衆議院

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第25号 平成15年6月13日(金曜日)

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平成十五年六月十三日(金曜日)
    午前九時三十一分開議
 出席委員
   委員長 山本 有二君
   理事 佐藤 剛男君 理事 塩崎 恭久君
   理事 園田 博之君 理事 吉田 幸弘君
   理事 河村たかし君 理事 山花 郁夫君
   理事 漆原 良夫君 理事 石原健太郎君
      太田 誠一君    小西  理君
      後藤田正純君    左藤  章君
      佐藤  勉君    笹川  堯君
      下村 博文君    中野  清君
      浜田 靖一君    林 省之介君
      原田 義昭君    平沢 勝栄君
      保利 耕輔君    星野 行男君
      保岡 興治君    吉川 貴盛君
      吉野 正芳君    渡辺 博道君
      奥田  建君    鎌田さゆり君
      中村 哲治君    水島 広子君
      山内  功君    上田  勇君
      樋高  剛君    山田 正彦君
      木島日出夫君    佐々木憲昭君
      保坂 展人君    徳田 虎雄君
      山村  健君
    …………………………………
   法務大臣         森山 眞弓君
   法務副大臣        増田 敏男君
   法務大臣政務官      中野  清君
   最高裁判所事務総局民事局
   長
   兼最高裁判所事務総局行政
   局長           園尾 隆司君
   最高裁判所事務総局家庭局
   長            山崎  恒君
   政府参考人
   (法務省民事局長)    房村 精一君
   政府参考人
   (法務省刑事局長)    樋渡 利秋君
   政府参考人
   (外務省総合外交政策局国
   際社会協力部長)     石川  薫君
   政府参考人
   (財務省大臣官房審議官) 石井 道遠君
   政府参考人
   (厚生労働省大臣官房審議
   官)           阿曽沼慎司君
   政府参考人
   (厚生労働省大臣官房審議
   官)           青木  豊君
   政府参考人
   (厚生労働省雇用均等・児
   童家庭局長)       岩田喜美枝君
   政府参考人
   (国土交通省住宅局長)  松野  仁君
   法務委員会専門員     横田 猛雄君
    ―――――――――――――
委員の異動
六月十三日
 辞任         補欠選任
  左藤  章君     佐藤  勉君
  笹川  堯君     浜田 靖一君
  中川 昭一君     林 省之介君
  保岡 興治君     原田 義昭君
  吉川 貴盛君     渡辺 博道君
  日野 市朗君     奥田  建君
  山田 正彦君     樋高  剛君
  不破 哲三君     佐々木憲昭君
同日
 辞任         補欠選任
  佐藤  勉君     左藤  章君
  浜田 靖一君     笹川  堯君
  林 省之介君     中川 昭一君
  原田 義昭君     保岡 興治君
  渡辺 博道君     吉川 貴盛君
  奥田  建君     日野 市朗君
  樋高  剛君     山田 正彦君
  佐々木憲昭君     不破 哲三君
    ―――――――――――――
六月十二日
 民法を改正し、夫婦別姓も可能となるような制度導入に関する請願(山内惠子君紹介)(第三七八七号)
 同(川田悦子君紹介)(第三九一九号)
 同(石井郁子君紹介)(第四〇一一号)
 同(木島日出夫君紹介)(第四〇一二号)
 同(瀬古由起子君紹介)(第四〇一三号)
 同(中林よし子君紹介)(第四〇一四号)
 同(藤木洋子君紹介)(第四〇一五号)
 裁判所の人的・物的充実に関する請願(左藤章君紹介)(第三七八八号)
 同(水島広子君紹介)(第三九一一号)
 同(佐藤剛男君紹介)(第三九九九号)
 治安維持法の犠牲者に対する国家賠償法の制定に関する請願(伊藤忠治君紹介)(第三七八九号)
 同(大石正光君紹介)(第三七九〇号)
 同(金子哲夫君紹介)(第三七九一号)
 同(菅野哲雄君紹介)(第三七九二号)
 同(児玉健次君紹介)(第三七九三号)
 同(佐藤観樹君紹介)(第三七九四号)
 同(横路孝弘君紹介)(第三七九五号)
 同(生方幸夫君紹介)(第三九一二号)
 同(大畠章宏君紹介)(第三九一三号)
 同(水島広子君紹介)(第三九一四号)
 同(山口わか子君紹介)(第三九一五号)
 同(横光克彦君紹介)(第三九一六号)
 同(上田清司君紹介)(第四〇〇〇号)
 同(大島敦君紹介)(第四〇〇一号)
 同(木島日出夫君紹介)(第四〇〇二号)
 同(筒井信隆君紹介)(第四〇〇三号)
 同(保坂展人君紹介)(第四〇〇四号)
 同(松崎公昭君紹介)(第四〇〇五号)
 同(渡辺周君紹介)(第四〇〇六号)
 重国籍容認に関する請願(今野東君紹介)(第三七九六号)
 同(田並胤明君紹介)(第三七九七号)
 同(桑原豊君紹介)(第三九一七号)
 同(土肥隆一君紹介)(第三九一八号)
 同(小林守君紹介)(第四〇〇七号)
 同(今野東君紹介)(第四〇〇八号)
 同(佐々木秀典君紹介)(第四〇〇九号)
 同(中沢健次君紹介)(第四〇一〇号)
 民法改正による夫婦別姓も可能な制度の導入に関する請願(野田聖子君紹介)(第三九九五号)
 国籍選択制度と国籍留保届の廃止に関する請願(北川れん子君紹介)(第三九九六号)
 同(土井たか子君紹介)(第三九九七号)
 同(保坂展人君紹介)(第三九九八号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 担保物権及び民事執行制度の改善のための民法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一〇二号)


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     ――――◇―――――
山本委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、担保物権及び民事執行制度の改善のための民法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 この際、本案に対し、佐藤剛男君外二名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の共同提案による修正案が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を求めます。山花郁夫君。
    ―――――――――――――
 担保物権及び民事執行制度の改善のための民法等の一部を改正する法律案に対する修正案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
山花委員 ただいま議題となりました修正案について、提出者を代表して、その趣旨及び概要を御説明いたします。
 原案では、現行の短期賃貸借制度を廃止する一方、抵当権者に対抗することができない建物賃借人に対して三カ月間明け渡しを猶予する制度を創設しておりますところ、競売による建物の売却によって突然に生活、営業の本拠から退去を求められることにより建物賃借人がこうむる不利益をより少なくするため、明け渡し猶予の期間を六カ月に改めるとともに、これに伴う所要の修正を行うものであります。
 以上が、本修正案の趣旨及び概要であります。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
山本委員長 これにて修正案の趣旨の説明は終わりました。
    ―――――――――――――
山本委員長 この際、お諮りいたします。
 本案及び修正案審査のため、本日、政府参考人として法務省民事局長房村精一君、刑事局長樋渡利秋君、外務省総合外交政策局国際社会協力部長石川薫君、財務省大臣官房審議官石井道遠君、厚生労働省大臣官房審議官阿曽沼慎司君、大臣官房審議官青木豊君、雇用均等・児童家庭局長岩田喜美枝君及び国土交通省住宅局長松野仁君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
山本委員長 次に、お諮りいたします。
 本日、最高裁判所事務総局園尾民事局長及び山崎家庭局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
山本委員長 これより原案及び修正案を一括して質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中村哲治君。
中村(哲)委員 おはようございます。民主党・無所属クラブの中村哲治です。
 前回、六月六日の質疑に引き続きまして、残した質問をまず伺います。
 まず、短期賃貸借について伺います。
 政府案では、抵当権の設定後の短期賃貸借の賃借人には競落後三カ月間の猶予期間を設けております。この三カ月の趣旨は何でしょうか。改めて確認させていただきます。
房村政府参考人 今回、短期賃貸借制度を廃止するということにいたしましたが、その場合に、競落後、明け渡しを求められる賃借人にとりまして従来の生活の本拠あるいは営業の本拠を移さなければならないわけでありますので、転居先を探して引っ越しをする、こういう一定期間の余裕をやはり与えるべきであろう、そういうことから、そのために三カ月程度あればいいのではないか。また逆に、競落人の立場からいたしますと、競落物件を猶予期間中はみずから使用することができないわけでございますので、余りに長期間の猶予期間があると、競落そのものを希望しないあるいは競売価格が下がってしまう、こういうおそれもありますので、その調和を考えて三カ月としたわけでございます。
中村(哲)委員 御答弁を伺いますと、調和を図るということで三カ月にしたということですが、三カ月という期間の実質的な理由は論理的には導き出されていないということであるというふうに受けとめさせていただくことはできるんではないかと思います。そこで、修正案が議論になるんだというふうに理解をさせていただくところでございます。
 提出者にお聞きいたします。修正案では、明け渡し猶予期間を三カ月から六カ月に修正しております。その理由はなぜでしょうか。
山花委員 今、政府の原案の趣旨について、引っ越しのための期間も必要だということのようでありますが、過日、参考人の質疑の中でも、お年寄りであるとかあるいはシングルペアレントのようなケースでは次の家を見つけるのが大変だという話もございました。また、定期借地借家のようなケースでは六カ月前に通知ということになっておりますので、それともそろえるということもございます。また、明け渡し猶予の期間中は建物を買い受けた人はその建物をみずから使用することができないということになりますけれども、六カ月という程度であれば、競売物件を買い受けようとする側の意欲減退により円滑な売却が阻害されるというような問題も生ずることはないであろうというふうに考えまして、明け渡し猶予の期間を買い受け人の買い受けのときから六月とするものでございます。
中村(哲)委員 次に、お聞きいたします。
 修正案で民法三百九十五条二項を新設することとなっておりますけれども、それはなぜでしょうか。
山花委員 明け渡し猶予期間中の建物使用者というのは、建物について賃借権その他占有権原を有するということになるわけではありません。その猶予期間の満了まで明け渡しをしないことが許されるというところにとどまるわけであります。そして占有者は、明け渡し猶予によって無償で建物を使用することができることになるかというと、そういうわけでもなくて、建物所有者である買い受け人に対して、建物の使用の対価として賃料に相当する額の不当利得の返還義務ということを負うことになります。
 建物使用者が明け渡し猶予期間中の使用の対価を買い受け人から請求されても支払わないような場合に、六カ月の期間が満了するまで建物の使用を許すということになりますと、建物所有者の権利を不当に害するということになるのであろう。
 そこで、修正案の方では、民法三百九十五条に第二項を加えまして、買い受け人が建物使用者に対して相当の期間を定め、一カ月分以上の使用の対価の支払いを催告したにもかかわらずその期間内に建物使用者がその支払いをしない、こういった場合には、その期間の経過後は、建物買い受け人は、建物使用者に対して建物の引き渡しを求めることができるとしたものであります。
中村(哲)委員 簡単に確認させていただきますと、三カ月から六カ月に延ばした、それに対する弊害といいますか、それを軽減するために二項を新設したというふうに理解してよろしいんでしょうか。
山花委員 この二項については、三カ月を六カ月に延ばしたからといって、繰り返しになってしまいますけれども、占有権原があって、新たな賃貸借契約が買い受け人との間に承継されるわけではありませんから、そうすると、ただ占有していて賃料相当分も払わないようなケースが出てくると、これはやはり調整が必要なんであろうということで新設をしたということでございます。
中村(哲)委員 次に、民事執行法八十三条二項を修正して、買い受けのときに民法三百九十五条一項に規定する建物使用者が占有していた建物の買い受け人については引き渡し命令の申し立てをすることができる期間を九カ月に伸長するのはなぜでしょうか。
山花委員 民事執行法の八十三条第二項は、競売不動産の買い受け人は、代金を納付した日から六カ月の間、引き渡し命令の申し立てをすることができるとしております。
 修正案では民法三百九十五条第一項の建物明け渡し猶予期間を六カ月に延ばしておりますから、あわせて引き渡し命令の申し立てをすることができる期間というものも長くいたしませんと、民法三百九十五条第一項の明け渡し猶予の規定が適用される場合には、買い受け人は、明け渡し猶予期間が満了した後も建物明け渡しをしない占有者に対して、引き渡し命令の手続によって簡易に明け渡しの実現ということを求めることができなくなってしまいまして、建物明け渡し請求訴訟を提起しなければならないということになってしまいます。
 そこで、修正案の方では、建物明け渡し猶予期間を原案より三カ月長い六カ月に修正するとともに、買い受けのときに、民法三百九十五条第一項に規定する建物使用者が占有している建物の買い受け人が引き渡し命令の申し立てができる期間も三カ月延ばしまして、代金納付の日から九カ月としたものでございます。
中村(哲)委員 先ほどの確認になるかもしれませんけれども、修正案によると、建物の使用の対価を一月分以上支払わないと建物の明け渡しをしなければならないことになります。それは、原案よりも賃借人保護が後退するのではないかという考え方もあるかとは思うんですけれども、その点についてどのようにお考えでしょうか。
山花委員 確かに、条文をぱっと見ますと、そのような印象を持たれてしまうのかなという気もいたします。
 ただ、この買い受け人が建物使用者に対して明け渡しを求めるためには、一月分以上の不払いがあった後に、相当の期間を定めて催告するということが必要となっております。その催告期間が経過した後、建物使用者に対する引き渡し命令の申し立てをすることになります。そして、引き渡し命令の審理では、審尋において、使用の対価の支払いの有無であるとか、買い受け人が建物使用者に対して建物使用の対価として請求した額が相当であるか否かということが争点となると考えられます。これらの手続を経た上で引き渡し命令が発令されますから、その執行に至るまでは一定の期間を要するということになります。
 原案におきましても、建物使用者が明け渡し猶予期間中の建物使用の対価につき不当利得として支払う必要があることは当然の前提とされていたわけです。ただ、その猶予期間が三カ月というもともと原案の方は短い期間ですので、不払いがあったとしても、今申しました明け渡しの手続をとっているうちにその猶予期間が経過してしまうことが多いだろうということから、不払いがあった場合の取り扱いにつき、恐らくそういった理由で特段の規定が設けられていなかったのではないかと推察をされます。
 したがって、今の説明からもおわかりいただけるかと思いますけれども、修正案の方は原案より賃借人にとって不利な内容となるというような変更ではないということは御理解いただきたいと思います。
中村(哲)委員 ありがとうございました。
 それでは次に、抵当権消滅請求について引き続き質問をさせていただきます。
 民法三百七十八条の滌除を抵当権消滅請求という形態に見直す理由や請求者を所有権者に限った理由については、前回、六日の質疑で伺いました。そこで伺ったことなんではありますけれども、確認をさせていただきたいと思います。
 民事局長に伺います。
 濫用の事例としてどういうものが実際にあるんでしょうか。前回伺ったことの確認とはなるんですけれども、その点について答えていただきたいと思います。
房村政府参考人 滌除権の行使は、第三取得者が抵当権者に対して行う意思表示ということもありまして、そういう私人間の行為でありますので、濫用事例の詳細を把握しているわけではありません。
 ただ、金融関係者とか抵当権を行使することの多い方々から話を聞きますと、現在の滌除制度は、滌除の申し立てを受けますと、増価競売の申し立てをして保証金を納めなければならない、競落人が出ない場合にはみずからその競落をしなければならない、こういう負担が非常に重い。
 こういうことから、第三取得者の方が市場価格よりも相当程度低い額で滌除の申し立てをしてくる。その場合に、その額が余りに低い場合には増価競売の申し立てをするしかないわけですが、多少低いということですと、低いとは思いつつも、負担が重いということから滌除の申し出を受けざるを得ない。そういうことで、相当低い額で妥協せざるを得ないという弊害が生じているというぐあいには聞いております。
中村(哲)委員 ヒアリングをしているのがどうも銀行からのヒアリングが中心となっていて、一般の滌除を今まで利用したことのある人というようなところからの意見がどうも聞けていないような、そんな気もするんです、答弁を伺っておりますと。
 ということであるならば、やはり法務省としても民事局としても、従来の滌除権者と言われている人たちにも配慮する必要があると思うんですけれども、この抵当権消滅請求の手続では、第三取得者にはどのような配慮がされているんでしょうか。不利益を制度の見直しによってこうむることはないのでしょうか。
房村政府参考人 実は、今申し上げたような滌除が濫用されているということから、今回の検討に際しましては、滌除制度をそもそも廃止すべきである、こういう意見も相当強く主張されたわけでございます。
 ただ、抵当権つきの物件を取得した人間に、その抵当権の負担を消滅する道を開く、ひいてはそれが物件の流通を促進する、こういう観点も重要であるということから、抵当権を消滅する制度は基本的に残すということにいたしまして、ただ、従来の制度が余りにも抵当権者にとって負担が重い、その抵当権者の負担の重い部分を見直すことによって合理的な制度にしようということにしたのが今回の提案でございます。
 これによりまして、第三取得者としては、基本的に自分の申し出た額でその抵当権の負担を消滅する道は依然として開かれておりますので、そういう意味では、第三取得者にとっては、今回の改正によって特段の不利益は生じていないというふうに考えております。
中村(哲)委員 第三取得者は自分の希望した額を入札すればいいという話になりますので、確かにその点は、抵当権者に不当なほど有利な制度にはなっていないのではないかという主張も一理あるのではないかということで、受けとめさせていただきたいと思います。
 次の質問に移ります。
 民法三百八十九条で、一括競売制度の導入が政府案にありますが、この趣旨はどのような趣旨でしょうか。
房村政府参考人 現行法の三百八十九条で一括競売を認めておりますが、これは、土地に抵当権が設定された後に、その土地上に建物が築造される、それでその土地しか抵当権の効力として競売できないということになりますと、土地を競落した人間は建物の所有権は取得しておりませんので、その建物が占有権原がないものであるとしても、訴訟を起こして収去を求めなければならない、こういう負担をこうむります。そうなりますと、当然その負担を恐れて競売に参加しない、あるいは競売価格が非常に下がる、こういうことになりますので、建物も一緒に競売してしまえばその建物所有権も取得しますので、建物をそのまま利用することも可能ですし、自分の費用で取り壊す場合であっても訴訟等の負担はこうむらない、こういうことになります。
 そういうことから土地建物を一括して競売ができるということにしているわけですが、現行法では、抵当権設定の後その設定者が抵当地に建物を築造した場合に限っております。ただ、抵当権設定者以外が建物を建てた場合であっても、その建物についての占有権原を持っていない、不法占有である、こういうような場合には、競落されればその土地の所有者からいずれ取り壊しの請求を受ける、そういうことでございますので、こういう場合も一括競売をできるようにすれば、競落をする人にとっても便利ですし、ある意味では、建物の所有者にとっても、みずから取り壊しをしないで、逆にその競売代金の配当を受けることも可能になる、こういうことから、今回範囲を広げまして、一括競売ができる場合を広げた、こういうことでございます。
中村(哲)委員 そうすると、建物所有者に対する配当はどのようになるのか。金額的にはどのような金額になるというふうに考えられるのか。手続的な規定もありましたら、そのこともあわせてお教えいただきたいと思います。
房村政府参考人 これは、一括競売をいたしましても、抵当権者が優先弁済を受けられるのは土地の代金部分に限りますので、建物の代金部分は建物所有者の方に参ります。
 その代金をどういうぐあいにして案分するかということでございますが、これは、裁判所が土地の評価額と建物の評価額をそれぞれ出しまして、その比例に従いまして競落代金を案分する。
 その場合の評価の仕方といたしましては、建物については、もともと土地の使用権がついておりませんので、建物としての額、ですから、例えば、現在その建物を建てるとすれば幾らかかる、その使用年数に応じて償却したような額というような算定方法が一つ考えられると思いますが、そのような適切な方法によりまして、建物そのものの額として評価をいたします。土地については、そういう負担のない更地の評価を基本としてそれぞれの評価額を出して、それで案文をして、建物部分のものを建物所有者に配当する、こういう形になります。
中村(哲)委員 確認なんですけれども、土地については、市場価格を中心として、近隣のところとの比較をしながら裁判所が額を積算する。そして、建物に関しては、この建物を建てたときの建築費を幾らかと算定して、そして経年劣化していますから、その分を考慮する、それが建物の現在価格になる。そして、先ほど算出した土地の価格そして建物の価格、この比率が出る、何対何というその比率が出る。そして、競落した額をこの先ほど算出した比率で分配して配当に回す。こういうことでよろしいですね。
房村政府参考人 土地建物の評価の仕方は、また専門的にいろいろあろうかと思いますが、基本的にはおっしゃるとおりでございます。
中村(哲)委員 それでは、次に疑問になるのが、建物が登記されていない場合、この場合でも一括競売をすることができるんでしょうか。
房村政府参考人 これは建物が登記されておりませんでも、一括競売は可能になります。
 参考までにその場合の手続を申し上げますと、申し立て債権者の方で、執行裁判所に建物の図面それから各階の平面図、これを提出していただきます。裁判所書記官が差し押さえの登記を嘱託するときに、これらの書面を登記所にあわせて送ります。そうしますと、登記官がその未登記の建物について、そういう資料に基づいて表示の登記をした上で差し押さえの登記をする、そして競売をする、こういう形になります。(中村(哲)委員「図面がないときは」と呼ぶ)それは出していただかないと、登記ができないものですから。よろしいでしょうか。
 建物を評価するということで、当然、現況調査等も行いますので、それは図面は作成可能ではないかとは思っております。
中村(哲)委員 図面は税務署から取り寄せたりすることができるという話も聞いておるんですけれども、その点は、確認なんですけれども、いかがでしょうか。
房村政府参考人 済みません、そういう実務的なところは私も余り詳しくないんですが、実態としては、債権者の方がいろいろな手を尽くして図面を出していただいて、表示の登記をしているという実情のように聞いておりますが。
中村(哲)委員 ここの点はきのう質問通告でも確認していたので、ぜひ答弁を用意していただきたかったんですけれども、できないということですから、次の質問に移ります。
 根抵当権について伺います。
 民法三百九十八条ノ十九で根抵当権について規定を追加しておりますけれども、この趣旨はどのような趣旨でしょうか。
房村政府参考人 根抵当権はその対象となる被担保債権が浮動するわけですが、これを実行するためにはその被担保債権を確定する必要があります。
 確定事由がこの三百九十八条ノ二十に種々規定されておりますが、その第一号には、「担保スベキ債権ノ範囲ノ変更、取引ノ終了其他ノ事由ニ因リ担保スベキ元本ノ生ゼザルコトト為リタルトキ」と、これが確定事由として挙げられております。
 一見しますと、極めて当たり前の、もうこれ以上債権が生じないんだから確定するということのようなんですが、取引が終了したかどうかというのはなかなかわかりにくい。そういうことで、従来から、この元本確定事由については外形的、客観的に明確に判断できない、こういう非難がございました。そういうことから、無用の紛争を避けて明確にするために、根抵当権者による通知によって、意思表示によって元本を確定するということを認める、これであれば非常に明確でございますので、そういうことによって確定事由としたいと。
 また、この確定事由は、基本的に根抵当権者の方で、もうこれ以後の債権は担保してもらわなくても結構です、こういう意思表示ですから、基本的には設定者に不利益を与えるものではない。そういうことから一方的な意思表示で確定をさせても問題は生じないであろう、こういうことから、新しく確定事由として、また、そういう事由で通知の事実がはっきりすれば登記もその事実に基づいてできるということから、双方申請ではなくて単独申請で可能にする、こういう改正をするものでございます。
中村(哲)委員 それでは、なぜ今までこの規定が設けられていなかったのでしょうか。
房村政府参考人 基本的には、根抵当権者にとっては、今後生ずる債権が抵当権で担保されるというのは利益な状態である、それを確定させる必要が多いのは設定者の方であろう、こういうようなことから、設定者の側からの意思表示による確定は従来から定められていたわけですが、根抵当権者についてはそういうものが用意されていなかったわけであります。
 ただ、最近のように、根抵当権で担保されておりました債権を抵当権つきで債権譲渡をしたい、こういうような場合には、確定をしないと債権譲渡ができません。この場合には、根抵当権者にとってもそうする必要性がありますので、それで、そうしたからといって、先ほど申し上げたように設定者に特に不利益を与えるものではない、こういうことから、抵当権者側からの意思表示による確定請求を今回認めるということとしたものでございます。
中村(哲)委員 以上で、前回積み残した質問はすべて聞かせていただきました。では次の質問に移ります。
 前回六月六日の質疑において、不動産登記法十七条の、いわゆる十七条地図についての質問をしました。質疑の後、前回お聞きした予算面の問題だけではなく、境界を確定する手続の不備が実は十七条地図の整備が進まない原因のもう一つの大きな理由になっているのではないかと思うようになりました。
 そこで、民事局長に伺います。
 現在、土地の境界を確定する手続としてはどのようなものがあるのでしょうか。
房村政府参考人 現行法上、土地の境界が争われているという場合には、境界確定訴訟という訴訟類型が解釈上認められております。その場合には、その隣接する者が隣の人を相手取りまして、境界の確定を裁判所に求める。裁判所で審理、判断をして、その境界を確定する、こういう訴訟がございます。
中村(哲)委員 つまり、境界確定訴訟しかないということなんですよね。そして、その境界確定訴訟で土地の境界が確定した場合、十七条地図の整備につながるんでしょうか。
房村政府参考人 法律的な制度としては、御指摘のように境界確定訴訟しかありません。
 これが確定した場合ですが、これは、その結果を当事者の方で登記所に申し出て、地図の訂正等を求めていただければ、登記所の方でもその判決を参考にいたしまして地図の訂正等が可能でありますが、私人間の訴訟でございますので、特に届け出の義務とかそういうものはありませんから、連絡がなければ全くわからない、こういうことになってしまいます。
中村(哲)委員 非常に問題が多いのかなという気がいたします。つまり、法曹関係者と申し出の当事者、土地の境界を争っている当事者だけで裁判をするわけですから、そこの専門的な測量とかいうところは必ずしも必要になっているわけではない、また登記所に知らせる義務もないということで、十七条地図の整備には必ずしもつながらない。しかし、境界の確定する手続としてはこの境界確定訴訟という形しかない。非常に問題が多いというふうに認識せざるを得ないと思うんですが、これまで民事局としてはどのような取り組みをしてきたのでしょうか。
房村政府参考人 実は、御指摘のように、境界をどう確定するかということについては、法律的な整備が非常におくれているというぐあいに私どもも思っております。この境界確定訴訟も、現行法上、特に法律上の根拠が定められているわけではなくて、かつて裁判所構成法におきまして、「不動産ノ経界ノミニ関スル訴訟」を区裁判所の管轄に属する、こういうような規定もあったことから、解釈によりましてそういう訴訟類型が認められているということでございます。
 ところが、この境界というのはいわゆる所有権の境とは性質が違う、いわば公法上のものでございます。何番地の土地の境界がどうかというのは、その所有者だけではなくて、やはり公の事柄でもありますので、公法上の効果を持っているというぐあいに普通考えられております。ところが、これを私人が自由に決めることのできる訴訟で争わせるということが本当に境界の定め方として適切であるかどうか、こういう問題がそもそもございます。
 また、境界確定訴訟については、今言ったように、解釈で認められてきているものですから、手続等についても必ずしも明確に決まっているわけではございません。それと、やはりどうしても訴訟ということになりますので、判決の確定までに相当の時間がかかって、費用もかかる。また、訴訟として隣同士で裁判所で争うという形になりますので、隣人関係に悪影響が出るというようなことも懸念されております。また、その判決の効果も一体どこまで及ぶのか、こういう問題もございます。
 そのようなことから、境界を確定する、あるいはその紛争を解決する制度というものを国として整備すべきではないかということは、私ども登記に携わる者として考えております。そういうことから、平成十一年に専門家、有識者から成る研究会に研究をしていただいて、裁判外紛争解決制度に関する調査研究報告書というものを取りまとめて、境界紛争の解決のあり方について研究をしてきたところでありまして、現在においても引き続き研究等を進めております。
中村(哲)委員 平成十一年ということは四年前ですよね。四年前からまだ何も進んでいないということも問題だとは思うんですけれども、まず確認をさせていただきたいと思います。
 平成十一年に出された研究会の報告、これの概要というものはどういうものでしょうか。今の境界確定訴訟の問題点はどのように解決されているんでしょうか。
房村政府参考人 平成十一年の研究会報告書では、境界の確定を法務局長等の行政処分で行う、いわば公法上の境界でございますので、行政処分の形でそれを確定する、そして、その土地の所有者等がその処分に不服があれば、行政訴訟でその取り消しを求める、こういうことを基本としております。
 法務局長が境界についての処分をする場合には、弁護士、土地家屋調査士、登記官等の境界に関する専門家から構成される合議機関を設けまして、そこで調査審議をしていただいて、その結論を諮問していただく、それに基づいて処分を行う。こういたしますと、公法上の境界を国が判断するという形で理論的にも整合いたしますし、また、境界に関する専門家が登記関係の方々に大勢いらっしゃいますので、そういう方の専門知識を活用して、より適切な判断が可能になるのではないか、こういうことから、基本的な仕組みとしては今申し上げたようなものを考えております。
中村(哲)委員 それでは、なぜそれを立法化、すぐにはしようとしていないんでしょうか。もう四年たっております。恐らく、今の御答弁から考えると、もう立法化したいんですけれども、なかなか手が回らなくてできない、そういうお話なのかなと思うんですが、いつごろを目途に考えていらっしゃるんでしょうか。
房村政府参考人 十一年に報告が出ているのになかなか立法化していないという点では、確かに私ども、御指摘を受けますと恥ずかしいんですが、一つには、現在、司法制度改革推進本部で裁判外紛争解決制度について全般的に検討して、その基本的な枠組み、いわば基本法というようなものをつくるという動きがございます。この境界紛争も当然そういう裁判外での紛争解決制度でございますので、本部で検討しております裁判外紛争解決制度の基本的な枠組みに合致したものにしたい、そういうことから、推進本部での検討を待ってそれに合致するような形で立法したい、こう考えて少しおくれているということが一つございます。
 それから、制度自体としても今までにない全く新しいものでございますので、例えば不服申し立てをする行政訴訟の仕組みをどういうぐあいにするのか。実は、この行政訴訟そのものについても推進本部でもまた見直しが進行しておりますので、やはりそういうものを踏まえて、せっかくつくる制度ですから、つくってすぐにまた修正ということでは困ると思いますので、そういうことからややおくれておりますが、私どもの今の予定といたしましては、不動産登記に関しましては、来年の通常国会にオンライン申請を可能にするための不動産登記法の全面改正をお願いしようと思って鋭意努力をしているところでございます。その次の課題がこの紛争解決制度ではないか。
 ですから、推進本部でADRの基本法の仕組みあるいは行政訴訟の仕組みが確定いたしますと、それを受けてできるだけ早期に立法したい、こう考えております。
中村(哲)委員 司法制度改革の一連の大きな流れの中でこの境界確定手続の立法を進めていくということで理解をさせていただきたいと思います。
 そして、この境界確定手続法が将来できた場合には、ほかの分野、ほかの省庁も含めてどのような影響を与えることができると法務省としては考えているのでしょうか。
房村政府参考人 これは、今まで訴訟を起こさなければならなかったような境界をめぐる紛争がここで適切に解決される、裁判外紛争機関という性質上、簡易迅速に、しかも専門的な判断に基づいて適切に解決することが可能になるだろうと思っております。
 それともう一つは、先ほどから御指摘を受けております十七条地図の整備、この地図の整備をする場合に、必然的に境界をめぐる紛争が惹起したり、あるいはそれを解決しないと地図がつくれないということがございます。こういう仕組みができますと、それと有機的に連動しながら十七条地図の整備を図っていくことが可能になるのではないか、そういう意味でも重要な事柄である、こう思っております。
中村(哲)委員 つまり、予算がついていたとしても、それを使うためには非常に大きな手間がかかっていた、だから、このような境界確定の手続が新たにADRとしてできれば、それが利用されることと相まって予算もきちんと使っていただける、そういうことだと理解できるんですね。そういうことですね。
房村政府参考人 御指摘のように、地図は境界を図面に落とすものですから、境界そのものが決まらないと地図がつくれない。この手続によりまして、従来に比べて迅速、適正に境界が確定できれば、地図の整備作業も進捗する、こういう関係にございます。
中村(哲)委員 あと房村民事局長に確認なんですけれども、先ほどおっしゃったように、境界確定というのは公法上の確定である、しかし、一方で土地の所有権というのは民法上の物権の争いですね。恐らく、望まれるべき、将来できると言われているこの境界確定手続法では、ともに確定する手続じゃないとなかなか意味がないのかな。例えば取得時効があった、そうすると所有権が移っているわけですから、そこも含めて境界を確定して公法上の境界もつくる、同時にそのようなことがなされるようなADRにならないと意味がないのではないかと素人ながらに思うんですが、その点については、今どのようにお考えでしょうか。
房村政府参考人 実は、それはなかなか難しい問題がございます。
 御指摘のように、利用する立場からすると、所有権といい境界といい、やはり、自分の土地の範囲がどこなんだ、こういうことを決めてもらいたいという希望はあるだろうと思います。ですから、そういう立場からしますと、境界とあわせて所有権の範囲についても確定するということが便利ではないかとは思うのです。
 ただ一方、理論的に考えますと、境界というのは公法上の定めということになっておりますし、所有権の範囲と境界の範囲が必ず一致するわけでもない。隣の土地の一部を時効取得しちゃっているような場合には、所有権の範囲はそこまでいっておりますが、それによって境界が動くわけではない、こういうことがございます。
 今、我々が考えておりますそういう境界確定を行政処分型で行う場合、集める専門家は境界の認定についての専門家を集める、こういうことが中心でございますので、いわゆる訴訟手続で争われるような所有権の有無をそこで判断することが果たして適切かどうか、こういう問題もございます。
 ですから、実は、研究会報告ではそこは比較的消極的に、土地の所有権の争いについては謙抑的に手を出さない、それは裁判所の方に任せようか、あるいはまた別の、ADRがあればそちらに、こういう考え方にはなっております。
 ただ、利用者からすれば両方一緒にということもあろうかとは思いますので、いずれにしても、今後研究を進めて、ADR基本法の考え方等も参考にしながら決めていきたい、こう思っております。
中村(哲)委員 房村民事局長、今おっしゃったことの前提というのは、ある意味十七条地図が一〇〇%整備している場合には当てはまる理屈じゃないかなと思うんです。公法上の境界ですから、十七条地図があった場合には、もう余りそこに手を入れる必要もないというか、そういう要請は出てくると思うんです。
 ただ、十七条地図自体がなくて、はっきりしていないようなところもたくさんあるわけですね。その中で境界を確定しながら手続を進めていくということですから、やはり、公の地図でどういうふうな境界を引くのかということと所有権の確定というのは実は非常に密接に関係してくる。にもかかわらず、ADRで一挙に解決できなかったとしたら、それは境界確定訴訟の弊害が残るということにもなりかねない。そこは確認をさせていただきたい、また主張をさせていただきたいと思いますが、時間もありますので、次の質問に移りたいと思います。
 次に、登記業務のコンピューター化とインターネットでの公表について質問をいたします。
 抵当権の設定物件の短期賃借人に対する保護の議論においても、賃借人が登記を見ることが必要である、前提であるというような議論がされております。しかし、実態として、賃貸物件を探すときに、希望する物件の検討の際に、抵当権がついているか、一々登記所に行ってそんなの調べる人はだれもいないと思うんです。
 私も最近物件を調べましたけれども、十件二十件回って見るわけですよね。紹介されたら、これ、よさそうやなと思って何件か見るわけです。そうしてその中で、ではそれを今度登記所に行って調べるのか。賃借物件というのは言ったら早い者勝ちの世界ですので、そんなの一々調べている暇もないというような、そういった今までの慣習があると思うんです。だから、議論の前提になっていることと実質的なものと、いわゆる立法事実が違うわけですよね。だから、そこは考えて制度をつくらないといけないんだと思うんです。
 私は、登記情報、つまり登記簿情報と十七条地図ですね、その情報をインターネットで自由に閲覧できるように将来的にはしていくべきではないかと思うんですが、この点についていかがお考えでしょうか。
房村政府参考人 御指摘のように、インターネットで登記の情報を見ることができるようにする、これはこれからの社会では当然要求されることだろうと思っています。私どもも、今、登記簿に入っている情報は、コンピューターで処理をするように、コンピューター化をしておりますので、そのコンピューター化した登記情報については、インターネット経由でこの情報を見るということを可能にする登記情報の提供に関する法律をつくりまして、現に実行しております。
 地図については、残念ながらまだ地図のコンピューター化が、進むというかまだ着手もしていないものですから、将来の課題になりますが、この登記簿のコンピューター化の次は地図情報をコンピューター化する、そしてその情報をやはりインターネットで見ることができるようにする、こういうサービスを提供するというつもりで、そのシステムの開発等も進めているところでございますので、将来的には、御指摘のように、インターネットを使いまして、いながらにして登記情報を見ることが可能になる、こういうことを実現したいと考えております。
中村(哲)委員 今の登記簿情報に関しては、今もうインターネットで見られる手続がある、そして、地図情報に対しても将来的にはインターネットで見られるようにしないといけない、そういう御答弁だったと思うんです。
 今、財団法人民事法務協会による登記情報のインターネットでの提供がなされているということなんですけれども、ちょっと高いんじゃないかなと思うんです。一件当たりの手数料は九百八十円。ということは、十件見ようと思ったら、九千八百円クレジットカードで決済をしないといけないわけです。それはなかなかちょっと高いんじゃないか。例えば抵当権をつけたりまた不動産の売買のときには、一件当たり九百八十円、これはそんなに高い値段じゃないと思うんです。しかし、短期賃貸借のところで、参照すべきという立法趣旨ならば、そこはもっと安くする政策的な努力が必要なんじゃないかなと思うんです。そこが違うといったらまた別ですよ。
 僕は、売買とか抵当権の設定の際であれば、一件当たり九百八十円というのは必ずしもそんなに高くはないと思うんですけれども、そういった要請があると思うんですね。だから、低廉な額で情報提供をしていく今後の努力というのは必要なんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。
房村政府参考人 確かに、御指摘のように、今回のような法改正を行いますと、抵当権の有無を登記簿で確認するという必要性が生じてまいりますので、それをできるだけ低廉な費用で確認できる道を開くということは重要なことだろうと思います。
 ただ、現在の手数料も、実際にかかる経費を予想利用件数で割りまして一件当たりの単価を出して、それに基づいて定めるということで、決して恣意的に高目に設定しているわけではないんですが、ただ、現実にインターネットの利用件数は相当伸びております。したがいまして、利用件数が伸びてくれば、それを踏まえて一件当たりの手数料を下げるということは可能になろうかと思います。
 また、経費削減の努力も今後続けて、ぜひ利用しやすい価格におさまるような努力をしていきたい、こう思っております。
中村(哲)委員 つまり、手数料の問題というものは非常に重要な問題である、ここを検討しないといけないと思うんですね。
 今はインターネットの話をしましたが、登記所での閲覧とか登記簿謄本をとる場合でも同じことだと思うんです。登記簿謄本をとる場合には、今、一件千円の手数料がかかります。また、登記簿を閲覧する場合には、一件五百円の手数料がかかります。こういった手数料は、法律上は登記特別会計で処理されていると聞いております。
 登記特別会計ではどのように使われているのでしょうか。
房村政府参考人 それでは、簡単に登記特別会計の仕組みから御説明をさせていただきたいと思いますが、よろしゅうございましょうか。
 実は、登記特別会計は大きく二本柱でできております。一つが、今御指摘のような手数料収入、これが大体一千億程度ございます。それからもう一つは一般会計からの繰り入れ、これが大体七百四十億程度ございます。
 こういう二本柱でできておりますのは、実は、登記所の行っている事務に二種類の事務がございます。一つは、いわゆる所有権移転というような登記申請を処理する登記審査事務でございます。それからもう一つは、登記簿謄本を発給するというような証明に関する事務、私どもとしては、これを登記情報事務、こう申しております。そういう登記事件の申請を処理する審査事務と証明等を行う登記情報管理事務、この二つに大きく分かれております。
 財源もこの二つに分けて使っている。手数料収入の方は証明等の登記情報管理事務に使う、そして、一般会計からの繰り入れは登記事件の審査に当たる審査事務に使う、こういうことになっております。
 したがいまして、手数料で納めていただいた額は、専ら登記情報管理事務、ですから、コンピューター化経費であるとかコンピューターの運営あるいは謄抄本発給事務機器の整備、それに従事する職員の給与、こういったものに充てられております。
中村(哲)委員 手数料収入が大体千億円、そのうち、人件費とかもかかりますので、登記情報管理事務の方には大体七百億円程度今かけているということだと思います。
 そうして、今後このコンピューター化はどのように進んでいくのか。七百億円かけて、どういったスケジュールで進んでいくというふうに考えたらいいのか。例えば、都市部では何年度までにやろう、全国では何年度までにやろう、そういった予定があるのであれば教えてください。
房村政府参考人 今、全国的にコンピューター化を進めているところでございますが、不動産登記のコンピューター化につきましては、今のめどといたしましては、平成十六年度末までには、需要の多い都市部等を中心に全国の主要な登記所の移行作業は完了させられるであろう、こう思っております。
 ただ、何分、登記所は全国に七百二十カ所以上ございますので、そのすべてをコンピューター化するということになりますと、どうしても平成十九年度ぐらいまではかかってしまうのではないか、こう思っております。
 私どもとしては、一日も早くコンピューター化を完了して、オンライン等で利用していただけるようにということで、今後も鋭意コンピューター化のスピードアップを図っていきたい、こう思っております。
中村(哲)委員 先ほどのお話は登記簿のコンピューター化に限られるんだと思うんですね。確認をさせていただきたいんですけれども、そういうことだと思います。
 つまり、十九年度までになされるコンピューター化は登記簿であって、十七条地図はまだなわけですよね。この十七条地図は、今後どのようにコンピューター化していく予定なんでしょうか。
房村政府参考人 地図につきましても、現在は数値地図が主流になっておりまして、コンピューターで処理することがもう可能にはなっております。したがいまして、登記所に備えられている十七条地図をそういうコンピューターによる数値管理をすれば、コンピューターで処理ができますし、オンラインで見ることも可能になります。
 現在、そのための準備としてシステム開発を行っておりまして、まずはパイロットシステムを立ち上げて、問題点を実際に試して研究したい、こう思っている段階でございます。
中村(哲)委員 今からやっていくということなんですけれども、そもそも、十七条地図をやはりきちんと整備する必要があると思うんですよね。
 先ほどお話を聞きますと、十七条地図の整備というのは、登記審査事務の方に入るわけですよね。つまり、一般財源の部分でなされている。だから、先ほどおっしゃったように、手数料で賄われる登記情報管理事務とは違う仕分けの部分から出さないといけない。やはりこの九千百万円をふやしていく努力をしないといけないんじゃないでしょうか。
 と申しますのは、登録免許税、これは一年間に八千億円ぐらいあるわけですよね。だから、手数料と考えれば、八千億円、十七条地図に回せるはずなんですよ。でも、それは現実的ではないですから、一般財源として非常に重要な財源でもありますから、八千億円はすべて十七条地図に回すということはできません。それはわかりますけれども、八千億円と九千百万円、これは全然額が違うわけですよね。
 ということを考えても、国土交通省がやっている地籍調査が二百六十億円ということを考えても、法務大臣はもっと閣議の中でも、やはり十七条地図をふやすために、八千億円上げている登録免許税、二百六十億とは言わないけれども、少なくとも百億ぐらい回してくれということを言えるんじゃないでしょうか。いかがでしょうか、大臣。
森山国務大臣 この問題の重要性から、おっしゃるようなことも大いに考えられると思います。
 閣議といわずいろいろな場合にそのことを主張して努力したいと思います。
中村(哲)委員 いや、もうすごく力強いお言葉をいただきました。閣議とはいわずいろいろな場所で言っていくということをおっしゃっていただきましたので、本当にこの十七条地図は、近代国家として日本が存立するもう最低限の条件ですから、ここをしっかり政府として今後とも取り組んでいただくということで、質問を終わります。
 ありがとうございました。
山本委員長 山花郁夫君。
山花委員 民主党・無所属クラブの山花郁夫でございます。
 担保・執行法について質問をしたいと思います。先日来いろいろ議論のあるところですけれども、まず、先取特権のところについて伺いたいと思います。
 先取特権で、従来は雇人給料という形になっていたものが、今回は対象が広がった、広がったというふうに民事局長が答弁をされているんですけれども、私は、ずっと議論を聞いていて、おやと思っていたことがあるんです。
 というのは、対象は確かに広がっていると思うんです。六月という期間制限もなくなりましたし、給料という言葉でもなくなりました。ただ、おやと思っていたのは、その主体も本当に広がっているのかなと。つまり、従来も民法の教科書なんかには、雇人といったときには、民法上の典型契約である雇用契約の主体だとは書いていないわけですよね。ところが、局長の答弁を伺っていますと、いやいや、従来よりこれも広がりましたのでということで、例えば、同僚委員からも指摘があった手間請の問題だとかあるいは一人親方なんぞについても、ケースによっては判断するという言い方をされているわけです。
 ただ、私は、一般の学者の書かれた教科書などを読めば、いや、それは従来からそうだったんじゃないのかな、そういう印象を持っていたんですけれども、これは主体が広がったということでよろしいのかどうか。まず、それを確認させていただきたいのと、労働法上の労働者とほぼ同一の意味なのかということについて、改めて御答弁いただきたいと思います。
房村政府参考人 従来の民法の解釈についてもいろいろな考え方があろうかと思いますが、一般的には、民法の雇人というのは雇用契約に基づくという理解が多かったのではないかと思います。ただ、それは解釈の仕方としては、必ずしも法形式にとらわれずに、実質としての雇用契約だという判断の仕方はあろうかと思いますので、必ずしも典型契約の雇用のみに限るということが確立した考えとは限りませんが、商法に比べれば狭いというのが一般的な理解であったのではないか。
 今回、もともと広く解釈されていた方にとっては同じだとは思いますが、そういう狭い解釈をとっていた場合であっても、今回の改正でそれは広い方に合わせるということで、実質雇用関係、いわゆる支配従属といいますか、そういう関係にあれば保護の対象に入るということを申し述べたわけでございます。
 それから、労働基準法あるいは労働組合法でいろいろ労働者性の判断もございます。これは基本的にそう大きくは違わないと思いますが、それぞれの法律の必要性、例えば労働基準法であれば労働環境等についての保護を与える必要性の観点から労働者性を判断することになろうかと思いますし、労働組合法であればいわゆる労働権の主体としての労働者性ということになろうかと思います。ただ、民法では、先取特権の保護の対象としての使用人を判断するということになろうかと思います。
 ただ、現実に、その労働者性の判断で、例えば指揮命令関係がどうなっているかとか、給与の支払い形態がどうなっているか、こういうようなことを総合して判断をされているようでございますが、その多くはこの民法の使用人、いわゆる雇用関係に基づく労務提供の対価であるかどうかという判断には共通の部分も多いのではないか。したがって、参考になる部分は多々あろうかと思っております。
山花委員 これは法律によって、例えばの話、全く同じ言葉を使っていても、法律が違えば、場合によっては解釈が違うことというのはあり得るのは承知はいたしておりますが、今回テーマになっております先取特権も、これは労働債権を対象とするものということになりますから、広い意味では、最も広くとれば、それは学者がどうテーマ設定するかにもよりますけれども、恐らく労働法の一部をなすところになるのかなと思います。
 それだけではなくて、実態として見たときにも、例えば会社がつぶれた、つぶれたという言い方は法的にはいろいろなケースがあって、民事再生法の適用のケースもあれば、破産法のケースもあれば、いろいろあるんですけれども、つぶれたというときに、そこで働いていた人たちが、例えば賃確法とかありますし、それを使う、あるいは労働法のいろいろな手だてをとる。そして、それの中の一つとして今回の先取特権ということが出てくるわけですので、そういったときに、当事者からすれば、そんな法律について皆さんプロではない方がむしろ一般ですから、あるときは自分は労働者で、あるときは使用人でなかったりとかというのは、何かとても不思議なことが起こってしまうような気がするんですね。
 そこで、厚生労働省に、きょうおいでいただいておりますので、お伺いしたいと思いますけれども、厚労省の方では、労働基準法研究会労働契約等法制部会というのがあって、そこで平成八年の三月に労働者性検討専門部会報告というのが出ております。大変詳細な報告なんですけれども、これの五ページ以下から、「使用従属性に関する判断基準」ということで、指揮監督下の労働に当たるかどうかということで、イ、ロ、ハとかこうありまして、「仕事の依頼、業務に従事すべき旨の指示等に対する諾否の自由の有無」、「業務遂行上の指揮監督の有無」、「拘束性の有無」、「代替性の有無」など、こういった判断基準を挙げられております。
 この専門部会報告というのは、聞くところによりますと、結構有名なもので、労働関係の仕事をしている方なんかだとこれの存在なんかはよく知っているようですけれども、そもそもこれはどういうたぐいの性質のものなんでしょうか。これに従って判断しなきゃいけないとされているものなのか、あるいは、これを参考にして現場の方で実務的に動かれているということなのか、お願いします。
青木政府参考人 お尋ねの労働基準法研究会の労働契約等法制部会、平成八年三月に労働者性検討専門部会報告というのを出しておりますけれども、これは、労働者性というのは実態的に判断をするということで、非常にさまざまな実態がございますので、私どもは労働基準法を初め労働関係法を各種実際に施行しているということでありますので、その研究会でかなり詳細に検討していただきまして、建設業の手間請従事者とか芸能関係者について具体化をしていただいたということであります。
 私どもとしては、こうした報告書などを都道府県労働局、地方の出先でありますけれども、などに送付いたしまして、現実に個別事例の積み重ねを通じまして、労働者性の判断というのをこういったものを参考にしながらやるということにいたしておるところであります。
山花委員 この専門部会報告を拝見させていただきますと、ここで大変詳細に検討されておりまして、例えば、仕事の依頼、業務に従事すべき旨の指示に対する諾否の自由の有無ということで、つまり仕事を依頼されて拒否できるかどうか、恐らく、労働者といったとき、普通は拒否できないでありましょうし、さらにこれを読んでいきますと、そういった単純なことだけではなくて、どういう事情があったら労働者性が認められるのか、あるいは、それだけではなくて、むしろマイナスになるケースはこういうことではないかとか、そういったことが具体的な例が挙げられて、詳細に検討されています。
 また、後ろの方へ行きますと、先ほども出ておりましたけれども、大工さんの例で、こんなのはどうかとか、こんなのはどうかとか検討されているんですけれども、民法上の先取特権で言う使用人に当たるかどうかという判断の要素として一応、これがそのままということではないんでしょうけれども、大体同じような形で判断の要素として参考になるというふうな認識でよろしいでしょうか。
房村政府参考人 御指摘の報告書、私も拝見をさせていただきました。非常に詳細に検討されております。
 これは労働基準法上の労働者の基準ではございますが、実際に基準として指摘されております、例えば委員から御指摘のあった、仕事の依頼等を諾否の自由があるかどうか、こういうような点は民法上の使用人の判断をする際にも当然参考になる、ここで検討されておりますような基準というのは、民法における解釈についても参考になるというぐあいに考えております。
山花委員 厚労省の方にこれはお願いがあるんですけれども、こんな話を聞いたことがあって、というのは、建設現場で働いている方で、機械によって指を落としてしまった、労災の認定をしてもらおうと思って行ったんですけれども、最初本人が請負だというふうに言っていたものですから、それだけが理由じゃないのかもしれませんけれども、それでなかなか認定が手間取ったというような話も聞いております。
 もう既に各地には送られているということですけれども、この報告を参考にして、誤りのないようやっていただきたいと思うんですけれども、一言いただければと思います。
青木政府参考人 労働基準法を初め労災保険法、労働関係法令で労働者保護がいろいろ規定され、措置されているわけでありますけれども、それのもとになりますのは労働者であるかどうかということでありますので、そういう意味では、ここのところは最も基本的なところということであります。
 大変さまざまな実態がありますものですから、極めて限界的な事例については非常に難しい場合も出てまいります。そういう意味で、こういった研究会などでいろいろ御検討いただくということもやっているわけであります。
 こういった実態に即して判断をするということでやっておりますので、こういった報告なども十分にさらに一層第一線でもきちんと活用してやれるように今後ともやっていきたいというふうに思っています。
山花委員 では、青木審議官どうもありがとうございました。退席されて結構です。
 それでは次に、この先取特権なんですけれども、先日来ずっと参考人の質疑でも意見を伺ったりとか、あるいはこの場でも申し上げてきたことですけれども、これを実現しようとするとなかなか手続のところで壁があって、これももう申し上げていたことですけれども、実際に立証するための書面を集めようとすると、しかも証明力のあるような形でということになると、そうそう容易に手に入らないものであったりとか、あるいはせっかく手に入れても、いろいろなものを持っていっても裁判所の方で、いやそれだけではちょっとという話があったりとか、過日、山内委員もいろいろ質疑をされておりました。
 そこで、まず裁判所の方にお伺いしたいんですけれども、過去にも同様の議論が行われていたわけであります。第八十七国会、昭和五十四年のことですから結構昔になります。同じような議論がされているんですね。
 例えば参議院の方で政府委員の香川さんという方が、「その権利を証する書面なりや否やというところは、ある程度そのものずばりの明白なものでなくとも、存在が推認できるというようなものであれば、この書面として扱うというふうな運用を期待したいわけでございます。」というふうに言われております。あるいは、違うところの答弁ですけれども、「裁判所のこの書面の取り扱いについては、相当弾力的に考えていただければというふうに考えております。」と政府側は一生懸命弾力的にやってくれというようなことを言われていて、当時の最高裁判所長官代理者西山俊彦さんは、これも答弁をしていて、
  先取特権を証する文書の種類については、実務の取り扱いといたしましても特に制限をしているわけではございませんで、執行官あるいは執行手続でどういう証明文書が多く用いられているかということは実際にはわかりませんが、仮に賃金支払いの仮処分の事件なんかの例によって考えてみますと、倒産をしたという企業であってもまだ会計係が残っている場合がございまして、その会計係の人が給与に関する証明を出してくれるという例もありますし、それから賃金台帳を持参してくるという例もございます。それから、そういうものがない場合でも、
そういうものがない場合でもということを言われていて、
 過去に毎月毎月賃金をもらっていたその賃金の明細書を各人労働者持っておるわけでございまして、それを提出してもらって賃金額を決めているというのが実情でございまして、かなり融通的な取り扱いがなされているのではないかというふうに考えておるわけでございます。
と非常に希望的な観測を述べられております。
 さらには、大変御丁寧に、これは衆議院の方に来たときに、政府からの答弁などもいろいろあったんですけれども、
  先回の議事、それから今回の議事もそうですが、この立法過程それからその審議過程におきます論議は、これは当然立法解釈の資料として裁判官も使うということはもちろんでございます。特に新しい法律でありますれば、それが解釈、運用の指針になるということは、もう一番強い意味を持っておるように思われます。私どもといたしましては、この法案が成立いたしました暁は、民事執行法についての裁判官用の執務資料を作成して、その中に国会における質疑応答の内容も掲載する予定でおります。それから、この民事執行法の解釈、運用について裁判官協議会を開催して、新法の運用に遺憾なきを期するという予定でおりますが、その中の問題の一つとして、いま問題になっております各条文についての解釈についても、意見交換をする機会を持ちたいというふうに考えております。それから恐らく、新法が施行されるまでには法務省当局の立案担当者によります公式の解釈というものが、いろいろな文献に載ることであろうかと思われます。それも当然裁判官の目に触れて、運用に誤りがないことになるであろうというふうに申し上げるわけでございます。
と随分御丁寧な答弁をされていたんですけれども、その割には、過日来指摘があるように、その証する書面についてはかなり厳しい取り扱い実務がされているケースもあるわけであります。
 つまり、行政の側からもこういうふうにやってほしい、議会の側からも柔軟にやってほしいというようなやりとりがあって、参議院なんかの附帯の決議でも、「柔軟な対処を図る法の趣旨にかんがみ、」とか、こういうことが言われていて、ここまでいろいろあって丁寧に答弁されて、ところが、実際の運用が随分厳しいということですと、議会に身を置く側からすると、率直に言って何なんだというような気もするわけであります。
 過去にこういった答弁もされているわけですけれども、この点について裁判所としては、今回、例えばこういう議論があったということを受けて、特に何かされるということはあるんでしょうか。あるいは、過日の答弁と全く一緒ということなんでしょうか。その点についての御認識をまず伺いたいと思います。
園尾最高裁判所長官代理者 民事執行法の制定の議論の当時に御指摘のような答弁があったということはそのとおりでございます。これに基づきまして、執務資料を作成してこのような議論も紹介する、それから協議会での議論をするというようなこともやってきたところでございます。
 この答弁がございました昭和五十四年当時にはまだ民事執行法が制定されていないという状況ですので、担保権実行につきましては、競売法だとか民法あるいは民事訴訟法というような、複雑かつ総体としては大変不備だというふうに評価される規定に基づいておりましたので、一般先取特権に基づく担保権実行の申し立てにつきましても、余り利用されていない、あるいは実例も余りないという状況で、そのような研究をしていこうということで御答弁を申し上げたというところでございます。
 その後、民事執行法が制定されまして、一般の先取特権、賃金債権に基づく担保権の実行ということについても相当数の事例が出てまいりました。その中で、それぞれの裁判所としましては、その立証が困難な事例についてはできる限り非定型的なものでも認めていこうという姿勢と、また一方、他の債権者からの指摘などがありますような、倒産前後にいわば何か協議をして、事実と少し異なるような立証がされるのではないかというような指摘などについてもいろいろ研究するという、そのような実例の積み重ねがあって現在に至っておるというわけでございますが、今後ともその研究はなお続けていかなければならないというように思っております。
 一般先取特権について、どのような証拠が提出された場合に法律に定めた要件の立証があったと見るかは、まさに裁判の内容そのものでございますので、事務当局としてお答えするということは難しいことではございますが、そもそも民事執行法が、一般の先取特権の証明文書につきまして、公文書で証明するという担保権実行の一般原則の例外を認めたという趣旨は、賃金債権の立証などの場合には公文書の取得が難しいという実情もあることを考えての立法でございますので、具体的な事案に応じて、申し立て代理人の意見あるいは証拠の状況を見た上で、裁量権をしっかりと行使して判断をするということは大事なことであるというように認識しております。
山花委員 これは実際の法の解釈とあとは裁判官の心証の問題もあるので、そういう話になってしまうのかなという気はするんですが、改めて、これは民事局長、お伺いしたいと思います。
 過日来指摘があるところですけれども、これは余り本当に立証が重くなってしまうようなことがあると、幾ら権利はある、権利はあるといってもそれを実現することができなくなってしまいますし、先日の参考人からの意見でも、だからこそ、例えばこんなもの、こんなものと例示することも考えられるんだけれども、かえって挙げちゃうと、それがないとだめなのかとか、あるいはどれが一番大事なんだみたいな話にもなりかねないので、あえて書かなかったんだという話があったわけです。今回の法の趣旨としては、あくまでも立証、そんなに負担を重くさせないんだ、そういう趣旨として理解をしてよろしいですね。
房村政府参考人 法律で単に「担保権の存在を証する文書」としただけで特に例示をしていないのは、まさに御指摘のように、具体的な例示をしますと、かえってその文書がない場合に立証が難しくなってしまうのではないか、そういうことも配慮した結果でございます。運用といたしましても、私どもとしては、定型的な文書というのはなかなか難しい場合もございますでしょうから、総合的に判断をして、裁判所で適切な判断をしていただけるようにというつもりでこの法律はできております。
山花委員 その点を確認させていただいて、これも先日指摘はしたんですけれども、先取特権をこうやって広げられるのは大変結構なことだとは思いますが、ただ実際、倒産、破産の現場では、ほとんど、これを使おうなんというときには、落ち穂拾い的に残った債権をかき集めてというような現状なわけです。本来的には、もうちょっと労働債権の地位が高ければいいのかなと思うんですけれども、一生懸命かき集めても、後から国税だとかそういうものでごっそりまた持っていかれてしまって、せっかく集めたものも後からやってきた方に負けてしまうというような形になっております。
 ところで、ILOの一七三号条約では、そういうことのないようにするようにというふうにされておりまして、今まで、二〇〇一年十月末まで十四カ国が批准していると言われていますけれども、これは厚労省にお伺いしたいんですけれども、ILOの一七三号条約というのは、これは日本政府としては結びたいんですか、結びたくないんですか、批准を。
青木政府参考人 ILOの百七十三号条約は、現在、未批准ということでありますけれども、労働債権の保護についての規定の条約でありますが、私どもとしては、やはり賃金を初めとする労働債権というのは、労働者とその家族の生活の糧だということでありますので、その労働債権の保護の強化というものは大変重要な問題であるというふうに認識しております。
 労働債権の保護については、このところずっと、法制審議会においても、その保護の重要性についても意見を申し上げてきているところでありますが、この御指摘になりましたILO百七十三号条約については、国内法制との整合性を十分勘案した上で、国内法制度を整備した上で批准をしていくという態度をとっているわけであります。
 このILO百七十三号条約は、我が国における各種債権の優先順位とこの条約が求めているものとは相当異なっている内容になっているというようなこともありまして、今直ちにこれを批准するというのは大変難しいと思っておりますが、労働債権保護の観点から、この批准に向けた環境整備を含めまして、適切な対応に努めていきたいというふうに思っております。
山花委員 今、国内法がまだ未整備だからというお話なんですけれども、これは外務省にお伺いしたいんですけれども、一般に、条約を結ぶときには、国内法の方を整備してから批准をするというケースもあれば、先に批准をして、それから国内法の整備をするというケースもあるような気が、気がするというか、ありますよね。何か風の便りで聞いたところによると、何か法務省も、まだ、組織的犯罪のうんたらかんたらという、刑事局が国内法の整備をする前に条約を結んだというケースがあったようですけれども、このILOの関係については、外務省としては、これはどういう考え方なんでしょうか。
石川政府参考人 お答え申し上げます。
 ILO条約につきましては、各国の政府、労働者及び使用者のさまざまな関心を反映し、種々の分野を対象としたものが採択されてきております。
 私どもとしましては、それぞれの条約の目的、内容、我が国にとっての意義等を十分検討の上、また、その時々の国内のコンセンサス、国際世論等も勘案して、批准することが適当と考えられるものにつきましては、国内法制等との整合性を確保した上でこれを批准すべきものと考えております。
 なお、国際組織犯罪防止条約について……(山花委員「それは」と呼ぶ)よろしゅうございますか。はい、失礼しました。
山花委員 このILOの関係については、昭和二十八年に閣議決定がされているようですね。時の総理大臣吉田茂のころに、ILOの関係については、「批准前に立法の措置を講じ、これにつき国会の議決を求める。これに関する事務は、労働省又は他の所管省の主管とする。」とありますから、今言われたとおり、国内法、このILOの関係については、今一七三号の話をしていますけれども、ILOの関係については、国内法が整備が整って、それから条約を批准する、こういう段取りになっている。そして、この当時の閣議決定を見ますと、その所管は現在の厚労省、当時の労働省というふうにされているわけであります。
 ところで、厚労省としてはほかに法整備が必要なのでという話で、外務省にお伺いしますと国内法が先でということなんですけれども、これはどこが邪魔しているんですかね。邪魔しているという言い方はちょっと問題かもしれませんけれども、例えば、労働債権よりも社会保険などの方が優先する形になっていますけれども、これも、今は同じ役所になっていますね、厚労省の方で社会保険庁などがこういう労働債権より優先するような形でお金を持っていってしまうんですけれども、社会保険より労働債権の方を優先すべきではないかと考えるんですけれども、この点はいかがでしょうか。
阿曽沼政府参考人 お答えをいたします。
 社会保険料でございますけれども、租税と並んで公的な債権でございますので、健康保険等におきましては、国税あるいは地方税に次ぐ先取特権の順位を与えられているということでございます。
 御指摘の労働者債権との関係でございますけれども、民法等により定められておりまして、租税債権と労働者債権との関係に準ずる扱いというふうになっているというふうに承知をいたしております。
山花委員 国税と並ぶという、公的な債権ということですけれども、これは、例えば国税徴収法を主管しているのは財務省だと思うんですけれども、そうすると、財務省が何か壁になっているんでしょうか。そうだとすると、租税債権よりも少なくとも、私債権すべてと申し上げているわけではありません、ILOの条約もありますし、労働債権の方を優先させるべきではないかと思うんですけれども、財務省の方はどういう見解なんでしょう。
石井政府参考人 お答え申し上げます。
 労働債権を租税債権よりも優先させるべきではないかという御質問でございます。
 現在、国税徴収法で一般的な租税債権の優先権というものが定められております。これは、申し上げるまでもないことでございますが、租税が国家の財政的裏づけとなる、あるいは租税の負担の公平確保という観点から、確実に徴収すべきものであること等の理由からによるものでございます。
 ただ、租税債権と私債権との個々の具体的な優先関係につきましては、国税徴収法でも私法上の優先順位を前提として調整規定がいろいろ置かれているところでございます。この根っこにある私法上の優先順位というものは、具体的には民法なり商法などの実体法によって定められているところでございます。
 したがいまして、私法上の優先順位として労働債権の位置づけがどのようなものとして位置づけられるのかということが深く関係してくるわけでございますので、私どもとしましては、労働債権と租税債権の優先順位をどう考えていくかという点について、基本的には、先ほど申し上げました租税債権の持つ特質といいますか、特殊性のほかに、私法上の優先順位の中で労働債権がそもそもどのように位置づけられるのかということも踏まえて慎重に考える必要がある問題であろうというふうに思っております。
山花委員 いやいや、これは何かまずいことになってきていまして、つまり、法務大臣、要するに、論理的にいきますと、外務省の立場としては、いや、国内法の整備が先だ、もうそういう閣議決定があるんだという話になっています。国内法上、例えば社会保険との関係ではどうだというと、社会保険は、並びでいうと、租税債権、国税徴収法とかの並びの関係で、うちだけでは何とも言えない。そうすると、財務省に、そこでどうするんだという話になると、いやいや、実体法の民法、商法がこんな低いところにあるから優先できないんだというような話で、結局これは法務省じゃないですか、ILOの一七三号の壁になっているのは。
 最初、私は、厚労省がなかなか取り組んでいないのかなと、大変恐縮ですが、ちょっと疑っておりました。ところが、話を聞いていくと、いろいろ検討会とか今までも、全然何もしていなかったわけじゃなくて、いろいろやってきた、ただ、いろいろな役所間の調整があってと。まあそれはそうでしょうと思って。そうすると、大概こういうのは、自分のところでお金を取るところが、自分たちの権益を死守しようとしているのかなと、これも失礼な言い方かもしれませんけれども、思って話を伺ってみると、いやいや、これは法務省の実体法の方でこうなっていますのでと。結局、法務省のここにたどり着いちゃうんですよ。
 ですから、これ、だって――あれ、御出身の役所じゃなかったでしたか。当時は労働省ですから、労働省設置の目的からいえば、労働者の権利をしっかりと確立してというところなわけですから、そして、このILO一七三号条約、非常にいい内容となっているじゃないですか。もう十年以上にわたって批准ができない状態になっております。先ほど中村委員からは、境界確定訴訟の関係で、四年もたった、四年もたったという話がありましたけれども、これは十年以上たっているんですよね。これは法務大臣、ぜひ、御出身のところをやはりちゃんとかわいがってあげにゃいかぬですよ。
 法務大臣としてもこれはしっかりと、やはり民法、実体法のところで、以前もスーパー先取特権をつくるべきだなんという議論もありましたけれども、ぜひ検討していただきたい。そして、きょう今この場でということは難しいかもしれませんけれども、できるだけ年限的な目途を、例えば何年後までにはやりたい、きょう今この場でというのは難しいのはわかりますけれども、そういう形でやっていただきたいと思いますけれども、その点についての取り組みの決意をお聞かせいただきたいと思います。
森山国務大臣 労働債権の支払いが確保されるということが労働者及びその家族の生計維持のために重要な意味を有しているということは、もう十分私も承知しております。
 おっしゃるように、若いときには国際労働課長というのもやっておりましたし、そのような問題については日々考えている時代もございました。
 法務省におきましても、その所管する民事基本法の分野におきましてこれまでも労働債権の十分な保護が図られるように配慮してきたところでございまして、今後も同様の配慮をしながら民事基本法の整備を慎重に進めていきたいというふうに考えております。
山花委員 まあまあ、ちょっと答弁書を置いていただいて。ILOの関係は、方向としては日本政府としてもちゃんとやった方がいい。それは、厚労省の皆さんも頑張っておられるわけですから、それに向けて法務省としてもちゃんとやるんだ、そういう指示を出したいということを言っていただけませんか。
森山国務大臣 さっき申し上げたように、法務省も一生懸命それなりに取り組んでおりまして、特に労働債権の問題については、今回の改正でも非常に努力して広げてまいったところでございます。その方向でさらに検討するように努力したいと考えています。
山花委員 今回の件は、対象は広がってはいますけれども、優先順位を上げるというところまではいっていないわけですよ。したがって、これで一区切りとされると、結局またILOの関係では、多分、ほかの役所の方、困ったなという話になってしまいますよ。
 順位の引き上げということについて、恐らく今、破産法の関係でいろいろ議論をされているんだと思います。そこでどうなるかわかりません、私は極めて高い位置に来ることを期待したいと思いますけれども、ただ、破産というのはその局面だけのことで、会社がつぶれたと表現するときには、破産手続に行くケースばかりではなくて、民事再生法とかその他のケースがあるわけです。そうすると、結局民法の、実体法のところをいじらないと、このILOの関係ではそううまくいかないことになるわけですよ。
 ですので、ほかの国税にも優先する、何にも優先するといういわば超越的な、まあ先取特権という言葉も私、古めかしいなという気はしているんですけれども、言葉のことはどうでもいいんですけれども、そういったような順位を与えるように取り組みをしないと、これは多分、ILOの一七三号条約の関係ではこのままになってしまいますよ。
 ですので、若いころはそういうことを一生懸命考えていたと、そう過去の話ではなくて、ぜひ、政府としてしっかりとこれができるように、法務省にもこれで満足することなく鋭意取り組んでいただきたい。できればそういうのをしっかりと指示しますと言っていただきたいんですけれども、どこまで言えるかわかりませんが、ぜひもう一度御発言をお願いします。
森山国務大臣 おっしゃるような趣旨で、その方向に向かって関係各省ともよく相談してやりたいと思っています。
山花委員 関係各省とも相談してということですので、ぜひ関係各省の方、期待して、見守っていただければなと思います。
 関係各省の方は、御退席されて結構です。ありがとうございました。
 それでは、賃貸借の関係でお話を聞いていきたいと思うんですけれども、賃貸借というのは、抵当権設定後の賃貸借が負けるというのは、これは法律の理屈からすると、賃借人の方には大変申しわけないけれども、当たり前という話なんだと思います。
 ただ、現行法ですと、賃貸借は債権法上のものとして構成されておりまして、外国の例なんかを見ると、賃貸借が物権として構成されているところもあるわけです。ただ、物権として構成したとしても、実際は、ビルを建てた時点で抵当権を既に設定しちゃっていますから、物権化したとしても恐らく、登記を基準とすると賃借人の方がおくれるケースの方が圧倒的に多いのかなと思います。
 ただ、ここのところの流れとして、賃借権について、ある程度、賃借人の権利強化というような流れで来ていたわけですから、私は、本来的には物権化というのも一つの方策かもしれませんし、さらには、借りたら例えば二十年間とかそれぐらいは絶対的な対抗力を持たせるというような形で将来的には検討をしてもいいのではないかと思っております。
 通告はしていませんけれども、民事局長、もしそういうふうに賃貸借について、借りたら一定期間絶対対抗できますよというような仕組みにしたとき、何か弊害のようなことというのは考えられますでしょうか。
房村政府参考人 ですから、それが抵当権者の予測可能性を害するかどうかということではないかと思います。
 今回用意しました、抵当権者の同意に基づく対抗力の付与ですが、これと定期借家権とを組み合わせれば、相当長期間の借家権であって抵当権に対抗できるというものは可能になるわけでございます。
 現行法では、抵当権におくれる賃借権は短期賃貸借として保護されるのが限度でございますので、五年とかそういう長いものについてはおよそ保護される道がなかったわけですが、今回は、抵当権者の同意を得ればそういう道が可能になりましたし、抵当権者にとってもあらかじめ設定される賃借権の内容がわかっておりますので、予測可能性を害することはない。そういうことで、御指摘のような場合、今回の制度を活用していただければ保護が図れるのではないかと思っております。
山花委員 法律的な表現をすると、そういう話になるんですよね。ただ、経済的な面、法律的にも表現できますけれども、経済的な面でいうと、恐らく建物についての担保価値というのが低くなるんであろう。つまりは、抵当権を設定していざ競落しようと思っても、二十年、三十年絶対に対抗されちゃうということになると、そもそも、そうするとお金を貸す側も、今まで、いざ競売まで行けば五千万は取れると思っていたのが、実際は、恐らく賃借権のなし崩し的実現でこうやって、要するに一遍に取るか、だんだん取るかの違いがあるから、その分価値が低くなるということなのかなと思うんです。
 ただ、法務大臣、法務大臣としてというよりも、今の内閣のまたメンバーとしてお伺いしたいんですけれども、今大変景気が悪くなっていて、つぶれていく会社が多いんですけれども、一方で、もっともっとベンチャーを育てようじゃないかというような議論もありますね。むしろ竹中さんなんかは、いや、アメリカのマイクロソフトを見てみろとかいろいろ言われていて、そうやって、構造改革をすれば、つぶれるところもあればどんどん伸びるところもあるんだというようなことを言われることがあります。
 ただ、アメリカと日本の大きな違いというのは、銀行のお金の貸し方に大きな違いがあって、もう釈迦に説法ですけれども、アメリカなんかでは、ベンチャーがあれだけ伸びるというのは、資産を持っていなくたって、金を貸すときは貸すんですよ。つまり、このグループがどういう人材を持っているのか、スタッフを持っているのか、そしてこの人たちはどういう計画でということ、それを審査して、よし、それなら幾ら貸そうということをやる。
 ところが、日本の銀行というのは、そういうことではなくて、まず不動産はありますか、土地はありますか、家はありますか、家というか建物はありますか、もう既に抵当はついていますかと、建物というか、不動産担保優先主義と申しましょうか、そういうお金の貸し方をしているわけですよね。
 むしろ、さっき言ったように、もうこの際、今すぐとは言いませんけれども、賃貸借については、これだけむしろ景気が悪い時期で、もう家を出ていかなきゃいけなくなっちゃうような人が出てきてホームレスが多いような時代になってということであるとすると、思い切って賃借権については二十年、三十年絶対的な対抗力を持たせて、むしろ建物なんかは資産価値なんというのはそんなにないものだ、なくはないですけれども、そういうふうにして、銀行はむしろそういうことから、お金を貸すのに不動産優先主義を改めさせるのは、金融庁だけじゃなくてこういうところからだってやろうと思えばできるじゃないですか。つまり、そういうふうにすれば、これも楽観的過ぎるかもしれませんけれども、賃借権はすごく強化されるし、むしろ銀行も体質が変わってベンチャーが伸びるようになるかもしれない。
 何か御感想があれば、どうでしょう。
森山国務大臣 おっしゃることはわかるような気がいたしますけれども、私は残念ながら金融や経済問題の専門家でもございませんし、そういうことを深く研究しているわけでもございませんので、この場でお答えすることはいたしかねるということでございます。
房村政府参考人 現在、例えば不動産、土地建物の評価にいたしましても、従来ですと、近隣の売買実例を参考にして、いわゆる幾らで売れるかという観点での評価が中心でしたが、最近は、その不動産あるいは建物を利用してどれだけの収益が上がるかということに着目する収益還元法での評価が次第にふえてきております。そういう、まさに御指摘のように、物を幾らに売れるかというより、どれだけの収入が、利益がそこから上がってくるかということに着目するという。
 今回、同意による賃借権の対抗力付与という制度をつくりましたのも、物件の評価を、幾らに売れるかというよりも、どれだけそこから賃料収入が確実に上がってくるか、そういうことに基づいて抵当権者がその建物を評価するということが、実際に行われてきておりますし、これからはますますふえるのではないか、そういう観点からすると、御指摘のように、安定した賃借権を保障することによって確実に収益を上げる、その収益から抵当権者も返済を受ける、こういう利用法はふえていくのではないか、こう思っております。
山花委員 今回、短期賃貸借の廃止ということで、従来の賃借権強化の流れからするとちょっとどうかなという疑問もあったんですが、ただ、今回の法改正というのは執行法制の円滑化という観点からのものですので、期間については提案は若干不満があったんですが、それはそれとして、今回は理解はできないわけではありません。
 ただ、むしろ、今民事局長の方向性が、方向性というか、随分そこまでお答えになるのかなと思うような話だったんですけれども。今後、方向性としては、やはり賃借権については、私は、構成は、物権として構成するか債権として構成するかというのは実はそんなに重要なことではなくて、対抗力が抵当権の設定の前後を問わず一定期間ということが大事なのではないかなと思っておりますので、ぜひそういう方向で今後検討していただきたいと希望を述べさせておいていただきます。
 あと、今回、この法律をめぐっていろいろと調べていきますと、先ほどのILOのこともそうですけれども、賃貸借のあり方であるとか、法務だけの問題ではなくて、まあ専門家ではないのでというお話ですけれども、そういう問題もいろいろはらんでおりますので、ぜひちょっと考えていただきたいと思います。
 ところで、今回、短期賃貸借を廃止した後の占有できる期間、三カ月を六カ月にしたらどうかという提案をさせていただいております。
 ところで、過日、参考人の質疑の中でもおっしゃっておりましたが、つまり、一人親家庭のケースでは、なかなか家を探すのが難しいという話もあるんですよという参考人の意見がありました。先日法務大臣に、そんな話があることを御存じですかと申し上げたら、ちょっと聞いたこともあるかなぐらいのお話でした。繰り返しになってしまうかもしれませんけれども、結局、家を借りようとしたときに、保証人を立てろ、それも保証人もちゃんと稼ぎがある人じゃないとだめだぞなんということを言われて、そうすると、離婚をした、特に子連れの女性なんかでは借りづらいという実態がある、参考人の方もそんなような趣旨のお話をされておりました。
 いい悪いという話でいうとそういう社会はどうかなと思うんですけれども、ただ、実際、離婚される方がこれだけふえてきておりますので、そこのところをしっかり手当てしなければいけないんじゃないかと思っております。
 きょう、国土交通省の住宅局長においでいただいておりますけれども、公的住宅について、特に一人親家庭と言いたいところですけれども、それだけではなくて、今回三カ月ではちょっと家を探すのは大変だというグループの中では、高齢者の方であるとか一人親家庭のような話が出てきているのですけれども、この点について国交省としてはどういった取り組みをされているのか、お伺いしたいと思います。
松野政府参考人 お答えいたします。
 母子家庭などの一人親世帯の居住の安定を図るということは、大変重要な課題であると認識しております。一人親世帯が民間賃貸住宅に入居できないといったケースは、高齢者やあるいは外国人の場合と比べると少ないわけですが、一部の大家がその入居を敬遠する場合があるものと聞いております。
 こうした実態を勘案しながら、母子世帯等につきましては、特に住宅困窮度が高いと考えられますことから、公営住宅の入居者の募集に当たりまして、一般公募による入居のほか、地方公共団体の判断によりまして優先的な取り扱い、これは優先入居と言っておりますけれども、そうした取り扱いができることとなっております。その結果として、一般公募による入居も含めますと約九十五万の母子世帯のうち約十六万世帯が公営住宅に入居されているところでございます。
 今後とも、こうした制度が適切に活用されることによりまして、一人親世帯の居住の安定が図られるよう努めてまいりたいと考えております。
山花委員 一部そういう大家さんがいるというお答えでしたけれども、ただ、外国人とかお年寄りの方に対してはもともとちょっと民間のケース、かなりひどいケースをいっぱい聞いていますから、それに比べれば一部なのかもしれません。
 それでも、結構当事者団体の方なんかからは、いや、結構あるんですよというような話を伺っておりますし、九十五万のうち十六万ということですが、残念ですけれども、こういった制度についてそんなに、皆さん御存じかというと結構知らない人もいて、ただ、そういう当事者団体のようなのに入っている方は皆さん情報を密に、こういうのがあるんですよとやっていますけれども、知らない方もまだまだいらっしゃるようですので、それは本当にいい取り組みだと思いますので、ぜひ今後とも続けていただきたいと思いますし、またPRもしっかりやっていただきたいと思います。一言。
松野政府参考人 お答えいたします。
 御指摘のとおり、こういう制度を、公営住宅にも優先入居制度があって母子家庭などの一人親世帯が優先的に入居できるという可能性がございます、このことを今後ともPRしてまいりたいというふうに考えております。
山花委員 住宅局長、ありがとうございました。退席されて結構です。
 法務大臣、そういうことなんですよ。つまり、そういう施策を講じなければいけないぐらいのそういうグループがあって、大変苦労されている方もたくさんいらっしゃるということでございます。今までこういった女性の問題についてはいろいろ取り組まれてまいりましたけれども、本当にこういったいろいろな改正の中のほんの一部分ですけれども、そういったところがひっかかってくる今回の改正なので、ぜひ今後とも関心をお持ちいただきたいと思います。
 ところで、次の論点に移ってまいりたいと思いますが、今回は、担保・執行法の改正で養育費について執行を容認する提案がなされております。
 これはこれとして、先日も、いいことだということを申し上げましたが、この養育費について、私は、今までの審議であるとかあるいは参考人からの意見聴取などをする中で、余りにも払われていないということに改めて驚くとともに、もうちょっとこれは何とかできないものかと思っているんです。
 離婚するときに、今法律をテーマにしたテレビなんかでもすぐ慰謝料という言葉は、慰謝料をよこせという言い方は出てくるんですけれども、つまり、一般の方は、慰謝料という言葉は割と耳なじみがあるんですけれども、養育費というと、もちろん知っている方は知っているのでしょうけれども、必ずしも皆さん知っているわけではないのかな。しかも、養育費の取り決めがあったというケースでも、口頭でというのが結構パーセンテージを占めておりまして、これも、法律の世界では口頭だろうが何だろうが意思の合致があれば成立するんですけれども、一般の社会では、いや、口約束でしょうというような認識が結構あります。
 そうだとすると、これはもう少し養育費をちゃんと取り決めさせるために工夫ができないかと思いまして、今資料として離婚届が皆さんの席に置いてあるかと思いますけれども、この離婚届を出す際に任意的な記載事項として、例えば、養育費の取り決めがあるときはその額及び方法とかそういうようなことを書くようにすると、届け出を出すときに、おお、こんなのがそういえばあった、子供の養育費はどうするか、これも決めて離婚届を出さにゃいかぬなと思うのではないかと思ったのですけれども、いかがでしょうか。
房村政府参考人 確かに、離婚に際して養育費の取り決めが必要であるということを意識してもらうという意味では、離婚届用紙にそういうものの記載を求めるというのも一つの考え方かとは思います。
 ただ、基本的に、離婚届け出で記載していただいている事柄は、戸籍に記載する事項あるいは離婚届の受理に必要な判断をするために必要な事項というものを記載していただいているのが原則でございますので、そういう点からいたしますと、養育費の取り決めというのは直接的には戸籍に記載する必要もありませんし、また受理の判断にも必要でないということになります。それで、ある意味では、そういう養育費の取り決めというようなプライバシーにわたる事柄を必要性がないのに書かせるということについて、どう受け取られるかという問題はあろうかと思います。
 そういうことから、私どもとしては、そこまで戸籍届け出用紙に任意記載事項としてでもあれ、国がその様式を定めて記載事項に掲げますと、ある意味では、書きたくないのに書かなければいけないのか、こういうことを届け出をする方々が思うという懸念もありますので、やはりそれは難しいのではないかという感じはしております。
山花委員 私は、必要的記載事項とすることは反対なんです。というのは、DVなんかのケースでは、ともかく別れることが先だ、養育費どころじゃないと。人によっては、人によってはというかDVの多くのケースでは、養育費なんかももらうのも汚らわしいという方たちもありますから、書かなきゃいけないとするのは反対なんですけれども、書かせるということによってそういう意識を顕在化させるということが必要ではないかという意見なんです。
 今、局長は、届け出受理の判断に必要かどうか、あるいは戸籍に記載することについて基本的に書かせるものだと言っていますけれども、違うものも入っているじゃないですか。つまり、同居の期間とか夫婦の職業とか、これは何で入っているんですか。
房村政府参考人 御指摘のように、現在の離婚届では、同居の期間あるいは別居する前の住所、その仕事というような、直接戸籍に記載しない、あるいは離婚届の受理の判断に必要でない事柄も記載事項になっております。
 これは、人口動態統計、国の事業として行っておりますが、それの人口動態調査令で、人口現象を調査研究する場合の指標として、その時々における現実の人口を把握するとともに、国及び地方公共団体における保健、福祉、医療等の各種行政施策あるいは医学研究のために利用する基礎資料とするという公益的目的で収集されております。そういう法令に基づいて、戸籍の届け出の際にこういった事柄を、市町村長が人口動態調査票を作成するということから、それに協力する趣旨で離婚届にも記載をしていただいているということでございます。
 そういう意味で、完全な任意的記載事項を設ける場合とはやや性質が異なるのではないかと思っております。
山花委員 何かその話も私はずっとひっかかっておりまして、でも、どうでしょう、この委員会にいらっしゃる委員各位の皆様も、恐らく婚姻届にも似たような欄があったと思いますけれども、この欄が実は戸籍とは全く関係ない人口動態統計に使われているということを知っている人なんて、ほとんどいないんじゃないかと思うんですよ。届け出票にはその旨の断り書きも何にもないですよね。
 これは、それこそ個人情報保護法の観点からいうと問題があるんじゃないですか。だって、こんな届け出にこう書いてあったら、それは書かなきゃいけないことだろうなと思うでしょうし、本人は届け出る、離婚するために書いたものが、人口動態統計に使われていたなんというのは、これはいかがなことかと思います。最低でもこれをそういうことに使いますよということを書いておかないと、まずくないですか。
房村政府参考人 私どもとしては、人口動態調査に協力する趣旨でこういう欄を設けているわけでございますが、確かに、御指摘のように、記載をしてもらう目的が、離婚届、あるいは婚姻届でも同じですが、そういう身分行為の変動に伴う届け出事項とは異なる趣旨で記載をしていただいておりますので、その点については、そういった注意書き等をするかどうかについて、ただいまの御指摘を受けて検討していきたい、こう考えております。
山花委員 それと、そういう協力する趣旨でということであれば、人口動態統計というのは厚労省が所管しているのでしょうか、もしそちらの方で養育費についても、では統計としてとりましょうと言ったら、これは書くようになるんですよね。
房村政府参考人 それは、人口動態統計の場合には、法令上の根拠に基づいて市町村長に人口動態調査票の作成が義務づけられている事柄でございますので、私どもとしてもその趣旨に沿ってこういう欄を設けているわけでございますが、ただいまの養育費の方は、ちょっと性質が異なるのではないかというぐあいには思っております。
山花委員 性質が異なるということですけれども、先ほど、養育費についてはプライバシーにかかわることで書かせるのはいかがかという話でしたけれども、そもそも離婚届を出すこと自体がプライバシーにかかわることだと思いますし、また、人口動態統計に使うといっても、同居の期間がどれぐらいかなんて、まさにプライバシーにかかわることじゃないですか。だから、先ほどおっしゃった理由というのは、別に決定的な理由ではないような気がするんです。
 もっと言えば、養育費というものについてなんですが、もともとこれは子の福祉を図るために考えなければいけないことなわけです。九六年に法務省が民法改正を検討した際に、現行の七百六十六条の一項について、当時検討されたのは、父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、ここからですけれども、父または母と子の面会及び交流、子の監護に要する費用の分担、こういったことも協議で定めるというふうになっていたわけであります。
 九六年の民法改正案ということになりますと、当時随分報じられました、たしか選択的夫婦別姓も入っていたものではなかったかと思うんですけれども、そういえば法務大臣、選択的夫婦別姓の話はどうなったんですか。
森山国務大臣 今、自民党を初め各党の議員の間で相談していただいて、次第に結論に近づきつつあると聞いております。
山花委員 何か、本当に近づきつつあるんですか。先ほど来もう何年もたったという話がありますけれども、この九六年のなんかは、まさに法務省が立案までしたものについていまだに実現していないんですけれども、それはもうしっかりと政府の責任で提案されたらどうですか。各党のなんて言っていないで。
森山国務大臣 今、議員の間で相談していただいておりますので、そちらにお任せしております。
山花委員 いや、お任せというか、法務大臣なんですから。一時、なられたころは随分と、我が党の議員も質問されたり他の党の同僚委員も質問されて、もっと何か決意のにじみ出るような答弁をされていたと思うんですけれども。
 どうですか、何か一部には内閣改造の話なんかも新聞紙上にあったりしますけれども、ぜひ任期中にやるという決意を言っていただけないでしょうか。
森山国務大臣 先ほど来申しましたように、今、議員の皆さんの間で相談していただいておりますが、法務省は、おっしゃるとおり、平成八年の法制審議会の答申を受けまして努力してまいりました。しかし、その結論がなかなか政府として提案するというところまで行きませんでしたものですから、私といたしましては、ぜひそれを進めたいという議員の皆さん方のお力にお任せしようということで、今、私としては本当に残念なんですけれども、そのような形になっております。
 私はいつまでやるかわかりませんけれども、できるだけ任期の間にその成果が見られればいいというふうに思っております。
山花委員 執行法制のことでも、今回、そのときにたまたま当たることができてうれしい気持ちだとおっしゃっていましたけれども、ぜひ、まだもっと大きなうれしい気持ちになるようなことをやっていただきたいと思います。
 ところで、養育費に話を戻しますけれども、かつての法務省の改正案では、子の監護に要する費用の分担についても協議で定めるべしというものがありました。ただ、こう書くことがいいかどうかというのには若干私も疑問はあるんですけれども、つまりは、くどいようですけれども、DVなんかのケースで、これがないがために離婚できないというのはいかがなものかと思いますので。
 ただ、民法の今の条文の書き方では、監護権だとか何とか権だとかいって親の側の権利のように書いてあっても、これは本当は子供の方の権利なんだ、子供の福祉のために考えていくんだという形で、判例も、最高裁も言っていますし、実際の実務の取り扱いもその観点からやりましょうというふうに動いていると承知をいたしておりますが、まずその点については、そのとおりでよろしいですね。
房村政府参考人 それは、御指摘のとおり、親権にしましても監護権にしましても、子の福祉のためにということで実務は運用されております。
山花委員 監護権といっても、監護に要する費用の分担というのは、法律に書くか書かないかは別として、法律上の義務ではないにしても、本来的には、離婚の際に協議されるべき事柄である。それは、子の福祉のために、養育費についても、どう表現していいのかわからないですけれども、できればしっかりと取り決めるべき事柄であるという認識でよろしいですね。
房村政府参考人 本来は、まさにおっしゃるように、離婚のときに適切な取り決めをしていただくのが最も望ましいことだろうと思っています。
山花委員 そうだとすると、離婚届を書く際に、繰り返しになりますけれども、任意的な記載事項として書くということは検討されていいのではないかと思うんです。
 というのは、子の福祉と人口動態統計とどっちが大事なことかという話なわけですよ。私は、やはり子の福祉ということは、これは本当に大事なことだと思いますし、今まで出てきた議論の中、あるいは参考人の意見の中からも、養育費の額の、実際に払われている額の低いことも驚かされるんですけれども、そもそも取り決めが余りにも少ないということにもがっかりしてしまうわけでありまして、この点について、検討するぐらいのことはできないでしょうか。
房村政府参考人 今考えておりますのは、先ほども申し上げましたけれども、いわば意識してもらうという目的のために、任意的とはいえ、記載事項として様式を定めて、国民にそれを利用してもらうということが、そういう必要以上にプライバシーにわたることを届けさせるという非難を浴びないのかという懸念が一つございます。
 それからもう一つは、先ほど来先生もおっしゃっておりますが、こういう取り決めをしないと離婚できないということであると、離婚を優先するばかりに、本来主張すべきことも主張できなくなって、非常に不利益な取り決めをせざるを得なくなるおそれがある。それが任意的記載事項ではあっても、届け出用紙に記載されておりますと、そういう誤解を招かないかというようなことも考えなければならないのではないか。
 そういったようないろいろな問題がございますので、御指摘を受けて、現段階では、私どもとして難しいのではないかとは思っておりますが、それは、きょういただいた御指摘も踏まえてさらに検討はしてみますが、基本的には、難しいのではないかなという考え方ではございます。
山花委員 最後のところでまたリセットされてしまったような感じがしますけれども、ただ、書きぶりを工夫すればそこはクリアできるんではないかと思っております。
 恐らく、任意的記載事項として、ここに、例えば月三万円、銀行振り込みでと仮に書いてあったとしても、それはそのときの話ですから、後に事情の変化というのは起こり得ますので、例えば、離婚した何カ月か後に夫の方が失業してしまって、あるいは何カ月か後にむしろ女性の方がベンチャーか何かで一山当てて、むしろそっちの方が裕福になったというケースも出てくるでしょうから、ここに書いてあるからといって、それが直ちに債務名義になったりとか、そういう法的な効果は恐らく生じないんだろうと思うんです。
 ただ、法的に全く無意味かというと、やはり使えるケースというのは想定できて、というのは、養育費を払えという訴えを提起したときに、額などについてもいろいろがちゃがちゃやるんでしょうけれども、夫の側で、いや、そもそもそんな合意すらしてないんだと否認の陳述をした際に、いや、過去にやっていたはずですよという、書面が、書面だから間接事実になるのかな、まあ証拠としての意味ぐらいは有するのではないかと思うんです。だから、ある程度意味はあると思うんですが、それでも難しいというお話なんでしょうか。
房村政府参考人 それはもちろん文書に記載してあるわけですので、証拠としての価値は当然あろうかと思います。ただ、ただいまの御発言の中にも、債務名義になったり、法律上の効果が直接生ずるわけではないという御指摘がありましたが、これは性質上は当然そういうことだろうと思います。
 ただ、公の書類で、市町村長に届け出るものに記載しているということから、当事者の方で、何らかの法的効果が生ずるという誤解をする可能性はありますので、そういう意味でも、そういう点も考えなければいけない要素の一つではないか。より適切な法的取り決めをしないままに、この届け書に書いたからそれで大丈夫だというぐあいに誤解されても、かえって保護に欠けることになりかねないという心配もございます。
 それと、一たん取り決めをしてしまいますと、やはりそれを変更するというのはなかなか当事者の意識としても難しくなりますので、届け出時に記入するために、とりあえず取り決めて届け出てしまうということで、かえって不適切な取り決めがなされるおそれもなくはないので、いろいろな側面から検討しなければいけない事柄はあるのではないかと思っています。
山花委員 それはそれとしてわからないでもないんですが、先ほども申し上げたとおりで、それは書き方で工夫できないかなと思うんです。
 例えば、以下の点については届け出時のものにすぎないものですとか、そういうことをちゃんと書いて以後の、要するに、何かそういう注意書きを書いた上で、例えば欄を一つ下に落として書くであるとか、だって、人口動態統計のこれだって、別居する前の世帯の主な仕事と夫婦の職業、こんな大きなあれになっていますから、先ほども言ったように、扶養料の取り決めがあるときはその額と支払い方法とか、それで、取り決めは届け出時のものですと書いておけば、扶養料は取り決めていないと書いてあったとしても、当事者に不利益になるかというと、必ずしもそうではなくて、いやいや、書面を出したときには合意してなかったけれども、後で合意ができたという主張、立証だって可能になるじゃないですか。だから、その辺は工夫すれば何とかなるんじゃないかと思います。
 繰り返しになりますけれども、扶養料がプライバシーの問題だということであれば、この人口動態統計だってかなり問題があって、同居の期間がどれぐらい、同居を始めたとき、別居したときですよ。例えば、芸能人が週刊誌でこんなことを書かれたら、結構有名人だったら大騒ぎになるようなことも書かせているじゃないですか。
 それに比べればと申しましょうか、扶養料を払う、払わないというのは、質が違うので、どっちがセンシティブかということは言いづらいですけれども、こっちがよくて、プライバシーを根拠として扶養料の取り決めがだめだというのは、ちょっと理屈として弱いような気がしますし、もっと言えば、さっき、検討しますというお話でしたけれども、人口動態統計に使いますよという断りもなく、こんなふうに書かせているわけですから、今までこれがよかったということであれば、扶養料ぐらいいいではないかというような気がします。ただ、私としては、これはよくないではないかと言っていますので、ちょっとそういう言い方もできないんですけれども。
 職業についてもプライバシー性というのはあって、日本では余り意識はされていないのかもしれませんけれども、例えば、アメリカで仕事につくときに、前に仕事、何していましたかというのを基本的に聞いちゃいけないという取り扱いになっているようですね。もう厚労省の方、いなくなってしまいましたけれども。つまり、我が国でも、考えてみれば、職業差別というのは古典的な差別の類型ですから、職業が何であるかというのは局面によってはプライバシー性を持つケースもあるわけで、そうであるとすると、離婚届を出す際に、扶養料を任意的な記載事項として書かせるということは、検討されていいような気がしてならないんです。
 先ほど来、法務大臣、ずっと何かごらんいただいていますけれども、いかがですか、今の議論を聞いていただいて。つまり、本当に何かの形で、ともかく扶養料については、今の金額的な水準ももうちょっと何とかならないのかと思いますけれども、そもそも取り決めを、何とか引き上げる方で努力していかなければいけないと思うんですよ。そのために具体的にはこういうことが考えられるという話をさせていただいているんですけれども、いかがでしょうか。
森山国務大臣 先生のおっしゃりたいこともよくわかりますので、この離婚届をもし書き直すとしたら、どこにどういうふうに変えたらいいのかなと思って先ほどから見ていたわけでございますが、これに一つの欄を設けて何かそういうことを書くというのも、また支障が考えられないことはないという局長の説明もわかるような気がいたしますので、何かうまい工夫はないものかというふうな感じで、私は今見ていたわけでございます。
山花委員 要するに、これを見て何とかできないかと考えていられたという話だと思いますけれども、これが人口動態統計に使われているという話は大臣は御存じでしたか。別に知らなかったからけしからぬという話でもないと思うんですけれども。
森山国務大臣 そういうことは、実は存じませんでした。でも、この項目を見ますと、何かそういうことに使われているのかなという気もいたします。
山花委員 検討されるという話ですけれども、やはりこれは、そうやって見ると異質ですよね。上のところは、明らかにこれは戸籍にかかわる事柄であろうと思いますけれども、職業がどうであるとか、同居の期間がどれぐらいかとか。
 ですので、局長は少し難しいのではないかとおっしゃっておられますけれども、大臣は、先ほど来ずっと一生懸命ごらんになって、どうか何とかできないかと考えておられたんじゃないかと思いますけれども、せめて検討はしていただけないでしょうか。
森山国務大臣 いや、なかなか難しいとは思いますけれども、しばらくこれを眺めさせていただくという意味で、検討させていただきます。
山花委員 まあ、眺めているだけではなくて、どこかに工夫して書けないだろうかなということを思っているわけです。
 もちろん、離婚届に任意的な記載事項として書かせるというだけではなくて、もっともっとほかにもやらなければいけないことはあるんだと思いますし、ほかにも工夫をしなければいけないことというのはたくさんあるんだと思いますけれども、率直に言って、やはり養育費の取り決めがされている水準、私は低いという印象を受けていたんですけれども、大臣はいかがですか。
 参考人の質疑のときはいらっしゃいませんでしたけれども、最高裁から、これぐらいですという報告があったりとかいうのをお聞きしていたと思うんですけれども、もっともっとそのパーセンテージを引き上げる、離婚届に書かせるかどうかということはおいておいても、必要性はあるという認識をお持ちでしょうか。
森山国務大臣 私も、実態のパーセンテージがどのくらいか承知いたしておりませんけれども、でも、離婚ということになってしまうという結果になった場合には、そういうことを必要なら決めておくということが当然じゃないかという感じで伺っておりました。
山花委員 本来は当然のことが、実は、もう三割、四割は当たり前という、コマーシャルのような数字なわけですから、もう少し引き上げるために、ぜひ努力をしていただきたいと思います。
 それでは、養育費については結構頑張ったつもりだったんですけれども、もうちょっと前向きのことを言っていただければと思ったんですが、これぐらいにさせていただきたいと思います。
 執行法のところに戻っていきたいと思いますけれども、この執行法制のところで一点、倒産のケースで、過日の参考人の質疑の中でも、労働組合が頑張って会社を再建したというようなお話を聞いたわけであります。あの場合は間違いなく適法な占拠だったと思うんですけれども、職場占拠に、組合が占拠しているケースでは、いろいろなケースがあって、労働組合の方には申しわけないけれども、全部が全部適法かと言われると、そうとも言えないケースも残念ながらあるんだろうなとは思います。
 ただ、そういうケースで、倒産に反対ということで組合が職場占拠なんかをしている場合に、組合は民事執行法五十五条三項に言うところの審尋を受けるというふうに考えてよろしいんでしょうか。
房村政府参考人 この民事執行法五十五条三項を改正で入れました平成八年の民事執行法改正における提案者の趣旨説明におきましては、民事執行法五十五条三項の規定は、労働組合運動その他正当な活動をする者などの権利主張の機会を確保するため、執行裁判所が必要があると認めるときは審尋を行うことを法律上明確化するものであると説明されております。
 この趣旨は、裁判所においても当然認識されておられると思いますので、その占有が正当な労働組合活動によるものか否かということが問題になるような事案においては、通常、審尋がされた上で発令の判断がされる、こう思います。
山花委員 もっと言えば、組合の関係で占拠されているというようなケースでは、そもそも、その執行については慎重に、要するに、入り口のところで、正当な活動については、それは慎重な取り扱いをしていただくという前提があっての話だと思いますけれども、その前提部分についてはそういうことでよろしいですね。
房村政府参考人 基本的に、労働組合の正当な活動であれば、価格減少行為には当たらないという理解でございますので、問題になる場合には、当然慎重な判断が必要となると思っております。
山花委員 では、質問を終わります。どうもありがとうございました。
山本委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午前十一時五十九分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時一分開議
山本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。山田正彦君。
山田(正)委員 自由党の山田正彦です。
 今回、短期賃借権について、その制度をなくすという改正について質問したいと思います。
 今どんどん新しいビルが建っていっております、六本木ヒルズビルとか。そうすると、ビルが建った場合に、必ず保存登記と同時に金融機関の担保設定がなされるというのが通常だと思うんですが、二番、三番となされていく。そういった場合に、いわゆる短期賃借権がなくなるとすると、今、この前バブルがはじけてどんどん不動産も競売物件に出されていっておりますが、それと同じように、その後の賃借権の設定、これが短期賃借権で対抗できないということになりますと、ほとんどその利用が阻害されてくるんじゃないか、いわゆる価値がつくっても下がるんじゃないか、そういう懸念があるんですが、局長、どう考えますか。
房村政府参考人 御指摘のように、現在、賃貸専用の建物等が相当数多く建設されております。これにつきましては、融資を受けて建物を建て、保存登記と同時に抵当権を設定するということが通常だろうと思っています。
 その場合、その後に結ばれた賃借権の保護でございますが、現在の短期賃貸借制度であっても、その場合の賃借権の保護としては必ずしも十分ではない場合があるわけです。これは、短期賃借権が対抗できるとはいいつつ、競売開始決定から競落の日までの間に期間が満了いたしますと、その時点で対抗できなくなってしまう、当然に明け渡さなければなりませんし、敷金も引き継がないということになります。それが相当数ございますので、現在においても、そういう意味では、かなり偶然的な事情に左右される保護しか与えられていない。
 今回、そういうことから、特に短期賃貸借が濫用されているという点もありますので、短期賃貸借制度を思い切って廃止することといたしましたが、その賃貸用物件の賃借権の保護という仕組みに関しましては、抵当権者の同意を得てその賃借権に対抗力を与えるという制度をつくっております。
 この場合には、現在の短期賃貸借ですと長くても三年、しかも偶然的事情に左右される、こういう制約がございますが、今回の新しい制度であれば、賃借権の保護される期間は契約で設定した期間が全面的に保護可能になりますし、また抵当権者としても、御指摘のような賃貸用物件であれば、その返済はそのものを貸すことによる賃料収入から返済を受けるということが予想されますので、抵当権者にとっても、同意を与えて優良な賃借人を確保するということにメリットを感ずるということがございますので、積極的に利用していただけるのではないかと思っております。
 これを利用していただければ、そういう物件について賃借権の保護が図れるのではないか、こう思っております。
山田(正)委員 今局長の答弁でしたが、今かなりのマンション物件が都内でも建っているわけですが、そうすると、保存登記がなされ抵当権が設定された後のマンションを借りるというか賃借する人というのは、保証金も払い、そして競売になったらすぐ追い出されるというんじゃ、これはやはり短期賃借権制度ぐらいあって、それを利用させない限りは、私は大変厳しくなっていくと考えてはいるんです。
 局長は、いわゆる承諾があって、契約でもって、抵当権者の承諾のもとの契約で十分やれるじゃないかと言いますが、例えば私が抵当権者、銀行であったとしたら、それは、その期間だけ賃借権が対抗できますよということになりますと、その抵当権の価値が著しく損なわれることになりますね。そうすると、抵当権者が自分の権利が著しく損なわれるような承諾をすると考えられますか。
房村政府参考人 まず第一に、そういう賃貸用物件ということで融資をしている場合には、抵当権者も、その返済はその物件を賃貸することによる賃料収入から返済を受けるということが当初からわかっているわけでございますので、優良な賃借人を確保するために協力するということについては、抵当権者自身の利益でもあるわけでございます。
 そういう点で、任意に承諾をするということは十分あり得ると考えておりますし、また、万一そういう対抗できる賃借権を設定した物件が競売にかけられた場合、これは優良な賃貸物件であって継続的な賃料収入が見込める、こういう評価に基づいてその建物の価格が設定されるであろう。これは、現在、収益還元法が不動産の評価の主流に次第になりつつあるということを考えても、そのような賃貸物件であるから、著しくそれだけで直ちに下がってしまうということではない。適正な賃借権が設定されている物件であれば、かえってその賃料収入を評価して、それなりに正当な競売価格が得られるであろう。
 そういう観点から考えますと、抵当権者にとって賃借権に同意をするということが必ずしも不利になるばかりではない、抵当権者にとってのメリットも十分ある、こういうぐあいに考えております。
山田(正)委員 賃借人がみんな優良な賃借人であればいいわけですが、ところが、大きなビルで何十、何百という借り手がいるとして、そういった場合に、それは優良な賃借人というのもいるかもしれませんが、それ以上に、もうずっと不払いが続いているとかあるいは悪質な占有業者、そういった人もいるかもしれない。
 そういったとき、いわゆる競落人の立場からすれば、いわゆるさらで、もう新しくその物件を何らかに利用、賃貸にするにしてもまたさらな形で利用しよう、これが一般だと思うんですね、通常だと思うんです。
 そういった場合に、いわゆる抵当権が、いわゆる承諾のある賃借権がある、対抗できる賃借権があるとなると、普通に考えれば、優良な賃借人があれば全部がそうであれば別ですが、やはりそこは価値が下がると考えるのが当然だと思うんですよ、私は。
 そうなってくると、いわゆる承諾を求めるについて、賃借人も、敷金の問題もあるし、保証金の問題、いろいろあって、承諾を求める賃借権を設定しよう、契約でできるじゃないか、そうなってくれば、そこにやはり何らかの承諾料、今で言う更新料みたいなものですね、そういったものが事実上相場という形で、承諾料を幾らにするかという形になってくるんじゃないか、実際に運用するとなれば。そう考えるんですが、局長、そうは思いませんか。
房村政府参考人 これは、賃借権について、抵当権者の同意を得て対抗力を付与するというのは、当然、賃貸借契約を結ぶ際にその同意を得られれば安定した賃借権になるということでございますので、結ぶ方は当然、賃貸借契約のときにそういう条件を考えて、契約に入るかどうかというのを選択することになるだろうと思います。
 先ほども申し上げましたが、抵当権者にとっても優良な賃借人を確保するということには当然メリットがあるわけですので、また、他の賃貸物件もあるわけですから、それの競争の中で、目先のそういう承諾料を取ることによって優良な賃借人を逃す、そういう危険もあるわけでございます。そういうことを考えますと、必ずしも、抵当権者が必ず承諾料を取るということになるとは考えにくい。
 契約の更新のような場合には、そこに既に利用を開始している者にとって更新をしないことに伴う不利益がありますので、一定の更新料を払うという慣行ができ上がったものと思いますが、これから新たに契約に入るという場合ですので、いわば市場の競争原理が働く場面でございますから、そこは事情が違うのではないか、こう考えております。
山田(正)委員 借りる側にしてみれば、新しいビルを借りるとして、それに対する内装、改装、設備投資等々、何千万かかかるわけですから、当然それについて、競売になってすぐ出ていかなきゃ、修正案でも六カ月後には出ていかなきゃいけないということになると、投下資本の回収もできませんし、そうなれば当然のことながら、安定して何千万の設備投資するに当たっては、そこに、承諾料幾らにしてくれますかという話になっていく。これは経済の常の行為であって、局長、よく経済社会の取引慣行というのを知らないんじゃないですか、これは。そうなっていくことになり得るおそれが十分ある、そういうことだと思うんです。
 そういった場合、逆に考えてみれば、いわゆるビルの所有者にとってみれば、それだけ抵当権者の力が強くなって、短期賃借権の対抗ができなくなることで強くなって、そして、逆に、入ってもらうには賃料を下げるとか、保証金、敷金をもらえないとか、そういう不利益な事態も十分考えられる。どう思われますか。
房村政府参考人 例えば、今例に挙げられましたような、内装に相当多額の費用をかけて、ある程度の期間そこを使用してその資金を回収していく、こういう利用を考えた場合に、現在の短期賃借権による保護では最長三年しか保護されない。しかも、競売開始決定から競落までの間に期間満了してしまいますと、そこで打ち切られてしまう。そういう意味では極めて不安定な権利でございます。
 それだけの投下資本をかけて回収を図る場合に、今回の、同意に基づく対抗力を与える賃借権であれば、その回収に必要な期間をあらかじめ設定して、それについて同意を得ることによって賃借権の存続期間中すべてにわたって保護を受けられる、こういう新しい制度でございます。
 そういうような新しい制度のメリットを考えれば、当然、同意を与えてより優良な賃借人を確保したいという誘因が抵当権設定者、抵当権者に働くことは事実でありましょうし、また、利用する方も、そういった物件に、多少賃料が高くても安心して来るのではないか。そういう競争原理が働くことによって適正な利用が確保されていく、こういうぐあいに考えているわけでございます。
山田(正)委員 短期賃借権の、競売開始から競落まで、その間に期限が切れてしまうんじゃないかと言いますが、実際に、短期賃借権三年の間に何もなければさらに更新されるわけでしょう。そして、仮に今、競売ですが、開始から競落までは半年ぐらいで今いっているんじゃないですか。そういう形であれば、私は、短期賃借権の価値というのは十分あるし、問題は、非正常ないわゆる不法占有者、そういったものがあるから、抵当権を侵害するから短期賃借権をなくそう、そういう制度の趣旨だ、そう考えるわけですね。
 そうした場合に、不法占有者に対しては確かに、例えば山口組のだれかが入ってきて、だれが本当にその物件に入っているかわからないという事例はよくあります。私どももそういう相談を受けることは弁護士のときにありますが、そういった場合に、これは排除できるんだと思っていても、相手を特定できない、そういったことで保全処分がなかなかできなかった、実際に。しかし、今度からは、不特定の者についても、不特定の占有者に対しても、その場で、執行のときに特定できれば断行の保全処分、できるわけですから、それであれば、いわゆる短期賃借権のこれまでの弊害というのはそれで十分償われるでありませんか。
房村政府参考人 御指摘のように、今回の改正法案では、保全処分の相手方を特定できない場合には相手方不特定のままに発令をする、執行の段階で特定をするという新しい仕組みを採用しております。これによりまして、御指摘のように、くるくる占有者がかわってしまうような場合にも対応可能となる。そういう意味ではかなり強力な武器となり得るのではないか、こう思って期待しているところです。
 ただ、これまでの民事執行法の改正を見てみますと、平成八年には引き渡し命令の相手方を拡大し、平成十年には執行官の調査権限の拡充、それから、今回も改正をいたします、新たな保全処分を創設する、こういうような、執行妨害を排除するためにさまざまな手続的な強化がなされております。それなりの効果も上がっているとは思いますが、依然として、短期賃貸借が占有屋等による執行妨害に濫用される例が後を絶たないというのが実情でございます。
 こういうものに対応する方策として、手続的な強化を図る、あるいは罰則の強化を行う、こういう対応策をとるべきことは当然ではありますが、それだけで完全に対応し切れるかというと、これはなかなか難しいのではないか。やはりそもそも、民法の定める抵当権等の権利の内容を濫用しにくい制度にする、こういう観点からの手直しも必要ではないか。
 現在の短期賃貸借制度についてはかねてから、執行妨害の手段として濫用されている、こういう指摘がありますし、また、賃借人を保護する制度としては、先ほども申し上げたような非常に偶然の事情に左右されるというような合理性を欠く面もございますので、今回、短期賃貸借制度を廃止した上で、これにかえまして、濫用の余地を排除しつつ、保護すべき賃借人に合理的な範囲で確実に保護を与えるという明け渡し猶予の制度、それから抵当権者の同意による対抗力付与の制度、こういうものを新設するといたしたものでございます。
山田(正)委員 局長にお聞きしたいんですが、今回、この短期賃借権の対抗の排除というのは、非正常な占有者、いわゆる不法な占有、抵当権の不当な侵害、そういったものの濫用に利用されているからもうやめるということなんですか、そうではないんですか。もう一回確認したい。
房村政府参考人 大きな理由として、この短期賃貸借制度が執行妨害に濫用されている、こういうことがございます。それと同時に、賃借権の保護として現在の短期賃貸借制度は必ずしも合理的なものではないという、その二点からの改正でございます。
山田(正)委員 それで、まず一点目からお聞きします。
 今言ったように、不特定の者に対する保全処分もできる、排除できるということになったら、なおそのほかにも濫用のおそれがあるというのは、どういう場合が考えられますか。
房村政府参考人 この保全処分で排除できますのは、価格減少行為を行って競売価格を低下させるおそれがある場合、この場合に保全処分を行うとなっております。
 ただ、そういう占有をして現に価格低下行為を行うという場合もありますが、同時に、短期賃貸借制度を仮装して、敷金あるいは賃料の前払い、こういったものを仮装いたしまして、競落人に敷金の返還請求権を引き継がせることによってその金銭を得ようとする、あるいは賃料前払いを主張して無料でその建物を使用しようとする、こういうような形態のものもございますし、そういう濫用形態のすべてに対して今回の保全処分で対応できるということはにわかに考えにくい。
 やはり、そういう濫用形態が広く見られるということを考えますと、基本の短期賃貸借制度そのものを見直すしかないのではないかというのが、今回の改正に至った経緯でございます。
山田(正)委員 今の説明はよくわからなかったんですが、短期賃借権を設定して、実際には借りていないのに、そこに金銭の授受があり得るような場合があるということですかね。
 ということであれば、これは虚偽の賃借権になりますね。虚偽の賃借権だったら、刑法九十六条ですか、偽計による威力業務妨害罪に当たって、これはすぐ刑法上の罪で逮捕できるじゃありませんか。
房村政府参考人 設定されたと主張されている賃借権が虚偽のものであるか否かが一〇〇%確実に判断できるということであれば、まさに御指摘のとおりでございます。
 ただ、債務者と通謀してそういう契約書類を偽造する、あるいは債務者が不在のすきに乗じてそういった書類を偽造して占有してしまう、さまざまな形態がありまして、そういったものすべてについて的確に判断をするというのは至難のわざだろうと思います。特に、形式的に整った契約書類を偽造された場合に、これを見破るというのは相当難しいのではないか、こう思っております。
山田(正)委員 偽造文書等であるということであれば、現実にそこに居住しているか居住していないか等々を見ればすぐ挙証できるはずで、そうであったら、司直によって、刑事事件でもって、すぐに取り調べもできるし、逮捕もできるし、排除できる。不特定者に対する断行の保全処分と、そして刑事罰でもって、十分抵当権者に対する短期賃借権の濫用は防げる。
 ところが、大臣聞いていただきたいんですが、逆にこの短期賃借権をなくすことによってどうなるかというと、例えば設備投資を何千万もかけてやるとか、多くのそういった人たちに、契約してやりなさいと言っても、そこに当然、承諾料をどれだけ払ったら契約できるとか、実態の経済取引はそういう形になってきて、逆に不動産の利用を、所有権じゃないですよ、利用を阻害するような悪法につながると私は考えているんですが、大臣、いかがでしょうか。
森山国務大臣 現行の短期賃貸借制度におきましては、賃借人の保護の有無というのは、期間満了時と競落時の先後という偶然の事情に左右されるのに対しまして、この法律案におきましては、建物賃借人に合理的な範囲で確実な保護を与える、明け渡し猶予制度を創設しているわけでございます。
 また、抵当権者の同意によりまして賃貸借に対抗する力を与える制度を創設いたしまして、抵当権におくれる賃借人の地位を現行制度以上に安定させる道も用意しておりますので、賃借人の保護に配慮した内容となっているものと考えております。
 また、短期賃貸借が執行妨害に濫用される可能性をなくすことによりまして、抵当権者の債権回収に関する予測可能性を高めているということから、抵当不動産の所有者にとっても融資を受けやすくなるという利益があるものと考えるわけでございまして、先ほど来、民事局長がるる御説明いたしましたように、今回の改正が間違っているとは思いません。
山田(正)委員 大臣、話を聞いていてもらいたいんですが、いわゆる短期賃借権の弊害というのはある、それは認めているし、そのために、さっき言ったように、不特定者に対する保全処分もできるし、虚偽の賃借権の場合には威力業務妨害罪による刑事等々のこともできる。それで十分できるのに、確かに、大臣が、抵当権者の承諾のもとに今度新しい賃借制度もできているじゃないかというお話でありますが、これは、実際にいったら、私が、抵当権者、銀行だとしたら、それは競売のときにさらに返るものだったら価値がありますよ、建物は。ところが、さらに返らないでそこにそのまま賃借権があるとしたら、なかなか実態上の取引としてはそうはいかない。
 そういったいろいろな問題があるので、大臣、今回の改正は、まさに銀行助け、抵当権を設定する銀行のために、利用者のこと、所有者のことを考えていない制度だ、私はそう考えるんです。
 その中の一つとして、敷金、いわゆる保証金ですね、保証金も返ってこない。例えば、バブルがはじけて競売になった物件で、私どものところにも相談ありましたが、当時二千万円保証金を積んだんだけれども、その保証金は一銭も返らずに、競売になって出ていけということになった、どうしたらいいでしょうか、こういうことになってしまうわけなんですよ、これは。
 そうすると、短期賃借権、三年あれば、少なくとも三年間、あと頑張って回収しましょうとか、そういうことができると思うんですが、それができないとなった場合に、今回この改正ができるとすると、賃借人の保証金、敷金、これを何とか保全する制度、これを考えなければ、今回この改正は私は利用者の立場から納得できないわけですが、局長、何らかの手当てが考えられますか。
房村政府参考人 御指摘のように、賃借権が引き継がれる場合には敷金も買い受け人に引き継がれるわけでございますが、今回、短期賃貸借制度を廃止することといたしましたので、敷金は当初の賃貸人、その敷金を渡した相手方から直接返還を受けるということが原則になります。その場合、敷金の保護を図る方法が何かないかという御指摘でございます。
 一つは、実際にも契約で定められている例がございますが、当初の賃貸借契約の締結時に敷金に関しまして特約を結んで、賃貸人が差し押さえを受けるあるいは競売開始決定を受ける、こういう事態が生じた場合には、敷金の返還時期が、期限の猶予を失って返還時期が到来する、こういう特約を結ぶということはあり得るわけです。現実に例もございますが、その場合には、競売開始決定後、賃借人の賃料債務とその敷金の返還債務との相殺が可能になりますので、実質的にはそういう形で敷金の返還を受けることができる、こういう道はございます。
 そのほか、任意の形で敷金を特定の預金口座等に置いて、それに対して例えば債権質のような担保権を設定する、こういうようなことは契約ベースでは可能ではあろうかと思っております。
山田(正)委員 賃貸借契約をするときに、そういう賃借人のためになるような特約事項というのは、私は今まで見たことがありませんね。賃貸人と賃借人の立場というのは、賃貸人の方が強くて賃借人は弱いんですよ、実態として。借りる側が弱いんです。貸してもらうんですよ。そのために借地借家法とかいろいろ保護があるわけですから。
 それで、借りている側が、もし貸している側に差し押さえがあったり何だりしたら、すぐにその敷金の返還義務が生じて家賃と相殺できますよなんて、そういう契約は実態としてはあり得るはずがない、幾つかはそれはあるかもしれませんがね、そう僕は思っております。
 しかしながら、こういった場合に、敷金返還について何らかの方法、例えばこの前の参考人の藤川さんの場合に、預託金制度があるんじゃないかとかいろいろ言っておりました。場合によったら、そういった賃借物件というのはもう今日本国じゅう何千あるいは何百万とあると思うんですが、そういったものについて一つの保険制度というのかな、保証制度というか、例えば家主とあるいは借り主が、敷金のうちからでもいいですけれども、任意でもって結構だと思うんですよ、任意で保険を設定して、そして、いざそうやって出ていかなきゃいけないというときに、そういった事故があった場合の保険、全額敷金を返還しますといった、そういう第三者の保険みたいな制度があれば、借りる側も貸す側もそれを利用する、十分利用できると思うんです。
 そういう制度ぐらいは考えなければ、これは利用者にとって大変なことだ、そう考えますが、大臣、今お聞きになっておったと思いますが、政策の問題なんですが、どうお考えでしょうか。
森山国務大臣 なかなか難しい問題でございまして、先生の御指摘も理解はできますけれども、この賃貸借の問題、今回のこの改正によりまして少しでも解決の方向へ近づけたいという努力の成果でございますので、これをぜひ成立させていただきまして、その後もまた注視しながら、よりよい方向へ努力していきたいというふうに思います。
山田(正)委員 大臣、僕の問いに答えていただいていないんです。
 私が言っているのは、いわゆる保証金、敷金の返還がなされない、そういった場合の、例えば任意な、賃貸人と賃借人が敷金のうちから保険料として一部支払うことによって、いざという場合の保険制度みたいな制度を考えられないか、何百万という賃借人の保護のために。こういう制度を考えるとしたら、それはどうだろうかと聞いているんですよ。それは大臣に聞いているので、そういう制度を考える必要がないといえばそれで結構です。検討してみる価値があるかもしれないといえばそれでも結構です。
森山国務大臣 大変難しい問題でございまして、おっしゃることもわからないことはないのでございますけれども、不動産の賃貸借は、賃貸業者のみではなくて、一般の私人間に多く行われているわけでございまして、また、その際に敷金を差し入れる慣行も広く行われているわけでございます。
 そのすべてを対象にいたしまして、賃貸人で構成する団体への預託を義務づけたり保険を掛けるというようなことが法的に強制することができるかどうか。賃貸借契約の成立について極めて強い規制を加えるということにもなりますし、また社会的な影響が余りにも大きいと思いますので、これはなかなか慎重にしなければいけないことだと考えております。
山田(正)委員 私は、今の自賠責みたいな強制保険と言っているんじゃなくて、いわゆる任意の保険制度、借りる側としても、敷金のうちから五%なり貸す側がその保険に入ってくれる、そうすると安心できるわけです。あるいは、それを要らないという人はそのままでいいわけですし、そこは貸す側と借りる側の合意ができればいいわけで、何もみんな強制してやれと言っているわけじゃないわけです。
 そういう制度なりを考えないといけないんじゃないだろうかと大臣に聞いているわけです。
森山国務大臣 敷金の返還を確実に受けられるようにいたしますために当事者の任意で行う方策といたしまして、例えば、賃貸借当事者間の合意によりまして、賃貸人が敷金を銀行に預け入れた上で、賃借人のための質権を設定するという方法をとるというようなことは、現行法のもとでも不可能ではございません。可能であるわけでございます。
 また、今回の改正では、抵当権者の同意によって賃貸借に対抗力を与える制度を創設しておりますので、このような同意が得られた賃貸借については、買い受け人に引き受けられ、敷金の返還債務も承継されるということになるわけでございます。
山田(正)委員 大臣、私の言っていることとちょっと違うんです。
 いいですか。確かに、もらった敷金を銀行に質権設定させる、そういう所有者なんていないと僕は思いますよ。敷金は、その建設費の一部に充てるでしょうし、質権設定させたり銀行に預金したりということはあり得ないと思いますよ。
 そうじゃなくて、敷金をもらっているうちの五%でもいい、それをいわゆるそういう事故があった場合の保険に掛ける。そうすると、賃借人も、あ、これは保険に入っているから敷金は幾らか戻ってくるなと安心できる。そういう任意の制度の創設というのも考えられないかと言っているんですよ、大臣。
森山国務大臣 任意の制度ということでございましたら、それはその当事者間の話し合いが基本的に成り立てばできるかもしれないと思いますが、強制的あるいは相当義務的な制度ということになりますと、最初に申し上げたように、難しいのではないかという気がいたします。
山田(正)委員 それは、確かに義務的の強制保険とは考えられませんね。ただ、保険となると財務省の管轄になるかと思うんですが、そういったいろいろな問題があるかとは思いますけれども、ぜひ、これを機会に、全国の賃借人というのは、保証金、敷金が払ってもらえずに泣いている者というのは、僕は何百万人もいると思うのです。そういった制度の創設を考えていただきたい、そう思います。
 次に、財産関係のいわゆる開示、財産開示の創設について民事局長にお聞きしたいと思いますが、今、サラ金とか消費者金融、あるいはいろいろなところがどんどんどんどん簡裁の債務名義をもらっているというのが実態ですね。この債務名義の中には公正証書によるものは含まれないのですね、確認したいのですが。
房村政府参考人 今回創設いたします財産開示手続の申し立てをするために必要な債務名義の種類として、公正証書は含まれておりません。
山田(正)委員 そうすると、簡裁の判決、債務名義によって開示請求するとすれば、例えばサラ金業者とか町金といいますか、金融業者等は、支払わなければ裁判所に開示の申し立てをするぞ、それでいいのかと、そういう場合というのは十分考えられるわけですね。だれだって裁判所に呼ばれたくない。開示の請求をすれば裁判所に呼ばれて、おまえさんの財産、全部明らかにしなければ、それは大変なことになるぞ、それでいいのか、早く払えと、そういう責められ方は十分考えられる。これは別に脅迫にはなりませんか。
樋渡政府参考人 まずは、犯罪の成否は、収集された証拠によって認定された事実関係に基づいて判断されるべき事柄でございますので、なかなか一概にはお答えいたしかねることでございますが、一般論として申し上げますれば、脅迫罪等に当たるか否かといいますことは、行為者の言動はもとより、相手方との関係等、諸般の事情を総合考慮して判断されるものでございますから、行為者が申し向けた文言の中に、例えば今おっしゃいましたような、法律上規定された権限を行使する旨の文言があった場合でありましても、個別の事情に応じ、脅迫罪等に当たる場合がないわけではないと考えております。
山田(正)委員 まあ、そういう場合もあり得る。
 今回の開示制度は、そういう脅迫になるような、あるいはまがいのというか、そういうぎりぎりのところでの新たな取り立ての方法を、いわゆる町金あるいはサラ金業者に与えるということになりやしないかという心配を実は大変いたしているわけです。その辺については、十分対応策というものは考えているのか、あり得るのか、民事局長。
房村政府参考人 今回この財産開示手続を設けるに至った経緯から御説明をさせていただきますと、日本では、強制執行の申し立ては、相手方の財産を把握いたしまして、それを特定した上で申し立てるのが原則になっておりますので、判決をとって相手方に対する債務名義を取得しても、財産がわかりませんと、これを実現する道がない、空振りに終わってしまうということが、かねてから日本の司法制度の欠陥の一つであるというぐあいに指摘を受けていたわけでございます。
 諸外国の例を見ますと、このような判決等の債務名義をとった者の申し立てに基づきまして相手方に財産の開示を命ずる、あるいは第三者に照会をするというような制度が設けられ、それに対して罰則の制裁も科されているという例が多うございます。そういうことから、今回の執行制度の改正に当たりましては、何らかの形で債務者の財産を把握して、せっかくとった判決が空振りに終わらないような仕組みを考えたい、こういうことで、この財産開示手続を創設したわけでございます。
 ただ、同時に、御指摘のように、裁判官の面前で全財産を開示するということは相当の負担でございますので、これが過酷な債権取り立ての手段として濫用されることのないような配慮もすべきであろうということで、種々考えまして、まず第一に、債務名義の種類を制限いたしました。先ほども申し上げましたが、執行証書のようなものについてはこの財産開示手続は利用できないということにいたしまして、判決のような確実なものに限定をしております。
 それから第二番目に、この財産開示手続を申し立てをする場合に、事前に強制執行が奏功しなかった、強制執行したけれども配当を得られなかった、あるいは配当を得られないということが見込まれる、こういうような疎明を要求することによりまして、安易に利用されることを防ごうとしております。
 それから第三に、債務者が一たん財産開示手続において陳述をした場合には、原則としてその後三年間は当該債務者に対する財産開示手続を実施することができないことといたしまして、頻繁に利用されて圧力の手段とされることを防ごう、こういう配慮をしております。
 このような手当てを講じておりますので、これが過酷な債権取り立ての手段として濫用される可能性は非常に低い、こう思っておりますが、私どもとしても、実際の運用のされ方ということについては、この法律が実施された場合には十分注視をして問題の把握に努めてまいりたい、こう考えております。
山田(正)委員 今は簡裁で簡単に、サラ金、町金はどんどん判決をとっていますから、それはなかなか防御する方法にはつながらないと思います。
 ところで、開示請求に呼ばれたとしたときに、例えば私が末何とか興産とかといって、何千億か財産隠ししましたですが……(発言する者あり)末野興産でしたか。私がそういう当事者であったとしたら、これは、そんな財産なんてありませんとのうのうとそこで答弁する。そうした場合に、これは罪に問われますか、うそを開示した場合。
房村政府参考人 今回のこの財産開示制度、裁判官の面前で宣誓をして陳述をしていただくわけですが、御指摘のような虚偽の陳述をした場合には過料の制裁ということになっております。
山田(正)委員 過料の制裁というと、例えば末野興産みたいに何千億もある財産隠して、そんな事実はありませんと虚偽の開示をした場合において、三十万の過料で済まされる。であれば、それは、本当に悪質に最初から財産を隠そう、執行を免れようという連中は、三十万の過料で済むわけですから、まともに陳述するわけないですね。これは偽証罪にも問われないんですね、刑事局長。そうすれば、まともに答える人、いないんじゃないですか。どうですか、刑事局長か。――刑事局長じゃない。
房村政府参考人 今回、財産開示制度を設けるということで検討いたしました際に、一方の意見としては、やはり制度の実効性を高める見地から、宣誓をした上で虚偽の陳述をしたような場合には刑事罰をもって臨むべきである、こういう意見もございました。現に諸外国では、刑事罰あるいは裁判所侮辱として身体的拘束を科すというところもございます。
 ただ、同時に、今まで日本で設けられていない新しい制度でありますし、過酷な債権取り立ての手段として濫用される危険もある、こういう指摘もございました。
 そのような双方の意見を踏まえまして、法律案では、出頭義務、宣誓義務を課した上で、不出頭などについては過料の制裁を科す、こういうことで制度を構築したものでございます。
 また、同時に、先ほども申し上げましたが、債務名義の種類を限定するとか、手続的な申し立ての要件を定める、あるいは三年間は開示を行わない、こういうようなことをして、できるだけ濫用の危険を防ごう、こうしたものでございます。
 何分、新しい制度でございますので、私どもとしても、今後の運用の実情を注視しながら、さらにその制度の充実を図っていきたいと考えているところでございます。
山田(正)委員 中途半端な法律じゃないのか。例えば末野興産みたいにというか、財産隠しをする悪質なものに対しては、いわゆる罰金もしくは偽証罪にでも問えるような、そういうものをその制度の中に入れるということは必要なんじゃないか、私はそういう考えなんですが、ただ、善良なというか、一般の庶民にしてみれば、開示請求で裁判所に呼び出されるというのは大変な苦痛なわけです。実際に裁判所に呼ばれて、裁判官の面前で聞かれたって、もう上がってしまって自分は何を答えているのかわからない、そういう状況が普通だと思うんです。
 そういったことが考えられるとすれば、事前に書記官によって、事前予備調査みたいな、例えばこういうあなたの財産があったら、不動産の評価証明ぐらい持ってきてくださいとか、あるいはこういうものですよと、電話でもいいし、そういう予備的な準備というのは当然必要だ、そう思うんですが、私の質問時間も来ましたので、それを指摘して、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
山本委員長 木島日出夫君。
木島委員 六月六日、先週金曜日に続きまして、担保物権及び民事執行制度改善のための民法等の改正法案について質問いたします。
 私も最初に、民事執行法百九十七条、第四章ですか、新設される財産開示制度についてお聞きをいたします。
 これまでの質問者からも、再三、この制度が町金融などによって濫用されないか、それでなくても債務返済に苦労している庶民が身ぐるみはがされないのかという心配がたくさんあるわけです。私もそこを一番心配しております。
 先ほどの質問に民事局長が答えて、濫用防止として三つ挙げましたね。債務名義を一定程度絞ったということ。二つ目には、強制執行あるいは担保権の実行が行われ、その完済に至らないということ、それからその見込みがあること。そして三つ目は、一度やったら三年間は開示ができない。この三つだけですか。
房村政府参考人 基本的に、財産開示の仕組みは今のとおりでございます。これによって濫用を防止するということを考えております。
木島委員 一つ確認したいんですが、財産開示請求ができる債務名義を絞ったというんですが、どういうふうに絞ったんでしょうか。
房村政府参考人 まず、基本的に、原則として判決にいたしまして、いわゆる執行証書、公正証書を除く、それから仮執行宣言つきの場合を除く、支払い督促を除く、こういうことでございます。
木島委員 そうすると、通常の金銭債権請求の裁判が確定すれば、それは当然財産開示請求ができるということになりますね。
 それから、二つ目の要件ですが、第百九十七条の一項一号は、強制執行か担保権実行における配当手続が現実に行われて、完全弁済が得られなかったとき、二号は、知れている財産に対する強制執行を実施しても、完全な弁済が得られないことの疎明があったときとありますが、この二号というのはどんな状況を想定しているんですか。
房村政府参考人 二号としては、例えば不動産を把握はしている、しかし、それに先順位の非常に高額の抵当権がついていて、調査した限りでは、およそ余剰が生ずるとは思えない、こういうような場合が典型例になろうかと思います。
木島委員 そうしますと、逆に質問しますが、三つの要件が満たされますと、裁判所に呼び出された債務者はどこまでみずからの財産について開示、陳述しなければならないんでしょうか。先ほど来、答弁の中に、すべて財産を開示させられるというような発言がありましたから、そうなんでしょうか、この法律は。
房村政府参考人 これは強制執行あるいは担保権の実行の対象となる財産を開示するという目的でございますので、生活必需品のような差し押さえ禁止財産については当然開示する必要はないということになります。それ以外については基本的にはすべての財産を開示していただくというのが原則でございます。
木島委員 例えば、こういう質問なんですよ。
 一千万円の支払い請求が判決で認められて、債務名義がとれた、債務者に不動産があるのはわかっている、それで、競売にかけたりしても、そのわかっている不動産だけではとても一千万には配当が見込めない、抵当権がついていまして五百万しか配当が見込めないだろう、そういう局面において、この債務者を呼びつけて、財産全部を明らかにしろ、例えばA銀行に五百万の預金がある、B銀行に一千万の預金がある、C銀行に一千五百万円の預金がある、株券をたくさん持っている、不動産を別に持っている、そういう局面の場合に、債権者としては債務名義はたかだか一千万、目の前にある、わかっている不動産を競売にかければ五百万は入ってくる、あとは残は五百万だ、そんな局面のときに、債務者のすべての預貯金、不動産、有価証券その他その他、積極財産を全部しゃべらないといかぬということにこの法律はなるんですか。
 それとも、私の質問をもっと具体的に言いますと、一千万の債務名義なら、一千万円以上おれは預金はここにあると言ったら、もうその余の預金は一切しゃべる義務がない、そういう限定、債権額の限定というのはつかないんでしょうか。
房村政府参考人 先ほども申し上げましたが、一応全財産を開示するのは原則でございますが、まさに御指摘のような場合に備えまして、今回、二百条に陳述義務の一部の免除という条文を置いております。
 そこでは、申立人の同意がある場合あるいは既に開示したものによって相手方の債権の完全な弁済に支障がなくなったということで裁判所の許可を受けたときはその余の財産について陳述することを要しないということでございますので、今御指摘のように、もう既にこの財産で十分完全な弁済が得られるということが明らかであれば、裁判所の許可を得て、その余のものについて開示する必要はなくなるということであろうかと思います。
木島委員 二百条に確かにそういうことが書いてあるんですよね。そうしますと、一千万の債務名義だ、しかし、こんなのは表に出す話じゃないですから、何カ所かに預貯金を持っている。そして、ではA銀行に一千万円の預金があるということさえ開示すれば、この二百条が動き出すという可能性はあるわけですね。
 しかし、では、債務者はその債務だけじゃなさそうだ、ほかにも借金をしょっていると。もしその預貯金が表に出てきてしまえば、財産開示請求をした請求権者だけじゃなくて、ほかの請求権者がわっと入ってくるというような状況も当然想定される。そんな場合には二百条はどうなるんですか。
房村政府参考人 それは、他に債権者がいて執行した場合に配当要求をしてくる、そのことによって、開示された財産からは完全な弁済が受けられない、こういう可能性があれば、それは二百条を発動して、そこでその余の財産についての陳述を免除するというわけにはいかないだろうと思います。
木島委員 そうすると、結局、百九十六条に始まるこの財産開示手続というのはどういうことになるんでしょうか。
 積極財産、たくさんある。消極財産、債務ですね、たくさんある。全部足し算するとプラマイ・ゼロになってしまうかもしれない、あるいはおつりが来るかもしれません。あるいは、場合によってはプラマイ・マイナスになってしまうかもしれない。いろいろな局面がある中で、たまたまある債権者が債務名義をとって、そしてある財産の一つについてのみ強制執行したけれども配当が得られないというときにこの財産開示請求は発動されるわけですね。しかし、その裏には隠れたる部分が、積極財産もあれば消極財産もたくさんある。
 そういう中でこの財産開示制度というのが動き出すということになりますと、一体、百九十六条、百九十七条、二百条、そういう要件について、だれがどこまで陳述する義務が発生するのかということをきちっと法的にあらかじめ明らかにしておかなければ、開示しなかった場合にはいわゆる罰則があるんですね。過料という優しい罰則ではありますが、しかし、これは罰則であることは間違いないのでありまして、その辺の要件がきっちりしていますか。そうしないと、刑事事件として立件するときに大変なことになるんじゃないかと思えてならないんですよ。
房村政府参考人 基本的には、先ほど申し上げましたように、差し押さえ禁止財産等を除く財産について開示をしていただくということが原則でございます。
 二百条では、申立人の同意がある場合、それから開示した部分によって完全な弁済が得られるであろう、こういう場合、裁判所の許可を得てその一部で済ませる、こういうことでございますので、もちろん当事者の側から同意がある場合はもう明らかでございましょうし、弁済が可能かどうかということについては、その当事者の方からそのような事情を聴取することによって裁判所が適切に判断をしていく、こういうことになろうかと思います。
木島委員 今の答弁を聞いておりますと、結局、債務者にとっては罰則、過料ということでありますが、罰則を回避しようと思ったら、今現に強制執行され、あるいは競売に付されている財産、そして財産開示請求をしてきている町金融なら町金融からの債務、それだけじゃなくて、結局は刑事罰を回避しようと思ったら、あらゆる積極財産、そしてそれに対応するあらゆる債務、ほかの借金、どんな人からどんな借金があるのか、全部裁判所に明らかにして、これこれこういう状況だからこれで私は全部なんですよ、隠していないんですよということを立証しなければ、罰則を受ける危険を負担するということになりやしませんか。
 そうすると、これはもう大変なプライバシーの侵害といいますか、町金融には何ら関係ないほかの債務まで全部明らかにしてしまうということに、結果的にはこの罰則をつけることによってなってしまうんじゃないですか。それに対する歯どめというのが、この四章、五章にはあるんでしょうか。
房村政府参考人 基本的に、強制執行もしくは担保権実行の対象となる財産を把握するための制度でございますので、開示をする必要があるのは積極財産でございます。
 ですから、仮に一部の財産を開示してそれで完全な弁済が得られるかどうかという判断を本人の方が裁判所に求める場合には、確認するために他の債務の状況について質問等がなされる可能性はございますが、財産開示そのものとしては、基本的には積極財産を開示するということでございます。
 また、基本的に、もう判決のような確実な債務名義が確定しておりまして、その支払い義務を負っているということが前提でございますので、本来的に言えば、任意にそれを支払っていただいて解決をする。それが解決できずに、しかも権利を持っている権利者として財産が把握できないがためにその権利の実現が図れないという場合でございますので、これは、本人にその程度の協力をしていただくということはやむを得ないのではないか、こう考えております。
木島委員 では、事実関係だけ聞いておきましょう。
 この財産開示の対象である積極財産、資産は、日本国内だけじゃなくて、外国にある財産も当然含むと解釈されますか。
房村政府参考人 基本的に日本国内において強制執行または担保権の実行をするということを想定しておりますので、その執行あるいは競売の申し立ての対象となり得る財産、こういうことで範囲が画されると思っております。
木島委員 そうすると、外国にある財産はこの財産開示請求の対象から除外されるということで、結構なことですね。
 それから、では続いてお聞きしましょう。
 財産開示請求があった数カ月前あるいは直前に、債務者が所有権を第三者名義に移転したような場合、開示請求その瞬間では自分名義の積極財産ではない場合、あり得ますね、不動産もそうだし、株券もそうだし、その他銀行預金も移すことはできますね。そういう場合は、どこまでが財産開示義務があるんでしょうか。
房村政府参考人 この財産開示の対象となる財産は、その時点においてその本人に所属している財産でございます。したがって、過去に処分した財産について、直接的にこの開示の義務がかかるということはございません。
木島委員 わかりました。
 ドイツなんかによりますと、現にある財産だけじゃなくて、詐害行為取消権の対象になるような行為、財産を隠す行為、それも何か開示請求の対象になるような法制度があるやにお聞きしているんですが、この法律はそこまでは求めていないと確認してよろしいですか。
房村政府参考人 これは、実はこの制度を法制審議会において議論したときにも、そういう過去の一定期間内の処分した重要な財産は開示させるべきではないか、こういう御意見もあったわけでございますが、最終的に現時点における財産に限るということにいたしました。
 ただ、例えば過去にこういう取引があって、現金が入ったのではないか、それはどうしたんだというような関係上、いわば陳述の信憑性をテストするために過去の取引について質問が及ぶということは、これは当然予想されます。
木島委員 変な質問をします。これは刑事罰にかかわるので御容赦ください。
 架空名義の預金、あるいは事実上妻名義の預金、知人名義の預金、しかし、真実は債務者本人のものだというようなことが何らかの状況で立証されてしまったような場合は、そういう自分名義ではない財産を開示しなかった、そういう場合に、過料の制裁、刑事罰、受けるんでしょうかね。
 刑事罰というのは非常にシビアですから、お聞きします。正当な理由なく陳述すべき事項について陳述しなかったとき、虚偽の陳述をしたとき、過料なんですね。強烈ですね。ですから、お聞きします。
房村政府参考人 まず最初に、過料でございますので、いわゆる罰金とは違いますので、刑事罰という言葉ではない、もちろん罰則の一種ではございますが。過料でございますので、そこはひとつ御認識を願いたいと思います。
 それからもう一つ、今の点ですが、財産開示の目的からいきますと、実質その人の財産であればこれを開示していただくということだろうとは思いますが、しかし同時に、名義等の関係もございます、強制執行の対象としてどう考えるかという問題もありますので、これは非常にあいまいなお答えで申しわけないんですが、それはやはり財産の帰属状況をどこまで認定できるか、実質的にその人のものとして執行対象の財産になり得るということであれば開示していただく必要がありますでしょうし、その可能性が非常に低いということであればその罰則の適用までは考えないということになるのではないかと思いますが、ちょっと難しい問題だと思っています。
木島委員 難しいのを承知して私は聞いているんですよ。
 ただ、あくまでもやはり二百六条というのは過料でありまして、第一項第二号は、財産開示期日において宣誓した開示義務者が、正当な理由なく第百九十九条一項から四項までの規定により陳述すべき事項について陳述せず、または虚偽の陳述をしたとき、そういう構成要件ですから、これは一応罰則の構成要件ですから、一点の曇りもなく構成要件はつくられなきゃこれはいかぬと思うんですね。そうしますと、私は、最後の、仮装とか、名義の預貯金なんかを陳述しなかったときに、これは動くのか動かないのかというのはやはり大事だと思うんですよね。
 もうちょっと明確な答弁を求めて、この問題は終わります。
房村政府参考人 これはその審尋の運営の仕方にもかかわることかとは思いますが、やはり実質その人の財産であって、当然執行の対象になり得るものであるとすれば、これは開示していただく必要があろうかと思いますので、そういった完全な仮装である、いわゆる取り消し等の法律行為に伴って戻ってくる財産ということではなくて、実質的にもその人の財産であるという場合には、これはやはり開示していただく必要があるのではないか、こう思っています。
木島委員 では、ついでに、せっかくですからもう一点。係争中の積極財産は開示義務があるんでしょうか。
 というのは、相続争いをしている最中で、この一千万の預金はおれのものだ、おれには相続権があるといって頑張っているとか、不動産の所有関係を争っている、おれのものだと主張し続けている、そういう債務者が財産開示請求を受けてしまったときに、どこまでしゃべらないとこの罰則の対象になるのか。これは非常に大事ですよね。あるいはどんな真実を、係争中の、どんな係争の状況を裁判所にしゃべらないといかぬのかというのは、なかなかそういうことまで考えていきますと、この財産開示請求というのはただものじゃないなと思わざるを得ないので、せっかくですから、最後の一問を発して、答弁を求めます。
房村政府参考人 そういう係争中の物件であるということをおっしゃっていただくのがベストだとは思いますが、実際、それは事後的にともかくその人のものでないということになれば、それは開示していなくても何ら問題はないということになりましょうし、現に係争中で権利が非常に不安定だというような状態のものであれば、最終的にその人のものだとなっても、そういう不安定な時点で開示の対象から落としたということについて正当な理由が認められる場合もあるのではないか、こういうぐあいに考えております。
木島委員 この問題はもう閉じますが、日本で初めてつくられる制度です。運用を誤れば、町金融によって債務者が身ぐるみはがされる、あるいは係争中のものまで全部はがされる、あるいはその他その他、自分の借金全部を表に明らかにしないと過料の制裁のおそれを受けるなんということ。そういう、運用によっては大変なことになってしまうので、やはり債務者の人権、財産隠せという意味じゃありません、基本的人権、財産をしっかり保全する、そういう利益といいますか、それが運用によって図られなければいけないのではないかということを指摘だけしておきまして、次に移ります。
 民事執行法百五十一条の二、扶養義務等に係る定期金債権を請求する場合の特例であります。
 離婚した夫がまともに養育料を旧妻に支払わない、そういうときに、一度差し押さえをすれば、その後引き続いて、夫がまじめに会社勤めをしている場合には毎月毎月の先の給料を差し押さえできるという趣旨だと思うので、まことに結構なことでありまして、私は大賛成であります。
 それを前提にいたしまして、ちょっと難しい、微妙な問題について確認しておきます。
 一定の時期に扶養料請求の債権が滞った、そしてこの民事執行法百五十一条の二を使って裁判所に申し立てをした、それは結構なんですね。そういう場合に、それを数カ月続けていたと。例えばですよ、三カ月目に、その債務者である旧夫がひとつ奮発しまして、親戚、身内から借金をたくさん借り込んで、それまでの債務の滞りを全部解消した、一遍に払って不履行はない状況をつくり出したという場合は、その翌月の給料債権なんかに対してはこの百五十一条の二は動くんでしょうか。
房村政府参考人 養育費等の支払いを怠りまして、この制度を使って、将来の養育費に基づいて将来の給与を差し押さえる、こういうことを一回いたしますと、仮にその後たまっていた分を全額払ったからといって、その差し押さえが無効になるということはございませんので、依然として将来分についても差し押さえの効力は維持されております。
木島委員 そうすると、非常に嫌な制度になってしまうんですよね。旧夫がたった一度だけ、給料をもらったけれども旧妻に対して養育料を支払うのを怠ってしまった、その場合にこの百五十一条の二が使われて、将来の扶養料に対しても差し押さえができるような状況がつくられる。
 そうすると、さっき私が言ったような場合、非常にまじめに頑張って、人から借金までして遅滞を解消した、それでも、その後でも差し押さえの効力が生き続けるとなりますと、その会社が第三債務者になるんですよね。その旧夫は会社勤めをしているわけですね。会社と労働者という雇用関係のもとで、ずっと子供が二十になるまで差し押さえの効力が続くなんというようなことになりましたら、会社から、おまえは一体旧奥さんに対して全然支払いしていないのか、だめじゃないかなんという批判、あらぬ疑いを受けることになっちゃうんじゃないですかね。
 この法律、百五十一条の二には「その一部に不履行があるとき」という条件がついているでしょう。だから、この法律を動かすときには、最初に不履行があっても、頑張って不履行が解消された状態では、そういう将来の差し押さえはとまるというふうに解釈していいんじゃないんですか。何でそういう解釈、だめなんでしょうか。
房村政府参考人 確かに、たまっている分を払ったのに将来分が差し押さえられているというのは厳しいという見方もあろうかと思います。
 ただ、現実問題として、こういう養育費で差し押さえまでの手続をとるというのは、本当に、ただ一カ月分をちょっと怠っただけというよりは、相当おくれたり不払いの期間があって、なかなか解決しなくて申し立てをするというのが実情だろうと思います。そういうときに、じゃ、たまっている分を払ったらもう将来の効果はなくなるんだということになってしまいますと、またその次の月に支払いがないとまた申し立てをしなければいけない。そうすると、現状でたまった分についてその都度申し立てをしなきゃいけないのと基本的には同じことになってしまいます。
 ところが、養育費というのは、やはりためることのできない性質、毎月毎月の生活の糧でございますので、これは継続的にきちんと払っていただく必要が非常に高い債権でございますので、債務者にとってやや厳しいとは思いますが、それを怠って相手方がやむなく申し立てをした場合には、やはりそれはたまっている分を払ったからといって取り消せるというような性質のものではないのではないか。そこは、本当に取り消しを求めるのであれば、誠意を尽くして話し合いをして、今後、間違いなく払うということを信頼を取り戻した上でその差し押さえを取り下げてもらう、こういう方法はもちろんあるわけでございますので、これは実際の力関係、あるいは必要性を考えますと、この程度の保護を与えないと実質的な保護が図れないのではないかと思っております。
木島委員 そうですかね。
 では、事前に法務省にこの問題を投げかけましたところ、一つの回答があったことは事実なんです。債務不履行状況が生まれて、旧妻がこの百五十一条の二を使って将来の債権まで執行できるような状況をつくり出した、それに困って、旧夫が頑張り抜いてどこかから借金してきて、未払いは解消する状況をつくり出した、そういう場合には、旧夫としては、何か請求異議を申し立てる、非常に技術的で失礼ですが、請求異議の申し立てをして、裁判官にそれを認めてもらって、執行はもうできない、債務はもうないという状況を認定してもらって、この百五十一条の二という大変不名誉な状況を解消する道があるんではないかという知恵もちょっと伺ったんですが、それは、そういうことはだめなんですか、結局、だめだということに法務省、なったんですか。
房村政府参考人 ただいまの請求異議を起こせる場合は、差し押さえをしてある将来の分について、例えば、扶養料の支払い義務の到来日から給料日までの間にその扶養料を支払う、そうしますと、その分は消滅してしまいますので、差し押さえの効果は消滅しませんが、実質的にはそこから取り立てることはできなくなるはずである、そういうことから、その月分について請求の異議を起こして取り立てを阻止する、そういうことが可能になるということでございまして、その先については依然として差し押さえの効果はありますので、逆に言いますと、毎月毎月前払いをして請求異議の訴えを起こさなければいけないということになりますので、余り実効的な方法ではないだろうとは思います。
木島委員 このぐらいでもうやめますが、本当に詰めて考えていきますと、なかなかこれは大変な制度だなということを私は逆の意味で実感します。決して離婚した旧妻の権利を損なうなんという気持ちは毛頭ないんですけれども、法律の盲点といいますか、そういうのがかいま見れるので、老婆心ながら質問したわけです。
 次に、民法三百九十八条ノ十九から二十、根抵当権元本確定と登記の問題についてお聞きをいたします。
 現行法では、根抵当権の元本確定を請求する権利は、銀行の方にはない、抵当権者の方にはない、根抵当権設定者の方にのみある。しかし、別途、取引の終了したるときという客観的状況が生まれたときには元本確定事由になる、そういう仕組みになっているわけですね。
 そこでお聞きしますが、現行法で根抵当権元本確定請求を銀行側、抵当権者側に与えなかったその立法趣旨、根本的にはどんなところにあるんでしょうか。
房村政府参考人 根抵当権の確定と申しますのは、そのとき以後生ずる債権がその抵当権によって担保されないということでございますので、基本的にその確定は抵当権設定者にとって利益であって、抵当権者にとっては形式的には不利益に当たる、こういう理解がされていたものと思います。
 したがいまして、根抵当権の確定に利益を持つ設定者に対しては確定の請求権を法律制度としては用意いたしましたが、抵当権者には特段そのようなものは用意しなかった。競売をするということであれば、競売申し立てをすればそれで確定をするわけでございますので、特段確定の制度を設ける必要を当時は感じなかったのではないかと思います。
木島委員 明快な答弁なんですね。
 ところが、本改正法案は百八十度制度をひっくり返しちゃったわけですね。この制度、根抵当権の制度が法制化されたときには、銀行、根抵当権者側は確定請求がなかった。ところが、本改正法案によって、抵当権者側から、これは条件なしで、いつでも元本確定請求ができる、銀行側から、抵当権者側から元本確定請求があったときには直ちに確定されるということになるんですね。何で根本的な思想の転換をしてしまったんですか。
房村政府参考人 根本的な思想の変換と申しますよりは、先ほども申し上げましたけれども、根抵当権者は、抵当権の実行の申し立てをすればそこで当然に元本が確定いたしますので、別途元本確定請求というような制度を設ける必要はないというのが、多分、民法制定時の考え方だったのではないかと思っております。
 ただ、近時、根抵当権者が直接実行を申し立てるということではなくて、根抵当権で担保されている債権を抵当権つきで譲渡をしたい、こういうことによって実質的な債権の回収を図るという需要が社会的に非常に重要になってきました。根抵当権の性質として、確定前は債権と抵当権との付従性が否定されておりますので、根抵当権と債権を同時に譲渡しようということになりますと、債権を確定する必要がある。そういうことから、根抵当権の被担保債権の確定を抵当権者の意思によって行う、そういう制度に対する社会的需要が生じてきた、こういうことでございます。
木島委員 改正法第三百九十八条ノ十九によりますと、第一項で、根抵当権設定者は、物上保証人ですね、これは、設定のときから三年間はみずから確定請求ができない。しかし、第二項で、この法案が成立しますと、根抵当権者はいつにても、何ときにても担保すべき元本の確定請求ができる、そして、この場合においては担保すべき元本はその請求のときにおいて確定すと。根抵当権設定者は三年間義務づけられてしまう、しかし、貸し出した方、銀行、金融機関、根抵当権者の方はいつでも元本確定ができちゃう。これは余りにも不公平ではないかと指摘されているのを耳にしたことがあるんですが、どうなんでしょうか。
房村政府参考人 まず第一に、確定ということの性質でございますが、先ほども申し上げましたように、根抵当権の元本の確定という事態が生じますと、それ以後の債権がその抵当権によって担保されなくなる、こういう関係にございますので、抵当権設定者にとっては別に不利益ではない、そういうことでございます。
 抵当権者といたしますと、そういう意味で意思表示で確定をさせるということが認められても、相手方にそういう意味で損害を与えるわけではなくて、以後の債権が抵当権によって担保されなくてもいい、そういうことを甘受するということでございますので、これは一方的意思表示で確定を認めても法律的に何ら問題はないと理解しております。
木島委員 現下の金融取引あるいは国政上でも最大の問題の一つが、不良債権の早期処理の加速化です。小泉内閣の至上命題になっていますね。私どもは反対です。その一つの大きな要因として、銀行と金融取引をしている中小零細企業との関係の問題なんです。これはその問題につながるんですね。
 そうすると、今、銀行は、中小企業を切り捨てていきたい、もうこの中小企業とは銀行取引やめたいということが不良債権早期処理の加速化の名のもとに金融庁から詰められてきているわけなんです。そういう場合、これまでの民事法は、銀行の方からは元本確定請求権がなかった。要するに元本確定請求権というのは何かといったら、経済的に言葉をかえれば取引停止ですよ。もうあなたのような中小零細企業とは金融取引しませんよ、担保権者としての意思表示でしょう。だから、元本確定して、おしまい、金融取引しません、そういう権限をこの民法によって付与するということになるんですね。
 これまでの民法は、現行民法は、銀行、金融業者、抵当権者側からの元本確定請求権はありませんでしたよ。だから、この法改正というのは、既に与党によって、議員立法によって、いかがわしいやり方だったと私は思うんですが、特例法によって突破されたものです。それを一般法化するものですが、銀行対中小零細企業の金融取引の側面から見ますと、どうも余りにも、金融機関、根抵当権者の方の利益だけを優先して、不良債権の早期処理の加速化をこの民事法の側面からもバックアップするという本質を持つものじゃないかと危惧している一人なんですが、そういう経済的な背景があるんじゃないでしょうか。
房村政府参考人 今回この元本確定の制度を新たに設けました背景につきましては先ほど申し上げたとおりでございますが、その前提として、現在の民法三百九十八条ノ二十第一項第一号、ここで、「担保スベキ債権ノ範囲ノ変更、取引ノ終了其他ノ事由ニ因リ担保スベキ元本ノ生ゼザルコトト為リタルトキ」と、これが確定事由とされております。したがいまして、基本的な取引が終了すれば、これは確定事由に基本的になるわけでございます。
 ところが、この取引の終了ということがなかなか客観的に認識しにくい、外形的、客観的に明確に判断できない場合が多いということから、この確定事由については、無用の紛争を招いているのではないか、こういう指摘がありまして、その解消策としては、根抵当権者にその確定の請求権を与えるという形で明確化することが望ましいというのはかねてからあった議論でございますので、今回、この執行制度、抵当権制度等を見直すに際しまして、この元本確定の制度を設けるということといたしたものでございます。
木島委員 それは承知していますよ、三百九十八条ノ二十第一号の「取引ノ終了」というのが、客観的な事実が元本確定事由だと。それはどういう場合が取引の終了に当たるか、争いがある裁判例もたくさんあるということを私も承知しています。
 しかし、これは裏返せば、金を貸した側、抵当権者、銀行の方が、もうこんな中小零細企業と金融取引したくない、切ってしまえという思惑があって、貸し付けをとめてしまう。しかし、中小零細企業にとっては命がけですから、金融取引が切られたら自分は倒産、破産するんですから、中小零細企業にとっても命がけ、物上保証人、担保権設定者にとっても命がけですね。そういうせめぎ合いの中で、争いがあり、第三債務者とかほかの債権者との利害関係もこれあり、こういう「取引ノ終了」という、客観的な事実ですが、非常にあいまいな条文は問題ありとかねてから指摘したのは、銀行の方が、こんなものは切り捨ててしまえ、おれたち金融機関に元本確定請求権という天下の旗印をよこせということで、かねてから論議があったんじゃなくて、かねてから金融機関から強烈な要求が法務当局は突きつけられていた、そんな問題なんじゃないですか。
 これは、金融取引を切られたら本当にすぐ破産してしまう、そして何としても金融取引を継続したい、しかし借金でなかなかままならない、そういう中小零細企業の立場から物を考えますと、今民事局長が言ったような答弁を、ああ結構ですと言うわけにはいかないんですが、どうなんでしょうか。
房村政府参考人 この民法三百九十八条ノ二十第一項第一号の定めに問題があるというのは、金融機関のみならず、一般的に民法学者の間でも指摘をされていた事実だろうと思っておりますが。
木島委員 時間が迫っていますから、この問題はもうこれで切り上げて、次に、民法三百七十一条、抵当権の効力の拡大。
 これまで抵当権というのは、明治以来百年間、担保物件の交換価値に着眼をして形づくられてきた制度であります。しかし、今度の法改正によって、抵当権は、単に担保物件の交換価値のみならず、その使用価値、収益にまで手を伸ばす、抵当権の強烈な権利の拡大、そういうのが本質的な問題であると私は見ております。
 そこで、三百七十一条の条文で、「抵当権ハ其担保スル債権ニ付キ不履行アリタルトキハ其後ニ生ジタル抵当不動産ノ果実ニ及ブ」、要するに、抵当権者である銀行に対する支払いがおくれたら、そのおくれた時期以降の建物についた賃借権の賃料、そういうものをみんな抵当権者が持っていけるという抵当権者優先のすさまじい法改正なんですが、この「不履行アリタルトキ」というのはどういうことなんですか。
房村政府参考人 いわゆる不履行でございますので、確定期限があればその期限を徒過したこと、不確定期限であれば催告を受けて催告期間内に履行しなかった、こういう場合でございます。
木島委員 抵当権は一つだけじゃないわけですね。銀行取引が多ければ、第一順位の抵当権、第二順位、第三順位と、もう何十個とついているようなものもあります。その三番目の抵当権者についてのみ不履行が発生したときには、その三番手の抵当権者たる銀行が賃料を横取りできる、こういうことになるわけですね。
房村政府参考人 条文にありますとおり、担保される債権に不履行があったときには、その抵当権の効力が、果実である賃料にも及ぶということでございます。
木島委員 そんな局面を想定しますと、債務者というのは必ずしも銀行からの借金だけじゃないわけです。基本たる債務としては、労働賃金支払い義務があるんです。下請代金支払い義務があるんです。いろいろ問題になりましたが、租税債権の支払い義務もあるでしょう。社会保険料の支払い義務もあるでしょう。そういうもろもろの債務の中で、中小零細業者は生きているわけですね。
 そんなときに、抵当権者にのみその賃料を先取りする権限を与えてしまうというのは、この条文は労働債権や下請債権に全然配慮がないというのは私は不満でしようがないんですが、なぜこんな強大な、果実にまで、賃料にまで抵当権が及ぶような、日本の明治以来の抵当権制度の根本的な、これも私は思想の転換だと思うんですが、図るときに、労働債権とか下請企業業者の債権とか、そういうのを配慮してやったらよかったんじゃないかと思うんですよ。抵当権が賃料まで手を出したら、抵当権、絶対ですから、ほかの一般債権は全部排除されてしまうんですよ。
 何でこんな強力な権限を与えたのか、そのときに労働債権その他に配慮することを考えなかったのか、答弁願います。
房村政府参考人 実は、抵当権の効力が賃料のような法定果実に及ぶかどうかという点については、考え方の対立がございました。
 御指摘のように、抵当権の本質は交換価値の把握である、使用収益権は設定者に残っているんだ、こういうことを重視する方は、抵当権はあくまで交換価値の把握に満足すべきで賃料等にはその効力が及ばない、こういう考え方を主張しておりました。しかし、これに対しまして、抵当権の効力として、物上代位の規定があるので、その物上代位の効果として法定果実である賃料にも抵当権の効力が及ぶ、こういう考え方も対抗して主張されておりました。
 そして、平成元年の最高裁判決で、最高裁は、抵当権に基づく物上代位で賃料債権を差し押さえられる、優先弁済を受けられる、こういうことを認めましたので、日本において、抵当権の効力として賃料等の法定果実にも及ぶということは、現行民法の解釈として最高裁で確定している判断でございます。
 今回の法改正は、その点を明確にするためにしたものでありまして、この法改正によって改めて賃料等が抵当権の優先弁済の範囲に入ってくる、こういう関係にはございません。そこをひとつ御理解いただきたいと思います。
木島委員 時間ですから終わりますが、先日、私は短期賃貸借保護の廃止の問題を取り上げました。きょうも同僚委員からも厳しくその問題が取り上げられました。
 これは、大臣に意見だけ言って終わります。総じて、今回の担保物権・民事執行制度の改善のための民法一部改正法は、専ら金融機関ですよ、専ら抵当権ですよ、その権限だけを、権益だけを強大にする。そして、社会的弱者といいますか、債務者もその弱者の一人でしょう、賃借人も当然そうでしょう、労働債権もそうでしょう。そういう人に対する配慮が余りにも全体的に少ない。
 それは法制審が、そして法務省が、大体利害関係がふくそうするような状況の中にあって、銀行からの意見しか耳を傾けない、そういう年来の法務省民事当局にある体質がこんなへんぱな法律を持ち出してきたんじゃないかと厳しく指摘をいたしまして、質問を終わります。
山本委員長 保坂展人君。
保坂(展)委員 社会民主党の保坂展人です。
 本案に入る前に、二点だけ、簡単に法務大臣に伺いたいと思います。
 UNHCR、国連難民高等弁務官の日本・韓国地域事務所の方から、入管の今回の改正案についての見解が表明されました。その中で、一歩前進ということを、例えば六十日ルールの撤廃だとか、評価されていますけれども、同時に、最も懸念されているところの、いわゆる迫害のおそれのある場所から直接日本に入国するという部分にハードルを置いていることについて、こうなると十人中八人が排除されてしまうではないか、また、難民条約に一部反するという可能性がある、こういった見解が表明されたようですが、どのように受けとめられていますか。
森山国務大臣 今回の入管法改正案についてのUNHCRの見解におきましては、入管法改正案に対して大きな前進として歓迎するという一方、今後も検討課題が残されていると指摘されております。
 UNHCRの見解の詳細につきましては現在検討中でございますけれども、私は、今回の入管法改正案が難民条約に反することはないと考えております。
 UNHCRの御指摘は、入管法改正案に規定する仮滞在許可の条件といたしまして、迫害のおそれのあった領域から直接日本に入ったことを求めることが難民条約に反する可能性があるということでございますが、その真意は必ずしも明らかではございませんけれども、直接日本に入るという言葉の定義あるいはその内容、解釈について、あるいは誤解をしておられるのではないかと思うこともございますし、さらに、日本といたしましては、EU諸国の扱いも参考にいたしましたものでございまして、このような条件を付することが難民条約に反するとは考えておりません。
保坂(展)委員 これは誤解なのかそうでないのか、ぜひそこはしっかり、こういう見解はもう早く表明されたわけですから、よく話していただきたい。もちろん、この委員会でもこの間問題にしてきている入管行政のこともございますので、その点はいかがですか。
森山国務大臣 入管法の改正、既に提案をさせていただいておりますが、近くこの委員会でも御審議いただけると思います。そのときに十分御説明申し上げ、また御質問もいただいて、検討していただきたいと思います。(保坂(展)委員「UNHCRと話していただきたい」と呼ぶ)
 UNHCRともちろん話し合いまして、我が方の考え方もよく説明したいと思います。
保坂(展)委員 次に、これは今週の木曜日だったんですが、在日韓国人と日本人の男性の、お母さんが在日韓国人、日本人の男性がお父さん、男性がお父さんは当たり前ですが、婚外子の国籍をめぐる裁判の最高裁判決があった。出生後認知でも日本国籍ということが、いわばここで改めて出た。実は、九七年にこの委員会で私この質問をしていまして、当時やはり、これはもう少し短い、三カ月間の例でしたけれども、いわゆる出生前に認知をすることということをやや幅広に置いた判決が出て、民事局長通達がその当時出ています。今回の最高裁判決を民事局はどのように受けとめていますか。
房村政府参考人 御指摘の事案は、日本人父が胎児認知をしておりますと、出生によって日本国籍を取得する。ところが、法律上婚姻をしている女性に、夫以外の子供を妊娠した場合に、婚姻中は認知ができませんので、そういうことから認知ができるようになって、母の夫と子の間の親子関係の不存在を確定するための法的手続が子の出生後遅滞なくとられた、こういうような種々の条件をつけて、そういう場合には出生後の認知であっても国籍を取得するという最高裁の判例が御指摘のように平成九年に出たわけでございます。
 今回の事案は、子の出生後八カ月をたちましてから親子関係不存在の確認が出たということで、子の出生後遅滞なくと言えないということで、国籍を認めなかったわけでございますが、最高裁判所の方では、その親子関係不存在確認の訴えを提起するまでの事情を種々調べまして、今回は特別の事情があって、遅滞なくとられたということで救済する、こういう形の判決でございます。
 私どもとしては、今後の扱いといたしましては、八カ月ということは形式的に見ればやはり遅滞なくとは言いにくいと思いますが、そういう個別事情によってはなお国籍を認める場合があるということが最高裁判所の判断として示されましたので、今後はそういった期間の長いものについても個別の事情を十分しんしゃくした上で適切に国籍の判断をしていきたい、こう考えております。
保坂(展)委員 これは、最高裁判所までたどり着くのに大変な労力で裁判をされたと思います。前回は、出生後三カ月、裁判確定後十四日以内という、これは平成九年の判決後の通達だと思いますが、そういう形で整理をしておられますけれども、もう一度ここは抜本的に、今回の最高裁判決を受けとめて、ぜひ検討、整理をして、同様の件で次々と裁判を起こしたりというようなことがないように計らっていただきたいと思いますが、いかがですか。
房村政府参考人 今回の判決を参考にいたしまして、今後、個別事情に十分しんしゃくして適切な判断を行っていきたい、こう考えております。
保坂(展)委員 それでは、本案に移ります。
 先ほど同僚委員からも指摘がありましたけれども、私も、抵当権の、抵当不動産の果実にまでそこが及んでいくということは、かなりドラスチックな変化を、民事局長はもともとそうだったんだというふうにおっしゃっていますけれども、としたら、やはり建設に汗した工務店や職人さんの汗の結晶としてその建物というものができた、この結晶と果実とどっちが重いかという問題がやはり気になるんですね。
 やはり世の中の均衡を図っていくためには、金融機関等の抵当権を強化するだけではなくて、そもそもそういったものをつくり出す人たちが足げにされるような世の中ではまずいと思いますね。
 その辺の哲学をまず語って、民事局長からお願いします。
房村政府参考人 今回、抵当権の効力が法定果実、賃料に及ぶということを明らかにいたしましたのは、先ほども御説明いたしましたが、既に最高裁判所の判例によって明らかにされていることを法律の面でも明確にする、こういう趣旨でございます。
 それを前提として、今回特に不動産について、抵当権に基づく収益執行という形の新しい担保権実行の形態を採用したわけでございますが、これは特に近時、賃貸物件として優良なものがあって相当の賃料収入が見込まれる、抵当権者としても、その賃料収入から優先弁済を受けることによって債権の満足が得られればそれで十分でございますし、そういう形で抵当権者が満足を得れば、債務者、所有者としても所有権を失わないで済む、そういうことからそういう収益執行を考えようと。
 既に、現在の抵当権に基づいて、賃料についての物上代位も行えます……(保坂(展)委員「いいです、いいです、ダブる部分は」と呼ぶ)よろしいですか。
保坂(展)委員 同様の答弁は結構ですから、もうちょっと深めていきたいと思います。
 この担保・執行法制の見直しに関する要綱中間試案ですか、こちらを見ますと、さきの質疑のときにも問題にしましたけれども、何とかこれは、労働債権について各般の声があることを踏まえて、この中間試案には、労働債権にかかわる先取特権について、なお労働債権の保護の観点から検討する必要があると書いていますよね。そして、注として、一定の範囲については何らの公示手段も要さずに最優先の効力を認め、特定の財産の上に存する抵当権等の担保権にも優先するべきものという意見があるという意見紹介をしています。しかし、その後出た経団連のコメントなどは、これはやはり反対ですね、これは困ると。
 まず、要綱中間試案にこの意見の記載も含めて書き込まれた経緯について、簡潔にお願いします。
房村政府参考人 この中間試案に注として、今御紹介がありましたような、いわば最優先の先取特権、これを認める意見もあるということを紹介しておりますが、これは、法制審議会の議論の中でこういう意見もあるということが述べられましたので、パブリックコメントで広く意見を求めるに際して参考になればということで、注の形で御紹介したものでございます。
保坂(展)委員 そういう紹介があって、その後、中間試案に対する意見が各界から民事局の方に届いた、こういうふうにありますよね。そして、これに対してかなり労働団体などからは賛成の声が寄せられ、そして、これはやはり経済団体、多分、経団連も反対だったわけですから、これも反対の声が寄せられたと。これはやはり抵当権者その他の債権者の利益を害するんじゃないかとか、債務者の資金調達に悪影響を及ぼすのではないかというような声だったようですが、最終的にはこちらの声を採用したということでしょうか。
房村政府参考人 パブリックコメントで紹介をいたしましたところ、反応として、今御指摘いただきましたように、労働団体からは賛成である、こういう声が届きましたが、それ以外では大学で一校賛成しているところがあるだけでありまして、各種団体、大学、弁護士会も含めてですが、そういったところから寄せられた意見は圧倒的に反対が多うございました。
 そういうことを踏まえて法制審議会でも引き続き審議をしたわけでございますが、やはり公示手段を要することなく最優先の効力を認めるということであると抵当権者に不測の損害を与えるおそれがある、また、それを恐れて、抵当権者の与信額の引き下げによって債務者の資金調達に悪影響を及ぼすおそれがあるだろう、こういうことから、審議会としてこの意見は採用しない、こういうことになったわけでございます。
保坂(展)委員 前回、今回の民法と商法の部分の範囲をこれは拡大するんだということで、例えば一人親方であるとか手間請という形だとか、労務を提供する外形的な形態にかかわらず、これは労働というふうに認めてそこは整理されるんですということで、一歩前進ということを私も申しました。
 ただ、この要綱中間試案のペーパーを見ていますと、なかなかやはりこの不況、倒産の時代に、一人親方で入ればそれは労働債権だ、しかし、兄弟工務店とか零細企業あるいはグループ請とか、こういう形で入ったときに、何だ、一般債権になっちゃうのかと。汗の結晶は銀行の果実よりはるかに下なんですね、私は逆じゃないといけないと思いますけれども。
 というところで、この中間試案では、不動産工事の先取特権ということも書かれていますよね。不動産工事の先取特権の効力を保存するために、工事開始前にその費用の予算額を登記しなくても、工事完了後直ちにその費用の額を登記すればそこに足りるものとするというような部分で、これを読んでいまして、この方面からも少しその権益を保護することができる可能性があったんだなと。
 しかし、これも、どうやらこの法案からは姿も形も見えないわけですけれども、ここはどういう経過だったんですか。
房村政府参考人 これは、不動産工事の先取特権について、工事開始前に費用の予算額を登記するという仕組みに現行なっておりますのを、工事完了後直ちに費用の額を登記すれば足りる、こういう改正を考える、考えるというか検討の対象としたわけでございます。
 意見が完全に、さまざまな意見が寄せられまして、そういう形でやってくれれば使いやすくなるという声もありましたが、同時に、工事完了後、費用を登記されるということでは予測可能性を害する、こういう心配も非常に強うございました。また、逆に利用する側から、このような登記にしても、単独登記にしない限りは実際には利用できない、こういう指摘もありました。また、逆に設定される方からは、単独登記されたのでは、これは濫用の危険が多くてとても耐えられない、そういうさまざまな意見がありまして、結局成案を得るに至らなかった、こういうことでございます。
保坂(展)委員 ですから、やはり汗の結晶はどうにかして確保したいというごく当たり前の、またどう考えても切迫していますから、兄弟の工務店で三カ月かけて契約を受けて回してきた仕事が何もない、これは一千万どころか百万すら入らないといったら、もうあしたどうしようかという世界になるわけです。
 これについては前回も質問してきましたけれども、日弁連などは、中小企業保護、請負人保護の観点で賛成の意見をこれに関しては述べられていたようですけれども、結局成案を見ることができなかったということで、法制審議会の議論の中でもここが議論されたということを、やはり今、世を広く見渡してみれば、はっきり言って、不払いで泣きを見ている業者、あるいは会社というふうに言っていても実態は家族、こういう人たち、あるいは極めて規模の小さい、あるいは中規模も、別に規模が小さい業者だけが困っているわけじゃないんですけれども、実際に働いた、労務を提供した、しかし、逆に言えば、今度は、一人で入っていたり個人的にということであれば今回の改正でカバーできるんだけれども、たまさか三人だったりとか十人だったりすると、これは一般債権。ここは破産法などで見直していくということをおっしゃったんですね、前回。そうじゃないんですか。
 では、このすき間はこのままいくんですか。そこでまず第一の質問にします。要は、こういうふうに放置をされていっていいんだろうかということについてはどう思いますか。
房村政府参考人 基本的に、今回の改正で、実質として雇用関係にある場合にはその先取特権の保護を及ぼすという改正をしたわけでございます。そういう形で、労働債権の保護は今後も民事基本法の見直しの都度念頭に置いて対応していきたい、こう思っております。
 また一方、雇用関係と認定できないような形態の債権者についてどういう保護をするか。こういうことについては、例えば再生手続とか会社更生手続では、少額債権者として優先的に支払いをするということを可能にするような制度を設けておりますし、そういう種々の方法を組み合わせることによって保護を図っていくのかなと思っております。
保坂(展)委員 なかなか力強くない答弁だったと思うんですね。保護を図っていくのかな、これは保護されないのかなって感じなんですね。
 前回の局長の答弁で、契約の形式じゃなくて、実態として債務者に対して労務を提供して生活を営んでいる者であるかどうか、ここを見ていく、つまり形にこだわらないということであると思うんですね。そうすると、私の聞き方もちょっとまずかったかもしれないんですけれども、先ほど言ったグループ請だとか、あるいは家族数名、お父さんとお兄さんと自分とか、そういった家族工務店だとか、そういう形の、形態上はしかし外注費扱い、一応法人でもある、あるいは個人事業者として申告している、いろいろな形があると思うんですが、しかし、中身はこれは労務提供じゃないかと言える部分について、これは柔軟に見ていけるんでしょうか。そうだとすれば、保護されていくのかなというのが少し力強くなると思うんですが。
房村政府参考人 その点は、前にも申し上げましたように、法形式ではない、要するに、実態としての、いわゆる雇用関係に当たるのかどうかということを主眼として判断をするという形になっておりますので、それは指揮命令のあり方であるとか報酬の払い方であるとか、そういったものを総合して、実質的に雇用関係だ、こう認定できれば、おっしゃるような形態であっても、この先取特権の保護が及ぶということは十分あり得ると思っています。
保坂(展)委員 法務大臣に伺います。
 これは政治家として、非常にお聞きしたいところなんですけれども、先ほど結晶と果実という比喩、例えを申し上げました。要は、働いた人たちの汗の結晶と、そして今回は抵当権が不動産賃料も果実ということで押さえる、衝突するわけですね。といいますのは、労働債権とかそういったことの支払いの確保に、テナント料とか何かをまず充てていた。かつては売掛金なども使っていたようですけれども、なかなか最近それも難しいようです。
 そこで、国会テレビの問題も前回言いましたよね。なお、本当に零細で、世の中を支えている人たち、汗を流して大変な仕事をしている職人さんや親方あるいは中小企業という人たちが、やはりここはちょっと不安になるような時代に入っているんですね。ここはやはりバランスよく、今後しっかり手当てしていただきたいという、大まかな質問ですが、いかがですか。
森山国務大臣 民事局長が御説明いたしましたように、賃金を得た形態あるいは収入を得た形態、形についてはそうかた苦しく考えるわけではなくて、実際問題として賃金を得たというようなものであれば、それは大き目に考えていくというような態度でございますので、おっしゃったような問題についてもかなりの部分がカバーされるんではないかというふうに思います。
 中小零細企業が日本の産業の中心であり、それが支えているということは全くおっしゃるとおりでございまして、その人たちが不安にならないように、できるだけのことをしていきたいというふうに思います。
保坂(展)委員 それでは、裁判所にちょっとお聞きしたいと思うんです。
 結局、賃金債権の実行に当たって、存在を証する文書ということで、賃金台帳、出勤簿、雇用契約書などがきちんとあれば、これはなるほどという話になるわけですけれども、なかなかないということがどうもあるんです。そういったものがきちんと保全されていなかったりとか、もうそもそも行方がわからなかったりという場合がございます。そういう際に、例えば労働債権確認書とか陳述書とか、私の雇用関係に対する申し立てとか、何かいろいろ工夫して挙げられているようでございますけれども、ここいら辺の運用の実態はどういうふうになっているんでしょうか。
園尾最高裁判所長官代理者 民事執行法が一般の先取特権の証明書につきまして他の担保権とは違う法制をとっておりまして、一般には公文書で証明を要するところを、そのような制限を加えていないというような趣旨も考えますと、裁判所としては、個別の事案に応じて、どのような、書面あるいは先ほどお話しのようなさまざまな非定型なもので認めていくかということについて、事案ごとに知恵を絞って検討していかなければいけないということになるわけでございまして、一般的に、事務当局がその内容について述べることは難しいわけですが、やはり具体的な事案の内容に応じて、申立人の意見をよく聞いて、証拠の状況を点検した上で、しっかりと裁量権を行使して、認定していくということになるべきものだというように考えております。
保坂(展)委員 よく、しっかり見て、やっていただきたいと思います。
 もう一つ、これは保全処分の問題で、労働組合活動その他正当な活動に対して十分な配慮をしなければならない、これは九六年当時から言われてきておりますけれども、五十五条の保全処分が決定した際に、同条三項で審尋をとる、審尋を行うということを定められていますが、その実態はいかがでしょうか。簡単にお願いします。
園尾最高裁判所長官代理者 この点につきましては、権利侵害の態様とか緊急性、求める保全処分の内容、さらに疎明として出されてきているものの内容などによってどのような審尋を行っていくのか、あるいは審尋を行わないままで発令していくのかというさまざまな検討をするということになりますが、特に、権利者の権利に影響を与えるような場合には現実にその者を呼び出して意見を聞くというような審尋の方法をとることもございます。
保坂(展)委員 では次に、短期賃貸借制度の廃止にかかわる問題についてもう一度法務省に伺いますけれども、先ほど同僚議員からも質問がありましたけれども、例えばアパートや貸し家を契約する人が、そもそも抵当権の存否自身を知る手段というのはあるのだろうか。例えば不動産屋さんで宅建業者と契約するときに、何らかの説明義務とか課せられているものでしょうか。
房村政府参考人 宅建業者には宅建業法によりまして重要事項の説明義務が課されておりますが、その説明義務が課されている重要事項の中には、賃貸物件に抵当権が設定されているということは含まれているということでございます。
保坂(展)委員 私、そういった説明を、何十回も借りましたけれども一回も受けたことはありません。ここは、やはりかなり深刻な影響が出てくると思うんですね。
 先ほど来、敷金の問題、保証金の問題、出ていますけれども、そもそも保証金と敷金というのは概念として違うんですか。
房村政府参考人 敷金は、一般に、賃貸借契約の締結に際して賃借人から賃貸人に支払われ、賃貸借契約が終了した時点で、賃料の不払いあるいは賃貸物件の修理に要する費用があればそれを差し引いて返還する、一種の担保というぐあいに理解されております。
 保証金という名目で授受されているものについては、敷金の性質を持っているものもございますし、また、いわゆる建設協力金のような性質、建設費用にそれを充てて保証金を支払った者に優先的に入居を認める、こういうような性質の金員もあるようでございます。これについては、多分貸し金としての性格を持っているのではないかと思います。
 したがって、保証金については、さまざまな性質のものがあるので一概に法的な性質がこうだというぐあいには説明できないかと思いますが、敷金の性格を帯びているものもあるということは事実であろうと思います。
保坂(展)委員 今の説明で、例えば、この不況の時代に、会社に見切りをつけてお店を開きたい、どうにかかき集めて一千万保証金を積んだ。今のお話だと、これは、そのうちの幾らかは敷金的な性格を持ち、多くは多分貸し金的な性格を持つということですね。そうすると、そこに、不幸なことにオーナーが破産をしてしまって競売に付されて、新オーナーが登場した。そのときに、ごあいさつの後、実は交代しましたので、少しまけるので、八百万もう一回入れろ、こう言われる場合、現実にあるんじゃないでしょうか。
 そのときに、払った側としてみれば、かき集めた一千万入れているじゃないか、だからいるのではないか、そしてまたその物件の価値も、おいしい料理を出してお客さんも呼んで雑誌にも載った、営業努力によってその物件の価値もつくっているんだ、こういう意識もあると思います。しかし、法律でそういうふうになっているし、その保証金自体は新オーナーに何か承継をされて、出ていくときには払い戻してくれるみたいな、そういうこともこれまであったと聞いているんですけれども、これからはどういうふうになるのでしょうか、この法律では。
房村政府参考人 まず、現在の考え方でございますが、そういう賃貸物件について例えば所有権の移転があって、その人間が賃借権を引き受けた、こういう場合、敷金についてはその賃貸物件の買い受け人が承継するという解釈がとられておりますが、先ほど申し上げましたような保証金のうち、仮に貸し金部分があるとすれば、それは当然には引き継ぎませんので、敷金としての性格を持っている部分に限られるという形になります。
 現在改正をお願いしておりますものでございますと、短期賃貸借として従来引き継がれる可能性があったものが、今回は賃借権としては引き継ぎをしないということになりますので、敷金部分も含めまして、保証金全額について従来の賃貸人から返還を求める、こういうことになります。
保坂(展)委員 この短期賃貸借の廃止を考えたのは、占有屋対策なんですね。占有屋対策であるとすれば、これは今テナントの話をしましたけれども、今度は住居に移りますけれども、住居の、アパート、マンション、貸し家などに占有屋が居座って処理に困ったというようなケースというのはあるんですか。実態はどうなんですか。商業ビルがほとんどじゃないんですか。
房村政府参考人 今回、短期賃貸借の制度を見直しましたのは、これが執行妨害の手段として非常に濫用されているということと、もう一つは、賃借権保護の制度としても必ずしも合理的なものではない、こういう二点から見直しをしたわけでございます。
 それから、濫用の実態でございますが、これはさまざまな執行妨害の形態があるようでございまして、もちろん商業ビル的なものについて行われる場合もございましょうが、通常のマンション等の賃貸用物件についてそういう執行妨害がされる、勝手に入り込まれて短期賃貸借が仮装される、あるいは高額の敷金が仮装されるというような例があるということは私どもも聞いております。
保坂(展)委員 中小企業もお店を開かれている方もごくごく、借家人ですね、アパートやマンションを借りて住んでいる多くの方に非常に激変が、これは少なくとも、こういった法律が変わったということは、そんなに広く、どんなに周知をするといっても、何かの具体的な境遇に直面しない限りなかなかわからないんだと思うんですね。
 法務省として、例えば、借地借家法の定期借家権の創設のときに、正当事由をそこから適用除外するというようなことで、従来は慎重、反対だったところを一応転換された。しかし、従来慎重だったところの根拠は、住まいや暮らしにかかわる部分の民法の基本中の基本のところはそう容易に変えるべきじゃないということだったんじゃないかと思うんですね。今回のこのいわゆる改正案も、住宅、住まいなどに対してトータルな哲学あるいは予測を持ってされているんでしょうか。
 そういう意味で、国民には大変いろいろな方たちがいますから、病気の人とか収入がない人とか、あるいはもう高齢でどこか探すといっても探せませんよという方、たくさんいらっしゃいますね、そのあたりはどういうふうに考えていますか。
房村政府参考人 御指摘のように、居住の保護というのは非常に重要なことだろうと思っております。そういう観点から、私どもも、抵当権と居住権あるいは利用権の調整ということを念頭に置いて今回の制度も考えたつもりでございます。
 そういう意味で、従来の短期賃貸借でございますと、競落がされるまでの間に賃借権の期間が満了いたしますと、競落と同時に明け渡さなければいけない、こういう事態になっていたわけでございますが、その点は、やはりそこに居住している者にとって酷ではないかということから、私どもとしては、対抗できない賃借権であっても、そういうものについて一律に、期間が既に満了していても、明け渡し猶予期間を確保して居住の保護を図ろう、こういうことを考えましたし、また、抵当権者の同意を得て、安定して利用できる賃借権というものを新たに設けられるようにしようと。
 こういう意味で、私どもとしても、できる限りの居住と抵当権との調整を図って、居住者の利益も保護できるような制度として考えたつもりでございます。
保坂(展)委員 先ほどの、抵当権者の同意ということを要する、要望ですね、これは実際にいろいろ聞いてみますとあるそうですね。しかし、これはかなり大きなオフィスビル、そしてまた入る方も、法律知識できちっと武装した大手の企業あるいは外資系とかというところの人たちは何か権益はしっかり保護されて、一人一人の丸裸の国民は、ロシアンルーレットじゃありませんけれども、運が悪きゃそれまでよということにこれはなっては困ると思うんですけれども、その辺はどうですか。
房村政府参考人 おっしゃるように、大型の賃貸物件には利用しやすいだろうと思っています。ただ、賃貸人の立場としても、安定した賃借権ということをいわば売り物にしてより有利な条件で賃貸をするということから、その利用についてのインセンティブは働くのではないかと思っております。
 もう一つ、利用者として、抵当権が設定されているかどうかということは非常に重要なことでございますので、先ほども、宅建業者の説明義務には入っていると申し上げましたが、この点についても協力を求めて、広く説明が徹底するようにいたしたいと思いますし、この制度について、従来とは相当大きく変わりますので、私どもとしても、国民に広く周知をして理解を求めていきたい。
 そういう意味で、従前の契約については今回の新しい制度は適用しないということで、従前の法律的地位が甚だしく変わるということは避け、今後の契約についてこの新しい仕組みのもとで適正な利用契約を結んでいただきたい、こう思っておりますので、周知に努めたいと思っています。
保坂(展)委員 例えば、高齢者の世帯などから引っ越しの相談を受けたりしたら、これから気をつけてくださいよということをやはりアドバイスしなきゃいけなくなるということがあるのかと思うんですね。今住んでいるところにいる限りは安心だよというと、何かそれこそ物件の流動性みたいなものはかえって失速してしまうのかなという気もしますけれども、時間がありませんので、今度は養育費の問題に移りたいと思います。
 前回、法務大臣に、「簡易迅速な養育費等の算定を目指して」という大阪、東京、両方の家庭裁判所の判事の方の労作ですね、こういうものが登場したということで、私も知らなかったし、大臣も知らなかったと。これは、受けとめてみていかがですか。感想で結構ですので。
森山国務大臣 私も御指摘をいただいて、早速読ませていただきましたのですけれども、大変専門的な立場から精密に勉強されまして、非常に参考になる内容だというふうに拝見しました。
保坂(展)委員 裁判所にお聞きします。
 この研究会、大変いいことをされているんですけれども、裁判所の有志ということですけれども、どういう経過で立ち上がって、そして、この研究の成果というのは大変大きいと思うんですよ。これは、今まで個々具体的に裁判所でもやられていたと思うんですけれども、例えば、七百万円の年収があるサラリーマンのお父さんが、三百万円の年収で子供一人を育てているお母さんに対しては、大体、十五歳から十九歳なら六万円から八万円くらいというラインがこの一覧表で出るわけですよね。こういうもの、やはりかなり画期的だと思いますけれども、どういう経過でつくられたんですか、簡単に。
山崎最高裁判所長官代理者 委員御指摘のように、養育費の算定方法につきましては、従来複雑な作業をしておりまして、裁判所部内におきましても、かねて、何とか簡易迅速な算定ができないものかという問題意識を持っていたところでございますが、このたび、事例を数多く有している大規模庁である東京、大阪の裁判所の裁判官におきまして、本格的に研究しようということになって、研究会を立ち上げたということを聞いております。
保坂(展)委員 では、厚生労働省の方に伺いますけれども、ガイドラインですね、これは自立支援大綱ですか、母子家庭に対して。厚生労働省、来られていますね。これをつくられましたよね。
 そして、養育費ガイドラインの作成ということもこの大綱でうたわれているということですけれども、今回の研究会報告に関して注目されて、これは使っていこう、あるいは、ガイドラインというふうにうたっていたことにぴったりのものが出た、こういうことなんでしょうか。あるいは、その辺の経過などありましたら。
岩田政府参考人 離婚による母子家庭が今大変増加しております。養育費の支払いを見ますと、約束をしたことがあるというのが三五%、実際に払われているというのが二一%ということで、我が国の養育費の支払いは非常に不十分、低調であるというふうに考えておりました。
 その原因はいろいろあろうかと思いますが、一つは、養育費を取得する方法についてよくわからないとか、請求するにしても、幾らぐらい請求するのが相場なのかといったようなことについてもよくわからないということがあったように思います。
 そこで、厚生労働省としては、昨年、母子家庭等自立支援対策大綱、これは母子家庭対策を拡充強化するための大綱でございますが、その中で、今委員が言われましたように、養育費の手引の策定も検討することといたしていたところでございます。
 一方、今最高裁の方からお答えがございましたように、裁判官から構成される私的な研究会が昨年から動いているということをお伺いしておりましたので、その検討結果が出されるのをお待ちしておりましたところ、本年三月の末に養育費の算定表が作成、公表されました。早速拝見いたしましたけれども、非常によくできているというふうに思われました。
 また、今後、裁判の実務においてもこの養育費の算定表が目安となるということが十分予測されるのではないかとも思いましたので、早速、すぐに地方公共団体に対して、こういう養育費の算定表が策定されたということの情報提供をいたしたところでございます。
 今、厚生労働省といたしましては、養育費の手引自体を作成中でございますけれども、養育費の額については、この研究会が作成された算定表を紹介したいというふうに思っておりまして、これを一般の国民の方がより理解しやすいように解説をつけ、そして、養育費が取れなかったときの養育費の請求の手続などについても盛り込んだような手引を今作成中でございます。
保坂(展)委員 民事局長の方にまたお願いします。
 この間、人訴の法案の審議であるとか、今回、こうやって養育費がなかなか払ってもらえない働いているお母さんの立場からすると、本当に小さいけれども一歩前進だと。この委員会でも、やはり二万、三万あるいは四万という世界ではないんじゃないかと。子供一人育てるのに、十五歳過ぎて一体どうだろうかという、やはり隔靴掻痒の感があったんですね。これはやはり一覧表でぴたっと、収入がある程度一千万とかぐらいだったらやはり十万を超えてとか、それなりに世間の尺度の数字がぴたっと出ていますよね。こういうことについては、やはりせっかくの機会で、この養育費の問題を国会で議論するというのも、これまでたびたびあったことじゃないと思います。
 こういった情報をしっかり法務大臣にも上げて、また国会にもぜひ提案の中に附帯の資料や情報として掲げていただくということを求めたいと思うんです。
房村政府参考人 今回、私どもとしては、執行の面から少しでも使いやすいという制度を目指したつもりでございますが、御指摘のように、もとになる養育費の取り決めあるいはその額、これが大事でございますので、私どもとしても、可能な限りこういったことを世間に広く知っていただく、あわせて、それによって得られた適正な養育費を、今回整備いたしました手続を場合によれば活用していただく、こういうことを考えていきたい、こう思っております。
保坂(展)委員 裁判所の方で、調停で養育費を払うという取り決めがされたものの追跡調査をされていますよね。その際に、実際に金額も低いし全く払われていないケースも多いと。私が驚いたのは、子供一人について最も少額な養育費は千五百円だったというんですね。これはどういう世界なのかなというふうにも思いますけれども。
 民事局長に伺いますが、調停によって養育費の取り決めをされたところを追跡したわけですから、実態はもっと、働く女性にとって、子育てを抱えながら頑張っているお母さんたちにとっては、大変このアンケートよりもっと厳しい現状だということじゃないかと思いますが、いかがですか。
房村政府参考人 それは御指摘のとおりだろうと思います。
 裁判所まで両当事者がそろって来て、そこで話し合いがまとまっているわけですから、離婚等に伴う養育費の負担についてはそれなりにきちんとした、ある意味では恵まれた部分ではないか、そこに至らないような人たちも大勢いるということではないかとは思っております。
保坂(展)委員 それでは、法務大臣に伺いますけれども、前回、同じやりとりで、そもそも金額が三万円、四万円、五万円ということでいいんだろうか。千五百円まであったわけですけれども、もっと低い場合もあります。そして、収入が相当高い場合にでも低いところにそろっちゃうという問題もある。
 とりあえず初めの一歩だったんですが、裁判所の有志と、厚生労働省もこのガイドラインを今配布するということで、全体として相当、一歩どころか、日本のこの養育費の支払い後進国というものが大きく変わろうとしているときなんではないか。これはよく国民に周知をしてしっかりと生かされていくようにされたらどうかと思うんですが、いかがでしょうか。感想も含めてお願いします。
森山国務大臣 おっしゃるとおり、大変貴重な資料だと思いますので、このような資料が出たということを広く国民一般の方に知っていただいて、必要なときに参考にしていただくようにしなければならないと思っています。
保坂(展)委員 ぜひそうしていただきたいというふうに思います。
 以上で終わります。
山本委員長 これにて原案及び修正案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
山本委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に入ります。
 討論の申し出がありますので、これを許します。木島日出夫君。
木島委員 私は、日本共産党を代表して、担保物権及び民事執行制度の改善のための民法等の一部を改正する法律案、同修正案に対して反対の討論を行います。
 いわゆる占有屋等による違法な民事執行妨害、競売妨害等による収益が、暴力団を初めとする反社会的集団の資金源の一つにもなっており、その対策が必要です。その点で、それらへの対策として本法案の保全処分の強化、明け渡し執行の実効性の向上など不動産執行妨害対策の強化を行うことは必要なことと考えます。
 しかし、本法案が占有屋対策を理由に短期賃借権保護制度を廃止することは、賃貸マンション、賃貸テナントのほとんどに金融機関の抵当権がついている我が国の現状にかんがみると、社会的弱者である賃借人の保護を決定的に後退させることになり、到底認めることはできません。競売後、明け渡し猶予期間が設けられるといっても、原案での三カ月、修正案の六カ月では、賃借人の居住の安定を図ることなどできないことは明白です。
 そもそも、賃貸マンション、賃貸テナントなどは、その多くが、本来自己使用目的ではなく、文字どおり賃貸を目的として建設されています。金融機関も、そういう物件であることを承知の上で、賃料収入を返済原資と見込んで融資をし、抵当権を設定しているのです。たまたま賃貸マンション等の所有者が破産したからといって、何の責任もない善良な賃借人が立ち退かなければならないいわれは全くありません。こういう場合、フランスでは、賃借人は十二年間の保護が与えられます。ドイツでは、居住用の賃借権は保護されているのです。抵当権は賃借権を破らないという法格言さえあるのです。今求められているのは、短期賃借権保護制度の廃止ではなく、フランス、ドイツのように正常な賃借人の保護を拡充すべきことではないでしょうか。
 占有屋などは短期賃借権保護制度があろうとなかろうと執行妨害を行ってきたし、現に行っています。短期賃借権保護制度を廃止しても、占有屋はさまざまな形態で残ることが予想されています。執行妨害対策としても、短期賃借権保護制度廃止を行うことは本筋ではありません。にもかかわらず競売執行妨害対策と称して短期賃借権保護制度を廃止することは、不良債権早期処理の加速化を進める金融機関や大手ディベロッパーの要求のみを最優先させたものと言わざるを得ません。
 なお、本法案には、養育料等の債権の履行確保の制度の新設など賛成できる部分も少なからずありますが、改正法案の最大の焦点である短期賃借権保護制度の廃止は、とるべき法改正の方向が全く逆立ちしており、その及ぼす影響が甚大でありますから、法案に対し反対する次第であります。
 以上であります。(拍手)
山本委員長 これにて討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
山本委員長 これより採決に入ります。
 内閣提出、担保物権及び民事執行制度の改善のための民法等の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。
 まず、佐藤剛男君外二名提出の修正案について採決いたします。
 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
山本委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。
 次に、ただいま可決いたしました修正部分を除いて原案について採決いたします。
 これに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
山本委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
山本委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、佐藤剛男君外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党及び社会民主党・市民連合の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。山花郁夫君。
山花委員 ただいま議題となりました附帯決議案について、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。
    担保物権及び民事執行制度の改善のための民法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。
 一 抵当権と利用権との調整に関する民法の規律が変更され、短期賃貸借制度が廃止されるとともに、新たな賃借人保護の制度として建物賃借人に対する明渡猶予制度及び抵当権者の同意により賃貸借に対抗力を与える制度が導入されたことにかんがみ、その変更点及び新制度の内容について広く国民に周知されるよう努めること。
 二 抵当権と賃借権の権利関係の調整については、本法施行後の状況を勘案し、引き続き必要な検討を行うこと。
 三 労働債権に係る先取特権の実行手続はその「存在を証する文書」の提出により開始するものとしている民事執行法の趣旨について、労働者に過剰な証拠収集の負担をかけることなく迅速な権利実現が図られるよう、その周知に引き続き努めること。
 四 本法による改正後の民事執行手続が適正かつ迅速に運用されるよう、裁判所の人的・物的体制の整備に配慮すること。
 五 扶養義務等に係る金銭債権を請求する場合における強制執行の特例が養育費等の履行確保のために創設されたものであることにかんがみ、その特例の内容及び強制執行の申立てに必要な手続について広く国民に周知されるよう努めること。
 六 本法による改正後の民事執行法上の保全処分について、労働組合運動その他正当な活動を阻害することのないよう十分配慮し、関係者への周知に引き続き努めること。
 七 倒産時における賃金債権、退職金債権等の労働債権、担保付債権、租税債権、公課債権等の各種の債権の優先順位について検討を進め、所要の見直しを行うこと。
以上であります。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
山本委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 佐藤剛男君外三名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
山本委員長 起立多数。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。
 この際、ただいまの附帯決議につきまして、法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。森山法務大臣。
森山国務大臣 ただいま可決されました附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。
    ―――――――――――――
山本委員長 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
    ―――――――――――――
山本委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後三時四十一分散会


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