衆議院

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第23号 平成17年6月14日(火曜日)

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平成十七年六月十四日(火曜日)

    午前九時二十一分開議

 出席委員

   委員長 塩崎 恭久君

   理事 田村 憲久君 理事 平沢 勝栄君

   理事 三原 朝彦君 理事 吉野 正芳君

   理事 津川 祥吾君 理事 伴野  豊君

   理事 山内おさむ君 理事 漆原 良夫君

      井上 信治君    大前 繁雄君

      川上 義博君    近藤 基彦君

      左藤  章君    笹川  堯君

      柴山 昌彦君    園田 博之君

      谷  公一君    西川 京子君

      早川 忠孝君    松島みどり君

      水野 賢一君    森山 眞弓君

      保岡 興治君    柳本 卓治君

      岡本 充功君    加藤 公一君

      河村たかし君    小林千代美君

      佐々木秀典君    樽井 良和君

      辻   惠君    松野 信夫君

      松本 大輔君    江田 康幸君

      富田 茂之君

    …………………………………

   法務大臣         南野知惠子君

   法務副大臣        滝   実君

   総務大臣政務官      増原 義剛君

   法務大臣政務官      富田 茂之君

   外務大臣政務官      小野寺五典君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 荒木 二郎君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    大林  宏君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  三浦 正晴君

   法務委員会専門員     小菅 修一君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十四日

 辞任         補欠選任

  秋葉 賢也君     西川 京子君

  水野 賢一君     川上 義博君

  柳澤 伯夫君     近藤 基彦君

  仙谷 由人君     岡本 充功君

同日

 辞任         補欠選任

  川上 義博君     水野 賢一君

  近藤 基彦君     柳澤 伯夫君

  西川 京子君     秋葉 賢也君

  岡本 充功君     仙谷 由人君

    ―――――――――――――

六月十四日

 少年法等の一部を改正する法律案(内閣提出第五三号)

同月十三日

 民法を改正し夫婦別姓も可能となるような制度導入に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第二三〇二号)

 同(石井郁子君紹介)(第二三〇三号)

 同(穀田恵二君紹介)(第二三〇四号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第二三〇五号)

 同(志位和夫君紹介)(第二三〇六号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二三〇七号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第二三〇八号)

 同(山口富男君紹介)(第二三〇九号)

 同(吉井英勝君紹介)(第二三一〇号)

 国籍法の改正に関する請願(石毛えい子君紹介)(第二三一一号)

 同(山口富男君紹介)(第二三一二号)

 共謀罪の新設反対に関する請願(石井郁子君紹介)(第二三一三号)

 治安維持法の犠牲者に対する国家賠償法の制定に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第二三一四号)

 同(石井郁子君紹介)(第二三一五号)

 同(穀田恵二君紹介)(第二三一六号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第二三一七号)

 同(志位和夫君紹介)(第二三一八号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二三一九号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第二三二〇号)

 同(山口富男君紹介)(第二三二一号)

 同(吉井英勝君紹介)(第二三二二号)

 裁判所の人的・物的充実に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第二三二三号)

 同(石井郁子君紹介)(第二三二四号)

 同(穀田恵二君紹介)(第二三二五号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第二三二六号)

 同(志位和夫君紹介)(第二三二七号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二三二八号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第二三二九号)

 同(山口富男君紹介)(第二三三〇号)

 同(吉井英勝君紹介)(第二三三一号)

同月十四日

 治安維持法の犠牲者に対する国家賠償法の制定に関する請願(奥村展三君紹介)(第二五一八号)

 同(安住淳君紹介)(第二六二二号)

 同(肥田美代子君紹介)(第二六二三号)

 同(山内おさむ君紹介)(第二六二四号)

 同(菊田まきこ君紹介)(第二七六六号)

 同(中山義活君紹介)(第二七六七号)

 同(古本伸一郎君紹介)(第二八二九号)

 同(本多平直君紹介)(第二八三〇号)

 同(笠浩史君紹介)(第二八三一号)

 同(渡辺周君紹介)(第二八三二号)

 同(石井郁子君紹介)(第二九四四号)

 同(穀田恵二君紹介)(第二九四五号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第二九四六号)

 国籍選択制度の廃止に関する請願(荒井聰君紹介)(第二五一九号)

 同(石毛えい子君紹介)(第二五二〇号)

 同(仲野博子君紹介)(第二五二一号)

 同(西村真悟君紹介)(第二五二二号)

 同(松野信夫君紹介)(第二五二三号)

 同(丸谷佳織君紹介)(第二五二四号)

 同(阿久津幸彦君紹介)(第二六二七号)

 同(市村浩一郎君紹介)(第二六二八号)

 同(小林千代美君紹介)(第二六二九号)

 同(小宮山洋子君紹介)(第二六三〇号)

 同(首藤信彦君紹介)(第二六三一号)

 同(辻惠君紹介)(第二六三二号)

 同(土肥隆一君紹介)(第二六三三号)

 同(楢崎欣弥君紹介)(第二六三四号)

 同(鳩山由紀夫君紹介)(第二六三五号)

 同(肥田美代子君紹介)(第二六三六号)

 同(藤田一枝君紹介)(第二六三七号)

 同(藤田幸久君紹介)(第二六三八号)

 同(前原誠司君紹介)(第二六三九号)

 同(松木謙公君紹介)(第二六四〇号)

 同(山内おさむ君紹介)(第二六四一号)

 同(山井和則君紹介)(第二六四二号)

 同(横路孝弘君紹介)(第二六四三号)

 同(池坊保子君紹介)(第二七六八号)

 同(稲見哲男君紹介)(第二七六九号)

 同(高木美智代君紹介)(第二七七〇号)

 同(泉房穂君紹介)(第二八三三号)

 同(岩國哲人君紹介)(第二八三四号)

 同(大出彰君紹介)(第二八三五号)

 同(土井たか子君紹介)(第二八三六号)

 同(中井洽君紹介)(第二八三七号)

 同(細野豪志君紹介)(第二八三八号)

 同(増子輝彦君紹介)(第二八三九号)

 同(渡辺周君紹介)(第二八四〇号)

 同(古屋範子君紹介)(第二九四七号)

 成人の重国籍容認に関する請願(荒井聰君紹介)(第二五二五号)

 同(石毛えい子君紹介)(第二五二六号)

 同(仲野博子君紹介)(第二五二七号)

 同(西村真悟君紹介)(第二五二八号)

 同(松野信夫君紹介)(第二五二九号)

 同(丸谷佳織君紹介)(第二五三〇号)

 同(阿久津幸彦君紹介)(第二六四四号)

 同(市村浩一郎君紹介)(第二六四五号)

 同(小林千代美君紹介)(第二六四六号)

 同(小宮山洋子君紹介)(第二六四七号)

 同(首藤信彦君紹介)(第二六四八号)

 同(辻惠君紹介)(第二六四九号)

 同(土肥隆一君紹介)(第二六五〇号)

 同(楢崎欣弥君紹介)(第二六五一号)

 同(鳩山由紀夫君紹介)(第二六五二号)

 同(肥田美代子君紹介)(第二六五三号)

 同(藤田一枝君紹介)(第二六五四号)

 同(藤田幸久君紹介)(第二六五五号)

 同(前原誠司君紹介)(第二六五六号)

 同(松木謙公君紹介)(第二六五七号)

 同(山内おさむ君紹介)(第二六五八号)

 同(山井和則君紹介)(第二六五九号)

 同(池坊保子君紹介)(第二七七一号)

 同(稲見哲男君紹介)(第二七七二号)

 同(高木美智代君紹介)(第二七七三号)

 同(泉房穂君紹介)(第二八四一号)

 同(岩國哲人君紹介)(第二八四二号)

 同(大出彰君紹介)(第二八四三号)

 同(土井たか子君紹介)(第二八四四号)

 同(中井洽君紹介)(第二八四五号)

 同(細野豪志君紹介)(第二八四六号)

 同(増子輝彦君紹介)(第二八四七号)

 同(渡辺周君紹介)(第二八四八号)

 同(古屋範子君紹介)(第二九四八号)

 国籍選択制度と国籍留保届の廃止に関する請願(肥田美代子君紹介)(第二六一八号)

 同(松野信夫君紹介)(第二六一九号)

 同(山内おさむ君紹介)(第二六二〇号)

 同(山井和則君紹介)(第二六二一号)

 同(稲見哲男君紹介)(第二七六四号)

 同(佐々木秀典君紹介)(第二七六五号)

 裁判所の人的・物的充実に関する請願(辻惠君紹介)(第二六二五号)

 同(山内おさむ君紹介)(第二六二六号)

 民法を改正し夫婦別姓も可能となるような制度導入に関する請願(肥田美代子君紹介)(第二六六〇号)

 国籍法の改正に関する請願(渡辺周君紹介)(第二八二八号)

 重国籍容認に関する請願(大出彰君紹介)(第二九四二号)

 女性の人権の確立を目指す法制定に関する請願(石井郁子君紹介)(第二九四三号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 刑法等の一部を改正する法律案(内閣提出第五二号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――

塩崎委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、参議院送付、刑法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房審議官荒木二郎君、法務省刑事局長大林宏君、法務省入国管理局長三浦正晴君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

塩崎委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

塩崎委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山内おさむ君。

山内委員 民主党の山内おさむでございます。

 本日は、主に入国管理法の情報提供と旅券の確認義務に絞ってお話を伺いたいと思います。

 大臣は、本法の提案理由説明の中で、昨年十二月にテロの未然防止に関する行動計画を策定し、その中でテロリストを入国させないための対策の強化が求められている、これも提案理由の一つとされておりますが、まず最初に、テロとかテロリストという言葉が使われておりますけれども、この定義についてお示しいただきたいと思います。

南野国務大臣 お答え申し上げます。

 一般に、テロリズムの用語は、特定の主義主張に基づきまして、国家等にその受け入れ等を強要し、または社会に恐怖などを与える目的で行われる人の殺傷行為などをいうものとされております。本法律案の提案理由説明やテロの未然防止に関する行動計画等において用いておりますテロの用語も、このことを踏まえて用いたものであり、テロリストという用語は、そのテロの実行者等の意味でございます。

山内委員 それでは、今回新設されます規定の個人情報の海外への情報提供の点については、これはテロリストを入国させないための対策の強化の一環として規定されていることなんでしょうか、それとも違うんでしょうか。

南野国務大臣 そういう問題点も含まれているはずでございます。

山内委員 それでは次の質問ですけれども、今のテロの未然防止に関する行動計画によりますと、我が国でもe―パスポートの研究を進めるべきだということが規定されておりますけれども、最近の報道によりますと、外国人が我が国に入国するときに指紋と顔写真をとって、それを国内にいるときに携帯すべきだ、そういう立法を考えている、あるいは、我が国から帰るとき、出国するときにも指紋押捺を求めるというような法の研究がなされていると報道がありますけれども、そのとおりなんでしょうか。

南野国務大臣 いろいろな問題点については、今現在検討しているところでございます。

山内委員 問題点について研究されるのはいいんですが、指紋押捺制度につきましては、在日の皆さん方の関係でそれが随分問題となり、廃止になったという経過もございますので、政府が全く罪も犯していない人に指紋を押すように求め、犯罪者扱いと同視することは人権上大きな問題があると考えるのですが、この点の視点はきちんととらえながら議論されると聞いてよろしいんでしょうか。

南野国務大臣 先生が御懸念の、テロリスト、犯罪者あるいは不法滞在者の流入、日本に入ってくることを水際で防止する方策を徹底すべきであるというようなところから、先生御案内のバイオメトリックスを活用した出入国管理体制の構築を求めていこうとするものでございまして、これは内閣官房に設けられましたワーキングチームにおきましても具体的な方策に対する検討を行っているところと承知いたしております。

 先生の御指摘の点につきましては、出国時における旅券の不正利用や、または犯罪者の国外逃亡をも未然に防ぐという上で一定の効果があると考えておりますけれども、一般の外国人の方々に対して過度な負担を与えることなく、また、スムーズな審査手続を確保するということも必要がございますので、今後のバイオメトリックス活用に関する制度設計につきましては、ポイントといたしまして、厳格化、円滑化のバランスを十分に考慮していきたいと思っております。

山内委員 それはわかるんですが、出国時にまで指紋を求めて、以前に日本に入国してきた人との照合までするというのは、私はちょっと、人権を配慮した運用になるのかどうか、大変危惧をしておりますので、この点は再度指摘をさせていただきたいと思います。

 それから、先ほど海外への情報提供の件で、それはテロリストの入国を阻止するためにあるんだというのが提案理由説明であるとお聞きしたんですけれども、この情報提供の部分につきましては、それでは、テロリストを入国させないための対策のため以外には考えておられないと聞いてもいいんでしょうか。

富田大臣政務官 先生の御趣旨がどの点にあろうかちょっと定かではございませんが、お互いに情報提供し合うという入管法の六十一条の九の規定ですので、テロリスト対策だけではないというふうに私は思います。

山内委員 だとすると、例えば、今、この法案についてはいわゆる人身取引法という別名でも言われていますとおり、人身取引の発生を防止するためにもこの情報提供については利用されるべきだというふうに聞いてよろしいんでしょうか。

富田大臣政務官 そのとおりだと思います。

山内委員 それ以外にはないんでしょうか。

南野国務大臣 今回の改正におきましては、外国の入国管理当局に対する情報提供の規定を新設している。そのことは、人身取引議定書において、人身取引の防止のための加害者や被害者に関する情報を関係当局で交換すべきことが求められております。そのほか、密入国議定書におきましても同様に、移民を密入国させることを防止するため、各国間で情報交換すべき旨が求められていることを受けたものであろうと思います。

山内委員 ですから、人身取引の関係とテロリストの対策の関係以外については、この情報提供についての規定は適用しないということで聞いてよろしいんでしょうか。

富田大臣政務官 今大臣の方から密入国議定書のお話がありましたけれども、密入国防止のための情報提供もあると思います。

山内委員 密入国防止のためということは、例えば、具体的にはどういう場合に適用されるんでしょうか。

富田大臣政務官 具体的に想定されるのは、例えば、偽造、変造旅券に関する情報をお互いに提供し合うということが想定されると思います。

山内委員 提供する相手国というのは、どういうところをイメージして規定されているんでしょうか。

富田大臣政務官 提供する相手国につきましては、相手国における情報提供制度や個人情報保護制度の有無、内容等を調査いたしまして、入管法第六十一条の九第二項の目的外利用の防止のための適切な措置を講ずることが可能であるかなどの点を踏まえた上で選定することになるというふうに考えております。

山内委員 いかなる情報を提供するかについてはどう考えたらいいんでしょうか。

富田大臣政務官 新設される情報提供規定により提供することを予定しております情報は、例えば、出入国記録、退去強制記録、偽変造文書行使情報及び偽変造鑑識技術等、入国管理当局が入管法上の職務を遂行する過程において取得した情報であります。

山内委員 そういう具体的な情報の項目あるいはどういう国に情報提供するのかなどについて、どうして法文に書き込まれなかったんでしょうか。

富田大臣政務官 今先生、法文に書き込まれないというふうにおっしゃいましたが、改正入管法の六十一条の九の一項、二項には今私の方が答弁しました具体的な中身までは書いてありませんが、この規定からは当然そういうことが予想されるというふうに考えております。

山内委員 それでは、総務省にお聞きします。

 総務省は、情報提供については、個人情報保護法、行政機関情報保護法についての適用がまずそもそもあるとお聞きしてよろしいんでしょうか。

増原大臣政務官 お答え申し上げます。

 いわゆる行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律でございますが、この第二条では、個人情報とは「氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの」、このように定義をいたしております。

 したがいまして、本件の場合、法務省において、具体的な情報の内容に応じてそれぞれ御判断をされるというふうに考えております。

山内委員 例えば、法務省がいろいろな個人情報を聞き取りによって取得したことについて、それを外国の政府あるいは政府機関に情報提供をするということは、個人情報の目的外利用にはならないんでしょうか。

増原大臣政務官 委員御指摘の点でございますが、いわゆる行政機関の個人情報保護法でございますけれども、この第八条一項におきまして、「行政機関の長は、法令に基づく場合を除き、利用目的以外の目的のために保有個人情報を自ら利用し、又は提供してはならない。」というふうにされております。

 具体的な法務省のケースがどうかわかりませんが、仮にこれが個人情報というふうにしましても、まさに「法令に基づく場合を除き、」と書いてあるわけでございまして、これを今、今般の法改正でもって法令でそれをやろうとしているわけでございますから、いわゆる第八条関係とは抵触はしないというふうに考えております。

山内委員 法務省は、行政機関の保有する個人情報について、外国政府あるいは機関に提供することについては目的外利用にはならないと解釈しているのでしょうか。

富田大臣政務官 今、総務大臣政務官の方から御答弁ありましたように、今回のこの情報提供は、行政機関個人情報保護法八条第一項に規定する「法令に基づく場合」に該当し、許容されるものというふうに考えております。

山内委員 法務省が今まで私に説明していたのとは違うんじゃないんですか。

富田大臣政務官 法務省の事務方の方で、先生に対するレクの際に、ちょっと正確を欠いた説明をしたというふうに報告を受けております。この場で、ちょっと申しわけないなというふうなことで謝っておきたいと思います。

 そのような御説明になってしまった事情としましては、本年三月まで施行されておりました旧法、すなわち行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律第九条に関する整理と、新法第八条に関する整理とを混同して説明してしまったというふうに報告を受けております。

 新法につきましては、先ほど答弁しましたように、端的に、新法第八条第一項によって許容されるものと整理すべきものというふうに考えております。

山内委員 委員長、ちょっと五分ほど休憩させていただけますか。なぜならば、きょうの今まで法務省から説明を受けてきたのと全然違うことを今言っておられまして、今まで説明を受けてきたことに基づいて、私、いろいろあとの問いを構成していたものですから、整理をさせてもらいたいと思いますので、五分で結構ですから、お願いします。

塩崎委員長 ちょっと速記をとめてください。

    〔速記中止〕

塩崎委員長 速記を起こしてください。

 質疑を続行いたします。山内おさむ君。

山内委員 では、難民の問題について少しお聞きしたいと思います。

 入管当局が、迫害する国というか、迫害する側に難民申請者の情報を提供したら、もし仮にその人が強制送還された場合には、わざわざその人の危険性を高めて、そして強制送還をするということになろうかと思うんですけれども、こういう理解でよろしいんでしょうか。

滝副大臣 仮に、難民という概念に該当する人であれば、そういうような危険性が委員御指摘のとおり生ずるおそれは多分にあると思います。

山内委員 だとすると、クルド人難民について、出身国であり、まさに本人への迫害を行うかもしれないトルコ政府へ情報の照会をしたことは、問題があったとは思われないんでしょうか。

滝副大臣 特定の事件を想定して委員御指摘だと思いますけれども、従来から当委員会でも問題になってきましたクルド人難民の問題につきましては、日本政府としても、この人というよりも、クルド人をめぐるトルコの情勢についてどうなのかということを複数の国に打診をし、特にイギリスに打診をしながら、実際の状況の情報交換をしながらこの問題に当たってまいりました。

 その中で、このケースについては、直接的な情報交換はトルコ政府に対してできませんけれども、問題点が、裁判で公文書の成立についての真偽を争う点がございましたものですから、その部分に限って、難民ということじゃなくて、公文書の成立そのものについてどうなのかということの照会をした経緯がございますので、特に難民ということでもって意見交換をさせてもらったわけじゃないということで御理解をいただきたいと思います。

山内委員 裁判になれば、それは裁判所で議論されていることだから公の機関で議論されていることだ、だからその時点でプライバシーというのはなくなってしまうという理屈なのかもしれませんが、UNHCRでは、訴訟になったとしてもそのプライバシーは保護されるべきだというふうに日本政府に指導をしておりますし、それからEUにつきましては難民申請者の情報を共有することはやめようというふうな取り組みもあるんですが、そういうようなEUの動きなども考えて、もう少し情報共有については慎重に行おうということは、このクルド人の入国管理局の調査の後、検討されたり、UNHCRと協議をしたりされていないんでしょうか。

滝副大臣 今委員御指摘のとおり、EU諸国の中では、難民に関する情報について直接当事者国との間の難民としての情報の共有はしないようにということで、EU各国の中で情勢の意見交換というか情報交換を通じて、いわば周辺的な情報でもって事柄を進めていく、こういうようなルールになっているようでございます。

 しかし、実際問題として、私どもはそういうような配慮というのは当然必要だろうというふうに思っておりますから、当然、EUがやっているような、当事者国じゃなくて、EU各国の中におけるような情報交換、情報共有、そういうものを主体にして仕事を進めていくということについては、私どもも同感でございます。

 ただ、この問題については、先ほど申しましたような事情がございましたものですから、要するに公文書の作成確認ということで私ども終始したつもりでございますけれども、その後、御指摘のように、UNHCRとの意見交換を通じて、この問題については、さらに具体的に今後の問題としても、特に不都合の生じないような格好で事を進めていきたいというふうに思っております。

山内委員 この法案につきまして附帯決議をつけさせていただこうと思って与党の皆さんと協議をさせていただいたんですが、今、日本の憲法の改正の議論がなされておりまして、その中に、プライバシーの権利、環境権を書き込もう、知る権利を保障しよう、あるいは自衛権を憲法上明記すべきじゃないか、自衛隊の国際貢献について法的根拠を与えるべきじゃないか、そういう論点がございますよね。

 そういう大きな論点の中の一つに、やはりプライバシーについては書き込んで尊重していこうと。特に、日本ではその権利について十分に保障されていなかったという議論もございまして、憲法にもし書き込んだとしたら、それは日本人だけではなくて諸外国の皆さんについても人権として保障していこうという議論が今なされているわけです。

 ですから、プライバシーについては、本人の放棄をするという合意があって初めて外国との情報を提供しようというようなことをすべきだと私は思うんですね。それがまさに、UNHCRが日本に勧告をしている内容の一つでもあると思うんです。それを、国連難民高等弁務官事務所の指導とか、そういう提言の精神を生かしてというような一文を附帯決議で入れていただきたいということも強くお願いしたんですけれども、与党の皆さんから、それは書き込めない、約束できないと言われてとても残念な思いをしているんです。

 今、私の方で話させていただきましたけれども、個人については特に事前の合意を求めていくという形で情報提供をしていくということについては、ぜひ考慮していただきたいと思っています。

 ところで、難民申請者から聞かれた情報についても、これは相手国の要請があれば、住所、氏名とか、先ほど増原政務官がおっしゃったようないろいろな情報を相手国に提供される考えなんでしょうか。

滝副大臣 出入国管理及び難民認定法の六十一条の九の条文によれば、一般的に規定をしているように表現されているわけでございますけれども、当然、難民条約の制約がかぶってまいりますから、法務省としての扱いは、今度のこの改正、新しい条文を入れましたけれども、それがそのまま動くわけではございませんということで、当然、従来からこういう難民条約のルールに従って法務省としては事務を処理しているつもりでございますので、今後とも、これによって難民の本国に、出入国管理法に従ってストレートに情報が行くということはあり得ないと思っております。

 したがって、その問題はこれからも同じというふうに御理解をいただきたいと思います。

山内委員 そうすると、難民申請者からの個人情報については、相手国には情報提供をしない。そういう国際的な基準と全く反する、あるいはUNHCRがマンデートとして難民認定した人についてまでも日本は世界でも類のない強制送還をしたという事実もあってかなりの批判を受けられたわけですから、難民申請者からの情報については絶対に相手国には提供しないということを大臣の口からもお願いしたいと思います。

南野国務大臣 UNHCRとの協議の上で、今も話を進めております。いろいろな事例がございますが、そのことについては、なるべくその個人の問題を考えながら、また、UNHCRの意見を尊重しながらやっていこうという体制でございます。

山内委員 大臣の発言は副大臣の発言より後退しているんですよ、全く。なるべくなんという話はないんですよ。大丈夫かな。難民条約に違反するんですよ。だから、しちゃいけないんですよ。それを副大臣は言われたんですよ。いや、笑い事じゃないですよ。

 そうすると、法文上にきちんと、難民申請者の個人情報は相手国に通報しない、情報共有はしない、情報提供の申し入れがあっても教えない、そういうような条文をつくる、規定するということは考えないんですか。

富田大臣政務官 現在でも提案しております改正入管法の六十一条の九の第二項に、目的外使用されないための適切な措置というふうな規定がございます。これは、相手国当局との間の文書をもって情報提供の具体的な条件、手続等を定めることになるというふうに考えておりまして、その交渉過程で、相手国当局が目的外使用を防止するための条件等に同意しないなど目的外使用を行う懸念を払拭できない場合には、情報提供に係る取り決め自体をも結べませんので、法務省としましては、新たにきちんと、今先生御指摘のような条文を設けるまでもないというふうに考えております。

山内委員 政務官の本当に誠実な答弁に感謝したいと思っています。非常に明確に言っていただきましたので、多少は大臣の答弁で不安を覚えたのが解消された気がいたします。

 ただ、政務官、一番最初におっしゃいました情報提供の立法趣旨というか提案理由が、密入国者の情報も情報交換する趣旨であると言われたのが少し気になっておりまして、難民の人たちというのは、普通の方法で入国する人たちというのがなかなかおられないんじゃないかなと思うんですね。

 だから、やはり、どういう国に提供するのか、どういう情報を提供するのか、あるいはどういう方法で情報提供するのかというようなことを、できれば、この中のそういう活動をしている人たちやそれを支援している弁護士などを含めて具体的な基準を決めて法務省として公表をする、これに従って行動していただけるならこうしますよというような行為規範を公表していただけないかと思うんですが、どうでしょうか。

富田大臣政務官 先生御指摘の判断基準の策定とか公表の可否につきましては、今後、法務省の方としてはきちんと検討してまいりたいというふうに考えております。

山内委員 どうもありがとうございました。

 それでは、外務省にも来ていただいておりますけれども、我が国は行政機関が持つ個人情報の保護について法制化をして取り組んでおりますが、情報提供の相手国が行政機関個人情報保護法というような法を持たない場合、情報提供を慎重に行うべきではないかと思うんですが、どうでしょうか。

小野寺大臣政務官 お答えいたします。

 先ほど来お話が出ておりますが、当然、この問題、相手国の制度の違いというのがございます。当然、情報提供に際しては、相手国の制度の違いというものを勘案しながら個別具体的に検討して、相手国に関しては、情報漏えいのことについて問題ないということがない限り、こういう情報提供というのは難しいというふうに思っております。

山内委員 入管難民法の法案によりますと、「当該情報が当該外国入国管理当局の職務の遂行に資する目的以外の目的で使用されないよう適切な措置がとられなければならない。」と、ちょっと読むと消極的な規定であるのですが、これは具体的にはどういうことをイメージしたらよろしいのか。外国政府に対し日本の国内法規などで制約をかけるようなことが本当にできるのか。これは、もしできれば外務省、お願いしたいと思います。

小野寺大臣政務官 先ほど富田政務官からお話が一部出ていたと思うんですが、当然、こういうことを相手国がしないということ、目的以外の目的で使用されないことということに関しては保証を取りつけるということになっています。

 保証としましては、国際約束ということがありますが、国際約束以外の場合、文書を取り交わす方法としまして、口上書等しっかりとした対応、お互いの二国間の関係をつくるものが必要だというふうに思っております。

山内委員 総務省と外務省の政務官、どうもありがとうございました。

 それでは、法務大臣政務官に、今の外務省が言われた点についてさらにお伺いしたいんですが、仮に、情報提供をした相手国が目的外使用した、家族や関係者が命を落とした、人権侵害を受けたというような深刻な状態になったときには、では、日本政府としてはどんな責任がとれるのでしょうか。

富田大臣政務官 先ほど、改正入管法の六十一条の九の二項の適切な措置について、相手国との取り決めをこのようにやっていくんだという御答弁をさせていただきましたけれども、そういう事態に陥らせるような国とは取り決め自体結べないと思いますが、それでも、では、そうなったらどうするんだというふうな御質問だと思います。

 法務省としましては、先生御指摘のような結果が生じないよう、相手国当局との情報提供に関する条件、手続等、提供する際に万全を期していきたいというふうに考えております。

山内委員 私としては目的外の使用を行う可能性が高い外国当局については情報提供を行わないという旨を入管法に書き込んでいただきたかったのですが、とにかく運用の面で、ぜひとも二国間協定でしっかりとそのあたりはチェックしていただきたいと思います。

 それでは、旅券の確認義務の論点に入らせていただきます。

 この運送業者の旅券確認義務につきましても今回の新設規定なんですが、具体的にはどのようにして確認をさせるのでしょうか。

富田大臣政務官 旅券等の確認の程度につきましては、単に旅券様の物を所持していることを確認するだけでは足りず、運送業者として通常の注意義務を払えば発見できるような、例えば旅券とは到底言えないものを所持している場合や、本人と似ていない他人の写真が貼付されているときや、旅券の有効期限が切れている、そういった場合、これを見落として搭乗させるようなケースにつきましては確認義務を果たしたとは言えないというふうに考えております。

 ただ、搭乗直前の短時間のうちに多数の乗客の旅券等を確認していただくという制度の趣旨からして、真偽の鑑定までこれを義務づけるものではありません。

山内委員 私も真偽の鑑定まで義務づけると酷だと思うんですけれども、だとしたら、確認義務を十分に行わなかった場合に罰則規定を置かれているんですよ。その罰則規定というのがまた、実際に現場で行う船長さんたちにとっては重荷になると思うんですが、罰則規定の導入についてまで必要だったのか、あるいは、真偽の鑑定まで必要がないのに罰則規定でそういう義務を履行させるというか、そのあたりの、罪刑法定主義とも絡めて説明ができたらお願いします。

富田大臣政務官 先生の御指摘は、罰則を科すんだからもう少し確認義務の中身を具体的に規定すべきじゃないかという御趣旨だと思うんですが、入管法第五十六条の二は、確認義務を課す目的につきまして、外国人が不法に本邦に入ることを防止するためと明確に規定しております。

 不法入国にならないためには、先ほども申しましたように、旅券等の真正性と有効性、すなわち、旅券等が発行権を有する者によって発行された真正なものであること、また、旅券等の名義人とされている者により使用されており、有効期限が切れたりしていないことなどを確認される必要があり、これらを確認するためには、先ほどお話ししたような、およそ旅券等と言えないようなものではないか確認したり、貼付されている写真や有効期限等を確認する必要があるということはおのずと明らかになるのではないかというふうに解されます。

 したがいまして、確認義務の内容は明確になっていると思いますし、また、業者の負担もあると思いますので、このような確認の内容、方法等につきましては、運送業者に対し、あらかじめ旅券の確認の程度等に関する指針を示したいというふうに考えております。

山内委員 指針はもちろんだと思うんですけれども、研修とか教育とか、やはりそういうことも、飛行機の場合、搭乗員さんとか、船長さんとか、しっかりとされて、とにかくどこの港、どこの空港でも同じことがされているというようにしないと、また法の趣旨としておかしくなると思いますので、その点は徹底していただきたいと思います。

 ところで、難民の件なんですけれども、難民の認定申請を例えば日本でしようと思っている人が、例えば万やむを得ず偽造旅券をつくって、日本行きの船、日本行きの飛行機に乗ろうとしたという場合に、この運送業者の確認義務によって、日本へ来てもらっては困るということになるんでしょうか。

富田大臣政務官 先生の御質問の趣旨は、そういう場合は気の毒じゃないかという点にあると思うんですが、旅券等は外国人が外国を旅行する際に必要とされる文書でありまして、国際的な一般慣行としましても、国際旅行を行う者に旅券等の所持を義務づける制度が確立しております。各国は、旅券等の旅行文書の所持を自国への入国を認める条件の一つとしているのが一般的な取り扱いであります。

 したがいまして、運送業者におきましては、有効な旅券を所持しない乗客を搭乗させたとしても、当該乗客が到着国の入国管理当局から上陸を拒否され、出発地等に返還しなければならないことから、運送約款に基づきまして旅客等の搭乗手続等の際に旅券等の確認を行っているものと、これは現在でもそうやっているというふうに承知しております。このようなことから、運送業者が偽造旅券を理由に搭乗を拒否することは現在でも行われていることでありまして、今回、旅券の確認義務を課したことにより新たに発生する問題ではないというふうに考えております。

 米国、フランス、イギリスを初めとする諸外国におきましても、運送業者に対して旅券等の確認義務を課しておりまして、義務違反に対しては制裁が科され、これらの国において、難民認定申請予定者であるということのみをもって確認義務や制裁が免除されるわけでないということも承知しております。

山内委員 今の答弁でこちらは理解すべきなのかもしれませんけれども、結局、難民申請予定者であるということだけでは運送業者の確認義務は免除されない、それはわかるんです。確認義務を行使したときに、難民認定申請者で日本に行きたい、日本に行って申請をさせてくださいという人に、来てはいけないということまでも運送業者は言えるんですか。

富田大臣政務官 運送業者が来てはいけないというふうに言うのではなくて、到着国の入管当局の方で上陸を認めるかどうかの判断をすることになると思いますので、今回の確認義務の規定と運送業者が拒絶するということには必然的なつながりはないというふうに思います。

山内委員 できれば運用面で二点お願いしたいんですが、一点は、日本というのは難民の受け入れが世界的に非常に少ない、難民が日本に来にくい国で、唯一そういう方法がとれるのは、在外公館の塀をよじ登って、日本人小学校に入り込むとか、大使館に逃げ込むとか、そういう形でしか日本の国土に難民が入ってくるという形が想定できない国だと、難民をたくさん受け入れている国からは多少皮肉って意見されますよね。

 ですから、偽造旅券を持っている難民認定申請予定者が入ってくる場合に、運送業者が確認義務の段階で入るなと言うことはない、日本の入管当局が判断すべきだと言われましたので、入管当局の皆さんにはやはり弾力的な運用をお願いしたいなというのが一点と、そういう場合に、刑事罰があるんですね。そういう偽造旅券を行使したような場合には三年以下の懲役もしくは三百万円以下の罰金に処せられるということで、実際に地方裁判所では、それを厳格に適用するとそれこそ難民の人は全く日本に入ってこれなくなるということもあって、一地方裁判所かもしれませんけれども、刑を免除したという事例もございます。

 難民の人たちが日本へ入ってくるときの偽造旅券については、今言いました二つの点からも、法務当局の方で善処すべき点があるのではないかと思うのですが、どうでしょうか。

富田大臣政務官 入管法の第七十条の二は、難民条約三十一条を受けて規定されているものでありまして、難民の保護にとって重要な意味を有するものというふうに理解をしております。難民条約第三十一条の不法入国や不法在留等の罪とあわせて成立することなく、さまざまな罪について一律に処罰しないとの制度を設けることまで求めているものではないというふうに理解をしております。

 この点、現行法下におきましても、入管法第七十条の二に該当する事案において、偽造旅券の行使罪や外国人登録法上の罪もあわせて成立すること等が想定されますけれども、このような場合においては、検察当局において、起訴、不起訴の判断において、入管法七十条の二の趣旨を考慮して適切な取り扱いを行っているものと承知しております。今回の法案で新設する入管法七十四条の六の二第一項第四号の罪についても、同様の対処が期待されております。

 したがいまして、入管法七十四条の六の二の第一項第四号の罪につきまして、同法第七十条の二のような刑の免除規定を設けるまでの必要性はないのではないか。

 先生先ほど地裁の判例もあるというふうに言われましたけれども、高裁の方でまた別の意見にもなっているようですので、法務当局としては、現在の段階ではこのように考えております。

山内委員 ただ、これは、交渉させていただきました結果、附帯決議の中には入れていただけそうなんですが、念のために答弁で確認させてもらいますけれども、運送会社による旅券などの確認に当たっては、庇護希望者の庇護権や家族的な結合などが阻害されないように、十分な配慮がなされる必要があると思います。法務省としては、その恣意的な運用がなされないようにぜひともお願いしたいと思うのですが、大臣、どうでしょうか。

南野国務大臣 今回の法改正といたしましては、運送業者に対して旅券等の確認を義務づけるものでございます。その結果、偽造旅券であることが判明する、そういうような場合には、運送業者は、運送の約款に基づいて、航空機等の安全確保等の視点から、みずからの判断によりまして搭乗拒否等を行うこととなるわけでございます。

 旅券等の確認の方法や程度につきましては入国管理局におきまして指針を作成いたしますとともに、運送業者の職員を対象とした偽変造旅券の確認方法等につきましても、先生が先ほどもおっしゃっておられましたような研修会、そういったものを随時開催することによりまして指導を重ねていく予定でございますが、旅券等の確認方法、またその程度といった事項を超えて運送業者への指導を行うことは、入国管理局の立場からは困難でないかなというふうにも考えられます。

山内委員 難民の皆さんにかかわらず、在留特別許可、あるいは上陸特別許可、仮放免、在留資格の更新、変更などの出入国管理制度の運用につきましては、今後とも引き続きましてその基準づくり、それから公表を私どもは本当にしてほしいと思うんですけれども、その公表の可否につきまして、できれば外部の識者も加えていただいて透明性の高い運用をお願いしたいと思うのですが、どうでしょうか。

南野国務大臣 先生おっしゃるとおりでございますが、わかりやすく透明性の高い出入国管理行政を実現するということは、これは本当に重要であると認識いたしております。

 そのために、上陸または在留審査関係におきましては、在留資格に関する解釈上のポイントを公表したり、または、我が国への貢献が認められて永住許可された事例等を公表するとともに、これに関するガイドラインを策定しまして公表したところでございます。また、在留特別許可及び仮放免につきましては、裁量的な処分であるところでございますので、在留特別許可につきましてはその透明性を向上させること、そういう観点から、許可された事例を公表する措置を講じておりました。

 昨年三月に策定いたしました第三次出入国管理基本計画におきましても、各種手続の透明性を向上させる方策について言及しているところでございます。

 それぞれの処分の性質等も十分勘案しながら、引き続き、公表事例の充実や、またガイドライン策定の適否の検討を行ってまいりたいと考えているところでございます。

山内委員 外国人が、約二百カ国の人が二百万人ぐらい常時日本にいるというほど国際化が進んでおります。外国人が入国するときに、リエゾンオフィサーも含めて二重三重のチェックを受ける、そして宿泊した旅館でも旅券番号の記入が求められる、そういう社会になっていきます。

 これが行き過ぎますと、やはりどうしても外国人というのは危険な存在あるいはテロリストじゃないかとみなすような風潮にもなってきますし、そのうちの一つが、怪しい外国人を見つけたら法務省に教えてくださいというような、ああいうホームページにもなってくると思いますので、日本がどういう方向を目指していくのか、国際社会に冠たる存在として日本をこれからも売り込んでいくという姿勢をとるなら、やはり外国の国籍を持つ人についても我が国の法制度の中でしっかりと人権尊重を果たしていく、守っていくということが必要だと思うということを指摘させていただきまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

南野国務大臣 先ほどの答弁のところで、昨年三月と申し上げましたが、本年三月の間違いでございますので、訂正いたします。

塩崎委員長 次に、津川祥吾君。

津川委員 民主党の津川祥吾でございます。

 まず冒頭、おわびを申し上げますが、ちょっとパソコンの調子が悪くて印刷できませんでして、私がきのうつくった質問のメモなんですけれども、パソコンのモニターを見ながら質問をさせていただきます。ちょっと不快に思われましたらおわびを申し上げますが、御了承いただければと思います。

 まず、せっかくですから、今の山内議員の質問のところで、政務官から大変にすばらしい、やはり法律の専門家だなというような答弁をきちきちとされましたけれども、大臣からはぜひ政治家としての感覚で、感覚でと言ったら怒られるかもしれませんが、政治家としての信念でちょっと御意見をまず冒頭確認させていただければありがたいんですが。

 移民の方々についての議定書でございますけれども、難民と言われる方々が、例えば偽造パスポートを持って入ってくる。一義的には不法入国ということになるのかもしれませんが、いわゆる不法入国者というものと難民というものは、これは同じものだ、つまり、にせのパスポートを持って入ってくるんだから、法律を犯しているから、これは不法入国だというふうに思うのか、それはやはり難民であるというふうに見るのか、もちろん難民の方であればですよ、それは大臣としてどのようにお感じでしょうか。

南野国務大臣 難民の方は、先生、定義がございますよね。その国の状況というものも勘案していかなければならない。不法にお入りになってこられる方は、またそれなりの事情があろうかと思いますけれども、言葉の定義がありますように両者は違うというふうに思いますが、受け入れる我々としては同じような対応になるのかなと、心情的にですね。もちろん規則は違います、その規則が違うところによって、国がどう対応していくかというところは違います。

津川委員 要するに、まず、不法入国者という扱いとしてとらえるのか。それは、一義的には間違ったパスポートを持っているんですから、法律的に問題があるんですけれども、でも、その人は難民である。しかも、難民であって、状況によってまともなパスポートを持ってくるような状況ではとてもなかった。そういった背景があって来られる難民の方々というのは当然あり得るわけであります。

 そういう場合に、いや、彼は不法入国者であるという見方をするのか、それは難民であるという見方をするのかというところ、もちろん定義からいえばそれぞれ違いますという話ですし、これは政務官にお答えいただければもっとはっきりお答えいただけるのはわかるんですが、政務官のお話を伺いたいのではなくて、大臣としてはどういうふうに認識をされるか。

 最初に私の気持ちを言わせていただければ、やはり難民の方に対して優しい国でありたいと思うわけですね、日本という国は。法律を犯すことに対して優しいなんというのはとんでもない話で、それはだめなものはだめですけれども、ただ、難民という方々に対して、日本としてはしっかりと、受け入れる場合は受け入れて、お守りをする場合はしっかりと守りしますよ、こういう思いを政治家として私は持っておりますけれども、大臣はどのようにお感じかをまず伺います。

南野国務大臣 政務官にお答えいただければいいんですけれども、私個人といたしましては、やはり人道的に、問題をそこに絞って考えるならば、そのような考慮をしながら事に当たるのは当たるわけでございます。

津川委員 ありがとうございます。

 これまでの歴代大臣がどうこうということを申し上げるわけではありませんけれども、これまでの日本の難民に対する対応というものが、大変厳しい、あるいは冷たい対応であったという国際的な評価はあるわけでありますから、これはこれでしっかりと私も受けとめて、我々の考え方はもちろんありますから、すべて外国と同じように受け入れるべきというわけではありませんけれども、それは日本は日本のやり方がありますけれども、しかし、まさに人道的な観点に立って、難民の方々に対して、受け入れるべきはしっかり受け入れなきゃいけないという今大臣のお答えをいただきましたので、理解をさせていただきました。

 それでは一つ一つ質問に入らせていただきます。

 まず、今回の法案は、名前で言うと刑法等の一部を改正する法律案とありますが、中身は人身売買禁止法とか、そういうような言い方をしますけれども、これは前提となっているのが二つの議定書ですね。国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する人の取引を防止し、抑止し及び処罰するための議定書、いわゆる人身取引議定書、それともう一つは、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する陸路、海路及び空路により移民を密入国させることの防止に関する議定書、いわゆる密入国議定書という二つの議定書でございますが、この二つの議定書の趣旨及び目的について確認をさせていただきます。

南野国務大臣 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する人(特に女性及び児童)の取引を防止し、抑止し及び処罰するための議定書、いわゆる人身取引議定書と申しておりますが、これは人身取引を防止し、及びこれと戦うこと、または人身取引の被害者を保護し、及び援助すること、並びにこれらの目的を実現するために締約国間の協力を促進することを目的として、人身取引に係る一定の行為の犯罪化、人身取引の被害者の保護、人身取引の防止措置、国際協力等について規定するものであります。

 また、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する陸路、海路及び空路により移民を密入国させることの防止に関する議定書、これがいわゆる密入国議定書でありまして、密入国の対象となった移民の権利を保護しつつ、移民を密入国させることを防止し、及びこれと戦い、並びにこのために締約国間の協力を促進することを目的として、移民を密入国させることを可能にする目的で不正な旅行証明書を製造すること等の一定の行為の犯罪化、または移民を密入国させることの防止措置、国際協力等について規定するものであります。

 今回御審議いただいております刑法等の一部を改正する法律案は、両議定書の締結に伴い、また、近年における人身取引その他の人身の自由を侵害する犯罪の実情等にかんがみ、刑法、出入国管理及び難民認定法等を改正し、所要の法整備を行おうとするものであります。

津川委員 この二つの議定書及び近年の人身取引その他の人身の自由を侵害する犯罪の実情等、この「及び」の部分については、先日の参考人の方もお話をされておりましたが、例えば超長期にわたる誘拐監禁事件があって云々ということで、それについて法定刑の引き上げというものをされる、そういう話だと思いますが、ちょっと、この文章を読んで奇妙に感じるところがあるんです。

 こういう議定書があったので、あるいはそういう人身の自由を侵害する犯罪が非常にひどいものがあったので今回のこういうものをやるというのはいいんですが、日本で、特にこの人身取引というものが何でこんなに横行してきたのか。国際的に見ると、アメリカにおいてもクリントン政権のときにこの法律をつくったそうでありますから、日本だけで起こっているわけではなくて、世界じゅういろいろなところで、いろいろな形での人身取引が横行しているのかもしれませんが、特に日本がひどいというような指摘をされるに至りまして、何でこんなことが日本で起こったのかと。

 つまり、議定書が、国際連合の中で国際的にこれに取り組まなきゃいけないという話と、日本で多発をしているという話、ちょっとこれはまた一つ分けて見る必要があるのかなという感じがいたしましたので、確認をさせていただきたいんです。

 昨年の十一月に、私もこの問題について一般質疑で大臣に質問させていただきました。そのときはまだ、もちろん法案も出ていませんでしたし、基本的な政府としての方針も、出る一カ月ぐらい前だったでしょうか、その段階でありました。この段階で質問させていただいて、大臣は、いずれにしても人身取引の撲滅に一生懸命取り組む、その旨の御発言をいただいたわけでありますけれども、何で日本でこの人身取引が横行したというふうに考えられるか、御見解をお伺いします。

南野国務大臣 人身取引の問題が我が国において深刻であるということについては、もう先生御案内のとおり、私もそのように体感いたしております。

 この背景とか原因といたしましては、国際的に見ましても、やはり地域間の所得格差もあるのかなというふうにも思いますし、また、人の移動が最近本当に容易になってまいりました、活発になってきております。また、犯罪の国際化または組織化というような問題が進んでいるというふうに思います。その一方で、性的搾取等の需要が日本に存在すること、これは大変嫌な問題でありますけれども、このようなさまざまな事情が指摘されているものというふうに認識いたしております。

 政府が昨年十二月に策定いたしました人身取引対策行動計画は、このような人身取引の背景や原因となり得る事情も踏まえたものでありますので、今後も人身取引の防止、撲滅を図ることは当然でありますが、この行動計画に盛り込まれた施策を着実に実行していく所存であります。

津川委員 貧富の格差が大きくて、経済的な格差が大きくて、例えば外国で働かれている方々は、厳しい生活の中で一生懸命働いてもなかなか楽にならないけれども、日本に行って、多少は危ない仕事でも多少やってしまうと、それでまとまったお金が入って、相当生活が楽になる。実際にそういう例があるようでありまして、それで国に豪邸が建って、それを見た人が、日本に行けばやはりこういうことができるのかと。どんな仕事をしてきたかはよくわからないし、あるいは大体察しがつかないでもないけれども、それで自分の家族、親、兄弟、みんな飢えに苦しまずに生活ができるんだったら、やはり自分は身を挺してやってみようかという方が生まれてくるのも、これは背景としてはあり得るのかなと思います。

 性的搾取が日本にあるということも今指摘をされましたが、あるいは、移動が非常に楽になったといったことも指摘をされましたけれども、だから日本に多いというのはちょっと違うような気がするんですね。それはアメリカにあってもいいですし、ほかの国にあってもいいはずであります。ほかの国にもたくさんありそうなところが、日本では非常に多い。しかも、取り組みがおくれたということもあります。あるいは、先日参考人で来ていただいた現場の方々のお話を伺っても、いまだにこの人身取引、人身売買の全容がわからない、駆け込んできてくれた人たちの対応は何とかできるけれども、駆け込まない人がどのくらいいるのかわからない、全体がどのくらい起こっているのかすらまだわからないという状況ですね。

 参考人に質問させていただいたときも、いろいろな意味で調査をしている、調べているというような話もしていただきました。それも大変大事なことでありますけれども、なぜ、これまでおくれたのか、それから、日本の対応がこれまでおくれたのか。世界の中でも日本の対応がおくれたということが、今日本で非常にこの人身取引、人身売買が横行してしまった理由の一つではないかと思うんです。つまり、取り締まりが非常に緩い。商売と言っていいのかどうかわかりませんが、結果的に金もうけができてしまう、こういう需要もある、こういう環境がある意味で整ってしまっている日本でこういったものが横行した。

 その背景、需要云々ということもさることながら、その問題に対する問題意識が低かった。前回申し上げたときも、私自身もこの問題についてほとんど知らなかったということを申し上げました。民主党の中で、この法律をつくるべきだというチームを担当させていただいて、初めてこんなひどいことがあるのかというのを勉強したぐらいでありまして、私の地元の周りの方に聞いても、そんなことがあるのかという話で、だれもほとんどこの認識をお持ちの方はいらっしゃらないんですね。

 国民の認識という部分もあるんですが、この犯罪に対する認識が非常に低かった、そして対応が非常におくれたということが、日本でこの人身取引が横行した一つの原因になったんじゃないかと思うんですが、それについて御意見ございますでしょうか。

南野国務大臣 いろいろな理由があろうかというふうに思っておりますけれども、我が国の人身取引の実態、またはそれに対応する取り組みの状況につきましては、国際機関または米国の国務省から厳しい御指摘がされたということで現在に至っているわけですけれども、そういうことは承知いたしております。

 我が国の取り組みについて十分な理解がいただけない部分もあるということについては残念なところもありますけれども、法務省におきましては、こういう指摘も踏まえながら、人身取引の実態や国際的な動向を踏まえながら、さらに撲滅、そういった方向に向かって進んでいきたいと思っております。

 おくれたということについては、もっといろいろな背景もあるのじゃないか。経済的な問題点もありますし、外国の方たちがお越しになってそういうお仕事をされることによって、それをお仕事と言えるかどうかわかりませんが、外貨が稼げるというようなことでございますので、そういう意味では、大変悲しい状況でありますが、そういう環境が温存されていたということも申し上げられると思います。

津川委員 日本の対応について理解をしていただけないのが残念というのは、政府がやったことを私が理解しなかったのが残念という雰囲気にも聞こえなくもなかったんですが、法務大臣ですからそういう言い方になるのかもしれませんけれども、やはり、対応は非常に不足をしていたということはまず認識をするべきだと思うんですね。不足をしていなかった、十分な対応をしてきた、こういう認識ですか。どうぞ、お答えください。十分な対応をしてきたというお考えですか。

南野国務大臣 だれも十分な対応をしてきたとは言っていませんけれども、女性の感覚と男性の感覚は違うのではないかな。どういうのが十分であり、どういうのが十分でないかということもありますけれども、政府全体としては……(発言する者あり)だから、それは対応がおくれていたということは言わざるを得ないと思っております。

津川委員 対応がおくれていたということはとりあえず認めていただきました。別にこれは議論するところじゃないと思います。女性の感覚と男性の感覚というと、ちょっとなかなか迷路にはまり込みそうなので、私はそれについては聞きませんが。

 何でこの対応がおくれたかということについてですが、根本的に、人権の問題のとらえ方ではないかと思います。ちょっと大臣にまた伺いますが、日本で日本人の基本的人権を保障する法的根拠というのは何でしょうか。

南野国務大臣 どうしてお尋ねになったのかなと不安に思いましたが、憲法ではないんですか。

津川委員 正解でございます。大変失礼な質問をしたかもしれませんが、憲法で規定をしている基本的人権は日本人の人権である、こういう解釈がありますね。外国人の人権を保障する法的根拠は何でしょうか。

南野国務大臣 外国人の方々を日本で受け入れた場合、日本の法的根拠に合わせるということも一つの、その方々の人権を守るということにもなってくると思います。

津川委員 日本にいらっしゃる外国人には人権がないということを私は言っているんじゃなくて、人権はあるものですし、保障されなきゃいけないんですが、法律的な根拠はどこに求めていらっしゃるかということを伺ったんです。

南野国務大臣 それは、その方々がどういう目的で日本にお入りになってくるのか、それが正式な形でお入りになっていただくのであれば、我が国のルールに合えば我が国のルールがその人権を守っていくものと思っております。

津川委員 日本国憲法第十一条は「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。」と書いていますね。それは国民、日本人の話なわけですよ。ところが、外国人が含まれないんじゃないかという話なんです。ですから、日本にいらっしゃる在日外国人、来日外国人の方々の基本的人権を保障する法的な根拠は何ですかと。日本に来たから何か守られるという話ではなくて、法律的にどういったところで保障されているのかという法務大臣の見解を伺いたいんです。

南野国務大臣 我が国にお越しになられた外国の方々は、トータルとしての国連の人権という問題点でもカバーされていると思います。

津川委員 それは正解だと思います。要するに、国連憲章ですとか世界人権宣言ですとか、そういったところで外国人の人権というのは読むこともできますし、日本国憲法の中でそれを読むことができるという説も多いですし、これは考え方ですから、大臣の見解を伺いたかったんです。だから、日本にいらっしゃる外国人には人権は守られないという結論はないにしても、では、どういったところで外国人の人権というのは守られるのかというのは、やはりちゃんと議論をする必要があると私は思うんですね。

 例えば国際的にも、外国人の方、その国に来たほかの国籍の方の人権をどこまで守るのかというのは、すべて守るわけではなくて、その権利によるだろう。ある権利は、例えばその人の自国で享受できる権利と同程度のものを保障すべき、ある権利は、その国のほかの国民の皆さんと同じような権利を享有するように認められるべきとか、それは権利によっていろいろ見解があるわけですけれども、首を振られていらっしゃいますが、その考え方は違いますか。今、首を振られていらっしゃったから。そういうことじゃないのですか。わかりました。よくわからないんですが、ちょっと不安になりましたけれども。

 そういう考え方がありますが、それで、何であえて伺ったかというと、まさに日本において外国人の方々の人権は十分に保障されていないんじゃないか、このことを申し上げたいんです。それは、全くされていないというか、ある程度されているというか、これは程度によって違うかもしれませんけれども、基本的には、私たちの日本人の感覚として、外国から来られている方々の人権をいかにして守るかという議論は余りしてこなかったということは言えると思います。

 日本における在日外国人、来日外国人の方々の基本的人権というものは今十分に保障されているという認識をお持ちかどうか、法務大臣の見解を伺います。

南野国務大臣 何を称して十分かという問題点は残るだろうと思いますけれども、法に従ってその方たちとどう交流していくかという、その基本的原則については、受け入れておられる部分もあるし、また、それでは不十分であろうと言う方たちもおられると思いますが、あくまでもその方たちが、正規に我が国にビジットしていただいている方、お仕事されている方、いろいろな方々がおられますので、どの方たちを指しておっしゃっているのかというのはちょっとわかりませんが、適切に我々の法にアダプトしていただいている場合、また、国連の法にアダプトしながら日本の法律とドッキングできているような場合には、人権は十分守られていると思っております。

津川委員 人身売買の話で、正規のパスポートで、自分でとって、自分でお金も払って日本に来たけれども、だまされて働かされて、何とか命からがら助けてくれというふうに大使館なり警察なりに逃げ込んだ方が、何の保障もなく退去強制処分になったという事例は山ほどあるのは御案内だと思うんですが、この件について、では、そういった方々の人権は日本の法律でどういうふうに守られていたんですか。

南野国務大臣 その方たちは正規のルートでお入りになったかもわかりませんが、特定の人をお指しになっているとは思いますけれども、その方たちがどのように処遇されたかということについては、悪い処遇の仕方をした人も悪いんじゃないですか。

津川委員 それは悪いですね。それは、悪い処遇をした人たちは悪いんですけれども、そういう目に遭った人の人権をどういうふうに守るか、守らなきゃいけないか、救済しなきゃいけないかということについて、日本政府はこれまで退去強制処分で、はい、おしまいとやってきた例が幾つもあるわけですよ。この話、知っていますよね、当然。だからこの法案を出してこられたわけでしょう。

 だから、この問題について、外国人の人権というものがこれまで残念ながら日本では守られてこなかった例があったんじゃないか。そして、まさに人身取引、特に、非常に狭い範囲かもしれませんが人身売買というこの問題の中で、非常に深刻な人権侵害が起こっていたにもかかわらず、残念ながら日本政府はそこに対してはちゃんとした対応をしてこなかった。日本の法律で対応してきたと言うんですけれども、日本のどの法律で対応してきたんですか。

南野国務大臣 いろいろなケースがあるかもわかりませんが、人身取引の被害者であることが明らかな方の場合には、形式的には収容令書を交付しますが、同時に仮放免を許可し、事実上収容しないというような形でその方の自由というものを享有していただきたい。被害者の方の心身の状態なども十分に配慮をしながら、人権と人道の観点に立って適切に対応しているものというふうに思われます。

津川委員 特にここ一年ぐらいでしょうか、運用でそういった対応をしてきていただいたという話は聞いていますから、現場からは随分、十分と言えるかどうかは別として、待遇はよくなってきたというような評価もいただいておりますから、それはそれでいいんですけれども、それをまさに法律にしようとしたのが今回の法律ですよね、大臣。

 ですから、今までは残念ながら、入管法で言うところのオーバーステイだとかなんとかという、そこで一発でアウトになって、それ以外の彼女たちの人権についてどうこうするということが事実上なかなかなされてこなかった。この問題が非常に大きくなってきた段階で、ようやく対応をし始めていただいたというところだと思うのです。

 この問題について、昨年の十一月に質問をした段階で、これはもう以前からあったんだけれども最近ようやく脚光を浴びてきたという話について、これまでの問題意識はどうだったかということをたしか局長に伺いましたら、新聞で何かちょっと見て、これは問題になると思いました、そういう話なわけですね。新聞で見て問題だと思っていただくのも結構なんですが、入管を預かる局として、実際に、国がそういう被害者の方々に対して、ある意味でさらに追い打ちをかけるような仕打ちをしてしまったということについてはやはり反省をしなければならないし、だからこそ、その反省に基づいてこの法案が出てきているんだと思うんです。

 ですから、大臣にはぜひ、人権といっても、先ほど私が申し上げましたいろいろなものがありますし、どこまで保障されるのかというのも議論はいろいろあるところですけれども、最低限、例えば生存権、こういったことは当然のことながら守られなきゃいけないでしょうし、今、一つ一つやる気はありませんけれども、こういったことを考えたときには、人身取引の被害者の方々の人権は、まず人身取引をされた段階で非常に人権侵害をされた上に、その後の対応がまずかったがために残念ながら人権が回復できなかった、だからその視点に立ってぜひ運用をしていただきたいというふうに思います。

 もう一点質問をさせていただきますが、今回の提案理由の中で、先ほど山内委員からも質問のあったポイントですけれども、運送会社がチェックをするとかなんとかというそこの部分です。この法案の要点の第二番目で「テロリストの入国防止のための規定の整備を行う」というふうに書いておりますけれども、これは具体的にどういう整備をされるんでしょうか。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年十二月に、政府で、テロリストを水際で防止するための行動計画を策定されておりますが、その中にいろいろな施策が盛り込まれておるわけでございます。

 今回の法案で御審議いただいております関係で申し上げますと、航空会社等の職員に搭乗口で旅券の確認をしていただく、これを義務化するという規定を盛り込んでおりますけれども、これがテロリストの水際排除のための一つの方策ということで、今回は議定書の中にもそのようなことが、義務化をすべきだという規定がございますので、あわせて、今回、テロ対策という趣旨も含めて法案としたものでございます。

津川委員 外国の入管当局との間の情報提供についてもここに含まれるというふうに考えられますか。確認します。

三浦政府参考人 御指摘のとおりだと思っております。

 ただ、行動計画そのものに、情報提供というようなことが政府の行動計画の中にあるわけではございませんが、テロ対策としては非常に有用であると思っております。

津川委員 済みませんが、大臣、今お話しされたことはさっき山内議員が質問されたことと全く同じことでして、同じ範囲の話ですから、このぐらいは大臣にお答えをいただきたいなと思います。

 それで、冒頭に、大臣に議定書の趣旨と目的について御説明をいただきました。その議定書の中に、今局長からもありましたが、旅客会社の旅券確認義務規定ですとか、外国の入国管理当局に対する情報提供にかかわる規定を設けなさい、あるいは会社に対しては罰則も設けなさいというふうに書いています。この法律の中にまさにそのことが書いてあって、罰則規定も書いてあります。

 これは、議定書にあるからこういう規定を設けたんだと思うんですね。それはテロ対策にも有効ではないか、そういう解釈は結構ですけれども、この法律をつくったのは、議定書にそういうふうにしなさいと書いてあるから書いてあるんだと思うんです。これ以外にテロ対策として規定を整備する部分というのはございますか。局長でよろしいです。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の法案に盛り込まれている対応以外ということでございますと幾つかございますけれども、政府の行動計画の中で規定されておりますテロ対策としましては、水際対策ということで、例えば外国人が来日する際に指紋ですとか顔の写真を……(津川委員「この法律の中で」と呼ぶ)今回お願いしている法律では、直接的にはそういうものはないと思います。

津川委員 大臣、ないんですよ。「テロリストの入国防止のための規定の整備を行う」と書いていますが、その部分は何かというと、議定書に書かれている部分ですね。議定書でこういう規定をつくりなさいと言われてつくっているところの話です。

 ですから、密入国議定書の中で、旅客会社の旅券確認義務あるいは外国の入管当局に対して情報提供をするというような規定を設けなさいと言っているその理由は何ですか。議定書の中でなぜこういうものをつくれと言っているんですか。

南野国務大臣 それは、そういう議定書の中に含まれているテロリスト対策ということも、この人身取引ということについては関連し、大切な課題であるから、それを一緒にあわせながら、もっといい方向で、グローバルな方向でこの法案が展開できればということだろうと思います。

津川委員 私、あえて申し上げましたが、議定書は二つありますけれども、今言っている議定書は人身取引じゃないですよ。密入国の議定書ですよ、今人身取引なんとかとおっしゃいましたけれども。密入国の議定書の中にテロリストについての規定はありますか。答えてください。

三浦政府参考人 私からお答え申し上げます。

 人身取引議定書につきましては、まさにこれは人身取引の防止、撲滅のために、この被害者が国際間の移動という形で取引の対象になるということもあり得るわけでございますから、ここをチェックするという意味合いで、委員御指摘の航空機の搭乗の際のチェックでございますとか、そういう問題が提起されていると思いますし、また、もう一つの、人の移動に関しましては、犯罪組織等が偽造旅券等をつくりましてこれを密入国を図るような者に提供するというようなことで、国際間の不法移民というものが横行しているということで、これにきちっと対処する、こういう目的であろうと思われます。

 このことにつきましては、当然、議定書にうたわれているというだけではなく、我が国におきましても、特に最近の実情から見ますとそういった事例が頻発しておりますから、これにきちんと対処するという意味で当然必要性があるということから、法案に盛り込んでいるものでございます。

津川委員 だから、議定書以外の必要性とか、それをテロ対策に使えるかどうかという話は、それはそれで結構ですけれども、その話じゃなくて、議定書の中でこの二つの規定を設けなさいと言っている理由は何ですかと今大臣に伺ったんですよ。この法案提出の理由はこの二つの議定書でしょう。しかも、私は丁寧に、きょう冒頭の質問は、この二つの議定書がどういうものかということについて答えてくださいと、わざわざ質問通告までしたわけですよ。質問通告しなくても、この法案の背景になっているんですから、そのぐらいはまずちゃんと確認をしていただきたいと思います。

 人身取引議定書ではなくて、人身取引議定書の中にこの規定をつくれなんてどこにも書いていませんからね、そうではなくて、密入国議定書の中でこの二つの規定をつくれと言っている目的は何ですか。お答えください。

南野国務大臣 先生の御質問は、密入国議定書の締結に関する問題点ですね。

 この趣旨は、国連で採択された密入国議定書、これは、他人を不法入国させることを可能にする目的での不正な旅行証明書の製造等の犯罪化等について規定しているものが、この密入国議定書であります。

津川委員 大臣、この議定書を読まれましたか。だって、最初に書いてあるでしょう。前文、これはテロリストを締め出すためのものではなくて、一番最初に申し上げましたけれども、移民が不法に密入国をさせられるということは移民の人権侵害だと言っているんですよ、「移民の生命及び安全を危うくすることがある」と。だから、これだけ読むと、これは何の議定書だという話になると思うんですね。

 密入国をさせる、そういうことをする組織がけしからぬというのは、それはそれで理解するにしても、密入国をさせるとその移民の人権も侵害されるから、だからそれは厳しく取り締まるんだと。それだけ聞くと、さっきの移民と難民の話じゃないんですが、何か難民に対してすごく厳しい議定書のような感じがすると思うんですけれども、これはこういう厳しい議定書なんですよ。これはそういうものですよ。これはそういうふうにしか書いてないですよ。そうじゃない部分があるなら教えてください。

南野国務大臣 これは、一応法律としていろいろな区分けがされておりますけれども、それに対する当たり方、対応の仕方というのは人道的であり、人権を尊重した形で対応していくわけでございますので、どうしてそうおっしゃるのかわからないです。

津川委員 ですから、移民を不法に密入国させてはならない、こういう状況のときには密入国させてもいいですよということはどこにも書いてないんですよ。だめ、だめ、だめということだけ書いてあるんです。密入国は移民にとってよくないからだ、あるいは、そういったことを取り仕切る犯罪組織はけしからぬから、そういったことは認めてはいけないということを書いているんですよ。これは移民をどういうふうに受け入れましょうというふうには書いてないですね。それはいいですか。

南野国務大臣 それは、我が国でつくった法律に対して、お互いルールを守りましょうということですから、密入国ということは、我々の全体的な法律、いろいろあると思いますけれども、その法律の中でルールに適合していない問題であろうかと思っております。

津川委員 申しわけありません、もう一回質問しますけれども、法律がどうこうじゃなくて、移民に対してどういう議定書であるかという認識なんです。テロリストを締め出すという話ではなくて、これは移民を締め出すという話なんですよ、違法に入ってくる者に対して。だから、そういった面においては、例えば難民としてどこか国外に逃げようとする人に対しては、この議定書だけを見ると非常に厳しいように見えるけれども、そういう認識を大臣はお持ちかということを伺っているんです。

南野国務大臣 このつくった法律のルールを守っていこうということにつきましては、いろいろな問題点があると思いますけれども、難民の方については例外であるということでございます。

津川委員 それは難民条約の話ですよ。難民をいかにしてしっかりと受け入れるかという話、もっと大きな話が背景にあって、それはしっかりやりましょうと。一方で、そのさまざまな取り組みに対して、全くの別ルートで犯罪組織が不法に移民を密入国させようとする、そういう窓口はしっかりと閉じましょうという話なわけですよ。ですから、大臣が今回提出をされたこの法律の背景となっている議定書は、移民をこういうルートからは入れてはいけませんという話であって、テロリストを見つけ出しましょうという話じゃないわけですよ。ですから、移民に対する対応というのは、本来、密入国で入ってくる移民はけしからぬという話じゃないんです、基本的に。そういうやり方は移民にとって決してプラスではない、そういう背景があるわけですよ。

 さっきから、あるいは先日からの議論を聞いていますと、どうも密入国する人間はテロリストだと言わんばかりの、何かそういう対応の答弁をされるんですね。だから、余りやり過ぎちゃいかぬよ、はい、わかりましたというのは、それは確かにそのとおりなんですが、この議定書で言っているのはそういうことではなくて、つまりテロリストを締め出すという話ではなくて、そんなルートから移民が入ってきてはいけない、それはあなたたちにとってプラスではない、あなたたちは危険になるし、生命も危うくするよと。だから、当然のことながら、難民についてはしっかりとした別のルートを確保する、安全なルートを確保する、これをしっかりやらなきゃいけないんです。これをやらずに、これだけ厳しくしたら、それこそ難民はどこから入ってくればいいんだという話なんですよ。その認識をまずお持ちいただきたいと思います。

 それから、もう一度伺いますけれども、ですから、テロリストの入国を阻止するというふうにはこの規定は本来使えないはずなんですよ。移民なわけですから、移民が間違ったルートで入ってこないようにするという話ですから。それが仮に難民であれば、当然のことながらしっかり受け入れなきゃいけない、さっきの答弁のとおりなんですけれども。だから、テロリストであるかどうかをチェックする規定ではないはずなんですけれども、大臣はこれは、議定書ではそうはなっていないけれども、それを日本の法律にするときにはテロリストを排除するための規定にした、こういう認識でいらっしゃいますか。

    〔委員長退席、吉野委員長代理着席〕

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほども若干御説明させていただきましたが、委員御指摘のとおり、要するに議定書の範疇は超える問題でございます、テロリストの対策というものは。ただ、最近、国際的にもテロ対策というものは非常に重要な課題になっておりますし、これは我が国でも喫緊の課題でございますので、政府におきましても昨年十二月に行動計画を策定したわけでございまして、その際に、テロリストが我が国にみだりに入国できないようにするのにはどういう方法があるかという、その一つとして位置づけたということでございます。

津川委員 テロリストの入国を阻止するというのは大変大事な話でありますから、それはそれでやらなきゃいけない。それはやるべきではないと私は決して申し上げません。ただし、そのことと、移民が不法に入国しようとすると、それは移民にとってプラスではない、そういう趣旨の議定書の規定を混同すべきじゃないと思うんですよ。これはぜひ運用のときに認識をいただきたいと思います。また、本当は大臣に認識をいただきたかったんですが、どうも認識いただけないようなので、ちょっと次の質問に移ります。

 これまでも、人身売買が国内で横行してきたことに対して、いや、それは国内の法律で対応できるんですと言ってきたけれども、実際には全然対応できてこなかった。だから、今回こういった具体的な人身売買罪というものをつくる、そのことによって取り締まりが非常にしやすくなるという話だと思います。

 いろいろな法律を準用すれば確かにできるわけですね。今までも人身取引の摘発というのは随分やっていただきまして、これは数が多いかどうかわかりませんけれども、風適法ですとか、売防法ですとか、職安法、入管七十三の二、入管七十四の六、それから公然わいせつ等々、幾つかのものを使って、つまり、既存の法律を使って人身取引事犯の検挙をしているわけですから、今までのものでもやろうと思えばできたはずです。だけれども、しっかりとした法律がなかったからできなかったと。

 この人身売買という名前についていかがなものかという感じがしなくもないんですが、ただ、それでも今のひどい現状を一刻も早く改善するという意味ではやはりこういったことは必要だと思います。

 同時に、これまでも多くの委員の方が指摘をされてきたことですけれども、被害者の保護ですね。被害者の保護についても今までのルールで準用すればできるんですという話なんですが、これは言ってみれば、今までの人身取引を取り締まれてこなかった言いわけと全く同じなわけです。今のルールを使えば取り締まれますと。それは確かに取り締まれますよ。だけれども、実際には、十分には取り締まれなかった。被害者保護も、確かに、今のルールで準用すれば、何とか温かくサポートすることができるかもしれない。でも、やはりここはしっかりした立法措置が必要で、財政的な措置も必要だと思いますが、大臣の見解を伺います。

南野国務大臣 我が国の刑罰法規の基本法である刑法に人身売買罪を設けるということでございまして、国民の規範意識を喚起しまして、そして人身取引に対する抑止効果、防止効果というようなものを考える意義は大きいものというふうに思っております。

 これは人身売買ではありませんが、DV法におきましても、これはある程度の身の危険とかいう問題もそこにありまして、それを表に声を出してもらえるような方策をとったことによって今の形が展開されている。

 だから、このたびも、この人身取引、いろいろなルートがあると思いますけれども、そういう形で我々の対策というものの展開がうまくいけば、その方たちにとっても人道的な対応ができるというふうに思っておりますし、その効果を具体的な数字で述べるのはそれは困難であります。

 この法律案では、人身売買罪のほか、人身取引に関連する一連の行為を処罰の対象ともいたしております。捜査機関におきましても、人身取引事犯に対しては、これら新しい罰則を積極的に適用して、その取り締まりの強化ということも一つは必要なことであろうというふうに思っております。目的は人身取引の防止や撲滅に資していきたいということでございます。

津川委員 答弁になっていなかったんですが、ちょっと時間がなくて困っちゃったんですけれども。

 最後に、申しわけありません、一点だけ。警察庁に来ていただいたので答弁いただきたいんですけれども、大臣も、今言わなかったけれども、前回は金がないという話をされたんですが、ビラをつくられましたね。百万枚つくられたそうですけれども、あれは幾らかかりましたか。

荒木政府参考人 お答えをいたします。

 リーフレットは、警察庁が、関係大使館あるいは省庁、NGOなどと協力して企画をいたしまして、社会安全研究財団というところに依頼をして百万部つくりました。約四百四十万円かかったと聞いております。

津川委員 ああいうのも結構だし、できることは何でもやればいいと思いますけれども、お金がないというんであれば、ああいう、ちょっとどう使うのかよくわからぬところに四百四十万も使うよりも、被害者保護ですとか、もう少し実効性のあるところに予算を集中させていただきたいと思いますので、これは他省庁の予算だといって手を出さない話ではなくて、もう人権を守る話で、人権の担当大臣は南野大臣なわけですから、積極的にやっていただきたいと思います。

 終わります。ありがとうございました。

吉野委員長代理 次に、樽井良和君。

樽井委員 民主党の樽井良和です。

 引き続き、刑法等の一部を改正する法律案、人身取引について質問いたします。

 まず、ちょっと大臣に、その取り組みなり法改正の意気込みなり、そういったことを最初にお伺いしたいと思います。

 今回の法律改正もそうなんですが、共謀罪なり、あるいは今まで見てきた中で、最近どんどんと法律を改正しようという上がってくる流れの中で、どうも、国際法を批准するとか、あるいは国連やアメリカがこういうふうに言っているからこういうふうに改正しようというような流れが見受けられると私は思います。

 これは、実際に問題点があるんですから、自分の国をみずから正していかないといけないという姿勢を持たなければならないと思っていますが、大臣、外圧なしでもこの問題を同じように取り組んできたのか、あるいは外圧がなければ法律改正はしなかったのか、そういった姿勢をまずお答えください。

南野国務大臣 先生御心配でございましょうが、外圧なくしても我々はぜひやっていきたいという基本的な流れはあったというふうに私は思っておりますし、自分もそういうような姿勢で議員としての活動に取り組んできております。

 でも、このたびのことにつきましては、人身取引について、女性や児童の尊厳を著しく害する重大な人権侵害である、これを認識いたしておりますし、内外の情勢を踏まえながら、その対策を検討していたところでございます。

 国際的には、人身取引議定書の採択に先立ち、平成十年ごろから、G8及び国連における同議定書策定のための公式、非公式の会合に積極的に参画してきました。だから、これは言われてしたわけじゃないということの一つでございます。

 国内においても、平成十五年十二月に政府が取りまとめました犯罪に強い社会の実現のための行動計画、これに法整備を進めることを盛り込みまして、必要な検討作業を行ってきたところでございます。そういうように、我々は人から言われてということでないというふうに御説明できるかなと。

 このように、法務省といたしましても、条約や米国の指摘を後追いするのではなく、我が国の問題として主体的に人身取引対策を進めてまいりましたし、今後もこれに全力で取り組んでいく姿勢は変わりません。

樽井委員 お答えありがとうございます。

 ただ、何かこの国を見ておりますと、妙に、黒船がやってきたり、あるいは原爆を落とされたりしないと、抜本的に体制なりあるいは体質なりが変わらないなというイメージがあると思います。

 最近の法改正に当たっては、アメリカが言うとそれを批准するというイメージが、実際にはデータ的には多々あると思うんですね。

 例えば、セクハラなんかのああいった法律なんかでも、例えば日本でぱっと問題意識が出てきて改正するとかいうよりは、アメリカでこういう法律があるから改正するんだというような、そういった割と欧米批准型の法改正が多いと思います。データ的にきちんと、この国みずからの文化とか状況とかを考慮して、みずからここは直した方がいいということ、これをまず進んで自国の中で、どこからも言われなくてもやっていかなければならないと思います。

 もちろん、国際的に協調性を持ったり、あるいは国際的な批判をどんどん払拭していくというのは、外交上、大きなメリットもありますし、重要だと私も認識しておりますが、それだけではない、みずからもやる。

 そして、日本からも逆に、国際的にこういったことを改正したらどうですかという、言われっ放しじゃなしに、提案する側に立つぐらいの意気込み、そういったものも今後は必要なんじゃないかと認識しておりますので、その辺、十分配慮し、また考えていっていただきたいと思います。

 このたびの人身取引なんですが、どんな事件でもそうなんですけれども、水際でまず防止すること、これがまず第一だ、こういうふうに思っております。

 実際に、例えばこういったケースですと、パターンでいうと、フィリピンからの興行目的なんかで来られる、そういったケースが多いと聞いておりますし、大体、見る方も、ちょっとこれは怪しいなというのは、入国される方を見たら、直観として何となくわかると思うんですね。これは本当に家族旅行なのか、それとも、ちょっとぴんとくるものがあるというのは、入国の時点で当然わかると思います。

 これはいろいろなプライバシーの問題もありますので、事件の実態をちゃんと調査した結果を相手国に申し出て、それで相手国の承諾を得て、入国の際、例えば、いつまで興行目的で滞在されるおつもりなんですかということをちゃんと空港で入ってきたときに聞いて、その方がちゃんとその期間に出国しているのかどうか、こういうこともきちんとチェックすべきだと思います。

 そしてまた、ちょっとこの方はどういうことなんだろうか、怪しいなと思ってぴんときたときには、もし何かありましたらここに連絡してくださいとか、こういうことになった場合、こういうところに逃げてきたら私たちが守りますので大丈夫ですよとかいうことをきちんとレクチャーしてあげる必要があるのかなと思うんですが、そういう水際対策の方はどうなっておりますでしょうか。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、委員御指摘の、興行の話が出たわけでございますけれども、興行に限らず、我が国で就労をしようとする目的で入国してくる外国人の方につきましては、基本的に、事前に日本の入管の方に、日本で就労する資格があるかどうかということで審査をする制度がございます。これで、入管の方で審査をして、問題ないということが認められた者につきましては証明書を発行いたしまして、その証明書を御本人が自国で手に入れて、ビザが必要な場合、ビザを公館で、領事館等で取得した上で入国してくる、日本に上陸する、こういうシステムになっておりますので、事前にかなり厳密なチェックができておるというふうに思っています。

 もちろん、御指摘のとおり、それだけではなくて、当然、上陸審査の際には厳格に審査をするわけでございます。中には目的を偽って、不法就労などの目的を隠して来る方もいる可能性がありますので、当然そういう方については厳しくチェックをしていくということになると思います。

 そのほかにいろいろ、我々としても、先ほどもちょっと御質問で出ましたが、人身取引の観点から申し上げますと、被害者になり得るというような方、これは被害者そのものだというのを見分けるのはなかなか難しいところもあるかとは思いますけれども、入国審査官がかなりそういういろいろなケースを見ておりますので、ぴんとくるというような場合もあるかと思います。

 そういうケースにつきましては、今我々が考えておりますのは、別室で詳しい事情を聞くというようなことを考えております。セカンダリー審査、こういうふうに呼んでおるんですが、そのまま入国のブースでその人にいろいろな質問をしておりますと、後に並んでいる方がつかえてしまいますので、別室に移っていただいていろいろ事情を聞くというようなこと。そういうところで、もし人身取引の被害者として連れてこられたということであれば、これは被害者として直ちに保護の手続に入る必要があろうかと思います。

 それと、あとは広報という関係でいきますと、リーフレット等を、当然多くの外国人の方に、もし被害に遭ったような場合には、こういうところに連絡すれば保護が受けられますということを知っていただく必要があると思うわけでございますが、これを今警察庁の方から三十万部程度いただいておりまして、これは全国の入管や支局、空港などに置いておるわけでございますけれども、こういうものをなるべく多くの方に目に触れていただけるような方策を今後とも考えたいというふうに思っております。

樽井委員 ありがとうございます。伺いますと、かなり厳密にやられているという話なんですが、実際に人身取引が問題になっているわけですから、それでも入ってきて、やはり問題になっているわけであります。

 先ほどおっしゃいました別室でのセカンダリー審査、あるいはリーフレット、これも非常に大事だと思います。いろいろな国の言葉で、こういったことになったときにはこっちに逃げなさいとかいうことを入国された時点で言ってあげないと、捕まってしまったら後は情報がとれないということもありますので、その辺は徹底していただきたい。

 それで、言葉巧みに、こういう感じで、こういうことを言われて、こういったブローカーに引っ張られてあなたは入国しているんじゃないですか、それだったら、こういうケースがあるので気をつけなさいよと言えば、水際で、あっ、ひょっとしたらというので思い当たる節があれば、そこで保護を要求してきたりとか、あるいは被害者になる前に救われることもあると思いますので、その辺はこれからなお一層力を入れていただきたいことを強く申し述べておきたいと思います。

 それで、偽造のパスポートで入国されるんだとか、そういう話はよく聞くんですが、実際に偽造のパスポートなどが多いということであれば、IC旅券など、偽造防止技術を使った、新しいそういったパスポートなりを世界的なスタンダードとしてつくるべきじゃないかと思うんですよ。そういった情報の国際共有化とともに、防止するための新技術の開発、こういったことも日本はどんどんと世界的に訴えていくべきじゃないかと思うんですが、この辺は、そういう姿勢としてはあるんでしょうか。いかがでしょうか。御所見の方をお伺いいたします。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 私ども入国管理局の仕事は、旅券等の真偽をきっちり確認して出入国の審査を行うということでございますが、旅券自体は、我が国では外務省の所管でございまして、外務省の方で発行されるわけでございますが、先般旅券法の改正が成立いたしまして、日本でもIC旅券を発給するように制度として成ったわけでございます。これは偽造等が非常に難しいとされておりますので、出入国審査を適正に行うためには非常に有用であると思っておりまして、我々も、こういったものが世界的に広がっていけば、当然我が国の出入国管理にも大いに資すると思っております。

 現在、そのようなIC旅券等の読み取りの技術等について鋭意検討しておるところでございます。

樽井委員 偽造されるといいましても、普通、紙にぺたっと写真を張っているような書類であれば、むしろ偽造されるのは当たり前なんでありまして、そういったものが偽造されるからこういった事件があるんだということでしたら、やはり単純な話、では偽造できないものをつくろうという方向に持っていくべきだと私は思います。

 また、先ほども言いましたけれども、言われっ放しじゃなしに、日本からも出していこうという姿勢が大事だと思いますので、日本のそういった技術を生かして、偽造できない、こういった技術のパスポートをつくれますよということで、日本からも世界に、こんなものでやりませんかと。しかも、発展途上国の技術ではそれがつくりにくいでしょうから、そういった面では、ODAなりそういったところに支援するのは、国際的に見ても大事なことじゃないかと思います。

 そういう姿勢を持っていただきたいということ、日本からもやっていただきたい、その中には、自分のところの得意わざである技術なんかも使って、世界にきちんと、防犯あるいは偽造防止のスタンダード、こういったものも確立していくような方向性を持っていただきたいということを訴えておきます。

 それで、だまされて売春を強要されている日本にいる外国人と、金銭目的で、同意の上で、半ば確信犯的に売春をしている外国人の割合を知りたいのですが、数字的にはどんなものになっていますでしょうか。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員御質問の、金銭目的が最初からあったかどうかというようなことについて、なかなか詳細は、全貌は把握できておらないわけでありますが、当局で把握している人身取引の実態ということで、把握している限りで御説明させていただきますが、本年の一月から五月の末までに、人身取引の被害者として入管で保護または支援を行った方が二十六名おります。これを国籍別に見ますと、フィリピンの人が十三名、タイの人が十名、コロンビアが三名、こういう数になっております。

 この二十六名の方につきまして、不法入国ですとか不法残留等の退去強制事由に該当していたために在留特別許可を与えた人数が十五名になっております。また、十一名の方は正規滞在者、つまり、我々が被害者として把握して保護を開始した時点ではまだ在留資格がありまして期限内ということでありまして、不法滞在状態にはなっておらなかったわけでありますが、この十一名は全員フィリピンの方でございまして、そのうちの一人につきましては、在留期間の更新をして、引き続きとどまるような措置をとっております。また、そのほか、帰国支援等で、残りの十名の方については、IOMという機関がございますが、ここにお願いをして、帰国の支援をしたというような状況でございます。

樽井委員 今の関連で、あわせて質問をいたしますが、要するに、例えば、通常の風俗雑誌であるとかスポーツ新聞に、よく風俗の広告があったりします。あと、インターネットの例えばエロサイトの中のバナー広告とか、そういうところで一般的に、何かクリックしたら宣伝されている中にこういった被害者の方がいるのかどうかですね。

 何か、通常の風俗と言ったらあれですけれども、どこかその辺を歩いていてぱっと客引きされる、お兄さん、みたいなフィリピン人の方がそうなのか、それとも、物すごくアンダーグラウンドな、何か地方の、こんな店あるのかというところに、知っている人だけは知っているような店でやっているのかどうか、この辺のことをちょっとお伺いしたいんですが。

荒木政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年中、人身取引の被害者として七十七人を確認しておりますけれども、稼働先の大半が風俗営業あるいは性風俗の関連営業ということで、売春あるいは性的役務の提供を強制されているということであります。

 御指摘のありました、どういう場所が多いのかということでありますけれども、中心部の歓楽街もございますけれども、検挙したその結果の被害者を確認した例としては、比較的町外れの、表現がいいかどうかわかりませんが、場末の人里離れたスナック等で、まさにおっしゃるようにアンダーグラウンドの店で働いているケースが多いというふうに認識をしております。

樽井委員 だから、要するに、その辺で、例えば六本木とか歌舞伎町とかを歩いていて、おられるフィリピン人の方とか、ああいうのは余りその可能性がないということなんですね。

 例えば、それだけの、半ば拉致的なことをされている状態だったら、顔に悲壮感があるとか、ある程度、暴力を振るわれたりしたら、どこか傷があるとか、何か楽しそうにない、ちょっと震えながらしているようなイメージがあるんですが、何かその辺の風俗街みたいなところをばっと歩いていると、割と明るいですよね、立っている方は。極端なことを言えば、あれは同意の上で来られている方と見てよろしいんでしょうか。

荒木政府参考人 お答えいたします。

 先ほど、うちの方で確認いたしました例としてはそういうアンダーグラウンドが多いと申しました。そういう繁華街で働いておられる方についてもいろいろ事情を聞いたりすることがございますけれども、そういう場合も、いわゆる人身取引の被害者であるということで申告をなされる方は、それが正直かどうかはともかくといたしまして、大変少ないというふうに認識いたしております。

樽井委員 先ほどからそういうことを聞いているにはわけがあるんですが、ここに、平成十七年二月の警察庁の、外国人女性の人身取引、トラフィッキング事件の検挙状況というのがあります。これで検挙をしている数を見ますと、検挙件数が、平成十三年から十六年まであるんですが、十三年が六十四、十四年が四十四、十五年が五十一、十六年が七十九。実態はまた後で聞きますけれども、これはちょっと少ないんじゃないかと私は思っているんですね。

 実際に、今言われたようなアンダーグラウンドのところだったら検挙しにくいのかなとは思うんですが、例えば、町を歩いていたらどんどん引っ張られるような状況でしたら、やみ金なんかでも、普通に電信柱に張っている広告を見てそこへ行けば、ある程度、何か怪しいところがあるわけですよね。普通に町で引っ張られたりしたらそういうところに行けるのであれば、極端なことを言えば、私服の刑事か何かがうろちょろしていて引っ張られていって客を装えば、何ぼでも挙がってしまいかねないような気がするんですね。

 実際には悪質ブローカーの取り締まりというのは、具体的には何をどんな形でやっているのか、その具体的な取り締まりあるいは検挙するやり方を教えていただきたいんですが。

荒木政府参考人 お答えを申し上げます。

 我々、ブローカーは大体三種類ぐらいあるんじゃないかと思っておりまして、いわゆる仕出し国で空港まで被害者を連れてくる送り出しブローカー、あるいは空港から日本の空港まで連れてくる、引率ブローカーと呼んでおりますけれども、それから、日本の空港から雇用主に引き渡す、いわゆる受け入れブローカーということで、昨年中、二十三人のブローカーを検挙いたしておりまして、引率ブローカーが一名、受け入れブローカーが二十二名となっております。

 罪名といたしましては、入管法に言います不法就労助長罪あるいは職安法の有害業務の紹介罪というものが多くなっております。

樽井委員 データ的にはそういうことなんでしょうが、取り締まりの、具体的に何をやっているのかということなので、どういったところ、例えば、チクりによってわかるのか、あるいはお客さんから通報があるとか、そういった方が逃げ込んでこられて、話を聞いて、捕まえに踏み込むのかとか、その辺のことをちょっと詳しくお伺いしたいんですが。

荒木政府参考人 検挙の端緒につきましてはさまざまであります。言われましたように、お客さんからの情報もございますし、あるいは、被害者の方が交番あるいは警察署に駆け込んでこられたケースもございます。その状況に応じまして、今申し上げたような法令を適用して悪質ブローカーあるいは雇用主の取り締まりに当たっているということでございます。

樽井委員 実際に、先ほどいろいろなブローカーの話を伺いましたけれども、その実態調査、把握という段階で、地下経済、簡単に言えば売り上げですね、その大体の規模、そしてまた、地下経済に占める人身取引、人身売買の割合というのは、ざくっとしたところでもいいですけれども、大体どれぐらいのデータが上がっているんでしょうか。

荒木政府参考人 地下経済の規模、あるいはその中で人身取引の占める割合、どのくらいかということでありますけれども、まさにアンダーグラウンドの経済、アンダーグラウンドの取引でありまして、我々警察としては、検挙し、あるいは保護した中からのそういう個別の事例しか把握をしておりません。したがいまして、どのくらいの割合かというのに答えることは極めて困難であります。

 ただ、昨年中、人身取引で検挙した被疑者五十八名のうちに暴力団の関係者が九名ほどおりまして、そういった組織犯罪の有力な資金源ともなっているというふうに考えておりまして、こうした観点からも取り締まりを強化してまいりたい、かように考えております。

樽井委員 犯罪組織の捜査なので、いろいろな面で怖かったりすることもたくさんあると思いますし、それは大変な部分もわかるんですが、もうちょっといろいろな実態等をいろいろなところから聞き込んで、状況などをきちんと整理して、もうちょっと踏み込んだ捜査をすれば、検挙数が上がっていくんじゃないかと思います。

 問題になっているぐらいなんですから、場末のスナックに行けば、何となく証拠はつかんで挙げるようなことというのは多々あると思いますし、聞き込みなどでも、聞き方によれば、もうちょっと被害者の方からじっくり構えて聞いていけば、いろいろなことがわかると思いますので、そういった地下経済あるいは人身取引なんかに関しましても、もうちょっと実態調査、それと踏み込んだ捜査、これをお願いいたします。

 それで、私、疑問に思っているのでちょっと聞きたいんですが、性的目的とか労働目的、あるいは臓器摘出なんかで人身売買取引をされた人は、最終的にどうなっているのかというのがちょっと気になるんですね。

 年齢の問題もあります。来たときに自殺をはかったりしてちょっと体がおかしくなったとか、あるいは何かの病気、性病とかになってしまって、言葉は悪いですけれども、こういった中での商品としての価値がなくなったと。そういったときに、その方々を、今まで言われてきた悪質ブローカーが、これで帰りやとお金を渡して国に帰してあげているような絵が浮かばないんですよ。目的をなさなくなったときにその方々はどこに行ってどうなっているのかというのが何かちょっと不気味なので、その辺の実態等を認識いただけているのであればお答えいただきたいのですが。

三浦政府参考人 ただいま委員御指摘のようなケースもあり得るんだろうとは思いますけれども、我々入管当局で保護した方については、今御指摘のようなケースは今のところ接しておらない状況でございます。

樽井委員 先ほどから、余り実態の方がわかっていない。全然わかっていないのに法改正というのもちょっと妙だと私は思うんですけれども、実際にそういった問題も多々あると思います。

 今、例えば、たくさん人身取引が行われているのであれば、それは年齢的にもあと何十年かしたら、こんな売春目的で日本に来た少女等、この方々がいつどうやって借金を返して帰国するのか、帰国するときに、例えばそれは警察に駆け込んだりはしていないわけですから、そのときにはどういうふうにして帰されているのかということ。こういったこともちゃんと追跡調査しないと、不気味な話、その辺に放置されているとかあるいは殺されているということになれば、こっちの方も物すごく大問題ですので、こういったことも、聞き込みなどをまた強化していただいて、対策などをしていただきたいと思います。

 それと、これも実態の方はどうなっているのかと思うんですが、臓器摘出目的、この目的で買い付けて、一体、どういったところが摘出して、だれに移植しているのか。これは、例えば挙がったときに追跡調査とかはできているのか。だれか、うちの娘がちょっと病気で、肝臓なり何かがおかしいのでとってきてくれという依頼があるのか、それとも、勝手にとっておいて、全くそんな依頼がないところに移しておいて病院からお金を取るのかとか、いろいろなシステムがあると思うんですが、その辺の実態の方は把握できているんでしょうか。

大林政府参考人 臓器摘出目的での略取誘拐それから人身売買等の行為は、現行法では処罰対象とはされていないため、その実態を把握することは容易ではありませんけれども、例えば、平成十四年に発生した殺人、強盗致傷、逮捕監禁致傷等事件の判決書によれば、被告人らが、臓器売買により多額の金銭が得られると聞き及んでこれを企て、路上生活者を誘い出して同居させ、臓器ブローカーと連絡をとるなどしたが、うまくいかず、次第にこの路上生活者をもてあましては暴行を加えるようになったあげく、同人を殺害した。さらに、その後、殺害した被害者にかわる臓器売買の対象者を得るため、別の被害者に対し、借りた金を返すという口実で呼び出した上、路上において殴打、足げりするなどの暴行を加えて、自己の車両に乗せようとしたが、被害者がすきを見て逃げたため、残された被害者の車両内から現金等を強取した、このような事例がございます。

 今、御指摘の臓器のブローカー等の実態等については私ども承知しておりませんけれども、今のような、割合と金もうけになるというふうなうわさもあるようでございまして、我が国において、今後、臓器売買等を目的とした略取誘拐や人身売買等の行為が行われる可能性はあるもの、こういうふうに考えております。

    〔吉野委員長代理退席、委員長着席〕

樽井委員 臓器摘出目的に関しましては、これは誘拐とかよりは完全に殺人やと思いますので、とった後どうなっているのかというのは、考えるのもちょっと恐ろしいようなところがあります。これは詳しくまた調査なりあるいは捜査なりして、こんな非人道的なことはないと思いますので、組織を挙げるなり、そういったことにももっと努めていただきたいと思います。

 そして、この法律が施行されたとしても、実際に被害者の方がそんな法律があること自体を認識するというのも難しいと思うんですよね。全く普通に、風俗店とか歓楽街、あるいは先ほど言われたような場末のスナックなんかで被害に遭われているフィリピンやコロンビアの方が、では、こういった法律ができたから逃げ込もうなんというのは絶対わからない、そういうふうに思います。

 それで、「人身取引は重大な人権侵害です! 外国人女性・児童の尊厳を守ります。」というポスターとかをつくられているんですが、実際これは日本語ばかりで、これを読めるんだったらさほど問題はないんですけれども、話によれば、ニュースもわからない、新聞も読めない。ポスターでこんな漢字で日本語で書かれていても、被害者の方は何のことだかさっぱりわからないですよ。

 やはりこういったことを、この法律ができたら、ちゃんと被害者の方がいかに逃げられるか、いかにかくまってあげられるか、帰国させてあげられるかというところが主な目的の一つであると思いますので、実際にはいろいろな多言語で、フィリピンとかコロンビアとかいろいろな言葉で、もしこういった状態であるのならここに連絡してくださいとかここに逃げてくださいとか、必ず私たちは皆さんを帰国させるようにきちんとお守りいたしますというようなポスターを、歓楽街、そういった怪しいところ、あるいは風俗営業法の許可証の例えば下にでも張ることを義務づけるとか、あるいは電信柱とかに張って、一回キャンペーンを張ったりして周知徹底しないと余り意味をなさないと思いますが、その辺の見識なり、やるのかやらないのかを含めて、あるいは周知徹底の施策などがありましたらお答えください。

南野国務大臣 ありがとうございます。先生のユニークな発想を取り入れて展開できればいいなと思っておりますが、それ以上にアイデアがあればまたいろいろ出していただきたいというふうにも思っております。

 先生御指摘のとおり、人身取引の被害者が、助けを求めるすべを知らないまま他人の支配のもとに置かれて搾取を続ける、このことはまことに痛ましいことであるというのは申すまでもありませんが、被害者が加害者からの報復等におびえることなく関係機関に被害を申告できるようにするためには、先生がおっしゃっているそれに言葉をちゃんと、適切な言葉に訳しながら、また小さなリーフレットももうつくっておられますので、そこら辺を適当に配布するなり、そういった広報啓発が重要だと考えております。

 政府としても、そのような問題点を含めましてしっかりと広報啓発活動を行ってまいりたいと思っておりますが、警察庁が、先ほど申したようないろいろな問題、リーフレット等も作成していただいておりますので、その配布にも力を入れていただきたいというふうにも思っております。

 法務省といたしましては、今後、こうした広報活動をどこでどのように行えば被害者のために最も有効かという観点から展開してまいろうと思っておるところでございます。

樽井委員 その辺、周知徹底をお願いしたいんですが、これは被害者の方だけじゃなくて、そういった例えばポスターで、もしこういった人身取引であなたが商売するとこういう罰則がありますよ、お客さんの方にも、極端な話、そういった方を買われた場合はこんな罪に問いますよとか、需要自体を減らすようなキャンペーンも同時に進行してやることがこういった問題を縮小させていく方向に導くことだと思いますので、その辺は、許可証と同じように、張るのを、提示を義務づけるぐらいでもいいと思っているんですね、私は。普通の風俗店なりラブホテルなんかでも入り口に張っておくぐらいの、それぐらいのことをやっても、一度キャンペーン的に期間を設けてでもいいですから、この法律が施行されたと同時ぐらいにどんとやるべきじゃないか。そうしないと、ほとんどの人が知らない。極端に言えば、この商売をしている人が知っているかも僕は怪しいと思います。

 そのぐらいやと思いますので、その辺は、罰則を強化しましたよといって、罰則を強化されたのも知らずにそのまま継続してやるんだというような流れが普通に起こるだろうと。だって、一般の後援会の人らにこんな法律が今通りそうですよと言っても知らないんですから、では、その方々が新聞を読んで認知しているというのはえらい考えにくい話でありますので、その辺はやはり、そういったお店なりに、ポスターなり、先ほど言われたようなリーフレットの配布なりをきちんとしていただけたらと強く思いますし、また、実際にしなければ意味がない、こういうふうに私の方は認識いたしておりますので、ぜひよろしくお願いします。

 それで、例えば、実際に逃げ込むところも、シェルター、駆け込み寺みたいな感じはいいんですが、わからないですよね、ぱっとどこに行けばいいのか。何かそういった犯罪が多いところには、例えば国際的な同じマークの、普通、警察に行くんだったら、派出所の赤いボールみたいなものが上についていますから、あっ、ここは警察だとわかるみたいに、国際的な派出所みたいなものがあってもいいのかなと。そこに逃げ込んだら、自分の国の大使館なりにホットラインがあったり、対応してくれる人もいるような、そういった場所、あるいは何かマークをつけている人なり、そういった一つの国際的な基準の対応できる場所をつくるべきじゃないかと思うんですが、その辺はいかがでしょう。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、関係省庁いろいろございますが、それぞれのところで被害者が申告をしていただきやすいような形で努力をしておるところでございまして、外国人の方が入管にお見えになるケースが多いものですから、入管に来ていただいたら直ちに外国語で対応できるような形のインフォメーションセンターも設けておりますし、また、警察におかれても、交番に、気軽にと言ったらおかしいんですが、遠慮なく申し出てくださいというようなことで、いろいろ広報活動をしておられるようであります。

 また、それぞれの省庁が、独自ではなくて、お互いに連携をとるようにしてございますので、こういうことで対処をしていきたいと考えておるところでございます。

樽井委員 例えば、日本に連れてこられてだまされた方というのが警察を見てわかるかどうかということも含めて、警察自体も、こんなことを言ったらあれですけれども、余り信用していないというようなレベルの段階ではないかと思いますので、何かもうちょっと、原語の話せるところ、自分の国の大使館にすぐホットラインでつながるところ、とりあえずここに入れば言葉も通じるし大丈夫だなという場所、こういったものは何カ所か主要なところには設置してもいいのかなと。

 そういったことが、逆に、観光客なんかに対しましても、何かあったらここが、大使館に行けと言われても、大使館まで行くというのも結構なものだと思いますので、そういった簡易的なものがあればいいのだと思います。

 それで、実際に、通報とか逃げてくるとかいった状態でも、利用した方は余り通報しないですよね。社会的な観点から考えて、私、こんなところへ行きましてこんな女の子がいましてと、ではおまえ行ったのかという話になりますし、ではやったのかという話になる。そういうところから情報が余り来ない。

 それで、実際に被害者の方も、聞くと、家族に被害が及ぶとか、そういったことで何か怖くて、とどまるも地獄だけれども逃げるも地獄みたいな、自分の中ではそんな状態であるんだと思うんですね。

 先ほど、ポスターなどで私たちは帰国させてあげますよというようなことを書いたら来られるんじゃないですかということを言いましたが、実際に、被害者を保護した後、ぱっと強制的に帰すのではなくて、やはりブローカーの捜査への協力目的も兼ねて、強制退去なしでずっとかくまってあげながら情報を収集するということが非常に大事じゃないかと思うんですが、その辺のことについてはどういうふうにお考えでしょうか。

三浦政府参考人 確かに、委員御指摘ございましたように、人身取引の被害者という立場にある方ですと、脅迫ですとかいろいろな形で加害者側の支配下に置かれているという状況でございますので、本人は当然身の危険というものがあることが多いわけでございましょうし、場合によっては、関与している犯罪組織といいますかブローカーが、本国の本人の家族に対して、もし自分たちに都合が悪いような供述をしたら家族に累が及ぶというようなことでおどすというようなケースも考えられるわけであります。

 したがいまして、仮に入管にそういう方が駆け込んでこられたような場合につきましては、まず、警察を初めとした関係機関に入管の方から情報提供を直ちに行いまして、緊密に連携をとるというふうにしておるところであります。すなわち、被害者の保護がまず第一義的に大事だという観点から行っております。

 それから、本国におきまして被害者の家族に被害が及ぶのではないかというようなおそれが認められるケースにつきましては、御本人の在京の大使館等がございますから、ここに通報、連絡をいたしまして、関係機関と緊密に連携をとって、本国政府の方にも連絡していただいて、本国政府の方でも対応していただく、こういう形をとっております。

 また、御本人が帰国したいという場合について、帰った後に本人がまた危害を加えられるという可能性もないわけではありませんので、これにつきましては、国際移住機関、IOMという略で呼ばれておりますが、ここが被害者の帰国支援をされておりますので、こういうところとの協力をしておりますし、また、本国の現地の方にもNGO組織がございますので、そういうところとも連絡をとっておりまして、帰った後も身に危険が及ばないような方策をいろいろ考えているところでございます。

樽井委員 今話に上がったのでちょっと伺いたいのですが、実際に、家族がおどされているとか、帰った後、自分が帰ってみたらその国でやはり報復に遭ったとか、あるいは家族が何か拷問に遭ったり、殺されたりしたような、リンチに遭ったりしたような事件というのは、実態としてはどうなんでしょうか、あるんでしょうか。

三浦政府参考人 実際、私どもが直接認識というものではないのでありますが、それぞれ本国の方の先ほど申しましたNGO組織等の方々がございまして、そういう方々から人身取引の実態等についてお話を伺うようなことがあるわけでありますが、そういうケースもあるというふうには聞いております。

樽井委員 実際にそういった方を保護した後、円滑な帰国を図る前に、まず家族の安全確認をしてあげて、うちがあるいは向こうのNPOがそういったところはちゃんと守ってあげているよ、そういった中で、では、どういった目に日本で遭ったのか、どういった組織にどういうふうにして連れてこられてこういったことになったのか、ちょっと話していただけないでしょうかというような対応をとらなければ、言ったはいいが、それで逮捕されたら、帰国したら家族が殺されていたわじゃもう話にならないんで、その辺の、例えば家族の安全をちゃんと確保してあげるようなシステム、これ自体は今後どのようになさるおつもりなのか、何か施策でもあればお伺いしたいんですが。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 入管として、外国におられる家族の方々について直接支援をするという立場にないものですから、いろいろな機関の協力をお願いするということになるわけでございます。

 ただ、私ども入管の立場といたしましては、今委員御指摘のようなケースで、本国に帰ったら危害が及ぶのではないかというようなケースがありますれば、これはそういう心配がなくなるまで、我が国に合法的に滞在していただいて心身のケアをしていただくなりということをすべきであって、これがまさに人身取引被害者の保護の第一歩であろうというふうに思っておりますので、仮に不法滞在状態の方であっても、保護の対象として、まずは合法的な在留資格、在留特別許可というもので付与いたしまして、その中で、御本人が早期に帰国を希望し、なおかつ帰国が可能な状況であれば、なるべく短期間で、先ほど申し上げましたIOM等の御支援をいただきながら帰国していただくし、場合によって、刑事裁判などでいろいろ、証人に出るというようなケースでございますとか、さらに治療が長引くというようなケースであれば、より長期的に我が国に滞在できるような措置を講じてまいりたいというふうに思います。

樽井委員 実際に、具体的に帰国に伴う費用あるいは書類的な手続、そういったことは今の段階でやっているのか、今やっていなくても将来的にはこういうことをしようと思っていることがあるのか、具体的に費用などは出してあげているのかどうかとかをちょっと知りたいんですが。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 御本人がお金があるというケースについては、大体普通、御本人のお金で帰るんでしょうが、帰国費用がないというケースにつきましては、先ほどちょっと申し上げましたIOM、国際移住機関という機関がございまして、ここが帰国支援の一環として、帰国費用のない方について費用を支援するというシステムになっておりますので、そういうケースの方についてはIOMの方に私どもから連絡してお願いをしておるわけでございます。

樽井委員 実際に被害に遭われた方というのは、こんなことを言っていいのかどうかわからないですが、もう十分反省しているというふうに思っていい方はたくさんいらっしゃると思います。また、日本人にとんでもない目に遭わされたという思いで帰るよりは、やはり帰国に伴う費用でありますとかあるいはその手続、ある程度の便宜供与や不処罰も兼ねてそれぐらいの対応をしながら、捜査協力をしてもらうというような、そういった観点からも大事ですし、国のイメージにかかわることですので、そういった対応をきちんとしてあげることが大事だと思います。

 実際に、きちんと帰してあげて、家族の身柄をちゃんと保障してあげて、そしてこういった組織には厳重に取り締まりを強化するからということで帰してあげることによって、世界から日本への非難、こういったものもかなり払拭されるんだと考えますので、ぜひ、その点についてはきちっとした対処をしていただきたいと思います。

 国のイメージにかかわることですので、この法律施行後は、先ほども言いましたように、周知徹底などを図ってきちんと成果を上げていただきたいということを強く願いまして、もう時間ですので、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございます。

塩崎委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

塩崎委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、参議院送付、刑法等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

塩崎委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

塩崎委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、田村憲久君外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。樽井良和君。

樽井委員 ただいま議題となりました附帯決議案について、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。

    刑法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。

 一 人身取引被害者の保護については、人身取引被害実態の正確な把握が重要であることにかんがみ、内外の関係機関と十分な情報交換を行うとともに、婦人相談所・民間シェルター・NGO等に対する財政支援についても、検討すること。

 二 人身取引被害者の保護については、被害者の置かれた状況を十分斟酌し、人権に配慮した、きめ細やかな対応を行うよう、婦人相談所及び民間シェルターとの連携に努めるとともに、多言語ホットラインの設置、適切な通訳人の確保、医学的・心理的専門員の育成、雇用・教育・訓練の機会提供なども含め、総合的な法整備について、検討すること。

 三 人身取引の被害者の保護及び支援のため、必要があれば、被害者の保護及び支援、被害者の法的地位、帰国、情報交換、法施行機関等の職員に対する教育訓練、被害予防、国及び都道府県の基本計画策定、NGO等との協力について、法整備も含め、検討すること。

 四 運送業者による旅券等の確認に当たっては、庇護希望者の立場や家族的結合等に特に留意し、決して恣意的な運用が行われないよう、関係機関と密接な連携を図り、指導の徹底に努めること。

 五 外国入国管理当局に対する情報提供に当たっては、人身取引被害者及び関係者の安全確保を最優先に、提供情報の目的・範囲・方法等を定めた基準の作成や公表の可否について、検討すること。

 六 人身取引を撲滅するため、人身取引送出国及び経由国に対し、我が国における人身取引に関する情報を広く提供するとともに、我が国の性産業の法的規制のあり方についても、検討すること。

 七 在留特別許可、上陸特別許可、仮放免、在留資格更新などの出入国管理制度の運用については、今後も引き続き、その基準の作成や公表の可否について検討し、透明性の高い運用に努めること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。(拍手)

塩崎委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

塩崎委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。南野法務大臣。

南野国務大臣 ただいま可決されました附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと思います。

    ―――――――――――――

塩崎委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

塩崎委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

塩崎委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時六分散会


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