衆議院

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第4号 平成22年3月12日(金曜日)

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平成二十二年三月十二日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 滝   実君

   理事 阿知波吉信君 理事 石関 貴史君

   理事 辻   惠君 理事 樋高  剛君

   理事 山尾志桜里君 理事 稲田 朋美君

   理事 森  英介君 理事 大口 善徳君

      大谷  啓君    加藤 公一君

      金森  正君    金子 健一君

      木村たけつか君    桑原  功君

      坂口 岳洋君    竹田 光明君

      橘  秀徳君    中島 政希君

      永江 孝子君    長島 一由君

      野木  実君    藤田 大助君

      藤田 憲彦君    細野 豪志君

      牧野 聖修君    森本 和義君

      山崎  誠君    河井 克行君

      柴山 昌彦君    棚橋 泰文君

      長島 忠美君    福井  照君

      柳本 卓治君    山口 俊一君

      吉野 正芳君    神崎 武法君

      城内  実君

    …………………………………

   法務大臣         千葉 景子君

   総務副大臣        渡辺  周君

   法務副大臣        加藤 公一君

   厚生労働副大臣      長浜 博行君

   法務大臣政務官      中村 哲治君

   最高裁判所事務総局総務局長            戸倉 三郎君

   最高裁判所事務総局人事局長            大谷 直人君

   最高裁判所事務総局刑事局長            植村  稔君

   政府参考人

   (総務省自治行政局選挙部長)           田口 尚文君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            徳永  保君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           清水美智夫君

   法務委員会専門員     生駒  守君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十二日

 辞任         補欠選任

  石森 久嗣君     森本 和義君

  熊谷 貞俊君     金森  正君

  藤田 憲彦君     藤田 大助君

  山口 和之君     木村たけつか君

  横粂 勝仁君     大谷  啓君

  棚橋 泰文君     長島 忠美君

  馳   浩君     吉野 正芳君

同日

 辞任         補欠選任

  大谷  啓君     横粂 勝仁君

  金森  正君     熊谷 貞俊君

  木村たけつか君    山口 和之君

  藤田 大助君     藤田 憲彦君

  森本 和義君     金子 健一君

  長島 忠美君     棚橋 泰文君

  吉野 正芳君     馳   浩君

同日

 辞任         補欠選任

  金子 健一君     石森 久嗣君

    ―――――――――――――

三月十日

 選択的夫婦別姓の導入などの民法改正を求めることに関する請願(阿部知子君紹介)(第三一七号)

 婚外子差別を撤廃する民法・戸籍法改正に関する請願(首藤信彦君紹介)(第三三〇号)

 同(柚木道義君紹介)(第三五三号)

 同(藤田一枝君紹介)(第四四二号)

 改正国籍法の厳格な制度運用を求めることに関する請願(金子一義君紹介)(第三四一号)

 人権擁護法案の成立反対に関する請願(金子一義君紹介)(第三四二号)

 選択的夫婦別姓制度の法制化反対に関する請願(金子一義君紹介)(第三四三号)

 複国籍の容認に関する請願(藤田一枝君紹介)(第三四四号)

 国籍選択制度の廃止に関する請願(柚木道義君紹介)(第三五一号)

 同(石毛えい子君紹介)(第三六六号)

 同(小林千代美君紹介)(第四一九号)

 同(仲野博子君紹介)(第四二〇号)

 同(稲見哲男君紹介)(第四三〇号)

 同(寺田学君紹介)(第四三八号)

 同(藤田一枝君紹介)(第四三九号)

 成人の重国籍容認に関する請願(柚木道義君紹介)(第三五二号)

 同(石毛えい子君紹介)(第三六七号)

 同(小林千代美君紹介)(第四二一号)

 同(仲野博子君紹介)(第四二二号)

 同(稲見哲男君紹介)(第四三一号)

 同(寺田学君紹介)(第四四〇号)

 同(藤田一枝君紹介)(第四四一号)

 共同親権・共同子育てを実現するための法整備を求めることに関する請願(中林美恵子君紹介)(第四一八号)

 同(生方幸夫君紹介)(第四三二号)

 同(下村博文君紹介)(第四三三号)

 同(服部良一君紹介)(第四三四号)

 同(石川知裕君紹介)(第四四三号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内閣提出第四号)


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     ――――◇―――――

滝委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として総務省自治行政局選挙部長田口尚文君、文部科学省高等教育局長徳永保君、厚生労働省社会・援護局長清水美智夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

滝委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

滝委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局戸倉総務局長、大谷人事局長及び植村刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

滝委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

滝委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。辻惠君。

辻委員 民主党・無所属クラブの辻惠でございます。

 与党委員としては初めての質疑ということで、十五分と限られた時間でありますが、法務行政全般、建設的な質疑をさせていただきたいというふうに思っております。

 定員法の問題ですが、この十年間、裁判官の増員については、司法改革ということで四十五人を十年間、そして裁判員裁判の関係で三十人を五年間ということで六百人増員ということであろうと思いますが、これは今後、具体的な増員計画というのはあるんでしょうか。

戸倉最高裁判所長官代理者 おはようございます。お答え申し上げます。

 今委員御指摘のように、これまで司法制度改革審議会の答申以来、裁判所は計画性を持った増員を図ってまいったわけでございますが、今後の増員の計画につきましては、これはもとより、裁判所に与えられた役割を十分に果たしまして国民の期待にこたえていくためには、さらに事件動向等を踏まえつつ、委員御指摘のような体制整備のあり方についても引き続き検討していくべきものというふうに考えております。

 ただ、平成二十四年度以降のことにつきましては、さまざまな変動要素等も考慮する必要がございますので、現時点で具体的なことを申し上げる段階には至っておりませんけれども、考慮すべき要素といたしましては、まず第一に、各種事件の動向、またこれが今後どのようになっていくかということでございます。特にこの点では、この間、とりわけ法曹人口が増加しておりますので、これが事件数の動向にどのように影響を及ぼすかということを考えていく必要があるものと思っております。

 さらに、事件の質ということに関しましては、裁判所に持ち込まれる事件というのは複雑困難の度を増しておりますので、こういったものがさらに今後どうなっていくかということも考慮いたしてまいりたいと考えております。

 一方で、民事訴訟法の改正等に伴いまして、審理形態の変化というものもございます。さらに、昨年実施されました裁判員制度が今後審理が本格化することになりまして、これにより刑事裁判の審理の形態がどのように変わっていくかということも十分見きわめていく必要もございます。

 このような諸事情を総合的に考慮しながら、今後とも、裁判所がその役割を果たすために必要な人的整備には努めてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。

辻委員 諸事情を考慮しながら人的整備を図っていきたいということですから、その諸事情ということについて幾つか伺っていきたいと思います。

 まず、もともと一九九〇年代に司法改革ということで、日本の司法が小さ過ぎる、大きな司法なんだということで議論がされて、そのときには裁判官、検察官、そして弁護士、それぞれについてやはり大きな司法の必要性があるということで増員の話があったと思います。

 お手元に配付させていただいておりますが、資料一の一番上段に「弁護士・検察官・裁判官数の推移」ということで、これは日本弁護士連合会の資料に基づいておりますけれども、法曹人口の推移というのは概略これでいいのか。大臣、認識はございますか。

千葉国務大臣 この資料、基本的にこのような推移だということを確認させていただきたいと思います。

辻委員 司法改革の論議のときの大きな司法といったときには、弁護士の増員も当然ですが、裁判官、検察官もいろいろな意味で増員の必要性がある、大きな方向としてはそういう議論があったと思いますが、その議論の方向自体については現在も変わりがないということで認識をされているんでしょうか。大臣、いかがでしょう。

千葉国務大臣 基本的に私はそのように認識をいたしております。

 そういう意味では、検事につきましても、なかなか十分ではございませんけれども、平成元年千百七十三人、平成二十一年度で千七百二十三人、こういう形で増加はいたしておりますが、これからも、やはり諸事情を含め、それから裁判員制度、迅速な裁判等々、こういう要請も受けながら、この増加に努めてまいりたいと思っております。

辻委員 この十年間で、裁判官は約六百人、検察官は二百人、弁護士は九千七百人増加だということでありまして、先ほど最高裁の方の御答弁で、法曹人口によって、それが事件数にどう反映するのかと。弁護士の間で競争がいろいろ激化をして、事件の掘り起こしというか、そういうことの結果、事件数がふえることもあり得る、その辺も見ていこうという御発言かと思いますが、諸事情というふうにいったときに、まず、事件数がどうなっているのかということが一つの重要なファクターだと思います。

 私の方で調査したところ、地裁、家裁のこの二十年間の事件数は約二倍になっているということでありますけれども、この事件数の増加傾向については最高裁はどのように掌握しておられますか。

戸倉最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 今委員御指摘のとおり、この二十年間というスパンで事件数の動向を見ますと、地方裁判所の民事訴訟事件は、平成元年に約十二万件であったものが平成二十一年には約二十四万件、ほぼ倍増でございます。あと、家庭裁判所の家事事件について申し上げますと、これは平成元年の約三十四万件が平成二十一年には約七十六万件となっております。

 以上でございます。

辻委員 事件数は二倍になっているということであります。

 さらに、成年後見事件が大幅にふえる見込みであるし、それから労働審判というのが二〇〇六年四月から実施されております。これもまだ数千件の単位でありますけれども、非常に増加傾向にある。二回、三回で労働問題のとりあえず一段の解決ということで、労働審判制度の利用がふえているということがあります。

 先ほどおっしゃったように、事件についていろいろな種類がふえてきているということもありますが、こういう労働審判制度や成年後見制度、裁判というのがふえていることも、これは諸事情に当然考慮されるということでいいんですか、最高裁。

戸倉最高裁判所長官代理者 委員御指摘のとおり、そういった事情も当然考慮要素に含まれるものと考えております。

辻委員 全国で本庁が五十カ所、支部が二百三カ所ある。その中で、裁判官が常駐していない支部が四十八カ所あるという指摘がなされております。また、支部では行政事件とか簡裁の裁判に対する控訴事件は取り扱っていない。労働審判も従来は取り扱っていなくて、この四月から立川支部と小倉支部で労働審判を取り扱うことになる。

 つまり、本庁自体に統合されているような傾向があって、支部で、ある意味では利便性というか、国民の側からいろいろな、小さな事件でも民事裁判に訴えざるを得ないというときの支部の機能が低下している。しかも、支部で労働審判事件とかなかなか扱われない。裁判員裁判も十カ所ですか、支部で扱われているという。

 そういう意味で、数の問題そして支部機能の問題、両方からいって、やはり裁判官が足りないということが言えるのではないかと思いますけれども、その点、いかがでしょう、最高裁。

戸倉最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 今委員御指摘のとおり、労働審判事件につきましては、現在本庁のみで行われております。ただし、この点につきましては、この四月から立川支部及び小倉支部で行うということになった次第でございます。

 確かに、支部で行政事件その他の事件すべて行っておるということはないわけでございますが、支部にどういう機能を持たせるかという点につきましては、やはりその支部、裁判所を利用される国民の皆様方の利便性ということも考慮するとともに、一方で、さまざまな事件に的確に対応する観点から、例えば非常に専門性の高い行政事件等につきましては、現在は本庁で行うというようなこともしております。また、労働審判のような、裁判官だけではなくて労働審判員の確保であるとか、その他もろもろの条件を整備する必要があるといったものにつきましては、現時点では支部では行っていないというような事情がございます。

 ただ、いずれにしても、そういう支部で行うべき事件につきましては、これを行うだけの人的配置は整備してまいりたいというふうに考えております。

辻委員 新聞報道で、これは読売新聞の山口版でありますけれども、労働審判の利用について、支部でできないからあきらめざるを得ないという利用者がいたというような報道もされております。やはり、支部機能も含めて国民の利便性にかなうように司法を強化していくということが重要ですので、その点は十分わきまえていただきたいというふうに指摘させていただきます。

 時間もありません。これはまた後日論議をしたいと思います。

 では、裁判の機能がどうなっているのか、実質審理がどうなっているのかということについて簡単にお尋ねしますが、資料一、資料二をごらんいただきたいと思います。

 資料一の真ん中の折れ線グラフ、下段の折れ線グラフ、真ん中は証人尋問の実施率であります。この二十年間で証人尋問そして当事者尋問が大幅に減ってきている。また、鑑定や検証、検証に至っては現在〇・三%です。千件で三件というような状況であります。

 これは最高裁の方で提供していただいた資料、資料二でありますが、同じように証拠調べの関係で大幅に実施率が減ってきている。また、期日の回数、特に高等裁判所は、三分の一とまでは言いませんけれども、三割、三分の一近くまで減っている。一・四回ということは、ほとんどの事件が一回半で終わっているというようなことであります。

 これは、本当に納得のいく裁判が実質的に行われているのかということが、国民の側からすれば疑問を持たざるを得ないというふうに思います。

 いろいろな理由があると思いますが、やはりこれは、人員を考えるに当たって、こういう実質審理が低下しているというものも考慮の重要なファクターになるということでいいと思うんですが、その点、確認です。最高裁、いかがですか。

戸倉最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 今委員御指摘の証人尋問率等の数値は御指摘のとおりでございますが、このような数字の変化の要因につきましては、一つは、推移をもう少し細かく見ますと、ここ数年で非常に証人尋問率等が下がっております。これは恐らく、この数年の間の過払い金請求事件、これは証人尋問、人証等は、調べたりはほとんどしないというケースでございますが、この事件が急増していることもあずかっているかと考えております。さらに、この十年余りの間の民事訴訟法の改正に伴う審理の改善といった結果も入っておろうかと考えておる次第でございます。

 ただ、いずれにしましても、こういった裁判を、充実した審理を行って当事者の納得をいただく、そのための体制を整備するという点も、当然我々人的体制を整備する観点では重要な要素だというふうに考えておる次第でございます。

辻委員 確かに過払い金裁判がふえているというのも一つの原因でありますけれども、やはりそれでも争われているという現実があります。

 そういう意味で、実質審理をもっと充実させていくためには、いろいろ検討しなきゃいけない問題がありますけれども、人的整備というのもまた重要だということを指摘しておきたいと思います。

 最後に、裁判所予算が一般会計予算のうちの〇・三九%という意味で、しかもその予算が漸減傾向にあるということが人的整備においてネックになっているということがありますので、これは与党側で十分検討して予算の確保もやっていかなければいけないということを申し上げまして、私の質疑を終わりとさせていただきます。

 ありがとうございました。

滝委員長 次に、中島政希君。

中島(政)委員 今、辻委員がおっしゃいましたように、裁判所予算というのは随分少ないものなんですね。三千二百億円ですか。こちらの石関理事も私も群馬県の人間で、八ツ場ダムというのが今問題になっているんですが、これは四千六百億円ですね。ことしの予算だけで百五十億円ですよ。今、一つ要らない橋をやめさせろと言っているんですけれども、これが五十億円ですよ。ことし六十五人裁判官をふやすのに必要な人件費は三十億円でしょう。やはり余り遠慮しないで裁判所も予算を要求した方がいいですよ。コンクリートより人へと言っている政権なんだから、もっと予算をふやせと言っていただければ、きっと大臣も考えると思います。

 いい機会をいただきましたので、今話題になっている判検交流のことをちょっときょうはお聞きをしたいと思います。

 判検交流というのは、御存じのように、裁判官と検察官が行ったり来たりする話なんですけれども、最高裁から見れば、法務省の方へ出向する、こういうことになるわけですが、最高裁の方に伺いますが、ことしの判検交流の実態、訟務検事、そのうちどのくらいいるか等、実態をお聞かせください。

大谷最高裁判所長官代理者 最高裁の方から出向しているということでの数を私の方から申し上げたいと思いますけれども、本年度で申しますと、法務省に出向した裁判官の数が全部で二十九名ということでございます。

中島(政)委員 両方合わせると五十名以上になっているということだと思うんですね。

 これは、私が調べましたら、昭和二十年、三十年代というのはほとんど一人、二人ですよ。それが、三十年代、四十年代、だんだんふえていって、それでも一けただった。それが、四十年代の後半になりますと二けたになるんですね。どんどんふえていきまして、二けたも、十人が二十人、二十人が三十人、三十人が四十人となって、去年あたり、判検交流は五十六、七人だったと思うんですけれども、あっという間にふえちゃった。

 ふえ出したのが昭和四十年代の後半、五十年前後なんですけれども、この時期にどうして判検交流がふえ出したのか、教えてください。

大谷最高裁判所長官代理者 いわゆる判検交流につきまして、これを定めた何か根拠規定のようなものはございません。

 今お尋ねの点ですけれども、こういった法曹間の人材の相互交流というのは相当以前から行われていたものと思っておりますが、その交流が開始された具体的時期等につきましては資料がございません。申しわけございません。その点についてはお答えしかねるというところでございます。

中島(政)委員 おかしな話なんですね。

 昭和二十二年に戦前の裁判所構成法が改正になりまして、裁判所法と検察庁法に分かれたわけですよ。そのときの立法の趣旨というのは司法と行政とを分けるという趣旨であったので、だから、二十年代には判検交流なんかなかった。四十年代後半になってふえてきたわけですね。国を相手にした訴訟がふえてきたりなんかして、民事に強い検事がいないので裁判官から補充するというようなことだったらしいですけれども。

 それにしても、こんな三権分立の基本にかかわることなので何か根拠があるんだろうと思って、私もいろいろ調べてみました。最高裁から規則集も借りて、こんな厚いのをよく見てみましたけれども、どこにも書いていない。こうした大事な問題がいつ始まったのか、何を根拠にしてやっているのか、全然わからぬと。まことにおかしな話だと思うんですね。

 新聞等で探してみますと、昭和四十年代の後半、四十九年ぐらいの新聞だったですかね、そのときに訟務検事の必要性がふえてきたので、法務省の方から裁判所に要請があって、最高裁と法務省が話して、三年したら戻ってくる、そういう細かいことまで決めて、この交流が拡大したという報道を見かけました。ただ、その報道を裏づけるような、役所側のあるいは裁判所側の資料とか覚書というようなものはないんですよ。

 では、これは口約束でこの交流というのはやっているんですか。最高裁にお聞きします。

大谷最高裁判所長官代理者 大変申しわけございません。先ほど申しましたように、その当時のことについて、私どもではちょっとつまびらかにできないということをお許しいただきたいと思います。

中島(政)委員 これは戦後、憲法ができて、司法権と行政権と分かれて、それぞれしっかりやっていくということですよね。三権分立になったわけですよ。戦前は、これは皆さん御承知のように、検事も裁判所も一緒だった、司法省の中にあった。司法省の中に裁判所もあり検事局もあった。これを、新憲法ができる過程で、戦後改革で分けた。この三権分立という日本の国の基本にかかわることだと思うんですね。

 戦前のように、知らない間に判検交流が何十人もふえていって、判事と検事が行ったり来たりしている、こういう状況なのに、何もないんですか、これについて。法務省と最高裁で話し合った文書とか、あるいは最高裁の中で裁判官会議で決めたとか、何かあるでしょう。ないんですか。何もないんですか。見つからないんですか。最高裁に聞きます。

大谷最高裁判所長官代理者 御質問の点については、特にございません。(発言する者あり)

中島(政)委員 これはまたおかしな話で、私も与党ですからね、野党だったら声を大きくしなきゃいけないところなんですけれども。

 しかし、これは大事な問題だと思うんですね。裁判所と法務省と、これは普通の役所じゃないでしょう。外務省から経産省に出向するというような話じゃないですよね、これは三権で別になっているわけですから。

 これは、行き来するについて口約束ですか。法務省の方から、国を相手にする訴訟が多くなって民事がわかる人がいないからちょっと検察に人を出してくれよと裁判所に頼んで、はいそうですかと、こうやって裁判所がこたえたのか。こんな口約束で三権のうちの二権の人のやりとりをやっていていいものなんですかね。

 私は、これは法治国家として、また憲法の建前からいって、まことにおかしな話だなと思いますね。

 法務大臣にもこの件はお伺いしたいと思うんです。

 本委員会でも、かつて南野法務大臣のときだったかな、我が党の枝野委員が、判検交流、特に検事の問題、裁判官が検事になっている、こういう問題について批判的な立場から、南野法務大臣と枝野さんが論争したことがございました。

 私も、どちらかというと、この判検交流に批判的ですし、批判的よりも何よりも、判検交流をやる、両者で人が行き来するということをいつだれが決めたのかわからない、そうした文書もない、なし崩し的にだらだら行われている。まことにおかしな事態だというふうに思います。

 新政権になったわけですけれども、この問題について、法務大臣、どのようにお考えになりますか。是非も含めて、また今後どうするかというようなこと、お考えがありましたら、お聞かせをいただきたいと思います。

千葉国務大臣 中島委員から御指摘をいただきまして、私も改めてこの問題について思い起こしているところでございます。

 実は、私も、従来、判検交流ということを、本当にどうなのだろうかと、いろいろなことを考えたりしたことがあることも事実でございます。

 根拠が確かにはっきりしていないということがございまして、例えば裁判所法では、裁判官に、判事補、簡易裁判所判事、検察官あるいは弁護士、裁判所調査官等々などから採用することができるというようなことはあるのですけれども、行ったり来たりをするということが本当に根拠がどういうことになるのかということを、私ももう一度きちっと検証させていただきたいというふうに思っております。

 また、とりわけ、裁判官と検事の交流の際に、訟務について裁判官がつく、そしてまた裁判官に戻られるということが、さまざまな、やはり三権分立や、あるいは原告、被告がすぐ入れかわってしまうのではないか、こういう大変疑念ももたらすところではないだろうか。こんなことを私も認識いたしております。

 こういうことも含めて、御指摘をいただいたこういう機会に、また改めて、さまざまな取り組み、あるいはまた御提起をいただいて、検証をしていきたいというふうに思っております。

中島(政)委員 今、裁判所法の話が出ましたけれども、裁判所法にも検察庁法にも、こういう人が検事になれます、裁判官になれますと、それぞれ資格は決めてあります。それは、こういう人がなれるというのを決めてあるだけで、行ったり来たりしていいということは決まっていないわけでございます。

 最高裁にもう一回聞きますけれども、この判検交流をやられている意義といいますか、意味というものが何かあってやっているんだと思いますけれども、その辺をお聞かせください。

大谷最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 裁判官、特に判事補でございますが、裁判所の外、外部で裁判官以外の法律専門職としての経験、その他の多様な外部経験を積むということは、多様で豊かな知識、経験を備えた、視野の広いといいますか、裁判官を確保するという目的のために裁判所としては極めて有意義なことと考えております。

 司法制度改革審議会の意見書におきましても、裁判官が、これは検察官への出向も含めてでございますが、そういったいわゆる外部経験を積むということが高い資質の裁判官を確保することにとって有用であると、その実施を求めているという意見書が出されたところでもございます。

 そこで、裁判官が法務省その他の行政庁に検事として出向するということが、民間企業等への派遣、あるいは新しくできました弁護士の職務経験、さらには海外留学などを含めた外部経験という大きなプログラム、これの一つとして考えているところであるわけです。

 また、立法事務関係あるいは訟務関係等の分野におきましては、特に民事の裁判実務の経験があって法律に精通している、こういった人材としての裁判官、この裁判官に対するニーズもございますところから、これにこたえる、こういう目的もあるということでございます。

中島(政)委員 裁判官や検事さんがいろいろな経験をされることは大事だと思いますよ。ただ、さっきから言っているように、それならそれで法律でちゃんと決めた方がいい。法律がだめだったら裁判所規則でもいいし、政令でもいいし、ちゃんと決めなきゃだめですよ。これはほかの省庁、外務省と経産省を行ったり来たりする話と違いますから、司法、行政、立法の三権分立の基本にかかわることですね。

 ですから、それぞれの役所で、法務省は法務省でこの件について話して大臣が決める、最高裁は裁判官会議で決めて、法務省と裁判所で公式に話し合って、覚書でも何でも取り交わして、立法府にもかかわることですから国会にも御報告いただいて、それで進めるべき問題だと思います。なし崩し的に、一人、二人だったのを出向者が何十人にもふえる、こんなことは法治国家としておかしいし、法律の番人である最高裁としてみっともない話だと思いますから、よく根拠を考えてもらって対応していただきたいと思います。

 時間が来ましたので、きょうはこの辺にしておきまして、また引き続きお聞きしたいと思います。

 ありがとうございました。

滝委員長 次に、稲田朋美君。

稲田委員 おはようございます。自由民主党の稲田朋美です。

 本日は、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案についてお伺いをいたします。

 まず、昨年五月から裁判員制度が施行されまして、最近は、連日各地の裁判所で裁判員事件が実施されております。マスコミ報道を見ます限り、心配されておりました裁判員制度、裁判所の運用も含め、かなり好意的に受けとめられているように思います。ただ、今後は各地で大型の否認事件や複雑な共犯事件等が審理の対象となっていくということが想定をされると思います。

 それで、裁判員事件のうちでも、とりわけ大型否認事件や複雑で困難な事件を全国的に適正かつ迅速に処理するためには、やはり必要かつ十分な人数の裁判官や職員を確保するとともに、事件の係属状況に応じて柔軟に各裁判所に裁判官や職員を配置することが必要だと考えておりますけれども、今回の増員は司法修習の期間に伴うものだと思いますけれども、こういった今私が申し述べましたような点について、今後どのような考慮がなされるのでしょうか。最高裁にお伺いをいたします。

戸倉最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、今回お願いいたしております増員につきましては、主として民事訴訟事件の審理充実を理由としておるものでございます。

 しかしながら、裁判員裁判への対応につきましては、平成十七年度から二十一年度までの間、五年間に合計百五十人の裁判官の増員を行ってきております。裁判所といたしましては、このような増員によりまして、委員御指摘のような大型否認事件等も含めまして、裁判員裁判に対応するだけの人的体制は整備できたのではないかと考えております。

 ただ、裁判員裁判は、法律専門家ではない国民の方々と一緒に裁判をするという点で、我々裁判官にとりましても、これはこれまで経験したことのないことでございます。また、御指摘のような大型否認事件などにつきましては、むしろ今後審理が本格化する、そういった状況にございます。

 したがいまして、裁判所といたしましても、今後、裁判員裁判の実際の審理が支障なく行われていくか、事件処理の体制として十分であるかといったことにつきましては引き続き注視してまいりたい、それに応じて必要な手当ても考えてまいりたいというふうに考えております。

稲田委員 ぜひよろしくお願いをしたいと思います。

 裁判員制度の運用についてもう一点お伺いをいたします。

 裁判員候補者の感想等をお聞きする限り、検察官の立証や説明はわかりやすくて、また裁判官の説明などもよく理解できたけれども、弁護人の立証については、その目的がよくわからないとか、説明も理解しにくいところがあったというような評価がなされることもあるようであります。

 弁護士の能力によって被告人の利益が侵されたり、また不利益になるようなことがあってはいけないということは言うまでもありません。また、裁判員の負担を考えると、これまで間々見られたように、否認事件であれば何でもかんでも争ってみるというようなことではなくて、被告人が本当に争いたいところに焦点を当てたような弁護をしていく必要があると思います。

 その意味で、健全かつ優秀な弁護士が適切な刑事弁護を行い得るような体制づくりが急務だと思っておりますけれども、その点に関する弁護士会の取り組み状況と今後の課題について、法務当局の認識をお伺いいたします。法務大臣の見解をお伺いいたします。

千葉国務大臣 今御質問をいただきまして、弁護士会の方の取り組みということでございますので、私も直ちに、どのような取り組みがなされているのか、つぶさではございませんけれども、例えば司法修習の際に、前段にいろいろな導入のためのプログラムをつくられたり、そういう形で実務家の養成などにいろいろな努力はされているということなどは聞かせていただいております。そういう意味では、弁護士会としても、当然のことではございますけれども、優秀な実務家を養成するということに力を注いでおられるものではないかというふうに考えております。

稲田委員 司法修習生からの裁判官の採用の数は、このところ余り変化はないように思います。法科大学院制度の導入以来、司法修習生の数は基本的にふえているはずなのに、裁判官の任官者数に余り変化がないというのは、法科大学院の卒業生のレベルが必ずしも高くないという実情と関係をしているのでしょうか。

 また、裁判所としては法科大学院卒業生のレベルをどのように評価されているのか、最高裁にお伺いをいたします。

大谷最高裁判所長官代理者 お尋ねの前半の部分ですけれども、判事補への任官につきましては、これは委員も御存じのとおり、今、指名諮問委員会という場で、希望者について適格性があるかどうか、資質があるかどうかというような判断をしていただいておりますので、全体としての修習生のレベルがどうかということと、直接その数の問題は関係ないと思っております。

 次のお尋ねでございますけれども、最近の修習生の状況につきまして、これは司法研修所の教官あるいは配属庁の指導官などから耳にするところを御紹介いたしますと、例えば、概して口頭で自分の考えを述べる能力にすぐれているなどということで、法科大学院教育によるメリットを評価するもの、あるいは、従来の司法修習を経た者と比べても決して遜色はない、こういう指摘もある一方で、特に、上位層、下位層の下位層の修習生の中には、民法、刑法等の基本的な法律について、表面的な知識はあるのだけれどもその理解が十分でない、こういう指摘もあるところでございます。

 レベルが全体として低下しているかどうかというのは、これは非常に難しい問題でありますが、いずれにせよ、新しい法曹養成制度の、法曹養成のプロセスによって生まれた司法修習生の状況につきましては、特に今申し上げた懸念材料、懸念部分に留意して、今後とも注意深く見守っていきたい、このように考えております。

稲田委員 ぜひ、法曹人口がふえるに伴ってやはり質も量もよくなったというような状況を目指していただきたいと思います。

 次に、弁護士からの任官、それから行政機関への任期つきの採用というものについてお伺いをいたします。

 弁護士の任官という制度は以前からありますけれども、その数が余り伸びていないように思います。弁護士から裁判官任官について伸びていないことについて何らかの構造的な問題があるのかどうか、弁護士任官制度の現状と今後の課題について最高裁にお伺いをいたします。

大谷最高裁判所長官代理者 まず、お尋ねのうちの数について申し上げますと、昭和六十三年に判事採用選考要領、弁護士任官についての要領が策定されてからの任官者の累計が、昭和六十三年度からということですが、判事八十人、判事補二十人の合計百人ということでございます。しかし、委員御指摘のとおり、残念ながらこの任官者数というのはまだまだ多いとは言えないと私ども思っております。

 その理由でございますが、ごく端的に申しますと、まず、弁護士として成功して依頼者等との関係も安定している弁護士が相当の年齢になってから裁判官という新しい仕事に飛び込むことには、やはりそれぞれの皆さん、かなりの決断がどうしても必要になるように思われます。また、弁護士事務所の共同化ということが十分に進んでいないということも弁護士任官者がふえない一因である、こういう指摘が聞こえてくるわけであります。弁護士の業務形態等からする構造的な隘路というものもあるように思われます。

 そういうところが要因として指摘できようかと思いますが、いずれにしましても、裁判所としましては、弁護士任官の意義は十分に理解しているところでありまして、平成十六年からスタートしました調停官制度、こういったものを活用しながら、すぐれた弁護士の方が多数任官していただけるように、私どもとしても制度運用の整備あるいは充実を進めていきたい、このように考えております。

稲田委員 弁護士から、例えば法務省民事局とか金融庁といった行政機関への任期つきの採用がふえている一方で裁判官任官が少ない点について、これからもぜひ何らかの対策をしていただきたいと思っております。

 次に、司法修習生の採用についてお伺いをいたします。

 昨年の十一月に、司法修習生の選考要項から国籍条項をなくしたということがあります。今まで司法修習生には国籍条項があり、その理由について最高裁は、公権力の行使や国家意思の形成にかかわる公務員には日本国籍が必要であるという内閣法制局の見解を準用して、修習生が例えば取り調べに立ち会ったりとか裁判所で非公開の合議に立ち会ったりすることから、公権力の行使や国家意思の形成にかかわる公務員に準じて国籍条項を設けていたと思いますが、これをやめた理由について最高裁にお伺いをいたします。

大谷最高裁判所長官代理者 今委員から御指摘ありましたが、平成二十一年度の十一月期の採用選考要領から、「日本の国籍を有しない者(最高裁判所が相当と認めた者を除く。)」こういう従来入っていた欠格事由の記載が削除されたということは御指摘のとおりでございます。

 その経緯についてちょっと御説明いたしますと、日本国籍を有しない者が司法修習生への採用を希望した場合、これは古く昭和五十二年の時点から、その人の法的な地位の安定性それから居住の継続性等を考慮して日本国民と同等の取り扱いをしても差し支えないかどうかということを個別的に判断した上で、実際には司法修習生としてそういう応募者を採用してまいりました。そういう運用が安定的に長く続いてきたこともありまして、欠格事由という言葉、日本国籍を有しないことのみをもってあたかも採用されないというふうに思われるような記載は削除する方が相当であろうということで判断し、その事項を削除したというものでございます。したがいまして、平成二十一年を機会に何か採用の基準あるいは取り扱いをそれまでと変更したというものではございません。

 経緯については以上でございます。

稲田委員 そうしますと、欠格事由として記載していたけれども事実上は変わらないということだというふうに御説明をいただいたんですけれども、九〇年から、例えば法律遵守の宣誓書を外国籍の希望者には求めていたけれどもそれを廃止したということになっているようですが、その点はいかなる理由によるものでしょうか。

大谷最高裁判所長官代理者 その廃止についても事実でございますが、これも運用が安定してきたからということで行わなくなったものではありますが、ただ、先ほど言いましたように、日本国籍を有しない者については個別に判断をしていくという点は変わっておりませんので、事前の面接をする際に、その点についてきちっと遵守してもらえるかどうか、この点は十分確認した上で採用しておりますので、実質的には変わるところはございません。

稲田委員 あと、日本人の場合ですと、例えば修習生に戸籍抄本などの提出を要求しているわけですけれども、外国籍の人には、今宣誓書については要求しないで個別に判断をするということですけれども、居住ですとか、そういう戸籍抄本にかわるようなものとして何か提出を要求しているのか、それともそういったものも要求をされていないのかについてお伺いをいたします。

大谷最高裁判所長官代理者 外国籍の方につきましては、その人の特定という意味がございますので、戸籍にかわるものとして外国人登録原票記載事項証明書、この証明書の提出を求めております。

稲田委員 やはり今外国人の問題が大変クローズアップをされておりますので、こういった点もきちんと厳正にやっていただきたいと思います。

 また、外国籍の方が、司法修習はできるということですけれども、例えば調停委員ですとか司法委員それから検察審査会の審査員、そういったものに採用されるのかどうか、その点についてお伺いをいたします。

大谷最高裁判所長官代理者 公権力の行使に当たる行為を行う、あるいは重要な施策に関する決定を行い、またはこれらに参画することを職務とする公務員につきましては、日本国籍を有する者が就任することが想定されるというふうに考えられるところで、裁判所の非常勤である調停委員などにつきましては、公権力の行使に当たる行為を行うとともに、公権力の行使に当たる行為に参画することを職務とする公務員に該当するということで、その就任のためには日本の国籍が必要であると考えているところでございます。

稲田委員 例えば調停委員、家裁でも地裁でもそうですけれども、裁判官にかわるような、かなり事件に立ち入った判断も任されてきます。検察審査会については国籍条項があるんですけれども、調停委員、司法委員について国籍条項があるのかないのか、その点はいかがでしょうか。

大谷最高裁判所長官代理者 国籍条項等について、法律上の規定はございません。先ほど申しましたのは、これを取り扱っております事務当局としてそういう考え方で運用しているということでございます。

稲田委員 ぜひ、公権力の行使や国家意思の形成にかかわるという点についてはきちんと判断をしていただきたいと思います。

 さて、鳩山総理は、日本列島は日本人だけのものではないというような思想の持ち主でありまして、その点から、外国人参政権なども積極的に認めていこうというようなことも発言をされているわけですけれども、まず、大臣にお伺いをいたします。

 外国人に今参政権を付与すること、国政参政権、地方参政権、両方の意味でお伺いをいたしますが、それと憲法十五条の公務員選定・罷免権は国民固有の権利であるという規定との関係について、どのようにお考えでしょうか。

千葉国務大臣 これにつきましては、もう委員も御承知のとおり、最高裁の判決がございます。憲法十五条一項の規定というのは、権利の性質上日本国民のみを対象として、我が国に在留する外国人に及ばないと解するのが相当と判示をされております。私もそのように認識をいたしております。

 他方で、同判決は、「我が国に在留する外国人のうちでも永住者等であってその居住する区域の地方公共団体と特段に緊密な関係を持つに至ったと認められるものについて、その意思を日常生活に密接な関連を有する地方公共団体の公共的事務の処理に反映させるべく、法律をもって、地方公共団体の長、その議会の議員等に対する選挙権を付与する措置を講ずることは、憲法上禁止されているものではないと解するのが相当」と判示をいたしております。

 そういう意味では、国政の事項につきましては外国人には及ばないということですけれども、地域に密接にかかわった問題については立法政策上の問題であるということが最高裁の判例から示されているのではないかというふうに思います。そのような認識のもとで私も考えているところでございます。

稲田委員 総務副大臣にお伺いをいたします。

 今、法務大臣から最高裁の平成七年の判例の御紹介がございまして、その中で、国政参政権を与えることは憲法十五条の関係で問題があるけれども、地方参政権については立法政策の問題であるということが最高裁で示されているということを、それが大臣の認識であるというふうにお伺いをいたしましたが、総務副大臣の御認識についてお伺いをいたします。

渡辺副大臣 平成七年の最高裁の判決、委員や法務大臣と違いまして私は法律の専門家でないものですから、これを何回も何回も読み直しているんですけれども、「専ら国の立法政策にかかわる事柄であって、」「憲法上禁止されているものではない」というふうには言われているわけでございます。

 しかし、反面で、憲法九十三条二項に「地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。」こう書かれている「住民」は「日本国民を意味する」のだというふうにも触れておりまして、ここで、住民とは日本国民であると憲法上は定義をされております。

 それでありながら、しかし、立法されることについては「憲法上禁止されているものではない」というふうなことで、これが最高裁の判決ではありますけれども、私のような、法律がちょっとわからない者については、何回も何回も読み直して、総務省の中でもこの問題についてはいろいろと議論をしております、論点を整理しています。

 そういう意味では、ただ、終審裁判所である最高裁がそのように言っているということは、これは専ら国の立法政策にかかわる事柄としてゆだねられているんだなというふうには、私はそのまま受けとめているところであります。しかし、この問題については、党内にも政府内にも、あるいは国内の世論にもいろいろな意見があることは承知しておりまして、その点は、総理も総務大臣も何度も国会で答弁をしておりますので、これは日本の国の統治にかかわる問題として、さまざまな議論があるべき問題であることというふうに思っております。

稲田委員 総務副大臣の御意見としてお伺いをいたしますが、地方参政権は、今、一般に民主党の案として考えられている一般永住者も含め外国人の方々に地方参政権を与えるのが、憲法十五条の関係ですとか、また立法政策も含めて妥当であると思われるかどうか、その点の見解についてお伺いをいたします。

渡辺副大臣 この点については、きょうは総務省の副大臣という立場でこの答弁席に座っております。個人的な意見は、先生とも雑誌で対談をしたこともありますし、私の政治信条はもう御承知かと思いますけれども。

 ただ、一般永住者と特別永住者という歴史的な背景も違いますし、これを一くくりにしてどうこうということは、私も法律家ではありませんので、この判決をめぐっていろいろな識者の方にお話を伺いました。その中では、やはりいろいろな御議論がございまして、この判決の要旨の中に出てくる、これは私というよりも専門家の方のお話を聞くと、例えば「永住者等」というふうに書かれております、では「等」とは一体何であろうかということについて意見を求めたり、あるいは「特段に緊密な関係」というのはどういうことを意味するんだろうかということも含めまして、今、いろいろな専門家の方にお話を伺っているところであります。

 いずれにしても、特別永住者と一般永住者というものは一緒にすることはできないであろう、一緒に一くくりとして考えることはできないのではないかなということも私自身は思っておりますが、今、いろいろな識者の方の御意見を聞いているところでございます。

 政治信条については、私、御存じのとおりだと思いますが、総務省の副大臣という立場できょうは答弁席におりますので、あえてこのようなことでとどめておきたいと思います。

稲田委員 今副大臣から御指摘もございましたように、例えば、外国人参政権について、国政参政権と地方参政権を分けて考えて、国政参政権は憲法に違反しているけれども、地方参政権については別に考えるべきではないかという学説を最初に日本に紹介した中央大学の長尾教授が、最近になって、やはりあの考え方は間違っていたということをおっしゃっております。

 また、平成七年の最高裁の判決を書かれた裁判官の一人である園部元判事が、この最高裁判例について、政治的な配慮があったんだ、また、今民主党で検討されているような一般永住者にまで地方参政権を与えるということは、これはやってはいけない、あり得ないことなんだというようなことを新聞の中で言われているわけであります。

 そこで、最高裁にお伺いをいたします。

 この園部裁判官も御指摘をされているんですが、判例の理由の中で、判例の拘束力を持っている部分、これが、主文を導き出すのに必要な部分と主文を導き出すのに必要ではない部分とを分けて、そして、判例の拘束力は主文を導き出すのに必要な部分であって、それ以外の部分、これを傍論というかどうかは別にして、それ以外の部分は判例の拘束力はないんだということを一般に言われているわけですけれども、この点について最高裁の御見解をお伺いいたします。

戸倉最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 一般論で申し上げまして、判例の拘束力と言われるものの中で、拘束力を持つ部分、あるいは、持たない、いわゆる傍論と言われる部分がいろいろ解釈の中で言われているということは委員御指摘のとおりかと思います。

 ただ、この傍論というものは特に法律等で定められた概念ではございませんで、そういった意味するところについても確たる定義等はありません。そういう意味で、最高裁といたしまして、傍論と、それらを導く、拘束力を持つ理由というところで一般的なことを申し上げることはできないわけでございます。

 そういう意味で、委員御指摘のような、さらに個別の判例の読み方ということになりましては、やはり最高裁は、個別の判決について、どれが傍論であるとか、そういった点についてコメントすることは差し控えたいというふうに考えております。

稲田委員 今の御答弁がちょっとわかりにくかったんですけれども、法律用語辞典ですとか、あと芦部先生の憲法の本とか、さまざまなそういった教科書的なものに、判例の拘束力については、主文を導き出すのに必要な部分について判例の拘束力があって、それ以外の部分については傍論と呼ばれるんだというような説明がされて、明らかに主文を導き出すのに必要な部分、例えば平成七年のこの判決ですと、明らかにこの判決は、地方参政権を与えられていないことが憲法に違反するかどうかが争われた事例で、憲法に違反しない、憲法十五条の解釈や、住民を、国籍を持っている日本国民である住民だというふうに解釈をした部分は、まさしく憲法違反ではないという主文を導き出すのに必要な部分で、先例拘束力がありますけれども、それ以外の部分については先例としての拘束力を持たないと一般の教科書的なものに書いてあるんですが、その点は間違いないでしょうか。

戸倉最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 判例の理由づけについて、そういった今委員御指摘のような、拘束力を持つ部分、あるいはそうでない部分があるというような形でいろいろ解釈されておるということにつきましては、委員御指摘のとおりかと考えております。

 ただ、今御指摘のような具体的な事件につきまして、どれが拘束力を持つ部分であるか、あるいはどれが傍論であるかといった点について最高裁としてコメントすることは差し控えさせていただきたい、そういうところでございます。

稲田委員 私は、一般論としてそれが間違いがないかどうかをお伺いしたかったわけですから、それは間違いがないと思います。

 また、平成七年の、主文を導き出すのに必要な部分か必要でない部分かというのは、普通の一般人が見れば明らかですので、今のお答えで、それ以上追及することはやめます。

 さて、大臣にお伺いをいたします。

 外国人の地方参政権について、先ほどの大臣の見解はわかったんですけれども、外国人の政治活動、特に選挙運動の自由について、大臣は、無制限とお考えなのか、それとも一定の制限があると考えられているのか、その点についてお伺いをいたします。

千葉国務大臣 これも判決の御紹介を含めて御答弁させていただきたいと思っておりますけれども、昭和五十三年に最高裁の判決がございますが、我が国に在留する外国人に憲法上の政治活動の自由の保障が及ぶか否かについて、「わが国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位にかんがみこれを認めることが相当でないと解されるものを除き、その保障が及ぶものと解するのが、相当」こういうことが判示がされております。

 一般論として申し上げれば、公職選挙法上、外国人の選挙運動や政治活動について、外国人ゆえの特別の規制は設けられていないというふうに承知をいたしております。この法の運用が外国人に対する政治的活動の基本的な考え方なのかなというふうに私は承知をいたしております。

稲田委員 今大臣が御指摘になったように、公職選挙法上に何らの制限がないことは御指摘のとおりであります。

 ただ、法律の上に憲法があって、そして憲法の、今の大臣が御指摘になった最高裁判決、マクリーン事件ですけれども、この中で、大臣お読みになったように、「政治活動の自由についても、わが国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位にかんがみこれを認めることが相当でないと解されるものを除き、」と書いてありますから、この反対解釈として、我が国の、例えば政治的意思決定ですとか、その実施に影響を及ぼすような活動についてはやはり政治活動は制限されると、この最高裁の判例で読めます。

 無制限ではなくて、そういう限定つきであると思いますけれども、その点について大臣も共通の認識でしょうか。

千葉国務大臣 最高裁の判例を私も解釈させていただきますと、そうだというふうに思っております。

 ただ、具体的にどのようなことなのかということは、私、憲法解釈をする立場にございませんのでわかりませんけれども、最高裁の判示をそのまま読みますと、無制限ではないということは読み取れることと思います。

稲田委員 総務副大臣にお伺いをいたします。

 政治資金規正法は外国人からの寄附を禁止しておりますけれども、その趣旨は何でしょうか。

渡辺副大臣 これはもう何回もほかの委員会でも答えておりますけれども、献金によって、外国人や外国の組織、外国の政府など外国の勢力によって影響を受けることを未然に防止しようという趣旨で設けられている、このように政治資金規正法の第二十二条の五は設けられているというふうに認識をしております。

稲田委員 そうしますと、公職選挙法の中には外国人の選挙活動について何ら制限はないんですけれども、今の政治資金規正法の趣旨からしますと、やはり同じような規制、例えば選挙運動について、外国人や外国勢力の影響を選挙が受けないように、政治的な意思決定について影響を受けないように何らかの規制をする必要はあるとお思いでしょうか。

渡辺副大臣 現行の公職選挙法では、外国人だからといって政治活動をさせないということはもちろん規定されていないわけでございまして、これは私ども日本人と同じように、公職選挙法の範囲内であれば政治活動あるいは選挙運動もできるというふうに解されております。

 反面、先ほど、いわゆるマクリーン事件の判決の中に出てきます「わが国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等」というものを例えばどういうふうに考えるかということは、これもまた、私よりも、いろいろな法律家の方に、例えばどういうことなんだろうかというようなことをこれから確認してまいりたいと思いますし、非常に例示をされていればいいんですけれども、こうした書かれ方をしますと、外国人のさまざまな政治活動と、このように制限をつけたことについては、これは当然いろいろな法律家のお話も聞かなきゃいけぬだろうなというふうに思っているところでございます。

 最高裁のいわゆる判決による法律的なイメージを私どもとしてもちょっと確認をしたいというふうに思って、確認をしているところでございます。

稲田委員 イメージを確認していただいているということなんですが、明らかに、先ほど法務大臣も御答弁なさったように、外国人の政治活動は無制限ではなくて、このマクリーン判決が言うように、「わが国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位にかんがみこれを認めることが相当でない」、こういった場合には、やはり選挙活動も制限をするべきではないかと思います。

 その一環として、ちょっと気になることがあるんですけれども、例えば平成二十二年の二月一日の産経新聞では、千葉県市川市の市議会で、永住外国人への地方参政権の付与に反対する意見書の採択に委員会レベルで決議しながら、民団のロビー活動の結果、一夜にして本会議で否決されたということがわかったということで、ロビー活動が積極的になされております。

 また、例えば民団新聞の、選挙期間中の新聞なんです、昨年の八月二十六日。ここにいかに民団の方々が選挙活動に活躍をされたかということが書かれております。

 少し読みますと、公示された十八日、活動を開始した、そして、民主党の鳩山由紀夫代表は、永住外国人の地方参政権について、もっと前向きに考えるときが来たと言っている、その結果、民団の支援活動は勢いづいている、「都内のある重点地区では公示日の十八日午前、民団支部事務所で支援候補の事務所からこの日預かったばかりのビラ二万枚に証紙を貼った。」また、ほかのところでは、「同支部が派遣した専従支援要員の二人は選挙事務所に張り付き、他の選挙スタッフとともに公設掲示板や支援者の自宅、店舗へのポスター張り出し、支援者名簿の回収などに汗を流した。」「このほか全国各地の重点地区でも、支援者名簿の作成など継続作業のほか、証紙貼りやポスター貼りなど、具体的な支援活動を一斉にスタートさせた。」ということが書かれておりまして、選挙期間中に証紙張り、ポスター張り、それから専従支援者の派遣、かなりさまざまな支援をされているわけです。

 こういった外国人の方々による選挙期間中の活動が、我が国の選挙、まさしく政治的意思決定に重大な影響を及ぼすとは考えられないでしょうか。法務大臣とそれから総務副大臣にお伺いをいたします。

千葉国務大臣 今御紹介をいただいたような、そういう事態といいましょうか、そこは私は承知をいたしませんので、そのようなことにコメントをさせていただくということは困難でございます。

 一般的に、必ずしも、政治的な意思決定にどのような影響を及ぼすかということ、個別どのような場合かということを私もお答えする立場にはございませんので、差し控えさせていただきたいと思います。

渡辺副大臣 私も、民団の新聞も読んでおりませんし、産経新聞の、市川市でのロビー活動というものがどのように行われたかということも、報道は知っていますけれども、実は事実を掌握しているわけではありませんので、何ともお答えしようがないんですけれども、これは一般論で申せば、私ども選挙を経験、くぐり抜けてきた者からすれば、いろいろな方に選挙を応援いただいています。その選挙の応援をいただく中で、そこで当然、自分自身の政治的な意思決定の中にどのように影響を与えたかというのはいろいろあるわけでございます。

 当然のことながら、選挙の支援を受けたからといって、では、その方に恩義を感じて何でもかんでもやるかといえば、これは一般論としてですけれども、なかなかそれは、できないことは当然できませんし、別に選挙で支援を受けなくても、政治信条にのっとって、これはという思いがあれば、どなたから言われることもなくやることもあります。ですので、どこまで政治的な意思決定に影響を及ぼしただろうかということは一概に言えないことで、一般論として言えないことでございます。

 ただ、今例示されたようなことにつきましては、事実としては認識しておりませんので、具体的にお答えできませんけれども、そこは政治家個人の、すべて政治信条に従って我々は行動すべきだろうというふうに思っております。

稲田委員 ただ、これは政治家個人とかそういう問題ではなくて、ぜひその事実関係を調査いただいて、それが妥当かどうか、このマクリーン判決に照らして妥当かどうかということをぜひ検討いただきたいと私は思うんです。

 なぜなら、この外国人地方参政権の問題は、そういった政治的な意味を非常に含んでおります。例えば、民団の新年会に農水大臣が行かれまして、自分は選挙委員長をしていたんだ、そして民団の皆さん方に大変お世話になって、選挙活動をいただいて、そのおかげで政権交代ができたんだ、そして、皆さん方に頑張っていただいたその公約として、外国人参政権をぜひ通常国会で成立させたいんだという強い決意を述べられているわけですけれども、私は、やはりそれは日本の政治家として絶対にやってはいけないことではないかと思っております。

 また、韓国では外国人の選挙運動が法律で禁止をされております。それも、やはり主権国家として、日本の政治が外国人や外国勢力によってゆがめられないように、そのために選挙活動についてもぜひ規制ということを考えていただきたいと思います。

 次に、この外国人参政権の問題は、冒頭言いましたように、もはや特別永住者の問題ではなくて一般永住者の問題になっております。

 平成二十年で永住者は九十一万二千三百六十一人、うち四十二万三百五人が特別永住者、サンフランシスコ平和条約で国籍を失った方々であります。また、四十九万二千五十六人が一般永住者です。特別永住者の方々は年々減少しておりますけれども、一般永住者の方々はふえております。特に、中国から来られている方は年々ふえていて、現在十四万二千四百六十九人で、毎年一割以上伸びておりまして、今、外国人地方参政権の問題というのは、特別永住者の問題ではなくて一般永住者の問題になっていると思うんですけれども、大臣にお伺いをいたします。永住許可を与える基準について御説明ください。

千葉国務大臣 入管法の永住許可における法律上の要件あるいは審査基準についてお答えをさせていただきますと、要件としては、一般の場合に、素行が善良である、独立の生計を営むに足りる資産または技能を有する、法務大臣が、その者の永住が日本国の利益に合すると認めること。先ほどの三つの要件と、日本人、永住者または特別永住者の配偶者または子である場合には、最初の、素行が善良だということと独立の生計を営むに足りる資産を持っているということは要件にはなっておりませんが、いずれにいたしましても、このような要件のもとで、審査の基準は、その永住が日本国の利益に合すると認められる基準はガイドラインで示しております。

 そのような形で、一般の場合には、原則十年以上本邦に在留している、あるいは罰金刑や懲役刑などを受けていないこと。それから、日本人、永住者または特別永住者の配偶者である場合は、実態の伴った婚姻生活が三年以上継続し、かつ、引き続き一年以上本邦に在留している、それと、罰金刑や懲役刑などを受けていない。こういう要件のもとで審査をさせていただいているという実情でございます。

稲田委員 ところが、この永住在留資格の許可の基準なんですけれども、法律では抽象的に書いているんですが、その運用の基準は、平成十年の二月に見直しをして、在留資格について、二十年から十年に見直しをされています。そして、在留期間を二十年から十年に短縮したことによって永住者の数が飛躍的に伸びまして、平成九年から十年間で約五倍に伸びております。

 このように、法律ではなくてその運用の中で永住の許可を与える基準を大幅に緩和することは、私は非常に問題なんじゃないかなと思っております。そして、永住要件の緩和をどんどんしていくということになりますと、日本では移民政策というのを認めていないんですけれども、法律も改正せずに法務省の行政で勝手にどんどんこれを緩和するということは非常に問題ではないかと思うんですが、その点についての大臣の御見解をお伺いいたします。

千葉国務大臣 この内部基準が変更されたということにつきましては、旧基準はおおむね二十年というような基準で運用されておりました。旧基準のもとでございますと、おおむねということで若干の幅があるわけですね。そういうことで、統一した運用基準をきちっとしておいた方がいいのではないかということ、それから基準緩和の要望や要請があったということなどに基づいて、二十年以上から十年以上ということに変更されたというふうに承知をいたしております。

 私も、決して何の意味もなく緩和をしたりあるいは基準を変更するというようなことがあるべきではないというふうに思いますけれども、必要に応じ、そしてまた、逆に言えば明確な基準を設定するというような趣旨で変更されるということはあり得ることだというふうに思っております。

稲田委員 ただ、やはり、法律を変更せずに、二十年を十年という半分に要件を緩和するということを国会の場で議論をせずにやられるということは、私は非常に問題ではないかなと思っております。やはりそういったことをきちんとやってもらわないと、どんどんと永住外国人の方がふえていき、そしてそこに地方参政権を与えていくということになりますと、非常にこの国の形を変更する、また主権国家としていかがなものかと思いますので、そういった点はぜひきちんとやっていただきたいと思います。

 きょうは厚労副大臣にもお見えいただいておりますが、永住外国人は生活保護の対象になるのでしょうか。外国人に対する生活保護の問題についてお伺いをいたします。

清水政府参考人 生活保護法は、その第一条におきまして日本国民のみを対象とすることといたしておりまして、外国籍の方は生活保護法の対象外でございます。

 しかしながら、外国籍の方につきましては、予算措置といたしまして、日本国内の就労活動に制限を受けない永住者等の在留資格を有する方、この方々に限りまして、生活保護法を準用するという考え方で日本国民と同様の対応をしておるところでございます。

稲田委員 外国人に対する生活保護を与えている割合が、日本の人たちに与えている割合よりも高いというふうに聞いております。また、生活保護を支給している対象の外国人の在留資格についてどういう割合になっているのか、お調べになっているでしょうか。

清水政府参考人 生活保護を受けている者の割合でございますが、日本の人口が一億二千万強の中、被保護人員が平成二十年度におきまして百五十九万ということで、一・二%ということになります。

 一方、外国人登録をしている方全体は、同時期を見ますと二百二十一万ということでございまして、その中で被保護の方は五万一千人余りということで、割合として二・三%ということでございますから、外国人登録人員分の被保護の割合は、日本国民にかかるものよりも高いということでございます。

稲田委員 支給している先の外国人の在留資格についてお調べですかという点はどうでしょうか。

清水政府参考人 生活保護を準用する外国人の方々につきましては、永住者、定住者、日本人の配偶者、特別永住許可を有する外国人の方という一くくりで数字をとらまえておりますので、それら個々ということについての数字は持ち合わせてございません。

稲田委員 ぜひそういうことも調べてほしいんですよ。それは私もお願いをしていますよ。

 しかも、永住外国人の要件というのは独立の生計を営むに足る資産または技能を有する者ですから、しかも日本の利益に合致するという方々ですから、本来、永住許可をもらっている人が生活保護をもらうということは私は論理矛盾だと思うんですけれども、そういった対象の中身についてもきちんと調べていただきたいし、また、昨年この委員会でも指摘をいたしました、大臣が特別在留許可をお与えになった中国人姉妹の事件の判決によると、不法滞在をしている間も生活保護を日本から受けていたということで、何で不法滞在をしている外国人に生活保護を与えるようなことになったのか、その点の審査もきちんとしていただきたいし、仮に与えた場合には返してもらっているんですかということを聞いても、全くお答えがないんですよ。

 そういったこともちゃんとやってもらわないと、どんどんどんどん日本は破産していく、ただでさえ貧乏なのに。一体何のためにそういうことをやっているのか。きちんとやっていただきたいと思います。

 せっかく厚生労働副大臣に来ていただいているので、時間が少なくなりました、子ども手当についてお伺いをいたします。

 子ども手当を、日本に来ておられる外国人のお子さんが外国に住んでいらっしゃる場合にも与えるんだという制度設計になっているようですけれども、それは一体どういう理由に基づくものなのか。私なんかからすると、外国の方は、日本に住んでおられて、外国に住んでいる子供さんに子ども手当を与えて、お子さんは日本にいるけれども外国に親御さんが住んでいると子ども手当は与えないというのは、子供に着目しても平等じゃないし、また財政政策としても、そんな野方図なことをやっていたら大変なことになると思うんですが、その点について御見解をお伺いいたします。

長浜副大臣 今お尋ねにあったとおりでございますが、今回の子ども手当法案というのは、現在もこの上で審議が続いておりますが、児童手当の一部を援用しながらスキームを構築しているところであります。

 この児童手当の法律の中においても、今先生が御指摘あった部分は、私が思いますに、一九八一年の難民の地位に関する条約の加入に当たり、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約の趣旨も踏まえて、他の国内法と同様に国籍要件は撤廃をし、現在は、国籍にかかわらず、親が日本に居住している場合には、その子について監護が行われ、かつ生計を同一にしているという、監護が行われ、かつ生計を同一にしているというポイントで、その子が外国に居住していても支給対象となっているところでございます。

 ただ、御指摘のポイントは、厚生労働委員会においても予算委員会においても、総理自身も、御党を初めとする多くの同趣旨の御質問を受けまして、今回のは一年、二十二年度の子ども手当の法案となっておりますので、二十三年度の法案においては重要な検討事項ということを答弁していることを付言させていただいております。

稲田委員 確かに、現行の児童手当と同じだということを言われるんですけれども、それならやはり、児童手当とこの子ども手当は全然その金額も違いますし、もし児童手当がそうだとしたら、児童手当のやり方自体も間違っているわけですから、誤りはやはり正すべきだと思うんです。

 ですから、そういったことも含め、やはり私は、日本の国益ということを外国人政策についてはきちんと考えていただきたい。鳩山総理は、日本列島は日本人だけのものじゃないんだということをおっしゃって、日本を世界に向けて開くんだ、そのための政策を自分は命がけでやるんだということをおっしゃっておりますけれども、そういったことでやはり日本は守れないと思うわけです。

 日本は移民政策をとっているわけでもありませんし、やはり、不法滞在者に対する在留特別許可の問題やら、今の生活保護、子ども手当の問題も含めて、きちんとした対応をとっていただきたいと思います。

 以上でございます。ありがとうございます。

滝委員長 次に、柴山昌彦君。

柴山委員 自由民主党の柴山昌彦です。

 まず、千葉大臣にお伺いします。

 大臣は、法曹人口の拡大についてどのような方針、御意見をお持ちでしょうか。

千葉国務大臣 お答えをさせていただきます。

 私は、法曹人口の拡大は基本的には必要だという認識でこの間考えてまいりました。

 委員も御承知のとおり、司法制度改革におきまして、審議会でも、二十一世紀にふさわしい司法制度のあり方ということが幅広く議論をされまして、その中で、これからの社会像といいましょうか、そういうことも踏まえながら、今後は国民生活のさまざまな場面において法曹に対する需要が多様化、高度化するということが予想される、社会の中で法の支配をあまねく実現する前提として、例えば、弁護士の地域的偏在などを是正する、あるいはさまざまな司法にかかわる人、人的基盤を広げていく、こういう必要性が指摘もされてまいりました。

 私は、この改革審議会の意見、こういうものが今の社会の大きな基礎を示しているものではないか、そういう意味で、法曹人口、それに伴って的確に拡大をされていく、あるいはすることが必要であろうという認識に立っているものでございます。

柴山委員 なるべく御答弁は簡潔にお願いしたいと思います。

 拡大の方向性というものは間違っていないというような御発言だったかと思います。

 もちろん、今回の法案で取り上げる裁判官の定員をどうするかということは、裁判官とともに仕事をする検事や弁護士の定員をどうするかということに密接にかかわってくるわけです。

 しかしながら、おととい三月十日、異例の再投票で、日本弁護士連合会会長に、法曹人口拡大の政府目標に正面から異論を唱えておられます宇都宮健児弁護士が当選されました。

 弁護士会長の個別人事ということではなくて、法曹人口削減を唱える日弁連会長の誕生ということについて、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

千葉国務大臣 私としては、これまでと同様、法曹人口は十分にこれからも増大をさせていく、そういう方向で、当然のことながら、日弁連などの御協力もいただいてまいりたいというふうに思っております。

 今度の会長の御真意といいましょうかお考え方、正式に伺っているものではございません。また、これから日弁連としてどのようなお考え方を全体としてお取りまとめになっていくのか、こういうことも定かではございませんが、できれば、司法制度改革、そして法曹人口、本当にきちっと的確に充実させていくということに後ろ向きになっていただくことがないようには期待をいたしているところでございます。

柴山委員 確かに、諸外国に比べて一けた割合が少ないと言われる日本の法曹人口の拡大の必要性は、実はこれは私が生まれる前から指摘をされておりましたし、にもかかわらず、弁護士会などの反対のためにそれがなかなか進んでこなかったのは、やはり、ギルド的な既得権益擁護体質があったという面は否定できないと私は思います。また、それを打ち破るための改革が必要だということも私自身確信はしております。

 しかし、質の低下ということはやはり避けなければいけないと思うんですね。手術が満足にできないお医者さんがお医者さんとして仕事をする、ぞっとするようなお話であります。今、法曹の社会的役割ということを考えた場合に、私はまさしくこういった配慮が必要となってくるんだと思うんですね。

 そこで、大臣にお伺いいたしますけれども、急速な法曹人口の拡大という中で、さまざまな弊害も指摘されております。政府目標、二〇一〇年までに司法試験の年間合格者数を三千人まで引き上げるというこの目標が見直される可能性はないのでしょうか。もうことし二〇一〇年ですけれども。

千葉国務大臣 基本的に、平成二十二年ごろには合格者数三千人程度を目指すという、既に閣議決定をいただきながら進めてきたものを今見直すということは考えておりません。

柴山委員 今とおっしゃいましたけれども、これまで私も、与党時代、さまざまなヒアリングをしてきましたし、また法務省の方々にもさまざまな場面で今申し上げたような懸念、さまざまな現在の状況について説明をさせていただいたんです。

 もうことしも三月の十二日ということになりまして、当然のことながら、間もなく司法試験シーズンがめぐってくるわけなんですよ。どうしてこうやって対応が先延ばしになっているのか、どうして率直な検討が行われていないのかということを私は極めて遺憾に考えております。今からでも、できる検討を極力加速して行っていただきまして、文科省等ともしっかりと議論を進めてほしいというように申し上げたいと思います。

 法曹がふえ過ぎでないかという検討の一方では、逆に、その中の裁判官はふえなさ過ぎではないのかという疑問を私は持っております。

 先ほど御指摘があったかとも思うんですけれども、裁判官、こちらは平成二年には人口は二千十七名、そして平成二十一年には二千七百六十名、この間三七%の増加となっているんですね。一方、弁護士は、同じく平成二年には一万四千百七十三名、平成二十一年には二万六千九百五十八名ということで、この間の増加は何と九〇%であります。検事ですら、平成二年千百七十三名、そして平成二十一年には千七百二十三名で、四七%の増加となっていて、裁判官よりは大きな伸び率を示しているわけです。

 こういうデータのもとで、弁護士や検事に比べて余りにも裁判所の体制が不十分じゃないかという指摘が可能かと思うんですけれども、これは裁判所の方にぜひお伺いしたいと思います。

    〔委員長退席、樋高委員長代理着席〕

戸倉最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 裁判官の人的体制というのは、基本的には、裁判官がどのような負担を負うかということを基準に判断してまいるわけでございますが、そのような負担というものは、委員も御存じのように、直接的には裁判所に提起される事件数や事件の中身といった点がございます。さらに、事件処理がどのように行われているかという点も関連してまいります。さらには、裁判員制度を初めといたしました裁判手続がどのように変わってきたか、どのような効率化が図られてきたかといった点も規定要素となろうかと思います。

 こういったことを踏まえまして、裁判官の増員につきましても、このような事件を適正迅速に処理するために裁判官が足りているかどうかという観点から検討しているところでございます。

 今委員の御指摘の、弁護士あるいは検察官の増加率の比較の点でございますが、これは、弁護士であれば、訴訟事件だけではなくて、予防法務あるいは裁判外の紛争解決など、さまざまな広範な社会的、法的ニーズに的確に対応しておられるという点がございます。また、検察官につきましても、公判だけではありませんで、その前提となる捜査という点にも大きなエネルギーを割いておられるところと承知しております。

 そういったことがございまして、裁判官のこれまでの人員の増加率と弁護士、検察官の増加率とを比較して、裁判所の体制がどうであるかということを御説明申し上げるのは非常に困難であるということは御理解いただければと思います。

 ただ、いずれにいたしましても、法曹人口の増加は、いずれ、民事事件を中心といたしまして、裁判所に提起される事件の増加につながっていくものと我々は予測しておるところでございまして、こういった点も考慮、念頭に置きながら、国民の裁判所に対するニーズをできる限り的確に把握いたしまして、計画性を持って鋭意必要な人的体制の整備に努めてまいりたいというふうに考えております。

柴山委員 ただ、法曹人口がふえれば、それに伴って、例えばある程度民事事件がふえていくというような相関関係というものはやはり私はあるんじゃないかと思うわけです。法の支配がその分やはり広がっていく、アンダーグラウンドに埋もれていたものが表に出てくるという関係にはあるのかと思いますので、そこはぜひしっかりとした検証をしていただきたいと思います。

 今御説明の中で、裁判官の負担というものが大きなメルクマールだというようなことをおっしゃったと思うんですけれども、それでは、一人当たりの裁判官の手持ち件数について、例えば東京地裁の民事部の通常部についての最近の推移をぜひ聞かせていただきたいと思います。

戸倉最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 今御指摘の東京地方裁判所民事、これは通常部でございますが、これの裁判官一人当たりの手持ち件数、これは平成二十一年度末の数字でございますが、約二百七十件ということになってございます。

柴山委員 二百七十件ですよ。ちょっと私は想像を絶する数字だと言わざるを得ません。

 実はこの問題は、私、二年前にも質問したんですね。二年前に同じことを聞いたんですよ、東京地裁民事部の通常部での裁判官一人当たりの手持ち件数は幾らですかと。そのとき何と答えられたかというと、二百件ですよ。この二年間の間でまた飛躍的にふえているわけなんですね。

 私の手元に平成十三年の四月十六日付で、最高裁判所事務総局が出した「裁判所の人的体制の充実について」というペーパーがあります。この中に、今後の目標として、裁判官の手持ち件数を大幅に減らさなければいけない、手持ち件数を現在の百八十件から、四分の三の百三十件から百四十件、こういった形でペースダウンしていくということが必要だというように明記されているんですよ。今おっしゃっていることと全く矛盾しているじゃないですか。どういうことなんですか。

    〔樋高委員長代理退席、委員長着席〕

戸倉最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 最高裁判所が、司法制度改革審議会の過程で、今委員御指摘のような手持ち件数の減少を図るということを申し上げたことにつきましてはそのとおりでございまして、それを踏まえまして、最高裁判所といたしましても、平成十四年以降、計画的な増員を図ってきたわけでございます。

 これに対しまして、当時の御説明におきましても、これはあくまで、事件数がその当時の事件で推移する場合は、その前提であるということを申してきたわけでございますが、その後、特に近年、過払い金事件を中心といたしまして事件が激増したという状況がございまして、その結果、今申し上げたような手持ち件数の増加ということにつながってまいったわけでございます。

 そういう意味で、その増員部分を増加した事件への対応ということに当面振り向けるということになってまいっているわけでございますが、そのような状況にありましても、審理期間等を見ましても、事件処理につきましてはおおむね支障なく行われてきておるところではございます。

 ただ、この意味で、裁判官の負担が非常に大きくなっておりまして、こういった事件処理を維持する上で、やはり裁判官の負担が大きくなっておるということは、我々も間違いのないことだと認識しております。

 そういうことで、裁判所といたしましても、今後とも、事件数あるいは処理状況などを踏まえながら、引き続き、必要な人的体制の整備に努めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。

柴山委員 そういう認識がありながら、何で今回こういうものを出してくるんですか、こういう数字のものを。

 判事補採用だって、これだけ修習生がふえているわけですから、それはやはり、さっき言ったように、質の低下というものは避けなければいけませんよ。だけれども、任官希望者の中でしっかりとしたセレクションをかけた上で、そんな、一割弱しか採用しないというようなことは、これは私はノズルを絞り過ぎじゃないかなと思うんですよ。

 はっきり言って、この平成十三年の、今私が紹介した書面の中には確かに十年間で五百人の増員ということが書いてあるんですね。さっきの法務大臣の御答弁と同じじゃないですか。一度決まった方針に要するに波紋を呼びたくないと。担当が変われば、それは時限爆弾の先送りで、自分のところで波風立てたくない、決まったことはそのまま忠実に、事情が変更してもそのままやっていく、そういう役所体質が日本の国をだめにしていくんですよ。

 それから、先ほど稲田委員の方からもちょっと御指摘ありましたけれども、裁判員裁判の導入で、やはり裁判官の忙しさというか払底状況というものはますます大きな問題となってくるんじゃないかというように私も思います。またさらに、事件の専門化、また複雑化によりまして、今、特別部がたくさんできていますね。そういう特別部の充実の要請ということにも私は十分配慮するべきじゃないかというように思っているんですけれども、どのようにお考えでしょうか。

戸倉最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 今委員御指摘の裁判員裁判への対応につきましては、平成十七年度から二十一年度までの間、五年間で合計百五十名の増員を行っております。これは、昨年、裁判員制度が施行されまして、その後の状況を見ておりますと、この体制によりまして順調な審理が進んでおるのではないかというふうに考えております。

 ただ、委員も御承知のように、裁判員裁判というのは、今後、否認事件であるとか、さらに複雑困難な事件などの審理が本格化するという状況にございますので、私どもといたしましても、審理の実際の運営がどのようになっていくかということには十分注意を払いながら、その必要な体制の整備という点にも意を払ってまいりたいというふうに考えております。

 また、専門性への対応も裁判所にとっては重要な課題でございまして、これまで専門性への対応ということで、集中部など、あるいは専門部を設けるというようなことをやってまいりました。

 その観点から裁判官の体制を見てみますと、例えば東京地方裁判所の知財専門部、知的財産権専門部がございますが、これは平成九年は一カ部、裁判官八名体制でございましたが、これが平成十年度以降、部の増設と増員を行った結果、現在では四カ部、裁判官十六人体制となっております。また、大阪地方裁判所におきましても同様な措置を行いまして、現在は二カ部、裁判官六人体制となっております。さらに、平成十七年には知的財産高等裁判所を設置したところでございます。

 このような専門事件への対応を行ってきました結果、知的財産権訴訟の審理期間につきましては、地裁第一審で、この十年間でおおむね半分になるといった成果が上がっておるところでございます。

柴山委員 確かに、専門部をつくって審理期間が大幅に短縮されるですとか、あるいはその事件解決の適正性というものがより高まるとか、そういうことがあれば、例えば通常部の裁判官を引っ張ってくるということで足りるという判断にも一部は合理的な部分もあるのかもしれませんけれども、ただ、やはり事件数の拡大ということとの絡みで、本当にそれで十分なのかということは常に私は検証していくべきだと思うし、さっき申し上げたことの繰り返しになりますけれども、一度方針を決めたからといって、不都合が生じればしっかりとそれに対応していくということは忘れないでいただきたいというように思っております。

 そしてもう一つ、私が指摘をさせていただきたいのは司法過疎地への対応ということなんですね。弁護士もゼロワン地域の解消ということで、司法支援センター、法テラス、そういった対応をしているわけですけれども、裁判所の方では、支部、支庁の充実、あるいは増設ということについて、どのような対応をされているんでしょうか。

戸倉最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 裁判所の使命は適正迅速に事件を審理、判断することでございまして、このことは、都市部であると、あるいは人口の少ない地域であるとを問わないということは言うまでもないというふうに考えております。

 また、裁判所の人的体制の整備におきましても、各地の業務の質、量に見合った体制を整える必要がございまして、裁判所といたしましても、これまで各地の裁判所における事件数の動向等に応じた体制整備に努めてまいっております。この点は支部等の小規模裁判所においても同様でございます。

 こういった点で、各地の裁判所におきますニーズに対応する体制を整備することで、支部などの小規模の裁判所におきましても、おおむね本庁と遜色のない事件処理が行われているものと承知しております。

 裁判所といたしましても、地方を含め、どの地域においても滞りなく事件処理が行われるようにいたしまして、全国的に公平な司法サービスを実現すべく、その体制の整備に努めているところでございます。

 また、さっき、支部の増設という点も御指摘がございましたけれども、支部の増設等を含めました支部の配置ということにつきましては、これは、裁判所へのアクセス、あるいは提供する司法サービスの質等を総合した国民の利便性を確保するという観点から、人口動態、交通事情の変化、あるいは裁判所で取り扱う事件数の動向等を考慮しながら、さらには近時のIT技術の進展等も視野に入れて、これは総合的な利便性の向上という見地から検討する必要性があろうかと認識しております。

 こういった点から、最近の情勢といたしましては、司法制度改革に関連した新たな諸制度が順次実施されまして、これがどのように裁判審理に影響を及ぼしておるか、あるいは市町村合併に伴う地域社会の状況の変化がどうなっておるかという点も我々としては注視しているところでございます。

 今後とも、裁判所といたしましては、地域の住民の方々がよりよい司法サービスを受けることができるよう、裁判所全体の配置のあり方といった観点から検討を行ってまいりたいというふうに考えております。

柴山委員 今おっしゃった人口動態ですとか、あるいはさっき言ったような手持ち事件のデータとか、そういうのはどういう形で検証しているんですか。今、一般論としておっしゃったけれども、例えば個々の地域でそういうことをきちんと検証するというような作業は、裁判所の事務局の方ではやっているんですか。

戸倉最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 各裁判所のニーズと申し上げますと、やはり具体的に個々の支部、あるいは簡易裁判所に提起された事件数といったことを我々としては一つ大きな手がかりとしているところでございます。

 その際、我々として、そのニーズに十分おこたえしておるかということに関しましては、その各地の裁判所の事件数、あるいは裁判官がどのような処理をしておるかというのは随時把握をして、検討しておるところでございます。

 あと、その処理状況という点では、例えば支部におきます訴訟の平均的な審理期間というものがどうなっておるか、非常におくれてはいないかというようなことも注視しておりまして、この点、審理期間につきましては、全く本庁と遜色のない状況になっておるというふうに把握しておるところでございます。

柴山委員 しっかりと検証していただきたいと思います。

 さっき、IT技術の進展というお話ありましたけれども、ITが使える方ばかりではありませんから、特に高齢者をねらったさまざまな悪質な事件等も続発しているわけですから、そういったことにもきちんとした目配り、配慮というものをお願いしたいというように私は思っております。

 こういうところで、法律家あるいは裁判制度が十分機能していないときにどういうふうになるか、御存じですか。政治家が出てくるんですよ、間に、口ききで。私も弁護士時代に、ちょっと固有名詞は挙げられませんけれども、何人かの、複数の政党の方から、やはり政治家介入案件というものがありました。そういうことをやはり少しでもなくしていくということがこれからの社会には求められていくというように思うんです。政治家は政治家としての仕事をする、そして法律家は法律家としての仕事をする、そういう社会の実現のために、ぜひ御尽力を賜れればと思います。

 ただ、今いろいろと逼迫の要因ばかり申し上げましたけれども、今、少しお話があったように、紛争解決の多様性と、弁護士がいろいろな紛争解決の手続に力を発揮しているというような御指摘もありましたけれども、そういうものがどんどん進んでくれば、裁判官だけが紛争解決をするということは恐らくなくなってくるんだと思うんです。

 この委員会でも検討してまいりましたADR手続の充実ですとか、あるいは準司法手続、行政の中で公正性を担保するために司法に準じる手続で審査をするという手続、また仲裁等の手続、さまざまあると思うんですけれども、こういった事柄の拡充ということについて、法務省、大臣、どういう御見解をお持ちなんでしょうか。

千葉国務大臣 大変重要な御指摘だというふうに私も受けとめさせていただいております。

 もう既にお触れいただけましたように、司法制度改革の中で、民間ADR、法務省としては認証制度、それを受け持つということで創設されておりますし、仲裁制度の整備、労働審判制度等々、さまざまな紛争解決手続が新しくつくられたということがございます。

 残念ながら、仲裁制度はなかなか日本でまだまだ活用がされにくい、されていないという実情はありますが、民間ADR、こういうものがかなりつくられ、そして機能を発揮しつつあるところでもございます。

 そういう意味では、法務省としても、このような解決手段、とりわけ、認証した民間のADR、これが大いに利用していただけるように、また環境の整備や、あるいは充実のために力を尽くしてまいりたいというふうに思っております。

柴山委員 お願いしたいんですけれども、ただ、けさの新聞なんかを見てみましても、今、独占禁止法の改正の議論の中で、準司法手続である公取の審判制度を廃止して、不服申し立てを裁判所の手続に一本化しようというような法改正を民主党さんの方でされようとしているんですよね。今おっしゃっていることとあべこべじゃないですか。もちろん、いろいろとこれまでの制度に問題点があることは私も承知をしていますけれども、これこそまさしく縦割り行政以外の何物でもないんじゃないですか。

 経産省は経産省で独自の判断をする、法務省は法務省で法務省の独自の判断をして政策立案をする、相互の連携とか、特に準司法手続というのは各省横断で取り組まなければいけない問題なんですよ。行政改革の非常に大きな起爆剤となるとすら私は思っているんです。そういうことの問題点について、質疑時間が終了したということですので、これは消費者特別委員会の方でしっかりと追及させていただきますので、またよろしくお願いいたします。

 以上です。

滝委員長 次に、大口善徳君。

大口委員 公明党の大口善徳でございます。

 今回の裁判所職員定員法の一部を改正する法律案に公明党としては賛成をいたします。

 その上で、平成十三年の四月に、最高裁判所事務総局で、司法制度改革審議会からの照会ということでこの増員の計画が出されたわけですね。平成十四年から十年かけて裁判官四百五十人の増員、これは裁判の迅速、専門化への対応ということでありました。着実にこれが進んでいる、九年で四百十二人でありますから、来年度やれば四百五十人程度に達するということであります。そして、平成十七年から平成二十一年の五年間で、この四百五十とは別に、裁判員制度の導入ということで百五十人の増員、これも今、二十一年で終わったわけであります。

 そういうことで、今後この増員計画をどうするのかということが、これは非常に今までも議論があったところで、大事でございます。裁判官の増員計画というのは、国民の生活そして国のあり方にとって非常に大きな問題であるわけですから、やはり中身のある答弁をしていただきたいと思うわけであります。

 各委員からいろいろ御指摘がございました。この二十年間で、民事事件の第一審の訴訟事件あるいは家事事件の総数、これが倍増した。過払い請求ということも多いと思います。それから、やはり事件の多様化、新制度、これは成年後見とか労働審判、裁判員裁判、こういうものがある。

 そして、そういう中で、やはり今裁判官が相変わらず非常に多忙である、それがさらに多忙化しているということも私どもは認識しているわけであります。証拠調べの希薄化等のことも指摘がありました。家事事件の遅延ということもあるわけであります。

 また、労働審判制度というのは、雇いどめとか、今いろいろ労働案件があって、これが三年間で三倍以上に急増しているということもあって、立川支部と小倉支部にも拡大するという答弁も今あったわけであります。

 また、裁判所の支部機能、これについては、非常駐が二三%、合議事件を扱わないのが七〇%ということで、本庁へ移っている、このことがまた地域に対しての利便性ということの関係からいくと、いかがなものかという問題がある。また、先ほど最高裁が答弁されておりましたが、支部裁判官についても非常に多忙だ、民事、家事、刑事を兼務して、支部長としての司法行政も担当している、こういうことでありますから、やはり審理期間はそう変わらないということですが、相当これはしわ寄せが来ているわけであります。

 さらに、裁判官の年齢構成、これも、平成二十一年の十二月で私が調べましたら、六十歳以上の方が五百六十九人、これは割合で一七%ということでありますが、この裁判官の多くが簡判を除いたらあと数年で退職される、こういうこともあるわけでありまして、これは本当に増員をしっかりと図っていかなければ法の支配ということに支障が出てくるのではないかな、私はこう思っているわけでございます。

 今、私が数々指摘をさせていただきましたものというのは増員を必要とする要素ということになると思うわけでありますが、四百五十人の増員計画が終了する二十四年度以降の裁判官の増員計画についてお伺いをしたいと思います。

 それから、平成十四年度から始まった四百五十人の増員計画のときは、平成十三年の四月には方針が決まっていたんです。そうなりますと、平成二十四年度ということであれば、二十三年の春の段階では、ある程度この増員計画というものがなければなりません。ということからいいましたら、もう一年前でありますから、今ある程度の方向性というのは出てこなきゃいけないと思います。

 いずれにしましても、そういう増員計画の見通しについてお伺いをしたいと思います。

戸倉最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 今委員御指摘のように、最高裁といたしましても、平成十四年度以降、毎年計画的な、計画性を持った増員を図ってまいったところでございまして、これが今後、二十四年以降ということでございますが、この点につきましては、委員御指摘のような事件数の動向、さらに個別の個々の事件の動向を考慮する必要がございます。さらには、裁判の審理の形態、運用というものがどういうふうに変わっていくかといった点をも総合的に考慮する必要があるところでございますが、これらの要素と申しますのは非常にいろいろ変動要素も大きいということで、長期的に確たる見通しを立てるのが非常に難しい点がございます。

 そういった点で、二十四年以降の計画については鋭意検討しておるだろうという御指摘でございまして、我々としても、その点、常に問題意識を持って検討はしておりますが、現時点では、具体的な、検討がどのようになっているかという御説明ができるようなものにまだなっていないということは御理解いただければと思っております。

 ただ、いずれにいたしましても、今後の裁判所の人的体制の整備に当たりましては、委員御指摘のような中長期的な見通しあるいは計画性を持ちながら検討していかなければならないということは、そのとおりだというふうに考えておりますので、裁判所におきましても、そのような視点を踏まえながら、今後とも検討をしてまいりたいというふうに考えております。

大口委員 だから、いつまでに計画を策定するんですか。それをお伺いしたいと思います。

戸倉最高裁判所長官代理者 これは今申し上げたようないろいろな要素がございまして、現時点でいつまでという具体的な見通しを申し上げるのは非常に困難でございまして、その点、できるだけ早くとは考えておりますけれども、現時点では、いつまでという点につきましても、ちょっと具体的なお答えはできないということは御理解いただければと思っております。

大口委員 ただ、二十四年度以降は増員計画がないわけだから、二十四年度以降、増員計画をスタートさせるということは間違いないですね。

戸倉最高裁判所長官代理者 二十四年以降の人的体制をどうすべきかというのは、これまでの増員の結果を踏まえ、さらには今後の事件動向を踏まえて検討していくということは当然必要なことでございますので、そういった検討をするということはそのとおりでございます。

大口委員 いずれにしましても、これは、この法務委員会でもしっかり議論していかなきゃいけないものですから、やはりある程度スケジュールを裁判所としても出していただいて、そして国民各般のいろいろな御意見も聞きながら、これはやっていかなきゃいけないと思いますので、対応をお願いしたいと思います。

 そして、私も、こういう問題は何回も質問をしているんですけれども、平成十三年の改革審議会の回答の中で、最高裁事務総局で、要するに、裁判官制度の改革に伴う増員ということで、四百五十人とは別に、特例判事補制度の見直しのために六十人程度の増員が必要だ、こういうふうに言っています。

 御案内のとおり、裁判所法二十七条で、判事補というのは一人で裁判することはできない、こういうことですね。ただ、特例判事補についての法律によって、在職五年以上になる者については最高裁判所の指名する者ができる、こうなっているわけであります。

 この件について、私は、平成十九年十一月六日、この法務委員会で特例判事補の問題についてお伺いしました。そのときに、事務総局の人事局長が、「特例判事補制度の見直しにつきましては、現実的な視点に立って計画的、段階的に解消すべきであるとの認識のもとに、当面、特例判事補が単独訴訟事件を担当する時期を任官七年目ないし八年目にシフトすることを目標として、見直しを進めているところでございます。」こういうふうになっているわけです。

 そこで、この六十人増員がきちんと行われているのか、現在特例判事補が単独訴訟を担当する時期は任官何年目から行われているのか、六十人の計画増員がどのように行われているのか、お伺いしたいと思います。

大谷最高裁判所長官代理者 委員御指摘のとおり、平成十九年にお尋ねがありまして、そして先ほど御紹介いただいたようなことを申し上げたところであります。

 東京それから大阪を初めとする大都市本庁につきましては、ほぼこの目標を達成することができたと申し上げることができます。ただ、大都市部以外の裁判所、特に地方の支部などにつきましては、なかなかその前提条件が整わないというところが依然としてございまして、見通しにつきましてはまだ道半ば、率直に言ってそういう状況であります。

 そういうことで、我々としては、委員からも平成十九年度もお尋ねがあるところでありますし、それから司法制度改革の中でその点についての改善を申し述べたところでありますので、この点について、さらに目標が達成できるように努力していかなければならない、このように思っております。

大口委員 この平成十九年、大谷人事局長にたしかお伺いして、そのようにお答え願ったわけですね。七年、八年目というのは別に大都市部だけじゃないわけでしょう。それなのにこれは進捗していないと。二年半前に私が質問して、それでそう答えられたことに対して十分進捗していないということは、これはどういうことなんですか。もっと責任持って回答していただかなければ、二年半たってできませんでした、おかしいんじゃないですか。

 それともう一つは、この特例判事補の単独訴訟事件の、任官の七年、八年目ということについては、これは当然増員の要素となるのか。

 この二点、お願いします。

大谷最高裁判所長官代理者 二年前と何も変わっていないのかということについて申し上げますと、先ほどもちょっと申し上げましたが、東京、大阪、名古屋、こういった地裁の本庁における実情としては、現時点では任官後六、七年目に当たる、五十六期と五十七期という修習生ですが、この判事補で民事、刑事の単独訴訟事件を担当している判事補は全体で東京一人、ただし、これもしかも部内事情によって臨時的に行っているものでありまして、大阪、名古屋では一人もいない、こういう状況はつくっております。

 ただ、地方の本庁や支部について、先ほどもちょっと申し上げましたが、任官六年目、七年目という若い判事補を含む裁判官によって単独訴訟事件の処理を支えているというのは事実でございます。

 これにつきましては、司法制度改革の時点でも、これにかわって単独訴訟事件を担当する実力を備える判事の確保については、特に優秀な弁護士任官者の確保が不可欠である、こういうことが述べられていたところであります。また、一般的な事情と申し上げましても、つまりキャリアの裁判官で申し上げましても、若手の裁判官の場合には多少遠方のところへ行くこともできるわけですが、なかなかそれが年配者には難しいという事情がございます。

 そういう前提条件がなかなか確保できないということで、先ほど申し上げたような現状ということになります。

 増員との関係、一言最後に申し上げますが、そういうことで、特例判事補制度の見直しの前提となる環境がまだ整っていないということから、この増員について行っていないということを御理解いただきたいと思います。

大口委員 しっかりやっていただきたいと思います。

 それから、法科大学院の定員数の削減についてお伺いしたいと思います。

 法科大学院につきましては、本当に七、八割の方が司法試験に合格して、こういうことで、大臣、千葉大臣も御答弁されたわけです。我々もそう思っていた。法科大学院に入学する人たちもそういう期待を持っていた。ところが、平成二十一年度の新司法試験では、全体の合格率が二七・六%。特に、未修者の合格率が一八・九%、これは二十年が二二・五%ですから、二割を割り込んでいる、こういうことであります。

 合格率の低下の一因として、法科大学院の乱立による過剰な定員数、これを私どもこれまで常々挙げてきておりまして、昨年四月、中央教育審議会の法科大学院特別委員会が、入学者の質を確保する観点から競争倍率二倍未満の大学院について自主的な定員削減を求めたということで、平成二十二年度は、募集人員が四千九百四人、こういうふうにお伺いしています。八百六十一人の減少ですね。今後も、この法科大学院の教育の質の確保の観点から入学定員の見直しとその改善を促進していく必要がある、こういうふうに思います。

 今、二十二年度は、そういうことで八百六十一人減少をするということでありますが、二十三年度の入学定員の見直しの検討状況について文科省からお伺いしたいと思います。

徳永政府参考人 二十二年度の募集人員の削減につきましては、ただいま先生から御指摘のとおりでございます。

 さらに、二十三年度の入学定員につきまして、私ども個別に大学から状況を伺っておりますけれども、その中では、これまでに見直しをしていない法科大学院も、すべてを含めまして、二十二校においてさらに定員の削減を検討していると聞いております。仮にそれぞれの大学での検討が進めば、結果としてすべての法科大学院において入学定員の見直しが行われるということになると思っております。

大口委員 私どもは、これは四千人ぐらいまでは本当に減らすべきだということを、私も常々言っておりました。この二十二校が定員を削減すれば、二百五十から三百は減るのではないかな、こういうふうに思っております。しっかり進めていただきたいと思います。

 この問題で、「法科大学院教育の質の向上のための改善方策について」という報告書を踏まえて、第三ワーキング・グループが、すべての法科大学院に対し、改善状況のフォローアップのための実地調査を行っていただいて、一月二十二日にその結果が公表されたわけでございます。

 法科大学院における教育の改善を促進するため、この改善状況の調査を行っていく必要があるわけでありますが、今回の調査の結果について文科省としてどうお考えになっているのか、お伺いしたいと思います。

徳永政府参考人 今先生御指摘のように、中央教育審議会のワーキンググループで具体に実地調査まで行って、やったわけでございます。

 そういった中では、例えば、入学者選抜で競争率二倍を下回る結果となっている、そういうことで、入学者の質の確保に対する意識が低い、そういう法科大学院が見られる。あるいはまた、定期試験の問題のいわば解答等につきましても実地で調査をしたわけでございますが、可とされた答案の中に、不可相当ではないかと考えられる答案が少なからず見られる、こういう法科大学院があったわけでございます。

 こういったことを通じまして、大幅な改善が必要な法科大学院が十四校、さらに改善、努力の継続が必要だというのが十二校、こういう多数の法科大学院がこういう指摘を受けたことを大変残念に思っておりますし、私どもも深刻に受けとめているわけでございます。

 今後、この具体に指摘を受けました二十六の法科大学院、あるいはまたそれ以外でも、二十二年度の入学者選抜の結果、その結果、例えば競争倍率が二倍を下回った法科大学院、定員未充足の法科大学院、こういった大学については継続的にヒアリングや実地調査の実施をしていきたいと思っておりますし、その上でさらなる組織の自主的、自律的な見直しを促していきたいと思っております。

大口委員 それで、改善策を、改善計画を立ててやっているわけですが、なかなか、意識が法科大学院によって違っている、十分進んでいないところもある、危機感が足りない、こういうことも言われているわけであります。

 そういう中で、今、中教審の法科大学院の特別委員会の議論の中で、要するに、法科大学院に対する公的支援というのがある、これは、国立大学は運営交付金、私立大学は私学助成の財政支援、それから法務省や最高裁判所からは実務家の教員派遣、こういうことで、本当にしっかりやっていないところについては公的支援を見直すべきじゃないか、そういう形でインセンティブを働かせるべきじゃないか、こういう議論もあるわけであります。公的支援のあり方についてどうか。

 そして、けさの新聞では、もう一つ、第三者機関による認証評価の判断基準に司法試験の合格実績を盛り込む、こういうことも一部新聞に出ています。この点はどうなのか。

 それから、ただ、そうはいっても、これを私どもは四千人程度削減をすべきだと主張しているわけですが、大都市の大規模が優位に立って地方の小規模が淘汰されて、地域的な適正配置、それを損なうのではないか、むしろ、地域的な適正配置ということからいえば、地方校に公的支援を厚くすべきじゃないか、こういう意見もあるわけです。やはり、法科大学院は相当お金がかかります。自分の住んでいるところから学んで、そしてそこで法曹としてやりたいという方もいる。みんな大都市へ行けばいいというものでもない。こういうことも考えているわけですが、以上の点について御答弁願います。

徳永政府参考人 先生御指摘の、いわば公的支援の見直しということでございます。

 こういった問題につきましては、私どもの行う公財政支出という問題もございますし、また、それぞれの実務家教員の派遣ということもございます。そういった問題全体について中教審で現在検討中でございますから、まだ具体的にこういったことということをお答えする段階ではないわけでございますが、少なくとも、私どもが直接所管をしております例えば公財政支出ということに関連をして申しますと、やはりそういう組織見直しを促進するためにはかなりのきちんとした見直しが必要ではないかと思っております。

 具体的に申し上げれば、例えば、法科大学院に対する公財政支出につきまして、学生の進路状況あるいは入学者選抜の状況、こういったものをいかに反映させるべきなのか、そうではないのか、あるいは、反映させるとしたらどういったことを行うべきなのか、こういったことを検討していくことになると思っております。

 ただ、その際、先生おっしゃいましたように、全国的な適正配置ということは、司法制度改革審議会の意見書におきましても、「適正な教育水準の確保を条件として、関係者の自発的創意を基本にしつつ、全国的な適正配置となるよう配慮する」ということが基本となっているわけでございます。現在、北海道から九州、沖縄まで、全国的な広がりを持って設置をされているわけでございます。

 私どもからすれば、そういう、先ほどから御答弁申しました入学定員の見直しあるいは公財政支出の見直しということで、いわば法科大学院の組織の見直しを推進していくわけでございますが、一方では、当然、そういう全国的な適正配置あるいは学生の学習機会の確保、こういったことにも配慮しなければいけないと思っております。

 その観点からは、特に近隣の法科大学院との連携強化、あるいは教育課程の共同実施、あるいは地元の法曹界や行政からの一層の協力の確保、こういったことについての取り組みを促していきたいと思っております。

 また、先生からも別に御質問がございました認証評価の際の基準でございますが、これにつきましては既に、学校教育法第百十条第二項に規定する基準を適用するに際して必要な細目を定める省令、この四条の一部を改正いたしまして、入学者選抜での適確かつ客観的な評価、こういったことについての、また、要するに新司法試験の合格状況を含む修了者の進路に関する評価、これを実施するということを認証評価基準に加えたところでございます。

大口委員 大臣が所信で、「新たな法曹養成制度における問題点の検証を行い、法曹養成プロセスの改善を図ることが必要不可欠」、こうお述べになって、二月五日に文科省と、これは副大臣同士が主宰者という形で、法曹養成制度に関する検討ワーキングチーム、これが設置されたわけでございます。

 新聞報道によりますと、文科の副大臣が出席されなかったということでございますが、このワーキングチームの検討内容として挙げられたものとして、一、現在の法曹養成制度の問題点、論点、二、問題点、論点を解決するための改善方策の選択肢の整理、三、改善方策を決定するフォーラムのあり方、この三点については具体的にはどのようなことであるのか。

 それから、このワーキングチームでは法曹人口のあり方についても対象とするのか。また、法曹人口の問題というのは極めて重要な問題で、これは、内閣にしかるべきそういう機関を設置して、そこで多方面にわたる意見を吸い上げて、そして、従来の方針を変更するのであれば閣議決定をする必要があるのではないか。

 そして、法学教育、司法試験、司法修習を有機的に連携させたプロセスとしての法曹養成制度及びその中核をなすものとしての法科大学院の位置づけ、これを前提として私は議論すべきであると思いますが、その点についてはどうなのか。それとの関連で、予備試験のあり方について検討する際もそれを前提とするのか。

 法務大臣にお伺いしたいと思います。

千葉国務大臣 今、大口委員がすべて、御答弁までいただいたような、そういうことがございますけれども、御指摘いただきましたように、プロセスによる法曹養成制度、これを前提とした上で検証させていただくということで設置をいたしました。

 御指摘のように、法曹人口のあり方にも、関連はする問題ですので、全く触れない、そういうことではなかろうというふうに思っておりますけれども、法曹人口の問題については、あるいはこの法科大学院を含めた法曹養成のあり方、これはやはりかなり大きな議論の場を設ける必要があるのではないか。そういう意味で、改善策を決定するためのフォーラム、こういうところで多様な皆さんの御意見をちょうだいできるような、そういうことが予測をされるのかなというふうに思っております。

 そして、その上に基づいて、仮に法曹人口、これをどうするかということになりますと、この間、三千人ということを目途にしてやってきた閣議決定を、やはりこれは閣議決定、そういう形で、変更するなり改めて決定するなり、こういう手続が必要になってくるのではないかというふうに考えております。

大口委員 法曹人口につきましては、大臣は昨年十一月十七日に、二十二年ごろに三千人程度を目指すという閣議決定、これは堅持すると今御答弁ございました。ところが、二十一年の合格者は二千四十三人、こういう状況であります。

 それで、合格者の三千人の目標というのは、平成二十二年度以降ですね。これは二十二年も目指す、二十二年度以降もこれを維持すべきと考えられるのか。そして、法曹人口の規模として平成三十年ごろまでに五万人とするということについて、これは審議会の意見書にはあるわけです。

 これについての大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

千葉国務大臣 審議会の意見書、それから閣議決定でも、平成二十二年度三千人を目標にする、それ以降のことについては必ずしも確定をされているということではございません。

 そういう意味では、この間の議論あるいはこれからスタートさせていただく法曹養成制度、この検証等もあわせながら、皆さんの御意見もちょうだいをして、議論を進めていく問題ではないかというふうに考えております。

大口委員 日弁連の会長の問題はこの法曹人口が争点になったということでありますけれども、きょうの朝日新聞の社説にもあります、昨年八月現在で、全国二百三ある地裁支部の管轄地域のうち、弁護士が一人もいない地域が二カ所、一人しかいない地域が十三カ所ある、こういう問題もあれば、法テラスのコールセンターには問い合わせ件数が〇八年度に二十八万八千件にも上った、起訴前の容疑者にも国選弁護人をつけるようになった、弁護士を必要とする場合は多くあるわけです。

 しかも、弁護士が、例えば金融庁に行くとか、証券監視委員会に行くとか、あるいは、いろいろな形、もっと法曹がいろいろな各分野に行く、政治家になっておられる方もいるわけでありますし、政策秘書になっておる方もいらっしゃる。

 そういう点では、私どもは、もっと前向きに、この司法制度改革という精神を、それは、国民に身近な司法、法の支配というものを社会の隅々まで広げていくということを、その原点に立ち返っていただかなきゃいけない、こういうふうに思っておりまして、やはり日弁連と法務大臣、よく協議をしていただきまして、よく意見を聞いた上で、しっかりと今の大臣のお考えを伝えるべきであると思いますが、最後にその点をお伺いします。

千葉国務大臣 基本的な考え方は大口委員とほぼ共通するものを私も持っているということでございます。ぜひ、日弁連のこれからの、どのような方向性をお持ちになるのか、そういうこともお聞かせをいただき、そして司法制度改革がいい意味でやはり前進をするということを私も念頭に置きながら対応をさせていただきたいというふうに思っております。

大口委員 時間になりました。以上で終わります。ありがとうございました。

滝委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

滝委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

滝委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

滝委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

滝委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時三十二分散会


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