衆議院

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第5号 平成23年4月13日(水曜日)

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平成二十三年四月十三日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 奥田  建君

   理事 滝   実君 理事 辻   惠君

   理事 橋本 清仁君 理事 樋口 俊一君

   理事 牧野 聖修君 理事 稲田 朋美君

   理事 平沢 勝栄君 理事 大口 善徳君

      相原 史乃君    井戸まさえ君

      大泉ひろこ君    川越 孝洋君

      菊池長右ェ門君    京野 公子君

      熊谷 貞俊君    黒岩 宇洋君

      黒田  雄君    桑原  功君

      階   猛君    橘  秀徳君

      中後  淳君    中島 政希君

      中屋 大介君    野木  実君

      三輪 信昭君    水野 智彦君

      森岡洋一郎君    谷田川 元君

      山崎 摩耶君    横粂 勝仁君

      渡辺 義彦君    赤澤 亮正君

      河井 克行君    北村 茂男君

      棚橋 泰文君    馳   浩君

      森  英介君    柳本 卓治君

      漆原 良夫君    園田 博之君

      城内  実君

    …………………………………

   法務大臣         江田 五月君

   内閣官房副長官      仙谷 由人君

   内閣府副大臣       末松 義規君

   法務副大臣        小川 敏夫君

   文部科学副大臣      鈴木  寛君

   法務大臣政務官      黒岩 宇洋君

   文部科学大臣政務官    林 久美子君

   厚生労働大臣政務官    小林 正夫君

   経済産業大臣政務官    田嶋  要君

   最高裁判所事務総局総務局長            戸倉 三郎君

   最高裁判所事務総局人事局長            安浪 亮介君

   最高裁判所事務総局経理局長            林  道晴君

   最高裁判所事務総局民事局長兼最高裁判所事務総局行政局長           永野 厚郎君

   最高裁判所事務総局刑事局長            植村  稔君

   最高裁判所事務総局家庭局長            豊澤 佳弘君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  富田 邦敬君

   政府参考人

   (警察庁長官官房総括審議官)           坂口 正芳君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 鎌田  聡君

   政府参考人

   (警察庁生活安全局長)  樋口 建史君

   政府参考人

   (総務省総合通信基盤局電気通信事業部長)     原口 亮介君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          後藤  博君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    原   優君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    西川 克行君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  高宅  茂君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 冨田 浩司君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 宮島 昭夫君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁原子力安全・保安院審議官)   黒木 慎一君

   参考人

   (日本郵政株式会社専務執行役)          中城 吉郎君

   法務委員会専門員     生駒  守君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十三日

 辞任         補欠選任

  大泉ひろこ君     谷田川 元君

  熊谷 貞俊君     菊池長右ェ門君

  野木  実君     森岡洋一郎君

  水野 智彦君     中後  淳君

  山崎 摩耶君     中屋 大介君

  北村 茂男君     馳   浩君

  柴山 昌彦君     赤澤 亮正君

同日

 辞任         補欠選任

  菊池長右ェ門君    熊谷 貞俊君

  中後  淳君     渡辺 義彦君

  中屋 大介君     山崎 摩耶君

  森岡洋一郎君     野木  実君

  谷田川 元君     大泉ひろこ君

  赤澤 亮正君     柴山 昌彦君

  馳   浩君     北村 茂男君

同日

 辞任         補欠選任

  渡辺 義彦君     水野 智彦君

    ―――――――――――――

四月十二日

 民法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 民法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三一号)

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

奥田委員長 これより会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りをいたします。

 各件調査のため、本日、参考人として日本郵政株式会社専務執行役中城吉郎君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として内閣官房内閣参事官富田邦敬君、警察庁長官官房総括審議官坂口正芳君、警察庁長官官房審議官鎌田聡君、警察庁生活安全局長樋口建史君、総務省総合通信基盤局電気通信事業部長原口亮介君、法務省大臣官房司法法制部長後藤博君、法務省民事局長原優君、法務省刑事局長西川克行君、法務省入国管理局長高宅茂君、外務省大臣官房参事官冨田浩司君、外務省大臣官房参事官宮島昭夫君、資源エネルギー庁原子力安全・保安院審議官黒木慎一君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

奥田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

奥田委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局戸倉総務局長、安浪人事局長、林経理局長、永野民事局長兼行政局長、植村刑事局長及び豊澤家庭局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

奥田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

奥田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。階猛君。

階委員 おはようございます。民主党の階猛でございます。

 本日は、一般質疑ということで、一時間時間をいただきました。

 きょうは、政府から、大変お忙しい中を仙谷官房副長官を初め他省の方々にもいらしていただいておりますので、まずは、そちらから最初にお聞かせいただければと思います。

 きょうは、大きく四つのテーマについてお聞かせ願いたいと思っておりますけれども、まず一つ目。先般、復興構想会議の設置が決まりました。この件について、復興基本法という法律も月末までに国会に提出するやに伺っておりますけれども、その点とも絡めて少しお聞かせ願えればと思っております。

 この復興構想会議、メンバーを見ますと、私、地元が岩手なんですが、岩手県の達増拓也知事など東北三県知事も含まれ、また、各界から非常に立派な方々が入っておられます。資料の一ページ目でございますけれども、こういったメンバーをそろえて復興構想というものを練っていくということですが、少し私見を申し上げれば、構想という言葉、通常、構想というのは、企業経営の世界などでは事業家や経営者が自分の頭の中に描くもので、ビジョンというのは、構想を現実のものとするために社員や利害関係者に伝えて、彼らを動かすための道具だというふうに言われるかと思っております。こういう定義に従えば、構想というよりもビジョンの方がいいのかなというふうにも思うわけでございます。

 その一方、我々民主党の中には、まさに、復興ビジョン検討チームというものが置かれております。私もその一員とならせていただいておりますけれども、党の中に置かれる復興ビジョン検討チームの役割と、政府に置かれた復興構想会議の役割の役割分担についてどのように考えればいいか。これはまだこれから煮詰まっていく話なのかもしれませんが、少し副長官にそのあたりについて御意見をお聞かせ願えればと思います。

仙谷内閣官房副長官 おはようございます。

 まずは、階委員も多分、この古今未曾有の地震と津波によって大変な被災をされたんだろうと想像いたします。心からお見舞いを申し上げます。

 そして、今度の東日本大震災で被災をされた皆さん方にまずはお悔やみとお見舞いを申し上げたいと存じます。そして、現在も大変苦しい、困難な状況の中で避難生活を送られている皆さん方にも、政府としては、すべての力を結集、発揮して、必ず被災された方々の生活を安定的な方向に持っていくという決意でおりますので、そのことをまずはお伝えを申し上げます。

 そして、現在、復旧のファーストステージがほぼ一段落を迎えようとしている。多分、ここからは復旧のセカンドステージに入ってきつつある。つまり、瓦れきの処理と仮設住宅の建設等々、住まい、そして、健康保全といいましょうか、公衆衛生や健康保全の問題が本格的な課題になってくる時期に入ったというふうに考えておりまして、その段階で次のステージ、つまり復興に向けて国民すべての支え合いの精神での御協力をいただきながら、新しい希望をつくって、総力を結集して、町や村、あるいは地域、そして日本の大きな新しい創造的な復興をつくっていく。そのために、階委員はビジョンというふうにおっしゃいましたが、これは多少ニュアンスの問題かもわかりませんが、構想をつくり、それを実施する強力な部隊をつくることが必要なんだろうというふうに考えておるところでございます。

 民主党にも復興ビジョン検討委員会というのができておるわけでございますが、私も少々かかわっておるわけでありますが、基本的には政府・与党、そして今回の場合には野党の皆さん方のお力もかりなければならない。とりわけ、大正時代の関東大震災のときの決定的な失敗は、当時の政友会という強大な野党勢力が後藤新平の復興院構想をはなから強力に反対をして、これで部分的に頓挫をしたということが、関東大震災の総括として、反省として我々はしっかりと腹に入れて臨まなければならない。この国会でも、野党の先生の皆さん方の大きなお力を合わせて、おかりして復興を進めなければならないということが一番肝要だろうというふうに考えております。

 政府が責任を持って、復興構想会議なら復興構想会議でつくられる復興の構想を、しっかりと実践的な法案なり予算なり、あるいは計画なりに移し込んでいく。これを、構想にせよビジョンにせよ描き切るのは、こういう時代でございますので、当然のことながら、地域、地方の方々、あるいは、昨日も、閖上地区で一カ月間ずっと治療、そしてコミュニティーの中でいろいろなアドバイスをされた医師の方が私のところに来ていただきましたけれども、閖上地区の自治会は随分しっかりしておって、この方々に任せ切る、そういう復興の構想でいいんじゃないかというお話までいただいたところでございます。

 やはり、地域の自主性、自発性、そして創意あるいは要望というものにこれが生かし切られるような、そういう復興のスキームが一方ではつくられなければならないだろう、そういうふうに考えているところでございます。

 非常に広く、深く、大きく、重く、そういう震災でございますので、従来的イメージだとなかなか自治体の手に余るというような話にもなるんでしょうけれども、やはり現場の自治的な主体を信じ切って任せる。そして、国自身としては、東日本大震災が与えている日本の国力総体に対するダメージをいかに回復し、あるいは、いかに未来志向で発展させるかという視点も絶えずこの構想なりビジョンの中に含んでいなければならない、こんなふうに雑駁に考えているところでございます。

 いずれにしても、あしたから構想会議の議論が始まりますので、そこで、ビジョン的な考え方なのか、頭の中で考えたのをペーパーに書くだけではない、実施につながるような構想をつくり上げてもらいたいものだな、こんなふうに考えているところでございます。

階委員 私の入っている復興ビジョン検討チームの方でも、直嶋座長を初め、先週は岩手の現地を視察に行き、また現地の企業経営をされている方々のお話なども聞き、今週末は宮城にも行ってまいります。

 現場の声をしっかり聞いて、それをもとにして、まさに仙谷副長官が言われたような、地域に根差した復興のビジョンというものをつくり上げていきたいと思いますので、ぜひ我々のつくったビジョンというものも政府の施策の中に反映していただければというふうに思っております。

 そして、先ほどごらんになっていただいた資料一の下半分の方に「復興に臨む政府の態勢」という簡単な図のようなものが、これは東京新聞の記事なのでこれが正確なものだというふうには申し上げるつもりはないんですけれども、この中で一つ気になったのは、ちょっと見づらいんですが、この図の一番下に、「復興対策本部事務局(復興庁?)」というふうにありまして、復興庁というものがあります。復興庁という言葉を聞くと、消費者庁のような府省のもとに置かれる庁ということを想起するわけです。国家行政組織法も、庁といえば府省の外局であるというふうにされているわけでございます。

 一方で、仙谷副長官は野党時代、私も仙谷先生の下で、政府が出してきた消費者庁の法案の対案として消費者権利院というものをつくるべきだ、消費者庁では縦割りの行政組織の中で権限が不十分で、もっと権能を強化すべきで、そのためには庁ではなくて院なんだということを議論したことをよく覚えております。

 そうした中で、今回の、ここに書いている復興庁という言葉に私はひっかかったわけでございますけれども、府省のもとに置かれる庁という組織ではなくて、より強力な権限を持った、まさに復興院のような組織が必要というふうに考えるわけでありますけれども、その点についても御見解をお聞かせ願えればと思います。

仙谷内閣官房副長官 これは、まさに復興構想会議でも議論をしていただく一つの論点、大論点だと思います。

 つまり、その構想の中で復興基本法のようなものをしっかりと法案としてつくるかどうか、そして、その法案の中でこれをつかさどるといいましょうか、執行する行政の単位、あるいはその上には当然政治があるわけでありますが、そういうものを、阪神・淡路大震災のときのような本部ということでいくのか、あるいは今階委員が御指摘になられたような復興庁、現在各省庁が持っている権限を集めて、そしてそれを統合する、インテグレートするような行政機関の方がいいのか、こういう議論になろうかと思います。

 御参考までに、阪神・淡路大震災のときには、階さんも消費者庁のときの経験でおわかりのように、どうしても一行政機関をつくろうということになりますと、それで旧来の省庁の権限をとってくるという話になりますと、日本の国家行政組織法上、法律でそれをつくるという、位置づけることは簡単なわけでありますが、新たな行政執行機関をつくるということになりますと、ややもすると個々の論争に時間がかかる。論争は、政治家の間の論争であれば、これはどこかで妥協ということもあるのかもわかりませんが、霞が関、各省庁の縄張り争いに近いところになってきますと、延々と果てしない論争が続くということもあって、阪神・淡路大震災のときには本部体制ということで、大臣が当時は国土庁大臣だったようでありますが、小里大臣が総指揮を振るわれて本部を運営していったということでございましょう。

 これは非常に一長一短があるわけでありますが、いずれにしても、今度の復興基本法のようなものがつくられるとすれば、その中に、本部にせよ、あるいは新しい省庁をつくるということ自身が法律上の根拠を置くものとして設定をされるべきだろうというふうに私どもは考えているところでございます。そして、実質上は相当大きな権限といいましょうか、本来的な意味での司令塔機能を生かして、オール・ジャパン、総力を挙げての復興の施策の実施ということをしていかなければならない、こんなふうに考えているところであります。

階委員 ありがとうございます。

 その霞が関の果てしない議論につき合っている時間はないわけですけれども、一方で、実効性のある組織を立ち上げるということは非常に大事なことだと思いますので、ぜひその点を踏まえて、これからの復興施策をリードしていく、実施していく機関のあり方というものについてしっかりとした対応をいただければと思っております。

 そして今、副長官のお話の中にも出た復興基本法、枝野官房長官も先日の記者会見で復興基本法というものをつくるんだというふうにおっしゃっていたと思いますけれども、この復興基本法をつくるに当たって、ちょっと私、勉強したことがございます。

 資料の二ページ目。「提案としての復興基本法」という見出しから始まっている箇条書きの資料でございますけれども、これは戎正晴弁護士さんという兵庫の弁護士会の先生、この方は阪神・淡路大震災の復興の際に非常に活躍されて、いろいろな経験を踏まえて、これからの立法のあり方、復興に関する立法のあり方について御提言されたものを私が見まして、きょう、そこから抜粋させていただいたものでございます。

 この中で特に私が注目すべきと思いましたのは、真ん中あたりに「復興の概念」というふうなところがあります。「復興とは、都市構造の改変や産業基盤の改変、市街地の再形成や都市機能の更新等中長期的課題の解決も視野に入れた概念であることの確認が必要である。」と。

 なぜこのような復興の概念を法律の中に盛り込まなくてはいけないかということでございますが、実は、我が国の法体系上、復興という言葉の定義が今まで存在しなかった。復旧ということは定義があったといいますか、そもそも字義のとおり明確といいますか、もとある状態に戻せばそれは復旧だ。ところが、復興というのは、もとある状態を超えて、さらに上に伸ばしていく。それはどこまで伸ばしていったらいいかということは、なかなかこれは程度を決めるのは難しいわけでございます。

 そうした中で、ともすれば、復興、復興ということを言うと、焼け太りではないかというふうに言われたり、あるいは、復興の中で財産を失い生計の手段を失った方に新たに生計を立てるための財産を国が与えてあげましょうと言うと、私有財産制度のもとでは、そういう、国が個人の財産を保障することはできません、そういったような議論が出てくるわけでございます。

 ところが、やはり復興という言葉がしっかり定義されることによって、これは国民的な合意のもとで、復旧を超えた新たな地域をつくるための創造的な取り組み、さらに、そこで暮らす方々が将来に希望を持てるような取り組み、こういったものができるわけであります。

 したがって、私は、この復興基本法、政府がつくると言われている復興基本法の中に、ぜひ復興という概念をしっかり盛り込むべきだと考えますけれども、この点について御見解をお聞かせください。

仙谷内閣官房副長官 ほぼ全面的に階委員のお考えに同意をいたします。

 菅総理も、未来志向的な創造的復興という言い方、あるいは復興から創造へというふうな言い方をしていらっしゃるわけでありますが、私も、今度の震災というのは、大変文明史的、ある種の分水嶺のところに、こんな古今未曾有の、千年に一遍というふうな言い方もされますけれども、そういう時点で発生した。そして、原子力発電というある意味では人間が考え出した最も先進的な技術のところに、ある種の破綻が来ておるというふうなこと。そして、今度の震災でわかってきましたことは、日本の非常に緻密な、エネルギーにせよ、あるいは工業製品にせよ、あるいは漁業、農業から発する日本全体の我々の生活水準にせよ、これはどこがぱちんと切られても成り立っていかないような関係性にあるということであるんだろうなと改めて身にしみて感じておるところでございます。

 おっしゃるように、復興の概念といいましょうか、未来志向で、そして歴史的な角度も兼ね備えて、そして、私は、自然と人間、人間生活の関係ということも十分踏まえて、そしてなおかつ、東北地方のみならず日本全国が置かれた、ある種の人口減少、そして高齢社会、そして過疎と集中、この問題をどう私どもが克服していくのかということが復興の概念の中に当然取り込まれなければならないというふうに考えているところでございます。

階委員 ありがとうございます。

 仙谷副長官、最後の質問でございますけれども、私、金融の世界におりましたものですから、これからの復興に当たって、何とか金融の機能というものを使えないかと思っております。

 と申しますのも、皆さん御案内のとおりの国家財政難の折、なるべく国家財政に頼らず、民間の資金を調達してそれを効率よく効果的に復興の財源に充てていく。また、復興のためのプロジェクトというものも、いわゆるばらまき的なものではなくて、しっかり、将来的に、これをやればこの地域はよくなるんだ、ひいては日本にとってもこれが成長の礎になる、こういったプロジェクトを金融のプロなどのしっかりとした目きき能力を持った人が審査して、それでお金をつけていく。

 そういった意味で、金融機能を活用するということがこの復興に当たっては大事なのではないか、そして、その金融機能の活用ということも私はこの復興基本法の中に盛り込んだ方がいいのではないかと思っております。その点について、最後に御意見をお願いします。

仙谷内閣官房副長官 この点につきましても、階委員の考え方に一〇〇%同意をしたいというふうに私は考えております。

 といいますのは、ここ約二年間、日本は成長戦略を考えてきたわけでありますが、国の財政がこういう状況になっていることの反面、民間には相当のお金が、たまっておると言ったら語弊があるかもわかりませんが、家計部門のみならず企業部門にも、あるいは金融機関にもお金が蓄積をされておって、これが動かないというのが日本経済のある種の病気だというふうに私は見ておりました。

 そこで、先般までの成長戦略では、インフラパッケージ型輸出というようなことで、海外にそのインフラパッケージを、特にグリーンフレンドリーなインフラをシステムとして輸出する。そのときに、国家財政的なお金はごく一部を使って、それをレバレッジとしてファンド構成を、できれば民間のたまっているお金を使う。それで資金循環を日本の経済の中でよくすれば、多分日本の経済はもう一度よみがえるだろう、そういう論理のもとに成長戦略を書いたりしたわけであります。

 同じように、これから資金需要が大変大きなものとなってくる。それで、日本のある種滞留したお金を回す、あるいはアジア的、世界的な相当だぶついているお金を、うまくエコフレンドリー、あるいはこれから全世界的に始まる高齢社会対応型の社会に対する投資として民間資金をうまく活用するということは、極めて重要なことだと私は思っておりまして、当然、金融論的な観点からこの復興構想が練られて、それが実施されなければならない、おっしゃるとおり、そのように考えております。

 したがって、復興構想の中あるいは基本法の中にも金融的な観点が盛り込まれる必要があるだろうと考えております。

階委員 副長官、いろいろと有意義な御答弁をいただきまして、ありがとうございました。大変お忙しいと思いますので、退室されて結構でございます。ありがとうございました。

 済みません、時間の関係で、質問の順番をちょっと入れかえます。

 二つ目のテーマで、第二次犯罪被害者等基本計画ということで、末松副大臣にお越しいただいております。

 資料の多分一番最後についていると思いますが、犯罪被害者基本計画における主な施策、これが今回の目玉となる施策がいろいろ列挙されているわけであります。ここには出ていないかと思うんですが、計画の本文の方を見ますと、「東北地方太平洋沖地震の今後の事態の推移も踏まえ、計画期間の終了前であっても、必要に応じてこの計画の内容を見直す」というくだりがございます。

 これはどのような事態を想定されているのか、あるいは、そのような事態が起きた場合にいかなる見直しを行うことになるのか、ちょっとここが気になったものですから、御見解をお聞かせください。

末松副大臣 お答え申し上げます。

 階先生には、この第二次犯罪被害者等基本計画におきまして、その策定に当たって、性犯罪被害者の対策について非常に貴重な御意見を種々賜りまして、まず感謝を申し上げます。

 この第二次犯罪被害者等基本計画、これから粛々と五年間やってまいりますが、そのときに、今、階先生御指摘の、大地震について、「必要に応じてこの計画の内容を見直す」ということでございますが、一応この基本計画そのものは、自然からの突然の被害という大地震ではなくて、人からの被害というところを前提にしているわけでございますけれども、大地震の中で、そういった犯罪ということについて、もしそういったことがこちらの計画として必要であるときにはそこは見直していく、そういう趣旨でございます。

階委員 行き届いた配慮だと思います。ぜひ、そういった事態には迅速に対応いただければと思っております。

 また、震災に関連してなんですけれども、私は、震災で被災された方々、特に御家族などを失われた方々、こういった方々については、心のケアであるとか生活のサポート、こういったものが重要であるかと思っております。一方、この犯罪被害者の基本計画、これはもう第一次からそうなんですが、まさに、被害者の心のケアとか生活のサポート、こういったものにきめ細かい配慮がされている、また、そうであらなくてはならないというふうに思っております。

 すなわち、両者には共通する部分といいますか、ここの基本計画は、これからの被災者の心のケアや生活のサポートに役立つ部分も大いにあるのではないかと思っております。例えば、そういった点を、被災者生活支援特別対策本部というのが政府に置かれておりますけれども、そういったところに提言して、それでいろいろな施策に盛り込んでいただくように副大臣の方で行動されたらいかがかなと思うわけでございますけれども、どうでしょうか。

末松副大臣 大変有益な御指摘をいただきまして、ありがとうございます。

 まさしく、大震災にしろ、あるいは犯罪にしろ、被害者の方々にとっては突然のショックといいますか、自分の責には帰しない突然のショックというのがございます。これに対する施策としては、本当に共通の施策がございます。

 例えば、今委員御指摘のように、損害回復とか経済的支援等、この資料にもございますように、カウンセリングとか、あるいは生活支援で公営住宅への優先入居とか、あるいは被害回復のための休暇制度の周知啓発とか、あるいはPTSD治療のためのいろいろな紹介やら専門家の育成とか、さらには、ワンストップ支援センターで、できるだけ被害者に負担がかからないような、こういう施策が来ていますし、また、女性とか子供さんのケア、そういったトラウマ、そういったものに対してもこの施策が盛り込まれておりますので、私の方からも、政府の対策本部に対して、この概念的なものをきちんと使えるような形で努力をしていきたいと思います。

 ありがとうございます。

階委員 副大臣、ありがとうございました。これで副大臣への質問を終わりますので、御退席願って結構でございます。

 あと二つほどこの関係で法務大臣にお聞きしたいんですけれども、具体的な施策の中で、何年以内に検討するというものが法務省関係で二つ、もっとあるかもしれませんが、二つほど取り上げたいと思います。

 一つは、第一の「損害回復・経済的支援等への取組」というところの一番上なんですが、弁護士等との打ち合わせにカウンセラー等を同席させることに対する日本司法支援センター、いわゆる法テラスによる支援についての検討ということなんですが、この点については、被害者が例えば裁判で損害賠償請求などをする際に、いろいろな事実関係を弁護士との間でお話ししなくてはいけない。かなりの精神的な負担があるわけです。ですから、私はカウンセラーというものは必要ではないかと思っております。

 実は私、先ほど末松副大臣からもちょこっとお話が出たんですが、議員になる前は、弁護士として犯罪被害者の支援の活動をしておりました。なものですから、カウンセラーというのは非常に大事だなというふうに思ってもいるわけです。二年という期限を設けてはおりますけれども、なるべく早くここはやられた方がいいのではないかと思います。

 この点について御見解をお願いします。

江田国務大臣 犯罪被害者の救援について階委員が御努力をいただいていることに感謝をいたします。

 今回のは未曾有の大震災ということでなくて、犯罪被害者的要素というのが今回の被害者にあることは確かでございますが、そうではなくて、犯罪被害者を救援していくというのは、これはもう一般的な必要性でございますし、また、犯罪被害者が本当に心のケアなどいろいろなことが必要で、そういう行き届いた支援をしていかなきゃならぬというのはこのとおりだと思っております。

 一方で、弁護士の方も、犯罪被害者と接点を持ち、犯罪被害者からいろいろな思いを聞いたりするときに、やはりカウンセリング能力も弁護士の皆さんにも持っていただきたいと思います。さはさりながら、やはり弁護士と犯罪被害者の間にカウンセラーの皆さんに立っていただいて、それはこういう意味なんですよ、こういう痛みをわかってくださいよ、こんなことを弁護士さんにもちゃんと言っていただくことが犯罪被害者の実質的な被害の回復につながるということもあると思っておりまして、それでこういう、二年をめどに検討するということを今やっているところだと思います。

 ただ、これは二年というのを、もちろん、それは物事は早ければ早いほどいいんですが、しかし、どういうスキームでやるか、民事法律扶助の対象にすることが可能なのかどうか、別のスキームにする必要があるのか、あるいは犯罪被害者等、あるいはカウンセラー等の要件をどういうふうに考えるかなど、検討を重ねる必要のある問題点がございまして、その検討の過程で、法テラス、日弁連、各種の被害者支援団体等を初めとする関係機関、団体との協議も必要で、なるべく急ぎたいと思いますが、相応の検討期間は必要不可欠と思っておりまして、御指摘の点は十分配慮してまいります。

階委員 ありがとうございます。

 もちろん、弁護士自身もカウンセリング能力を磨かなくてはいけないんですけれども、やはり一般の人にとっては、弁護士というのはなかなか近づきがたいというか、弁護士の能力以前に、やはり弁護士という存在自体が、緊張したりあるいはいろいろ負担になったりというのもあるものですから、そういった観点で、ぜひ御検討をお願いします。

 あともう一点だけ。

 第三の「刑事手続への関与拡充への取組」というのが右の方にございまして、「被害者参加人への旅費等の支給に関する検討」、これも法務省で二年以内に結論を出すというふうにあるんですが、常識的に考えて、被害者、ただでさえいろいろな傷を負って、経済的にも大変な状況にある方が多いと思われるんですが、こういった方に自己負担で法廷に来いというのもちょっと酷ではないかと思っております。ぜひその点もなるべく早く実行していただきたいと思いますが、大臣、いかがでございましょうか。

江田国務大臣 刑事手続に被害者が参加をする制度、これをつくる経過は委員御承知のとおりで、やはり被害者に参加をしていただいて、刑事手続を被害者にも納得のいく、そういう手続にしたいということではございますが、なかなかその旅費まで持つというのも大変で、今のところはこれは自費ということになっているのは御承知のとおりでございます。

 しかし、おっしゃるとおり、それは酷ではないかというのもよくわかるところで、ただ、どのような考え方に基づいて支給するのかとか、あるいは支給の要件をどうするのか、支給する機関、機関というのは仕組みですね、これをどういう仕組みでやるのか、費用の範囲をどうするのかなど、いろいろ検討するところがございまして、御指摘の制度の導入は、ひとつ着実に検討を進めさせていただきたいと思っております。

階委員 ありがとうございます。

 次のテーマに移りたいと思います。

 法曹養成制度について、これも昨年来、給費制の存続などとも関連していろいろな議論をしてきたわけでございますけれども、まず事実関係を確認させていただければと思います。

 鈴木寛文科副大臣の方からかと思いますが、平成二十三年度のロースクールに入るための適性試験の志願者数、これは何か二つの試験の実施機関があるようですけれども、大学入試センターの方で結構でございます、大学入試センターで実施したロースクールの適性試験の志願者数や、法科大学院の入学者数、その中で社会人の入学者数、これがどういった数字になっているか。前年度と比べて増減数、あるいはその増減の理由というものについてお聞かせ願えればと思います。

鈴木(寛)副大臣 お答えを申し上げます。

 平成二十二年度に大学入試センターが実施をいたしました法科大学院適性試験の志願者は八千六百五十人でございます。これは対前年度比千六百三十二名の減となっております。また、平成二十二年度の法科大学院の入学者数は四千百二十二名、うち社会人は九百九十三名でございます。これはそれぞれ対前年度比で申し上げますと、七百二十二人の減、社会人は三百五人の減、こういうふうになっております。

 その要因ということでございますけれども、当初、例えば平成十三年の六月に出されました司法制度改革審議会の意見書等々では、法科大学院の修了者の七割から八割程度が合格できるような教育にするであるとか、あるいは、法学部出身者でない者や社会人等を一定割合以上入学させる、こういうことで社会人の志望というのが大変ふえたわけであります。制度発足の平成十五年度には、大学入試センターの適性試験の志願者は三万九千三百五十人ということでありますが、先ほど申し上げましたように大幅な減となっております。

 その理由は、主として、いわゆる修了者の合格比率というものが、当初の意見書等々で言われておりましたイメージ、モデルに比べますと相当程度低迷をしているということで、特に社会人の方などが、それまでのお仕事をやめてこの分野に進んでいったとしても、なかなか当初の合格見込みというものになっていないということで、社会人が敬遠をされている。その結果、この制度全体が悪循環になっていっている、そういう社会人の有為な人材が志願してくれなくなっている、こういう循環。さらには、昨今は、そもそも高校生の法学部志願自体が大幅に減少をしているということで、若い方々、若い方々のみならずでありますが、若い方々がそもそも法曹という分野に参入をしなくなっているという悪循環に陥っている、こういう状況でございます。

階委員 確認ですけれども、今平成二十二年度の数字をおっしゃっていただいたと思うんですが、把握している数字はそれが直近のものということになりますか。平成二十三年度はまだなんですね。はい、わかりました。直近の数字はそういうことで、恐らく平成二十三年度も、今おっしゃったような減少傾向というのは続いてくるんだろうなというふうに理解しています。

 七、八割合格ということをうたっていたわけでございますけれども、実際にはなかなかそこまではいっていないということなんですが、現在の入学者数四千人ちょっとという数字の中で、もともと三千人を目指していたわけですから、四千人の七、八割だとちょうど三千人ぐらいになるわけですけれども、さはさりとて、余り能力が及ばない人を、七、八割が目標だからといってどんどん受からせていいのかという問題もあるわけです。さらに、ロースクールに入った人の立場からすれば、やはり目安は出していただきたいなと思っているところだと思います。

 そこで、法務大臣にお聞かせ願いたいのは、どの程度の合格率が今の入学者を前提とした場合に望ましいと考えられるのか、イメージをお聞かせ願えますか。

江田国務大臣 これはなかなか難しい質問でございます。

 私も、司法制度改革審議会のスタートのときから国会という場でいろいろかかわってまいりまして、いろいろな提案なども、むしろ与党的な立場から、当時は野党だったんですが、にもかかわらず提案をしてまいりまして、司法制度改革審議会の意見書の思いというのは共有をしているつもりでおります。

 そのときの思いというのは、点からプロセスへの養成と、そして七、八割は法科大学院卒業者が司法試験に合格するような、イメージですけれども、というものを持ってやっていく、そうすると、法科大学院に入る皆さんも安んじてプロセスの中で養成される、そういうことをイメージしていたんですが、現実がどうもそうなっていないというのは確かでございます。そして、年間三千人にとにかく引き上げて、そして全体に弁護士が五万人というようなイメージにたどり着いていこうとしたんですが、これも、現実に今、必ずしも順調にそういうことになっていないというのは御指摘のとおりです。

 ただ、こういう中で、また単にイメージだけを申し上げてもどうもこれは仕方がないので、やはり今の状況の中で法務大臣として言えることは、合格者というのは、司法試験委員会において、しっかりとこれは能力の有無を判定するという観点から合格者数が決まっていって、そしてその結果、率というものは、やはりこれはその結果として出てくるものであって、あらかじめ率をイメージとして持って、そして数の方を決めていくというのはなかなか難しいことかなと思っております。

階委員 率が出せない説明はよくわかります。であれば、逆に、どの程度の能力を身につければ合格するんだ、そういう資格の取得できる要件というか、そちらの方を明らかにしてもらえないかと。

 つまり、受験生にとってみれば、三千人とか七、八割合格と言っていたけれども、全くそれが現実には達成されていない中で、果たして何を政府がやろうとしているのかということが示されないと、先ほど鈴木副大臣もおっしゃったように、どんどんロースクールに入る人も減れば大学の法学部に入る人も減っていって、法曹人口というものが、むしろふやすために行ってきたはずなのに、将来的には減りかねないというとんでもない事態になるわけです。だから、その辺をぜひ早く、先の目標を示していただけないかと思っております。

 そういった関係で、先回のこの委員会でも議論が出ていたと思うんですが、文科省と法務省さんの方で新たな検討体制、いわゆるフォーラムというものを立ち上げるんだけれども、準備はしたんだけれども震災の関係でおくれていますというお話でした。

 ただ、この委員会では、昨年、給費制を一年間延長しますといったときに、委員会決議で、法曹養成制度のあり方をこの一年間で検討しましょうというふうにしておったわけで、時間は余り残されておりません。ですので、一刻も早くフォーラムで積極的な議論を進めていかなくてはならないと思います。

 せっかくですので、鈴木寛副大臣の方から、そのフォーラムは今後いつ立ち上がるかとか、あるいはどういうふうに進めていくか、御見解をお示しいただけますか。法務大臣にお聞きしようと思ったんですが、せっかく文科副大臣が来ておられますし、前回、法務大臣はこの点をお答えされていますので、ちょっとかえまして、済みませんが、副大臣、お願いします。

鈴木(寛)副大臣 フォーラムの設置は、実は、私とそれから法務副大臣、前副大臣の加藤公一副大臣、その後、小川敏夫副大臣が引き継いでおられますが、ワーキンググループをつくりまして、そこで、両省庁でやれることはやっていこう、こういうことでワーキンググループは取りまとめました。

 例えば、先ほど七、八割と言いましたけれども、修了者と合格者、これは両方あるわけです。修了者の方は主として文部科学省が担当をするわけでありまして、合格者の方は法務省が担当するわけでありますが、悪循環に陥った理由はいろいろございますけれども、一つは、やはり入学定員が一時多過ぎたというのは、私は率直にそう思っております。ピーク時は五千八百二十五人でありました。したがいまして、文部科学省におきましては、平成二十三年度で申し上げますと、二割減の四千五百七十一名まで入学定員を削減いたしました。

 そしてさらに、修了認定というものをきちっとやっていただくようなことを今求めております。とりわけ一部の法科大学院には、きちっとしたそうした取り組みを、質保証をやってください、そしてそれが不十分なところは財政支援を見直すといったことの改革を、この両省庁のワーキンググループでの検討と並行しながらどんどん改革を進めております。

 ただ、この問題、例えば合格者の問題は主として法務省なわけでありますが、世の中全体がやはり協力をしていかないと、この悪循環というのは解決ができないと思います。例えば司法試験合格者、当初のイメージで申し上げると、階委員もそうでありましたが、企業内のローヤーとか、そうした法曹有資格者の活躍する分野というものをもっともっと広げていくという、このことは好循環に転ずるための非常に重要なポイントであります。

 例えば、来年の秋からは、国家公務員の職種の中に法務職というのを、大学院卒業程度で、司法試験合格者については一部の試験を免除した形で、そうしたまさに国家公務員において司法試験合格者が活躍する、こういう道を開こうという第一歩が始まるわけでありますが、例えば地方公務員の分野とか、それからもちろん企業内の分野とか、あるいは、私は学校法人あるいは大学法人を所管しておりますけれども、こうした分野でも法曹資格者の活躍をしていただく必要性、社会的ニーズというのは大変高まっております。あるいは病院等々でも同じだと思います。そういった法曹資格者の職域拡大といいますか、活躍していただく場を拡大していただく。こういうことでやはり出口を充実していくということが好循環につながる。もちろん、入り口のところは我々きっちりやります。

 そういう意味で、法務省、文部科学省を超えて、その他のいろいろなセクターの方々が入っていただいて、そしてフォーラムをつくって、今悪循環に陥ってしまったものを、みんなが同時に同じ好循環に転ずるシナリオを共有しながらやっていこう、こういうことでフォーラムの設置を今目指しているところでありまして、今震災で大変な時期ではございますけれども、これも大変大事な課題でございますので、小川副大臣とも一緒に、いろいろと全力を尽くしてフォーラムの開催に取り組んでまいりたいと思っております。

階委員 ぜひよろしくお願いします。

 副大臣、これで御質問を終わりますので、退席されて結構でございます。ありがとうございました。

 残された時間、検察の改革について少しお聞かせ願えればと思っております。

 きのう、前田元大阪特捜部の検事が第一審で実刑判決を受けたということで、返す返すも本当に検察にとっては大変な問題だったわけであります。

 そして、検察の在り方検討会議が三月の末に検察改革の方向性を示したわけでございますが、その提言の中では、会議の中で議論が割れたからということでしょうか、全過程の可視化という表現ではなくて、できる限り広範囲の可視化という程度の表現にとどまっていて、私は少し残念だったわけでありますが、その後、法務大臣が、八日の日ですか、特捜案件の取り調べの全過程の可視化を試行するよう検事総長に指示したというふうに報じられているものでありまして、これは新聞記事、資料の三枚目にもつけております。私は非常にこの点は英断だったと思っております。

 今回、そのような指示をされた理由について、法務大臣、お願いします。

江田国務大臣 これは、委員が今指摘されました昨日の大阪地検特捜部の前田元検事、一年六月の有罪判決、これに象徴されるように、今検察というものが本当に国民の信頼を失ってしまっておる、これを何としても回復をしないと、それはやはり検察の信頼がない社会というのは安心して生活できる社会じゃないので、国民的な課題だと思っておりました。どうやったら信頼回復できるかと。もちろん、一人一人の検察官が日々の検察権の行使を適切にして、その積み重ねで時間をかけてということもあるでしょう。それも私はもちろん重要なことだと思いますが、検察というのはこういうふうに調べをしているんだということが、可能な限りやはり国民に明らかになっていくということが必要なんだろうということで、この取り調べ状況の録音、録画ということがクローズアップされてきているわけですね。

 取り調べを録音、録画して国民の皆さんに、さあ見てくださいと、こんなことはもちろんできることじゃありません。しかし、ちゃんと録音、録画を全過程しているということがやはりどこかにないといけないということで、検察の在り方検討会議の提言はいろいろな皆さんの御意見をいただいているので、ある幅がございました。

 録音、録画をやりますと、やはり供述を得るということに障害になるんじゃないかといういろいろな懸念も、もちろんこれは私も感じないわけじゃない。感じないわけじゃないけれども、それでもやはりやっていただかなきゃならぬというので、提言の中に、ある幅があった、その一番実際にやろうじゃないかというところを特に取り上げて、特捜部の身柄事件について全過程の録音、録画というものを、全件やってくださいとは言いません、しかし必ずこれをやってください、そして、それをやっていく中で、本当に問題点があるのかということをちゃんと検証できるように実行してくださいということで、検証するということになりますと、一件、二件、ちょっと取り上げてつまみ食い的にやったのではこれは検証できませんから、ある一定の数やっていただくということになる。これを、そういう思いから検事総長に指示をしたところでございます。

階委員 実際には、本当に、この指示を出すのは大変な御苦労があったのではないかと。それは、私も可視化議連という中で活動しておりましたので、辻先生たちと一緒に何回も何回も法務省の方たちとやり合って、それでもなかなか進まなかったものですから、これはもう法務大臣は本当に頑張られたなというふうに思うわけであります。

 そういった中で、その新聞記事の中で、検察庁法十四条の一般的指揮権を行使したやに書かれておりますけれども、もしそれが事実だとすれば、やはりそれは、ちょっとやそっとじゃ動かないから一般的指揮権でやるんだということだったのでしょうか。そのあたりをお願いします。

江田国務大臣 御承知のとおり、検察というのは、これは司法に限りなく近い世界で、政治とは距離を保っていただかなければなりません。しかし、やはりこれもあくまでも行政権の一部ですから、国民に対して、政治の部門あるいは立法の部門が責任を持って説明できるということになっていなければなりません。

 そこで、その両方の兼ね合いということで、検察庁法がいろいろな規定をして、法務大臣は検察官を一般的に指揮できる、ただし個別の事件については検事総長のみという、そういう仕切りになっておりまして、検察官を一般的に指揮する法務大臣の権限として検察官の頂点にいる検事総長に一般的に指揮をするんだということを、私はあえて明確に検事総長にもそのことをはっきり申し上げてお願いをいたしました。そうすることによって、検事総長に、本当にこれは法に基づいてやってもらわなきゃならぬことなんだということを明確に理解をしていただく。

 もちろん、私が言うまでもなく、検事総長はその理解をし、その熱意も持っていると思っておりますが、国民の皆さんにもそういう形で今政治が動いているんだということを明確に認識していただくためにも、そうすることが必要だと考えたわけです。

階委員 大臣の御見識と実行力、僣越でございますが、私からも本当に敬意を表したいと思います。

 質問時間が終了しましたので、最後ですけれども、これから試行していく中で、今まだ全過程の可視化、どういった事件についてやるかというところまでは詰め切れていないように資料などを見ていると思うわけですが、ここを、なるべく全過程を可視化するのを原則として、事件の範囲も広げていただきたいなということを考えております。また機会がありましたらこういった点についても御議論をさせていただきたいと思います。

 きょうはどうもありがとうございました。

奥田委員長 以上で階猛君の質疑を終了いたします。

 次に、大泉ひろこ君。

大泉委員 おはようございます。民主党、大泉ひろこでございます。

 今でも毎日余震がございまして、そういう意味では、私どもはまだ大震災の真っただ中にあるというふうに思われます。

 私自身、被災県の一つでございます茨城県第六区の選出でございます。岩手県、宮城県、これは津波の被害が大変大きゅうございました。そして福島県は、もう言うまでもございませんけれども、原発の被害を直接に受けておられる。そういう中で、この三県に比べますと茨城県の被害というのが若干かすんでいるようでございますが、茨城県の人々というのは、まあ、あの三県の方が大変だから我慢しよう、こういう言葉が多うございます。しかしながら、地域に行きますと、よくお聞きしますのは、風評被害で農産物が売れません、お魚をとってきても魚が売れません、当面の生活ができません、非常に悲痛な叫びがございます。

 そういう意味で、この大震災というのは本当に大きいものだったんだなと私は日々感じているわけでございますけれども、法務省にとっても、土地の境界が移動して、測定をしなきゃならないという仕事がございますが、言ってみれば日本地図を書きかえるほどの大震災だったんじゃないかというふうに思うわけでございます。

 その中で、せんだって法務省では、小川副大臣がリーダーになって、瓦れきの処理のために損壊家屋を無価物と考えるという、もともと財産権の侵害があるかもしれないところに瓦れきの処理を進めるための迅速な対応をなさったということは、法務省として非常にすばらしい対処をされたというふうに思っております。

 ところで、大臣が、先週の九日、十日でございますか、盛岡市と気仙沼市と足を運ばれて、御視察をなさったということでございますが、法務大臣の御立場で、この大震災に対する思い、それから、これから復旧復興にかけての思いというものをまず教えていただけますでしょうか。

江田国務大臣 先日の当委員会でも、おまえは視察に行ったのか、こういう御質問もございまして、まだ行っておりませんでした。

 これはもちろん、物見遊山で行くものではないし、覚悟を持って行かなきゃいかぬということでございますが、先週の土曜日、九日と、日曜日、十日と行ってまいりました。花巻空港から南下をして、太平洋岸、気仙沼へ行ってまいりましたが、七日に大変大きな余震がございまして、東北自動車道が下りは通れるけれども上りは通れないという状況のもとで、随分時間がかかりましたが、三時間ほどで気仙沼に着きました。

 市役所へ行って、市長さんにごあいさつを申し上げたんですが、その会議室の壁に、その日まで死者七百二人、行方不明者千四百十八人と書き出されている。それはただそれだけの数字なんですが、行方不明者千四百十八人と書いてあるこの多くの人がいまだに瓦れきの下に埋まっているんだ、そのことを思いますと、本当にもうこれは胸がつぶれる思いでございました。あと、尋ね人情報というのが壁にいっぱい張ってあるんですね。もう一カ月たっているのに、大変な状況。

 そして、避難所へ行きました。気仙沼市民会館というところへ避難をしている方が大勢おられて、そこの館長さんが所長さんをしておられて、女性の方なんですが、本当に胸を打たれました。その御主人も被災で亡くなっておられる。お子さん方はと聞きますと、娘二人と一緒に車に乗っていて、娘二人を早く逃げろといって逃がした、だから娘たちは大丈夫だった、しかし夫が出てこない。東京で勤務している息子が帰ってきて、徒歩で瓦れきの中を入っていって、そして夫を見つけた。私は幸せだ、夫が見つかって、葬式ができる、こんなに幸せなことはない、こんなことを言われているわけです。そうやって、みんな現地は一生懸命やっている。

 気仙沼の法務局の支局へ行きました。これはもう周りは全部、本当に周りが全部津波の被害でつぶれております。気仙沼の支局の壁にはタンクローリーが横転して張りついているわけですね。その中へ入っていって、そして、三階に戸籍の副本と届け書があったわけです。これですべての戸籍が再製できるということになりました。私は、その戸籍副本と届け書をしっかり守った書棚を、よくやったと本当になでてやりました。

 そういう状況で、そして、もちろん、私は見てきてその現場に心を打たれたわけですが、日本じゅうが、世界じゅうが今、その現地の皆さんと、そして今本当に悩んでいる、茨城の風評被害の皆さん、あるいは風評でなくて野菜の被害の皆さんなんかもそうです、そういう皆さんのところへ心を寄せています。みんなが心を寄せ合いながら、しかも、原子力発電という最前線の技術、これが今問われるという状態になっている。

 こういうある種の文明史的な岐路に立って、新しい時代をつくろうというわけで、私は、ここでみんなの気持ちが新しくつながって、日本の新しいきずなができ、さらに世界が新しくなって、二十一世紀のこれまでを超える新しい世界が始まるということになったら、これは歴史を画することになるんだ、こんな思いでこの復興に私ども取り組んでいかなきゃならぬ、国民みんなも取り組まなければいけないと思いました。

奥田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

奥田委員長 速記を起こしてください。

 質疑を続行いたします。大泉君。

大泉委員 大臣、ありがとうございました。

 冒頭に余震などということを言いましたので余震が起きたかなと思って、失礼を申し上げました。

 さすがに、かつて人権弁護士として名をはせた大臣のお気持ちのこもったお話をいただきまして、大変ありがとうございました。

 今回の震災で、今大臣のお話の中にも少し触れられましたけれども、四つの市町村が保有する戸籍が滅失したということでございます。この四つの市町村の滅失したその状況と、そして、これらの戸籍というのはそもそも電算化されたものであるかどうかということをまず教えていただけますでしょうか。政務官、よろしくお願いします。

黒岩大臣政務官 私も、今月、四月一日から六日まで六日間なんですけれども、政府の現地対策本部、岩手県の連絡室に駐在という形で、室長代行という形で行ってまいりまして、今、大泉議員から指摘された、戸籍が滅失した、四市町あるんですけれども、そのうちの陸前高田市と大槌町に私も行ってきました。これはもう庁舎が壊滅的な状況でして、そこの正本というのはすべてまさに流失しておる。ただ、その副本が、大槌町ですと宮古支局にあるんですけれども、宮古支局は幸い無事でございまして、副本はとっておるという状況でございます。

 今の御質問に答えますと、宮城県の南三陸町、宮城県女川町、岩手県大槌町、そして岩手県陸前高田市、この四市町の滅失した戸籍でございますけれども、これはすべて電算化、コンピューター化されております。

 しかし、これはすべて滅失しましたもので、ただ、幸いなことに、今申し上げた、すべて法務局の副本が残っているということで、今その再製化の途上でございます。四月の末までにはこの再製が完了する見込みということでございますので、御理解いただきたいと思います。

大泉委員 ありがとうございました。

 あわせて、これらの四つの市町村が持っていた戸籍は電算化されたものかどうかも教えていただけますか。

黒岩大臣政務官 先ほども若干触れましたが、この四市町とも電算化はされておりました。

大泉委員 済みません。では、ちょっと私、耳が悪かったようでございます。

 大臣も気仙沼の記者会見で、戸籍が副本で再製される、だけれども、完璧なものになるかどうかわからないという発言がありましたので、ちょっと気になってございましたけれども、基本的に、電算化されてデータにしておけば保存にスペースも要らないわけでございまして、今回のような震災、津波というようなケースを考えますと、早くすべての市町村でデータ化する、電算化するという必要があるのではないかなと私は思うわけでございます。

 現在、全国で戸籍を電算化していない市町村というのはどれだけあるかということと、重ねて、もう一つの質問を一緒に申し上げますけれども、電算化していないところがあれば、その市町村はなぜできていないか、これをあわせて、政務官、よろしくお願いいたします。

黒岩大臣政務官 平成二十三年の三月三十一日現在でございますけれども、戸籍のコンピューター化をしていない市町村の数は二百四十一ございます。全国の市区町村千九百一のうちの割合として約一三%の市区町村が電算化していない。

 その原因についてなんですが、これは一つ一つすべてを把握したわけではないんですが、私ども承知している限りは、さまざまな理由で、これは法律上は努力義務ということになっておりますので、そういったこともあるんですが、各市町村、いろいろな電算化の優先順位があるようでございまして、一概にこれだからこうだという理由で電算化していないとはちょっと申し上げづらいんですが、さまざまな理由があると承知しております。

大泉委員 ありがとうございました。

 電算化は努力義務ということでございますけれども、しかし、戸籍の事務については市町村が管掌すると戸籍法の一条になっていて、これは法定受託事務で、法定受託事務というのは余り市町村の裁量を許すのはどうかなと私は思うんですけれども、法務省の方で強く指示すればもうちょっと電算化できるのかな、私はそういうふうな感想を持ったわけでございます。

 これに関連してお聞きしたいのでございますけれども、現在、年金の受給とかあるいは税金を納める納税、そういうさまざまな国民生活にかかわるサービスは戸籍ではなくて住民基本台帳によって行われている。一方で、婚姻とか出生とか死亡とか、当然ながら身分に関するものは戸籍によって行われている。日本の国民の情報というのが二つに分かれて管理されているということになっていると思います。

 近代日本では、戸籍が明治の初頭にできたときには、戸籍と住んでいるところとほとんどの人が一緒だったと思いますけれども、どんどんどんどん都市に人口が流入していって、先祖以来の出身地と現在の居住地が大きく異なってきたと思います。だから、自分の身の回りでも多くの人は本籍を移換しちゃって、自分の住居地にしているという人が多いと思うわけでございます。

 日常のことは、別に戸籍と関係なく、住民基本台帳でさまざまな行政サービスが受けられることになっていますけれども、戸籍によるものも国民サービスはございます。例えば、遺産相続はもちろんでございますが、最近の年金分割、これは離婚したかどうかという事実の確認がございますし、あるいは児童扶養手当をもらう、これも戸籍に戻って確認しなければならないというのがございます。戸籍をもとに国民サービスが行われる場合もある。

 と考えますと、国民の情報が二つに分かれていて、国民サービスは、基本的には住民基本台帳でありますが、物によっては戸籍をベースにするものもある。本籍と住民票を持っているところが別な場合、二つの自治体で国民情報を管理するよりも、何か一つの自治体で管理した方が効率的ではないかなというふうにも考えられるんですけれども、二つの国民情報を別々の自治体で管理するメリットというんですか、意味というものを教えていただきたいと思いますが、副大臣、よろしくお願いいたします。

小川(敏)副大臣 確かに、委員御指摘のとおり、同じ役所にあったら両方使うときに一度にできるからいいなという気もするんですが、まず住民票の方から先に考えますと、やはり住民票は、住んでいるところで住民サービスを受ける、あるいは住民票をもとに選挙人名簿をつくったりして公民権の行使というようなことがありますから、どうしても住んでいる地域で管理しなければならないと思うんですが、戸籍の方は、現にそういう制度になっているわけですが、本籍地を任意に決めても、これはやはり家族の登録と公証というようなことの趣旨からすれば差し支えがないというところがございます。

 そして、一緒にあればいいという面もあるかとは思うんですが、しかし、戸籍を住民票と同じ役所でといいますと、そうすると、住民が引っ越すたびに、住民票が変わるたびに本籍も一緒にくっついていって変わらなくてはいけないということになりますと、それがかえって煩雑になるのではないか。あるいは、戸籍の中には筆頭者のほかに家族が複数入っておるわけでございますが、家族が必ずしも同じ住所ということにはならないとしますと、一つの戸籍の中に入っている人数分だけ住所が違いますと、どこの住所地でということになりますので、それを手当てするような作業、事務も出てくるかとも思います。

 また、生まれ故郷と現に住んでいるところと、でも、自分の本籍はやはり生まれ故郷なんだ、そういうふうにお考えの方も多いでしょうから、さまざまなことを考えますと、本籍地の方は、必ずしも住所地にはないというその性質上も考えますと、やはり必ずしも一緒にしなければならないということではなくて、別々でもいいのかな、このように考えております。

大泉委員 ありがとうございました。非常によくわかりました。

 戸籍の関係では、昨年も消えた高齢者で問題になったわけでございますけれども、昨年の法務省の発表では、幽霊人口と申しますか、百歳以上だけで二十三万人もいるということで驚きましたが、その後、昨年、法務省では、消えた高齢者をきっかけにして、戸籍抹消の通達を市町村に出しておりますけれども、その結果、二十三万人という数字はかなり減ったんでしょうか。民事局長さん、その結果を教えていただけますか。

原政府参考人 お答えいたします。

 委員お尋ねの高齢者消除でございますが、これは、戸籍実務上、所在不明の高齢者につきまして、一定の要件のもとに、戸籍上の整理を行うための行政措置として、市区町村長が職権により戸籍を消除することができるという取り扱いでございまして、具体的には、百歳以上の者で所在不明のものについて、本人の生死及び所在につき調査資料を得ることができない場合に限りまして、市区町村長が法務局または地方法務局の長の許可を得て、職権によって戸籍の消除をすることができるというものでございます。

 お尋ねの昨年九月の通知でございますが、これは、百二十歳以上の高齢者で戸籍の付票に住所の記載がないものについて職権消除の手続が迅速に行えるように取り扱いを示したものでございます。

 その実施状況でございますけれども、通知を発出いたしました昨年九月六日から昨年の十二月二十八日までに、市区町村長から法務局または地方法務局の長に対しまして、合計四万九千八百七十五人分の戸籍について職権消除の許可申請がされております。このうち、年内に四万六千五百八十七人分の戸籍につきまして法務局または地方法務局の長の許可がおり、市区町村長において職権消除が実施されております。このうち百二十歳以上の高齢者の戸籍は四万四千五百二十七人でございまして、百二十歳以上で戸籍の付票に住所の記載がないものの数全体の約五八%の戸籍について職権消除の手続が完了している、こういう状況でございます。

奥田委員長 ちょっとお待ちください。

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

奥田委員長 速記を起こしてください。

 大泉君。

大泉委員 ありがとうございました。

 端的に言うと、そう仕事は進んでいないというふうにとらえられたわけでございますが、まだまだたくさんの幽霊人口があるということでございまして、市町村にゆだねられているようでございますが、先ほども申し上げましたように、戸籍の管掌という言葉を使っておりますが、法定受託事務なので、市町村がいろいろな事情でやったりやらなかったりということについては、法務省がもっと指導されてもいいのかなというふうに私は個人的には思います。

 戸籍について、差別を保存するという御意見があることも承知しておりますけれども、情報の管理というのが非常に適切に行われれば、戸籍というのはむしろ日本の歴史資料として重要な意味を持つというふうに私自身は考えております。

 昨年の戸籍法の施行規則で除籍簿の保存期間が百五十年になったわけでございますが、それ以前の施行規則では保存期間が八十年でございました。したがって、そこにちょっとギャップができていて、市町村によっては昭和初期の除籍簿を廃棄したところがあるというふうに聞いておりますけれども、廃棄されたものの中には明治、大正の貴重な資料も入っていたかもしれないんですが、この廃棄されたということは事実でございましょうか。民事局長にお願いいたします。

原政府参考人 委員御指摘のとおり、昨年の改正前は除籍簿の保存期間は八十年でございましたので、市区町村によりましては、八十年経過ということで除籍簿を廃棄しているところもあるやに聞いております。

 ただ、市区町村によりましては、除籍簿の保管スペースが十分あるところは、八十年を経過いたしましても廃棄決定をすることなく保存しているところもあったというふうに聞いております。

大泉委員 ありがとうございました。

 何か貴重な資料が少し捨てられてしまったのかなというのは残念に思いますけれども、戸籍法ができたのは一八七二年、明治の初頭で、そのときのえとがみずのえさるなので壬申戸籍と言うそうでございますけれども、この最初の戸籍の中には随分詳しい情報が書かれていたということを読みました。もちろん、士族というような、身分についても書かれておりましたけれども、宗教についてとか、その人間の趣味についてとか、そこまで書かれていたということでございます。

 差別温存ということもあって、その後、この壬申戸籍も廃棄された廃棄されないなどというふうに言われておりますけれども、こういうような明治の初頭の人がどんな生活をしていたかというのがわかるわけでございますから、電算による保存ならば場所もとらないから、これから将来に向けてでございますけれども、法務省としては、情報管理に万全を尽くしながら、後世に役立つ歴史資料として、私は未来永劫保存していただきたいなと思っていまして、百五十年というか、千五百年、一万五千年も保存していただければなというふうに個人的には考えているところでございます。

 今、社会保障・税共通番号制度の検討が行われておりますけれども、住基番号とか基礎年金番号は、一九九〇年代にできるときには、個人情報との関係で反対が非常に多かったわけでございますが、最近は、その背景に特に年金記録の紛失の問題がありまして、国民サービスの充実という意味で前向きに検討していこうというふうに私は感じているわけでございます。

 年金も納税も、それからまた社会保険料もそうなんですけれども、現在、その方向としては家族単位から個人単位に向かいつつあると思っております。例えば基礎年金も、かつては夫婦一緒の年金だったのが一人一人の基礎年金だったり、年金分割ももちろん個人化していくということでございますし、最近問題になった第三号被保険者の届け出の問題も、年金が個人化しているのに手続が追いつかなかったということが問題だったわけでございます。

 年金にしろ何にしろ、個人単位に移りつつあるという背景には、今の人々の多様な生き方があると思いまして、生涯未婚率の最近の状況では、自分自身の家族を持たないという生き方も、善悪は別として非常に増加しているわけでございます。こういう多様な生き方に対する医療福祉のサービスというのは、確かに個人単位の方が適切に対応できる場合が多いと思いますが、そういう中で、身分に関する国民情報である戸籍というのは、個人単位の西洋社会では見られない、アジア特有のというか、個人ではない親族集団あるいは家族単位という考え方をとっているわけでございます。いわば戸籍は、歴史的な、この日本という我が国の文化とも言えるんじゃないかなと私は思います。

 今回図らずもこの大地震で、我が国の文化である戸籍が喪失する可能性があるということを認識したわけでございます。そこで、地震や災害に強い戸籍の管理を大臣にお願い申し上げたく、最後に、戸籍の管理についての御所見を賜れればと思います。よろしくお願いします。

江田国務大臣 我が国は、委員御承知のとおり、戦後改革以前は家制度があったわけですね。これは、戸主がいて、そこへ家に所属する者が皆入ってくる。おい、めいとか、いろいろな人が入ってくる。しかし、これは余りにも身分的な拘束が強過ぎる、家という制度はやはりよくないということで、戦後改革で家をやめました。

 やめましたが、しかし、夫婦あるいは親子、おい、めい、そういう親族的な身分関係というのは、やはり人間あるわけです。これはどこでもあるわけですよ。しかも、結婚するのに、親族同士で結婚したら次第に奇形があらわれるとかそうしたこともあって、親族同士の結婚に一定の制限を置いているとか、そういうことがございますので、あるいは相続ということもありますので、やはり親族的な身分関係をしっかり把握する、そして人間の行動に一定の基準を、規律を与えていく、これは大変大切なことだと思っております。

 ところが、今回の震災でこれが危なくなったというのは委員御指摘のとおりで、具体的には、南三陸町というところの戸籍データが流失をした。しかし、その副本が気仙沼にあった。

 これはどうなっているかといいますと、南三陸町の戸籍の正本が毎年三月三十一日に気仙沼の法務局で副本として保存される。したがって、去年の三月三十一日時点の南三陸町の戸籍の副本が気仙沼にあった。一年間のラグがあります。これについては、南三陸町に戸籍の届け書がございまして、それがほぼ一カ月ごとに気仙沼に届けられて、これがあったというので、一月の終わりか二月の初めかごろまでのものがあった。その時点から三月十一日までのものがないんですね。これを何とかしてまた復活をさせていかなきゃいけないわけですが、これはできるもの、できないものがあるかと思います。しかし、これはある時点でやはりある種の決断をしなきゃいけないので、四月末日で戸籍を再製するという決断をしたわけでございます。

 申し上げるように、そういうような管理の仕方ですから、ですから、いつどこで何が起きるかわからないということにさらされているのは事実で、やはりそういう管理ではなくてもっと万全の管理ができるように、これは何か確実な戸籍情報の保管方法について検討していく必要があると思っております。

大泉委員 ありがとうございました。質問を終わります。

奥田委員長 次に、京野公子君。

京野委員 民主党の京野公子と申します。

 このたびの震災、本当に心からお見舞いを申し上げます。

 私の出身の選挙区は、南、東の部分におきまして宮城県また岩手県と接地をしております隣県でございます。ですけれども、奥羽山脈、また和賀山塊という大きな山というものに阻まれておりますので、被害という点では決して多くはございませんでしたが、隣県ということで、結婚とかそうしたことの人の交流等もありまして、非常に秋田の方々も、被災地に入る方も多いですし、大変心を痛めております。一日も早くこの閉塞的な状況の中から被災地の方々が立ち直りますこと、また、原発の避難民の方々にも正常な生活を一日も早く取り戻していただけますことをお祈りしながら、質問をさせていただきます。

 さて、このたび、一部には想定外とか未曾有というふうな言葉が大変飛び交いました。そうした大規模な災害であるというふうなことを背景にして、非常に多くの対策本部であるとか会議体が立ち上がっております。私どももすべて把握できないほど多くありますけれども、会議体というのは結論を出すためにあるものですから、やはり議論の方向を誤らない、それから有効な対策を打てるための議論であらなければならないというふうに思います。

 そのような観点から、私は、きょう、政府の、被災地等における安全・安心の確保対策ワーキングチーム、このチームについて、ちょっと事務的なこととか、割に技術的なことをお聞きしたいと思います。

 最初に、このワーキングチームがつくられる背景、設置の目的の確認ですが、この文書には、地震の被災地及び原発事故に係る避難指示対象地域等における混乱に乗じた犯罪等や、善意に乗じた詐欺等の発生を抑止するため、こういうふうにきちっと書かれておりますが、こういう理解でよろしいでしょうか。

富田(邦)政府参考人 お答えいたします。

 今御指摘のとおり、被災地におきまして、混乱に乗じた犯罪の発生が懸念される、また、その他の地域においても、人の善意に乗じた詐欺等の発生が懸念されるということでございまして、これらについて関係省庁が緊密に連携し、被災地における安全、安心の確保に係る総合的な対策を検討、推進するということで、犯罪対策閣僚会議、これは既存の会議でございまして、総理が主宰して、全閣僚をメンバーとしております、この閣僚会議の下にワーキングチームとして設置したものでございます。

京野委員 それでは、その設置を正当化する犯罪増加等の客観的事実の確認ですが、三月三十日の法務委員会におきまして、稲田委員の御質問に対しまして、樋口安全局長から、相当数発生している、ただ、平時の発生件数を大きく上回るという状況にはないというふうな御答弁ですが、その後はいかがでしょうか。

樋口政府参考人 委員御指摘のとおりでございますけれども、若干繰り返しになりますが、被災地等の犯罪情勢、治安情勢でございますが、やはりその後も、多くは窃盗、手口的には空き巣でありますとか、出店荒らしというんですけれども無人化した店舗が荒らされる、そういった形態の窃盗が多くを占めてございますが、相当数発生をいたしております。また、被災地以外でも、便乗犯罪が全国的にもふえてきている状況にございます。

 幸いにして、現時点で、私ども警察の把握する限りにおきましては、治安が危険な状況にあるということではございません。

 ちょっと一点つけ加えさせていただきたいのでありますけれども、件数や統計は申し上げたとおりなのでございますけれども、今回の大震災では、被災者の方々、避難住民の方々は、心身ともに非常にストレスの強い環境に置かれておられまして、平常時では考えられないほどの強い不安感を抱いておられます。この不安感をどのようにして軽減することができるか、これが当面の大きな課題であると考えておるところでございます。

京野委員 ありがとうございます。

 同じく三月三十日の法務委員会におきまして、やはり先ほどから稲田委員の御質問をちょっと引用させていただいておりますが、この答弁は繰り返しませんが、非常に、流言飛語、デマ情報ということに対して樋口局長が答弁しておられます。それは、そういう事実があるとは認識しておりません、そして、デマ情報、流言飛語が多発しているということに対しては注意喚起の広報等の対策を進めております、大体こういう内容だったと思います。

 それで、四月六日のワーキングチームの議事次第で、最初の議題に、流言飛語についてというふうな議題が載っております。そして、本来、さまざまな項目立てがありますが、安全・安心の確保対策というものの案の承認といいますか、これは第二の議題になっておりまして、流言飛語に対する対応というものが先に出ているわけですね。

 これを、設立されて第二回目、骨子については第一回目の会合でたたいていただいたんだと思いますが、まだ対策そのものについては、次の議題が待っているにもかかわらず、この流言飛語についてというふうな議題が突出して、最優先で行うに足る何か必然的な、あるいは緊急的な理由があったのかどうか、具体的にお知らせ願えればと思います。

樋口政府参考人 まず、今御指摘の会議次第の順序としては、初めに、メンバーでございます私の方から流言飛語の実態について御説明を申し上げました。

 これは御理解いただけるかと思うんですけれども、平常時において余りそういったことのない状況、事態でございまして、どういったたぐいのデマ情報、流言飛語が口づてに、あるいは電子メールで、あるいはネット上での書き込みで行われているか、それを受けた避難所における避難住民の方々が、それを信じてどういった不安を訴えておられるか、そういう実態を御説明申し上げたということでございます。

京野委員 それは、この安全・安心の確保対策の案の中で、四月六日の時点で最も優先されなければいけないほど、流言飛語で被災地あるいは避難所の方々が混乱をなさる、それは、地震あるいは原子力発電等に関する情報に関して、そのような不安であるとか看過できない混乱というものが現実に起きていたのでしょうか。

樋口政府参考人 今も申し上げましたけれども、平常時においては、こういうデマ情報、流言飛語の実態がどうであって、それに対してどういう対策が必要かということをイの一番に議論しなければならないほどの状況はございません。今回、大変なストレスの高い中でお暮らしの避難住民等の方々の不安感の大きさを前提にした場合に、やはり、実態治安と不安感そのものにどう対処するかが二本立てで大変重要な対策であるという認識がございまして、常日ごろに余り理解、認識のない流言飛語の問題について御説明を申し上げた。流言飛語が先行してというようなことではございません。

 やはり、体感治安というような言葉もございますけれども、治安でありますとか安全、安心というのは、犯罪の発生件数がふえているか減っているか、どのぐらいのレベルであるかも重要でございますけれども、それとあわせて、不安感を静めるための対策というのが大変大きなもう一つの柱でございます。そういった認識でございます。

 その流言飛語の中には、最後のお尋ねがございましたけれども、原発絡みの根拠のない情報もデマ情報と言って差し支えなかろうかと存じますけれども、実際ネット上等であったと認識をいたしております。

京野委員 流言飛語が被災地の方々に与える不安というふうなことは、この同じ安全・安心の確保対策の五番においても言及されているわけですね。流言飛語や生活上のさまざまなトラブルが生じ、それで、被災地の警官に加え、全国から警官等の応援をいただき、警戒、警ら活動を推進すると。

 それで、今、体感治安というふうなことをおっしゃいましたが、私ども、やはり流言飛語とか、あるいは被災地の方の不安感ということを考えた場合、やはり身体に対する危害が加えられる、いわゆる武装した強盗団が向かっているとか、あるいは空き巣に入ったついでに生きている方をあやめる、あるいは危害を加えるとか、財産とか身体、生命に関する危険を感じたときに、非常に体感治安が悪くなるというふうなことがあるかと思います。

 それで、被災地や避難民の方々に対する警察庁としての最大の対応テーマは、むしろ、そうした、やはり流言飛語、デマ情報、樋口局長もおっしゃっていましたが、そういう事実は今のところ確認されていない、そのような形で、デマ情報、それはデマですよ、そのようなことは確認されていませんよと明確なメッセージをきちっと、自治体、あるいは避難所の運営に当たっている管理者というものがきちんとある避難所であればそういうフローを利用して、正しい情報といいますか安心情報といいますか、そういうものを与える、そして警らやパトロールをきちっと強化していくというふうなことが先であり、そういう意味では、体感治安に関する警察庁が行うべき一義的な対応というのはそういうものなのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

樋口政府参考人 御指摘のとおりでございまして、ただ、対策は、私どもにしかできない対策、これは制服警察官とパトロールカーを最大限出動せしめて警戒、警ら活動を行う、それから違反に対しては取り締まりを徹底する、当然のことでございますけれども、それと、御指摘のございました、正しい情報をお伝えする、あらゆる手段、方法を通じて、あるいは行政とか報道機関等とも連携をしながら、正しい情報をなるべく広くお伝えする。加えて、やはり明らかに誤った情報の流布に対しても対策を講じる。そういった何本かの重要な柱がございまして、その総合的な、バランスのいい対策が必要であろうかと考えております。

京野委員 私は、不確かな情報によって被災地に混乱がもたらされている、不確かな情報は流して構わないというふうな考えではもちろんありません、もちろんありません。ただ、最初に安全・安心対策の(10)の「流言飛語への対応」ということで出ている。私はこの書きぶりが、「国、地方公共団体等は、あらゆるメディアを通じて信頼できる情報発信に努める。」ということが三番目の段落に来ていまして、そして一番上に「地震や原子力発電所事故に関する不確かな情報等、」と。それで、この部分が、原子力発電所事故に関する確かな情報は一体何なのか、何をもって不確かとするのか、そのことが、正直に言いまして、今、日本全国、全国民の間で最も強い不信と不安の温床になっているということは私は否めないのではないかと思うんですね。

 四月六日という時点で、「流言飛語への対応」というこの部分をお書きになったというか、議論なさって、こういうふうなさまざまな議論の中でお書きになったのかもしれませんが、どの部門の方がこの十番のこういうふうな文章といいますか、項目をお書きになったのか、お聞かせ願えればありがたいです。

富田(邦)政府参考人 お答えいたします。

 「被災地等における安全・安心の確保対策」そのものでございますが、これは、被災地における治安情勢等を踏まえまして、内閣官房で原案をつくりまして、各省庁の御意見をいただきながら、最終的にワーキングチームの方で決定されたものでございます。

 なお、第一回、二回のワーキングチームの検討の間、インターネットに対する書き込みについての扱い、あるいは流言飛語の情勢等について関係省庁において非常に緊密な議論を行って、最終的に、今委員御指摘になりましたように、あらゆるメディアを通じた信頼できる情報発信の推進という言葉とあわせて、サイト管理者に対する自主的な削除を含めた対応をお願いしたいという文言になったということでございます。

 以上でございます。

京野委員 その後、より一層正確な情報を出すことに努めておられるというふうなことですが、やはり最初に「地震や原子力発電所事故に関する不確かな情報」というふうに、あたかも関係省庁あるいは政府のしかるべき機関しか正しい情報を握っていない、そして、それ以外から発信される情報は不確かであるというような印象を与えるような書き方をするということが、私は、このような非常事態といいますか緊急事態に陥っているときに、むしろ避けるべき書き方ではなかったのかというふうに感じております。

 それでは、引き続き同じ質問ですが、次は、総務省の局長名で文書が発出されておりますね。この件についてちょっとお聞きしたいんですが、この文書、要請を作成するに当たって、これは四月六日のワーキングチームにおける議論というものがその背景にあるのですか。それとも、その議論の際に、こういう要請を出したらどうかというふうな形で、既にそのような話は出ていたのでしょうか。

原口政府参考人 お答えさせていただきます。

 今回の要請文は、四月六日に、東日本大震災に関係するインターネット上の流言飛語対策が盛り込まれました「被災地等における安全・安心の確保対策」が決定されまして、それを受けて発出させていただいたものでございます。

京野委員 そうしますと、その議論を受けて発出したというふうなことですが、これは総務大臣の承認も得ているものなのでしょうか。

原口政府参考人 お答えさせていただきます。

 今回の要請の内容でございますけれども、インターネット上の地震等に関する情報であって法令や公序良俗に反するものについて、所管する電気通信事業者に対しまして、従来どおり表現の自由に配慮し、インターネット上の違法な情報への対応に関するガイドライン、これは事業者間でつくったものでございますが、それや契約約款に基づいて、自主的な判断により対応していただくように、改めて関係団体に要請させていただいたものでございまして、いわゆるこれまでどおりの対応を要請したということでございますので、事前に大臣まで御了承いただいて出したわけではございません。ただ、事後には御報告させていただいております。

 以上でございます。

京野委員 従来どおりの対応をさせていただいたということですが、この要請が出たということで、逆に、政府や公共機関が発出する情報に対する、ありていに言えば不信感とか、それから、従来どおりの感じでお出しだったのかもしれませんが、この要請が与えたインパクトというものは、総務省の担当部局でお考えになっている以上に私は深いと思います。

 これは、特定の国を挙げませんが、某国の情報統制と同じレベルではないかとか、あるいは、政府が出す情報以外はすべて流言飛語なのかとか、そのような極論も含めまして、非常にインターネットが普及した、それこそ中東のデモの話を引き合いに出すまでもなく、そのようなインターネットが発達した状況の中で、この要請に対する批判の広がりと波紋というものは想像以上に深かったと私は思います。

 そして、従来どおりの感覚でお出しになったと言いますが、やはり通信事業関係四団体は、常に表現の自由というふうなものとのバランスの中で、どのような場合は違法であり、違法性がはっきり根拠として示されない、いわゆる公序良俗に反するというふうな非常に裁量権の多い情報の取り扱いにつきましては、ガイドラインであるとか、あるいはさまざまな内部規則を定めまして、決して表現の自由に踏み込むような内容にならないように、本当に、私も今回さまざまなガイドラインを見て、表現の自由とのバランスと、それから犯罪を助長したりするような、あるいは公序良俗に反するような情報をどのようにバランスをとりながら排除していくのかと、非常にそのことに苦慮しておられる業界の、ある意味では良心というものを感じました。

 このガイドラインの中には、地震等に関する公序良俗に反する情報というのはどういうものなのかと。これは、自主的判断と言っていますが、具体的にはどのようなものを想定してお出しになったのか、お聞かせ願えますか。

原口政府参考人 お答えさせていただきます。

 実際、事業者がガイドラインを一つつくっております。また、そのガイドラインとともに、いわゆる契約約款のモデルというものをつくっております。その中に詳細は記述されておりますけれども、ただ、正直なところ、地震ということに特化されて記述されているわけではございませんで、もっと一般的な書き方、例えばでございますが、「他者を不当に差別もしくは誹謗中傷・侮辱し、他者への不当な差別を助長し、またはその名誉もしくは信用を毀損する行為」とか、そのような形の抽象的な書き方で多くの項目が記述されているということでございます。

京野委員 それは、約款、ガイドライン等については私も十分に読ませていただきましたので、十分に承知しております。

 具体的な違法性がはっきりと、後で訴訟になったときに、こういう表現は違法なことをそそり、あおる行為であるとある程度立証できるような背景のないものについては、公序良俗に反するというふうなことの中には余りにもあいまいな表現は取り入れられないように、一応そういうきちっとした内部規制が入っているといいますか、これはやはり表現の自由というものに対する配慮だと思うんです。そして、自主的判断、自主的判断というふうなことをおっしゃっていますが、その結果、例えば海外のメディアの翻訳を載せているサイト等が自主休止しているとか、そのようなことも起きていることは事実であります。

 そしてまた、昨日、非常に多くの国民も衝撃を受けたことだと思いますが、レベル7という発表がありました。しかも同じ日に、きょう原子力保安院とか安全委員会の方がいらっしゃらないのに失礼と思いますが、保安院はその7という発表に対して、三月二十三日には我々はそのような事態ではないかということは把握していたと、そのような、それぞれの機関がてんでんばらばらなことを言っている。常に情報を、最悪の事態、それから国民にとって最も危険なことというものを勇気を持ってきちっと公表していく、それが日本国民に対する信頼ではないかと私は思うんです。

 私ども日本人は、本当に、私の地元の方々も含めて、いたずらにデマ情報でパニックになるとか、そのような人々ではありません。どんな困難な事態でも、困難だ、危険だ、最悪のときにはこのようなことが予想されるということがきちっと信頼できる場所から公表されていれば、それはそれに対して対処をするだけの心構えもある国民だと私は自信を持っております。

 ですから、このような海外のメディア等も、例えばこの前、サルコジ大統領がわざわざやってきました、その意図についてはさまざまな評価があると思いますが、サルコジ大統領の出身国では、ル・モンドという最も中立的な新聞、そしてそのル・モンドよりやや左がかったリベラシオンという新聞がありますが、このリベラシオンはいち早く、これはレベル6だ、事故が一週間以内に収束しない時点でレベル6だというふうな警鐘を鳴らしておりました。

 ですから、日本の政府が発表していることと、あるいは海外メディアも含めて、やはり日本人はいろいろな情報にアクセスできるわけですね。ですから、私は、原子力に関する情報が、流言飛語というのは例えばどこに当たるのか、拡大していったら海外のメディアにまでそういう解釈が当たってしまう場合もあるのではないか、そういう懸念を持っておりますが、いかがですか。

樋口政府参考人 最も適当にお答えできる者がおりませんので、私が申し上げます。

 ちょっと乖離があるように、お聞きしていて思うのでございますけれども、明らかに原子力の事故絡みでも流言飛語はございます。それは、ここであえて具体的な県名は申し上げませんけれども、どこそこの水道水が、日にちが入って、いかに危険で、それはどうしなきゃいけないということがもっともらしく書かれたようなものもございます。ですから、そういうものをデマ情報と認識しておるのでございまして、正しい情報、もしかしたらその根拠がどうか、そういったものも含めていろいろな見解、それがデマ情報だというふうには、少なくとも私どもは認識はいたしておりません。

京野委員 では、例えば水道に、事実はあり得ない、事実無根な物質が混入されたとか、そのようなデマ情報が流れたという事実があったというわけですね。そういうことに対応するというふうなことであれば、私は、この総務省の要請に、具体的に例えばこのようなというふうな例示として掲げて、やはり一種の政府の発出する要請あるいはその姿勢に対する無用な憶測とか批判を招かない配慮というものをしてほしかったというふうに思います。

 時間ですので、あと、法務大臣にお尋ねします。済みません、時間ですね、よろしいですか。

 大臣、今こういうふうにいろいろ質問させていただきましたが、この総務省発出の文書に「表現の自由にも配慮しつつ、」と書かれてあります。「に」ではなく「にも」というふうに書かれているんです。「にも」という言葉をつけ加えることで、あたかも表現の自由はその他の配慮事項であるかのような軽い扱いになっている。

 今回のように、いまだかつて経験したことのない緊急事態なわけですね。こういうときだからこそ、私は法治国家としての品格が問われると思うんです。いかなる緊急事態に直面しても、慌てず、騒がず、曲げず、法による統治の原則をゆるがせにしない、そのような確固たる御意思をぜひ見識高い江田大臣からお聞きしたいです。

江田国務大臣 本当にだれも経験したことのない大変な災害、それに原子力事故という中に私どもは今います。これは、その地域の皆さんは本当に大変なストレスの中で生活をしていらっしゃる。そのストレスを我々もやはり共有をしているわけです。

 そんな中で、本当に、ふだんなら考えられないようなちょっとしたデマ、中傷、これが大きな社会的ストレスになってしまうということがございます。そういうときに、京野委員おっしゃるとおり、慌てず、騒がず、正しく物事を進めていく、これは本当に大切なことだと思っております。

 今、私も聞いておりまして、「被災地等における安全・安心の確保対策」、流言飛語という項目では法務省はこの対応の省庁に入っておりませんが、しかし、私どもも、例えば窃盗団が入り込んでいるとか、外国の人たちが何か悪さをしているとか、いろいろなことを言われているというようなことを聞きます。流言飛語というのは、これは根も葉もない、全く根拠のないデマ、うわさ、そういうたぐいのものでございまして、それはやはりみんなで自粛をしていこうということでございまして、どうぞ、政府の方の意のあるところは、それぞれの皆さん、御理解いただきたいと思っております。

 私も、CNNの英語の、これは大分早い段階ですが、日本が今大変な状態で、アンチャーティッドウオーターズの中で、どこにもマニュアルがないことを日本はやっているというふうに書いてくれておりまして、そういう中で、もちろん表現の自由も、なお、こんな中でも当然あるわけでありまして、今こういう時代ですから、かつての時代のように、こういうことが起きれば表現の自由を全部封殺をして、そして戒厳令下に置いてという、そういうことを私たちはする必要のない国民であり、文明の程度でありと思っておりますので、ぜひそこは政府を信頼していただいて、この地域の安全、安心を確保していかせていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

京野委員 これで終わります。ありがとうございます。

奥田委員長 以上で京野公子君の質疑を終了いたします。

 次に、城内実君。

城内委員 国益と国民の生活を守る会の城内実でございます。

 実は、私は昨日、東京の後援会の皆さんとともに、乗用車、トラック、計十台で、陸路、被災地岩手県に入りまして救援物資を届けてまいりました。救援物資お届けに際しましては、不要なものを届けるというよりも、事前に岩手県庁の担当者の方と綿密に相談をして、その際、必要なものを新品でかき集めて購入して、無事お届けすることができました。また、達増拓也岩手県知事にもお会いさせていただきまして、物資の目録と義援金をお渡しし、お見舞いと激励をさせていただきました。

 そして、帰路、航空自衛隊松島基地にも激励に参りまして、まさに被災地救援で大変にお忙しい中、基地司令並びに隊員の方とも意見交換をさせていただき、隊員、御家族の方々に心ばかりの支援物資をお届けすることができました。

 ちなみに、御存じのとおり、松島基地は津波で甚大な被害を受けましたけれども、基地司令以下の危機管理が徹底していたおかげで隊員の直接の被害はございませんでしたが、御家族の方に、亡くなった方、あるいは行方不明の方、被災を受けた方が大勢おります。まさに御家族がこういうひどい目に遭っているにもかかわらず、自衛隊員の方は不眠不休で救援に取り組まれております。この場をおかりしまして、隊員の方への深甚なる感謝と敬意を表します。

 また、現地では陸上自衛隊の方々が本当にテントで野営しながら災害救援に当たっております。こういった状況を見まして、私もできることは何とかしなきゃいけないなと思ったんですが、その際、ふと頭に浮かんだのは、今の民主党政権の政権中枢の中に、自衛隊は暴力装置であるなどという発言をされた方がいらっしゃいましたが、私はそれをふと思い出して、怒りや憤りよりも、むしろすごく悲しいものを感じた次第です。本当に不眠不休で、御家族の方がまさに被災を受けている当事者の自衛隊員の方々が、現地でふろ支援だとか燃料支援、物品支援、学校の復旧復興支援をやっていて、食べるものも、本当に温かいものを食べたのは一カ月ぶりだなんということをおっしゃっているんですね。

 それで、この暴力装置という表現について、大臣はどのようにお考えになっているんでしょうか。それをちょっと、質問通告をしておりませんけれども、御意見を賜りたいと思います。

江田国務大臣 自衛隊の皆さんが現地で本当に頑張っていただいている、このことはもうただただ頭を下げるばかりでございます。

 十万人という数を確保していただいて、いまだに十万人の皆さんが頑張っておられる。私も、先日、先ほど申し上げました気仙沼へ行ったときに、自衛隊の皆さんが本当に瓦れきの中で、まさに体を使って頑張ってくれている。あるいは福島第一原発においても、これはまさに命がけですよね。そういう努力をくださっているのは、これは自衛隊の皆さんならではと思います。

 私も、地元に自衛隊の駐屯地もありまして、日ごろしょっちゅういろいろな交流をしていて、自衛隊の皆さんとは大変仲よくさせていただいておりますが、本当に頼りになる皆さんだとただただ感謝をいたします。

 この皆さんについて、暴力装置という言葉が使われたというのは余り適切ではなかったと思っております。

城内委員 今、余り適切でないと言いましたけれども、全く、不適切どころか言語道断でありまして、自衛隊の皆さんは、たった一言、よく頑張っている、ありがとう、この一言だけで一生懸命やっているんですよ。そういう認識をぜひ閣僚、政権中枢でもうちょっと持っていただきたい、このことを申し上げたいと思います。

 次に、私は、前回、三月三十日の委員会で、被災地における治安の維持、犯罪の抑止という観点から、犯罪の重罰化、場合によっては特別法を制定して重罰化をしてくれ、しなさいという提言をしました。その際、大臣は、被災地における犯罪がそれほど数は多くないのでほっとしているというふうに述べられておりましたが、今でもその認識にお変わりはないんでしょうか。

江田国務大臣 先ほど政府参考人の方の答弁がございましたが、被災地の治安が悪化しているというような報告には接しておりません。

城内委員 客観的な数字はどうあれ、やはり現地の方々は非常に不安に感じているわけです。

 被災地における治安という点については、三月に、福島及び仙台地検が計六十一名の被疑者を県警との相談もろくにしないで釈放してしまった。その後、四月二日、そのうちの一人、窃盗容疑で勾留して釈放された者が建造物侵入の現行犯で逮捕された、いわゆる再犯ですね。

 三月三十日の委員会で、この福島地検の釈放決定について、自民党の柴山委員の質問に対して、大臣は、「釈放する必要がある理由は十分あった」と答弁されております。にもかかわらず、その後、四月五日、大臣は、釈放判断に疑問符がつくと思っている、検察庁を所管する大臣として残念であると述べられました。さらに、昨日、十二日の記者会見では、批判めいたことを言うことではないとの判断に至っていると、また立場を変えられた。まさに二転三転としているように感じております。

 これは報道ですから、もしかしたら報道が間違っているのかもしれませんが、これについて大臣の御見解をはっきりとお聞きしたいと思いますが、お願いします。

江田国務大臣 被疑者六十一名ということですが、正確には、そのうちの三名は起訴した後でございまして、被告人なので、被疑者は五十八名ということになるんですが、そういう小さなことがいろいろございますが、いずれも、五十八件すべて個々に、個別の事件でございますから、どの事件がどうであってということはお答えを差し控えるべきだとは思っております。

 ただしかし、私は、そういうことで、一つ一つの事件を検察官がちゃんと判断して釈放したものだろう、その検察官の判断というものは信頼をしたいという思いで、そして第一報は、それぞれ情状の軽いもので、決して社会に不安を与えるものじゃないから、安心してくれ、そういう趣旨の報告が上がってきたものですから、これをそのとおり私の認識として申し上げた。

 しかし、後に、今おっしゃった、窃盗の被疑者が建造物侵入で逮捕されて上がってきた。これは、結果から見ると、やはり再犯のおそれの大いにある者であったわけです、結果的には。そうすると、これは釈放の判断はどうなのかなということがちょっとよぎりますよね。

 そこへもってきて、強制わいせつ事件。これは、罪名からいうと、なかなか心配になる罪名です。しかし、これは本当に軽微なことだからという報告が上がってきておりましたので、そうかと思ったら、すぐに違う報告も上がってきて、あるいはいろいろなマスコミの皆さんの情報もあって、これは疑問がつくということを申し上げたわけです。

 そこで、これは疑問なんじゃないかということで、もっと詳しい報告をしなさいということで、報告をいたさせましたが、確かに、事案としてはいろいろ気になる事案ではあります。ありますが、被疑者の身上、あるいは被害者の状況、当時の身柄拘束している場所のライフライン、水道がとまっているとか、そんなものを総合勘案すれば、この釈放も、あえていろいろと現場の検察官の判断に私が言わない方がいいかなという判断をした。

 ちなみに、その事件についてはその後どうなったかということを申しますと、これはおとといの段階ですが、ちゃんと公判請求をいたしました。そこまできっちりできました。

 したがって、私は、地域の皆さんに大変不安を与えたということは、これは残念でございます。こういうやり方じゃないやり方があったのではないかという思いは確かにいたします。しかし、今振り返ってみて、現場の検察官の皆さんの判断に私がこれを監督する者としていろいろなことを申し上げるのは適切ではないと思っておるところです。

城内委員 大臣が今、地域の方々に不安を与えたということをお認めになったことは私は評価いたしますが、検察官の方々の個々の判断を信頼するということはもちろん大事ですけれども、結果として、被災されて、まさに非常に厳しい生活を受けていらっしゃる方が、自分たちもそういう犯罪者に何かされるんじゃないかという余計な心的なプレッシャーがかかるわけですから、そういうことのないように、まさに政治主導で、適切な判断を大臣がしていただきたいなというふうに思った次第でございます。

 次の質問に移りますが、実は、四月八日に規制・制度改革の基本方針というものが閣議決定されました。その中に「農林・地域活性化」という項目で、中国人訪日査証の要件緩和、見直しという項目が挙げられております。概要は、国際観光客誘致のため、中国人についての査証、ビザの発給要件の緩和など、訪日査証のあり方について検討するとあります。

 中国人の訪日査証については、昨年七月、既に緩和策が実施されております。この際、中国人の観光客を高額所得者層から中所得者層まで拡大すべく、発給要件を、年収二十五万元ですから、日本円にすると年収約三百十万円から、約七十万円にまで下げているんですね。

 結局、この緩和策というのは、一年もたっていないにもかかわらず、さらに追加して講じるということになっておりますが、私は、個人的に、これは非常に拙速なような感じがいたします。

 近年、警察と法務省の入国管理局の努力で、不法残留者や不法入国者が減っているんですね。しかし、こういった形で査証発給をさらに緩和すると、またふえてくるんじゃないかなと不安になるんです。この件について、私の親しい民主党の議員の方に何人か言うと、えっ、そんな話あるの、何で今そんなことを閣議決定するのと、非常に強く疑問視する声もありました。

 さて、質問ですが、昨年七月の査証発給要件緩和前と後で、この該当項目の方の不法滞在者の数というのはどの程度変わっているのか。おわかりでしょうか、わかったら教えてください。

江田国務大臣 これは、なかなか近似値などとりにくいんですが、緩和の前の平成二十一年七月から平成二十二年六月までの中国人個人観光査証による入国者数は約二万一千人で、そのうち不法残留となった者は一名でございます。緩和後の平成二十二年七月から平成二十三年一月までの観光査証による入国者数、これが約三万九千人で、そのうち不法残留となった者が九名でございます。

 こういう小さな数字ですし、期間もそれほど長くないので、断定的に評価を行うことは必ずしも容易ではないですが、これまでのところ、少なくとも、治安が悪化したというような明らかな結果や兆候があったということではないと思っておりますが、いずれにせよ、不法残留発生やあるいは治安の悪化の防止に懸命に努めていく所存でございます。

城内委員 もう時間がないので終わりますが、今の大臣の御説明ですと、平成二十一年七月から六月、パーセンテージは少ないとはいえ、二万一千人中一人ですね。そして、この緩和後、二十二年七月から一月、これは半年ですよね、九人。九倍じゃなくて、十二カ月で一人、六カ月で九人ですから、九掛ける二で十八倍なんですね。これはやはり、緩和したことによってどわっと不法滞在がふえたというふうに私は理解しているんです。

 警察庁の刑事局組織犯罪対策部の資料によりますと、検挙件数、検挙人員ともに、やはり中国の方の数が断トツのワースト一位なんですね。ぜひ大臣、治安維持の観点から、今回の査証発給要件の緩和にストップをかけて、もう一回よく入国管理局と議論していただいて、国益と国民の生活、安心、安全、これを顧みない拙速な改革をやめていただきたい。

 民主党内でも十分議論していただいて、今、被災でてんやわんやのときに、こういう国民の安心、安全にかかわる重要な問題については党内で十分議論して、そして我々野党とも議論した上で進めていただきたい、このことを申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

奥田委員長 以上で城内君の質疑を終了いたします。

 次に、河井克行君。

河井委員 自由民主党の河井克行です。

 三月十一日、あの東日本大震災の映像をテレビの画面で見ながら、私は涙がとまりませんでした。たくさんの家々や車が大津波によって流されていくさま、その中には逃げおくれた、かけがえのない、とうとい方々がいらっしゃっていたに違いがない。お悔やみを申し上げますと同時に、被災された方々に心からお見舞いを申し上げます。

 私は、江田五月大臣のお隣の広島の出身であります。昭和二十年八月六日、原子爆弾が投下をされた直後、黒い雨が大雨として降った、いまだに政府はそれを認めておりませんけれども、まさにその地域が私の幼いころから育っていた地域であります。広島市のちょうど北西部であります。もちろん、私はそのときには生まれておりませんでしたけれども、小学校のころから、被爆体験、さまざまな教育を受け、そして、知り合いや友人の中にたくさんの被爆者、被爆二世の方々がいらっしゃいますし、今なお突然、原爆被爆が原因と推定され命を落とされる方もいらっしゃる、苦しんでいらっしゃる方も数多くいる、そういう地で幼いときから育ってまいりました。

 だからこそ、私は今回の地震と津波までは自然災害だ、でも、その後の福島第一原子力発電所の一連の事故は到底許すことはできない、私は、人災だ、そう考えており、広島の皆さんの悲劇、そして長崎の皆さんがこうむったつらさを、今度は日本人の手でゆめゆめこれ以上広げるべきではない、毎日そういう気持ちでいっぱいであります。

 江田五月大臣は、法務大臣でいらっしゃる前に国務大臣でいらっしゃいます。内閣の重要な事項には関与をされるお立場でいらっしゃる。しかも、国権の最高機関である国会、参議院の議長職を退いた後、異例とも言われる形で、総理から強く請われて大臣に就任をされたと言われています。さまざまな報道を見ておりますと、菅総理大臣にとって最大の相談相手であるとか、江田法務大臣と話しているときが一番心が安らぐんだとか、そういうふうな報道がされております。

 この大震災や原子力発電所事故、今、菅総理大臣は最高責任者として対処していらっしゃる。これから申し上げることは、私たちは野党でありますから直接お話しすることはできない。大臣の口から、江田さんの口からぜひ総理にお伝えをいただきたいことが幾つかございます。

 一つは、昨日、国際評価尺度、答弁要旨には一切これは載っていません、政治家同士の話でありますので。経産省の原子力安全・保安院がレベル7に引き上げをいたしました。遅過ぎたのではないかという大きな批判があります。三月の十五日、十六日にはわかっていたんじゃないかと。なぜならば、幾つかの爆発事象がそのときまでにはもう起こっていた。つまり、今回レベル7に評価をされたほとんどの放射線量が、その時点でほとんど放出をされていた。きょうは四月の十三日、何をその後、一カ月近く、ただいたずらに時間だけが無為に過ごされてきたのか。

 先ほど民主党の議員の質問で、流言飛語についての問いかけがありました。流言飛語が起こる条件は、大臣、もう明らかなんです。責任ある当局が正しい情報を正しい時期に正しいやり方で国民に周知しないときに流言飛語は発生するんです。流言飛語を取り締まることももちろん重要であります。でも、それはイタチごっこにすぎない。肝心の政府そのものが、東電や政府の発表、公表が信頼されていないからこそ流言飛語が起こっている。この本質の問題から目をそらすべきではないと私は考えております。ぜひそのことを総理にもお伝えをいただきたい。

 そして、隠すとか、さまざまな問題が起こって都合が悪くなったから情報を小出しにするというやり方が一番よくないんです。さきの大戦でも日本陸軍の最大の蹉跌は戦力の逐次投入にあったと歴史家はみんな言っている。むしろ、大事なことは、総理の口から最悪の事態を国民にまず示すべきなんです。そして、それを何とか回避するために、今、日本国を挙げてこういう具体的な措置をやっています、それで、その措置の見通しなども同時に明らかにする。そのために全力を傾けているということを、官僚がつくったような作文とかじゃなくて、総理大臣の真心から言っていただきたい。

 最悪の事態を示して、それで国民が大騒ぎになるとかパニックに陥るとか、日本人はそんな情けない国民ではないと私は信じています。為政者が考えているよりもはるかに優秀な国民であります。私は、まずその点を江田大臣にしっかりと総理にお伝えいただきたい。

 もうこれは一政権の帰趨とか一政党の帰趨とか、そんな段階ではない。あなたは、法務大臣、法務行政の責任者という重要な仕事を担っていただいておりますけれども、私たちは、それだけではない、大事な役割を内閣の中で果たすべきだし、果たしていかれるに違いないと確信をいたしております。

 以上の点について、大臣のお考えをお示しください。

江田国務大臣 法務大臣の前に国務大臣で、今の菅内閣の内閣総理大臣に対して物が言える立場ではないか、こういうお話でございました。

 内閣総理大臣にそんな威張ったことを言うようなつもりはありませんが、しかし、総理大臣であるとか国務大臣であるとかということを超えて、やはり本当にみんなが今、力を合わせ、気持ちを合わせ、この危機を乗り切っていかなければいけないところであり、河井委員の今の言葉は大変重い意味を持っておると思っております。

 私は、今の委員の御批判はもちろんしっかりと受けとめさせていただきます。そして、私自身はかつて科学技術庁長官を務めた時代がございまして、原子力発電所というものは多少は知っております。それだけに、私が務めていた当時に既に福島第一は当然あったわけで、この安全性が、想定をされていた事象をはるかに超えるものが起きたこと、それを私どもが予見していなかったこと、そして、これが想定外と言わざるを得ないような、そういう原子力発電所であったこと、このことは私は責任を感じなきゃならぬと思っております。

 そういうことを前提にしながら、しかし、今現場の皆さんも一生懸命にこの事象を抑え込もうと頑張っておりまして、確かにレベル7ということではありますが、しかし、これは何とか抑え込みながら、冷温停止から安定的に、時間はかかると思いますよ、時間はかかると思いますが、安定的にデコミッショニングまでちゃんと持っていけるように努力をしていきたいと思っております。

 そういう、これは法務大臣の所管は全く関係ありませんが、国務大臣の一人として、そしてこれまで政治にかかわった者として、さらに一人の日本国民として頑張っていくし、菅総理にもぜひ頑張ってもらいたいと私は側面から支えてまいります。

河井委員 大臣が科学技術庁長官という御経歴をついつい失念をいたしておりまして、それならばこそ余計に江田大臣に課せられている政治的な責任は重いんですよ。本当に死ぬ気で頑張っていただきたい。総理にもそのことはしっかりとお伝えをいただきたい。

 そして、幾つか具体的なことを言いますと、私がずっと危惧をしていたのが飯舘村、ここでようやく避難の範囲の拡大ということが言われてきましたけれども、私は、自民党の本部でも、あるいは自分の書き物でも、飯舘村の全村避難というのを早期に一貫して訴えてまいりました。これももう三月十六日段階ではわかっていたこと、放射線量、さまざまな事柄、専門家も早くから指摘をしていた。

 一度避難範囲を指定したから、それを変えることによって政治的な責任をとらされるとかなんとか、ゆめゆめそういう判断があったと私は考えたくない。でも、結果だけ見れば、無駄な被曝、不要な被曝を何にも罪のない村民に政府が強いてきたという事実だけは残るんです。そのことはしっかりと肝に銘じていただきたい。そして、一日も早く科学的なデータをとにかく集めて、それを公表していただきたい。東電の発表にしても、保安院の発表にしても、官房長官の発表にしても、今の国民はほとんど信じていませんよ。だからこそ、先ほどのようないろいろな流言飛語も飛んでくるんです。

 今、一番アクセス数の多い気象関係のサイトは、大臣、どこの機関のものか御存じですか。

江田国務大臣 知りません。

河井委員 ドイツの気象庁の放射線量の広がりの予測のサイトが一番人気なんです。何で日本国の気象庁のサイトよりもそちらの方が多くなっているのか、何にも今の政府が公表していないからじゃないか。真摯に国民の実態の声に耳を傾けていただきたい。

 飯舘村の村民にしても、全くの住民なんです。今、第一原発で献身的な努力をしている現場の労働者の皆さん、本当に頭が下がる。でも、彼らは一人一人が厳密な放射線管理を施した上でのお仕事なんです。業としてやっていらっしゃる。飯舘村の村民にはそんな一人一人の放射線管理も施していないし、業としてあの地域に住んでいるわけでもない。全く別の話であります。

 もう一つは、きょうの朝刊に初めて出ておりましたけれども、文部科学省が十二日、福島県内の三十キロ圏外ですよ、三十キロの外で、土壌や植物から放射性ストロンチウムを検出したという記事が載っております。科学技術庁長官をお務めになった大臣ですから、この記事の深刻さがよくおわかりいただけると思います。これまでは揮発性の放射性物質しか検出されていなかった。ストロンチウムというものは、専門家に言わせると、これが検出された、しかも三十キロの外で検出されたということは、ほぼ間違いなく燃料棒そのものが燃えたに違いない、それを示しているんだというふうに言われております。

 もう一つ心配なものは、プルトニウムの存在。敷地の中で検出されたということは少し前に報道されましたけれども、果たしてこの土壌調査でプルトニウムがしっかりと検査をされているのかどうか。これは内閣としてしっかりとやっていただきたい。情報を小出しにしないで、全面公開をしていただきたい。重ねて大臣に申し上げたいと存じます。

 以上の点について、お考えがあればお示しをください。

江田国務大臣 科学技術庁長官を務めたと申しましたが、一九九三年、四年のころですから、もう知識も相当さびついておりますので、しかも所管外のことですから、今のストロンチウムのこと、あるいはプルトニウムのことについてあれこれここで述べるとミスリードしてしまうと思います。

 ただ、ストロンチウムというのが、これは体内被曝になると相当の影響を与えるものであるということはわかっておりますし、プルトニウムも、長崎の原爆がプルトニウム爆弾ですから、そしてまた、その後もいろいろな核実験などございまして、この地球上に相当のフォールアウトとしてのプルトニウムがあることも事実ですが、しかし、今のストロンチウムにしても、それから先日来検出されておりますプルトニウムにしても、このサイトの燃料棒の、それが溶けたか割れたか、そこはわかりませんけれども、燃料棒の中から出てきているものだということは、これは間違いないことだろうと思います。

 そうしたことについて、もちろん、これは決して私は、政府、内閣、関係機関、情報を隠しているというようなことはないと思いますが、なお心してまいりたいと思います。

 なお、サイトのことについて、私はドイツのそのおっしゃるサイトにどのくらいのアクセス数があるのか全く知りませんが、そしてそのドイツのサイトが本当に正確なことをしているかどうか知りませんが、しかし、本当に今、国民の皆さんがいろいろな国際社会全体のさまざまな情報にアクセスをして自分で真実を把握したいと思っておられる、そのことはしっかり我々、意にとめていかなきゃいかぬことだと思っております。

河井委員 今ドイツの気象庁の話をされましたけれども、大臣、自国の気象庁のホームページじゃなくて、海外の政府の機関が発表しているサイトを見ざるを得ない国民の情けなさというのはわかりますか。(江田国務大臣「委員長」と呼ぶ)まだ質問していません。(江田国務大臣「質問したじゃない、今。わかりますかという」と呼ぶ)質問していません。どれだけ情けない思いで日本国民がさまざまな手段を通じて今情報を集めようとしているのか。

 何度も言いますけれども、あなたは普通の大臣じゃないんですから。総理の御意見番とか御相談相手と言われている。普通の大臣じゃないんですよ。重みはあなた自身が一番よくおわかりのはずだ。しっかりと日本国の国民の命と財産を守るために、私たちもできることは協力すると自民党を挙げて言っているじゃないですか。その上で、最後に、最高責任者は内閣総理大臣なんです。

 重ねてお願いをいたします。国民の今のこの気持ちをしっかりと受けとめていただいて、これ以上被害が広がらないように頑張っていただきたい。もし何かお考えがあったらおっしゃってください。

江田国務大臣 ドイツの気象庁にどういうぐらいのアクセス数があるかというのは私はそれを知らないので、そのことについて聞かれても、それはわかりません。

 しかし、今委員がおっしゃるような、そういう国民の気持ちというのはしっかり受けとめていかなきゃいけませんし、また、そういう事態ですから、これはもうぜひお願いをしたい、野党の皆さんにも今のこの事態を乗り切るために本当に最大限の協力をお願いしたいと思っております。

 いずれにせよ、この危機を乗り切るために全力を尽くしてまいります。

河井委員 その上で、今回の大震災は、未曾有の国難だとか千年に一度の大地震、大津波だというふうに言われております。そして、その後、人類が全く経験したことがない複数炉にわたる原子力災害も今なお進行中、全く収束の見通しが立っていない。そういう中で、大臣、この異常な事態を受けて、何をなすべきか、つまり、何を優先させるべきかということを、やはり政府でしっかりと考えていただきたいということなんです。

 一般論でお聞きしたいんですけれども、政府は今何を優先すべきですか、この局面で。お答えください。

江田国務大臣 私は、これは全く個人的な意見ですが、今一番、被災地の皆さんも、そして国民みんなも、あるいは世界も焦っているのは原子力発電所の抑え込みだ、私はそう思っております。これは自分のこれまでの経歴、体験がそういう思いにさせるのかもわかりませんが、これを何とかして冷温停止まで持っていくことができれば、あるいは冷温停止に持っていくための安定的なプロセスがきっちり見えてくれば、相当私ども心が穏やかになっていろいろなことができると思っております。

 もちろん、被災の現場に、避難所におられる皆さんの生活の救済、これは当然、大変に優先順位の高いことでありますが、その仕事にしても、やはり原子力発電所はこうなってこうなってこうなるから大丈夫だと、こうなれば、相当に仕事の仕方が違ってくるだろうという気がして仕方がありません。

河井委員 そういう原子力発電所の事故の収束、そしてその後の被災地の復旧支援、復興支援、これが一番政府として優先すべきだと。全くそのように思っております。

 私は、その中で、法務大臣として法務行政をつかさどっていらっしゃる大臣にお尋ねをしたいんですけれども、この大震災が起こった後と起こる前、すべての役所においてあらゆる業務の見直しをしなきゃいけない。なぜならば、天文学的な数字に、これからさまざまなお金が必要になってくるからであります。今大臣おっしゃったとおり、私は、まずはそれを最優先にしていくべきだ、それに資源を集中投下していくべきだと。あれもしますこれもします、日本が平和で豊かで、何もなかった幸せなときと今とは全く環境が変わってきた、私はそう考えているんです。

 そこで、私が法務省のさまざまな業務の中で一つ考えたのが、裁判員裁判の仕組みについて、あり方についてであります。

 この震災によって、現在、裁判員裁判が行えなくなっている地域の有無とその状況、これがわかれば教えてください。

植村最高裁判所長官代理者 お答えを申し上げます。

 最高裁が四月十二日現在で把握している分でございますが、仙台高裁管内の裁判所で、仙台地裁、福島地裁、それから福島地裁の郡山支部、それから青森地裁で、震災以降、期日の取り消しというのをしております。

 具体的な数で申し上げますと、仙台地裁で合計三件、福島地裁本庁で一件、郡山支部で合計四件、青森地裁で一件でございます。そのほかに、東京の管内でございますが、水戸地裁でも震災以降三件の期日を取り消しております。

 ただ、青森地裁につきましては、庁舎等に比較的影響が小さかったものですから、四月の期日は生かされておりまして、これは四月から再開されると聞いております。

 したがいまして、庁で申しますと水戸、仙台、福島地裁本庁、それから郡山で今裁判員裁判をやっていないということになります。

 それから、盛岡でございますが、これはたまたまでございますが、地震が起きたときに事件が係属して、期日としては事件がございませんでしたので、取り消しという事態には至っておりません。

 以上でございます。

河井委員 もう既にそういうことで裁判員裁判の公判期日等の取り消しが現実に起こってきております。

 一方で、これまで国が挙げて裁判員裁判を推進してきたわけでありますけれども、これまで裁判員裁判に呼び出した人数の総数、これをお示しください。

植村最高裁判所長官代理者 お答えをいたします。

 制度施行以来、二十三年の三月末までの数字でございますが、呼び出しをした人数の総数は十二万三千六百六十六人の方でございます。

河井委員 加えて、これまで裁判員の候補者及び裁判員に支払った旅費や日当の総額などを含め、制度の運用のために必要な予算の総額を教えてください。

植村最高裁判所長官代理者 二十三年度の予算総額で裁判員制度関連経費を見てみますと、合計で四十二億四千六百万円でございます。それから、取り急ぎ、制度開始から二十三年の二月末までで、裁判員等の日当、旅費として支給した金額の合計は九億四千百万円でございます。

河井委員 大臣、お聞きのように、これまで、全部で十二万三千六百六十六人の方が選任されるかどうかは別として呼び出しを受けてきた。そして、二十三年度予算には、日当、旅費、二十二億二百万円を含め、四十二億四千六百万円が計上されております。

 私は、今、国の資源はすべて原子力災害と被災地の復興に回すべきだ、そのように考えており、裁判員裁判はしばらく停止をすべきだというふうに考えております。被災地のみならず、全国一律に裁判員裁判というものは執行を停止するべきだ。こんなことを言いますと、大臣の後ろに座っているような人たちは、そんなことはとんでもないと。それは、彼らは言うでしょうよ。だって、与えられた既存の法律や制度にのっとって、そして予算は消化しなきゃいけない、執行しなきゃいけない。それが、大臣、お役人の役割ですよね。でも、政治家は違います。

 千年に一度しかない、それ以上の未曾有の国難に今私たちの国は落ち至っている。そのときに、先ほども言いました、日本の国が平和で豊かで何の心配もないときにつくり上げてきたのが、この裁判員裁判という制度なんです。だからこそ、大勢の国民の方に御迷惑そして御協力、出頭してもらう、そういったことも含めて、そして税金も御負担をいただいてきた。私は、震災前と震災後では全く取り巻く環境が変わった、そう考えておりますが、大臣の御見解をお聞かせください。

江田国務大臣 委員の問題意識というのはよくわかります。わかりますが、しかし、今のこの未曾有の大震災と原子力事故、これを乗り越えるためにすべてのものを使っていかなきゃいかぬというその気持ちと、しかし、さはさりながら、日本国民皆、毎日毎日のそれぞれの生活をしている、そこへちゃんとした行政サービスが届いていかなきゃいかぬ、こういうことと、これは両方やはりやっていかなきゃいけないことだと私は思います。そして、裁判員裁判導入というのはどういう経過で、何を私たちは思って導入してきたかということは、これは一つ重いものがございます。

 私は思い出すんですが、思い出すといっても自分が経験したわけじゃないんですが、日本はかつて陪審裁判をやったことがございます。これはかなりの期間やりまして、そして戦争に入りました。戦争の最中になって、今や戦時だから陪審裁判などやっているときじゃないということで停止をいたしました。その停止から裁判員裁判が始まるまで、裁判の過程に国民が参加しようという、これが本当に長い間とまってしまったということがあるので、ここは歯を食いしばっても、なかなか困難なところがあります、今、この被災地の地域で裁判員裁判を行う困難なところはあります。しかし、ここは裁判員裁判をとめてはいけない、むしろ私はそう思っております。

河井委員 全く見解を異にいたします。

 大臣、今、被災地の皆さんは毎日生きるか死ぬかなんですよ。その中でやっている。その被災地の皆さんの前で今のような答弁を直接言っていただきたい、私は。一万円のお金でも二万円のお金でも大事なんです。だから、私たちも党派を超えて、国会議員、衆参両院、歳費の大幅削減、喜んで今月から導入されている。でも、それはもうその一環にすぎない。一円のお金でも私は振り向けるべきだと。

 私は、今の大臣の話を聞きながら、なぜ刑事司法だけが国民の生活感覚から浮き離れた、遊離をした抽象論だけの理念を振り回して無駄なお金を使い続けるか。私は、その被災されている方々に到底今の大臣の言葉は心にしみ入らないと思います。いかがでしょうか。

江田国務大臣 被災をされた皆さんが裁判員に呼び出される、そういう状況は私はこれはもちろんいけないと思います。そこはちゃんと手当てをしていかなきゃいけないと思います。そして、私どもも、もちろんそれぞれ、国会議員歳費を削って、被災をされた皆さんのためにこれを使おう、そういう決断をしている、これも思いを共有しております。

 しかし、例えばですよ、例えば被災された皆さん方は、では、本当にこの日本国じゅうの国民が皆同じような状況になって毎日毎日苦しむ、そのことを被災された皆さんは喜ぶでしょうか。そうじゃないので、やはりそれぞれ、私ども、日常生活というものはきっちりやっていく、その中の一部分をもちろん割く、しかし、やはり平常心を持ってこの国を運営していかなきゃいかぬ、これは私ども、今行政を預かる者としては大変大切なことではないかと思います。

 残念ながら、委員とそこは見解を異にするかもしれませんが、しかし、それは世の中、いろいろな見解があるわけですから、委員の見解だけで物事を押し通そうとしていただきたくない。せっかくの河井委員のそういう思いですから、これは私たち、その思いを大切に受けとめますが、委員の思いだけで物事を動かそうと思わないでいただきたい。

河井委員 私には何の権限もありませんから、私の考えだけで押し通すことははなからできないわけで、きょうは法務大臣たる江田五月先生に質問を申し上げ、この国会の場でさまざまな、よりよい国のあり方をつくろうということで今やっているわけであります。

 私は、今の大臣のお言葉を聞きながら、先日の法曹養成、法曹人口についての御答弁なども拝見しながら、ひょっとして、大臣はどこかで司法というものが別格なんだという意識を持っていらっしゃいませんか。司法というのは偉いものだ、尊敬されなくちゃ、それはもちろんどんなお仕事も尊敬されるべきでありますけれども、ほかのなりわいとは違う存在だという認識を根本的に持っていらっしゃるんじゃないかと。そうでないことを望んでおりますけれども。

 私は、鳩山邦夫法務大臣のもとで副大臣を一年少し務めさせていただきました。法曹三者の方々と話をしていて、時に彼らの傲慢、独善を感じたことがあるんです。それは私が全く法律の知見がこれまでなかったから余計にそう感じたのかもしれませんけれども、私は、あくまでも国民と司法というのは全く平等、対等な立場であると。そして、ごらんになったかどうかわかりませんが、私が書いた本の中で書きましたけれども、私は司法というのは終末処理場だと思っているんです。大切だけれども、決して大きな顔をして社会の中で歩くべき存在ではないというのが私の考えなんです。

 大臣は、せんだっての稲田朋美議員に対する三月三十日の当委員会での質問に対して、大きな司法というものを目指していかなきゃいけない、そのようにお答えになっていらっしゃいますね。そのためにはやはり法曹人口は絶対的に足りないので、大きな司法というものを目指していくのが私の考えでもあり、司法制度改革審議会の結論でも中坊さんが一生懸命おっしゃっていたことでありますけれども、そのようにおっしゃっている。

 大きな司法なんて国民は本当に望んでいるんでしょうか。大臣のお考えをお示しください。

江田国務大臣 私も司法が何か特別に偉い存在だなどと思ったことはございません。

 司法も今改革をしていかなきゃならないし、まさに司法制度改革は真っ最中でございます。そして、司法もまた国民主権の中にある司法です。国家機構というものを動かしていく、そういう一部を担っているという意識をちゃんと司法も持っていかなきゃいかぬ、これは当然そう思っておりますし、同時に、今委員がおっしゃった終末処理場、大きな顔をして町を歩けないと。私は、大きな顔をして町を歩けないというほど司法はみずからをさげすむことはないと思います。

 しかし、終末処理場という言葉は嫌な言葉だとは思いますが、いろいろな紛争を最後に解決する、紛争の解決というのは、本当は裁判なんかで解決したって解決し切れるものじゃないんです。ないんだけれども、ほかに方法がないから裁判という方法で解決する。そういう、ある意味、罪を背負った、罪というと言い方は悪いですが、ある意味、非常にやりにくい仕事をやっているのが司法なんです。そのことはよく理解をしていただきたい。私はそのことを大事にしたいし、やはりそこで頑張っている皆さんが、法というものを社会にちゃんと推し広げていく営みを同時に担っているわけですから。

 そして今、大変残念ながら、日本じゅうにある紛争のうち、本当に法律家が法に従った関与をしながら解決できている部分というのがまだまだ少ないので、そこで、それをちゃんと法に従った解決が日本社会の紛争解決の方法なんだということを実現するために、司法というものの規模を大きくしなきゃいけないということを私は言っているわけでございます。

 ちなみに、別に中坊さんと私だけが大きな司法を言ったんじゃないので、司法制度改革審議会の中での本当に多くの皆さんの結論というのが、大きなと言うとちょっと言い方がやや尊大に聞こえるかもしれませんが、司法のボリュームというのを上げて、これは司法というのは裁判所だけじゃありません、弁護士も検察官も全部含めて、その司法のボリュームというのをもっと広げて、そして法の支配をこの世の中に貫徹していこう、こういうことを考えたわけでございます。

河井委員 大臣、もうあと七分しかありませんので、また日を改めて。先ほど正確でない答弁をされたと私は思いますよ。司法制度改革審議会において、ほとんどの人が大きな司法をするべきだとおっしゃった、それは事実ではありません。それは議事録をしっかりと読んでいただいて、もう一回この場で議論をしていきたいと思います。

 それから、法務省の本省の皆さんだけじゃなくて、現場の、全国の検事の皆さん、検事補の皆さん、そして書記官とか多くの皆さん、その人たちの献身的な努力というのは私はよくよくわかっているつもりです。彼らが本当に仕事をしていただきやすいような環境をつくっていくのが政治の役割でありますので、私は、そういう意味からも、これは大臣と恐らく考え方が違いますけれども、捜査の全面可視化に私は断固反対であります。彼らの本当のやる気というものをしっかりとつくっていかなくちゃいけないという考えです。

 でも、そういうことを踏まえた上で、司法というものは最終的な段階で出てくる話であって、先ほど大臣もいみじくもおっしゃったじゃないですか、裁判なんて、かからなくてよかったらそれにこしたことはない、私はそれが日本人の持ってきた古来からのよき伝統だと思っているんです。いたずらに何もかも弁護士、法曹関係者に相談する必要もない。そして、弁護士だけじゃなくて、日本には司法書士、行政書士、社会保険労務士、土地家屋調査士、あるいはもっと広い観点からいえば、民生委員さんとか児童委員さんとか地域の町内会長とか、さまざまな立場の方々がいらっしゃる。そういう方の人口を全部合計すると、とてもとても日本の法曹人口が少な過ぎるなんということは言えない。

 その中で、大臣は、この前の稲田さんへの答弁について、「やはり法曹人口は絶対的に足りない」とおっしゃったんですよ。いろいろな業の人口というのはあくまでも相対なんですよ。日本国民一億数千万人における相対的な社会の中の位置づけで人口というものは考えられるべきなのに、大臣は「絶対的に足りない」と言ったんですよ。相対的な不足と絶対的な不足というのは、言葉じりの問題ではありません。これは大臣自身の見識の重要な起点ですから、私はこの点を確認させていただきたい。どういう意味なんですか、「絶対的に足りない」というのは。では、絶対的に何十万人というのがないと、そこまで達していなかったら不足だということなんですか。そして、その根拠は一体どこから来ているんですか。お示しをください。

江田国務大臣 司法制度改革審議会の議論の中で、法の支配を推し進めていこうという、これはみんな委員が共通の認識を持ったと私は思いますよ。

 そして、今の日本の社会で、委員おっしゃる、裁判なんてやらなくても、弁護士に相談しなくても、地域の町内会長もいるしなどなどおっしゃいました。しかし、そういう中で泣き寝入りをしている人が多いというのは事実だと思いますよ。やはり地域社会の中で弱い立場と強い立場があるんです。そのときに、強い立場の人が、おまえ、こうしろと言ったら、弱い立場の人はその地域社会の中で物が言えなくなるというような事実はあるんですよ。それを、ちゃんと法という基準で、準則で解決していくようにしていこうということを考えたら、法的知識を持っている、それは弁護士だけじゃありません、委員おっしゃる司法書士も、あるいはその他の皆さんも当然います。残念ながら検事補という制度は今ありませんけれどもね。

 そういうことになっているので、だから私どもは、法的紛争というものが法律という準則に従って解決されるためには、法曹人口というものがこれは今は余りにも少な過ぎる、こういうことを言ったわけで、絶対的にという、何か絶対と相対という意味で言ったんじゃなくて、絶対数が足りません、今のこの数ではやはり足りませんということを言っているわけです。

河井委員 ということは、大臣は、今、日本国においては法の支配が隅々まで行き渡っていないとお考えなんですか。

江田国務大臣 そう思っております。

河井委員 今のはとんでもない発言ですよ。法の支配が行き届いていない、この国で。一体何を言っているんですか、大臣。柳田の発言もひどかったけれども、ちょっとこの発言はひどいですよ。許すことはできない、大臣。

 だって、みんな、赤信号になったらとまるのを認めている国民ですよ。被災地だってさまざまな、それは略奪も小規模にはあるかもしれないけれども、諸外国のような暴動だって起こっていない。法の支配が行き届いていないんですか、今、日本の国は。それを、法務大臣たるあなたが国会の場で今言い切れるんですか。これは問題発言ですよ。

江田国務大臣 言葉が過ぎたら撤回いたしますが、法の支配の制度というものはちゃんとあります。ありますけれども、法によって解決すべき紛争が法によらずに解決されている場面がいっぱいある、そのことを言いたいんです。

河井委員 大臣、僕が考える法の支配というものは、国民の心の中に刻み込まれているものだと思うんですよ。法律を守る、遵法精神。

 例えば、深夜、歩行者の信号機がたとえ赤であっても守る国民がいます。そういうもの一つ一つが、そして、今は確かに治安も少し悪くなったけれども、若い女性が一人で夜、今でも歩くことができる、そういうことが、現実として法の支配が行き届いている国だ、こういう面で日本は世界じゅうで一番法の支配が行き届いている国だ、私はそういう認識なんですよ。だから、そこの出発点が全く違うんじゃないかなと思いますね。

江田国務大臣 法の支配というものの理解は、これはいろいろな議論があります、確かに。イギリスという国で、私はイギリスに若いころ勉強に行って、なるほどなと思ったんですが、バスから飛びおりる、これは、日本だとそんなことは禁止だ、恐らくこうなりますよね、動いているバスから飛びおりる。イギリスは何と言っているか。アライト・オン・ユア・オウン・リスク。車が動いているのに飛びおりるときにはおまえの責任で飛びおりろよ、こう言っているんですね。

 ですから、私は、例えば日本で真夜中に赤信号でも、全然交通がなくても、日本人はちゃんととまって待っている、それはそれでいいことだと思います。いいことだと思うけれども、そういうことを法の支配と言っているのとはまたちょっとこの定義が違うんだと思いますよ。

河井委員 弁護士サービスを世の中から掘り起こすというふうなことも先日の御答弁でおっしゃっている。弁護士のサービスなんて掘り起こす必要は全くないんですよ。

 国民にとって一番大事なものは一体何か、司法のあり方は何かという点について、時間が参りましたので、きょうはこの辺にさせていただきますけれども、ぜひまた、本論とそして各論も含めて、大臣といろいろと議論をさせていただきたいと存じます。

 終わります。

奥田委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時九分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

奥田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。平沢勝栄君。

平沢委員 自由民主党の平沢勝栄でございます。午前中に引き続きまして、質問を続けさせていただきたいと思います。

 午前中の質疑で、今回の大震災への対応、特に原発への対応について、国民が非常に政府に対する不信感を持っているという話がありました。これは国民だけじゃないんです。外国も大変な不信感を持っているんです。こっちも大変に深刻な問題だなと私は思っています。

 私も、在京の大使館の方、いろいろな方とお会いして話をしますけれども、非常に今回の政府の対応は疑問だという声が強いわけでございまして、だからこそ、避難エリアだって、日本政府の三十キロと全然違った八十キロ、百キロというところを設定している国があるわけでございます。

 まず、大臣にお聞きしたいと思いますけれども、先日、統一地方選の前半戦が行われました。私もいろいろなところに応援に行かせていただいて、いろいろな方とお会いさせていただきましたけれども、要するに、今の政府は信用できない、これだけの大震災にきちんと対応できる能力を持っているのか、そういう声が随分いろいろなところで聞かれたわけでございます。そういったことが今回の選挙の結果に出ているんじゃないかなという気が私はしますけれども、大臣はどう思われますか。

江田国務大臣 未曾有の大震災、それにレベル7という原発事故、これは本当に、私どもみんなにとって大変な危機でございます。

 そんな中、統一地方選挙が行われて、この選挙の結果は、私どもからすれば大変残念なことでございますが、民主党は大敗をしたと言わざるを得ません。しかし、私は、この大震災や原発事故に対する政府の対応について国民が批判的な見地から民主党を大敗させた、そういう因果関係というのは特に感じてはおりません。

 それぞれ地方選挙で、それぞれの地方地方のいろいろな事情がございます。知事選挙については、やはりなかなか現職が強いとか、それから、特にこういう時期ですから、みんなやはり不安というものが非常に強くて、不安なときにはどうしてもエスタブリッシュメントが強くなるとか、あるいは安定志向が強くなるとかということがこの地方選挙の結果にあらわれてきたんじゃないかと思っておりまして、私は、この結果はこの結果として、これはもう政権としても民主党としても真剣に反省をしながら、しかし、事態の乗り切り、これはやはり政権として責任を持ってやっていくべきものだと思っております。

平沢委員 今、大臣いみじくも言われましたけれども、こういう大きな問題があるときには大体政府・与党が強いものなんです、選挙なんかで。ところが、政府・与党にとって厳しい結果が出たというのは、私は、当然のことながら、今回の対応に対する不信感というのが相当反映しているんじゃないかなと思います。

 ところで、韓国の国会で、韓国の首相がこう言っているんです。今回の原発の対応について、日本が無能と。日本が無能ですよ、はっきり言っているんです。そして、すべての問題を臨機応変に解決していく指導力を示すことができなかったと、韓国の首相が、これは国会で言っているんです。

 念のため、外務省にこの報道は間違いないかと聞きましたら、外務省は、間違いない、こう言っています。日本は無能と言ったのは、日本人が無能とか、そういうことを言っているんじゃないと思いますよ。日本政府が、対応が無能ということを言っているんだと思うんです。これについて、大臣はどう思われますか。

江田国務大臣 韓国の方からそういう批判をされたということは真正面から受けとめなきゃならぬとは思いますが、しかし私は、それはそんなことないと思います。

 この原発は、福島第一原子力発電所、この設計のときの安全審査は、当時の政権のもとで原子力安全委員会や原子力委員会や、そういうところでやったわけですね。当時の政権はどうであったかということも考えてみなきゃいけないし、やはり私は、想定というものが間違っていたんだということだと思うんです。

 想定の間違いはあるにせよ何にせよ、これだけの大災害が起きてこういう原発事故が起きた。これの抑え込み、これは本当に世界じゅうどこを見てもこういうときのマニュアルというのはないので、ですからこれは、マニュアルにないことを日本人が、そして政府はいろいろな人の知恵をおかりしながら必死になってやっていく。やっていくけれども、やはりあちらを抑え込めばこちらが噴き出してくるとか、そういうある種の綱渡りを今行っている。綱渡りを行っているけれども、幸いなことに綱から落ちずに一歩一歩前へは進んでいるんだと思っております。

平沢委員 今回の想定外というのは、これは私どもが政権のときにやはり問題があったことは間違いない。しかし、起こってからの対応については、これは未熟というか、余りにも問題が多いんじゃないかな。私は、今回は、三重苦と言われていますけれども五重苦じゃないかなと。それは、原発、それから地震、津波、それに加えて情報不足、政府の迷走、五重苦じゃないかなという感じがします。

 そこで、きょうは資源エネルギー庁に来てもらっていますけれども、私が外国のメディアから受ける質問の中で一番多い一つが、要するに、最初の段階での注水なんです。使用済み核燃料プールに対する注水のときの、いわば混乱というか迷走、これが外国のメディアから、ウォールストリート・ジャーナルとかいろいろなところから受ける質問で一番多いんです。

 それで、聞かせてもらいます。これは、最初に警察にあったのは、三月十五日の朝、ぜひ派遣してくれという話がありました。そして、実際に警察が注水するのが十七日の夜、午後七時過ぎ。その間に二日半くらいたっているわけです。そこで、まず、きょう警察来ていると思いますけれども、警察は、そもそも警察の仕事でないのに何でこれを引き受けて、そして、警察が頼まれてから注水するまでに何でこんなに時間がかかったんですか。

鎌田政府参考人 お答えいたします。

 三月十七日に警視庁機動隊によって放水作業を行ったわけでありますけれども、これにつきましては、このときの地震に伴う福島第一原子力発電所における事故が極めて甚大な被害を伴う事態に進展する、発展する、そういう懸念もあったことから、国家と国民の安全を守る責務を有する警察として、経済産業省からの協力要請にこたえることとしたわけであります。

 十五日に要請があってなぜ十七日か、こういったお尋ねでありますけれども、十五日の段階で東京電力に高圧放水車をまずお貸ししたということであります。実際に警視庁による放水について要請がありましたのは翌十六日になります。その後、使用するヘリポートが変更になったりとか、あるいは現地における打ち合わせ、あるいは資材の準備等々で一定の時間を要したことは事実でありますけれども、警察としては最善を尽くして早期の放水を心がけたということであります。

平沢委員 原発の対応というのは、火事もそうでしょうけれども、初期の段階が一番大事だ、最初の段階の、初動の三十分が一番大事だということが言われているわけで、しかし、大至急派遣してくれと言われてから二日半かかっているわけです。

 そこで、きょうは資源エネルギー庁来ていますね。資源エネルギー庁にお聞きしたいんですけれども、注水を警察に頼んで、それから、まさに、冒頭言いましたように、迷走に迷走を重ねているんですよ。要するに、最初は、経済産業省から、車だけ貸してくれ、警察の放水車。そして、その次は要員も貸してくれと。最初、要員は訓練のため貸してくれと。次は、要員は訓練じゃなくていいから、要するに直接要員が行ってくれと。二転三転、迷走に迷走を重ねて時間ばかりたっているんです。

 要するに、何でこんな、方針がくるくる変わったんですか、資源エネルギー庁。

黒木政府参考人 お答えいたします。

 一、三、四号機のプールについて、冷却のために水を注水することが必要になったということでございます。その際に、お話がございました警視庁の高圧放水車を含めまして、各種の車両を広く当たって、それが使えるかどうかという検討を行い、実際に準備の整っていただいたところから機材等を搬送し、作業に当たっていただいたということでございます。

 御指摘ありましたように、そういう短時間の作業、それから現場におきましては高レベルの放射性廃棄物の瓦れきなどが散在しているという、これの除去を並行的に行いながら実施したということでございますので、結果的に十七日の夕方に放水に至ってしまったということでございます。

平沢委員 ちょっと理由にならないと思うんですけれども。

 先ほど言ったように、方針が二転三転して、そして一番外国のメディアも疑問に思っているのは、警察は注水する専門家ですかと。それは確かに高圧放水車は持っていますよ。ただ、これはデモ隊に放水するものでしょう。何で強く経済産業省は警察にこれを要請するんですか。警察は、実際に十七日の夕方行って、そして結局、そこでだめということで、今度は自衛隊、消防庁が注水作業をやるわけですけれども、なぜ警察に最初に頼んだんですか。方針として、水をまくならばこれは消防の方がいいと子供だってわかるんじゃないですか。

黒木政府参考人 お答えいたします。

 先ほどお話しいたしましたように、いろいろな角度から検討を行って、相談をしながら進めていたところでございまして、警察の車両も含めて、準備が整ったところから実施していただいた、そういう状況でございまして、当時としては、とにかく早い段階で水をプールに注水するということを第一のプライオリティーに挙げて検討がなされてきたということでございます。

平沢委員 しかし、結果的には、注水するという方針を決めて頼んでから二日半、注水するまでにかかっているわけですから、その間の迷走ぶりというのは、これはいずれ検証しなきゃならないと思いますけれども、これはまた、いずれにしろ時間がかかりますから、別の機会にしたいと思います。

 別の問題に行きます。

 先ほども、午前中の質疑で出ていましたけれども、今度の大震災で、宮城と福島の地検がトータル六十一人釈放したわけですけれども、先ほど大臣の答弁を聞いていまして、大臣は、最初はそれほど問題ないと思っていた、しかしマスコミ報道あるいは別の報告を聞いていて、やはり問題があるかなと思うようになった、こういうような答弁だったと思いますけれども、同時に、現場の検事の判断だから、それは尊重したいとも思ったということを言われました。

 私は、現場の検事の判断だから尊重するというのはそれでいいと思いますよ。しかし、その現場の検事の判断に、直観的にこれはやはり問題があるなと思ったら、やはりそれはそういうふうに言われるべきではないですか。それが大臣なり副大臣、政務官の仕事ではないですか。今回の件は、直観的に、だれが見てもこれはおかしいという感じがすると思うんです。

 きょう、まず警察が来ていると思うんですけれども、警察は、この釈放について、意見か何か言ったんですか。

坂口政府参考人 お答えいたします。

 今回は宮城県と福島県それぞれにおいて釈放されたわけでございますが、宮城県につきましては、警察庁舎ですとかライフライン等への物理的な被害が大きかったところ、一部の警察におきまして、警察署として必要な機能の維持が難しい実情につきまして個別に検察官に説明したものというふうに報告を受けております。

 一方、福島県につきましては、福島県警においては個別具体の事件について事前に協議を行ったという事実は報告を受けておりません。

平沢委員 今度の釈放について、大臣は、前回の法務委員会では、先ほどもありましたけれども、釈放する理由があったと思う、そして比較的そう重くない情状のものであったというふうに聞いているというような答弁がありました。

 副大臣は、翌日の内閣委員会で、一言で言えば、これは微罪だ、だから釈放したんだと。被疑者の安全も考えなきゃならない、参考人として来てもらうことができるかどうかということも考えなきゃならない、そのほか、起訴をしないで起訴猶予ということが見込まれる者、あるいは必ずしも公判請求しない、あるいは勾留していなくても、一たん釈放しても、在宅のまま、また追って捜査をして処分することができるというような者については可能な範囲で釈放しようということで考えたというようなことを副大臣は答弁しておられるわけで、一言で言えば、それほど大した重要な犯罪でないからということなんですけれども、それほど重要でないんだったら、何で勾留請求したんですか。勾留請求する必要はなかったじゃないですか、そんな、もともと釈放してもいいものであれば。あくまでも震災だからやったんでしょう。

 そして、コメントが変わっているんですよ。大臣は、四月一日の記者会見では、悪質といえば悪質ですけれども、不安を与えるような種類のものではないということを言われている。そして、四月五日の記者会見では、釈放の判断というのが適切であったかどうかというところに大きな疑問がつくことであると思っていると。そして、四月八日の記者会見では、軽微な事案とはちょっと言いがたいということが明らかになってきておりますので、これは大いに疑問がある、適切さを欠いていたのではないか、そういうふうに今思っておりましてということで、変わっているんです。

 最初の段階でこれは言われることじゃないですか。それを、最初の段階は問題ないよ、問題ないよと言って、何か時間がたっていったらいろいろ情報が入ってきて、これは問題だと。最初の段階で直観的にこれはおかしいと思われて当然だと思うんですけれども、大臣、いかがですか。

江田国務大臣 もちろん、全部勾留しているわけで、勾留の理由も必要もある、したがって勾留しているわけです。

 しかし、勾留の理由の方は別として、勾留の必要の方について言えば、それは、あれだけの震災で余震も続いている、被疑者の安全ということも当然それは考えなきゃならぬ、あるいは関係者を取り調べることがなかなかできにくい、その間に勾留の日時だけがどんどんたっていくというふうにいろいろな事情があって、勾留の必要性というのも、これもそうした諸般の事情の中で考えていくことですから、だから、現場の検察官が一件一件それぞれにそこを適切に判断した、私はそのことは基本的には信頼をしているということなんですね。

 だけれども、幾つか、これはどうもちょっとという事例があるわけです。個別の事例ですから、それを一々細かく言うのは本来は差し控えるべきことでありますが、そのうちの一つに強制わいせつというものがあった。強制わいせつは、それはやはり女性にとっては大変な犯罪でして、ですから、これは一見、強制わいせつ、え、こんなもの釈放していいのという感じがしましたが、そのときに現場からの報告として法務当局が受けていた報告は、これは罪名はそうだけれども軽微な事案だから大丈夫だと。私は、そういう報告ですから、それはそれで信用して、そういうことを皆さんに申し上げました。

 しかし、その後、法務当局からも、いや、そうは言ったけれども、それほど軽微というわけでもなかったという報告が上がってきて、さらに報道の皆さんから具体的な、報道によればですが、具体的な事実関係が出てきて、これはちょっと軽微だとはなかなか言いがたい、釈放の判断には疑問が残るということを申し上げました。

 さらに、その後、いろいろなことが明らかになってまいりまして、例えば被疑者の身上関係、どういう人間であるか、前科がどうであるか、親元がどうであるか、あるいは被害者の取り調べがどういうふうにできるのか、当時、被害者がなかなか居どころがわからなかったというようなこともありまして、そうしたことを総合的に考えれば、現場の検察官がぎりぎりのところで身柄を釈放するという判断をしたのも、その判断が、もちろん検察官はこれが適切だと思って判断をしたわけで、私の方もそれはそれで尊重すると言ってもまあいいかなということで、そんなようなニュアンスのことを申し上げました。

 そして、もう一つ事案がありまして、これは、窃盗で釈放した、しかし、それから半月ぐらい後ですか、建造物侵入で捕まってきた。建造物侵入といいますが、これはもう窃盗に一番近いタイプの建造物侵入、要するにコンビニの事務所へ入ったというんですから。これはもう、結果論ですが、結果的に見ると、釈放の判断は不適切だったと言わざるを得ないわけですよ。だって、また再犯しているわけですから。地域の皆さんにも不安を与える事案ですから。

 ですから、そういうことがあって、全体として、やはりこれはしっかり後に報告を受けなきゃいけないものだと思っておるということです。

 ただ、ごめんなさい、もう一つ申し上げますが、その後、捜査の方は鋭意精力的に進めまして、おおむね、公判請求、略式命令、あるいは家裁送致、不起訴、そういうことで処理できて、処理できていないのが今若干残っているというところになって、先ほど申し上げた強制わいせつについても、公判請求をきっちりとしております。

平沢委員 今度の釈放は、国民の目線から見てもやはりおかしいと思いますよ。だって、同じ警察署の中で、重罪のものは残って、それほど重罪でないと思ったのを釈放したということでしょう、これは。だから、何で釈放しなきゃならないんですか。身柄を預かっている警察の方で安全性が担保できないというんだったら、全員釈放しなきゃおかしいですよ。一部は残して一部は釈放するというこのばらばらの判断、これはどう考えてもおかしいんじゃないかなと私は思います。

 いずれにしましても、時間がないですから、次に行きたいと思うんです。

 検察の在り方検討会議、この前提言書を出しました。その中で、全面可視化についての言及もありまして、それをまた大臣は踏み込んでおられるわけでございまして、この前の提言書では検討だったのを、試行するというような形で、大臣はかなり踏み込んでおられるわけです。

 まず、大臣にお聞きしますけれども、提言を踏まえて大臣がいろいろと指示されている今後の全面可視化についてのスケジュールはどうなるんでしょうか。

江田国務大臣 提言は検討ということですが、検討といってもやってみなければ検討もしようがないので、したがって、私は、検討に資するためにも、特捜部の扱う身柄事件について、全面、全過程可視化を含む試行をしなさいということをお願いをいたしました。検察庁法に基づく一般的な指揮という形でいたしましたが、別に強権を振るってということではないので、これはもちろん、いろいろと相談をしながら、検察の皆さんともこれはいろいろな形で意見交換もしながら、やっていただけると私が確信を持てるものを指揮したのでありまして、決して強権を振るったわけではありません。

 これはなるべく速やかにと今思って、なかなか苦労しておりますが、刑事司法全体を改革するための検討の場を法制審議会の場をおかりしてつくって、そこへいろいろなものをフィードバックさせながら、一年後をめどに一定の検討の結果を得ていきたいと思っております。

平沢委員 では、この関連でもう一問だけお聞きしたいと思うんです。

 諸外国は、確かに取り調べの意味が全然違って、短いんですけれども、諸外国は大きな権限が取り締まり当局に与えられているんです。大臣は、先ほどイギリスに勉強に行かれたと言われましたから、イギリスの捜査当局がいかに大きな権限を持っておられるかというのは十分おわかりでしょう。

 一つだけ例を言いますと、IRAの銀行テロみたいなものがあったときに、イギリス当局は、グループで犯罪を起こしますから、仲間の一人が自首してくれば、そいつの今までやったことは全部免責するだけじゃなくて、何千万というお金を与えて、場合によっては偽名のパスポートまで与えてどこかに住まわせるというようなことまでやるんです。えらい権限を与えている。電話の傍受だって、インテリジェンスも含めればすさまじい数で行われている。日本とは全然違うんです。

 そこで、大臣にお聞きしたいんですけれども、大臣、一言でいいですから、大臣は全面可視化を考えておられるなら、諸外国の当局が捜査当局に与えている権限も同時に考えられるんですね。

江田国務大臣 私は、日本の刑事司法が余りにも供述やあるいは供述調書に頼り過ぎ、そして裁判所も、主観的な要素を微に入り細にわたっていろいろ認定しなければ、なかなか判決が熟したと認めてくれない。一方、世の中一般も、内心のところまで踏み込まなかったら、踏み込み足らずだ、事案が解明されていないというようなことで、刑事司法が非常にそういう主観的なところへ頼り過ぎた刑事司法になっていると思っているんです。

 これをやはりもっと変えて、世の中を動かしていくのに必要な限度での刑事司法というところへ落ちつけたい、刑事司法改革をしたいという思いで、ぜひそういう場をつくって、その場で可視化のアウトプットも入れますし、また、そのことによって起こるいろいろな困難も入れますので、そういうことを相対的に考えながらやっていくので、権限については、権限を入れることと可視化をやることとがリンクしているというふうには考えておりません。それは、権限が必要な場合も出てくるだろうし、新たな権限じゃなくて別の方法があるかもしれません。

平沢委員 冤罪を防ぐことは当たり前のことで、同時に、事件を解決し犯人を一名でも多く検挙しなきゃならないんです。これは両方やらなきゃならないんです。一言で言えば、冤罪を防ごうと思ったら事件を全然やらなきゃいいんです。だれも捕まえなければ冤罪はゼロになるんです。

 ですから、大臣が、それは可視化はわかりますよ、可視化も当然やるのであれば、同時に権限についてもぜひ考えていただきたいと思います。これは大事な問題ですから、また別途時間をとってやりたいと思います。

 最後に、この検察の在り方検討会議というのは、当然のことながら村木さんの事件が契機になったわけでございますけれども、村木さんのケース、これによって、今ここにありますけれども、村木さんの正規の印鑑が押された凛の会あての証明書によって大きな損失が出たと思いますけれども、日本郵政株式会社はどのくらいの損失が出たんですか。

中城参考人 お答えを申し上げます。

 郵便事業会社におきまして、心身障害者用の低料第三種郵便物の不適正利用に関しまして、事実関係が判明したものから、順次、広告主、広告代理店や心身障害者団体に対して損害賠償請求訴訟を提起しているところでございますが、御指摘のありました、偽造された証明書に係る不適正利用事案につきましては、現在までに計約十一億円の訴訟を提起しております。

 なお、このほかにも調査中のものがありまして、事実関係が判明し次第、訴訟を提起する予定でございます。

平沢委員 村木さんの保管している印鑑が押された証明書によって十一億、今わかっているだけで十一億出て、これからもまだ損失が出てくると。

 それについては、訴訟というのは、これはだれに対する訴訟なんでしょうか。今、訴訟を提起すると言われましたね。国が入るのかどうか、教えてください。

中城参考人 国は入りません。広告主とか広告代理店、それから心身障害者団体に対する訴訟でございます。

平沢委員 相手が負担能力があるかどうかは別にしまして、これは、村木さんが保管する正規の印鑑が押されて、村木さんの部下がこういったにせの証明書をつくって、その結果として、今わかっているだけで十一億の損害が郵政の方に出ているということですね。ですから、これからもその損害は膨らむと。

 そこで、時間が来たから最後の質問をしますけれども、厚生労働省、前回も聞きましたけれども、村木さんのあの事件の方の冤罪とは別に、村木さんについてのこの問題での処分というのはどう考えているんですか。もう一回教えてください。

小林大臣政務官 村木元局長については、刑事事件に対しては無罪判決が確定しましたけれども、御指摘の上村元係長の上司としての責任はあるもの、このように考えております。

 村木局長を含め、当時の関係者の監督責任について検討しておりますけれども、具体的な結論を出すためには、上村元係長に関する事実関係が確定する必要がある。現在、上村元係長に対する刑事訴訟が係争中であり、厚生労働省として判断する段階には至っておりませんけれども、判決が確定しない段階であっても、事実関係を確認した上で、上村元係長の処分とあわせて、村木元局長を含めた当時の関係者の監督責任について結論を出すこととしたい、このように考えております。

平沢委員 時間が来たから終わりますけれども、今わかっているだけでも相当の監督責任はあるんじゃないかなと思いますので、ぜひその辺はきちんとしたけじめをつけていただきたいと思います。

 時間が来たから終わります。

奥田委員長 以上で平沢勝栄君の質疑を終了いたします。

 次に、馳浩君。

馳委員 お疲れさまでございます。

 江田大臣、よろしくお願いいたします。私も、参議院議員時代から江田大臣のことはよく存じ上げているつもりではありましたが、改めて、法務大臣として、法の番人としての冷徹な判断と、同時に、関係者に対する温かい、説得力を持って職務を遂行していただきますように激励を申し上げたいと思います。

 私は、実は法務委員会は門外漢でございます。いつもは教育畑でやっておりますが、法務委員会に来るときには大体三つのテーマなんですよ。一つがきょうやりますハーグ条約に関係すること。もう一つが民法の親権問題、これは児童虐待に関係することですね。もう一つがオウム真理教に絡む団体規制法の問題。大体これを私は政策のテーマにしておるものですから、私が来たら大体そういう話だなと思って、前向きに対応いただきたいと思います。

 では、きょうはハーグ条約の批准と国内担保法問題についてお伺いをしてまいりたいと思います。

 まず、ハーグ条約に関係して関係副大臣会議が数回開かれていると思いますが、どんな話し合いをしているのか。そして、この副大臣会議では、批准するか否かまで含めて議論をしているのか、そして結論を出すおつもりなのか、この方向性について、これは小川副大臣にお伺いした方がいいと思いますので、お伺いしたいと思います。

小川(敏)副大臣 まず、ハーグ条約の締結についての結論を出すという意味での会合ではございません。ハーグ条約に関しまして、これを締結すべしという声と、あるいは消極的な声と、いろいろありますが、しかし、ハーグ条約をもし仮に締結した場合には、国内法としてどのような整備が必要なのか、そうしたことについて議論をしておる、こんなようなところでございます。

馳委員 結論を出す会議ではない、もしハーグ条約を批准したらという、どちらかというとあいまいな気もいたしますが、そうすると、何のためにこの副大臣会議を開いているのか、国際問題化しておりますこの問題への見せかけのポーズなのかという厳しい指摘もせざるを得ません。

 そして、大事なことは、批准をするためにはどのような論点、ハードルがあるのか、このことについてお示しいただきたいと思います。

小川(敏)副大臣 ハーグ条約を締結いたしますと、主なものとしましては、まず、外国から国内に子供を連れ去ってきた者に対して、外国の方の親がそれを返還するということの申し立てをする。条約上は司法と限定されているわけではありませんが、いずれにしても、司法かあるいは司法的な手続、これを設けなくてはいけない。これが一つの、どのような手続にするかというのが論点でございます。

 それからもう一つは、条約におきましては、政府が、中央当局と言っておりますが、中央当局を設けて、そのような手続を行うために具体的な支援をしろということが大きな義務となっております。そうした場合に、どの役所がどのような支援を具体的にどういうふうに行うのかということ、これも定めなくてはならない。

 また一方で、我が国におきましては、国内の夫婦間でもやはり、子供をどちらが監護するかとかいうことで争いがある場合がございます。そうした場合の取り扱い方と違う取り扱い方ができるのかどうかとか、今行っているところは、そういうことを踏まえて、ハーグ条約を締結した場合にどのような仕組みが考えられるのかなと。

 ハーグ条約を締結しても、国内法的にそれを履行する制度を構築するのが不可能だったら、これは締結できないわけでございますが、しかし、可能なら、可能という上において、このハーグ条約を締結するかどうかの判断を政府が行う、このようなことでございます。

馳委員 関係副大臣会議が開かれるようになったのには、私は二つの要因があると思っているんですよ。

 一つが、これは岡田外務大臣以来、アメリカの議会あるいはクリントン国務長官などから直接、この問題について日本としても対応を検討し、そして一つの方向性を出してほしいという外交的な、圧力と言うとあれですけれども、要望があったということ、これが一つ。もう一つは、やはり国内要因。今、小川副大臣もおっしゃったように、国内においても似たような事例が頻発する中で、我が日本という国家の離婚を取り巻く事情が、昭和の、今から三十年、四十年、五十年前の時代と今とではやはり社会的な状況が違うという、この二つのこともあって、やはりこれは副大臣会議を開いて、連携しながら対応しなければいけなくなったというふうに私は認識をしているんです。

 そうすると、そうはいっても、この副大臣会議をいつまでにどういう方向性でまとめていくかということ、これは政治的な課題だと思うんですね。どうでしょう。当事者として、小川副大臣として、この通常国会、私は通常国会中に方向性を出すべきだと思っていましたが、東日本大震災も受けまして、ちょっと事情も違ってまいりました。現状、副大臣としては、この副大臣会議に出席をされていて、どのあたりまでにどの程度の方向性を出すべきかなというふうに考えておられるか、ちょっと所感をお伺いしたいと思います。

小川(敏)副大臣 私どものこの副大臣の関係官庁の会議そのものの役割は、締結するかどうかを決めることではなくて、先ほども申し上げましたように、締結するとした場合にどのようなことが必要かという環境を考えることでございますが、ただ、会議を重ねる中におきまして、国内の手続法を設けることは可能である、それから、中央当局の支援ということも、これを具体的に定めれば定まる。ですから、仮に条約を締結した場合に、これが国内法的には全く実施できないというような結論にはなっておりません。

 ただ、そういう構築の問題とはまた別にしまして、実際にこれを導入した場合の大きな問題としましては、例えば、配偶者が子供を連れてきた場合に、それが暴力があったりとか、仮に、さまざまな事情があってやっと帰ってきたのに、それがまたもとの国に戻されてしまう、それが果たして子供のためにいいのかどうか。それをもっと丁寧に、子供の幸せのために考えた場合に、いいのかどうかということの中身において、より妥当な、より適正な対応をする必要があるのではないか。

 その点をめぐって、また反対論、賛成論があるわけでございますので、そうした点につきましても議論をしておるところでございますが、大分回を重ねておりますので、そうした意味で、条約を締結するかどうかという判断は私どものミッションではありませんが、条約を締結したとしても国内法的にはこれを進めることは可能であるなというぐらいのところに来ておりますので、あとは、これを踏まえて政府がどのように検討していくか、このようなことになると思います。

 ですから、政府次第では、それは早くということも可能ではありますが、結論を早く出すかどうかは私からは申し上げることは、申し上げる立場ではありませんので、御容赦ください。

馳委員 今お話を伺っておりましたら、いわゆる例外規定についてのとらえ方、それから、子の福祉に関して、そこをやはり最大限に考えていくべきだという方向性、私は、それは間違っていないと思いますし、その方向性は必要だと思います。

 同時に、さあ、では締結するとして、もちろん締結する方向が必要だ、私はそういう認識で質問しているんですが、国内法の整備をどういうふうに持っていくかということは、これは極めて、省庁がまたがりますので、やはり政治力が必要になってくる問題だと思います。まずは私は、小川副大臣のそういう意味でのリーダーシップを大いに期待しながら、ちょっと細かいことを質問してまいります。

 ハーグ条約は、親権、いわゆる監護権を含みますが、その侵害を伴う十六歳未満の子の国境を越えた移動に対して、原則、常居所地国に子を返還する条約ですが、この条約は、そもそも、何が子の利益、子の福祉になるかは、原則は、子がそれまで在住していた国、いわゆる常居所地国ですね、そこで決定することが望ましいという根幹的な価値判断があると思いますが、それでよろしいでしょうか。

小川(敏)副大臣 確かに、このハーグ条約は、実質的にどちらの親が子を監護するのがふさわしいかどうかということを判断する場ではなくて、そういう判断は、あくまでももとの居住していたところで判断しなさい、その判断をするためにはまずもとの場所に戻しなさいという規定でございますので、委員の御指摘のとおりだと思います。

馳委員 では、これは江田大臣にお伺いいたしますが、今私も指摘をし、小川副大臣にも御答弁いただきましたが、こういう根本的な価値判断自体について、江田大臣は共有することができるということでよろしいでしょうか。

江田国務大臣 これは、国際結婚というのがもう非常に普通のことになってきて、国際結婚が普通のことになったということは国際離婚もまた普通のことになってきますよね。そうすると、子供をどっちが育てるんだということが当然議論になるわけで、そういう議論になるときに、やはり国際的なルールというのが何かなきゃいけない。

 その場合に、今あるのはハーグ条約しかないので、ハーグ条約で、どちらが育てるのがいいかということは、その中身じゃなくて、どこで審判をするかというと、子供がもといたところ、常居所地国で裁判するのがいい、そういうルールです。やはりルールというのはなきゃいけませんから、私は、これは一つのルールだろうということで、その判断は共有をしております。

馳委員 私も同様に、やはり一定のルールが必要であろうというふうに思っております。

 ちなみに、これは事務方で結構です。今大臣もお示しいただきましたが、今、国際結婚や国際離婚はなるほど多くなってきた。では、どのぐらいさかのぼろうかな、私はもう五十歳になりますから、五十年前、昭和三十六年、要は昭和三十年代でいいんですよ、当時、国際結婚がどの程度の件数があって、国際離婚がどの程度の件数があったのか、そういう数字というのは把握しておられますか。

 私は、今急に思いつきで聞いているだけですから、つまり、国際結婚、離婚、これを取り巻く環境が我が国においてどの程度変わってきたのかなということについて、何か数値等がありましたらお示しいただきたいと思いますが、まず事務方から、どうぞ。

宮島政府参考人 先生御指摘でございますが、ちょっと恐縮でございますが、今の時点で数字を持ち合わせておりませんので、調べましてまた……(馳委員「では今度」と呼ぶ)はい。

江田国務大臣 昭和三十年代ということをおっしゃいました。私は、昭和三十五年に高校を卒業して、大学へ入った。当時はやはり、私の周辺に国際結婚というのはそうなかったと思いますね。今はもう国際結婚、ごろごろと言っちゃいけませんが、ごく普通のことになっているので、数字は後ほど事務方が調べてお答えできるかもしれませんが、感覚としてはもう全く違うと思います。

馳委員 国際結婚が当たり前になった時代という感覚は、私も共有しております。

 ただ、いろいろな問題をはらんでいますよね。例えば、某宗教団体の国際結婚というのは非常にシステマチックに行われておりまして、もしかしたら我が日本国の中山間地域の結婚対策になっているような背景もあったりするじゃないですか。これは別に悪いと言っているわけじゃなくて、しかし、国際結婚した後の家族のあり方について、法治国家である我が国もやはり一定のルールが必要だという、まさしく先ほど江田大臣がお示しになった対応をとっていかなければいけないのではないか。先進国の中でも我が日本国が現状どうなのかということを考えたときに、小川副大臣、やはりちょっと急いだ方がいいんじゃないのかな、こういう観点から私は質問しているということを御理解ください。

 そこで、国際的な批判があるということを踏まえると、国内担保法の検討を政治主導で急がせていただきたいと思っております。条約の締結がいつできるか、本当に早く早くと待っている方もたくさんおられます。国内担保法の進捗状況にかかっておりまして、この辺の政治的な責任というものをどのようにお考えなのか、小川副大臣からもう一度お伺いいたします。

小川(敏)副大臣 確かに、実際に国際結婚が破綻して、別れて、しかし子供は一人しかいないわけです。一人というのは、一人の子供は一つの存在ですから両方には存在できないということで、困難な問題がございます。

 国内におきましても、子供を連れて帰ってきた配偶者の場合には、そのままであってほしいとありますけれども、逆に、日本で生活していて子供を外国に連れて帰られてしまったという人からすれば、早くハーグ条約に日本も加入して何とか取り戻す道を開いてほしいということがありまして、これはまさにさまざまな状況があるわけでございます。

 ただ、私が法務副大臣を拝命したのが去年の九月ですか、欧米の法務関係の方が表敬に来られたりして何回もお話しすることがありましたが、ほとんどの方がすべて一様に、早くハーグ条約に加入しなさい、なぜ日本は加入しないのかということを言っていかれます。それだけ、欧米から見て、日本もハーグ条約を締結してほしいという声が強いのかなということは実感しております。

 担保法的には、先ほども申し上げましたように、技術的な面は大体出尽くしたかな。ただ、拒否事由の内容とか、それからそもそも締結するかどうかとか、そうしたことについての政治判断、これは、そうした海外からの状況とか、国内でそれを求めている人の声もありますので、政治的にはやはりしかるべく、そんなに遅くない時期に対応すべきだというふうには思っておりますが、しかし、反対する方にやはり十分納得できるような対応もしていかなくてはならないので、その点についてもしっかり検討していきたいと思っております。(発言する者あり)

馳委員 担保法とおっしゃいますが、私は、まず第一段階は手続法だというふうに思っているんですよ。そして、その手続の運用に当たるときにやはり配慮が必要だという法務省なりの配慮がなされているんだろうなというふうに私は思っているんですね。今、遅いというふうな声も牧野先輩からありましたが、これはやはり作業を早くしてほしいというのが正直なところでありまして、さらに、ちょっと細かく質問をさせていただきます。

 条約の適用対象事案は、監護権の侵害を伴う事例だと思いますが、親権の侵害を伴う事例との説明もあります。監護権の侵害か、親権の侵害なのか、これを我が国の法制でどう考えたらよいのか。

 私のつたない知識ではありますが、親権というと、養育監護権、居所指定権、懲戒権、職業選定権でしたか、そして財産権、こういうふうに言われていたと思います。ハーグ条約が対象とするのは監護権だけなのか、それとも親権というふうに含むのか、これはどういうふうに考えたらよいのか、そして法務省としてはどう考えておられるのか、お示しください。

宮島政府参考人 ハーグ条約に基づく子供の返還について対象になりますのは、まさに先生御指摘のとおり、監護権の侵害を伴う事案でございます。

 親権の定義とかについてもいろいろと議論はあると承知しておりますけれども、ハーグ条約の第五条におきましては、監護権には、子の監護に関する権利、特に子の居所を決定する権利を含むというふうに規定されておりますので、言葉に若干混乱もあったかもしれませんけれども、本条約の適用に当たっては、同規定に従って監護権の侵害の有無を判断するということになっております。

馳委員 わかりました。

 これはちょっと蛇足になるかもしれませんが、親権ということに関しては、多分この後、民法の改正案のお経読みをして審議が始まるんだと思います。これもやはり、時代とともに家族観が変わり、家族を取り巻く社会的環境が変わってきた。懲戒権というのはどうなんだろうかな。その以前に、単独親権であるけれども、諸外国のように共同親権という考え方の方がふさわしいのではないか。つまり、夫婦は別れたら他人、子供にとって親は親、この辺はやはり一つのルールとしてこれも考えていくべきなのではないかなと思います。

 ただ、この問題は民法の今回の改正案に付随する考え方でもありますので、きょうは深くは追及していきませんが、ただ、私もこれは十年間、児童虐待防止法の企画立案とかに取り組んできた者として、一面から見ると、無理無理親と子供が引き離された状態が継続するということも子供にとっての児童虐待なんじゃないんですかという指摘もできるんですね。そういう意味で、今回、民法改正というのは大きな改正ですから、簡単に三年や五年でできるものではありません。したがって、こういった議論も私はぜひ深めていただきたいとお願いを申し上げておきます。

 次の質問に入ります。

 条約では、監護権の侵害を伴う十六歳未満の子の国境移動事案に対して、現所在国の裁判所が常居所地国に子を返還する内容ですが、返還を拒否できる例外事由も規定されております。その内容はどんなものですか。

宮島政府参考人 ハーグ条約に基づく子の返還を拒否できる場合として条約に掲げてありますのは、以下のことでございます。

 まず一番目は、連れ去りから一年以上を経過し、子が新たな環境になじんでいる場合、これは第十二条に書いてございます。

 二番目が、申立人が監護権を現実に行使していなかった場合、これは十三条の第一項のa。

 それから三番目が、申立人が事前に同意または事後に黙認していた場合、これも第十三条の一項のaに書いてございます。

 それから四番目が、子の返還が身体的もしくは精神的な害を及ぼし、または子を耐えがたい状態に置くこととなる重大な危険がある場合、第十三条第一項b。

 五番目が、子が返還を拒否しており、当該子が意見を考慮するに十分な年齢、成熟度に達している場合、第十三条第二項。

 それから最後に、六番目でございますが、要請を受けた国の人権及び基本的人権の保護に関する基本原則により認められない場合、これは第二十条でございます。

馳委員 この例外事由、五つ申されました。これは、条約を締結した場合には、国内担保法でも当然制定されるべきものと考えてよろしいですね、小川副大臣。

小川(敏)副大臣 これは条約の中に認められている拒否事由ですから、それは絶対的に拒否しなくちゃいけないというものではありませんが、やはり当然、拒否事由として認めていくものだと思います。

 ただ問題は、端的にこのケースには当たらないけれども、しかしやはり困るんだというケースもございます。特に、今一番反対の声が多いのは、配偶者暴力、つまり、子に対する暴力じゃなくて、配偶者からの暴力があるので子供を連れて逃げてきたという場合に、子供が取り返されて向こうに戻ってしまえば、やはり親の立場として子供と一緒に行って監護権を争いたい、しかし、配偶者から暴力を受ける可能性があるというようなときにどうするのかとか、さまざまな声がありますので、むしろ、条約に定めたこの拒否事由が入るんですねというのは当然でして、あとはこれをいかに実情に合うように、この条約の趣旨に反しない範囲で拒否事由をきちんとまとめられるかというところだというふうに思っております。

馳委員 そこで、問題の例外事由条項の十三条一項b号でありますけれども、改めて、どんな規定であり、具体的な典型例をお示しいただきたいと思います。

宮島政府参考人 ハーグ条約の第十三条第一項bは、子の返還が子に対して身体的もしくは精神的な害を及ぼし、または子を耐えがたい状態に置くこととなる重大な危険がある場合には、子を返還する義務を負わないと規定しております。

 典型的な例としては、例えば、子の返還を要求する親から子が身体に対する暴力を受けたことがあり、その子を返還した場合にさらなる暴力を受けるおそれがあるようなケースはこれに該当するものと考えております。

馳委員 DV防止法については、これも私のつたない知識でありますけれども、保護命令がかかりますよね。そして、この保護命令がかかるのは大体一週間ぐらいじゃなかったでしょうか。とすると、我が国内法で、DV法の保護命令の規定を準用すれば十分例外規定として対応できるんじゃないかな、そういうふうに私は実は認識をしているんです。

 それで、質問をいたしますよ。

 同b号の、子を耐えがたい状況に置くこととなる重大な危険がある場合の解釈そして運用が問題だと思っています。国内担保法で同様な規定を置かざるを得ないと考えますが、その場合でも、限定列挙規定にするか、あるいは厳格な解釈そして運用とすべき、こういうふうに思いますが、いかがでしょうか。

 同時に、関連して、海外でのいわゆる国内担保法の適用というのはどういうふうになっているでしょうか。お伺いいたします。

小川(敏)副大臣 やはり、さまざまな具体的なケースとして、さまざまなケースがありますので、限定的にというよりも例示的にして、なお包括的な規定を置いて、いろいろなケースに柔軟に対応できるということが好ましいかと思っております。

宮島政府参考人 海外のケースについてでございますけれども、特例として、私ども調べましたところ、スイスが例外的に、具体的に国内法で条約第十三条第一項bを規定している国でございます。スイスは、第十三条第一項bに定める、子を耐えがたい状態に置くこととなる場合というのを具体的に国内法で定めております。

 それ以外の幾つかの国を調べましたが、米、英、豪、ニュージーランド等の担保法について調べましたが、これらの国々では、条約の定める文言をそのまま引用する形で返還拒否事由というのを定めております。

馳委員 小川副大臣、実は私もこのスイスの事例というのも調べていたんですよ。やはり我が国としても、先ほどから気になりますが、これに反対する方々もいらっしゃる。その事情も、私もわかっています、小川副大臣もよくわかっているはずです。したがって、この国内担保法をつくるときには、このスイスの事例というのをよくよく吟味された上で、日本的な対応をすべきではないかというふうに私は思っているんですよ。非常にここはセンシティブな問題だと私は思うんですね。

 小川副大臣のお考えをちょっとお聞きしたいと思いますが、いかがですか。

小川(敏)副大臣 いわゆる配偶者間暴力とか、あるいは条約には具体的に書いておりませんが、兄弟がばらばらになってしまうとか、さまざまなことがございますので、やはりここは具体的ケースに柔軟に対応できるようにしていくことが大事かなというふうに思っております。

馳委員 ここでも、蛇足ではありますが、非常に家族の問題、敏感でありまして、離婚となるともっと敏感でありまして、そうなると当事者同士での解決はなかなか難しいと考えるのが普通ですよね。

 小川さんは女房と離婚の話をしたことがありますか。ないですよね。つまり、これは、私も一応離婚経験者なので、あえて聞いているんですよ。本当に神経をすり減らす。そうすると、これはどう考えても、国際的な問題というのが絡んでまいりますと、法的に加えて、カウンセリングも含めて、措置をした後の問題も含めて実は対応してあげなければいけない。つまり、法がしっかりしていても、運用の段階で携わる第三者、代理人、この信頼がなければ動いていかないという問題なんですね。私はあえてちょっと今言いづらいことを言ってしまったんですけれども、ここに対応できる人の教育というか研修というか、さまざまなケーススタディーができる方、この人がやはり我が国内において必要なのではないかなということをあえて申し添えておきます。

 次の質問に移りますが、DVが真実起きていての連れ去りであるならば、これも返還拒否事例となるべきと思いますが、いかがでしょうか。

 あわせて、その場合、条約のどの返還拒否事由となるのでしょうか。

宮島政府参考人 常居所地国において、子供を連れ去った親が申立人から配偶者暴力を実際に受けていた事例につきましては、返還手続において、子を連れ去った親がその旨申し立て、かつ、先ほどいろいろと御議論がありましたが、条約の第十三条第一項bの定める返還拒否事由に該当すると証明されれば子の返還が拒否されるというのが条約の趣旨でございます。

 また、実際、ハーグ条約の締約国の事例を調べましたが、配偶者暴力があったとされる事案において返還が拒否されたという判例もございます。その場合は、この条約第十三条第一項bがその根拠になっていると承知しております。

馳委員 私、さっきから話を聞いていて、宮島さんは法務省の人かと思ったら、外務省の人なんですね。とてもこの問題に詳しいと思いますが、間違いありませんね。

宮島政府参考人 外務省の人間で、目下勉強させていただいているところでございます。

馳委員 江田大臣、こういう優秀な人が外務省にいるんだったら、法務省にちょっとスカウトしてきてトレードして、これは、要は外務省と法務省とやはり歩速を合わせなければいけない話じゃないですか。そういう意味での人事の連携というものも必要なんじゃないかなと思って。私は宮島さんは法務省の人かと思ったら、外務省なんですね。改めて、よろしくお願いしたいと存じます。

 さて、次の質問ですが、主要締結国の司法判断において、返還命令と返還拒否の割合は、大体、返還が七で拒否が三と聞いておりますが、フランスは拒否が五割弱あると聞いております。どうしてフランスは拒否の割合が高いんでしょうか。

宮島政府参考人 我が方におきましてフランスから聴取いたしましたところ、二〇〇八年の返還拒否の割合は約五割であったと承知しております。

 他方、返還拒否の割合につきましては、個々の事案ごとに判断が行われたというふうに理解しておりますので、その理由について一概に明確にお答えするのは困難なので、その点は御容赦いただければと思います。

馳委員 宮島さんらしくないですね。これはむしろ、フランスの国内担保法、あるいはフランスの国民性なのか。私は、どうしてなのかなということは、我が国外務省も法務省としてもちょっと把握しておいた方がいいんじゃないんですかという趣旨で今質問したんです。

 次の質問を伺います。

 難問の一つに、強制執行の可否がございます。締結国でばらつきがあると思いますけれども、主要国の状況はどうなっているでしょうか。

宮島政府参考人 条約自体には、返還命令の執行方法についての規定はございません。ハーグ条約に基づく命令の執行につきましては、各締約国がおのおのの国内法に基づいて実施しているのが現状でございます。

 主要国に対して、今の命令の執行状況について確認をいたしました。基本的な答えは、当事者が任意で命令を履行しているという回答でございました。

 他方、当事者の協力が得られない場合がありますが、米国では、裁判所が法廷侮辱罪による罰金、拘禁を含む幅広い措置を命じることがある、フランスでは、検察官が命令の執行を伴う場合もある、それから英国では、物理的強制力の行使を伴わない形での執行が行われることがあるという答えを得ております。

馳委員 ここは大臣か副大臣に私はちょっと聞いた方がいいと思うんです。強制執行ですよ、子供に対して強制執行ですよ。

 今アメリカの事例を聞いたら、何か別件逮捕みたいな感じの印象も受けましたね。そうすると、ここは、確かに任意で行っている、法律に基づいてやっている。しかし、子供が判断できるのか。連れ去ってきた親ががばっと抱えてしまったりすると、なかなか強制執行となると、これは警察権が介入することになるんでしょうか。ということを考えると、ここの考え方というのは極めて重要になってくると思うんですよ。

 私は、悪い表現をすれば、強制執行は絶対嫌だ、対応しない、返還しないと突っ張ったら突っ張った者勝ちになっちゃうようでは、国際ルールにかなうことにはなりません。この辺の考え方というのはやはり大事だと思うんですが、いかがでしょうか。

小川(敏)副大臣 引き渡し命令の司法手続か準司法手続か、それを設けるわけでございますが、そこで子供を返還するという決定が出た場合に、それを全く任意にしたのではやはり実効力がないので、何らかの強制力を持たせなければならないというふうには考えておりますが、では、どのように強制したらいいのか。執行官が来ていきなり引っ張っていっちゃう、しかし、引っ張っていっちゃうといっても外国までというわけにはいきませんし、なかなか難しいところがある。

 ただ、我が国の今の民事訴訟法の中では間接強制という強制執行もありまして、実行しなければ一日当たり制裁金がつくという、経済的な制裁を科してそれを執行することになりますが、これも一つの強制執行でございますので、そういう方法もあるのかなと。

 ですから、これは技術的にいろいろな方法がありまして、それぞれ長短がありますので、やはり検討して解決すべき問題だと思っております。ただ、あくまでも、司法手続あるいは準司法手続で出した命令に対して、全く強制力がない、全くの任意というのは、やはり制度の趣旨にはそぐわないかなという考えでおります。

馳委員 そうですよね。

 私は、これはまだもうちょっと時間がかかりそうな案件ではありますが、小川副大臣、大臣も、社会に対する周知徹底というものがやはりまず必要だと思いますよ。こういう問題がありますよ、国際的な子の連れ去りの問題がありますよ、ハーグ条約がありますよ、我が国としても締結をしましょう、国内的にも法的なルールをつくりましょう、しかし、そこにはまさしく、法律ができた以上は全く法律に従わないというわけにはいかない。そうすると、間接的な強制執行もあり得るということについての社会の理解というものは絶対に私は必要だと思うんですよ。そんなことは聞いてないよと、よく、乱暴な言葉ですけれどもありますけれども、そういうことがないようにするのも、私は政府としての責任ではないかなと思いますので、この点はやはり丁寧に慎重にやっていただきたいと思います。

 さて、次の質問ですが、返還命令が出た事例で、実際に常居所地国に子供が返還された事例の割合はどのくらいでしょうか。また、強制執行ができる国とそうでない国とで差はあるのでしょうか。教えてください。

宮島政府参考人 各国において実際に常居所地国に子供が返還された事例の割合については、実は承知しておりません。実態をなかなか把握するのが困難でございます。

 したがいまして、強制執行があるかないかによってその割合が変わるかどうかについても、同様な理由で把握することは困難でございます。

馳委員 何か外務省は、随分このハーグ条約締結に前のめりの割には実態をよく調べていませんね。そんなことではいけませんよ。これは本当に、ただルールをつくればいいというものじゃなくて、ルールが動いていかなきゃいけないわけでありますから、諸外国の対応状況というものの情報収集をお願いしたいと思います。

 その他、執行方法として、返還に係る費用負担等の問題があります。費用負担の問題についての主要国の状況を教えていただきたいと思います。

宮島政府参考人 返還に係る費用負担の問題についての御質問でございます。

 条約上の規定は、二十六条の第四項に、適当な場合には、司法当局または行政当局が、子を連れ去った者に対し、申立人が支払った子の返還に要する費用を支払うよう命じることができるというふうな規定がございます。

 ちょっと古いのでございますが、二〇〇四年にハーグ国際私法会議事務局が、子の返還に要する費用をだれが負担しているかというのを条約締約国について調査いたしました。その結果によりますと、英、ニュージーランド、オランダは、親がその費用を負担すると回答しておりますが、どちらの親が支払うのかについては明らかにしておりません。一方、アメリカは、明らかに不当な場合を除き、子を連れ去った親にすべての費用を課す旨、国内法に規定していると回答しております。

馳委員 小川副大臣、ここもやはり大事な問題ですね。

 つまり、連れ去ってきた方は、子供はとられる、金も取られるという気持ちに恐らくなるでしょう。逆に、子供を奪われた方は、子供を奪い返した、僕の責任じゃないのに何で金を払わなきゃいけないのかというふうな気持ちになるでしょう。そうすると、経済的な負担ができる御家庭とそうでない御家庭というのが当然ありますね。そうなったときに、知らぬ存ぜぬと政府が言っていいものかどうか。本当にちゃんと払わせるまた強制的な執行もするのだろうか。お金の費用負担の問題についても十分議論をしておいてほしいと私は思います。

 最後の質問になると思います。

 条約締結のためにも、実務をつかさどる中央当局を創設しなければなりませんが、条約上、中央当局に求められる機能は何でしょうか。そして、日本ではどこの省庁が適当と考えるべきなのか、お伺いしたいと思います。

宮島政府参考人 ハーグ条約の第七条におきまして、中央当局の役割につきまして五つ書いております。一つ目が、子の所在の発見、それから、子に対するさらなる害の防止、さらに、任意の返還または当事者間での解決の促進、それから、司法上の手続のための便宜の供与、五番目が、子の安全な返還の確保でございます。

 諸外国の中央当局についてでございますが、米国においては国務省、英、仏等におきましては法務省、司法省が中央当局に指定されておりますが、いずれにせよ、我が国がハーグ条約を締結することとなった場合には、当然、中央当局をどこに置くかについて確定する必要があるというふうに考えております。

馳委員 今答えたのは外務省なんですよ。私は、法務省はどう考えているかということも聞いておきたいんです。

 ちなみに、私なりにいろいろ勉強もさせていただきましたが、外務省に、法務省に、あるいは厚生労働省に、文部科学省もそうですね、総務省もそうですね、警察もそうです、それぞれいろいろなかかわりがある中で、私は、内閣府にこの問題についての担当部局があった方がよいのかなというふうにも考えております。ただ、専門性ということを踏まえて対処しなければいけないので、確かに難しい問題だなとは思っているんですよ。

 外務省は先ほどああいうふうに条約上の判断としておっしゃいましたが、法務省としてはこの中央当局についてどうお考えかお伺いして、私の質問を終わります。

江田国務大臣 先ほどちょっと申し上げましたが、国境を越えた子の移動についてのルールというのはハーグ条約しかない。ハーグ条約でも、中身というのはそれぞれの国によっていろいろで、中には、日本の子や親の立場からするとうれしくない、そういう扱いもある。しかし、こういうルールしかないから、やはりそのルールの中に入って、日本が国際的な子の移動についての、よりいい、チルドレンファースト、子の福祉に沿ったそういうルールをつくっていくプロセスの中に当事者として入っていく必要があるんだ。それを、日本で中央当局はどこだかわからないので前へ進まないというのでは困ると思っております。

 しかし、その中央当局をどこにするかというのは、これは、今委員おっしゃった、外務省も法務省も、あるいは厚生労働省も、いろいろなところがかかわりますから、こういうところで政治家の議論で決めていきたいと思っております。

馳委員 終わります。ありがとうございました。

奥田委員長 以上で馳浩君の質疑を終了いたします。

 次に、大口善徳君。

大口委員 公明党の大口でございます。

 最後の質問者になりますので、よろしくお願いいたします。

 東日本大震災から一カ月と一日たったわけでございます。本当に、現場の被災者、避難者の皆さんには心からお見舞い申し上げたいと思います。

 そういう中で、現場に弁護士会等、法律相談で駆けつけておられます。そういう中で、本当に、被災者の方から、今後の生活や事業をどう再建していくのかということ、いろいろな悩みがございまして、その相談もあるわけです。そういうことについてピックアップして、まずはお伺いさせていただきたいと思います。

 まず、被災地においては、多重債務を抱える被災者もありますが、被災者生活再建支援金、これが、今、現行は最大三百万。これは、みずからの生活再建のために支給されるものであって、債権者らの引き当てとなるべきものではないことは明らかです。ただ、差し押さえ禁止にはなっておりません。

 そこで、被災地の生活再建に不可欠な金額であるということからいっても、破産法三十四条四項に基づいて、破産申し立てをした場合、被災地において、破産事件における自由財産拡張の申し立て、これによって、原則限度額が従来九十九万円でありますが、それに生活再建支援金を加えた額を自由財産拡張限度額とすべきではないか。要するに、従来の九十九万円プラス生活再建支援金を加えた金額以上とすべきではないか、こう考えます。

 さらに、生活基盤である居住用不動産、生業に必要な自動車、船舶、農業機具を自由財産とできる等、被災地の実情に照らした弾力的な適用が図られるべきであると考えます。これは法務省の方針を出すべきであると思いますが、御答弁願います。

江田国務大臣 委員御指摘のとおり、大変な被災の状況で、被災された皆さんの生活が大変だ、これは本当にそのとおりだと思っております。

 そんな中で、被災者生活再建支援金三百万、これが破産で差し押さえをされてしまったのでは、それはどうしようもないというその御心配もよくわかります。しかし、御指摘のとおり、この生活再建支援金は差し押さえ禁止財産とはなってはおりません。

 ただ、破産法の三十四条第三項第一号あるいは民事執行法第百三十一条第三号などで、九十九万円の金銭を破産者の手元に残すことが可能だ、これがいわゆる自由財産ということで、この自由財産については、裁判所が破産者の個別の事情に応じて拡張することができるようになっていますので、九十九万というのは、標準世帯の一カ月の経費掛ける三、つまり、三カ月分。しかし、こういう場所にいて生活していくというのが標準世帯の一カ月の平均の経費ということでは、それは済まないでしょうから、収入の当ての問題、扶養すべき家族のことなどを考えて、裁判所が差し押さえする場合に、生活再建支援金というのは、これは債権者が引き当て、責任財産だと当てにしている金じゃないですから、そこは裁判所が適切に判断をしていただけることだと思っております。

 さらに、自動車とか、それから船舶とかおっしゃいましたか、あるいは工場あるいは農地とかということですが、自動車や家財道具などの生活必需品は自由財産とすることは可能で、裁判所の柔軟な対応は期待できると思うんですが、一方で債権者が責任財産だと期待している、そういう財産もあるかと思うんですね。

 それを自由財産の方に入れてしまいますと、今度は債権者の方の利益が害される。債権者が連鎖倒産していきますと、それがどんどん広がる。地域経済に大変な悪影響を与えるということもありますので、やはりそこは、最後は裁判所の個別の事情による判断でございますが、自動車、家財道具といっても、ベンツもありますし、家財道具も黒檀や紫檀もあるかもしれませんし、個別の事情によってそこは区切るところはあるだろうと。

 やはり、私は、不動産はなかなか難しいのではないかという気がしております。

大口委員 また、被災者の生活再建、事業再建では、平時以上の負担となることから、個人の民事再生の適用の場面を広げる必要がある。そういうことで、この適用上限額、今現行五千万円、これを引き上げる、あるいは、住宅ローン条項の適用条件についても、住宅ローン債権以外の担保がある場合も含める等、適用条件を大幅に弾力化するべきではないかと考えます。

 そしてまた、最低弁済額の引き下げも考えていただきたい。現行おおむね十分の一から五分の一程度でありますが、これをさらに引き下げる、あるいは、今最大五年にとどまっています弁済期間の延長、これは十年ぐらいにはしていただきたい。そういうことで、支払い条件の緩和も検討されるべきであると思いますけれども、法務省の見解をお伺いします。

 そして、最高裁には、倒産手続について、あらゆる資料を喪失した被災者も少なくありません。そういう点で、倒産手続を申し立てる際に、裁判所においても資料不足に対して厳格な対応をせずに弾力的な手続を行うべきである、こういうふうに考えます。

 法務省、最高裁から御答弁願います。

江田国務大臣 さまざまな場面で、委員初め野党の皆さんからも、いろいろな提案をいただいているということはありがたいことだと思っております。

 ただ、さはさりながら、今も自由財産のところで申し上げましたが、債権者の利益というのもやはり考えていかなきゃいけない。債権者もまた被災者である。そこで連鎖倒産がつながっていってはどうにもならぬということもあるわけです。

 民事再生手続は法人も個人もともに使えるわけでございますが、民事再生法の小規模個人再生手続というのは、特に債務額が少額な個人を対象とするということを前提にして、重厚な通常の民事再生手続よりも相当簡素な手続にしておりますので、債権者の利益が害される面があるということで、再生債権額の上限を五千万円として、また弁済期間も最長五年としているわけです。

 そこをいろいろいじってまいりますと、債権者による債権回収が困難になって連鎖倒産になるということもありますので、慎重な検討が必要というのが今のところの私どもの検討結果でございますが、また鋭意検討をしてまいりたい。

 さらに、住宅資金の貸付債権に関する特則というのもございまして、これは住宅ローン債権の繰り延べを内容とする条項を再生計画に定めることができる、あるいは住宅ローン債権者を再生計画案の決議においては議決権を有しないとする、そのような特則の制度が設けられておりまして、これも、これをどっちへ振るかによってまた、本当に微妙な債権者、債務者の接点ということになっておりますので、これを変えることには慎重な検討が必要です。しかし、大いにここは知恵を絞っていきたいと思います。

永野最高裁判所長官代理者 御指摘のとおり、被災地におきましては、債務者が破産や民事再生の申し立てをする際に必要な書類などが散逸したり滅失したりといった事態が想定されるところでございます。

 被災地の裁判所においては、当然のことではございますけれども、被災地におけるこのような実情を十分に考慮した上で、法の趣旨にかなった事件処理が行われることと考えておりますので、破産や民事再生の申し立ての際に資料が添付できないといった場合にも、各裁判所において適切な対応が行われるものと考えております。

大口委員 これは千五百件ぐらい、いろいろ法律相談を受けて、本当に、弁護士の人たちも、ぜひともこれは検討してもらいたいというものの中でも特に優先順位の高いものでした。

 法務大臣、やはりここは、もう現場を見てこられたわけですから、普通のあれではないわけです。また、住宅ローン債権というのは銀行等が債権者であります。そういうことを考えますと、この千年に一回と言われている事態に対して消極的な答弁じゃないかなと私は思いますが、もう一度お願いします。

江田国務大臣 繰り返しになりますけれども、債権者、債務者の本当に微妙な接点になっている、両方が被災者だと。

 しかし、おっしゃるとおり、住宅ローン債権などは債権者は銀行などが多いというのは、それは事実でしょう。そういうときには、やはり銀行にもう少し厚目に手当てをしろよという、そういうことも必要にはなってくるだろうと思います。

大口委員 次に、いろいろな相談業務、これについてはきめ細かな配慮をいただきたいと思います。

 一つは、法テラスにおける出張・巡回法律相談において、外国人の方、あるいは高齢者、障害者の方、そして女性、子供に代表されるような方々に対する特別の配慮、専門相談窓口、しっかりその配慮を行う制度上の措置が講じられるべきであると考えます。避難所において、外国人、高齢者、障害者、女性、子供が必要なケアを受けられない状況が少なからず見受けられます。法律相談としての件数に上がってこないケースも考えられますので、十分な配慮をお願いしたい。

 そしてもう一つ。被災地の生活上の不安、労働上の問題、中小事業者の再建方法等については、さまざまな要素が複合する問題となることから、被災者に対しては自治体が設置する被災者生活再建支援窓口、それから労働者に対してはハローワーク等、中小企業に対しては商工会議所、商工会、金融機関、農漁協などと弁護士等が共同したワンストップの相談体制というものを確立すべきだ。これについても配慮をいただきたい。

 そして、こういう相談業務におきまして、やはり弁護士のみならず、臨床心理士、精神保健福祉士、社会福祉士等も配置して、被災者の心のケアも徹底する、生活全般を見通した相談をできる体制をしくべきである、こういうふうに考えますが、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

江田国務大臣 ちょうど今、年度がわりでございまして、新年度が始まったところで、日弁連、あるいは東京、関東周辺の弁護士会、あるいはさまざまなそういう隣接士業の皆さんがごあいさつにお見えになっておりまして、その都度、私は、大変な震災の後で、阪神・淡路大震災のときにもそうした皆さんにいろいろな相談をお願いしましたが、今回もぜひよろしくということを申し上げております。

 特に今、委員御承知のとおりで、全国各地で法テラスの常勤弁護士を初めとする多くの弁護士が被災者からの相談対応に従事しており、またこれからもこれはふえていく。外国人の場合、女性の場合、高齢者の場合、あるいは障害者の場合、子供の場合などいろいろありまして、そうした人たちに親切に心の通う相談ができる、そうした専用の相談窓口を設ける、あるいは臨床心理士など心のケアができるそうした配置もしていく、こうしたことを実情に応じてやっていかなければいけないと思っております。

 それから、商工会議所とかそうした団体の皆さんがいろいろなノウハウを持っておられることもよくわかるわけでありまして、そうした他の機関の皆さんと連携を図って、そこへ、一つの場所へ行けばいろいろな相談がすべてできる、そういうワンストップサービスを提供することも重要だと思っておりまして、法務省の関連でいえば、法テラスの皆さんに、関連機関と連携しつつしっかり対応してくださいとお願いをし、法務省としても法テラスをしっかりと後押しをしていきたいと思います。

大口委員 前回も質問させていただいたんですが、震災特別民事扶助ということを考えていただきたい。阪神・淡路のときも、法律扶助協会が特別の民事扶助を活用して、一千件を超える援助実績があったわけであります。被災地における早期の紛争解決に大いに寄与したわけです。そういう点で、法テラス、日本司法支援センターが行う民事扶助、とりわけ代理援助について、厳格な資力要件、煩雑な手続があって、このままでは被災者の積極的な利用が見込めない。

 そこで、一、震災に関する事件について特別の予算を講じるとともに、二、資力要件を撤廃もしくは大幅に緩和し、三、徴求資料等を略して手続を簡素化し、四、立てかえ費の償還を原則的に猶予、免除し、五、対象を裁判に限定せず、ADRや行政申請手続も含めるべきである、こういうふうに考えます。これらの実施に必要な限度で、運用対応あるいは総合法律支援法の改正、こういうものを行うべきである、こういうふうに考えますが、いかがでございましょうか。

江田国務大臣 阪神・淡路大震災のときにはまだ法テラスができておりませんでした。そこで、民事法律扶助でいろいろなことをやっていただいた、その経験が今も生きていると思っております。法テラスの民事法律扶助事業、扶助業務の運用を通じて適切に対処していきたいと思っておりますし、また、今、多岐にわたる御提案もいただいているわけで、この必要性は高いと思います。

 御指摘の中には、資力要件を撤廃するということになりますと、民事法律扶助制度の根幹にかかわっていくため、ちょっと慎重にというところもありますが、しかし、運用はいろいろできる。資力要件の確認のための資料の提出を一体どの程度厳格にやるのか。これを緩和するとか、あるいは償還の猶予、免除の制度のあり方、これも弾力的な運用が可能であるとも考えられますし、それから、法務省では、法テラスの平成二十三年度予算、この運営費交付金を使って法テラスが対応するものだと思っておりまして、ここは支援をしていきたい。

 そして、今委員がおっしゃるADRですが、これは、法務省が民間のADR事業者の申請を受けて所定の基準を満たす業務について認証しているわけでございまして、こうした震災関係の紛争を解決するために活動するADRとしては、弁護士会あるいは社会保険労務士とか、さまざまございます隣接法律専門職種の団体が既に相当数ADRとして認証されておりまして、さらに新たに申請がある場合に、書類審査の合理化による期間の短縮、あるいは審査の並行的実施等、迅速な審理を行い、適切な対応をとっていきたいと思っております。

大口委員 ADRの認証申請につきましても、平時ですとガイドラインで三カ月ということですが、さらに迅速にお願いをしたいと思います。

 それから、今、後見制度といいますか、後見人、被後見人の安否ということが気遣われるわけです。東北三県で後見事件は延べ五千件強あるということでございます。

 四月十三日、本日の産経新聞に、この件につきまして、家庭裁判所が何らかの形で安否確認や、後見人が活動できているかどうかの確認ができていないとなると心配だ、こういうことを指摘する声がある。

 本当に、後見人や被後見人の安否確認を積極的に裁判所がやらなきゃいけないのにやっていないのかということについて、この産経新聞によると、これは最高裁の広報課ですか、「何事も申し立てが前提となっており、裁判所から積極的に動く制度になっていない。亡くなった原因が震災なのかを把握するすべはない」、こういうことで、被災地の実態把握ができない、こういう見解を示したという記事なっているわけです。

 これについて、それこそ中央大学の新井教授が、「あまりにも官僚的。裁判所が後見人を認容しているのだから、活動できない状況に対して責任があるはずだ」、こういうコメントもしているわけでありますけれども、この点、最高裁、家裁としてどういう対応をしているのか、お伺いしたいと思います。

豊澤最高裁判所長官代理者 委員御指摘のとおり、今回の大震災では、被災地に居住する後見人あるいは被後見人の方々にも、いろいろな深刻な状況に置かれている方もかなりおられるものと思われます。

 被後見人の保護という観点から、例えば、後見人が欠けたときには早急に新たな後見人を選任する必要がございます。家庭裁判所は、後見人等の監督を担うという立場にございますことから、新たな後見人を選任する必要があるかどうか、その必要性などについて把握するために、後見人や被後見人の安否を早急に調査、確認することといたしておりまして、既に被災地の裁判所においてそのための作業を開始しているところでございます。

大口委員 では、ちょっとこの新聞の記事と違うじゃないですか。どうなんですか。

豊澤最高裁判所長官代理者 新聞報道の件につきましては、次のような経過でございます。

 四月の五日に報道機関の方から、まず第一点として、後見人や被後見人の死亡や行方不明など震災の影響の実態をどのように把握しているのか、二つ目として、現時点で、震災により後見業務を受けられない状態となった被後見人が必要な後見業務を受けられるようにする手だてがあるのかといった質問がございました。これに対して広報課の方で、前者については現状の統計からは把握が困難である旨、後者につきましては個別の事件ごとの対応になる旨、そういう基本的な、その記事に書かれてあるような回答をしております。

 当時、後見人の安否調査等につきましては既に検討が行われておりましたが、その情報が広報窓口にまで伝わっておりませんでした。このことが原因でございます。裁判所内部の連携がうまくいっておりませんでした。このことについては率直におわびを申し上げたいと思います。

大口委員 被後見人の方々も大変な状況であるわけでありますので、とにかく安否確認をしっかりやる、そして対応していく。また、専門職の後見人の確保、これは二割の方がそういうことのようですから、確保もしていかなきゃいけないということで、全力を挙げてやっていただきたいと思います。

 次に、東京電力福島第一原発事故についてお伺いしたいと思います。原子力損害の賠償に関してでございます。

 これにつきましては、三月三十日に稲田委員も質問されておりまして、第三条の第一項ただし書きについて質問をされていたわけであります。要するに、原子力損害というのは、無過失責任、そして集中責任、無限責任ということでございます。そして、第三条一項ただし書きが例外であるということでありますが、政府は一貫して、第三条ただし書きには該当しない、ですから東京電力が第一義的には賠償責任を負う、こういうことであります。

 これについては、そういうことが前回ありましたので、それを前提にしてお伺いしたいと思うのですが、そういう場合、賠償措置額というものがあって、これは、電力会社と政府補償契約を結んで、電力会社が一事業所当たり賠償措置額の一万分の三の補償料を払ってやるわけで、例えば、一千二百億ですから、三千六百万円を毎年一事業所ごとで払っているということでございます。

 きょうの毎日新聞に、電力会社が毎年国に納めた補償料が一九六二年から二〇一〇年で累計で百五十億円しかない、こういうことであります。今回の補償額、これは、一事業所当たり一千二百億となっております。そして、二事業所と考えれば二千四百億ということでありますが、そうすると、百五十億しか電力会社はこれまで払っていないということは、それを除く部分は結局国が負担する、これは国民が負担することになるということで、もともとこのリスクに対して甘かったのではないかなと思いますが、その件についていかがかということ。

 今回、この賠償措置額というのは、二事業所と考えますと二千四百億ということであります。しかし、第二原発と第一原発とあって、第二原発の方との相当因果関係にある損害というのはどれぐらいの額かというと、一千二百億円を超える場合もあるし、下回る場合もあります。そうしますと、下回る場合は、第一の方は一千二百億、第二が下回った場合は、合計二千四百億を下回ることもあるのか。

 この二点、お伺いしたいと思います。

林大臣政務官 大口委員の御質問にお答えをさせていただきます。

 まず第一点目の点でございますけれども、よく委員御存じのように、原子力損害が発生したときに迅速かつ適切に損害賠償を履行できるように、原賠法においては、原子力事業者が、一般的な事故については民間保険会社、そして地震、津波などによるものについては国が引き受け手になるという一種の保険契約を結んでいるということになるわけでございます。

 こうしたことを踏まえますと、政府補償契約において電力会社が文科省に納付する補償料というのはいわば保険料のようなものでございまして、事故の時期によってとか、あるいはそれまでの保険料の累積によって、もともと、その保険料の累積と支給される額にやはり多寡が出る性質のものなんだというふうに考えております。累積を超える補償金を支払うということがあれば、その不足分は当然国からの支出になるというふうに考えております。

 そして、第二点目の、第二原発は一千二百億円を下回る可能性があるのかどうかという点でございますけれども、こちらも委員よく御存じのように、一事業所当たり一千二百億円ということでございますけれども、事故との相当因果関係が認められるものについては補償はされるということでございますので、その金額が相当因果関係によって一千二百億円を下回る可能性もあるということだと思います。

大口委員 だから、新聞記事ですと一千二百億から二千四百億というようなことになっていますけれども、相当因果関係がなければ、丸々二千四百億認められない場合もあるということでございますね。

 次に、原賠法の十六条の一項において、「政府は、原子力損害が生じた場合において、原子力事業者が第三条の規定により損害を賠償する責めに任ずべき額が賠償措置額をこえ、かつ、この法律の目的を達成するため必要があると認めるときは、原子力事業者に対し、原子力事業者が損害を賠償するために必要な援助を行なうものとする。」こう定めています。この「必要な援助」というのはどういうメニューがあるのか。補助ですとか無利子融資ですとか、出資だとか社債を買うとかいうことが考えられますが、どうなのか。そして、出資ということは国有化というようなことも考えられるのか、お伺いしたいと思います。

林大臣政務官 お答えをさせていただきます。

 メニューという点につきましては、今委員るる御指摘をいただいたこともございますが、基本的には、政府の行う、御指摘のあったような金融上の措置、さらには財政上の措置というものが想定をされるというふうに思います。

 なお、こうした援助は、当然、国会の議決によって政府に属された権限の範囲内において行うという原則をしっかりと守って当たっていきたいと思います。

大口委員 これは国会の議決が必要ですので、しっかり議論していかなきゃいけないと思っております。

 それから、今回、原子力損害賠償紛争審査会、我々も強く言って、ようやく四月十一日に設置されました。初会合をいつ開くのか。いつまでに原子力損害の範囲の指針を定めようとしているのか。早くその指針を定めるべきであるというふうに思うわけでございますので、その点についてお伺いしたいと思います。

林大臣政務官 私も委員のお考えに全く同感でございます。

 第一回はいつ開かれるのかという御質問でございますが、これはできるだけ速やかにというのは当然でございますが、今週中にも第一回の会合を開催したいというふうに考えております。

 指針についてはどうなんだという御質問もございましたけれども、これについても、これだけ非常に大きな被害を受けられて、そうした中でも今なお頑張っていらっしゃる被災者の皆さんのことを思えば、当然速やかに策定に当たっていきたいというふうに思います。

大口委員 とにかく、皆さんは将来に対して本当に希望を失っている、こういう状況でございますから、早く指針は出していただきたい、こういうふうに思います。

 そして、平成十一年九月に発生したジェー・シー・オー臨界事故について、平成十二年三月二十九日に原子力損害調査研究会最終報告書が取りまとめられたわけです。その中で、身体の傷害、人の検査費用、避難費用、物の検査費用、財物汚損、休業損害、営業損害、精神的損害という八つの損害項目について損害賠償の判断基準指針が示されたわけであります。今回の事故に関する原子力損害範囲の判定の指針、これは、ジェー・シー・オーのこの基準というものが反映されるのかということ。

 それから、本当にこの事故と損害の相当因果関係があるのかどうかということが心配されております。第一原発から二十キロから三十キロ圏内の住民の自主避難に必要な費用はどうなのか。第一原発から三十キロ圏外でも、健康影響の可能性が指摘される程度以上に高い放射線量が計測された地域住民の避難費用はどうなのか。第一原発から三十キロ圏外でも、原発の風評被害で物流が滞るなどして自主避難を余儀なくされた住民の避難費用はどうなのか。

 それから、区域も、今五つの区域が考えられますね。避難指示区域、それから屋内退避区域、計画避難区域、緊急時避難準備区域、それから、田村市、南相馬市両市の一部やいわき市全体のように、二十キロから三十キロ以内でも、緊急時避難準備区域でもなければ屋内退避区域でもないところがある。こういう方々は一体どうなるのか。

 それから、摂取、出荷制限が行われている野菜、原乳の営業損害、出荷制限が行われていない野菜等のいわゆる風評被害、魚介類から放射性沃素等が検出された場合の営業損害、漁業における風評被害、農水産物以外の観光サービス、製造業等への風評被害、こういうものがあるわけです。相当因果関係があるのか、お伺いしたいと思います。

林大臣政務官 基本的に、ジェー・シー・オーのときの指針は、当然それを踏まえてということに今回はなるというふうに思っております。さらにその上で、委員御指摘のように、今いろいろな形で自主避難をいただいているわけでございますが、これはジェー・シー・オーのときもそうでしたが、避難をいただいたときの、それにかかる経費あるいは出荷制限によって受けた損失、さらには風評被害によって受けた、これも損失ですね、こうしたことも当然その対象に含まれてくるだろうというふうに考えております。

大口委員 それでは、仮払いについてお伺いしたいと思います。

 海江田経済産業大臣が四月五日、閣議の後で、一日も早く仮払いをすべきであるということを記者会見で述べたわけです。また、新聞紙上でも百万円ということで載っているわけであります。

 これはどういう方が対象なのか。今挙げましたように五種類の地域があるわけですね。そして、幾らなのか、そして、いつごろ出すのかということにつきまして、やはりこれは原賠法が適用されるということでありますので、逆に、被災者生活再建支援法、こちらの基礎支援金百万円が出されない。ですから、同じ時期にやはり百万円支払うべきだ、こう考えますが、いかがでございましょうか。

田嶋大臣政務官 御答弁申し上げます。

 委員御指摘のとおり、原賠法の枠組みというのがございまして、その法律に基づいて、おっしゃっていただいた審査会、四月十一日に立ち上がりまして、その趣旨に基づいた賠償ということがございますけれども、大変時間がかかってはいけないということで、屋内退避の方々あるいは避難をされている方々、先ほど五種類とおっしゃっていただきましたが、避難区域の区別なく、その窮状にかんがみて緊急的支援措置として、生活資金としての一時金を支払う準備を現在いたしております。支払う主体は東京電力ということでございますが、国も連携して今その準備をしておるところでございます。

 タイミングでございますが、きょうこの時点では何日ということは申し上げられませんが、一日も早くということをあちらこちらから御要望もいただいておるところでございますので、今必死になってやっておるところでございます。

 現地においての本人確認等はまず確実にしていかなければならないということで、それが済み次第、十幾つの自治体が関係いたしておりますが、それぞれに、額としては先ほどおっしゃっていただきました額、基本的には被災者生活再建支援制度と、タイミングも、それから額に関しても横並びということで考えております。

大口委員 それでは、時間ももうありませんので、検察の在り方検討会議についてお伺いします。もう時間がございません。

 それで、今、大臣は、特捜部の身柄事件について、全過程の可視化を含む試行について検事総長に一般指揮権ということで指示をされたということについては、私ども一定の評価をしたいと思います。

 ただ、先ほどの答弁でも、法制審議会に諮問をして、そして一年を目途に可視化のアウトプットをやる、こういうことでありますが、いつこの法制審議会を開くのか。これは直ちにという考えでいいのか。それから、可視化のアウトプットということでございますけれども、一年後ということですが、これは閣法でそういう法律を出すのか。それから、特捜部の取り調べの録音、録画の試行の一年後の検証ということと一年後を目途に可視化のアウトプットとの関係がどうなのか、お伺いしたいと思います。

江田国務大臣 検察の在り方検討会議の提言を受けまして、私の方でこれを精査して、項目ごと、いつまでにというのを振り分けて、そして検察改革に関する取り組みということで指示をいたしました。

 これと、もう一つ省内の勉強会というのがあって、これは六月をめどに国の内外の勉強をずっと進めて、そこで、それが上がってきた段階で、なるべく早い段階で省内での検討の結果を出していくという、今、この二つのことが進んでおりまして、初めの検事総長にお願いした部分と、それと法務省でやる部分と、これを適切に振り分けながらやっていくというのと、ちょっと複雑な関係にはなっておるんですが、いずれにしても、検察庁において特捜の身柄事件、それから裁判員裁判の部分が別個まだあるんですが、これは検討ばかりじゃだめですよ、試行しなさいということで、実際に実行する。これが特捜の身柄事件の全過程の録音、録画を含む試行の実行ですね。

 こうしたものが進んでいきまして、そして、法制審議会の場に、刑事司法全体を多角的に見直していく、そういう場をつくろうと。これは法制審議会の場をおかりしますが、法制審議会の委員の皆さんにも入っていただくけれども、外部の目、外部の風ということをこの提言で言っていただいておりますので、外部の皆さんにたくさん入っていただいて、刑事司法全体を検討していく場を、これは早急に立ち上げたい。そこを場にしながら、いろいろな検討の結果をここへフィードバックしていって、そして仕上げをしていこうということでございます。

 この期限については、そこはいろいろ複雑になっておりまして、特捜の身柄についての全面的な録音、録画については、これは一カ月と言ったと思いますが、それから、もう一つ、また別のものとして横へ出すわけですけれども、供述がついつい誘導されやすい皆さん、知的障害とかコミュニケーション能力とか、こういう皆さんについては、最高検の方で三カ月をめどに試行の具体的なプログラムを立てなさいというようなことを言ったりしておりまして、今の刑事司法全体の改革については、録音、録画だけで済みませんから、これは相当長期になっていくだろうし、その都度、審議をしたものを、この部分をやりなさい、次にこれをやりなさいといった形で出ていくことも考えられる。今、そういったような全体の構造になっております。

 私の頭も時々混乱することがありますが、ぜひまた委員の御指導もいただきながら、整理をして前へ進めていきたいと思っております。

大口委員 一年後を目途に法制審議会で結論を出すということを答弁でおっしゃっていたので、そして、それらの可視化のアウトプットということで一年後に出されるということだったわけですが、その点はどうなんですか。閣法を出すというところまで一年後に行くんですか。

奥田委員長 先ほどの答弁漏れ部分、お願いいたします。江田法務大臣。

江田国務大臣 この検証結果を踏まえて可視化をやるという文がありましたが、それについて、もっと踏み込んで提言の取り組みということで、最高検に、特捜の身柄の全過程の録音、録画を含む試行をやりなさいということを言っておりまして、それのアウトプットを出していただくのが一年ということでございます。

大口委員 そうすると、法制審議会でまとまったものからアウトプットしていくということですが、可視化のアウトプットはいつごろになるんですか。

江田国務大臣 ですから、最高検で、特捜の身柄について、全過程の録音、録画を含む試行をやりなさい、その試行のアウトプットはだから一年で出してくださいと言っているわけで、録音、録画について法制化する必要があるかどうかも、これも検討していかなきゃなりません。

 録音、録画の法制化が必要であるかどうかということについて、省内の勉強会を、六月の後のなるべく早い段階について一定の方向を出していきたいと思いますが、これも恐らく、法制審の方に検討していただいて、出てくるということになると思います。

 そうすると、先へ先へどんどん延ばすんじゃないかという御懸念をいただくことがあるかと思いますけれども、それはそうではなくて、最高検の方で、これは検討ではなくて、まず試行をしなさいということを言っているわけですから、そこはもう一カ月後にはちゃんと方向が出て、実行されるというふうに私は思っております。

大口委員 時間が来ましたので、これで終わります。ありがとうございました。

奥田委員長 以上で大口善徳君の質疑を終了します。

     ――――◇―――――

奥田委員長 次に、内閣提出、民法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。江田法務大臣。

    ―――――――――――――

 民法等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

江田国務大臣 民法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 近年、児童虐待は、深刻な社会問題となっており、これまでもさまざまな取り組みが行われてきましたが、児童虐待を行う親に対しては、必要に応じて適切に親権を制限すべき場合があるとの指摘がされております。

 平成十九年に成立した児童虐待の防止等に関する法律及び児童福祉法の一部を改正する法律においても、その附則第二条第一項で、政府は、「児童虐待の防止等を図り、児童の権利利益を擁護する観点から親権に係る制度の見直しについて検討を行い、その結果に基づいて必要な措置を講ずるもの」とされております。

 この法律案は、以上のような経緯等を踏まえ、児童虐待の防止等を図り、児童の権利利益を擁護する観点から、民法、児童福祉法その他の法律を改正し、所要の法整備を行おうとするものであります。

 この法律案の要点は、次のとおりであります。

 まず、民法につきましては、第一に、二年以内の期間に限って親権を行うことができないようにする親権の停止制度を創設するとともに、子の親族及び検察官のほか、子、未成年後見人及び未成年後見監督人も、家庭裁判所に対し、親権喪失、親権停止または管理権喪失の審判の請求をすることができることとしております。

 第二に、家庭裁判所が未成年後見人に適任者を選任することができるようにするため、複数または法人の未成年後見人の選任を可能とするための所要の規定の整備を行うとともに、その選任に当たり家庭裁判所が考慮すべき事情を明記することとしております。

 第三に、親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負うこととするなど、親権が子の利益のために行われるべきものであることを明確にするための所要の規定の整備を行うこととしております。

 次に、児童福祉法につきましては、第一に、児童相談所長は、家庭裁判所に対し、親権喪失のほか、親権停止または管理権喪失の審判の請求もすることができることとしております。

 第二に、児童相談所長が、一時保護中の児童について、その監護等に関し、その児童の福祉のため必要な措置をとることができることを明らかにするとともに、児童等の親権を行うものまたは未成年後見人は、児童福祉施設の長、里親等または児童相談所長が入所中、受託中または一時保護中の児童等についてとる措置を不当に妨げてはならないこととしております。

 第三に、児童相談所長は、一時保護中または里親等に委託中の児童等で親権を行う者または未成年後見人のないものに対し、親権を行う者または未成年後見人があるに至るまでの間、親権を行うこととしております。

 このほか、所要の規定の整備を行うこととしております。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに可決していただきますようお願いいたします。

奥田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

奥田委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 ただいま議題となっております本案審査のため、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その日時、人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

奥田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、来る十五日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時十一分散会


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