衆議院

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第7号 平成16年11月12日(金曜日)

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平成十六年十一月十二日(金曜日)

    午前九時三十二分開議

 出席委員

   委員長 塩崎 恭久君

   理事 園田 博之君 理事 田村 憲久君

   理事 西田  猛君 理事 平沢 勝栄君

   理事 津川 祥吾君 理事 伴野  豊君

   理事 山内おさむ君 理事 漆原 良夫君

      井上 信治君    大前 繁雄君

      川上 義博君    左藤  章君

      柴山 昌彦君    谷  公一君

      早川 忠孝君    松島みどり君

      三原 朝彦君    水野 賢一君

      森山 眞弓君    保岡 興治君

      柳本 卓治君    吉野 正芳君

      加藤 公一君    鎌田さゆり君

      河村たかし君    小林千代美君

      佐々木秀典君    樽井 良和君

      辻   惠君    松野 信夫君

      松本 大輔君    江田 康幸君

      富田 茂之君

    …………………………………

   法務大臣         南野知惠子君

   法務副大臣        滝   実君

   法務大臣政務官      富田 茂之君

   政府参考人

   (司法制度改革推進本部事務局長)         山崎  潮君

   政府参考人

   (警察庁長官官房長)   安藤 隆春君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    岡田  薫君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          寺田 逸郎君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    大林  宏君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    横田 尤孝君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  三浦 正晴君

   法務委員会専門員     小菅 修一君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十二日

 辞任         補欠選任

  谷  公一君     川上 義博君

  松島みどり君     吉野 正芳君

同日

 辞任         補欠選任

  川上 義博君     谷  公一君

  吉野 正芳君     松島みどり君

    ―――――――――――――

十一月十二日

 裁判所法の一部を改正する法律案(内閣提出第七号)

 民法の一部を改正する法律案(内閣提出第一七号)(参議院送付)

 債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第一八号)(参議院送付)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 刑法等の一部を改正する法律案(内閣提出第八号)


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     ――――◇―――――

塩崎委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、刑法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として司法制度改革推進本部事務局長山崎潮君、警察庁長官官房長安藤隆春君、警察庁刑事局長岡田薫君、法務省大臣官房司法法制部長寺田逸郎君、法務省刑事局長大林宏君、法務省矯正局長横田尤孝君、法務省入国管理局長三浦正晴君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

塩崎委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

塩崎委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伴野豊君。

伴野委員 民主党の伴野豊でございます。

 南野大臣には二回目のチャレンジということでございまして、よろしくお願いいたします。

 もう私の質問が、追及が厳しいからというわけじゃないんですが、どうも私の質問時間と辻さんの時間中に休憩が入るようでございますけれども、そういうことではなくて、参議院の方へ呼ばれているということで、今回限りということでお願いしたいと思います。

 では、時間の許すところまで進めさせていただきたいと思います。

 今回議題となっておりますのは刑法等の一部を改正する法律案ということでございますが、国家というものから考えた場合に、この刑法というのは、私が言うまでもなく基本中の基本でございまして、これを語っていく上で、一度、大臣のお考え方、論理の組み立て方というものをちょっと確認させていただきたいということでしばらくおつき合いいただきたいんですが、まあ、頭の体操というふうに考えていただければいいかと思うんです。

 その中で、水曜日の日、十日ですね、小泉総理大臣が党首討論の中で、我が党の岡田代表の質問に対して、イラク特措法における非戦闘地域の定義を言ってくださいという質問に対して、やりとりがあった前後は省きますけれども、最終的に小泉総理は、法律上は自衛隊が活動しているところは非戦闘地域であると。言われた御本人も何か終わったときにやにやされていましたし、与党さんの方にも何かちょっと笑いが漏れていたような気がするんですが、この論理が成り立つとすると、刑法を考えていくときに恐ろしいことになってしまうということをちょっとやりとりをさせていただきたいなと。

 どういう例え話だといろいろわかっていただけるかなと思って、私も知恵を絞りました。例えば、こういうことが似ていないかな。厳密に言うと違う部分があると言われてしまうかもしれませんが、頭の体操で、論理の組み立てということで一緒にちょっと考えてください。

 どうも駐車違反をしていそうな人のところに、ああ、あなた、Aさんとしましょう、Aさん、駐車違反じゃないですかと言ったときに、Aさんがこう答えます。私は免許を取ってこの方二十年、駐車違反というものをしたことがありません、しかも私は公務員でございます、遵法精神でずっと活動しておりました、だから法律違反することはないわけであって、私がとめているところが非駐車違反区間なんですよ。ほおっということですよね。これに近いかなと……(発言する者あり)違うんですか。ゆっくり確かめてみたいけれども、ロジック的にはそうなんですよ。

 それについて、まず大臣、失礼だけれども、もう御存じだと思うけれども、私も前までイラクの特別委員会におりましたのでそらんじているぐらいですけれども、あえて、イラク特措法における非戦闘地域の定義を教えていただけませんか、まずそこから。

南野国務大臣 ありがとうございます。お答え申し上げます。

 法務省はイラク特措法を所管しておりませんのでお答えする立場にないと思いますが、その上で申し上げるならば、イラク特措法では、同法に基づく活動は、「現に戦闘行為」、この「戦闘行為」という案文の中に括弧が入っていて、その括弧の中も少し御説明した方がいいように思いますが、そらんじておられるんですけれども、読ませていただきます。「国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為を言う。」ということ「が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる」「地域において実施する」こととされております。これが、お尋ねのいわゆる非戦闘地域の要件であると思っております。

伴野委員 定義はそのとおりでございまして、ここでこけられちゃうと次に行けないんですけれども。失礼しました。

 イラク特別委員会なのでその話はここまでにしておきますが、先ほどの私が出した駐車違反のAさんの例は論理的に合っていますでしょうか。いかがでしょうか。これは感覚的にどうですか、そういうことを言ったAさん。

南野国務大臣 応用問題でございまして、今の委員の事例ということは駐車違反にはならないんじゃないでしょうかね。(伴野委員「えっ、ちょっと待ってください。ちょっと違うよ」と呼ぶ)駐車違反……(伴野委員「それは違うでしょう。それは駐車違反に、だめだめ、それは違うんですよ」と呼ぶ)

 先ほどもちょっと駐車違反のお話がいろいろございましたけれども、そこに、違うところにとめたということは駐車違反になるということでございます。

伴野委員 ちょっと私もびっくりしてしまって、ここで審議をとめなければいけなくなるかと思いましたけれども、やはり手順が違うんです。ロジックの手順が違うんですね。

 要するに、そのAさんがどういう発言とかどういう行為をしてきたかとか関係なく駐車違反の地域というのは決まるんですよ、いろいろな判断で。その次に、その人がそこへ入っているかどうか、そこへとめているかどうか、そこは駐車違反の定義で切符が切られるんだと思いますが、手順がそういうことなんですね。

 これは、数学ですと、私の時代は高一で習うんです、集合です。統計数学の初歩の初歩。PならばQであるという命題。メイダイというのは明治大学のことじゃないですよ、名古屋大学のことでもないです、命の題と書いた命題。PならばQというのが真であるとした場合でも、QならばPというのはなり得るかどうかというのは証明できないんですね。いろいろなパターンがあるんですよ。

 これは多分、私もよく高校一年生のときは間違いましたから、ちゃんと論理立てて数学的に考えればわかることなんですが、今の駐車違反のお話とそれからイラク特措法の定義のお話も御存じ、その上で、小泉総理大臣がなされた、自衛隊が活動しているところが、あるいは、ところはでもいいですよ、非戦闘地域、これは論理的に合っているんでしょうか。法解釈として合っているんでしょうか。いかがでしょう。

南野国務大臣 いろいろのお考えがあると思いますが、私は合っていると思っております。

伴野委員 だから、総理大臣の発言ですから合っていないとは言えないというところもわかりますけれども、大変に失礼な言い方をすれば、数学的には手順が違うんですね、先ほどの駐車違反の。

 まず、非戦闘地域であるかどうかという手続というか検討がある。先ほどのでいうならば、そこが駐車違反の領域なのかどうかというところの確からしさというのがあって、自衛隊がそこにいるとかいないとかというのは関係ないんですよ。非戦闘地域に行って活動することは、憲法上も法律上も、イラク特措法上は許される、そういう手順なんです。

 残念ながら、この小泉さんの発言は、高一の数学、集合論をきちっと理解している方であれば、多分、司法をきちっとやられている方であれば、手順が違うということにすぐ気がつくはずなんです。このことが成り立っちゃうと、さっきの駐車違反のAさんは、最初に大臣が言ったように、駐車違反にならないんです。

 例えば、こういうことが言えちゃうんですよ、今言ったのが成り立つとすれば。ある人が、先ほど言ったようにまたこれをBさんとしましょう。Bさんはこの間ずうっと、犯罪歴もなければ、それから何ら疑いをかけられるようなことはなかった。そして、その人が、例えばどこかへ支援活動あるいは何か事業活動をしなきゃいけない、僕は、そんな何か襲われたり犯罪に遭うのは御免だ、絶対犯罪が起こらない地域にしか行けないんですと言ったとしましょう。ですが、どうしてもその人を仕事に行かせなきゃいけない上司がいたとしましょう、Cさん。いやいや、私たちは犯罪が起こらない非犯罪地域しかあなたを行かせることができないから、だからあなたが行くところは非犯罪地域なんですよと行かされるBさんは、本当に安心して安全に行けるだろうか。

 これは行けないんですよね。もう答えも言っちゃいます。これは行けないんですよ、こんなことを言われたって。普通の人は行けないんですよ。

 今の犯罪というところを今回のテーマの一つである強姦ということに置きかえて考えていただくと、そういうところは絶対起こらない、あなたが行くところは、そういうところしか行かせられないんだから、あなたが行くことが、そこが、そういうことが起こらない、強姦が起こらないところだからあなたは安全、安心に行けるんです、あなたが行くところは犯罪が起こらないところですと言われたって、行けないんですよね。ロジック的にいけばですよ。今、頭の体操をしていただいています。

 残念ながら、この論法でいくと、小泉さんの発言でいくと、少なくとも、今行っている、あるいはこれから派遣されるだろうという自衛隊員あるいはその家族に対しては、僕はちょっと申しわけない発言だったんじゃないのかなと思いますが、大臣はここまでの論法をお聞きになって、いかがですか、やはり先ほどと一緒ですか。

南野国務大臣 委員は、その場所を非戦闘地域と認定したから非戦闘地域になるのではなく、非戦闘地域の実態を備えているからこそ非戦闘地域になるということをおっしゃったのだと。よろしいですね。

 そのことは当然のことと思いますし、総理も、自衛隊が活動するところが無条件に非戦闘地域になるといった意味のことを述べられたのではないと理解いたしております。

 総理は、さきの本会議で、サマワについて、バグダッドなど他の地域と比べれば比較的安定しているものの、先日もロケット弾の不発弾が宿営地に着弾しております、今後もこうした事案の可能性を否定することはできない、しかし、これまでの情報とあわせて総合的に判断すれば、今回の事案により直ちに自衛隊の活動するサマワ周辺が非戦闘地域の要件を満たさなくなったとは考えていないとおっしゃっておりますので、そのような趣旨のことをおっしゃったと思っております。

伴野委員 それだけ言いたかったけれども、この党首討論のときは時間もなくて前後をかなりはしょって言ってしまったのだろうと千歩譲って解釈しても、仮にそうだとしても、やはり一国の総理でございますので、こういう紛らわしい使い方はぜひ今後は勘弁していただきたいな、そんなふうに思うんですね。

 それは、我々も被害に、マスコミ被害という意味では、いろいろフレーズだけ切り取って取り上げられるというところもあるんですが、これは党首討論で、全国民が見ている中でここまで言い切っちゃうというのは、私は、ちょっとやはり無謀ですし、先ほどの駐車違反のお話のような方も出てきちゃうことを容認してしまうような感じもします。

 もっとあげつらって言う人がいるとすると、法的、憲法上的には行けないと言われるかもしれませんが、物理的にはふらふらふらっとファルージャへ自衛隊のある集団が行っちゃったときに、ああ、自衛隊がいるからファルージャも非戦闘地域だと言えるんですねというようなことがこの論理では言えてしまう可能性も出てきますので。

 だから、そういう不届き者が出てこないためにも、一国の総理の発言というのは非常に重いということで、ぜひ今度お会いになったらお伝えいただけないか、少なくとも手順が違うぞ、手順が違うぞ、どれだけ譲っても手順が違うよと。

 司法の方だったら、この方は多分そういういろいろな手順手順を踏んでいって、結果的にこういうことになるという論理構成をされて、やはり法体系というのは成り立っていると思うんですね。

 だから、それを、逆も真なりなんということを最初からやっちゃうと、さっき言った駐車違反の例のようなことになってしまう。自衛隊、あなたが行くところが絶対安全、そういう法律になっているからあなたが行くところは安全だと言われたって、いや、私はそういう無責任な言い方はしてはいけないんだろうなと思っております。

 大臣、参議院の方へ行かれるようでございます。切りがいいので、ここで一たん休憩にさせていただきます。

塩崎委員長 午前十時五十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前九時四十八分休憩

     ――――◇―――――

    午前十時五十分開議

塩崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。伴野豊君。

伴野委員 大臣、お戻りいただいたようでございますので、質問を続けさせていただきたいと思います。

 今回議題となっておりますのは、刑法等の一部を改正する法律案ということでございますので、これからはそれに近い質問から入らせていただきたいと思います。

 今回その改正の背景になっているお話も、先般、大臣、趣旨説明の中でもお話をいただきました。我が国の治安水準が余りよくない状態にあることや、それから国民のアンケート調査等々の結果を見ても、国民の皆様方も非常に治安の悪さを危惧していらっしゃる。あるいは、事象として起こっていることの中にも、非常に粗雑な、粗暴な事件がふえてきているというような御指摘の中で、お話があったかと思います。

 その中で、これは私の勉強不足でもあるんでしょうけれども、体感治安という言葉が出てまいりました。私、余り政治あるいは法律になじまないといいますか、仕事柄といいますか、日ごろ近づいていない方々にこの体感治安を聞きましたら、やはりよくわからないというお話でございました。ぜひちょっと、どう理解をしたらいいのか、この体感治安という言葉のもし定義があれば、あるいはここではこういう意味で使ったということがあれば、お教えいただければと思います。

南野国務大臣 お答えいたします。

 体で感じるということだと思いますが、例えば、内閣府の治安に対する世論調査によれば、治安が悪くなったと思うとする人の割合が約八七%という結果が出ております。また、自分や身近な人が犯罪に遭うかもしれないと不安になることが多くなったとする人が約八〇%という結果が出されております。

 このような数字に見られますように、我が国の治安情勢が以前よりも悪くなっているのではないか、自分自身もそのような犯罪の被害に遭うのではないかと国民一般に見られる感覚、それを体感治安と理解いたしております。

伴野委員 今、アンケート調査の結果やあるいはさまざまな調査の結果に基づいて取り上げたものだというお話がございましたが、これは一つの参考までにお聞きいただければと思うんですが、私も、以前おりました会社、あるいは大学時代、統計数学といいますか、標本抽出の勉強をした時期がありまして、アンケート調査等々も専門にやった時期がありました。

 それで、陥りやすいことは、やはり数字を読むということが重要なんですが、数字に頼り過ぎちゃう傾向があるということがありまして、こういうアンケート調査やあるいは統計調査をやっていただくことの注意していただく点としては、一度やったアンケート調査が、それは当然、標本抽出をきちっとされて、専門家が見てもきちっとした統計あるいはアンケート調査であるとしたとしても、やはりいま一度、再現性が不十分ではないか、あるいはその数字に対して余り読み過ぎていないかどうかというところをぜひとも注意して、今後もこの体感治安の情報のとり方には注意していただければ、そんなことを参考までに申し上げておきます。

 そういう国民の体感治安も余りいい方には行っていないという中で、さらには、今回の刑法、私も、限られた時間の中で、浅学非才でありながらもちょっと勉強させていただきました。そして、いろいろ感じさせていただいたことをいろいろ質問もさせていただければと思うんです。

 治安回復をしていく中で、この刑法等の一部を改正する法律案というのは、一つの処方せんといいますか、薬であるとは思うんですが、そのほかにどんな薬あるいはどんな手法を治安回復について大臣はお考えになっていらっしゃるか、お聞かせいただければと思います。

南野国務大臣 今回の改正におきましては、治安回復のための基盤整備の重要な一環をなすものである、先生御指摘のとおりでございます。単に罰則を強化するだけで治安回復を図るのには十分であるとは考えておりません。

 政府といたしましては、昨年十二月、犯罪対策閣僚会議におきまして、総合的な犯罪対策として、犯罪に強い社会の実現のための行動計画、これを策定いたしまして、現在、これを推進しているところであります。

 どういうことかと申しますと、今後ともこの行動計画を踏まえていくわけでございますが、各種法令等の整備、関係する組織の要員の充実、刑務所の過剰収容の解消と矯正処遇の強化、不法滞在の方々に、まあ外国人という言葉を使わせていただくならばそういう方の半減をするための出入国管理体制の充実強化、こういったものを中心的に、総合的な犯罪対策、それを取り込みながら、我が国の治安の回復を図っていきたいと思っております。

 これについても、施策の具体例は、例えばとおっしゃられると思いましたので、各種法令等の整備のことをさきに申し上げましたが、これは、人身取引等に対する罰則整備や少年の保護に係る調査手続等の整備について立案作業をしている最中でございますということもお答え申し上げたいと思います。

伴野委員 今、大臣からも、犯罪に強い社会の実現のための行動計画に従って、今後とも対策を練っていくというお話がございました。

 三つの視点と五つの重要課題というんでしょうか、これを今後五年間でやっていかれるというお話。私も、これを読ませていただきまして、細部はともかくとして、理念としてはこういう方向性なのかなというところもありますし、ちょっとこのあたりはというようなところもあるんですが、全体としてはふむふむと読ませていただきました。

 これは通告していないんですが、あればでいいんですけれども、今の大臣のお言葉も伺いました、それからこれも読ませていただきました、次に思うのは、何かその具体的な数字、目標数値、あるいは、これをやるためにこれこれの予算が要るというようなことはじっくりやっていらっしゃるのかな。これからの後の質問にもちょっとかかわるので、イエスノーぐらいで結構です。具体的な五年間のプランニングといいますか、これより詳細な計画というのはあるんでしょうか。あるなしで結構です。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま大臣の御答弁の中に出てまいりました、特に外国人の関係を入管で所掌しておるわけでございますけれども、いわゆる不法在留外国人、およそ二十五万人今いるというふうに推測されておりますが、これが犯罪の温床の一つになっておるという状況も認められますので、今後五年間でこの不法滞在者を半減するという施策を今行っているところでございます。そのための必要な人員、予算等についてもお願いしているところでございます。

伴野委員 これは、先ほど社会インフラというお話も出ました。しかしながら、いわゆる国土交通省が扱うような、港とか道路とか空港の整備の五カ年計画とか十カ年計画とは違うんだろうと思うんですね。犯罪がふえていく前提でいろいろなことを計算するというと、これもまたつっつかれる話にもなりかねない。じゃ、今度は減少されると言っていて、行刑施設が満杯になったらどうするか。

 だから、単年度でじっくり、考えていかなければいいんですが、ただ、ここは気をつけていただきたいんですが、五年でやるといったときに、じゃ、五年のプランニングがなくていいという理由にはならないんですね。

 先ほどちょっと雑談の中で、委員長さんから、伴野君は理数科系の人間ですかというお話があったんですが、理数科系の人間は、今度は逆にこだわっちゃって、半減させるというと五〇%の根拠は何だとかといって逆にやり出しちゃうと、これはできないんですよ。こちらはどちらかというと文科系の方の方が、えいやで、多少理屈がないぐらいの話でもいいんですね、あるときは。目標数値ですから、それに向かって頑張ろうというのはあっていいと思うんですよ。

 だから、国土交通省が扱う社会資本整備の五カ年計画とか十カ年計画、港をつくる、道路をつくる、交通量を円滑に、渋滞をなくしましょうという話とはちょっと違いますので、なかなか難しいとは思うんですけれども、五カ年でやっていくというならば、五カ年で大体どうしていくんだという、できる限り数値目標をそこには置いて、それで、予算としてはどれぐらい要るんだ、これだけの社会を、犯罪に強い社会の実現をこうしてこの予算で目指していくんだからどうだという議論をぜひできる準備をしておいていただければありがたいと思います。

 もしやっていらっしゃるんでしたら、多少その大まかな数字、具体的なプランニングはまたお教えいただければなと。きょうはこれ以上この件について突っ込むつもりはありません。御提案、御参考までにお聞きいただければと思うんです。

 それで、先ほど大臣のお話の中にも外国人犯罪のお話が出ました。これはマスコミの報道にもよるんでしょうけれども、やはりちょっと日本人の文化にはなじまない犯罪がふえてきているな。こういうのを農耕民族と狩猟民族というのがいいのかどうかわかりませんが、日本人だったらこんな粗暴、荒いやり方をするのかな、例えば、これだけの金額を奪うのに、こんな殺し方をして、残虐なやり方をするのかなというのが見られる。ですから、やはりこれは水際の対策というのは非常に重要なんですね。

 ただ、だからといって、ぎゅっと絞ってしまうというか、必要のないところまでがんじがらめにするのも、これもまた人の移動とか、鎖国をするわけにはいかないわけでございまして、だから、この辺はやはり過去の犯歴をよくお調べいただいて、多少傾向を見ながらやっていただくべきじゃないのかなと思うんですが、このあたり、外国人犯罪の状況とか内訳にかんがみて、分析をやっていらっしゃるならその分析をどうされているのかお話しいただければと。よろしくお願いいたします。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 警察庁の統計数字をお借りして御説明させていただきたいと思います。

 警察庁におきまして、来日外国人犯罪の検挙状況、これは平成十六年の上半期のものでありますが、これを出されておりまして、これによりますと、平成十六年一月から六月までの間における来日外国人の犯罪、これは刑法犯及び特別法犯合わせたものでございますが、この検挙件数は二万四千四百三十七件となっております。また、検挙人員は一万五百四十三人でございまして、年間の検挙件数、検挙人員が過去最高を記録いたしました前年、平成十五年の同期に比べましても、件数で五千八百四十六件、三一・四%の増加、検挙人員でも千四百五十七人、一六・〇%の増加という数字になってございます。また、検挙人員一万五百四十三人中、不法滞在者が五千九百十一人で五六・一%を占めるということになってございます。

 さらに、罪種別でございますが、窃盗犯の中でも、自動車盗ですとか自動販売機ねらいの件数がいずれも前年同期の二倍となっておりまして、侵入盗も増加しておるというふうにされております。

 また、特別法犯の中では、入管法違反、特に不法残留、不法在留罪が増加しているという状況になっております。

 また、刑法犯の検挙人員の内訳につきまして、平成十年の統計と平成十五年の統計、五年後のものでございますが、これを比較いたしますと、就学及び留学の在留資格で入国された方の検挙数が五年前に比べて三倍以上に増加しておるという状況にありまして、これが一つの特徴かと思われます。

 また、十六年の上半期の来日外国人犯罪の国籍別の検挙状況でございますが、中国人が検挙件数で八千六百七十三名、人員で四千六百二十名と、依然として高い比率を占めているという状況がございます。

伴野委員 たまたま今留学生さんの話が出ましたので、これが例えば、留学生さんの犯罪の割合が高い、この言葉だけ出ちゃいますと、本当にまじめにやる留学生さんまで厳し過ぎるような審査を受けるというと、これもまたいかがなものかな。一方で、そういうことがわかっていて、どう考えてもこれは本当に勉強に来ているのかというようなところは、やはりこれはきっちりやっていただかなきゃいけない。

 だから、めり張りがある対応をぜひしていただきたい。そのためには、やはり過去の犯罪歴等々いろいろ調べていただいて、それなりの傾向が出たとするならば、それをぜひ入管審査等に生かしていただければなと思うんですが、そういった意味で、今後のセカンダリー審査のありようとの関連というのはいかがでしょうか。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 委員の御指摘のとおりでございまして、本当に勉学の意欲に燃えている方につきましては日本に来て勉強していただきたいというふうに思っておりますが、中にはちょっと違った目的で来る方もおられますので、そこら辺の入国の審査を、一方では厳格にしますとともに、それ以外のいろいろな来日される方につきましては、なるべくスムーズな形で入国をしていただけるような手だてが必要かというふうに思っております。

 委員御指摘のセカンダリー審査というのは、まさにそういう観点から考えられたものでございまして、入国審査の際に、若干問題ありと思われる入国者につきましては別室におきまして詳細な審査をする、それ以外の方については時間をなるべく少なくするような形でスムーズに入国していただく、こういった施策を講じておるところでございます。

伴野委員 ぜひ、画一から個々対応といいますか、きめ細かな、しかもめり張りをつけた対応を期待していきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

 では、治安回復のお話はこれぐらいにさせていただきまして、今回の実体法の改正の方へ入らせていただきたいと思います。

 明治以来なかなか見直しができなかった、どういう見直しをするかという中身は別として、見直しを今回やったという点は私は評価したいな、そんなふうに思っているわけでございますが、では、その見直しがどうであるかということを少し議論させていただければ、あるいはその原因に関連して、今回の実体法の改正に即しているのかどうか、ちょっとお話をさせていただければと思います。

 まず、強姦は魂の殺人だという、先般、参考人の先生方も言っていらっしゃいましたし、私も、ある意味殺人よりも卑劣な行為なんじゃないかなと思います。

 先般、与党の女性議員も訴えていらっしゃいましたが、確かに、身内だからというわけじゃないんですが、自分の娘があるいは自分の周りの女性がということを考えただけでもぞっとしますし、そういった中で、残念ながら、今回の改正のきっかけになったスーフリ問題、スーフリ事件。数字をいろいろ拾っていくと、残念ながら性犯罪がふえていると言わざるを得ないこの状況。しかも、それは凶悪化している。

 この原因は一体どこにあるのか。やはり原因を究明していかないと、なかなか、先ほど申し上げたように、いろいろな対症療法的なことがあるんだと思いますし、対処法だけではいけない、熱が出たから解熱剤だけをやっていればいいんじゃなくて、そもそも体質改善に相当する全体のお話もしなきゃいけない。

 そういった中で、この性犯罪の増加、凶悪化の原因はどこにある、あるいはどうお考えになっているのか、大臣のお考えをお聞きしたいと思います。

南野国務大臣 本当に先生御指摘のとおり、近年の性犯罪、その認知件数も増加しております。十年前と比較しますと、強姦が約一・五倍、強制わいせつが約二・八倍の認知件数となっている。また、凶悪化と言えるかどうかはともかく、凶悪な性犯罪も引き続き起きている。凶悪化しているかどうかということはともかくとして、そのような事実があるということでございます。

 性犯罪を含めまして、犯罪の動向にはさまざまな要因、また複雑に絡み合っておりますので、これを一概に言うことは困難であろうと思いますけれども、性犯罪の中で、特に小学生や中学生を含む少年が被害に遭う事件の増加が著しいということからいたしますと、性に対する意識の変化や、また性に関する情報のはんらんなどによって少年が性犯罪の被害に遭う機会がふえていることも一つの要因として挙げられるのではないかな、そのように思います。

 ちなみに、いわゆる出会い系サイトが性犯罪のきっかけとなるという場合もふえておるのではないかな、そのようなことを考えております。

伴野委員 今大臣がおっしゃられたこともごもっともだと思いますし、さきのスーフリの事件を考えますと、行われた事柄と同時に、一般的には高学歴で、しかもそれがブランドであると思われる教育を受けている人間がああいう卑劣なことを、しかも集団で、組織的に、継続的にやっているというので今回の厳罰が下されたんだと思うんですね。

 私自身も、まだ小学校三年生なんですけれども、一人の娘を持つ身として、日々本当に教育、一人でも大変です。だけれども、そこへ立ち返らないと、この根本原因は解決できないんじゃないか。女性を暴力で行為たらしめることがどれだけ卑劣かという、この倫理観を植えつけないと、これはどれだけ重罰化しても、これがあるから、殺人罪に問われるあるいは死刑になるからといって思いとどまる人がいればまだいいぐらいの話で、多分、やる人間は、よほど計画犯じゃない限り、衝動的で理性を失ってやっているんだと思うんですが、ぜひそこへ立ち返らないといけないんじゃないのかなと思っております。

 そうした中で、男女平等参画社会という一方で、大人の社会でも見直していかなければいけないことは多々ある。そして、今回の見直しの背景なんかをいろいろ読ませていただいたり、聞かせていただきますと、先ほど言った、やはりどこかに刑法を見直したいという長年の空気があって、そこに今回のスーフリ事件等々、多少、国民的な要求と言っていいのか、この辺はちょっと言葉を選ばなければいけませんが、強姦罪というものが非常に着目されて、クローズアップされて、与党の先生方、女性議員、あるいは我が党の女性議員なんかもそこにやはり目が行って、いろいろ調べていくと、どうも強盗より強姦の方が軽んじられていないか、これは人の軽んじと同時に女性を軽んじているんじゃないかというところの議論もあって、今回、こういう見直しの空気が出てきたんだと思うんです。

 先般、与党の松島みどり議員が熱弁を振るっていらっしゃいました。私もその心情はよくわかりますし、質問をされた内容もじっくり聞かせていただきました。

 今回、集団強姦というのを創設されたりあるいは強姦罪の下限を上げるというようなことが、国民に対するアピール性を含んでいるとすれば、残念ながら、与党の女性議員ですら、そのアピールに対して、そのとおりだというところに落ちついていないようなやりとりに聞こえたんですね。

 また、たしかそのときは政府参考人の方だったと思いますけれども、説明を後から読み返しても、私の頭が悪いのかもしれませんが、そういう説明を受けても、まだちょっと女性を軽んじていないか、あるいは女性を軽んずるなというアピールに対してこたえているメッセージにはどうも読めないあるいは聞こえなかったんですが、このあたり、いま一度、強姦罪と強盗罪を比較して、そうじゃないんだとおっしゃるんでしたら、ぜひもう少しわかりやすく御説明いただけないかな。

大林政府参考人 今回の改正では、強姦罪の保護法益の重大性に着目しまして、従来二年以上十五年以下の懲役とされていました強姦罪の法定刑を三年以上二十年以下の懲役に引き上げるということ、あるいは、無期または三年以上十五年以下の懲役とされていました強姦致死傷罪の法定刑を五年以上二十年以下の懲役に引き上げる。また、集団により行われる強姦につきましては、その悪質性等にかんがみて、一般の強姦より重い処罰の対象にすべきであるということで、集団強姦罪については四年以上二十年以下の懲役に、または、集団強姦致死傷罪につきましては無期または六年以上二十年以下の懲役に処することができる規定を設けました。また、強姦を複数回犯した者につきましては、有期懲役の場合に二十年までしか処することができなかったものを、今回の改正により懲役三十年にまで処することができるようになります。

 このように、強姦に対する被害法益の重大性に着目してその罰則を強化しておりまして、私どもとして、強姦犯罪を軽んずるという気持ちは全くございません。

 他方、この中で最も重い集団強姦致死傷罪に当たる行為につきましては、集団で行うものですから、いろいろな役割分担がある。その中では、比較的軽微な者、具体的に言いますと、特段の前科もない、それから主導的な者に誘われて現場に行った、実際、被害者に対して姦淫行為までは自分は及んでいないというような人もおります。それで、被害者に対しては最大慰謝の措置を講じて示談が成立している、被害者も、その人については処罰は軽くしてくれというふうに言っているような、特殊な事情がある場合がございます。この場合に、執行猶予にするような道を講じておくことが、被害者感情の尊重という面からも、あるいは行為者の社会復帰という面からも相当と思われます。

 そこで、今回の改正では、このような者について執行猶予ができる、例外的ではありますけれども、そのような者については酌量減軽により執行猶予を付することができるというふうにしますと、二分の一にして三年が限界なものですから、結局、法定刑の下限を六年とせざるを得ない。その関係から、強姦致死傷罪を五年、それよりちょっと軽いといいますか、それから致死傷の結果を伴わない集団強姦罪が四年、一般の強姦罪は三年というふうな形になっているものでございます。

 このように、強姦犯罪だけを見ますと、それぞれ刑罰を重くしつつ、その犯行形態の悪質さ等を勘案して刑罰の均衡を図るようにしたわけでございますけれども、御指摘のとおり、強盗罪と比較しますと、強姦罪の刑の下限とはなお差がございます。

 強姦罪の下限のさらなる引き上げが困難であるならば、むしろ強盗罪の下限の方を五年から三年に引き下げて同一にすべきではないかという御意見もございます。

 しかしながら、御案内のとおり、悪質な強盗事件が頻発している昨今におきまして、強盗罪の刑を下げることは、強盗犯罪の違法性、重大性を軽く評価することになったとの誤ったメッセージを与えかねないという、また強い御批判があります。

 こういうことで、非常に難しい問題がございますが、今後、私どもとしては、法制審議会の附帯決議で、強盗罪などの罰則のあり方をさらに検討すべきとされているところでございまして、これを踏まえて適切に対処していきたい、このように考えております。

伴野委員 実際に扱っていらっしゃる、あるいは実際に扱った経験のあるプロの方が説明されるとそういうお話なんだろうと思うんですね。私もいろいろさわってみました。やはりこれはパズルのように難しいですね。確かに、ここが出っ張ればあそこが引くというような、それはおっしゃるとおりです。

 ただ、今回、メッセージとして出していただくなら、やはりわかりやすいというのが一つあるんじゃないかなと思うんですね。御説明されればそのとおりなんです。審議会の中でも、今おっしゃったようなことも含めて今後全体的にも考えていくというお話がございました。

 だから、例えば医学でいえば、これは本当に対症療法的なところから始まっていったような気がするんですね。ここの部分をさわったから、だんだんだんだん、ここもさわらなきゃとやっていった節があるのかなと。これはまた数学を出して申しわけないんですが、数学的に言えば、これは帰納法的なやり方ですね、実態を押さえていって汎用性を見るという。

 やはりその逆もぜひ、やられたんだと思いますよ、やられた結果だと思いますが、各論から広げていって総論、総論から下げていって各論というのは、これは私はぜひぜひ繰り返しやっていかなきゃいけないと思うんですね。それをぜひとも国民にわかりやすい議論の中で今後はやっていっていただければなと思うんです。

 正直言いまして、今の御説明を聞きましても、私の理解力も足りないのかもしれませんが、まだメッセージとしてはちょっと弱いような気がしてなりません。これは感想でございますので、ここでやめておきたいと思います。

 ただ、今後、やはり司法制度改革の中で、全然法律に今までかかわっていなかった方が急にこういった刑法の数字を見ていろいろ御判断されていくと思うんですね。だから、よりわかりやすくシンプルに、シンプルにできないと言われるかもしれませんが、よりそういう現状に合った改正のあり方というのも考えていかなければいけないんじゃないかと思いますが、そのあたりはいかがでしょうか。

大林政府参考人 今委員御指摘のとおりだと私ども考えています。なかなか刑法、いろいろな罪がたくさんございまして、なかなかその間のバランスというものが、常に刑の均衡というぐあいに言われるんですが、やはり刑というものは国民に理解されてこそ意味があるものでございますので、御指摘も踏まえて、なるべくそういうわかりやすいものをつくるように努力してまいりたいと思います。

伴野委員 ぜひ、そうあっていただければと思いますが、時間が押してきていますので、単刀直入に以後は質問していきたいと思います。

 今回、性犯罪について男女の差を設けない構成要件が考えられていないと思うわけでございますが、このあたりはどう理解したらよろしいんでしょうか。

大林政府参考人 お答えいたします。

 我が国の強姦罪の対象が女性に限定されていますのは、男女の生物的な差異等に基づき女性を保護しようという考えによるものであり、合理性があるものと考えております。

 また、男性に対する性犯罪につきましては、強制わいせつ罪に当たり得るところですが、悪質な場合もあることから、今回、強制わいせつ罪の法定刑を引き上げることとしており、事案に応じた適正な科刑が可能になると思われます。

 委員御指摘のとおり、外国では男女同じ性犯罪の対象としているところもあると承知しておりますけれども、それはそれぞれの国の実情等によるものと考えられ、その一方で、その法定刑は我が国の現在の強姦罪と比較しても必ずしも重くないものと承知しておりまして、そのようなあり方については慎重な検討を要すると思われます。

 申しわけないんですが、さっきの私の答弁の中で、強姦致死傷罪について無期刑のあることをちょっと落としましたので、訂正させていただきます。

伴野委員 このあたりは文化の違いというのもあるんじゃないかなと思いますので、ただ、国際化していく日本という中でそういった見方というのは無視できない流れもあるのかなと思いますので、常にそこら辺はウオッチしながら、ぜひ考えていただければと思います。

 時間もございませんので、次に行かせていただきたいと思いますが、今回の刑法等の一部を改正する法律案の中で、全体的にやはり少し罰が重い方向へシフトしているんだと思うんですね、強盗致傷罪のように下限が下げられた例もありますけれども。

 そうした中で、これは素人考えで、今いっぱいになっている収容所がもっと必要になってくるんじゃないか。今度、十五日月曜日に我が党の代表の岡田が大阪の行刑施設を拝見、視察させていただくことになっておりますが、多分同じ感想で帰ってくるんじゃないかと思います。やはりこれは、社会インフラとしてやるものはやる。

 それで、先ほどは犯罪に強い社会の実現をしていくための五カ年計画のお話もさせていただきましたが、このあたり、再入率というんですか、これが五〇%というのは、コップの水は半分になるところに、まだ水が半分あるかという言い方と、もう半分しかないという見方がありますので、これも数字のマジックにとらわれちゃいけないんだと思うんですが、そういった今回の改正が収容増につながってしまうというふうに解釈していらっしゃるのか、そういうことも含めて、今後の収容計画あるいは行刑施設のあり方について、お考えを聞かせていただきたいと思います。

横田政府参考人 お答えいたします。

 今回の法改正が収容増に結びつくかどうかということでございますけれども、御承知のように、犯罪といいますのはさまざまな要因がありまして、絡み合ってくるもので、一概にこれによって収容増になるかどうかということについては、なかなか難しいというふうに考えております。

 ただ、いずれにいたしましても、私どもといたしましては、収容動向に合わせまして適切に対応してまいるということでございます。

伴野委員 先ほども、これは国土交通省が扱っている社会資本整備の五カ年計画とは違うというお話もさせていただきました。確かに、増加することを前提にしたり、あるいは犯罪がふえていく社会を前提にする計画というのはなかなか難しいんだと思いますが、ただ、実情に即していかなければいけないという実態もございますので、よくそのあたりもかんがみて、きちっとした計画を立てていっていただければと思っております。

 そして、できることなら、やはり再入率は下げるにこしたことはないんだろうと思うんですね。ですから、これは、行刑施設だけのお話、法務省さんだけのお話ではないかと思いますが、社会全体的にはやはり再入率を下げる大きな目標を持っていかなければいけないんだと思います。

 ここからは、少し今回の法律について感想的な質問、私の個人的な意見を述べさせていただきながら、大臣がどう思っていらっしゃるか。

 私は、罪というものは、やはり罪を償わない限りは消えないんだと思うんですね。それはいろいろな謝罪の仕方、あるいは表現の仕方、いろいろそれは実情によってあると思うんですが、被害をこうむった人が一番つらいことの一つには、相手が罪の意識がないこと、池田小学校の事件を見れば、まさにそれだと思うんですね。何でこんな理不尽なことによって我が娘、息子が命を奪われなければいけない、しかも罪を肯定するような発言も見られたやに思います。

 これはちょっと手続のところに、いわゆる時効の方へ行くんですけれども、私の浅い勉強の中でも、アメリカとイギリスは殺人罪などでは時効がないというようなことも伺っております。

 そういうようなことで、そもそも、捜査のあり方とか、立件というんですか、いろいろやり方が違うというお話もあったんですが、少なくとも、証拠がなくなるからとか、被害者の気持ちがだんだん失っていくからということで時効があるとするんだったら、これは間違いだと思います。先般あった教員の殺人だったですかね、女性教員さんの殺人。時効になったからといって、何か自分の建物の下に埋めていた人の事件が出てきたと思いますけれども、あれなんかを見ていると、やはり、被害者もですし、あれを見た国民の皆さん方は、こんなの許せるかという感情になると思うんですね。

 だから、ケース・バイ・ケースだと思いますが、こういうケースは時効にしないというのがあってもいいような気がするんですけれども、そのあたり、大臣、いかがでしょうか。

南野国務大臣 本当に先生の気持ちはわかるようでございます。私も同感な部分もあると思います。殺人罪の被害者の遺族の心、心情、それを考えてみますと、処罰感情の希薄化を理由とする公訴時効制度に対する疑問ももっともな面がございます。

 でも、公訴時効制度は、時の経過により証拠が散逸してしまったり、または訴追が困難になってくるという事情に対する考慮ということもしなければならないと思います。

 犯罪を裁判の場でいつまでも処罰すべきとするかということにつきましても、社会全体の中での制度として見た場合には、なおさまざまな御意見があるものと承知いたしております。

 時効制度の存在自体を見直すことについては、種々の観点から慎重に検討すべきものと思っております。

伴野委員 最後に、今回、この刑法等の一部を改正する法律案で、私もいろいろ勉強させていただいていた中で最後に行き着いたのは、やはり加害者も被害者も出ない社会が一番いいにこしたことはない。だけれども、現実問題、こういう実態である。やはり次に考えてあげなきゃいけないのは、勉強すれば勉強するほど、被害者の方のことは考えないとと思っていたところ、きのうたまたまニュースでそんなようなことも扱っていましたし、今国会でも被害者支援法が議論されているところでございます。

 その次と言うと順番的に失礼なのかもしれませんが、更生施設なり行刑施設なり、最終的には、やはりこのバランスだと思うんですね。ぜひ、バランスをとっていただきながら、治安のよい国づくりに邁進していただければと期待して、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

塩崎委員長 次に、辻惠君。

辻委員 民主党・無所属クラブの辻惠でございます。

 最初に、委員長、どうもこれは定足数を欠いているように思いますが、民主党は七名そろっているんですが、自民党がおられない。このような状況の中で審議を進めていいものでありましょうか。いかがでしょう。

塩崎委員長 定足数を、直ちに集めますので。

辻委員 では、そのことを伺った上で、質疑に入りたいと思います。

 まず、今回の刑法の一部を改正する法律案、提案理由の説明を見ますと、結局のところ、最近の犯罪情勢と国民の規範意識の動向を踏まえて、事案の実態及び軽重に即した適正な対処が可能になるように法整備を行うんだということが書かれております。

 ということは、最近の犯罪情勢にかんがみて政策的な必要性があるんだということ、そして国民の規範意識の動向を踏まえて政策的な目的を実現するんだということが言われておりますから、その前提となる最近の犯罪情勢及び国民の規範意識の動向ということについて、まず、本当にそうなのか。

 現時点でこの立法を、しかも法制審に諮問されたのがことしの二月で、答申があったのが九月、実際、この重大犯罪の部会が開かれたのは、実質審議は十二時間、しかも非公開の審議しか行われていない。ある意味で非常に拙速的だと私は思いますけれども、そういう拙速に拙速を重ねてなお急がなければならない、今立法化しなければいけない立法事実は本当にあるのかということについて、冒頭でまず伺っていきたいというふうに思います。

 まず、凶悪犯罪その他の重大犯罪の増加傾向が続いているという点でありますが、法務参考資料として配付されている、これは十七ページでしょうか、殺人等の認知件数の推移というのがありますね。これは一九九四年と二〇〇三年を比較したときに、殺人は、九四年を一〇〇というふうにすれば、二〇〇三年は一一三・五であるというふうになっております。強盗は、一〇〇として二八五・五だと。確かにこれは数値がふえている。しかし、その強盗というのは、いわば窃盗と境目のあいまいな、そういういわば盗犯という側面を持つわけですから、窃盗に組み入れてもいいようなものが強盗になっている場合もあるかもしれない。

 ですから、立法事実として挙げておられる凶悪犯罪というふうに言った場合には、強盗殺人とか強盗傷人というのが本当に上がっているのかどうなのかということがやはりより問題だと思いますが、この点、本当に数値が上がっているんですか。お答えください。

大林政府参考人 今、強盗傷人についての数字をお尋ねになったんですが、ちょっと手元にないものですから、また調べたいと思います。

辻委員 強盗殺人はいかがですか。

大林政府参考人 強盗殺人についても、ちょっと調べさせていただきたいと思います。

辻委員 これはちょっと質問通告のときにその点を申し上げなかったのは私の方も落ち度があるから、後で伺えればいいと思いますけれども、私の方の認識というか調査によれば、横ばいである。

 ですから、強盗罪ということで、一〇〇が二八五・五に九年間の間になっているというふうに言われているけれども、凶悪犯罪という類型としての強盗傷人、強盗殺人というのは横ばいではないか。殺人についても、一〇〇が一一三・五というのは、確かにふえていることはふえているけれども、驚くほどふえているわけではないわけであって、今、重罰化で何とかしなければいけないという、そのような状況にはないんじゃないかというふうに思うわけであります。

 この点もすぐに回答は難しいのかもしれませんけれども、犯罪によって死亡した者、犯罪による死亡者数というのは、この十年間ふえているんですか、ふえていないんですか。いかがでしょう。

大林政府参考人 恐縮でございます、それも調べさせていただきます。

辻委員 つまり、法務参考資料として提供されている数字、認知件数が非常にふえているというふうになっているけれども、本当に凶悪犯罪がふえているかどうかということを緻密に詰めて考えたときに、強盗傷人、強盗殺人がどうなのかということが説明されていてしかるべきなんですよ。それが説明をされていない。これは本当に真剣に凶悪犯罪の根絶に向けてこの立法が必要だというふうにお考えになっているのかどうなのか、そもそもの姿勢が非常に、正確でないというか、疑わしいなというふうに私は思わざるを得ないと思います。

 それから、同じページに、犯罪の認知件数について、九九年から二〇〇〇年の間に傷害が大幅にふえている、ほかの犯罪も大幅にふえている。この一年間に何があったからこうふえたんですか。その前の六年、ふえていないんです、ほとんど横ばいなんですよ。この一年間に急激にふえているんです。その後、なだらかにふえた形にはなっている。この一年間に何が起こったからこんなにふえたというふうに法務当局は認識しているんですか。大臣はいかがですか、この点は。

大林政府参考人 今御指摘の点についても調べさせていただきます。

辻委員 ですから、凶悪犯罪その他の重大犯罪の増加傾向がある、それが立法事実の大きな柱の一つであるというふうに提案理由になっているわけですよ。ところが、その説明資料が一義的に明確ではないんですよ。これを読んだだけでは何ら、本当に凶悪犯罪がふえているかどうかわからない。そういう資料しかない中で議論をする、これはまさに拙速的なやり方ではないのかというふうにまず冒頭で申し上げておきたいと思います。

 この点については、この間の参考人質疑のときにも申し上げましたけれども、二週間ほど前の新聞の書評欄で、河合幹雄さんの「安全神話崩壊のパラドックス」という本があって、一つの見方を示されている。私は、必ずしもそれを、全面的に正しいかどうかということをこの場で申し上げるつもりはありませんけれども、犯罪の件数の評価についてはいろいろな考え方があるんですよ。

 だから、一方的な、しかも一番重大な犯罪とされていることについて数値も示さないで議論を行うということはやはり部分的である、提案の姿勢について非常に部分的である、こういうふうに言わざるを得ないと思います。

 また、日本の凶悪犯罪の件数は欧米に比べたら二分の一から五分の一だというふうに言われている。これも資料もあるようであります。だからといって、凶悪犯罪が確かに増加傾向にあるというのも事実だろうと思いますから、それに手を打たなくてはいけないと言っているんではないけれども、今最も対応策を考えなければならないのはこれに尽きるのか、これを優先的にやることが、日本の未来にとって、日本の刑事司法を本当に適正なものにしていく上にとって重要な第一義的なものなのかということについて、もう一度考え直していただきたいというふうに思います。

 そこで、これの端緒となっているのは、昨年、二〇〇三年十二月の犯罪対策閣僚会議で、犯罪に強い社会の実現のための行動計画というのが提言された、これが端緒になっております。

 この提案理由の中にも、行動計画が取りまとめられて、重点課題の一つとして治安回復のための基盤整備ということが挙げられ、その項目の中で凶悪犯罪等に関する罰則を整備することが求められた。つまり、これが端緒となり、これが根拠の一つ、かなり重要な根拠だということでこれは引用されているんですね。

 そこで伺いますけれども、この犯罪に強い社会の実現のための行動計画を見ますと、三つの大きな視点が提起されていて、その中で、犯罪情勢に即した重要課題ということで五つの重要課題が述べられていて、その第五に治安回復のための基盤整備というのが書かれている。それで、治安回復のための基盤整備ということについて十四の項目が掲げられていて、その十三番目に凶悪犯罪等に関する罰則整備というのが掲げられているんですよ。

 例えば、その十四の項目のうちの九番目を見れば、刑務所等矯正施設の過剰収容の解消と矯正処遇の強化ということが書かれている。十番目を見れば、更生保護制度の充実強化ということが書かれている。八番目を見れば、留置施設の過剰収容の解消と留置管理業務の効率化ということが書かれている。だから、いろいろな施策を講ずるべきだという提言が十四項目にわたって、この総体が治安回復のための基盤整備だ、こういうふうに言われているんですよ。

 その中で、そのうちの十三番目に掲げられている凶悪犯罪等に関する罰則整備が、非常に、繰り返しになりますが、拙速的に今法案化されている。これによって治安回復がなされるとお考えなんですか。いかがでしょう。

富田大臣政務官 今先生御指摘の十四項目、このすべてについて今法務省は一生懸命取り組んでいる。今回の刑法の改正は、治安回復のための基盤整備の重要な一環をなすものですが、単に罰則を強化するだけで治安の回復を図るのに十分であるというふうに考えているわけではありません。今挙げていただいたものを全部やっていくことが本当に大事だというふうに法務省としては考えております。

辻委員 行刑の問題、刑罰をどう位置づけるかの問題、その全般にわたってきちっと目配りをする、それぞれの連関性を明らかにする、その総合力によって治安回復を考えるというのが、これは成熟した物の考え方であり、政治家のとるべき態度だと私は思うわけですね。

 それであれば、その十四の中に、この間、前田参考人は、発熱状態のときに体力回復のためのトレーニングをしろと言っても無理なんであって、そのときは解熱剤を打たなければいけないんだ、こういうふうにおっしゃった。じゃ、発熱状態というのは四十度の高熱なのか、今三十八度の高熱なのか、平熱をちょっと、〇・何ぼ上回った高熱なのかによって対症療法がいろいろ変わってくるわけですね。

 ですから、さっき申し上げた凶悪犯罪の増加傾向というのは四十度に沸騰している状態なのかどうなのかということによって、法務当局としてどういう施策を講じていくのがより妥当なのかという問題になってくるわけですよ。

 だから伺っているんですが、今、富田政務官がおっしゃったけれども、じゃ、この刑法の重罰化と、例えばそのほかの項目、そのうちの一つ取り上げましょうか、九番目の刑務所等矯正施設の過剰収容の解消と矯正処遇の強化、これについてどういう制度的連関があり、重罰化になれば刑務所等矯正施設の過剰収容問題がどのような影響を受け、そして矯正処遇の施策についてさらにどういう問題が生じてくるのか、そのことについて、どの組織でどれだけの期間をかけて、その内的な連関、制度的な連関、その影響、そしてそれぞれが今後直面する課題、それについて真剣に検討された結果、この刑法の重罰化は出てきているんですか。これについてお答えください。

滝副大臣 今委員御指摘の十四項目の問題については、同時並行的にいろいろな手を打ってきているわけでございます。したがって、その中でこの重罰化は、その結果の問題として出てきたわけでは必ずしもございません。例えば、重罰化によって刑務所の過剰人員がこれからうんとふえるのか、あるいは横ばいでいくのか、そういうような計算はなかなか難しいところがございます。

 いずれにいたしましても、今のこの状況の中でいえば、刑務所の過剰人員は大体七千人おると言われているわけでございます。したがって、千人の刑務所の収容人員をふやすだけでも相当な年限がかかってきますから、結局、重罰化によってどの程度過剰人員がさらに発生するかという計算は細かくはなかなかできませんけれども、少なくとも七千人の過剰人員を解消していく必要がある。そういう中で、今の同時並行的な刑務所の増設が進んでいるし、それからまた矯正の面でも、例えば八時間労働のものを少し減らしながら、矯正教育の方に重点を置いていくとか、そういういわば同時並行的な面をある程度やっていかなきゃならぬというところで進めさせていただいているわけでございます。

辻委員 質問に対する回答になっていないじゃないですか。そういう質問に対する回答にならない答弁をされるんであれば、それはちゃんと私の許可を得てからやってくださいよ。

 私が質問をしたのは、先ほど富田政務官が、この十四項目について目配りをして、やはりそのうちの一つとして提案しているんだ、そういう趣旨に理解できるお答えをされたから、じゃ、例えばこの九項目めについては、どこの組織でどれだけの期間、どういう論議をして、それぞれについてどういう影響が生じる、悪い影響、いい影響、どういう結果が生じるか、それについて、悪影響についてはこういう手当てを打てば全体として前進するんだ、そういうような議論がなされているのかどうなのか、そこについてちゃんと詳細を語ってくれと言っているんですよ。そんな一般論を語ったってだめですよ。だれか答えてください。大臣、答えてください。

大林政府参考人 委員御指摘の点は私どもも理解できます。

 ただ、今回の、凶悪犯罪に対して法律的な手当てをして刑法を改正しようという議論は、専ら私ども刑事局を中心としてやっております。先生おっしゃるように、それは矯正とかいろいろな部面をかんで、将来的な数字を予測しながら施策をやっていくべきである、それは確かにそうなんですけれども、今回の刑法改正につきましては、私ども刑事局を中心として作業を行ってきたということでございます。

辻委員 私は、非常にこれは危惧感を持っているんですよ。こういう刑罰の重罰化だけで、だけでとはおっしゃっていない、だけれども、それを先行的にやることがまず大事だというふうな発想を法務当局も考え、そして政府・与党も考えている。その結果、日本の社会がどうなっていくのか。

 本当に、人を見たら、犯罪を犯せばこれは刑務所にたたき込めというような声がほうはいと沸いてくるような状況になっていくんですよ。排除の論理の社会になっていく。そして、その結果として刑務所の収容も長くなって過収容状態がふえて、そして、それで出てきた人を社会が受け入れますか。それだけの包容力と、社会の、ある意味では非常な強さですよ、私が思うには。そういう共同体的な、ある意味での統合力が今、日本が弱まっている。そのことが規範意識の減退にもつながっているわけであって、社会の統合力、社会のそういう力をどう高めていくのかということを一方で議論しながらいろいろな施策を講じていかなきゃいけない。

 そのときに、何ですか、規範意識を醸成するんだと。そんなの国民が萎縮するだけであって、規範意識、悪いことはしないようにしましょうとみんなに呼びかけて、悪いことをしたやつは刑務所にたたき込め、こういうような風潮をつくることは日本の社会にとって決してプラスではない。こんなことを、しかも一年もたたない短期間で、極めてずさんな資料の提供しかない短絡的な議論で決めていっていいのか。

 本当に、これは与野党を貫いた問題ですよ。私は別に野党議員だから言っているんじゃないんですよ。ちゃんとした議論をしなきゃいけない。司法改革については、いろいろな問題について本当に矛盾だらけの状態なんですよ、今。だからこそ、いろいろ説明を求めている。

 だから、さっきの私の質問に対しては、いや、そういうしっかりした組織ではちゃんと検討ができていない、これが答えじゃないですか、結局、おっしゃっていることは。

 検討していないんですよ。そのことをはっきりもう一回答えてくださいよ。検討していないでしょう。法務省のどこの機関で、この二つの要請について具体的に、人を集めて、時間をかけて、資料を集めて、そして中間報告なりを出して検討していますか。していないでしょう。しているかしていないか、答えてください。

大林政府参考人 今回の法案作成につきましては、当然、今の矯正の問題、例えば過剰収容に対してどういう影響があるかということは、当然、私どもも頭の上では、念頭に置いてそれは矯正局とも話をしてきました。

 ただ、数の問題あるいは犯罪のふえ方の問題につきましては、なかなか予測が難しいところもあります。ですから、おっしゃる不十分というのは、完全にクリアはできていないというふうに思いますけれども、それはそれなりに、法案を前提として最善の対策を立てていく必要があるというふうに思っております。

辻委員 それは、予測は必ずしもし切れない問題があるというのはわかりますよ。しかし、予測はし切れないけれども、どういう状態になるのかというのは、ある程度、やはり収容人員が過剰になっていくだろうということは、これは直観的にわかるわけですよね。

 だから、そうなると、その場合にどう手当てをするのかということも含めて、矯正局なりと共通の土俵に上って議論をした上でこれを提案すべきなんですよ。そこが欠落しているんではないかということを私は言っているわけですよ。だから、本当に成熟した提案になっていないんですよ、私に言わせれば。私はそう思います。

 それで、まずこれは個々の犯罪ごとに本当は検討していくべきだと思いますよ。スーフリの問題が社会的な問題になって、強姦罪の問題が取り上げられた。私は、今、二十四年間ですか、弁護士活動をやっていて、刑事弁護も年間五、六件は必ずやっている。その中で強姦の被告人の弁護もやったし、確かに、どういうんでしょうか、女性の性的な被害に遭う、権利の擁護が、これは十年ぐらい前の話ですけれども、必ずしもきちっと確立していないという面がある。それはそれで私もよくわかりますよ。

 だけれども、それを端緒に話を進めていくにせよ、それぞれの個々の罪種に応じて法定刑をどの程度上げるのが妥当なのか、犯罪の抑止につながるためにはどうすべきなのかということを議論すべきなのに、一つの例を突破口にして、結局、罪種としては百の罪種に及ぶ法定刑の引き上げが一遍になされようとしている。非常に網打ち的なやり方なんですよ。

 このようなやり方をするということは、手法自体が極めて大ざっぱだし、緻密さを欠いているし、社会を非常に息苦しい、閉塞感のある状態にしていく。アナウンス効果と言われているけれども、国民に対して、これは萎縮させ、排他的な感情をあおり立て、ある意味では魔女狩り的な、リンチ的な思いをかき立てることにつながっていく。そのことが、どれだけ大きな社会の損失につながるのか、日本の社会がぎすぎすしたものになっていくことにつながっていくのかというのを、反面を考えるべきなんですよね。そういう全体を考えて提言したとは思えない。

 だから、百罪に及ぶこの網打ち的なやり方によって犯罪が本当に減少すると考えておられるんですか。法務大臣、いかがですか。

南野国務大臣 重罰化によるアナウンスの問題、そこら辺も先生お話しの中に含めておられました。このたびの改正案というのは、凶悪重大犯罪に係る法定刑のあり方について、現在の国民の規範意識をより反映させようという考えに基づくものであると思います。それは、そのような法定刑を改めることによって、国民の規範意識と呼応して、その道義観念に呼びかけて犯罪を思いとどまってもらいたい、そういう意味で、国民に対する犯罪抑止のための訴えというアナウンス効果も期待しているところでございます。

 お尋ねは、法定刑の引き上げの持つ威嚇的効果が社会に伝えられるということによって健全な社会活動が萎縮してしまうのではないか、先ほどのお言葉にもございましたが、そのような疑問にもよるものと思われますが、今回の改正案は、国民が通常の日常生活において犯行に及ぶ可能性があるとは考えがたい凶悪重大犯罪に関する法定刑のあり方を見直そうとするものでございますので、これが国民の健全な日常生活、日常活動を萎縮させて、国家や社会のあり方というものを硬直してしまうようなことはないものと考えております。

 さらに、先生、もう一つ言わせていただくならば、今回の有期刑の上限を引き上げるということとしておりますのは、刑法制定後、国民一般の平均寿命が大幅に延びたことなどもございます。その上限を十五年とすることが国民の規範意識に合致していないのではないか、また、無期刑との差が大き過ぎるのではないか、そのような指摘も踏まえたものでございます。

 個々の特定の罪の法定刑が軽過ぎることを理由とするものではないということでございまして、また、個別に見てみましても、有期刑の上限を法定刑に含む罪は、いずれも重大な犯罪として特に重い刑が定められているものであり、その中で特にその上限の引き上げから除くべきものはない、そのように思っております。

辻委員 国民の正義観念に合致しているかどうかということをおっしゃっているけれども、これは司法改革推進本部の提言とかいろいろなところでも議論になるんですけれども、一方で、国民の価値観とかそういうものは多様化しているというふうに言われているわけですよ。だから、何が正義なのかというようなものも相対化してきているわけですね。

 だから、例えば、人を殺すなかれとか物をとるなかれとか犯すなかれとか、それは、あらゆる時代を貫いた正義であるべきだと思うけれども、それをどの程度処罰するのか、どう報復を加えるのかということを含めた全体の正義感というのは、歴史的なものがあるだろうし、個々の人々によってもやはり基準が違うだろうし、とりわけ現代のような価値観が多様化している中で、一義的には言えないと私は思うわけですよ。

 だから、立法事実の中で、国民の正義感に恐らくこれは合致していないということを、大きな二つの理由のうちの一つは、凶悪重大犯罪の増加傾向が続いている、だからこれに対して対処しなきゃいけない、これが一つ書いてあるわけですよ。もう一つは、現在の国民の正義観念に合致しているかどうかが問題だと書いてある。

 合致していないということを法務当局は言っているんですよ。国民の正義感は、もっと高く、もっと処罰すべきだ、軽過ぎるんじゃないかということを言っているんだというふうに理解できるんですよ。反論があれば反論してくださいよ。(発言する者あり)外野席はいろいろ言わないで、反論があれば反論してくださいよ。

 ですから、強姦罪が非常に問題がある、それはそうだ。だけれども、では、別の同僚議員がたしか参考人質疑か何かで言っていましたけれども、天皇の御名御璽の偽造について、これが、法定刑がアップする、そこまで及ぶということが今国民の正義観念に、アップしなければ正義観念にもとることになるのか。そんなことは言えないわけですよ。

 だから、個々の犯罪ごとにやはり検討を詰めていかなければいけないし、それを十把一からげに百以上の罪種にわたって一律に法定刑を上げるということもやはり非常に粗雑な議論であり、非常にやり方が雑である、本当に政策目的を真剣に考えているとは思えないわけであります。

 そして、かつ、国民の正義感というのは、本当に、仮に処罰感情が強くなっていたとして、それをそのままさらに強めるようにすることが今の国のなすべきことなのかどうなのか、これは非常に疑問なんです。

 そういう観点でちょっと具体的に伺っていきたいというふうに思いますけれども、私は、応報感情というのはやはり非常に重要なものであるというふうに思います。やはりそれは応報し切らなければ本当に解消されないし、応報し切った後でも解消できないんですよね。やはり被害の感情は厳然として事実として残るわけですよ。

 だから、目には目を、歯には歯をというタリオの法とかいろいろ言われている、リンチ裁判とか魔女狩り裁判とかいろいろ言われている、そういうような応報感情をむき出しにする、そういう社会からどう抜け出すのかというのが近代社会の成立だと私は思いますよ。だから罪刑法定主義があり、そのもとによって刑法は謙抑主義であって、その結果としての人権保障があるということが非常に重要なんですね。

 私が思うには、応報感情というのは、個人だけで処理できるものではなくて、社会的にやはり処理をしていくという施策を講ずるべきであろう。それは、共同体の中でそれを包摂していやしていくという問題も必要であろうし、精神的なケアもしなければいけない。また、犯罪被害者の人たちに対する経済的な援助が全然、これはお寒い状況である、そこも手当てをしていかないといけない。そういう総合的な、やはり社会的な力の中でこの応報感情も包み込んでいく、その中で個人の応報感情も解消、全部が解消されないにしても軟着陸をするというか、そういうようなまさに施策を講ずるべきなんですよ。

 だから、あからさまに応報感情だけを強調されているわけではないと思いますけれども、それは、逆行することになる、社会のそういう受容力をかえって奪うことになる、アナウンス効果というのが逆のアナウンス効果になってしまう。犯罪者とされる人、犯罪を犯したとされる容疑者に対して排他的に指弾するような社会、排除するような社会、刑期を終えて戻ってきてもそれを受容しない社会、包み込んでいく社会にならないわけですよ。

 だから、やはりそういう観点が総合的に重要だと思いますが、こういう考え方について、大臣、どう思われますか。大臣の率直な気持ちをお答えください。

南野国務大臣 今先生、応報感情ということを申されました。それをそのまま受け入れるのではありませんが、やはり、一定の被害感情やまたは遺族の方々の感情、これも無視できないことではないかな。罪を犯した人もそうです。その方の更生を図らなきゃならない。だけれども、罪の被害を受けた方たち、その方たちのことも無視できないことであろうかと。

 しかし、真摯で、今お示ししてきたとおり、社会全体がいかに犯罪者を受け入れるか、先生も今おっしゃいました、温かく受け入れてあげようか、そういう問題も考えていかなければならないことである、先生のお考えにも、私もそのように思っております。

辻委員 さしで、一対一で議論をしたいですね。その辺はもう少し詰めた話をしたい。常識論でいいんですね。

 やはり一面に偏った政策をとるべきじゃないと思いますよ、政府・与党も。処罰を重くしたら何かよくなるということはないですよ。逆に対立が激しくなって社会の秩序が紊乱する、逆に問題が生じると私は思いますよ、リアクションが必ずあるわけだから。

 だから、そういう総合的な観点に立って政治家が考えるべきであって、閣僚会議がどういう契機でそういうような提言をなしたのか、その後の法制審の論議が非公開で、だれがどういうことを言ったのか、きちっとした反対意見を言う見識のある人が本当に入って反対意見を言っていたのかどうなのか、総合的な話を本当にできていたかどうなのか。

 これはもう一政権与党の問題ではなくて、ある意味で今日本の秩序がいろいろ乱れていて、社会のいろいろなところに矛盾が生じているのをどう立て直していくのかというのは重要なんですよ。司法の問題についても、私はそうだと思いますよ。

 本音で言えば、民主党が政権をとったときにちゃんとリーダーシップをとって、本当にしっかりした法務行政、刑事司法を確立していきたいと私は思っています。だけれども、それは同じ立場で議論できるはずなんですね。ですから、率直なお言葉でお話しいただきたいというふうに思います。最後は御自分の意見を、見ながらではあるけれどもおっしゃっていただいたというふうに思いますけれども。

 それで、もう少し具体的に伺いますけれども、現行の法定刑で不都合なのかどうなのかということなんですよ。

 これは、配られている資料を見まして、殺人罪でありますけれども、殺人罪で、これは資料の二十二ページですが、五年以下が四二・四五%、三年以下が二二・七二%、そして執行猶予がついているのが一四・八三%なんですね。現在の下限は三年だけれども、五年に引き上げようとされているんでしょう。その五年以下が、現在の、この資料を見ると四二・四五%、つまり、日本の判決のうちの四割は五年以下なんですよ。

 つまり、これはいろいろな方々が指摘されているから屋上屋を架するようなことは申し上げませんけれども、殺人に至るというのは、物すごくいろいろな事情があって、広いんですよね。だから、決して三年以上を上げなければ何か問題が生じるということではないわけですよ。上限の問題は上限の問題として、下限を上げる必要が何であるのかというふうに思いますけれども、何で上げる必要があるんですか。

 四二・四五%の判決は間違っているとお考えなんですか。現在の日本の刑事裁判の殺人の四二・四五%の判決は間違っている、だから五年以上にしなきゃいけないんだ、その必要性があるんだ、こういうお考えで下限を上げるんですか。そういうふうに思っていないんだったら、五年以上にする必要はないじゃないですか。どうなんですか。ちゃんと答えてくださいよ。

滝副大臣 今先生の仰せになった問題でございますけれども、日本の殺人事件の判決が五年以下が圧倒的に多いということでございますけれども、基本的に、今御指摘のように、殺人でもいろいろな事情があるからそういうようなことになっているんだろうと思います。それを、やはり判決の中では情状酌量しているということをこれによって明らかにするという意味で今回三年から五年に上げたというようなこともございますので、その辺のところも御理解をいただきたいと思います。

辻委員 次回から出席を求めませんよ、そんな答弁ばかりされるんだったら。質問に対する答えになっていないじゃないですか。

 五年に上げないと不都合なんですかということを聞いているわけですよ。日本の殺人の判決の四二・四五%は五年以下なんですよ。では、これは間違っていると考えているのかということを聞いているんですよ。間違っていると考えているんだったら、そうだと答えればいい。どうなんですか。副大臣か大臣、答えてくださいよ。どう考えているんですか。

滝副大臣 間違えているというふうに申し上げているわけじゃなくて、情状酌量しているということをはっきりさせるためにも下限を上げた方がいい、こういう判断でございます。

辻委員 そんなのは部分的な理由にしかすぎませんよ。取ってつけたような、本当に自分が確信を持って語れないような答弁をするべきでないと私は思いますよ。

 強姦致死傷、これは短期三年以上を五年以上に引き上げるというふうになっていますが、現在の、これは資料の二十一ページですよ、二百三十五の懲役人員のうち、何ですか、五年以下ではないのは五十七じゃないですか。二割じゃないですか、二五%。つまり、これも殺人と同じですよ。

 強姦致死傷についての量刑の妥当性というのは一方でありますよ。妥当性はあるけれども、下限を上げる必要があるのかどうか。

 上限を上げないと、どうしてももっと重い処罰をしなければいけないのに上限が限られているからできないんだ、だからどうしても上限を上げてくれというのはわかりますよ。下限は、日本の裁判は、一年以上とか三年以上十年以下とか、裁判官の裁量が非常に広いわけですよ。その中でいろいろな情状とかを判断する。それがある意味で刑事政策的な日本の機能を果たしているわけですよ。それを狭めて裁判官を追い込んでいるんですよ。そのことの意味があるのかないのかです。

 だから、三年以上でも十分、五年の処罰をすることもできるし、六年の処罰をすることもできるんですよ。何でそれを、三年を五年に上げなきゃいけないんですか。

 裁判官が間違っているんだったらいいですよ。半数以上の裁判官は五年以下の判決しか出していないんですよ。これは裁判官が間違っているんですか。裁判官を教育するために、五年以下の判決は書くべきではないんだというふうに教育するために三年を五年に上げるんですか。どうなんですか、その点。大臣、お答えください。

大林政府参考人 今委員御指摘の量刑の分布でございますが、これについて私どもは、裁判所の量刑が間違っているという気持ちは毛頭ございません。

 今、上げるということが今回いろいろ議論になっていますけれども、先ほども強姦罪の三年について軽過ぎるのではないかという御指摘を受けておりますけれども、これを引き上げた結果、それぞれの犯行態様に応じて刑が決まっている。

 ですから、委員がおっしゃるように、今の量刑がおかしいから五年以上に上げるというものではなくて、やはり、そういう強姦犯罪に対する国民の目の厳しさ、あるいは国民にもそういうものを知っていただきたいという、先ほどおっしゃられた、メッセージという言葉を使われましたけれども、そういうことの認識をしていただきたい、いわゆる一般予防の観点からもありますので、そういう観点から刑を上げさせていただいたということでございます。

辻委員 結局、アナウンス効果というか、国家の決意を示すことに意味があるということなんですよ、おっしゃっているのは。要するに、日本の社会を、断固として処罰するぞという社会に持っていきたいということなんですよ、結果は、表現の仕方はもっとマイルドにしたって。それが本当にいいんですかとさっきから申し上げている。また別の機会にいろいろ議論をさせてもらった方がいいと思いますけれども、非常に危惧を私は持ちますね。

 若い人がというふうに言い出すと、自分が年をとったことのあらわれだから言いたくないですけれども、若い裁判官、検察官は、弁護士もそうですよ、なかなか、私もまだ、南野大臣に比べれば十五年も若輩者ですから、世の中のことがわかっていないことも……(発言する者あり)十五年じゃないですか。わかっていないこともいっぱいありますよ。だけれども、酸いも甘いもはわからないにしても、少ししょっぱいのとか辛いのぐらいはわかってくるんですね。

 そうすると、人間が何でこんな犯罪に至らざるを得ないんだろうかということとか、大変だったんだろうなとか、どう苦しんでいるんだろうか、何にもがいているんだろうかとかいうことがある程度理解をして共有できる感覚を持ってきて、だから、人に対しても物言いが余りきつく、僕も、こういうところではきつく言わせてもらっているけれども、本当はそうじゃないんですよ。(発言する者あり)いやいや、本当は優しくあるべきだというふうに思っていますし、やはりそういう感覚が重要なんですね。

 ですから、裁判所でも、何で重大犯罪で合議体になるのかという、裁判長が経験を踏まえた方、十五年ぐらいの経験を踏まえた方、やはり四十を超えて四十五になるぐらいの方々が裁判長でどっと構えていただいて、合議体で、だからこそ、いろいろな側面にわたる事情も加味して判決を下すのかなというような信頼関係が一応あるわけですね。現実は、私は、官僚司法でその信頼関係を裏切られることが多いんですけれども、いい裁判官もいらっしゃいますよね。

 それはそれとして、申し上げたいのは、比較して申しわけないけれども、やはり若い裁判官、若い検察官はしゃくし定規なんですよ。現にある直接的な事実で当てはめて判断をしてしまう。裏の事情とかいろいろ、なかなか見ない。しかも、早く、二年以内に判決を出せとかいうことで、まあいいかということで拙速になっていくわけです。

 いろいろな事情を考慮して、総合的に適正な量刑をしなければいけない。その中で、日本の司法に対する信頼、私はいろいろ不満があるけれども、絶対だめだというほどの、みんなが怨嗟の声を上げているわけでも必ずしもないわけだから、一定の信頼があるのは事実ですよ。

 そういう中で、三年を五年に引き上げる。そうすると、酌量減軽を加えないと執行猶予にならないわけですよ。先ほど申し上げたように、殺人の四〇%以上が五年以下だし、執行猶予も一四%か何かある。酌量減軽を加えるのは、やはりそれなりの裁判官、見識のある裁判官でないとできないんですよ。だから、若いと、ああ、法定刑は五年だと引っ張り上げられますよ。五年を基準に、五年をちょっと重たいところで判決がふえてくる可能性があるように私は思います。

 そういうような政策的なもくろみを持ってやっておられるのでないにもかかわらず、そういうような結果が出てしまうのではないかという懸念を私は持っている。そういう懸念について理解できますかできませんか、どちらですか、大臣。

南野国務大臣 私は、日本の弁護士さんを信用いたしております。

辻委員 弁護士のことを言っているんじゃないんですよ、裁判官のことを言っているんですから。

南野国務大臣 裁判官も同じでございます。信用しております。

辻委員 非常に危惧を持っている、これはある程度おわかりいただけるんじゃないかなと僕は思いますよ。本当に、日本の司法の未来を考えたときに、論議していきたいところだなというふうに思います。

 だから、下限を三年を五年に上げるというのは、国家の決意を言うだけであって、三年を別に五年に上げなくたって、処罰すべき量刑は科することができる。だから、強姦が二年は、不当に女性の権利について国家が軽視していたのではないか、それはやはりもうちょっと引き上げろ、これはそれとして、国家の基本政策としてそこをはっきり打ち出すということの意味はあると思うんですね。それは思う。しかし、それを全部に及ぼすことはないだろう。

 現実に、殺人なり強姦致死傷なりについて、現在の判決はこの下限以下の判決が非常に多いのですよ。だから、そこまで、そこを五年に法定刑を引き上げたら、本当に、しゃくし定規な判検事は、それを基準に上げちゃいますよ。日本の社会はそういうふうになっていく。それによって、上げたら、いや、重たくなったからもうやめておこうなんといって犯罪が抑止されるかというと、そんなのは論証がないし、法制審議会でも、今回の重罰化によって犯罪の件数が減るというふうにおっしゃった人は一人もいないというふうに聞いていますよ。

 だから、要するに専らアナウンス効果とかいう国家的な観点で、国民に号令するような観点でこんな法案を出すべきではないと私は思います。

 それで、では、十年を十五年に上げるとかいうようなことがありますけれども、十五年を二十年ですか、要するに上限を上げなければいけないほど、各罪種について、上限目いっぱいの判決が陸続と続いているという状態があるのですか。

 例えば、長期十年で、九年八カ月とか、九年以上とか、本当は十年を突破して下したい、だけれども法定刑が十年だからそれを超えることができない、上限に張りついている、だから何とか上限を上げなきゃいけない、そういうような立法事実があるのですか。あるのであれば、罪種を示して、具体的な数字とともに明らかにしてください。

大林政府参考人 お答えの前に、先ほど御質問のありました強盗致死、強盗致傷の検挙の認知件数についてお尋ねがありました。犯罪白書十六年版によりますと、強盗致死につきましては、平成十五年の認知件数が七十八件、強盗致傷が三千百十九件、これを平成六年に比べますと、強盗致死が四十二件、強盗致傷が九百八十六ということで、統計から見ますと徐々に増加しているというふうに思われます。

 それから、今の御質問でございます。今のような上限十五年ないし二十年に張りついているということが続々あるのか、こういうお尋ねについては、そのような事実ではございません。ただ、これは委員御案内のとおり、今の事例が十五年、併合罪加重すると二十年、その次が無期しかありません。したがって、これは検察においてもそうですし、裁判所においても非常に迷われる実態がある。

 私どもも、十五年、二十年を求刑するか、無期を求刑するかは迷うこともあります。あるいは、私どもが無期を求刑したのに、裁判所が二十年ということで落とす事例もあります。それが控訴審ではまた無期に戻るという例がありまして、量刑というのは非常に難しい事案でございまして、そういう点からいえば、今のような間がある、十五年、二十年から三十年ぐらいの間が出てくるということは、裁判所にとってもそれだけ量刑の幅が広がるということは言えようかと思います。

辻委員 私の質問は、十五年、二十年の上限に張りついている判決が多数あるのかという質問であって、そういう事実はないんだというお答えとして承っておきます。その他の点については別途議論をさせていただきたい、こう思いますよ。

 それで、結局、無期刑についても、以前は十五年を過ぎれば仮釈放になったり、二十年近くなったらかなり仮釈放になったりということが、今、非常にどんどん制限されて、限定されてきているわけじゃないですか。長期が併合罪加重で三十年に上がったときに、やはり無期は三十年に引っ張られる可能性があるわけですよ。

 ですから、死刑廃止問題も含めて、無期については、重無期刑とかいう議論もあって、刑罰論としてどうなのかということをもっと慎重に検討しないと、そう簡単に上限を、裁判官の裁量がふえるからいいんだということだけで上げるような問題ではないと私は思いますよ。

 だから、この点においても、上げる意味が果たしてあるのか。結局は、国家は重大な決然たる決意でもって犯罪は処罰するんだということを言いたいということだけなんですよ、尽きるのは。そのことが社会にいい影響を及ぼすとは私は思えない。時間がありますから、これはまた別の機会に議論をしていきたい、一般質問で本当にきちっと質問したいと思います。

 それで、大臣に伺いたいのですけれども、昨年の犯罪閣僚会議、そしてことし二月の法制審諮問があって、九月に答申があった。重大犯罪関係部会では実質十二時間の審議しかされていない。一方で、ちょっと時間の関係がありますけれども、行刑改革会議というのが、名古屋刑務所問題を契機として設けられて、十回の全体会を開き、三つの分科会でそれぞれ八回、九回会議をやって、実質の審議時間を百五十時間以上かけてやっているんですよ。いろいろ現に行刑改革会議の提言というのが出ているわけですよね。

 これと比べても、十分の一以下の時間しかかけないで成案を得て法案を提出する。これは前の大臣の基本姿勢の問題だから、今の大臣に批判しろと言われても困るかもしれませんけれども、今後、南野大臣、法務大臣を続けていかれるのであれば、やはりこういう問題に直面されるわけだから、拙速主義的な方法はとらないということを、やはりこの場でちゃんと決意表明していただきたいと思いますが、いかがですか。

 それは見ないで、御自分の意見で言ってください。見ないで言ってください。また見ているじゃないですか、だめですよ、それは。

南野国務大臣 先生のいろいろな御趣旨をお伺いいたしました。これからいろいろな形で審議し、その審議を見守っていきたいというふうに思っております。

辻委員 拙速主義的なやり方はとらないということを言ってくださいよ。

南野国務大臣 それは、拙速主義的にするかどうかも、審議をしていただかないとわからないということでございます。

辻委員 それはもう完全な問題発言ですよ。完全な問題発言。場合によっては拙速主義をとると言っているんだから。それは完全な問題発言。釈明するんですか。

南野国務大臣 拙速主義ということを先生おっしゃっていますが、そのような形で法をつくるわけではないと思いますので、きちんと審議していただくということを申し上げているわけでございますので、情状酌量していただきたいと思います。

辻委員 私が法務大臣に情状酌量してどうするんですか。(発言する者あり)いや、惻隠の情はありますよ、僕は。

 最後に、刑務所の過剰収容に至るのではないかというふうに思う懸念について。

 これは行刑改革会議の提言が出ています。やはりやらなきゃいけないものを三つ、受刑者の人間性を尊重し、真の改善更生及び社会復帰を図ることが重要であると、三つのうちのトップにありますよ。だから、刑務所の過剰人員が今でも言われているのに、さらに収容者がふえて過剰になると、職員の刑務官の負担はさらに過重になってくる。せっかくいろいろ考えようとしていることが阻害されるわけですよね。

 だから、この行刑の担当のお立場、これは矯正局長になるのかどなたになるかわかりませんけれども、この重罰化の受ける結果について、これは読めないというふうにおっしゃるんだろうと思うけれども、仮に、やはり過剰になるんだという事態があったとして、この行刑改革会議の提言をどう生かしていけるんですか、変容せざるを得ないんじゃないですか。どういうふうにお考えですか、その点。

横田政府参考人 お答えいたします。

 委員がおっしゃいましたように、行刑改革会議がさまざまな提言をしておりまして、その中にも過剰収容状態の解消ということが入っております。この今回の法改正によって過剰収容状態が増すのではないかというようなことでありますけれども、これは再三申し上げましたように、やはり犯罪というのはいろいろな要因でありますし、何といっても人の行動でありますので、この予測、そう容易にできるものではございません。

 ただ、過剰収容状態というのは現在ございますし、今の条件が全く同じであるならば、その過剰収容状態というのはやはり継続を、いつまでかはともかくとして、するのかなということもございますし、私どもといたしましては、この行刑改革の提言の趣旨を踏まえまして、最大限尊重しまして、やはりこれに対して、受刑者の真の改善更生及び社会復帰の実を上げるために、この過剰収容状態の解消に向けてさまざまな努力をしてまいりたいと思っております。

辻委員 時間が参りました。

 犯罪抑止の効果は非常に疑わしい。私は、アナウンス効果というか、そういう規範意識を醸成するんだということで国家が宣言することが、逆に社会を硬直化させるきっかけになることを恐れます。ですから、もっと総合的に問題を考えるべきだろうというふうに思います。

 他方で、これは恐らく、やはり過剰収容に至らざるを得ない現実を、多分そうならざるを得ない。そうなると、今の再犯率がなお高いと言われる中で、日本の行刑が本当ににっちもさっちもいかなくなるというような事態も十分あり得る。本当に真剣に考えなきゃいけない問題だ。

 十一月の十五日、民主党の岡田代表は堺の刑務所を見学されるということで、私も同行して、いろいろ当局の方にも御苦労話を聞かせていただいたり、いろいろしたいなというふうに思っています。今後、この行刑の問題も含めて、しっかりとした議論をしていきたいということを最後に申し上げまして、私の質疑を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

塩崎委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時三十三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

塩崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。佐々木秀典君。

佐々木(秀)委員 民主党の佐々木でございます。

 南野法務大臣とは初めてやりとりをさせていただきますが、御就任、とりあえずおめでとうございました。DV法のときには、私が野党の筆頭理事をやっておりまして、御一緒に苦労してあの法案を仕上げた。私どもの民主党の女性議員の皆さんも提案者で、先生と一緒にここで答弁されて、通ったときにはお互いに喜び合って記念撮影までしたということを思い出しますけれども、しかし、今度はお立場がお立場でございます。なかなか大変なお仕事ですけれども、ひとつしっかり取り組んでいただきたいと思います。

 私は弁護士ですから、法律家の端くれではありますけれども、大臣は法律家ではいらっしゃらない。しかし、法律家でなければ法務大臣が務まらないなんというものではなくて、法律家で法務大臣をお務めになった方の方がむしろ少ないですね。近くは保岡議員が法務大臣をお務めでしたけれども。前の野沢大臣もそうですし、それ以前の大臣も、法律家ではない方が多かったと思います。

 これは、一つは、やはり一般国民の感覚で、生活感覚などで司法行政をつかさどっていただくことが重要なんだ、大事なことなんだ、こういう思いがそれぞれの内閣にあるんだろうと。私は、それはそれで理解をいたしますし、大事なことだと思っておりますので、どうかひとつ、これまで培われた大臣のいろいろな御経験を踏まえ、御見識を踏まえ、そして一般の国民だったらどうなのか、一般の市民だったらどうなのかという感覚で司法行政に当たっていただき、また御監督もいただきたい。期待をしております。

 そういう点から見ますと、司法行政というのは、あるいは法律というのはやはりわかりにくい。一般の国民の皆さんからすると、裁判もそうですし、司法行政もそうですし、法務もそうですし、なじみにくい、わかりにくいというのがまあまあ通用していることですね。

 そこで、大臣には、ですから易しい言葉でわかりやすく語っていただきたいわけですが、しかし、この間も、大臣のごあいさつの中で、横文字を含めてなかなかわかりにくい言葉がいっぱいあるということでの質疑がありました。この刑法の改正について、これを必要とする事情、これが、刑法等の一部を改正する法律案提案理由説明、大臣からこの間読み上げられたわけですけれども、さあ、この中にも結構難しい言葉が幾つもあるんですね。

 先ほど、私、実は申しわけないことに、理事を務めております予算委員会で理事懇があったものですから、中座をいたしまして、そのために前のお二人の同僚の質疑を十分に聞けなかったものですから、あるいは重複するところがあるんじゃなかろうかと思います。ありましたら失礼をお許しいただきたいと思いますし、余りに重複でしたら、それはおっしゃっていただきたいと思うんですが、中座する前に、伴野さんの質問の中でやはりその種のお尋ねがあったんじゃないかと思いますが、私も、もう一つ、この点については重複するかもしれませんが、お聞きをしておきたいと思います。

 というのは、そのわかりにくい言葉の一つに、先ほど御指摘があったと思いますが、近年、我が国の治安水準や国民の体感治安が悪化しているとの指摘がなされている、これが一つの今度の改正を必要とする事情として述べられているんだろうと私は思うんですね。

 治安水準というのは、ほかの国に比べてどうなのか、犯罪の認知されている件数だとか、それからまたそれに対する犯人の検挙率がどうなのかとか、あるいはその予防策はどうなのかなどということを、外国と比較した場合にその水準がどうなのかというようなことなんだろうかな、これは大体わかるような気がいたします。

 しかし、国民の体感治安の悪化というのは、どうも、私も法律家やっているけれども、余りなじみになっている言葉だと私は思えないんですね。もう少しわかりやすい言葉があるんじゃなかろうか。例えば、治安に対する不安感が増大している、増しているんじゃないかとか、そういう言い方ならわかるんですけれども、体感治安の悪化というのは、あるいはさきの御質問にお答えがあったのかもしれないけれども、大臣としてどんなお気持ちでこれを読み上げられたのか、大臣としてはどう認識されているのか。これはもう一回、済みませんがお答えいただけますか。

    〔委員長退席、田村委員長代理着席〕

南野国務大臣 本当に、先生の人格がほうふつとするお言葉をいただき、まず、受け入れていただきましたことを感謝申し上げます。

 今、体感という言葉のことでございますけれども、我々は、私としましては、過去にも使ったことがございます。肌で感じるというようなことでございまして、そういう理由で使ったことがございます。

 例えば、内閣府の治安に関する世論調査によれば、治安が悪くなったと思うとする方が、大体、どういうふうに悪くなったかというと、約八〇%以上という結果が出ている。また、自分や身近な人が犯罪に遭うかもしれないという不安、今先生が御指摘されたような、そのような言い回しで言えばわかるかなというところで、不安になるということが多くなったと思う、これは自分が体験し、感じ取るということになってくると思います。そういう人の割合が約八〇%という結論、結果が出ておるということでございますので、このような数字に見られますように、我が国の治安情勢が以前よりも悪くなっているのではないか、自分自身もそのような犯罪の被害に遭うのではないか、そういう不安を持った一般国民の感覚といいますものが体感治安の悪化として理解されているのではないかな、そのように思います。

佐々木(秀)委員 肌で感じるというお言葉がありました。むしろそういう言葉で言っていただいた方が、体感治安なんというのをばあんと出したって、これは国民の皆さん、理解できないんじゃないかと私は思うんですよ。事ほどさように、これからもう少し、だれもがわかりやすく、納得ができるようなお言葉をぜひ使っていただくことが私は大事なんじゃないかと思うんですね。

 そこで、今、仮に治安に対する不安感が増しているんだというようなことからいいますと、これもなかなかそう一概にそうかなというふうにがえんじられないんじゃないかとも思うんですよ。

 というのは、この間、この法案の審議で参考人に来ていただきましたが、参考人の中で朝日新聞の藤森さんという記者さん、これが参考人で、これは朝日新聞でも調査をしているんですね。

 その調査の結果で目立つのは、何といっても犯罪への不安感の高さだろうと言っているんですね。それは指摘しながら、しかし、この意識は実態に見合っているだろうかと言っているんです。刑法犯の認知件数の推移は、戦後一たん減少したが、七四年に反転して、その後右肩上がりの多さを示しているんだと。そして、一方の検挙率はこの事件数に反比例するように急激に低下している、こう言うんですね。これで治安感が悪くなっているという感じが増大しているということにもなるわけですけれども。

 それと、東京世田谷の一家四人殺害事件の犯人はまだ捕まっていないとか、それから長崎市の幼稚園児の殺害のように非常に動機その他で不可解だというような事件が目立つ。こういうような事件についてメディアが大きく報じる、したがって、それらに対する一般の国民の皆さんの不安感がそこでまた大きくなっていくんだという指摘をされているわけですね。

 しかし、犯罪数が多くなったといっても、戦後のときに比べれば決して多くなっているわけじゃない。例えば、殺人、強盗、放火、強姦を合わせた凶悪犯罪の認知の件数は、二〇〇三年に一万三千件台だ。ピークだった一九五〇年の、これは戦後の時期ですけれども、一九五〇年の約一万六千件までは達していない。そして、刑法犯の八割以上が窃盗事件だということを言っておるわけですね。国際的には、日本の犯罪率はまだ欧米各国の二分の一から五分の一という水準にある、それこそさっきの治安水準になるわけですけれども。ということから見ると、言われるほどには、極端に治安状況が悪いということが言えるのかどうかという疑問がある。

 ただ、何といっても違うのは、やはり報道の違いだと私は思うんです。戦後、これだけ事件が多いときでも、テレビなんというものがありませんでした。報道、マスメディアというのは限られていたわけですね。ラジオだって持っている人は少なかったわけですから。それが、もう今は何でもかんでも、いろいろな媒体があって、それで、少し変わった事件などはどんどんどんどん報道されるわけですから、これは、一般の方が関心を持ち、そして知識を持つ、そしてそこで強調されたことについて不安感を増幅するということになってくる。この点は、やはり状況の違いで大きく変わっているわけですね。

 そんなことを考えると、一概に、客観的に日本の治安状況が悪くなり、だれもが犯罪に対する不安を身近なものとして考えているかというと、必ずしもそうではないのではないかな、そんな思いがするわけですね。

 ですから、そういうさまざまなこともあわせてやはりお考えいただかないと、今度の、これはまた、重罰化することによって犯罪の抑止力があるかということについては、先ほども辻議員が相当執拗に主張されて、そういう効果はないということを言っておられると、私もそうではないかなと思うんですが。そういうこととあわせて、やはり、思い込みではなくて、そしてまた、あらわれた数字についても、それを国民の皆さんが、冷静に考えたらどう受け取っておられるのかも分析する必要がある、私はそんなふうに思っているんですね。

 そこでもう一つ、この提案理由の説明の中で、これもまたどんな御認識なのかなと思うこととして、二段目のパラグラフですけれども、「凶悪犯罪等については、刑法や刑事訴訟法に定められている有期刑や公訴時効の期間の在り方等が現在の国民の正義観念に合致しているのかという問題が、かねてから指摘されていたところでもあります。」ここで「国民の正義観念」という言葉が出てきております。

 それからその後に、そこで、凶悪犯罪を中心とする重大犯罪に対し、最近の犯罪情勢及び国民の規範意識の動向を踏まえた上で、適正な対処が可能になるよう、刑法、刑事訴訟法を改正して所要の法整備を行おうとするんだ、こうなっているんですね。

 そこで、それでは「国民の正義観念」というのはどういうことなのか。それから、それに続く「国民の規範意識の動向」ということについては、立法者としてどのような把握をし、どのような内容だと認識されておるのか。これをひとつお答えいただきたいと思います。

南野国務大臣 私の認識でございますけれども、国民の正義観念、今おっしゃられました規範意識、それは、何が正しくて何が正しくないと考えるか、また、みずからの行動を何に従って律していくべきかということについて、国民の一般の中にある意識という意味であると理解いたしております。自分がどう考えているか、正義感があるのか、また、そういったルールについて自分はやっていく、そういったことについての感覚ではないかなと思っております。

 規範意識の中には、犯罪を犯した者は一定の制裁を受けるべきであるという意味で応報感情が含まれていると思われますけれども、それだけではなく、人間の理性を働かせることにより犯罪とされる行動を思いとどまる、そういう意味を持っておるもので、抑止の面も含まれている。応報感情と抑止の面というようなものが、今先生のお話しになられた二つの概念の言葉の中にあるのではないかな、そのように思っております。

佐々木(秀)委員 今、大臣から応報感情という言葉が出されました、いみじくも。

 そこで、それとの関連をまたお尋ねしたいんですが、国民の正義感というのは、やはり正しいものは正しくあるべきだ、不正が正しいようにされるのはたまったものじゃない。黒は黒、白は白、はっきりしてもらいたい、単純に言うとこうなんですね。

 この間、前議員の鈴木宗男氏に対する事件の判決がありました。懲役二年の実刑でございました。まだ最終的にどうなるかはわかりませんけれども、仮にあれが、あの事件がもし無罪だという判決が出たとすれば、これは私は、恐らく国民の多くの、全部とは言いません、全部とは言わないけれども、大方の国民の皆さんはやはり納得しない。そこらあたりが、むしろ私は、標準的な正義感情、正義観念ではないかな、こう思うんですね。

 しかし同時に、そうかといって、それじゃ、もちろん悪いことをした者は法に従って処罰されなければならないというところまではわかるんですけれども、それがどのぐらいで処罰されなければならないかということになると、これはかなりまちまちだろうと思うんですね。極端に言う人は、悪いことをしたら、それが殺人でなくても、それはもう殺されてもしようがないんだなんというようなことを言う人もいるし、まちまちではあるわけだけれども、今大臣もおっしゃった応報感覚、これがイコール正義観念だというようにとらえられるか、いや、そうじゃないよということなのか、この辺はどうですか。

南野国務大臣 私は、同じではないというふうに思っております。

佐々木(秀)委員 そうだろうと思うんですね。そこら辺を何か誤解されたりすると、私は、またこれは大変な問題になると思うので、これは明らかに区別をしなければならない問題だろうと思うんですね。

 だから、そういう点で、ここで「正義観念」という言葉を使ったり、「国民の規範意識」はまあまあわからないではないと思うんだけれども、正義観念に合致しているのかどうかというような表現が、さて、この理由になるのかなということについては、やや私も的確性を、少し問題じゃないかな、こんなふうに思っていることを指摘しておきたい、こう思います。

 そこで、次に行きたいと思いますけれども、これらのことが、この法律改正で大幅な犯罪についての重罰化をする立法事実、つまり本当にこれを必要とする理由になるのかなということになると、さきの同僚議員からの質問のように、私はやはり相当問題があるんじゃないかな、こんなふうにも思っておるわけです。このことについては、お尋ねというよりも、私はそう思っているということを申し上げながら、そして、御承知のように、今度のこの法改正のきっかけになったのは、何といっても昨年の十二月の閣議ですね。十二月十八日に犯罪対策閣僚会議で決定された、犯罪に強い社会の実現のための行動計画の中の施策の一つとしての提案ということになるわけですね。

 もちろん、このときにはまだ大臣は入閣されておらないですから、直接にはかかわってはおられないわけですけれども、しかし、この行動計画に基づいての今度の改正を提案された。これは南野大臣が提案されたということになるわけですが、このもとになっている今の行動計画、これは目を通しておられるか。しかし、お忙しい大臣のことですから、御自分で全部お読みになっていないかもしれないけれども、その内容については担当者からお話を聞いておられるかどうか。その辺はどうでしょうか。

南野国務大臣 お尋ねでございます。私もいささか勉強はさせていただきましたが、十分とは言えないというふうに思っております。

 行動計画につきましては、本年六月に行われました犯罪対策閣僚会議においてフォローアップが行われたということでございまして、各省庁において行っております施策の進捗状況についての報告がなされたとともに、今後の進め方についても協議が行われたと承知いたしております。

 さらに、今回の改正は、このフォローアップにおいても、行動計画の重点課題の一つでございます治安回復のための基盤整備の重要な一環をなすものとして位置づけられているというふうに思っておりますし、このほか、法務省におきましては、各種法令等の整備、関係する組織の要員の充実、これも大切だと思っております。刑務所の過剰収容の解消と矯正処遇の強化、さらに、不法滞在外国人を半減するための出入国管理、それの体制の充実強化などを中心として、総合的な犯罪対策に取り組んでまいりたいと思っております。

 施策の具体例の一つとして申し上げるならば、各種法令等の整備ということにつきましては、人身取引、トラフィッキングといいます、に対する罰則整備や、少年の保護にかかわる調査手続等の整備について、現在立案作業中であるということも申し添えさせていただきたいと思っております。

佐々木(秀)委員 これからお聞きしようということについて、かなり大臣に先にお答えをされてしまったような感じもしないではないんですけれども、今お話がありましたように、この行動計画は、確かに犯罪に強い社会の実現のための行動計画でありまして、そして、さまざまな施策についての提言をされておるわけですね。

 例えば、「二 治安回復のための三つの視点」などということを入れ、そして三番目に、「犯罪情勢に即した五つの重要課題」というようなものを挙げ、そしてその中には、具体的には、平和な暮らしを脅かす身近な犯罪の抑止のために、施策として、地域連帯の再生と安全で安心なまちづくりの実現とか、あるいは二番目として、犯罪防止に有効な製品、制度等の普及促進。これは恐らく錠前だとか、かぎだとか、そういうものをきちんとするというような、そういう有効な、ベル装置だとか、あるいはその他防備のシステムだとかいろいろあると思うんですが、そういうことを言っているんでしょうね。それから三番目に、犯罪被害者の保護の施策を推進するというようなことを言ったり、また、実にその後細かく、自主防犯活動に取り組む地域住民、ボランティア団体の支援とか、空き交番の解消と交番機能の強化などということも言っているんですね。それから、自動車盗難防止装置の普及、被害者等に対する支援等の推進、ちょっとこれを並べるのは、同じような扱いでいいのかなというような気もしないではないんだけれども、非常に細かいことまで言っている。

 それから第二に、少年犯罪の抑止などということを言っている。それから第三番目に、国境を越える脅威への対応。これは、外国人の不法入国問題だとか、在日外国人の犯罪に関する対策だとか、いろいろこういうことも言っているんですね。

 そして、第五番目として、治安回復のための基盤の整備が必要だということを言っておりまして、その中の具体的なこととしては、警察官、検察官等の職員の増大、出入国の管理体制の施設を含めた充実強化、矯正施設の過剰収容の解消と矯正処遇の強化、それからまた、更生保護制度の充実強化。一々これはごもっともなんですね、確かに必要なことが並べられている。

 そして、その後に、第五の治安回復のための基盤整備のまた具体的な施策として、一から十四までいろいろな施策が挙げられているんですけれども、その中の十三番目に、凶悪犯罪等に関する罰則の整備、これが出てきている。「凶悪犯罪の法定刑の引上げ、現在二十年とされている有期刑の上限の引上げ等を含めた、凶悪犯罪等に関する罰則の整備について検討する。」こうなっているんです。これをするとは書いてないんです、検討すると書いてある。

 今申し上げましたように、十四番中の十三番目ですよ、この罰則の強化というのが。ところが、これだけ羅列をされて、今も大臣から、犯罪防止のために、安全な、安心できる社会をつくるための閣議として決めたところは、これこれこういう総合的な施策をやっていかなければならないんだというふうに言われたわけですけれども、その中で十三番目という一番最後の方に掲げられている罰則の整備、重罰化。

 しかも、これについて検討するとなっているのに、これももう既に御承知のように、この閣議を受けて、ことしの二月に法務省で法制審議会を開いて、刑事法部会がつくられて、ここで選任された人々による審議が四回にわたって行われて、ことしの七月の三十一日ですか、第五回目で、もうこれについての結論が賛成多数で決定をされて、そして、大臣に対する答申がなされた。非常に速いわけですね。拙速で、非常に具体的なんですね。

 なるほど、こうやって見ますと、ほかのことというのは、なかなか手間暇がかかる施策かもしれない、そしてお金がかかる施策かもしれないですね。それに比べると、この法改正というのは、なるほど、人的な努力、エネルギーは必要かもしれないけれども、金はかからないんですね。そういうことで速くされたのかと思わないではないけれども、それにしても、検討するどころじゃない、とんとんとんとんと進んで、そして九月に意見書が出されて答申されということになるのかな、それで十月にはもう法案になって国会に出されたわけですから。それで、十一月に今こうやって私たちが審議して、来週はもう採決しちゃおうというんでしょう。これはちょっと、随分速いなと思うんですよ。

 しかも、御承知のように、今私たちの前にあるこの刑法典というのは、何と今から百年前、明治四十年にできたものなんですね。いろいろ時代の情勢が変化するにつれて、この刑法典のままでいいのかという議論は今までもたくさんあったわけです。戦前も、改正刑法仮案なんというのがいろいろ研究者などの手によってつくられ、提案されてきたこともあったけれども、結局それは通らなかったんですね。戦後になってからは、御承知のように、もちろん憲法改正されましたから、それに合わない犯罪というのもあった。そういうものは排除されていくんですね。

 ところが、それでもなお憲法上問題があるのじゃないかというので、これはまた後でお聞きをすることになるかもしれませんが、御璽、つまり天皇陛下のお使いになる印ですね、これを偽造した場合の罪なんというのがまだ残っているんですけれども、これも今度の改正に絡んで非常に重くなっちゃうんだけれども、こういう問題がある。

 それからまた、かねてから問題だった尊属殺に対する刑罰の重さ、これが平等をうたっている憲法に反するんじゃないかというようなことで議論があって、これについては残されていたけれども、御承知であろうと思いますけれども、最高裁判所で憲法違反だという判決が出て、それを国会で受けて、これを改正して、そういう特別な重罰というのをなくしたということがございましたね。そういう部分的な改正、刑法は。

 それと、とにかく片仮名で難しい言葉で書いているんじゃだめだからこれを易しくしようやというので、そういう改正は行われたけれども、しかし、いずれにしても、刑罰全体を、全体について見直すという作業はこれまでなかったんですよ。

 それからまた、刑事訴訟法上の時効ですね、この期間を今度は延長するわけですが、これについても今まで手をつけられなかった。言ってみれば、そういう意味で、今度のこの刑を重くするという刑法の改正は、百年前にこの刑法が制定されてからの極めて大きな全体にわたる改正だということになる。だとすれば、これは、先ほど、前の辻議員からもお話があったように、別なことについては相当な時間をかけて、法制審議会での議が、大変時間をかけた審議が行われている。それに比べると、余りにも今回のこの改正の作業というのは拙速だったんじゃないかという指摘は、私はもっともだと思うんですね。

 こういうことについて、マスコミも若干書きはしたけれども、しかし、本当に国民の皆さんの話題になったのかどうかということについては、私はそうはなっていないんじゃないかと思っているんです。もっとこのことについては、この提案理由の中で、「国民の正義観念」などということが言われ、あるいはまた、治安に対する不安感ということも言われているんだから、それとの絡みで、国民の皆さんに広く意見を聞くということが、この法制審議会での審議の間に行われてもよかったんじゃないかと思われるんですが、そういうことがあったようにもどうも伺っていないですね。ただ、治安に対する世論調査は内閣でも行っているとは聞いていますけれども、それが必ずしも、こういうような刑法の改正を是とするかどうかということにつながる、そのための直接の問いかけとは私はちょっと思えないんですね。

 そういうことから考えますと、一つは、今度の法制審議会での審議のあり方についても、私は、これはかなり問題があるんじゃないかと思うので、そこで刑事局長などにもお聞きをしていきたいと思いますけれども、第一に、私も審議会の議事録を見せてもらいました、刑事法部会の。これは相変わらず匿名になっているんですね。委員さんの皆さんの発言というのは、丸ポツになっていて、この発言をだれがなさったのかということは推測するしかない。中に、弁護士である私がなんということを言っている方がいるから、この審議会の部会の中の委員に二人弁護士がおられますから、その二人のうちのどちらかであろうということはわかるんだけれども、そのどちらかもわからない。こういうふうになっているわけですね。

 これは、従来からずっと相変わらず、法務省の法制審議会、どこの部会も全部こういうようにして匿名のままなんですか、そして、顕名にすればどんな不都合があるんですか。その辺の理由をひとつお示しください。

寺田政府参考人 今お尋ねのありましたとおり、法制審議会の議事録は顕名でない形で公表させていただいております。これは実は、平成十年までは議事録を公開していなかった扱いなんでございますけれども、平成十年の際に、委員の方々で御審議をいただいた結果、現在のような扱いになっております。

 御承知のように、法制審議会は審議会令という政令に基づいて議事が行われておりますが、そこで、こういうことの扱いは審議会自体で決めるということになっておりますので、法律的にもそういうことが根拠づけられるわけでございますが、実は、平成十五年になりまして、いろいろまた事情が変わったかもしれないということで、再びこれについて御議論をいただいて、しかし、現在の扱いを維持するということでございまして、もう少し正確に申し上げますと、要するに、発言者の名前とプライバシーにわたる事項は、やはり明らかにするのを差し控えておきたい、あとは発言内容を全部記載するということで現在のところ来ているわけでございます。

 ただいま申し上げましたとおり、平成十年に一度こういうことをお決めになって、しかし十五年に再度御議論をいただいているわけでございますので、いろいろな事情ということを考慮して、審議会自体もいろいろお考えになるわけでございますので、今後もそういう事情をまたお酌みいただいて、御議論をいただくということになると思います。

 どういう不都合があるかということはなかなか、議論の中ではっきりした形で出ているわけではございませんけれども、しかしながら、この法制審議会の、特に部会の性質によりましては、いろいろな外部からの圧力等があるおそれがあるというようなことが理由になっていたことがございます。

    〔田村委員長代理退席、委員長着席〕

佐々木(秀)委員 ちなみに、司法改革の推進のための諮問会議がつくられましたね、あの議事録は全部公開でしたね。顕名だったと思います、発言者も全部。そういうことから考えて、どうも法制審議会が相変わらずこうやって非顕名、匿名にしている。前は議事録そのものが非公開だったから、公開になったというのはそれよりも一歩前進だといえば前進だけれども、私は非常に時代おくれの感じがするんですね。

 いろいろな意見を述べることによって外部からのプレッシャーがあるんじゃないかというようなことが心配の一つになっているのかというような、今お答えのようにも聞こえたんだけれども、しかし、少なくともこの審議会のメンバーになるような人というのは、それぞれやはり見識を持っている人たちなんだろうと思うんですよ。学者にしたって弁護士にしたって、あるいはその他の方にしたって。だから、そこでの発言をあげつらわれてどうこうなんというのを考える人というのは本当にあるんですかね、また、事実そういうことがあるんでしょうか。

 司法改革の方では、私は、少なくともそういうことがあったとは聞いておりませんし、そんなことを言うんだったら、この委員会での参考人の質疑などというのは全部公開ですからね。これは議事録もつくられて、この間だって、参考人、そうやって来ているわけですよ、現に、この法案の審議について。そういうこととの整合性を考えると、匿名にしておくということは、私は何とも納得がいかない。

 大事なことはむしろ、この審議会でどなたがどういうような意見を述べられたのか、あるいは皆さんがちゃんと意見を述べられているのか、そういうことをむしろ知ってもらうことの方が、私は大事なんじゃないかと思うんですけれども、こんなに丸ポツだけだったら、第一に、この委員の全員が本当に発言しているのかどうかだってわからないんですよ、これは、見ただけでは。

 それから、最後に、それぞれについて賛否を採決していますね。これも、委員が何人で、賛成した人は何人だ、反対した人は何人だという、それだけしか出ていないんです。だれとだれが賛成し、だれとだれが反対した、これだってはっきり出して、公の立場を明らかにした方が私はいいと思っているんだけれども、現に、これはもうそれでやられてしまっていますから、今後の審議会のあり方として、これはぜひ検討してもらいたいと私は思いますね。こういうことのままでは、それでなくたって、情報公開法もできたり、できるだけ国民の皆さんに広く情報を、行政情報を伝えようなんというときに、これを隠しておくというのは、私はどうしても納得がいかないので。

 第一、これについて、この部会が置かれたときに、これから議論をされることで議事録をつくるということは、皆さんがわかっているんだろうと思うけれども、これを匿名にするかどうかについての御相談というのはあったんですか。全くそういうことのないままに審議がなされて、この議事録が匿名でつくられた、こういうことなんですか。どうなんですか、そこは。

寺田政府参考人 最近はテーマごとに部会を設定するということになっておりますので、今委員のお尋ねは部会でどうだったかということだろうと思いますけれども、法制審議会は総会全体で顕名をしない扱いというふうにいたしておりますので、部会も自動的にそのような扱いをするということで御説明をいたしております。

佐々木(秀)委員 要は、協議していないということですね。協議していない。それでは、そうお聞きをしておきます。

 そこで、私は拙速だったんじゃないかということを言ったわけですけれども、第二回の部会の議事録を見せてもらったんですが、ここで、ある委員がこういう発言をしています。

 今回凶悪重大犯罪の関係ということでこの部会が設けられて、それが主として根拠になっているわけですが、凶悪重大犯罪とは言えないものも含めて、すべてのものが法定刑が十五年から二十年に上がる、つまり、それだけの犯罪についての構成要件的な評価を変える必要があるということが提案されているわけでして、本当にそれがそうなのか、またそうでない犯罪もあるのではないかということもありまして、まずそれを一覧表を見ながら論議しなければ、余り抽象的に議論しても意味がないのではないか。つまり、すべてについてそういう法定刑を十五年から二十年に変えるというような必要は現在あるのかという点に関して、やはりそういう具体的な犯罪を前提に議論しなければそれがわからない、つまり、上げる必要のないものがあるのかもしれないということが議論されないままに終わってしまうのではないか、そういうふうに思うのでありますがという発言をしている。

 つまり、凶悪重大犯罪についてといいながら、ほかのものについても全部、十把一からげにやっているじゃないか。さっき私がちょっと言った例の御璽の偽造、これも非常に重くなっている。これなんかは、そのまま、今のままでも実は憲法上問題があるのではないかとさえ言われていたのに、これが非常に重くなって、俗にいわゆる公印偽造の罪に対する罰則よりも今度はぐんと重くなっちゃうんですね。こういう結果が出てくるわけですよ。

 ですから、そういうことについては本当はもう少し丹念に検討をすべきだったんじゃないか、本当だったら部会の中に小委員会ぐらいつくって、もう少しきめの細かい議論をしてもよかったのじゃないかと思うんだけれども、まず、小委員会の設置などという提案は全くなかったのかどうか、それから、今の委員の発言に対する対応のようなことについては議論がなかったのかどうか。これは刑事局長はメンバーとしてずっとお出になっているわけだからおわかりだろうと思うんだけれども、その辺の状況と事情についてお答えください。

大林政府参考人 まず、部会の中に小委員会をつくって個別の罪種ごとに検討すべきだという意見がなかったかということでございますが、刑事法(凶悪・重大犯罪関係)部会における審議は、凶悪重大犯罪に対する法定刑のあり方がどのようにあるべきかという点で、各罪種ごとの法定刑相互のバランス等も踏まえながら進められ、所要の審議を終えて部会としての結論が出されたものであり、この結論が出されるまでの審議過程において、小委員会を設け、個別の罪種ごとに検討すべきであるという意見はなかったものと承知しております。

 それから、今委員御指摘の、すべての罪種について一律に法定刑の上限を引き上げる必要があるのかということにつきましては、これは委員からのお話があり、また法務当局からも全体的な刑罰の一覧表をお示しして、皆さんの議論の中で参考にしていただいたということがございます。

 ただ、今回、有期刑に係る法定刑の上限を引き上げることとしていますのは、現行刑法における有期の懲役や禁錮の上限が十五年であることについて明治四十年に現行刑法が制定されたときから変更が加えられていない、その後の約百年の間に罪を犯して刑に処せられる者を含めた国民一般の平均寿命が大幅に延びたことなどもあり、この十五年という期間をもって有期刑に係る法定刑の上限とするのは、国民の刑罰観に係る規範意識に合致してはいないのではないか、また、無期刑に処する場合との差が大き過ぎるのではないかとの指摘がなされていることなどを踏まえたものでございまして、個々の特定の罪の法定刑が軽過ぎることを理由としたものではございません。

佐々木(秀)委員 いずれにしても、私は拙速の感を免れないと思うんですね。全体的な作業の状況を見てきますと、もう初めに改正ありきというか重罰化ありき、そのスケジュールに合わせて審議が行われてきているようにも思われてならない。

 そして、採決の結果を見ると、全部で、部会長を含めて委員は十八人ですかね、採決のときは十六人だったのかな。そのうち最終的に反対をしたという人は二人。これは恐らく、弁護士の委員が二人だったので、この弁護士出身の委員二人じゃないかなと思うんです。そのほかは、刑事局長も入っておられるし、それからまた最高裁判所の刑事局長もおられる。あるいは警察関係の方、それから学者が数名いるわけですね。

 それで、学者がみんなこれにやはり賛成しているというのも、どうもちょっと腑に落ちないんですね。というのは、この改正に対して反対するという刑事法学者四十八人の署名入りの意見書というのも出されていますね。これはもちろん刑事法学者の全部ではないことはわかるんですけれども、それにしても、私どもが議論をしてもこれだけいろいろ問題があるという指摘があるわけですから、専門家の刑事法学者の委員の中からもう少し厳しい意見などもあってもいいのではないかと思うんだけれども、どうも議事録を見るとそれほどではないんですね。

 そういうことを考えると、大体、審議会の学者委員の選び方そのものにも何か問題があるんじゃないかなんて、余り募集をしたというようなことじゃないんだろうと思うんですけれども、法務省の方で、やはりこの趨勢に賛同されるであろうというような方々を選択して依頼をしたんじゃないかというようにも勘ぐりたくなるんですけれども、この委員の選び方というのはどのように行われたんですか。

大林政府参考人 今委員の御指摘のとおり、それぞれの分野といいますか、裁判所は裁判所、あるいは警察は警察といろいろ分野がございますので、そういう知識経験の多い方、一方では、学者の方でもやはりそういう問題について関心を持っておられる方を中心にして選んでおります。特に意見によって差別するとかいうことは考えていないというふうに考えております。

佐々木(秀)委員 そういう公式的なお答えになるだろうとは思いますけれども、どうも、この流れとそれから議事録などを読ませていただいた内容などから考えると、私が言ったようなことがないでもないように思えてならないんですがね。

 これはもう、ここでやっても水かけ論になっちゃうかもしれませんからこの程度にしますけれども、しかし、いずれにしても、世の中にはいろいろな意見があるわけですから、私は、広くいろいろな意見を聞いた上で、それでやはり納得のいくような結論を得るようにしないと民主的ではないし、本当に役に立つものになるかどうかということについても疑問が出てくるんじゃないかということを恐れるわけです。議事録の顕名の問題を含めて、審議会のあり方も、ぜひ今後の課題としてお考えいただきたい、私はそういうふうに提言をしておきたいと思います。

 それから、この議事録を見ますと、第五回の部会の一番締めのところで、事務当局の代表として発言をされている方があります。これも顕名でないので名前が出ておりませんけれども、これはどなただったのか、差し支えなければお答えください。あるいは局長だったのかもしれないですね。

大林政府参考人 個別の発言者の特定は原則として差し控えたい、こういうふうに存じますが、今御指摘の部分につきましては、事務当局を代表して、あるいは、前任者が申し上げましたように、との発言がございます。明らかでございますので、あえて申し上げれば、私でございます。

佐々木(秀)委員 正直にお答えいただいて、結構でした。そういうようにありたいものだ。ぜひこれからお願いしたいと思うんですけれども。

 そこで、これが決まりましたのが七月の三十日、第五回の部会ですね。これでもう賛否で採決をするというときに、そのこと自体についての異論というか意見はなかったんですか、だれからも。採決に反対している人はいるんだけれども、採決自体、このときにもう決めちゃおうということについて、もっと慎重に審議するべきだという意見はなかったのかな。

大林政府参考人 審議自体は非常に充実してなされていると思います。今御指摘の点、議事録で明らかだと思いますが、審議し、採決して結論を出した、そこまではそういうお話はございませんでした。ただ、採決後に、委員御指摘のような感想めいた御意見があったことは事実でございます。

佐々木(秀)委員 私は、それが出て当然だと思うんですよね。にもかかわらず、こういうようなことになって、とんとんとんと進んでいったことがいかがなものかな、こう思っているわけです。

 それで、その翌日、これは資料の中にある新聞も書いているわけですけれども、例えば七月の三十一日付で読売新聞、見出しは「刑罰強化 抑制効果は不透明 刑務所過剰収容など課題も」。これもきょうの質問にも出ていましたけれども、結局、こうやって刑を長引かせることによって、つまり有罪になった懲役囚の収容が長引いていって、それがまた、そうでなくても今過剰収容だと言われている矯正の状況、これを一層悪くするんじゃないかという心配ですね。これはやはりマスコミもこう言っているわけですよ。

 同じように、同日付の朝日新聞も、「有期刑上限引き上げ 受刑者増に拍車 更生・社会復帰にも影響」。こういう心配を現にマスコミがしているわけですね。

 こういうような心配が、マスコミはしているけれども、一般の人になかなか、実は報道不足でわかられていなかったということにこれまた今度の改正の問題があるのではないか。もろ手を挙げて私どもとしても賛成するのにいささかちゅうちょするというような思いが、どうしてもそこで出てくるわけであります。

 法務大臣、昨年の閣議決定、私もさっき紹介いたしました、例の行動計画ですね。この中で、さまざま犯罪防止の施策などが挙げられているわけですけれども、それを総合的にやらなければ犯罪防止効果あるいは犯罪に強い社会実現のための効果は上がらないんだ。これは本当におっしゃるとおりなんですが、だとすると、いろいろ掲げられてはいるけれども、南野法務大臣としては、これから最も力を入れて、しかも早くやりたいということはどんなことなのか、これをひとつお聞かせください。

南野国務大臣 先ほど申し上げたことがすべて重要ではありますが、一番大切なことは、やはり予算、そういうものにも影響してまいるかなと思っております。

佐々木(秀)委員 予算に影響するというよりも、予算に関係する。ですから、それの中でも特にどういうことについて予算をつけたいんですか。

南野国務大臣 どれが先でどれが後かということは申し上げられませんが、今一番重要課題というのは幾つかございます。

 それは、行刑改革の中での刑務所をどのような形で早くつくっていくかということもあるでしょうし、さらにまた、今一番最初に申し上げた、マンパワーをどのように整えていくかということもございます。そういうようなものがあって、どれが一番、どれが二番ということはちょっと言えないんですが、ここに掲げてあることを本当に全部したいなというふうに意気込んでいるところでございます。

佐々木(秀)委員 法務大臣としてのお立場からは、例えば教育の問題だとか何かは管轄外だ、別のジャンルだということにもなるのかもしれませんですね。しかし、おっしゃったように、総合的にやらなければならないとすれば、特にこの中でも掲げられているように、例えば検察官をふやすとかいうようなことだとか、法務省として法務行政の中でやらなければならないことというのはたくさんある。そして、それに対しては、やはりお金がかかることもある、それからまた、他の省庁と協力関係を持たなければならないこともある。

 そういうことをやはり法務大臣として、特に、大臣、就任のごあいさつの中で治安のこと、人権もさることながら治安のことを非常に力説しておられるわけだから、そのことを強く閣議の中でも主張していかれて、必要なところには人を配置する、そしてまた、予算を獲得することについて最大の御努力をいただきたいと思うんですけれども、その御決意はどうですか。

南野国務大臣 先生のおっしゃるとおり、決意を持って臨みたいと思っております。

佐々木(秀)委員 そろそろ時間でございますので、終わりたいと思います。

 実は、そういうことで、南野大臣には市民感覚を大事にして司法行政のつかさの長としてしっかりお働きをいただきたいと同時に、そして、何といっても、やはり開かれた司法、そして公正な司法、国民の皆さんに納得していただける司法のあり方でなければならないと思います。

 法律のつくり方にしても、本当にそれが皆さんのために役に立つのかどうか。そういう意味では、今度のこの刑法改正、重罰化というのは、犯罪の抑止的な効果というのはほとんどない。これはさっき辻議員が言ったのを、私もそうだと思います。本当に犯罪をなくしたり、安心、安全な社会をつくるためには、それと違うさまざまな施策が必要なわけですから、そういうことにこそ力を尽くすべきだと私は思っております。

 同時に、それをつかさどる大臣としても、公正でなければなりません。そういう意味では、きょうは時間がありませんからお聞きをしませんでしたけれども、大臣の政治資金にまつわる問題、疑惑と言ってもいいのか、あるいは法律的には余り問題にはならないかもしれないけれども、しかし、いかがなものかと思われるような風評もなくはありません。こういうことについて、きょうはお尋ねをいたしませんけれども、いずれまた機会がありましたらお聞きをするかもしれませんので、そのときはまたどうぞよろしくお願いしたいと思います。

 以上、申し上げまして、質問を終わります。ありがとうございました。

塩崎委員長 次に、松本大輔君。

松本(大)委員 民主党の松本大輔です。

 この臨時国会から新たに法務委員となりました。初心者でございますが、どうぞよろしくお願いします。

 ところで、大臣は最高裁判所には行かれたことはありますでしょうか。

南野国務大臣 はい。行ってまいりました。

松本(大)委員 私も法務委員になったということもありまして、先日行ってまいりました。

 大臣は女性でいらっしゃるわけなんですが、最高裁の中に正義の女神の像があったのはお気づきになられましたでしょうか。

南野国務大臣 はい。お示しいただきまして御説明いただきました。

松本(大)委員 最高裁の大法廷の前の大広間、入り口から入っていって右手のところに正義の女神像がありまして、右手に勇気を示す剣を高々と掲げて、左手に公平と公正を示すてんびんを持った例のものなんですが、御説明をしていただいた方に伺いましたところ、つくられた方が私と同じ広島県出身の方、圓鍔勝三さんという彫刻家の手によるものだと伺いましたので、しげしげと眺めてみましたら、普通の正義の女神の像と違う点が二点ありました。

 まず一つは、顔が東洋的な仏像のようなお顔をされているということですね。もう一つは、目隠しがないということでございます。これは、考えてみますと、正義の実現のためにはしっかりと我が目を見開いて真実を見定めるぞ、そういう強い意志のあらわれではないかなと、私は、その像からそういう力強い何かを感じ取ったわけでございます。

 私は法律家ではございません、元銀行員でして、そのときによく先輩から、上司から言われましたのは、銀行員というのは健全な懐疑心というのを持っていなきゃいけないんだと。経営計画を出される、あるいは企業の財務諸表を読む、その際に本当にこれは大丈夫なのかという健全な懐疑心というものを持っていなければいけないと。私は、これは別に銀行界だけではなくて、産業界だけではなくて、政治の世界も一緒じゃないかなというふうに思うわけであります。後ろから耳元でささやいてくださる秘書官の方が、あるいは振りつけをしたがる官僚の方がいつも真実を教えてくれるわけではない、私はこのように思っております。

 これは法務に限った話ではないんですけれども、勉強会ですとかあるいは私の部屋にお越しいただいて、いわゆるレクを受けると、さすがに賢い方々のお話だけあって、それはそうだな、うん、なるほどな、結構なことだと。一見、なるほど、もっともだなと納得してしまいそうになるんですけれども、そうはいってもやはり政治家というものは、野党であれあるいは与党であれ、本当に大丈夫かな、官僚のつくられた法案に対して本当にこれで大丈夫なのかなと、健全な懐疑心を持って臨まなければならない。その上で、これは正しいんだと真なる信念を持つに至ったら、それは、そのときは勇気を持って断固としてその正義を実現していくというのが私は政治家の務めではないかなというふうに思うわけです。

 ところが、その意味から、その観点から考えますと、私は先日、本会議で大臣に質問をさせていただいたんですが、正直申しましてちょっと失望というか残念でございました。それは、答弁内容もさることながら、大臣は官僚のつくられた原稿を棒読みされていたからなんですね。通常であればこんなことは申し上げないんですけれども、承るところによると今回の刑法改正は、もとはといえば、大臣が座長をお務めになられた、与党の女性と刑法のプロジェクトチームから端を発したものであるというふうに承知をしております。

 大臣のホームページをちょっと写し出してきたんですけれども、似顔絵がありますね、十一の政策のうちの八つ目として、集団強姦罪の検討ということを盛り込んでいらっしゃるわけです。ということは、今回の法案というのは大臣にとっては相当思い入れの深い法案だったのではないかな、私はそのように思ったわけです。大臣、どうですか、違いますか。この法案、相当思い入れがおありだったんじゃないんですか。

南野国務大臣 はい。その当時も、いろいろな大きな事件になった出来事がございました。そういう事件を通しまして、我々女性というものをもうちょっと大切にしてもらいたいな、物とそれから命と、どういうふうにそれをはかっていくのかな、そういうような気持ちがあり、ぜひその問題については解決していこうと思い、そのプロジェクトチームを立ち上げまして、前野沢大臣に申し入れをしたところであります。

松本(大)委員 こんなに長く南野大臣御自身のお言葉をお聞かせいただいたのは初めてのような思いがしまして、非常にうれしく思いました。

 政治家としての思い入れというのは、本当に今のような御答弁であれば伝わってくるんですが、ただ、その本会議のときの提案理由の説明ですとか私の質問に対する御答弁については、残念ながら官僚の作文の朗読じゃないかと。法案の生みの親としての熱い思いというのが伝わってこなかったんですよ。私は、それが非常に残念に思ったわけです。先ほど正義の女神の像のお話をしました。しっかりと我が目を見開いて真実を見定める、信念を持つに至ったら断固として実行する、そういう正義の女神の像のような大臣のお姿を期待していただけに、ちょっと残念に思ったわけでございます。

 本日は、そういう経緯もありまして、前回の本会議で御質問をさせていただいた質問の更問いをさせていただくようなつもりでまいりたいと思いますので、ぜひとも御自身のお言葉で、なおかつ納得のいく説明というものをお願いしたいと思います。

 やはり、真っ先に確認させていただきたいのは、今回の法改正の目的であります。それを伺った上で、この法案が本当にその目的にかなっているのか、健全な懐疑心を持ちつつ検証していきたいというふうに考えるわけですが、まず、そもそも論に立ち返ってみたいというふうに思います。

 そもそも、今回の法改正の目的とは何でしょうか。提案理由説明、ちょっと長いんですが、端的にお答えいただけますでしょうか。

南野国務大臣 法改正の目的といいますと、私が担当したその部分だけではありませんので、全体をお示ししなければならないというふうに思います。

 その問題点につきましては、近年、人の命それから体、生命や体に重大な危害を及ぼす凶悪重大犯罪が絶えておりません。また、我が国の犯罪情勢は厳しい状況にあります。そういうようなことから、犯罪について現在定められている刑の長さが国民感情に合っているのかな、そういうような指摘もなされました。また、昨年十二月に取りまとめられました犯罪に強い社会の実現のための行動計画、それにおきましても刑事法の整備が求められております。

 今回の法案は、そのような状況を踏まえまして、凶悪重大犯罪に対し適正に対処できるよう、刑法等を改正するという信念でございます。

松本(大)委員 そこにカメラがありまして、恐らく、法学部生の方とかあるいは政治好きの方が、きょうのこの議論を何人かの方が見ていらっしゃると思うんですが、ぜひとも司法へのアクセスを高める上でわかりやすい御説明をいただきたいな、こう思うわけなんです。

 今大臣の御説明の中には、凶悪重大犯罪の増加傾向というものに対処していきたい、それから、国民感情に果たして現行の体系が合っているのかどうかというような御趣旨の発言があったんですけれども、これを法律案提案理由説明という中から拾い上げるとすれば、「凶悪犯罪その他の重大犯罪の増加傾向」というものですとか、あるいは「国民の規範意識の動向等」ということになるんではなかろうかというふうに思うんですけれども、それを一つずつ、そういったもののそういう目的をかなえるためにこの法案が合致しているのかどうかというところをちょっと検証させていただきたいなというふうに思います。

 現行の法体系が国民感情に合っていないのではないかという、「国民の規範意識の動向」というところで恐らくあらわされている言葉だと思うんですが、これはそういう理解でよろしいでしょうか。

南野国務大臣 そのとおりでよろしいと思います。

松本(大)委員 それは本当でしょうか。要するに、現行の法定刑では軽過ぎるというふうに思うようになったという、その国民の規範意識が変わってきているんだということは本当ですか。どういう根拠に基づいてそう変わっているのかということを御説明ください。

南野国務大臣 根拠となる点も含めまして、今回の改正案におきましては、近年の犯罪情勢などを踏まえて、やはり犯罪の性質または刑法の規定など、それを考慮しながら法定刑の引き上げ幅を決めております。

 有期刑の上限の見直しということもありますけれども、それにつきましては、犯罪情勢や国民感情の変化または平均寿命の延びなどを踏まえて、適切な刑を科すことができるようにするために必要な見直しを行うということでございます。

松本(大)委員 今の御答弁は私の問いに対する御答弁にはなっておりません。国民の規範意識の変化が、変わっているというその根拠を示してくださいというふうに申し上げているので、質問に的確にお答えいただきたいと思います。

南野国務大臣 近年の刑法犯の認知件数が増加を続けている、これは御存じのことと思います。平成十五年は、その増加の主な原因になっていた窃盗の認知件数が減少に転じたことから、刑法犯罪全体の増勢にも歯どめがかかったものの、人の命や身体等に重大な危害を及ぼす凶悪犯罪を中心とする重大犯罪の増加、これは依然として続いております。

 犯罪情勢及びそれに対する国民の意識などにつきましては、刑罰法令を所管する法務省といたしましても常々最大の関心を持ってその動向に留意しているところと聞いておりますし、今回の改正につきましてもそのような動向を踏まえたものであると承知しております。

 例えば、最近公表されましたものを見ましても、法務省の犯罪被害実態調査によりますと、平成十六年二月の調査におきましては、過去と比較して我が国の治安状況が悪くなったとする者の比率が七五・五%を占めており、内閣府の治安に関する世論調査によりますと、平成十六年七月の調査におきまして、ここ十年で日本の治安が悪くなったとする人の割合が八六・六%もございます。その他報道機関による世論調査の結果としても、多くの国民が日本の治安が悪くなったとの認識を示した、そのことの報道が多数なされていると承知しております。

松本(大)委員 同じことを何度も言いたくないんですけれども、今の大臣の御答弁は、犯罪がふえていると、その数字を今おっしゃったわけですね。二点目は、治安が悪くなったと、犯罪に遭うかもしれないと思うようになったという人がふえたということをおっしゃったわけですよ。その二点です。

 だけれども、僕の質問は、法定刑を引き上げろ、甘いんじゃないか、もっと厳正に対処すべきだというのが国民の規範意識の変化であるとすれば、それはどういうデータに基づいているんですか、それを示してくださいと申し上げているんですよ。

南野国務大臣 根拠と言われますと、数字を出せということであろうかと思いますが、そういうことでなく、今お話るる申し上げました、そういうことを、そういう観点に立ちまして、正義感とか規範意識が変化しているということを申し上げているわけでございます。

松本(大)委員 今のは本当にひどい答弁です。

 端的に申し上げれば、全く根拠がないと開き直っていらっしゃるのと同じでございます。るる申し上げたとおり、そういうこと、これで私に理解しろとおっしゃられるのは大変厳しいと思うんですが、もう一度お尋ねします。

 規範意識が変化しているというのは何を根拠にされておっしゃっているのか、明確に御答弁ください。

南野国務大臣 今お尋ねの件ですが、「あなたは、犯罪を減らすために、何が最も有効だと思いますか。」という、そのデータでよろしいですか。

 そのデータによりますならば、刑罰の強化をしてほしいというのが一六ありますが、もっと多いのが景気や雇用対策であったり、またはモラルの向上であったり、それから地域住民の連携というようなところもそのアンケートの中には含まれておりますが、我々の観点からすると、やはり刑罰の強化というようなところも社会的、みんなの認識度というところにあるのではないかな、そのように思っております。

松本(大)委員 一六ありますとおっしゃったんですけれども、これはどういうことですか。

 まず、その母集団というかサンプル数とか、何%なんだとか、どういう人を対象にされたのかとか、そういうことをおっしゃっていただかないと指標にならないんですけれども。

南野国務大臣 これはタイトルでございますが、「治安・安全 高まる関心」、地域などで自衛策という朝日新聞社国民意識調査によります。二〇〇四年一月二十七日朝刊の十五ページに載ったようでございます。

松本(大)委員 法務省の、刑法を百年ぶりに変えるという大改正ですよ、大臣。僕らがみんな死んで何年かたって、刑法の勉強をしようという人が、あのときどういう議論が行われたのかなと思って検索をされて、この議事録を読まれるかもしれないんですよ。歴史の重みというのをわかった上で答弁してくださいよ、ぜひ。

 朝日新聞の調査だけで、それでもって今回の法改正の根拠とされたんですか。

大林政府参考人 今大臣からは朝日新聞の話が出ました。これは、先ほどから引用されている法律案の黄色いやつの中の五十八ページにございます。読売新聞の国民意識調査におきましても、刑罰の強化を……(発言する者あり)いいえ、朝日新聞もですけれども、朝日新聞もさっきの一六%が出ていますけれども、その中に読売新聞の結果が、これは平成十五年二月で四四・七%あります。

 今委員御指摘のとおり、一つの指標の参考資料として今掲げさせているものでありまして、今回の罰則の強化につきましては、いろいろな方の意見がございます。それをいろいろな形で集約させていただいたものでございまして、御指摘のように、今の新聞のこれだけをもって今回の刑罰の引き上げに当たったというわけではございません。

松本(大)委員 朝日新聞と読売新聞のデータだけじゃない、いろいろな方の御意見をいろいろな形で集約されたとおっしゃいましたけれども、であるならば、それを出してくださいよ。今この場で出せないのであれば、この審議が続いている間にぜひ我々に見せていただきたいと思います。そうしないと、本当に規範意識が変わっているのかどうかということを我々検証できないじゃないですか。

大林政府参考人 私ども法務省あるいは官邸へのメール等がありまして、その中で今の刑罰が軽いのではないかという御意見が寄せられているのは事実でございます。整理してまたお示しできるようにしたい、こういうふうに思います。

松本(大)委員 今手元にそういった根拠となるものを何もお示しいただかないままこの先の議論を進めることが適切なのかどうかという疑問を私は禁じ得ないわけでございますが、お示しいただけるということなので、ぜひそれを、ではいつまでにどういう形でお示しいただけるのかだけちょっと教えてください。

大林政府参考人 今私、メールの話を一つの例として申し上げたんですが、なかなか、その中身について御説明できるものとできないものがあります。ちょっと私の方で検討させてください。

松本(大)委員 立法根拠が説明できないというのは、立法根拠のない立法をされていると言っているに等しいと私は思うんですけれども、説明できないというのはどういうことなんでしょうか。

大林政府参考人 一つの例で恐縮ですけれども、御議論になっています例えば法制審議会の議論、これについては、いろいろな資料をお示しして結論を得たわけでございますけれども、これも各界の方が出ておられます。ですから、そういう広い国民の意見ということにつきましては、いろいろな調査結果、今委員御指摘の刑罰を上げろという直接的なものについてのデータというのはなかなかまとめがたいのですけれども、今まで御説明している例えば我が国の治安に対する意識の問題、今のままは悪いと。それから、内閣における行動計画において、罰則の整備もしなければならないというような問題、いろいろな角度から今の罰則が今のままでよろしいのかということが議論されてきたわけでございます。

 ですから、直接、例えば先ほどのような新聞記事の問題もそうでございますけれども、罰則について、各党の政治家の方々についても、いろいろ御意見を寄せられているところですし、罰則はやはり今のままでいいのかという御意見を聞いたこともございます。ですから、そういう総合的な意味において、今の刑法、このままでいいのか、特に凶悪重大事犯についてこのままでいいのかという御意見は多い、それなりの支持を得ているものというふうに考えております。

松本(大)委員 御自身で御答弁なさっていて正直苦しいと思われませんか。客観的指標がこの場で示されないのに、それを根拠に行われた立法について審議しろと言っている方が僕は無理があると思うわけなんですけれども、いつまでにどういう形でお示しいただけるんですか。とりあえず、その……(発言する者あり)データですよ、だから。根拠になっているものですよ。いつまでに、どういう形でお示しいただけるのですか。それはあるとおっしゃったじゃないですか。

大林政府参考人 先ほどからも申し上げているとおり、先ほどの最初のきっかけが、新聞の世論調査の結果が出たものですから、それを一つの例に挙げたわけですが、今申し上げているとおり、内閣として、今のままの罰則ではいけないという形の行動計画が出ているわけです。これは多数の人の御支持を得ている、その結論だというふうに思います。ですから、そういう項目別のものとして、今のままでいいのか、治安に対していいのかという形で、項目別なものについては、それはある程度まとめられると思いますけれども、それは、今のような総合的な問題として今度の改正の必要性というものを申し上げているわけでして、そういう項目的なものでよければ私どもも検討したいというふうに思います。

松本(大)委員 内閣として行動指針が出ているからそれは国民から支持されている証拠なんだというのは、全く根拠になっていないと思います。自衛隊が活動しているからそこは非戦闘地域なんだと言っているのと同じような理屈でございます。内閣として行動指針を出しているからそれは御支持を得ているんだというのは、全く論理的思考にはなっていないですね。御説明になっていないと思うんですけれども。

 要するに、何が言いたいかというと、客観的指標がない、要するに仮説をあなた方は立てられたわけでしょう。規範意識が変わっているんだ、甘過ぎるんじゃないかという仮説を立てられたわけですよ。仮説を立てられた以上は、それは根拠がなければ仮説にすぎないんですよ。仮説が結論を導くためには、立証の必要があるわけでしょう。立証をするためには、仮説を立証するためのデータというものが、客観的な裏づけというものが必要なのは物の道理じゃないですか。それを示してくださいと言っているのに、ないと。いろいろ集約したけれども何となく渋っていらっしゃる。これでは議論が続けられないんですよ。だから、どういう形のデータがあって、それをいつまでに示せるのか、お答えください。

大林政府参考人 内閣の問題も出てきました。政治家の方々も当然含まれている話でございます。

 一つの例として先ほどの例も申し上げたところでございまして、今の項目別に、今の治安に対しての刑罰引き上げについて、どのような、例示といいますか、そういうものがあるのかということであれば、私ども、できるだけ早急に項目のピックアップはしたいというふうに考えておりますけれども、ただ、その内容は、今まで申し上げているとおり、行動計画とか、先ほどの新聞の罰則に関する記載とか、それから治安に対する国民の要望とか、いろいろなそういう意味を総合的に言っているものですから、その程度の、その程度と私が言っちゃまずいですけれども、そういうものであるということで御理解いただければ、私の方でまとめたいというふうに思います。

松本(大)委員 今のはちょっと許されない御答弁ではないかなというふうに思います。その程度のものというのは、どこかの総理大臣もおっしゃっていましたけれども、その程度のものと言われているようなものを根拠にして、人の自由や尊厳を奪って、時には生命を奪うような罪刑を決めるわけでしょう。許されるのですか、そんな議論が。とんでもない話ですよ。

塩崎委員長 ちょっと速記をとめてください。

    〔速記中止〕

塩崎委員長 では、速記を起こしてください。

 大林刑事局長。

大林政府参考人 失礼しました。

 根拠となるものについて、次の委員会までにまとめたい、こういうふうに思います。

松本(大)委員 ありがとうございます。

 次の委員会までにまとめていただく際には、ちょっと御確認なんですが、治安のことは聞いていません。治安が悪化したかどうかというようなデータは聞いていません。法定刑の引き上げで対処すべきだという声を集約したもの、それが読み取れるようなデータが手元にあるということなので、そのためのデータを出してください。それから、新聞だけじゃないとおっしゃいました。いろいろなところからいろいろな意見を集約されたとおっしゃいましたので、提出される際には、新聞のネタではなくて、実際にいろいろなところからいろいろな集約をされたとおっしゃるんだから、その種の指標というかデータを示していただきたい、これをちょっと御確認させてください。

塩崎委員長 松本委員に申し上げますが、一つ二つのデータで決めたことではないことはもう御案内のとおりでありまして、私どもとしては、法務省に対して、総合的に判断した根拠を総合的に見せろ、こういうふうにお願いをしているつもりでございますので、そのように御理解をいただいて、法務省もそのような形で総合的な説明をきちっとできるように次回までに御用意をいただきたい、こう思います。

松本(大)委員 ありがとうございます。よろしくお願いします。

 そのデータを示していただいて、もっと厳正に対処すべしという声が実際にあるんだ、規範意識が変化しているんだということを認めたとして、その矛先というのは二種類あるんじゃないかなと思うんですよね。一つは、法定刑を引き上げてくださいというもの、もう一つは、裁判所の下す判決が軽過ぎるんじゃないかなという方向に向いている可能性だってあるわけなんですが、今回は法定刑の引き上げで対処されたということは、これはあくまでも、裁判所の言い渡し刑に対する不満ではなくて、法定刑がそもそも甘いんだというところに国民の要請というか要望は向いているんだなという御理解をされたという認識でよろしいですか。

大林政府参考人 今の裁判が軽過ぎるかどうかというのは、個別の問題でございますので、何とも言いがたいところではございます。

 私どもとしては、裁判所の、先ほども議論のありました、例えば無期刑と有期刑の十五年、二十年の差の間に今のところない、要するに、無期刑の手前はそのようなもので、実際の実務上どちらにするかというのは、法曹三者においてそれぞれ悩みを持つところでございます。そういう面において、その間を埋めるような形、形としては引き上げ、有期刑の引き上げという形にはなりますけれども、その間を埋めるような形で、裁判官の裁量性が広がって、その間に適切な刑を言い渡せるようになるということは、これはよいことではないかなというふうに私どもは考えております。

松本(大)委員 裁判官の裁量が広がって適切な刑を言い渡せるようになるとおっしゃいましたけれども、先ほど辻委員の質問の際に、殺人を例えば例に挙げれば、五年以下の言い渡しが四二・四%を占めるというものがありました。法改正によって適切な刑の言い渡しが可能になるということは、ちょっと辻委員の御質問の繰り返しになりますが、今四割以上が五年以下の言い渡しになっているというのは適切ではないというお考えなんでしょうか。

大林政府参考人 まず、統計上の問題で一つつけ加えさせていただきますと、その殺人の中にはいわゆる殺人未遂も入っている統計でございます。ですから、結果として軽いようなものも入るし、あるいは、殺人自体にも、時々報道されますけれども、介護疲れの問題とか、非常に同情すべき事案もあります。ですから、具体的な事案の中には非常に軽いものもございます。ですから、そういうものについて量刑がおかしいと言うつもりは私ども全くございません。

松本(大)委員 ちょっと時間の関係もありますので、国民の規範意識の変化というのはあと一問ぐらいで終えますけれども、やはり納得させてもらえない以上は、根拠に乏しい、非常にぼんやりしたものだなというふうに感じざるを得ないんですよね。

 辻委員も指摘されておりましたけれども、今回の法改正に当たっては、法制審議会の刑事法部会というのは四月の十九日から七月三十日まで五回開かれた。審議時間はわずか十二時間余りということなんですけれども、そもそも、拙速な議論だったからしっかりした裏づけが行えなかったというのが本当のところなんではないですか。いかがですか。

大林政府参考人 審議会の内容につきましては、はっきり申し上げていろいろな議論が出ております。これは議事録でも明らかなことでございます。その上で、また法務当局からも出せる資料を出しまして、それで議論していただいたものでございます。それなりに意見が出尽くしたところで決議をいただいたものであって、不十分なものというふうには考えておりません。

松本(大)委員 ありがとうございました。ちょっと私も疲れましたが、立場の違いということもあるので、その規範意識の変化というのはさっきの質問で終えます。

 本会議の質問のときにも申し上げましたけれども、やはり刑法を考えるに当たっては、いつもにも増して、情と理と、両方を尽くしていかなきゃいけないんじゃないかなというふうに思うわけです。時代劇の名裁きが名裁きと呼ばれるゆえんは、やはりその両方を尽くしているから見る者を納得させ、そして感心させるんじゃないかなというふうに思います。国民の規範意識の変化、もっと厳正に対処すべしというものがいわゆるその情の部分であるならば、理の部分というものにちょっと視点を移してみたいと思います。

 今回の法定刑引き上げの対象となっているのは凶悪重大犯罪です。法律の世界に限らず、何か重大な問題が起こっている場合というのは、通常その原因を探って、それからそれを取り除くことによって問題解決を図るというのが一般的な問題解決のプロセスではないかな、私はそのように思います。ですから、凶悪重大犯罪に対処しようとするからには、当然、まずはその原因を突きとめることから始められて、今回の法改正でその原因を取り除こうとされたのではないかなというふうに思っております。

 今回の法改正に当たり、対象となる凶悪重大犯罪の原因についてどのような分析が行われてきたのか、教えてください。

大林政府参考人 ちょっと私、理解できなかったところがあるものですから、もう一回、恐縮ですが、お願いいたします。

松本(大)委員 問題が発生したときには、その問題の解決を図ろうという際には、どこにその問題の原因があるのかということを突きとめて、その原因を取り除くことによって問題解決を図るというのが、一般的な問題解決のプロセスですよね。

 原因を取り除かない限りは問題が繰り返し発生するわけですから、問題を解決しようと思ったら、その原因はどこにあるのかを突きとめて、その原因を取り除いて問題解決をするというのが、横文字風に言えばソリューションというやつだと思うのですけれども、今回は、凶悪重大犯罪に対処しようとされているわけですから、当然、その原因についても、まずは分析をされて、それで、その結果、今回の法改正でその原因を取り除けると思うに至ったから法改正をされた、そういうアプローチをとられたと私は信じているのですけれども、であるならば、凶悪重大犯罪の原因についてどういう分析が行われたのか、教えてください。

大林政府参考人 凶悪重大犯罪の増加傾向が依然として続いております原因については、一概に述べることはちょっと困難でございますけれども、社会環境の変化や社会における意識の変化、あるいは経済情勢や国際化の影響等のさまざまな要因が複雑に絡み合っているのではないかというふうに考えております。

 今おっしゃられる問題解決のための方法というものは、再三議論になっているとおり、刑罰の引き上げによってすべて解決できるというふうに私ども考えているものではございません。当然、防犯活動なり、あるいは保護や矯正の方での被収容者の処遇の問題とか、総合的な問題でやはり解決していかなきゃならないのではないか。

 では、なぜ引き上げをするのかというふうなことは、これからの犯罪動向というのはこれから見ていかなきゃなりませんけれども、特に凶悪犯罪が最近目立つ、それで、先ほど、メッセージ効果といいますか、そういうお話もあったわけですけれども、平たく言いますと、例えば、今度、強姦罪の刑が上がります。特に集団強姦罪の罪が上がります。これはもう強姦自体悪いことなんですけれども、そういうときに、二人でそういうことをやったら大変なことになるんだよ、刑が重くなるんだよ。あるいは、殺人罪についても引き上げがあります。これも、皆さん、人を殺したら悪いということは知っているわけですけれども、今度の引き上げによりまして、人を殺すというのは本当に悪いんだよということを、やはり家庭なり社会なり、あるいは職場なりで議論していただく、それによって、そういう一定の抑止効果はあるのではないか。

 これをなかなか数字化はできないのですけれども、そういう問題も考えられますので、今回の引き上げによってそれなりの効果は得られるのではないかというふうに考えております。

松本(大)委員 今おっしゃられたのは予想であり、期待であります。根拠にはなっておりません。原因を一概に述べることは困難、さまざまな要因が絡み合っていると。要するに、原因がはっきりわかっていないんだけれども、法定刑の引き上げは恐らく問題解決に資するだろうという期待をなさっているわけでございます。根拠になっていない以上は、それは単なる勘か、あるいは迷信とか信仰のたぐいと変わらないんじゃないか。テレビのふぐあいはたたけば直るとか、けがしてもつばつけておけば治るとか。ひょっとしたら、その手が汚れていたら、汚い手でさわったら、逆にけがは悪化するかもしれないんですよね。

 つまり、何を申し上げたいかというと、根拠に乏しい対処法というのは、時としてとても危険なんじゃないかなというふうに私は思うわけでございます。

 期待をしているかどうかはお聞きしておりませんので、なぜ法定刑の引き上げが凶悪重大犯罪の増加傾向への適切な対処になるかを、もう一度御説明ください。

大林政府参考人 御案内のとおり、刑罰の機能というものは昔から議論されてきております。

 今私が申し上げた、いわゆる一般予防といいますか、ある程度の行動、こういうことをしてはいけないよという法律なりそういう規範を示すことによって、一般の人たちがそれに反する行動をしないようにするというのが一般予防の考え方です。それから、特別予防といいまして、今度は犯罪人自体に着目しまして、そういう人たちが社会復帰して改善更生するようにどうしたらいいか、その場合の一つの指針といいますか、そちら側からを中心にした考え方。あるいは、被害者から見たいわゆる応報刑的な考え方もございます。

 それはそれぞれのお考えはありますけれども、私が今申し上げたように、一般予防的な刑罰の機能というのは、これは単なる期待ではございませんで、これは一つの刑罰の機能としてこれまで認められてきたものだというふうに承知しております。

松本(大)委員 これまで認められてきたとおっしゃいましたけれども、さらに引き上げればさらに抑制できるというのは認められてきたんでしょうか。

大林政府参考人 今度の引き上げによりまして、実際に、では強姦罪なり殺人罪なりがどれだけ減るかということは、これは数字的にあらわすことは困難でございます。

 しかしながら、犯罪を犯す人以外の国民というのが大多数でございますから、その間に、そういう刑罰が重くなったよ、これは当然報道機関を通じて皆さん知ることになります、議論をされるときに、そういうふうに重くなったよ、だからそういうことは絶対いけないよねということは、これはそれなりの一般予防的な抑止効果を持つものだというふうに考えております。

松本(大)委員 やはり、何度お伺いしても、期待とか願望の域を出ていないのではないかという感想をぬぐい去ることができません。つまり、法定刑引き上げによる犯罪抑止効果というものはそもそも未検証の仮説にすぎないんじゃないかというふうに、御答弁をお伺いしている限りでは思うわけなんですよ。

 いや、僕もしつこいなというふうに多分思われると思うんですけれども、ただ、この提案理由説明の最後のところに、「何とぞ慎重に御審議の上、」と書いてあるんですよ、「何とぞ慎重に御審議の上、」。(発言する者あり)全部書いてあるんですが、全部書いてあるんだったら、全部慎重に審議しなきゃいけないんですよ。

 だから、今回の刑法の改正というのは百年ぶりの抜本改正なんでしょう。しかも、罪刑を決める、法定刑を引き上げるという、人の命であったり自由であったり尊厳に影響をしてくる部分なんですよ。だから、いつもにも増して慎重に審議しなきゃいけないというふうに思うんですが、犯罪抑止効果がどうしても検証されていない、未検証の仮説にすぎないようでは慎重にしても審議を進めようがないから、こうやって、論証してください、期待じゃなくて、願望じゃなくて論証してくださいというふうに申し上げているんです。

 では、仮に抑止効果があるとしましょう。時間の関係もありますから、抑止効果があるとしましょう。抑止効果があるとして、どの程度抑止効果があるのか、どの程度抑止できると考えるのか教えてください。

大林政府参考人 答弁が繰り返しになって恐縮なんですが、もう御案内のとおり、犯罪を犯す場というのはそれぞれ違います。その場でやめようかというケースもあるでしょうし、それはいろいろな理由があろうかと思います。ですから、具体的な問題として、ではどのくらいの効果があるかということは、なかなかそれを表現するのは難しいということをぜひ御理解いただきたいと思います。

松本(大)委員 今までの質疑の中で私が思いますのは、やはり非常に根拠があいまいで乏しいんじゃないかな、十分に議論は尽くされていないんじゃないかなという感じをやはり捨て去ることができません。

 なぜここまでしつこく申し上げるかというと、そのほかの理由としては、あと五年足らずで裁判員制度が始まるわけですね。市民の方が裁判員として刑事裁判に参加されて、有罪無罪、量刑を評議されるようになるわけですよね。そのときに、立法過程の正当性や妥当性に疑問が残ってしまうようなものをルールとして、それに基づいて審議してくれ、評議してくれというのでは、これは裁判員の方というか市民の方に会わせる顔がないんじゃないかなというふうに思うからなんですよ。

 次回の委員会のときに、また新たな資料を提示いただけるということなので、ぜひ論証をしていただきたいなというふうに思います。

 次の質問に移らせていただきたいと思います。

 体感治安の悪化というものを今回の提案理由説明の二行目に挙げていらっしゃるわけなんですが、凶悪重大犯罪に対する罰則の強化が本当に体感治安の改善に資するのかどうかということをちょっとお伺いしたいなというふうに思うんです。

 平成六年から十五年までの十年を比べた場合に、一般刑法犯の総数と、それから今回の対象になっている凶悪重大犯罪の件数は、それぞれ何件から何件にふえているんでしょう。

大林政府参考人 一般刑法犯の総数で申し上げますと、平成十五年が二百七十九万百三十六ということでございまして、十年前の平成六年に比べますと、一五六・四%にふえております。(松本(大)委員「凶悪重大犯罪の方は」と呼ぶ)

 それでは、今回対象となっております強制わいせつにつきましては、平成六年を一〇〇としました場合に、平成十五年は二八〇・一%、それから強姦が一五三%、殺人が一一三・五%、傷害が二〇二・一%ということになります。

松本(大)委員 調査室の資料を拝見して、その数字は見させていただいたんですが、刑法犯全体が約百万件ふえているのに対して、強制わいせつ、強姦、殺人、傷害、強盗の合計件数は約三万件の増加なんですよね。それで、つまり増加の大半は凶悪重大犯罪以外の犯罪ということになるわけですけれども、最も多くふえているのは何ですか。

大林政府参考人 今申し上げた中で最も多いのは強制わいせつでございます。ただ、今対象として挙げなかった強盗罪についても、二八五・五%ということで多くなっております。

松本(大)委員 済みません、ちょっと御質問が悪かったようです。言い直します。

 一般刑法犯の増加分に占める凶悪犯罪の割合は非常に低い、要するに、残りの大半は何によってふえているんですかということです。一番大きくふえているものです。

大林政府参考人 失礼いたしました。窃盗罪でございます。

松本(大)委員 窃盗は、百五十六万件から二百二十四万件と、約七十万件もふえている。平成十五年の一般刑法犯に占める割合は八割で、十年間の増加に占める割合も、寄与分も七割ということなんですけれども、これだけ大きくふえるからには、なかなか捕まらずに再犯を繰り返すということになるというふうに思うんですが、検挙率についてはどうなんでしょうか。この十年間で、一般刑法犯と窃盗犯、どのように変化しているか教えてください。

大林政府参考人 資料によりますと、検挙率は、平成十五年、一般刑法犯総数では二三・二%、窃盗が一九・四%、強制わいせつが三八・八%、強姦が六三・五%、殺人が九四・一%、傷害が六四・七%となっております。

松本(大)委員 済みません、御丁寧に全部お答えいただきました。

 刑法犯全体では四三%から二三%、窃盗は三八%から一九%というふうに変化しているわけですけれども、要するに、窃盗は件数も多いし、検挙率も二割を切っている。なかなか捕まっていないから、さらに再犯を重ねて、さらに件数もふえる。検挙率の低い窃盗の件数がどんどんふえるから、一般刑法犯全体としての件数もふえる。そして、検挙率は大きく押し下げる。こういうことだと思うんですが、つまり、窃盗犯を抑止したり、検挙率を上げない限り、犯罪全体としての件数も減っていかないし、検挙率も回復しないということだと思います。

 今回の法改正、すなわち凶悪重大犯罪の刑罰強化で、窃盗犯を抑止したり、検挙率を上げることは可能ですか。

大林政府参考人 委員御指摘のとおり、窃盗対策というのが非常に大きな割合を示していることは事実だと思います。

 ただ、今回の凶悪重大犯罪というものは、国民に大きな、窃盗にもいろいろあるわけですけれども、強姦とか殺人とかいうものについて、治安に対する考え方というのが非常に重い意味を持つという意味において、確かに窃盗は窃盗で、おっしゃるとおり、これを解決しなければ根本が直らないだろうという御指摘は全くそのとおりでございますけれども、今回の改正の対象としているものはまた別な意味で、それなりの、件数は少ないんですけれども、その引き上げというものが必要だというふうに考えております。

松本(大)委員 御質問にお答えはいただいていないというふうに思います。

 凶悪重大犯罪の刑罰の強化で、窃盗犯を抑止したり、その検挙率を上げることが可能ではないということをはっきりおっしゃらないということなんだと思うんですが、要は、窃盗犯を抑止したり、その検挙率を上げることができずして、犯罪全体としての件数を減らしたり、検挙率を回復させることは不可能なわけですから、犯罪全体としての件数を減らしたり、検挙率が回復しないとしたら、それで体感治安は回復できないじゃないですか。私が聞いているのはそういうことなんですよね。

 時間が余りなくなってきたので、窃盗犯のところはちょっとこの辺にしますけれども、ただ、体感治安の悪化を解消したいなら、さっきおっしゃいましたけれども、僕は、やはりその優先順位づけは、犯罪全体のわずか数%程度の凶悪重大犯罪への対処よりも、むしろ犯罪の八割を占める窃盗の抑止と検挙の徹底の方を先にすべきではないかなというふうに考えているわけです。体感治安の悪化を提案理由説明の二行目に挙げておきながら、窃盗の抑止や検挙よりも凶悪重大犯罪の罰則強化を先行させるのは、僕は筋違いなんじゃないかなと思うということを指摘させていただきたいというふうに思います。

 時間もございませんので、次は、刑務所の収容と更生教育のお話をちょっとお伺いしたいなというふうに思います。

 過剰収容状態のお話はよく聞かれるところだ、よく論ぜられるところだと思うんですが、きょうの御質問の中にも幾つかありました。ただ、どのぐらいふえるのかということは特定が困難じゃないかとか、悪化を前提にすべきではないかというようなお話もあったわけですけれども、ただ、そうはいっても、大臣、本会議の御答弁の中で、刑務官のところですね、「所要の要員の確保に努めてまいりたい」というふうにおっしゃっていらっしゃいます。

 職員一人当たりの収容人員というのを、イギリス、アメリカ、ドイツ、フランスあたりと比べてみますと、日本は倍近い開きが現状でもう既にあるわけなんですが、今後、法定刑の引き上げによって過剰収容状態がさらに深刻化するようになった場合に、所要の要員の確保というのは、既に二倍近い開きがある欧米並みの水準を目指して努力していくという理解でよいかどうか、大臣のお考えをお伺いしたいと思います。

横田政府参考人 私の方からお答えさせていただきます。

 委員がおっしゃいますように、欧米との比較におきまして、日本の刑務官一人当たりの被収容者数は大変重いものがあります。ただ、それでは欧米並みに合わせるのかどうかということは、これは国によって行刑の目的、内容が異なりますので、必ずしもフランスやドイツと、それから日本が同じ行刑の仕方をしているわけではありませんので、一概にそれに合わせるのが理想だということにはなりません。

 ただ、現状として、職員の負担が大変重いということは事実でございますので、その点につきましては、職員の負担軽減、これは行刑改革会議の提言にもございますし、私ども、そのところは、今後、鋭意努力してまいりたいというふうに考えているところでございます。

松本(大)委員 はっきり欧米並みの水準を目指すというふうにはお答えいただけなかったんですが、私も法務委員になって、地元の刑務所と、それから府中刑務所と二カ所見させていただいたんですが、やはり、現場の方の強いられる緊張の度合いというのは本当に高まっているなというのが率直な感想です。ぜひ、所要の要員の確保に努めると、大臣、本会議でおっしゃったわけですから、適正な水準を目指してぜひ努力を重ねていただきたいなというふうに思います。

 刑務所の過剰収容状態の解消の件でもう一点ちょっと御質問させていただきたいと思いますが、大臣、本会議の御答弁で、収容能力の増加ということをおっしゃっています。「今後とも、刑務所の拡充を含めた収容能力の増加と所要の要員の確保に努めてまいりたいと考えております。」というふうに御発言をされております。

 現状、全国の受刑者は約六万人で、うち外国人受刑者が約三千人と、およそ五%を占めています。刑務所を視察させていただくと、ベジタリアン用の食事とか、豚肉が食べられない人用の食事とか、言葉が通じない人用に何か民間の施設から人を呼んだりという大変な苦労をされているんですけれども、過剰収容状態の解消に受刑者移送条約というものが一つ挙げられるんじゃないかというふうに思います。

 現在、約三千人の外国人受刑者のうち、国別に見ますと、中国が約千四百人、イランが四百人、ブラジルが三百人、韓国、北朝鮮が約二百人と続きます。ところが、いずれの国とも受刑者の移送条約は結ばれておりません。

 野沢前大臣は、受刑者の移送を過剰収容の解消にも役立てたいと述べられておりました。そして、ことし四月に中国の司法相とお会いになられて、移送の話を持ちかけたという報道もございました。

 先日の本会議の収容能力の増加に努めるという大臣の御答弁は、受刑者移送条約の締結に向けて、とりわけ国別に見て多い国々との間の協議を進めるということが含まれるのかどうか。だとしたら、どのように進められるのかお聞かせください。

横田政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねのように、現在、来日外国人受刑者の全体の約四五%が中国国籍を有する者です。それから、イラン国籍を有する者が一二%に及んでおります。

 ただ、この移送条約の問題、移送の問題なんですが、現在、我が国は、欧州評議会の受刑者移送条約に加入して、そして受刑者の移送を行っているところでございます。中国及びイランはこれに加入しておりません。したがいまして、まず中国及びイランが欧州評議会の受刑者移送条約に加入してくれるならば、これは両国との間で受刑者移送ができます。しかしながら、今後も両国がこの条約に加入しない場合には、これらの国との間で受刑者移送を行うための二国間の受刑者移送条約をそれぞれの国との間で締結する必要がございます。

 このうち、私どもとしては、我が国の刑務所等の過剰収容の一因となっていると考えます中国人受刑者の本国への移送、これをまず道を開きたいと考えておりまして、今委員もおっしゃいましたように、昨年十二月には、犯罪に強い社会の実現のための行動計画では、外国関係機関との連携強化のために、日中間における受刑者移送条約の早期締結等が挙げられております。そしてまた、先ほど委員も御指摘なさいましたように、野沢前大臣もこのことについては高い関心を示されまして、中国の当局者ともお会いになったりしております。

 私どもといたしましては、この二国間の条約の早期締結等に向けて積極的に対応していきたいと考えておりまして、現在、外務省とともに、中国との間において受刑者移送に関する国際約束について協議を開始したいというふうに考えているところで、私どもとしては、何とかこれを実現したいと考えているところでございます。

松本(大)委員 政治的決断というか決意を伺おうとしたので、ぜひ前向きに取り組んでいただきたいと思います。

 時間が終わってしまいましたので、更生教育についてはちょっと伺えなかったんですが、見に行った府中刑務所は、あの鬼平犯科帳の長谷川平蔵が昔つくった石川島人足寄せ場というものに沿革があるようでして、要するに、職業指導というものを今から二百年も前に既に行っていた、更生教育を既に実践していたということでございます。刑罰強化だけがやはり犯罪を防ぐわけではないということを既に二百年も前の方が実践されていたわけですから、ぜひとも総合的な対策によって、本当の意味での治安回復というものに努めていただきたいということを申し上げまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

塩崎委員長 次に、小林千代美君。

小林(千)委員 民主党の小林千代美です。

 この改正法案を審議するに当たり、その前提条件というものが全く今示されていない中で、私も、質問を一時間するのにひどく大変な思いをしたわけでございます。

 そもそも、この改正目的ですね。この提案理由説明の中には、凶悪犯罪、重大犯罪が増加をしている、それによって我が国の治安水準や国民の体感治安が悪化している、だからこの事態及び軽重に即した適正な対処が必要なんだというような提案理由説明がされたわけなんですけれども、この三段論法のそれぞれについて、私は疑問を抱かざるを得ない。ゆえに、この法改正について、どういうふうに質問をしていいのかわからないというところが私の思っている率直な感想なんです。

 私も非法曹者、法曹出身というわけではありません。ですから、例えばこの法律案の概要を見て、例えば何が何年になった、上限が何になった、下限がどういうふうになった、これによってどのように変わっていくのかなということが全く想像できないわけなのでございます。

 先ほど松本議員の方から提起ありました、このもととなった総合的なデータというものを御提示いただけない限り、質疑することが難しいわけなんです、根拠に乏しいわけなんですから。ですから、それが次の委員会で出てくるということですから、ここで質問をしないわけにもいかないので、出てくるという前提のもとで質問をさせていただきたいと思います。

 そもそも、凶悪重大犯罪が本当に増加しているのか、これもクエスチョンマークがあるところは同僚議員からの指摘でもございました。また、治安水準、国民の体感治安が悪化している、この体感治安という言葉も私は実は知らなかったわけなんですけれども、本当にこういった状態は何が原因で招いているのかといったような法的根拠も、もとになったデータも何も今示されていない。それでもって、それに対応するための、実態に対応するため、あるいは軽重に即した適正な対処のためというんですけれども、全く質問しづらいわけなんですよね。前提条件が全くないわけでございますから。

 まあ千歩譲ってそれを理解したとしましょう。ですけれども、出てきた法案というものが余りにも、実態に即した、軽重に即したというよりも、十把一からげ法案というふうに呼びましょうか、余りにも広範な範囲にわたっておりまして、一律、丸ごと、全部一括してみたいなイメージを抱かざるを得ないわけでございます。

 例えば、有期刑の法定刑または処断刑の見直しというところで、これが対象になる犯罪は全部で百四あるというふうに伺っているわけなんです。しかし、その百四を全部一つ一つ見てみますと、果たしてこれは、この前提条件になっている凶悪重大犯罪で治安が悪化しているのかなというふうに考えると、クエスチョンマークを持たざるを得ないところがたくさんあるわけなんですよ。

 例えば、先ほどから問題になっています御璽偽造、この犯罪により、本当に人の命や体に重大な危害を及ぼすような凶悪犯罪、重大犯罪というものがあって、それで治安が悪化しているというような実態があったのかどうか。それは一つ一つ個別なものになってしまうかもしれません。そういった例も当然あるでしょう。そして、もう片方では、例に何回も出てきておりますようなスーパーフリー事件、あのような集団強姦における上限が十五年間しか今の法定刑では求刑をすることができないといったようなことも個別に見てみればわかります。

 しかし、こういった実態、軽重に即した適正な対処が本当にこの一律引き上げでいいんですか。これは適当ではないんじゃないでしょうか。まず、大臣にお伺いしたいと思いますが。

南野国務大臣 今回の有期刑の上限を引き上げるということとしておりますのは、刑法制定後、国民一般の平均寿命が大幅に延びたことなどもございまして、その上限を十五年とすることが国民の規範意識に合致していないのではないか、また、無期刑との差が大き過ぎるのではないかとの指摘を踏まえたものであり、個々の特定の罪の法定刑が軽過ぎることを理由とするものではありません。

 また、個別に見ても、有期刑の上限を法定刑に含む罪はいずれも重大な犯罪として特に重い刑が定められているものであり、この中で特にその上限の引き上げから除くべきものではない、そういう観点に立っての整理でございます。

小林(千)委員 同僚議員の指摘の中にも出てきたことなんですけれども、どう見ても、この法案が立案過程において粗雑な状態のままで出てきている、こういった感想を本当に持たざるを得ない状況になっているわけなんです。

 何回も話に出てきていますけれども、法制審議会、これが四月から七月にかけて行われて、五回で合計十三時間の審議、しかも非公開で。これは、ほかの審議会と比べて、とられた時間というのはどうなんですか。いかがですか。

大林政府参考人 法制審議会における審議についてお尋ねがありました。

 法制審議会の刑事法、今回のは凶悪・重大犯罪関係部会が五回にわたって行われました。その内容を申し上げますと、一回目は事務局当局からの説明とこれに対する一般的質疑、二回目と三回目が一読という、一通り諮問を見るものです。それから四回目が二読、五回目が採決を含めた三読ということでございました。

 このうち、一読においては極めて多様な論点について各種の見地からの意見交換が行われましたが、そのように充実した審議が行われたことから、二読が行われた四回目の部会における議論は、一読における論点の掘り下げに充てられました。それで意見が出尽くしたことから、次回に採決まで進めることとされ、これに異論等もありませんでした。最終的に五回目の部会で、諮問された要綱の各項目に関する賛否の意見及び附帯決議案の提示があり、採決が行われました。

 このような審議の経過からも明らかなように、法制審議会における専門的調査検討の舞台である部会の審議は充実したものだったと考えておりまして、時間的、内容的に不十分であったということはないと考えております。

    〔委員長退席、田村委員長代理着席〕

小林(千)委員 多様な論点が出されました、意見がいろいろと出ました、出し尽くされました、ですから終わりましたというような報告を受けても、実際にその中でどのような意見が出ていたのかということを本当は知りたいわけなんですよ。例えば、この法定刑の引き上げについて、上限を十五年は何年にする、下限を何年を何年にする、何年上げたら客観的判断になるのかというような論拠というのは、確かに難しい面はあると思うんですよね。

 しかし、この法制審議会の中には、刑法や刑事訴訟法の学者の方も多分いらっしゃったでしょう、そういった研究をされている学者委員の方もいらっしゃると思います。こういった方々から、この法定刑の引き上げが、一体、犯罪抑止力とどういうふうに相関関係を持つのか、因果関係があるのかどうなのか、そういったことは立証されたんでしょうか。それでもって、これは何年が何年になりますよ、下限は何年が何年になりますよといったような結論になったんでしょうか。

大林政府参考人 各論点につきましてかなり突っ込んだいろいろな議論がなされました。

 今お尋ねの有期刑の法定刑や処断刑の上限の引き上げに関してどのような議論がなされたかということについて簡単に申し上げますと、主要なものを申し上げますと、一つとしては、現行法の規定が実際上何か問題を生じさせているのか、それからまた、一律にその法定刑の上限を十五年から二十年に引き上げる必要があるのか、さらに、有期刑の受刑者にもたらす影響という観点から見た場合、時代の流れが以前より速くなっている現代において、あえて有期刑の上限を引き上げる必要があるのか、あるいは逆に受刑者の社会復帰が困難になるのではないか、また、有期刑の上限を引き上げると、無期刑受刑者の仮出獄までの期間も延びるのではないか等の論点について検討が行われました。

 このうち、現行法の規定が実際上問題を生じさせているのかという点につきましては、無期刑や長期の有期刑の宣告件数がふえる中で、無期刑と長期の有期刑との選択が実務上も大きな問題になっており、有期刑の法定刑や処断刑の上限を引き上げるという形で裁判所の量刑における裁量の幅が広がるのであれば、より適正な量刑ができるのではないかという意見が出されております。

 また、法定刑の上限を一律に引き上げるべきかという点につきましては、今回の改正は、特定の犯罪の法定刑についてその上限が低過ぎるという理由によるものではなく、国民の規範意識等に沿った法定刑のあり方いかんという観点に立脚するものであり、また実際上も、何年以上の有期懲役という法定刑の罪は、いずれも非常に重大な犯罪であって、その間で法定刑の上限を区分する合理性は乏しいとの意見等も提示されました。

 またさらに、有期刑の受刑者への影響という点につきましては、自由刑は行動の自由を制約することを本質的な内容とする刑罰であって、その制約の時間の長さで刑罰の重さが判断されるのであるから、一定の刑期の刑の重さを考える上では、むしろ平均寿命との関係が重要な意味を持つものであり、刑のあり方として有期刑の上限をどのように定めるかという問題と、社会復帰のための有期刑受刑者の待遇をどのようにすべきかという問題は、理念として別に考えるべきであり、長期受刑者の処遇について、その社会復帰が著しく困難であるという状況にはないとの意見等も提示されております。

 さらに、無期刑受刑者の仮出獄への影響という点につきましては、無期刑であれ有期刑であれ、仮出獄資格を得た後、受刑者が社会復帰が可能な状況にあると認められるのであれば、直ちに仮出獄を認めるべきものであり、そのような仮出獄の理念を変えるものではないとの意見も示され、結局、諮問どおり有期刑や処断刑の法定刑の引き上げを行うべきである、そういう意見が採択されたものでございます。

小林(千)委員 刑のあり方、特に社会復帰については、またこの後で時間をとって質問をさせていただきたいと思うんですけれども、例えば、裁判所の量刑というものを、裁判官の量刑というものを広げるためといいましても、先ほど辻委員の方からも指摘がありましたように、今、上に張りついているような状態でもない、それを何でさらに上に広げる必要性が今回あるのか、こういったことはもう既に指摘された事項でございまして、本当にこの法制審議会というものが、たった十三時間、今回私たちも何時間審議に時間をとれるんでしょうか、これだけの、百年ぶりの大改正というのに、こんな拙速な議論が、しかもこの法案の内容、出てくる過程につきましても、大変粗い、粗雑としか言いようがないわけでございまして、このような法制審議会のあり方自体も私は大変問題があったのではないかなというふうに指摘をさせていただきたいと思います。

 そして、本当に体感治安をよくするためには何が必要か。

 先ほど同僚議員が言っておりましたけれども、一番が窃盗なんですよね、財産犯というものがふえている。それに対して国民は本当に不安を抱いているわけでございまして、その順番からいえば、この凶悪重大犯罪に対する刑罰の強化という面では、ニーズとしては低いところにあるわけなんですよ。ですから、例えば、窃盗をどういうふうに防止していくか、なくしていくかといったような方策というものが、治安回復というためには一番最初に来るべきであると思います。そのためには刑罰の強化というものは必ずしもプライオリティーの高いものではない。例えば、窃盗をどうやって未然に防ぐか、抑止を持たせるか。それは、例えばモラルの向上、学校教育の中、あるいは家庭教育の中であったり、社会生活の中で生まれることではないか。あるいは景気・雇用対策というものも、これは大変相関関係のあるものなのではないかなというふうに私は考えております。

 治安対策としてはこういったことを総合的に進める必要があって、それこそ一番、国民が思っている体感治安をよくするためのあるべき姿なのではないかなというふうに思いまして、今回の法改正、重罰化というものは一番の対策ではないと思うんですけれども、どういうふうにお考えでしょうか。

大林政府参考人 委員御指摘のとおり、窃盗罪については非常に数が多いものでございます。これに伴う被害者もそれだけ多いということでございまして、これの犯罪対策が大事であるということはそのとおりでございます。

 これは行動計画にも載っていることでございますけれども、身近な犯罪の抑止ということで、やはり交番機能の強化とか、それから地方での地域住民の犯罪抑止活動とか、さまざまな具体的なものが出ております。これはこれで委員御指摘のとおり非常に大事なことではあると思います。

 ただ同時に、御承知のとおり、例えば家に押し入って人を刺して殺害する、あるいは悪質な強姦事件が発生しているのも事実でございます。それに対して、その一つの方策ではございますけれども、刑の引き上げということも大事であるんじゃなかろうかというふうに考えているところでございます。

小林(千)委員 ぜひ、国民が一番のニーズとして思っている治安の対策というものを考えていただきたいと思います。

 そして、今回の法改正の一つの目的でしょうか、犯罪被害者の意をくみするものでもあるという考え方も一つあるようでございますけれども、もちろん、この犯罪被害者の方々、自分の身内を殺された、殺害をされた、被害に遭った、こういう方々にとってみては、加害者を極刑に処してほしい、こういう考え方も当然あるだろうというふうに思います。

 しかし、極刑に処せばそれで被害者の感情がおさまるかといえば、それは必ずしもそうではないわけでございまして、あの池田小学校の事件などはその最たる例ではないかなというふうに指摘をしたいと思います。

 今の現状の犯罪被害者の支援に対しましては、本当に国として何のケアもされていない、不十分であると言わざるを得ない状況にあると思います。特に、犯罪被害者の方々の人権が今全く確保されていない、犯罪被害者は刑事手続から全く排除をされている、あるいは刑事手続の中に加われるとしても証拠品扱いにしかしてくれないというような、犯罪被害者の方々の司法不信というものは大変大きいのが現状ではないかと思います。

 今、犯罪被害者支援法案というものが超党派の議員立法でつくられているところでございまして、近々、これは内閣委員会の方なんでしょうか、提案をされる予定になっているようなんですけれども、今の司法不信を抱いている犯罪被害者の方々、この犯罪被害者支援、大臣、この方々の司法不信の思いをどのように考えていらっしゃるでしょうか。特に大臣、弱者救済、人権擁護といった考え方から今までずっと取り組んでいらっしゃった課題でもあると思います。ぜひ大臣のこの思いをお聞かせください。

南野国務大臣 犯罪被害者及びその家族のお気持ちを受けとめ、さまざまな面での保護や支援を図っていくことは非常に大事なことだと思っております。加害者の更生も大切でありますが、被害者の支援ということも大いなる課題であろうかと思っております。

 そこで、法務省におきましては、平成十二年の犯罪被害者保護二法などの法整備及び被害者等通知制度による被害者への情報提供などを行ってきたところであります。また、検察当局においても、被害者の立場それから心情、そういうものに配慮しながら事件の適正な処理に努めてきたところであると承知いたしております。

 今後とも、被害者の方々の保護及び支援に役立つことができるようさらに努力してまいりたい、そのように思っております。

小林(千)委員 議員立法で提案される予定のこの犯罪被害者支援法ですけれども、私たちも本当に、犯罪被害者の方々を精神的にも、また経済的にもしっかりと支えられる法律にしていきたいな、こういう思いでいっぱいです。

 そしてもう一つ、犯罪被害者の方々、もちろん自分たち被害者支援というものもしてほしいと思っている要求もあると思いますけれども、加害者に対しての思いというのも同時にあると思います。例えば、なぜうちの子が殺されるようなことになってしまったのか、その背景を知りたい、どういう人間に殺されてしまったのか知りたい、こういう思いはあるでしょう。また、二度と自分の子供のような不幸な目に遭う子供が生まれないでほしい、こういう思いもあると思いますし、加害者に対しては、一生かけて罪の意識を持って罪を償ってほしい、こういうふうな思いも同時にあると思います。

 この加害者更生に関してなんですけれども、このような犯罪被害者の方々の声にこたえるための加害者更生というものが今十分にされている状況でしょうか。お伺いいたします。

横田政府参考人 行刑の面からお答え申し上げます。

 私どもの矯正局の所管の矯正施設におきましては、受刑者、少年院在院者も含みます矯正施設ですので、そのような人たちに対して改善更生と社会復帰を達成することを目標にしておりますけれども、彼らがみずからの犯罪と向き合い、犯した罪の大きさや被害者の方々の心情や苦しみを認識し、被害者の方に誠意を持って対応していくことについての指導教育を一層充実させることが重要であると考えております。

 これまでもそれぞれの施設におきましては、このような被害者の方々の心情や苦しみを認識する、自分の犯罪に正面から向き合うといったような教育をしてまいりましたけれども、特に被害者保護という観点から、本年度に入りまして、矯正局におきましては被害者の視点を取り入れた教育研究会というものを設けまして、直接、被害者の方々、被害者団体の方々、あるいは学者、弁護士、そういった方々にお願いいたしまして、そのような研究会を催しました。そこにおいて、これまで私どもがやってきました教育のあり方や内容、方法につきましてもいろいろ批判的な御意見をいただきましたし、また、さまざまな意見も承りました。

 私どもは、この研究会の結果を踏まえまして、また、今後さらに被害者の視点を取り入れた教育といいますか、視点に立った加害者教育をするように、現在、鋭意そのプログラムを検討しているところでございます。

    〔田村委員長代理退席、委員長着席〕

小林(千)委員 どうも今、その加害者更生プログラムというものが十分に機能をしている状況にはないのではないかな、こう思える状況になっているわけです。

 行刑改革会議の提言の中には、行刑の基本理念といたしまして、受刑者を拘禁して社会から隔離をする、そしてその自由を奪うという一つの理念と、もう一つの理念としては、その改善更生及び円滑な社会復帰を図るというふうな二本立てになっているんですけれども、これは、再入所率が五〇%近い現状を考えますと、二番目の改善更生及び円滑な社会復帰、この機能が今、行刑施設で働いていないというふうに思わざるを得ないわけでございます。

 同じくこの提言の中には、受刑者が真に改善更生した上で社会復帰を遂げるためには、受刑者みずからが、その犯した罪を十分に自覚して、あるいは、みずからが犯した罪による被害者等に対して十分に思いをいたした上で、自発的に改善更生及び社会復帰の意欲を持つことが大切であり、このような意識を持つことができるような行刑運営を心がけるべきであるというふうに提言書の中には書かれているわけでございます。

 まさにこの点については、先ほど申し上げたような、被害者の加害者に対して感じている思いというところとも通じるわけでございまして、そこが今全く機能をしていないわけなんですね。再入所率五〇%ですから。

 この五〇%の中身を詳しくちょっとお伺いをいたしました。そうしてみましたら、仮出獄をして、その後、刑期が終わるまで保護観察処分を受けるわけなんですね。その保護観察中の再犯率というものはわずか一%だそうです、保護局の方にお伺いをいたしましたら。そうすると、その後犯罪を犯しているんですね。あるいは、それが、五〇%がその後全部じゃないんだよというふうに保護局の方はおっしゃっていたんですけれども、保護観察処分を経験しない、つまり、満期で出所をいたしまして、保護観察処分なしでいきなり社会にハードランディングをさせられる、こういった方々の方が再犯率は高い、このように説明をしてくださいました。

 保護観察を経過した後の再犯率は、うちは三八%なんですよというふうに保護局の方は言っていただいたんですけれども、この三八%だって褒められた数字では決してないわけなんですよ。

 このことを考えますと、この矯正局、行刑施設の中で行われている矯正というものもうまく機能をしていないわけなんですね。先ほど、八時間労働を六時間労働に減らして、その時間を矯正に充てているというようなお話を伺いましたけれども、十分に機能をしていないわけなんです。そしてまた、保護観察処分中、その期間中も、そんなに長い期間ではないですよね、その期間中は一%程度の再犯率ということですけれども、その後また罪を犯してしまう。

 このことを考えてみますと、行刑施設の中で行われている矯正教育あるいは保護観察中に受けている更生教育といったもの、ともにこれは不足をしているのではないかと思いますけれども、どのようにお考えでしょうか。

横田政府参考人 この点も行刑の立場からお答えを申し上げます。

 委員御指摘のように、満期釈放者の再犯というか、私どもが承知できるのはあくまでも再入所率でありまして、要するに、一たん行刑施設から出た人たちがまたその後に行刑施設に入ってくるかという再入所率しか把握できませんので、その再入所率で申し上げますと、確かに、満期釈放者それから仮釈放者、両方合わせた平均で申し上げましても、四七%ぐらいということであります。この数値というのは、この十年ぐらいほとんど動いていない横ばいの状態にございます。これも委員既に御存じのとおりだと思います。

 御承知のように、刑務所には、覚せい剤事犯者であるとか、暴力団関係者であるとか、あるいは高齢者、特に最近高齢者がふえておりますけれども、高齢者であるとか、それから精神疾患者など、処遇に大変な困難を伴う者が多数収容されております。その再犯防止につきまして、これは矯正施設における処遇などで達成できるものではございませんで、先ほど委員も一般論としておっしゃっていましたけれども、やはり社会全体で取り組むべき問題だというふうには考えます。

 しかし、そうは申し上げましても、私ども行刑当局といたしまして、先ほどの再入所率、この数字をよしとしているわけではございません。これも、委員も御指摘の、昨年十二月に出されました行刑改革会議の提言におきましても、教育的処遇を充実するということにされております。既に私ども当局といたしましては、これらの提言を踏まえまして、例えば本年には、薬物依存からの回復を支援する民間の自助団体の方々や専門機関等の有識者による薬物事犯受刑者処遇研究会を開催して、薬物依存者に対する処遇の充実方策について検討しておりますし、その他、受刑者の問題性や特性に応じた個別処遇の一層の充実を図ることによって、再入所率の低下に努力してまいりたいと考えております。

 以上でございます。

小林(千)委員 今、行刑行政の話になると、刑務所の過剰収容というものが、大臣のあいさつの中にも入っているとおりに、それだけにどうも目が行っているところなんですけれども、確かに、あの状態、私も視察をさせていただきましたけれども、六人定員のところに二段ベッドを入れて八人収容していたり、あるいは独房が、二人使っていたら独房じゃないわけなんですけれども、横に座ればひざがつき合うようなところに入所していたら、そこでうまく矯正プログラムが機能するかといったら、とてもじゃないけれどもそういう環境ではない。もちろんそれはそれで対応していただかなければいけないと思いますけれども、再入所率の問題を考えますと、問題は過剰収容だけではないですよね。今おっしゃったような、やはりどうやって二度と犯罪に手を染めないような教育を施していくかという観点が不足をしていてならない。これは行刑施設の中でですけれども、思います。

 また、もう一つ、これは保護局の方になるんでしょうか、仮出獄をした後の更生のあり方。これも、お話を伺いますと、保護観察中につきましては保護司の方々がいろいろとケアをしてくださるということですけれども、それが打ち切られると、野放しにされる。保護司の方で本当に心ある方だったら、その後、どうだい、元気でやっているかい、ちゃんと働いているかいみたいなことはやってくれるのでしょうけれども、それはあくまでもその人の好意でしかないわけなんですね。ですから、保護観察中における更生のあり方、これも当然見直さなければいけない。保護観察が打ち切られてしまえば、その後は、もちろんいつまでもつきまとうかというようなプライバシーの問題もあるんでしょうけれども、やはりこれは見直すべきではないかと思いますけれども、保護観察中の更生教育のあり方、あるいは、保護観察が打ち切られた後も何らかの対処が必要なんだと思いますけれども、どうお考えでしょうか。

大林政府参考人 きょうは保護局長が来ておりませんで、私も横田局長の前に保護局長をやっておりましたので、その知識から申し上げますと、御指摘のとおりでございまして、なかなか難しいのは、刑期が終わった場合、当然再犯の予想ができる人も中にはいるわけでございまして、ただ、それは今、日本の、刑というのは決まっている以上、その時点では出さなきゃならないということで、特に満期出所の方については非常に問題があることは私どもも認識しております。

 したがいまして、それで、一時的に保護施設、まだ非常に力が弱いんですけれども、保護施設に半年ぐらい入れるという形で、その間に仕事を探していただく、あるいはアパートみたいなのを見つけてもらうという形で、出所後の短期間の間についてはできるだけフォローするように努力しておりますけれども、委員御指摘のとおり、なかなかそこは数には合わないということで、まだまだ力が不足だ、これからやはり充実させていかなきゃならぬということはそのとおりだと思います。

小林(千)委員 やはり、今のこの再入所率五〇%という数字を聞きますと、確かにこれはほっておいてはならない現状になっていると思いますので、ぜひともこれは、あり方を含めて、更生プログラムの見直しをしていただきたいと御要望を申し上げておきたいと思います。

 もう一つ、行刑施設についてお伺いをいたします。

 今回、この法定刑の引き上げにより、行刑施設に長期間入所をする、以前よりも長期入所をするということも考えられるわけでございますけれども、これが一体入所者に対してどのような影響を及ぼすのか、どういった検討がなされているのかを伺いたいと思います。

 このような事例があります。

 強盗殺人を犯した者が仮出獄中に再度強盗殺人を犯した、こういった刑事事件におきまして、控訴趣意書の中で、担当の検察官が次のように主張されているんですね。いたずらに長期間の拘禁は、受刑者の人格を破壊し、生活不能、無感覚、そしてしばしば精神病を招来し、受刑者の社会化にはむしろ有害なのであり、遅くとも十五年の服役後にはこのような人格破壊作用があらわれることは、従前から多くの研究者が指摘をするところでもある。

 このように担当検察官が言われているんですけれども、これは、行刑施設の中の更生プログラムあるいはその中での刑期の過ごし方といった面でも大変大きな影響を与えると思いますけれども、この件についてどのようにお考えでしょうか。また、さらに長期化されることにより、社会復帰というものに影響がどのようにあるとお考えでしょうか。

横田政府参考人 お答えいたします。

 まず前提なんですが、今回の法改正によりまして、法定刑が長期化することによって、刑の長期化が現実に、長期受刑者が現実にふえるかどうかということにつきましては、これは必ずしもそういうふうには考えないわけでございます。

 いずれにいたしましても、長期受刑者が、およそ人格破壊に至る、あるいは社会復帰が困難になるということは、これは決してないというふうに私ども考えます。今委員がおっしゃったものについて私は存じ上げませんけれども。

 いずれにいたしましても、長期受刑者につきましては、感情や情緒等の起伏の把握に一層の注意を払いながら、心身の健康の保持、体力の維持に配意しながら、釈放前の指導を徹底するとともに、更生保護機関、関係機関との連携を密にするなどして、施設内処遇からいわゆる社会内処遇への円滑な移行が図れるように、これまでも努めてまいりましたし、これからも努めてまいります。

小林(千)委員 入所の長期化ということになりますと、やはり社会復帰というものが以前よりも難しくなるであろう。例えば、十年一昔というふうに言っていましたけれども、今、時の流れのスピードというものは相対的に大変速くなってきている、五年一昔みたいなふうにも言われるわけでございまして、そういった環境の中で、二十年あるいは三十年入所されていた方が出所をしてから社会に復帰する、これは大変大きな課題ではないかな、これに対するやはり矯正教育というものにしっかり取り組んでいただきたいと思います。

 次に、法案の内容にちょっと入りたいと思うんですけれども、強姦、強制わいせつについて、まず大臣にお伺いをしたいと思います。

 性的自由の侵害ということなんですけれども、日本の場合ですと、加害者が、主体が男性、客体が、被害者が女性である場合に限り強姦罪が適用ということになりますし、まあ、その前提として挿入行為があったということなんでしょうけれども、それ以外は強制わいせつという犯罪になるわけなんです。

 しかし、大臣、今まで女性の人権問題ですとか取り組んでいらっしゃった大臣にあえてお伺いをしたいと思うんですけれども、性的自由に対する侵害というものは、これは男性であろうと女性であろうと、受ける侵害に対して、個人の尊厳という意味においては性別は関係ないものと私は考えます。その個人に対して、性的侵害を受けるということは、命を落とすことよりもひょっとしたらつらいことなのかもしれない。こういった状況は、客体が、被害者が女性であれ男性であれ、私は同じ重さを持っているのではないかというふうに思いますけれども、性別により犯罪の種別を分ける、これを大臣はどのようにお考えでしょうか。

南野国務大臣 我が国の強姦罪が女性に限定されているのは、先生、あり得ない、男女平等にすべきだというふうに思っておられるようでございますが、性というもの、いろいろな問題を考えてみますと、男女の生物的な差異等に基づくということになろうかと思います。これは解剖学的な問題でもあり、それから生物学的な問題でもあり、ホルモン的な問題も、いろいろその中に含まれている課題であるというふうに私は承知いたしておりますが、この法案は女性を保護しようという考えによるものでありますので、そういう点では合理的であるというふうに考えます。

 また、男性に対する性犯罪については、強制わいせつ罪に当たり得るところですが、悪質な場合もあることから、今回、強制わいせつ罪の法定刑を引き上げるということにしており、事案に応じた適正な科刑が可能になると思われます。

 外国では、男女同じ性犯罪の対象としているところもあることは承知いたしておりますけれども、それはそれぞれの国の実情等によるものと考えられ、その一方で、その法定刑は、我が国の現在の強姦罪と比較しても必ずしも重くないものと承知しております。そのようなあり方については、慎重な検討を要するというふうに思っております。

小林(千)委員 先ほど、生物的な差異に基づくものであるからこういうふうに犯罪の種別を分けるというふうに答弁いただいてきましたけれども、具体的に生物的な差異というのはどういうことを指していますか。

南野国務大臣 男性は妊娠しません。女性は妊娠します。いろいろな課題があります。

小林(千)委員 多分そういうことではないかなと思っておりましたけれども。それは、もちろん妊娠の可能性というものが女性にはあるわけなんです。

 しかしながら、それはやはり、もちろんそれぞれの事情に見合った法定刑というもの、あるいは求刑というものが行われなければいけないと思います。先ほど前段に申し上げましたように、個人に対する性的自由の侵害という価値で考えれば、私は、男性に対する侵害も女性に対する侵害も同じなのではないかなというふうに思います。

 もちろん、そういった生物的な差異、妊娠の可能性といったようなこともあるでしょうけれども、やはりそれぞれに見合った刑のあり方というものを検討すべきなのではないでしょうか。

大林政府参考人 委員がおっしゃられるのはわかります。外国の例を見ますと、かなり細かい分類がなされている。今のような男女を共通とするもの、それから強姦的なもの。それは、先ほど大臣も答弁なされたように、刑が、今回私どもが御提案している刑よりもかなり軽いものが先進国で見られます。ですから、確かに、そういう性犯罪というものを考える場合に、委員がおっしゃるような考え方ももちろんあります。ですから、今後、将来的にはそういうものも検討課題にしていく必要があろうかと。

 ただ、現在、日本においては圧倒的に女性の被害者が多いわけですので、今のところはこの刑を維持していく必要があろうか、こういうふうに考えております。

小林(千)委員 女性の被害者が多いからそういうふうにというのは、答えになっていないと思います。男性の被害者も、少ないですけれども存在をしているわけでございますから。ぜひこれは将来的な課題として、大臣、検討をいただきたいというふうに思います。

 続きまして、時効についてお伺いをいたします。今回、公訴時効の期間の見直しが行われます。なぜ延長するんでしょうか。

大林政府参考人 お答えします。

 今回の改正で凶悪重大犯罪に係る公訴時効期間を延長するのは、国民の平均年齢が大幅に延びる等の状況のもとで、凶悪重大犯罪に対する処罰感情等が時の経過により鎮静化していく度合いが低下しているというふうに考えられることや、新たな捜査技術の開発等により、犯罪発生後相当期間を経過しても、有力な証拠を得ることが可能になっていることなどを踏まえたものでございます。

小林(千)委員 もちろんそういった事情もあるでしょう。もう一つ、やはり犯罪被害者の方々に対する思いというものもあると思います。例に挙がっているような、殺人を犯しても十五年間逃げおおせればそれで罪は問われないのか、そういった被害者に対する感情も当然あると思います。

 でも、その被害者の方々は、一刻も早く犯人を捕まえてほしい、検挙してほしい、こういった思いも同時にあるわけでございまして、それは時効を長くすれば検挙率は上がるのか、こういった問題もあると思います。そういった犯罪被害者の方々が要求しているのは、初動捜査体制を含めて、警察力、刑事警察力の向上というものを望んでいるのであり、時効の延長、もちろんそれもあるでしょうけれども、一刻も早く検挙をしてほしい、検挙率を上げてほしい、こういった要求があるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

大林政府参考人 御指摘のとおりだと思います。

小林(千)委員 そこで、考えるのは、この時効の延長ということにより、対象とされる事件はふえるわけですよね。ですから、今の状態、ただでさえ刑事警察力の向上が求められているところに、資源は限られている、捜査資源、これは費用なんですか、人的費用なのかもしれませんけれども、そういった予算は限られている、その中で、捜査資源は、事件の数が、対象件数が多いんですから振り分けられる、それによる捜査能力の低下というおそれは招かないでしょうか。心配しているんですが。

大林政府参考人 御指摘のとおり、公訴時効期間を延長することにより、捜査当局の負担が一定程度増すことは間違いないと思います。捜査当局におきましては、限られた人的、物的資源の中で創意工夫をして、迅速な適用実現といいますが、事案を解明していく、そして、法令を適正に適用していくという努力をしていかなければならない、これはそうしなければならないというふうに考えております。

小林(千)委員 もう一つ、時効が延長されることにより危惧される問題といたしまして、被告人・弁護人の防御権ということもあると思います。時間が経過することにより、証拠がなくなってしまう、これは検察側にしてみても条件は同じなのかもしれませんけれども、あるいは証人がお亡くなりになってしまう、こういったことも十分考えられるわけでございまして、こういった防御あるいは立証に支障を来すものというふうにならないのか。

 もちろん、だからといって時効を短くしなければいけないというものではないと思いますけれども、この辺のバランスのとり方、永遠に時効は、殺人については時効を設けないべきという意見もあると思います。この辺のバランスのとり方はどのようにお考えでしょうか。

大林政府参考人 相当な日時を経過してから犯人を検挙するということは、これはいろいろな面で難しい問題、証拠収集の面で非常に問題があろうかと思います。これまでの法制審議会等の議論の中に、これによって被告人側、弁護人側が負担が重くされるんじゃないかという御意見もあります。

 御案内のとおり、刑事において立証責任を負うのは検察官でございます。私たちとしては、今回の公訴時効期間の延長が、検察官と被告人との負担のバランスを被告人の不利益に動かすものではない、こういうふうに考えております。

小林(千)委員 もう一つ、警察機能、警察能力、捜査能力ということでお伺いをしたい。

 きょうは警察庁の方もおいでいただいているわけなんですけれども、残念ながら、今、警察が国民から信頼を余りされていない、こういった世論調査も行われている、結果が出ているわけでございます。直近の調査によりますと、まあ新聞のデータをそのまま持ってくるのもどうかと思いますけれども、例として挙げます。

 警察を信頼しているというのが六五%で、過去最低となってしまった。十年前はこれは九〇%近くあったのが六五%まで低下をしている。逆に、警察を信頼していないというのは三四%、国民の三分の一は警察を信頼していないという今の、体感治安というんですか、という状況にあるわけなんです。理由といたしましては、警察官のモラル低下ですとか、あるいは内部の不祥事隠しの体質がある、親身に対応してくれない、こういったことを国民は思っているわけなんです。

 私は北海道選出なんですけれども、御存じのように、道警、道警不正会計処理、報償費の不正流用の問題で、今、北海道では大問題になっています。道民の方々からは、道警の信頼というものは失墜をしている状態なんです。

 このような状態で、どうやって警察が国民から理解をされ、信頼をされ、その警察の捜査能力というものを向上させていくか、大変私は難しい課題を抱えていると思うんですけれども、このような警察組織の体質改善をしないと、なかなか国民からの信頼回復、治安回復には結びついていかないと思うんですが、いかがでしょうか。

安藤政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、治安の回復という警察の任務を遂行するためには、警察に対する国民の理解と協力が不可欠でございまして、このことは国民の信頼を基礎として得られるものであると我々は認識しております。

 そこで、これまでの警察の取り組みについて申し上げたいんですが、一連の警察不祥事を受けまして、平成十二年三月に警察刷新会議が発足いたしました。そして、同年七月、警察刷新に関する緊急提言が国家公安委員会に提出されまして、これを受けまして、国家公安委員会及び警察庁では、同年八月に警察改革要綱を取りまとめ、以来、それに基づく各種施策を全国警察を挙げて推進し、国民の信頼回復に現在取り組んでいるところであります。

 具体的に申し上げますと、例えば、警察官の教育につきましては、法の執行者に求められる高い倫理観を備えた警察の育成が不可欠であると考えておりまして、職務倫理教育を一段と強化しているところでありますし、また、警察庁あるいは都道府県警察における監察機能を強化して、被疑事案、いわゆる不祥事案の未然防止に努めるとともに、被疑事案が発生した場合には、事案の厳正な処理と適切な公表を行うことにより、警察の自浄機能の強化に努めるところであります。

 加えて、警察法を平成十二年に改正いたしまして、都道府県警察職員の職務執行についての文書による苦情申し出制度を新たに創設しまして、苦情の適正な処理を現在推進しておりますし、また、住民からの相談に的確に対応するため、いわゆる警察安全相談と申しますが、その体制を強化するなどいたしまして、国民の要望、意見を把握し、誠実な対応を図るための取り組みを強化しているということであります。

 さらに、今委員御指摘のように、経理の不適正問題ということでございますが、これにつきましても、それぞれの疑惑が指摘された各県の警察の方で、現在公安委員会の指示を受けながら、厳正な調査を今推進しているといいますか、そういう中で、この経理の問題につきましても、国民の信頼を回復するために適正な執行を図るように、現在、警察庁と各県と連携をとりまして、そうした国民の信頼を回復するための、この分野におきましてもさらなる努力を続けているということであります。

 以上、長くなりましたが、そういうのが警察の取り組みの概要でありますが、いずれにしても、治安回復のためには、今後とも、先ほども申しましたような警察改革をやはり持続的に断行して国民の信頼を回復することが不可欠であるというふうに私どもは認識しております。そのためには、やはり警察改革の推進状況を不断に検証する、これが大事だと思いますので、そうした検証をしながら、引き続き積極的に警察改革に取り組んでまいる所存であります。

 以上です。

小林(千)委員 時間がありませんし、この問題、不正会計経理処理の問題については内閣委員会でもやっていますので、ここでは取り上げませんけれども、ぜひとも信頼回復のために一層の努力をしていただきたいと思います。

 時間がありません。最後の質問になりますけれども、裁判員制度との関連です。

 私も裁判員制度のときに質問いたしましたけれども、どうしても、自分が裁判員になったとき、この量刑を判断しなければいけない、大変重い責任を持っているなというふうにあのときも感じていた次第です。私は非法曹者ですので、国会議員でなくなれば、裁判員となることも当然あります。できれば次も当選したいなと思っていますけれども、でも、そういったことも考えているんですよね。(発言する者あり)いえ、別に、当選をしたいと思っています。

 今回、この量刑の引き上げにより裁判官の裁量が広がったということは、二〇〇九年をめどに行われる裁判員制度においても裁判員の裁量が広がるということに、これはイコールでなるわけでございます。そのときに、自分が裁判員になったときに、今回の法定、下限は三年、上限はこのぐらいというところが、今度は下限が五年、上限が幾つ、こういうふうになるわけなんです。その中で、裁判員は一体どうやって量刑を判断するのか、これは大変難しい問題だと思います。

 その辺は、裁判官の方がいろいろと示唆をしてくださる、示唆といいますか、裁判官の方がいろいろアドバイスをしてくれるのかもしれません。前例、あるいは法定刑の幅、あるいは求刑みたいなものを考慮に入れて判断をするということになるんだろうと思いますけれども、この法定刑の幅が全体的に引き上げられることによって、重い方にスライドさせられるといったことはないのか。

 私たちが裁判員になったときに一番ここは気になるところなんですけれども、こういった今回の法改正に対する影響は、裁判員制度でどのように出てくるとお考えでしょうか。

山崎政府参考人 量刑につきましては、今委員の方からも幾つかの要素を言われていると思いますけれども、まず、裁判の終局に至りますと、検察側から求刑が行われます。これは、いろいろな同種の事件等を考慮した求刑が行われるわけでございます。これに対して、弁護側、被告人側からこれに対する意見が出てくるわけでございまして、まず、ここが一つの手がかりになるということは間違いございません。

 それからもう一つは、先ほどから御指摘ございますように、裁判官と評議をするわけでございますけれども、その中で、法定刑がどのぐらい、それから、実際に刑を科す場合の、処断刑といいますけれども、その幅がどのくらい、それから他の事例においてどういうようなことになっているか、こういう説明がされるということになりまして、いろいろな参考があるわけでございますので、その中で決めていただくということになろうかと思います。

 それから、もう一点の御指摘でございますけれども、確かに、刑の幅が広がる、処断刑の幅が広がるということになれば、それは重いものについては影響を受けて重くなっていくということはあろうかと思いますけれども、従来の考え方からでもそれほど重くないというものについてはそれほど大きい影響を受けるかどうかということで、事案、事案によるということでございます。一定の影響はあるということでございます。

小林(千)委員 何にしても、その裁量判断を下さなければいけない市民がわかりやすい法律でなきゃいけないことは確かなわけでございます。前提といたしまして、一番最初にそのもととなった総合データが出てくるという前提のもとに質問をしたわけでございまして、ぜひともそれが、だれが見ても納得できる内容であることをお願いしまして、質問を終了させていただきます。

塩崎委員長 次回は、来る十六日火曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時四分散会


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