衆議院

メインへスキップ



第7号 平成16年3月30日(火曜日)

会議録本文へ
平成十六年三月三十日(火曜日)

    午前十時四分開議

 出席委員

   委員長 柳本 卓治君

   理事 塩崎 恭久君 理事 下村 博文君

   理事 森岡 正宏君 理事 与謝野 馨君

   理事 佐々木秀典君 理事 永田 寿康君

   理事 山内おさむ君 理事 漆原 良夫君

      金子 恭之君    小西  理君

      左藤  章君    佐藤  勉君

      桜井 郁三君    谷  公一君

      中野  清君    早川 忠孝君

      保利 耕輔君    松島みどり君

      森山 眞弓君    保岡 興治君

      柳澤 伯夫君    山際大志郎君

      泉  房穂君    枝野 幸男君

      鎌田さゆり君    河村たかし君

      小林千代美君    小宮山洋子君

      高井 美穂君    辻   惠君

      中井  洽君    松野 信夫君

      上田  勇君    富田 茂之君

      川上 義博君

    …………………………………

   法務大臣         野沢 太三君

   法務副大臣        実川 幸夫君

   法務大臣政務官      中野  清君

   最高裁判所事務総局人事局長  山崎 敏充君

   政府参考人

   (司法制度改革推進本部事務局長)  山崎  潮君

   政府参考人

   (法務省大臣官房長)   大林  宏君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)  寺田 逸郎君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    樋渡 利秋君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)  遠藤純一郎君

   法務委員会専門員     横田 猛雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月三十日

 辞任         補欠選任

  松島みどり君     金子 恭之君

  水野 賢一君     谷  公一君

  加藤 公一君     高井 美穂君

同日

 辞任         補欠選任

  金子 恭之君     松島みどり君

  谷  公一君     水野 賢一君

  高井 美穂君     加藤 公一君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 判事補及び検事の弁護士職務経験に関する法律案(内閣提出第七〇号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

柳本委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、判事補及び検事の弁護士職務経験に関する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りをいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として司法制度改革推進本部事務局長山崎潮君、法務省大臣官房長大林宏君、法務省大臣官房司法法制部長寺田逸郎君、法務省刑事局長樋渡利秋君、文部科学省高等教育局長遠藤純一郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

柳本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

柳本委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局山崎人事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

柳本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

柳本委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。森岡正宏君。

森岡委員 私は、自由民主党の森岡正宏でございます。

 本法案につきまして質問をさせていただきたいと思いますが、言うまでもなく、裁判官、検察官に限らず、専門家は自分の専門分野のことしか知らないというのではよくないと思います。若手の裁判官や検察官が弁護士の職務を経験する制度を設けるということは、大変有益だと私も考えておりますし、司法制度改革の目的にかなっていると考えます。

 そこで、まず実川法務副大臣に伺いたいわけでございますが、この制度を設ける趣旨、目的、判事補や検事が弁護士の職務を経験する必要性、メリットをどう考えておられるのか、簡潔にお答えをいただきたいと思います。

実川副大臣 今御指摘の必要性またメリットについてのお尋ねでございますけれども、我が国社会におきましては、司法に対する国民の要請が多様かつまた広範なものとなっております。これにこたえるために、裁判官や検察官も広くまたかつ高い識見を備えていることが求められております。

 さらに、判事補や検事は、弁護士の職務経験を通じまして、紛争の背景にあります社会の実情にじかに接するとともに、司法に対します国民のニーズを実感するとともに理解することができ、このような体験を判事補また検事に復帰した後の職務に生かすことが期待されておるところでございます。

 本制度は、このように、弁護士の職務経験を通じまして、裁判官や検察官の能力また資質の一層の向上、その職務の一層の充実を図ることを目的とするものでございます。

森岡委員 今の司法は国民のニーズに十分こたえていないと言われております。そのことが今般の司法制度改革の原点であると私は理解しているわけでございますが、裁判官について言えば、世間知らずだとか、判決と国民の常識との間にギャップがあるなどと言われております。その意味では、弁護士という法曹界内部の経験だけではなく、裁判官が司法の外の社会に出て、より幅の広いいろいろな経験を積むこと、これも私は大事だと思っているわけでございまして、その実情がどうなっているのか、最高裁にお伺いしたいと思います。

山崎最高裁判所長官代理者 ただいま委員御指摘のとおり、複雑多様化、専門化が進展しております我が国社会におきまして、裁判官が国民の要請に十分こたえていくためには、やはり社会事象等について多様な知識、広い視野を備えるということは非常に重要でありまして、この点で、弁護士等の経験に限らず、司法の外へ、外の社会に出まして多様な経験を積むこともまた有意義なことであろうというぐあいに考えておるところでございます。

 こうした考えに基づきまして、現在におきましても、そうした法曹界の外部の経験を積む機会をかなり広く設けておりまして、判事補について申し上げますと、民間企業等での研修、あるいは行政官庁、在外公館等への出向、それから海外留学等、こういったことが行われているわけでございまして、今後ともこのような方策をさらに充実してまいりたいと考えているところでございます。

森岡委員 今おっしゃったような経験は、全体の何割ぐらいの人がそういう研修を受けておられるんでしょうか。

山崎最高裁判所長官代理者 それぞれの経験に応じて人数がございますが、トータルで申しますと、各期と申しますか毎年判事補を大体百名ぐらい採用しておりますが、そのうちの半分程度は何らかの意味で外部の経験をしている、そういう状況でございます。

森岡委員 この法案のポイントは、私は、この当事者の身分のことではないかと理解しております。判事補から裁判所事務官に、そして検事から法務事務官に任命されて、その事務官の身分を保有したまま弁護士の職務を行うものとしておりますが、その理由は何でしょうか。

山崎政府参考人 裁判官と検察官の職務でございますけれども、これはやはり弁護士の職務と両立しないという性質がございます。したがいまして、裁判官、検察官の身分を保有したまま弁護士になるということはおよそ考えられないということになろうかと思います。

 それでは、何で公務員の身分を残すのかということでございますけれども、やはりこの制度は、その職務経験を裁判官、検察官の職務に生かすということ、これを目的としているわけでございます。いずれ復帰をするということが前提になっております。そうなりますと、公正性を保持して、それから裁判や検察に対する国民の信頼を損なわないようにする必要があるということから、やはり国家公務員としての一定の服務規律に服するというのが相当であろうということを考えたわけでございます。

 それから、裁判官それから検事でございますけれども、憲法上あるいは法律上、身分保障がございまして、そこで、その地位を離れるわけでございますので、そこでやはり大きな不利益を受けないようにする必要もあるということを考えるわけでございます。

 したがいまして、このような形で制度を構築いたしましたけれども、これは民間での経験を公務に生かすための官民人事交流制度、これとも同様の考え方を採用しているということでございます。

森岡委員 今御答弁をいただきましたけれども、国家公務員の身分を保有することによって、弁護士業務が制約されたり、支障が及ぶことがあるんじゃないかなと。

 私が心配するのは、例えば国家賠償でありますとか行政訴訟でありますとか、国を相手に訴える事件に関係する、訴える人の利益を守るのが弁護士の務めだと思いますが、国家公務員の身分のままで矛盾しないだろうか、私はそういう疑問を持つわけでございます。

 また、弁護士としての守秘義務と、公務員として知り得たことを告訴、告発しなければならない義務、こういう両方の義務が衝突するということが起こるんじゃありませんでしょうか。

 そのことについてお答えをいただきたいと思います。

山崎政府参考人 裁判官、判事補の場合は裁判所職員、それから検察官、検事の場合は法務事務官ということになりますけれども、そういうポストにはつきますけれども、公務には一切従事をしないということになっておりまして、これは法律の五条一項でもその旨を明記しております。したがいまして、身分はありますけれども、職務は一切しないという形になります。したがいまして、判事補とか検事に対して、弁護士業務について職務上の命令をするということは、これはできないという形になっております。職務をやっていないわけでございます。したがいまして、そういうところは残しますけれども、一般の弁護士と同じ活動はできるということでございます。

 ですから、そういう意味では、事件の種類等は制約がございません。先ほど御指摘がございました事件に関しましても、あるいは刑事の事件、検察官が本来起訴する立場になるわけでございますけれども、逆に被告人の弁護に回るということも制約はしていないということでございます。

 それからもう一点は、告訴、告発の問題でございますが、告訴、告発の点につきましては、職務を行っていることが前提になっておりますが、今回のこの制度では、職務を行っておりませんので、告訴、告発の義務は生じないというふうに考えております。

森岡委員 わかりました。

 弁護士職務に従事した後、判事補もしくは判事または検事に復帰するわけでございますよね。特定の弁護士事務所と特別の人間関係ができることによって、将来の裁判などに悪い影響が及ぶというような心配はないでしょうか。その点をお伺いしたいと思います。

山崎政府参考人 裁判官は憲法及び法律のみに拘束される、これはもう憲法上でそういうふうに定められておりますけれども、検察官も法律上そうでございまして、法に従うということでございます。したがいまして、受け入れ先の弁護士事務所、そことの関係ができたとしても、復帰後は裁判官、検察官として良心と法律に従って職務を行うということで、これはもう現在の前提、建前でございます。

 これ以外にもさまざまな人事交流の制度がありますけれども、それでも行われているわけでございますが、その関係で、もとの職場に復帰したときにいろいろな支障が生じたという指摘は全く聞いておりませんし、ないと確信をいたしております。

森岡委員 本法案では、弁護士の職務を経験する期間は原則二年ということになっております。特別に必要があると認めるときは三年まで延長できる、こうなっておりますけれども、十分に実のある経験をするためには、二年では短過ぎるという意見もあるようでございます。期間を原則二年とした理由はどこにあるのか。

 弁護士事務所側からしたら、わずか二年で経済的なメリットが出てくるんだろうかということを疑問に思っておられる方もあるようでございます。私の親しい弁護士さんに聞きましても、果たしてそれだけのメリットがあるかなというふうに言っている人もあるわけでございまして、このことについてどう考えておられるのか、お答えをいただきたいと思います。

山崎政府参考人 この二年という単位でございますけれども、現在、例えば民事裁判の平均的な第一審の審理期間を考えますと、八・三カ月ということでございます。あるいは、証人等を立てて実質の中身に入る事件、これが十二・九カ月というふうに言われております。

 したがいまして、通常二年あれば、新しい事件を受任いたしまして、少なくとも一審が終わる、そこまでは大体経験が可能ではないかということでございます。また、この間に終わらない事件でも、やはり一緒にやって経験しておいた方がいいという事件もあろうかと思います。そういうことを考えまして、別に事件の種類を問うわけではございませんけれども、通常二年で大体のものはわかってくるんではないかということが第一点でございます。

 もう一点は、やはりこれは、裁判官が多様な経験をするという、その経験の一環でございます。したがいまして、ほかにもいろいろな経験も必要なわけでございますので、そういうことを総合勘案すると、やはり二年ぐらいが妥当ではないか。それ以外は、独立して裁判をするために、裁判官あるいは検事としてみずからの修業、本業の修業もしなければならないということがございますので、そのバランスを考えたらこの辺が相当だ、こういうことでございます。

森岡委員 本制度の運用に当たっては、日本弁護士連合会が積極的に関与、協力することが不可欠であると考えております。そのための措置が講じられておるのかどうか伺いたい。

 例えば、だれをどの弁護士事務所に預けるかを決めるのはだれが決めるのか。また、研修内容について、法務省や最高裁からどういう御指示をされようとしておられるのか。日本弁護士連合会とどのように協議して進めようとしておられるのか、その点を伺いたいと思います。

山崎政府参考人 この制度はまさに日弁連の御理解と御協力をいただかなければ到底成り立たないということでございます。したがいまして、この制度の大きな枠組みといたしまして、最高裁と日弁連、それから法務省と日弁連、その間でこの制度の運用面に関する事項を運用要領として定めていただく予定でございます。この要領に従いながら、個別の事務所とそれぞれの組織が取り決めをいたしまして、その内容に基づいて個別の雇用契約をしていく、こういう形になるわけでございますので、どうしても前提としては日弁連の御協力が必要でございまして、どういう事務所が対象になるかということも、日弁連の方でいろいろお調べをいただいて、お知らせをいただくということでございます。

 実際の、あとの人の配置等は、これはまた運用上の問題として、お互いに協議しながら決めていくということになろうかと思います。

森岡委員 時間が参りましたので、これで終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

柳本委員長 漆原良夫君。

漆原委員 公明党の漆原でございます。

 市民感覚にマッチした人権感覚豊かな裁判官、検察官をどうやって育成するかということは、今後の司法にとって大変大きな課題であると思っております。

 そんな観点から、私は、かつて、平成十一年の三月三十一日の当委員会の質問で、研修弁護士制度を導入してはどうかという御質問をさせてもらったんですが、この研修弁護士制度、日弁連の提案でございます。この制度は判事補が判事に任官する前に必ず一定期間弁護士実務を経験させる、こういう制度でございますけれども、この法律案はこの研修弁護士制度とその発想を同じくするものだというふうに私は認識をしております。

 そこで、改めて本法律案の趣旨、目的をお尋ねするとともに、二十一世紀の司法を支える検察官像、裁判官像というものをどのように認識されておるのか、お尋ねしたいと思います。

山崎政府参考人 ただいまの点、大変重要な問題だと思いますけれども、個人的な考え方ということでもお答えさせていただきたいと思います。

 やはり法律家、裁判官なり検察官、何が問われるかということでございますけれども、一つはやはり人間性豊かな法律家ということだろうと思います。それから、幅広い見識を備えた法律家、それともう一つは専門性も備えた法律家、この三つが大きく問われることになるだろうというふうに認識をいたしております。この中でやはり一番重要なのは、人間性豊かな法律家ということになろうかと思います。これが前提で、それ以外のものが加わってくるということになろうかと思います。

 そういう意味で、世情にたけて、血の通った判断ができる法律家、これが理想像でございます。どういう立場に立ってもそれができるということ、これを念頭に置きながら今回の法案を考えた、こういうことでございます。

漆原委員 大変いい御答弁をいただいたと思っております。私も、まさにこれからの裁判官、検察官というのはそういうふうでなくちゃならないというふうに思っております。

 そこで、現在でも判事補は民間企業や行政機関、在外公館あるいは海外留学などで人事交流しておるわけでございますけれども、これらの制度に加えて、新たに弁護士という、今までなかった弁護士の職務を経験させるというふうにしたことの理由を聞きたいと思います。

山崎政府参考人 先ほど最高裁の方から、現在いろいろな経験をしている種類、内容等についてお話がございましたが、これに加えて弁護士の業務を経験するということでございまして、これは、大きな特徴は、依頼者から直接事情をいろいろ聴取いたしまして、その依頼者が一体どういうことを考えて裁判を行おうとしているのか、あるいは紛争の背景は何であるかとか、要するにその実態をよくつかんで事件に当たっていく、こういう能力をまず養うということが必要だということ。

 それから、やはり専門的な、それとあるいは先端的な分野の知識、実務経験も必要だろうというふうに思います。それから、弁護士の視点から事件を見るということとともに、その活動の実態とか実情、これを体験していただくということ。それからもう一つは、裁判所や裁判官、あるいは検察庁や検察官、このあり方を外部から見直す機会になるということでございます。

 こういうような大きな四つぐらいの目的を持って今回この制度を構築したということでございますが、個人的には、最後に申し上げました、外部から自分の組織を見直す、これが大変重要なポイントになろうか、それが将来裁判の方の中にも生かされていくということになるので、ここが一番重要かというふうに判断はしております。

漆原委員 最高裁にお尋ねしますが、判事補は十年間ですね。判事補の職務の内容は一体どんなことをするのか、それから今何人くらいの判事補がいらっしゃるのか、この概略を説明してください。

山崎最高裁判所長官代理者 判事補の職務内容についてのお尋ねでございますが、主として全国の地方裁判所、家庭裁判所で裁判官として事件の処理に当たっているということでございます。

 ただ、判事と異なるところがございまして、その職権に制限が加えられております。特別の定めがある場合を除きましては一人で裁判をすることができないということになっておりますために、訴訟事件を担当する場合には合議事件の陪席裁判官、そういう立場で職務を行っているわけでございます。そのほか、もちろん訴訟以外の保全事件でありますとか執行事件、破産事件等々、それから刑事で申し上げますと令状事件の処理等は、一人で担当しているところでございます。

 もっとも、委員御存じのとおり、判事補の職権の特例等に関する法律というのがございまして、判事補の経験が五年以上で最高裁判所の指名を受けた者につきましては、ただいま申し上げました職権の制限がございませんで、判事の権限と同様の権限を持って仕事をしている、こういうことでございます。

 それから、判事補の人数でございますが、平成十五年十二月一日現在の人数は八百二十五人ということでございます。

漆原委員 意見書では、すべての判事補に裁判官の職務以外の経験を積ませろ、こうなっておりますが、弁護士職務を経験させる判事補はどのくらいの割合を予定しておられるのか、お尋ねします。

山崎最高裁判所長官代理者 実は、この弁護士職務経験制度、ただいま法案を御審議いただいておりますし、先ほど来話題に出ておりますが、最高裁判所と日本弁護士連合会との間で運用上の問題について協議をしているところでございまして、そういった運用上の問題を詰めて、具体的に判事補に対して、ではどれくらい希望するかということを聞きながら制度を動かしていく、こういう運びになろうかと考えております。

 そういうことでございますので、現段階では、判事補からどの程度の希望が出てくるのか、あるいは逆に、日弁連の方でどの程度の受け入れ弁護士事務所を確保していただけるのか、そういうところがちょっと判然としないところがございますものですから、確定的な数字を現時点で申し上げるのは、これは大変難しいということでございます。

 ただ、私ども、初年度、スタート時点では、ただいま申し上げました判事補の希望の状況ですとか、あるいは事件処理体制の確保という重要な問題もございますので、そういうところを考慮しながら、少なくとも二けたに乗るような規模で実施、スタートを切りたいというように思っておるところでございます。

漆原委員 今までの人事交流に加えて、特に弁護士職務を経験させるという今回の法律ができた趣旨から考えてみて、なるたけ多くの判事補の皆さんが弁護士職務を経験する必要があるというふうに思いますので、その辺の工夫をお願いしたいと思います。

 そこで、判事補に弁護士経験をさせるといっても、判事補になったばかりの人にすぐ弁護士事務所に行ってこいと言っても、これは私は実益がないと思うんですね。何年間か判事補をやってきちっと裁判所の職務を理解した人、この人が弁護士事務所に出て初めて、外から自分を見るということになるわけですから実益があると思いますが、やはり少なくても三年か五年くらいは判事補を経験した人が外に出るというふうに、私はそれが理想だと思うんですが、その辺はいかがでしょうか。

山崎最高裁判所長官代理者 ただいま委員が申されたとおりであろうかと存じております。この制度をより意義のあるものとするためには、ある程度やはり裁判官の経験があることは望ましいというぐあいに私どもも考えております。

 先ほど申し述べました日本弁護士連合会との協議の中でもそのあたりをどうするかという議論をしておりますが、現在のところは、裁判官の異動期というものがございまして、それが一つこういう経験をするチャンスになるものですから、そういった点で考えますと、一回目の異動期、これは任官して二年六カ月してから異動期を迎えるものですから、そのあたりから、二回目の異動期、それはさらに三年後の、任官からしますと五年六カ月後ということになりますが、その間あたりから経験をスタートさせるのがいいのではないか、こういう議論をしているところでございます。

漆原委員 弁護士職務従事職員というんですね、この新しい判事補は。この職員は国から給料をもらえない。弁護士や弁護士法人に所属をして、雇用関係を結んで給料をもらうことになるわけなんですが、なかなか弁護士業も今不景気だそうで、弁護士を受け入れてくれないと、研修というか職務経験ができないわけですから、この辺の受け入れ態勢はしっかりやらなきゃならぬと思うんですね。その辺の受け入れ態勢について、今どんなふうになっているのか、お尋ねしたいと思います。

山崎最高裁判所長官代理者 委員が申されたとおりでございまして、この制度を円滑に動かすためには、受け入れ事務所が整っていなければいけないというぐあいに私どもも思っておるところでございます。

 何よりも判事補が主体的、積極的に取り組むということが必要でございまして、そのためにも、魅力的な事務所をたくさんそろえていただくということがポイントになろうかというぐあいに思っております。先ほど来何度も申し上げておりますが、日本弁護士連合会とそのあたりの議論もやらせていただいておりまして、日弁連と密接に連携協力を図りながら、環境条件の整備に努めたいというぐあいに思っておるところでございます。

 その関係でいいますと、日弁連の方では十分な数の受け入れ事務所を整えるということを言っておられますので、そのように期待しているところでございますが、私ども、判事補の希望はさまざまございますものですから、そういったさまざまな希望に応じられる、バラエティーに富んだ事務所をそろえていただけるようにお願いしているところでございます。

漆原委員 次に、四条関係についてお尋ねしたいんですが、この弁護士職務従事職員は、原則として単独で仕事をできない、弁護士法人等が承認した場合には例外的に単独で処理できる、こういう条文になっていますね。

 例外的に単独でやるという場合は、万が一ミスがあった場合の法的責任、損害賠償義務は全部この弁護士職務従事職員が負うということになるわけですから、もしもミスがあった場合のことを考えると、お客の立場からしても、職務経験に来た二年間の判事補に資力があるとも思えないし、損害賠償も十分じゃないと思うし、また職務経験に来てミスを犯して大変な後始末をしなきゃならぬという負担を負うことも大変だと思う。

 そう考えると、何も職務経験二年間の間に単独で事件をさせる必要はないだろう。例外を認める必要はないんじゃないか。仮に自分の知り合いから来た事件があっても、それは事務所を通すとか法人を通すとかいうふうにしてやった方がいいんじゃないかと思うんですが、その辺はいかがでしょうか。

山崎政府参考人 確かに御指摘の点はそのとおりでございますので、原則としてこれは事務所の方と共同受任という形でさせていただいておりますけれども、これで例外を設けております。

 例外は、これは最終的にはそこの弁護士さん、要するに指導する弁護士さんですね、そういうところの判断にももちろんなるわけでございますが、非常に、行ったその弁護士と個人的な知り合いがあって、あるいは親族関係もあるかもしれませんけれども、どうしてもその人にやってほしい、それでそれほど難しい問題点はないというような場合で、雇用側の方がこれならば大丈夫かなと判断したものに関して、あえてそれを否定するまでもないということからこの例外を設けた、こういうことでございますので、決してこれが原則形態になるわけではないということで御理解を賜りたいと思います。

漆原委員 もう時間がなくなったので最後の質問でありますけれども、私が一番心配しているのは、弁護士職務経験をする判事補の意識の問題なんですね。民間の一流企業に行く、行政機関に行く、在外公館へ出向、海外留学、これはもう大変華やかでいかにもエリートコースという感じを受けるんですが、しかし今回の弁護士職務経験、市井の一弁護士事務所での職務経験にはそういう華やかさはないわけでありまして、えてして弁護士職務を経験する判事補の心の中に、いささかも、貧乏くじを引いたとか何かどさ回りをさせられるとか、そういうふうな後ろ向きの感情が芽生えてはならぬと思うんですね。絶対に芽生えさせちゃいかぬと思うんですね。

 この点について最高裁はどのような配慮をされているのか、お尋ねしたいと思います。

山崎最高裁判所長官代理者 委員御指摘のような意識、感情というものが生じてならないのは、まことにおっしゃるとおりだと思っておりまして、最高裁といたしましても、そういうことがないように十分な配慮をしていきたいと考えております。

 こうした弁護士職務経験を含めました外部経験の運用に当たりましては、やはり判事補の希望というものを基本として考えていきたいというぐあいに思っておりますけれども、判事補の意見をいろいろ聞きますと、それぞれで、さまざまな希望を申し述べておりまして、弁護士実務経験のような法律実務に沿ったような形の経験が自分にとってプラスだと考える者もおれば、そうじゃなくて全然離れた経験をしたいという者もおりまして、これがさまざまでございますので、どちらがいい、どちらが悪いというような、そういうランクづけというものは判事補の意識の中では少なくともないということがうかがえるところでございます。

 私どもとしましても、こういう弁護士職務経験をすることによった成果を今後の職務に生かしてもらいたいと考えておるわけでございますから、復帰後の配置あるいは担当職務などにもできるだけ配慮いたしまして、適切な運用に努めたいと考えているところでございます。

漆原委員 以上で終わります。ありがとうございました。

柳本委員長 永田寿康君。

永田委員 民主党の永田寿康でございます。法務委員会で初めての質問をさせていただきます。(発言する者あり)本会議でやっていますけれども、本会議とも違いますね、いずれにしても初めてですね。

 私は、見かけ上、三十四歳の男性の平均年収よりも大分給料を高くもらっているものですから、税金をたくさん納めています。酒税もいっぱい払っています。そういう税金を払っているのは本当に腹立たしいことではあるんですが、その税金を使ってさまざまなインフラが整えられている、そのことをもって自分が税金を払うことを正当化するというのが私の気持ちの中にあるわけですね。

 私が、税金を使って整えるインフラとして最も適切だというか価値が高いと思っているものが、この司法インフラであります。はっきり言って、道路や高速道路よりも、自分が人権を侵害されたときに、最後に裁判で救済される道が残っているということが私の中で最も価値が高いものだと思っているんですよ。ですから、そういう司法制度をしっかりとつくっていくという仕事に携われる今の私の立場というものは、政治家を志した私としても、本懐を遂げているというか、非常にすがすがしい気持ちでこの質問をしておりますので、ぜひ答弁もまじめにしていただきたいと思います。

 加えて、本日の質問に限らないんですが、答弁者の方々にぜひお願いをしたいんです。

 常々思っておりますのは、内閣提出法案に多いんですけれども、どうせ賛否は決まっているんだから、与党多数で採決はもう決まっているんだから、だから答弁は余り中身がなくてもいいんだというような気持ちで答弁されると、非常に悲しくなります。きょう質疑にさまざまな資料も付されていますけれども、これは保存期間が非常に短いんです。ですから、やはり国会の議事録というものは百年残るものですから、立法者の意思というものがどういうふうなものであったのか、そのことを議事録に残すことによって歴史の評価にさらしていくということが私は大切なことだと思っています。

 ですからぜひ、中身の濃い、そして、本当にこの場だけ、時間だけ過ぎればいいんだというような気持ちではなくて、歴史の評価にたえ得るような、そういう答弁をしていただきたいと思っておりますので、ぜひ、そういう心構えでいていただきたいと思います。

 質問に入りたいと思います。

 まず、判事補並びに検事が弁護士の職務を経験するということでございますが、現在において、判事補や検事の職務能力が満足すべき水準にあると考えているのかないと考えているのか、足りないと考えているのであればどこであるのか、それを、歴史の評価にたえ得るような内容の答弁でぜひお答えいただきたいと思います。

山崎政府参考人 現在、判事補あるいは検事は、試験に受かって、それから訓練を受けております。もちろん、仕事をやりながら日々訓練をしているわけでございますので、それなりの能力は私は備えていると思います。これは弁護士でも同じかと思います。

 ただ、問題は、どうしてもこういう仕事をやっていると、一方的な方向からしか物を見ないんですね。仕事上、多方向から物を見るということが余りできないんですね。それは、やはり非常に視野を狭くするということですね。ですから、見える範囲も非常に狭いものになるということでございます。これがやはり足りないものということでございまして、そのためにはどうしたらいいかということで、現在、裁判所の方も、いろいろ運用で外へ、いろいろな経験をさせております。

 これは、一番いいのは、世の中の動きがどういうことであるか、世の中は一体どういうことを考えてこういう事件が起こるのか、あるいは、それを持ち込んだとき、当事者の反応は、裁判の訴訟指揮だとかあるいは検事の対応だとか、それに対してどういう思いを抱いているかとか、いわゆる外から自分の組織を見直す、こういうことが一番重要なことでございます。そういうためにこの研修制度を設ける、これは実に有意義な制度だというふうに私は理解をしております。

永田委員 最初は、判事になったり判事補になったり、あるいは検事になったときにはそれなりの能力、識見を持っていたのに、一方的な物の見方しかできない社会に身を置いていると、だんだん偏った物の見方になってしまう。ですから、その壁を打ち破るために研修が必要なんだ、そういう答弁だと受けとめさせていただきます。

 しかし、そういう偏った見方になってしまった人が今現実に裁判所の法廷で働いているわけですね。そのことは問題はないんですか。

山崎政府参考人 偏ったと私は申し上げておりませんで、一定の方向から物を見るということでございます。これは、現在、もっと年配の方、そういう方もみんな、それなりに自己努力をしたり若干の外の経験を経ながらやっているわけでございますが、これからやはり二十一世紀に向かって、法律家もふえてまいりますし、それから、よりよい法律家をつくるためにはどうしたらいいかという視点でございますので、今がだめと言っているわけではございませんで、これからもっとよりよくしよう、こういうことでございます。御理解を賜りたいと思います。

永田委員 ですから、指摘をしたいのは、現状において問題があるのであれば、その問題は本当に問題なんですよ。裁判所は人権救済の最後のとりでですから、そこで間違いが起こっているようでは取り返しがつかないことになるんですね。現状、問題が起こっているんだったら、本当に裁判制度そのものがおかしいということになっちゃうし、問題がないんだったら何もこの出向制度を新たにつくる必要はないんですね。研修制度というか、つくる必要はないわけですね。

 だから、立法者の意思が僕は矛盾しているんじゃないかという指摘をしているわけですよ。現状において問題があるんだったら、それはもう本当に大ごとで、裁判制度を一からつくり直さなきゃいけないことになるでしょうし、問題がないんだったらこんな制度をつくる必要がないんじゃないかと思っているんですけれども、問題があると思っているのかないと思っているのか、そこをはっきり答弁してください。

山崎政府参考人 現在の裁判全体として見れば、私は世界に誇れるものだろうと思います。そのぐらいのことを現実にやっていただいております。

 ただ、それでいいのかということでございまして、そういう点は、今までは法曹内部のいろいろな考え方で判決をしてくる、裁判をやる、そういう形で国民は納得していたのかもしれませんけれども、現在、やはり国民が求めているのは、国民サイドに立った、そういう気持ちをよくわかった上での裁判をしてほしい、そういう要求が物すごく出てきているわけでございます。だから、時代が変わってきているという点もございます。求めるものがずっと質が高くなってくる、それから国民サイドからの要求が高くなってくる、こういう時代を迎えているということでございますので、よりいい裁判をするためにこの制度を設ける、こういうことでございます。

永田委員 今、私が質問をした直後に座ったら、天の声が右の方からちょっと聞こえてきまして、問題はあるんだよという話でしたが、問題があるという答弁でも僕はいいと思っているんですよ。というのは、人間は、もともと間違いを犯す生き物ですよ。一方からの見方しかできない生き物なんです。だから、三審制になっているんじゃないでしょうか。

 裁判というのはもともと間違うものだ、間違う可能性を含んでいるんだ、だけれども、それを何とかしようという努力をした結果がこの三審制であるという答弁だって僕は全然構わないと思っているんですよ。なぜそんなに問題があるという表現をすることにちゅうちょしているのか、本当に心中をお察しして余りあるところではありますが、もう少し正直に立法者の意思というものを述べていただきたいなというふうに思います。

 今、国民サイドの要求、視点で裁判をやってほしいという要求が高まってきたという話ですが、今回の法案をつくるに当たって、当事者というのはいろいろあるわけですね。法務省、裁判所、日弁連も当事者だと思います。

 一方で、国民という当事者もいるはずなんですね。国民の意見はどうやって吸い上げていったのか。この法律をつくるに当たってどうやって、まさに国民の視点で、国民サイドの要求で、要求が高まってきているからこういうような制度をつくるんだというお話ですから、当然国民の意見も聞いていると思うんですが、どうやって聞いたんでしょうか。内容もお願いします。

山崎政府参考人 その点は、突然の御質問ですので、記憶で答えさせていただきますけれども、この前身でございます改革審議会、ここでもこの問題を十分討議しているわけでございます。そのときにも、法律家以外の委員の方にもかなり入っていただいております。それが半分以上になるような構成になっております。それから、そこでいろいろなヒアリングをしておりまして、各界の方々、あるいは消費者団体の方々とか経済界の方、そういうふうな方からもヒアリングを受けていることでございます。

 それから、今度、私どもの仕事になってから、事務局の方で検討会を設けておりまして、検討会にも法律家もおりますけれども、委員の中には法律家以外の方もかなりおります。

 それから、さまざまなヒアリングを続けたり、それから案を練ったときにはパブリックコメントにかけまして御意見を伺って、その上で最終的にこのような判断をしていったということで、十分にその意見はお聞きしているつもりでございます。

永田委員 いや、手続だけ踏めばいいという話じゃなくて実体的な中身も、要は、ちゃんと国民の意見を聞くのに適当なやり方で十分な熱意を持ってやらなければならないのであって、その一環が本日の審議であろうと私は思っています。

 きょう、わざわざ裁判所の方にもお越しいただきましたが、法務省、それから私も日弁連の方とは意見を交換しながらやってまいりましたが、まさに国民の代表たる国会議員がここでこの制度について意見を述べるということは、本当に、国民の意見を政策に反映させる上では最も大きなクライマックスの場面ではないかと思っています。

 ですから、私も、一切遠慮をせずに本音をぶつけていきたいと思っていますが、はっきり言って、今回の、判事補とか検事が弁護士になる、弁護士になって法廷で実際に弁護活動をするという場面において、そういう人に私が弁護されたいかという気持ちになると、ちょっと暗い気持ちになってくるんですよ。せっかく、私は、司法制度というのは私が払った税金で支えるものの中で最も価値の高いものだと思っていますけれども、しかしながら、そういう弁護士に弁護してもらいたいかというと、必ずしもそういう気持ちになれない。

 なぜかというと、今回の、簡単に言ってみれば弁護士事務所に出向して弁護活動をやるというのは、役所流の言葉で言えば、オン・ザ・ジョブ・トレーニングというか、OJTですよね。つまり、仕事をしながら知識や経験を蓄積していって、能力を高めていく、仕事をしながらトレーニングをするというオン・ザ・ジョブ・トレーニングに相当するものだと思いますが、果たして法廷の場でOJTをすることがどういうことにつながるのかということをどこまで考えているのか、僕は本当に知りたいのですよ。

 つまり、そんな研修みたいな形で、自分が人権侵害を受けて、それを救済してもらおうというときに、いやいや、この弁護士は実は研修なんですよというようなことがわかったときに、自分が受ける印象というものは、ああ、この人は本当にまじめにやってくれるのかな、十分な能力を持って、熱意を持って弁護活動をやってくれるのかなというふうに感じると思うんですよ。

 果たして法廷の場でOJTをやるということについてどのようなデメリットがあり得ると考えられたのか、そのことについて立法者の意思を聞きたいと思います。

山崎政府参考人 広い意味では、研修の一環、いろいろな職務の経験の一環ということになろうかと思いますが、この制度につきましては、公務員の身分を保有はいたしますけれども、最終的には公務員としての職務を行うわけではございません。ですから、そこに指揮命令権は及ぶ余地は全くないわけでございます。

 そうなりますと、弁護士事務所で活動する場合には、一般の弁護士で雇われるという場合とそれは変わらないんだと私は理解している。したがいまして、事件をやれば、それで失敗をすれば、損害賠償請求もあり得るし、懲戒という問題もあり得る。ですから、やる以上は、そういうものも待ち受けているわけでございますから、きちっとやらなければそういうことにもなりかねないということでございまして、そういう意味では、独立して十分に活動ができるシステムになっております。

 この点で、じゃ、何かデメリットがあるかという点で、それは、依頼者から、どういう弁護士を選ぶかというのは、例えば今度行くような弁護士じゃなくたって、みんなそれぞれ選ぶわけですね。それの一環としてそういう面はあるかもしれませんけれども、やる方の側としては、それは全く通常の弁護士と変わらない、こういう意識で送り出すことにしております。

永田委員 この出向弁護士が高い独立心を持っている、倫理観も高い、そして職務に対する熱意が高い、こういうような人物であれば全く問題は起きないんですよ。

 確かに、独立性を確保しようと思えば独立性が確保できるシステムになっています。つまり、国家公務員としての職務をしないわけですから、指揮命令権が及ばないのは当然ですね。独立性を確保しようと思えばできるようになっているんです。

 しかし、本当に独立した立場で弁護をするかどうか、それが担保されているかどうかというと、制度上は担保されていないんですね。本人の意識によっているわけですよ、それは。本人の意識が高ければ一生懸命やるだろうし、低ければ一生懸命やらなくても構わないというような制度になっているはずですよ。

 だから、それを、一生懸命弁護活動をするように追い立てるような、駆り立てるような、そういうような制度上の工夫というのはなされていないと思うんですけれども、そうじゃありませんか。

山崎政府参考人 確かに、その辺になると、個人の問題はかなり大きく左右してくるんだろうと思いますね。それは通常の弁護士でも同じでございまして、独立をしてやらないでその事務所で一緒にやらせてもらえばいいやという方で、どれだけ本当にインセンティブを持って仕事をしているか、場合によってはそうじゃない方もおられるかもしれない。やはりそれは個人の問題がかなり大きく左右いたします。

 この点につきまして、私どももいろいろ、言えば心配はありますけれども、ただ、それは、じゃ、制度上どういうふうに担保ができるかということは、それはもう内心の問題、それを担保する方法というのは、これは極めて難しいということだろうと思います。ですから、あとは、この制度の趣旨をどうやって検事なり判事補にわかってもらって、その意識を高めていってもらうか、こういうことになろうかと思います。

 それから、これできちっとした研修をして将来に生かしてこなければ、それは将来自分がまた判断されることにもなるわけですね。だから、そういう点では、いろんな仕掛けでやはりインセンティブを高める、そういう制度構築にはなっているというふうに私は思っております。

永田委員 いや、しかし、普通の弁護士と同じ気持ちで職務をするはずだというふうにおっしゃいますけれども、普通の弁護士といわゆる出向弁護士とは、置かれている立場が違うわけですね。

 すなわち、この出向弁護士は、出向期間が解けたら自動的に出向元に帰っていくということが保障されているわけですね。そうすると、弁護士として一生懸命仕事をしなくても、弁護士としての職務の評価が必ずしも高くなくても、自分の身分はもとへ戻って、判事補とか検事とかいう極めて恵まれた環境でまた仕事をすることができるようになっているわけですね。つまり、弁護士として仕事を一生懸命やらなくても、怠けてしまっても別に構わないんじゃないか、ちょっとしたロングバケーションだというような気持ちになっても何にも差し支えないような制度になっているんですよ。

 つまり、普通の弁護士とは違うんですね。普通の弁護士は、一生弁護士で食べていくしか方法がないというふうに思えば、まあ国会議員になっている方もいらっしゃいますけれども、そうではなくて、弁護士で一生懸命やっていこうと思えば、一応、あいつは腕ききだ、なかなか一生懸命やるし、頭もいいし、証拠調べの能力も、専門性も高いというような評価が高まって初めて大きな案件を担当させてもらうような環境が整うのであって、あいつはもう悪徳弁護士だ、全然仕事を一生懸命やらぬ、負け続けている、バッジだけつけているやつだというふうな評価になったら、ろくな仕事は担当させてもらえないわけですよ。それは自分の人生の否定につながるわけですね。だから、一生懸命やろうと思うんですよ。

 でも、出向弁護士はそういう評価にさらされないんですよ。結果責任を問われないようになっているんですね。

 しかも、実は弁護士事務所というのは行政機関や裁判所からは独立した存在でありますから、弁護士に出向した後に、出向弁護士がどういう弁護活動をした、どういう証拠調べをした、どういう論陣を張った、こういうことを出向元に帰ってから後で評価を受けるということはあり得ない話なんですよ。だって、弁護士事務所の仕事を評価することになりますから。それは独立性から見て、裁判所や行政機関が出向弁護士の出向時代の仕事の内容を評価するということは原理的にできないようになっているんですね。つまり、結果責任を問われないようになっているんですよ。だから、普通の弁護士と同じような熱意が期待できるという考え方は、僕は間違っていると思います。

 そこについての立法者の意思、なぜ、これ、普通の弁護士と同じ熱意が確保できると考えているのか、立法者の意思をお聞かせいただきたいと思います。

山崎政府参考人 確かに、御指摘のとおり、普通の、通常の弁護士の場合と違うということは、それは理解できます。

 問題は、そのやっている職務に関して、これに関していろいろ介入するということはできません。これは独立を保たなきゃいかぬ、職務上の秘密もございます。ですから、そこの点では何も言えないという構造になっている。それから、その点について報告をするということもあり得ないということになろうかと思いますね。

 問題は、戻って以後の話でございます。ここで、やはり、二年間出ていって、結局、身についていないということになれば、再任の期間がいずれ十年でやってくるわけでございます。御案内のとおり、今度の新しい制度で指名諮問委員会というのを設けておりますので、指名諮問委員会の方でいろいろ調査されることにもなろうかと思います。どの程度、その弁護士事務所から調査結果が行くのかどうか。これは、いろいろ職業上の秘密もあって限度はございますけれども、ある種のものは行くんではないかと思います。そうなりますと、そこで評価を受けることになるわけです。ですから、やっぱり自分の将来にも大きな影響があるということでございます。

 ですから、そういう意味では、ちゃんとやっていくというインセンティブ、これは当然にあるというふうに私は理解しております。

永田委員 一方で、やはり相変わらず、ちょっと戻しますけれども、OJT、研修を、人権を守る最後のとりでである裁判所の法廷で行うということが僕はどうしてもひっかかるんですね。

 これは、法廷でなければ経験できないような知見というのはあるんでしょうか。つまり、わざわざ弁護士という機会を与えることによって、弁護という仕事をする機会を与えることによってしか、それでしか習得できないような知識や経験というのはどういうものを考えているのか、立法者の意思を聞きたいと思います。

山崎政府参考人 二つあろうかと思います。

 一つは、事件というのはさまざまな複合要因で起こってくるわけでございますが、裁判に出てくる場面というのは、かなり制約したものしか出てこない、なかなかその実態がよく見えにくいという点でございます。これを、そのあらわれた現象から推察していくということがどうしても問われるわけでございます。弁護士の関係の仕事をやりますと、そこのところが十分会得できるだろうということ、これが一つのメリットでございます。ここはぜひ見てほしい、経験してほしいということでございます。

 それから二つ目は、外部から組織を見直すということでございます。組織だけではなくて、自分たちのやり方、これもきちっと見てほしいということです。

 例えば、法廷に行って現実にやりとりをしながら、相手方の検察官の対応だとか、あるいは裁判官の対応、こういうものの中に、裁判官だって検察官だって神様じゃありませんから、いろんな欠点を抱えることもあります。そういう中で、ああいうことはやっちゃいかぬ、これは当事者が激怒するとか、こういうことはやるべきだ、いいヒントもあると思いますね。そういうのをきっちり把握してほしいんです。いいものは採用して将来の自分のマイコートのために役に立ててほしい、悪いことは絶対やらない。このためには、やはりどうしても法廷が必要だというふうに思っております。

永田委員 いや、法廷の場で経験を積むことには合理性はあると思いますけれども、そうであるならば、何も弁護士じゃなくたって、弁護士の仕事を補佐する事務員だって構わないんじゃないかという気がするんですよ。いろんな相談を受けるのは、事務員だって受けますよ。そうして、弁護士だって、一から十まで全部、自分で六法全書を開いていろいろ調べたりするわけじゃなくて、当然、事務員の手をかりながらやっていくわけですから。国会議員の仕事だって、別に議員本人が六法全書を開いてやることも、僕はありますけれども、そうじゃなくて、秘書がやる部分もたくさんあるわけですよね。そうすると、実際の弁護士の業務を経験して弁護士の感覚を習得するという意味においては、何も実際に責任のある弁護士という立場にならなくても、弁護士の補佐、あるいはかばん持ちとは言いませんけれども、補佐をする事務員になっても、その大半は習得することができるんじゃないか。

 つまり、僕がこだわっているのは、経験を積むのが大事だということはそれはわかります、だけれども、それをやる上でどうしても、人権を守れるか守れないかのせめぎ合いになっている法廷の場で、その責任者になる訴訟代理人としての弁護士という仕事を使って研修をするということが我慢ならないわけですよ。だから、できるだけ、弁護の当事者じゃない、人権とは余り関係がないところで経験を積んで、知識を積んで、裁判所を外から見てその感覚を養い、そして、どうしても弁護士でなきゃ習得できないものがあるんだというのであれば、それは本当に最小限にとどめる。つまり、人権がかかわったような事件の場で研修をするというのは本当に必要最小限にとどめるというのが正しい道じゃないかなというふうに思っているんですが、どうして全部弁護士でということにしちゃったのか、お考えをお聞かせください。

山崎政府参考人 これは、議論の当初、裁判官なら裁判官、検察官なら検察官の身分を持ちながらということもありました、考えとしては。ただ、これでありますと、結局、お客さん的な立場で行く、自分の権限がないわけですから、ただそばで見ている、それから、補助的な事務をお手伝いするとかそういうことになって、本当にこれで身につくのかという議論が圧倒的でございました。私もそう思います。やはり、権限を持って、責任を持ってやるのと、そうじゃない、単なるお客さんとしてやるのは、これは全然身につき方が違うだろうと思いますね。

 それから、やはり弁護士、いろいろなところで活動はいたしますけれども、法廷を抜きにして活躍する、活動するというのは、やはりもう一部しか見ていないということになろうかと思いますので、そういう点でも、やはり法廷が必要でございます。それから、自分の組織を見直すという大変重要な点で、やはり法廷が必要だというふうに考えております。

永田委員 一方、先ほどたしか漆原委員からもお話があったと思いますけれども、森岡委員だったかな、両方からあったと思いますが、とにかく、出向先の弁護士事務所と当該判事補ないしは検事が特別な人間関係をつくってしまうんじゃないかということは、本当に心配になります。

 例えば、私がだれかから突然訴えられた。自分は本当に法廷にいきなり被告として引っ張り出されていった。ところが、よくよく見てみたら、相手方の訴訟代理人になっている人が、当該担当裁判長が出向した時代の出向先の事務所のボスだった。その出向時代のことを考えれば、この裁判長がどういう長所を持っていて、どういう短所を持っていて、どういう癖を持っているかというのを一から十まで知り尽くしている。そういう人が相手の訴訟代理人になっている。そういうところで裁判が行われたら、果たして被告の側に立った人はどういう感覚に陥るとお考えですか。

山崎政府参考人 これは、現在の例で申し上げますと、弁護士から裁判官に任官する制度がございます。この場合にも起こり得る話です。これは、二年間、そこの事務所でやるよりもっと緊密な関係になるわけでございますけれども、そういう制度を持ちながら、今までこういう点で不都合があるということは一度も聞いたことはございません。

 やはり、プロはプロでございますから法と良心に従ってやるということでございまして、それは、個々の裁判をやっておりますと、非常に親しい友人の弁護士が代理人についている場合とか、それは大いにいろいろあるんですね。ありますけれども、それはそれとして、やはり事件の中身を客観的に見て最終的に判断をする、こういうのが法律家の建前でございまして、それで現実に行われていると思います。

 もし、どうしてもそういうことができないという場合であれば、回避手続とかいろいろな手続がございますので、そういうことで対処をしていくことになろうかと思います。

永田委員 今、先ほどのほかの委員の質問の中でも出てきた答弁だったと思いますが、とにかく、今のところそういう特別な人間関係があるからこの裁判はおかしいんじゃないかというような苦情は寄せられていないというお話でしたけれども、仮にそういうようなところで、この裁判は不当だ、適当ではないというような感覚を、例えば事前にでも事後にでも、つまり判決が出る事前にでも事後にでも被疑者ないしは関係者が感じたときには、どういうような手続で苦情を申し立てればいいんですか。

山崎政府参考人 裁判の制度としては、これは裁判官の方が主体的に判断するということになりますけれども、回避という手続がございます。やはり……(永田委員「事前ですか」と呼ぶ)事前ですね、途中でもそれはあり得る話だと思いますけれども。やはりこのままやると外部からいろいろ疑われるおそれもあるというふうにもし考えられれば、そういう手続で回避をしていただくということになるわけです。

 それ以外は、苦情といっても、制度といたしまして忌避という制度もございます。へんぱな裁判をするおそれがあるということでございますけれども、これは、通常の場合はそう簡単に通る主張ではございませんけれども、制度として、どうしてもおかしいということであれば、そういう申し立てでということもあり得るということでございます。

永田委員 だから、これは通常の場合であればそう簡単に認められるものではないというふうにおっしゃいましたけれども、苦情がないんじゃなくて、あってもそれが受け付けられないとかあるいは反映されない、そういうような状態なのではないかというふうに心配をしています。

 つまり、法と証拠に基づいて裁判を行われるのが建前ですから、それは、そういうふうに裁判所が言ったら、もう被告人の方はそうなんですかと言って泣き寝入りをするしかないわけですね。そういう泣き寝入りをした中で出された判決を、その後に自分が公平と感じるかどうかということを想像すると、いや、これは法と証拠に基づいてやるのが建前だから公平なんだよと説明されても、いや、しかし、もとの、出向先のボスでしょう、この裁判長はというふうになったら、何かもやもやしたような気持ちになると思うんですよ。

 国民の視点で、国民の要求で裁判を運営してほしいという要求が高まっているというのであれば、そういうような、ここの裁判官はひょっとしたら不公平な判決を下したのではないかというような疑いを持たれる国民の気持ちもぜひ大切にして、制度を運用してほしいんですよ。

 そこへの配慮は裁判所にもぜひ一言触れていただきたいんですけれども、推進本部と裁判所、両方とも、そこの運用に対する配慮をお聞かせください。

山崎最高裁判所長官代理者 先ほど推進本部からのお答えにございましたとおり、この制度というのは、当然、弁護士の職務経験を経た後に裁判官に復帰するわけでございます。そうすると、裁判官として職務を行う、その際には、公平中立な判断者としての職責に従って職務を遂行するのは当然のことであろうと思います。そういうことでありますので、私どもとしては、裁判官に復帰後におきまして、受け入れてもらった事務所との関係が維持されるというようなことは全くあり得ない、それが事件処理に影響を及ぼすということは全くあり得ないということを考えております。

 これは、いわば裁判官の職業倫理の一番根幹になるところでございますので、その点について、国民の皆様方の御理解を得ていきたいというぐあいに思っております。

山崎政府参考人 運用については、そこのところは慎重に配慮する必要があるというふうに私は思いますけれども、ただ、裁判の制度は、じゃ、そこで、その点に不満がある、そうしたらやはり上訴ができる。要するに、三審全体の中で判断を仰いでいくということにもなっておりますので、制度的には担保されていると私は思っております。

 ただ、運用上そういう問題があるということは頭に入れながら行動をしなきゃいかぬということだろうと思います。

 なお、一点、先ほどの御質問の中で、パブリックコメント、ちょっと申し上げたのですが、やっているものとやっていないものがあったようでございまして、これはやっていないということでございます。ただ、私どもの組織は全部オープンでございますので、議事録も、それから提出した書面も全部インターネットに載っておりますので、そういう意味では、いつでも意見を言えるという状況になっているということで御理解を賜りたいと思います。

永田委員 あと、国家公務員の身分を残したまま弁護士事務所に出るというお話なんですけれども、いま一度、国家公務員の身分を残す必要があるというその必要性について御説明をください。

山崎政府参考人 この点につきましては、最終的に、裁判官なり検事、これはもとへ戻ってくるということが前提であるわけでございます。そうなりますと、やはり職務を行うに当たっても公正性を保持しているということは重要でございますし、また、裁判や検察に対する国民の信頼、これを損なわないように行動しなければならないということ、これは当然でございます。

 したがいまして、どうしても、そういうことをきちっとさせるためには、やはり身分を保有させておく必要があるということでございまして、これは、例えば公務員の、官民の人事交流制度、これでも全く同じことを考えているわけでございます。そういうことから身分を残したということが一点でございます。

 それから、裁判官なり検察官は、憲法、法律によって身分が保障されているわけでございまして、最終的には、嫌だと言えば、同意が得られなければ奪うわけにいかないわけですね。同意の上でそれを行っていただくということになりますね。ということになりますと、やはり余り不利益がないように、働きやすいようにしてあげるということも必要だということですね。

 そういうようないろいろな観点を考えて、公務員の身分を残すということにしたわけでございます。

永田委員 しかし、長いこと判事補や検事で仕事をしているとだんだん物の見方が偏ってきて本当に裁判に影響が出るかもしれないという懸念があるからこそ、この制度を導入するわけでありますね。

 そんなところで、例えば、あなた、公務員の身分を外して出向してくださいというお願いをしたときに嫌ですと言うような人は、堂々と、あなたはこの仕事を続けていく能力がないからもう首ですと言ってもいいんじゃないかと思うんですよ。あるいは、では、国家公務員の身分を外すことはできないけれども、公務員でいてもいいけれども、だけれども仕事は一切させないよ、そういうことにしてもいいと思うんですよ。なぜそうしないのか。つまり、そこまでして身分を守らなければならない理由が僕にはよくわからないんですね。

 だって、組織の外から裁判所というものを見ることがそんなに大事だというふうに言っているわけですね。あるいは、弁護士にならなければ積めない知識や経験がある、そこまで論陣を張っているわけですから。であるならば、それほど重大な価値があるこの研修というものを嫌だと言うような人には、あなたはもうその能力がないものと認めますというふうに言うことがどうしてできないのか、御説明ください。

山崎政府参考人 先ほど来、裁判官がほかのところにもいろいろ出向しているというか出ているということがございますが、その場合、やはり裁判官のままで出ているものもあるわけでございます。そうなりますと、そこは給与とそれから身分を保障されているわけでございます。そこからやはり外を見るということも重要、できるわけですね。今回の場合、ここだけ、そして全部根っこを外してしまうということになると、ほかに行く人たちと大いにバランスを欠くわけでございます。そういうようなことも考えざるを得ない。

 それから、やはり法律上あるいは憲法上の身分保障があるわけでございますので、それは行ってもらいますけれども、行きやすいような形で構築をすべきだということだろうと思います。

永田委員 憲法上の問題は確かにあるにはあるんですけれども、ただ、例えば裁判官の身分が保障されているというのは、それは安心して、中立に、高い独立性を持って裁判をしてほしいという気持ちがあるから、憲法上、裁判官というのは身分の保障がなされているんだと僕は理解しています。何か、一回裁判官になったら絶対首にならないんだみたいな、そういう特権的なものを裁判官に与えるためのものではないと思います。

 もちろん、例えば懲戒とか、そういうルール違反、裁判官としてふさわしくないような行為があったときのルール違反に対する罰として身分を奪うことは認められているんだと思いますけれども、しかし、そうでもなく、つまり、ルール違反でもなければ裁判官は一生裁判官でやっていけるんだ、国家公務員の身分を外されることはないんだというようなことになると、それはちょっと違うんじゃないのかなというふうに思うんですよ。

 やはり、能力が足りなければその地位を奪われるのは世の中の常識でありまして、政治家だってそうなわけですよ。四年に一回なり六年に一回選挙をやって、そこで自分の実績と今後の将来性について、あるいは能力について厳しい判断を仰ぐから、だから我々はその任期の期間中は身分が保障されているわけですよ。会期中は逮捕もされない、そういう特権まで与えられているわけですね。歳費は払うというふうに憲法に書いてあるわけですよ。

 ですから、そういうふうな憲法上の身分保障というのは、何も特権を与えるためにやっているんではなくて、あくまで高い独立性を持って安心して仕事ができるというような環境を整えるためにあるんではないかというふうに考えれば、これは、出向する期間も国家公務員の身分をわざわざ与え続けるということには僕は余り説得力がないんじゃないのかなというふうに思っていますが、反論はありますでしょうか。

山崎政府参考人 ごく例外を除いて、公務員が外へ出る場合、これは公務員の身分、根っこを全部残していると思うんですね、ほかの制度も。それから、仮に残さないものもあるかもしれません。これは、ちゃんと法律上不利益にならないような手当てを別途しているわけでございます。したがいまして、そんなに変わったことをやっているわけではございませんので、これが日本の一般のルールだ、そういう御理解をしていただきたいと思います。

 やはり問題は、公務員の根っこをなくして行くということになったときに、果たして、憲法上の関係を考えると、それでいいのかということにもなり得ますので、そこはやはり、行きやすい環境を整えるということで御理解を賜りたいと思います。

永田委員 さまざまな法律の制約はあるにしても、やはり、裁判官というものは非常に広い知識や経験が必要なんだ、そういう性質の仕事であるというふうに考えれば、弁護士として経験を積む、その間退職金や共済については最低限の保障しかしない、そういうふうな期間があって当然の仕事であるというような判断というか評価をすることも、私は一つの案ではないかというふうに思っています。

 正直言って、弁護士の経験を積まなければちょっとバランスを欠いたような裁判官になってしまうんではないか、検事になってしまうんではないか、そういうような懸念の中からつくられた制度を、その制度に従った出向命令を嫌がるような人であれば、これはもう堂々と、あなたは能力がないんだ、知識も経験も足りないんだというふうな評価をして、もう一切仕事はさせない、そういうふうにしちゃっても僕は全然問題ないと思うんですよ。そんな知識も経験も足りない人に、共済とか退職金とか、そういうもので厚遇してあげる必要はまるっきりないと思うんですね。我々政治家に比べると何とも恵まれた職業だなというふうにちょっとうらやましく思ってしまうところがあると思うんですよ。皆さんもそう思いますよね。

 我々だって、今度給料を一〇%減らされて国会議員年金も減らされるという時代に、それでも構わない、そういうふうな職業なんだというふうに高い倫理性を発揮してその苦難に耐えようとしているわけですから、ぜひ裁判官も我々の痛みを分かち合っていただきたいなというふうにちょっとお願いをしたいと思います。

 時間になりましたからこれで終わりにしますけれども、本当に、最近、民主党の議員は知性と教養が邪魔をしておるんではないか、仕事の仕方に邪魔をしておるんじゃないかというような感じがあったので、私きょうは知性と教養を最小限に抑えた上で議論をいたしましたが、我が同僚鎌田さゆりが民主党の知性と教養を遺憾なくこの次の質問で発揮すると思いますので、皆様御堪能いただきたいと思います。

 ありがとうございました。

柳本委員長 鎌田さゆりさん。

鎌田委員 民主党の鎌田さゆりでございます。

 元気さにおいては国会でだれにも負けない自信はありますけれども、知性と教養は、少なくとも永田さんよりは劣りますので。それは余計なことですが。

 先ほど来ずっと委員会審議をお聞きしておりまして、最高裁からお見えの山崎さんも、それから司法制度の方の推進本部の山崎さんも、お二人とも山崎局長で、何か不思議なめぐり合わせと思いつつ、さらに、山崎推進本部事務局長におかれましては、今回の法案の主眼、テーマでありますいわゆる他職経験、局長もかつて裁判官をなされていたやにお聞きをしておりまして、まさにそういう経験者としての答弁がずっと続いていたのかなと私は私なりに評価も、おこがましいですけれども、させていただいたりしておったんです。

 ですが、この法案の審議に入る冒頭、やはり、私はまず大臣に御確認をさせていただきたいことがございます。

 先ほど来、この法案の提案理由、趣旨説明といったものに対してるる御説明ありました。法案の概要を開けば書いてあることをただまた繰り返し御説明いただいておりまして、それは聞かなくてもわかるというような感じがするんですけれども、確認をしたいということは、私は、今回のこの法制度導入に当たりましては、日本が長期目標にして置いている法曹の一元化、そして弁護士任官、こういったものをさらに充実させていかなくちゃいけないという最終目標を見据えた、その手前の中間地点の中間目標に置いて、なかなか弁護士任官も進まない、あるいは法曹一元もなかなか具体に難しい。

 では、難しいからといって何もしないわけにはいかない。では、こちらを充実させるという方法もあるのじゃないかという考え方に立って、私は、その考え方でこの充実を求めたいと思っているんですけれども、そういうことをぜひ大臣も共通認識でいていただきたいなという思いを込めて御確認をさせていただきたいと思います。

野沢国務大臣 法律によって社会が治められるということがいかに重要であるかということにつきましては、昨今における例えばイラク等の状況をごらんいただきましても、極めてこれは大事なことと思うわけでございます。

 これまで我が国では、もう百年以上かけまして、これをしっかりと積み上げて進んでまいりましたが、今回お願いしておりますこの法案につきましては、さらにそれを一歩二歩前進させるべき、裁判という制度、そして弁護士さんという職務、あるいは検察官というお仕事、こういった方々が、より一層日本の国民の皆様の意向をくみ上げて、立派なやはり裁判をし、事件の処理をしていただくということから、法に対する国民の信頼をさらに上乗せするといいますか、いや増しするということで、大変実は意義のある法案と私は考えておるわけでございます。

 さまざまな今議論をしていただいておりますけれども、経験を積むということは、これはやはりかけがえのない財産でございまして、私も、ただいまもう七十を超えるという年になってまいりましたが、この五十年間有余の間で積みました経験というものは何一つ実はむだなものはなかった、こういう思いでいっぱいでございます。

 その意味で、これからは、裁判官あるいは検察の皆さんが、弁護士さんという厳しい仕事を、また温かい仕事でもあると思いますが、そういう目から見て裁判はどう見えるかと。

 やはり私も、弾劾裁判所の裁判長という立場であの一番高いところへ座ってみますと、わきに座る方、正面に座る方とはまた違った感覚になるわけでございまして、やはり守る立場、攻める立場、さまざまな立場を経験され、そしてまた最初に申しましたように、世間の皆様、国民の皆様の気持ちをくみ上げるハート、並びにまた、その技術を含めて習得されることが今法案の最大の眼目と私は考えておりますので、どうかひとつ十分な御議論を尽くしていただきまして、この趣旨が生きまするようよろしくお願いいたしたいと思います。

鎌田委員 大臣、大変恐れ入ります、恐縮でございますが、再び同じことを。

 私は、今の大臣の御答弁を聞いて、本当にこの法案を通そうという意気込みのようなものも感じました。しかし、私、御確認をさせていただきたいと申し上げましたのは、今回のこの制度導入は、日本として、まさに法治国家として、将来の法曹一元化、そしてまた弁護士任官というものを九一年から進めている、こういったものがなかなか現実は思うように運ばないという実態も、これは一方であると思います。

 しかし、そういうものをただ放置しておくわけにはこれはまいりませんから、大きな目標として、司法制度改革審議会設置法の附帯決議でも法曹一元化というものの議論を充実させなければならないという附帯決議もついておりますし、ですから、そういう最終的な大きな目標に向かっていくその途中の中間地点として、判事補さんや検事さんたちに弁護士としての職務経験を積んでいただくことによって、私は、そのように、この大きな一つの、法曹一元という大きな目標の中の一つの中間地点かなというふうに解しているんです。大臣、いや、それが間違いだよというのであれば間違いだとおっしゃっていただいて結構ですし、いや、同じ思いでもってこれを充実し、そしてさらには、最終的に長期目標でそういうものもあるんだというふうにおっしゃっていただきたいと思うんですが。

野沢国務大臣 法曹一元化につきましては、少しさかのぼる話になりますが、昭和三十年代に、臨時司法制度調査会という中で、この一元化が円滑に実施されるならば一つの望ましい制度としつつも、しかし、これが実現されるための基盤となる諸条件はいまだ整備されていないとの結論に至ったところでございます。たしか十二項目ほどの条件がありまして、例えばその第一が、やはり法曹人口の飛躍的な増加がないと必ずしもこれは機能しない。以下、各項目にわたって触れられているわけでございます。

 今回の司法制度改革審議会の中でも、御指摘のように、一元化という言葉が大変議論をされましたけれども、この意味につきましては極めて多義的な意味合いが持たれておりまして、この言葉にとらわれるだけではなくて、要するに、国民が求める裁判官を得るための具体的方策について検討するとの方針をいただいておるわけでございまして、きょう私も持ってきておりますが、この審議会の御答申を生かす意味で、十三年六月十二日にまとめられた答申で、二十一世紀の我が国社会における司法を担う高い質の裁判官を安定的に確保する等の観点から、判事補に裁判官の職務以外の多様な経験を積ませる制度、あるいは弁護士任官等の推進等をここで整備しましょう、こういうことで御提案があったわけでございます。

 この法案は、その意味で、司法制度改革審議会意見の趣旨、これを踏まえた司法制度改革推進会議の計画、これを具体化するために立案し、提出させていただいておりますが、同時に、法曹一元化という大きな目標のまず第一歩だ、これからも引き続き創意工夫を凝らしまして、より一層充実した制度のためには引き続きの努力が要るものと考えておりまして、国民の皆様が求めておられます高い裁判官の資質を育成していくそのための一つの一里塚だ、こうお考えいただければよろしいかと思います。

鎌田委員 最後のその一言が欲しくて、何分も、随分かかっちゃったなと思いますけれども、まさに法曹一元化に向けた一里塚というふうにとらえていただければと。

 私は、これは、うがった見方をしますと、法曹一元化が進まない、弁護士任官が進まない、ではちょっとその場しのぎでこれをというふうに、首をかしげている人もいますけれども、というふうに、地方に行けば、地域に行けば、法曹の現場に行けば、そういう声も現実としてあります。そういったものにも耳をかさなくちゃいけないのが、また首をかしげていますけれども、そういう首をかしげる姿勢がよくないんじゃないですか。本当におかしいと思う。地方の、この現場で働いている人たち、現場でこういうものに遭遇している人たちの声を代弁していると思ってください。その辺のところ、一方的になりますけれども、意見としてつけ加えながら。

 先ほど対象者については八百三十人という数字が先ほどのやりとりの中でございましたけれども、そのうち、もう既に官民交流の中でいわゆる他職経験をなさっている方もいらっしゃると思うんですけれども、今回のこの制度導入に当たっての対象者は、既にもうそういう他職経験をなさっている方も含めてすべてというふうに考えていいでしょうか。これは、最高裁にお願いします、判事補さん。

    〔委員長退席、塩崎委員長代理着席〕

山崎最高裁判所長官代理者 判事補の数でございます。恐縮でございますが、八百二十五と先ほど申し上げました。平成十五年十二月一日現在の人数でございます。

 委員御指摘のとおり、その中には、もう既にこういった外部での経験を経た者がたくさんおります。ちょっと、その中で何人というのは調べておりませんので、今数を申し上げることはできないんですが、先ほど申し上げましたのは、いろいろなプログラムがございまして、そういうものを積み上げた場合には、毎年毎年百人の判事補がいるといたしますと、その半分ぐらいは経験しているということでございます。先ほど申し上げました八百二十五人の中には、例えば去年任官したばかりの若い判事補も含まれているものですから、トータルとして半分とは申しませんけれども、かなりの数の者がもう既に経験しているところでございます。

 今回、新たに弁護士職務経験制度ができました場合には、一人の者が幾つもの経験をするというのは、これは必ずしも合理的ではないものですから、むしろ、私どもの考えておりますのは、すべての判事補が何らかの形で一回はこういう経験をするように、そういうぐあいに制度を運用していきたいということを考えておりますものですから、重複の経験というのは、これは全くないという趣旨ではございませんけれども、趣旨としては、未経験の者にできるだけ割り振っていくのが全体としての経験を積ませるのにいい方法であろうというぐあいに考えております。

鎌田委員 未経験の方の方が優先だけれども、すべてということの確認をさせていただきました。

 先ほど漆原委員との質疑のやりとりの中で、できるだけ多くという御要望を最後になされて、それに対しては御答弁なく、ただ、それまでのやりとりで、山崎人事局長からの答弁の中で、具体に何人というそういうものを掲げたり、ここでということはなかなか難しいというお話がありましたけれども、私は、再度、具体的に何年計画で何人をというのを本当は要求したいところでございますけれども、しかしなかなか裁判、これから先どういった事案が現実に現場で出てくるかわかりませんし、そういったものの事務処理というものもこれありだ、それも理解した上でなんですけれども、ただし、最高裁として判事補さんをその他職経験の現場に送り込むという、その最高裁の立場で、やはりこの法制度導入に当たってのもう少し突っ込んだ意気込みというものをお聞かせいただきたいです。

 やはり、訴訟当事者の一方である検事、検察側よりは、あってはならないですけれども、どうしても現場の声を聞くと、裁判官の方に、先ほどの永田委員とのやりとりでもありました、偏った見方というものが現実的にあるという声もあります。ですから、判事補さんが他職経験をされるということに対して、最高裁として、その現実を踏まえた上で、ぜひ意気込みをお聞かせください。できるだけ多く出したいという気持ちがあるのかどうか、あるのならあると、お願いします。

山崎最高裁判所長官代理者 判事補は裁判を行っておりますが、裁判所に持ち込まれる事件というのが昨今ますます複雑で困難になっております。そういう意味で、できるだけ社会事象についての洞察力といいますか、そういったものを高めていかなければいけない、そういうことを考えておるわけでございまして、そういう意味で、先ほど申し上げました、裁判官以外の職務の経験をしたり、あるいは外部の、海外留学なども含めまして外部の経験をいろいろ積ませるということが非常に重要な意味合いを持つだろうというぐあいに認識しているところでございまして、そういったものの一つとして、この弁護士職務経験制度というのは非常に重要な意味があろうかと思います。そういったことで、全体として、判事補のすべてに、先ほど申し上げましたとおり、何らかの外部の経験をさせたいということを考えておるわけでございます。

 先ほど申し上げました既に存在するメニューでは、大体半分ぐらいは経験できるようにはなっておりますけれども、残り半分はどうするのかということがそうすると残ってまいりますので、そういうものを一つのターゲットにして、この弁護士職務経験制度を運用していくということが考えられるわけです。もちろん、既存のプログラムの充実ということも、またこれも同時にやっていきたいと思いますが、それとあわせて全員に経験できるようにということを考えておりますものですから、当然我々としても、できるだけ多数の判事補がこの弁護士職務経験をできるように努めてまいりたいというぐあいに思っております。

鎌田委員 次に、期間のことについてお伺いをします。

 法案には「二年を超えることができない。」というふうに数字が掲げられております。先ほど来からも出ていましたけれども、日弁連としてのお考えとしては最低限三年必要だというような意見も試案の中で出されておりますけれども、その間日弁連といろいろ協議をなさってきたんでしょうから、調整の結果ここに落ち着いたのかなと思いますけれども、その二年というところに落ち着いたのは、最高裁あるいは法務省としての意思、二年というものへの意思が強いのか。

 先ほど山崎事務局長からの答弁で、一概には言えないけれども、大体八・三カ月、あるいは十二・何カ月ですか、そういったものの審理の状況を見れば二年で大体習得できるんじゃないかというふうに考えているけれどもという答弁がありましたが、私は、まあ二年で大体習得できるんじゃないか、そういう程度の答弁というか、そういう思考的な背景があるのでは、私はちょっと納得がいかない。二年で、十二分とはいかないけれども、自信を持って大丈夫なんだと。日弁連は最低限三年ですよ。しかし、今回、二年を超えられないとして、もし特別な理由があっても三年を超えない。日弁連という、まさに弁護士さんを束ねていて、そして独立した機関がそういうふうに意見を出しているところで、なぜこの二年に落ち着いたのかというところに、そこに最高裁あるいは法務省の意思があるのか。

 あるいは、重ねてですけれども、続けてですが、その二年という、二年間という弁護士職務従事職員で今弁護士事務所に出向している、そういう情報は、例えば事件を受任する際に、依頼人に対してその情報というものはどうやって伝わることになるのか。

 二つ続けてお伺いします。

山崎政府参考人 何年にするかということ、これは、日弁連と最高裁、法務省、その三者で協議があったことは間違いございません。その中で三年説、二年説あったことはそのとおりでございます。最終的には、そこで両者合意をして、二年を原則にして例外的に三年、こういうふうにしたわけでございます。

 先ほど私、余り自信のない答弁というふうに聞こえたのかもしれませんけれども、そうではございませんで、二年でできるということを申し上げているわけでございます。ただ、事案によっては、もう少しきちっとやって終われるならば、そのままずっと終わりまでやった方がいいというものもあろうかということから、例外的に三年も認めるということでございます。

 それからもう一つは、これは裁判官がいろいろな経験をする中の一つのものでございます。判事補というのは十年の間でございます。五年たちますと単独で裁判もできることになるわけでございますので、裁判官としての修業も大事になるわけでございます。ですから、そういうものの総合的なバランスの上で考えていくということでございますので、そういうことからその期間が決まってきたということでございます。

 それから、今、裁判官からなった弁護士であるということを告げる義務があるかどうかという点でございますが、この法律上何も規定をしておりませんので義務はございません。この点についてどうしていくかは、これから法曹三者でお話し合いをしていただいて、その運用の点は決めていっていただくということだろうと思いますが、基本的には、その弁護士事務所の、そこに雇われる弁護士さんですね、この方がどういうような意向をお持ちになるか、依頼者との関係、そういうことをも総合勘案して考えていかれることではないかというふうに考えております。

鎌田委員 先ほど永田さんからの質問の中で、ああこの人が、目の前にいる弁護を依頼しようとしている人が今そういう状況で来ているんだとなると頼みたくなくなっちゃうという気持ち、私も正直、すごくその気持ちが理解できます。

 というのは、今回、二年間という数字を見たときに私ふっと思ったのは、他職経験で判事補さんや検事さんが弁護士事務所に行って弁護活動を二年間するというのを聞いたときに思ったのは、まるで、二百キロの新幹線に乗って、新幹線の車窓からのどかな田舎の風景を、農民の暮らしを車窓から見る、そんな感じかなと思ったんですね。

 しかし、裁判の現場で我々が、私はまさに依頼人の立場に立つことがあるかも、まあ余計なことですが、そういう立場からすると、二百キロの新幹線の車窓からのどかな田園風景の田舎の農民の暮らしをただ眺めるような、そういう心境の人には弁護活動は依頼できない。やはり、新幹線をおりて、田舎に出て、一緒に泥にまみれて、農民の暮らしをまさに一緒に体験してくれる、そして痛みも何もすべて共有してくれる、体感してくれる、そういう弁護士さんにやはり弁護活動を依頼したいと思いますよ。一〇〇%信頼を寄せて相談をするわけですから、情報をすべて共有するわけですから。

 ですから、私は、この二年という数字を見たときに、果たしてと。ましてや日弁連がそういう意見を出している。それから、二年を超えることができないという背景、状況を持った人が、依頼人に果たしてどうやって伝わるのか。そして、依頼人は、それを聞いたとき、その弁護士を拒否することができるか。弁護士職務従事職員ですね。

 本当にこの制度がひいては法曹一元化につながると私は信じていますけれども、しかしこれが出ていく現場というのは、まさに裁判、訴訟の現場に行く、そして弁護人に依頼をするときのそのやりとりの中におりていく制度ですから、この二年という数字や、あるいは情報がどういうふうに伝わるかということに私は非常に神経を使いたくなるんですね。

 そこでなんですけれども、この法案で言っている実のある経験というのは、確認しますが、いわゆる事務経験、弁護士としての、弁護士活動としての事務経験なのか、あるいはいわゆる弁護活動なのか、そこのところだけはしっかり確認をさせていただきたいと思っております。

 さらに、先ほど私がちょっと例を出して申し上げましたけれども、そういう、ただ眺めるだけの、ちょっと腰かけ二年間というようなことには決してならないんだというところも確認をさせていただきたいと思います。

山崎政府参考人 御指摘のとおり、腰かけで仕事をやってもらったら困るわけでございます。新幹線から眺めているだけ、これでは何のために行くのかということになろうかと思います。ですから、そういうことにならないように、当初は、裁判官の身分を残したり検察官の身分を残して行こうかという案もあったんですけれども、そうなりますと、まさに新幹線から眺めているという状態になります。ですから、それは避けるべきだろうということから、現実に弁護士に登録をして弁護活動をやっていただきたいということでございます。単なる事務手続を覚えるということ、これは通常の仕事のやり方の問題を覚えるというだけでございまして、それが目的ではございません。

 先ほど来申し上げておりますけれども、やはり依頼者がどういう点で困って、裁判に何を期待しているか、こういうところをきちっと把握してほしいということですね。それから、裁判を通じて、やはり自分の組織のあり方それから裁判のあり方、こういうものを外側からよく眺めて、おかしいところは直すべきだし、いいところは取り入れる、そういう材料にしてほしいということでございます。ですから、決してお客さんの立場で行くということではございません。

 それから、依頼者との関係でいろいろ御心配があるという点でございますけれども、そういうことに配慮いたしまして、原則は、雇う方の弁護士さん、この方と共同受任をしていただくということになっております。それは、指導を受けるという立場もございますけれども、やはり依頼者との関係もございます。

 それからあと、現実に告げるか告げないか。これは運用上の問題でございますけれども、依頼者で強くそういうことを気にされる方がおられるならばきちっと申し上げるべきだろう。やはり信頼関係でもっているわけでございますので、どうしても嫌だと言われればそれは受任できないということにはなろうかと思います。

鎌田委員 本当に、くどいようですけれども、その二年間、たとえ二年間であっても弁護士になり切っていただかなくちゃなりませんので、弁護士になり切るということは、依頼人と二年間だけのおつき合いという気持ちじゃなくて、実際に今弁護士として活動している方々は一生のつき合いと思って受任しているわけでございますから、そういう同じような気持ちに立って仕事に二年間当たっていただかなくちゃならないと思います。なり切っていただきたいです。

 それで、今答弁の中でもちょっと触れられてありました、それから先ほど来も出ておりますけれども、公務員の身分を保有しているという理由ですが、先ほど、公務員としての倫理規程、いわゆる倫理の感覚をきちっと持って、そして公正な立場で行く、さらに不利益な取り扱いを将来において受けないようにというような御説明がございました。

 まさに私も、その二点は大事であり、特に後者の方の、不利益な取り扱いを受けてはならない。どうしても退職金ですと百五十万ぐらい、何か数字を調査室の資料で見ることができましたけれども、そういうふうな不利益が出るおそれがあるのであれば、まさに私は、その理由としても妥当だと思いますし、公務員の身分を付与したままというのも妥協できるところでございます。

 ただ、やはり公務員身分保有に対する異論ですとか懸念というものがまだたくさんございます。具体に現場の声なんかを聞いてみますと、公務員の身分を持ったままの弁護士なら結局中途半端な弁護士だ、さらには、そういったもののリスクをしょってでも弁護士活動を二年間やるんだ、そういう人に手を挙げてもらってこそ、まさにこの他職経験、判事補さんが弁護士経験をして、そして日本の裁判制度をいいものにするというそこに生きるんだ、そういったものが不利益が怖くて手が挙げられないなんというんだったら来なくていいよというような声だって現実にあるんですよね。そういう懸念だとかあるいは不安、そして異論もまだまだあります。

 そういったものに対して、ぜひこれは大臣に、全国にまだあります不安ですとか懸念ですとか異論に対して、それを払拭するに値する、大臣としての、この法案提案者の、あるいは推進本部のトップツーとしてのお考えを、メッセージをぜひ出していただければありがたいと思います。

野沢国務大臣 私は、法曹を志す方々の一番基本的な心構え、あるいは前提と言ってもいいかもしれませんが、この方々は、もちろん法律や技術やさまざまな経験は生かしてはいきますが、大事なことは、やはりお国のために尽くす、あるいは世のため人のため、あるいは個人も含め、とにかく人のために役に立つことをしよう、こういうことが前提として、心構えとして基本にある方がこの世界に入ってきていただいているものと私は思うわけでございます。

 その意味で、いろいろと問題はございましても、やはり国家公務員であるということの身分、これも一つの大事なことでございますし、それから弁護士さんとしての職業、これまた人権擁護を基本とする大きなお仕事の一環でございますので、私は、こういった法案をつくりまして、さらに多様な経験を積むことによって一層の効果が上がるということが実現できるならば、先ほども申し上げましたとおり、よりよい裁判を実現するための一つのステップ、一里塚として、今法案をぜひひとつ御理解し、また御成立に協力をいただきたい、かように思っております。

鎌田委員 わかりました。

 ただ一つ、実現できるならばという仮定のお話がございましたので、ちょっと残るものはありますけれども、しかし、大臣を頂点にして、提案する皆さんが、絶対にそういう懸念だとか異論だとか不安だとかそういったものを払拭する制度としてこれを生かしていく、そして最終的には法曹一元化に結びつけるんだという一つの大きな考えに基づいてやっていかれるというふうに、今の大臣の言葉は誓いにも似たものだと思いますので、そこに責任を持ってぜひ今後進めていっていただきたい。最高裁におかれましても、また法務省におかれましても、そのように思います。

 公務員身分保有について、弁護士活動に障害となるかどうかもお聞きをする予定でしたが、これは先ほど来の答弁で了解いたしましたので、これは飛ばします。

 次に、報告のことについてなんですけれども、報告を求められたら、それは義務として報告をしなければならないのか、いわゆる義務かどうかをお聞きします。

山崎政府参考人 これは義務でございます。

鎌田委員 義務だろうかと思ったんですが、なおはっきり義務だというふうになりますと、またそれはさらに重く受けとめたいと思います。

 法案の中には、勤務条件及び弁護士業務への従事の状況というふうに書いてございます。これは、簡単に言えば、弁護士職務従事職員のいわゆる働きっぷりというふうに、もちろん勤務条件はまた別でしょうけれども、働きっぷりとそしてまたその条件というふうに考えてよろしいですか。

山崎政府参考人 ここで考えておりますのは、例えば、勤務時間等がどうなっているかとか、それからやはり給与の支払い状況、これはまさか払わないというところはないかと思いますけれども、場合によってはおくれるということだってあり得る可能性がございます。そういうものとか、それから、あるいは仕事への従事状況というんですかね、何日間欠勤しとか、そういうような関係でございまして、そういう外形的なものを求めるだけでございまして、その事件の内容的なもの、これについては弁護士法上も守秘義務がございますし、そこのところを求めるということではございません。条文上もそこは括弧の中で手当てをしているということでございます。

鎌田委員 守秘義務はもちろんそれに入らないということでしたけれども、いわゆる外形的なこと。そうすると、私が今申し上げた働きぶりなんというのは、もしかしたらそれぞれの弁護士さんの主観、見方によっても違うでしょうから、もしかしたら働きぶりなんかも入らないのかなと。単純に何時から何時まで仕事をして、そしてどのくらい休んで、どのくらい遅刻してとか、もう本当に事実現象面だけを報告することになるのかしらと思ったんですけれども。

 ここで二つ気になるのは、一つは、先ほど山崎事務局長もおっしゃったように、その内容については報告義務に入らないということに加えて、厳密に言うと守秘義務に入らないような、その事務所としてどれだけの件数を扱っているとか、あるいはどういった分野のどういった種類のものをどういうふうに受任しているとか、そういった厳密に言うと守秘義務には入らないような、そういうものなんかもこれは報告には入ってこないというふうに考えてよろしいか。

 それからもう一つは、私は、これはちょっと難しいと思うんですけれども、先ほども申し上げたように、その弁護士さんによっての主観が入ったりすると、何というんでしょうね、しかし、その弁護士さんも、その事務所と独立してその人を預かって、そして二年間、いわゆるボス弁というんですか、そういう形で見ていくわけですから、だから私は、その感想を書くところがあるのかしら、あっていいんじゃないかなと。別に、この人は働きぶりがAだった、Bだった、Cとかと、そういうふうにまでは言いませんけれども、ある程度の、評価のヒの字ぐらいにはかかるような、余りにもひどければとても熱意が見られないとか、あるいはとても熱意が見られるとか、その程度くらいの感想のようなことを書くというか、報告するときには、そういったものを求めるということもこれは妥当ではないかなというふうに私は考えるんですけれども、以上二点についてお願いします。

山崎政府参考人 基本的には、その事務所にお任せするわけですね。そこの指導に従ってやっていただくということで、もちろん自発的にもきちっとやらなければいけませんけれども。そういうシステムででき上がっておりますので、例えば細かい民事の件数が何件だとか、そういうようなところまで求めるつもりもございません。

 それからまた、勤務状況云々というものも、それはいろいろ具体的な事情にもよるわけでございますので、そこのところを一律に聞くとか、そういうことは想定はしておりません。

鎌田委員 前半の方は、それで納得いたしました、確認をさせていただきました。

 後半の方は、私、何も一律に評価めいたことを報告させたらいいんじゃないのということを言っているのではありません。もしそういったこと、今申し上げたような内容について何も検討が今まで、こういうことも報告してもらった方がいいんじゃないかとか、検討が今まであったかどうかは教えていただけますか。

山崎政府参考人 その点の検討は余り具体的にはやっておりませんけれども、今後の運用の問題としてどうするべきか、これはまた別途の問題があろうかと思いますが、それはまた弁護士会等との関係でいろいろお話をしていただければというふうに思います。

 ただ、非常に問題が起こるということになれば、むしろ弁護士の事務所の側からそれぞれもとの組織のところに当然話は行くだろうと思います。それを言わなきゃいかぬというような義務づけとか、そういうことは必要ないだろうというふうに思っております。

鎌田委員 はい、わかりました。

 次に、懲戒のことについて伺いたいと思います。

 法案上、読む限りにおいては二重の懲戒権というものが生じているのではないかと思いますけれども、そのように読み取ってよろしいでしょうか。

山崎政府参考人 これは、身分は公務員と弁護士と両方ございますので、公務員の場合は国家公務員法の関係、それから弁護士も弁護士法関係の懲戒、両方がそれぞれの観点から行われる可能性はあるということです。

鎌田委員 しかし、その二年間の間においてはいわゆる公務には従事はしないわけですから、その懲戒権に対する考え方としては、弁護士職務に関連した非違行為と、そしていわゆる私生活上の非違行為、この場合に当てはまる、その二年間の間、公務に従事しない間、そのように考えてもよろしいですか。

山崎政府参考人 基本的には公務に従事いたしませんので、その身分に伴うものでございまして、例えば信用失墜行為でございます。これが典型的でございまして、ただいま例を挙げられましたけれども、私生活上の不祥事ですね、それから、あるいはその仕事に伴う不祥事もあり得るかとも思いますけれども、大体そういうものです。公務員としてやはり信用を失墜するような行為、これが中心的な対象になっていくというふうに考えております。

鎌田委員 今、公務員としての信用失墜という言葉もありましたが、この二年間は公務に従事していないわけですから、だから弁護士職務に今ついている職員の方々に対する懲戒権の発動というものは、この二年間は、まずはその弁護士職務としていかがか、そしてまた私生活についてももちろんそうですけれども、弁護士職務のところについて考えれば、ここのところについては、あくまでも懲戒権の発動は弁護士会にまずあるというふうに考えてよろしいですか。

山崎政府参考人 弁護士活動に伴うものであれば、それはまず弁護士会の方の懲戒の発動、こういう問題がまず前提になるということでございます。

鎌田委員 重ねて確認ですけれども、将来、二重の懲戒が及ぶ場合も出てこようかと思いますが、そういったものは、刑事罰のような重大なそういう案件というふうに考えてよろしいですか。

山崎政府参考人 それに限定できるかどうかという問題は別でございますけれども、片っ方でこういう処分が行われるということだったら、片っ方もそれを勘案してということも考えられますし、それは両方の相関関係でございますし、やはり両方で重いものを、ペナルティーを負うという場合も当然それはあり得る話だろうと思います。

鎌田委員 しかし、それは、今重いという言葉がありましたように、重いものであろうというふうに考えてよろしいですね。

山崎政府参考人 信用失墜行為でございますので、それなりに重いものというのが念頭に浮かびます。

鎌田委員 終わります。ありがとうございました。

塩崎委員長代理 泉房穂君。

泉(房)委員 民主党の泉房穂です。

 お昼どきではありますが、あと四十分間、有意義な質疑にしたいと思いますので、前向きな御答弁を期待しつつ、質問に入らせていただきます。

 もうかなり、これまで主要な論点につきましては論議されてまいりました。私としては、この法案の制度趣旨をさらに各方面から推し進めていただきたいという観点から質問をしたいと思います。

 この法案の制度趣旨は、検事さんや裁判官が一般国民の感覚を身につける、また、多様な経験を積んで、それを裁判や検事の現場に生かしていくという趣旨であると思います。全くその点については異論もなく、大賛成であります。

 しかしながら、今回の法案によりましても、実際聞くところでしたら、裁判官につきましては、年間、百人のうち二けた、十人程度、検事につきましても七、八十人のうち数人程度という話が漏れ伝わってきます。果たしてその程度で十分なのだろうかというような危惧を持っております。

 裁判官や検事におきましては、今お手元の方に資料を配っておりますけれども、これまで、弁護士経験以外にも各種交流事業がなされておりますが、見ていただければおわかりのとおり、裁判官につきましては、民間企業には五名ほど行っておりますが、あとは行政機関や在外公館や海外留学ということでありまして、果たしてこれで一般国民の感覚が身につくのだろうかという危惧を禁じ得ません。二ページ目の検察官につきましても、いろいろ出向はなされておりますが、司法改革推進本部とか法務省とか、そういったところで仕事をしている方が大半でありまして、果たしてこれまでのような交流事業でもって、今回の制度趣旨たる一般国民の感覚を学ぶ、多様な経験を積むということにかなうかという点、非常に心配しております。

 私自身も弁護士でありまして、司法試験に九年前に合格し、七年前から弁護士をしております。私が弁護士になって非常に尊敬する弁護士がおりまして、その方は今、裁判官をしております。市役所で、十数年窓口で普通の市役所の職員として働き続けた後に弁護士になろうと思って勉強をして、司法試験に受かりました。裁判官になろうと思いましたがかなわず、まず弁護士になりました。このたび弁護士任官として裁判官になり、今、いい仕事をしていると聞きます。

 私が思うには、この制度趣旨からしますと、何も裁判官、検事になってから新たに二年間の経験を積まなくても、既に社会人として多様な経験を積んだ、一般国民の感覚を身につけた方が司法試験を受けて法曹三者になっていく、そういう面でも重なる部分があると思います。そういった見地から質問をしていきたいと思います。

 まず前提として、この法案自体が予定している裁判官、検察官が備えるべき、理想とするべき資質についてであります。

 この点、私が考えますに、もちろん、法律の専門家でありますから、豊富な法律知識があること、また正確な判断能力、そういったものは当然、大前提であります。しかしながら、それのみならず、裁判官であれば事実認定を行います。検察官であれば起訴をするかどうか、犯罪に当たるかどうか、事実認定、もちろん大事であります。そういったときに、やはり広い社会経験、人間というものはいろいろなことをするものである、なかなか通常考えにくいことも人間はしてしまうものであるといった、そういったいろいろな社会経験があってこそ正確な事実認定ができるものだろうと思います。

 また、裁判官であれば量刑、特に執行猶予にするか実刑にするかという場面、検事であれば起訴猶予にするか起訴するかといった場面において、やはり人間の情といったもの、執行猶予にしてもこの人は立ち直ってくれるだろう、そういったことが思えるかどうかという部分につきましては、やはり温かい、先ほど大臣もおっしゃいましたが、ハート、心といったものが極めて重要だと思います。

 また、今回導入が予定されております裁判員制度、これにつきましても、裁判官が一般の市民の方にわかりやすく説明をする能力も必要となります。検察官につきましても、被害者の支援の場面において、心傷ついた被害者に対して、やはり近くに寄り添って、一緒になってその気持ちに寄り添えるような感覚、それも大事です。

 そういったことを含めますと、単なる法律知識、判断能力のみならず、プラスアルファの資質が要るのではないかと私は考えますが、この点、理想とするべき裁判官像、検察官像につきまして、非常に大きな問題ではありますが、それぞれ、法務大臣、最高裁の方から、まずはお答え、よろしくお願いいたします。

野沢国務大臣 さきの本会議におきましても、委員から大変活発な御質問をちょうだいしましたこと、改めて御礼を申し上げます。

 お尋ねの裁判官あるいは弁護士さん含め、法曹関係者の皆さんに期待している姿といいますか人間像、こういうことになりますと、これはもう一口にはなかなか言えないんですが、私は、人間力豊かな人になっていただきたい。冷静な判断を下せる頭脳、そして今もお話がありました温かいハート、そしてまたそれを裏づける多様な社会経験を積んでいただきまして、より適正な、だれが見てもなるほどという判決なり判断が出るような、そういう裁判官であり、あるいは検察の方であり、弁護士さんであっていただきたいな、こう思うわけでございます。

 今回の法律は、それにまず一歩近づくための大事な法律ということで、どうぞよろしくの御審議をお願いしたいと思います。

山崎最高裁判所長官代理者 裁判官は、公正中立な立場で法律を解釈いたしまして、具体的な事実にそれを適用し、紛争を適正妥当に解決する職責を有するものでございます。したがって、それにふさわしい資質、能力が必要だと期待されるところでございます。

 理想とされる裁判官像あるいは裁判官のあり方ということは、さまざまな角度で議論されましょうし、切り口がございますので、なかなか一言で申し上げるのは難しいところがございますが、一つ、これからの裁判がどのようなものになっていくのか、そういったこととの関係で考えてみるということができようかと思うわけであります。

 そういう点でいいますと、まず、裁判の対象となる事象、これはますます複雑化してくるだろうと思います。そういうことに伴って、やはり裁判官には高度の専門的知識、これは、委員御指摘になられました、単なる法技術というようなものではなくて対象となる社会事象に対する理解、こういうものができるような専門的知識、こういうものが必要だろうと思います。

 それからもう一つは裁判の説得性、これがこれまで以上に問われることになってくるだろうと思っております。つまり、国民の理解、信頼を得るということが非常に重要になるわけでございまして、その面でいきますと、やはり豊かな人間性を備えていることとか、あるいはバランスのとれた判断力を持っているとか、そういったことが非常に重要になってくるだろうというぐあいに思っております。

 こういった二つ申し上げました双方を身につけるというのはなかなか大変なことだとは思いますが、これからの裁判官という職には必要なことだろうというぐあいに思っております。

泉(房)委員 私も、先ほど申し上げましたが、今回の法案につきましては、趣旨については本当に賛同するものであります。ただ、それを補う意味で、法曹になる前の社会経験、社会人経験を経た方が法科大学院に入ったり、また、今はまだ並行してありますが、司法試験に合格して裁判官、検察になっていくという道も、やはりこの制度趣旨からすれば何らかの配慮があってしかるべきだと思いますが、この点、法務大臣より、そういった採用後の社会経験のみならず、いわゆる裁判官、検察官になる前の社会経験につきましても一定の配慮といいますか、重要性についての認識をお伺いしたいと思います。

山崎政府参考人 この点につきましては、法科大学院の制度をちょっと御説明させていただきたいと思いますけれども、これからの法曹には、やはり社会人としての経験を積んだ者等、こういう多様なバックグラウンドから法律家に登用していくということがどうしても必要になってくるだろうという認識でございまして、実は、法科大学院の設置に関しましても、そこを重点的に、かなり意識して考えたわけでございます。

 これは、法科大学院の設置基準に関します文部科学省の告示では、入学選抜において、法律以外の専攻分野を修めた者や実務経験を有する者などが三割以上となるよう努めることというふうにされているわけでございまして、この四月から開校、もう間もなくでございますけれども、各法科大学院においてもこれにのっとって入学選抜を行っているものと承知しております。

泉(房)委員 私自身も、弁護士になろうと思ったのは二十六、七歳のころであります。私ごとですが、私自身は、今は亡き石井紘基先生のもとでいろいろお手伝いさせていただく中、石井紘基先生から、弁護士になったらどうかとお勧めをいただき、受験を決意しました。その際、やはり迷ったのは、その後の生活がやっていけるだろうか、司法試験に受かるだろうかというふうな気持ちであります。

 そういった立場から考えますと、今回の法科大学院、大学を卒業して間もない方にとっては、確かにその後の大学院という形で延長に位置づけられますが、社会人として、例えば家族を抱えている方にとりましては、他学部であれば、私も教育学部出身ですが、三年間、またその後、研修、短縮されて一年としても、四年間の間、家族をどうやって養っていくのか、また合格するだろうかという不安ももちろんあります。

 そういったことに対する配慮につきましては、今御説明もありましたが、現実のところ、今なされている配慮は、社会人と、あと他学部を入れて三割というような指針であります。しかし、他学部といいましても、経済学部やほかの学部からそのまま大学を卒業してすぐに行かれる方もおります。社会経験があるとはもちろん限りません。むしろ、社会経験を重視するのであれば、純粋に社会人枠というものの比率をきっちりと、文部科学省として、各大学に告示という形で今回同様なすべきではないかと考えます。この点についてのお答えをいただきたいと思います。

 また、現状、今回の定員は、確認いたしましたところ、法科大学院、六十八大学、五千五百九十人でありますが、このうち社会人枠を設けているのは、六十八大学中二十五大学で、半分に至りません。また、人数におきましても、三百五十人、六%程度であります。社会人経験を経た方が法科大学院に入る門戸としてはやはり狭まっているような感がぬぐい切れません。この点、文部科学省としてどのような配慮をしていくのか、あわせてお答えください。

遠藤政府参考人 多様なバックグラウンドを有する人材を多数法曹に受け入れる、こういう司法制度改革の趣旨を踏まえまして、先ほど法務省の方から御説明ございましたように、三割以上の入学に努力すべし、こういう告示を設けてございます。

 これを受けまして、今御指摘のように、大学によりましては他学部出身者の優先枠を設けたり、あるいは特別選抜ということで、これが六十八大学中二十五大学ございます。そのほか、募集要項で三割以上を目安として選抜を行う、こう明記しておるのが八大学。そのほかでございますけれども、社会人を含めまして、法律学部についての基礎的な知識を習得していない法学未修者を対象とするコースを設けまして、法律科目試験を課さずに、適性試験の結果のほか面接や小論文等により入学選抜を行う、そういうコースを設けている。これは、告示の趣旨が、三割以上という趣旨でございますけれども、特別枠を設けるということを必ずしも求めておりませんで、いろいろな工夫で三割以上入学するように努力すべし、こういう規定でございます。

 したがいまして、私ども、入学者が確定しましたらどういう実態であるかということをきちんと調査して、もし趣旨に沿っていないようなことであれば、また対応を考えていきたい、こうも思っておるわけでございます。

 ちなみに、一、二に問い合わせたところ、東大でいいますと、合格者が三百二十五人おりまして、そのうち社会人が百五十四人、四七・四%。一橋大学についても、社会人が三一%。そのほか、他学部の人はまた別にいる、こういうような実態であるというふうに聞いておるわけでございます。

    〔塩崎委員長代理退席、委員長着席〕

泉(房)委員 きょうのきょうですぐに答えは出ないでしょうけれども、今の三割ですけれども、指摘しておきますが、他学部といいましても、今の現場を見ますと、他学部が早い段階から司法試験予備校に通って、卒業と同時に受験するというようなことが一般的なわけであります。社会経験があるわけではありません。社会人と一律にいいましても、実際のところ、卒業後も司法試験を受け続けている方、家庭教師や塾講師で食いつなぎながら司法試験を受けている実態があります。

 そういった方まで社会人に含めてしまいますと、この制度趣旨であります多様な経験ということからしますと、やはりそぐわない面があると思いますので、今後調査なさると思いますので、本当にこの制度趣旨に合った、多様な社会経験を持った方がちゃんと法科大学院においても入学できるようなシステムづくりに心がけていただきたいというふうに指摘だけさせていただいて、次に、お金の問題についても確認しておきます。

 法科大学院は高いです。一般的な大学院が五十二万八百円に対し、法科大学院は高くて、八十万四千円要ります。入学金も二十八万二千円。こんなお金はなかなか用意できません。確かに奨学金制度が予定されてはおります。ただ、それも返さなきゃいけません。例えば、家族のある方が奨学金を借りた場合、確かに今、上限二十万までふえました。でも、結局、三年間の法科大学院の期間二十万借りますと、七百二十万程度の借金を抱えることになってしまいます。無利子とも限りません。有利子もあります。

 やはり、そういったことも含めますと、授業料免除など多方面からの経済的支援というものも考えるべきだと考えますが、その点、御見解を問います。

遠藤政府参考人 御指摘のように、大変学資が高いということもございまして、平成十六年度予算案におきましては、今御指摘ございましたように、法科大学院生に対する奨学金といたしまして、無利子で千三百人分、有利子で二千二百人分、合計で三千五百人分の貸与人員を確保しておるところでございます。これは、貸与率にしまして、入学予定人員の六割ということになるわけでございます。

 それから、金額でございますけれども、有利子奨学金について上限の月額を、これまでの十三万円から二十万円に引き上げるというような措置も講じておるわけでございます。

 授業料の減免制度でございますけれども、国立大学におきましては、従来より、経済的な理由などにより授業料等の納付が困難である者などを対象に、修学継続を容易にし、教育を受ける機会を確保する、こういう趣旨で授業料減免を行っておりますが、国立大学法人化後におきましても、国立大学の法科大学院を含めて、今大体五、六%という水準でございますけれども、それと同規模の免除が可能となるよう十六年度予算案におきましても必要額を措置しておりますし、また、公私立大学におきましてそういう授業料減免措置が実施された場合には、特に私立大学につきましては、経常費補助金の中で実施状況に応じた傾斜配分による補助金の増額措置というのも実施してございますし、私立大学の授業料が高くならないようにということで、法科大学院に対する特別の経常費助成も予算の中に組み込ませていただいたところでございます。

泉(房)委員 それから、実際に法科大学院を卒業して司法試験に受かった後の修習時代の問題であります。

 この点、私の修習時代は給料が出ておりまして、今も出ておりますけれども、今議論のあるところですが、ただ、修習生になりますとアルバイトができません。ですので、その給料のみで家族を養うということになるわけですけれども、ここは議論のあるところではあろうと思いますが、その修習期間中のそういった経済的支援策につきまして、今議論のあるところでしょうが、どのような方向で考えられるのか、お答えください。

山崎政府参考人 ただいま御指摘のように、修習生は修習に専念する義務があるということから、兼職とかバイトとか、これはできないということになっております。それが前提でございます。

 修習生に対する給費の問題でございます。

 これは、私どもの方に検討会がございまして、まだその検討を継続中ということでございますが、現在の状況でございますけれども、今後における司法修習生の増加に実効的に対応して法曹人口の増加を実現するために、修習生の給費制の見直しについて検討を加えているということになるわけでございますけれども、給費制を見直す場合には、修習の実を十分に上げることができるようにするため、その代替措置として貸与制を設けるなど、そういうような検討を現在しているということでございます。

 これについてはさまざまな御意見がございまして、最終的な結論を出すのはもう少し時間がかかると思いますので、そこまでお待ちをいただきたいというふうに思います。

泉(房)委員 これからの検討だと思いますが、俗っぽい言い方ですが、裁判官や検事になる方が金持ちの子弟ばかりではなく、貧乏人の小せがれやお嬢さんもちゃんとそういったところに入っていってこそ多様な国民の意見が反映されると思いますので、そういった配慮の方をぜひともよろしくお願いしたいと思います。

 続きまして、司法試験に受かった後、実際に裁判官や検事に採用される時点の問題であります。

 現実に社会経験のある方は一定数おられます。そういった方が今裁判官や検事になっているかというと、現実的には極めて限られているというふうに私は認識しております。

 お手元に配りました資料の三枚目、四枚目ですが、これは、ここ数年間の司法修習時点におけるそれぞれの修習時の年齢と、裁判官、検察官になった方の年齢の対比表であります。

 簡単に申し上げますと、最近では、大体修習が終わるのが、去年の場合ですと二十九・三歳、おととしが二十八・六歳、まあ二十九歳前後で大体修習を終わるわけであります。

 しかるに、裁判官になる方については二十六歳ぐらいであります。三歳程度平均年齢が若いという実態があります。検察官につきましては、四枚目ですが、当然、一般的な平均年齢は一緒ですから、検事につきましては二十七・一歳、その前が二十六・六歳、同じく二十六、七歳。二、三歳やはり若いということです。平均において三歳も若いというのは、極めて若いわけであります。

 具体的に申しますと、大学を現役で通って、司法試験も大学卒業後すぐ通る、または、一年ぐらいだけ大学で浪人したか司法試験で一浪したかという方が最も多く裁判官や検事になっているという実態をすごく感じます。

 そういった方々が多様な社会経験を持っていることは非常に珍しいわけでありまして、確かに、キャリアシステムの問題もありますし、それだけ優秀な方だから裁判官、検事になるという面もあるのかもしれませんけれども、やはり多様な社会経験を踏まえた方が裁判官、検事になることが望ましいという価値判断からしますと、そういった方のみに限らず、社会経験のある方も裁判官、検事になっていくような配慮があってしかるべきだと私は考えますが、この点につき、お尋ねいたします。

山崎最高裁判所長官代理者 私の方から、裁判官についてお答え申し上げたいと思います。

 裁判官の採用に当たりましては、任官希望者の能力、識見、人物等を総合的に考慮した上で裁判官としてふさわしい者を採用する、こういう方針でございまして、採用前に他の職務の経験があるかどうか、こういったことも、こうした総合的考慮の一つの要素として考えておるところでございます。

 裁判所は、採用前に他の職務の経験を有する者を含めまして、多様なバックグラウンドを有するすぐれた人物、これを多く採用したいというぐあいに考えておるところでございますが、現実を申し上げますと、他の職務を経験した人たちが任官を希望されるというそのこと自体が非常に少ないものでございますので、結果的には、なかなか採用者の中でそういう経験を有している方が多くならない、そういう状況だろうと思っております。

 年齢のこともおっしゃられましたけれども、これもちょっと似たようなところがございまして、年齢が高いからといって採用しないというような、そんなことではもちろんないわけでございますが、修習生である程度年齢の高い方でありますと、もう既婚者で家族を持っておられるとかいうことがありますと、裁判官になった場合に、さあ転勤どうしようかというようなことをやはりお考えになるようでございまして、なかなか希望される方はそう多くない、そういうことがあろうかと思います。

 その結果として、先ほどお示しいただきました資料のように、判事補の採用時の年齢が低くなっている、こういう状況であろうと考えております。

大林政府参考人 検事任官者の平均年齢が司法修習終了者の平均年齢を下回っているという点は、委員御指摘のとおりでございます。しかしながら、昨年の検事任官者七十五名の任官時の年齢は二十三歳から三十八歳までと幅がありまして、平均年齢二十九歳以上の者も二十一名おります。

 したがいまして、必ずしも年齢にはかかわらず、有能で適性のある者を採用しているというふうに承知しております。

泉(房)委員 私自身も修習時代を経験していますので、お答え自体、こういう場でなかなか言えることと言えないことがあるんでしょうけれども、私として皆さんに知っておいていただきたいのは、現実問題、裁判官、検察官になるには、司法修習時代、各クラスというのがありまして、そこのクラスの担任の先生がいまして、高校みたいなものですけれども、その先生が実質的には、君、裁判官にならないか、検事にならないか、裁判官になりたいんですという相談に対して、君、ちょっとやめておいたらという中で、実際上、絞り込みがなされているのがまさに実態であります。一般的な修習生の間の一般認識としては、三十も超えたらもう裁判官は無理だとかいうようなのが、一般的にそういうふうに修習生の間では言われているという実態があります。

 また、裁判官につきましても、できる限り、ある意味では素直なという方なんでしょうが、私自身、修習時代は、私自身は変わり者ですので、修習へ入りましたけれども、余り勉強もせぬと、近くの障害者施設のボランティア活動をやったり、また手話サークルを自分で立ち上げたりしておりました。そういったときに、裁判官志望の方が手話サークルに来られますと、担当教官から、君、手話サークルなんかに行っていたら裁判官になれないよと言われたというふうにして、ある方が相談に来られます。私はびっくりしまして、何で手話サークルの、手話をしたら裁判官になれないんだとその人に聞きましたら、教官からは、いや、とにかく修習生時代はおとなしくまじめに勉強しておったらいいんだというようなことを言うような始末です。

 別に個々の真偽のことを今私は確認したいわけではなくて、確かに修習生について、若くて優秀な方をという面をある程度重視されることは私も否定はしませんが、しかし、繰り返し、それのみならず、今回の制度趣旨のように、単に法的知識、判断能力、要するに、よく勉強して賢かったらいいだけじゃなくて、人の痛みがわかるような面の方もやはり裁判官、検事に要るだろうという制度趣旨からしますと、例えば、そういう個別の採用に実質的に当たっている担当教官も、一定割合、何人かのうち二割や一割ぐらいは、そういった社会人経験のある方を配慮してなってもらうと。そういった方が、例えば家庭裁判所で、離婚や相続やそういった一番生々しい人間模様のところで本当によき裁判、審判をすることが期待できる面もあろうと思います。

 そういったことにつきまして、今余りにもそういったことに対する配慮がないのではないかというふうに危惧をしておりますので、お答えできる言葉も限られているのかもしれませんけれども、その点、社会人の経験のある方についても、裁判官、検事の採用についてやはりそのことについて一定の配慮をする旨の前向きの答弁を期待して質問させていただきますので、御答弁よろしくお願いいたします。

山崎最高裁判所長官代理者 裁判官の採用につきましては、先ほど申し上げたとおりでございまして、私どもは、むしろ多様なバックグラウンドを持った人たちがたくさん任官してくれればいいというぐあいに考えております。

 今委員のお話の中に出ました司法修習生の修習の指導に当たる教官たちの認識という点で申しますと、実は、言ってみれば、ストレートで来た非常に若い修習生が、それがゆえにいいということではない、必ずしも優秀とも言えないと。

 いろいろな意味でそれは言っているんだろうと思いますが、単に法律的な知識があるとかそういうことではなくて、やはり裁判官に必要な当事者に対する共感ですとかそういうバランス、人間性、そういったものすべてを含めた上での言葉だろうと思っておりますけれども、そういう意味では、むしろ、委員のおっしゃられるように、既に別の職務を経験した者で司法試験を通って法曹を志す者の中にかなりすぐれた人物がいるということを言っております。

 そういうことが教官の共通認識になっておりまして、そういうところで、我々は優秀な人物になっていただきたいと思うんですが、これが、先ほど申し上げたところで、実は、こちらからラブコールを送ってもなかなかこたえていただけないような状況も一方ではあるというようなことがございますので、そういう状況を踏まえながらも、先ほど申し上げましたとおり、できるだけ多様な人物を裁判官に採用していきたいというぐあいに思っております。

大林政府参考人 検事の採用につきましては、任官志望者が有する多様な職業経験についても、検事としての適性を判断する要素の一つとしてはこれまでも考慮しておりまして、今後とも有能で適性のある人材を検事として積極的に確保するため努力してまいりたい、こういうふうに考えております。

泉(房)委員 また今後とも採用が毎年続くわけですので、また来年も同じように、極端に三歳も若いということにつきましては、その合理的理由があるならともかく、私としては、とにかく早く受かった賢い方がいいということに偏っているように感じますので、年齢構成につきましてもよく配慮されて、来年度もまた平均値をいただきますので。別に、年齢が若いからいけないと単純に言っているんじゃないんです。ただ、極端に三歳も若いというのはやはり余りにも異常だと私は思いますので、その点厳しく指摘して、次の質問に入らせていただきます。

 次につきましては、資料の一枚目、二枚目にも、配らせていただいていますが、既になされている事業との関係であります。

 今回の制度が、これまでの制度と並ぶような制度だという位置づけだというふうに伺っておりますが、ただ、私からしますと、かなり違うのではないかと。特に裁判官につきましては、例えば民間企業は五名程度、あとは本当に行政機関や在外公館、検事はほとんどが役所なわけでありまして、それと在野の弁護士というものはやはりおのずから違うだろうと思います。

 私が質問したいのは、これまで聞いているところでは、裁判官につきましては、百人中五十人がもう既にこういう形で行っていると。残り五十人のうち十名程度を目安として弁護士経験をしてもらおうということであります。将来的には、裁判所といたしましては、ほぼ全員に経験を積ませようということでありますが、とすれば、残り五十名は弁護士経験を積む方向で検討していただきたい。

 また、それ以上に、こういった行政機関や在外公館や海外留学ももちろん否定はしませんが、それがあるからといって、ではもう多様な経験を積んだのか、一般国民の感覚に触れたのかというと、そうとも限らないと思いますので、こういった方につきましても、あわせて、弁護士経験を含めての多様な経験を積めるような配慮をすべきだと考えます。

 同様に、検察官につきましても、ほとんど行っているのは法務省や司法改革推進本部などでありまして、これで一般国民の感覚がわかる場所なのかといいますと、そうとも限らないと私は考えますので、この点。

 また、検察につきましては、人数がまだ出てきません。何人出す予定かにつきましても、裁判官は、百人のうち一割程度の、まあ二けたという数字を言っておるようでありますが、検察につきましては、今七、八十名毎年おるわけですから、少なくとも一割の七、八人程度はまず初年度から目安にすべきだと考えますが、この点あわせて、それぞれお答えください。

山崎最高裁判所長官代理者 今委員の方からお話がございました、一期百人のうちで半数程度、五十名まではちょっといかないだろうと思いますが、重複して経験している者がおるものですから実際の数としてはもう少し減るだろうと思っておりますが、いずれにしてもその程度でございまして、私どもは全員に何らかの外部の経験をさせたいということを考えているものですから、今回の弁護士職務経験制度にのっとって、できるだけ多数の判事補を経験させたいということを考えております。

 先ほど、二けたに乗る程度のということを申し上げましたが、あくまでもスタートの時点ということでございますので、これが円滑に運用されていけば、その人数は当然膨らんでいくだろうと思います。

 ただ、今あるプログラム、この方の充実ということも同時に図っていきたいと思うものでございますから、最終的にどういう数になるか、これはちょっと不確定な要素がございますものですから、現在確定的なことは申し上げにくいということでございますが、いずれにしましても、できるだけ多数経験できるように努力してまいりたいと思います。

樋渡政府参考人 これまでに実施してきております他職経験につきましては、委員御指摘の、また委員がお配りになられました資料の中に入っておりますが、その中の最後の方にも書いてございますが、さらに平成十四年四月からは、検事に市民感覚を学ばせるため、公益的活動を行う民間団体や民間企業に検事を一定期間派遣する外部派遣制度も導入しておりまして、現在のところ、勤務経験十五年程度の間に、在職者の約七割から八割程度がこれらの他職経験、この表にありますことすべて含めましての他職経験に従事している実情にございます。

 このような他職経験の活用につきましては、例えば、海外の検察運営の実情等を研究した上、その成果をその後の検事としての職務に生かしており、また、被害者支援センターに派遣された検察官は、改めて被害者対策の必要性を実感し、検事の職務に復帰した後、被害者の立場に一層配慮した捜査を実践していますほか、研修内容等を他の職員に伝えて好影響を与えるなどしているところでございます。

 それで、お尋ねの、今回の法案ができましてからの弁護士の実務につくことでございますが、今後は、この弁護士職務経験の状況等を踏まえながら、これらのさまざまな、制度の円滑な実施をするための工夫をすることが、課せられた重要な課題であるというふうに思っております。

 そして、どの程度の人数を弁護士経験させるのかということでございますが、これは、受け入れていただく弁護士事務所の方の御都合もございますでしょうし、日弁連と協議をしながら進めていきたいと考えておりますが、少なくとも数名ないし十名程度は行かせてやりたいなというふうに考えているところでございます。

泉(房)委員 残り時間も少なくなってまいりましたが、次は受け入れの問題であります。

 弁護士の受け入れ事務所につきましては日弁連の方で態勢を整えると思いますので、日弁連の努力に期待するとして、そこで、受け入れ態勢が整った場合であります。実際のところ、今伝え聞くところでは、大阪や東京の大きな、大都会の事務所が予定されている旨も伝わってきますが、私としては、何のために弁護士経験をするのかと。それはほんまに、一般の国民のいろいろな、雑多な方のいろいろな思いや痛みやそういったことを学ぶためにではなかろうかと。そのときに、いわゆる、その弁護士事務所に行っても、やたら大きな事務所で、かつ、している仕事も非常に、大企業のことのみをやっているような事務所に行って、果たして生身の心の痛みやそんなところに触れられるのだろうかという危惧を抱きます。

 もちろん両面要るんでしょうけれども、少なくとも、日弁連の方で多様な事務所が用意された場合、例えば、私などは田舎の弁護士でありまして、たった一人で弁護士をやっていて、土日もいろいろな人が訪ねてきてピンポン鳴らされて相談させられるというか、そういう立場です。そういう中でこそ感じる部分があるわけでありまして、そういった地方の事務所、また弁護士の数が一人二人の事務所であったとしても、そういった受け入れ態勢が整ったのであれば、派遣する方もきっちりとそういったことも配慮して偏りのないような派遣をしていくというような心構えがあるのかどうか、お聞きしたいと思います。

山崎最高裁判所長官代理者 判事補の関係で申し上げますと、この弁護士職務経験制度、これは、判事補が主体的、積極的に取り組まなければ意義がないといいますか、効果が上がらないところでございますので、基本的には、判事補の希望を入れて、その希望に沿ったような形で運用したいというぐあいに考えております。本法案におきましても、判事補の同意に基づいて行うということが決められておりますので、当然そういうことだろうと思っております。

 判事補の希望はどうかということを見ますと、これは実はさまざまでございまして、一つは、非常に専門的な法律事務所で専門的な分野について経験を積みたいという希望を述べる者もおりますし、一方は、その逆でございまして、一般的な、市民的な法律紛争にかかわりたい、こういう希望も申し述べておりますので、そういったさまざまな希望を受けとめていただけるだけのバラエティーに富んだ受け入れ事務所を用意していただけますと、そういった形で、判事補の希望に応じたところでこの経験制度を動かしていけば、バラエティーに富んだ形の経験ができ上がっていくんだろうというぐあいに思っておるところでございます。

樋渡政府参考人 検事をどの事務所で受け入れていただくかにつきましては、受け入れ先事務所がどの程度、どの地域にあるのか、また対象となる検事がどのような希望を持つか等によって決まってくるものと考えております。

 もっとも、本制度を円滑に運営するためには、日弁連に積極的に関与していただくことが不可欠でございまして、受け入れ先となる弁護士事務所の募集等を含め、今後、日弁連との間で協議をしていきたいと考えておるところでございます。

泉(房)委員 いろいろ聞きたいことはありますが、もう時間が迫っているようですので、最後に一点だけ。

 これまでも質問がありましたけれども、今回議論のありました、公務員の身分が残ったがゆえに報告義務、報告をするということ、それから懲戒権が二重に及ぶという問題があります。

 既に質問がなされておりますけれども、再度確認したいのは、弁護士という職業柄、やはり独立性の確保という問題が重要であります。特に日本の弁護士の場合、弁護士自治というものが確立しておりまして、この点が弁護士の人権擁護、そういった面において極めて重要な意味を有していると考えます。

 この点、今回の法案でも当然だと思いますが、こういった弁護士の職務の独立性、弁護士自治に配慮した運用、報告の問題、また懲戒の問題につきましてもそういった配慮がなされると思いますが、その点、最後、大臣の方から、そこの配慮につきまして御答弁をお願いいたします。

野沢国務大臣 身分が二つにありましても、やはり私は、この中で一番大事なのは今行全力ということでありまして、今ここで拝命しておりますお仕事について、やはり職務に忠実にやっていただく、これを原則にしながら、運用について適切な方法を考えていきたいと思います。

泉(房)委員 適切な運用を期待しつつ、私の質問を終わります。ありがとうございました。

柳本委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

 次回は、明三十一日水曜日午前十時五十分理事会、午前十一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時四十分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.