衆議院

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第5号 平成22年11月16日(火曜日)

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平成二十二年十一月十六日(火曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 奥田  建君

   理事 京野 公子君 理事 階   猛君

   理事 滝   実君 理事 辻   惠君

   理事 本多 平直君 理事 稲田 朋美君

   理事 平沢 勝栄君 理事 大口 善徳君

      阿知波吉信君    相原 史乃君

      井戸まさえ君    小野塚勝俊君

      大西 健介君    川島智太郎君

      川村秀三郎君    熊谷 貞俊君

      黒岩 宇洋君    桑原  功君

      小林 正枝君    小宮山泰子君

      小山 展弘君    竹田 光明君

      橘  秀徳君    中島 政希君

      早川久美子君    皆吉 稲生君

      湯原 俊二君    横粂 勝仁君

      河井 克行君    北村 茂男君

      柴山 昌彦君    棚橋 泰文君

      森  英介君    園田 博之君

      城内  実君

    …………………………………

   法務大臣         柳田  稔君

   内閣官房副長官      古川 元久君

   法務副大臣        小川 敏夫君

   総務大臣政務官      内山  晃君

   法務大臣政務官      黒岩 宇洋君

   外務大臣政務官      山花 郁夫君

   最高裁判所事務総局総務局長            戸倉 三郎君

   最高裁判所事務総局人事局長            大谷 直人君

   最高裁判所事務総局刑事局長            植村  稔君

   政府参考人

   (法務省大臣官房長)   稲田 伸夫君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          後藤  博君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    西川 克行君

   政府参考人

   (法務省保護局長)    坂井 文雄君

   政府参考人

   (海上保安庁長官)    鈴木 久泰君

   法務委員会専門員     生駒  守君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十六日

 辞任         補欠選任

  高邑  勉君     皆吉 稲生君

  牧野 聖修君     小山 展弘君

同日

 辞任         補欠選任

  小山 展弘君     牧野 聖修君

  皆吉 稲生君     川村秀三郎君

同日

 辞任         補欠選任

  川村秀三郎君     大西 健介君

同日

 辞任         補欠選任

  大西 健介君     小林 正枝君

同日

 辞任         補欠選任

  小林 正枝君     高邑  勉君

    ―――――――――――――

十一月十六日

 国籍選択制度の廃止に関する請願(浅尾慶一郎君紹介)(第一八八号)

 同(首藤信彦君紹介)(第二一二号)

 同(仲野博子君紹介)(第二一三号)

 同(西村智奈美君紹介)(第二一四号)

 同(京野公子君紹介)(第二四二号)

 同(石毛えい子君紹介)(第二四五号)

 同(稲見哲男君紹介)(第二六一号)

 同(柚木道義君紹介)(第二八八号)

 同(池坊保子君紹介)(第二九六号)

 成人の重国籍容認に関する請願(浅尾慶一郎君紹介)(第一八九号)

 同(首藤信彦君紹介)(第二一五号)

 同(仲野博子君紹介)(第二一六号)

 同(西村智奈美君紹介)(第二一七号)

 同(京野公子君紹介)(第二四三号)

 同(石毛えい子君紹介)(第二四六号)

 同(稲見哲男君紹介)(第二六二号)

 同(柚木道義君紹介)(第二八九号)

 同(池坊保子君紹介)(第二九七号)

 司法修習生の給費制の復活を求めることに関する請願(石井啓一君紹介)(第二八七号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 裁判官の報酬等に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出第一八号)

 検察官の俸給等に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出第一九号)


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     ――――◇―――――

奥田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、裁判官の報酬等に関する法律等の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律等の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として法務省大臣官房長稲田伸夫君、法務省大臣官房司法法制部長後藤博君、法務省刑事局長西川克行君、法務省保護局長坂井文雄君、海上保安庁長官鈴木久泰君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

奥田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

奥田委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局戸倉総務局長、大谷人事局長、植村刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

奥田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

奥田委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。熊谷貞俊君。

熊谷委員 民主党の熊谷でございます。

 本日は、今般提出されております裁判官の報酬等に関する法律等の一部を改正する法律案並びに検察官の俸給等に関する法律等の一部を改正する法律案に関連して、幾つか質問させていただきます。

 私は、二〇〇四年、国立大学が独立行政法人化される以前まで、長らく国立大学の教官でございまして、国家公務員の資格を有しておった者でございます。その間、幾多の経済的な状況下で官民較差ということが言われまして、人事院勧告に基づく給与の改定等がなされた経験を持っております。特に一九九〇年の初頭におきましては、バブル真っ盛りのころでございまして、有力国立大学の学長の年収が入行一、二年の銀行員の給与とほとんど同じである、そういう時期も経験しております。

 今般提出されております一般の国家公務員給与法案におきましては、二年にわたりまして減額ということでございまして、特別給の〇・二カ月分の引き下げ、これを含みまして、職員の年間給与は平均で九・四万円減額、率にして一・五%の減給、こういう内容になっております。

 私は、自分自身も国家公務員でございましたが、給与の多寡にかかわらず、私の場合は教育研究を通して国家に貢献しているという自負を持っておりまして、そういう意味で、やはり国家公務員の給与策定に当たりましては、当然ながら、行財政の業務の適正化と人員の適正配置、こういう観点は忘れてはなりませんが、いたずらに、公務員バッシングの風潮の中で、下げればいい、こういう観点で給与改定がなされる、こういうことはあってはならない、こういうふうに考えているものでございますが、現下の厳しい経済状況の中におきましては、やはり官民較差、大変民間が厳しい中でこういう改定がなされる、こういうことはいたし方ないと思っておるところでございます。

 一方、民主党は、さきの衆議院選挙の際にも、公務員の総人件費二割削減、こういうことを主張してまいりました。今回は人事院勧告に沿った額にとどまっておりますが、今後行われるであろう総人件費削減、これと関連しまして、大臣として、内閣の一員として、公務員の総人件費削減、こういう方向に対するお考え、今般の給与法との関連も含めてお答えいただきたいと思います。

柳田国務大臣 おはようございます。別の委員会に行っておりまして、おくれてどうも済みませんでした。

 お答え申し上げます。

 今回の裁判官報酬法及び検察官俸給法の改正は、いずれも、人事院勧告を踏まえて一般の政府職員の給与が引き下げられることに伴い、裁判官の報酬及び検察官の俸給を引き下げることを内容としているものでございます。

 マニフェストに書いてあります国家公務員の総人件費の削減につきましては、今後、本年十一月一日になされた閣議決定を踏まえてさまざまな検討がなされる中で、内閣の一員として適切な対応をしてまいりたいと考えております。

熊谷委員 先ほど冒頭にも申しましたように、国家公務員の給与策定、これに関しましては、行財政の効率化と人員の適正配置という観点を忘れずに行わなければ、単なる財政の健全化、あるいは、そういう観点だけで本末転倒な結果に終わってしまってはならない、やはり慎重な御議論をお願いしたいところでございます。

 二〇〇四年に国立大学が法人化されまして、一挙に十万人に近い国家公務員が削減された、こういうことがございますが、やはり、そういう国家公務員総人件費削減、これが本末転倒になるような、つじつま合わせに終わるような、こういうことがあってはならないと思いますので、国家公務員全体の士気にもかかわることでございますし、国家の重責を担う人材の確保という観点からも、ぜひ適切な御議論をお願いしたいところでございます。

 ところで、今般提案されている法案に基づきまして、法務省におきましては総額で人件費がいかほど削減され、それが総予算の何%ぐらいに当たるのか、お答えいただけますでしょうか。

黒岩大臣政務官 熊谷委員の質問にお答えしますけれども、今法務省の総人件費が四千八百六十四億円でございます。今回の改正に伴いまして、まだ作業中でございますけれども、約五十億円削減の見込みということで、先ほど熊谷委員が指摘された、全体の約一%強の削減という数値に近似した形で削減することが今見込まれていると承知しております。

熊谷委員 同じ質問でございますが、最高裁判所の人件費の総額、それと削減の割合はいかほどでございましょうか。

大谷最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 今回の法改正により削減されます裁判官の報酬及び一般職の俸給につきましては、諸手当の削減分を含めまして、現在積算作業中ということでございますが、おおよそ二十六億円程度を見込んでおります。

 平成二十二年度の裁判所職員全体の報酬、俸給及び諸手当の予算額が約一千八百八十億円でございまして、今回の改正によりまして約一・四%の削減が見込まれるところでございます。

熊谷委員 おおむね一般の行政職に関する給与法に基づく削減ということで法務省並びに最高裁の給与が策定されている、こういうふうに理解をいたしました。

 ところで、一般の行政職に関する総務省管轄の法案以外に、法務省におきましてはこの二法が提出されております。この理由といいますか背景といいますか意義というのは、以前の参議院法務委員会における法務省の見解に示されておりますとおり、例えば検察官につきましては、裁判所に対し司法権の発動を促すといった重大な職権を持っており、そういった面で司法官に準ずる性格を有すると。こういう特別な地位と職権ということで、こういう別建ての法案が提出されておる、こういうふうに理解をしております。

 一方で、例えば検察官の不利益処分といいますか、減給処分につきまして、例えば、これは特別な司法官に準ずるという立場上、検察官適格審査会というのが設けられていると理解しておりますが、実はこれによってこういう不利益処分を受けた検察官の事例は一件であると。これは罷免という事例であったようでございますが、それ以外は一般の公務員と同様に法務大臣の権限によって懲戒処分がなされておる、こういうことでございます。

 給与法についても見られますように、特別なこういう司法官に準ずる職権というものを重んじたその背景から見て、この状況というのを法務大臣はどのようにお考えでございましょう。一般行政職と同じような懲戒処分が従来なされてきていると……。

柳田国務大臣 懲戒処分を行う権限の行使は、職務上の義務に違反したことなどの懲戒事由が認められる場合に限りますから、検察官の身分保障を定めた検察庁法第二十五条の趣旨に反しないと私は考えておりまして、一般の皆さんと同様だと思います。

熊谷委員 ちょっとよくわかりませんでしたが、そういう法令に基づく処分である、そういうことでございます。

 こういう検察官の身分というのが司法官に準ずるということで、やはりその給与法を初め特別な職権と地位ということが認識されている、こういうふうに私は理解をしておるところでございます。

 そこで、ちょっと残りの時間につきまして、検察ということに関連して質問を続けさせていただきたいと思います。

 御存じのように、大阪の地検で検察による証拠改ざんという事件が発生いたしまして、これは、国民の検察、司法に対する信頼を本当に大幅に損ねた、大変ゆゆしき事件だと思っておりますが、法務省におかれましては検察の在り方検討会議というものを設置されまして、その第一回が先般十一月十日に行われた、こういうふうに伺っております。

 法務大臣に、全部が決まっているわけではないと思いますが、この検察会議の議題の内容につきまして、あるいはその意義といいますか、法務大臣がこれを設置された目的といいますか、それも含めてお答え願いたいと思います。

柳田国務大臣 委員が御指摘のように、検察への国民からの信頼というのは地に落ちた、この地に落ちた状況の中で何とかしなければならない、そういうためには何をすべきだろうかということを考えさせていただきました。一日も早く国民の信頼を回復するために何をすべきか、これは、検討会議をつくって第三者の意見を聞いて反映をさせていきたい、そういう目的でつくらせていただきました。

 議論をする内容につきましては、先日の第一回目の中でも、各委員の方から自分の関心はこういうことだという披露はなされました。ただ、二回目から具体的な課題についてはいろいろと議論が進むものだ、そういうふうに思っております。

 なお、国会で御指摘していただいた内容については、この検討会議の皆さんの方にはお伝えをしているという状況でございます。

熊谷委員 ありがとうございました。ぜひ十分な検討がなされることを期待しております。

 それに関連しまして、次は検察審査会についてお尋ねをしたいと思います。

 昨年五月に裁判員制度が導入され、それにあわせて、司法制度への国民の参加ということで、検察審査会の議決権付与、起訴議決の制度というのが行われました。こういうように司法に一般の国民が参加する、こういうことの意義につきまして、ちょっと抽象的な質問で申しわけございませんが、大臣の方にお答えいただけますでしょうか。

小川副大臣 先般行われました司法制度改革では、大きな柱として、国民が利用しやすい、利便性が満たされた司法の実現とともに、やはり司法そのものが国民が支えるものだという観点から、国民がより広く参加できるような司法制度にというような理念でございました。

 御指摘のとおり、裁判員制度もまさにその典型でございますが、この検察審査会につきましても、検察の捜査について、国民の意思と離れたようなところで全く国民の声が届かない形ということよりも、何らかの形で捜査に関して、特に起訴した場合には裁判所でその判断が問われるわけですが、不起訴の場合については裁判所ではもちろんその判断が問われることはない、これにつきまして、検察審査会制度が従来あって、不起訴に関して国民の声を反映しようということでございました。

 ただ、従前は、検察審査会の判断に検察庁は拘束されないということで、ややもすれば検察審査会の判断が軽視されてきたというような面があったのではないかという反省も踏まえまして、検察審査会が二回にわたりまして起訴相当の議決をすれば拘束力を有する、このような形を導入しまして、国民がしっかり参加して、国民の声を反映した捜査というもののあり方を求めようということでございまして、こうした国民の声をしっかり取り入れることによって、司法に対する国民的な基盤をより強固にしよう、このような精神だったと思います。

熊谷委員 ありがとうございました。

 従来、検察制度におきまして、起訴あるいは不起訴の権限というものに関して刑事訴訟法で定められておりますとおり、これは法律用語でございますが、起訴便宜主義と起訴独占主義ということで、検察庁の内部で培われてきたさまざまな事例とか英知を蓄積した中で、起訴あるいは不起訴の判断がなされてきたということでございます。

 この起訴独占主義あるいは起訴便宜主義ということと関連しまして、検察審査会の制度、起訴議決、強制的に起訴ができる、あるいは指定弁護士による起訴が行われる、こういう制度が、一方で、起訴あるいは公訴の、乱訴といいますか、みだりに人を起訴する、こういうことを防止するという観点から、何らかの歯どめといいますか、別途の制度が設けられている国もたくさんあるわけでございますが、起訴議決ということだけに関して検察審査会に強制権限を持たせた、こういうことを考えますと、こういう起訴便宜主義あるいは従来の起訴独占主義との関係を、もう一度ちょっとお答えいただきたいと思います。

小川副大臣 なかなか本質的なところでありますので、十分にお答えし尽くせるかどうかわかりませんが、起訴便宜主義を採用しましたのは、犯罪に該当すればすべて起訴しなければならないというふうにしますと、余りに過酷な例が出るのではないかと。

 一つの例でいいますと、例えば万引き。出来心で万引きしたというような事件があったとしまして、また最近は罰金刑ができましたけれども、その前は刑が懲役刑しかないというようなときに、本当に出来心で、軽微な万引き事件でも、窃盗は窃盗で起訴しなければならない、そうすると懲役刑の前科がつくのかというような例もございました。

 犯罪に該当した場合にすべて起訴しなければならないというのは、やはり妥当性を欠く、あるいは国民に対して余りに過酷な結果をもたらすのではないか、そうした観点から、検察官は、そうした犯行の状況や被告人の状況、その他さまざまな状況を踏まえて、起訴を猶予するという処分をできるということにしたのが起訴便宜主義だというふうに思います。

 しかし一方で、検察官がその裁量で起訴、不起訴を決めることができるという場合に、今度は、その権限を濫用して、本来起訴すべき者を起訴しないというような弊害が生じてしまったりしないかと。

 例えば、検察官が、判断を誤るということもあるでしょうけれども、例えば警察や検察といった、いわば身内の犯罪について、殊さら甘い処分で起訴しなかったりとかいうようなことで、まさに検察官が裁量の範囲をいわば逸脱した形によって不起訴ということを行った場合に、先ほど申しましたように、起訴であれば、それが不当かどうか、不当であれば裁判所が判断するわけでございますが、不起訴という場合には、これを判断する場がないのは余りにも不適切ということで、いわば国民が判断する検察審査会という制度が設けられたわけでございます。

 ですから、起訴便宜主義を認めた、しかし一方で、不起訴という検察官の処分の濫用、これをしっかり監視するために検察審査会制度があるというふうに思われますので、その両者は決して矛盾する位置づけのものではない、このように考えております。

熊谷委員 そういうことであれば、やはり検察審査会での手続、これの厳正な手続、適正性が問われるわけでございまして、例えば、被疑者を呼んで証人として調査をする、こういうことも許されているわけでございますが、その際に、例えば黙秘権を告知されているかどうかとか、あるいは手続の適正性が、裁判におきますような、事後の判定がなされてそれが救済される、そういうようなことが検察審査会の中で担保されているのか、こういう問題が指摘されると思います。この点につきましてお答えいただけますでしょうか。

小川副大臣 検察審査会の運用の適正ということでございました。

 やはり、検察の処分の当不当、適否を判断するわけでございますから、まず、組織そのものが検察庁ではなくて裁判所に設置されているということ、そしてまた、検察審査会は、審査員に選ばれた国民がまさに適正な判断をする、あるいは第三者からの不当な影響を受けないというような組織の運営をする、議論をするということで、氏名が公表されない、議事が公表されないというような位置づけになっておりまして、適正な判断がされるような運用を行っております。

 また、黙秘権の告知でございますが、これは、憲法上、何人も、発言、あるいは取り調べといいますか、事情聴取に応じる義務がないという大原則がございますので、強制をされる必要はないわけでございますが、ただ、検察審査会は、検察や警察のような取り調べそのものではございません。したがいまして、仮に被疑者が何らかのことを述べたとしても、検察官あるいは裁判所の裁判官、あるいは司法警察員に対して述べた供述調書のような証拠能力というものが、刑事訴訟法上認められておりません。

 ですから、そうした証拠能力がないということにおきまして、黙秘権を必ず告知しなければならないのかということは、刑事訴訟法にも決められておりませんので、いわば黙秘権を告知するかどうかは、これはいわば検察審査会の運用の問題であるというふうに考えております。

熊谷委員 ありがとうございます。

 もう大分時間が残り少なくなってまいりましたので、ちょっとはしょりますが、いずれにしましても、起訴議決という強権が付与された検察審査会の手続の適正さというのは、あいまいな形ではなくて、やはりもう少し明確にルール化されるべきである、こういうふうに私は考えております。

 特に、検察審査会法上、先ほど副大臣がおっしゃったように非公開ということでございます。我々は、その中でどういう手続がとられたのか全く知るよしがございません。一方、昨今、メディアあるいはインターネット等を通じまして、さまざまな情報が一般市民に降り注いでいる。こういう状況下で、審査員の判断にも、審査会において審議されるべき前提となる事項以外のさまざまな予断がまじるのではないだろうかと。

 これは公開である裁判においてはこういうことが検証可能なわけでございますが、非公開であるこの審査会においては全くそういう予断排除といいますか、そういうことの確証が持てないわけでございます。

 そういうことも含めまして、ぜひ、大臣が設置されました検察の在り方検討会議におきましても、もう一度検察審査会のあり方につきまして、あるいは制度につきまして、議題として取り上げていただいて御討議いただきたい、このように考えておりますが、大臣、最後に一言お願いいたします。

柳田国務大臣 基本的にはメンバーがいろいろ議論して決めることではございますけれども、必要があれば議論の対象になるんだろう、そういうふうに思っております。

熊谷委員 ありがとうございました。

 もう時間でございますので、これで質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

奥田委員長 これにて熊谷貞俊君の質疑を終わります。

 次に、大口善徳君。

大口委員 公明党の大口でございます。

 裁判官の報酬等に関する法律等の一部を改正する法律案、検察官の俸給等に関する法律等の一部改正案について質問をさせていただきます。

 きょうの答弁の状況も踏まえてこの賛否については決めたいと思っておりますので、どうか実のある御答弁をよろしくお願いいたします。

 まず、省庁の事務次官に相当する検事一号俸以上の俸給を受けている検察官の役職とそれぞれの人数、またそれぞれの俸給の年額について、どのような状況でありますか。法務省、お伺いします。

稲田政府参考人 平成二十二年七月一日現在の数字でございますが、事務次官より高額の俸給を受けている検察官は、検事総長あるいは検事長などの認証官が十名でございます。それから、事務次官と同額の俸給を受けている検察官は、検事正あるいは高検の次席検事など五十九名であると承知しておるところでございます。

 なお、それぞれの俸給の年額でございますが、検事総長につきましては約二千九百万、次長検事及び東京高検検事長以外の検事長が約二千四百万、東京高検の検事長が二千六百万、それから一号俸の検事正等が約二千三百万円というところでございます。

大口委員 次に、省庁の事務次官に相当する判事一号以上の報酬を受けている裁判官の役職、それぞれの人数、またそれぞれの報酬の年額について、どういう状況でございましょうか。最高裁、お伺いします。

大谷最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 判事一号以上の報酬を受けている裁判官ですが、最高裁判所の長官、それから最高裁判所判事、東京高等裁判所長官、その他の高等裁判所長官及び判事一号の裁判官ということでございまして、その人数及びそれぞれの報酬の年額でございますが、最高裁の長官が約四千万円、それから最高裁判所判事が、これは十四人の方々ですが、約二千九百万円、東京高等裁判所長官が約二千八百万円、その他の高等裁判所長官が七名の方、約二千六百万円、そして判事一号が百八十五人で約二千三百万円ということになっております。

大口委員 普通は事務次官というのはその省庁で一番最高の金額なわけですが、裁判官、検察官につきましては、もちろん認証官がいる、あるいは憲法で裁判官の地位が保障されている、また、検察官も司法に準ずるということでありますけれども、なかなかこういうことを我々は知らないものですから、国民に示す意味があると思いまして、質問をさせていただきました。

 そういう点で、裁判官そして検察官というのは、一般の国家公務員とは違って特殊性があってこういう形にしているわけでありますけれども、その理由についてお伺いしたいと思います。

後藤政府参考人 お答え申し上げます。

 裁判官は、特別職の国家公務員の中でも、司法府に属し、独立してその職権を行使するなど、その地位や職責に特殊性がございます。また、憲法上、裁判官の報酬は在任中これを減額することはできないという規定も設けられておるところであります。このような特殊性から、一般職の国家公務員はもとより、特別職の国家公務員の給与法とも別に裁判官報酬法が定められております。

 それから、検察官でございますけれども、検察官は、司法権の発動を促し、その適正円滑な運営を図る上で極めて重大な職責を担う準司法官的性格を有する特殊な官職であるとされております。また検察官は、原則として裁判官と同一の試験及び養成方法を経る者でございます。これらの点などから、試験、任免、身分保障等についても検察庁法に特例が定められておるところであります。このように、検察官の職務等の特殊性から、検察官の給与については、一般の政府職員とは別個に、裁判官の給与に準じて検察官俸給表が制定されているものと承知しております。

大口委員 次に、法務省には法曹資格がある裁判官、検察官出身と法曹資格を有しない一般事務官が在籍しているわけでありますが、法曹資格者と非資格者とでは、給与体系の違いによって、同じポストにありながら給与の差が生ずることになると思います。

 果たして実態はどうなのか。法務省局長以上の役職についている裁判官、検察官出身者の人数、トータルの人数と、その中で裁判官、検察官出身の人数、そして、それぞれの役職ごとの給与に関し、同じポストに一般事務官がついた場合との給与格差についてお伺いします。法務省。

稲田政府参考人 御指摘ございましたように、法務省には、局長クラス以上の役職に、検察官出身者でありますとかあるいは裁判官の出身の方が転官して来ていただいているという実情にございます。

 まずその人数から申し上げますと、法務本省の内部部局で申し上げますと、七月一日現在で局長以上の役職についているのは裁判官出身者二名、それから検察官出身者六名でございます。

 次に、俸給の比較というところでございますが、これは同じポストに検察官以外の一般職職員がついた場合との格差ということで、やや、こういう言い方はあれですけれども、そうしてみればという話なものでございますので、なかなか比較しにくいところがございます。給与の場合、どうしてもそれぞれの者が背負ってきているものというようなものもございますし、俸給体系自体が異なりますので、単純に比較は難しいということを前提に御説明をさせていただきたいと思うんですが、局長級の一般職の俸給としては、通常、指定職の俸給表の四号あるいは五号ぐらいだろうと言われております。

 検察官につきましても、局長級のポストにだれがつくかによって号俸は必ずしも一定ではございませんが、高い方で仮に比較するといたしますと、検事一号と指定職五号とでは月収で二十万近い差があるというのが実情でございます。(大口委員「年収では」と呼ぶ)年収は、済みません、ちょっと今、手元にそのあれがございませんが、その倍数を掛けるぐらいの数になると思います。十六ぐらい掛ければいいと思いますけれども。

大口委員 そうすると、三百二十万ぐらいの差があるということでございます。

 それから、実態をお伺いしたいわけですけれども、なぜ、同じポストで同じ業務につきながら、裁判官、検察官出身者がそうでない方よりも給与に差をつけるのか、その根拠についてお伺いします。

稲田政府参考人 御存じのとおりでございますが、法務省の所掌事務のかなりの部分と申し上げますと、司法制度に関する法令でありますとか民事及び刑事の基本法令、これらの立案、それから訟務を中心といたしました訴訟事項の追行、あるいは検察に関すること、あるいは検察の周辺といいますか刑事司法全体にかかわるものなど、そういう意味では、専門的な法律的知識、経験を要する事務が他省庁に比べてかなり多いというふうに認識しております。これらの事務を適正に行うためには、どうしても法律専門家としての実務経験を有する検察官や裁判官を法務省において任用する必要があるというのが、いわば必要性というか実態でございます。

 他方で、裁判官出身者を含めて、検事、これは検察庁にいる検事の職にある者を法務事務官という形で転官させるということなりますと、検察官の身分保障との関係で、人事行政上非常に難しくなるというようなこともございまして、法令上も、一部の検事を検事のまま法務省の職員に充てることができるというふうにされております。そこで、給与につきましても、現在御審議いただいております検察官の俸給等に関する法律が適用されるというようなことになっております。

 これは、検察庁法二十五条によりまして、検察官につきましては、その意に反して官を失うことがなく、また俸給を減額されることはないという身分保障が定められているというところ、今申し上げましたような事務官に転官させるということになりますと、一時的であれ検事の身分を失うというようなこともございますので、そのような点からなかなか実態上は難しいということもございまして、現在、申し上げるような検察官の俸給法の適用のままというふうにしております。また、実際上も、このような形で行えないと、なかなか異動が難しいというような実態にあるということでございます。

大口委員 この法務省の特殊性なんですが、ここはやはり大臣、聖域のない改革ということ、民主党政権の一つのあれでございます。何でも変えればいいというものじゃないですけれども、ただ、やはりこういう法務省の組織のあり方がほかの省と、特殊性を持っている、その上で今後考えていかなきゃいけない問題ではないかな、こう思います。

 民主党さんは、昨年の衆議院選挙時及びことしの参議院選挙時に、マニフェストにおいて国家公務員の総人件費二割削減を公約に掲げておられます。この公約に掲げられている総人件費二割削減の対象に、一般職の給与以外に裁判官の報酬、検察官の俸給も含まれるのか、お伺いしたいと思います。

柳田国務大臣 御指摘の民主党のマニフェストについては、裁判官の報酬及び検察官の俸給も含めた国家公務員の総人件費について二割削減することを意味するものと考えております。

大口委員 そうしましたら、これは衆議院のときのマニフェストに、その削減をどうするかという中で、地方分権推進に伴う地方移管、それから国家公務員の手当、退職金などの水準、定員の見直しなどによって二割削減となっています。また、労使交渉によって給与を決定するということで、労使交渉でやるということも最近、政府の答弁でございます。

 そうしますと、どういう手法で二割を削減するのか、お伺いしたいと思います。

柳田国務大臣 国家公務員の総人件費の削減については、平成二十二年の十一月一日に閣議決定をいたしておりますが、「公務員の給与改定に関する取扱いについて」、そういう中におきまして、次期通常国会に自律的労使関係制度を措置するための法案を提出して、交渉を通じた給与改定の実現を図ることとし、さらに、その実現までの間においても、人件費を削減するための措置を検討し、必要な法案を次期通常国会から順次提出することとされたところでございます。

 今後、これを踏まえてさまざまな検討がなされるだろう、そういうふうに考えておりまして、法務省としても、内閣の一員として適切な対応をしてまいりたいと考えております。

大口委員 大臣、また質問に答えていただいていないんです。

 マニフェストで、こういう方法で削減をする、こういうふうに書いてあるわけですから、大臣のお考えとして、どういう方法でその削減をしていくのか。裁判官も検察官もこの対象だと明言されたわけですから、当然お考えがあると思いますので、お答えください。

柳田国務大臣 内閣として、総人件費二割削減、その方針に基づいて、「公務員の給与改定に関する取扱いについて」ということが十一月一日に閣議決定をされました。その方針に基づいて、我々としても適切に対応するというのが法務省としての考えでございます。

大口委員 これは来年の通常国会に出すわけですよね。ですから、大臣の頭の中に、ある程度そういうものがないと私はいけないと思うんですね。

 こればかりやっていても仕方ありませんので、含まれるということでありますけれども、今回の、裁判官については二百八名、検察官については六十九名もの省庁の事務次官相当以上の給与を受けている職員が在籍している状況、このことと総人件費二割削減との兼ね合いはどのように認識されておられますか。

柳田国務大臣 またおしかりを受けるかもしれませんけれども……(大口委員「では、同じですと言ってください」と呼ぶ)

 同じ方針で対応いたします。

大口委員 次に、今、ことしの十一月一日に「公務員の給与改定に関する取扱いについて」が閣議決定をされた、こういうことですね。そして、来年の通常国会に、自律的な労使関係制度を措置するための法案、これを出す、それまでの間、人件費を削減するための措置ということで必要な法案を出すと。これはまず給与法の改正ということが答弁をされているわけです。退職手当法とか、そういう形になってくるわけですね。あるいは定員法の改正、こうなってきます。

 そこで、裁判官について、裁判所法には労働基本権を制約する規定はないです。ですから、裁判官には団結権、団体交渉権、協約締結権や争議権といった労働基本権が認められるのでしょうか。最高裁、お願いします。

大谷最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 これまで我が国におきまして、裁判官の労働基本権ということが問題となった事例がございませんで、法令の解釈にかかわるという事柄でもありますので、私の立場から意見を述べることは差し控えさせていただきたいと思うわけです。

 従来から、裁判官につきましては、憲法によって報酬あるいは身分といったものについて強い保障を受けるとともに、職務の執行についてもその独立性が強く保障されているわけでございます。一般の勤労者のように、使用者と対等の立場に立って経済的地位の向上あるいは労働条件の改善を図る必要がない、こういった理由から、裁判官に、労働組合を結成し、またはこれに加盟する権利は認められない、このように理解されてきたものと承知しております。

大口委員 そうしますと、次期通常国会における労働基本権を付与する改正案が今検討されていると思いますが、団結権、団体交渉権、協約締結権、争議権、こういうものは認めないということと伺っていいんでしょうか。法務大臣。

柳田国務大臣 自律的労使関係制度を措置するための法案を提出しというふうに先ほど申し上げました。このことを通じて、交渉で給与改定の実現を図ることとされたところでございますが、現時点では、その具体的な制度の内容はまだ未定でございまして、お尋ねの点については回答をいたしかねるというのが今の現状です。

大口委員 今最高裁判所は、憲法で身分を保障されているので認められないと言っているわけです。今最高裁の御意見を聞いておられたわけでしょう、法務大臣。だから、もう一回答弁してください。

柳田国務大臣 民主党のマニフェストに従って閣議決定をした中に、これはどうのこうのというのは今のところありませんので、裁判官については今御意見は伺いました。具体的に、ではどうするのかと言われたら、今そういうことを議論している内容ではないので、お答えはいたしかねるというふうにお答えしたところです。

大口委員 今の最高裁の見解は、きょう初めてお知りになったんですか。

柳田国務大臣 さようでございます。

大口委員 労働基本権に関する感覚といいますか、来年、通常国会でこれは議論するわけですから、ちょっと余りにも認識がないと心配しております。

 次に、検察官については、検察庁法には労働基本権の規定はなく、一般職の国家公務員に準ずることになるようでありますが、検察官に、団結権、協約締結権を除く団体交渉権といった労働基本権が認められるのでしょうか。また、次期通常国会における労働基本権を付与する法改正の結果、こういう団結権、団体交渉権、協約締結権、争議権というのはどの範囲まで認めようと考えておられるのか、お伺いしたいと思います。

柳田国務大臣 私も、神戸製鋼にいたころに組合に入っていましたので、少しはかじっているつもりでありますけれども、検察官につきましては、一般職の公務員と同様、現在は、団結権、協約締結権を除く団体交渉権は認められていますけれども、協約締結権及び争議権は認められておりません。

 このことについてどうするかというお問い合わせでありますけれども、今その具体的な制度内容についてはまだ未定でございますので、申しわけありませんが、この点についても回答はいたしかねるというのが現状でございます。

大口委員 それでは、検察官の場合、仮に団体交渉権の協約締結権が認められた場合、検察官についてはどのような俸給の定め方をするのか。それから、協約締結権が裁判官の方は認められないわけですよね。そして、もし検察官の方も認められない場合は、何を基準にしてこういう俸給の改定を行うと考えておられますか。

柳田国務大臣 申しわけありませんけれども、同じ答弁の繰り返しになります。具体的な内容はまだ決まっておりませんので、答弁はいたしかねます。

大口委員 次に、諸外国における裁判官、検察官に対して、どの程度の労働基本権が認められているか、お伺いします。法務省。

稲田政府参考人 諸外国における国家公務員の労働基本権の範囲ということにつきましてでございますが、これ自体十分に私ども把握しているわけではございません。ただ、国によっていろいろさまざまであるというふうに認識をしております。

 人事院の公表した白書等によりますと、例えば、イギリスでは、軍人を除いて国家公務員は、団結権それから協約締結権を含む団体交渉権さらに争議権を有しているというふうにされております。他方で、ドイツでは、官吏一般に団結権は認められているが、その勤務条件は法律により一方的に定めるもので、労使交渉による決定は認められておらず、争議権も認められていないとされております。

 そういうことからしますと、それぞれの国における裁判官や検察官の有する労働基本権の範囲も、またこれによって相当違ってきているんだろうなというふうに思っておるところでございます。

大口委員 フランスも、団結権はありますが協約締結権、争議権はないということでございます。

 今後検討していただくということでございますけれども、裁判官と検察官についての労働基本権というのは、これまで、例えば行革推進本部の専門調査会において議論をされていたのか、あるいは国家公務員制度改革推進本部労使関係制度検討委員会において議論されていたのかということと、もう一度、裁判官、検察官の労働基本権について、いつごろまでに、どういうスケジュールで結論を出されるのか。来年の通常国会にこの労働基本権についての法律を出す、こういうことですから、待ったなしなわけですね。ですから、そのスケジュールについて、大臣にしっかりとした答弁をいただきたいと思います。

柳田国務大臣 行政改革推進本部専門調査会及び国家公務員制度改革推進本部労使関係制度検討委員会では、公務員の労働基本権について検討がなされましたが、裁判官や検察官に特化した議論はなされておりません。労働基本権をいつごろまでにということにつきましては、国家公務員制度改革基本法を踏まえ、施行後三年以内である平成二十三年六月までの法案提出に向けて検討していると承知いたしております。

大口委員 ですから、これまで全く裁判官、検察官については検討していないわけですから、これは急いで、今、白紙だという御答弁でございました、今後検討するということですから、具体的に、そういう委員会等をつくって検討するのか、そしてパブリックコメント等も求めていくのかとか、こういう手順があると思うんですね。六月に法案を出すんですから、大体三月ぐらいに固まっていなきゃいけないわけですよね。そこら辺のスケジュール観をお伺いしたいんです。

柳田国務大臣 しっかりと考えて対応してまいりたいと思います。

大口委員 本当に全く議論されていないので、ほかの公務員についてはここ何年間議論されているわけですから、本当にここは法務大臣が責任を持って検討していただきたい、こういうふうに思います。

 さて、報道によりますと、本年七月十五日、茨城県桜川市において、保護司さんが、みずから担当している少年の放火により御自宅の全焼という被害を受けたという事件が発生しています。このような場合、国において保護司さんに対し何らかの補償がされるべきだと考えますが、現在の制度では物的損害を補償することができないとも聞いています。

 保護司さんには、無給のボランティアとして、保護観察官を補助して更生保護の第一線で活躍してもらっています。その活動の過程で損害をこうむった場合に、補償を受けられないというのであれば、保護司さん自身の活動に対し不安を感じるようになり、また一般市民の方々が更生保護活動に参加しようという意欲が減退してしまいます。更生保護制度の存立を揺るがす事態にもなりかねません。

 保護司さんにお伺いしますと、いや、頑張っていますから大丈夫ですというお声を聞くわけですけれども、国としては、やはりここはこのまま看過するわけにはいかないと思います。保護司さんが保護観察対象者から人的または物的な被害を受けた事例はどのようなものがどの程度あるのか、そして、法務省としてどういった対応をしているのか、お伺いしたいと思います。

坂井政府参考人 お答えいたします。

 保護司さんは、いわゆる非常勤の国家公務員と位置づけられております。したがって、保護司さんが保護観察を実施するに当たって人的被害を受けた場合には、国家公務員災害補償法が適用されるということになります。しかし、御指摘のとおり、物的な被害につきましては補償する制度はございません。また、家族についてもいずれも補償されない、こういうような実態でございます。

 お尋ねの点でございますが、過去十年間、調査をいたしましたところ、保護司さんがいわゆる保護観察の対象者から人的被害を受けた事例というのは数件ございます。例えば、自宅で保護観察対象者から殴打されたというような事例もあるわけでございます。しかし、実は物的被害につきましてはこういった補償制度がないということもございまして、これまで把握をしてきておりません。

 したがいまして、現在、これは、保護司さんはたくさんいらっしゃいますので、とりあえずでございますから抽出調査ではございますが、その実態というものについて今調査中というふうな状況でございます。

 以上でございます。

大口委員 これは七月の事件ですから、もう今は十一月ですので、調査中というのは余りにもおかしいなと私は思うんですよ。いつまでに結果がわかるんですか。

坂井政府参考人 全国で大体五百人ぐらいの保護司さんに対して無作為で抽出をいたしまして、その方に対してアンケート方式で調査しておりまして、今その取りまとめ中でございますので、結果が出るのにはそう長くはかからないかというふうに思っております。

大口委員 この茨城県の件につきまして、九月二十四日、茨城県保護司会連合会が法務省の局長に対して、保護観察対象者の行為によって財産に重大な損害をこうむった場合の補償制度の確立を求める陳情書というのをお渡ししたわけですね。局長も、関係機関と協議しながら法整備に向けて検討する、こうおっしゃっているわけであります。

 どうか、柳田法務大臣、この件につきまして法整備の推進をするお気持ちがあるのか、具体的にお示しいただきたいと思います。所信表明でも言及されていますので、お願いいたします。

柳田国務大臣 大口委員の御指摘もございます、しっかりと検討して、法制化、このことも含めて検討してまいりたいと思います。

大口委員 時間が来ましたので、これで終わります。ありがとうございました。

奥田委員長 次に、河井克行君。

河井委員 おはようございます。自由民主党の河井克行です。

 きょうは、裁判官の報酬等に関する法律等の一部改正案並びに検察官の俸給等に関する法律等の一部改正案、いずれも、司法制度の根幹、特に人的な基盤にかかわる大変重要な法案であります。法案の質疑も取りまぜながら、現下の司法、法務そして検察のあり方全般について、きょうは政府側に、大臣を中心として問いただしていきます。

 まずは、大臣、海上保安庁職員によるビデオの流出の事案が発生をいたしました。私は、今回のあの四十四分間のビデオをずっと見ながら、なぜ政府が公開をしたくなかったのか、それがよく見えてきた、あの中に如実にあらわれている、そのように実感をいたしました。

 当初、さまざまな理由が挙げられました。なぜ政府側はあのビデオを公開したくないのか。言われたことが、中国側が反発をする、そういうことがまことしやかに言われていた。

 ところが、十一月の十二日、私自身が外務委員会におきまして前原外務大臣にその旨を問いただしたところ、「今回のビデオ流出の経緯がどういうものであったかという問い合わせについては外交ルートでございましたけれども、抗議とか反発とか、そういうものは届いておりません。」これが外務大臣の答弁であります。そしてその後、横浜のAPECにおきましては、菅総理大臣と胡錦濤国家主席の間で首脳会談が開かれた。またその後、日中の外相会談も相次いで開かれた。つまり、中国側は今回のビデオの流出について何ら反発をしていない。反発をしていたとすれば首脳会談や外相会談を開くはずがないわけですから、反発がなかったことが立証されたと私は考えております。

 しからば、なぜ政府が公開を渋ってきたのか。私は、国内の事情がその原因だろうと最初から思っておりました。いわば中国は口実にされたにすぎない。実は、あのビデオの中にさまざまな事柄が隠されているからこそ国民の目に触れさせたくなかったんだ、私はそう考えております。

 ここに、九月二十四日、那覇地検の次席検事が報道発表した、例の処分保留、釈放の会見の紙があります。この中に書いてあることと、そしてあのビデオで映っていることが全く矛盾をしている。具体的に言いますと、船長を釈放した理由の一つに、那覇地検の次席はこう言っています。「本件は、海上保安庁の巡視船「みずき」の追跡を免れるため咄嗟にとった行為と認められ、計画性等は認められず、」と発言をしております。前回のこの法務委員会で私が法務大臣に質問いたしましたときに、この紙については見たというふうに大臣はおっしゃっておりました。

 大臣、ここでお尋ねいたします。後ろからのメモじゃなくて私の話を聞いていただきたいんですが、追跡というのは日本語でどういう意味でしょうか。これは一般論ですから。日常用語でこの次席は語っているわけです。ですから、後ろからのペーパーなんかは関係ない。追跡とは日本語でどういう意味なのか、お示しをください。

柳田国務大臣 一般的な日本語ですと、後を追いかけるということだと思いますが。

河井委員 全くそのとおりでして、辞書によりますと、逃げる者の後を追いかけることと書いてあります。

 では、次に質問いたしますが、AがBを追跡する、この場合、一般的にはどちらが前でどちらが後ろでしょうか。AがBを追跡する、どちらが前でどちらが後でしょうか、お示しをください。

柳田国務大臣 どちらが前か、私、船を勉強してきましたから、どちらも前もあり得るのかなと今ちょっと頭をめぐらせております。

河井委員 それはお答えにはなっておりません。一般的に追跡という場合、先ほど大臣は後を追いかけることだとおっしゃった。そのとき、AさんとBさんがいます、AさんがBさんの後を追いかける、どちらが前でどちらが位置的には後ろなんでしょうか。

柳田国務大臣 いろいろな状態が考えられるのかなと今個人的には頭をめぐらせております。

河井委員 そのめぐらせている頭の中をぜひこの場でお示しをいただきたい。

 これは難しい法律用語とかじゃないんですね、この那覇地検の次席が言っている言葉は。日常用語、常識の話なんですよ。AさんがBさんを追いかけるという場合、位置的にはどちらが前でどちらが後ろなのか、お考えを、今、常識の問答をしているつもりなんですけれども、お示しください。

柳田国務大臣 ですから、どっちが前か後かというのは、いろいろな場面が考えられるのかなと。例えば、車が一緒に走っていて、片方が急ブレーキを踏んだら、片方は前に行っちゃいますね。どっちが前なのか後なのかと聞かれてもこれは困るな、そういう感じです。

河井委員 先ほど読み上げた那覇地検の次席の会見では、「「みずき」の追跡を免れるため咄嗟にとった行為と認められ、計画性等は認められず、」そのように答えています。

 では大臣、「みずき」と該船、中国船、どちらが先行をしていたんでしょうか。

柳田国務大臣 どちらが先行をしていた。ですから、海は道はありませんよね。どっちも行けるわけでしょう、どこにでも、かじを切れば。どちらが先行か、こっちに切っちゃうとどうなっちゃうのかといったら、どっちが先行かわからないし。だから、そういう聞き方をされても、全然私は、どっちが前なのか後ろなのか、言えと言われても困るな、そう思っています。

河井委員 私は、今、一般論じゃなくて、その現場の話ですよ。ちゃんと人の話を聞きなさい。

 「みずき」の追跡を免れるためとっさにとった行為、そして計画性ではないというふうに次席が言ったとき、「みずき」と該船との位置関係はどうだったかということを聞いているんですよ。どちらが先行していたかということを聞いている。

柳田国務大臣 私もあのビデオを少し見ましたけれども、それは映す方向から全然違って見えるんじゃないだろうかと思いますよ、私は。映す方向から。映す方向から全然、海の上からでも撮れればですよ。映す方向から、どうのこうの言われたって、それは絶対的な位置関係が海の上にあるわけじゃないので。とにかく私は、頭の中では、どっちが前か後ろかとはっきり言えと言われても困るなと。

 ちなみに、この中で、ではどっちが前なのかどうなのかという具体的な報告を私は受けているわけでもありませんし、詳細にわたってこの場で皆さんにお答えすることはできないかと思っています。

河井委員 いや、今びっくりしました。

 どちらが先に、位置関係がどちらに位置して、どちらが後だったか、その場の話ですよ。それについて大臣は御理解がないということですか。そうなれば、巡視船と該船のどちらに非があるかという、その根本にもかかわる話ですよ。

 大臣、ビデオを撮った位置の話ではないんです。その瞬間どちらが先行していたか、どちらが頭を向いていて、どちらの頭が先行していたか。巡視船か中国船か、これはもう明らかな事実なんです。それについてお答えをいただきたい。

柳田国務大臣 ですから、ビデオで、こう走っていますよね、並走して。こっちから撮ればこっちが前に行ったように見えるじゃないですか。こっちから撮ればこっちが先に行ったように見えるじゃないですか。だから、どっちが前か後ろかと言われたら、撮る方向によってどっちが前か後ろかは変わりますよと一般論で言っただけです。

河井委員 しからば、「みずき」の損傷はどの部分ですか。

柳田国務大臣 右舷の後ろだったですかね、ビデオで見たときに。図面で見たときも、右の後ろだったというふうに記憶をしていますが。

河井委員 右舷の中央から船尾にかけての損傷なんです。

 では、お尋ねします、大臣。

 位置関係が、「みずき」がもし後ろで、該船が先行していたとき、そういう損傷はできますか。

柳田国務大臣 通常ですと、当たってきた方がそこにぶつかったんでしょうから、当たったその絶対的な時間を考えれば、それは巡視船が前にいたということにはなるかと思います。

河井委員 逃げるためにぶつかってきたのではなくて、私は、意図を持ってぶつかってきたと。

 もし逃げるのであれば、まず最初、「よなくに」に衝突した後、すぐに逃げるべきだった。また、その前に繰り返し海上保安庁は何度も針路規制ですとかあるいは放水規制をしている。それらをすべて無視してぶつかってきたんです。「よなくに」にぶつかり、そして「みずき」にぶつかり。

 しかも、「よなくに」に衝突してから「みずき」に衝突するまで、調べでは大体何分ぐらい時間がかかっていますか。領海にどれぐらいとどまっていたか。

柳田国務大臣 できますれば、逮捕した海上保安庁に聞いていただきたいと思います。

河井委員 これぐらい大事な話もあなたは知らないんですか。

 那覇地検の次席は、とっさの行為、計画性は認められないと言っている。後ろからちょろちょろする必要はないんですよ、こんなことは。大事なことなんですよ、これは。とっさでもなかったら、計画性でもないというふうに言った。

 悪質な、意図的なものだというからこそ、検察は最初そういう判断をした。最終的には腰折れになったけれども。その理由の最大のものが、繰り返しやってきたということですよ。「よなくに」だけでなくて、その前に何度も何度も針路規制、放水規制もする、それでも無視して突っ込んできた。「よなくに」にぶつかった。それで、領海の外に出ていくんじゃない、なおもとどまった。そして、次に「みずき」にぶつかった。

 どれぐらいの間時間がかかって領海にとどまったかなんというのは、これはもう、大臣、イロハのイじゃないですか。後ろからはいいと言っているんですよ、本当に、何度も。こんなことすらちゃんと覚えていないんですか。これは極めて大事なところですよ。四十一分間かかっているんですよ、およそ四十一分間。四十一分間も領海にとどまっていた。これをもって、何がとっさなのか、何が計画性がないのかと。

 またこれは日本語の話になりますけれども、とっさあるいは計画性、大臣はどのように解釈していますか。

柳田国務大臣 逮捕の状況については、しっかりと海保をお呼びになってお話を聞いてもらえれば、正確なことがおわかりになるんだろうと私は思います。よろしいですか、それで。

河井委員 まあ、そう言われると思いまして、この前の外務委員会で、自民党の同僚議員が海上保安庁の鈴木長官に質問をいたしました。そうしたところ、これは海保ではなくて、この紙は那覇地検ですから、法務・検察に聞いてくださいという答弁の繰り返しだった。

 海上保安庁に聞いたら、法務・検察に聞いてくれ、あなたに聞いたら、海上保安庁に聞いてくれ。これでは一体どっちなんですか。この国は一体どこでどのように物事が決まっているんですか。

 しかも、これは少なくとも那覇地検の文書ですよ。あなたは、自分で見たと私の質問に対しておっしゃった、概略は読んだとおっしゃった。そうですね。その上でわかりましたと言いましたというのが私に対するせんだっての答弁です。どこがとっさなのか、計画性がなかったのか。私は、全く次席の言っていた言葉が空虚に思えて仕方がない。

 結局、この部分を隠したいからこそ、中国の反発なんというのは取ってつけた理由だ。政府が、そして那覇地検がうそをついたんです。とっさでもなければ計画性がないこともない、それがあのビデオの映像で私はよくわかった。その那覇地検がついたうそ、あなたがそれに対してわかりましたと了承した、官房長官が了とした、その政府の判断が、結局、一番大事な事実に反していたというその姿を国民の目に触れさせたくなかったから、それで政府はビデオの公開を拒否し続けているんだ、私はそのように考えています。

 大臣、どうですか。

柳田国務大臣 ビデオの公開について、委員はいろいろと御自分のお考えをお話しになっているようでありますけれども、我々としましては、検察当局としては、衆議院議長から、本年九月七日の尖閣諸島沖での我が国巡視船と中国漁船との衝突事案の映像記録を提出していただきたいという旨お話がございました。そのお話を受けて、地検と海上保安庁がいろいろ協議をして、お出しをすることになったわけでございます。

 その際、要望書の中につけたことは、海上保安庁からの要望ということで、海上保安庁の捜査の過程で収集された証拠であり、海上保安庁においては、海上警備・取り締まり活動の秘匿性への配慮が必要であること、関係者の名誉、人権への配慮も必要である、そういう海上保安庁の要望。それに、刑事処分前にこうした証拠を国会に提出した前例がない、その上で、刑事訴訟法第四十七条の趣旨にかんがみ、お出しをしたわけであります。

 そういうことで、取り扱いについては極めて慎重にしていただきたいということをお願いしただけでございまして、何も、何か作為があってやったというふうには私は承知いたしておりません。

河井委員 あのビデオを見ておりましたら、船員が、ぶつかる直前に船の中に入っていきます。その場の偶発的なとっさの行動で、船員が全員中に入っていくでしょうか。私は違うと思います。ぶつかるということが船員全員にその場で通知をされた、あるいは前もって通知をされていた、だからこそ危険を回避するために入っていったんだ。私は、とっさでもなければ計画性がないこともない。一つ一つの映像を分析していくと、那覇地検がついたうそというものが明らかになってくる。

 大臣、検察官が下した判断が誤りな場合、だれが責任をとるんですか。

柳田国務大臣 今回の検察当局の判断は、私は、それでよかった、わかりましたと申し上げた次第でありまして、そのことについて、何にも間違ったことはなかったというふうに認識しています。

河井委員 私の質問を全く、だから、本当に時間がもったいないんですよ。こっちは限られているんだから。委員長、しっかりと指導してください。

 私が聞いたのは、検察官が処分、判断の誤りをしでかしたとき、秘書官、また後ろからちょろちょろ出すんじゃないですよ、本当に。だれが一体責任を負うのか。これはもう当たり前の話ですよ。常識の話ですよ。検察官の責任は一体だれがとるんですか。お答えください。

柳田国務大臣 事前に通告があればちゃんと勉強してきておりますけれども、間違った答弁をしたらさらにつっつかれますので、しばらくお待ちください。

奥田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

奥田委員長 速記を起こしてください。

 柳田法務大臣。

柳田国務大臣 懲戒事由、国家公務員法第八十二条第一項に書いてございますのは、国家公務員法等に違反した場合、職務上の義務に違反し、または職務を怠った場合、国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあった場合というふうに規定されておりまして、一般論として申し上げれば、検察官について職務上の義務違反等の事由があれば、懲戒処分の対象となると思っております。

 なお、検察官適格審査会の対象となるものにつきましては、検察官が心身の故障や職務上の非効率によりその職務をとるに適しないかどうか審査されますので、ここで判断がされるものと思っております。

河井委員 また違うんですね。検察官という、大臣、後ろからのメモとか勉強の要旨じゃなくて、もうこれは基本中の基本の話だと私は思います。検察官というものはどういう存在なんですか。大臣、なるべく僕の方をちょっと見てください。ほかの役所と違って、ほかの役所の職員は、最終的には大臣にさまざまな権限が行っているんです。ところが、検察官は違いますね。検察官は一人一人が検察庁みたいな存在ですね。だから独任制の官庁と言うわけでしょう。その言葉をお聞きになったことはありますね。お答えください。

柳田国務大臣 案件によって、上級、最高検なり高検と相談することも私はあるものと承知いたしております。

河井委員 いや、もう全然御理解されていないから、これは本当に質疑が成立しないんですよ。独任制の官庁という言葉をお聞きになったことがありますねと聞いているんです。

 検察官というのは、一人一人が自分に責任を負って、それでやってきている。上級官庁と相談することはもちろんあります。ありますけれども、最終的な責任はすべて一人一人の検察官なんです、一人一人が検察庁という官庁だと言っても言い過ぎじゃない。それぐらい、検察官という地位と職は保護されているということなんですよ。

 だからこそ、この国会の場で、那覇地検の担当検事がどういう判断をどういう理由でしたか、それについて、次席も検事正も含めてこの場に呼んで、参考人として招致をした上で話を聞かないことには、海上保安庁に聞いたら、法務・検察に聞いてくれ、あなたに聞いたら、海上保安庁に聞いてくれ。では、一体この国はだれが責任を持って仕事をやっているんですか。だれが真剣に仕事をしてやっているんですか。それについてだれも質問を受け付けないということは、国民に対して説明ができないことをやっているということですよ。

 大臣、だから、もうペーパーをめくるのはいいですから、政治家同士の話をしようじゃないですか。私はそういう思いで、きょうは大臣にだけ質問をさせていただきたいというふうに事前に言っているんです。

 だから、大臣、先ほどの、とっさとか計画性が認められない、こういうことについて、結局、政府が最終的には、一番しょっぱなは那覇地検、そして、あなたも含めて、官房長官も含めて、国民に知られたくない事実があるからこそ公開を渋ってきたんだと断じざるを得ない、私は繰り返しそのように申し上げます。

 それで、今の答弁を、いろいろと質疑を皆さんも聞きながら、これは野党だけではなくて与党の先生方も同じです、どうも柳田大臣とは議論がかみ合わないことが多い。そして、何か困ったことがあれば、すぐお得意のフレーズが飛び出してくる。個別の事案がどうのこうのとか、法と証拠に基づいてどうのこうのというふうな言葉がしばしば、私自身も受けたし、野党の先生方もしょっちゅう受けたし、私が調べたら、与党の議員に対してもそのような答弁をしている。

 先週末、広島の地元のある会合で、大臣、今私が申し上げたような事柄について発言をされていますね。そのことについてお答えをいただきたいんです。

 十一月十四日日曜日、広島市中区で、大臣の就任をお祝いし、報告を聞く会が開かれました。その席上で大臣がどういう発言をされたのか、お示しをいただきたい。

 全部かというと長いですから。最初は、こういう言い出しから始まっています。

 皆さん、こんにちは。きょうはこういうふうに、まあ報告というか、祝っていただくというか、こういう会を催していただきました。そして、多くの方に御出席をいただきました。本当にありがとうございます。思い返しますとですね、私は、というところから、大臣が政治の世界にお入りになってから、ずっといろいろな出来事をおっしゃっている。

 そのあいさつの中盤あたりで、今私が申し上げた事柄について触れています。大臣の口からお話をいただきたいと思います。

柳田国務大臣 大臣に就任してから二月近くたつわけでありますけれども、広島の地元の仲間が、帰ってこいや、顔を見せろよということで帰らせていただきまして、その場にいたのは、従来、選挙から応援してくれた仲間だ、そういう思いで出席をさせていただきました。その際にそういうことを申し上げました。

 と申しますのは、この国会の場の質問の中でも、捜査の機微に触れることとか、証拠になっていないじゃないかとかいうお話の質問が細部にわたってあるときは、そう言ってお答えをするのが普通でございますと。捜査の内容についてとか、そういうことをこういう場でお話しすることはできないんです、そういう場合にはこういうことを言っておりますというふうなことを申し上げました。

    〔委員長退席、滝委員長代理着席〕

河井委員 正確さを期すために、十四日日曜日、何時から、場所はどこでやりましたか。覚えていらっしゃったらお答えをください。

柳田国務大臣 何時でしたか、多分十二時だったと思います。御飯が出ていましたから。広島市内のホテルです。

河井委員 十二時から、リーガロイヤルホテルの四階のクリスタルホールで開かれた会合であります。

 大臣、先ほど私が申し上げた、個別の事案という言葉と法と証拠に基づいてという言葉をお使いになったとおっしゃいましたが、もう少し詳しく、当日、その場でおっしゃったことをお答えいただけませんでしょうか。

柳田国務大臣 仲間内で楽しくやろうということで、大分愚痴も入ったのかもしれませんが、細かく覚えてはおりません。

河井委員 公開された祝賀会だというふうに私は聞いております。決して閉鎖的な会合ではない。

 それで、個別の事案と法と証拠ということについてはおっしゃったわけですね。それをもう一度、はっきりとお答えをいただきたい。

柳田国務大臣 事件の捜査の詳細等いろいろあったり、証拠がどうのこうのとか、いろいろと機微に触れる質問があったときには、こういうことでお答えをさせてもらっておりますというふうにお話をしたというふうに覚えております。

河井委員 重ねて伺います。こういうこととはどういうことですか。

柳田国務大臣 捜査の具体的な中身とか証拠は何かとか、いろいろ聞かれた場合は、お答えができないので、こういうふうなことでお答えをしていますというふうに話したというふうに私は記憶をいたしております。

河井委員 結構記憶していらっしゃるじゃないですか。

 私は、そこにいた人から記録を手に入れました。公開の席でありますので。このような大事な発言であります、大臣として。この場で紹介をさせていただきます。

 法務大臣とはいいですね、二つ覚えておけばいいですから。個別の事案についてはお答えを差し控えますとね、これはいい文句ですよ、これを使う。これがいいんです。わからなかったらこれを言う。これで大分切り抜けてまいりましたけれども、これ実際の話で、しゃべれないもん。あとは、法と証拠に基づいて適切にやっております、この二つなんです。まあ何回使ったことか。

 これはあなたの発言に間違いないですね。

柳田国務大臣 公開したというか、それは主催者に聞いてください。私は、主催した仲間は、みんな、仲間内で集まって、仲間内で祝ってあげようということで行きました。

 ちなみに、そういった発言はしたというふうに記憶はしております。

河井委員 ここに記録もありますし、録音したテープも持っております。もう一度言います。

 法務大臣とはいいですね、二つ覚えておけばいいですから。個別の事案についてはお答えを差し控えますとね、これはいい文句ですよ、これを使う。これがいいんです。わからなかったらこれを言う。これで大分切り抜けてまいりましたけれども、これ実際の話で、しゃべれないもん。あとは、法と証拠に基づいて適切にやっております、この二つなんです。まあ何回使ったことか。

 これは、与党の皆さん、あなたたちも含めた国会軽視なんですよ。野党議員だけじゃないんだよ。その辺でやじっている連中、わかっていないんだよ。これは与党議員の質問に対してもそのように答えている。野党議員だけじゃない。与党議員も含めた、国会軽視甚だしいじゃないですか。歴代の法務大臣に対する冒涜ですよ、あなた、これは。何ですか、この言い方は。

 大分切り抜けてまいりましたけれども、何をどう切り抜けてきたんですか、お答えをください。発言認めたんだから、答えてください。(発言する者あり)

    〔滝委員長代理退席、委員長着席〕

奥田委員長 御静粛に。

柳田国務大臣 先ほどから申し上げていますとおり、私が最初選挙に出た二十年前からおつき合いをしてくれている人、応援をしてくれている人、そういう方々が集まって、祝う会をしてやろうということで出席をさせていただきました。その際に、仲間の皆さんにいろいろとお話をさせてもらったわけでありますけれども、その際にそのフレーズは使わせていただきました。

 ただ、国会の場でもそうですけれども、捜査の詳細にわたること、そして証拠についてとか、いろいろと質問が出てまいりましたので、その際は、お答えができないわけですから、そういうフレーズを使わせてもらいましたよと言ったわけであります。

 なお、そういうものが外に出ると、私は仲間内の会合で、本当に考えられないことだなと、今、個人的には思っています。

河井委員 あなた、何言っているんですか。国務大臣は、三百六十五日、二十四時間、一分一秒のすき間もなく国務大臣ですよ。いつでも国務大臣、そして法務大臣ですよ、あなたの仕事は。国の司法、そして治安、検察行政、さまざまな重責を担っているのがあなたですよ。何十年前から友達だからとか、そんなことは関係ないんですよ。

 しかも、繰り返すけれども、これは公開の場です。決して、友達、親戚、家族の中の話じゃないんです。公開の、あなたの就任をお祝いし、報告を聞く会。とんだ報告じゃないですか、こんな報告は。

 大分切り抜けてきた、質問に答えてほしい、どのように、何を切り抜けてきたんですか。あなたが言った発言なんですから。

 しかも、大臣、一般時でもこの発言は大問題だ。しかも、今は尖閣問題で、あなたの法務大臣としての判断、それに国民の関心が集まっているときなんですよ。そのときに及んで、この法務委員会、そして予算委員会、すべての衆参の委員会におけるあなたの答弁、全く国民をばかにしている。繰り返すけれども、与党も含めた国会議員に対する答弁をばかにしているということは、国民をばかにしているということであり、国民に対してきちんと説明することからあなたは大臣として逃げている。

 大分切り抜けてまいりましたけれども、まあ何回使ったことか。ごまかしていいということですか。逃げてばかりということですか。

 もう一度、大臣、これはあなたの国務大臣としての資質にかかわる問題です。この発言についての認識、お示しをいただきたい。(発言する者あり)

奥田委員長 御静粛にお願いをいたします。

柳田国務大臣 ですから、私が昔からおつき合いをしてきた仲間が集まって、お祝いの会をしてもらいました。その会でそういうふうにしゃべった記憶はあります。

 ただ、現実的に、捜査の詳細とか証拠はどうなのかということをいろいろとたくさん聞かれています、その際にこの言葉を使うしかないんだということを、そういうことでそういうふうな言い回しになったと私は思っておりまして、あくまでも仲間内でやった会合であります。

河井委員 引用した冒頭、もう一回言いますよ。法務大臣とはいいですね、二つ覚えておけばいいですからと。何ですか、これは一体。歴代の法務大臣みんな冒涜する、そしてあなた自身が法務大臣としての職を汚している発言ですよ、これは。しかも、繰り返すけれども、これは公開された場ですよ。閉鎖的な、親戚会とか同級生の会じゃないんですよ。公開の場です。

 あなたの大臣としての資質、そして、委員長、きょうは、裁判官の報酬と検察官の俸給の法律の一部改正案、この審議をするために開かれた。でも、あなたが、これまでも、そしてこれからもしていく答弁、全部、個別の事案についてはお答えを差し控えます、法と証拠に基づいて適切にやっています、これさえ使えれば、うるさい国会を切り抜けることができる、あいつらを黙らせることができるということじゃないですか、これは結局。これは、委員会として、法案の審議、彼が、あの大臣が何を言ってきても全く信用することができない。みずから自白したわけですよ、この日曜日に。これ以上この法案の審議を続けることはできない。

 まず初めに、大臣、この発言についての謝罪と撤回を求めます。

柳田国務大臣 何回も言いますけれども、昔からつき合ってきた多くの仲間が集まってお祝いをしてくれた会でございまして、多くの皆さんは私の知り合いでございますし、そういう中で、少々茶化したかもしれませんけれども、現実的には、法律の……(発言する者あり)

奥田委員長 御静粛にお願いいたします。

柳田国務大臣 捜査の中身とか細かい点を聞かれたら答えられないんです、それはこういうふうなフレーズを使って答えておりますというふうに申し上げている次第であります。

 ですから、私は、間違って言ったこととは思って……(発言する者あり)いや、だから、仲間内でお話ししているという雰囲気で、少々茶化したかもしれませんけれども、現実的には、答えられないことを聞かれるとこういうフレーズでお答えするしかないんですというふうな考えで、そういうふうなお話をしたところでございます。(発言する者あり)

奥田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

奥田委員長 速記を起こしてください。

 柳田法務大臣。

柳田国務大臣 いかに身内の中の会合とはいえども、誤解を与えるような発言をしたことについては、おわびを申し上げます。そして、ああいう発言を二度としないようにいたしたいと思いますし、委員会の審議におきましては真摯な答弁を心がけたい、そういうふうに考えております。大変御迷惑、誤解を与えまして、済みませんでした。

河井委員 この場には、森法務大臣経験者いらっしゃいますし、民主党の方には滝実元法務副大臣もいらっしゃいます。私も副大臣を務めさせていただきました。自民党には、きょうお見えじゃないですけれども、高村先生も法務大臣をお務めになった。それぞれの大臣が、法務大臣という重い職、最終的には死刑も判断しなきゃいけない、人の命も法によって奪わなくちゃいけない、そういうぎりぎりのところで、重圧で悩み苦しみ、もがきながら、それでも国の安定と国民福祉の向上のために仕事をしようとしてきている。

 あなたは、その中で、茶化したとかそういうふうな発言をされた。私は、法務大臣において、茶化すというふうな表現は最もふさわしくない。謝罪、そして発言の撤回、今そのようにおっしゃったけれども、私は、あなたが法務大臣として、国務大臣としての資質、やる気もなければ能力もない、そういうことが如実にあらわれた。だって、仲間内だから、何十年来の仲間内だから、まさにあなたの本音があらわれた、あなたの日ごろ法務大臣として仕事を遂行する上での一番核心の部分があらわれたんだ、私はそのように解釈をしております。

 こういう法務大臣を抱きながら、この委員会で質問を続けなきゃいけない。もう本当に悔しい、情けない思いでいっぱいでありますけれども、少し時間が残っておりますので、きょうの法案、二つございます。

 まず最初の質問。一般政府職員給与引き下げを勧告した今般の人事院勧告、公務員給与の引き下げに伴って裁判官の報酬を引き下げる法律の改正ですけれども、憲法第七十九条の六項、この関係、そして裁判所法第四十八条との関係を法務大臣としてどのようにお考えなのか、お聞かせをいただきたい。

柳田国務大臣 今回の裁判官の報酬引き下げは、民間給与水準との均衡等の観点からの人事院勧告を踏まえた国家公務員全体の給与引き下げに伴い、法律によって、裁判官の報酬についてこれに準じた引き下げを行うものでございます。

 したがって、裁判官の職権行使の独立性に影響を及ぼすおそれもなく、個々の裁判官及び司法に何らかの圧力をかけることを考えたものではありませんので、憲法及び裁判所法の規定に違反するものではないと考えております。

河井委員 先ほども一部議論がありましたが、この二法案、いつまでに成立させる必要があるか、それについても重ねてお尋ねをいたします。

柳田国務大臣 本二法案による報酬月額及び俸給月額の改定に伴い、平成二十二年十二月支給分のボーナス支給額に影響を生じることから、同月支給分のボーナスの基準日である十二月一日よりも前に成立させ、かつ公布することが必要となります。

河井委員 裁判官並びに検察官、給与面でも、今ちょうど審議をしている法案にも載っておりますけれども、ほかの公務員と比べて厚い処遇、待遇がなされております。大臣、この理由についてはどのようにお考えになっているでしょうか。先ほど言いました、検察官、独任制の官庁、そういった一連の観点からも含めてお答えをいただきたいと思います。

柳田国務大臣 先ほども御質問がございまして、事務方の方から報告がありましたけれども、裁判官については、特別職の国家公務員の中でも、司法府に属し、独立してその職権を行使するなど、その地位や職責に特殊性があり、その報酬は在任中減額できないと憲法上規定されていることなどから、一般職給与法とは別に裁判官報酬法が制定されました。

 検察官については、準司法官的性格を有する特殊な官職であること、原則として裁判官と同一の養成方法を経ることから、一般の政府職員とは別に検察官俸給法が制定されたと承知いたしております。

河井委員 今お答えになりましたとおり、経済的な背景だけではなくて、もう一つ、先ほども少し触れましたが、職の保護という観点からも、裁判官、そして特に触れたいのが検察官の存在であります。

 一人一人の検察官の適格を審査するために設けられているのが検察官適格審査会、逆に言えば、ここで裁かれない限り、普通は、一般的には検察官を罷免等々することはなかなか難しいわけであります。

 大臣、お尋ねをいたします。この検察官適格審査会では、一体何が裁かれ、審査される事項はどういった内容でしょうか。

柳田国務大臣 検察官適格審査会は、検察官が心身の故障や職務上の非能率により、その職務をとるに適しないかどうかを審査するものであって、処分の適否について審査するものではないというふうに承知をいたしております。

河井委員 もう一度聞きます。

 今回の事案のように、外交的な配慮によって処分を決めたということについて、検察官適格審査会で審査はできますでしょうか。

柳田国務大臣 今回は、国内法にのっとって粛々と捜査を行った上で適切に判断したものと承知しており、検察官適格審査会の審査対象になるとは考えておりません。

河井委員 つまり、できないんですね。先ほどの答弁でもありましたとおり、病気ですとか、明らかな業務の怠慢、そういった外形的な事実以外で検察官をこの適格審査会で裁くことはできないんです、大臣。大臣、こっちを向いてくださいね、今議論をしていますから。それだけ検察官という存在は守られているんです。

 では、なぜ検察官という存在が守られているんですか。お答えください。

柳田国務大臣 準司法の立場にあるからだと私は考えております。

河井委員 大臣、別の言葉で言えば、法と証拠によってのみ検察官をして判断させるために彼らの職が守られている。それ以外のいかなる圧力とか誘惑からも遮断するための保護策なんです。そのために検察官の職の保全が保障されている。政治権力とか、ほかのさまざまな権力、圧力から遮断されているからこそ、検察官は安心して法と証拠によってのみ判断をすることができるんです。違いますでしょうか。

柳田国務大臣 そのとおりでございます。

河井委員 ところが、今回の事案のように、法と証拠によってのみ安心して判断できる体制が保障されているにもかかわらず、検察官がみずからその一線を踏み越えてしまったならば、その判断の妥当性を問う仕組みが新しく必要になってくるんですよ、大臣。わかりますか、私の言っていることは。

 今の検察官適格審査会は、法と証拠によってのみ判断される、だから、その判断の是非を問う存在ではないんですね。裁く場ではない。病気とか、明らかな職務怠慢の人だけ裁く。でも、今回のように、法と証拠以外の外交的配慮と那覇地検の次席がもう公然と言ってのけた、こういう判断が加わった案件においては、その判断の妥当性を問う仕組みが今ないんです。だから、それが新しく必要になってくる、私はそう思うんですが、大臣の御見解をお示しください。

柳田国務大臣 この委員会でも何人かの方から質問が出ておりますけれども、不起訴ということになれば検察審査会で取り扱うことになるというふうな質問を何人からか聞いております。

河井委員 それは話が飛び過ぎであります。それは、最終的な救済策として検察審査会という存在はある。ただ、そのことについては、これは私が申し上げるまでもありませんけれども、与党議員を中心として、さまざまな事案について検察審査会については疑義が呈されてきているのは大臣も御存じだと思います。検察審査会の話まですぐ飛ぶ前に、私は、判断の妥当性を問う新しい仕組みをつくらなきゃいけない。

 ただ、もしそれをつくったとすれば、今度は検察官の職の中立が保障されない。つまり、さっき私が大臣と質疑をいたしましたとおり、最終的には個々の検察官の責任、その人が誤った場合には、最終的には責任をとる人間がいない、そういう前提で今までの検察官の仕組みが成立し、運用してきた。それは、繰り返すけれども、法と証拠によってのみさまざまな判断を検察官はするものだ、そういう大前提があったからなんですね。その大前提が、大臣の御答弁では、歴史上初めて覆されたような、外交への配慮、日中関係への配慮ということを先日私の質問に対してもおっしゃった。

 今、首をかしげていらっしゃいますけれども、では、これまで日中関係への配慮、外交関係への配慮というような判断をしたことがあったでしょうか、検察当局が。確認のために質問いたします。

柳田国務大臣 なかったというふうに報告を受けております。

河井委員 そのとおり、なかったんですよ。だから、これまでなかった新しい段階に検察そして法務が入ってきたということなんですね、大臣。これまでとは違う時代に入ってきたんです。

 しからば、当然、今回の事案の妥当性も含めた形で、私は、新しい時代における検察のあり方、それはあなたが、きょうは時間がないからまた後日に移しますけれども、お手盛りの、千葉景子さんを座長に起用する、これまで政府の委員や法務省の役職をたくさんやってきたそういう人たちを委員に起用した検察の在り方検討会議なんてものじゃなくて、もっと真摯な形で私は検察官のあるべき新しい仕組みについて考えていっていただきたい。それは法務省、検察として考えていっていただきたいし、国会でも考えるべきだ、私はそのように考えております。もう一度大臣の御見解をお尋ねします。

柳田国務大臣 委員の意見は意見として拝聴いたします。

河井委員 その上で、あともう四、五分ありますので、今少し申し上げました検察の在り方検討会議。前回の質問で、私の質問に対して大臣は、大阪地検検事正としての監督責任、三浦正晴さん、あるいは太田茂さん、そして次長検事の伊藤鉄男さん、それぞれ前田元検察官の一件に直接のかかわりはなかった、監督責任に問われたために処分を受けたということを御答弁いただきました。

 大臣、検察組織のナンバーツー、伊藤鉄男次長にまで監督責任を問いながら、その責任の上位者である千葉大臣には、責任を問うどころか座長に据える。法務大臣の在任中に正しいあり方に検察、司法を導けなかった人に、正しいあり方を議論、検討する組織体のリーダーをお願いするとは余りにこっけいだ、私はそのように考えております。逆に、検討会に呼んで、なぜ正しいあり方に自分が法務大臣時代に導くことができなかったか、敗軍の将としての反省の弁を千葉さんから聞くべきであって、その人にリーダーをお願いするなんてことは、私は話が全く反対だというふうに考えております。

 お尋ねします。この人選は役人の、後ろにいるような法務省の官僚の提案ですか。まさか大臣の発案ではないでしょうね。お答えをください。

柳田国務大臣 フロッピーディスクの改ざんが行われた当時の政権は民主党ではございません。犯人隠避についての一部が民主党政権下にあったということは承知をいたしております。そういう中で、私は、千葉法務大臣まで、地位等を考えると、責任は問われることはないのではないかと考えた次第であります。

 なお、メンバーの選考につきましては、千葉座長と、私と、後ろにおります政務二役と、いろいろと相談をしながら決定させていただいたところでございます。

河井委員 政務三役はわかりますけれども、千葉さんも交えての人選ということを聞きまして、今大変驚いた次第であります。

 大臣、お答えになっていません。次長検事まで、検察庁のナンバーツーまで監督責任を問われた。その上の人がなぜ監督責任がないんですか。論理的に説明をしていただきたい。

柳田国務大臣 フロッピーディスクを改ざんしました証拠隠滅、これは千葉前大臣が大臣をお務めになっていた以前の事件でございます。犯人隠避について、いろいろと前政権から今政権までわたったということは承知いたしておりますけれども、行為者の地位等を考えると、私は千葉大臣の責任を問われることはないというふうに判断をしたところであります。

河井委員 全く論理的な説明になっておりません。

 この委員の顔ぶれ、もう時間が来ましたのでまた別の機会に譲って質問を続けさせていただきますけれども、これらにつきましても、法務省の役職ですとか、政府のさまざまな審議会の委員をこれまで何度も務めてきた人たち、中には、今回のこの検察のあり方を検討する立場とさまざまな面で矛盾を来すと思えるような審議会の委員も含まれております。

 それらにつきましてはまた次回に譲るといたしまして、最後に、大臣、自覚を持って、責任を持って仕事をしていただきたい。あなたが何を茶化したかわからないけれども、あなたに茶化されるような日本国そして日本国民じゃないんです。命をかけて仕事をしていただきたい、歴代の法務大臣が皆そうであったように。今はあなたが大臣を務めている。逃げずに、真っ正面から、命がけで仕事をしていただきたい。あなたに大臣としての資質があるかどうか、今回の一件でさらに疑問の念を強くいたしました。

 時間が来ましたので、以上で終わります。

奥田委員長 これにて河井克行君の質疑を終わります。

 次に、北村茂男君。

北村(茂)委員 自由民主党の北村茂男でございます。

 本日は、裁判官の報酬等に関する法律等の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律等の一部を改正する法律案が議題であります。これらの法律案に関する質疑と、法務委員会が所管する問題、課題について質問をしてまいりたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いをいたします。

 私は法務行政に殊さら精通している者でもありませんし、ましてや法曹関係者でもありません。したがって、これからの質問はまさしく国民目線での質疑をさせていただきたい、こう思っておりますので、そういう思いでのお答えをいただきたいと思っております。

 さて、議題となっておりますこの二つの給与法に関して伺います。

 人事院勧告の趣旨にかんがみまして、裁判官の報酬等に関するこれら給与法案が今議題となったところでありますが、もしもこの法律案が成立した場合、具体的に年間どの程度の予算額が縮減できるのかということが第一点。しかも、この二つの法案、それぞれ所管が違うわけでありますが、それぞれ総人件費の中でどれくらいの比率の縮減になるのか、先輩方の質問もあったかもしれませんが、お答えをいただきたいと思います。

黒岩大臣政務官 お答えいたします。

 先ほどの別の委員の質問にもお答えしましたけれども、法務省としての人件費総額四千八百六十四億円のうち、約一%に当たる五十億円がこの法改正によって削減される見込みとなっております。

 裁判官についての詳細については、当局の方から詳細のことはお答えさせていただきます。

大谷最高裁判所長官代理者 お答え申します。

 裁判官に関して申し上げますと、この報酬法の改正による人件費の削減額ですが、現在、積算作業中でございますが、報酬及び諸手当を合わせまして、約七億から八億円程度と見込んでおります。裁判官に関係いたします予算が約四百六十八億円でございますので、約一・五%の縮減ということになると考えております。

北村(茂)委員 それでは、せっかくおいでいただきましたので、いわゆる一般職の職員の給与及び特別職の給与に関する法律等も同時に提出されているわけでありますが、これらが成立した場合、政府全体でどの程度の予算額の縮減になるのかもあわせてお答えをいただきたいと思います。

内山大臣政務官 北村委員にお答えをいたします。

 財務省の試算によりますと、義務教育国庫負担金等を含めた国の総人件費、平成二十二年度七兆五千六百五十億円ベースでの本年度の人事院勧告を完全実施した場合の影響額は、概算で約七百九十億円程度のマイナスになります。また、義務教育国庫負担金等を除いた国家公務員の人件費ベース、平成二十二年度五兆一千七百九十五億円ベースの影響額は、概算で五百三十億円程度、これは民主党のマニフェストのベースでございます。

北村(茂)委員 わかりました。

 そこで、今もお話ありました民主党のマニフェストでは、これもまたさきに質問があったかもしれませんが、さきのマニフェストでは、国家公務員の総人件費を二割削減ということが国民との契約、約束となっているわけであります。

 そういう二割削減ということでいけば、総額おおむね一・一兆円の削減になるということでありますが、今回の予算縮減とあのマニフェストの約束との差は一体どうなるのか、整合性は一体どうなるのか。多分お答えは、四年間でやればそれでいいんじゃないかということでしょうが、果たして一・五%の縮減で、残り三年でこれらを達成するということが可能なのかどうか、そのことを民主党の一員としてどうお考えなのか、お答えいただきたいと思います。

内山大臣政務官 お答えをいたします。

 今回の法案は人事院勧告どおりの給与を改定するというものでありますけれども、政府としては、国家公務員の労働基本権制約の代償措置としての性格、他方、現下の経済社会情勢の厳しい経済財政情勢なども勘案して検討をした結果、本年の給与改定については人事院勧告どおり実施するとともに、来年度以降の人件費削減方針についても明らかにすることとしたものでございます。

 今後の国家公務員の給与改定については、次期通常国会に自律的労使関係制度を措置するための法案を提出し、交渉を通じた給与改定の実現を図ることとし、さらにその実現までの間においても、来年度から人件費の削減を可能とするための措置について検討し、給与法改正法案などの必要な法案を順次国会へ提出していきたいと考えております。

 なお、民主党マニフェストにおいて掲げられた国家公務員総人件費二割削減については、今回の給与法案に基づく給与改定だけではなく、国の事務事業の徹底した見直しによる行政のスリム化、地方分権推進に伴う地方移管、各種手当、退職金等の水準の見直し、労使交渉を通じた給与改定など、さまざまな組み合わせを行い、平成二十五年度までに達成することを目標としております。

 以上です。

北村(茂)委員 今となっては若干マニフェストを拡大解釈せざるを得ないという答弁であったと思います。すなわち、事業の縮減等も含めて二割削減を図るんだということであれば、総額二割は人件費で圧縮するということを言われたマニフェストからは大きく逸脱をするものというふうに思わざるを得ません。なお一層マニフェストを堅持するというのであれば、最後までその推移を我々としては見守っていきたいというふうに思っているところであります。

 さて、次の質問に移りたいと思います。

 小沢民主党元代表の資金管理団体陸山会をめぐる政治資金規正法違反事件についてでありますが、平成十六年、十七年分のいわゆる虚偽記載容疑に対して、東京第五検察審査会は起訴議決を行っております。そこで、この検察審査会制度を設けられた趣旨、その目的を改めて確認しておきたいと思いますが、お答えをいただきたいと思います。大臣にお願いします。

柳田国務大臣 検察審査会制度は、一般の国民の中から無作為に抽出して選任された十一名の検察審査員で構成される検察審査会が、検察官の不起訴処分の当否を審査することを通じて、検察官が行う公訴権の実行に民意すなわち一般国民の感覚を反映させてその適正を図ることを趣旨としたものと承知いたしております。

北村(茂)委員 いわゆるアメリカでの陪審制度と同様、民意を反映させる制度だということであります。

 民意を反映させる制度だとすれば、小沢一郎民主党元代表は、この第五検察審査会の起訴議決は無効だとして、国を相手取り、取り消しを求めた行政訴訟を今提起しているところであります。私は、そういう意味で、せっかく民意を反映させる制度ができているにもかかわらず、立法府の一員を構成する、しかも、とりわけ有力な政治的指導者でもある方が、この制度に真っ向から挑戦するかのような行政訴訟を提起するなどとは、私はあるべき姿ではないと思うんですが、この問題を、中身いかんではなくて、第五検察審査会の議決に対して行政訴訟を起こして弁護人の指定を無効にしなさいというようなことをやってくるこの姿、この行為について大臣はどういう評価をされますか。

柳田国務大臣 今委員の御質問は、本人が判断すべき事柄だろうと私は思っております。

 その上で、行政訴訟ということであったわけでありますけれども、最終的には裁判所で判断をされることなので、私は、私の立場でコメントすることは控えたいと思います。

北村(茂)委員 もちろん、だれしも被疑者であったり疑われたりすれば、問題を提起する、それを払いのける努力をする権利を与えられていることは当然であります。そのことまで否定しようとは思っておりません。

 しかし、提起をする制度があったり、提起をするそのことについては、決してそのことを否定するわけではありませんけれども、せっかくこの法制度、こういう制度を設けながら、立法府の構成員である方がこのような問題提起をすることはいかがかという問題を私は投げかけたわけであります。

 お答えすべきでないという法務大臣のお答えでありますが、その法務大臣が、実は、十月五日午前の閣議後の記者会見で、この問題についてこのようにコメントしておられます。東京第五検察審査会が小沢民主党元幹事長に起訴議決を行ったことについて、正直言ってびっくりしている、仲間からこういうことが起こったことは残念だ、結果的に有罪か無罪かわからないが、起訴されたことは残念だと法務大臣はコメントしておられます。今の答弁とは若干違うんじゃないでしょうか。お答えいただきたい。

柳田国務大臣 小沢先生とは大分以前から同じ党にいたこともありまして、そのころからいろいろ御指導を賜ったこともありました。そういったことで、仲間内からそういうことが起きたということは残念だと、そのときは率直に自分の感想を述べた次第でございます。

北村(茂)委員 私は、個人的な感情を述べるのは、これまた決して常識を逸脱したものではないと思うけれども、法務大臣として閣議後の記者会見でこのような見解を述べることは、私は常軌を逸していると言わざるを得ない。あなたが今ここでお答えになったこととの整合性は決してとれるものではないということを申し上げておきたいと思います。

 昨日、国会が七時間も空転をいたしました。その原因は民主党。我々は、この国会で予算審議に入る以前から幾つかのことを民主党に要求してきました。いわゆる小沢証人喚問、あるいは政治倫理審査会での説明責任を果たすようにということを強く申し入れてまいりました。これを受けて、国会審議の過程で、与野党幹事長・国対委員長会談が行われた際、岡田民主党幹事長は、今議会中に小沢元幹事長の何らかの対応が必要なものという民主党の見解を表明されております。しかし、いまだそれが実現されておりませんが、今回、今議会中に何らかの対応がされると私どもは期待をして、今議会に臨んでいるわけであります。

 しかも、岡田幹事長は、小沢元大幹事長にお会いをした際に、いわゆる法的責任、司法の場で争う責任と政治的責任は違うということを小沢元幹事長に申し上げたという報道もありました。まさに、国民に説明責任を果たす、政治責任を全うしていただきたいという趣旨だと思います。

 もう既に、予算委員会での証人喚問、あるいは政治倫理審査会への出頭等を求めているところでありますが、私からも、この法務委員会において、あえて、小沢元幹事長の今議会中における、今議会は十二月三日までしかありませんので、それまでに適当な対応をぜひ実現していただきたいということを強く申し上げておきたいと思います。

 さて、私も尖閣問題について伺ってまいりたいと思います。

 今回の尖閣沖の中国漁船衝突に関連する事件の背景は深いものがあるというふうに私は思っております。それは、さかのぼって、昨年八月に行われました解散・総選挙の際に、民主党の鳩山代表が、いわゆる沖縄の普天間の移設問題に関して、沖縄の基地は、普天間の基地は、国外、もしくは最低でも県外と言われたことに私は端を発しているというふうに思っているんです。あれほど紆余曲折を経て合意を得た日米合意を、アメリカはどのように見ていたかということであります。政権交代必至、民主党政権おおむね間違いなかろうという中でのあの鳩山発言は、アメリカをして、私は、次なる政権はどんな政策をとってくるのかということに大きな不信を抱いたのだと思います。なぜなら、それに引き続く民主党政権の対応が、次から次へとこれまでの政策の変更があったからであります。

 昨年十一月十五日、東アジア共同体構想を提唱したAPEC首脳会議後のシンガポールでの鳩山総理の講演の際、このようなことが強調されました。当時は、アメリカを除外しての東アジア共同体構想であったことは御案内のとおりであります。さらには、今後の日本のあり方として、日本と米国と中国の関係は正三角形の関係があるべき姿だとはっきり言明をされたことも間違いありません。

 さらには、昨年末の小沢民主党幹事長率いる大訪中団のあの姿であります。百四十名以上の国会議員を引き連れ、総勢六百名になんなんとする大訪中団が、あの胡錦濤主席と一人一人写真を撮って、ありがとうございますと、あれほど打ちこびる姿は私は見たことがありません。あれをして朝貢外交と言わずして何と言うのかと思った国民も多いと思います。

 あるいは、尖閣諸島の漁船の事件もありまして、リチャード・アーミテージ元アメリカ国務副長官は、九月十五日、日本記者クラブで会見をしまして、中国は、日本と米国の関係が冷たくなっているからこそやっている、どこまで許されるのか試していると指摘をされました。さらに、これに先立って、マスコミの報道では、官邸の官房長官を訪れて、中国は今まさしく日本を試しているのだというアドバイスをしたと報じられております。

 私は、今回の尖閣諸島の漁船衝突事件は、単に偶発的な事件であったとは思えません。一連のこれら流れの中で、必然的に起こるべくして起こった事件ではないのか。たとえ、それが漁船の衝突という現象であらわれなくても、先駆けて言えば、沖縄や奄美地方での潜水艦の目に余る横行、あるいは、日本の海上保安庁の測量調査に対して異常接近をして、その調査をやめろ等の、威嚇行為なのか違法行為なのかを繰り返す姿。私は、これらの姿をして、今回の尖閣諸島における漁船衝突事件あるいは領海侵犯事件は、単に偶発的な事件だとは思っていないのです。

 したがって、アメリカとの関係、中国との関係、あるいは政権の目指す方向性が原因で、このような流れの中での必然的な現象の一つのあらわれとして起こったものだと考えざるを得ない、私はこう思っているわけであります。

 そこで伺いますが、もうその経過等については、ここまで事件が推移しておりますから、途中ははしょって、今回の映像流出事件について、捜査当局は昨日、流出への関与を申し出た海上保安官の逮捕を見送り、任意捜査を継続する方針を決めたとの報道がありました。証拠隠滅や逃亡のおそれがないことなどから、あるいは、任意捜査で裏づけがとれつつある、さらには、問題の映像が秘密の度合いが余り高くないとの理由から任意捜査を継続することになったと報じられております。

 私は、今回このビデオを提出しなかったのは、タイミングを逸したのか、あるいは中国との約束があったのかと思っておりましたが、今になってこのような任意捜査にして、そして本人の罪状もどのような状況になるかわからないと報じられているわけであります。

 このことについて、任意捜査で進めることにした趣旨、お考えについて改めて法務大臣の御説明をいただきたいと思います。

柳田国務大臣 お尋ねの件につきましては、昨夜報告を受けましたのは、逮捕していないという報告を受けました。

 ただ、先生がおっしゃるマスコミの内容については承知いたしておりますけれども、私が受けている報告は先ほど申したとおりでございます。

北村(茂)委員 時間がだんだんだんだん進みますから、余りかかわっておれませんが、私どももこの推移を見守りたいと思っております。

 私が、十三日の日に地元で、三十人ほどのマイクを使わない対話集会というのをやってきたんですが、その席で、皆さん方が関心があるのはどんなことですかとお伺いしましたら、圧倒的に、この尖閣問題に対する関心が強い方が多うございました。

 その中で、皆さん方にそれぞれ伺いました。今回の事件についてどう思うか、あるいはビデオを流出した保安官についてどう思うか、あるいは処分したらどのような対応がふさわしいと思うか等々の意見を聞いてまいりました。

 今回のビデオを流出させた保安官は、国民が知る権利、知りたかった、そのことにこたえてくれたんだという意見が圧倒的に多かったことは間違いありません。ただし、公務員として、一定の守秘義務、あるいは秘密性がどこまでなのか、機密性がどこまであるのかということは、そのラインの引き方は別として、公務員としてあるまじき行為であったということについては、それは、処分は場合によっては認めざるを得ない。でも、国民の見たい、知りたいという強い要望をかなえてくれた行為であったという評価をしている方が非常に多かったということだけは、この際申し上げておきたいと思います。

 そこで、このビデオは、これほどまで公開されたビデオになってしまったんですけれども、改めて国民の皆さんに公開をする気がないのかどうか、大臣の見解を伺いたいと思います。

柳田国務大臣 流出したビデオについての御質問だ、そういうふうに理解をして、お答えをさせてもらってよろしいでしょうか。(北村(茂)委員「はい」と呼ぶ)流出したビデオ、マスターテープというのもありますので、流出したビデオということで御答弁をさせていただきます。

 この件については、今るる先生の方からお話がございました。我々としましては、刑事訴訟法第四十七条の規定により、公判の開廷前には公にしてはならないものとされておりますので、公開については慎重に対応すべきと考えております。

 なお、国会法第百四条第一項に基づき、国政調査権の行使として、国会から記録提出要求が出された場合には、当然のことながら、当該映像記録の保管者において、そのことを踏まえて、法令にのっとり適切に対応するものと承知いたしております。

北村(茂)委員 しかし、衆参の対応が違うということで、昨日、御存じのとおり、衆議院の与野党国会対策委員会に対して、鉢呂委員長から、早急に参議院と同様の対応をさせる、ビデオを公開するよう努力を政府にさせるということを明言した一札が入っていることは御存じでしょうね。存じ上げていないんですか。それを受けて与野党が正常化をして、昨日の予算委員会開会となったことは、大臣、知らないんですか。お答えいただきたい。

柳田国務大臣 国会が夜九時に開かれましたですよね、本会議が。それの条件について、私は鉢呂先生と話をしたことはないので、鉢呂先生からそういう話は聞いたことはきのうはありません。

北村(茂)委員 そうすると、不正常化していた国会状況が正常化する原因は、何で正常化したのかということは全く存じ上げないんですか。

柳田国務大臣 国会が不正常になった理由は、あのときに、私、予算委員会に座っていましたので承知をいたしております。

 その後、どうして本会議が開かれたかという理由について、鉢呂国対委員長から私は説明は受けたことはないというふうに答弁をさせていただきました。

 ただ、先ほど答弁をしましたように、慎重な姿勢というのはとっております。なお、国会法第百四条第一項に基づき、国政調査権の行使として、国会から記録提出要求が出された場合には、当然のことながら、当該映像記録の保管者において、そのことを踏まえて、法令にのっとり適切に対応するものと承知いたしておりますというふうに答弁をさせていただいております。(発言する者あり)

奥田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

奥田委員長 速記を起こしてください。

 柳田大臣の方から、再度答弁をいたします。

柳田国務大臣 先ほど、流出したビデオについての御質問ですかということでお尋ねをしたら、そういうことだったので、その扱いについてはこういうふうにさせていただきますというふうに申し述べましたのは、国会のいろいろな動きを勘案してのことだというふうに承知をいたしております。

北村(茂)委員 改めて、国会の要請には応ずると明言を……(発言する者あり)だから、政府が応ずる予定だという話がありましたので。時間がありませんが、しかし、これはきちんと確認をしておきますよ。ぜひ、政府が国会の要請にこたえるということは約束しているんですから、与党で約束しているんですから、当然のことを実現してもらいたいと思います。

 間違いないですか。念を押しておきます。大臣。

柳田国務大臣 ですから、国会から国政調査権という要求があれば、適切に対応したいということでございます。

北村(茂)委員 時間がありません。最後の一問。

 今月十日の衆議院予算委員会において、菅総理は、衝突は中国側に非があったという政府の共通認識が、流出したビデオでこれはもう客観的な事実になったと発言しております。

 今後の海保職員の士気を考えてみれば、体を張って職務を遂行した海保職員の今度の正当性が裏づけられる映像は、私はしっかりと公開をすべきだ、こう思っております。そうでなければ、海保の今回の行動は士気にも極めて大きな影響を及ぼす、こう思っております。

 私、個人事ですけれども、私の地元にあります海上保安部の友の会の会長を長年続けております。したがって、海保の職員の皆さん方がどれほど苦労して業務に当たっているかということについては、あるいは海保の一連の全国的なイベントや訓練にも何回も参加したこともございます。したがって、現場の一線で苦労しておられる海保職員の士気を考えれば、私は、しっかりと今回の対応をしてあげないと、士気に影響するし、こんな危険を押しているのに、だれも素知らぬ顔というのでは、まさしく日本の沿岸警備は守られないということになりかねないと思います。

 加えて、処分等の問題も、執行側と政治側は違うんだという一連の発言については、極めて強い違和感を持っております。改めて、海保長官に、この海保職員に与える士気をかんがみて、今回の対応をどのように考えておられるのか伺って、私の質問を終わりたいと思います。

奥田委員長 最後の答弁となります。よろしくお願いします。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 北村先生には、日ごろから私どもの業務に対して深い御理解をいただいておりまして、ありがとうございます。

 今回、中国漁船衝突事件に係るビデオ映像の流出に、私どもの職員が、自分が流出させたと名乗り出て、現在、捜査当局の任意の事情聴取を受けておるという事態は、極めて重く受けとめております。

 しかしながら、現在でも、海上保安庁の巡視船艇、航空機は、尖閣諸島周辺海域を初め、我が国領海、EEZにおいて、領海警備、違法行為の取り締まり等の業務に当たっており、組織の停滞、士気の低下が許される状況にはないと考えております。

 このため、この職員が名乗り出たその十日に、馬淵大臣からも、情報管理の徹底、捜査への全面的な協力に加え、現場の海上保安庁職員の業務への精励という点についても指示をいただきました。私から緊急通達を発して、この旨を現場にも伝えたところであります。

 この指示を全職員が肝に銘じ、尖閣諸島周辺海域における領海警備、違法行為の取り締まりを初め、現下の課題に的確に対応できるよう、海上保安業務に全力を尽くしてまいりたいと考えております。

北村(茂)委員 以上で質問は終わります。ありがとうございました。

奥田委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。

 この際、暫時休憩いたします。

    午後零時十四分休憩

     ――――◇―――――

    〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕


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