衆議院

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第17号 平成19年5月18日(金曜日)

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平成十九年五月十八日(金曜日)

    午前九時三十一分開議

 出席委員

   委員長 七条  明君

   理事 上川 陽子君 理事 倉田 雅年君

   理事 武田 良太君 理事 棚橋 泰文君

   理事 早川 忠孝君 理事 高山 智司君

   理事 平岡 秀夫君 理事 大口 善徳君

      安次富 修君    赤池 誠章君

      稲田 朋美君    今村 雅弘君

      近江屋信広君    奥野 信亮君

      木原 誠二君    後藤田正純君

      笹川  堯君    清水鴻一郎君

      柴山 昌彦君    杉浦 正健君

      福岡 資麿君    三ッ林隆志君

      武藤 容治君    森山 眞弓君

      矢野 隆司君    柳本 卓治君

      山口 俊一君    石関 貴史君

      大串 博志君    河村たかし君

      中井  洽君    横山 北斗君

      神崎 武法君    保坂 展人君

    …………………………………

   法務大臣         長勢 甚遠君

   法務副大臣        水野 賢一君

   法務大臣政務官      奥野 信亮君

   文部科学大臣政務官    小渕 優子君

   最高裁判所事務総局総務局長            高橋 利文君

   最高裁判所事務総局刑事局長            小川 正持君

   政府参考人

   (内閣官房司法制度改革推進室長)         小林 昭彦君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房政府広報室長)          高井 康行君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局審査局長)        山田  務君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    縄田  修君

   政府参考人

   (警察庁刑事局組織犯罪対策部長)         米田  壯君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          菊池 洋一君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    小津 博司君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    梶木  壽君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           布村 幸彦君

   法務委員会専門員     小菅 修一君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十八日

 辞任         補欠選任

  今村 雅弘君     福岡 資麿君

  清水鴻一郎君     木原 誠二君

  保岡 興治君     安次富 修君

同日

 辞任         補欠選任

  安次富 修君     保岡 興治君

  木原 誠二君     清水鴻一郎君

  福岡 資麿君     今村 雅弘君

    ―――――――――――――

五月十七日

 犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律案(内閣提出第七七号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 裁判員の参加する刑事裁判に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出第八四号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――

七条委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、参議院送付、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として、内閣官房司法制度改革推進室長小林昭彦君、内閣府大臣官房政府広報室長高井康行君、公正取引委員会事務総局審査局長山田務君、警察庁刑事局長縄田修君、警察庁刑事局組織犯罪対策部長米田壯君、法務省大臣官房司法法制部長菊池洋一君、法務省刑事局長小津博司君、法務省矯正局長梶木壽君、文部科学省大臣官房審議官布村幸彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

七条委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

七条委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局高橋総務局長及び小川刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

七条委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

七条委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。神崎武法君。

神崎委員 法案の質疑に先立ちまして、愛知におきますけん銃による警察官等の殺害事件につきましてお伺いをいたしたいと思います。

 昨日、愛知で元暴力団組員の男がけん銃を発射して、奥さんと見られる女性を人質に籠城する事件が発生いたしました。本日も今もって立てこもっているというふうに聞いておりますが、男は、家族二人を撃ち、さらに警察官一人をけん銃で死亡させ、もう一人にも重傷を負わせたということであります。

 先月の長崎、町田の事件を受け、政府は、銃器対策本部を立ち上げ、銃器や暴力団の取り締まりの徹底を行っていると承知をいたしております。暴力団一人にけん銃一丁が行き渡って、全国で五万丁ものけん銃が違法に所持されているとも言われております。一般国民もいつけん銃による事件の巻き添えを受けるかもしれない、こういう事態に政府一丸となって対策を講じておりますけれども、改めて法務大臣の所見と決意をお伺いいたしたいと思います。

長勢国務大臣 前回の長崎の事件、また今回の事件、こういう銃器による犯罪が起きるということは非常に憂慮すべき状況にあると思います。特に今回、警察官の方が殉職されたということで、勇気ある行動には敬意を表したいと思っております。

 こういう銃器をめぐる事件が頻発しておるということにつきまして、政府においては、銃器対策本部において検討を続けておるところでございますが、法務省といたしましても、関係省庁との密接な連携のもとに、けん銃事犯についての厳正な処分、厳格な科刑の実現に全力を挙げますとともに、また、けん銃等の提出、自首減免規定の適切な運用も図って、こういう問題を生じないように努力していかなきゃならないと思っております。

 同時に、これは主として警察庁での対応になるのかもしれませんが、銃器の取り締まりについても見直しを検討すべきことかなと考えております。

神崎委員 ぜひとも、政府一丸となって対応をお願いいたしたいと思います。

 それでは、法案の質疑に移りたいと思います。

 二年後に裁判員制度が導入されますが、これまでの刑事司法は、専門家同士が共通の素材と土俵でそれぞれ固有の役割を果たす、そういう了解のもとに行われてきたと思います。ところが、裁判員制度の導入によりまして、刑事裁判の中核部分であります事実認定と量刑に一般国民の直接参加が要請されるという大改革が行われたわけでございます。

 まず、基本的なことを確認いたしたいと思います。

 裁判員制度の導入によって、刑事裁判の目的と内容に変化が生ずるのかどうか、また、検察官の役割は変わるのか、変わるとすればどう変わるのか、弁護人の役割は変わるのか、変わるとすればどう変わるのか、職業裁判官の役割は変わるのか、変わるとすればどう変わるのかということであります。

 私は、刑事裁判の目的は、適正な手続を通して事案の真相を解明し、国家刑罰権を具体的に実現する、そういう意味では変わらないと思うわけでありますけれども、ただ、裁判員、一般の方が入ってまいりますと、検察官が主張する事実、これが合理的な疑いを入れない程度に立証されているかどうか、そこが恐らく裁判の中心になってくるだろうと思いますし、弁護人もそこを中心とした攻防戦をやると思いますので、当然おのずから微妙な変化が出てくるのかなという気もいたしますが、法務大臣並びに最高裁当局は、これらの点についてどういうふうにお感じになっておられるのか、お尋ねをいたします。

長勢国務大臣 我が国の刑事訴訟法においては、刑事裁判の目的は、「刑事事件につき、公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適正且つ迅速に適用実現すること」にあるというふうに定めております。裁判員制度の導入によっても、この刑事裁判の目的そのものは従来と変わるところはないというふうに思っております。また、法と証拠に基づいて事実認定をし、適切な量刑を判断するといった基本的な刑事裁判の内容というものも裁判員制度の導入によって変わるものではないというふうに考えます。

 ただ、裁判員の方々が刑事裁判に関与することになりますので、それを受けて、例えば職業や家庭を持つ裁判員の方々の負担を可能な限り軽くするために、迅速な刑事裁判がより一層求められることになりますし、また、裁判員の方にも裁判の手続や争点の所在、さらには証拠の内容等を正しく理解していただくために、刑事裁判のわかりやすさということも求められることになると思います。

 そして、刑事裁判に関与する検察官、弁護人及び裁判官の役割も、刑事裁判の目的そのものが変わらない以上、やはり基本的には従来と異ならないものと思いますが、ただ、裁判員制度の導入を受けて、例えば訴訟当事者である検察官と弁護人は、刑事裁判を迅速に進めることに最大限の努力をし、裁判員の方にもわかりやすい主張、立証に努める、こういうことがこれから求められていくことになる。また、職業裁判官においても、一般市民から選ばれた裁判員の方がともに審理に携わることになるということを受けて、これまでとは違って、よくわかってもらう説明をするといったような対応などが求められる場面もあるものと考えます。

 内容、役割は基本的には変わらないと思いますが、それに沿った対応が必要になっていくものと思っております。

小川最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 刑事裁判の目的は、刑事事件について、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適正かつ迅速に適用実現するということにございまして、この点は裁判員制度の導入後も変わることがないということは先ほど委員御指摘のとおりでございます。ただ、委員も御指摘のとおり、裁判員裁判では、一般の国民の方々に裁判員として参加していただくわけでございますから、裁判をわかりやすく、かつ、負担の少ない迅速なものに変えていかなければならないということでございます。

 裁判員法でも、五十一条におきまして、「裁判官、検察官及び弁護人は、裁判員の負担が過重なものとならないようにしつつ、裁判員がその職責を十分に果たすことができるよう、審理を迅速で分かりやすいものとすることに努めなければならない。」とされているところでございまして、検察官、弁護人、裁判所は従前の役割に加え、委員から御指摘がございましたけれども、微妙に変化があるのではないかとおっしゃいましたが、裁判を迅速でわかりやすいものにするように、それぞれ今申し上げましたような役割を担うことになると考えております。

神崎委員 ぜひ、制度の趣旨に従って御準備を進めていただきたいと思います。

 それから、裁判員制度の導入にはいろいろな観点からの批判もこれまでにありました。例えば、この制度は憲法に違反する。八十条で裁判官は内閣が任命することになっているとか、三十七条で公平な裁判所というふうに言われている、こういったところに反するじゃないか、こういう指摘もありました。

 また、この制度は手抜き審理が横行する可能性がある。これまで刑事司法は、精密司法と呼ばれるように大変精密な調査等が行われていたけれども、粗雑な司法になるんじゃないか、こういう指摘もあります。

 また、この制度は事案の真相を解明できなくなる。裁判員審理を避けるような公訴構成が可能な案件はそういうふうになっちゃうんじゃないか、あるいは司法取引が生ずるのではないか、こういう観点からの批判です。

 さらにまた、この制度は訴訟費用がかかり過ぎる。裁判員費用あるいは建物の改築等を含めまして、訴訟費用がかかり過ぎる。

 この制度は、刑事重大事件以外の事件の訴訟遅延を招くおそれがある。結局、裁判官三名をこの審理に張りつけるということで、その他の審理に割く裁判官の余裕がなくなるんじゃないかということであります。

 この制度は、裁判員になる国民の負担が大き過ぎる等々、さまざまな議論がございました。

 これまで多くの議論を通して、いずれも克服されてきたと考えますけれども、総括的に法務大臣のお考えをお伺いいたしたいと思います。

長勢国務大臣 裁判員制度は、広く国民が裁判の過程に参加をし、その感覚が裁判の内容に反映されることによりまして、司法に対する国民の理解や支持が深まり、司法がより強固な国民的基盤を得ることができるようになるという大変意義のある制度だと考えております。

 裁判員制度について批判的な御意見があったことは承知をいたしておりますけれども、この法律はそうした意見も踏まえて立案をされ、国会でも十分な審議をしていただいたものでございますので、そういった問題は相当に解消されておるというふうに理解をしております。

 若干敷衍して申し上げれば、裁判員制度は、憲法の要請する、独立して職権を行使する公平な裁判所による法による裁判を確保することができる制度でありますので、憲法の趣旨には沿ったものであると考えておりますし、また、裁判員制度のもとでは公判前整理手続が必ず行われ、争点を明確にした、迅速で充実した審理が行われることになっておりますので、いわゆる手抜き審理が行われたり、事案の真相が解明できなくなるということはないというふうに思います。

 さらに、裁判員制度の対象とならない事件についても、公判前整理手続の適切な運用や、争いのない一定の事件についての即決裁判手続の導入により迅速な審判を行うことが可能となっておりますので、これらの事件の訴訟遅延を招くということはないと思っております。

 そして、裁判員制度の実施には一定の経費がかかることは間違いありませんけれども、先ほど申しましたように、重要な意義を有する制度でありますから、その上迅速化等の方策も講ぜられておりますので、この点についても各方面の御理解が得られるものというふうに考えております。

 最後に、裁判員制度の導入に当たっては、国民の負担が過重なものとならないようにすべきであるということは当然のことで言うまでもないことでございます。そのために、裁判員になることの辞退、裁判員の個人情報の保護等の制度が設けられておりますし、運用においても、審理を迅速でわかりやすいものとすることに努めることとされておる等々、配慮がされておるわけでありますので、そして、今回提案しております部分判決制度の導入も、裁判員の負担が過重なものとならないようにするために提案をさせていただいているわけでございまして、御指摘の御批判に耐え得るものと思っております。

神崎委員 裁判員の負担を軽減する方策の一つといたしまして部分判決制度を導入することとしたわけでございまして、私もその点は賛成の立場から議論を進めたいと思います。

 参議院法務委員会の附帯決議におきまして、「裁判員が刑事裁判に参加しやすくなるよう刑事裁判の更なる迅速化とともに有給休暇制度や保育・介護施設等の環境整備の拡充・促進に一層努めること。」と決議されているところであります。

 部分判決制度の導入のほかに、裁判員の負担を軽減するためにどのような取り組みをされているのか、お伺いをいたしたいと思います。

長勢国務大臣 裁判員の負担軽減のためには、まずもって各訴訟当事者が努力をして迅速でわかりやすい訴訟進行を実現することが極めて重要であります。検察当局においても、裁判所、弁護士会とも連携しながら、その実現に向けてさまざまな努力をしておるというふうに承知をしております。

 具体的に申し上げますと、検察当局におきましては、まず、公判前整理手続を活用し、裁判所や弁護人らと協力の上、公判前に争点を明確化した上で、その争点の判断のためにどのような証拠をどのような順序で取り調べるかといった明確な審理計画を立て、真に争いのある点を中心とした、無駄のない充実した審理を行うようにしていると承知をしております。

 また、平成十八年三月には、最高検察庁において、これまでなら立証が複雑困難であるとして長期間を要していたような事件の裁判についても短期間で終えることができるようにするための工夫等について、「裁判員裁判の下における捜査・公判遂行の在り方に関する試案」を取りまとめ、作成したと承知をしております。現在、これをもとにして、各地の検察庁においてさまざまな取り組みが積極的に行われているところでございます。

 さらに、全国において検察庁、裁判所、弁護士会が公判審理を迅速でわかりやすいものとするための協議や模擬裁判を繰り返し行っておるわけでありまして、そういう努力も引き続き続けていきたいと思います。

 他方、政府としては、裁判員制度関係省庁等連絡会議の枠組みの中で、関係省庁等が連絡して国民の参加を容易にする環境整備に努めております。その中で法務省も、企業、団体や個別企業に対して制度への理解を求めるとともに、裁判員となった従業員に対する休暇制度の整備に向けての検討をお願いするなどの活動を行っているほか、保育、介護などのサービスに関する周知啓発に努めているところでございまして、今後とも負担軽減に努力をしていきたいと考えております。

神崎委員 大臣は参議院本会議があるということでございますので、どうぞ、御退出して結構でございます。

 それでは、引き続きお尋ねをいたします。

 部分判決制度につきましては、訴訟経済だけを追求すると、全体としての手続がかえって長期化したり、あるいは裁判員の参加する審理手続が拙速となって、結果として適正な裁判が行われないおそれがある、こういう批判もありますけれども、この点につきましてどう反論されますか。

小津政府参考人 お答え申し上げます。

 部分判決制度は、同一の被告人に対する複数の事件を一括して審判すると、その期間が長期に及んで、裁判員を選任することや、裁判員が最後まで円滑に職務を遂行することが困難になることが見込まれて、その結果審理の円滑な進行が妨げられるような場合に対処する制度でございますから、この制度の趣旨そのものが全体として審理を円滑に進行させるためのものであるということでございまして、これによって訴訟手続が大幅に長期化するということも考えにくいところでございます。

 また、部分判決制度のもとで、個々の裁判員への負担を軽減しながら、区分事件の審理と裁判、そして最後の審理の併合事件の審判におきまして、もちろん刑事訴訟法等の規定に従った適正な手続のもとで行われるわけでございますので、審理手続が拙速なものとなることはないわけでございまして、このような批判は当たらないと考えているところでございます。

神崎委員 これまでの議論では、部分判決以外にも異なる案が示されてきたというふうに承知をいたしております。どのような議論がこれまでにあったのか、なぜその案を採用しなかったのか、その点についてお尋ねをいたします。

小津政府参考人 御指摘のいろいろな御議論の中で、司法制度改革推進本部のもとに設置されました検討会で出た御議論の一つとして、弁論を併合しないで個別の裁判体が事件ごとに通常の終局的な裁判をした上で、さらに別の裁判体が複数の裁判結果を前提として刑を調整する案が示されるなどしたわけでございますので、これらにつきましても検討させていただきました。

 しかしながら、この案によりますと、弁論を併合せずに個別の裁判体がそれぞれに刑の言い渡しを含む終局的な裁判をすることになりますけれども、その場合、言い渡された複数の刑を具体的にいかなる基準でいかなる手続により調整するのかという、極めて難しい問題を生じることになります。

 また、各事実に共通する情状に関する立証や認定をその都度行わなければいけないということになってしまいまして、訴訟経済等々の観点からも問題があろうと思いますし、果たして裁判員への負担の軽減という効果がどれだけあるかということにもなるわけでございますので、そういうことで、この案はなかなか難しいというふうに考えたわけでございます。

神崎委員 米国の陪審制、ドイツの参審制にもこういう部分判決制度はないというふうに承知をいたしておりますが、なぜ我が国がこのような制度を導入されるのか。

小津政府参考人 我が国での導入の必要は、大変に長期化が予想される場合に裁判員の負担を軽減したいということでございますけれども、例えば、アメリカで申しますと、陪審員は、基本的には事実認定といいますか、有罪、無罪の判断だけということに特徴があろうと思いますし、また、ドイツの参審制度でございますと、一定期間、いろいろな事件をずっと参審員の方がやられるということでもございますので、そのあたりで日本とは随分事情が違うのではないかなというふうに考えております。

神崎委員 部分判決によりまして裁判員の任務は終了いたします。裁判官はそのまま任務を行うとしておりますけれども、なぜでしょうか。法制審議会の議論では、裁判官も裁判員の任務終了とともに交代する案は議論されなかったのでしょうか。こういう点を含めまして、お伺いします。

小津政府参考人 まず、裁判官はそのまま任務を行うという理由でございますけれども、部分判決制度はそもそも裁判員の負担を軽減しようということでございますので、もちろん裁判官についてそのような理由から交代しなければいけないという理由はないわけでございますけれども、もう一つ別の観点から申しますと、裁判員制度の対象事件につきましてはすべて公判前整理手続に付されるわけでございますが、受訴裁判所が公判前整理手続を主宰いたしますのは、争点の整理や証拠調べの決定、審理計画の策定など公判における審理や証拠調べのあり方にかかわるものでございますので、公判の運営に責任を負う受訴裁判所がそのような公判前整理手続を行うということになっているわけでございます。

 そのような公判前整理手続の主宰を規定いたしました趣旨からいたしますと、区分事件の審理ごとに裁判官が交代するということになってしまいますと、公判前整理手続を主宰していない裁判官が審理を担当するということになって、全体として責任ある公判運営の観点から問題があるのではないかと考えたところでございます。

 また、法制審議会の議論で、確かに、裁判官も裁判員の任務終了とともに交代するという案はできないだろうかという御議論があったところでございますけれども、先ほど私が申し上げましたような御議論がございまして、そのような案はとられなかったといういきさつでございます。

神崎委員 最後に質問しますけれども、全体に携わる裁判官と部分だけに携わる裁判員との間に情報格差というものが生じて、裁判に支障が生ずることはないのかどうか、その点だけ確認をしておきたいと思います。

小津政府参考人 ただいまの問題につきましては、もちろん、それぞれの審理につきましてはそれぞれが全く対等に行うわけでございますけれども、また、区分事件の審理や裁判に関与した裁判官が併合事件の審判をする場合、部分判決について有罪の言い渡しをする場合には、犯行の動機、態様、結果等々に関連する情状についての事実を記載することができまして、最後に、つまり併合事件の審判をする裁判官も刑の量定についてこれらを参考にすることが可能でございます。また、部分判決の対象になった事件についての公判手続の更新の規定もあるわけでございます。

 また、今般の法改正によりまして、証人尋問等の記録媒体への記録という制度が導入されますと、これらを利用して裁判員の方々がこれまでの経緯を十分に把握するということもできるようになろうかと思いまして、これらのことによって、情報の格差ということの問題が生じることはないと考えているところでございます。

神崎委員 終わります。

七条委員長 次に、稲田朋美君。

稲田委員 おはようございます。自民党の稲田朋美でございます。

 いよいよ、裁判員制度がスタートするまであと二年ということになりました。私も、地元の福井でこの裁判員制度について有権者と話す機会があるんですけれども、余り国民の間に浸透していないようにも思います。私がお会いして裁判員制度のことをお話しした中で、裁判員制度を楽しみにしているとお答えになったのはたったの一人でございまして、あとはほとんどが、不安ですとか戸惑いをおっしゃっているわけでございます。

 そんな中で、今回、裁判員法が改正をされるということでございますけれども、まず、なぜこの時期に裁判員法が改正されるのかということをお伺いいたしたいと思うわけでございます。

 今回の裁判員法の改正の最も重要な部分は、先ほど来御質問がありましたけれども、部分判決制度を取り入れるということでございます。一人の被告人に対して複数の事件が係属をしている場合に、裁判員の方々の負担を軽減するという意味から、それを区切って、それぞれに審理をして、そして最後の併合審理のときにまた新たな裁判員が入って、裁判官と合議体を形成して終局判決を出すということなのでございますけれども、こういった事態というのは裁判員法が制定された当時でも十分予想されたわけでございます。

 例えば、オウム真理教の事件など、一人の被告人に対して多くの事件が係属をして、そしてその審理が長引くというような場合、そしてまた裁判員の負担が大変重くなるような事態も十分予想されたわけであるのに、裁判員法を制定したときにそのことが議論されたのかどうか、どうして今の時期になって裁判員法を改正して部分判決制度を入れるのか、この点について法務副大臣にお伺いいたしたいと思います。

水野副大臣 今先生が御指摘は、同一の被告人に対して複数の事件が起訴されて、その審理をどうやっていくのかという問題は、確かに、裁判員制度導入を決めたときにもこういうことは想定し得たんじゃないかというお話だと思うんです。

 これは、当時からそのことは当然議論としてはございまして、司法制度改革推進本部のもとに、当時あった首相を本部長とする本部ですけれども、そのもとに設置をされていた裁判員制度・刑事検討会においても議論されておりましたが、当時は、どうするかという具体案というか成案を得るには至らず、同検討会がまとめた裁判員制度の概要についての骨格案においても、さらに検討することとされておりました。

 また、国会審議においてもこの問題はやはり取り上げられておりまして、当時の司法制度改革推進本部の事務局長は、答弁において、さらに検討を続け、必要があれば裁判員法の施行の前に法改正をしたいという旨の答弁をしておりますし、裁判員法の可決に当たっての参議院の法務委員会の附帯決議でも、「裁判員制度の施行までの準備を行う過程において、制度の円滑な実施の観点から必要な場合には、制度上の手当てを含めて適切に対処すること。」そういう附帯決議がされたこともございます。

 ですから、そういうことがありましたので、法務省として鋭意検討を進めてまいりまして、今回、具体案としてこの部分判決制度の新設等を内容とする案を得るに至りました。そういう意味では、本体の裁判員法の施行の前にさらに法改正という、そこら辺はちょっと妙な形だという御認識かもしれませんけれども、当時から積み残しの課題だということではあった、そういう議論はあったということでございます。

稲田委員 先ほどの神崎先生の質問にもございましたけれども、部分判決制度を導入することの趣旨というのは、裁判員の負担を軽くするということだけだと思っております。他方、この部分判決制度を導入することに対して、例えば裁判官出身の方々ですとか法曹関係者からも、疑問の声があることは事実でございます。

 例えば、情報の格差の問題。最後の裁判員は、前の部分判決については部分判決に書かれたもの以外の情報がないのに比しまして、裁判官はずっと同じ裁判官で、その情報に圧倒的な格差があって、その裁判官と裁判員の間でちゃんとした合議ができるのかという問題ですとか、例えば部分判決については、独立して被告人が控訴できなくて、裁判員も、最後の裁判員の方は、前の部分判決について疑問だなと思ったとしても、やはり前の部分判決には拘束をされる、最終的な判決にだけ控訴ができるということですとか、さまざまな問題点も指摘されているところだと思っております。

 そこで法務当局にお伺いいたしますが、そういった部分判決に対しての問題点といいますか弊害の指摘があることについて、どのようにお考えで、その点についてどういった解決をお考えでしょうか。お伺いをいたします。

小津政府参考人 部分判決制度につきましてのいろいろな御議論のうち、情報格差の問題と、それから独立した不服申し立てについての御指摘がございました。例として挙げていただきましたので、お答え申し上げます。

 情報格差の問題につきましては、その議論のポイントを先ほど神崎委員に対してお答え申し上げましたが、さらに敷衍して申し上げさせていただきますと、まず、区分事件の審理及び裁判に関与した裁判官が別の区分事件の審理及び裁判をする場合における裁判員との間の情報格差の問題につきましては、そもそも、区分事件はそれぞれが別個の事件でありまして、それぞれの審理におきましてはそれぞれの証拠に基づいて判断されるということになりますので、もちろん御指摘のような情報格差の問題は生じないわけでございます。

 次に、区分事件の審理及び裁判に関与した裁判官が併合事件の審判、つまり最後の部分の審判をいたします場合にも、部分判決において有罪を言い渡す場合には、犯行の動機、態様及び結果その他の罪となるべき事実に関連する情状に関する事実についても記載することができるとしております、この法案の七十八条三項の一号でございますが、そのように規定されておりますので、併合事件の審判の裁判員は、刑の量定を判断するに際しましてこのような記載を参考とすることが可能になるわけでございます。

 それから、併合事件の審判の裁判員は、部分判決の対象となりました事件の公判手続の更新におきまして、刑の量定判断に必要な証拠については、みずから直接取り調べることができるわけでございます。

 さらに、今回の法整備において新設いたします訴訟関係人の尋問及び供述等の記録媒体への記録制度、これによりまして、裁判員裁判の審理を記録媒体へ記録することが可能になりますので、これを公判手続の更新の際に用いることによりまして、区分事件の審理で行われた証人尋問等についてもその内容を容易に理解することが可能になると思われます。

 これらの諸制度の活用によりまして、最後の審理におきまして、これに関与する裁判官と裁判員の間における情報の格差が問題になることはないのではないかと考えております。

 それから、部分判決に対する独立した不服申し立てを認めていない趣旨でございますけれども、仮に部分判決に対して独立して不服申し立てを行うといたしますと、その申し立てによる判断が終局するまで併合事件の全体についての審判を行うことができない、こういうことでございますので、一審の裁判が著しく遅延することになるだろうということで、そもそもこの部分判決制度を導入した意義が失われることになるのではないか。

 それに加えまして、部分判決制度につきましては、いわゆる絶対的控訴理由に当たるような事由があるとき等々につきましては、その出された部分判決によらないで、全体について裁判をすることが可能だという制度などもございますので、これらによりまして、この部分判決それぞれについて独立した不服申し立て制度というのは必要でもございませんし、不適当ではないかと考えたわけでございます。

稲田委員 いずれにしましても、刑事訴訟の実体的真実の発見という意味からして、私は、部分判決制度というのは本当に狭めた限りで運用すべきではないか、このように考えているところでございます。

 裁判所においても、きちんと争点整理をして、審理の計画をして、集中的に一括審理することによって、部分判決制度を導入することは制限的に行うべきではないかというふうに私は思うわけでございますけれども、仮にこの法案が成立いたしました折に、どういった場合に区分審理か一括審理かを決めるのか、この点について最高裁判所にお伺いいたします。

小川最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 部分判決は、併合した事件を一括して審判することにより要すると見込まれる審判の期間その他の裁判員の負担に関する事情を考慮し、その円滑な選任または職務の遂行を確保するために特に必要があると認められるときに用いられる制度でございます。また、犯罪の証明に支障を生ずるおそれがあるとき、それから、被告人の防御に不利益を生ずるおそれがあるときその他相当でないと認められるときは用いることはできないというふうにされております。

 部分判決制度によって審理を行うか否かは、今申し上げました法の要件を裁判体が具体的な個々の事件に当てはめて判断すべき事柄でございまして、裁判員制度が施行されていない現時点で具体的な運用がどのようなものになるのかを予測するのは困難でございますけれども、例えば審判の期間が著しく長期化するなど、特に必要があると認められる場合に利用する例外的な制度として設けられたものと承知しております。

稲田委員 最初の方に刑事局長が述べられた要件は、法案に既に書いてありますので私も承知をいたしております。ただ、この部分判決というのは一括審理が原則であって例外であるというふうに明確に基準を決めていただきたい、このように考えているところでございます。

 次に、裁判員制度がうまくいくためには、やはり国民が参加しやすい制度でなければならないと思います。

 例えば、小さいお子さんを育てているお母さんですとか、介護の老人を抱えている方々ですとか、そういった方々の不安を本当に解消してあげなければならないと思います。そのためには、裁判員に選任された方に優先的にデイケアサービスを利用していただくとか、保育所を利用していただけるとか、そういった形の配慮が必要になると思います。

 それは、法務省だけでも裁判所だけでもだめで、厚生労働省、本当にいろいろな各省庁が連携してこの対策に当たっていただきたいと思っておりますけれども、内閣官房には裁判員制度のための関係省庁等連絡会議が置かれているというふうに聞いておりますけれども、これまでのところ、どういった行動計画が立てられたというだけで、具体的な成果というものにつながっていないというふうにも思うわけでございます。

 内閣官房の司法制度改革推進室は政府全体のリーダーシップをとるべき責任組織としてきちんと成果を出していただきたいと考えておりますけれども、今後の具体的な取り組み、国民が参加しやすい裁判員制度という意味からの具体的な取り組みについて、お伺いをいたしたいと思います。

小林政府参考人 お答えいたします。

 今委員から御指摘がありましたとおり、政府には裁判員制度に関する関係省庁等連絡会議というのがございまして、これは省庁等ということからもおわかりいただけると思いますけれども、関係省庁だけではなくて、最高裁判所、それから日本弁護士連合会にも参加していただいております。

 それで、裁判員制度の円滑な実施に向けまして関係省庁等が取り組むべき課題を行動計画という形で取りまとめまして、これは平成十七年の八月でございますけれども、それ以後、先生が御指摘になりました環境整備の問題も含めまして、さまざまな課題に取り組んでいるところでございます。

 総合調整を担当している内閣官房といたしましても、これらの関係省庁等が計画を着実に実施できるようにバックアップを行うとともに、定期的にフォローアップの会議等を行いましてその実施状況の把握に努めてございます。行動計画そのもの、それから毎年詳細な実施状況をフォローアップしておりますけれども、これらは内閣官房のホームページにおいてすべて公開してございます。

 さきの内閣府の世論調査では、制度自体の周知が八割ぐらいということでしたけれども、御指摘のような育児の問題、介護の問題あるいは仕事への懸念、こういう不安や懸念を持たれる方々も少なくないというのも事実でございます。裁判員制度の実施を約二年後に控えた今、内閣官房といたしましても、改めて裁判員休暇制度の普及、それから保育や介護サービスの活用を初めとする環境整備につきまして、法曹三者や厚生労働省等の関係省庁と十分連携を密にいたしまして、国民のニーズに応じた形で具体的な成果が出せるように積極的に努めてまいりたいというふうに考えております。

稲田委員 最後に、法教育についてお伺いをいたしたいと思います。

 昨年の十二月に教育基本法が改正され、昨日教育三法も衆議院の委員会で採決が行われました。安倍政権が目指す教育再生、その中に高い学力と規範意識ということがございますけれども、そのためにも、法教育というのが教育再生の一翼を担うのではないかと期待をしているわけでございます。

 そこで、文部科学省にお伺いをいたしたいんですけれども、単に裁判員制度の制度の趣旨とか意味とかその内容を教えるだけではなくて、法とは何か、そしてまた司法制度とは何か、何のために司法制度があるのかということも含めて、全国的に、そしてまた小学校のころからきちんと法教育をしていただきたいと考えておりますけれども、この法教育についての文部科学省の取り組みについての決意といいますか、そういったものの方針をお伺いいたしたいと思います。

布村政府参考人 お答えいたします。

 先生から今御指摘のありました裁判員制度自体につきましては、中学校の社会科、公民的な分野の教科書に取り上げられているところでございます。

 それに加えまして、小中学校におきまして、児童生徒に法や決まりの意義あるいは守ることの大切さ、そして司法の仕組みなどについて理解させるということ、そしてまた社会の一員として、法や決まりに基づいてよりよい社会の形成に主体的、積極的にかかわろうとする態度をはぐくむことが極めて重要な課題であると認識しております。このため、児童生徒の発達段階に即しまして、社会科、道徳、特別活動などにおきまして法に関する教育に取り組んでいるところでございます。

 先生からも御言及いただきました改正された教育基本法におきましても、教育の目標、目的として、社会において自立的に生きる基礎を培うこと、あるいは公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うことということが新たに規定されております。そしてまた、裁判員制度の導入など、社会の変化に主体的に対応できるようにすることも法に関する教育の一環として重要な課題でございます。

 文部科学省におきましては、法務省とも連携をさせていただきながら、今後ともこのような方向で小中学校段階からの法教育の一層の充実に取り組んでまいりたいと考えております。

稲田委員 最後に、法務副大臣にも法教育のことについてお伺いをいたしたいと思います。

 法務省では、中学三年生を対象として「はじめての法教育」という教材、また裁判員制度を題材とした教材をつくっておられますけれども、それで十分だとお考えでしょうか。私は、小学校のころからきちんと多様な教材をつくって法教育をやるべきではないかと思っておりますが、最後にその点について、法務副大臣の御意見をお伺いいたします。

水野副大臣 先生御指摘のとおり、未来を担う子供たちが法教育を通じて法を守ることの大切さについて深く理解するということは極めて大切でございますので、法務省としては、これまで法教育研究会や法教育推進協議会を発足させ、確かに御指摘のとおり、中学校で行う法教育を念頭に置いて法教育に関する教材を作成、発表してまいりました。

 具体的には今御指摘のような教材というようなものを作成したわけですけれども、今後は、中学校における法教育のみならず、御指摘のとおり、小学校、高等学校などを含めた発達段階に応じた法教育の具体的なあり方等について教材例を作成することを含めて検討してまいりたいというふうに考えております。

稲田委員 いずれにしましても、あと二年、国民にきちんと裁判員制度が普及するように願っております。

 以上でございます。ありがとうございました。

七条委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午前十時十九分休憩

     ――――◇―――――

    午前十時四十七分開議

七条委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。石関貴史君。

石関委員 民主党の石関貴史です。

 私も、当選以来、割と長くこの法務委員会に所属をさせていただいているんですけれども、政務官、いつもこちらへいらっしゃって、質問しないと申しわけないなと思っていたんですね。時折、我が党の高山委員が配慮をして政務官にということですけれども、大体そのたびごとに、ちょっと予想していなかったとかで、これは申しわけないな、しっかり通告をして、私も政務官にいろいろお尋ねをしたいと思っていたところなんです。

 そうしたら、ちょっと私は違う質問を想定していたんですが、ここへ来て、政務官のお名前が挙がって報道されたという事件があり、これは、政務官個人のこと、そのこともお尋ねをしたいんですが、政治家として、あるいは今政府にいる方としてですね。ただ、我々政治家全員に共通する、我々がしっかり考えていかなきゃいけないということもあり、お尋ねをしたいと思います。

 通告のとおりでございますが、まず、奥野政務官の関係で報道がありました。幾つかありましたが、手元にある、これは二〇〇七年五月十六日の読売の記事ですが、奥野衆議院議員の私設秘書、大麻所持で現行犯逮捕という見出しで報道されております。別の、こちらの方はネットですが、自民、奥野議員の元私設秘書、大麻所持で逮捕、こういった報道がされているということであります。

 この事件について、警察から、事件の経緯、警察が把握しているもの、御説明をお願いします。

米田政府参考人 お尋ねの事案につきましては、警視庁品川警察署におきまして、本年五月十三日、衆議院議員の私設秘書を、当時でございますが、大麻と認められる葉片を所持していたとして、大麻取締法違反で逮捕した事実でございます。

石関委員 逮捕してすぐ、勤め先が奥野事務所だということがわかったんですか。

米田政府参考人 その辺の詳細については承知をしておりません。

石関委員 これは、十三日に逮捕されているということですけれども、十六日の午後にはこういった形で報道されているんです。警察は今承知をしていないという御答弁ですが、通告してありますよね、何でこれはすぐこういうふうに報道されたんですか、数日のうちに。教えてください。

米田政府参考人 どのように報道側が知ったかということは、私どもとして承知をしておりません。

 この手の薬物事件につきましては、原則として、こちらから積極的に、逮捕したからといってすぐに広報するわけではありませんで、それはやはり背後関係等々をいろいろ突きとめなければなりません。そういう作業の途中に何らかの方法でメディアの方は察知をしたということでございまして、その過程で、そのようないわば人定事項といいますか、そういったものを何らかの方法でメディアで知ってお書きになったということではなかろうかと思います。

石関委員 では、今、一つ捜査の過程でということですけれども、例えば聞き込みをしている途中で漏れちゃったとか、これは警察の関係者が進んで話すことではないんだろうというふうには思いますが、この事件を離れて、一般的にはどんな場合に、こういう漏れるべきでない段階で情報が流れて報道されるパターンがあるんでしょうか。一般論で結構です、こんなものがあった、こんなものがあったと。警察はそれは秘密にしていたんだけれどもこういうふうにばれちゃったこともありましたよとか、あるいは報道機関の方でのりを越えてそういった情報収集をしてやられてしまったとか、一般論で幾つか御紹介いただけますか。

米田政府参考人 いろいろなパターンがありますので統一的になかなか申せませんが、例えば、殺人事件のような場合でありますと、被害者側あるいは近隣住民の側といったところをメディアの方がいろいろ取材されて、まだこちらが公表していないような事実をお書きになったりするということもあります。

 それから、そもそも警察として事件の発生そのものをまだ全く公表していないという段階でも、いろいろな関係者もいらっしゃいますし、そこは、取材をする側が一体どういうことをやっているかというのは必ずしも承知しておりませんけれども、何らかの方法でつかむということもあるかと思います。

石関委員 今一般的なお話を伺いましたが、それでは、この事件について政務官にお尋ねをします。

 私設であるけれども秘書の方が逮捕されたということで、何らかの理由で報道機関がこれを察知した、情報を入手したということ、これは政務官のところへも直接あろうと思いますし、最低限事務所の方へは何らかの確認ということがあったと思いますが、政務官の関係者にはそういった報道機関からの問い合わせというのはいつ、どのような形であったんですか。

奥野大臣政務官 いつも御配慮いただきまして、ありがとうございます。(石関委員「高山さんです」と呼ぶ)はい。

 今の御質問でありますが、御指摘の者が逮捕された当日の夕方に、その親から直接私が連絡を受けて、大麻取締法違反により警察に逮捕されたという事実を知りました。(石関委員「報道機関」と呼ぶ)親。(発言する者あり)

石関委員 聞きなさいよ、ちょっと。

 報道機関からの問い合わせはいつあったんですかとお尋ねしたんです。

奥野大臣政務官 報道機関からの問い合わせは、この間この委員会があった日でありますから、十六日ですか。(発言する者あり)体調は悪くないですが、たしか、この委員会が終わった後です。

石関委員 委員の方もよく聞いてください。

 私がお尋ねしたのは、報道機関がこういった情報をいつ、どのような経緯で入手し、そして、報道機関は報道する前に当事者に確認をするだろうということで、政務官の方に問い合わせ等があったのはいつかということをお尋ねして、政務官御自身が知ったことも含めてまたお尋ねをしようと思っていたところで、政務官からその先に答弁があったということであります。

 これは、政務官に限らず、我々、選挙に出る政治家ですから、選挙も含めて、ふだん、身の回りの秘書、公設はもちろん私設も含めて、事務所のスタッフというのは、十二分にその身元等、我々の方でしっかりと安心できる方を周りに配置しなきゃいけないということは言うまでもないと思います。特に、選挙に関しても、相手方に雇われた人が入ってきてわざと選挙違反をするとか、あるいは仲間の人が相手に走って情報を流すとか、よくあることですよね。選挙もそうでありますし、スタッフにしてもそうだということです。

 報道によると、この船津容疑者は昨年十一月ごろから運転担当の職員として働いていたというふうにありますが、政務官、これは事実ですか。

奥野大臣政務官 事実であります。

石関委員 奥野議員の政務官の就任はいつですか。

奥野大臣政務官 昨年の九月の末だったと思います。

石関委員 そうすると、政務官に就任をされた、政治家であり政府に所属する者、政務官という枢要な地位を占める者になってから、運転手ということでありますが、採用されたということですが、どういう経緯でこの船津容疑者を採用することになったんでしょうか。

奥野大臣政務官 御指摘の者につきましては、昨年十一月一日より私の事務所で雇い入れたことは今申し上げたとおりであります。それまでいた者がやめたものですから、この者にかわって、古い運転手にかわって運転手を務める者を探しておったところ、当人が私の事務所で働きたいということで私の事務所に参りましたので、面接の上、採用を決めたものでありまして、その仕事内容は、車の運転のほか、コピーとりや書類の持参等、専ら単純作業に従事させておりました。

石関委員 経緯ということでお尋ねをしたのは、職業選択の自由が個々人に認められているということは言うまでもありませんが、また、採用する側も、どういう人を採用するかというのは、それぞれの基準で選んだり、先ほど申し上げたように、特に政治にかかわる者は、安心かということで選ばれるんだと思います。

 今一番お尋ねをしたかったのは、前任の方がおやめになったということで、そういう方もいらっしゃるんですが、実態的には、あるいは数の上から、広告を打って、奥野事務所で運転手がいませんからどうですかとか、あるいは秘書がいなくなったのでどうですかというのは、多くの政治家、国会議員はそういうことをやられていないというふうに私は承知をしているんです、パートのところに載せて何時から何時まで単純作業ですとかを。そこを一番お聞きしたかったんですね。

 例えば、支持者の方の息子さんであるとか、おいがぷらぷらしているからちょっと使ってくれないかとか、政治の中ではそういったものが数多く見られると思うんですが、この方はもともと知っていた方だったんですか、それとも、だれかの仲介があったとか、そういう関係の方ですか。

奥野大臣政務官 基本的に、うちの事務所に仕事をしたいということで来られた方でありまして、特に過去知っていたというわけではありません。

石関委員 私に関しては、まず、そういう方がいらっしゃったら、どういう方かなということで、社会通念上許される範囲で、その方はどういう人か、また関係者はどうかということをしっかり確認して、政治的にも、いろいろな意味でも大丈夫だということでお願いをするようにしているんです。これは、大体皆さんそういうことではないかなというふうに思うんです。

 その点に関しては、ちょっと甘かったなとか、もう少し周りを調べてからとか、そういう思いは今政務官の中にはございますか。

奥野大臣政務官 私は、皆さん方御承知のとおり企業をやっていましたから、人を見る目は正しいと思ってそれなりに自負をしているんですが、その者を見て、これは使えると思って判断したものですから、それで採用したことになります。

 結果として、今反省はしております。

石関委員 結果としてそういうことだったということで、内心いろいろじくじたる思いもお持ちなのかなとそんたくをするところではありますが、私自身もやはり、秘書がやめる、それは自己都合もあり、いろいろな事情があるというときには、先輩からも言われていますし私もそう思うんですが、やめた後も真っ当にやってもらいたいなという気持ちもありますし、そうでないと困るなというのがあります。

 最近の事件でも、元国会議員秘書がと報道されたり、事実そういうことだと思うんです。これは、我々、政治というのも、本当に多くの国民の皆さんの期待を得てやるところであり、その分非常に人間関係でも濃密な部分があって、一度でも奥野衆議院議員の秘書をやっていたとか、大臣もそうですし、副大臣もそう、我々普通の議員もそうで、一生ついて回るということですから、まずどういう人間を、身の回りに信頼できる人間を置くかということと、やめた後もちゃんとやってもらう、これは我々自身にも責任があろうと思います。

 結果としてこうなったことでと政務官はおっしゃいましたが、改めてお尋ねをしますが、一議員としてではなく、やはり政府に所属をしている政務官という枢要な地位にある政治家として、こういう結果になってしまったということについて、いろいろ考えれば、例えば、考え得ることとして、法務省の機密を何か知りたいという人間が、政府の大事な立場にいる方ですから、そういう方が入ってきて、政務官のところで働いていれば何かの情報が得られるだろう、あるいは組織的に送り込む、こういったことも考え得ることでありますよね。

 私は、今のお話を聞くと、採用が少し軽率だったのではないかなということ、私自身も政治家として、こういったことも踏まえてしっかりやっていかなきゃいけないなと改めて思っているところであるんですが、今度は政務官として、このことについて、結果としてこうなってしまったが反省をしているとか、何らかのお言葉をいただきたいなと思うんですが、政務官、いかがですか。

奥野大臣政務官 今御指摘いただいたとおりだろうと思います。

 先ほど申し上げたとおり、私の事務所に十一月から運転手として勤務していた者が、こういう大麻取締法違反によって捜査機関に逮捕されたことについては、まことに遺憾であります。

 採用のときの判断が誤っていた、結果としてはそういうふうに感じるわけでありますが、事件そのものは、私を初め、事務所が全く関知することができなかった個人の私生活上の出来事であるように私は感じますが、私の事務所に勤務していた者がこのような事件を起こしたことについては、私の監督指導が至らなかったことでありまして、特に、今申されたように、政府の立場にあってまことに申しわけなく、おわびを申し上げる次第であります。

 今後、事務所職員に対する指導を徹底して、二度とこのようなことがないよう万全を期してまいりたいというふうに今覚悟を決めております。

石関委員 御答弁のとおりであるというふうに私も思いますし、こういったものを機に、さらに、我々政治家個人はもちろんでありますが、それが何らかの犯罪に巻き込まれるということであっては国民の皆さんの信頼を失うということになりますし、身辺の者についても同様、政府についてはさらにそういった厳しい態度でみずからを律するということが必要だと思います。

 改めて、治安を預かる法務省の政務官としても、そしてまた大臣を初め当局の皆さんにも、そういった気持ちで臨んでいただきたいと思います。

 奥野政務官についての質問はこれで終わりにいたします。

 続いて、法案の方に入らせていただきます。

 今回の法改正、部分判決制度の新設等、裁判員の負担を軽減することがその主たる趣旨であるというふうに理解をしておりますが、裁判員の負担の軽減のためには、わかりやすい訴訟の進行というのが重要なことであろうというふうに思います。

 そのために、これまで訴訟の関係者はどのような努力をされてきたのか、負担軽減のためのわかりやすい訴訟の進行、このための努力はこれまでどのようなことがされてきたんでしょうか、まずお尋ねをします。

小津政府参考人 委員御指摘のとおり、裁判員の負担軽減のためには、各訴訟当事者が努力し、わかりやすい訴訟進行を実現することが極めて重要でありまして、検察当局におきましても、裁判所、弁護士会とも連携しながら、その実現に向けてさまざまな努力をしているものと承知しております。

 具体的に申し上げますと、検察当局におきましては、まず、公判前整理手続を活用いたしまして、裁判所や弁護人らと協力の上、公判前に争点を明確化した上で、その争点の判断のためにどのような証拠をどのような順序で取り調べるかといった明確な審理計画を立てて、真に争いのある点を中心とした、無駄のない充実した審理を行うようにしていると承知しております。

 また、平成十八年三月でございますが、最高検察庁におきまして、これまでであれば立証が複雑困難であるとして長期間を要していたような事件の裁判についても、短期間で終えることができるようにするための工夫等を取りまとめました文書を作成いたしました。「裁判員裁判の下における捜査・公判遂行の在り方に関する試案」と題しております。

 この試案では、証拠の厳選、わかりやすく簡にして要を得た冒頭陳述、論告の実施、簡にして要を得た供述調書の活用、ポイントを絞った効果的な証人尋問の実施などの工夫を行うことが示されておりますが、実際にも、各地の検察庁におきましてさまざまな取り組みが積極的に行われているものと承知しております。

 さらに、全国におきまして、検察庁、裁判所、弁護士会が公判審理を迅速でわかりやすいものとするための協議や模擬裁判を繰り返し行っているものと承知しております。

石関委員 今御答弁にあったような工夫、御努力をされてきたということでありますが、平成十六年の刑事訴訟法の改正、公判前整理手続が新設されたということですが、この法改正後の審理期間の現状というのはどのように変わっており、今どのようになっているか、お尋ねをします。

小津政府参考人 この法律の施行が平成十七年十一月一日でございますので、平成十八年一月から十二月までの間の数字でございます。

 これは十八年でございますのでまだ速報値でございますけれども、申し上げますと、全国の刑事通常第一審裁判所におきます、これから裁判員の対象になる事件でありますが、その公判回数は、全体の平均開廷回数は約五・六回でございましたが、そのうち、公判前整理手続に付された事件の平均開廷回数は三・三回でございました。

 否認事件について取り上げて申しますと、全体の平均開廷回数は約八・八回であったのに対しまして、公判前整理手続に付された事件の平均開廷回数は約四・二回であったと承知しております。

石関委員 今伺うと、審理期間、回数は、法改正後に、御努力もあって、このような形で軽減をされている、短くなったり、回数も減っているということであります。

 こういったふうに今まで努力をされてきている、法改正もあり、変わってきているという中で、さらにこの部分判決制度を導入する、この趣旨、理由について、今のを受けて、改めて大臣にお尋ねをいたします。

長勢国務大臣 今説明したように、検察当局においては、裁判員の負担軽減のために迅速かつわかりやすい訴訟進行を実現できるようにさまざまな努力をしてきておりますが、しかし、同じ被告人に対して複数の事件が起訴され、各事件についてそれぞれ争点があるような事案の中には、このような努力を尽くしてもなおその審理が長期に及ぶものがあるということが予想されるわけであります。このような場合に、一般の国民から選ばれた裁判員がすべての事件の審理及び裁判をしなければならないといたしますと、その負担が著しく大きくなるということのほかに、そもそも、長期間の審理に応じられる国民のみしか裁判員になることができないということになってしまいます。

 そこで、今回の部分判決制度を導入しまして、同一の被告人に対し複数の事件が併合され、その審理が長期に及ぶ場合などについては、裁判員の負担が著しく大きなものとならないようにして、長期間の審理に応じられる国民のみならず、幅広い層からより多くの国民に積極的に参加してもらうことができるようにしようということで、この判決制度を提案しているところであります。

石関委員 それでは、この新設される部分判決制度ですが、これが用いられる典型的な場合の訴訟手続の流れというものをわかりやすく簡明に教えてください。

小津政府参考人 典型的な場合ということで、裁判員対象事件であるA事件とB事件、二つある場合で申し上げます。

 まず、A事件とB事件について弁論の併合の手続がなされるわけでございますが、その全体につきまして、これを裁判員裁判において必ず行うとされています公判前整理手続を行いまして、併合された事件の全体について審理計画を策定するわけでございます。その中で、証拠関係でありますとか全体として審理にかかる予定の期間などを踏まえまして、部分判決制度によって審理する必要があると認めました場合には、裁判所において区分審理決定を行って、審理の順番等も含めた審理計画を策定いたします。

 その上で、例えばA事件を先行して審理するということになりましたら、その審理を担当する裁判員を選任して審理を行い、有罪、無罪について部分判決を言い渡します。そして、A事件を担当した裁判員はその時点で任務は終了いたします。その後、B事件の審理及び終局の判決、つまり全体の判決をする裁判員の選任を行いまして、B事件についての審理と両事件の情状について審理をして、刑の量定も含めた終局の判決を言い渡すことになるということでございます。

石関委員 そもそも、この裁判員法というのは、裁判官と一般の市民の方から構成される裁判員、この方々については、やはり裁判官が主で、裁判員の人は臨時で入ってもらうというようなとらえ方なのか、裁判官と裁判員というのは対等の関係にあるんだ、こういうことなのか、改めて確認をしておきたいと思います。

小津政府参考人 法律問題についての判断は裁判官が行うという点はございますけれども、基本的にそれ以外の点については対等であるというふうに認識しております。

石関委員 対等であるということが趣旨であるということですが、であれば、具体的な条項に入りますが、八十六条の二項及び三項、構成裁判官の合議によって職権で部分判決によらない旨の決定をすることができる、こういう制度が入っております。今御答弁いただいたような裁判官と裁判員は対等だということを前提にすると、この部分判決の判断について、構成裁判官の合議、裁判官だけで否定をすることができることになってしまうのは今の趣旨に反するのではないか、こういうふうに私は思いますが、いかがですか。

小津政府参考人 御指摘の条項で、併合罪の全体についての裁判を部分判決によらないこととすることができる場合として定められておりますのは、刑訴法の三百七十七条の各号、また三百七十八条の各号でございまして、いわゆる絶対的控訴理由として定められているものでございまして、手続に関する判断でございますので、もともと裁判官のみで判断することとされているものでございます。その点につきましては、裁判員法の六条の二項の二号で、そういう部分については裁判官が判断するんだと書いてあるわけでございます。

 ちなみに、三百八十三条各号の事由というのもございますけれども、再審事由とされるものでございまして、これも、訴訟手続に関する専門的なもので、裁判官のみによる判断によるということにしておりますので、ただいま私が申し上げました趣旨、また今委員御指摘の点と矛盾するものではないと考えております。

石関委員 それでは、今回のこの法改正によって、訴訟関係人の尋問及び供述等の記録媒体への記録の制度が導入をされるという改正内容ですが、この理由と、この制度では記録媒体に記録をするということなんですけれども、これはあわせて警察にもお尋ねをしたいんですが、証言とかこういうものを記録するということですけれども、こういうふうなものが入ってくるということは、警察が被疑者に対しての取り調べのいわゆる可視化もあわせて、ここでこれが導入されるわけですから、やはり考えていくべきと思うんですが、まず法務省、そして警察に、一点ずつお尋ねをいたします。

 これを入れた理由を法務省に、それから警察も、取り調べに関して可視化を、ちょっとこれは内容が幾らか違いますけれども、可視化として記録媒体にしっかり記録するということをやるべきだと思うんですが、それぞれにお尋ねします。

七条委員長 時間が来ておりますから、簡潔明瞭に。

小津政府参考人 それでは、私は、記録媒体への記録制度の導入の理由でございます。

 一般の国民である裁判員の方が審理や評議において十分にその職務を遂行するためには、公判廷での関係人の尋問や供述等を、その状況等を含めて、より鮮明な形で記憶喚起するなどが必要となってくる場面もございます。また、裁判員制度のもとでは、連日的開廷による審理でございますので、結審したすぐ後で評議が行われるということが予想されておりますので、これらの中で、前に行われた証言、供述等をすぐに確認したいということがあろうかと思います。

 これらのような理由で、今回この制度を導入したいとしているということでございます。

米田政府参考人 そのような記録媒体の使用ということにつきましては、その場面場面といいますか、それぞれ異なる要請あるいは理屈があろうかと思います。公開の法廷と異なりまして、取り調べにつきましては、それが録音、録画されるということについては、私どもとしては、いまだやはり懸念がございますので、そこは慎重に対応したいと思います。

石関委員 ありがとうございます。

 今回のこの制度について、記録媒体に記録をするということについても、これはやはり被害者の方が記録をされるということで何らかの心理的な萎縮があったりとか、そういう懸念もあろうと思います。それでも今回法改正にこれが入ってきているということ、それと、警察においては、やはり取り調べの可視化、今の説明では私もまだ納得はいかないし、先日この委員会での鈴木議員の質問にあったとおり、これは検察のこともありましたけれども、やはりこちらはこちらで可視化をして、我々が、安心をしてと言ったら変ですけれども、しっかり記録に残る形での取り調べを進めるべきだと思います。

 頭出しだけさせていただいて、高山委員が熱心にこの問題も取り組むというふうにおっしゃっておりましたので、後に続けたいと思います。

 それから、こういった審議の内容を踏まえて、スムーズな裁判員制度の導入に大臣がさらに努力されることをお願いいたします。

 ありがとうございました。

七条委員長 次に、高山智司君。

高山委員 民主党の高山智司です。

 では、今のDVDのことについて、まず伺いたいと思うんです。これは私が後で質問しようと思ったこととも関係あるんですけれども、まず、長勢大臣に伺いたいんです。

 連日開廷ということもあり、DVDで録画したものを裁判員のときに使うというような話ですけれども、なぜそういう記録媒体というかDVDの導入をするんでしょうか。

 今まで裁判所では、速記の方がばあっと早く書いて、その文書をもとに、こういう議論がなされていたのかとやっていたわけですけれども、今度はそれをビデオで見てやるんだということになってくるわけですよね。それは、確かに真実性は担保されるかもしれませんけれども、逆に、身ぶり手ぶりを交えてわあっと大げさにやる人から訥々と話す人からいろいろいて、やはり我々は、特に裁判の場では、じっと冷静に、この人、本当はこういうことなのかな、こうなのかな、当てはめはこうだなとやるような部分というのは必要だと思うんです。

 裁判所は劇場じゃないですから、DVDによる録画等、どうしてこういうものが入るようになったのか、大臣として、昨年ですか、何か指示を出されていますけれども、どういうような指示を出されていたのか、まず教えてください。

長勢国務大臣 記録媒体に記録することについてのお尋ねでございますが、職業裁判官と裁判員の方とは、常に裁判に従事されておられる職業裁判官とはやはり違うと思うわけであります。

 そういう裁判員の方が、審理または評議における職務の的確な遂行を可能とするためには、公判廷で行われた訴訟関係人の尋問及び供述等を、その状況等も含めてより鮮明な形で記憶喚起することが、なれておいでにならないわけでございますから、必要になってくる場面も少なくないと思われます。

 また、裁判員制度のもとにおいては、連日開廷により審理が行われることになりますので、したがって、審理が終わったらすぐ、短期間で評議が行われるということになりますから、評議の段階では公判調書が完成をしていないということも少なからず生ずると思われます。

 そのため、裁判員が評議等において公判廷で行われた訴訟関係人の尋問及び供述等の内容を確認することができるようにする必要があるということから、この制度を導入するというものでございます。

高山委員 そこで大臣に伺いたいんですけれども、私が鹿児島の警察が事件を捏造みたいな質問をしたときに、大臣は、余り取り調べを可視化すると真相究明の妨げになるんだ、警察庁の人は、ビデオなんかで撮られていると証言する人が萎縮してしまって本当のことを言わないんだ、こういうような話をされていたんですけれども、裁判で同じようなことが起きるおそれはありませんか。

長勢国務大臣 捜査の段階での話と公判廷での話は、おのずから意味が違うんだろうと思います。

高山委員 大臣、そういうふうに答弁されると思いましたけれども、本当にビデオで撮られていてその人が萎縮しちゃうのかどうか、まず、それそのものもおかしな答弁だと私は思っていますよ。取り調べのときに、ビデオで撮られていると萎縮しちゃって本当のことを言わない、それも理由にならない理由だと思っておりますから、裁判所においても録画を当然使った方がいいと思うし、取り調べにおいても録画をどんどん使った方がいいと私は思いますよ。だって、そんなことを言ったら、速記の人が書いているから、あるいは取り調べ官がメモをとっているから本当のことを言わないということになりますからね。

 だから、私が今大臣に伺いたいのは、その違いは一体何なんだろうということです。裁判の場ではビデオがあっても本当のことを言う、速記の人が書いていても本当のことを言う、でも取り調べの場では言わないんじゃないかというのは、それはちょっとおかしいんじゃないですか。なぜそんな違いが出てくるのか、それを教えてください。

長勢国務大臣 もともと裁判は公開が原則でございますから、そこで証言されていることを、その後の評議等に便宜な限りにおいて今この制度を導入しようとするものでございますから、捜査の段階の話とは意味が全然違うというふうに思います。

高山委員 カメラがあろうとなかろうと、やはり証言する場では真実をきちんと言わなきゃいけないのであるから、そういうことは全然関係ないんじゃないのか、歴史の進歩とともに、カメラがあろうがペンがあろうが、真実を語らなきゃいけないときは語らなきゃいけないだろうし、どうしても否認したい人はずっと否認するだろうし、それは余り関係ないんじゃないかと私は思います。

 この点、裁判所の方にも伺いたいんですけれども、今回、裁判員制度の部分判決ということで、連日開廷だ、裁判員の人にも次の日にはビデオを見てもらって判断してもらう、こういうことですけれども、実際、速記は間に合わないんでしょうか。

 この点に関して、今、裁判所の速記というのは大体何日ぐらいで上がってくるものなのかということをまず伺いたいと思います。その上で、現在、速記の人が何人ぐらいいて、これから裁判員制度で連日開廷ということになれば、速記の人をふやしていくのかどうなのか、そういう全体的な方針もあわせてお願いします。

高橋最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 速記官の人数いかんということでございますが、平成十九年の四月一日現在で二百八十五名でございます。(高山委員「ふえているのか、減っているのか、そういうことを聞いているんですよ」と呼ぶ)それは、漸次減っております。

 どのぐらいの期間で、速記をした後、調書として上がってくるのかという点でございますが、これは一概に申し上げられません。その速記官の手元でどれだけ込み合っているかにもよりますけれども、私が民事の方でやっておりました経験からいいますと、一週間以内には上がってきたというふうに記憶しております。

高山委員 私もよく、前回の質問の中ではここが答弁違うじゃないですかとやるために、衆議院記録部の人にお願いすると、そこだけ急いでくれて次の日に速記が上がってきたりということがあるわけですね。しかも、そういうのをビデオで確認しようと思うと、今衆議院でもインターネットのビデオで見られるんですけれども、何かごにょごにょ、また、特に委員会の場合はやじとかがすごいですからなかなかわかりにくい部分もあって、議事録で確認するというのは結構重要なんですよね。

 だから、例えば、連日開廷ということであれば、そこだけ重点的に速記の人を急がせて書かせたりだとか、あるいは速記官が今漸次減っているということでしたけれども、もっと人をふやすとかして、裁判の迅速化ということであれば、これから裁判員制度に対応していくべきだと思うんです。

 なぜ今、人が減ってきているのか、また、そういう速記官の重点配置をなぜ考えないのか。民事のゆっくりした事件だったら、確かに半年に一回しか開かれませんというのはありますけれども、もし連日開かれるようになるのであれば、そういう人事配置を考えるべきだと思うんですけれども、そういうことは考えているのか、もし考えていないんだとしたら、その理由はなぜか、教えてください。

高橋最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 先ほど大臣の方からも御答弁ございましたように、裁判員裁判の場合は、委員も御指摘のとおり、連日的に開廷される、場合によっては三日間連続あるいは四日間連続、朝の十時から夜の五時まで、連続して開廷して証言の記録をしなきゃいけない、そういうものに全部果たして速記で対応できるのかという問題が一つございます。

 むしろ、先ほど大臣も御答弁になりましたように、評議のときに使うものとしましては、そのときの、汗をたらたら流しながら証言したのか、あるいは本当に自信を持って証言したのか、その供述態度、その供述をした人がどういう状況で供述していたのかも含めて見ることのできるような、録画でございますが、それを使った方が、裁判員、一般の方に膨大な調書を読んでいただくということは、これはおよそ難しいことでございますので、むしろ、そういうような形でそれに検索機能をつけたものを使う方が評議の際に用いる場合には適切であろう、さように考えております。

高山委員 いや、私は、それはそうだとは思いません。例えば、本当に朝の十時から夕方までで、そういうものをビデオとかで見ていくのは物すごく大変なことだと思うんですよ。むしろ、議事録で、どこだっけな、あっ、ここの部分だというふうに確認して、そこの部分をさらに、汗がたらたらしていたかどうか、赤面していたかどうか、目が泳いでいるとか、そういうことをビデオで確認するのはいいですけれども、やはり議事録そのものは要るんじゃないですかね。その方が検索も速いと思うんですよ。

 大臣も、いろいろなものを調べたりするときに、ビデオで順送りでいろいろ調べていったりするより、やはり紙ベースで、ささっと、ここだとやる方が、これは人間、速いと思うんですね。しかも、確実だと思うんですよ。

 これは、速記をやらないで録画だけになっちゃうわけですか、それとも速記と録画は併用されるわけですか、私は併用すべきだということを言っているんですけれども、どういうふうになるのか、もうちょっと詳しく教えてください。

高橋最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 確かに、あの場面のあの供述を聞きたいというのが、検索機能があった方がいいことは間違いございません。それで、今、最高裁では、音声認識のモデルを開発中でございます。これには、発言をそのまま書面にする、文章化するという機能がついておるわけでございますが、まず何よりも、検索機能をつけまして、例えば、ブレーキを踏んだという証言があると、ブレーキと入力すると、その証言場面が出てくる、それを録画と一緒に見ることができる、そういったことができるようなものを今開発中でございます。

 それから、併用の点でございますが、上訴審の関係で、きちんとした正確な逐語調書をつくらなきゃいけないことは当然でございます。その意味で、速記官の調書も、これは当然併用して使われることになる、そういうふうに考えております。

高山委員 その点で聞くと、何で速記官の数がどんどん減っているのかというのもよくわからないですし、あともう一つは、これも新聞報道によれば、録音して、それを自動で何かやっていく機械があるらしいんですけれども、それも、誤訳というんじゃないですけれども、まだ完全なものではない、なかなか人の耳にかなうものではないんだというような報道もあります。

 裁判であるとか、こういう委員会の質疑だとか、大事なことが話し合われているものは、なるべくいろいろな方法で記録していく方がいいと思うので、ぜひ、速記も、どんどん今人数が減っているということですけれども、むしろ人をふやして、きちんとした議事録を残していくという方が大事だと私は思います。

 また、もう一つ、ちょっと指摘したいのは、やはりビデオというのは怖くて、これは大臣も皆さんも御経験のことだと思いますけれども、こういうやりとりをしていたのに、テレビのニュースで十秒ぐらいだけ報道されると、何かその部分だけ全然違うような脈絡で報道されていて、こうだったのかというようなことがあると思うんです。やはりどういう脈絡のやりとりでやってきたのかということがないと、裁判員の人も、その部分だけ切り取ってきて、ほら、ここで目が泳いで証言をしているから怪しいでしょうと検察官に言われたときに、そうだなと思ってしまうかもしれない。そういう誘導のおそれがあるので、全体の文章で見たらこれはちょっと違うんじゃないかというようなやりとりができるようにしないといけない。

 また、DVDを再生するということになると、全員で同じテレビを見ながらやるわけですよね。ところが、議事録であれば、みんなが同じ議事録を見ながら、ここの部分はこう言っているけれども、前の部分はこうですよという裁判員の人も出てくるかもしれない。だから、リアルだとか臨場感がとかいうことで言えば、確かにビデオは必要だと思いますけれども、併用しなきゃいけないんじゃないかと私は思います。

 あわせて、先ほどの理由にもならないような理由で、取り調べの可視化は、真実を言わないからビデオはなかなか使えないんだというようなことを申しておりましたけれども、やはりもう時代がどんどん進んできて、捜査手法は、盗聴したりだとか、自動車にココセコムをつけたりだとか、いろいろなことが出てきているわけですから、やはり取り調べの可視化をしないとフェアじゃないんじゃないかというふうに私は思っております。

 この間ちょっと質問できなかったもので、今、緑資源機構の談合問題、官製談合で、またこういう官製談合が続いているのかというような話がありました。さらに、その資料を東京地検の方でなくしてしまったというような話もありました。

 そもそも強制調査に入ったのは公正取引委員会であるという話を聞いているんですけれども、なぜ東京地検で物がなくならなければいけないのか、非常に不思議だなと思いましたので、まずは、なくなった資料というのは、強制調査のものなのか、任意で提出を受けたものなのか、それをどういう経緯で東京地検に貸し出すことになったのか、また、そういう貸し出しをしてもいいのかどうかも含めて、公取の方から経緯を説明してください。

山田政府参考人 お答えいたします。

 今回公正取引委員会がどのような証拠物を貸し出したかにつきましては、公正取引委員会の調査活動にかかわる事項でございますので、お答えを差し控えさせていただければと思っております。

 一般的に申しますと、公正取引委員会の犯則調査は、告発に向けた調査であるところ、告発前であったといたしましても、当委員会の犯則調査部門が、告発後の捜査主体であり、公訴維持に当たる検察当局との間で必要な情報交換その他連携をとりつつ調査を行うことは当然であり、そのことは、当委員会に犯則調査権が与えられた趣旨に沿い、また当然予定しているものと考えているところでございます。

高山委員 まず前段の答弁がちょっとよくわからなかったんですけれども、具体的に、今怪しいと言われているこの緑資源機構のこの理事の通帳がなくなったんですかとか、そんなことは聞いていないんですよ。強制捜査で集めた資料なのか、任意で領置したのか、どっちですか。

山田政府参考人 公正取引委員会は、いろいろな形で資料を収集するわけですけれども、今回貸し出したものについては、それがどのようなものかにつきましては、やはり公正取引委員会の調査活動にかかわる事項でありますので、答弁を差し控えさせていただきたいと思います。

高山委員 済みません、それはどういうふうに捜査に影響してくるんですか。強制で集めたのか任意提出かというのが、どういうふうに捜査に影響するのか、ちょっと説明してください。

山田政府参考人 公正取引委員会でいろいろ調査をするときに、いろいろな手法があると思いますけれども、そういう点で、そういう具体的な手法について、必ずしも明らかにすることが適当じゃないと考えているところでございます。

高山委員 これは令状主義の潜脱になりますよ。強制捜査をするときは、何々何々のその他一切とかいって一応明示しているわけですよね、強制捜査するものを。任意の場合には、これを出していただけますか、それともどうですかと任意で出してもらうわけですよね。全然、それは捜査手法と関係ないじゃないですか。ひょっとして、令状主義の潜脱をしているのがばれるので答弁できないということなんでしょうか。

 きちんとまず答弁してください。強制のものなんですか、それとも任意で領置したものなんですか。

 あるいは、では、もう一個加えて聞きますよ。公取では、強制で集めてきたものと任意で集めてきたものを一緒にいろいろ捜査しているんですか、それとも、一応保管は分けてやっているんですか、ちょっと教えてください。

山田政府参考人 公正取引委員会としては、調査、差し押さえた物件と、それから任意に提出いただいた物件については、別途、分けて管理しております。

高山委員 大臣に聞きます。

 法務省というか検察では、証拠品の取り扱いはどのようになっていますか。つまり、強制で集めてきたものと任意で集めてきたものをどういうふうに分けて管理されていますか。私、これを前回聞いていますので。

長勢国務大臣 具体的には、ちょっと恐縮ですが刑事局長から答弁させますが、集めた資料は、検察庁において訓令に基づいて管理をするということになっておりますので、具体的な内容は刑事局長から答弁させます。

小津政府参考人 先日、私の方で少し御説明をさせていただきましたが、令状に基づいて押収する場合、それから任意提出を受ける場合、両方ありますけれども、いずれも、検察庁において、それはその後は領置をして……(高山委員「分けて管理しているか聞いているだけだから、それを答えてくださいよ。何のために答弁しに来たんですか」と呼ぶ)いえ、それで、領置をして保管するわけでございます。

 その意味では、強制手続で持ってきた証拠品と任意提出を受けて保管している証拠品で違いはございませんので、その両方について、それをそういう意味で全く別々に別のところに保管している等々のことではございません。

高山委員 ちょっと済みません、今、細かい話なので局長がということで出てきましたけれども、そんな、ただ両方とも領置になりますから、そういう意味で区別はありません、それを聞いているんじゃないんですよ。強制でやってきたものはこっちの部屋、任意なのは例えばこういうふうに管理しております、ただ、集めて、一緒に捜査をすることはあるけれども、またこういうふうに戻していますとか、そういう具体的なことを言うために今政府参考人にしたので、そうじゃないんだったら、これから大臣に聞き続けますから。

小津政府参考人 具体的なことで申しますと、強制手続で持ってきたものと任意提出を受けたものとで、別々の場所で保管するということではございません。いずれにいたしましても、証拠品は、証拠品の倉庫あるいはこれにかわる場所におさめて保管するということにしております。

高山委員 公取では一応分別してちゃんと管理されているということでしたけれども、検察の方では一緒にごちゃっと置いてある。だからじゃないんですか、こういう紛失とかが起きるのは。何かもう少し工夫されたらいいんじゃないんですか、捜査資料の扱いを。東京地検だということで、わあっと持っていったりすることもあるわけですよね。これは今後も起こり得る話ですよ。段ボールをごみと間違えて捨てちゃったということですよね。どうしてきちんとした管理をしないのか。

 この間私が質問したときに、大臣の方で答弁されましたけれども、その後、きちんと分別管理するなり、あるいはこういう再発防止の何か指示を出していただいているんでしょうか。それとも、のど元過ぎればということで、何も指示を出さずに終わっているのでしょうか。

 まず、私が委員会で質問した後あるいはこの事件が発覚した後、どういう指示を出しているんですか。ただ気をつけろなんというのは困りますよ。

長勢国務大臣 この事件は、本当に申しわけない事態だと思っております。

 今、具体的にどういう形でこういうことが起きたのかを調べさせておりますので、その調査を待って、それなりの対応をしたいと思っておりますが、御指摘のように、公取等からお預かりし、管理について十分であったのかどうなのか、また、今後直す点があるかないかについても検討させたいと思っております。

高山委員 不十分だと思いますよ、大臣、申しわけないけれども。

 やはり軽く考えているんじゃないですか、捜査資料を。わあっといっぱいあって、何か物すごい量の段ボールがあるから、管理もわからないから同じ倉庫に入れておいて、昔のものはなくなっちゃったかもしれないとか、ちょっと軽く考えているんじゃないですか。そうじゃなかったらなくなりませんもの。しかも、今また何か調査してと言いますけれども、これは法務省だとか検察の信頼にかかわりますよ。それを、何かちょっと軽く考えているなという気がします。

 それで、東京地検の岩村修二さんという次席検事が、当庁に全責任があり、おわびするほかないというようなコメントも出されていますけれども、これは全然改善された様子もないし、もっと言いますと、一つ答えていただきたい。

 この間、保坂委員が飲酒、ひき逃げについて質問していたときに、あれっと思ったんですけれども、そのときに問題となっていた検事とこの岩村検事は多分同じ人物じゃないかと思うんですけれども、そのときに、刑事局長が、ゴルフをやった後でビール一杯という事実はどうだというふうに保坂委員が聞いたら、そんなことはないんだ、当時の資料によりますとそんな事実はなかったと言ったんです。

 これは、当時の新聞記事を見てみますと、東京地検部長罰金二十万というような事故で、最後の方に、事故当時、岩村部長らは連れ立ってゴルフに出かけた帰り、岩村部長は、昼食の際、ビールをコップ一杯程度飲んだと供述しているというような記事が出ているんですけれども、虚偽答弁ですか、ちょっとそれだけ答えてください。

小津政府参考人 ただいま高山委員からも御指摘ございましたし、先日保坂委員の方から、ゴルフが終わった後でお酒を飲んで運転をして事故を起こしたのではないかというお尋ねがございましたので、そのような事実はないと認識しているというふうに御答弁申し上げたわけでございます。

七条委員長 時間が過ぎておりますので、簡単に。

高山委員 ちょっと刑事局長の答弁も不誠実な感じもしますので、これはもう終わった事件ですので、こういう供述があったのかなかったのか、当委員会に提出していただきたいと思います。

 委員長、お取り計らいをお願いします。

七条委員長 今の件について、資料を後日提出できますか。

 では、それも理事会で協議させていただきます。

高山委員 終わります。

七条委員長 次に、平岡秀夫君。

平岡委員 民主党の平岡秀夫でございます。

 法案の質問の前に、四月二十五日の本委員会で少年法の改正法案の補充質問をした際に、ちょっと見逃せない事態が発生しておりますので、私としてはしっかりとけじめをつけさせていただきたいという思いで、まず質問をさせていただきたいと思います。

 同日の法務委員会で私の質問がありまして、今回の少年法改正に当たって、文部科学省は、今度小学生でも少年院に収容される可能性があるということになるということを踏まえて、こうした少年院に収容される小学生についてどういう教育を行っていくかについて、いつ、どの段階で、どれだけの協議を行いましたかということを質問したわけでありますけれども、それに対して、小渕文部科学大臣政務官は、私の質問に答える形で、四点、こちらからの疑問点を申し上げまして、それについては法務省からも回答いただいておりますというふうな形で、その文章を長々と読み上げて、まさに時間の浪費をされたわけであります。

 そのときは読み上げただけの話でありますので、私も十分にわからなかったわけでありますけれども、全く私が質問してることとは関係のない文章を読み上げて、その場を繕うというごまかしの答弁が行われているということであります。

 後日、私が提出を求めました書類を見せていただきましたけれども、全く私の質問していることとは関係のないことしか書いていない、そういう状況であります。この件について、小渕政務官、私はそういう意図的なものであったとは考えたくはありませんけれども、こういう質問に対して全く関係ないことで時間を費やさせてしまったということについて、まず釈明をお願いしたいと思います。

小渕大臣政務官 お答えをさせていただきます。

 去る四月二十五日、本委員会におきまして委員から質疑された御質問につきましてでございますけれども、当日、大変騒然とした中での委員会運営でありまして、大変にぎやかな中での質問でありましたので、さまざまな発言が重なっていたため、十分先生の御質問を聞き取ることができなかった、また、質問に関しましては、事前に通告をいただくことができなかった、そのようなことから、この御質問に対しましては、法令協議での内容を説明するべきではないかと理解しまして……(発言する者あり)

七条委員長 静かにお願いします。御静粛に。

小渕大臣政務官 御説明をさせていただいた次第であります。

 今後、先生の御質問に関しても、引き続きまして誠意を持って対応させていただきたいと考えております。

平岡委員 今のは全然釈明になっていないんじゃないですか。だって、誠意を持って答弁していきたいというのはこれからの話じゃないですか。これからの話でしょう。そういう違う答弁をしたことについて、しっかりとした釈明ができていないと私は思います。

 ごまかしの気持ちがあってやったわけではないというようなことだと理解をして、それでは、今回の改正で少年院に収容されることとなる小学生に対する教育をどのように行うかについて、一体どういう協議をいつやったのか、改めて小渕政務官にお尋ねいたします。

小渕大臣政務官 お答えをいたします。

 初等少年院におきましては、現在の対象は十四歳以上でありますけれども、小学校及び中学校で必要とされる教科の指導を行うことというふうにされております。この点につきましては、今回の法改正により変わるものではありませんで、小学生が入る場合にも、この規定に対応することが可能であります。

 したがいまして、改正法案の閣議決定に先立つ平成十七年二月の法務省との協議におきましては、少年院における小学生に対する教育に関しては、文部科学省としては、特に教育内容についての意見を述べる必要がないものと判断をいたしました。しかし、その後、それ以外にも、中学生と小学生において確認、また協議というものは、さまざまな事務手続として行われてきております。

平岡委員 要するに協議していないということはわかったわけですけれども、私は、小学校でやる教科の内容が行われているかということを聞いたんじゃないんですよ。小学生に対してどういうふうに教育をしていくのかということについて協議が行われているのかということを聞いているんです。教科の内容ではないんですよ。

 小渕さん、あなたは少年院に行ったことがありますか、少年院でどういうふうに教育が行われているかというのを見たことがありますか、ちょっと答弁してください。

小渕大臣政務官 私は、少年院には入ったことはございません。(発言する者あり)

七条委員長 御静粛にお願いいたします。

平岡委員 ちょっと、猛烈に抗議する。私が聞いたのは、小渕さんが少年院に入ったことがあるかということじゃない、少年院でどういう教育が行われているか見たことがありますかと聞いたんですよ。(発言する者あり)

七条委員長 御静粛にお願いをいたします。

小渕大臣政務官 視察したことはございません。失礼いたしました。

平岡委員 小渕さん、あなたも挑発的な答弁をしないように気をつけてください。

 私たちは、少年院に行きました、少年院でどういうふうにして教育が行われているかという教室も見ました。私は、あの場面で、中学生が勉強をしているところに、あそこの教室の中に小学生を入れて教育をするというのはやはりできないと思いますね、はっきり言って。そういう意味においては、教科が教えられているかどうかじゃなくて、そういう小学生に対して教育を施せるような状況が整っているか、これは極めて重要な問題だと私は思いますよ。

 だから、さっきも何か小渕さんは役人が書いた答弁を読んで、これでいいというふうに納得させられたのかもしれませんけれども、私は一度見ていただきたいと思います。決してそんな答弁で納得できるような状況ではありません。

 私が聞きたいのは、教科だけではなくて、本当にそういう小学生に対して教育ができるような環境が整っているのかどうか、このことを文部科学省としてしっかりとチェックしなければいけないということを言っているんですよ。

 私たちは、少年法の改正において、おおむね十二歳以上ということについては反対していますから、あくまでもこれは反対し続けますけれども、これが実際に実行される段階になったときには、しっかりとした小学生に対する教育というものが行われる環境というのが整わなければいけない、こういうふうに思うんですね。それが協議されていなかったことについては、極めて政府の対応はまずいということで私は抗議を申し上げますけれども、仮にこういう法案が成立してしまうというときには、文部科学省としてどう対応されるのか、この点について、小渕政務官のお話を改めて、今度は挑発的でないように答えてください。

小渕大臣政務官 少年院における小学生の教育に関しまして、これまでも協議、確認を行ってまいりましたけれども、今後も法務省から相談がありましたら、教育につきましてしっかり連携をしながら、文部科学省としても協力をしてまいりたいと考えております。

平岡委員 もう少し小学生に対する教育あるいは義務教育について、やはり子供たちの立場に立って文部科学省は考えてほしいと思いますよ。だから、法務省から相談があったら対応しますではなくて、本当にそういうことがちゃんとできているのかどうかということをやはり確認していくという姿勢がなければ、私は文部科学省として責任を果たしたとは言えないと思いますね。だから、そういう視点でこれから仕事をしていただくことを強くお願い申し上げたいと思います。

 そこで、今度、裁判員制度の話にちょっと入るわけでありますけれども、小渕さん、どうぞ、引き取ってもらって結構です。

 今回、私も強行採決を阻止しようと思って参加した、例の憲法改正手続法案でありますけれども、あれについて、国民投票の投票権者の年齢が十八歳になるという形で規定をされているわけであります。ただ、附則の中に、十八歳投票権者になるに当たって、いろいろな成人年齢についての見直しをしなければいけないということになるわけであります。

 そうしますと、今回の法律に関して言えば、裁判員、それから検察審査員についても、これは年齢要件が十八歳以上という形に、最低年齢が十八歳ということになるというふうに私は思います。そうなることについて、法務省として何か問題があるというふうにお考えでしょうか。どうでしょうか。

長勢国務大臣 現行裁判員制度では、選挙権を有する方々から無作為で抽出することになっておりますから、現行公選法では二十ということになるわけです。

 現行公選法が仮に変わった場合、問題があるかどうかという御趣旨かと思いますが、ちょっとこれはこれからの検討でございますので予断を持って申し上げるわけにはいきませんけれども、裁判員制度立案の段階での議論を踏まえれば、公選法に合わせるということになるのかなと思いますけれども、いずれにしても、これから政府全体の中で検討していくことになると思います。

平岡委員 私が聞いた趣旨は、そうしますかと言っているんじゃなくて、裁判員にしても検察審査員にしても、十八歳以上になることに何か問題がありますかということを聞いているんです。どうでしょうか。

長勢国務大臣 裁判員の選任資格あるいは検察審査員を衆議院議員の選挙権を有する者とされましたのは、裁判員は三権の一翼をなす司法権の行使に直接参画することになりますので、少なくとも、同様に三権の一翼をなす立法権の行使に直接参画する国会議員を選ぶことによって間接的に国権の行使に関与し得る資格を有する者であるべきということが考えられることや、より幅広い層から裁判員が選任されることが望ましいということから、現行制度になったと承知をしております。

 裁判員や検察審査員に選任されることができる者の下限年齢については、今申し上げましたような観点も必要でありますし、また、事実認定や量刑、検察官の不起訴処分の相当性についての判断といった、それぞれの職務を遂行するに必要とされる能力をどのように考えるか、十八歳で何か問題があるかどうかということ、また、他の法律との整合性、特に公職選挙法との関係など、さまざまな事情を考慮する必要があると思いますので、ちょっと今ここで、具体的に十八歳になった場合にこういう問題がありますということを明確に申し上げることはできないんじゃないかと思います。これからの議論だろうと思います。

平岡委員 今の答弁は、法務省のエリートが知恵を集めてつくられた答弁でありましょう。今の答弁を聞いていると、具体的には何の弊害もないというふうにわかりました。検討しなきゃいけない課題はいろいろあるけれども、今の段階でこれは全然だめだという話は全くないということでありますから、憲法改正手続法案の附則の中にある、与党の方の附則の第二項は全く意味をなさない規定だというふうに私は思いますので、しっかりと、十八歳になるような形で法務省としても対応していただきたいというふうに思います。

 それから、裁判員制度に絡んで、この委員会でも問題になったんですけれども、裁判員制度に関する最高裁が主催するフォーラムとか、あるいは法務省が主催するシンポジウムということで、特に、最高裁の方でサクラの問題とか、あるいはタウンミーティングにおけるやらせの問題が昨年発覚をしたわけでありますけれども、そういう問題が発覚した後の最高裁によるフォーラムあるいは法務省によるシンポジウムというのはどういうふうに行われているのか、それぞれお答えいただきたいと思います。

小川最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 平成十七年度及び平成十八年度に最高裁が主催して実施いたしました裁判員制度全国フォーラムにおきまして、一部の会場で金銭を支払って参加を募るという、フォーラムの趣旨、目的に沿わない不適切な募集行為がありました。共催の新聞社によりこのような不適切な募集行為が行われましたことは、主催者としてまことに申しわけなく思っております。

 本年一月末に一部の会場で不適切募集があったことが明らかになりました段階で、最高裁判所といたしましては、事実関係の調査と並行いたしまして、その後のフォーラムの実施について急ぎ検討をいたしました。その結果、フォーラムを実施すること自体はやはり有意義と考えられましたことから、不適切な募集が行われないよう、再発防止策を徹底した上で予定のフォーラムを実施することといたしました。

 ただし、昨年度不適切募集があって、この時点で未実施であった千葉会場につきましては、コーディネーターを共催新聞社以外から選任して、一定の牽制をする体制をとりました。また、同じく未実施でございました和歌山会場につきましては、共催新聞社等を主催者から外しまして、再発防止に向けた体制をとりました。

 先ほど申し上げました再発防止策の内容でございますが、具体的にはフォーラムの運営を担当する……(平岡委員「もういいです」と呼ぶ)よろしいですか。いろいろと、集客管理責任者なども設置して、牽制体制を整えてやりました。その後は一切そういう不適切な募集はなく、三月四日をもって全フォーラムは終了いたしました。

長勢国務大臣 法務省主催のシンポジウムにおいて問題が指摘されましたけれども、正直言いまして、法務省としては全く関与しないことであったと思っておりますが、いずれにしても、その問題が出ました後、シンポジウムは開催いたしておりません。今後、シンポジウムをどうするかということは、開催するかどうか、またそのやり方も含めて検討しておるところでございまして、やるとしても問題のないようにしたいと思っております。

平岡委員 フォーラムとかをやるということ自体は決して悪いことではないと思いますけれども、問題がないように、やり方は、今大臣が言われたように、しっかりと検証しながらやっていただきたいと思います。

 ところで、平成十八年度に実施したフォーラムについては、あるいは最高裁の場合十七年度も含めてですけれども、電通が請け負っておられるということですけれども、その請負契約では、このフォーラムの企画、渉外はだれが行うことになっていたのか。これはもう既に週刊誌に出ていることではありますけれども、御答弁いただきたいと思います。

小川最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 平成十八年度の方を申し上げますが、平成十八年度のフォーラムの企画につきましても、平成十七年度と同様、株式会社電通が請け負っているわけでございますが、具体的な担当者につきましては、契約書に添付された仕様書には、パブリックマネジメント・ソリューション室プロジェクト開発部の局長以下二十数名の氏名が記載されてございます。また、契約の際に提出された見積書には、全体企画、渉外のプロデューサーとしてえの目清一朗ほか一名の氏名が記載されております。

平岡委員 ほか一名というのは、白井則子さんということだと思いますけれども。

 それで、法務省の方が十八年度に実施したシンポジウムというのも同じく電通が請け負っておられるわけでありますけれども、その請負契約でいきますと、シンポジウムの企画制作はだれが行うことになっていたのか、この点について御答弁いただきます。

小津政府参考人 最高裁御当局の場合と法務省の場合で契約の内容も異なっているようでございますが、法務省におきましては、電通との協議によりまして、シンポジウムの開催時期や開催地、スケジュール、各地共通のプログラム等のイベントとしての重要な部分は法務省と電通とで協議をして決めたわけでございまして、それで、恐らく御指摘は、この見積書に制作人件費というのがございまして、これは開催の当日等々に運営管理等をするプロデューサーやアシスタントプロデューサー等に支払う費用でありますが、この人たちの名前は見積書等には記載されておりませんので、私どもは具体的には把握しておりません。

平岡委員 具体的に把握していないというのはどうしてですか。聞けばわかる話じゃないですか。聞いてくださいよ、これは通告をしているんだし。どうしてそんなことが言えないんですか。何か隠し事でもあるんですか。

小津政府参考人 御指摘の点につきましては、委員からの御指摘もございましたので、私どもで電通に問い合わせを行いましたけれども、具体的な担当者の氏名については答えられないという回答でございまして、何分そういう契約関係でございますので、それ以上私どもでは知る方法がない、こういうことでございます。

平岡委員 これは税金で行われているものですよね、大臣。それで、どういう人がこういう企画とか制作とかいうことについて責任を持ってやっているのかということについて、教えてくれと言ったって教えられない、そんなところとこういう契約をしていいんですか。さっきも答弁で、これからのやり方も考えていくと言われましたけれども、そんなことも教えられないということを言っているようなところと契約していいんですか。どうですか、大臣。

長勢国務大臣 今までいろいろな経過もあったようでございますが、民間企業との契約のあり方、具体的にどういうふうなことを考えていけばいいかということはもう一遍慎重に考えて、問題が生じないように、やるとしてもそのようにしたいと思います。

平岡委員 最高裁がちゃんと答弁できることを法務省が答弁できないというような状況に陥るような契約は、私はもうやるべきじゃないと思いますね。

 やはり契約の透明性もしっかり図りながら、さっき言ったように、私は、このシンポジウムとかフォーラムとか、悪いことをしているというふうには言っていません、必要なことだろうと思うんです。

 ただ、それをやるに当たっては、税金を使ってやるわけですから、しっかりと透明性があり、だれから聞かれてもどういうふうに使っているんだということが説明できるような状態でやるべきだ、そうしなければ、やはりいろいろな人から疑惑を持たれて、逆に、せっかく一生懸命やっていることがマイナスの効果になってしまう、裁判員制度というのはそんな汚い形でやられているのかというふうなことになってしまうわけですから、その点は、私の方からも十分に注意喚起をしておきたいというふうに思います。

 なかなか率直な答弁がされないので、法案そのものの審査がちょっと少なくなりましたけれども、四月十日の参議院の法務委員会で最高裁の小川刑事局長が答えられている中身でありますけれども、平成十七年度の裁判員対象事件の新受事件数は三千六百二十九件、一つの事件で六人の裁判員とすると、年間大体二万二千人弱、二万一千七百七十四人の裁判員になるというふうに答弁をされておられるんです。

 これは多分、今回の部分判決というものを想定しないでこういう計算をされたんだろうと思いますけれども、今回の部分判決の制度について言えば、平成十七年度のケースで推測すると大体どの程度の事件数といいますか、裁判体がつくられるというようなことになるというふうに見込まれているんでしょうか、その場合に裁判員数はどのくらいになるのか、この点についてお答えいただきたいと思います。

小川最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 部分判決は、併合した事件を一括して審判することにより要すると見込まれる審判の期間その他の裁判員の負担に関する事情を考慮して、その円滑な選任または職務の遂行を確保するために……(平岡委員「私が質問していることに答えてください、要らぬことは言わないで」と呼ぶ)はい、わかりました。特に必要があると認められるときに用いられる制度でございます。

 ただ、犯罪の証明に支障を生ずるおそれがあるときとか、被告人の防御に不利益を生ずるおそれがあるときその他相当でないときには用いることができないという制度で、例外的な制度だというふうに考えております。

 それで、部分判決制度によって審理を行うか否かは個々の事件ごとに裁判員の負担に関する事情を考慮して判断されるべき事柄でございますので、今の段階で部分判決の対象となる事件数を予測することは困難でございます。

 ただ、大ざっぱな形になりますけれども、複数の裁判員対象事件が併合して審理される件数は、恐らく年間数百件程度というふうに見込まれます。しかも、その多くは、事実関係に争いがないなど、部分判決によることを必要としない事件であろうと思います。また、事実関係に争いがある事件であっても、先ほど述べましたように、犯罪の証明に支障が生ずるおそれがあるときや、被告人の防御に不利益を生ずるおそれがあるときその他相当でないと認められるときは部分判決を用いることができないとされておりますので、実際上は、部分判決が用いられる事件数というのはそれほど多くないというふうに考えております。

 したがって、部分判決制度が導入されたからといって、年間の裁判員の数が大幅にふえるというようなことはないというふうに考えております。

平岡委員 私は、多分最高裁は答えられないというようなことを言っていたので、答えられないとしたら立法提案者である法務省に聞こうと思ったんですけれども、大体、法務省も今の答弁でそんなに違いはないと思いますから。余り多くはないということで、予算上の影響も、当初想定していたものよりふえるということでもないと理解をさせていただきたいと思います。

 そこで、第六十五条に関してでありますけれども、先ほど、同僚の石関委員の方からもこの規定が設けられた趣旨は何なのかということで質問がありましたので、とりあえずそれを前提としてやりますけれども、この六十五条を見ていると、これはどういうふうに利用されるのかということが全く書いていないんですよね。目的は書いてあるけれども、利用するのは書いていない。一体どういうことにこれは利用されるんですか。この趣旨ということを踏まえて、ちょっとその利用の部分について答えていただきたいというふうに思います。

 これはちょっと明確な質問にはなっていませんでしたので、刑事局長でも結構です。

小津政府参考人 利用ということについて私が十分正確に理解したかどうかという点はございますが……(平岡委員「刑事局長が正確に理解していなかったらどうするんだ」と呼ぶ)いえ、質問の御趣旨をということでございます。

 公判廷での証言内容等を記録媒体、DVDにおさめて、それをその日あるいはその後の評議の中で必要な場合に、それでは、あそこのところをちょっと一遍DVDを映して見てみようではないかということで評議に役立てるということを予定していて、そのように基本的には使われるのではないかと理解しております。

平岡委員 例えば、この記録したものについて控訴審のようなところで利用されるということは可能なんでしょうか、あわせて、この記録というのはいつまで保存されるということになるんでしょうか、この点について、六十五条の趣旨からお答えいただきたいと思います。

小津政府参考人 まず、今私が申し上げましたほかに、委員の御質問の趣旨に沿って、公判手続の更新の際にこれを使うことができるということは今回の法案等にも書いてございます。

 控訴審でということでございますと、改めて証拠調べをするという手続が必要であると理解しております。

平岡委員 この規定は「記録することができる。」と書いてあるだけであって、どういうふうに利用されるのか、どれだけの保存が認められるのかというようなことについて全く書いていないという意味において、私は非常に不親切な条文だというふうにも思います。

 そういう意味でいくと、今の質問に関連してちょっとやじ的にいろいろな声が周りから聞こえていますけれども、六十五条の第三項の趣旨が私もちょっとどうもよくわからなくて、「前項の場合において、」と書いてあるのが第二項なんですけれども、第二項の場合でしか、要するに訴訟記録に添付して調書の一部とできないというふうになっていることの趣旨もよくわからないんですよね。これは何でですか。何でこんなことになるんですか。

 素人的に考えれば、こういうふうに記録にとったものについては、それを調書の一部とするということについてそんなに制約を持たせる必要はないのではないかというふうな気もするんですけれども、第三項はどういう趣旨ですか。

小津政府参考人 これはビデオリンク方式による証人尋問をとった場合のことでございますが、この場合には、特にほかの証人に比べて証言によってその精神の平穏を著しく害されるおそれが大きいので、特にそのビデオリンク方式をしなければいけないということになったわけでございます。そこで、新設する制度につきましても、これについて特別の扱いをして、その方々が繰り返して証言すること等による二次被害でありますとか、強い精神的な圧迫を回避しようということでございます。

 もっとも、後に証人尋問が行われることが明らかにないと認められる場合には、記録媒体を訴訟記録に添付して調書の一部とすることによって保護を図ろうという必要はございませんので、ただし書きを設けまして、このような場合には訴訟記録に添付しないことができるとしたものでございます。

平岡委員 何か時間が来てしまったようなので、用意した質問を全部質問できなかったので残念でありますけれども、これで終わりたいと思います。

七条委員長 本会議散会後直ちに委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。

    午後零時十九分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時五十四分開議

七条委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。横山北斗君。

横山委員 民主党の横山北斗です。

 午前中の質問と重なり合う部分も幾つかあろうかと思いますけれども、何とぞよろしくお願いいたします。

 裁判員制度が二年後にスタートする、これは司法制度改革の大きな柱であるわけですけれども、本年二月の内閣府の世論調査結果によりますと、裁判員制度に関する特別世論調査、八〇・七%の人が制度開始を知っていると回答しましたけれども、義務であっても参加したくないという人が三三・六%、余り参加したくないと回答した人が四四・五%と、裁判員制度の参加には八割近くの人が消極的な態度を今の段階で示しております。こうした今の段階で国民の間にある抵抗感といいますか、この現状につきまして、法務大臣及び最高裁判所当局のお考えをまず最初にお聞かせ願えればと思います。

    〔委員長退席、武田委員長代理着席〕

長勢国務大臣 裁判員制度の施行があと二年後に迫っておるわけでございまして、ぜひ国民の皆さんの御理解をいただいて、発足時には、裁判員に選任された場合、積極的に参加をしていただけるような状況にしたいということで、今一生懸命努めておるところでございます。

 昨年の世論調査の結果は御指摘のとおりでございまして、積極的に参加をしたいという人あるいは参加してもいい人を入れても二割程度、余り参加したくないけれども義務であるからせざるを得ないという人が四四・五%、義務であっても参加をしたくないという人が三三・六%という状況でございまして、我々としても大車輪でこの理解に努力をしなければならないと思っております。

 例えば、時間的に余裕がないとか、いろいろな意味で仕事あるいは生活に支障を来すという問題もありまして、こういう問題の解決も必要ですが、この調査によれば、やはり責任を重く感ずるとか難しいからという雰囲気も感ずるわけでありまして、今まで裁判員制度について説明の仕方も意義とか難しい話ばかりするものですから、どうも国民の皆さんも腰が引けるようなところがあるんではないか、もちろん大変大事な仕事をしていただくことになるわけでございますが、もう少し気楽にという表現も不適切かとは思いますけれども、そんなに精神的な不安なく参加していただけるように、最高裁あるいは日弁連ともお話をして、これから広報のやり方等も考え直して、精力的にこの浸透を図るように努力をしていきたいと思っておる次第でございます。

小川最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、裁判員として裁判に参加することにいまだ多くの国民の方が消極的であるというふうに承知しております。問題はその原因でございますが、裁判に参加することについてさまざまな不安や疑問を感じて、それが参加に対する心理的な障害になっているのではないかというふうに考えております。

 そこで、裁判所といたしましては、裁判員制度の意義、裁判員の役割、裁判員裁判の運用イメージなどを正しくお伝えするとともに、不安や疑問に的確に答えるなどして、これを解消するための広報活動を法務省、日本弁護士連合会と連携協力を図りながら、そういう広報活動の展開をいたしまして、参加意欲の向上を図ってまいりたいというふうに考えております。

横山委員 それでは、現段階で八割の人が消極的となっているこの裁判員制度への参加につきまして、具体的にその広報活動、啓発活動、これまでどういう取り組みをしてきたのかについて、関係省庁の方から御説明願います。

小津政府参考人 裁判員制度の広報活動でございますけれども、法務省におきましては、最高裁判所、日本弁護士連合会などと連携協力いたしまして、積極的かつ精力的に行っているところでございます。

 具体的に少し申し上げますと、広報用のパンフレットやリーフレットを配布したり、有名俳優を起用したドラマ仕立ての広報用ビデオを制作、上映するなど、工夫を重ねて多様な広報活動を展開しているところでございます。

 特に、全国の検察庁では、そのいわば組織力を活用いたしまして、検事正を初め多くの職員が地域の集まりや企業に説明に出向く草の根的な広報活動を展開しておりまして、これまで七千回を超える説明会を実施しております。

 さらに、将来裁判員制度を支えることとなる若い世代への広報にも取り組んでおりまして、学校への説明に出向くほか、教え手である教員の方を対象に、裁判員制度を題材とした教育教材を作成したり、法教育の進め方や裁判員制度についての説明を盛り込んだ教員研修も実施しているところでございます。

 今後は、ただいま大臣が申し上げましたような観点で、残り二年間、さらに精力的に取り組んでまいりたいと思っております。

小川最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 裁判所が取り組んでまいりました具体的な方策でございますが、平成十七年度は長谷川京子さん、平成十八年度は仲間由紀恵さんを起用して、裁判員制度の意義、内容について周知する新聞、雑誌広告、裁判官のインタビューを掲載したタイアップ広告などを実施いたしました。

 また、平成十七年度及び十八年度は、全国五十カ所で裁判員制度全国フォーラムを開催いたしました。

 それから、裁判員裁判の審理、それから裁判員の役割等について具体的なイメージを示すため、裁判員制度の具体的な内容をわかりやすく説明したブックレットや漫画を交えて、QアンドA方式を用いてわかりやすく解説したパンフレットを制作しました。

 それから、各地においても、模擬裁判、裁判官による出張講義、説明会等を行っており、これは約三千回を超えております。

 さらに、最高裁において制作した映画「評議」や「裁判員 選ばれ、そして見えてきたもの」と、裁判官等による説明をセットにした上映会等を開催しておりまして、この数も一千回を超えております。

 今後とも、法務省や日本弁護士連合会などと協働して、広報活動の展開をしてまいりたいと思っております。

高井政府参考人 お答え申し上げます。

 内閣府におきまして、これまでさまざまな広報媒体を使いまして、裁判員制度に関する政府広報を行ってきているところでございます。

 具体的には、政府広報誌、政府インターネットテレビ、政府広報のホームページ、テレビの定時番組において取り上げるとともに、一般週刊誌においても広報を行ってきているところでございます。

 今後とも、適時適切な広報に努めてまいりたいと考えております。

横山委員 私もこの広報については、地元の青森県で東奥日報という地元紙がございますが、連日、そういうフォーラム、シンポジウムみたいなものを行うというような宣伝が出ていて、広く、自然とそういうところに目が行く広告の出し方もしてくださっておりますし、そういうものが伝わるには伝わっているのかなと。問題は、やりたくないという人がまだまだ圧倒的に多いということなんだろうなと思っております。

 それで、午前中に稲田先生の御質問の中でも、今のこの時期、やるかやらないかというと、まだ国民の間に消極的な人が圧倒的な中で、また新たに何か法律を変えるというか修正するというか、そういうことに対しての御意見が出されておりました。

 これは、もちろん、法律等々に何か不備があれば、その施行までにきちんと見直すというのは当然のことだと思うんですけれども、私が一つ感じているのは、法律というものの持つ性格もあるだろうということであります。

 例えば、私ども今政治をやっていて、政治であれば、権力とか、政党とか、選挙とか、民主主義とか、具体的に説明しろと言われると非常に難しいですが、みんなその言葉と意味は何となくわかっている。しかし、法律の言葉というのは、債権とか、物権とか、無体財産とか、罪刑法定主義とか、最初にその言葉を聞いただけでは何のことかわからない用語というのが非常に多いわけです。

 法学部の学生であれば、一年生のときに、これからそういう新しい言葉を学んでいくわけですから、新しいことを学んでいるんだなということで、気合いも入るんでしょうけれども、それが一般の国民ということになると、失礼ながら、余りやる気のない人々を前にしたときに、今回また部分判決とか区分審理とか、読んでそのまますっと入っていかない言葉が追加ということになると、今この広報活動に携わっている人たちの間でも、どうしたらいいのか、また何か新しく加わるみたいだねというような声が出てきているのが現状だろうと思います。

 部分判決とか区分審理というのも、その言葉のとおりじゃないかと言われると、しかし、またちょっと違うわけですよね。一人の人が三つ殺人事件を犯したから、それはA、B、C、三つに分けてやるんだというだけならそれでいいのかもしれませんけれども、実際にはその後で、また最後の審判で、すべての事件を総括した判決を言い渡すとかですね。

 だから、その言葉の難しさと、どういう制度なのかということをまた新たにそこで追加されていくというあたりの面倒くささ、先ほど大臣が一言で、難しい話ばかり言うものだからと、まさにそのとおりの状況の中で八割の人が拒否反応を示しているのだ、本当に、一言で言ってしまうと、まさにそのとおりだと思います。そのあたり、説明の仕方を含めて、きちんとした広報活動をしていく必要性を感じております。

 では、私は、以下、平明な言葉でありきたりの質問をしていきますので、だれにでもわかるようにお答えください。

 まず、国民を裁判員として刑事裁判に参加しやすくするためには、例えば有給休暇制度の促進、保育、介護施設等の拡充、国民が参加しやすい環境づくりを進めることが必要ですが、この点、今どういう取り組みが行われているのか、あるいは今後実施に向けて検討していることがあればお答えください。よろしくお願いいたします。

    〔武田委員長代理退席、委員長着席〕

小津政府参考人 ただいま御指摘いただきました点について、政府として、いろいろな省庁が力を合わせて取り組んでおります。国民の皆様の参加を容易にするためのいろいろな状況、環境を整備しているということでございます。

 そういう中で、法務省も、企業団体やそれぞれの個別の企業に対しまして、あるいは出向きまして、裁判員制度への理解を求めて、裁判員となった場合、つまり、その企業の従業員が裁判員となった場合に休暇制度を整備していただけないかというようなお願いをいろいろとしておるところでございます。

 また、保育、介護などにつきましては、現行の制度で裁判員の方がいろいろと利用することのできる制度があるわけでございますので、その内容につきましてわかりやすくお知らせするということについて努めているところでございまして、そのようなことにつきまして、さらに一層努力してまいりたいと思っております。

小川最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 今法務省の方からも御答弁がございましたが、まず、休暇制度の関係では、最高裁は、法務省、日本弁護士連合会とも連携して、各種経済団体等に対し、裁判員制度の意義や重要性について理解していただいた上で、休暇制度導入の検討を働きかけてございます。

 それから、育児、介護関係でございますが、裁判員制度の円滑な実施のための行動計画の中で、介護、養育に関する各種サービス、事業が十分活用されるような措置を講じることなどの確認がされておりまして、最高裁は他の関係機関と連携をしまして、例えば保育については、裁判員として参加する児童の保護者のニーズに合った保育のサービスを円滑に実施できるよう、一時保育のサービスを一層活用するための方策について検討しているところでございます。

横山委員 それでは、部分判決制度ということについて、刑事裁判への影響についてお尋ねいたします。

 この改正では、裁判所に同一被告人に対する複数の事件が起きたときに、部分判決制度を新たに導入することとしています。この制度は、裁判員の負担を軽減する、適正な結論が得られるようにするために導入されたということですが、反面、全体として起訴から判決までの手続がかえって長期化するのではないか、あるいは裁判員の参加する審理手続が拙速となって、結果として適正な裁判が行われなくなるのではないかという指摘もあります。

 部分判決制度については、実際の事件処理に当たる個々の裁判所において、指摘されるようなことが起きないよう、事案に応じてバランスのとれた運用がなされることが重要であると考えますが、こういう指摘があることについて、まずどのようにお考えか。これが結局、被告人にとって不利益となるという指摘もありますけれども、この双方について御見解をお聞かせください。

    〔委員長退席、上川委員長代理着席〕

小津政府参考人 ただいまの、いろいろな御指摘があるという点につきましては、私どもとしてはそのように思っておりませんので、今後、もちろんこの審議もそうでございますけれども、国民の皆様にこの制度の内容をお知らせするときに、その点もわかりやすく十分にお知らせする必要があると思っております。

 全体として、長くなり過ぎるのではないかということでございます。これは、もちろん全体として円滑に行うようにするための制度でございますので、決してそういうふうにならないようにしなければいけないわけでございますけれども、具体的に工夫いたしております一つのこととしては選任予定裁判員という制度。つまり、三つございましたらA、B、Cと順番に審理をしていくわけでございますけれども、二つ目、三つ目の事件の審理をするときになって初めて裁判員を選ぶということではなくて、その事件をやる裁判員になるはずの方についてもあらかじめ選任手続をしておくというのも、一つ、今度工夫をして入れさせていただいたわけでございます。

 それから、一つ一つの事件についての審理手続、これはもちろん刑事訴訟手続にのっとりましてきちんとやるわけでございますけれども、特に被告人に不利益になることはないか、あるいは実際、事実認定にとっておかしくならないかというような点につきましては、部分判決制度をとるかどうか、区分審理をするかどうかという判断に当たりまして、被告人の権利利益が不当に害されるような場合などはこの制度を使わないということが、はっきり法律に書いてあるところでございます。

横山委員 この部分判決制度についてですけれども、事案によっては、一件であっても複雑かつ長期の審理を必要とする裁判も想定されると思います。こういう事案では部分判決制度は活用されないということですが、裁判員の負担軽減のためにどういうことをお考えか、御意見をお聞かせください。

小津政府参考人 具体的に申し上げますと、まず一つは、新しい刑事訴訟法によりまして、公判前整理手続を十分に活用するということであると思っております。公判前に争点を明確化して、その争点の判断のために、どういう証拠をどういう順序で取り調べればいいのかというはっきりとした審理の計画を立てて、本当に争いのある点を中心にして、できるだけ無駄のない充実した審理を連続して行えるようにするということであろうと思います。

 もう一つは、これは当事者それぞれが努力をするということでございますが、検察の側から申しますと、適切な主張、立証事実を設定する、それから、提出する証拠を厳選する、わかりやすくて簡潔で要を得た冒頭陳述や論告をする、それから、出す証拠もポイントを絞ったものにする、証人尋問もそのようにするといういろいろな工夫をしていくことによりまして、一件であっても非常に複雑な事件というものについて、審理期間を相当に短縮するように頑張ってまいりたいと思っております。

横山委員 わかりました。

 それでは、区分審理決定の要件についてお尋ねいたします。

 区分審理決定の要件について、改正裁判員法第七十一条第一項、「一括して審判することにより要すると見込まれる審判の期間その他の裁判員の負担に関する事情を考慮し、その円滑な選任又は職務の遂行を確保するため特に必要があると認められるとき」と規定しております。

 まず、ここで言う審判の期間についてですが、裁判員となる一般の国民にとって、どれだけの時間的な拘束を受けるかということが大きな関心事になっているわけです。この審判の期間というのは、具体的にどの程度の期間を想定しているのか、お聞かせください。

小津政府参考人 具体的な審理の期間につきましては、実は法制審議会の中でも、どの程度のイメージを持つべきかといういろいろ御議論がございました。しかし、やはりそれぞれの事件によって違うだろう、それから、裁判員の負担ということも、それぞれの事件でございますけれども、事実関係だけではなくて、証拠関係なども影響するだろう、それから、期間と申しましても、どれぐらい連続してやるかということによっても違うだろうということでございますので、やはりここの期間というのが、例えば何日ぐらいということでは申し上げかねるということを御理解いただきたいと思います。

    〔上川委員長代理退席、委員長着席〕

横山委員 それでは同じく、区分審理決定の要件として、改正裁判員法第七十一条第一項には、「その他の裁判員の負担に関する事情」という文言が入っております。この負担に関する事情というのも国民にとって関心のある事項と考えますけれども、この負担に関する事情として、具体的にはどういう事情を想定しているのでしょうか、御説明願います。

小津政府参考人 これは、期間とは別に審理の回数がどれぐらい多いかということもあると思いますし、また、一回にどれぐらい難しい複雑なことをするかということがあると思いますので、別の言葉で申しますと、それらの、審理内容の複雑さなどの要素もあると考えているところでございます。

横山委員 この制度は、今回の改正法は、前のものを、より国民の負担を、裁判員の負担を軽くするという目的で出てきたものであることは承知いたしておりますけれども、それによってまた新しい問題が発生するのじゃないか。部分判決にしても、裁判官と裁判員との情報量の差とか、さまざまなことを指摘する法律の専門家が数多く出てきておりますので、その点、御配慮のほど、よろしくお願いいたしたいと思います。

 以上で私の質問は終わります。

七条委員長 次に、保坂展人君。

保坂(展)委員 社民党の保坂展人です。

 法務大臣に伺っていきたいと思いますが、先ほども話題になっておりましたけれども、裁判員制度の二月の調査結果では、知っている人はかなりふえている。しかし、義務であっても参加をしたくない、こういう方が三三・六%で、余り参加したくないけれども義務であるのなら参加せざるを得ない、こういう方が四四・五%と、かなり消極的な、八割という数字が出ております。

 私、裁判員制度の広報費の問題をじっくり考えさせていただいた折に、裁判所がつくった「評議」あるいは「裁判員」、それから法務省でつくったDVD、これも見せていただいたんですが、特に感じましたのは、これは裁判所の映像だと思いますけれども、裁判員をやるかどうか迷うときに、御本人が決断するシーンのせりふが、息子さんが、おやじ、逃げるのかよという一言で、いかぬなと言って手続に入るシーンだとか、あとは、呼び出されて説明を受けているときに、いや、私なんか裁判員なんかできませんよと言ったときに、若い女性が、格好悪いよみたいなせりふが出たりしているんですね。

 また、これは中村雅俊さんが裁判長で、私はとてもできませんと言う人に対して、やはり素人の感覚が大事なんですと言って、話し込んでお願いをしていくというようなシーンが紹介されているんですが、どうもやはり格好悪いよとか逃げるのかよみたいな言い方では、ちょっと裁判員制度についてのインセンティブが、国民に負担を求めるというか、参加してくださいと言うにはやや欠けるのではないかというふうに思うんですね。この辺、法務大臣、どう考えていますか。

長勢国務大臣 おっしゃるとおりだと思います。

 私は党でこの制度の立案に当たりましたけれども、そのときからこの問題が一番心配されていたことです。それに対して、法曹界というのは、裁判所、法務省を含めて法曹界と言っていいと思うんですけれども、それは国民の義務だから来るのは当たり前だという感覚を、私から見ると感じたことを今でも思い出しておりまして、今シンポジウムとかフォーラムでいろいろ問題も指摘をされておりますが、そのこともありますけれども、私は法曹界の人間ではないから間違っているかもしれませんが、恐らく、その中でわかる話を、一生懸命細部にわたって丁寧に言っておられるんだろうと思うんですけれども、立案に当たった私でもそんなことまで知らないというふうなことまで一生懸命説明しておられる可能性が高い。

 しかし、ここにおいでになられる先生以外の国会議員でも余り中身を御存じないわけで、まして一般の国民の方々はほとんど法律知識がない方の方が圧倒的に多いわけですから、シンポジウムとかフォーラムとかをやったって、ほんの一部の関心のある人が来ているだけですから、理解を広げることにどれだけの効果があるのか、私自身は若干疑問に思っております。

 むしろ、そんな難しい話は少し省略しても、専門家はそれはちゃんとしないといけませんけれども、みんな気を楽にして、参加をしてもいいやという感じになるような広報宣伝活動に専念をすべきではないのかと私個人は思っておりまして、いろいろな御意見もあろうかと思いますが、そう思っております。

保坂(展)委員 率直な答弁だと思います。

 ただ、私は、例えば離婚訴訟とかそういうことについてであれば、気楽にというか、素人の感覚でどうかなというお誘いもできるかと思うんですが、事は殺人とか放火という大変大きな、いわば被害者がいる事件に限られてこれはスタートしていくということだと思います。

 政府提出の法案の中に、既に本会議でやりとりがありましたけれども、犯罪被害者の方の法廷への参加の問題というのがございます。

 これはちょっと裁判所に聞きますけれども、現在、傍聴席に、例えば犯罪被害者の遺族の方が、遺影を持たれたりとか、場合によっては遺骨をともに持ってこられたりとかというようなことはあるんでしょうか。どういう実態になっているんでしょうか。

小川最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 統計はとっておりませんので、最高裁として運用について承知しておりますところを申し上げますと、遺影につきましては、被害者の遺族の方から遺影とともに傍聴したいという申し出がされる例が多うございます。そして、現にそれを裁判体の方で許可している例も多数あるというふうに承知しております。

 例えば、遺骨とか遺品とかいうものもございますけれども、遺骨については特に一般的とは言えませんけれども、過去に許可した例というのもあるようには聞いております。遺品についてはなかなかわかりません。

保坂(展)委員 法務大臣、一緒に考えたいんですけれども、法務省から聞いている話だと、裁判員の方が六名で、真ん中に職業裁判官が座るんでしょうね、裁判長が真ん中にいて、九人のコートができるわけですよね。そして、検察官側に、検察官と話しやすい位置に被害者の方が座る、こう言われています。ですから、裁判官席から見て、検察官との間に、弁護人と相対する位置の、裁判官に近い席に被害者の方が座るのかなと。

 その場合、今裁判所の答弁にあったように、これは大切な子供を殺されたり、愛する人を失った遺族にとっては、やはり遺影を持っていきたいという心情は当然あると思います。場合によっては、納骨していない、そんな気持ちになれないということで、では遺骨もぜひそこにという方もいると思うんですね。そして、容疑者というか、被告として裁かれている本人がいるわけですから、これはやはり感情を抑制しろといってもなかなか難しいと思います。

 そこで、いろいろ具体的には言いませんけれども、想像してみると、被告が起訴事実について否認をする、私はやっていません、全然いわれのないことですというふうに言っていると、実際には冤罪事件というのはあるわけですからそれは本当かもしれないんですけれども、法廷の空気としては、どうもこれはひどい人間ではないかというような空気が流れてしまわないだろうか。そして、裁判所の映画でも、素人の感覚を大事にすると言っているわけですから、裁判員の方が、午前中に呼び出されていろいろ制度の説明を聞いて、午後からもう法廷に出てくるわけですから、そうすると、裁判員制度がスタートする時期にはちょっと想定しなかったような事態が法廷の中に出てきてしまうんじゃないか。

 できれば、私、この法務委員会全員で模擬法廷をやってみたらどうかなと思うんですね、そういう状況を、今政府提案の状況まで加味して、どういうふうな状態になるのか。その辺、法務大臣、どう思いますか。

長勢国務大臣 公判廷における被害者の席をどこに置くのかとか、あるいは傍聴席の話を今御説明があったようですけれども、今度、被害者の席があるときに、そこに遺影を持ってくることが許されるのかどうかは、これはちょっと私個人は正確にはわかりませんけれども、いずれにしても、今の刑事法廷の中で、裁判員が参加をされて、被害者も参加されるということが行われていくことになるわけですね、あの法律が通れば。

 それを、今おっしゃったように、感情的な話だけになったのでは困るわけですから、これは裁判長の指揮の問題でもありますし、検察も弁護側もそういうことのないような配慮をする、また、被害者の方々がそういうことにならないようにするような規定も整備をしておく、これは被害者法のときにまた議論させていただきますけれども、そうなっておりますので、今先生御心配のようなことはないだろうと思っております。

保坂(展)委員 私は、犯罪被害者の方が法廷で意見を陳述することは必要だと思っているんですね。ただし、全部すべからく検察官の隣にお座りになるということがいいのかどうかということは考えてみなければいけない。

 そして、さらに大きな問題があるんですね。私と大臣は見解を異にしていますよね。死刑の問題です。私たちは、これは自由民主党の中にも、野党も与党も超えて、やはり死刑制度は脱却していった方がいいんじゃないかという意見を持っております。信念に近いものですから、私自身も。

 裁判員は、くじで選ばれて、限定された幾つかの理由以外はなかなか拒否しづらい制度になっております。そこでなんですけれども、憲法十九条で思想及び良心の自由は、これを侵してはならない、あるいは信仰上の問題で自分は死刑というものにタッチしたくないんだ、これがアメリカの陪審制度のように全員一致でやる制度であればそういう心配はないんですけれども、評議は多数決でございますので、このことに抵抗があったり、そういうことにしたくないと本人は思っていても、裁判員に選出されたら逃れられないんですね、死刑の判決を出す責務を市民として負うという制度になっています。

 つまり、私は自分の思想、信条あるいは信心といいますか信教上の理由で死刑にかかわることはできませんというのは、裁判所にも聞きますけれども、どう考えたらいいでしょうか。

長勢国務大臣 辞退事由を今度の裁判員法で定めておるわけでございますが、今おっしゃったような信教の自由だとかあるいは思想、良心の自由を侵害するようなことはできないと思いますので、この問題を、政令上、やむを得ない場合はいいというふうに書くことになっていますので、その政令の中で、どういう形で今おっしゃったようなことを明らかにできるかということを十分検討してみたいと思います。

小川最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 具体的にどのような人が裁判員法十六条七号に掲げるものに、辞退事由ですけれども、該当するかどうかということは、結局、個々の具体的な事情に基づいて裁判体が判断するということでございますので、その点について、ちょっと最高裁の方としてはお答えする立場にないと思います。

保坂(展)委員 今大臣がおっしゃった政令というのは、法務省でつくるわけですか。(長勢国務大臣「はい」と呼ぶ)そうですね。

 では、刑事局長に伺いますが、今大臣がおっしゃったように、つまり、自分の思想、信条は、死刑についていろいろな意見がありますよ、世論調査をすれば、これは存置した方がいいという声が多いんでしょう、しかし、自分は信念でこれにはもうタッチしたくないんだ、あるいは信教上の理由でそれは絶対だめだ、こういう人については除外されるというふうな方向で政令をつくろうとしているのかどうか。

小津政府参考人 御指摘の点は、まさに裁判員法で具体的に辞退事由が定めてあって、そのほかに政令でそれを定めるということになっておりまして、まさに今、私ども、どのような場合をさらなる辞退事由として盛り込むべきかどうかということについて検討しているところでございまして、また、検討して、問題点、論点を明らかにした上で、いろいろな形で皆様方の御意見を伺いたい。

 現段階までにどういうふうなことをしているかということでございますが、広報をしております過程で、思想、信条の問題も含めまして、どういうことで行きたくないと思うかということについて、できるだけの情報を今集めて整理をしている、そういう段階でございます。

保坂(展)委員 今の小津刑事局長の答弁は、いろいろなことを幅広く見て総合的に勘案して決めていきますという答弁であって、大臣が言ったことは非常にわかりやすかったんですね。

 私が例示したような、具体的に死刑をめぐって考え方があるわけですから、そういう人が裁判員というふうに言われたときに、これは殺人事件の可能性とか強いわけですから、自分はそれにくみできませんよという場合は除外される、あなたは裁判員ということに無理に義務づけられることはありませんというふうに考えていいのか、いや、そうじゃなくて、そういう人も含めて、これはだめなんですよ、義務なんですよということになるのか、裁判員制度をめぐって議論は大きく分かれますよ、これで。いかがですか。

長勢国務大臣 まだ検討中でございますから断言的に申し上げることは遠慮させていただきますけれども、思想、信条の自由、良心の自由を侵害することのないようなことを何らかの形で考えることがやはり必要なことではないかと私は思っております。

保坂(展)委員 裁判所の方は、自分は死刑判決に加担したくないという国民の信条あるいは信教上の信念というのは除外理由に当たるとは断言できないという見解ですか。

小川最高裁判所長官代理者 お答えします。

 そういう事柄について、今、最高裁としてお答えする立場にはないというふうに考えております。

保坂(展)委員 これは非常に大きな問題だということで、議論を深めていきたいと思います。

 今回提案の部分判決の問題なんですけれども、これは本当に公平な裁判が受けられるんだろうかという問題をはらんでいるように思います。

 例えば、これは連続殺人事件ですかね、考えられるのは。八人なら八人という非常に多数の被害者を出した同一人物による犯行、そしてその事件が審理をされるというときに、これを四グループに分けるのか三グループに分けるのかわかりませんが、仮にA、B、Cと分けたときに、Aのグループ、Bのグループ、そしてCのグループ、このCのグループは最後にいわば判決を出す、部分判決をA、Bが出して、そしてCのグループは併合して、A、Bも含めたところでの判決を出すという制度だというふうに聞いているんですが、これは例えばA、B、Cと順番に進んでいくんでしょうか、それとも、Bが先になってAが後になった、そういうようなこともあるんですか。これは、裁判所の都合によってどうにもできるように書いてあるように思うんですが。

小川最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 今、委員御指摘のようなケースでございます。そういう場合にどのような順序で審理を行うかということでございますが、これは本当に個々の事件に即応して、個々の裁判体が公判前整理手続の中で適切に判断することになるものと考えております。

 事案によっては時系列に沿って順番に審理するということもあろうかと思いますし、ほかにもいろいろな、例えば、時系列では後の方の事件の重要証人が、前の段階で証言をしないと後の段階では証言ができないような障害事由があるとか、いろいろな事情がありますので、必ずしも、常に時系列になるとかそうでないとか、それはいろいろな場合があろうかと思っております。

保坂(展)委員 結局、裁判員で選ばれたCのグループの人たちは、自分たちが直接は参加をしていないAとBの部分判決についても、先ほどから議事録の話とか出ていますけれども、目を通すというか、映像で見るんですかね、こうして把握をする、そしてさらには最終的な判決に至らなければいけないというときに、本当に市民が主役の裁判員制度であれば、いや、ちょっとこの部分判決は、どうしてこう部分判決になったのかということで、例えば選出された裁判員全体の総会みたいなことをやるなんということは考えなかったんでしょうか。

 部分で進行する、確かに速いと思いますよ、それは。しかし、時系列を追って、犯罪を起こす手前で被告はどうだったのか、どういう生育環境にあったのかということを全部追っていきながら判断をしてきている、これが裁判だと思うんですね。それを、分割が幾らでもできるのかどうかわかりませんけれども、そういうことをなぜ考えなかったのか。

 つまり、共有できないわけですね。Aグループの部分判決に対して、Bグループが、全然違うよ、これは違うんじゃないか、冤罪じゃないか、こう考えたときにも、Aの有罪はひっくり返らないわけですね、もう一回出た以上は。それはどうしてなんですか。

小津政府参考人 質問の御趣旨は、結局どうしてこんな制度にしたのか、まさにそういうところであろうと思います。

 もちろん、これはもう条文にも書いてございますけれども、基本的には併合事件は全部一緒にやる、したがいまして、この区分審理をやるのは例外的な場合であるということが一つございます。

 それから、裁判員の負担等を考えると、そういうふうにするべきだと思われる事件であっても、犯罪の証明に支障を来すおそれがある場合、それから被告人の防御に不利益を生じるおそれがある場合その他相当でない場合には、これはやらないんだということが書いてあり、また、この区分審理決定をする場合には、検察官、被告人、または弁護人の意見を聞き、そしてそれに不服があれば即時抗告をすることができるという仕組みになっておるわけでございます。

 結局、そういう仕組みの中で、どうしてもこの手続をやらなければいけないというものがどういうものかということを具体的な裁判の中で考えていっていただくしかないかと思っております。

保坂(展)委員 これが出てきたのは、やはり裁判所側の要求なんでしょうかね、法務省が立法していますけれども。

 私は、裁判員制度を八割の方がちょっと危惧されているということ、そして、今、ちょっと大臣もおっしゃいましたけれども、そのグループ審理、しかも、最後の場面だと、自分が直接立ち会わない評議の結論も、部分判決ですか、これも取り入れて、しかもこれは時間がないんですね、三日でやるというわけですよ。こんな負担を、国民にくじで選んで強いていいんだろうか。

 大体、裁判員制度のこの法律というのは施行されていないですね。施行されていないのに、もう改正案が出てくるということを考えると、この制度、特に立法理由みたいのはわかりましたけれども、これは慎重に扱うべきじゃないですか。でないと、裁判員制度だけでもややっこしいですけれども、これを説明すれば、ますますそんなことができるかいなというふうに思う人が多いんじゃないですか。

長勢国務大臣 裁判員制度を施行するに当たって、裁判員の方々に過度の負担を生じないようにしなきゃならぬということで、今言っておりますような、複雑な、複合的な事件ですね、こういうものの取り扱いをどうするかは、施行までには片をつけないかぬということが法律をつくったときからの経過でございまして、むしろ、施行してからでは間に合わないので、施行する前にこの制度をつくる必要があるということで、各方面で御議論いただいて、御提案に至っておるということだと思います。その点、ひとつ御理解をいただきたいと思います。

保坂(展)委員 亡くなった山崎さんが奔走されて、司法制度改革推進本部ですか、事務局長として、私も何回も話を聞いて、非常に尊敬をしていましたが、そういうときにはこの制度もなかったような気がしますね。後から出てきた。

 私は、この裁判員制度の中で国民に過度の負担を強いたくないというのはわかります。しかし、何人も連続して殺してしまったような事件というのを例に挙げましたけれども、これはしっかりした裁判をやってほしいというのも、国民の声じゃないでしょうかね。

 ですから、これは例外中の例外だということなんですか。本当にごく少数で、もしかしたら使わない制度なのかもしれないぐらいでいいんですか。それを最後の質問にします。

長勢国務大臣 今の段階で、ほとんど使わないんだろうなと言えと言われましても、ちょっと言えませんけれども。

 それから、どれくらい分割した方が適切かは、具体的な事件ごとに決まってくる問題ですから、どうこう言えませんけれども、先ほど刑事局長が答弁をいたしましたように、部分判決にするのが不適切だというものは部分判決制度に持ち込まないという仕組みはつくってあるわけでありますから、今先生がおっしゃったような心配のないように、適切な運用が裁判所において行われるものだろうと思っております。(保坂(展)委員「例外ですか」と呼ぶ)もともと必要がある場合にやるわけですから。

保坂(展)委員 終わります。

七条委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

七条委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、参議院送付、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

七条委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

七条委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、早川忠孝君外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党及び社会民主党・市民連合の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。高山智司君。

高山委員 民主党、高山智司です。

 ただいま議題となりました附帯決議案について、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。

    裁判員の参加する刑事裁判に関する法律等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府及び最高裁判所は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。

 一 部分判決制度の実施に当たっては、裁判員の負担の軽減を図るという目的を踏まえつつ、被告人の利益が保障され、迅速に真相究明が実現し適正な結論が得られるよう、公正で的確な運用がなされるよう司法関係者に周知徹底すること。

 二 併合事件審判における量刑判断を適正なものとするため、区分事件における量刑事情を併合事件審判の裁判員が十分理解できるよう、部分判決の判決書を分かりやすいものとすること等に努めるよう司法関係者に周知徹底すること。

 三 証人尋問等の記録媒体への記録及びその活用については、証人等のプライバシーの保護、被害者感情の尊重等に十分配慮して行うこと。

 四 被告人の防御等に支障を生ずることのないよう、公判調書を整理すべき期限の改正内容を司法関係者に周知徹底すること。

 五 検察審査員の選定等に当たっては、欠格事由等に係る資格の有無の判断その他その手続を適正かつ円滑に行うこと。

 六 裁判員制度の意義及び内容について国民や企業等に対する周知徹底が十分なされるよう広報啓発活動の一層の充実を図るとともに、幅広い層の国民に対する法教育の充実に努めること。

 七 国民が裁判員として刑事裁判に参加しやすくなるよう、刑事裁判の更なる迅速化に向けた工夫を行うほか、有給休暇制度の促進及び保育・介護施設等の環境の整備に努めること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。(拍手)

七条委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

七条委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。長勢法務大臣。

長勢国務大臣 ただいま可決されました裁判員の参加する刑事裁判に関する法律等の一部を改正する法律案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。

 また、最高裁判所に係る附帯決議につきましては、最高裁判所にその趣旨を伝えたいと存じます。

    ―――――――――――――

七条委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

七条委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

七条委員長 次回は、来る二十二日火曜日午後二時理事会、午後二時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時五十分散会


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