衆議院

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第24号 平成16年5月12日(水曜日)

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平成十六年五月十二日(水曜日)

    午前九時三十四分開議

 出席委員

   委員長 柳本 卓治君

   理事 塩崎 恭久君 理事 下村 博文君

   理事 森岡 正宏君 理事 与謝野 馨君

   理事 佐々木秀典君 理事 永田 寿康君

   理事 山内おさむ君 理事 漆原 良夫君

      小野寺五典君    左藤  章君

      桜井 郁三君    柴山 昌彦君

      中野  清君    早川 忠孝君

      平沢 勝栄君    松島みどり君

      水野 賢一君    森山 眞弓君

      保岡 興治君    山際大志郎君

      荒井  聰君    泉  房穂君

      鎌田さゆり君    小林千代美君

      小宮山洋子君    辻   惠君

      中井  洽君    松野 信夫君

      吉田  治君    上田  勇君

      富田 茂之君    川上 義博君

    …………………………………

   法務大臣         野沢 太三君

   法務副大臣        実川 幸夫君

   法務大臣政務官      中野  清君

   最高裁判所事務総局人事局長   山崎 敏充君

   最高裁判所事務総局民事局長

   兼最高裁判所事務総局行政局長   園尾 隆司君

   政府参考人

   (司法制度改革推進本部事務局長)   山崎  潮君

   政府参考人

   (知的財産戦略本部事務局長)   荒井 寿光君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)   寺田 逸郎君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    房村 精一君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    樋渡 利秋君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)   清水  潔君

   法務委員会専門員     横田 猛雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十二日

 辞任         補欠選任

  柳澤 伯夫君     小野寺五典君

  枝野 幸男君     吉田  治君

  加藤 公一君     荒井  聰君

同日

 辞任         補欠選任

  小野寺五典君     柳澤 伯夫君

  荒井  聰君     加藤 公一君

  吉田  治君     枝野 幸男君

    ―――――――――――――

五月十二日

 国籍選択制度と国籍留保届の廃止に関する請願(古屋範子君紹介)(第二一七八号)

 同(丸谷佳織君紹介)(第二一七九号)

 国籍法の改正に関する請願(古屋範子君紹介)(第二一八〇号)

 同(丸谷佳織君紹介)(第二一八一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 行政事件訴訟法の一部を改正する法律案(内閣提出第六六号)

 不動産登記法案(内閣提出第七五号)

 不動産登記法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第七六号)

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

柳本委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、行政事件訴訟法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として司法制度改革推進本部事務局長山崎潮君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

柳本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

柳本委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局園尾行政局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

柳本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

柳本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。辻惠君。

辻委員 民主党・無所属クラブの辻惠でございます。

 前回、行政事件訴訟法の持つ意義、本当にこれが行政をチェックするために実効性ある法案として定立されるのか、また、そのような運用がなされるのか、これが極めてかぎであるということで、それを法の支配という理念のもとに運用していかなければならない、法の解釈についても、法の支配という理念のもとに解釈していかなければならないという観点から、前回総論的に御説明を求めました。

 きょうは、具体論にわたりまして説明を求めていきたいというふうに思います。

 本法案につきましては、救済範囲の拡大、審理の充実、促進、利用しやすく、わかりやすくするための仕組みの整備、そして仮の救済の制度の整備という四点にわたって改善となっているんだ、このように立法者の方は、提案者の方はおっしゃっておられます。本当に、具体的な条文を見たときに、そのような前進になっているのかどうなのかということについて逐次具体的に伺ってまいりたい、このように思います。

 まず、改正法の第三条で、抗告訴訟ということで新たに六項、七項が加わっております。六項で義務づけの訴え、七項で差しとめの訴えが認められるということになっております。

 義務づけの訴訟ということに関して、例えば六項の一号では、「行政庁が一定の処分をすべきであるにかかわらずこれがされないとき」というふうに、ある意味では限定が加えられている。これは不作為を争うわけでありますから、作為義務があれば、当然それは義務づけの訴えは認められるわけであって、処分性を前提にするというのは非常にこれは限定的な考え方、つまり、取り消し訴訟中心主義を脱却していないのではないかというふうに考えられるように思いますが、この点はいかがでしょうか。

山崎政府参考人 従来取り消し訴訟を中心に行政訴訟が行われてきたというその点はそのとおりかと思います。

 私ども、義務づけ訴訟ですね、これを今回認めるという方向でお願いしているわけでございますけれども、現在はある行政処分を取り消すかどうかという限度におさまっているわけでございますけれども、これについて、取り消すだけではなくてこういう処分をすべきであるということを義務づけるということですね。これは確かに取り消し訴訟の対象についてもっと深く処分を求める、こういうものでございますので、それは取り消し訴訟の範囲に入っているということは間違いありませんけれども、それについていろいろな対応を認めていく、こういうことですので、バリエーションとしては広がっているということですね。

 それともう一つは、申請したものが拒否をされて、それに対して取り消し訴訟と、それからあるいは義務づけ訴訟を起こす、こういうパターンのものももちろんございますけれども、それ以外に、申請権者じゃない人が規制権限の発動を求めて第三者として義務づけを求めるというものも新たに設けているわけでございますので、これは従来の申請者とその相手方と、あるいはごく限られた方について取り消しを求めるというようなものから、さらにその義務づけですね、こういう規制権限を発動しなければならないという、そこまで求める、そういう点を明らかにしたという点では広がっているだろうというふうに思いますし、これをいろいろな形で利用していただいて、国民の権利救済を図っていただくということになるわけでございますので、取り消し訴訟中心主義からさらに広がっていろいろなメニューを用意した、こういう位置づけになろうかと思います。

辻委員 今のおっしゃっている一歩広がっているという趣旨はそれとして理解できると思いますが、これは処分性を前提にした規定になっていると思いますが、その点は、それは不可欠なものではないと思いますが、いかがでしょうか。

山崎政府参考人 どういう解釈をするかは別として、取り消し訴訟の対象になるのは一応処分性があるものと今まで言われておりますけれども、それについてのものをいうことになると思います、ここの義務づけ訴訟は。ただ、処分性がないものについてどういうふうに扱っていくかということにつきましては、これは、後の方の条文で出てまいりますけれども、当事者訴訟の中の確認訴訟、これを利用していただいて、その権利義務関係の存否を争っていただく、こういう形になろうかというふうに理解をしております。

辻委員 順次伺ってまいりますが、この義務づけ訴訟については、六項一号の場合に、対世的効力がない、準用されていないというふうに考えられますが、このような、法令に基づかない場合に第三者に義務づけが及ばないというのは、具体的な争訟において二重手間になるようなことも懸念されると思いますが、その点はいかがですか。

山崎政府参考人 第三者に対する関係は、参加の制度もございますし、あるいは訴訟告知ですか、こういうものを利用していただいて、そこに効力を生じさせる。それで一回で解決するというんですか、そういう方法もあるということでございます。

辻委員 ちょっと、質問の事項が多くなっていると思いますので、次に進みます。

 差しとめ訴訟が、これは新たに法定されたということでありますが、これもまた処分性というものを前提にしているわけでありまして、二○〇三年の十月二十四日付の「今後の検討のためのたたき台」の中で見ましたときに、「本案の要件として、行政庁がその処分をすべきでないことが一義的に明らかであることが必要ではないか。」ということが欄外で述べられていて、これを前提に、この処分性を持ち込んだ七項の規定になっているように思いますが、これではやはり非常に限定的であって、この差しとめの訴えが発動される場面というのは非常に限られてくるのではないかというふうな懸念を持ちますが、いかがでしょうか。

山崎政府参考人 これにつきましては、法案の要件としてこれを書いているわけでございまして、通常の場合は、処分性がある、そういう行為、これが前提になるということだろうというふうに思います。

辻委員 そうすると、結局、逆に言うと、取り消し訴訟の場合に処分性を前提にして、したがって、行政訴訟が本案で争う余地が非常に狭くなっている、問題であるということが言われていて、その処分性についてやはりもっと緩和して考えるべきではないかという、取り消し訴訟の場面を広くする意味でも議論があると思いますが、結局、従来の処分性を前提とした狭い取り消し訴訟の範囲内で、この義務づけ訴訟にしても差しとめの訴訟にしても措定されているというふうにしか理解できなくなるんですが、そういう趣旨でありましょうか。

山崎政府参考人 確かに今回、処分性の範囲をどうするかという点については議論はいたしましたけれども、最終的にはそこについての改正は加えないと。これは、実体法の解釈の問題、あるいは実体法でどう規定をするかという問題にも絡むわけでございますので、そこのところは何も改正は加えておりません。したがいまして、処分性があるかないかという問題につきましては、それは実体法の問題であるということでございます。

 ただ、では、処分性がないものについてどうするかということでございますけれども、これにつきましては、例えば、先ほども申し上げましたように、処分性がないといたしましても、そのことによってみずからの権利義務関係に影響があるということになれば、これは、当事者訴訟としての確認訴訟、これを利用していただいて、自分がそういう義務がないということの確認、こういう形で争ってもらいたいということで、そちらの方向は、ある程度そこを明確にすることによって、そういう手段がありますよということを明確にしている。

 片方、処分性のあるものについては、処分性がありますけれども、その処分が行われる前にもそれをストップする方法とか、それから、単に取り消すだけではなくて、そういうことまで義務づけてしまうようなもの、こういうようなものを、メニューをもう少し広げていこう、こういう考えによるわけでございます。

辻委員 今御説明をいただきましたが、処分性の概念というところにまだとらわれている面が残っているという点については、やはり今後検討していくべきではないかというふうに指摘しておきたいというふうに思います。

 それで、今御指摘になられた四条の当事者訴訟の後段で、「公法上の法律関係に関する確認の訴えその他の公法上の法律関係に関する訴訟をいう。」というくだりでありますが、これは、今御説明になられたように、処分性に拘束されないということだと思いますが、そうすると、これは、行政処分に限らず、行政指導とか行政計画とかそういうものも広く対象になる、こういう理解でよろしいんでしょうか。

山崎政府参考人 基本的考え方はそのとおりでございます。

 ただ、例えば通達とか行政立法があって、それがおかしいというならだれでも起こせるかということではないということでございまして、そのことによって、みずからが申請をしたときにこういうような形の決定が下るという場合に、それであれば自分の権利が侵される、こういうような関係、あるいは自分の権利義務関係に影響がある場合、こういうものについては、公法上の確認訴訟、これを提起して、その是正を図っていくということができる、こういう形になるわけでございます。

辻委員 この四条の後段につきましては、処分性に拘束されないし、行政指導等も対象となるという意味で、つまりこれは、行政側がどういう手段をとったのかということにかかわらず、いわば国民の側で、法律上の利害関係があれば、これは確認訴訟を起こせるという、そういう、国民の側の視点に立って考えられているというふうにも理解できますが、それはそういう理解でよろしいんでしょうか。

山崎政府参考人 そのとおりでございまして、従来これは、解釈あるいは判例で、一部この類型を使って訴訟をやっていったものもありますけれども、一般に余り知られていないわけでございまして、これを明確にすることによって、やはり、国民サイドの方からこれを利用するならできますよという合図をしているわけでございますので、国民サイドに立った考え方ということになろうかと思います。

辻委員 だから、国民のサイドに立った考え方として行政指導等も対象にするという考え方は、例えば同時に取り消し訴訟にも、国民のサイドに立った考え方で考えたときに、行政処分に限定するのではなくて、行政指導とか行政計画等も取り消し訴訟の対象にするのがやはり国民の側に立った考え方であり、その辺の考え方は統一して、取り消し訴訟にも及ぼすべきだというふうに思いますが、これが食い違いになっているというのはどうしてなんですか。

山崎政府参考人 食い違いというふうに理解するのかどうか、ちょっとわかりませんけれども、要はこの処分性を、では、行政指導とか、それから通達でも結構ですけれども、そういうものを認めるということになりますと、やはり処分性があるということだと取り消し訴訟の対象になりますので、そうすると、出訴期間とかそういう問題にもみんな影響してくるわけでございます。

 例えば、都市計画について処分性がどうだこうだという問題、議論ありますね。これについても、処分性をもし認めるということになれば、出訴期間も当然に伴ってくるわけでございますので、ある期間を過ぎたらもう争えなくなるという問題にもなってまいるわけでございまして、そういう点も総合的に考えて決めていかなければならない。あるいは、それは実体法の、どういう政策をとるか、ここで処分性を認めて争わせるのかどうかというところにも絡んでくるわけでございまして、これを統一的に現段階で整理をするというのはなかなか難しいということから、この点についても、将来の問題であるという形でその整理をしたということでございます。

    〔委員長退席、下村委員長代理着席〕

辻委員 そうすると、取り消し訴訟で行政処分に限定しているという考え方については、やはり今後の見直しの課題ではあるという認識はお持ちである、こういう理解でいいんですか。

山崎政府参考人 ただいまの点につきましては、本当に実体法の問題に絡んでくるわけでございますけれども、そういう問題についてどうしていくべきかということは課題として残っているということで、私ども、これからこの法案の方、御承認をある程度いただける段階になりましたら、検討会がございますので、そちらの方でまた検討を、再度議論を開始するということになります。それで、残った問題について、今御指摘のもの以外にもございますので、こういうものについて検討を加えていきたいというふうに考えているところでございます。

辻委員 では、次に進みます。

 原告適格の問題については、多くの方から既に御質問があります。やはり一項の「法律上の利益を有する者」という、いわばある意味ではシンボル的な言葉に固執し続けるということ自体が、やはり今回の行政事件訴訟法の改正がまだまだ不十分であるということの一つのあらわれではないかというふうに私は思わざるを得ないわけであります。その点は指摘しておきたい。

 それで、二項について、いろいろ加重な要件が原告適格に課されております。これは同僚委員からも質問があったと思いますが、「当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たつては、当該法令と目的を共通にする関係法令があるとき」というような、これはやはり昨日の参考人質問で、塩野参考人は、むしろ裁判所の手足を縛ってはいけないんだ、これがむしろ手がかりになるんだという御説明をされたように思いますが、しかし、素直に読めば、限定的に要件を狭めているというふうに理解されますし、また、その次に、「当該処分又は裁決がその根拠となる法令に違反してされた場合」、「その根拠となる法令に違反して」ということになりますと、その根拠法令が想定している利益が害されたということがやはり前提になってくる。この点は、当該根拠法令が想定している利益というよりも、単にその処分で害されたんだということで、端的に足りるのではないかというふうに思います。

 この最後の点についてはいかがですか。

山崎政府参考人 これについては、行政処分が誤りがある、それによるから損害とか被害が出てくるわけでございますので、それを端的に申し上げているだけでございまして、そういうことがあったと仮定した場合に、どんな被害が生ずるのか、これは現実にどういうものが生ずるのか、その程度とか性質は何かということでございまして、別にこれを書いたから何か足かせになるというものでもない。要するに、間違ったことの行為が行われたときにどんな被害が生ずるのですかということを言っているわけでございますので、特段に、私どもこれが足かせになるという理解はございません。

辻委員 特に限定するために付したものではない、そういう趣旨ではないんだということを御回答いただいたというふうに理解いたします。

 その上で先に進みますが、十一条の被告適格に関連して、その被告適格については、処分の取り消しの訴えについては、当該処分をした行政庁の所属する国または公共団体を相手にすればいいというふうになっていながら、四項では、当該処分した行政庁を記載するものとするという規定になっておりますが、この四項の趣旨というのはどういうものでしょうか。御説明いただけますでしょうか。

山崎政府参考人 確かに、被告適格を原則として国ということでいいということにしているわけでございますが、この四項につきましては、これを置いた理由でございますけれども、国といっても業務は大変広いわけでございますので、起こされたときに、では、現実にどこの所管になるのかということ、これを早目に知って、その訴訟の対応を早くできるように、そういう便宜に資するということと、それから、釈明処分制度の円滑な運用にも資するわけでございまして、どこかということが早くわかれば、場合によっては行政庁がなかなか定まらないというものもありますし、従来行政庁があったけれども、もう消滅してしまっているというものもあるわけでございますので、そこのところはなるべく早目に手ががりをいただいて、早目に用意をする、こういう便宜のためだと。

 それから、あと、判決が下った場合、その判決の拘束力とか、こういうことが及ぶ行政庁はどこなのかということ、こういうことの手ががりにするために、明確化するためにこれを置いたわけでございます。

 ただ、では、これについて、行政庁の記載がない場合とか、あるいは誤った場合、これで原告が不利益を受けるのかということでございますが、これは、わからないときには書かなくても結構でございますし、仮に誤ったからといって、これによって何かの効果が生ずるということはない、こういう理解でつくっているものでございます。便宜のためということでございます。

辻委員 四項は訓示規定であり、不利益を原告にこうむらしめるものではないんだ、こういう趣旨であるという御回答でありました。

 では、次に、十二条の管轄でありますが、「取消訴訟は、被告の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所」云々というふうにありますが、この裁判所というのは、これは地方裁判所の本庁に限定する趣旨なんですか、そうではないんですか。いかがですか。

山崎政府参考人 行政事件訴訟の関係は、裁判所の設置規則で、支部では行わないということになっておりますので、本庁を意味しているわけでございます。

辻委員 国家賠償請求訴訟等では、別に本庁に限らなくて支部に対しても訴訟を起こせる。そうすると、この行政事件訴訟法だけ、それは設置法云々というふうに今紹介されましたから、この改正案のみで処理できる問題かどうか、それもあわせて伺わせていただければいいと思いますが、行政事件訴訟法だけ本庁でなければならないというふうに限る趣旨、それで、むしろ、これは知的財産高等裁判所のときにも、地方分権との絡みで、地方にとって司法サービスが充足されるようにする観点からは余り限定するのは望ましくないというような議論もありましたけれども、国家賠償訴訟と比べて、この行政事件訴訟法が支部ではだめで本庁に限るんだというその合理的な理由なり根拠というのはあるんでしょうか。その点はいかがですか。

山崎政府参考人 確かに、国家賠償関係は支部でも行っております。支部で著名な判決もあるわけでございます。これは通常の民事事件でございまして、そういう意味では行政事件ではないんですね、行政が前提にはありますけれども。そういう意味で、通常の事件と同じ配てんをしているということになります。

 行政事件訴訟だけはなぜ違うのかということでございますけれども、やはり行政事件訴訟の関係はかなり専門性を要する、そういう性格を持っているわけでございまして、そうなりますと、専門性を有する裁判官をどのように配置していくかということでございまして、これは、全国いろいろなところに常に置くということは不可能でございますし、また、みんなばらまいてしまうとかえって力にならない。やはりそこをある程度集約して、そういう人を配置して迅速にその判決を行っていく、こういう思想のあらわれというふうに理解をしております。

辻委員 昨日の参考人質疑の中でも、行政事件訴訟を担っていく専門的な知識を持った法曹をどのように養成していくのかということが議論として出ておりました。

 今のお答えについて一理はあるというふうに思いますけれども、国家賠償請求訴訟も、行政訴訟そのものではありませんけれども、それはそれでかなりのいろいろな造詣の深さというのを要求されるような訴訟でもありますから、行政事件訴訟法と国家賠償訴訟法で区別する合理性がどこまであるのかというのは、やはり問題として残るのではないか。行政事件訴訟法も支部で取り扱えるように考える余地はあるのではないか、検討課題としてあるのではないかということを指摘しておきたい、このように思います。

 次に、釈明処分については、どのような書類が出てくるのかとか、それが具体的に本当に有効に活用されるためにはどうすべきなのかという点については、今まで議論のされているところかと思いますので、その点は割愛をいたします。

 次に、二十五条の執行停止について伺います。

 この執行停止につきまして、第二項で「重大な損害を避けるため」、そして第三項で「損害の回復の困難の程度を考慮する」という項目がありますし、従前の第三項が第四項に移っておりますが、第四項では「公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれ」というような規定があります。つまり、二項、三項、四項、執行停止が認められるためにクリアしなければならない要件がどんどん積み重なって加重されている。果たして、こんな必要があるのかというふうに考えます。

 この「重大な損害を避けるため緊急の必要」とか、「損害の回復の困難の程度を考慮する」とか、これは具体的にどのような場合を考えておられて、本当に必要な規定だというふうにお考えなんですか。

山崎政府参考人 今回、二十五条の改正の一つのポイントは、「回復の困難な損害」ということから、「重大な損害」というふうに改めているわけでございます。

 「回復の困難な損害」といいますと、性格上も金銭では全く足りない、そのぐらいに質的に高いものというイメージになるわけでございますけれども、そこまで至らなくてもいいのではないか、通常の損害であっても、やはり重大な損害が生ずるおそれがあるというような場合にも、執行停止を認めていくべきではないか、こういうような議論が行われまして、その質だけではなくて程度についても対象にするということから、そこは改正を加えたということでございます。

 その上で、その損害の程度が重大だということでございますけれども、それは行われる処分との関係、そういう相関関係を考えてどちらの方が優位になるのか、そういうことから総合判断をしてもらいたい、こういう趣旨でこの規定を設けたということでございます。

辻委員 従前の規定が「回復の困難な損害」である、これを緩和して「重大な損害」になったんだ、こういう御説明であります。

 しかし、三項で「重大な損害を生ずるか否かを判断するに当たつては、損害の回復の困難の程度を考慮するものとし、」というふうになって、結局、「回復の困難」というのを「重大な損害」に変えた、緩和して変更したんだと言いつつ、三項では、その重大な損害の存否の判断に当たってはやはり回復の困難の程度を考慮すると。結局、同じことじゃないですか。これでどこが緩和されたことになるんですか。

山崎政府参考人 従前であれば、「回復の困難な損害」、これだけでありまして、今回はその程度を考慮しでございますので、回復困難な損害といっても、それぞれ程度があるわけでございますので、その辺の点も、程度もちゃんと考慮しながら最終的に総合判断をしなさい、こういうことを言っているわけでございます。そこは御理解を賜りたいというふうに思います。

辻委員 いや、山崎局長が苦笑されるように、非常に苦しい答弁ではないかというふうに思います。余り変わらないんじゃないか。むしろ、「重大な損害」についてはもっと緩和をして、不相当な損害とかぐらいに緩和したっていいんじゃないかというふうに私は思います。

 その点は指摘するにとどめたいと思いますが、従前の三項が四項に移行して、やはり「公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき、」は執行停止はすることができない。これは、憲法の公共の福祉論のところでも問題になっておりますが、非常に抽象的な漠然とした概念で、その権利行使なりを抑制するという機能を公共の福祉は果たしているという現実があるわけですね。

 だから、そういう公共の福祉論をなお四項で存置するということは、やはり時代の考え方ないしは、もっと直接的に言えば、この執行停止を実効的に発動できるようにするんだという考え方からすれば、むしろ公共の福祉のこの規定は削るべきであったんではないかと思いますが、いかがですか。

山崎政府参考人 これにつきましては、ある行政処分が行われまして、それに対して取り消しの訴えが起こる、それに執行停止がもし行われた場合、そのことによって社会に非常にいろいろな不安な状態が生ずるとか、例えば、従来の例で、ある場所の集会所の許可の関係で取り消し訴訟を起こすということで、執行停止がされるということになると、今度はその反対、賛成反対の両方あるようでございまして、そこの使用をめぐって大きな紛争になる可能性がある。それで、一般の方もいろいろ迷惑をこうむるというようなことから執行停止の判断をした、執行停止をしなかったというんですか、そういうことがありますけれども、これは行政処分でございますから、やはり国の大きなあり方を決める場合もありますし、それから、それによって大きな社会混乱が生ずる場合もあります。

 そういうことを考えて、制度の担保として置いているものでございまして、これが伝家の宝刀で、しょっちゅう抜かれるということは余りあってはならないというふうには考えますけれども、やはり制度の問題としては、最終的な担保としては必要なものというふうに理解をしているわけでございます。

辻委員 それは、執行停止の申し立てがあれば、やはり必要性なり具体的に要件を検討していくわけでありますから、その中で十分検討すればいいことであって、公共の福祉という最後の防御線をあらかじめ張っておく、公共の立場でいつでも、具体的な本当に執行停止の必要性があっても、それを覆すような一般規定を残しておくというのは、行政訴訟を本当に実効化させていくんだという考え方からはやはりそぐわないのではないかなというふうに思います。

 この公共の福祉の規定、四項で存置している点についても、これは今後の課題としてぜひ検討していっていただきたい、このように指摘しておきます。

 次に、三十七条の二の義務づけの訴えの要件について伺ってまいりますが、これもまた一項で、「一定の処分がされないことにより重大な損害を生ずるおそれがあり、かつ、その損害を避けるため他に適当な方法がないときに限り、」というような限定が付されております。私は、義務づけは、やはり作為義務があるのかないのか、具体的な要件の中で十分判断できるわけであって、このような「重大な損害」とか「他に適当な方法がないときに限り、」という限定をわざわざ付する必要はないというふうに思います。

 ここで言う「重大な損害を生ずるおそれがあり、かつ、」「他に適当な方法がないとき」というのはどのような場合を想定されているんですか。本当にこれは、具体的にこの規定はどのような場合に発動されることになるんでしょうか。

山崎政府参考人 これは、他の法律で争う手段を決めているものがあります。そういうものについてはその手段を使ってもらいたい、こういう趣旨でございまして、それがないものについては要件さえ合致すれば起こすことができるということになります。

 例えば、ちょっと例を一つ挙げさせていただきますけれども、税金申告の関係でございますが、過大な申請をした場合に、その税額の減額をする更正の請求の制度があるわけでございますけれども、こういうような場合に損害を避けるための方策が個別法の中で特別に法定されている、こういうような場合には、減額更正処分の義務づけを求めるというようなことは、他に適当な方法があるものですから、こういうものについては損害を避けるため他の適当な方法がないとは言えないということから、そちらを御利用いただきたいという趣旨でございまして、こういうものがない限りは起こすことは可能であるということになります。

辻委員 そうすると、今の御説明では、他に適当な方法ということで、ほかに救済の手段があればそちらをとってもらいたいんだけれども、それがなければ別に大きな支障にはならない、したがって、この義務づけ訴訟の三十七条の二の第一項の規定はそんな制限的なものではないんだという趣旨で回答されたと思います。

 そうであれば、端的に削ったっていいんじゃないか。当然、他に適当な方法があって重複的な場合にはそちらの手段を講ずることも十分あり得るわけでありますから、あえてこのように限定的な文言を条項の中に挿入する必要はないんじゃないか、端的に削ればいいじゃないか。この点については、塩野座長も検討会の中で消極的な意見を述べておられたように聞いておりますが、いかがでしょうか。

山崎政府参考人 塩野座長が消極的な御意見を言われていたというのは、ちょっと私は記憶はないんですけれども、この規定をもし置かないとすると、結局、どっちの方法をとるのかということで、利用する側が非常に困るということもございます。それから、裁判所も、それを認めるかどうか、困るわけでございますので、これはここで明確にしておいた方が、それはどっちの方法を選んでやるかということの紛れがないということにはなろうかと思いますので、そういう点で御理解をいただきたいというふうに思います。決して制限的に書いているわけではないということです。

辻委員 制限的に書いているわけではないということをしっかりおっしゃっているということをまず確認しておきたいというふうに思います。

 その上で、今のお話は、他に適当な方法がないとかいうことを書いておかないと利用者側が困るというふうにおっしゃったけれども、それは利用者側が選択すればいいことであって、利用者側の選択するしないについて、わざわざ条文の方で国家がそこまで心配をしておく必要なんというのは、やはりこれは考え方として本末転倒なのではないかなというふうに思います。

 むしろ、作為義務があれば義務づけは基本的にやらなければいけないのであって、重大な損害があるからこそ義務づけが必要なのでありますから、この三十七条の二の「重大な損害」とか「他に適当な方法がないとき」というのは、山崎局長が御回答されたように、制限的な大きな意味はないんですから、むしろこれは削除する方向で今後の検討課題としていただきたい、このことを指摘しておきたい、このように思います。

 それから、この義務づけの訴訟の三項で、「法律上の利益を有する者に限り、」という、まさに旧態依然とした、法律上の利益という概念にこだわった規定が付加されている点がやはり問題だろうと私は思いますし、とりわけ、五項で、「裁量権の範囲を超え若しくはその濫用となると認められるときは、裁判所は、行政庁がその処分をすべき旨を命ずる判決をする。」と規定があります。これは、現行法の三十条を存置しているわけでありますから、この五項を新たに規定する必要はないんじゃないんですか。

山崎政府参考人 これは、義務づけ訴訟がどういう場合に可能かということをここで書いているわけでございますので、例えば、行政処分が自由裁量の範囲だということになると、それは第一義的には行政庁の裁量で決めていくこと、それについて裁判所の方がこうしろああしろと言うのが果たして司法権としていいのかどうかという問題の議論があるわけでございます。

 したがいまして、行政庁が何かをする場合には、一定の一義性というんですか、一義的に大体こういう処分になるというようなもの、こういうものについては裁判所の方で義務づけをしてもおかしくないだろうということから設けているものでございまして、その一義性があるもの、それと、裁量ではあるけれども裁量を超えているあるいは濫用している、こういうものについては、裁判所は命じてもいいよ、こういうことを言うわけでございますので、ここは明確にしておかないと、どういう場合に訴訟ができるかという要件でございますので、これは必要なものというふうに理解をしております。

辻委員 先ほど引用しました二〇〇三年十月二十四日付のたたき台で、この三十条自体、見直しの議論があったわけですね、「十分な検討を行う必要がある。」と。

 私は、個別の権利侵害の救済ということが行政訴訟の大きな目的であるけれども、同時に、違法な行政裁量をチェックしていくということが重要なわけでありますから、行政庁の裁量権を制限していくという観点からすれば、この三十条については、やはり、これをそのまま将来の検討課題として残しておくというのは、今回の改正の不十分さを端的にあらわしているんじゃないかというふうに思います。この点は、後に少しお伺いしたいというふうに思います。

 この三十条との関係では、今の三十七条の二の五項との関係はどういうふうに理解すればいいんですか。

山崎政府参考人 これは、裁量に関しての一般規定と書き方は同じでございますので、そこは同じことになります。ただ、ここで言いたいのは、義務づけ訴訟が行われる場合、どういう場合にできますかということを明確にする必要があるわけですね。だから、その処分に一義性がある場合、あるいは、そうじゃない場合であっても、濫用とかその範囲を逸脱している、こういうものについてはいいですよということを言うわけでございます。

 この三十条に関しましては、確かに検討会でもいろいろ議論はございましたけれども、最終的にはこれは実体法の問題もかなり絡んでくるということから、訴訟手続内の今回の改正の趣旨からは直ちにはその結論は出ない、こういうことでここの点については見送った、こういうことでございます。

辻委員 やはり、三十七条の二の五項は、屋上屋を架する意味もあって削除すべきものではないかというふうに思います。その点を指摘しておきます。

 次に、三十七条の四、差しとめの訴えの要件についてでありますが、これも一項で「重大な損害を生ずるおそれがある場合に限り、」というふうに限定が加えられている。しかし、義務づけの場合の三十七条の二と対比すれば、「その損害を避けるため他に適当な方法があるときは、この限りでない。」と、これはただし書きになっていますね。これは意味が違うというふうに理解すべきなんでしょうか、三十七条の二の場合と。

山崎政府参考人 これはただし書きで書かれておりますので、消極的な要件ということでございます。

辻委員 三十七条の二の場合も、まあ具体的にそういう制限する趣旨ではないし、ある意味では、おっしゃった言葉を使わせていただくと、利用者側の便宜を図るためにわざわざ親心で規定した、そのような規定なんだという趣旨でおっしゃったようにも思うわけです。

 つまり、三十七条の二でもう書く必要がなかった、それをさらに弱めた形で三十七条の四にただし書きでわざわざ書く必要なんて、これは毛頭ないんじゃないですか。これは明らかに削除すべきだと思いますが、いかがでしょうか。

山崎政府参考人 これについても、ただし書きで書くか本文で書くかという問題がございますけれども、これは、だから、他にそういう方法がある場合には適用にならないよということを言う趣旨でございまして、例えば差しとめの訴えでその例に挙げますと、差しとめを求める処分の前提となる処分がありまして、その前提となる処分の取り消し訴訟を提起すれば当然に後続するその差しとめを求める処分をすることができないということが法令で定められているというような場合が考えられます。これが、現実には滞納処分の取り消しの訴えがありまして、これを提起すれば、その訴訟が係属する間は当該滞納処分による財産の換価をすることができないという国税徴収法九十条の規定がございまして、こういうようなものがあるときは、換価処分をとめたいという場合でも、その前提となる滞納処分の取り消しを求めればその換価がとまるということになりますので、これは、他の適当な方法があるということになるわけでございます。

 なお、一点だけ申し上げますと、他に適当な方法があるかどうかという点については、第三者に対して直接民事上の請求、こういうことが可能であるからといって、直ちに他に適当な方法があるとして義務づけや差しとめができないということにはならないということだけは御理解を賜りたいと思います。

辻委員 いや、今の御説明ですと、わざわざ規定しなくても、当然それは運用上間違った運用になるわけではないというふうに思われます。やはりこれは必要性のない条項である、ただし書きであるというふうに指摘しておきたいと思います。

 次に、三十七条の五、仮の義務づけ及び仮の差しとめに関して、ここでまた第一項、「償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があり、」という文言が出てきます。つまり、償うことのできない損害、そういうレベルの損害がある。それから、回復困難な損害という損害がある。そして、重大な損害がある。それ以外の損害がある。損害をこのように段階的に、これはある意味では非常に具体的にわかりにくい、非常に感性に訴えるような感覚的な問題で規定されている。その意味では、非常に解釈において明確性を欠くわけですから、私はやはり妥当でないというふうに思います。

 これは特例法で償うことができないという規定があるという御説明があると思いますが、この「償うことのできない損害」というのはどんな場合を言っているんですか。現に、そういう償うことのできない損害ということで認定された具体例というのはあるんでしょうか。御紹介いただきたいと思います。

山崎政府参考人 ちょっと、償うことができない損害は別のところにも、法律に幾つかそういう条項はございますけれども、それについて、今突然でございますので、調べておりませんのでわかりません。

 問題は、ここで想定されるものということでございますけれども、例えば義務づけ、仮の義務づけという点を考えますと、例えば、年金やその公的給付、こういうものについて、その資格認定等について本案判決まで生活の維持に必要不可欠である場合、これは本案判決を待っていたら生活ができないということになるわけですね。それがまさに償うことのできない損害、こういうふうに考えております。

 それから、差しとめの場合でございますけれども、本案判決前に、例えば営業停止などの制裁処分が公表されたりして、そうして名誉や信用が害される場合、そうなりますと、もう職業として成り立たないという場合もあり得るわけでございます。そういう場合には、もう償うことができない損害、取り返しがつかない損害ということになるわけでございますので、これはそういう場合には差しとめをすることができる、こういうことをうたっているわけでございます。

 ただ、これはなぜこのような「償うことのできない損害」というふうに定めたかということでございますけれども、仮の救済でございますので、これはやはり、まだ行政庁が処分を行っていない、あるいはこういう処分をするというふうになっていないところに、こうしろ、あるいはとめろ、こう言うわけでございますので、仮の制度でございまして、これは仮でも認めますと、あるいは金銭給付して、後で取り消しになっても、それを戻せと言ってもなかなか難しい話でございます。そういうことを考えると、やはりある程度、仮の処分であるということを考えれば、その程度が著しいような場合、こういうような場合だよということで制度を構築するということはやむを得ないものとして考えております。

辻委員 今、回答の中でも取り返しがつかない損害とか並べて、償うことができない損害とおっしゃったんです。だから、取り返しのつかない損害というのは回復困難な損害であり、償うことのできない損害はここで言う「償うことのできない損害」です。だから、意味に大きな違いはないわけであります。

 わざわざこのようなランクづけをするということは、要するに、仮の義務づけ、仮の差しとめなんだから、仮なんだから限定的に解釈しろということをむしろ裁判官にアピールするために、わざわざ損害をランクづけして規定している。これはある意味では、現場の裁判官に対する不信感を前提にしている、指導要領みたいな形でこんな規定をしているんじゃないかというふうにも疑われかねないと私は思います。

 時間の関係で、各条項については非常に概括的でありますが一応質問させていただいたということで、次に進みたいと思います。

 二〇〇三年の十月二十四日付の司法制度改革推進本部行政訴訟検討会が、「行政訴訟制度の見直しのための考え方と問題点の整理(今後の検討のためのたたき台)」というものをペーパーを出しておられる。これを見ると、課題として三種類にわたって挙がっていて、このような「必要がある。」とか、このように「明示する。」とか、具体的にこれは法案化することを要求している課題と、それから、「なお検討する。」というふうに書いてあるそういう種類の課題と、それから、「十分な検討を行う必要がある。」というふうに書いてある。つまり、大きく言って三種類に分かれるように思います。

 一番目のものは既に基本的に法文化されているわけですから、では、「なお検討する。」というふうに規定されている課題と「十分な検討を行う必要がある。」というふうに規定されている課題、これは違いがあるんですか。

山崎政府参考人 違いがございます。

 「なお検討する。」というものにつきましては、一応の重要な論点であるという認識は共有されているんですけれども、議論がなおまだ抽象的な段階にとどまっている、もう少し詰める必要がある、こういうことでございます。

 それから、「十分な検討を行う必要がある。」というのは、立案の方向を示すにはいまだ議論が熟していない、あるいはもっと大きな将来課題として中長期的な検討を継続していかなければならない、こういうものもあり得るということから、そこは使い分けをしているということでございます。

辻委員 なお検討するという課題としては、このたたき台では、確認訴訟による救済、執行停止、仮の救済、そして執行停止決定に対する不服申し立ての四つが規定されていて、これは、前三者については一応法案化されているというふうに理解していいと思いますが、執行停止決定に対する不服申し立てだけはまだ法案化されていないということだと思います。

 十分な検討を要するという課題としては、団体訴訟、訴訟の対象、裁量の審査、訴え提起の手数料、弁護士報酬の片面的敗訴者負担、納税者訴訟等が十分な検討を行う必要があるというふうな課題として挙がっていると思います。

 十分な検討を行う必要があるというのは、今局長は、今後の課題だという何か悠長なことをおっしゃっているんですけれども、この検討会の中では、十一月の推進本部の解散以前に、やはりその必要性について詰めていくということが前提として議論されていたんじゃないんですか、その点はどうですか。そんな先延ばしをするような課題としてここに書いてあるんですか。

山崎政府参考人 これは事柄によっては、それはもう少し議論すれば本部の方でできるというものもあるかもしれません。ただ、物によっては、これは今私どもの検討会というような単位でやるだけではなくて、もっと大きな、司法と行政との境をどうしていくかとか、あるいは国会と行政の関係をどうしていくかとか、かなり大きな議論をしなければならない、それだけ重要な問題も入っております。

 それから、手続というよりも、実体法をどういうふうにしていくかという考え方、行政そのものの考え方を変えていくかどうか、こういうものも含まれているわけでございますので、そういう問題につきましては、そういう問題でどういう問題をこれから取り上げていくか、それをどういうところで議論をしていくか、こういうところまでを議論していくということでありまして、決して逃げているわけではございません。

 今の中でできるものはできるだけやる、しかし、できないものはどういう形でやっていくか、こういうところまで議論をしましょう、こういうことでございます。

辻委員 五年後に見直しという規定がありますけれども、運用を経て見直し、そういう問題としてではなくて、それ以前に当然十分な検討をする課題だという理解でこのペーパーは書かれていると思いますし、そういう趣旨でいいと思うんですが、大臣にお伺いしますけれども、「十分な検討を行う必要がある。」というふうに書いてある点について、今後どうしていくおつもりなのか、早急にこれを実現化するための決意というのはおありなのか、この点についてはいかがですか。

野沢国務大臣 大変大事な問題について御指摘をいただいております。

 今回の提案しております法律につきましては、これまでの議論の中で、ほぼ煮詰まったものを集約してお諮りをいたしておるわけでございますので、残されている課題につきましては、当面、この十一月までの司法制度改革推進本部における検討会の中で十分詰めまして、できれば次の臨時国会あたりで御提案できるものはしていくということになろうかと思いますし、なお、その後、残りました問題につきましては、政府全体でしっかり責任を持って、常時、問題点の解明と必要な立法措置その他についても手当てをしていかなければならない課題、永遠に続くこれは課題と心得ております。

辻委員 政府の決意をしっかりとこの場で確認させていただきたいというふうに思います。

 例えば、個人が行政処分を争うということだけでなくて、地方公共団体が国の施策に対して争う、そういう事例も現にあるわけであります。大分県の日田市でそういう訴訟の事例があって、これは原告適格なしということで門前払いされたようでありますけれども、今後やはり地方分権を徹底させていくという、今の中央集権のあり方を変えていく中で、行政訴訟の活用すべき場面もどんどんもっと重層的に広がっていくんだ、そういう観点をも含めて、今の大臣の決意をもっと具体化していくために国会としては責任を負っているんだということを指摘して、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

下村委員長代理 佐々木秀典君。

佐々木(秀)委員 民主党の佐々木です。

 行政訴訟法、今度の改革が非常に大きな改革であり、また司法制度改革審議会の意見を踏まえてのかなり広範にわたっての改正であることを私どもとしても評価しております。

 そういう意味から、この法案については私も賛成いたしますし、できるだけ早い施行を願っているわけですが、しかし、なおいろいろな問題点があることは今の辻委員の質問の中にも出ていて、それに対して今法務大臣から、大事な指摘だ、これに対して政府としてもしっかり対処をしていく、常にこれで終わる問題じゃないという御答弁をいただいて、私も大変心強い思いをしておりますので、どうか、これからまたさまざまな御意見、そしてこの国会での論議、これを踏まえて、さらによくすべきものについては大胆によくしていく努力をお互いにしたいものだと思いますので、そのことをぜひ関係者に御努力をお願いしたい、私どももそれについて協力をしたい、こんな思いで質問をさせていただきたいと思います。

 そこで、原告適格の拡大の問題についても随分ここで議論になりました。これについては、裁判所も、現行の法律をもとにして起こされているさまざまな事件について、いろいろな苦労をされながら判例を積み重ねたりしておられます。しかし、今度の改正というのはこれらの、確かに裁判所の御苦労もあるわけですけれども、従来の裁判所の判例に追随する、あるいは追認をするというようなものではなくて、改めてここで実質的に拡大を図っていくんだという決意のあらわれでなければならないと思っておりますけれども、そのような考えでよろしいのかどうか。

    〔下村委員長代理退席、委員長着席〕

山崎政府参考人 この点に関しましては、判例の追認ではないかというちょっとあらぬ批判を受けまして、私どもも実は心外でございますけれども、そうではないということでございまして、まずこの条文を見ていただきますと、「当該処分又は裁決の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく、」という発信をしているわけでございまして、従来、ややもすると、その文言にとらわれたような判決というようないろいろな御批判もあったわけでございますので、それではならないということをまず宣言しているわけでございます。あと、四つの考慮要素、こういうものを十分考えなさい、こういう合図を出しているわけでございます。

 従来から、この中の要素については、個々の事例において少し芽を出したものもあることは間違いございません。ただ、この四つのファクターについて、すべてちゃんと考慮をして、それでやれということを述べたものはないという理解をしております。

 それから、判例の中には、確かに、広く認めたものと極めて狭いものと、ばらばらでございます。これは解釈でございますので、それは事件事件においてどういうような解釈をとるかというのは任されている話でございますので、では、あるかなり広い判例が出た、すると、後の事件が必ずしもそうなるとは限らないわけでございます。現実に、確かに最高裁の判決が少し広く認めたのが出ましても、その後の実務を見ていまして、必ずしも広がったとは言えないというような実態にあるわけでございます。

 こうなりますと、規範は何かということがはっきりしなくなるわけですね、このままでは。これでは困るわけでございまして、そこで、ばらつきがあって解釈の範囲で許されるというところをもう少しグレードアップするべきじゃないかということで、今まで出てきた要素、これは必要だと思われるものについては、ここに全部盛り込みまして、少なくともこの点はちゃんと判断をしなさい、その上で、原告適格があるかどうかをきちっと決めなさい、こういうことを言っているわけでございますので、これは実質的に広がる、そういう思いで、そういう文言もここに込めているわけでございますので、それをぜひ御理解賜りたい。

 今後のまた判例の運用等、これを見守っていかざるを得ないと思いますけれども、そういうふうに判例がなっていくことを期待しながら、この条文を定めていったということを御理解賜りたいと思います。

佐々木(秀)委員 そういうことだとすると、例えば、先ほど辻委員からも指摘がありましたけれども、個人ではなくて、自治体が原告となって訴訟を起こすという例として、現に起こした例として、これは、九州の大分県の日田市が、いわゆる場外車券売り場の設置計画、これについて、国の設置許可の無効確認を求めた訴訟があったわけですね。これについて、裁判所は、原告適格がないというので門前払いをしたわけですけれども、これなどについては、今度の改正によって原告適格、この日田市の訴訟などのような場合に、自治体の原告適格が認められることになるのか。それからまた、例えば風俗営業法による風営の許可などが、非常にこれが迷惑だということで、その周辺の住民が争っていくというような訴訟について、この住民の原告適格などは今度の改正によって認められることになるのかどうか。

 これは改革本部、あるいは、きょうは裁判所もお見えになっていると思いますけれども、この辺がどうなるのか、それぞれちょっと御意見をお聞かせいただきたいと思います。

山崎政府参考人 具体的な判決、これはことしの大分地裁の判決ですか、これにつきましては、具体的に全部判決を読んでいるわけではございませんし、かつ、その根拠条文等も当たっておりませんので、ちょっと今この段階で個別のお答えは差し控えさせていただきたいと思いますが、風俗営業の関係につきましては従来から検討会でもいろいろ議論がありましたので、その辺のところをちょっと御紹介をしたいというふうに思います。

 この点についても判例もあるわけでございますけれども、認可基準がいろいろ決まっておりまして、それにつきまして、判例の判断は、良好な風俗環境の中で生活する利益、これが背景に利益としてあるということはそのとおり言っているわけでございますが、ただ、これは専ら公共の利益の保護、こういう観点でありまして、私的に個々の人たちの利益ではない、こういう判断で最終的に認めなかったということになるわけでございますが、今度、この考慮事項を定めることによってどういう影響が出てくるかということでございますけれども、確かにその条文がそういうふうに読まれても、では風俗営業法の中で一体どういう規定がされているかということを全体を見なさいということになるわけでございます。

 この中を見てまいりますと、風俗営業に関しましては、例えば営業所周辺の騒音とか振動の規制とか、それから周辺における正常な風俗環境を害する恐れのある広告とか宣伝の規制とか、その他、幾つか環境に配慮した規制をしております。このようなことを実効性を担保するために、法令の遵守を管理する管理者の選任、これを義務づけております。これでもし違反するというような状況が出てくると、その許可を取り消すこともできる、こういうような規定もあるわけでございます。そうなりますと、この法律全体でどういうことを定めているのかという、この趣旨を見なさいということになります。いろいろな環境の基準を守らないと取り消しまで至る、こういうようなことが書いてあるわけです。

 あと、今のこの考慮事項の中で、では現実に、ある風俗営業の店ができたことによって周辺住民がどういうような被害を受けるのか、こういう点も考慮しなさい。その被害の性質というんですか、それは何であって、どういう程度のものであるか、そういうことも考えて最終的に判断をせよ。こういうふうにつながっていくわけでございますので、その事案、事案によって違うかもしれませんけれども、認められていく可能性があるというような方向で、この条文は、そういう思いを込めてつくっているということでございます。

佐々木(秀)委員 裁判所も、大体今の局長のお話のようでよろしいですか。

 では、裁判所にもちょっと。委員長、裁判所にもお答えをいただきましょう。

園尾最高裁判所長官代理者 具体的な事件の内容に関しての意見を申し上げるというのは差し控えたいというように思いますが、今回の法改正の中には、多数の重要な事項が含まれておるという認識でございまして、この法改正の趣旨、それから当委員会での議論の内容というようなことをよく裁判所に伝えまして、しっかりとした運用ができるように体制を整えてまいりたいというように思っております。

佐々木(秀)委員 具体的な事件については、確かにお答えがいかがなものかということはわかりますが、一般的なこととしては、今御両人からお答えがあったその趣旨に沿って、ひとつ前向きになることを私どもとしても期待をしております。

 そこで、三番についても同じようなことですから、これははしょることにいたしましょう。もう一つ、これも具体的な事件についてではないんですが、事例として御紹介しながら、こういう場合には一般的にはどうかということでお尋ねをしたいと思います。

 過日、圏央道事件というのがありましたね。いわゆる首都圏中央連絡道路をめぐる訴訟ですね。これが、住民が土地収用が違法だということで、その取り消しを求める請求と、それから執行停止を求めるという事件があったわけですけれども、これに対して判断がなされております。しかし、執行停止が出ても事業の方は進められていて、判決でも土地収用は違法だという判断がなされているわけですけれども、執行停止の方は後に取り消されているわけですね。事業を進められている。

 いずれにしても、こういうふうな公共事業をめぐっての行政訴訟というのは、従来もあったし、これからもまた多くなるだろうと思われるんですが、そういう場合に、今度執行停止の要件を随分緩和されているわけですけれども、しかし、これが不安定な状態のままだとどちらも大変困るわけですね。訴えを起こした住民の方は、どんどんどんどん事業が進んでしまうと、もう実際に、例えばこの道路なんかもできてしまったら確かに意味がない、それを全くもとに戻すということは難しくなるわけですし。ですから、早い段階での司法審査というのが私は必要になってくるんだろうと思うんです。

 一方、事業をする側にしても、不安定なまま、落ち着かないままでやると、場合によって取り消されるということになった場合に、それまでやった費用というのはむだになってしまうというような、エネルギーがむだになってしまうということもあるわけですから、いずれにしても早期の司法審査が求められてくることになると思うんですが、今度の改正との絡みで、特にこの執行停止要件が緩和されているということの関連でこの辺をどう考えたらいいのか、また、どういうようになっていくと予想されるのか、その辺についてお答えいただけますか。

山崎政府参考人 個別の事件につきまして現に係属中でございますので一般論で申し上げたいと思いますけれども、まず、全体的に申し上げたいのは、やはり早期に解決をしていく、こういう要請があるわけでございまして、これにこたえなければならないということは当然でございまして、私ども、そういう観点から、今回は例えば義務づけ訴訟、これを法定する、あるいは差しとめ訴訟も法定をする、こういうことによって、まず事前にある程度決着できるものはするというような手段を新たに設けている。それから、仮に処分性がないといたしましても、公法上の権利義務関係に影響があるということであれば、確認訴訟を利用して早期の権利関係の安定、これを図ってもらいたい。そういうことからさまざまな制度を今回設けたわけでございます。

 それとともに、先ほど来御指摘がございます執行停止の要件、これについても緩和をしているわけでございます。従来、回復が困難な損害ということになりますから、これはもう質的にとても回復が無理な、そういうようなものを言うわけでございますので、そうなりますとかなり狭まる、そういうことになるわけでございますが、これを、そういうような質的な問題だけではなくて、質的にはそうではなくてもやはり重大な損害が生ずるような場合にはその対象にしようということから、「重大な損害」という形で広げました。ただ、これに関しましては、「重大な損害」といいましても、やはり行われる処分との相関関係もございますので、そこのところは総合的にそこで考えてほしい、こういうことから規定を改めたということになるわけでございます。

 この運用について今後どういうふうになっていくかというのは、やはり裁判の状況を見なければならないということにはなろうかと思いますけれども、こういうような趣旨について理解をしていただいて裁判をやっていただければというふうに考えているわけでございます。

佐々木(秀)委員 私どもとしても、ぜひそういうことになればよろしいと思いますので、これもまた関係者の御努力をお願いしたいと思います。

 そこで、本改正の理由ですけれども、大臣もお述べになっておられるように、これは国民の権利利益のより実効的な救済手続を整備するためなんだということが言われているわけですね。そういう観点から、この改正された法律の運用については、憲法上国民の裁判を受ける権利があるわけですけれども、この裁判を受ける権利に留意しながら、国民の権利救済方式の明確性を確保し、また、訴訟の両当事者の実質的な対等性ということも確保していく必要があるだろうと思うんですね。

 どうしても、やはり行政をめぐっては、どちらかというと訴訟になっても行政の側の方がいろいろな意味で力が強いということはもう明らかなことだろうと思いますだけに、そこで実質的な平等ということが、あるいは対等ということが非常に大事になってくると思うんですけれども、今度の改正でそれを図るような手だてというものが講じられていると考えていいのかどうか、また、そうする努力を、どういうようにして方策を立てていくのか、この辺を改革本部と裁判所、両方からお尋ねしたいと思います。

山崎政府参考人 ただいま御指摘の点から、この法案についてもさまざまな手当てをしております。先ほど、新しい訴え、これを設けたということを申し上げましたけれども、これは民事訴訟と比較していただければ、民事訴訟には形成、給付、確認、三つの大きな手段があるわけでございますけれども、今回、取り消し訴訟中心と言われていた、これは形成訴訟であろうかと思いますけれども、それから比べれば民事訴訟にかなり近い手段をこの中で与えている、それだけメニューを多様化して、利用できるものは利用していただきたい、こういうことでございます。

 例えば、義務づけ訴訟は、典型的にいえば給付の判決に近いものでございます。それから、確認訴訟を明確化するということでございます。あと、差しとめという方法ももちろん民事にあるわけですけれども、こちらで、行政の方でも差しとめという方法を認める。行政というのは極めて特殊性がありますけれども、それをなるべく取り払いながら、民事訴訟に近いものとしてのいろいろな典型的な訴訟類型を設けたということでございまして、これは実質的に、国民に使っていただきたいという意味では実質的対等の一つの方法であるということになります。

 それから、もう一つ大きな問題は、行政庁に対しまして、処分の理由を明らかにする資料あるいは記録、こういうものの提出を求めるといういわゆる釈明処分の特例、これを設けているわけでございますが、これは従来からなかなか、行政のやっていることの理由あるいは資料がわからないということから審理がなかなかスムーズに進まないという点もいろいろ御指摘がございまして、この点につきまして、この釈明処分を早期の段階で行うことによって理由とか資料を早目に出してもらって、それで争点を絞って速く訴訟を進める、こういう意味では、ある意味では実質的な対等をここで図っているということになります。

 それから、例えば被告適格についてある程度統一をして、その上で、何か国民の方が間違った場合にもその救済が可能になるような、そういうような方向も出しているわけでございまして、従来、行政庁を間違ってそれで却下になってしまうというようなものもあったわけでございますけれども、そういうことのないように救済も国民本位で考えていく、こういうようなさまざまな手当てをして、利用しやすい、わかりやすい行政訴訟ということを目指しているものだということで御理解を賜りたいと思います。

園尾最高裁判所長官代理者 ただいま御指摘いただきました観点、すなわち、憲法上の国民の裁判を受ける権利に留意しつつ、権利救済方式の明確性の確保と両当事者の実質的対等性の確保が図られるべきであるという点につきましては、改正法の運用に関するまことに重要な一つの判断要素ということになるというように考えておりまして、改正法案が成立しました場合には、このような観点につきましてもしっかりした運用がされますように、研究、検討を重ねていきたいというように考えております。

佐々木(秀)委員 そこで、もう一つ裁判所にお尋ねをしておきたいんですけれども、今のようなお話で、いずれにしても今度のこの法改正で行政訴訟のあり方というのが相当変わるだろうということが私どもとしても期待されるんですが、何といっても、審理に当たられて判断をするのは裁判所なわけですから、裁判官の役割というのは非常に大事になってくるわけです。

 そこで、この後では私、また管轄の問題をお尋ねしたいと思うんですけれども、とにもかくにも今度は管轄も広がって、今度の改正では、従来は、国を相手にする取り消し訴訟などでは、本庁を相手にする場合には東京地裁だけだったわけですけれども、それが高裁所在地の地方裁判所にも広がるということになります。

 そこで、東京地裁、それから大阪地裁にもあるんでしょうかね、行政専門部としての部がありますけれども、その他の地方裁判所、高裁本庁所在地八カ所あるとして、東京、大阪以外、名古屋はあるのかな、その辺もお尋ねしたいんですが、特に行政専門部というのは置いていないにしても、やはりそういう裁判所にも行政訴訟を起こされるということになると、それを担当する裁判官、行政専門部に所属をされておられる裁判官はもちろん行政訴訟に精通されておられるし、今度の改正についても意欲的に勉強していかれるだろうと私は思うんだけれども、そういう特別の行政部以外の裁判官などについて、どういうようにこのことについて理解をしてもらうかということ。

 お聞きをすると、最高裁判所では、裁判官の合同会議、合同研修なども持っておられるということだそうです。しかし、これがまた、研修が個々の裁判官の独立を侵すようになってしまってはいけないわけだけれども、純粋な意味での勉強とか、それから先ほども、原告適格、被告適格の問題についても、従来の判例の追認ではなくということになるわけですけれども、その辺の認識あるいはその取り組み方などについて、裁判所としてどういうように対処していくのか、その辺の方策についてのお考えがあればお聞かせをいただきたいと思います。

園尾最高裁判所長官代理者 この法改正がなされました場合には、その運用ということについて十分に研究を重ねていかなければいけないというように考えているわけですが、ただいまの集中部あるいは専門部という体制につきましては、事件数が多い裁判所では、専門的に処理するということで事務処理のレベルを上げていくというような検討がなされておりまして、御指摘のように、東京、大阪では専門部体制を設けております。それ以外にも六カ所の裁判所におきまして、これは事件の多い裁判所ということになりますが、集中部ということで、行政事件は専らその部で扱う、それから、ほかの事件も扱うけれども行政事件はともかくそこで扱うという集中部体制を設けるというようなことで、研究のレベルを上げるための一助としておるということでございます。

 この法改正、成立いたしました場合には、この情報をよく裁判所に伝える、それから研究をしていくということが重要でございますが、その中で、ただいま御指摘のような各裁判官の裁量、自由な判断、こういうようなことについては、これはもう十全に発揮していただくということが基本でございますので、研修にいたしましても、例えば、現在、これは最高裁判所の司法研修所で研修をするということで、研修を専門にする機関での研修に特化していくというような工夫をしております。それから、協議会を開くということに関しましても、それぞれの専門部、集中部の方にいわば研究を代表してやっていただいて、いろいろ研究をして、そこの結果を発表していくというような工夫を凝らしているところでございます。

 今後も、そのような工夫を凝らしつつ、研究、検討を重ねていきたいというように現在のところ考えておるわけでございます。

佐々木(秀)委員 かねてから、例えば公害事件などについての担当裁判官が最高裁に集められて、研修とかあるいは合同会議とかという名目で行われるけれども、どうも判例を統一するような方向が最高裁から示されてというような批判もないではなかったわけですね。ですから、これはもう裁判所、それぞれ裁判官は独立があるわけですから、その独立性を絶対に侵してはならないと私は思いますので、そこのところは十分に留意していただきたいと同時に、しかし、それぞれの裁判官に、先ほど来話のあったような専門性、専門的な知識あるいは見識、これを持ってもらうという要請もあるわけですから、そこの兼ね合いをひとつ十分に考慮していただいて、実を上げるようにしていただきたいということをぜひ要望しておきたい、このように思います。

 そこで、裁判管轄の問題なんですけれども、国を被告とする抗告訴訟の裁判管轄、これが十二条で改正されて、先ほど話があったように、従来、どうも東京地裁だけであったようなものについても、原告の所在地管轄の高等裁判所の所在地管轄の地方裁判所になる、こういうことなんですが、高等裁判所の本庁は八カ所ですけれども、しかし、そのほかに支部がありますね。高裁支部がたしか六カ所かな、六支部あると思うんですが、この支部も入るんですか、入らないんですか。条文ではその点がはっきりしていないと思うんだけれども。

山崎政府参考人 高裁の支部所在地の地方裁判所ですね、これは入らないということで考えております。

佐々木(秀)委員 これはやはりいろいろ問題があると思うんですね。先ほどの辻委員からもお話があったけれども、高裁本庁の所在地管轄の地方裁判所という場合に、例えば東京だと東京地裁になるわけですけれども、東京地裁の支部の問題もあるんですね。八王子支部なんというのは本当に大きな、これは本庁に匹敵する大きな支部なので、本当はこういうところにだって裁判を起こせるようにしていいんじゃないかという先ほどの辻委員の指摘というのは考慮に値するものだと私は思うんですが、それと同時に、高裁の支部はだめよというあたりがいろいろ、いかがなものかなと思うんですね。

 確かに、少なくとも高裁であっても広がったということは、私は評価をいたします。

 実は、私の弁護士経験の中でもあったことなんですが、もう十数年前に、私、東京から旭川、地元に戻りまして、弁護士登録をしたら途端に裁判の依頼があったんですが、それは遺族年金の受給についての裁判だったんです。

 御承知のように、遺族年金については、正式な配偶者だけではなくて、内縁関係にある配偶者についても受給権を認められているんです。それで、実質的な内縁関係にあったというお年寄りのおばあさんだったんですが、その相手さんが亡くなられて、それで請求したら、どうも社会保険庁から却下をされて、例の審査などをやり、再審査も請求して、結局は社会保険庁本庁から認められなかったものですから、社会保険庁を相手にする裁判を私が担当して、とりあえずは旭川の地方裁判所に起こしてみたんですけれども、管轄違いということで、東京地裁に移されちゃったわけですね。

 ところが、そんなおばあさんですから、経済的な資力なんというのは全くないわけで、札幌の地裁でやれるのであれば、電車で行き来もできますし、日帰りもできますから、何とか裁判もできるわけですが、東京ということになると、とてもじゃないけれども、航空機賃なんというのは請求できるような状態でないわけです。ただ、たまたま私はそのときに日本弁護士連合会の理事もやっていたものですから、月に一回ぐらい理事会があるので、これについては弁護士会の方から旅費が出るので、それで、そのときに東京地裁、裁判所で。ただ、それが日にちが合わないとだめなわけですけれども、裁判所も大変同情して配慮をしてくれまして、日弁連の用件で来る日に裁判をなるべく入れてくれるようにしていただいて、何回かやったんです。

 最終的には私どもの主張をお認めいただいて、判決ではなくて話し合いで認められたものですから、そんなに長くかからなくて解決したというようなことがあって、私としても、この管轄の狭さ、非常に実感していただけに、今度広がるのはよかったと思っているんです。

 それと、実は今から五年前に、私、内閣委員会で理事をやっておりまして、いわゆる行政情報公開法、これをつくったときに、やはり管轄が問題になりました。このときに、行政情報公開に関する訴訟も、これは行政訴訟ですね、行政庁を相手にするわけですから行政訴訟の一種なんですが、この法案の原案では、現在ある行政訴訟法の管轄に準じる、こうなっていたわけです。だから、これもやはり裁判所は東京地裁、本庁所在地、本庁関係だとすると東京地裁ということになる。これも、情報公開という非常に大事な、それこそ民主主義の要諦だと思われる大事な裁判、国民の知る権利ということから考えても大事な裁判を、こういうふうな訴訟になった場合に狭い、使い勝手の悪いようなことにするのはいかがなものかというので、そこで裁判管轄の問題が議論になりました。

 いろいろ考えた末に、最終的には与野党で合意ができて、それで高裁所在地の地方裁判所ということになったわけですが、実はそのときに、高裁の本庁だけでなくて支部まで入れるべきじゃないかという議論をお互いに与野党間でやったんですね、院内で。何といっても、それには沖縄のことがあったわけです。

 御承知のように、かつて沖縄が日本に復帰した場合に、沖縄にも那覇に高等裁判所を設けるべきだという要求があったんですね。地元からも非常に強かった。ところが、残念ながらそれが設けられないで、那覇に地方裁判所は設けられましたけれども、高等裁判所は福岡高等裁判所の支部ということで、那覇に福岡高裁沖縄支部というのが設けられたわけですね。私どもは、北海道の場合にはおかげさまで、札幌高裁ということで、札幌の地裁に、管轄になりましたけれども、沖縄の人たちがこの支部での行政訴訟、そのときには情報公開訴訟ですけれども、これが認められないとすると、結局は福岡高裁まで行かなければならないじゃないか、これはまた大変な手間暇がかかるじゃないかということで、何とか特例的に沖縄に認めることができないかということを考えたわけです。

 実は先日、この行政訴訟法の審議で塩野先生がお見えになりましたけれども、そのときにも塩野先生がいらして、現在の行政訴訟法ではまだ管轄が広がっていないけれども、情報公開法での管轄を広げることはどうかと言ったら、それはもう国会の考え方でいいんだ、特例として決めることはできるということで、それに我が意を得て、それで管轄の拡大を相談したわけですが、残念ながら、高裁の支部まで広がらなかったんですね。

 今度の行政訴訟法の改正の管轄の書きぶりは、まさに情報公開法の管轄についての書きぶりをそのままこっちに写しているように見られてならないわけです。僕は、順序が本当は逆だろうと思うんですけれどもね。これが先になっていたらそれに従ってということを、情報公開法の方でもそうだったろうと思うんだけれども、順序が逆になっているようなことがあるんだが、しかし、これも御承知のように、そういうような非常に真剣な議論があったあげくに附則がつけられて、それで、情報公開法の四年後見直し、施行から四年後の全面的な見直しになっているんですけれども、その中で、特にこの裁判管轄の問題は優先的に見直すという順位までつけられているわけですよ。

 そういうことから考えると、今度もこの管轄に高裁支部を除いたというのは、どうもその辺からいうと問題があるんじゃないか、特に沖縄の人のことを考えると、特例をつくるということはできたんじゃないかと思ったりするんですが、この辺はどうなんですか。

山崎政府参考人 私ども、情報公開訴訟の関係のいきさつ、十分に頭に入れながらこの条文を設けたということになるわけでございます。

 そのときにさまざまな御議論があったということでございますけれども、基本的には二つの論拠がございまして、一つは、裁判所の専門性、これをどの程度備えていくか。専門性がある人をなるべくふやしていかなきゃならないんですけれども、これが全国に拡散してしまっては余り意味がないところもありまして、あるところに集中をしたいということですね。

 それと、やはり当事者の便宜、この両方が合致するところはどこか、こういう観点から考えたわけでございまして、先ほど北海道の例もございましたけれども、まさに札幌なんですが、そこには専門家を配属する、では北海道の中、ほか全部に配属したらなかなか、かえって薄くなっちゃって、これでは意味がない、こういうことを考えまして、高裁所在地の八つのところの、二つは専門がありますので六つですか、そこに管轄を、こういうふうに考えたわけでございます。

 情報公開訴訟の関係の問題については、見直しがあるということも頭にはありますけれども、そこでどういう議論になるか、それを最終的に踏まえて、こちらの方もどうしていくかという問題が起こると思いますけれども、余り広がってしまっては、裁判所の専門性の、専門的な人の配置の問題にも影響いたします。その辺のところをよく考えながら、最終的にどうすべきかということはもう一度考慮をしなければならないかもしれません。その辺は頭には入っているということでございます。

佐々木(秀)委員 今回の質疑の中でも明らかになっておりますし、また参考人質疑の中でもその話も出ていたんですけれども、御承知のように、今の司法試験は、かつて行政法は選択科目の中に入っていたんですが、今は除かれているんですね。選択科目にもなっていない。そうすると、なかなかやはり行政訴訟、あるいは行政法そのものもそうですけれども、必ずしも法律家はみんな勉強しているとは限らない。しかし、法律実務家になった以上は、その種の事件を担当することになる、裁判官であれ弁護士であれ、その事件を通じて勉強するということになるんですね。

 さっきお話のあったように、東京、大阪、その他何カ所かで専門部、特別部というのが行政についてできている場合には、当然、そこの裁判官は勉強しているけれども、そうでないにしても、さっき辻委員からお話しのように、国家賠償訴訟などについてはそういう専門部のないところでも裁判が起こされて、裁判官はやらざるを得ないわけです。また、そういうことについて勉強していけばわかるという能力を持っていなければならないはずだし、また、勉強の機会だってあるわけですから、私は、今事務局長のお話のように、例えば高等裁判所にしても、八カ所の本庁所在地の裁判官だけがそういう専門的な勉強をして、ほかの人たちはしていないとか、あるいは知識がないとかということにならぬだろうと私は思うので、少なくとも、裁判官である以上は、適応するだけの能力は持っているはずだし、機会さえあればやっていけるはずだと私は思うので、どうもそれを、高裁の支部の方をこの管轄から除くという理由としては合理性が非常に乏しいと私は思っているんです。

 そういうことから考えても、先ほどの情報公開法で管轄の見直しを最優先順位にしたということを十分にこれもまたしんしゃくしていただいて、行政訴訟についても、私は、今後の見直しの中でぜひそのことは考えていただきたい。何といっても、今度の法律の改正の趣旨が、国民の利便のためにというか、権益を図るために、擁護するためにということなんですから、そういうことを考えると、そういうことについてはもっと寛容であっていいのではないだろうか、狭める必要はないんじゃないか、裁判所としてもそれにこたえていくという体制をつくっていくことはできるし、またやるべきじゃないか、私はそう考えておりますので、積み残しの問題についてもさっき辻委員から指摘がありましたけれども、ぜひその中の一つの問題として意識をして、再検討の取り組みの問題として考えていただきたいということを要望しておきたいと思います。

 大分時間が詰まってまいりましたけれども、あと幾つかの質問をさせていただきたいと思いますが、この改正案の実施の時期、これは政令で定めることになっているんだろうと思いますけれども、大体いつごろを考えているのか。私はできるだけ早い方がいいのではないかと思っているんですけれども、例えば裁判員法などの場合には、これは周知徹底、あるいはその他の準備に相当時間がかかると思いますけれども、私はこの法律の改正はそんなに手間暇かける必要はないんじゃないかと思っているんです。ですから、なるべく早い方がいいと思っているんですが、この辺の見通しはどうですか。

山崎政府参考人 この法律の附則の一条で原則をうたっておりますが、若干の例外は除いて、「公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日」ということでございますので、仮にもう間もなく御承認いただくということにしますと、一年以内でございますので、どこかで、区切りのところになろうかと思います。ですから、来年になって、一月一日か四月一日という辺が候補かなということでございます。

 ただ、その間に、やはりこれだけのものの周知徹底、これは特にプロに徹底をしなければならないという点もございまして、それを鋭意して、それで、その準備をなるべく早くして、可能な限り早い段階で施行していきたい、こういうふうに考えております。

佐々木(秀)委員 その点は了解いたしました。

 そこで、これが施行されるまでの経過的な措置、これが必要になってくるのかなとも思うんです。例えば、原告適格が拡大されるという規定が置かれることになるわけですけれども、そうすると、現在係属している事件についてはこれはどうなるかということなんですね。

 それからまた、義務づけ訴訟だとか差しとめ訴訟、執行停止、仮の義務づけ、仮の差しとめなどについてもそうなんですけれども、これがどうなるのか。

 そしてまた、具体的には、例えば地裁で原告適格がないように却下された、これがまだ施行前にですよ、現在段階で。それで、当然のことながら、控訴をした。そこで、控訴をして高裁に係属しているときに本法が施行されるというような場合に、この事件についてはどうなるんだろうか、その原告適格などについて。また、これが高裁から、さらに高裁の段階を経て上告されているような場合、最高裁に係属しているという場合にはどうなのか。この辺についてはどうなるのか。これは裁判所でもいいです。

山崎政府参考人 この附則の二条から五条までで基本的なことを定めているわけでございますけれども、二条の原則は、通常は、訴訟手続については、改正後に訴えの提起があった事件に適用するという原則が今まで行われてきておりますけれども、今回は、三条から五条までですか、ここのところは新たな制度でございます、それから対象者が違っちゃう、期間が違っちゃうということですから、これは従来のものは従来ということにいたしますが、それ以外の点につきましては、この規定は、特段の定めがある場合を除きまして、法律の施行前に生じた事項にも適用すると言っております。

 したがいまして、この法律の施行前に、仮に、義務づけ訴訟というのは解釈上起こせることになっておりますから、それがあったとして、それについて改正後にも係属しているといった場合には、改正後に、やはり新しい法律が適用された、そういうような解釈でやっていくということになります。旧来の事件にも適用がある、こういう原則になるわけでございます。

 したがいまして、原告適格についても、例えば一審に係属をしていて、それでそこで施行を迎えるといった場合には、今度は新法が適用になりますので、その上での判断をしなければならないということになるわけでございます。それが原則だということで、いいものは早く適用しよう、こういう考え方でございます。

 それから、もう一つ御指摘がございまして、高裁とか最高裁に行った場合どうするかということでございますが、これも例外ではございませんで、施行になれば現在係属している事件については全部適用を受けるということになりますから、新法が適用になった状態でどう判断をするか、ちゃんと考えて、その上で裁判をしなければならないということになるわけでございます。

 したがいまして、ある程度係属している事件については、この新法の精神をよく考えながら審理をしていくということが必要になっていくかなというふうに思っております。

佐々木(秀)委員 今の点、裁判所はどうですか。

園尾最高裁判所長官代理者 大幅に手続が変わるという場合に、法律の定め方としては、既にある事件についてはもとのままの法律、新しい事件については新しい法律という定め方があるものが比較的多いわけでございますが、今回の法改正は、施行と同時に既に係属しておる事件にも適用されるというのが原則になっておるという特別な規定を持っておるというように裁判所としても認識をしております。

 そうしますと、現在の事件に関しましても、この処理のためにこの法律の趣旨について十分な研究を必要とするというように考えておりますので、その体制を整えていくということが大変重要な法律であるというように認識をしております。

佐々木(秀)委員 それでは、最後の質問になると思いますけれども、今度の改正で、二十三条の二で釈明処分の特則が設けられることになりました。これも私は大変重要な法条だと思います。「被告である国若しくは公共団体に所属する行政庁又は被告である行政庁に対し、処分又は裁決の内容、処分又は裁決の根拠となる法令の条項、処分又は裁決の原因となる事実その他処分又は裁決の理由を明らかにする資料であつて当該行政庁が保有するものの全部又は一部の提出を求める」、これはやはり運用によっては非常に大きな意味を持つことになるんだろうと思うんですね。

 ところが、先ほどの御紹介した行政情報公開法などでもそうですけれども、公開請求をしても、官公庁あるいは団体などがなかなかその資料を出したがらない、情報公開したがらないということがどうも見受けられるわけですね。そこで、情報公開法においても審査会がつくられ、そしてまた、それでもなおかつ出さないという場合には訴訟ということになっていくわけですけれども、こういう条文がつくられたとしても、やはり行政庁がその趣旨を十分に理解して積極的に対応するようでなければ意味がない、消極的に対応するということであってはせっかくつくる条文が意味をなさないことになると思われるわけですね。

 そういう点で、被告になる行政庁が、こういう裁判所からの釈明があった場合には、それに積極的に応じていく体制というのをどうしても徹底させていく必要があるんじゃなかろうかと思われる。つまり、行政全体にこの趣旨を徹底してもらわないと私はならないんだろうと思うんですけれども、その方策について、これはひとつ法務大臣に、どうしたらいいのか、どんなことを考えておられるのか、どういうことによってこれを生かしていくのか、この辺についてぜひお話を承りたいと思います。

野沢国務大臣 一番大事なところをお尋ねいただいておると思いますが、本法案におきましては、裁判所が行政庁に対しまして、処分の理由を明らかにする資料や審査請求に係る事件の記録の提出を求めることができるという新たな釈明処分の制度を新設しておるところでございます。

 これによりまして、訴訟の早期の段階で、処分の理由、根拠に関する当事者の主張及び争点が明らかとなりまして、充実した審理が迅速に行われることに役立つと考えられるわけでございますが、御指摘のとおり、行政庁が消極的対応では本制度の目的は達せられないものであると考えておりまして、本制度を含め、今回の行政訴訟改革を意義あるものとするためには、国や地方の行政機関におきましても、今回の改正の趣旨を十分理解して行政運営に当たることが必要であると認識しております。そのため、各行政機関に対しては、本改正の趣旨が十分に周知され、改正に係る制度が適切に運用されるよう、幅広い機会を通じて改正の趣旨の周知徹底を図ってまいりたいと考えておるわけでございます。

 今回の改正を契機といたしまして、行政の目的、趣旨がより一層国民、住民の皆様に理解をされまして、かえって、これを機会に住民の福祉に役に立つものとして積極的にこの制度が活用されるよう期待しておるところでございます。

佐々木(秀)委員 法務大臣から、先ほどの辻委員に対する最後のお答えとあわせて、今またお聞きをしたようなお答えをいただいたことをありがたく思っております。ぜひ、これが各行政庁に徹底できるように、ひとつ法務省の主導でやっていただきたいと思っております。

 今度の行政訴訟法の改正は、今大臣がお話しのような点で、本当に国民の権益を守り、そして、確かに行政としてもいろいろと努力をされておられると思いますけれども、しかし、まだまだやはり行政がすべてがよかれということにはならない、そのひずみ、これをやはり行政のサービスを受ける国民が正していくということに役に立つものでなければならないと思っておりますだけに、関係者は一層それぞれに努力をしていく必要があるだろうと思っております。

 もちろん、裁判所が何といっても主導的な役割を果たすわけですから、ぜひこの改正の趣旨をそれぞれの裁判官が踏まえていただいて対応していただくことを望みますけれども、弁護士さんたちもそうだろうと思いますけれども、特に今のような点については、法務省、法務大臣、ひとつ行政官庁に徹底させていただくようにぜひお願いしたいと思います。

 以上で私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

柳本委員長 御苦労さまでした。

 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時三十三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時一分開議

柳本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として司法制度改革推進本部事務局長山崎潮君、知的財産戦略本部事務局長荒井寿光君、法務省大臣官房司法法制部長寺田逸郎君、法務省刑事局長樋渡利秋君及び文部科学省大臣官房審議官清水潔君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

柳本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

柳本委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局山崎人事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

柳本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

柳本委員長 質疑の申し出がありますので、これを許します。吉田治君。

吉田(治)委員 民主党の吉田治でございます。

 一般質問ということで、数点、時間も限られておりますので、それぞれ手短に御答弁等をさせていただき、議論を深めていきたいなと思っております。

 まず最初は、これは法務委員会のマターではないということなんですけれども、やはり私は、ぜひともこれから先は、司法の中核である法務省がこの案件を担っていくべきだという思いの中で、例えば、今、米国の経済スパイ取締法というのが非常に経済界においても大変大きな議論になってきております。

 もう御承知のとおり、それには知的所有権、知的財産という中で、遺伝子研究の問題であったり、青色発光ダイオードの開発の問題であったり、日米間におけるさまざまな議論の中で、これをすべて経済産業省マターにしてしまうのは私はいかがかと。日本にとって、法務行政の中で、このことをしっかりと法務・検察を中核に取り扱っていくべきことが必要ではないかなと思っております。

 また、本年一月には、不正競争防止法の改正も施行されたという中で、まだ数カ月しかたっていないということでありますが、例えば、本日の朝刊等を見ておりましても、裁判員制度において、法務大臣並びに担当事務局長の方から、いや、五年間の経過を待たずに、場合によれば施行前であっても柔軟に変えていかなければならないという御答弁をされている。そういう中におきまして、この米国の経済スパイ取締法は、日本とアメリカにおいては非常に不均衡だと私は考えております。

 また、日本においては、今申し上げましたように、不正競争防止法というふうなものが取り扱いするというのも、私も経済産業委員の一員として、いつもこの法案の取り扱いについてはちょっとどうもおかしいんじゃないかなと思っているんですけれども、その辺の経緯なり方向性なり、どういうふうにお考えになられているのかということを法務大臣の方からお答えいただければと思います。

野沢国務大臣 経済社会の発展がひところに比べますと最近は大変早くなっておりますし、国際化の進展、それからそれにかかわる各国の対応も相当多様化している。

 こういう中で、私どもは常に、法制度のあり方につきましては、国際化ということを視野に置きながら、かつまた我が国の経済産業の実態を踏まえながら、この法制度の整備をしっかりやらなければならない。とかく今までは、一番最後に、経済現象の結果を整理するような形で法制度の整備が行われる。これではやはり世の中をリードできないわけでございますから、今後の姿としましては、やはり将来を見越した形で、法律がある程度世の中の事態を切り開くくらいの気構えで取り組む必要があろうかと思っております。

吉田(治)委員 そういう中で、やはり機密情報の持ち出しというんですか、これは単に政府間のスパイだけではなくして、企業間、経済間のスパイというふうな部分でも大変大きな問題だと思うんです。一方的に米国における経済スパイ犯ということで取り締まれるだけではなくして、国内においてもそういう不正競争防止法等があるのであれば、徹底的にこれを活用というんですか、活用と言うのはよくないですね、この法律を厳守するという方向で進めなければならないと思うんですけれども、法務当局として、きょうは刑事局長がおいででございます。このことに対してどういうふうに考え、これから取り組んでいくのかという部分はいかがでしょうか。

樋渡政府参考人 先ほど委員の方からも御指摘がありましたように、不正競争防止法といいますのは、改正されまして、ことしの一月一日に施行されたものだというふうに承知しておりますが、法務当局として把握している範囲では、同罰則を適用して起訴した事例については、現在までのところは承知しておりません。

 いずれにしましても、検察当局におきましては、刑事事件として取り上げるべきものがあれば所要の捜査を遂げ、法と証拠に基づいて適宜適切にその処分を決するよう努めており、営業秘密に係る不正競争行為に関する罰則の違反行為に関しましても、同様に適切に対処するものと承知しております。

 なお、委員の御指摘が、さらに新たな特別立法の立案等も検討すべきではないかというような御趣旨でありますれば、この不正競争防止法の施行状況等の運用を見守りつつ、先ほど大臣の方でもお答えいただきましたように、政府全体において必要に応じた法整備等の検討を進めるべきものと考えております。

吉田(治)委員 この法律は、警察、検察が取り扱いますよね。経産省が摘発することではないと思うんですけれども、これは主にどの部分、どっちの方が取り締まりというんですか、摘発等をしていくと考えたらよろしいんでしょうか。

樋渡政府参考人 それはまさしくケース・バイ・ケースでございまして、認知をしたところが警察であれば警察が動くでありましょうし、あるいは告訴、告発というようなこともございますから、それが検察に対して告訴、告発がなされれば、検察が独自に動くということもあり得るものと思っております。

吉田(治)委員 非常にこれは日米関係というふうなもの、また法務行政というふうなものでいろいろと御意見があると思いますけれども、運用をしていって早急に、この法律というふうなものはしかるべき形なのか、どういう形なのかは、もっと国会で議論をすべきであるということを考えております。

 そういう中で、この経済スパイの問題は、知的財産というふうな部分が非常に深くかかわってくると考えております。きょうは知財戦略本部の事務局長においでいただいておりますが、前回のこの委員会での質疑、また経済産業委員会での質疑も行いましたけれども、なかなか不十分で議論もかみ合わない点がございましたけれども、まず、このスパイ取締法というふうなものに対して、今後、日本の知財戦略の中でどういうふうに考えて、どういうふうに織り込んでいくのか。

 現に、何度もお話が出ていますように、不正競争防止法というのはあるとは言いながら、やはりアメリカ側がどんどんこのスパイ取締法というふうなものによって、知財保護というふうなものを、人的にも法律的にも強く戦略として持ってきているのであれば、知財戦略という名前がついているんですけれども、本部としてどういうふうに今検討がなされているのか。もしくは、今後検討する状況になっているのか。また、具体的な形として何かのものを出そうという考えがあるのか。その辺、事務局長、いかがなんでしょうか。

荒井政府参考人 アメリカのスパイ取締法の関係でいろいろ御指摘ございますが、確かに日本におきましてはスパイ取締法というのはないわけでございます。ただ、さっき御指摘ございましたように、不正競争防止法を改正して、そういうことで、他人の営業秘密を不正に取得したり、使用、開示するというものを刑事罰の対象にするということになったわけでございまして、これは日本の状況から申し上げれば、大変な、大きな進歩だったと思っております。

 それで、日本の今後のことを考えたときにも、知的財産、日本人の持っている知識、技術、こういうもので立派な国をつくる、そしてまた競争力を高めていく、そういう観点、もっともっと力を入れるべきじゃないかという御指摘だと思います。

 まさにその点はそのとおりでございまして、これは、そういうことを発明された方、創作された方の権利であるだけじゃなくて、国家にとっても大変貴重な財産だという観点を、今、視点を入れて検討を始めたところでございまして、そういう議論の中では、日本ではさらにまたノウハウが技術者を通じて海外に流れている、こういう問題をどうするんだというような御指摘もございますので、いろいろな御指摘をいただきながら、日本としても、国家にとっても非常に大事な知的財産を、国としてどのように取り組んでいくか、今後、各方面の御議論をいただきながら検討を深めてまいりたいと思っております。

吉田(治)委員 いつも局長と議論をしていますと、大くくりな話で、具体的な話は何もないわけなんです。

 今の話も、刑事罰を、現状であるならば、現職の人間が持ち出すのはだめだと。青色ダイオードの場合は、裁判で二百億円という判決が出たお方は、内容的にはその会社をやめて、ある意味でそれのライバル会社に雇われていくわけですよね。ということは、その人間が機密という部分を、頭の中の脳に入れたものを相手の会社へ持っていく。これについては、アメリカのスパイ法においてはこれは厳罰に処せられる、日本においてはそれがないと言われております。

 そういうふうな部分で、刑事罰というふうなものをどう知財戦略の中に入れていくのか、その辺はどうなんですか。

荒井政府参考人 御指摘の点につきましては、知的財産をどのように保護していくかということにつきまして、従来は、刑事罰の関係では、御指摘のとおり、特にアメリカとの比較においては必ずしも十分ではなかったという点もございます。

 しかし、そういうことを日本全体としてどのように強化していくかということは、各方面でいろいろな御議論をしていただく必要があるわけでございます。今、模倣品とか海賊版という問題も出てきておりまして、そうなってくると、非常に大事な知的財産がいろいろな形で侵害されているんじゃないか、そういうことについても刑事罰を強化してほしいとか、あるいは取り締まりを強化してほしいとか、いろいろな要望が出てきております。

 今、きょう現在、具体的なことを申し上げる段階には至っておりませんが、そういう議論が非常に各方面から寄せられてきているということでございますので、真剣に取り組んでいきたいと思っております。

吉田(治)委員 事務局長の答弁の中の、模倣、海賊版は次の質問なんですね。今申し上げていたのは機密の持ち出しというもので、知恵の部分を持ち出していくということについては、もう一度お聞きします。今後検討項目に入れる、これはイエスかノーかお答えいただいて、その二点目。

 では、今少し答弁に入られました模倣品、海賊版。これはもう現実的には財務省の管轄である税関の問題であると思いますけれども、それをどう水際で押さえるのか。

 例えば、一流ブランドのメーカー品のタグというんですか、韓国に行くとタグと商品は別で、商品を持って帰ってきたそのタグの、こういう店に行ったらタグをもらえるからもらっておいでと、もらってくる。それは、両方考えてみると違反にならないとか、もう考える方は知恵を出して、手練手管でやってくる。

 やはり、知財の保護というのは、どうも特許だとか弁理士さんだとかいうことじゃなくて、基本的には人間の持つ知恵をどう守るのか、そして海賊版であるとか模倣品でというふうなものをどう守っていくのか。反対に言ったら、これはそういうことを、悪いことをしたら大変な罪に問われるよというところまで踏み込んでいくというのが実は知的財産の戦略ではないかと思うんですけれども、その辺は事務局長、いかがなんですか。

荒井政府参考人 第一点の御指摘の点につきましては、ノウハウ等の海外への流出防止という観点から検討の対象にしていきたいと思っております。

 それから、第二点の問題につきましては、現在、模倣品の関係で専門調査会でいろんな議論をしていただいておりまして、その中で、まさに先生御指摘のような問題、これを放置していいのかという御指摘がございまして、そういうことについて、どんな法律を使うのか、関税定率法になるのか商標法になるのか、いろいろな議論はございますが、やっぱり法律改正してでもしっかりそういうおかしい状態は直すべきじゃないかというようなことで、現在検討が進められております。

吉田(治)委員 それと同時に、非常に模倣品とか海賊版というのは、もう一つ言うと、私は、消費者の立場からすると、なぜそういうものを買うのかと。余りにも高過ぎるからですよね、本来のものが。品質的なものとかそういう保証があるから、知財という部分の守らなければならないということはあると思うんですけれども、どうも、前回も議論をしかけてそこで終わったんですけれども、余りに保護、保護という形で行き過ぎると、結果として消費者にとっては高いものを買わなければいけない。

 経済産業委員会でも著作権法の議論をいたしましたけれども、日本から輸出をした中国向けのCDが、輸入して返ってくる、これは何百円の世界だ。同じものが日本で同じようにつくられて売っても二千何百円だ。それなら、返ってくる分について、輸入される分については法規制でだめよとする。結果として、知財は守られたと大きな声で言われても、消費者的に言うと、今まで同じものが何百円で買えていたものが二千何百円になった。なおかつ、じゃ、二千何百円になったものを、そうしたからといって、生産者がそれを安くするということはしない。結果としては、知財を守る、守るといって、不利益をこうむるというんですか、負担をしなければならないのは消費者である。

 また、もう一点、これは知財高裁のときの議論でも何度も申し上げて、もう皆さん方にとったらええかげんやめとけということかもしれませんが、結果として、知財高裁も東京しかない。中小企業にとっては、特許だとか知財というものは自分たちで守ろうとしても、もうアクセスポイントがどんどん中央へ中央へ流れていってしまう。気がついてみると、知財保護、知財保護というのは、私は大企業中心という言い方がいいのかどうかわかりません、持てるものが中心になってしまっているのではないか。

 でも、私はそれでもいいと思うんです、まず取っかかりは。その後の展開、知財戦略という部分でいったら、いや、まずは大きなところ、力のあるところに力をつけてもらうんだ、その次の段階として、知財高裁の議論のときも申し上げました、どんどんそれをふやしていくんだ。結果として、その後に中小企業の皆さんだとかまた消費者の皆さんにとってプラスになるんだというものが見えてこない限りは、知的財産戦略といっても、結果としては国民から、また日々汗を流されている中小企業の皆さん方にとっては遠い存在でしかあり得ないということになる、そういうふうに考えるんですけれども、この辺の知財保護全体というふうな部分において、消費者とか中小企業の視点というのをこれからどういうふうに戦略本部として入れていくのか、いかがでしょうか。

荒井政府参考人 知的財産の保護をいろいろ議論を進めておりますのは、日本人の持っている技術開発能力とか創作能力、こういうものをしっかり発揮していこうということでございまして、そういうことによって、いい商品が出てくる、そしてまた安く商品が提供される、サービスが提供される、そういうことで国民経済全体にとってプラスになるんだという観点から取り組んでおりますので、まさに先生御指摘のとおり、消費者にとっても利益のある形にならなければ知財戦略は意味を持たないわけでございます。

 ただ、御指摘ございました点については、もっともっと消費者の観点から見て、本当にいいものが出てきて安くなるんだなということを、よくチェックしていくという姿勢を今後強めていきたいと思っております。

 そういう意味で、供給するサイド、研究開発するサイドと、それから国民の皆さん、消費者の皆さんとのバランスをよく考えるということは考えていきたいと思いますが、同時にまた国際競争でしっかりいいものをつくっていくということは、進めれば消費者にとってもいろいろな世界じゅうからのものが入ってくるというメリットがあるんじゃないか。

 それからもう一点、中小企業の点は、これはもう中小企業の方のいろいろな御意見をお伺いすると、彼らが持っている一番大事なものは技術だという会社が多いわけでございますので、まさにその中小企業の技術を保護できるような知財制度になっていかなきゃいかぬ。と同時に、また彼らの場合にはどうしても体制が弱いとか資金的に弱いという点もございますので、中小企業の方を何とかバックアップする、支援するという観点を今後は強化していきたいと思っております。

吉田(治)委員 時間がありませんので、知財の関係はこれぐらいにさせていただきたいと思うんです。

 また、知財の事務局から私どもの方に、ホームページを見てよく勉強するようにと前回言われましたので、必ずホームページを見て、議事録等を丹念に読み直して、前回の六回目から七回目の話であるとか、さまざま事務局の方にお聞きしたいことがございますので、今後とも機会があるたびにお呼びをさせていただきますので、その旨よく御理解をいただきたいと思います。

 続きまして、ロースクールがいよいよ四月から始まりました。現状と今後の問題というのは、多分司法制度改革のさまざまな法案審議の中で出てきたと思います。まずは現状、ことしのロースクールの入学者の出身構成というんですか、さまざま数字が出てくると思うんですけれども、文科省、おいでになられていると思います、いかがでございますか。

清水政府参考人 本年四月から開設されました法科大学院六十八校の入学者は、四月一日現在五千七百六十七名でございますが、社会人は二千七百九十二名ということで四八・四%、五割弱というふうな状況でございます。また、法学部以外の学部の出身者は一千九百八十八名ということで、割合は三四・五%というふうな状況にございます。

吉田(治)委員 これはいつまとまったんですか、文科省さん。

清水政府参考人 つい最近まとまりまして、きょう公表させていただこうというふうに思っております。

吉田(治)委員 できるだけ早くこういう統計は出していただかないと、四月の段階で入って今ごろというのは、六十七校でしょう、ファクスで取り寄せてもすぐじゃないですか。

 私、四月の段階で、四月二十八日の質問に向けてお願いをしても出てこなかった。出てきてくれと言ったらこうして数字が出てくるというのは、余りにも、そういう意味でいったら議会軽視、委員会軽視、ちゃんとしてもらわないと。大事な数字というのははっきり言って役所の方が持っていらっしゃるんですから、しっかりその辺は、次回以降、そごのないようにしていただきたい。

 という中で、今これだけの方が、五千七百六十七名入られたということは、確実に、法曹人口というんですか、事務局長、大体何%ぐらいがこれから先ロースクールを出て司法試験を通られると予測を立てられているんですか。

山崎政府参考人 突然の御質問でございますけれども。法曹人口について、ことしから千五百名の合格者にふやしていくということになります。それから、多分平成二十二年の、記憶でございますけれども、そこから三千名体制にふやしていく、こういうことでございます。

 今、法科大学院の生徒の人数が出てまいりましたけれども、それで割っていただければ大体合格率というのは出てくることになろうかと思いますが、ただ、そこから、卒業しても一回で受かる方ばかりであればその数字はいいんですけれども、とまりますので、そうなりますと、具体的に受かっていく率というのはそう伸びるわけではないだろうというふうに思います。

吉田(治)委員 大体何%ぐらいをめどにされているのか。

 それから、ロースクールの卒業生以外の方も司法試験は受けられるんですよね。そうしますと、合格者数が三千人というふうなことを目標にするのであるならば、ロースクールに入られて、一般で受けられてということになると、ロースクール出身者の合格率は四割ぐらいになるんですかね、各学年。どんなものですか。

山崎政府参考人 確かに、法科大学院を卒業しなくても、予備試験を受かって受ける方もおられるわけでございますので、これ以上ふえてくるということは間違いないと思いますけれども、ただいまの人数で大体五千何百名でございますので、それで三千名ということになりますと、その割合ぐらいが目標。ただ、これからふえていくと、またなかなかその率をキープするのは難しくなるということでございます。

吉田(治)委員 そうしますと、きょうは最高裁の方おいでで、私は、特にこの議論を時間をとってやりたかったのは、裁判官というのは、一度任用されますと独立ですよね。独立するということは、はっきり申し上げて首にはできないということですね。院の、国会において裁判官訴追委員会があってという話ですよね。

 そうしますと、まず一点目は、ちょっと気になるのは、例えば、そういう裁判官の方が御病気になられる。肉体的な病気もあれば精神的な病気もある。そういう場合にどういうふうに対応されるのかというのが一点と、二点目、裁判官になられて、どれだけ、何年務められるかは別にして、やはり、こんなことを言ったら悪いですけれども当たり外れがある場合があるわけですよね、弁護士の先生に言わせると。あの裁判官に当たったのか、まあ外れとは言いませんけれども、ちょっと変わっているなと。ということは、そうだとみんなが認知してもどうしようもできないのが、裁判官の、ある意味で私はすばらしい独立性だと思うんですけれども。ということは、まず採用するときに非常によく見なければいけないというふうなことになるんです。

 その辺は、これから人数がふえていく中で、反対に言うと、たくさんいてるからいいのが選べるよ、言い方はよくないかもしれませんけれども、非常にそこのところは僕は大変大きなポイントだと思うんですけれども、その辺はどういうふうにお考えになられ、これから法曹人口がふえていく中でどういうふうになっていくんだ。そして、裁判官として任用された方を、トレーニングというんですかね、どういうふうに、研修というんですか、していくのかというのは。いかがなんですか、その辺は。

山崎最高裁判所長官代理者 今委員御指摘のとおり、裁判官として高い資質、能力を備えた者を採用しなければいけないということで私どもも考えているところでございますが、その採用の方式としましては、司法修習生からの判事補の採用、これを進めていくとともに、弁護士からの任官というものも推進していきまして、それによりましてすぐれた人材を確保したいというぐあいに考えておるところでございます。

 一つ、これは委員も御承知かと思いますが、下級裁判所の裁判官は最高裁判所の指名した者の名簿によって内閣が任命する、こういうシステムになっておりますが、その最高裁の行う指名に関しまして、昨年五月に下級裁判所裁判官指名諮問委員会というものが設置されております。

 この委員会には法曹三者のほか学識経験者の方にも御参加いただいておりまして、そこで裁判官にふさわしい人材かどうかという御審議をいただいて、最高裁判所に答申していただきまして、その答申を尊重して最高裁判所が指名していく、こういうシステムができ上がっておりますものですから、このシステムを機能させていけば、今後とも質の高いものが確保できるだろうというぐあいに思っております。

 それから、裁判官は、一たん採用した後、強い身分保障がございます。そのとおりでございますが、任期が十年ということになっておりますので、十年ごとに再任をするのかしないのかというようなことを検討する。その際には、ただいま申し上げましたとおりの、下級裁判所指名諮問委員会で、またそこで審議がされるわけですから、裁判官として職責を果たせないような者についてはそこで排除されていくということが考えられることになっております。

吉田(治)委員 もう時間がないですな。また、この辺の話はゆっくりしましょう、今度。

 同じように、検事さんの方はどうなのかなと思います。

 それから、もう時間の関係で、ちょっと気になるのは、今司法制度改革の中で、司法修習生への給費の問題というのが出てきているんだと思います。奨学金という形にして貸し付けにしようじゃないかという議論もあるやに聞いているんですけれども、司法修習生への給費という問題は今後どういうふうな形で取り上げられて検討されていくのかということ。

 ちょっと、この二点。検察関係とそれから司法修習生への給費の問題、お願いしたいと思います。

樋渡政府参考人 法務省といたしましては、従来から、検察官の採用に当たりましては、能力、適性、人格、識見にすぐれた人材を確保するべく、厳正な選考を行うことなどにより、有能で適性のある検察官を確保してきたところでありますが、今後とも同様に、良質な人材を数多く確保するため、なお一層の努力を傾けてまいりたいというふうに思っております。

山崎政府参考人 給費制の御質問でございますけれども、この点につきましては、現在、私どもの方の検討会を設けて検討中ということでございます。

 視点といたしましては、今後における司法修習生の増加に実効的に対応して法曹人口の増加を実現するために、給費制から貸与制に移行するかどうか、この見直しを今続けているというところで、現在、まだ結論は出ておりません。もう少し時間がかかるかというふうに御理解を賜りたいと思います。

吉田(治)委員 もう時間ですので、質問もちょっと残っていますので、また寄せてもらいますわ、皆さん、好き嫌いは別にして。よろしくお願いします。

柳本委員長 御苦労さん。

     ――――◇―――――

柳本委員長 次に、内閣提出、不動産登記法案及び不動産登記法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として法務省民事局長房村精一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

柳本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

柳本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。泉房穂君。

泉(房)委員 民主党の泉房穂です。今から一時間、不動産登記法についての質問をさせていただきます。よろしくお願いいたします。

 法案についての質問、これまでも裁判員制度や司法ネット等でさせていただきました。その都度、それぞれ改正には、いいところもあれば、なかなか問題点等の指摘もあるという中で、そうはいっても、やはりこの時期にどうしてもこの法案は必要であるというような中で、質問をさせていただき、答えをいただき、司法ネットも裁判員制度も、修正の上、この衆議院の委員会で可決をしたというふうに私自身も認識しております。

 しかしながら、今回のこの不動産登記法につきましては、果たしてこの国会で急いで通す必要があるのかということについて率直に疑問を感じております。きょう一時間質問させていただきますので、その疑問の解消ができればいいのですけれども、そうでない場合は、改めて検討された方がいいのかなというような心持ちできょうは質問に臨むということを前もってお伝えした上で質問させていただきます。

 今回の不動産登記法なんですが、お配りしているように、概要を見ましても、ポイントは、オンライン化に伴いまして、国民の利便性の向上、そして登記の正確性、登記の真実性と言ってもいいと思いますが、この二点についてどのような影響があるのか。そしてまた、この分野において一番主要な役割を占める司法書士さん、土地家屋調査士さんももちろん関係しますけれども、司法書士さんなどにおいて、どういった役割の変化があるのかというあたりの三点が非常に重要なポイントであろうと思います。

 まずもって、今回の改正案につきまして、オンライン化とは直接関係ない部分、例えば現代語化した部分については当然賛成であります。こんなことは遅過ぎたと思います。当たり前だと思います。また、もとの住所のところに通知をする変更であるとか、また、登記の原因、つまり、もともと売買があったか、相続があったかということをきっちりと確認するようなことをするということも、もちろん当然必要であります。そういった点については、全面的に賛成するものであります。

 問題はそこではなくて、果たしてこの時期にこういった枠組みでオンライン化をする必要があるのか、そのオンライン化によって本当に国民の利便性が高まるのか、また、オンライン化によって、真実性、つまり、その登記が本当に真実の登記であるということがより確保されるのかというポイントであります。その点、順次質問させていただきます。

 まずもって、このオンライン化についてですが、批判の中では、今回のオンライン化は、まさにオンライン化するためのオンライン化にすぎないのではないか、本当に国民の利便性や真実性の確保ということを考えたオンライン化ではないのではないかというような批判も聞いておりますが、この点、大臣に、今回のオンライン化が一体何のためにオンライン化するのかということをまず明確にしていただきたい。そして、その際、国民にとってどういうメリットがあるのかという見地から、お答えのほどお願いいたします。

野沢国務大臣 一番肝心なところをお尋ねいただいておると認識しておりますが、今回の改正法案の趣旨は、情報処理技術の進歩、その他社会の変化に適合するためのオンライン申請の導入など、不動産登記制度を全面的に見直すことによりまして、登記の正確性を確保しつつ、国民の利便性の一層の向上を図る、ここにポイントがございます。

 オンライン申請の導入によりまして、申請人は、登記所に出頭することなく、いつでも、自宅や事務所にいながら迅速に登記の申請をすることが可能になるわけでございます。また、オンラインの申請では、パソコン上で作成したデータをそのまま送信することにより申請をすることができるので、データをわざわざプリントアウトする手間やコストを省くこともできるわけでございます。

 このように、オンライン申請の導入は、国民が登記制度を利用する上での利便性を高めるものであると考えておりまして、あくまで国民の皆様の便利のためにこれをやるんだ、いわゆるIT化のためのIT化ではございませんということでございます。

泉(房)委員 御説明自体は予想されたお答えなんですけれども、当然、オンライン化するわけですから、しかも、オンライン化もただじゃなくて、国民の税金を使ってオンライン化をわざわざするわけです。それに見合うだけの利便性の向上が本当にあるのかという見地で見たときに、今おっしゃったように二十四時間申請できるのは当たり前です、オンライン化するんですから。また、直接行かなくてもいいのも当たり前のことであります。しかしながら、現実的に、今の登記申請実務を見ますと、ほとんどが司法書士さんが担っております。

 とすると、司法書士さんが行かなくていいという点は、確かにそれは理解できます。でも、それが果たして国民にとってどういう利益なのかといったときに、実際の現実を見ますと、ほとんどの登記実務を司法書士さんに依頼しているわけです。その結果、簡単なと言ったら失礼ですが、登記について、登録免許税以外に、司法書士さんにやはり十万なり二十万なりの費用を負担してお願いしている現状であります。

 そういった見地からして、では、果たして国民の負担が経済的に軽くなるのか、また、国民自身がみずから、わかりやすく、登記の今回の変更に伴って、自分でできるようになるのかといったときに、ほとんど変更がないのではなかろうか。とすると、司法書士さんは楽になるけれども、国民は果たしてどの程度利便性が向上するのかについては甚だ疑問に思っておりますので、この点、繰り返し、どういった具体的なメリットがあるのか、利便性の見地からお答えください。

野沢国務大臣 繰り返しになる可能性はございますが、オンライン申請の導入によりまして、申請人は、登記所に出頭することなく、いつでも、自宅や事務所にいながら迅速に登記の申請をすることができる、ここがポイントでございまして、国民にとっての利便性が高まると考えておるわけですが、特に、本人申請の多い、抵当権の登記の抹消の申請や、登記名義人の住所等の変更の登記の申請におきましては、申請書のフォーマット等を利用することにより、オンラインによる申請が利用しやすくなると考えております。

 現行制度上も司法書士に依頼することを強制してはおりませんし、新たな制度のもとにおいても、登記申請の際に司法書士を頼むかどうかについては、当事者がそのメリット等を考慮の上選択される問題であろうと考えております。個人個人に見ると余りそのチャンスが多くはありませんから、やはりこれは、今までどおり司法書士さんのガイドがないとなかなかできないでございましょうし、また、法人等で一括して扱うような場合には、もう司法書士さんのお世話にならなくてもできるということではございますが、しかし、その上でも、念には念を入れまして、司法書士さんの能力を活用する道はこれからもまた開けていくだろうと思っております。

泉(房)委員 利便性はこの後改めて質問しますが、もう一点大臣にどうしても聞いておきたいのは、真実性の確保であります。

 つまり、登記というものは、それが本当の実態、つまり本当と一致していないと、本当に、いろいろな犯罪になってしまったりすると、その結果は取り返しがつかないことになります。だから、もちろんきっちりとしなきゃいけないわけですが、ただ、オンライン化といいますと、一般的には、そういった情報化をすれば、情報の流出等でやはり危険性が高まるというような認識が一般的だろうと私は思います。

 しかしながら、今回の説明を聞いておりますと、むしろ、オンライン化によって真実性の確保がより担保されるというか、高まるというような説明を受けますけれども、そこはどうしても理解しがたいところであります。むしろ、オンライン化は必要で、その結果真実性が低下するかもしれぬところを、何とか対策を講じてそうしないようにするという説明であれば、そうかなと思うんですが。

 この点、大臣は、オンライン化によって果たして真実性が高まると考えておられるのか、また、具体的に不正事件の数がオンライン化によって減少するというふうな御理解なのか、お答えください。

野沢国務大臣 今回のオンライン申請の導入におきましては、登記済み証と比較して偽造が困難である登記識別情報の制度を導入する、これによりまして本人確認ができるわけでございますが、登記の正確性はより向上するものと考えております。

 このような制度の導入によりまして、不正事件の数が減少することを期待しておりまして、私も、数少ない経験でございますが、オンライン化されました事務は繰り返し検証ができる、忘れてしまったことでもすぐまた確認ができる、こういった面で非常に確実性が増すのではないかな、これは期待でございまして、これからの努力にもかかわるところはございます。

泉(房)委員 大臣からの答弁を踏まえまして、利便性、そして真実性について、具体的に質問の方に入っていきたいと思います。

 私の理解ですと、今回のオンライン化によって、利便性が高まる、国民のサイドからいって具体的に考えると、本人申請、実際、統計を見ましたら、ほとんど九五%が代理人申請で、五%程度本人があるように思えても、裁判所からの職権とかありますから、ほとんどが司法書士さんが関与しているという現状からしますと、本当に限られた本人申請の方が、確かに二十四時間パソコンに向かってできるというような場面、そして司法書士さんに依頼する場合は、司法書士さんが直接出向かなくていい分、日当とか交通費の部分が少し助かるので、その分、本人の払う金額が減るというぐらいのことは私も理解はできます。でも、その程度で果たして、今回のオンライン化に伴う費用との関係でいったときに、その程度で利便性の向上と言えるかについては非常に疑問に思っております。

 私自身も弁護士をしておりまして、オンライン化といいますか、パソコンの導入の流れの中で、恐らく将来的には、そういったパソコンの普及が進めば、登記については司法書士さんを頼まなくても自分でできる場面もふえるのだろうなとか、また税理士さんの業務についても、例えば相続税の支払いなども、そういった形でかなり本人の部分でできるようになってくれば、かなり本人の経済的負担も助かるのかなという思いを持って、この間、こういった動きを見てきました。しかしながら、今回の法改正によって果たして本人申請の数がふえるかについては、本当に説明がありません。

 そこで、まず、現状の認識から問いたいと思います。現在の本人申請の割合をどのように見るのか、少ないと見るのか妥当と見るのか、そのことをまずお伺いしたいと思います。

    〔委員長退席、森岡委員長代理着席〕

房村政府参考人 現在の本人申請の割合でございますが、これは委員からも御指摘がありましたように、権利に関する登記それから表示に関する登記、いずれにつきましても、おおむね九五%程度が資格者代理人によるもので、その残り約五%程度が本人申請ということになっております。

 この数字が多いと見るのか少ないと見るのかということでございますが、これはいずれにいたしましても、申請をする当事者の方が、費用を払ってそういう資格者代理人を使われるのか、あるいはみずから申請をするのかということを選択された結果であろうと思っておりますので、私どもとして、特にこれが多いとか少ないとかということを申し上げる立場ではないのではないかと思っております。

泉(房)委員 今のお答え自体は、価値判断を避けておられると思うんですけれども、国民サイドから見た場合、もちろん司法書士さんの問題はまた別途ありますから、それは私なりにも考えはありますが、国民サイドから見た場合に、例えば相続をして、親御さんが亡くなって名義を変えるときに、わざわざ代理人に頼まなきゃいけないのかといった場面を想定したときに、こういったオンライン化に伴って、わかりやすい画面でクリックしてできれば、自分でできる、その結果、わかりやすく、自分でできれば、今払っている費用負担、十万、二十万の費用が助かるという面があるわけです。随分助かるわけであります。その分、司法書士さんの業務は減るという面はありますが、それは別途考えればいいわけであります。

 せっかくオンライン化するわけですから、本人申請がすべてだと言いません、できる部分、もっとあろうと思います。具体的な住所変更、引っ越ししたから住所をやはりきっちり変えておきたいといった場面、抵当権の抹消で、銀行の支払いが終わって、銀行からしっかりとしたそういった証明書がある場合などは、自分で当然できると考えるのが通常の私の理解だと思うんです。

 ただ、現状は、先ほど選択とおっしゃいましたが、現実は、選択をしているわけではなくて、登記については司法書士さんに頼むんだという一般的な国民の理解のもとに自動的にお願いしているという現状がある。そこについて、せっかくオンライン化するんですから、自分でできる場面については、一定程度自分でできるようにしていくというような目標設定は要るのではなかろうかと思いますが、どのようにお考えでしょうか。

房村政府参考人 ただいまの御指摘の、登記について国民の方々が自分でできるものについては自分でできるような方向に持っていくべきではないかとおっしゃる点は、それは私どもも全くそのとおりだろうと思っております。ですから、現状におきましても、各登記所の窓口には申請書の様式を幾つも用意いたしまして、それを利用して御自分でしていただく、それについて必要な知識については登記相談員等を配置いたしましてその相談に応ずる、こういう体制をとっております。

 今後、オンライン化をする場合ですが、これはまさに、オンラインのメリットを生かしまして、まず、申請ソフトを無料でダウンロードできるようにいたします。それと同時に、各申請書の様式をこれまたダウンロードできるように準備いたしまして、御指摘のような、特に比較的簡単な、抵当権の抹消であるとか本人の表示の変更であるとかそういったものは、ダウンロードした申請書様式に必要な事項を記載して、ダウンロードしたソフトを使って申請をするということが可能なようにしていきたい、こう思っております。

 私どもとして、国民の方々がみずからそういった形で登記をするということについて、登記所としてできる限りの配慮をするということは従来からやってきておりますし、今後もそういう努力は続けたい、こう思っております。

泉(房)委員 今お答えありましたが、現在でも相談に応じているとはおっしゃいますが、現状は、今数字を挙げられたように九五%、ほとんどが代理人を通じている現実があります。考えてみて選択して、自分でやるか司法書士さんに頼むかを考えて選んでいるわけではなくて、本当に自分でやっているというのは極めて限定的な場面なわけであります。

 今回のオンライン化によって、今のお答えだと、データの申請書類をダウンロードできるなんてぐらいだと、本当に寂しい話だと思うわけです。パソコンの画面を見て、その指示に従ってクリックしていくことによって、ある一定分野の登記申請については本人部分が主流になっていくというぐらいの目標設定をしないと、お金のない時代に税金を使ってわざわざオンライン化するわけですから、それぐらいの国民の利便性の向上ぐらいはやはり高い理想として目標に掲げるべきではなかろうかと思います。

 この点、具体的に、では、今回のオンライン化によってどの程度本人申請の割合が高まるのか。一般的な形でも結構ですし、特定の分野、例えば、住所変更の場面、抵当権抹消の場面、それからあとは相続の場合でそれほど争いのないような、親御さんが亡くなって兄弟のうちどちらかが相続するなどの場合はかなり本人申請が可能だろうと私は思っております。どの程度の目標設定をされているのか、されていないのであれば、どうしてそういう目標設定をしないのか、お答えください。

房村政府参考人 ただいま申し上げましたように、今回、オンラインの申請を可能にすることに伴いまして、できるだけ使いやすい、そういう様式を用意して、その様式に従って記入をすれば申請ができるという登記の情報を用意するつもりでおります。

 ただ、相当複雑なものになりますと、これはなかなか国民の一般の方々は、幾ら申請書様式をダウンロードしても適切な申請書を作成するのは難しいかと思いますが、先ほどから申し上げますような抵当権の抹消であるとか登記名義人の表示の変更であるとか、そういったものについては、様式に記入するだけで十分申請が可能になるのではないかと思っておりますので、ある程度は本人申請がオンラインでふえていくのではないか、こう思っております。

 ただ、オンラインの申請を利用するためには、当然のことながら、自宅にパソコンがある、あるいは事務所にパソコンがあって、しかもそれを使える、こういうことが前提になりますし、また個人認証の普及ぐあいというようなものにも影響を受けますので、現段階でどの程度ふえるかというのは、私どもとしてはなかなか予測は難しい、こう思っております。

 ただ、そういった働きかけをするということと、使いやすいソフトを開発することによりまして、できるだけ国民の方々がみずからそういう登記申請が可能になるような状況はつくっていきたい、こう思っております。

泉(房)委員 今のお答えの部分ですが、ここら辺は、私も弁護士をしておりまして、場面は違いますが、裁判などをするときに、裁判についても、今の裁判所の書類は難しいです。訴状であるとか答弁書であるとか、よくわからぬ言葉が使われて、一般の方が裁判をしようと思ってもなかなかできません。一般的な裁判をするんだったら、弁護士を頼むというような国民の理解が一般的かなと思います。

 しかしながら、本当のところは裁判なんてものは難しいものではなくて、例えば、お金を百万、二百万貸したけれども返してくれないという裁判自体に弁護士が必要かといったら、本当は要らないと私は思います。百万貸した、二百万貸したのは、借用証書があって、それを裁判所に持っていけばそこで裁判をしてもらえて、返したか返していないかの事実がある程度明らかになれば、自分でできる場面もあるかと思うんです。何が問題かというと、何か難しいかのようなイメージが一般的な国民の認識になっていることが問題だと思うんです。

 これは、この登記の場面でも同じでありまして、登記が難しいとは思いません。自分自身がどの建物や土地を持っているかということがちゃんとはっきりしていて、それを証明できて、それをだれに売るのか、またはどの銀行に抵当権を設定するのか、そういったことがはっきりすればそれでできる話でありまして、別に難しい話なのではないと思います。

 それが難しいイメージを持たれてしまっているのは、申請書類の形式がまだわかりやすいものになっていないであるとか、やはり司法書士さんの果たしているこれまでの、ある意味積極的な役割は後で申し上げますが、そういった中で、何となく難しくて、こういった分野は代理人に頼まなきゃいけないということなのかなと思うのが正直であります。

 とした場合、本当はオンライン化によって手続部分についてはかなりの部分クリアできて、本人申請ができるのではなかろうかと私は考えています。

 それとは別の真実性の確保の部分について、司法書士さんが担われてきた役割は私は大変高く評価しますし、そこの部分をどう考えるかの問題はあると思います。ただ、少なくても申請手続の部分につきましては、オンライン化によって随分進むはずだと思います。この点、少なくても今回のオンライン化によって本人申請の割合が飛躍的に伸びることぐらいは、やはり税金を使う以上は国民に約束すべきだと思いますが、この点、改めてお答えをお願いします。

房村政府参考人 登記手続といいますのは、大体年間千七百万件程度ございます。これを、ともかく登記は迅速に、原則として即日処理ということが原則でございますので、迅速に、しかも全国均一の処理ができるようになるということが国民から要請されているわけでございます。

 そういうことから、どういう法律関係にはどういう登記をする、どういう登記をするときにはどのような添付書類が必要である、こういうことが全国どこでも確実に判断できるように、非常に詳細に決まっております。そういうことから、国民の方々がある行為をしたときに、それを登記面に反映するためにどの登記を選択して、その登記を申請するにはどういう書類が必要である、こういうことをやはり調べていただかなければならない。そういうことから、登記が難しいという意識を持たれているのではないかと思います。

 もちろん、先ほどから申し上げておりますように、書式集を用意するとか登記相談を用意するというようなことで、できるだけ使いやすくしているつもりでございますし、オンラインの場合には、そういった書式集について、紙で備えるとなるとどうしてもスペースの関係がありますが、コンピューターでの検索ということであれば相当多くのものが用意できますので、また解説もつけられますし、そういう意味で、従来に比べて大分使いやすくなる、こうは思っております。

 ただ、本質的に、オンライン化するというのは、従来紙でやっていたものをオンラインでできるということがオンライン化の中心でございますので、従来紙のベースで非常に難しかったものが、オンラインにしたら途端に容易になるということではないであろうと思っています。ただ、オンラインの場合には、先ほど申し上げましたようなスペースの確保というような制約がなくなりますので、多くの様式を用意し、あるいは解説をつけるということで、少しでも国民の方々にわかりやすくするということは、これは相当やりやすくなるだろうと思っています。

 ですから、オンライン化をした場合には、そういうことを利用していただいて本人申請がふえるのではないか、こう思っているわけでございますが、先ほど申し上げたように、オンラインにしたから登記手続そのものが抜本的に変わるということではございませんので、そういった意味では、先ほど申し上げたような大量の事件を、しかも法律関係に従って適正に処理する、そういう登記手続の要請にこたえるためのある程度の分類というのはどうしても必要でございますので、その点はまだ残ろうかと思います。ただ、それをできるだけわかりやすくして、少しでも利用を促進するということを考えているわけでございます。

泉(房)委員 いろいろとお答えいただいて、なかなか、ある程度法案が出されてきた中で、答弁にも限界があるのかなと思うんですが、具体的な場面を考えますと、難しそうに言うんですけれども、難しくはないんですよ、本当に。

 私はこの家に住んでいます。この家は私のものです。でも、今回売ります。だれに売ります。ここに売買契約書があります。それを持っていけば、手続ができれば望ましいわけです。相続です。お父さんが亡くなりました。お母さんは既に亡くなっています。子供は私だけです。だったら、それで戸籍謄本と除籍謄本を持っていって、不動産登記簿謄本を持っていけば法務局の方で受け付けて、そこで変更ができるようになれば望ましいという価値判断は間違っていないと私は確信しています。

 しかしながら、これまでの長年の慣習、慣行の中で、具体的に言いますが、司法書士さんの果たしてきた役割というのは、単に手続の代行というよりも、実際の登記変更の原因のもととなった、本当に売買があるのだろうかとか、本当に相続が真の相続なのかとか、そういった本当は真実性の担保のところに司法書士さんの役割はかなり現実的な機能としては大きかったんだと思います。そこは私もそう思うんです。

 そこの部分は、別途それはその問題としてあるとしても、ただ、代行手続の部分については、オンライン化によって一気に飛躍的に解決できる部分もあるわけですから、何か、オンラインにするためのオンラインではなくて、オンライン化することによってそこの部分を一気に利便性を高めるというぐらいの発想は欲しいと思います。

 もしそうでないのであれば、この法案の概要の一番趣旨のところにうたっている「国民の利便性」というのは一体何なのかと。司法書士さんに払うお金が日当分、ちょっと一万、二万安くなるというような程度の利便性でわざわざ大枚な金を使ってオンライン化するのかというと、本当に寂しい話ではありませんか。それのためにこんなに急ぐ必要があるのかというふうに疑問も感じますが、その点、改めてお答えください。

房村政府参考人 何回も申し上げますが、オンライン化に合わせてできるだけ使いやすくするということは、私どもとして可能な限りするつもりでおりますし、その具体的方策は先ほどから御説明申し上げているとおりでございます。

 確かに、御指摘のように、御本人で申請されている方々は比較的少ないわけでございますが、それでも千七百万の五%といえば相当の数になるわけでございますし、また、司法書士の方々がオンラインを使う場合にも、当然のことながら、司法書士の方々の負担の軽減は、それを利用する国民の方々の負担の軽減に結局はつながっていくわけです。それは、個々の人にとっては大した額ではないかもしれませんが、何せ登記件数というのは非常にたくさんあるわけでございますから、それを全体として見れば、国民経済としては相当の国民の負担の軽減につながるのではないか、こう思っているわけでございます。

 いずれにしても、私どもとしては、このオンライン化をきっかけにできるだけ国民に使いやすい登記にして、希望すれば御本人で登記ができるような仕組みを今後も努力をして開発していきたい、こう思っています。

泉(房)委員 押し問答になってもあれですが、あと、オンライン化といいますと、いわゆる情報化をするわけですから、その部分がいろいろな部分に活用できるんだろうと思います。地図などもデータ化したりすると、例えばオンライン化した場合には、登記の情報を確認する際に、土地と建物を別々でなくてリンクさせるであるとか、その土地と建物を例えば画面上でクリックすればそこで登記簿謄本のようなものが、情報が見られるであるとか、そういうことをすることによって、そういった面でも国民の利便性、つまり、この土地はだれのものだろうなという確認をするときに、わざわざ赴いていったり代理人に頼まなくても、簡易な手続によって自分で確認できれば、それは取引の安全にもつながる、ひいては国民の利便性にもつながる、そういう面もあると思います。その点、どのようなお考えなのか。では、そういった面も含めてお答えください。

房村政府参考人 今回の法案におきましては、地図も電子化できるということにしておりますので、まさに御指摘のように、同じ電子化した情報でございますので、従来のいわゆる登記簿に記載されていた登記情報と電子化された地図情報をリンクさせるということを私どもも考えております。現実に今、地図情報システムを開発しておりますが、これは登記情報とリンクをして、おっしゃるような利用の仕方を可能にするという方向で今努力をしているところでございます。

 そういう意味では、今回の法案をきっかけに、電子化をすることによって国民にとって全体としての登記情報が非常に利用しやすくなるのではないか、こう思っております。

泉(房)委員 利便性の問題も切りがありませんが、次に真実性の問題の方にも移っていきます。

 真実性という言葉はあれですが、簡単に言えば、不正を防止できるかという問題であります。確かに、現在も不正はないわけではありません。ただ、千数百万件のうちに、果たしていわゆる不正がどの程度あるかということで、不正にもいろいろな内容がありますけれども、偽造した添付書類を用いた不正事件数につきましては、確認したところ、平成十二年から十四年度までの三年間で六十件、登記済み証、いわゆる権利証というか、登記済み証の偽造が三十件。つまり、三年間で六十件、一年二十件です。数が二千万件近い中において、少なかったらいいというものではありませんが、それが果たしてどのような評価になるのか。そして、その数がふえているから、オンライン化によって防止する必要があるのか、その点、現状認識ですね、現状の登記実務が果たして不正が大変で緊急に対応を要する事情なのかというと、私は必ずしもそうではないのではないかという問題意識を持っていますが、この点、お答えください。

房村政府参考人 御指摘のように、偽造書類等を用いた不正登記事件、これは大体年間二十件程度でございます。その半分近くが登記済み証の偽造というようなことになりますし、そのほか、印鑑証明書の偽造であるとか、それから保証書の偽造といった、やはり書類の偽造が圧倒的に多いということになります。

 数としては、大体横ばい、年によって、少ないときは十数件、多いときは二十数件ということはございますが、平均しますとほぼ二十件程度でここのところ推移しております。先ほども申し上げましたように、年間千七百万近い数でございますので、明らかになった不正登記事件の数ということで見ますと非常に少ないと言えるだろうと思っております。

 ただ、御承知のように、この対象となっている土地建物というのは、個人にとっては非常に重要な財産、まず最も価値のある財産と言っていいかと思いますので、そういったものについて、自分の知らない間にこのような形で権利が移転をされてしまう、あるいは知らない間に負担をこうむってしまうということになりますと、それは被害に遭われた方にとっては非常に甚大な損害ということになりますので、これは見過ごしにできない。

 また、登記制度としても、やはり、知らない間に権利が移ってしまうというようなことが数は少なくても毎年あるんだということになりますと、国民の登記制度に対する信頼が傷つくということがございますので、私どもとしては、できるだけこういう不正登記事件は減らす、目標としてはこれを完全になくすという目標で努力をしているところでございます。

 日々、審査に当たる登記官も、注意をして印鑑証明書をチェックしたり、登記済み証をよくチェックするというようなことで発見に努めているわけでございますが、今回オンライン化をすることに伴いまして、登記済み証がなくなって登記識別情報になる、あるいは、印鑑登録、印鑑証明書が電子署名に変わるというようなことになりますと、そのチェックの体制としては、目で見るチェックよりも電子的に一義的にできますので、そういった意味の安全性の向上はあろうかと思っております。

泉(房)委員 そのようにおっしゃるんでしょうけれども、データ化すると安全性が高まるという面もゼロとは思いません。ただ、この後申し上げますが、むしろ危険性が高いので心配をしております。

 その前に、千七百万件のうち、一年間に二十件程度のそういった不正、もちろんゼロにすべきであります。ただ、例えば結婚するときの婚姻届、これは名前を書いて認め印を押すだけであります。養子縁組届、これも一枚、役所にある紙に名前を書いて、認め印を押して出すだけです。本人の確認もありません。認め印であって、実印でもありません。そういった中で、実際上、養子縁組が勝手になされているものが多発しています。こんな二十件程度ではありません。

 だから構わないと言っているのではありません。もちろんゼロにすることが望ましいし、そうなるようにすべきでありますが、ただ、では、婚姻届や養子縁組をするのに、難しい複雑な手続をして、日にちもかかって、代理人に頼まなあかんのかというと、それはそれで大変であります。やはり、その部分は本人が自分で書いてやってくださいよという中で、実務は運用しているわけであります。

 不動産については、歴史的経緯もありまして、かなり慎重な、金額も大きいとかいう問題もありまして、より正確性の担保は必要だという価値判断もあるのかもしれませんが、そこを過度に強調して、それを理由にオンライン化するというのは、私は、理由としては、オンライン化の理由にはならないと思います。

 具体的に、オンライン化することによって、今のニュアンスだと、今回のオンライン化によって不正件数が減るかのようなニュアンスで受けとめますが、私は、この後述べますが、そうであればいいけれども、そうならないことを危惧しています。では、認識としては、年間二十件の不正件数がオンライン化によって二十よりももっと少なく、一けたになるというような御認識なのか、まずお答えください。

房村政府参考人 これはもちろん、オンラインの利用件数の推移にもよるわけでございます。

 ですから、今直ちに、オンライン化が実現した場合にどれだけ不正件数が減るということは申し上げにくいわけでございますが、ただ、少なくとも、従来利用しておりました偽造登記済み証、このような形態での偽造はオンライン申請に関してはできなくなる、あるいは、書面の場合でも、登記識別情報を利用する場合には偽造は不可能になるわけでございます。したがって、そういうタイプのものはなくなるだろう。

 ただ、御指摘のように、さまざまな新しい方法というのは当然悪い人は工夫するものですから、では、こういう対策を講じたら完全に防げるかというと、それはなかなか難しいだろう。ただ、少なくとも、現在用いられている不正手段の大きな割合を占める偽造登記済み証であるとかそういったものは防げるということは申し上げられようかと思います。

 それから、婚姻等の関係も御指摘になりましたが、これにつきましても、婚姻あるいは養子縁組の総数から見れば数は少ないわけですが、確かに偽造がございます。

 そういうことから、現在、婚姻とか養子縁組のような創設的な届け出に関しましては、市町村の窓口において本人確認をしていただく、こういう措置をとってその経過を見ているところでございますが、そういう意味で、やはり国民にとって重要な財産であるとか自分の非常に重要な身分行為、こういうものに関して、数は少なくても偽造があるということであれば、それはそれに対する対応策をできる限り工夫するということは必要だろうと思っております。

 登記の偽造につきましても、もちろん、オンライン化そのものが登記偽造を防ぐためということではなくて、これは主として利便性を考えたわけでございますが、それと同時に導入されている識別情報であるとか電子署名等を活用すれば不正事件の防止にも役に立つということを申し上げているわけでございます。

泉(房)委員 今回の真実性の部分についての説明は、偽造が防止できるとおっしゃるんですが、繰り返しですが、年間十件ぐらいです。千七百万件あるうちの十件の問題であります。では、今回オンライン化することによって、それが十件を割ってゼロになる、一になるのであれば、それはそれでいいことかもしれません。しかしながら、偽造が防止できる面がある反面、こういった識別情報をデータ化することによってのおそれはまた別の見地で高まるわけであります。

 きょうお配りした部分の中で、これも法務省の方からいただいている中の最後の四枚目を見ましても、登記識別情報通知というような書式があります。これを見ますと、いわゆる登記識別情報通知というのは、一枚紙で、目隠しシールが張ってある下に、めくったら十二けたの算用数字とアルファベットを書いているものがあるという状況であります。

 これ自体を偽造する可能性は低くなるでしょうし、これ自体に意味があるわけではありません。しかし、この十二けたが意味があるわけですから、この十二けたをだれかが控えてそれを持っていってしまえば、その情報は情報として次から次に転々と行ってしまいます。今ある登記済み証であれば、その登記済み証が手元にあるのであれば、少なくても別途違うところで偽造されるおそれが、年間十件程度なのか、それ以下なのか、手法がわかりませんので、あるにしてもその程度であります。しかしながら、この目隠しシールをはがした状態のものをだれかが見てしまって伝わっていくというリスクが果たしてそれでとどまるのかといったときに、もっと高いのではないかということを私は危惧しているわけであります。

 これに対しての、どの程度のリスクなのかという認識、そしてどのような対策を考えておられるのか、これは非常に重要な点だと思いますので、お答えください。

房村政府参考人 御指摘のように、登記識別情報というのは十二けたのアルファベットと数字を組み合わせたもの、一種の暗証番号ですね、そういうことですから、これをコピーされてしまいますともう本物と区別がつきません。そういう意味で、この登記識別情報は、登記済み証とは違った、登記済み証であれば幾ら人に見せてもそれで直ちに悪用されるというおそれはないわけでございますが、登記識別情報の場合には、その中身を他人に見せて写されてしまいますともう区別がつかない、そういう性質の差がございます。ですから、この登記識別情報については、その保管に気を使っていただいて、他人には中身を見せないということを十分配慮していただく必要がございます。

 ただ、そのかわり、この登記識別情報は十二けたのアルファベットと数字の組み合わせでございますので、本物自体を人に見せない限りは、偽造するということは不可能でございます。

 そういう意味で、知らない人に偽造するチャンスを与えないという意味の安全性の向上と、見られた場合に容易に成り済まされるという意味の危険性はありますので、そういう意味のメリットとデメリットはございます。

 今回、従来の紙の登記済み証というのはオンラインの場合には到底使えませんので、それにかわるものとしてこれを考えたわけでございますが、そういったいわば弱点もありますので、この点については、私どもとしても、国民の方々に保存について十分注意するような周知を図りたい、こう思っておりますし、例えば、登記所の内部でも、端末にはこの登記識別情報が出ないようにして、一般の職員がこれを見て悪用することのないような配慮を内部的にも行っております。

 それから、これを御本人に通知をする場合、紙の通知をする場合には目隠しシールを上に張りまして、この目隠しシールは一回はがしてしまいますと通常の手段では普通つかない、また無理につけても痕跡が残るということで、見られたかどうかがわかるような形にしておきます。そうしますと、仮に代理人の方あるいは第三者の方が介在していても、本人の手に渡ったときには、本人としては、その状態を見て圧着された目隠しシールに何の変化もなければ、これはまだ他人が見ていないということがわかるわけでございますので、それをそのまま保存していただければ、他人が登記識別情報を濫用する危険性は防げる、こういうことになります。

 また、オンラインで通知をする場合には、これは当然暗号化をして通知をするということになりますので、その暗号を解読できるのは御本人が持っている秘密かぎだけということになりますから、仮に、代理人の方がオンラインで申請をして、代理人の方が識別情報を代理で受領しても、その受領した識別情報は暗号化されておりますので、どういう番号かは代理人の方にはわからない。それをそのまま御本人に渡していただく。このような形で、介在する人には登記識別情報がわからないような、そういう形で運用ができるように工夫をしているところでございます。

 また、今言ったような特色は従来の登記済み証と大分違いますので、もちろん、間に立つ資格者代理人の方々にも資格者団体を通じて周知徹底を図りたいと思っておりますし、登記所の窓口、あるいは識別情報をお渡しするときにそういう注意事項を御本人の方にもお渡しするという形で、間違いなくこれが運用できるようなことを考えております。

泉(房)委員 長々と御答弁いただきましたけれども、やはり机上の空論というか、何か机に向かって考えているんだなという気がします。新聞でも書いて、今のお答えありました、本人がしっかり管理してくださいよと、結局は本人に負担を課すわけであります。国民の利便性といいながら、国民にある意味の義務を課す。そして、その一つの方法として提案なさっておられるのが、今もありましたが、目隠しシールを張っていますので、はがさなければいいでしょうと。

 これは多分、五年、十年、二十年、三十年です。二十年、三十年、目隠しシールを張り続けるのかというときに、普通に考えてください、こういった重要な、まさに不動産という重要な価値あるものの登記済み証にかわるものをもらうわけです。目隠しシールが張ってあって、これをはがさずにおるか。人間の好奇心というものはそんなものではありません。ツルの恩返しも、見てはいけないと言ったら見てしまう、浦島太郎だってやはりふたをあけてしまう、それが人間でありまして、こんなもの、目隠しシールで隠してあって見ずに待てるはずがないじゃないですか。めくりますよ。自分でめくった後どうするか。張りつけようとしても張りつかないわけでしょう。結局、裸のままの情報があるわけですよ。それで防止策というのでは余りにもお粗末ではないですか。

房村政府参考人 いや、もちろん御本人は目隠しシールをはがさなければ識別情報がわからないわけですし、今回の制度として登記識別情報の有効性確認というような制度も設けておりますが、それは御本人が利用できるわけですが、そのためには当然この番号を見なければなりませんから、御本人がはがすのは当然のことです。

 目隠しシールで、そういう、はがしたらわかる、あるいは、にわかにまたくっつけられないという仕組みをしているのは、登記所から直接御本人が受け取ればいいわけですが、その間に第三者が入ったときに、その第三者がひそかに見ているのではないか、そういう心配を防ぐためにこういう工夫をしているわけです。

 ですから、それは、もちろん御本人の方は普通は見ると思います。しかし、見た後、自分で保管するのは、当然御自分で保管するわけですから、それは人に見えるようなところに普通は保管しない。例えば貸し金庫に預けるとか。それは、現在の登記済み証でも、皆さんそれなりに気を使って、そう簡単に人が見れたりさわれるところには置かないだろうと思います。登記識別情報についても同じような形で保管をしていただければ、それはそう簡単に他人の人がこれを濫用するということはないだろう、こう思っておりますので、御本人がずっと見ないでということを申し上げているわけじゃございません。

泉(房)委員 手元に来るまではその御指摘はわかりますが、実際の場面を考えてみたら、相続をしました、自分のもの、持ち分が何ぼかなりました、登記識別情報を自分で手にしました、自分でめくります。問題はその後であります。

 今の登記済み証、いわゆる権利証の扱いを見ても、権利証を見せない場面もありますが、家族とか親族とかにはやはり見せることはあります。そのときに、裸の生の情報の、紙の状態で、親族といっても必ずしも親族はすべてそれを秘密にしているとも限りません。そこで流出する可能性もある。具体的には、この状況で自分自身が常にこれを確保して秘密にしていればいいですが、だれかが見た場合、そこにリスクは伴う。権利証であれば、見せた後回収を図れば権利証自体は自分のものです。ただ、情報は、一たん知られてしまったら、そこでとまりません。次から次に情報が流れていくことをとめようがないわけです。問題は、そこに危険性があるということを私は指摘しているのであります。

 あわせてお答えいただいたらいいんですが、そこで、あともう一つ場面を想定しますと、今回、自分の権利について、一つの不動産について、一つの部分について一つの情報ですから、抵当権を設定し、その後売却する場合、二回同じ番号を使うことがあります。そのときに、先ほどの指摘のように、多くの場合、司法書士さんを利用します。代理人を利用した場合、司法書士さんは、やはりそれは見ることにはなるでしょう、実務としては。そのときに、司法書士さんのみが、では、秘密にできるのか。そのときに立ち会った方がそれを見ずに済むのか。

 やはりそこに流出の危険性がある。一回こっきりじゃなくて、一たん使った情報がまた裸のまま次の使うときまで残ってしまうという危険性はやはり常につきまとうわけであります。恐ろしいのは、情報というのは一たん出てしまったらどこに行ったかが見えないというおそれであります。物としての権利、登記済み証はブツとしてありますから、偽造のリスクは常に防ぎ切れませんが、物は残ります。

 例えば、今回の場合、自分の土地を高い値で売ってほしいなと思ってだれかに頼みます、売ってくださいと。通常、権利証だったら権利証を渡します。でも、売る気がなくなったら、返してよと言って登記済み証を回収したりします。ここで一たんリスクは回避されます。

 ところが、今回の場合、例えば登記識別情報を通知、連絡してしまった場合、同じような書面を渡してしまった場合、その人から回収を図っても、一たん知らせてしまった登記識別情報の番号というものは自分以外の人に知られた状況のまま放置されるわけであります。そういったときに、では、そのリスクを本人が将来負い続けるのかというと、非常に酷だと思います。その点、どのようにお考えか、お答えください。

房村政府参考人 御指摘のように、現在の登記済み証の場合には、それを示すことによって、自分が実際にその登記の権利を持っているということを相手に納得してもらうという一種の証拠として使われているわけでございます。これが登記識別情報になりますと、そういう形で見せたらわかってしまうのではないかという御指摘ですが、それはそのとおりです。

 しかも、登記識別情報の場合には、これを見ただけで本物かどうかはわからないわけです。登記済み証の場合には、登記官の印、そういったものを見ることによって、特に資格者代理人等が関与する場合には、本物の登記済み証であるかどうかということがわかります。しかし、登記識別情報の場合には、いわゆる暗証番号ですから、でたらめに数字を書かれてもわからないわけです。

 ですから、登記識別情報で権利を持っていることを確認するために、今回、新しく登記識別情報の有効性確認、御本人の方からこの番号を登記所の方に通知をしてもらって、登記所が、その番号はこの登記についての有効な登記識別情報です、こういうことを証明する、そういう仕組みをつくっております。

 したがいまして、今登記済み証を他人に見せて自分が権利者だということを納得してもらっているその役割は、今後は、登記識別情報の有効性確認、それをやっていただいて、その有効性を確認したものをお見せしていただければ、この登記について、この識別情報を持っている人は有効な識別情報の持ち主ですということが証明できますので。これは、具体的な識別情報の中身は表示されておりませんから、そういう意味では、権利者であるということをそれによって他人に納得していただけると同時に識別情報が漏れることは防げる、こういう形になります。

 ですから、それは取引の、最終的に登記申請をする段階ではもちろん識別情報を直接使わなければなりませんが、それまでの間のいわば権利の確認のための登記済み証の効用というものは、そういった有効性確認を利用していただければ可能になります。

 あと、抵当権の設定をしたときの登記識別情報はどうなるのかということですが、これは、御指摘のように、所有権が移転して登記識別情報をもらった方が抵当権を設定するときに、それを使ってさらに、その識別情報はそのまま残りますので、次に、例えば抵当権を設定するとか所有権を移転するときにはそれはまた必要となります。したがいまして、その場合に、代理人の方々が識別情報を知ってしまうのではないかということも懸念されるわけです。

 ですから、登記識別情報の申請に当たっては、専用ソフトを使いまして暗号化して送っていただくということにしておりますので、その入力を例えば御本人の方に周りから見えないような形でやっていただく、そういうような形をとるとか、あるいは、将来的に例えばICカードの中に格納して、そのICカードの中で処理を一切済ませてしまうというようなことは十分技術的にはあり得るだろうと思います。

 ですから、ここのところは、私どもとして、具体的にどういう形でやるか、例えば紙でやる場合であれば、やはりその証明書を外につけた形で密封をして、それをそのまま登記所まで持ってきていただくというような形で、他の人の目に触れることのないような、そういった実務慣行を資格者団体とも協議して、法務省内でも十分検討して、そういうことを国民の方々に理解を広めたい、そういうことによって濫用の機会を少しでも減らしたい、こう思っております。

泉(房)委員 お答えとしてはそういういろいろな理屈を述べられるんでしょうけれども、実際考えると、今回のオンライン化を仮にしたとしても、全国民の意識が一気に変わるわけではありません。実際の現場を見ても、恐らくそう大きくは変わらないと思います。実際のところ、何が変わるかというと、これまでの登記済み証という、何か挟まって、司法書士さんが厚紙にしていた権利証といわゆる俗っぽく言われるもののうちの中身がこの一枚紙に置きかわるのが恐らく実態だと思います。それと扱い方も、国民の扱い方が、急に今回のオンライン化で全く違った扱いをするとか、オンラインの情報の管理の必要性をみんなが認識するなんということは考えにくいと思うんです。同じような用いられ方をしてしまう、その結果、こういったデータというものが流出するリスクが高まる。

 私が言いたいのは、結局、オンライン化について私自身は反対しているわけではありません。ただ、オンライン化によって、戻りますが、国民の利便性を高めるんだったら、せっかくなんだから国民の利便性を飛躍的に高めるぐらいの工夫をしたらどうなんですかと。それもなかなかはっきりした答えも得られない段階で、なおかつこういったオンライン化によってむしろ、場面は変わりますが、リスクは高まる面もある。それに対する防止策も今のお答えのような程度で、見切り発車をして本当に大丈夫なのか。

 その結果、今は千七百万件中十件、二十件にすぎない不正事件が、果たしてこれが五十、百になってしまったときに、まさにそれで責任がとれるのかということを危惧するわけであります。もっとちゃんと防止策について、もっと現場に即した、生身の普通のおっちゃん、おばちゃんの感覚で考えないと、オンライン化してこうやったらこうだからという、そんな一瞬で変わるものじゃないわけであって、そこに対する丁寧な配慮というものが要るんではないかと本当に強く強く感じる次第であります。

 これらの点を含めまして、一たん大臣の方に、これらの、今申し上げた利便性の向上が不十分じゃないんだろうか、またこういった真実性の担保についてもリスクが高い、もう少し慎重な見きわめを含めて再度検討してみてからもっといい形でやったらどうかというような私の提案をさせていただきますが、どのようなお考えか、お答えください。

野沢国務大臣 オンラインの現在の社会における普及率を見ますと、企業関係はもう相当高いレベルに達して、今、家庭でも相当なレベル、八割以上のレベルまで来ている、こういうデータもございまして、これをやはり利用、活用するということはこの問題に限らず大変便利であるということを国民の皆様がもう認識してきていただいている。ここ一、二年に相当な普及率が上がっていることは確かでございます。

 そこで、今民事局長からもお話がございましたように、さまざまな工夫を凝らしながら、不正防止あるいは利用の利便性、それからコストの低減を含めまして、総合的に見て、これはちょうどいいタイミングに御提案を申し上げているんではないかなと。これ以上おくれますとやはり世間の動きから逆におくれをとってしまう、また、これ以上早いとまたちょっと普及の程度で十分ではなかったかな。実は絶妙のタイミングに御提言を申し上げていると自信を持っております。

泉(房)委員 大臣なりの非常に一つの解釈だと思いますが、実際のところからするとそうじゃなくて、e―Japan構想があって、十五年度中にやりましょうという中で、ちょっとおくれたけれども、これもやらなあかんというのがほんまやと思います。だから、オンラインせなあかんという中で頑張ってオンライン化を進めているというのが正直だと思います。

 ただ、それは、もしほかの面がいいのであれば、それはそれで一つの価値判断なり時期の見方だと思いますが、繰り返し述べますが、オンライン化のためのオンライン化という面が先走ったばかりに、本当に国民の利便性の部分のコストダウンが図れるのかもはっきりしない、本人申請がふえるかどうかもわからない、そしてリスクの部分についても、情報化に伴うリスクについての本当に万全たる措置があるかどうかもまだ不透明である。こういう段階で事を急いでオンライン化する理由があるのか。

 そしてまた、オンライン化を仮にしても、実際のところ、オンラインの利用率は高くないと思います。実際のところは、これは書面申請も残ります。実際のところ、オンラインを利用する率はどれぐらいふえるか。実際のところ、これもお答えいただきますが、これをオンライン化にして、半分、七割、八割はオンライン化すると思っているはずはないでしょう。本当に数%しかいかないという本音のところの認識がありながら事を急ぐというのは罪深いと思いますが、どのようにお考えですか。

房村政府参考人 オンライン化の見通しということでございますが、現実には、そのシステムを開発して、それぞれの登記所で対応していかなければなりません。今、そういうシステム開発等を行っておりますが、仮にこの法律を成立させていただけるということであれば、来年の三月には一庁目を指定して、そこでのオンラインの受け付けを始めたい、こう考えております。

 これは、今後の展開につきましては、そういう準備の整った登記所から順次指定をして、次第に広げていくということで進めたいと思っておりまして、これは登記所全体のコンピューター化とも関連いたしますが、第一庁目を出した後はできるだけ早く全国展開をしたい、こう思っております。

 利用率の方でございますが、これは、先ほども申し上げましたが、個人認証の仕組み、そういったものの利用の仕方等とも関係いたしますので、私どもだけでなかなか可能にならない部分もございますが、できるだけの協力をいただいて、私たちも使いやすい仕組みを考えることによって、なるべく多くの方に早くオンラインを利用していただけるようにしたい、こう思っております。

泉(房)委員 もう法案を提出されておりますので、今のような答えかもしれませんけれども、本当に心配しています。運用面で図れる部分、私、これは賛成はいたしかねますが、この結果、かえって不正がふえてしまったり現場が混乱したんでは、本当に何のためのことかわからないということは、もう強く強くお伝えしたいと思います。

 そしてまた、もう一点、司法書士さんの役割についてであります。

 ここも、私も悩ましい問題だと思うんです。司法書士さんのこれまでの役割を見たときに、実際の登記手続の単なる代行手続自体は、本当は、実際のところ、きょう申し上げました、難しい話ではほんまはありません。ただ、司法書士さんが実際のところ、本人確認の場面であるとか、登記の原因となった相続や売買が本当にあったかとか、そこに、売買決済の場面に立ち会ったりして、非常に重要な機能を果たしておられる、それはそのとおりだと思います。

 ところが、その場面が、今回のオンライン化によってやはり影響を受けるだろうと思います。もし本人申請の数がふえれば、司法書士さんの、わかりやすく言えば事件数も減るという面もあります。そうしたときに、やはり、司法書士さんの業務のあり方、司法書士さんの生活に占める登記実務の比率の部分へも影響を与える。そうであれば、本来であれば、司法書士さんというものについての役割の分析、認識、そしてあり方についての幅広い検討。

 具体的には、例えば司法書士さんが、登記実務のみならず、もっと多分野の、最近では簡裁代理権とか成年後見の分野でも活躍しておられます。そういった多方面の活躍の場を提供する中で、司法書士さんに安定的な生活基盤の提供と活躍の場を提供する中で、登記分野については、ある意味、本人申請の比率を高めていく、本当はそういったトータルな仕組みづくりをすべきではないか。

 そうじゃなかったら、ある面、司法書士さんに対しては、いやいや、何も変わりませんと言いながらある面は本人申請がふえるというのは、これはちょっとうそであって、どっちかなんであって、本人申請が大幅にふえて国民の利便性が高まれば、その分、司法書士さんの業務については減少という事実があるわけです。それについてどういう手当てをするのか考えるべきであります。そうじゃなくて、全然変わりませんというんだったら、まさに本人申請がふえないということになりかねません。

 どちらに転ぶにしても、やはり、もっとトータルな検討が必要ではないかと思いますが、どのようにお考えでしょうか。

房村政府参考人 司法書士の方々の役割ということですが、先ほども申し上げましたが、登記の中には、比較的簡単な、抹消の登記であるとか、表示変更の登記というようなものもございます。こういうものは特にオンラインにすれば使いやすくなりますので、そういう点で本人申請がふえるのではないか、こう申し上げているわけですが、しかし、登記の中には、やはり相当複雑なものもございます。

 実は、かつて、法務省の民事局で勤務している参事官の方が勉強のためにみずから登記申請をしたところ、相当附せんがついて補正をされてしまったという話がございますが、相当程度に法律知識があっても、やはり、申請書をきちんと書いて、間違いのない登記申請をするというのはなかなか難しいことでございます。

 そういうことから、やはり、登記の中には専門家を利用するというものが当然残るだろうと思いますし、また、単に書類の作成だけではなくて、そういう取引全般を通じて司法書士の方々の専門知識を活用しているという面が、多分、依頼の中には相当あるんだろうと思います。そういうものは、本人申請が幾ら便利になったとしても、やはり司法書士の方々を使うだろうと思います。

 そういう意味で、登記について司法書士の方々が大きな役割を果たすということ自体は、実際の率は多少動くかもしれませんが、そういうこと自体は今後も続くのではないか。ただ、それと同時に、簡裁の代理権であるとか、その他いろいろな新しい法律問題が生じておりますので、そういった分野で、司法書士の方々が、国民に最も身近な法律家として今後活躍の分野を広げその比重を高めていくということは、これは大いにあり得ることではないか、こう思っておりますので、私どもとしても、そういった方向に協力をしていきたい、こう思っております。

泉(房)委員 今の答えは、答えのようでなっていないと思うんです。私も、司法書士さんは登記において一定の役割を占めるのは当たり前です。その分野がやはり類型化されて、複雑な分野とか、しっかりせなあかん分野は当然そうです。ただ、今のように九五%を司法書士さんの状況から、本人申請がふえてくればその部分、業務も減るじゃないか、だったら、司法書士さんについてやはり何らかの手当てをするなり、司法書士さんももっともっと活躍する場面もあるので、そこもトータルに考えたらどうですかと質問しているわけですから、重要な場面もありますと、そんなの当たり前であって、そうではなくて、司法書士さんにもっと誇りを持って仕事をしてもらえるような役割を課すんであれば、他分野の活躍ないしは今回の登記についても司法書士さんに期待するんであれば、本人申請と並列せずに、すべからく司法書士さんを関与させ、そこに真実性の担保もかませるとか、そういった仕組みを、役割をきっちり司法書士さんに保障するという枠組みであれば一つの価値判断です。こんな中途半端な状況でオンライン化を進めるというのは、私は、司法書士さんに対しても失礼だと思います。

 最後になりましたが、きょうにつきましては、まとめますが、国民の利便性についてもはっきりわからぬ、真実性の担保だってどうなるかわからぬ、こんな状況で急いで導入してほんまに責任を持てるのか、やってみたらどうなるかわからぬという面があれば、少なくても運用面で一定期間の後の状況を見ての見直し等ぐらいはやはり考えないと、これで法を通して終わりでは、ちょっと政治家として一般のおっちゃん、おばちゃんについて責任を持ち切れぬのじゃないかと思いますが、最後に大臣、そのあたりの御認識をお述べください。

野沢国務大臣 やはり、司法当局といいますか、法務省といたしましては、技術の進歩、それから社会のニーズ、そしてまた国民の皆様の今後の利便性、あらゆる面を考えまして、この制度は必ず機能するであろう、またそのように努力して育てねばならない、かように考えております。

泉(房)委員 大臣の御答弁ですので。

 少なくとも、このオンラインが、私自身は個人的な立場は賛成いたしかねますが、仮に導入されて、その結果、不正が今よりふえるようなことがあったら、本当に今の答弁について責任を持てるのかという問題だと思いますので、そこは重々、今回の法案、施行令に任せていくことばかりで、本当に見切り発車だと思いますので、よく考えていただくように申し述べて、質問を終わります。

森岡委員長代理 御苦労さまでした。

 松野信夫君。

松野(信)委員 民主党の松野信夫でございます。

 私の方からも不動産登記法につきまして質問をさせていただきたいと思います。できるだけかみ合った議論になりますようにお願いしたいと思います。

 今回の不動産登記法、第一条のところが目的ということで記載があります。国民の権利の保全を図る、そして取引の安全と円滑に資するというような規定になっているわけでありまして、この国民の権利の保全と不動産取引、そういうものが安全に行われるということは大変重要なことであります。

 こういう取引の安全ということの前提として、登記が正しくなされている、登記上の権利者と実体上の権利者というものがぴったり一致をしているということがやはりこれは重要なことでありまして、この登記の真実性、これをやはりしっかり確保していかなければいけないだろうというふうに思います。

 他方、恐らくこの法案というものは、利便性、コンピューターを使って手軽にやれるという形の利便性というものも追求をしているわけで、登記の真実性とそれから利便性、両方を追求しながらこの法案ができたのかなというふうに思います。しかし、前提としては、やはり何といっても登記が正しく真実にできているということが大変重要だと思います。

 この法案によって、この真実性の確保というものがどういうふうに図られているのか、この点について、まず大臣のお考えをお聞きしたいと思います。

野沢国務大臣 不動産登記にかかわる一番本質的な問題について冒頭御指摘をいただいたわけでございますが、国民の権利の保全及び取引の安全のためには、正確な登記がされることが何よりも大切なのは言うまでもないことでございます。そのためには、申請人が申請権限を持つ本人であること、また登記原因が正確であるという、この二点の確認が重要であると考えておるところでございます。

 申請人の本人確認につきましては、現行法では、印鑑証明書及び登記済み証の提出によりまして、登記済み証がない場合には保証書の提出及び事前通知の手続をとることにより確認を行っております。他方、登記原因につきましては、現行法では、原則としては登記原因証書の提出を受けましてこれを確認することとしておりますが、登記原因証書が存在しない場合や提出することができない場合には、提出しなくてもよいこととされております。

 今回の改正では、登記済み証と比較して偽造が困難である登記識別情報の制度を導入しまして、これにより本人確認を行うこととしております。また、登記済み証がない場合に必要とされております保証書の制度を廃止しまして、かつ登記の識別情報の提供がない場合の事前通知の手続を強化することとしております。さらに、資格者代理人による本人確認情報の提供を制度として位置づけることとしており、これらの施策により、登記の正確性の確保を図ろうとしておるわけでございます。

 もう一方の登記原因の正確性につきましては、登記原因を証明する情報を必ず提供しなければならない制度とすることとしているところでありまして、議員の御指摘の二点の問題については、十分これは確保できるものと確信をしております。

松野(信)委員 ありがとうございました。

 登記の真実性をしっかり確保していくということは、大変大事なことであろうかと思います。ただ、我が国の登記制度というのは、基本的には、公信力がないというのが前提になっているわけで、それは突き詰めていって、登記というのは常に必ず実体的真実を明らかにしているものだ、ぴったり一致しているということであれば、もういっそのこと公信力を認めるというような、これは法制度の大転換になろうかと思いますが、そういう点を考えてもおかしくはないわけで、こういうような今回の法案の施行、その先には、例えばドイツのような公信力を認める、登記がすなわちそれが真実だと。そこまでを念頭に置いた上でのこの法案の提出というふうになっているんでしょうか、いや、そこまではまだ考えていないんだということなんでしょうか。

房村政府参考人 御指摘のようにドイツにおいては登記に公信力が与えられておりますので、登記面に表示されたとおりの権利関係が形成されるわけでございますが、これを日本で採用するかどうかということは、従来から議論はございますが、やはり公信力を認めるということになりますと、民法、実体法上の問題にも大きく影響をいたしますし、取引慣行あるいは登記所の組織あるいはその確認の仕方という意味で権利の公証のあり方、こういった非常に幅広い影響を及ぼします。

 今回は、法改正を検討するに当たりまして、そういった余りにも多面にわたる検討が必要であるということから、私どもとしては、現行の枠組みを維持した上で、その中で合理化をしていくということを比較的早い段階で考えましたので、そういった意味で、公信力について本格的に検討する以前の段階において、そのような採用は難しいだろうということを判断したわけでございます。

松野(信)委員 今回の登記法の改正という問題については、先ほど来も少し出ましたけれども、いわゆるe―Japan構想ということで、いろいろコンピューターを活用した、言うなら電子政府、これを目指す、その一環というふうにも考えられるかと思います。

 それはそれで別に悪いというわけではありませんが、しかし、新しい法改正をするという以上は、その前提として、これまでの不動産登記手続、これについてはやはり何らかの問題点がある、改善した方がいい、そういう立法事実があって今回の登記法の改正につながったんだろうというふうに思います。そうすると、従前のこの不動産登記手続については、例えばこうこうこういう点にやはり具体的な問題点があった、支障があったというのが恐らくあってのことだろうと思いますが、その点はどのように認識をしておられますか。

房村政府参考人 従来の登記手続の問題点ということでございますが、その前に、今回の法改正に至った立法事実といいますか、経緯でございますが、御指摘のように、e―Japanということでオンライン申請を可能にするという要請が一つありました。これはもちろん立法のきっかけになっております。

 しかし、同時に、不動産登記法自体が非常に古い、片仮名、文語文で、できるだけ早く現代語化をすべきであるということは国会においても指摘を受けていたところで、かねてから私どもも現代語化を早くしたい、こう思っていたことが一つございます。

 それと、コンピューター化が進んでおりますが、従来の不動産登記法は紙を前提とした規定をして、それにコンピューター庁を無理に当てはめた、こういう形でございますが、今後は逆にコンピューター庁が原則になりまして、いわば紙による処理は経過的なものになる、そういうことから、登記法の規定の仕方もコンピューター処理を前提としたものに改めた方がわかりやすくなるだろう、こういう要請もございました。

 そのほか現行の登記手続につきまして幾つかの問題点が指摘されておりましたので、そういうことを総合いたしまして、オンラインを可能にすると同時に、現代語化を図り、あわせて従来指摘されていた問題点の解消を図る、こういうようなことが今回の立法の経緯でございます。

松野(信)委員 私も少しくこの登記関係の事件などを扱ってまいりまして、裁判などもあります。

 一番多いのは、やはり、登記権利者その本人の意思確認が必ずしも十分になされないまま移転登記がなされた、あるいは抵当権設定登記がなされたというようなことで、間違った登記になっているじゃないか、こういうようなことから紛争が発生をする、こういうケースが多いかと思います。

 それ以外にも、例えば、実際に司法書士さんに登記をお願いする、それで委任状に実印を押したりするわけですが、そういう実印の印影の判断が登記官によってまちまちである。Aという登記官はこれくらいクリアに押捺されていればパスするけれども、Bという登記官はちょっとゆがんでいるからもう一度押し直しというようなことで突っ返される、こういう問題点も現実にはありました。

 また、近時の問題では、いわゆる商工ローン、商工ローンによって仮登記を濫用する。お金を貸し付けるときに、最初に印鑑証明書とかいろいろな必要書類を取り上げておいて、しばらく、何年もたってからいきなり仮登記を申請して設定してしまう、こういう仮登記制度の濫用とも思われるようなケースもあって、この辺が今の実務で問題とされるべきところかなという気がしております。

 それで、実際のところを見ますと、いわゆる登記原因証書というものは、これは余り使われない、せいぜい半分ぐらいしか使われなくて、いわゆる申請書副本という形が結構多い、半分ぐらいそういうふうになっているということであります。

 この点については、今後、この申請書副本というやり方ではなくて、登記原因証明情報、これを作成するというふうになっているんですが、この申請書副本でやるということについての何か具体的な弊害、問題点というのはあったんでしょうか。

房村政府参考人 たしか現行法におきましては、一応原則は登記原因を証する書面を添付していただくわけですが、その書面がないなどの場合には申請書副本で足りる、こういうことになっております。御指摘のように、実情として、登記原因証書が添付されておりますのは大体五五%程度、約四五%は申請書副本で登記がされております。

 これについての問題点ということでございますが、登記は、もちろん権利の移転を公示するわけでございますが、その移転の原因ということについてもあわせて公示をしておりますので、できるだけ正確に実際の登記原因が登記面に反映するようにということで、この原因証書の添付を求めているわけでございます。

 ところが、申請書副本でいいということになりますと、それがややもしますと、実際の登記原因と違う登記原因で登記がされてしまう、その代表的な例が中間省略登記かとは思いますが、そういったようなことがどうしても避けられないものですから、やはり登記原因自体を正確に公示するために、申請書副本ではなく登記原因証書の添付を必須化すべきではないかというのは、かねてからそういう指摘があったわけでございます。

 そういうことから、今回、この登記の正確性を原因についても確保するために、登記原因証明情報という形で添付をしていただくということにしたものでございます。

    〔森岡委員長代理退席、委員長着席〕

松野(信)委員 今お話がありましたこの登記原因証明情報ですけれども、具体的にはその証明情報というものはどういうものなのか、そこには何が記載されるのか。どうも法文を見た限りでは必ずしも明確ではない。常識的に考えれば、通常、売買契約書、売り主と買い主の売買契約書をつくって、それで移転登記をする、こういうことになれば、この売買契約書に売り主、買い主双方の印鑑まで押してある、これが一般的には登記原因証明情報というのに該当するんだろうなというふうに思います。

 しかし、売買契約一つとってみても、必ず売買契約書をつくらなきゃならないというわけではないわけで、知り合った同士であれば、それこそ領収書だけで済ませちゃうということだってあり得るわけです。そうすると、実際には領収書しかつくっていないとすると、例えば、じゃ、この領収書というのが登記原因証明情報に成りかわるものなのかどうか、その点はどうなんでしょうか。

房村政府参考人 御指摘のように、売買契約書というのはその代表的な例だろうと思います。

 ただ、実際に、作成された売買契約書でなくても、登記原因を証するような情報であれば登記原因証明情報になり得るわけでございますが、この情報を要求している趣旨といたしましては、登記原因が真実であることを担保するためでございますので、最小限、登記義務者の方の、文書であれば署名が必要である、情報であれば電子署名というような形になろうかと思いますが、そういうことになろうかと思います。

 内容的には、やはり、売買契約に基づいてこの所有権が移転したということがその情報から読み取れるようなもの、ですから、実際上、今、登記原因証書としていわゆる売り渡し証書というようなものを作成して登記原因の証明書として使っておりますが、そういった内容になるのではないか。ですから、領収書だけでは、それだけで証明するわけにはいきませんので、そういう個別のものではなくて、やはり登記原因全体を証明できるような情報、適切なものがある場合にはそのままつけていただければ結構ですし、それがない場合には作成をしていただいて、最小限、登記義務者の方の署名、押印をしていただく、こういう形になろうかと思います。

 これについては省令等でもう少し詳細に決めていくということも考えております。

松野(信)委員 売買契約書が典型的に当たるということだろうと思いますが、実際には、恐らく売買契約書は別途つくって、それは売り主、買い主双方が原本を持っている。そうすると、登記原因証明情報で登記所の方に提出するのはその写しというような形になるんでしょうか。

房村政府参考人 電子的な形で申請する場合は、何らかの形で電子的にしていただかなければなりませんので、多分その場合には電子的な情報をつくって電子署名をしていただくことになるのではないかと思います。

 それから、先ほど登記原因証明情報について省令で定めると申し上げましたが、これはちょっと勘違いでございまして、形としてはこの条文で書き切っておりますので、あとは運用を適切に行うということであろうと思っています。

松野(信)委員 この登記原因証明情報にどの程度の情報を盛り込むのかという点も、これまた条文上必ずしも明確ではありません。恐らく、例えば、典型的な売買ということであれば、売買の日時それから売買の物件、当事者、この辺は当然に入ってくるのかなと思いますが、例えば、代金が幾ら、手付金が幾ら、決済方法は、場合によってはこの売買には特約条項があるとか、何らかの附帯条件がついているとか、そういうところまで登記原因証明情報に記載を予定しているのかどうか、この点はどうでしょう。

房村政府参考人 もちろんそういう詳細にわたるものを書いていただいても、ある意味では書いていただく方が好ましいのかとは思いますが、これは最小限登記事項になる登記原因を証明する情報ということでございますので、例えば、代金額についてこれを記載していなくても、売買契約であって、かつ代金の定めがあるということがその証明情報からわかれば登記原因としては足りるわけでございますので、そういう観点から証明情報の範囲については判断をしていくということになろうかと思います。

松野(信)委員 それから、登記原因証明情報について、この情報というのは、基本的には電子的に処理されるというのがベースかと思いますが、これは第三者に開示されるようなものなのかどうか、この点はいかがでしょうか。

房村政府参考人 この登記原因証明情報でございますが、これは書面で出される場合もあれば、電子的に来る場合もあろうかと思いますが、いずれにしても、従来の扱いでいいますと、附属書類として閲覧の対象になる、利害関係人がこれを閲覧することができるということになります。

松野(信)委員 登記申請書の閲覧など、よく実際の裁判などでも問題になります。本当に真意に基づいて移転登記がなされたかどうか、あるいは抵当権の設定登記がなされたかどうかというようなことで裁判などに発展する場合があります。

 その場合、そういう登記申請書あるいはその附属書類、そういうものを登記所から取り寄せようというふうになりますと、たしか今のやり方では十年というのが保存期間だ、こういうふうになっているものですから、以前の、それより前の書類を取り寄せようというふうに、裁判所から照会しても、もう破棄されているということで保存されていなかった、こういうケースが時々あるわけです。代理人として非常に残念な思いもすることがありました。

 これは言うまでもなく、例えば、取得時効というのが問題になるのは、二十年で取得時効が完成するというのが法律上の規定ですから、私は、こういう登記申請書とか附属書類などはせめて二十年ぐらいはしっかり保存をしておかないと安心して不動産購入もできない、いざ裁判にでもなったときに検証ができない、こういう弊害が出てくるのではないかと思いますので、これは直接法案の規定とは異なるかと思いますが、せめて二十年ぐらいしっかり保存しておいていただきたいと思いますが、この点はいかがですか。

房村政府参考人 御指摘のように、現在、登記の申請書及び附属書類の保存期間が十年になっております。特に、時効取得等の関係で、この保存期間を十年より二十年程度に長くできないのかという御指摘があるのは私どもも承知はしているわけでございますが、保存のためのスペースの確保という問題もございますので、そういう保存の必要性とか、登記所の庁舎設備の状況等を踏まえてさらに検討させていただきたい、こう思っております。

松野(信)委員 ぜひ前向きに検討をお願いしたいというふうに思います。

 それからもう一つ、登記原因証明情報について、売買契約書ではなくて、例えば、売買に立ち会っている司法書士さんの確認書とか司法書士さんの証明書とか、そういうのも当然出てくるだろうというふうに予想されます。

 そうすると、司法書士さんがこの確認書あたりをつくったという場合、本当にその司法書士さんがつくったものかどうかというのがやはり問題になってくるだろうと思いますので、作成者がだれで、本当につくったかどうか、例えば、従来のやり方でいくならば、印鑑証明書、実印を押捺して添付しておくというような方法もあろうかと思うし、今後、場合によっては、司法書士さんの電子署名を添付するというようなことも考えられるのかなと思いますが、この点はいかがですか。

房村政府参考人 現在、司法書士の方が職務上書類を作成した、そういう場合には、司法書士法の施行規則に基づきまして、その作成した書類に記名し、職印を押すべきである、こういうことになっておりまして、励行していただいております。

 ですからその点は、今後も、文書で出される場合には、そういう形で記名と職印が押されるという形になりますが、電子的にオンラインで来る場合に、それに相応する措置を講じないとなりませんので、まさに御指摘のような電子署名も含めて、電子的なオンライン申請をした場合に、司法書士がその情報を作成したときに、その表示の仕方をどうするかということを現在検討いたしまして、省令において定めることとしております。

松野(信)委員 次の問題に移りたいと思います。

 今回の法案の目玉は、要するにオンラインで申請するということになるわけですが、果たしてそのオンライン申請というのがうまくスムーズにいくかどうか、これは先ほど泉委員の方からもいろいろ御指摘があったところであります。

 現在、登記所というものが七百弱全国に存在をしているというふうに承知しておりますが、どうも聞くところによると、この七百弱の登記所というものをだんだんと統廃合してもっと数を減らしていくというふうなお話も聞いております。この点は、例えばいつごろまでどうするというような何か予定が立っているんでしょうか。

房村政府参考人 御指摘のように、現在登記所は全国で六百八十三庁ございます。これは、かつては登記所二千を超す数、例えば、昭和三十年には二千八十五庁ございました。しかし、その二千の数ということになりますと、非常に小さな庁が多くて職員も分散をいたします。そうなりますと、どうしても行政効率も悪くなる。このようなことから、行政を効率化するということから、従来から登記所を統廃合して適正な配置を実現するということで進めてきているところでございます。

 現在の六百八十三庁という数にいたしましても、かつてに比べますと相当少なくなってはおりますが、例えば、全国にあります税務署が五百二十四庁、簡易裁判所が四百三十八庁ということで、そういう全国に置かれている国家機関としてはやはりまだ数が多くて、しかも小規模なものが多いということが言われるわけでございます。

 政府の方針といたしまして、行政改革としてできるだけ行政を効率化、スリム化する、こういうことが言われておりまして、その一環として、この登記所についてもその配置を見直すべきである、適正配置を推進すべきである、こういうことが言われております。今後、平成十七年ごろまでに一千カ所のおおむね半分程度まで縮減を図るということが閣議決定されておりますが、私どもとしては、地元の理解を得つつ、その登記所の適正な配置について今後も努力をしていくということになります。

松野(信)委員 登記所は、大体法務局、地方法務局にあったり、その出張所にあったりということで、地域地域に見ますと、場合によっては、ちょっとそこにいろいろな人権擁護相談、あるいは登記の相談、ちょっとした相談に地域の人たちがよく行かれるところでもあります。

 ですから、私は、余りそう性急に、六百八十三カ所ある登記所の統廃合を進めるというのは、これはやはり慎重に進めるべきだ、余り事を急いで早急にやるべきではないのではないか、こういうふうに、これは意見として申し上げたいと思います。

 それから、せっかくオンライン申請をするということでありますので、オンラインの申請ができる指定庁、先ほど、泉委員の質問に対する答弁で、まず、とりあえず一カ所指定してというようなお話でありましたが、具体的に、いつ、どの程度オンライン指定庁を予定しているのか、また、すべての登記所をオンライン指定庁にするというのは大体いつごろを考えておられるのか、この点について答弁をお願いします。

房村政府参考人 先ほども申し上げましたが、十七年の三月までには施行されますので、そのときには少なくとも一庁は指定したい、こういうことで準備を進めております。

 その後は、それぞれの登記所の準備状況とか、あるいは予算の状況というようなもの、あるいはコンピューター化の進捗状況ということと関係いたしますので、今具体的にいつまでに何庁というところまで詰めているわけではございませんが、できるだけ早くオンライン化を実現したい。

 要するに、コンピューター化したところについてはできるだけ早く順次オンライン化をしていきたい、将来的にはすべての登記所がオンライン登記所になるということにしたいと思っておりますが、現在の段階でいつまでにとはっきり申し上げられるところまではいっておりません。できるだけ早くやりたい、こう思っております。

松野(信)委員 具体的な日程まではまだよくわからないということだろうと思いますが、そうすると、オンラインの指定がなされていない、いわゆる未指定庁ということであれば現行のやり方をずっと続けるということになろうかと思います。

 ただ、こういう理解でよろしいんでしょうか。オンライン指定庁になった場合は従前のまさに書面でやるというやり方はもう受け付けない、もうオンライン指定庁の場合は必ずオンラインのやり方でないと受け付けないんだ、こういうやり方なんでしょうか。

房村政府参考人 これは、オンライン指定庁になりますとオンライン申請が可能になるということでございまして、従来どおりの紙による申請ももちろん可能でございます。

松野(信)委員 これも泉委員の質問の中にもありましたけれども、オンラインの申請という前提には、やはり住基ネットあたりのカード、これが実際に使われていないと電子署名あるいは電子証明書の方にも発展していかない。ですから、オンライン申請が本当に根差して、根づいていくというためには住基カードが普及をしていなければだめだろうというふうに思います。

 しかし、私の方がいろいろ聞いているところでは、住基カードというものは、一つには今五百円か千円かぐらい費用がかかるということ、つくったとしてもそれほど今のところ余りメリットがないということなのか、現実に余り普及をしていない、人口の割合で見ても数%ぐらいの人しかこの住基カードというものは持っていないというようなことで、そういう現実からすると、どうも、せっかくオンライン指定庁というふうに、次々にできるかもしれませんが、必ずしもそうスピーディーに普及するものでもないのではないかなというふうにも思いますが、この点はいかがでしょうか。

房村政府参考人 御指摘のように、御本人の電子的な確認手段としては電子署名あるいは電子証明書ということになりますので、個人の場合にはやはり今の住基カードを使うことが多いだろうと思います。

 そういう意味で、これが普及する必要があるというのは御指摘のとおりだろうと思いますが、ただ、例えば印鑑登録を考えてみましても、もちろんあらかじめされている方も多いかと思いますが、重要な取引等で必要になるので印鑑登録をして印鑑証明書を求めるという方も随分いらっしゃるわけですので、登記で使用する必要に応じて、この住基カードを用いて電子証明書の交付を受けるというような方もこれから出てくるのではないか、こう思っておりますので、私どもとしては電子署名、電子証明書が広く使われて、オンラインによる登記申請もなされることを希望しているわけでございます。

松野(信)委員 このオンラインの申請のときに少し気になるという点は、いわゆる無資格者による登記の不法代理、この問題があろうかと思います。

 弁護士や司法書士さんであれば、まさにそれが仕事ですからできるわけですが、それ以外の資格のない人が代理人となって登記の申請業務を行うということも考えられないではない。そうすると、やはりそういうのは法律上は違法な行為ということになりますので、それはもちろん取り締まりは取り締まりとしてしなければならないと思いますが、登記の手続のところでもそういう無資格者の登記申請は排除するというか、何らかの阻止するようなこういう手続というのはあるんでしょうか。

房村政府参考人 御指摘のように、登記申請の代理を業として行うということは、現行法上、司法書士、土地家屋調査士及び弁護士に限られておりまして、それ以外の方が業としてこういう申請を行いますと刑事罰則をもって罰せられる、こういうことになります。ですから、登記所においても、この申請がこういう法律に違反したものであるということがわかれば、これは刑事告発等をして適正な処罰を求めるということは行うというつもりでおりますが、具体的に、そういう業法に違反する申請であっても、代理権そのものがないわけではありませんので、それを、罰則の適用を別といたしますと、申請行為を無効にするということは現行法上は難しいと思いますので、私どもとしては、そういう取り締まりを十分やっていただく、そのために登記所としてもわかっている情報を活用して協力するというようなことを考えております。

松野(信)委員 そうすると、無資格者によるいわゆる違法な代理申請でも、代理権がある以上は、それはそれで登記の申請は受け付ける、しかし、登記所から見て、この代理人は資格者ではないというのがわかれば、それなりの、例えば告発するなり通知するなり、それなりの対応をする、こういうふうに理解してよろしいんでしょうか。

房村政府参考人 御指摘のように、代理権がないということでの却下はできませんので、それはそれとして手続は進めざるを得ませんが、そういった司法書士法あるいは土地家屋調査士法、弁護士法等に違反する、刑事罰則に値する行為であるということがわかれば、それは告発をして適正な処罰を求めたい、こう思っています。

松野(信)委員 その点はわかりました。

 それから、従来のやり方ですと、いわゆる筆跡というものが残って、例えば、裁判などで問題になりますけれども、売買契約書に売り主の名前がちゃんと筆跡が残っている、あるいは司法書士さんに出している登記の委任状、この委任状の筆跡が本人のものかどうかというようなことで、実際、裁判ではそういうものが確認されて、検証の結果、本人のものだったとか、あるいは全く別の第三者が偽造していたんだというようなことがそういう書面で確認ができるわけです。

 ところが、これからこのオンラインのやり方ということになると、筆跡鑑定で本人のものか本人のものでないかというようなやり方はもうちょっととれなくなってくるんだろうなというふうに思います。そうすると、一般的に考えられる、司法書士さんなどによる代理人の申請の場合、登記義務者本人とそれから代理人双方とも、これは電子署名とか電子証明書、これを双方とも提供するというふうになるのか、それともまた別のやり方をとられるのか、この点はどうでしょうか。

房村政府参考人 御指摘のように、オンラインの場合には署名とかあるいは印影というものは用いられなくなりますので、やはり電子署名あるいは電子証明書ということによって、それぞれ本人であることの証明をしていただく。これは、登記権利者、義務者、申請代理人、そういった関与する者について皆同じでございます。

松野(信)委員 それから、司法書士さんあたりが資格を持って代理人としてやられる場合に、本人確認、あるいは本人が本当に売るんですか、買うんですか、あるいは抵当権を設定するんですかというような本人の意思確認、これは現実にはかなりきちんと司法書士さんたちはされていらっしゃるかと思いますが、この点、今後どういうふうになっていくのか。電子署名あたりの採用というようなことで、本人の意思をしっかり、こうこうこういうような手段でこうして確認しましたというようなものを何かきちんとした形で残すのか、あるいはそういう代理人に、一定期間、そういう確認した本人の意思、他人ではない本人だというようなものは一定期間ちゃんと保存しなさいというような義務づけまで考えておられるのか、この点はどうでしょう。

房村政府参考人 実際の登記実務としては、御指摘のように、司法書士の方々が内容面も含めて本人確認や意思確認を慎重にされた上で登記申請をしているということが大部分だろうと思っております。

 今回、そういう実績も踏まえまして、資格者代理人による本人確認という制度を設けたわけでございます。これについては、資格者の方から確認の情報を登記所の方に出していただくということでございますので、これはいわば、従来でいえば、附属書類として保存がされます。資格者の方が行った、そういう登記所に出ない情報そのものについては、これは、それぞれの方の事務処理のあり方で適切に処理をしていただくということになろうかと思います。こちらとして、特に今回の法律で、そういった情報についての保存とか、そういったものを決めてはおりません。

松野(信)委員 それから、具体的に典型的な売買のことを考えますと、売り主の方とすれば、しっかり売買代金を確保しなきゃならないし、売買代金が確保されるまでは移転登記には応じない、こうなります。買い主の側も全くそれは同様であって、お金を払う以上は、確実に所有権移転登記が自分のところに来る、そういう意味で同時履行というのが実務慣行として確立をしているわけです。それに合わせるように、権利証あるいは司法書士さんへの委任状、印鑑証明書、そういうものをお渡しするのと引きかえに代金をもらう、こういうふうになっているわけで、権利証が存在すれば、まさにそれが同時履行が担保されているわけです。

 しかし、今後もう権利証ではない、登記識別情報だというような、これでいくとするオンライン申請の場合、どういうふうにしてこの同時履行というものを担保していくのか、買い主の人はいつお金を払えば安心なのか、この点はどのようにお考えでしょうか。

房村政府参考人 実際の運用としてどうなるかという予測の面になるわけでございますが、仮にオンラインで申請をするという場合を考えますと、それこそ端末の前に一堂に会しまして、そこで必要な情報をお互いに交換して、現にオンライン申請をしてしまって、そこで同時に代金をやりとりするというのが最も確実、まさに同時履行ということになろうかと思います。

 ただ、そこまでいかない場合もあり得ますので、そういう場合には、従来の登記済み証のかわりに登記識別情報を渡してやるということになろうかと思いますが、これについても、先ほど申し上げたような、中身を見られたくないということを確保しようと思いますと、申請の時点で、御本人なり御本人の委任を受けた方がその入力をするというようなことをする必要があるかもしれません。

 ですから、従来の登記済み証とやや異なった配慮が必要とはなりますが、基本的には、登記申請に必要な情報をすべて渡した段階で代金と引きかえに交付するということは、実務的に今後もなされるのではないか、その最も確実なのがオンライン申請をしたときということにはなろうかと思います。

松野(信)委員 登記識別情報を使ってオンラインで売買するという場合、例えば、登記識別情報、売り主の方が持ってこられた登記識別情報、これが有効なものかどうなのかというのは、ふだん登記識別情報なんというものは大体権利者の人がしっかり握って放さない、だれにも見せないというのが一般的でしょうから、いきなり持ってこられて、この登記識別情報が本当に有効なものだというのを確認するというのは直前でないとわからないかもしれないな。そうすると、本来なら、例えば司法書士さんであれば、事前に有効性を確認して取引の現場に臨みたい、こう思っても、そういくかどうかちょっと心配な点もあるので、例えば、そういう事前の、登記識別情報が有効か無効か大丈夫か、この確認というのは実際できるものなんでしょうか。

房村政府参考人 これは、登記識別情報の確認はいつでもできますので、事前にその確認をしていただいて、それから取引の話を始めるということは十分可能でございます。

松野(信)委員 それから、こういうオンラインの申請のときには、当然、電子署名とか電子証明書とか、そういうようなものが出てくるわけですが、これも要するに、例えば売り主さん本人の電子署名かどうか、間違いないかどうか、途中で変更されていないかどうか、こういう電子署名の有効性の検証というのも、一般的には、売買、実際の取引の直前ということになるのかなと思いますが、こういう電子署名の有効性の検証というのは、これは実際、売買に立ち会う司法書士さんができるものなのか、司法書士さんがもしできないとするならば、その有効性はだれがどういうふうにして判断するのか、この点はどうでしょうか。

房村政府参考人 まず、実際に申請をしていただきますと、法務省で受け付けた段階で、その証明の有効無効はチェックをいたしますので、申請をすれば直ちに、もし無効であれば無効だというメッセージがすぐ出ますので、それは、そういう形での確認は可能でございます。

 ただ、そういう実際の申請をする前に司法書士の方のところで確認できるかということになりますと、これは例えば、登記所が出しております商業登記に基づく印鑑証明等ですとこれは可能なんですが、住基カードに基づきます個人認証の方は、現行法のもとでは可能とはなっておりません。

 ただ、総務省において、そういう専門資格者団体からの要望を受けて改正を検討されているということですので、将来的には可能になるのではないか、そういうことを私どもとしても希望しております。

松野(信)委員 電子署名についても、電子署名も何けたかの数字とか英語がいろいろ入ってきているわけですが、これも変えることは可能なわけですね。そうすると、実際に売買の取引決済をする、それからその後の登記申請の手続をする、その間にタイムラグが生じた場合に、それは、不心得者の、悪い人は、その間に電子署名を変えてしまうということだって、これは理屈上は可能なわけですね。ですから、取引決済のときには正しかった電子署名も、実際、登記申請のときには違っていて受け付けられない。そうすると、非常にふぐあいが出てくるのかな。

 これを防止するには、例えば、電子署名は、一週間なら一週間、やった以上もう変えられないというような方法でもするのか、何らかの手段をすることができるのか。この辺はどうでしょうか。

房村政府参考人 御指摘のように、電子署名を失効させるというようなことはそちらの制度の仕組みとして可能になっておりますので、取引をして、その署名に必要な情報も渡した後で変えてしまうというようなことも全く起こり得ないわけではない。ただ、それを防ぐために署名の変更を許さないようにするかと申し上げましても、これは登記制度と直接リンクしているわけではございませんので、なかなか難しい面があります。

 そういう意味では、一番確実なのは、先ほども申し上げましたが、オンライン申請で使うということであれば、現に、オンライン申請をしていただいて、その署名が失効しているような場合には、その段階で直ちにわかりますので、最小限そういうものが出ないということを確認した上で代金のやりとりをするという形にすれば、それは確保できます。

 ただ、そういう個人認証の署名そのものをすべての取引が終わった後で変えるというのは極めて希有な例ではないかと思いますが、そういうことを完全に防ごうと思えば、今申し上げたようなオンラインの時点での決済ということは可能な仕組みではないかと思います。

松野(信)委員 それから、実務的に考えますと、よくありますのは、住宅ローンで抵当権がついている物件を売買する、それで、新しく買う人は、別の銀行から融資を得て、売買代金を融資を得て購入する。そうしますと、まず売り主の方は抵当権の抹消登記手続をする、それから、売り主から買い主に、売買を登記原因とする所有権移転登記手続をする。そして、新しい買い主さんの方にはその融資先が抵当権を設定する。こういう一連の流れで現実にはよくなされて、例えば司法書士さんの事務所でしたり銀行でしたり、やって、いわゆるこの連件登記申請というのは日常的によく行われているわけですね。

 それが、今度のオンライン申請でスムーズにいくかどうか。例えば、抵当権の抹消で登記識別情報が出てくるのを待って、もう一遍また売買の移転登記で登記識別情報が出てくるのを待ってというような、そういう煩雑なことになりはしないかどうか。この点はどうでしょうか。

房村政府参考人 御指摘のように、一連の取引に関する登記申請について、連件申請ということで一括して処理をするという仕組みを現行法はとっておりますが、これは、オンライン化した場合にもその連件申請は可能とすることにしております。

 オンラインの段階で連件であるということを明示して申請をしていただければ、現行法の連件申請と同じような処理をいたします。登記識別情報についても、そういった処理が終わってから出すという形になりますので、その点は現行の取り扱いを維持したいと思っております。

松野(信)委員 ありがとうございます。

 それから次に、登記官による本人確認、これは、二十四条に規定があるところで、これは従前の取り扱いより少し変わっているように思います。

 もともとは、登記官というのは、消極的審査ということで、言うならば、形式的にいろいろ書類が整っておればそのまま登記受け付けをやっていたというわけであります。ところが、今度、二十四条になりますと、「申請人となるべき者以外の者が申請していると疑うに足りる相当な理由があると認めるときは、」「当該申請人の申請の権限の有無を調査しなければならない。」調査できるじゃなくて、「しなければならない。」というふうに登記官に義務づけをしているわけですね。

 そうすると、従来は、消極的審査ということで、形式的に整っていれば問題なしとなっていたものが、一々、本当に売るのか売らないのか、移転登記に応ずるのか、抵当権設定登記に応ずるのかどうか、そういう、怪しいと思ったときに、一々そういう実質的な資格の問題とか実体的な権利変動まで登記官は介入してくるのかという点がありますが、この点はどうですか。

房村政府参考人 御指摘のように、今回の改正法案の二十四条では、「申請人となるべき者以外の者が申請していると疑うに足りる相当な理由があると認めるときは、」「権限の有無を調査しなければならない。」としております。

 これは、ここに書いてありますように、要するに、申請人として表示されている人でない者が成り済まして申請をしているのではないか、そういう場合に、本人が本当に申請しているかどうかを確認するという、いわば本人確認でございます。さらに進んで、実体上売買をしたのかどうかというようなところまで実質的な審査を行うという趣旨ではございません。あくまで本人であるかどうかということの確認という限定が付されております。

 この点は、実は、従来こういうことは明文では規定されておりませんでした。現行法においては当事者出頭主義を採用しておりまして、しかも申請人が出頭しないことを却下事由としておりましたので、来た人と面接をしまして、この人が本人ではないということがわかると一応却下するという形にはなっておりましたので、現行法のもとにおいても、本人確認については登記官の審査権限が及ぶということは、解釈上は出てきたわけです。

 今回、当事者出頭主義を廃止いたしましたので、そういう、少なくとも本人確認の権限があるということを明確にする必要があったということと、やはり何といっても、成り済まし等を防ぐためには、単に権限があるというだけではなくて、そういう疑わしい場合にはこれを審査して、適正な登記を実現する義務もあるんだ、こういうことを明示したいということで、「権限の有無を調査しなければならない。」こういう規定にしたわけでございます。

松野(信)委員 今の御答弁であれば、従来から行われている、例えば司法書士さんあたりがされていたやり方で特に問題なく登記手続がなされていたわけでありますので、従来のやり方と新しく二十四条で規定されているやり方と、そんなに違うものではないというふうに理解をしていいように思いますが、その点でよろしいですか。

房村政府参考人 そういう意味では、従来の、現行法のもとでできなかったことが新たにできるというような関係ではないだろうと思います。

 ただ、ややもしますと、現行法のもとの扱いでは、例えば、警察等から通報があったにもかかわらず、書類が整っているということで漫然と登記をしてしまって、登記官に過失があるということで裁判で負けるというような事案もございましたので、やはりその登記官の人たちも、そういう疑わしい、例えば警察からの通知があるというような場合には、それをきちんと調査して、真実性の有無を確認した上で登記をすべきであるということをはっきりさせるという意味でも、明文の規定を置く必要がある、こう考えたわけです。

松野(信)委員 そうしますと、この二十四条のところで、「疑うに足りる相当な理由」というのは、今御答弁いただいた、例えば警察から事前に通告がなされているとかいうような、ある程度明々白々といいますか、極めて例外的な場合にこの条項を適用する、こういうふうな理解でよろしいですか。

房村政府参考人 疑うに足りる相当な理由ということですので、やはり相当の確度の高い場合だろうとは思いますが、もちろん警察からの通告もありますし、あるいは本人からの申し出ということもあるでしょうし、それから、他の事件で申請をしたものが偽造であった、それと同じ者が申請をしている、こういうような場合は当然疑うに足りる相当な理由があるのではないか。それは具体的な事例の集積を待つことになろうかと思いますが、やはり相当確度の高い場合だろうとは思っております。

松野(信)委員 実は、近時いろいろ問題になっております商工ローン、いわゆるノンバンクで、どうも余りたちのよくない金融業者は、貸し付けをするときに、あらかじめ登記の申請に必要な書類を取り上げている。印鑑証明書あたりを取り上げているというやり方をとっていて、それで、何年もたってからいきなりばんと仮登記あたりを申請して登記してしまう。場合によっては、ちゃんと払って、あるいは利息制限法で計算するともう過払いにもなっているのにもかかわらず、仮登記をばっとつけてしまうというような悪質な例も実はあるんですね。

 そういうような場合に、例えば、借りてまじめに払ってきたというような人から見れば、この二十四条あたりを活用して、あらかじめ、もうこういうふうな登記は受け付けるなというような形というのは可能なんでしょうか。

房村政府参考人 これは書類的にきちんと整っている、印鑑証明書もついているというようなことですと、申し出があっても、それは登記官としては、先ほども申し上げましたように、添付書類から、それは明らかに偽造であれば別ですが、その要件が満たされている場合には、これは登記官の義務として実行せざるを得ませんので、それはいささか難しいのではないかと思います。

松野(信)委員 それから、もう時間が余りありませんので、念のためにちょっと聞いておきたいと思いますが、二十二条の規定で登記識別情報の提供というのがあります。ただし、そこにただし書きがありまして、正当な理由がある場合は提供しないでよろしいということがあるのですが、具体的にはどういうようなケースだと正当な理由がありというふうに考えておられるんでしょうか。

房村政府参考人 これは、登記識別情報については、例えば他人に盗み見られたおそれがあるというようなときには、これは失効の申し出ができることになっておりますので、そういう形で失効させてしまった場合には当然提供することができないわけでございますし、保管をしていたけれども誤ってどこかに行ってしまって番号がわからなくなってしまった、こういう場合もこれはやむを得ない正当な理由があろうかということになりますが、そういったことが典型例ではないかと思っています。

松野(信)委員 この点については、旧法ではいわゆる保証書というやり方で、権利証をなくしちゃった場合は保証書ということでやる。しかし、登記済み証をなくしましたということは、別に何も立証しなくても、ただなくしたということで保証書の作成はできていたわけですね。

 そうすると、この新法では、例えば登記識別情報をなくしたというような場合、まさにこの正当な理由ということについて、何らかの証明資料というか疎明資料というか、そういうようなものは要求するんでしょうか。

房村政府参考人 提供することができない理由は申請書には書いていただくことになろうかと思いますが、それ以上にそれを証明するものといってもなかなか難しい。特になくしたような場合はどうしようもありませんので、そこまでは考えておりません。

松野(信)委員 時間も参りましたので終わりたいと思いますが、率直に申し上げると、この不動産登記法はまだまだいろいろと議論をしなきゃならないし、省令、政令等にゆだねられる部分も多いので、今後ともきちんとした検証が必要だということを指摘させていただいて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

柳本委員長 御苦労さま。

 次回は、来る十四日金曜日午前九時四十五分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時三十五分散会


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