衆議院

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第30号 平成18年6月13日(火曜日)

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平成十八年六月十三日(火曜日)

    午前十時二分開議

 出席委員

   委員長 石原 伸晃君

   理事 倉田 雅年君 理事 棚橋 泰文君

   理事 西川 公也君 理事 早川 忠孝君

   理事 松島みどり君 理事 高山 智司君

   理事 平岡 秀夫君 理事 漆原 良夫君

      赤池 誠章君    稲田 朋美君

      近江屋信広君    太田 誠一君

      笹川  堯君    柴山 昌彦君

      下村 博文君    長崎幸太郎君

      平沢 勝栄君    三ッ林隆志君

      森山 眞弓君    矢野 隆司君

      保岡 興治君    柳澤 伯夫君

      柳本 卓治君    石関 貴史君

      泉  健太君    枝野 幸男君

      河村たかし君    小宮山泰子君

      福田 昭夫君    細川 律夫君

      横光 克彦君    伊藤  渉君

      保坂 展人君    滝   実君

      山口 俊一君

    …………………………………

   法務大臣         杉浦 正健君

   法務副大臣        河野 太郎君

   法務大臣政務官      三ッ林隆志君

   外務大臣政務官      伊藤信太郎君

   厚生労働大臣政務官    岡田  広君

   衆議院庶務部長      山本 直和君

   会計検査院事務総局第一局長            諸澤 治郎君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  安藤 友裕君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    縄田  修君

   政府参考人

   (警察庁交通局長)    矢代 隆義君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局審議官)            細溝 清史君

   政府参考人

   (総務省自治行政局長)  高部 正男君

   政府参考人

   (法務省大臣官房長)   小津 博司君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    寺田 逸郎君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    大林  宏君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    小貫 芳信君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  三浦 正晴君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 長嶺 安政君

   政府参考人

   (国税庁課税部長)    竹田 正樹君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           岡島 敦子君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           松井 一實君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           間杉  純君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局次長)           高橋  満君

   法務委員会専門員     小菅 修一君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十三日

 辞任         補欠選任

  水野 賢一君     長崎幸太郎君

  小宮山泰子君     泉  健太君

同日

 辞任         補欠選任

  長崎幸太郎君     水野 賢一君

  泉  健太君     横光 克彦君

同日

 辞任         補欠選任

  横光 克彦君     福田 昭夫君

同日

 辞任         補欠選任

  福田 昭夫君     小宮山泰子君

    ―――――――――――――

六月十三日

 刑事訴訟法の一部を改正する法律案(河村たかし君外二名提出、衆法第一三号)

 民法の一部を改正する法律案(枝野幸男君外七名提出、衆法第三五号)

同月十二日

 選択的夫婦別姓制度の導入や婚外子相続差別の撤廃などの民法改正を求めることに関する請願(阿部知子君紹介)(第三四三七号)

 共謀罪の新設反対に関する請願(石井郁子君紹介)(第三四三八号)

 同(笠井亮君紹介)(第三五二五号)

 共謀罪(犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案)の廃案に関する請願(吉井英勝君紹介)(第三四三九号)

 共謀罪の新設に反対することに関する請願(下条みつ君紹介)(第三五二六号)

 選択的夫婦別姓の導入などの民法改正を求めることに関する請願(石井郁子君紹介)(第三五二七号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第三五二八号)

同月十三日

 共謀罪の新設に反対することに関する請願(阿部知子君紹介)(第三六三八号)

 同(河村たかし君紹介)(第三六三九号)

 同(下条みつ君紹介)(第三六四〇号)

 同(照屋寛徳君紹介)(第三六四一号)

 同(中川正春君紹介)(第三六四二号)

 同(羽田孜君紹介)(第三六四三号)

 同(鉢呂吉雄君紹介)(第三六四四号)

 同(日森文尋君紹介)(第三六四五号)

 同(牧義夫君紹介)(第三六四六号)

 同(横光克彦君紹介)(第三六四七号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第三七三八号)

 同(石井郁子君紹介)(第三七三九号)

 同(小川淳也君紹介)(第三七四〇号)

 同(奥村展三君紹介)(第三七四一号)

 同(笠井亮君紹介)(第三七四二号)

 同(菅野哲雄君紹介)(第三七四三号)

 同(北神圭朗君紹介)(第三七四四号)

 同(北橋健治君紹介)(第三七四五号)

 同(玄葉光一郎君紹介)(第三七四六号)

 同(小平忠正君紹介)(第三七四七号)

 同(小宮山泰子君紹介)(第三七四八号)

 同(郡和子君紹介)(第三七四九号)

 同(穀田恵二君紹介)(第三七五〇号)

 同(近藤昭一君紹介)(第三七五一号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第三七五二号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第三七五三号)

 同(重野安正君紹介)(第三七五四号)

 同(篠原孝君紹介)(第三七五五号)

 同(末松義規君紹介)(第三七五六号)

 同(仙谷由人君紹介)(第三七五七号)

 同(田島一成君紹介)(第三七五八号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第三七五九号)

 同(辻元清美君紹介)(第三七六〇号)

 同(筒井信隆君紹介)(第三七六一号)

 同(藤村修君紹介)(第三七六二号)

 同(松本龍君紹介)(第三七六三号)

 同(柚木道義君紹介)(第三七六四号)

 同(吉井英勝君紹介)(第三七六五号)

 同(笠浩史君紹介)(第三七六六号)

 治安維持法犠牲者に対する国家賠償法の制定を求めることに関する請願(玄葉光一郎君紹介)(第三六四八号)

 同(笠浩史君紹介)(第三六四九号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第三七七〇号)

 同(石井郁子君紹介)(第三七七一号)

 同(笠井亮君紹介)(第三七七二号)

 同(穀田恵二君紹介)(第三七七三号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第三七七四号)

 同(志位和夫君紹介)(第三七七五号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第三七七六号)

 同(篠原孝君紹介)(第三七七七号)

 同(末松義規君紹介)(第三七七八号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第三七七九号)

 同(柚木道義君紹介)(第三七八〇号)

 同(吉井英勝君紹介)(第三七八一号)

 同(渡辺周君紹介)(第三七八二号)

 法務局・更生保護官署・入国管理官署及び少年院施設の増員に関する請願(河村たかし君紹介)(第三六五〇号)

 同(今村雅弘君紹介)(第三七八三号)

 同(高山智司君紹介)(第三七八四号)

 国籍選択制度の廃止に関する請願(渡辺周君紹介)(第三七三六号)

 成人の重国籍容認に関する請願(渡辺周君紹介)(第三七三七号)

 国籍法の改正に関する請願(仙谷由人君紹介)(第三七六七号)

 同(渡辺周君紹介)(第三七六八号)

 選択的夫婦別姓の導入などの民法改正を求めることに関する請願(穀田恵二君紹介)(第三七六九号)

 裁判所の人的・物的充実に関する請願(枝野幸男君紹介)(第三七八五号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 会計検査院当局者出頭要求に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 信託法案(内閣提出第八三号)

 信託法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第八四号)

 法の適用に関する通則法案(内閣提出第四三号)(参議院送付)

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

石原委員長 これより会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣参事官安藤友裕君、警察庁刑事局長縄田修君、警察庁交通局長矢代隆義君、法務省大臣官房長小津博司君、法務省刑事局長大林宏君、法務省矯正局長小貫芳信君、法務省入国管理局長三浦正晴君、国税庁課税部長竹田正樹君、厚生労働省大臣官房審議官岡島敦子君の出席を求め、説明を聴取し、また、会計検査院事務総局第一局長諸澤治郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

石原委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

石原委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。細川律夫君。

細川委員 おはようございます。民主党の細川律夫でございます。

 大臣も大分お疲れのことかと思いますけれども、国会もいよいよ今週限りで閉会になる予定でございますので、いましばらく辛抱しておつき合いをいただきたいと思います。

 この国会でも、日本の安心、安全な社会をつくり上げていかなければならないというような議論がたくさん出てまいりました。その安心、安全な社会というのに、治安の問題がございます。

 治安が最近大変悪くなったという評価もあれば、少しよくなりつつあるというようなこと、いろいろその評価はありますけれども、治安がよいか悪いか、その目安といたしまして、よく、犯罪の認知件数がふえたか減ったか、あるいは検挙率が上がったか下がったかというようなことが話題になります。

 しかし、各種犯罪統計は、認知されました犯罪だけが数値化されるわけでありまして、その背後にありますいわゆる暗数、警察が犯罪として認知していない部分がございます。いかに認知された犯罪の中で検挙率が上がりましても、認知されないものが多ければその検挙率も意味がないということも言えるわけでございます。

 例えば、和歌山のカレー事件にいたしましても、あの事件があって初めて、そのほかにやっていた保険金詐欺などが明らかになったわけでございます。警察とかあるいは医師が、病死であるとかあるいは自殺、事故、こういうふうに断定しておりましたのが、後で犯罪の嫌疑が出てきた、こういう例も大変多いわけでもあります。

 そこで、殺人事件が認知されずに終わっているということを考えますと、その背後にあります我が国におきます死亡の原因、死因究明制度に問題があるのではないかというふうに私は思っております。つまり、異状死体に対する検視、検案あるいは解剖が確実に行われているかどうかというのが大変重要な問題であります。

 そこで、刑事訴訟法の二百二十九条にはこういうふうに規定されております。「変死者又は変死の疑のある死体があるときは、その所在地を管轄する地方検察庁又は区検察庁の検察官は、検視をしなければならない。」第二項「検察官は、検察事務官又は司法警察員に前項の処分をさせることができる。」こういうふうに規定をしてありまして、変死体は必ず検察官かあるいは警察官が検視をしなければいけないということになっております。

 そこで質問いたしますが、この「変死者又は変死の疑のある死体」というのは何であるか、お答えをいただきたいと思います。

大林政府参考人 刑事訴訟法第二百二十九条第一項に言う「変死者」とは、いわゆる不自然死で、犯罪による死亡ではないかという疑いのある死体をいうものとされております。また、「変死の疑のある死体」とは、自然死か不自然死か不明の死体であって、不自然死の疑いがあり、かつ、犯罪によるものかどうか不明なものをいうとされています。

 したがって、自然死であることが明確な死体あるいは不自然死のうち犯罪によらないことが明確な死体が、「変死者」あるいは「変死の疑のある死体」に含まれない、こういうことになります。

細川委員 一方、医師法二十一条にはこういう規定になっております。「医師は、死体又は妊娠四月以上の死産児を検案して異状があると認めたときは、二十四時間以内に所轄警察署に届け出なければならない。」こういうふうに規定がなされておりますけれども、この「異状がある」という「異状」とはどういうことをいうんでしょうか、厚生省。

岡島政府参考人 医師法二十一条の「異状」とは法医学的な異状とされておりますが、具体的にどのような死が異状死に該当するかにつきましては、個々の状況に応じて個別に判断される必要があるため、死体を検案した医師が個別に判断しております。

 なお、死亡診断書の記入マニュアルにおきましては、死体を検案した結果、「外因による死亡またはその疑いがある場合には、異状死体として二十四時間以内に所轄警察署に届け出が必要」であることとしておりまして、死体検案書の様式におきましては、外因死の内容として、交通事故、転倒、転落等の不慮の事故死、自殺等を挙げているところでございます。

細川委員 済みません、もう一回。異状というのはどういうのを言うのか、ちょっと簡単にお願いします。

岡島政府参考人 法医学的な異状ということで、病理学的な異状ではなくて法医学的な異状を意味するということとされております。これは、具体的な細胞学的あるいは身体的な状況だけではなくて、その死の周辺の状況も含めての異状という判断がされるものと考えられておりますが、個々の状況に応じまして、これは死体を検案した医師が個別に判断するものとされているところでございます。

細川委員 法医学的な異状というふうに言われていますけれども、ちょっとよくわからなかったんですけれども、続けます。

 仄聞するところによりますと、刑事訴訟法で言う変死、それから医師法で言う異状死、どちらも英語ではアンナチュラルデス、つまり不自然死と言うというふうに聞いております。

 ところが、現実に警察に届けられた異状死体のうち九割は非犯罪死体とされまして、死体見分またはいわゆる行政検視という手続が行われております。残り一割が、変死体の扱いで、司法検視を受けるということになっております。

 それで、非犯罪死体というふうにされました死体というのは、見分もほとんどが現場の警察官の手で行われておりまして、専門家である刑事調査官の数も大変少ないわけでございます。その結果、一たん非犯罪死体というふうにされますと、司法解剖もまず行われなくて、見逃されることにつながっていくということになるのではないかと思います。

 そこで、犯罪がある、犯罪が疑われる死体、これは検視をしなければいけない、いわゆる司法検視が行われることになります。

 そこで、検視とは一体どういうことかということでございますけれども、この検視というのは、法律など法令には定義はございません。解釈上、刑事訴訟法ができたときから解釈としてこのように言われております。

 検視とは、犯罪に起因する死体であるか否かを判断するため、捜査機関が、五官、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚、聴覚がなぜこの検視に必要かわかりません、ましてや味覚、こんなものは関係ないと思うんですけれども、その五官の作用により、変死者または変死の疑いのある死体の状況を調べる処分である、こういう定義でずっと現在まで来ております。いわば、検視官の勘を頼りに検視が行われていると言っても過言ではないと思います。死ぬ前は非常に先進的な医療が行われますけれども、死んだ途端に、死んだ瞬間から江戸時代に逆行するんだ、こういうようなことも言われております。

 こういう検視の定義は変えるつもりはないんでしょうか。法務省にお尋ねいたします。

大林政府参考人 委員御指摘のとおり、検視は、変死者または変死の疑いのある死体について、その死亡が犯罪に起因するものかどうかを判断するために、五官の作用により死体の状況を見分する処分と解されております。

 検視は、変死者または変死の疑いのある死体が存在する場合に、その背後に犯罪が伏在していることが多いと考えられることから、それらの犯罪の発見及び捜査を的確かつ迅速に行うため、緊急に行う捜査前の処分として行われるものでございまして、確かに、委員御指摘のとおり、五官という言い方は最近は余りしないのでございますが、しかしながら、このような検視についての解釈そのものを現在変更する必要はない、このように考えております。

細川委員 私は、この検視や見分をする際は、こういう今の非常に科学も進んだ現在でありますから、例えばCTなどを使って画像検査などもこの検視に取り入れる、そういう科学的手法をこの検視の中にも取り入れるべきだというふうに考えますけれども、これについては法務省はどういうふうに考えておりますか。

杉浦国務大臣 検視は大体警察庁がやっておるわけですが、CTを使って検視したことも例としてはあるようでございます。刑訴法二百二十九条一項の解釈のもとにおきましても、その死亡が犯罪に起因するものかどうかを判断するために、医師、病院等にCT検査を依頼することなどを、遺族の承諾を得るなどいたしまして行うことが禁止されているものではないというふうに考えております。

 しかしながら、検視は緊急の状況下において迅速に行う必要がございますし、CT検査のように、死体の現存場所では操作が困難な機器による画像検査等の科学的手法を一律に義務づけるということはいかがなものかというふうに思っております。

細川委員 こういう科学的な手法も取り入れて検視をするような、そういう形でぜひお願いしたいと思います。

 それから次に、犯罪の見逃しを防ぐために検視制度をもっともっと充実させなきゃいけないということになりますと、できるだけ専門知識のある人に検視、検案をさせるべきではないか、こういうことになるのは当然だと思いますけれども、この点について警察庁はどういうふうにお考えですか。

縄田政府参考人 警察におきましては、死体の取り扱いにつきまして誤りのないようにということで、先ほど委員も御指摘になられました刑事調査官を中心に、死体の取り扱いに適正を期すように努めております。

 刑事調査官につきましては、十年以上の刑事経験を持つ者を選考いたしまして、警部ないしは警視の者を警察大学校に三カ月ほど入校させ、また、解剖等の実習もしっかり監察医務院で積ませまして、経験をさせております。そういった者、ことしの四月一日現在で百四十四名、若干ふえました。そういうことで、現在、全国に配置されております。

 このほか、検視業務に携わる警部補ですが、こういった者も対象に警察庁の方では専科の教養もいたしておりますし、この刑事調査官の会議、これは各大学の教授にも来ていただきましていろいろ研究する場でございますけれども、こういう会議もしながら技術的なものを研さんいたしております。また、各都道府県におきましても、各大学とも連携しながら研修会等も行っております。

 今後とも、刑事調査官等のこういったものの体制強化、それから、実際に検視を担当する警察官に対する研修の充実を図りまして、適切な死体取り扱いに努めるよう指導してまいりたい、こういうふうに思っております。

細川委員 ありがとうございました。

 次に、死亡診断書あるいは死体検案書のことについてちょっとお聞きをいたしますけれども、普通、病院などで人が死亡した場合には、担当した医師が死亡診断書を書きます。警察が取り扱う死体の場合、つまり異状死の場合には、検案した医師が死体検案書を書きます。

 ところが、この検案あるいは検案書作成に当たりまして、検案した医者が、どういう名目かわかりませんが、十万円以上の額を遺族に請求する場合があるというふうに聞いております。一方、東京都には監察医制度がありまして、これに基づく医務院がございますので、異状死の検案は原則的に監察医が行うわけでありますけれども、この場合は、その死体検案書はただなんです。一通目は全くただ、二通目からは六百円という、本当にごく安い金額なんですね。

 一方で十万円以上取られるようなところもある、一方ではただ、無料だと。余りにも差があり過ぎると思いますけれども、こういうものは何とかならないのかと。私は、人の死というものは、だれもが死ぬんですし、そして、この死亡診断書あるいは警察の問題になっているのはいわゆる検案書、こういうものはどうしても埋葬などで必要書類でありますから、そこにそんなに差があってはおかしいと思います。

 そういう意味で、こういう平準化した同じような料金にするということは制度設計としてできないものか、厚労省の方にお聞きをいたします。

岡島政府参考人 医師が検案に際しまして検案のための費用や検案書を作成するための費用は、特段に定めておらず、医師が定めるものとなっております。ということで、これを規制することは困難と考えております。しかしながら、経費に比べて著しく高額なものとなることは不適切であると考えるため、今後、関係者とも相談してまいりたいと考えております。

細川委員 ありがとうございました。

 では、次に進みまして、さらに死体を調査する、こういうことになってまいりますと、解剖の実施があるわけでございます。実例を挙げながらちょっとお尋ねいたします。

 先月、五月十七日に千葉県の方で、これは民事の裁判でございましたけれども、保険金殺人の疑いがあるという非常に重大といいますか、そういう判決がありました。

 報道によりますと、千葉地方裁判所の佐倉支部では、民事事件の判決で、保険金目的で男性を薬物中毒で死亡させたと推認できるというふうに判断いたしまして、フィリピン人女性の四千五百万円の保険金請求を棄却した。その結果、これは一転して刑事事件の色合いが強まったということでございます。この裁判でこの女性は、一九九八年に死亡した建材会社の社員の死亡保険金四千五百万の支払いを求めていたものでございます。

 私は、殺人の見逃しがあってはいけないという思いで、これまでにも死因究明の重要性について国会の中でも指摘をしてまいりましたけれども、この事件も重要な殺人というのを見逃している疑いが十分に強いというふうに思います。

 この女性は、この一九九八年に死亡した事件のほかに、さらにその前に、一九九五年、三年前に別の同居男性が保険金加入後に急死をいたしまして、九千万円の保険金を得ているということでもございます。これについても殺人の可能性が大変強いのではないかということも、これまた否定できないところでございます。

 そこで、お聞きをいたします。

 まず、前の事件ですね、一九九五年の男性の死亡事件はいわゆる変死事件だと思いますけれども、警察庁、この概要についてちょっと説明してください。

縄田政府参考人 お尋ねの件につきましては、平成七年八月に千葉県内において亡くなられた三十歳の男性に関する事案だと承知をいたしております。

 千葉県警察におきましては、死体に外傷がない、あるいは関係者の供述に矛盾点がないとかこれまでの病歴等々から、犯罪に起因するものではないとして取り扱った、このような報告を受けております。

 個別の死体の取り扱い事案につきまして、これ以上詳細な答弁は差し控えさせていただきたいと思います。

細川委員 この事件については、司法解剖はいたしましたか。

縄田政府参考人 司法解剖は実施いたしておりません。

細川委員 なぜ、しなかったんでしょうか。

縄田政府参考人 繰り返しになりますけれども、先ほど申し上げましたが、死体の取り扱いをいたしました警察官におきまして、死体には外傷はない、それから関係者の供述に矛盾がない、これまでの病歴、通院等もされておりました、医師の病歴の疑いがあるという判断もあった、こういうふうなことから、犯罪に起因するものではないと判断をしたもの、こういうふうに報告を受けております。したがいまして、司法解剖等は実施をしていないということでございます。

細川委員 アパートでその男性が死亡しているところを発見した第一発見者は、このフィリピン女性と非常にごくごく関係の深い男性で、しかも、その男性が受取人の保険、このときには九千万円、この保険金の受取人になっていたということもわかっていたわけですね。

縄田政府参考人 本件事案につきましては、まさに亡くなられた方の死体の取り扱いに関する事案でございまして、それに関連するプライバシーにかかわるような事実につきまして、この場で申し上げることは差し控えさせていただきたい、こういうふうに存じます。

 なお、一般論で申し上げますと、警察としましては、委員も御承知のとおりでございますが、さまざまな調査あるいは情報等がもたらされる、それに基づきまして、必要があれば捜査を当然していく、こういうことになろうかと思っております。

細川委員 しかも、その第一発見者で九千万の受取人になっていた男性は、警察に対して、保険には入っていなかったというようなことをわざわざ言っているんではないですか。

 個人のプライバシーの問題もあるかと思いますけれども、あえて私は、なぜこういう事件を司法解剖に付さなかったかという、死因究明の制度なりあるいはそういうものがしっかりできていないのではないかということで質問をいたしております。答えていただきたいと思います。

縄田政府参考人 繰り返しになりますけれども、一人の方が亡くなられた事案でございます。委員御指摘のように、これをどうとらえるかというものはあろうかと思います。現時点におきましては、先ほども申し上げましたように、千葉県警察においては司法解剖を行っておらず、犯罪に起因するものではないという報告でございます。

 プライバシーにかかわることにつきまして、今ここで詳細をお答えすることは差し控えたいと思いますが、ただ、一般的な他の事件の捜査とか諸般の情報、あるいは調査の過程でいろいろ情報が得られますと、それに従いまして捜査すべきものは厳正に捜査をしていく、こういうことでございます。

細川委員 私は、この質問の前段階からずっと申し上げてきたのも、検視というのが十分なされていないといろいろな問題が起こるというようなことでずっと聞いてきたわけでございます。

 この事件も、ひとり暮らしの者が死亡した、そして第一発見者が九千万円もの受取人だ、しかも保険に入っていないというようなことを言っている。そういうことで一応検視をされたわけですよね、変死ですから。だから、その検視をしっかりやって、ちょっとでも疑いがあれば司法解剖にしっかり回す、させるというのがこの事案の処理であったのではないかというふうに思います。

 これは私は、非常に疑わしい点がございますので、まだ時効にもかかっていないと思いますので、ぜひ再調査していただきたい事案じゃないかというふうに思っております。

 では、次にお伺いしますが、この三年後に起こった、一九九八年、本件の、千葉地裁の民事事件で問題になったこの件でございますけれども、この事件の概要について御報告をお願いいたします。

縄田政府参考人 お尋ねの事案につきましては、平成十年八月に千葉県内におきまして死亡いたしました、当時三十四歳の男性に関する事案だと承知いたしております。

 当時、男性は、緊急搬送先の千葉県内の病院で死亡されました。医師は、死因を急性心不全と判断されました。警察への届け出がなかったため、千葉県警では当時、その男性の死亡事案につきまして認知をしていなかったところでございます。

 そのおよそ一年半後に、当時のこの死亡事案につきまして、若干不審であるとの情報が警察に寄せられました。千葉県警察におきましては、その情報を吟味いたしまして、関係資料等を押収の上、現在、事案の解明に向けて捜査中であると報告を受けております。

細川委員 これは、病院からは警察の方に異状死として届け出がなかったというふうに聞いております。したがって、死亡した当時は警察の方はわからなかったと思いますけれども、この事件も、担当の医者そのものは、報道などによりますと、中毒死ではないかというふうに疑っていたというような報道がございます。

 これは訴訟の資料にも出てきているところでございますけれども、初めにかかった私立病院の方では、何らかの毒物が投与された可能性が高い、そして公立病院の担当医も、薬物中毒によって今回のような死亡に至るケースがあるというような答えをしているところでございます。しかも、この男性の死因について不審なところがあったので病理解剖をしているわけですから、そうしますと、こういう事例の場合は、医師法二十一条の異状死ということで、当然二十四時間以内に警察に届けなければならないケースではないでしょうか。厚生省、お答え願います。

岡島政府参考人 医師法二十一条に基づきまして、異状があると判断された場合には、二十四時間以内に警察に届け出る必要がございます。ただし、具体的にどのような死が異状死に該当するかにつきましては、個々の状況に応じて個別に判断されるということで、死体を検案した医師が個別に判断しているところでございます。

 一般論として申し上げますと、仮に、死体を検案した医師が中毒死の疑いがある異状死というふうに判断したのであれば、医師法の規定に基づき必要な手続を行う必要があるというふうに考えております。

細川委員 私は、最初の事件、それから本件、今答弁いただきました事件につきましても、いずれも、やはり死因をしっかり究明するために、本来ならば司法解剖をして必要な検査をすべきであった事案ではないかというふうに思います。

 そこで、この一九九八年に起こった事件で、民事訴訟ではありますけれども、その中で裁判官が、保険金目的で男性を薬物中毒で死亡させたと推認できる、ここまで判決で判断をいたしております。これは私は見逃すわけにはいかない。こういう判決が出て報道をされて、遺族の人はもちろんでしょうけれども、一体死因が何であったのか、これは殺害ではないかという疑いがあるような場合は、しっかりと捜査をして、それが解決するというか、きちんと説明ができるような、そういう捜査をしっかりやらなければいけないと私は思いますけれども、警察庁はどういうふうにお考えでしょうか。

縄田政府参考人 本件事案につきましては、死亡後一年半後に情報が寄せられまして、千葉県警察では、関係書類を押収する、あるいは諸般の鑑定等も行うなど、現在捜査中であります。真相解明に向けて全力を尽くすべき事案だろう、こういうふうに認識をいたしております。

 詳細、具体的な捜査状況につきましては、答弁を差し控えさせていただきたいと思います。

細川委員 この事件は、担当された医者が、死因にいろいろと不審を感じて、病理解剖をやった。病理解剖をして、臓器などを保存していた。したがって、その後で、保存をしていたその臓器を鑑定に出して、何によってこの人が死亡したかというようなことがはっきりわかってきたわけでございます。

 そういうことで、この解剖、私は司法解剖をしなきゃいけなかったと思いますが、司法解剖をし、いろいろと検査をし、そしてまた臓器も残しておくというようなことが非常に重要だと思います。ぜひ、この事件については、しっかり、犯罪被害者や遺族の感情を踏まえ、万全を期していただきたいと思います。

 そこで、我が国は、先進国の中でも解剖の割合が非常に少ないということでございます。ちょっと古いあれですけれども、解剖率は、例えばフィンランドなんというのは三六%、英国が二四%、アメリカが一二%、ドイツは八%というのに比べまして、日本はたったの四%。WHOの統計でも最低でございます。その四%の中でも、六割以上が病理解剖でございまして、犯罪捜査などに係る死因究明の法医解剖というのはさらに少ないところでございます。

 そこで、少しでも犯罪の疑いがあれば、積極的に司法解剖をすることによって犯罪を見逃さないようにすべきだと私は思いますが、警察庁はその点をどういうふうに考えていますか。

縄田政府参考人 平成十七年中の司法解剖の体数は、四千九百四十二体でございます。この司法解剖の重要性と申しますのは、委員御指摘のとおりでございます。犯罪に起因する疑いのあるものにつきましては、これを司法解剖を行いまして、真相といいますか死因を解明し、犯罪捜査の一助とする、こういうことであろうと思っております。

 先ほども申し上げましたが、刑事調査官等専門の捜査員、鑑定に当たる者を育成し、また、現場の警察官につきましても十分教養を行いまして、死体の取り扱いに誤りのないように指導をしてまいりたい、こういうふうに考えております。

細川委員 そこで、また千葉の事案に戻りますけれども、この一九九八年の事案では、鑑定に出しまして、サリチル酸が検出をされまして、そこで中毒死の疑いが濃厚になったということでございますけれども、このサリチル酸については、薬物あるいは毒物などの通常の検査で検出できたんでしょうか。

縄田政府参考人 サリチル酸の検査の関係でございますけれども、科学警察研究所はもとより、各都道府県の科学捜査研究所では、ガスクロマトグラフィー等、質量分析の装置がございまして、技術的に分析をし、これを検出することは可能でございます。

 ただし、委員御指摘のとおり、司法解剖の際、常にすべての薬物につきまして検査をしておるというわけではございません。したがいまして、現場あるいは死体の状況、捜査の経緯等々、あるいは解剖医の所見等々も踏まえながら適切な検査を行うということで、使用された毒物の検出に努めるということで、今努力をしているところでございます。

細川委員 これはサリチル酸の話でありますけれども、では、よくこれまでにも保険金殺人なんかで使われたこともあります、例えばトリカブトとかあるいは青酸カリ、こういうのは通常の薬物、毒物の検査で検出できるんでしょうか。

縄田政府参考人 委員の方から、青酸カリあるいはトリカブト等ございました。あとは農薬とか催眠導入剤とか、いろいろございますけれども、警察におきましては、死体の取り扱いに際しまして、死体の瞳孔の状態とかあるいは口臭とか死斑の色等、こういった毒物の使用、服用を疑う死体所見の有無につきまして、まずは綿密な観察を行う。そういったところから、さらに綿密な現場観察等、関係者の事情聴取、どうしても捜査と一緒に判断をしていくということが重要であるということで、そのように対応いたしております。

 死体観察や周辺の捜査の結果等、総合的に検討した上で、薬毒物の服用が疑われる場合には、血液あるいは尿等も採取する、科警研で検査をする。さらには、犯罪に起因するという疑いがある場合には、司法解剖に付し、大学の方でいろいろな検査がなされるということでございます。

細川委員 こういう薬物、毒物検査をするには費用も重なるというようなことで、なかなか大変なところもあるかと思いますけれども、この点はやはり十分にやっていただかないと死因究明ができないということもございますので、その点はよろしくお願いをしたいと思います。

 そこで、この九八年の事件では、たまたま病理解剖をしていて臓器が保存してあったから、毒物による保険金殺人というようなことが言われるようになったのでございますけれども、司法解剖の方で、臓器の保存あるいは血液の保存とか、そういうような規定というものはつくられているんでしょうか。司法解剖で、臓器の保存あるいは血液の保存などの規定があるのかどうか。

縄田政府参考人 警察におきましては、司法解剖の際に採取した臓器、血液等の保存を定めた規定はございません。鑑定先の各大学の法医学の教授等がまさに判断をいたしまして、鑑定のために必要に応じて臓器を保存しているというのが実情でございます。

 警察におきましても、この鑑定から必要に応じて血液等の提出を受けておるところでございますけれども、こういったものにつきましては、警察で残部については保存している、こういうのが実態でございます。

細川委員 この事件で、臓器が保存されていたことによる事件の解明というのができたことを考えますと、司法解剖をした場合の臓器の保存あるいは血液の保存をどういうふうにするかという規定のようなものをつくって、しっかりやっておかなければいけないんじゃないかと思いますけれども、この点についてはどうですか。

縄田政府参考人 臓器等の保存の方法等につきましては、先ほども申し上げましたが、まさに専門的見地を持っておられます法医学の教授等、法医学教室の方で、適宜な方法で適切な場所に保管をされておる。これは、鑑定のために必要だということで保存されるというのが通例であろうかと思います。

 警察におきましては、片や、諸般の捜査活動を行うわけでございます。捜査の過程の中で、どういうものがどう必要であるか、いつまで保存するかというようなことにつきまして判断をしながら、逆に言えば、解剖医、教授等とも緊密な連携をとりながら、いつまで保存するか等々、打ち合わせをしながら適切に運用していくということでございます。

 事案ごとにそれぞれ異なりますし、臓器等あるいは検査の内容等も異なりますので、個別のルールを定めるというのはなかなか難しいのではないかなと私どもでは考えておるところでございます。

細川委員 お答えに対しては私は不満でございます。やはり、しっかりした規定をつくって、保存すべきものはどういうものか、あるいは保存期間はいつまでかというようなことをしっかり決めておかないと法医学教室の方も大変でしょうし、それから今血液なども、検査について、全量消費といって後は全然保存しない場合がたくさんあるというようなことも聞いておりまして、ぜひ、こういう点については規定をつくっていただきたいと思います。

 いろいろと質問をしてまいりましたけれども、まだ途中で時間が来てしまいました。私は、悪いやつがよく眠るようでは困る、あるいは、悪いやつを眠らせないように犯罪行為に対してはしっかり摘発をしてもらう、そのためにはやはり死因をどう究明していくか、国として死因究明制度を充実させる、そういう制度も含めまして検討をしていただきたいと思います。

 また機会がありましたらさらにいろいろと御質問をさせていただきますけれども、きょうはこれで終わります。ありがとうございました。

石原委員長 次に、保坂展人君。

保坂(展)委員 社民党の保坂展人です。

 先日、四月二十一日に、入管の問題について、アクセンチュア社の低価格入札という問題について伺いました。

 その続きなんですが、現状はどうなっているか。低価格入札以降、自動化ゲートの試作機がつくられ、いよいよ本格運用段階に入るというふうに聞いていますが、簡単に、現状がどうなっているのか、入管局長、お願いします。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 本年の五月十六日付の官報で公示したものでございますが、出入国管理業務の業務・システム最適化に係る基本設計等及び生体情報システムの設計・開発等に関しまして意見招請をする公示を行っております。

 この調達の趣旨、目的でございますけれども、当局が策定いたしました出入国管理業務の業務・システム最適化計画を具体的に実施いたします上で、現行システムが抱えるレガシーの問題を刷新して、新たなコンピューターシステムを構築するに当たっての要件の定義や概念的な設計を行いますとともに、IC旅券の発給等を契機といたしまして、バイオメトリックスを活用した出入国審査体制の構築に関して、所要の業務システムを整備するに当たってのプログラム開発及び実証実験の運営等を行うものでございます。

 これの現状でございますけれども、公平かつ透明な競争環境を整えますために、調達仕様書の作成に当たりまして、本件調達に関心のある企業等から質問や意見を求めるものでございまして、本日、十三日の夕刻がその提出期限となっております。

 今後の予定でございますけれども、意見招請を踏まえまして当局で作成いたしました仕様書に基づき、企画内容と価格を一定の割合で評価する総合評価方式による入札手続を進めることとしておりまして、八月の末ころには落札者が決定されるのではないかと考えております。

 以上でございます。

保坂(展)委員 これは、もしよろしければ入管関係を担当されている河野副大臣に答えていただきたいんですが、アメリカのUS―VISITと今度入管で入れる仕組みと差はないんですね。前回、答弁で確認しています。差は、アメリカの方は査証段階で指紋をとるぐらいで、基本的なシステムにおいては差がない。

 ところが、アメリカでは百億ドル、一兆一千億円という途方もない額になっている。ところが、日本ではそういうことはない。少なくとも、この委員会でやりとりをしていたように、五十億前後、掛ける十年でも五百億円ということになります。アメリカの百億ドルというのは十年分というふうに聞いているんですが、これは、アメリカのシステムの一部あるいは全部を日本のVISITシステムに使うということがあるのかどうなのか、この点について何か御存じでしょうか。

河野副大臣 アメリカのUS―VISITに関してはいろいろな話がされておりますが、言われている、やれ百億ドルだの何兆円だのという数字は確固たるものではありません。アメリカは、予算がオーソリゼーションとアプロプリエーションで分かれておりますし、US―VISITに関しましても、今手元に資料がないかなと思ってめくっておりますが、上限が幾ら、下限が幾らの調達をしますよという上限が、保坂さんのおっしゃる途方もない数字になっているわけであります。

 ですから、そういう数字がひとり歩きするのはいかがかなと思いますが、何も、日本のシステムをアメリカのUS―VISITのサブシステムにするつもりは全くございませんので、そこら辺は全く違う話だと御了解をいただいて結構です。

保坂(展)委員 では、局長にそこの点を聞きますけれども、結局、十万円で実証実験をアクセンチュア社がとったと。これは、法務省の大臣官房会計課からの聞き取りで、海外におけるノウハウを持っているということが挙げられておりますよね。ですから、河野副大臣の先日の答弁でも、やはり日本でこのシステムを取得するということは、国際社会においても大変大きな戦略的な意味もあると聞いています。

 局長に端的に伺いますが、アメリカのそのシステムを日本において転用するということはあるのかどうか。あるいは、日本でこれからつくる仕組みが日本以外の他の国に委嘱されていくということ、その可能性はあるのかどうか。おわかりになる範囲で。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国におきましても、外国人の入国審査に際して指紋情報等を採取するわけでありますので、そういう意味では、米国のUS―VISITと似たようなシステムになるのだろうとは考えておりますが、ただ、委員御指摘のとおり、アクセンチュアという会社がそれに関与することになるかということになりますと、それはまた別問題だと考えております。

 御承知のとおり、アクセンチュアにつきましては、先ほども答弁申し上げましたが、法務省の最適化計画の策定に当たりまして、アクセンチュアから我々は支援を受けております。

 その点に関しまして、各府省の情報化統括責任者連絡会議というのがございまして、ここの決定によりまして本年三月末に改定されました業務・システム最適化指針というのがございます。これの第五版によりますと、最適化計画の策定や本格運用システムの設計、開発を含めた最適化計画の実施に当たってのガイドラインというものが定められておるわけでございます。

 このガイドラインによりますと、最適化関係事業者に対する委託の考え方といたしまして、会計法上の原則であります一般競争を行う上で、無差別性、透明性、公平性を確保する観点から、最適化計画の支援を実施した事業者に対しましては、当該最適化計画に基づくシステムの設計、開発等を委託しないことを原則としておるわけでございます。他方、最適化計画に示された方針やスケジュールに基づきましてシステム設計、開発が進められていることを側面からチェックする役割を担う工程管理につきましては、最適化計画の支援業者が引き続き行うことも可能である、こういうふうになっております。

 具体的に、アクセンチュア社は入管の最適化計画の支援業者でございますので、この最適化計画の実施といたしましての指紋情報等の採取の関係のシステムの設計、開発につきましてはこれを委託しないというこの原則に該当するものでございます。

保坂(展)委員 ちょっと聞いたことと答弁が違っていたんですけれども、直接の運用、実施はしないけれども、管理というか、そういう部分の関与はあり得るというふうに聞きました。

 次に、刑事局に伺いたいんですが、法務省からの情報によると、この低価格入札の検察総合情報システムというのを現在、アクセンチュア社に委託中である、既に十億円以上支払いになっていると。これは入管のように、何かレガシーシステムというのがあってこれを改変していくということではなくて、一回現在の検察庁の情報をなしにして新規に立ち上げる、こういうふうに聞いているんですが、この検察総合情報システムをアクセンチュア社が受注した経過、なぜ受注したのか、これに絞ってまずお答えいただけますか。

大林政府参考人 平成十五年度の検察総合情報管理システムの詳細設計につきまして、一般競争入札においてアクセンチュア株式会社が落札したというふうに承知しております。

保坂(展)委員 この情報というのは、もう御承知のとおり、検察庁が所管する最高度のセンシティブ情報ですよね。個人の犯歴にかかわる、あるいは、あらゆる検務事務というんですかね、こういったことをどうやってやるんだろうかということをすごく私は心配しまして、こちらの契約書を持ってきていただいて、契約書の中の仕様書という部分を見ると、つまり、この作業をどこでやるのかという問題があるんですね。

 作業については、当省内に確保するというのは場所的に難しい、スペースはないので、プログラムの修正等については請負者の負担において行うこととする、ただし、検務事務等に関する実際のデータ等を利用する作業については当局が指定する場所で行う、外部へのデータ持ち出しは禁止する、こうなっていて、それは私が心配したことと同じことを刑事局の方でも考えたと思いますが、これは実際どうだったのか。

 実際、法務省の中に個人情報の部分はここで作業すると分けておいて、プログラムはアクセンチュア社の方でやる。では、それをどういう人たちが、少なくとも刑事局の責任ある人たちがきちっと監督していたのか、これについて御答弁ください。

大林政府参考人 検察総合情報管理システムの開発に際し、そのプログラム開発については業者が準備した場所で作業しておりましたが、作業の過程でデータを利用する必要が生じた場合であっても、実際の事件のデータを業者に提供することはせず、当省職員がテスト用のデータを作成した上で業者に提供しておりました。また、実際の事件のデータを用いた検証等の作業を行う必要が生じた場合には、常に当省庁舎内において当省職員がこれを行っており、実際の事件のデータを業者が目にすることがないよう厳格な管理を行っていた、このように承知しております。

保坂(展)委員 これは法務省全体でこういった電子政府化が進んでいると思うんですが、ちょっと官房長に伺います。

 法務省情報ネットワークシステム最適化計画というのが二〇〇五年、平成十七年の四月に決定されておりまして、最後に統合図というか、これは全部統合していくというのもありますが、端的に、平成十七年度末までで電子政府化の予算というのは幾らぐらい使ったのか。これはちょっと予告を金曜日にしたんですが、どうですか。

小津政府参考人 お答え申し上げます。

 法務省情報ネットワークの最適化計画、これは、法務省が所有するネットワークごとに設けられた回線を政府全体の方針に基づきまして順次統合して、一府省一ネットワークを実現して運用管理経費の効率化を図ろう、こういう計画でございます。

 その法務省情報ネットワークにつきましては、平成十七年度に約二億円の開発経費を投じて再構築いたしまして、その結果でございますが、年間約七億円の運用経費を要しておりましたところ、年間約二億円運用経費が削減できると見込まれておるところでございますが、この先どのように統合していくかということにつきましては、現時点では算出していないわけでございます。

 それから、法務省のそのほかの部局、例えば入管局、刑事局等々でございますと、それはそれぞれの部局のいわば情報関係の予算全体の金額ということになるわけでございまして、それを進めていく上で、最適化の考え方にのっとって進めていくということでございまして、ちょっと、私、今の時点では法務省の民事も含めました電子関係の予算のトータルをこの場で持ち合わせておりません。失礼いたしました。

保坂(展)委員 これは、予告したのは法務省の最適化計画が二億円というのを知りたかったわけではなくて、法務省の入管であれ検察であれ、全体で幾らなのかという、金曜日に予告すればきょうあたり伺えるかなと思ったんですが、わかりませんか。わからなければ後で的確に。

 では、次に内閣官房の方に伺いますが、このアクセンチュア社の受注については宮内庁や公取や国税庁というものも把握されているというふうに伺っているんですが、宮内庁のCIO補佐官というのは一体何をやっているんでしょうか。どういう役割なんでしょうか。

安藤政府参考人 お答えいたします。

 宮内庁に限らず、CIO補佐官におきましては、それぞれ担当する府省におきますところの情報システムの導入あるいは運用、保守の全般にわたりまして、政府CIO、これは主として大体官房長クラスがやっておりますけれども、しっかり技術的観点からサポートし、的確なるシステム導入等の運用を確保していく、そこをサポートする役割を担っているということでございます。

保坂(展)委員 もう一問、内閣官房に伺いますけれども、電子政府化を急げというときに、世界主要先進国二十三カ国の中で日本は十七位にすぎない、最近五位に上がったという話がありますけれども、これはアクセンチュア社の調査ですよね。これは政府はかなり影響を受けて、参考にして電子政府化を進めたんでしょうか。

安藤政府参考人 お答えいたします。

 政府の電子政府構築計画といいますか、電子政府構築に向けた取り組みといいますのは、二〇〇一年のIT戦略本部においてe―Japan戦略というものが決定されまして、この中で、やはり簡素で効率的で利便性の高い行政サービスの提供ということが非常に重要なテーマの一つとなっておりまして、以後、できるだけ的確にかつ迅速にそうした行政サービスというものを実現し、国民の皆様にも利便性を享受していただくという観点から、計画的にこの導入を図ってきておるということでございます。

 アクセンチュアさんの方の調査、いろいろ世界各国の電子政府化についての取り組みについて調査されておりますけれども、これは、こういった私どもの方の政府としての電子政府の推進と特別な関係があるわけではございませんで、あくまで一つの参考にはなろうかと思いますけれども、これでどうこうされているからということではなくて、あくまで簡素で効率的で、国民の皆様にとって利便性の高い行政サービスに努めるという観点から行っているところでございます。

保坂(展)委員 最後に大臣に伺いますけれども、私は、ちょっと入管のことから入って、たまたまその入管の問題で十万円という入札があったので、その十万という入札の中に登記と刑事局のシステムも同時に同じ会社でやられている。いずれも個人情報の中で極めて守秘義務が高い情報を同じ会社がやっていて、どうなっているのかなというところで考えてきたんです。

 先日も指摘しましたけれども、法務省のホームページに、大臣はお忙しくてごらんになっていないかもしれないんですが、電子政府というところをクリックすると、入管に関しても二千ページぐらいの文書が出るんですね。入管法は二十九日にこの法務委員会で与党多数で可決されていますけれども、三十日付か何かで出ている文書の中には、例えば将来構想の中で静脈情報という、この委員会の中で全然出てこなかった項目まであったりします。

 私の問題意識は、電子政府化はいいことに違いないんですけれども、これは大変大きなセンシティブ情報を含んでいるので慎重の上にも慎重に、また、過去の検証もしっかりやっていただきたいという点でいかがでしょうか。

杉浦国務大臣 先生のおっしゃるとおりだと思います。詳しくは河野副大臣にお答え願いますけれども、私が今一番関心を持っておりますのは、コンピューターに投資してシステムをつくったけれども、利用が全く進んでいない。特に登記関係なんかそうですね。行政サービス一般にそうなんですが、一%未満だと。これは何のために投資したのか。それを国民の皆さんに利用してもらわなきゃだめなんで、それをどうしなきゃいかぬかということに一番関心を持って、私はコンピューターに弱いものですから、そちらの方は河野副大臣にお願いしたいと思いますので、河野さんからお答えいただきます。

石原委員長 時間が来ておりますので、簡潔にお願いします。

河野副大臣 大臣の問題意識を踏まえ、しっかり対応してまいりたいと思います。

保坂(展)委員 それでは終わります。

石原委員長 次に、河村たかし君。

河村(た)委員 きょうはいろいろありますので、ちょっと端的に。

 まず、もう三年、四年になりますけれども、名古屋刑務所の話で、私は、これは世紀の大冤罪事件だ、こう言っておりますが、そういう立場から、まず、いわゆる放水とそれから革手錠でという話ですけれども、矯正局内でその実験が行われたかどうか。

小貫政府参考人 実験というのは、放水実験は行っておりません。革手錠については、腰に巻いたりする等のことはやっておりますけれども、力いっぱい締める等の実験は行っておりません。

河村(た)委員 そんなことはやっていないということじゃないですか、これは。もっとちゃんと、はっきり言ってください。

小貫政府参考人 そのような実験は行っておりません。

河村(た)委員 きのうもテレビを見ておりますと、エレベーターで悲惨な事故がありまして、あれは警視庁ですけれども、現場でエレベーターを実際動かして、当然、実地検証をやっておりますよね。なぜやらなかったんですか。

小貫政府参考人 御案内のとおり、本件については今裁判中でございます。そこでまさに、放水あるいは革手錠の施用が本件の事故であるのか犯罪であるのか、裁判で争われているところでございます。

 裁判におきましては、証人尋問あるいは鑑定等々を駆使して、事案の真相にわたる調査あるいは審理が可能でありますけれども、実際に私どもでそういう権限とあるいは専門的な知見を持たない中で、おのずからその調査には限界があるもの、こういうことでございます。

河村(た)委員 今、ちょっと悪いけれども、個人的に矯正局長に恨みはないけれども、矯正局が専門的知見がないというのは大問題ですよ。検察庁の方が専門的知見がないんじゃないですか。革手錠をどうやって締めたらその施用はどうなるか、それから放水は、保護房の中でふん尿まみれになって受刑者が暴れているような状況の中でそれをどうやって処遇していくのか、こんなことは矯正局が一番知っておって当たり前じゃないですか。

小貫政府参考人 先ほど答弁が中途になりましたので、ちょっと続けさせていただきたいと思うんですが、放水から死傷の結果が生ずるか否かの実験について申し上げますと、事案発生当時の客観的な条件というのを必ずしも当局は把握しておりません。そこで、正確な実効性のある実験ができるかどうかという観点から考えまして、これは困難であろうと考えたところでございます。(河村(た)委員「専門的知識があるのかないのか言ってください」と呼ぶ)

 どういう面での専門知識かということでございますけれども、それまでの経験からいいまして、放水につきましてはまさに初めての経験でございました。革手錠につきましては従来から使用してきた、こういうことでございますので、その使用の方法等については一定の知識は持っているつもりでございます。

河村(た)委員 一定のと言っていますけれども、最も専門家じゃないですか。ほかにいないじゃないですか、これは特殊な分野だし。言い直してください。最も知っている立場にあると言ってください、ここではっきり。

小貫政府参考人 繰り返しの答弁で恐縮ですが、革手錠については使用経験を持っている、そういう職業についている集団である、こういうことでございます。

河村(た)委員 むちゃくちゃな話をしていますけれども、それから、残るといけませんけれども、放水は過去にもありましたからね。確認しておいてください。

小貫政府参考人 ホースを使った放水の例はあったと思いますが、私の知る限りは、それが事故に結びついたという例は初めてじゃなかったのかなというふうに思っております。

河村(た)委員 では、そういうことで告発をされましたけれども、長くなるといかぬので、告発に至る理由。人を告発するには理由がないとこれは誣告罪になりますからね。実地検証もせずに告発したと。国会でぼろかすに言って。それに至る理由をきちっと報告書にして出してください。

小貫政府参考人 まず、告発に至る経過について若干の説明を申し上げて、それが足りなければ報告書にさせていただきます。(河村(た)委員「後日、報告書でいいです」と呼ぶ)それでよろしゅうございますか。では、そうさせていただきます。

河村(た)委員 これはやってもらわないと大変なんですよ、私も被害者の一人ですから。

 それから、放水実験と放水実験の捜査報告書が捏造されているということを私、言いましたね。これは刑事局長ないし総務課長に申し上げました。そういうことを受けて、早速放水実験、革手錠施用実験、いずれもやってくださいよ。

小貫政府参考人 先ほど御答弁申し上げたとおり、当局では具体的な前提条件をすべて把握しているわけじゃございませんで、そういった放水実験によって正確あるいは有効な実験結果が得られるかどうか、非常に慎重に判断すべきことで、現段階では、困難な実験である、こういう認識でおります。

河村(た)委員 冗談じゃないですよ。そんなもの、紙に〇・六キロと書いて出したわけでしょう。放水で、保護房の中でどういうことが行われているか。それじゃ、エレベーターの、上へ上がったときになぜああいう事故が起きたのか、部品がいかぬのか、当然やるじゃないですか。どこがいかぬのですか。革手錠なんかまだ幾らでもあるでしょう、現物は廃止しましたけれども。何でしないんですか。

小貫政府参考人 先ほど来申し上げているとおりでございまして、いろいろな前提条件等が判明しておらないし、私どもにとってという意味でございますが、そういった条件が把握できていない段階で、的確、正確、そして有効な実験を行うことは困難であろう、こう考えているところでございます。

河村(た)委員 これはやはり職務怠慢というか、明らかに故意ですよ。こんな放水実験なんというのはすぐできるでしょう。法務省の庭でもいいし、すぐできますよ、目の前で。なぜ、保護房の中で二人亡くなって、一人けがをしたのか。それをやらないということでしょう。

 では、裁判でというんですか。裁判で明らかにするから真相解明はやらないというんですか。

小貫政府参考人 行刑運営上必要な事柄については、私ども従来から、必要でかつ可能なものについては調査をしてきたつもりでございますし、それは今後も同様な考えで臨みたい、こう思っております。

 ただ、委員御指摘の実験については、累次の答弁と同様でございまして、正確かつ的確あるいは説得的な実験結果を得られるのは非常に困難であろうという認識で現在はおります。

河村(た)委員 何を言っておるんですか。裁判所の方がはるかに困難ですよ、プロがいないんだから。おたくが一番プロじゃないですか、保護房も入っていけるし。当時の水圧はわかっておるでしょう、実際は水道の水圧より低かったということが。これはわかっておるんですよ。

 では、次の質問です。

 先日、大体半月ぐらい前ですけれども、TBSのニュース23という番組で、まだ刑務所の中では暴行が多く行われている、状況は悪化しているような報道がされましたけれども、あれは本当ですか。

小貫政府参考人 私どもは、刑務所内での暴行事案が増加しているという認識は持っておりません。ちなみに、平成十三年度、十四年、十五年、十六年、十七年と数字を申し上げますと、三件、七件、八件、二件、二件、こういう数字でございます。

 ただ、刑務所内でのことでございますので、これが二件あるからといって、だからといって自慢できることじゃございませんので、極小化する、あるいはゼロにしなくてはならない、こう思っている次第でございます。

河村(た)委員 では、抗議されましたか。ぜひ抗議してくださいよ。

小貫政府参考人 先生の御指摘を受けて、私、昨夜、ニュース23を見させていただきました。あれを見ますと、あそこで言っているのは、国賠訴訟の一方当事者の受刑者からの手紙を読み上げておる、こういうことでございました。

 私どもとしては、国賠訴訟でこちらの主張をしっかりと述べて、その中で真実を明らかにしていくべきだろう、こう考えておりますので、報道に対する抗議までの必要はないのではなかろうかと考えている次第でございます。

河村(た)委員 実際に事故があったときに、ちゃんと言うことも言わないし、調査もしないし、こんなことで、国会でいろいろ審議してくれというのはむちゃくちゃじゃないですか。私はそう思いますよ。私は何でこれを抗議しておるんですか。冗談じゃない。刑務官のみんなも言っていましたよ、とんでもない、河村さんと。そういうことですよ。だから、あなたの方からも言うことを言わなきゃいかぬ。

 それじゃ、何か取材はあったんですか。

小貫政府参考人 私が認識している限りでは、取材はございませんでした。

河村(た)委員 いずれにしましても、全く調査をせずに告発をしてしまったということは、これは何らかの犯罪の成立する余地はないですか。告発に至る報告書をもらいますけれども、これは実地検証を一切していない。

 それで前国会で何十人も出てきて、何年間まではいきませんけれども、予算委員会でもやりましたよ。それで、新聞、テレビでわあわあ、刑務官が暴行したといってやったんですよ。それで八人、地獄の思いをしている。告発したのはあなたたちじゃないですか。管区長が告発したじゃないの、実地調査も何もせずに。これは誣告罪にならないですか、大林さん。

大林政府参考人 委員御案内のとおり、いわゆる名古屋刑務所事件、三事件ございます。被告人八名については三グループに分けて公判が進められておりましたが、うち一名の被告人については、革手錠使用事案である九月事案及び放水事案である十二月事案により、平成十六年三月三十一日、名古屋地裁において有罪の判決が言い渡され、確定しているものと承知しております。

 また、二名の被告人については、放水事案である十二月事案により、平成十七年十一月四日、名古屋地裁において有罪の判決が言い渡されましたが、検察官及び弁護人の双方が控訴し、現在、名古屋高裁に係属中であると承知しております。

河村(た)委員 時間がないけれども、とんでもないですよ、有罪確定して、私は会いに行きましたけれども、弁護士はやめ検の人で、家族は泣いておりましたよ、保釈がありましたからと言って。とんでもない話ですよ。それから、後のことも言っておりますけれども、まあ、これはどう言ったらいいかね。

 では、放水のときに、〇・六キロを裁判官は高圧と言ったんですか、判決の中で。

大林政府参考人 今申し上げたとおりであり、また、その余の被告人については現在裁判中であります。判決そのものについてのコメントは、ちょっと差し控えさせていただきたいと思います。

河村(た)委員 コメントじゃないですよ。判決文の中で、〇・六キロを高圧と言ったんですよ、私は法廷におりましたけれども。

小貫政府参考人 判決文によりますと、事実認定の中で、噴出した高圧の水が、こういう表現になってございます。

河村(た)委員 そういう話ですよ。そんなもので有罪にして、あなたたちが放水実験をやらなかったのが理由じゃないのかな。あほらしい。

 水道の放水、ではここで水開いてくださいよ、委員部でも。水圧何キロ出ると思いますか。〇・六より高いですよ、そこで水道を開いたら。何が高圧ですか。どう思いますか、局長。

小貫政府参考人 判決の事実認定のことでございますので、私から答弁するのは差し控えるのが穏当かなと思っております。

河村(た)委員 いずれにしろ、告訴に至る報告書はお約束いただいたので、放水実験と革手錠施用実験は一遍ちゃんと再現してやってください。頼みます。

小貫政府参考人 繰り返し繰り返しで恐縮でございますが、困難であろう、こう認識しているところでございます。

河村(た)委員 これは本当に犯罪的ですよ、言っておきますけれども。だから、僕のところに暴力団関係者が来るんじゃないですか、誤解されておるといって。そんなことを日本じゅう垂れ流しして、高圧放水でやったなんて言うものだからそうなったんじゃないですか。

 やめておきますので、では、告訴に至る報告書は出してくださいね。ありがとうございます。

 では、次、警察庁の方に伺います。

 これは四月二十一日です。ここで、このテープ。まず委員長に聞こうかな。こういうふうに押すと、逮捕の瞬間を録音されたテープが鳴りますけれども、理事会で御協議いただくということになっておりましたが、これはなぜここでやっておるかといったら、いわゆる可視化の話ですね。可視化そのものです。可視化というのはビデオだけみたいですけれども、ビデオが撮れぬ場合は録音するということになっていまして、これこそやらなきゃいかぬのです。

 自民党の皆さんに申し上げておきますが、あなたたちは、にせメールのときに出せ出せと言って、本物が出てきた場合、何でやらぬのですか。一体何を考えておるの。

 そういうことで、委員長、これは再生させていただきたいが、どうしたらいいですか。

石原委員長 もう既に民主党理事をして理事会のお話はさせていただいております。

河村(た)委員 その内容を教えてください。

石原委員長 民主党の理事の皆様に申し上げます。

 もう既に理事会の話はついておりますので、河村委員にお話をしていただきたいと思います。

河村(た)委員 そんなこと、委員長が言ってくれなきゃどうするんですか。ちょっととめてよ。それは言ってくれないといかんですよ。

 そんなものは、委員長は、民主党の意向も受けて、要するに議運で相談するということでいいですね。(発言する者あり)

 そんなこと知りませんよ。初めてですよ、こんなあほらしい。石原さんはちゃんと言えばいいんですよ、そのとおりのことを。どうなりましたか。

 何でかといいますと、ちゃんと委員会で、理事会は別で委員会こそが正規の機関だから、理事会で協議されたことをちゃんと委員長から言ってもらわないと、委員にわからぬじゃないですか。それは一人一人聞くことじゃないですよ。僕が民主党から聞くことじゃなくて、自民党の方も聞きたいでしょう、これ。(発言する者あり)何を言っておるんですか。

 これはちゃんと言わないといかぬですよ。委員長、当たり前じゃないですか。ちょっととめてちょうだい、この時間もったいないから。内容だけ言ってくれなきゃ。

石原委員長 河村たかし君。私は申しました。

 民主党の理事をもって理事会の結果を河村委員にお伝えくださいと発言をさせていただきました。

河村(た)委員 まあしかし、これはちょっと政党政治も行き過ぎていますよ、言っておきますけれども。一体何を考えておるんですか。ほかのがあるのであれですけれども、委員長、これはとんでもないですよ、悪いけれども。

 言っておきますが、理事会というのは民主党のためや自民党のためじゃないですよ。これは委員全体がどうするかと考えておるんですよ。では、どうなったということを言ってくれるのは当たり前じゃないですか、そんなこと。何を首かしげておるんですか。

 これはどうなっておるの。ちょっと本当にとめたらどうよ。こんなばかなこと、杉浦さんでもおかしいと思うでしょう。

石原委員長 理事会の詳細について委員長から明らかにするというのは、理事会の性格を著しくこれから変えるということに私はなると思いますので、民主党の理事をもってお答えくださいと申し述べさせていただきました。御理解を賜りたいと思います。(発言する者あり)

 私の判断はそのとおりでございます。(河村(た)委員「ちょっと議論してくれよ、こんな話聞いたことない」と呼ぶ)

 理事会で既に協議いたしました。

河村(た)委員 これは本当にふざけていますよ。議員というのは、全部それぞれ国民の負託で出てきておるんですよ。それで何がどういうふうになったかということは、当然みんなに言ってもらわなきゃいかぬじゃないですか。こんな話は聞いたことがないですよ。何だと思っておるんですか、議員の仕事というのを。私たちは党のサラリーマンじゃないんですよ、党の職員じゃないんだよ。一体何を言っておるの。

 信じられぬけれども、どうしようもないんで、一般質疑でちょっとほかにもいろいろ聞かなきゃいかぬからね。信じられぬ。これほどまでに議員が形骸化しておるというのは本当に情けないですよ。

 では、議運でやってくれということになりましたということで、高山理事と平岡さんから聞きましたので。(発言する者あり)

 当たり前じゃないですか。おれが知っておったらいかぬじゃないですか。ここでこうなったと言わないといかぬじゃないか。おれは個人のためにやっているんじゃないんだよ。この委員会でやっておることは全国民が見ておって、テープの問題はどうなったんだと。ああそうか、議運でやることになったのかということで、私は、国民の皆さんに知ってもらう義務があるじゃないですか。何を言っておるんだ、冗談じゃないよ、むちゃくちゃだよ。

 では、矢代さんに聞きますけれども、そのテープですけれども、その後、どういうふうに調査されましたか。この神戸北の話ですね。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 私ども、テープ起こしのものをいただいておりますが、これを県警の方にもお送りいたしまして、捜査記録と照合するなどしていき、また、私どもからいろいろな疑問点などもお尋ねし、調査したところでございます。

河村(た)委員 矢代さんはどうですか。これを聞かれましたか。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 私は、テープ起こしは見ておりますが、テープは聞いておりません。

河村(た)委員 そうしましたら、私の部屋にありますので、終わったら、どうぞおいでいただけませんか。

矢代政府参考人 どのようにいたすか、また委員とも御相談させていただきたいと思います。(河村(た)委員「私ですよね、委員というのは」と呼ぶ)失礼しました。はい、そのとおりです。

河村(た)委員 なかなか矢代さんはヒューマニズムあふれる雰囲気で、官僚的でないところが、まあ、そういう人は出世せぬと言われておりますが、非常に人間味あふれるので、なかなか愛きょうがあって非常に好きですけれども。

 ぜひ、個人的には別ですが、これは皆さんが言われておることよりもっと重要なんですよ。交通違反というのは年間に八百万件あるんですよ。だから、全国民の日常生活に物すごく深くかかわる問題なんです。そこで、警察は警察で、お巡りさんはどういう苦労があって、反対に取り締まられる方はどういう問題があるかということを、これはあったら聞かなきゃいかぬですよ。

 そういう意味で、ちょっともう一回、どうですか、矢代さん。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 私ども全国の警察につきまして指導する立場にございまして、さまざまな状況につきまして、必要があれば調査する立場でございます。

 ただ、今回のケースにつきましては、私どもかなり詳細に調査したつもりでございまして、それをどのようにいたすかどうかは、また別途御相談させていただきたいと思います。(河村(た)委員「私とね、私とと言ってちょうだい、御相談といってもどこと御相談かいろいろあるので」と呼ぶ)委員と御相談させていただきたいと思います。

河村(た)委員 それでは、これはいろいろ警察庁の方もテープを聞かれたと思いますけれども、アクセスされましたか。いろいろな雑誌等において、今こういうものは非常に技術が発達しまして、一定のインターネットのところにアクセスすると声が聞こえる技術があるんですよ。これはどうですか。

矢代政府参考人 アクセスできるようになっておるようですが、これは有料になっておるようでございまして、したがいまして、組織的にこれを聞いているということはないと思います。

河村(た)委員 有料なのは一つでございまして、もう一つは、週刊プレイボーイ、週プレにおいては無料なんです。これにアクセスされていますか。

矢代政府参考人 私及び私が知っている者につきましては、アクセスしておりません。ただ、それ以外の方でどうかということにつきまして、ちょっと把握しておりませんので、御説明できません。

河村(た)委員 矢代さんには正直に言っておきますけれども、これは警察庁からアクセスされていますからね。されていますから、ぜひその方からも、テープをとっておられると思うので、聞く手もありますけれどもね。正直に言われた方がいいですよ。私は余り、ある程度正直に言ってもらえば、そうわあわあ言いませんので。八百万件もありますから、それはいろいろな間違いがありました、済みませんでいいんですよ。はっきりしてもらえればということなんです。

 そうしたら、実際は四十分間説得に当たったと言っていますけれども、それについて、ちょっと時間がないものだから、その報告、初めに現認してから手錠をかけて、それからその後連行というか同行されるまで、そのところの報告書を出してくださいよ。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 ここで御説明申し上げたいと思いますが……(河村(た)委員「ちょっと時間がないもので、後で」と呼ぶ)本当に簡単でございます。

 これは、歩道上を走っておる原付を現認して逮捕したという事案でございますが、当日、午前九時五十五分ごろ、この被疑者が原付で歩道上を走行しておるのを現認しております。それから、午後零時三十三分でございますか、この時点で現行犯逮捕をいたしております。

河村(た)委員 その間の連絡はどうですか。まあいいです。また出していただきます。

 ちょっと時間がないので先に行きますけれども、それではもう一つ、奈良の事案がありましたよね。奈良の事案についてはどうでございましたか。

矢代政府参考人 奈良の事案でございますが、これは乗車用ヘルメットの着用義務違反ということでございました。平成十七年一月二十六日の十五時十分ごろですが、これは、奈良県警の西和警察署の警察官が四人で検問しておりまして、乗車ヘルメットを着用せずに走行している原付を現認して、停車合図を送った。違反車両はUターン逃走のそぶりを示したので、すぐに同車に駆け寄り、停車させ、路外の空き地部分に誘導して違反事実を告げて、道路交通法違反、乗車ヘルメット着用義務違反として告知したということでございますが、この状況について、次のとおりでございます。

 当初、違反者の人定を確認するため運転免許証の提示を求めましたが、違反者は、法律で免許証は提示しなくてもいいことになっているなどと申し立てて、警察官の要求に応じませんでした。そこで警察官が、免許証の提示がなければ無免許の疑いがある、無免許運転であれば逮捕する場合もある旨伝えて、さらに説得を続けた結果、渋々違反者が免許証の提示要求に応じ、人定が確認され、点数切符により告知したものでございます。この間、道路交通法違反を現認して告知するまでの間、約十二分を要しております。

 なお、その後、同日六時ごろ、違反者が所轄に来署いたしまして、免許証の提示を拒んだことに対し、現場の警察官が逮捕することもあり得ると言ったので免許証を提示したが、そのときの警察官の言動が納得いかないとの苦情が申し立てられました。同署では、既に六時を過ぎておりまして当直体制に入っておりまして、状況がわからないままでは十分な説明はできないことから、事案を対応した者から後日説明させるということで、本人を帰宅させました。

 翌日でございますが、検問に携わっていた警察官が本人に電話し、道路交通法六十七条で無免許運転と認めた場合には運転免許証の提示義務があること、また、無免許運転ではなくても、交通違反をした場合には運転免許証を提示して警察官に協力するのは当然のことではないかなどと説明しましたが、違反者は、四人の警察官から言われたことが腹立たしい、運転免許証の提示義務はないという話に終始し、らちが明かないため、違反者宅を訪問することとし、さらに話をしたものと承知しております。その結果、本人は警察官の説明に納得したと承知しております。

 この後処理の部分につきましては苦情処理としておりまして、警察にさまざまな苦情や申し立てがございますので、それにつきましてそれぞれ対応しておりますが、その対応として行ったものでございます。

河村(た)委員 その逮捕の話をしたときに手錠に手をかけたことがあったかなかったか、それからもう一つは、後で行ったときに謝罪したかどうか、この二つを端的に答えてください。

矢代政府参考人 申し上げます。

 手錠につきましては、特に手をかけたりしたことはないということでございまして、これは先ほど申し上げました、本人が警察署に来まして苦情を申し立てておりますが、そのときの記録にも特にそのようなことはありませんで、申し立てはあくまで、四人の警察官から言われた、それから免許証の提示がなければ云々ということでございました。

 それから、謝罪につきまして、これは説明に行ったわけですが、どうも御本人は、警察官がわざわざ来訪したということもあったと思いますが、特に話がさらに進まず、もう納得してしまったというような状況と承知しております。

河村(た)委員 それでは、今言いましたように、交通違反というのは年間八百万もあって、いろいろなことがあり得ると思うんだけれども、そういうときに、反抗的な態度をとった人たちにいわゆる逮捕をちらつかせて切符を切るということは一切ない、あるいは今後も一切しません、ありませんということを、ちょっとここではっきり言っておいてください。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 捜査一般に、任意捜査の原則あるいは逮捕の要件等、刑事訴訟法等の法令の遵守は職務執行の基本でございます。したがいまして、今委員御指摘のようなことというのはあってはならないことでございますし、また、今後ともないものと確信しております。

 また、都道府県警察におきましては、この点は非常に大事なことでございますので、初任科を初めといたしまして、警察官のいろいろな段階で教育の場がございますが、そのときに最も重要な事項として教養しているものでございます。

河村(た)委員 はい、ありがとうございます。そうしたら、警察庁さん、結構でございます。

 あとは、議員宿舎の話をちょっとしたいと思います。

 これは、何でかと言いますと、一番最後に聞きますけれども、杉浦法務大臣にちょっとお伺いしますが、憲法十五条に、いわゆる公務員は全体の奉仕者であるという規定がありまして、普通は、全体の方はいわゆる論議になりますけれども、その後にも、一部の奉仕者ではない、いずれも奉仕者という言葉を使っております。これは、英語ではサーバンツというのが書いてありますけれどもね。そういう精神からいって、後で出てまいりますが、どう思われるかという話でございます。

 順番にいきましょうか。まず、新赤坂宿舎ですね。これは建築費総額幾らで、それから入居者は何人おるのか。それと、すぐ隣地にこういうのがあるんですけれども、これはすぐ隣地のマンションです。本当の隣地です。ここで大体八十平米、一億です。八十平米、国会議員の宿舎、一億、民間の場合ですね。駐車場は別です。きょう電話かけて聞いたんです。駐車料金は月に大体五万ぐらいかかると。衆議院の場合は多分ゼロになると思いますけれども、そこら辺のところ、いかがですか、ちょっと衆議院事務局に。早うやってちょうだい、時間がない。総額と入居者数。

山本参事 お答えします。

 PFI手法による赤坂議員宿舎整備事業における事業費は総額で三百三十四億円であり、そのうち、建設費は百三十八億円となっております。また、総戸数は三百戸でございます。

河村(た)委員 そういうことで、億ションということでございます。土地がただになっておりますので、お上の場合は、議員の場合は。これは真横のマンションですから。国会議員が億ションに住むことになったんですか。これはえらいことですよ。

 今、青山宿舎はあいておりますか。

山本参事 青山議員宿舎の議員室については、全議員室が四十室で、平成十八年六月二日現在の入居室数十九室、空き室は二十一室でございます。

河村(た)委員 こうやって、あいておるところがあるわけですね。私は今、この青山に入っておりますけれども、あいておるところがあるのに、そこを使わずに、仮宿舎ということで、大層豪華なところにみんな入っておりますので、これは会計検査院にお伺いしますけれども、会計検査院は、税の無駄遣いというか、公正に使われているかということをチェックすべく、わざわざ憲法で定められておりますからね。これは検査すべきじゃないですか。

諸澤会計検査院当局者 お答え申し上げます。

 国会の収入支出でございますとか国有財産の受け払いなどにつきましては会計検査の対象となっておりまして、国会から提出されます計算書また証拠書類に対する書面検査のほかに、毎年一回、二日間程度を要して実地の検査を実施しているところでございます。

 この実地検査に当たりましては、私ども、物品購入でございますとか役務契約など、さまざまな支出項目の中から、一部でございますが、それを抽出して検査を実施しているというところでございます。

 今後、ただいまお話がございました議員宿舎の有効利用が図られているかなどの点につきましても、十分留意してまいりたいと考えております。

河村(た)委員 では、国会議員が億ションに住むことについてはどうでしょうか。国会議員が億ションに住むことについて、それも多分、家賃十万円以下、駐車場込み。

諸澤会計検査院当局者 お答え申し上げます。

 議員宿舎の必要性でございますとか、また、どのような議員宿舎を用意するのかということにつきましては、国会御自身でお決めになられたことと承知はしております。

 しかしながら、会計検査院といたしましては、本件、PFIによる赤坂議員宿舎の建てかえ事業ということでございますけれども、事業の進捗に応じまして、合規性、経済性、効率性、有効性などの観点から検査を実施していくものと考えているところでございます。

河村(た)委員 これはしっかりやってくださいよ。国会を聖域にしたら、本当に憲法が泣きますよ。会計検査院、これはわざわざあるんですからね。

 それから、議員宿舎の根拠法というのはあるんですか。

山本参事 議員宿舎は、国家公務員宿舎のように法律に基づくものではございませんで、直接規定したものはございません。

 国有財産法上は行政財産の庁舎でございまして、地方選出議員の在京生活を保障し、議員の職務を円滑に遂行するための宿所として、議院運営委員会の決定に基づき設置されたものでございます。

河村(た)委員 ないんですよね、根拠法は。これはなかなかですよ。これは庁舎だと言っていますけれども、国会のものを見ますと、赤坂の新築のがありますけれども、特に寝室一は主寝室として、寝室二は子供部屋もしくは書斎などということで、子供部屋をつくることをはや予定しておるんです。庁舎というと議員会館みたいなものだね、これは。まあ、あなたに言ってもしようがない、後で個人的に恨まれてもしようがないのであれですけれども、とんでもないですね。これはお手盛りの最たるものであったということだと思います。法律の根拠もない。

 それでは次、これは財務省、国税庁。

 要するに、民間の人が入る家賃だとこれだけ取られる。それで、公務員宿舎も大問題ですよ、言っておきますけれども。公務員宿舎も安い値段だ。議員宿舎も、安い値段で入っておる場合は、税というのは公平でないといかぬですから、フリンジベネフィットといいまして、所得とみなしていわゆる課税する、これは当たり前ですよね、納税者として。いわゆる差額というのはフリンジベネフィットで課税しないんですか。

竹田政府参考人 お答え申し上げます。

 一般論として申し上げますと、所得税法上、いわゆる社宅あるいは公務員の場合の宿舎の貸与を受けている場合におきまして、入居者の方が実際に負担している社宅等の使用料、これが、社宅の利用について通常支払うべき賃貸料の額、この通常支払うべき賃貸料の額より低額である、そういった場合には、その差額は収入金額に含まれるということで、これは課税関係が生じることというふうになります。

 ここで言う通常支払うべき賃料の額、この考え方でございますけれども、社宅といったものの貸与が職務と密接に関連しておって、住まいとしての安定性に乏しい、例えば、退職いたしましたらすぐ退去しなきゃいけない、そういった事情もございますので、一般の、みずから賃貸住宅を借りられた場合と性格を異にしている面がある。そういう点を考慮いたしまして、通常支払うべき賃料の額というものを、その社宅の敷地とか家屋の評価額に一定の率を乗じるなどといたしました維持管理費を算定の基礎とした一定の計算式、これに基づいて算出することとしております。

 したがいまして、社宅等の経済的利益の課税に当たりましては、先生御指摘のように、一般の民間家賃の相場の価額との差額についてそのまま課税するということはしていないところでございます。

河村(た)委員 ということは、今、公務員宿舎の問題を盛んにやっておりますけれども、それと大体同じ感覚で、課税していない、そういうことですね。

竹田政府参考人 現実に課税しているかしていないかにつきましては、個別にわたる事項でございますので、お答えは差し控えさせていただきたいと思いますが、まさに先生御指摘のように、考え方は、国会議員の先生方も含めた国家公務員もそれから民間の方も、全く同じ通達、考え方に基づいてやっております。

河村(た)委員 じゃ、公務員宿舎を改善するには議員宿舎をやらないかぬということだ、そういうことでございます。

 では、最後に、大臣、お待たせしまして済みません。

 おだてるわけじゃありませんけれども、なかなか地元では大変御人気のあられる大臣でございまして、いろいろ法律的知識もある、またヒューマニズムもあるという方が、本当に、ちょっと冷静に考えてほしいんですよ。やはり権力をつかさどる者は質素でなければならない。こんなことは世界史が生んだ常識でございまして、都会のサラリーマン、都会でなくてもそうですけれども、皆さんにとって住宅問題というのは、住宅ローンというのは、言ってみれば税金と同じですよ。それで、通勤一時間かけて、みんな苦労している。そういうところで、国会議員がこんな便利なところで億ションに住む。億ションよりいいんですよ、駐車場を除いて億ションですよ、これは。

 こういうことで、二つあるんですけれども、一つは、憲法が言う奉仕者と本当に言えるんだろうか。それからもう一つは、愛国心だと言っていますけれども、こういう、国会議員が億ション、駐車場を除いて億ションに住む国で、一体愛国心というのは持てるんですか。よく考えてくださいよ、皆さん、庶民の気持ちになって。(発言する者あり)何を言っておるんですか、あなたたち。こんなことを感じぬようでは、とんでもないよ。

 いいですか、これをぜひ杉浦先生、本当に一遍原点に立って、議員というのはどうあるべきかというところからひとつ答弁をお願いします。

杉浦国務大臣 国会議員も、憲法十五条に定める全体の奉仕者の一員であります。疑う余地はありません。

 宿舎は、議院運営委員会の議を経て建設されておりまして、世間に今いろいろ批判があることは耳に入りますが、私の知っている限り、議員で指摘されるのは先生が初めてではないか、そう思います。

 いずれにしても、国民の理解が得られるかどうかという問題だと思います。愛国心とかそういうこととは次元の違う話だと私は思っております。

河村(た)委員 何を言っておるんですか。お立場があるのでこうなるのかもわからぬけれども、やはり国を愛する場合は、ここは、議員は人の上に立つと余り言いたくないですけれども、実はこれは大変重要な仕事で、社会の仕組みをつくる仕事ですから。そういう人たちがやはり謙虚に、質素に暮らしている、最低でも国民と同じ生活をしている、これは私は絶対的だと思うんですよ。だから立派なんですよ。

 だから、ああ、おれも日本をひとつよくしようかな、じゃ東京で、おれだったら名古屋でひとつ頑張ってみようかな、こう思うんですよ、コミュニティーの中で頑張ろうと。そこをつくる人たちが、億ションですよ、言っておきますけれども。庶民の高ねの花ですよ、これは。

 もう一回答弁いただきたいんだけれども、議運だ議運だと言うんだけれども、議運は私は筆頭理事にもう言ってありますから、きょうここで質問すると。だから、一遍、ウイ・アー・パブリック・サーバンツという本当の原点に立って、やはり僕は、議員宿舎を全部廃止して、自分で不動産屋へ行って、ワンルームに入りたい人はワンルームに入る。それで、どうしても欲しいものだったら住宅手当を国民の皆さんのところで堂々と議論する。こういう当たり前の姿に戻さぬと、政治への信頼というか、ああ、日本というのはいい国だな、そういうふうに出てこぬと思うんだけれども、どうですか、大臣。

杉浦国務大臣 正直に言いますと、例えば地方から、遠隔地から当選して来られる方にとっては便利だと思うんですね。

 それから、国民の衣食住の水準はもう劇的によくなっております。公務員宿舎にしても議員宿舎にしても、戦後の混乱した時代から始まっておるわけでして、新しい、こういう衣食足った時代にどうかというのは、これは議院運営委員会の場で十分検討していただく必要があると思う。どの程度の水準がいいかどうか、検討すべきことだとは思います。

 例えば、拘置所にしても刑務所にしても、拘置所は最近、冷暖房完備ですからね。昭和四十年前後は何もないですから……(河村(た)委員「それは東京だけですよ」と呼ぶ)いやいや、新しいところはですよ。刑務所も、最近新しいところは暖房が入りますから、それは国民生活のレベルが上がっているからであって……(河村(た)委員「刑務所と一緒にしちゃまずいだろう」と呼ぶ)いや、でもと申し上げているわけで、やはり国民生活の水準、そういうものから勘案していくことは必要だとは思います。

 これは、国民の全体の奉仕者である国会が議院運営委員会という場を持っているわけですから、そこで十分に検討して、いかなる水準が適正かどうか御判断いただくことだと私は思っております。

河村(た)委員 では最後に、これで終わりますけれども、ぜひこういう、さっきの委員長の話もそうだけれども、議員というのはそれぞれ一人ずつ、これはある意味じゃ社長なんですよね。中小企業のおやじみたいなもので、それぞれが結構立派なものなんですよ。だから、やはり質素なところに住んで、みんなが拍手するような状況にしていかないかぬ、宿舎を。

 便利だからと言ったら何でも便利になりますよ。それじゃ国民の皆さん怒りますよ、おれも便利なところへ十分の一の家賃で住ませてくれと言って。だれの金で入っておるんだということですよ。億ションは金持ちが入るところで、議員が入るところじゃないですよ、言っておきますけれども。

 終わります。

     ――――◇―――――

石原委員長 次に、内閣提出、信託法案及び信託法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。杉浦法務大臣。

    ―――――――――――――

 信託法案

 信託法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

杉浦国務大臣 信託法案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 この法律案は、最近の社会経済の発展に的確に対応した信託法制を整備する観点から、受託者の義務、受益者の権利等に関する規定を整備するほか、多様な信託の利用形態に対応するための新たな諸制度を導入するとともに、表記を現代用語化し、国民に理解しやすい法制とするものでございます。

 第一に、この法律案は、信託制度について、受託者の義務、受益者の権利等に関する規定を整備することとしており、その要点は次のとおりであります。

 まず、受託者の義務に関しましては、形式的には受託者と受益者との利益が相反する行為であっても、信託行為において許容する旨の定めがあるときなど実質的に受益者の利益を害しないときはこれを許容することとし、また、信託事務の処理を第三者に委託することができる範囲を拡大するなど、その規律の合理化を図ることとしております。

 次に、受益者の権利に関しましては、帳簿その他の書類及び信託財産等の状況に関する書類の作成、保存、閲覧等の規定を整備し、受託者に対する損失てん補等の請求に加えて違法行為の差しとめ請求の制度を創設するとともに、受益者の意思決定について多数決によることを許容するほか、新たに、受益者にかわって受託者を監督する信託監督人制度等を創設するなど、その行使の実効性及び機動性を高めるための規律を整備することとしております。

 第二に、この法律案は、信託制度について、多様な信託の利用形態に対応するための新たな諸制度を導入することとしており、その要点は次のとおりでございます。

 まず、状況の変化に即応して信託の形態を再編できるように、信託の併合及び分割の制度を設けるとともに、信託を利用した資金調達の要請にこたえる観点から、受益権の有価証券化が可能となる受益証券発行信託の制度を設けることとしております。

 次に、受託者の履行責任の範囲が信託財産に限定される限定責任信託の制度を創設し、公益信託でなくとも受益者の定めのない信託を一定の要件のもとに許容し、委託者がみずから受託者となる信託について、その要件、方式等を一般の信託より厳格なものとした上でこれを許容するなど、信託の類型の多様化を図ることとしております。

 第三に、この法律案は、信託法の表記を現代用語化しようとするものでございます。

 信託法は、大正十一年に制定された法律であり、片仮名の文語体で表記されていることから、利用者にわかりやすい法制とするため、これを平仮名の口語体の表記に改めることとしております。

 続いて、信託法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 この法律案は、信託法の施行に伴い、旧信託法、信託業法その他の六十三の関係法律に所要の整備を加えるとともに、所要の経過措置を定めようとするものでございます。

 以上が、これら法律案の趣旨でございます。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに可決していただきますようお願いいたします。

 ありがとうございました。

石原委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 この際、暫時休憩いたします。

    午後零時八分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時三十九分開議

石原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 内閣提出、参議院送付、法の適用に関する通則法案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として金融庁総務企画局審議官細溝清史君、総務省自治行政局長高部正男君、法務省民事局長寺田逸郎君、法務省刑事局長大林宏君、外務省大臣官房審議官長嶺安政君、厚生労働省大臣官房審議官松井一實君、厚生労働省大臣官房審議官間杉純君、厚生労働省職業安定局次長高橋満君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

石原委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

石原委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高山智司君。

高山委員 民主党の高山智司でございます。

 まず、この法の通則につきまして、なぜ今回こういう改正になったのか、この運びの背景を教えてください。これは政府参考人の方でも結構です。

寺田政府参考人 現行法の法例は明治三十一年にできた法律でございますが、その一条を見てもおわかりのとおり、法律全体の適用の通則について基本的なことを決めているわけであります。しかし、三条以後については、おおむね、いわゆる国際私法、どこの国の法律を渉外的な事項について適用するかということについての原則を定めている。これで長く今日まで適用を続けてきているわけであります。

 その間において、身分的な事項について、婚姻、親子でございますが、改正の必要が特に強く求められたため、その部分については改正が行われたわけでありますが、その余の部分については全く改正がございません。それでも今日まで何とかやってこられたということは現実の問題としてはあるわけでございますが、しかし、戦後も非常に長くなりまして、特に一九九〇年代以後は国際的な交流というのがどこの国でも非常に盛んになったわけであります。

 そこで、こういうことについての法典を有しているのはヨーロッパの国が非常に歴史的に古いわけでございますが、そういう古い歴史を持つヨーロッパの国でも改正が次々と行われるような状況になってきていたわけであります。

 我が国については、非常にこの法律、難しいところもございます、なかなか決めがたいところもあるわけでございまして、学説の習熟というのもなお十分でないところもあるわけでございますが、それにしても、そういう各国の状況を見ますと、これはもうなかなか放置できないなという状況に至りまして、平成十三年、十四年あたりから検討をずっと続けてまいりました。それで、法制審議会での御議論もいただいた上で、今回こういう提出ができたわけでございまして、私どもは、長年の検討の結果ということと、ここ最近の各国の動きというものをにらんでの改正というように考えているところでございます。

高山委員 今、改正の背景は伺ったんですけれども、もう少し具体的に、実際どういう不都合があったのでここを改正したんだという部分をお話しいただきたいんですけれども、何かこれは今のままでは不都合があったのでしょうか。

寺田政府参考人 一番わかりやすいのは不法行為の分野でございます。不法行為について、現在の法例では原因事実の発生地ということが書かれているわけでございます。ただ、不法行為の何が原因事実の発生かということになりますと、例えば、近隣諸国で何か大きな事故が起こって我が国にその影響が及んでくるという場合に、一体どこが原因事実の発生地なのかというようなことは、広く解釈問題になってくるわけであります。それは必ずしも、どうも今の法律の状況としては十分明確ではないのではないかという御批判があった。

 他方で、不法行為については、各国とも、被害者の保護ということが非常に強調されるようになってまいりました。それは、不法行為の考え方として、基本的に、損害のてん補というものをどこの国の法律に基づいて行うかということを中心に考えるべきであるという考え方に基づいているわけでございますけれども、そういった点からいたしますと、もう少しそういうことを明らかにするという意味で、被害者の保護を念頭に置くと、やはり結果が発生した土地というものが非常にクローズアップされるわけでありまして、各国とも、いろいろなバリエーションはございますけれども、結果の発生ということを重視してきているところがふえてきているわけであります。

 そういった意味で、我が国も、この原因事実の発生地をそのままにしておくのはちょっとどうかなという意見が学者の皆さんの間でも非常に強かったわけでございますし、実務家の皆さんの間でも、もうこれはそろそろ改めてはどうかと。これが一番わかりやすい例かと思います。

高山委員 では、今の不法行為のところなんですけれども、製造物責任のところでこれは何か変更があったんでしょうか、今までのままなんでしょうか。そこをお願いいたします。

寺田政府参考人 現行法では、先ほど申し上げましたとおり、原因事実の発生地ということでございまして、その原則にのっとって、例えば製造物責任、あるいは生産物責任とも言われておりますけれども、そういう性質の責任についても規律するというのが一般的な考え方でございます。

 ただ、この点につきましては、仮に結果発生地ということの規律を中心に考えますと、ある物を製造してその欠陥によってどこかで被害が生ずる、その被害が生じたところというのは、生産物を考えてみますと、非常に広範囲にわたることが予想されるわけであります。製造者にとってみたら、思わぬところでそういう被害が起きることがあるわけでございますし、被害を受けた方自身にとっても、例えば旅行中にたまたまそこで被害が生じたということもあるわけでございます。

 そういった点で、やはり普通の不法行為よりはもう少し絞って、この点について特則を置くのが適当ではないかということが、例えば国際私法について各国の統一条約をつくるということをある国際機関でもってやっているわけでございますけれども、そういうところでもいろいろ御議論になって、国際的にそういった面での統一の条約をつくってはどうかというような動きもあるわけでございます。

 そういうことを勘案いたしますと、我が国においても、やはり製造物責任、生産物責任については特則を置いてはどうかという御議論が学者の間でも非常に強かったわけでございまして、それで今回、生産物責任については、基本的には、被害者がどういうマーケット、市場でそれを入手されたかということを中心に連結点を考えていく、そこの地域の法律、国の法律を生産物責任の準拠法にすべきであるという考え方を基本といたしているわけでございます。

高山委員 今の不法行為の生産物責任に対する特則なんですけれども、そうしますと、ちょっとこれは局長に具体的な例で伺いたいんですけれども、秋葉原なんかへ行きますと、韓国や中国の方がいろいろ買い物をされているのをよく見るんですけれども、あそこで売っている製品というのは、例えばアセンブリー・イン・インドネシアのテレビだったり、そういうものを韓国や中国の方が秋葉原で買って、タックスフリーとかデューティーフリーとかと書いてある店が秋葉原はすごくいっぱいありますよね。中国語や韓国語の話せる店員なんかまで雇っていて、そちらの方に売ることを専門としているようなところというのはすごく多いんです。それで、自国に持ち帰られて、テレビなんて見ていたときに何か事故が起きた、これはどこの国が準拠法になるんですか。

寺田政府参考人 被害者の方が生産者の生産者としての責任を製造物責任法等をもとに追及するという場面を想定いたしますと、この場合はまさに、新しい法案では十八条がそれに当てはまることになるわけでございまして、被害者がその生産物の引き渡しを受けた、そういう地の法律、つまり、秋葉原であれば日本国ということになるわけでございますので、日本の法律が適用になるだろうというふうに考えます。

高山委員 そうしますと、例えば中国や韓国などの方が買って帰られて、中国、韓国の自宅で使われているときに、それで日本法準拠となるわけですけれども、これは何か不都合は生じないんでしょうか。

寺田政府参考人 今、生産物の責任を追及するという場合は、そのメーカーを追及するわけでございますけれども、メーカーを追及するについて、メーカーとしては、どこの市場に自分の製品が出ているということはそれほど困難なく把握できることでございまして、他方、買った方は、そこで買ったということでそこの場所の法律が適用されるということにそれほど違和感をお持ちになることもないだろうということで、十八条にはもちろんただし書きもございますけれども、基本的にはそれほど不都合はないだろうと思います。

 なお、念のため申し上げますと、このような事故が起こった場合には、何も製造物責任だけの追及ではありませんで、もちろん売った方の契約責任も追及されるわけでございます。そういうことは、日本の売り手にも責任が追及されるわけでございますが、それはここの製造物責任とは関係なく、売買契約の準拠法ということになるわけでございます。

高山委員 あともう一つ、この不法行為で、密接な関連を有する地で契約が成立するというようなのがあるんですが、ここをもう少し説明してもらえますか。

寺田政府参考人 御指摘をいただいているのは二十条だろうと思いますけれども、一般的に、先ほど申し上げましたように、原因事実の発生地ということから結果発生地に切りかわるわけでございますけれども、その場合に、どうしても不都合が生ずる、違和感が生ずるようなケースがないわけではございません。

 例えば、日本の方と日本の方がアメリカでけんかになりまして、そこでいろいろな事故、事件が起こってしまう、被害が起こってしまうということはあるわけでございます。その場合に、結果発生地はもちろんアメリカになるわけでございますけれども、しかし、その当事者同士は、基本的にはそれは日本の中での出来事の延長だと考えている場合もあるわけでございます。

 そういうようなケースを念頭に置きますと、必ずしもすべてのケースにおいて結果発生地が準拠法になるのが当事者間の規律として適当だとは言えないようなケースがあるだろうということで、それについて、より密接に関連がある地の法律というものを、いわばそういうことから例外的に逃げ出させるような措置をとるのが適当ではないかということが、これはどこの国でも議論がされているところでございます。

 我が国もその考え方を採用いたしまして、この場合に、非常に抽象的ではありますけれども、しかしいろいろな例外的なケースに妥当するということで、二十条では、明らかにより密接な関係があればそちらの地の法律によるということを例外的に認めることにしているわけでございます。

高山委員 今いろいろと御説明いただいておりますのは、先ほどの話にもありましたように、EUの通則法というか、EUのと結構似ているんですか、それとも決定的に違う部分があるんでしょうか、ちょっとEUとの比較で伺いたいんですけれども。

寺田政府参考人 この分野での経験が非常に深い地域はやはりヨーロッパでございまして、EUは当然、その域内の中で、法律の衝突と俗には申しますけれども、抵触法の問題が頻繁に生ずるわけでございます。

 そこで、EUでは古くからこれについて、各国で共通の結果が得られるように、つまりどこの裁判所で訴えても同じようなことになるように、EUの共通の準拠法をつくろうという動きがありまして、それが各国でも、そのEUの結果が参照されているわけでございます。

 EUはこの点について、不法行為では必ずしも明確な、今申し上げたような生産物責任の原則はとっておりませんけれども、ヨーロッパの国の中には、例えばスイスのように、その点についての特例を置いているところもあるという状況でございます。

高山委員 何でこれはまた、EUみたいに実際にいろいろと問題が生じそうなところでそういう不法行為の特例のようなものをとっていないのに、今回、日本の方では取り入れたんでしょうか。もう一度お願いできますか。

寺田政府参考人 この点についてはいろいろ御議論もございまして、もちろんEUでもいろいろ、こういうことをしてはどうかという御議論もあるわけでございます。EUも必ずしも不磨の大典ではございませんで、いろいろ改正の議論等もあるわけでございます。

 我が国のこの議論の中では、例えば不法行為について、今の生産物責任についての特例、あるいはエスケープクローズと言っておりますけれども、より密接な関連があるところはそういう地の法律によるというのは、学者の間では割と共通の考え方でありまして、それほど違和感がない。皆さんが御議論をなさる意味で、今の各国の、例えば先ほど申し上げましたスイスでありますとかあるいはイギリスでありますとかの法律を見ると、そういうものもないわけではないので、それほど、日本がここでこういう仕組みをとるからといって、それが異例だということではないというように御理解を賜りたいと思います。

高山委員 では、大臣にちょっと伺います。

 一問目ぐらいの方から伺いますけれども、いろいろお話を伺っていますと、法の適用の通則というのは、随分古い文言でも書いてありますし、実際、我が国がそんなに、海洋国家といいますか、地政学的に隣の国と接しているわけじゃないので、法律上のこういう問題がヨーロッパ諸国に比べたら起こらなかったのかもしれないんですけれども、この改正、ちょっと遅きに失した感もあるんですが、どうしてゆっくりやられたんでしょうか。大臣にまず伺います。

杉浦国務大臣 遅きに失したかどうかは別にして、おくれたのは間違いないと思うんですけれども。

 私、弁護士をやっているときに、二十年前、事実上廃業したんですが、その前十五年ぐらいやっておったんですが、法例に突き当たったのは一回だけですね。日本人が外国人と結婚して離婚騒動になって、これはどこの法律を適用するんだということを見たぐらいで、法例を念頭に置いて仕事をしたということはなかったですね。

 実際、先ほど局長が言いましたけれども、いわゆるグローバリゼーションといいますか、国際化が進み始めたのは最近のことですね。最近は非常に国際的結婚も多いし、離婚も多い。子供のやりとりで、私、地元へ帰っても相談を受けることがあるぐらい進んできております。国際化の進展と申しますか、経済社会もITが進んで、大きく変化しているという事情があると思います。

 先ほど来、先生の御質問で局長が答えていましたが、EUが一番熱心なんですけれども、あそこはもう一体化していこうという方向性を持っていますから、研究も熱心、条約もどんどんつくる。我が国も、ハーグですか、あれに参加して、議論に参加していますけれども、あの方々にとっては、国際私法というよりもむしろ、EUとしてまとまっていくために、それぞれの国の民法、私法の運用が別々では困るという特殊事情がありますものですから、大変熱心にやっておられる。EU統合に向かう過程の中で、このところ特に熱心に、そういう事情があるということも間違いないと思います。

 それから、法例そのものは、非常に規定が抽象的で一般的であって、基本的には解釈で運用されていたという面があるわけなんですが、正直言って、判例も少ない、学者さんの議論も国内では余りないですね。国際私法の本を読んでいただければわかりますけれども、よくわからないというか、実際本当に必要なんだろうかというぐらいの漠とした中身なんですね。そういうようなことでおくれておった。

 それからまた、国内の事情からいいますと、バブル経済の崩壊後、倒産法制ですとか不良債権処理とか企業の国際競争力の強化等々、会社法制の整備を急ぎました。そちらの方に手をとられて後回しになったというような実情も正直言ってあったんじゃないでしょうか。民事法の世界ではありませんが、司法制度改革も一方でやりましたので、関連した部分もあって、民事法制の担当者がどうしてもこれに専念できなかった。だから、法制審にかけたのは平成十五年ですね。そういうおくれがあったことは否めないと思います。

 しかし、先ほど申したように、いろいろその前から勉強をしていまして、最低、そういった状況に対応する必要なところを変えようということでお諮りすることになったんだと思います。

 これで主要法制で片仮名のものはなくなる。まだほかに片仮名の法律は幾つかありますけれども、主要な法制では最後の現代化だということで、ぜひ慎重に御審議いただいて、成立させていただければと思っております。

高山委員 今大臣からは、ゆっくりになってしまった内幕といいますか、かなり正直なところをお話しいただいたなという印象があります。

 また、国際結婚が今ふえてきているということで、その問題に関しましてはまた後で質問いたしますけれども、今大臣のお話にもありましたように、EUの方は、国際私法というより域内でどんどん統合をしていこうということで熱心だというようなお話がありました。

 実際、今、東アジアでの域内貿易がもう五五%を超えてほとんど域内での貿易が多くなってきている、こういう現状を踏まえて、日本も国際私法のあり方を、日本中心というのも変ですけれども、国際戦略上どう位置づけて今後やっていくつもりなのか、あるいはそういうつもりが全くないのか、ちょっと大臣に伺いたいと思います。

杉浦国務大臣 私法の分野というのは、それぞれの国の歴史、伝統、文化、宗教等絡んで、相当独自なものがあるわけですね。例えば中国、韓国、日本というのは儒教で共通点がありますし、漢字文化がもとになったということもあって比較的似ている部分もあるわけなんですが、東南アジアになると、これはもう本当にさまざまなんですね。

 例えば、ハーグと申しますか、西側世界で、離婚した場合に、子供を連れて奥さんが帰っちゃう、例えばアメリカ人と結婚した日本人が子供を連れて日本へ帰っちゃう、そういう場合に、条約で、ともかくもとへ戻せというような条約があるようです。締結されている、日本は入っていませんけれども。EUなんかですと一体になるわけですから、国の間といったって、日本では県の間ぐらいの感じになるじゃないですか。だから、そういう場合には、国の力で一たん戻して、そこで決着をつけてから帰しなさい、帰るなら帰れというようなことが議論になっていて、そんな条約もあるようなんですが、では、それに日本が入れと言われたら、これは相当問題があると思うんですね。

 ですから、国際化の進展というのは一方では事実でございます。国際結婚も、タイとの間もあり、フィリピンとの間、いろいろございますから、それぞれの国の法制との調整を図っていくということはもう絶対必要ですので、後ろは向けませんですが、しかし、それぞれの国の私法の世界がございますので、調和を図っていくという意味で協議の場を設けることは必要だと思いますし、日本がいち早くハーグに参加したのは、これはいいことだと思うんですけれども、ヨーロッパにおいて、日本が初めて、その後、最近幾つか入っているようなんですけれども、そういう協議の場というのは大事だと思います。

 私人の間でトラブルが起こった場合にどう対応するかという問題ですから、イニシアチブをとっていくことも必要だとは思いますが、余り無理はできないといいますか、やはりそれぞれの国の事情があるわけですから、お互い相談しながら、どうしましょうかねということではないでしょうか。

高山委員 僕は、東アジア経済圏というのを将来見据えて、その中での通則というんでしょうか、そういうのもちょっとお考えになってはというような趣旨で申し上げたんですけれども、大臣のお考えは今はっきりわかりましたので、それはそれで結構でございます。

 今、大臣のお話の中にもありましたけれども、ハーグの方では子供を連れて帰っちゃったら一回国の力で戻してなんて、随分、そういう法律というか国の力で家族が引き裂かれていくようなことは、日本人の感覚としてはやはり合わないものがあるなというような気も私はいたしました。大臣もそういう趣旨でおっしゃっていただいたんだと思うんです。

 この点、今、大臣おっしゃったように、いろいろな国の人との間で結婚も進み、子供も出てくるということでございますけれども、無国籍だとかあるいは重国籍ということでいろいろな問題が生じていると思うんです。

 無国籍の問題についてまず伺いますけれども、日本は、無国籍というのはどういう弊害があるのかということと、これを解消するためにどういう努力を今までされてきたかということ、これを伺いたいと思います。これは副大臣でしょうかね。

河野副大臣 無国籍になりますと、国の保護が当然受けられません。我が国は、例えば両親が無国籍の場合に、日本で生まれた子供には日本の国籍を与える、そういうようなことを行っております。

 ただ、今現実に問題になっておりますのは、我が国はパレスチナを国家として承認しておりません。パレスチナ人の御夫婦が日本にいらっしゃって日本で出産をされた場合に、日本側から見ると、無国籍の夫婦に産まれたお子さんということで、日本国籍を与えております。こういうケースがもう既に二けたになっております。向こう側から見れば、パレスチナ国家と日本国家の二つの国籍を持っているということになるんだと思いますが、いずれ中東紛争の中で日本国籍を持った方の邦人保護の問題ですとか、あるいはそういう方がテロ行為に加担をしたりすると日本の国家も当然のことのように巻き込まれることになりますので、こうした問題が起きないように、なるべく早く無国籍になるような状況の解消に努めてまいりたいと思っております。

高山委員 今副大臣からお話がありましたように、無国籍の問題でやはり一番被害を受けるのは子供だと思うんですよね。それで、アメリカなんかだと、不法移民の子供であっても教育を受ける権利はある、学校に行くことはできるんだというお話もありますけれども、今副大臣、日本では国家の保護を受けられないということでした。

 例えば、日本では、そういう無国籍の子供というのは、学校に行ったりあるいは病院に行ったりしたときに何か保護を受けたり、こういうことはやはりできないんですか。

河野副大臣 国内で学校に行く、病院に行くというのは、国籍の問題といいますか、それは社会保障制度の問題、あるいは義務教育制度の問題になるんだろうと思います。

 法務省の中でプロジェクトチームで外国人労働者の問題をずっと研究してまいりましたが、外国から来られて日本で働いている方々の子供に関しても、やはり日本人の子供と同じような義務教育をきちっと適用して、御両親には、子供に教育を受けさせる、そういう義務を課して、国としてはそういう子供たちもしっかり教育を受けられるようなサービスを提供する、社会保障に関しましても、社会保険の本人負担分はきちっと払っていただいて、採用する側は企業負担をちゃんと払っていただく、そういうような制度を国籍を問わずやはり適用していく。あるいは、現にそういうルールになっているならば、きちっとそういう運用をしていくべきだろうと思います。

高山委員 今副大臣からいい答弁をいただいたので、ちょっとこれは通告していないのであれなんですけれども、国際条約で、教育のときに、要するに外国人に対する教育に対する配慮か何かの規定があって、それを日本の方では受け入れていないというような話がたしかあったと思うんです。

 それで、私が言いたいのは、今教育基本法の議論をしているときに、自民党案も民主党案もそうなんですけれども、外国人の子供に対する教育ということに関して記述がないというか、配慮が全然ないわけなんです。実際、これは、今副大臣がおっしゃいましたように、福祉の問題であったり、あるいは教育行政だから文科省の問題なのかもしれないんですけれども、私は、やはり無国籍というものが生じてしまうということが一番そういう問題の遠因になっている気がするんです。

 これは大臣でも副大臣でも構いませんし、事実関係のことであれば政府参考人でもいいんですけれども、今、日本では外国人の子供に対する教育の配慮ということで何か特別なことをやられているんでしょうか。ちょっとわからないですか、何かありますか。

河野副大臣 例えば自治体の中には、浜松だったと思いますが、浜松市内に住んでいらっしゃるブラジル人の子供をしっかり義務教育に引き取るために、一億五千万円程度の教育の人件費を自治体が負担しております。そういうケースもございます。

 一般的な話になりましては文科省の担当なものですから、調べて、後ほど御連絡をさせていただきたいと思います。

高山委員 どうも済みませんでした。

 では、無国籍はこのぐらいといたしまして、無国籍と重国籍とどっちが問題なのかというのはなかなか難しいんですけれども、この重国籍というのはどうして生ずるのかということと、もう一つ、重国籍になると何か不都合があるんでしょうか。これは事務的なことですから、別に政府参考人でも結構ですけれども、では、副大臣。

河野副大臣 昭和六十年でしたか、国籍法を両系主義に変更いたしましたので、日本人のお父さんあるいは日本人のお母さんが外国の方と結婚をして生まれた子供は、相手の国が両系主義をとっている場合には、必然的に重国籍になります。

 重国籍の何が問題かといいますと、例えば領事保護で二つの国がバッティングをする、あるいは、日本国籍を持っている方が相手の国に徴兵制などがある場合には徴兵にとられてしまう、そうした場合にどうするか。あるいは、今でも起きておりますが、例えば、外国のパスポートで入国をしてこられた二重国籍の方が日本のパスポートで出国をすると、当然に統計は混乱をいたします。また、別々な名前を名乗ることが可能になりますので、婚姻関係その他、身分関係も若干複雑になる、場合によってはどちらかの国の法令違反になる、そういうケースも考えられます。

高山委員 ちょっと一つ一つ伺いたいんですけれども、まず、身分関係に混乱をというのは、二つ名前があるので、例えば日本とフランスとかで違う名前でもって二つ結婚してしまうとか、そういう問題があるということだと思うんですけれども、これは、そんなに国が禁ずることというよりは、それぞれの奥さんの方で、何なのあなたはということで、個人的にやり合ってもらえば済むというレベルの話ではないでしょうか。これはこんなに禁ずるほど大変なことでしょうか。どうですか、まず副大臣に意見を伺いたいんですけれども。

河野副大臣 婚姻に関しては法律で定めているわけですから、それぞれの奥さん、あるいはそれぞれのだんなさんになるのかもわかりませんが、どうぞ御自由にやってくださいというわけには、これはなかなか国家としていかないんだろうと思います。やはり身分関係はきちっとする、我が国は重婚を禁止しておりますので、そうしたことがないように、そこはやはりはっきりしないといかぬと思います。

高山委員 それとあともう一つ、外国の軍隊に入ってしまうというような話がありましたけれども、実際にそういうことで何か問題が生じたことはあるんですか。

寺田政府参考人 現実に、特定の外国の軍隊に日本人との二重国籍者が入ったことによって外国との間でそれが外交問題になったということは、今まではないというように私どもは承知しております。

高山委員 そうしますと、そんなに目くじらを立ててということではないですけれども、仮に、今そういう重国籍の人が本格的に日本を攻撃してきたら、それは、例えば国籍の問題が仮に整理されていても十分問題になり得ることだと思いますし、私は、日本が攻撃されるときに国籍の問題が重要になるのかというのは、ちょっといまいちぴんとこないんですけれども、よく法務省からこういう説明を受けるんですけれども、ちょっと副大臣、もう一回、ここを本当に納得できる説明をしていただけますか。

河野副大臣 徴兵制度の問題は、日本の国籍を持っている人が外国の軍隊に入る、そのことによって、例えば邦人保護との兼ね合いをどうするかということ自体がもう既に問題なんだと思うんですね。日本国籍を持っている人が外国の軍隊に徴兵されて、その国と日本が戦争になった、さあどうする、もちろんそういう問題もありますが、日本国籍を持っている人の邦人保護の問題を考えても、徴兵制がある国との二重国籍で日本人がその国の徴兵に行くということも、やはりそれ自体問題なのではないかと思っております。

高山委員 そうしますと、副大臣、徴兵で行く場合と、前もいらっしゃいましたけれども、傭兵で外国の軍隊へ入られている日本人の方、日本国籍の方がいらっしゃると思うんですけれども、これはどう違うと考えたらいいんですか。

河野副大臣 傭兵というのは自分で職業を選択されて行くわけですから、日本人の傭兵の方が海外あちこちでいろいろ戦争活動をやっているというのは日本からしてみると余りいいことではないのかもわかりませんが、それは個人の職業選択の問題であります。

 徴兵の場合には、一定の年齢になった方がその国の軍隊に徴兵されるわけですから、そこはやはり邦人保護との兼ね合いが出てくるんだろうと思います。

高山委員 そうしますと、本人の意思を結構重視されるということなんでしょうか。そうすると、自分の意思で国籍を選ぶというんですか、こういうことができない子供なんかはまずどうしたらいいんでしょうかね。あるいは、自分の意思で必ず国籍というのは選ばなきゃいけないものなんですか。そのときそのときで、もし本当に戦争に行きたくないのであれば、その人が使い分けるということは可能なんですかね。

河野副大臣 日本の場合には、出生による二重国籍の場合には、一定の年齢までは二重国籍を認めております。

 それで、国が目くじらを立てる問題かという議論もあります。これは、実は数十万人の方が今出生による二重国籍になっているんだろうと想定をしておりますが、残念ながら、一定の年齢になったので選択をしてくださいということが、これはとても徹底できているという状況にない。徹底できているという状況にないどころか、これはなかなかできない状況でもあります。だからといって、これを、いいですよということにすると、恐らく飛躍的に、ネズミ算式に重国籍の方がふえる、あるいは四重国籍、八重国籍になりかねない。そうすると、身分関係がやはり混乱をする、あるいは旅券の問題等も出てきますので、なかなかどうぞ御自由にというわけにはいかないんだろうと思います。

 ただ、例えば、国籍は幾つあっても、このパスポートでやりますよということが相手の国と合意ができれば、国籍は三つ、四つあるけれども、旅行するときには必ずこのパスポートでやりますというような取り決めができれば、おっしゃるとおり、そう目くじらを立てなくてもいいのかなと思います。現実にはなかなか、そういう交渉も始まっておりませんので、難しいというのが現実だと思います。

高山委員 今数十万人の方がそういう国籍選択のという話がありましたけれども、きのう、法務省の方からこういう「国籍選択届」というのをもらったんですけれども、実際これを見ますと、「日本の国籍を選択し、外国の国籍を放棄します」というようなことが書いてあります。これを一応日本政府には出す。そうすると、例えば、日本とイギリスとか日本とフランスとか二重国籍だった人は、何かフランスの方で除籍されちゃったり、あるいは市民権を失うですとか、もう日本を決断として選んでいるわけですから、そういうことが何かあるんでしょうか。

河野副大臣 その届け出を日本政府に出していただきましても、日本政府から別に相手の政府に通告をしているわけではございませんので、その書類を日本政府に出したからといって、相手の国が国籍を剥奪するというようなことは現実にはなかなか起こり得ないと思います。

高山委員 それでは日本政府は、法務省の方、皆さんやはりまじめなんでしょうか、国籍を選ばせてということなんですけれども、諸外国でこういう国籍を選ばせている国と選ばせていない国と、今実際どういうふうになっているんでしょうか。

河野副大臣 諸外国もいろいろな対応があるようでございます。

 例えばG8の中で見ますと、日本とドイツは、外国へ帰化をすると自国籍を当然に失う。その他の国は、当然には外国へ帰化したことによって自国籍を失わない。あるいは、欧州評議会の加盟国、オーストリア、モルドバ、スロバキア間では、出生や婚姻により当然に重国籍となった場合にはこれを容認するということになっております。それから、中国、韓国、アジアに目を転じますと、外国への帰化により当然にその国の国籍を喪失するものとなっておりますので、諸外国の対応は二極化していると言ってもいいのかなと思います。

高山委員 そうしますと、先ほどの法の通則じゃないんですけれども、いろいろな国で国籍に対する考え方が違うというのは、かなり混乱を来す原因になっていると思うんですね。諸外国で、それぞれの国で歴史があるので、あるいはそういう日本みたいな戸籍という考え方がない国もあるでしょうし、これは国際的に統一する必要はないんでしょうかね。どうですか。

河野副大臣 これはもう国とは何ぞやというのが、日本のような国とヨーロッパの国では恐らく違うんだろうと思います。ヨーロッパの国は、それぞれ王室がつながっているとかいろいろなことがあると思いますので、国とは何ぞやという考え方が違えば、当然国籍に対する考え方も違ってくる。これをそう無理やり一つにする必要があるかといえば、恐らく、それについてもいろいろな考えがあるんだろうと思います。

 そういう国籍に対する考え方はいろいろ差があっても仕方ないということは、これは容認できるのかなという気もいたしますが、法務省にいる立場からいたしますと、国籍はたくさんあってもパスポートはぜひ一つにしてほしい、ここだけは将来的に各国で議論をして、とにかく、国境をまたぐときにはこの身分でいきますよという……(高山委員「各国で指紋とられて」と呼ぶ)指紋で登録するということが各国共通になればそれはいいのかもしれませんが、そこまで言うつもりはございませんが、少なくともパスポートは一冊にしてほしいなというのが、恐らく世界各国の入管の現場の声なんだろうと思います。

高山委員 パスポートを一つにして入管行政をぴしっとやりたいというのは当然のことだと思います。けれども、そういった中で、例えば、自分は両国の国籍を持っているけれども、どっちも自分の母国だと考えているから、わざわざ外国の国籍放棄なんということを宣言するのは心が痛むというかやりたくないんだ、こういう人も当然いると思うんですよね。

 しかも、今副大臣のお話を伺いましたら、ここに外国籍を放棄しますということを書いたからといって、当然に外国の国籍が除籍になるわけでも別にないということですから、特にここに書いてある、ここの選択宣言というこれは、何でこんなところにこれが書いてあるんですか。

河野副大臣 法律の規定がございまして、日本の国籍を選ぶ場合には外国籍を放棄する旨宣言をしなければならぬという法律に基づいてその用紙ができておりますので、その旨、そこに記載をしております。

 お話のように、自分の場合は帰化をしたから日本国籍はなくてもいいけれども、自分の子供が将来日本の国籍をとるときに、自分の連れ合いの国籍を放棄するみたいなことが書いてある書面に署名させるのは忍びないから、この文面は何とかならぬか、そういう声もございます。

 今、出生の二重国籍が、そろそろ選択をしなければならぬという年齢に近づいている方も多数いらっしゃいますので、書面のあり方がそれでいいのかどうか、あるいは、数十万人いらっしゃる中でどれだけ把握をしているか、いや、把握すべきかどうかという議論も当然あろうと思いますので、国籍の問題は少しこれから国際化の中で議論をしていく必要があるんだろうというふうに思います。一概に二重国籍を今すぐ認めようというつもりもございませんが、そうした書面のあり方を含め、少しこれから考えていかなければいけない問題だと思います。

高山委員 今、副大臣、国籍の選択宣言に関しては条文があるのでということでしたけれども、これは確かに、この選択届を見ますと、ここにゴシック文字で「放棄します」と書いてある。その上には「現に有する外国の国籍」ということで書いてあるんですけれども、先ほどの副大臣のお話ですと、ここにイギリス、フランス、日本、アメリカと、自分はここの国籍を持っていると書いた上で、でもパスポートは日本で申請します、これでやるんです、これは可能ですよね、こんなわざわざ選択宣言で放棄とかしなくても。

 そこで、副大臣としても、次に、例えばこの紙なんかをつくりかえて、こういうのはちょっと削除してというような方向で今検討されているんですか。

河野副大臣 その文言の取り扱いは、少しいろいろな方の御意見を伺ってみたいというふうに思っております。

 それから、パスポートの問題ですけれども、例えば日本とイギリスの国籍を持っている方は、それは、日本では日本のパスポートを発給しますし、イギリスではイギリスのパスポートを発給するわけですから、日本とイギリスできちっと条約でも結んで、両国の重国籍の場合にはどちらか片方しかパスポートを出さないよ、あるいはそれがお互いチェックできる、やはりそういう仕組みがないとなかなか二重国籍でパスポート一つというのが担保されませんので、国家間でそういう取り決めとそれを実行する何か担保になるようなものが将来的につくれれば、パスポート一つで重国籍ということが考えられなくもないというのは、これは私の個人的な見解ではありますが、そういうことも将来的にはあるのかもしれません。

 ただ、今のところ、そういう議論は国際的にもどうもまだないようでございます。

高山委員 先ほどの大臣のお話にもありましたけれども、経済的な結合だけじゃなくて、やはり域内でどんどん人の移動もふえてくると思いますし、国際的な結婚ですとかあるいは離婚だ、そういうことがどんどんこれからふえてくると思うので、ぜひ、家族や個人がわざわざ何か国の制度によって嫌な思いをする、そういうような制度にだけはしていただきたくないなと。

 確かに、入管行政、一つのパスポートで全部オンライン化してぴしっと決めたいというのは、行政をやる側からすればもう当然のことだと思うんですけれども、ただ、そのために何かわざわざ、その家族にとっては、例えば両国が祖国で、それが自然な状態であるというのを、こういう行政上の都合によって崩していくというんですか、そういうのはこれからの国の制度のあり方として不自然なんじゃないかなと私は思います。ただ、そこは副大臣も大臣もお気持ちは多分一緒だということを顔色から推察いたします。

 ちょっと残りの時間を使いまして、登記情報のオンライン化の関係を伺いたいんですけれども、まずちょっと伺いたいのは、私の同僚議員である馬淵さんも前回いろいろ質問させてもらったと思うんですけれども、このオンライン化が余り利用されていないというような話があったんです。

 一つ伺いたいのは、今、オンラインの申請と窓口の申請があるんですけれども、オンラインで申請して全部自己完結できるんですか、オンラインの中だけで。それとも、まだ人の手を煩わせる部分というのは多いんですか。そこをまずちょっと確認したいんですけれども。

寺田政府参考人 このオンライン申請は、過渡期のものでございますので一様ではございませんが、一番代表例は、不動産登記のオンライン申請でございます。

 不動産登記のオンライン申請について申し上げれば、申請人の方から電子データが電子証明書つきですべて参りますので、申請人と登記所の間は完全に電子情報だけのやりとりということになるわけでございます。

 しかしながら、それを受け付けた以後、登記所の中でどういう作業をするかと申しますと、これは、従前と同様に、現に文書で書かれたものと照合したりするような作業もございますので、電子データを打ち出して、それと確かめる部分も部分的にはございます。例えば全く電子だけで済むものもございますけれども、一部は、そういうように打ち出して、その打ち出した書面を見ながら審査しているというところもございます。

 それから、今度、登記が完了した後でございますが、登記が完了したという通知をいたしますので、そこはまた申請人との間、代理人ともそうでございますけれども、これは完全に電子でございます。

 したがいまして、登記所の中では、まだ完全に審査の部分で全部電子データだけで処理しているということではございません。

高山委員 大臣、そもそも何でオンライン化したんですか。人の手でやった方が確実じゃないかというのであれば、別にオンライン化する必要はないじゃないですか。これは何でオンライン化したんですか。

杉浦国務大臣 コンピューター化というのは、要するに、事務処理の簡易迅速化を図ろうということがそもそものスタートだと思うんですけれども、その後、IT技術が発達してまいりまして、オンラインで申請その他処理できるようにしようという要素が入ってきて、加速をしていったんだと思います。

高山委員 副大臣も、聞くところによりますと、かなりこれに関心を持たれて、いろいろともっと登記オンラインを使用しようというようなプロジェクトをやられているということなんですけれども、今大臣おっしゃいましたように、スピードアップであるとか、あるいは人手のかからないようにコンピューターで自動的にというのは、目標はすごくいいんですけれども、実際問題、さっき局長が話していましたように、来たのをまたプリントアウトして、それでチェックしているというと、それはただメールで来るだけのことになっただけで、ファクスで来ているのと窓口に来ているのと、違いがよくわからないものですから、ちょっとその違いを説明していただきたいんですけれども。

河野副大臣 法務局は、今、全国的に統合を進めております。それまでは、ちょっとそこまで行って登記その他できたものが、車で大分遠くへ行かなければならないというような状況も出てまいります。いずれは、司法書士さんのところから、あるいは自分のところからコンピューターを使ってオンラインで登記ができる、情報の照会ができる、そういう状況をやはりつくっていきながら法務局の統合を進めるというのが、最終的には必要になってくると思います。

 本来は、それに合わせて登記の審査も、例えば人工知能がある部分まではやってくれて、登記官は最後のチェックだけすればいいというようなことにいずれはなってくるんだろうと思いますが、なかなかそこの部分がまだロジックがうまくできていない、そこのところは今までの経験頼みというのは残念ながらございます。

 これは、やはり日本の土地の情報がなかなかまだ完璧に整理がされていない、地図もすべてコンピューター化されているわけでもございませんし、現状と公図が大幅に違うという問題の箇所がまだまだ日本にたくさん残っておりますので、そういう状況ですべてコンピューターにさあお願いしますというわけにもいかない。そこはやはり人間が出ていって、いろいろ調べたりしなければならぬという現実もあるわけで、そちらはそちらで、地図のコンピューター化が進み、公図と現状が違うという問題が解消されていけば、かなりの部分は一つのロジックで登記を進めていくことができるようになるだろうと思いますので、オンラインで申請をしてお客様の利便性を高めるところと、それからもう一つは、中で登記を間違いのないようにスピードアップしてやる、この二つをうまく並列で走らせていきたいというふうに思っています。

高山委員 副大臣もいろいろとお考えがあると思うんですけれども、まずちょっと一つ聞きたいのは、メールでもいいですし、ファクスでも来て、これは必ず人の手で何か突合しなきゃいけない部分があるんですか。そこは、複雑だとは思うんですけれども、定型業務でコンピューター化といいますか、定型業務の機械に置きかえていくことはできないんですか。

河野副大臣 本当に定型的なものであるならば、そこはうまくロジックを組むことができればコンピューターの処理でいけるのかもしれません。ただ、そういう本当にAからBからCと流れるようなものがどれぐらいあるかというのは、これは私もわかりません。ただ、登記というのは、土地の所有権ですとか担保権というものを扱うものですから、間違いがあってはいかぬということで、今は人手をしっかりかけて確認をしております。

 まだ地図その他条件整備が済んでいないものですからなかなか難しいと思いますが、いずれどこかの段階で、本当に簡単なところから、わかりやすいロジックでコンピューターが登記をきちっと進めていくような日がそう遠くないうちに来るのではないかと思っております。

 ただ、何分やはり日本の土地の現状は、もうそれは沖縄に行けば戦争で地図が失われてしまったというような状況もあるわけですし、いろいろなところで、まだ明治時代の、それこそ折り目が見えなくなってしまったようなものを使っているような場所もあるわけで、なかなか簡単ではないということだけは御理解をいただきたいと思います。

高山委員 いや、副大臣、地図混乱地域だとかそういう特殊なところは大変なんだろうなというのはもちろん想像できますけれども、本当に日常業務で、抵当権つけました、いや抹消しましたとかということや、ここ、相続でこう来たので半分になりましたとか、割合そんなに問題のない事案というのがかなり多いと思うんです。そこまで全部一々プリントアウトしてみて、あるいは、しかも、ちょっと今もう時間がないから自分で言いますけれども、局長の通達で、わざわざ原因関係となった契約書だとかそういうのまで全部添付しろだとか、要するに、オンラインだけでは仕事が完結しないような指示を出しているような気がするんですけれども、それはどういう指示ですか、ちょっとその局長通達の確認です。

寺田政府参考人 おっしゃる通達と申しますのは、平成十七年の二月二十五日の通達で、これは昨年の三月から新しい不動産登記法が施行された際に、その施行にかかわる法務局の処理について包括的に指示をしたものでございます。

 おっしゃるポイントは、多分そこの第二の「登記事務の取扱い」のところの「2 審査の方法」の「(1)電子申請についての審査は、」云々とありまして、結果を印刷して管理する、あるいは、その他書面で処理をすることについてのさまざまな注意事項を書いてございますが、そこの部分だろうと思います。

 それで、完全に電子化できるかどうかということは、一つは、おっしゃるように、電子頭脳と申しますか、完全にコンピューター自体でどこまで処理できるかということにかかっておりますので、今議員がまさにおっしゃいました抵当権の抹消でございますとか、あるいは登記名義人が住所を変更したのでその住所の変更だけをしたいというようなことに関して言えば、いずれそれほど遠くない将来に、それらは完全に論理構造だけの問題で、できるように思えるわけでございます。

 しかしながら、例えば、相続の登記で申しますと、相続関係図がございまして、一体、だれが相続を放棄したとき、だれがどれだけ分ふえるかということは、単純なケースでは簡単でございますけれども、難しいケースも出てくるわけでございます。その他、だれがこういう法律行為をしたかということをそれぞれの書面について検討しなければなりませんので、それは単にコンピューターだけで全部処理し切れる問題ではないのが実情ではございます。

 ただ、私どもは、できるだけ電子情報を電子情報として利用したいということはもちろん思っているわけでございまして、実際に記入をするという部分については、これはそのほとんどすべての時間が省略できるような形にはなるわけでございます。そういう形で今後も進めてはまいりたいというように考えております。

高山委員 今、大臣、副大臣も聞いていただいたと思うんですけれども、要するに、オンライン化を進めるということを言いながら、十七年に、プリントアウトしてわざわざやれみたいな通達を出したり、特に副大臣はプロジェクトをやられていろいろと御苦労はされていると思うんですけれども、登記のオンライン化を本当に進めるのであれば、オンラインの中だけで完結する領域をどんどんふやしていかないと、いつまでたってもコンピューターの向こう側に人間がいて答えているというのであれば、オンライン化した意味が全然ないですよね。自動販売機の中にキヨスクのおばさんがいて、ぱっとジュースを出しているような、そういう状態がずっと変わらないのが何か法務省のオンライン化じゃないかなというふうに私は思いますので、こういった点、またいつになるかわかりませんけれども、ちょっと勉強させていただいて、追及をしていきたいと思いますが、きょうはこれで終わります。

石原委員長 次に、平岡秀夫君。

平岡委員 民主党の平岡秀夫でございます。

 きょうは、法の適用に関する通則法の審議ということでございます。近年、いろいろな分野で国際化というものが進んできているというふうに思いますけれども、その中でも、証券取引についても国際化をしているということで、その取引の準拠法をどのようにしていくのかというのは、ある意味で言えば、現代的な課題の一つだろうというふうに思います。

 そこで、まずお聞きいたしたいと思いますけれども、外国の投資家とかあるいは外国の証券会社が我が国の証券市場において取引をする場合の準拠法というのは、今回の法案ではどのようになっているのか、この点についてまず御答弁をいただきたいと思います。

杉浦国務大臣 お答え申し上げます。

 証券市場における取引は、当事者間の契約によるというふうに考えられますから、その準拠法は、当事者が日本の投資家または証券会社であるか外国の証券会社または投資家であるかにかかわらず、当事者が合意により選択した場合には第七条の規定によりますし、当事者が合意による選択をしなかった場合には、この法律の第八条の規定により決定されることになると存じます。

平岡委員 ここでちょっと一つ確認なんですけれども、外国の個人投資家というのは、この法案でいきますと、第十一条で、消費者契約の特例ということで消費者という概念が出てきますけれども、これに該当することになるんでしょうか。どうでしょうか。

寺田政府参考人 これは事実関係によりますので、必ずどちらかに当たるということはない。そういう場合もありますし、そうでない場合もある。例えば、個人投資家でも、頻繁に売り買いをなさっている方というのは、業としてなさっているということに見られて、ここに言う消費者に当たらないということも十分にあり得るわけでございます。

平岡委員 なり得る場合があるということでちょっとお聞きしますと、第十一条の一項のところに、「消費者がその常居所地法中の特定の強行規定を適用すべき旨の意思を事業者に対し表示したときは、」「その強行規定をも適用する。」というふうになっておりますけれども、こういう規定の適用も当然にあるというふうに考えていいんでしょうか。

寺田政府参考人 この法律上は、そういうこともあり得るということでございます。ただし、これは日本の取引環境をどうするかということでございますので、別途、日本の方でそういうことについて行政的な規制をするということもまたあり得るわけでございます。

平岡委員 いずれにしても、こういう証券取引というのはかなり国際化しているというような状況の中で、どういう取り扱いになるのか、準拠法をどうしていくのかというようなことについてはより明確にしておく必要があるというふうにも思いますので、その点もよろしくお願いいたしたいと思います。

 そういうことに関連して、現在、外国人投資家も巻き込まれ、そして外国からの投資にも影響を与えていると言われている事件に関連して少し質問をしてみたいというふうに思います。

 この事件は、今月五日に逮捕された村上世彰氏の件でございますけれども、この村上世彰氏の逮捕容疑というのは一体何なんでしょうか。まず御答弁いただきたいと思います。

大林政府参考人 御指摘のとおり、東京地検は、六月五日、株式会社MACアセットマネジメントの村上世彰取締役を証券取引法違反の事実で逮捕したものと承知しております。

 お尋ねの逮捕事実については、被疑者は、投資顧問業を営む株式会社MACアセットマネジメントの取締役であり、実質的経営者であったものであるが、同社の役員らと共謀の上、MACアセットの業務及び財産に関し、平成十六年十一月八日ころ、株式会社ライブドアの幹部らから、同社において、東京証券取引所市場第二部に上場されていた株式会社ニッポン放送の総株主の議決権数の百分の五以上の株券等を買い集めることについての決定をした旨の公開買い付けに準ずる行為の実施に関する事実の伝達を受け、同事実の公表前に同株券を買い付けて利益を得ようと企て、法定の除外事由がないのに、同事実の公表前である同年十一月九日から平成十七年一月二十六日までの間、東京証券取引所市場第二部等において、ニッポン放送の株券合計約百九十三万株を価格合計約九十九億五千万円で買い付けたというものであると承知しております。

平岡委員 新聞報道等でもそういう逮捕容疑というのが挙げられているわけでありますけれども、ただ、この事件についてちょっと鳥瞰図的に物事を見ると、インサイダーがあったのかどうかということについてはよくはわからないんですけれども、そういう問題よりは、むしろ、既に大量に仕込んでいた株式というのを高値でうまく売り抜けた、そういう売り抜けるために何かいろいろなことをやってきたのではないかというようなところが、私は、大きな目で見たときのこの事件の全容的なものではないのかなというふうには思うんですね。ただ、全容が全部犯罪ということではなくて、その全容の中に細切れ的に、一部分的に犯罪に当たる行為があったということもまたあり得ることなのかなというふうには思います。

 そういう意味で、今回の事件については、公開買い付け等に関するインサイダー取引というような位置づけの中で今捜査が進められている。逮捕されたということについては、それはそれとして、それを否定するものではないんですけれども、実は、こういう形で逮捕されたということで、市場関係者とかあるいはファンドマネジャーに混乱が生じているというふうなことも聞いているわけであります。

 すなわち、どういうことかというと、先ほど容疑事実、嫌疑事実ということを言っていただきましたけれども、先ほどありました、総株主の議決権数の百分の五以上の株券等を買い集めることについての決定をした旨の公開買い付けに準ずる行為の実施に関する事実の伝達を受けたというくだりでありますけれども、その件について、実は、平成十一年の六月十日の日本織物加工事件において、インサイダー取引の判例というのが出ているわけですよね。

 この中では、ちょっと私も詳しくは申し上げませんけれども、株式の発行についての決定というものについてはどういうものなのかという話として、株式発行が確実に実行されるとの予測が成り立つことは要しないというようなくだりがあるというふうに聞いています。

 そういうこととの関係で今回の問題を考えてみると、公開買い付け等の実施を決定したというためにはどういう状況が必要なのかと考えてみたときに、この判例をもとに考えれば、当該公開買い付け等が確実に実行されるとの予測が成り立つことは必要としないというような考え方も成り立ってくるだろう。そうなってくると、私が冒頭申し上げましたように、市場関係者の方々は、そういうある程度未必的に認識したことでインサイダー取引になってしまうというようなことになってしまうと、危なくて、自分がどういうふうな資金運用をしていいのか、非常に難しくなってしまうというような問題が発生しておるということになるわけであります。

 そういう意味で、当局にお伺いしたいのは、この公開買い付け等の実施を決定したということについて言えば、当該公開買い付け等が確実に実施されるとの予測が成り立つことは要しないという従来の判例に沿った考え方というのが成り立っているんでしょうか。どういう考え方になっているんでしょうか。

大林政府参考人 犯罪の成否は、個別具体的な事件について収集された証拠に基づいて判断されるものであり、その前提となる法令の解釈についても最終的には裁判所において判断されるものであって、法務当局として、個別具体的事件の捜査、公判を離れて一般的な法令解釈をお答えすることは困難であることを御理解いただきたいと思います。

 あくまで一般論として申し上げれば、御指摘の判例は、証券取引法第百六十六条第二項第一号に言う株式の発行を行うことについての決定をしたとは、右のような機関において、株式の発行それ自体や株式の発行に向けた作業等を会社の業務として行う旨を決定したことをいうのであり、右決定をしたというためには右機関において株式の発行の実現を意図して行ったことを要するが、当該株式の発行が確実に実行されるとの予測が成り立つことは要しないと解するのが相当であると判示したものと承知しております。

 また、その理由として、そのような決定の事実は、それのみで投資者の投資判断に影響を及ぼし得るものであり、その事実を知ってする会社関係者らの当該事実の公表前における有価証券の売買等を規制することは、証券市場の公正性、健全性に対する一般投資家の信頼を確保するという法の目的に資するものであるとともに、規制範囲の明確化の見地から株式の発行を行うことについての決定それ自体を重要事実として明示した法の趣旨にも沿うものであるからであると判示しており、この判例の趣旨は、御指摘の公開買い付け等の実施の決定の意義の解釈にも参考になり得るものと承知しております。

平岡委員 確かに、今政府参考人が言われたように、それぞれの事件、それぞれ個別性があるわけでありますから、今の判例がそのまますべてに当てはまるということでは多分ないのかもしれません。特にこの事件について言えば、問題となったのは、この会社との交渉を委任されていた弁護士がそういう情報を得てインサイダー取引をしたというような事例でありますから、今回の場合について言えば、もともと大量に株式売買をして運用していくというような立場に立っている人ではないという意味においては、若干違いが出てくる可能性もあるのかもしれません。

 ただ、要は、こういうファンドマネジャーの方々も含めて、これから何かやっていくときに、インサイダー取引に問われないためにはどういうことが必要なのか、問われてしまうのはどういうことなのかということが明確になっていないと、なかなかしっかりとした資金運用ができないという問題があろうかというふうに思います。

 そういう意味では、先ほどの判例というものが一つの参考になるということの御答弁でありましたけれども、先ほどの言葉を短く言えば、未必的認識だけで足りるというような整理をするということになるわけであります。そういう整理をするということは、考え方によっては、処罰の範囲を余りにも拡大してしまう、そのことによって市場に混乱を生じさせてしまうのではないかというふうに思うわけでありますけれども、市場を管理している当局として、この点についてどのようにお考えになっておられるか、お聞かせいただきたいというふうに思います。

細溝政府参考人 判例につきましては先ほど法務省から御紹介があったとおりでございまして、この決定の事実というのはそれのみで投資者の判断に影響を及ぼし得るものであるというふうに考えておりまして、それを知って行う公開買い付け等の買い付けを規制するということは、まさにこの判決の中にも、証券市場の公正性、健全性に対する一般投資家の信頼を確保するという法の目的にも資するというふうに言われております。そういった観点から資するものであるということであれば、しかも、規制範囲の明確化の見地から法の趣旨にも沿うとも言われております。

 そうしたことを考えれば、この処罰の範囲が不当に拡大されて市場に混乱が生ずるものとは考えにくいと思っております。

平岡委員 この事件との関連で言えば、これ以外の、決定という事実がどういうものであったのかのほかにも、だれが伝えたのかとか、いろいろなほかの要素もありますから、ここの部分について言えば、当局としてそう考えておられるということであるならば、それはそれとして一つの考え方だと思いますけれども、それが市場にどういう影響を与えるかということについてもしっかりと検討していただいて、より明確な指針というようなものが示せるということが望ましいんじゃないかという点をまず指摘させていただきたいというふうに思います。

 それから、この事件に関連して言いますと、いわゆる応援買いというものが一つの論点になっているようにも思います。応援買いというのは、証取法百六十七条の第五項の第四号に該当するものとして言われているわけでありますけれども、村上氏の記者会見の中ではこんなことが言われています。

 一つには、平成十六年の十一月八日に宮内さんが、ニッポン放送はいいですね、取得できたらいいですね、やりましょうよ、よろしくお願いしますと言って頭を下げたというような発言があったり、あるいは、平成十七年の一月六日に堀江さんに会う機会があり、もしニッポン放送を公開買い付けするとしたらいかがですか、村上さん、協力してもらえますかというような話があったというふうに記者会見で村上氏が述べているところでございます。このことは、先ほど私が申し上げましたような応援買いに該当することをある意味では村上氏が示唆しているのではないかというふうにも思えるわけであります。

 そういう意味で、ちょっと応援買いについてお聞かせいただきたいと思うのでありますけれども、この百六十七条第五項第四号の規定をしっかりと読めば、そこにいろいろな限定が付されているということもわかるわけでありますけれども、例えばこういうケースは応援買いに当たるんだろうか、どうだろうかという点でございます。

 例えば、五%以上の株式を大量取得する者からの要請を受けて株式を買い付けるわけでありますけれども、それを、共同して、つまり公開買い付け者等の要請を受けて買い付けるということと、みずから自分自身のために買い付ける、あるいは自分が運用しているファンドのために買い付けるというようなものが混在してしまうようなケースの場合は、これは応援買いという取り扱いとしてインサイダー取引から除外されるというふうに解していいものなんでしょうか、どうでしょうか。

細溝政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、東京地検特捜部と証券取引等監視委員会で捜査中ですので、個別の事案についてはお答えはしかねる状況にございますが、今、一般論でお聞きになりましたので一般論で申し上げますと、インサイダー取引の適用除外として、条文上、公開買い付け者等に売りつけ等をする目的をもって買い付け等をする場合に限る、こう書いてございまして、まさに目的で分けるということでございます。したがって、公開買い付け者に売りつける目的をもってする場合に限りインサイダー取引の適用除外となるものでございまして、そういう目的をもって買い付けをしないものは適用除外にならない、逆に言うとインサイダー取引に適用されてしまうということであろうかと思っております。

 ただ、いずれにしても、個別の事案につきましては、取引の内容とかその背景等の事実認定がなされた上でなされるものと承知しておりますので、よろしくお願いします。

平岡委員 ちょっと今の質問で確認するんですけれども、要請を受けて買ったものというのが例えば一万株ありました、自分のために買ったものが五千株ありました、こういうようなときに、一万株については、要請を受けて買ったのでここはインサイダー取引ではないけれども、自分のために買った五千株というのがインサイダー取引に該当するんだというふうな理解に立っているということなんですか。ちょっと確認の意味でお願いします。

細溝政府参考人 先ほど申し上げましたように、個別の事案につきまして、適用につきましては、まさに事実認定がなされた上でなされると思っております。

 一般論で申し上げますと、そういうふうに明快に目的をもって分けられる場合においては、おっしゃったとおり、売りつけをする目的で買った部分は適用除外ですが、自分のために買った部分についてはインサイダー取引の規制の適用除外にはならないというふうに思っております。

平岡委員 それで、さらに問題が進んでまいりまして、最初は公開買い付け者等の要請に応じて株式を買っていた、つまり公開買い付け者等に売り渡すということを目的に買っておったけれども、その後、状況が変わってしまって、買い付けた株式を公開買い付け者等以外の者に売ってしまったというような状況のときは、この最初に買い付けた行為、これ自身は、さかのぼって応援買いに該当しなくなって、インサイダー取引に該当するということになるんでしょうか。それとも、買い付けるときにあくまでも買い付け者に売りつけることを目的に買っていれば、後でどんなふうに気持ちが変わって、それを高値で売って売り抜けても、それはインサイダー取引とは関係ないということになるんでしょうか。どちらの方の考え方になるんでしょうか。

細溝政府参考人 あくまでも一般論として、解釈論としてお答えさせていただきますが、買い付けを行うに当たって売りつけをする目的をもって買い付ければ足りるので、買い付ける時点でそういう目的を持っていて、その後で目的が変わった、そういう場合でも、いわゆる応援買いに該当することは変わりないというふうに解しております。

平岡委員 今のを確認すると、当初そういう目的、売りつけることを目的として買い付け者の要請を受けて買っていたら、後で売り抜けたとしてもこれはインサイダーにならないということですね。ちょっともう一遍、確認をしてもらえますか。

細溝政府参考人 個別の事案につきましてはまさに事実関係、事実認定次第でございますが、一般論として、解釈論として申し上げれば、今おっしゃったとおりであろうと思っております。

平岡委員 そういう意味で、今回の事件についても応援買いではないかというような指摘がある点について言えば、そもそも買うときに、どういう要件のもとにどういう目的で買っていたのかということが決め手になるということだと思います。

 それはそれとして、先ほど冒頭申し上げましたけれども、この事件は、ある全体の取引の中の一部だけを取り出して見て、これがインサイダー取引に当たるか当たらないかという議論がされているかのようにも思いますけれども、どうも、この事件についてある程度関心を持って詳しく見ている人たちの中では、今の捜査のあり方について疑問を呈しておられる方々もおられるように承っております。

 例えば週刊誌とかの中でも、今回の村上事件については、インサイダー取引としてとらえた場合には有罪になるとは限らないんじゃないか、あるいは十分な量刑が期待できない、つまり、インサイダーの対象になる株式の数が非常に限定されてしまうというようなことで、十分な量刑が期待できないんじゃないかというようなことを述べておられる方々もおられますけれども、そういう意見があるということについては捜査当局の方でも承知しておられますでしょうか。いかがでしょうか。

大林政府参考人 委員御指摘のように、さまざまな意見の報道があることは承知しておりますが、お尋ねは現在捜査中の事件に関する事柄であり、お答えを差し控えさせていただきたいと思います。

 検察当局においては、必要な捜査を遂げた上、法と証拠に基づき適正に対処するものと承知しております。

平岡委員 さらに、今回の事件について言えば、またいろいろな識者の中では、インサイダー取引禁止規定の問題よりは、むしろ証取法百五十七条一号とか、そういったような包括条項というものを適用すべき事案ではないかというような意見も出ているというふうに私としてはいろいろなもので見ておりますけれども、そういう意見がある、そういう考え方があるということについても御存じになっているでしょうか。この点についてお伺いしたいと思います。

大林政府参考人 御指摘のような報道があることは承知しておりますが、お尋ねは現在捜査中の事件に関する事柄でございまして、お答えを差し控えさせていただきたいと存じます。

平岡委員 そういうお答えしかできないということも私なりに理解はしておりますけれども、そこで、識者の中では、百五十七条第一号の適用があるような事例ではないかという指摘があるので、あえてお聞かせいただきたいというふうに思うのであります。

 証取法の百五十七条第一号の罪というのは、若干省略しますけれども、有価証券の売買その他の取引等について、不正の手段、計画または技巧をすることというふうに書いてあるわけでありますけれども、ここで言っている不正の手段、計画または技巧というのは、どういうような行為がそれに該当するのかという点についての当局の御見解をお聞かせいただきたいと思います。

大林政府参考人 いかなる行為が証券取引法第百五十七条第一号に該当して犯罪となるかというお尋ねでございますが、犯罪の成否は、個別の事案において収集された証拠に基づいて判断される事柄であり、一概にお答えすることは困難でございますが、例えば、無価値の株券に偽装の株価をつけるため、証券会社の外務員二名と共謀の上、同人らをして株式につき権利の移転を目的としない仮装の売買を行わせたという事案について、同号に相当する旧証券取引法第五十八条第一号に該当するとした裁判例があるものと承知しております。

平岡委員 そういう裁判例があるということではありますけれども、もともとこの証取法の百五十七条第一号のもとになっているアメリカの証券取引法を見てみますと、第十条の(b)項というのがあって、これについてはスキャルピングと言うそうでありますけれども、もともとの語源は、インディアンが敵の頭から頭皮をはぎ取って戦利品とするというようなことを指して言うということで、非常に野蛮な行為というような位置づけで呼ばれているようでありますけれども、具体的には、例えばこんなことが該当するということで言われております。

 例えば、投資顧問業者等が自分の顧客に特定の株を推奨するという一方で、自分はその推奨した株を持っていてそれを市場で売り抜けるというようなことをすると、これにまさに該当するというふうに言われているそうでございます。

 それはそれとして、私がそういうものを参考にしながら一つの事例を今から申し上げたいと思いますけれども、こういうものについては百五十七条一号違反というようなことになるのかどうかということについての御見解をお示しいただきたいというふうに思います。

 X社の株式というものを二〇%保有しているAという人が、Bに対して、経営権取得を目的に共同してX社の株を買っていこうという話を持ちかけました。そして、BがそのX社の株式三五%を大量取得した事実が公表されたことで、X社の株が急騰いたしました。そうしたところ、その話を持ちかけたAがそのX株を市場で売り抜けたということでございます。つまり、AがBをだまして大量取得させて株価の急騰をあおっていった、そして売り抜けた、こういうようなケースについては、これは証取法百五十七条一号違反に該当する犯罪となるというふうに理解してよろしいんでしょうか。

 判例で、先ほど政府参考人の方から不正の手段に当たるケースについてのお話がございましたけれども、そうしたケースと比較してみても、策略によって相場をつり上げて売り抜けるという悪質な行為だというふうに考えられますけれども、どのようにお考えになるでしょうか。

大林政府参考人 あくまで一般論として申し上げれば、有価証券の売買その他の取引等について、不正の手段、計画または技巧をしたと認められれば、証券取引法第百五十七条第一号違反の罪が成立することがあるものと承知しておりますけれども、犯罪の成否は、個別の事案ごとに収集された証拠に基づいて判断される事柄でありますので、一概にお答えすることは困難であることを御理解いただきたいと存じます。

平岡委員 私が言ったのは、多分こういう要件が整わなければ判断できないだろうなという基本的な要件は述べた上で申し上げたつもりでございます。答弁の前半部分では、必ずしもそういうものは全く検討に値しない話だというふうなことではなかったので、多分可能性としては十分にある話だということで、ただ、実際にどうするかは、やはり一つ一つの事件を見なければいけないということなんだろうというふうに私としては理解しております。

 ちょっといろいろとあっちこっちの議論をさせていただきましたけれども、冒頭に申し上げましたように、今回のこの事件について見ると、ただ単にある一部のインサイダー取引だけを取り上げて、ここが問題だから今回の事件が起こってしまったんだというよりは、私は、もっともっと大きな目で証券市場の公正さというものを確保していくためには、さまざまな問題が今回の事件には潜んでいるのではないかというふうに思うわけですね。

 例えば、識者が指摘する中には、例のMSCBと言われている下方修正条項つき転換社債、これを発行して資金調達をするということは、ある意味では既存の株主の利益を害する行為であって、こういう形でやるということは、かなり資金調達としては異常であるというような形で資金調達がされたり、あるいは、一応立ち会い外取引ということではありましたけれども、時間外取引を活用して株式の大量取得が行われたというようなこととか、先ほど私が申し上げましたように、経営権取得をめぐって、それなりに、株式を取得していこうというお互いの合意があったというか、お互いにそういう意識があったにもかかわらず、高値になったときに市場で売り抜けたとか、そういうような全体的な流れを見たときには、私はかなりいろいろな問題が潜んでいる事件ではないかというふうに思います。

 そういう意味では、先ほど申し上げましたように、証券取引市場の公正さというものを確保していくためには、インサイダー取引禁止規定だけではなくて、証取法百五十七条第一号など、その他包括的な規定についての違反がないかも真剣に検討すべき事案だというふうに私は思いますけれども、当局の御見解をいただきたいと思います。

大林政府参考人 現在、事件は捜査中でありますが、あくまで一般論として申し上げれば、検察当局は、法と証拠に基づき、刑事事件として取り上げるべきものがあれば適切に対処するものと承知しております。

平岡委員 まあ、一般論でしか答えられないのかもしれませんけれども、先ほども言いましたが、証券取引市場の公正さ、これをいかに保つかということで、日本では余りにも判例が少ないし、実際の今の金融庁あるいは証券取引等監視委員会が、どういう取引なら大丈夫で、どういう取引ならだめなのかというようなことについての積み上げが余りできていないんですよね。

 そういう意味においては、今回の事件も含めて、しっかりと、公正な証券取引市場のために何が必要なのかという視点で見ていただきたいということをお願いしておきたいというふうに思います。

 そこで、ちょっとわき道にそれてしまいましたけれども、またもとに戻りまして、通則法の話をしたいと思うんです。

 今回、通則法をこうやって見るに当たって、もともと国際私法に関する話ということで、その条約関係というものがどういうふうになっているのかなということで見てみたら、どうも、ハーグ国際私法会議で作成された条約というのが非常にたくさんあるというんですけれども、我が国はたった五個しか批准していない、一九七三年以降につくられた条約については批准は一つだけしかない、こんなような状況になっているというふうに聞いています。我が国が未締結であるけれども発効した条約は二十もあるというふうにも伺っております。

 この前から条約の批准をめぐって当委員会でもかなりもめまして、麻生外務大臣の発言でも、我々も、なぜ批准できないのか、こういうことをめぐっていろいろ議論があったわけでありますけれども、外務省の方では、こういう問題について一体どういうふうにお考えになっておられるんでしょうか。あるいは、法務大臣も、ハーグ国際私法会議で既に発効されている条約はたくさんあるにもかかわらず我が国は批准していない、こういう状況についてどのようにお考えになっているか、それぞれ御見解をいただきたいと思います。

    〔委員長退席、早川委員長代理着席〕

伊藤大臣政務官 お答え申し上げます。

 ヘーグ国際私法会議によって作成された条約のうち、現在までに我が国が締結した条約は、御指摘のとおり六件でございます。

 委員御指摘のように、三十六あるうち、なぜ六つしか締結していないのかという話でございますけれども、その三十の内訳を見てみますと、それぞれの理由があるということでございまして、我が国が締結していない条約の多くは、条約自体が未発効であるか、締約国数がまだ多くない、あるいはヘーグ国際私法会議等において対象分野の重複する新たな条約の作成が現在検討されている等の事情により、締結に向けてさらに慎重な検討を行い、また各国の動向に合わせて見守るという必要がございます。

 そういった事情がない条約は数件にとどまるわけでございますが、それらについては、国内法制との整合性等の問題があり、今現在、締結に至っていないというところでございます。

河野副大臣 今伊藤政務官から御説明があったわけでございますが、例えば一九五八年に幾つか条約がつくられておりますが、二つとももう数十年たっておりますけれども、まだ未発効でございます。こういう条約については、御説明があったとおり全部で十件でございますが、我が政府の人的リソースがたくさんあれば、こういうのもみんな入ってしまえということになるのかもわかりませんが、リソースを考えますと、やはり優先順位の高いところから選んで入らざるを得ないというのが現状でございます。

 三十六のうち、発効がされていないものあるいはもう既に次の条約の準備がされているようなものにつきましては、恐らく今後とも必要がないのかと思います。

 まだまだ数が少ない、民事及び商事に関する外国の判決の承認並びに執行に関する条約、これは一九七一年でございますが、締約国がまだ四つということでございます。こういう十三の条約につきましては、数がふえるのかどうか、引き続き見守っていくわけでございます。

 それ以外に、今準備はしておりますが、実施体制その他、あるいは国内の法整備がまだできていないというのが若干ある、そういう状況でございます。

平岡委員 今、副大臣と大臣政務官の話の中で、国内法制の整備ができていないのが若干あるというふうに言われましたけれども、具体的にどの条約についてそういう状態になっているのかというのを、わかったら教えてもらえますか。

伊藤大臣政務官 お答え申し上げます。

 少し議論を整理しますと、我が国が締結していない三十件のうち未発効のものが十件、その残り二十件なんでございますが、そのうち、新しい条約を検討されているものが五件ございます、それからヘーグ国際私法会議のメンバーの半数以下にとどまっているものが十二件ということで、残りは三件ということになるわけでございます。

 一件ずつ申し上げますと、一九八〇年に採択された子供の奪取条約及び一九九三年に採択された国際養子縁組条約、この二つでございますが、この二つに関しては締約国数も比較的多く、我が国としても、現在、締結について検討を行っているところでございます。しかしながら、我が国が締結した場合の国内への影響、また、国内法との整合性の問題及び国内における協力の中心となる中央当局の指定に伴う法制の整備等につき、さらに慎重な検討を要するために、現時点では締結の見通しが立っていないということでございます。

 最後の一つ、一九七〇年に採択された証拠の収集に関する条約については、今副大臣から御答弁もあったかもしれませんが、我が国にとってのメリットも余り大きくないものですから、締結の優先度は相対的に低いというふうに考えております。

平岡委員 きょうは時間がないので、ここは条約を審査するところじゃないので、これらの国内法制化が整っていないためにできていないというふうに言われているものについては、ある意味ではこの委員会もそれなりの責任があるのかもしれません。そういう意味ではもっともっと議論していきたいんですけれども、ちょっと時間がないのでとりあえずおいておいて、この前からありますけれども、条約があって、たくさんの国が批准していて、我が国だけが批准できていない状況がおかしいからというような理由だけで物事を進めていこうとしておられる方々がおられる中で、こういう既に条約は発効しておるにもかかわらず我が国としては何らの批准手続も進められていないということについては、やはりよく見直していかなきゃいけないということだけ、とりあえず指摘をさせていただきたいというふうに思います。

 それから、次に、外国法の調査研究についてなんでありますけれども、これもこの前の共謀罪の法案の審議をしているときに痛切に感じたんですけれども、外国はどうなっていますか、外国の共謀罪というのはどういう実態ですかとか、参加罪をとった国と共謀罪をとった国はどんなふうになっていますかとか聞いても、ほとんどわからない。これから調べてみます、これから訓令を出しますといったようなことで、我が国の政府というのは、一体他国の法制についてはどういう姿勢をとっているんだろうか。ある意味では、我が国が非常に立派な法制を持っているので、ほかの国を参考にする必要はない、ほかの国の実態を知る必要はないというふうに思っておられるのかもしれませんけれども、法務省あるいは外務省として、外国法の調査研究というのは一体どういう体制になっているのか、このことについて、まずお聞かせいただきたいと思います。

河野副大臣 立法作業における外国法調査研究については、その立法内容によって必要な外国法の範囲や調査研究すべき事項はさまざまであることから、法案の立案担当部局において、具体的な法案の内容に応じて行っているところであります。

 例えば、今回の通則法案については、その内容が国際私法分野の基本法であることから、渉外的な法律関係に関する紛争の統一的な解決のために、外国における国際私法の内容との法制的な調和を図ることが不可欠であると考えられました。そのため、国際私法を専門としている学者を任期つき公務員として採用し、EU諸国を中心とする主要国について、外国国際私法の調査を担当させ、また外部の学者に対しても外国国際私法の内容の調査を委託し、さらには外務省を通じて最新の外国法の制定状況について調査を依頼するなどして、諸外国の国際私法について調査研究をした上で立案を行ったものであります。

伊藤大臣政務官 お答え申し上げます。

 今議題になっておりますヘーグの国際私法会議において作成された条約の締結を検討する場合においては、外務省としても、在外公館を通じて、各国における調査、またヘーグ国際私法会議の事務局に対する照会、また場合によっては各国への出張による調査等により、必要に応じて締約国における関連する国内法制について調査を実施してきておりますが、さらにそれを強化していく考えでございます。

 また、法務省を初めとする関係省庁からの要望がある場合にも、必要に応じて調査を実施するということでございます。

平岡委員 いや、何か立派な答弁をしていただいたので私も感心したんですけれども、こういう国際私法だったら、在外公館を通じて、国際的な事務局を通じて、いろいろなことを通じてしっかりと調べていますというお話だったんですけれども、では、共謀罪のときは、一体あれは何なんですかね。もう調べても調べても、全然調べていない。調査訓令、これから出します何たらかんたら。各国の外国法制というものをほとんど調べないで、我が国でこんなものが欲しい、こんなものがあったらいいなということだけで法制化を図っているとしか思えないですね。

 今、国際私法についてそれほどやっておられるということを本当に得意げに話されるなら、答弁されるなら、ぜひ、この共謀罪、どういう取り扱いになるかわかりませんけれども、仮にまた議論するときには、自信を持って、これだけのことを調べてきました、外国はこうなっています、外国の運用はこうですということが言えるようにしていただきたいと思います。

 大臣、いかがですか。

杉浦国務大臣 国際私法については、ハーグに機構があって、EUを中心にして、学者の世界も民間事業の世界も相当集中して議論しているという背景があると思いますが、刑事の場合には、それと比べるとちょっとどうなのかなというところがございます。相当各国の独自の法制があるので、ちょっと国際私法と比べられるといかがかなという感じがいたします。

 条約刑法について先生から御指摘をいただいたんですが、外務省の方も調査、条約締結等でやっておることは反映されていると思いますし、中身については、与党の方でも修正案を提出し、民主党からも修正案が提出され、さらに、与党では議長の御示唆に基づいて再々修正も提案をし、民主党の方でも再修正を御提案いただく等、中身についても議論いただくと同時に、相当煮詰まった内容になってきていると思うわけでございます。

 議論は議論として、もう相当煮詰まっていると思いますので、継続審査はやむを得ないと思うんですけれども、次の国会で、できるだけ早期に成立を図っていただくようにお願い申し上げたいと思っております。

    〔早川委員長代理退席、委員長着席〕

平岡委員 大臣が、この共謀罪に関する条約刑法、継続審議とかという言葉を出していただくのは、これは少し越権行為じゃないかというふうに思います。そこは院が判断する話ですけれども、昨日私たちの方でも、政府として自主的に撤回をして、抜本的な、原点に立ち戻った見直しをしてほしいということを申し上げておりますので、その点はぜひお願いしたいということで申し上げさせていただきます。

 それから、刑事法の分野については、外国法の調査研究はちょっとどうなのかなというような印象も持っていると言われましたので、その印象は大切にしていただいて、特に共謀罪の関連の条約刑法については国際的な捜査協力ということがあるわけでありますから、それぞれの国がどうなっているかということをやはりしっかりと把握しておかなければ、捜査協力にも支障を来すということにもなろうかと思いますので、その点はよろしくお願い申し上げたいというふうに思います。

 こんなことをしていると時間がなくなってしまうので、法案の中の労働契約の問題についてちょっと質問をしてみたいというふうに思います。

 我が国でも、外国から労働者の方が来ておられたり、あるいは外国人実習生とか研修生というような形で来ておられたり、いろいろな方がおられるわけでありますけれども、これらの方々の労働契約というのは、通常、どういうふうになっているんでしょうか。

 ここで見ると何かいろいろな、新しい十二条の中では労働契約の特例というようなことが書いてあって、かなり労働者の人たちにとっては有利なような印象はあるんでありますけれども、例えば、外国、タイから来ていただくようなときに、タイの法制に基づいて契約をしていくというようなことも当然第七条等から考えればあり得るというふうに思うわけでありますけれども、どのような労働契約に通常なっているというふうに考えたらいいのか、この点について教えていただきたいと思います。

岡田大臣政務官 お答えをいたします。

 労働基準法などの強行法規や社会保険関係法などの国と国民との関係を規定する公法の適用については、本改正法に基づき外国法を適用すると取り決めた場合でも、日本法が適用されるということになっております。

平岡委員 その部分はわかったんですが、国と人との関係のものは当然そうなるわけですけれども、では、例えば労働者と使用者の関係とかいうような部分については、通常、外国人労働者については、日本でどういうふうになっているんでしょうか。これは、法制としてどうなっているかというより、実態としてどういうことになっているのかということなんだろうと思うんですけれども、その点の答弁が、要するに、労働基準法とか社会保険関係法のような国と労働者との関係を律しているようなものについてはそういうことなんだろうと思うんですけれども、使用者と労働者との関係については、実態としてどういうふうになっているんでしょうか。

松井政府参考人 お答えさせていただきます。

 基準法などにつきましても申し上げたとおりでありますし、私人間で契約をする場合であって、そういった法制が当事者の契約内容を強行的に解釈する、規定する、そういったものにつきましては、最終的に日本国の法律が適用されるようになるというふうに解釈されます。

平岡委員 それで、そうすると気になるんですけれども、今の法案の第十二条の中で、例えば一項を見たら、「労働者が当該労働契約に最も密接な関係がある地の法中の特定の強行規定を適用すべき旨の意思を使用者に対し表示したときは、」「その強行規定をも適用する。」こう書いてあるけれども、今の説明だと、そんな意思表示をするまでもなく強行規定が適用されてしまうんだというようになっていて、どうもこの法律と今の説明とは整合性がとれていないように思うんですけれども、どうですか。

寺田政府参考人 ちょっとその関係を整理させていただきますと、もともと私人間の契約というものは、これは原則どおり私人が選択することができるということになるわけでございます。これは全く私法上の契約でございます。

 そこで、次に、その私法上の契約について、一定の強行規定というのがその法体系の中にあり得るわけであります。これは、例えば日本とどこかの外国の関係者とで労働契約がされた場合に、そのどこかの外国の法律でもってその契約が行われるということを当事者が決めたという場合に、それでも、しかしより密接な関係があるどこかの国の、別の国の法律の強行規定が適用になる場合があり得る、それを十二条が指しているわけで、例えば、そういう労働契約については書面がどうしても必要だというような規定が仮にあるとしますと、そういうことをここで特に労働者側から主張すれば、そういう法の適用関係が実現できるというのが、ここの十二条の趣旨であります。

 これに対しまして、先ほど来委員が御質問なり厚生労働省の方でお答えになっておられる問題は、ここの、その当該労働供給が行われる地の行政的な規制、これについては、当事者がどのような法律関係を自分たちの労働契約に適用するというふうに決めても、それは強行的に適用されるわけでありまして、こういういわば法廷地と申しますか、そこの強行規定の適用ということと十二条で問題にしている強行規定の適用というのは次元を別にする問題でございます。

平岡委員 ある程度わかったような気もしますけれども、また議事録を精査した上で、その必要があれば質問をしていきたいと思います。

 そこで、ちょっと関連する問題として、これは地元のいろいろな方々から指摘されている問題としてお聞かせいただきたいというふうに思っているわけですけれども、例えば、外国人実習生に対する厚生年金の保険料でございますけれども、個人負担分の保険料については、帰国後の申請により返金されるという仕組みが外国人脱退一時金ということで平成七年からつくられているというふうに聞いておりますけれども、企業負担分についての保険料が返金されないというようなことになっていることについて、これは特に企業側の方々の中から、どうも不合理じゃないか、個人分は返してもらえるのに企業分は返してもらえないのは一体どういうことなんだというような指摘があるんですけれども、この点についてはどのようにお考えになっておられますでしょうか。

岡田大臣政務官 お答えいたします。

 個人負担分については議員御承知のとおりでありますが、お尋ねの企業負担相当分を事業主に支給することについては、賦課方式を基本とする現行の厚生年金保険制度において、事業主は、被用者本人の年金受給の有無とは関係なく、厚生年金保険制度に対する応分の責任を負うものとされていることであります。外国人を雇用しない事業主との間の公平性が損なわれる、こういうことから、厚生年金保険制度上困難であると考えているところであります。

平岡委員 今、公平性という言葉で今の制度を正当化されたようでありますけれども、本当にそれが公平なのかどうか。外国人実習生という位置づけで考えてきた場合には、そういう日本人との公平性だけでなくて、その特殊性というものも多分あるんじゃないかなというふうにも思いますので、引き続きちょっと検討をしていただきたいというふうに思います。

 次に、同じく外国人実習生の失業保険についてお聞かせいただきたいと思うんですけれども、この地元の方の指摘は、外国人実習生というのは、実習後、帰国の義務があって、再就職の可能性がないんだから、失業保険について保険料を納めさせるというのは不合理な制度ではないかというふうに指摘をしておられるわけでありますけれども、この点については、厚生労働省としてどのようにお考えになりますでしょうか。

岡田大臣政務官 雇用保険の適用事業に雇用される労働者は、国籍のいかんを問わず、原則として被保険者となります。技能実習生についても、受け入れ先との間に雇用関係があることから、原則として雇用保険の被保険者となるものであり、被保険者となって六カ月以降に受け入れ先の倒産等により離職した場合には、給付を受けることが可能であります。現実に、次の受け入れ先がすぐには見つからず、離職した技能実習生に対して支給がなされた実績もあります。

 このため、技能実習生の生活及び雇用の安定、再就職の促進の観点から、雇用保険を適用することが適切と考えているところであります。

平岡委員 今の説明もそれなりに必要性というものが感じられるものであったと思いますけれども、いろいろな問題点がほかにないかどうか、また精査してみたいというふうに思います。

 ちょっと時間がなくなったので、大量に用意した質問が大分残ってしまったんですけれども、一つ、きょう、信託法についての提案理由説明がございまして、これがいつ審議できるのかということはちょっとわかりませんけれども、この信託について、国際私法、つまり今回の通則法でも特に規定を置いていないんですね。

 この点について、参議院の方で審議がされたときに手塚裕之参考人から、信託に関する準拠法の規定の整備に関しては次のように発言があったように議事録で残っております。すなわち、信託に関する準拠法の規定の整備は先送りになった、信託法そのものの大改正を待ってからということで積み残しになっているんだというふうに言われておられます。

 今回、信託法についての提案がありました。私も、整備法の方に今回のこの通則法の改正規定が入っているのかなと思って、さっき、提案理由説明をしていただいたときにしっかりと見ましたけれども、多分なかったのではないかというふうに思うわけであります。

 信託法そのものの大改正を行おうとしているわけですね。それを、大改正ができるということを前提として、なぜこの国際私法の通則法にその信託に関するルールというものが提案されていないのか、この点について、大臣、御見解をお聞かせいただきたいと思います。

杉浦国務大臣 現在の法例の上におきましては、信託の準拠法に関する明文の規定はございません。

 法制審において御議論、検討されたわけでありますが、信託の当事者や信託財産が異なる国に所在する国際的な信託ですとか、海外で設定された信託の成立や効力の準拠法について規定を設けることも検討されたようでございます。

 しかしながら、信託の準拠法については、これに関する裁判例もございませんし、学説上の議論も極めて乏しいため、法制審議会においては、議論の蓄積が不十分なまま規律を決定して明文化することによる弊害の方が懸念される旨の指摘がございました。また、諸外国においても、信託についての規定を有する立法例は少ないと承知しております。

 以上の事情にかんがみまして、本法案においては、信託に関する準拠法については特段の規定を設けなかったわけでございます。これまでと同様に解釈にゆだねることとなります。

 しかしながら、この問題は重要な検討課題であると認識しております。今後とも、諸外国の立法動向並びに我が国における裁判例、学説等の積み重ねを見守りながら、関係省庁とも協力して適切に対応してまいりたいと考えております。

平岡委員 時間が参りましたので、終わります。

石原委員長 次回は、明十四日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時四十分散会


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