とさせていただきます。
 どうもありがとうございます。(拍手)
山本委員長 ありがとうございました。
 次に、三木参考人にお願いいたします。
三木参考人 毎日新聞論説委員の三木賢治と申します。今回の一括法案について、司法や事件を担当してまいった新聞記者として、私見を申し述べさせていただきます。
 このたび政府が進めております司法制度改革の眼目は、閉鎖的とのそしりを免れず、法曹資格を持つ者だけが特権的、専横的に牛耳ってきた裁判制度を、一般の市民に大きくあけ放とうとするところにございます。
 その意味で、一括法案にあります民事調停法、家事審判法などの一部改正は、弁護士を非常勤裁判官として民事調停と家事調停の一翼を担わせようとするものでありまして、従来は職業裁判官にほぼ独占されていた裁判所の世界に新風を吹き込むものとして歓迎してよいと思います。
 最高裁と日弁連との間では、別途、弁護士任官制度の推進が図られているところでありますが、これとともに裁判官の給源を多様化するものとして期待するところ大というわけであります。ぜひとも普及させ、将来的には市民が選んだ人を裁判所に送り込むようなシステムへと道筋をつけていただければ幸いかと思います。
 しかしながら、裁判所の閉ざされた扉を開く役割を弁護士に期待すると申しましても、その弁護士の社会もまた、開放性、透明性に富んでいるとは言えないのが実情であります。一般の市民には、弁護士の法律事務所もまた、裁判所同様に敷居が高く感じられているのです。
 多くの弁護士の方々が、弱者救済や社会正義の実現のために手弁当をもいとわず、献身的な活動を続けていらっしゃることを承知した上で申し上げますが、本来の社会的使命を忘れ、既得権を守ることにきゅうきゅうとしている弁護士が少なくありません。法曹人口を大幅にふやす今回の改革をめぐって日弁連が真っ二つに割れたことは御記憶に新しいところと存じますが、これも潜在的な法的紛争による被害者を救済しようとするよりも、パイの配分を減らすまいとの意識のあらわれとの見方ができようかと思います。
 無弁地帯とかゼロワン地域と呼ばれる、弁護士が一人もいないような、いわゆる弁護士過疎地が全国に広がっているのも、弁護士に所得偏重主義が蔓延している影響が潜んでいるからにほかなりません。
 心ある弁護士の皆さんは、消費者金融の支店が何店もある町に弁護士がいないのはどう考えてもおかしいと口をそろえておっしゃいます。消費者金融があれば、そこには必ず民事紛争があるものだからですが、多くの弁護士は、紛争の陰で泣き寝入りを強いられている市民を救済するよりも、東京を初めとする大企業が集中する大都市で割がよい仕事を探そうとする傾向が顕著だと思われます。
 幸か不幸か、最近は長引く不況の影響で、報酬額が限られている国選弁護人や法律扶助事業による個人破産手続の引き受け手にも弁護士が殺到しているようですが、一般的に、弁護士は紹介者のいない依頼を積極的には受け付けようとせず、多額の報酬が見込まれる事件ばかりを選ぶ性向が認められると言わざるを得ません。
 その結果、知り合いに弁護士がいない一般の市民にとっては裁判所や裁判がいよいよ縁遠い存在になってしまい、紛争解決手段として訴訟が敬遠されてしまったと言えようかと思います。極論すれば、これまで、社会経済活動の発展に比して増加する紛争に対して限られた法曹人口で曲がりなりにも対応してこれたのは、弁護士界が裁判所で扱う事件数を現状で対応できるように前さばきをしていたからとも言えましょう。
 以上を踏まえますと、司法書士法の改正によって、簡易裁判所では司法書士が弁護士と同様に代理人を務められるようになったのは歓迎すべきことと考えます。裁判所で非常勤裁判官として弁護士が初めて調停を主宰するのと同様に、司法書士が初めて、これまで弁護士が独占していた代理人業務を担当することによって、法曹界の閉鎖体質に風穴をあける効果が期待できると考えるからです。
 その流れを加速させるためには、民事訴訟について簡易裁判所の管轄を拡大させる裁判所法等の一部改正などの法整備を進めるのは至極妥当だと考えます。
 九十万円という現行の訴額の上限は二十一年前から引き上げられていないのですから、引き上げは当然でしょうし、その引き上げ額が百四十万円というのも各種の経済指標などからはじき出した数字ですから、それなりの説得力があると思います。しかし、私個人としては、この際、金額だけ考えれば、一挙に二百万円近くまで引き上げても差し支えがないのではないかとさえ考えております。
 と申しますのも、簡易裁判所での代理人業務は、もともと弁護士が熱心にかかわってきた分野とは言えません。現在も、原告側、被告側の双方が弁護士を代理人として立てない、いわゆる本人訴訟が九割を占めているとの統計もございます。それはそのはずでございます。今どき百万円にも満たぬ争いでせっかく勝訴しても、弁護士に高い報酬を請求されたのでは提訴する意味がなくなってしまうからです。
 今後、市民のニーズにこたえる形で司法書士がリーズナブルな報酬で代理人を引き受けるようになれば、情勢が変わってくるかもしれません。弁護士会には弁護士と司法書士との法律知識の差異などを懸念する声があるようでございますが、簡易裁判所は性質上、黒白をつけること以上に円満で早急な解決が求められている裁判所でもあり、法律解釈をめぐる複雑な論争が生じる余地はそれほどあるとは思えません。
 そもそも司法書士が代理人業務を手がけて不都合が相次げば、やはり弁護士でなければだめだといった話にもなるでしょう。高い報酬を要求する弁護士以上に、優秀な司法書士が割安な報酬でばりばりと仕事をこなしていけば、利用者はそちらに殺到するでありましょう。自由競争の時代なのでありますから、代理人の選択も市場原理に任せればよいと考えます。
 先ほど申した弁護士過疎地での司法書士の活躍も大いに期待されるところです。一部の弁護士らによる限度額を低く抑えようとの主張の中には、いたずらに既得権益の保持にこだわるばかりで、市民の利益を軽視する考えが潜んでいると思わざるを得ません。
 同様に、弁護士法の一部改正によって異質な人材を弁護士に登用しようとする改革にも賛成です。いわゆる特任検事というのは、テレビドラマのあの赤かぶ検事の主人公のような方だと思いますが、しかるべき手続を経て弁護士資格を取得すれば、市井の人の訴えに真剣に耳を傾けて、生え抜きの弁護士にまさる人権救済活動を展開してくれるかもしれません。だめな人ならば、利用客が見限っていけばよいのだと思います。
 司法試験に合格後、法律関係事務に従事していた公務員らに資格を付与することについても、妨げる理由はないと思います。国会議員の先生方も、本来、法律に最も精通しているべきお立場なのですし、自信がおありならばどんどん弁護士業務に転じられればよい。有能かどうか、役に立つ弁護士かどうかは利用客が判断すべきことなのです。
 問題は、市民が多種多様な弁護士の中から自分に最もふさわしい人材を選ぶことができるように、個々の弁護士についての情報を幅広く公開していくシステムをつくり上げねばなりません。現在の弁護士広告には事実上制約がいろいろとあるようですが、市民が選択する際の参考となるように、経歴や得意とする分野、報酬の見積もりなど、すべてを明らかにしてほしいと思っております。広告を自由にする以上は、弁護士会としても、過去の懲戒処分などが一目でわかる告知法も考え出していってもらいたいと思います。
 個人的には、法曹分野を得意とするNGOが、あのミシュランのレストランの格付のように、弁護士の資質や人となりを星印で示してくれるような案内でもつくってくれれば、真に市民の味方となる弁護士に依頼者が集まっていくようなシステムができ上がるかと思っております。
 こうした観点に立てば、弁護士の綱紀、懲戒の手続も一段と透明性を増す方向で改正されるべきは言うまでもありません。弁護士法の一部改正を初めとする司法改革が市民の使い勝手をよくする方向で進むことを祈念して、私の意見陳述とさせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)
山本委員長 ありがとうございました。
 以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。
    ―――――――――――――
山本委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小西理君。
小西委員 自由民主党の小西理でございます。
 四参考人の方々につきましては、本当に貴重な意見をお聞かせ賜りまして本当にありがとうございます。幾つかちょっと私なりにお伺いしたい点がございますので、これを順次お伺いしたいと思います。
 まず最初に、成田参考人にお伺いいたしますけれども、いただきました資料の中にも、金銭事件の多くが貸金業者の取り立て事件で占められている、こういう話があるのでございますけれども、この部分があかないと、この制度、どういう形でやったとしてもなかなか実効性が得られないんじゃないか、そういう懸念もあるわけでございますけれども、では、こういう取り立てというのはどういう手続でやるのが一番いいのか。今までどおり簡裁でやるのか、また何か別の手だてを考えた方がいいのか。御意見があればお聞かせいただければと思います。
成田参考人 現在、私ども仕事をしておりまして、私自身もそういう金融関係から請求を受けている被告側、消費者側の事件を幾つか担当しております。地裁においても簡裁においてもこの種の事件が大変ふえております。
 その一番の問題は、やはり利息制限法の問題あるいは出資法の問題、そのあたりの規制が甘いということが一番大きな問題であろうと思います。利限法に絡む紛争が大変多いわけでありまして、そのことをめぐって訴訟になる前の段階でも私ども、金融業者と電話でやりとりしておりますが、その部分をやはりもう少し透明に解決できる実体法をきちっとしていかないといけないのではないか。
 それから、この金融関係の事件、サラ金関係の事件が多い、これは倒産でも同じでございます。自己破産事件が膨大にふえております。この点においても同じような視点での、今回の審議とは関係のないところになりますけれども、今後の課題として御検討いただきたいと思います。
小西委員 どうもありがとうございます。
 次に、高中参考人にお伺いしたいと思います。
 今回、弁護士資格の範囲が非常に広がるわけでございますけれども、いわゆる士業の団体で一番やはり重要になるのが職業倫理の維持だ、これはまさにおっしゃるとおりだと私は思うんですけれども。今御説明いただいた中で、書き物をしっかりとつくる、また、懲戒制度をつくられるということなんですけれども、この二つできましてもその真ん中ですね、間をどのように維持していくのかという点について、私どもとしてちょっと見にくい部分がありますので、まだ十分に御説明いただいていないかもしれませんけれども、その点について、この職業倫理をどういうふうに維持していくのか、詳しくお聞かせいただければというように思います。
高中参考人 お答え申し上げます。
 先ほども申し上げましたように、弁護士倫理を確立するということが司法制度改革審議会の意見書にも載っておりまして、現在日弁連では弁護士倫理の全面見直しということを進めております。既に、第一次案ができ上がっておりまして、早ければ来年早々には新しい倫理ができ上がると思います。
 それとあわせて、綱紀・懲戒制度の透明化、迅速化、実効化という面からの今次の改正がございましたが、これに合わせた会則の整備も今大至急進めているところでございます。
 問題は、この倫理をつくり、それから綱紀・懲戒制度をつくりながらそれをどう維持するか、どういうふうに運用するか、こういう御質問だと思いますけれども、倫理につきましては、当然に研修を充実する、弁護士会として、日弁連としては、弁護士倫理研修、今も義務化しておりますけれども、さらにこれを充実させたものにするということも考えております。
 それから、綱紀・懲戒制度につきましても、なかなか外から見えない、こういう御批判もいただきましたので、今次の改正に合わせまして、懲戒制度についても迅速な運用をして弁護士に対する国民の信頼を確保するということに努めてまいる、こういう所存でございます。
小西委員 ありがとうございます。
 今講習という話を伺って、ちょっと意地悪な質問かもしれないのですけれども、運転免許でも、大体最初はみんな覚えておるけれども、だんだんやっていくうちに講習の内容からかけ離れていろいろなことをやってしまうようなことがあるわけですが、その点について何か担保する手段とかお考えでしょうか。
高中参考人 お答え申し上げます。
 倫理研修につきましては、新人、いわゆる弁護士になったばかりの新人弁護士だけではございませんで、十年刻みで研修をしております。これは義務化をしておりまして、受けませんと、甚だしい場合には懲戒の理由にもなるというふうになっております。
 最近もそうでございますが、弁護士、二十年、三十年、いわば経験豊富な先生方についても研修をやっておりまして、これが大変充実した内容であるというふうに我々は考えているところでございます。
 さらにこれを充実させてまいるということで、最初だけの倫理ではございませんで、弁護士は続けてまいるその折々に研修をして、我々の襟を正すということを考えているところでございます。
小西委員 ありがとうございます。
 今懲戒制度の話が出ましたけれども、ちょっと思いつきで恐縮ですけれども、一般の依頼者からこの弁護士の方は倫理に反しておるんだというような申し立ても受け付けるという制度内容でお考えなんでしょうか。
高中参考人 懲戒請求につきましては旧来から弁護士法に規定がございまして、懲戒請求は何ぴとでもできるというふうになっております。すなわち、当の弁護士と利害関係のない方であっても懲戒請求ができる、こういう規定になっているところでございます。
 したがいまして、倫理に反するというお考えであれば、当の関係人以外の方でも懲戒請求はできる、こういう内容になっておりますので、今の御質問に対しては、倫理違反があるとお考えであれば、どしどしとは申し上げませんけれども、懲戒請求をして我々の襟を正すということに制度上なっているところでございます。
小西委員 高中参考人、もう一点ちょっと別の質問なんですけれども。
 ずっとこの法案とか聞いていまして、私も余り法律、いつもずっと訴訟とかするわけではないのですけれども、一般人の民間の立場からいいますと、やはり法廷に持ち込まれる前の段階というのは非常に重要な要素ではないかなというように思うわけでございます。実際に訴訟する前に、我々としては、まず相談をするだとか、訴訟をしたらどういう結果になるんだとかそういうことをまず知りたいというのが一番正直なところではないかなというように思います。
 こういう点について、弁護士会そのほかとして何かの手段なりなんなりを今お考えかどうか、お聞かせいただければと思います。
高中参考人 お答え申し上げます。
 先生おっしゃるとおり、裁判をする前に、その紛争の問題点ないしは最適な法的解決手段は何かという事前の問題というのは極めて大事でございまして、弁護士の職業は裁判所だけではございませんで、裁判前の相談というのは極めて大事である、これは認識しているところでございます。
 そのために、日弁連あるいは各弁護士会におきましては、法律相談センター、これの拡充に努めておりまして、ほぼ全国の弁護士会と言ってよろしいかと思うんですが、法律相談に関する受け入れ体制、これを充実したものにしております。不足があれば、さらに充実したものに持っていくというふうに考えているところでございます。
小西委員 今の質問に関連しましてお伺いしたいんですけれども、実際のところ、経験からいいまして、なかなか弁護士さんに相談することも難しいといいますか、頭の中で論点を整理するのは結構難しい、一般の人間にとっては。したがって、今言った相談所に、そもそも相談所が敷居が高いというようなことも現実にはあり得るんではないかなと思うんですね。
 そういう点について、きょう司法書士の代表の方もお見えになっておりますけれども、弁護士会の方として、どういうふうにそこをお考えなのか。
高中参考人 敷居が高い、こういう御批判をちょうだいしているところでございますが、我々も敷居が高いと言われないように鋭意努めておるところでございますが、特に問題なのは、やはり報酬が見えないというところにあろうかと思います。それから、身近に知り合いの弁護士がいないという問題もあろうかと思います。
 まず、報酬の問題につきましては、先ほど意見陳述で申し上げましたとおり、報酬規定がなくなりますけれども、できる限り国民が報酬予測を立てやすいような方策にこれから日弁連としては鋭意努めてまいる、こういうつもりでございます。
 それから、身近に弁護士がいないということは、先ほど意見陳述でもございましたが、広告の問題あるいは弁護士会の広報の問題であろうかと思います。弁護士会としても、身近な弁護士の存在ということを含めた広報活動に鋭意努めております。
 さらには、広告が自由化をされまして、原則的に弁護士の広告は、広告事項あるいは広告媒体を問わずフリーという現状になっておりますので、さらにこれを推進して、弁護士情報を国民に広く知らしめるということに、会員全体として、日弁連全体として、あるいは弁護士全体として進めていく、こういうふうに考えているところでございます。
小西委員 ありがとうございました。
 次に、北野参考人にお伺いいたします。
 今回の事物管轄の金額について特に御意見はなかったんですけれども、成田参考人は百万円、三木参考は二百万円、こういうようなお話も出たわけでございます。実は案は今百四十万円ということが出ておりますけれども、北野参考人として、この金額についてどのようにお考えなのか、お伺いしたいと思います。
北野参考人 私どもは、簡易裁判所においては、国民生活にかかわる事件について簡易迅速に処理されることが一番大事だという意見を述べてまいりました。そういうことをいたしますと、経済指標の動向も大いに参考になるわけでありますけれども、二十一年前と比べますと、国民生活というのは多様な価値観があり、多様な形態を持っているところであります。可能な限り、その事件が簡易裁判所で国民生活にかかわるものとして処理されるべき金額を設定していただきたいという要望を述べてまいりました。
 その検討のもとに百四十万にしていただいたんだろうという気でおるわけでありますから、司法書士としましては、今この百四十万円の中で精いっぱい努力するつもりでおる次第でございます。
小西委員 もう一点、ちょっとこれはつかぬ質問になるかもしれませんけれども。
 一般の方と一番接しておられますけれども、大体百万円の訴額でどれぐらいの手数料額が妥当、妥当といいますか、これくらいだったらやってみようとか、そういう判断をされる額だというふうにお思いでしょうか。
北野参考人 事案の内容にも当然よりますけれども、私の経験で、私の実務で申し上げますと、大体十万円前後かなと思っているところでございます。
小西委員 ありがとうございます。
 次は、三木参考人にお伺いしたいと思います。
 弁護士の方が今高収入をどうしても目指されるということで、これは経済原則として、弁護士になるのはやはり難しい今、門戸は広くなっておりますけれども、それなりの努力、研さん、日ごろの勉強とか、非常に大きな専門的な知識と努力を要する職業でございまして、そうすれば当然、高収入を目指そうというのは偽らざるところではないかな、避けて通れない部分はあるんではないかなと私は思うんですね。そういう中で、今度、では収入を下げればどうなるかというと、これはまた、それだけ質がキープできない、そういう問題も裏腹に抱えておると思うんです。
 こういう中で、一体どういうような折衷点といいますか、アイデアなんかをもしお持ちでしたら、ちょっと御意見を伺いたいと思うんです。
三木参考人 難しい司法試験を通られて弁護士になって高収入を目指して当然だというような、私もそう思っていまして、そういう弁護士がいられて大いに結構。
 ただ、弁護士というのは、やはり社会正義の実現という大きな理念を掲げて活動されることを期待されている方という前提を忘れていただいては困るということだけを申したいわけで、片方で、そういったお仕事をなさる方もいてもいいし、一方では、今実際には、裁判所から遠のいて、多くの法的弱者が苦しんでいる現実を考えれば、そちらの救済にももう少し力を入れていただく弁護士がいてもいいし、やはりセグメント化の時代、いろいろな方がいていいと思うんです。
 去年の、例えば個人破産だけを見ても、二十一万件だかを数えている中で、たしか東京三会の弁護士の一年間に受ける新受件数というのは、二十件台、二十数件だったと思うんですね。要するに、個人破産だけでも二十一万件なのに、やはり弁護士が引き受けている受理件数はまだまだ低いんだと。その総体的なことをまず解決していってもらうことが、今司法改革で求められているんじゃないか、こう思うんです。
 リーズナブルな報酬で事件を引き受けてくださる方がたくさん出てくることによって、難しい法律用語、法律問題を解決していく弁護士とのセグメント化も可能になっていくんじゃないかというふうに思っています。
小西委員 貴重な意見を御開示いただきました。重ねて御礼申し上げまして、質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
山本委員長 次に、山花郁夫君。
山花委員 民主党の山花郁夫でございます。参考人の皆様、貴重な御意見、朝早くからありがとうございます。
 まず、今回の法改正の一つの事物管轄のことについてお伺いしたいと思います。
 まず、成田参考人にお伺いしたいと思うんですけれども、先ほどのお話の中で、例えば不動産については、本来、簡易裁判所の審査に適さないケースもあるんだというお話がございました。
 確かに、ここのところ景気が大変悪くなっておりまして、資産デフレなんというふうに言われることもあって、土地、建物の価格が下がっていますね。特に、土地だと百四十は微妙かなと思いますが、建物の明け渡し請求訴訟なんかですと、百四十で入ってくるケースもかなりあるような気がいたしますし、貸し金返還請求訴訟に比べると、確かに、不動産ですといろいろな担保がついていたりとか、それも、設定が変わったり、最近、銀行も再編がいろいろされていますから、何か名前が変わっていたり、いろいろな複雑なケースがあるんだろうなということは推測できます。
 この点について、本来、簡易裁判所ではなくて地裁に行くべきケースがあって、裁量移送が適正に行われるべきだという御意見でしたけれども、もう少し詳しくお話しいただけないでしょうか。
成田参考人 不動産で百四十万円以下という事件は、都会地、東京を中心に考えますと、余り、希有だという受けとめ方をされるかもしれません。ただ、地方へ行きますと、土地の価格は大変低いわけでありまして、百四十万でも土地に関する事件が相当数入ってまいります。
 それから、建物について、木造家屋で時間が経過しておりますと、百四十万、これは固定資産税評価額の二分の一で計算していきますので、その金額が百四十万以下というのは、むしろ戸建ての小さな長屋のようなものであれば、皆入ってしまう。
 ですから、そういった事件を、先ほど私紹介しましたような簡裁の、一回か二回でぼんと結論を出すようなところに、その人の、居住者の利益とかそういったものを総合的にきちっとアドバイスして解決できる、それだけの力は私は簡裁になかなかないだろう、調停ならまた別だと思いますけれども。
 そう考えますと、むしろ、本当に明け渡しを求めるのならば、訴訟として提起するなら、地裁へ提起するように窓口で指導する、あるいは原告が起こす場合ですね。ですから、それは、起こす代理人である弁護士あるいは司法書士さんが、これは簡裁に提起をしたんだけれども、将来、被告側から移送申し立てが出ると地裁に行くんですよということをある程度覚悟して、それを当事者に説明して、事件受任をするということが必要なのではないか、あるいは、窓口でもそういう指導をすべきではないのか。そういうことでございます。
山花委員 ただ、窓口で指導して、原告はそうかもしれませんが、被告の側が応訴してしまって陳述してしまうと応訴管轄が発生するので。
 我々から裁判所にこうせいというのはなかなか言いづらいんですけれども、弁護士さんの立場からですと、裁判所の方でもそういうふうなことをやっていただきたい、そういう趣旨でよろしいでしょうか。
成田参考人 おっしゃるとおりでございます。
 裁判官が法廷で、第一回期日に、弁論に際してそういう教授をすれば非常にいいのではないか、そういうふうに言っておるわけです。
山花委員 成田参考人と北野参考人にお伺いしたいと思います。
 両参考人とも、今回の事物管轄の引き上げについては、ぜひ簡易裁判所に人的、物的充実をしてほしい、そういった御意見でした。
 ただ、これは最高裁の方に聞きますと、ふえる件数も、つまり引き上げることによって事物管轄が発生して、それで恐らくふえる件数というのは、そんなに極端に二倍、三倍にふえるわけではなくて、せいぜい一割ぐらいかなと。そうすると、現在の体制でも十分とは言わないけれども、そんなに極端に何か充実をと言われてもどうですかね、そういうような対応なんです。
 私は、これは前から思っているんですけれども、設営する側というのは、それは訴訟というのは集団的な現象で日常的なルーチンワークですが、普通、一般の国民からすると、裁判にかかるなんというのは一生のうち一回あるかないかのことだと思います。
 どうも、ちょっと欠席裁判であれですけれども、いないところで言うのもなんですが、設営者の側の意見なのかな、そんなような気がするんですけれども、実際、利用者の方々と接しておられる立場から、あるいはこれからそういうところに進出していくお立場からいって、人的、物的体制の充実ということについて、なぜ必要なのかということをもう少し詳しくお聞かせいただきたいと思います。
成田参考人 先ほど御説明しましたように、十三年度の民訴の簡裁の新受件数が三十一万件ございました。
 私の感想でございますが、各簡裁の一人の民事の裁判官の手持ち事件は恐らく一千件を超えているんではないかなと思います。それに対して、地裁の方は百五十件から多分二百件ぐらいだろうと思います。私は、どちらも裁判官にとってかなり負担過剰な状態になっている、そういう意味においては、裁判官をふやす必要が相当程度あるであろうというふうに考えております。
 それから、裁判官だけではございません。書記官あるいは法廷、それが足りない。民事調停に関しては調停室が足りない、家事調停については調停室が同じように足りない。調停室がないために期日が入らない、そういう状況が日常的に生じております。
 こういう問題は、理屈あるいはペーパーでお読みいただくのではなくて、実際に、お国のそれぞれの裁判所、家庭裁判所、簡易裁判所、地裁をのぞいていただく、そしてそこに出入りしておられる弁護士あるいは当事者の御意見を聞いていただくと非常によくわかるのではないかと思います。
北野参考人 簡易裁判所における事件ですけれども、今でも年々増加しているのは事実であります。そしてまた、これが百四十万円になりますと、さらに増加するだろうという予測はございます。
 また、私どもが司法書士の実務として日ごろ接しておりますけれども、必ずしも事件を抱えた人が訴訟に持ち込むケースというのはすべてではないわけであります。それは、裁判所が敷居が高いとかいろいろな問題があるわけであります。
 司法書士は、国民の接点に立って、この事件を正当な権利を持って裁判にゆだねたいというようなこともあるわけでありますから、その方の増加も十分考えられてくるわけであります。そういたしますと、今の増加しない簡易裁判所の判事の数では足りなくなってくるんではないかなと思うわけであります。
 さらに、利用しやすい立場から見ますと、機能充実も必要であります。訴えを提起する簡易さ、こういうものを行いますときには、やはり人的処理が多くなってくるんではないかと思うわけでありますから、限りなく簡裁の充実は人的、物的ともに今後も行っていくべきだというように思っている次第でございます。
山花委員 三木参考人にお伺いしたいと思います。
 今回非常勤裁判官の制度が導入されるということで、大変高く評価をされているようであります。
 ところで、法曹三者のうち弁護士さんに関しては、先ほど参考人も御指摘されたように、例えば刑事事件で手弁当で一生懸命頑張っている方もいれば、そうじゃない方もいればということなんですけれども、それは、およそ弁護士という資格を持っている人はいろいろな方とおつき合いしなければいけないですから、それはいろいろな方がいるんだろうなと思います。
 ただ、反面、制度として見たときに、まさに裁判官こそ、本当に人権感覚がしっかりしていて、世間的な常識もあって、そういう人たちが確保されなければいけない。
 だから、日弁連の皆さんには大変失礼ですけれども、たとえちょっと変なことを言うような弁護士さんがいたとしても、裁判官がきっちりと判断をする。逆のケースもあると思います。裁判官の方が世間的な常識からちょっとずれていたときに、ちゃんと弁護士さんの方でコントロールするということもあると思います。
 本来、例えば裁判官がみんなそういうすばらしい方たちだったら、何も非常勤裁判官なんか入れなくてもいいわけですよ。ところが、実際にこれがやはり大事だと言われる、高く評価される根拠について、もう少し膨らませていただきたいところが一つと、そういう人たちは、裁判所でもいろいろな裁判所がありますね、家庭裁判所もあれば簡易裁判所もある、どういうところに本来行ってほしいのかというのを、いわば第三者的な立場からお話しいただきたいと思います。
三木参考人 昔、司法記者をしておったころ、霞が関の裁判所ビルの地下に食堂が並んでおりまして、昼どきに行っておりますと、裁判部の裁判長を先頭に、右陪席裁判官、左陪席裁判官が一列縦隊になってやってくるんですね。裁判長がきょうはそばにするかと言うと、右陪がさようでございますね、左陪もさようでございますねと言って、みんなでそばを食べる。
 最近、その話を最高裁の課長さんに言ったら、今どきの若い人はそんなに従順じゃありませんよ、こうおっしゃっていたけれども、そういった独特なヒエラルヒーに支えられた均質化された社会をつくっていて、それが今煮詰まった状況にあることは最高裁自身がお認めになっているところでありまして、やはり多種多様な方々を裁判所の中に送り込んでいって、裁判長がそばにしようと言っても、いや、僕はきょうはラーメンがいいと思います、あるいは、カツどんを食べたい、こう言えるようにしていかないと、合議の自由も担保されていかないんじゃないかと思いますし、そういうことをやはり期待する。
 そのときに、やはり世故に一番たけている、法曹三者の中では世故にたけていると思われる弁護士の方々を送り込んでいくというのは、一つの風穴をあける効果が大だと思うんです。
 非常勤裁判官ももちろんですが、一方で今、日弁連と最高裁では、常勤裁判官に、弁護士から裁判官へ転身する制度を進めているわけで、こういうものが幅広く実現されていくことによって、最終的には法曹一元に向かっていくんだと思います。
 なかなか非常勤裁判官の場合などには、将来的にも、例えば刑事裁判を担わせていいのかみたいな問題はいろいろ出てくるんだろうと思いますけれども、できる限り幅広いところに、民間からの人も、最終的には一般の市民が選んだ人までが裁判所で裁判官を務められるような仕組みにしていかなければいけないわけですし、将来的には最高裁の判事も国民が選ぶような形になるのが理想に近づくんではないかというように心得ますと、ここだけに限定しろということではなくて、幅広く給源の多様化を図っていくべきなんじゃないかと思います。
山花委員 高中参考人にお伺いしたいと思います。
 私は、医師と弁護士というのは利用者からすると結構似ているところがあると思っています。というのは、お医者さんの場合は、場合によっては命について預けなきゃいけない。預けると言うと適切じゃないかもしれませんけれども、最終的には判断を任せなきゃいけない。弁護士さんだって、財産的なことだけではなくて、例えば離婚するかどうかとか、子供を引き渡してくれとか、そういう話だと本当に、人生を託すと言うとちょっと大げさかもしれないけれども、お任せしなければいけないことがあります。
 そうだとすると、やはりその資格に対する信頼というのは非常に重要だと思うんですね。私は、学歴とか資格そのものに対してはこだわりがない人間なんですけれども、例えば弁護士さんでも、司法試験を受けるときは頑張ったのね、研修所で頑張ったのねということなんだけれども、なった後は何をしているかというのは、それは全く別の話だとは思います。ただ、国民の側からしたときに、そういう資格を持っている人にいわば人生を託すというケースのためには、それを担保するだけのものがなければいけない、そのように思うんです。
 先ほど、特任検事であるとか国会議員について、本来であれば研修をちゃんとやるべきじゃないか、そういった御意見だったと思いますが、研修については、例えば仮にやるとしたら、どれぐらいの期間、あるいはどれぐらいの内容のことをやればいいという御意見なのか、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。
高中参考人 研修についてのお尋ねでございます。
 どのくらいの期間でどういう内容かということでございますが、今詰めている最中でございまして、ここで明確なことを申し上げられないのは大変残念なんでございます。
 ただ、一般論として申し上げますと、弁護士の仕事というものは大変に幅が広うございます。中には、先ほど先生がおっしゃったような、人の人生そのものを変えてしまいかねないという大きな問題もございます。それから、先ほど申し上げた弁護士の職業倫理、これを確立しているということがあればこそ信頼が得られるというふうにも考えております。
 したがいまして、研修の内容については、一般的な職業倫理も含めた弁護士としての活動をするについて、今言った人の人生も変えるというようなことも含めた、弁護士としてのスキルというんでしょうか、それを一定限度担保する内容、これを考えてみたい。もちろん、裁判実務でございますから、ある程度技術的なところもございます。単に法律を知っているだけでは裁判は動かせませんので、そういう技術的な面もきっちり研修の中で体得をしていただくというふうに考えております。それなどをいたしますと、一定の期間はやはり必要ではないかというふうに考えております。
 と申しますのは、例えば刑事事件一つをとってみますと、被疑者の段階から受けますと、被疑者の接見がございます。起訴されますと、今度は公判活動に進みまして、訴訟記録の検討をしなきゃいけない。さらには、被害者のある犯罪ですと示談交渉にも走らなきゃいけない。裁判になりますと、最後に弁論要旨をつくってという最後のところまで参るためには、ここをすべて知っていただくというためには、やはり一定の期間が必要であろうと思います。
 ですから、ある程度時間で細切れにやってまいりますと、体系的な研修ができない。いわば弁護士の仕事の本髄と申しましょうか、そういったところをやはり体得して国民の基本的人権の擁護、こういう仕事をやっていただきたい、こういうふうに考えているところでございます。
山花委員 ありがとうございました。終わります。
山本委員長 次に、上田勇君。
上田(勇)委員 公明党の上田勇でございます。
 きょうは、四名の参考人の先生方には大変お忙しい中御出席をいただきまして、また、それぞれのお立場から大変貴重な御意見をいただきまして、まことにありがとうございます。きょう先生方からお伺いをいたしました御意見に基づきまして、何点か御質問させていただきたいというふうに思います。
 まず、最初の成田参考人にお伺いしたいというふうに思います。
 成田先生は、事物管轄について、今回百四十万円に引き上げるというものでは少々高過ぎるのではないかという御意見であったというふうに思います。ただ、これに対してほかの参考人の先生方から、意見が分かれたわけでございますけれども、それに対する反論というか反対の意見として幾つか述べられました。
 一つは、いわゆる司法過疎、ゼロワン地域の問題があるじゃないかというような御指摘があって、こういう少額事件も、そういったところはどうするんだという話がありました。また、弁護士報酬が高過ぎるんじゃないかというような御指摘もありました。だから今でも簡裁や地裁においても本人訴訟が多いんだ、だから、そう言うのであれば、もっとその範囲を拡大した上で、司法書士さんが代理人になった簡裁で処理する方が利用者にとってもプラスになるんだというような反論があったというふうに思います。
 こうした点、二点指摘があったんですけれども、そういった点についてはどのように反論というか、お考えなのかをお聞きしたいと思います。
成田参考人 簡裁が、全国津々浦々といいますか、全国で多数の庁が、四百三十八庁ある、そういう意味において、全国津々浦々にあるという点においては国民に近い裁判所であることは事実であります。
 ただ、その簡易裁判所がどういう機能を担った裁判所であるのか。その仕事のやり方、役割、そしてそこで扱うべき事件としてどのくらいの大きさの事件を扱うのが適当なのか、そこが事物管轄を決める議論の出発点であろうかと思います。
 確かに、弁護士の過疎地はあると思います。それについては、日弁連は、法律相談センターを設立したり、あるいは公設事務所をつくって、徐々に今司法サービスの枠を広げているわけでございます。そのことと簡裁の事物管轄の変更の問題、引き上げの問題とは次元の異なる問題だというふうに私は理解しております。
 弁護士報酬の問題は、司法書士さんの簡裁事件についての報酬の計算の仕方、今までの計算の仕方と私どもの計算の仕方とはかなり違うのではないかと思います。
 従来の、司法書士さんが書類提出ということを前提に議論されたときには、どれだけの書類を何枚つくったのか、作業量で計算していたと思います。弁護士の方は、訴額に対する一定利率の着手金と報酬で計算したかと思います。
 どちらが高いのかということは、実は私は、平成八年の民訴法改正、少額訴訟の改正のときに、日弁連の委員としてその問題を担当しておりましたけれども、実際に計算してみますと、その当時の少額訴訟、三十万未満のところで計算しますと、どちらをとってみても市民の皆さん方がとてもペイする金額にはならない。
 結局、少額の訴訟というのは、ある程度御本人がやるということを前提で、御本人が行っても迅速簡易に解決できるような制度設計が必要である。そして、少額訴訟を超える部分については、私どもと司法書士さんが、これからは司法書士さんの活躍分野になるわけでありますが、そことても、私は、そんなに大きな開きにはならないのではないか、また、そこは競争なのではないかというふうに思っております。
 本人訴訟率の高い事件が地裁にあるという御指摘、北野会長から御指摘がありまして、そのとおりでございますが、実は、地方裁判所で本人訴訟になっている事件、まあ原告事件が本人訴訟ということはちょっとおき、被告が本人訴訟というケースのほとんどは、多くは、争いのない事件で、欠席判決になっている、あるいは公示送達事件になっている、債務名義をとるだけのために訴訟を起こしている、そういう事件が多いわけでございます。ですから、その事件の部分について、では簡裁に行ったら、弁護士もしくは司法書士がついて、そこで活躍の場があるかというと、必ずしもそれはそうではないのかもしれません。
 ただ、地方に行きますと、原告事件について本人訴訟率が高いことは事実でございます。この点は、今後、我々が法曹人口をふやし、弁護士がふえてきて、その弁護士が過疎、偏在の地に多く散らばっていけば解決できることになるかと思います。
 そういう意味において、例えば法科大学院が地域に適正に配置されるようなこと、あるいは公設事務所の輪が広がっていくということ、そういった今後の我々の活動にかかっている問題だろうと思います。
 ただ、そういう問題は、五年、十年、十五年という長いタイムスケールの間の問題でございまして、今問題になっている簡裁の事物管轄というのは、来年どうするかという問題でございます。現在の司法の容量から見て、どうすれば弊害が起きないのかということを前提に考えていかざるを得ないのではないかというふうに考えております。
上田(勇)委員 ありがとうございました。
 次に、北野参考人にお伺いしたいというふうに思います。
 今、司法書士の皆さんに簡裁の代理権が付与されて、また、簡裁の事物管轄もこの法案では上限が引き上げられるということになりますと、司法書士の皆さんの活動の領域というのはますます広がるんではないかというふうに思います。
 きょうのほかの参考人の御意見の中で、例えば不動産関係などは法律関係が非常に複雑なので、簡裁よりもむしろ地裁の方が、結果としては裁判が迅速、適切になるんではないかというような御意見もございました。ただ、こちらはもう全く、そういう専門のお仕事の内容については素人ではあるんですけれども、聞くところ、司法書士さんは日ごろから不動産登記のお仕事だとかをされているので、そういう意味では、土地関係というのはむしろ非常に詳しいんではないのかなというようなイメージもございます。または、法律関係はちょっと別なのかもしれません。
 そこで、ちょっと北野参考人にお伺いをしたいんですけれども、そうした不動産事件を取り扱うというのは、司法書士の皆さんが代理人となった場合においては、いろいろ法律関係が複雑なので、やはりそれを取り扱うのは非常に難しいものなんでしょうか、その辺の御認識を伺いたいというふうに思います。
北野参考人 日ごろ不動産を扱っておりますが、これが訴訟になったといたしますと、私どもは今、裁判書類作成事務を通してこの訴訟支援をいたしているわけでありますけれども、その中でも、例えば賃料の不払いによる建物明け渡し請求というような、賃料不払いという事実を証明することによって決まるという事例もございますし、あるいは境界訴訟であるとか所有権の争いであるとか、こういう問題がございます。
 これについても書類作成援助はいたしますけれども、簡易裁判所の管轄で考えてみますと、簡易迅速ということが第一義でありますので、審理期間がいたずらに長くなることは許されないだろうと思います。そういうことは、やはりその部分等につきましては、裁量移送等をもって地裁で審理するということも十分考えていいだろうと思うところでございます。
 さらにまた、そういうふうな事案の問題につきましては、司法書士側も依頼者に対して迷惑をかけられないわけでありますから、一つの目安をつくりながら簡裁における役割を果たしていきたいと思っているところでございます。
上田(勇)委員 ありがとうございます。
 それでは次に、三木参考人にお伺いをしたいというふうに思います。
 先生の御意見というのは、基本的には、多様な人材にできるだけ弁護士になってもらう、そしてどの弁護士に依頼するかというのは、依頼主が、まさに市場原理、自由競争に基づいて選んでいくんだという御意見だというふうに思います。
 基本的には、その原理というのは私もそのとおりなんだろうというふうに思うんですけれども、ただこれ、なかなか難しいというのは、やはり弁護士さんに依頼するというのは、非常に多額なお金を一遍に扱う場合も多いですし、私などの経験を見ても、そう何回も弁護士さんを利用するわけではないし、また素人の立場からすると、では果たして、その結果が弁護士さんの資質や能力に影響を受けたのかどうかというのも、実際はなかなか判断がしがたいんではないのかなというふうに思います。また弁護士、法律事務所といっても、じゃ、うちの町内会にあるのかというと、なかなかないのが現実であります。
 そうすると、選ぶといってもなかなか、そう選択肢というのは現状ではないんだろうな。これから法曹人口が、弁護士さんの数がふえて、選べるというようなことになるのかもしれませんが、しかし、今のペース、この司法制度改革で議論されているペースでふえていったとしても、そうすぐに、さっきのお話をすると、そば屋を選ぶような簡単に選べるものではないんだろうなというふうに思います。
 そうすると、もう一つ、先生、情報公開を徹底すべきだと。これも非常に重要なことだというふうに思うんですけれども、ただ、これはお医者さんについても言えることなんですが、何か専門的なことでいろいろ言われても、まさにその利用者は素人でありますので、果たして何を言いたいのかもわからないというようなことが多いんじゃないのかなというふうに思うんです。
 そうした中で、先生は先ほど、第三者による評価みたいな話というのがあったんですが、果たしてそういう、何か先生の構想、もうちょっとその辺の構想を、どうやったら一般の、まさに法律の素人でもどこを選んだらいいのか判断できるというようなもので、なおかつ、ある程度は公正なものでなければいけないと思うんですけれども、もうちょっと、何かその辺のアイデアについてお考えを付言してもらえればというふうに思います。
三木参考人 実際、弁護士をどう選ぶかというのは大変な話で、私はこういう職業をしているので、よく友人、知人から、弁護士さんを紹介してくれ、こう言われて何件も紹介してきたところがあります。
 これは千差万別なんですが、一般的に弁護士さんの話、きょうみたいなところでは大変心苦しいのは、私、長い間司法記者をやっていて、私どもとおつき合いいただくような弁護士さんには尊敬すべき方が多くて、問題点を指摘するのがどうも心苦しいところがあるんです。報酬に関しても、極めて納得のいく低廉な報酬しか請求されない方もいまして、そういうところへ相談を持ち込んできた人が、ちょっと弁護士の話を聞くだけで解決していくという事案はかなりのものに及んでいると実感しております。
 ただ、これだけ先生方がいらっしゃって、今も東京に一万人もの先生がいらっしゃる中で、どこを訪ねればいいのかというのは本当に難しい話で、だれか友達を頼っていけば、友達がいる人はいいんですが、友達もいないような方をどうしていくか。そのために日弁連も実際に法律相談の窓口をいろいろつくられているけれども、先ほどもお話に出ましたように、その窓口さえも敷居がなかなか高い。しかしながら一方で、今、ホームページを通じてそれなりに、弁護士としての広告をなさっている方もいるし、地域ごとに、どういった分野が得意なのかを示した弁護士マップみたいなものもホームページのサイトにはあらわれているようであります。
 それをさらにもっと進める形で、多分、今にNGOがやってくれると私は期待しているんですが、既に、裁判官紳士録といったようなものは市販もされております。実は弁護士についても、一部の経済雑誌が特集したりもしているわけですけれども、いろいろな、よいお医者さんガイドみたいなものを、よい弁護士ガイドみたいな形で出していますが、それをもっと大々的に取り上げたものをどこかのNGOでもつくってくれないかなと思っておりますし、折に触れて弁護士の先生方の活動ぶりも、やはり名前入りでメディアも紹介していくことによって、さまざまな形で弁護士の実態がわかっていくんではないか。
 それがわかれば次第に選びやすくなってくるとは思いますが、そうこれは急にいかないことは覚悟の上で、先ほど、ミシュランのように星制度でもできないかなと言ったのはその辺でございます。
上田(勇)委員 ありがとうございました。
 では、終わります。
山本委員長 次に、山田正彦君。
山田(正)委員 きょうは、参考人の先生方、本当に早朝より御苦労さまです。
 成田先生にちょっとお聞きしたいと思うんですが、確かに先生の、物価指数とか土地価格指数で百万ぐらいが妥当だということは、その意味ではわかるんですが、では、実際に百万から百四十万の事件を弁護士さんが頼まれて、やってもらえるのかどうか、実際にやっているのかどうかというと、なかなか難しいんじゃないかと思うんですが、そのあたりはどうお考えですか。
成田参考人 私は、百万円であっても百四十万であっても、あるいは百万円未満でも、まあ三十万となるとちょっと大変だと思いますが、私は弁護士としてその仕事をやっております。
 ただ、小さな事件の場合に、大きな事件と同じような手続、同じようなことをやったんではユーザーのプラスにはならないわけであります。百万円であるならば百万円の、簡易迅速に解決してこそいいわけでありますので、それに合う解決の仕方、例えば、できるだけ訴外での交渉を経るようにする、あるいは調停を活用する。どうしてもだめな場合に簡易裁判所なり地方裁判所に訴訟を起こしますけれども、その場合も、やはり手続選択ということを非常に重視しております。
 それから、そういう小型の事件をたくさんやれるためには、やはり事務所の体制が必要であろうと思うんです。このあたりも今後の大きな課題になってくるだろうと思います。たくさんの事件を処理するには、ある程度弁護士の職員がそれを手伝ってくれないとうまく回っていかないかと思います。日弁連でも今、そういう職員を研修したり、その一つの資格制度をつくろうという議論も始まっております。
 以上でございます。
山田(正)委員 先ほど成田先生が言っておられましたが、私も思うんですが、やはり少額、百万以下でも百四十万円以下でも、本人でやれるような簡便な訴訟制度、それを考えてやるべきじゃないかと。
 前まで、地裁あたりでも、破産事件とか自己破産のそういうものは、いわゆる裁判所の職員が指導して、こうして書いたら窓口で自己破産できますよと。自己破産する連中というのはほとんどお金がないわけですから。そういった指導も一時やってくれたようですが、最近は随分、手続がかなり複雑になってきて、ほとんど自分でやれることもできなくなった。訴訟もそういう状況だ。
 そうなったとき、本人訴訟の道、これを、例えば先生がおっしゃっていました弁護士会の資格を持った職員でもって、今、少額訴訟で一番大変なのは利息制限法の問題だと思うんですが、そこはそういった職員が、センターをつくって本人訴訟を弁護してやるような、そういう制度的なもの、また裁判所職員の方も、書記官でもいいし、そういう本人訴訟についての助言あるいはシステム、そういったものは大変大事なんじゃないかと思うんですが、先生、いかがでしょうか。
成田参考人 私も頻繁に簡裁の建物に入ることがございます。最近、簡裁は大変親切になってきまして、ビデオで簡易裁判所の審理がどんなものなのかということを上映しております。それから、窓口へ行きますと、定型訴状というものを用意しておりまして、いろいろな訴訟類型にわたった定型的な用紙を用意していて、職員がそれに聞き取りしながらマル、ペケを、マル、チョイを打っていけば訴状が完成するというようなものもつくっております。
 破産については地方裁判所の方でやっておりますが、こちらの方は、正直なところ、大変事件がふえているものですから、恐らく書記官がそこまでのケアをするのがなかなか大変なんだろう、あるいは、完璧な状態で記録を上げないと事務が停滞するというような問題があるのかもしれません。
 いずれにしましても、弁護士会の方におきましては、法律相談の窓口において、調停や訴訟で、本人でおやりになっていて困ったときに法律相談センターを訪ねられて、それで担当弁護士が、その状況の中から、次回までにどういう準備をすべきなのか、あるいは利限法引き直しをする場合にはどういうふうにすればいいのかという指導をしているわけでございます。利限法の引き直しなんかはパソコンがあれば簡単にできるわけでございまして、弁護士会によっては、サラクレ相談センターにパソコンを置いておいて、そこで当事者のデータを入れるというようなことをやる場合もございます。
 以上でございます。
山田(正)委員 高中先生にお聞きしたいんですが、私は離島の方にいるわけですが、そうしますと、島ですとなかなか弁護士さんがいらっしゃらない。たまたま弁護士さんが見えたというのでその弁護士さんを紹介したら、その弁護士さんはお金だけもらってどこかに出奔しちゃった。日弁連に問い合わせしたら、その弁護士さん、前は登録してあったけれども今は登録されておらず、どこに行ったかわかりませんというので、紹介料というその人が払った訴訟費用をとうとう私が立てかえて本人に代弁しちゃったといういきさつがあるんですが、田舎の方では、本当にそういう弁護士ゼロ地帯といいますか、大変困っておる。
 日弁連も最近、そういう法律相談センターみたいな制度を一生懸命やっているようですが、なかなか、実態はみんな困っているというところなんですが、そういったところに対して、何とかもっと具体的にというか、弾力的にやれる方法はないものでしょうか。
高中参考人 お答えを申し上げます。
 先生、大変気の毒な目にお遭いのようでございますけれども、そういうのは、先生の御紹介のは極めてレアケースであろうかというふうには思いますが、御指摘の、全国津々浦々に弁護士が分布していないという問題であろうかと思います。いわゆる弁護士過疎の問題であろうかと思います。
 これは、日弁連でも積極的にその問題については取り組んでおりまして、先ほど法律相談センターというふうに先生はおっしゃいましたが、日弁連は今、公設法律事務所というのをつくっております。日弁連が費用をつくって法律事務所を設置いたしまして、そちらの方に弁護士を常駐していただくということで、いわゆるゼロワン地域、ある裁判所の管轄地域に弁護士がゼロあるいは一名であるという地域に公設法律事務所を今積極的に展開しているところでございます。既に十幾つの公設事務所ができて、さらに今、増設をするという計画を立てておりますので、法曹人口がふえてまいりますと、先生の御懸念のお話についてはできる限り解消する方向に持ってまいりたいと考えているところでございます。
 ちなみに、東京三弁護士会では、小笠原の島がございますけれども、こちらの離島についても、ことしから定期的な法律相談を始めるということも考えておりますし、いわゆる離島対策というものについても、これから鋭意取り組んでまいりたいというふうに考えているところでございます。
山田(正)委員 今、そういう公設の事務所が十幾つできたということですが、全国に有人の離島は四百二十四ありまして、ひとつそういったものも考慮に入れていただければ、そう思います。
 もう一つですが、やはり弁護士の報酬が非常に高いんじゃないか、とても弁護士さんに頼めないんじゃないか、そういう感覚、庶民の感覚があると思うんですが、実際にいろいろこれくらいかかりますよというお話をすると、みんな一様に、高いな、一般にはそういう顔をされるわけです。我々、いろいろ、弁護士さんとしてはそれぐらいの報酬を取らなきゃやっていけないんだということはよくわかるんですけれども、そういう一般の意識との、報酬額のずれというのはあるんじゃないか。
 そういったときに、皆さんにいわゆる報酬を周知してもらうということで、今までは報酬規定等あったわけで、これがなくなる。そうしたときに、先ほど、アンケート調査して、それを日弁連で公表するというのも一つだと思うんですが、あるいは、各法律事務所で自分のところの報酬規定を張っておくというのも一つかと思いますが、相談に来て、そういうところまで見るという人もなかなかいないでしょうし、やはり弁護士法そのものの中に、報酬の開示というか、それを必ず事件相談前に言うということを義務づけるとか、そういう規定ですね、規則、そういうことが必要なんじゃないかなということも感じているわけですが、その点どう思われますか。
高中参考人 先生御指摘のとおりでございまして、現在、弁護士報酬に関する会則規定事項が削除された場合に、日弁連としては、事前の報酬説明義務、これを会則上の義務として明定をする予定でございます。報酬についての十分な説明をし、かつ報酬契約書、これをつくるということを義務づける、これを今検討中でございまして、これも本年度中の日弁連の総会におきまして可決する、こういう予定になっているところでございます。
 それともう一つ、報酬についてのアンケートでございますが、これも、三十五類型につきまして、どのくらいの金額を取るかというアンケート調査をしておりますが、この金額が一般の人にとってみると高いと映るのか、それともリーズナブルと映るのかにつきましても十分に御依頼者に対して説明を尽くす、この義務を明定するわけでございます。
山田(正)委員 北野先生にお聞きしたいと思いますが、今、司法書士の先生方は、私の知人でも何人も、土曜、日曜、大変な研修をやっているのはよく承知しておりまして、本当に大変立派なことだなと思っているわけです。
 ところで、司法書士の先生のところに、倒産事件、いわゆる破産とか個人の民事再生とか、そういった相談というのはかなり来ているんじゃないかと思うんですが、実際に代理人になれないわけですね。そういった場合、どういう処理を現在しているんでしょうか。
北野参考人 司法書士の事務所に一番持ち込まれますのが個人の破産事件でございます。これは御指摘のとおり、代理になじまない、私たちが代理ができないものでありますけれども、代理がないだけに、本人から事情を必死に聞きまして、そごのない形の書類をつくることに全力を挙げているところであります。そういうことで、地裁ではありますが、代理になじまなくてもその機能は十分発揮できるようになっていると思います。必ずしも代理でなければならないということは破産事件についてはないのだろうと思うところでございます。
 それともう一つ非常に多くなりましたのが、民事再生でなしに、個人の特定調停でございます。この事件が非常に多くなりました。これも代理になじみませんけれども、それなりの事情を十分聴取しながら調停申し立て書に書くことによって、その不自然さをカバーしているところでございます。今次、この特定調停については代理が認められると思いますので、依頼者の選択に基づいて、どちらをするかということを十分協議しながら利用していただきたいと思っているところでございます。
山田(正)委員 時間が参りました。ありがとうございました。
山本委員長 次に、木島日出夫君。
木島委員 日本共産党の木島日出夫です。
 四人の参考人の皆さん、大変貴重な意見をありがとうございました。
 私は、今回提案された法案は、司法制度改革から見て賛成できる部分ととても賛成できない部分とが入りまじっている、一言で言えば玉石混交の法案だと大変困惑をしておるんですが、時間の限度がありますから、特定の問題、問題ではないかと思われる点に絞って参考人に質問いたします。
 最初は、弁護士資格付与の特例緩和の問題について高中参考人と三木参考人にお伺いいたします。
 三つの批判が指摘されると言えるのではないか。
 一つは、お手盛り批判であります。司法修習をしないでも弁護士になれる、ましてや特任検事は司法試験に合格しなくてもなれる。これは、国会議員とか企業法務とか検察庁とか、いわゆる特権階層に対するとんでもないお手盛りではないかという批判が国民から噴き出しておる。
 二つ目には、この結果、司法修習が軽視、形骸化されるのではないか。司法修習は、かつて二年だったのが今一年半、これからロースクールができるとさらに短縮されるんじゃないか。この制度が司法修習をやらなくてもいいというのですから、これは司法修習形骸化への道を開くことになりはせぬかという批判、懸念。
 三つ目には、法曹養成の基本。今回、司法制度改革審議会意見書が出された、この基本に逆行しておるんじゃないか。司法試験一点突破の法律家養成が矛盾の限界になっている。それを改めるために、ロースクールを経て、そして司法試験を比較的合格させて、そしてさらにきっちりとした司法修習をやる。一点突破じゃなくて、継続的な、立派な法曹をつくるためというのが今回の法曹養成の基本的な理念だったんじゃないか。ところが、今回のこの仕組みは、司法試験だけ受かりゃ何にもやらなくても弁護士になれるというようなことも含めまして、私は、大きな逆行じゃないか。
 特に、特任検事は、民事をやったことのない刑事専門の検察官に付与するものであります。平成十三年では、二十四人が受験してたった二人が合格している。大変狭き門のようではありますが、本当に民事の試験が行われているかどうか私は知りませんし、定かじゃありませんし、特にこの制度ができたら、今たった二十四人しか受験していないけれども、法務省がやるこの試験に合格したら弁護士になれるというのなら、私は、多くの副検事が我も我もとこの試験に参入してきて、そしてお手盛りですからね、法務省の試験ですから、全くチェックなしに弁護士への資格付与の道が拡大していくんじゃないか。
 そういう危惧をこの面では持っておりますので、ちょっとしゃべり過ぎましたが、高中参考人と三木参考人に、この問題についての率直なる御意見をお聞かせ願います。
高中参考人 お答え申し上げます。
 先ほど私、冒頭の意見陳述で申し上げたとおり、日弁連としては、法曹、弁護士資格の基本は司法試験の合格と司法修習の終了である、これを不必要に拡大するということについてはにわかに賛同しがたい、ただし、今回のものについては一定の評価ができる、こうお答えを申し上げました。
 特任検事のお尋ねでございますけれども、先生御指摘のとおり、刑事につきましてはそれなりの経験はございますけれども、いわゆる民事事件、あるいは民事事件の中の家事事件、あるいは行政事件などにつきましては、残念ながら、司法修習に匹敵するだけの修練を積んでおられない。この問題点は日弁連もかねてより指摘しているところでございます。法曹制度検討会の席上におきましても、日弁連としては、特任検事については五年以上在職で、かつ司法試験の口述試験に合格することを条件とする、こういう意見を申し上げました。
 今次の改正法につきましては、研修が事後研修というふうになっているところでございます。したがいまして、この研修内容を充実しないと、先生御指摘のとおり、司法修習の形骸化という問題に発展しかねないと考えているところでございます。研修の充実ということを、日弁連としては、常にこの問題については意を用いたいと考えているところでございます。
三木参考人 特任検事の方が弁護士になる、先生御指摘のような懸念を私も持っていないわけじゃない。刑事はともかく民事訴訟をどうやっておやりになるのか、なかなか難しい面もあるだろうと思います。
 私は、先ほども申しましたように、弁護士についての個人情報がすべからくオープンになれば、例えば、幾ら立派な特任検事からなられた弁護士であっても、民事訴訟を頼みに行く依頼者がそうそう簡単に出てくるとは思えない。特任検事から弁護士になられた方が相当の努力をされて民事でも活躍されていかない限り、そうそう顧客が集まるとは思いませんが、逆に刑事事件ならば、現在弁護士が余り積極的に受け入れていないような小さな、小さいが本人にとっては深刻な訴えに対しても耳を傾けてくれるのではないか。赤かぶ検事のように、弱者の側に立った弁護が期待できるのではないか。
 そういうことを考えると、これは比較考量の問題ですが、弁護士資格を付与しても大きな影響は出ないだろう。それから、実際に特任検事の方には検事正までおやりになった方もいらっしゃいますが、実際に取材を通じておつき合いしていると、それは人格的にもすぐれた方が多く見受けられますし、やはり今後の御自身の御努力ということにもなっていくんだろうと思います。
 一方で、司法試験を通った方、国会議員の先生たちもそうですが、司法修習なしで弁護士資格を付与するということについても議論が両方出るところだと思います。現在、大学院で教えていらっしゃる大学教授にも、五年以上でしたか、弁護士資格を付与している制度がございますが、この辺とあわせて再検討する余地はあるのかもしれない。
 しかしながら、先ほど来申しましているように、実際に弁護士登録なさって、顧客に選んでもらえるかどうかということが大きなチェック機能として働くのではないか、そこに期待したいのと、もう一つ、研修は、自動車の運転でもそうですが、ペーパードライバーが実際に車を運転するようになったときに、実際には免許を持っているのに、もう一度自動車学校に通われる方がいらっしゃいます。これは、なかなか制度化は難しいかもしれませんが、そういった自主的な研修機関というのがあってしかるべきだし、三十年も三十五年も法律実務から遠ざかっていた方が弁護士として良識的なお仕事をされていこうとするならば、そういった研修を積まれるということも当然予測されるところだと思いますので、そういった研修機関というものが誕生することも期待していきたいと思います。
木島委員 私は、長い間の弁護士経験から、今御答弁の中に、まあ特任検事から弁護士になっても、民事が不得意だから依頼は余りないから実害はないだろうという趣旨のお話がありましたが、そうではない。
 現状、長い間検察をやられ、定年退官になって、非常に立派な方で、刑事問題については本当にピカ一という方が弁護士になります。そうすると、だれが依頼に行くか。町の高利貸しなんですよ。一般の、民事を知っている弁護士のところへ行けば高金利は是正されますから、弁護士のところで。こんな高金利、だめだぞ。しかし、そういう検察官上がりの立派な方のところへ町の高利貸しが行きますと、ほとんどそういうことは言わず、代理人になって、違法な高金利、どんどん取り立てるような、態度も横柄な人が率直に言って少なくありませんので。
 そういう実害を私は弁護士としてたくさん経験しておりますから、これはそんな生易しいものじゃないということを私は指摘して、弁護士会が言うように、研修で、立派な研修でこの問題が解消できるとは私は考えられないので、もっと厳格にこの弁護士資格の付与の問題は考える必要があるんじゃないかと感じていることを申し添えます。
 二つ目には、陳述から全くありませんでしたが、外国弁護士に対する法律事務取り扱いの規制緩和の問題について、成田参考人にお聞きいたします。
 今回の法案で、現行法では外国弁護士が日本弁護士を雇用することが禁じられたのを解禁する。解禁をして、しかし、ちょっと弊害があっちゃいかぬということで、ただし、日本法しか扱えない問題については業務命令してはいかぬぞ、外国弁護士は雇われ日本弁護士に不当な関与をしてはいかぬぞ、そういう規制が入り込んできましたが、雇用ですからね、今度は。
 外国弁護士が日本弁護士を雇用する。しかも、一対一というよりも、数千人の弁護士を抱える巨大な、全世界を多国籍企業と一緒になって支配していると言ってもいいようなアメリカの巨大なローファームが日本に乗り込んできて、そこで日本の弁護士が雇われるという仕組みが解禁になるわけですから、これは生易しい問題じゃないんじゃないかというふうに思うわけであります。
 この問題に対して、今回の改正法案に対して、日弁連としてはどう考えているのか、基本的スタンスをお聞かせ願いたい。――これは、だれかな。高中さんですか。
高中参考人 お答え申し上げます。
 今次の改正法案を見ますと、外国法事務弁護士が日本の弁護士を雇用するということになっております。ほかにも、共同事業も解禁されるということになっております。
 従前、これが禁止されておった理由は、先生御指摘のとおり、外国の弁護士は、日本法固有事務、我が国の法律事務を取り扱うことを禁止しよう、この立法趣旨から、雇用あるいは共同事業を禁止しておったわけでございます。
 その危険性につきましては、日弁連としては、この法案の検討過程からずっと意識をしているところでございまして、外国法弁護士あるいは外国弁護士が法文化あるいは習俗が全く異なる日本の日本法の法律事務を取り扱うということは、国益にも反する、あるいは我が国国民の基本的人権の擁護にも問題があるという認識でございます。したがいまして、今次の改正の検討につきましては、日弁連は、従前、単独雇用については反対である、こういう見解を述べておったところでございます。
 この法案につきましては、外弁法の四条、すなわち外国法弁護士の職務範囲を超えないということにつきまして、これを徹底するために、単独雇用あるいは共同事業に関する事件受任あるいは取り扱い、それから利益分配などなどに対する会則をきちんと整備する、こういうことを今必要だというふうに考えているところでございます。
木島委員 時間が迫っておりますので、最後に北野参考人に一点お伺いいたします。
 私どもは、司法書士の皆さんが力をつけて、簡裁代理権を授与されて、そしてしっかり国民の権利利益を守るということ、大賛成だということで賛成をいたしまして、先ほどの意見陳述の中で、それがいよいよ研修の段階に入ってきている、大変うれしく思っております。
 一つだけお伺いいたしますが、私はそのときの法案審査でも指摘したんですが、現在の司法書士さんの基本的任務は登記申請だ。そうすると、登記申請は、登記権利者と登記義務者両方から双方代理を受け取るという仕事になれているというのが基本的な本質なんですね。ところが、今度、簡裁代理権が授与されますと、利害関係が激しく激突する原告、被告の一方の当事者に立つわけです。弁護士として、一方の当事者の代理人は絶対に相手との変な関係を持ってはならぬ、そこが弁護士の基本的な任務であり、資格なんですね。
 そこが基本ですから、私は、今回、簡裁代理権を司法書士さんが付与されるというのは大変結構でありますし、賛成でありますが、そこを間違うと、大変なことが国民、依頼者との関係で発生する。そこの研修が非常に大事だ。ある面では、司法書士さんの質的転換が求められるのが簡裁代理権の付与だということだと思うので、先ほど、研修が今始まっている、百時間だとお聞きをいたしましたが、百時間というと、一日五時間で二十日間の研修ですね。そういう研修の中身、ちょっと教えてください。
 そして、その基本的なスタンスの問題ですね。まあ司法書士倫理ということになるんでしょうか、これから。そういうことの研修が非常に大事だということを感じておるので、そんなのが研修の強化の中にどのくらい盛り込まれているのかについても、ちょっと教えてください。
北野参考人 まさに今指摘いただきましたことが、私どもにしても大きな課題にいたしております。
 そして、この特別研修百時間の中には、そういう、登記事務と厳然と区別ができる、あるいは、登記事務が裁判事務に悪影響を及ぼさない、きちっとした形で対応できるということをまず第一番目に置いて、百時間の研修を行っているところであります。倫理から始まり、そして憲法もございます。さらには、法廷技術における、訴状等の作成のほかに、そういうことをきちっと厳然と、依頼者の立場を、一方の立場を擁護するという観点からの研修がほとんどの科目に取り入れてございます。
 さらには、この特別研修が終わりましても、私どもは継続して、司法書士はほかの職能と比べましても非常に研修時間が長いわけでありますし、会員に課せる時間も毎年多くかけておるわけであります。これを十分取り入れて、研修に励んでいきたいと思っているところであります。
 さらに、倫理でございますけれども、倫理もこれまでの倫理を一掃いたしまして、裁判事務が十分に正当に行えるという観点のもとに、倫理を今策定いたしているところでございます。本年六月の定時総会には、会員の賛同を得て、この倫理を高らかに宣言させていただく予定でもございます。
木島委員 ありがとうございました。
 簡裁事物管轄の拡大についても聞きたかったんですが、時間が参りましたので終わります。本当にありがとうございました。
山本委員長 保坂展人君。
保坂(展)委員 社会民主党の保坂展人です。
 私は、簡裁事物管轄の引き上げの点から伺いたいと思いますが、成田参考人と北野参考人、それぞれ伺いたいんです。
 今回提案されている九十万円から百四十万円へという引き上げについて、日弁連の方では、いや、それは少し高過ぎるんじゃないかということで、論拠を示されました。また、司法書士会の方では、百四十万円は妥当であり、場合によれば、多分、もう少し上げてもいいのではないかという認識をお持ちだろうと思います。
 その認識が、そこは違いますので、今の実態を踏まえたときに、簡裁で、先ほど述べられたように、大変、消費者金融などの事件が極めて集中をしているという現状もお話しになられたかと思いますけれども、実際に百四十万円というふうになったときに、どんな変化が、例えば事件数の増加とかいうことに、どのような予想をされているのかということを、あわせて、お二人のお話を、もう一度その点に絞って聞きたいと思います。よろしくお願いします。
成田参考人 昨年来、この問題を検討する際に、最高裁の方でつくっていただきました、幾らになると地裁事件の何件が簡裁にシフトするのかという一覧表を見せていただきまして、それをもとにいろいろな試算をやってまいりました。百四十万円に上がった場合に、地裁から簡裁にシフトする件数が、全国で、これは十三年度のデータだと思います、計算上は約二万件ぐらいではないか。そうすると、三十一万件の訴訟にそれが加わるという事態になるわけであります。
 ただし、問題は、この二万件の事件の中には、従来の九十万円以下の事件とは違った相当難しい事件が半分以上入っております。不動産の訴訟、損害賠償、あるいはそれ以外の金銭に絡む訴訟が入っています。
 他方、簡易裁判所といいましても、いろいろでございます。大規模の簡裁、本庁あるいは支部に付設されている簡易裁判所もありますし、司法のアクセス、国民とのアクセスがよいとされているのは独立簡裁、これは、本当の郡部にある独立庁舎の裁判所でございます。
 大規模簡裁では、先ほど申しましたように、訴訟事件の約八割から九割がサラクレ事件で、一時間に十件も、あるいはもっとかもしれませんが、期日指定を受けて、裁判官が法壇の上にいて、その下に司法委員という方が五名ないし十名みえて、和解が成立しそうになると、すぐ別室へ行って和解してこい、そういう流れ作業で審理をやっているのが実態と思います。
 他方において、独立簡裁においては、独立簡裁のほとんどがてん補、つまり巡回裁判所のようなものでありますが、曜日を決めて、週一日か二日、裁判官が来て、その際に通常事件と調停事件をやって帰っていく、そういう状態でございます。
 そういう現状の中において、九十万から百四十万にふえる、この二万件の部分がどのように解決していくのかというのが大問題だと思います。
 これを、もし百四十万でいくという前提をとるのであれば、百四十万の中の本当に難しい事件、不動産訴訟等複雑な事件はできる限り地裁に送り、そして、従来の簡裁のそういう簡易迅速な、流れ作業のようなことでありますけれども、それはそれとして、司法の解決機能として、一、二回で解決できる、二カ月で解決できる、三カ月で解決できる、それは大変な機能だと思います。その流れを阻害しないようにしていくということが極めて重要なことであろう。そのために、私どもは、百万以上にして本当に大丈夫なのかということを言い続けているのであります。
保坂(展)委員 北野参考人に伺いますが、今、成田参考人が言われたことも踏まえて、認識の上で違うところがありましたら、率直にお願いしたいと思います。ちょっと簡潔にお願いします。
北野参考人 簡裁にかかわる事件は、当然、百四十万円になりますと、ふえることは必然だろうと思うわけであります。その中で私どもが考えますのは、商工ローンであるとかクレサラ事件が簡裁に回ってくる、あるいは簡裁にかかわる事件になろうかと思いますが、どの裁判所におきましても、これを裁判で解決したいという意思は同じことだろうと思うわけであります。
 それと、クレサラ事件でありますと、非常に内容は簡単といいますか、単純な部類であります。地裁におきますと、支配人等弁護士を立てない代理人ということになりますし、簡裁でおけば許可代理人ということになるでありましょう。しかしながら、一方の、相手方の当事者といいますのは、代理がつかないケースが非常に多いわけであります。そういたしますと、簡裁に回ることによって、代理をつけることによって、裁判がスムーズに、円滑にいく場合もございますし、あえて言えば、司法書士がフォローする機会も非常に多くなってくると思うわけであります。
 したがいまして、簡裁に移ったといったって大きな弊害はないだろう、むしろ、合理性が生まれてくるんだろうと思うところであります。
 さらに、我々は特定調停という大事な分野も抱えております。これに回る事件も多いわけでありますので、訴訟にすぐ移行するということは考えられないと思うところであります。
 これらの機能を十分生かしてまいりたいと思っているところでございます。
保坂(展)委員 次に、高中参考人に伺いますけれども、弁護士報酬のところで、これは公取からの意見があって、ここを、会内規定というものを削除する。そうした場合に、今述べられたような、では、一体幾らなんだろうかという不安が、敷居が高いというお話もありましたけれども、ますます怖くて、ちょっとアクセスしづらい。しかし、それを今、アンケートなどされているということでしたけれども、同様の指摘を受けないように工夫しつつ、なおかつ、使いやすい法律家へのアクセスということを具体的にどのように今考えておられるのか、お願いします。
高中参考人 お答え申し上げます。
 日弁連で行っております報酬に関するアンケートでございますが、これは、会員向けにはもちろん配付はするわけでございますけれども、主には、国民が報酬予測を立てるための材料である、こういう認識を持っておりますので、印刷物にして配布をするということも考えておりますし、あるいは、ホームページ上にそれを掲載して一般に公知するということも考えているところでございます。
 敷居が高いという御批判を先ほど来ちょうだい申し上げておりますけれども、そうならないための弁護士情報の公開、また、報酬に関する広報活動などなどにつきましても、日弁連としては、今後、旧にも増した活動に努めてまいる、先ほど申し上げたとおりでございますが、さらにその活動を発展させるというふうにしたいと考えております。
保坂(展)委員 では、三木参考人に伺いたいと思うんですが、今回、弁護士懲戒の部分で、さらに一層の手続の明確化、あるいは弁護士以外の外の、市民の声、あるいはそのほかの良識的な人々の目を入れるという形で、それ自体としては異論が、私もそれでいいというふうに思っております。
 ただ、そこで、検察官はどうかということを少し考えてみたときに、検察官適格審査会というものが、昭和二十二年でしょうか、そのぐらいに発足いたしまして、さきの法務委員会で聞きましたところ、戦後このシステムが動いたケースはたった一件。平成四年に、失踪した副検事が、これはいなくなっちゃったわけですから、これはちょっと、どういうふうにするのか困ったんでしょう、手続がとられたというのが一件あるだけで、例えば、福岡で起きた捜査情報の漏えいにかかわる、これは裁判所も絡んだ事件ですけれども、こういう当然やっていいだろうということがされていないという現実がわかりました。
 これは国会の問題でもありますが、国会議員六名もそこに入っている、日弁連の会長も含めて、相当、検察官について国民が捜査などに不服があるときには申し出る、こういう仕組みだそうですが、現在、会長はいないという状態だそうです。会長がいないということも質問して初めてわかったんですが。当然、法務省はホームページでも知らせていませんし、何より中央省庁再編で、これは所轄は総理府だったんですね、事務局は大臣官房がやっていたみたいですけれども、その所轄もなぜか法務省に移っちゃったということで、全く稼働していない。
 これはちょっとバランスを欠くんじゃないのかなということを私は思うんですね。そのあたりについて御意見をお願いしたいと思います。
三木参考人 全く先生と同感でありまして、私も、あの福岡事件のときに、そうだ、適格審査会というのがあったんだということを同僚と思いつきまして、ぜひ開いてほしいと思っていながら、開かれずじまいになったのは、全く残念な話だと思います。
 もっと活性化させるべき組織でありますし、今、日弁連も、弁護士自治の話があるにもかかわらず、外部の人間まで入れて透明化しようと努力されている。当然、法曹三界がそれぞれに市民の目を入れていく、そうしない限り、今やろうとしている司法制度改革はとてもできない。風通しよくしていこうというのは当然のことだと思います。先生御指摘のとおりだと思います。
保坂(展)委員 この点について、弁護士会の中でも懲戒のことをめぐって若干議論があった、若干というか、かなり議論があったというふうにも聞いています。しかし、結果としてはこれでいこうというふうにされているということと、私、先ほど三木さんにお聞きした、やはり戦後一回も検事に、副検事の方の失踪というのは例外的な事項だろうというふうに思いますよね、全く作動していない、報告もないですね。訴追と弾劾の年報は我々国会に来ますけれども、報告もないし、存在すらもほとんど知らない。
 その現状について、どのように日弁連として考えられるか。これは高中参考人にお願いします。
高中参考人 日弁連としても、先生の御指摘の点については、具体的にこちらの方で把握をするようなセクションもございませんので、今後、鋭意その関係についても日弁連として対応の体制を整えてまいりたいと思っております。
保坂(展)委員 それでは、高中参考人にもう一つ伺います。
 特任検事、国会議員に対して、やはり研修、これは議論が今まだ十分整理されておりませんけれども、研修でいいのかという声ももちろんありますし、研修といってもどのぐらいの研修なのかということもあります。実際にやるのであれば研修をというふうに言われたその中身を、どの程度の研修を考えておられるのか、あるいは、実務上欠いてはならない、特任検事の場合、国会議員の場合、どの期間、どのぐらいの質と深さで研修が行われるべきとお考えになっているかを明かしてほしいと思います。
高中参考人 先ほども申し上げましたように、この研修の中身は検討中でございまして、まだ確たるものとはなっておりません。今進めておるのは、企業法務担当者についての研修というのが、これは資格要件になっておりますので、既に検討を始めておるところでございます。
 基本的な考え方としては、最初と最後にいわゆる座学、講義による形式の研修を行い、中間の一定期間において実務的な研修、すなわち各法律事務所に行っていただいて、生の法律事件を取り扱っていただき、弁護士としてのいわゆる真髄をきわめてもらう、こういうことを考えているところでございます。その各弁護士事務所における研修というのは一体どのくらいの期間がよろしいのか、ここがちょっと今意見が分かれておりますので、これを今後さらに各方面の意見を聞きながら詰めていく、こういう段階になっているところでございます。
保坂(展)委員 それでは最後に、北野参考人にまた伺います。
 最も市民に近い法律実務の場で長年経験を培われてきた司法書士の皆さんが訴訟代理権を持たれて、そしてとりわけ金銭にかかわる、この長期不況を背景にした、中には、この国会で問題になっていますけれども、やみ金など、ほとんど犯罪的な、あるいは犯罪そのものに該当するような金銭の貸借にもかかわる件がやはり集中しているという現状があろうかと思うんですね。ぜひ、市民の立場に立って、苦しんでいる一般の庶民の側に立って現状を、立法措置が必要であれば国会に伝えたり、そういう活動にもっと力を入れてほしい、そういう意味での心構えを伺っておきたいと思います。
北野参考人 司法書士の職務の中に、社会問題に対する対応ということを強く今意識して動いておる次第であります。やみ金問題についても憂慮すべき事項だということで、意見等も申し述べました。今度はいろいろな施策を提言したいと思います。
 そして、私どもは、今次、裁判外の法律相談、示談交渉権も与えられました。これを使命として、やみ金対策等に使っていきたいと思うところであります。
保坂(展)委員 ありがとうございました。これで終わります。
山本委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。
 次回は、明二十一日水曜日午前八時三十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時十五分散会


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