衆議院

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第2号 平成26年10月15日(水曜日)

会議録本文へ
平成二十六年十月十五日(水曜日)

    午前九時二分開議

 出席委員

   委員長 奥野 信亮君

   理事 伊藤 忠彦君 理事 柴山 昌彦君

   理事 土屋 正忠君 理事 ふくだ峰之君

   理事 盛山 正仁君 理事 柚木 道義君

   理事 井出 庸生君 理事 遠山 清彦君

      安藤  裕君    井野 俊郎君

      池田 道孝君    泉原 保二君

      小田原 潔君    大塚  拓君

      大見  正君    勝沼 栄明君

      門  博文君    神山 佐市君

      神田 憲次君    菅家 一郎君

      木内  均君    黄川田仁志君

      小島 敏文君    小林 茂樹君

      小林 史明君    古賀  篤君

      今野 智博君    末吉 光徳君

      棚橋 泰文君    中谷 真一君

      平沢 勝栄君    三ッ林裕巳君

      宮澤 博行君    村井 英樹君

      八木 哲也君    郡  和子君

      階   猛君    横路 孝弘君

      高橋 みほ君    丸山 穂高君

      大口 善徳君    西田  譲君

      鈴木 貴子君    西村 眞悟君

    …………………………………

   法務大臣         松島みどり君

   法務副大臣        葉梨 康弘君

   法務大臣政務官      大塚  拓君

   衆議院管理部長      中村  実君

   政府参考人

   (内閣官房法曹養成制度改革推進室長)       大塲亮太郎君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 島根  悟君

   政府参考人

   (総務省自治行政局選挙部長)           稲山 博司君

   政府参考人

   (法務省大臣官房長)   黒川 弘務君

   政府参考人

   (法務省大臣官房訟務総括審議官)         都築 政則君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 小野瀬 厚君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          萩本  修君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    深山 卓也君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    林  眞琴君

   政府参考人

   (法務省保護局長)    片岡  弘君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  井上  宏君

   法務委員会専門員     矢部 明宏君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月十五日

 辞任         補欠選任

  安藤  裕君     井野 俊郎君

  大見  正君     神田 憲次君

  門  博文君     小林 茂樹君

  黄川田仁志君     村井 英樹君

  鳩山 邦夫君     木内  均君

  三ッ林裕巳君     棚橋 泰文君

同日

 辞任         補欠選任

  井野 俊郎君     安藤  裕君

  神田 憲次君     八木 哲也君

  木内  均君     小林 史明君

  小林 茂樹君     中谷 真一君

  棚橋 泰文君     三ッ林裕巳君

  村井 英樹君     黄川田仁志君

同日

 辞任         補欠選任

  小林 史明君     泉原 保二君

  中谷 真一君     勝沼 栄明君

  八木 哲也君     大見  正君

同日

 辞任         補欠選任

  泉原 保二君     鳩山 邦夫君

  勝沼 栄明君     門  博文君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

奥野委員長 少し遅くなりましたけれども、これより会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房法曹養成制度改革推進室長大塲亮太郎君、警察庁長官官房審議官島根悟君、総務省自治行政局選挙部長稲山博司君、法務省大臣官房長黒川弘務君、法務省大臣官房訟務総括審議官都築政則君、法務省大臣官房審議官小野瀬厚君、法務省大臣官房司法法制部長萩本修君、法務省民事局長深山卓也君、法務省刑事局長林眞琴君、法務省保護局長片岡弘君及び法務省入国管理局長井上宏君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

奥野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

奥野委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。盛山正仁君。

盛山委員 自由民主党の盛山正仁でございます。

 先日、十日の法務委員会での松島みどり法務大臣の所信的御挨拶を伺いました。犯罪被害者等基本法を大臣が議員立法で制定され、治安の維持、犯罪の抑止に取り組んでこられたというところには、大変すばらしいなと頭が下がる思いをしておりますし、また、大臣が御就任早々、性犯罪の罰則に関する検討会の発足を指示されるという、スピード感あふれた、また女性ならではの行動について、国民の一人として大臣の活躍に期待をするということをまず申し述べさせていただきたいと思います。

 大臣はきょうは内閣委員会の方に御出席ということでございますので、以下、副大臣と政務官に対しましてお尋ねをさせていただきたいと思います。

 以下、松島大臣の所信的挨拶の柱に沿ってお尋ねをしていきたいと思うわけでありますが、まず、世界一安全な国日本の実現に向けてということで、犯罪対策の推進についていろいろお述べになりました。

 私は、刑務所出所者などの円滑な社会復帰の実現、これは大変重要なことである、こう考えておりますけれども、その社会復帰に当たって、保護司の方々の活動というんでしょうか助力というんでしょうか、これが大変重要であると私は考えております。

 昨年の六月に刑法等の一部改正が成立をいたしました。施行はこれからということになっておりますけれども、これらの法改正によりまして、刑の一部執行猶予というものが今後可能になるわけであります。つまり、刑務所に入っておられる方がこれまでよりも早く出所をされて、そして社会の中で復帰をされる。

 そこに大きな役割を果たすのは保護司の方々です。保護司の方々が、また再犯ということがないように、一時猶予で出所された方々、こういう方々にどのように社会復帰の手助けをしていくのか、こういったことが大変大事なことになると思います。そういう点で、今、少しずつ保護司さんの数も減っているところなんですが、これまで以上に保護司の方々の肩にかかる役割というのは重くなってくる、私はそんなふうに考えております。

 一方、そうでありながら、保護司の方々への待遇というのはなかなか厳しい現状にあります。ボランティア同然というんでしょうか、保護司の方々の高邁なお気持ちに依存しているというのが現状ではないかな、そんなふうに思います。

 私も、地元で活動しておりましてよく比較をするのは消防団の方々でございます。消防士の方々は公務員です。そして、民間の方々が消防団となって、ボランティアとなって、例えば東日本大震災のときもそうでした、あるいはこの夏の広島の土砂災害のときもそうでした、そういう方々が前面に立っていろいろな活動をしておられます。

 同じように、法務省の職員とペアになって民間でボランティアとして活動しているのが保護司の方々であります。その保護司の方々に対する待遇というのが、消防団の方々に比べて大変厳しい状況であるなと私には感じられてなりません。だからこそ、保護司を引き受ける方がなかなか少なくなっている。

 あるいはまた、昔であれば、保護司の方々は地元の名士の方々も多かったわけでしょうから、ある程度広いお宅にお住まいで、そういうところへ出所者の方を招かれて、最近どうしている、困っていることはないか、そんなこともやりとりができるような環境だったかと思いますが、御案内のとおり、戸建ての家が減り、マンションがふえる現状でございます。家族とは別に一部屋を設けて、そこで出所された方々とお話をする、そういう家庭環境というんでしょうか、そういうものもなかなか難しくなっている。

 そんな中、より一層責任が重くなっている保護司の方々に対して、どうしたらそれに法務省が応えることができるのか。あるいは、新しい若い保護司の方々を今後迎えていくためにどうすればいいのか。出所者のこれからの円滑な社会復帰の実現にも赤信号がともりかねない、私はそんなふうに思いますので、保護司の待遇改善について法務省はこれまで以上にしっかりと取り組んでいくことが必要だと思うんですが、副大臣、いかがでしょうか。

葉梨副大臣 お答えいたします。

 極めて重要な課題であると認識しております。本来でしたら、松島大臣が御答弁申し上げて、法務省挙げて取り組んでまいるというその決意を述べなければいけないところですが、本日は内閣委員会出席のため御不便をおかけしますことをまずおわび申し上げます。

 保護司の皆様、無給の非常勤国家公務員として本当に厳しい仕事に従事していただいており、頭の下がる思いでございます。

 まさに今、盛山委員御案内のとおり、保護司の数ですが、定員が五万二千五百人に対し現在員四万七千九百十四人と、充足が非常に難しくなっていることに加えて、また高齢化も進んでおります。加えて、今御指摘ございましたように、刑の一部執行猶予というものが導入されますと、ますます保護司さんの業務も困難になるということも十分考えられるところです。

 そこで、今現在やっている施策としては、保護観察官やベテラン保護司によって担当保護司へのサポートを充実することで、一人の保護司さんの負担をできるだけ軽減できないか。あるいは、今、戸建てからマンションというお話もございました。更生保護サポートセンター、これを保護司さんの活動の拠点としてより充実しなければいけない。

 そのような支援の強化を行っているところですけれども、今後とも、保護司の方々の御意見や御要望をしっかりと受けとめながら、その不安や負担感をできるだけ軽減して、誇りとやりがいのある活動を行っていただけるよう、待遇の改善について努めてまいりたいと考えています。

盛山委員 副大臣、ありがとうございました。

 予算その他、これまでより厚くしておられるのは私も承知しているんですが、ぜひ実態をよくごらんになっていただきたい。現場で保護司の方々がどういうふうにしておられるのか、あるいはサポートセンターの確保にどれだけ御苦労しておられるのか、そういうことをぜひごらんいただきまして、入所者の社会復帰の促進、そして再犯の防止につなげていっていただければと、心から期待をする次第です。

 それでは次に、二〇二〇年オリンピック・パラリンピック東京大会を見据えた出入国管理及びテロ対策等の推進についてでございます。

 観光立国の実現に向けて、外国人観光客が大変増加しております。私も長く観光に携わってまいりましたが、テンミリオンということで、昭和六十年ごろ、日本人が海外に一千万人渡航しよう、そんなことをやっておりましたけれども、当時、テンミリオン、海外からの外客誘致が一千万になるなんというのは夢のまた夢でございました。長年の懸案でございましたが、昨年になりまして、やっとこの一千万人が実現をしました。そして、ことしになりまして、円安も一つ大きな背景かとは思いますが、これまでのところ、昨年以上に順調な形で外国人観光客がふえてきております。

 これまでは、どちらかというと、貿易で日本は黒字が大きかった。黒字減らしのために、貿易収支の黒字を減らすために、総合収支で少しでも黒字幅を減らすために観光収支で赤にする、そんな政策をしておったのが、これからは、場合によったら観光収支で黒字になる、それこそ、外客の誘致によって観光立国ということにもつながる、今、そんな時代に変わってきたのかなと。そういう点では、国際交流が、観光ということで一般の人の交流が深まるということで、いろいろな形で各国の人々と触れ合い、また、日本も見てもらって、相互理解が深まるというのは大変結構なことだ、そんなふうに思うわけなんです。

 まず、外国人観光客の方が日本に入って一番最初に接するのが入国管理でございます。法務省の審査官にお目にかかられるというのがまず第一で、そこで第一印象というのがやはり相当程度決まってまいります。私自身も外国に何度か行きましたけれども、三十分から一時間ぐらい待たされることがあったらば、何という国なんだと、そんなふうにも正直思いました。

 日本にお見えになる外国人の印象をよくするためにも、入国管理のところをスムーズにしていくということが必要であると思います。三十分以上待たせるということがないように、スムーズな入国審査というものを実行していっていただきたい。

 また、日本は島国ですので、これまではほとんど飛行機でお見えになるということだったわけですが、最近はクルーズ客船によってお見えになる方もふえました。昔のクイーン・エリザベス2は千五百人程度の旅客定員の船でありましたが、最近の船は、何とお客さんが六千人乗れるような船までできているぐらいです。

 今の日本でも、二、三千人のお客さんが一度に来るといったような客船が入港するようになりました。ジャンボ機が仮に最大五百人乗ってくるとしましても、三千人ということであればその六倍の人数が一挙に来るわけでございますので、これだけ大量の来客を、どうやってスムーズな入国審査をしていくのか、これはなかなかそう簡単なことではないと思います。

 他省庁の部分で、そういうゲートですとか、いろいろな入国のための、あるいは空港ビル、旅客船ターミナルという整備も必要でございましょうし、また、アメリカのESTAと呼ばれる電子渡航認証システムといった、外務省等にお願いをしないといけないところもあろうかと思いますけれども、入国審査官の増員、そして入国管理施設の整備、自動化ゲート、法務省として、入国審査体制、システムの改善に力を入れていっていただくことがこれまで以上に直面する大きな課題になっていると思います。

 特に、人員の増員なんというのはそう簡単にできることではないと思うわけなんですけれども、このあたり、ぜひ法務省にこれまで以上に力を入れていただきたいと思うんですが、政務官の方から法務省の対応ぶりについてお答えいただきたいと思います。

大塚(拓)大臣政務官 お答え申し上げます。

 今、盛山委員御指摘のとおり、貿易収支も赤字基調となってくる中、観光立国というのは戦略的に極めて重要だと認識をしているところでございます。

 昨年、二〇一三年には外国人観光客が一千百二十六万人、本年は一千二百万人を超えるというふうに見込まれているところでございまして、こうした中、法務省としても、入国審査体制を抜本的に拡充していく、そして二〇一六年度までに最長待ち時間を二十分以下にしていきたい、こういうことで、来年度については、入国審査官を三百人の増員ということで要求させていただいているところでございます。

 また、二〇二〇年のオリンピック・パラリンピックに向けては、二千万人という外国人観光客が日本にお越しになるということが予想されておりますので、それまでに八百名から千百名の入国審査官を計画的に増員していきたいと考えているところでございます。

 一方で、治安も切り下げるわけにはいきませんので、しっかりとした審査をしながら待ち時間を短縮していくということが必要になってまいります。そうした中、御指摘のとおり、出入国の審査ブース増設をしてまいります。

 それから、自動化ゲートの利用促進、そして顔認証技術を活用した出入国確認というもの、これについては、今、いろいろな形で研究、実証しているところでございます。そして、アメリカのみならず英国や豪州でも導入されております電子渡航認証システムといったもの、これも検討を開始しているところでございます。

 こうしたことをあわせて、迅速かつ円滑、かつ治安を確保した形での出入国審査というものを実現してまいりたいと考えております。

 また、クルーズ船につきましては、さきの通常国会で入管法の改正が成立をいたしております。本人確認が的確に行われているなどの一定の範囲のクルーズ船の外国人乗客を対象として、簡易な手続で上陸を認めるという船舶観光上陸許可の制度というものを新たに導入することといたしたところでございます。明年の一月一日に実施ということになっておりますので、これに向け着実に準備を進めてまいりたい、このように考えておるところでございます。

盛山委員 御答弁ありがとうございました。

 私も顔認証のテストに参加したことがありますけれども、本当に、そういう最先端の技術をうまく活用されて、スムーズな入国審査をぜひお願いしたいと思います。

 二〇二〇年、もうあと六年足らずであります。二千万人になるかどうかは正直わかりませんけれども、東京オリンピック・パラリンピックの際には多くの人々がお見えになりますので、それへの体制整備をぜひ強化してやっていただきたいと心から願う次第です。

 今政務官の御発言の中にもありましたけれども、外国人の受け入れということは決してプラスだけではない、マイナスのこともある、こんなお話がありました。

 我が国は、安全、安心については大変高い評価を受けている国であると思います。外国人の観光客がふえるのは大変結構なことなんですが、それによって我が国の治安に黄色い信号がともるようなことになれば、これはかえってマイナスになろうかと思います。テロ等、そういうような関係者が入らないようにしていくためには、やはり、スムーズな受け入れと同時に、慎重な審査というんでしょうか、そういうものも必要であります。

 また他方、今、我が国は、二〇〇八年をピークに人口が減少する社会になってまいりました。これからの我が国の経済的な発展なんかを考えますと、外国人の受け入れについても、他方、観光客ということとは別に考えていかなければならない、そんなタイミングです。

 この臨時国会においてもまたそういうような法案が、内閣委員会の方でしょうか、御審議なされるやにも伺っているところでございますけれども、今後、広く、あるいは多く外国人を受け入れていくというためには、政府側の対応あるいは国会での法案審議、それだけではなく、広く国民の皆様に、外国人を受け入れるということはこういうふうなメリット、デメリット、両方ありますよ、しかしながら、我が国としてはこういう方向に向かっていきたいんだ、そんなことを丁寧にわかりやすく説明して理解を得る必要があると思うわけなんですけれども、入国管理を御担当されている法務省として、そういうことに対しましてこれからどのように取り組んでいくのか、副大臣の方からお答えいただければと思います。

葉梨副大臣 外国人材の受け入れについての盛山委員の御指摘、このメリット、デメリット、本当に非常に重要なことだと考えています。

 内閣府の試算によれば、今、人口減少という御指摘がございましたが、毎年毎年、人口の減少によって〇・三%ほど成長率を引き下げるという結果になっている。そういうこともございまして、昨年、本年と二度にわたり閣議決定された日本再興戦略では、高度外国人材の活用など、外国人材の活用に関するさまざまな方策が盛り込まれているものと認識をしております。

 ただ一方で、まさに委員御指摘になられましたように、世界一安全な国日本というのは、これもまた重要な経済発展のインフラであるというふうに認識をしております。ですから、テロリスト、違法行為をもくろむ外国人の水際での入国阻止、入国管理秩序を揺るがす不法滞在者、偽装滞在者問題への対応など、これも経済発展のためにもやはり重要な課題である。まさにこの治安の維持というのは極めて重要な課題と認識しています。

 ですから、ここら辺のメリットとデメリット、ここのところをしっかりと国民的議論を広げていかなければいけない、まさに委員と同じ認識でございます。

 「日本再興戦略」改訂二〇一四においては、「移民政策と誤解されないように配慮し、かつ国民的なコンセンサスを形成しつつ、総合的な検討を進めていく。」とされております。関係省庁ともしっかりと連携をしつつ、国民的な議論を進め、政府全体として検討を進めていきたいと考えております。

盛山委員 ありがとうございました。

 やはり、国民の皆様、できるだけ多くの皆様が、外国人と私たち日本人が共生していくということはどういうことなんだということに不安を感じることがないよう、御理解をしていただけるよう、ぜひ法務省だけではなく政府全体でお取り組みを強化していただければ、そんなふうに考えます。

 それでは次に、法の整備についてお尋ねをいたします。

 この臨時国会の中で、法の整備の中で、法務省が、政府が今度提出されようとしている法案としまして、船舶の所有者等の責任の制限に関する法律、これの改正を今御準備されていると伺っております。俗に船主責任制限法といいますが、民法の一部の特例であるということで法務省が御担当ということかと思いますけれども、実態の海運あるいは海難事故ということに対して、やはり法務省では十分に把握することはなかなか難しいんじゃないかな、そんなふうに私自身は失礼ながら思うわけであります。

 タンカーなどの油の、タンカーなどが積んでおります積み荷が起こす事故につきましては、船舶油濁損害賠償保障法というものがございまして、これも別の条約があって、これについては国土交通省が所管をしておられるわけなんですけれども、この船主責任制限法は法務省所管ということでありますので、国土交通省ですとか、あるいはそのほかの関係の各省庁とよく御連絡をとっていただいて、この法改正、あるいは法の目的であります被害者の救済、これをどのようにしていけばいいのかということ、一層の御検討、取り組みを強化してほしいな、そんなふうに思うわけなんです。

 シェークスピアの「ヴェニスの商人」という話がありまして、当時は帆船の時代ですけれども、船が出ていって、船が戻ってきたら積み荷で大もうけする、かわりに、船がどこかで難破をしたらすってんてんになるということで、シャイロックがお金を貸してというような、そんな話がありましたけれども、海運というのは、昔からそんなふうに事故等がつきものであった。あるいは、そういう歴史があるからこそ、民法の中に海商法というような分野ができた、あるいはイギリスのロイドのコーヒーショップで損害保険ができた、そんな経緯があるわけなのであります。

 そういうような、世界の海を船が自由に動くということで、それぞれの国で決めていてはいけないということで、国際間の条約ができた。そして、この船主責任制限条約に沿った形での改正ということで、今回の国内法であります船主責任制限法の改正、こういうことでありましょう。

 ただ、ここでぜひ御検討いただきたい、取り組んでいただきたいのは、条約に合わせた機械的な改正だけでは不十分なところがあるということでございます。

 一旦海難事故が発生した場合、特に環境の被害、これは、タンカーのような積み荷の油でなくても、船を運航するバンカーオイルと言われます油、燃料油、これが漏れることによりまして相当大きな環境被害を引き起こします。また、漁業被害も引き起こします。こういった被害者対策にしっかりと取り組んでいく必要があるんじゃないかなと私は考えるところです。どうすれば被害者が泣き寝入りをせずに済むようになるのか。船主の責任を制限するということだけではなく、被害者の被害に対する救済をどのようにして図っていくのか。

 法と政治は被害者を救済するためにあるのではないかと私は思います。そういう認識を、大臣や副大臣、政務官という政治家の方々だけではなく、国家公務員でいらっしゃる法務省の職員全体で共有していただけるよう、ぜひ政務官の方から御指導いただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

大塚(拓)大臣政務官 お答え申し上げます。

 今御指摘をいただきました船主責任制限法、本臨時国会において法務省所管ということで提出をさせていただくことを予定しているわけでございます。

 本法は、締約国が四十九カ国ございますけれども、これが、物価も大分上昇したということで、前回改正は九六年でございますから、それから物価が上昇した分を、一・五一倍ということで、損害賠償の責任限度額を引き上げるという国際条約の改正に伴う法改正ということになります。

 一方で、委員大変問題意識がございますように、盛山委員は、運輸省、国交省の出身でありますとともに、兵庫県が選挙区でございまして、委員の御地元で海難事故に伴う大規模な漁業被害というものが過去に発生をしているわけでございます。そうした意味で、大変問題意識の高い中で法務部会長という責任ある立場を今担っていただいておるわけでございますけれども、党内の議論でも、部会長が大変イニシアチブをとってこの問題に取り組んでおられるというふうにお伺いしております。

 船主責任制限法の引き上げだけではやはりカバーできないような被害というものが、現代的な海難事故という中では多く見られるところでございます。兵庫県のケースもそうだろうと思います。漁業者の方々が非常に生活にも困窮をするような被害を受けてしまう。確かに法務省という所管から見ますと、そういうところまではこれまでなかなか目が行き届いてきていなかったのではないかという思いは、私も、盛山先生から御指導いただいて、するようになっているところでございます。

 一方で、さまざまな省庁にまたがる課題でもございます。船舶油濁損害賠償保障法、油賠法というものがございますが、これは国交省の所管であり、そして漁業保険あるいは漁業共済ということになってまいりますと、農水省、水産庁の所管ということになってございます。

 法務省としても、こうしたところの問題意識を職員一同しっかり持つように今後指導していきたいと思いますし、関係省庁、国交省、農水省、水産庁とともに、こうした問題にしっかりと取り組んで必要な検討をしてまいりたい、このように考えているところでございます。

盛山委員 ありがとうございました。

 ぜひ、関係者、多くの皆さんの意識を共有していただいて、被害者の救済ということに力を入れていただければと思います。

 国際協力の推進について伺わせていただきたいと思います。

 法制度整備の支援もそうなのでございますが、国際協力の推進ということは、法務省の分野でも、いろいろな分野に及ぶなかなか幅の広い話だなと思っております。

 法の支配という言葉、前大臣の谷垣法務大臣もよくお使いになっておられましたけれども、ルール・オブ・ロー、ルールをみんなが守るんだという、この意識を世界全体で共有していくということが大変大事なことだと思っておりますし、また、この法の支配の理念を我が国が率先して世界に広げていくということが日本の地位や影響力を高めることにつながるのではないかなと私は考えております。

 何でも自分の好き勝手にやってよいということではないわけですから、だから法の支配というものが、これまでの長い歴史の経過で、イギリスだとかフランスだとか、そういうところからスタートしてできてきたわけであります。王様が勝手なことをしないようにというようなことで、それがだんだん、自然法といったような考え方と結びついて、法の支配となったのではないかなと思います。

 国際法などのルールを守っていくことが世界の平和と安定につながるということを主張することは、我が国が、国際紛争を解決する手段としての武力の行使を放棄した日本が率先して世界に広めていくのに一番ふさわしい役割ではないかと思うんですが、この国際協力の推進、法の支配の敷衍ということについて、副大臣から御意見を伺いたいと思います。

葉梨副大臣 お答えします。

 盛山委員御指摘のとおり、法務省におきましては、法務省の運営します国連アジア極東犯罪防止研修所や法務総合研究所国際協力部で、刑事司法実務家を対象とした国際研修あるいは開発途上国に対する法制度整備支援を進めております。

 そして、この法の支配、非常に重要な概念だというふうに考えておりますし、先週、ベトナムの副首相が来日されまして、ぜひとも法制度整備支援などについて日本の知見を教えていただきたいと。実は、諸外国の方からも、この法の支配について、日本からいろいろと援助をいただきたいという要望は極めて強いものがございます。

 この分野というのは、まさに御指摘のとおり、日本がしっかりとリードして、まさに平和的な法の支配を日本がリードするという意味でも、今後とも、法務省としてもしっかり力を入れた国際協力に取り組んでいきたいと考えています。

盛山委員 ありがとうございました。以上で終わります。

奥野委員長 次に、遠山清彦君。

遠山委員 公明党の遠山清彦でございます。

 改めて、いらっしゃいませんが松島大臣、葉梨副大臣、また大塚政務官、御就任おめでとうございます。当委員会の与党理事として、また公明党の法務部会長として、大臣を初めとして政務三役の皆様のリーダーシップのもとに法務行政の運営等をしっかり支えてまいりたいと思っております。

 また、本日後で質問させていただきますが、大臣の就任早々、刑法の強姦罪の見直しについて、市民団体の方々の要望を直接聞いていただきました。この問題も含めて、さまざまな法務行政の課題につきまして、与党ではございますけれども、時に提案をさせていただきながら進めてまいりたいと思っております。

 まず、本日の一問目でございますが、再犯防止の取り組みの強化についての基本的考え方を伺いたいと思っております。

 先ほども盛山委員のお話にありましたとおり、再犯防止の強化を通じて、日本が世界一安全な国であるということを担保していくことは非常に重要なことでございます。日本で今発生している犯罪の約六割が再犯者によるものでございまして、ここのところを減らしていくということが、日本全体で発生している犯罪を減らすことにつながるわけでございます。

 再犯防止で重要なキーワードは、もう副大臣も御承知だと思いますが、統計が示しておりますとおり、元受刑者の住まいと雇用の確保ということでございます。出所後に住むところがない、あるいは仕事がない方ほどすぐ再犯に走る傾向が強いということでございまして、ここの手当てが非常に大事でございます。

 そこで、まず、概括的な御答弁で結構でございますが、来年度に向けまして、再犯防止の強化についてどのような取り組みをなされるのか、副大臣ですか、御説明をいただければと思います。

葉梨副大臣 まさに、世界一安全な国をつくるためには、再犯防止施策が極めて重要でございますし、住まいと仕事の確保というのは本当に、統計的にも住まい、仕事のない方が再犯をしやすいということはもう立証されておりますので、極めて重要だと思っております。

 政府におきましても、再犯防止施策として、施設内から社会内における処遇まで切れ目のない一貫した指導、支援を行うことが特に重要であるということから、対象者の特性に応じた指導、支援の強化、社会における居場所と出番の創出などの総合的な再犯防止対策を推進しているところでございます。御指摘のように、来年、では具体的にどうだということでございますと、刑務所出所者等の就労を確保するため、民間の雇用ニーズに応じた刑務所における職業訓練の拡大、これはニーズと離れちゃうと非常に問題でございます、さらには協力雇用者に対して奨励金の支給制度を新たに創設する、このような形での必要な経費を要求しております。

 また、刑務所出所者等の住居を確保するという意味では、更生保護施設の受け入れ機能の強化や老朽化した更生保護施設の施設整備の促進、これについても所要の予算要求をさせていただいておるところでございます。

遠山委員 副大臣、ありがとうございます。

 副大臣の御答弁の中で職業訓練の拡充が出てきましたが、これは極めて重要なんですね。

 私は、地元が九州と沖縄でございまして、特に福岡の協力雇用主会の皆様と大変親しく交流をさせていただいております。

 昨年のことになりますが、ある程度の規模で介護施設を運営している団体の理事長にお願いをしまして、そこで、この半年ちょっとで五名ぐらい元受刑者を雇用していただきました。やはり、実情を伺いますと、入所している間に例えばヘルパーの資格を取ったりしていれば、職場に来てからもすぐ働くことができるということがございますし、また一方で、五人ぐらい雇われた中で二名ぐらいが、雇ってすぐに、住まいも用意してあげたんですけれども、失踪してしまったという実際の事例もございました。やはり、元受刑者の方々の場合なかなか難しい面が、一般の求人と違いまして、あるようでございます。

 しかし、そういうリスクがある中でも、社会貢献の一環として元受刑者や非行少年を積極的に雇おうという協力雇用主の存在は非常に重要だと思っておりまして、その御認識のもとに進めていただければと思っております。

 二問目の御質問は、まさにこの協力雇用主についてでございます。

 私も何度も当委員会で取り上げてまいりました。貴重な存在であるというのは先ほど申し上げたとおりでございますが、実は、この協力雇用主に登録される企業や団体、事業主さんがふえておりまして、去年ぐらいは、私、大体ざっくり一万と言ってきたわけですが、最新の数字を伺いましたら、今、一万二千六百三社登録されているということでございます。問題は、全国で一万二千六百三社の事業主が、条件が合えば元受刑者を雇ってもいいという意思を持ちながら、実際に雇用している会社の数は四百七十二にとどまっているということでございます。

 これは、なぜ起こっているかいろいろ私も現場で伺いますと、やはりミスマッチなんですね。つまり、雇用したい側の求人の条件と雇用される側の諸条件が合わないというところがございまして、ここをどう改善するか、また、法務省の立場から、行政ですから限界はありますけれども、よりスムーズに多くの事業主さんに雇っていただけるようにするかという工夫をするところが大事だと思っております。

 副大臣、どういう工夫をされようとしているかについて御答弁いただきますが、私としましては、協力雇用主登録事業社数の一〇%、一割、ですから、今でいうと千二百社ぐらいが実際に雇用しているという状況を一刻も早くつくり出すことが大事だと思っておりまして、これは私が勝手に申し上げている目標でございますけれども、ぜひ副大臣にも共有していただいて、その方向に向けて、今年度はまだ残り半分ございますし、また来年度もお取り組みをいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

葉梨副大臣 遠山先生と全く同じ認識を共有させていただいております。

 まず、協力雇用主の方々により多く雇っていただくという意味でも、奨励金をしっかりと確保したいというふうに思います。

 そして、矯正施設の中でそういう事業主のニーズに応じた職業訓練をするということで、今幾つか取り組みはしておりますけれども、しっかりと情報交換、我々がニーズ自体をやはり把握しなければいけない。そして、把握をした上で、どのような形の資格を取らせたらいいのか、あるいはどういう訓練をしたらいいのかというのをきめ細かに今後とも考えていかなければならない。

 そういうことで、いろいろな知恵をめぐらせながら施策を進めてまいりたいと思いますので、今後とも御指導をよろしくお願い申し上げます。

遠山委員 ありがとうございます。目標をシェアしていただいたので、ぜひ一割を目指して頑張りたいと思います。

 続きまして、冒頭少し言及いたしました刑法、強姦罪の見直し、別の言葉で申し上げれば、松島大臣が就任早々からおっしゃっている性犯罪の罰則、罰則の強化ですね、率直に申し上げて。ちょっとお伺いをしたいと思います。

 まず、大臣のリーダーシップのもとに、迅速に、性犯罪の罰則に関する検討会が立ち上げられたことに心から敬意を表したいと思います。

 先日も私、大臣のお部屋に、性暴力禁止法をつくろうネットワークという市民団体の代表の方々をお連れいたしまして、いろいろな意見交換をさせていただきました。現在の刑法に定められております罰則の中で、市民団体の皆さんから言わせれば十項目以上改善点があるということなんですが、特にその中で二点、きょうは、私個人としては早急に改善をしてもらいたい点を指摘したいと思います。

 まず一点目は、現行法上、性交同意最低年齢が十三歳である、この点でございます。私、個人的に、十三歳の少女がどういう状況下で男性との性行為に同意するのか、ちょっとにわかには想像しがたい面がございます。ですから、少なくともこの同意最低年齢を今の十三歳から引き上げるべきではないか。十三歳というと義務教育の途中ですから、これは引き上げるべきではないかということを申し上げたいと思います。

 それから、二点目ですけれども、性犯罪を罰する際の要件に、法律上の文言をそのまま言いますと、暴行、脅迫を用いてという要件がございます。これの見直しをするべきではないかという点も指摘をしたいと思います。

 なぜこういうことを申し上げるかといいますと、その暴行、脅迫を用いて性犯罪を行ったことが立証されないと加害者が有罪にならないということがございます。これは、具体的に申し上げれば、女性が抵抗しなかったことに着目をして、裁判等で、この要件が満たされていない、そして加害者が無罪になるということがあるわけでございます。

 しかし、常識的に考えまして、暗がりの道端とか公園等で突然男性に襲われて、かつ、その男から騒いだら殺すぞという類いの言葉をかけられた女性が精神的ショックを受けて抵抗ができないということは、これは容易に想像できるわけでございます。ところが、裁判になりますと、この加害者、被疑者と言っておきましょう、被疑者の弁護側が、実際にその行為中に女性が抵抗していなかったということをもって、この刑法上の要件に合わない、よって無罪放免ということがございます。

 私、これは国民の常識から考えて、ちょっとおかしいんじゃないかというふうに思っております。もちろん、私も、法務委員会に所属してもう三年目でございますので、刑法の罰則を見直すということは、これは法制審にかけなければならないわけですし、時間も要するわけですし、またいろいろな面からの慎重な検討というのが必要だとは思いますけれども、社会の中で常識的に考えられていることからすれば、私が今取り上げた二点については早急に改善の方向で法務省でも検討していただくべき刑法の問題点ではないかと思いますが、現時点でどのようにお考えか、伺いたいと思います。

葉梨副大臣 本来大臣が答弁しなければいけないところでございますが、大臣の所信的挨拶の中では例示として罰則の引き上げというのが取り上げられた、触れられたわけですけれども、私も、法務省で大臣にお仕えしながら、非常に松島大臣の性犯罪の抑止についての極めて強い意思というのを実感しております。

 ですから、今般の性犯罪の罰則に関する検討会、これも早急に発足準備が整ったわけですけれども、ここでは、単に罰則の引き上げということだけではなくて、多角的な論点が活発に議論されるというふうに我々も期待をしています。御指摘のように、暴行、脅迫がなくても強姦罪が成立するいわゆる性交同意年齢、これが十三歳未満というのは低過ぎるんじゃないかとか、あるいは、強姦罪等の成立に必要な暴行、脅迫の程度が厳し過ぎるのではないか、このような論点についても活発な御議論を期待しています。

遠山委員 ぜひよろしくお願いいたします。

 副大臣、読まれたことがあるかどうかわかりませんが、天童荒太さんという作家が書いた「永遠の仔」という小説がございますけれども、これを私は以前読みまして、大変衝撃を受けました。小説ではありますが、幼少期に性的虐待を義理の父親等から受けた三人の若者が、大人になってから、自分が意識しない間に心に傷を負っていて、いろいろな事件を起こしていくことが克明に描かれているお話でございます。かなり児童相談所とかの現場を知っている作家さんが書いたものですので、幼いときに性的虐待を受けた人がどういう傷を負って社会で生きているかということはやはりぜひ御認識をいただいて、真剣に取り組んでいただければと思います。

 続きまして、若干関連しますが、本年の通常国会におきまして、議員立法で改正児童ポルノ禁止法が成立をいたしました。国際社会の強い要請、そして何よりも被害に遭った子供たちを守るために、また、新たな被害者をつくらないためにも絶対に必要で画期的な改正であったと、私も提案者の一人として自負をしているところでございます。

 今回のこの改正によりまして、いわゆる三号ポルノの定義が具体的になりました。「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの」という、より具体的な定義に変えられております。

 まず警察庁に伺いますが、この法改正そして法施行が始まってから三カ月がたちましたけれども、この新たな定義に抵触する疑い等で逮捕または検挙された事例があるのか、お答えをいただきたいと思います。

島根政府参考人 お答えいたします。

 改正法施行後の児童ポルノ事犯の検挙状況につきましては、現段階では都道府県警察から全体的な報告を受けていないため、お尋ねの数字を把握しておりませんが、新たに設けられました盗撮による児童ポルノ製造罪、これを適用し検挙した事案については報告を受けておりまして、これらはいわゆる三号ポルノに該当するものと承知しております。ちなみに、本年上半期につきましては、検挙事案のうちこの法二条三項三号に該当する被害児童数は、二百六十九人と把握いたしております。

遠山委員 法施行が七月ですから、数字は下半期でまとめて、来年ぐらいに出てくるんだと思いますけれども。

 副大臣、今警察からちょっと数が出てこなかったのであれなんですが、十月五日、NHKの「おはよう日本」という報道番組で、「“子どもの性の商品化”実態は…」という特集がありました。私もこれを拝見してちょっと驚愕をしたんですが、改正法の施行の後でも、水着姿の少女たち、中には少女といっても三歳の幼児が出演しているDVDが、映画やドラマと同様に一般向けの商品として、店舗によってはいまだに販売されているという実態がNHKで報道されております。

 そのNHKの報道の中で、インタビューを受けたビデオ業界の関係者から、法改正の後も意識はそれほど変わっていない、手口も悪質になり、どんどん過激に進んでいる会社も幾つかあるという証言がありました。

 それから、今回の質疑に当たりまして、通告のときに、ちょっと委員会で配るには余りにも不適切な内容だったので配っておりませんが、法務省と警察庁に私は渡しましたけれども、カラーの写真で、写真を見るだけでも明らかに法律に抵触しているような商品が店頭に並んでいる店舗内の写真あるいはホームページが存在をいたしております。

 改正の後も、こういった法律に抵触するような商品が堂々と、一般の人も入れるようなところで売られているということに私は大変な憤りを覚えておりまして、警察庁並びに警視庁、そして法務省の刑事局を中心に、この辺は徹底的に取り締まりを強化していただきたい、こう思いますけれども、いかがでしょうか。

葉梨副大臣 本当に、児童ポルノあるいは児童の性的虐待の問題というのは極めて大事な問題だと思いますし、私も実は、平成九年に警察庁の少年課におりましてからの、結構長くかかわっておる事案でございます。特に日本において意識が諸外国と比べて余り高くないというのも、これもまた実態であろうかと思います。

 ただ、改正法が施行になって三カ月ということですけれども、まずもって、やはり、こういうような形で改正法が施行になったんだ、その意味はどういうところにあるんだということを我々の側でもまず積極的な広報をして国民の理解を得るということとあわせて、しっかりとした取り締まりを行う。これを車の両輪として、ぜひとも、国民の中から児童に対する性的虐待ということを払拭できるような、そういう社会をつくることができるように我々としても努力をしていきたいと思っています。

遠山委員 ぜひよろしくお願いします。

 それで、簡単に、これに関して最後にちょっと提案があるんですが、実態の把握を法務省また警察庁においても、警察庁の答弁は要りませんが、やっていただきたいと思っておりまして、ぜひ、NPOとか市民団体等で実態把握に努めているところもございますので、これらの団体からのヒアリングを含めた調査を強化していただきたいと思いますが、その点いかがでしょうか。

葉梨副大臣 現場の実態につきましては、先生御指摘のように、多くのNPO、関係団体の方々が非常に熱心に現場の実態について調査もしていらっしゃるし、また危機感も持っていらっしゃる、その現状も本当によく私も存じ上げているつもりです。

 法務省としても、例えば、児童ポルノ排除対策推進協議会というのを毎年十一月に開催する、そして、関係団体による講演やあるいは官民のパネリストによるパネルディスカッション、あるいは、ことしの十一月にも同様の公開シンポジウムを行うというようなことを企画して、また実行もしているところですけれども、まさに先生の御指摘を踏まえまして、より緊密にこういった情報交換を行うように私どもも心がけてまいりたいと思いますし、また、職員をしっかり督励していきたいと思っています。

遠山委員 副大臣の力強いお言葉をありがとうございました。

 シンポジウムについて年に一度やっているということは私も認識しておりますが、副大臣が最後におっしゃったように、年一回のシンポジウムにかかわらず日常的に情報収集に努めていただいて、悪質な業者やネットワークを見つけたときには、ぜひ警察庁と相談をして取り締まりを強化していただきたいということを重ねて申し上げたいと思います。

 最後になりますが、外国人人材の活用について、まず法務省としての基本的な考え方を伺いたいと思います。

 今、人手不足が深刻化しておりまして、政府のさまざまな文書、例えば成長戦略、再興戦略等の中でも日本社会において外国人材の受け入れを強化すべきではないかという方針が示されているわけでございますが、一方で、政府としては従来から、例えば単純労働者は原則受け入れない、移民政策はとらないということも言ってきたわけでございます。この外国人材の受け入れについて、まず法務省の現時点での基本的な考え方を端的に伺いたいと思います。

葉梨副大臣 先ほど盛山委員にも答弁をさせていただきましたけれども、昨年、本年と二度にわたり閣議決定された日本再興戦略、ここでは、高度外国人材の活用など、外国人材の活用についてさまざまな方策が盛り込まれています。

 まず一つは、やはり法務省としても、日本経済のさらなる活性化のためには、活性化を図って競争力を高めていくためには、これに資する外国人材の受け入れは一方で非常に重要である、これはそう考えています。ただ、他方で、やはり世界一安全な国日本をつくるということも、これまた諸外国から投資を受け入れて、そして安心して働いていただくという意味でも、これも経済発展の大きなインフラである。両方をしっかり両立させていくということが大切だというふうに考えています。

 ここで、特に中長期的な外国人材の受け入れについては、先般六月に閣議決定された日本再興戦略で、「移民政策と誤解されないように配慮し、かつ国民的なコンセンサスを形成しつつ、総合的な検討を進めていく。」とされております。

 まさに国民的な議論を進めながら、先ほど申し上げました成長に資するという点、さらに治安をしっかりと守っていくという点、これを両立させるべく、関係省庁とも連携して、しっかり議論を進めていきたいと思っています。

遠山委員 ぜひよろしくお願いします。

 最後の質問になりますが、この外国人材に少し関係しますけれども、技能実習制度の課題で保証金の問題というのがありまして、十月十一日付読売新聞朝刊の一面で大きく報じられました。

 その内容は、これはもとになっているのは厚生労働省の調査ということでございますけれども、この技能実習制度で来日した外国人研修生のうち、約一六%が来日前に母国で保証金を支払ったと回答しているということでございます。この保証金というのは、今、厚生労働省は認めておりません。禁止しているわけでございますけれども、どうも、いろいろ聞きますと、研修生が来日後に逃走するのを防ぐ目的で送り出し機関が徴収し始めたということでございます。ただ、今回の調査で明らかになったのは、調査を受けた一六%が支払っていると答えているということでございます。

 そこで、簡潔に二点伺いたいと思います。

 一点は、法務省としては、保証金を禁止しているわけでございますから、この禁止事項の実効性をどう担保していくのかということが一点でございます。

 それから二つ目は、来日後に逃走を防ごうとして労務管理を強化する、例えば研修生のパスポートを取り上げるとか銀行通帳を取り上げるとか、ここまでやりますと、これはもう日弁連等から人権侵害だと言われてしまうという面がありまして、非常に難しい面がございます。そういった、来られる研修生の人権に配慮しながら同時に保証金も払わせない体制というのをとらなきゃいけないんですが、それに向けての対処方針を伺って、私の質問を終わりたいと思います。

葉梨副大臣 済みません、私の方から答弁させていただきます。

 御案内のように、現行制度のもとでも、技能実習に関連して、送り出し機関などが技能実習生から保証金を徴収することは禁止をされています。しかし、まさに御指摘のように、保証金の徴収は通常、外国で行われるものですから、その実態を把握することはまず一つ大変困難なところがある。

 では、それにどう対処するかということでございますけれども、やはり外国政府との協力が不可欠でございます。現在進めている技能実習制度の見直しにおいては、関係省庁と連携しながら、送り出し国との政府間取り決めを作成して、保証金の徴収に対して効果的な対策をとることができるよう方策を検討する。こういった政府間取り決め、これが一つでございます。

 そして、外国人が日本に入国したときの管理の話で御指摘ございましたけれども、人権侵害にわたるような管理ということはあってはならないことです。しっかり私どもも見ていかなければいけないところだと思っています。ただ、しっかりと、外国から来た方が気持ちよく働いていただけるように、その生活であるとか悩み事、こういったものを相談するということで、やはり外国人の方を温かく迎えるようなそういう管理、これはやはり必要なのかな。

 ですから、逃走防止とかそういうような物騒な話ではございませんで、そういう形で、ともに働き、ともに管理をしながら、人権侵害に当たらない、そういうような方策を我々としても考えていきたいと思っています。

遠山委員 以上で終わりますが、大臣、きょうは質疑できませんでしたが、先ほど、大臣とやりたかった質問をいろいろさせていただきました。また別の機会に改めてさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 以上で終わります。ありがとうございました。

奥野委員長 次に、柚木道義君。

柚木委員 大臣、おはようございます。民主党の柚木道義でございます。

 きょうは、本当に大事な課題山積の法務委員会、さまざまな質疑準備をそれぞれの委員の皆さんがされてきていると思いますし、もちろん私も、ここに大量のうちわもありますが、それ以外のたくさんの質疑の準備もしてきているんですね。それなのに、大臣がこの間、きのうも参議院でも陳謝という形をとられているようですが、さまざまな問題が次から次へと出てきて、所信の質疑に入るどころか、その前に、大臣御自身の資質について問わざるを得ない。

 こういう状況になっていることについて本当に私は残念に思いますし、きょう、本来ならば、例えばテロ資金の供与の防止法案もあります、法曹改革やあるいは裁判員制度、検察審査会制度の評価、さらには死刑制度廃止、少年法、性犯罪者厳罰化の効用、あるいはヘイトスピーチ問題、そして女性活用という意味の中でさまざまな課題、そういった点について質疑をさせていただきたいところです。

 まず、昨日、大臣は、この衆議院では所信に入る際に一切謝罪の必要もない、そういう形で、何ら、この間、資質の問題に対して言及をされなかったにもかかわらず、参議院においては、私も文面をここに持っておりますが、私自身に対する予算委員会での御指摘や報道について、あたかもそれらが雑音であるかのように受け取られる発言をいたしましたことを陳謝します、そして、今後、国民の皆様にいささかでも疑念を抱かれるような事柄がございましたら、その都度真摯に説明に努めてまいる所存ですと陳謝をした上で、所信に入っているんです。

 松島大臣、なぜ、この衆議院における所信の際に、そういった謝罪、あるいは雑音ということに対しての説明をなされなかったんですか。まず冒頭、御答弁ください。

松島国務大臣 記者会見を十日に行いまして、その後の展開でございますが、衆議院の委員会の冒頭では、このようなことを申し上げるには、そのような御指摘もございませんでしたし、申し上げることをいたしませんでした。

 参議院におきましては、昨日、読み上げられましたとおりのことを述べ、陳謝をした次第でございます。

 なお、御指摘の、記者会見におきまして雑音で迷惑をかけたことは残念などと申し上げたことについて私の真意を申し上げますと、本来の閣僚としての職務でない、私個人の国会議員としての活動や言動について御指摘を受けたこと、そしてその御指摘に対して私の説明が不十分であったことなど、私自身の、あくまでも私自身の至らなさでお騒がせしたという意味の、それを雑音と申し上げたつもりです。

 もとより、国会議員の方が議会で発言されることや報道陣の方が書かれることを雑音などと申し上げるつもりは全然なく、その点に関しましては、私は、言葉を仕事としていながらそのような言い方で、全く、後から読むとこうとられても仕方がないと思われるような形で雑音という言葉を使ったこと、深く反省しております。

柚木委員 松島大臣がもし本当に今答弁、弁明されたように思っておられたとするならば、そもそも、雑音というような言葉を使われないんじゃないんですか。心の中で、野党からの予算委員会における指摘、公職選挙法違反の疑いがあるうちわの配布、あるいは議員宿舎問題等々、この後それぞれの委員からの質疑があると思いますが、そういった追及の中で本音が出たんじゃないんですか、雑音。

 私は、実は、先週の火曜日に我が党の蓮舫委員が参議院の予算委員会で初めて、このうちわの配布は公職選挙法違反の疑いがあるという指摘があって、そして、我々は、衆議院ではまさに法務委員会での質疑をするべく準備を進めていたところ、資質を問わざるを得ないということで、その火曜日も含めて、松島大臣の御地元、墨田区、荒川区、連日伺って、地元の有権者の方々にお話を伺ってまいりました。火曜日、水曜日は墨田区、木曜日は荒川区、金曜日は大臣の関係者の方からもお話を伺いました。

 そういう中で、私は、この謝罪の文面を読んだときに、地元の方々がおっしゃっている松島大臣に対するさまざまな御意見を承りました。その中で、たくさんのうちわもお借りをしてきております。このうちわ、後ほど少し申し上げざるを得ません。いろいろなバージョンがさらにあるんですね。そういったことも含めて、私は、大臣がそういった指摘を受けたことを雑音というような表現をされたこと自体、今ここでその釈明をされたわけですが、私は、心の中の声をそのままおっしゃられたのではないか、そのように言わざるを得ません。

 なぜならば、このうちわでありますが、実は、法務大臣バージョンというのはもう既に示されている、法務大臣になってからも配布をされている、印字をされている、これはもう答弁もされています。ところが、この法務大臣と印字をされる前に、ちょっと見えづらいんですが、シールでわざわざ法務大臣というふうに上から張ってある。ちなみに、このシールの下は「経済産業副大臣・衆議院議員」。その前のバージョンの上から間に合わずにシールを張られている、そういうふうに伺いました。それだけ急いで、とにかくうちわを配りたい。

 そして、本来であれば、法務大臣になったら自粛をするのかと思いきや、さらにたくさん、多くのうちわを配布されている、そういう行動をされている。御地元の方からお話を伺っています。

 そして、今回私は新たにこういううちわを、大臣、見覚えがありますか、「今度こそ!」「今度こそ!」。松島大臣、この「今度こそ!」といううちわ、見覚えがありますか。御答弁いただけますか。どういううちわですか。

松島国務大臣 「今度こそ!」、反対側がどういうのか……(柚木委員「同じです」と呼ぶ)

 ああ、「今度こそ!」という標語が、私も含め、あったと思います。

柚木委員 多分、ごらんいただいている方、わかりづらいと思うんですね。

 これは、私がお話を伺った中では、最終的には、最終形というか最新形の「法務大臣」に至る原版だと伺いました。つまりは、松島大臣が浪人中に今度こそという思いで、そして、このヒマワリのロゴは、後援会の皆様がごらんになれば、松島大臣、松島みどり議員、松島みどりさんのことだとおわかりになるロゴだ。そして、そのうちわが進化をしていく中でこのうちわになっていく。

 松島大臣、なぜ、この「今度こそ!」のうちわは、この最新バージョンのように、松島大臣の名前や肩書や写真、こういったものが入っていないんですか。お答えください。

松島国務大臣 今回、今お手元で最初にお見せになられたものは、この一年間国会で成立した法律を簡単に示した、まとめて示したものです。私は、この一年間、九月三日までは経済産業副大臣、それから後は法務大臣ですが、国会議員として、そしてまた政府の一員として、いろいろな法律をつくってくることに力を注いでまいりました。それで、その法律を書いて、その法律を選んだ人間、自分の責任を持って名前も書き込みました。

 「今度こそ!」というのは、浪人中でございます。残念ながら、自分自身の思いとか政策はあっても、これは公的にいろいろなものを示すものですから、名前も書かず、今度こそというその思いだけを書いた。ですから、受け手にとって、それぞれの方の今度こそがあるのか、あるいは私自身を応援するために今度こそと思ってくださる方がいるのかわかりませんが、そういった状況です。

柚木委員 私がお聞きした話と随分ギャップがあります。

 このうちわは、後ほど申し上げますが、東京都の選挙管理委員会あるいは区の選挙管理委員会の事務局長が地元の荒川区議会で、このうちわそのものが公職選挙法違反の……(発言する者あり)ちょっと静かに聞いてくれませんか。委員長、やじをやめさせてください。国民の皆さんの知る権利を奪うのはやめてください。(発言する者あり)やめていただけませんか。静かにしていただけませんか。大事なところなんです。法律違反かもしれない問題をやっているんですよ。

 この松島みどりさんの名前が入っている、そして写真が入っている、肩書が入っている、こういったものを特定の後援会の方ではなくて盆踊りなどで配布をすることは公職選挙法違反の疑いがあると選管の事務局長が答弁しているんですよ、公式に。後ほど、資料もつけていますが。

 そして、では、なぜ最初はこれだったのか。私が伺ったのは、まさにこのような形をとると選挙法違反になるおそれがあるからこのバージョンでつくったと。つくった、かかわった方からそういう話を聞いているんですよ、大臣。これは違うんですか。

松島国務大臣 つくった人から聞いたとおっしゃったんですけれども、誰のことかよくわからないんですけれども、私以外で誰か事情をよく知っている人にたまたま出会われたんでしょうか。墨田区の方か荒川区の方か、どういう方がおっしゃったかわからないと私も答弁のしようがございません。

柚木委員 このうちわのときも、これはもう明確に答弁されていますよね、御自分がかかわって作成もし配ったと。これはもう答弁されています。

 このうちわは御自分は作成にかかわっているんですか、かかわっていないんですか。

松島国務大臣 かかわっております。いつの、何年のものだったかはちょっと、今ここから見えませんのでわかりませんが。

柚木委員 なぜ今のお話が問題なのか、もう皆さん、明らかですよね。

 こちらは、まさに今、公職選挙法違反の疑いがあって、告発をされるようなことも含めてそういう状況にある、そういうおそれがあるうちわですよ。そして、そのおそれがないうちわ、先ほど発言もありました、これは問題ないじゃないかと。そうなんです、まさにこっちだったら問題がない。そして、みずからその作成にかかわっておられたと今認められました。

 何でこっちのうちわになっちゃったんですか。

松島国務大臣 答弁申し上げます。

 先ほど答弁したつもりなのですが、現職の国会議員として、一年間にできた重要な法律を広く国民の皆さんと申しますか、私の地元で関心のあるテーマ、多分ことしの最初は小規模企業振興基本法のことを書いてあると思いますが、そういった法律をつくって国会は動いているんだということをお示ししたくて、法律をいろいろ書いてあります。自民党として、そして私の名前も書いております。

 今度こそと言っていた時代は、自民党政権でもなかったし、私も国会議員でもありませんでした。何を書きようもございませんでした。

柚木委員 大臣、答弁を意図的にはぐらかしていると私は言わざるを得ません。

 なぜならば、資料の二枚目をごらんください。これは東京都選管の資料です。「寄附はNO!」という中の右下のマークの中に、「お祭りへの寄附や差し入れ」のところにわざわざ、はっぴと同様に柄のついたうちわ、これを例示してあるわけです。

 そして、この間のやりとり、ちょっとページをつけていませんが、資料の六ページ目をごらんください。これは、松島大臣の地元選挙区の荒川区議会で、九月二十九日、先月の末です、斉藤裕子委員が、この松島大臣がお配りになられていたうちわ、これは公選法違反の疑いがあるかどうか質問をされて、そして選管の事務局長が、赤線を引いておきましたが、確かにうちわということで、公選法に基づくものとしては疑わしい可能性があると答弁をしています。そして、次のページにもつけておきましたが、都選管に確認したところ、公選法に抵触する可能性があるというふうに答弁をされているわけです。

 松島大臣、今まさに、御自身が大臣としての、このさまざまな、自民党の議員として法律に責任を持ってという答弁がありましたが、法務大臣になられているんですよ、法務大臣になっているのに、うちわを配布すると公選法違反の疑いがある、そういうことを御存じなかったんですか。

松島国務大臣 私がつくったものは、この一年間に国会で成立した法律の内容など、討議資料を印刷したうちわを地元の盆踊り会場等で配布したことは事実であります。これは、私の国会議員としての活動報告や政策などを印刷したチラシやビラと同様、討議資料として配布したものであります。

 私としては、イベント会場で無料で配られているものと同様のものであって、つまり使い捨てられることもある同様のものであって、私が配ったもの自体に財産上の価値があるとは考えておらず、公職選挙法で寄附が禁止されている物品に該当するとは考えておりません。

 ただし、こうした疑念を招くことは私の本意ではございませんので、今後配布はいたしません。

柚木委員 ますます疑惑が深まる御答弁でしたね。

 今明確におっしゃいましたね。このうちわ、討議資料と書いてある、そして、価値はないと明確に今おっしゃいましたね。これは、そもそもうちわ自体が、無差別に配布することが公職選挙法違反の疑いがあると大臣の地元の区議会で明確に選管の方が公式に答弁されているんですよ。

 今、御自分の理解をおっしゃいましたが、実は、うちわであることも公選法違反の疑いがあることに加えて、討議資料であると今御答弁いただきましたが、二重の意味でこれは違反じゃないですか。

 討議資料というのは、まさに、不特定多数でなくて、後援会の方々を対象に配るから討議資料というのであって、わざわざここに討議資料とつけていることによって、二重の意味で法律違反になる。むしろ、自民党さんであれば自由新報、我々はプレス民主とか、そういった政党の広報紙のロゴが入っていればそういう御答弁になるかもしれませんが、わざわざ討議資料と銘打って不特定多数の方に盆踊り等で配る。これは、大臣、二重の意味で法律違反じゃないですか。

松島国務大臣 おっしゃっていることがよくわからない、二重の意味というのがよくわからないのですけれども、うちわというものの中に、確かに保存しておきたいような、この絵で見ますと、お祭りのはっぴとお祭りの大きなうちわは私どもの方でも見かけますが、確かに貴重なものであって、ずっと置いておくような、そういうものもあるかと思います。ただ、私のものはそれに該当しない。

 そしてまた、討議資料というのは、広く皆さんにこれを報告したいという、単なる私の意見の主張ではなく、国会で成立した、いろいろな委員会で、経産委員会、法務委員会などで成立した法律にちょっと説明をくっつけて書いてありますので、これは討議していただきたい資料、そういう意味でございます。

柚木委員 法務大臣という職責にある中で、随分御自分に都合のいい解釈を公式のこの国会答弁の場で述べておられますけれども、大臣は、先ほどの委員会で、特定秘密保護法の担当大臣でもあって、国民の皆さんの知る権利に対して明確に答弁をする、そういう職責をより重く担っておられる大臣ですよ。討議資料自体、今のような解釈、これは、そんなことでいいんだったら、みんな配りますよ、討議資料と書いたものをどんどん全国で。

 さらに、価値がないとおっしゃいましたが、私も見て驚きましたよ、ネットオークション、最新のもの、五千二百五十円で落札されていますね。大臣、これで無価値なんですか。

松島国務大臣 それは、幸か不幸か存じませんけれども、各委員会でいろいろこのように取り上げられて質疑されたから、何かそういう注目を浴びたことだと思っております。

 それ以前におきまして、法律の書かれたものを実費の数十円以上の価値を持って保存されるという方はいらっしゃらなかったと思っております。

柚木委員 このうちわ、私、ずっと先週地元を回らせていただいて、いろいろな方からお話を伺いましたよ。もっと持っている方がいるんですよ。一人が三枚も四枚も持っていて、これは便利だ、暑いときにちょうどいいから便利だ、こういうふうに答えている方はたくさんおられましたよ。だから、貸した後、返してほしいと言われていますよ。無価値なものを返してほしいんですか。

 このうちわ、大臣御自身がいろいろなところでお配りになられている。この資料の中にも、私も証言はたくさん聞いていますが、三枚目には、御地元、これは香取神社、大臣の御地元ですから御存じですね。御本人も写っておられる。この場でこのうちわを配布されている、そういう証言もいただいております。大臣、一体、こちらの場所で何枚ぐらいうちわを配られたんですか。

松島国務大臣 私が回っているときは、主眼は盆踊りを踊ることですので、何枚のうちわを配ったかは、少し認識しておりません、覚えておりません。(発言する者あり)

柚木委員 一枚でも違法だと今発言が聞こえてきましたが、私がお聞きしたら、大臣、これは相当、本当に熱心にお配りになられているんですね。

 このうちわ、秘書さんも一緒にどさっと持ってきて、会場で配っていく。このうちわのはけが悪いと、松島大臣みずからがうちわを持って、浴衣で盆踊りをされている方々の帯のところにどんどん挟んでいかれる。すごいですね、大臣、それだけ熱心にこのうちわをお配りになられたかった。

 少なくとも一カ所に何百人も集まる祭りだと聞きましたよ。大体何枚、何十枚、何百枚、それぐらいの感覚はおわかりじゃないですか。どれぐらい配られたんですか。

松島国務大臣 それは、はっきり言って、一カ所で何枚ぐらいとか全体でどれぐらいというのは、私、九月の初め二週は非常にお祭り、イベントの込んでいるときでございましたから、自分の日程自身も全部は今把握できていない、覚えていないぐらいですから。

 申し上げましたように、私にとっては、どんなに忙しいところでも、各箇所二、三曲ほど踊っていく方が忙しいものですから、どれだけできたかということは自分ではわかりません。

柚木委員 今、自分でわからないぐらいの日程が入っているということでしたから、枚数、大体の感覚はおわかりになると思いますが、そういう答弁ですが、一日に、我々も皆さんもそうですよね、盆踊りの季節、何件も伺いますよね。覚えておられないぐらい回るというのは、一日、大体何件ぐらい回られるんですか。

松島国務大臣 ピークの日は、ピークの土曜日は十六カ所回ります。

柚木委員 松島大臣、みずからの趣味を盆踊りと公言をされていらっしゃって、靴を本当に何足もすり減らして履きかえるというようなお話、地元の有権者の方からもお聞きしましたよ。

 十六カ所とありましたが、大体どれぐらい皆さんは集まられるんですかといったら、やはりそれは百人単位では集まるんですね。多いところはもっと。そういう話、それぞれ地元で伺いましたよ。十六カ所も回れば、それはもう千人単位のオーダーになるわけですよ。

 もちろん、御本人だけじゃなくて、秘書さんも、受け取ってくれないと叱られますのでと涙ながらに手渡していく、そういうことを聞いていますよ。熱心な秘書さんだと思いますよ、私は。

 私がなぜこういうことを聞かざるを得ないのか。これは公職選挙法違反の疑いがあるんですよ。その違反の疑いがある中で、では、一体、どういうところで、何人の方に、何枚ぐらい配って、これも重要な構成要件じゃないですか。(発言する者あり)法律違反の疑いがあることが、何がどうでもいいことなんですか。

 大臣、では、冒頭おっしゃっていただきましたように、この謝罪において、国民の皆様にいささかでも疑念を抱かれるような事柄がございましたら、その都度真摯に説明に努めてまいると明言されておられますので、これまで、このうちわ、各バージョンありますよ。これは結構ですから、法務大臣バージョン、シールバージョン、副大臣バージョン、それぞれ何枚作成されて、単価は幾らで、大体何枚ぐらい配られたのか、調べて次の委員会までに御答弁いただけますか。

松島国務大臣 今突然ですので、ちょっとお答えできませんので、おっしゃいましたように調べて御報告したいと思います。

 ただ、つくったものが全部配布し切ったというわけでもございませんが、とにかく発注した枚数、単価などについては後日報告させていただきます。

柚木委員 次の委員会までにぜひ御提示をいただきたいと思います。

 公職選挙法違反の疑いがある大臣のもとでこの法務委員会の審議を進めるというのは、私は、国民の皆さんの負託に応えることになり得ないと思いますよ。死刑執行も含めて、大変な重責を担う大臣ですよ。賛否そのものもあるような、そういう制度ですよ。

 松島大臣、今回、私、先ほどの地元の区議会の答弁、こういう形で資料にも文字ベースでつけさせていただいたのは、松島大臣はそういう認識はないとおっしゃいます。これが、もちろん、告発されて以降、捜査が進む、あるいはその対象にもしなれば、その御認識が正しいのか間違っているのか、法的にも明らかになります。ただ、私が申し上げたいのは、地元の区議会で選管の事務局長がこれだけ法律違反の疑いがあるという明言をされている、こういう状況が起こっていることに対して、自分はその認識がないとおっしゃいます。しかし、では今後どうするのか、このうちわを配るんですか配らないんですか、そのように問われたときに、これからは配らない、そういう御答弁でもありました。

 松島大臣、これは仮に公選法違反だったとしたときに、これからは配らないということで許されるんですか。

松島国務大臣 第一点で、荒川区議会の決算特別委員会におきまして、そこの選管事務局長が、うちわだと考える、うちわだと公選法に基づくものとしては疑わしいという可能性があるというふうに考えますというふうに答えておられます。これは私の地元の区議会での議論でございますが、九月二十九日、私が、とっくにもううちわの季節も終わっておりまして、うちわも配っていない時期だったわけですけれども、そして、こういうことがございますから、今後は配らない。

 そして、おっしゃいました今までのことが公選法違反に当たるのかどうかと言われました。先ほど申し上げましたように、財産的価値のない、公職選挙法で言うところの寄附に当たらないものである、そして国会審議の中身を知らせようとした討議資料であるという認識で私はつくりましたので、私の気持ちとしては、公選法違反には当たっていないとずっと考えてやってまいりました。

柚木委員 これは、この後、それぞれ同僚議員がさらに法律的にいろいろな視点で伺わざるを得ないわけですが、私は、こういうことがまかり通るようなことであれば、実際に大臣の御地元、あるいは私も地元で聞きましたよ。このうちわの問題はもうみんな知っています。

 大臣の御地元で、これは水曜日の夜だったと思いますが、女性の方三人ぐらいです、あの月食があったときですよ、月明かりのもとで、いろいろお話を聞いていました。うちわもお借りしてきました。そうしたら、その近くを、小学校高学年の方々、四人だったと思いますね、男の子と女の子二人ずつ通りかかって、あ、松島大臣のうちわだ。もうみんな知っているんですね。言われてびっくりしたのが、これは法律違反ですよねと。そして、私は思わず驚いて、これ、みんなもらったの、もらいましたと。大臣いたの、いました、これは何ですかと聞いたらこれはうちわですよと教えてくれましたと。

 子供たちまで知っている。法律違反ですよねと私に聞いてくる。既にそういう違反の疑いがあるということを地元の議会でも答弁をされていて、報道等も含めて子供たちもそういうような認識。「寄附はNO!」こういうふうに資料にも書いてあるわけですから、大臣が幾ら御自分の認識を述べられても、皆さんがそういう受けとめられ方もされている中で、いやいや、これは違反じゃありません、あるいはもう今後配らないからこれでいいんですと。

 そういうことであれば、では、どんな法律違反を犯しても、あるいはそれが違反かもしれないという段階でも、いや、これからはもうやりません、スピード違反、駐禁、いやいや、もうこれからはやりません、何でもかんでもそういう社会になってしまったら、法治国家としてこの国は成り立つんですか。松島大臣、いかがですか。

松島国務大臣 これが公職選挙法違反と決まったような前提でおっしゃらないでいただきたいということと、もう一つは、先週水曜日、私の地元でお話しになって子供たちが法律違反と知っていたという御指摘ですが、それは恐らく、あのころに委員会なりテレビといったもので報道されて、それを見ていたんだと思います。

 最初から、盆踊り会場で手にしたときに、あ、違反だなどと思ったふうではなかったと思います。

柚木委員 ここにおられる全ての委員の方々は御記憶に新しいかと思いますが、これまでずっと、歴代の大臣、閣僚、いろいろなことで辞任、やめられておりますよ。この法務委員会、法務大臣経験者、過去この三、四年をとっただけでも御記憶にあるでしょう。法律違反でなくたって、言葉のことや、ちょっと休憩室で何を飲んでいたとか、そういうようなことで何人もの大臣がやめているじゃないですか。法律違反の疑いがあるというのは、そういった問題以上に重大な重みがあることですよ。

 法の番人、法をつかさどるトップである法務大臣がそのような自分に都合のいい解釈で法律違反の疑いがあることをやって、しかも、今後はもうやらないからそれでいいんですと。そんなことで世の中が通るのであれば、みんなそうなっちゃいますよ。お巡りさんが困っちゃうじゃないですか。

 大臣になってから自粛をするのかと思いきや、ますます熱心に配っている。私は、なるほどなと思いました。それまでは、正直、差し出してもなかなか受け取ってもらえない場面が散見をされた、だから大臣になってここぞとばかり一生懸命配られていたんでしょうね、そういうふうにごらんになっておられますよ、地元の方々は。

 むしろ自粛すべきところをさらに熱心に配る。違反の疑いのあることをですよ。法務大臣にもなっているんですよ。知らないとは言わせませんよ。都選管ですよ。御地元ですよ。

 自分に勝手のいい解釈で法律を運用する。そして、まさに国民の皆さんにとって非常に懸念のある特定秘密保護法の十二月十日からの運用開始の所管大臣でもある。私、けさもある方から言われました。松島大臣は特定秘密も担当しているんですか、びっくりしました、お願いだからやめてくださいと。国民の皆さんが、今そういう御認識の大臣が法務大臣あるいは特定秘密保護法、こういったことの所管の大臣であることをどのようにごらんになっているのか。まさか、雑音だ、そんなふうには思っておられないと私は思いますが。

 大臣、今回この「寄附はNO!」という資料をつけましたが、過去に、歴代の大臣の中で、いろいろな理由で辞任されている方が戦後百十四人おられます。松島大臣は、今回のこの件、責任をとって、まともな委員会審議ができるようにけじめをつけられる、そういったお考えはありませんか。

松島国務大臣 私は、今後とも安倍政権における法務大臣の務めをしっかりと果たしてまいります。どうかよろしくお願いします。

柚木委員 あるいは、過去には、皆さんもよく御存じで私も尊敬する議員、先輩である小野寺元防衛大臣の件は御存じですよね。お線香を初盆回りで渡されて、議員辞職をされておられます。私は、小野寺さんは立派な方だと思いますよ。でも、まさにそうやってけじめをつけられた。

 松島大臣、国会議員、ましてや大臣、その中でも法務大臣、法の執行、法を守る、誰よりも模範であるべき、普通の国会議員以上に当然そういう立場にある。だからこそ、うちわの配布、公選法違反、そういう疑いがあることはまさに絶対に自分はやらない。それがお手本、見本じゃないですか。それを、解釈を自分の都合のいいように、それで、だからいいんです、全うします。そういうことで国民の皆さんが納得すると思いますか。

松島国務大臣 さまざまな私の所業によりまして誤解を招き、そして、いろいろな方から御指摘、御批判、御心配を受けたことは、本当に私の至らなさと思っております。

 しかし、これからしっかりと身を引き締めて、この法務行政という重要な行政、そしてまた国務大臣として特定秘密保護法の施行までの準備の完了、しっかりと取り組んでまいりたいと思います。(発言する者あり)

柚木委員 与党席からも頑張れの声は少なかったですよね。

 国民の皆さんが本当にそうお感じになられているでしょうか。これが仮に、では刑事告発されたら、どういうお考えになられるんでしょうか。どういうけじめをお考えになられるんでしょうか。

 きょうこの後、同僚委員、各委員から、大臣の資質についていろいろな質問があると思いますが、所管のいろいろな事項に入りたくてみんな準備もしている、私もしている。でも、その質疑をする資質、資格があるのか、こういうことをやらざるを得なくて、しかも、このうちわ公選法違反問題だけなら、このことだけで、次行け、そうかもしれませんが、そうではないんですよね。議員宿舎問題、あるいは、そもそも、初登庁の際にお出迎えが少ないからやり直しとか、車が気に入らないから谷垣大臣のときの車からかえさせるとか、いろいろな報道、これは事実かどうか、後ほど同僚議員からちゃんと指摘があると思いますし、ましてや、法務大臣、死刑執行であったり、あるいは指揮権発動など、本当に法務大臣というのは他の閣僚にはない重責を、職責を担わざるを得ない、そういう重い重い立場ですよね。そんな中で、そういうことを執行する資質をお持ちなのかどうなのか。

 私は、きょう、今までの議論で、とてもそのような納得を国民の皆様ができるとは思えないんですね。むしろ、特定秘密保護法まで含めて所管なのかと心配されていると思いますよ。

 大臣、議員宿舎問題についても、このようにコメントされていましたね。「「消費増税の前に身を切る改革」と言っているのに、与野党とも恥ずかしくないのか。二十三区内居住者は入れない規則なので私は無縁だったが、これほど職住近接で広い「社宅」は必要ない。」こうおっしゃっていて、今宿舎に入られて、そのことに対して釈明されましたが、大臣、この間、宿舎に入られてからも御地元の御自宅に帰られて、そして、週末の、盆踊りも含めた日程はそれはあるでしょう。そういった、半分は公務かもしれませんが、半分は地元の案件。

 こういった形で、宿舎に入られたのに自分の家に週末帰る。こういうことについて、改めてここで説明をいただけますか。

奥野委員長 ちょっと待ってください。

 今、うちわ問題、一応区切りがついたという、今この場ではあなたの質問はこれで、以上で切りませんか。(柚木委員「ちょっと一点、これをやらせていただいてから考えます」と呼ぶ)

 それで、私の理屈からいうと、うちわ問題については、先ほど何枚印刷したか答えてくれというのがあったものですから、それも含めて、一応、これからの取り扱いについては、うちわ問題だけはとりあえず理事会で引き取らせてもらいたい、こう思ったんですが。(柚木委員「次の質疑者以降は、もちろん」と呼ぶ)まだあるの。

 では、あなたの件についてはそうさせてもらいます。それでいいですか。(柚木委員「この後の答弁によって、そういうふうにさせていただくかどうか、決めさせてください」と呼ぶ)

 大臣に申し上げますが、きょうは、失礼ながら松島さんの資質問題を皆さん方がいろいろ聞きたいとおっしゃっているわけですから、なるべく誠心誠意お答えいただくことを期待したいと思います。余り後ろからいろいろな支援をいただいたものを読むんじゃなくて、自分の気持ちでしゃべっていただきたい。そのことだけお願いします。

松島国務大臣 議員宿舎に入居した問題について御答弁させていただきます。

 私は、墨田区内の集合マンションに住んでおりますが、墨田区が認定した子育て最適マンションの一つで、小学生や子供さん、幼児がとても多いマンションです。

 私自身は、法務大臣になりますと、組織犯罪だとかいろいろな犯罪、治安対策、そういった責任者で、なった途端に、いろいろなメールや、そしてまた手紙などもいただきます。警備上の問題と申し上げましたのは、私の身を守ってほしいという意味ではなくて、私に警護はつきますけれども、とばっちりを万一にも私の住んでいるところの住人の方々が受けてはいけない、そう思って……(発言する者あり)警護はついています。移動していますし、それは盆踊りであれ、どこの公務のいろいろな会場であれ、警護の方が複数態勢で、警察庁も一緒に出てくださっています。

 そして、私が住んでいるところはそういう状況ですので、そうでないところに法務大臣在任中だけ宿舎を借りたいと願い出て、議運でしかるべき担当者から認められたものです。

 なお、おっしゃいました、それにもかかわらず週末帰っているじゃないかというお話なんですが、確かに、荷物の片づけに行って、とりに行って、数時間過ごして、一回か二回は朝までいたでしょうか、ありますが、おっしゃったように趣旨から考えるとおかしいわけですから、それ以降、私はずっと議員宿舎の方に、週末も含めて生活をしている次第であります。

柚木委員 九月三日だったでしょうか、第二次安倍内閣発足。まだ間がない中で、一回だったか二回だったか、それより多いのか私は知るすべがありませんが、ともすれば毎週あるいは隔週のように帰られて、少なくとも泊まっている、あるいはそれ以上に戻っている、そういう御答弁でした。

 これに関連して伺いたいんですが、松島大臣、この今のお話は、恐らく墨田区向島の家のお話ですね。これは公開されているものですから当然大臣は御認識があると思いますが、もう一軒お住まいをお持ちなんですね。江東区深川、住所までは控えますが、資産公開の中で私も確認をさせていただいております。これは、もう一軒御自宅があるという認識でよろしいんですか。

松島国務大臣 まず一つ、最初におっしゃったことのうちに、九月三日に就任いたしましたが、もちろん議員宿舎というのはすぐ入れたものではなくて、所定の手続その他で、二十九日の国会開会を目指して、その直前に入居が認められたものです。

 なお、おっしゃっております、資産報告などで出しておりますのは、私、墨田区東向島と、それから、江東区深川に、小さい、かつて昔の職業だったときに買ったものをそのまま持っております。これは家族が時々仕事場に使っておりまして、住居としては今、もうかなり古いですし、使える状況のものではありません。

柚木委員 江東区の方の御自宅、マンションだということだと私は認識しておりますが、御主人様と共同の名義というか所有だというふうにお聞きをしておりますが、では、ここには帰って泊まられるということは、大臣以降、一度もないんですか。

松島国務大臣 その江東区の深川のマンションには、少なくとも十五年間は泊まったことがございませんし、少なくとも五年間は入ったことがございません。

柚木委員 泊まったことがないということですから、私もそのように思いたいと思います。これについては、私も、もう一つ御自宅があるんだなと思ったものですから、確認をさせていただきました。

 この宿舎問題については、やはり、区外の方々でまだ入れていない方もいるんですよね。本当に、別の宿舎で、それは近い方が正直便もいいです、仕事上も。でも、入れなくて、そうじゃないところに、地方の議員さんでおられるわけですよね。

 大臣は、ここまで必要ないと言い切っておられながら、今は宿舎に入っている。そういうこれまでの言動とのぶれ、そういったことに対して、入れていない同僚議員もたくさんいて、一生懸命仕事を頑張っていますよ、そういう方々も含めて、この前言について何か撤回なり訂正なりされるつもりはありますか。

松島国務大臣 法務大臣としての、何カ月かわかりませんけれども、その期間だけ限定して住まわせていただくことにしておりますので、改めて撤回とかそういったことは、ツイッターについてはするつもりはございません。

柚木委員 大臣は恐らく、本当に自分のお考えは基本的にはなかなか変えられない方なんだなと改めて今思いましたね。いろいろな方からの指摘を受けて初めて渋々認めるというか、今回の雑音発言もそうですし、当初は謝罪する必要がないとこの法務委員会の所信の後の、私が報道で見た限りでは、委員会で謝罪の必要はなかったと述べておられるようですし、私はやはり、法務大臣、法の執行、特に死刑執行だったり、指揮権発動の職権だったり、そういった本当に他の閣僚にない重責を担われる方は、より謙虚で、そして、自分に甘く人に厳しくではなくて、自分に厳しくそして人に優しくぐらいの本当に大きな度量、人間的な素養、資質が求められると思いますよ。この宿舎の問題一つとっても、私は今のお話は残念だなと思います。

 もう一点。これは、収支報告書を拝見すると一件あったので、確認の意味で伺いたいので、事前に通告しておりませんから、記憶の範囲でお答えをいただければと思います。

 平成二十四年の十二月の十一日付で、株式会社コングレという会社から百万円の寄附が行われておりまして、大臣の東京都の自民党さんの第十四区支部の収支報告書に記載をされておられます。

 このコングレという会社は、実は以前に、御党の小池議員が環境大臣だったときに同じく百万円の寄附を受け、これは国会で公選法違反の疑いがあるんじゃないかということで審議の対象にもなり、さらには、私も調べましたら、過去、平成十八年以降、手持ち資料ですが、いわゆる官公庁、大臣が国交副大臣をお務めになられた国土交通省、あるいは献金をいただいた後に就任をされた経済産業省、経産副大臣になられています、そういったところからも随契で受注をしていて、例えば、大臣が寄附を受けられた翌年の四月一日付で、経産省は、七千六百万円以上の案件を随契で発注しております。

 この献金について、記憶、認識はございますか。

松島国務大臣 二十四年の十二月とおっしゃいましたでしょうか。(柚木委員「はい」と呼ぶ)ちょうど選挙のときだったと思っております。選挙のときというのは私も事務所におりませんし、その収支報告書も、会計をやっている者にやらせておりましたので、よく記憶はございません。

 知っている会社で、昔の友人のいる会社であることは事実ですけれども、そのときにまとめてそんなお金をいただいたかどうかは全く記憶にありませんので、調べてみます。

柚木委員 私、過去三年分の収支報告書を拝見すると、やはり野党にいらっしゃる間と、そして、いよいよ政権復帰がかなり、この時点では三百議席超えとか報道もされていた中で、寄附も、大臣としては熱心にそういうことも含めてされていたんだと思いますが、ふえているんですね。その中で、一つ桁が違うなと思ったから目がとまったんです。ほかのは十万とか二十万とか。一つだけ百万の桁だったんですね。

 そして、今、友人もいらっしゃると言われました。同じ選挙を私も戦いました。選挙中であれ、百万の御寄附があって友人がおられるところだったら、私は少なくとも報告も受けるし記憶も持つと思いますが、何で、大臣、記憶にないんですか。

松島国務大臣 選挙のとき、百万であれ十万であれ、政治連盟とかいろいろなところからいただいておりますが、それぞれについて即座には覚えておりません。

 平時ですと、もし大型の寄附があったら覚えている、プラス、幾らを超したらまずいのかなということも考えたりすると思いますが。

柚木委員 松島大臣は、第一次安倍内閣では外務政務官、改造内閣では国土交通副大臣、第二次安倍内閣では経産副大臣、そして今法務大臣と、政務官、副大臣二回、そして大臣、これだけの経歴をお持ちです。

 二〇〇五年の総選挙直前に小池環境大臣時代に公選法違反の疑いがあると国会でも審議の対象になっていて、そして御自身は、今回四度目ですね、政務三役に就任をされていて、過去にこのコングレという企業は、まさに国土交通省や経産省が大口の受注先になっています。二〇〇五年には小池大臣の問題も起こっています。

 そういったことが起こった中で、このコングレという企業が、そういった随契も含めて、官公庁が対象の企業であるという認識はお持ちでなかったんですか。

松島国務大臣 それはありません。

 私、野党で落選して、そういう状況の中ですから、そういう認識はございませんでしたし、復帰後すぐは、院の役職にはついておりましたけれども、政府の役職にはついておりません。

柚木委員 少なくとも、今は法務大臣、過去に副大臣二度そして政務官、そして、その所管であった国交省や経産省が大口の受注先で、これだけ、ぱっと見ただけでも三十件近く受注の案件があります。

 そして、今、まさに浪人中であったということがありましたが、この収支報告書を拝見すると、本当にこのコングレさんだけが桁が一つ違う。ありがたい話ですよね。私が浪人中だったら、本当にありがたいと、少なくともお礼ぐらいは申し上げると思います。その記憶もない。

 大臣、少なくとも、経産副大臣になられて、四月一日ですから四カ月後ですよ、その献金、寄附を受けてから、経産省が発注をしている。七千万以上の、副大臣に御就任のときの経産省が発注をしている、そういう対象企業から御自分が百万円の御寄附をいただかれていたということに対しては、やはり、まさに冒頭おっしゃられた、国民の皆様にいささかの疑念を抱かれるような事柄がないようにという趣旨から含めても、例えば、そういうことがわかった場合には返金をされるとか、あるいは、自分で、大臣に就任したときには、そういった過去の政務三役の経歴も含めて、そういった献金先があるのかないのかも含めて点検してみるとか、そういったことをする必要性についてはお感じになられませんか。

松島国務大臣 問題はないと思っておりますし、おっしゃったのは、時期が二十四年十二月としたら、四カ月後はまだ経産副大臣になっておりませんでした。

 それと、問題はないはずだと思いますが、一応、どういった会社か、そしてそのタイミングと金額の問題など調べて、また後刻、必要性があれば理事会で話し合っていただいて、お答えしたいと思っております。

柚木委員 そろそろ持ち時間が終わります。

 私は、冒頭申し上げましたように、本当に、この法務委員会でさまざまな課題、議論をしたかったんです。そして、今後、議論したいんです。しかし、このやりとりの中で、この後の後続議員に譲りますが、本当にその任にあるに値するのかどうなのか、その疑念が払拭されないままこの質疑を終えることが残念ですが、あとは後続の委員にお譲りをしたいと思います。

 御清聴いただきまして、ありがとうございました。

奥野委員長 これにて柚木君の質疑は終了しました。

 次に、郡和子君。

郡委員 おはようございます。民主党の衆議院議員、郡和子でございます。

 今のやりとりを聞かせていただきまして、法務大臣でいらっしゃいますけれども、頬かむり大臣かなというふうに思わざるを得ないところが幾つもございました。

 私は、これまでの松島大臣のさまざまな活動の中から、民法改正のことについて御見解をたださせていただきたいと思っております。

 まず、松島みどり大臣の戸籍名をお教えください。

松島国務大臣 戸籍名は馬場みどりと申します。ずっと松島みどりという名前を使っておりますが。

郡委員 戸籍名は夫の名字であられるけれども、ふだんは旧姓を名乗っておられるということでございます。いわゆる通称使用というふうに認識をいたしますけれども、その理由は何でしょうか。

松島国務大臣 旧姓を通称として使用しているわけでございますが、かねてより、結婚する前の松島という姓で社会生活を、私、この仕事につく前の新聞記者時代もそうやって署名記事を書いておりましたし、そしてまた、その後、政治の世界に進みまして、政治活動、さらに選挙においても松島みどりで立候補しております。そのため、現在も、仕事及び社会生活全般を松島みどりで行っております。

    〔委員長退席、柴山委員長代理着席〕

郡委員 ここでちょっと私の思い出話を差し挟んで恐縮なんですけれども、もう二十年以上前のことだったと思いますけれども、あるシンポジウムを聞かせていただいたことがございまして、そのパネリストの中に大変すばらしい御発言をする女性がいらっしゃったんですね。当時、私も放送局に勤めておりまして、後に、その女性に取材を申し込みたいと思いまして、趣旨を申し上げて、主催者にその方の連絡先をお聞かせいただきまして、電話をしたんです、先日のお話を聞かせていただいてぜひ取材をさせていただきたい旨を伝えたくて。

 そうしましたらば、私が名乗りましたらば、イの一番にあちらが、何だ、和子と言われました。そうしましたら、高校の同級生でございました。卒業してしばらく疎遠になっておりまして、結婚して名前が変わっていて、その名前を見ただけではとても、同級生で、同窓の仲よしだった女性というふうには判じ得なかったんです。女性の場合は大方こういうふうなことが多いわけです。男性がこのような思いをなさったことというのは余りないかというふうに思いますけれども。

 そういう意味では、三日、就任式を迎えられて認証式で受け取った大臣の辞令、括弧内に旧姓、つまり松島と書かれていたということでして、うれしかったが、本当は括弧を逆にしてほしいというふうに述べておられました。私も非常に共感をしたものでございます。

 超党派の女性国会議員が、二〇〇一年だったでしょうか、当時の森山法務大臣に選択的夫婦別姓の申し入れを行っておられます。呼びかけ人はどなたでしょうか。

松島国務大臣 呼びかけ人は大勢いましたが、恐らく、御質問の趣旨から申し上げますと、私も呼びかけ人の一人になっておりました。各党の女性議員が何人もおりました。

郡委員 そうですね。福島みずほさん、そして松島みどり大臣の名前もしっかりとあります。呼びかけ人のお一人でいらっしゃった。

 自民党内でも、二〇〇二年に、例外的に夫婦の別姓を実現させる会が発足して、選択的夫婦別姓制度を例外的に認める法案を議員立法で通すということを目的とされました。

 松島大臣もこのメンバーでいらっしゃいましたか。

松島国務大臣 はい、メンバーになっておりました。

郡委員 ですから、私は、松島大臣は夫婦別姓導入について積極的に推進をされる方だというふうに思っておりました。

 しかし、十月八日の参議院の予算委員会で、福島委員の質問に対してだったでしょうか、民法改正につきましては、我が国の家族のあり方の根幹に深くかかわるものであり、世論調査の結果などを見ましても、国民の意見が大きく分かれているところであります、したがって、法務省といたしましては、現在、民法改正による選択的夫婦別氏制度の導入はできないと考えておりますと御答弁されました。

 心変わりされたのでしょうか。

松島国務大臣 一国会議員としては、かつていろいろな活動をしてまいりました。そして、その後、通称というものがかなりいろいろな職場でも使われるようになりましたので、私の熱い思いとか執念は少し冷まされた状況でおりました。

 そこへ、私は法務大臣になりました。

 法務大臣というのは、基本法であります民法を所管しております。私が法律、民法について述べるとき、特に、この選択的夫婦別氏制度を導入するというのは民法を改正しなければなりませんので、これは私の個人的なかつての思いを主張するわけにはいかない、そういう立場になったのだと考えております。

郡委員 導入できないと考えているというのは一体誰ですか。おかしいんですよ。

 法務省はついこの間まで、「選択的夫婦別氏制度の導入は、婚姻制度や家族の在り方と関係する重要な問題ですので、国民の理解のもとに進められるべきものと考えています。」これが法務省としての見解だったんじゃないですか。導入できないと断定する見解に変わったのはいつですか。

松島国務大臣 法務省のこれまでの見解も、今後の動きを見据えてのことでございます。

 現在どうなのかと尋ねられれば、世論調査の結果、例えば一番直近の内閣府の世論調査は、平成二十四年、賛成が三五・五%ですが、反対が三六・四%で、通称使用のみ容認という方は、民法改正までは反対だけれども通称は使ってもいいという人は二四・〇%です。このように大きく分かれておりますので、現在の時点では、法務省がこれに取り組むということは極めて困難であると考えます。

郡委員 今、世論調査の結果を出されましたけれども、この世論調査について、改正の考慮事由であっても、根拠として法改正に慎重になることに対しては、これは国連の人権に関する各委員会からも厳しい批判を受けているんですよ。

 しかも、今大臣がお話しになった世論調査、二〇一二年十二月のものですけれども、回答者の年代構成が高齢者に著しく偏っているんです。これをもって反対が容認を上回ったと評価できるのかどうかというのは疑問であります。回答結果を人口構成で補正いたしますと、導入の容認が三六・六%、反対が三四・六%と逆転をするんです。これは参議院の法務委員会でもちゃんと確認をされていることですよ。

 平成十三年三月一日の衆議院の予算委員会の第五分科会の質問、大臣御自身、覚えておられると思います。

 私にとりまして非常に身近な問題で、そして極めて腹も立っている問題なんですけれども、質問させていただきます。

  国民健康保険証のことなんですけれども、背景を申し上げますと、私は夫と二人暮らしでございまして、私自身は、国会議員はみんな大体そうだと思うんですけれども、国民健康保険に入っております。そして、夫は会社の保険、つまり社会保険に加入しているんです。

  これは、見えないでしょうから読み上げますけれども、私が持っています東京都の墨田区が発行している私の保険証でございます。こっちは、納付書兼領収書というのが毎月参ります、それでございます。ところが、これはどこにも私の松島みどりという名前は記載がございません。

  実は松島というのは私自身が旧姓を使用しておりまして、これの解決は私の政治課題の一つでございます選択的夫婦別姓制度が実現しないとだめなので、

というふうにおっしゃっておられます。これ以降も長々と、夫婦別氏制度が必要だということを述べられて、質問をされている。

 そして、このたび、それができる法務大臣になられたわけです。しかも、所信で述べられていた、明治民法からずっと続いている強姦罪の量刑について、これはかねてから私はおかしいと思っていたというふうにおっしゃって、改正に前向き、意欲的な御発言をされている。

 この夫婦別氏についてだって同じことじゃないですか。明治以来のものです。そして、これもまた並々ならぬ意欲をお示しだったんですよ。できる立場じゃないですか。

    〔柴山委員長代理退席、委員長着席〕

松島国務大臣 おっしゃるとおり、意欲を持ってきたテーマは幾つかあります。

 それで、先ほどの強姦罪が強盗罪よりも刑が軽いこと、これは今、例えば裁判員裁判によると、そういう法定刑をずっと上回る判決が出されたり、あるいは、そういった形で世の中の見方が変わってきている。強姦罪と強盗罪のバランスが悪いということで変わってきた。

 これならば、私が宣言してすぐ、一カ月以内に、実際、私が指示をして、一月以内に検討会が立ち上がって、十月末には第一回目の会が開かれますけれども、残念ながら、残念と言ってはいけないでしょうか、この選択的夫婦別氏の問題は、私がかつて情熱を燃やした問題ではありますが、各党内のいろいろな意見、そしてまた世論調査、さっきおっしゃっておりましたように、確かに、世論調査というのは、一般的に、年齢の高い方がお答えになっていらっしゃる、その嫌いはございます。

 ただ、ちょっとこれは気をつけなければいけないと思いますのは、賛成と、通称使用のみ容認と、反対に分かれた言い方になるんですが、通称使用のみ容認というのは、民法改正を伴う別氏の導入は反対なんですね。だけれども通称使用は認めるという意味ですから、そういうことで見ていきますと、やはり若い世代においても、決して賛成派が断トツに多いということにはなっていない。

 そこで、いろいろな国民の広い御意見をもとにしなければいけない、民法という極めて基本的な法律を直ちに改正に向けるのは、民法のうちのこのことについては極めて困難であると考えております。

郡委員 ですから、先ほども私、申し上げました。できない理由を世論に置くとすれば、世論は改正に当たっての考慮事由ではあっても、それを根拠として法改正に慎重になるということに対して、国連の人権機関から、各委員会から厳しい批判を受けているじゃないですか。そのことも考えなくちゃいけないというふうに思いますよ。

 大体にして、今申し上げました導入の容認についての世論調査ですけれども、これは、ですから、先ほど申し上げましたように、人口構成にして修正をいたしますと、賛成と反対と逆転をするということも申し上げた次第です。

 ちょっと話題をかえますけれども、二〇一四年、ことしの六月二十三日、日本学術会議が提言をまとめておられます。御存じのことと思います。何か、わからないというお顔をなさっているようですけれども。

 選択的夫婦別姓で、「現行規定では、婚姻時に夫または妻の氏を称するとしており、これは夫婦同氏の法的強制を意味する。形式的には性中立的な規定であるが、実際には九六・二%が夫の氏を選択しており、男女間に著しい不均衡を生じさせている。氏は単なる呼称ではなく個人の人格権と切り離すことはできず、夫婦同氏の強制は人格権の侵害である。個人の尊厳の尊重と婚姻関係における男女平等を実現するために、選択的夫婦別氏制度を導入すべきである。」これが、ことし六月二十三日に日本学術会議がまとめられた提言であります。

 さかのぼって、松島大臣が呼びかけ人として、超党派の女性議員で当時の森山法務大臣に別氏制度の導入を申し入れされたのと前後して、男女共同参画会議基本問題専門調査会による選択的夫婦別氏制度に関する審議の中間まとめが公表されております。

 そこには、少子化への対応から、婚姻の障害を取り除き、少子高齢社会で女性の能力を生かす必要があり、職業生活を送る上での支障ともなるものは除去するという基本姿勢が示された上で、夫婦同氏制度については憲法上の問題もあると指摘し、家族の一体感にとって大切なことは、同氏という形式ではなく、愛情や思いやりという実質であると指摘して、個人の多様な生き方を認め合う男女共同参画社会の実現に向けて、選択肢を広げる制度の導入が望ましいとし、選択的夫婦別氏制度を導入する民法改正が進められることを心から期待していると結ばれております。

 政府の男女共同参画会議基本問題専門調査会のまとめでございます。これは二〇〇一年のまとめでございます。

 この二〇〇一年当時も、どこかで聞いたようなせりふだなと。少子高齢社会で女性の能力を生かす必要がある、全ての女性が輝く社会、似ていますよね。との文言でまとめられているんですよ。これはどういうふうにお感じになりますか。

松島国務大臣 今おっしゃいました男女共同参画会議の中間取りまとめ、二〇〇一年十月の中でそのようなことが書かれているのはおっしゃっているとおりです。

 そしてまた、委員がおっしゃるとおりに、少子高齢社会の中で女性を活用していこう、その労力を使っていこう、そのためにも必要だと言われたのは、そのとおりのことが書かれておりますし、まさに今日的テーマも一緒だと思っております。

 ただ、この中間取りまとめにおきましては、夫婦同氏制度が職業生活を送る上で支障となっていることを主な理由として委員御指摘のような提言がなされておりますが、職業生活上の支障につきましては、現在というか、あの時代から比べると、もう十数年たって、職業上等の通称使用の拡大の運用の範囲が広く進んでおります。そしてまた、男女共同参画会議の基本問題専門調査会が平成十三年当時懸念した問題点は、それによって相当程度解消されているものではないかと考えております。

 いわゆる士業、司法書士さんとか弁護士さんとか税理士さんとか、その当時は、戸籍上の名前を変えると登録名も変えなきゃいけなかったのが、それが可能になったり、いろいろな形で、いろいろな職場でも旧姓を使っていいというふうに随分進んできていると思います。

 そうした中で、一方、民法を改正して選択的夫婦別氏制度を導入するということは、我が国の家族のあり方の根幹にかかわるものであり、やはり広く国民の理解を得ないと行うことが難しいかと思っておりまして、先ほど申し上げましたように国民の意見が大きく分かれている状態では、選択的夫婦別氏制度の導入は難しいと考えております。

 と同時に、通称使用がそれぞれの職場でどのように行われているか、そして通称を使用するに当たってどんな不便が職場あるいは社会生活上あるか、これをやはり広く調べて、それぞれの役所やそれぞれの職場での解決につなげるように、政府内でも声を上げていきたいと思っております。

郡委員 せっかくそのお立場になられたのに、何とも後ろ向きでいらっしゃる。

 二〇〇三年を皮切りに、国連の女子差別撤廃委員会は、日本に対してこの民法七百五十条の法改正を要請する勧告をたびたび行っております。そのたびに、我が国は不誠実な対応に終始しているんですね。

 日本は人権政策に後ろ向きとの評価になって、勧告そのものを形骸化させるようなおそれがあるんじゃないかと思いますけれども、いかがですか。

松島国務大臣 勧告に対しては、日本の国内のさまざまな実情を御説明する形で、誠心誠意、御理解をいただこうと思っております。

郡委員 本当に残念でなりません。ころころ変わる、信念を持たないというような閣僚が、この第二次安倍内閣の女性閣僚の中には随分いらっしゃるんだなということを思います。

 実は、平成十三年五月八日、民法の一部を改正する法律案、提出者の筆頭は我が党の枝野幸男議員ですけれども、この中に山谷えり子大臣の名前がございます。

 法案を提出されていましたよ。夫婦別氏を認める改正案を提出されていました。であるのに、先日の予算委員会では、私の考え方と異にするので私は反対だということを表明されておりましたけれども、虚偽答弁ですよ。

 この山谷大臣もそうですけれども、松島大臣だって、今まで言ってこられたことと違っているわけですよ。なぜ推進しようとなさらないんですか。あれほど強姦罪のことを意欲を持ってやられるというんだったら、これだって同じことですよ。

 しかも、世論が問題だというふうにおっしゃるのであれば、世論を改正の一つの根拠にするのであれば、やはり勧告を受けている女性の十六歳という婚姻年齢です。一九九六年当時から、男女ともに十八歳というのが多数派であります。二〇一二年には、現行法を維持すべきだというふうに答えた方は二〇%まで低下しております。

 これは、世論で法改正するかしないか決めるんだったら、やろうじゃないですか。すべきでしょう。

松島国務大臣 おっしゃる件は、男性十八歳、女性十六歳を婚姻最低年齢としていることについて、一般に女性の方が心身の発達が早いことを考慮して婚姻最低年齢に男女差が設けられたものであり、これまではそれなりの理由があったものと承知しておりますが、委員御指摘の世論調査の結果も踏まえ、社会情勢、国民感情の推移等も考慮しつつ、今後も前向きな議論をしていく必要があるのではないかと、これについては考えております。

郡委員 後ろから出された答弁書をお読みになって、しかし、前向きに検討するというお話でした。

 なぜ、別氏が、前向きに検討してまいりたいというふうにおっしゃれないんですか。

松島国務大臣 先ほど郡委員が言われたように、世論調査の結果が全然違うじゃないか、こっちは世論調査に押されているじゃないかという、まさにそういう御趣旨でございます。

郡委員 男女の間で異なる婚姻最低年齢を設定する国に対して、国連の女子差別撤廃委員会は、こうした規定を設けている国というのは、今大臣もちょっとお話しになられましたけれども、「女性の知的発達の度合いが男性とは異なり、もしくは、婚姻に際して女性の身体的及び知的発達の段階は無関係であるという誤った前提にたつものであるから、廃止されるべきである。」というふうにしております。

 この勧告の背景は、低年齢での結婚、出産が、女性の進学率の低さですとか中退率の高さですとか識字率の低さ、こういうものに反映して、経済的な自立を阻害する原因になりかねない、男性への従属関係は、女性から人としての尊厳を奪うことにつながって、人身売買や売春、買春、女性、少女に対する暴力を温存、助長することにつながるなどの認識があるわけです。

 納得されますよね。

松島国務大臣 低年齢結婚及びそれによる出産が世界の子供たちに悲劇をもたらしているということはもともと知っておりますし、そして、先ほどノーベル平和賞を受賞された彼女の発言などを見ていても、つくづくそうだと思います。

郡委員 一日も早く改正されるべきだと思いますよ。

 それから、再婚期間の問題で伺いたいと思います。

 現行法は、女性の婚姻解消の日から六カ月間は再婚することができないというふうになっているわけですけれども、また、再婚後に出生した子供の父親が前の夫のものか、後から結婚した夫のものか、わからなくなることを避けるためだというふうになっていて、これらの民法の改正というのも重要な課題だろうというふうに思っています。

 これにつきましても、自民党さんでもいろいろと検討されていたというふうに承知をしております。そのメンバーにどなたがいらっしゃいましたでしょうか。

松島国務大臣 そのメンバーに誰がいたかというのはちょっと覚えていないんですけれども、今おっしゃいました、女性のみに再婚禁止期間があることの問題につきましては、この制度そのものは、離婚後間もないうちに再婚を認めると前の夫の子か後の夫の子かわからなくなる事態が生ずるおそれがあるため、これを防止することを目的としたもので、この制度はそれなりの合理性があるものだと考えております。

 ただ、再婚禁止期間が六カ月間であることの妥当性につきましては、社会情勢の推移等を考慮しつつ、今後議論していく必要があるのではないかと考えております。

郡委員 この法案の準備をされている中に松島大臣は入っておられなかったのですかとお尋ねをしております。

松島国務大臣 済みません、私が動いていた活動の中にこのテーマが入っていたかどうかは、申しわけありません、記憶しておりません。

郡委員 これも、男女共同参画、女性の生き方にも大変深くかかわる問題でありまして、政治家として、これをやったかやらないかも覚えていないという、そういうことでよろしいのかどうか。私は、正直な御答弁だったのかもしれませんけれども、甚だ残念であります。

 民法の改正についてもいろいろ前向きにお取り組みをいただけるものと期待をしておりましたけれども、それが非常に水泡に帰してしまいました。

 しかも、先ほど来、同僚議員が指摘をした数々の問題でございますけれども、うちわにいたしましても、うちわと認識してはおられないというふうにおっしゃっていたわけですが、討議資料というふうなことであるならば、先ほどの御答弁の中にもあった、もううちわの時期ではなくなっていたというような趣旨の御発言をされていましたけれども、討議資料であれば、何もうちわの時期じゃなくてもいいわけですよ。しっかり御認識をされていたわけですよね。

 そういうことは認識をされておられながら、法務大臣として重要な政治課題で、しかも意欲を持って取り組まれていたことも含めて、それをやれないというふうに気持ちを変えられる。そういうことは政治家としていかがなものかということを申し上げて、私の質問を終わります。

奥野委員長 これにて郡和子君の質疑は終了しました。

 ちょっと速記をとめてください。

    〔速記中止〕

奥野委員長 速記を起こしてください。

 それでは次に、階猛君。

階委員 民主党の階猛です。

 私は先国会までこの委員会で野党の筆頭理事をしておりまして、奥野委員長には、副大臣として、審議のときには大変お世話になりました。当時の政務三役、谷垣大臣を初めとして、いつもしっかりとした答弁をされ、また、言動、国会外でも、私どもからするとなかなか追及しづらい。じくじたる思いもあった反面、やはり政府、特に法務省の高官である以上、それは当然かなと思っておりました。

 残念ながら、今そういう状況になっていないのではないかということで、私からも大臣の資質について幾つかお尋ねします。

 まず最初に、先ごろの所信の中で、大臣はいみじくも、法律を扱う人は責任を持たなければならない、それが自分の信条だと述べられていました。

 法律を扱う人には、死刑執行の命令を下す法務大臣は含まれますか。

松島国務大臣 はい、含まれます。

階委員 かつ、死刑執行命令を行う法務大臣は、法律を扱う人の中でも最も重い責任を持つと思いますが、違いますか。

松島国務大臣 階委員のおっしゃるとおりだと思います。

階委員 最も重い責任を持つということで今お答えいただきましたが、責任を持つ中身について伺います。

 責任を持つことには、みずから法やルールを遵守して、国民の模範となることも含まれると思いますが、違いますか。

松島国務大臣 おっしゃるとおりです。

階委員 もう一つ。責任を持つことには、権力の濫用をせず、法の支配を貫徹することも含まれると思いますが、違いますか。

松島国務大臣 権力の濫用をせず、法の支配を貫徹すること、もちろん含まれると思います。

階委員 最後にもう一つ。責任を持つことには、法の解釈や運用をみだりに変更せず、法的安定性を守ることも含まれると思いますが、違いますか。

松島国務大臣 法の安定性は重要だと考えます。

階委員 以上確認した上で以下質問に入っていきますけれども、先ほど、責任を持つことには、みずから法やルールに違反せず、国民の模範となることも含まれるということを大臣は認められました。

 私どもとしては、大臣は、規範意識が欠如ないし鈍麻しており、この責任を果たす資質に欠けていると考えております。今からその理由を、これまで出ております二つの事例で明らかにしていきます。

 まず、大臣、これを見ていただいて、これはうちわではないと言えますか。

松島国務大臣 私の意図としては討議資料として作成をいたしましたが、うちわの形をしていると言われれば、そのとおりです。

階委員 結論だけでいいですが、うちわではないとは言えないということでよろしいですか。(松島国務大臣「はい」と呼ぶ)今、はいとお答えになりましたので、次の質問に行きます。

 では、これを受け取られる人は、うちわではなくて、討議資料だと思って受け取ると思いますか。

松島国務大臣 一般的には、うちわにいろいろな文字が書いてあるな、そう思われるのではないかと思います。

階委員 素直な御答弁だと思います。一般的には、うちわであって、それに何かいろいろなことが書いてある、そのとおりだと思います。

 それで、資料をごらんになっていただきたいんです。

 資料一は、公職選挙法百九十九条の二という真ん中あたりのところに、「公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む。)」そういう方は、「当該選挙区内にある者に対し、いかなる名義をもつてするを問わず、寄附をしてはならない。」ということがありまして、ここで言われている寄附には、「金銭、物品その他の財産上の利益の供与」云々かんぬんということで、寄附というものにはこういうものが含まれるんだよということが百七十九条に書いてあります。

 他方、資料二、これは選挙関係の実例判例集から抜粋したものであります。この質疑事例によりますと、「候補者等が、その名入りのうちわやカレンダーを選挙区内にある者に対して贈ることはできないか。」という問いに対して、模範回答は「お見込みのとおり。」つまり、できないという答えになっております。

 そこで、選挙部長、きょう来ていただいております。選挙部長、公職選挙法にこのような規定がありまして、うちわを選挙区内にある者に対して配ることはこの規定に違反し処罰対象になるということで、確認ですけれども、よろしいですね。

稲山政府参考人 お答えを申し上げます。

 総務省として、個別の事案についての答えは差し控えさせていただきたいと存じますが、一般論で申し上げますと、先ほど御紹介のあったような条文がございます。

 質疑集が配られておりますが、そのうちわの解釈につきましては、昭和五十年当時に一般的に普及いたしましたうちわ、これは財産上の利益があるということを念頭に一般論として示されたものと考えております。

 いずれにいたしましても、寄附に該当するか、財産上の利益の供与に当たるかということは、個別事案ごとに、その事実に即して判断されるべきものと考えております。

階委員 もう一問、選挙部長に伺います。

 先ほど来、大臣は、討議資料ということで、それらしきことをいろいろ書いているから合法なんだという趣旨のことを言っていましたけれども、公職選挙法上、寄附の対象となるもの、本件でいえばうちわですけれども、その寄附の対象となるものに討議資料という中身を記載したからといって、違法性はなくならないですよね。

稲山政府参考人 個別の事案につきましての回答は差し控えさせていただきたいと存じます。

 財産上の利益の供与に当たるかどうかという観点は、先ほど申し上げましたようなことで、個々に判断されるべきものと考えておりますが、例えばビラということになりますと、その内容についての制約というものは特段ございませんので、全体的な判断の中で考慮がされるべきものと考えております。

階委員 今、内容を聞いているんじゃないんです。寄附の対象となるもの、例えばうちわに討議資料という記載をしたからといって、違法性はなくなるものではないですよねということを確認したいんです。

稲山政府参考人 一般論として申し上げれば、財産上の利益というものの判断に、その中身、記載の内容によってそれが異なるといったことは考えにくいのではないかと一般的には思っております。

階委員 今確認させていただいたとおり、仮にうちわに討議資料と書いたからといって、違法性はなくならないというのが一般論でございました。

 先ほどの答弁、大臣は、これは討議資料としていろいろなことが書いてあるから合法なんだとおっしゃいましたけれども、その見解は今も変えられませんか、同じですか。

松島国務大臣 私が申し上げましたのは、いろいろな文章を書いた討議資料という意図でつくった、そして、公選法違反に当たらないと自分が解釈をしてつくったのは、これが財産上の価値のあるそういううちわではない、選管がどういううちわを想定していい悪いを決めていらっしゃるのか個別にはわからないんですけれども、財産上の価値があるようなものには思わないということで、私は違反に当たらないと考えて作成をいたしました。

階委員 埼玉県のホームページとかに、うちわは寄附に当たって違法だというような記載があったりとか、この選挙関係実例判例集にも、うちわは違法だということが明確に書いてあるわけですね。そのようなことは存じ上げなかったということですか。

松島国務大臣 残念ながら、埼玉県の選管のQアンドAは見ておりません。

階委員 では、うちわを配ることは合法だと考えてこれまで活動してきたということになりますか。

松島国務大臣 財産的価値のない程度のうちわの形をしたもので、そして法律その他の文案が書いてあるものをお配りすることは違法ではない、もちろん違法ではないと思ったから、そういう行動をして、配布をしてまいりました。違法だと思ったら、しません。

階委員 その確信を持たれた背景で、例えば選挙管理委員会などの当局や法律の専門家などに違法性がないかということを確認したのでしょうか。

松島国務大臣 いつだったか忘れましたが、どこかで聞いた気はしますが、個別によって判断は分かれる、最初から一概にどうこうは言えないというようなことを聞いた記憶がございます。

階委員 ということは、これは合法だということもお墨つきを得られているわけではないですね。御答弁を求めます。

松島国務大臣 いいというお墨つきも、悪いからやめろというのも、どちらも言われない、通例が何カ所で、私も当たりました。

階委員 法務大臣になられてからもこれを配っていたということが先ほど明らかになりましたけれども、法務大臣たる者、合法か違法かわからなければ、私は疑わしきは配るべきではないと思うんですが、大臣は疑わしきは配っていいというお考えなんですか。

松島国務大臣 それは、その時点でも公職選挙法に違反するとは思わなかったので、配りました。

 ただ、先ほど申し上げましたように、いろいろなところから疑念が生じたり、こういう形で、さっきも他の委員に、重要な課題があるのにこういう問題をずっとやっているのは情けないと言われました。私はもう配りません。

階委員 刑事局長にも来ていただいていますけれども、刑法総則に故意の規定がありますね。それで、仮に本人が討議資料だから合法だと認識していたとしても、客観的に見て明らかに寄附の対象物、本件でいえばうちわであるというふうに認められれば、これは処罰対象になりますね。

林政府参考人 犯罪の成否がどのように認定されるかということについては、いずれにしても、捜査機関が収集した証拠に基づいて個別に判断されるものでありまして、その証拠というものはさまざまな性質の証拠があると考えております。

階委員 では、こういう聞き方をします。

 もし、うちわを不特定多数の人に選挙区内で配ったということで公職選挙法の嫌疑に問われた方がいるとします。この方が、いや、これはうちわではありませんといった弁解をしたときに、その弁解が合理性があるかどうかはどのように判断するんですか。

林政府参考人 捜査機関によって収集した証拠には、供述証拠もあれば客観的な証拠もございます。そういったことについて、それぞれの証明力を総合的に判断されるものと理解しております。

階委員 刑事局長、客観的な証拠はこれです。これはうちわじゃないですか。

林政府参考人 今、個別のことについて私が答弁をすることはできないと考えております。

 いずれにしましても、捜査機関によって収集した証拠に基づきまして、結果的に公職選挙法に定める寄附に当たるか、その前提としては、物品に当たるのかどうか、こういったことが総合的に判断されるものだと思います。

階委員 そんな答弁でいいんですか。それでちゃんと治安は守れるんでしょうか。不合理な弁解を許すことにつながりますよ。

 どうですか。これはうちわじゃないと言えるんですか。

林政府参考人 先ほど来申し上げているように、犯罪の成否を決めるのは、やはり捜査機関によって収集した証拠に基づいて判断いたしますので、私ども、捜査機関ではございません、法務当局といたしまして判断を下すということはできないと思います。

階委員 では、今後のこともありますので、大臣にちょっと事実関係をお尋ねしますけれども、私どもの調べたところでは、九月六日に大臣の選挙区内で、荒川区文化祭大会なるものが行われたそうです。その際、荒川区太鼓連盟が演じた組太鼓の演奏と盆踊りの会場で、このうちわ、肩書が法務大臣だったのか、シールを張って法務大臣なのか、あるいは経済産業副大臣か、そこまではわかりませんけれども、この類いのうちわを配ったという情報を得ておりますが、間違いないですか。

松島国務大臣 大太鼓連盟の盆踊りの際には、少しは配っていると思います。

階委員 同様に、九月六日、七日の両日、同じく選挙区内にある、先ほど柚木議員も尋ねましたけれども、小村井の香取神社でお祭りが行われた際にもこのうちわを配ったということでよろしいですね。

松島国務大臣 小村井の香取神社のお祭りは金曜の夜から土、日と続いておりまして、神社の中で配ったという場合もあれば、神社の外で、祭り関連のところで配った地域もあるかと思います。

階委員 今のやりとりで、公職選挙法、先ほど申し上げました百九十九条の二項並びに百七十九条の構成要件に当てはまる事実は大体示されたのではないか、大臣が自白されたのではないかと私は思っておりますので、あとは、今後の対応はまた党の方で検討したいと思っております。

 もう一つルールに違反したことがありまして、これも取り上げられていますが、赤坂議員宿舎への入居の件です。

 二〇一二年四月十四日の大臣のツイート、これは資料三をごらんになってください。先ほど柚木議員も指摘されましたけれども、このツイートで、「赤坂議員宿舎、家賃が八千円下がって八万四千二百九十一円とは呆れる。相場の五分の一か。「消費増税の前に身を切る改革」と言っているのに、与野党とも恥ずかしくないのか。二十三区内居住者は入れない規則なので私は無縁だったが、これほど職住接近で広い「社宅」は必要ない。」ということで、この中で二十三区内居住者は入れない規則だということを認識されていますよね。

 その規則を知りながら今回入居された理由をもう一度説明してください。

松島国務大臣 原則二十三区内居住者が議員宿舎に入れないという院内の申し合わせルールがあることは存じていました。

 ただ、原則であって例外もあるということを聞いたことがあったものですから、私が法務大臣に就任し、これはテロ組織だとか犯罪組織だとかに対する担当の大臣ですので、いろいろ嫌がらせの手紙やメールも参ります。そうした中で、私が住んでいるマンション、小学生や幼稚園の子がたくさんいる、子供たちも多いマンションでもしものことがあったら、私は、警護官が私のことは守っていますけれども、とばっちりが周辺に及んだら、本当に万一のことがあったら嫌だと思って、そして、議員宿舎の方に大臣でいる間だけ移らせてもらって、それが終わったらもとのマンションに帰ろう、そう思った次第です。

階委員 今言われた事情が本当に特例に値するのかどうかということについては後ほど確認するとして、きょうは、衆議院の管理部長にも来ていただいています。

 衆議院の管理部長に聞きますけれども、過去に、東京二十三区内に住居を所有し、かつ、東京二十三区内に選挙区がある議員で、この特別な許可、特別な許可と申しますのは、資料四を見てください、資料四の二項に、今大臣も言われましたけれども例外ルールがあるということで、二項のただし書きに、「所有する住居に議員が入居できない特別の事情がある場合には、議院運営委員会庶務小委員長において、許可することができる。」この許可を受けられた方がいますか。

 もう一度お尋ねしますね。過去に許可を受けられた方で、二十三区内に住居を所有し、かつ、二十三区内に選挙区がある議員はいましたか。

中村参事 お答えさせていただきます。

 二十三区選出議員で宿舎に特例で入居された方は、今のところいらっしゃいません。(階委員「大きな声で」と呼ぶ)いらっしゃいませんでした。

階委員 過去にいらっしゃらない、今件が初めてだということです。

 異例中の異例ですので、よほど特別の事情が必要だと思っておりますけれども、大臣としては、先ほどの事情がこの異例中の異例に当たるほどの特別の事情に当たるというふうに考えられたということでよろしいですか。

松島国務大臣 はい、そのとおりです。

階委員 そこで私は理解に苦しむのは、大臣として、自分の自宅に住んでいらっしゃる子供たちなどに迷惑がかかるのをおもんぱかって、このこと自体は私はいい考えだと思いますよ、そのことをおもんぱかってわざわざ衆議院議員の宿舎に移ったにもかかわらず、週末には戻って、そして、大臣に言わせれば、マンションの住民に迷惑がかかるようなことをしていたり、あるいは、たくさん人が集まるお祭りの会場に行って、警備上の問題、SPだけじゃなくて、先ほどおっしゃっていましたけれども、地元の警察の人たちも動員されたりして、そうやって安全を確保しなくちゃいけない、そういうところは全く意に介さないというのは、極めてアンバランスだと思います。矛盾していると思いますが、どうですか。

松島国務大臣 一つ目の、私が行くと危ないと言われるマンションに週末泊まっているという御批判ですが、一度か二度、どっちか忘れました、深夜に荷物をとりに行って、そのまま……(発言する者あり)

奥野委員長 ちょっと静かにしてください。

松島国務大臣 九月三日に就任した後すぐに入居が認められたわけではございませんから、九月の末になりまして、入居を認められて、荷物を赤坂に搬入して、そして、週末に、秋物の洋服をとりに行って、結構深夜に及びましたので、そのまま泊まったということがたしか一回か二回あります。

 子供さん、住民の人が外に出てこない時間でしたけれども、しかし、やはりいろいろなことを考えると、それもやめまして、マンションの敷地内にあったポリスボックスも撤去してもらって、普通のマンションとして皆さんが平穏な生活を送れるように、今、そういう態勢にしております。(階委員「後段の方を答えていないですよ」と呼ぶ)

 後段の方ですね。たとえ、議員でいずれかの閣僚を務めていても、もちろん、盆踊りがふさわしいのかどうか、それは意見が分かれるかもしれませんが、街頭演説にしても、いろいろな街頭の行動、人々と接する行動というのはあり得ると思っております。(階委員「質問に答えていないです」と呼ぶ)

奥野委員長 では、もう一度質問してください。

階委員 自分のマンションに住んでいる子供たちやその親御さんには気を使ってそこに泊まらないようにしようというのは、私はそれは一つの考えだと認めますけれども、もしそういう考えを本当にお持ちであれば、お祭りなんかは、お子さんがいっぱい来るじゃないですか、近所の人たちもいっぱい来ますよ。しかも、マンションと違って、閉鎖的な空間ではなくて、出入り自由ですよ。どんなテロリストが来るかもしれませんよね。そこになぜ行くんですか。(発言する者あり)

奥野委員長 ちょっと待ってくださいね。

 今、私の指示に基づいて、松島大臣は自分の言葉でずっと対応しているんですよ。そういったときに余り外野から余分なことを言われると頭が混乱しますから、そういう意味では、静かに答えさせる環境をつくってあげてほしい。

 大塚さんにも申し上げます、さっきから少し多いです。それだけ御注意ください。

松島国務大臣 ポリスボックスが建っていて、法務大臣が住んでいるところだと評判になると、そしてまた、狙う人というのはどこが住居かと調べますから、ターゲットになるおそれがあります。

 一方、私がいろいろイベントに出るというのは、神出鬼没と言うとおかしいですけれども、あっちこっち順番もでたらめに参りますので、狙った人がそこで待ち受けてというのはかなり困難じゃないかと私は思っております。

階委員 別に狙いやすいかどうかを聞いているわけじゃないんですよ。大臣がさっきおっしゃったのは、お子さんや親御さんに迷惑をかけないようにということで、わざわざ自分の自宅を離れて生活をしていらっしゃるわけですよね。そこまで御配慮される大臣がなぜお祭りには神出鬼没でどこにでも出かけられるのか、その神経がわかりませんし、矛盾していると思います。何か弁解はありますか。

松島国務大臣 弁解というわけではありません。

 つまり、どこへ行くかわからないということは、狙おうとする人が狙ってきにくいのではないか、そういうことを申し上げたわけです。ここにいるんだとわかっていれば狙ってくるでしょうけれども、どこへ行くかわからないのに、次がどこかもわからないのに、私を狙って、狙い弾で誰かがけがをするという確率は、自分が明らかに住んでいると世の中に思われているマンションの裏庭よりはずっと安全だと思います。

階委員 それでは、今後もお祭りには神出鬼没でどこにでも行きますということでよろしいですか。

松島国務大臣 今後、自分がどれぐらいいろいろなターゲットにされて危ないのか、警備というものがどれぐらいの危険をはらむのかをこれから見きわめてまいりたいと思っております。

 幸い、しばらくそういうのもございませんので、じっくり考えたいと思います。(発言する者あり)

階委員 来年まで考えてくださいというお話も今ほかからありましたので、ちゃんと、法務大臣としてどういう行動がいいのかということを考えていただきたいと思います。

 それから次に、私が冒頭申し上げました、責任を持つことには、権力の濫用をせず、法の支配を貫徹することも含まれるのではないかということも認められました。大臣はその地位を利用して権力を濫用し、いわば人の支配になっていると思われる事例をちょっと耳にしましたので、その真偽につき、まず、大臣官房長にお尋ねします。

 まず、大臣の初登庁の際、法務省の職員の出迎えが少ないと大臣が立腹し、初登庁をやり直したという情報を聞きましたが、本当ですか。

黒川政府参考人 お答えいたします。

 松島大臣初登庁の夜、御指摘のとおり、一旦法務省に入られながら、議員会館に戻られて登庁し直されたということは事実でございます。

 その理由につきまして後に大臣にお伺いしたところ、当初予定されていた登庁時間よりかなり早目に着いてしまったこともございまして、役所の出迎え態勢がまだ整っていないのではないかとお考えになって、時間調整のために議員会館の方に戻られたということがわかりました。

階委員 今の答弁について大臣に確認しますけれども、当初何時に登庁される予定で、実際には、早まったといいますが、何時に着かれたのですか。

松島国務大臣 何時の予定ということではなく、就任した日というのは、皇居で認証式がありまして、その後、官邸で記者会見が順次行われていきます。予定の時間より随分それはずれ込みます。それが終わった後に、一旦会館で着がえたり軽く食事をとるのか、あるいは法務省へ直行して、その後法務省で夜中十時、十一時ごろの記者会見をするのかという二つの選択肢がございました。

 それのどちらを選ぶかというので、私はちょっと勢い込み過ぎて、もう何も食べないでこの勢いで行っちゃおうと行きかけたんですが、まだ準備がよく整っていないようなので戻った。何時の予定を何時にずらした、そういう明確なのがあったものではありません。

階委員 食い違っていますよ。準備ができていないから戻ったと今おっしゃいましたよね。予定の時間より早く着いたので一回戻ったとさっき官房長は言いました。食い違っていますよ。

松島国務大臣 予定の時間と申しますのは、官邸の会見が終わって、即法務省へ行くのか、一旦会館に入ってドレスから平服に着がえるのか、そういう意味の時間取りの話で、何時何分とそれを正確に決めるタイプのものでは多分ない。それは恐らくどの役所でも、就任の日の夜というのは、時間帯的な決め方はそうだと思います。

階委員 ですから、別に早く着いたとかそういう話ではなくて、いずれかの選択肢、あり得る選択肢のうちの一つを大臣が選ばれてそれで着かれたわけだから、別にそれは予定外でも何でもないということでよろしいですね。当たり前のことをしただけだということでよろしいですね。イレギュラーなことをしたんですか。

松島国務大臣 当たり前のことをしたというのは、一遍法務省へ行きかけて、やめて会館に行ったことを指していらっしゃるんですか。

階委員 事実関係。まず、一回、初登庁で法務省の役所には入ったんですか。

松島国務大臣 車は一度、駐車場というか中に入りました。

 はっきり申し上げまして、幹部がまだ迎える準備がそろっていませんからと。下に一人か二人いらっしゃいましたけれども、今まで、通常の経験で、そういうとき、幹部というのは十人か二十人いらっしゃるものだと思ったので、まだのところへ行って待っていても仕方がないので、そこでそのお二人と言葉を交わしているというのもなんなので、一度去りました。

階委員 別に十人か二十人そろっていなくても登庁しても問題ないと思いますけれども、このままでは登庁できないというふうに判断したのは誰ですか。

松島国務大臣 電話で問い合わせたら、官邸からすぐ帰ってきたものだから、まだ人が集まる準備が進んでいないということを聞いたので、それで一遍引き返しました。

階委員 一旦役所の中に入って電話で聞くというのはどういうことですか。役所の中に入ったんですよね、一回。電話で聞くというのはどういうことですか。

松島国務大臣 役所の駐車場の入り口まで、門の入り口まで入っただけですから。

階委員 官房長、過去に、初登庁の際に、入り口まで来て、戻ってまた出直してきたという人はいますか。

 それからもう一つ、必ず初登庁のときは、私も政務官として初登庁したときに人がそろっていないときもありましたけれども、人がそろっていないと何か不都合はあるんですか。

黒川政府参考人 過去にそのような動きをされた大臣はいらっしゃいません。

 ただ、私どものお出迎えの態勢として、ちょっと大臣に事前説明が不十分で、認識違いがございました。

 私どもの役所は、十九階にあります大臣室付近に多数の幹部が待機しておりますが、一階の玄関口に出迎えに立つのは、私のほか、秘書課のスタッフ数名でお出迎えするのが通例でございました。ただ、その通例の私どもの出迎え態勢のあり方をきちんと事前に大臣に御説明しておりませんで、多数の幹部が役所でお待ちしておりますということだけお伝えしていたので、今現在も大臣にちょっと認識違いがあるのかもしれませんが、私どもの事前の説明が不足で、少しそこに行き違いがあったというのが実態でございます。

松島国務大臣 私の中に各省庁によってやり方が違うという認識が欠けていたということを反省し、よくコミュニケーションをとるように努めてまいりたいと思っております。

階委員 午前中は時間が来ましたので、ここで終わらせていただきます。ありがとうございました。

奥野委員長 午前の質疑はこれで終了します。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時七分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

奥野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。階猛君。

階委員 質疑を続けます。

 午前中の質疑の中で、当局や法律の専門家から法律的には合法とも違法ともアドバイスを受けていない中で、あえて、通常のビラにせずに、うちわを討議資料として、みずからの名前を大きく記載して配ったということでした。その理由を改めてお聞かせください。なぜ普通のビラにしなかったのか、なぜうちわだったのかということです。

松島国務大臣 通常のビラというのは配りにくいんですね。受け取りにくい、配りにくいということと、受け取ってもすぐ捨てられますし、一瞬でも見ていただきたい、家に持って帰るまでとてもいかない、その会場だけでも一瞬でも見ていただきたい、そう思いました。

階委員 通常のビラだと配れない、数がはけないからということでよろしいですね。うなずいていただきました。

 それから、午前中最後の官房長の答弁ですけれども、初登庁の出迎えは、法務省の通例としてはふだんどおりの態勢であったけれども、大臣の方でたくさんのお出迎えがあるものと誤解されるような連絡を事務方がしていた、だからこそやり直すに至ったということでした。

 大臣にお尋ねします。仮にそのような誤解があったにせよ、たしか夜の九時ごろだったと思いますが、皆さん残業していて、一刻も早く家に帰りたい、そういう中で、出迎えの人数を多くして職員の帰宅をおくらせるのは何も問題がないですか。

松島国務大臣 それで少し時間がずれたとすれば、反省をしております。

階委員 官房長、別の件です。

 大臣が御自身の公用車をかえたということも漏れ伝わっておりますが、本当ですか。その理由は何ですか。

黒川政府参考人 お答えいたします。

 大臣御就任に当たって、大臣の公用車について松島先生からお問い合わせがございました。それに対して、私どもの方で、通常、大臣はこのようなタイプの車種を使っておられますと御説明をいたしました。

 お問い合わせがありましたので、私どもの方から、車種について何かお考えがありますかとお聞きして、大臣としばらく話をしました。そうしたところ、大臣の方は、経産副大臣の当時ワンボックスカーをお使いになって、ワンボックスカーに乗りなれているということと、また、洋服との関係で、スカート等が多いからということだと思いますが、乗りおりが便利だということで、ワンボックスカーをお好みだということを理解しました。

 そこで、私どもの方として、法務省にもワンボックスカーがございますので、これでよろしければこれを公用車にいたしましょうかとお諮りしたところ、そうしてくださいということでしたので、事前に大臣と御相談し決定しておったもので、初日から、つまり初登庁のときからワンボックスカーを利用されております。

階委員 確認しますけれども、そうすると、もとからあった車両だということで追加的なコストは発生せず、かつまた、前任の大臣が使っていた車両は有効に使われているかどうか、お答えください。

黒川政府参考人 大臣がワンボックスカーを公用車に選択されたことで特段の経費は発生しておりません。

 旧来の車種については、常時使っているわけではありませんが、必要に応じて今後使うことになると思います。

階委員 車の件は、今の点で了としましょう。

 ただし、大臣の御見解のもと、前代未聞、初登庁をやり直したということですが、私は、財政が厳しく、消費税を上げたりしたいというときに、職員を呼び出して残業代の支出をふやすのは国民のためになるのだろうかということを考えますし、これは、先ほど申し上げました、法の支配というのは、権力も法のもとにあり、抑制的に行使すべきだということで、単なる自己満足のためにこういう権力を行使していたとすれば法の支配に反すると思いますが、いかがですか。

松島国務大臣 法の支配と人の支配ということに当たるかどうかわかりませんけれども、私がよく確認しないで、役所ごとにルールがいろいろ違うということを考えないで、これまで幾つかの役所で見知っていたのが一階で迎えられる場合が多かったので、それに合わせるようにしようと思って、ただ、理解が不足だったことは否めませんので、今後、しっかりとコミュニケーションをとってまいりたいと思っております。

階委員 今後ということですけれども、今、大臣を続けられる資格があるのかどうかという観点から、もう一点尋ねていきます。

 冒頭に、責任を持つということには、法の解釈や運用をみだりに変更せず、法的安定性を守ることも含まれるということを大臣もお認めになられました。

 しかし、この委員会でも、先ほど来、郡先生が御指摘された選択的夫婦別氏制度もそうですが、議員時代から自説を変えていらっしゃいます。その変節した理由も、まともに説明していないと思っています。まさに朝令暮改で、法的安定性を害すること甚だしいと思っています。あと、先ほどのツイートで議員宿舎は必要ないと言いつつ、今では、本来、原則として入居資格がないにもかかわらず利用しているということもありました。

 それから、ガソリンの暫定税率についても、かつては撤廃を主張していたのに、国土交通副大臣になるや、突如存続を主張され、この点を参院予算委員会で追及されると、苦しい弁解を長々と続けて、時の予算委員長、しかも御自身の所属する自民党の委員長から出入り禁止を言い渡されています。

 そうした、朝令暮改といいますか、無責任な言動は枚挙にいとまがありません。法の最高責任者である法務大臣がこのありさまでは、法の運用に予測可能性がなくなり、国民は安心して行動できないと思います。

 まして、特定秘密を指定できる役所に法務省も入りました。役所の都合で場当たり的な秘密指定がされたり、内部通報者を不当に処罰したりしないよう、一貫性のある、透明性のある姿勢が求められます。

 なおかつ、特定秘密保護法の担当大臣でもあるということですから、政府全体がそうしたことのないよう監督する立場でもあります。

 また、十月三日の予算委員会では、法務省は政府の顧問弁護士として、いろいろな訴訟が起きてから対応するのではなくて、それを未然に防止する法的な支援、アドバイスも行っていきたいというふうに言われておりました。

 そうした、まさに法の番人であり、大元締めである重要な役割を担う大臣として、これまでるる申し上げてきたとおり、規範意識の鈍麻、人による支配の実行、朝令暮改の言動は、全くもって資質に欠けると思います。今すぐ大臣の職を辞すべきと考えますが、いかがですか。

松島国務大臣 全くそうは考えずに、しっかりとこの安倍政権で法務大臣を務めてまいりたいと思っております。

 なお、一点、先ほど、私の選択的夫婦別姓に対する考え方、時代を追って変遷があったというようなお話がございました。法の安定性ということを考えますと、私自身、法務大臣になりました以上、法の安定性を考えて、先ほど申し上げたように、民法の改正は、この問題に関しては現在それを志向することは難しいと考えております。

階委員 同じく基本法であり、法的安定性が求められる刑法については、性犯罪の厳罰化を進めようということで、これは一カ月で進めたなどと先ほどもおっしゃっていましたけれども、法制審議会とかで慎重に議論するべき話ではないんですか。

松島国務大臣 これは、法制審議会というのはその後に開くものです。まず、どういう問題点があるか、現在の刑事罰に妥当性があるのか、そしてまた、犯罪の構成要件に妥当性があるのかということを調べてもらう検討会を早急に立ち上げたということです。

 そして、先ほど申し上げましたように、この件につきましては、裁判員裁判を見ておると、判決がかなり重罰化したり、検察の要求以上の判決が出たりしていることがある。そのように、性犯罪に対しては、実際の法定刑の意味が薄れてきているという認識のもと、行動を起こしたものです。

階委員 先般、先ほども少し答弁を引用しましたけれども、訟務局なるものをつくって、各省に対して、政府の顧問弁護士として法律違反を未然に防止するアドバイスなどを行っていくということを述べられました。今回のうちわの問題、総務省は、先ほど選挙部長が答弁しましたけれども、うちわである以上、討議資料と書かれていたかどうか、これは違法性を左右するものではなくて、討議資料と書かれていたとしても処罰性が失われるものではないという趣旨でした。

 これは大臣の考えと反するように思われますけれども、訟務局ができた場合、総務省の選挙部に対して、その見解は間違っているなどと言うつもりもあるんでしょうか。

松島国務大臣 結論として、全くそんな考えはありません。

 一つ一つの事案について、まず一つは、もし何かこれが問題になったとき、私の行為が問題になったときも、法務大臣としてどうこう意見を言うことは全くしません。

 と同時に、先ほどの訟務制度というのは、もちろん、一般論として、いろいろな裁判がございます。その中には、早目に考えておけば、役所がこのような法律の運用をすればよかったというようなことは幾つかございますので、そういう意味で、そういう相談どころとしての訟務部門の格上げが必要ではないかということを申し上げ、そしてまた概算要求もしているところでございます。

階委員 これからも大臣を続けていきたいと言っていましたけれども、他方で、規範意識に欠ける面、法の支配の意識に欠ける面、それから朝令暮改の言動ということも明らかになっているわけです。御自身が資質は十分にあるというふうに考えていらっしゃるのであれば、その理由をお答えください。

松島国務大臣 法務大臣の資質というものは私が判断するものではなく、それは任免権者が考えることだと思います。

 私は、誠心誠意、この安倍政権の法務大臣として相務めてまいりたいという覚悟だけを申し上げさせていただきます。

階委員 わかりました。これは安倍総理の任命責任だというふうに承ります。

 もう時間ですので、これで終わりますけれども、ちょっと質問から離れますけれども、私、実は東大の野球部のピッチャーをしておりました。この後質問に立つ井出君も東大野球部の後輩です。

 大臣は、聞いておりますところ、東大応援部の初代チアリーダーとして活躍されたということでありますけれども、我々の野球部というのは、もう御案内のとおり、なかなか勝てません。ただし、弱くても、ちゃんとルールにのっとって正々堂々とフェアプレーをしているからこそ、応援部の方たちも一生懸命応援してくれていると思うわけであります。

 ところが、私が大臣を見ているところ、そうしたルールに対して余りにも無頓着で、規範意識に欠けているというのは大変残念であります。私は、このような大臣の後輩であることは恥じると言わざるを得ません。

 ぜひ、大臣におかれましては、もう一度しっかりこれまでの行状を振り返っていただいて、身の振り方を考えていただくことをお願い申し上げまして、私からの質問を終わります。

 ありがとうございました。

奥野委員長 これで階君の質疑を終了します。

 次に、井出庸生君。

井出委員 維新の党、信州長野の井出庸生です。よろしくお願いいたします。

 まず冒頭、大塚政務官、大変失礼なんですが、不規則発言が多いのかと。私の浅い経験からしても、委員会で政務官がそのような御発言を多々されたというのは見たことがございません。私はきょう政務官に答弁を求めておりませんので、御発言は求めませんが、お静かにしていただくか、それができないのであれば退席していただいて結構です。

 私からも、大臣の資質について質問をさせていただきます。

 まず、柚木議員の質疑の中で冒頭にあった雑音の発言、謝罪はしかと受けとめました。ただ、法務大臣御自身は、かつて、一に国語、二に国語、三、四がなくて五に算数とおっしゃった方ですので、重々注意をしていただければと思います。

 それと、先ほどの盆踊りのやりとりなんですが、盆踊りを、忙しいときは何カ所行かれたというような御答弁をされましたが、私は、個人的には非常に残念な答弁だったなと思います。そういった個人の御活動はブログや会報でやっていただければいいと思いますし、それを国会の法務委員会の答弁で、法務大臣で、もう少し言い方があったのではないかと。安倍政権の法務大臣は務まるかもしれませんが、日本国の法務大臣としての意識を持っていただきたいと思います。

 私からも、うちわの問題をまず伺います。

 このうちわの問題は、やはり公職選挙法、法律をきちっと守っているかというところが本質だと思います。かつて、会津藩校日新館に伝わる「什の掟」の精神に、ならぬものはならぬという言葉があります。その中には、弱い者をいじめてはなりませぬですとか、ひきょうなまねをしてはなりませぬなど、いろいろありますが、政治家にとって、公職選挙法に違反するようなことは、まさに、ならぬものはならぬと言うべきではないでしょうか。

 このうちわの一件なんですが、もう一度だけ確認をさせていただきます。

 大臣、これは資料なんですか、うちわなんですか。どちらですか。二者択一でお願いします。

松島国務大臣 私といたしましては、討議資料、つまり、この一年間にどんな法律ができ上がったかということを書いたものを印刷して配りたい、それを形にするときに、うちわと見られる形のものにつくった、そういうことです。

井出委員 御意図は資料だ、そう承りました。

 お配りをしております資料の二枚目を見ていただきたいのですが、これは、ことし提出をされております、大臣が代表者を務めている自由民主党東京都第十四選挙区支部の使途報告書の表紙です。

 大臣に伺いますが、毎年提出をされております使途報告書また収支報告書は、御自身が責任を持って確認をされておりますか、また、記載されていることにきちっと責任を負えるでしょうか、お答えください。

松島国務大臣 大体見ております。

井出委員 資料を一枚めくっていただきまして、三枚目の資料になります。

 まず、この資料の四角の枠の右の上、宣伝事業費という項目、印刷製本費という項目になっております。要するに、印刷製本費に係る支出がここに一覧として記載をされております。

 左側の「支出の目的」というところを下に目を追っていただけると、私が二重丸をつけておりますが、資料印刷という項目が二つあります。それを横に目で追っていっていただきますと、金額は十三万九千六百五十円、八万四千円、支出をした日付、平成二十五年七月二十五日、平成二十五年八月二十七日となっております。

 そして、その隣なんですが、支出を受けた者の氏名、大臣が資料印刷を発注した会社、資料には会社名が記載されておりますが、きょうは匿名で議論をさせていただきます。いずれも同一の会社です。

 この会社の業務概要をインターネットに掲示されていますものが次の一枚でございます。上から、代表者名、資本金、そして三つ目の営業種目なんですが、オリジナルタオル、オリジナル手拭い、オリジナル扇子、オリジナルうちわ、企画・デザイン・製作となっております。

 この営業種目の中に、一般的にチラシ、資料を印刷するような、印刷業、印刷という文字すらないことは一目瞭然かと思います。つまり、この会社は、一般的に資料を作成するときにお願いをする印刷会社ではない。

 先ほどの収支報告書の一覧にありました印刷製本費、そして資料印刷ということでこの会社に発注をされているんですが、次の資料、五枚目になりますが、この会社の商品一覧を見れば、ごらんのようにうちわがずらっと並んでおります。もうこれは明らかにうちわをつくっている会社だ、これは一目瞭然です。

 大臣、あなたは、うちわの製作会社に発注をしてこれをつくられている。つまり、最初からうちわだという意図が御自身の中にあってこれを発注しているんじゃないんですか。違いますか。

松島国務大臣 ですから、先ほど申し上げましたように、討議資料を、国政の中身である討議資料をどのような形のものにしようかということに当たって、そういうのが得意な会社に頼んだことだと思います。発注先を決めたのは私じゃないですけれども、そういうことだと思います。

井出委員 今月八日の参議院予算委員会、みんなの党の議員が、作成を指示したのも大臣が指示したという理解でよろしいかという質問に対して、法律をコンパクトにまとめて書くことも含め私が作成をいたしましたとお答えになっているかと思うんです。

 確認になりますが、この会社の業種、業態を知らなかったということなんですか。

松島国務大臣 一般的な印刷会社でないとか、今書いてありました、うちわとかタオルとか記念品とか、そこまではよく存じていません。

井出委員 先ほどの御答弁の中で、通常の形にすると資料がはけないというお話がありました。それで、工夫をされたと。しかし、その発注先の会社がうちわを製作している会社なんですね。これを見れば、もうどう客観的に考えても、うちわをお願いしていますと言っているとしか思えないんですけれども、それでもまだ、うちわじゃない、そういうことなんですか。

松島国務大臣 いえ、形はうちわです。狙いは、つくりたかったものは討議資料ですけれども、形はうちわです。

井出委員 私はこの収支報告書を見たときに、支出の目的、資料印刷で発注している、その会社が資料印刷を取り扱っていない、タオルや扇子やうちわをつくっている。これは、私の地元は車社会なのでガソリン代がかかるんですけれども、ガソリン代と書いて、ガソリンを扱っていない会社から水やお酒を買っているのと同じようなものじゃないかと。

 この記載がうそだと私は思うんですけれども、いかがですか。

松島国務大臣 いずれにいたしましても、これは経産副大臣になる前ですし、つまり去年の夏のことですので、ちょっとまた後ほど調べて御報告させていただきたいと思います。

井出委員 調べて報告ということは、いつまでにどういう形でやっていただけるか、お答えください。

松島国務大臣 理事会で御相談いただきます。(発言する者あり)

 私としては、ですから、先ほど申し上げましたように、討議資料をつくる目的でつくりまして、ですから、支出としては討議資料です、印刷です。頼んだところが、うちわ。もちろん、うちわの形にさせるためにうちわの得意なところに頼んだのかもしれませんというわけです。

井出委員 かもしれないというのは、うちわの形にさせるためにという御認識はあったんですよね。それで、どうして会社だけ、うちわをつくっている会社かもしれないということなんですか。うちわをつくるためにうちわをつくっている会社に発注したということなんじゃないんですか。

松島国務大臣 私自身がつくったとこの間も申しましたのは、法律のうち、何を皆さんに知ってほしいかを取捨選択したり、短くまとめたり、そういう作業は私がやって、そして、うちわみたいな形の資料を、だから、私がつくっている時点は資料なんですよ。資料をどこの印刷会社に発注するのか。(発言する者あり)でも、印刷もしましたよ。印刷会社に発注するか、どこの会社に発注するなどは私自身が指示しないでスタッフにやらせているので、そこでどういうやりとりがあったかは後で調べます。

井出委員 資料の形を丸くしろ、柄をつけろ、そこは大臣の御工夫、御指示だったんじゃないんですか。

松島国務大臣 そういうことです。

井出委員 そうしますと、やはり、大臣が代表をお務めになっている政党支部は、うちわをうちわの会社に発注したということになるんじゃないんですか。

松島国務大臣 委員の御質問の意味が、支出の目的が資料印刷でないということについて、そこの観点でおっしゃっているのならば、これは資料を印刷しています。つまり、資料を印刷したということと、それがうちわの形になったということは、別に矛盾しない。資料として配りたくて印刷をしております。

井出委員 先ほども申しましたが、例えば支出の目的にガソリン代と書く。例えです。発注した会社がガソリンを扱っていない。実際、お酒とか水とか、そういうのを買っているのと同じぐらい、この記載は虚偽じゃないかと私は思うんですが、いかがですか。

奥野委員長 ちょっと井出さんに申し上げますけれども、本人は資料と思ってつくっていたとずっと言い続けているわけですよ。だから、ここの段階でも資料だと思って資料というふうに書いてあるんだということを主張しているわけですよ。

 ところが、あなたは、資料じゃなくて、正確に言えばうちわを発注したんだ、そう書け、それが本当じゃないの、こう言っているわけですけれども、それは基本的に、二人でこんなになっているんですよ。僕はそう思うんですよ。

 だから、もしこれをもっと議論させろというなら、僕は余り時間の無駄のような気がしているものですから、もしそういうことをおっしゃるならば一回理事会で持ち帰りますけれども、いかがですか。

井出委員 今、委員長からそういう御提案をいただきましたが、これは、使途報告書に虚偽の記入をした疑いがある。それがそうなれば、政党助成法の第四十四条一項、五年以下の禁錮もしくは百万円以下の罰金、この疑いが、事実として、私はその疑いが確定していると申し上げているわけじゃないんですよ、疑いがあるのではないかと伺っているんです。いかがですか。

松島国務大臣 例えば、お水と書いて、それがペットボトルの水なのか、それとももっと大きいペットボトルの水なのかという違いならわかりますけれども、水か油かの違いをあたかも私が政治資金収支報告書に書いたように言われると極めて心外で、資料を印刷したものであって、それをうちわと言うかどうかは議論が分かれると思いますが、政治資金収支報告書の文言には決して間違いはないと思っております。

 なお、先ほど柚木委員の御質問に対して、製作した本数その他についてはまた後ほどお伝えするということにしておりますので、また同じようにしたいと思います。

奥野委員長 ちょっと待ってください。今の後段の話ですけれども、これは理事会で議論させてくださいというふうにさっき申し上げました。

 この件も、これを見ていれば、ポスターと、それから名刺と資料と書いてあるわけですよ。だから、うちわと言っていいのかどうかわかりませんが、それが名刺でもないしポスターでもないわけですから、資料でも、そういう表現もあるんじゃないのと私は思うものですから、それはちょっと持って帰らせてください、こう申し上げているわけです。

井出委員 今、水がどういう形態か、ペットボトルなのか瓶なのか、そういうふうにおっしゃられたんですが、私は、大臣が今おっしゃったように、水と油ぐらい違っていると思うんです。

 それはなぜかといえば、資料であれば合法、うちわであれば違法。だから、ここの違いは決定的で、ここの説明責任というのは絶対に果たしていただかなければならないんです。どうですか。

松島国務大臣 資料として製作し、収支報告書に書きました。

 と同時に、もう一つ申し上げますと、うちわだったとしても、その商品上の、財産上の価値云々によって問題になるかどうかというのはまた別の問題であります。

井出委員 その価値は、先ほど柚木委員が御質問された単価ですとか、そういうものを見なければいけないのかなと思いますが、通常の討議資料というのは、大臣も法律を書いていただいていますけれども、これを読んで、使用すると思うんですよ。これはこうやって討議するんじゃないんですか。

松島国務大臣 ああ、こんなに法律をやっているのとか、あれっ、これはどういう意味なのとか、教育と書いているねとか、やはり感想を言っていただけます。

井出委員 この使途報告書というものは毎年公開をされるものだ。そういう毎年公開されるもので、資料の印刷、実際はうちわの製作会社、この決定的な違い。それで、うちわであれば、これは公選法違反だ。私は、そうした疑いのあるものをこうやってオープンになる資料に堂々と載せている感覚自体も資質を疑うんですけれども、いかがですか。

松島国務大臣 オープンにして正しいことだと思っているから、オープンにしております。

井出委員 大臣は、資料だ、そういうことでオープンにしている。オープンにすることによってうちわであることが明らかになっているということを私は言いたいんです。

 済みません、先ほど、この件を確認するというお話がありましたけれども、いつ、どこでというところもしっかりと何らかの形で明示して、きちっと期限を設けてやっていただきたいと思います。

奥野委員長 それでは、できれば理事会で検討したいと思いますので、あしたの夕方までに確認できますか。今、全部。枚数の問題、それから資料印刷とか単価、それも全て。(松島国務大臣「あさっての昼ならできますよ」と呼ぶ)あさっての昼……。(発言する者あり)

 では、あした一回議論しますから、できるだけ早く対応してもらうようにお願いします。そうしないと、本当の議論ができないものですからね。

井出委員 この問題は、これからはこういったものは配らない、そういうお話はいただいているんですが、こういったものを配ってきたことが、私はもう甚だ不適切だったと思っております。

 これまで配ってきたことに対しても一言謝罪があってしかるべきだと思いますが、いかがでしょうか。

松島国務大臣 私は、違法なものを配ったと思っておりませんでした。討議資料を配ったつもりでおりましたが、それは、利用される方の中に、確かに、暑いときなど、蚊がやってきたときなど、やはりうちわとして使われる方もいらっしゃいましたし、そして法務大臣になった後も配っていたということを含めて、これは反省をしようと思います、この点は。

井出委員 この問題は、さきの先生方も御指摘のように、公職選挙法違反の疑い、決して私は確定したとは言いませんよ、疑いになり得ると思っております。

 それで、私が先ほど謝罪をした方がいいんじゃないかと伺ったのは、こういった件が告発になったりすれば、当然、捜査の対象となります。捜査の対象となったときに、それをそれまでの間ずっと否定し続けるのか、それとも、先にそれを認めて謝罪をするのか、そういうことは、一般論で言って、刑事捜査において全くそれは心証というものが変わってくると思います。

 まず、専門家の林刑事局長にこの見解を求めたいと思います。

林政府参考人 いずれにしましても、捜査機関は、告発等がなされれば、当然、法と証拠に基づきまして厳正に対処するということに尽きると思います。

井出委員 もう一度お伺いしますけれども、一般論で申し上げて、捜査対象となる案件があったときに、捜査を進めたときに、それを否認、否定し続けるのと、そのことを認めるのでは、処分の心証というものは一般論で言えば大きく違うんじゃないですか。

林政府参考人 まさしく捜査機関が、検察等が最後に処分するときに、当然、さまざまな犯情あるいは一般的な情状というものを考慮いたします。その中でどのようにそれが評価されるかというのは、本当に個々の事案によって変わりますので、定型化して申し上げることはできないと思います。

井出委員 冒頭申し上げた「什の掟」、ならぬものはならぬなんですが、その中には、うそを言うことはなりませぬ、そういう言葉がありますので、最後にこの件に関してつけ加えさせていただきたいと思います。

 次に、法務行政、特に刑事司法分野について、大臣の御見識、資質を伺ってまいりたいと思っております。

 大臣は、衆議院議員に四度当選をされ、また、長く法務委員会理事もお務めになられたと承知をしております。法務大臣になる際に、並々ならぬ思いがあるのではないか、法務行政にかける思いがあるのではないかと私は思いますが、そのあたりの御決意はいかがでしょうか。

松島国務大臣 所信表明でも述べさせていただきましたが、私にとって非常に印象に残っている仕事の一つに、議員立法で犯罪被害者基本法というのをつくったことがあります。

 被害者や遺族にとっては、犯人が逮捕されたのかされなかったのか、起訴されたのか、有罪になったのか、刑務所に入ったのか出たか、それもわからない。そうした中で、性犯罪の被害者が、刑務所から出てきた犯人から、おまえが親告したからだといって刺されて亡くなったという事件を目にしたことがあって、これが深く印象に残り、そしてまた、それ以外にも、犯罪被害者の方々の、あるいは遺族の方々の泣き、叫び、いろいろなことを聞いてくる中でやってまいりました。やはり、被害者への配慮であったり弱い立場の人への配慮ということを法務行政の中でしっかりやっていきたい。

 なお、法律の用語が難しいのはある程度仕方がないですが、私自身は司法試験を受けたことも何もしたことがない人間ですけれども、できるだけわかりやすい言葉で語ることができれば、そのように思っております。

井出委員 犯罪被害者の話がありまして、大臣が基本法にお取り組みになられたことは私も伺っております。

 ただ、私は、大臣のこれまでの御発言を伺っていると、まず被害者の人権を守ること、そして加害者の人権は二の次、三の次だと、これは平成十七年三月三十日の法務委員会でおっしゃられております。また、四月九日の法務委員会のときに、これはたしか裁判員裁判制度の議論だったと思うのですが、人を一人殺したら死刑になるのが当たり前だと私は思っていますという御発言があったかと思います。

 私は、加害者に重罰を科すこと、罪を償ってもらうこと、それは当然だと思いますが、しかしながら、罰則を重くする、罰則を重くして厳しい処罰をしていく、それが犯罪被害者の権利の全てなのかというと、私は若干の疑問を感じております。

 まず大臣に、大臣のお考えになる犯罪被害者の権利とは何か、伺いたいと思います。

松島国務大臣 先ほど少し申し上げましたが、自分に対する加害者がどういう状況であるかわからない、裁判の行方がどうなっているかわからない。今、犯罪被害者基本法の成果として、刑事裁判に被害者や遺族の方が出て、愛する我が子の最期はどうだったか状況を聞いたり、あるいはいろいろな思いを訴えることができるようになった、これも大きな進歩だと思っております。

 私自身がそのチームで、それは単に法務省だけでなくて、内閣府や警察や国交省、厚労省、一緒にやっていたチームでしたから、最初に手っ取り早く実現できましたのは、これは旧建設省、国交省マターですけれども、家で死傷事件が起こったときに、血が飛び散った家にそのまま住んでいられない、優先的に公営住宅に入れるように、これはすぐ全国に手を回してもらって進めることができました。そういうことを幾つか進めてまいりました。

 そして、特に遺族の方にお話を聞く中で、子供が未成年に殺された、自分の子供も未成年だけれども、警察で、どうせ悪仲間同士のけんかだったんだろうと、自分の子供をそういうふうにおとしめられた。いわゆる二次被害というものが、取り調べでも報道でもいろいろな形で起こってくる。こういうことも何とかしなければいけない。

 被疑者に対してはお金がなければ国選弁護人がつきますけれども、被害者の方は、どこへ訴えていったらいいか、誰に味方してもらえばいいかわからない。そういう弁護人も必要じゃないか、そういうことを思った。

 さらに、さっきちょっと申し上げましたけれども、性犯罪というのは、ほかの犯罪被害者は声を大にしていろいろなことを語ることがある程度できますが、性犯罪の被害者はそれができない。私自身、仕事をやっていく上で、女性だからということをそんなに意識したことはございませんけれども、この問題はかわりに声を上げたい、ずっとそう思ってまいりました。

井出委員 今お話をいただいたことですとか、基本法によって、その後、裁判に被害者が直接参加することが実現したということは、私も大きな前進だったと思っているんです。

 ただ、平成十六年四月九日の、人を一人殺したら死刑になるのは当たり前だと私は思っています、この価値観というのは、私は、かなり極端な、偏った発言だと思っております。

 この発言はまだ当然覚えていらっしゃると思いますけれども、この御見解は今も変わりないですか。

松島国務大臣 国会議員として、先ほど申し上げましたように、特にその時代、被害者たちに寄り添っていた、そしてまたいろいろな方々と話す中で、そういう意見も国民の中にあるという思いの中で述べた発言です。

 現在、もちろん私は、人権というものは全ての人にとってあるものであるし、矯正施設の中でも教育がなされて生まれ変わろうとしている人たちがいる、そういうことを深く認識しております。

 と同時に、今おっしゃった、厳密に一人殺した場合に判決が云々ということについては、法務大臣ですから、個別の事件について、例えば今もどこかで裁判が行われているかもしれない個別の事件について、量刑の傾向だとか、裁判所がどういう判断を下すべきだということは、意見を言うことはできない立場だと考えております。

井出委員 この発言だけではないんですね。

 私は、大臣のこれまでの発言を聞いておりますと、判例主義に対して、それは甘い、そういう御趣旨の発言をしたり、執行猶予が多くてとんでもないと。もっと言えば、一審で無罪となった裁判が、その後、上級審で有罪になって、有罪が確定した。そうしたときに、無罪を出した裁判官は間違った判決を出しているんだから、それを人事考課で評価するべきだというような御発言も過去にされていると思っておりまして、そういう発言をされている方が法務大臣をされていたら到底たまらないと思っております。

 先ほどの犯罪被害者遺族の関係で一つ実例を挙げて申し上げますと、これは二〇〇五年二月三日に毎日新聞が書いていたのですが、宮城県で二〇〇〇年に、少年三人を含む十八から二十五歳の男女八人が、二十歳の女性を六日間にわたって監禁して暴行して死なせた、遺体に灯油をかけて焼いた、そういう本当に悲惨な事件がありました。

 この御両親が、恐らく、刑事裁判のときはまだ基本法がなくて、直接参加は実現しなかったのではないかと思うんですが、この御両親は民事裁判を起こされている。それは、お金が欲しいということではなくて、民事裁判を起こして、その中で加害者と対話ができる可能性があるからということで、わざわざ民事損害賠償の裁判を起こしました。

 実際、この御両親は加害者と対面を果たすんですが、そのときのインタビュー記事が二〇〇五年二月三日の毎日新聞にありまして、記者が、会って何を聞きたいのか、加害者についてどんな思いなのかと言われたときに、その御両親、お父さんなんですけれども、更生を期待しているわけではない、刑事裁判では語られなかった本当の気持ちを知りたいだけだと。また、一生許したくない、死んでほしいと思う半面、同じ年代の子供を持つ親として、いい子になって生活してほしいという思いもあると。

 私は、この一文を読むだけでも、犯罪被害者というものが抱えているお気持ち、また、犯罪被害者の権利というものは、非常に細やかといいますか、決して、罪を、人一人殺したら死刑が当たり前ですとか、執行猶予が多過ぎるとか、そういう話ではないと思うんですよ。

 今、私が御紹介した記事は事前にお伝えしていると思いますが、この記事の御感想を伺いたいと思います。

松島国務大臣 委員が御指摘の記事も読ませていただきました。

 この中の、今おっしゃいました、同じ年代の子供を持つ親として、いい子になって生活してほしいという思いもあるとか、本当に、私もいろいろな方々に接する中で、望むもの、みんなもがいていて、心の安定とそれから苦しみとがずっと交互に家族はやってきて、その中で、求めるものはそれぞれ多様だと思います。

 そして、先ほどの、私のこれまでの考えというか、法務委員会で述べたりしたことについて幾つか申し上げますと、執行猶予が多過ぎると申しましたのは、特に性犯罪について執行猶予つきの判決が多くて、その中に再犯が高いということ、これについて注意を喚起したかった。

 そしてまた、裁判官の判決というのがいろいろ分かれるということについて、当時は私は一議員でしたから、もちろん三権分立ではありますけれども、国会を代表する立場ではない。一議員としての立場でいろいろな思いを、つまり、判決というのはなかなかみんな知らないから、最高裁判所についてはペケをつけるとかあるけれども、地裁とか高裁のことはよくわからないから、どういう裁判官とかどういう裁判例があるかということは世の中にわかった方がいいという思いで発言しましたが、私、法務省、法務大臣という立場に立ちましては、もとよりそのような発言は一切行いません。

井出委員 今、三権分立の話がありましたので伺いますが、先ほど私が少しお話しした御発言、平成十八年二月二十四日の法務委員会で御発言をされているんですね。

 まず、基本的に優秀な裁判官とはどういう人かという質問でございますと、私からすればもう全く意味不明な前置きをされて、今お話があった、執行猶予つきの判決が非常に多くてけしからぬと。それは今御説明いただいたと思っております。

 その後に、「無罪にした、無罪判決を出したけれども控訴審で有罪になり確定した、この場合も一審の裁判官の判決は間違っていたということになるわけですから、こういったことを明らかに国民に示すとともに、裁判所の世界ではこれが人事考課に反映されるんでしょうかという疑問と提案でございます。」そういう御発言をされていて、今、国民審査の言及がありまして、私もそれはいろいろ問題のある制度だなと思っているんですが、私がここで問題だなと思っておりますのは、無罪判決を出したけれども控訴審で有罪になり確定した、一審裁判官の判決は間違っていたということになるわけだと。

 無罪判決が間違いだというのは、一体どなたに決める権利があるんですかね。無罪判決が正しくないなんという価値観がこれまでそういう司法の場であったのかどうなのか、それを伺いたいと思います。

松島国務大臣 一審で無罪となる、それは裁判官の決定でしょう。控訴審でそれが有罪となる、これももちろん一つの決定でしょう。裁判官は、その心、裁判官の一人一人の良心に従って行うというわけなのですが、こういった場合とか、あるいは、これは収容するほどでもないといって執行猶予をつけたようなときに、執行猶予をつけてすぐまた犯罪が起こったときに、これは一体、その判決というのは正しいんだろうかというようなことを、一般的には、今は法務大臣として述べているんですよ、あのときに書いたことは、そういう意味で、それぞれの裁判官の判断というものについてどうだったのかという検証はどこかでなされているのだろうか、そういうことを書きました。

 つまり、いろいろな会社では、会社でも公務員でも、あの仕事が正しかったのかどうかということを組織の中で判断する、そういうことが、裁判所というところは全体の組織の中であるのだろうかということを質問してみたわけです。

井出委員 私が大臣の御発言をいろいろ読ませていただいて、一審無罪、上級審で有罪、それで有罪が確定したときに、無罪の判決は間違っていたというところにこだわるのは、ほかの発言を私が拝見していても、基本的に発言が全て有罪ありきなんですよ。冤罪とか、そういったものに対する御発言は全くと言っていいほど見られないんです。そういう感覚だと、今、法務大臣だから云々とおっしゃっていますけれども、そういうお考えが本当に九月三日以降変わっているんですか。

松島国務大臣 例えば検察部門は、厚生労働省元局長の無罪、冤罪事件をきっかけとして、大きな大きな検察改革を進めてまいりました。そういった事案も私は、もちろんこれは私が三日に就任する以前の出来事ですけれども、その努力ぶりもかいま見ております。同時に、もちろん、人が人を裁くということは、一〇〇%正しいと限らない。だからこそ上級審もあるのだということは十分理解しております。

 私が申し上げたいのは、再犯防止ということ、そしてまた、刑事施設内、さらに外へ出てからの途切れのない教育、処遇、そうやって更生を図っていく、そういうことが重要なのであって、そのことは強調して申し上げたいと思いますが、別に全て有罪でなければいけないなんということは思っておりません。

井出委員 今、そういう思いは、思っていないということをおっしゃっていただいたので、そこは重々そういうお気持ちでやっていただきたいと思うんです。

 大臣が先ほどの御答弁で申し上げた、どの組織でもそういった何かの判断を下したときにその検証をする、裁判所というところにそういうものがあるのか、そういう御意識があったかと思うんですけれども、判決をめぐる評価というものは、私は非常に難しいものだと。プロの裁判官だって、悩みながら判決を出して、出した後に、それが正しかったのか、そういうことも考えていると思います。

 きょうは一枚新聞を、気になったのがあって持ってきたんです。十月の十二日に、地元、信濃毎日新聞の記事があったのですが、実は、長野地裁で死刑が言い渡された事件がありまして、四十三歳の男がほか数名と一家三人を殺害した。これが、一審、長野地裁で死刑、最高裁でも死刑が判断されたということがありました。

 ただ、このときに一審の長野地裁で裁判員を務めた男性の方は、死刑判決を言い渡すときに被告を直視することはできなかった、後で別の裁判員から、被告が目をつぶって判決を聞いていたということを聞かされたと。

 また、実行犯も一審は死刑だった、それが高裁、上級審では無期懲役になったんですが、そのときの裁判員をやっていた方は、一審で死刑を言い渡すときに、自分より若い、命を奪っていいものかと自問自答した、それが高裁で無期懲役になったときに少しほっとした、そういう胸中をおっしゃられているんです。

 裁判の評価というものは、関係者や当事者、そしてまた社会全体、時間の流れというものもあるでしょう、判決の直後、判決から何年かたったときの状況。そういったいろいろなものによって評価がされるものであって、何が正しい、何が間違っているというものをどこが判断するんだということは極めて難しいと私は思うんですが、いかがでしょうか。

松島国務大臣 確かにそう思います。

 私は、今回の例ではございませんが、まだ法務大臣でなかったころ、落選中だったかもしれませんが、裁判員制度で、裁判員で死刑と決めて、そして、きっといろいろみんな悩みながら決めて、控訴審でそうでなくなった、多分同じようなケースだと思います。そのときに、私は内心、第三者として考えて、一生懸命悩みながらやった結論を控訴審がひっくり返すんだったら、裁判員制度って何なんだろうと思いました。でも、一審の裁判員をやった方が、ほっとしたと、何か本当に同じような表現があったんですね。

 それを聞いて、では、自分たちはそういう答えを出したけれども、プロだけの裁判官がやってそうじゃないのを覆しても、それで腹が立つものじゃなく、みんな、裁判の結果というのは、裁判員が加わっても裁判官だけでも、悩んで、考えて、ずっと胸にひっかかっていくものなんだなということを、私も同じ気持ちを共有しております。

 これは、法務大臣としてしゃべったのではなくて、それ以前の、一議員として、一私人としての感想です。

井出委員 引き続き、裁判員の裁判について関連して伺います。

 きょう示しております資料の最後、六枚目、日本経済新聞の記事なんですが、実は、ことしの七月二十四日に最高裁判所第一小法廷の方で、幼い一歳八カ月の女の子を両親が暴行して死なせるという事件、これは、大阪地裁が平成二十四年三月二十一日に裁判員裁判で、求刑の懲役十年に対して、地裁は十五年という判決を言い渡した。それについて、ことしの七月二十四日、最高裁第一小法廷はこれを破棄した。

 これは裁判の世界の判例というものの取り扱いが議論となる裁判だったんですが、この判例について、大臣、どのように御見解を持っているか、お伺いします。

松島国務大臣 裁判のあり方について、量刑も含めて、判例主義云々ということも、法務大臣である間は控えさせていただきたいと思います。

井出委員 法務大臣である間はというお言葉なんですが、根っこの考えはどうなのか。

 判例について大臣が、過去の法務委員会、平成十六年四月六日になるんですが、「これまでの判例主義の、量刑が決まる、何かこんな甘いものでいいんだろうかと一般の人が思うようなことがしばしばあるというようなことがそのままでいて、」と。

 これは、裁判員裁判の議論をしているときに、判例主義、判例で量刑が決まる、そういう甘いものがある中で裁判員制度を導入しても意味があるのか、そういう御趣旨の発言なんですけれども、もともとは、判例主義で判例に基づいた判決が出ることについては、それでは判決が甘い、そういうお考えを持っていたということでよろしいですね。

松島国務大臣 かつて裁判員制度導入の時期に、私は、いろいろそれについて疑問や不満を持っていました。そのうちの一つが、これまで判例主義だったのを改めるために裁判員を導入するというけれども、それだったら、裁判員を入れなくても、ちゃんと司法の世界でやればいいじゃないか、そう思っておりました。

 もう一つ、裁判員を入れないと判決まで物すごく長くかかる、短くするためにも裁判員制度をやるんだという論がありましたから、これについても、それはプロである裁判官と検事が考えればいいことで、それを裁判員制度によって打破しようとするのはおかしいと、当時思った考えを述べておりました。

 現在見るに、裁判員制度は、あれは、忌避できる、六割ぐらいの人が辞退できるようになりましたし、そして、実際にやった方々の九五%がやってよかったと。やった人、やらなかった人を含めて全体に聞いてみても、五割ぐらいの方が裁判が身近になったとか量刑が妥当になったとか感じていらっしゃるようですので、それはよかったことだったと思っております。

井出委員 この新聞記事でお示しをしております最高裁の判決、求刑の一・五倍の判決を出した地裁の裁判員裁判の判断を見直すべきだと。

 この判決の全文を見ますと、最高裁の判断として、まず前段で、「我が国の刑法は、一つの構成要件の中に種々の犯罪類型が含まれることを前提に幅広い法定刑を定めている。」そういうことを最初に言っているんですが、この「幅広い法定刑」についても、大臣はやはり否定的な御見解を示されている。

 これは、平成十六年十一月九日、「裁判でそれぞれゆだねられるんだったら、法律をつくる人はいいかげんでもいいということになるでしょう。幅を持たせておいたら全部厳しく裁判所がやってくれるということだったら、じゃ、軽い方をどんな軽いのにしておいてもいいということになってしまう。」その「言いわけは絶対におかしいと思います。」

 最高裁のこの文章は、一つの構成要件の中に種々の犯罪類型が含まれていることを前提に、だから、幅広に量刑をとっている。

 これは、これから恐らく性犯罪の下限を引き上げる、その御検討をされているところとも重なってくるんですけれども、犯罪にはさまざまな形態があって、だから幅広い法定刑をとるんだ、このことをかつて否定して、今はこれはまだ否定されますか、もうされないんですか。

松島国務大臣 例えば懲役十年以下といったらゼロから十年までですし、幅広い法定刑があるということは全く否定しません。

 今引用されたのは、たしか私が、性犯罪の法定刑が、強姦で致死傷、強姦して死に至らしめたときでも懲役五年以上または無期でした。一方、強盗致傷、強盗でけがのときでも懲役六年以上。逆なんですね。おまけに、強盗致死、強盗で死なせたら死刑または無期懲役なんです。物すごく差があります。

 ということを委員会で質問したら、二種類の答えがあって、一つは、明治時代、ずっと女の被害の方が低い扱いだったのが、これでもだんだん変えてきたんだ、片っ方をだんだん、強盗の方を軽くしてきて、こっちを重くしていって、バランスでやってきたと言うので、それに対して私は、やるべきことだったら、すぐやらなきゃいけないじゃないかと申しました。

 もう一つは、法定刑が懲役五年以上でも、現実には裁判でもっと重い罪が出ているんだから、そんな、松島委員、急いで変更、変更と言わなくてもいいじゃないかというような答弁をされて、それはやはり法律をつくる国会というところがしっかりやらないと、どうせ重くやってくれるんだからいいわ、最低刑が低目の刑でもいいわというのはおかしいと、過去思ったことを口にしたものです。

 そして、今やろうとしていることは、裁判員制度の行方も見ながら、そして世の中の流れも見ながら、私が考えていることが全部正しいかどうかわかりませんから、それは、検討委員会でお諮りいただいて、そしてまたその後に、司法制度調査会というより高いレベルのところでしっかりと議論してもらって決めていただきたいと思っております。

井出委員 性犯罪の刑の下限を引き上げるという議論は、今大臣から御説明があったように、それぞれ、当時の刑事局長ですとか法務大臣ができない理由を述べております。そこをしっかりと、社会的情勢ですとか、そういったものの上で検討していくというのであれば、私もその議論に積極的にかかわっていきたいと思いますが、刑の幅を広げたり、厳しくすればいいというような感情的なお話であったら、私はこの議論には乗れませんので、そこのところは今後の議論をしっかりと。

松島国務大臣 もちろん、刑の長さを初めにどうこう決めてという、そういう検討会ではありません。

 そしてまた、同時にそれは、例えば、今の要件で、激しい暴行というか、激しく抵抗していなかったらだめということになっているんですが、もう体がすくんじゃって、殺されるかもしれないと思ってうまく抵抗できなかったというと、それは強姦でないと言われる、こういう扱いをどうするんだとか、あるいは、今、十二歳以下だと、とにかくどういう環境であれ強姦ということになるわけですけれども、十三歳以上だったら、大人の方が、いや、あの子がお金を上げたらついてきたんだとか言ったら、言い逃れのようになる。そういうことが、幾ら何でもそんな小さい年齢で区別しているのはおかしいからもうちょっと上げたらどうかとか、それから、親告罪の問題をどうするかとか、それに関するもろもろのことを一緒に話し合っていただく検討会です。

 済みません、一点。その検討会の後に来るものを、私は何か司法制度調査会と言ったようですけれども、法制審議会なり法制審議会の部会なり、そういったことです。

井出委員 性犯罪の法定の議論については、今後ともしっかりと参加をさせていただきたいと思います。

 きょう、いろいろ申し上げてきましたが、私は、これまでの大臣の御発言が、冒頭にも申しましたし、少し厳罰主義、厳罰傾向が過ぎるのではないか、そういうことをるる申し上げてきました。

 先ほど申し上げた最高裁の判決は、判例も捉えて、「裁判員裁判といえども、他の裁判の結果との公平性が保持された適正なものでなければならない」ですとか、あと、もっと言いますと、量刑というものは「裁判体の健全な裁量によって決せられるものであるが、裁判体の直感によって決めればよいのではなく、客観的な合理性」、協議を尽くしてということだと思うんですが、直観で量刑というものを決めてしまってはいけないということをこの最高裁の判決は最後に指摘をしているんです。

 私は、きょう、質問に立つまでずっと大臣の発言を見させていただいて、冒頭の、人一人殺して死刑は当たり前もそうなんですけれども、刑罰というものに対するお考えが、刑罰の歴史の初期のころの御認識なのかなと。ハムラビ法典の、目には目を、歯には歯をという言葉がその象徴かと思うんですが、私は、少しそっちに偏った発言が多かったのかなと。刑罰が、報復や被害者の救済のためだけに行われるのではなく、社会や国家の秩序を守るためにだんだん変わってきた。お話があった矯正教育ですとか、そういうところだと思うんです。

 先ほど、法務大臣になったら、法務大臣の間はそういったことは申し上げないとおっしゃられましたが、根っこの思いの部分をしっかり変えていただかないことには、法の安定性ですとか、そういったものは到底維持できなくなるのではないか。

 私は、これまで大臣が御発言されてきた中で、いいものもあったと思うんですよ。わかりやすい言葉を法律で使うですとか、裁判員も、もっと離婚とか解雇とかそういうところからやった方がいいんじゃないかとか、私はそれはすごくいいなと思う部分もあったんですが、全体的な発言のトーンがやはり少し偏っているのではないか。そこをしっかり変えていただかないことには、私は、冒頭に質問したうちわの話もありましたけれども、きょう御質問させていただいた趣旨をしっかり踏んでいただくことが一番の資質を問うことだと思いますので、最後に御見解をいただきたいと思います。

松島国務大臣 私がちょうど法務委員会で何年か活動していたころは、刑務所も過剰収容、入国管理所も過剰、つまり、治安も非常に悪化している時期でした。外国人犯罪者もふえた。そういった中で、一方で犯罪被害者の声を聞いて、とにかくこれは変えなきゃいけないという中で、ある意味非常に激しい、一方的な思いを持っていた部分もあったと思います。

 今、いろいろな形に落ちつく中で、そして私自身、この役所におきまして、それぞれの専門家、局の人間からもバランスよく話を聞く中で、学びつつ、自分の考えの正しいやり方を求めていきたいと思っております。

井出委員 終わります。ありがとうございました。

奥野委員長 これにて井出庸生君の質疑を終了します。

 次に、丸山穂高君。

丸山委員 維新の党の丸山穂高でございます。

 引き続きまして、私からも幾つか、特に、うちわもスカーフも雑音の話も松島大臣いろいろお答えいただいていると思いますので、特段お答えのなかった部分と、建設的な御提案で、後半は、できれば法務行政にかかわるもので御質問させていただきたいと強く思います。

 いろいろな声があると思いますし、そして何より、残念ながらこんなことになってしまって、客観的に言ってもマイナスからのスタートになってしまったと言われてしまいますけれども、でも、やはり挽回できると思います。できるかどうかは大臣次第ですので、引き続き誠実にお答えいただけますように。ただ、おかしい部分がありましたらきちんと話をするのが我々の立場でございますので、申しわけございませんが、よろしくお願いいたします。

 そして、ちょっと、建設的な御意見も含めて、最初に一つ二つほど資質についてお話しさせていただきたいんです。

 先ほど来、宿舎問題で、大臣は誠実にお答えいただいていると思います。これ以上は我々としても、少しおかしいなとは思いながらも、見解を異にすると言われてしまえば厳しいところがあるな、国民の皆さんが御判断されることだろうなというふうに感じるところなんです。

 一つちょっと、建設的な御提案というか、おかしいなと思うところは、今回大臣におなりになって、セキュリティー上の理由で、特に、同じマンションにお住まいの周りの方々に御迷惑がかかるので、それで今回、立法府が持っている赤坂の衆議院の宿舎に住まれるという話なんですけれども、大臣におなりになってセキュリティー上の関係でというのであれば、法務省が持っている宿舎、もしくは行政府が管理する宿舎は多数あると思うんですが、そちらにお入りになるというのが通常の筋であって、立法府が、衆議院が管理している宿舎に入るというのは理屈上も少しおかしいんじゃないかなというふうに感じるところなんですが、このあたり、理屈として、まず、法務省さんでもほかの役所でも構わないんですが、この辺、ほかに宿舎がありますよねという確認を一言とりたいんですが、担当の方、いらっしゃいますか。いませんか。

 いなければ、事前にお聞きしたところでは、各役所が持っています。もちろん法務省さんも練馬区やらに持っておりますし、特に、各省共通の、財務省でも、千代田区にもありますし港区にもありますし、新宿、文京と、本当にいろいろなところにお持ちなんですが、そこにセキュリティー上の関係で泊まるというのも十分あり得ると思うんですけれども、なぜ赤坂の議員宿舎を選ばれたのかというのはお伺いできますでしょうか。

    〔委員長退席、柴山委員長代理着席〕

松島国務大臣 私、国家公務員宿舎がどれぐらいあいているかわからないのと、私が国家公務員宿舎に手を挙げてその席を埋めていいのかどうかもよくわからず、全く考えもしませんでした。

丸山委員 衆議院の宿舎に対して、特別の理由で求めてお入りになっていますよね。そして、その特別の理由も、先ほどの御答弁でありましたように、本当に希有な、全く今までなかった例だということでございますので、いろいろな御批判を受ける中で、いろいろな検討をされるのも私はありだと思います。

 逆に言えば、大臣のセキュリティー上の話であれば、法務省の官舎や、もしくはほかの行政全体の官舎にお泊まりになる方がセキュリティー上間違いないと思いますし、まさか、近くてきれいだから赤坂にお泊まりになりたいというわけでは全くないと思いますので、きちんとそのあたりは精査をいただきますようにお願い申し上げます。

 そして、法務行政に関連して、大臣の過去の御発言に関して少しお伺いをしたいんです。

 平成十七年三月三十日の法務委員会で、具体的には、イスラム教徒の方への刑務所内での待遇の話を大臣が御発言されております。

 どのように御発言されているかと申しますと、「私、府中刑務所を見たときに思った感想としましては、例えば、イラン人は宗教上の理由で豚肉なしのメニューをわざわざつくるですとか、あるいはパン食したかったら希望をとるとか、逆差別でずるいんじゃないかと。」逆差別だというふうにおっしゃっています。そして、「本人の希望なんか聞いている場合じゃありません。」と。

 わざわざ日本へ来て犯罪を犯してまで、そんなぜいたくなことを言わせるべきでないと御質疑をされているんですけれども、これはまず事実でしょうか、大臣。

松島国務大臣 私、法務委員会のメンバーで刑務所を視察した後、そのように述べました。非常に刑務所の受刑者がふえている、過剰収容、特に来日外国人の割合が六%まで高まっている、そういった状況でした。その中で、国民の中にもいろいろな声が受刑者についてある中で、その一つを述べた、そういう認識です。

 ただ、これに関しましては、私も、もとより国際的な人権という問題を考えますと、その中でも特に宗教に関する寛容性というのは、人権の中でも極めて重要なものであるということを現在知るに至っております。

 そして、今、法務省の刑事施設では、豚肉のことだけではなくて、食事の、ラマダンで食べられない時期は夜まとめて何食出すとか、あるいは宗教的な儀式、儀礼に使うものであっても、そんなに騒音を立てないで一人でお祈りできるようなものだったら使ってもいい、そういうような寛容性を持って実際今は対応しているところです。

 そしてまた、過剰収容も大分おさまって、特に来日外国人の収容者の比率は減っております。

丸山委員 前半は、大臣がそのようにお考えになっておっしゃった、そして後半は、事実ベースとして法務省がやられているという話なんですけれども、まず、法務省として、事実ベースの、役所の方でこれを御発言できる方はいらっしゃいますか、イスラムの関係の。

柴山委員長代理 どのような内容の質問をするかによりますが。

丸山委員 先ほどの大臣がおっしゃっているのが事実ベースかどうか。特に、現状として……

柴山委員長代理 事前に通告しておりますか、矯正局の方に。

丸山委員 お話はしてあるはずなんですけれども。ただ、参考人としての指定はしていないので、恐らくそれで来られていないのかもしれませんが。

 わかりました。大臣がおっしゃいましたので、そのとおりだとしたときに、では、大臣としては、この前の発言、イスラムの方々に対してメニューをわざわざ別につくるとかということはおかしいんじゃないか、逆差別じゃないかという御発言に関しては、これは訂正されるということでよろしいんですね。

松島国務大臣 はい。国際的な人権問題に照らして、訂正といいますか、そのときはそういう国民の意見もある一つを述べたつもりですが、私の意見というふうにとられては困りますので、訂正します。

丸山委員 今、明確に訂正とおっしゃっていただきましたので、私としては、おかしかったことに対しては、間違っていましたとか、今後はこうしますと言っていただければ、基本的にはいいと思います。

 ただし、ちょっと、松島大臣の場合は余りにも多いかなというのが少し気になっておりまして、逆に、今回のイスラムの件もそうですし、例えば宿舎の話も訂正がありました。また、揮発油税の話も先ほどほかの委員からお話がありましたけれども、以前御発言されたお話と、そして、それが出てきて現実面として今御発言される話が違うというのは、非常に聞いている方としても、ではどちらを信用してよいのか、そしてさらには、また変わるんじゃないかという疑念を持たざるを得ない。

 このあたり、特定秘密の御担当で、また、例えばその特定秘密に関しましても、記者会見で、私自身これから勉強するということで、絶対言いたくないとは思っていたんですけれども、そういう状況ですと。勉強するというふうなお話を、真摯にお話しはされていますけれども、あらゆる点で、本来なら、できれば勉強や経験を積んでいただいてから、もちろん積まれていますけれども、大臣になられるのが筋で、そしてそうした中で、以前の御発言が訂正されるというのは非常に危ないものだ、法務行政においても危険だと思うんです。

 このあたり、大臣として、数々の御発言が出ている中で、その点につきましてどのように御本人でお感じですか。

松島国務大臣 私は、この委員会に四、五年かかわってきました。その中で、自分がこういうふうにすべきだと述べて、その後、例えば入管関係で実現したものもあれば、これはやはり発言したことがよかったんだと思いますし、発言したことの中で、やはり一方的な、国民の一つの意見にすぎなかったような場合は今のように取り消しましたし、あるいは、物によっては、そういう方向性に向かいたくても今の日本の全体の状況が許さないから、法務省としては基本法を扱うから、法務省として進めることができない、いろいろなケースがございます。

 かつて委員会の質問者だったときに、委員もそうでいらっしゃいますけれども、私も与党ではございましたけれども、役所の思いのとおりのことを言ったのでは意味がない、やはり議論の場であると考えて、それなりのことをぶつけてきましたので、それがうまく取り入れられてうまくいった場合もあれば、ここへ来ていろいろ考えると違う考えもある、そういう場合もございます。

丸山委員 お立場が変わって御発言が変わるというのは、国民の方からしては余りいいことではないと思います。ただし、法的安定性、恐らく政権として全体の御発言だという趣旨だと思いますので、そのあたりは考慮したとしても、このあたりは重々に気をつけていただいて。特に松島大臣の場合は、今、一挙手一投足が本当に残念ながら注目されておりますので、ぜひ気をつけていただいて、充実した法務委員会の審議につながりますように、御発言等お気をつけください。よろしくお願いします。

 そうしたら、まず私からも資質の話をさせていただいたんですけれども、続きましては、特に法務行政に関してメーンで大臣にお伺いしていきたいんですが、まず最初に、泉南アスベストの訴訟についてお伺いしたいと思います。

 先日、泉南の石綿被害に関しまして、最高裁での判決が出ました。そして、アスベスト被害に関しまして、国に責任があるということを認める判決が出ておりました。一部高裁に差し戻しになっておりますが、一方で、責任に関しては、もう完全に国の責任を認めるというのを最高裁が固めたところでございます。

 これを受けて厚労大臣が、先ほども実は厚労委員会で、同僚の議員にお願いしまして、実は原告団の皆さんが来られて、そこで大臣に直接聞きたいというお話をずっといただいていたものなんですけれども、一方で、やはり厚労省の方からは、だめだと。残念ながら、厚労省の方へ伺っても大臣に直接会えないという状況が続いておりました。そうしたら、ちょうど一般質疑で大臣がお話しされるということであるので、同僚議員から質疑をさせていただいて、そしてそこへ傍聴に来られてぜひ直接お聞きくださいという形で、先ほど、来ていただいて、そしてそこで大臣より謝罪のお言葉をいただいた。そして、やはり言いぶりはなかなか選ばれておりましたけれども、実は塩崎大臣は、小泉さんのときですかね、前回のときも同じような政治決断で、こういった判決に対して全面的に原告団の皆さんに対して手を差し伸べるという決断をされた経緯もありまして、そのお話も同僚議員から触れさせていただいて、そして、前向きに、できる限り心は一緒だというお言葉をいただいているんです。

 改めまして、実は法務大臣も国賠訴訟の場合は被告に入るということでございます。この判決を受けまして、法務大臣として、原告団の皆さんに対するお話、そして、できればその先に、政治的決断が非常に急務だと。もう十四人の方がお亡くなりになっているんです、この八年の闘争の中で。行政には無理なので、できる限り早い政治による救済が必要なんですが、このあたりにつきまして、大臣よりお言葉をいただきたいと思います。

松島国務大臣 丸山委員は、たしかこの泉南地域の小規模企業がたくさん集中しているところで活動を行っておられますから、本当に胸を痛めてこられた問題だと承知しております。

 この最高裁判決によりまして国の損害賠償責任が認められたことについては、おっしゃったように、訴訟を訟務という立場でやってきました私どもとしても重く受けとめております。

 なお、最高裁判決により差し戻された原告の方々につきましては、大阪高裁で審理されることとなりますが、最高裁判決の内容を踏まえて、関係省庁と協議の上で適切に対応してまいりたい。

 つまり、塩崎大臣ともお話ししているんですが、多分委員がおっしゃったのは、差し戻し請求で、それから時間をかけていても命との闘いになる、和解ということもないのか、そういうことも含めてのおっしゃり方だと思うんですね。

 私の方としては、私も言葉を選びながらしか申し上げることはできませんが、つまり、最高裁判決の内容を踏まえて、内容を重く受けとめて、損害賠償も踏まえて、そして、差し戻された原告の方々については大阪高裁で審理されることとなるけれども、関係省庁と協議の上で適切に対応してまいりたい。つまり、一般的な対応以外の何かがとれないかということを、真摯に厚労省とともに早い協議をしたいと思っております。

丸山委員 今、大臣としての御答弁をいただきましたが、もう少し政治家としての御答弁を、具体的じゃなくても構いません、原告の皆さんに寄り添っていただけるということで、政治家松島議員は寄り添っていただけるということでよろしいですね。

松島国務大臣 今申し上げましたのは、一応事務方に支えられている法務大臣としては本当にぎりぎりの表現をしたつもりなんですけれども、今問われているのは、もともとの責任というのは、労働行政というか国の政策が、もう随分前から、戦前戦後からわかっていた被害について、経済を優先して、ストップをかけるということ、それに対してのいろいろな施策をすることを怠ったからこういう結果になった。一義的には厚労省の訴訟でありますが、それを役割上うちの法務省がやってきた。

 お一人お一人にとって、まさにずっと日本のそうした政策の中で、特に小さな小規模事業の方々が苦しんで、病を得て亡くなったということについて、本当につらい事案を最高裁がああいう判決を出したということを、やはり深い意味のあることだと思っています。

丸山委員 ありがとうございます。

 本当に時間がありません。できる限り早い政治的決断をぜひよろしくお願いします。

 次に、法務省関連でお伺いしたい。

 これもニュースになったところからずっと気になっていたことなんですけれども、法務省のサーバーに対する不正アクセスの件、これは国民の皆さんも非常に気になっているところだと思いますので、お伺いしたいと思います。

 報道によりますと、先月の段階で、法務省の民事局のサーバーと、あと、全国の法務局の端末に外部から不正なアクセスがあったということでございます。

 これに関しまして、まず、これは事実かどうかと、そして、現時点での調査結果がどのようになっているのかというのを、もし事務方の、大臣でも、お答えいただけるなら。

深山政府参考人 今委員の御指摘のあった、法務省の民事局と法務局のサーバー、ネットワークを構成しているんですけれども、これに不正アクセスがあったというのは事実でございます。九月二十二日に事実を公表して、それが、今委員が御指摘になった報道になったものと思っております。

 その原因がどうなっているのかということですが、現在、法務省では、内閣官房の情報セキュリティセンター、いわゆるNISCですけれども、これと、それから捜査機関にももちろん内容を説明して、連携をして全容の解明に努めているところです。したがって、まだ現時点で、どういうふうな原因で、どういう経路で、どういうことが起こったのかという全容の解明に至っておりません。

 これは、ある程度の時間をかけてサーバー等の解析を行わないと、その犯行の全容といいますか、そういうことがなかなかわからないという性質のものですので、現在、まだ鋭意その解明を続けているところであるということでございます。

丸山委員 難しいとは思うんですけれども、どれぐらいの時間がかかって、これは、国民の皆さんに、その結果というのは、捜査上言えることは限られているかもしれませんが、できる限り不安を除くためにオープンにするということはしていただけるのでしょうか。

深山政府参考人 現在、捜査の内容等々をここで詳しくお話しすることはもちろんできないんですけれども、今委員のお話にありました、捜査がある段階で終了した段階でその結果を公表する、国民の皆さんにその内容をオープンにするということは当然のことだと思っております。

丸山委員 恐らくこのニュースを聞いて国民の皆さんが一番気になったのは、個人情報がどの程度漏れたのかどうか、この一点だと思います。人によっては、どこの国か、もしくは日本の国内からの犯罪なのかも気になる方ももちろんいらっしゃるでしょうけれども、恐らく一番気になるのは、個人情報が漏れたのか、自分のが漏れているのかどうか、そこが一番気になるところなんです。

 法務局は、人権の相談だとか、あと、成年後見制度ももちろん見ておられる。いろいろな利用者のプライバシー、国民の皆さんのプライバシーももちろんサーバーで持っていらっしゃると思うんですね。この個人情報は漏れたんでしょうか、漏れていないんでしょうか。漏れたのならどの程度か。

深山政府参考人 現時点で判明していることは、法務省のサーバー内の情報が外部に送信された可能性があるということです。可能性はあるものの、現実に送信されたか否かということも、まだ全容が解明されておりませんのでわからない。

 したがって、それでは、今回の不正アクセスで個人情報が外部に出たのかということも、現時点では明らかではございません。

 もちろん、御指摘のとおり、このネットワークの中には、職員の個人情報や、法務省民事局あるいは法務局で行っている登記、供託、戸籍、国籍、人権擁護、訟務といった多様な業務の関係の組織間のメールであるとかいうようなものもございますので、個人情報があり得るということはそのとおりなんですけれども、この点もまだ調査の途中であるということでございます。

丸山委員 今のお話であれば、メールも含めて登記や戸籍の情報が直接入っているという認識、メールで入っている可能性があるということでいいんですか。

深山政府参考人 ちょっと言葉足らずで失礼しました。

 登記や戸籍もシステムで動かしていますけれども、このシステムとは別のシステムです。簡単に言えば、これは事務連絡用のシステムでございまして、難しい処理案件などについて上級庁に問い合わせをするというようなことが、行政ですから多々ございます。そういったものをメールで、こういう難しい特定のケースについての法的な処理をどうしようかというようなことを相談する、こういうふうな形にしたらどうかという回答がある、こういった類いの業務連絡文書が大量に含まれておりますので、そういう意味で登記や戸籍等々と申し上げたので、その業務自体のシステムとは別のシステムでございます。

丸山委員 わかりました。

 ということは、本当に何万件、何千件、何十万件かもしれませんが、まだわからないけれども、そういったレベルの情報流出の可能性は恐らく低いかもしれない、一方で、メールでの問い合わせに載った案件が漏れている可能性があるので、まだこの後の調査を見なければいけないということですね。わかりました。

 ここは皆さん非常に気にされているところだと思いますので、できる限り早期に、わかったことでオープンにできることはオープンにしていただくことが大事だと思うんです。

 一方で、いろいろな報道を見ていますと、昨今、サイバー攻撃が非常にふえていると思うんですね。六秒に一回か、秒数は忘れてしまいましたけれども、本当に毎日すごい数のサーバーに対するアクセスが国は行われていると思うんです。

 現に法務省さんでこういう状況が起きてしまって、今後やはり再発防止をどうやっていくのかというのが非常に大事な観点だと思うんですが、このあたりも含めまして、大臣、今回の件を受けての思いと、そして再発防止の点、特に御言及いただけますでしょうか。

松島国務大臣 本当にあってはならないことで、まだ被害ははっきりは出ておりませんけれども、今、捜査機関にも捜査してもらっていますので、早く結論が出るように、そして国民の皆様に安心していただけるように、これはひとり法務省だけの問題でなくて、内閣官房情報セキュリティセンター、NISCなども一緒に行っていく、各省共通の重要な課題だと考えております。

    〔柴山委員長代理退席、委員長着席〕

丸山委員 よろしくお願いします。

 午前中の質疑で、たしか盛山委員だったと思うんですが、保護司さんへの支援のお話がございました。そして、大臣の所信でもこの支援の充実を図っているという御発言があって、これは非常に大事なお話だと思います。大臣も先日、保護司さんの何周年かの記念の式典にお出になっているというふうにお聞きしているんですけれども、私も地元で保護司の皆さんのお話を聞いていると、本当にボランティアの皆さんで大変だというお話を聞きます。

 先ほどの副大臣の御答弁だと、ベテランの方からのサポートを充実させたいという話、そして更生保護サポートセンター、こちらも充実させていきたいという話がありました。一方で、やはり役所ですので、予算的な部分、予算、権限というのが一番、まあ法もそうですけれども、立法化も大きい、三つだと思うんですが、このあたりが大事なところだと思うんです。

 この予算的な部分も含めまして、この支援の充実とは具体的にどのようなものか、お教えください。

松島国務大臣 丸山委員も、保護司の皆さんが本当にボランティアで頑張っていただいているところに力を入れていただいてありがとうございます。

 予算が確かに必要でございます。保護司の方々が活動していただきやすいように、地域の活動拠点となる更生保護サポートセンターの増設、これは、小さい家に住んでいたり、マンション住まいだったりしたら対象者となかなか向き合う場所がない、公的な場所を借りたりしてそういう場所を設ける、こういったことにつきましても、前年度よりずっとふやした九億四千万円の概算要求をしているところでございます。これで、平成二十六年度までに三百四十五カ所設置の経費が措置されて、今年度中に三百四十五になる予定なんですけれども、来年さらに百一ふやそう、そういうふうに考えております。

 もう一つは、薬物事犯など、再犯率の高い、そういった処遇困難な事件の場合、保護司さんに一対一じゃなしに複数で担当してもらう、薬物の治療に行かせたり、仕事探し、家探し、いろいろ大変なので複数の人にしてもらう、そういったことにかかわる実費弁償費も、ボランティアなんですけれども、保護司さんに実費弁償金という、非常に低い額ですけれども、それを二人、三人一組でやればお金がかかっちゃう、その増額も手当てするということです。

 さらには、協力雇用主、刑務所から出てきた人を採用してあげるという雇用主の方々に対して、これまでは月におよそ二万円、公的に払っていたのを、四倍の八万円にする、それを六カ月間続けて、あと、最大年間七十二万円になる、そういう形でふやしていきます。ただ、問題なのは、幾らそれをふやして雇用主さんがいても、実際の働く人がそこからすぐ飛び出しちゃう、それを何とかしなければいけないという問題を持っていると思います。

 先日、私が出席いたしましたのは、更生保護制度施行六十五周年記念全国大会でございました。全国で一千五百人の保護司の方々に法務大臣表彰を差し上げたところでございます。

 こういった保護司を初めとする民間のボランティアの方々が、罪を犯した人たちの改善更生、さらに再犯の防止を担っていて、そのおかげで安心、安全が保てるということを就任以来いろいろな場面で申し述べてまいりましたが、丸山委員にも御理解いただいておりますし、委員の皆様、それぞれ御地元で、保護司さんが頑張っていただいているということをアピールしていただき、そして、私たちも法務省一丸となってこれを日本じゅうに知ってもらうように努力を続けてまいりたいと思っています。よろしくお願いします。

丸山委員 予算の増額の話もしていただきました。保護司の皆さん、お金の話は言いたくないけれどもとおっしゃるんですけれども、やはりお伺いしていると一番大きな点だと思いますので、ここは、もう重々おわかりだと思います、しっかりお願いいたします。

 次に、少し話が飛ぶんですが、入管のお話で、特に東京オリンピックを見据えまして、顔認証技術を活用した自動化ゲートによってできる限り時間を短縮しようというお話、午前中も少し質疑をされた方もいらっしゃいましたけれども、この点につきまして、私からもお伺いしたいんです。

 たしか一回目の実験が、うまくいかなかったとまでは言いませんけれども、いろいろな問題点が出てきたというお話を伺っております。その問題点を踏まえまして二回目をやられたということですけれども、まず、この点につきまして、実験を踏まえていかがだったのか、実現のめどはつきそうなのか、お伺いしたいと思います。

松島国務大臣 今回の実証実験は、ことしの八月四日から九月五日まで、成田空港と羽田空港で、およそ二万三千人の日本人の方々に御協力いただきました。

 この顔認証というのは、日本人の出国審査と帰国審査に使う、そうすることによって、その時間が、出入国審査官の手間を外国人の方に振り当てることができるからというのが趣旨でございます。

 この実験を行いまして、この実験によって得られたデータについて、現在、有識者で構成している出入国審査における顔認証技術評価委員会におきまして、技術的な観点からそのデータの妥当性と信頼性を確認の上、日本人の出国審査や帰国審査に導入するために十分な精度が確保できるかについて分析していただいているところでございます。

 今後、この分析結果を受けて、この評価委員会で実用化に向けて検討し、年内をめどとして報告書を取りまとめていただく。報告書を取りまとめていただいて、こういう機械が、こんなふうに直さなきゃいけないとか、これでいいとかということを決めてもらって、来年以降になりますが、ぜひ実用化に向けて一日も早く取り組んでいきたいと思っております。

丸山委員 実験の結果は年内にということなんですけれども、一方で、なぜこのお話をさせていただいたかというのは、もちろん、入管を利用される方が非常にふえていくのが予想される中で、この業務をどうするかというのは大事な課題なんですが、一方で、法務省さんの方で、オリンピックを見据えて人員増を考えられているという話があります。

 まず、これは事実ですか。それの規模なり、そのあたりのお話は行っていますか。

松島国務大臣 今、出入国審査官は二千二百人おります。ここ数年、毎年百人ずつふやしてきました。来年度は一挙に三百人ふやそうと概算要求しているところです。

丸山委員 人をふやすということは非常に難しくもあり、でも大事でもあり、ただ、扱いを間違えると非常な問題を生じるんだと思うんですね。

 というのは、やはりオリンピック後も見据えた上での人員配置をしていかなければ、このあたり、例えばオリンピックが終わった後に、オリンピックのときほど人が要るわけではない。そうした中で、では、その方々をどうしていただくのかというのが、恐らくいろいろなところで、今後、オリンピックのための警備の増強だとか、オリンピックのための、建築関係も、民間の方もそうでしょうけれども、オリンピックを見据えた中で人員増したものをどうやってポスト・オリンピックへその人材を生かしていくのかというのは、非常に大事な点なんです。

 今、急激に入管の方々をふやしていった中で、では、終わった後、必要がないからというのは、なかなか公務員では難しいと思うんですけれども、このあたりの雇用形態も含めて、ポスト・オリンピックというのは何かお考えなのか、このあたり、まずお伺いできますか。

松島国務大臣 その件につきましては、二〇二〇年のオリンピック・パラリンピック東京大会に向けて、政府は訪日外国人の旅客者数を二千万人にしようと目指していますが、実は、観光立国日本を目指す政府としては、それにとどまらず、二〇三〇年には三千万人を超えることを目標としています。つまり、オリンピックがピークで落ちるというんじゃなしに、そこからまたふやそうとしております。

 ですから、今ふやした人員は余るわけじゃなくて、ますます必要になっていく。ただ、そのころには、いろいろな機械などが進んでくると今のペースでふやさなきゃいけないかどうかは別ですが、今採った人が数年後に余るという事態にはならないと思います。

丸山委員 役所で、目標値を高く持っていって、その目標達成のためには人員を入れるというのは非常によくある手段で、政務の方々もうんうんとちょっとうなずいていただいていますけれども、一方で、必要なものはやはり人材として確保しなければなりません。ただ一方で、固執して、数が減っているのに維持をしなければいけないのも、それは国民の目線からすればおかしな話で、人件費を削れるところは削っていかなければなりません。

 では、このあたり、もし目標が達成されなければ、もちろんこの人員の配置もしくは機構・定員の部分も見直すということでよろしいんですね。

松島国務大臣 そういうことになっていくと思いますけれども、目標の達成というのは、我が法務省だけの目標じゃなくて、政府を挙げて取り組んでまいりますので、何とか達成していきたいと思います。

丸山委員 もちろん達成していただくのが大事なんですけれども、達成できない場合には、もちろんそのとおりだ、削減も入るということでございますので、きちんとそれを踏まえた上で、よろしくお願いいたします。

 そして、少しお時間がなくなってきましたが、お伺いしておきたい方を先にお話しさせていただきたいんですけれども、民法の、特に親子関係を踏まえて、具体的には七百七十二条の嫡出推定、特に女性の再婚禁止期間の話をさせていただきたいと思います。

 大臣は、かなり女性の権利に関して御発言も多いようでございますし、並々ならぬ熱意をお持ちだと思いますけれども、私、民法の規定で一番変な、変なと言ったら申しわけないんですけれども、今の時代に合っていない、科学で見える時代に余り合っていないんじゃないかなと思うのがこの部分でございます。

 先日、最高裁判例で、DNA鑑定の事例も出ました。ただあれは、立法府が、もしくは行政府で検討した上で、民法の七百三十三条、七百七十二条あたりを変えることを妨げるものではもちろんありませんし、恐らく女性の再婚期間も、DNA鑑定があれば、どちらの子供かどうかというのは明らかにわかる話で、わざわざ現状の、昔の民法の規定をそのまま、この再婚禁止期間、いわゆる待婚というんですか、待っている間の時間を保つというのは必要ないことになってくるんだろうと思うんです。

 大臣、このあたり、非常に女性だけアンフェアな部分でもあるんじゃないかなという御意見もあると思うんですけれども、大臣として、今、女性のこのアンフェアな部分をどんどん変えていきたいという思いで法務大臣をやられているんだと思うんです、いろいろなお話を聞いていますと。

 一方で、女性の活用という意味で安倍内閣もやっておられますけれども、この点を変えるのを検討されるだとか、内部でも構いませんし、大臣としての思いでも構いません、現状と、そしてこれを今後どうされたいのかというところに関しましてお話をいただければと思います。

松島国務大臣 民法の条文でいうと二つあると思いますが、民法七百七十二条の嫡出推定の規定というのは、これは、子の福祉のため、法律上の父子関係を早期に確定し、家庭の平和を尊重するという趣旨に基づく制度と認識しておりまして、DNA鑑定によって生物学上の父子関係の立証が容易になった今日でも合理性があるものだと考えております。

 ただ、次の民法七百三十三条でございますが、女性のみに再婚禁止期間を設けられている点、これは午前中に郡委員からも御質問がございました。

 女性のみに再婚禁止期間が設けられていることそのものは、離婚後間もないうちに再婚を認めると、前の夫の子か後の夫の子かわからなくなるという事態が生ずるおそれがあるため、これを防止することを目的としております、この条目は。

 この点については、女子のみに再婚禁止期間が、期間という制度そのものは合理性があるものと考えております。しかしながら、再婚禁止期間が今六カ月であるということ、この六カ月であるということが妥当かどうかという点につきましては、今後、社会情勢の推移等を考慮しつつ、こういう要望の中ではかなり前向きなんですけれども、今後も議論をしていく必要があるのではないか、そういうふうに考えているところでございます。

丸山委員 大臣、今、こういう要望の中では前向きだという御発言をいただきましたけれども、大臣として、政治家として、女性政治家として、ここはどのようにお考えなのか、具体的じゃなくても構いません、踏み込めるところ、踏み込めないところがありますので、そこだけもう少し詳しくお伺いしたいんですけれども。

松島国務大臣 もし六カ月間を百日に変えても、実際に自分の子供かどうかというのは母親がわかっているとして、そうじゃなくて、数字上も狂いはしないというふうには思っておりますが、それをどのように、やはり民法というのは基本法でございますから、法律改正等手続というのもすぐどうこういくものではないと思っています。

 それともう一つは、これは変な話なんですけれども、この規定が幾つの女性にも適用される。何歳だから、あなたは子供を産むわけないだろうから適用しないというのも変な差別ではございますけれども、妊娠ということを基準に考えているんだから。私も以前、年配の女性から、六十五歳か七十歳の女性から相談を受けたときに、半年再婚できないのよと言われて、それは非常に奇異に感じたことを覚えております。

丸山委員 もう時間がないので終わりにしますけれども、大臣、発言を踏まえた上でのいろいろな御指摘がある中での委員会でございます。重々気をつけていただいて、実りある審議にしたいのはみんな一緒でございますので、ぜひすばらしい法務行政をしていただくことを期待しまして、私、丸山穂高の質疑を終えさせていただきます。

 ありがとうございました。

奥野委員長 次に、西田譲君。

西田委員 次世代の党の西田譲です。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 今回の大臣の所信的挨拶をお聞きしておりますと、これまで谷垣前大臣は、所信のたびに、法の支配の貫徹、そして法秩序の維持、こういったことを殊さら強調されていらっしゃいました。非常に、ある意味、私は頼もしい限りだというふうに思っておりました。と申しますのも、この法の支配の貫徹といったことこそ、この日本が開かれた自由社会であること、それを守る不動明王のような存在であるというふうに思っておったわけでございます。

 そんな中、松島大臣の所信から、法の支配という文言が、主体的な表現としては消えてしまっておりました。最後、法整備支援のところでやや単語は用いられておりましたが、主体的に法の支配をしっかりと守っていく、そういった表現が所信からは消えておりました。実は非常に残念に思ったわけでございますが、大臣に、この法の支配についてのお考えをまずお聞きしたいと思います。

松島国務大臣 法の支配は、もとより日本が近代国家であることの基本だと考えております。

 そして、ちょっとおっしゃいました、最後に外国への支援の中で触れたというのは、法の支配の貫徹していない国、法の支配がまだまれである国にそういうことを日本がきちっと伝えていくというお話の中で言いました。それ以外のくだりでは、私自身は、これは私の癖ではございますが、国民の方から見てのそれぞれの法務行政がどういうものであって、どうあらなければいけない、そういう気持ちで述べた中で、法の支配という大きい言い方をしなかった、そういうわけでございます。

西田委員 国民の方から見ての法の支配がどうあるべきかといったことであれば、それは恐らく、所信でまず最初に述べられた、法律は人を幸せにするものでなくてはならないという言葉なのかと今感想として思うわけでございますが、この大臣の最初の、法律は人を幸せにするものでなくてはならないという所信をお聞きしたときに、有名な法哲学者、人定法主義の法哲学者であるハンス・ケルゼンの言葉を思い起こしたわけでございます。

 ケルゼンはこう言っているわけですね。正しい秩序とは、人の行動を、全ての人々が満足するように、つまり、全ての人々が幸福になるように規制する秩序であるというふうにハンス・ケルゼンが言うわけでございますけれども、大臣もそういう思いで冒頭の所信を述べられたのでございましょうか。

松島国務大臣 済みません。そういう法哲学者について学がなくて、申しわけありません。

西田委員 もう一度申します。

 正しい秩序とは、人の行動を、全ての人々が満足するように、つまり、全ての人々が幸福になるように規制する秩序であるというふうにケルゼンは言うわけでございます。まさしく、大臣がおっしゃった法律は人々を幸せにするものでなくてはならないといったことは、このケルゼンが言っていたことなのかなと私は思いましたけれども、まあ、ケルゼンがどうか、それはおいておきましても、内容的にはいかがでございましょう。

松島国務大臣 まさにそのとおりです。

西田委員 ありがとうございます。

 もう一つ、これは以前の、平成十六年十月二十六日の法務委員会の質疑で、大臣は、これと同じようなといったら違うのかもしれませんけれども、こういったことをおっしゃっているんですね。法律のあり方について、愛と正義、この裏づけがなくては法律ではないというようなことをおっしゃっておりまして、何か歌謡曲のような感じでもあるのでございますけれども、ここでまた愛と正義ということが出てくるんです。

 またケルゼン、ケルゼンはどうでもいいんですけれども、ケルゼンがこう言っていたんですね。正義とは社会的な幸福なのであり、幸福は社会的秩序が保障するものである、よって、人は、社会から孤立した個人として幸福になることはできないから、社会の中に幸福を求める。つまり、正義とは社会的幸福だと言っていたんですね。ケルゼンはこう言っていました。

 ケルゼンがどうかはおいておいて、大臣が平成十六年におっしゃった愛と正義とは、つまり、そういったことなのでございましょうか。

松島国務大臣 何かうれしいやりとりですけれども、本当にそう思います。

 法治国家であること、そして、法律に人が守られると同時に法律を守らなきゃいけないということ、そこに愛がなければいけないこと、本当にそのとおりだと思います。

西田委員 実は、大臣、ちょっと意地の悪い質問をしてしまったなと思っておるんですけれども、このケルゼンは、ヒトラーの政策を推し進めた法哲学者でございます。ヒトラーがよりどころとした法哲学者であります。アイヒマンの映画がありましたけれども、法に従ってユダヤ人を虐殺するわけでございます。悪法もまた法であり。

 つまり、私は、大臣の所信を聞いたときに、人を幸せにするのが法律の役割だとおっしゃいましたけれども、果たして人の幸せというのは、我々が全ての国民の幸せを把握できるわけでもありませんし、全ての国民のニーズを、もしくは価値基準に序列をつけることもできませんし、そういった中で国民を幸せにするのが法律だというのは、私はどうしても権力者の言いわけに聞こえてならないわけでございます。

 私のひっかけ的な質問が申しわけなかったわけでございますけれども、もしそういった意味ではないということであれば、ぜひ否定をしていただきたいと思います。

松島国務大臣 幾つかおっしゃった難しい言葉がそういう経歴の持ち主の方の言葉とは存じませんでしたが、やはり法律というのは人々を幸せにしなきゃいけないものだし、その幸せはもちろん人によって多様だけれども、心の充足まで法律が規定することはできませんが、最低限のものとか、人が、心が傷つかないものとか、それはやはり法律でつくらなきゃいけないものがあるということを、特に、今回ノーベル平和賞をもらった、勉強したいのに勉強できない、銃弾に……(発言する者あり)マララさんを見ながら、そういうことを思いました。(発言する者あり)

西田委員 まさに人定法主義ということでいえば、今、柴山委員も御指摘でありましたカール・シュミットであり、そしてまたケルゼンが、民主主義体制の中で発生した全体主義を導いていったというふうに、これは物すごく反省しなければならないことだと思うんです。

 まず第一点、大臣も今、国民の幸福、幸せ、それぞれの感情にというふうにおっしゃいましたけれども、やはり幸福に政府や国家権力が過剰に介入してはならないというふうに私は思います。やはり幸福の尺度は人によって違いますし、先ほど申したように、何が幸福で、もしくは何がその人にとって大事で、もしくは大事でないかについての価値判断などできるわけがないわけでございますから、むしろ、法律をつくる側として、もしくは行政として大切なことは、国民の幸福といったことよりも、国民を不幸にしないといったことではなかろうかと思います。

 国民の幸福ということを言ってしまいますと、どの国民の幸福なのかといったことになって、どうしても特定の人の幸福につながってしまうおそれがありますし、恣意的政治、まさに法の支配による政治の反対概念ですけれども、恣意的政治に陥る可能性が、これまでの歴史でも証明されているわけでございます。

 だからこそ、所信のまず一発目の大事な文言の中で国民を幸福にするものでなくてはならないとおっしゃったところにひっかかったことは、まさしくこれでございまして、幸福にしなければならないではなくて、国民の不幸を最小限にしなければならない、こういったことがしかるべきものではなかろうかというふうに私は思います。大臣のお考えをお聞きします。

松島国務大臣 言葉を裏側から見るか、表側から見るかいろいろあるとは思います。

 ただ、おっしゃった中で、不幸を最小限にするということは、私も同じ所信の中で述べました、なぜ犯罪被害者問題をやったかというと、国が、治安や、そこに住む人々の安心、安全を守らなきゃいけない、その務めを果たせなかったから、だから何とかしなきゃいけない。つまり、不幸をつくり出さないことは務めである。でも、不幸を生まないことが法律のというのは、それもちょっと余り暗いと思ったもので、幸せの方でまいりました。

西田委員 きょうも午前中からの答弁で、やはり大臣は、犯罪被害者への取り組みについて、非常にこれまでも御熱心に取り組まれておられました。確かに、議事録を振り返ってみますと、非常にその分野に対する質問が多いなというふうに思ったわけでございますが、非常に被害者の気持ちに寄り添われるその政治姿勢に敬意を表するものでございますが、議事録を見てみると、そういった大臣のこれまでの政治姿勢、画竜点睛を欠くような発言が最後に出てきたのが気になったわけでございます。

 平成十八年から協力雇用主制度ができましたけれども、それに先立っての御質問ではなかったかというふうに思うわけでございますが、出所者の方々の就職難、そういったことを問題視された質疑でございますが、最後に大臣はこうおっしゃっているんですね。「きれいごとよりお金の支給が大事」だというふうにおっしゃっておられます。まさしくこれはきれいごとなどという言葉を使ってはいけない事柄であるにもかかわらず、「きれいごとよりお金の支給が大事」というように、これは平成十七年十月五日の法務委員会の質疑にておっしゃっております。

 出所者の方々を雇用していらっしゃる経営者の方々が、きれいごとじゃなくて、まるでお金という物差しで出所者を雇用しているような発言でございますし、これは私は訂正が必要かというふうに思っております。大臣の御見解をお聞きしたいと思います。

松島国務大臣 私自身は、そのような、ちょっと全部を振り返って読んでいないのでわからないんですが、出所者の仕事ぶりということで、自分で発言で印象に残っているのは、例えば、森林の作業に当たる人など人不足で困っているし、刑務所にいるときから、そういったところだと周りに民家がないからそんなに摩擦もなくて、そこへ行ってやったらどうだろうかというようなことを当時の自公政権下の滝実副大臣に申し上げたことなどはございますが、出てこられた人を雇う人が金目当てだなどということは思ったことはなかったし、はっきり言って、協力雇用主に幾ら払っているとか払おうとしているということは、今この職について初めて、そのころはそんなに存じてもいませんでした。

 ただ、思うんですが、きれいごとよりお金という意味で申し上げますと、今は、出所するときに余りにもお金を持っていない。報奨金として払われる、あれはバイトじゃないので、ずっと作業をしても、アルバイト代みたいにそれに見合ったお金をもらえるのではなくて、一日当たり五百円とか六百円ですから、出るときに六万円、七万円しかない。そうしたら、本当に礼金も敷金もないし、住むところもなくなって困ってしまう。そういうようなことは多分発言したりしたことはあるかと思いますけれども、先ほどの文脈はちょっと、後で振り返りますが、言っていないと思います。

西田委員 平成十七年ということで失念していらっしゃる部分もあろうかと思いますが、全文を読み上げますと、「きれいごとよりお金の支給が大事ですから、厚生労働省にはぜひ大臣からもっとハッパをかけていただいて、」という発言でございます。ぜひ、これは大臣、もう一度振り返ってみてください。読むとこれは長くなります。

 いずれにいたしましても、出所者を雇用する事業主に対する助成金、補助金を前段で問題にされていらっしゃって、それに対しての松島大臣、当時松島委員の発言でございます。そうなってしまいますと、この「きれいごとよりお金の支給が大事」というのは致命的な一言でございますから、私は、ぜひ確認をいただいて、今のお考えのもと撤回されるのであれば、しっかり撤回していただかないと、せっかく、昨年から、再犯防止PTの中でも出所者に対する取り扱い、そして協力雇用主に対する問題というのがこの法務委員会でも非常に建設的な議論がされ続けてきている状況でございますから、ぜひともよろしくお願いを申し上げたいというふうに思います。

 さて、次でございますけれども、先ほど来何回か出ましたけれども、死刑制度についての大臣のお考えでございます。

 平成十六年四月九日の大臣の質問が先ほど取り上げられましたね、「人を一人殺したら死刑になるのが当たり前だと私は思っております」。やはり、この法務委員会の場での発言としては、大臣は過激な活躍をされておられたんだなというふうに振り返るわけでございます。

 平成十七年の十月五日の法務委員会では、死刑の確定から執行までの平均期間が八年三カ月であることをもって、法務大臣に対して、怠慢である、しかも法律違反であるというふうに指摘をされていらっしゃいます。さらには、死刑執行に対しては慎重な態度で臨む必要があると大臣が答弁したことに対して、慎重という言葉を聞いてますます疑念が深まったというふうに、大臣はさらに問い詰めていらっしゃるわけでございます。

 大臣の死刑制度に対する御所見をお伺いしたいと思います。

松島国務大臣 死刑制度というのは、もちろん、人の命を最終的に奪うものですから、一番重い刑ですから、極めて慎重に、しかしながら同時に、どういった罪状があって最終的な判決がおりたのか、そこにどういう被害者がいたのかということを考えて厳正に、慎重と厳正と両方の姿勢が必要だと思っております。

 そして、今御指摘がありました、私の質問の中で、六カ月を超過しているのは、刑事訴訟法四百七十五条二項には六カ月以内で執行しなさいと書いてあるのに、現在の状況が法律違反ではないかという質問をいたしましたのは、これは確かに、判決確定の日から執行までの期間が長くなっているというのは、法の規定するところと一致していなくて、まずいということを申しました。

 実際には、後で調べましたところ、この四百七十五条第二項の本文は、一般的には、法律で義務づけというよりは訓示的規定だということで、裁判所の例でもこのように述べていることがあるのは承知しております。法務大臣として、従来からのその解釈を変更することは考えておりません。

 そして、先ほど話がありました、私の質問に対して、ある答弁者が、政府参考人だったかと思いますが、慎重かつ慎重というおっしゃり方をなさいました。この慎重かつ慎重というのは、結局、実施しないということではないのか。慎重かつ厳正という両方のバランスのとれた発言が必要なんじゃないか。慎重という言葉を何度も繰り返して殊さらに強調しているように受け取れたので、法の規定を踏まえた厳正な態度が必要であるということを十分認識してほしいと議員の立場で政府に対して申したものであります。

 もとより、繰り返しになりますが、死刑は人の命を絶つ極めて重大な刑罰でありますから、その執行に際しては、慎重、かつ、しかし同時に厳正である、その態度で臨むことが必要だと考えております。

西田委員 であれば、大臣、この十七年の「怠慢です。法律違反を犯している」というのは誤りであったということでよろしいでしょうか。

松島国務大臣 訓示規定ということですので、すぐ守らなければいけない、刑訴法違反を法務省が犯しているということは、そうではない、現状の法務省も大丈夫だということです。

西田委員 ありがとうございます。

 大臣、先ほども人権ということについて話が出ました。私もこれまで、この一年半、法務委員会で、谷垣大臣とは、人権とは何ぞやという議論を何度かしてまいりました。と申しますのも、法務省が行う人権擁護行政、予算も三十億以上つくわけでございますね。果たして法務省としてなすべき人権擁護行政の姿とは何ぞやといったときに、まずは非常に疑問があるというのが私の問題意識でございますけれども、こういった議論をするに当たっては、人権とはそもそも何ぞやといったところで、きちんとそれぞれ相互理解が必要かというふうに思っております。

 私は、人権というのは、いわゆる世界人類、世界じゅう、人類全てに普遍的な権利というものがそもそも存在するとは思っておらず、国民の権利として確定されているものが人権であるというふうに思っております。と申しますのも、これまでの歴史でも、幾ら人権人権と叫んでも、その人権を既に失っている人たちを決して人権という概念は守ってこれなかったわけでございます。

 例えば、さきの大戦の満州引き揚げの際でございますけれども、ロシア兵からの略奪、強姦その他の被害に、幾ら当時の日本人が人権といっても、いわゆる主権が喪失した状況下での人権なんて守れないわけでございます。やはり、国民の権利としてきちんと確定したものが正しい人権であろうかというふうに私は思っておるんですね。

 そこで、大臣の、そもそも人権とは何ぞやといったこと、これは法務省のパンフレットでは幸福追求権とかそういうことを書いてあるのでございますけれども、大臣のお考えをお聞かせいただければと思います。

松島国務大臣 人が生きていく上で、他者から卑しめられたり辱められたり、そういう不幸な要素を受けないことが人権ではないか。そして、人権は本当にさまざまで、子供たちにとってはいじめられていることが、ましてやそれがネットを通じて拡散されることが何よりの人権侵害でありますし、それぞれの立場の方によって人権というのは違う。また、人権というのは、それを踏みにじられた人と、たとえ軽い気持ちであっても傷つけた人間とでは全くとりようが違う、そんなものだと思っております。

西田委員 どうでしょう、大臣、国民の権利と人権の違いとは何か、御説明できるでしょうか。

松島国務大臣 おっしゃるその意味合いがよくわからないのと、通告がなかったので、非常に哲学的に考えなければいけないのか、法律の概念をいろいろ使わなきゃいけないのか、ちょっとわかりませんので、今回は差し控えさせていただきます。

西田委員 わかりました。

 それでは、法務省の人権擁護行政をちょっとお話ししたいと思いますけれども、先ほど大臣がおっしゃったように、女性、もしくは子供、そして次に出てくるのが高齢者、そして障害者、外国人、北朝鮮に拉致をされた人々、ホームレス、犯罪被害者、出所者というように法務省のパンフレットでは出てきて、それぞれの施策をやっているということでございます。

 女性政策についての人権擁護行政は何をやっているかといいますと、ほとんど男女共同参画の宣伝のようなものでございまして、内閣府の代理店のような状況になっているわけでございますね。高齢者については、高齢者の虐待はよくありませんとか、そんな当たり前の話でございますし、子供をいじめてはいけないとか、そういった話でございます。拉致された被害者を取り戻さなきゃいけない、これも内閣府が先頭を切ってやっている話でございますね。

 法務省の人権擁護行政の意味は果たしてどこにあるんだろうかというような問題意識を持っているわけでございます。

 当時、谷垣大臣はこうお答えいただきました。まだ国民の権利として生成途中の分野、そういった分野についてきちんと国民を守っていく必要があるというような御答弁をされたというふうに思っております。それこそが法務省の人権擁護行政だというふうにおっしゃいました。

 これは、通告を当然しているわけじゃございませんけれども、大臣が、私が人権と国民の権利の違いは何かと言ったときにちょっと答えづらいとおっしゃいましたけれども、今私がした質問であればお答えできるんじゃないかなと思うんですけれども、いかがでございましょう。

松島国務大臣 確かにおっしゃるように、権利とか人権の中には、もう世の中で確立されているものもあれば、そうじゃないものもあります。ストーカーだとかDVなんというのは、昔は、勝手に家族で、夫婦でけんかしているんだろうとか、ストーカーなんて、おまえが色目を使ったから追いかけてきたんだろうとか、警察へ行っても取り合ってくれなかった。それをやはり人権として捉えなきゃいけない。

 法務省の場合は、それは警察に言っていくという手もあるけれども、それが言いにくい、そうした場合の窓口であったり、あるいは人権、これは法務省はそれほどまだ手を染めていませんけれども児童ポルノの問題でも、どんどん概念は変わってきている、それをどうやっていくのか。

 そういったことをそれぞれ、別に、内閣府がやることを、内閣府というのは全部横串の組織でございますから、それを法務省が下請をしているわけではなくて、高齢者に対する差別や事件を起こしちゃいけないということを、ほかの所管あるいは議員立法などで決められても、児童ポルノは議員立法ですけれども、それを、やはり目を光らせる中に私どもの法務省人権擁護局があっていい、そう思っております。

西田委員 例えば、犯罪被害者の人権ということについては、大臣は非常にアンテナが高うございます。これまでの質疑あるいは御答弁等を伺っても、それはうかがい知れるものでございます。

 例えば、ここは個別の問題意識を私は御提案申し上げたいと思うんですけれども、新聞、テレビ等の報道ではなぜ犯罪被害者の方の顔写真、実名がすぐ出てくるのかといったことは、私は非常に問題意識として持っております。被害に遭われた本人はもとより、御家族の方々の心痛を思うに、これは不適切だというふうに思わざるを得ません。

 そういう新聞、テレビの報道が、例えば殺された被害者の顔写真や実名をすぐにこうやってテレビ、画像で流すというのが、仮に、もう命がないんだから、それこそ国民の権利がないというような考え方をベースに持っているのであれば、これはとんでもないというふうに思うわけでございますね。

 犯罪被害者の権利、国民としての権利といったものに非常にアンテナの高い大臣として、この件に関しての御所見をぜひお伺いしたいと思います。

松島国務大臣 まさにおっしゃるとおりだと思っております。

 報道の自由との関係は非常に難しいものがありますが、例えば、犯行を行った方は、加害者は二十未満だと、そういう特定される要素は出さないことになっています。そうすると、どうしても何らかの情報を書きたくなる、AがBを殺しただけでは始まらないので。そして、被害者の方のことを、お名前なり、どこの学校に通っていたとか、顔写真とか、書きたくなる。でも、これが結局はどれだけ傷つけることになるか。

 少しお話をさせていただきますと、私は、大学を卒業して、新聞記者になりました。宮崎支局という地方に行って、こんなことがありました。

 割と山間部の中学生の女の子が、逮捕監禁だったでしょうか、連れ回された。みんな、どこに行った、どこに行ったと、そのときは学校名まで出して捜しまくっていた。結局、二日ぐらいして無事に戻ってきた。彼女は、何か何十歳の男の人と一緒にいたけれども、気丈に振る舞って、何もなくてよかったという事案がありまして、しばらくたってから、警察が強姦で逮捕したんです。

 私は、絶対この事件を書きたくない、書いたら、あの子はそういうことだったんだとばれるからといって、泣きながら書きたくないと。結局、上司が、おまえが書かなくても地方新聞が書いたらわかるとかいう理由でほかの人に書かせましたけれども、私は、自分にとっての被害者の報道というのはそれが原点です。

 その前には、幼稚園の子が溺れたとき、泣きながら幼稚園の先生に顔写真をもらったこともありました。

 どこまでが許されるのか。被害者というのも、それを取り上げられることによって二度とそのような被害が起こらない、そういう意味合いもあったり、しかし、取り上げられることが被害者にとって及び遺族の方にとって二次被害、三次被害の苦しい思いになったり、もうそれはいろいろなケースがある。

 ですから、私が先ほど申し上げました犯罪被害者を救うというのは、単に刑事裁判に加わるだけでなくて、取り調べの過程も、そして報道も、いろいろなことを含めてやはり対応が必要な問題だと考えております。

西田委員 ぜひ、犯罪被害者がすぐこうして実名、顔写真入りで報道されるのは不適切だとおっしゃっていただきたいんですが、そういうわけにはいかないのでございましょうか。

松島国務大臣 やはり、世の中、報道の自由とか知る権利というものがございますので、言い切ることは難しいと思います。

 ただ、人権擁護という観点の中で、さっきも申しましたようにケース・バイ・ケースで、その人が、例えば事故の被害などでも、取り上げられることによって山を愛してずっと通っていた人がこういう事故に遭ったんだとか、あるいは、いろいろなことが取り上げられることが本人を傷つけない場合、あるいは、ほかの教訓になる場合もございますし、一概に一般論で言うことができない。

 つまり、結局、被害者の心及び遺族の心をどれだけ思いやれるかということが全てのかかわりの人に求められるものだと思っております。

西田委員 ここについては、ぜひ、問題意識は同じと思いますので、よろしくお願いいたします。

 報道の自由という話がございました。この自由という言葉については、大臣、以前、これは法務委員会等の場ではないんですけれども、選択的夫婦別姓問題のメールマガジンで気になる発言をされていたのを見つけました。

 というのは、大臣、自由についてこうおっしゃっているんですね。「人に迷惑をかけない限り、自由度が高い社会が生きやすい社会であり、日本もそういう社会を目指したい」。これは、平成十四年一月十七日、女性国会議員メルマガ「ヴィーナスはぁと」というところでございますけれども、「人に迷惑をかけない限り、自由度が高い社会が生きやすい社会であり、日本もそういう社会を目指したい」ということでございます。

 これは、今でも、大臣、お考えはお変わりないでしょうか。

松島国務大臣 そのようには考えていません。

 先ほども申し上げました、法という枠組みとか、例えば法律婚の中でいろいろな子供の推定とか規定がある、法律婚をするならばいろいろ守らなければいけないこともある。つまり、人によって、自由で全てそれでいいんだという人もいれば、そうじゃなくて、自由と同時にある法律や国の枠組みの庇護を受けたいという人もいるわけで、いろいろな方がいる。

 私が否定しましたのは、もう今思っていないと言ったのは、そういう方もいていいんだろうけれども、私も、国会議員としての年月を重ね、いろいろな仕事もしてくる中で、そう単純なものではないと思うに至っております。

西田委員 ありがとうございます。

 これも、それではもう撤回ということでございますけれども……(松島国務大臣「撤回というか」と呼ぶ)ではございませんか。

 大事なところですよ、大臣。やはり法務大臣でいらっしゃいますから、国民の自由といったものに対する考え方というのは非常に大事だと思います。人に迷惑をかけなければ自由度の高い社会、つまり、人に迷惑をかけてさえいなければ自分の幸福追求の権利は侵してはならないんだと主張できるのか。私は、決してそんなことはないと思います。

 例えば、大臣、以前ですけれども、援助交際をする女子中高生がこういったことを言いましたね、誰にも迷惑をかけていないんだから私の自由でしょう。こんな自由を認めてしまったら、私は、この国の倫理や道徳、さらに言っては、やはり国家という秩序を破壊してしまうと思います。つまり、自由といったときには、必ずそこには、秩序であり倫理であり美徳といったものがなければならないものであると考えます。

 だからこそお聞きしたんですけれども、人に迷惑をかけない限り自由度の高い社会が望ましいなんということは、これは撤回をしていただいて私は了とするわけでございますけれども、いま一度お伺いしたいと思います。

松島国務大臣 結果的には撤回とおっしゃるかもしれませんけれども、公共の福祉とか秩序とかそういったものの中で人は皆生きている、その中で幸せをそれぞれ求めているということだと思っております。

 ただ、委員がおっしゃる、これも撤回ですねとさっきから、あれも撤回、あれも撤回と、つまり、それをマイナスのようにおっしゃられると、撤回何件とか言われると、ちょっとその言い方は困るな、そういう思いでおります。

西田委員 大臣、余りその場その場で御主張が変わってしまっては、これはやはりよくないです。こういうのは、大臣の主義主張とかそういったこと、例えば先ほど来から出ていますね、性犯罪に対する厳罰化。大臣の政治信条としてやってきたんだ、だから今回もやる。夫婦別姓制度についても、本当に大臣の信条の一つですね。メルマガでは、たしか、議員になる前からの私の大事な問題意識だというようなこともおっしゃっておられました。

 ところが、やはり法務大臣という職につくと、当然、法務大臣としておっしゃれることとおっしゃれないことが出てくるといったことはわかるわけでございますけれども、余り、これまで政治信条と言っていたものがこうやって撤回もしくは変節ということになってしまいますと、私は、政治信条というより、大臣の政治信条はむしろ御都合主義的なものに陥ってしまうのではなかろうかというふうに思うんですね。そこは逆に心配をするわけでございます。

 なぜ心配かといいますと、御都合主義に陥ってしまいますと、今はこう答えるけれども、また次どう答えるかということがやはりわからなくなってきてしまいます。それよりも、政治信条として、自分の政治信条に正直に生きていらっしゃるという方がまだわかりやすくて、ああ、大臣はこういう人なんだというのがわかるんですけれども、今回は、やはり百八十度の転換がいろいろなところで出てきておりますので、改めて自由についての考え方をお伺いしたつもりでございます。

 改めてお伺いします。大臣、御都合主義というのが違うということであれば、ぜひ反論していただきたいというふうに思います。

松島国務大臣 御都合主義というのがどういう場合に言うか、その定義がよくわかりませんけれども、立場というものがありますし、人間は、そうでなくても、いろいろなことに関しても、人生の長い歴史の中で、そしてまた社会生活、政治生活の中で考え方が変わる部分はあると思います。

 そして、私は今、法律を扱っている立場として、民法を所管している立場として、その中でできることは少しずつでも進めたい、でも、今こちらは無理だとか、そういうことをそれぞれのセクションの職員とともに話をしているところであります。

西田委員 御都合主義とはどういうことかわからないというふうにおっしゃいましたけれども、大抵、御都合主義というのは、やはり、政治信条、そういった政治哲学もしくは掲げる政策がころころ変わる方のことでございますし、大体、そういう方というのは、御自身の経験や置かれている環境のみに基づいて行動している場合が多いんですね。つまり、大臣になったらころっと変わるとかですね。

 そういった方に特徴的なのが、大体、自分を正当化するための理屈だけは後から後からどんどんどんどん出てくるわけでございまして、どうしてもきょうの答弁を見ておりますと、政策的なことに関して、これは非常に大事なことなんですけれども、何だか私は大臣がだんだん御都合主義に見えてきてならないというふうに思うんですね。

 最初の、幸せの話をしました。ちょっとひっかけでしたけれども、本来であれば、大臣の感性からして、いや、そうじゃないとおっしゃっていただきたかったんですけれども、ヒトラー同様に、それはいいというふうにおっしゃるわけですよ。これはやはり非常に危険だなと私は思います。

 最後、ちょっと時間が五分ありますから、選択的夫婦別姓についてもお聞きしたいんですけれども、大臣は推進していらっしゃいまして、今回は、世論調査の結果、もうやらないということでございますね。

 では、裏を返せば、世論調査というのも大抵当てになるかどうかわからないんですけれども、仮に世論調査である程度の結果が出たら、推進をしていかれるのでございますか。

松島国務大臣 推進、選択的夫婦別姓を導入したいという人。そして、絶対反対という人。そして、民法は改正反対で、通称使用にとどめるべきだ。通称使用にとどめるべきだというのは、結局、民法改正反対ということですから。これを足した数が逆転したり、拮抗し逆転したら、もちろん、それは考える時期に来るのだと思います。

 ここしばらく、そういう状況にないというのが現実です。

西田委員 やはりどちらかというと御都合主義的だなと思って、世論がそうなればそうするということでございますね。

 これは非常に大事な話でございまして、例えば、世論調査であったり、男女共同参画局がやっているいろいろな調査も、そして先ほどの質問でも、例えば、不便を感じる、昔の友達が私だとわかってくれないとか、いろいろな意見が出ております。アンケートに答えたそういう国民の意見、これは質問の聞き方も悪いんですけれども、大抵、それは、個別的理由をもっておっしゃっていることが非常に多いです。御自身の便利だとか不便であったりとか、御自身で解決すべき話、もしくは御家族で解決すべき話、もしくは職場で解決すべき話をもって、まさに日本のコモンローである民法の家族法の改正をせよというのは、ちょっと私は違うというふうに思います。

 それを、世論がこう言うからやらなきゃいけないというのは、私は非常に御都合主義的な話だというふうに思うんですね。大臣は、これまでの主張であれば、世論はどうであれ、私はこういう考えを持つ、だからこそ世論を導いていくんだというぐらい旗を立てて選択的夫婦別姓を推進してこられていた方なのに、今は、何かその信条が若干消え去って日和見になってしまっている。これは、逆に言えばちょっと残念な気もするんですけれども、いかがでございましょうか。

松島国務大臣 世論をリードする気持ちで云々とおっしゃいました。

 はっきり言いますと、それに失敗したというか、無理だったんです。変わると思っていました、もうちょっと何年かしたらと。平成十二年、二〇〇〇年に初当選してしばらくのころ、何人かの先輩、同僚と一緒に同じ運動をして、ああ、きっとこれがみんなの方向性になるだろうと思ったけれども、ならなかったんです。ですから、ごり押しはできないと思っています。

西田委員 理解をしていただくことができなかったから、これはもうだめだったということで諦めたということでございます。そうすると、イコール、そのような考えは間違っていたというふうにお考えなんでしょうか。

松島国務大臣 一議員として、それが正しいと思っていたこと、そして、広まることを願って活動したことは、間違いなんかではありませんでした。

 しかし、ここに至って、平成二十五年、二十六年の現実の状況を見ると、これからすぐ検討会をやって、法制審をやってというような、その旗振りを法務大臣としてやれる状況にないということです。

西田委員 法制審はもう答申を出しているはずでございますね。

 であれば、大臣、これはまた時間をとって、夫婦別姓の議論はいたしましょう。と申しますのは、私は導入すべきではないというふうに考えております。また大臣のお気持ちが変わられて、導入に邁進されては困りますから、これはしっかりと選択的夫婦別姓の何がだめなのか、徹底的にこの後も議論はしたいと思いますので、ぜひ信念のある大臣でいらしていただきたいというふうに思います。

 どうぞよろしくお願い申し上げます。

奥野委員長 これにて西田君の質疑は終了しました。

 次に、鈴木貴子君。

鈴木(貴)委員 質問に立たせていただきます。鈴木貴子でございます。

 まず冒頭、無所属でありながらこうして質問の機会をいただきましたことを全ての委員の皆様に感謝、御礼を申し上げます。

 そしてまた、松島大臣にきょうは質問をさせていただくわけでありますが、大臣は就任挨拶の中で、それまで権利が尊重されてきたとは言いがたく、十分な支援を受けられずにおられた犯罪被害者やその御家族の方々に光を当て、支援をするのは、治安を預かり、犯罪の抑止を責務とする国の役割と、まさに優しさと力強さが、そしてまた大臣のお人柄もにじみ出たような御挨拶を伺わせていただきながら、私も、国会議員として現在唯一の二十代の国会議員でありまして、六十一年生まれなんですが、初めての昭和六十年代生まれの政治家であり、また、数的に非常に少ない女性の議員として、ある種マイノリティーの一人と思っておりますが、松島大臣にも今後ともまた御指導いただきたいな、このように思っております。

 それでは、早速質問に入らせていただきます。

 就任御挨拶の中で、可視化の議論について大臣触れておられました。

 まず質問させていただきます。

 そもそも、取り調べの録音、録画という可視化の議論がなぜ始まったと大臣はお考えでしょうか。そもそもの議論の本質的背景、理由について、大臣の所見をお尋ねいたします。

松島国務大臣 検察改革の一環、検察改革と申しますのは、今次官をされていますが、厚生労働省元局長の全く無罪だった事件、そしてそれに伴う事件、こういった事件の後に、検察が生まれ変わらなければいけないんだ、取り調べのやり方も、刑事司法も変えなきゃいけないんだということで、そのうちの一つとして、取り調べの録音、録画制度というものの検討が始まったと考えております。

鈴木(貴)委員 今大臣も、いわゆる村木事件、郵便不正問題のことも御指摘がなされましたが、私としまして、例えば一検事、一個人による不適切な取り調べが行われていたというだけであれば、その検事が処分されれば済むべき話ではないのかなと。しかし、現実におきましては、法制審が開かれ、特別部会と、このような形で議論の場が持たれているわけでありますが、それについての大臣の御見解を求めたいと思います。

松島国務大臣 端緒は特捜の一検事の調べによるものであったとしても、その風土、とにかく有罪を急ぐとか、いろいろな意味での検察が染まっていた風土を改めなければいけないんだということを検察みずからが悟ったからスタートしたんだと思います。

鈴木(貴)委員 今、大臣は風土というお言葉を使われましたが、大臣も、組織、体制としての、不適切な、改善をすべき危機意識というものを持っていらっしゃるのかな、このように思っております。今、うなずいていただきました。

 まさに就任の御挨拶の中でも、検察改革のための取り組みを着実に実施してまいりますと大臣も述べられておりますが、実際、法制審議会でのこの議論、可視化について、三年という時間が既に経過をしております。大臣が就任御挨拶の中で、検察改革を着実に実施してまいりますと述べていらっしゃいますが、この三年間との違い、大臣が描いていらっしゃる検察改革、これまでの取り組みとは何を変えていかなくてはいけないのか、何を変えないといけないのかという点について教えていただけますでしょうか。

松島国務大臣 検察改革、鈴木委員がおっしゃいますとおり、この三年間、それに取り組んできたわけです。そして、この三年間で相当の進展が得られたと思っております。というのは、私は、その改革という流れの中の終盤のところに大臣として登場したような、終盤であり、そして終盤がこれからのスタートである、そういう位置の時期に大臣になったものだと思っております。

 その一つが、先ほど少し言われました取り調べの録音、録画制度について、今既に試行は始まっておりますけれども、それの基準を法制審の答申において盛り込まれた、そういうふうに思っております。

鈴木(貴)委員 大臣は、今回初めて質問をさせていただいたわけでありますが、この検察改革において、風土、組織としての改善すべき点があるとおっしゃっていただきましたが、実は私、何度となくといいますか、毎回、この委員会で質問させていただくたびに、その時々の刑事局長と質疑応答させていただいております。そして、その刑事局長の口から、これまでの我々の不適切な取り調べなり、あり方、風土ですね、反省します、見直します、改善しますといった言葉が一度たりとて出ていないというのが事実であります。

 この事実について、所管の大臣であります松島大臣、これまで刑事局長側から、まさに当人側から、反省します、見直します、改善します、変えていきますといった言葉が出てきていないこの事実についてどのように考えられ、またどのような指導をなされるか、教えていただけますでしょうか。

松島国務大臣 林局長がどのように答えたのか、私ちょっとわからないので……(鈴木(貴)委員「答えていないんです」と呼ぶ)ですから、そういうことを答えていない事情はよくわからないんですけれども、恐らく、法務省と検察の関係というのは、全体、検察改革をやってください、やり終えなければだめなんだということを法務省は指導する、そしてウオッチする。しかしながら、実際に検察がこういうふうにやるんだという実態のところの踏み込み方というものに、どこまで我々が法務省の立場で踏み込んでいいのかということで、彼は踏み込まなかったのじゃないかなと思います。

鈴木(貴)委員 大臣の三権分立に対しての御見解、御認識を伺いたいと思います。

松島国務大臣 三権分立、当然、司法と国会と政府、行政、この三つがそれぞれに対して独立しているということだと思っております。

鈴木(貴)委員 まさに独立機関であるということであり、衆議院のホームページにも載っているんですけれども、日本国憲法は、国会、内閣、裁判所の三つの独立した機関が相互に抑制し合い、バランスを保つことにより、権力の濫用を防ぎ、国民の権利と自由を保障する三権分立の原則を定めているとあります。

 つまり、言いかえれば、この三権分立というのは相互不干渉ではないわけです。相互不介入と三権分立はまた違うわけであります。必要なときには所管の大臣がしっかりとした指導をするということがまさに大臣に求められている責務であると考えますが、大臣、見解はいかがでしょうか。

松島国務大臣 今、必要なときに所管の大臣がしっかりとというふうにおっしゃったんですが、私は、法務行政を所管しておりますが、司法に対して何か物を申すべき立場ではないと考えます。

鈴木(貴)委員 大臣にお尋ねを申し上げます。

 法務大臣というのは指揮権を持っていると思いますが、指揮権のそもそもの趣旨についてどのようにお考えでしょうか。

松島国務大臣 法務大臣の指揮権は検事総長に対してのみ行使されるべきものであって、そしてそれは、検察の行為が著しくどうであるか、そのようなことを考えたときに出されるものと承知はしております。

鈴木(貴)委員 今、検事総長にのみ行使することができるという大臣の発言でありましたが、個別の案件に対しては確かに検事総長のみかもしれませんが、所管の大臣として、指揮権というものは、検察全体、組織全体にも発動することが可能だと思うんです。

 まず、指揮権というものはそもそも法務大臣しか行使ができない、逆を言えば法務大臣というのはそれだけ重要な職責を担っていらっしゃるわけです。そしてまた、松島大臣の力量などを政府、安倍総理が見られて、まさに適任であるという判断の上で今の大臣がおられるわけだと考えているんですけれども、その大臣が指揮権についての認識が不十分であるということは、まさにこれは国家の問題であると思うんですが、どのようにお考えでしょうか。

松島国務大臣 検察庁法十四条の規定によりますと、「法務大臣は、第四条及び第六条に規定する検察官の事務に関し、検察官を一般に指揮監督することができる。但し、個々の事件の取調又は処分については、検事総長のみを指揮することができる。」とあります。

 委員の御質問の中の、法務大臣と検察との関係がどうなのかと言われますと、個々の事件の取り調べまたは処分については検事総長を指揮する。そして、検察官の全体をトータルに、確かにおっしゃるようにトータルに一般に指揮監督する、このように真面目に誠実にやってくださいとか、そういうことを一般に指揮監督することはできると考えております。

鈴木(貴)委員 まさに大臣がおっしゃいますその指導なんですけれども、先ほど大臣はみずからの答弁で、風土として、不適切な取り調べ、そういった風土がはびこっていたと、大臣みずから、その危機意識を持っていらっしゃったということを、今も大きくうなずいていただいておりますが、そのような答弁をいただきました。

 まさに、三年たってもいまだなお……

 時間をとめていただくことはできますでしょうか。

奥野委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

奥野委員長 速記を起こしてください。

鈴木(貴)委員 質問からでいいですか。

奥野委員長 はい。

鈴木(貴)委員 という大臣の答弁を受けて、必要な的確な指導をするということの認識も今大臣みずから述べられていたのではないのかなと思います。

 また、まさに就任挨拶の中でも、検察改革のために着実に実施をしていくと。ということは、継続をしていくということは、逆に、まだ完遂されていないという言葉の裏返しであると思っております。

 この問題に対しての大臣の前向きな答弁をいただけないでしょうか。

松島国務大臣 それはおっしゃるとおりです。

 三年間、検察改革を進めてきたわけですが、そしてまた、先ほどの可視化の問題につきましても、方向性をはっきりと示した。これが実際にどのように活用されて、それが、本当にこれで検察が変わったと周りから評価していただくようになって初めてその実が上がるのだと思っております。

鈴木(貴)委員 この間、大臣は答申を受け取られたかと思いますが、いまだに可視化の対象が非常に狭い、全体においてのいまだ三%という指摘も依然としてあるわけです。国民全体から検察が変わったなという状態にはまだまだほど遠い。九七%遠いと言っても過言ではないのではないでしょうか。

 先ほど来から大臣御答弁で、マイノリティーといいますか、光がこれまで当たってこなかった弱者の皆さんに、また犯罪被害者の皆さんに心を寄せられている発言をされておりますが、例えばこれまで再審無罪になられたいわゆる冤罪被害者の皆さんの人権ということも、松島大臣であれば、これまでの大臣よりも殊さらに寄り添っていただけるのではないのかな、このように思っております。冤罪被害者の皆さんの実体験、皆さんの生の声、こういったことを直接聞く機会を設けられたらどうかなと私は大臣に進言をさせていただきたい、このように思っております。

 そしてまた、大臣みずからがそういった生の声を聞くことで、これからの法整備、これからの建設的な議論に役に立つのではないのかと思うんですが、そういった議論の場、生の声を聞く機会を持たれることに関して、大臣、どのようにお考えでしょうか。

奥野委員長 時間が来ましたから、短くお願いします。

松島国務大臣 委員御指摘のように、もちろん、冤罪に遭った方というのは、それがどのような罪であれ、それによって人生が狂わされて、これぞまさしくこれほどの被害者はないと思います。冤罪が確定されているような方々でお会いできる方がいらっしゃいましたら、そういうことも含めて考えていきたい。

 いずれにしても、日本の検察が、常に基本に忠実な正しい捜査、公正な捜査をできるように努めてまいりたいと思います。

鈴木(貴)委員 ありがとうございました。

奥野委員長 これにて鈴木君の質疑は終了しました。

 きょう懸案事項になりました資料といいますかうちわの件は、理事会でも検討しますから、できるだけ早くやりたいので、大臣の方でも至急調べていただくことをお願いしておきます。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会します。

    午後四時三分散会


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