衆議院

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第9号 平成21年5月8日(金曜日)

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平成二十一年五月八日(金曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 山本 幸三君

   理事 大前 繁雄君 理事 桜井 郁三君

   理事 塩崎 恭久君 理事 棚橋 泰文君

   理事 谷畑  孝君 理事 加藤 公一君

   理事 細川 律夫君 理事 大口 善徳君

      赤池 誠章君    稲田 朋美君

      近江屋信広君    木村 隆秀君

      笹川  堯君    清水鴻一郎君

      杉浦 正健君    平  将明君

      高木  毅君    萩山 教嚴君

      早川 忠孝君    町村 信孝君

      武藤 容治君    森山 眞弓君

      矢野 隆司君    柳本 卓治君

      若宮 健嗣君    北神 圭朗君

      中井  洽君    古本伸一郎君

      山田 正彦君    神崎 武法君

      保坂 展人君    滝   実君

    …………………………………

   法務大臣         森  英介君

   法務副大臣        佐藤 剛男君

   法務大臣政務官      早川 忠孝君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 園田 一裕君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 深草 雅利君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    米田  壯君

   政府参考人

   (警察庁刑事局組織犯罪対策部長)         宮本 和夫君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局審議官)            細溝 清史君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    倉吉  敬君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    大野恒太郎君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  西川 克行君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房参事官)           坂井 眞樹君

   参考人

   (群馬県太田市長)    清水 聖義君

   参考人

   (日本弁護士連合会人権擁護委員会委員)      市川 正司君

   参考人

   (在日本大韓民国民団中央本部団体渉外事務局長)  ソ・ウォンチョル君

   参考人

   (移住労働者と連帯する全国ネットワーク事務局長) 鳥井 一平君

   法務委員会専門員     佐藤  治君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月八日

 辞任         補欠選任

  河井 克行君     若宮 健嗣君

  長勢 甚遠君     高木  毅君

  石関 貴史君     北神 圭朗君

同日

 辞任         補欠選任

  高木  毅君     長勢 甚遠君

  若宮 健嗣君     河井 克行君

  北神 圭朗君     石関 貴史君

    ―――――――――――――

五月七日

 子どもの保護に名を借りた創作物の規制、捜査機関による濫用の危険性が高い児童ポルノの単純所持規制反対に関する請願(枝野幸男君紹介)(第二二三三号)

 国籍選択制度の見直しを求めることに関する請願(河野太郎君紹介)(第二二八六号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する等の法律案(内閣提出第五一号)


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     ――――◇―――――

山本委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する等の法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房審議官園田一裕君、警察庁長官官房審議官深草雅利君、警察庁刑事局長米田壯君、警察庁刑事局組織犯罪対策部長宮本和夫君、金融庁総務企画局審議官細溝清史君、法務省民事局長倉吉敬君、法務省刑事局長大野恒太郎君、法務省入国管理局長西川克行君、農林水産省大臣官房参事官坂井眞樹君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中井洽君。

中井委員 おはようございます。民主党の中井洽でございます。

 最初に、法案審査の前に、この三月、四月、非常に興味深いいろいろな事件や裁判所の判決が出ておりますので、これらについて、御関係の皆さん方に御意見なりお尋ねをしたいと思っております。

 また、森大臣には、きょうは僕は初めての質疑になると思いますが、幾つかお尋ねもしたいと思いますので、お願いを申し上げます。

 最初に、先月二十三日に、SMAPの草なぎ剛君というのが公然わいせつ容疑で現行犯逮捕されるという事件が起こりました。連休の間も座談会やらやったんですが、質問の一番多いのはこれでございまして、そういう事実があったことも間違いないであろうし、事件ももう処理されたようでございますから、申し上げることは余りないんですが、一つだけ、当人が警察へ勾留され、弁護士も呼ばれて神妙にしているところ、また、尿検査等で薬物の反応もない。こういう中で、夕刻になって家宅捜索をやった。これがどうもよくわからない。そして、家宅捜索をやった結果、押収物なしだ、こういうことで締めくくられたわけでございます。

 いろいろあるんでしょうが、こういう事件でここまでおやりになるのか、どういうことを目的としてこの家宅捜索をおやりになったのか、警察庁にお尋ねをいたします。

園田政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねの事件に関しましては、警視庁におきまして、被疑者が酒に酔っていたため十分な取り調べもできず、本件公然わいせつ事件の動機、背景なども明らかにならなかったことから、犯行の動機、背景など、事件の全容を明らかにするために捜索を実施したものでございます。

中井委員 三十四歳の、一応世間にも名前が売れている人が酒に酔って裸になった、みっともないことでありますし、なかなか酔いもさめなかったということもあるんですが、こんな事件で家宅捜索をやるのかと僕は思うんですね。しかも、そのことによってマスコミ等全部に知られて、例によって大報道が繰り返された。僕らは田舎におって何も知らなかったから、これは多分、麻薬絡みかなと当然思ったわけで、上京してきてお尋ねしたら、尿検査をやって、この嫌疑はなかった。

 背景というのは、酒を飲んで裸になった背景というのは、そんなのはあるんですか。どういうことを考えてこれをおやりになるんですか、こういう家宅捜索というのは。これがよくわからない。念のために聞かせてください。

園田政府参考人 一般に、一般論で申しますと、公然わいせつの事件の捜査におきましては、例えば犯行の動機とか背景など、こういうものが明らかにならない場合がございまして、こういうときには、事件の全容解明のために、捜索を含め必要な捜査を尽くすものと認識をしております。

中井委員 そうやってお言いになるのはわからないわけではありませんが、ただ、酒を飲んで騒いだ、まあ公園で全裸になったというのは異常であるといえば異常かもしれません。それだけの事件だと僕らは思いますし、国民も思うんだと思うんですが、こういったところは少し異常反応じゃなかったかとあえて申し上げておきます。

 その次に、もう一つお尋ねしたいのは、先月の二十二日に、警視庁と千葉県警の合同捜査本部で、千葉の市長さんを収賄の容疑で逮捕されました。これはこれで結構なことでございますが、テレビ、新聞等で私どもも聞いておりましたら、警視庁は警視庁はと、こう言うんですね。どうして千葉へ警視庁が出ていくんだと思いますが、お尋ねをしたところ、合同捜査本部は逮捕日に設置された。

 要は、地域を超えても捜査ができるということらしゅうございますが、地域を超えた捜査というのは、各県各県、県警があるわけですね。警察のスタイルとしては都道府県、こういうことになっておりますから、当然、事前に十分な打ち合わせ、あるいは相手の捜査権というものを十分顔を立ててやっていくというのが普通ではないか。それを、警視庁が乗り出していくというスタイル、それはもう警視庁からすれば当たり前かもしれませんが、私自身は少し奇異な感じを受けました。この点を説明いただきたいと思います。

米田政府参考人 委員御指摘のとおり、警察は、それぞれの都道府県の都道府県警察、自治体警察でございます。ただ、犯罪は広域にまたがることも多いものですから、管轄区域を超えて権限を行使することができるということになっております。

 それで、例えば今回の場合は千葉市長ということで、千葉の公務員でございます。贈賄側が東京都内にいるということでございます。それぞれの県警の中でそれぞれ別々に捜査をして、それで合同すればいいんですが、捜査の実務としてなかなかそうはいかないところがございまして、やはり最初にその情報をとったところが、機密の保持に注意をしながら、そして、その情報源との人間関係も大事にしながら、それが捜査をすべてやっていくという場合も多いわけでございます。

 ケース・バイ・ケースでございますけれども、このような贈収賄事件の場合、過去にも例がございますけれども、管轄区域がまたがっている場合に、最初に情報をつかんだ県警が他県の被疑者も含めて立件をするということは多いわけでございます。

 その際、いざ立件をする、逮捕をするというようなときになってからは、それはそれぞれの都道府県警察の地元への影響力といいますか、地元での力がございますので、それを合同させるために合同捜査本部ということも間々あることでございます。

中井委員 警察権の及ぶ範囲というのは非常に難しいことだろうと僕は思いますし、都道府県、都道府県のそれぞれの本部という形で、地方警察という名のもとにやっている。また、その地方警察本部の中でも、市町村、市によっていろいろと隣の人との関係やら難しいのがある。しかし、犯罪は極めて流動的で、日本だけやなしに世界をまたにかけて行われる。こういうところの苦労はよく承知をしております。

 一方、アメリカなんかは、二州にまたがるとFBIが出てくる。FBIと州警察、あるいは郡の保安官事務所と、非常な争いの中で事件の捜査が行われる、こう言われているんですね。

 今回のこの事件は東京都の業者が密告をしたと言われていて、今、そういう人たちとの信頼関係というようなお話がありましたが、時効になるのを待っておっておやりになったという説も実はないわけではない。しかし、そういうことを含めて、日本の警察のシステムがうまく機能していないところ、警視庁というのは非常に力が強いから、関東近辺、警視庁主導、こういう形でいかれる。また、プライドを持っている、これもよく承知をしています。しかし、日本じゅう本当にそううまくいくのか。

 都道府県を超えた警察の捜査のあり方、連絡網のあり方というのは、僕はいつもちょっと頼りないような感じを抱くんですね。そういった点について何かお考えがあるか。本当に、名古屋なら名古屋管区の警察というのがそういう調整能力というのをちゃんと東海地区で果たしているかとか、そういったことについて僕は疑問に思っているんですね。そこら辺について少しお考えがあればお聞かせいただけますか。

米田政府参考人 確かに、委員おっしゃいますとおり、都道府県警察でございますので、この管轄区域をまたがる事案についてどう処理をするかということは、自治体警察である都道府県警察から少しはみ出た広域の活動をするような仕組みを設けております。

 それで、それぞれの自治体警察があり、そしてその上にまた国家警察があって動くという、例えばFBIのような仕組みということも、それはあり得るんでしょうけれども、我が国の場合は、都道府県警察を主として、そしてそれが相互に乗り入れをする、その乗り入れに際して警察庁が調整をする。もちろん、さっきおっしゃいましたように、中部管区警察局が中部管区内を調整するということもございますけれども、そのような方法でやっております。

 これは、いろいろな過去の事案の中で制度改正も行われてまいりまして、例えば都道府県警察の区域の周辺も、かつては数キロでございましたが、最近はかなり広げまして、その間は自由に相互に乗り入れができるというふうにしてみたり、あるいは広域組織犯罪につきましては、これは全国どこでも捜査ができるというような仕組みにしたりというようにして、都道府県警察を中心にしながらその枠組みを改善するという方向で対処をしているところでございます。

中井委員 日本じゅう犯罪者が流動する中で、警察組織も、固定されたということでなしに、融通無碍な形で大いにやれる。同時に、警視庁だけが融通無碍で、関東の警察が東京へ出てきて捜査なんて僕は余り聞いたことがない。そういうことも含めて、十分な組織の運用のあり方、警察庁が調整をとるように要請をいたしておきます。

 それから、続いて、おもしろい事件の判決が最高裁で無罪という形で言い渡されました。この事件について少し警察や検察にお尋ねを申し上げたいと思います。

 先月十四日、防衛医大の教授、休職中の方ですが、強制わいせつ罪に問われていたのが、最高裁で、三対二ということではありましたけれども、無罪、こういう判決が出たわけでございます。最高裁が、高裁へ差し戻さずに、無罪だとずばっとやるというのも大変珍しい事件でございます。

 同時に、この被告の方は、取り調べの最中から、一審、二審、ずっと無罪を主張されていた、こういう事件でもあり、私どもも、こういうときの被告の方の喜びとか思いというのはどんなものだろうか、こう思って判決を読ませていただきました。

 痴漢というのか、こういう事件は非常に難しい。証人がなかなかいるわけでもないし、物証があるわけでもないし、被害者の方々が訴える、それもかなり強い意思でおやりにならないとなかなか事件にもならないんだと聞いております。そういう意味では、立件、そして起訴というのは大変困難なことがあろうと思いますが、この裁判で、どこがまずくて無罪になったと警察や検察はお考えですか。

米田政府参考人 委員も御承知のとおり、この事件につきましては、第一審、第二審が有罪判決、そして最高裁で無罪判決が出たわけでございます。

 それで、この事件で一番争点になっておりましたのが被害者の女性の供述の信用性ということでございまして、もちろん、警察の捜査段階でもさまざまな角度からそれを検討して、そして立件をして、検察官に送致をいたしました。検察官においてもまた慎重に検討されて、起訴されたというふうに伺っております。一審、二審ではその信用性が認められ、最高裁ではそれが疑問があるということになったわけでございます。

 したがいまして、私どもとしては、この判決を真摯に受けとめて、今後の捜査で、いつも物証がとれればいいんですが、必ずしも物証がとれない場合もある、そういう場合、どのような段取りで捜査をしていくかということを改めて検討しなければならないということで、その判決の後、四月二十四日に都道府県の警察の実務担当者を集めまして、現在の捜査の実情あるいは問題点等、さまざまな検討をいたしました。

 このような検討を踏まえて、今後より一層に慎重かつ適切に捜査を進めてまいりたいと考えております。

大野政府参考人 この最高裁判決でございますけれども、判断の前提といたしまして、この種の事件の困難性を指摘しております。

 被害事実や犯人の特定について物的証拠等の客観的な証拠が得られにくく、被害者の供述が唯一の証拠であることも多い上、被害者の思い込みその他により被害申告がなされて犯人と特定された場合、その者が有効な防御を行うことが容易でないというような特質が認められる、こういうようなことを指摘された上で、被告人に前科前歴がなく、この種犯行を行うような性向をうかがわせるような事情が見当たらない、あるいは被害者の供述の信用性についてはなお疑いを入れる余地があるということで、全体として、被告の犯行であると認定するについてはなお合理的な疑いが残るというような指摘をしたわけでございます。

 検察当局におきましては、これまでも、捜査、公判に当たりまして、できる限り客観的な証拠の収集に努めるとともに、被害者を含めまして供述の信用性の吟味に努めてきたわけでありますけれども、今回の最高裁の判決で指摘された点ということも今後さらに十分に踏まえまして、より一層適切な対応に努めてまいりたいというふうに考えております。

中井委員 先ほど警察の局長は、四月二十四日、会議を開いて、さらに一層慎重な捜査をというお話をいただきました。

 警察におかれましては、平成十七年十一月十日、「電車内における痴漢事犯の適正捜査推進について」、こういう形で通達をお出しになっている。それは、先ほど申し上げたように痴漢事犯というのは非常に難しい、そういう中で無罪判決も幾つか出ている、こういうことに合わせて出された通達だと聞かせていただいております。

 そこには、「一般的留意事項」として、「目撃者等の確保」「実況見分等証拠の保全」「被害者及び目撃者等の調書は、具体的な被害の状況等を明らかにするとともに、供述の裏付け捜査を徹底すること」「科学的、合理的な捜査を推進すること」、こういうことが書かれております。当然といえば当然のことでございます。

 しかし、今回の最高裁の判決でも、このようなこと、科学的、合理的な捜査ということが不足したんじゃないかというようなことが述べられている。ここら辺は、少しやりにくいことだし、せっかく被害者が訴えたことだから事件と、こういうこともあるんでしょうが、やはり被疑者の方にも人格があれば社会的地位もあればということだと思います。こういう人のところの家宅捜索をやって常習犯かどうかとかお調べになられるのなら家宅捜索も意味があると思うんだけれども、本当にこういう方の背景、被告の背景というのをきちっとお調べになった上でおやりになったのかどうか、ここら辺がどうも疑問が残る。

 無罪になられた方も、記者会見等でその無念さや悔しさをやはりぶつけていらっしゃるんですね。これらについてどういうふうに警察としてお感じになるか。あるいは、訴えた方の言葉は十分聞いたけれども、調べられた側の方を本当にお調べになったのか、ここらが僕はちょっとわからないなという気がいたします。

 特に、検察におかれては二十日間勾留されておるわけであります。こんな事件で二十日間も勾留して一体何を調べておったんだと言わざるを得ないと思うんですが、この二つ、お答えをいただきます。

米田政府参考人 平成十七年通達に基づく捜査でございますが、この事件につきましても、この通達に基づいて、目撃者の確保あるいは科学捜査の徹底等々推進をしております。

 ただ、捜査については、そのときそのときの事案の内容が異なりますし、また捜査が置かれている状況も異なりまして、必ずしも、やろうとしてすべてができる、捜査項目がすべてこなせるというわけではございません。例えば目撃者を捜そうとしても目撃者はいないということが、これは痴漢の場合、往々にしてございます。その場合、例えば駅の防犯ビデオ等々で、ある程度被疑者、被害者の動きがわかるということもございまして、そういったように、必ずしも通達に書いてあることそのものがいつも実現できるとは限りませんけれども、その趣旨を体して捜査をしている。

 本件についてもそのようにやっております。

大野政府参考人 身柄拘束についてのお尋ねでございました。

 確かに……(中井委員「いや、その間、どんなことを調べておったのか」と呼ぶ)

 ただいま警察庁の方からも答弁がありましたように、所要の捜査をするわけでございます。個別の具体的な活動内容等につきましては、事柄の性質上お答えを差し控えたいと存じますけれども、被疑者の勾留をする、あるいは勾留の延長をするということにつきましては、要件が法律で定められております。検察官がその点につきましていわゆる疎明を行って、裁判所に勾留あるいは勾留延長を請求するわけでございまして、これが認められて起訴前二十日間の勾留が行われたということでございます。

中井委員 僕が申し上げているのは、それは起訴前二十日間は認められるけれども、例えばこういう方が逃亡するといったって逃亡するわけはないし、証拠隠滅といったって証拠もないような事件ですから、こういう事件で、自供して、自分がやりましたと言う以外は、二十日間全部勾留し続けるというやり方は僕はそろそろお考えになった方がいいんじゃないかということを申し上げたいと思います。

 それは権限で、法律に定まったことですから結構であります。しかし、それならば、弁護士を立ち会わせて取り調べをするとか、やはり被疑者の人権というもの、あるいは被疑者の言い分というものはきちっと伝わる捜査というものもやらないと、一方的なことになるんじゃないか。

 刑事局長は個々の事件ですからとおっしゃるけれども、もう最高裁で無罪判決が出ちゃっているんだから、これ以上進捗しようがないんです。これも、去年の冤罪事件、富山や鹿児島の冤罪事件と同じように、やはり反省材料として検察の中で御検討いただきますことを申し上げておきます。

 もう一つ申し上げたいことは、大阪・枚方の汚職事件で、これまた先月二十八日、何人かの被告の中で副市長だけが無罪判決、こういう言い渡しがございました。きょうが控訴の期限かな、二十八日からだと。対応がこれから、わからない中ですからお答えにくいと思いますが、こんなこともまた珍しいんじゃないかなと僕は思って、この判決を見させていただきました。

 検察は、往々にして特捜なんかは、事件を組み上げて、その中で自供をとっていくとかよく言われておりますけれども、この副市長さんも、御自分は関係ないということをずっと言い続けられて、そして、しかし市の仕事に弊害があってはいけないということで辞職をされて裁判をやった。これまた判決後に、大変悔しい、情けない思いをぶつけていられる。

 これから控訴されるかどうかわかりませんが、こういうことをやはりきちっと受けとめられて、先ほどの事件と一緒に、検察のミスとしての実例の中で勉強されて、そしてこういうことが起きないように御努力をいただきたいと思いますが、どうですか。

大野政府参考人 御指摘の枚方市の副市長による談合事件、これにつきましては、先般無罪判決がございまして、現在まだ、この判決に対する対応については検察の方で検討中であるというふうに承知しております。

 したがいまして、法務当局としては、この時点で具体的なこの事件についての御答弁は差し控えさせていただきたいと思うわけでありますけれども、無罪判決が出され、とりわけそれが確定した場合には、やはり検察としてはそうした司法の判断を重く受けとめます。そして、どこに原因があったんだろうかということを部内できちんと検討いたします。部内の会議でこれを題材として取り上げる検討会のようなことを行うこともありますし、また、案件によっては、さまざまな種類の部内の会議で取り上げて、反省点を共有するというようなことをしております。

 無罪判決について、この事件についてどうかということは申し上げられないにしましても、先ほど来先生から御指摘のあった無罪判決につきまして、重く受けとめる、それを今後の反省材料として生かしていくというようなこと、具体的に申し上げれば、今申し上げたようなことになるわけでございます。

中井委員 反省材料としておやりいただくのは、それはそれでお任せをして見守りたいと思いますけれども、常に国会において、大臣でも局長でも、個別の事件には言わないけれどもと言うて、法と証拠に基づいてということを言われる。だけれども、無罪判決が出ると、被告から無罪になられた方々の、新聞社、テレビ等のインタビューを聞いていると、全部、無罪と言っても聞いてくれなかった、そして、どなられた、怒られたということばかりが出てくる。

 そういう悔しい思いばかりが一遍に出るんだとは思いますが、しかし、そこら辺の取り調べのあり方、そして、疑いをかけられた人たちの主張に十分耳を傾けるというやり方、僕は、そのために二十日間の勾留期限というのはあるんだと。無理やり自供させて、無理やり罪に入れ込んでいくというための二十日間じゃないんだと思うんですね。そこら辺を十分お考えになられることが必要だ、こういう時代でありますから、あえて申し上げておきます。

 それから、私ども民主党の小沢代表の秘書の逮捕の事件に絡んで、大臣にお尋ねをいたします。

 大臣は、過般、同僚の山田議員の質問に対して、四時半に刑事局を通じて聞きました、こういうことを言われたわけでございます。別にこだわりませんが、事実関係だけ僕はこの機会に確かめたいと思いますのでお尋ねをいたしますが、総理は、あるいは官房副長官は、参議院の予算委員会で、夕刊で見た、こういうことを言われているわけでございます。当日、私も夕刊を見てびっくりした覚えがございます。朝日新聞の夕刊でございます。大体、三時五十分ぐらいに夕刊というのは届くわけでございます。

 大臣は、当日、夕刊はごらんにならなかったのですか。

森国務大臣 その日、私は、喜連川のPFIの刑務所視察に行っておりまして、帰り、ちょうど四時半ごろ、上りの高速道路を走っていて、そこで電話を受けたわけでございます。

 それで、要するに、刑事局から、検察からこういう事前の報告があったということで聞いたのが四時半でございまして、もうちょっと正確に言うと、私は携帯電話のフラッシュニュースというのをいつも使っておりまして、それでもって、ほぼ相前後する時間にフラッシュニュースでそのことを聞き及んだことはあります。

 ただ、四時半で、小沢代表の秘書を含む三人をおおむね五時ごろに逮捕するということを聞きました。

中井委員 それなら了解をいたしますが、大臣、四時半ごろ電話で刑事局から聞かれて、官邸へ連絡したかとか、刑事局にお聞きになったか、あるいは御自分で官邸へ連絡しようとされなかったのか、この点はいかがですか。

森国務大臣 私は、私の範囲のことですので、官邸に報告するということは考えませんでしたし、現にしませんでした。

中井委員 指示は。

森国務大臣 いいえ。しません。

中井委員 局長にお尋ねいたしますが、法務大臣に御連絡をなすった後、官邸へ、この間の質疑では事後に伝えたということでございますが、それは間違いありませんか。

大野政府参考人 本来、そうした捜査に関する情報をいつ伝えたかというようなことは明らかにすべきではないというふうに考えておりますけれども、先般来、この問題につきましてさまざまな御議論が行われていることにかんがみまして、特にお答え申し上げますと、法務当局におきまして官邸に連絡をいたしましたのは、逮捕が行われた後でございます。前には連絡をしておりません。

中井委員 しつこく尋ねて申しわけないですが、官邸というのは、総理秘書官あるいは法務省から内閣へ出られておるだれかに伝える、そういうことですか、あるいは漆間官房副長官ですか。

大野政府参考人 法務省の事務当局者から総理大臣官邸に事務的に連絡をしたということでございます。(中井委員「相手はだれですか、事務的に」と呼ぶ)相手は、私どもの刑事課長から総理大臣の秘書官に連絡をしたというふうに承知しております。

中井委員 内閣官房副長官にも伝えるんですか。総理秘書官だけですか。

大野政府参考人 官房副長官に連絡をした事実はございません。

中井委員 承りました。

 一つだけ感想を言いますと、森法務大臣、やけにのんきだなと。もし、それをお聞きになって総理に御自分でお伝えにならないというのは、僕は、内閣の法務大臣として、また政党人として、大したことない事件だとお思いになったのか、何だったんだろうかなと。森さんらしいなといえば森さんらしいかもしれませんが、少しそんな感想を持ったということをあえて申し上げたいと思います。

 かなり時間をとりまして恐縮でございます。法案関連に少し入っていきたいと思います。

 同じように、三月の二十七日に、東京地裁におきまして争われておりました韓国人夫婦、これは不法在留でございます。この方が自分で名乗り出て、そして東京入管に収容された。その中で、特別審理官による口頭審理や、あるいは特別在留の願い等を出されたけれども、東京入国管理局長がこれらを受け付けず、結局、退去強制命令が出される。そういう中で不当だと訴えて、一年余りの裁判の中で原告が勝訴、国が全面的に敗訴する、こういう事件があったわけでございます。

 私も、こういう判決というのは初めてでございます。読みましたが、大変立派な判決で、不法残留ということは褒められたことではありませんが、しかし、その中で平穏な社会生活を送り、日本社会にも生活の根をおろして受け入れられている、こういった人たちに対して特別な措置をとるべきであって、こういう東京入国管理局長の措置は与えられた権限を逸脱しているという判決でございます。訴訟費用は全部国が払いなさいと。私はこれはこのまま確定してしまえばいいじゃないかと大臣にもお願いを申し上げましたが、残念ながら控訴されるわけでございます。

 今回、この法律が成立をいたしますと、施行まで三年ということでございます。そうしますと、この三年間の間に、現在住民登録をされておるけれども不法残留の方、こういった人たちが、登録はできませんから名乗り出る。名乗り出たときにどうされるのか、片っ端から強制退去になさるのか、こういう問題であります。

 かつて、いろいろな委員会で、こういった人たちの個々の事情を十分考えて対応していく、こういうふうに言われて、法務省は個々の状況に応じて対応されてきたやに見ておりましたが、今回の事件なんかを強硬におやりになる背景には、やはり不法残留者をなくせという大運動の中にあって、個々の事情をしんしゃくする、こういった情けある姿、こういったものがなくなっているんじゃないかと僕は心配いたします。

 これは、三年間の間に、住民登録はしてあるけれども不法滞在、不法残留している、こういった人たちが名乗ってきたら、いろいろな事情をしんしゃくして、ルールをつくって、この裁判の一審の判決に見られるようなことを基礎にして、特別在留というのを認めて、日本人社会でやはり安心してお暮らしいただけるようにしていくべきじゃないかと僕は思うんですが、この点について、法務省の考えを承ります。

西川政府参考人 委員お尋ねの件につきましては、四月九日に控訴をいたしております。控訴審において、個別案件について事情を明らかにするということですので、お答えは差し控えさせていただきますけれども、一般論で申し上げれば、一審において当方の主張が認容されなかった場合には、判決内容を精査した上で、慎重に検討して控訴するか否かの判断を行っており、委員御指摘の事案につきましても、そのような検討をしたということでございます。

 それから、在留特別許可に関してでございますが、御案内のとおり、在留特別許可に関しましては、ガイドラインを発表いたしまして、積極要素、消極要素、これを総合的に考慮して、もちろん原則として不法滞在の人はお帰りいただくというのが原則でございますが、中には特別の事情がある場合もございますので、その場合については在留特別許可を認めることもあるということで、個々具体的に対応しているというところでございます。

中井委員 裁判においても、今回の事件は消極的理由というのがほとんどなくて、認めるべき積極的理由がこれだけあると見事に書き連ねられているわけですね。今のお答えは、積極的理由、消極的理由を十分勘案して、そして場合によっては認めることがあると。そんなことならガイドラインは要らぬのですよ、場合によっては認めるというんですから。

 日本人社会で受け入れられて、本当に、税金も払って犯罪も犯さずに営々と働いて、そして夫婦で財産をつくって日本人まで雇っているというような人たちをどうして無理やり追い返すんだ、こんなもったいないことはないじゃないかと僕は思うんですね。だから、そういう意味で、ガイドラインがあるなんといったって実際はそれを適用しないんですから、ないのも一緒だと僕は思います。

 そういう意味で、今回の法律ができたら、これから三年間の間にガイドラインをつくったなら、それに適応する人は認めるんだとやらないと、みんなさらに潜ってしまう。今なら、法律が通ってから三年間の間に名乗り出る人がいっぱいいらっしゃる。この今裁判になっている方も、自分たちで名乗ってこられたんでしょう。そういうことを含めてお考えになるべきだと僕は思いますが、森大臣、いかがですか。

森国務大臣 委員がおっしゃったのは、個別の事案を例にとられていますけれども、全体的なお話だというふうに受けとめさせていただきます。

 確かに、この法案を御審議をお願いいたしまして、なるべく早く御可決いただきたいと思っているわけでございますけれども、委員の御指摘なさっていることは、これが実施されるまでの極めて重要なテーマであろうというふうに思っております。

 今の委員からの御指摘を受けとめまして、今後、公表事案のさらなる追加や在留特別許可に係るガイドラインの内容をいま一度吟味してみたいと思っております。

中井委員 大臣の御答弁を了といたします。ぜひ温かい目で見てやっていただきたい。

 それは、消極的理由のところには、この間のフィリピンの方のような不法入国、今の裁判、不法残留、そういういろいろな違いがあると思うんですね。しかし、その後の経過、こういったものを考えてやる、また、本国へ帰って本当にその人たちが幸せな生活を送れるのかどうか、そういったことを見てやるということを含めて、早急に対応をおつくりいただきたい、そして対応を明らかにしていただきたい。

 大臣の御答弁は結構ですが、当局でそれがスムーズに通るかどうかを僕は心配いたしております。そういったことを含めて、この法案審査の間にできる限り明確なものが私どもに示されるように、重ねて要求をいたしておきたいと思います。

 それで、今三年という話が出ましたので、もう一つお尋ねをいたしますが、この法案が通ったとして、今百七十万おられる外国人の方々を含めて、これからお入りになってくる方々を含めてコンピューター処理をなさっていく、これに約三年かけて切りかえてしまうんだ、こういうお話のようでございますが、これは、人員的にあるいは予算的に大変なことになるんだと思うんですが、出入国管理局としては、十分対応できるんですか。

西川政府参考人 確かに、これから、現在外国人登録されている方を徐々に在留カードの方に切りかえていくというのは非常に大変なことで、二百万を超える方を移行させていくということになろうというふうに思います。

 そのためのシステムの構築、それから人員の配置等についても、これから考えなければならない課題は非常に多いわけでございますが、他方、今回の改正で効率化される部分も相当出てきておりますので、効率化される部分の人材等、資源を十分生かしながら、この大きな課題に向かっていこうというふうに考えております。

中井委員 国は、年間観光客二千万人という大目標を立てて、観光客増加にお取り組みでございます、円高やいろいろなことがあって、なかなかそうはいっていないところもあるようですが。しかし、そういうものに合わせて、一番大事な出入国管理、それも、成田初め、できていない。二十四時間の出入国の管理体制というものができないと、到底そんな二千万の人を引き受けられない。

 三千数百人の方々で頑張っていらっしゃるようですが、これから定数削減だ何だといって難しい中をどうやりくりされようとするのか。余裕が出る部分というのがあると言われますが、どこで余裕が出てくるのか、僕らはよくわかります。コンピューターでやられるということだけなんでしょうが、そこら辺を含めて十分な予算対応やらがなされるのかどうか。

 予算について大体どのぐらい見込まれているのか、もう少し具体的にお答えください。

西川政府参考人 お答え申し上げます。

 今、法案の審査中でございまして、システムの仕様の決定等はこれからの作業ということになりますので、極めて大ざっぱな話ということになりますが、在留カードを調製する、作成すると、そのシステムの構築等についておおむね八億円ぐらいはかかるというのが極めて大ざっぱな見積もりでございます。それ以外に、調製する機材等の借料が大体年間やはり八億円以上かかるだろう。

 もちろん、これ以外に、例えば在留カードの生カードそのものを入手するとか、あるいはコンピューターシステムをさらに改修していくとか、さまざまな作業が要求されるということでございますので、これについては、公布後三年以内の政令で定める日に施行されるということになっておりますので、この三年間の期間を最大限に生かして準備をしていきたいというふうに考えております。

 したがって、コンピューターの利用というのが最も大きな効率化の手段ということになりますが、業務面につきましても、例えば今回は、再入国について、みなし再入国という制度をとらせていただきました。これは、在留カード等を所持している者については、一年以内の出入りについては再入国許可を必要としない。さらに、特別永住者については、二年以内の出入りについて、有効な旅券を所持してということでございますけれども、必要がないということで、再入国というのは数が非常に多いということでございまして、その部分については相当削減されるだろうというふうに考えております。

 このような余力を使いまして、システムの構築、さらに、新たな在留制度の構築、施行に向かって努力していきたいというふうに考えております。

中井委員 この在留の新たな制度で、届け出が随分楽になるんだという御説明でございます。

 所属機関の名称、所在地の変更、消滅または当該機関からの離脱もしくは移籍等は、届け出るということになっている。これは所属機関も何か届けるんだそうでありますが、それは随分大変じゃないかと申し上げたら、定住者やら永住者やら日本人の配偶者等は除くから、今百七十万人いるうちの大体五十万人だ、こういうお話でありましたが、それは間違いないということなのか。

 同時に、在留カードなるものは、例えばワーキングホリデーで来られる学生さん、大分人数は減ってきていますが、この六月には台湾との間でワーキングホリデーの協定ができるようでございます。また台湾からもワーキングホリデーの方が入る。この人たちは、このカードを持たなきゃならないのかどうか。あるいは、転々と働きながら日本を遊んで見物されるわけですから、そのたびに届け出、変えるのかどうか。その点についてお尋ねをします。

西川政府参考人 まず、所属機関の届け出を要する者ということでございますけれども、委員がおっしゃりましたとおり、すべての外国人に求めているというわけではございませんで、あくまで所属機関の存在が在留資格の基礎となっている者、その者たちだけについて届け出を求めるということでございます。

 今の、平成二十年十二月末現在の外国人登録を基礎にして申し上げますと、改正法によって所属機関等の届け出義務が残る者は五十七万七千八百三十五人、これに対して、改正法により所属機関等の届け出義務がなくなる者、これは今外国人登録において勤め先について登録を求めておりますので、それがなくなる者が六十九万四千八百九十三人でございますので、半数以上の者については届け出義務がなくなるということになります。

 それから、ワーキングホリデーについてのお尋ねがございましたが、現在、日本国とほかの国との、国と国との約定においてワーキングホリデーを実施しておりますが、大体ワーキングホリデーの在留期間は六月から一年の在留期間で決定をしております。このように、ある程度の期間本邦に在留する場合には、ワーキングホリデーで来られる方も住居地を定める場合が多いと考えられますので、原則としては、継続的な情報把握の対象として、在留カードを交付するのが適当とは考えております。

 ただ、今委員おっしゃられましたとおり、ワーキングホリデー対象者の中には、住居地を転々とすることがあらかじめ予定されている方も考えられないことではないということで、これらの方々を継続的な情報把握の対象とすることについて、委員の御指摘も踏まえまして、その是非を含めて今後さらに検討していきたいというふうに考えております。

中井委員 過般、与党の皆さんの御議論を聞いておると、届け出をたびたびしなきゃならない人たちというのはインターネットやらあるいは郵送で受け付けることを検討する、こういうお答えであったようでありますが、それは、市町村に届けるよりかは入国管理局の方がよっぽど遠いわけでありますから、検討だけじゃなしに、ぜひそういう配慮をなさるように私の方からも要請をしておきます。

 幾つか質問があるんですが、残ります。最後に一つだけ。

 これは非常ににせものをつくりやすいと僕は思うんですね。入国して、このカードをもらって、後、住所を自分で勝手に打っちゃって潜っちゃえばわからないじゃないかと。身分証を見せろと言われたときに、入国カードはちゃんと普通のだしということでありましょう。一々法務省へ問い合わせるわけじゃありません。

 また、皆さん方はICチップが入っているからにせものはつくれないと言っているけれども、だれもそれが本物かどうかもわからぬから、まるっきりにせものをつくろうと思ったら、実に簡単にできていくんじゃないかと僕は思います。不法残留とかそういう組織的犯罪者とかいうのは、こういうことでにせものをつくるなんというのはあっという間なんですね。ICチップを張ったからにせものがつくられない、そんなのんきなことを言わずに、初めからつくられるものとして対応をいろいろお考えになった方がいいんじゃないか、こんなことを、あえて質疑せずに申し上げておきます。

 最後に、民事局長にお越しをいただいております。

 過般、私ども民主党の地図混乱の対策のプロジェクトチームで、かねてから大変混乱地域として住民がいろいろな運動をされている滋賀県大津・住吉台地区というところを視察してまいりました。大変深刻な、また有意義な話し合いをさせていただきました。当日、大津法務局からもお越しをいただいて、つらい話も聞いていただいたりいたしました。

 その中で、住民側と大津法務局で、それでは、こういう形で一度調整の会議をやってくださいと私の方から申し上げて、そして、その人たちが六月には転勤じゃないだろうなということも含めて確認をとってございます。

 その会議が順調に開かれるという方向に行っているのかどうか、局長の方からお答えをください。

倉吉政府参考人 御指摘の、住吉台地区の地図混乱地域の問題でございます。

 大変深刻な問題で、特に、地図がきちっとできていないために分筆、合筆ができないということで、生活のインフラである下水道、水道整備工事などもうまくいかない、道路もうまくいかないというような話を十分聞いておりまして、我々も重く受けとめているところでございます。

 先般の御指摘をいただきまして、民事局ももちろんですが、法務局といたしましては、今後とも、住吉自治会で地番整理協議会という団体が発足しておりますが、そこと連携協議をとりつつ、登記所備えつけ地図の作成作業が実施できる環境を整備していく、その構築のために適切に対応してまいりたいと考えておりまして、本年五月中には、地番整理協議会と、今、所在不明の土地というのがございますが、その土地の処理等を議題といたしまして、具体的な打合会を実施することとしております。

 また、これとあわせて、大津市に対しましても、住吉台地区の地図整備の必要性及び協力について引き続き働きかけを行うこととしております。

中井委員 局長、それで大変結構で、ありがたいことだと思いますが、申し上げておくのは、きちんと調査ができる環境をつくるためにその委員会と話し合ってくれと言っているわけじゃありません。この委員会で、邪魔をして、さんざんいろいろなことをやっている人がいても、きちっと地番を確定できる地域がある、そこは、調査会の方で、自分らでもやっている、これを含めて、そこのところで何とかならぬかという会合をやってくれ、こういう会合でございますので、それを契機に進めばありがたいことだと僕らも思っておりまして、提案をしたところでございます。

 ぜひひとつ、こういう残念なことがいつまでも放置されることのないように、御努力を賜りたいと思います。

 委員長、ありがとうございました。

山本委員長 次に、古本伸一郎君。

古本委員 民主党の古本伸一郎でございます。

 大臣におかれましては、連日の御対応、大変お疲れさまでございます。

 入管法の改正ということでありますが、まず、入管法の目的についてお尋ねしたいと思うんですが、これは何を目的としている法律なんでしょうか。

西川政府参考人 出入国の管理でございますので、一つは、問題のない外国人についてはできるだけ円滑に我が国に受け入れる、しかしながら、ルールを守らないで我が国に違法に滞在する外国人については速やかに厳正に対応するということであろうと思っております。

古本委員 ということは、今回の法改正に伴って、適法に入国し、そして適法に滞在なさっておられる方々にとってはより便利に、そして、不法に入国したり、あるいは不法に滞在しておられる方々がおるとすれば、そういう方々については不便になる、こういう理解でいいでしょうか。

西川政府参考人 そのような方向を目指した改正であるというふうに考えております。

古本委員 大臣、今回の改正によってこれは随分、今委員長のお許しをいただいて資料をお配りいたしておりますが、番号を入れませんでしたのでちょっと恐縮でありますが、一枚目をめくっていただいて、二枚目ですね、「研修生・技能実習生の受入れ機関数」、それから、さらにその裏面の「在留外国人の在留資格別内訳」ということで、これはそれぞれ役所の方から出していただきました。

 例えば「研修生の産業・業種別受入れ機関数(平成十九年度)」、これで見ますと、一番構成比が多いのが、衣料品関係の繊維製品製造業という方面にいわゆる外国人研修生、技能実習生がお越しになり、そして今、労働力として二年目以降は働いておられる。二番目が農業であります。食料品製造業が三つ目で、建設関連工事が四つ目です。そして金属製品製造業が五つ目。ベストファイブといえばそういうことになるんでしょう。

 こういう分野で働いておられる方々の中で、これまでどういう問題があったかということについて、局長の方から少し整理していただいていいですか。

西川政府参考人 研修・技能実習の本来の目的というのは、我が国の技術をほかの国に移転して、その技術を当該国で生かしていただくということでございます。

 ただ、残念ながら、研修・技能実習の受け入れ機関の中には、必ずしもこの趣旨を十分な理解をしないで、実質上の低賃金で使う、あるいは労働基準法違反、超過勤務等、各種法令の違反に及ぶところがあって、不正行為が相当数発生しているというのが問題状況でございまして、入国管理局としては、この不正行為の発生をできるだけ食いとめる、これが大きな課題ということになっております。

古本委員 今回の改正の主眼の一つであろうかと承知いたしておりますけれども、要は、一年目の研修期間であるにもかかわらず、実際には働いていただいている、こういった実情が散見されるという中で、一年目からいわゆる労基法の適用対象、つまりは最賃以上を支払っていくということの適用の対象にしていくということであります。

 このことによって、それぞれいろいろな産業分野、今申し上げましたが、繊維製造業、建設、農業あるいは金属製品、食料品製造、それぞれの分野ございますけれども、各業界団体からはどういった御意見があったというふうに承知をされているのか、説明を願います。

西川政府参考人 それぞれ所管の省庁を通じまして業界団体等の意見も聴取しておりますが、一年目の研修について、今度は就労に基づくということで、労働関係法令を適用するということについての反対はなかったというふうに承知しております。

古本委員 それは当たり前でして、実際、研修ではなくて、働いていただいていたという認識があったにもかかわらず、法の網の目から漏れ、最賃さえも払わずに就労させていたということを今回一掃していくということについては、各業界からも、当然のことでありますけれども、賛意を得ている、こういうことを今御答弁いただきました。

 さて、そこで、きょうは農水にもお越しをいただいておりますけれども、たまにテレビや何かの特集で、長野のレタス農家でしたっけ、何かそういうものを栽培している様子が、中国からいらした研修生の方々によって支えていただいているんだなんということをかいま見ますと、大体どういうような規模で、今この研修先、受け入れ、構成比でいけば実に一六%ということになっておりますので、農業の現場における実態のようなものがあればお聞かせいただけますか。

坂井政府参考人 お答えいたします。

 農業分野における研修・技能実習生は、近年増加傾向にございます。平成十九年度、私どもが把握しております最近のデータによりますと、研修生の方で九千人、また、この十九年度に研修から技能実習に移行を申請された方が四千人いらっしゃいます。また、この前年度、すなわち十八年度に技能実習への移行を申請された方が三千人いらっしゃいます。これらの方、二年間の技能実習すべての期間いらっしゃるかどうかはわかりませんが、この九千人の研修生に加えて、申請者ベースで、それぞれ二年間で合わせて七千人の申請が行われておりますので、最大限で一万六千人から七千人程度が今農業分野で技能習得を行っているというふうに考えております。

 また、全体の農業における位置づけですが、これは把握の仕方が大変難しいわけですけれども、ちなみに、平成二十年の基幹的農業従事者数、これはふだん農業に従事されている方、職業は何ですかというふうに聞かれたときに農業ですと答える方というふうに考えていただければいいと思いますが、百九十七万人いらっしゃいますので、こういった数と比較すると一%未満、こんな状況になっているわけでございます。

古本委員 さらにお尋ねします。

 今約二百万人の就労者がいる中で約一%ということでありますが、一枚目の資料をごらんいただきますと、表紙です、「日本の将来人口の動向」ということで、これは国立社会保障・人口問題研究所の資料でございますが、いわゆる生産年齢人口、十五歳から六十五歳が、現在、二〇〇九年あたりですから大体八千万人を少し割る数になってきているんでしょうか。やがて二〇五五年にはこの人口が四千五百九十五万人にほぼ半減をしてしまう計算であります。百年後には二千二百万人に、十五歳から六十五歳人口が、激減というよりも、もう日本列島からほぼいなくなってしまう。

 こういう状況にかんがみますと、百年先もあのおいしいレタスを、しゃきしゃきとしたレタスを我々は食べたいわけでありまして、農水としては、この分野における外国人の皆様の労働力、技能実習を終えた後の労働力というものについて、これは頼りにしていかざるを得ないのか、あるいは現状はこの一%というシェアのままで当分はいいというふうにお考えになっておられるのか、お聞かせ願いたいと思います。

坂井政府参考人 お答えいたします。

 まず、我が国の農業の将来展望でございますが、私ども、基本計画の中で構造展望をつくっておりまして、その中で、実は、今後農業の個別の経営体の規模拡大を図っていく等の取り組みを通じて、基幹的農業従事者につきましては百五十万人を切るようなレベル、そういったレベルで、担い手によって農業経営の、農業生産の大宗を支えていく、こういった構造を考えているところでございます。

 他方、現実問題といたしまして、外国人研修・技能実習生の受け入れは近年増加傾向にございます。雇用労働として求められている部分もあると思いますので、今回制度改正も検討されているというふうに承知をしておりますが、農林水産省としましては、この法令に適応した形での受け入れ、こういったことは今後とも進めていく必要があろうかというふうに考えております。

 他方、十分なお答えになっていないかもしれませんけれども、農業全体につきましては、今後若い担い手を確保していく、そういったことが必要となる中で、農業の構造展望としましては、従来よりは少し少ない数の経営体で、いわゆる担い手、農業のプロによって農業生産全体を支えていこう、こういったことを考えているところでございます。

古本委員 これは大臣、たしか御党の中でも研究されておられる諸先生方がいらして、いわゆる外国人労働力を、これは一枚目の裏面でありますけれども、閣議決定、平成十一年、第九次雇用対策基本計画、「外国人労働者対策」という項目になっておりますけれども、これは専ら、「我が国の経済社会の活性化や一層の国際化を図る観点から、専門的、技術的分野の外国人労働者の受入れをより積極的に推進する。」と。

 つまり、大体そういう、技術者であったり金融知識があったり医療分野であったり、それは、その次の裏面に在留資格別内訳というのをA4の横書きでつけていますけれども、本来期待をしている教授分野、芸術分野、投資、法律・会計業務、こういういわゆる社会科学、自然科学それぞれの分野における技術者たちの在留の内訳よりも、現実的にはこういう、閣議決定では国民のコンセンサスが必要だというふうに書いておられるいわゆる単純労働者の受け入れについての消極的なスタンス、この部分が恐らくおもしになって今日に至っているんだと思うんです。

 ちょっと相前後いたしまして恐縮ですが、御党の中でも、やはり入管法の議論の大前提として、そうやって入ってこられる外国人の皆様に今後どういった分野で在留資格を付与していこうかという議論に至ったときに、やはりここでうたっておることが今日ずっと生きてきていると思うんです。

 人口動態を見る限りは、もちろん高齢者の活用だとか女性の社会への参加だとかいろいろなことも言っておられますけれども、それとて、やらないよりはやった方がましですけれども、少子化がこのまま行った場合の中位推計でいけば、今申し上げた百年後には労働人口が二千万人足らずになってしまうということを考えますと、移民政策の大前提のようなものは御党の中でもおっしゃる方がいらっしゃいますね。一千万人どうだというようなことをおっしゃる人もいらっしゃる。

 では今すぐにその一千万人プランを政府として出すべきだとまでは申し上げませんけれども、農業でいえば、二百万人のうち、少なくとも一%が、お願いをしている、地域なりあるいは個別の農家の事情なりがあるやにお伺いいたしましたけれども、その点、今回の入管法の議論の大前提だと思いますので、御所見があれば伺いたいと思います。

森国務大臣 大変大きなテーマの御質疑だと思いますけれども、私はまず個人的には、やはり外国人の受け入れについて、今おっしゃられたように、現在の方針が個人的にはいいんじゃないかというふうに思っております。

 ただ、私どもの与党の中にも、もうちょっと大胆に移民を受け入れたらどうかというような意見もあることも重々承知をしておりますけれども、そういった移民政策とか外国人の受け入れというのは将来の日本の国の形を左右するものですから、やはり国民的な大きな議論が必要であると思います。

 私は、例えばある時期にもうちょっと大きな移民を受け入れたらどうかということになぜ消極的かと申しますと、そういった大きな固まりが、それこそ現役世代のうちはいいわけですけれども、その方たちが定住して、また社会保障の対象者にいずれなるわけですね。そういったときには、結局同じ問題がそこで蒸し返されるわけでございます。したがって、私自身は、先ほど委員の資料にございました、今の外国人労働者対策についての基本計画というのが適切なんじゃないかというふうに思っております。

 そういう中にあって、それでも、確かに専門的、技術的分野の外国人労働者についてはこれまでも積極的に受け入れてきたところでございますが、専門的、技術的分野に該当しない外国人労働者の受け入れというのは、今まさに外国人研修制度でもって供給されていると言ってもいいわけですが、これは確かに一面、そういうことを、研修制度の名目をもって労働者として使っているじゃないかという見方もあるわけでございますが、そうはいっても、最低限の一つの担保というか、やはりそれなりの技術を習得してもらって、国に帰って、我が国からの技術移転に当たってもらうという大義名分があるわけでございまして、その中にあって、この制度が今後とも維持されていくべきだと私は思います。

 ただ、先ほど来御指摘にありましたように、制度の中でいろいろな不都合なことも生じておりますので、研修生の保護という観点から、やはり労働法制を一年目から適用することの方がいいんじゃないかという考えのもとでその改正をお願いしているわけでございまして、しかも、その中にあって、一年目のけじめとして資格試験を受けてもらう、こういうことでございますので、私は、私の私見も含めましたけれども、現在のそういった外国人の受け入れにとって、今回のこの研修制度の改正というのは、研修生の保護という観点から、より望ましい改正ではないかというふうに信じているところでございます。

古本委員 ありがとうございました。

 今、大臣の、政府を代表しての、いわゆる外国人労働力というんでしょうか、広く言えば移民施策にかかわる話まで踏み切るかどうかという構えがあるか否かということについては、現状を維持していった方がいいんじゃないかということを承りました。

 その上で、少し確認するんですが、現在、いろいろな業界の意見を聞いたということでありますけれども、いわば本当にまじめに研修を受けていただき、そして今、大臣が言うところの、日本の技術を習得していただき、お国に帰ってからそれを伝播していただくということで役割を果たしているということなんですけれども、現実的に、三年目でお帰りになるともったいないという声がいろいろな業界から出ているんじゃなかろうかと思いますけれども、それについてはいかがですか。

西川政府参考人 これについては、今委員御指摘のとおり、さまざまな御意見を伺っております。いわゆる再技能実習を認めるか否かということになるんですが、反対論としては、やはり研修・技能実習制度というのは三年間で学んでもとの国で生かしてもらう制度なんだから、それを守るべきだという強い反対論もございますし、それから、委員今御指摘されたとおり、せっかく三年間かけて育てたんだからもっと生かしたらいいんじゃないか、こういう意見もございます。

 今現在、さまざまな場所で議論をしておいていただきまして、その議論が集約されるというのをいま少し見守りたいというふうに考えております。

古本委員 これはいろいろな分野によって違うんでしょうけれども、農業なんかはどうなんですか。

坂井政府参考人 お答えいたします。

 私どもも、必ずしも全体の意見を把握しているわけではございませんが、一部の関係者の方から、せっかく技術を身につけたのにやはりもったいないと申しますか、もう少し長く滞在することができないか、そういった意見があるということは承知をしております。

古本委員 別にお願いしていた答弁ではありませんからね。

 要は、大臣、産業実態としては、これはいろいろな分野がありますので、また今後ともつぶさに産業の声も聞いていただきながら、今三年を上限といたしていますけれども、その年限について、今後の課題ではあると思うんですね。それは課題を提起させていただきたいと思います。

 さて、その研修で入ってこられた方が、実は就労しているかどうか、就労させてしまっているかどうかということは、現場を調査しないとわかりませんね。年間で何万人ぐらいが研修生でお越しになっておられて、それに対してどのくらい現地立ち入りをなさっておられるんですか。

西川政府参考人 平成二十年の研修の新規入国者が十万一千八百七十九人ということでございます。それから、研修の外国人登録者数は平成二十年末で約八万六千八百人、概数でございますが、そういうことでございます。

 研修・技能実習におきまして不正行為が発生しておりまして、それに対して入国管理局においては実態調査を実施しておりますが、これが平成二十年一年間で五百三十四件ということでございます。五百三十四の機関に対して実態調査をしております。

古本委員 それは、その外国人の方々から当局へ、こんなひどい目に遭っているんだというような通報があって、それを受けて入管局のしかるべき人が駆けつけているのか、それとも、十万件の入国、研修目的の方に関して標本的に調査をしているのか、どちらですか。

西川政府参考人 平成二十年の不正行為認定が四百五十二件ありまして、これの端緒というのはさまざまでございます。

 一番多いのは労働基準監督署からの通報、これが百三十九件、一般人等からの提報、情報提供でございますが、これが八十四件、関係者からの申し立てが五十八件、それから当局独自による実態調査で発見したものが五十一件という順番になっております。

古本委員 当局独自というのはどういうことかなんですけれども、要は、今回、一年目から労基法の適用対象にしていって、最賃以上をきちんとお支払いしようということを幾らうたっても、現場でそうなっているかどうかをきちんと把握する体制にしておかなければ、悪いことをしようと思っている人はまたやってしまう可能性がございますね。

 入管のその分野に対する要員が、各入管局によってそれぞれ配置をなさっておられると思うんです。先日、質問に先立ちまして、当委員会でも東京入管局、そして私の方で無理を言って名古屋入管局も少し調査させていただきまして、現地も行ってまいりましたが、実はこの分野に関して、名古屋入管局に関して言えば、年間での対象が千六百カ所、これを大体三名から五名で編成して回っていらっしゃるそうなんですね。ですから、本当に要員が足りているのかという御議論はいろいろな場面で出ているんだと思いますけれども、そのことについてもさらに充実を図っていただきますよう、要望しておきたいというふうに思います。

 さて、お配りをしております資料の、めくっていただきまして、これも番号をつけませんで恐縮でございます、出入国管理及び難民認定法の、以下、抽出をしていただいた資料なんですが、これは法務省の方で出していただきました。

 冒頭の入管法の趣旨に少し立ち返りたいと思うんですが、そもそも、「本邦に上陸しようとする外国人は、有効な旅券で日本国領事官等の査証を受けたものを所持しなければならない。」というふうに書いてあるんですが、これはどういう意味ですか。

西川政府参考人 ここに記載されているのが原則でございまして、我が国に入国するためには、まず有効な旅券が必要である、これが第一点でございます。第二点は、日本国領事官等、つまり我が国の在外公館等で前もって入国のための査証を受ける、これが原則になっております。ただし書き以下が例外ということになります。

古本委員 要は、日本に入りたいという申請があった外国人の方であれば、その国にある領事館でビザが必要な場合はビザをとっていただいて、そして、その人が「所持する旅券及び、査証を必要とする場合には、これに与えられた査証が有効であること。」こういうことになっていますね。

 その上で、定義なんですけれども、旅券とは何かというと、「日本国政府、日本国政府の承認した外国政府又は権限のある国際機関の発行した旅券又は難民旅行証明書その他当該旅券に代わる証明書」ということになっているんですけれども、この定義のイはどういう意味ですか。

西川政府参考人 これが旅券の定義でございまして、原則、日本国政府それから外国政府が旅券として発行したものということでございますが、それ以外に、例えば国際機関の発行したもの、それから難民旅行証明書、それから、外国政府でありましても、旅券そのものでない場合に、渡航許可証みたいなものを発行して、それで出入りをさせる場合もございますので、そういうものについても一時的な旅券として認める、こういう趣旨でございます。

古本委員 今、後段で言われた、外国政府が云々とおっしゃったくだり、それはどういう意味ですか。

西川政府参考人 例えば、我が国に外国人が旅行していた、パスポートをなくしてしまった、それで臨時的に、大使館もしくは領事館の方に駆け込みまして、当該国に帰りたいので一時的にパスポートにかわる渡航の証明書みたいなものを出してくれ、そういう場合については旅券と同じような扱いをする場合があるということでございます。

古本委員 本件の審査に当たって、いろいろなお立場の方から御意見があるやに承知をいたしていますけれども、これは、すぐれて入管法の趣旨からすれば、有効な旅券を持っておるということを大前提にしていることは国際社会の中で常識だと思うんですけれども、こういうことをうたっていない国が逆にあるんでしょうか。

西川政府参考人 基本的には、旅券が、当該政府がその人についてその国籍の者であるという身分を保証して保護を求めるという趣旨でございますので、基本的に申し上げますと、旅券を持っていない外国人は受け入れないというのが国際慣習であるというふうに考えております。

古本委員 しかるに、なぜに有効な旅券を持てない人が存在するか。一つに、難民とかいらっしゃるでしょうね。あるいは、その難民の方の間に生まれた赤ちゃんは引き続き難民でありますから、帰属する国がない、無国籍というようなケースもあるんでしょうね。

 ですから、それぞれのケースをここで一々やれませんけれども、有効な旅券を持っているということに関して、これは当然のことである、国際慣習であると。そこのところをもう一度言ってください。

西川政府参考人 原則としては、外国人がほかの国に入るときには有効な旅券を持っていただかなければならない。それで、当該発行国がその人の国籍を保証して保護を求める、そういうものを持った人を初めて受け入れるというのが国際的な慣習であると考えております。

古本委員 この議論をちょっとここで一たんとめて、大臣、要するに、いろいろな御議論があるようでありますけれども、実は、悩ましくも何もないんですね。有効な旅券を持っていなければ、外国に我々も行けないわけでありますから、向こうもそうである、お互いさまであるということがまず第一にあります。

 その上で、では、入国の際のいろいろな事務工数についてちょっとお尋ねをしたいと思うんですけれども、めくっていただいた資料の、手数料納付書という紙がございます。森法務大臣あてに出す紙ですね。サーティフィケート・フォー・ペイメント・オブ・フィー、手数料納付書。今回議論になっていますけれども、再入国の際のこういった手数料も、今後は、適法に入国し滞在されておられる外国の方にあっては、一年以内に再入国なさる場合はこれが不要であるということになるんですが、今、再入国の手数料というのは、ここの資料に書いていますけれども、年間約二十六億円強、これでよろしいですか。

西川政府参考人 平成十九年度の数字でございますが、再入国、二十六億八千八百八十七万九千円ということです。

古本委員 我々も外国へ行ったときに、国に入る、そのときのビザであったり再入国するときの手数料であったり、こういったものを徴収するということは国際社会では当たり前のことだと思うんですけれども、これはいかがですか。

西川政府参考人 どの許可についてどのような手数料を徴収しているかというのはそれぞれの国によって異なるというふうに思いますが、何らかの形で、どこかの許可について手数料を徴収するというのは当然あることだというふうに思っております。

古本委員 これは、それぞれ在留許可の更新やら変更、それから再入国、永住、就労資格証明、これを全部合わせますと、年間で幾らぐらいになりますか。ざっと暗算すると五十億を超えるぐらいだと思うんですけれども。

 要は、今後はこの歳入がなくなるんですね。

西川政府参考人 再入国のほとんどはみなし再入国ということで、すなわち在留カードの所持者については一年以内の再入国がほとんどでございますし、特別永住者については二年以内がほとんどでございますので、再入国部分についてはほとんどなくなるというふうに思われます。

古本委員 同じ法務省の所管で、大臣、興味深いことに、きょうにわかに民事局長にもお出ましをいただいて、御尊顔を拝眉をしないと落ちつかないものですから、無理を言いまして。

 たしか、登記特会というのがありますね。登記をつけたときに登免税を払います。登免税はたしか通常の印紙で払うと思うんですね。他方、謄本閲覧をした場合には登記印紙を張ると思うんですね。これはそれぞれ、登記をつけたときの登免税の行く先と、謄本を請求したときの登記印紙で納めた場合と、登免税の通常の印紙税で納めたとき、それぞれ行き先がどう違いますか。

倉吉政府参考人 前提といたしまして、登記の特別会計の仕組みをちょっとお話しさせていただきたいと思いますが、登記の仕事、登記の事務といいますのは、今委員の御指摘のありました所有権の移転とか抵当権の設定の登記申請をする、登記申請をして、それに応じて登記をするという登記審査事務というのがまずございます。

 それからもう一つは、今委員がもう一つ言っておりました、登記簿謄本を交付し、あるいは閲覧をさせる。今はコンピューター化されていますので、全部登記事項証明書ということになりますが、そういった登記情報管理事務に分かれるわけでございます。

 実は、そもそも、この登記特別会計を導入いたしましたのは、登記簿謄本等の交付等の事務について事務量が非常に大幅にふえまして、その事務が大幅に遅滞するという問題がありました。これを抜本的に改めるためにはコンピューター化をするしかない。そのための経費を登記関係の手数料で賄うということを明確にするために創設されたというのが登記特別会計でございます。

 それでは、先ほどの情報管理事務ではなくて登記審査事務の方はどうなんだということになるわけですが、登記審査事務の方につきましては、この特別会計創設以前から一般会計で賄っておりました。そういう経緯がありました。そして、そもそもこの審査事務については登録免許税が課せられておりまして、これが一般会計に入っていくということになっておりますので、その結果、一般会計からの繰り入れを審査事務については受けて、登記特別会計を、先ほどの手数料収入から来る分、これが登記情報管理事務に充てられる、それから、登録免許税が入ってくる一般会計部分については一般会計からの繰り入れで登記審査事務を賄う経費にする、そういう二本立てになっているということでございます。そういうことで二つに分かれているということになります。

古本委員 実に明快でして、今回、先ほど中井先生の方からもありましたけれども、新たに在留カードというのをつくるんですね。

 名古屋入管で、いわゆる調製業務と言われる、市区町村にて発行業務を法定受託事務としてなさっておられる外登証ですね、外国人登録証。このものの発行は、実際には、これは資料をおつけしていますけれども、サンプルを入手、いただきましてつけておりますけれども、チヨダ・ジェニファーさんですか、これはMOJとシールを張っていますから、法務省なんですね、外登証は。だから、法務省が本来出すべきものを市区町村でやっていただいている。これを発行するオペレーションルームも少し見せていただいたんですけれども、なかなかのシステムを組んでおられましたね。

 これを新たにICチップを埋め込んだ新しいものにつくりかえるとなると、これまでのインフラ環境をもう一度再構築することになると思うんですね。大体幾らぐらいかかると見込んでおられますか。

西川政府参考人 在留カードの調製費用、作成費用のことですが、それから作成の機器の導入費用につきましては、まだ在留カード及びシステムの仕様が定まっていないので、確たる金額をお答えできる段階ではございませんけれども、現時点で可能な範囲で申し上げますと、現時点の試算ということで大ざっぱな話でございますが、在留カードの発行システムの開発経費として約八億円、それからカード調製機器の賃料、一年間のランニングコストが年間約八億円見込まれるということになっております。

古本委員 その数字を聞く限りは、ある意味、受益と負担が実に見合っている感じがするんですね。

 片や登記簿を電子化していこうというシステムを構築される。少しけたが違いますけれども、それに要する費用は、受益者である登記を申請した方に、その納めていただいた、登免税は一般会計に入りますけれども、登記簿閲覧をしたりする、要するに登記所を利用した、使用収益した、いわば使用料としてこの手数料収入をもらっているわけですね。

 他方、今回の入管業務に関して言えば、それは入管の職員もふやしましょうよと先ほど私申し上げましたけれども、これは施設もなかなか手狭になれば、今後外国人もおいでになる方がふえれば、いろいろやっていかなきゃいけない。

 だから、その分野に関して、実は、大臣、いろいろ特会には悪い特会もありますけれども、受益と負担を明確にさせるという意味では、少なくともこの方々が納めていただいた分については、そういったものに支出が見合うという、見合いという意味でいけば、受益と負担、これは実にわかりやすい話ではなかろうかと思うんですけれども、現実は、大臣に納めることになっているこういった手数料は一般会計に入っちゃっているんですね。結果、今回システム開発に幾らかかるかわかりません。今ああいった八億円とか言われていますけれども、それも危なっかしいですよ。局長、もし上振れしたら訂正しなきゃいけなくなるので、本当に概算の概算として承っておきますよ。

 だから、単に、実際に特別永住者の皆様がこれで利用しなくて済むようになれば非常に便利になる、これはまことにもって結構なことだと思うんですけれども、引き続き利用なさる方もおるわけでありまして、この手数料収入というものとそれにかかわるインフラ設計費用というものを少し見合いで考えるという発想は、大臣、ないんですか、ちょっとにわかのお尋ねですけれども。ちなみに登記はそうしているんですよ。

西川政府参考人 今現在、外国人登録証明書については無料ということでやっております。

 それで、在留カードはどうかということになるんですが、上陸の段階で在留カードを発行する場合、これについては料金を徴収するのはなかなか困難だというふうに思われます。これはなぜかといいますと、ほかの国も、上陸段階で何らかのカードを発行している国はございますけれども、その段階で料金を徴収することは余りない。

 ただ、その後、我が国にいまして、例えば変更するとか、それから更新をする、この段階は現在でも手数料を徴収しておりますし、今後、在留カードの利便性等も考えて、その金額をどうするかについてはさらに検討していきたいというふうに考えております。応分の負担はしていただくという考え方も大いにあろうというふうに思いますので、検討させていただきたいと思っています。

古本委員 やみくもに、いわれのないものを徴収されるとこれはいけませんけれども、少なくとも、この入管という一つのプラットホーム全体を使う人はだれかといえば、日本人が出国する場合と外国人がいらっしゃる場合、また再出国、再入国する場合。それぞれの方が受益と負担し合えば実に明快じゃなかろうかと思うんですけれども。

 似たような話が、実は、これは国交省になりますけれども、空整特会もそうですね。空港使用料、空港の旅客施設サービス利用料とか、ありますね、出国するときにあの印紙が。ああいったものも一度研究していただいて、実に見合うんじゃないかなと。課題の提起にとどめたいと思います。

 さて、きょうは済みません、警察にもお越しをいただいていまして、大事な観点に気づいたんですけれども、実は、外登証がなくなると暮らしが不便になるんじゃなかろうかという、我が党の中の議論でも、部会でも随分出ておりました。

 外国人の働いておられる方がなぜ日本に来るかといったら、稼ぐために来ているわけでありまして、それをお国の兄弟や親に送金をなさるということによって、ある意味、目的が完結していると思うんです。その目的を完結させる一番大事なところでいいますと、実は、お配りしている資料の最後ですけれども、過日、財務金融委員会で資金決済法という法律が新たに、衆議院では可決をされておりますけれども、並行して、犯罪収益移転防止法、いわゆるマネロン法ですね、こういった法律が既に施行されております。

 これは、どういう場合にこういうものが求められるようになるんですか。銀行の窓口に行ったときに、ある一定額以上を送金しようとすると、外国人、日本人で何か彼我の差はあるんですか。どんな感じになっていますか。

宮本政府参考人 外国人の国外送金ということでの御質問かと思いますけれども、犯罪収益移転防止法上は、マネーロンダリングでありますとかテロ資金供与の防止の観点から、銀行等が、十万円を超える現金送金を扱う場合に、顧客が外国人であるか否か、送金先が外国であるか否かを問わず、一定の公的書類の提示を受けるなどして本人確認を行うことが義務づけられているところでございます。(古本委員「幾らなんですか」と呼ぶ)現金送金の場合は十万円を超える場合となっております。

古本委員 大臣、つまり、いわゆる出稼ぎに来られて、日本で本当に身を削って稼いだお金を、お国で待っている親兄弟に送ろうという場合に、一万円とかで送るのならいいですよ、だけれども、多分そんな小刻みなことは手数料を考えれば非効率ですから、十万円くらいまとまって、千ドルですか、送ろうといったときに、本人確認に必要な書類で、運転免許証、パスポート、外国人登録証、外登証とありますけれども、現在は、不法に残留されておられる方も結果として外登証を持ち続けているケースがありますね。これはありますか、入管局長。あるかないか。

西川政府参考人 おられると思います。その場合も外国人登録証を出しております。

古本委員 では、今後は、法改正後はその外登証は持てなくなりますね。

西川政府参考人 在留カードは、正規の在留者にしか出さないという予定でございます。

古本委員 マネロン法上の趣旨からすれば、不法滞在している人なのか適法滞在しているかにかかわらず、この法律があるという前提でよろしいですか。それとも、たとえ不法滞在しておられる方でも、現行は外登証を持っておられますから、フィリピンで待っておられる親御さんにこの十万円を送りたいんだといって銀行の窓口に来られた方々は、現状では送金できますね、外登証を持っていますから。これは今後はどうなりますか、警察庁。

宮本政府参考人 犯罪収益移転防止法上の本人確認の義務づけでございますけれども、これにつきましては、その相手方たる顧客、銀行にとっての顧客でございますが、これは不法滞在者であっても本人確認が必要になるということになります。当然のことというふうに理解しております。

古本委員 いや、何かちょっとかみ合っていないんですけれども、現在は、たとえ不法滞在者でも外登証を持っておられるので、本当にフィリピンから出稼ぎに来られた方が身を削って稼いだお金を、三菱UFJへ行って振り込みたいと言えば、外登証を見せて振り込めるんですよ。それが今後はできなくなりますねと聞いているんです。いかがですか。

宮本政府参考人 現行の犯罪収益移転防止法におきましては、顧客の本人確認書類として、運転免許証でありますとかパスポートでありますとか外国人登録証明書といったものが法的に定められておりまして、こういったもので本人が確認できるかどうかによるところだと思っております。

古本委員 では、金融庁に確認します。きょうは金融庁にも来てもらっているんです。

 これは、手数料というと大体幾らぐらいなんですか、日本の銀行で送金する場合。海外送金です。

細溝政府参考人 お答え申し上げます。

 銀行の手数料につきましては、これは規制がない世界で、各行のそれぞれの経営判断でございます。

 それで、海外送金の場合も、自行あて、他行あて、円貨か外貨かによっていろいろ異なりますが、大手銀行で例を申し上げますと、他行あてで三千五百円とか四千円とか五千五百円といったケースがあると承知しております。

 ただ、関係銀行手数料とか円貨建ての手数料とか、さらにこれに上乗せして求められるものもあろうかと思いますので、一概にはなかなかお答えしがたいということでございます。

古本委員 せっかく来ていただいたのにあれですけれども、事前にホームページを見ればこれは書いていまして、百万円送金しようとしても、大体五、六千円でしょう。だから、パーセンテージでいけば、一%に満たないんですよ。百万円送金して、大体五、六千円で大手行で送金できますから。

 ということは、警察庁、今、地下銀行の問題がございますね。実は資金決済法を財金で、私どもも可決に参加しましたけれども、やはり地下に潜っているお金を表に出そうという観点もあったと思うんですよ。

 これは、今、地下銀行と呼ばれる、銀行法に抵触をする不法送金業者からの送金というのは規模はどのくらいあるんですか。

宮本政府参考人 警察におきましては、銀行業を営む免許を受けないで報酬を得て国外送金を代行する者を、地下銀行ということで取り締まりをしておるところでございます。

 警察庁におきましては、犯罪統計上、地下銀行の検挙件数、検挙人員といった集計はしておりませんけれども、平成四年以降平成二十年末まで、警察庁において把握しておる、各都道府県警察がいわゆる地下銀行として検挙した事件、これにおける送金額の合計は、推計でございますが、約七千八百億円でございます。

古本委員 この間で七千八百億、七千数百億円ということは、ざっくり言って一年で大体四百九十億円は地下に潜っているという計算ですね。当然、そうなるということは、本邦の銀行としては手数料をもらい損なっていますし、ビジネスチャンスも逃していますし、何より銀行法違反じゃないですか。

 ですから、今回、諸先生方にも少し課題を提起させていただきましたが、実は、いろいろな社会保障はそれぞれ不法残留されている人でも比較的手厚いと僕は思っております。でも、他方、なぜ日本に命からがら来たかといったら、稼いで、お国で待っている親兄弟に振り込むわけですよ。その送金作業において、実は結果として外登証が奪われてしまうと、ただでさえ地下銀行に潜っているお金を助長することになるんじゃなかろうかと思いますが、警察庁、いかがですか。

宮本政府参考人 この入管法の改正が不法滞在者の国外送金といったものにどのように影響するかというのは、直ちには判断いたしかねるところでございますけれども、いわゆる地下銀行、これは、外国人の不法入国、不法滞在の定着、来日外国人が犯罪を繰り返し行うことを助長するといったこうした基盤になるものでもあることでございまして、警察におきましては、今後とも厳正に取り締まってまいりたいと考えております。

古本委員 地下銀行の手数料というのは、大体どのくらいと言われているんですか。

宮本政府参考人 過去検挙いたしました事件から見ますと、これはさまざまでありまして、一概には言えないところでありますけれども、一回ごとのそれぞれの送金額のおおむね一%程度であろうかと見ております。

古本委員 ということは、結構取っているんですよ。だから、実は三菱UFJのどこか支店に行って適法に送ってもらった方が安心して確実なんですよ。もちろんありますよ、送った先の、そういう現地社会の中で、何やら手配りで親御さんのところに持っていってくれる仕組みもあるらしいんですよ。それはそういう意味では非常に便利なのかもしれませんが、だからといってそれを看過するわけにはいきませんね。ですから、この問題を少し提起しながら、最後にもう一つだけ。

 運転免許証も個人を証明するものとして認められているんですが、外国人が運転免許を取る場合に、不法残留かどうかというのを確認していますか。

深草政府参考人 新たに運転免許を受けようとする者は、住所地を管轄する公安委員会に免許申請書を提出し、運転免許試験を受けることが必要であります。その際、外国人の場合には、運転免許申請書に、日本人の場合に必要とされる住民票の写しの添付にかえて、外国人登録証明書または旅券等を提示することが必要となります。また、外国の運転免許を保有している場合には運転免許試験の一部が免除されることから、外国人登録証明書または旅券等に加えて、当該外国の運転免許証を提示するとともに、その日本語の翻訳文等を添付することが必要となります。

古本委員 ということは、外登証を今後奪われた、奪われたという言い方も変ですね、不法滞在なんですから。それを没収された方は免許は取れない、これでいいですか。

深草政府参考人 お答えします。

 道路交通法上は、不法滞在であることを理由に運転免許証の交付を拒否する規定はございません。

 しかしながら、在留資格がない場合、現状ですけれども、外国人登録証明書の在留資格欄に在留資格なしと記載するとされていることから、運転免許証の申請をした外国人が不法入国や不法残留者であることが判明した場合には、運転免許証の交付手続とは別に、警察としての必要な措置をとることになろうかと思います。

古本委員 済みません、時間が来ちゃったので、もう一言だけ。

 つまり、車を運転するかどうかということももちろんですけれども、実は、日本のこの社会で生きていかれる上で身分証明をするものとして、我々日本人もそうですけれども、免許証というのは大変有効な公的な証明書の一つになりますね。このものが、実は調べると、三年出ているんでしょう。どうですか。在留許可がそもそも一年の人に三年出ちゃっているんですよ。違いますか。

深草政府参考人 運転免許証の期間は三年でございますので。

古本委員 ということは、大臣、これは警察庁ですから、ぜひ一度閣内で懇談していただきたいと思うんですけれども、実にきてれつな話なんですよ。片方で、やれ不法残留者を何とかするんだと言い、他方で免許証はしれっと三年出ているんですよ。しかも、外登証といっても、リニアに、リアルタイムで不法滞在だというのが打てる仕組みに今はなっていませんね。ですから、それを持ち込むことによって、各地方の公安委員会は免許を、知らずに善意で発行してしまっている可能性も実はあるんですね。

 今送金の問題を提起しましたけれども、本人確認に必要な書類という意味で、他方で外登証はこれで没収されることになる、そもそも外国人登録法がなくなりますから、根拠法がなくなりますから。さらには、旅券に関して言えば、適法なビザがなければこれは有効じゃなくなりますね。唯一残る免許証は、何やら可能性として残っているんですよ。ですから、今後は不法滞在している人は免許証を使って送金しましょうということでも言うのかという話になってきますので、ぜひ入管とそこのところがきちっと合うように、決して彼らを不便なあれにしようじゃないかという提案をしているのではなくて、抜けのないような運用をぜひお願いしたいと思っています。

 前段で申し上げました受益と負担の部分については、本当にこういう財政も厳しい折から、より明快にした方がいいのではないかというところも強く課題提起をいたしましたので、よろしくお願いをしたいと思います。

 時間を過ぎまして失礼しました。ありがとうございました。

山本委員長 次に、保坂展人君。

保坂委員 社民党の保坂展人です。

 きょうは、入管法の改正という審議なんですが、前回入管法の大幅な改正は、生体認証、バイオメトリックス、こういった内容でした。実は、この法務委員会でこの法案が上がった後、連休前でしたが、私は自宅でインターネットを見て、法務省のサイトマップを見たら、何と、法案が上がった翌日に、いわばどんなシステムを導入するのかというのが二千ページ以上全部出ているんですね。あれ、法案が上がったばかりなのになと思いつつ、そこから調べ始めたんですが、どうも最近の法改正というのは、こういった我々の法文があるのではなくて、いわば大型の情報システムを設計なさるベンダーというか、コンピューター、情報処理のそういう企業がいわば技術的な可能性を相当程度出した上で、そこに法案を乗っけていく、こういう構図になっているなということを認識しました。今回も実はそうなのではないかというふうに思います。

 その視点から質問をしていきたいんですが、まず入管局長にお尋ねしますが、法務省入管局のいわゆるレガシーシステム、旧型の閉鎖系の、なかなかふぐあいの多いこのシステム、これまでどのぐらいの費用を投下してきたのか。累積ですね、どのぐらいお金をかけてきたんだという話。それから、これを変えましょう、刷新可能性調査そして最適化計画、今やっていますね、これに幾らかけたのか。そして、実は、きょう審議しているのは外国人ですが、日本人も含めて、これは総取っかえするという計画ですね、幾らぐらい見込んでいるのか。答弁していただけますか。

西川政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、当局においては、出入国管理に係る電算システムの運用を開始した当初、特定のベンダーがハードウエアとソフトウエアを一体的に開発した、いわゆるホストコンピューター、これを中心にシステムを構築した経緯があります。これについては、同一のベンダーでなければその後のメンテナンスやシステム改修を満足に行うことができず、結果として、ほかのベンダーの参入が困難な状況、これが問題点としてつくり出されたということでございます。

 このようなシステムは一般的にレガシーシステムと言われていますが、この今までにかかった経費は、すべて合算いたしまして、昭和五十九年から平成二十年度までトータルとして約八百二十一億円ということになります。これは、運用等すべて含めた金額でございます。

 次に、平成十六年度に当該システムの刷新可能性調査を実施した結果、刷新可能性があるとの調査結果を受け、これに基づき最適化計画を策定した経緯があります。当該刷新可能性調査については、平成十六年度の契約金額が約五千九百万円であります。これに基づく最適化計画策定業務委託について、平成十七年度に約九千五百万円の契約を締結しているということでございます。

 今後の見通しということになりますが、システムの最適化計画を策定して、このレガシーシステムと言われている現世代システムを同等の機能を持ったオープン系システムに刷新する、こういう計画になっておりますが、この経費の削減効果ということでございますけれども、年間約三十六億円のランニングコストの削減を目指しておりますが、これは同一のシステムという場合でございます。当局としては、今後法改正に伴う機能追加についても、オープン仕様を徹底することによって、現行システムの運用経費を上回ることがないようにしたいというふうに考えております。

保坂委員 ちょっと聞いたら、入管局の予算の半分がこの費用だというんですね。半分ですよ。八百億円使ってきた。これからまた、今、どれだけ減るかという話をされましたけれども、古本委員が聞いていましたけれども、やはり八億円ということはないんじゃないかと私は思いますよ。やはり相当程度のお金が必要になってくる。

 私、ここで問題点は、こういったベンダーの方々、いわばこれは日立から、日立以外のところも参入できるようにするんでしょうけれども、どんなことができますかというと、あらゆることができるような提案をしてくるわけですよ。とすると、本当に必要なものだけをやるという抑制的な行政じゃなくなるというおそれがあって、一つ伺いたいのは、この最適化計画を見ると、富士ソフトという企業に、いわゆる位置情報サービス、LBSというんですか、移動する人や車等をGPSで追うサービス、これを法務省が発注して、昨年の七月から何か運用しておるというふうに見つけました。

 さらに調べると、法務省の説明では、これはモバイル端末を入管職員が持って、これに、例えば過去手入れのあった摘発箇所であるとか、あるいは注意する対象の箇所などを画面上にマップに示すんだ、こういうふうに説明を受けているんですが、実は、LBSというのはどんどん日進月歩の技術でありまして、それで、法務省の入国警備官が使うにしても、手のひらに乗せて、ノートパソコンで見れるものは手のひらで見れるわけですから、こういうふうにして使っているのかどうかという点。

 それともう一点。そうすると、仮放免の最中だったり、あるいは収容の対象となる可能性のある外国人について、例えばその方が携帯電話を持っていれば、位置情報を発出しているわけですね。そういうことについて使う例があるのか。これは使っているのか、あるいは使う場合もあるのか、この点、明確に答弁してください。

西川政府参考人 委員御指摘のLBSというシステムは、当局の位置情報システムということでございまして、これは、当局の保有している提報の情報、それから過去に摘発等を実施した場所等が登録されて、その情報を地図上に表示し、摘発等に活用しているというもので、御指摘のとおり、平成二十年の七月四日から運用を開始しております。

 ただ、このLBSといった場合に、携帯電話等のGPS機能を利用した位置把握が可能なものを指す場合がありますが、当局のシステムにはそのような機能はございません。また、将来的にそのような機能を付加して、外国人の追跡に利用するということは予定しておりません。

保坂委員 入管法のたしか六十一条の九ですかに、いわば海外からの捜査に対して入管情報を使うということは可能だという規定があったと思うんですが、例えば、そういった人物を、携帯電話の番号がわかっていれば、いわゆる警察等の捜査機関は、電話会社に照会をかけて、その情報を取得して捜査をするということは通常行われていますね。そことのリンクは絶対ないんですか。

西川政府参考人 今現在、システムにはそのような機能がございませんし、そのような機能を付加するという予定もございません。

保坂委員 実は、今回の入管法の先ほどの最適化計画には、たくさんの情報、外国人にかかわる情報、とりあえず在留カードというのができるんですね。この在留カードのナンバーというのは、一人一人振りつけるんですよ、一番からずっと続いて。この在留カードのナンバーをキーにして、いろいろな情報をくし刺しにするという設計になっていますね。その点、どうですか。

西川政府参考人 在留カードの特定のためにナンバーをつけます。それで、ナンバーは在留カードの表面に記載をされます。それから、それ以外の情報もそこに記載をされます。それが一部ICチップに入りますが、そのナンバーを使って別の情報をくし刺しにする、このような予定はございません。

保坂委員 ただ、この最適化計画には、外国人情報、氏名から男女、国籍、旅券番号、在留資格、居住地その他いろいろあって、勤務先の情報とか、最後に、在留カード番号、外国人情報管理の共通管理キーとして活用されるべきだというふうにこの会社は法務省に提案しているんです。おわかりですか。

 つまり、この在留カード番号というのが、いわゆる外国人総背番号制だということじゃないですか、提案している内容は。

西川政府参考人 質問の意味を誤解していたら申しわけないんですが、当然のことながら、ナンバーはございますし、それは当方の、入管が保有する情報の中に、氏名等基本情報もしくは必要な情報と一緒に入っております。

 ただ、その情報については、基本的には入管の目的のために使う情報でございますので、それ以外のものに使うことは、法令による場合を除いてはということになりますが、ないということでございます。

保坂委員 ところが、今回の入管法では、かなり細かい情報も、例えば勤務先の給料が二十五万から二十万になったとかそういうことでも、あるいは職の転変があったとかいうことも報告をさせることになっていますね。

 実は、最高裁判決がこの件で出ていると思うんですけれども、データマッチングということについては、住民票コードをマスターキーとしてさまざまな情報をマッチングさせること、これは国家公務員法の違反行為になるという判決です。平成二十年の三月六日に最高裁で出ております。また、行政機関の職員が、こういった個人の秘密に属する事項が記録された文書を収集したりマッチングさせたということについては、これはいかぬ、こういう判決として判示されていると思うんですが、これには拘束されないということなんですか、入管の見解は。

西川政府参考人 先ほどの御質問の中で、給料の変更について報告義務があるような質問がございましたが、給料の変更については報告義務はございません。

 それから、御指摘の最高裁判決については、行政機関が住民基本台帳ネットワークシステムによる個人情報を収集、管理、利用することについて、憲法に違反するものではないと判示した最高裁判決、その中に、御指摘のようにデータマッチングという言葉が使われている。この判決で言うデータマッチングとは、住民基本台帳法の規定によって許される範囲を超えて、住民票コードをマスターキーとして用いて本人確認情報を他の個人情報と結合することというふうにされております。つまり、この最高裁判決は、個人情報の目的以外の利用や提供は原則として違法であるという当然の理由を判示したというふうに理解をしております。

 ところで、入管の側でございますけれども、新たな在留管理制度において、外国人本人あるいは受け入れ機関からの届け出等により取得する外国人に係る個人情報の利用等についてでございますが、これは、住民基本台帳法の後にできました行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律、その第八条一項、この規制がかかるということになっております。これによりますと、法令に基づく場合等を除いて、原則として目的以外の利用や提供をすることはできないということになっております。

 したがいまして、新たな在留管理制度におきましても、外国人を含めた個人情報保護については十分な配慮がなされるということでございまして、御指摘の最高裁判決が判示するところと矛盾するところはないというふうに考えております。

保坂委員 これは大事なことだから法務大臣にお聞きします。よろしいですか。

 基本的な事柄なんですが、今回の在留カードで、そこに幾つかの情報を入れるという運用をしていくということと、そしてもう一点、入国管理の際に指紋や顔写真をとるという形での運用を行っていますね、こういった情報も取得をしている。この二つの情報は、一緒になるということはあり得ないんですか、それとも、将来は一緒にするんですか。大臣、いかがですか。

西川政府参考人 在留管理で収集した情報、それから空港で指紋の採取をした情報、これを一緒にするということは現在では考えておりません。

保坂委員 今そうおっしゃるんですけれども、かなり細かい計画、工程表がございまして、こういうものをやはり業者の方が作成されているわけですよ、我々が審議を始める前に。

 それを見ると、法務省全体のコンピューターシステムの刷新があるわけですね、大きな話でいえば。そして入管のレガシーシステムの改革ということがあって、コンピューター企業の方々は、こういったばらばらな情報を一元的に統合するというのを提案しているんです。現場の方もそうしたいと言っているんですよ。だけれども、局長は違うと言う。どっちが本当なんですか。大臣、どうですか。

 では、絶対これは統合しないと言い切れますか。

森国務大臣 局長から答弁したとおりでございます。

西川政府参考人 出入国管理システム、これは、旧式のレガシーシステムを基盤としている、従来からのデータベース構造の影響を受けて、すべてのデータを一元的かつ体系的に管理するというふうには至っていないということでございます。

 効率的な情報の利用ということになりますと、データベースを一元化するのが効率的だということになろうというふうに思いますが、他方、データベースの一元化によって指紋情報を直ちに在留管理を目的として使用するということには、それは問題があろう場合も出てくるというふうに思いますので、その辺についてはさらに検討して対応していきたいというふうに思います。

保坂委員 森法務大臣、私の問題意識がわかるでしょうか。

 要するに、本案審議、法案があって、これについて、ここを変えよう、ここを修正しよう、そういう話があって、成立したらその法案に基づいていろいろな準備が始まっていくというのが通常の形ですね。

 ただ、今回の法案も、こういった大きな情報処理を伴うような内容ですね。すると、やはり、事前に業者に対するいわゆる法案の下敷きになるような、技術的な基礎になるようないわば企画提案書なり調査の発注があって、そこからこの法案になっていく、こういう展開なんですね。こういうものを読むと、すべからく、今局長の答弁とは違って、統合していく、一緒にしていくんだ、一元管理していくんだというふうに書いてあるんですよ。それはどっちが正しいんですか。そう書いてあるけれども、そうはやらないということなんですか。

 つまり、こうやって法律が通過しちゃうと幾らでも政令とか個々の運用で変えられてしまうというような、法案審議自身が余り意味がないんじゃないかというぐらいの詳しい内容ですよ。この法案が成立する予定日まで書いてありますよ。

森国務大臣 事前から準備していなきゃ、ちゃんと施行日にできませんから、それは準備することは別に妨げられないと思いますが、いずれにしても、申し上げられることは、個人情報の目的外の利用はしないということでございます。

保坂委員 そうすると、目的外の利用を書いているようなそういう企画提案書はだめだよ、うちの局じゃできないよというふうにはねるべきじゃないですか。これに何千万も払っているわけでしょう。おかしいじゃないですか。目的外利用をしないといいながら、あらゆるデータを一元化するという方向で、年次も全部書いてあって、こういうふうに工程表で統合していこうと書いてあるんですよ。おかしいじゃないですか。

西川政府参考人 私が申し上げたかったことは、上陸審査時において提供を受ける個人識別情報、これは水際対策として使用されるもの、こういうことでございます。その際には指紋情報を取得するということでございます。その指紋情報が直ちに在留管理を目的として常に使用できる、そういう意味で、すべての情報をだれでもがアクセスして使用できる、そういうことは考えていないということを申し上げたかったということでございます。

保坂委員 では、言い方を変えましょう。

 局長、在留カード番号というのがキーになるというお話をしましたね。これは、キーは法務省の中でキーにするということでしょう、入管局の中で。在留カードのチップに入っている情報は、それはすべてのものが入っている必要はない。ある特定の情報でいい。その在留カードの番号を法務省の入管のコンピューターに入れると、入国管理の情報やさまざまな情報が統合されて、一元化されて見れますよというふうにシステムを改革するということによって刷新が図れるんだという内容の提案ですよ。そういうことはあり得るんでしょう。

西川政府参考人 そういうことはあり得るというふうに思いますが、そのキーによって指紋にまでアクセスできるかどうかというのはまた別の話だというふうに考えています。

保坂委員 結局はこれがマッチングそのものなんですよ。

 ですから、私は非常に不思議なのは、今、法務省が法案をつくっているんじゃなくて、企業がつくっているんですね、実際のところ。CIO補佐官ですか、これもアクセンチュアという会社を経た人たちが三人ばかり入って、法務省、検察事務情報ですか、検察の情報もやっているわ、かなりの大きな国民のプライバシーを伴う情報も、そういった企業の御提案の枠に沿って大変なお金を使ってやっている。ここにしっかり監視を光らすべきだと思いますが、こればかりやっていられないので、ちょっと法案の中身にも入りたいと思います。

 例えば、在留資格の取り消しがありますね。ここでDVの被害者などの件がよく言われると思うんですけれども、この法案にある、例えば九十日を経過してしまった場合でも、DVで逃げ回っていることが理由でそれができなかったというふうに認められれば、救済されるという道はあるんでしょうか。

西川政府参考人 入管法第二十二条の四第九号の「届出をしないことにつき正当な理由がある場合」というのがございます。

 DV被害者が加害者に所在を知られないようにするため、住居地の変更届が出なかったという場合については、この「正当な理由がある場合」に当たるものというふうに考えられますので、在留資格の取り消しは行わないことになろうというふうに思います。

保坂委員 あと、午後から参考人でやりますが、一点だけ、研修生、実習生の制度について伺います。

 これはきょうの新聞ですか、中国人の元実習生が提訴をした。これは小渕元総理のおいの方が理事長の協同組合ということですが、月額五万円の研修手当のはずが三万円しか支給されなかった、非常に安い賃金でこき使われていた、通帳と印鑑も組合が保管しておったということで、提訴をされたということです。

 こういった事案について、私はたびたび岐阜に行ったり、時給三百円で、暖房もないところで震えていた中国人の女性たちとか、相当これは、現代の人買いに近いというか、そのものの搾取であるし、大変な人権侵害だな、この制度はもう悪用されている。

 不思議なのは、入管局長、そういう協同組合がどうして続いているんですかということなんですね。こういうものを取り消したり、まさにそういうところには紹介しないというふうに、しっかり悪質なところは締めるということをやらないんですか。これは明確に。

西川政府参考人 個別の事案については別に判断するということになろうというふうに思いますけれども、組合が関与して不正行為という認定がなされますと、現状の制度においても、三年間は研修生の受け入れは停止するということになりますし、それから、本改正を通していただきましたら、省令の改正によって、悪質な事案については三年から五年に延ばすということで、入管局としては、研修生を受け入れさせないということで厳正な対応をしようというふうに考えております。

 また、各団体の解散等につきましてでございますけれども、それは、各団体の設置根拠となる個々の法律に基づきまして、所管行政庁において判断されるということになると承知しておりまして、法務省においても、例えば、不正行為が最も多く認定されている事業協同組合につきましては、不正行為等の認定をした場合は、その情報を都道府県等設立認可庁に提供する。それで、設立認可庁において、当省の情報に基づいて、指導であるとか業務改善命令等の所要の措置がとられるということになっているというふうに承知しております。

保坂委員 これは本当に、例えば中国から日本に来るときに、ブローカーにかなりのお金を払っている。そのお金は、要するに、何の問題もなく帰ってきた場合にまた戻ってくるという、保証金のような、身の代金みたいな役割なんですね。それで、例えばそういった、賃金低いとか未払いがあるなんということで訴えを起こそうとすると、日本の暴力組織によってライトバンに入れられて関空まで連れていかれるなんて、そういうような事態も現にあったんです。これまでも随分ありました。絶対ないようにしていただきたいということを指摘します。

 最後に、ちょっと裁判員制度について、刑事局長に来ていただいていますので。

 この間、もう実施が近いということで、我々も、裁判員制度を問い直す議員連盟というのをつくって、各種の勉強会を開きながらいろいろな議論をしていますが、大体どのような立場の方からの議論でも二つの問題が出てくる。一つは、やはり死刑判決の問題。それからもう一つは、国民に対する守秘義務の罰則の問題。

 但木元検事総長が、NHK「日曜討論」で、私、拝見していましたら、裁判員制度の模擬裁判でしくじったなと思ったのは、どうも期日を急げ急げというばかりに多数決でいってしまった、全部多数決だった、死刑について、重大な人の生命の簒奪というような、こういう究極の刑について、これは全員が一致するまで、みんなが納得するまで、急いで急いでということではなくて、やはり審理を尽くすべきじゃないか、こうおっしゃっていました。また、新聞のインタビューでもそういうふうに言っておられますね。

 これは、元検事総長ですから、民間人の一弁護士の意見ですという受けとめなのか、その後輩の現刑事局長としてこれをどう受けとめるのか。そういうふうにおっしゃるんなら、全員一致というふうに条件をつけたらよかった、これからだって遅くないというのを一つ指摘をしたいと思います。

 もう一点。それは、裁判員裁判に、裁判員になりたいという人は非常に少ないでしょう。読売新聞の世論調査でも、七六%が消極的、なりたくないと。なぜなのかという理由の一つに、一生涯、この評議で見聞きしたことや経過は口外してはならないよという守秘義務がかかっているということですね。半年以下、五十万円以下。これについて、但木元検事総長は、評議のやりとりについて、守秘義務というのはあるけれども、実際に刑事罰がかけられるのは本当にレアケースだ、私はむしろ、評議で自分の考えたことや感じたことを大いにしゃべってほしい、こう言っているんですね。これは私の意見と同じですね。

 とりあえず、自分の意見や、自分の意見を言うには評議の経過を全然言わないことはできませんね。ただし、裁判員裁判の中で、どの裁判官や裁判員がこんな主張をしたとか、死刑死刑と言い続けていたとか、その方の不利益になったりするようなことはやはり厳に慎まなければいけない。裁判中は何も言っちゃいかぬと思いますが、終わってから、未来永劫、死ぬまで、息を引き取るまでこのことは言うなと言っておいて、感想や意見をどんどん言って記者会見してくださいなんて、これは矛盾していますよ。

 どうですか、この二つについて。ちゃんと率直に、しっかり答えてください。

大野政府参考人 ただいま御指摘のありました但木前検事総長の発言につきましては、私も承知しております。ただ、これは、前検事総長ではありますけれども、あくまでも個人としての御発言でありますので、法務当局の立場からそれについて、その御発言を取り上げてコメントするのは本来適切ではないというふうに考えております。

 ただ、今、その但木前総長の発言はともかく、そういう趣旨についてお尋ねがありましたので、私が理解した限りで、それに対する法務当局の考え方を申し上げたいというふうに思うわけでありますけれども、まず、死刑の関係であります。

 但木弁護士が言われていることは、死刑のような重大な結論に至る場合には、安易に多数決による評決を行うのではなく、十分な評議を尽くして全員一致の結論に至ることが望ましい、こういう御意見であるというように承知しております。実際に、裁判員が参加する合議体におきましても、評議を尽くすべきことは当然であります。但木弁護士の御発言も、そうした評議あるいは評決の運用のあり方について発言されたものであるというように理解しております。

 ただ、裁判員が参加する合議体におきましても、評議を尽くしてなお意見の一致が得られない場合というのはあるわけでありまして、そうした場合には、やはり評決を行って合議体の意思を決定するしかないということでございます。但木弁護士が言われているのは、安易に、すぐに、意見がまとまらないから評決をするというのではなくて、みんなの納得が得られるように十分に評議を尽くすべきだ、こういうことを言われているのだというように理解しておりまして、その点につきまして、法務当局の考えるところと食い違いはないんじゃないだろうかというふうに考えております。

 それから、守秘義務の関係でございます。

 但木弁護士は、特に、裁判員がその経験を語ることがこの制度についての国民の理解や協力を得る上で重要であるという観点から発言をされているわけでありますけれども、しかし、守秘義務が重要でないというふうに述べられたとは理解しておりません。むしろ、評議の中で述べられた裁判員等の意見が外部に漏れることになれば、評議における自由な裁判員の発言が妨げられることにもなるわけでありますし、また一面、裁判員の保護にも欠けることになるわけでありますから、守秘義務の重要性についても当然これは肯定されているというように理解しております。

 今、保坂議員から御指摘がございましたのは、他人の意見ではなく、裁判員の経験者が自分の意見を明らかにすることは許容すべきではないのか、こういうことだというふうに承りました。

 ただ、裁判員が自分の意見や判断について公にする場合であっても、そうした意見と判決結果を照らし合わせれば、ほかの裁判員の意見が推測できる場合もあります。あるいは、一部の裁判員がその意見等を公にいたしますと、ほかの裁判員も事実上同様に意見を表明せざるを得なくなるような事態に至ることも考えられますことから、やはり自分の意見に限ってこれを公にしてもいいんだとすることは相当でないだろうというふうに考えております。

 裁判員の経験を広く国民が共有してこの制度に対する理解、支持を高めていくという観点からどうなのかということでありますけれども、公開の法廷での証拠調べや陳述、あるいは判決の内容については守秘義務の対象となる秘密に該当しておらないわけでありますし、また、秘密に及ばない範囲で裁判員の職務についての、これは評議の感想ということも入るわけでありますけれども、許されているわけであります。したがいまして、そうした経験の共有と申しましょうか、裁判員経験者がその感想や意見を語る上で、裁判員に課せられた守秘義務がどうしようもない支障になるというようなことはないというふうに考えているところでございます。

保坂委員 但木弁護士とおっしゃったけれども、前検事総長ですからね、法務・検察を代表する人物じゃないですか。この裁判員制度施行直前にかなり思い切った意見を言ったと私は思いますよ。さすがポイントを押さえていると思いますよ、意見が全部一緒じゃありませんけれども。なぜ国民の間に忌避感情が大きいのかというポイントの二つが彼が指摘している点だと私は思います。

 国会は立法府ですから、この制度に欠陥があれば大いに正さなきゃいけないということで、超党派で議員立法で手当てをしていきたいということを申し上げて、きょうは時間が終わりましたので、次の機会に譲りたいと思います。

 ありがとうございました。

山本委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

山本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 午前に引き続き、内閣提出、出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する等の法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、群馬県太田市長清水聖義君、日本弁護士連合会人権擁護委員会委員市川正司君、在日本大韓民国民団中央本部団体渉外事務局長ソ・ウォンチョル君、移住労働者と連帯する全国ネットワーク事務局長鳥井一平君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に委員会を代表して一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多忙の中、御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見を賜れば幸いに存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、清水参考人、市川参考人、徐参考人、鳥井参考人の順に、それぞれ十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。

 なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得て発言していただくようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。

 それでは、まず清水参考人にお願いいたします。

清水参考人 ただいま紹介いただきました太田市長の清水でございます。

 ことしは私自身が外国人集住都市会議の座長をやらせていただいておりまして、そういったような関係上、集住会議の全員の総意でありますけれども、入管あるいは住民基本台帳、それらについてここでお話をさせていただくわけであります。

 外国人集住都市会議につきましては、平成十三年に設立をされまして現在に至るわけでありますが、設立当時、非常に地域が混乱をしておりました。これは、入管制度と私どもの考えているものとが余りにも乖離をし過ぎている、現実問題として私たちが住民を確認できないというような状況にあったわけであります。そのために、全体で二十五市が集まって、この問題解決のために国に対して要望していこうというようなことになったわけであります。また、今月二市が加わりまして、二十七市町が参加をしているということであります。

 私どもは、そういったことを中心にして問題提起をやってきたわけでありますが、なかなか現実問題として改善の状況が見られないというようなことで、参考資料を出しておきましたが、平成十九年、皆さん方にそのように要望をしてきたわけであります。

 各会とも、外国人登録制度の問題については実は毎回出ておりまして、この解決なくして現在のいわゆるニューカマー対策等々について私どもの混乱は終わらないというような認識が実はあるわけであります。

 私ども地方自治体は、御承知のように、多文化共生をやっていかなければなりません。日本人だけで云々というわけではなくて、互いに考え方を共有して、同じ地域に住む住民として生活をしていかなければならないということが前提でありまして、こういった今までの状況、いわゆる登録と居住実態の乖離というのが邪魔になっているといいますか、これを何とか早目に解決をしなければならないということであります。

 私どもでデータを出した一つの事例があるわけですが、外国人の子どもの不就学実態調査というのが文部科学省から公表されておりますけれども、私どもでの実態の調査結果を見てみますと、就学年齢にある外国人登録者が七百八十四名いるはずになっておるわけでありますが、その一人一人、一家庭一家庭の訪問調査を行った結果、転居、出国等が百八十一人いたということが明らかになりました。つまり、七百八十四人のうち二三%に当たる百八十一人が登録上の住所には住んでおらない、私どもの把握しているデータと違う状況にあるということであります。

 これは外国人登録と実態との乖離を示す一例でありますが、恐らく、今やっている定額給付金あるいは子育て応援特別手当についても同様の結果が出てくるのではないかというふうに思っております。こういったことが現実問題として起こっているがゆえに、送付した文書が返送されるとか、あるいは課税を続けても当人が居住していないため納入されることなく滞納にカウントされる、あるいは児童手当が振り込み続けられるというようなことなど、多くの支障が生じているということであります。

 そこで、登録と実態が現行制度では問題がある、どうして乖離をしてしまうかということでありますが、まず言えるのは、職権消除の制度がないということであります。

 先ほどの不就学調査のように、登録されている住所に住んでいないということを市町村が確認した場合、日本人であれば市町村が職権で住民票を消除するということができるわけでありますが、外国人登録原票の場合は、その外国人が日本に在留している限り閉鎖することができず、入管の方からの連絡を待って初めて消除できるというような状況、つまり、原票はそのまま残ったままになっているというようなことになります。

 また、転出届の制度がないために、他の市町村へ転出したりしたときに外国人を迅速に把握できないというようなことが挙げられております。また、外国人が在留期間の満了までに再び入国するつもりで出国する場合、再入国の許可を受けて出国しますが、これらの外国人に対しましても、海外転出届の制度がないために市町村における把握が困難をきわめるというような状況になっております。

 さらに、現行の在留管理制度の問題を指摘しておきたいと思います。

 現在の制度においては、外国人登録法上の届け出義務に違反していたとしても、入管法上の処分、例えば在留期間の更新を認めないといった処分に必ずしも直結していないのではないかと思っております。

 当市においては、常日ごろから、窓口に各国語で記載されたポスターを掲示したり、また、土日開庁を行ったり、最近では、定額給付金の支給に当たり、外国人の方々に対し、外国人登録を正確に行ってくださいという呼びかけもしております。しかし、なかなかすべての方に市町村役場において正確な登録を行っていただけていないというのが実情でありまして、自治体側の努力だけでは限界もあるわけであります。

 これが、もし住所の届け出義務を放置し過ぎると在留資格にも影響が出る可能性があるということになれば、外国人の方々の届け出に対しての意識も変わり、今と状況は相当変わってくるというふうに思っております。現在は必ずしもそういうふうにはなっていないということであります。

 こうした市町村の現場の目線から、今般の入管法等の改正案について、次のとおり意見を述べたい、そのように思います。

 まず第一に、現行の外国人登録制度は、在留管理を目的とする制度でありながら、法定受託事務として、市町村がその事務を担っております。他方、現在、外国人は住民基本台帳制度の対象になっていないことから、市町村は、事実上、外国人登録を行った外国人を住民として把握し、各種行政サービス提供の基礎としております。しかしながら、本来、国には国の、自治体には自治体の役割があるわけであります。新制度においては、それぞれの役割分担を明確にした上で、国、自治体ともに、しっかりとそれぞれの役割に取り組むといった制度にしていただきたい、そのように思っております。

 この点について、新たな制度は、在留管理については国が直接行うということを原則としており、自治体は住民基本台帳制度を通じて日本人と同様に外国人住民を把握することにしておりますので、めり張りのきいた制度になっているというふうに思っております。

 第二に、先ほど説明しました登録と居住実態の乖離、これは非常に問題でありますが、この抜本的な解決を図っていただきたいというふうに思っております。

 これについては、住民基本台帳法の改正案においても、外国人も市町村長による職権消除や転出届の対象となるものと承知しております。また、入管法においても、外国人に対し、住所につき、法務大臣をあて先として市町村経由で届け出ることを義務づけた上で、住所の届け出義務の違反が長く続いているような方に対しては在留資格が取り消されることがあり得るとしているとのことでありますが、このような制度が加われば、外国人の方々がきちんと住所を届け出ることは相当担保されるのではないかというふうに期待をしております。

 このことについても、何も制度をきつくするということだけではなくて、やはりお互いの信頼関係、市町村と外国人との信頼関係もさらに増す、非常にいい関係ができると私どもでは期待をしているわけであります。

 第三に、新たな在留管理制度の構築により、法務省は、従来よりも正確に在留外国人の在留情報について把握することが可能になると聞いております。そうして把握された正確な情報をもとに、法務省は、市町村の保有する外国人の住民基本台帳の正確性の確保にも協力、貢献していただきたい、そのように思います。

 外国人の身分事項や在留資格、在留期間の変更あるいは出国といった情報は、住民基本台帳を正確にしていくため必要不可欠な情報であります。法務省から的確に市町村に提供していただくことは非常に大事なことであります。この点についても、別途審議中の住民基本台帳法の改正案において反映されているものと承知しているところであります。

 最後になりますが、外国人集住都市会議といたしましては、入管法等改正案や住民基本台帳法の改正案の今国会での速やかな可決、成立を望むものであります。外国人集住都市会議は、新制度の早期創設、早期施行を従来から要望しております。

 このことについては、会議のメンバーからも、もっとスピーディーにできないものかというような意見もありまして、ぜひ新制度は早急に可決、成立をさせていただきたい。施行まで三年かかると聞いておりますので、実態は三年でも遅いというふうに考えておりますが、中身の濃い十分な準備をして施行するというようなことから考えれば、三年以内に行ってほしいというふうに思っておるわけであります。そういう意味では、一刻でも早い法案の可決、成立を望んでおります。

 少子高齢化とグローバル化の進展する中、今後の外国人のさらなる増加を考えたとき、今、制度の抜本的見直しをしなければ、今後我が国は取り返しのつかないことになるのではないでしょうか。今、外国人集住都市会議は二十七都市となろうとしておりますが、外国人住民が増加し、同様な課題を抱える都市はふえる一方でありますし、集住都市が抱える問題は、全国の自治体においても同様に抱え、あるいはいずれ抱えることとなる大きな課題であるということを今後とも訴えていきたい、そのように思っております。

 以上で私の話とさせていただきますが、ぜひ速やかな可決、成立をよろしくお願いをいたします。

 以上であります。(拍手)

山本委員長 どうもありがとうございました。

 次に、市川参考人にお願いいたします。

市川参考人 弁護士の市川と申します。

 本日は、意見を述べる機会を与えていただきまして、ありがとうございます。私は、日弁連人権擁護委員会の委員をしておりまして、個人的にも、外国人や、日本人と外国人の事件などを取り扱っております。

 今回の私の意見は、お手元にあります資料のうち、会長声明というのがございまして、これが一番直近の日弁連の意見でございますが、この会長声明に沿って日弁連の意見を御紹介するということにさせていただきたいと思います。

 先生方からの御質問につきましては、御質問に対応する日弁連の意見がない、見解がまだないというものもあるかと思いますので、その場合の私のお答えは、私自身の見解によるものというふうに御理解いただければと思います。

 今回の改正案との関係で、前提として、人権という視点から、特に二つの視点が今回必要ではないかというふうに考えております。

 第一に、改正案との関係では、改正案は、国が外国人の在留に関する情報を点から線という形で継続的に把握することを目的としているというふうにされておりますので、外国人のプライバシー権あるいは自己情報コントロール権というものとの関係を検討する必要があると思います。

 近時、情報処理のコンピューター化が進んでいるということが背景にありまして、官庁ですとか会社がそれぞれ持っている個人情報を、横断的にこれを集めまして、統合して、個人の姿を詳細に浮き彫りにするということも可能となるような技術ができております。そこで、判例などを通じまして、自己情報コントロール権、つまり自分の情報が収集され、管理され、あるいは利用され、そしてまた提供されるということに対して、本人の同意によるコントロールを及ぼすことによって、予期しない無限定な収集や利用を防止するという権利が認められてきております。

 第二に、日本社会の中にあって、特に外国人をくくり出して管理の対象とするということとの関係で、これが行き過ぎてしまいますと、外国人を差別的に取り扱って、外国人に対する差別や偏見を助長し、その結果、多民族、多文化の共生する社会の実現を拒むことになってはいけないということがございます。

 以上の視点から、今回の管理の強化について、真に必要なものであるのか、また、必要であるとしても、人権に対する必要最小限の制約であるのかという点について吟味が必要だろうと考えます。

 具体的に見ますと、第一に、改正案では、外国人登録制度は廃止される一方で、外国人登録制度と同様に、特別永住者の方については永住者証明書、その他の中長期在留者の方には在留カードの常時携帯が義務づけられております。

 国連の自由権規約委員会は、一九九三年当時から、永住外国人について、外国人登録証明書を常時携帯させる制度の廃止を求め続けております。常時携帯制度の目的としましては、外国人の情報を即時的に把握する必要性があるんだということとされておりますが、日本人について考えてみますと、在留カードのようなものはございませんけれども、運転免許を持って、それから社会保険にも入り、住民登録もしておる、そういったものを材料に個人を特定しているということでございます。

 外国人でも、特に永住者や特別永住の方については、長年の生活の中で同じような足跡を残していらっしゃるわけでありまして、これ以外にカードを常時携帯させて、カードで即時に身分を証明させる必要性があるのかというと、疑問と言わざるを得ません。外国人だけを対象とすることから、偏見を助長しないようにという観点からも、在留カードと永住者証明書の常時携帯に反対をしております。また、在留カードの不携帯について、刑事罰を科すということも行き過ぎではないかと考えます。

 第二に、在留カード番号についてであります。

 在留カードが、その外国人の身分を証明するものとして、入管、自治体だけでなく、銀行口座の開設、図書館の利用などの生活のさまざまな場面で利用されることが予測されます。その際に、在留カード番号もカード券面から読み取ることができる、あるいはICチップから読み取れるということになりますと、官庁や会社が、在留カード番号と結びつけた形でいろいろな情報を記録、保管するということになります。

 この在留カード番号は、その人だけに付された固有の番号ということになりますので、国の機関が、例えばAの一二三四五番の方の情報を下さいということになりますと、この番号をマスターキーにしまして、預金取引であるとか図書館の利用状況であるとか、そういったその人に関するたくさんの情報を集めることができるということになります。このため、自己情報コントロール権の侵害になりかねないという問題が生じるわけでございます。

 参考になる例としまして、日本人につきましても、住基台帳カードの交付に当たって、住民票コードをマスターキーとして、個人情報の収集、名寄せと言われるようなものが簡単にできてしまうのではないかということが指摘されました。

 そこで、現在、住民票コードをカードの券面には記載しないで、ICチップの、民間業者などからは読み取りできない領域に書き込む、民間業者が住民票コードの告知を求めることを禁止するなどの配慮をしていただいております。今回の在留カード、特別永住者証明書においても、同様の手当ては少なくとも行っていただきたいなというふうに思っております。

 第三に、在留資格取り消し制度の範囲の拡大についてであります。

 まず、改正法案の日本人の配偶者等の在留資格の取り消し事由についてでありますが、この制度は、典型的には、偽装結婚により在留する者を国外に退去させるということであろうと思います。

 この規定の「配偶者の身分を有する者としての活動を」「三月以上行わない」ということの意味するものは、偽装結婚よりも相当広い射程になります。例えば、日本人である夫のDVが原因で別居を余儀なくされているような場合、あるいは日本人である夫がみずからの不貞が原因で家を出てしまったような場合なども、入管の解釈では、同居はしていないので、「配偶者の身分を有する者としての活動」はしていないということになろうかと思います。

 他方で、離婚に関する家裁の判断では、多少事情は違うというふうに思います。DVや不貞の当事者である有責配偶者からの離婚請求については、一年程度の別居では離婚を認めることはないというのが法律家の一般的な感覚であろうというふうに思います。時には、裁判所が強く諭して、もとのさやにおさめるということもあるわけでございます。

 ところが、入管法の世界で三カ月の別居で在留資格を取り消させて帰国させることができるということになりますと、早く離婚を迫りたい日本人の配偶者の側は入管に取り消し制度の発動を求める、これを恐れる外国人の配偶者の側は我慢をしたり妥協をしたりしなければならなくなるということになりますと、一方配偶者の側に不当に有利に働いて、家族関係の法秩序も崩れてしまうのではないかということを危惧しております。

 また、改正案は、九十日間住所の移転の届け出をしないときには在留資格の取り消しの対象となるというふうにされておりますが、この届け出のおくれについては、住基法上それから入管法上それぞれ罰則が設けられておりまして、これに加えてさらに在留資格の取り消しというところまでいくのはやや行き過ぎではないかというふうに考えております。

 第四に、外国人が所属する学校などの機関が、所属する外国人に関して、受け入れの開始及び終了に加えてその他受け入れの状況に関する事項の届け出を義務づけるという点でございます。

 大学などが、入学、退学だけではなくて、その他受け入れの状況ということで、例えば、取った単位の内容、あるいは論文のテーマ、そういったことまでも入管に報告を義務づけるということがあり得ます。

 こういったデータを総合しますと、その留学生の学問の方向、あるいは考え方、こういったこともわかるようになり、憲法上保障されております学問の自由と衝突することになりかねません。また、報告された情報の内容や正確性について、外国人学生の側は、これを確認するすべがございません。このような意味で、学問の自由や自己情報コントロール権との抵触という問題があると考えております。

 こういった一律の包括的な報告義務の問題とは別に、今回新設されます十九条の十八と十九というところでは、中長期在留者の情報の継続的な把握のための調査権限と収集した情報の整理を規定しております。この情報の整理というのは、恐らく、データベース化も想定しての規定と思われます。

 この調査の対象となります情報は、御説明によりますと、入管法の在留に関する処分に必要な範囲内に加えまして、在留の管理上必要な情報を含めるということでございますが、入管法上の処分、審査に収れんしない、一般的な在留の管理上必要な情報を集めるということになりますと、対象が際限なく広がるのではないかというおそれがあります。日本人も含む交友関係であるとか、社会生活全般に及ぶ事柄がどんどん収集をされて、データベース化されるというおそれがあるのではないかというふうに考えております。

 第五に、住基台帳法の改正に関係して、住民票に記載する外国人の範囲に関する問題です。

 今回の住基法の改正は、外国人も日本人も同様に住民基本台帳に記載して利便の増進を図るということで、日弁連も基本的にこの方針には賛成の立場でございます。

 しかし、国の在留管理制度とリンクさせるということで、住民票記載に当たって在留カードや特別永住者証明書の提示を求めることとし、基本的には、在留資格を持っている中長期在留者と特別永住者を対象にしております。

 今回、これに加えて、難民認定申請中の外国人で、在留資格はないものの仮滞在許可を受けて在留中の方についても記載の対象とすることとしている点も評価しておりますが、難民申請中の方の場合、平成二十年を見ますと、仮滞在許可を受けておりますのは、在留資格のない申請者のうちのわずか八・六%にすぎません。仮滞在許可ではなくて退去強制手続上の仮放免許可というものを得ている方も相当数いらっしゃいます。また、申請中で特定活動という在留資格を与えられているのですが、その期間が三カ月以下であるために、中長期在留者に当たらずに住民票の対象にならないという方もあり得ます。

 これに対して、平成十八年に難民異議に対する決定を受けた方の一次からの申請処理期間を見てみますと、平均五百四十五日かかっております。処理期間はむしろ長くなる傾向にあると思われまして、退去強制手続に乗っている方の在留特別許可の判断がなされるまでの期間も、三カ月以内という例は余り多くないのではないかと推測されます。これらの方は国も存在を把握している方でありまして、特定活動の方や仮放免許可者についても住民票に記載するということがむしろ改正の趣旨にも沿うのではないかというふうに考えております。

 最後に、今回の改正には積極面もあると考えております。

 第一に、国連の拷問禁止委員会から勧告を受けました収容施設等視察委員会の設置であります。しかし、こういった第三者委員会は、十分な権限とその人事、予算の面での独立性、専門性が確保できないと実効性がございません。ですから、例えば、各委員会には弁護士会からの推薦を受けた弁護士を委員として入れて、専門性、独立性を確保するなどしていただきたいと考えます。既に刑事施設視察委員会でも同様にしていただいており、御参考にしていただければというふうに思います。

 第二に、拷問禁止条約の国内法化という趣旨から、拷問を受けるおそれのある国への送還を禁止する規定が置かれたことも評価すべきものと考えます。具体的にどの手続の中でだれがこの規定の該当性を判断するかを規定することが、この規定を実効化するためにより必要なことではないかというふうに考えております。

 以上の点が、修正を含めて慎重に審議をお願いしたいという点でございまして、以上が日弁連の意見というふうにお考えいただければと思います。

 どうもありがとうございました。(拍手)

山本委員長 どうもありがとうございました。

 次に、徐参考人にお願いいたします。

徐参考人 在日韓国民団の徐といいます。

 平素、日本国の発展と国民の生活安定のために御尽力され、また、日韓友好親善と在日韓国人の地位の向上のため格別の御配慮を賜っています山本幸三法務委員長を初め各政党の議員の先生方に、衷心より敬意を表します。

 新たな外国人在留管理制度案に対しまして意見を申し述べさせていただきます。

 私は、昭和二十七年、一九五二年に日本で生まれた在日韓国人二世であります。妻も在日二世で、二十八歳と二十六歳の二人の子がいます。父親は、戦前、日本人として九州の炭鉱で働き、同じく韓半島から渡ってきていた母親と縁があって結婚し、終戦までに日本で二人の子をもうけ、戦後、私を含め四人の子を生み育てました。

 現在、歴史的経緯をもって日本に居住する在日韓国人の大多数は、入管特例法によって特別永住資格を持ち、日本で生まれ、日本で育ち、日本に生活の本拠を有しています。長い間、住民として、納税などの義務はもちろん、地域住民として善隣友好を深め、地域社会の一員としての役割を担っております。

 このたびの新たな外国人在留管理制度の導入が、両国間の歴史的経緯をその原因とし居住するに至った在日韓国人が、日本社会で人権を尊重され、今後日本社会でより一層安定した生活を営むにふさわしい待遇の改善となりますよう、法務委員会の諸先生方の特段の御配慮をお願い申し上げます。

 私は、四十三万人の特別永住者を代理してこの席に立っております。私たちの主な改正要望事項を述べさせていただきます。

 新たな外国人在留管理制度の導入におきまして、特別永住者に対しては、歴史的経緯に配慮し、証明書の常時携帯制度から除外することを強く要望いたします。

 特別永住者は入管特例法の対象であって、入管法上の在留資格に該当するものではありません。このたびの改正案において、いわゆる対象外国人ではない特別永住者に対しては、これまでの歴史的経緯に配慮し、対象外国人とは別途に市町村から証明書を交付されるのに伴い、その常時携帯制度からも除外すべきであります。

 特別永住者のほとんどが日本で生まれ、既に四世、五世まで生まれています。実際には二世、三世も証明書を常時携帯していないのが生活上の実態であります。このたびの改正案が、不法滞在者対策などを強化するとして、まだ高校生である十六歳の子からICチップつきカードを受領させ、常時携帯と提示義務を負わせ、それを守らない場合は罰則をもって科すというのは、子ども権利条約を出すまでもなく、大きな人権問題を引き起こすものであります。

 十年前、第百四十五回通常国会におきまして、外国人登録法の一部を改正するに際しまして、次のように附帯決議がなされております。「政府は、次の諸点について格段の努力をなすべきである。」「外国人登録証明書の常時携帯・提示義務等に関する規定の運用に当たっては、特別永住者について常時携帯義務違反が刑事罰の対象から除外された趣旨も踏まえ、いやしくも濫用にわたることのないように努めること。」「外国人登録証明書の常時携帯義務の必要性、合理性について十分な検証を行い、同制度の抜本的な見直しを検討すること。とりわけ特別永住者に対しては、その歴史的経緯等が十分考慮されなければならない。」

 この十年間、日本政府は格段の努力を具体的にどのようにされたのでしょうか。十年前も、私たちは常時携帯の廃止を強く求め、審議もされましたが、結局廃止に至らず、常時携帯制度の見直しを検討するという附帯決議に終わった経緯があります。今度こそは先送りをせず、実態に即して常時携帯制度を廃止すべきであります。

 国連の自由権規約委員会は、現行法の外国人登録証明書については、日本国民には求めていないのに永住外国人に対しても刑事罰等をもって常時携帯を義務づけることは、自由権規約第二十六条に反する差別的な制度であって廃止すべきであると勧告しております。これ以上、この勧告に逆行するような措置をとるべきではありません。

 このたびの新たな外国人在留管理制度の導入に対しては、新たな管理による規制強化と新たな差別が生じる憂慮があるとの声が全国から起こっております。

 入管特例法において、「法務大臣は、」「特別永住者の本邦における生活の安定に資するとのこの法律の趣旨を尊重するものとする。」と規定しており、毎年行われております日韓アジア局長会議においても、韓国側から、常時携帯の対象から除外するように重ねて要望しています。

 去る二月、公明党の大口善徳先生、神崎武法先生の御尽力で、森法務大臣にお目にかかり、私たちの長年の願いである常時携帯制度からの除外を重ねて要望したところであります。

 戦後、初代の出入国管理庁長官を歴任されました鈴木一氏は、次のように述べられております。在日韓国人に対しては、国内問題の一つとして、日本国民に準じた総合的対策がなければ、それは政府の盲点である、国際人権条約の原則だけでなく、彼らの歴史的事情からして、日本に生活の本拠地を有するこれら在日韓国人たちに、地方選挙権を含めたあらゆる権利について内国人と同等の処遇を与えるのは当然と思う、また、国民全体の意識改革が必要だが、日本に住むようになった在日韓国人たちの歴史を知り、彼らの立場に立って考えるだけの心の広さが求められていると。

 戦後日本の発展の一翼を担ってきました永住外国人の存在を含め、今後の日本のあるべき外国人政策を抜本的に見直していく上で、先生方が御自分に何ができるかをこの委員会で真摯に問い直し、審議していただきたいと切に願っております。

 次に、新たな外国人在留管理制度の導入において、一般永住者の負担を特別永住者に準じて軽減されるよう、強く要望いたします。

 一般永住者は、日本政府みずからが日本への永住を許可した者たちであり、長年にわたり納税等の法的義務も果たしております。彼らが証明書の常時携帯をしなくてもよいように、また、わざわざ入管事務所に出向き、諸般の手続や届け出をしなくてもよいように、特別永住者に準じた負担軽減措置をとるべきであります。とりわけ、在留資格の異なる家族の間を分断すべきではありません。

 永住者の場合、そもそも入管事務所に行く必要がなく、再入国のときだけ入管事務所に行けばよいところを、このたびの法改正が導入されれば、今まで市町村でよかった変更届や勤務先などをわざわざ遠方の入管事務所に届け出ないといけなくなりまして、大きな負担増となります。特に、都市部の入管事務所は今でも非常に混雑しており、さらなる不便と混雑が予想されます。

 管理する側の都合だけで法律をつくるのではなく、日本の方々と生活をともにしている一般永住者の負担の軽減や利便性などを、もう少し彼らの立場に立って考える心の広さ、寛容さが求められています。

 次に、新たな外国人在留管理制度の導入におきまして、就職、就学差別が生じることのないよう、特段の配慮を強く要望いたします。

 法務省の業務の一環として、外国人が所属する機関、留学先、研修先、職場に対して、個人単位で状況を定期的かつ随時報告させることを義務づけ、また、外国人が届け出た情報と、外国人の所属機関から受けた情報を照合するとし、これに従わなかったり誤った情報を提供した場合、刑事罰もしくはそれに相応した措置をとるとしています。

 これが導入されれば、特に中小の企業主などは罰則や煩わしさ等を嫌い、外国人及び子弟が採用忌避に遭ったり就職機会を奪われたりして、ひいては就職、就学差別につながるおそれがあります。

 日本で生まれ育った外国人の子供たちが、新制度による管理の強化によって差別的待遇を受け、ひいては民族的差別を助長するおそれもあります。今後、日本の発展の一翼を担う外国人及びその子供たちが日本で住みやすく生きていくために、住民として人権を尊重され、差別なく、ともに暮らしていくことができる新制度にすべきであります。

 日本で生まれ育ち、定住していく外国人の数は年々増加しています。私たち及び子供たちには愛する日本にしか生活の根拠がありません。日本で生まれ育った私たちを、外国籍だからといって、きのうきょう上陸してきた外国人と一緒にして在留管理を強化しようとするのは、私たちの人権と生活を脅かし、私たちの心を傷つけるものであります。

 先進国で人種差別撤廃法がないのは日本ぐらいです。むしろ、人種、国籍差別撤廃法の一日も早い整備が強く望まれています。一つの家族に日本籍、韓国籍、米国籍などを持つ家庭が珍しくなくなりました。このたびの法改正におきましては、特に歴史的経緯を有する私たちの要望事項をぜひ組み入れていただき、何とぞ特段の御配慮と改善がなされますよう、重ねてお願い申し上げます。

 意見陳述の結びに、一九九一年に日韓外相覚書が交わされ、特別永住資格や指紋押捺の廃止、常時携帯制度の見直しを検討することなどを取り決めたとき、当時の海部首相が、日本国民に向け次のようなメッセージを発表しております。少し引用させていただきます。

 我が国には、特別な歴史を有し、私たちと社会生活をともにされてこられた在日韓国人の方々が数多く住んでおられます。これら在日韓国人の方々は、その特別な事情から、いろいろと苦労を重ねてこられており、日本社会において、より安定した地位と待遇を必要としておられます。私は、これらの方々が日本国の社会秩序のもとでできる限り安定した生活を営むようにすることが重要と考えます。私は、世界的な視野に立って、今後の日本社会の建設を進めていくに当たっては、国内におられるこれらの方々と同じ社会に生活する人間として、ともに考え、ともに生きることができるようにしなければならないと考えます。国民各位が職場や地域社会といった日常生活の場において、在日韓国人、さらには同様の歴史的経緯を有する他の外国の方々の立場についての理解と配慮を一層深められますよう心から希望いたしますと述べています。

 この首相のメッセージを想起しつつ、諸先生方に私たちの切なる希望を託しまして、私の意見陳述を終わらせていただきます。よろしくお願いいたします。(拍手)

山本委員長 どうもありがとうございました。

 次に、鳥井参考人にお願いいたします。

鳥井参考人 こういう場で発言させていただくことを感謝しております。

 私は、移住労働者と連帯する全国ネットワーク、略称移住連と申しますけれども、お手元にリーフレットを配付させていただいておりますけれども、その移住連の事務局長を務めております鳥井と申します。

 私たちの移住連は、一九八〇年代からこの日本の労働市場の求めによって急増した移住労働者とその家族、ニューカマーの人々に対する差別、人権侵害や労働問題に取り組んできた各地のNGOや労働団体によって一九九七年につくられた全国ネットワークです。現在、九十の団体が加盟しております。

 また、私自身は、個人加盟の労働組合であります全統一労働組合という、中小零細企業をフィールドとしているわけですけれども、その労働組合でオルグをやっております。ちなみに、最近、職業がオルグなどと言います人はほとんどいません。伝統芸能の部類に入るなどと言われたりもしておりますけれども、私は胸を張ってオルグだというふうに言っておるわけです。

 さて、この全統一労働組合で、一九九一年からいわゆるニューカマーの組合加入が相次ぎました。これまでで四十カ国、約三千名の外国籍労働者の登録がありました。とりわけ南アジア、アフリカなどからが多く、最近は中国の方もふえました。年間、平均で新規に二百件から三百件の相談事例をこなし、そして、同じく年間、新規で約百五十社との交渉などを行っております。また、一九九三年以来、いわゆる外国人春闘に取り組んでまいりました。そのような経験と、移住連におけます全国のNGOのネットワーク活動をもとに、現場からの立場で意見を申し述べます。

 また、今回の改定に対しては、基本的に反対の立場で意見を申し上げたいと思います。

 ただ、私たちは、やみくもに反対を唱えているわけではありません。確かに、今回の改正案は、外国籍住民、移住労働者の置かれている困難な状況や、外国人差別の悪用と助長や拡大によって引き起こされている労働基準の破壊やモラルの破壊がもたらすこの社会のひずみに対する、一定の政府の認識を示したものであろうかとは思っております。

 私たち移住連は、それぞれの分野で、ずっと一貫して、この社会が新しい時代、多民族、多文化が始まっているということですけれども、新しい時代に入ってきていることを、さまざまなところで、加盟団体によっては二十年以上にわたって訴えてきました。とりわけ法務省はもちろんのこと、政府に対しては、省庁ごとの縦割り的、場当たり的対応ではなく、横断的対応と抜本的解決に向けた政策、施策を求めてきたわけです。そのことは、集住都市と言われる地方自治体にとっても認識を共有できるところが多々あるかとは思います。

 そんな私たちに対して、省庁の冷たい対応が長年続いてきました。

 しかし、二〇〇六年ごろから急速に、いわゆる受け入れ論議が沸き上がってきました。これは、人口減少社会への対応が喫緊の課題であるとの危機感からであろうかとも思いますが、いずれにせよ、従来の単一民族国家論からの転換を意識したものであろうと思います。動機に疑問がないわけではありませんが、今般の入管法改正、一括して一言でそう表現させていただきますが、入管法改正が時代の要請にこたえた動きであることは事実でしょう。つまり、多民族、多文化共生社会に向けた政策議論を始めるということにおいては、私たちが求めるところと同じであるということは言えると思います。

 ただ、しかしながら、今般の入管法改正は、余りに拙速と言わざるを得ないのです。

 今起きている問題、つまり、今や既にこの社会がさまざまな分野で外国籍の住民や労働者の存在がなくては成り立たなくなっている事実があるにもかかわらず、単一民族国家という事実に反する建前論によって、多民族、多文化を拒否する余りに起きている社会のひずみや人権侵害、そして労働基準の破壊、壊れてしまったモラルなど、今まさに日々起きている現在進行形の本質的課題への抜本的解決を図るのではなく、これを避けて、外国籍の住民や労働者を管理、監視の対象とするものであり、かつ、そのことが区別、差別を拡大、助長させるものであると言わざるを得ないものです。また、外国人を使い捨て労働力としてみなし、いかに効果的に活用するのかということのみにポイントがあるのではないかとの疑念さえも生まれる内容ではないかと思います。

 例えば、入管法改正案の提出背景といいますか情勢について、このように記述されております。抜粋しますが、「在留外国人の国籍も多様化してきております。このような中で、転職、転居を頻繁に繰り返す方も少なからず見受けられる等、在留外国人の方々の在留状況の正確な把握が困難になってきており、」中略しますけれども、「国民健康保険、児童手当等の市区町村の個別事務に支障を来し、在留外国人に対する行政サービスの提供や義務の履行の確保に困難を生じさせている等の問題も生じており、」となっています。事実そのとおりです。

 ところが、その解決アプローチが全く違っているわけです。在留外国人、法案の言葉を使いますが、在留外国人が好きこのんで転職、転居を繰り返しているわけではありません。安定した職業、雇用があれば、転職、転居が起きないことはだれが考えても明らかなことです。事実そうです。つまり、なぜ在留外国人に安定した雇用がないのか、派遣などの非正規雇用、非正規労働しかないのか、そのことを抜本的に解決する政策、施策が求められているのであり、在留外国人に対する罰則を強化することで対応するというのは、社会全般を見渡した解決ではなく、一層混乱と差別拡大をもたらすものであると言わざるを得ないわけです。

 さて、限られた時間ですので、幾つか具体的な点について述べます。

 個人情報の集中とデータマッチングの問題については、既に述べられておりますから、問題があることだけを指摘し、省略させていただきます。

 所属機関の届け出義務化についても、もう既に述べられておりますが、別表第一の在留資格対象者はもう既に六十五万人にもなり、ともに働き、勉学し、家族を形成し、地域や職場の一員となっているわけです。その外国籍住民や労働者を対象に、企業や公共団体、宗教団体、日本語学校、大学、専門学校などに対して、個人単位で就労状況、在籍状況、研修状況、就学状況を報告させることを義務づけています。これは外国人登録制度にはなかった新たな管理方法で、公権力の介入から独立性を保障されている大学や報道機関、宗教法人までもが法務省の外国人管理を担うことになるわけです。

 例えば、日本語学校や大学、専門学校など教育機関からは、学生の氏名、生年月日、国籍、在留資格、在留カード番号、在籍事実、退学、除籍、所在不明事実などを届けさせます。また、雇用先では、二〇〇七年十月から施行されている雇用状況報告の義務化によって、厚生労働省経由で法務省は情報提供を求めることができることになっています。しかも、届け出事項は、法律ではなく法務省令で幾らでも拡大できるようになっています。これでは、外国籍住民、労働者への行政サービス促進ではなく監視することとなってしまいますし、著しい力関係のアンバランスが生まれ、市民社会に差別を持ち込み、拡大することになるのではないでしょうか。

 次に、在留資格の取り消しについてですが、これも既に述べられているので省略させていただきます。

 同時に、義務規定と罰則等についても、同様の意見が述べられております。

 ただ、一九九九年の外登法改正審議の際に、この法務委員会で附帯決議をしております。その附帯決議では、「外国人登録法に定める罰則について、他の法律との均衡並びにこの法律における罰則間の均衡など、適切な措置につき検討を行うこと。」となっています。今回の入管法改正案では、この附帯決議を無視していると言わなければなりません。

 次に、常時携帯ですが、常時携帯義務については、私と同様の問題に対する指摘の意見がありましたので、これについても省略させていただきます。

 在留カードの記載事項にある就労制限の有無の問題、あるいは所属機関に関する届け出による過度な負担の問題、法文ではなく省令への委任が無限定に行われている問題、自治事務を在留管理事務に従属させる問題などがあります。また、特例法改正案では、前述した常時携帯義務の問題や、依然として管理制度内に置こうとしている問題、超過滞在者、難民申請者の行政サービスからの排除の問題などがありますが、時間の関係上、詳細は配付資料をごらんいただきたいと思います。

 さて、外国人研修・技能実習制度ですが、これもまた、現状起きている問題についての認識は、これまで私たちが繰り返し指摘してきたことが幾分かは功を奏してきたのか、共有されつつあることが入管法改正案の前提認識としてうかがうことができます。しかし、今回の改正案には、この制度についても明確に反対の立場で問題を指摘させていただきます。

 今回の改正案は、基本的に、日本への労働者の入り口として、技能実習制度あるいはその枠組みを固定化させるものであると言えます。

 そもそも技能実習制度は、従来の研修をより実践的なものとして、開発途上国への技術移転を目的としていたものです。それでは今回の改正で設立される在留資格の技能実習は、研修といかなる関係になるのかが不明確、あいまいなものとなっています。ストレートに言わせていただきますと、つけ焼き刃的な、その場しのぎの制度改正案と言えます。

 研修や技能実習を御都合主義的に言いかえていく手法は、厳に戒められるべきです。結果的に、制度のもとで、ある意味希望を抱いて日本に来る外国人労働者、移住労働者に新たな権利侵害をもたらします。国際的な批判を既に受けていますが、多発する不正行為、奴隷労働、人身売買とも言える実態は、労働者を労働者として受け入れないことにすべての問題の根源があることは明白なことです。

 また、今回の改正案では、外国人研修・技能実習制度が、安価な労働力補充としての活用だけではなく、副次的に生み出し、今や主ともなりつつある大きな利権構造をそのまま温存させることとなっています。当該研修生、実習生の個別の労働契約とは別に存在する、送り出し機関と受け入れ機関の労働法を無視した契約の存在に示される不正行為の温床となっている、団体監理型の第一次受け入れ機関への管理の甘さがそのことをあらわしています。

 本来、研修に対する不正行為に対しては、厚生労働省がもっとしっかりすればいいわけです。つまり、従来の労働基準法研究会報告による労働者性についての判断基準認定を、在留資格が研修だということを例外としないとすれば足りるわけです。このような場合にこそ、法務省との横の連携が求められるわけです。

 いずれにしても、この外国人研修・技能実習制度が、研修生、実習生自身への人権侵害や、時給三百円に示される劣悪な労働条件、未払い賃金の横行などの問題だけではなく、労働基準そのものの破壊や企業経営者のモラルの破壊、私は邪悪な欲望に変身する社長と言っているんですけれども、この制度が人を変えてしまうわけです。私たちのこの民主主義社会の柱の一つである労使対等原則を壊してしまっていることに早く気がつかないと、取り返しのつかないことになってしまいます。

 今回の改正案は、この抜本的解決にはならず、かえって労働者の受け入れ論議をごまかすものとなっていると思います。研修制度の厳格な運営と技能実習制度の廃止、そして労働者受け入れの制度設計を正面から議論することが求められます。この社会全体のグランドデザインにかかわる問題です。

 最後に、この日本の社会は大きな曲がり角に来ていることを申し上げたいと思います。既に多民族、多文化は始まっています。冒頭でも述べましたが、外国籍の住民、労働者や、あるいは日本以外にルーツを持つ日本人が、地域、学校、職場の大切な一員になっています。いや、不可欠な存在となっています。

 ここで私は、あえて、いわゆる不法就労者、私たちはオーバーステイと言っていますが、不法就労者について述べさせていただきます。

 一九八〇年代のニューカマーのほとんどが彼ら彼女らでした。しかし、彼ら彼女らはこの社会に何をもたらしたでしょうか。犯罪の温床となった事実はどこにもありません。それどころか、この二十年以上にわたって日本の経済活動を下支えしてきました。

 私は、いわゆる半減化政策を恩知らず政策と言っているわけですけれども、なぜなら、オーバーステイの移住労働者は企業活動を活性化させ、私たちの日々の生活を支えてきました。ある者は、金属プレス、メッキ、ゴム、プラスチックなどの製造業で、ある者は建設や解体の現場で、ある者は居酒屋でいやしを提供しました。ある大手居酒屋のチェーンの店舗数拡大の大躍進の陰に、彼ら彼女たちがいたことは周知の事実です。

 サービス残業に抗議の声を上げ、未払い残業代支払いの先駆けとなったのもオーバーステイの彼ら彼女らでした。また、ある者は配偶者となり、地域の重要な一員ともなっています。そして、総じてオーバーステイの彼ら彼女らは、私たちに地球というものを意識させること、つまり世界の一員であることを認識させるものとなったのです。

 ところで、今回の入管法改正案は、この日本が地球の一員、世界の一員であることを意識したものとなっているでしょうか。国連あるいはILOの条約や勧告など国際規範との関係についての検証が不十分ではないでしょうか。

 この社会の労働力としてのオーバーステイ移住労働者から、日系労働者、そして外国人研修生、技能実習生と変遷をしてきましたが、その場しのぎ的な受け入れや、監視、管理強化を入管法改正で拙速に行うことは、今大きな曲がり角に立つこの日本の社会にとって取り返しのつかない禍根を残すことになります。

 もう一点、拙速について指摘します。今回の入管法改正によって、管理、監視の対象あるいは影響を受ける人々に対するヒアリングなど、当事者からの声を余りにも聞いていないと思います。

 どうか、外国籍住民、労働者を大切な地域の一員、職場の一員として、この社会を支え、担う一員として位置づけた政策、施策が必要です。今回の改正案は、次の社会に対する広範な議論が欠如していると言わざるを得ません。これからの多民族、多文化共生社会について、出入国管理という視点だけでは政府の施策は不十分であると言わざるを得ません。外国籍住民、労働者を管理、監視、排除の対象としてではなく、よき隣人、働く仲間として共生していくための法律改正、政策、施策をお願いしたいと思います。

 どうもありがとうございました。(拍手)

山本委員長 どうもありがとうございました。

 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

山本委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。武藤容治君。

武藤委員 どうもありがとうございます。

 私は、岐阜県の第三区といいまして、市長さんにはよくわかりますけれども、棚橋先生が岐阜県の大垣なんですけれども、そこの近くにおりまして、御多分に漏れず、外国人の方が今大変ふえて、いろいろお仕事についていただいて地域を支えていただいております。

 きょうは本当にお忙しい中を四人の参考人の方においでいただいたので、今もお話ありましたように、慎重審議の中の一環で、きょうは参考人ということで皆さんから御意見を賜りたいと思います。

 私も二十分しか時間がないので早々にやりますけれども、拙速という話もございまして、いろいろと我々も審議を急がなければいけない部分もありましてあれですけれども、この入管法の改正というのはやはり我々自由民主党の中でももう大変長い議論を今までさせていただいてきています。そして、前回行われました入国のときの指紋の関係からまた一歩進んで、今回はいわゆる総務省のデータと法務省のデータを一緒にしておこうという形の中で、市長さんからもさっき話があった大変切実な問題が各市町村にはありまして、要するに住民票を固定できないというところが一番今大きな問題があって、今回、その中での改正の一歩だというふうに思っております。

 そんなことで、後で市長さんにまたお話を伺いたいと思いますけれども、まず四人の方に総洗いでひとつお聞きしたいことというのは、きょう午前中にも古本先生の方から話があったんですけれども、やはり少子高齢化の大きな社会問題を今日本は抱えています。将来的にはやはり労働人口がどんどん減っていくだろう。古本先生もさっき御指摘されましたけれども、百年後にはもう半分以下になってしまう。

 これは、そういう形の中で、我々としてはやはり先を見て、どういう形でこの入管法の改正も含めて考えていかなきゃいけないのかという一つ切実な問題もあるわけですけれども、ざっくばらんに皆さんからアバウトでお話を伺いたいことは、こういう日本の労働人口という問題に対して、いろいろなそういう入管法の問題はあるにしても、ちょっとおいておいて、お気持ちとして、将来、日本のあるべき姿というのは、皆さんいろいろと立場が違う形でこの関係も今までかんでいらっしゃるので、百年じゃなくて結構です、二十年か三十年後、一体日本はどうするべきだというのは、こういう機会ですから、もしよろしければ参考人にお話を伺いたいと思いますので、市長さんの参考人の方からよろしくお願いします。

清水参考人 集住会議で私がよく述べてきているのは教育の問題であります。

 それは、二十年後、三十年後を考えたときに、家族として永住をしているその子供たちが、必ず成人になり、我々の仲間として、また知的にも、単なる労働者だけでなくて、我々以上の能力を持っている方々も大勢出てくるような環境づくりをしなきゃいけないだろうというふうに実は思っております。

 ですから、今は単に労働者としてのニューカマーでありますけれども、二十年後、三十年後になりますと、単なる労働者だけではなくて、先ほどありましたように、きつい仕事とか汚い仕事とか、そういったものをやるだけでなくて、やはり彼らの中から東大を卒業してもらうとか、あるいはどこかのお医者さんになるとか、そういったことをやっていただいて、私たちのやはりパートナーとして共生の時代をこれからつくり出していかなきゃならない。そのときのために、今ルール改正をきちっとしてもらうことが非常に大事だと私は思っています。

 これは、どこに住んでいるか、何をやっているか、やはりこれは国と地方で共有のテーマとして、彼らと共存していく中で必要欠くべからざるものというふうな認識であります。

 ぜひ教育、あるいは将来の彼らを考えたときに必要なものを法律の中に盛り込んでいただきたい。しかも、これはもう速やかに実行に移してもらいたいというようなことが強い要望であります。

 以上です。

市川参考人 少子高齢化の中での労働問題といいますか、労働人口をどう考えていくかということについて、日弁連という立場で何か意見をということは、なかなかその立場上からもちょっと申し上げかねる部分がございます。

 ただ、個人的に、事実認識としてまずどうなのかということから考えますと、例えば、今、毎年外国人の方が日本に永住していくという方が年間五万人、去年でいいますと六万人ぐらいいらっしゃる。そしてまた、帰化をしていく、日本人になっていくという方、これは顔の様子、髪の色も違うわけですけれども、そういう方が年間、去年で一万三千人いらっしゃる。

 こういった方が年々ふえていく、これはもう現実の問題として、今そうなっているということは我々はまず踏まえなければいけないのかなと。こういった世界の流れの中で、多民族化、たくさんの民族の方が日本社会の中で生活していくということは、やはり流れとしてなかなか押しとどめることは難しいのではないのかなというふうに思っておりますし、またそれを積極的に評価して、新しい形での社会のあり方を探していくというのがこれからの一つの社会の課題ではないかなというふうに私個人は思っております。

徐参考人 二、三十年後の日本のあり方といいますか、自分は、外国人の定義、それから日本国民の定義も含めて、新たな定義の仕方が必要であろうかというふうに考えております。

 私自身がもう五十六年、日本で生活して、なお外国人という処遇の状況ですが、日本におられる外国人の方々は、自分が見るところは三つに分けられるだろう。一つは、もう長くおられて、いわゆる定住、永住していく在日、それから、数年おって、商社マンとかいろいろな方々は駐日、それから通過外国人と大きく三つぐらいに分けられるのかなと思うんですが、もう在日になった方々は、いわゆる日本国民に準じた扱い方をして、幅広く受け入れていかなければ、日本がこれからどうやってアジアの中で、また世界の中でやっていくのかなという危惧を率直に覚えますので、そういった意味で新たな定義づくり、幅をつくって、そういった私どもは共生のシステムをつくるべきだというふうに考えております。

 以上です。

鳥井参考人 労働者人口の減少についてですが、基本的にはやはり入り口の問題があると思います。この入り口を、残念ながら日本の場合には働くということについての在留資格がないわけですね。労働者を労働者として受け入れる在留資格といいますか、これについてどうしていくのかということについて早急に検討する必要があると思います。

 先ほども申し上げましたけれども、今のところ技能実習というものでしかない、あるいはスキル別のものはありますけれども、今必要とされている、あるいは農業や漁業、それから製造業のところでの働き方というものがないわけですね、あるいはサービス業もそうですけれども。一つは、この働き方の在留資格をどうするのかということは早急に考える必要があると思います。

 もう一つは、今述べられましたけれども、これからの社会というのは日本人と外国人という分け方ということではもう考えられなくなってきているのではないか。

 私はよくいろいろなところで言っているんですけれども、私の息子は今高校二年生で、東京の江戸川区におりますけれども、小学校、中学校の中で同じクラスにやはり髪の毛の色が違ったり、あるいは肌の色が違ったりする日本人がいるわけですね。そうすると、今までのように、そもそもがそれは差別だというふうに規定はされているんですけれども、日本人はどうしても外見だけで判断をして、日本人か外国人かという判断をする。そのことだけではもう済まされない社会になってきているんだということを私たちは認識する必要があると思うんですね。

 ですから、法律、制度、政策もそういう実態に見合ったものとして考えていく必要があるだろう。必ずしも日本人を一つの形に当てはめて考えていくと、この政策、施策は間違っていくだろう。

 それから、教育の問題もありますけれども、多民族、多文化という現実に目を当てた施策をやっていくことが、いわゆる少子高齢化に対する一つの対応にもなっていくというふうに考えております。

武藤委員 それぞれの立場で、皆さん共生という形でお話をいただいて、ありがとうございます。

 私も、生まれて五十年以上たちましたけれども、余り外国の方に対して違和感というのは正直持っていないタイプです。地元へ帰っても、工場へ行けば、中で一生懸命汗を流して働いているブラジルの方とかは多くなっていらっしゃいますし、あるいは我々は週末にいつも地元におりますから、車で走っていれば、にこやかな笑った顔で、四、五人の中国の方が、多分研修生だと思うんですけれども、町中を走っていらっしゃる。

 だから、いろいろさっきから話を伺っていると、やはり雇用という問題で、正直申し上げて、非常に劣悪な環境の中で働かされている中国の方も、私も知っています。縫製組合の方ともいろいろな話をして、どうしてそういうふうになっちゃったのというところの話も聞いて、今回、こういう改正が一つ明るい兆しで、とにかく、やはり共生という意味ではそれぞれの皆さんが権利をお持ちで、しっかりとペイというもの、支払いというものもあるべきだというふうに思っております。

 ですから、一つ一つ解決していく問題だなと思いますけれども、百の全体を見た中で、いろいろ報道を見ていると、どうしても悪い話が集中して出てきますので、皆様、特に現場をよく知っていらっしゃる方ですから、今回の改正も前向きに考えていけば、先ほど太田市の市長さんがおっしゃられたように、その居どころがわからなくなっちゃうというのが、いろいろ話を聞いていると、今一番そこが最大の大きな問題ではないのかなと思っております。

 ですから、雇用の問題、いろいろな形で我々もしっかり皆さんと一緒に勉強しながらまだやらなきゃいけないと思っております。

 ちょっと話を先に進ませていただきますが、清水参考人にお聞きしますけれども、私どもも、市長さんが大変苦労をしているところがあると思います。さっきおっしゃられた教育の問題もそうなんですが、文科省と、いろいろ縦割りの中で日本というのは政治が進んできていますので、最近やっと横割りというのか横軸をつくって、それぞれ連携をし合いながらという形で、省庁連絡会議とかいろいろ開かれています。

 太田市は特に日本でも最大数をお持ちになっていらっしゃる外国の方がいらっしゃるので、教育について一番困られている点が一つか二つあると思います。いわゆるお金の問題もそうだと思いますけれども、いかに参加させるかとか、そんなようなことを、ちょっときょう参考人にお知らせいただければと思います。

清水参考人 集住会議が始まったころ、高校への進学率が約四五%ぐらいの外国人、特にブラジル、ペルー、南米系の方々であります。それが現在は八五パーまで来ました。しかも、学校に通う数も現在ふえまして、外国人学校に行っている、ブラジル人学校に行っている人と比べますと、大体三対一ぐらいで公立の学校に来ている方が今非常に多くなってきているというような状態であります。

 ですから、それをするために何をしたらいいか。これは国にもいろいろ要求しましたが、何も国はしてくれません。仕方がなしに、うちの方でブラジルに参りまして、先生方を募集して、先生をブラジルから連れてきました。

 これはなぜかといいますと、彼らに生まれた子供たちが母国語を忘れてしまうというのは非常に悲劇であります。ですから、母国語をちゃんと覚えながら日本の勉強をして進学していくというシステムをつくりたいというようなことで、教育には取り組んできました。

 結果として、今言ったような八五%、恐らくもうすぐ九〇%程度の高校進学率になるというふうに思っています。

 その際にぜひお願いしたいのは、母国語を忘れない、例えば南米系の今ニューカマーと言われている人たち、これをやはりつくっていくということが教育の分野でも絶対に必要である。そのためには、やはり入管法の改正をやって、太田市に住んでいるということをきちっと確立してもらいたい。子供たちが太田市にいますよ、太田市にいることによって私たちが教育の機会を彼らに与えることができるということになるわけでありまして、太田市に在住しているのか、仙台にいるのか、わけのわからない状況というのを一刻も早く変えてもらいたい。そのことによって、サービスあるいは彼らの行政需要に対応する我々の行政の供給ができるというような筋書きになっていく、そのように思っております。

武藤委員 私も、随分前に法務省さんからこのレクチャーをちょっと受けました。ですから、その辺の移動に対する配慮というのは今回相当されているというふうに判断しておりますので、御期待がかなうように精いっぱい努力をまたさせていただきます。

 それで、もう一件、教育の問題と、一つ気がかりなのは、例の社会保障の関係。

 これは、この景気ですので、日本人でも最近ちょっとお払いいただけない方が残念ながらいらっしゃるようですけれども、外国の方のその辺については日本人と差異がないと思ってよろしいのかどうか、もし実態がわかればお教えいただければと思います。

清水参考人 数字は把握しておりませんけれども、やはり国保の加入が非常に悪い。これは外国人特有のものなのかはわかりませんが、非常に悪い。現実問題として、もう要らないよと、滞納をカットしてしまう率は外国人が圧倒的に多いわけであります。

 ですから、やはり国保に加入したり、あるいは二十年後、三十年後を考えて、介護保険にも加入してもらうというようなことは絶対に必要であります。

 でも、そのためにも、しつこく言うようですけれども、やはり居住はきちっとしてもらわないと何も打つ手がないというような事態に必ずなるということであります。

武藤委員 ありがとうございました。

 残り時間五分でございますけれども、皆さんが先ほどの中で、今度外国人登録制度から変わりまして在留カードというものができますけれども、身分証明ということで、私も日本人でずっといますからあれなんですけれども、今はいわゆる身分証明書を、議員のを持っていますけれども、常時携帯に余りこだわりないんですけれども、皆さんの立場からいうと、やはりこれだけは外してというふうな、どうも先ほどの御意見が多いようです。

 市川参考人にちょっとお聞きしましょうか、やはり日弁さんの関係ですので。

 その辺の抵抗感というのは、解決策というのは何かないんでしょうか、日弁さんから見て、そういうような見方というのはできないでしょうか。持っていなきゃいけない常時携帯というものをやむを得ざる措置としてやった場合に、これだったら許せるというような考え方があるのかどうか、もう一方的にだめということじゃなくて。頭脳明晰な先生ですので、ぜひ御指摘いただければと思います。

市川参考人 日弁連も、先ほど申し上げた自由権規約委員会も、常時携帯については、こういうふうにすればいいというようなものが、ちょっとなかなか今見出すのは難しいのかなというふうには思っております。

 特に、持っているということで、例えば道で歩いている方で、外国人であるとか外国人らしき人に、外登証を見せてください、今度は在留カードを見せてごらんというような形で声をかける、これはなかなか日本人ではあり得ないことなわけですけれども、やはりそういったことが起きてしまってはいけないのかなというふうに思いますし、そうすると、常時携帯ということ自体、そもそも本当に必要なのかなということをもうちょっと突き詰めて考えていくと、私どもはやはり必要性を認めることがなかなかできないなというのが今の現状でございます。ちょっとお答えにならなくて申しわけないです。

武藤委員 ありがとうございます。

 徐さん、民団さんは、私の地元でいろいろお話を伺って、いつもおいしいものを食べさせていただいていますけれども、何なんでしょう、それはやはり歴史的背景でよくわかります、ですが、これから将来、日本が世界との共生というものを果たしていく中で、今の常時携帯という話は将来的にいって大きな問題になるんでしょうか。今までの流れからいうとそうなんでしょうけれども、先を見たらどうかという観点で、ちょっとお話しいただけたらと思います。

徐参考人 常時携帯の件ですけれども、自分自身がもう四十年余り常時携帯させられてきたわけですけれども、我々は長年、こういう言葉は申し上げていいのか、いわゆる取り締まり、いじめ、嫌がらせ等々で非常に痛い思いをしてきて、もう常時携帯と聞いただけで生理的な拒否反応が起こってきている。特に一世の方々はそれはありますし、我々二世は、車を運転するときに、うかつにも家に外登を置いてきて、車を運転していてとめられて、外登がないと、君、署に来なさいと引導される。引導という言葉を使われまして、調書をとられて、そこであらがうと、留置場送りで前科がつく。不携帯だけでこういう状況なものですから、非常に生理的な、長年にわたる歴史がありまして、常時携帯だけはもうよしてくれというのが圧倒的な声なんです。

 こういうことを踏まえた上で、先生がおっしゃっておられる、これから。

 今、法務省の統計では二百十五万、外国人が住んでいますけれども、我々は、実は一番古いオールドカマーなんです。ですから、我々の処遇が一つのモデルになるんですね。

 ですから、我々、長年お願いしていますけれども、やはり、長年おられましたら、日本国民に準じた待遇をどのようにとっていくかという施策、具体的なもの、これがなされないと、どんどんニューカマー、新しい人たちが入ってくる、オールドカマーのきちっとしたものがないのに、じゃ、どうするのかということがありますので、ぜひこの機会にそのこともきちっと見定めて、今後のあるべき外国人政策の抜本的な見直しと、一くくりで在日外国人はくくれないんですね、そこをきちっと精査して、きちっと区分して、順序よく手当てをしていくという措置が非常に大事になります。特に、これから日本は外国人をどんどん受け入れざるを得ない。少子高齢化の問題もあります。そういったこともありますし、国際社会における日本の役割もありますので、その点、ぜひお願い申し上げます。

武藤委員 ありがとうございます。大変参考にさせていただきます。ただ、時間が短いので……。

 私は、外国人研修制度のあり方自体、本当にこれはいろいろあると思います。おっしゃっていることは当然なんですけれども、逆に、今働いていただいている企業側から言うと、この制度自体がなくなった場合には、多分破滅する会社が非常にたくさん出てくるというのが私どもの地元でも実態でございまして、そこにメスを入れなきゃいけないとは十分知りつつ、どういう形でこれからやっていったらいいのか。また先生方がこれからも御質問されるので、参考にさせていただきながら、いい取り組み方を、とにかく希望に満ちあふれた日本をつくっていかなきゃいけないと思いますので、ぜひまたよろしく先生方の御指導もいただくことを心から念じて、参考人への質疑を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

山本委員長 次に、古本伸一郎君。

古本委員 民主党の古本伸一郎と申します。

 参考人の皆様には、本日はありがとうございました。

 前段の委員会の中で政府の見解をただしたわけでありますけれども、適法に滞在されておられる外国の方に関しては便利になる、他方、不法に残留されておられる方には当然に不便になる、こういう至ってシンプルな法改正の趣旨を確認したわけでありますけれども、それぞれの、四方から、今回の改正の趣旨について、今、簡潔に言えばそういう答弁が森大臣からございましたので、感想をお聞かせいただきたいと思います。

清水参考人 私、先ほどからお話ししているように、私どもが一刻も早くやっていただきたいのは、この法改正をぜひやっていただきたい。これは、先ほど乖離の話がありましたけれども、やはり住んでいる人が本当にいるのかいないのかという中で住民サービスができない、これが非常に大きな点であります。住民サービスを日本人も外国人もひとしくしたいというふうに思っていますけれども、ターゲットがいるかいないかわからない、これは自分たちの計画をつくる上でも非常に困った話であります。

 ですから、一点それだけに絞ってぜひ通していただければ、早急にお願いしたいというのが私どもの希望であります。よろしくお願いします。

市川参考人 今回の改正は、大きく言いますと、入管法の改正による在留の管理の強化、あるいは先ほど申した、点から線への管理の強化ということと、もう一点は、住民基本台帳法の改正という形で、住民に対する行政サービスの基盤をつくっていくという両側面あるのかなというふうには思います。

 私どもとしては、前者については、先ほど申し上げたとおり、これは当然人権に対する制約もはらみながらやっていくことになりますので、その必要性や、必要最低限なものかということについての吟味はきちっとしなきゃいかぬというのがまず一つのスタンスでございます。

 後者の住民基本台帳法の改正に関して言えば、その台帳によって、新しく住民を、住民行政サービスという視点からとらえ直して制度をつくっていくということについては、私どもも評価をしているところでございます。

 ただ、今おっしゃっていただいた在留資格のない方について、これから除かれていく方がどうしても出てくるということについては、私どもが一つ懸念しておるのは、先ほど出ておりました、例えば教育の問題で、教育を受ける権利というのは、国際人権条約の社会権規約等で、在留資格のあるなしにかかわらず、子供に対する教育というのはしなければいけない、それは子供の権利であるというふうに定められておりますので、これを実質的にどうやって保障していくのかということはやはり落としてはならない視点ではないかなと思います。

 これは、ただ権利として認められているということだけではなくて、今までは、外国人登録がある在留資格のない方であっても就学通知が行って、そして就学を促すということができていたわけですけれども、今後はそれができなくなってしまう。つまり、住民票に記載されていないということで、住民として把握されなくなってしまう。そのことから、実質的にはなかなか学校に行く方がいなくなってしまうのではないか。そういうことがないように何らかの手当てができるのか、どうすればいいのかということは御検討いただきたいなというふうに思っております。

徐参考人 このたびの法改正は、犯罪対策、不法滞在者対策として出てきておりますし、あわせて、適法に在住する者の利便性ということで、法務省が管理を一元化するという方向ですけれども、それは一定の理解はできるんですが、ただ、拝見していましたら、余りに管理する側の、つくる側の意向が反映され過ぎておりまして、もう少し、管理される側の、ここに適法に住んでいる人たちのいろいろな生活実態をもっときちっと組み入れて、きめ細かいものが必要であろうかと思います。

 特に懸念されるのは、罰則規定が余りに厳しいのではないか。適法にここに住んでおる方々に対するいろいろな変更届、いろいろな届け出があるんですけれども、これが刑罰、刑法に準じて非常に厳しいものがあるということは、今後やはり日本で永住、定住していく方々とともに生きていく場合には、これはどうかなと。

 といいますのは、今、実際に我々は、近くに皆おるんですが、もう国籍が国際化しているんです、一つの家族の中に。その中にいろいろな分断をつくるということで、逆に壁をつくっていくということで、いろいろな支障があると思いますので、私は、この法務委員会におきまして、やはりもっときちっと精査されまして、きちっときめの細かい手当てをしないと、後々禍根を残すのではないかというふうに感じております。

鳥井参考人 今、午前中の審議のことをお聞きしましたけれども、そのように、適法に滞在している者とそうでない者ということの分け方がこの入管法改正でできるのかどうかということについては、非常に疑問に感じます。

 今、他の参考人の方もおっしゃいましたように、現在適法に滞在されている方に対しても、外国籍ということだけで非常に厳しい罰則規定がある。これらについて、精査がやはり不十分ではないかなというふうに思います。実態に照らし合わせて、その罰則に当たるものに対応するものがあるのかどうかということについて、もう少し慎重にといいますか、拙速と私が申し上げていますのは、速いことを問題にしているわけではないわけですね。内容をもう少ししっかりとやっていただきたいというのが私どもの意見です。

古本委員 実は、データを紹介しますと、在留外国人の資格別内訳という法務省の資料なんですけれども、平成十六年には永住者というのは三十一万人、それが平成二十年には四十九万人でありまして、シェアでいきますと、平成十六年には一五%だったものが、二十年には二二%になっているんですね。これは恐らく、日本人の配偶者であったり、先ほどの、ブラジル人の方々が日本に長くいて功績が認められ、永住が認められるケースやら、いろいろあると思うんですね。

 それから他方、特別永住者が四十六万人でシェア二三%でいらしたのが、平成二十年には四十二万人でシェア一八%まで減ってきているんですね。恐らくこれは、だんだんとその数が減ってきているということで受けとめるんです。

 そうしますと、いかに共生していくかということに恐らく尽きると思うんです。二、三、具体の話なんですけれども、いろいろ外国人労働者の窓口をしていらっしゃるということですが、働いて稼いだお金をお国に、親兄弟に送金をする場合というのは、大体、知っていらっしゃる方でいくと、日本の三菱UFJ銀行の窓口から振り込みに行くのか、残念ながら、銀行法違反に当たる地下銀行といいますか、いわゆる非合法の銀行を通じて送金する人が多いのか、感覚からいうとどっちが多いですか。

鳥井参考人 正直申し上げまして、二十年前と今は大きく変わりました。議員御指摘のとおり、二十年前は、必ずしも正規のルートではないということもあったわけですけれども、最近は、ほぼ通常の銀行からの振り込みというのがふえているというふうに思います。

古本委員 ところが、不法残留なさっている方については外登証がこれからは出なくなるわけですね。今、法務省の不法残留者でも外登証を、例えば太田市長が出してくださったおかげで、法定受託事務として出してくださったおかげで、日本の社会において、市民生活において支障はぎりぎり来していなかったと思うんですけれども、銀行の窓口で振り込むにも、外登証がないと十万円以上はお国に送金できなくなるんですね。これは、別途マネロン法の規制、マネーロンダリングを規制するためにやる、これ自体は必要なことだと思うんですけれども。

 それから、実は、単純に外登証を、不法残留の方については没収というんでしょうか、今後、無効にするということに関して言うと、実は今、太田市に住んでいらっしゃる外国人の方は、今後は銀行の窓口では送金できなくなる懸念があるんですけれども、いかがですか、市長。

清水参考人 私の立場から、ほとんど答えられない質問なのであります。

 ただ、不法滞在そのものは、やはり原則よくない。よくないといえばよくないですね。我々にとっても、そんなに何ら益するものはない。共存していくのには不適な位置づけであるというふうに私は思っていますし、振り込めないのを承知で不法滞在しているなら、それはそれで仕方がないんじゃないですか。

 以上です。

古本委員 実は、これは先ほど警察庁から聞いた資料ですけれども、七千八百億円ぐらいが地下に潜っているらしいんですね。ですから、せっかく日本で付加価値を生み出して、本当に身を削って稼いだお金であれば、お国で待っておられる御家族もいるでしょうから、できれば日本の金融機関を使って適法に送金していただきたいと思っているんです。

 実は、その懸念があるということなんですけれども、感想があれば。

鳥井参考人 議員御指摘のとおりだと思います。

 今回の入管法改正では、その点が非常に懸念されるわけですね。つまり、現在、いわゆる不法滞在、非正規滞在の人たちがこの後どのようにしていけばいいのかという道筋が見当たらないんですね。ですから、地下に潜ってしまうということが一番懸念されることです。

 私どもとしては、このことについてよく検討していただきたいなと。つまり、先ほどお話がありましたけれども、実は、オーバーステイの人たちは現に働いているわけですね。税金も払っておるわけです。この人たちをどうしていくのかについて、ただ単に帰れというだけでは解決はつかない。この人たちをどうするのかということの道筋を、ぜひとも御検討いただきたいなというふうに思っております。

古本委員 それから、徐さんにお尋ねしたいと思うんです。

 今、一つの家族の中でいろいろな国籍を有する家族の形態というものが生まれているということでもありました。それから、太田市長からは、教育の問題が心配だという、御著書を拝見いたしましても、ブラジル人の子たちの教育のことを書いておられました。

 実は、事前に文科省から外国人学校のデータを入手していたんですけれども、今インターナショナルあるいはそういう南米系学校、韓国学校、朝鮮学校、いろいろあるんですが、全体で、学校教育法百三十四条に基づく各種学校という扱いになっておりまして、別途都道府県知事の認可を受けておられるということなんです。家庭内で、この人は日本人で、こちらは韓国籍で、それで何か差があるということになると、これはまことに家庭内でぎくしゃくいたしますし、他方で、学校の中で仮にそういう差があるとしたならば、どうなるかということなんです。

 徐さん、要するに、韓国の特別永住者の子たちというのは、大体、韓国学校に行くんですか。朝鮮学校に行くんですか。それとも、日本の学校に行かれるんですか。

徐参考人 我々は、九七%以上ですかね、日本の学校に通っております。というのは、韓国の学校は四つしかないんですよ。東京に一つと近畿に三つと、限られていますので、ほとんどが日本の学校にずっと通っているという状況です。

古本委員 実は、先般の当委員会で自民党の先生がお尋ねになっていて、私も気づいたといいますか、へえっと思ったんですけれども、今回、有効な旅券を持っておられるということが条件になって、今回の改正にはいろいろ御不満が、不十分だというおしかりも随分いただきました。

 一方で、特別永住者の皆さんについては、少なくとも、今まで再入国の審査を受ける場合には手数料をちょうだいいたしております。その金額が、これは年間で、例えば平成十九年ですと二十六億円に上る手数料を日本国政府としてちょうだいいたしております。この専らが、国別の分析はできませんけれども、特別永住者の方がどこか海外旅行へ行ったり、あるいはお国に帰られたりというときに多分払われたものだと思うんです。これが今後は、基本的には免除といいますか、経済的な負担はなくなるということになるんです。

 このことについては評価していただけるんでしょうか。

徐参考人 今回、公明党の大口先生や皆さんの御尽力もあったんですけれども、長年の、もう何十年ですか、自分だけでも三十年以上運動してきましたので、非常に進展したと高く評価しておりますし、全国を回ってみると、皆さんも今回のその件に関しましては非常に喜んでおりまして、三年後でなくてすぐにでもしてほしいということです。

古本委員 これはそういうことになるんですけれども、他方で、特別永住者の中の、日本に今いらっしゃる、いわゆる在日と言われる皆様の中に、韓国籍の方と朝鮮籍の方がまたいらっしゃいますね。ですから、この問題がもしかして、こういう学校の子供たちのレベルにおいて何か同じ学校の中に混在すると、また話がややこしくなるなという懸念があるんです。

 実感として、このインターナショナル、それぞれ外国人学校がありますけれども、二つのお国の方が混在している学校というのはあるんですか。

徐参考人 若干あるというふうに聞いております。これはいたし方ないと思います。個々の親が子供にどのように教育させるかということもありますので、それはいたし方ないと思いますが、ほとんど余り例はないんじゃないかなと思うんですけれども。

古本委員 そうすると、どちらかに学校の単位で分かれているという感じなんでしょうか。

徐参考人 詳しくは私もつまびらかにしておりませんけれども、と思いますね。やはりおのずと分かれますし、特に私どもの認知では、朝鮮学校というのはやはり思想教育、北を云々ということを言っておりますので、韓国籍の者は、例外はあるかもしれませんけれども、基本的にはそちらには行かないというふうに考えております。

古本委員 そういう意味では、同じ学校の中で、パスポートの色も違い、そもそも旅券を有効なものを持っているかどうかの違いによる差によって、子たちが何か心が傷つくという懸念は余りないということでいいんでしょうか。

徐参考人 今の件に関しましては非常にあると思いますね。それはまた別の問題で、有効な旅券は何をいうのかということもありますけれども、いわゆる朝鮮籍の者は韓国のパスポートは持てません。

 ただ、人道的に韓国政府が、定期的といいますか、いわゆる墓参団的なもので、臨時の、一回有効のパスポートを一九七〇年代から発行しておりますけれども、これは一回限りで、人道的な措置ということですから、国籍を変えずにということで措置しておりますけれども、基本的には、いわゆる朝鮮籍の者はパスポートを持っていないはずです。

古本委員 時間が参りましたので終わります。

 いずれにしても、足らざるところがあるという御指摘、それぞれの参考人からいただきましたので、また今後の審議に生かしてまいりたいというふうに思います。

 ありがとうございました。

山本委員長 次に、大口善徳君。

大口委員 公明党の大口でございます。

 本日は、清水参考人、市川参考人、徐参考人、鳥井参考人、お忙しいところ、ありがとうございます。

 それでは、時間もございませんので、まず、清水参考人からお伺いをさせていただきたいと思います。

 清水参考人、太田市の市長を長年やられて、集住都市会議でも座長ということで、私は静岡県なものですから、浜松とかが加わっておるわけであります。最近非常に雇用が大変な状況の中で、日系人の方は大変な状況になっている。特に子供にしわ寄せが来ているということで、私ども、これは国がもっと対応すべきだという市長の、また集住会議の本当に強い御意見がある、このように聞いております。

 そういう中にありまして、今回、一番多文化、多民族共生社会を実践されているのは清水市長のところではないかな。教育におきましても、ポルトガル語ができる、しかも、教員はブラジルか日本の教員免許を持った人で対応している。しかも一クラスに三人、国際学級という形でやられている。私どもは非常に先進的な取り組みだと思っております。

 そういう中、やはり行政サービスを提供するには、本当に太田市だったら太田市の住民かどうか、これを確実に把握する基盤というものが今までなかった。これが今の市長のお話だと思うわけです。

 そういう点で、実は、今回の入管法の中で、在留資格の取り消し事由として、上陸して九十日以内あるいは居住地が変わって九十日以内に届け出をしないと在留取り消しの事由に当たる、ここが非常に厳しい、こういう御意見もあるわけでありますが、住居をきちっと正確に把握するという観点からいって、このような取り扱いについてどうお考えになるか、お伺いします。

清水参考人 私は、そこは緩和してあげることが大事かなというふうに思います。

 これは、規則は規則でありますけれども、例えば免許証の更新のときに、どこかへ登録しておくと手紙が必ず来て、あなた、免許証の期限が切れますよという、安全協会ですかね、そこから連絡が来るわけですけれども、同じような形で、居住さえしっかりしていれば、必ずどちらか、あるいは転居先がはっきりするかどうか、登録していない場合でも連絡可能なような形にしておいてあげて、やはりそこは留保すべき期間というものを設けるべきではないだろうか。親の都合で子供たちまで同じような形で日本にいることを拒否されるというようなことがあったら、本当に気の毒だというふうに思います。

 ですから、その範囲を余り窮屈にしないことがいいんではないかなというふうに思います。

大口委員 このあたりは、正当な理由ということを一つのキーワードにして考えていかなきゃいけないなと私も思っておるわけでございます。

 次に、市川参考人、日弁連でこの問題をずっと取り組んでこられたわけでございます。その中で、例えば、国が外国人の生活の細部に立ち入って個人の生活を監視することを許し、外国人が犯罪の温床となっているのではないかという偏見や差別を助長するおそれがある、あるいは、プライバシー権ないし自己情報コントロール権の保障、外国人の差別的取り扱いの禁止等の観点から問題点を含む、こういうふうに今おっしゃっているわけであります。

 そして、在留カードの番号について、これがその中でも非常に大きな問題がある、こういうお話でございますが、その点について、ちょっと御見解を確認したいと思います。

市川参考人 これまでは、カードの番号がどうついているかということはそれほど意識されなかったのかもしれませんけれども、今の情報処理が進んでいる中では、カード番号何番の人が預金をここへつくりました、こういう預金経過ですよとか、あるいは在留資格に関しても、この番号の人はこういう経過をたどってこういうことをしている、図書館でも在留カード番号を控えて、こういう本を借りていきました、こういう形で、番号と結びつける形でいろいろな情報がいろいろなところに蓄積されていく。

 これを、国やいろいろな機関が、例えば、警察が捜査とかいろいろな情報を把握するために照会をかけて、この番号の人と言えば、その番号はその方一つしかございませんので、名前や生年月日とは違う、本当に固有のものでございますから、それで全部情報をごっそりと統合することができるということになってしまう。

 ですから、そういう意味で、住基カードのときにも住基番号というのが非常に神経質に、これを券面に書くべきではないという議論が起きたわけでございまして、今回もやはり同じような配慮をすべきではないか。

 その点、今回、入管法の改正では、どうしても在留管理というのは目的に出てきてしまいますので、個人のプライバシーであるとか情報コントロール権、これは外国人であっても、やはり同じように人権として守られなければいけませんので、このあたりの配慮がやや欠けているのではないか。

 そういう意味で、せめて現行の住基法と同じようなたてつけの保護方針の仕組み、これをやっていただきたいな、こう思っているわけでございます。

大口委員 この問題につきましては、やはり入管という目的に沿った形できちっとやっていかなきゃいけないし、濫用があってはいけないのではないかと思います。また、行政機関による個人情報保護法等も、当然これはしっかり厳守していかなきゃいけないことだと思っています。

 ただ、この番号というものを、要は、外国人が届け出をする場合に郵送でもできるようにとか、利便性を向上するために活用するというプラスの面も私はあるのではないかなと思うわけでございます。

 それでは、徐参考人にお伺いをしたいと思います。

 徐参考人は一九五二年のお生まれだと。ちょうどサンフランシスコ講和条約があって、特別永住者、韓半島から来られた方が一方的に国籍を失わされる、こういう状況があったわけです。一九四五年には選挙権も剥奪されている。そういう点で、在日韓国・朝鮮の方々の歴史的経緯というものは、私ども日本人としてもしっかり銘記しなければならない、こういうふうに思っておるわけでございます。

 そういう中にありまして、これは十年前の衆議院、参議院の附帯決議で、この特別永住者の、当時は外登証、今回は特別永住者証明書の携帯義務については、特に特別永住の方についてはしっかり配慮しなきゃいけない、こういうことで、私どもも、徐参考人を初め民団の団長様以下、一緒に森法務大臣のところにもお伺いしたわけでございまして、そして、やはりこの携帯義務というものは削除すべきではないか、それから、行政罰であっても十万円の過料、これも削除すべきではないか、こういうことを一緒に森法務大臣に要望した次第でございます。

 実際、この行政罰の十万円の過料、これはこの十年間一件もこういう適用がないわけでありまして、もう弾力的運用ということを法務大臣もおっしゃっていますので、実質は即時に身分を把握するための機能は有していないのですね。

 私どもは、やはり衆議院、参議院の附帯決議、立法府の附帯決議は重く考えるべきである、こういう観点からも、今回の特別永住者についての特別永住者証明書の携帯義務あるいは行政罰、こういうものは削除すべきだ、こういうふうに考えておる次第でありますが、徐参考人から、その件について思いを語っていただきたいと思います。

徐参考人 冒頭、意見陳述でも申し上げましたけれども、これは我々の積年の宿願といいますかお願いです。

 我々、もう四十年余り、ずっとこの常時携帯ということで、我々の諸先輩からよく聞きました。僕はそれはなかったんですけれども、昔は家にはふろがありませんから、近場の銭湯に行くんですけれども、だれが外登証を持っていくんですか。そういうところで幾度もやられたとか、昔はそういう時代の影響もあったんでしょうけれども、いろいろな取り締まり、いじめとかいろいろなことを受けてきたと。

 二世は特に、自分は仕事柄、全国を何十年間回っているんですけれども、車を運転するときに、ちょっと家に外登を忘れてきて、検問で外登がないと、これは不携帯だと。不携帯は刑法を適用しますから、それで署に引導しまして、調書をとって云々ということで、不携帯だけで前科がつくんですね。

 この非常に嫌な思いを積年受けてきましたので、皆さんには、特別永住者から常時携帯制度そのものをぜひなくしていただきたい、こういう思いは非常に強いんです。十年前も自分は担当していたんですけれども、これを各政党にお願いしましたが、結局、その廃止に至らず、附帯決議で終わってしまったという非常に残念な思いがあります。このたびはぜひこれを実現していただきたいし、あわせて一つお願いがあります。

 先般、森法務大臣にお願いしたんですが、一般永住者の枠が余りに広いんですよ。特別永住者というのは、一言で申し上げたら、戦前から継続して住んでいる者及び子孫に与えられるものですが、一般永住者の中には、戦前から住んでいて、戦後すぐ韓国に戻って、またすぐに戻ってきた方々が結構おられるんですね。この者たちは特別永住資格が適用されない、継続性がないものですから、一般永住ですね。彼らは三十年も四十年も一般永住なんです。だから、最近五年、十年で一般永住を取った方とは雲泥の差があって、納税額も莫大ですね。

 だから我々は、十把一からげで一般永住をくくるのではなくて、例えば、自分は申し上げているんですけれども、一般永住を獲得して五年もしくは十年経過した者は、できれば日本国民に準じた扱い、もしくは特別永住者に準じた扱いをしないと、これからどうするんですかということを申し上げております。

 そういうことで、今回、諸先生方の御尽力で常時携帯制度をぜひ外していただきたいとお願い申し上げます。

大口委員 戦前、疎開で例えば韓国に戻られた、ただ一九四五年の九月の二日に戻ってこれなかった方は、同じような歴史的経緯があるにもかかわらず、一九四五年九月二日に日本にいなかったということで特別永住者と認められない、こういうこともあるわけですね。

 ですから、要するに、特別永住者、そしてまた一般永住の中でも、いろいろな類型があるということも、本当に今後しっかり議論していかなきゃならないな、こう思う次第でございます。

 そういう中で、みなし再入国許可制度、特別永住者の方は二年以内であればこれは再入国許可を得ないで行ったり来たりできる、これも昨年、当時は鳩山法務大臣の方に要望させていただいたわけでありますけれども、今回これが入ったということでは、私は評価できるのではないかなと思いますし、また、この再入国の許可の有効期間も、一般では三年から五年、それから特別永住の場合は四年から六年、さらに海外で一年更新できる、こういうことになったわけであります。

 そういう点では、この点につきましても私どもの要望を組み入れていただいたのではないかなと思いますが、この点の評価について、徐参考人からお伺いしたいと思います。

徐参考人 実は、常時携帯と相まって再入国許可制度の適用除外は、私ども、長年お願いしてきました。二年前に法務省に参りまして、実は、韓国やアメリカでもこのようにやっておりますよ、ぜひこれは是正してくださいということをお願いしましたし、昨年は大口先生また神崎先生の御尽力によりまして、当時鳩山大臣に時間をかけてお目にかかりまして、私ども、非常にお願い申し上げました。大臣も非常にその意を酌んでいただいて、これはやはり是正しなきゃいけない、簡素化していこうということを明言されまして、我々、今回のこの措置が、非常に積年やっておりますので、非常に前進したというふうに高く評価しております。

 できましたら、もう再入国許可制度は一定の永住資格を持っている者に対しては、なぜかといいますと、日本に生活の本拠地があるわけですから、日本に戻ってこざるを得ないんですね。そういう者たちに対しては、もう再入国許可制度自体からの適用除外をお願いしたいと思うんですが、いずれにしましても、今回の措置は大きく前進したということで、高く評価しております。

大口委員 それでは、鳥井参考人にお伺いをしたいと思います。

 今、日本は働くために入国するということでは、高度人材といいますか、専門的、技術的な分野の方が入ってこられます。それから、研修・技能実習制度という形で入ってこられます。それから日系人が入ってこられます。研修・技能実習は、実態としては単純労働者を獲得するための形になっている。それから、日系人の方も、本当は、受け入れる以上は教育もあるいは社会保障も含めてしっかりとインフラを整備して受けなきゃいけないのに、それが整備されていないので、こういう経済的な危機になると、そういうところにしわ寄せが来るということで、これは本当に国としても反省しなきゃいけないことであると私も思いますし、また企業もここは認識しなきゃいけないことだと思うんです。

 そういう中で、この研修、そして技能実習につきまして、団体監理型、ここが本当にいろいろと、参考人もいろいろなことで書いておられますけれども、大変な問題である、こう思っておるわけですが、そのことにつきまして、我々も、その団体監理型については今回、入管法で三年を五年にしたりとか、あるいは在留資格を取り消したりとか、いろいろな手当てもしているわけですが、この点について評価なり考え方をお伺いしたいと思います。

鳥井参考人 御指摘のある点については、確かに入管法改正案の中にそれらについての罰則規定を強化しているという点はあるかと思います。しかしながら、残念ながら、この団体監理型というのは非常に巧妙な手だてをとっておるわけですね。ですから、例えば受け入れ停止になっても、全く違う名前で新たに始めておったり、違う名前でやるというようなことを行っておるわけです。

 ですから、基本的には、この団体監理型というのをやめてしまうといいますか、技能実習制度をやめない限りはこの問題は解決しない。先ほど、現に技能実習制度、研修生、技能実習生を受け入れている企業はではどうするのかということですけれども、私は、その企業に対する産業政策と、そして労働者を受け入れる政策を早急にやらなければならないと思います。個々の中小零細企業の経営者にそのことを負わすのは、余りにも酷だというふうに考えているわけですね。

 ですから、今回の改正案に対する評価と言われますと、非常に厳しいことを言わざるを得ないというふうになるかと思います。

大口委員 そういうこともあって、緊急避難的に労働関係法令を適用するという形にさせていただいたり、そして、この技能実習という形での資格という形にさせていただいておるわけでして、これからしっかりこれは議論してまいりたい、こういうふうに思っておる次第でございます。

 参考人の皆さん、きょうは本当にありがとうございました。

山本委員長 次に、保坂展人君。

保坂委員 社民党の保坂展人です。

 鳥井参考人にお聞きしたいんですが、私は四年前に、岐阜県のある工場で中国人の女性たちが大変な目に遭っている、帰国直前で未払い賃金を出しなさいという要望をしたら、強制的に出国させられるような身の危険を感じた、こういう場面で会ってまいりました。

 真冬で雪が降っている日でしたけれども、暖房器具もない。彼女たちは、ペットボトルにお湯を入れて抱きながら身の上話をしてくれた。しかし、彼女たちは結構、中国の、もともとお子さんがいたり御家庭があるんですが、かなりしっかり働いて家を建てて、研修制度という、日本というこの大きな先進的な国で研修するんだということに大変夢を抱いて来たら、全く雲泥の差どころか奴隷工場だった、こういう思いを抱いて、まあ、彼女たちはその賃金が払われたというふうに聞いていますけれども、鳥井参考人がおっしゃった中で、制度が社長を邪悪な欲望に変身する云々と。これは具体的に言うとどういうことなんですか。ちょっと具体的な話をひとつお願いします。

鳥井参考人 私は、たくさんの研修生、技能実習生を受け入れている企業の社長さん、あるいは農家の方々とお会いしているわけです。この方々、皆さんいい方です。それは皆さん少しイメージしていただければ結構だと思いますけれども、零細企業の製造業で頑張っている社長さんです。あるいは農業を一生懸命守ろうとして頑張っておられる方々なんですね。この中にそんな悪い方がいらっしゃるわけがないんですね。中にはどうしようもない方もいらっしゃいますけれども、しかしながら、それは本当にごく一部です。ほとんどいい社長さんなんですね。

 研修生を受け入れますと、大体一年目までは、一年目といいますのは、初めて研修生を受け入れるといった場合、一年目はすごくいい、親切に優しくされるんですね。ところが、この制度上、個別の労働契約とは別個に、送り出し機関と受け入れ機関の間で、本人の意思とは関係ないところで契約があって、いろいろな名目でお金をピンはねしている。その中で、彼女たちは、あるいは彼たちは、日本に来るために事前に借金をして来ているわけですけれども、口答えをすると、あるいは逆らうと強制帰国という道があるということをみんな聞かされているわけですね。

 その優しい社長さんたちが、ちょっとした冗談のつもりで、権利主張といいますか意見を言った研修生、技能実習生に対して、じゃ、帰らせるぞ、あるいは警察呼ぶぞなんて言うと、びくっとしちゃうわけですね。そのびくっとしている姿を見て、これはいけるかなということで、大きく力関係が変わっていくわけです。この社長さんたち、あるいは農家の方たちが思い違いをしてしまうといいますか、ある意味では戦争下における人が変わってしまうというのと同じような、制度が人を変えてしまう、力関係が人を変えてしまうという非常に恐ろしいことが起きているわけです。

 これはレアケースじゃないのか、一部の悪いところを挙げているんじゃないかという御指摘があるんですけれども、これは全くレアではありません。レアであれば、私どももすぐに解決するはずなんですね。しかしながら、ほとんどがこういうケースが多い。

 残念ながら、労働者として、今御指摘があった寮の問題なんかについては、寮が必ずしもひどいところばかりではありません。寮としては、住まいとしては整っている場所もあります。しかしながら、そこにおいても研修というのは存在していないんですね。労働者として最低賃金はクリアしておっても、研修制度ということで、あるいは技能実習制度ということで、そこで技能を技術移転するということで行われているわけではありませんし、それは、労働者の側も、あるいは使用者の側も、全くそういう認識はない。かえってそのことを言われると、なぜそんな困ったことを言うんだというような認識なわけです。

 この社長さんたち、いい社長さんたちがいつでもいい社長さんたちであるように、あるいは農業を頑張っている農家の人たちが農業を頑張っていけるような、そういう受け入れ方というもの、あるいは労働の支え方といいますか、働き方の支え方というものを考えていかないと、大変なことになってしまうのではないかなというふうに思っております。

保坂委員 六年ほど前に、高松の造船所で働いているフィリピン人の実習生、研修生たちが、その賃金、パスポートも全部取り上げて、残業代も払わずに、労基署から警告を受けて、そして操業停止になったということで、それは指導が入ったということでよかったんですが、そのフィリピン人の実習生、研修生たちが、いわば研修先を失ったわけですね。結果、高松入管では退去強制手続に入るというとんでもない動きがあって、当時、森山法務大臣が、これは被害者だということで、何とかそのときには別の受け入れ先を見つけて、継続をしてもらったということがありました。

 ただ、今日、これだけの不況ですので、受け入れ先が倒産をしていくケースというのは結構あるというふうに聞いています。受け入れ先が実習中、研修中に倒産をしてしまう、倒産をしてしまうと、次のところを見つければいいわけなんですが、なかなか見つからない、そうすると、ではどうやって食っていけばいいんだと。アルバイトなりなんなりすれば、これは不法就労になってしまう。ではどうすればいいんだと。答えが出ていないように思うんですね。この点、いかがですか。

鳥井参考人 とりわけ昨年の末から、途中帰国というのが非常にふえているわけですね。一月で三けた台になっているわけです。

 これは、国の制度で研修・技能実習として受け入れているんですから、一人としても実は途中帰国というのがあってはならないことなんですね。しかも、この理由が、本人に理由があるのではなくて、企業が受け入れていく経済的な余裕がなくなってしまった、こういうことです。あるいは倒産ですね。では、なぜそのような企業がそもそも受け入れていたのかということになるわけです。

 最近、名古屋の事例ですと、研修生と技能実習生がいます、研修生を帰してしまおうというわけですね。事実、もう帰ってしまいましたけれども。理由は明確でして、実習生は労働者ですので助成金があるわけですね。雇用調整ということで助成金がある。しかし、研修生には助成金がない。だから帰してしまう。これでは研修制度というふうには言えないわけです。

 現に今、困っている研修生、技能実習生がたくさんおります。この研修生、技能実習生を救済するのは、実はJITCOや国でしかないわけですね。この点、ぜひとも救済をしていただきたいなというふうに思っております。

保坂委員 今、フィリピンの実習生、研修生たちが何とか研修途上で強制送還されることはなかったという話をしましたが、フィリピンには造船所はないというふうに実はそのとき聞いたんですね。そうすると、この研修、実習というのは何なんだろうかと。

 そこで、もう一問聞きますが、一年以内の技能実習の場合は職種の制限がかからなくなっているというと、これはどういうことになりますか、鳥井参考人。

鳥井参考人 これは、実際上、私は単純労働という言葉は余り好きではありませんけれども、道筋を開いたということになるのでしょう。ですから、このことは私はもっとしっかりした議論が必要だと思います。

 技能実習を一年目から始めるというのは、では、そもそも研修と技能実習という関係、一体いかなる関係だったのかということになるわけですから、この職種限定がなくなりますと、私はこれまでもいろいろな場で訴えてまいりましたけれども、これまでも研修ということで、繰り返し一年ごとに入れかえて単純労働を実際はやらせておったわけですね。これが堂々と技能実習だからいいんだということになってまいりますから、このことの議論というのはなし崩し的に行うものではなくて、しっかりとした議論が必要ではないかというふうに思います。

保坂委員 続いて、徐参考人にお願いしたいんですが、先ほど来、常時携帯義務について、私も九九年の附帯決議のときにこの委員会におりましたので、以来変わっていない、また今回の法案にも残念ながらそのことはついているだけではなくて、入管にそのカードをとりに行ったりと、新たな負担の問題もあるということを重々受けとめて、そういった九九年にうたったようなことをまた附帯決議を同じように出すということが絶対ないようにしたいと思います。

 その上で、おっしゃった意見の中で、今回の、いわば学校だとか職場だとかいうところが罰則つきで情報を出さなければいけないということが原因になって、新たな例えば就学差別や就職差別や、あるいは子供に対する差別というのが助長される懸念があるとおっしゃいました。その点をもう一つお願いしたいと思います。

徐参考人 これは我々は非常に懸念しております。というのは、日本の国民の方々が、また雇い主の方々、いろいろな団体の方々が、外国人がどういう存在であるかということをよくつかんでいない方々が非常に多いんですね。ですから、単に外国人というだけでこれはだめだとか、これは負担があるとか、これこれの報告義務があるからというと、これは非常に面倒くさくなるんですね。これは明らかに我々は、具体化していく中で、就職差別、就学差別、新たな差別を生むことになるんじゃないかと非常に懸念しているんです。

 子供たちはそのことをよくわからずに、なぜと非常にジレンマに陥ったり、傷ついたりする。彼らは、日本で生まれた外国人、今非常に多いわけですね。単に国籍が異なるだけで、そして単に外国人としてくくられる。これは、その本人たち、当事者にとっては非常に傷をつけるということです。

 ですから、そういうことで、やはり外国人の立場にもうちょっと立って、きめの細かい、そういった、後でその本人たちにマイナスにならないようにきちっと手当てをしないと、僕は、これから国際国家日本の役割等々を考えるときに、これはマイナスになっていくのではないかというふうに懸念をしております。

保坂委員 次に、市川参考人に。

 会長声明の中にもありましたし、そして御意見の中にもあったんですが、在留カードの番号、これがいわばマスターキーになって、さまざまな情報がマッチングされるおそれがあるということを私は午前中の質問で取り上げたんですね。

 実は、今回の法改正の前の段階で、あるベンダー企業が法務省入管局の受注に応じて、いわば入国管理システムの情報データベースをどうやって構築していくのかと工程表を書いているんです。実はそこは明確に、統合すると書いてあるんですね、入国管理のバイオメトリックス、生体情報も、今回のカードも。

 そして、私が質問で聞いたのは、在留カードというシステムと、同時にまた、位置情報システムといって、どなたがどこにいるのかということをGPSを通して見る。これは、今の段階では入管の職員の方が、いわば不法滞在の摘発にここが怪しいかなと思って使うという段階だそうですが、実際には、電波を発しないチップなどでもGPSの反応をして、どこにいるのかということを、技術的には可能だというふうにも聞いています。しかし、そういうことは法務省令にゆだねられているので、何が何だかさっぱりわからない。

 ということは、昨年ですか、最高裁の判例もありました。つまりは、データのマッチングということをみだりにやることは国家公務員法違反であるということと恐ろしく乖離があるなという点について、御所見を伺いたいと思います。

市川参考人 おっしゃるとおり、今回の法案で、情報の処理とか、どういう情報を収集していくか、あるいは在留カードに記載していくかということについては省令にゆだねられている部分もありまして、例えば、入国時には顔情報だけではなくて指紋情報もとっておりますけれども、そういったもの、今回は顔情報だけは在留カードに載せていくということになりますが、では、指紋情報はどうなのかということも省令にゆだねるというような形で全部丸投げされてしまいますと、やはり個人情報保護として本当にどうなのかという問題があるかとは思います。

 それから、先ほど申し上げたような、十九条の十八、十九という形で、統合、十九条の十八という規定はデータベース化というものをある程度想定しているのではないかと思いますけれども、今先生がおっしゃったような、いろいろな情報を集めてこれを統合していく、そうすると、在留カード番号をマスターキーにして、そのマスターキーの方の情報を全部ごっそりと集めてみると、一つの人物像、預金入金履歴、あるいは交友関係であるとか、それは日本人も含めての交友関係だと思いますけれども、そういったものの全体像がいつの間にかつくられてしまう。

 それが正確なものであればいいですけれども、情報が偏ったものであれば、偏った情報になってしまう。それを知られている、見られている側はどういう像をつくられているかというのが全くわからない状態でどんどん管理が進んでいくということは、やはりどこかで歯どめをして、本当に必要最低限なものを管理に使っていく。余計なものは収集したり統合したりしていかない。

 第三者との、ほかの官庁との間でも、行政機関の情報保護法、これだけではなくて、より個別の手当てとして、どういう形で具体的な提供の必要性を認識していくのか、こういった手当ては今後必要になってくるんじゃないかなというふうに思います。

保坂委員 清水参考人に伺いたいんですが、これまで情報の把握がばらばらであった、これを統合するということによって双方に利便性が増すんだという面はあるかと思います。

 ただ、今ちょっとやりとりをしてきたように、外国人、あるいは日本人もそうですけれども、あらゆる人間にはプライバシーというのがございますね。必要最低限の情報がやりとりされるだけではなくて、自分の知らないところの情報というものが、例えば在留カード、これに全部入るとは限らないんですね。このカードの番号と結んでいるホストコンピューターにいろいろな情報がマッチングされて、いわば管理が行われるということで、外国人のプライバシーを侵害する心配があるんじゃないかと私は懸念をしているわけですが、自治体の長として、大変外国人の方が多い町で行政をされている立場として、いかがでしょうか。

清水参考人 私の町は、今のプライバシーの問題等々について、ISOで管理しているんですけれども、ISOの27001番という、特に情報の管理システムを導入しております。今お話のあるように、必要外の情報が我々の手元からどこかに飛び出ていくというようなことはやらないということがISOの中でやられていますので、内部管理でなくて、我々はやはり外部管理で中の情報の管理をやっているということから、非常に今の心配されていることは、私どもではないというふうに思います。

 また、我々住基カードを持っていますね。先生は持っているか持っていないかわかりませんけれども、住基カードを我々日本人は持っている。この住基カードを中心にして、私たちは、心配された、過去にいろいろな議論がありましたけれども、そういう支障も何らなかった。また、問題も起こっていない。最小限度の情報の管理で在留管理というのをやっていくということは、やはり必要なことであると私は思っております。

 ですから、いわゆる、今の、だあっとネットして何でもかんでも全部わかるようなそういうシステムは、これはもちろんISOにはありませんし、あってはならない。でも、そんなに何でも心配する必要はないというふうに思います。

保坂委員 私は、心配しているというだけではなくて、実際に法務省の発注された工程表を見ると、そういうふうに書いてあるんですね。これは、本来はこういった委員会に提出をされて議論すべきものなんですが、実は、コンピューター技術、大変な量の情報をさばかなければいけないので、こういうことを、こういう技術がありますよ、こういうフレームでいきましょうということを法案に即して提案をされているわけなんです。それで申し上げたということをちょっとつけ加えさせていただいて、私の質疑を終わりたいと思います。

 どうもありがとうございました。

山本委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 参考人の方々には、貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時二十二分散会


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