衆議院

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第8号 平成20年4月15日(火曜日)

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平成二十年四月十五日(火曜日)

    午後一時二十二分開議

 出席委員

   委員長 下村 博文君

   理事 倉田 雅年君 理事 実川 幸夫君

   理事 柴山 昌彦君 理事 早川 忠孝君

   理事 水野 賢一君 理事 加藤 公一君

   理事 細川 律夫君 理事 大口 善徳君

      赤池 誠章君    稲田 朋美君

      近江屋信広君    清水鴻一郎君

      七条  明君    杉浦 正健君

      武田 良太君    棚橋 泰文君

      長勢 甚遠君    古川 禎久君

      馬渡 龍治君    武藤 容治君

      森山 眞弓君    矢野 隆司君

      保岡 興治君    柳本 卓治君

      石関 貴史君    枝野 幸男君

      河村たかし君    中井  洽君

      古本伸一郎君    神崎 武法君

      保坂 展人君

    …………………………………

   法務大臣         鳩山 邦夫君

   内閣府副大臣       山本 明彦君

   法務副大臣        河井 克行君

   法務大臣政務官      古川 禎久君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局参事官)            三村  亨君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    倉吉  敬君

   法務委員会専門員     小菅 修一君

    ―――――――――――――

四月十五日

 民法の一部を改正する法律案(第百六十四回国会衆法第三五号)の提出者「枝野幸男君外七名」は「枝野幸男君外六名」に訂正された。

 非自然死体の死因等の究明の適正な実施に関する法律案(第百六十六回国会衆法第五一号)の提出者「細川律夫君外二名」は「細川律夫君外一名」に訂正された。

 法医科学研究所設置法案(第百六十六回国会衆法第五二号)の提出者「細川律夫君外二名」は「細川律夫君外一名」に訂正された。

同月十四日

 国籍選択制度の廃止に関する請願(細野豪志君紹介)(第一六〇一号)

 成人の重国籍容認に関する請願(細野豪志君紹介)(第一六〇二号)

 選択的夫婦別姓制度導入及び婚外子相続差別撤廃の民法改正を求めることに関する請願(保坂展人君紹介)(第一六〇三号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 保険法案(内閣提出第六五号)

 保険法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案(内閣提出第六六号)


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     ――――◇―――――

下村委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、保険法案及び保険法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として金融庁総務企画局参事官三村亨君、法務省民事局長倉吉敬君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

下村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

下村委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。倉田雅年君。

倉田委員 自由民主党の倉田雅年でございます。

 本日は、保険法案についてお尋ねをしますけれども、時間をたくさんいただいたものですから、保険法の淵源といいますか、そういうところからいろいろと法務省に質問させていただきたい。また、金融庁にも、最近保険の不払い状況というものがいっときありましたので、それがどうなったのかというようなこともお聞きをしたいと思うわけでございます。

 まずもって、今回の法案でございますけれども、保険法、これは御承知のとおり、明治時代に商法の一部へと編入されてきた、西洋から入ってきたものだ、こういうふうに理解をしているわけでございますが、そもそもその西洋のどこにおいて、いつごろの時代に、どういうことから、こういう保険法というものが成り立ってきたのかということからお尋ねをしたいと思うわけでございます。

 損害保険それから生命保険、それからさらに共済というものがあるわけでございますが、いずれも西洋に存在をしたと聞いておりますので、まずもって、損害保険関係からお尋ねができればと思うわけでございます。

 古い時代のことですけれども、恐らくはギリシャとかローマとか、あのころからその淵源のようなものはあったのではないか、その辺からお教えを願いたい。法務省当局、お答えを願います。

倉吉政府参考人 委員の御指摘をいただきまして、にわか勉強をいたしました。まことにお恥ずかしい話ですが。御指摘のとおり、ギリシャにさかのぼるという話で、私も驚いたんです。

 まず、損害保険についてでありますが、ギリシャ時代に冒険貸借というものがあったそうであります。冒険貸借というのは、ある種の冒険に出ていく、そのとき、その出ていくお金を貸してやるんですね。冒険に成功したら、それに利息をつけてもらうぞ、冒険に失敗したら返さなくていい。その冒険というのはある種の貿易めいたことではないかと思われますが、これが原型だそうであります。

 近代的な意味の損害保険といたしましては、まず、海上保険ですが、これが十四世紀から十五世紀のいわゆる大航海時代、そのときに、海上貿易が盛んだったイタリアの商業都市で始まった。それから火災保険でございますが、火災保険は、ロンドンで起こった大火を起因といたしまして、十七世紀後半にイギリスで始まった。それぞれそのように言われております。

 これらの保険が生まれた事情といたしましては、いずれも保険の引き受けを専門とする業者が出てきた、そういうことによって、商業として次第に発達してきたというふうに言われております。

 次に、生命保険でございますが、生命保険につきましては、その原型は中世ヨーロッパのギルド、同業者が集まって、それで、その仲間内で亡くなったときに備えてみんなでお金を基金しよう、そういうことから始まったということで、これはある種、共済組合的な色彩もあったのではないかと思われます。そのほか、十七世紀のイギリスの教会関係者の集まりで、特定の集団を相手方とする、そういう制度が始まったということであります。

 その後、不特定多数の者を相手方として行われ、保険数理や、いわゆる大数の法則を用いるような近代的な意味での商業としての生命保険、これは十八世紀後半にイギリスで始まったというのが一般的な理解のようであります。

 大数の法則というのは、もう委員は御承知でありますけれども、数少ない一部の人の経験では起こるか起こらないか全くわからない、一人の人間から見ると全くわからないんだけれども、たくさんの例を集めて統計をとると、そこに一定の率で必ず起こるんだという法則がある、これを大数の法則と申します。これが保険制度の基礎になっているわけでございます。

 我が国に関しましては、鎖国が終わった直後の安政六年、一八五九年でございますが、外国保険会社が横浜で損害保険業を開始したという記録が残っております。その後、あの有名な福沢諭吉が、慶応三年、一八六七年ですが、「西洋旅案内」という本の中で、ヨーロッパでは近代的な生命保険、海上保険、火災保険が行われているということで日本に紹介した、これが最初である、こういうふうに言われているようです。

 共済については後でよろしいでしょうか。

倉田委員 お聞きをして、なるほどと思うところもあるんですが、倉吉局長のお言葉の中に、近代的なのはいつ始まったというお話がありました。

 近代的なということの意味は、それ以前にも、相互扶助的なものというのはあった、けれども、恐らくは商業に適するものとして取り上げられたということの意味ではないか。すなわち、保険の引受手という商売人があらわれてきた、これをもって近代的というような時代の区切りをされたのかなと思いますが、その点はいかがでしょうか。

 それから、ロンドンの大火というのは、たしか一六六六年、六が三つなものですから私も覚えているんですが、その辺でしょうね。ちょっと、御質問。

倉吉政府参考人 ロンドンの大火は十七世紀の後半だ、そのように私も聞いております。そのとおり間違いないと思います。

 それから、近代的という意味は、まさに商業として成り立つようになったという意味でございまして、その基本には、先ほど申し上げた大数の法則等を使って、これくらいの確率でこういうことが起こるんだ、だから、これだけの人を集めればこれだけの保険料をこういうふうに取っていけば採算が合うんだということを、ある程度科学的に裏打ちされてやるようになった、こういう意味であろうと思っております。

倉田委員 そうしますと、近代的と言われる以前にも、恐らくは相互共助的なものというのはあったのではないか。特に、先ほど局長がおっしゃった、ギルドという言葉が出てきたんですけれども、これらの中で、仲間内、つまり特定の人間が困ったときにみんなでふだんから出し合っておいたお金を、その困った人間に差し上げる、こんなところから共済というものは出てきているのかなと思っておりますけれども、この辺の経緯といいますか発祥につきまして、できればお教えを願いたい。

 日本にも、実は共済的なものがあったんじゃないかなと思われますね。講とか頼母子講とかいうのができた、また、鎌倉時代には日本にもギルドが成立していたと歴史の本には書かれておるわけですが、共済関係について、全般をお教え願いたい。

倉吉政府参考人 先ほどちょっと御紹介いたしましたギルドでございますが、これは商人や職人の、親方衆というふうによく言われますが、そういう人たちが仕事仲間ごとに集まってつくり始めたんだ、農業をやる人は土地があるからいい、しかし、こういうギルドで一定の職を持っている人というのは、その人が亡くなってしまったら、たちまち家族は路頭に迷う、だから、集まってみんなで協力し合ってやろうと始めたというような文献が残っておりまして、その意味ではこれが、先ほど私は損害保険の本当の発祥だということを申し上げましたが、もともとは共済組合的なものであったのかなという感じがいたします。

 それで、一般に、共済という仕組みは、社会的、経済的地位を共通にする者が、相互に掛金を拠出し合いながら、その資金により、その仲間のうちのだれかに不幸があったという場合に金銭の支払い等の給付を行う、こういう仕組みであると説明されております。しかしながら、このような共済の中にも、互助会的に定額の見舞金の支払いをするだけだ、そういうふうにとどまるものから、大規模な組織で、先ほど申し上げました大数の法則、保険数理を用いた運営を行うものまで、さまざまな形態のものが存在しておりまして、この淵源を一律に説明するのは困難である、こういうふうに言われているようでございます。

 ただ、もっとも、先ほど委員から日本でもあったのではないかという御指摘がありましたが、そのとおりでございまして、共済というのは相互扶助の精神で運営されているということから、江戸時代に発達した無尽や頼母子講といった相互救済の仕組みが共済の仕組みにつながったのではないか、これが有力に言われているようでございます。

 また、例えば農協の共済がございますが、これにつきましては、伝統的に相互に協力し合うことが不可欠な業態であった農業事業者の間で、相互扶助の一環として、不幸があったり災害があったという場合の偶然の出来事に対しての保障を行うというのがむしろ自然である、日本独特の風土であろうかと思いますが、そのように考えられまして、共済を運営する兄弟組織体が次第に形成されてきたというふうに言われているようであります。

 なお、現在存在する各種共済団体の先駆けとして言われておりますのは、大正十年、大分新しくなりますが、一九二一年に、当時の神戸や灘で結成された生協組織などが挙げられております。こうした組織も、市民や労働者といった加入者が集まって、当時深刻だった物価高に備えるという友愛的な目的が結成のきっかけであった、このように言われております。

倉田委員 大変詳しく御教示をいただきました。ありがとうございました。

 そこで、今回の改変でございます。商法の中から取り出して別途な法律として組み立てる、しかも片仮名を平仮名に改める等々ありますけれども、今回の改変に当たっての動機といいますか、ただ、ほかの法律も片仮名からいろいろ平仮名に直しておりますから、そういったことのほかに、いっとき、いわゆる平成大不況の中で、脱出策としてゼロ金利政策がとられた時期がある、また現在も低金利の時代である、そういう中で保険会社がいわゆる逆ざやというようなこともあったのではないか、そうした中から、いろいろな形でといいますか、保険契約者ないしは被保険者に対して会社側がなかなか支払いをしない、いわゆる不払いというものが多発した、それに対処するというような動機も改変の動機の一つとしてあるのではないかなと私は考えていますが、この点、いかがでしょうか。

倉吉政府参考人 保険法の見直しの作業そのものは、いわゆる保険金の不払い問題を直接のきっかけとして始まったというものではございません。

 商法の中の保険に関する規定が百年間ほど、全然実質改正のないまま行われている。この間に社会経済情勢が大きく変動して、商法の中に置いている保険の規定が現実に追いつかなくなっている。しかも相変わらず文語体のままだ。だからこれを全部見直して、保険法という単行法にして、そして口語体化していこうというのが基本的な動機でございます。

 ただ、保険法の見直しに向けた検討が始まったころ、それと相前後して保険金の不払い問題が起こりました。したがいまして、その後の検討作業においては、保険金の不払いの問題という社会的な意味合いも含めまして、十分な配慮をした上で、適切な契約ルールを定めるということを念頭に置いて検討が進められてきたというのが実際でございます。

 この法案の中で、契約締結時の告知についてのルールを見直すことといたしました。それから、保険給付の履行期についての規定も新設いたしましたが、こうしたことは不払いの問題があったということも念頭に置いて定めたものでございます。

 今申し上げましたように、不払いの問題というのは、立案の直接の契機となったものではありませんけれども、立案の過程で大きく取り上げられたので、これに対処する規定もこの法案においては設けられたという経緯でございます。

倉田委員 そういったところなのかもしれないとは思いますけれども、やはり不払いの多発というのはこのまま放置するわけにはいかないというところがございます。

 きょうは金融庁にも来てもらっておりますけれども、多発した不払い状況の実態はどんなぐあいか、それから現在はどうなっているのか、それに対して金融庁としてはどのような対処をされたのか、これをちょっとお伺いしたいと思います。

三村政府参考人 平成十七年以来、各保険会社におきまして、保険金等の不払いや支払い漏れといった問題が明らかとなってまいりました。

 まず、生命保険会社について申し上げますと、十七年の十月、不適切な不払いが、過去五年間、合計で千四百八十八件、総額で約七十二億円認められたところでございます。このため、特に不適切な不払いが多数認められた一社に対し、業務改善命令及び一部業務停止命令を発出するとともに、不払い事案が認められたその他の社についても業務の改善を促してきたところでございます。

 また、保険金等の支払い漏れにつきましては、十九年の二月に全社に報告を求め、十九年の十一月末までに全社が調査を完了し、各社から金融庁へ報告書が提出されたところでございます。各社の公表によりますと、支払い漏れの件数、金額は、過去五年間、全社合計で約百三十一万件、総額約九百六十四億円となってございます。

 次に、損害保険会社について申し上げます。十七年の十一月に付随的な保険金の支払い漏れが認められました二十六社に対して業務改善命令を発出したところでございますが、十九年六月末時点までに明らかとなりました過去約三年間の支払い漏れの件数、金額は、合計で約五十万件、総額約三百八十二億円となってございます。

 また、第三分野商品につきまして、過去五年間、合計で五千七百六十件、総額約十六億円の不適切な不払いが認められたところでございます。このうち特に不適切な不払いが認められた十社に対しまして業務改善命令を発出し、さらにそのうち六社に対しましては一部業務停止命令を発出するなど、業務の改善を促してきたところでございます。

 いずれにいたしましても、保険金の支払いは保険会社の基本的かつ最も重要な責務の一つであり、金融庁といたしましては、適時適切な保険金の支払いが行われるよう、引き続き各保険会社に対し再発防止策の策定、実施など、業務改善に向けた取り組みを促してまいりたいと考えております。

倉田委員 ただいま伺って少しびっくりしたんですけれども、生命保険で不払いが千四百何件だ、支払い漏れが百三十一万件だと。この支払い漏れと不払いというのはどこが違うんですか。その辺が一つ。

 それから、生保では人が亡くなりますから、亡くなったのか傷害なのか、今どちらを言ったのかちょっとわかりませんが、そうすれば、掛けている人は必ず保険がもらえる、あるいは遺族はもらえる、こう思うんでしょうけれども、損保となりますと、またいろいろな形の不払いがあろうかと思うんですね。

 損保、生保を問わず、どういう不払いの仕方をするのかというとおかしいんですが、どういうことを理由に支払わない、あるいは支払い漏れが起こるのか。その辺のことを少し教えてください。

三村政府参考人 不適切な不払いと支払い漏れの区別でございますが、不適切な不払いと申しますのは、例えば保険金の請求があった場合に、本人が病名を知っていながら告知していなかったと判断をして会社が支払いを拒んだような事例でございます。

 支払い漏れと申しますのは、例えば、本体の生命保険金は支払われておりますけれども、入院をされていたとかそういったいろいろな特約がついてございます。その特約についての請求案内が漏れておりまして、そのために支払い漏れが発生した、そういう事例でございます。

 また、損害保険会社につきましても、付随的な不払いにつきましては、例えば自動車の関係ですと、事故がございまして、そのときに代車を使いました、その費用が、保険の特約で見ることになっていたものが、実際には請求がなされず支払われなかった、その請求案内もなされなかったといったような事例でございます。

 以上でございます。

倉田委員 ちょっとくどいようですけれども、生命保険については百三十一万件の支払い漏れがあって、九百六十何億円である、それから、損保につきましては五十万件で三百八十二億円である、こんなぐあいに伺いましたけれども、これは五年間でということでしょうか。

 その同じ五年間でいいですが、それぞれ損保、生保、全体で一体どれくらい支払いし、そしてそれに対して今言ったような数字があるのか、簡単に教えていただきたいと思います。この点は質問通告してありませんでしたか。大丈夫ですか。

下村委員長 先にちょっと質問を。

倉田委員 そうですね。今の点は、質問をあらかじめ通告していなかったものですから、後で調べてお教え願いたいと思います。

 また続いて、金融庁に対する御質問になっちゃうんですけれども、よろしいですか。

 傷害保険あるいはがん保険といったいわゆる医療保険、これはいわゆる第三分野というぐあいに言われて、生保と損保のちょうど中間的なものだと言われているわけですけれども、これが外国の保険会社からまず入ってきたのではないか。そして、私は、たまたま日本が、社会が高齢化してきているということから、入院保険とかいろいろとその需要も高まっておった、こういうことから第三分野が急速に広がってきたというぐあいに認識をしておるわけでございます。

 平成十三年、二〇〇一年に全面的にこの分野が解禁といいますか、許容されたというぐあいに聞いておりますが、この第三分野というものの存在が大きくなってきたことも今回の改正の一つの必要性といいますか、これをも規定していかなければならないという意味での必要性の一つではなかったかと思うわけでございます。

 第三分野の保険が日本で使われ始め、そして、今言った二〇〇一年に全面解禁になるまでの経緯といいますか経過、それを述べていただきたいと思います。

山本副大臣 倉田委員御指摘の第三分野でありますけれども、日本では戦後できたようでありまして、最初は主に災害時の傷害などを保障する商品として発売をされたようであります。四十年代末に、今お話がございました外資系のがん保険等が販売されるようになりまして、五十年代後半以降には医療保険の販売等が拡大をしてきた、こんな歴史があるようであります。

 こうした中で、先ほどお話がございました生損保会社の第三分野への相互乗り入れが二〇〇一年からなったわけでありますけれども、この経緯を申しますと、平成六年の十月に、日米両国政府間におきまして、中小事業者及び外国保険事業者の中に第三分野への依存度が高い会社が存在する、こういったことを踏まえまして、所要の激変緩和措置を図るということが適当であるというふうにされたところであります。

 その結果、翌平成七年ですけれども、保険業法改正におきまして、激変緩和のための第三分野に対する配慮規定が設けられました。さらに、日米間におきまして、補足的な激変緩和措置の実施及び激変緩和措置の終了に関する基準、というのは、激変緩和措置を解除するための条件、どういう条件がそろえば激変緩和措置を解除できるんだ、そういったものが平成八年に合意をされました。

 その後、激変緩和措置を解除するための条件が満たされたということで、今お話がありました、二〇〇一年に激変緩和措置が解除され、生損保会社による第三分野への相互参入が自由化された、こんな経緯であります。

倉田委員 大体わかったつもりでありますけれども、激変緩和というのは、今おっしゃった中小会社が主として第三分野を行っておった、そこで大手も含めた全面的な解禁といいますか、それが最終的に行われたのが二〇〇一年、こんな理解でよろしいんでしょうか。

山本副大臣 そのようなことで結構だというふうに思っております。もともと禁止事項ではなかったわけでありまして、認定サイドによってそういった点の差があった、こんなふうに御理解いただきたいと思います。

倉田委員 次に行きますけれども、さらに、今回の保険法の改正で重要なのは、いわゆる共済契約は、先ほどからその歴史が語られましたけれども、共済契約の当事者の一方が一定の事由が生じたことを条件として財産上の給付を行うことを約して、相手方の方はこれに対して当該事由の発生の可能性に応じたものとして保険料ないしは共済掛金を支払う契約である、こういう点。

 今、法案の二条を読んだのでありますけれども、こういう点では、保険契約と共済契約とは実は民事的な観点からは同じ仕組みになっておる、こんなぐあいに考えられますので、今回の保険法を共済契約にも適用するということとなったと考えますけれども、これも大きな一つの経緯ではないか。

 つまり、この保険法の改変の一つの眼目というぐあいに考えますが、その点の考え方は間違いでないかどうかということと、もう一つ、共済と保険契約というものは、今言った共通性は契約にありますけれども、どこが違うのか。違う点もあろうかと思います。この二点、お教えを願いたい。

倉吉政府参考人 保険と共済を通じて共通の契約のルールにしよう、これが今回の立法の目玉であること、委員の御指摘のとおりでございます。しかし、そうはいっても違うところがという御指摘がありました。そこからお話をしたいと思います。

 一般的には、保険と共済については、その組織と運営について異なる点がある、こう言われております。二点ほど、挙げさせていただきます。

 まず第一に、共済の場合には、特定の団体の構成員の間で運営される制度であるということが前提とされますので、共済契約を締結するに当たって共済団体への出資や運営への参画を伴うというところが特徴でございます。これに対しまして、株式会社が保険者となる保険の場合には、不特定多数の者が加入するということが前提とされておりまして、保険契約の締結に当たっては、出資は必要がないわけでございます。ここが第一の違い。

 それから二番目は、共済は、相互扶助の理念に基づいて運営される非営利目的の団体である共済団体が運営主体になる。これに対しまして、保険の場合には、株式会社が保険者となるわけでありますから、要するに営利企業によって運営される。ここがまた、大きく違うということになります。

 このように、保険と共済には違いがあると言われているわけでありますけれども、その一方で、その契約の内容だけを取り上げますと、どちらも、事故や病気といった万一の事態に備えて多数の人がお金を出し合って、不幸にもそうした事態に遭った方に保障を行うという仕組み、これは全く同じでございます。もちろん共済の中には、小規模なもの、見舞金程度しか出さないというものがありますけれども、そういうものは除きまして、あとは一緒。

 今回の保険法案は、このような両者の契約内容の点だけを取り上げまして、そこの共通点を踏まえて両者に共通の契約ルールを定めようとしたものであります。

倉田委員 局長の御説明、今までの点、納得でございますけれども、実を言いますと、御承知かと思いますけれども、今おっしゃられた、特定の方々を相手にこれまで共済契約をやってきている団体が非常に多くあるわけですね。代表的なものを挙げればJAさん、農協ですね。それから漁協、生協もそうではないでしょうか。それから、もっと言えば労働組合にもそういうものがあるんじゃないかと考えますけれども、そういった共済契約を行ってきた既存の団体の方々が、今局長がおっしゃったように、相互扶助でやっているんだ、非営利でやっているんだ、その意味では商売にしている保険とは違うんだよ、おれたちの中でやっていたことではないか、こういう観点があると思うんです。

 そういうことから、この保険法において共済も一くくりにしましょうということに対しまして、確かに契約は共通性があるかもしれないけれども、今言ったようなことから、自分たちの団体の内部でやってきたことに対して、保険業を監督してきた現在の金融庁、一昔前は大蔵省でございましたが、この監督の手が伸びるのではないかと危惧をなさっている方々が多くいらっしゃる、こんなぐあいに伺っているんです。

 今回の保険法案の改正、それからもう一つ、たくさんの関係法律の整備に関する法律案、こういうものがあります。この中には保険業法もあるわけでありますけれども、監督関係において何らかの変更はないかということをお聞きしたいと思うんです。

 もう少し詳しく言いますと、JAさんについては農水の方だと思うんですね。あるいは漁協もそうでしょう。各団体によって監督官庁がそれぞれ違っているわけですね。その中で監督が行われていたところへ保険法がかぶってくるから、今度は金融庁の方の手が伸びてくるのではないか、こういう恐れを抱いておられるんじゃないかと思うんです。

 今言った関係法令の中には保険業法も入っていますが、今回の改正においてそういった監督関係に何らかの変更が起こるのか起こらないのか、まず法務省にお答えを願いたいと思います。

倉吉政府参考人 ただいまの点ですが、保険法案は、事故や病気に備える仕組みとして保険契約と同様の実質を有する共済契約が個々に存在している、そのことに着眼いたしまして、そのような共済契約にも保険契約と共通の契約ルールを適用しようとするものでありまして、それ以上のものではございません。したがって、共済団体の組織や運営、その監督規制等については、保険法案では何のルールも定めておりません。

 今委員の御指摘のありました保険法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案、この中で保険業法が少し手が入っておりますけれども、これは商法から保険法に変えた、保険法に伴ったことによって字句が変わった、そういったことに伴う形式的な修正でございまして、今回の法案で共済団体に対する監督規制に関連する内容の改正というのは一切行われておりません。したがって、各種業法による共済団体に対する監督の体制が今回の法案で変更されるということはないということになります。

倉田委員 今回の関連法案の中の保険業法のところを見ますと、従前と変わった点は、定義のところで、今までは保険業とは人の生死にかかわることだと書いてあったのが、人の生存または死亡と字句が変わっただけですね。それから、払い戻しの請求権が従前は二年だったのが三年になりましたか。この点も格段の監督関係とかに変更があるものではない。この二点のみですね。監督関係に影響する文言は一切ない、こういうぐあいに私も理解をいたします。

 しかしながら、平成十七年に、いわゆるオレンジ共済の事件等に対処するべく保険業法の改正が行われました。そのときに、業法の改正に当たって、平成十七年四月八日の衆議院の財務金融委員会で当時の伊藤国務大臣が、「共済制度全体の問題につきましては、保険業法に基づく保険会社制度及び少額短期保険業者制度、そして現在幅広く行われている根拠法のある共済との関係を含めて、幅広い観点から検討する必要があると考えております。この点について、先ほども御答弁をさせていただきましたように、本法施行後五年以内に行う見直しの中において、関係者の皆様方とよく相談をし、協議をさせていただきながら検討をしていきたいというふうに思っております。」こんなこともおっしゃっております。

 いま一つ。平成二十年三月二十七日、参議院の農水委員会におきまして、野村哲郎参議院議員が保険法に関する質疑をちょっと行っております。それに対しまして、金融庁の細溝審議官がこういうことをおっしゃっているんですね。

 所管官庁のある制度共済、農協等の協同組織において提供されている共済でございますが、基本的にはそのあり方につきましてはそれぞれの所管官庁において検討されるべき事項であると考えております、ここまではいいんですが、ただ、一言、金融取引上の消費者保護の観点から必要があるとすれば、金融庁としても関係省庁と御相談していきたいと考えておりますなんという文言が少し出てきておるものですから、金融庁において、この保険法の改正の中で、共済をも契約が共通であるという点から保険法の対象にする、この点からして、監督関係についても一元化する意図があるのではないかということを、先ほど申しましたような団体の方々が心配する向きがあるんです。

 私は、今回の改正においてそういう点は見られないなと先ほども申しましたように考えているんですけれども、まず、金融庁として、そういう意図があるのかないのか、この法案を契機として監督の一元化を図ろうというような意図はあるのかないのか、この点はっきり、副大臣、お答え願いたい。

山本副大臣 倉田委員からのお尋ねでありますけれども、今回の保険法案は、保険や共済に係る契約に関する規律を定める法律であると承知をしております。したがって、今回の保険法の制定に当たりまして、共済組合などの組織法や監督法の一元化を考えているものではありません。

 以上でございます。

倉田委員 ありがとうございました。納得をいたしました。

 それで、法務大臣、私は先ほど来申し述べているように、この法案の改正に当たりまして、多くの団体が心配なさっているんです。そういう意味で、もしほかの委員の皆さんの御承諾が得られれば、今言った、今回の法改正は決して監督関係の一元化などを目指したものではないんだということを附帯決議したらいかがかなということを考えておるわけでございます。もう法務省としては局長にきちんと答えていただきましたが、場合によってはそういった附帯決議ということもありますので、大臣として、そうしたことを図るものではない、このことをはっきり述べていただくとありがたいと思います。いかがでしょう。

鳩山国務大臣 保険法というものは、私にとって決して得意の分野ではありませんし、学生時代に商法もとらなかったという実績もあるわけでございまして、きょうは、倉田教授の授業を法科大学院で聞いているような、そんな思いで今やりとりを聞かせていただいておりました。

 共済という仕組みは、農協の共済が典型なのかと思いますが、特定の団体、集まりの中から必然的に誕生したものであって、まさしく無尽や頼母子講の精神がそのまま現代に生きているのが農協の共済等の共済の仕組みではないか、そう思います。

 したがいまして、先ほどから法務省あるいは金融庁からも答弁がありましたけれども、今回は、いわば業法とは全く関係なく、商法から保険法が独立するという中で、共済という制度も保険と同じような、損保、生保と同じようなルールが必要であろうということで改正をいたすわけでございまして、規制とか監督というものについてのルールを定めようというものでは全くありませんので、今回の改正によって、例えば農協の共済の監督官庁が変わるとか、生協がどうだとかということは、一切あり得ないということは明言できると思います。

倉田委員 ありがとうございました。

 それでは、これから少し法案の内容について幾つかの点をお聞きしたい、このように思います。

 副大臣、もう御質問は、これから金融庁にはまだありますけれども、副大臣にはございませんから。ありがとうございました。

 そこで、今言いましたように、法案の内容でございますが、今回の法案の改正の目的の一つといいますか、先ほど来出ておりますように、消費者保護を推し進めよう、簡単に言いますと、保険契約者もしくは被保険者、こちらの保護をより推し進めようということもあって、告知についての制度を変えましょう、こんなようなことが一つの大きな点として出てきていると思うんです。

 今までは、例えば保険の勧誘員が来まして、既往症が実はこれこれあるんだけれども、そこまで明確に言った場合に、いやいや、それは隠しておきなさいよなどと言うことはないとは思いますけれども、保険への加入の勧誘を強めるために、少々のことは黙っておけばいいですよといって一たん加入させておく。いざ保険事故が起こってみますと、いや、あなた、この点、もともとこういう病気があったのに告知していないじゃないですかというような形で、逆に不払いの理由にされてしまう。こんな事案が幾つもあったというぐあいに私は知っておるわけでございますけれども、そういうものを未然に防ぐために、告知というのは保険会社側から聞かれた事項についてのみイエス、ノーと答えれば、それでもう契約者としての責めは免れる、こんな制度に切りかえたのではないかと思いますが、そういう理解でよいのかどうか。法務省、いかがでしょうか。

倉吉政府参考人 ただいま委員御指摘のとおりでございます。告知について、その規律について大幅な見直しをいたしました。

 一つは、今までの商法の規定は、保険契約者の方が重要なる事実について告知しなければならないと考えていて、何が重要なる事実に当たるのかというのは、保険契約者がみずから判断して、そしてみずから言わなきゃいけない、こうなっておりました。これを保険法案では改めまして、重要な事項のうち、保険者になる者が、保険会社の側が告知を求めたもの、それについて答えればいいんだということにいたしまして、過剰な負担を保険契約者に課するということをやめたわけであります。

 それからもう一つは、今委員が重ねて御指摘になっておりました、保険契約者等によって告知義務違反が仮にあったといたしましても、保険者のために保険契約の締結の媒介を行うことができる者、保険媒介者というふうに申しますが、この媒介者が告知を妨害したり告知しないでいいと教唆をしたようなときは保険者は保険契約の解除をすることができない、こういうふうに明記いたしました。

 これは、ただいま委員御指摘のとおり、さまざまな訴訟等で、告知義務違反を保険会社の方が主張する、これに対して保険契約者の側から、いや、媒介に来た募集人の人が言わなくていいと言ったんですよというような主張がされるという実態があるものですから、この実態に着目して規定を置いたものでございます。

 一応、その点が二点の大きなものでございます。

倉田委員 ありがとうございました。

 今、保険媒介者ということがありましたね。いわゆる生保レディーという言葉がいいんでしょうかどうでしょうか、募集に当たる方がこの保険媒介者に当たることは多分間違いないと思うんですね。その方がいろいろと告知を妨害した場合云々、こういうことだと思うんです。

 一方、代理店はどうなのか。代理店が不当な教唆をして告知させなかったような場合、代理店というのはこの保険媒介者に入るのか入らないのか、この辺をちょっと、法的なことではありますが、お教え願いたい。

倉吉政府参考人 保険媒介者の典型は、今委員からお話のありました生命保険の募集人であります。契約締結の代理権は持っていない、ただその契約を媒介するというものであります。

 今もう申し上げたことになってしまいますが、代理人で一番典型的なのは損害保険の代理店、こういうことになります。この法案では、そこで明記してありますが、保険媒介者の定義から代理人を除いております。これは、代理人が告知妨害等をした場合には、告知義務違反の事実を代理人が知っているか、知らなかったとしても過失がある、これは当然そういうふうに評価されることになります。そうなりますと、保険者は、現在の民法の規定上、保険契約を解除することはできないことになる、今度の保険法案の条文もあわせてでありますが。

 この点をちょっと御説明申し上げますと、保険法案におきましては、告知妨害や告知しないでいいと教唆をしてはいけない、そういう規定とは別に、保険者自身が保険契約の締結の段階において保険契約者等の告知義務違反の事実を知っていた、または知らなかったことに過失があったという場合には保険契約を解除することはできない、こういうことにしております。

 これはもう委員御承知のとおりでございますが、民法ではどうなっているかといいますと、保険者が悪意、有過失であったか否かということは代理人によって決する、こうなるわけでございます。民法の百一条の第一項にその条文がございますが、代理人で取引をしたときは、その法律行為の瑕疵について、知っていたか知らなかったかとか、過失があったかなかったかということは、本人ではなくて代理人について決めるんだ、こういうふうになっております。

 したがいまして、代理人の行為については、結論的には保険者本人の行為、保険会社の行為と同視されることになりますので、保険者に関する規定によって規律されるということになって、結論は全く問題ありませんので、その関係で保険媒介者の定義からは除いてある、こういうことでございます。

倉田委員 簡単に言うと、代理者はイコール保険者なんだ、当然のことである、こういうことですね。

 次に、挙証責任といいますか、保険事故があったんだよ、そして保険会社は支払う義務があるんだよ、この辺の、どちらが責任を持つんだという問題が従前の裁判でも幾つかあったと思うんですね。私の理解では、判例というものが大体固まってきておって、挙証責任はむしろ、支払いをしない場合に、これこれだから支払いませんよということは保険会社の側にあるんだ、契約者の側にその挙証責任を負わせてはいけない、こういうような判例にだんだんなってきて、大筋固まってきておったと思うんです。

 そのような状況の中で、今回の保険法の改正で大きい点は、一つは、事故の発生というのを契約者ないし被保険者は通知をしますね。これはもう、通知をしなければ保険会社はわかりませんから、通知するのが当たり前だ。保険契約者がやるのはそれだけであって、あとは、保険会社がいかなる場合に免責されるのかという規定、この規定をしっかりとつくってありますね。例えば十七条なんかですね。簡単に言えば、契約者とか被保険者が故意または重大な過失によって事故を生じさせたときはてん補の責任を負わない、これは当たり前のことですね。

 重大な過失によって契約者ないし被保険者が生じさせたんだということは、恐らくこれについては保険者が証明しなきゃならないんだろう、こういう理解でよろしいんでしょうか、簡単にお答えください。

    〔委員長退席、実川委員長代理着席〕

倉吉政府参考人 今御指摘のありました条文第十七条、それから五十一条、八十条とほかの保険でもありますが、そこでは、保険者が保険給付を行う責任を負わないこととなる事由については、保険者の免責事由として規定しております。このような規定の仕方をすることによりまして、ただいま御指摘のとおり、保険給付請求権の発生原因については請求者側が証明責任を負うけれども、免責事由に該当することについては保険者側が証明責任を負うということを規定上明確にしているところであります。

倉田委員 その十七条等の御指摘の条文なんですが、そこで「戦争その他の変乱によって生じた損害についても、同様とする。」と。戦争や何かに巻き込まれて損害が起こった、あるいは亡くなった、こういうのはちょっとこの保険の契約外のことですよ、こういうことで責任は免れるんだろうと思うんです。

 戦争まではわかるんです。その他の変乱の意味なんですが、例えば、生命保険を掛けておりました方がイラクへ行きました、イラクの反政府勢力によって命を落としました、こういうときに、成田から飛行機で行きました、そこのところで万一があったときにはという保険を掛けますけれども、ああいう保険ではそれも当然入るんじゃないかと思われる。いわゆる一般の生命保険を掛けている人がイラクへ行きました、たまたまそういう目に遭って命を落としました、これは戦争の中に入るのか、その他の変乱の中に入るのか、ちょっと具体的過ぎるかもしれませんけれども、お教え願いたい。

倉吉政府参考人 この変乱という言葉は珍しい言葉でして、これは現行商法をそのまま引き継いで現代化したものであります。

 一般にこの解釈として言われておりますことは、一たん戦争等が発生すると、保険金の支払い事由が一度に集中して発生いたします。そういうものすべてについて保険金を支払わなければならないということになりますと、保険料を高くしておかないと保険会社がやっていけないということになりますので、そこまで支払うことにすると保険料が著しく高額になってしまう、これは適当でないので戦争等の変乱は除くんだ、こういうことでございます。

 このような趣旨からいたしますと、この変乱という言葉は、革命や内乱等のように、保険金の支払い事由が一度に集中することによって保険料の計算の基礎に影響を及ぼすこととなる事態を指す、こういうふうに解釈されます。

 したがいまして、個別の事案が変乱に当たるかどうかというのはちょっと微妙な問題もあろうかと思いますが、ある程度一般論という形で申し上げますと、生命保険契約については、外国で生じたテロ行為等によって保険料の計算の基礎が影響を受けるというのはちょっと考えにくいわけでございます、一どきにいっぱい集中することになりませんので。したがって、ここで言う変乱は、ただいま委員が御指摘された事例というのは該当しないのかな、このように考えております。

倉田委員 今のも理解できました。

 あと、いろいろと、例えば保険の約款が一方的に保険会社側に有利になっている、つまり片面的になっているのは効力を生じなくなるとか随所にありますけれども、この辺のことについては、それこそ今まで、保険証書の裏の方に契約してもすぐには目を通さないような事項がいっぱい書いてあって、いざ事故が起こってみると、その中にひっかかっていて払わなかった、こういうような、一般的には不測な事態といいますか、掛ける方とすれば、契約者とすれば思ってもみなかったこと、こういうことは片面的強行規定として約款を無効とする、この法案についてはこの辺のことはよくできている。さらに、責任保険の被害者について先取特権を認めているのもよいと思うんです。

 一つ最後にお聞きしたいんですけれども、三十八条、被保険者の同意というのがあるんですけれども、最近、残念なことに、日本でも母親が小さな子供を殺してしまうという考えられないような事故が起こることがないわけではない。

 そんなことを考えますと、未成年者に親が高額な保険を掛けるとした場合、その場合の被保険者の同意というのは恐らく、契約をするその親自身が親権者ですから、子供にかわって同意したことになるんじゃないか。

 ということになりますと、法制審あるいは金融審が審議している過程で、未成年者の生命保険というのは特別の規制をするなり禁止するべきではないかという意見があったというようなことを聞きますけれども、結果としては、恐らくは契約自由の原則等から、保険会社にも自粛を促す、自分で自主的にそういうことがないように注意をするというようなことで、特別な規定は設けられなかったというぐあいに理解していますが、そういうことでよろしいんでしょうか。

倉吉政府参考人 ただいま委員御指摘のとおりの経過でございます。

 法制審の保険法部会における審議の過程では、未成年者を被保険者とする生命保険契約、これは死亡保険契約のことでありますが、これについては、モラルリスクを防止するという観点から、禁止した方がいいのではないか、あるいは保険金の上限額を制限した方がいいのではないか、こういう議論、指摘がございました。

 しかしながら、さまざま議論を重ねているうちに、このような規制をすることについては、まず、保険契約自体もそうですが、保険契約や保険契約者というのは千差万別である、この例が適切かどうかわかりませんけれども、子供をプロスポーツ選手として育てている、そういう子には高い保険金を掛けたいというニーズだってあるだろうというような話がありました。

 こういうことを考慮すると、そのようなさまざまなニーズの違いというのを度外視して、未成年者を被保険者とする生命保険契約というのは一律にだめなんだとか金額を制限するんだということは、いささか過剰な規制ではないか、相当ではないのではないかという指摘があったわけでございます。

 それから、もう一つは、これも委員から御指摘のありました実務上の配慮ということなんでありますが、実務上も、保険契約の締結に当たっては、保険者が保険金の額を含むさまざまな事情を勘案することでモラルリスク対策を講じているのが実情でございまして、この対策については、実務上それから監督官庁による監督上のさまざまな施策を通じて総合的な対策を講ずるのがむしろ適切だ、契約ルールの時点でぴしっと制限してしまうというのは相当ではないということになりまして、結論的にはそのような規定は置かないということになりました。

倉田委員 時間が来てしまいました。

 まだ、例えば保険者が支払いの遅滞に陥る時期というのを法定すべきではないかというような考え方もあったというような点、恐らくは、保険にはいろいろな種類があるので一概に法定もできぬだろうという結論ではないかと思います。その点とか、あるいは団体定期保険、団体で掛けたけれども、つまり会社が掛けました、被保険者は雇用されている人間です、受け取っちゃったのは団体であって本来の被保険者に払わないなんという事例もあった。

 そんな問題も実はないことはないんですが、もう時間でございますので、先ほど金融庁にお願いした点だけちょっとお答えをお願いしたいと思います。

三村政府参考人 生命保険会社の支払い漏れにつきまして申し上げます。

 保険金額の支払いは過去五年間で約百十五兆円でございまして、支払い漏れの占める割合は〇・〇八%でございます。

倉田委員 わかりました。

 これで質問を終わらせていただきます。

実川委員長代理 次に、神崎武法君。

神崎委員 公明党の神崎武法でございます。

 保険法案は、商法の保険契約に関する規定を削除して、保険契約に関するルールを定める単行法を制定するものでありまして、明治三十二年の商法制定後、保険法の百年ぶりの実質的改正であるというふうに思います。その意味では、大変今回の改正は意義深いものがある、このように思います。

 まず、大臣にお伺いいたしたいわけでありますけれども、海上保険につきまして、今回の改正作業から外されているわけであります。これは将来の海商法の改正作業の中で取り扱う予定であるのか、外した理由についてお伺いをいたします。

    〔実川委員長代理退席、委員長着席〕

鳩山国務大臣 海上保険は損害保険の一形態でございまして、いわゆる第三編海商に特別の規定がある場合を除いて、海上保険契約にも損害保険の総則の規定が適用されるというふうになっております。神崎先生おっしゃるとおり、要するに海上保険に関する規定が第三編海商の中に設けられているわけですね。保険という項目があるわけです。

 ただ、海上保険については、今回の保険法の見直しの対象にはしておりません。なぜならば、海上保険の規定が他の海商法上の諸制度と密接に関連をしておりまして、それと切り離して、海上保険の規定だけ取り出して改正するのは相当でないという判断があったわけで、当然、海商法上の保険の部分も改正するということであるならば、それは海商法全体を改正するという一大作業をしたときになるだろうと思っております。

神崎委員 クーリングオフの権利、これは保険契約の申し込みの撤回または解除の権利でございますが、本来ならばこれは契約法の領域に属すると思うわけでありますけれども、現行法上は保険業法に定められております。

 今回の保険法の改正の重要な課題は保険契約者の保護でありますから、その意味ではクーリングオフ規定を新保険法の方に今度移行させるという考え方はなかったのかどうか、クーリングオフ規定を保険業法にとどめた理由を含めて、お伺いいたしたいと思います。

倉吉政府参考人 ただいま御指摘のとおり、クーリングオフの規定というのは、契約者の契約解除権を定めたという意味では、契約ルールそのものであります。それにもかかわらず今度入れていないのはなぜかということでありますが、これは全部監督業法の方で書かれているからというのが、そういう法体系上の理由に尽きます。

 まず、保険契約のクーリングオフについては保険業法の三百九条に規定されておりまして、このほかのものを見てみましても、例えば生協の関係の共済契約につきましては、消費生活協同組合法十二条の二により保険業法の規定が準用されておりまして、農協についても、農業協同組合法に規定が置かれている。それから、保険契約以外の契約類型についても、クーリングオフの規定というのは、それぞれの事業者に対する監督法の中で規定されているというのが実情でございます。

 こうしたことから、今回の改正に当たりましても、契約法である保険法の中にクーリングオフの規定を移行させるということはしなかったものであります。

神崎委員 今回の主な改正点の一つは、先ほどからもお話がありましたけれども、共済契約への適用範囲の拡大であります。

 共済契約は、これまでは商法の規律対象ではなく、現行商法の規定が類推適用されるにすぎないと解されてきたところでございます。共済と保険とは本質を異にしており、その組織運営上の特質を踏まえて慎重に検討すべきという意見もあったと思うわけでありますけれども、本法案では、保険契約についての定義規定を設けて、共済契約にも直接適用することといたしております。

 共済契約への適用範囲を拡大した理由についてお伺いをいたします。

鳩山国務大臣 現在、保険契約については商法の中に契約ルールが定められておりますが、今回、これを独立させるわけでございます。

 共済契約については、法律上の契約ルールが存在していない、いないがゆえにいろいろな問題が、事件が起きたこともあるということでもありましょう。しかし、共済契約の中には商法が定める保険契約と実質的に同様のものが存在しており、保険や共済に加入する者からすれば、実質同じような契約について法律上の基本的なルールがある方が望ましいということでありましょうから、そこで、共済を今回は含めることといたしました。

 共済契約については、先ほど神崎先生おっしゃいましたように、商法の保険契約に関する規定が類推適用されるという、確かにそういう学説があるわけですが、類推適用に頼るのではなくて、法律に基本的な契約ルールを定めることにより、契約上のトラブルを解決する際の指針が一層明確になると言うことができましょう。

 そういう意味で、今回の保険法案では、共済契約の中で実質的に保険契約とほとんど同様の内容を有するものについて、保険法の中に取り込ませていただいたところでございます。

神崎委員 また、改正点の一つは、商法には損害保険と生命保険の規定しかありませんでしたけれども、医療保険、がん保険、介護保険など、傷害疾病定額保険契約に関する規定を第三分野として規定したところでございます。

 傷害保険契約と疾病保険契約を別の類型と見る考え方もあると思いますけれども、一つの類型として扱った理由についてお伺いをいたします。

倉吉政府参考人 新設いたしました傷害疾病定額保険についての規定、これは傷害保険と疾病保険に分けて規定するということはいたしませんでした。御指摘のとおりでございます。

 これは、傷害保険と疾病保険とで具体的な契約ルールの内容に異なるところはなく、あえて別々の類型として整理する必要がないためであります。

 実際問題といたしましても、例えば入院保険などでは、入院の原因が傷害であるか疾病であるかを問わず、入院という給付事由が発生したときに一定の保険給付を行う、そういう契約があるわけでございます。また、そもそも、中毒症状などがございますけれども、そういう中毒症状などのように、傷害に該当するか疾病に該当するかの区別が困難だというものもございます。

 こうしたことからいたしますと、傷害保険と疾病保険に共通の契約ルールを設けるということには十分な合理性があるだろうと考えております。

神崎委員 次に、給付についてでありますけれども、生命保険契約及び傷害疾病定額保険契約につきましては、金銭の支払いに限定をいたしております。損害保険契約と取り扱いを異にしておりますけれども、これはなぜなのか。それから、生命保険契約などにつきまして、いわゆる介護サービスの提供や老人ホームの入居権など現物給付があり得るわけですけれども、これを取り入れなかったことも含めて、お尋ねをしたいと思います。

倉吉政府参考人 損害保険契約については、保険給付の内容としても、商法上も現物給付が認められているわけであります。

 これと同様に、生命保険契約それから傷害疾病定額保険契約の保険給付についてもいわゆる現物給付、この場合は、特に生命保険とか疾病保険ということになりますと、介護施設に入居させるといったような役務の提供、こういうことが考えられるんだと思いますが、そういった金銭の支払い以外の財産上の給付を含むものとして規定すべきかということが、ただいま御指摘のとおり、法制審議会の保険法部会では非常に議論になりました。かなりいろいろな議論が闘わされたわけでありますが、現実に、現物給付を行う生命保険契約それから傷害疾病定額保険契約にも保険法の規律を及ぼすのがむしろ適当なのではないかということで、これに賛成するという意見も複数ございました。

 ただ、最終的にはということになるんですが、現時点においては、現物給付について、保険契約者の保護のための監督規制が十分に整備されていないことなどを理由といたしまして、もっと慎重に考えるべきじゃないかという意見が強く主張されました。それで、最終的には、現物給付は含めないことにしようということで取りまとめがされた、今回の法案はこの部会の取りまとめを受けてそのまま提案している、こういう実情でございます。

神崎委員 今、法制審議会での議論にもお触れになりましたけれども、法務省事務局原案のたたき台におきましては、傷害保険契約及び疾病保険契約の給付についての定義は、一定額の金銭の支払いその他の財産上の給付をすることとされていたわけですね。金銭の支払いに限定をしていなかったわけです。

 最終的に金銭の支払いに限定をされたわけですけれども、法制審議会での議論というのをもう少し詳しく御説明いただきたいと思います。

倉吉政府参考人 実は、さまざまな議論がございました。

 積極に解する見解というのは、むしろ今の時代の推移を見越して、高齢社会になっていくんだ、その中で生命保険それから傷害疾病の定額保険といったものについてはさまざまなニーズが出てくるだろう、お金をもらうだけではなくて、ある時期からある高度障害になったら、それこそ亡くなるまでずっと一定の施設に入るようなことというのは、まさにニーズがあるのではないか、ニーズがあるのであれば、それに対してきちっとしたルールを適用していくという考え方が正しいのではないか、こういう見解でございます。

 これに対しては、一般の損害保険契約であるような現物給付、多分、自動車の故障を直すとか、ちょっとした建物の修繕をするというようなことがあるのではないかと思いますが、今言ったような長期間の介護であるとか一定の施設に入れるということになりますと非常に長い幅になりますので、それに入っている間に、当初の契約で想定していたとおりの内容のものが役務として給付されているのかということはきちっと検証しないと、保険契約者の側にも被保険者の側にも不利益が生ずるかもしれないということになります。

 その点についての監督というのがやはりある程度きちっと整備されていかなければいけないだろうというようなことが議論になりまして、先ほどお答えしたことと結論は一緒なんですが、そういうことで何度も議論を闘わせて、最終的には、もう少し監督行政がきちっとできるということが担保されてからやった方が社会的には混乱を招かないのかな、こういう判断に落ちついたということであります。

神崎委員 法案は、法案の規定よりも保険契約者側に不利な内容の約款の定めを無効とする片面的強行規定を導入しております。三十六条は、海上保険契約や法人等の損害保険契約についてはこれを適用しないとしておりますけれども、その趣旨はどういうことでしょうか。それから、強行規定による保護を与えない企業保険の範囲、これをどのようなメルクマールで決めておられるのか、その点もあわせてお伺いをいたしたいと思います。

倉吉政府参考人 その条文の第一号で挙げております海上保険契約でございますが、この海上保険契約というのは、一たん保険事故が発生すると巨大な損害が生ずるというところがもちろん特徴でございます。その意味で、類型的に特殊なリスクを担保する保険契約であるということになります。

 このような特殊な保険契約についてまで片面的強行規定を適用してしまいますと、保険会社といたしましては、保険の引き受け自体が困難になる、あるいは保険料をよっぽど高く設定しないと割に合わない、こういうことになります。そうすると、かえって保険に対する契約当事者のニーズにこたえられない、こういう事態が生ずることになるというわけでございます。

 同様に、法人等の事業活動に関するリスクについても、巨大な損害が生ずるというものや、あるいはむしろこちらが多いのかなと思いますが、リスクの評価に必要な情報が保険契約者側に偏在している、そういう特殊性がありまして、このようなリスクを担保する企業保険等につきましても、片面的強行規定を適用すると、保険に対するニーズに即した、それに応じた保険の引き受けがやはりできなくなるという弊害が生じてしまうことになります。

 そこで、保険法案では、ただいま御指摘のありました三十六条につきまして、例外的に片面的強行規定を適用しないということをしているわけであります。

 どのようなメルクマールか、これはなかなか難しい問題でございますが、以上申し上げました三十六条の趣旨からいたしますと、そこの四号に書いてあります「事業活動に伴って生ずることのある損害をてん補する損害保険契約」に該当するか否かということが問題になるわけです。

 これは、当該保険契約でカバーしようとするリスクが、その事業活動と関連しているために一般的、普遍的なリスクとは異なる性質を有すると言えるかどうか、つまり通常の、先ほど大数の法則というのを申し上げましたけれども、一般的な大数の法則がすぱっと当てはまる事例なのか、この業界に特有のことを考えなきゃいけないのか、その辺がメルクマールになるだろう、こういうふうに思っております。

神崎委員 保険契約時の告知につきましては、告知負担を軽減し、保険者からの質問に答えれば済むとしたことは、告知義務に絡んで相次いでいる不払いなどを防ぐことがねらいで、保険契約者の保護が強化されているというふうに考えます。

 法務省事務当局のたたき台では、告知義務違反による解除の効果として、A案、現行法の考え方を維持する、B案、告知義務者の故意または重過失によるものかで区別、故意の場合は全部免責、重過失の場合は保険金を減額した責任、こういう両案があったということでございますけれども、法案はA案を最終的に採用しているわけでございます。これはなぜでしょうか。

倉吉政府参考人 ただいま委員から御指摘いただきましたとおりのA案、B案というのがございました。

 このB案というのは、少し詳し目に説明いたしますと、保険契約者等に故意があった場合については保険者は責任を全部免れる、こういたします。保険契約者等に重大な過失があった場合については、正しい告知がされていたら保険者は保険契約を締結しなかっただろう、こういうふうに認められるときは保険者は責任を全部免れるということにいたしまして、もし正しい告知がされていたら保険者はもっと高い保険料で契約を締結したであろう、こういうふうに認められるときは、保険者は約定保険料の額の本来支払われるべきであった保険料の額に対する割合によりまして保険金を減額した責任を負う、こういう考え方でございます。

 これは、私自身も説明しながら思いますが、この規律は非常に難しい、非常に複雑な規律でありまして、告知義務に違反した場合に、結局、契約した人が幾ら保険金をもらえるのかというのがすぐにはわからないじゃないかという批判が、これは法制審議会の部会の中で消費者側の委員から出されたということがございました。

 それから、より本質的な問題としては、重過失の保険契約者まで保護しようということをいたしますと、全体としては保険会社が支払う額が多くなるわけですから、その支払い額や支払いのためのコストを担保しなければならない、したがって、その反射的効果として、正しく告知をした大多数の保険契約者の保険料が上がってしまうということになる、これも不利益になるのではないかという反対意見も開陳されまして、そうしたことでB案は採用しなかったということでございます。

神崎委員 他保険契約について、告知義務を制度化していないわけでございます。他保険契約について告知しなかった場合、重大事由による解除の対象になるのかどうか、この点についてお尋ねをしたいと思います。

倉吉政府参考人 保険法案では、損害や人の死亡等といった保険給付の要件となる事由の発生の可能性、危険と言っておりますが、これに関する重要な事項のうち、保険者になる者が告知を求めたものが告知義務の対象になるものとしておりまして、告知義務の対象となり得る事項を具体的には明示しておりません。ただいま御指摘のとおりでございます。

 これは、どのような事実が危険に関して重要な事項となり得るのかということについては個々の保険契約の内容や保険契約者によって千差万別でありまして、告知義務の対象として個別具体的な事項を一律に掲げるのは相当でないという理由によるものでございます。したがって、保険法案では、保険契約者等が他の保険契約に加入していることについても、これを告知義務の対象として明示してはおりません。

 一方、ただいま御指摘のありました、重大事由による解除でございますが、こちらの解除の原因になるのは、故意に保険事故を生じさせた、あるいは保険給付の請求について詐欺を行った場合等が挙げられておりまして、それを総括するまとめの言葉として、保険者の保険契約者等に対する信頼を損ない、当該保険契約の存続を困難とするような事由、このように定めております。

 したがいまして、保険契約者等が他の保険契約に加入していたとしても、一般的にはそれだけでは直ちに保険者との信頼を損なうような重大事由とは言えないでしょうから、該当しないと思われます。

 極めて希有な事例でありますが、実務上は時々見られるケースでありまして、例えば保険契約者が自分の自動車について、ごく短期間の間に何十もの自動車保険に入った、それが盗難に遭ったということになると、おかしいじゃないか、こうなるわけです。

 そういう何十もの自動車保険契約に重複して加入し、しかもそれを隠していたというような特殊な事情がある場合には、これは場合によっては信頼関係を破壊する、信頼を損なうような重大な事由に該当するということもあり得るのではないかというふうに考えております。

神崎委員 危険増加による解除の規定がありますけれども、商法六百五十六条、六百五十七条は危険の著しい増加を問題としているのに対して、この法案では、危険の増加という文言を用いているわけでございます。文言上は違うわけですけれども、これは実質的に変更する趣旨なのか、今までと変わらないのか、その点についてお伺いをします。

倉吉政府参考人 現行の商法は、契約の締結後に危険が増加すると保険者の引き受けた危険と受け取る保険料とがアンバランスとなるため、これを調整する必要を認めるという一方で、危険がわずかに増加したという程度のことでこのような調整をわざわざ認める必要はないだろうということで、著しい危険の増加があった場合、こういうふうに規定しているわけであります。

 今回の保険法案では、危険の増加の規定が適用される要件を、危険増加が生じたこととしておりまして、著しいという要件は課しておりません。

 しかし、この危険増加というのは、条文の前の方から読みますと、定義規定から手繰って読んでいきますと、契約締結時に保険者が告知を求めた事項についての危険の増加に限定しているわけでございます。しかも、保険法案では、告知を求めることができる事項を、危険に関する重要な事項というふうに限定しておりますから、結局、危険増加に当たるのは、危険に関する重要な事項について危険が増加したとき、大変くどくなって申しわけありませんが、そういう場合に限られるということになります。

 そういたしますと、保険法案における危険の増加の規定も、要するに瑣末な事項について危険が増加した場合には適用されないということになりますので、結局、現行の商法と今度の保険法案の場合で、その適用範囲は、細かく見るとちょっとずれるところがあるのかもしれませんが、実質的には異ならないだろうと考えております。

神崎委員 先ほど倉田委員からも質問がありましたけれども、親が子供を被保険者として保険金を掛ける子供保険は規制されておりません。親が保険金目当てに子供を殺害する危険もあるし、子供の死亡について数千万円の保険契約を締結する必要性にも疑問があるところであります。

 一定の保険金額を超える部分を無効とし、保険金額に一定の制限を設けるべきとの意見もあったと思いますけれども、なぜ規制を最終的にしなかったのか、再度確認をいたします。

倉吉政府参考人 理由は二点ございまして、一つは、保険契約や保険契約者は千差万別である、いろいろなニーズがあるんだ、契約自由の原則があるんだからそれを認めてあげていいじゃないかということでございます。

 もう一つは、実務上も、保険契約の締結に当たっては、保険者が保険金の額を含むさまざまな事情を勘案することでモラルリスク対策を講じているというのが実情でございまして、保険金額というのはその一要素にすぎないということになります。それだけのことで契約自由の原則を破って契約法上一律の制限を課す、そこまではしなくてもいいのではないかというのが理由でございます。

 ちょっと付言させていただきたいと思いますが、今委員が危惧しておられました保険金殺人等のモラルリスクについてでありますけれども、この保険法案におきましては、保険者の免責に関する規定はもちろん置いておりますし、それから重大事由による解除というのもできるようになっております。それから、被保険者の方から解除請求をするということもできるように規定を新設しておりまして、所要の対策を講じているところでございます。

神崎委員 他人を被保険者とする死亡保険契約及び傷害疾病定額保険契約におきまして、被保険者の同意を要しているところであります。ただ、例外として、商法六百七十四条一項ただし書きにあるように、被保険者が保険金受取人である場合には被保険者の同意は不要としているところであります。

 本法案は、給付事由が傷害疾病による死亡のみである傷害疾病定額保険契約についてはただし書きを適用しないとしておりますけれども、これはどういう理由なのでしょうか。

倉吉政府参考人 ただいまの御指摘の点の理由でございますが、傷害疾病定額保険契約というのは、被保険者の生存中の事故、入院をするとか高度障害に陥った、そういう場合がありますが、そういう生存中の事故に備えて締結されるのが通常であります。

 したがいまして、保険金受取人が被保険者である場合には、その人が生きているわけですから、その人が受け取ることになりまして、モラルリスクとか賭博保険といった、そういう弊害は少ないと考えられるというのが基本的な理由でございます。

 しかしながら、ただいま委員から御指摘のありました傷害または疾病による死亡のみに関して保険給付を行う傷害疾病定額保険契約ということになりますと、これは死亡保険契約と同じだということになります。専ら被保険者の死亡に備えて締結されるものということになりますので、しかも、被保険者が保険金受取人とされていても、実質的には被保険者の相続人が保険金を受け取る、こういうことになるわけでございます。

 そうすると、モラルリスクや賭博保険の防止といった被保険者の同意を要する趣旨にかんがみまして、給付事由が今申しました傷害疾病による死亡のみである、そういった傷害疾病定額保険につきましては、被保険者の同意を常に効力要件とするということにいたしたわけでございます。

神崎委員 終わります。

下村委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時五十五分散会


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