衆議院

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第13号 平成16年4月13日(火曜日)

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平成十六年四月十三日(火曜日)

    午前十時三分開議

 出席委員

   委員長 柳本 卓治君

   理事 塩崎 恭久君 理事 下村 博文君

   理事 森岡 正宏君 理事 与謝野 馨君

   理事 佐々木秀典君 理事 永田 寿康君

   理事 山内おさむ君 理事 漆原 良夫君

      小野寺五典君    左藤  章君

      佐藤  勉君    桜井 郁三君

      中野  清君    早川 忠孝君

      平沢 勝栄君    保利 耕輔君

      松島みどり君    水野 賢一君

      森山 眞弓君    保岡 興治君

      山際大志郎君    泉  房穂君

      枝野 幸男君    鎌田さゆり君

      河村たかし君    小林千代美君

      小宮山洋子君    辻   惠君

      中井  洽君    中野  譲君

      松野 信夫君    上田  勇君

      富田 茂之君    川上 義博君

    …………………………………

   法務大臣         野沢 太三君

   法務副大臣        実川 幸夫君

   法務大臣政務官      中野  清君

   最高裁判所事務総局刑事局長  大野市太郎君

   政府参考人

   (司法制度改革推進本部事務局長)  山崎  潮君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    樋渡 利秋君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    横田 尤孝君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)  北井久美子君

   法務委員会専門員     横田 猛雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十三日

 辞任         補欠選任

  柳澤 伯夫君     小野寺五典君

  加藤 公一君     中野  譲君

同日

 辞任         補欠選任

  小野寺五典君     柳澤 伯夫君

  中野  譲君     加藤 公一君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 裁判員の参加する刑事裁判に関する法律案(内閣提出第六七号)

 刑事訴訟法等の一部を改正する法律案(内閣提出第六八号)


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     ――――◇―――――

柳本委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律案及び刑事訴訟法等の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りをいたします。

 ただいま議題となっております両案審査のため、明十四日水曜日、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

柳本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

柳本委員長 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として司法制度改革推進本部事務局長山崎潮君、法務省刑事局長樋渡利秋君、法務省矯正局長横田尤孝君、厚生労働省大臣官房審議官北井久美子君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

柳本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

柳本委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局大野刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

柳本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

柳本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山内おさむ君。

山内委員 民主党の山内おさむでございます。

 先日、アメリカの大リーグのニューヨーク・ヤンキースの開幕戦で、ジュリアーニ前ニューヨーク市長が始球式をされました。アメリカも民主主義がしっかり根づいている国であるなと思うと同時に、やはりグローバルな、世界を見ているなという思いで、小泉さんとの始球式対決を楽しみに見ていたんですが、今回の裁判員法について、たくさんの欠格事由とか、あるいは就職禁止事由、それから辞退事由が書いてございます。三権分立の立場、それから本当に裁判員になっていただくにはふさわしくないなという方が書いてあるのは間違いないんですけれども、余りにもたくさん書き込み過ぎているのじゃないかと思っています。

 このジュリアーニ前市長が市長就任時に陪審員にくじで当たりまして、それも二回連続で当たったそうなんですけれども、陪審員として彼のキャリアにまた新たな経験を重ねていただいたということで、私は、そういう何百万の人口のニューヨーク市の市長さんまで陪審員として何日間も休んで陪審裁判に当たっていく、こういうアメリカの制度についてはやはり見習うべきところがあるな。それは、まさに今私たちが刑事裁判に裁判員制度を入れ込んで、そして市民が司法に積極的にかかわっていく、そういう制度を今この私たちがつくり上げていくんだ、そういう思いで質疑をさせていただいているところでございます。

 そういう点からいたしますと、たくさんの辞退事由等を書き込み過ぎて、私は市民が裁判にかかわっていくということは権利であると思っているのに、その権利を、最初からあなた方は来てほしくありませんよというような書き方をするというのは、国民の権利を狭める。つまり、そういう辞退事由等についてはもっと狭く解釈して、たくさんの国民に刑事手続に参加をしてもらって、自分たちが刑事司法を国民として支えていくんだ、そういう思いで裁判員制度をつくり上げたいのですが、政府の御見解をお願いします。

野沢国務大臣 ただいま委員はジュリアーニ前ニューヨーク市長さんの件をお引き合いに出されましたが、実は私も、ジュリアーニ市長さんが就任当時、犯罪を激減させたという、かの破れ窓理論の適用等によりまして大変な実績を上げられたということについては大変実は敬意を表しておる一人でございますが、今、裁判にかかわるジュリアーニさんの関与につきましては初めてお伺いをいたしまして、今後ともそういった事例については参考にさせていただきたいと考えております。

 今委員御指摘の欠格事由に関しまして、被告人の権利の保障を含めた裁判の公正及びこれに対する国民の信頼を確保するというために、職務遂行能力または人格的信用に欠ける者は裁判員になることはできない、これはやむを得ないかなと思っております。また、就職禁止事由は、三権分立の観点と国民一般の感覚を裁判に反映させるという裁判員制度の趣旨を実現するという観点等から、政策的に一定の地位にある者は裁判員の職務につくことはできないとするものでございます。さらにまた、辞退事由を挙げておりますけれども、これは、国民の負担を過重にしないという観点ないしは義務負担の公平を図る観点、さらには重要な公務を全うする必要から、一定の事由がある場合に限って裁判員となることを辞退することを認めるものでございます。

 裁判員制度の趣旨に照らしますと、なるべく広い範囲の国民に参加していただくことが望ましいところではございますが、ただいま申し上げたとおり、欠格事由、就職禁止事由及び辞退事由は十分合理性のある根拠を持って定めているところでございまして、それが広過ぎるということはないと考えておるところでございます。

山内委員 それでは、欠格事由から、私の方で気づいた点、少し政府に問いただしたいと思っています。

 まず、十四条一項に、中学を卒業していなければ裁判員になれないという規定がございますが、これはどういう趣旨なんですか。

山崎政府参考人 これにつきましては、裁判員制度という、司法権について、司法について判断を下すということになりますので、そういう点から、裁判の内容について基本的に理解が得られる、そういうようなものをお持ちかどうかということ、これを基礎とするということでございまして、そういう意味で、裁判所の方でそういう同等のものをお持ちかどうかということも判断をするということになろうかと思います。

山内委員 それは差別じゃないんですか。どうして、中学を出ている人が社会常識があって、刑事裁判について国民の意識を反映できるというような仕組みを、中学を卒業したかどうかだけで決めるんですか。

山崎政府参考人 通常は、義務教育を終了すれば、その義務教育で教えているものについて理解は可能であるということを前提にして組み立てられているんだろうと思うんですね。そういうふうに判断をする。それからもう一つ、じゃ、卒業をされていない方であっても、それと同等の能力を備えている方も当然おられるわけでございますので、その点については判断をして裁判員になっていただく、こういうシステムでございまして、それは平等性を欠くということではないと思います。必要な能力だということです。

山内委員 日本の国の運営を左右する国会議員の選挙を二十以上の国民にすべて保障しているわけです。その関係からはどうですか。

山崎政府参考人 選挙権の行使の問題とは違うんだろうと思うんですね。この場合には、司法的な判断を一緒になってやるということでございますので、かなり専門的にわたることもあるわけでございます。そういう点について基本的な理解が得られるように、それをしないと被告人の人権の問題にもなるわけでございますので、そういう点を考慮いたしまして、最低限のものということで、こういうものを設けているわけでございます。

山内委員 しかし、ただし書きで「義務教育を終了した者と同等以上の学識を有する者は、この限りでない。」と書いているじゃないですか。

 では、それをだれが判断するんですか。

山崎政府参考人 これは裁判ですから、裁判所の方で判断をいただくということでございます。

山内委員 それは何か試験でもするんですか。

山崎政府参考人 試験をすることはございません。面接をいたしまして、そこのやりとりで判断をしていくということでございます。

山内委員 中学を卒業したのと同程度の能力があるかどうかを、試験もしないで裁判官が裁判員に選任するかどうか、たった、何時間ですか、一時間もとれるんですか。例えば裁判員を六人と六人で十二人選任するときに、そんな、裁判官自身に、義務教育を終了したと同程度の学識を有する云々というような判断ができるんですか。

山崎政府参考人 これは、裁判を一緒に行っていくわけでございますので、そういうことの本当に基本的な理解というんですか、そういうことができるかどうかという観点から行うことになろうかと思います。それはやはり、裁判が現実に一緒にできなければどうしようもなくなってしまうわけでございますので、そういう観点から、通常の会話が許されるということになれば、通常の考え方、会話ができるという形になれば、それは中学校の卒業と同等の能力を備えているということになるんだろうというふうに思っております。

山内委員 だとしたら、「学校教育法に定める義務教育を終了しない者。」という部分は削っていいんじゃないんですか。つまり、自分たち裁判官と一緒になって裁判を立派に判決まで行く、そういう能力があるかどうかを判断して決めますと言われるんだったら、中卒以上という部分だけでも削除したらどうですか。

山崎政府参考人 これは、中学を卒業されている方は、一般的に義務教育を終わっているわけでございますから、その能力はあるということを前提に、そこのところは御質問はしないという形になるわけでございまして、これを外してしまいますと、全員について全部確かめなければならないということになるわけでございます。制度の組み立て方の問題でございますので、仮に中学を卒業されていない方であっても、それは質問手続内で、ああこれなら大丈夫だという方は、それはやっていただく、こういう組み立て方が妥当であるというふうに私は思っております。

山内委員 では、同じところに書いてある、心身の故障のためにできない方という記載がありますけれども、これは目が不自由な方とか耳が不自由な方をはなから裁判員として排除する規定なんじゃないんですか。

山崎政府参考人 「心身の故障」と書かれておりますけれども、それによって職務の遂行に著しい支障があると認められる場合、この場合を欠格事由というふうにしているだけでございまして、著しい支障がない限りはやっていただくという形になります。

山内委員 ですから、では私の聞いた人たちはどうなるんですか。

山崎政府参考人 それは事案によると思いますけれども、例えば、現場のいろいろな写真とか状況、こういうものを全部目で見てそれで判断をせざるを得ない微妙な事件ということを仮に想定いたしますと、目の不自由な方について、本当にそれが判断できるかという問題にはなり得るだろう。それから、やはり音の問題でも、耳の問題もございますけれども、声がだれの声であるかとか、そういうものが決め手になるような事件ということももちろんございます。

 ただ、一般的に、では目の見えない方は全部だめか、耳の不自由な方はだめだということではないということでございます。

山内委員 だとしたら、この書きぶりは訂正されたらどうなんですか。つまり、裁判所は、事案ごとによって、たとえ口の不自由な方でもこの裁判については最後の判決まで一緒にやれるような仕組みを裁判員法はつくり上げますよというのが今の答弁だとしたら、最初から心身の故障がある人はもうだめだよというような規定は書かれない方がいいんじゃないんですか。

山崎政府参考人 これは心身の故障のある方はだめだと言っているわけではございません。著しい支障でございますので、そういう方については、やはり職務をお務めいただくのは御本人にも大変苦痛であろうということですし、それから被告人の人権の問題もございますので、そういうことも総合判断をいたしましてその要件にしているということでございますので、御理解を賜りたいと思います。

山内委員 例えば刑事手続で、今、手話の仕組みができていますよね。それから、目が不自由な方には点字で裁判をしたりしています。これは実際にしています。

 そういう仕組みを今の刑事手続でもとっているわけですよ。身柄を拘束されて、死刑になるかもしれない、無期になるかもしれないという本人についてそういう仕組みをとっているわけですから、それを裁く裁判官あるいは裁判員についても、そういう手話とか点字とかを取り込んでいく、そういう気持ちはないんですか。

山崎政府参考人 ですから、この法案では「著しい支障」というふうに申し上げているわけでございまして、そういう補助的なものを使えばそれは可能であるということになれば、それは著しい支障とは言えなくなるんだろうと思います。

山内委員 ということは、手話とか点字とか、そういうものについても積極的に導入をしていくというふうに政府としての答弁を承っていいということですね。

山崎政府参考人 その補助的なものを利用することによって判断が可能であるという方については、裁判員になっていただくということでございます。

山内委員 就業禁止事由の点で大変ひっかかる点があるんですが、審議官クラス以上のいわゆる高級官僚については裁判員になれないという規定がございますけれども、これの立法趣旨は何でしょうか。

山崎政府参考人 これは、基本的には三権分立の観点だということになるわけでございますけれども、片や、やはり裁判員になっていただく方は、なるべく広い範囲からなっていただきたいという要請もございます。そういうことから、そのバランスをとっているわけでございます。

 基本的には、行政の中枢にある者は裁判の中に入っていくということが三権分立の関係からいいかどうかという問題がございますが、全員がそれはだめだということは、これはまた狭めてしまうことにもなります。したがいまして、審議官級以上の者というふうに限定をしておりますけれども、やはり審議官の所掌事務は、重要事項についての企画及び立案に参画する職ということでございまして、いわゆる行政の、重要な行政権の行使について意思決定をするという者に当たるわけでございますので、それ以上の者については御遠慮を願う、それ以下の者についてはそれは当然裁判員となっても構わない、こういうことでございます。

山内委員 行政の意思決定をするのは、大臣あるいは政治家であればいいんですよ。

 今の見解は、官僚主義を温存するものだと思いますよ、私は。他人の預けた年金資金を勝手に自分たちの飲み食いや住宅資金に使っておるじゃないですか。そういう高級官僚たちを、今の見解は温存しようというものでしょう。だって、国の中枢にいるから裁判員になれないという議論にはならないでしょう。

山崎政府参考人 これは、この条文を見ていただきたいんですけれども、国会議員の方も就職禁止事由に当たると書かれております。要するに、三権の関係で、みんな独立しているわけでございますので、国会議員は立法府の方でございます。立法府の方が裁判の中に入らない方がいい、こういう配慮でございます。それから、行政権もやはり裁判の中に入らない方がいい。行政と裁判所でいろいろ裁判をやることもあるわけでございます。ただ、全員についてそれを通したら、公務員は大変多いわけでございまして、狭めてしまうわけでございます。したがいまして、一定の線を画しているということでございます。

 審議官以上の方は、政策立案、内部意思決定をする責任者でございます。最終的にはもちろん大臣がお決めになるということには間違いございませんけれども、第一次的な判断はそこで行われるという意味では、やはり幹部でございます。したがいまして、そういう判断権を持っている方については御遠慮を願う、こういうことでございます。

山内委員 私は、そういう審議官以上で社会常識を知らない人たちに、裁判所に時々行って、そして、ああ、庶民はこういう動機でこんな事件を起こすんだな、そういう意識がないと、年金を払っていないタレントを平気で使うようなとぼけた国家運営がされると思いますよ。

 政治のいろいろな場にいろいろな層の国民が関与していく。その一つである司法に、初めて国民が判断をするという立場で入っていくわけですから、私はこの裁判員制度を本当にたくさんの人を裁判所に来ていただくという制度にするんだったら、私は就業禁止規定、もっとたくさん言いたいんですけれども、就業禁止規定の中で書き込んであるようなのをできるだけ将来的には狭めていく、そういう方向性が私は必要だと思うんですが、政府の側で答弁いただけませんか。

山崎政府参考人 これとほぼ同じような就職禁止事由を持っているのは、検察審査会制度でございます。これは、五十年以上行われているわけでございますけれども、これに関して、今まで一度もそういうことを言われたことはないわけでございます。

 今回、それとほぼ平仄を合わせているわけでございますけれども、制度でございますので、これを運営していっていろいろな問題が生ずるということになれば、それはもう変えていくことについてはやぶさかではないということになりますけれども、現時点ではこの形でスタートするべきだというふうに考えております。

山内委員 辞退事由の点で二、三点押さえておきたいと思いますが、七十歳以上の方については辞退の申し立てができるということなんですが、この立法趣旨を伺いたいと思います。

山崎政府参考人 確かに七十歳以上が辞退ができるということになっておりますけれども、一般的に言えば、高齢者にとって、裁判員の職務を遂行することを義務とすることは、やはり肉体的、精神的な負担が大きいということが通常考えられるわけでございます。したがいまして、高齢者を辞退事由の一類型として掲げたものでございます。

 これにつきましては、御本人の意思が入りますので、七十歳を超えられた方でも、十分に職務が務まるという方は辞退事由の申し出をしなければいいということになりますし、やはり負担にたえられないという方は、言っていただければ辞退を許す、こういう形で考えておるわけでございます。

山内委員 十六条、これは七号に、裁判員選任手続の期日に出頭することが困難な者ということでいろいろと書いてあるんですが、その中で、介護または養育が行われなければ日常生活を営むのに支障がある同居の親族の介護、養育という記載がございます。これについては、同居していない親族の介護、こういうときには辞退できないのですか。

山崎政府参考人 この十六条七号のイロハニ、これの列挙事由は、典型的に考えられるものを法律で明確にしたということでございます。

 この七号のところの柱書きのところに「その他政令で定めるやむを得ない事由」がございますけれども、例えば、同居はしておりませんけれどもすぐ近くに要介護の方がおられるという場合も考えられるわけでございます。そういう場合にどうなるかということでございますけれども、そういうような場合には、実質としては辞退できることとすべきであるというふうに考えられるわけでございまして、こういうことを踏まえまして政令を検討していきたいということでございます。

山内委員 その政令ですけれども、具体的に、いつごろどういうものが国会の場で見させていただけるんでしょうか。

山崎政府参考人 これにつきましては、まず、法律が成立をいたしますと、要するに、周知徹底の活動が、広報活動でございますけれども、これが必要になるわけでございます。それに伴いまして、やはり、辞退事由として国民の方がどのようなものを本当に欲しているのか、この典型事由以外に。

 そういうこともいろいろな場面からお聞きをして、そういうことを集約した上で政令を定めるということになりますので、現時点ではいつということは申し上げられませんけれども、これは、ある程度の時期には国民はこういうことで辞退ができるんだということがわからなければならないことでございますので、施行ぎりぎりというわけにはいかないだろう、もう少し前には決めざるを得ない、こういうようなことを考えているわけでございます。

山内委員 大臣、今、何点か山崎さんと議論しましたけれども、この議論の過程で山崎さんが、欠格事由とか就業禁止事由あるいは辞退事由については今のところはこのままでいいんじゃないかというような発言があるんですが、その方向性として、それを国民がたくさん参加していただくためにその事由を狭めていく、つまり、たくさんの人に来ていただくような仕組みに今後見直しをしていこう、例えば三年単位ぐらいで見直しをしていこうというような考えは大臣の気持ちの中にありませんか。

野沢国務大臣 御趣旨のとおり、できるだけ多くの国民の皆様に御参加をいただくということがこの制度の一つの基本になっていることは私も同感でございまして、今御指摘の各項目の事項につきましては、実施の過程の中で十分配慮しながら改善を図っていく必要があろうかと思っております。これは何も二年とか三年とかということではなく、絶えず、法律である以上は、当然、これがより的確な効果を上げるための手続でございますから、委員御指摘のような方向でこれからも進めていく必要があろうかと認識しております。

山内委員 その発言を前提にお聞きしますけれども、「その他政令で定めるやむを得ない事由」のことなんですが、政府の方で政令で思想、信条による辞退を認める方針であると聞いています。この思想、信条による辞退に当てはまる理由とは具体的に大体どういうようなことをイメージしておられるのか、お聞きしたいと思います。

山崎政府参考人 そのイメージでございますけれども、要は、人が人を裁くようなそういう制度、そのことについて自分としては一切認容できない、こういう信条をお持ちの方ということがイメージでございます。ただ、私はやりたくない、きついから嫌だ、こういう方は当たらないというふうに考えております。

山内委員 裁判官が、あなたはどういう考えをお持ちですかとか、信条あるいは思想にかかわる部分を権力を持っている側が国民に対して問う、そしてそういう話を話させる、そういうこと自体が憲法の禁じている思想、信条を侵してはいけないということではないんですか。

山崎政府参考人 これは、御本人からそういう申し出があれば裁判所の方でその内容についてお聞きするということはあるかと思いますけれども、一方的に、そういう状況でもないのに、裁判所の方から、あなたはどういう信条をお持ちですかと聞くことではないというふうに思います。ただ、手続上、そこでいろいろ質問をして、いろいろやるということができることにもちろん法文上なっているわけでございます。

 ただ、問われた方も正当な理由があればそれを断ることもできるということになっておりまして、そこは、みずから裁判所が全部を聞いて回るということでもないし、仮にそういう必要があっても、答えるについて拒否ができるということにもなっているわけでございまして、そこでバランスがちゃんときちっととれているというふうに考えております。

山内委員 司法制度改革審議会の会長を務められた佐藤教授は、そもそも裁判官が個人の思想、信条を尋ねること自体は違憲であるというような発言をされていますが、このことを聞いてどう思われますか。

山崎政府参考人 それは、御本人からそういう申し出があればそれはどういうことかと確かめること、これは許されることだと私は思います。

山内委員 もうお一方、東大の名誉教授の芦部先生の話、説なんですが、国民が裁判員に選ばれるということについては、それは権利である、その権利について、あなたからいろいろ話を聞いたけれども、あなたの思想はこうだから裁判員として不向きです、やめてください、そういう不利益に扱うこと自体を問題だと芦部先生は言っておられるんですが、この点についてはどうですか。

山崎政府参考人 この点につきましては、裁判員になることが権利であるという規定をしていないわけでございます。逆に、無作為抽出をして国民の方にそれを義務としてお願いするということでございまして、ですから、そういう関係からいっても、その点についてお聞きをする、辞退するかどうかという事由でお聞きをするということは、別に権利を害することに私はならないというふうに考えております。

山内委員 しかし、裁判官が裁判員候補者の皆さんに問いかけをして、この人は思想的に裁判員には無理だなとか、この人は考え方が裁判所の考え方ともう真っ向から違うから不適格だというような判断を裁判官自身に、その問いかけをする裁判官自身に負わせるということは、どうなんでしょうか、やはり難しいんじゃないんですか。もっと細切れで、詳しく、こういう場合にはいろいろな話をして辞退を認めてあげなさいよというようなガイドラインができていなければ、それは旭川の裁判官と那覇の裁判官と、辞退を認める裁判官の運用が私は違ってくると思うんですが、どうですか。

山崎政府参考人 しかし、思想、良心の自由について、どういう場合には許され、どういう場合には許されないと、それを事細かに規定すること自体が難しいだろうと私は思います。やはり、最終的にそういうものに当たるか当たらないかというのは判断をしていただく、こういう構造しかないだろうというふうに思っております。

山内委員 ちょっと時間がなくなったんですが、従業員が社長に、社長、私、裁判員に呼ばれましたので休みを十日ほどとらせてくださいと頼んだときに、私は、今のアンケートの結果からすると、結構、会社の社長が、辞退できるものだったらやめさせてもらってこいと言うと思うんですよ。そういう人をふやしたいんですか。そういう人をたくさんつくりたいんですか。

 私は、この三十分の議論をやっていて、そういう意識が政府にないと私は思うんですよ。確かに、退職者と主婦しか裁判員になれないというような制度を皆さんの方でつくろうとしているんじゃないかと思っているんですけれども、もしそれが間違った指摘だったらまた違う言い方もさせていただきますけれども。

 たとえ忙しい人でも裁判員になり得る制度づくりというのが私はやはり必要だと思うし、そのことを何百年も続いているアメリカの刑事司法手続は私たちに教訓として教えていると思っています。大臣も、見直しを含めていろいろなことを考えていく、限定的に欠格事由あるいは就業禁止事由、辞退事由を考えていないとおっしゃったわけですから、これは今、市民参加の障壁をしっかりと取り払って、どうにかして多くの国民が裁判員になり得る制度を私は政府につくってもらいたい。私たちもそのための修正案協議にこれから入らせていただこうと思う、そのことを述べさせていただきまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

柳本委員長 泉房穂君。

泉(房)委員 民主党の泉房穂です。

 きょうは一時間の時間をいただきました。私自身、今回の裁判員制度につきましては、本当に、七年前弁護士になったときに、こういった市民参加の裁判員制度ができるとは夢にも思っていませんでした。今回、こういった制度を導入という審議に当たりまして、市民参加というものが本当に意味のある、制度趣旨にかなったものになるために、きょうの審議の時間を使わせていただきたいという思いであります。

 私が思いますに、今回の裁判員制度ですが、多様な方、多様な民意を裁判制度に反映させていくということだと思うんですが、どうしてそれが必要かと私なりに理解しますと、大きく二つ思います。

 一つは、これまでのような職業裁判官だけにいわゆる事実認定とか量刑を任すのではなくて、やはり普通に暮らしている市民の方々の声とかを反映した方が望ましいという趣旨だろうと思います。

 実際、弁護士をしておりまして感じますのは、例えば刑事弁護の、性犯罪事件などの場合、男性の年配の裁判官の場合、例えば、夜中にミニスカートで女性が歩いていたから強姦に遭ったとしても女性の側に落ち度があるというようなニュアンスの発言をなさる裁判官もおられます。そのあたりにつきましては、恐らく、女性の視点とか、今どきといいますか、今の時代をちゃんと理解していれば、そういった発言はないのかなと思うこともよくあります。

 また、殺人事件などで、私自身は、障害者をお持ちの方が身内の方を殺した事件を幾つもやりました。そういったときに感じますのは、本当に、障害を持った親御さんとか、例えば介護に大変に苦労されている方が殺人事件に至る苦悩というものにつきまして、果たしてどの程度、裁判官が想像力が及ぶのかという問題であります。

 また、障害をお持ちの方自身が犯罪を起こす事例も間々あります。そういったときに、障害をお持ちの方の意見、また障害を抱えた御家族の意見、介護に大変な方の御意見がちゃんと裁判に反映されれば、量刑上も、執行猶予にするのかどうかとか、懲役何年にするかというときにも、やはりそういった視点があれば現状よりもなお国民の民意に沿ったようなものになるのではないかと感じる次第です。

 この点については、要するに、裁判制度につきましては法的知識と判断能力が極めて重要でありまして、これまでの職業裁判官は確かにその二つの面は持っていると思います。たくさん勉強をし、法律知識もある、またいわゆる判断能力もたけている。しかしながら、それだけでは不十分である。むしろ普通に暮らしている方の素朴な感覚とかまたいろいろな苦労というものをやはり裁判制度に反映してこそ、妥当な事実認定、妥当な量刑ができるという価値判断にこの裁判員制度はあると思うわけです。

 とすれば、まさに、この裁判員制度の導入に当たって、ぜひとも参加していただきたいのは、女性の方であったり、障害をお持ちの方であったり、また介護で御苦労されている方自身がこの裁判員制度の中の一人として入っていくことによって、この本来の趣旨がかなうのではないかと私は思っています。

 また、今回の裁判員制度につきましては、やりたい人がするというような選択制ではなくて、新たな義務として裁判員という義務を課すわけであります。新たな義務を課すということは、その義務を履行しようとした場合に、その義務の履行ができるようなやはり公の支援が不可欠だと思います。例えば、勤労の義務を課すのであれば、働きたいと思っても働くところがない、そうであれば国はやはり働く場所を提供していく責任があると思います。子供に教育を受けされる義務を負わすのであれば、なかなか経済的に厳しくても、経済的な支援を伴って、子供を学校に行かせられるように国の責任があると思います。

 とすれば、この裁判員制度も、裁判員という義務を課す以上、障害をお持ちの方であったとしても、また育児や介護で御苦労をなさっている方であったとしても、何とか辞退せずに裁判員として来てくださいというようなやはり新たな支援策が必要であろうと私は思います。そういった支援策もないままに単に新たな義務だけを課すというのは、バランスを欠いているのではなかろうかと思います。

 私は、今申し上げた二点。一点は、妥当な結論を得るためにも、ぜひとも女性や障害をお持ちの方や介護にかかわっている方の参加が必要である、また新たな義務を課す以上、新たな支援策が必要である、この視点でもってきょうの質問に入らせていただきます。

 具体的にイメージしますと、例えば小さな子供を抱えた方が裁判員になったときに、果たして行けるのかと考えます。私自身、今四十で、遅まきながら初めての子供を授かり、今一歳に満たない娘がおりますが、一時保育を預けるのも大変です。子供は本当にいつけがをするかもわからない中、なかなか目も離せないという中で、果たして裁判員制度になったときにすぐ行けるかというと、やはりちゅうちょすると思います。そういったときに安心して預けられるような一時保育の場所であるとか、そういったものを確保して初めて裁判員として行けるんだろうと思うわけです。

 また、お年寄りの介護をしている方の場合であっても、ではおじいちゃん、おばあちゃんの面倒を見ずに裁判所に行けるかというと、なかなかそう容易ではありません。ただ、今の制度の中では、デイサービスの制度などもあります。そういった活用が考えられてしかるべきだと思います。

 また、お年寄りの方で足が悪い、しかししっかり判断能力もある方の場合、裁判所に行くことさえできれば裁判員になれると思います。そういったときの移動手段をどのように確保していくのかという視点も重要であろうと思います。

 また、障害をお持ちの方について、先ほど山内議員の方からもありましたが、障害を持っていたとしてもサポートがあれば裁判員としての職務が可能であれば、そのサポート体制をやはりとっていくべきだろうと私は思っています。

 障害を抱えた御家族についても、介護の場合と同様、そういった障害児や障害者を一日、数日間、きっちりと安心したところでそういったお世話をいただけるようなデイサービスもありますので、そういった活用によってそういった御家族が裁判員になれていくと思います。

 また、仕事を持っている方については、これまでも議論がなされたところであります。

 こういったことを考えますに、この裁判員制度の導入に当たっては、繰り返しになりますが、そういったいろいろな困難といいますか支障のある方を、いかにしてそういった支障を減らしていくのか、公的支援をしていくかという視点が極めて重要であろうと思います。

 この点につきまして、まず法務大臣に、こういった参加しやすい制度づくりの必要性、またその重要性の御認識をお伺いしたいと思います。

野沢国務大臣 裁判員制度の趣旨にかんがみまして、幅広い国民の皆様に裁判員になっていただくことは極めて重要であると考えております。

 さまざまな事情を抱えております一般の国民が裁判員として参加しやすくするためには、ただいま委員御指摘のように、いろいろな制度を活用いたしまして、これを取り入れることによりまして参加がしやすくなるということが考えられるわけでございますが、この法案の中においても、国民が裁判員として参加しやすくする制度を設けているところでございますが、その他の具体的な工夫につきましては、裁判員となることについて辞退が認められる事由、あるいは裁判員となる者の負担、財政事情、国民の意識等を勘案しまして、今後さらに検討を重ねていく必要があると考えております。

泉(房)委員 この問題につきましては先ほどの山内議員からも指摘がありましたが、辞退をしやすくするのではなくて、辞退しなくても、裁判員になれるような方向で検討すべきだと思います。そのためには、施行までにこれからもいろいろ議論もあると思いますが、やはり新たな義務を課す以上、新たな支援策、それに伴う費用負担も含めてですけれども、お金の問題もやはり重要だと思いますので、何の制度もつくらずに義務だけ課すのではなくて、新たな支援策というものを前向きに検討すべきだと思いますが、この点、裁判員制度の導入に当たってやはり支援策ということをやっていくという決意のほどをお伺いしたく、改めて大臣の方お願いいたします。

野沢国務大臣 新しい制度でございますので、今委員御指摘のようないろいろな視点から、施設の充実もございましょうし、あるいは介護の制度を活用した人的な支援もあろうかと思いますし、それから今御指摘の資金あるいは予算上の裏づけ、こういったあらゆる面から、この制度の構築に向けてこれから具体的な検討に入っていく必要があろうかと思っております。

 そのためにもひとつ、この国会におきまして、今さまざまな御意見をちょうだいする中から、具体的な政令あるいは規則、さらなる他の制度に対する支援のお願いといったものを含めて、具体的にこの制度が根づくような形で改善、改良を努めていく必要があろうと思っております。

泉(房)委員 この問題意識につきましては、これまでも審議なされておりますし、例えば、裁判所に託児所や託老所ができないかという指摘もなされております。私もそうなればいいと思いますし、現実にアメリカなどではそういった育児施設もたくさんできておるようであります。

 しかしながら、いきなりそうはいかなくても、今あるシステム、例えば一時保育のシステム、デイサービスのシステム、そういった今あるシステムを活用するという工夫によっても、ある程度参加しやすい制度づくりができるだろうと思っております。

 この点につきまして、特にこの問題につきまして詳しいといいますか中心的な官庁であります厚生労働省に対しまして、こういった市民が裁判に参加しやすくするような社会資源としてどういったシステムがあるのか、どういった活用が可能なのか、そうした視点からお伺いしたいと思います。

北井政府参考人 お答えを申し上げます。

 裁判員に選任された方が、その御家族の中に、介護が必要なお年寄りであるとか障害をお持ちの方あるいは保育が必要な小さな子供さんがおられる場合に、裁判員として活動を行おうとする場合には、やはり一時的に介護あるいは保育が必要になると考えております。

 そのような一時的に預かるサービスとしてどのようなものがあるかというお尋ねでございますけれども、まず、就学前のお子さんに関しましては、今も御指摘がございましたように、一時保育や延長保育などの保育サービスの利用が可能でございます。それから、小学校に入られた後の低学年のお子様の放課後といったようなことにつきましては、ショートステイであるとかトワイライトステイといったような短期の支援事業の利用が可能でございますし、また児童館の活用も可能かと考えます。また、会員間で育児の相互援助活動を行っておりますファミリーサポートセンターがかなりの地域にございます。そうしたことも可能かと思っております。

 それから、お年寄りにつきましては、要介護状態にあるお年寄りの介護につきましては、ホームヘルプであるとかデイサービスのサービスの利用が可能でございます。また、要介護状態にまで至っていない高齢者につきましても、かなりの市町村におきまして地域の支え合い事業が行われておりますので、そうしたサービスの利用も可能かというふうに考えます。

 また、障害者につきましても、ショートステイやホームヘルプなどのサービスの利用が可能でございます。

 厚生労働省といたしましては、これらのサービスにつきまして、それぞれ計画的な推進に努めているところでございまして、今後とも、必要なサービスの充実といったことに努めてまいりたいというふうに考えております。

泉(房)委員 厚生労働省でいろいろシステムのことは理解しましたが、この裁判員制度につきまして、まず小学校のお子さんをお持ちの場合、今、学童保育というのがありますけれども、こういった裁判員制度の場合に、やはり一時的に学童保育が使えたら便利だろうと思いますので、一時的な学童保育というようなシステムを御検討願いたいということを申し添えます。

 またもう一点、介護認定を受けていなくてもというお話が今ありましたが、具体的に考えますと、介護を要するとまでは言いにくいけれども、一緒に暮らしているおじいちゃん、おばあちゃんのお昼御飯、晩御飯をつくらなあかん、そういう状況で裁判へ行けるかというと、なかなか行きにくいといったときに、配食サービス、今も支え合い事業がありましたが、そういったことがもっと活用できれば、その日は一日留守にして裁判に行けるわけでありますから、そういったこともなお一層進めていただきたいということを申し添えたいと思います。

 続いて、推進本部にお伺いします。

 こういった議論の中で、ぜひとも推進本部につきましては、本当に後ろ向きのといいますか、現状維持的な発言ではなくて、新しい制度をつくるわけですから、新しい支援策をぜひともお答えいただきたいと思うわけであります。

 加えまして、やはり費用負担の問題は極めて大きな問題であります。具体的に考えますと、先ほどのように、例えばお年寄りの場合、介護保険のサービスが利用できるといいましても、現実的に、もう既に利用していてケアプランがあるわけですから、いきなり裁判員制度となっても、その制度の上限額を超えて利用しようと思ったら自己負担になってしまいます。支援費の場合も同様であります。

 そういったことを考えますと、結局、そういった制度を利用するにしても、そのお金をだれが持つのか。介護保険の保険料の負担で済むのか、全額自己負担になりかねない面もあろうかと思います。そういったことも含めて、やはりそういった費用負担の面をどのように手当てしていくのかという視点は極めて重要であろうと思っています。

 先ほども申し上げましたが、例えば育児の場合、アメリカでは、育児施設や育児費の補償というものをこの裁判員制度に当たってやっているところが十以上の州においてあると聞いております。ペンシルベニア州では、女性の辞退がやはり多いので、それをどうやって防止するかという見地から裁判所に託児所をつくった。これが始まりだと聞いています。

 女性の方に参加していただくために、例えばペンシルベニア州では裁判所内に託児所をつくったという経緯もあるわけであります。その後、繰り返しになりますが、多くの州でそういった試みがなされております。育児費用の払い戻し制度というものも現に存在する州もあります。イギリスでも、ベビーシッターのお金をちゃんと負担しているというところもあるわけであります。

 こういった工夫は当然なされてしかるべきであろうと私は考えますが、この点、推進本部のお考えをお聞かせください。

山崎政府参考人 さまざまな事情を抱える方がなるべく裁判員として参加することができるようにすること、これは望ましいことだと私どもも考えております。

 ただいま御指摘の点でございますけれども、この点については、この場面だけなのか、あるいは、例えば自営業の方あるいは個人企業の方、そういう方に対する損失補償をどうするのかという問題、あるいは農作業に関与している方、その間できなかったあれをどうするのかとか、この議論を始めますと、バランスのためには、あらゆるジャンルについてどういう問題が起こり得るか、全部これを公平にやらなければならないということになろうかと思います。

 ただいま御指摘の点は、そのうちの一つということになろうかと思いますけれども、この全体についてまずきちっと検討しなければならないということになりまして、一つ二つを取り出すということは、なかなか法制上は難しいという点が一つございます。

 それから、そういう金銭的な補償というんですか、そういうものを支給することになった場合に、平等の見地から、あらゆる場合に全部出さなきゃいかぬという形にもなってくるわけでございますが、こういうことで逆にまた本当に理解が得られるのかどうかという問題もございまして、現在において、これを直ちに導入していくということは非常に難しいというふうに考えております。

泉(房)委員 いろいろ理由は言っておられるのですが、結局はやろうとするかどうかだと思うんです。

 一遍に全部しなくても、特に重要なところから優先的にやっていく。もちろんお金は限られているわけですから、どこを重点化していくかという視点はもちろんあっていいと私も思います。

 具体的に、この裁判員制度ができて、実際に、裁判員になる方のうち極めて女性比率が少なくなったときにやはり国民の目がどのように見るのかと考えたときに、女性の方が男性と同様ぐらいの数、やはり裁判員になっていくというようなことも極めて重要だろうと私は思うわけであります。そうしていかないと、せっかくつくった制度が本当に国民から支持される制度になっていかないということを危惧しているから申し上げているわけでありまして、お金に限りがあることは当然でありましょうし、優先順位があることもそうだと思います。

 ただ、問題は、だからといって何もしないのではなくて、じゃ何からやっていけるのかという検討の中で一つずつ前向きに進めていくという発想が必要だろうと思います。

 その点、ほかの点もいろいろありますけれども、特に、やはり小さなお子さんを抱えた女性の方に対する、女性という言い方はいけませんね、小さなお子さんを抱えた扶養義務のある方といいますか、そういった方に対するサポートというものは極めて重要だろうと思うんです。だからこそ、多くの諸外国でもその点が重点化されてやっているわけであります。

 確かに、先ほどの御指摘のように、給与損害のような日当の問題などにつきましては、金額も大きくなるでしょうし、またいろんな面もあろうと思います。ただ、小さなお子さんを抱えた女性の方が裁判員になりたいといったときに、それをサポートするぐらいはまず始めていいのではないかと思うわけです。

 その点、改めてお答えください。

山崎政府参考人 ただいま御指摘の点、あるいは介護を要する方、そういう同じジャンルの問題かと思いますけれども、確かに、出やすくするということ、参加していただきやすくするということは必要だというふうに思います。

 ただ、これだけを取り出して法的に決めるということはなかなか難しい。ほかのジャンルの方についても、それなりにそういう方々、何で我々は見捨てられるのかという問題も生ずるわけでございますので、そのバランスはきちっと。それから、皆さんの議論が、これだけは優先をしていいという形になればそれはまた別かもしれませんけれども、現段階において、そういう理解がすべてにおいて得られているかどうかという点を考えますと、まだそこまでは行っていないだろうというふうに理解をしております。

泉(房)委員 同じ押し問答になってもあれですけれども、ただ、例えば、市民の裁判員制度をつくる会であるとかいろんな市民団体などからも、やはり一番多く寄せられているのは育児、介護の問題でありますので、私としては先ほどの認識は答弁と違いまして、ある程度国民の理解として、育児、介護に対して手厚くしていくということについては国民的合意が得られるものと私は考えておりますので、その点、再度検討をするように強く言っておきたいと思います。

 この点につきましては、具体的な条文の解釈についてちょっと私が心配しておるのは、辞退理由のところの十六条の七のロであります。ちょっと読みますが、要するに辞退理由として、「介護又は養育が行われなければ日常生活を営むのに支障がある同居の親族の介護又は養育を行う必要があること。」ということが辞退理由として記載されております。

 具体的場面を想定しますと、裁判員に当たった方といいます人に対しまして裁判所の方から連絡が行きまして、一緒に暮らしている、小さなお子さんは普通一緒に暮らしていますから、小さな子供がいるというだけで、では、残念でした、辞退ですねとなるのか、そうではなくて、小さなお子さんがおられても、一時保育のシステムがありますよ、例えばこういったことができますよ、何とか来てくれませんかというふうにやはり説得していくのかというところは、大きな違いだと思っています。

 私としては、本来法文としては、「支障がある」ではなくて、どうしても、公的支援を受けてもなおかつ著しい支障があるということぐらいで初めて辞退が認められるのであって、そうでない限り、公的支援を盛っていくことによって参加できるようにしていくという発想が必要であろうと思います。

 ここのところの解釈が余りにも、一緒に暮らしている小さい子がおるから、残念でした、一緒に暮らしているおじいちゃん、おばあちゃんの介護が要るから、では結構ですというような運用ではなくて、この点につきましては、公的支援をもってしてもなおかつどうしても裁判員として来れないというような形で解釈すべきであろうと考えておりますが、この点、どのようなお考えか、お答えください。

山崎政府参考人 これは個々の事情によっていろいろ変わってくるだろうと思います。養育、介護を要する方がおられても、親族の方で頼んで、若干無理があっても了承してもらってお手伝いをいただけるというような環境にあるかどうか、あるいは近くに親族がおられて可能かどうかとか、それから全くそういうことがないような方、それぞれその事情は相対的でございますので、今御指摘のとおり、いろいろな工夫で、出てきてもらえる方についてはなるべく出てきていただく、こういう考えであることは間違いございません。

泉(房)委員 今のお答えのように、出てきてもらう方が望ましいということであれば、出てきてもらえるような公的支援をしていくという発想が必要だろうと思いますので、その点も重ねて申しておきます。

 続いて、最高裁につきましてでありますが、推進本部の方は快いお答えもなかなか難しいんですが、ただ、そうであったとしても、今の運用上でいろいろやっていける面もあろうかと思います。

 例えば、裁判所の方から裁判員になろうとする方に対して、小さいお子さんがいれば、地域の、あなたのお住まいの近くにこういった一時保育の施設が幾つかありますよ、値段もばらばらです、それぞれこういったシステムですというような情報提供をすれば、ああ、だったらそういうのを使ってみようかと思うと思います。

 また、お年寄りの介護の方に対しましても、今はホームヘルプやデイサービスやいろいろありますよ、少しお金がかかってもどうですかというような情報提供をなされば、だったら私も、おじいちゃん、おばあちゃんの面倒ばかり見て一生を終えるんじゃなくて、こういった社会参加の意味も込めて裁判員をやってみようかなと思うような動機につながると思うわけです。そういった工夫というものが裁判所においてなされてもいいのではないかと思う次第であります。

 そのためには、具体的に、先ほど話もありましたが、厚生労働省がいろいろ取り組んでおられるようなそういったシステムについて、きめ細かな情報を得た上で、裁判員になろうかという方に提供していくということも必要だろうと思いますが、この点、最高裁はどのようにお考えか、お答えください。

大野最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 私ども、裁判員制度の運用面をこの制度ができたときには担うことになります。

 私どもとしても、裁判員制度の円滑な運用ということを図っていかなくてはいけません。そのためには、国民の理解と協力がこれはもう不可欠であろうと思います。したがいまして、裁判所としても、幅広い国民の方々の理解を得て参加していただくということは大切なことであるというふうに理解しております。

 そのために裁判所としてどのようなことを行っていく必要があるのか。また、わかりやすく、かつ負担の少ない、適正手続のもとでということですけれども、そういった裁判を実現していくために何をしていかなくてはいけないのかということをこれから検討していかなければならないというふうに思っております。

 その一環といたしまして、議員御指摘のような、小さな子供を抱えた方、介護を必要とする老人を抱えている方などについて具体的にどのような方策をとっていくのか、とっていくべきなのかということにつきましては、これから、裁判員候補者として選定期日に出頭した上で、裁判員になることを希望され、あるいは辞退を申し出られる方がどのくらいいるのか、どの程度の事由であれば辞退を認めるべきかといったようなことについての国民の意識、さらには利用可能な施設の状況などを総合的に考慮した上で判断する必要があろうかと思っております。

 委員御指摘のような点を踏まえまして、今後検討してまいりたいというふうに考えております。

泉(房)委員 厚生労働省につきましても、この裁判員制度の導入につきましては、もう全省庁挙げてのことだと思います。裁判員制度に関しまして、厚生労働省としてもそれぞれ情報提供を、裁判所の方から求められれば当然していくべきだと思いますが、このような連携についてどのようなお考えか、厚生労働省、お願いします。

北井政府参考人 保育サービスや介護サービスの利用につきましては、支援が必要な方が適切なサービスを受けられるようにするということがとても大切なことでございまして、これまでも、実施主体であり、かつ住民に一番身近な市町村によりまして、広報紙であるとかインターネットであるとか電話サービス等を通じまして、さまざまな形での住民への情報提供が行われてきているところでございます。

 さらに、国におきましても、保育サービスにつきましては、保育所の名称や利用サービス等について情報提供を行っておりますi―子育てネットということがございまして、そういったインターネットサービスも行っております。

 今後、裁判員制度の導入に際しまして裁判所などの関係機関から具体的な要請があれば、十分連携をして、御相談に応じ、適切に対応してまいりたいというふうに考えております。

泉(房)委員 今、厚生労働省の方から、裁判所の方から具体的な求めがあれば対応していくというお答えでしたので、最高裁の方、当然厚生労働省と連携をとっていくと思いますが、その点、改めてお答えをお願いいたします。

大野最高裁判所長官代理者 先ほど申し上げましたように、今後具体的な検討をしていくことになります。その中で必要であるということになりました場合には、厚生労働省とも連携をとっていくことになろうかと思いますが、さらにそういった点も含めてこれから検討していきたいというふうに思っております。

泉(房)委員 一般的な答弁ですが、本当に、この問題に限りませんが、成年後見の問題にしろ何にしろ、法務省と厚生労働省というのは極めて隣接領域だと思います。児童虐待にしろDVにしろ、やはり法務省と厚生労働省がいろいろな分野で手をとり合ってともに進めていく。そういった受け皿の部分は厚生労働省が充実化を図り、そういったいろいろな法的な部分については法務省が受け持つ中で、やはりともによくしていくという視点が必要だろうと私は思うわけであります。

 今のお答えだと、検討して、必要であればということでありますが、私はそれはもう必要に決まっておるわけでありまして、法文の中にも育児や介護や、そういったことが記載されているわけでありますから、当然、そういったサービス提供、情報提供をする意味で、厚生労働省の力をかりずしてなかなか難しいというのはもう明らかでありますから、現時点で厚生労働省と連携をとりながらやっていくということぐらいいいのではなかろうかと思うわけですが、改めて答弁をお願いいたします。

大野最高裁判所長官代理者 まだ具体的な方策が固まっていない段階ですので、その段階で明確なお答えをすることはなかなか難しいということも御理解いただきたいと思っております。

泉(房)委員 全く理解はしませんけれども、これは押し問答になってもあれですから。当然必要だと思いますので、本当に連携をとり合ってやっていただきたいと思います。

 各論に幾つか入っていきますが、まず移送サービスについての質問をさせていただきます。

 具体的には、事例としては、足腰が悪い年配の方がおられて裁判員になった、ただ、なかなか移動が困難であるというときに、裁判所の方に来られれば裁判員として職務は執行できるというようなケース。あと、例えば障害をお持ちの方、車いすの方などで移動が不自由な方につきましての移送サービスであります。

 この点、私としては、移送につきましては、裁判員となった以上、例えば、具体的に言いますと旅費という形の解釈を拡張しまして、移送サービスの費用を持つであるとか、そういった工夫もできるのではなかろうかと思いますし、また、今の介護保険の中では、病院に行くには移送サービスのある面費用負担はできるけれども、裁判員制度の利用には使えないのじゃないかというような議論もなされているようであります。

 こういった点も踏まえまして、移動の不自由ささえ解消できれば裁判員になれる方の場合、なってもらったらいいと思うわけであります。また、費用負担につきましても、そう驚くほどのお金がかかる話ではありません。せめてこれぐらいのことはしていいのではないかと私は思うわけでありますが、この点、推進本部、お考えのほどをお聞かせください。

山崎政府参考人 先ほど育児の問題等について申し上げましたけれども、基本的な考え方は、介護の場合、これも同じジャンルのものというふうに考えておりまして、そこの費用のかかり方の問題の違いだというふうに理解をいたしますけれども、これも先ほどちょっとお答えをいたしましたけれども、ほかのジャンルとの関係をどうするかということ、それから、やはりこういう点について、費用負担をするということについての理解が一般的に得られるのかどうかという問題にかかってくるということでございます。

泉(房)委員 同じようなお答えですが、一般的な理解は得られると思います。大した費用もかかりません。その移送のところを、何日か往復するお金を公費で持つことぐらい、国民は理解すると私は思います。ただ、なかなか推進本部の方から快い答えももらえませんので、最高裁の方にもお伺いします。

 具体的に、裁判員制度の、金額はまだこれからでしょうが、日当、旅費、宿泊費などが出ると思います。旅費につきましては、通常実費であります。移送サービスを、例えば民間のボランティア団体を利用するとか公を利用するとかしまして、利用したときの領収書が出ると思います。そうすると、実費精算ですから、手元にお金が残る話ではありません。旅費の解釈によってこの移送サービスの部分を負担するということも検討されてしかるべきであろうと思います。

 すぐに今明確なお答えが無理であっても、そういった検討は可能ではなかろうかと私は思いますが、裁判所はどのようにお考えか、お答えください。

大野最高裁判所長官代理者 実費の負担の問題ということでありますけれども、その点については、まだ私どもも十分な検討ができておりません。今後、それが可能かどうかも含めて検討させていただきたいというふうに思っております。

泉(房)委員 とにかく、新しい制度がなかなか難しいのであれば、現行の制度の運用面とか解釈面で何とか参加しやすくしていくという方向で検討のほどをお願いいたします。

 続いて、バリアフリーの問題であります。

 私も裁判所に今も行っていますけれども、車いすの方を二階の法廷に上げるのに、今も裁判所は古いところも多くて、エレベーターのないところがたくさんあります。車いすを片方持って御家族の方と一緒にえいやっと、法廷によっこらしょといって移動するわけですけれども、こういったときに、裁判所の中でやはりエレベーターぐらいあったらいいなと思います。

 また、普通、例えば駅とかそういうときの場合、駅員さんが、困っているとすぐ飛んできて一緒にやってくれるわけですが、裁判所の方は余りそういった関心が薄い方も間々見受けられて、みんながよっこらしょといっているのに裁判所の職員の方がお手伝いになかなかすぐ来られないということもあります。ここら辺も意識の問題であろうと思います。

 ハードの面とソフトの面をやろうと思いますが、両面お伺いしたいと思います。

 まず、ハード面につきましては、お金のない時代ですからすぐには難しいのかもしれませんが、裁判所などにつきましては、順次改築、新築がなされていくと思います。そのときに、少なくともこういった車いすの方などに対する配慮は当然なされてしかるべきでありますし、当然だと思いますが、この点、どのようにお考えか。すぐに改築、新築がなされなくとも、少なくとも、やはり何らかの手当て、スロープにするとかある程度の工夫は要ると思います。この点、どのようなお考えなのかという点、お答えください。

 あわせてソフト面でありますが、裁判所の職員につきましても、こういった問題についての意識啓発といいますか、部分は必要であろうと思います。少なくとも、障害をお持ちの方がお近くに、裁判所におられればできることをお手伝いしていくといった姿勢が裁判所の中にも必要であろうと思いますが、研修などの面も含めまして、お答えのほどお願いいたします。

大野最高裁判所長官代理者 まず、施設面についての説明を先にさせていただきますが、全国に裁判所の庁舎は四百六十あります。これまで、新築や増改築等の機会をとらえまして庁舎のバリアフリー化を進めてきております。

 車いす利用者の方のための玄関のスロープそれからトイレ等につきましては、ほぼすべての庁舎に整備されている状況にあります。また、玄関付近のインターホン等の呼び出し施設は約九割の庁舎に、自動扉は約七割の庁舎に整備されている状況にあります。エレベーターにつきましては、これは三階以上の建物ということですけれども、その三階以上の建物の庁舎につきましては、約八割に設置されているという状況にあります。

 今後とも、そのバリアフリー化に向けて、引き続いて障害者の方に配慮した設備の整備を図っていきたいというふうに考えております。

 もう一点、ソフト面ですけれども、裁判所にも車いす利用者の方の傍聴等、あるいは関係者等がいることもあります。従前に比べますとそういった点についての配慮は大分できてきているようには思っておりますが、まだ不十分な点があるかもしれません。今後、施設面で全国的なバリアフリー化を進めていくということでありますし、研修面、要するにソフト面でも、その面についてさらに検討して充実させてまいりたいというふうに考えております。

泉(房)委員 今答弁もありましたが、確かにハード面はお金がかかる話であります。ただ、お金がかからない方法はあるわけでありまして、裁判所に働く者が心がけ次第で、たとえエレベーターがなくても、みんなでばっと集まってきて二階、三階にやっていく風景が見られれば、それはそれでできることだと思うんです。だから、そうやってできることからまずどんどん進めていただきたい。そういった意味の研修なり何らかの啓発活動なりというものはぜひともお願いしたいと思います。

 次に、具体的に障害をお持ちの方が裁判員となる場合であります。この点、いろいろな議論もあろうかと思います。そう単純ではないことは私も理解します。

 具体的に考えますと、例えば、聴覚に障害をお持ちの方の場合で、かつ手話を解する方の場合ですね。全員が手話を解するわけではありませんが、例えば、手話通訳がつけば特に支障なく裁判員の職務を執行できる方の場合を考えた場合、こういったときに手話をつけるとしたときは、その手話のお金をだれが負担するのかという問題があります。

 また、具体的に考えますと、私も手話をつけて法廷で何度か活動したことがありますけれども、そういったときはやはり時間が倍以上かかります。三倍ぐらいはかかろうかと思います。とすると、迅速な裁判という今回の要請との中で、難しい問題が生じます。ほかの、例えば三人、六人なら六人の市民、六人とは決まっていませんが、例えば六人だと仮定した場合、残りの五人の方が特にそうでない場合、お一人が手話が必要だとすると、二倍、三倍の時間を要する。その間おつき合いを願うことになります。ただ、私個人としては、そうであったとしても、そういった方も含めて社会がある以上、そういった方を排除することなく、手話通訳の方を介して裁判員制度を推していくべきだと考えます。

 また、視覚障害の方の場合で、点字の問題があります。これは、もっとなお難しい問題がありまして、連日開廷の中で証拠書類をでは点字化できるのだろうかと思うと、なかなか容易ではなかろうと思います。とすると、書類を全部点字にする間、一週間あけられるのかという問題も生じてきます。しかしながら、そういったことも含めてもなお、やはり何とか裁判員制度の中で裁判員になれるような工夫が必要であろうと私は考えております。

 また、内部障害をお持ちの方で、ある程度医療的なサポートが要る方の場合であっても、もしものときの備えとしての医療のサポートでありますから、そういったシステムといいますか、そういった配慮ができれば裁判員となれるわけでありますから、もしものときが心配だからといってあきらめる必要はなかろうと思っています。

 こういった点につきまして、最高裁といたしましてはどのように運用面で心がけていかれるのか、お答えお願いいたします。

大野最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 心身に障害を持っている方を含めまして、幅広い国民に裁判員になっていただくということは、必要であるし重要であろうというふうに思っております。

 そのために、聴覚障害のある方、あるいは視覚障害のある方、先ほどは内部障害のある方というのも出てきましたけれども、そういった方々に裁判員をお願いするというような場合もあろうかと思います。

 視覚障害のある方に裁判員をお願いするということになります場合には、委員御指摘のような、証拠書類の点字化という問題が出てまいります。これは、連日開廷のもとで、裁判員が選任されると、その直後あるいは翌日といったような短い期間の中で審理を開始するということになってまいります。したがいまして、その選任決定後、証拠調べまでの間に時間的な余裕がないというのが実情でありまして、裁判所におきましても、また証拠を請求する方におきましても、すべての証拠書類を点字化するというのは物理的に非常に難しい面があろうかと思われます。

 また、聴覚障害のある方の場合には、手話通訳人を評議に立ち会わせることができるかといったような問題もあります。

 さらに、内部障害のある方等につきましても、具体的にどのような配慮が可能か、あるいは、費用負担の面を含めましてどういったことが考えられるかというようなことを今後さらに検討してまいりたいというふうに考えております。

泉(房)委員 これらの点につきましては、確かにお金もかかったり手間もかかったりするわけでありまして、そうそう容易な話ではないということは私も理解しています。

 ただ、要するに、社会というものはいろいろな方がいて成り立っているわけでありまして、単に迅速であればいい、単に手間がかからなきゃいい、お金がかからなきゃいいという問題ではなくて、ある程度お金がかかったとしても、ある程度手間がかかったとしても、そのことによって多くの方の参加が得られるのであれば、何とかそういう方向を工夫していこうというような努力が必要であろうと思います。そういった方向でぜひとも御検討のほどお願いしたいと思います。

 こういった障害をお持ちの方につきましての部分につきましては、先ほど山内議員の方からも御指摘ありましたが、条文解釈上は十四条の三の解釈とも関連してくると思います。先ほども話が出ましたが、十四条の三の欠格事由につきましては「心身の故障のため裁判員の職務の遂行に著しい支障がある者」とされております。

 これはどう読むかですけれども、心身の故障のために裁判員として職務ができないという場合は欠格だろうと読むんだろうと思いますから、そのことに公的な支援が得られれば、御本人が手話や点字や何らかのサポートが得られれば、本人として裁判員の職務の遂行ができる以上、欠格事由に当たると解すべきでないと思います。そのことによって迅速な裁判との要請で緊張関係が生ずるのであれば、それは別途考慮すべき問題でありまして、欠格事由の解釈につきましては、すぐに当たるというのではなくて、できるだけ障害をお持ちの方も裁判員になっていただく方向で解釈されてしかるべきであろうと思います。

 この点、推進本部につきまして、まずもって、障害があっても、できる限り裁判員として参加してもらうのが望ましいと私は考えます。また、先ほどの解釈につきましてもそのような理念に基づく解釈がなされてしかるべきと考えますが、その点、どのようにお考えか、お答えください。

山崎政府参考人 この点も、法文では著しい支障というふうに表現をしておりまして、この著しい支障につきましては、補助手段を講ずれば可能であるという場合には、それは欠格事由には当たらないと判断をすべきだろうというふうに思います。なるべく多くの方に参加していただく。

 それから、あと、現実の裁判でどのようにやっていくか、あるいはたえられるかどうかという問題は、また別途の判断だろうというふうに考えております。

泉(房)委員 この点に関しましては、具体的に、例えば知的障害者や精神障害をお持ちの方についてどうかという問題があります。

 この点、いろいろ価値判断も分かれるところなのかもしれませんが、今回の裁判員制度の趣旨というものは、いろいろな方に入っていただいて、その方が望ましいという価値判断をしているわけであります。極めて豊富な法的知識を持っており、かつ判断能力においてたけている方のみで、つまり職業裁判官のみでするのではなく、ある意味、法的知識には乏しいかもしれない、判断能力においても職業裁判官に比べればそれほどでないかもしれない、でも、そういった方々も含めてした方が望ましいという価値判断に基づいてこの制度があるのだろうと私は理解します。

 そうであるならば、例えば、軽度の知的障害をお持ちの方、軽度の精神障害の方につきましては、御本人が裁判員としてやりたいというのであれば排除すべき理由はなかろうと考えますが、この点、改めてお答えをお願いいたします。

山崎政府参考人 先ほど申し上げました趣旨は、心身に障害を持っておられる方、今御指摘があったような方につきましても裁判員の職についていただくこととしておりまして、その職務の遂行に著しい支障があると認められる場合、これについてのみ欠格事由とする、こういう考え、それは同じでございます。

泉(房)委員 法文の解釈でありますが、著しい支障はだれにとって著しい支障かというと、当の本人が職務遂行するに支障があったときだと当然思いますので、例えば、点字や手話が要る、だから手間がかかる、金がかかるから支障があるわけではないと思いますので、あくまでも、サポートが得られて本人ができるという状況であれば、参加すべき方向で当然解釈されてしかるべきでしょうし、そのための公的支援システムをぜひとも整えていただきたいということを改めて強く申し添えます。

 続きまして、仕事を持っている方についてであります。

 この点につきましても多く議論がなされておりますが、ここは、本当にシンプルなふうに思うのですけれども、仕事があって働いている場合、サラリーマンやOLの方、自営業の方もおられるし、そういったときに、具体的に、急に裁判員をやってくれと言われても、仕事があって、本人が行こうと思っても周りの方との関係も含めてなかなか行きにくい。

 どうすればいいかというと、もっと早目に、もう三カ月、半年ぐらい前からわかっていれば、ある程度仕事の都合もつけられると思うわけであります。また、そのときは無理であっても、今は忙しい時期だ、二カ月後、三カ月後だったら大分仕事も暇といいますか余裕がある、だったら延期をするとかいった工夫があれば、この点、かなりクリアできると思います。

 具体的に、例えばニューヨーク州などの場合は、一年に二回まで延期できるというふうになっております。ペンシルベニア州では、例えば小さなお子さんをお持ちの方の場合、子どもの夏休みが終わるまで延期できるというシステムまであります。子どもが夏休みだったら親御さんは手がかかるだろう、子どもが夏休みを終わって学校へ行き始めたら裁判員になれるだろうという配慮だろうと考えます。

 こういったことからしまして、これまでの答弁、なかなか快い返事は得られておりませんが、少なくとも早目に裁判員を選んでいくような工夫をなさるとか、延期についても、ある程度のそういった工夫がなされてもいいんじゃないかと思うわけであります。

 この点、答弁としてはなかなか、事務が繁雑になるとかいうような答弁になるのかもしれませんが、それはある程度事務が繁雑になってもやるべきじゃないかと私は考えますが、どのようにお考えか、推進本部、お願いします。

山崎政府参考人 まず、猶予期間、猶予期間と言うのはおかしいですけれども、どのぐらい期間を置くかという問題でございますけれども、これは法文の二十七条の四項という規定が置かれておりまして、これは「最高裁判所規則で定める猶予期間を置かなければならない。」とされております。

 これは、裁判の迅速の問題と、やはり裁判員の方がなるべく出やすいような期間を設けるという、そこのバランスのとり方の問題になって、個々によっていろいろ決まってくることになろうかと思いますけれども、私どもは、両方の要請がございますので、それを踏まえて相当な期間が置かれるだろうというふうに思っております。

 それからもう一点は、延期制度の問題でございます。

 確かに、前に、非常に仕組みが複雑になるということは申し上げました。

 ただ、これだけではなくて、ちょっと理念的な問題もございまして、これが仮に仕組みが設けられるということになりましても、裁判員を広く国民から公平に選ぶという建前をとっているわけでございまして、そうなりますと、辞退が認められた一部の方に優先的に裁判員となる地位を与えるというような結果になる。

 そういうような例外的な取り扱いを認めるということについて、全体の考え方の中のバランスでこれが果たして許されるものかどうかという点について若干難点があるということも考えておりまして、私どものこの法案で手当てしているのは、一般のプールの中に戻って、その中で選ばれるチャンスは与えますということを最低限保障はしておりますけれども、それ以上に優先的ということになりますと、全体の無作為抽出の平等という点の理念とやや反するおそれもあるということで、現在の状況では考えていないということでございます。

泉(房)委員 今のお答えは本当に価値判断の問題ですので、平等という言葉を言われましたけれども、裁判員になろうとした、ちょっと待ってくれたらなれるというのに、あんただめですよ、もう一回選ばれるのを待ちなはれというようなことが、果たしてそっちが平等と考えるのか。そうではなくて、裁判員になる、よし、なろう、でも今ちょっときつい、ちょっと待ってくれたら、そういった方に機会を与える方がむしろ平等なのかというのは、両方あろうと思います。その点は再度検討を強く申し入れたいと思います。

 そうでないと、せっかくの制度が、繰り返しになりますけれども、本当にたまたま、そのとき時間的に余裕がある方に限られてしまうわけであります。そうすると、本当に多様な民意の反映になるのかといったことを危惧するからこそ言っているわけでありまして、延期制度などにつきましては別にお金のかかる話ではないわけでありまして、そのあたり、再度検討すべきだと考えます。

 そして、通知につきましては、漏れ聞くところによりますと、三、六構成か、一、四構成が決まってから選ぶというような声も聞こえますが、そんな遅いときから選んでしまったら猶予期間は極めて短くなってしまいます。猶予期間を長く置いたら、身柄、つまり被告人からすると、長期間にわたって裁判を待たなきゃいけないというようなことになりかねません。とすれば、起訴をした段階から早目に選任手続をしていくとか、いろいろな工夫があってしかるべきじゃないかと思います。ある面を立てればどこかが立たなくなる面はあろうと思います。ただ、できる限り参加しやすくなるような工夫をしていくべきだということを、この点、言っておきたいと思います。

 それから、あと休業制度につきましてもなかなか快い返事はないんでしょうけれども、裁判員となって、具体的に考えると、有休消化してしまっていた裁判員に当たった方が裁判員として行く場合、欠勤扱いになって給料が減ってしまいかねません。そういったときに果たして行けるのかという問題もあります。日当、旅費、宿泊につきましても、日当が八千円程度であれば余りにも少な過ぎます。自営業の方などの場合、ましてや八千円の日当でなかなか行けるものではないと思います。

 具体的に、例えばドイツなどでは、自営業の方が裁判員になってかわりの人を頼んだとき、その自分のかわりをしてもらう人の賃金も公で支給されるというような工夫もなされております。別にできない話じゃなくて、するかどうかの問題であります。

 繰り返しになりますが、そういった仕事をお持ちの方に対しても、何らかの工夫でもって、参加しやすくしていくという工夫が何かあっていいと思うんです。お金のかからぬ制度であれば、例えば、企業のうち、そういった裁判員制度を、どんどん従業員を裁判員に送り込んでいる企業については表彰するとか、そういったことだけでも結構です。何かしら裁判員になることを勧めていくような工夫は考えるべきだと思うわけです。

 何もできない、できないじゃなくて、一つぐらい何か前向きな御答弁をお願いしたいと思います。推進本部、お願いします。

山崎政府参考人 毎回同じ答えをして恐縮でございますけれども、この給与補償の関係につきましても、先ほどの問題と同じような問題でございまして、これに関しては、特にまた難しいのは、個人の場合の給与の補償と、それでは無職の方、主婦の方もおられますし、あるいは無職の方もおられます。そういう方についてどうするのかとか、いろいろなバランスを考えなきゃいかぬですね。それから、かなり高額所得の方についてどうするかとか、そういう問題も全部出てきますので、そこのところの全体のバランスを考えて、どういう補償にすべきかということを今直ちにここでみんな理解が得られるかという問題、なかなかこの点は難しいだろうというふうに思います。

 あと、日当等でやっていくということでございます。これについてはまた裁判所の方でいろいろ御検討になるということだろうと思いますけれども、そこの点は御理解を賜りたいというふうに思います。

泉(房)委員 同じような冷たいお答えばかりですが、お金がないんだったら知恵を絞って知恵でやるという工夫があってしかるべきですから、金がないというのが理由だったら、金を使わぬでやることを考えたらいいと思いますので、少なくともこの審議が終わるまでに、少しぐらい工夫についての答弁がなされることを強く求めます。次もう一回質問しますので、そのときまでによろしくお願いします。

 時間的に制約もありますので次に進みますが、具体的にこういったお話をさせていただきますと、本当に今のままでいってしまいますと、裁判員になるときに、時間のある方、具体的に言いますと、定年退職を終えた後の健常、いわゆる障害をお持ちでない健常者であり、男性に偏るかもしれない、かつ年齢的にも高齢者に偏りかねない。果たしてそれで本当に公正な社会を反映した裁判体ができるのかという危惧であります。

 改めて申すまでもありませんが、例えばアメリカの合衆国憲法の修正条項では、陪審員は社会を公正に代表するというふうに言われております。なぜ裁判員制度や陪審制度がいいのかというと、それが社会の反映であろうということに依拠しているんだと思います。それが性別や職業や年齢などによって極めて偏った構成になったときに、果たして社会を反映しているのかという疑問があると思います。

 例えば、そういった性別において一方的に偏った場合には、そのことを理由として、要するに差し戻してもう一回審理をやり直せというようにアメリカなどではなされた例もあります。そういったことも配慮して、例えばノルウェーなどでは男女比は一対一にしているとも聞きます。そういった工夫もなされてしかるべきであろうと思います。

 ただ、こんなことを聞いても、お答えとしては、なかなかそういったいわゆる性別のバランスを法文上織り込むことは難しいということなのかもしれませんが、少なくとも、例えば今の法文上でいったとしても、裁判員六人のうち男性六名女性ゼロ名で果たして性犯罪の裁判をしてどうなのかという問題を考えますと、やはりそれは公平ではなかろうと私は考えるわけであります。男五人、女一人でも、その女性の方一人が自分の意見を言えるかというと、なかなか言いにくいと思います。

 本来半々ですから、今の六人を前提としますと、男性、女性、三、三が理想だと思いますが、少なくとも四対二ぐらいにとどめて構成をすべき何らかの工夫が必要であろうと思います。選ぶ段階でなかなか選びにくいとしても、何らかそこの手当てをやはり検討すべきだと思いますが、この点、推進本部、お答えください。

山崎政府参考人 この国会審議を通じまして、このような御指摘がございます。

 ただ、この問題は、男女の比率だけが問題なのかということにもなるわけでございまして、それ以外にも、では年齢層だってどうするかという問題ですね。これは例えば若年層に全部固まってしまうという問題とか、いろいろな問題もあるわけでございます。それから、職業的な問題だとか、いろいろな問題があるかもしれません。

 そういうことになりますと、どういうジャンルで分けるかということですね。これに対しても、皆様方それぞれ、みんな考え方が違うはずでございます。そうすると、そういうことを本当に仕分けできるのかどうかということですね。それから、何か一方的に比率を決めてやることが本当にいいのかどうか、それによって逆に偏りを生じないのか。それを主宰側の方で決めていくということに関して本当にいいのかどうかという問題ですね。これが無作為抽出に当たるのかという問題も生ずるわけでございます。

 今回の法案の内容は、一定の候補者の中から辞退とかそういうことがある方はみんな除かれまして、その中で、例えば公平な裁判をすることができないおそれがあるような者については不選任の決定をするということになりますが、残り、その候補の中から双方が四人ずつ理由を付さない不選任の請求をすることができまして、こういうものを利用しまして、それぞれが考えるバランス、こういうものを配慮しながら決めていく。それは当事者の意思に従った構成ということになるわけでございますので、そういうものでやっていただくことが一番バランスがとれているのではないかというふうに思っております。

泉(房)委員 本当に推進本部のお答えは、いきなり言いにくい面もあるかもしれませんけれども。

 繰り返しですが、みんなどこの国も、いろいろな制度を導入する中でいろいろな知恵や工夫をしながら、例えば、きょうも指摘させていただいていますが、やはり自営業の方にも出ていただきたいからといって賃金を払う工夫をするとか、いろいろな障害をお持ちの方についての配慮をするとか、育児や介護についても工夫するとか、例えばこの問題についても比率を決めるであるとか、いろいろな工夫をしてきているわけであります。そういった諸外国の例も参考にして今回の制度の枠組みも考えておられるわけですから、そういった取り組みをちゃんと取り込むというような視点でやはり検討すべきであろうと考えます。

 そうじゃなかったら、今の場合、実質的に見たときに、男性の健常な高齢の職業裁判官という部分がかなり決定権を持っているようなシステムについて、わざわざ市民を裁判員制度として入れる実質的な意義というものが本当に薄れかねない。

 本当に多様な方が入るためには両面要ると思います。今言った、構成比から見ていくのと、あとは参加しやすいように、繰り返しになりますが育児や介護やそういった方に対する社会的基盤整備を工夫することによって辞退せずに済む、その両面からそういったことを配慮すべきだと思いますので、その点は本当に再度検討すべきだと考えます。

 時間となりましたので、最高裁につきまして最後一点ですけれども、実際に裁判員に選ばれたときに皆さん不安で、裁判といったらそれだけでなかなか物おじしかねません。そういったときにやはりわかりやすく親切な対応をして、裁判員になっていただくような工夫が要ると思います。

 ちょっと手元の方に、これはフランスの方の裁判員制度といいますか、についてのいろいろ案内の書類でありますが、諸外国でもいろいろな工夫がなされていると思います。日本においてもこれからでありましょうが、市民の声をちゃんと踏まえた上で、裁判員に当たった方が、ああ、やってみたいなと思うようなわかりやすいパンフレットをつくったり、わかりやすいオリエンテーションをするとか、そういったことがぜひとも必要であろうと思います。

 キーワードとしては、やはり裁判所が市民に対して親切にしていくことだと思うんですが、この点、最高裁のお考えをお聞かせください。

大野最高裁判所長官代理者 委員御指摘のとおり、裁判員に選ばれた方にはやはりいろいろ不安、疑問があろうかと思います。

 裁判所といたしましても、裁判官と一緒に裁判をしていただく方、国民からすれば裁判をする人になるわけですから、その裁判員の方々に、この制度についてのきちっとした理解と、あるいは刑事手続についての理解といったようなものも含めてわかっていただかなくてはいけません。そのために、裁判所といたしましても、わかりやすく、そして委員のお言葉で言えば親切に、その制度の内容、裁判員としての役割等についての説明をしていく必要があると思っております。そのための具体的な方策として、いろいろなことが考えられると思います。

 これからは、何が一番わかりやすく実効的なものであるかということを踏まえつつ、検討していきたいと思っております。議員御指摘のような外国の例といったようなものも参考にさせていただきたいというふうに思っております。

泉(房)委員 最後の質問、ここで終わりますが、とにかく、参加しやすい制度づくりという視点は極めて重要でありますので、この点、関係各省、本当に改めて、この法案の採決までにもっと前向きの答弁をするように期待しまして、改めてこの問題、次の機会がありましたら質問したいと思います。

 これで終わります。

柳本委員長 御苦労さま。

 辻惠君。

辻委員 民主党・無所属クラブの辻惠でございます。

 どの法案もそうでありますけれども、とりわけ裁判員法案につきまして、国民の基本的人権、とりわけ刑事被告人の基本的人権に極めて大きくかかわってくる法案でありますから、立法目的、立法事実というものが厳格に確定されなければいけない、そして、法案の射程範囲というか守備範囲というものがきっちりと確定されなければならない、このような観点に立って、前回の質問におきましては、立法目的、立法事実に関連して、明らかにさせていただきました。

 結論的に言えば、国民の司法参加というのは憲法上の権利でもない、憲法上の要請でもない、国民の常識を判決に反映させる、そういう政策的目的によって導入される制度なんだというお答えがあったと思います。

 きょうは、この点について再確認をした上で、結局のところ、この裁判員法案というのは、国家と国民の関係をどう見るのか、また司法の役割をどのように考えるのか。そういう意味におきまして、国家観、司法観、そしてまた、それの背景となる基本思想にかかわる問題、その点について、きょうは詰めた議論をさせていただきたい。

 なぜそのような議論が必要なのかというふうに考えますと、これは、具体的な、各論的な項目について、どういう観点でその各条項が持ち出されてきているのか、その妥当性はどこにあるのかということは、やはり、背景となっている基本的な視座ということをどう考えるのかによって大きく変わってくるわけであります。

 そういう意味におきまして、まず、この裁判員制度が前提としていると考えられる国家観、司法観、基本思想というものについて、きょうの質問でははっきりとさせていただきたい、このように思っております。

 まず、大臣にお伺いいたしたいというふうに思いますけれども、前回の質問で明らかになった事項を私なりにまとめてみました。

 まず、現在の日本の刑事裁判は大方の信頼を受けており、特に大きな問題点はないんだ、このように認識しているという点が一点であります。

 そして二点目は、魔女狩り裁判とか人民裁判とかが行われてはならないことは当然であり、無辜の不処罰、疑わしきは被告人の利益にという刑事裁判の大原則が尊重されなければならないこともこれまた当然であると。

 そして三点目に、刑事被告人、被疑者の権利というのは、日本国憲法が根本規範として認めている基本的人権の尊重主義という中の、刑事手続上の人権というのは重要な権利であって、憲法三十一条ないし三十九条で現に保障されており、これは侵害されてはならないものなんだという点。

 そして四点目。これは少し問答のやりとりがありましたけれども、捜査の可視化とか取り調べ時の弁護人立ち会い権の保障については、被疑者、被告人の権利を前に進めるものだと私は理解しておりますけれども、この点についてはいろいろ議論のあるところであるから、将来どのような方向に進むべきかは推進本部としては現時点では白紙の立場である、このようなお答えがあったように思います。

 そして五点目。国民の司法参加は憲法上の権利ではない、また憲法上の要請でもない、判決に国民の意識を、常識を反映させるのがよいという政策的判断に基づくものである、このような答弁があったと思います。

 そして六点目に、法令の解釈や証拠能力の認定については裁判官が行い、裁判員が参加して行うのは事実認定、証拠の評価と量刑判断であって、これらの点に国民の常識を反映させることが裁判員制度の目的だ、このような回答だったと思います。

 概要、そのような内容でよろしいんでしょうか。大臣、お答えください。

野沢国務大臣 基本的人権の保障というのは、現行の日本国憲法において国民主権あるいは平和主義と並んで重要な柱であると考えておるわけでございまして、これについて何ら今回の法案がもとるということではないと思っております。

 裁判員制度のもとで憲法上の被告人の権利が不当に制限されるようなことは、したがって、あってはならないということでございまして、むしろ、これからの時代の変化、社会の展開によりまして、司法制度がより身近なものとなるということ、さらには一層公平公正なものとなるということ、そして迅速にその結果が出るということを目的としたものでございまして、いわば、この人権の保障という点では、一層、より有効なレベルに一歩進むものと考えておるわけでございます。

辻委員 今のお答えをそのとおりしっかりと受けとめさせていただきたいと思いますけれども、そうだとすると、この裁判員制度の導入によって刑事被告人の権利が侵害されたり後退することがあってはならない、そのようなことはないんだというふうにおっしゃっていますが、この審議の中で後退することとか侵害なんだということが明らかになったら、その点については撤回される、こういう理解でいいんですね。

野沢国務大臣 そのような内容になっていないものと考えておりまして、考えに考え、審議を尽くして、ベストの案を御提案しているつもりでございます。

辻委員 もちろん、司法制度改革推進本部でも検討会、研究会を三十数回にわたって行ってこられたわけですから、英知を尽くしておられるというのは疑わないところであります。

 しかし、人間、一〇〇%万全だということはあり得ないわけであって、先日の知的財産高等裁判所の審議におきましても、私は、担当として質問させていただく中で、いろいろな疑問点、問題点を感じました。

 この裁判員制度につきましては、私はもっと前提的なところから大きな問題点を幾つか感じているわけであります。ですから、それは私だけの思い違いであれば杞憂になるわけでありますけれども、一〇〇%英知を凝らしても、やはり水が漏れることがあるわけですから、そういう問題点が審議の中で明らかになる可能性はゼロではないですよね。なる可能性がゼロでない、その場合にはやはりその条項は撤回される、こういう理解でよろしいんでしょうか。

野沢国務大臣 国会における審議の結果は尊重させていただくつもりでございます。

辻委員 では、その上で、私も気合いを入れて、きっちりと伺わせていただきます。

 まず、この法案ですが、提案理由の説明には次のように書かれております。「国民の中から選任された裁判員が裁判官と共に刑事訴訟手続に関与することは、司法に対する国民の理解を増進させ、また、その信頼の向上に資するものと考えられます。」この提案理由を読むと、結局、具体的に述べているのはここだけなんですよね。

 まず、この点について伺いますけれども、司法に対する国民の理解を増進させるというのは、どういうことをおっしゃっているんですか。どういう意味を持つんですか、このくだりは。

山崎政府参考人 前回も議論をさせていただきましたけれども、証拠の評価と量刑に一般の国民の方の感覚が加わる、こういうことでございます。その加わることによって裁判の内容がより国民の声が反映されるということと、それによって、司法に対する国民の理解あるいは支持、これが深まるということによって、司法がより強固な国民的基盤を得ることになる、こういうことを意味しているわけでございます。

辻委員 では、「司法に対する国民の理解を増進させ、また、その信頼の向上に資するもの」だ。これはあわせて読むことで理解すべきなのだろうというふうに思いますが、これをあわせて読むと、結局、司法の中にというか、司法の横に国民が加わるんだ、そうすると司法と仲間意識になって、司法の様子もよくわかる、友達関係になるわけだから司法に対する信頼も向上するんだ、こういう、極めて情緒的な表現ではありますけれども、大ざっぱに言えばそういうことなんでしょう。いかがですか。

山崎政府参考人 今言われたような意味ではなくて、司法の中に国民が入っていただいて、一緒に裁判をやるわけですね。それで、社会的にいろいろ注目を浴びるような、関心があるような事件についても、自分たちでもきちっとやったということですね。それで、やはりそういうことによって刑事裁判に対する理解も深まって、司法とはこういうものかということ、こういうことを理解してもらって司法がきちっとしたものになっていく、こういう意味でございまして、何か仲間内になってやるという意味ではないということでございます。

    〔委員長退席、塩崎委員長代理着席〕

辻委員 その辺はちょっとおいおい聞いていきますけれども、そうすると、現在の刑事裁判は、特に大きな問題がなく、国民の大方の信頼を受けているわけだから、どうして今この時点で国民の司法参加ということを言わなければいけない必然性があるんですか。どうしてこの時点でそれが必須、不可欠な問題なんですか。この点はいかがですか。

山崎政府参考人 これはやはり、裁判は今までずっとやってきております。確かに、おおむね順調にいっているわけでございます。個々に見れば、非常に時間がかかったりとかいろいろな問題は指摘はございますけれども。

 こういう中で、やはり裁判について、プロだけの目から見て物を決めていくということ、これだけ複雑な世の中になってきているわけでございますので、それで内部から物事を見ているというのは、ある一面しか見ていないわけでございますね。そういうことで、それでは全部のものを本当に見ているのか、こういう国民の意識が出てきているわけですね。

 そういうために、まず、前回申し上げましたけれども、裁判官自身が弁護士となって原則二年間その業務を行って、ある側面から見ているだけじゃなくて別の面からも見ていく、こういう点が必要だろうと思います。ただ、これはたかだか二年に限られちゃっているわけでございますので、では、それだけで全部済むかというとそうはいかないだろうということで、逆に国民の方から入っていただいて、物を見るときにやはり違う視点もあるんだよということ、こういうことを裁判の中できちっと言っていただくということですね。

 それから、どうしても裁判官等、プロですね、これはやはり物事の見え方がだんだん狭くなってくるわけでございます。そういうところで、やはりもう少し視野を広げて、それでいろいろな意見を聞きながら最終的に判断をしていく、こういう形にしよう。これは国民的な要請もあるのではないかというふうに思います。

辻委員 一方で、刑事裁判についての国民の信頼というのは大方の信頼を得ていて、特に大きな問題は生じていないということが言われている。私は、これは実は大きな問題、矛盾がたくさんあるというふうにいろいろ思っております。

 これは、各論のところでその点については申し上げますが、少なくとも提案者の側ではそのような理解に立っておられて、しかるに、国民の司法参加ということを、ほとんど問題がないところになぜわざわざ、ある意味では戦後の刑事訴訟を大きく変容することになるにもかかわらず、あえてやらなければならない必要性があるのか、この点が今の御説明だけではやはり不十分ではないか、納得できない、私はこのように思います。

 そこで、この提案理由だけでは、具体的に今の言葉だけしか書いてありませんね。だから、これの基礎となっているだろうと思われる衆議院調査局法務調査室の作成に係る「法律案提出の背景」という、冊子がありますけれども、基本的にはこの冊子に書いてあることを踏まえて今回の提案理由がこのような簡潔な言葉で表現されているんだ、こういう理解でいいんでしょうか。

山崎政府参考人 ただいま御指摘の、そういう経過を踏まえてこの立案に至ったということは間違いがございません。

 ただ、いろいろなとらえ方をしておりますので、それがすべてそのまま直結しているかどうかという問題は、また別問題でございます。

辻委員 ただ、一字一句細かい語句をそのままそのとおり支持されるというわけではないでしょうけれども、基本的な考え方、基本思想、物の見方ということに関して、この裁判員制度に関連しては、「法律案提出の背景」というこの文章がありますけれども、大枠はこの上に基本的立場としては立って今回の法案が提案されているんだ、こういう理解でよろしいんでしょうか。

山崎政府参考人 大枠といたしまして、私どもの組織の前身でございます司法制度改革審議会意見、ここで取りまとめが行われまして、この方向を実現するために私どもの本部ができているという点においては、それを基礎とするということは間違いございません。

辻委員 今回の法案の背景となっている国家観なり司法観、そして基本思想について伺っていきたいというふうに冒頭で申し上げましたように、この「法律案提出の背景」という中で書かれているいろいろな表現について具体的に伺っていきたい。

 まず、「法律案提出の背景」という一ページ目の1のところに「国民の社会常識の反映と司法参加」というくだりがあります。まず、その大きなパラグラフとして、二つの文章に分かれている。前段の文章でありますけれども、「我が国の刑事裁判に対しては、国民の意識・価値観が多様化し、社会が急速に変化する中で、」というのがまずあって、「一部裁判に時間がかかりすぎる、」「時として有罪・無罪の判断に納得できないことがある、刑が重すぎたり軽すぎたりすると思えることがある、裁判の手続や内容が分かりにくい、公訴提起の在り方に疑問があるなどの問題が提起されており、」そして次ですね、「刑事司法を、より迅速で、国民の社会常識が反映され、分かりやすいものとすることが期待されている。」というふうに書かれておりますが、問題が提起されているというのはだれが問題を提起しているのであり、そして、わかりやすいものとすること等が期待されているというのはだれが期待しているんですか。

山崎政府参考人 これは私どもの方で作成したものではございませんので、ちょっと何とも言えないんですけれども、やはりこの審議会を通じていろいろなヒアリングをしておるわけですね。これは別に、法律家以外でも、一般の市民の方、あるいは経済界の方、それぞれ裁判に結構携わる方、そういう方にもいろいろヒアリングを重ねておりまして、そういうところからの御指摘がいろいろあったということは間違いないことであるというふうに思っております。

辻委員 余り細かくこだわるつもりはありませんけれども、では、統計資料をとっているのかとか、国民のどの階層から何回どういうアンケートをとったのかとか、つまり、何か国民の総意でこのようなことが期待されているとか、このような問題が提起されているとかいうふうに抽象的に書かれているけれども、具体的には、これを起案したそのもととなっておる司法制度改革推進本部が期待をし、問題を提起しているということなんでしょう。

山崎政府参考人 私が申し上げているのは、改革審議会の中でまず議論がいろいろありました。その議論について、本当にそういう状態にあるのかどうかというのはヒアリングを重ねているわけでございますね。そういう中から上がってきた声がまさにこの意見書にまとめられているということだろうと思います、細かい文言はちょっと別として。したがいまして、最終的には改革審議会の方でそういう判断をされてまとめられたということになります。

辻委員 時間があればしっかりと聞いていきたいんですが、「国民の意識・価値観が多様化し、社会が急速に変化する」ということと、これがまず現状の認識だと思うんですね。次に、裁判の矛盾がこのようにあるんだと五点にわたっていろいろ書かれている。有罪無罪の判断に納得がいかないことがあるとか。

 だからどうするのかということで、次に、「より迅速で、」「社会常識が反映され、分かりやすいものとすることが期待される。」こうなっているんですが、「国民の意識・価値観が多様化し、社会が急速に変化する」ことによって、次に書いてある五つのいろいろな矛盾というのは、具体的にどういう理由、どういう根拠でこのような矛盾が起こっている、こういう理解に立っておられるんですか。

山崎政府参考人 世の中が時代とともに変わってきておりますね。ですから、求めている要請が変わってくるということが一つあることは当然。それからもう一つは、現在行われている司法、総体的には、私が先ほど申し上げておりますし、順調にいっているといいながら、やはり部分的に見れば、裁判が遅い、あるいはなかなか周りから見て納得いかないものとか、そういうような矛盾的なものも指摘されているわけでございます。

 したがいまして、そういうものをどうにか解消していかなければならないということは命題でございます。その命題を果たすとして、それは、やはり国民に納得できるような裁判というような視点、そういう時代の流れに変わってきているわけでございます。

 したがいまして、結局、国民に参加をしていただいて、そういうようないろいろ指摘されている点について解消をして、その上で国民に納得してもらえるものにしよう、こういうふうにつながっていくんじゃないかというふうに理解をしております。

辻委員 国民の意識、価値観が多様化しているわけですから、国民の常識というものは一概に言えなくなっているわけですよ。価値観が、意識が多様化すればするだけ、国民の常識というのを前提にある一つのまとまりのあるものを概念として措定することは、やはり困難になっているということだと思うんですよね。

 だから、国民の意識、価値観が多様化しているということと、国民の常識を反映させるということは、それ自体において論理が矛盾している。時代認識は意識、価値観が多様化しているという一方で、国民の常識というふうに措定されるそのときの国民の常識というのは、意識、価値観が多様化していることの中でどうしてそのような常識が生み出されるんですか。その点はどうなんですか。

山崎政府参考人 国民の常識といっても、これは御指摘のとおりに、価値観が多様化しておりますので、そうなりますと、幅があるということになるんだろうと思うんですね。この幅の範囲内では、それはやはり国民の意見なんですね。そこのところで、それはどれじゃなければならない、こういう時代ではございませんので。

 それで、ある程度の多数の方を裁判員になっていただいて、多様な意見を裁判の中に入れていただいて、その上で総合判断をしましょう、こういうことになるわけでございまして、国民の常識というのは必ずしも一つということではないですね。幾つかある。そういうふうなものを投影させましょう、こういう考えでございます。

辻委員 後の質問でまたそれについてはお伺いしますけれども、つまり、国民の常識だというふうにいって何かまとまるということがより困難な時代になってきているというふうに思うんですね。

 だからこそ、国の統治のあり方なり、もっと分権社会にしていかなければいけないとか、もっと地域のコミュニティーに行政についての合意形成をゆだねなければいけないとか、今の行政国家化した現象、行政権がどんどんどんどん肥大化していくということに対して、それを統制する、チェックする、そういうことが重要なんだと言われている。それが私は、今の時代認識として正しいんではないかというふうに思うんですね。

 だから、国民の意識、価値観が多様化しているから何をすべきかというときに、そういう多様な意識、価値観をどのように行政的な合意形成、それはどういう地方分権国家をつくっていくのかということにもかかわってきますけれども、そういう視点で物事を考えるべきときに、社会の常識を何か措定して、司法権にそれで影響を及ぼすというのは、時代が逆行しているんではないですか。物の考え方が逆転しているんではないですか。同じ質問の繰り返しかもしれませんけれども、一応お答えいただければと思います。

山崎政府参考人 それは、今委員御指摘のように、価値観が多様化している時代にどうやって国家全体を考えていくか、こういう視点は当然あろうかと思います。そういう考え方も、私わかることはわかります。

 問題は、裁判の関係でございますけれども、また別の関係もございまして、いろいろな意見があるときに、いろいろな意見の方に意見を言っていただいて、聞いた上で最終的に判断をしていくというのも、これは民主主義のあり方の一つであるわけでございまして、それはいろいろな側面があるんだというふうに私は思っておりまして、必ずしも一つの思想で全部を通さなければならないということではなくて、いろいろな場面があり得る、考え方があり得るわけでございます。

 最終的には、裁判の中で多数決できちっと決めていく、これが一種の民主主義のあり方ということで、それは逆行はしないというふうに私は考えております。

辻委員 一つの思想でまとめるということ、そういう何か特定の思想でまとめるということではなくて、むしろ、ある意味で国家の統治能力を、司法の領域において、司法権能においてその統治能力を非常に高める、そこに国民を参加させることによって、その統治能力を参加意識を持たせることによって高めるという効果をねらったものなんではないのかという問題意識から質問しているんですけれども、その点はどうですか。

山崎政府参考人 いや、それは、統治能力を高める、そういうような考え方ではございません。裁判に国民の感覚を導入して、投影して、納得のいく裁判にしようということで、これは統治をするという意識ではないわけでございます。

辻委員 あと三十分ぐらいしかありませんから、議論がどこまで発展するかということはありますが、司法制度改革審議会意見書で、これは佐藤幸治さんがお書きになっていて、非常に佐藤さんの特殊な言葉があちらこちらに語られているというふうに思いますが、まさに我が国の的確かつ機敏な統治能力を発揮しつつ、国際社会において名誉ある地位を占めるのに必要な行動のあり方が不断に問われているんだ、これがバックボーンにあるんだというふうにおっしゃっているわけですよ。先行するいろいろな改革があって、司法改革もそういう日本の国家的な統治能力をきちっと高めるために司法改革が必要なんだ、非常に大ざっぱに言えばそういうふうに集約されることをおっしゃっているわけですよね。

 ですから、先ほどから申し上げているように、価値観が、意識が多様化している中で国民の常識を裁判の結果に反映させるということは、結局、司法の統治能力に国民の常識ということを参加させることによって、国家の、国民を含んだ、そういう統治能力を高めるということにこの裁判員制度の導入というのは主要な目的があることになるのではないですかということを伺っているんですよ。どうなんです。

山崎政府参考人 もともと司法権は、国民から負託されてそれを行使しているものということになるわけでございまして、そういう意味では国民と全く無縁のものではないわけですね。それで、その中に、今まで国民の方が負託しているということだけではなくて、さまざまな価値観が多様化している時代なのでそれを裁判の中できちっと述べてほしい、そういうことを反映させた裁判をやっていきましょうということでございまして、今まで負託していたものの中に一部参加をする、こういうことでございまして、それが統治だとか、統治しないとかするとか、そういう問題ではないというふうに私は考えております。

辻委員 「法律案提出の背景」というところに返って伺いますけれども、二十一世紀の我が国社会において司法が果たすべき役割を明らかにする、国民がより利用しやすい司法制度の実現、国民の司法制度への関与、法曹のあり方とその機能の充実強化その他司法制度の改革、基盤の整備に関して必要な基本的施策について調査審議することが目的だということで司法制度改革審議会が発足をしたということになっております。

 そして、「「より強固な国民的基盤を得る」ことを目的に、「広く一般の国民が、裁判官とともに責任を分担しつつ協働し、裁判内容の決定に主体的、実質的に関与することができる新たな制度を導入すべきである」」ということで裁判員制度なんだというふうになっているんですが、「より強固な国民的基盤を得る」というのは、これはどういう意味なんですか。

    〔塩崎委員長代理退席、委員長着席〕

山崎政府参考人 これは、かみ砕いて言えば、国民の方が裁判の中に入って、裁判官とともに一緒に判断をするわけでございます。それをすることによって、自分も一国民として司法に対して責任を持って参加して裁判をしたということ、自分の意見も入ってやった、こういうことがふえてくれば、国民の方が、司法というのは自分たちが参加して自分たちも決めているんだ、そういう納得が得られてくるということですね。司法というのはこういう役割をしているんだ、そういうことですね。そういうことを大いに理解していただける、こういうことを言っているわけでございます。

辻委員 例えば、国民がより利用しやすい司法制度の実現ということと国民の司法制度への関与ということが並列的に並べられていますね。これは、併存する場合もあれば対立する場合もあるという理解でいいんですか。

山崎政府参考人 ただいまおっしゃっておられるのは、この改革審の意見書、三つの柱でできておりますので、利用しやすい司法という面ではまた別のいろいろな政策が立てられておりますね。それから法曹養成をどうしていくか、人の問題ですね、それと国民的基盤の確立、この三つに分かれておりますので、これは一緒になるという形ではなくて、いろいろなジャンルに分かれて改革をしていきましょう、こういう趣旨に理解をしております。

辻委員 例えば、裁判官と裁判員との役割分担についてということで、「それぞれの知識・経験を共有し、その成果を裁判内容に反映させる」というようなくだりがありますよね。知識経験をそれぞれが共有して、それを反映させるというのはどういう意味なんですか。

山崎政府参考人 裁判は結局合議体で行われるわけでございますので、それぞれの人生観、育ってきた環境によって物事の見方はさまざまございます。ただ、一定のルールの範囲内でということは、もちろんそれは枠はあるわけでございますが、そういうことを出し合って議論をして、その上でそのことを裁判の中に反映していく、こういう趣旨だというふうに理解をしております。

辻委員 結局、知識経験を出し合って、それはいろいろ衝突することもあるし対立することもあるわけじゃないですか、それはまさに価値観とか意識が多様化しているわけだから。それをまとめる、健全な社会常識にまとめるということですよね。

 この健全な社会常識を反映させるための健全な社会常識を、それぞれの裁判官なり裁判員の知識経験をぶつけ合ってそれをまとめ上げる健全な社会常識というのは何なんですか。

山崎政府参考人 それぞれ、先ほどから申し上げているように、価値観が多様化しておりますので、みんな意見が違うかもしれません。しかし、意見が違うところで大いに議論をしていただくのが合議でございます。最終的にはそれで評決をするということで、最後はそこで決めていく、こういうルールでございます。

 このルールにつきましては、それぞれの双方に必ず一名以上の賛同者がいなければならないというルールをとっておりまして、これは協働作業だからそういうふうにするということでございまして、最後はやはり多数決で決めていく、こういうルールにならざるを得ないと思います。

辻委員 事前手続がどれぐらいかかるのかというのは、運用の実態を見なければわかりませんけれども、場合によっては三カ月や六カ月で手続が終わって、そして公判審理が開かれることになる。そして、その時点で裁判員が参加することになるということも考えられると思うんですが、例えば、非常に凶悪な犯罪、社会的な事件として凶悪な犯罪が起こる。そうすると、日本の現状で見れば、マスコミは非常に大きく取り上げ、ある意味ではエキセントリックに、センセーショナルに取り上げるわけであります。それは、六カ月やそこらの後においてもその影響なり余波というのは当然あって、やはりマスコミが大々的に喧伝した、そういう影響下に国民の多くはいることが通常予想されるわけですね。

 そうすると、ある特定の凶悪だとされる犯罪が生じて、仮に六カ月後に審理があり評決があった。そのときの社会的な常識、つまり、裁判員は事実の認定と量刑の判断を行うというふうになっているわけですから、その量刑の判断に社会常識を反映させる。その社会常識というのは、当然、そのようなマスコミの喧伝された影響、効果に陰に陽に左右される、ないしは影響を受けているというふうに考えられますけれども、その点はいかがですか。

山崎政府参考人 この点に関しましては、この制度は、法と証拠に従った公平な裁判を行うということは、従来の裁判官による裁判、これと全く変わっていないわけでございます。したがいまして、一般の方が一般的な感覚をお持ちだといっても、それはその枠内での問題でございまして、そこの枠から外れるわけにはいかない。初めから、マスコミがこう言っているからもうこれは有罪だとか、そういうことはあってはならないというシステムになっているわけですね。

 これをもう少し担保するものとして、本当に、情に流されて冷静な判断をすることができない、そういうおそれのある方もおられる可能性がありますね。こういう者につきましては、これは不公平な裁判をするおそれがあるということから不選任の請求をすることもできますし、またその任についてからも解任をするというようなシステムも持っているわけでございまして、やはり裁判のルールに全く従わないような方、こういうような方については解任ということでその任を外れていただいて、また別の方に入っていただいてきちっと裁判をやっていく、こういうシステムになっておりますので、そこは暴走は許されないということでございます。

辻委員 今おっしゃった解任手続等については、ちょっと各論のところですから、それについて、では、解任する手続ないしはそれを判断する材料がどこまで情報開示されるのかとかいうような問題も含めて、それは問題点として後日伺いたいというふうに思います。

 話をもとに戻しますと、私が問題提起をしているのは、マスコミが非常に大きく喧伝をして、ある意味で予断を抱かせるようなそういう社会情勢下にあって、事実の認定と量刑判断をするに当たって、その影響力からなかなか免れないだろうということを指摘したことに対して、いや、そうはいっても法と証拠によって認定するんだから問題はないんだというふうにお答えになったと思うんですね。

 だけれども、量刑判断というのはある意味では法と証拠とは違う、ある種、融通無碍な領域とも言える領域なわけですよね。だから、そうなると、そこに何らかの影響が当然生じることは考えられるのではないですか。だから、その影響を、効果的に影響を発揮させるような意味で、この「健全な社会常識」という言葉を使っておられるんじゃないですか。その場合の健全な社会常識って何なんですか、何を基準としたものなんですか。

山崎政府参考人 まず、大前提として、今御指摘のある例の場合、これは、私ども検討の途中では対マスコミとの関係、いろいろ案もあったわけでございますが、最終的には、マスコミの方でも自主的なルールをつくっていただくということで、今回はこちらでは何も置かなかったということでございまして、まずそちらの方の成果を一つきちっと見ていかなければならないという問題はもちろんございます。

 それからもう一つは、最終的に判断をするという場合、国民の方でもいろいろな方がおられるわけでございますから、それでいろいろな、量刑でも分かれることになる可能性はあるわけでございます。そういう場合にまさに合議が行われて多数決で決めていく、こういうルールでございます。

 これでどうしても、それでもなお裁判としておかしいということになれば、これは控訴審で是正をされる、こういう構造ででき上がっているということでございます。

辻委員 結局、私の問題意識は、最初から申し上げているように、一方で憲法上の刑事手続上の被告人の権利が、国民の司法参加という政策目的、それは国民の常識を判決に反映させるんだというその政策目的によって、現に保障されている、憲法上保障されている被告人の刑事手続上の権利が危うくなったり後退をしたり侵害されたりすることになっては、これは本末転倒であり、そういう制度はある意味で憲法違反になるんじゃないですかということを問題意識として持って言っているわけですよ。

 具体的に、もう少し具体的な場面、場面でこういう不利益が生じる可能性がないのかということは伺っていくつもりではおりますけれども、まずその一番最初として、刑の量定において、非常にマスコミが華々しく、ある意味で予断を持った喧伝をしているときに、それを受けた国民、やはり社会的な健全な常識といったときに、オウムの件なんかいったら、何で八年も十年もかかる裁判をやっているんだ、あんなものすぐに死刑にしてしまえとか、いろいろな声が多く寄せられたりするわけですよ。だから、そういう声にさらされる危険というのは、制度の問題とは別に、現実的な影響下に置かれるという意味における危険というのはやはり生じるわけですよ。

 それに、刑の量定というのは何らかの拘束を受けるわけだから、結果として、刑事被告人は、やはりみずからの防御する権利を、余分な防御をしなければいけない、マスコミのそういう攻勢とかについても余分な防御をしなければいけないという意味において、やはり権利の侵害がより多く生じることになるのではないかという質問なんですよ。この点はいかがですか。

山崎政府参考人 これは、先ほど来申し上げておりますけれども、国民の方が入るからといって、法と証拠、この範囲を超えて、それからあるいは量刑でも、常識的な考え方があろうかと思います、これをはるかに超えるということ、それは最終的には許されないことになるわけでございまして、それは一定の範囲内で、いろいろな価値観がございますからそれは動くことはあり得る話だろうと思います。

 そういうような、合議で結局定めるわけでございますから、そういうような経験とか知識、こういうものが全体がその合議の中に反映をされまして、その過程を通じて適正な結論に達していく、こういう構造になっているということと、影響されやすいような方とか、そういう方についてはお引き取りを願うような制度、これを別途設けるということで、制度面とそれから合議によってその点はいろいろきちっとした是正がされていく、こういうことで考えておりまして、被告人に不利益になるということではございません。

辻委員 社会が国民の敵だというふうにわっと沸き返っているときに、やはり多くの国民がそれにとらわれ、そのような気持ちになる、それは法曹資格を有している者だって当然そういう気持ちになるということは十分あり得ることなわけですよ。だから、特殊な場合にそういう危険があるということを想定して、解任規定があるからそれで事足りるということではないと思うんですよね。

 やはり、だから、そういう社会の常識とかいうふうに語るときに、ある意味では、わっと盛り上がるものもこれは社会の常識だということになるわけですから、そういう状況下でいろいろ余分な防御を努力せざるを得ないような立場に刑事被告人が置かれるということ自体が一つの不利益だと思うんですね。

 やはりその点についてもう少ししっかりと自覚をしていただきたいというふうに思います。いかがですか。

山崎政府参考人 御指摘のとおり、現在プロだけでやっている裁判、これとは変わるわけでございますけれども、ルールは同じでございます。それは幾ら国民の常識あるいは感覚と言われても、これはやはり法律の解釈には従わざるを得ない、これは裁判官が決めるわけでございます。

 それから、証拠の評価であっても、シロをクロと言うことはできないわけでございますので、そこはやはり一定のきちっとしたルールがあるわけでございまして、その中における国民の感覚の反映、こういうことでございまして、そこのルールは変わっていないというふうに御理解を賜りたいと思います。

辻委員 では、重大な凶悪事件が起こってその直後に世間が大きく感情的になっているときに、裁判員がそのような感情にとらわれないようになるそういう担保というのは、どういう制度的な担保としてこの法案の中で示されていますか。

山崎政府参考人 これは、先ほど来申し上げておりますけれども、まず、裁判員として選任をする場合のいろいろな面接とかそういうことを通じて、この方は本当にそういうことで任にたえられるのかどうかという問題ももちろん、すぐ質問でわかってくるわけですね。その段階で、これは冷静な判断ができないというおそれのある方については、公平な裁判をすることができないおそれがあるという形で、不選任決定をしてお引き取りを願うということにもなろうかと思います。

 それから、先ほど来申し上げておりますけれども、解任の規定があり、裁判員になった後も、一定の外部の情報に惑わされて、そういう発言ばかりしている、あるいはそういう行動ばかりするということであれば、冷静にみんなの議論に参加をしないという状況があれば、やはりこれはもう解任という形で正常化を図っていくということになるわけでございまして、そういうような担保は皆備えているわけでございます。

 最終的には、合議をして、その中で結論を出していく、多数が集まって多数決で決めていくということでございます。それも、結論を出す場合には両方の意見が入っていなければならない、こういう担保をしているわけでございます。したがいまして、それほど現在のルールと大きく変わるということではないだろうというふうに思っています。

辻委員 今おっしゃったのは、極めて部分的な、担保制度の一つとして列挙されるのはいいと思いますけれども、極めて部分的だと私は思いますね。

 では、担う国民、裁判員となる可能性がほとんどの国民にあるというふうにされているわけですから、そうなると、結局、国民がそういうことにとらわれない、一時の感情にとらわれなくて、自分が向き合う裁判の、法と証拠に沿って自分がきちっと判断をしなければいけないという見識と、その制度に対する意義ということをしっかりと認識するということがなければ、やはりそういうことはあり得ないわけですよ。だから、それを具体的にどう担保しているのかということをより明確に示していただきたいということが一つですよ。

 それと、国民にそういう見識と意義ということを、ある意味では周知徹底ということがまだまだ不十分だから、まだそこについて全くおぼつかないということであるから、五年の施行期間を設けているということなんでしょう。その点、そういう脈絡で、通常は考えられない異例な五年間という施行期間を設けられているというのは、そういう意味を持っているからなんじゃないんですか。

山崎政府参考人 そういう意味では、まずきちっとした周知をして、この制度の理解をしてもらわなければならないということは、御指摘のとおりでございます。

 ただ、この五年間の期間というのは、もちろん国民の方に理解してもらうという要素もございますし、それ以外にいろんな準備もしなければならない、いろいろなものが総合されているわけでございますので、必ずしもそれだけのものではないということですね。

 それからもう一点は、そこで一般的な理解をきちっとしてもらわなければならない。これも政府として最大限努力しなければならないということだろうと思いますが、これは、法文の中にも、附則のところにそういう規定が入っておりますけれども、それでまず一つ責務を負っているということ。

 それから、この法文の中で、裁判所の役割につきまして、裁判官ですね、裁判官は合議においてわかりやすくその制度等を説明しなければいかぬということ、評議においてわかりやすく、それから十分に意見を言ってもらえるような形でやらなければならないということが規定されておりまして、まずは、そういうような動揺を受けやすいような事件については、裁判官がどの程度きちっと説得をして、冷静な気持ちになって合議を進めていくか、こういうところが制度的にはいろいろ手当てがされているということでございます。

辻委員 この裁判員制度の法案提出の背景、社会的な常識を反映するんだ、国民の積極的な参加を促すんだということになっておりますが、その背景としては、恐らくこの司法制度改革審議会意見書の中で、佐藤幸治さんがおっしゃっている、国民の統治客体意識から統治主体意識への転換というような、これを規定的前提にするんだ、こういうことをおっしゃっているわけですね。これは、極めて独特な、特殊な言葉で、すべてあまねく人々が理解可能な言葉ではないというふうに思いますけれども、つまり、国民が統治客体から統治主体へ意識を変えるんだ。

 だけれども、国家なり法ということを問題にしているときには、国家と国民というのは別の存在であり、ある意味では対立的な存在なんですよ。だから、それを、統治客体であったのが統治主体になるんだ、そのための制度がこの裁判員制度なんだということは、対立な側面を持っている国家と国民という現実を、そのように一面的に統治主体なんだという、これはある種のイデオロギーをそこに植えつけているようなものであって、現実とは違うんじゃないですか。

 こういう考え方、現実と乖離したある種の理念なりイデオロギーを持ち込んで制度の趣旨とすることは誤っているのではないかと思いますが、この点はいかがですか。

山崎政府参考人 国家と国民の関係について、これはさまざまな考え方があろうかと思いますが、それぞれの立場でいろんなことが言われていると思いますが、基本的に現在の日本の制度でどうなっているかということでございますけれども、これは先ほども申し上げましたけれども、司法権は、やはり国民から負託されてそれで行使しているものということでございまして、国民と国家は敵対関係ということではないわけでございます。協働関係ですよね、もともとは負託されているわけですから。負託されているものに、じゃ、お上だけに任せますよという形じゃなくて、自分たちも一部に参加をしていきましょう、負託している実質を実効あらしめるようにしましょう、こう言っているわけでございまして、何か、敵対関係ということではないと私は思っております。

辻委員 立法目的と立法事実をはっきりさせて、この法案の射程範囲ということを明確にすることが、仮に成立させて制度を運用するに当たっても必要不可欠だという前提でいろいろ伺ってきました。一方の政策的な要請と憲法上の価値が対立した場合にどちらをより優先しなければならないのか。これは自明のことであり、憲法上の価値である。したがって、刑事被告人の権利が後退するようなことがあれば、この裁判員制度というのはやはり問題なんだということを私は問題意識として持って、その上に基づいて御質問しているわけです。

 少なくとも、立法目的として、判決に国民の社会常識を反映させるんだ、その立法目的の立て方については、私は、幾つか大きな問題点がある。最終的に、今申し上げた統治客体から統治主体意識へ転換するんだなんということを言うことは、そんなに簡単にみんなの理解を得られるようなものではないというふうに思います。だから、立法目的について、必ずしも妥当ではないというふうに私はあえて言います。

 では、そういう立法目的を実現しなければいけない立法事実というのは、現にあるんですか。だって、刑事裁判というのは国民の大方の信頼を得て特に大きな問題もなく運用されているわけですから、あえてこの制度を持ち込まなければいけない立法事実というのは、現実にどこにあるんですか。具体的に示してください。

山崎政府参考人 これは冒頭に、我が国の司法制度はおおむね理解をされているというふうに申し上げましたけれども、やはり一部の事件に関しては極めてその事件の時間がかかるということ、あるいは、いろいろ、真偽のほどは私はわかりませんけれども、そこは申し上げませんけれども、マスコミ等を見れば、こういう結論でいいのかという、いわゆる国民から見たときに首をかしげるものも出てくることもあるわけでございます。

 こういうことをやっていると、やはり司法というのはだんだん国民から遠い存在になってしまうということですね。非常に時間が経過した以後に、もう風化したころに、こんな裁判もあったのかということで、果たして国民の感情も許すか、そういう問題がずっと指摘されてきているわけです。

 そういうことを解消するためにはどうしたらいいかということで、やはり国民にも、参加して、自分たちでもやった裁判だ、そういうことで納得してもらおう、こういうことでございまして、これは、立法事実は現にあるということです。具体的な事件でどうこうというのは立場上申し上げませんけれども、そういう指摘は随分あるということでございます。

辻委員 時間の関係がありますから、あと一、二にとどめたいと思いますけれども、今、国民、国民というふうにおっしゃっているんだけれども、その国民の中には刑事被告人は含まれているんですか。どうなんですか。

山崎政府参考人 これは、刑事被告人を直接、その意見を聞くということはしておりません。(辻委員「概念として」と呼ぶ)概念ですか。

 概念は、例えば国会議員の先生方、これは国民の代表ということでございますね。いろいろなところから国民の意見の反映で選ばれているということになりますね。直接そういうことに、お聞きすることができないというような場合には、そういう代表する方にお聞きをする、あるいは、いろいろなマスコミだとか経済界だとか労働界あるいは一般の消費者の方、そういうようなどこかの代表の方にお聞きするしかないだろうと思いますね。全部について聞いて回るわけにはいかぬということで、そういう代表されているような方につきましてはヒアリング等を通じて意見をお伺いしている、こういうことでございます。

辻委員 ちょっと質問の趣旨がしっかりとは通じていなかったようなので、私の趣旨とはちょっと違うんですが、要するに、結局、国民の司法参加、国民の司法参加というふうに言われたときに、当然、犯罪者や刑事被告人の人たちも含めて国民という概念があるわけですよね。だから、国民全体の司法参加という、そういう人たちも含んだ視点として国民という概念が措定されていなければならないと私は思うわけです。

 ところが、専ら語られている国民の司法参加というときの国民というのは、刑事被告人はどこかよそに追いやられていて、刑事被告人と対立する別物としての国民という概念が措定されている。その国民が司法に参加する。

 だから、結局のところ、司法を担う司法権力という国家とそこに国民が参加をして、刑事被告人と対抗関係をとるというような、そういうシチュエーションのあらわれ方になっているのではないか、それがこの法案の大きな問題点ではないかというふうに私は考えるわけです。やはり、結局、刑事被告人の権利がないがしろにされるような思想構造、国家観、要するに司法観というのがこの法案の背景にあるのではないかということを、私はきょうの質疑を経てもなお非常に感ずるものであります。

 これは、またあした私は質問時間をいただいていますから、この問題意識を踏まえて、もう少し具体的な各論も含めて、あす質疑をさせていただきたい、このように思います。

 終わります。

柳本委員長 午後四時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時四十二分休憩

     ――――◇―――――

    午後四時三十二分開議

柳本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。鎌田さゆりさん。

鎌田委員 民主党の鎌田さゆりでございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 お疲れさまでございます。静かな、大変環境のいい中でやらせていただきたいと思います。

 今回の刑事裁判の充実、迅速化を図るための諸方策が導入された刑事訴訟法の一部を改正するこの法律案でございますけれども、充実化と迅速化というものを共存させるという、私は、可能ではあっても、この充実化と迅速化を共存というのは非常に難しいテーマではないかなと思っております。

 ですけれども、可能であるというそこを追求していきながら、しかし絶対に忘れてはならない裁判というものについての理念、そういったものを忘れずにこの充実化と迅速化というものを同時に目指していくという努力はしていかなくちゃいけないのじゃないかなと思っておるんですが、ぜひ冒頭大臣に、裁判というものがだれのためで、そして何のためにあるのか、そしてこれからもあり続けなきゃいけないのか、大臣としてのお考えを冒頭明らかにしていただきたいと思います。

野沢国務大臣 冒頭ちょっとかたくなりますけれども、刑事裁判の目的については、刑事訴訟法の第一条にも規定されておりますが、公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障を全うしながら、事案の真相を明らかにして、刑罰法令を適正、迅速に適用実現することにある。ちょっとかたい御答弁で恐縮ですが、これは私なりの言葉で言わせていただきますれば、原告がいて被告がいて、さらにはその後ろにおります大勢の国民の皆様、その国民の皆様のために、またその幸せのために行われるべきであると考えております。

 ただいまお話がありました充実と迅速化というのは、一見矛盾することもございますが、むしろ、これはあわせ行うことを今回の法案で実現したいものと考えて御提言しているわけでございます。

鎌田委員 きょうで今回の通常国会の法務委員会、大臣とのやりとりは三回目になりますけれども、御自身のお言葉でというふうにおっしゃっていただいて御答弁いただいたのは初めてかなと思いまして、すごくまとまった言葉でしたけれども、大変うれしく、感動してお聞きをさせていただきました。全く私も同感でございます。

 刑事裁判にあっては、やはり国家国民のため、そしてひいては裁かれる人の人権をいかにして守っていくか、また、民事裁判にあっては、両当事者間の利益を守るためであり、また国家秩序の維持のためというふうに私は受けとめておりますし、これをしっかりと守っていく制度構築にしていかなければならないと思っております。

 そしてまた、裁くという裁判の場面においては、だれが、あるいはどの角度から見ても公正なルールに基づいて、適正な、明確な事実関係を明らかにしていくという判断、決定、これが大事なのではないかなと思っておりますので、その考えに基づいて、そしてまた、ここ数回にわたります自民党、与党さんの質問の中でもたびたび出てきました、きょうも出ていました憲法の中にあります三十一条、三十二条、三十七条、裁判というものを受ける権利、あるいは適正な法手続によって、開かれた法廷で主張していく権利とか、そういったものを根底に、基本に据えながら質問をさせていただきたいと思います。

 まずは、公判前の整理手続についてお伺いをいたしますけれども、この手続の主宰は受訴裁判所になるということでしょうか。

山崎政府参考人 そのとおりでございます。

鎌田委員 これは非公開ですか。

山崎政府参考人 非公開手続でございます。

鎌田委員 ということは、非公開の場面において、同一の裁判官が、この手続にもかかわり、そしてまた公判後の裁判に受訴裁判所としてかかわっていくというふうになるわけですか。

山崎政府参考人 手続の流れとしてはそのとおりでございまして、同一の裁判官が判断をしていく、こういう形になります。

鎌田委員 もう本当にこれだけお聞きしただけでも、いわゆる予断排除の原則に反するんじゃないのというふうに感じて当然じゃないかなと思うんですが、審議会の意見書でも、その予断排除の原則には配慮しなければいけないというふうな意見もございますけれども、これに反しないというふうにはっきり根拠を持って御説明をいただけますか。

山崎政府参考人 若干長くなりますけれども、この点についてきちっと御説明をさせていただきます。

 いわゆる予断排除の原則の趣旨でございますけれども、公訴提起の際の検察官から裁判所への一件記録の提出を認めないということによりまして、捜査機関の心証が裁判所へ一方的に引き継がれて、それから裁判所があらかじめその事件の実態について心証を形成して公判に臨む、これを防止しているものでございます。

 この公判前整理手続でございますけれども、これは、裁判所は、当事者に主張の予定を明らかにさせたり、それから証拠調べ請求やそれに対する意見、証拠意見、これを明らかにさせるということになりますけれども、これは公判の審理が計画的に円滑に進行するよう準備するために行うものでございまして、あくまで両当事者の主張に触れるものにすぎないということでございます。しかも、その両当事者がひとしく参加する場合において行われる、こういうものでございます。

 それからまた、裁判所は、証拠能力の判断とか証拠開示の裁定のために証拠に触れることもあるわけでございますけれども、これも証拠能力の有無とかあるいは証拠開示の要否、その判断のために証拠を確認する、こういう作業をするにすぎないわけでございまして、当該証拠の信用性を判断するわけではないということでございます。

 したがいまして、受訴裁判所が公判前整理手続を主宰いたしましても、予断排除の原則に抵触するものではない、こういうふうに考えているわけでございます。

鎌田委員 いろいろと御説明をいただきましたけれども、その主張に触れるものにしかすぎない、触れられちゃ困るんじゃないかなと思って聞きましたが、ひとしく集うといったって、ここは非公開の場でありますから、とにかく、この受訴裁判所が主宰をするということについては、もうこの法案ののっけからですけれども、私は大反対でございます。

 今、公判前整理手続で明らかになることにも少し触れていただきました、次にお聞きをしようと思ったんですけれども。

 ちなみに、三百十六条の五のところには、「公判前整理手続においては、次に掲げる事項を行うことができる。」ということで、一から十一までありますけれども、行うことができるということは、これは行わなくてもいいというふうに解釈をしてよろしいわけですか。

山崎政府参考人 これは、できることを掲げているわけでございまして、当該審理において必要のないことはやらなくてもいい、必要がないことはやらなくてもいいということです。最大限これだけはできるということでございます。

鎌田委員 必要がないという判断は、裁判所が下すわけじゃないですね。これを明らかにする者の側の方が判断をしていいんですね。

山崎政府参考人 主張を提出するのは、これは当事者でございます。それから、最終的に、証拠を請求して、これを採用するかどうか、こういう判断は当然裁判所がやる。それから、当事者に不服がありまして異議の申し立てをするとか、こういう点については、判断は裁判所。

 要するに、三者が集まって、三者が必要なことをやる、こういう手続でございます。

鎌田委員 ちなみに、その一から十一まである中で後半の部分に、証拠調べをする決定、今も触れた部分もあるかと思うんですけれども、これからその裁判を進めていく、公判の期日が決まって、そして公判が進んでいく、そういう流れの中に非常に大きくかかわりのあるような内容と思っていいと思うんですけれども、そういうものをこの整理手続の中で明らかにして、そしてそれを受訴裁判所の裁判官がその手続にかかわってということというのは、これは先ほど御説明をいただきましたけれども、私は明らかにその心証に大きく作用するというふうに感じられます。

 そして、裁判というのはそれこそ生き物だというふうによく言われますけれども、公開の法廷で始まって、流動する闘いの局面、局面でそして心証をつかんでいくものだと思いますけれども、こういう掲げられている事項の特に後半の部分のあたりなどは、あらかじめそういうものを明らかにするという、しかも非公開の場で。私はそこに必要性を感じないんですけれども、いかがでしょうか。

山崎政府参考人 これは、現在の刑事訴訟の手続で考えてみますと、特段ルールを決めないで始めれば随時いろいろなものを出していけるという形になるんだろうと思いますが、そのルールをもう少し前倒しをして、早く出して、本当に必要なものの争点を決めて、そこに必要な証拠を十分出して裁判を行っていこうというものでございまして、そのルールからいくと時期的に前倒しになるということでございます。

 それから、ここで整理をいたしますけれども、ここで整理したものでこれで終わりということではなくて、これは予備的な手続でございまして、法廷に行ってすべてを取り調べるということになるわけでございますので、公開の法廷で必要なものは全部そこでやるということでございますので、そういう意味では今の手続と変わらないということになろうかと思います。

鎌田委員 ですから、そういうふうに、なるべく計画立てて、あらかじめ明らかにして、それこそこの法案の理念のところに、迅速化と充実化というところにもつながっていくんだというふうには理解はできるんです。

 だから、だからこそなんです、だからこそ戻っていって、主宰は受訴裁判所がするべきじゃないんじゃないですかと。あらかじめこういうものを出して、そしてそれからの道筋というものを、今局長おっしゃったように、いいですよ、それをやったとしても、やるのはいいとしても、だからこそ、そしたら受訴裁判所が受けるべきじゃないんじゃないですか。だって、同じ裁判官が、非公開の場で出たものを、幾ら有罪の心証をとることにつながらないといったって、そういうものを目にして、そしてまた裁判員にも説明してという機会も出てくるでしょう、いろいろなことを。公判がスタートしてからまさに闘いが始まるんでしょう、裁判というのは。そして公判が始まってから有罪か無罪かどっちかに決まっていくんでしょう。それを、ほんのちょっとでも裁判官に対して有罪の心証をとるようなそういうようなことがあっては、これはみじんもあっても絶対いけないと私は思うんです。

 だから、おっしゃるように、迅速化あるいは充実化を目指していくために必要なこのあらかじめの手続の中でこういうものを明らかにする、そこは百歩譲ってうなずけたとしても、だとしたら、主宰は絶対受訴裁判所がやるべきじゃないですよ。そんなの絶対おかしい。(発言する者あり)与党さんからおかしいという声が出ていますから。(発言する者あり)えっ、質問がおかしいんですか。どっちですか。

山崎政府参考人 私には、今のやりとり、聞こえませんでした。私の意見として申し上げたいというふうに思います。

 まず、裁判官が仮に証拠に触れるというものでございますけれども、これは現在の刑事訴訟手続の中でも、判断する前提として提示を命ずるということで、見るとかそういうことはできることになっております。ただ、それは、その判断を下したら、それでそれは必要ないということになれば、その心証はとってはならない、これが大前提でやっているわけでございます。

 それから民事手続でも、同じようなもの、例えば文書提出命令がございまして、これについて本当に提出を命ずるかどうかという判断のためには物を見なければわからないということで、見てその上で判断をするという手続もございます。だからといって、それを見たから心証をそのまま引き継いでいい、こういうことにはなりません。

 それからもう一点は、申し上げたいのは、では、公判を担当する裁判官以外の裁判官がこの整理手続を行うということにいたしますと、必要な証拠調べの範囲などについて公判を担当する裁判官と判断が異なったというような場合には、また公判において再度証拠決定をし直す、あるいはもう一度、整理手続、これに戻してやり直すとか、出たり入ったりということを何回か繰り返す可能性があるわけでございます。やはり、そういうことになると非常に実際上の手続にも問題があるということで、公判前整理手続を行った意味が失われる、こういうことを考えまして、受訴裁判所で行う、こういうふうにしたわけでございます。

 特に、裁判員の入る事件に関しましては、これはそんなことをやっていたら協力は得られないということになるわけでございますので、その点は御理解を賜りたいと思います。

鎌田委員 そうしますと、この法案、公判前整理手続から読んでいくと、現在の起訴状一本主義、これとの兼ね合いはどうなるのかなと。これはここで考えを改めていくということになるわけですか。

山崎政府参考人 起訴状一本主義のことでございますけれども、この点については、先ほどは予断の排除という点の要請を申し上げましたけれども、それが端的にあらわれているのが起訴状一本主義ということになろうかと思いますけれども、この点につきましては、先ほど申し上げましたけれども、公判前整理手続においては、当事者に主張の予定を明らかにさせたり、証拠調べの請求や、それに対する証拠意見、こういうことを言わせるということで、あくまでも準備を行うということでございまして、その点では、証拠の内容に触れるというよりも主張に触れるということでございまして、それで両当事者がひとしく参加している場で行うわけでございます。

 それから、証拠の判断等についても、先ほど申し上げましたけれども、証拠開示の要否の判断のために証拠を確認するということでございまして、その信用性云々ということを判断するわけではないということでございまして、そういう意味では、この手続は起訴状一本主義に反しないというふうに考えているわけでございます。

鎌田委員 作業現場の局長とは、ずっとやっていてもこのままだと思いますので、大臣にぜひお伺いしたいんですが、私は、迅速化、充実化のためにこの整理手続を今回導入して、そして、なるべく整理整とんされた中でというか、それは理解できます。否定はいたしません。しかし、ならばこそ、この手続の主宰は、同一の裁判官がする、裁判所がするなんてことがあっては、これは絶対よくないですよ。

 今の御説明も、先ほども重ねていただきましたけれども、あくまでも準備だと。その準備が公判前にきちんとされる、そしてそれから公判に突入していくというのが、じゃ、できレースの裁判になっちゃうのというふうに素人の私なんかは考えてしまいます。

 それから、主張に触れるとおっしゃいましたが、両当事者が幾ら平等にそろっているといったって、非公開の場での主張ですからね。初めに申し上げましたけれども、憲法で、オープンになっている法廷の場面でそれぞれが主張する権利を有しているわけですから、非公開の手続の中で主張し、それに触れるからいいんだという説明でもって予断排除の原則をちゃんととっているという根拠にはならないと私は思うし、あるいは有罪の心証をとるということもこれで避けられるんだというふうには、私は少なくとも。

 そして、私は法曹界の人間でも何でもありませんから、それこそ、司法の現場に行って、一人一人の弁護士さんや、一人一人のそういう司法の現場にいる人たちからいろいろな話を聞いてきて、ここに来ています。前回の委員会でも言いましたけれども、そういう司法の地方の現場の声を代弁しているというふうに自分は思っています。そういうところで今私が申し上げてきた声がたくさんあるということを、大臣、改めて踏まえていただいて、このことに対して検討の余地が幾ばくかもないのかどうか。

 そしてまた、今回はスタートですから、しかし、これから先、不都合がもしももしも、あるいは、これは常にその検討を、ちゃんとそのチェックをしていくんだというような、そういういろいろな考えを持つことは私は許されて当然だと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

野沢国務大臣 裁判の基本かと思いますが、これは改めて申し上げるまでもなく、何よりもまず、この迅速化あるいは充実化という前に、真実を明らかにするという、この前提が最も私は基本であろうと思います。

 真実を明らかにするためには、やはり被告の言い分、原告の言い分、あるいは検事さんの言い分、そして弁護士さんの弁護の言い分、すべて判断を公平な立場で行う裁判官の、やはり準備といいましょうか、法律並びにその証拠、これに対して知り尽くした上での判断というものが一番基本であろうと思うわけでございますので、今回提言しております公判前整理手続というのは、当該裁判所でやっていただくことが最も効果的であり、そしてまた、結果よしということにつながるものと私は確信をいたしておるわけでございますが、どうかその点については十分御検討の上、御賛同をいただければ幸いと思います。

 よろしくお願いします。

鎌田委員 大臣のお考え、わかりました。でも、私は、大臣からそういうお言葉をいただきましたけれども、やはりこのことについてはどうしても理解ができないなというふうに思います。

 裁判官といえども神様ではないと私は思いますし、だからこそ、完璧に予断というものを、有罪の心証をとってしまうようなことは絶対あってはいけないわけで、裁判で平等に対等に闘いが公判スタートから始まっていくということを保障するのが大切なのではないかなと思いますので。これについては答弁は要りません。

 続きまして、三百十六条の十五のところに証拠開示類型の限定が掲げられておりますが、三百十六条の十五の条文の後に、「次の各号に掲げる証拠の類型の」というのに当てはまるものが一からずっと載ってございます。その中で、五番のところに「次に掲げる者の供述録取書等」とございまして、そして今度は、「(前条の規定により」云々「供述に現れた事項と同一の事項に関する供述を記録したものに限る。)」という括弧書きのものがございます。そしてまた、その次に「検察官が証人として尋問を請求した者」という文言がございます。

 これを見る限り、またしても、弁護側の弁護活動あるいは被告人にとっての正当な真っ当な防御活動というものをここで萎縮させるの、狭めるんですかという思いを抱かざるを得ません。私は、この五番の括弧書きのところ、これは全く不要であるというふうに考えますが、いかがでしょうか。

山崎政府参考人 三百十六条の十五の第一項第五号でございます。この趣旨を申し上げますけれども、検察官が証人請求をした者または証人請求予定者の供述録取書等を開示対象類型とするものでございます。

 これを開示対象類型とする趣旨でございますけれども、検察官側の証人の供述の証明力を判断する上で、その証人の従前の供述を検討しまして、矛盾とかそれから変遷の有無、こういうものがあるかどうかということ、それから内容を確認する、こういうことが一般的、類型的に重要であると考えられるということからこの規定を置いているわけでございます。

 このような趣旨からいたしますと、当該検察官側の証人の供述調書等であっても、公判廷において証言が予想される事項とは全く関連のない別の事項についての供述を記載したものは、一般的、類型的にその検討が重要とは言えないということになるわけでございまして、したがいまして、これが開示対象類型には含まれないということを明らかにする趣旨でございまして、それを同一事項ということで限定を付した、こういう内容でございます。

鎌田委員 もし私の解釈が少しそれていたら、逆に指摘していただければいいんですけれども、例えば、刃物を持った人がだれかを刺したという現場を目撃した場合、「記録された供述に現れた事項」、これというのは、例えばこれだと、その目撃したという供述の録取書に当たるんだと私は思うんですね。

 しかし、公判を進めていく中で、例えば、もしもこの目撃をした人が証人の予定者で、その証人が、その目撃をする前にここで何が起きていたか、ほかのも何か見ていたとか、あるいは、三日前に、その刃物を持って刺した人とこの証人予定の目撃者は実は大げんかをしていて、すごい恨みを持っていたとか、何かそういう関連しているような、そういったものが、反対尋問をしていく中で、同一の事項に制限しないで出てくることによって、それをもとに公判の中でさまざまな弁護活動が展開されていって、思いも寄らない真実、事実が明らかになるということだってあるんじゃないかなと思うんですけれども、こういうとらえ方は間違いですか。

山崎政府参考人 先ほどちょっと長々申し上げて恐縮でしたけれども、端的に言えば、その事項と全く関係のないというもの、これは必要ないだろうということをここで言っているわけでございまして、関連のあるものはやはり出さざるを得ないんです。ですから、その犯行の目撃の状況、それと、その前の経緯というんですか、動機に至るやりとり云々、こういうのは当然密接に関連をしてくるわけでございますので、これは同一事項に含まれるということでございます。

鎌田委員 わかりました。であればというような気持ちも持ちました。

 やはり、その前後の関連するようなものというものは公判廷の中で非常に大切だと私は思いますので、ただ、「同一の事項に関する」、その同一というものがどうしても誤解を招くのかなと思いますけれども、今の答弁でそれが生きていくんだろうと思いますので、そこのところはしっかりそのようにしていただきたいと思います。

 それから、三百十六条の三なんですけれども、少し戻って。「できる限り早期にこれを終結させるように努めなければならない。」というふうにございますけれども、「これを」というものは、結局はその公判前整理手続のことを指すのでいいんでしょうか。指すのであれば、「できるだけ早期に」というのは、さっきから聞いているような気もいたしますけれども、「できる限り早期にこれを終結させるように努めなければならない。」なんということは、何も法律で書く必要は私はないのではないかなと思いました。そこのところはいかがでしょうか。

山崎政府参考人 これは、昨年も裁判の迅速化法を御承認いただきましたけれども、全事件について二年以内のできる限り短い期間でやっていく、こういうことを内容とするものでございまして、やはりこの手続の指針を与えるものでございます。ですから、必要なものは全部やるわけでございます。やるんであるけれども、それをできる限り短くというんですかね、集中をして、それで手続を終わっていく、これを目標にするわけでございまして、これは当然やはりこの趣旨として書くべき事柄だというふうに思っております。

鎌田委員 再び大臣に確認をさせていただきたい、お聞きをしたいと思います。

 この「できる限り早期に」という言葉、そしてそこからつながって、「努めなければならない。」というふうに文末を結んでおりますので、このように若干でも強制的なニュアンスが伝わってくるような法文上でいきますと、迅速化には寄与するかもしれません。

 しかし、先ほど大臣がちゃんとおっしゃったように、事実を明らかにしていくことが最も大事なんだということにおいては、時として、ああ、少しゆっくりかもしれない、しかしこれを充実してやっていかなきゃいけない、充実してやっていくことによって、私は、おのずと迅速化にもつながると思いますので、ここのところの「できる限り早期にこれを終結させるように」というこの言葉はなくとも、十分、関係する方々が迅速化を目指して、充実した手続、そして裁判というものを行っていけるのではないか。

 そして、逆に、法律で担保をするというか、きちんと言葉として残すべきは、やはりこの前に十分な準備が行われるようにする、これをきちんと担保をしてあげる、十分な弁護活動、そして十分な調べ、そしてそれを審理するという、そこのところだと思いますけれども、いかがでしょうか。

野沢国務大臣 裁判を速く行うためには、やはり何といっても、証拠が十分出そろっている、あるいは両者の主張がはっきり出てくる、いわゆる裁判前の整理手続をしっかりやるということは、極めてこれは裁判迅速化には効果的でもありますし、また、その事実を事前に明らかにすることによって真実もおのずから明らかになってくるということからいたしまして、今回のこの法案が、一連のものが新しい制度であるということを考えますと、やはり努力目標、達成目標をこうした形で記述する「できる限り」という表現は、その意味では妥当ではないかと考えております。

 どうぞよろしく。

鎌田委員 大臣にどうぞよろしくと言われると、何か静かな威圧感のような、はいと言わざるを得なくなっちゃいますけれども、でも、どうしてもはいとは言えないでございますですね。できる限り早期にこれを終結させなければいけないと何で法案で書くのかなというのが、とても私には、そんなことを言わなくたってと思います。ただ、これはその前の国会、あるいはずっと議論されてきたところでもあると思いますけれども。わかりました。でも、ぜひこれからも追っかけていきたいと思いますが。

 続きまして、主張明示のことについて伺いたいと思いますが、三百十六条の十七のところに、被告人は公判の適正な手続において裁判を受ける権利、先ほども憲法三十一条の紹介をいたしました、あるいは公開の法廷で自分の主張を行うという権利、憲法三十七条に保障されています、にもかかわらず、この非公開の場面において、またこれも最後に何々しなければならないと。これは、だれが見たって、どう見たって強制ですよ。

 私は、もうさかのぼってさかのぼって憲法のところにも触れるおそれの大いにあるこの主張明示の義務だと思いますけれども、なぜこのようなものが必要なのか。私は、何々しなければならないというような強制の意味が伝わるような、そういう文言にはすべきじゃないと思いますが、いかがでしょうか。

山崎政府参考人 これは、条文で見ていただければわかるのですが、あくまでも、公判においてする予定の主張がある場合に限って主張をしなければならない、こういうふうにつながっているわけでございます。ないものについてそれを強制しているわけではないということでございます。

 先ほど来、委員の方も御指摘がございますけれども、裁判は、充実してかつ迅速である、これが理想でございます。歴史上これを理想の姿としてずっと追い続けてきて、なかなか知恵がないということから、いろいろな試行錯誤をしてきているわけでございます。

 今回も、この裁判員制度導入に伴いまして、まさにこういうことでやっていこうということでございまして、この両方の理念を掲げないとやはりまずいんだろうと思いますね。十分にやりなさいということですね、先ほど条文にございました、それで、やはり迅速にやりなさいと、両方の命題をきちっと出して、それで初めて有効になるわけでございます。

 それを有効あらしめるためには、前倒しで、あるものは出していただきたいということでございまして、それは、ないものはないで結構でございます、あるものは、それを、時期を前倒しして出しておいてくださいということを申し上げているわけでございまして、これを義務づけることはそんなにおかしいことじゃないと私は思っております。

鎌田委員 では、明示しなかったとして、それは不利な心証をとるという、そこにつながるということは、そういうおそれはありませんね。

山崎政府参考人 黙秘の権利はもちろん被告人にはございますけれども、ここで何も言わなかったということによって、それが当然に何かの不利益になるということはございません。この構造は、現在の刑事訴訟法の手続、それと全く同じ構造でございます。

鎌田委員 私がこれに対して異議を感じ、そして異論を唱え、申し上げましたのは、ここで強制というふうにちょっとでも伝わって、そして、ここで何が何でも明示しなくちゃいけないんじゃないか、明示しなかったら後で不利な心証になってしまうんではないか、そういうような、ちょっとでも萎縮あるいはその弁護活動、防御活動を阻害してしまうようなことにつながるというのでは、これは絶対にあってはいけないと思うからで、絶対にあり得ないんだということですね。完璧にあり得ない、一〇〇%。

山崎政府参考人 これは、現在の手続をもう少し前倒しして行うということでございまして、言いたくないことは言わなくていいということは、もう今と同じでございます、そこを強制するわけではございません。

 それから、言いたいことがあれば言っていただいて、それを公判廷で明らかにしていただくということになるわけでございまして、そこの構造は何も変わっていないのでございます。ただ時期的に前倒しをして整理をいたしましょう、こういうことでございます。

鎌田委員 いや、ですから、その時期的にのところでは、先ほど来私も申し上げているとおり、前倒しをするというところで、環境が違うじゃないですか、環境が。だから、大きく、だってこれは公判前整理手続の中での主張明示義務ですよね。非公開か公開かという天と地ほどの差もあるようなところでしなくちゃいけない明示義務ですよね。

 これは私、何かやはり、とらえる目線が違うというか感じ方が違うというか、そもそも一番初め、裁判というのは、裁かれる人の人権を、まあ私はそういうふうに思っている、裁かれる人の人権を守るためであり、国民、国家のためであり、正義のために。そういうときに、大きく環境が、原則が違う、非公開か公開かで違う、しかも公開の場で述べるのを保障されているのに、非公開のところでちょっとでも強制的な意味があってはいけない。

 では、それは絶対ないんですねと聞けば、前倒しするだけだから、時期的にちょっと早まるだけだからと。そういうふうに感じられちゃ、これもまたいつまでたっても話なんてかみ合わないし、そういう非公開の場面であっても、時期が前にいく、そのところで主張明示をされても、それは、ほんのちょっとも、一ミリといえども不利な心証をとることにはつながらないし、そして、それを全然強制するものでも何でもないし、完璧に、被告人の防御活動を阻害するものでは絶対ないんだということですかと聞いたので、それに対して、うんといやとどちらかだけでもいいと思うんですけれども。

山崎政府参考人 被告人の防御する権利、これに支障を与えるものではないということでございます。後ほど、これは公判廷において整理したものをきちっと主張することができる、公開の法廷で。そういうことも保障されているわけでございますので、そこの点は御理解を賜りたいと思います。

鎌田委員 続いて、公判前整理手続終了後の証拠調べ請求について伺いたいと思いますが、三百十六条の三十二のところで、三行目、「やむを得ない事由によつて公判前整理手続」云々かんぬんとございます。「手続が終わつた後には、証拠調べを請求することができない。」というふうにあるんですが、この手続終了後というのは、もちろんだと思いますけれども、第一回公判期日以降ももちろん指すものなんですよね。確認です。

山崎政府参考人 公判前整理手続が終わった以後を指しますので、第一回公判期日以後ということではございません。その前でも、とにかく整理手続が終わった以降は全部指すわけですね。(鎌田委員「以降は全部指す」と呼ぶ)はい、そういうことです。

鎌田委員 「やむを得ない事由によつて」というふうにありますけれども、「やむを得ない事由」というのは非常にあいまいな表現でありまして、ぜひ確認をさせていただきたいのは、刑事訴訟法の三百八十二条、ここのところに、一審とそれから控訴審のいわゆる性格の違いからするところの「やむを得ない事由によつて」云々かんぬんと、三百八十二条の二にございますけれども、そこのところの、こちらの三百八十二条の方にあるような「やむを得ない事由」というのは、これは言ってみれば当然といえば当然、一審と控訴審の違いからする、非常に解釈的には狭まったものかなと思うんですけれども、こちらの方のは非常にあいまいで、できるならばここではっきりしてもらいたいし、この一審と控訴審のところで、刑事訴訟法三百八十二条でうたっているところのそれとは全然違うわけですから。ただ、言葉としては全く同じなので、やむを得ない事由が一体何なのか、さらに、私は、ここへ「やむを得ない事由」という言葉をもってして証拠調べを請求することができないというふうに規定をすることに、またこれも全く必要ないというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

山崎政府参考人 これを、やむを得ない事由がない場合でもいつでも出せるということにしたら、本当に準備手続をした意味がどういうことかということを問われるわけですね。ここで言っているやむを得ない事由は、先ほど三百八十二条の二でございますか、ここで言われましてこれと共通しているところと、それからもう少し広がるところと、二つあります。

 共通するところを申し上げますと、証拠は存在はしていたんですけれども物理的に出せないという場合もあります。あるいは、これを知らなかったということですね、これについてもやむを得ない事由がある。ここは共通をしているわけでございます。

 それからもう一つは、今回、公判前の整理手続、あるいは公判前だけじゃなくて期日間における整理手続もあるわけでございますけれども、そういう手続における相手方の主張や証拠関係などから、証拠調べ請求をする必要がないと考えて、そのように判断することが合理的であったと考えられる場合でございまして、当然、そういう主張はしなくても、争点になっていないので証拠を出さなかったというような場合で、期日を進めていくところで主張が変わってきたというような場合、それは当然必要になってくる。こういうものについてもやむを得ない事由になりますよということが、ここで言っている意味でございます。

鎌田委員 局長、今そこまでおっしゃったのであれば、何もここで「やむを得ない事由」という誤解を招くようなあいまいな表現ですることないんじゃないかと思うんですよ、私は。

 だから、今のお話の裏を返せば、つまりは、訴訟の進行を、わざとというか意図的にというか、明らかにおくらせた、意図的に。訴訟の進行を明らかにおくらせる目的でもってこういうことをした、そういうときには証拠調べ請求することはできないというふうに、私は特定をしてよろしいんじゃないかと。今ここで「やむを得ない事由によつて」というふうに書くと、今局長はそうやって説明してくださいましたけれども、非常にあいまいで、いや、これはどこからどこまでなんだろう、そしてまたさっきの三百八十二条との関連はどうなんだろうと。

 そういうふうに、訴訟の進行を明らかにおくらせる目的というふうに限って、そういうときにそういう証拠調べを請求することができませんよというふうにやった方がわかりやすいし、そして、私は、それを言わんとしている部分も大いにあるんじゃないかなと思いますけれども、いかがでしょうか。

山崎政府参考人 今二つおっしゃられておりますけれども、やむを得ない事由がある場合に限って証拠を出すことができるという考え方と、不当に訴訟をおくらせる目的で出すものについての制限をするという考え方、その二つを言われているんだろうと思いますが、後者の方で構わないんではないかというふうに言われているんだろうと思います。

 そうなりますと、不当に審理がおくれるかどうか、そこの判断の問題でございますけれども、そうじゃない限りはいつでも出せるということになるわけでございまして、それは、やはり準備手続をきちっと行ってきたこと、それが一体どうなるのかということにもなるわけでございます。

 特に、裁判員制度の導入がされている事件に関して、順次やってきた、そのときに途中で、それじゃ、そんな目的はないけれどもとにかく出しますよということを認めるということになるわけでございまして、これはやはり、手続の流れ、あるいはその手続は何のためにつくっているかということと矛盾をしてくる可能性があるというふうに考えます。

鎌田委員 明らかにおくらせる目的に限る、それ以外ならばもう何でも、そうすると手続をやった意味がない。私は、そういうふうなお話に流れていくというのは非常に、日本の、今百年に一度の司法制度改革をやっているすごく大切なターニングポイントというか新たな出発のときなのに、私はですけれども、憲法でうたわれているそういったものの保障というものがどんどん遠ざかっていくように感じてしようがありません。

 訴訟の進行を明らかにおくらせる目的に限るというふうにしちゃうと、それ以外のものは全部証拠調べ請求できることになるんだ、だったらば手続の意味がない。だけれども、局長もさっきからおっしゃっているように、やはりいろいろ進めていく中で、新たなものが出てきて、新たな事実確認をしなくちゃいけないものが出てくる。そうなったら、それは証拠調べ請求というものについて、そのあいまいな言葉でもって定義づけをして制限を加えるということは、これは、憲法で保障している裁判の場所で闘っていく、局面、局面でもって闘っていくということを少なからず阻害するというふうに私は感じます。

 ですから、やむを得ない事由によってという、ここで何も一気に狭める必要も何もないし、証拠調べを請求することができないというふうにするのであれば、制限をかけるのであれば、やはり先ほど来言っているような、そういうふうに特定をすべきじゃないですかという考えは、きっと局長とずっとまたやっていても変わらないと思うので、大臣、いかがでしょうか。

野沢国務大臣 法律の書きぶりとしてどちらがいいかということもあろうかと思いますが、やはり私ども、これからこの制度を新しく運用していくに当たりまして、あらゆる事態にできるだけ適用可能な表現をとっておくことが大事ではないかと思うわけでございます。

 私も、いろいろな法律をこれまでつくってきたり、あるいは運用してきた中で、「やむを得ない事由によつて」というこの表現というのは、これから起こり得る事態を相当カバーできる大変上手な日本語ではないかと思っておりますので、その辺、ひとつ御検討をいただきたいと思います。

鎌田委員 正直、すごく残念な気持ちでおります。

 だからなんです。確かに大臣がおっしゃるように、上手な日本語を使って幾らでもカバーできるようになっている。それでよくないから、だから、訴訟の進行を明らかに遅らせる目的というふうに限った方がいいんじゃないかと。

 私は、被告人の防御活動、弁護人の弁護活動というもの、それは最大限に十分に配慮をして、あらゆるチャンスを提供していかなければならないという考えでおります。

 例えば、警察が犯罪行為らしきものをマークして、そして任意で捜査が始まって、一年かかるものもあれば、二年かかるものもあれば、わかりませんけれども、その間、ずっと捜査でさまざまな証拠資料を集めて、そして逮捕して、そして二十数日たって起訴をして、そこから今度、弁護人は、大組織の警察、検察組織に対抗できるなんてあり得ないとも思うのですけれども、そこに対して弁護人は、一人で立ち向かったりもするし、二人でもあるかもしれないけれども、そこから証拠調べや資料調べが始まるのですよ。私は、明らかに天と地の差があると思います。

 検察や警察は、それはもうすごい捜査力でもって、機動力でもって、あらゆるところで、そして時間もかけ、起訴までの間調べられる。しかし、弁護人はそうはいかないという現状は、皆様は私よりも何百倍も御存じの方だと思いますので、私が言うまでも何でもないのですけれども、しかし、こういう現状の中で、またここでそういう制限があるということは、果たしてその現状をどう見ているんだろうと。

 大臣は、警察、検察側の、そういったものの力の大きさと、物理的なさまざまな大きさと、そしてまた、弁護活動をしていく弁護側の力のこの違いというものは、私が今申し上げたものは理解できませんか。

野沢国務大臣 裁判員制度の導入の目的というのが、まず、わかりやすくするということ、それから、公平に公正に行うということ、また、委員再三御指摘のように、迅速に行うという、この三つが非常に大きなやはり要素であろうと思います。

 その意味からしても、証拠の開示というのは事前にそろえて、主張もそろえて、公平な判断ができるようにということがまさに命の部分でございますので、途中からいろいろなものが出てきたということになると、それのまた調べ直しだとか、やれ、やり直しだとか、裁判員の方も日程がなかなかやりくりがつかなくなるとか、さまざまな課題が出ると思いますので、やはりここは、しっかりと集約した形で出そろったところで裁判がスタートし、そこで大部分が終結する。

 ただ、全くやむを得ないような新しい証拠がぽっと飛び出したら、そこはやはり認めなければならないだろうということだと思いますので、ここは御理解をいただきたいと思います。

山崎政府参考人 ただいま証拠収集能力の違いを言われました。客観的にはそうだろうと思います。

 今回は、いろいろ御指摘があった点も踏まえまして、とにかく、被告人の防御のために必要な証拠はなるべく多くを開示していこう、こういうシステムを今度導入するわけでございまして、そこで証拠を十分出した上で必要な主張はしていただく、それから、自分でその必要な証拠は出していただく、こういうことを前提に、十分に準備をすることを前提にやっているわけでございまして、その上で、一応、証拠の提出を後出しはなしにしましょう。

 ただ、やむを得ないものについては当然認めます。それから、それ以外でも、職権で、やはり裁判所は真実発見義務がございますので、職権でも証拠調べをすることができるという二つの穴をあけているわけでございまして、これによって被告人の防御について支障を与えるということはないというふうに考えております。

鎌田委員 あと四つぐらいテーマを予定していたんですけれども、時間もないので、あと二つは絶対何としてもやりたいので、以上は閉じて、次に行きます。

 連日的開廷の確保ということも今回は法律の中で、二百八十一条ですか、うたわれておりますけれども、これも先ほどからずっと私が主張してきているのと関連をいたしますけれども、この連日的開廷を確保していくのであれば、少なくとも、もういろいろな場所でいろいろ議論が大分出ているかと思うのですけれども、一つに、接見交通権の拡充、これは、急いで制度化を、整備を進めていかないと、今のままでは、またますます弁護活動ばかり大変な状態に追い込まれていってしまいます。

 例えば、私は、夜間、休日、あるいは電話などでの接見が可能になるようにすべきだと思いますけれども、そして、具体的には、刑事訴訟法の三十九条三項、接見の指定というこの条文がございますが、欲を言えば、ここのところは削除したっていいんじゃないのと思いますけれども、できなければ、その指定を調整に改めるとか、私はそのように思いますが、いかがでしょうか。

横田政府参考人 お答えします。私の方から、ただいまのお尋ねの前半についてお答え申し上げます。

 行刑施設に収容されております被収容者の接見は、現行の監獄法令上は、原則として、執務時間内でなければこれを許さないというふうにされております。行刑施設の長において、その処遇上その他必要があると認めるときには、例外的にこれを許すことができることにもなっております。

 被告人の弁護人から夜間の接見の申し出がありました場合には、行刑施設の長において、当該接見の緊急性、必要性や、当該接見のための職員の配置が可能であるかなどを検討し、個別にその許否を判断するということになります。

 それから、電話の件なんですが、刑事訴訟法上の接見には電話の使用は含まれず、監獄法上も電話の使用は認められておりません。

 電話による通話につきましては、その相手方が弁護人であるかどうか十分確認することができないなど、逃亡または罪証隠滅の防止の観点や、施設の規律及び秩序維持の観点からの問題もあるというふうに考えております。

鎌田委員 今私が申し上げたものは、ここで初めてじゃなくて、もういろいろな場所でいろいろな方々がそういう要望を意見として言っているわけですから。

 やはり、今の御説明ありましたけれども、連日的開廷を確保していくとなったら、まじめに、だって、こういうふうに接見交通権を拡充されないとやっていけないですよ。どうやってやっていけというのかなと思うんです。

 こっちで連日でやれ、しかし接見交通権はこういう状態だと。例えば、すごい大都市の弁護人の方がいきなり遠いところに行って接見しないとだめだ、そういう状況にある弁護活動をしている人が全国に幾らでもいるじゃないですか。そして、これで連日的開廷でしょう。どうしろと、体が一つしかないのにと思いますので、引き続き、これはきっちり検討していただきたい。

 それから、民主党として、河村議員を中心にして刑事訴訟法の改正の議論も進めてきて、これから法案を出す予定にも、出したのかな、になっていますけれども、取り調べ過程の可視化、録画、録音、こういったものも、きのうの公聴会でもありましたが、絶対にこれはないとだめというふうに私は思います。

 これはぜひ検討の余地、これからの例えば見通しでもいいです、今こういうところでこういうような協議をしているから、大体このくらいにはめどがつくんじゃないかなというようなところまであったら、非常に進歩したと多くの人がこれは評価をすると思いますが、いかがでしょうか。

樋渡政府参考人 取り調べ状況の録音、録画等につきましては、司法制度改革審議会意見におきましても、刑事手続全体における被疑者の取り調べの機能、役割との関係で慎重な配慮が必要であること等の理由から、将来的な検討課題とされているところでございまして、法務省といたしましても、慎重な検討が必要であるというふうに考えております。

 なお、最高裁判所、日本弁護士連合会及び法務省、最高検察庁は、本年の三月、裁判員制度の導入等を踏まえ、検討を要する刑事手続のあり方等に関し協議、検討を行うために、刑事手続の在り方等に関する協議会を設けたところでございまして、この協議会におきましては、委員御指摘の取り調べ状況の録音、録画等の問題につきましても協議、検討することとされておりまして、法務省としましては、同協議会における議論も踏まえ、刑事手続のあり方全体の中で多角的な見地から検討することが必要であるというふうに現在考えているところでございます。

鎌田委員 通告をしていたものがまだ残っていますけれども、時間が来ましたので、ルールを守って終わりにしたいと思います。

 ぜひ、いい司法制度の改革が進みますように、そして、みじんも弁護活動あるいは被告人の防御活動というものを阻害するようなことがない、そういう制度設計にしていっていただきたいということを要望申し上げまして、私は終わります。

 ありがとうございました。

柳本委員長 御苦労さん。

 次回は、明十四日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時三十三分散会


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