衆議院

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第9号 平成16年4月2日(金曜日)

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平成十六年四月二日(金曜日)

    午後二時五分開議

 出席委員

   委員長 柳本 卓治君

   理事 塩崎 恭久君 理事 下村 博文君

   理事 森岡 正宏君 理事 与謝野 馨君

   理事 漆原 良夫君

      小西  理君    左藤  章君

      佐藤  勉君    桜井 郁三君

      中野  清君    早川 忠孝君

      保利 耕輔君    松島みどり君

      水野 賢一君    森山 眞弓君

      保岡 興治君    柳澤 伯夫君

      山際大志郎君    上田  勇君

      斉藤 鉄夫君    富田 茂之君

      川上 義博君

    …………………………………

   法務大臣         野沢 太三君

   法務副大臣        実川 幸夫君

   法務大臣政務官      中野  清君

   政府参考人

   (司法制度改革推進本部事務局長)         山崎  潮君

   法務委員会専門員     横田 猛雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二日

 辞任         補欠選任

  富田 茂之君     斉藤 鉄夫君

同日

 辞任         補欠選任

  斉藤 鉄夫君     富田 茂之君

    ―――――――――――――

四月二日

 行政事件訴訟法の一部を改正する法律案(内閣提出第六六号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 公聴会開会承認要求に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 裁判員の参加する刑事裁判に関する法律案(内閣提出第六七号)

 刑事訴訟法等の一部を改正する法律案(内閣提出第六八号)


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     ――――◇―――――

柳本委員長 これより会議を開きます。

 開会に先立ちまして、民主党・無所属クラブの各委員に出席を要請いたしましたが、御出席が得られません。やむを得ず議事を進めます。

 内閣提出、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律案及び刑事訴訟法等の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。

 順次趣旨の説明を聴取いたします。野沢法務大臣。

    ―――――――――――――

 裁判員の参加する刑事裁判に関する法律案

 刑事訴訟法等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

野沢国務大臣 まず、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律案について、その趣旨を御説明いたします。

 国民の中から選任された裁判員が裁判官とともに刑事訴訟手続に関与することは、司法に対する国民の理解を増進させ、また、その信頼の向上に資するものと考えられます。そこで、この法律案は、刑事裁判に裁判員が参加する制度を導入するため、裁判員の参加する刑事裁判に関し、裁判所法及び刑事訴訟法の特則その他必要な事項を定めるものであります。

 以下、法律案の内容につきまして、その概要を御説明申し上げます。

 第一に、裁判員の参加する合議体で取り扱う事件を定めるとともに、当該合議体の構成は、原則として、裁判官の員数を三人、裁判員の員数を六人とすること、裁判所の行う事実の認定、法令の適用及び刑の量定は、当該合議体の構成員である裁判官及び裁判員の合議によることなど、合議体の構成並びに裁判官及び裁判員の権限等について所要の規定を置いております。

 第二に、裁判員は衆議院議員の選挙権を有する者の中から選任するものとするとともに、裁判員となることのできない事由、裁判員候補者名簿の調製、裁判員候補者に対する質問等の裁判員の選任の手続及び裁判員の解任の手続等について所要の規定を置いております。

 第三に、裁判員の参加する合議体で取り扱う事件については第一回の公判期日前に公判前整理手続に付さなければならないことなど、裁判員の参加する裁判の手続に関し所要の規定を置いております。

 第四に、裁判官と裁判員の合議による判断は、裁判官及び裁判員の双方の意見を含む合議体の員数の過半数の意見によることなど、裁判員の参加する刑事裁判における評議及び評決について所要の規定を置いております。

 第五に、労働者が裁判員の職務を行うために休暇を取得したこと等を理由として解雇その他不利益な取り扱いをしてはならないことを定めるほか、裁判員等を特定するに足りる情報の取り扱い及び裁判員等に対する接触の規制に関して裁判員等の保護のための所要の規定を置いております。

 このほか、所要の規定の整備を行うこととしております。

 次に、刑事訴訟法等の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。

 我が国においては、刑事司法がその役割を十全に果たし、国民の期待により一層こたえることができるようにするため、刑事裁判の充実及び迅速化を図ることなど、刑事司法の改革が求められております。この法律案は、このような状況にかんがみ、刑事裁判の充実及び迅速化を図るための方策を講ずるとともに、被疑者に対する国選弁護人の選任制度の導入等国選弁護人制度の整備及び検察審査会の議決に基づき公訴が提起される制度の導入を行うことを目的とするものであります。

 以下、法律案の内容につきまして、その概要を御説明申し上げます。

 第一に、刑事裁判の充実及び迅速化を図るための方策として、公判審理に先立ち、十分に争点及び証拠を整理するため、公判前整理手続等を創設するとともに、その手続の中で、検察官による証拠開示を拡充することとしております。あわせて、連日的開廷の確保、裁判所の訴訟指揮の実効性の確保、争いのない一定の事件について簡易迅速な審判を行う即決裁判手続の創設等についての所要の規定を置いております。

 第二に、国選弁護人制度の整備として、被疑者に対する国選弁護人の選任制度を導入するとともに、国選弁護人の選任要件及び選任手続、選任の効力、解任、費用の負担等についての所要の規定を置いております。

 第三に、公訴権行使に民意をより直截に反映させてその一層の適正を図るため、検察審査会の一定の議決に基づき公訴が提起される制度を導入することとし、当該議決の要件、その議決に基づく公訴の提起及びその維持等についての所要の規定を置いております。

 このほか、所要の規定の整備を行うこととしております。

 以上が、各法律案の趣旨であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。

柳本委員長 これにて両案の趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

柳本委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 ただいま議題となっております両案審査のため、来る六日火曜日、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

柳本委員長 起立総員。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

柳本委員長 次に、公聴会開会承認要求に関する件についてお諮りいたします。

 両案につきまして、議長に対し、公聴会開会の承認要求を行うこととし、公聴会は来る十二日月曜日に開会し、公述人の選定等は委員長に御一任願いたいと存じますが、これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

柳本委員長 起立総員。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

柳本委員長 次に、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として司法制度改革推進本部事務局長山崎潮君、法務省刑事局長樋渡利秋君、文部科学省大臣官房審議官金森越哉君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

柳本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

柳本委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局大野刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

柳本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

柳本委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。下村博文君。

下村委員 我が国の司法制度は、これまで戦後半世紀以上にわたって、おおむね良好にその機能を果たし、国民からも高い信頼を得てきているものと考えておりますが、同時に、国民の意識や価値観が多様化し社会が急速に変化する中では、司法もまた、より一層国民の感覚が反映され、迅速でわかりやすいものとなることが望まれております。

 また、小泉内閣のもとでの構造改革の進展に伴い、我が国の社会は、いわゆる事前規制・調整型の社会から事後チェック・救済型社会へ変わりつつあります。このような社会においては、ルールに基づいて公正に判断を下すべき司法の役割はこれまで以上に大きくなるものと思われます。

 これからの司法は、その意義や役割がより広く国民に理解され、その信頼を得て、国民の生活に結びついた形で機能するものでなければなりません。

 私は、自民党の司法制度調査会に設けられました裁判員制度小委員会の委員長代理、また超党派の議連の事務局長をさせていただいたということもございまして、今回のこの裁判員制度のあり方について大変な関心を持ってまいりました。そういう中で、今回質問をさせていただきたいというふうに思います。

 自民党の中においては、この検討会の結果の取りまとめにおいて、裁判員制度は、国民の司法制度への関与を拡充し、司法を、より迅速で、より国民の感覚が反映され、よりわかりやすいものとすることによって、司法に対する国民の理解を増進させ、その信頼を向上させることに役立つということであり、さらに、国民が主体的に司法の運営に参加することにより、国民の公共精神の涵養につながる、このようにまとめているわけでございます。

 先ほど申し上げましたように、この裁判員制度については、今の我が国において期待されている、国民により強固に支えられ、そして国民と結びついた司法を実現するための大きな、意義ある制度であると考えております。

 そこで、まず法務大臣にお伺いいたします。

 この裁判員制度導入の意義について、どのようにお考えでしょうか。

野沢国務大臣 ただいま委員が御指摘になりましたとおり、国民が裁判官とともに刑事裁判に関与することは、司法に対する国民の理解の増進とその信頼の向上に資するものであります。

 すなわち、裁判員制度の意義は、広く国民が裁判の過程に参加し、その感覚が裁判の内容に反映されることによりまして、司法に対する国民の理解や支持が深まり、司法がより強固な国民的基盤を得ることができるようになることにあると考えております。

 加えて、裁判員制度が導入されますと、職業や家庭を持つ国民の方々に裁判に参加していただくことができるようにするため、裁判が迅速に行われるようにすることとしております。また、裁判の手続や判決の内容を裁判員の方々にとってわかりやすいものとする必要がありますから、国民にとってもわかりやすい裁判が実現されることになります。

下村委員 我が国では、長く、刑事裁判はプロの裁判官がすることとされてきたわけでございますが、広く世界に目を向ければ、刑事裁判に国民が参加する制度は珍しくない、逆にむしろ多くの国では国民の司法参加の制度が採用されているようであります。これらの諸外国の制度は、我が国の国民参加の制度のあり方を考えるに当たっても十分参考にすべきであると考えます。

 政府においても、この法案の作成に当たって、こうした諸外国の制度についても研究されたことと思いますので、確認のために、司法制度改革推進本部事務局に伺います。

 諸外国には、裁判に国民が参加する制度として陪審制度や参審制度があると承知しておりますけれども、裁判員制度はこれらの制度とどのような点が異なるのか、お答えいただきたいと思います。

山崎政府参考人 諸外国における陪審制度や参審制度の具体的なあり方につきましては、それぞれの国によってさまざまでございますけれども、一般的な理解で申し上げたいというふうに思います。

 まず、陪審制度でございますけれども、これは基本的に、犯罪事実の認定に裁判官が加わらず、陪審員のみによってこれを行う制度であるということでございます。

 それから、参審制度でございますけれども、これは基本的に、裁判官と参審員が一つの合議体を形成して、ともに裁判を行う制度であるというふうにされているわけでございます。

 司法制度改革審議会の議論の過程では、裁判員制度は、諸外国の陪審制度や参審制度をも参考にしながら、それぞれの制度に対して指摘されている種々の問題点をよく吟味した上で、特定の国の制度にとらわれるということはなく我が国にふさわしい国民参加の形態を検討した結果、裁判員制度の導入が提言されたということであるというふうに承知をしておりまして、本法案における裁判員制度もこの提言を踏まえたものとなっております。

 具体的には、裁判員は裁判官とともに合議体を形成するということとされておりますので、先ほど述べた点に照らせば、参審制度と共通した点があるということになるわけでございますが、例えば、参審制度が採用されておりますドイツの制度とは、裁判員の権限や選任方法の点で異なっている、こういう状況でございます。

下村委員 我が国独自の制度として裁判員制度を検討したということでありますけれども、もちろん、それぞれの国の制度は、その国の歴史的あるいは文化的背景を踏まえたものであるはずですから、我が国において採用すべき制度のあり方を考えるに当たっては、我が国の実情を踏まえる必要がある、それは当然のことであると思います。

 そうした点から考えますと、最初にも触れましたように、まず、我が国ではこれまで、裁判あるいは司法という存在に対して国民はある程度高い信頼を寄せてきたのではないかというふうに私は思っております。つまり、基本的にはプロの裁判官の判断を信用してきたと大まかのところでは言えるのではないかと思うわけでありますけれども、それにもかかわらず、今回、これまでの裁判だけでなく裁判員制度を導入する、その理由はどういう理由であるのか、大臣に対してお伺いしたいと思います。

野沢国務大臣 我が国の現在の司法制度は、基本的には国民の信頼を得ているものと認識しておりますが、司法の果たすべき役割がより大きくなっていく中で、司法がその機能をよりよく果たしていくためには、国民的基盤をより強固にすることが必要であると考えております。

 裁判員制度が導入され、国民の感覚が裁判の内容に反映されることにより、司法に対する国民の理解や支持がより一層深まり、司法はより強固な国民的基盤を得るようになるものと考えております。

下村委員 この裁判員制度は、国民に司法に参加してもらうという制度なわけです。つまり、国民に裁判の場で一定の役割を担ってもらおうという制度なわけでありますが、裁判員にどのような役割を担ってもらうということをこの裁判員制度で期待しているのか、法務大臣にお伺いいたします。

野沢国務大臣 裁判員は、裁判官とともに評議し、有罪無罪の決定及び刑の量定につき、裁判官と同等の権限を持って判決内容の決定に関与していただくこととしております。そして、裁判員制度においては、裁判官と裁判員が相互のコミュニケーションを通じ、それぞれの認識、知識経験を共有することにより、一般の国民の感覚が有罪無罪の判断や刑の量定により反映されるようになることが期待されるところであります。

 そのような意味で、裁判員には、裁判官とともに司法の一翼を担っていただくことになるものと考えております。

下村委員 裁判員には、一般の国民の感覚を裁判の内容により反映するという役割が期待されていることだというふうに思われますけれども、そのとおりだと思います。

 ただ、私は、裁判員が期待される役割を十分に果たすためには、仮にも裁判員制度あるいは裁判員がお飾りになってしまうということであってはならないというふうに思うわけでありまして、まさに、プロの裁判官とともに、協働、ともに仕事をするということが必要であり、またそれが可能な制度でなければならないというふうに考えるわけでありまして、この点は強調しておきたいというふうに思います。

 また、この裁判員制度、裁判内容に一般の国民の感覚がより反映されるようになる、そういう意義があることは先ほど答弁をいただいているところでありますけれども、同時に、我が自民党の取りまとめの中で触れられております、先ほども申し上げましたが、国民の公共精神の涵養につながる、こういうことも大変重要ではないかというふうに思います。裁判員制度は刑事裁判について導入されることとされておりますので、この点は、犯罪や治安の問題を国民がより身近な問題として考えることにつながるのではないかと思うわけであります。

 そこで、法務大臣に伺いたいと思いますが、裁判員制度の導入、これには、国民が、社会秩序の維持や治安の問題も、人任せではなくて自分たちの問題として考える、そういう意義もあるように思われるわけでありますが、この点についてはいかがでございましょうか。

野沢国務大臣 裁判員制度の導入により、一般の国民に刑事裁判の過程に直接参加していただくことになります。その結果、委員ただいま御指摘のとおり、社会秩序や治安、あるいは犯罪の被害や人権といった問題について、それぞれの国民にもかかわりのある問題としてお考えいただく契機にもなるものと考えております。その意味においても、意義のある制度であると考えております。

下村委員 裁判員制度の意義を確認するというのはこの程度といたしまして、次に、裁判員制度を実際に導入するに当たって特に考えておかなければならないと思われる幾つかの点について、確認をしておきたいと思います。

 まず、憲法との関係でありますけれども、憲法には、司法への国民参加に関する規定は設けられておりません。こういうことから、従来、裁判官でない者が裁判を行う制度は憲法に違反するのではないか、こういう議論がございます。

 私は、この法案で定められているような裁判員制度、これは憲法に違反するものではないというふうに考えているわけでございますけれども、大変重要な問題でございますので、この点について確認をしておきたいというふうに思います。

山崎政府参考人 憲法では、司法権に関する七十六条以下の規定において、裁判官の職権の独立、あるいはその身分保障を定めておりますけれども、これとともに、三十二条の規定において、裁判所において裁判を受ける権利、それから三十七条で、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利、これを規定しているわけでございます。これらの規定により、憲法は、独立して職権を行使する公平な裁判所によって法による裁判が行われること、これを要請しているものと解されるわけでございます。

 本法案における裁判員制度は、このような裁判を確保することができる制度でございまして、この憲法の趣旨に沿ったものであるというふうに理解をしております。

 もう少し具体的な理由を申し上げます。

 まず、本法案においては、法による公平な裁判を行うことができる裁判員を確保するため、その資格に関する要件や職権行使の独立に関する規定等、さまざまな手当てをしているわけでございます。また、法による公正な裁判が保障されていると言えるためには、適正手続のもとで証拠に基づく事実認定が行われ、その認定された事実に法が適正に解釈、適用される必要がありますが、裁判官と裁判員が十分に評議を行うことで、双方の有する知識経験が合議体全体に共有されるということにするとともに、その過程を通じて適正な結論に到達することが予定されているわけでございます。

 また、法令の解釈については、裁判官のみが判断の権限を有しておりまして、裁判員はその判断に従うこととされているという点がございます。これに加えまして、裁判官と裁判員が対等な権限を有する事項についての判断については、その双方の意見を含む合議体の過半数の意見によることとされているということなどによって、本法案における裁判員制度は、憲法の要請にこたえられる裁判を確保することが可能な制度になっていると理解をしているわけでございます。

下村委員 裁判員制度は、法律専門家ではない一般の国民が参加する制度であるわけですから、当然、裁判員は法律の知識や裁判の経験がないわけです。特に、この法案では、裁判官それから弁護士等、法律専門家は裁判員にはなれない、そういう制度になっているわけですから、制度の本質として、法律専門家でない人の参加が予定されている制度であるということなわけです。

 他方、我が国の刑事裁判はこれまでプロの裁判官によって担われてきた、これに対する期待も高い、こういうことで、素人が裁判を行う、果たしてそれで公正な裁判が維持できるのか、こういう漠然とした不安を感じるということも、ある意味ではやむを得ないというふうにも一方で思うわけであります。

 ですから、この制度を導入するに当たっては、こうした不安をきちっと解消する、そういうことが求められるというふうに思うわけでありますけれども、この法律専門家としての訓練を受けていない裁判員が有罪無罪やあるいは量刑の判断を行ったとしても、真実を明らかにし、有罪である場合には犯した罪に見合った刑を科するという刑事裁判の基本的役割をきちんと果たす、そういう点で問題はないのかどうか、大臣に伺いたいと思います。

野沢国務大臣 裁判員は、有罪無罪の決定及び刑の量定については、裁判官と同等の権限を持って判決内容の決定に関与いたします。こうした判断の前提として必要な法的な知識や刑事裁判の手続については、公判審理開始前、公判審理の間、あるいは最終の評議等の場をとらえまして、裁判官から丁寧な説明がなされるものと考えております。評議につきましては、法案の第六十六条第五項に定めておるところでございます。

 そして、裁判員制度は、裁判官と裁判員がともに評議し、相互のコミュニケーションを通じてそれぞれの知識経験を共有し、適正な結論に到達することが期待されます。このように、裁判官と裁判員が協働することにより、裁判員制度のもとにおいても刑事裁判の基本的な役割は適切に果たされるものと考えております。

下村委員 法律の専門家でない一般の国民が有罪無罪の決定を行う、そういう必要な知識、それは裁判官がきちっと説明をするということでありますけれども、このことは、裁判員制度を実質的に機能させていく上で大変重要な点であるというふうにも思うわけであります。つまり、裁判員が有罪無罪や量刑についてみずから判断をするためには、その前提条件として、裁判で何が行われているのかをきちっと理解することができる、そういうことでなければならないわけです。

 そこで、もう少し具体的な内容について司法制度改革推進本部事務局に伺いたいと思いますが、法律の専門家でない一般の国民、しかも、裁判によって、裁判員が新たに選ばれるわけであります。裁判のことがわかるようにする、そのためにどんな手だてが考えられるのか、お答えをいただきたいと思います。

山崎政府参考人 法律の専門家でない一般の国民が裁判員となり、専門家である裁判官と協働して裁判内容の決定に主体的、実質的に関与するためには、裁判員にわかりやすい裁判とすること、これが大変重要であるということでございます。

 まず、わかりやすい裁判とするために、以下の諸点を初めとする措置をとることとしております。

 まず一つは、公判前整理手続の創設。それから、裁判員制度の対象事件については公判前整理手続を必要的なものとすること。それから、公判期日は、できる限り、連日、継続して開廷するとの原則を法律に明記するというような手続を置いているわけでございます。

 そして、専門的な知識を要する法律解釈や訴訟手続に関する問題につきましては、裁判官が判断するということにしておるわけでございます。それからまた、事実認定、量刑等の判断の前提として必要な法的な知識や刑事裁判の手続につきましては、公判審理開始前、公判審理の間、あるいは最終的な評議等の場をとらえまして、裁判官から裁判員に丁寧な説明がされるものと考えているわけでございます。

 この法案で、裁判官、検察官、弁護士は、審理を迅速でわかりやすいものとすることに努めなければならない、こういう規定を明記しております。これは第五十一条でございます。具体的には、例えば、公判に携わる法律家においては、難解な法律用語を裁判員にわかりやすい言葉で説明をいたしまして、証拠の説明に当たっては、図面を用いるなどして裁判員が理解しやすいように工夫する、こういうような取り組みが求められているということでございます。

下村委員 実は私は、この問題は法律の規定や制度のあり方だけの問題ではないというふうに考えております。

 もちろん今御答弁をいただいた点はいずれも重要な点でありまして、こうした手当てはぜひとも必要だと思いますけれども、これと並んで重要なのは、こうした制度を運用していく法律専門家たち、裁判官、検察官、弁護士の対応だと思うわけであります。

 今、難解な法律用語というのが答弁の中にもありましたが、今までのような法律専門家の用語だけでは、一般の方々になかなか理解をしていただくのは難しい。そういう意味では、こういう方々が裁判員制度の趣旨をしっかりと理解して、そして裁判員がその権限を十二分に行使できるような環境を整えるということは、これは裁判官を初めとする法律専門家の義務でありまして、今後、法律専門家の方々には、そのような、今までとは違う、一つ一つの裁判が裁判員そして同時に国民の方々に理解ができる、そのための裁判をどうするかという意識改革も含めて求められているのではないかということについては、指摘をしておきたいというふうに思います。

 また、関連してもう一つ伺いたいと思います。

 裁判員には法律的な知識がない、そういう点とは別に、国民の司法参加に対して懐疑的な立場の人たちからは、冷静な裁判が行われなくなるのではないか、こういう懸念が述べられているわけであります。こうした懸念に対しても、きちっとこたえる必要があるわけでございます。

 法律や裁判の専門家ではない一般の国民が裁判に参加することについては、感情や、あるいはそのときの社会の雰囲気、こういうことに流された裁判が行われるのではないか、このように不安を抱く向きがあると思いますけれども、そういうおそれは実際ないのかどうか、お伺いしたいと思います。

山崎政府参考人 裁判は本当に、言うまでもなく、法に従って公平に行われなければならないということでございますけれども、ただいま委員が御指摘のとおり、裁判が感情や社会の雰囲気に流されるというようなことがあってはならないということは当然でございます。

 この点に関しましては、裁判員制度のもとでは、法に従った公平な裁判が行われることを担保するために、事件関係者等を裁判員から除外する制度、こういうものを設けております。

 それから、不公平な裁判をするおそれを示して行う、理由を示す不選任請求というものも設けております。また、理由を示さないで行う不選任請求の制度、こういうものを設けるなどしておりまして、冷静に判断することができない者は裁判員となることができないということになっているわけでございます。

 それとまた、裁判官と裁判員とが十分に評議を行うことで、双方の有する知識経験が合議体全体に共有されるということになるとともに、その過程を通じて適正な結論に到達をするということが予定されているわけでございます。

 また、法令の解釈については裁判官のみが判断の権限を有しまして、裁判員はその判断に従うということにされているわけでございます。

 また、裁判官と裁判員が対等な権限を有する事項についての判断は、その双方の意見を含む合議体の過半数の意見によってなされるということにされているわけでございます。

 こういうような手当てがされておりまして、御指摘のようなおそれはないというふうに考えているところでございます。

下村委員 今の内容についても、より具体的にもお聞きしたいと思うんですが、今回の司法制度改革の中で、この裁判員制度については大変に国民あるいは世間が注目をしている法案でもございますし、また、それだけの時間もかかることもあるかというふうに思いますが、きょうは最初ですので概括的なことについて全般的にちょっと押さえていきたいと思っておりますので、ポイントポイントで質問をさせていただきたいと思います。

 裁判員制度の対象事件についてお聞きしたいと思いますが、国民がどのような事件の裁判に参加するか、そのことについて、この裁判員制度の基本的なあり方にかかわる重要な問題でございます。また、参加される国民にとっても大変に関心の高いことだと思いますので、法務大臣に対してお伺いしたいと思います。

 この法案におきまして、裁判員制度の対象事件、これは「死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる罪に係る事件」、それから「裁判所法第二十六条第二項第二号に掲げる事件」すなわち法律上合議体で取り扱わなければならない事件「であって、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に係るもの」、こういうふうに規定をされているわけでございますけれども、これらの事件を裁判員制度の対象事件にしたその理由について伺いたいと思います。

野沢国務大臣 まず、裁判員制度の円滑な導入のためには対象事件を限定する必要があると考えております。そして、その範囲につきましては、国民の関心が高く、社会的にも影響の大きい重大事件とすることが相当であると考えたものであります。

 そのような観点から、まず、最も重い法定刑が定められている罪として、死刑または無期の懲役もしくは禁錮に当たる罪の事件を対象とするとともに、特に国民の関心が高いものとして、法定合議事件であって故意の犯罪行為により被害者を死亡させた事件を対象としたものであります。

下村委員 それでは、裁判員制度の対象事件につきまして、より具体的なことを司法制度改革推進本部事務局に伺いたいと思いますが、裁判員制度の対象事件の主な罪名、どのようなものがあるのか、あわせて裁判員制度の対象事件の件数、一年間でどれぐらいの数になるというふうに予想できるのか、伺いたいと思います。

山崎政府参考人 まず、対象事件の主な罪名でございます。

 一つ目が、死刑または無期の懲役もしくは禁錮に当たるものでございますけれども、典型的なものは殺人あるいは強盗殺人、強盗致死傷、それから現住建造物等放火とか、こういうものが代表的な例でございます。

 それから、二番目の、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に当たるものという典型的なものは、傷害致死あるいは危険運転致死、こういうものでございます。

 対象事件の数でございますけれども、平成十四年の実績といたしまして、二千八百十八件ということでございます。このうち、法定刑に死刑または無期の懲役もしくは禁錮を含む事件、これが二千五百三件、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた事件が八百九十二件でございます。これを足しまして、重複している部分を除きますと二千八百十八件、こういうふうになるわけでございます。

下村委員 二千八百十八件ということでありますけれども、このような罪状については、一般の国民の目から見ますと、かなり、暴力団とかあるいは組織犯罪にかかわった事件に該当するのではないか、そういう事件の裁判員になるということについては相当な不安感があるのではないかというふうに思うわけでありますけれども、国民が裁判員となることに不安を抱くような場合、今回のこの法案でどのような対策、手当てを講じておられるのか、お聞きしたいと思います。

山崎政府参考人 ただいま御指摘の点については何点か手当てをしているわけでございます。

 まず、全体的な考え方でございますけれども、裁判員は、裁判に関与することを職業とする裁判官とは異なりまして、無作為に選ばれた一般の国民であるということでございます。また、裁判員となることをみずから希望しない場合であっても、法律上の義務としてその職務を行わなければならないということにされているわけでございますので、裁判員の保護には十分に意を用いなければならないということでございます。

 具体的な手当てでございますけれども、裁判員の保護のための措置といたしまして、まず七十二条におきまして、裁判員それから補充裁判員、裁判員候補者またはその予定者の氏名、住所等、その個人を特定する情報を公にしてはならないというふうにしているわけでございます。

 また、次の七十三条では、裁判員または補充裁判員に対する接触を禁ずるということにしております。裁判員等の生活の平穏を保護するということにしているわけでございます。

 さらに、裁判員に対する不当な働きかけを防ぐために、七十七条では、裁判員に対する請託罪というのを設けております。

 また、七十八条では、裁判員に対する威迫罪、これを設けているわけでございます。

 また、八十条では、裁判員の氏名等漏示罪を設け、裁判の当事者または当事者であった者が、正当な理由なく、裁判員候補の氏名など、裁判員選任の過程で知った個人情報などを漏らす行為を禁止しているわけでございます。

 それから、これ以外でございますけれども、裁判員またその親族等に対する加害行為がなされるおそれがあるような事件、こういう事件につきましては、裁判員の関与が非常に困難になるというふうに認められるわけでございますので、例外的な措置といたしまして、裁判員制度の対象事件から除外をいたしまして、裁判官のみの合議体で審理を行うということができるようにしているということでございます。

下村委員 次に、評決及び評議の問題について伺いたいと思います。

 本法案の第六十七条によれば、裁判員が権限を持つ有罪無罪の判断や量刑については、評決は裁判官と裁判員の双方の意見を含む合議体の員数の過半数の意見による、そのようにされているわけでございます。

 この評決の要件については、過半数ではなくて、全員一致あるいは三分の二以上の特別な多数決によるべきである、こういうような提案をしているところも、あるいはそういう意見も、この裁判員制度関係のいろいろな提案、法案の中にもいろいろございます。

 この法案について、合議体の員数の過半数を基本とすること、そのようにした理由について伺いたいと思います。

山崎政府参考人 私も、この法案を作成するに至る過程でさまざまな御意見があったということは承知をしております。ただ、私どもは、最終的に現行法との整合性、これを考えまして過半数というふうにしたわけでございます。

 現行の裁判所法は、裁判は過半数の意見によることとしているわけでございまして、裁判員が評決に加わる場合のみこれと異なる評決要件を定めるという合理的な理由はないというふうに考えたわけでございまして、そういうことから、原則として過半数の意見によることとしたものでございます。

下村委員 確かに、現在の裁判が過半数ということですから、この裁判員制度の導入による裁判だけ基準を変えるということについては合理的ではないというふうに私も思います。

 さらに伺いたいと思いますけれども、この評決要件について、これは単に過半数であるということだけではなくて、その意見が裁判官と裁判員の双方の意見を含むものである、つまり、裁判員だけの過半数であってはならないということでありますけれども、双方の意見を含む過半数、そういうふうにした理由について伺いたいと思います。

山崎政府参考人 その理由は二つございまして、まず一つは、裁判官と裁判員とが責任を分担しながら協働して裁判内容を決定するということでございます。したがいまして、双方の意見が含まれているということが大変重要な要素になるわけでございまして、こういう点をまず考慮したということでございます。

 それからもう一つは、先ほど憲法との関係でお話を申し上げましたけれども、法による公平な裁判を受ける権利を保障しているその憲法の趣旨、この点も考えて、このように定めたということでございます。

下村委員 裁判官が三人、裁判員が六人というのが今回の裁判員制度、提案でございますが、まさにこの点におきまして、この裁判員制度が裁判官と裁判員が協働する制度であるという理念を体現した規定ということであるかというふうに思います。

 評決の要件については今伺ったとおりでありますけれども、それでもどうしても意見が分かれる場合、評決の要件に従って結論を出すほかないとは思いますけれども、その前提条件として、まずもって十分に評議を尽くす、そしてその評議においては裁判員も十分に意見を述べることができるようにするということが不可欠であると思うわけであります。

 この評議においては、裁判員が十分に意見を述べることができるような配慮が必要だというふうに思うわけであります。裁判官が三人いますと、知識としてはもう絶対的な差があるわけでありますから、どうしても、数は少なくても裁判官が主導によって評議を行うことによって、裁判員が遠慮してしまう、あるいは知識がないためにほとんど発言をしなくなるということであっては、この裁判員制度を導入する趣旨からも外れてくるわけでございまして、このようなことにおける配慮についてはどう対応をお考えか、お聞きしたいと思います。

山崎政府参考人 ただいま御指摘のとおり、一般の国民の感覚を裁判内容に反映させるという裁判員制度の趣旨からいたしまして、評議においては、法律の専門家である裁判官と一般の国民から選ばれた裁判員とが十分に意見を交換しまして、評議を尽くすということが大変重要なポイントになるわけでございます。

 このことを確実に行うため、この法案では、あえて明文の規定を置いているわけでございまして、六十六条の五項という規定がございます。ここには、「裁判長は、第一項の評議において、裁判員に対して必要な法令に関する説明を丁寧に行うとともに、評議を裁判員に分かりやすいものとなるように整理し、裁判員が発言する機会を十分に設けるなど、裁判員がその職責を十分に果たすことができるように配慮しなければならない。」と規定しているわけでございまして、裁判員が十分に意見を述べて、その職責を果たすことができるように配慮する義務を裁判長に課しているということでございます。

下村委員 ぜひ、そのような適切な運営が裁判長のもとで行われるということが担保されるようにお願いしたいと思います。

 次に、この裁判員制度の導入の中で、関心を持っておられる方々から必ず質問されることとして、守秘義務がございます。これについては、マスコミも、守秘義務ということをとらえて裁判員制度に対する懸念、危惧を表明している、そういうところが多いわけでございまして、この点について確認をしておきたいと思います。

 裁判員の守秘義務に関しては、裁判員として知ったことは一生何も話してはいけない、このように伝えられてしまっているような、そういう感じがあるわけでありますが、実際この法案を読む限りでは、そのような理解ではない、それは誤りではないかと思うわけでありますけれども、しかし、改めてこの守秘義務の範囲、これについてお伺いしたいと思います。

    〔委員長退席、森岡委員長代理着席〕

山崎政府参考人 ただいま御指摘のとおり、裁判員として知ったことであっても、そのすべてについて一切話すことができない、こういうことではございません。

 裁判員の守秘義務に関しましては、この法案の九条二項に規定を設けているわけでございますけれども、これによれば、「裁判員は、」「評議の秘密その他の職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。」というふうにされているわけでございます。

 「職務上知り得た秘密」にはさまざまなものが考えられますが、特に裁判員の場合には、その職務の性質上、審理の過程で知った他人のプライバシーにかかわる秘密が典型的に予想されるわけでございます。例えば、証拠物として取り調べた日記に記載された内容であって、朗読された部分以外のページに作成者のプライバシーにかかわる事項が記載されているような場合が考えられるわけでございます。

 また、この法案におきます評議の秘密でございますけれども、七十条一項に規定されておりますけれども、「構成裁判官及び裁判員が行う評議並びに構成裁判官のみが行う評議であって裁判員の傍聴が許されたものの経過並びにそれぞれの裁判官及び裁判員の意見並びにその多少の数」ということにされているわけでございまして、これがその秘密の事項でありまして、これ以外は秘密ではない、こういうことになるわけです。

下村委員 これはいろいろな方から危惧されている点でございますので、もう一度確認ということでお聞きしたいと思うんですが、中には、この守秘義務をそもそも課す必要がないのではないか、あるいは守秘義務を置いても、例えば十年程度で期限を設けたらどうかというような意見がございます。

 そういう意味で、改めて、裁判員に守秘義務を課すその趣旨について、お答えをいただきたいと思います。

山崎政府参考人 裁判員に守秘義務を課すということは、他人のプライバシーを保護するということと、それから裁判の公正さや裁判への信頼を確保する、それから評議における自由な意見表明を保障する、この三つの要素が含まれておるわけでございます。

 このうち、評議における自由な発言を保障することにつきましては、裁判員が後に批判されることを恐れたりしてみずからの意見を開陳することを差し控えることがないようにして、自由濶達にさまざまな意見交換がされる、充実した評議が行われるようにしようとするものでございます。このことは、裁判において適正な結論が得られるようにする上で非常に重要な意味があるものでございます。

 また、評議において述べたことが公表されず、事後的に追及、報復されるようなおそれをなくすという点で、裁判員の負担を軽減するという意味もあるわけでございます。

下村委員 私も、今答弁がありましたように、裁判員の自由な意見を保障し、裁判の公正さを確保したり、また関係者のプライバシーを保護する、そういうことにおいては必要だと思います。裁判員が一定の範囲で守秘義務を負うことは、そういう意味では当然のことでもあるというふうに思うわけであります。

 また、守秘義務には、評議においてどのような意見を述べたかを後になって批判されたりしないようにするということで裁判員の自由な意見の表明を保障するという点で、裁判員のためにも意味があるというふうには考えるわけでありますが、ただ、国民にとって義務を課すということは、これは問題でありますので、その義務の範囲を明確にするということは不可欠なことだというふうに思うわけであります。

 逆に、具体的にどのような事項が守秘義務の範囲外になるのか。この範囲外というポイントから御説明をしていただきたいと思います。

山崎政府参考人 「職務上知り得た秘密」に該当しない事項は、守秘義務の範囲外となるということでございます。

 具体的にちょっと申し上げれば、公開の法廷でのやりとり、あるいは判決の内容につきましては、守秘義務の範囲に含まれていないということでございます。したがいまして、これらについて他人に話したといたしましても、守秘義務違反には当たらないというふうに考えているわけでございます。

 また、秘密に及ばない範囲で裁判員の職務についての感想等を述べることも許されるというふうに考えております。

 例えば、法廷の点でいえば、公判廷での当事者の訴訟行為、これが非常にわかりにくかったとか長かったとか、こういうような感想があるわけでございます。それから、裁判員となったことの感想、こういうものもあるわけでございまして、いやあ疲れたとか、非常に難しかったとか、そういうようなことがあります。それからまた、司法制度に対する意見も当然あるわけでございまして、こういう点を改善したらいいんじゃないかとか、そういう御指摘もあろうかと思います。

 こういうものにつきましては守秘義務違反にはならないということでございます。

下村委員 特にこれがポイントだと思うのは、この裁判員制度が導入されまして、裁判員を経験された方々に対してマスコミ等が取材をするということがこれから非常に多くなるというふうに思います。また、マスコミに、この裁判員制度についてメディアから国民に知ってもらうという意味では効果があるわけでありますし、PRもしていただきたいと思うわけであります。

 一方で、守秘義務ということで、どこまで話していいのか、あるいは話したらまずいのかということについては非常にデリケートでございまして、法律の条文の書き方としては、法案にありますように、「評議の秘密その他の職務上知り得た秘密」こういうふうに規定しているわけでございまして、なかなか、条文に書くときにはこういうふうにしか書けないのかなとも思うわけでありますけれども、しかし、国民一般に新しい義務をかけるという問題でありますから、やはり可能な限り国民の皆さんにわかりやすいようにするということが重要ではないかと思います。

 法務大臣にこの点についてお伺いしたいわけでありますけれども、この守秘義務の範囲について、どのようなことは話してはいけなくて、どの範囲であれば問題がないのかということを国民に対してわかりやすく説明するということが必要ではないかというふうに思いますので、改めてこれについて大臣から御答弁をいただきたいと思います。

野沢国務大臣 法律上は守秘義務の範囲は明確に規定されていると考えておりますが、ただ、委員御指摘のとおり、裁判員として参加する国民の負担を軽減し、その不安を取り除くためには、どのようなことは話してはいけないか、あるいはどの範囲であれば問題がないのかということをきちんと具体的に理解してもらうようにすることが極めて重要であると思われます。

 その具体的な方法については政府としても今後検討してまいりたいと思いますが、例えば、国民に対するパンフレットにおいて、守秘義務に反する行為とそうでない行為をわかりやすく説明するようなことが考えられるのではないかと思っておりまして、今後の準備期間の中で十分な手当てを考えていきたいと思っております。

下村委員 守秘義務に関しては、この法案では単に義務が定められているだけではなくて、その違反、つまり秘密を漏らした場合には刑罰が科されるということになっておりまして、刑罰が科されるということで、この裁判員制度導入の中でこれが大きな不安感、あるいは疑問点ということで、いろんなメディア等でも取り上げられているわけでございます。

 確認のために司法制度改革推進本部事務局に伺いたいと思いますけれども、諸外国には陪審員、参審員、この守秘義務違反に対して罰則が科せられている例があるのかどうか、お伺いしたいと思います。

山崎政府参考人 罰則を設けている方から申し上げますけれども、イギリス、フランス、イタリアでは、評議内容を含め秘密を漏らす行為に対して、身体を拘束する自由刑、例えば拘禁刑、懲役刑ですね、こういうようなものを含みます刑罰を定めた罰則規定を設けているわけでございます。

 それから、アメリカでございますけれども、公判終了後について一般的な規制はないと言われているわけでございますが、一部の州で、報酬を受けての取材等を処罰する規定があるというふうに承知をしているところでございます。

下村委員 この守秘義務ということについて、これは守るべき重要な利益ということであるわけですから、それを損なう行為があったとして、それに対してペナルティー、罰則を設けていないということでは守秘義務という意味がないわけですから、ある程度の罰則を設けるということは法律上は求められることであるというふうに思うわけでありますけれども、しかし、この点について、この法案に対する危惧といいますか、批判というのが一番あるのではないかと思うわけであります。

 特に、この法定刑に関して、法案では「一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金」と定められておりまして、裁判員に対して特に懲役刑を科す、これは重過ぎるのではないか、こういう批判がありますので、この点について、懲役を科すということに対する考えをお聞きしておきたいと思います。

山崎政府参考人 この法案では、法定刑を「一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金」と定めているわけでございます。

 なぜこうしたかということでございますけれども、守秘義務違反の事案の中には、多額の報酬を得た上で重大なプライバシー侵害という結果を生じさせるような非常に悪質なもの、これも想定されることでございますし、現にもう起こっていることがあるわけでございまして、個々の事案の犯情の程度に応じて適切な処罰が可能となるように、罰金刑だけではなくて懲役刑も選択できるようにするのが適当であるというふうに考えたわけでございます。

下村委員 また、この裁判員の守秘義務に関し、裁判員が自分の意見を述べることまで禁止する必要はない、こういう意見もあるわけでございまして、これは一番デリケートなことでございますので、この点についてはどうかということをちょっと確認のためにお伺いします。

山崎政府参考人 この点は二つの場面があろうかと思います。

 まず、裁判係属中ということと、終わった後ということになろうかと思いますけれども、係属中の点でいえば、裁判員が事件の審理中に自己の意見を公表するというような行為、これは進行中の裁判の公正さに対する信頼を著しく損なうという行為になるわけでございますので、これを禁止する必要は非常に高いということになります。

 それから、裁判が終わった後の、裁判員であった者がしゃべる場合ということでございますけれども、有罪となった事件について、自分は本当は無罪だったと思っていたとか、あるいは自分は評議で無罪を主張したと述べたり、逆に、無罪が確定した事件について自分は今でも有罪だと思っているというようなことを言う行為も、既になされた裁判に対する信頼を著しく損ないまして、将来を含めた裁判一般に対する信頼をも傷つける行為だと思われるわけでございます。そこで、このような行為も禁止をするという必要があるわけでございます。

 したがいまして、七十九条に規定する範囲でこれを述べることを禁止するということにつきましては、合理的な理由があるというふうに考えているところでございます。

下村委員 このように説明を聞けば、それぞれ理由があるということは理解できるわけでありますけれども、最初にも申し上げましたように、この問題については、守秘義務があってそして罰則規定があるということで、多くの国民が、非常に大変だ、こういう印象が先行していつつあるのではないかと思うわけでございまして、ぜひ政府の方は、この守秘義務の必要性それからその範囲等について、もっと積極的に説明して国民の皆さんに理解を得る、そういうことを周知徹底する必要があるのではないかというふうに思います。

 また後ほど質問の中で指摘させていただくつもりですけれども、裁判員制度の導入に当たっては、国民の負担をできる限り軽減するということは大変重要なことであるというふうに思うわけであります。

 裁判員制度に関する議論では、国民が参加しやすい制度にする必要性や国民の負担を軽くする必要性、それが強調されているというふうにも一方で思うわけでありまして、私は、国民の負担を軽減するということ、そういうふうに考えることと同時に、裁判員も裁判官と同様に人を裁くという大変重要な立場に立つということでありますから、本来、きちんとした責任感を持って職務を行ってもらわなければならない、こういうこともよく理解をしてもらう必要があるのではないかと思うわけであります。

 そのような点も含めまして、制度のありのままの内容をきちっと国民にお伝えして、そして理解して、そして、司法制度も含めて、この国は自分たちがつくって、そして自分たちで一緒によりよくしていくんだという、まさに民主主義としての国民の意識の涵養を同時にしてもらうということもしていかなければならないと思うわけであります。

 さて、国民の理解という点で、守秘義務の問題だけではなくて、そのほかの点でもさらに政府が努力をしてもらう必要があると思います。

 それについては法務大臣にお聞きしたいと思いますが、そもそもこの裁判員制度、制度そのものについてでありますけれども、各種世論調査の結果を見ますと、国民の多くは裁判に国民の感覚が反映されることについて、これは大体歓迎をしていると思うんですね。しかし、自分がいざ裁判員となる、このことについては不安やちゅうちょを感じている、こういう方の方が実際は多いというのがデータとしても出ているわけでございます。こういう状況において裁判員制度の導入を行うということは時期尚早である、こういう意見もあるわけでございまして、政府は裁判員制度に対する国民の理解の現状についてどのように考えられているか、お伺いしたいと思います。

    〔森岡委員長代理退席、委員長着席〕

野沢国務大臣 裁判員制度につきましては、これまでも広報を行いまして、近時、報道等で大きく取り上げていただいていることでありますが、国民の関心も次第に高まってきているように思われます。

 しかし残念ながら、御指摘のとおり、現段階では裁判員制度に対する国民の御理解はまだ十分とは言えないと考えておりますので、今後ともにさまざまな機会を通じて裁判員制度の意義やその具体的内容についての理解と関心を深めていただくように努めてまいりたいと考えております。

下村委員 現段階で、裁判員制度が導入されたら自分もぜひ裁判員になりたい、こういう方はいろいろな調査でも大変少ないわけでございまして、これがいざ施行されるときには多くの方々に、この裁判員にぜひなりたいという方々がふえてもらうようなことをしてもらう必要があるわけでありますが、今後政府はどのようなことを行っていくつもりなのか、お聞かせ願いたいと思います。

山崎政府参考人 この裁判員の制度がその役割を十分に果たすためには、国民の協力、これが不可欠であるということでございます。裁判員制度の意義やその具体的内容についての理解と関心を深め、進んで刑事裁判に参加していただけるように、積極的かつ十分な広報活動を行う必要があるということでございます。

 具体的には、広報活動として考えられることでございますけれども、制度の内容をわかりやすく説明したパンフレット、これをいろいろなところに配布して、いつでも身近なところで見られるようにしておくということ、あるいはビデオの作成をする、あるいは講演会等の開催をする等、いろいろ考えられるわけでございますけれども、今後、その効果的なあり方についてはなお十分に検討してまいりたいというふうに思っているところでございます。

下村委員 ぜひこれはしっかりとこの制度の意義、内容を国民に説明していただいて、理解をしてもらえるよう積極的な取り組みをお願いしたいと思いますし、また、将来裁判員になる可能性のある今の子供たち、学校教育の中で、社会科、公民等の中で、しっかりと、市民社会における構成員として、この裁判員制度の重要性、それから司法の国民に開かれた改革が行われている中での理解、こういうこともきちっと行われるように、今後文部科学省に対しても、これは法務省あるいは司法制度改革推進本部からも改めて要請をしていただきたいと思います。

 次に、裁判員となる国民の負担についてどのように考えるかという観点から、何点か質問をさせていただきます。

 国民は、裁判に参加することを仕事にしているプロではないわけでありますから、ほかに本来の仕事があり、それを毎日行っているわけです。ですから、裁判員になってもらうということは、そうした国民の方々に、本来している仕事あるいは家事、その他の用事をやめたり、あるいは休んでもらって裁判所に来てもらうということなわけです。

 そういう御苦労とか御負担をおかけして裁判所に来てもらうということでありますから、その負担をできる限り軽くする必要があるということは当然なことでございまして、裁判員となる国民の負担が過重なものにならないようにするためにこの法案ではどのような手当てが行われているか、推進本部にお聞きしたいと思います。

山崎政府参考人 国民の負担が過重なものとならないようにすること、これは大変重要なポイントでございます。この法案でも幾つかの点、制度を設けているということでございます。

 まず、本人の病気や介護、養育の必要など一定のやむを得ない事由がある場合には辞退を認めるということ、辞退をすることができるということの規定を置いているということでございます。

 それから、迅速でわかりやすい裁判を実現するため、公判前整理手続における争点整理を義務づけるということにするとともに、公判を連日的に開廷するということにしているわけでございます。

 また、出頭いたしました裁判員に対して、旅費、日当等を支給するということでございます。

 それから、裁判員の職務のために必要な時間は職場を離れることができ、また、裁判員の職務を行うために仕事を休んだこと等を理由として事業主が不利益な取り扱いをすることを禁止する。

 こういうような規定を設けているということでございます。

下村委員 負担の軽減という意味では、まず、裁判員として裁判所に通う期間を必要最小限にするということが最も大きな問題だと思います。実際、オウム真理教のような事件というのは特異な例ですけれども、しかし、国民から見ますと、ああいう事件の裁判員になったら、これは大変だ、自分の仕事をやめなくちゃいけないのではないかというような心配をされる方もいるぐらいでございます。

 今お話がございましたように、一般の国民に参加してもらう以上、裁判の迅速化、これはもう不可欠だというふうに思うわけでありますけれども、実際、しかし、今までの裁判というのはなかなかそうではなかったわけでございまして、裁判の迅速化、これを行うために具体的にどのような手当てを行うつもりか、お聞きしたいと思います。

山崎政府参考人 今回の刑事訴訟法の一部改正という、そちらの方で手当てをしているわけでございますけれども、刑事裁判の充実、迅速化を図るための方策といたしまして、まず、十分な争点整理を行いまして、明確な審理計画を立てることができるようにするための公判前整理手続、これを創設するということでございます。ここで争点を明確に確認して、絞って、その裁判に向かっていくということ。それから、この中で十分な証拠を開示して、争点を絞っていく。この二つの点をこの中で行っていくということにしているわけでございます。

 その上で、裁判員の方に入っていただいた裁判をやっていくわけでございますけれども、その場合には、連日的な開廷を原則とするということの規定を置いているということでございます。

 それから、裁判所の出頭命令を遵守しない当事者に対する制裁措置等の導入をするということで、そこの裁判の引き延ばしが行われないような措置をする。

 こういうような点を制度的な手当てとして講じているということでございます。

下村委員 今回、おっしゃるとおり、裁判員制度の導入とあわせて刑事訴訟法の改正を行うわけでございますけれども、実際、この裁判員制度を導入する以前、現在ですね、刑事事件は平均どれぐらいかかって、そして、導入されることによって、刑事訴訟法改正も行うことによって、刑事裁判はどのぐらい早くなるということがおおよそ言えるのか。

 いろいろな手当てをするということはわかりましたけれども、具体的に国民から見てどれぐらい早くなるということを、もうちょっと具体的に説明していただけますでしょうか。

山崎政府参考人 現在、刑事事件、平均的に言えば、ちょっと今手元に資料はございませんけれども、三・何カ月で終了していると思われます。ただ、その中で、ごく一部でございますけれども、二年を超えて、物すごく長くなる事件もあるわけでございます。そういうのが現在の状況ということになるわけでございます。

 私ども、今回、ではこれについてどのぐらい早くなるのかということでございまして、この点は、ただいま申し上げましたような公判前の整理手続、これを設けまして、そこで証拠もみんな出し、それから争点も絞っていくという作業を前倒しで行います。その上で、裁判員が入っていただく公判を開くということになりますので、そこの公判前の整理手続、これをやる段階は若干時間を要するかもしれませんけれども、裁判員の方が入った裁判が始まれば、そこは極めて迅速に行っていくということを考えているわけでございます。

 本当に争いのない事件であれば、一日二日ということで終われるだろうというふうに考えておりますし、証人等を要する事件で、若干時間を要するとしても、まあ一週間程度かというような、イメージでございます、必ずそのとおりになるかどうかはちょっと別でございますけれども。ただ、それ以外に、もっといろいろ難しい事件がある。こういう点についても、どのようになっていくかということは、まだそこまで推測することはできませんけれども、大体そういうようなイメージで考えているわけでございます。

 今回の改正では、裁判の迅速化に関する法律で求められております、二年以内のできるだけ短い期間内に第一審の刑事裁判を終えるという目標、これを実現するために当面必要と考えられる制度的手当てを行うものということでございます。昨年、裁判の迅速化に関する法律を御承認いただきましたけれども、これを実行していくということでございますけれども、裁判員制度の事件になれば、もっともっと短縮をしていくことが必要だということで、我々の法案の中でも制度的な手当てをしているということでございます。

 まだ、本当に具体的にどの程度になるということは今のところ申し上げられませんけれども、イメージとしてはそういうイメージだということで御理解を賜りたいと思います。

下村委員 これは非常に重要なことでありまして、つまり、休暇をどれぐらいとる必要があるのか。一日二日で済めばいいわけですけれども、一週間休暇をとらなくちゃいけないとか、あるいはそれ以上必要だということは、なかなか今のお話のように、事件によっても違うでしょうから、一概には言えないわけですけれども、しかし、国民にとっては、これはかなり切実な問題でございますので、ぜひこの刑事裁判の迅速化について制度的な手当てをきちっと行って、安心できる、具体的な、目に見える形で提示をしていただきたいと思います。

 同時に、法律専門家の人たちの意識改革が必要だというふうに思うんですね。裁判員制度が導入された後は、今までのように裁判官あるいは検察官、あるいは弁護士もそうですけれども、自分たち専門家の都合で審理等を決めるということでは、これは裁判員にとっては、とてもつき合っていられない、そういうことになりかねないわけでございます。

 国民の負担を軽減するためにどのようにすべきかということについては、こういう法律専門家の方々も、本当に短縮できるのかということで危惧を持っている方々も結構おられますので、ぜひ、推進本部として、この迅速化に向けた制度設計、それから法律専門家の意識改革、改めてこれについてはきちっと対応をしていただきたいということをお願いしたいと思います。

 今の国民の負担の問題で、休暇の問題について伺いたいと思いますけれども、会社勤めなどのサラリーマンにとっては、裁判員となるために休暇をとることができるかどうかということは非常に重要な問題であります。休暇をとることができないということになりますと、サラリーマンが裁判員に選ばれた場合、無理を強いるということになるわけでございます。それが一日二日であればまだとれるでしょうけれども、一週間とかあるいはそれ以上ということになると、これは本人にとっても会社にとっても大変な負担にもなるわけでもございます。

 そもそも、サラリーマンが裁判員となるために休暇をとるということを、きちっとこれは国の方で施策として対応してもらわないと、実際は裁判員になれないということになるのではないかと思いますが、これについてお伺いしたいと思います。

山崎政府参考人 労働者が裁判員としてその職務を行うにつきましては、労働基準法七条という規定がございまして、この適用があるというふうに考えているわけでございます。これによりまして、労働者が裁判員の職務を行う場合には、労働時間中であっても、そのために必要な時間は職場を離れることができるということになるというふうに考えているわけでございます。

 また、この法案で、労働者が裁判員の職務を行うために休んだことなどを理由として事業主が解雇その他不利益な取り扱いをすることを禁ずる旨の規定、これを置いているわけでございまして、この二つをあわせて手当てをしておけば、裁判員として出頭していただきやすい、そういうような手当てができているんではないかというふうに思っているわけでございます。

下村委員 ただ、公務員と違って民間企業では、そうはいっても、簡単に休むことはなかなかできない。先ほども言いましたように、一日二日ならともかく、もっと長引くということであると、これはやはり大変だという思いをされる方が大半だと思うんですね。

 そういう意味では、新たに裁判員休暇の制度を創設すべきである、特に有給で休暇をとることができる制度を設けるべきである、こういう意見もあるわけでございます。この点について、考えを伺いたいと思います。

山崎政府参考人 ただいま御指摘のような意見があることも私どもも承知はしておりますけれども、検討はいたしました。ただ、この点につきましては、有給休暇制度を設けるということになりますと事業主側の負担を強いるわけでございまして、事業主側も大きいところから小さいところまでさまざまございまして、これを一律に負担をかけるということがいいのかどうか、こういう点も我々は考慮をいたしまして、やはりこの制度を設けるのは慎重に考えるべきではないかというふうな結論に至ったということでございます。

下村委員 これはきちっと手当てを講じませんと、せっかくこの裁判員制度を導入しても、事実上、サラリーマン、特に若い方々、あるいは重要な役職についている方々は、裁判員になりたいけれどもやはり仕事の都合でなれないというふうな形で、結果的には裁判員のなり手が非常に少なくなるということも考えられるのではないかというふうに思いますので、今後も検討をされるべきことではないかと思います。

 また、これはサラリーマンだけでなく、自営業者の方々、こういう方々も裁判員に選ばれる可能性があるわけであります。この自営業者の方々が裁判員になった場合に、裁判員の職務に当たっている間は仕事から離れるということであるわけでありますから、着実にそれに伴って収入も減るということにもなるわけでございまして、自営業者が裁判員となることによる経済的な負担を軽減する措置、これを講ずるべきだ、こういう考えもあるわけでございますが、これについては大臣、どんなふうにお考えか、お聞かせ願いたいと思います。

野沢国務大臣 この裁判員制度がその役割を十分に果たすためには、委員御指摘のとおり、社会全体の理解と協力が不可欠であると考えております。そのような観点からいたしましても、この制度が十分機能するために、実施されるまでの間相当な期間をとってもおりますので、その意義や内容についての理解と関心を深めまして、職業を持った国民の方々にもこの刑事裁判に参加していただけるようにするために、積極的かつ十分な広報活動を行ってまいる所存でございます。

下村委員 また、裁判員、これは広く国民からということですから、育児とか、お年寄り、そういう方々の介護をしなければならない、そういう方々が選ばれる可能性もあるわけでございます。このような中で、託児所とか、あるいは託老所というんですかね、こういう整備も必要であるという意見があるようでありますけれども、このように育児や介護をする必要がある人が裁判員として参加するに当たって、このような諸整備を行う必要があるということについて司法制度改革推進本部の意見をお聞かせ願いたい。

 それから、先ほどちょっと自営業者の件で、推進本部として、経済的な軽減を講ずる必要があるかということについての何か意見があれば、これもあわせて具体的にお聞かせ願いたいと思います。

山崎政府参考人 育児、介護の関係で、託児所、託老所、この主張がされているということは私どもも承知をしているわけでございます。一般的に言えば、さまざまな事情を抱える国民の方が裁判員として参加しやすくするために、さまざまな工夫をしていくべきであるということは考えているわけでございます。

 ただ、この託児所、託老所の整備につきましては、裁判員制度の運用の詳細につき今後さらに検討を要することから、一概にその要否を論じるということはできませんけれども、裁判員となることについて辞退が認められる事由、あるいは裁判員となる者の負担、財政事情、国民の意識等を勘案して、今後慎重に検討すべきものというふうに考えているわけでございます。

 それから、自営業者の関係の経済的な負担を軽減する方策、先ほど大臣からもお話ございましたけれども、そういう御指摘もございますけれども、この点も、自営業者の所得の補償をするということについては、所得の高い安いとか、あるいは主婦や仕事のない方との関係のバランスをどうしていくかということも考えますと、なかなか、一律にこういうものを導入するというのは、現時点は非常に難しいという認識を持っているわけでございます。

下村委員 この育児あるいは介護をする必要がある人が裁判員になった場合の託児所とか託老所、これはこの間民主党が本会議の中で質問していた内容で、我々与党としてもこれについて確認の意味で今質問したわけでございますが、私も、そのたびに託児所あるいは託老所を裁判所の中へつくるということは大変なことだと思いますし、また、それと必ずしも関連させる必要はないとは思いますが、しかし、今後、厚生労働省とも連携しながら、ショートステイとか既存のいろいろな施設、制度というのは、これは運用で使えるわけですから、この辺の連携はより密に、裁判員制度を導入するに当たっては考える必要があるのではないかというふうに思いますので、質問をさせていただいているわけでございます。

 ところで、法案の第七十一条は、労働者が裁判員の職務を行うために休暇を取得したこと等を理由として解雇その他不利益な取り扱いをしてはならないとされておりますけれども、しかし、この規定には罰則規定が設けられておりません。ですから、このことによって、実際、裁判員になったけれども、厳しい企業状況にあるところであれば、結果的にはこれがきっかけで労働者がリストラになってしまう、解雇されてしまうということになりかねないという危惧はあるんではないかと思うわけでございます。

 この七十一条の規定は現実にはどのような法的効果を持つということになるのか、お聞かせ願いたいと思います。

山崎政府参考人 この七十一条の規定でございますけれども、これに反した法律行為あるいは業務命令は民法上無効であるというふうに考えられるわけでございます。

 したがいまして、例えば、雇用主が解雇したと主張した場合でも、その賃金支払い義務は消滅しないということになります。また、労働者が業務命令に従わなかった場合でも就労義務違反にはならないということで、雇用契約上の債務不履行責任は生じないということになろうかと思います。

下村委員 このように職業を持った方々が裁判員となりやすくするためには、法整備、これも必要なわけですけれども、同時に、それぞれの企業、会社あるいは社会、そういうところの理解がなければ、結局は絵にかいたもちになってしまって、いろいろな理由で、裁判員になっても辞退をするということになってはならないわけでございますから、ぜひ、これについては、制度を導入すれば解決できるということではございませんので、まさに司法制度改革は、同時に日本全体の民主主義の成熟にとっても影響することでございますから、国民全体の意識改革も必要だというふうに思いますし、政府としてもそういう観点からトータル的な施策として取り組んでいただきたいと思います。

 それから、ちょっと項目を変えまして、特に社会の注目を集めるような重大な事件、こういう場合には、裁判員にも注目が集まることによってそのプライバシーが公表される、こういうことが懸念されるわけでございます。そのようなことになりますと、裁判員となる国民に無用な負担を強いるということになり、ひいては裁判員制度が機能しなくなる、こういうおそれもあるのではないかと思うわけでございます。

 裁判員のプライバシーが暴露されないようにするために本法案ではどのような手当てが行われているのかということについて、お聞きしたいと思います。

山崎政府参考人 裁判員のプライバシーあるいは生活の平穏、これはもう極力守らなければならないということでございます。その関係で、この法案では何点かの手当てをしているわけでございます。

 まず、裁判員のプライバシー保護のための方策といたしまして七十二条という規定を置いておりまして、ここで、裁判員の氏名、住所等、その個人を特定する情報を公にしてはならないということにしております。それから、次の七十三条では、裁判員または補充裁判員に対する接触を禁ずるという規定を設けているわけでございます。それから、法案の八十条では、裁判員の氏名等漏示罪を設けまして、裁判の当事者または当事者であった者が正当な理由なく裁判員候補者の氏名など裁判員選任の過程で知った個人情報などを漏らす行為、これを禁止しているということでございます。

下村委員 反面、裁判員に対する接触禁止規定、これはこれでプライバシーの保護ということでは非常に重要なわけでございますけれども、一方で、メディア規制になる、そういうおそれがあるのではないか、こういう指摘もあるわけでございます。

 これはちょっと悩ましいところがございまして、この裁判員制度を導入して、これが広く国民に理解をされ、そして自分もぜひ裁判員になってみたいと思っていただけるかどうかということは、やはりメディアがこの裁判員制度について積極的に取り上げるところはきちっと取り上げてほしい、しかし、それが裁判員のプライバシーにかかわるようなことで、後々裁判員になった方が非常に困るということになってもまずいわけでございまして、この辺のバランスをどうとるかということは、この制度が広く国民に理解をされ、そして参加動機になるかどうかということでは大変重要なことであるというふうに考えるわけでありますけれども、これについて、このメディア規制を含めまして、接触禁止の規定について推進本部ではどのように考えられているか、お聞きしたいと思います。

山崎政府参考人 この点に関しましては、私ども、検討の途中で、メディアの報道についての、偏見報道の禁止という条項を設けるかどうかということを検討したわけでございます。これにつきましてはさまざまな御意見がございまして、最終的には私どもも、報道の自由、表現の自由という点についてやはり重要なポイントであるということから、報道の関係につきましては、マスコミの方でいろいろ自主ルールをつくっていただくということを前提に、私どもとしては規定を設けないということで、何も今回は設けていないという選択をしたわけでございます。

 ただ、この点に関しまして、どうしても、接触禁止の規定を置いておりますので、それとメディアの関係がどうだ、こういう議論も出てくるわけでございます。

 裁判員への接触規制でございますけれども、これは裁判の公正あるいは裁判に対する信頼を確保するために置いているわけでございますし、また、裁判員の生活の平穏を保護して、その負担を軽減するという趣旨から置かれているわけでございます。そして、この規制の対象は別にメディアに限っているわけではございません。裁判終了後は、裁判員等が職務上知り得た秘密を知る目的での接触、これに限定をいたしまして、これを規制するということにしているわけでございまして、この接触禁止がメディア規制に当たるものとしては私どもは理解はしておりません。一般的な規制であるというふうに考えているわけでございます。

下村委員 これはたたき台をつくるにおいて我が党においてもいろいろな議論がございましたが、最終的にはメディアの自主規制を当分の間見守る、法的な措置については考えないということに我が党のたたき台の中でもなったわけでございますが、今後、これはポイントだと思いますし、メディアにおける自主規制について期待をしたいというふうに思います。

 また、裁判員は裁判官と対等の権限で司法権の行使に当たる、そういうことから、一般の国民であってもその氏名を明らかにすべきではないか、こういう意見もあるわけでございます。本法案においては、裁判員の氏名を公にしないこととされておりますけれども、その理由についてお聞かせ願いたいと思います。

山崎政府参考人 確かに、この法案を作成する途中の段階で、氏名を公表しないということでいいのかという御議論がございました。全く外から見えない、やみの裁判ではないかという御批判もあったわけでございますが、この点につきましては、裁判員は裁判官と対等の権限で司法権の行使に当たっているわけでございますので、それが全く名前がわからないということで行うということは相当でないというふうに考えております。

 この法案においては、公益の代表者として裁判にかかわります検察官、及び裁判の結果を直接に受けることとなります弁護人及び被告人に対しては、裁判員が選任される前にあらかじめ裁判員候補者の氏名を知らせる制度を設けることにしております。したがいまして、当事者については裁判員あるいは裁判員候補者の氏名を知る機会がある、保障しているということでございまして、全くわからないという制度ではないということでございます。

 他方、裁判員は、裁判に関与することを職業とする裁判官とは異なりまして、無作為に選ばれました一般の国民であるわけでございますので、また、裁判員となることをみずから希望したわけでもないわけでございますので、したがいまして、裁判員のプライバシーあるいは生活の平穏、これを極力保護する必要があるわけでございます。また、裁判員に対する不当な働きかけを防止する必要もございますので、そういう意味で、対外的に、外に裁判員の氏名は公表をしないということにしまして、当事者にのみ公表をする、こういう形で保護をしているということでございます。

下村委員 裁判員制度に関して、最後に、控訴審についてお伺いしたいと思います。

 控訴審については、法案には特に規定は設けられておりません。そして、法案の第二条によれば、裁判員が参加する裁判は地方裁判所において行われることとされているわけでございます。

 控訴審においては裁判員が参加しない、そういうふうにした理由についてお伺いしたいと思います。

山崎政府参考人 現行法上、控訴審は第一審の判決の当否を事後的に審査する、いわゆる事後審というふうに言われているわけでございます。第一審と同じように証拠調べをするという構造にはなっていない。そういう非常に専門的な構造になっているわけでございます。したがいまして、職業裁判官のみで構成される控訴審が裁判員の加わった第一審の判決を破棄するということも、そういう意味で正当化されるものと考えられるわけでございます。

 それから、主に書面から成ります公判記録によって、一審に提出された証拠あるいは主張あるいは審理過程を精査いたしまして一審の判断の当否を審査するという控訴審の現実の職務内容からしても、そういった経験がない裁判員の方が本来の力を発揮する場面は非常に考えにくいという点もございます。また、その負担も一審に参加する場合に比べて相当重くなるということも考えられるわけでございます。

 こういう点を考えまして、控訴審につきましては、現行どおり裁判官のみで構成してやっていくことが適当である、こういう判断をしたわけでございます。

下村委員 国民はもともと裁判員として参加しても素人なわけですから、私も、参加する意義が最も大きいのは第一審であるというふうには考えますし、また、ここでの、裁判に裁判員が参加する制度とすることでは、第一審ということは妥当であるというふうに思います。

 しかし、せっかく裁判員が加わった裁判が行われているにもかかわらず、そのことが無意味になるようなことになってはいけないとも思うわけでございます。裁判員が参加したことに意味を持たせるためには、控訴審は第一審の判決を破棄した場合自判することはできない、そういうふうにすべきではないか、こういう意見もあるわけでございますが、この点についてはどのように考えられているか、お聞かせ願いたいと思います。

山崎政府参考人 現行法上、控訴審は、原判決の誤りの有無を事後的に点検する事後審、先ほど申し上げましたけれども事後審とされておりまして、第一審の判決を破棄する場合には事件を第一審に差し戻すのが原則であるというふうにされておりますけれども、事後審査のために用いた資料によって直ちに新たな判決を言い渡せる場合に限って自判できる、こういうふうにしているわけでございます。

 第一審に裁判員が加わった事件についても、このように、事後審査のために用いた資料によって直ちに自判できる場合には、例外的に自判を認めても、裁判員が第一審に加わった趣旨を損なうものではないというふうに考えているわけです。

 典型的に言えるのは、身がわりの事件がございまして、真犯人がきちっと出てきて、自分がやったということを証言したような場合、こういうような場合にはかなり明らかなものであるということでございまして、その場合には高等裁判所で自判をして、みずから裁判をするということですね、これも許されるだろうということから、こういうような構造をとったということでございます。

下村委員 制度のあり方としては、答弁いただいたとおりであるというふうに思います。もっとも、裁判員制度の意義を損なわないようにするために、控訴審を担当する裁判官、それから裁判員制度の意義、これを裁判官も十分に踏まえて適切な判断をしてもらう必要があるというふうに思いますので、私の意見としてつけ加えさせていただきます。

 次に、刑事訴訟法等の一部を改正する法律案に関してお伺いいたします。

 まず、公的弁護制度の整備について質問をします。

 自民党においては、司法制度改革審議会の審議に先駆けまして、平成十二年から十三年に司法制度調査会の報告を取りまとめまして、民事法律扶助の拡充とあわせて公的弁護制度の整備をも内容とする総合的法律扶助制度の構築を提言したところであります。

 今回の刑事訴訟法等の一部を改正する法律案は、総合法律支援法案と相まって、この自民党司法制度調査会の報告を具体化あるいは実現するものであるというふうに理解をしております。

 ところで、この公的弁護制度の整備として、今回新たに被疑者に対する公的弁護制度を導入することとしておりますけれども、公的弁護制度は税金で賄われるものでありますので、国民の理解を得ることが重要です。したがって、なぜ国民の貴重な税金を使って被疑者に弁護人をつける必要があるのか、国民にわかりやすく説明することが必要だと思います。

 そこで、法務大臣にお伺いしたいと思いますが、なぜ被疑者に対する公的弁護制度を導入することとしたのか、その意義についてお伺いいたします。

野沢国務大臣 被疑者に対する公的弁護制度の導入につきましては、まず、被疑者が弁護人の援助を受ける権利を実効的に担保できるということ、また、捜査段階から国選弁護人が選任されることによりまして、弁護人の早期の争点把握を可能にいたしまして、結果として刑事裁判の充実、迅速化を図るという観点から重要な意義があると考えております。

下村委員 この公的弁護制度の整備に国民の貴重な税金を使うということについて国民の理解を得る、そのためには、本当にそこにニーズがあるのかどうか、これを吟味することが重要だと思います。本当は資金力があるのに、自分のお金を惜しむ余り国選で弁護士を請求するということを今回の制度導入によって行うということであっては、これは国民の理解は得られないわけでございます。

 この公的弁護制度の制度設計に当たって、被疑者の資力、資金力等をチェックする仕組み、それから資力のある被疑者に私選で弁護人の選任を促す仕組み、こういうことを設けなければこの法案をつくった本来の趣旨がなかなか生かされないと思うわけでありますが、そういう仕組みが整備されているのかどうか、お聞きしたいと思います。

山崎政府参考人 確かに、御指摘のとおり、国民の税金を使うわけでございますので、そこの要件はきちっとしなければならないということだろうと思います。

 この国選弁護人の選任でございますけれども、被疑者がみずから私選弁護人を選任できない場合に行うべきものであるということでございます。被疑者について、資力の基準額を政令で定めることといたしまして、その資力審査のため、被疑者に資力申告書の作成、提出を義務づけることとしているわけでございます。

 それから、資力が基準額以上である被疑者については、あらかじめ弁護士会に私選弁護人の選任の申し出を行うことを義務づけまして、私選弁護人を選任しようとしたにもかかわらず私選弁護人を選任できなかった場合に国選弁護人を選任する、こういうような手続を設けているわけでございます。

 被告人の段階につきましても、弁護人がいなければ開廷することができない事件があります、これを必要的弁護事件と言っているわけでございますが、この場合はつけざるを得ませんので、これはちょっと別といたしまして、それ以外の場合につきましては、被疑者の場合に準じまして、選任の要件あるいは選任手続を、同様な整備をするということにしているわけでございます。

下村委員 まだ時間はございますし、質問をしたいこともございますが、きょうはイレギュラーで、こんな時間まで審議をしているのは当法務委員会だけではないかというふうに思うわけでありまして、関係委員の方々に対して心より敬意を申し上げたいと思います。

 そして、これは大変重要な法案でございますので、きょうは特に、裁判員法案及び刑事訴訟法等改正案の第一日目の質疑ということで、大きな論点についての質問をさせていただきました。この法案は、国民にとって大変関心の高い司法制度改革の目玉になる法案でございますので、ぜひ次回からは民主党もそろって、この重要な審議についての論点、質問ができるべきことではないかというふうに思いますし、またそういう観点から、きょうはこの程度とさせていただきます。

 ありがとうございました。

柳本委員長 はい、御苦労さま。

 次に、漆原良夫君。

漆原委員 公明党の漆原でございます。

 まず、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律案についてお尋ねします。

 裁判員制度は、国民が自律性と責任感を持って国民のための司法をみずから実現し支えるという理念に基づくものであります。極めて有意義な制度であると考えておりまして、我が党といたしましても、参加する国民にとって、参加しやすく、わかりやすい裁判員制度、そして何よりも、参加した国民が参加してよかったと実感できる裁判員制度をぜひとも実現したいというふうに考えております。

 下村委員からも話がありましたが、この裁判員制度というのは、まさに司法制度改革の大きな目玉の一つであるというふうに考えております。

 そこで、大臣に、まず、この司法制度改革の意義と、この改革、制度の実現に向けての決意をお尋ねしたいと思います。

野沢国務大臣 今回の一連の司法制度改革の中で、この裁判員制度の導入は一番その中心的な存在ではないかと考えておるわけでございます。

 この裁判員制度が、広く国民が裁判の過程に参加をいたしまして、その感覚が裁判の内容に反映されることによりまして、司法に対する国民の理解や支持が深まりまして、司法がより強固な国民的基盤を得ることができるようになるという重要な意義があるものと考えております。

 加えまして、裁判が迅速に行われるようになり、また裁判の手続や判決が国民にとってわかりやすいものになるということも期待されるところでございます。

 裁判員制度の導入は、司法に対する国民の理解の増進とその信頼の向上に資するものでありまして、大変重要な意義があるものと考えております。このような裁判員制度の意義を踏まえまして、国民の理解を得るように努力し、その実現に向けまして全力を尽くしてまいりたいと考えております。

漆原委員 裁判員が刑事裁判に参加する場合に、何人の国民が裁判員として参加するのか、また何人の裁判官と裁判体、合議体を構成するのか、非常に難しい問題があります。国民の感覚を裁判に反映させるというこの裁判員制度の趣旨から考えれば、相応の人数の裁判員の参加が必要だというふうに考えますが、裁判員の数が多ければ多いほどいいものでもないわけでありまして、十分な評議を尽くすことができる規模の人数でなければ、これまた説得力のある判決を書くこともできないというふうに考えております。

 そこで、大臣にお尋ねしたいんですが、この法案において、合議体の構成を、原則として裁判官三名、裁判員六名となっておりますが、このようにした理由をお尋ねしたいと思います。

野沢国務大臣 まず、評議の実効性の確保や、個々の裁判員が責任感と集中力を持って裁判に主体的、実質的に関与することを確保するという観点から、合議体全体の規模には一定の限度があり、十人に至らない程度が適当であると考えられるところでございます。

 次に、裁判員制度の対象事件は、法定合議事件のうちでも特に重大と考えられる一定の事件であることから、現行の法定合議事件と同様に、原則として裁判官三人による慎重な審理を行うことが必要であると思われます。

 そして、合議体全体の規模を一定の限度内とした上で、裁判に国民の感覚がより反映されるようにするため相当程度裁判員の数を多くするという観点から、その人数を六人とすることとしたものでございます。

漆原委員 推進本部にお尋ねしますけれども、この裁判官三名、裁判員六名という合議体の構成につきましては、専門の裁判官、しかも熟練の裁判官が三名もでんと前に座って、全く法律に素人の一般の人が六名くらいいたとしても、一般の人は萎縮をして、生まれて初めて裁判所に行くという人も多いと思いますから、そんなところに行って生まれて初めて事件を担当するわけですから、そういう専門家が三人もいると、たとえ六人の裁判員であったとしても、素人だから萎縮して意見を述べない。これでは司法制度改革審議会の意見書が要請するような実質的な関与を期待できないのではないか、こういう批判もありますが、この点についてはどのように考えておられますか。

山崎政府参考人 まず、今大臣から答弁がございましたように、全体を九人としているわけでございまして、この程度の人数であれば、充実した評議が行われまして、そこに参加する一人一人が責任感と集中力を持って実質的に関与できる、そういう規模であるというふうに考えております。いわゆるお客様にならない、こういう程度であろうというふうに考えております。

 この法案では、それ以外に幾つか手当てを置いておりまして、まず、裁判員は裁判官と対等の評決権を有するものとしております。そして、その裁判員の人数も一応裁判官の倍おるわけでございますので、そのぐらいおれば気おくれすることもなくやっていけるだろうということでございます。

 それから、裁判員が関与する判断は、裁判員の意見を含む過半数の意見によることとしているということでございます。

 それと、ここは法文でもきちっと置いているわけでございますけれども、評議の整理に当たる裁判長は「裁判員が発言する機会を十分に設けるなど、裁判員がその職責を十分に果たすことができるように配慮しなければならない。」とわざわざ明文の規定を置いておりまして、裁判長にこの点を注意喚起しているわけでございます。

 したがいまして、この関係で、裁判長の方としては訴訟指揮をうまくしていただいて、十分に裁判員の方にやはり評議に参加をしていただいてその上で決めていく、こういうことが可能になるような形をしておりますので、この中で十分な意見を言っていただけるのではないかというふうに考えているわけでございます。

漆原委員 大臣にもう一点お尋ねします。

 この合議体の構成については、裁判員制度というのは国民が中心となって裁判を行う新たな制度と位置づけるべきであって、裁判官は法律専門家として裁判員を補助する立場にあるべきだというふうな考え方から、裁判官は一人でいいのではないか、裁判員が十名前後必要なのではないかというふうな考え方もあります。

 このような考え方からは、三人、六人というこの法案に対しては、裁判官を現行どおり三名とし裁判員を六人しか選ばないということは、法案の合議体の構成は現在の職業裁判官による裁判を踏襲しつつ国民の良識を加味すれば足りるという、ちょっと味つけ程度にすればいいんじゃないかというふうな発想に基づくものだというふうな批判がなされているわけですね。

 そこで、従来の裁判に国民をつけ足すということではなくて、新たな国民参加の制度としての合議体の構成を考えるべきである、したがって裁判官一人、裁判員十名前後というふうな反論もなされておるんですが、これについてはどのようにお考えでございましょうか。

野沢国務大臣 裁判員制度の導入は、司法に対する国民の理解の増進とその信頼の向上に大いに資するものである、大変重要な意義がある制度と考えておるわけでございますが、他方、現在の裁判制度を考えてみると、基本的には国民の皆様から高い評価を得て今日まで来ておるということもまた私は事実であると思います。

 そこで、現行の裁判制度の長所を維持しつつ、裁判員と裁判官の協働、ともに働くという意味で、対等な立場で制度を運営し、これを実行していくという観点から、先ほど申し上げました三人の六人という合議体の構成を考えたということでございまして、この構成については、まことに、これまでの長所と今後の国民の皆様の関与という点で適切な比率というふうに考えております。

    〔委員長退席、塩崎委員長代理着席〕

漆原委員 今度は実務の観点から推進本部にお尋ねしたいんですが、裁判員制度は、先ほど申されたとおり、陪審制とは違って判決の中で事実認定はきちっとしなくてはならぬわけですね。その事実認定も、日本の場合は、証拠の採用、不採用、それに対する心証形成、相当論理的に詳しく事実認定をしていくわけですね。

 そういう判決を書かなければならないという立場に立って、一方で、たった一人の裁判官が十名の裁判員の人を相手に論点を整理し、そして皆さんの合意を形成していくというのは、これは大変、並大抵の、不可能に近いほどの労力を裁判官に要請するものだというふうに私は思っております。

 そこで、実際の実務の観点からいうと、この裁判官三人、裁判員六人の考え方と、裁判官一人、裁判員十名前後という考え方、どちらの方がすぐれているか、推進本部にお尋ねしたいと思います。

山崎政府参考人 この点につきましては、法案の作業に至るまで大議論を交わしたわけでございます。

 私どもの考え方を申し上げたいと思います。また、それが実務的に妥当なものであるという観点から申し上げたいと思いますけれども、まずこの裁判員制度の対象事件、これが非常に重たい、重要な事件であるということでございます。そうなりますと、やはり慎重に判断をするという、現在もそれは合議事件、三人でやるということになっておりまして、そういう観点からは、本当に裁判官一人だけでいいのかという問題が生じてくるわけでございます。これ以外でも法定合議事件という三人でやる事件がございますが、そちらは三人でやる。裁判員制度の方はもっと重い事件であるのに裁判官一人という形になりまして、これで本当にいいのかどうか。三人寄れば文殊の知恵と言われているわけでございますが、重大な事件について、一人で本当にいいのかどうか。

 それからもう一つは、法律判断は裁判官の専権になっているわけでございますので、やはり重大な事件の中には相当に法律判断も難しいものもあるだろうということになるわけでございます。その場合に、それを一人で判断するのか。特に、その中で憲法問題とか憲法解釈の問題も当然出てくる可能性がございます。この点について、やはり一人の裁判官でそこを判断していいのか、こういう問題が出てまいります。したがいまして、そういう点を考えると、やはり裁判官は三人必要ではないかということを考えたわけでございます。

 では、裁判員の方、どの程度がいいかという問題でございますが、ただいま委員御指摘のように、日本の判決というのは、やはりある意味の精密司法でございます。この裁判員制度に関しまして、今までと同じような精密司法でいけるのかどうか、またちょっとここは考えなきゃなりませんけれども、諸外国の例のような、すごいラフな書き方、記載の仕方、認定の仕方、これは今の日本の土壌の中で本当に受け入れられるかどうかという問題がございます。やはりある程度きちっとした理由は付さなければならないだろうと思います。

 そうなったときに、かなりの人数の方がおられますと、評議自体も意見を余り言わない方も出てまいりますし、最終的に決まった結論に対していろいろな理由が必要でございますが、多数の方にこれを全部きちっと理解していただき、読んでいただき、それで承認をしていただくということになりますと、相当な負担になることは間違いないわけでございます。

 こういう点も考えまして、余り多い人数でやった場合に本当に今の日本の裁判の中で大丈夫かどうかという論点がございまして、私どもは、そういう点から考えて余り多い人数でやることは相当ではない、それから裁判官はやはりいろいろな点を考えれば三人必要である、こういう中で最大限国民の多様な意見を反映させるために六人の方に参加をしていただく、こういうふうに考えたわけでございまして、やはり裁判官一人で裁判員の方十名、これはちょっとなかなか非現実的かなというふうに理解をしております。

漆原委員 この法案では、裁判員が参加する場合の合議体の構成を原則として裁判官三人、裁判員六名としながらも、一定の場合には裁判官一人、裁判員四人の合議体で審理、判決できる、裁判ができるとされております。

 一定の場合に裁判官一人、裁判員四人の合議体で審理、裁判ができるとすることができる制度を設けた理由は、どのような理由からでしょうか。

山崎政府参考人 裁判員制度の対象になります事件、もともと重大な事件ではございますけれども、第一回公判期日前の、いわゆる公判前の整理手続でございますけれども、この導入によりまして、争点の有無、これが相当程度明らかになるということになるわけでございます。それからまた、その中で、被告人が事実関係を争っていない、それから法律解釈や訴訟手続上の問題も余り生じないであろうというふうに予想される事件もあるわけでございます。

 こういうような事件につきましては、裁判官三人、裁判員六人というのは、相当に規模の大きな合議体で審理が常に必要不可欠かと言われると、そこまでは言えないのではないか、通常の場合よりも少人数で構成する、審理をするとしても差し支えないのではないか、こういうような場合もあるじゃないかということから、こういうような場合に限って、裁判所の判断によりまして、裁判官一人、裁判員四人の合議体で審理をするということを可能とする制度を設けたわけでございます。

漆原委員 次に、裁判員の選任についてお尋ねしたいと思います。

 裁判員制度は、広く国民に参加をお願いする制度でありまして、裁判員の選任の手続は多くの国民がかかわることになりますから、この手続に関する国民の関心は大変強いというふうに認識しております。

 この法案を見ますと、裁判員の選任のための手続は、具体的な裁判、具体的な刑事事件を前提としない裁判員候補者名簿をつくるまでの手続と、特定の刑事事件を前提とした事件ごとの手続という二段階に分けることができるというふうに思いますが、なかなかイメージとしては浮かばない。

 そこで、まず、裁判員の候補者の名簿が作成されるまでの裁判員選任に関する手続はどのような流れで進められるのか、概略的に説明願いたいと思います。

山崎政府参考人 この手続の流れ、ちょっとわかりにくいところがございますので、きちっと御説明したいと思いますけれども、まず、毎年一定の時期までに、地方裁判所が次年度に必要と見込まれます裁判員候補の員数をその管轄区域内の市町村に割り当てをいたしまして、これを市町村の選挙管理委員会に通知することにいたしております。通知を受けました市町村の選挙管理委員会は、その通知をされた員数分を選挙人名簿に登録されている者の中からくじで選定をした上で、選定された者について裁判員候補者予定名簿を調製いたしまして、これを地方裁判所に送付するということにしております。

 そして、地方裁判所は、管内の市町村の選挙管理委員会から送付を受けた裁判員候補予定者名簿に基づいて、裁判員候補者の氏名等を記載した裁判員候補者名簿を調製するということにしているわけでございます。地方裁判所は、裁判員候補者名簿を調製したときは、そこに記載された者にその旨を通知するということにしております。

 これが、まず候補者の名簿の作成の段階までということでございます。

漆原委員 それでは次に、具体的な事件ごとの裁判員の選任の手続は具体的にはどのような流れでいくのか、概要を説明してもらいたいと思います。

山崎政府参考人 裁判員の参加する合議体で取り扱う対象事件につきまして、第一回の公判期日が定まったときは、裁判所は、審判に要すると見込まれる期間その他のいろんな事情を考慮して、呼び出すべき裁判員候補者の員数を定めることにしております。まだ具体的にどの程度になるかわかりませんけれども、裁判員が六名、あるいは補充裁判員という方も必要な場合もございます。そのような人数を抽出いたしまして、いろんな事情の方がおられますのでその何倍かの方を候補者として呼ぶ、こういうような形になろうかと思います。

 候補者名簿に記載されました裁判員候補者の中から、その員数分の呼び出しをすべき者をくじで選定いたしまして、裁判所は、質問票によって欠格事由等があると認めた者以外の者を裁判員等の選任手続の期日に呼び出すことにいたすわけでございます。

 その後、裁判員等選任手続において、裁判所は出頭した裁判員候補者に対し質問を行います。そして、欠格事由あるいは辞退事由等があると認める者、あるいは検察官や被告人側による理由を示さない不選任の請求があった者について不選任の決定をいたした上、不選任の決定がされなかった者から、くじその他の作為が加わらない方法によりまして裁判員を選任して決定する、こういう手続になるわけでございます。

 補充員を置くときは、同様にして補充員を選任する、こういう形になるということでございます。

漆原委員 この法案は、裁判員の選任方法については、選挙人名簿から無作為に抽出するというふうになっておるわけでございますけれども、ドイツの場合には、何らかの方法で裁判員としてふさわしい有識者を選考すべきだというふうな、ドイツのように、そういうふうに有識者を選考すべきだというふうな意見もあったと聞いておりますが、我が国は裁判員の選任方法を選挙人名簿から無作為抽出とした、有識者にしなかったという理由は、どんな理由だったんでしょうか。

山崎政府参考人 まず、ドイツのような、ある有識者名簿から抽出をしていくという方法も相当議論はされたわけでございますが、では具体的に有識者というラインはどういう方になるのかということ、これの決め方が極めて難しいということと、それから、そういうラインで線を引きますと、やはり一定の考え方というか、多様な考え方の方、そういう方を抽出するのがなかなか難しいということ、そういうような点が考慮されたわけでございまして、やはり有識者選抜方式というのですか選出方式、これはなかなか難しいという結論に達したわけでございます。

 片や、無作為抽出の点でございますけれども、これは、広く一般の国民の感覚を裁判に反映させるようにするという裁判員制度の趣旨から、幅広い範囲の国民から選出をすることが可能になるという利点があるということでございます。それから、無作為抽出の方式は、選任過程の透明性あるいは公平性、これが確保できるということでございまして、そういう点を踏まえまして改革審議会の意見書においても提言をされておりまして、最終的に、私どもの本部の方でもさまざまな点から検討はいたしましたけれども、やはりこの無作為抽出方式が一番、多様な方に出席をいただき、それから公平な手続であるということから採用したということでございます。

漆原委員 裁判員制度の趣旨からすると、なるべく多くの国民が主体的に刑事裁判に参加していただくことが望ましいというふうに考えております。

 裁判員になることは、本人の意向にかかわらず、法律上の義務となっているのかどうか。もし法律上の義務となっていたならば、義務違反に対してはどのような制裁があるのか。そして、裁判員となることを法律上の義務というふうに構成した理由は何か。まとめてお尋ねしたいと思います。

山崎政府参考人 これは、一定の要件を満たす者の中で無作為に選任されるということでございますので、辞退事由に当たらない限りは本人の意向にかかわらず裁判員となることを拒めないという意味におきまして、法律上の義務であるということでございます。

 法律上の義務ということで、出頭について、出頭しなかった場合には、秩序罰といたしまして過料の制裁はあるということでございます。

 では、なぜこういう制度を設けているのかということでございますが、先ほど申し上げましたけれども、広く一般の国民の感覚を裁判に反映させるというこの制度の趣旨から考えまして、できるだけ幅広い層の国民の中から選任されることが望ましいわけでございます。裁判員となることを義務とすることは、こうした要請を制度的に担保するものでございまして、それにより国民の負担が平等になるものと考えられるわけでございます。

 これを仮に義務としないとした場合には、希望者のみが裁判員になるという制度になるわけでございます。そうなりますと、最終的に選任される裁判員の資質とか性向とか、そういう点について偏りが生ずる懸念がある、こういう問題点があることから、義務を課すとしたわけでございます。

    〔塩崎委員長代理退席、委員長着席〕

漆原委員 今お答えのあったような趣旨から裁判員となることを法律上の義務とするとしても、裁判員には絶対になりたくないという、頑強に拒んでいる人にまで義務づけすることになりますと、無理を強いることにならないか。そういうふうな無理をして引っ張ってきて、果たして公正な、適正な判断が期待できるのかなという疑問も持っております。

 どうしても裁判員になりたくないという人についても無理やり務めさせることになるのかどうか、この辺はいかがでしょうか。

山崎政府参考人 確かに、裁判員候補者に出頭義務を課すということにいたしましても、やはり国民に過度な負担をかけるべきではないということも、これもまた一方の要請でございます。

 そこで、このようなことがないように、まず、法案におきましては、裁判員候補者が理由を示して辞退を申し立ていたしまして、裁判官においてやむを得ない事由があると認めた場合には辞退が認められるということにしているわけでございます。これがまず一つの制度でございます。

 それから、仮にそれが辞退事由に該当しないという場合には、主体的に裁判員として参加してもらえるように理解を得るための努力をすべきことは当然でございますけれども、裁判員になることを強く拒んでおりまして、誠実に裁判員の職務を行うことが期待できないような場合、こういうような場合には、やはり裁判として不公平な裁判をするおそれがあるということといたしまして、当事者の理由を示さない不選任請求、あるいは不公平な裁判をするおそれがあるという不選任請求、こういう手続を使いまして、裁判員から除外されることになるというふうに思われるわけでございます。

 したがいまして、実際上は、裁判員になることを強く拒んでいる人に無理やり裁判員を務めさせるということにはならないというふうに考えております。この議論の過程でも、首に縄をつけてまでやらせるのかという大変強い主張をされた方もおられるわけでございまして、この辺は、ただいま申し上げましたような制度の中で対処をしていくというふうに考えているわけでございます。

漆原委員 裁判員、いろいろな人と話をしますと、協力して裁判所に行ってもいいけれどもという次に出てくる言葉は、一体何日くらい裁判に時間がかかるんですかということが出てくるわけですね。何日くらい仕事を休まなければならないのか、何日くらい身柄を裁判所に持っていかれるのか、こういう素朴な疑問があります。

 したがって、裁判によっては、長くかかるのも短くかかるのもいろいろあろうと思うんですけれども、大体、推進本部で、普通の一般的な裁判で予定をしている裁判日数、こんなものがわかったら教えてもらいたいし、また、裁判員になった人は朝から晩まで裁判所に詰めていなきゃならないのか、あるいは、その裁判の間身柄をどこかに拘束されてうちへ帰れないのかどうか、こんなふうな心配をされている方もあるんですが、いかがでしょうか、その辺。

山崎政府参考人 まず、どこかに身柄を拘束されるのかという点は、拘束はされません。家があればそこから通っていただいても結構でございます。また、遠い方はどこかへ宿泊をしていただく、こういうことになります。

 それから、裁判をどういうふうにやるかはその裁判所がいろいろ決めていくことになりますけれども、この関係で一緒に法律の審議をいただいております刑事訴訟法の中で、裁判員制度につきまして、連日的な開廷をしていくという規定があります。これも連日やると言っているわけじゃございません。連日的にやっていくと。それはやはり裁判員の方の負担、それから訴訟関係者の都合等もございますが、なるべくそれは連日的に行っていくということでございます。

 これが大体どのぐらいの日数になるかということ、先ほどもちょっと聞かれまして、なかなか答えにくいところがあるわけでございますけれども、現在、平均的な事件でいけば三・三カ月かかっている。仮に月に一回開廷をすると大体三回という形になるわけでございます。これが否認事件になりますと、八カ月から九カ月ぐらいかかっているという統計でございます。こうなりますと、毎月一回やっても八回から九回、こういうふうになっていくわけでございます。

 すごく大きな事件はちょっと別として、通常考えられる、そんなに争っていない事件であれば、やはり一日か二日で終わっていくだろうというふうに考えております。

 それから、証人を何人か調べてやっていかなければならないということになれば、それは一週間ぐらいかかるかもしれません。あるいは、もっと重い事件になりますと、もう少しかかるかもしれません。これはちょっとなかなか、予想でございますので、予測でございますので、しかとは申し上げられません。

 ただ、裁判員の方を呼び出すときには、この事件は何日かかる、こういう期日でやりますということを全部お知らせいたしまして、その上で、辞退事由があるか、自分は都合がつかないかどうか、それも全部お聞きした上で決める、こういう形をとっております。その期間中、自分がその仕事から外れてしまった場合には事業が成り立たないとか、その間に自分の結婚式があるとか冠婚葬祭いろいろあるとか、それから介護の問題とか、いろいろ事情があるわけでございますので、予定の日数を勘案してその辞退事由を認めるかどうかということを決めていくわけでございますので、本当にそこで都合のつかない方はやはり辞退をしていただくということになろうかと思います。

漆原委員 国民の負担を軽くするという意味では、辞退事由、国民にとって非常に重要なことだと思います。また、裁判員になる可能性のある国民の皆さんも、どんな場合に辞退できるのかなということを非常に重要に考えておられますので、十六条にいろいろな事由を辞退事由として挙げておられますが、この十六条にそれぞれの事由を辞退事由として掲げた趣旨を説明してもらいたいと思います。

山崎政府参考人 十六条が辞退事由でございますが、一号から六号まで事由がございまして、例えば年齢七十以上の者という記載がございます。あるいは学校教育法上の学生でございますね、学生である者。こういう方については、七十歳以上であるということを言っていただければ、それが証明できれば辞退をすることができるという、いわばこれは客観的な基準でできているものでございます。

 問題は七号でございます。七号につきましては、「次に掲げる事由その他政令で定めるやむを得ない事由があり、」ということで「出頭することが困難な者」こういうふうに記載されております。

 その中で、イからニまで事由が設けられておりまして、これは通常、典型的に起こり得るだろうというものを掲げているわけでございます。

 イが「重い疾病又は傷害」でございますね。それからロが、介護、養育が行われておりまして、その介護、養育がなければ日常生活を営むのに支障がある、そういうような親族等がいるという場合です。それからハが、「その従事する事業における重要な用務であって自らがこれを処理しなければ当該事業に著しい損害が生じるおそれがあるもの」ということになります。それからニが、これが先ほど申し上げました「父母の葬式への出席その他の社会生活上の重要な用務であって他の期日に行うことができないもの」であること。これは、日常生活で通常起こり得るということから、この四つの事由を掲げさせていただいた。それ以外にもいろいろな事由があろうかと思います。

 これは、なかなか典型的と言えるかどうかはちょっと別でございまして、これから、どういう場合があり得るかということを考えまして、それを政令にゆだねて、その中で定めていくということでございます。

 今後、この法案が成立した暁には、さまざまなPR活動をいたしまして、国民の方からいろいろな意見が出てまいります。そういう実態を調査して、この政令の中に、典型的とは言えなくても幾つかの辞退事由を掲げておいて、国民に明らかにしておいた方がいいというものを定めていく、こういうような考え方でこの法律ができているということで御理解を賜りたいと思います。

漆原委員 そうすると、「その他政令で定めるやむを得ない事由」というのは、本来は法律で全部、この七号でばあっと羅列しちゃえばいいんだけれども、しかし、今後どんな事由が起こってくるか、国民の皆さんから聞かなきゃだめだ、そのときのために政令として定める余地を残したんだ、こういう理解でいいんですか。あるいは、今具体的な内容が、こんなものがあるというお考えがあれば、それはそれでお答えいただければ結構ですから。

山崎政府参考人 基本的な考え方は今申し上げたとおりでございますが、この議論の過程の中で、思想、良心の自由あるいは宗教の自由等、憲法上の権利を害することになるような場合、こういうような場合等について、その趣旨が何らかの形で明らかになるような規定を政令の中で設けるべきだという意見がございまして、私どもといたしまして、これは解釈上も、そういう問題、憲法上の権利を害していいということにはなりませんが、それを政令で明確に規定していくということで、その点については、一項目、今具体的に考えているものがございますが、それ以外について、では本当にどういうものがあり得るのかということについては、これからいろいろ国民の方に問いかけをして定めてまいりたいというふうに思っております。

漆原委員 具体的な例を出しますけれども、個人商店を経営している人、中小零細企業の経営者、自分が休んだら仕事をやっていけない、あるいは、たまたま裁判員として予定された時期に仕事が集中している、この仕事を逃したくない、こういうふうな事情はたくさんあると思うんですよね。こういう場合は辞退することができるのかどうか、いかがでしょうか。

山崎政府参考人 先ほど、十六条の七号のハで職業上の理由について申し上げましたけれども、個人商店を営んでいる、あるいは中小企業の経営者であるということ自体だけでは辞退事由には該当しないということでございます。

 ただ、個人商店を営んでいる方とか、あるいは中小企業の経営者については、本人みずからが処理しなければ当該事業について著しい損害が生ずるおそれがあるという場合がどうしてもあるわけでございます。そういうような重要な用務がある場合もあり得ます。そういう場合には辞退事由に当たるというふうに考えております。その審理の期間等との関係でやはり相対的に定まっていくということになろうかと思います。一日ぐらいだったらあけられる、二日ぐらいだったらあけられるという場合は、やっていただくということになろうかと思います。

漆原委員 およそ私は裁判所になんか行ったことがない、裁判所へ行って人を裁くなんという大それたことはしたくない、自信がないというふうに言われる方も無作為抽出の中には多いと思うんですね。そういう、およそ人を裁くなんということは、私、自信がないんだという素朴な感情の方は辞退できるんでしょうか。

山崎政府参考人 今おっしゃられました自信がないという点でございますけれども、自信がないというだけでは辞退事由に該当はしないというふうに考えております。やはり、一般の方、大なり小なりそういう気持ちはお持ちかもしれませんけれども、それは、裁判の方に来ていただいて、裁判所の方でちゃんと懇切丁寧に易しく御説明をして、参加をしていただいて心配のないようにするわけでございますので、それだけで辞退事由に当たるということになりますと、大部分の方が辞退されちゃうということにもなるわけでございます。

 ただ、先ほどちょっと申し上げましたけれども、やはり、裁判員になることを物すごく強く拒んでおりまして、その状態から見て、誠実に裁判員の職務を行うことができない、そういうおそれがあるというような方もおられる可能性がございます。そういう場合には、不公平な裁判をするおそれがあるという理由、あるいは当事者から理由を付さない不選任請求、こういうものをいたしまして、裁判員から除外されていくことになるというふうには考えられますけれども、一般的にそれを許容するということではございません。

漆原委員 先ほど局長は、思想、良心の自由を理由とした辞退は認められる可能性があるというふうな答弁をされましたですね。そうなると、何でもかんでも、思想、良心の自由に反して裁判員になりたくないというようなことで、むしろ濫用的な申し立てがふえて、裁判員の選任に支障を来すのではないか、こういう心配もありますけれども、いかがでしょうか。

山崎政府参考人 思想、信条による拒否という点につきましては、およそ人が人を裁く、こういう制度を自分は許容しないという方、これはまさに思想、良心の自由のことかと思いますけれども、ただ、現実に、では、人が人を裁く制度は全く許容できないというふうに考えられる方が本当にどれだけおられるか。今、こういう裁判制度というのは全部日本にあるわけでございますので、そういう中で、それが本当にたくさんおられるかという点はあろうかと思います。

 こういうことを口実にいろいろ言ってくる方がおられて制度が大丈夫かという御指摘だろうと思いますけれども、私どもといたしましては、この制度の実施までに若干時間を置かせていただいておりますので、その間に精力的に広報活動を行いまして、やはり国民の理解と支持を、関心を深めるということに最大限努力をしたいというふうに思っておりまして、こういうことを行うことによって、御指摘のような事態、こういうことが生じないように最大限努力をしてまいりたいというふうに考えております。

漆原委員 辞退の申し立ての時期についてお伺いしたいと思います。

 辞退事由に当たり、かつ、辞退したいと考えている裁判員の候補者についても、選任手続のために裁判所に赴かなければならない義務を負わせることは、無用の負担になると思われます。裁判員となることを辞退したいという人も一度はどうしても裁判所に出頭しなければならないものかどうか、お伺いしたいと思います。

山崎政府参考人 これは、先ほど手続をちょっと申し上げましたけれども、呼び出すときに質問票をお送りいたします。そのお送りした段階で、やはり自分にはいろいろなこういう事由があるという場合には、そこに記載をしていただいて、それを証明する資料をつけていただいて返送していただくということをまず考えております。

 それから、もちろん、出頭された方について面接をした上で決めるという二つの手続がございまして、今、十六条の七号で掲げておりますところで、例えば重い病気で出頭することができないという方は当然出てこられないわけですので、質問票の返送と医師の診断書、こういうものがあれば、もうそれは出頭していただかなくても辞退事由に当たるということになりますし、ほかの、ここで掲げているものでありましても、その質問票に書いていただいて証明が可能であるというものであれば、来ていただかなくても辞退事由に当たるということになろうかと思います。

 物によっては、来てちゃんとお聞きしなければ辞退事由に当たるかどうかわからないというものもございますので、そういう関係で、来ていただくものと来ていただかなくても判断が可能なものと、両方ございます。

漆原委員 続いて、刑事訴訟法等の一部を改正する法律案についてお尋ねさせてもらいます。

 証拠開示の拡充ということを今回大きく広げているわけなんですが、まず、現行制度のもとでの検察官による証拠開示、これはどのようになっているのか、ここを御説明いただきたいと思います。

山崎政府参考人 現在の刑事訴訟法では、二百九十九条という規定がございまして、証人等の尋問を請求する場合には、その氏名及び住居を知る機会を与え、また証拠書類、証拠物の取り調べ請求をする場合には、これを閲覧する機会を与えなければならないというふうにされております。規定はこれだけしかございません。

 判例で、もう少し違う取り扱いが今解釈上行われているわけでございますが、最高裁判所の判例がございますけれども、これによりますと、裁判所は、一定の場合にはその訴訟指揮に基づいて検察官が所持する証拠の開示を命ずることができるというふうにされておりますけれども、この辺の解釈がさまざまな、なかなかきちっとしていない場面もございまして、その射程範囲等、それから手続等も全部解釈で行われておりますので、これが不十分であるという状況で、余り使われてはいないという状況でございます。

漆原委員 それでは、今回の刑訴法の改正によって検察官の証拠開示はどのように変わるのか、少し詳しく御説明をいただきたいと思います。

山崎政府参考人 今回の刑事訴訟法等の一部を改正する法律案で、この点を手当てしているわけでございます。

 検察官は、公判前整理手続において、被告人に対し、検察官が取り調べ請求をした証拠をまず開示いたしますけれども、これ以外に、検察官が取り調べを請求した証拠の証明力を判断するために重要な一定類型の証拠、あるいは被告人側が明らかにした主張に関連する証拠、これにつきまして被告人側の開示請求があった場合には、その開示の必要性と弊害等を勘案して開示しなければならない、こういう義務を与えております。要するに、請求権と義務を与えているということでございまして、これは訴訟指揮に基づくものではないということでございます。

 訴訟指揮に基づくものでございますと、それが却下されたといたしましても、それについて不服申し立てをすることができないという形になりますけれども、請求権を与えているということになりますと、それは却下された場合には不服申し立てをすることができる、こういうような大きな違いがそこにあるということでございます。

 それから、証拠調べをする時期でございますけれども、刑事訴訟法で開示の時期と範囲について明確なルールを定めておりまして、第一回の公判期日前の段階においても被告人側の請求によって開示されるものとしているわけでございまして、現在では証拠調べの段階に入って初めてそれができるということになるわけですが、それをかなり前倒しにしているという点で大きな特徴を持っているというものでございます。

 それからさらに、検察官側に被告側から証拠開示の請求をいたしまして、それに従わないというような場合には、これは最終的には裁判所の方で裁定をして出させる、こういうような明確な手続をつくり上げたということでございます。

漆原委員 公的弁護制度について質問します。

 弁護士を依頼するのに資力が十分でない、この国民を援助する制度としては、民事の分野では民事法律扶助法が制定され施行されております。ところが、刑事の分野では、公判段階でこそ国選弁護人制度があるものの、被疑者の段階では、資力が十分でないなどの理由でみずから弁護士を選任することのできない者に公費で弁護士を選任する制度はありません。被疑者に対する公的資金を導入した弁護制度導入については、民事法律扶助法の審議の際にもその必要性が強く主張されて、ある意味では宿題として残っておったものであります。その意味で、今回の刑訴法の改正において、被疑者に対し国選弁護制度を導入するというふうにしたことは、まことに意義が深いと思います。

 ただ、被疑者に対する国選弁護制度の対象が、法案ではすべての身柄事件とはされていないわけですね。これはどのような理由によるのか。もう一つ、対象事件ですけれども、当初は、死刑または無期もしくは短期一年以上の懲役または禁錮の罪の事件、こうなっておりますね。その後は、しばらくした後、必要的弁護事件に該当する事件に拡大するというふうになっておるわけなんですが、このように段階的に対象事件を拡大することにした理由は何なんでしょうか。二点お聞きします。

山崎政府参考人 二点お尋ねかと思います。

 最初は、全事件について導入しなかった理由はどうかということでございますけれども、いわゆる司法過疎地域、こういう地域が存在するわけでございますけれども、それから公的資金導入に伴う国民の負担、こういうことを考慮いたしまして、弁護人の援助を受ける必要性が高い被疑者を優先すべきであって、この観点から、法定刑が重い罪で身柄を拘束されている被疑者を対象にするとしたものでございます。

 例えば、弁護士過疎地域でございますと、この制度を設けようといたしましても、それに全部対応し切れないという問題もあるわけでございます。それから、全事件についてということになったときの国民の負担、税金を使うわけでございますので、そういう点も考慮して、必要性の高い者にまず限定をしていこうと考えたわけでございます。

 確かに、短期一年以上、いわゆる法定合議事件について導入をするということにしておりますけれども、一定の期間が過ぎた後は、死刑または無期もしくは長期三年を超える懲役または禁錮に当たる事件、いわゆる必要的弁護事件、そこまで拡大をしていくということを予定しているわけでございます。

 これはやはり、なぜこういうふうにしたかということでございますけれども、先ほど申し上げました司法過疎地域の問題もございます。そういう関係から縮小した範囲で導入をせざるを得ないということでございますけれども、今回、法案を提出させていただいております総合法律支援法において公的弁護制度の運営主体として設けられます日本司法支援センター、こういうところで契約によって弁護士を確保して、司法過疎地域にも事務所を設けるなどいたしまして、そういうことによって初めて人を配置することが可能になるわけでございますので、今、かなりの事件について導入をするということになったら、現実的な手配ができていないおそれもございますので、まず、総合法律支援の法律に基づきまして全国に弁護士を配置いたしまして、その上で、ある程度地盤ができたころに拡大をしていく、こういうことから、二段構えで拡大をしていくというふうに考えたわけでございます。

漆原委員 被疑者に対する国選弁護人の選任時期ですけれども、法案では勾留段階というふうになっていますね。

 今、弁護士会では、当番弁護士制度ということで、逮捕された即日に弁護士が接見する、こういう制度にしているわけなんですけれども、被疑者にとって逮捕された時期というのは一番不安で、そこで場合によっては意に反する供述がなされる可能性もないわけではないわけですね。そういう意味で、やはり身柄を拘束された、勾留じゃなくて逮捕の段階から弁護人を選任する制度とすべきではないのかな、もう一歩、身柄を拘束されたら即座に国選弁護人が選任できるような制度にした方が、冤罪事件も防げる、また被疑者に国選弁護人を付する趣旨にも合致するのではないかというふうに私は思うんですが、そうではなくて勾留段階からとされた理由をお尋ねしたいと思います。

山崎政府参考人 被疑者弁護につきましては、まず資力の要件を審査いたしますので、その申し出をさせたりするわけでございます。この手続がまず必要であるということ。それから、あるいは資力がある方についても、弁護士会の方に私選の弁護士を選任するというような依頼をまずするわけでございます、それがうまくいかなかったという場合に初めて弁護士をつけるという形になるわけでございます。そうしますと、四十八時間とか七十二時間という非常に短い期間内でこの手続を全部終えることができるのかどうか、速やかに終えられるかどうかという問題が残ります。

 また、最終的にはこれは裁判所の方で選任をするわけでございますので、その短い間に、裁判所に判断をしてもらうために行ったり来たりの押送をするわけでございますが、これが広い地域でありますと、本当にそれで間に合うのかどうか、できるのかどうかという物理的な問題もいろいろ抱えるわけでございます。

 こういうような実務的な点を考えて、最終的には勾留段階、そこで初めて裁判官と会うわけでございますので、その段階であわせて選任の要件についても判断をしてもらうのが一番実務的に可能な方法であろうということから、こういうことにしたわけでございます。

 これにつきましては、私どもの検討会の方でも、司法過疎地域に出張に行っていただきまして、そこの現地の方の意見も全部お聞きをした上で、本当に可能かどうかということから判断をさせていただいたということでございますので、御理解を賜りたいというふうに思います。

漆原委員 以上で終わります。ありがとうございました。

柳本委員長 御苦労さまでした。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時三分散会


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