衆議院

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第11号 平成16年11月24日(水曜日)

会議録本文へ
平成十六年十一月二十四日(水曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 塩崎 恭久君

   理事 園田 博之君 理事 田村 憲久君

   理事 西田  猛君 理事 平沢 勝栄君

   理事 津川 祥吾君 理事 伴野  豊君

   理事 山内おさむ君 理事 漆原 良夫君

      井上 信治君    大前 繁雄君

      左藤  章君    笹川  堯君

      柴山 昌彦君    谷  公一君

      早川 忠孝君    松島みどり君

      三原 朝彦君    水野 賢一君

      森山 眞弓君    保岡 興治君

      柳本 卓治君    井上 和雄君

      市村浩一郎君    加藤 公一君

      鎌田さゆり君    小林千代美君

      佐々木秀典君    篠原  孝君

      島田  久君    樽井 良和君

      津村 啓介君    辻   惠君

      松野 信夫君    松本 大輔君

      江田 康幸君    富田 茂之君

    …………………………………

   法務大臣         南野知惠子君

   法務副大臣        滝   実君

   法務大臣政務官      富田 茂之君

   最高裁判所事務総局人事局長            山崎 敏充君

   政府参考人

   (司法制度改革推進本部事務局長)         山崎  潮君

   政府参考人

   (総務省総合通信基盤局電気通信事業部長)     江嵜 正邦君

   政府参考人

   (総務省総合通信基盤局電波部長)         竹田 義行君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          寺田 逸郎君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    大林  宏君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  三浦 正晴君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   松元  崇君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            石川  明君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           北井久美子君

   法務委員会専門員     小菅 修一君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月二十四日

 辞任         補欠選任

  河村たかし君     島田  久君

同日

 辞任         補欠選任

  島田  久君     市村浩一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  市村浩一郎君     井上 和雄君

同日

 辞任         補欠選任

  井上 和雄君     篠原  孝君

同日

 辞任         補欠選任

  篠原  孝君     津村 啓介君

同日

 辞任         補欠選任

  津村 啓介君     河村たかし君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 裁判所法の一部を改正する法律案(内閣提出第七号)

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

塩崎委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、裁判所法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。南野法務大臣。

    ―――――――――――――

 裁判所法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

南野国務大臣 御説明いたします。

 裁判所法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。

 新たな法曹養成制度の整備は、多様かつ広範な国民の要請にこたえることができる多数のすぐれた法曹の養成を図ることを目的とするものであり、司法修習生の修習についても、司法修習生の増加に実効的に対応することができる制度とすることが求められております。

 この法律案は、このような状況にかんがみ、新たな法曹養成制度の整備の一環として、司法修習生に対し給与を支給する制度にかえて、司法修習生がその修習に専念することを確保するための資金を国が貸与する制度を導入することを目的とするものであります。

 以下、法律案の内容につきまして、その概要を御説明申し上げます。

 第一に、司法修習生に対し給与を支給する制度を廃止し、これにかえて、最高裁判所が、司法修習生に対し、その申請により、無利息で、司法修習生がその修習に専念することを確保するための修習資金を貸与するものとしております。

 第二に、修習資金の額及び返還の期限は、最高裁判所の定めるところによるものとしております。

 第三に、修習資金の貸与を受けた者につき、災害、傷病その他やむを得ない理由により修習資金を返還することが困難となった場合における返還の期限の猶予、及び死亡または精神もしくは身体の障害により修習資金を返還することができなくなった場合における返還の免除について、所要の規定を設けております。

 第四に、以上のほか、修習資金の貸与及び返還に関し必要な事項は、最高裁判所が定めるものとしております。

 このほか、所要の規定の整備を行うこととしております。

 以上が、この法律案の趣旨であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。

塩崎委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

塩崎委員長 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として司法制度改革推進本部事務局長山崎潮君、法務省大臣官房司法法制部長寺田逸郎君、財務省主計局次長松元崇君、文部科学省高等教育局長石川明君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

塩崎委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

塩崎委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局山崎人事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

塩崎委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

塩崎委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。谷公一君。

谷委員 昨年、初めて当選いたしまして、先月より法務委員会に属している谷でございます。

 長年、地方行政の仕事をしてきたわけでございますが、司法につきましては、尊敬すべきたくさんの先輩の方なり同僚の方に知識、識見など比べようもございませんが、せっかくの機会でございますので、裁判所法の一部を改正する法律案について、また、それと関連する法曹養成の制度全体について、素人といいますか国民の目から見て、幾つかお尋ねをしたいというふうに思います。

 先ほど、南野大臣の方から提案理由の説明があったわけでございます。現行法では、司法修習生に対し国が給与を支給しているところでございますけれども、その制度をやめて、これからは支給をしない、しかしながら、司法修習生が希望をすれば、修習に専念できるようにお金を無利息で貸してあげましょうと。このように、給費制から貸与制に変わるというのが今回の法改正の骨子、ポイントといいますか要諦であろうと理解しているわけでございますが、なぜ変えるのか、今の制度にどこに不都合があるのかということについて、私の頭の中で十分理解できていないというのが正直なところでございます。

 なぜ変えるのか、まず南野大臣に、その点についてお尋ねをしたいと思います。

南野国務大臣 お答え申し上げます。

 法曹の質、量ともに充実させるためというのが一番大きな目的ではございますが、司法修習生の大幅な増加が求められております。また、このたびの司法制度改革を実現していくに当たりましては、国民の負担を伴うことについてその理解を得ていく、そのような必要が出てまいります。

 このような状況にかんがみますと、今後もさらに国民の負担をふやして給費制を維持することについて、国民の理解を得ることは困難ではないかと考えております。そこで、司法修習生が修習に専念できる環境を確保しながら、給費制を貸与制に切りかえる必要があるというふうに考えております。

谷委員 今回の司法制度改革の目的は、国民に身近で、速くて、頼りがいのある司法の実現を目指すということであろうかと思いますが、確かに、司法ネットの整備であるとか、裁判員制度の導入であるとか、法科大学院の設立などで大きな財政負担が生じるということは事実であろうかと思いますけれども、何か財政上の理由がやや強調されているというのか強調され過ぎるというのか、司法制度改革推進本部の事務局長である山崎さんの方に、この点についてどうですか、この理由について。

山崎政府参考人 ただいま大臣の方からも御答弁ございました。全体の趣旨はそのとおりでございますけれども、私が考えているところを若干申し上げたいというふうに思います。

 まず、今回、改革審議会の方で、法曹人口を大幅にふやしていこう、こういう政策を決めているわけでございます。それに伴いまして、それを実現するためにはどういうシステムが必要かということから、新しい法曹養成制度が構築されて、順次その案が成立しているわけでございますけれども、いわば、法科大学院と司法試験と司法修習、この三つを連携して、これからふえていく修習生を質を落とさずに育てていこう、こういう政策をとったわけでございます。

 これに関しましても、それなりの財政負担が当然伴うものでございます。これ以外に、先ほど御指摘ございましたように、裁判員制度あるいは司法ネット等、本当に、これを実現していくためにはそれなりの資金が必要になってくるわけでございます。

 これにつきましては、まさに税金を使わせていただくことになるわけでございまして、国民の負担という問題があるわけでございます。この国民の負担につきまして、やはり国民の方々の理解を得なければならないだろうということでございます。その理解を得るという点につきましては、我々としても、お願いするものはお願いする、しかし、自分たちで努力できるものは努力してそこを合理化していく、こういう姿勢が大事であるということになるわけでございます。

 そういう点から考えた場合に、この給費制度の問題につきましては、これは戦後間もなくの創設当初に比較して、修習生が大幅に増加するということでございます。当初は二百名台でございました。そういう状況の変化があるということ。それから、公務員でなく、公務にも従事しない者に国が給与を支給するのは、現行法上かなり異例の制度であるということから、給費制を維持することについてもさまざまな批判もございました。

 このような状況を総合的に我々としては勘案いたしまして、給費制を維持することについて、国民の理解を得ることはもう現状では困難であるということでございます。そういう点を考えて貸与制に移行するということにしたものでございます。

 ですから、最後にまとめて言えば、単に財政事情が厳しいからというだけではなくて、やはり、司法制度改革を実現するために財政資金をより効率的に投入する趣旨、これで貸与制に移行するということでございますので、御理解を賜りたいと存じます。

谷委員 今の御説明ですと、制度ができたときにはそれなりの合理的な理由があったけれども、社会の大きな変化、それから司法制度改革、そういった中で、従来の制度をそのまま維持するということについては国民の理解がなかなか得られないという御答弁ではなかったかと思います。

 ただ、そうすると、少し観点を変えまして、司法制度を支える法曹のあり方ということにつきましては、司法の制度が国によってさまざまであるように、その国の歴史とか文化とか国民性とか、そういったものに深く根差しているように思います。

 アメリカ合衆国、アメリカは司法試験合格者はすぐに弁護士などになれるというふうに理解しているわけでございますけれども、我が国日本のように、一定期間司法修習生として学ぶことを義務づけている国はどういう国があるのか、また、そういう国は給与を払っているのかどうかということについて、お尋ねしたいと思います。

山崎政府参考人 確かに、我が国と同様なシステムを持っている国として典型的なのは、ドイツと韓国が挙げられているわけでございます。アメリカとかイギリスについては、こういう制度はないということでございます。

 それで、ドイツでございますけれども、これは州ごとの制度になっているようでございますが、給費制をとっております。ただ、例えばベルリン州などでは、修習生の身分を公務員から非公務員として、給与を減額したというふうにも聞いております。

 また、韓国でございますけれども、韓国も給費制をとっております。ただ、この点につきましても、修習生の増加に伴いまして、給与を通常の国家公務員の職給と切り離して減額をした、こういう状況にあるというふうに聞いております。

谷委員 同じような、一定期間司法修習生として義務づけている国はドイツ、韓国ということですが、いろいろ調べたり、あるいはお話を聞いていると、我が国の制度が新たに法科大学院をこの四月に設けた、法科大学院が一方である、しかし、司法試験合格後、一定期間また司法修習生となることを義務づけている、そういう国というのは、我が国のほかにございますか。法科大学院があり、なおかつ試験合格後も一定期間司法修習生となることを義務づけている国はないんじゃないか。何か非常に、やや中途半端な感じもしないでもないんですけれども、どうでしょうか。

山崎政府参考人 確かに、御指摘のとおりに、ロースクールプラス研修、これを持っている国は、今のところ私どもも承知はしていないところでございます。

谷委員 なかなか、制度を変えるときに、全く白紙の状態ではなくて、今の制度を前提にしてなおかつ国民の理解を得ながら変えるということで、難しいところはあろうかと思いますけれども、なかなかそれぞれ、アメリカ型に徹するわけでもなく、かといってドイツ型に徹するということでもないということで、よりよい制度に根づくように期待しているところでございます。

 少し質問を変えます。

 現在、司法修習生に給与が支払われているわけでございますけれども、どの程度の額が支払われているのですか。これは一律ですか、それとも年齢、扶養家族によって差を設けているのか、お尋ねしたいと思います。

山崎最高裁判所長官代理者 現在、司法修習生に対しましては給与が支給されておりまして、これは一人当たり月額二十万二千九百円という金額でございます。これは当然一律でございますが、そのほかに、一般職の公務員の例に準じまして諸手当が支払われるということになっております。この点につきましては、例えば扶養手当ですとか住居手当といったものがございまして、これはそれぞれ要件を備えた者に支給される、こういう仕組みでございます。

谷委員 現在、全く一律ではなくて、それなりのいろいろな、年齢とか扶養家族を加味しているということでございますけれども、給付から貸し付けにするということについて、少し気になるのは、私も実は子供が三人いるんですけれども、計算上は大学生三人ということはあり得ないんですけれども、なかなかストレートでいかない、浪人もあったということで、一年間、大学生三人になったんです。大変でしたが、幸い、私は神戸に住んでおりまして、自宅から二人、娘が通っていましたので、男の子だけ獣医の大学に行くということで神戸を離れていたということで、一人だけいわば仕送りをしていたということで済んだんですけれども、なかなか大変です。

 そういう我が身のあれから考えてみましても、この四月から法科大学院ができ、二十二年ごろには基本的に法科大学院、ロースクール修了者のみが法曹に入ることになる。ではそのロースクールはというと、法学部出身者を二年、それ以外の者は三年、その間私立の大学で学ぶとすれば百万から二百万、平均で百五十万ぐらいですか、学費だけでもそれだけかかる。それで、大学院のときに、司法試験を控えているためアルバイトなどはもちろんできない。それで、そのロースクールの学生のときもいろいろ、奨学金などで借りる人も相当出てくるかもわからない。

 加えて、わずか今度は一年でございますけれども、司法修習生の期間も、今のように給与が出るのではなくて、貸与ということに変える。早く言えば、なかなか経済的に余裕のない家庭、方、あるいはたくさん稼いでいる親のいない方というのは、裁判官なり検事なりあるいは弁護士になるというのが大変難しいのではないかということも危惧するわけであります。

 能力のある人、あるいは努力してきた人、あるいは汗をかいた人、そういった方が報いられる社会というか、たとえ親が貧しくてもそういう能力と努力があれば夢と希望が実現できる、そういう社会というのは、我々はぜひともこれからも守っていかなければならないと思うんですけれども、この点について、人間性豊かな滝副大臣、御見解をお尋ねしたいと思います。

滝副大臣 今の委員の御指摘のとおり、この法科大学院、最低二年法学を実習し、既習していない人は三年、こういうコースを経るだけでも負担というのはそれなりに出てくるわけでございますから、仰せのとおり大変在籍することが厳しい。その上に、合格しても今度は修習生として、貸与制度でございますから、私は、それなりに経済的には大変大きな負担をお願いすることになるということについては御指摘のとおりだと思います。

 ただ、幸いなことに、このロースクール、法科大学院につきましては、奨学金の面でかなりの配慮ができたということもございます。

 それからまた、修習生の期間についても二十万円程度月額で借りられる基盤ができたということにおいて、かなりの財政支援は結果的にはできたということを考えてみれば、この辺のところが精いっぱいのことかなという感じがいたします。

 さらに加えれば、これはもう大学サイドの件でございますけれども、結果的に各法科大学院とも奨学金制度をかなり充実したものを、もちろん一部の学生でございますけれども、発足とともにそういうような制度を大学側も用意してくれたということによって、かなり救われた格好にはなっているんだろうと私は思います。

 しかし、いずれにいたしましても、返還の問題がございますから、それはそれでまた別に考えていかないとこの問題は完結しないということを考えていかなければいけないというふうに私は思っております。

谷委員 副大臣の言われる返還の問題でございますけれども、今回の貸与制の検討過程で、例えば、司法ネットの常勤弁護士となった場合とか、あるいは過疎地域で活動する弁護士となった場合とか、裁判官、検察官に任官した場合とか、それぞれ一定期間勤めると修習資金の返還を免除するということについても検討されたというふうに聞いております。

 例えば、僻地医師ということで、僻地の医師の確保のために、一定期間僻地などに勤務した場合、大学六年間の学資を免除するとか、そういう制度が昔からありますけれども、そういうような仕組み自体は広く国民の理解を得ているというふうに思うんです。

 そういうことから考えると、こういうことをもっと前向きに検討してもよかったのではないかと私自身思うんですが、しかし提出法案にはこういうことは盛り込まれておりません。返還免除の制度を設けなかった理由について、推進本部の山崎局長にお尋ねしたいと思います。

山崎政府参考人 ただいまの御指摘の点は、私どもの検討会でも最後の最後までいろいろ議論があったわけでございます。最終的にはこれを取り入れないということにしたわけでございますが、その主な理由でございますけれども、免除の対象となる職種を合理的、客観的に切り分けること、これが実際上困難であるということと、それから、進路にかかわらず法曹三者を統一的に養成するという統一修習の理念、これとの関係でどうなのかという二つのポイントがございました。こういう点から今回は取り入れないということでございます。

 先ほど、例えば僻地に勤務した者をどうするかという御指摘もございました。これは、僻地に勤務する者というのはいろいろなパターンがございまして、まず、裁判官、検察官でも、当然あればそこへ行くということでございますし、それから司法ネットで行く人もいるかもしれません。これ以外に、例えば日弁連でもみずからの努力で、ひまわり基金ということで僻地に事務所を設けて活動されている方もおります。それから、みずからの意思で退職後そういうところに行かれる方も現におられるわけでございまして、そういう方々をどういうふうに切り分けていくかということが極めて難しいということから、最終的にはこのようになったということで御理解を賜りたいと思います。

谷委員 今の提出法案にそれが入っていないわけでございますので、おっしゃられることはわかりましたが、もう少し前向きにとらえていただいてもいいのかなというふうに思います。

 今の僻地なりの問題でも、裁判官なり検事は、これはそういう組織があればそこに勤務するわけですから、問題は、弁護士がいない、現実にいないという地域は全国にいっぱいあるわけですから、そういう地域の実態を見るならば、制度として優遇策を設けるということについても、もう少し前向きに取り組んでもいいのではないかなというふうに私は思っております。

 次の質問に移らせていただきたいと思います。今度は、新しい司法試験についての質問でございます。ロースクールの修了者が受験する新しい司法試験です。

 まず、合格率について伺いたいというふうに思います。

 三年前、平成十三年六月に取りまとめられました司法制度改革審議会意見書では、「法曹となるべき資質・意欲を持つ者が入学し、厳格な成績評価及び修了認定が行われることを不可欠の前提」こういう留保つきではありますけれども、法曹教育に特化した教育を行う法科大学院修了者のうち相当程度、例えば七、八割の者が新司法試験に合格するという認識が示されたところでございます。

 その後、ロースクールができた。この四月には六十八校、定員が約六千人ですか、もう開校して、既に学んでいる。そして、来年の四月も幾つかプラスアルファがあるようでございます。

 ある雑誌を読んでおりましたら、シミュレーションによりますと、平成十八年の新しい司法試験の合格率は約三分の一、平成二十年以降は約二〇%というふうに言われております。五年間に三回チャレンジできるわけですから、それを含めてのことだと思うんですけれども、どうも、もちろん最初の十三年六月の司法制度改革審議会意見書は、繰り返しになりますけれども、いろいろな留保条件がついているということは事実でございますけれども、何となく私も、そういう新聞でぱらぱら見ていたときに、ああ、今度は新たな仕組みになって、ロースクールで学んだ人が、多くの人が、普通にきちんと勉強していれば、裁判官なり検事なり弁護士になるのかなというふうに思っていたら、何かどうも、ロースクールができ過ぎたのか、大変合格率が、今のシミュレーションですと初年度が三四%とかそれ以降は二〇%とか、大変厳しい数字になっている。

 この制度設計の考え方は変えたのか、変えていないのか、あるいは、変えていないのであれば、なぜそういうふうになったのか。弁護士でもございます富田政務官にお尋ねしたいと思います。

富田大臣政務官 先生が御指摘いただきました司法制度改革審議会の意見書に確かに七、八割という数字が出てきますが、先生も御指摘のように、留保つきだというふうにおっしゃっていただきましたけれども、そこでは、「法科大学院では、その課程を修了した者のうち相当程度(例えば約七〜八割)の者が」「新司法試験に合格できるよう、充実した教育を行うべきである。」という意見書になっております。七、八割が合格するとは書いてございません。法科大学院における教育内容及び教育方法に関するもので、新司法試験において法科大学院の修了者の七、八割が合格することを企図したものではないというふうにこの点は認識しております。

 そもそも、各年度の司法試験の合格者は、法曹として必要な学識やその応用能力の有無という観点から、司法試験考査委員の合議による判定に基づき司法試験委員会が決定することとされており、将来、法科大学院課程の修了者のうち何割が司法試験に合格するか、あらかじめ確かなものとして申し上げることは困難であります。

 先ほど先生の方から三四%とか二割という数字が出ておりましたが、仮に法科大学院の一学年の学生約六千人が全員その課程を修了するとして、年間合格者を約三千人と仮定した場合、受験回数制限を前提として計算すれば、その合格率はおよそ五割になるとも考えられます。

 しかし、意見書の立場に立って法科大学院による厳格な修了認定を前提といたしますと、その修了者数が少なくなりますから、まあ認定されない方もいらっしゃるということで、合格率はそれより高くなることとなります。

 いずれにせよ、現時点でこのような前提抜きに合格率を申し上げることは控えるべきであろうというふうに考えております。

谷委員 何かもう一つあれでございますけれども、後でたくさんの方が質問されるようでございますので、そこは譲りまして、試験内容についてお尋ねしたいと思います。

 では、その新しい司法試験の内容はどういう内容になるのかということでございますけれども、ロースクールの教育内容を踏まえた試験になるということでございますけれども、現在は択一があり論文があり口述ですか、というようなことでございますが、わかりやすく、今と何が違う試験内容になるのかということについてお尋ねしたいと思います。

寺田政府参考人 内容面から申し上げますと、今委員が御指摘のとおり、まさに法科大学院の教育を反映した司法試験にする、これは連携法の考え方でございますが、それに示されてあるとおりのことを考えております。

 具体的に申し上げますと、まず口述試験というのがございません。新しい試験で口述試験をしないのは、法科大学院の教育課程の中で、このような口述試験で見られるべき能力、すなわちいろいろな応対をする能力でございますが、そのようなものは実際にはかられるだろうという期待に基づいているわけでございます。

 より重要なことは、もう少し実務的な対応能力というのがやはり今度の新司法試験には入ってくるという点でございまして、具体的に申し上げますと、まず基本的な科目であります憲法とか民法とか商法とか刑法とかという科目が、従来の試験には科目別として試験を行う、こういう仕組みになっておりましたけれども、新しい試験においては公法系と民事系と刑事系、こういうような三つのカテゴリーに分けまして、それぞれ関連の科目を幅広く柔軟に実務的に聞ける、こういう体制になっております。

 三番目の問題といたしまして、出題の内容でございますけれども、これは短答型と論文型がもちろんあるわけでございますけれども、短答型についてはより基本的な能力を聞くわけでございますが、論文型においては、今までのような何々を論ぜよということだけではありませんで、いわば非常に実務的な、例えば契約書でございますとかいろいろな実務上出てくる書面というようなものももとにいたしまして、幅広い観点から非常に長時間にわたって論述していただかなきゃならないような、そういうタイプの問題ということも当然に予定する、こういうことでございます。

谷委員 それでは、もう時間もなくなりましたので、最後に一つだけ、施行期日についてお尋ねしたいと思います。

 十八年十一月一日ということですけれども、しかし、この春法科大学院に入学した三年課程の学生は修了するのが平成十九年三月であります。それから五年間で三回受験できる、こういうことを考えるならば、何か、入学したときというか入学を決めるときに、今の制度を前提にその人たちは人生設計を考えてロースクールに入ったのではないか、常識的にはそう考えるんです。そういうことを思えばどうかなという思いがしないわけでもないんですけれども、山崎事務局長のお考えを最後にお伺いしたいと思います。

山崎政府参考人 この制度の発足を十八年にした理由でございますけれども、先ほど申し上げましたように、新しい法曹養成制度、これ全体のスタートが平成十八年から行われていくわけでございますので、そういう関係から、それと一体にしてと考えたわけでございます。

 その前提でございますけれども、前提として、給費制の見直しにつきましては、司法制度改革審議会の意見でもその指摘がございました。また、それを受けまして、私どもの検討会の方でも二年間にわたり議論を続けまして、この内容についてはもう一般に、外に出ているものでございまして、それから検討会の中でも委員の方々から、法科大学院生はある程度覚悟をしている、そういう状況である、そういうような御指摘もございました。そういう点を受けまして、私どもは平成十八年からというふうに考えたわけでございます。

 ただ、この点に関しましては、法科大学院生からのいろいろ御指摘もございますし、さまざまな議論があるということは承知をしているところでございます。

谷委員 どうもありがとうございました。

塩崎委員長 次に、江田康幸君。

江田委員 公明党の江田康幸でございます。本日は、裁判所法の一部を改正する法律案について質問をさせていただきます。

 今般の司法制度改革におきましては、法曹養成制度の改革が大きな柱の一つとされておるところでございますが、どんな立派な制度をつくっても、これを担って動かしていく、そういう人の部分でございますけれども、人が大事である、その人の養成ができなければならないわけでございます。質、量ともに豊かな法曹を得るということが一番重要であるかと思っております。

 今般の最高裁判所の改正につきましては、法曹養成の最後の課程であります司法修習について、司法修習生に国から給与を支給する制度を、国から修習資金を貸与して、法曹になった後に返還する制度に改正するものでございます。

 法案の質問に入る前に、新たな法曹養成制度につきまして質問をさせていただきたいと思っております。

 この新たな法曹養成制度は、事実上、司法試験という点による選抜となっている現行制度を改めて、法曹になるための専門的な教育を行う法科大学院を創設して、法科大学院の教育と司法試験、司法修習を連携させたプロセスとしての養成制度を整備するものであり、法科大学院は既に今年四月からスタートしているところでございます。

 そこで、まず、法科大学院と司法試験の連携について質問をさせていただきます。

 新しい司法試験につきましては、法務省に設けられた司法試験委員会で検討が進められているとのことでございますが、新司法試験では法科大学院の教育との連携を具体的にどのように図っていかれるのでしょうか。

寺田政府参考人 ただいま御指摘がありましたとおりに、現行の法曹養成制度と違いまして、新しい法曹養成制度が一番特色といたしますのはプロセスとしての法曹養成ということで、具体的には、法科大学院の教育と司法試験、司法修習との間の連携が図られるということが非常に大きなポイントになるわけでございます。

 御指摘の司法試験と法科大学院との連携につきましては、具体的には、先ほど申し上げましたとおり、一番大きいポイントは、やはり司法試験の内容というものが法科大学院の教育を反映しているかどうかという点だろうというふうに考えておりまして、試験の内容が法科大学院で現に実務的に行われるだろうと言われるような長文の分析力を非常に多く試すようなタイプの出題になる。また、科目も、選択科目というのが、先ほど申しました基本的な三科目以外に設けられるわけでございますが、その選択に当たっても、現に法科大学院で行われている、実務上重要だとされるような科目の中から選ぶということにいたしております。

 また、具体的にいろいろな情報を、どういうような司法試験が行われるかということを法科大学院側にお伝えするということも非常に重要でございますので、現在、司法試験委員会の検討の枠組みの中からサンプル問題というのをつくりまして、そのサンプル問題というのを既に公表してございますが、これを法科大学院側にごらんいただきまして、具体的に、司法試験ではこういうような問題が出されるということをあらかじめ知っていただきたいという手当てをいたしておりますし、また、今後は、どのような試験が具体的に行われるかということについてもさまざまな情報提供をしてまいります。

 反面、現に司法試験委員会の方にも、具体的に、では法科大学院でどういう教育が行われているかということを知っていただくのも非常に重要でございますので、これはさまざまな手だてで、司法試験委員会の方が、現に法科大学院でどのような教育が具体的に行われているかというようなことをごらんいただくというような、そういう工夫もいたしております。

 なお、司法試験委員会でございますが、この中には、メンバーとして法科大学院の関係者の方も四名おられまして、うち二名は純粋に法科大学院の学者の方でおられます。

江田委員 今申していただきましたように、やはり、質、量ともに優秀な法曹をつくるという上においては、司法制度改革、法曹養成制度の骨格であります法科大学院と司法試験と司法修習の連携が重要であるということで、法科大学院の教育を反映している、そういう司法試験の内容にしていく、また、そういう情報を交換してそのような方向に持っていくという答弁であったかと思います。

 これに続きまして、やはり優秀な人材を育成するという上においては司法修習がまた非常に大事になってきますので、この司法修習についてお伺いをいたします。

 司法修習は、現実の事件、それを教材として、弁護士、検察官、裁判官の仕事を実際に体験することを通じて法律実務を学ぶ課程であると思っておりますが、百聞は一見にしかずという言葉がありますけれども、見る以上に、実際の仕事を体験するということになるわけですから、法曹に必要な能力を身につけるために非常に有益な教育課程であって、我が国の法曹のレベルの向上に大いに貢献してきたのではないか、そのように考えております。

 そこで、新たな法曹養成制度においても、このような司法修習の重要性というのは変わらないんでしょうか。

山崎政府参考人 ただいま委員の方から御指摘ございましたように、司法修習、これは大変重要なポイントでございます。

 大学、あるいは今回であれば法科大学院でそれなりに学んでこられるとは思いますけれども、ただ、そういう座学的なものを具体的な事件にどうやって当てはめるかというのは、これは極めて難しいところでございます。それから、理屈をそのままその事件に当てはめた場合には、やはり妥当でないという場合もあるわけでございますので、その辺の入り口のところを学んでほしいというところに一つポイントがあります。

 これだけではなくて、やはり法曹のあり方とか法曹の倫理、この点についても現実の現場を見ながら学んでいただきたい、こういうことでやるわけでございます。

 そういう点から、この重要性は、新しい制度になりましても、貸与制のもとでも全く変わることはないというふうに理解をしております。

江田委員 新しい法曹制度におきましても、このような司法修習の重要性は変わらないどころか、さらに重要になってくるという御認識だと思います。

 では次に、新たな法曹養成制度におきましては、法科大学院を卒業して新司法試験に合格した者が司法修習を受けることになるわけでございますけれども、新しい司法修習というのは現在の司法修習と比べましてどのように内容が変わるのか、詳しくちょっと御説明をお聞きしたいと思います。

 また、法科大学院の教育との連携について、具体的にどのように図っていかれるかということをお聞かせいただきたいと思います。

山崎最高裁判所長官代理者 先ほど来委員御指摘のとおり、新しい法曹養成制度は、法科大学院教育、司法試験、司法修習との有機的連携のもとに行われるというふうにされております。

 その中核に位置づけられております法科大学院におきましては、法律実務家としての基礎的な素養を涵養するために、実務を視野に入れた法理論教育が行われるというふうにされております。そういうことから、新しい司法修習の期間は、従来の一年六カ月から一年に変更されたというところでございます。

 ところで、その新しい司法修習でございますが、最高裁判所に、法曹三者のほか法科大学院教授を含めた有識者にも御参加いただきまして、司法修習委員会という委員会を立ち上げまして、そのあり方について検討をお願いしたところでございます。その委員会では、先ほど申し上げました新しい法曹養成制度の基本構造を踏まえまして、また、修習期間が一年とされるという前提で種々検討をしていただきまして、本年七月に議論の取りまとめがされたところでございます。

 その取りまとめを若干御紹介いたしたいと存じますが、新しい司法修習においては、法科大学院における教育及び法曹資格取得後の継続教育との有機的な連携と役割分担を図ることが不可欠である、こういう指摘がまずございます。その上で、幅広い法曹の活動に共通して必要とされる、法的問題の解決のための基本的な実務的知識、技法、それと、法曹としての思考方法、倫理観、心構え、見識等、こういったものを標語的にまとめますと、「法曹としての基本的なスキルとマインド」、こういう表現もされているわけでございますが、そういったものの養成に焦点を絞った教育を行うという提言がございます。

 さらに、司法修習の課程という観点で申し上げますと、やはり、実務家の個別的指導に基づいて法律実務を身をもって体験する実務修習を中核とする、しかし、それに加えまして、体系的、汎用的な実務教育としての司法研修所における集合修習をこれと有機的に連携させて実施すること、こういう提言もございます。

 さらに、法科大学院において、先ほど申し上げましたとおり、法律実務家としての導入教育が行われるということが前提となりますものですから、実務修習から修習を開始いたしまして、その後に集合修習を実施するのが適当である、こういったさまざまな提言がございます。

 一年間の期間、実務修習に割り振る期間ということになりますと、これは各分野別の修習というのがございまして、裁判所、検察庁、あるいは弁護士会での修習、こういったものがそれぞれございますので、その期間が八カ月ございます。それに加えまして、選択型実務修習というものが二カ月間ございます。それで十カ月。残りは、先ほど申し上げました集合修習に二カ月当てる。こういう割り振りが提言されているところでございます。

 お尋ねのもう一つの、法科大学院における教育との連携でございますが、これは、法科大学院協会を初め、法科大学院の関係者の方々とさまざまなチャンネルで情報交換することが重要であろうと考えております。

 先ほど御紹介いたしました最高裁に設けられました司法修習委員会、ここには法科大学院教授の御参加をいただいておるわけでございまして、こうした場で法科大学院における教育の実情等を御紹介いただいて、修習内容の検討に反映させることが考えられるわけでございます。

 こうしたことを通じまして、具体的な連携を図ってまいりたいというふうに考えております。

江田委員 連携を図っていかれるということでございます。

 国民から見ても、これまでの裁判官にしろ、弁護士にしろ、ここは弁護士がいっぱいいらっしゃいますが、例えば、国民の心がわからないとか冷たいとか常識がないとか、済みません。やはりそういうような、人間性のある人材の育成を図るという上からも、今おっしゃられましたように、思考方法とか倫理観とか心構えとか見識とかいうような、法曹としてのスキル、マインドとおっしゃいましたけれども、そういうところが重要視されて修習されていく。もちろん、先ほどから言われております実務的な教育についても、集合教育まで考えられていくということでございますので、少し安心しているところでございます。どうぞよろしくお願いしたいと思っております。

 次に、時期をお聞きしたいんです。そういうような新しい司法修習の具体的な教育内容につきましては今お話をお伺いしましたけれども、最高裁で検討されているということでございますけれども、それはいつごろ決まることになるんでしょうか。今後の検討はどのように行われていくか、そこら辺のところも、またわかるようにお示しください。

山崎最高裁判所長官代理者 先ほど御紹介いたしました司法修習委員会の検討の成果に基づきまして、現実に司法修習を担います司法研修所を中心として検討を進めておりますが、これは司法研修所だけでは完結的にはできませんで、実務修習を担当する各地の弁護士会あるいは検察庁、それからそれぞれの裁判所の担当者とも協議が必要でございます。現在、そういう協議をしながら、具体的な内容について検討を進めているところでございます。

 新しい司法修習、平成十八年から実施される予定でございますので、その時期に円滑にスタートできるように、スケジュール的に余裕を持って検討してまいりたいというふうに考えております。

江田委員 それでは、今回の裁判所法の改正案について質問をさせていただきます。

 まず、改正後の六十七条二項では、「司法修習生は、その修習期間中、最高裁判所の定めるところにより、その修習に専念しなければならない。」と規定されておるところでございますけれども、現行法にはこのような修習専念義務は規定されておりません。

 そこで、まず修習専念義務とはどのような義務か、最高裁にお聞かせいただきたい。

山崎最高裁判所長官代理者 修習専念義務と申しますのは、司法修習生が、修習期間中、その全力を修習のために用いてこれに専念すべき義務というふうに申せると思います。

 ただ、その具体的な内容ということになりますと、例えば兼職、兼業の原則的禁止ですとか、そういったことが考えられるわけでございまして、その点につきましては、最高裁判所規則で規定されているところでございます。

江田委員 それでは、今回の改正で、現行の裁判所法には規定のないこの修習専念義務を規定することとした、その理由をお示しください。

山崎政府参考人 確かに、現在の法律の条文には何もないということでございますけれども、これは、現在でもやはり修習専念義務があることを前提にしております。

 なぜ書いていないかということでございますけれども、現在は給与を支払っておりますので、給与を支払うということは、その内容解釈からいけば、給与をいただいているのに他で働いてもいいということにはならないというのは当然の話でございますので、そこから解釈がされる、こういうことで書いてございません。具体的には、最高裁の規則の方で具体的なものについて定めている、これが現在の方法でございます。

 今回、これを貸与に、修習資金に変更するわけでございます。修習資金に変更したことによって、そうすると、修習専念義務というのはどうなるんですかということを、若干疑義が生ずるおそれもあるわけでございます。貸与資金と修習専念義務との関係が必ずしも結びつくかどうかという問題もございます。

 そういう点も考えまして、法律で修習専念義務を定めるということにしたわけでございまして、給与制であろうと貸与制であろうと、修習専念義務の内容、これについては全く変わらない、こういうことでございます。

江田委員 今申されましたとおりだと私も理解をしておりますが、給費制でも貸与制でも、修習専念義務は非常に重要なことであるので、これは変わらないということだったと思います。しかし、改めて、貸与制に今回変えるからその義務というのが問題になるので、明らかにそこに示しておくということであると思っております。

 これまで給費制によって国が法曹を手厚く養成してきたことの意義とか実績は大きなものがあると私も理解しております。しかし、これから将来の話としましては、先ほどから答弁にも出ておりますけれども、司法試験の合格者数を三千人に倍増させるということや、ほかの専門的な職業の養成制度とのバランスを考えると、今後も給費制を維持することは、国民から法曹だけ優遇されているという批判の目、国民からの理解が得られないというようなことがあるということを私も承知しております。

 したがって、この給費制の見直し、貸与制への移行というのは、やはりこれはやむを得ないことであると考えておりますが、これまで給費制のメリット、つまり、司法修習生がしっかりと修習に取り組むことができる環境を確保するということは、貸与制でも必要になってくると思います。そのために、必要な額を貸与することが必要ですし、また、司法修習生にとって借りやすく返しやすい制度とすることが重要であると思っております。

 そこで、司法修習生には、扶養家族がある方、また、アパートを借りている方も多いと思いますし、このような場合には、単身者、自宅の場合よりも生活に多くの費用がかかります。そこで、修習資金の貸与額というのは、先ほどから出ておるんですが、具体的にどの程度になるのか教えてください。

山崎政府参考人 御指摘のとおり、安心して、腰を据えて修習に専念してもらうためには、それに見合うものを貸与する、そういう修習資金を貸与するということになります。

 具体的には、現在、給与としては大体二十万円台の給与をもらっているわけでございますが、それにいろいろ手当がつくということでございます。その辺のところを大体カバーできるような金額ということを念頭に置いておりまして、最終的には最高裁判所の規則で定められることになりますが、その大きなポイントだけをちょっと申し上げたいと思いますけれども、まずは、司法修習生の必要それから返還の負担を考慮しまして、二十三万円程度を基本的な貸与額といたしまして、より少ない額の貸与を希望する者には十八万円程度の貸与額、そういう二つのものをまず設定していくことを考えております。これで選んでいただくということでございます。

 それから、御指摘がございました、扶養家族があったりあるいは住居を賃借している者につきましは、その基本的な二十三万円の貸与額に相応額を加算いたしまして、二十八万円程度まで貸与できるというような、そういう三つのランクを考えているところでございます。これによりまして、安心して修習に専念はできるだろうというふうに理解をしております。

江田委員 今おっしゃっていただきましたけれども、一律ではなくて、扶養家族、住居を賃借している者について、その相応する額を加算して考えている。二十三万円、まあ額としては今あったとおりだと思いますけれども、もう一つ質問をさせていただきます。

 司法修習生は、先ほども出ておりますが、法科大学院でも多くの奨学金を借りられているわけですね。私も奨学金、別の学部ですけれども、借りさせていただきました。その奨学金を多額受けながら、その返還債務も負っているという者も多くなると思います。

 そこで、修習資金の返還につきましては、法科大学院の奨学金の返還などにも十分に配慮することが必要ではないかと考えますが、この点についてどのように考えているか、安心できるように御答弁をお願いしたいんですが。

山崎政府参考人 この点については、最終的には最高裁判所の規則で定められることになりますが、現在考えている大きな点だけについて申し上げたいと思いますけれども、まず、御指摘のような点を配慮して、修習の終了後、数年間修習資金の返還を据え置くということをまず考えております。それから、その後、据置期間の後、十年間の年賦によって返還をする。こういうふうな非常に返しやすい配慮をしているわけでございますので、これによってそれほど金額の返還がきつくなるということはないだろうというふうに理解をしております。

江田委員 時間がなくなってきておりますが、次に、貸与制への移行時期について質問をしておきます。

 法案では、平成十八年十一月一日が施行期日とされておりますけれども、これでは、ことしの四月に法科大学院に入学した者は、新司法試験に一回で合格しても貸与制ということになるわけであります。今出ている御意見としまして、彼らが法科大学院に入学した時点では貸与制への移行が決定していたわけではないということから、法科大学院の学生の一部でしょうけれども、給費制を期待して入学したのにこの期待を裏切られたというような反対が起こっているとお聞きします。

 この点につきましてどのように考えているのか、見解を明らかにしていただきたいと思います。

山崎政府参考人 この点につきましては、先ほどもちょっと私ども御説明いたしましたけれども、このポイントについては、もう既に改革審議会の意見書の中でも論じられておりますし、私どもの検討会でも二年にわたって検討を経てきたものでございまして、その情報はすべてオープンになっているということから、ある程度周知ができているということ。それから、検討会のメンバーの中には法科大学院の先生方もおられますので、その方の意見も十分に聞いたんですけれども、法科大学院生はもう覚悟の上で来ている、こういうふうな御指摘が、私が言ったのではございません、そういう御意見もあったということでございます。全部ではございません。

 そういうことも踏まえまして、それから、制度全体が変わっていくのが平成十八年の秋からだということを考えまして、このようなことをしたわけでございます。

 ただ、この後、法科大学院生が私どもの事務局を訪れております。そのペーパーもいただいております。後出しじゃんけんじゃないかと御指摘もございました。さまざまな御意見があるということも我々わかりまして、最終的には、これをどのようにしていくかということですね。さまざまな意見があるということは、私どももよく承知しているところでございます。

江田委員 情報については周知徹底はなされていたということとかございますけれども、やはりそこのところを、施行されるのが今からでございますので、少なくとも、そういう方々がいらっしゃるということを配慮してスタートを切られた方がいい、そういう配慮をぜひともお願いしたいということだけ述べさせていただいておきます。

 最後でございます、済みません。

 大臣に、今までお聞きしたいと思っておりましたが、この司法制度改革、今般、裁判員制度、司法ネット、これまでの司法と決別を図るような新制度の導入が次々と決定されたわけでございます。ただ、法改正、制度の改正というのはおおむね終わったかと思うんですけれども、これからはこれを実行に移す非常に重要な司法制度改革の新たなスタート時期と言えると思っております。

 そこで、この時期に当たりまして、司法制度改革の新たなスタートに当たりまして、この司法制度改革の諸施策の具体的な実施に向けて、大臣の決意を最後にお聞かせいただければと思います。よろしくお願いします。

南野国務大臣 ただいま議員がおっしゃったように、本当に次の運用に向かって、我々、邁進しなければならないというふうに思っております。自由かつ公正な社会の実現のためには、その基礎となる司法制度を、新しい時代にふさわしく、国民にとって身近なものとなるよう改革していくことを欠かすことはできません。

 このような意味で、今進めております司法制度改革、これは歴史的にも大変に重要な意義を有する改革であると思っております。これまで、司法養成についての改革、裁判員制度、また司法ネットの導入、今先生もお触れになっていただきました、裁判の迅速化法の制定など、数々の制度改革を行ってまいりましたが、今後は、一連の改革の成果を国民が実感できるように、改革の趣旨に沿った運用が行われていくことが重要であると思っております。

 私は、司法制度を所管する法務大臣として、司法制度改革の実現のために、今後も、これまで講じてきた諸施策の適正な実施を含め、最大限の努力をしてまいりたいと思っております。

 ありがとうございました。

江田委員 今、大臣の強い決意をいただきました。

 これで質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

塩崎委員長 次に、鎌田さゆり君。

鎌田委員 民主党の鎌田さゆりでございます。

 山崎事務局長、推進本部のお取りまとめ役、本当にお疲れさまでした。もう間もなくですね。カウントダウンにもう入っているんじゃないかと。心が浮き浮きなのか、もう気が抜けない最後の段階なのか、はかり知れないところがありますけれども、その局長に、あるいは推進本部の皆さんに、うそじゃありません、本当に心から敬意を表したいと思います。本当ですよ。

 そこで、初めちょっと大臣に、借金ありますかと聞こうと思ったんですけれども、やめました。本当にもうこれはまさにプライベートなことなので、やめました。

 山崎事務局長に、局長も修習生の御時代があったわけですよね。その当時、局長は給費の制度のもとで修習されていたと思いますけれども、先ほど来ずっとやりとりの中でございました給費の性格、そこに税金から出ていくというところのその重みというか、だからこその専念という、いろいろありました。

 局長御自身は、修習生時代、この給費の制度というものをどんな気持ちでもって、その恩恵といったらいいんですかね、それを受け、そしてそのときに、司法試験の勉強から始まって、もう本当に心から尊敬しています、試験合格した。私なんか、とてもじゃないですけれどもあれですから、勉強して、そして合格をして、そして修習期間も終えられてと。

 その局長に、この給費の制度というものを改めて振り返って、若かりしころを思い出していただいて、そして今この制度の転換の時期を迎えている。どんな思い、感慨がございますでしょうか。お聞きしたいと思います。

山崎政府参考人 ただいま、大変激励の言葉をいただきまして、本当にありがとうございました。ただ、終わるまではきちっとやりたいというふうに思っております。

 私個人のことを聞かれると非常に答えにくい点はございますけれども、確かに、修習生になりまして給与がもらえるということ、これは、正直な気持ちは、ありがたいという気持ちはございました。それだけ理解が得られているんだなという気持ちがございました。その当時はそういう時代だったのかもしれません。私はそれほど、だからそのことに関して不思議には逆に思わなかったというのが正しいところでございます。おかげさまで十分に修習をさせていただきまして、現在がございます。

 そういう意味で、修習は非常に人間性を磨くという点で、それから、これから法曹人として活躍していく基礎を学んでいくという意味では大変重要でございます。この点は将来も変わらないだろうと私は考えております。

 問題は、修習の重要性と、それと給費を払うかどうかというのは、また若干ポイントが違うんではないかということです。これは時代とともに変わってきているということですね。

 まず、法律家を育てる、国家の人材を育てるということは大変重要なことでございますので、そこにある程度金をかけるべきだ、こういう御指摘がございます。私はそのとおりだろうと思います。そういう意味で、給費は別として、それ以外のランニングコストも何十億も国が全部出しているわけでございまして、その中で学んでもらう、こういう形をとっているわけでございまして、どちらの道に進むのでもこれは私は必要だろうというふうに思います。

 ただ、そこで給与をもらえるかどうかという問題につきましては、これはやはり国民の理解がどういうものであるか、時代時代によって変わってまいりますけれども、その反映をするということになろうかと思います。今回、改革審の意見書でも給費の見直しについて御指摘がございました。それ以外にも、いろいろなところからそういう御指摘がございました。

 私どもの検討会で、これは二年間検討をしたわけでございますが、最初はいろいろ御意見ございました。そういう中で、最後集約したときには、もう大部分の方が給費制を見直すべきである、反対の方もおられました、若干名おられましたけれども、最終的にはそういうところに集約をしていった。特に法律家以外の方の意見が極めて強かったということでございまして、我々は自分たちのことだけを考えていてはいけないんだということですね、やはり国民の声を素直に聞かなければならないんだ、私はそういう実感がいたしました。

 そういう意味で、残念ではございますけれども、やはり制度として、自分がどうだったかという問題よりも、制度としてどうあるべきかということを客観的に考えれば、やむを得ない措置というふうに考えておるわけでございます。

鎌田委員 ありがたい気持ちでもって受けていた、それから、修習のときは人間性を磨く、将来にわたってと、いろいろ御説明をいただきました。ちょっと長くなって、途中からちょっともやもやっとなって、私の理解力不足なのかもしれないですけれども、最後に、残念だけれどもやむを得ないという言葉もあったので、私は正直に吐露していただいて大変結構だったかなと思っております。

 ただ、自分たちのことだけを考えているわけにはいかないというくだりもありましたけれども、私は、私の意見ですけれども、この給費制度を例えばもし維持するということを選択した場合、それが法曹の方々にとって自分たちのことだけを考えているなんというのは、それは私はおかしいと思うんですね。よい法曹者を育てるということは、ひいては国民全体にとっての利益につながるわけですから、司法サービスの利益に。だから、何も自分たちのことだなんて、そんな自虐的にならなくていいと思いますよ。必要なところにはどんどん要求して、いつも同じことを言っていますけれども、私はそう思うのでございます。

 それで、一つちょっと懸念がよぎりますので、払拭をしたい気持ちも込めてなんですが、済みません、答弁短くしてもらえますか。いっぱい質問したいので、時間がないので。

 この法案では十八年の施行ということで、くしくも十八年というと、ネットの業務が開始される、それから公的弁護の新たな制度が拡大されるということで、私の性格がうがっているのかもしれません、そういうネットだ、公的弁護を新たにとなると、そっちの方でかかるのとこれが、まさか相殺なんかしないよなというふうに考えたくなっちゃうんですよね。それを払拭していただけるんなら、ぜひ、そんなことはないと、毎年ちゃんとこれだけの予算を財務省と協議をして、貸与の返還の仕組みには変わるけれども、ちゃんと運用していくんだということを改めてお示しいただきたいと思います。

山崎政府参考人 十八年は確かにネットが始まったりいたしますけれども、この新しい法曹養成制度、これがスタートするときにすべて変えていこうという発想でございます。結果として同じ年に当たるわけでございます。

 私どもは、必要なものはやはり国民のために必要でございますので、これはきちっと御理解を得ながら増額していくというつもりでございます。こちらでその分がそちらに振りかわる、そういう発想で考えたわけではございませんし、ここでカットしたもので足りるとは当然思っておりません。それ以上のものは必要だろうというふうに思っております。

鎌田委員 明快にありがとうございました。

 次に、財務省に伺いたいと思いますけれども、財務省としての認識なんですよね。結局、今回の司法制度改革は、言うに及ばず、五十年に一度の改革どころか、私は百年に一度の大改革と。政治改革、行政改革、選挙制度が変わる、省庁の再編があった、そして三番目にこの大改革が来て、そういう大改革に財政出動というのは当然必要だと私は認識をしている一人なんですけれども、そういう認識をともに持っていただけるのかどうか、財務省のお考え、平成十四年から再三にわたってこの給費については厳しい、適切とおっしゃるかもしれませんけれども、そういうお考えをお持ちのようですので、改めて財務省としてのお考えを伺いたいと思います。

松元政府参考人 お答え申し上げます。

 司法制度改革につきましては、行政改革を初めといたします社会経済の構造改革が進められております中で、我が国司法機能の充実強化等を図るべく、現在、総合的かつ集中的に推進されているというところでございまして、重要な意義を有するものと認識いたしております。

 ただ、一方、我が国財政が極めて厳しい状況にあることも事実でございます。歳出改革路線を引き続き堅持していくために、司法関係予算の取り扱いにつきましても、今後、財政資金の効率的使用の観点に十分留意しつつ検討していく必要があると考えております。

 そうした中で、司法制度改革のさらなる推進に当たりましても、国民に負担を求め、その理解を得ていく必要があることも踏まえつつ、司法制度全体で合理的な制度設計を図っていただくというため、これまで司法当局におかれましても種々の議論、検討がなされた結果、今般の給費制の見直しに係る提案もなされておると受けとめておりまして、財政当局といたしましては、そうした経緯、検討を踏まえつつ適切に対処してまいりたいと考えております。

鎌田委員 通告すると答弁長くて、何か聞いているうちにわけわかんなくなっちゃって、そうすると、別に意地悪じゃないんですけれども、通告しないのを聞きたくなっちゃったりするわけなんですけれども、司法制度が国家の重要な社会的インフラであるということは認識ございますか。

松元政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほどの答弁、冒頭で申し上げた趣旨と同様ということになりますが、現在、司法制度改革につきましては、さまざまな構造改革が進められていく中で、我が国司法機能の充実強化等を図るべく、総合的に推進されているというところでございます。そういった中で重要な意義を有するものと認識いたしております。

鎌田委員 そういう意義を認識していても、財政の合理化というところがやはり財務省のお考えの、頭の中は大半を占めているんだなというのは、今の答弁で大変よくわかりました。

 法律家の養成は国家の責任と負担で私は行うべきと思っておりますし、ほかの省庁に関係するところだって、むだでもっともっと合理化しなくちゃいけないところが私から見たらたくさんあるんじゃないかなと思いますけれどもね。昨年の参議院選挙のときも、その前の総選挙のときも話題になっているところなんかも、保険に関する、年金に関するところなんかも含めてですよ。そんな渋い顔しないで、こっち見てくださいよ。

 いや、私は本当にそう思う。だからといって本人に負担させる制度をここでつくるのかというのが、でも、出すのは、財布持っているのは財務省だから、財務省の御機嫌を損ねちゃったら大変なことになるしということも私もよぎりますし、でも、やはりこの意義というものは財務省の皆さんにもしっかり認識をしていただきたいなという思いがございますので、今の答弁、うそじゃない、重要な意義をちゃんと認識しつつ、しかし合理化をというところでの立場でしょうから、あとだれに期待するかといえば南野大臣にしっかり期待をして、頑張っていただかなくちゃいけないんですけれども。

 財務省にまた改めて伺いますが、今、専門家を養成する制度として、研修医、警察大学校、税務大学校、防衛大、防衛医大等々ありますけれども、それぞれに、返還しなくちゃいけないのがあったり、あるいは支給という形がとられていたり、いろいろですけれども、例えば、今回のような財政的な理由でもって、今実際にこの給費の制度がとられているところ、種々検討していく中で、そちらの方も、廃止になったり貸与に変わったりというようなことだってあり得ますよね。財務省。

松元政府参考人 お答え申し上げます。

 それぞれの、防衛大学あるいは防衛医大、警察大学校等々についての御質問でございますが、それらの事情に応じて検討してまいるということでございまして、そこは、歳出の見直しにつきましては聖域はないということで考えております。ただ、いろいろそれらの御事情がおありということで理解いたしております。

鎌田委員 済みません、今のところ、もう一回。請求はないとおっしゃった……(発言する者あり)聖域はない、ごめんなさい。聖域はない、そうですね、ありがとうございました。聖域はない改革がほかの分野でも行われていくという御答弁でしたので、わかりました。

 法案についてなんですけれども、先ほどの江田議員の質問にもありました。今回初めて専念という言葉が法案の中に入りましたが、この専念の言葉が今回はっきり明快にここに規定をされたということで、これは非常に重いと思うんですね。先ほどの山崎事務局長の御答弁の中で、今までの給費の制度の中でも、あるいはこれからも、その専念というところについてのイメージというか、それは変わらない、ただし云々かんぬんという説明がありました。だったら、何も今回改めて入れなくてもいいんじゃないのなんという声もさっきちらっと出たぐらいで、ここにはっきり明記されて規定されてしまうと、やはりこれがひとり歩きをしてしまう危険性だって、私はなきにしもあらずだと思うんですね。

 そこでなんですけれども、先ほど直前に通告をさせていただきましたが、これは最高裁にお聞きをします。

 最高裁判所の事務総局の総務局でおつくりになっている「裁判所法逐条解説」というところの、わかりやすくページ数を言いますから、三百九十六ページから三百九十八ページまでにかけてなんですが、その中に今回の六十七条に関する逐条解説が載っているんですけれども、ここの、三百九十六ページの最後の(四)の、司法修習生は一定の給与を受ける云々、ずっと続いていますが、そこのところをちょっと改めてきちんと御説明いただきたいと思うんですが、特に、三百九十八ページの六十八条に係るところについてもお願いをしたいと思います。

 これ、法務委員の先生方、皆さん篤と御存じなのかもしれないけれども、私は、済みません、初めて見たんですね、これ。よかったらだだっと読んでいただいても結構ですし、お願いをいたします。

山崎最高裁判所長官代理者 委員御指摘の「裁判所法逐条解説」というものが資料としてございます。その御指摘の部分に、司法修習生の給与が国庫から給されることについての解説がございます。そこには、「司法修習生は、修習の全期間を通じて、修習に関しては、司法研修所長の統轄をうけるものであり、また、司法修習生の修習に関する事務は最高裁判所に置かれる司法研修所で取り扱うものとされている以上、給与も国庫から受けるべきは、当然といえよう。」こういうくだりがございます。

 この点について御説明する前提として、まず、この逐条解説というものでございます。これは、裁判所部内で裁判所法について研究したその成果をまとめた資料でございまして、昭和四十四年に資料としてつくり上げたものでございますが、実は、この「まえがき」というところも委員ごらんいただいていると存じますが、これは、当時最高裁事務総局の一部局で検討したものでございまして、その「まえがき」に書いておりますところによりますと、「解説中、意見にわたる部分が、当局かぎりの一応の見解にすぎないことは、いうまでもない。」こういうことになっておりまして、決して最高裁判所の公式見解を書いたものではございませんので、それを前提として御理解いただきたいということでございます。

 その上で、ただいまの部分について若干、私限りの見解を述べさせていただきたいと存じますが、先ほど、「司法修習生の給与は、「国庫から」給される。」という部分に、「国庫から」のところにかぎ括弧がついてございます。つまり、給費制をとるとした場合に、ではその給費というのはどこから支給するのか、それは国庫から支給する、そこの解説をした部分なのでございます。

 それは、先ほど読みました部分の後ろの方に出てまいりますが、「司法修習生のうちには、弁護士を志望する者もあり、かつ、一般に、弁護士会でも実務修習をすること等の関係もあり、疑をさけるため、とくに国庫から給与を受けることが明らかにされたものであろう。」こういう解説でございまして、要するに、弁護士会で修習するから弁護士会が給与を払え、そんなことは言うんじゃなくて、それは当然、国庫から給与を支払うのは当然であろう、こういう解説でございますので、御理解いただきたいと存じます。

鎌田委員 ありがとうございました。何も、つけ加えてのあれは、別に要らないんでないかなと思うんですけれども。

 私、思ったんですけれども、ここに書いてあることは一部局の見解でしょうけれども、ここにこうしてきちんと資料として存在をしているんですよね。だからこれは、うそが書いてあるわけでもございませんし、解説として。

 ただ、今回のこの法案が通りますと、これは書きかえる必要性というのはないんでしょうか。それをお聞きしたいと思います。

山崎最高裁判所長官代理者 先ほど申し上げましたこの資料というのは、昭和四十四年当時の研究成果をまとめたものでございまして、実は、その後も、裁判所法の改正等ございますけれども、それに従って改訂するという作業を一切しておりませんで、それはその時々の改正の経過、議論等を踏まえた上で、法律の文言の意味内容を理解するという、そういうやり方でやっております。

鎌田委員 ずっと書きかえていないから、そうすると、これからこれは書きかえなければならないということで……(発言する者あり)書きかえない。これは書きかえない。その当時出したものだから、もうそれで終わりと。ああ、そうですか。そういうものでしょうかね。いや、私、さっき山崎局長が読んでくださったところは、ちょうど、以心伝心だなと、読んでもらいたいと思ったところを読んでもらったものですから、司法修習生は、「修習に関しては、司法研修所長の統轄をうけるもの」だと、そして、「給与も国庫から受けるべきは、当然といえよう。」というくだり、読んでいただいて、改めてこの給費の制度についてまた認識を深くしたんですけれども、これはもうこれで終わりですか。そうなんですか。いいんでしょうかね、それで。

 そして、ではお聞きしますが、今度法律改正になったら、書きかえないは書きかえないで、それでいいとしますけれども、これはもう趣旨が変わっちゃいますよね。再度お願いします。

山崎最高裁判所長官代理者 今回の法案、仮に成立いたしますと、給費制というものが貸与制に切りかわるわけでございますから、当然、その解説自体は直接的な意味はなくなるということでございます。

 ただ、こういう資料をどの程度アップデートして整備するかというのは、これは用途との関係でございまして、将来的にそういう必要が生じた場合に、それを改訂することは全くないということを今断言するわけではございませんけれども、それぞれ必要に応じてその改訂を考えていくという考え方になろうかと思います。

 ただ、ただいまの部分の趣旨といいますのは、それは先ほど申し上げましたとおり、給費制をとった場合に給与はどこが払うのか、それは国庫からだ、こういう考え方が示されておりまして、これはある意味では、今回貸与制に切りかわった場合、では貸与の資金はだれが負担するのか、こういう疑問が仮にわいてきたとした場合に、それはやはりこの趣旨は同じように当てはまるんじゃないか。それは国庫から貸与資金を調達して貸し付ける、こういう制度が当然とられるべきであろう、こういう趣旨に理解することが可能ではないかと考えております。

鎌田委員 頭のできが違うので、わかったようなわからないような、うなずいて一応は聞いていたんですけれども、とにかく、私、この逐条解説というものが、たとえ一部局の解説であろうとも、このようにして我々の目に触れて参考になるわけですから、そのときつくったものだから、一部局がつくったものだから、そういうふうにお答えをされるとたまったものじゃないなという思いと、そして、ここに書いてあることの意義というものは、どんなに昔であろうとも、その後改訂がされなければやはり生き続けているものだと思いますので。

 ただ、貸与になっても国庫からというふうに、ここの内容がまた変わるとしても、そこは、貸与になってもその修習資金というものは国が責任を持って国庫からということは変わらないんだという御説明であったと理解をしたいと思いまして、うなずいていらっしゃるから、もうやめにします。

 それで、ここにちょっと司法研修所のパンフも取り寄せたんですけれども、今のと若干関連しますけれども、二ページ目に、「司法修習生の身分は」とあって、「国家公務員に準じた身分にあり、国から給与や諸手当が支給され、修習に専念する義務、守秘義務などを負っています。」とあります。

 こういうパンフレットなんかも、これはことしのはずですけれども、この辺の中身なんかも変わりますね。

山崎最高裁判所長官代理者 パンフレットは必要に応じて改訂していかなければならないわけでございますので、ただいまの給与を受けるという部分は、それがなくなれば当然改訂すべきものと思います。

鎌田委員 今回、貸与に変わるということで、最高裁さんにおかれましては本当に御苦労さまなお仕事がたくさんふえたなということを、この時点でも、本当に大変ですね、と思いました。

 次に行きますけれども、貸与を受ける受けないにかかわらず、アルバイト等、これは不可と思ってよろしいんですよね。それから、これは土日も含めますか。

山崎最高裁判所長官代理者 修習専念義務のお尋ねであろうと思いますが、先ほども答弁の中で申し上げましたとおり、修習の全期間を通じて修習に専念すべきこととされておりますので、アルバイトも当然にはできないということだろうと思います。

 それから、土日も当然、修習に精力を振り向けなければいけない、こういうことになろうかと思います。

鎌田委員 修習期間がいずれ一年間に短縮をされる予定と聞いておりますので、バイトをしている暇なんというのはないんでしょうけれども、間口が広くなった分、いろいろな人材の、すばらしい、有能な方がいらっしゃって、また変わった方もいらっしゃるかもしれないし、例えば、医師免許を持っていて、すごく献身的な方がいて、あそこの病院は医者が足りない、給料要らない、ボランティアで医者として私の医師資格を生かそうと。あるいは、もうすごく頭がよくて、全然余裕だから、ちょっと公認会計士の事務所へ行って、公認会計士の研究をしながら、そこで勉強すっぺなんという修習生もいたりなんか、これも報酬なしなんですけれども、これは収入がなくても専念義務違反に当たりますか。

山崎最高裁判所長官代理者 修習専念義務の内容でございますけれども、修習に専念すべきであるということの裏返しとしまして、ほかの職業についたり、あるいは他の業務を行うということが基本的にはできない、ただ許可を受けた場合にはそういうことは許される場合もある、こういう形になっております。

 具体的な事案につきましては、それぞれ具体的な状況を踏まえた上でその許可をするかしないかという判断をしていくんであろうと思いますが、その観点で申しますと、やはり修習に専念しなければならないことの意義をやはり十分考えなければいけない。つまり、司法修習というのは、先ほど来申し上げておりますが、実務修習を中核として、法律家としての最低限の力量を身につけるというところにありますものですから、実際に修習の全課程を漏れなくやってもらうということに意味があるわけでございまして、それが欠けると本来の修習という名に値しない、そういう結果になってしまうものですから、まずその点が第一だろうと思います。

 それはそうといたしましても、そのほかに、こういう職業があって、ぜひそういうことをやりたいという場合におきましては、その業務の態様ですとか、あるいはそういうことをやらなければならない必要性とか、そういったことを個別に考えながらその許可をすべきかどうかを考えていく、こういう考え方になろうかと思います。

    〔委員長退席、田村(憲)委員長代理着席〕

鎌田委員 個別に考えるのは、どこのだれが何を基準に考えて決めるんですか。

山崎最高裁判所長官代理者 先ほど申し上げました兼職、兼業の関係で申しますと、基本的には最高裁判所の許可が要るということでございますので、最高裁判所においてその点の許否の判断をするということになろうかと存じます。

鎌田委員 どこのだれがは最高裁判所と、一言で終わらせられたんですね。何に基づいてというのは、何か明快な基準というのはあるんですか。

山崎最高裁判所長官代理者 先ほど申し上げましたとおりでございまして、司法修習の意義ですとか重要性とか、そういう特質というものを十分踏まえた上で修習に専念してもらうということが第一番でございます。

 それから、修習生の立場といいますかそういったもの、中立公正でなければいけないといったこと、そういったものを考慮した上で、具体的に、兼職なり兼業の態様ですとかその必要性だとか、そういう個別の事情を検討して判断するということになりますので、一律に、抽象的に、こういう場合はいい、こういう場合はだめという形の御説明はちょっと難しいと思います。

鎌田委員 いや、専念という言葉が文字となって法律の中に明記されておりますので、何か最高裁の方に素人の私が言うのはちょっとおこがましい、不遜な感じもするんですけれども、明記されいている以上は、明快にきちんと今のうちから、国会にこの法案が出てきたという時点でちゃんとつくられていないと、私はだめなんじゃないかなと思うんですよ。

 ちょっと変えますが、例えばアルバイトをしていたのが発覚したらどうなるんですか。

山崎最高裁判所長官代理者 修習専念義務といのは、実はこの法案によって、給費制が貸与制に変わったから出てくるものではないというのは、先ほど御説明あったと思います。現在でも同じ状況でございまして、やはり修習に専念していただかなきゃいけないし、それがゆえに、先ほど来出ております兼職、兼業については許可ということを制度としてとっているわけでございます。

 したがいまして、許可なくそういうことをやるとルール違反ということになりますので、あるいは注意を受けたりということはあろうかと存じます。

鎌田委員 注意を受けたり、はっきりここで示していただきたいんですよね。

 というのは、だから、何度も言いますけれども、専念が言葉になって法律に入った。それで副職、兼業は禁止、土日もだめ、アルバイトだめよと。そして、では、専念義務に違反している、ルール違反と今おっしゃいましたけれども、それが発覚したらどうなるのと言ったら、注意を受けるとか、受けたりでしたか、同じですね、そういうんじゃなくて、その辺は決まっていないんですか、何にも。

山崎最高裁判所長官代理者 許可なくアルバイトをするということの態様にもよろうかと存じます。許可制に気がつかずにうっかりやってしまっていたというようなことであれば、注意をしてそれを改めていただくということも一つあろうかと思います。

 それから、長い期間そういうことをやっているがゆえに修習に身が入らなくて、成績が不良で終了できないような状況が生じたとすれば、それは修習の見込みがないと判断されて罷免される、そういうシチュエーションも考えられようかと思います。それぞれの状況に応じてそれに必要な措置をとっていく、こういうことだろうと思います。

鎌田委員 いまいちすっきりしないんですけれども、専念という言葉が法律に入った、そしてアルバイトは禁止ですとなっている以上、それが発覚したら、それは専念義務違反、法律違反ということで受けとめてよろしいんですよね。

山崎最高裁判所長官代理者 そのとおりではございますが、先ほど来申し上げています、許可を受ければ兼業、兼職が可能なケースもございますわけですから、それとの関係でございまして、実質的に許可が受けられるのに形式的にその手続を踏んでいなかったというようなケースであれば、形式的には無許可の兼業で専念義務違反というような形になっても、実質的にそんなに責めるべきものではないということもあり得るだろうと思います。まさに、どういう態様でそういうことが行われたかによって変わってくるところではないかと思います。

鎌田委員 私は、許可を受けないで、発覚ですから、そうなった場合はどうするのかなと。法律に専念が明記された、それ違反だったら法律違反でいいのかと言ったら、許可を受けないでとなった場合にはそれは違反だというふうに今おっしゃいました。

 法律違反の想定があることに関して、そんなに責めを負うべきものでもないからとか、注意を受けたりとか、あるいは罷免される場合もあるとか、こんな幅広な、あいまいなことで決していいはずないんじゃないでしょうか。これまた本当に最高裁の方に私の立場から言うのはちょっとあれですけれども、余りにもちょっと漠とし過ぎじゃないですか。いかがですか。

山崎最高裁判所長官代理者 先ほども申し上げましたが、修習専念義務というのは現在でもございます。現在、最高裁判所規則によりまして、兼業、兼職に許可を得なきゃいけないということになっております。許可を得なくてそういうことをすれば、現在も規則に違反している、大きな意味で法令に違反しているということになるわけなんでございます。

 しかし、それに対してどういう対処をするかということになりますと、現在も全く同じなんですが、うっかりして許可を得なかった、実質的には許可しても差し支えないといいますか、許可を得られるようなケースもございますので、その場合には注意をして、ちゃんと許可をとりなさいということをやりまして改めさせるというので終わらせるケースもございますので、やはりその事案に応じて考えていくということだろうと思います。

鎌田委員 何度も言いますけれども、専念という言葉が入っているんですよ、法律に。今までも、これからも、専念というその基本的に流れるものは変わらない、全くおっしゃるとおりですよ。しかし、法律にここで入ったんだから、ここは大きな違いですよ。

 法律に書いていても書いていなくても、流れている基本的なそういう理念は変わらないんです、専念は変わらない、だから云々かんぬん。でも、今回、ここで法律にはっきり二文字入っているんだから、それに伴ってはっきりしておかなくちゃいけないところははっきりさせなきゃいけないじゃないですか。違いますかね。私、何にも変なこと、特別なことも言っているつもりないし、まして、これから修習生として法曹を目指そうという人にとっては、こういうところまできちんと、私が想像するに、深く理解をして、大変優秀な方が集まるんでしょうから、天下の最高裁、きちんとしておかないと、と思いますけれどもね。

 こればかりやっているわけにいかないので、私の、兼業、副業禁止ということについて、専念という言葉が入ったことについて、最高裁のこれに対する法案作成に当たっての取り組み状況というのはこんなものだったんかなという、済みません、感想を持って次のテーマに行きたいと思います。

 修習地の選択についてお聞きをしたいと思います。

 修習生に選択権があるのかどうか。それから、希望地、第八希望まで聞いていらっしゃるというふうなことを伺いましたけれども、希望地との合致度合いはいかほどになっているのか。それから、第八希望までとっても、希望の一カ所とも合わない人がどれだけいるのか、去年一年間だけでもいいし、わかる範囲で教えていただきたいと思います。

    〔田村(憲)委員長代理退席、委員長着席〕

山崎最高裁判所長官代理者 実務修習地の関係でございます。

 その場所につきましては、司法修習生の採用申込者につきまして、希望する修習地を第一から第六希望まで出させておるのが現状でございます。その理由とあわせてそういうものを記載しております。それをもとにいたしまして、司法研修所長が決定する、そういう仕組みでございます。

 多数の司法修習生がおりまして、これを実務修習させるためには、やはり全国に配置するということは避けられないところでございます。ところが、一方、司法修習生の希望ということになりますと、どうしても東京、大阪を初めとする都市部に集中する傾向がございますものですから、すべての司法修習生を希望どおりの実務修習地に配属するというのはなかなか難しいという状況でございます。

 ただ、先ほど、希望とあわせて理由も書いてもらうと申しました。その理由で、例えば家族状況ですとか、そういった関係で切実な事情のある修習生というのは出てくるわけで、そういう者につきましては、希望する修習地に配属するようにできるだけ配慮をしているということでございます。

 そういうことでありますので、これは正確な統計をとっていないものですからはっきり申し上げにくいんですが、全体的に見た感じでございますが、大半の修習生は第三希望までの実務修習地には配属されているというふうに理解しております。

鎌田委員 私も統計を持っていないんですよ。ただ、全く正反対ですね、私のとっている情報収集と。例えば、初めから、あなた、実家は富山だったね、じゃ、富山とか、あるいは、第六希望まで一応希望は聞かれるんだけれども、そんな若いときに、全国津々浦々転々としていろいろなところを知っているわけじゃない修習生が、第六希望まで理由を添えて書けと言われたって、そう簡単に書けるものじゃないとか。そして、最後はやはり、大半は第三希望までかなっているようだという御答弁でしたけれども、私が聞いているのは、大半は希望どおりいかない、希望どおりいくのが非常に少ないんだというのを聞いております。

 だから、何が言いたいかといえば、今回、修習生の給費から貸与に変わるというときに、その修習地の選択余地が自分の希望どおりになかなかいかない修習生が、言ってみれば、もしかしたら生まれて初めての土地、知っている人もだれもいないというところの土地で、何かと心細い、そして厳しい修習期間を経なければいけないというときに、本当にすばらしい法曹を育てるときに、国としてさらに追い打ちをかけるような負担を強いてもいいんでしょうかねという思いもあるわけですよ。

 だから、何もこの修習地の選択について修習生の希望どおりにすれば何かが、どこかすごくよくなるということは決して申し上げませんけれども、やはりこういうことも、今あるいはこれからの修習生にとって、この貸与に変わるという制度が心の重荷の一つになっているということはぜひ認識をしていていただきたいなということを申し上げておきたいと思います。

 次に、貸し付けの業務というか、貸付業務内容について伺っていきたいと思いますけれども、最高裁の中のどこがあるいはどのような組織がこの貸し付けを行っていくんでしょうか。アウトソーシングの可能性はあるでしょうか。伺いたいと思います。

山崎最高裁判所長官代理者 現在、給費制をとっております。その制度のもとでは、司法修習生に対する給与支給事務を各裁判所の人事課等の部局で行っている、要するに裁判所職員が担当しておりまして、給費制から貸与制に移行した場合には、こうした修習資金の貸与等の事務につきましては、同じようにやっていくのが基本となろうかと思いますが、なお、制度開始後の事務の具体的な内容ですとかそれから事務量等を踏まえながら、これが円滑に進むように事務処理体制については考えていきたいと思っております。

鎌田委員 今その支給の事務を行っているところがそのままということの御答弁でしたけれども、アウトソーシングの可能性はあるんですかと聞いたんですが、それについては。

山崎最高裁判所長官代理者 先ほどお答えしたとおりでございまして、制度開始後、具体的にどの程度の事務になっていくか、事務量になっていくか、そういうものも踏まえた上で、その段階でいろいろ工夫すべきことがあれば工夫するということを考えていくんだろうと思っております。

鎌田委員 アウトソーシングの可能性はと聞いたのに対して、その時点で工夫すべきところはしていくということが必要になろうかと思いますと。

 私の頭が悪過ぎるんでしょうか。全然聞いたことへのお答えとは、だから、そうすると、今の答弁と私の聞いたのをつなげるとすれば、その時点で工夫しなくちゃいけないことが出てくればする可能性もあると。その工夫が、例えば、今やっている事務のところがそのままやろうと思ったけれども大変な事務量になってしまった、ああ、アウトソーシングしなくちゃいけない、ではアウトソーシングして工夫していこうということですか。

山崎最高裁判所長官代理者 どういう体制で事務を行うかということに関してはいろいろな選択肢がありますので、委員御指摘のとおり、アウトソーシングの非常にうまい方法があれば、それも選択肢の一つとして検討するということだろうかと思います。

鎌田委員 まだ何も具体的には、そんな深くうなずかないでください。具体的には決まっていないなんておかしいでしょうと言いたいんだから、余り深くうなずかれるとちょっと困っちゃうなと、ますます私の性格が悪くなるなと思うんですけれども。

 これは、お金を貸して、ましてや、さっきからずっとあるように、税金が元手のものを貸して、そして返してもらうという新しい仕組みが大々的にいずれスタートするわけですから、この辺のところは具体的にどうなっているのかというのをきちんと我々はこの国会の法務委員会の場で知っておく権利も、あるいは義務もきちんと説明をする上であると思うんですね。

 しかし、それに対して今のようなまたまたあいまいと言わざるを得ない御答弁でして、またこの辺もこのくらいしかまだ決まっていないのかという感想を持たざるを得ないんですね。

 次に移りますが、先ほど貸し付けの金額、毎月十八万、二十三万、二十八万、こう段階がある、二十三を基準にして云々かんぬんありましたけれども、この段階が上に上がっていったり何だり上下するやつのその要件というのは具体的に決まっているんでしょうか。あるいは最低、最低というか十八の数字ですね、ここのところは申請があればぽんと出ちゃうのか、この十八についても何か申請が来たら審査するぞみたいな、そういうのはあるんでしょうか。

山崎政府参考人 先ほどお答えいたしましたけれども、二十三万円と十八万、これはめどでございますけれども、そこのランクについては個人で選んでいただく。だから、二十三万借りたい人は二十三万の申請をしていただく、十八万で結構だという人は十八万の申請をしていただければそれを認めると。

 ただ、二十八万については、扶養家族とかそれから住居手当、住居手当というか賃借している場合、そういう事情がある人について、そういう事由に当たるかどうかということを判断するわけでございます。

鎌田委員 十八と二十三に関しては申請があれば出しちゃうと今おっしゃったんですけれども、そして二十八については御説明いただいたとおりで、では、十八と二十三については申請があれば出しちゃうんですね。申請があれば出しちゃう。ここについての要件というのはないんですか。

山崎政府参考人 要件はございません。借りたくない人は全く借りなくても結構でございますので、そこは自由に判断をしていただくと。

鎌田委員 はい、わかりました。ああ、そうですか。もっと私は、それこそさっきからあるように、税金から出てくるそういうお金なので、十八万にしろ二十三万にしろ要件があってちゃんと、例えば、返せる見込みみたいなものも、あるいはそういう意思の確認だとか、いろいろなことが審査があるのかなと思ったんですが、ないんですね。そうですか。何かちょっと意外でした。

 次に伺いますけれども、返還のスタート時期、先ほども質問でありました。それに対して、十年間の返還期間ということは数字をお示しいただきましたけれども、返還スタート時期まで据置期間の数年間という御答弁がございました。この数年間の数のところの数字をこの際明らかにしていただきたいと思うんですが。

山崎政府参考人 最終的には最高裁判所の方で決めていくことになると思いますが、現在我々が考えているところでは、三年から五年の据置期間というその範囲で決まっていくということになるだろうというふうに考えております。

鎌田委員 関連すると思うんですが、その施行時期はこの法案では十八年ということですけれども、しかし、これもまた委員会冒頭、山崎事務局長、この時期についても柔軟に考えていくこともあり得るような御答弁がございました。でして、開始時期とこの据置期間の数字の兼ね合いというのは非常に重要だと思うんですよね。

 例えば、十八年の今のこの開始のままの法案で、その据置期間が短くてすぐに返還が始まってしまうのと、あるいは、施行開始時期がもっと先になって、不意打ち後出しじゃんけんなんて疑念を抱いている人にも解消するようにもうちょっと後にスタートになって、それで五年間の据置期間があったりすれば、これはもうまさに本当にこの負担というところも大分軽くなってこの返還というものが開始されると思うんです。

 三年から五年という数字をお示しいただきましたけれども、やはりこれは五年が妥当ですよね。三年から五年というところで御検討いただいているのであれば、やはり五年間の据置期間を置いて、そして十年間で返すというのが非常に妥当だと私は思いますが、いかがですか。

山崎政府参考人 最終的に私が決める権限はございませんけれども、貴重な御意見として承りたいというふうに思います。

鎌田委員 貴重な御意見と言っていただきましたので、貴重な御意見は貴重な御意見ですからね、局長。でも、局長が決める権限がないと言ったって、やはり局長は局長ですから、五年になるんじゃないかなという期待を込めて、次の質問に入りたいと思うんです。

 また法案の中で、ちょっとあやふやというかあいまいだなというふうにどうしても感じざるを得ないのがあるんですが、六十七条の二の三項、四項なんですけれども、やむを得ない理由で猶予することができる、それから全部または一部の返還を免除とか、これらについての、具体的に、災害、傷病その他やむを得ない理由により返還が困難となったときというふうにあるんですけれども、この辺のところの基準はもうできているのかどうか。何か資料があるのか、あるいは、この認定も、今支給の事務を行っているところがそのまま認定もなさるわけですか。

山崎最高裁判所長官代理者 条文の解釈にかかわることで、私がお答えするのが適当かどうかわかりませんが、条文によりますと、最高裁判所は、一定のやむを得ない理由により修習資金を返還することが困難となったときは、その返還の期限を猶予することができるとされておりますし、免除の関係も、最高裁判所は、一定の事由がある場合に、修習資金の全部または一部の返還を免除することができるということでございますので、最高裁判所において、対象となる方の具体的な事情を踏まえた上で判断していくことになろうと思います。

鎌田委員 それはわかるんですよ。私が聞いたのは、だから、もう時間もないので、聞いたことにお願いしたいんです、お答えを。何か基準があって、何か資料があって、それに基づいてだれが認定していくんですかと聞いたんですね。今の御答弁だと、私が聞いたのには何にも御答弁いただいていないと思うんですよ。まあ、そこまでまだ細かく決まっていないんでないかなと、またそうやってうなずかれるとつらいんですけれども、そういうふうに思うんです。

 やはりこの辺もまだ、法律案にはこういうふうに書いてあっても、そこを認定するところが最高裁だということはわかりました。しかし、その認定するところで、何に基づいて、何の基準に基づいてどうだこうだというのがほとんど決まっていない状態で、いや、これで法案、よくぞお出しになるなというのと、本当にこれからまた大変だなというふうに、お気の毒だなと思うんですけれどもね。やはり私はだめだと思うな、ちゃんとそういうのを決まって出していただかないとというふうに思うんです。

 それで、先ほど来質問にも上がっていましたが、任官者の返還免除、これを導入されない仕組みというものはお考えになっているか。いるかいないかでお答えをいただきたい。

 それから、将来にわたって、これが未来永劫こうだという、固めていくということは何も要求しているつもりございませんので、状況に応じて議論をしていきながら、変わる可能性だってなきにしもあらずかもしれない。でも、その際にはこの法律を変えないと、今の最高裁規則ではできないですよねということを確認したいと思います。

山崎政府参考人 任官者免除、いわゆる政策的な免除の点でございますけれども、これは現在もこれを取り入れなかったということでございますし、今後ともこの点については、現時点ではですね、そういう点については考えていないということでございます。

鎌田委員 いや、だから、次の答弁のときにまた加えて答えてください。もしも変更することが生じた場合は、今のこの法律を変える、現在の最高裁規則では、そのままではできないということで、いや、いいです、ちょっと待って、時間ないから次に続けて行っちゃうので。

 この回収手続なんですけれども、法的な回収手続も想定されるというふうに、先週ちょっと打ち合わせしたときにお聞きをいたしました。返さない人がいたら、それは訴訟手続に持ち込んでいくんだということで、その際には原告、最高裁になるのと聞いたら、違います、法務省ですとおっしゃっていましたけれども、それから逆の場合に、私はうつだから仕事がこのくらいしかできません、だから返せません、猶予してくださいという申請があったときに、例えば、認定のときに、あなた、うつだといったって、一日三時間ぐらい仕事できるんだったら仕事できるに入るんだから返せるでしょう、返しなさいというようなやりとりがあったときに、返還しなくちゃいけない、貸与を受けた元修習生が訴訟に持ち込むことだってあり得る、十分に想定されると私は思うんですね。

 そうなった場合に、法務省が原告であってもいいですけれども、被告であってもいいですけれども、そういうことはきちんと想定をされているのか。それとプラスして、もしそうなった場合には、もちろん普通の裁判手続を踏んでいかれるわけでしょうから、そういう流れの中で、最終的に最高裁まで持ち込まれて争われるということも想定されているのか。

 次に、そうなった場合、最高裁が御自身で決めた基準、手続、ルール等が、初めは地方裁判所で判定を受けて、それからどんどん上に上がっていって、最高裁で判定を受ける。そうすると、最高裁でつくった基準を、自分で自分の権利を判定、認定する事態も出てくるということも想定されているのか。私は大いにあり得ると思いますが、非常に不思議というか、おもしろいというか、おかしなということもあり得るんですが、それはいかがでしょうか。

山崎政府参考人 ただいま御指摘ございましたけれども、国が裁判を起こす、それからもらった方が起こす、両方ございます。そして、最高裁まで行くかということは、これはあり得る話でございます。最終的には最高裁が判断をするということになりますが、司法行政上の問題の判断と裁判の判断というのはこれは分かれておりますので、それは現在でもある問題でございますので、それと同じに扱うということでございます。

鎌田委員 さっきの、法律を変えないで、まだいいです、次がきっと最後になるのかなと思うんです、また最後のときに加えてください。ちゃんと議事録に残しておくべき御答弁ではないかなと思うので、お願いしますね。

 本当は、この法的回収手続のところを一番時間をかけてやりたかったんですが、また例によってここを最後に持ってきたので時間がなくなっちゃって、ストレスが私は残るんですけれども。

 大臣、ずっときょうの委員会始まってから、後また続いていきますけれども、それぞれのやりとりを聞きながら、今回の貸与制度に変わるということで、法曹としてスタートする時点で、多かれ少なかれ、少ないという認識をお役所の方はお持ちかもしれませんけれども、毎月この程度の返還だしとか思いますけれども、しかしながら、やはり山崎局長が冒頭おっしゃっていたように、修習期間の間、人間性を磨く、私は、何にもまさる、何にもコントロールされない職務の独立性を担保できる良心というものを徹底して胸に刻み、学ぶ、そういう期間を終えた方々が、やはりその良心を絶対に忘れないで、良質な弁護活動、あるいは良質な法曹として活動していく、活躍していくに当たっては、これは、幾ら法曹といえども人間ですから、そういう仕事をするときに、幾らかでもやはり借金というものは少ない方がいいと私は思うんですね。

 それで、この法案は、非常に、私の思いを込めて言わせていただければ、そういった良心を若干なりともゆがめさせてしまうおそれがある法案というふうに感じざるを得ない。新たな負担や新たな借金がふえるということで、一定の利益を上げて、一定の返済というものをしていかなくちゃいけない法曹にとって、若干良心を曲げてでも利益に走らざるを得ない、そういう弁護活動になってしまうことだって、これは大いにあり得ると思うんです。そうなったときに、良心との兼ね合いというものを心配する私は一人なんですね。

 ですから、大臣におかれましては、そういったこともぜひ、頭からそんなことないと否定をなさることなく、そういう危険性もあるなという御認識を持っていただきたいと思いますので、先ほどの局長の答弁と、そして大臣には、この法律を通していくに当たってのそういった良心、法曹と良心との兼ね合いというものに対する思いをお述べいただきたいと思います。

山崎政府参考人 先ほどの件は、法律を変えなければできないということになります。

南野国務大臣 先生の本当に熱意をとうとうとお述べいただきました。裁判を目指す方も、どのような職業を目指す方も、その人の良心が一番必要だろう、まず人間性であるというふうに思います。そういう意味では、借金しているというような感覚よりも、それで勉強した、そしてそれを国に返還するのだというプラス思考で、どうぞ頑張っていただきたいと思っております。

鎌田委員 ありがとうございました。終わります。

塩崎委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時四分開議

塩崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。辻惠君。

辻委員 民主党・無所属クラブの辻惠でございます。

 司法修習生の給費制の廃止をめぐる法案について質疑をいたします。

 この法案については、三千人体制になる時点で廃止をするんだということで、大枠、与野党の協議が成り立っているやに聞いておりますもので、そういう意味では非常にかいのない質疑の時間帯だなという感じは非常にするんですが、この問題、それで一件落着の問題ではないというふうに私は思います。やはり、その後、見直しも当然なされてしかるべきだと思うし、民主党政権になった暁には、もう一度これを抜本的に見直すことをぜひ私は先頭に立ってやりたい。だから、そのときは山崎事務局長にもまたおいでいただいて、反面教師になるのか何になるのかわかりませんが、やはり、よくいろいろバックグラウンドも含めて考えてこられているわけですから、御意見も承りながら、建設的な意見を将来またやっていきたいなというふうに思います。

 そういう意味で、きょうの質疑につきましては、給費制の廃止をめぐる問題が何が問われているのかということについて、後日のために、しっかりとした議論を残すというつもりでやりたいというふうに思っております。

 まず、やはり立法目的、立法事実というところから確認してまいりますけれども、給費制の廃止ということについては、新たな法曹養成制度の整備が多様かつ広範な国民の要請にこたえるべきものであって、それに基づいて司法修習生の増加ということが現実化して、それに実効的に対応する制度をつくることが必要なんだということが大まかに提案理由で説明されております。

 そして、このことを具体的に述べているものだというふうに思いますけれども、司法制度改革審議会意見書(抜粋)というのが資料の十九ページにありますが、給費制のあり方については、「新たな法曹養成制度全体の中での司法修習の位置付けを考慮しつつ、その在り方を検討すべきである。」こういうふうに言われているんですね。ですから、新たな法曹養成制度をどのようなものとして制度設計していこうとするのか、その中で給費制の問題がどう位置づいてくるのかということが問われるわけであります。

 この新たな法曹養成制度ということについて、実は、これは資料の中にありましたが、新たな法曹養成制度については、法科大学院制度というのを中核として法学教育や司法修習を位置づけるんだというふうになっていて、どうも新たな法曹養成制度の中心は法科大学院制度だというふうに位置づけられているように聞こえますし、また、資料を見る限り、そのように思わざるを得ません。

 冒頭でまずお伺いしますが、新たな法曹養成制度の制度設計ということについて、そういう理解で提案者はお考えなのかどうなのか、その点お答えいただきたいと思います。

    〔委員長退席、田村(憲)委員長代理着席〕

山崎政府参考人 この点につきましては、この法務委員会でも相当活発な、濃密な議論が行われたわけでございますけれども、ただいま委員御指摘のように、法曹養成のための専門的な教育を行う法科大学院、これを中核とするということでうたわれておりますけれども、まさに基礎的なところについては法科大学院でお願いをするということになるわけでございますが、もう一つ言っていますように、新しい司法試験と司法修習、これを連携して人を育てていこうということも言っているわけでございますので、試験も大事ですし、かつ一番職業教育の基礎となる司法修習、ここも大事だということでございますので、三つとも全部大事だということでございます。

辻委員 今までの法曹養成制度との比較でもう少し突っ込んで伺っていきたいと思います。

 一九四七年に司法研修所が発足をして、戦前の高文の試験を合格して、判検事に進む人々は司法官試補になり、そして弁護士を希望する人は弁護士試補と。司法官試補は有給であって、弁護士試補は無給であった。そういう戦前のいわば分離修習、それに対する深い反省を行って、戦後の司法修習は統一修習になったというふうに私は理解しておりますが、この戦後の統一司法修習の要点というのはどの点にあったんだというふうにお考えになっているんでしょうか。

山崎政府参考人 戦後、現在の体制になった大きな理由でございますけれども、やはり、司法で活躍をするという方々については、それぞれ法曹三者の世界をよく見て、その上できちっとした判断を下していこう、こういう理念に基づくわけでございまして、そういう意味から、一緒に同じかまの飯を食って、同じものを見て、その上で公平にいろいろ判断をしていこうと、いわば統一修習の理念、これを盛り込んだということでございます。

辻委員 一九四五年の九月二十四日に、当時の大日本弁護士会連合会が、当時の東久邇内閣総理大臣に、法曹一元ということを建議しております。

 その背景としては、裁判所が戦時に戦争協力体制を支えたという、その痛苦な反省に立って、二つの制度をやはり考えなきゃいけないということを言っております。

 一つは、判検事の養成制度が弁護士の養成制度と区別されて非常に官僚的であった、そういう官僚的養成制度を変えなければいけないということが一つ。そして、もう一つは、司法大臣の掌握下に置かれていた司法行政を、これも変えなければいけない。前者の官僚養成制度については、やはり法曹一元ということをベースにすべきなんだということがあります。そして、後者の司法大臣の掌握下に司法行政が置かれていたことに対しては、裁判所が司法省から独立するということで制度を満たすべきなんだということが提言されている。

 そのような、敗戦後の、戦後の社会を国家をどのようにつくり上げていくのか。戦争に対する痛苦な反省を踏まえて、どのように新たな社会をつくっていくのかということの中で法曹一元制ということが打ち出され、そして、そのような理念に基づいて戦後の司法修習制度、判検弁三者の統一修習制度が発足したというふうに考えられると思います。

 その統一修習制度の二年間、当時は、最初、前期修習というのが四カ月あって、実務修習が地方で一年四カ月ですか、最後に後期修習がある。そういう統一司法修習制度が一九四七年以降採用されたわけでありますが、この統一修習制度ということついて、やはり尊重し続けるべきものだというふうにお考えなのかどうなのか、この点はいかがですか。

山崎政府参考人 結論からいえば、この理念は尊重していくということ、それが必要であるというふうに考えております。

 例えば法科大学院で今回やや実務的なところも教えてもらうわけですけれども、これはあくまで基礎でございまして、それを現実の事件にどう当てはめるか、あるいは当てはめていいのかどうかという問題については、まさにこの実務修習を経ないとそこの実感はわいてこないわけでございます。ここの感覚をきちっとつかまないで職業につくということは大変危険なことでもございますし、偏った意見になるおそれもございます。

 そういう意味では、非常に重要な問題であるという認識をしております。

辻委員 配付された資料でも、六十八ページで、大塚一男弁護士の朝日新聞への投稿で、司法研修所の初代所長だった前沢忠成氏が、繰り返し、統一、平等、公平の理念に立つ新修習生制度の意義を説いたということが言われております。新時代をみんなの力でつくっていくんだという息吹を感じる発言が当時なされていたというふうに思います。

 例えば、幾つか紹介をさせていただきますけれども、第四期修習生の入所式において、統一養成について、この前沢当時の司法研修所所長は、「諸君は、将来、それぞれ、判事、検事或は弁護士となられるわけで、今からその志望を確定していられる方もありましょう、まだ決っていない方もあることと思いますが、いずれに向われるかは、二年間の修習が終って、決定されればよろしいので、二年の終了まで、諸君の志望は伺わないことにしています。これは、判事になる人も、検事になる人も、弁護士になる人も、二年間全く同一の修習課程を経ることが、新制度の眼目であるからであります。」このようなことをおっしゃっている。

 そしてまた、第二期修習生の入所式に当たって、同じく前沢所長は、「本日に初まる五カ月の期間、私共は諸君のよき友人、親しき友となり、一団となって共に疑い、共に求め、共に苦しみ、弾力ある各種の研修方法によって外に鑑み、内に省み、諸君各自の内に秘めるよきもの、貴きものを引き出し、伸ばし、諸君二五二名をそれぞれ個性特徴のある立派な法律実務家として育て上げるべく、ささやかなる努力を捧げむと念願するものであります。」

 また、第五期修習生の入所式に当たって、村松俊夫所長代行は次のようにおっしゃっております。「新憲法の下に於て正義の実現、秩序の維持、人権の尊重という重大な使命を担うに足る、高い識見と、円満な常識を具えたローヤーを育成するという目的にて、法曹一元の高き理想を実現する第一段階として誕生したのであります。」このような発言が続いております。

 いずれも、判検弁それぞれがしっかりとした社会的な責務を負って、バランスのある法曹として登場していけるような、そのような教育は統一司法修習のもとで生まれるんだということを強調されているわけであります。

 山崎事務局長、この理念は尊重すべきものだというふうにおっしゃいましたけれども、当時の二年間の統一司法修習は、実務修習の一年四カ月ですか、それ以外の前期修習、後期修習、その三つが合わさっているというふうに思いますが、前期修習、後期修習がこの統一司法修習制度の中で持つ意味、意義ということについて、どのようにお考えでありましょうか。

山崎政府参考人 まず、前期でございますけれども、これは、現在の体制で見てまいりますと、学生が学部で勉強をして、そのまま試験を受かって来るということでございまして、実務的な教育というんですか、基礎、いわば要件事実とかそういうものがあるわけでございますけれども、そういうものについて全く学んでいないわけでございますので、まずそこの基礎を学んでもらうというのが前期修習でございます。

 それを前提として、実務修習に行って、それを具体的な事件にどうやって応用していくか、こういうことを学ぶのが実務修習でございまして、後期修習は、その学んできたことについて、これは全国でいろいろなところに行っておりますので、その辺のところのある程度均一化も図る必要もございますし、最後に、そのでき上がりぐあいというんですか、それを試験をして判定する、こういう役割だということでございます。

辻委員 私は、先ほど引用しました前沢所長や村松所長代行の発言を見るに、「よき友人、親しき友となり、一団となって共に疑い、共に求め、共に苦しみ、」云々とありますよ。つまり、一緒に法曹になっていくんだという立場に立って、ある意味では寝食をともにしながら、人生論も語り合いながら、いろいろな相互の希望についての意見も言い合いながら、本当に、判事になるということで自分は志望してきたけれども、どのような判事で、何をしようとするのかという前提を問い返されるような議論が、この統一修習の集団生活の中で、やはりそこがもう一回新たに検証されざるを得ない。

 そういう集団生活の持つ非常に重要な効果ということがやはり統一修習を支える根幹にあるんだろうと私は思うんですけれども、この理解についてはどのようにお考えですか。

山崎政府参考人 私、先ほど形式面からちょっとお答えしたわけでございますけれども、最初に、同じかまの飯を食うということを申し上げましたけれども、まさにそういう中でお互いに議論し、法曹のあり方、人間のあり方、こういうことも大いに議論していただいて、自分の進路を決めていくということになります。

 それから、自分が本来進むべき道以外のところもきちっと見て、どういう理由によってこういうことをやっているのかも理解をしましょうと。そういうことで、要するに、人間性を磨く、そういう機会であるということも、これも本当に間違いないところでございますので、職業につく、その職業上の知識の問題と、職業上の倫理、あるいは自分の人生をどうするか、この二つが非常に重要なポイントであるというふうに考えております。

 したがいまして、修習というのは不可欠なものであるというふうに考えているわけでございます。

辻委員 これは資料の二十九ページにありますが、法曹としての基本的なスキルとマインドを養成することが必要なんだということなんですね。

 スキルは、ある意味では技術的な問題であって、マインドというのは、いかなる法曹として国民のために何をやるのか。判事なり検事になり、また弁護士になるとしても、国民の立場に立って何をやるのか、みずからはどういう職責を負う存在なのかということをしっかりとわきまえるということが、このマインドの中の重要な部分だろうと私は思うわけであります。

 そのようなときに、このマインドを形成するのは、やはり切磋琢磨であり、同じかまの飯を食って、寝食を忘れ語り合うなり、けんかも含めて、やり合うなりということが非常に重要だ。だから、そういう意味で、集団教育というか、集団生活の中での司法修習ということの意味が私は非常に大きなものがあるというふうに思います。そのこと自体は、山崎局長もそうだと、了とされるということでよろしいんですよね。今うなずいておられるから、そのとおりだと思いますが。

 そうだとすると、今回の法曹養成制度の制度設計が、今言った統一司法修習のある意味で基礎とされるべき集団生活による司法修習ということがどのように保障されているのか、生かされているのかということについて、対比して伺いたいというふうに思います。

 法曹養成制度の中核は法科大学院だ。これは二年ないし三年だということになりますね。司法修習については一年だ。その一年のうち、最初の八カ月は分野別実務修習だ。民裁、刑裁、検察、弁護という四つの分野について二カ月ずつ分野別実務修習を行う。それから次に、選択型の実務修習を二カ月やる。これは法律事務所をベースにして、主体的な選択、設計によって、修習生がどういう修習を行うかを選択するんだ。最後の二カ月が集合修習である。クラス担任制を維持して、集合修習を最後に行う。

 私は、法科大学院は、いわばスキルを習得する助走期として、準備期間として位置づけるというのは、これはこれでいいと思いますけれども、しかし、法科大学院というのは、まだ司法試験にも受かっていないし、本当に何人が法曹になるかわからないという、ある意味で競争関係の中での教育と、法曹になるんだということを前提とした緊張感ある仲間意識というか、そういう、法曹として出発した後での教育、お互いの切磋琢磨とは意味が違ってくるというふうに思うんですね。

 先ほどから繰り返し確認させていただいている戦後の司法修習というのは、やはり法曹になるということが前提となって、その上で、判検弁、それぞれ巣立っていく、それまでの司法修習期間をともにするという、これが重要なのであって、今言われている法科大学院というのは、そういう意味では、法曹になるかならないかわからない人を含めた、ある意味で技術的な習得のレベルにとどまるものであると私は思わざるを得ない。

 では、今の統一司法修習のかぎとなる集団的な学習ということが新司法修習制度ではどのように保障されているかというと、最初の八カ月は分野別の実務修習であって、次の二カ月は選択型の実務修習であって、最後の二カ月だけが担任制で集合修習だというふうになっているわけですよ。

 だとすると、統一司法修習のベースとしてあるべき集団生活が保障される前期修習、後期修習、合わせて八カ月の中で切磋琢磨をしてきた、それが、最後の二カ月に縮められているわけですね。しかも、それは二回試験の直前なわけだから、お互いに寝食を忘れて夜まで語り合うなんということの余裕がない時期なんですよ、最後の二カ月というのは。とすると、そのように、同じかまの飯を食うという仲間意識を培うような制度状況にないじゃないですか、この新司法修習制度は。これは私は問題だと思うんですけれども、これについてはどう説明されますか。

山崎政府参考人 まず、さっき私申し上げましたけれども、前期修習は実務修習に行く前提を教えているわけでございます。いわば要件事実教育をしているわけでございますけれども、これは法科大学院の方でお願いをするということで、まずそこをカットしているわけでございます。あと、実務修習とそれから後期修習、これについては残っているわけでございますが、時間的には少なくなるというのは、御指摘のとおりでございます。

 それで、では、その時間的な中でできないのかということでございますけれども、それは私はやり方によってはできるだろうと思っておりますし、例えば実務修習に行って、そこの同じグループの人間は複数いるわけでございますから、そういう中で、いろいろ議論をし切磋琢磨をするということは十分に可能でございます。それから、選択修習の中でもそれはできるわけでございます。そういう意味で、時間的には短縮にはなりますけれども、それはできるということでこういう案を考えているわけでございます。

 それから、もう一点だけ。これから三千人にふやしていくわけでございますけれども、そういう体制を考えた場合に、修習生が同じところに二期分ダブるということですね、これは、ちょっと受け入れの方として、現実問題として極めて難しくなる、こういう制約も当然あるということをお考えいただきたいというふうに思っております。

    〔田村(憲)委員長代理退席、委員長着席〕

辻委員 簡単に、ちょっと法科大学院の現状について御質問しておきたいと思いますけれども、法科大学院のカリキュラム設定について、これは統一修習制度ということを念頭に置いて設定されているんですか、そうではないんですか。どうなんでしょう、文科省。

石川政府参考人 法科大学院のカリキュラムについてのお尋ねでございますけれども、法科大学院におきましては、法理論教育を中心といたしまして、実務教育の導入部分もあわせて実施をするという考え方のもとに、その教育課程の編成に当たりましては、法律基本科目、法律実務基礎科目、そして基礎法学・隣接科目、展開・先端科目のすべてにわたって授業科目を開設するということにしております。また、それぞれの領域がいずれかに過度に偏ることがないように配慮をするように文部科学省告示においても定められておるところでございまして、これは、司法制度改革の趣旨を踏まえてそのようなカリキュラム設計をいたしているところでございます。

 実際に、これを受けまして、各法科大学院では、実務家教員の参画のもとに、少人数教育を基本といたしまして、ケーススタディーとかあるいは現地調査など、法理論と実務のかけ橋を強く意識いたしました実践的な教育が実施されている、こういう状況でございます。

辻委員 現状についてはその御報告を承っておきますが、私の質問は、そういう法科大学院教育制度の現状というのは、その後に続く司法修習制度が統一修習なのか分離修習なのか、いずれなのかということを念頭に置いて、それと連関した形で制度設計されているのかどうなのか、その点を伺っているんです。それを意識していないということであればそういうお答えで結構だし、意識しているというのであれば、どこがどうつながって意識して、どう生かされた形になっているのかということをお答えいただきたい。

石川政府参考人 重ねてのお尋ねでございます。

 法科大学院の教育のあり方につきましては、平成十三年の司法制度改革審議会の意見書にもございますような、法理論教育を中心としつつ、実務教育の導入部分、こういったものを、実務との架橋を強く意識した教育を行うべきである、こういった御指摘も踏まえまして、法曹養成全体の中で適切な位置づけ、適切な教育を行うということで考えておるところでございます。

辻委員 問いに対する答えになっていませんよ。

 統一司法修習制度を前提にして法科大学院のカリキュラムが制度設計されているのかどうなのか、イエスかノーかで答えてください。

石川政府参考人 統一的な法曹養成制度の中での設計をされているというふうに理解しております。

辻委員 それでは、統一司法修習制度を前提として、それと不可欠に連関するカリキュラムというのはどういう形で設定されているんですか、具体的に説明してくださいよ。どこがどう前提にしているからこういうカリキュラムになっているんだと言えるんですか。答えてください。

石川政府参考人 冒頭でも多少御説明を申し上げましたけれども、統一的な法曹養成制度の中で適切に位置づけるという考え方のもとに、法科大学院におきましては、法理論教育を中心としつつ、実務教育の導入部分もあわせて実施をする。すなわち、法理論と実務のかけ橋、これを強く意識した実践的な教育を実施するという考え方でございます。

辻委員 答えになっていないじゃないですか。

 統一司法修習を前提にしているというんだったら、統一司法修習を前提にして、それを前提にしていることが明らかにわかるようなカリキュラムはどのように制度設計されているんですか。どの部分を見れば、ああ、これは統一司法修習を前提にしているんだなというふうに理解できるんですか、それを言ってくださいよ。一般論しか言っていないんです、あなたは。答えてください。考えていないんでしょう、そこは。

石川政府参考人 司法修習というのは、先ほど法務省の山崎局長ですか、お話もございましたように、実務面を重視したトレーニングだというふうに理解しております。その前提として、法科大学院におきましては、法理論教育を中心とし、またその実務修習につながるような、かけ橋となるような実務教育の導入部分を担当するということでございます。

辻委員 同じ回答を、しかも具体性を欠いた回答を繰り返されても、それは答弁に対する拒絶としか思えないですよ。何も考えていないということを自白しているに等しいですよ、それは。

 ほかのお立場の方でお答えいただく方がいらっしゃいますか。

寺田政府参考人 差し出がましいようでございますが、私どもの方で、連携法に基づきまして……(辻委員「連携法というのは何ですか」と呼ぶ)失礼、法科大学院と司法修習それから司法試験というものを、三者を連携して、プロセスとしての法曹養成をするという立場から、これについての連携に関する法律というのをおつくりいただいております。その法律の考え方に基づきまして、法科大学院のカリキュラムを議論する場においても、法務省あるいは現役の裁判官なり検事なりが参加させていただいております、あるいは弁護士の先生も参加いただいております。

 そういう席でカリキュラムが議論される際に、修習においてこれまでどういう理論的な教育がされてきたかというようなことも御披露申し上げて、さらには、弁護士にとって必要な倫理規定でありますとか、あるいは裁判所において具体的に要件事実がどのように考えられているかというようなことを、法科大学院の学生は志望にかかわらず共通にカリキュラムとして学べる機会が与えられる、そういう設定がされております。

 これは、まだ法科大学院は実は始まりましてことし第一年目でございますので、どちらかといいますと二年ないし三年の応用的な項目でございますので、まだ具体的に法科大学院の学生がこういうことを学べる段階には至っておりませんが、そういうことがプランとしてはあるわけでございます。

辻委員 今おっしゃった法科大学院と司法修習と司法試験の連携に関する法律というのは、司法修習は統一司法修習制度であるということを前提にして成り立っている法律であるという理解でいいんですね。そういう御発言と受けとめていいんですか。

寺田政府参考人 御指摘のありました連携法、先ほど私が御説明申し上げたところでございますが、この法律における法科大学院のカリキュラムのあり方というものは、当然、修習が、それが弁護士になるか裁判官になるか検事であるかにかかわらず適用されるべきものという前提でできております。

辻委員 その前提であるというのは、法案の提案理由なり、それの明文化されたものないしは答弁において今まで語られているもの、そういうものがあるんでしょうか。

寺田政府参考人 その点を法案の審議の中で明らかに御質問があったということもございませんし、法案の中に具体的に統一修習という文言が出ているということではないことはそのとおりでございますが、具体的に、分離修習を前提としてはいないという意味で、統一修習だということがもう当然の前提として皆さんの間で御議論が、その他のカリキュラムをどうすべきかというようなことがあったということは事実でございます。

辻委員 統一修習制度を前提にその法律も提案され成立したんだというふうにおっしゃっているということで伺っておきます。

 一点申し上げておきたいのは、結局、この今審議されている法案に返ったときに、新たな法曹養成制度全体の中での司法修習の位置づけを考慮しつつ、そのあり方を検討するというふうに給費制については言われているんですよ。

 はしなくも今明らかになったけれども、法科大学院が法曹養成教育の中核だというふうに言われて、しかし法科大学院はまだ一年目の試行期間である、だから、二年目ないし三年目がまだ全く試行されていないんだからどうなるかわからない。つまり、新たな法曹養成制度全体を論議しつつ、その中で司法修習を位置づけて給費制の問題を考えるというこの趣旨からしたときに、まだ時期尚早なんですよ。法曹養成制度の全体像なんて全く明らかになっていないわけですよね。だから、非常に拙速的な論議の提起のされ方だということを指摘しておきたいと思いますよ。法曹養成制度をもっとしっかりと議論しなければいけないというふうに思います。

 三千人制度が正しいのかということについては私は異論を持っているし、また、司法試験の受験回数を三回に制限するなんて、これはとんでもない悪法、悪制度であるというふうに思います。やはり、それは就業の機会を奪うものであって、職業選択の自由に反するのではないかというぐらい私は思います。

 何で三回に制限する必要があるのか。私も三回以上受けているし、三回に制限されたら弁護士は受からなかった、そういう痛苦な、みずからを振り返ってみても、やはり回り道をいろいろ人間はするんですよね。回り道をした人の方が味があるかもしれない、絶対そうだと思うんですよ。だから、三回に限るというのは、回り道をしない均質な法曹をとにかくつくり出せばいいんだという、そういう法曹養成についての国家の一つの判断ということがあらわれているわけですね。これは、私は間違っている。

 先日、憲法調査会で、聖路加の日野原重明名誉院長が公述人に来られて、私は質疑をさせていただいたんですけれども、これは憲法九条の問題に関連してだったんですが、日野原先生がおっしゃったのは、要するに、日本で徴兵制度がないんだから、若者はその徴兵制度一年か二年にかえて、海外にボランティアに行くとか、社会のいろいろなところに出かけていかなきゃいけないというのをやはり義務的にすべきなんだ。自分は医者でずっと長年やってきたけれども、二十二や二十三のお医者さんが本当に患者さんの気持ちをわかって、会話が成立するような成熟した大人として成長しているかといったら、疑問だ。まだまだそんな若造が、本当に生死の境を、不安を持っておられる患者さんに対して、医者としてちゃんと物を言えるか、会話が成立するのか、その人の気持ちがわかるのか。そういう意味では、まだまだひよっこで、大人ではないんだ。だから、いろいろな社会経験、ボランティア制度で、やはりそういうものをくぐり抜けて、それを成長の糧として、その中でさらに経験を積んで初めて一人前の医者になれるんだ。こういうふうに日野原先生はおっしゃった。

 まさにそのとおりだと僕は思いましたし、それは法曹も同じだと思うんですよね。

 質問通告に法匪というような言葉を書かせていただいて、聞きなれない言葉だと思われたかもしれませんけれども、法律の条文をしゃくし定規に当てはめて、それで事足れりという、そういう血も涙もない法曹が育っていってはならないんですよね。

 これから社会がより多様化していって、価値観も多様化し、いろいろな非常に複雑な矛盾もふえていくだろう。その中で、交通整理をしていくというのが法曹の役割だし、検事も単純に訴追意識だけを、また厳罰化を求められればそれだけで社会が安定するというわけでもないわけですから、バランスのある総合的な、人間として熟した法曹として、やはりそれぞれの立場で尽くしていくべきだというふうに思うわけであります。

 だから、そういうような法曹を養成していくに当たって、法曹教育というのは物すごく重要だし、そのときに集団で修習をするという、先ほど山崎局長言われたけれども、前期修習の役割というのは、スキルを覚える初歩的な段階だということに尽きるのではなくて、もっと重要なのは、やはり同じ法曹としてかまの飯を食って未来を語り合う、寝食を忘れて語り合う、いろいろ切磋琢磨するということの方がより重要な前期修習の意味なんですよ。だから、木を見て森を見ない発言なんですよね。

 スキルの修習は二次的、三次的で、またそれぞれもっと機会もあるし、それはやらなければいけないことですけれども、より前提的には、いかなる法曹になるのか、そのための、一人ではやはりそれは解決しない、いろいろな意見が世の中にはあって、いろいろな生き方がある、人生があるということを人から学び知っていくという、そういう集団生活の持つ重要さということをやはり本当にちゃんと位置づけてもらいたいなと。それが欠落しているんですよ、今回の一年間の司法修習制度は。だから、本当に根本的な意味のところで統一修習制度の根幹を欠落させている、そういう制度設計になっているというふうに思わざるを得ない。

 だから、その点は絶対改善すべきだ。今国会のこの法案で改善という話にならないというふうに思いますけれども、今国会は給費制の問題ではありますが、やはり法曹養成制度をもう一回見直して、しっかりとした議論をしていく必要があるというふうに改めて申し上げておきたいというふうに思います。

 それで、今の点とも関連するんですが、選択型の実務修習というのは、個人の主体的な選択と設計によってというふうに書かれていますが、先ほどの日野原先生の言をまつまでもなく、法科大学院を出て司法試験に受かって八カ月の分野別実務修習が終わった、ある意味ではまだ大人として成熟していない修習生が主体的にやるなんていうことは、別にその人たちの人格をおとしめる意味ではなくて、やはり難しいというふうに思うんですね。

 そうなると、今人気のある渉外事務所だとか企業法務だとか、おのずとそういう方に流れてしまうということがあるわけですよ。だから、バランスのある修習制度をやはり国の側でちゃんと制度設計すべきだ。そういう意味では、主体的なということでお任せにするという分野別実務修習はやはり再検討されるべきだというふうに思いますけれども、この点はいかがですか。

山崎最高裁判所長官代理者 修習を所管しております最高裁判所からお答えしたいと思います。

 先ほど来委員の御指摘のありますとおり、私どもとしては、質の高い多様な人材を法曹として育てていきたいというふうに考えておるわけでございます。そういったことから、選択型実務修習というのも意義があるのではないかというふうに、これは司法修習委員会というところで議論していただきまして、そういう提言をいただいているわけでございますので、私どもそういうことで運用していきたいというふうに思っております。

 選択型実務修習、もう御存じかもしれませんが、修習生の進路ですとか問題意識ですとか、その前提として行われました分野別実務修習での実績、関心に応じてそれぞれ選択していくという形のものでございます。考えておりますのは、実務庁会がいろいろ多様なメニューを準備いたしまして、それから選んでもらうということを考えておりますので、そういう意味では、一応分野別実務修習を自分でやったその経験に照らして選択していく、こういうことになろうかと思います。

 そういうことで、適切な選択あるいは修習をやってもらえるというふうに思いますし、もしそういう何か極端な方に流れるようでございましたら、そこは実務庁会の指導担当者が適宜アドバイスし、あるいは指導し、適切に行われるように考えていく、そういうイメージを持っております。

辻委員 最高裁に伺いますけれども、集合修習ということの持つ意義というか、私なりの意見をさっきから述べているつもりなんですよね。

 これについては、一九七〇年代に腐ったリンゴ論というのがあって、一つ腐ったリンゴがまじると周りがどんどん腐っていく、法曹養成の司法修習で、変な思想とか変な腐ったリンゴ的な修習生が一人入ってくると、周りもそれに侵されてどんどんどんどん悪くなっていく、本来求めている修習生、卒業生が得られなくなるんだというような議論が研修所で結構なされたと思いますけれども、その議論についてどのようにお考えなのか、それと集合修習との関係についてどのようにお考えなのか、最高裁の意見を伺いたいと思います。

山崎最高裁判所長官代理者 先ほどもお答えいたしましたが、私ども、あるいは司法研修所といたしましては、社会全体のニーズがいろいろ多様化していく、そういう状況のもとで、やはり質の高い、しかも多様な人材、こういうものを法曹として輩出しなければならない、そういう意識を持っておりますので、委員が御指摘になられましたように、ある種均質のものをつくっていく、そういう考え方は全くとっておりません。

 そういうことでございますので、できるだけ多様な法曹ができるように、今後とも努力していきたいと思っております。

辻委員 当時は七〇年代ですから、宮本判事補の再任拒否とか阪口修習生の罷免問題とかいろいろ、青法協問題ということで、当時は長沼ナイキ基地訴訟の問題で、司法行政からのいろいろ容喙があったんじゃないかというようなことも指摘されて、司法が論議がかまびすしかった時代だと思うんです。

 そのときに、集合修習ということについて、余り長い期間、人生経験が豊富なのかどうかわからないけれども、青年の真っ当な、普通に育ってきたことにいろいろ思想的に悪影響を与えたり、社会をもっと知らなければいけないというようなことで、いろいろそういう影響を受けては本来の修習は成り立たないんだというようなことを最高裁、司法研修所当局は言っていたと思うんですけれども、その点については反省をしているんですか、今。

山崎最高裁判所長官代理者 集合修習との関係でのお尋ねであろうと思います。

 先ほど来委員も御指摘になっておられるとおり、修習においては、基本的な法曹としてのスキルとともにマインドというものを養成しなきゃいけない。そういう意味で、集合修習の持つ意味、これは重要なものがありますし、委員の御指摘のとおりのところだろうと思います。

 ただ、法曹としての倫理ですとか使命感、そういったいわゆるマインドの部分というのは、言ってみれば、集合修習で築かれる部分もございますが、同時に、修習全体、先ほど来出ています分野別修習ですとか選択型修習を通じても身につけていくべきものだというふうに思っておりますので、そういう位置づけで考えていきたいと思っております。

 したがいまして、集合修習というのは、スキルの面から見ますと、体系的で汎用的なスキルを身につけさせる非常に重要な部分であろうと思いますが、限られた一年という期間の中でどれぐらいそれに当てるかというのは、これは制度設計の問題でございまして、先ほど申し上げました最高裁判所の司法修習委員会のところで議論していただいて提言をいただいておりますので、そういうものを尊重して制度をつくっていきたいというふうに思っております。

辻委員 私は、集合修習は、スキルにとっても重要かもしれないけれども、マインドの形成にとってより重要だということを言っているんですよ。その点、ちゃんと理解して御発言いただきたいなというふうに思います。

 時間の関係もありますから、やはり法曹養成制度をもっと、受験資格を三回に限るとか、非常にいろいろな、多様な方向性から法曹を求めることができる、法曹の給源が多様な、日本人に限らず、在日の方々も法曹になれるということでなっているわけですね。ですから、そういう多様な給源を求めていく。

 だから、何か一つのルートを通らなければ法曹になれないという法曹養成の給源を狭めるやり方は、やはりこれは、日本が今後より多様な社会を形成していくに当たって、多様な給源から法曹になられた方々が法曹になっていかなければ対応できないという面が非常によりふえるわけでありまして、私は、そういう意味での法曹養成制度をもう一回見直すべき点が非常にあるんじゃないかというふうに思うことを申し上げておきたいと思います。これは、改めて見直したときの論議としてしっかりとまたさせていただきたいなというふうに思います。

 それで、本来の給費制の問題についての質問はこれからなんでありますけれども、だから、そういう意味で、法曹養成制度の中で司法修習を位置づけて、その中で給費制を考えると言っているのに、法曹養成制度がいかなるものなのかということの議論がまだ本当に熟していない、その中で給費制の廃止だけが急がれようとしているということは、やはりこれもまた問題がある。法務省なり推進本部、それは十一月いっぱいで存在がなくなるからお急ぎなのかもしれないけれども、余りにも拙速的過ぎるというふうに思います。そのことを申し上げておきます。

 貸与制だということになっておりますけれども、この貸与制をめぐっては、正式な文書としては任官者の免除というような話は出てきておりませんけれども、法曹養成の検討会ではその種の議論もなされたというふうに思っておりますけれども、提案者としては、任官者の免除については、これは将来認める余地があるというふうにお考えなのか、そうではないのか、その点はどうなんですか。

山崎政府参考人 任官者免除につきましては、現時点でこの考え方を変えるということは思っておりません。

 ただ、先ほど申し上げましたように、連携法が出てきておりますけれども、その連携法で見直しの規定が入っておりますので、委員御指摘のとおり、この法曹養成制度、新しく始まるわけでございますので、これは一定の期間後にきちっと見直すということになろうかと思います。それは、いいものはいい、だめなものはだめということになるかもしれませんけれども、そういう中でいろいろ議論が起こるということは否定はできないということでございますが、私どもとして、それは将来変えるということで考えているわけではないということを御理解賜りたいと思います。

辻委員 提案側の最もオピニオンリーダーであり責任者であられる山崎局長の個人的な見解として伺いたいと思いますが、仮にこれが貸与制になった場合に、判検事志望者と弁護士志望者で区別を設けることが妥当だというふうに局長はお考えなんですか、そういう意思は毛頭ないというふうにお考えなんですか、どっちなんですか。

山崎政府参考人 私個人として申し上げますけれども、差を設けることは妥当でないというふうに思っておりますし、今後もそうあってはならないというふうに思っております。

辻委員 それはそのとおり伺っておきます。

 法曹養成制度というのは公益的なインフラ整備ということでありますから、仮に弁護士になるという存在だからといって、それは営利のみに走るということではなくて、やはり社会を支えていく公益的な存在でもある、そういう職責も弁護士は同時に持っているんだということについて、これは弁護士の側ももっと努力をしなければいけない、自戒してそういうようなことをしていかなければいけないというふうに思いますけれども、やはりその点はしっかりと申し上げておきたいと思うし、それを御理解いただいた上で、今、差を設けることは妥当でないとお考えだということを明言されたんだというふうに思います。

 それで、この給費制の問題について、これは経済的負担を受験生に非常に過大に負わせることになって、やはり、法曹を希望する人たちが広く日本全国から法曹を希望することができなくなる、貧富の差によって希望もできなくなる、断念せざるを得ない、そういう意見もあります。このような点について、法務大臣、どのようにお考えですか。

南野国務大臣 今までの制度は、いわゆる給料をいただきながら弁護士になろう、そういった若いファイトを燃やしていただけていたと思います。先生も本当にその若さですてきな弁護士になられたとも思いますし、それは、三回ではけしからぬとはおっしゃいますが、一つの歯どめになろうかと思っておられる。

 また、そういった恵まれた環境にいる人だけが司法の立場に立つということは、これは貸与制でございますから、そういうことでは限定されないのではないか。勉強したい方は、どうぞお金を借りて、しっかり勉強してください、それについての返済制度というものも本当に十分見ながら、一律の規定を設けていますよ、これは逆に喜ばしい方法の制度になっているのではないかなというふうに思います。

 その制度、この改革が実現した暁には、うんとうんと立派な、質量ともに兼ね備えた弁護士さんたちが国民の方々のニーズにこたえていただけるだろうと思います。そして、それは都市だけでなく、地方にも僻地にも頼りたい弁護士さん、国民はそう思っておりますので、どうぞ、人間性をプラスしながら、弁護士の専門性という問題に切磋琢磨して育っていただく方が養成されるべきであると思っております。

 以上でございます。

辻委員 最後に、大臣にもう一、二点伺いますが、今までの議論をお聞きになっていて、大臣としてのお考えというのを伺いたいと思いますが、司法修習制度については統一修習制度を維持すべきであって、分離修習などは考えるべきではないのかどうなのか、この点が一つ。

 それからもう一点は、給費制について、判検事希望者と弁護士希望者で区別をして、判検事だけを免除にするというようなことを考えるべきでないと考えるのかどうなのか、この二点について。

南野国務大臣 第一問の点でございますが、やはり統一と、先生がおっしゃっているように、同じかまの飯を食べながら、ともに論議をして、そしてどういう問題だということを検討していく、それは、弁護士に限らず、医師でも看護師でも何でも、専門性であるという以上、私はそのような教育をしてほしいなというふうに思っておりますが、弁護士の方は特に国民の期待が大きいと思っております。

 それから、先ほどの給費の問題についても、裁判官、判事、それからもう一つは弁護士の方々についても、それはみんな同じでなければいけないというふうに思っております。

辻委員 どうも時間がいっぱいになりました。

 最後に、山崎潮事務局長、百五十九回通常国会のときから、大先輩でありながら失礼なこともいろいろ申し上げ、これは役目としてやっていたということで御理解いただき、これからまたいろいろな場面でいろいろお知恵なり御助言いただくことになると思いますから、よろしくお願いします。御苦労さまでした。

 以上です。

南野国務大臣 先ほど申し上げたのは、裁判官、検察官、弁護士でございます。

辻委員 はい。それで訂正していただいていいです。

     ――――◇―――――

塩崎委員長 次に、裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として総務省総合通信基盤局電気通信事業部長江嵜正邦君、総務省総合通信基盤局電波部長竹田義行君、法務省大臣官房司法法制部長寺田逸郎君、法務省刑事局長大林宏君、法務省入国管理局長三浦正晴君、厚生労働省大臣官房審議官北井久美子君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

塩崎委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

塩崎委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小林千代美君。

小林(千)委員 民主党の小林千代美です。

 これから、三十分しか時間がないんですけれども、難民政策について主にお伺いをしたいと思います。

 さきの通常国会の中で入管難民認定法の一部改正というものが行われました。日本の難民政策については国連の難民高等弁務官の方からもいろいろと指摘があるところでございまして、積極的に取り組まなければいけない、こういうことを言われているわけなんです。

 しかし、今回のこの通常国会での法改正、例えば六十日ルール、これが六カ月になりました。あと、今まで法務大臣がその決裁権を持っていらっしゃったんですけれども、そこに難民審査参与員というグループができまして、そこの諮問というものもできたわけでございます。まあ、一定の前進かとは思いますけれども、指摘があるような、積極的な難民政策への取り組みというものにはまだまだ足りない点が多いのではないかなというふうに私は感じているところがあります。

 国際情勢も変化しておりまして、流出している難民の数というのもふえてきているところですし、日本でも難民の認定申請数というものは、ここ数年、ウナギ登りの状況になっております。

 UNHCRの前弁務官でした緒方貞子さん、この方も日本に対しまして指摘をしているところでございまして、例えば、日本が単一民族の島国であるということはあくまでも錯覚であり、人、物、情報などが広く行き交うグローバル化した今日の世界においては到底維持し続けられない、私たちは、島国根性や外国人に対する偏見や差別というものを打ち捨てて、外の世界の問題を自分たちの問題としてとらえる必要があるというふうに指摘をされているところでございます。

 また、南野大臣が法務大臣として御就任をされまして、以前にも質問をさせていただきましたけれども、大臣が今まで人権擁護といった分野で大変活躍をされていらっしゃった。御自身のお考えの中でも、少数の異質な人々にも寛容である社会、多様な生き方やあり方というものを認めるような社会を築いていくことが重要であるというふうな大臣御自身のお考えを持っていらっしゃるところでございます。

 ぜひ大臣にお伺いをしたいんですけれども、というよりも積極的に取り組んでもらいたいと私は希望として思っているんですけれども、これからの日本の難民保護政策、どのようにするべきだというふうにお考えでしょうか。御所見を伺わせていただきます。

南野国務大臣 本当に難民という問題についてはいろいろなことを検討していかなければならない。日本は空からまたは海からしか来られないというようないろいろな課題もそこにございますけれども、我が国は、昭和五十六年、難民条約に加盟いたしております。それに伴いまして、難民認定制度を設けて、その後二十年以上にわたり、国際的な取り決めである難民条約等にのっとり、個別に審査の上、難民と認定すべきは認定してまいりました。

 今後とも、政治的迫害等から逃れ、庇護を求める方々を迅速かつ確実に難民として認定し、さらにそれを保護するという姿勢で臨んでいく、人類愛というところに根差すことは変わりございません。

小林(千)委員 確かに、日本は四方を海で囲まれておりまして、そういった条件もあるかもしれない。また、使われている言語も、日本語という世界じゅうでは余り使われていない言葉。そういう言いわけはもう通用しないと思うんですよ。依然として認定率というものは大変低い。数%、平成十五年の数字ですと三・二%だそうです。こういったところを改善していかなければ、国際社会の中で人類愛を持って貢献をするというのはなかなか難しいのではないかなというふうに思っているところです。

 法務委員会でも、ことしの三月でしたか、東京入管の方に視察に我々は行ってまいりました。そのときに局長から御説明をいただいたわけなんですけれども、申請者の国籍別内訳というのが、これは平成十五年度ですけれども、一位がビルマ、ミャンマーで、二位がトルコ、三位がイランだということに昨年はなっているということでした。

 ミャンマーからの認定申請というものは、前年より大変大きくふえているんですね。データを見ますと、以前からミャンマーというのは、これは法務省からいただいた資料なんですけれども、ここ五年間くらい常に一位か二位ぐらいの認定申請者の数がいらっしゃるわけなんです。ずっと、四十人、二十何人、二十何人、三十八人と来たのですけれども、平成十五年には百十一人ということで、ミャンマーからの申請者数というものが大変ふえた、こういった状況になっております。

 また、認定された数というのもわずか数%で、申請者数に対して認定された方の数は大変少ないわけなんですけれども、それでも、認定者数のうちほとんどがミャンマー国籍の方だという現状に今なっているかと思います。

 それで、このミャンマーの今の政治状況についてお伺いをしたいと思います。

 大臣、今のミャンマーの政治情勢について、特に、ノーベル平和賞を受賞されましたアウン・サン・スー・チーさんが、一時期、自宅軟禁から解放されたわけなんですけれども、また自宅軟禁の状態が続いている現状になっております。この件について、大臣、どのようにお考えでしょうか。

南野国務大臣 先生のお話でございます。お答えいたしますが、政府といたしましては、現在の事態を懸念いたしまして、アウン・サン・スー・チー女史が率いるNLD党を含むすべての関係者が関与した形での国民和解と民主化プロセスの具体的進展を求めて、今後ともミャンマー政府に粘り強く働きかけていくという方針にあるものと承知いたしております。

 さらに、ミャンマーにおきましては、昨年五月以降、スー・チー氏が自宅において軟禁された状態が継続しており、また、本年五月より再開された国民会議も、スー・チー女史率いるNLDが参加していないまま開催されているという状況を、我が国としては、心を痛め、懸念いたしているところでございます。

小林(千)委員 何でこういったミャンマーの政治情勢について伺ったかと申し上げますと、今、難民申請をしたミャンマー国籍の方が裁判を起こしているわけなんですね。この方は、難民の認定をしない処分の取り消し、退去強制令書発付処分取り消し請求、これは一審で勝たれた方なんですよ、ミャンマーの国籍の方が。その方に対しての控訴事件というものを、法務大臣、大臣が控訴人となられておりまして、高裁に上がっているのですね。

 具体的なお名前のことは申し上げませんけれども、その控訴理由書の中に書かれているミャンマーの国内の情勢の政府の認識として、ちょっと私は二、三指摘をしなければいけないことがあるのですよ。先ほど大臣が答弁をしていただきましたミャンマーの今の政治状況とはどうやら違うところが、この中には書かれているわけでございます。

 ちょっと引用をさせていただくわけなんですけれども、この控訴理由書の中に「ミャンマーの政治情勢について」という項目がございまして、このように書かれております。「ミャンマーでは特にNLDに対する抑圧が続いた結果として、NLDからの脱退が強制された旨判示しているが、NLDの党勢が弱体化したのは、アウンサンスーチーの硬直的な思考など、政治手法に対する反発や疑問が国民や党員の間に広まっていることも要因としてあり、一概に政権側の弾圧の結果と論ずることは早計である。」このように控訴理由書の中には書かれているところでございます。

 つまり、アウン・サン・スー・チーさんのやり方というものが反発や疑問を国民の間に招いていて、それが広がっているというふうに述べられているわけなんですけれども、このような理解で正しいのでしょうか。先ほどの答弁とかなり違うと思うのですが、大臣。

南野国務大臣 御質問の件につきましては、アウン・サン・スー・チーさんのことでございますが、ミャンマー人に関する難民不認定処分の取り消し請求訴訟において、政治的迫害を受けたという原告の主張が正しいかどうか、裁判所が的確に判断できるように、訴訟当事者である法務省の見解として、原告の主張に反する報道や書籍があることを指摘したものであります。裁判所は、これらすべての証拠等を考慮しながら、的確な判断に至るものと思っております。

小林(千)委員 法務省の考え方というのは、本を引用して、そういうことも言っている人がいるからということでいいのですか。これは政府の考え方とは違うのですか。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど大臣から御答弁ございましたが、政府としてのミャンマーに対する認識というのは、先ほどの大臣のお話のとおりでございます。我々もそのように認識しております。

 本件の御質問に関しては、具体的な訴訟におきまして、原告の主張が果たして正しいものかどうかということを最終的に裁判所の方に御判断いただくわけでございますが、その際に、一般的な状況のほかに、有識者の方から、先ほど委員御指摘のような記述をされた書籍などが出されているという状況もございますので、こういったことも参考にして裁判所の方で適正な御判断をしていただきたいということを法務省として主張申し上げた次第であります。

小林(千)委員 法務省のその見識というのは政府の見識ということでよろしいのですか。

三浦政府参考人 訴訟の当事者として主張申し上げたということでございまして、ミャンマーの一般的な状況の認識につきましては、先ほど大臣から御答弁があったとおりだと考えております。

小林(千)委員 でも、法務大臣ほか一名の名前で控訴人として挙がっているわけなんですよ、控訴されているわけなんですよ。そこに挙げられている理由書というのは、当然これは控訴人が挙げられ、まあ代理人ですけれども、法務大臣が挙げられている。

 この中で述べられていることは政府の見解と違っていいということなんでしょうか。先ほどの答弁ですとそうですよ。そうおっしゃっていましたよね。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 認識としては政府の認識は一つであると考えておりますが、個別の事案につきましては、いろいろな状況があるかと存じますが、中には原告の主張されるところと異なった状況も認められるという趣旨の文献等もございますので、そういったものも総合的に勘案して裁判所としては判断をしていただきたい、こういう趣旨で申し上げたわけでございます。

小林(千)委員 政府、法務省の見解というものは先ほど大臣からお伺いをいたしました。私が今質問をしておりますのは、この控訴されている方、具体的な方の名前を挙げて聞いているわけではありません。この中に「ミャンマーの政治情勢について」という項目があります。ミャンマーの政治情勢を法務省、法務大臣に伺うんですから、当然これは、政府の認識は一つでないと困るのではないですか。

三浦政府参考人 ミャンマーの政治情勢に関する認識は先ほど来申し上げているところでございます。

 ただ、一国の政治情勢につきましてはさまざまな見方があるところでありまして、現に、先ほど御答弁申し上げました書籍につきましても、そういった見方をされているところがございますので、これらを、そういったものがあるという事実を前提といたしまして適正な判断をしていくべきだというふうに裁判所に申し上げたということでございます。

小林(千)委員 確認しておきます。

 では、この控訴理由書に書いてある内容というものは、法務省あるいは政府の見解と違っていいということなんでしょうか。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 そのような見解も一部にあるということを御指摘申し上げているだけでございまして、政府の見解としましては、先ほど大臣から御答弁があったとおりであると認識しております。

小林(千)委員 これは大臣が控訴人となって出されているものなんですよ。そこに、一般的な、特定な事例を挙げて言っているわけではありません、「ミャンマーの政治情勢について」ということで書かれた内容です。そういった政治情勢について、政府の持っている認識と違うところの考え方というのを、どこの本から持ってきたのかわかりませんけれども、引用して挙げている。こんなことが法務大臣の名前で出されていてよろしいのですか。大臣、答えてください。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 事実の見方として、先ほど来申し上げているような、書籍に記述がある、そういった一つの見方も存在するということでございます。

小林(千)委員 それでは、これは法務省の見解じゃなくて、本からの引用ということでよろしいんですね。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 具体的な書面には、引用であるという趣旨の記載がなされていたというふうに記憶しております。これを引用したということでございまして、法務省の見解そのものという趣旨ではないと考えております。

小林(千)委員 法務省の見解ではないということを確認させていただきました。

 もう一つ確認をしておかなければいけないことが、同じ控訴理由書の中にございます。

 ミャンマーの民主化運動について書かれているところがあります。一九八八年の八月に起こったミャンマー民主化運動についてなんですけれども、そのくだりにつきまして、このようにこの控訴理由書の中では書かれております。「一九八八年に相次いで発生したデモ等についても、実際には、純粋な政治運動などではなく、実際には混乱に乗じた殺人、集団暴行、略奪、放火などが広範に行われた騒乱であって、政府を支持しているとみなされた者を集団で暴行した上で殺害し、鎖で繋いで引きづり回すようなことまで行われたというのである。」というふうに書かれております。

 これは、一九八八年のミャンマーの民主化運動そのものを否定しているんですよ。それは確かに、運動の中で、騒乱の中で、そういった集団暴行あるいはリンチのような殺人というものが一部あったのかもしれません。しかしながら、この文章では、あれは民主化運動ではありませんでした、混乱に乗じた殺人、集団暴行、略奪、放火でしたと、八八年の民主化運動を全否定しているんです。

 これも、外務省の方、きょう本当は呼びたかったんですけれども、三十分で時間がないので残念なんですけれども、次、またやりますよ、外務省の方に聞いて。

 これは日本の政府の見解と同じと考えてよろしいんですか、この控訴理由書の中に書いてある一文は。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の点につきましても、先ほど来御答弁申し上げているような形で書籍等に記載がございます。この引用でございますが、一九八八年の民主化運動につきましては、ミャンマーにおきまして全国的規模で発生したさまざまな事件を総称したものであるというふうに承知しておるわけでありますが、その過程におきまして憂慮すべき事態が生じていたことは事実であろうというふうに思います。

 他方、デモ等に乗じた一般犯罪が発生した旨の報道や書籍の記載が存することも、これまた事実でございます。

 御指摘の書面に関しましては、そのようなさまざまな評価があることを紹介したにすぎないものでございまして、一九八八年の民主化運動全体を犯罪であるというような位置づけをしているわけでは毛頭ございません。

小林(千)委員 では、ここのくだりの部分も本からの引用であったということですね。

 では、大臣にお伺いをいたします。

 大臣は、この一九八八年のミャンマーの民主化運動を政府としてどのように認識されていらっしゃるでしょうか。

南野国務大臣 お答え申し上げます。

 一般論として申し上げれば、一九八八年のミャンマーにおける民主化運動の過程において憂慮すべき事態が生じたことは私も存じております。

小林(千)委員 一般論じゃなくて、政府の、大臣の見解をお伺いしています。大臣に伺っています。

南野国務大臣 お答えいたします。

 このたびも同じ御答弁になろうかと思っておりますが、ミャンマーの民主化運動についてどう思うかということだと思います。

 それを一般論として申し上げれば、一九八八年のミャンマーにおける民主化運動の過程において憂慮すべき事態が生じたことは私も存じておりますという答弁でございます。

小林(千)委員 一般論じゃなくて、大臣、大臣の職務にある、政府の、閣僚のメンバーとしていらっしゃるんですから、その立場として答弁してもらわないと困るわけなんですよ。一般論で言われても困るわけです。

南野国務大臣 一九八八年、全国的な民主化要求運動が発生し、同年八月以降、特に激しさを増して騒乱状態となり、また、政府職員の職場放棄、デモなどにより国家機能は麻痺し、治安が極度に悪化したことを憂慮すべき事態という形で申し上げました。

小林(千)委員 では、大臣の認識は、先ほど答弁をされた内容と違うということでよろしいんでしょうか。

南野国務大臣 最初申し上げたところに、私が、憂慮すべき事態が生じたことは私も承知しておりますということでありまして、その憂慮した中身は何かと問われたら、今のことを御返答したということでございます。

小林(千)委員 この控訴理由書の中には、純粋な政治運動ではないというふうに書き切っているわけなんですけれども、それでよろしいんですか、政府の答弁として。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 一連の運動の過程の中で、一部一般犯罪が生じたこともあり得るであろう、こういう趣旨で記載されておると承知しております。

小林(千)委員 一部そのような運動があったであろうということが、これは一部ではなんて書いていないんですよ。一部じゃなくて、この中では全否定されているんですよ。そういった政府の認識と違うことがここに書かれている、こういった認識でよろしいんでしょうか。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 そのような趣旨で記述されているものとは考えておりません。基本的な認識は先ほど来申し上げているとおりでございますが、その中で、かなり広範にわたっていろいろな事象が生じたようでございますので、その中で一部犯罪行為が行われたという指摘も有識者からございますので、そのことも踏まえてということでありまして、一般的に、八八年の民主化運動そのものが、全部が犯罪だということを申し上げているわけでは毛頭ございません。

小林(千)委員 では、これは全否定をするものではないということでよろしいですね。

三浦政府参考人 委員御指摘のとおりでございます。

小林(千)委員 この件につきましては、私の同僚の議員も実は外務委員会の中で質問をさせていただいているところでございます。外務省として、日本の政府として、ミャンマーで行われた民主化運動あるいは今の政治情勢についてどのように考えているか、これを大臣に答弁いただいたこともあります。

 しかし、その外務委員会の速記録を私も持っていますけれども、その大臣の答弁と今入管局長のお答えいただいた内容というのは全くもってかけ離れている。それでよろしいんですね、この控訴理由書の中身というものは。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど来お答え申し上げておりますように、ミャンマーの情勢についての基本的認識は、外務大臣が御答弁された内容と我々の認識は同一でございます。

 ただ、具体的な個別の訴訟の中におきましては、これは難民申請をされる方も千差万別、いろいろな御事情があろうかと思います。そういう訴訟の中で、裁判所が認定をしていく上で、原則的なものとまた違った側面があるという指摘をされた文献等もございますので、そういうものも踏まえた上で、具体的な訴訟について裁判所に適正な御判断をお願いしたい、こういう趣旨でございます。

小林(千)委員 政府の認識とは違う、そして、この控訴理由書の中は本からの引用であるということをはっきりさせていただきました。

 まだまだ指摘をしなければいけないところは、同じような理由でもって挙げられているものはたくさんあるんですよ。残念ながら、きょうは時間が三十分しかございませんで、また今後もこの問題について取り上げなければいけないわけなんですけれども、このように、政府の認識と全く違うような考え方を控訴理由書の中で取り上げられている、しかも、その出どころというものはそういった本である、それは大変問題があるんじゃないですか。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 書籍に関しましては、現地の状況をかなり御存じの有識者の方の書かれたものであるというふうに思っておりますし、また、マスコミ報道等についても同趣旨の報道のあった状況もございますので、そういうものを総合的に記述しているということでございます。

小林(千)委員 では、これは法務省独自で調べた内容ではなくて、本、マスコミ、幾つかの情報のソースというものからこの控訴理由書というものをつくり上げたという理解でよろしいんでしょうか。

三浦政府参考人 委員御指摘のとおりでございます。

小林(千)委員 いいんですか、そういう法務省あるいは政府の見解と全く違った内容が挙げられているということ、しかも、それが法務大臣の名前で出されているということに対して。

 残念ながら、きょうは時間がなくなってしまいましたけれども、これは内容が政府の答弁と差があるということ、しかも、その出どころは、そういったマスコミの書いたものであり、本だったり、そういったことであるということを認識させていただきました。引き続き、私も時間をいただきまして、この続きの話をしたいと思います。

 済みません、司法法制部長、そこまで、質問が半分以上行きませんでして、申しわけございませんでした。

 質問を終了します。

塩崎委員長 次に、津川祥吾君。

津川委員 民主党の津川祥吾でございます。

 きょうは、人身売買の禁止、この問題につきまして質問をさせていただきます。

 ここ数年、国際的にも人身売買というのが非常に大きな問題として表舞台で取り上げられるようになり、またその中で、実は日本が人身売買に関して取り締まりが緩い、また、そういったことを背景として実際に国内で人身売買が非常に多く行われているのではないか、こんな指摘もされたところであります。

 私も不勉強でして、人身売買と最初に聞いたときのイメージというのは、どこか遠い国の経済的に非常に厳しいところで、食うや食わずで生活をしているところでやむを得ず子供を売ってしまうという、そんなような状況のことを考えていた。もう一つあり得るのが、これは日本にも関係してくる話ですが、臓器の売買ですね、こういったものには恐らく関係をしてくるだろうなぐらいの認識しかなかったら、日本の国内で、非常に珍しくないような状況でこの犯罪が横行しているというような状況があるそうであります。

 我が党内でもこの問題について多くの議員が関心を持っておりまして、実は党内で人身売買禁止法検討プロジェクトチームというのをつくりまして、私もその事務局を担当させていただいて、事務局を担当させていただいてから勉強してびっくりしたというのが正直なところでございます。

 大臣も、この件については所信でも述べられていらっしゃって、またこれまでも非常に関心をお持ちでいらっしゃるということでございますので、そういった意味で、大臣の所信、一般質疑の時間でございますので、ぜひその思いを披瀝していただきたいなというふうに思います。

 まず冒頭、法務省として、来年の通常国会をめどに法改正をしようかという動きをされているということを仄聞しております。現在の段階でどういった形の法改正を考えていらっしゃるか、今わかる範囲でお答えをいただければと思います。

南野国務大臣 先生、御質問ありがとうございます。

 本当に人身売買というのは日本からなくしていかなければならないな、そういう強い意識もこの立場になる以前に持っておりましたし、勉強会も進めていっていたところでございます。

 法務省におきましても、人身取引の撲滅が重要な課題であると考えております。その取り組みを強化するため、本年九月、法制審議会に対して刑法等の一部改正について諮問をしております。

 同審議会におきまして御審議いただいているところでございますが、諮問いたしました内容としましては、大きく四つございますが、一つは、人身の売り渡し行為及び買い受け行為を犯罪とすること、二番目は、被略取者等の収受を加え、輸送、引き渡し、蔵匿行為を犯罪とすること、三番目としては、国境を越える略取行為等の処罰を拡大すること、さらに四番目としては、逮捕監禁罪及び未成年者略取誘拐罪の法定刑を引き上げることなどであります。

 また、法務省におきましては、法制審議会の答申を受け、次期通常国会を目途に刑法等の一部を改正する法律案を提出したいと思っております。

津川委員 この法律を改正する動きの背景を少し教えていただきたいんですが、これは現場から言われている話でありまして、違えば違うというふうに言っていただきたいんです。

 要するに、現場でこの取り組みをされてこられた民間の方々の話を伺いますと、この話はもう随分昔からあったものだ、問題点はずっと指摘してきた、しかし日本の国は、なかなか政府は動いてくれなかった、ようやく動き始めたのが、アメリカから指摘をされたからだと。あるいは、今回、条約がございますよね、条約の議定書がございますけれども、こういったものを立法事実とされているのかもしれませんが、要するに、不名誉な話ですが、外圧に弱い日本、今回もそんなことを現場の方から指摘されるんです。

 今回法制審に諮問した、そういった背景、流れですね、これは、現場の状況を把握して、これだけ問題が深刻であるからということからこういう動きになっているのか、あるいは、アメリカなりあるいは国連の中での議論を踏まえてこういった流れになっているのか。この辺、お答えいただけますでしょうか。

大林政府参考人 お答え申し上げます。

 人身取引に関しての問題意識は前からあるわけですが、直接的な契機というものは、今御指摘のとおり、国連において、平成十二年十一月十五日、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する人、特に女性及び児童の取引を防止し、抑止し及び処罰するための議定書が採択されて、平成十五年十二月二十五日に発効しておりますが、これが直接的な契機といいますか、大きな原因でございます。

津川委員 問題意識はあったという話ですが、どういう問題意識があったか、お答えいただけますか。

大林政府参考人 これもまた具体的なものを提示することは困難ですけれども、以前からの新聞報道にもありますように、単発的に時々出ていますように、暴力団の資金源となる、それでパスポートを取り上げられたりするような事例が、これは以前から散発的に見られたところでございまして、このような問題を解決しなきゃならないという問題意識は私どもも持っておりました。

津川委員 もう少し詳しくお答えいただきたいんですが。

 というのは、犯罪ですから、それは問題です。重大な人権侵害ですから、重大な問題ですね。暴力団の資金源となっているというのも、これは大変大きな問題です。ただ、そういう重大な問題であると同時に、国が対応してくれていない。

 その人身売買、そういう人身売買罪というものは規定として国内法ではないにしても、明らかに非常に重大な人権侵害をされている外国人の方が日本にいらっしゃるのに、その方が被害者として扱われていない、状況によっては加害者扱いされているんじゃないかというようなこと、これは報道の中であるはずですね。こういう問題意識があったかどうかを伺いたいんです。どうですか。

大林政府参考人 今おっしゃられるその加害者という御趣旨なんですけれども、そういう女性が、従来、入管法違反、例えばオーバーステイとか、それから偽造旅券によるとか、そういう問題。要するに、被害者、加害者という意味で、今おっしゃられている意味では、加害者、その犯罪に対する加害者ということは通常考えられない。

 委員の御指摘は、多分、犯罪の犯人といいますか被告人とか、そういうとらえ方という御趣旨で聞かれているのかなという意味であれば、厳密にその被害者がという具体的な数字的な把握はしていませんけれども、そういう方もそういう罪名で訴追されている事例はあるのではないか、こういうふうに考えております。

津川委員 済みません、加害者という表現、確かに適切じゃなかったかもしれませんが、報道で確かにそういう報道がありまして、加害者扱いされている、被害者なのに加害者扱いされているんじゃないかという、犯罪者と言ってもいいかもしれませんけれども、法を犯しているという扱いをされて退去強制処分になってしまうというような。

 そういうのを認識されていますという話でしたけれども、要するに、それが問題だと認識をしていたかどうかという話を伺ったんですが、大臣にお答えいただいてよろしいでしょうか。

 これは大臣もずっと専門的にされていたと思いますけれども、これは、そういう被害者の方がいるということ、そういう被害者をまず救済しなきゃいけないということもあります。そういう犯罪を撲滅しなきゃいけないという問題もあります。犯罪を撲滅するという問題で、こういう刑法の改正を行ったりということも当然あり得ると思うんですが、少なくとも、その被害者の方々に対する対応が日本政府は余りにもちょっと冷た過ぎるんじゃないだろうか。これは性犯罪について全般的に言えることなのかもしれませんが、男性社会であることが原因なのかどうかはわかりませんけれども。

 いずれにしても、こういった女性、外国人女性に対して余りにも冷たい仕打ちをしてきたのではないか、ここの問題意識は、大臣、今までお持ちだったでしょうか。

南野国務大臣 いろいろな方がおられるというふうに思います。そして、そのいろいろな方が被害者意識をお持ちなのかどうかというようなことも、いろいろ事案ごとに調べていってみなければわからないというふうに思いますけれども、少なからず、そういうように目的外の行動を日本でしなければならなかったという方々に対しては、大変気の毒だなという心は持っております。

津川委員 やはりこれまでの政府の対応は問題があったと言わざるを得ないと思うんですね。それは、そういう法律がなかったからだということだけでは説明できない部分があって、やはり認識が甘かったんだろうと思います。

 これは政府の認識だけじゃなくて、私も先ほど申し上げましたが、日本の国内でそんな犯罪が、本当に人身が六百万だか五百万だかで売買されているという事実をほとんど認識していない。そんなことがあるとしたら、それは何かの法律でちゃんと取り締まられているんじゃないだろうかと。

 犯罪者は処罰をされ、捕まるか捕まらないかは別として処罰をされて、被害者はそれなりのケアを受けているんだろう、もしそんなことがあるならと思っていたら、よくよく見たら、実際、そういったことをやってきた組織犯罪者の方がほとんど実は訴追をされていない。しかも、この案件でいえば、被害者の方が強制的に国に帰されて、それでおしまい。それでおしまいどころか、また日本に送り込まれて同じようなことに遭っているとか、何か、日本の警察に駆け込もうとすると、逆に地元の、国の家族が生命の危険にさらされるとか。

 これは国際的にはもうずっと前から大きな問題として各国は取り組んできたそうでありますけれども、日本政府としてはこういったものに対する問題意識がちょっとやはり甘過ぎて、結果的にこういうものを助長してしまって、だから日本でこういうものが横行してきたのかなという気がしてならないわけでありまして、やはりここは、この実態をしっかり調査する必要があるんだと思うんです。

 まず、この実態ですね。人身売買というのか人身取引というのか、どっちが正しいのかわかりませんが、こういうことが実際に日本でどのくらい犯罪として発生をしているのかどうか。人身売買罪としてカウントすることはできないと思いますけれども、実際どのくらいのことが発生をしていて、それをどのように取り締まっていかなきゃいけないか、その認識をまずお伺いしたいと思います。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 入国管理局におきまして、本年、二回にわたりまして実態調査を実施いたしておりますので、その結果を御説明したいと思っております。

 一回目は本年の二月でございますが、全国の地方入国管理官署におきまして行いました入国警備官による違反調査に当たりまして、容疑者、これは入管法で退去強制事由に当たるものでありますが、この方々から、人身取引の被害者、条約上のですね、の定義に当たるかどうかという観点から事情を聴取しております。

 その結果を当局で集計、分析したところによりますと、期間中、調査対象となりましたのは三千五百十七名でございまして、このうち、人身取引の被害者に該当する可能性が高いと認められた方の数は五十三名でございました。国籍別の内訳で申し上げますと、タイ人が三十四名、フィリピン人が十六名、韓国人一名、インドネシア人及びコロンビア人各一名でございます。性別で申しますと、全員が女性でございます。

 それから、二回目でございますが、本年七月から八月にかけまして同様の調査を実施したわけでありますが、調査対象者は二千七百八名でございました。このうち、人身取引被害者に該当する可能性が高いと認められた者の数が三十二名でございまして、国籍別内訳で申しますと、タイ人十四名、フィリピン人八名、インドネシア人及びコロンビア人各三名、ペルー人、ミャンマー人、ロシア人及び中国人各一名という数字になっております。性別につきましては、一名のみ男性、その余は女性でございました。

 今御説明いたしました数字でございますが、調査期間がごく限定された期間でございます。なおかつ、退去強制手続をとった人たちだけに限っている調査でございますので、これ以外にも、当方で認知していないいわゆる暗数も含めると相当の数になるかと思われますが、これはまだ明確に認識できない、数字として認識できない部分でございます。

 当局といたしましては、人身取引が重大な人権侵害であるということにかんがみまして、撲滅に向けまして、関係省庁とも連携の上で、今後とも積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

 以上でございます。

津川委員 大変心強い答弁をいただきましたが、実際そうやっていただきたいなと思いますけれども、今までの現状からいくと、入管ほど冷たいところはないと言われていますので、汚名返上のためにしっかり頑張っていただきたいと思います。

 人身取引、人身売買というものを法律で規定していくと、これは件数ももう少し正確な形で認知されるでしょうし、当然のことながら、犯罪防止ということももっと的確な対応ができるようになると思いますが、人身取引の定義というものを、人身売買でもいいですが、この定義をどのように考えていらっしゃるか。これは法律を提出する際に確定するのかもしれませんが、今の段階でどのように定義をされているか、お示しをいただきたいと思います。

大林政府参考人 先ほども触れました人身取引議定書の第三条(a)というものがありまして、犯罪化を求められている人身取引については、「搾取の目的で、暴力若しくはその他の形態の強制力による脅迫若しくはこれらの行使、誘拐、詐欺、欺もう、権力の濫用若しくは弱い立場の悪用又は他人を支配下に置く者の同意を得る目的で行う金銭若しくは利益の授受の手段を用いて、人を採用し、運搬し、移送し、蔵匿し又は収受すること」と定義されておりまして、その際、「搾取には、少なくとも、他人を売春させて搾取すること若しくはその他の形態の性的搾取、強制的な労働若しくは役務の提供、奴隷若しくはこれに類する行為、隷属又は臓器摘出を含める。」とされているところでございます。

津川委員 法務省が来年の通常国会で出されることを予定されている法案の中で、これをどういう法律にするかというところが、まさにこの議定書をそっくりそのままフォローするような国際的な人身売買を禁止するあるいは防止していくための法律というものにするのか、刑法の中に人身売買罪というものをつくって、あるいは、さらに被害者を保護していく、そういうルールをつくっていく、そういうやり方をするのかによってちょっと違ってくると思うんですが、仄聞するところによると、刑法の中を変える、人身売買罪ですか、人身取引罪ですか、これを新たにつけ加えるという話を伺っていますが、そのときの定義もこれに従うということでよろしいですか。

大林政府参考人 従来、刑法には逮捕監禁罪とか略取誘拐罪等の規定がございまして、今の議定書から犯罪化をしなきゃならないということで、基本的には今、御指摘のとおり、刑法で改正することを考えております。議定書の求める犯罪化しなきゃならぬというものはすべて刑法の中に盛り込んで改正をしたい、このように考えております。

津川委員 人身売買、人身取引そのものの定義が、この議定書の定義でいうと、正直申し上げまして非常にわかりにくいんですね。それで、少し例を挙げます。

 私の事務所に大変優秀な秘書がたくさんおります。政策秘書に石田というのがおりますが、今この放送を聞いていたら大笑いしていると思いますけれども、大変優秀なんですね。

 例えば、南野大臣のところで、あの津川君のところの政策秘書は優秀だからぜひうちで使いたい、うちの事務所はお金があるから、今の津川君のところの条件よりもっとよくして使ってあげるよと言って、彼本人も、では行きたい、野党の三席理事の秘書なんかやるよりも大臣の秘書の方がずっとやりがいがあるよと思うかもしれませんね、条件もいいし、行きたいと。そのときに、でも私が行かれちゃ困るんだ、次の秘書を探さなきゃいけないしというところで、では、金銭トレードをしよう。要するに、お金を払うから、彼に、うちの事務所をやめて南野大臣の事務所のところで働いていただく、こうなったときに、これは人身売買に当たるんでしょうか。

大林政府参考人 今までの略取誘拐罪の定義もそうなんですが、人を保護されている状態から引き離して、自己または第三者の事実的支配のもとに置くこと、これが前提になっています。

 ですから、今おっしゃられる優秀な秘書の方がという形が、人を保護されている状態という定義、代表的なのは、両親が未成年の子供を養っているという状態から、今度の場合は、従来は、暴行、脅迫を伴わなければ、だれかにそれを売っても罪にならないわけですが、今度は、暴行、脅迫を伴わない、ただ保護者が相手に売るという行為は罪になります。

 ただ、今委員御指摘のものは、優秀な方が、その個人的な自発的意思も当然ある話でございますので、こういう罪には当たらないというふうに考えております。

津川委員 では、自発的意思が伴わない場合、彼としては、いや、津川君のところでやりたいんだ、だけれども、南野さんのところに行きなさい、私のところに残るんだったら首にする、雇用関係が解消されてしまうというような場合ですね。彼は優秀ですから、今ほかの業界へ行っても働けるかもしれませんが、例えば、状況によって、秘書をやるしか仕事がなかなかできない、就職活動も新たにできない、そういう状況ですね。立場が、こちらが強くてあちらが弱い場合。南野さんのところに行ってほしい、それで本人は泣く泣く承諾をした場合ですね。

 立場が非常に弱い、一応は承諾はしているけれども、自由意思であちらに行きたいと言っているわけでは決してないような状況。これは、日本の国内だから何だか犯罪にはなかなか見えにくいんですが、深刻になってくると、まさに人身売買につながるようなところというのは非常に大きくあると思うんですね。

 雇用関係にあって、一応は自分で働きたいと言ってきた。雇用契約上で結ばれて働いている。しかし、事実上はそこで働かざるを得ないような人がいる。そういう人が、ほかに行きなさい、あるいはほかの人がその人間を使わせてください、契約をしたいというときに、では幾ら払ってくれたらそっちに上げますよというような話をしたときに、これは人身売買に実はなりやすいんじゃないかと思うんですね。その辺、いかがでしょうか。その境目はどの辺にあるのか。

大林政府参考人 そういう犯罪になるかどうか

というのは、本当に証拠関係の問題になるかと思います。ただ、今おっしゃられているような契約上の関係を前提にした場合に、今まさにおっしゃられたように、我が国において、人を支配するという状態が余り考えられないのかなと。ただ、事実関係によって、もう本当にそういう従わざるを得ないような極端な事例があれば、それはそういうことが問擬される場合もあるとは思います。

 ただ、今おっしゃられるような雇用契約なり一つの契約を前提にしている場合において、人身の自由を拘束するというまでの事例があるかどうかということは、ちょっと考えられないような感じが私はいたします。

津川委員 実際に日本で、人身売買で警察とかそういったところに駆け込んでこられた方の話なんですが、これは裁判をやっていませんからどういう判断になるかわかりませんけれども、本人は逃げようと思えば逃げられたじゃないかということは、これは言われたら弱いなという話が結構あるんですね。

 例えば、パスポートをとられただろうとか、地理がわからないとか、日本語がよくわからぬとかいっても、客引きをやらされたりするわけですね。人込みの中で、どうやって客引きをしているかわかりませんけれども、多分人込みの中の客引きですから、その瞬間に逃げようと思えば逃げられた、そこで手を挙げてタクシーをとめて、警察に行ってくれと言えば多分警察に行ってくれただろうと。

 あるいは、よくわからないままに契約書に判こを押されている、判こというかサインをさせられているかもしれないです。だから、契約があったからいいんだという話には多分ならないんだと思うんですね。

 別にうちの秘書がどうかという話じゃないんですけれども、要するに、この人身売買罪、人身取引罪というものを規定した上で、目的は、やはり本当に犯罪的な人身取引を国内から撲滅をしていきたいし、それは国際的にも協調して撲滅をしていくということだと思います。

 それは、先ほどは、例えば未成年者の場合云々という話がありましたけれども、国内の事例を見る限りでは、未成年者の例もあるようでありますけれども、成人の方がむしろ今のところは多いそうでありまして、状況としては、本人が自発的な意思で日本に来たんだと。実際の例としては、ディズニーランドを見に行こうと言われて、自分でパスポートをとって、自分で切符を買ってやってきてだまされちゃった、そういう例があるんですね。

 その中でも、例えば、接客の仕事をしよう、そうしたらお金がたくさんもらえますよ、ウエートレスか何か知らないけれども、そういったところの接客業をやらないかと。それは、ある意味で、その本人がある程度仕事をする、しかも接客業をするというところまで大体認識している。しかも、風俗店かもしれないというところを何となく認知をしていたかもしれないなんという、そういうふうに持っていかれて、これはもう自分の意思で来て犯罪をしていった人だ、こういう扱いに処理をされてしまうという例が非常に多いそうであります。

 ですから、人身取引罪というものを新たにつくったとしても、彼女は自分の意思で来たんだと言われてしまうと、それっきりになる可能性があります。

 ですから、これをつくる際には、本当にそういう被害者の立場、そもそも立場が弱い、契約書があったとしてもなかったとしても、本当に自分の意思で来たから、では、それは人身売買じゃないんだというような扱いの仕方は非常に危険だと思いますので、その辺のところをぜひ御配慮いただきたいなというふうに思います。

 それからもう一つは、今被害者の方々が、現状ではほとんどが退去強制処分になって終わってしまう。要するに、帰されて終わり。そのことによって、結果的に、そういう犯罪をしていた組織そのものの訴追がなかなか難しくなっている。被害者がいなくなっちゃいますから、だれがどこでどうされたかという話が、ほとんど証言がとれないということがあります。そういった意味で、まさに加害者、犯罪組織の訴追のために、そういった被害者の方々の協力を求めるべきだと思います。

 そういう中で、やはり国内にある程度一定期間とどまっていただいて、安全なところでとどまっていただいて、捜査に協力をしていただくですとか、あるいは、実際にそれをするときには、本国の家族が身の危険にさらされるということもあるそうでありまして、アメリカの法律ではそういった家族の方々をアメリカに連れてくるという制度もあるというふうなことを聞いております。そういったところまでぜひ検討していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 一般に、人身取引の被害者の立場に立たれる方は、退去強制事由に該当するケースが割に多いのではなかろうかというふうに思っております。そうしますと、委員御指摘のとおり、強制退去というような手続に進んでしまうわけでありますが、私どもといたしましては、現行法の運用といたしましても、例えば、被害者として加害者の刑事訴追にとって重要な証人になり得る、必要であるというような状況でございますとか、御本人が帰国した場合には、いろいろな、組織から迫害、脅迫を受けるといったようなケースも考えられますし、また、そういうことで御本人が日本にとどまりたいというような意思がある場合には、在留特別許可や仮放免等を積極的に、弾力的に運用いたしまして、日本にとどまっていただけるようなことで今対処しておるところでございます。

津川委員 先に進もうかと思ったんですが、今のお話を聞いてちょっとまた確認をさせていただきたいんですが、在留特別許可、どんなような状況のときに出されているか、お答えいただけますか。

三浦政府参考人 今委員の御質問は、一般論としてということでありましょうか、人身取引の被害者という限定され……(津川委員「被害者で答えていただければそれでありがたい」と呼ぶ)そうですか。

 被害者の場合につきましては、先ほど御答弁申し上げましたような事情を勘案して判断をするということでございます。

津川委員 実際は、この許可が出されるのは、それは個別の事情があるでしょうから、一概にいい悪いはここで申し上げることはできませんけれども、これは実際に現場の方々から伺っている話ですけれども、許可が出るのは日本人の子供を育てている親という場合だけ、しかも、それもすべてではない、単なる被害者の場合は全くそれが出ない、これがほとんどではないかと思うんですね。

 これはそれぞれの個別の事情に入りますから、今の段階でそうであるとかそうでないとかということはなかなかお答えいただけないかもしれませんけれども、今私が申し上げた一つのポイントは、被害者の救済、被害者の人権を守るということ、もう一つは、こういった犯罪そのものの訴追のための体制整備として、日本に在留をしていただく必要があるのではないかということを申し上げました。ぜひ御配慮をいただきたいと思います。

 もう一つ、具体的に被害者保護をしているのが、ほとんどが、ほとんどがと言うと語弊があるかもしれませんが、非常に大きな役割を担っているのが民間シェルターだ。しかし、民間シェルターは非常に少ない、また財政的な援助も非常に少ないという話でありますが、民間シェルターに対する財政的支援をとるお考えがあるかどうか、伺います。

北井政府参考人 人身取引被害者に対する支援に当たりましては、婦人相談所などの公的機関のみならず、民間シェルターなども重要な役割を果たしていると認識をいたしております。

 こうしたことから、厚生労働省といたしましては、現在、DV被害者に対して行っております一時保護委託の制度がございます。婦人相談所から民間シェルターなどに対しまして委託費を支払って一時保護を委託するという制度でございますけれども、こうした制度について新たに人身取引被害者についても活用できないか、今前向きに検討しているというところでございます。

津川委員 大臣、この委託の話はよく御存じですよね。DV、これは非常に嘆かわしい話でありますけれども、その犯罪被害者が非常に多くいらっしゃって、実際なかなか、定員いっぱいというんでしょうか、対応し切れていないという状況であるのはよく御存じだと思います。

 そこに加えてこれもお願いするということになりますと、これはやらなきゃいけない話だと思いますが、やはり相当財政的な措置をしなきゃいけないだろうと思います。それも、具体的には、民間のシェルターの方々、数が非常に少ない、限られていますから、やはりそこをもう少しうまく活用していくということを考えるべきじゃないかと思うんですが、大臣、お考えございますでしょうか。

南野国務大臣 DV法などで、今、NGOの方々も一生懸命その方面で活動してくださっており、シェルターの問題についても、厚生労働省とあわせて検討しておられます。内閣府も関与しております。

 そういう意味では、今先生がテーマに持っておられる人身売買、被害に遭った方々についても、何らかの優しい方法を考えていかなければならないというふうに思っておりますが、またこれからの検討でもあろうかなと思っております。

津川委員 優しい気持ちもありがたいんですが、ありがたいというのも変ですが、大切なんですが、予算がないんです。これは、幾らつけますよという話ではないんですけれども、圧倒的に不足しているんだと思うんです。ここで、仮に人身売買罪というものをつくって、何か保護しなきゃいけないということをやっても、受け手がいないわけですよ。全く予算も足りない。

 ここが緊急の課題だと思うんですが、温かいお心というのはありがたい話ですが、財政的に支援をするお考えが、積極的に考えていただけるかどうか、お答えいただけますか。

南野国務大臣 先生のせっかくの優しいお心ですが、予算は厚生労働省の方にありますので、内閣府と我々法務省とが一生懸命協力しながらやっていかなきゃならない。法務省にもいろいろ予算がたくさん要る部分もございます。でも、今お問い合わせのシェルターも大切なものでございますので、検討したいというふうに思っております。

津川委員 ちょっとこういう発言はどうかなと思いますけれども、厚生労働省の予算だからこそ、どんどん使えと言ってもらいたいんですよ、法務大臣なんですから。あなたのところの予算を使えと。大事な話なんですからということはしっかり言っていただいて、予算はあなたのところだと言っていただければいいんです。政府でしっかり連携をとって、連絡会議、とられているわけですよ。あれは厚生労働省だ、これは法務省だという話じゃなくて、皆さん真剣になって考えて、絶対やるべきだ、予算をつけるべきだということは、これはもう声を大にしていただいて、出てくる財布は厚生労働省、これでいいじゃないですか。こういうふうにやっていただきたいと思います。

 ここは本当に日本のメンツもかかっているところでもありますので、まあ、メンツが大事なんじゃないんですけれども、かかっているところでもありますので、これは緊急にやっていただきたいし、法制度だけつくりました、整備だけしました、実態は全然改善していませんなんということで、日本の評価がさらに下がってしまうようなことにならないように、ぜひこれは実効性を上げていただきたいというふうに思います。

 それから、ちょっと基本的なことを伺いますが、外国人の方が日本で犯罪に遭ったときに、基本的にどういう扱いになるのか。外国人の犯罪被害者の方に対する基本的な考え方というものをお伺いしたいと思います。

大林政府参考人 今の御質問のお答えになっているかどうかわかりませんが、通常、外国人の被害者については、警察が第一義的に扱うのが通常じゃないか、こういうふうに思っておりますが。

津川委員 つまり、外国人が例えば不法滞在をして、それとあわせて何かの犯罪に巻き込まれたときに、被害者として何らかの形の救済を受けるとか、犯罪被害者としての権利を守られるということではなくて、そもそも不法滞在であるということで退去強制される例が一般ではないかと思うんです。

 それは、外国人の人権というものは、犯罪被害者としての人権というものは、日本人の犯罪被害者のときの人権とはこれは違う、こういう認識を持たれているのかどうか、お伺いをしたいと思います。

三浦政府参考人 入管局としてお答えするのが適当かどうかとは思いますが、入管局の立場といたしましては、先ほども申し上げましたが、犯罪の被害に遭われた方が当該加害者の処罰等にとって不可欠な供述等を必要とされているような場合につきましては、刑事訴追がスムーズにいくような形で在留ができるような措置を運用で考えていくということにしておるところでございます。

津川委員 先ほどの繰り返しになってしまいますけれども、そうやって、考えていらっしゃると答弁されますけれども、実際には退去強制されているわけでしょう。それが圧倒的に多いわけですよね。被害者であるということから考えても、その人たちが不法残留をしているということ一点で、場合によっては警察も通さずに退去強制をしている。警察がかかわっても、ほとんどが退去強制処分になってしまっている。

 こういう状況を考えたら、その人が犯罪被害を受けたか受けないか、どこでも何も言う機会もなく、いつの間にか本国に送還されている、こういう状況が多いように見受けられますが、それは、そうではない、その認識は間違っている、こういう御答弁でよろしいですか。

三浦政府参考人 退去強制手続の中で、御本人から犯罪の被害の申告がありますれば、当然これを警察等に通報することになると思います。

 なお、先ほど被害者の方の送還の関係で若干御質問がありまして、ただいまの御質問とも関連いたしますので御紹介いたしますと、実態調査をいたしました本年の二月に、人身取引の被害者の可能性が高いとされた方々のその後の手続でございますが、在留特別許可を得て本邦に在留している者が十七名でございまして、本国に帰国した方が三十名、この方々は全員、早期に帰りたいという意思を表明された方であります。まだ最終的に処理が決まっていない方が六名、こういう状況になっておりまして、日本に在留される方も相当数あることは間違いないところでございます。

津川委員 ちょっと、入管局長の御答弁としてはそこが限界なのかもしれませんが、大臣、問題は、やはり私が申し上げたような問題が現実的にはあるんだと思うんです。

 確かに、最近少し変わってきた、今回の一連の流れも含めてなんでしょうけれども、法務省の対応が変わってきたという話も伺っています。伺っていますが、例えば今のお話の中でも、本国に早急に帰られることを望まれたんだ、だからどうぞ帰ってくださいと言ったと言いますけれども、その中には、まさに早く帰らないと家族が殺される、そういう人があるわけですよ。早く帰って、それで、では彼女たちが安全になったかというと、とてもそういう状況じゃないわけですね。もう一回捕まる可能性の方が高いんですよ。

 だから、これは、国内から人身取引を排除して、外国に押し出してしまえばいいという話ではなくて、やはり日本国内を舞台にした人身取引を撲滅させるということは、同時にやはり国際協力の中で、今具体的にいただいたタイとかフィリピンですとか韓国ですとか、こういったところの国々とも当然のことながら連携をして、人身取引というものを撲滅していかなきゃいけない、当然の話だと思うんです。

 今のお話、局長の言いぶりからすれば、それはそこまでなのかもしれませんけれども、やはり大臣には政治家として、この問題、もう少し深刻に受けとめていただきたいし、深刻に今まで受けとめていただいたからこそ、これまで我が党の質問の中に、聞いてもいないのに人身取引という答弁が出てきたりとかいうこともあるんだと思うんです。

 ですから、そこをもう少し、先ほど来の、官僚的なと言っては申しわけないですね、紙に書かれたような答弁ではなくて、この問題を本当に法務大臣として撲滅をしていくんだ、あるいは政治家としてこれまで取り組んできた、その情熱をもって、ことし、来年、再来年のうちに、もう徹底的にこれをなくしていくんだ、そのための法制度がその中の一つであって、法律さえつくればいいという話ではないわけですから、そういう認識を持って取り組んでいただきたいんですが、その思いをちょっと語っていただけますでしょうか、大臣。

南野国務大臣 この場で申し上げることではないかもわかりませんが、DV法などに関しましても、このたびの改正によって、都道府県までしっかりと頑張ってください、そういうシェルターも含め、NGOの活動も含め、そのような改正案をつくっております。それは厚生省、内閣府、その他の関連省庁が取り組んでいこうとしていることであり、また、今お話しの人身問題についても、私はそれと同じレベルの課題であろうかと思っておりますので、一生懸命取り組む覚悟は仰せのとおりでございます。

津川委員 もう一つ、人身取引の問題の難しいところは、人身取引だけ取り締まれば終わりじゃなくて、実はこの背景に二つ問題があると思うんです。一つは、外国人労働者の問題、もう一つは売春の問題であります。

 外国人労働者をどのように受け入れるのか、受け入れないのかも含めて、やはりその法律の整備あるいは制度の整備というものが非常に重要でありますけれども、今までは基本的に水際対策をやってきた。だから、極端な話、国内には外国人がいないんだ、そういうことを前提にした国民の意識とかあるいは制度があったものですから、その水際を突破してしまうと、その途端にどこで何をやっているのかよくわからない、そういう事情がたくさんあります。地方によっては、これは非常に深刻な問題になっています。それは、国内の経済をこれからどうやって支えていくか、国の形をどういうふうにつくっていくかということにも非常に影響します。

 ですから、これは人身売買の問題だけではなくて、そういったその背後にある、次に解決をしなきゃいけない大きな問題が潜んでいるということ。

 それから、やはり売春の問題についても、これは外国人の人身売買がなければそれでいいという話では多分ないわけですね。そもそも、この問題をどうやってとらえるのかということ、これはなかなかとらえにくい分野でもありますけれども、やはりここをしっかり正面からとらえて問題を解決していこうとしない限り、例えば先ほどの暴力団の資金源になっているというような、こういった問題は恐らくいつまでたっても解決をしないと思います。

 ぜひとも、人身売買というところだけで終わるのではなくて、この背後にある二つの大きな問題についても積極的に今後取り組んでいただきたいということを申し上げまして、時間が来ましたので終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

塩崎委員長 次に、樽井良和君。

樽井委員 民主党の樽井良和です。

 まず、つかみに、私、議員になって一年たつんですが、今までこうしてずっと質疑をしてきましたけれども、例えばこの質疑が、どんな斬新なことを言っても、これが法律に反映されていったというようなことは経験ありません。実際に、野党議員、ちょっとひがんでいるわけじゃないんですけれども、私たちが、採決直前に例えば質問をされる議員もいらっしゃるわけです。そんな中で、何か斬新な意見をそこで初めて言ったからといって、法律の中に入るということがまずない、そういうことが実際問題あると思います。

 私、経営者だったので、すごく、むだなことが大嫌いなんですね。いろいろな議員が一生懸命いろいろなアイデアあるいは法律の問題点を考えて追及をしていく中で、もう最初から法律は決まっていて、それ、聞くには聞くんだけれども、夫婦げんかで奥さんの話を聞くには聞くみたいなもので、聞くには聞くんだけれども、全然変えてくれない。

 こういったことを取り入れるようなやり方というのは、大臣、私見で結構ですので、お考えになったことはありますか。

南野国務大臣 それは、考えたことがあるといえばある、ないといえばないということでございますが、この委員会でしっかりと御審議いただくことが、それが一番大きな成果になっていくと思いますし、法律をつくっていくというのはそういうことであろうかなと思っております。

樽井委員 考えがあるといえばある、ないといえばないということなんですけれども、実際に私たちは選挙を戦ってきて、何人もの方に支持されてこっちへ来ているわけです。それが、例えば国の中で新しい案件が浮上すると、この国は、金子教授なんかも言っているんですけれども、我が国は世界有数の審議会行政の国である、そして、そういった案件が出ると、まず私的諮問機関を設けるんだと。

 そういった私的諮問機関あるいは審議会の委員の方の方が、私たちちゃんと選挙で選ばれた者よりも、何か法案をつくる上では大きな影響力を持っているような位置にいるということを感じるんですが、審議会の委員の選任は、私たちは選挙で選ばれておりますけれども、どういうふうにして選んでいらっしゃるんでしょうか。

寺田政府参考人 代表的な法制審議会の例で申し上げますと、法制審議会には法制審議会令という基本となる政令がございます。そこで、学識等経験者ということで基本的な要件が書かれておりますので、その要件に該当する方の中から選ばせていただくということでありますが、さらに政府には、余り長期に同じ人が同じ審議会にはいないようにするとか、あるいは余り高齢の方は避けるとか、自分の省の出身者は避けるとか、さまざまな制約も同時に課されておりまして、そういった中で、いろいろな方をお願いするものとしてピックアップさせていただいて、そこから大臣の御判断で任命する、こういうプロセスが一般にはとられているというふうに思います。

樽井委員 実際にそういったプロセスに対するある程度の指針というものを出しておられることとは思いますけれども、実際に世間の風当たりといいますか意見でいいますと、実に結論が先にありきの人選をしているんじゃないか、そういった非難が多々見られるわけであります。

 実際に、例えば会議を混乱させるようなことを言わない人かどうか、過去にその人を使った省庁に電話をして尋ねてみた、こういった委員会選任にかかわる担当者のコメントもある。あるいは、専門分野とか、こういったいろいろなところのバランスを見て考えるんですが、結果的には、多数決によると官僚の思惑のとおりに決議がされるように人数とかもちゃんと計算されて選んでいる。あるいは、議論を尽くしたという体裁をとろうとはしているんですけれども、最初に探りを入れて、どうもこの人は反対だとか賛成だとかいうのをある程度見きわめた上で選任をしているんじゃないかという、これが最近問題として上がってきているわけでありますけれども、その辺の実態の方はいかがなんでしょうか。

寺田政府参考人 私ども、少なくとも法務省の審議会に関する限りで申し上げますと、先ほど申し上げました法制審議会を初めとしていろいろな審議会がございますが、特に法制審議会の場は非常に基本的なことを決めますので、人選にも慎重を期しておりますけれども、学者の先生方、これはあらかじめ御見解がおありになる方もおありになりますけれども、今は必ずしも法律学の専門家の方でない方も同時に有識者ということで加えさせていただいており、そういう方々については、あらかじめ意見がわかるということはあり得ないわけでございます。

 いずれにいたしましても、あらかじめその方が自分たちのこれから提起する問題についてどういう意見をお持ちだということを基準にこれを決めるということはない、このように申し上げられると思います。

樽井委員 実際にそういった委員会に選ばれた方々の話によると、例えば質問取りみたいにちょっと話を先に伺って、いろいろ、どんな考えをお持ちの方かというのをちゃんと調べた上で、またちゃんと選任するかどうかが決まっているというような話が出ております。

 そしてまた、会議の内容なんですけれども、族学者、さっき学者の方と言いましたけれども、族学者がはびこるという、これは、議事の混乱を招くような危険な人はもう二度とお呼びがかからないんだ、そうではなくて普通の、官僚の言ったとおりに事を運んでいくような学者が選ばれていて、実際には、朝の部会のように、専門的なことをだあっと一時間半ぐらい説明しておいて、三十分ぐらいちょっと議論する時間があるだけだ、そういうふうなことになっております。

 実際には、これは民意を反映しているというふうに見せかけるだけの一つのアクションになりかねない、そういったことを私は思うわけですけれども、その辺について、もうちょっと、選任をしている段階で、何でその人が選ばれたのか、そういったことを明確に示すだけの透明化をしていただきたい。決める前に、例えばインターネットで公開するとか、そういったことはできないのかどうか、その辺をお伺いいたします。

寺田政府参考人 今委員が御指摘になりました審議会におけるさまざまな人選については、政府全体の審議会の中でどうあるかということについてお答えすべき立場にはございませんけれども、少なくとも、法務省の法制審議会を中心とする審議会においてそのような人選をしたことはございません。

 この人選はなかなか難しいことでございまして、いろいろな側面を検討しなきゃならないわけでございますが、透明性というのも確かに一つの考慮すべき要素だというふうには思います。したがいまして、現に、法制審議会におきましても、その他の審議会におきましても、どういう方がメンバーでという、お名前と今の職業といいますか、どういう地位におられる方かということはお示しするということにいたしております。

 ただ、どういう人を候補者として現在考えていて、それが結果的にどういう利害得失といいますか、どういう適当、不適当があるからこうなったということをお示しするのは、いろいろな人事上の問題もございますので、それはなかなか難しいことではないかなというふうに思います。

樽井委員 実際には私たち議員が法律の作成にもっと積極的にかかわっていかなければならない、こういうふうに考えております。そんな中で、私たちは、本当にできた法案を見て、何かこう、それなりの文句を言っているだけのような、そういう立場にあるような気がしてならない。

 そういった中で、実際に議論している中でも、一回そんな全体会議を開くとか、まだ法案が上がってくる段階で、もうちょっといろいろな議員が集まって審議する場がなければ、もう完全に、民意を反映しているとはいえ、どうして選ばれたのかわからないということなんですけれども、そういった方々が担当して、あるいは意見を言ったのか言わないのか、これも定かではないんですが、そのまま素通りして上がってくる、そういったことがとめられないんだというふうに思っております。

 それで、私、これは大きな問題だと思っておりますので、法務委員会で言うのはどうかと思いますが、今回、ちょっと質問させていただきたいんです。

 現在、ソフトバンク、これは十月十三日、携帯電話で使う八百メガヘルツ帯の周波数をNTTドコモなど既存事業者に割り当てる総務省の方針案を不服として、割り当て実施の差しとめを求める行政訴訟を東京地裁に起こした。そんな中で、この割り当てを、要するに、八百メガヘルツを割り当てるときにNTTドコモとKDDIだけに割り当ててしまったというその審議会のメンバー、こういったものはどういったふうにして選ばれたんでしょうか。

竹田政府参考人 先生御指摘の審議会というのが具体的にどこの審議会かという点につきましてはちょっと不明でありますので、まず、携帯電話の周波数再編方針案をつくった経緯について御説明させていただいてよろしいでしょうか。

 まず、私ども総務省の情報通信審議会におきまして、平成十五年七月に、今後の中長期における電波利用の展望についてということで、電波政策ビジョンとして取りまとめが行われております。その中で、携帯電話用の周波数への需要が大幅に増大することに対応しまして、周波数の再編を進めることが提言をされております。これはビジョンでございます。

 御指摘の八百メガヘルツ帯につきましては、現在、携帯電話等の移動業務用に細切れに割り当てておりまして、その集約、移行を進めることによりまして、まとまった広い帯域の割り当てによる周波数利用効率の向上とか、あるいは、国際的な周波数利用との整合による国際ローミングの実現や近隣諸国との干渉防止、それから、平成二十四年以降に、現在アナログテレビジョン放送で使用しております七百メガヘルツ帯と対で九百メガヘルツ帯を移動業務に新たに使用することが可能となる等の意義を有しております。

 このため、情報通信審議会に対しまして、八百メガヘルツ帯における移動業務用周波数の有効利用のための技術的条件について諮問を行いまして、平成十五年六月に、八百メガヘルツ帯における新たな周波数配置の全体像について答申を得たところでございます。

 この情報通信審議会の答申を踏まえまして、電波法九十九条の十一第一項第二号の規定に基づきまして、周波数割り当て計画の変更等につきまして、本年七月に、これは電波監理審議会に諮問を行っております。パブリックコメント及び関係者からの意見の聴取を経まして、本年九月に答申を得て決定したところでございます。

 御指摘の再編方針案でございますけれども、これにつきましては、八百メガヘルツ帯及び九百メガヘルツ帯を使用している既存事業者の周波数移行を促進すべく、総務省において案を作成しまして、平成十六年八月から九月にパブリックコメントを招請したものでございます。

樽井委員 では、例えば、先ほど言われていましたような情報通信審議会であるとかあるいは電波政策特別部会、こういったところはこの割り当てには一切意見としては関与をせずに、総務省の方で決めたということでよろしいでしょうか。

竹田政府参考人 正確に申し上げますと、情報通信審議会ではビジョンをまずつくっていただきまして、次に、情報通信審議会の答申を踏まえまして、これは、電波法に基づく周波数割り当て計画というのがございまして、これはどの周波数をどういった業務に使うかということを決めておりますけれども、この周波数割り当て計画の変更につきましては電波監理審議会に諮問をしております。

 しかし、八百メガと九百メガを使用している既存事業者への周波数移行を促進すべき総務省の再編方針案につきましては、総務省として作成いたしました。

樽井委員 総務省としてということなんですけれども、具体的に、その最終的な決断を、例えばどなたか一人でされたか。パブリックコメントを参考にしたということもありましたけれども、どうも、報道されているところによると、パブリックコメントが例えば十件ぐらいしかなかったとか、そんな話を聞いているんですが、その辺の事実関係の方はいかがなんでしょうか。

竹田政府参考人 この周波数の再編方針案につきましては、パブリックコメントを実施しまして、インターネットのメール等によって三万件意見が寄せられております。それで、ここについては、現在、その内容について私どもで検討中でございます。まだその最終案についての結論は出ていないということでございます。

樽井委員 最終的にその八百メガヘルツを、要するに、ドコモとKDDI、auですね、割り振ったその最後の決断というのは、総務省のどなたかの決断ということでよろしいんですか。それとも、この電波政策特別部会とかの方々の意見も聴取したということで理解していいんでしょうか。

竹田政府参考人 この再編方針案につきましては現時点でもまだ案の段階でございまして、これにつきましては、パブリックコメントと、それから、別途、この携帯電話用の周波数につきましては総務省として今検討会を開いておりまして、その検討会の内容も踏まえて最終的な結論を得たいというふうに考えております。

樽井委員 検討会ということなんですけれども、ちなみに、この電波政策特別部会のビジョン委員会、この構成員の一覧表というものを私は調べてみたんですが、この中にいろいろな大学教授とかも入っております。例えば、あと、企業でいいますと、日立製作所であるとか富士通、ソニー、Jフォン、KDDI、あとトヨタ自動車、こういったところの面々が出てくるんですけれども、この中に、例えばヤフーの関係の方とかはいらっしゃらないわけです。

 さらに、よく言われておりますのが、郵政共済会がKDDIの株主であって、さらに、NTTドコモの方は国も株を持っている。そんな中で、ヤフーの方は、天下りも受け入れなければ、そういった便宜も図ってくれない。そういうことである程度審議が左右されるとか、そういうことは一切ないというふうに考えてよろしいでしょうか。

竹田政府参考人 御指摘の情報通信審議会の本委員会の方の構成というのは、一般の審議会と同様、審議会の選任に当たりましては、平成十一年四月二十七日に閣議決定されております審議会等の運営に関する指針というものを踏まえまして、委員会の構成について、当該審議会等の設置の趣旨、目的に照らし、委員により代表される意見、学識、経験等が公正かつ均衡のとれた構成になるように留意しまして、委員の選任について、先ほど局長の方からも答弁がありましたけれども、府省出身者の委員への任命の抑制、高齢者委員の任命の制限、それから兼職の禁止、長期留任の禁止、女性委員の割合に留意しているところでございます。

 具体的な選任に当たりましては、各審議会等に必要とされる専門性に配慮しつつ、各種の人材データベース等を用いるなどしまして幅広く候補者の情報を収集した上で、適任者を選考して総務大臣が任命しているところでございます。

 それから、この情報通信審議会には、本委員としては電気通信事業者、放送事業者は排除されております。

樽井委員 電波政策特別部会のビジョン委員会のメンバーを見ましても、先ほど言いましたように、株の持ち合いとかいうような流れ、あるいは天下りの受け入れ先になっていたりする企業に対して、ある程度そちらの方にいいように判断するんじゃないかと疑ってしまうのがやはり普通の考え方だと思います。実際に携帯電話のビジネスというのは物すごい急成長をして、これは一躍、電波行政、電波が金のなる木に今変身している、そういうふうな認識でおります。

 では、ちょっとここで質問を変えたいと思いますけれども、例えば、この訴訟が起こっています、もしヤフーが勝てば、これは八百メガヘルツに参入できるということなんですか。それとも、技術的に、勝とうが負けようがそんなのは無理なんですよという話なんでしょうか。その辺をちょっとお伺いしたいんですが。

竹田政府参考人 訴訟についての関係の御質問というふうに理解しておりますけれども、現在裁判で係争中の案件でございますので、具体的な中身についてのコメントは差し控えさせていただきたいと思います。

 ただし、今回訴訟の対象とされた割り当て方針案につきましては、先ほども申し上げましたけれども、パブリックコメントに寄せられました御意見等を踏まえまして、案について検討を進めているところでございますし、今後、先ほど申しました検討会の場で意見交換を踏まえた上で決定したいというふうに考えております。

 いずれにしましても、当方の立場は裁判を通じまして主張していきたいと考えており、具体的なコメントは差し控えさせていただければと思います。

樽井委員 技術的に、例えば今の段階で要するに八百メガヘルツの電波帯に参入するということがすごく不合理なことに当たるのか、それとも、人情的にといいますか、今まで参加していなかったところをそこに入れるのはどうかと思うとかいうようなことなのか、その辺はどっちと理解したらよろしいんでしょうか。

竹田政府参考人 現時点での周波数の再編方針案におきましては、現在、八百メガヘルツ帯及び九百メガヘルツ帯を使用しておりますNTTドコモ及びKDDIの移行先の周波数は、移行元と同じ八百メガヘルツ帯とすることが適当としております。

 この再編方針案の作成に当たりましては、NTTドコモ及びKDDIが現に八百メガヘルツ帯の周波数の割り当てを受けて無線局を開設し、事業を展開していること、それから、携帯電話用周波数が逼迫している中で、七百メガヘルツ帯及び九百メガヘルツ帯において将来新たな携帯電話用周波数を確保するためにも、円滑かつ経済的に周波数の集約、移行を図ることが必要であること、また、他の周波数帯も含めて周波数全体の効率的利用を図る必要があること、こういったことを踏まえまして、幅広い観点から客観的に検討を行っているものであるというふうに理解しております。

 なお、再編方針案におきましては、NTTドコモ及びKDDIに割り当てられている周波数幅は、現在、合計八十八メガヘルツという幅でございますけれども、新しく案の中ではこれが六十メガヘルツへと縮減されることとされておりまして、両社に対しましては新しい周波数を追加的に割り当てるものではございません。

    〔委員長退席、田村(憲)委員長代理着席〕

樽井委員 この参入に関することで、誤解されては困るんですけれども、例えばヤフーをごり押しして入れようというような、そういった思惑ではなくて、技術的に、例えば今入っていくのが正しいのかどうか、その辺をまず今聞いたところであります。

 実際にこれは大変な問題だと思うんです。携帯電話といえば、もうみんな持っているわけです、大体の方が。そして、通話料も今かなりの額に上っております。実際にデータでいいますと、NTTドコモに加入されている方で、大体一月平均一人当たり七千四百円通話料がある。KDDIでも七千二百六十円、ボーダフォンでも六千百五十円なんですけれども。

 例えば、私、普通に考えて、今までにKDDIやNTTドコモがもう赤字の段階からずっといろいろな投資やインフラをやっていって、もうかり出したら新規のベンチャーがぱっと入ってきてサービスだけとるというのは、それはある種、一つのビジネスとしたら、そこにビジネスルールとしての問題というのはある程度考える方がいらっしゃるとは思うんですが、これは、例えばヤフーの、評価するところによると、ADSLなんかでも、つなぎ放題がかつて五千円ぐらいした、それが、ヤフーBBが一気に出てきて、これはもういきなり二千円ぐらいに値段がなっているんですよね。

 実際にこの携帯電話にも参入するということになれば、大体三割、四割値段を下げてみせる、こういったことをまた豪語されている部分がありまして、例えば四割といいますと、一月、一人大体二千八百円安くなるわけです。一世帯当たり一万円で、一年で十二万円といったら、減税しているぐらいの効果は優に、これを考えてもあるんですよね。

 実際に、例えば大学生なんかだったら、僕、七千円どころじゃないと思うんですよ。一万九千円か二万円ぐらい、うちの娘でも使いますから。実際にそんな中で三割、四割ということになれば、その浮いたお金で例えばCDを買ったり、テレビゲームを買ったり、映画を見に行ったり、あるいはこの携帯のお金によって、カラオケに行くようなお金もそこに流れていったり、ひどいところによると、お父さんの口座から娘が使ったやつが落ちたりするので、おとっつあんの小遣いまで減っている、こういった話も聞くところでありますので、この携帯電話の料金に関する問題というのは、かなり国民みんなが注目すべきところであると思いますし、行政もかなり強くこの辺は考えていかなければならないと思っております。

 実際に、今三社の寡占状態というような段階だと思うんです。今回問題としてとらえたいというのは、例えば、かつてトヨタや日産が、自動車会社はあったんだけれども、ホンダがもう最後滑り込みで参入しようというときに、なかなか入れてもらえなかった。例えばそういった状態にヤフーが置かれているのであれば、やはりできるのであれば参入させて、ちゃんとした自由競争のもとで、それだけ利便性が出てくるわけですから、そういったことにも配慮していくのが国の姿勢じゃないかな、こういうふうに思っているんですが、その辺の見解の方はいかがでしょうか。

    〔田村(憲)委員長代理退席、委員長着席〕

竹田政府参考人 訴訟に関しまして、また八百メガヘルツ帯の携帯電話の周波数再編に関しましては、先ほど御答弁申し上げたとおりでございますけれども、検討会の中では、新たな携帯電話用周波数として二・〇ギガヘルツ帯及び一・七ギガヘルツ帯についても検討をしておりまして、私どもとしては、既存事業者、新規事業者も含め、この検討会の中で御意見をちょうだいしているところでございます。

樽井委員 そのパブリックコメントの中身なんですけれども、それによっても、今言われたような意見ということでよろしいんでしょうか。どういうような意見がパブリックコメントで寄せられているか、大体、重立った傾向というのは、今わかっているところはないですか。

竹田政府参考人 まだパブリックコメントの内容については精査中でございまして、最終的にはパブリックコメントの結果については公表することといたしておりまして、その内容につきましてはしばらくお待ちをいただきたいと思います。

 ただ、私が先ほど申し上げましたのは、携帯電話の新しい周波数に関する検討会においての議論というのは、新規参入を前提として八百メガヘルツ帯以外の新しい周波数帯も含めて検討をしている、こういうことでございまして、パブリックコメントを招請した案についての範囲を超えて、より広い検討ということでございます。

樽井委員 八百メガヘルツ以外の周波数によって参入できるというちゃんと道を開いているというのであれば、それも一つのちゃんとした結果をもたらすであろうとは思いますけれども、実際問題、八百メガヘルツで参入しないことには、技術的な、開発とかいろいろな部分も含めまして、ちょっと時間がかかる、携帯電話、その機械の開発自体。

 今回、例えば、参入する時期といえばあれなんですけれども、今だったら会社がかわったら電話番号が変わるんですけれども、もう少ししたらナンバーポータビリティーで、会社がかわっても番号が同じまま違う会社に移行できるようになるわけですね。当然、いろいろな参入をねらっている会社としたら、それまでにちゃんとした機種が店頭に並ぶぐらいのことをビジョンに描いていると私は考えるんですけれども、例えば訴訟が長引いたりとか、あるいはなかなか時間がかかっているんだということでおりなければ、その分どんどんどんどん不利になっていくというようなことが当然考えられる。

 そういった中で、早急にパブリックコメントをまとめたり、あるいはいつまでにこういった結果をちゃんと返事して、どういうふうなシステムをつくるんだということを行政としてきちんと進めているのかどうか、その辺のところをお伺いいたします。

竹田政府参考人 まず一点目で、周波数の関係のお話をさせていただきます。

 携帯電話用周波数につきましては、歴史的に、低い周波数から導入されてきております。それで、現在携帯電話事業者さんがお使いの周波数帯としましては、八百メガヘルツ帯、一・五ギガヘルツ帯、二ギガヘルツ帯の三つの周波数帯を使用されております。したがいまして、二ギガヘルツ帯におきましても既に新しいサービスが開始をされておりますので、新規参入といった場合、二ギガヘルツ帯、一・七ギガヘルツ帯というのは技術的にサービスが可能な周波数帯というふうに考えてございます。

 それから、できるだけ私どもも、こういった携帯電話の周波数については、周波数が逼迫しておりますので、ユーザーの利便性という意味で、できるだけ早く周波数を供給していく必要があるというふうに認識しておりまして、一方で訴訟がありますので、どういったことが現時点で可能かというのは明言することは困難ではございますけれども、できるだけ早く、少なくともこの八百メガヘルツ帯の再編案については結論を得たいと考えております。

樽井委員 ちょっと話戻りますけれども、例えば、さっき、パブリックコメントをまとめていくということなんですけれども、このパブリックコメントというのがどれぐらいの参考度といいますか、例えばそれがこういうふうな中身になっていようとも、都合がいいやつだけピックアップをして、その中で審議して選んだりとか、そういうことがあってはならないわけで、それはもうちょっと透明性といいますか、パブリックコメント自体、例えば国民が見れたりとか、そういう状況に置かれるということはあるんでしょうか。

竹田政府参考人 この件だけということではなくて、一般的に、私どもがパブリックコメントを実施した場合、その内容について、私どもとして当然、その御指摘が正しいかどうかについての見解というものを付させていただいて、そのパブリックコメントの結果を公表させていただいております。これがまず第一点でございます。

 それからもう一点。パブリックコメントに寄せられました中身につきまして、妥当性のあるものについては、ほかの事例では、例えば、電波監理審議会の省令改定の過程で修正をさせていただいて、諮問した内容とは異なった内容で答申をさせていただいた例もございます。

樽井委員 パブリックコメントをある程度選んだりする以前に、とりあえず来たものは全部、今インターネットがあるんですから。それがいいか悪いかというのを決めるのはやはり国民の権利であって、それを抽出して、これがどうのこうのと言っていたら、その方の意見に結局なってくるんじゃないかというふうに私は感じるんですけれども。

 やはり、コメントをとったからには、すべてそのまま、例えばインターネットとかを使いまして、検索すれば全部見えるような、こういった状態にしておかなければ不公平なんじゃないかというふうに思いますが、その辺、いかがでしょうか。

竹田政府参考人 再編案についてのパブリックコメントについては、非常に多数の意見が寄せられたということもありまして、これをどのように整理して国民の皆さん方にお見せするかということについては、現在検討をしております。

 いずれにしましても、三万件全部をそのままお見せすることもできませんし、場合によってはパブリックコメントを寄せられた方の氏名の公表等も控える、そういったような場合もございますので、そういったことも勘案しつつ、最終的に整理をして公表させていただきたいというふうに考えております。

樽井委員 幾ら三万件とはいえ、別にその三万件全部が、例えばネットで検索したときに、全部映っているんじゃなくても、ちゃんと一個ずつ、例えば言われている内容で分けているとか、あるいはコメントされた方の氏名で検索できるとか、そういったふうに、全部とりあえず原文のまま見えるということ、これがまず一つ大事なことだと思っております。それを加工するというのであれば、余りパブリックコメントをとる意味すら、形骸化されて、余り意味がないんじゃないかというふうに私は感じるんです。

 そういったところで、例えば名前をもし出したくなければ匿名で出せばいいわけですし、本人が本当に出したくないというんだったら、それはその人を尊重して出さなくてもいいんだけれども、ただ寄せられたコメントを何個か抽出して、選んで、それで都合がいいように当然したんじゃないかなと思ってしまうというのはやはりあると思うので、その辺は透明化して、そのままやった方がいいんじゃないか、そういうふうに思いますので、ぜひ、この問題についてはいろいろ、ちょっと時間がありませんので、また追及していこうと思っております。

 それで、大臣、ちょっと話が飛びますけれども、スカイプって御存じですか。

南野国務大臣 今、ちょっとわかりません。

樽井委員 これは、大体皆さん御存じないんですね、スカイプという。

 これは、パソコン同士で無料通話を可能にするIP電話ソフトなんですよね。これは、リリース後一年でダウンロードが千七百万件を突破した。それで、恐ろしいことに、パソコン同士の通話だけじゃなくて一般電話へも接続できるようになった、それも通話料でいえば例えば十分の一とか、とんでもなく安い、しかも音声もだんだんよくなってきて一般電話と変わらなくなってきている、こういうことなんですよね。ダウンロードとかを含めてこのソフト自体が無料である、こういう状態です。

 だから、社内LANなんかで接続をしていたものじゃなくても、それをダウンロードして、パソコン同士だったらずっと電話ができるわけですね。こういったソフトが出てきている。例えば、それをおもちゃだと言うような人もいるんですけれども、これでもう電話業界が終わったというようなことを言う人もいるわけです。

 こういったことに対して、何か、IT業界は特にこういうのが多いんです。例えばさっきの携帯電話でも、ひょっとしたら、近い将来、話し放題で例えば五千円なんというサービスなんてすぐ出かねないんですね、技術的に。このスカイプなんかにしても、ダウンロードしてパソコン同士で話がどんどんできて、無料で、通話料もただであり、そういった状態だったら、すぐ普及すれば、たちまち今のこういった通信会社が経営困難な状態になるということも当然予想されるわけです。

 こういった新技術によって、新しい技術、国民にとってはある程度便利で、あるいはコスト的には非常にすばらしいんだけれども、既存のガリバー企業をハチの一刺しみたいなのでぱっとつぶしてしまいかねないような、こういった技術が出てきたときの例えば国の対応、あるいは国としてはどういうふうに対処しようと考えているのか、この辺をちょっと総務省の方にまずお伺いいたします。

江嵜政府参考人 お答えいたします。

 先生御案内のことではございますけれども、スカイプとは、最新のインターネット技術、いわゆるファイル交換の技術を応用しまして音声通話ができるソフト、これはソフトウエアでございます。このソフトウエアをパソコンに組み込みまして、パソコンにマイクとヘッドホンを接続するとユーザー同士で音声通話が可能となるというものでございます。

 御質問の件につきましてお答えいたしますと、一般論ということになりますけれども、電気通信分野につきましては、御案内のように、非常に技術革新が激しいということでございまして、例えば現在、加入者数が非常に増加しておりますIP電話がございますけれども、今後とも、既存の電気通信サービスと競合するいろいろな新しいサービスとか、また、高度な通信インフラを利用しました新しいアプリケーションソフト、例えばこのスカイプなんかはそういうことだと思いますけれども、そういうものが生まれてくると想定されます。これ自体は、利用者の立場から見ると、低廉な通信料金とか、高度な、また多様なサービスをもたらすと考えております。

 一方で、このような新規サービスとかソフトウエアの進展によりまして、既存の電気通信事業者の経営にも影響を与える可能性というものについても確かに存在するわけでございますけれども、この点につきましては、まずは既存の電気通信事業者の経営努力とか創意工夫ということにより対応すべき問題ではないかというふうに認識しております。

 なお、先生御指摘のございましたスカイプでございますけれども、現在のところ、パソコンとパソコンの間の通信、通話が通常というふうに聞いておりまして、かつ、通話をするためには、パソコンのほかにマイクとヘッドホンを一緒にくっつけたようなヘッドホンセットが必要でございます。かつ、相手のパソコンに着信させるためには、相手のパソコンがインターネットに常時接続していなきゃいかぬという条件がございます。それから、無料通話ということにつきましては、確かにございますけれども、あくまでパソコンの間の通信にとどまっておるということでございまして、既存の固定電話に与える影響は現時点では極めて限定的ではないかなというふうに考えております。

 いずれにしましても、電気通信事業に与える影響につきましては、行政として、今後とも注視してまいりたいというふうに考えております。

樽井委員 マイクとヘッドホンが要るということですけれども、会社とかでは、マイクとヘッドホンぐらい、これからパソコンもそのことも考慮してだんだん常時するような形になってきたりして、会社とかではずっとつけっ放しといえばみんなつけっ放しなので、長距離の東京と大阪なんて、電話で一々NTTを使わずに、これを使って連絡をとり合おうなんということは容易に予想できるわけです。

 それで、恐ろしいことに、これはコストが安いだけじゃなくて、七人なんですね、スカイプというのは。七人で経営できちゃう。それがNTTとかだったら、物すごい、何千、何万という人がいるわけです。ジョブレスリカバリーという、つまり、どんどん便利になっていくんだけれども、もう雇用が要らないやという状態になってくるんですよね。

 こういうことで、物すごい安価で、そして革新的な技術、そういうのが通信で出てきた。だけれども、それには雇用も要らなければということになれば、かなり今まで、既存のところに努力をしろと言っても、七人対何千人で努力と言っても、余りにもそれは違い過ぎるので、こういったところに国がどういった対処の仕方をするのか、どういった方針を持って当たっていくのか。

 これは電波行政だけにかかわらず、例えばエネルギーなんかでも、斬新なエネルギーの技術がぽんと出たら、今までずっと原油とか輸入していたような会社というのは一気に危ないわけですから、こういった、これから先出てくると思います、革新的なものが出た、そういったときに国としたらどういう対処の仕方をするのか。

 これは企業努力と言われてもかなりきついと思うんですが、その辺の、大体、特にこのスカイプ限定でもいいんですけれども、そういった方針というのが、先ほど言われたままでよろしいんですか。

江嵜政府参考人 スカイプにつきましては、先生今おっしゃったようなことも考えられますし、まだ今後ちょっとどうなるか、例えばメッセンジャーサービスと似たようなサービスがございますけれども、それについては余り伸びていないということもございますので、どうなるかというのはちょっと今後わかりかねるところはございますけれども、私ども、基本的な考え方としては、まずは電気通信事業者さんの経営努力、創意工夫ということで対応していただきたいというふうには考えております。

 ただ、行政といたしまして、既存の電気通信事業者さんが、いろいろな意味で状況の変化というものがある場合にどのように対処していくかということになるわけですけれども、特に、例えば加入電話サービスのような基本的なサービスというのがございます。そういうサービスが提供されなくなるような事態が起きては非常に困るわけでございまして、行政としてはそういう場合のことも考えながら、接続ルールの見直しとかいうことも含めて、必要に応じて、新たな状況変化に対応した環境整備というのを考えていくべきかなというふうには思っております。

 ただ、基本は、事業者さんの創意工夫、経営努力ということかと思っております。

樽井委員 これからベンチャーを立ち上げようということでどんどんどんどん力を入れていく一方で、そのベンチャーが既存のガリバー企業を一気に倒しかねない、そういったことを開発できたときの対処の仕方というのは、国を挙げてグランドデザインをちゃんと考えておかないときついんじゃないかなと、私の方は思っております。

 特に、きょう質問しました携帯電話の件につきましては、もうみんなが使っている、議員なんかは皆さん二万円や一万円すぐ使っているので、物すごくこれは影響力がある話なので、この辺はぜひとも慎重に審議して、国民の利益にかなった判断を下していただきたい、そういうことを訴えまして、時間が来ましたので質問を終わらせていただきます。

塩崎委員長 次回は、来る二十六日金曜日午後零時五十分理事会、午後一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時七分散会


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