衆議院

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第9号 平成26年4月2日(水曜日)

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平成二十六年四月二日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 江崎 鐵磨君

   理事 大塚  拓君 理事 土屋 正忠君

   理事 ふくだ峰之君 理事 盛山 正仁君

   理事 吉野 正芳君 理事 階   猛君

   理事 西田  譲君 理事 遠山 清彦君

      安藤  裕君    池田 道孝君

      小田原 潔君    大見  正君

      神山 佐市君    菅家 一郎君

      黄川田仁志君    小島 敏文君

      古賀  篤君    今野 智博君

      清水 誠一君    末吉 光徳君

      橋本  岳君    鳩山 邦夫君

      平口  洋君    三ッ林裕巳君

      宮澤 博行君    郡  和子君

      田嶋  要君    横路 孝弘君

      高橋 みほ君    大口 善徳君

      椎名  毅君    鈴木 貴子君

      西村 眞悟君

    …………………………………

   法務大臣         谷垣 禎一君

   法務副大臣        奥野 信亮君

   法務大臣政務官      平口  洋君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          小川 秀樹君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    林  眞琴君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  榊原 一夫君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 正木  靖君

   政府参考人

   (国税庁課税部長)    岡田 則之君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           西山 圭太君

   法務委員会専門員     矢部 明宏君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二日

 辞任         補欠選任

  門  博文君     清水 誠一君

同日

 辞任         補欠選任

  清水 誠一君     門  博文君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第三四号)


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     ――――◇―――――

江崎委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として法務省大臣官房司法法制部長小川秀樹君、法務省刑事局長林眞琴君、法務省入国管理局長榊原一夫君、外務省大臣官房参事官正木靖君、国税庁課税部長岡田則之君及び経済産業省大臣官房審議官西山圭太君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんでしょうか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

江崎委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

江崎委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。初めに、宮澤博行君。

宮澤(博)委員 おはようございます。自由民主党の宮澤博行でございます。

 本日は、大臣初め政府の皆様方、御出席いただきまして、法案の質疑をさせていただきます。余談なく早速入りますので、よろしくお願いいたします。

 外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法の一部を改正する法律案ということなんですけれども、初めに、趣旨なんですが、法案の説明の中では、この法律案は、法律事務の国際化、専門化、複雑多様化により的確に対応するため、外国法事務弁護士法人の設立を可能にするということなんですね。

 しかし、誤解というか要らぬ不安というか疑念というか、やはりこういうのが出てくるわけなんですね。外国の弁護士さんが日本で自由に事務所をどんどん開設できるのかとか、外国資本で日本の弁護士が駆逐されてしまうのじゃないか。今TPPの議論がありますので、似たような不安、まあTPPの不安というものはそれは現実の不安であるかもしれません、そういう似たような不安というものがやはり出てきているわけなんです。

 ですので、これらの不安や疑念をどのように払拭してよりよい法制度の基盤をつくっていくのかというのをこの審議の中で明らかにしなくちゃいけないわけなんですが、それにおいては、この法律の仕組みだけじゃなくて、既存の弁護士法人のあり方ですとか既存の外国法事務弁護士のあり方、そういったものも同時に調査をしていかなければならないだろうなと思っております。ぜひよろしくお願いいたします。

 さて、先に整理をしておかなくちゃいけないのがこの法律の今までの経緯ですね。

 これは、昭和六十一年に制定されて六十二年の四月に施行された外国法事務弁護士制度、そこから始まったわけなんですが、その後、平成六年、平成八年、平成十年と平成十五年、四回の改正が行われていると私は記憶をしております。承認基準が緩和されたり、共同事業の要件が緩和されたり自由化されたりというさまざまな緩和があった。外国法事務弁護士による弁護士の雇用の解禁もあったわけなんですね。

 しかし、それらの途中に、平成十三年、弁護士法人制度が導入された。そしてその後、規制改革・民間開放推進三カ年計画で外国法事務弁護士の法人化について検討ということが盛り込まれた。

 この後、平成二十一年八月、外国弁護士制度研究会の中間取りまとめがあり、パブリックコメントがあり、そして同じ年の十二月に外国弁護士制度研究会が報告書をまとめて提出された。この中には、いわゆるA法人、B法人があったわけですね。A法人というのは外国法事務弁護士事務所を法人化する、今の法案に非常に近いもの、B法人というものは共同事業を法人化していこうということだったわけなんです。

 まず、この二十一年八月から十二月の間に行われたパブリックコメント、このパブリックコメントでどういった内容の意見が出たのか、ここのところはまず把握しておかなければならないと思いますが、御答弁をお願いいたします。

小川政府参考人 お答えいたします。

 ただいま御指摘いただきましたパブリックコメント、平成二十一年八月に実施されたものでございますが、この中には二つの考え方、一つは今お話ございましたA法人、もう一つはB法人、両方の考え方を示してございました。

 今回の法改正の対象となっております外国法事務弁護士法人、いわゆるA法人につきましては、自由な競争を確保するための制度的基盤として、提供者である外国弁護士の参入のための選択肢がふえるものとして賛成するという、これは経済団体からの意見でございますが、そういったもののほか、外国弁護士にも日本の弁護士に許容されているのと同様の法人形態で業務を遂行する選択肢が与えられることになるので歓迎する、これは外国の大使館からの御意見でございますが、そういった賛成の意見が寄せられました。導入に反対する意見はなかったものと承知してございます。

 これに対しまして、B法人、いわゆる共同法人でございますが、共同法人につきましては、外国弁護士参入の選択肢がふえるものであり、基本的に望ましいと評価できる、これも経済団体の考え方でございますが、こういった賛成意見もあった一方で、現状では共同法人の社員である外国弁護士が日本法に関する法律事務に不当に関与するおそれを払拭することはできないといった反対意見もございました。

 こういった状況を踏まえまして、今回の改正法案におきましては、外国法事務弁護士法人の導入のみを対象として、共同法人の制度については外国法事務弁護士法人の活動状況等を見た上で検討していくこととされたものと承知してございます。

宮澤(博)委員 ありがとうございました。

 パブリックコメントの結果を経て、A法人には反対意見はなかったけれども、B法人には反対意見があったということなんですね。後ほどこの件については改めて触れたいと思います。

 この法人化、パブリックコメントはそうだったんですけれども、パブリックコメントは、中間取りまとめを出して、その意見というわけなんですが、そもそもこの制度をやろうというふうになったそのきっかけ、つまり、経済界もしくは諸外国から何らかの要望、圧力があったのかどうなのか、そこのところも把握しておきたいと思いますが、説明をよろしくお願いします。

小川政府参考人 お答えいたします。

 外弁法人制度の創設につきましては、国外からの要望といたしましては、アメリカ、それからEU、オーストラリアといったところからそれぞれ要望がされております。例えばアメリカで申し上げますと、日米規制改革及び競争政策イニシアチブ、二〇〇一年版でございますが、この米国政府の要望書などに示されているものでございます。

 また、国内からの要望といたしましては、規制改革・民間開放推進三カ年計画、平成十六年三月十九日閣議決定のものでございますが、それから構造改革特区第十九次提案、平成二十二年十月のものでございますが、これらにおいてそれぞれ要望がされているものと承知しております。

 以上でございます。

宮澤(博)委員 今、アメリカ、EU、オーストラリアという話がありました。

 そして、その後、国内のことに関しては、規制緩和の計画、そういった官製のもの、政府が立てたものについてのお話はありましたけれども、日本の実業界や法曹界、そういった政府以外からの声、要望は、このパブリックコメント以前、研究以前にはあったのかなかったのか、そこの点はどうなんでしょうか。

小川政府参考人 経済界から明示的な形で要望が出たかどうかということについて私ども承知しておりませんが、先ほど申し上げました構造改革特区第十九次提案は、これは大阪市の提案になるものでございまして、国際的な法的需要に適切に対応する観点から、外弁事務所についても日本弁護士事務所と同様の位置づけで法人化が可能となるように早急に求める、こういう内容でございました。

宮澤(博)委員 ありがとうございました。

 大阪市さんがどういった法曹界のニーズを捉えているかというのは、そこまではおわかりになりますか。なかなか答えにくいですか。はい、わかりました。

 では、次の項目に移りたいと思います。

 今回の法改正の目的なんですけれども、先ほど提案理由の説明の中で、国際化、専門化、複雑多様化という話はさせていただきましたけれども、しかし、それはお題目であって、この法改正で何が変わるのか、そこのところは目的として、メリットとして押さえておかなくちゃいけないんですね。

 今回の法改正で、外国法事務弁護士の業務範囲が広がるわけではない、そういった見方もあるわけなんですけれども、では、何がメリットなのか。従たる事務所、支店を置くことができる、法人だから借金ができる、雇用が容易になる。これら、どうなんでしょう、法人化のメリット。今回の法改正のメリット、それは一体何なんでしょうか。

奥野副大臣 目的というよりはメリットでお答えしますけれども、今、皆さん方御承知のとおり、経済界は国際化が進んでいる。特に、MアンドAを通じて外国企業を買収して国際化を進めているというような経済環境にあるわけであります。

 私がMアンドAを積極的にやったのが十年以上前でありました。そのときに外国企業を買収する案件もたくさんありまして、そのときに大変不便を自分の身で経験したことがあります。それは何かというと、外国のコンサルタントをそのときだけ外国から雇ってきて、外国の法律を教えてくれよ、そんなようなことをやった経験があります。

 そういうことを考えていく中で、日本の外国人弁護士というものも、個人では開業できるようになっておりますけれども、これを共同経営化するというか、企業化するということのメリットは何なんだ、こういうことであろうかと思います。

 そういうことを考えていくと、一つは、多国籍の企業をMアンドAするようなときに、Aという会社があって、その本店がニューヨークにあって、支店がイギリスにある、特許権はドイツのものを使う、そういうようなときに、外国弁護士が一つの企業としてまとまっていると、日本のMアンドAをしようとする企業は利便性が非常に高くなるわけですね。こういうようなことが一つ。

 それから、支店を置けるわけでありますから、日本全国どこへでも支店を置くということで考えてみると、MアンドAをしようとする企業が、いろいろなところで弁護士企業に対して問いをぶつけることができる、そんなメリットもあると思います。

 それから、共同経営体の中にXという人間がおって、その人がよんどころない事情でどこかに行かざるを得なくなった、そのときに、Yという代替の人をすぐ供給することができるわけでありまして、MアンドAをやろうとしている企業から見ると、継続性が非常にスピーディーに維持できるということもメリットの一つだろうと思います。

 それに加えて、賠償能力という面から見ると、共同経営体といいますか、外国人弁護士業を行う企業が受けて立ってもらうこともできるし、弁護士個人に加えて、企業としても賠償能力があるわけでありますから、そういう面ではいろいろと、MアンドAをやろうとする企業にとっては、仕事が非常にしやすくなるというメリットはあるのではないかと思います。

 上手に言えなかったかもしれませんが、できるだけわかるように言ったつもりであります。よろしく。

宮澤(博)委員 ありがとうございました。

 先生の実体験に基づく御説明で、大変よくわかりました。ありがとうございました。

 では、制度の中身について多少質疑をさせていただきたいと思います。通告と多少順番を変えさせていただきますので、よろしくお願いします。

 最初に、社員についてお聞きをしたいと思います。

 この法律案の中にも、社員ということが出てくるんですが、これは、法律をわかっていらっしゃる方はもう当然のことではありますが、社員、会社員、社会通念上のものと法律上の社員というのは全く別物なわけなんですね。

 実際、この法律を見てみても、この法の第五十条の十三によって弁護士法の規定が準用されているわけですが、弁護士法の第三十条の十三が準用されている場合、これは代表の話になる。弁護士法第三十条の十五が準用されると、これは債務に対する無限責任ということになるわけですね。

 ですので、社員とは一体どういうものなのか、改めて確認のためにも聞いておきたいと思います。お願いします。

小川政府参考人 お答えいたします。

 一般的な概念で申しますと、社員という場合には会社などに雇用されている従業員を指すことがあるように思われるわけですが、法律でしばしば用いられます社員という概念は、例えば株式会社の株主のように、法人の構成員としての地位を有するものとして用いられてございます。

 この法律案における社員も、会社法の合名会社の社員とほぼ同様の地位を持つものでございます。

宮澤(博)委員 ありがとうございました。

 社員になっている弁護士の方はいざというときに無限責任の債務を負うということではありますが、そうしますと、実際、弁護士法人が解散、破綻、清算、そういったことが今国内で事例としてあるのかどうなのか、そこのところもお聞きしておきたいと思います。これは外国法事務弁護士の話ではあるけれども、やはりそれをかがみとして見るためにちょっと質疑しておきたいんです。

 平成二十三年、二十四年、二十五年、この三カ年ぐらいで結構です。弁護士法の三十条の二十三には弁護士法人の解散が規定されているわけですが、解散の理由が第一号から第七号まで掲げられています。それぞれについて、どういう数字、件数があるのか。特に第四号の破産手続開始の決定、これらは現状はどうなのか、債務の額はどうなのか、もしかしたら社員の数もわかれば、ぜひ御説明をいただきたいと思います。

小川政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねの弁護士法人の解散の状況についてでございますが、申しわけございませんが、法務省として、統計上、正確なものは把握してございません。

 ただ、弁護士法人制度が施行されました平成十四年四月から平成二十五年三月末までに設立されました弁護士法人の総数は六百八十九ございまして、他方で、平成二十五年四月一日現在の弁護士法人の数は、これは清算中の法人なども含めまして六百五十七法人であるということからいたしますと、三十二程度の弁護士法人が既に何らかの理由で解散をしている。各年ごとといいますか、全体としての数字としては以上のようなところでございます。

宮澤(博)委員 わからないというなら仕方ないですけれども、そこら辺のところは、やはり今後わかるようにしていく努力というか、制度的な改変、そこら辺もちょっと御検討いただけたらありがたいなというふうに思います。

 さて、さらに質問を進めさせていただきます。

 次は、使用人たる弁護人についてお聞きしたいと思います。

 これは、使用人たる弁護人というよりも、共同事業のあり方、制度のあり方そのものまでお聞きをしたいなと思うんですが、今回、法五十条の十一というものがあります。これは、「外国法事務弁護士法人は、自己の業務の範囲を超える法律事務の取扱いについて、その雇用する弁護士」、日本の弁護士ですね、日本の弁護士に「業務上の命令をしてはならない。」という旨の規定があるわけなんですね。

 平成十五年の改正で、外国法事務弁護士による弁護士の雇用解禁、日本の弁護士を雇っていいよということになったことはなったんですが、ちょっと事例を紹介させていただきたいと思います。

 外国法事務弁護士さんが日本の弁護士さんと新たに外弁さんを雇用しているのはどんな状況かというと、事務所としては十七だそうです。そして、雇用している外弁さんが、雇用主が二十七、雇われている日本の弁護士さん四十六、雇われている外弁さん三十六ということなんですね。結構日本の弁護士さんも雇用されている。では、外弁さんが日本の弁護士さんのみ雇用しているケースはどうかというと、六事務所、雇用主は八人、雇われている日本の弁護士さん十五人ということですね。これは平成二十五年四月一日のデータであります。

 ということは、疑念として、外国法事務弁護士さん、外弁さんが日本の弁護士さんを雇用し、国内司法に参入するということがもうこじあけられている。外国法事務弁護士さん、外弁さんが本国の大規模な事務所の余力を持って日本の司法に参入する、こういう疑念が生まれてきてしまうわけです。だから法五十条の十一があるわけなんでしょうけれども、だから規定するんだと答えられると困るんですよ。

 もう一つ事例を紹介させていただきます。

 共同事業、つまり外弁さんと日本の弁護士さん、もしくは日本の弁護士法人さんが共同事業を行っている場合を見てみたんですけれども、提携関係は三十六ありますよ、平成二十五年の四月で。その中で、全く同じ名前のものが二十三あるんです。そして、似た名前のものは三つなんです。似た名前というのは、外国法という文言が入っているかいないか、これが三。全く異なる名称が十。これは私も内実までわかりませんけれども、データを見ただけですから何とも判断できませんが、類似するものも含めて三十六の中で二十六、ほぼ同じ法人じゃないかと思われる、そういう状況なんですね。

 ということは、この法五十条の十一が制定される前から、既にこの条文は形骸化しているということなんですね。既に外弁さんが日本の弁護士さんを雇用して、業務命令ではないけれども、その雇っている弁護士さんが独立の存在として共同事業を組む。言ってみれば、B法人というものは、今回採用しないといっても、B法人が既に現実としてできてしまっているような状況、B法人と同じ効果が現実として広まっている状況、そういうふうに解釈することができるんです。

 ですから、この法五十条の十一はその機能を本当に果たし得るのかどうなのか、そこのところはちょっと説明していただきたいと思います。

小川政府参考人 今回の改正法におきましては、外弁法人が弁護士を雇用することを禁止しておりませんで、個人の外弁と同様に雇用は可能でございます。

 ただ、外弁法人が被雇用弁護士などを通じて権限外事務を取り扱うことを防止する必要があることから、御指摘ございましたように、改正法案の五十条の十一において、雇用関係に基づく業務上の命令を禁止するなどの弊害防止措置を設けたものでございます。

 また、この措置を実効的なものとするために、届け出をさせるということも行っているところでございまして、こういったことについての違反行為があれば、日弁連による懲戒、あるいは、非常に悪質な場合は刑罰によって臨むことも可能でございます。

 それから、御指摘ございました、ほぼ同一の法人名、これは法律上、経済的に一体のものということであれば許容するということが平成十五年改正の一つの内容でございます。

宮澤(博)委員 ありがとうございました。

 事務方の説明としては、もうそう答えざるを得ないと思いますし、今私が説明したものも決して法律違反ではないはずなんです。ということは、これは現実として受けとめなくちゃいけないと思うんですが、既に外国弁護士さんが日本の弁護士さんを雇用して入ってきているというこの現状、さらにはB法人というものがもうほぼ現実のものになっている現状、これをどのように捉えて今後対応していくのか。そこのところは、どうでしょう、お考えがあればお聞かせいただきたいと思います。

奥野副大臣 余り専門でないので、事務方の答弁と似たり寄ったりになるかもしれませんが、いずれにしても、今までは外国人弁護士が日本で個人で活動するということは認められていたというのは委員御指摘のとおりです。その外国人弁護士は、日本の法律に基づくいろいろな仕事をしてはならぬという規制がありました。弁護士というのは士業の中でもいろいろな仕事ができるわけですね。それから、弁護士にいろいろ仕事をされたら困るというほかの士業もあるわけです。結構いろいろな芽がたくさんあるよということは一つの事実だと思います。

 そうした中で、今まで外国人弁護士が日本の法律に基づいた仕事をして、いわゆる日弁連から懲戒処分を受けたり、あるいは刑事罰を受けたりした事例は今まではございません。

 その延長線上で、今度も、共同経営体、いわゆる外国弁護士の組織が、では、パートナーとして日本の法律に基づく弁護士を、一緒に仕事をすることができるかと言ったら、できないんです。しかし、いそ弁的な、要するに事務作業的な人を、日本の法律にたけたいそ弁的な人を雇い入れるということはできる。

 しかしながら、例えばそれを逆手にとって、日本の法律に基づく弁護業をやると、今度は日弁連から批判を受けて、懲戒処分を受けてしまう、そういうような自制能力を持っている組織だと私は思っていますから、そういう意味では、今までどおりのやり方で、特に心配したことは起こらないんじゃないかと私は思っております。

宮澤(博)委員 ありがとうございました。

 この外弁さんが日本で仕事をするということを法人としてやっていくということですが、ちょっと制度の方へ戻りたいんですけれども、では、実際、法務大臣によるこの外弁さんの承認の実態、それから指定法の実態、これはどうなんでしょうか。

 というのは、もう簡単に承認をしてしまっている、指定法は認めてしまっている、そういう形なのか。承認の数はこちらで把握はできるんですが、申請の数というのがなかなかわからないんですね。申請の数があって承認の数があって、どれだけ難しいものなんだろう、そこら辺も把握しておきたいものですから、説明をお願いいたします。

小川政府参考人 お答えいたします。

 申請に対する答えとしての承認という形での統計ではございませんで、年ごとにとっておりますので、恐縮でございますが、平成二十三年の申請件数は四十九件、二十四年が四十四件、平成二十五年が五十五件でございます。

 承認の件数の方は、平成二十三年が五十五件、平成二十四年が四十二件、平成二十五年が四十九件でございます。

 それから指定の関係でございますが、指定の関係につきましては、特に法十六条一項二号、これは、「特定外国の外国弁護士となる資格を有する者と同程度に当該特定外国の法に関する学識を有し、かつ、その法に関する法律事務の取扱いについて五年以上の実務経験を有する者」、そういう条件のもとで認めるものでございますが、この十六条第一項二号による指定法につきましては、平成二十三年から二十五年までの三年間で指定された例はございません。

宮澤(博)委員 申請の数より資格の承認の方が多い年があったりなんかして、ちょっと、おやとは思ったんですが、それはさておき、承認されなかった事例というのはどういうものがあるんでしょうか。わかったら答えてください。

小川政府参考人 具体的には、もちろん、承認には要件がございますので、例えば職務経験要件を満たさないとか、あるいは一定の賠償能力などということが求められますので、そういった要件を満たさない場合ということでございます。

宮澤(博)委員 ありがとうございました。

 きょうは、この外弁の法人設立の法案の質疑をさせていただきました。

 さまざまな疑念というか不安がやはりあります。弁護士さんの中にもあります。

 今後、日本の社会をどのように法的に安定させていくのか、弁護士さんの業界をどのようにしていくのか、そして、外弁さんと日本の弁護士さんのあり方をどうしていくのか。また、司法、法曹養成の改革があって、その見直しもなされている。たくさん弁護士さんが出てきているけれども、なかなか就職口がない。また、裁判以外の紛争処理の話も考えていかなくちゃいけない。そういう中で、この外弁さんと日本のあり方、法的安定性のあり方、法社会の全体的なあり方、どのようにビジョンを持っていらっしゃるのか、ぜひ最後に大臣に御所見を伺いたいと思います。

谷垣国務大臣 法の支配をあまねく推し進めていくという観点からいいますと、日本の弁護士だけではなくて、外国法事務弁護士の法的サービスが充実して、国内法、国外法両方のサービスを十分に受けられるようにする、その基盤をつくっていくということは私は極めて大事だと思います。

 先ほど副大臣からも具体的な経験に基づいたお話がございましたが、今度の法改正も、そういう国内法、国外法双方についての充実したサービスを提供できるような体制をつくっていこうということの一環でございます。

 ただ、今いろいろその副作用に対する御心配は言及されましたね、五十条の十一等々が骨抜きになっていないかというような問題でございます。そういうところも十分目配りしなければいけませんが、私どもは、そういう法の支配を推し進めていく観点から、国内法、国外法双方の法的サービスが十分に利用できるような環境をつくっていく、こういう気持ちで臨んでまいりたいと思っております。

宮澤(博)委員 どうもありがとうございました。

江崎委員長 次に、遠山清彦委員。

遠山委員 公明党の遠山清彦でございます。

 私も、早速、本改正案の質疑に入りたいと思います。

 この改正案によりまして、宮澤委員からもいろいろありましたとおり、外国法事務弁護士、必ずしも外国人だけじゃありませんけれども、日本人で外国で資格を取った方も含んでのことでございますが、いわゆる外弁とよく略される皆さんが社員となりまして、外国法に関する法律事務を行うことを目的とする法人を設立することが可能になります。

 まず私が伺いたいのは、この制度の創設によりまして、法務省としてはどの程度の外弁法人が実際につくられると見込んでいるかということをお聞きしたいと思っております。

 ちなみに、日本の弁護士、これは既に法人化が認められているわけですが、日本の弁護士の登録者数は現在三万五千百五人、実際に法人化されている団体は七百四十三団体にすぎません。ですから、三万五千百人の弁護士がいて、法人は七百四十三団体ということでございます。

 実は、法務省の資料によりますと、外国法事務弁護士の登録者数は三百七十六人しかいないわけでございます。そうしますと、三万五千の日本の弁護士で七百四十三の法人ですから、三百七十六人の外国法事務弁護士だと団体の数はそんなに多くないんじゃないかという印象を受けますけれども、どのような見解を持っているか、小川部長から伺いたいと思います。

小川政府参考人 お答えいたします。

 この法律案に基づきます外国法事務弁護士法人の具体的な設立見込みの件数を求めることはなかなか困難ではございますが、今御指摘ございましたように、現時点で外国法事務弁護士の数が三百七十六名程度であることからいたしますと、今回の法改正によって創設される外国法事務弁護士法人の数にも、当然のことながら、おのずと限度があるものと思われます。

 他方で、これまで国内外から法人制度の創設に関する要望が継続してあったこと、それから、検討の過程において外弁の事務所などにヒアリングをした際にも一定の要望などがあったことからいたしますと、ある程度の利用数は見込まれるものと認識しているところでございます。

遠山委員 そうですね。実際にどれぐらいの外弁法人ができるか、これは法改正をしてみて結果を待つしかないという面はあるかと思います。

 今回の法改正の必要性につきましては、今、司法法制部長から若干言及がありましたけれども、法律事務の国際化、専門化及び複雑多様化により的確に対応するためという説明を法務省さんはしております。確かに、グローバリゼーションも進みまして、日本政府も外国企業の日本への投資増加などを歓迎している観点から、欧米諸国関係団体などからも要望があったと認識をしております。

 私、大臣に伺いますけれども、今回の改正を、欧米の関係団体、例えば具体的に一つ申し上げますと、欧州ビジネス協会、これは在日のヨーロッパ諸国の商工会のような組織でございますが、EBCと略されておりますけれども、このEBCの昨年の報告書では、本改正案を原則歓迎しながらも、先ほども宮澤委員の質問にあったかと思いますが、外国弁護士と日本の弁護士の双方で構成される弁護士法人ではないという点について強く批判をしております。

 そこで、大臣にまず基本的なことを伺いますが、この法人の社員を外国法事務弁護士に限定した理由について、御説明をいただきたいと思います。

谷垣国務大臣 今委員がおっしゃいましたように、EBC、欧州ビジネス協会等々からは、弁護士及び外国法事務弁護士がともに社員となる法人の制度、いわゆる共同法人とかB法人とか言っておりますけれども、それに対する強い御要望もあったことは事実でございます。

 ただ、それにつきましては、先ほど小川司法法制部長も御答弁申し上げたと思いますが、外国法事務弁護士が法人制度を利用して権限外の業務を行っていくということについて、それを容認するのじゃないかという懸念があるという御意見がありました。そういう弊害が生じないような立法のあり方というものもいろいろ我々は議論してきたんですが、現段階に至るまで、十分その懸念を払拭するというところまで至っていなかったというのは一つございます。

 それから、他方、外国法事務弁護士による法人の設立に関しては、アメリカやEU等の要望がございまして、それは、外国法事務弁護士だけが社員となる、そして外国法に関する法律事務を行うという、いわゆるA法人と申しますか、外弁法人と申しますか、そういう設立を可能とすることによってアメリカやEUの要望に応えることができるのではないか。だから、差し当たって、これを速やかに実現する必要があるというようなことで、今回の立法になりました。

 つまり、いわゆる共同法人というものをこれで全部なしよとかというようなことを必ずしも考えているわけではございませんで、外国法事務弁護士のみが社員となる法人の設立、それから、その利用状況あるいは活動状況を見た上でまた検討していく必要はあり得るのかな、このように考えております。

遠山委員 いろいろ御丁寧に御答弁いただいて、ありがとうございます。

 それで、大臣が今おっしゃった一つ目の点ですね。つまり、外国法事務弁護士が法人をつくって、その法人を利用して、今大臣のお言葉だと権限外の事務を行うおそれがあるということで、これは言いかえれば、日本法にかかわる法律事務を取り扱うことをいわば違法に行う可能性が起こるという懸念を大臣がおっしゃったんだと思います。

 それで、ちょっとまた事務方に伺いたいんですが、確かに社員になれるのは外国法事務弁護士だけなんですが、この法人が日本の弁護士を雇うことはこの法律でもできるということになっております。この雇われた日本の弁護士は、当然、日本法を取り扱う有資格者でございますので、法人業務外で日本法にかかわる法律事務を取り扱うことは可能だと認識をしておりますけれども、この点は間違いないでしょうか。

小川政府参考人 お答えいたします。

 日本の弁護士が、外弁法人の業務のほかに、個人で日本法に関する事件を受任することは可能でございます。

遠山委員 そこで、また大臣にお伺いをいたしますが、外弁法人の社員になれるのは外国法事務弁護士だけですが、その法人に雇用された日本の弁護士がいて、その人が日本法にかかわる法律事務を法人業務外で取り扱うことができる。

 そうしますと、この法人はこの弁護士を雇っている雇用主でございますので、これはあってはならないことかもしれないけれども、理論的には、自分が雇った日本の弁護士が日本法の法律事務を行う、そして、自分はその弁護士を法人において雇用しているという関係をいわば利用、悪用とまで言っちゃいけないのかもしれませんが、利用して、事実上関与することが可能なのではないかという指摘も一部であるやに聞いておりますが、この点についての法務省の御見解を伺いたいと思います。

谷垣国務大臣 外国法事務弁護士法人も、弁護士との関係で緊密な提携・協働関係をつくって、複雑多様化している法的需要にきちっと対応していく必要性がある、これは当然でございますが、それは自然人である外国法事務弁護士も同様であるということから、外国法事務弁護士法人についても日本の弁護士を雇用することができるという今までの経緯がございました。

 他方、今おっしゃった点ですが、外国法事務弁護士が、雇用している弁護士を通じて、権限外の事務といいますか、非弁活動ということにもなるのかもしれませんが、そういうことを取り扱うことを防止する必要があるではないかということから、外国法事務弁護士法人についても、雇用関係に基づく業務上の命令を禁止するなどの措置、五十条の十一といったような規定が生まれておりまして、弊害をストップさせる措置、弊害を生じないようにさせる措置というのができている、こういうことでございます。

遠山委員 そうすると、大臣が今おっしゃったように、法律の条文では日本の弁護士を雇用できるけれども、その人が法人の業務外で行う日本法を取り扱う業務について法人が不当に関与しないように罰則つきで法整備がされています、こういうふうに理解をしているわけでございますが、そこで、大臣、もう一点伺いたいと思います。

 先ほども私、申し上げましたけれども、基本的にあってはならないことでございますが、仮に、この法改正によって可能となった法人が、法律で禁じられている業務を実際行っているかどうかのチェックをする体制はどうなっているのか。これは、私も法律を読みまして、一義的には、弁護士会、また日本弁護士連合会、日弁連に監督責任があるというふうに理解しております。

 ところが、この日弁連と外弁法人との関係において、例えばですけれども、ちょっと疑わしい業務を、権限外のことを法人がやっているんじゃないかといったときに、情報を開示せよと弁護士会あるいは日弁連が言ったときに、クライアントとの守秘義務の関係で全ての情報を開示できませんと弁護士会に断りを入れてきたりした場合、どこまで日弁連あるいは所属の弁護士会が調査できるのか、つまりチェックをしっかりできるのかどうか。これがしっかりしていないと実際の摘発にはつながらないと思いますので、その点について大臣の御見解をいただきたいと思います。

谷垣国務大臣 これはなかなか難しいところもある問題でございますが、今おっしゃった秘密保持義務というか守秘義務は、これは、弁護士の仕事というのが、依頼者が法律事件について秘密に関する事項を打ち明けて法律事務を委任するという、その職務の特質がありますから、弁護士にとっては基本的な職業倫理であるというふうに考えられてきた。

 その事情は、外国法事務弁護士でも、その職業、プロフェッションを確立するためには当然必要なことだとして、外弁法の五十条一項において弁護士法第二十三条を準用してそういった倫理を法の上でもフォローしているわけですね。

 そこで、確かに、今おっしゃったような、日弁連が監督するとしても、いや、職業上の秘密である、だめだということになれば、そこから先はなかなか行きにくいということも事実でございます。ただ、これは日本の国内弁護士についても同様の仕組みでなっておりまして、日弁連が監督していくということになっても、やはり職業上の守秘義務があるということは前提になっている。

 ですから、そういう意味では、国内弁護士それから外国法事務弁護士は同様の規律のもとにあるということになっておりまして、日弁連の懲戒手続の中でそこは適切な対応、御判断をなさるのではないか、こう思っております。

遠山委員 わかりました。

 大臣、冒頭申し上げたように、実際どれぐらいの数の外弁法人ができるかというのはまだちょっとわからないところがありますし、せっかく法改正しますのでゼロでは困ると思いますけれども、最初の数はそんなに多くないんじゃないかと私は推測しております。そういう意味でいうと、そこの最初に出てくる外弁法人の活動がスムーズに滑り出すことでこういった問題も、おっしゃったように、日本の弁護士も一緒ですよと言われればそのとおりなわけでございまして、しっかりとその辺のコンプライアンスの確保については法務省も目を光らせながら、また日弁連の自律性のもとでしっかりとやっていただきたいというふうに思います。

 それから、再び事務方に御答弁を求めたいと思いますけれども、本改正案では、外国法事務弁護士法人は複数の事務所を設けることができるとされております。ただし、条件がついておりまして、全ての事務所に社員が常駐をしなければならないとされております。

 その理由について丁寧に御説明をいただきたいと思いますけれども、これは弁護士法の規定を準用しているからと理解をしているんですが、ただ、弁護士法人の場合は、社員が常駐しない従たる事務所を設ける特例措置というものが認められております。しかし、外国法事務弁護士法人は、複数の事務所を設けてもいいですよといいながら、全ての事務所に社員が常駐しなさい、こういう規定しかなくて、特例はないと理解をしております。もし私の認識が間違っていれば正していただいても構いませんが、いずれにしても、なぜ全ての事務所に社員が常駐しなければならないのか、御説明いただきたいと思います。

小川政府参考人 お答えいたします。

 今回の改正法案では、御指摘いただきましたように、いわゆる複数事務所の設置を外弁法人に認めますとともに、従たる事務所についてのいわゆる常駐義務というものを定めてございます。

 これは弁護士法人でも基本的には同様でございまして、外弁法人の事務所がいわば非弁行為の温床となることを防止し、つまり、弁護士はいないで、ほかの事務員と称するような人などが法律事務をとるといういわゆる非弁行為の温床となることを防止し、あわせて弁護士会による指導監督の実効性を確保する必要があるということから、その事務所に当該事務所の所在地の弁護士会の会員である社員を常駐させなければならないこととしたものでございます。

 他方で、弁護士法人の従たる事務所においては、委員から御指摘がございましたように、特例措置、すなわち、例外的に非常駐許可の規定が設けられております。

 これは、いわゆる弁護士過疎地域における法律事務の需要に対応するといった公益活動の基盤となることも期待されておりまして、常駐はしていなくても、一定期間中に何回か来るということによってもそのニーズに対応するということを踏まえたものでございまして、そういった公益活動の基盤となることも期待する、こういったことが理由でございます。

 しかしながら、外弁法人についてはそのような、これは条文で申しますと弁護士法三十条の十七のただし書きに当たりますが、そのただし書きに相当する部分は準用してございません。この趣旨は、外国法に関する法律事務のみを取扱業務といたします外弁法人につきましては、少なくとも現時点におきましてはこのような例外的な措置を講ずる必要性が認められないということによるものでございまして、以上の理由から、非常駐許可の規定を設けないこととしたものでございます。

遠山委員 よくわかりました。

 要は、専門家でない私の言葉で申し上げれば、日本の弁護士法人も外国法の弁護士法人の場合も、原則的には、非弁行為が行われないように全ての事務所に社員を常駐させなければいけない、有資格者がいなきゃいけない。しかし、日本の弁護士の場合は、過疎地域、弁護士がほとんどいないゼロワンとか呼ばれている地域でも法律サービスを提供するために、やむない場合は特例として弁護士のいない事務所を設けることを認めている。この外国法事務弁護士法人の場合はそういうニーズがないだろうということで、ないというふうに理解をいたします。

 まあ理論上は、弁護士過疎地域でも、もしかしたら、ニューヨーク州法に基づく相談がないとは一〇〇%言い切れませんが、それはそのときで考えればいいということで、最後の質問に行きたいと思います。

 大臣に伺います。

 これは私がきょう質問する中では一番答えづらいお話なのかもしれませんが、要するに、外国法事務弁護士法人だけに限らず、日本の弁護士法人もそうなんですが、社員の責任が無限であるという問題についてでございます。

 無限であるということは、もしいろいろなトラブル、債務の関係が生じて、法人の財産で債務を完済できないときには、原則として法人の全社員が無限連帯責任を負うという形になっております。

 先ほど私が言及いたしました欧州ビジネス協会の報告書では、有限責任制度の導入をぜひしてもらいたいということを言っております。私の限られた知識の理解では、外国においては、一定規模の弁護士法人は有限責任事業組合、英語でリミテッド・ライアビリティー・パートナーシップ、LLPと呼ばれる方式になっていますので、社員の責任というのは有限化されているわけです。

 先ほど申し上げましたように、これは日本の弁護士法人も無限責任になっておりまして、ですから、欧州ビジネス協会の報告書は、日本の弁護士法人も外国法事務弁護士法人も、両方とも有限責任制度を導入すべきではないかと言っているわけでございますが、今回の法改正でも導入されておりません。その理由についてお聞きしたいと思います。

谷垣国務大臣 委員おっしゃるように、今の日本の弁護士、現行の弁護士法人の社員、これは無限責任を負う、それで外弁法人にも同様な規律を及ぼしていこう、こういうことなんですが、その背景にある考え方は、いわゆる外弁法人も弁護士法人と同じように、基本的には、構成員たる社員個人の人的信用を基礎とする、そういう法人である、だから、社員に無限責任を負わせることによって依頼者その他の債権者の保護を図るべきものだという考え方が背景にあるわけでございます。

 そういう観点からしますと、確かに有限責任法人というものは外国にあるようでございますが、債権者をどう保護していくかという観点からは相当な詰めが必要な議論だということになると思います。

 それで、それでと言ってはなんですが、弁護士法人の中に指定社員制度というものが設けられておりまして、外弁法人についてもその制度を利用したらどうかということになるわけでありますが、要するに、特定の事件を担当する社員を指定する、この事件に関してはこの人が担当であるという社員を指定することによって、この事件について全く業務に関与しない社員は無限責任を負わない、そういうことが可能である、そういう仕組みは用意されているところでございます。

遠山委員 よくわかりました。

 無限責任を全社員に及ぼしたくない法人の中で、特定の事件というか事務について特定の社員を充てることで責任を事実上限定化することができるという制度で、それを今回の法改正で容認される外国法事務弁護士法人も使えるということを確認させていただいて、ちょっと早いですけれども、私の質疑を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

江崎委員長 次に、階猛君。

階委員 おはようございます。民主党の階です。

 本日は、外弁法改正案の審議ということですが、きのう、この委員会の一般質疑の中でも袴田事件の問題が取り上げられました。法と証拠に基づいて対応という大臣の御答弁もありましたけれども、その再審に関しては、私は、ちょっと法律の不備があるのではないかという問題意識を持っておりまして、まずはそのことからちょっと御質問をさせていただきたいと思います。

 まず、資料一というのをごらんになっていただければと思います。

 ちょっと細かくて恐縮なんですが、過去に死刑が確定した事件について再審開始決定が確定した事案ということを一覧表でまとめました。一番から免田事件、財田川事件、松山事件、島田事件と並んで、最後に袴田事件ということであります。

 細かくは御説明しませんけれども、過去の四つの事件と比べて、今回の特徴は四つぐらいあるかなと思っております。

 まず第一に、死刑確定から再審開始決定までの期間が長いということであります。

 これまで一番長かったのは、一番の免田事件であります。この免田事件は、再審請求が第六次まで行われまして、その第六次で再審開始決定がなされるまでの期間が大体二十七年です。それに対して、今回の袴田事件では、再審請求は第二次なんですが、開始決定まで三十四年もかかっている。つまり、非常に長い時間がかかったということが一点目です。

 それから第二に、この再審開始決定なんですけれども、今回の特徴としましては、静岡地裁という、従前、死刑判決を下した裁判所においてこの決定がされたということであります。

 ほかの四つの事件で見ますと、再審請求がされた場合に、まず、死刑判決を下した裁判所で決定されるんですけれども、そこでは棄却になって、その後、上級審で覆って再審開始に至っているということでありますから、この点も二つ目の特徴として挙げられるということであります。

 それから第三として、再審事由として、死刑判決の決め手となった物的証拠について、きのうも指摘されていましたけれども、捏造の疑いが指摘されています。

 ほかの事件では、この表でいいますと、下から三つ目の行ぐらいですけれども、再審事由の要旨というところをごらんになっていただきたいんですが、いずれも自白の信用性が否定されて再審開始決定に至っているということであります。これが三点目。

 それから、最後四点目ですけれども、再審開始決定後、直ちに身柄が釈放されたということであります。

 ほかの事件では、再審開始の決定が確定して、それから再審が行われて、無罪になって初めて身柄が釈放されたということで、ここも大きく違うということです。

 以上を指摘した上で、これから質問に入らせていただきます。

 まず、第一の指摘した点に関係して、死刑囚や被害者遺族の心情がないがしろにされているのではないかということです。

 袴田さん自身も、死刑執行の恐怖と向き合う精神的苦痛の中で、精神的に病気を抱えられたというふうに仄聞しております。また、遺族にしても、いつまでも事件が終結しないことによって、次への一歩を踏み出せないまま、思いを引きずってしまうということがあります。再審請求の手続を明確にして、予測可能性を持たせて、期間も短縮すべきではないかと思っております。

 ちなみに、今の再審の規定、刑訴法にありますけれども、第四百四十五条に「事実の取調」という条文はありますが、余り細かいことは決められていなくて、これではどのような手続でいつまでかかるのかということが事前には読めないということで、先ほど言ったように、被害者あるいは死刑囚に対して余りに心情をおもんぱかっていないのではないかというふうに思います。この点について、大臣からの御所見をお願いします。

谷垣国務大臣 袴田事件については、今委員は、死刑確定から再審開始決定まで三十四年というふうにおっしゃいました。特に、平成二十年の四月に第二次再審請求がなされまして、ことしの三月二十七日にその第二次の請求の中で再審開始決定がなされた。そうすると、今三十四年とおっしゃいましたけれども、その申請からこの決定まで六年かかっている。私は、むしろ、まず三十四年というのは一次がございましたから、そこが一つ意味のある、意味のあると言ったら語弊がありますが、数字かなというふうには思います。

 ただ、私も今回、再審までどうなっているのかと多少事務方からもいろいろ聞いてみまして、相当、年間、再審請求はあるようでございまして、大部分のものは短い時間で処理されているけれども、やはり、難しいと言うとなんでございますが、先ほどお挙げになりました四大再審事件と言われるようなものは、いずれも相当長期間を要していることは事実でございます。

 それで、この袴田事件については、いまだ係属中のものでございますので、私の方からその件については詳細なコメントは避けるべきであるというふうに考えておりますが、先ほどのようなことを申し上げますと、できるだけ、裁判の迅速の要請というのは他方であるわけでありますが、相当個別の要素もあるんだろうというふうに私は思っておりまして、長短を一概に言うことはなかなか難しいのかなと思いますが、私としても今後よくこの点は勉強していきたいと考えております。

階委員 事務方で結構なんですが、再審開始請求の審理をどうするか、どういう手続で進めるかということについては、普通の公判手続と違って余り規定がないと思っていまして、先ほど、四百四十五条、「事実の取調」ということを私ちょっと挙げましたけれども、何かほかに、こういう手続の流れで進んでいきますよというものはありますか。

林政府参考人 御指摘の再審請求審の手続の構造でございますが、まず、基本的に通常審は、検察官、あるいは被告人、弁護側、あと裁判所、こういった形での当事者構造をとっておるわけですが、再審請求審につきましては、再審請求を受けた裁判所が職権で判断していく、審理をしていく手続でございます。そのために、その審理も非公開となっております。

 そういったことから、確かに、その職権手続でどのような審理を行うかということは、個別事案に即してその裁判所において進めているものでございまして、そういった形で、通常審に比べますと、そういった審理の手続に関する規定は少ない状況にございます。

階委員 大臣にも問題意識は共有していただけたのかなと思っておりますけれども、やはり、予測可能性がないまま再審の請求の審理が長引くということは、当該死刑囚にとっても、また被害者にとってもよくないことだと思っていますので、ぜひ、ここはしっかり検討していただきたいと思います。

 それから、先ほど申し上げた二つ目の点なんですが、過去の再審開始決定は、死刑判決を下した裁判所ではなくて、その上級審が決定しているという点です。

 なぜそうなのかということを私なりに考えてみますと、やはり、過去に自分たちが下した判決を同じ裁判所、幾らその裁判官自体がメンバーがかわっているとはいえ、過去の先輩がやったことを否定するわけでございますから、なかなかやりにくいのかなと。

 やはり、私としては、現行法、刑訴法四百三十八条で、条文としては「再審の請求は、原判決をした裁判所がこれを管轄する。」ということになっていますけれども、これは見直して、再審の請求があった場合には第三者的な裁判所でこれを審理した方が、より客観的な、かつ妥当な審理ができるのかなと思うんですが、この点はいかがでしょうか。

谷垣国務大臣 今の階委員の問題意識に私も十分お答えする能力があるかどうかわからないんですが、かなり多面的なことを考えなければいけないのではないかと思います。

 現行制度のたてつけは、要するに、いわゆる原判決をした裁判所で行うという仕組みになっております。今委員のおっしゃったように、簡単な事件は別としまして、現実に、複雑な、相当長期を要しているようなものに関しては、必ずしも、裁判官の顔ぶれが同じということはほとんどあり得ないのが現実だろうと私は思います。

 それに加えまして、では、どういうところに持っていくのかというのも、けさ大分いろいろ聞いてみたんですが、どうもいろいろな要素があるようでございまして、再審の構造とあわせて、それは、地裁で判決を出したら高裁に持っていくのがいいのか、あるいは最高裁にいきなり持っていくのがいいのかといっても、それぞれかなりの問題があるように、けさの段階で私は認識をいたしました。

 この点については、余り答弁に長々使ってもいけませんので、個別にわたることは差し控えますが、もし御関心があればまた刑事局長にお聞きをいただきたいと存じます。

階委員 では、そこは後で聞かせていただければと思います。

 次に、第三の点です。

 捏造疑惑が出てきたということで、きのう、STAP細胞でも小保方さんに同じような疑いがかけられているということで、やはり、多分、捜査機関の方としては、それに対して承服しがたいから即時抗告だということで、きのうも答弁されたと思うんですね。ただ、確かに承服しがたい気持ちもわかるんですけれども、疑いをかけられるようなことを今までしてきたということは真摯に反省していただかなくてはいけないと思っております。

 あの村木事件のフロッピーディスクの偽造の問題、それから、私も取り上げました石川さんの捜査報告書の偽造の問題なども過去にあった中で、この捏造というのを、闇に伏すといいますか、ちゃんと真剣に調べないまま、国民に説明責任も果たさないまま終わらせてしまうというのは私は問題だと思っております。

 既に捜査機関への信頼が失墜した中にあって、こういう問題、こういう指摘が裁判所からあったわけですから、早急に国民への説明責任を果たす、その観点から、直ちに法務省としても内部調査を行って真相を明らかにすべきではないかと思いますけれども、この点、大臣、いかがでしょうか。

谷垣国務大臣 きのう、鈴木貴子委員の御質問にも、日々に新たにというような言葉で私は御答弁を申し上げたところでございますが、今現実に即時抗告を申し立てているところでございますので、私が、証拠の評価はどうあるべきかとか、そういう問題について詳細に申し上げるのは差し控えたいと思っております。

 ただ、即時抗告審で再審開始決定の当否をめぐって審理が行われるわけでございますから、少なくとも、静岡地裁でああいう指摘を受けているわけでございますから、当然のことながら、検察としては、証拠等々をどう評価するかということを真剣に模索しながら臨むのではないかと考えております。

階委員 捏造があったかどうかということと、今回の再審開始決定が妥当かどうかというのは必ずしも一体ではないと思っていまして、捏造があったかどうかというのは、まさに捜査機関に犯罪行為があったかどうかということで、仮に捏造があったとすれば、捜査機関としては、四人も殺人して、そして住宅に火をつけたという重大な事件ですから、もし有罪になれば死刑だということは当然予測可能、にもかかわらず、有罪を決定づけるような証拠を捏造したというのであれば、私は、いわば捜査機関による袴田さんに対する殺人罪の間接正犯だと思います。

 それぐらいの重要な問題があるということであれば、確かに、裁判の手続にのっとって即時抗告をしていくというのもいいでしょうけれども、この捏造疑惑に対しては、きちんとやはり法務省として対応して、疑いがあれば晴らしていく。また、仮に、万一事実ということであれば、関係者の適正な処分と再発防止策ということを講じていかなければ、私はまずいのではないかと思います。もう一度、大臣に御見解をお願いします。

谷垣国務大臣 その点は先ほどの繰り返しになりますが、当然即時抗告の過程の中で問題点が明らかになってくると思いますし、適切に検察としても当然対応しなければなりません。

 私としては、現在、この即時抗告に関して、裁判所で審理が行われるということを重視したいと思っております。

階委員 裁判の話と捏造の話を私は切り分けるべきだと。なぜなら、捏造という問題は組織の信頼性にかかわってくる問題ですから、それはやはり、疑いで、根も葉もないということであれば晴らしていかないと組織のトップとしてはまずいのではないかということで、あえて私は法務省の立場に立って申し上げているという面もあるということを御理解ください。

 これがうやむやにされて、国民に対して説明責任を果たせないのであれば、多分、この間の報道ぶりからして、多くの一般国民は、検察がまた捏造したなということで終わってしまいます。裁判の経過に任せていけば、どんどんそういうふうになってしまうと思いますから、私は、大臣のお立場であれば、早く捜査機関への信頼を回復するための手だてを講じるべきだということを重ねて申し上げます。

 そして、四つ目の点に移らせていただきます。

 身柄釈放がまだその再審開始決定も確定していない段階でされたということについて、私は、過去の例と比べて特別であるということを御指摘申し上げました。

 ちょっと前提として事務方にお尋ねしたいんですが、今回のこの再審開始決定の身柄釈放を決めた部分について、これだけ取り出して異議申し立てをしたというような報道に接したんですけれども、これは間違いないかどうか。そして、仮にそうであれば、その異議申し立てに対して今どういう状況になっているのかということを御答弁いただけますか。

林政府参考人 今回の再審開始決定には、再審を開始するという決定の部分、それから、死刑及び拘置の執行を停止する、こういう決定部分、この二つの部分がございます。それにつきまして、後者である死刑及び拘置の執行を停止するという決定部分については、検察官は通常抗告というものをいたしました。それが棄却されているということになってございます。

階委員 という状況で、身柄釈放ということが続いているわけですけれども、まず、そもそも、死刑の場合に、刑の執行ではなくて、身柄を拘束しているのは拘置という法律的な整理になるんだそうです。刑の執行ではないということなんです。

 一方、法律上の条文で言うと、刑訴法四百四十八条の二項ということなんですが、「再審開始の決定をしたときは、決定で刑の執行を停止することができる。」ということで、刑の執行は停止することができるということなんですが、先ほど言った死刑囚の拘置について停止できるという条文はありません。

 過去には、私の模範六法、免田事件の裁判例が載っていますけれども、死刑の執行を停止した場合、刑法十一条二項の拘置の執行を停止することはできないというような裁判例もあったそうでして、こういう状態だと、今回はたまたま、裁判所の英断と私は思いますけれども、英断で身柄の釈放がされましたけれども、今後またこういう結論が導き出されるかどうかはわからない。

 過去の例を見ると、免田事件というところで先ほどの裁判例があったわけでして、むしろ、四百四十八条二項が、あえて刑の執行停止と言って拘置の停止というのは言っていないということを根拠にして、引き続き身柄を拘束し続けるということにもなりかねないわけでありまして、私としては、条文を改正して、この部分については、死刑囚の再審開始の場合も、刑訴法四百四十八条二項を準用して拘置を停止できるようにすべきではないかと思うんですが、この点、大臣、いかがお考えでしょうか。

谷垣国務大臣 確かに、今、階委員がおっしゃったように、四百四十八条二項は、明文では拘置の執行を停止するということは書いておりません。かつては、拘置の執行を停止できないという、明文規定がないことを理由にこれを否定する見解もあったようでございますが、いわゆる松山事件や島田事件等々で、この二項によって拘置の執行を停止したという例が重なっておりまして、そういう解釈に基づいて、この四百四十八条二項によって拘置の執行を停止することができるということで運用がなされているものというふうに理解をしております。

 先ほど刑事局長が、拘置の執行の停止に対する特別抗告を申し立てたと言っておりますが……(階委員「通常抗告」と呼ぶ)通常抗告をしたと言っておりますが、あれも、このような解釈を前提として、四百四十八条二項としてそういう判断が裁判所はできるんだけれども、それに対して通常抗告をしたということでございまして、この解釈自体は検察も否定しているところではございません。

階委員 一点確認ですけれども、再審開始決定のときに身柄が釈放されたのは、今回が初めてじゃないかと。今大臣の御答弁だと、過去の事件でもあったというふうにおっしゃったんですが、いかがですか。

谷垣国務大臣 確かに、先ほどの島田事件、松山事件と申しましたのは、再審無罪判決後にそのような判断をしたということでございます。

階委員 ですから、再審開始決定のときに釈放されたというのは今回が初めてのケースですが、大臣の御答弁からすると、今回のような扱いというのはもう解釈上確立されていて、裁判所の裁量で釈放することは全く問題ないんです、法改正をしなくてもいいんですということをおっしゃられたということでよろしゅうございますね。

谷垣国務大臣 そのような解釈が確定していると考えております。

階委員 よくわかりました。

 それで、今回の開始決定の翌日に、これは衝撃的だったんですけれども、袴田事件の被害者の方の中で唯一生き残られた長女の方が亡くなられています。新聞記事によると事件性はないということで、この再審開始決定との因果関係が明らかではないんですけれども、これは大臣にお聞かせ願えればと思うんですが、当然、大臣の立場でも御関心を持っていることだと思うんですが、この再審開始決定と因果関係がないということは言い切れますか。

谷垣国務大臣 私も、この記事が出たのは早速拝見しまして、承知はしているんです。ただ、法務大臣として、被害者の御遺族が亡くなったか否かというのを、こういう形では知ったわけでございますが、公的に知る立場にございませんし、また、そういう報告があるわけでもございません。ですから、ちょっとそれに関して申し上げるのは差し控えたいと思います。

階委員 一般論として言えば、被害者の遺族の方が、真犯人は見つかって死刑囚になって、いずれ死刑が執行されるだろうと思って長年過ごしてきた、ところが、その死刑囚というのは実は無罪かもしれないということで再審開始決定が下されたということになると、非常に心理的なダメージは大きくて、自分の今まで我慢してきたのは何だったんだろうと思って、場合によっては、言い方に注意しなくちゃいけないですけれども、みずから命を絶つといったことだって想定されなくはないと思うんですね。

 そういう心理的ダメージも考えるのであれば、やはり、こういう決定がされた後、捜査当局なりしかるべきところから被害者の心のケアというのはされるべきではないかと思うんですけれども、事実関係として、こうしたケアというのはされたのか、あるいはそういうことを考えておられるのか、事務当局からお願いします。

林政府参考人 お尋ねの、こういった特定の個別事件でそういった対応がなされたかどうかということについては、検察当局の活動内容にかかわる事柄でございまして、お答えすることは差し控えたいと思います。

 なお、被害者に対する配慮あるいは被害者の御遺族に対する配慮というものが重要であることはもとよりでございますが、そういった場合、検察当局においては、こういった裁判結果でありますとか加害者の釈放等については、御遺族の御要望があるなし、そういう有無等を踏まえながら、そういった個別の中で説明の要否あるいは内容等について判断していくものと考えております。

階委員 再審開始決定になって冤罪が晴れるというのは、これはこれでいいことでありますけれども、一方では、被害者にとってみると、真犯人がいなくなる、わからなくなってしまうということで、その心理的なダメージにも私は配慮する必要があると思っていまして、この手の事件があったならばそうしたことにも目配りする必要があるのではないかということをお伝えしたいと思います。

 また、この点については、どうしたことが考えられるのかというようなことは私も考えていきたいと思っています。

 そこで、死刑執行についてもちょっと話をしたいんですが、三月の三十一日に再審請求が棄却された飯塚事件というのがありました。この飯塚事件では、再審請求の準備中に死刑が執行されたということです。再審請求手続が逆に始まっていれば死刑が執行されていなかったのではないかという気もしますが、この点について、参考人、いかがでしょうか。

林政府参考人 再審請求手続が始まっていれば死刑は執行されていなかったのではないかというこの御質問、仮定の御質問に関してはお答えをしかねるところでございます。

 なお、死刑執行に関しては、個々の事案について関係記録を十分に精査して、刑の執行停止、再審事由の有無等について慎重に検討し、これらの事由等がないと認めた場合に初めて法務大臣において死刑執行命令を発することとされているものと承知しております。

 なお、再審請求は、法文上は、法務大臣が死刑の執行停止を命ずる事由には当たらないということとなっています。

階委員 事実関係を参考人からお願いしたいと思いますが、きのう、田嶋委員からの質疑の中で、確定死刑囚が百三十人ぐらいいる中で、再審請求中が八十何人という御答弁があったと思います。再審請求の手続中に死刑執行がされた事案は過去にあるのか、あるとすればどのようなケースだったのかということを教えていただけますか。

林政府参考人 まず、平成二十六年三月三十一日現在で未執行の死刑確定者は百三十一人おりまして、そのうちの再審請求中の者の人数は九十人となっております。

 その上で、過去に再審請求中に死刑の執行が行われた事例はあるものと承知しております。

 なお、その当該事案の内容等につきましては、未執行の死刑確定者の心情に与える影響等に鑑みまして、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。

階委員 過去に再審請求中に死刑執行がされた事案があったということなんですが、再審請求中ということであれば、場合によっては冤罪という可能性もあるわけで、私はここは非常に慎重でなくてはいけないと思っております。

 一方、この委員会でも以前に議論をさせていただいたんですが、大臣は、死刑執行の命令を下す際には記録を精査して慎重に判断されるということだったんですが、その大臣の目に触れるというか上がってくる案件というのはどこでどのようにして選ばれているのだろうか。まさか確定死刑囚百三十一人全部の記録に目を通すわけにはいかないと思いますので、事務方がセレクトして上げてくるんだと思うんですが、その基準とかその方法とかはどうなっているのかということを参考人からお願いします。

林政府参考人 死刑執行の判断につきましての内部的な手続等にかかわる事項については、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。

 死刑執行に関しては、個々の事案について関係記録を十分に精査して、先ほども申し上げましたが、刑の執行停止、再審の事由の有無等についてこれを慎重に検討し、これらの事由等がないと認めた場合に初めて死刑執行命令を発することとして、法務大臣において判断しております。

 また、その過程において、刑事局を含めた法務省内の関係部局の検討を経ているものでございます。

階委員 私が最近読んだ本で、大臣に死刑執行を判断していただく前に、死刑執行起案という刑事局内部の手続があると聞いたんですけれども、これはどのようなものなんでしょうか。

林政府参考人 ただいま申し上げましたが、死刑執行に関しては、個々の事案について関係記録を十分に精査して、刑の執行停止、再審事由の有無等について慎重に検討し、これらの事由等がないと認めた場合に死刑執行命令を発することとされております。

 その過程におきまして、刑事局を含めた法務省内の関係部局が、今申し上げた点等について十分な精査、検討をしております。その際、委員が今言われた起案というものと一致するものであるかどうかはもちろん定かではございませんけれども、検討に必要な書面の作成をしているところでございます。

階委員 これは、死刑執行起案という、担当の検事がこの死刑執行に問題がないかどうかというのをまず判断した上で大臣に最終的な判断を仰ぐというやり方だと、まさに担当の検事が生殺与奪の権を握っているということなんですが、法制度としては、死刑囚については六カ月以内に執行ということで、機械的と言ったら語弊がありますけれども、ある程度の基準は客観的に定められているわけです。ところが、現実には、今回、袴田さんも、冤罪の疑いがあるから当然といえば当然なんですけれども、何十年も執行がされないで来ている、そういう方もたくさんいらっしゃるわけですね。

 死刑執行の対象者を恣意的に選ばないという法律の基準にのっとって公平に選ぶような仕組みが一方では必要だと思いますし、死刑制度を存続するという立場に私は立っていますけれども、そういう仕組みが必要であると考えますし、ただ、その一方では、冤罪による死刑執行を防ぐということも、これは極めて根本的な課題だと思っております。

 こうした、恣意的に選ばないということと冤罪を防ぐということを両立させるような方策について、大臣として何かお考えになっていることがあれば、お願いします。

谷垣国務大臣 二つ今お挙げになりました、冤罪の発生を防ぐ、恣意的ではないということが何よりも大事なことだと私も思います。

 私も、なかなかお答えが難しいなと思ってここに立たせていただいたんですが、冤罪を防ぐという点になりますと、恐らく、先ほどの担当する検察官の調査もそうですし、私も記録を精査するときに考えておりますのは、やはり行為者の同一性といいますか、要するに、この人がこの事件の実行行為者である、その情状に対するような意見はいろいろあるだろうと思いますが、私自身は行為者の同一性というところを一番注意して、もちろん、私はプロの刑事裁判官でもありませんし、プロの検察官でもございませんから、私の能力は限界があるだろうと思います。しかし、私が一番精査すべきことはその同一性である、実行行為をした人がこの人であるか、そこのところを私の能力の及ぶ限りきちっと精査をする。

 そのほか、いろいろ考えなければならないことはあろうかと思います。今のお答えが十分かどうかはわかりませんが、私としては、そのように考えて対応しております。

階委員 私は、谷垣大臣は、そのあたりは重々考えてやられる大臣だと思っていますから、その点は信頼しておりますけれども、もっとシステムとして考えた方がいいのではないか、どなたが大臣になられても、あるいはどなたが担当検事であっても、間違いのない死刑制度の運用というのがされるようなシステムというのも考えていかなくちゃいけないのではないかということをお伝えしておきます。

 その上で、ちょっと残りの質問は時間の関係で後回しにしまして、外弁法の話に戻りたいと思います。

 まず、この改正の必要性ということなんですが、今回の改正の目的として、国際化、専門化、複雑多様化に的確に対応ということがきのうの趣旨説明でもあったかと思うんですが、現在の制度では対応できないのだろうかということです。この点について、大臣から御説明をお願いします。

谷垣国務大臣 ちょっと私も頭を切りかえませんと。

 確かに、今おっしゃったように、非常に複雑多様化、専門化、国際化している、先ほど副大臣からも御答弁があったところでございますが、こうした法的ニーズに今まで外国法事務弁護士という方々が対応してこられた、これだけ複雑化してまいりますと、これまで以上により的確に対応することが必要になってくるだろう。

 そこで、平成二十年の三月に閣議決定されました規制改革推進のための三カ年計画という中でも、これまで以上に的確に外国法事務弁護士に対する法的ニーズに応えるということを目的とする、そういうふうになっております。

 委員の御質問は、今までの制度では応えられなかったかというものでございましたよね。(階委員「はい」と呼ぶ)応えられないというわけでは必ずしもなかったとは思います。ただ、やはり法人化することによって、その組織なり全体の対応力がより充実したものになっていくということはそのとおりだと思います。

 それから、地方にやはり支所を設けるということ。今までは東京三会に集中する傾きがございましたけれども、地方にそういうニーズがないとは言えないと思いますので、そういった面で、今までよりも国際化や事件の複雑化に対してより適切な対応を図っていくということではないかと思います。

階委員 私が見る限りでは、国際化、専門化及び複雑多様化に的確に対応というよりは、外国の要望に的確に対応しているという感じもするわけです。

 まず、その立法の必要性が仮にあったとしても、手段として相当なのかどうかということもちゃんと考えておかなくてはいけないと思っていますけれども、なぜ、このA法人、B法人という中のA法人、法律でいうと外国法事務弁護士法人となりますけれども、それを設立することが従来よりも国際化、専門化、複雑多様化に的確に対応できることになるのか。

 先ほども副大臣の方から御説明がありました。支店で地方のニーズにも対応できるとか、あと、引き継ぎが容易であるとかいう法人のメリットも挙げられましたけれども、何かちょっとぴんとこないところもありますので、もう一度大臣から、この法人をつくることによって的確に対応できるようになるんだというその根拠ないし理由を御説明いただけますか。

谷垣国務大臣 今度の制度改正が認められますと、先ほど申したことの繰り返しになるかもしれませんが、資格取得国が異なる者を含む、例えばイギリスであったりアメリカであったり、あるいはオーストラリアであったり韓国であったり、その複数の資格者が法人として組織されるということが可能になります。そして、業務の共同化あるいは分業化、専門化というものが進むということで、利用者に今までよりも質の高い多様な法律事務が提供され得るのではなかろうかというのが一つでございます。

 それから、これも先ほど申し上げましたけれども、複数の事務所の設置が可能となるということによって多様な外国法サービスを全国的に展開することがやりやすくなってくるということ。

 それから、受任主体が法人化することによって、受任主体が法人だということになりますと、業務担当者等の交代等が円滑になるという面もあるでしょうし、それから、社員が法人と連帯して責任を負うということになりますので、依頼者に対する事務所の賠償能力というか、補償能力というか、そういうものが強化されるということになると思います。

 それから、法人名義で財産を持つとか、借り入れるとか、あるいは従業員の雇用を行うということが可能になりますので、いわば事務所の足腰を強化するということができるようになるのではないか。

 そういうメリットがあって、それが国民の法的ニーズに十分応えていく効果を私どもは期待しているということでございます。

階委員 今の説明で手段が一定の相当性があるということはわかりましたけれども、私は、もっといい手段があるのではないかと。

 つまり、日本の弁護士でも弁護士法人というのはつくれるわけでして、日本の弁護士は外国法の仕事も当然ながらできるわけですね。問題は、日本の弁護士がそういった仕事をするスキルがない。だから、そのスキルをどんどんつけてもらおうということで、私は、法科大学院制度、法曹養成制度の改革というのがなされたんだと思っているんですね。

 そういった方向で法曹養成制度改革を進めていこうというのが、これまで政府が目指していた方向ではなかったのかということを確認させていただきたいんです。

谷垣国務大臣 階委員のおっしゃったことは、私もそうだと思います。

 平成十三年の六月十二日、司法制度改革審議会の意見書にも、国際化時代の法的需要に十分対応するため、弁護士の専門性の向上、執務体制の強化、国際交流の推進、法曹養成段階における国際化の要請への配慮等というようなことが挙げられておりまして、そういうことを通じて国際化への対応を強化すべきであるというふうに言われております。

 それから、昨年六月に法曹養成制度検討会議取りまとめというのをいたしましたが、その中でも、関係機関や団体等の連携のもとに、日本の弁護士の海外展開を促進し、また、日本の弁護士が国際案件処理についての能力向上に努めつつ、海外展開業務を充実させる必要があるというふうにされております。

 ですから、私ども国といいますか法務省としても、そういうことを目指していることは事実でございますし、事実、私は法務省に参りましてから、私どもが法曹としての教育を受けたときよりも格段にそういう方向が充実して、若い弁護士の方でそういった業務に応え得る方もふえているなとは思っておりますが、まだまだ海外展開に関する、私どももそういう検討なり推進策を常に検討しておりますが、今後とも努力をしなければならない点があるだろうと思います。

階委員 ですから、法曹養成制度改革で国際業務をする弁護士がどんどんふえていれば、実は今回の改正は必要なかったのではないか、十分に国際化、専門化、複雑多様化のニーズに応えられているというふうになれば、あえて外国法事務弁護士法人なるものを日本の弁護士法人のほかにつくる必要はなかったのではないかというふうに思うわけです。

 実際問題、法曹養成制度改革の結果、国際的な業務に従事する弁護士がどの程度ふえたのかということをもし把握されているようであれば、これは数字ですので事務方でも結構なんですが、お答えいただけますか。

小川政府参考人 お答えいたします。

 法曹養成制度改革の結果、国際的な業務に従事する弁護士数がどの程度増加したかという点につきましては、国際的な業務というのをどう定義づけるかなどの問題もございまして、具体的な数字としては直接は把握してございません。

 ただ、外国法事務弁護士に雇用されている弁護士という観点で見ますと、平成十七年四月一日に雇用が解禁された後、平成二十五年四月一日現在で合計四十六名となっております。また、外国法共同事業にかかわる弁護士について見ますと、平成十七年四月一日時点におきましては、事業数は十九、被雇用者を含め事業にかかわる弁護士数は三百十二人でございましたのが、二十五年四月一日現在では、事業数は三十六、弁護士数は六百七十七人となっておりまして、増加傾向にございます。

 また、弁護士の海外への進出という観点から見ますと、大手事務所に対するアンケートに基づくものではございますが、海外展開拠点の状況として、本年一月の時点におきまして、中国、ベトナム、シンガポール、タイ、ミャンマーなどに合計二十カ所以上の海外拠点が存在しており、これらの拠点において、四十名以上の日本の資格を持った弁護士が活動をしてございます。また、海外出向研修の概況といたしましても、アメリカ、イギリスを中心とする欧米諸国に約四十名弱、中国、シンガポール、ベトナムなどのアジア諸国に約四十名弱の法曹有資格者が出向し研修を行っている。これは大手事務所の状況でございますが、以上の状況でございます。

階委員 今、日本の弁護士がどういう仕事をされているのか、それを踏まえた上で、こういう新たな法人が必要なのかどうかというのを説明いただけると、より納得性が高まるのではないかと思います。

 あと、私の資料でいうと、資料の一番最後、資料七というのをごらんになっていただけたらいいんですが、「外国法事務弁護士の登録状況内訳」、平成二十五年四月一日現在なんですが、弁護士会別で見てみますと、やはり東京三会が圧倒的に多くて、大阪、愛知はちょっと桁が違ってきているということで、ほかは推して知るべしというような状況でございます。

 先ほど、わかりやすく支店と申し上げましたが、正確には従たる事務所というんでしょうか、この従たる事務所の設置が認められるというお話でしたけれども、果たしてそのニーズというのはあるのだろうか。地方に従たる事務所を展開していくようなニーズは今のところないような気がするんですが、こうしたデータを踏まえても、従たる事務所の設置を認める必要があるというのであれば、その理由を、大臣、お答え願えますでしょうか。

谷垣国務大臣 確かに、先ほどもちょっと申し上げましたし、今も委員が指摘されましたけれども、現に、登録されている外国法事務弁護士は九割が東京三会に集中しているということは事実でございます。

 それで、今まで法人化というものが認められておりませんでしたから、従たる事務所も設置することができなかった。今後、東京以外の都市にも、具体的にどうなっていくかはこれからの展開を見なければわかりませんけれども、それが設置することが可能になったこと、そういうことを通じて、東京以外のところでも外国法に関するサービスを受け入れることができるようになる、利用できることになるのではないかと期待しているところでございます。

階委員 一枚戻っていただいて資料六を見ていただきたいんですが、この外国法事務弁護士の業務実態というところで、下の方に、バツを二つ冒頭につけている項目があります。日本の弁護士は日本法及び外国法を取り扱うことが可能であるのに対し、外国法事務弁護士は、日本法に関する法律事務を取り扱うことがまずバツ、それから、我が国の裁判所、行政庁での手続に代理人として関与することもバツだということが書かれております。

 日本法に関する法律事務を取り扱うことについて、どうやってその規制が守られているかどうかをチェックするのかということについては、先ほど質疑の中でも触れられていましたので、ここはちょっと飛ばさせていただきまして、もう一方の、我が国の裁判所、行政庁での手続に代理人として関与すること、これの潜脱行為が行われかねないのではないかという問題意識からお尋ねします。

 質問の事前の通告の8をごらんになっていただきたいんです。

 外国法事務弁護士あるいは外国法事務弁護士法人の業務範囲としては、今申し上げたように、法廷での代理は認められていないんだけれども、一方で、契約書をつくることは可能なわけでして、契約書で準拠法とか管轄裁判所の定めを置くことはよくある話です。この準拠法とか管轄裁判所を海外にすれば、実質的に法廷の代理ということも可能となって、業務範囲の制限をいわば潜脱できるようなことも可能なのではないかと思っております。

 そもそも、これを潜脱と言うのかどうかも議論となるかもしれませんけれども、こうした点については別に問題ないと考えていらっしゃるのかどうか、あるいは、潜脱になるのでチェックしなくちゃいけないということを考えていらっしゃるのかどうか、これは参考人からお願いします。

小川政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のような場合、もちろん、契約書によって準拠法や管轄裁判所を海外のものにするということは可能でございますが、そもそも、外国法事務弁護士がとれる事務自体が、出発点から、日本法に関する事務はとることができませんので、その意味では、余りそういった状態が多く出てくることはないのではないかというふうには見てございます。

 ただ、仮に、潜脱と評価されるような場合があり得るといたしますと、これはもちろん個別具体的な状況に即してということではございますが、日弁連などの関係機関における懲戒等の手続で、そういった実態も踏まえた上で適切に判断されるものと承知してございます。

階委員 この法案に関して、最後にまとめとして大臣にお尋ねしますけれども、私は、こういう国際業務については、日本の弁護士あるいは日本の弁護士法人がなるべく対応するようにして、それでサービスの受け手の利用もより便利になるようにするというのが原則だと思っていまして、それで足りない場合に、海外の弁護士さんの力もかりて、今回のような外国法事務弁護士法人というものの設置を認めるべきだということで、補完するような役割というのが正しい考え方なのではないかなと思っております。

 それは、現在、弁護士さんが過剰ぎみでありますから、そうした方の職域を確保するという意味でも重要なことだと思っていますし、国益を守るという観点からも重要だと思っています。

 そのあたりの、原則が何で、あるいは例外というか補完すべきものが何かというのは、私は、大臣として明確な見解をお示しすべきではないかと思っていますが、大臣のお考え、日本の弁護士のあり得べき姿、そして海外の弁護士にどのように国内で活躍してもらうのかということの調和というかその関係について、御説明いただけますか。

谷垣国務大臣 私は、今委員がおっしゃいましたように、弁護士の数がふえているということも事実でございますから、日本の弁護士は、もちろん国内法事件も充実して、さらに職域も広げていく、これは努力をしなきゃいけない、法務省としても大きく関心を持っているところでございますが、それと同時に、外国法についても職域を広げてもらいたいと思っております。

 私、今、法務省がやっております途上国等に法制度支援をするのは非常に大事なことだと思っておりまして、単に法制度をつくるというだけじゃなしに、法律家の養成等々をお手伝いするということが、その国との長い友好関係にも非常に意味がございますし、さらに、日本との経済関係等々も、日本が相当寄与してその国の法制度を高めていったということになりますと、日本との経済関係にもプラスの面がたくさんあるだろうというふうに思っております。

 したがって、そういう業務に日本の法律家がどんどん業務を広げて参画してもらいたい、そのことは法務省としても積極的に後押しをしたい、このように考えているところでございます。

 他方、では、外国法事務弁護士はどういう仕事をしていただくべきかということになりますと、これはもちろん、日本の国内法には関与することができません。それぞれの御専門の外国法を中心に仕事をしていただいて、法の支配に関する基盤をつくっていただく。

 その意味では、外国法事務弁護士と日本の弁護士が扱うあれが必ずしも、補完関係と言っていいのかどうか、実は私も十分考え詰めているわけではなくて、それは、それぞれの長所とする分野というものでそれぞれ競争されたらいいのではないかと私自身は思っております。そこらあたりもまたよく勉強させていただきたいと思います。

階委員 ぜひよろしくお願いします。

 最後、わずかな時間となりましたので、ちょっと途中で割愛したところに戻りますけれども、袴田事件を受けて、今、法制審では新時代の刑事司法制度特別部会の議論が佳境に入っていると思うんですが、やはり私は、三つの点についてはきちんと進めるべきだと思っています。

 一つは、取り調べの可視化です。その特別部会にかけられたたたき台の中で、全過程可視化を原則とする第一案と、部分的な、裁量的な可視化を目指す第二案というのがあるんですが、私は、第一案が中心となるべきだと。

 袴田事件でも、実は、今回の再審請求の中では余り触れられていなかったんですが、四十五通の自白調書のうち、四十四通の任意性が否定され、原判決では一通だけ証拠能力が認められたということなんですが、もし全過程可視化であれば、残り一通についても、その前後の状況から不採用になり得たということもあり得るかもしれません。

 こうした取り調べの全過程可視化ということと、それから、そのたたき台からは漏れているんですが、二月十四日の参考資料で小野委員という方から、再審請求審においても、公判前ないし期日間整理手続と同等の証拠開示が行われるべきだという意見が出されておりまして、これに同調する委員からの意見も多数ありました。この点についても積極的に進めていただきたい。

 それから最後に、証拠隠滅罪等の引き上げということがたたき台にありますけれども、捜査機関が同種の罪を犯した場合にはさらに加重すべきだという議論が、従前あったものがたたき台からは漏れていますので、この点についても、今回の件を受けて、検察あるいは捜査機関の信頼回復という観点から、しっかり検討していただきたいということを申し上げたいと思います。

 以上、時間が参りましたので、終わらせていただきます。ありがとうございました。

江崎委員長 次に、西田譲委員。

西田委員 維新の会の西田譲です。

 本日もどうぞよろしくお願い申し上げます。

 さて、本日は外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法一部改正法律案ということでございまして、これも初めて読みながら勉強させていただいたわけでございますけれども、これは、もともと制定されている弁護士法に対して、外国の弁護士の方が日本国内で活動するに当たっての特別措置をつくった、昭和六十一年、先ほどの議論の中でも経緯が御説明されておりましたけれども、そういうことでつくられた法律であって、今回の法制は、趣旨説明でも大臣おっしゃっていらっしゃいましたとおり、国際化ということの中、もしくは専門家、もしくは複雑多様化、そういったものにしっかりと対応していこうという趣旨での今回改正ということでございました。

 ですけれども、現行法を踏まえて改正案を読んでいきますと、趣旨にあるような印象というよりも、むしろ外国の弁護士の方の活動をいかにして制限してやろうかというような印象を持つわけでございますね。これは読んだ中での私の偏見かもしれませんけれども、偏見は大事だなと思っておりまして、偏見を大切にしながら、きょうは質問をしていこうかなというふうに思っております。

 まず、そもそも、名称なんでございますけれども、非常に実はなじみがないんですね、事務弁護士というものは。そもそも、日本には事務弁護士という資格があるわけじゃないわけでございまして、突然いきなり事務弁護士というのが外国法に関してだけ登場するわけでございますけれども、事務弁護士というのは何ぞやということで調べてみますと、イギリスとかは事務弁護士なんですね。法廷弁護士と事務弁護士、バリスターとソリシター、こういうことで、むしろ事務弁護士というと、詳しい方はイギリスかなというふうに思ってしまうわけでございますね。なぜ今回、今回といいますか、制定当時でございますけれども、あえて事務弁護士という名称にしたのか。

 当然、外国法事務弁護士、これは日弁連に登録して会員になるわけでございまして、そういった意味では弁護士同様に認められた範囲内で法律事務を行うわけでございますから、例えばアメリカ合衆国ニューヨーク州弁護士、もしくはイギリス国弁護士、フランス国弁護士とか、そういうふうに言った方が依頼する側からもわかりやすいというふうに思うわけでございますけれども、なぜこのような事務弁護士という名称をいきなり登場させたのか、その経緯について御説明をいただきたいと思います。

小川政府参考人 お答えいたします。

 まず、外弁法は、外国の弁護士となる資格を有する者が国内において外国法に関する法律事務を取り扱うことができる道を開き、かつ、その法律事務の取り扱いを弁護士の例に準じて規律するなどの特別の措置を講じて、渉外的な法律関係の安定を図るということを目的とするものでございます。

 外国弁護士が我が国で取り扱います業務の範囲は外国法に関するものでございますが、法廷活動は含まれておりません。事務弁護士という名称は、今も御指摘ございました、原則として法廷活動を行わない英国のソリシターの訳語として定着しておりまして、外国法事務弁護士といえば、取り扱う対象が外国法であることと、許される事務の中に法廷活動を含まないことを容易に理解することができると考えられたところでございます。

 それから、取り扱うことのできる業務は、原資格国、つまりもともと資格を取った国に関する法律事務にとどまりませんで、指定法に関する法律事務など原資格国以外の法律も含まれ得るということからいたしますと、例えばニューヨーク州何々ということではなくて、外国法事務弁護士という名称をつけました方がその実態にふさわしく、しかも、我が国の弁護士との混同を招くおそれもない、こういった観点を考慮されたものと思われます。

西田委員 ありがとうございます。よくわかりました。

 次に行きたいと思うんですけれども、外国法事務弁護士と登録をすると、日本国内で法律事務、つまり弁護士活動が一部できるようになるわけでございますけれども、この法律がそもそもできる前もそうだったんだと思うんですけれども、いわゆる外国弁護士の方もいらっしゃるわけですね。では、今どういう状況かといいますと、恐らく、登録をしていらっしゃる外国法事務弁護士も日本国内で活動していらっしゃるし、外国弁護士の方もいらっしゃるという状況にあろうかと思うんです。

 では、登録をしていない外国弁護士の方は国内で何をなさっているのかということが疑問になるわけです。そういった実態等についてどのように把握をされていらっしゃるのか、教えていただければと思います。

小川政府参考人 お答えいたします。

 外国法事務弁護士登録をせずに活動する外国弁護士の実情そのものについて、具体的な人数ですとか活動実態を把握しているというわけではございませんが、例えば、活動実態について見ますと、大手の事務所などに外国弁護士として雇用され、そこでいろいろとトレーニー的な調査などをしたり、補助的な事務にかかわっているというふうな実情を聞くことはございます。

 また、人数の面で申しますと、弁護士あるいは弁護士法人が外国法事務弁護士ではない外国弁護士を雇用する場合には日弁連に届け出るということとされておりまして、平成二十四年度に届け出がありました数は合計八十一名でございます。

西田委員 ありがとうございます。

 今の御説明ですと、まず二点あります。

 一点は、日弁連に登録されているのは日本の弁護士事務所であったりするところで働いていらっしゃる方ということでございました。そうでない方も多分いらっしゃるのではなかろうかと思うんですけれども。

 きょうは、入国管理局長にもいらっしゃっていただいております。在留資格について伺いたいと思うんですけれども、外国法事務弁護士さん、これは恐らく法律学という専門職のところでの在留許可かなと思うんですけれども、登録をしていない外国弁護士さんが日本に在留する場合の在留許可というのはどのようになっているのか。

 それと、今、小川部長さんからは、弁護士事務所で働く外国弁護士さんは八十一名というお話でしたけれども、それ以外の方も恐らくいらっしゃろうかと思うんですけれども、日本にいらっしゃっている外国弁護士さん、在留されている外国弁護士さんの数を把握されていらっしゃったら、それもあわせて教えていただきたいと思います。

榊原政府参考人 お答えいたします。

 外国法事務弁護士の登録をしている者に対しましては、法律・会計業務の在留資格が決定されます。また、外国法事務弁護士の登録をせずに我が国に在留する外国弁護士で、本邦の公私の機関との契約に基づき法律学の分野に属する知識を必要とする業務を行う場合には、人文知識・国際業務の在留資格が決定されます。

 また、外国法事務弁護士の登録をせずに我が国に在留する外国弁護士の数につきましては、統計として取りまとめておりません。

 以上でございます。

西田委員 ありがとうございました。

 恐らく、入国管理局で把握をされていないということであれば、何人いるかというのは、もうわからないということでございましょう。

 それで、先ほどの小川部長の答弁にもありました、日弁連として把握できるのは、恐らく監督権が及ぶ範囲でしか把握できないんでしょう、これは恐らくその人数しか把握できないことだと思います。

 先ほど二点あると申しました。もう一点は、そういう、登録をしていないで日本で活動する場合で想定されていらっしゃる、もしくは伺っていらっしゃるのが、調査であったり補助的な何か活動というふうにおっしゃいましたけれども、そういったことというのは登録せずにできるのでございましょうか。

 これは、私も法律の専門家じゃないですから、ここが実は正直余りよくわからないところで、法律事務というのは、どこまでが法律事務で、どこから先は法律事務じゃないのか。この辺について、外国弁護士さんの今の労務の提供に恐らく当たるんだと思いますけれども、そことの線引き等、整理されているのであれば、ちょっと教えていただければと思います。

小川政府参考人 弁護士法あるいは外弁法は法律事務という概念を用いております。

 法律事務といいますのは、一般に、法律上の権利義務に関し争いや疑義があり、または新たな権利義務関係の発生する案件について法律上の効果を発生、変更する事項の処理をいうものと解されておりまして、こういった趣旨の裁判例などもあるところでございます。

西田委員 ありがとうございます。

 多分、入国、在留許可が妥当かどうかにもかかわってくると思うんですけれども、当然、先ほどの人文知識・国際業務で在留されている方が法律事務に関することをやると、これは在留資格に違反する資格外活動になるわけでございますよね。ですから、恐らく何かしら明確な線引きがあるんじゃなかろうかなというふうに思ったんですね。

 つまり、人文知識・国際業務では、法律学に基づく労務の提供は認められるけれども、法律事務は認められないということなんだと思いますけれども、もう一度ちょっと、入管局長でも構いませんし、小川部長でも構いません。労務の提供というのと法律事務の違いというのはどこにあるのでございましょうか。

小川政府参考人 先ほども申し上げたところではございますが、法律事務と申しますと、やはり、ある紛争があって、そういったものについて解決に向けた形での権利義務関係が変更、変わっていくというようなことでございますので、私が労務の提供にかかわる例として申し上げました、例えば単純な調査であったり補助的な業務ということについてはこれに当たらないというものだろうと思います。

西田委員 これはむしろ弁護士法の七十二条のところ、これは非弁に対する刑罰法規であろうかと思いますけれども、ここでの定義なんだろうと思います。

 今おっしゃったように、訴訟関係にあるとか、まさに裁判業務もそうですし、この七十二条の趣旨というのは、こういう裁判業務を初め、法律相談もそうでしょうし、調査もそうでしょうし、契約書であったり法律文書の作成とかそういったことも、全部基本的には弁護士しかやっちゃだめという解釈だと私は思っておるのでございますし、また、そういったことについては、スタッフに基本的に任せちゃだめなんだ。

 医師の世界、医療行為の世界でいうと、医師の指示があれば看護師も一部認められた医療行為ができるわけでございますけれども、弁護士の世界はそうじゃないんだぞ。それぐらいこの七十二条というのは厳格に解釈されているものだというふうに私は認識をしておって、実はそこに問題意識を持っていて、そういう厳格な解釈ばかりしていたら、弁護士の法律事務というのは煩雑化し過ぎて、これが結果として、年間で弁護士が取り扱える事件数がなかなかふえない、法の支配をあまねく貫徹する、法のサービスを提供するということの大きな大きな足かせになっているんじゃなかろうかという問題意識を持っているわけでございます。

 今言った七十二条の解釈は、私の解釈でよろしいのでございましょうか。つまり、法律事務というのは、裁判業務も含め、調査もだめ、契約書の作成や法律文書の作成もだめ、法律相談もだめ、こういったことでよろしいのでございましょうか。

    〔委員長退席、盛山委員長代理着席〕

小川政府参考人 七十二条が定めております法律事務というのは、先ほど私が申し上げたとおりでございますが、条文上も、「弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、」などございまして、「その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。」もちろん例外があれば別であるというふうには書いてございますが、そういう定め方をしておりまして、あくまで基本的には法律事務という概念を中心としたものでございます。

西田委員 ありがとうございます。

 これはもう一度、弁護士法そのものについてですので、また機会を改めて、私ももう少し理解を深めて質問していきたいと思います。

 今回の特別措置法に戻りたいと思います。

 まず、この三条でございますけれども、ここで職務が定められているわけでございます。ただし書きで、まさに法律家の根幹にかかわるような業務が、広範に、しかも一律にやっちゃだめだということで制限をされているわけでございますし、第二項では、さらに細かい点を挙げて、弁護士、この弁護士というのは国内の弁護士ですね、弁護士の助言を書面でもらえと命令しているわけでございます。

 こういった、厳格に、しかも一律に、広範に職務を制限しているというこの条文が、国際法務サービスを適切かつ有効に行き渡らせるというものに対して、むしろ阻害している条文になってしまっているんじゃなかろうかというふうに思うんですが、いかがでございましょうか。

小川政府参考人 お答えいたします。

 外弁法三条第一項ただし書きにおいては、外国法事務弁護士は、日本国内の裁判所や検察庁などの手続の代理や、これらの機関に提出する書類の作成等の業務を行うことはできないということとされてございます。今御指摘ございましたように、各号にいろいろ定めているところでございます。

 原資格国法に関する事務を取り扱うのが外弁の基本的な業務でございますが、仮にそれに当たるとしても、例えば、裁判手続に関連するもの、あるいは刑事事件に関するもの、それから、不動産の得喪や工業所有権の得喪に関するものなど、我が国の国益あるいは公益上の観点から外国法事務弁護士に取り扱わせることが必ずしも相当でないものもあると考えられますことから、これらの法律事務については、外国法事務弁護士が行うことができる法律事務から除外したものでございまして、今申し上げましたような趣旨に基づくものと理解しているところでございます。

西田委員 ありがとうございます。

 次に、第十条に行きたいと思います。

 第十条というのは承認の基準ということなんでございますけれども、ここも職務以上に非常に高いと思われるハードルがあるわけでございます。まず、三年以上資格取得国における実務経験が必要というように第十条にあるわけでございます。

 何で三年なのか。国内でいうと、弁護士さん、資格を取ったら、司法研修ということがあろうかと思いますけれども、実際の実務経験、たしか二カ月でございましたか。外国法事務弁護士に登録する外国弁護士には、なぜこんな三年という資格取得国における実務経験というのを条件としてつけていらっしゃるのか。この趣旨を教えていただければと思います。

小川政府参考人 お答えいたします。

 外国法事務弁護士の制度は、申請者が外国弁護士の有資格者であるという、そのことに基づいて、改めて試験ですとかあるいは選考を経ることなく、法務大臣の承認のもとで我が国での活動を認めるという制度でございます。そのため、原資格国法に関する法律事務を取り扱うのに十分な能力や資質を有し、適切な監督のもとで、倫理的にも外国の弁護士として欠けるところがないということを実務経験があることによって証明することとしたというのが、外弁法十条一項において職務経験を要求した趣旨でございます。

 三年とされている点でございますが、これはもともと五年でございました。これが、法改正によりまして三年と緩和されたものでございます。これは、外国法事務弁護士となる資格の承認に当たって職務経験を要件とすること自体の妥当性は、今申し上げましたように認められるものの、現行法のもとでの運用実績ですとか諸外国の同様の制度の例との比較の観点から、職務経験要件を三年以上としたものでございます。

 外国の例でございますが、アメリカで外弁制度を持っておりますところで、弁護士の人数の非常に多いところとしてよく言われますニューヨークあるいはミシガン、それからテキサスといったところでも申請直前の五年中の三年間の職務経験を必要とする、こういったことも参考とした事由の一つでございます。

西田委員 ありがとうございます。

 恐らく相互主義的なところもあろうかなというふうに思いますので、理解をするところでございますけれども、能力や資質というものはクライアントが判断するものでございますから、資格があれば、余り細かい規定は私は必要ないんじゃなかろうかというふうに感じるものでございます。

 だからこそ思うのが、この三年以上については、第二項で、三年の実務経験は、日本で活動した期間を一年を限度として入れるというふうになっているわけでございますよね。これは何であえてこんな一年、しかも一年を限度として、何でこれまた一年なんだと、何かいろいろなところに恣意的な数字が出てきているように感じるわけでございますけれども、ここについても教えていただければと思います。

小川政府参考人 お答えいたします。

 労務の提供ということを職務経験に算入できる根拠ということがまず第一でございますが、国内で弁護士や外国法事務弁護士などに雇用されて、資格取得国の法知識に基づいて行った労務提供などをしていても、これはもちろん依頼者に対して法的助言を与える資格はないわけですが、その労務提供の内容、つまり、資格取得国の法知識に基づいて、先ほど申し上げました、調査のような労務提供をしているということ、そういった内容に照らしますと、実務経験として相当程度満足できるものと評価できるのではないかということでございます。

 その上で、日弁連などの監督を受ける弁護士や外国法事務弁護士が雇用主でありますので、適切な監督を受けているということも考えることが可能でございます。

 そこで、一年以内であれば職務経験に算入しても弊害がないと考えたわけでございますが、もともと、職務経験が現時点では三年でございますので、考慮すべき要素として、そういう意味では短期間ということで、一年以内であれば算入可能であるというふうにしたものと思われます。

西田委員 御説明を聞いておりますと、やはりいろいろなところで恣意的なんだなということを感じるわけですね。

 実務経験といいますけれども、日本で外国弁護士ができることは、まさに御答弁にありましたとおり、法律事務じゃないわけですよね。ですから、外国法事務弁護士としての経験でもないわけですし、いわゆる国内での弁護士としての経験でもないわけで、単なる労務者の経験なわけで、これを実務経験に入れるというのは、ここはここでナンセンスに思うわけですね。あえて実務経験を大事にするというのであれば、入れるべきじゃないんではなかろうかというふうにも問題意識を持つところでございます。

 次に行きたいと思います。

 次は第四十八条です。この法律は、読んでいきますと、めくっていってはまたもとに戻り、めくっていってはまた戻りと非常に何か整理されていない感じがするわけでございますけれども、第四十八条、これもまさに私は参入障壁に近いような決め事ではなかろうかと思うんですけれども、在留義務ですね。外国法事務弁護士は、登録をされれば、一年のうち百八十日は日本にいなきゃいけないというふうに決められているわけでございます。

 この要件が果たして必要なのか。外国法を取り扱うわけでございますから、例えば、依頼を受けて、取り扱っている外国法のその外国に行って、現地に行って調査したり、もしくは検討したりしていかなければいけないことだって恐らくあろうかというふうにも思いますし、在留義務をあえてここで百八十日も課している意味が私はよくわからないわけです。そこで、これについて教えていただければと思います。

小川政府参考人 お答えいたします。

 外国法事務弁護士は、我が国において、基本的には、原資格国法に関する法律事務を取り扱うということを職務としているわけでございまして、長期間我が国から出国して不在となるような事態によって、依頼者に対して迷惑をかけないようにするという依頼者保護の観点から、また、形式的に登録のみをいたしまして、事務員的な立場で、資格のない者に法律事務の処理を任せるなどという状態になることを防ぐため、こういった理由から、少なくとも年の半分程度以上は我が国に在留する必要があると解されることによるものというふうに理解してございます。

西田委員 ありがとうございます。

 依頼者保護と、あとは法律事務を事務員に任せちゃだめだという御趣旨でお答えになりましたけれども、依頼者が、自分にとってこの弁護士でいいのかどうかというのは、それは依頼者が決めることであって、自分の利益に反するような弁護士であれば、それはすぐ取っかえるわけでございます。ですから、これも私は余計なお世話な気がしてなりません。また、法律事務を事務員さんに任せないようにするとおっしゃいますけれども、それは、そもそも、先ほどの三条の職務であったりするところで厳格にだめだと言っているわけでございますね。ですから、あえてまたここでこの百八十日の根拠にするというのも蛇足なような気がしてなりません。

 さらに、この第二項ですね。これは例外的な定めなんでしょうけれども、自己あるいは親族が傷病その他やむを得ない事情のときは、しようがないと言っているわけですね。自分が病気になったり家族が病気になったら、しようがないと。これなんて、まさにずる休みをする学生の言いわけと同じレベルでございますよ。こんな規定をするぐらいだったら、むしろ、日本における依頼を受けて今行っている外国法事務弁護士の業務で海外に行った期間はその限りではないとか、そういうふうにするのがよっぽどきれいだ、そもそも要らないんですけれども、というふうに思うわけでございます。

 さて次に、また第十条に戻らなければいけませんけれども、承認の基準についてのところで、もう一度戻って質問したいと思うんです。

 ここは、第十条第四項で、承認するに当たって、法務大臣は、日弁連の意見を聞かなければならないというふうになっているわけでございますね。どうして日弁連に聞かなければいけないのか、これについて、この趣旨を教えてください。

小川政府参考人 日弁連は、申請人の有する資格が我が国の弁護士に相当する内容を持つものであるかなど、承認の基準に関する事実についての専門的な知見を有していることから、法務大臣の承認の可否判断に当たりまして、その意見を聞くというのがまず有用であると考えられたこと、また、日弁連は、外国法事務弁護士の登録を行う機関でございますので、外国法事務弁護士の資格得喪に密接な関係を有するとともに、外国法事務弁護士の指導、連絡及び監督を行うこととされておりまして、これらの事務を有機的かつ円滑に運用する必要があることから、法務大臣が承認を行う場合には、その意見を聞くこととされたものでございます。

 なお、法務大臣は、日弁連の意見に拘束されることはございませんで、運用といたしましても、日弁連意見と異なる判断をした事例は相当数ございます。

西田委員 ありがとうございます。

 今の御答弁をお聞きしましても、あえてここで、「聴かなければならない。」という強い文言にする必要はないんじゃなかろうかと。今の御答弁の内容ですと、聞くことができるで十分可能なのではなかろうかと思います。誰がこの条文案をつくったのかわかりませんけれども、つくった人の意図が見えてしようがないわけでございます。

 大臣には最後にまとめてお聞きしたいと思うんですが、先ほど、大臣が拘束されることはないとおっしゃいましたけれども、やはり、こう書くことは、承認の実質判断権者がまるで日弁連に移ってしまっているんじゃなかろうかというような印象を持ち得るわけでございます。

 そこで、意見が異なることがあったということが運用の中であったとおっしゃいましたけれども、もうちょっと具体的に教えてください。大臣は承認しようと思ったけれども日弁連がだめと言って、結果、大臣が承認すると言ったからそのとおりにしたのか。ちょっとそこの具体的なところを教えていただければと思います。

    〔盛山委員長代理退席、委員長着席〕

小川政府参考人 承知しております限りで申しますと、承認不相当というのを日弁連が出した事案について法務大臣が承認したという例でございまして、先ほど相当数と申し上げましたが、九例ほどあるというふうに聞いてございます。

西田委員 ありがとうございます。

 とすると、日弁連の意見はあったものの、その承認をされたとき、大臣がみずからの御意思でもって、判断でもってしっかりとこの法律のとおり判断権を行使されたということでございましょう。

 条文は、「聴かなければならない。」と書いてありますけれども、これは法務大臣のきちんとした承認案件だと思いますので、よろしくお願いできればと思います。

 そして、もう一つあります。今度は、現行法ではなく改正案の第五十条十三、何度か議論が出ております従たる事務所でございます。

 従たる事務所は、弁護士法でただし書きにあるような、先ほど、弁護士過疎に対応する意味で常駐の弁護士がいなくてもいいというものが外国法事務弁護士法人には適用されないというふうにおっしゃいましたけれども、先ほども議論がありましたね。本当にニーズがないのかあるのかといったものを全て把握して判断することなんて私は不可能だというふうに思うんですね。あるかないかわからないという状況の中で、あえてこの外国法事務弁護士法人には弁護士法にあるただし書きを認めなかったというふうに思えてならないのでございますけれども、そうではないんですか。

小川政府参考人 ただし書きを認めなかった理由につきましては、準用を認めなかった理由につきましては先ほども申し上げたとおりでございますが、弁護士法人の従たる事務所の場合は、弁護士過疎地域における需要に対応するといった公益活動の基盤となることも期待されるということでございますが、外弁法人には、少なくとも現時点においてはこういった必要性が認められないということから、特にただし書きを準用しないという判断をしたものでございます。

西田委員 これまで何点か細かく条文についてお伺いをしてきました。冒頭に申し上げたとおり、読めば読むほど、国際化、多様化、複雑化に寄与するような法律というよりも、外国法弁護士の活動を縛るような印象をやはりどうしても持たざるを得ませんし、掲げる理念は、国際法務サービスをもっと国内に広く提供できる体制をつくっていこうではないか、たしか大臣も先ほどそういうふうに答弁されていたと思うんですけれども、そういう気持ちはあるものの実際の法律はそうなっていないような印象を持ちます。

 そこで、大臣にお伺いしたいと思います。

 この法律は、どうしてもそういう、国際法務サービス、法律サービスを広く提供する体制をつくらなきゃいけないという趣旨があろうかと思う一方で、条文を読めば、このように高い参入障壁ばかりが設けられていると思うんですけれども、それについてのお考えを大臣にお聞きしたいと思います。

谷垣国務大臣 この制度は、昭和六十一年に外国法事務弁護士という制度をつくったときから始まっているわけですね。その当時、私は、法務委員会に所属していたのか、私どもの党の法務部会で議論したのか記憶は定かでありませんが、当時の私の印象としては、外国の弁護士さんが入ってくる、黒船来るというような議論が非常に多うございました。

 それ以降、この法律、逐次改正を重ねてまいりましたけれども、最初のその黒船来るというところで、何とかして害を抑えるかと言うとちょっと言葉は適切ではないかもしれません、そういうところから、実情がだんだんわかるようになり、これは不便だというところ、あるいは諸外国からこういうところはもう少し何とかならないかというような要請があるところを逐次直してきたのが今までの流れであるというふうに私は印象を持っております。

 ただ、一番最初に制度をつくりましたときに、そういう黒船来るということではありましたけれども、では、外国の弁護士さんに関して、日本で新たに日本での資格を満たすかどうか試験をさせるとか、資格試験を設けるというようなことはやりませんでした。私も諸外国の制度は詳しくありませんが、フランス等はどちらかというと、外国の弁護士にフランスで仕事をさせる場合は、フランスでもう一回フランス規格の試験をやるというようなことをしているようでございますが、日本の場合は、そこは、例えばアメリカで弁護士の資格を持っていれば、イギリスでバリスターの資格を持っていれば、それは基本的に認めようという、そこは比較的オープンな制度を、比較的と言うといけませんが、つくったんだと思います。

 ですから、そのかわり、大臣の承認ということをとっておりますのは、結局、先ほど司法法制部長が説明しておりますように、では、依頼者が頼んだけれども、依頼者の利益が守れないようなレベルの低い人では困るということを担保しようというので大臣の承認という仕組みをとっているんだろうと思います。

 それで、試験をしない、そういうこともある程度は必要かなと私は思っておりまして、そこは、今までいろいろな議論がございまして、見直さなきゃならないところが今後どれくらいあるのかわかりません、やはりそのときそのときの状況、議論に応じて逐次検討していく必要はあるのかな、このように思っております。

西田委員 ありがとうございます。

 昭和六十年代でございますよね。私はまだこの世界におりませんでしたが、大臣のわかりやすい説明で容易に想像できるわけでございます。

 その中でできたことということで、やはり私は、細かいところではあるかもしれませんけれども、こう直した方が、今のニーズ、具体的なニーズ、先ほど奥野副大臣も本当に御自身の経験に基づいてお答えいただきました、そういう、もっとこうであればいいのにというニーズにより応えられるものに細かいところの改正がなっていくのではなかろうかというふうに思います。

 これが、先ほど申した在留期間の問題であったり、もしくは従たる事務所の常駐義務であったり、いろいろなところでもあろうかと思いますので、これは引き続きぜひ、もうこれでおしまいということじゃなくて、よりよきものにしていく検討を続けていただければなというふうに思います。

 前半は、参入障壁があるのではなかろうかということについてお話をしてまいりましたけれども、これから先は、これは業務統制が過ぎるんじゃなかろうかというふうに感じる部分がややあるわけでございますので、そちらについて議論をしていきたいというふうに思います。

 まず、第四十九条の三でございます。「弁護士の雇用及び外国法共同事業に係る届出」についてということでございますけれども、届け出でございますから、こういった、共同事業を行う、もしくは弁護士を雇用するといった際に、誰を雇用するのか、そしてその共同事業はどういう名称なのか、どういう弁護士がいるのか、そういったものを届け出するのはわかるのでございますけれども、そこには、そこで行う法律事務の範囲まであらかじめ日弁連に届けなさいというふうに書いてあるわけでございますね。

 法律事務の範囲まで届けるというのは、本当に必要があるのか。実際、普通に国内の弁護士業務でそんな、事務所を開くとき、もしくは何か依頼を受けて弁護を行うときに、法律事務の範囲を届けなさいなんということはないわけでございますから、私はこれもまた業務統制が過ぎるんじゃなかろうかというふうに感じたわけでございます。

 そこで、この届け出の必要性について、お答えをいただければと思います。

小川政府参考人 お答えいたします。

 外国法事務弁護士は、弁護士を雇用するときあるいは外国法共同事業を営もうとするときは、あらかじめ、当該雇用に係る弁護士の氏名及び事務所のほか、当該外国法共同事業に係る弁護士または弁護士法人の氏名または名称及び事務所並びに当該外国法共同事業において行う法律事務の範囲等について、日本弁護士連合会に届け出なければならないとされております。

 その趣旨は、雇用及び外国法共同事業に伴う弊害を防止する手段の一環といたしまして、日弁連などによります指揮監督の実効性を担保する観点から、日弁連に、日本弁護士の雇用ですとか、外国法共同事業の存在をあらかじめ了知させるべく、弁護士を雇用し、または外国法共同事業を営もうとする外国法事務弁護士に対しまして、雇用または外国法共同事業に係る一定事項について届け出を義務づけるというものでございまして、外国法事務弁護士による適正な法的サービスの提供を担保するという観点からも必要な制度であるというふうに認識しております。

西田委員 ありがとうございます。

 この第四十九条の三は、この後、七項にわたって詳細に、いろいろな届け出をしなさい、やれ報告をしなさい、こうやってまさに煩雑な事務を課しているわけでございますけれども、今、日弁連の監督指揮の実効性を担保するためにこういったことをやっているとおっしゃいました。この問題、ちょっとまた後で触れさせていただきたいと思います。

 次に、この第四十九条、それと第四十九条の二ですけれども、この条文では、「不当な関与をしてはならない。」ということが出てくるわけでございます。

 そこで、外国法事務弁護士法人で雇用する日本の弁護士に対してであったり、もしくは、外国法共同事業における不当関与をしてはならないということが定められているわけですけれども、先ほどの法律事務のところも基本的なことでお聞きしましたけれども、ここもちょっと基本的なことをお聞きしたいんですけれども、何が不当な関与で、では、正当な関与というのはどういうことなのか。この辺を教えていただければというふうに思います。

小川政府参考人 お答えいたします。

 この条文の基本的な考えは、業務の範囲を超えて、外国法事務弁護士が、例えば日本の弁護士を通じることによって本来であればできない業務を行うということを禁止するものでございますので、不当な関与という点も、みずからがそういう業務の、あえてできないことをするためにするものと評価されるかどうか、そういったことが一つの基準でございます。もちろん、具体的な事例において不当な関与と評価されるかは、関与の程度ですとか内容などを総合的に判断するものではございますが、基本的な理解は冒頭申し上げたとおりでございます。

 逆に不当な関与でないものといたしますと、雇われている弁護士が日本法の解釈に関する、例えば鑑定書などを作成するに際しまして、参考となる外国の判例、法令などを翻訳して外国法事務弁護士の方が提供する行為など、これは実質的に権限外法律事務を取り扱ったというふうにはおよそ評価されないものでございますので、そういった付随的な事務などを行って関与するような場合には、不当な関与とは評価されないというふうに理解されております。

西田委員 ありがとうございます。

 ここは恐らく、例えば弁護士法人であれ、外国法共同事業についてであれ、これは内部のことに物すごく深くかかわってくるので、やはり何が正当、何が不当というものの判断というのは非常に難しいんじゃなかろうかなというふうに思います。

 例えば、世界的にいろいろな事務所を持っている大きな弁護士法人があったとして、そこに所属する弁護士の方が日本に来て、外国法事務弁護士法人を立ち上げて、そこで日本人を雇用します。クライアントは、日本国内の国際的に活躍している企業で、それは当然日本の国内法にもかかわるし、アメリカあるいはほかの国の法律にも深くかかわる。そういったクライアントからの相談に、それぞれの専門性を持って、クライアントの依頼に最大限応えるにはどうしたらいいかということをやっていくわけでございますよね。

 こういったところで、それぞれ専門性を持ったプロフェッショナル同士が議論するので、そもそもこの不当な関与なんというのがあり得るんだろうかというふうに思うのが、まず一点あります。

 そして、仮にあるとするのであれば、そういう国際的な大きなネットワークを持つ弁護士事務所のいわゆるトップの方からの指示で、これはこうしろと言われる。雇用ですから、あくまで雇用というのは労務に役することでございますから、そういった指示には従わなければいけない。そう言ってきたときに、あるとすれば、もしかしたらそういう不当な関与ということが言われるのかと。そういったことで、非常に難しい判断になってくるんじゃなかろうかなというふうに思います。

 先ほど答弁にありましたとおり、自分の権限外のことに対して何かやったら、これはもうだめだよといいますけれども、それはそもそももう職務の範囲で厳格に定められているわけですので、何でここで判断が難しい不当な関与を禁止するという条文をあえて強調されていらっしゃるのか、そこがいま一つわからないところなんですね。

 もしお答えできるのであれば部長にお答えいただきたいんですけれども、難しいですかね。なぜ、あえてまたここで不当な関与ということを繰り返し強調される条文を入れていらっしゃるんでしょうか。

小川政府参考人 先ほど申し上げましたとおり、もともと外国法事務弁護士は原資格国法などの事務しかとれないわけで、それを越えますと、形式面では当然のことながら権限を越えるわけでございます。

 ただ、実際の業務の観点から見ますと、外国法事務弁護士が被雇用弁護士などがみずから行う法律事務にいわば実質的に介入することなどによって、外国法事務弁護士による権限外法律事務の取り扱いと評価される、そういった、形式的な権限は越えていないけれども実質的には権限外法律事務の取り扱いと評価されるという場合が大きな問題になるわけでございますので、そういう意味でも、表現としましては、実質的な概念である不当な関与という表現を用いたものだということが一つの理由だろうと思います。

西田委員 この不当関与の禁止ということは六十一年の成立当初から入っていたわけでございますけれども、もう二十年弱たつわけでございますね。その間、運用されてきたわけでしょうけれども、具体的にこの不当な関与と指摘をされるようなことがこれまであったのか、もし把握をしていらっしゃれば教えていただきたいと思います。

小川政府参考人 お答えいたします。

 不当な関与があった場合には、懲戒事由になりますほか、非常に悪質な場合は刑事罰の対象にもなるわけでございますが、これまで、不当な関与によって外国法事務弁護士が懲戒、刑事罰などを受けた事例はないものと承知しております。

西田委員 この二十年弱の間、一度もなかった。なかったというのは逆にどう評価をすればいいんでしょうか。

 そもそも、先ほど私が言ったように、プロフェッショナルな法律の専門家の領域でございますから、お互いがお互いの領分の中で、それぞれの専門性に基づいて、お互い尊重してチームを組んでやっていたりするわけですから、そもそも不当な関与なんというのは起こり得ないんだ。ということであれば、この条文、必要性が本当にあるのかということにもなりましょう。

 逆に言えば、日弁連が、先ほど、監督の実効性の担保ということで、大変丁寧に条文で日弁連のお世話をしているわけでございますけれども、それにもかかわらずちっとも監督できていなかったから不当な関与での懲戒は一件もないのか。

 今御答弁いただいた不当な関与は一件もないというのはどう評価すればいいのかということについて教えていただければと思います。

小川政府参考人 お答えいたします。

 不当な関与という概念が法律に盛り込まれましたのは、雇用の禁止あるいは共同事業についての制限を廃止いたしました平成十五年の改正からでございますので、その意味では、施行後ほぼ十年程度ということだろうと思います。その間、先ほど申し上げました届け出義務などといった別の意味での監視体制もございますので、そういったことも功を奏して、これまで懲戒、刑事罰などを受けた事例がないものと承知しているところでございます。

西田委員 ありがとうございます。

 そうすると、済みません、私の勉強不足で、十年弱の運用ということでございます。この十年弱の中で、やはり、法律での届け出義務を課している、そういったことによって、この法律がきちんと機能したことによって、なかったという評価であるということでございましょう。

 ただ、私は、先ほど来申し上げているように、本当にこの不当関与というものが現場で実際に起こり得るという想定がなかなかしづらいわけでございます。

 今回の質問は、前半部分で参入障壁についてお話をさせていただきましたし、後半部分では、この法律が求める業務統制が行き過ぎているんじゃないかという感想を持つ、偏見を持っているわけでございますけれども、それについてお話をしているわけでございます。

 そこで、これについても大臣にぜひ見解を伺いたいと思うんですけれども、外国法事務弁護士の国内での活動に対して、この法律は、その趣旨とは裏腹に非常に強い業務統制を課して、有効かつ効率的に外国弁護士、外国法事務弁護士が活動する土壌をむしろ阻害しているんじゃなかろうかというふうに感じるのでございますけれども、いかがでございましょうか。

谷垣国務大臣 外国法事務弁護士というのは、二つといいますか、制約を負っているわけですね。一つは、国内法の事務をやってはいけない、外国法の事務であるということですね。それからもう一つは、これは決して外国法事務弁護士に関してだけではございませんけれども、弁護士法は、かなりいわゆる非弁活動を制約するといいますか、非弁活動を抑えていくというのには、力を入れたという表現がいいのかどうかわかりませんが、相当そこのところは意を用いている。

 今おっしゃった点は、いずれも、外国法事務弁護士として国内で活動できる限界あるいは非弁活動等々をどう定めるかというところからきているので、私は、その限りにおいては合理性がないとは必ずしも言えないんじゃないか、合理性はあるのではないかというふうに思っているわけです。

 ただ、現実にそれが、何というんでしょうか、余りにも大きな制約になっていたり妥当ではないことになっているのかどうか、これはやはり耳を傾けなければいけないと思いますが、立論の基礎にはそういう合理性はあるのだというふうに思います。

西田委員 ありがとうございます。

 黒船来るで制定された法律で、当然合理性を持って制定された法律だと思います。ただ、二十年、そしていろいろな改正からももう十年運用してきている中で、やはり今後、細かいところでの改正の必要性、その問題意識はこの委員会の質疑でぜひ表明をさせていただきたいというふうに思います。

 そして次に、監督の体制についてなんでございますけれども、日弁連の監督、法律でも、その実効性を当然担保しなきゃならないというところで丁寧な条文が書かれていたりするわけでございますけれども、実際にこの監督の実効性は、実効性といいますか、うまく機能しているのか、この点についての評価を小川部長にお聞きしたいと思います。

小川政府参考人 お答えいたします。

 外国法事務弁護士に対する監督は、日弁連において適正に行っているものと承知しております。

 数字の点を若干申し上げたいと思います。

 外国法事務弁護士に対して業務停止以上、業務停止以上と申しますのは、懲戒処分の種類は、戒告、二年以内の業務停止、退会命令、除名の四種類ございますので、二年以内の業務停止、退会命令または除名、この三種類に該当する場合は、そういった懲戒処分がされました場合には日弁連から法務大臣への通知がされる扱いとなっておりまして、これまで、業務停止以上の懲戒処分は五件あるというふうに承知しております。

西田委員 ありがとうございます。

 きちんと実効性については有効であると評価をしていらっしゃるということでございました。

 この問題は、何も外国法事務弁護士に限らない話になってくるんですけれども、やはり弁護士の世界というのはなるほど特殊なんだなということが、今回この特別措置法を読むにつけ感じるわけでございます。

 弁護士自治というのでございましょうか、制定当時、国家権力とやはり対峙しなきゃいけないということを想定されて、弁護士会に、今、懲戒まで含めて、除名まで含めて、物すごく強い権限、国家権力に匹敵する権限を日弁連に与えて、自治だということでやっているわけでございます。

 でも、その考え方が今も引き継がれてやっていらっしゃるんでしょうけれども、その考え方でいくのであれば、何も、外国法事務弁護士はその弁護士自治の枠組みに入る必要はないんじゃなかろうか。外国法事務弁護士が国家権力と対峙するようなことがあるんだろうかということを思えば、私は、法務大臣で承認するわけですから、法務大臣できちんと監督していただければいいんじゃなかろうか。これも一つの問題意識ではなかろうかというふうに思うわけでございます。

 今回、ちょっと時間も余りましたので、ちょっと弁護士法にも突っ込んでみたいなと思うんですけれども、この弁護士法、先ほど申したとおり、弁護士自治の確立ということで、大いなる期待の中で成立したんだろうなというふうに思います。

 この弁護士法の第一条を読んでみますと、なるほど、物すごいですね、基本的人権の擁護、そして社会正義の実現ということがまず書かれているわけでございます。ただ、ここで私、ひっかかるわけでございます。基本的人権については当委員会でも何度もお話ししたとおりでございます。あえてきょう繰り返しません。社会正義という言葉が出てきます。

 我が国で有効な法律、千八百九十何本あろうかと思いますけれども、社会正義という文言が出てくる法律というのは、実は弁護士法のこの第一条だけなんですね、検索してみましたけれども。これはもう当たり前だと思いまして。

 社会正義とは一体何なのか。これは非常に難しい問題だというふうに思うわけでございます。非常に難しい問題ですね、社会正義とは一体何なのか。

 この社会正義の実現というものは、実は私は、やはり文言そのものを非常に警戒するわけでございます。まるで呪文のように、社会正義と言えば何でも認められるということで、我々政治家としても身に覚えがあるのでございますけれども、何か特定の利益を獲得したいときには、社会正義にかなうと言うのが一番いいわけでございますから、ついつい社会正義という言葉を何でもできる呪文のように枕言葉として使ってしまうわけでございますけれども、弁護士法第一条が書く社会正義とは一体何なのか。ちょっとお答えしにくい質問なのかもしれませんけれども、ぜひ大臣に教えていただきたいというふうに思います。

谷垣国務大臣 この委員会には、横路前議長を初め、弁護士でいらっしゃる先輩、同僚がたくさんいらっしゃるので、では弁護士法第一条はどういう意味だというのもなかなか答えづらいなと思いながら立たせていただきました。

 今委員がおっしゃったように、私の理解するところでは、この弁護士法というのは、第二次大戦後、相当気合いを入れて議員立法でつくった法律だろうと思います。委員が言われましたように、やはり国家権力とも時には対峙して、それこそ基本的人権を守り、社会正義を実現していく、そのためには弁護士に高い倫理と自治がなければいけない。

 ですから、例えば弁護士というのは国家資格でございますが、弁護士になれるかなれないかというのは、弁護士会に登録するかどうかということによって決まってくる。その弁護士の登録というのは、行政法の教科書を読むと、私人による行政行為であるというような定義がされているように、日本の例えば業界団体としてはかなり特殊な性格を持っているのも事実だろうと思いますし、それだけに、非常に気合いの入ったものであるということだろうと思います。

 そこで、社会正義とは何だ、呪文のようなものじゃないかということでございまして、私も答弁に困りましていろいろ本をひっくり返してみたわけですが、一般に、ここで言う正義というのは三つの意味が与えられているようでございます。

 一つは、法的正義ですね。法に正しく適合していくこと、つまり、法の規定をその本旨に従って忠実に実現し、または遵守していく、これはやはり弁護士の責務であることは間違いないだろうと思います。

 それに加えて、各人が各人にふさわしいものを受け取るといいましょうか、アリストテレス以来といえばそのとおりでございますが、配分的正義というのも正義に関して常に言われることでございます。

 それから、社会関係あるいは制度の正当性を判定する、やはり実質的な正義というものが、形式的な正義だけじゃなしに実質的な正義というものがあるだろう。価値基準としての正義があるだろう。

 こういったさまざまな意味で理解されていて、こういった三つの意味を全部含んだものであると弁護士法のコンメンタールには書いてございます。

 余り自分の言葉で答弁をしたとは思えませんが、答弁にかえさせていただきます。

西田委員 ありがとうございます。

 今、法的正義、配分的正義、実質的正義とおっしゃいました。私、正義というのは個人のルールであろうかというふうに思います。社会のルールでは決してない。配分的正義というものが仮にあるとすれば、私はそれは全体主義へつながる道だというふうに思うわけでございます。

 どうも社会を擬人化してしまって、社会というものに正義をくっつけてしまうことが果たしていいのか。社会というのは、あくまで個人が、個人の目的に沿って、個人の自由を持って行動する場であるわけで、社会が何か目的を持って行動するわけじゃないわけでございます。そういった社会に正義という目的をあたかもあるようにつけて擬人化してやってしまうことは、どうも設計主義的なにおいがして、意図的なものを感じざるを得ないわけでございます。

 もし仮にそういったことを弁護士法が第一条に掲げているのであれば、これはもう少し、私、もっと時間のあるときにきちんとまた大臣と議論をしたいなというふうに思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 以上で終わります。

江崎委員長 次に、椎名毅委員。

椎名委員 ありがとうございます。結いの党の椎名毅でございます。

 本日、外弁法の改正ということで、質疑時間を三十分いただきましたことを感謝申し上げたいというふうに思います。

 先ほどの西田委員の最後の質疑は、非常に考えさせられる、哲学的なすばらしい質問だったなと思って横で聞いておりました。私自身は哲学的なところには入らず、幾つか聞いていきたいと思います。

 今回の改正で、外国法事務弁護士が法人をつくることができるということで、基本的には弁護士と平仄が合ったというところなのかなというふうに思っています。

 私自身は、外国法事務弁護士とともに、横に法律事務所を並べてつくる、昔は特定共同事業というふうに言いましたが、今では、平成十五年の改正以降、外国法共同事業という名前に変わっていますが、そういった事務所にいたこともありますし、その後、比較的大手と言われる法律事務所にいたこともあり、弁護士について法人化を認める法律ができたときと、それから外弁法の改正が起きたときと、それぞれ比較的自分なりに当事者として見てきた部分があるのも事実でございます。そういった中で、幾つか聞かせていただきたいなというふうに思います。

 弁護士法人ができたときに、私自身が所属していた、今だと日本で二番目に大きいと言われていますけれども、昔は日本で一番大きい法律事務所だったというふうに言われている、その法律事務所で、自分なりに頭の体操として、法人化するんだろうかどうかということを考えたことがあるわけですね。結論としては、法人化しないということでありました。

 やはりこういった法人化するというときに一番気にすることは何なのかというと、実は税務なんだというふうに思っています。

 現在の法律事務所というのは、大体基本的にはパートナーシップ契約に基づく任意組合のようなものでございます。任意組合である以上、各出資者が、総有的に、各それぞれ経費とそれから利益を持ち分として持つということで、最終的には、出資者である、いわゆるエクイティーパートナーと俗に呼んでいる人たちですけれども、この人たちは、最後の利益については、全部経費精算等が終わった後、それをみずからの持ち分によって割った形でみずからの利益として考え、そしてそれに対して所得税を払う、弁護士の税金の支払い方というのは大体そういうスタイルになっているわけですが、では、法人化したときにどうかというところで、やはり使い勝手が悪そうだなというふうに感じたところでございます。

 今回、外国法事務弁護士法人ができたときに、弁護士法人と、恐らく合名会社と同じような税務規律になるかというふうに思いますけれども、一応、この法律ができた後、外国弁護士法人、法人単体の税務とそれから法人に出資している社員の所得税に関する税務、それぞれについて国税庁から教えていただければと思います。

岡田政府参考人 お答えいたします。

 一般論として、法人に関する部分の税制と社員に関する部分の税制を分けて御説明をいたします。

 まず、法人でございますけれども、審議中の法案における外国法事務弁護士法人は、法人税法上の内国法人に当たります。したがいまして、各事業年度の所得、すなわち、その事業年度の益金の額から損金の額を控除した金額に対して法人税が課されるということになります。

 一方、個人である社員でございますけれども、法人から利益の配当を受け取った場合には、配当所得として所得税が課されることになります。なお、配当所得につきましては、確定申告におきまして、法人税と所得税の二重課税を排除する趣旨から設けられております配当控除の適用が受けられる、こういうことになっております。

椎名委員 ありがとうございます。

 法人化すると、税務上のメリットがあるのであればやはり使うんだというふうに思うんですね。

 実際、先ほど遠山先生の質疑の中でも、弁護士法人が認められるようになってからどのぐらい法人化されましたかというと、そんなに多くはない数の回答をいただいたというふうに思っています。

 おっしゃっていただいたように、法人化すると、基本的に法人に対して法人課税がかかるということと、それから、社員である弁護士も役員であるので役員報酬をもらいますから、役員報酬に対しては通常の所得として所得税がかかります。

 弁護士法人については、一応、会社法の六百二十一条という条文を準用していて、おっしゃるとおり、配当が認められるわけですけれども、配当については、配当所得ということで、基本的には、要するに、法人税を払った後の当期純利益、そこから払われる配当分について、配当所得としてかかる。配当控除があるというふうにおっしゃいましたけれども、一部そういったメリットも多少ありますけれども、一応、法人税がかかった後の利益から配当されるということで、正直、余りメリットがないんです。いわゆるパススルー税制というふうに言われている、任意組合だったり匿名組合だったり等において一回的な課税が行われるというスタンスとは若干違うんですね。

 弁護士法人化した人たちの御意見等を聞くと、メリット、デメリットそれぞれ指摘しているんですけれども、税務上のメリットについては触れている人はほとんどいないというのが正直なところです。節税メリットはない。むしろ、法律事務所という事業形態の維持継続性というところと支店の開設ができるという、おおむねこの二点に集約される部分があります。

 私が所属していた事務所のライバル事務所である日本で一番大きな法律事務所も、昨今、攻撃的に攻勢をかけていて、支店をようやくつくるようになって、法人化を一部したんですね。しかし、もともとエクイティーを持っているパートナー自体はほとんど法人の中には入っていなくて、事実上、法人というのは物すごくちっちゃな部分的なものになっていて、法人と、もともと行っている法律事務所とが共同事業をやっている、そういうていをとっているというところです。

 そういった現実の実務を見てみると、今回、弁護士法人化が認められたところで、どこまでふえるかというのは正直疑問です。かといって、別に制度として認めることを否定するつもりはもちろん毛頭ないんですけれども、どこまで使い勝手のいいものなのかというと、私自身は若干疑問視をしているというのが正直なところであります。

 使い勝手という意味でいうと、二点目、もう一つ、次の質問で伺いますけれども、弁護士法人と外国法事務弁護士法人、いずれも、基本的には、合名会社に類する、要するに持ち分会社に類する形で社員弁護士は無限責任を負うことになります。

 しかし、国際的には、私が以前、弁護士になりたてのころに所属していた法律事務所もそうですけれども、いわゆるLLPと言われる有限責任事業組合という形態をとっていて、負う経済的な責任については、基本的に出資額を限度に責任が限定されているというふうに思っています。

 私自身が既に弁護士の活動をしていたころに、有限責任事業組合契約に関する法律という法律ができて、この法律ができたときに、これを専門職事務所に使うことができたら何てすばらしいんだろうと思って、いろいろ勉強してみたら、施行令に、弁護士法七十二条に記載される弁護士業務については適用がありませんと書いてあるわけです。

 そういう意味で、やはり法律事務所については有限責任化というのが基本的になされていないわけですけれども、まず前提として、経済産業省に、この有限責任事業組合契約に関する法律施行令をつくるときに、弁護士事業を外したというところについての経緯を含めて、どういったことを考えたかについて教えていただければというふうに思います。

西山政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生からお話ございました有限責任事業組合契約に関する法律、平成十七年にできておりますけれども、この有限責任事業組合、LLPと言っておりますけれども、これにつきましては、今先生からもお話がございましたとおり、組合に対して出資額以上の責任を負わない有限責任組合員のみから成る組合として定義をされております。

 したがいまして、この法律を策定するに当たりまして、特定の業務を行う者が無限責任を負うことが前提となっている場合につきましては、その政令において、その業務を有限責任事業組合の対象業務から除外するという措置をとったわけでございます。

 まさに今おっしゃられましたとおり、弁護士業務につきましては、弁護士法におきまして無限責任を負うこととされておりますので、これはほかの公認会計士あるいは司法書士といったものも同様でございますけれども、そういうことを踏まえまして、先ほど御指摘の施行令の中で除外をすることとなったということでございます。

椎名委員 ありがとうございます。

 この本体である法律の方で無限責任化されているという話です。

 そこで、大臣に伺いたいんですけれども、こういった専門職法人のさらに国際化ということを進めていく際に、先ほど遠山先生からもございましたけれども、その有限責任化というのは、割とグローバルな流れの一つなのではなかろうかというふうに思う次第でございます。

 そういった、専門職法人における社員弁護士等、社員公認会計士等の責任の有限化というところについて、御所見というか御意見をいただければというふうに思います。

谷垣国務大臣 今、経産省の西山審議官から御答弁がありましたけれども、先ほど遠山さんに御答弁したところでありますけれども、やはり日本では、弁護士あるいは弁護士事務所というのは、社員というか弁護士の個人的な資産と申しますか個人的な人的信用が背景にあって制度がつくられているんだろうと思うんですね。ですから、そういうたてつけを前提とする限り、西山審議官のような整理になるんだろうと私は思います。

 ですから、現時点でどうかと言われれば、日本の制度としては、有限責任というようなものを考えていくのは、少し論点がたくさんあり過ぎるんじゃないかという御答弁をすることになると思います。

 ただ、かなり、今、椎名委員がおっしゃったように、国際的にはそういうものを活用しているいろいろな例があり、また、それが法律業務をきちっとやっていくという上で業績を上げているというようなことも頭の片っ方には置いておかなければいけないな、こう思っております。

椎名委員 ありがとうございます。真摯な答弁をいただきました。

 今後、日本の法律事務所も世界展開をしていく可能性が低くはないというふうに思っています。既に、私のいた法律事務所も、ニューヨークとそれからシンガポールに支店がありますし、これからアジアに支店を出していくことを想定しています。先ほど申し上げました、日本で一番大きな事務所である、私が昔いたところのライバル事務所についてはさらに、国内に三つ支店があるとともに、海外においても、基本的にはアジアですけれども、アジアにかなり多くの支店を設けています。

 日本の中小企業、さらには大企業等も含めて、海外へ進出していき、そこで合弁だったり契約だったりというものをやるニーズというのが非常に高まってきています。今までですと、大手の商社のような会社が海外に進出して合弁などをするということで、大体そういった会社は法務部も充実しておりますし、英語をしゃべれる人もいっぱいいるので、海外の法律事務所を直接使うことになります。その結果、日本の法律事務所が海外へ展開するというニーズが正直ほとんどなかったです。

 私の所属していた事務所も、結構、二十年ぐらい前に一回シンガポールに支店を出しましたが、最終的に数年で撤退しました。その後、もう一回事務所を海外に展開するというのは、明らかにフェーズが変わってきているからです。英語をしゃべれる人さらには法務部が充実していない会社も、海外に展開して、特にアジアに展開していかないと生き残っていくことのできない、そういう時代になってきているわけです。

 そういった時代になってきて、だからこそ、我々、我々という表現もどうかと思いますけれども、日本の弁護士がそれを後追いしてサポートをするために海外に展開をしていく、そういう時代になってきています。

 そうなると、負う責任というのも、予測可能性の低いところから来る可能性もあります。そういう観点で考えると、外国法事務弁護士の有限責任化ということではなくて、むしろ日本の弁護士の有限責任化という観点からも、今後とも、この有限責任という問題については、ぜひ役所の中でも御検討していただきたいなというのが正直お願い申し上げたいところでございます。

 次の質問に参ります。

 いわゆるB法人というものについては、種々今まで議論がありましたので、そのあたりについては飛ばしますけれども、その次について。外国法事務弁護士とそれから弁護士法人、弁護士と、それからさらには隣接業種を含めて、複合法人みたいなものを一体化してつくっていき、経営を一体化するということのニーズというのは、これから高まってくるんじゃないかというふうに思います。

 もちろん、B法人について、一つ検討事項があって、断念というか、今回は改正しないという結論を出した以上、さらに先の複合法人というところについては、なかなか今すぐ答えを出すということでもないかというふうに思いますけれども、ぜひ大臣の御所見をいただければというふうに思います。

谷垣国務大臣 今おっしゃるように、その議論をする前に、まだ詰めるべき議論はあるのかなと思いますが、御指摘のような法人の制度を設けるかどうかということは、結局のところ、今までの問題意識からしますと、そこに社員として参加される隣接法律専門職がその権限を越えて、本来弁護士が行うべき法律実務を実質的に取り扱うという、非弁活動といいますか、弁護士法七十二条でしたか、そういったものの潜脱にならないかというのがやはり最大の問題点になってくるんだろうと思います。

 それぞれの隣接専門職もそれぞれの業法がございますから、そういう業法の基本的な考えを踏まえて、その辺をどう制度設計していくかという議論は詰めなければいけないんだろうと思います。

椎名委員 ありがとうございます。詰めなければならない議論というのがたくさんあるのは、重々承知をしております。

 いわゆるB法人に関しては、既に外国法共同事業というところをやることによって、事実上、隣というか、同じオフィスの中に名札を二枚掲げて、同じ名前の法律事務所と、同じ名前の外国法事務所をつくって、基本的に内部での扱いはほぼ一緒ですね。弁護士と外国法事務弁護士とほぼ一緒で、同じように部屋が与えられて、オフィスを完全に共有する、そういう状況の中でやって、さらに言うと、経営もほぼ一体化しているという状況なんだというふうに思います。

 このB法人を認めないと、やはりその法人化という意味でいうと、例えば、いわゆる外国法事務弁護士事務所が法人化をしたいと仮に思っても、事実上、弁護士と共同で事務所をつくることができないと、グローバルなリーガルファームの日本支店として完結しないんですね。なので、やはりここは引き続き検討していただきたいなというふうに思います。

 さらには、私が従前所属していた事務所は、実は、タックスローヤーと、それから日本の税理士が、別途、同じフロアというか、同じビルの中に税理士事務所も一緒にあわせ持っていました。日本の税理士がやっている仕事というのは、アメリカではローヤーと呼ばれる弁護士がやっている仕事だったりするわけです。いわゆるタックスローヤーという専門的弁護士ですけれども、そういった仕事を実はその税理士と、それからタックスローヤー、アメリカの弁護士とが共同しながら、例えば移転価格税制とかについて助言をしていく、こういったことをやっていたわけですね。

 そうすると、やはり同じようにグローバルローファームを一部門として日本支店を完結させるとなると、実は隣接業種とも共同して法人をつくるということまでしないと、本当に使い勝手がそんなによくないということになってしまうんです。なので、本当に大臣のおっしゃっていることもわかりますし、所轄官庁が違って、所轄法律が全然違うのでなかなか難しいのは十分わかりますけれども、ぜひ省庁横断的に検討していただきたい問題ではあるなというふうに私自身は考えております。

 次の質問に参りたいというふうに思います。

 外弁法十条の承認基準については、先ほど来、西田先生のところで詳しくお取り上げいただいているので、そこは一つ飛ばさせていただきたいというふうに思います。

 次の質問に入りますけれども、外弁法四十八条一項の、まさに百八十日の在留資格というところについてです。

 これについても、先ほど来申し上げておりますグローバルローファームの実務という意味で申し上げますと、グローバルローファームというのは、世界じゅうのいろいろな支店をめぐった任意組合というのが一番上にあって、その後に日本支店における任意組合、パートナーシップ契約みたいなのがあって、大体そういう形になっているんですね。

 それぞれの立場の人が、グローバルの任意組合、パートナーシップのパートナー、パートナーシップの持ち分を持っているグローバルパートナーと、日本のパートナーシップの持ち分しか持っていないローカルパートナーと、組合のパートナーシップ持ち分を持っていないけれども対外的にパートナーと呼称していいノンエクイティーパートナーという人と、そのさらに、いそ弁的なアソシエートという人がいます。私はこの一番下っ端のアソシエートだったわけですけれども、大体そういう形になっているんです。

 この百八十日の在留資格というのは、一番上のグローバルパートナーシップというところに入っている人で生活の本拠が必ずしも日本なのかどうかわからないという人がこの法人の社員になれないのじゃないかというふうな問題があるだろうというふうに、私自身は、ちょっと法文を読んでいて思ったわけですね。

 なので、ちょっと伺いたいんですけれども、この百八十日の在留資格について、諸外国にまず類似の法制があるのかという点と、それから、相互主義という観点を考えたときに、これが、仮にないのであればということですけれども、仮にないのであれば、相互主義という観点から考えると、この要件を緩和していった方がいいのではないかというふうに思うんですが、大臣の御所見をいただければというふうに思います。

谷垣国務大臣 諸外国の例ということになりますと、私どもの承知している限りでは、こういう要件を認めている国は余りございませんで、あるのは、韓国が日本とほとんど同様の規定を置いているというふうに承知をしております。

 しかし、これは、今、相互主義との関係でおっしゃいましたけれども、相互主義的な観点から、こういう制度をあそこの国でもやっているから俺もこうだというわけでは必ずしもなかったんだろうと思います。

 これは、先ほど事務方の方から御答弁申し上げたかもしれませんが、一つは、長期間、日本を不在にしていて、依頼者から見ると、相談したくてもできないというようなことでは困るじゃないかというのは一つあったんだろうと思いますね。

 それからもう一つは、非弁活動にも通じてまいりますが、形式的に登録だけして、トレーニーというか、そういうものに丸投げをしていくようなことも、これはおかしいじゃないかというところから決められたものでございます。

 ですから、必ずしも相互主義的な観点ではなくて、日本の制度的な要請といいますか、そういうものだったと思います。こういう国際的な業務というのは、日々変化していくことでもございましょう。実態がどういうところにあるかは、我々もよく見なければいけないと思っております。

椎名委員 ありがとうございます。

 先ほど申し上げたヒエラルキーでいうと、私自身は一番下っ端のアソシエートだったわけですけれども、大体クライアントとの窓口は一番下っ端のアソシエートがするので、社員弁護士が日本にいるかどうかについては正直余り関係ない、社員弁護士というか社員である外国法事務弁護士がいるかいないか、正直余り関係ないというのが実感としてはあります。当然ですけれども、テレビ会議も電話会議もあるので、相談もできれば議論もできるようになっています。

 そう考えると、必ずしも、おっしゃっていたデメリットというか問題点というのは、解消できる部分もあるのではないかなというふうに思いますので、引き続き御検討いただきたいというふうに思います。

 最後の質問です。平成十五年の改正も含めてですけれども、この一連の外弁法の改正というのは、基本的には、ガット・ウルグアイ・ラウンドから続いているサービス貿易の自由化というものの一つの大きな流れなんだというふうに思います。さらには、米国から定期的に来ている要望書の中でも、比較的、平成十五年改正を含めて、そして今回の法人化を含めて、私自身も、使い勝手としてはどうかというところについて幾つか御指摘は申し上げましたけれども、おおむね、グローバルに見ても、やはり使い勝手という意味でいうと多少問題はあるものの、それなりに制度としては整備されてきたんじゃないかなというふうに思っています。

 要するに、サービス貿易の自由化という観点で、これ以上要請されている部分もそんなにないんじゃないかなというふうに思っているんですけれども、外務省と大臣に、それぞれ、今後の外弁法の改正を含めた、その法的サービスの自由化というところについて、今後の見通しというか御所見をいただければというふうに思います。

正木政府参考人 先生今御指摘のとおり、これまでWTOあるいは日米間の経済対話などにおいて、法律サービスの規制改革につきましては、職務経験要件の緩和あるいは廃止などの要請が寄せられて、議論がされてきております。

 また、日本としましても、各国の要望も念頭に置きながら、先生が御指摘されたように、法律事務の国際化、専門化及び複雑多様化により的確に対応するなどの観点から、種々制度改正を行ってきているのは御案内のとおりでございます。

 今回の法案はさらなる規制緩和を目指したものと理解しておりますが、各国からも引き続き我が国の外国法事務弁護士制度について要望が寄せられておりまして、法律事務の国際化、専門化あるいは複雑多様化に的確に対応する観点からも、引き続き、法務省とも連携を図り、議論を行ってまいりたいと思います。

谷垣国務大臣 今お話がありましたように、ガット・ウルグアイ・ラウンドとか、あるいは構造協議で議論されてきたものは、かなりこなしてきたのかなという思いはございます。ただ、今後どういうふうに議論になっていくのかはわかりませんし、やはりいろいろな、こういう国際的な法律業務の変貌していくところもあるんだろうと思います。そういったことをよく見きわめながらやっていきたいと思っております。

椎名委員 時間も来ましたので終わりますけれども、先ほど申し上げたように、これからは日本の法律事務所が外へ出ていく時代になるというふうに思います。そう考えたときに、今まで日本が米国やガットだったりWTOだったりというところから要望されてきたことと同じことを、日本が今後外へ発信していくということが必要になってくるというふうに思います。ですので、法務省と外務省とで連携をとりながら、弁護士業務の国際化という点から引き続き御検討いただきたいなというふうに思います。どうぞよろしくお願いします。

 本日はありがとうございました。

江崎委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

江崎委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

江崎委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんでしょうか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

江崎委員長 異議なしと認めます。そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

江崎委員長 次回は、来る八日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二十七分散会


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