衆議院

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第4号 平成26年10月24日(金曜日)

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平成二十六年十月二十四日(金曜日)

    午前九時三十一分開議

 出席委員

   委員長 奥野 信亮君

   理事 伊藤 忠彦君 理事 柴山 昌彦君

   理事 土屋 正忠君 理事 ふくだ峰之君

   理事 盛山 正仁君 理事 柚木 道義君

   理事 井出 庸生君 理事 遠山 清彦君

      赤枝 恒雄君    安藤  裕君

      池田 道孝君    小田原 潔君

      大塚  拓君    大見  正君

      勝沼 栄明君    門  博文君

      神山 佐市君    菅家 一郎君

      黄川田仁志君    小島 敏文君

      古賀  篤君    今野 智博君

      桜井  宏君    末吉 光徳君

      鳩山 邦夫君    平沢 勝栄君

      藤井比早之君    三ッ林裕巳君

      宮澤 博行君    郡  和子君

      階   猛君    横路 孝弘君

      高橋 みほ君    丸山 穂高君

      大口 善徳君    西田  譲君

      鈴木 貴子君    西村 眞悟君

    …………………………………

   法務大臣         上川 陽子君

   法務副大臣        葉梨 康弘君

   法務大臣政務官      大塚  拓君

   政府参考人

   (内閣府地域活性化推進室室長代理)        富屋誠一郎君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 塩川実喜夫君

   政府参考人

   (総務省自治行政局選挙部長)           稲山 博司君

   政府参考人

   (法務省大臣官房訟務総括審議官)         都築 政則君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    深山 卓也君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    西田  博君

   政府参考人

   (法務省保護局長)    片岡  弘君

   政府参考人

   (法務省人権擁護局長)  岡村 和美君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  井上  宏君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 河野  章君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           苧谷 秀信君

   法務委員会専門員     矢部 明宏君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月二十四日

 辞任         補欠選任

  池田 道孝君     赤枝 恒雄君

  黄川田仁志君     桜井  宏君

  宮澤 博行君     藤井比早之君

同日

 辞任         補欠選任

  赤枝 恒雄君     池田 道孝君

  桜井  宏君     黄川田仁志君

  藤井比早之君     勝沼 栄明君

同日

 辞任         補欠選任

  勝沼 栄明君     宮澤 博行君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

奥野委員長 これより会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として内閣府地域活性化推進室室長代理富屋誠一郎君、警察庁長官官房審議官塩川実喜夫君、総務省自治行政局選挙部長稲山博司君、法務省大臣官房訟務総括審議官都築政則君、法務省民事局長深山卓也君、法務省矯正局長西田博君、法務省保護局長片岡弘君、法務省人権擁護局長岡村和美君、法務省入国管理局長井上宏君、外務省大臣官房審議官河野章君及び厚生労働省大臣官房審議官苧谷秀信君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

奥野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

奥野委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。安藤裕君。

安藤委員 おはようございます。自民党の安藤裕でございます。本日は、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 早速質問に入らせていただきます。

 まず、大臣の就任の御挨拶の中で、法務行政は、現場の職員ばかりでなく、保護司、協力雇用主、篤志面接委員、人権擁護委員といった地域のボランティアの方々に支えられています、こうした地域の方々の活動を支援し、そのとうとさや重要性を世の中にお伝えすることも法務大臣の大切な仕事と考えておりますというお言葉がありました。

 私自身も、保護司の方々を初め、これらの皆さんの活動は、日本の治安を維持し、国民生活の安全を守る上でも本当に大切な仕事であると考えております。

 しかし、最近では、これらのボランティアを引き受けてくださる方が大変少なく、なかなか後任が見つからないので引き継げない、高齢になっても仕方なく続けているという事例もあるように思います。特に、再犯防止という観点からも、世の中の安心、安全を守っていくためにこのような活動があって、地域の篤志家がボランティアでその役割を担ってくれているということは、もっと広く知らしめるべきだと思いますし、大臣も御挨拶の中でそのようにおっしゃっておられるわけですが、現実には、このような仕事があること自体、余り知られているようには思えません。

 そこで、これらの仕事が存在することや、そのとうとさや重要性をどのように世の中に伝えていこうと考えておられるのか、できるだけ具体的にお答えいただきたいと思います。

片岡政府参考人 お答え申し上げます。

 保護司を初めとする民間のいわゆる更生保護ボランティアの方々ですが、各地域におきまして、保護観察対象者に対する指導助言等のいわゆる処遇活動や、地域の犯罪予防のためのいわゆる地域活動等の重要な活動を行っていただいております。

 更生保護の意義という一般的な事柄につきましては、社会を明るくする運動を通じるなどして、国民の理解を深めることに努めてきたところでございますが、今後におきましては、さらに、保護司の実際の活動内容を国民の皆様により具体的に知っていただくということが必要になりますし、保護観察対象者等を実際に雇用していただく協力雇用主を確保することなど、そういう具体的な取り組みが一層重要となるものと考えられます。

 そこで、各地域に保護司の活動拠点となる更生保護サポートセンターを設置してこれを活用すること、そのほか、社会貢献活動といった地域のボランティア活動と一体となってこれを実施するということなどを通じまして、より地域と連携した処遇活動というものを展開していくことによりまして、地域の方々に保護司等の更生保護ボランティアの活動をより身近に感じていただいて、そのとうとさや重要性をより具体的に伝えてまいりたいと考えております。

 以上でございます。

安藤委員 ありがとうございます。

 ぜひ、このような仕事があるということをもっと国民の皆様に周知していただきたいと思いますし、担い手が出てくるようにしていただきたいと思います。そして、これらの仕事をしてくださっている皆さんがいるからこそ、地域の安心、安全が保たれて、安心できる住みやすい地域ができているということをもっと世の中に知らしめていただきたいというふうに思います。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 次に、訟務体制の整備についてお尋ねをしたいと思います。

 これも大臣の就任の御挨拶の中で、国の制度のあり方や政策の根幹に重大な影響を与える訴訟に適切に対応していくことは国として喫緊の課題であるというお話がありました。

 法務省では、今回、訟務局というものを設置するということを検討しておられるようですけれども、その目的や必要性についてお答えいただきたいと思います。

都築政府参考人 国の利害に関係する訴訟は、法律上、法務省が行うこととなっております。このうち、訴訟の結果いかんが国の政治、行政、経済等に重大な影響を及ぼす重要大型事件が、現在、約二千三百件に達しております。

 これらの訴訟に適切かつ迅速に対応していくためには、法務省の訟務組織が、関係する行政庁に対して法的な観点から指導的役割を果たしていく必要があります。また、訴訟に至る前であっても、行政の法適合性を確保し、紛争を未然に防止するため、訟務組織がいわば政府のコンプライアンス機関としての役割を果たしていく必要もあります。

 なお、国外の訴訟につきましては、法務省は関与していないというのが実情であります。しかし、国外訴訟につきましても、我が国の利害に重大な影響を及ぼすものの増加が懸念されております。これに対する訟務組織の関与につきましても、今後検討していく必要があるというふうに考えております。

 以上のような要請に的確に応えるため、訟務組織の充実強化を図る必要があり、平成二十七年度予算概算要求において訟務局の新設をお願いしているところであります。

安藤委員 ありがとうございます。

 まずは国内の事案に対応できる体制をつくり、同時に海外の訴訟に対しても対応していくということですけれども、やはり国際的な観点をこれからは忘れてはならないと思います。

 特に国際裁判においては、先般行われた捕鯨に関する裁判で敗訴するという事態が起きました。これは、日本が国としてこういった国際訴訟に対応できなかったことにより、大きく国益を損なう象徴的な事案だというふうに思っております。この事案に対して、本当に日本は政府を挙げて対応していたのか。今のお話だと、法務省は関与していなかったということですけれども、やはり法務省と外務省と連携をしてこういった事案にはかかわっていかなくてはならないと思います。

 そして、これからの国際社会においては、国際法をいかに国益に資するように運用することができるか、これも国力に直結をしていくと思います。日本がこれからも国際社会において尊敬される地位を占めるためには、国際紛争における日本の法的な立場をしっかりと主張して、関係国を納得させ、なおかつ、国際世論においても支持を得られる行動をとらなくてはならないと思います。ぜひお願いをしたいと思います。

 あわせて、大飯原発訴訟のように民間の事業会社が訴訟の対象となっているような事案であっても、国のエネルギー政策の根幹にかかわるような案件には、国が何らかの関与ができるようにしていくべきではないかというふうにも考えます。そのことについても、ぜひとも検討していただきたいというふうに思います。どうぞよろしくお願いをいたします。

 次の論点に移りますけれども、難民の認定申請者が増加をしているということが最近指摘をされております。そこで、最近の難民認定者の数の推移と、それから、これがふえた理由についてお答えをいただきたいと思います。

井上政府参考人 難民認定の申請者数のお尋ねでございますけれども、難民認定法制に関しましては、前回、平成十七年に若干の大きな法改正をしてございます。その平成十七年の時点では申請者数は三百八十四件でございましたが、本年九月時点では、既に昨年を上回るほど増加しておるのですが、三千六百件となってございます。

 この難民認定申請の人の中には、正規の在留資格を持って申請している人と不正規の在留状態で申請する人がいるんですが、正規の在留者からの申請数を見ますと、これは、平成十七年の百九件から本年九月末時点での約三千件と、かなり急増しておるところでございます。

 その背景を考えますに、平成二十二年の三月に、正規在留者である申請者に対しては、申請から六カ月が経過すれば就労活動が可能となる在留資格を一律に与えるという取り扱いをした、そのことが原因の一つになっていると考えております。

安藤委員 ありがとうございます。

 今お答えをいただきましたとおり、難民申請者の数は相当にふえているということですけれども、しかし、実際に日本が難民として認定をした人数は、平成二十五年では六人と、極めて少数になっているということです。また、難民として認定しなかったものの、人道的な配慮が必要なものとして在留を認めた者は百五十一人、合わせて百五十七人が難民関係で在留資格を得たということです。

 今のお話を聞いても、申請は多く出ているけれども、日本で難民認定を受けるということは、この数字を見ると相当困難であるということが言えると思います。これは、特に日本の難民認定が厳しいということではなくて、難民として認定すべき国情ではない国からの申請者も多くて、恐らく、申請をする人たちも、日本で難民認定されることは自分は無理だろうなと思っているのではないかというふうにも思います。

 しかし、それでもなぜ日本でこれほど難民認定申請をしようとする人がふえてきたのか。それは、今の難民認定制度が、正規の在留資格を持って入国をして、その資格がある間に難民認定申請をすると、申請後六カ月たてば就労できる資格が与えられて、そのまま日本にい続けることができるというものになっています。さらに、難民認定されなくても、再申請をすることができて、これを繰り返すことによって事実上は無制限に日本に在留することができるという制度になっているように思います。

 そこで、申請の増加を受けて難民認定制度のあり方についての検討を行うということですけれども、これはどのように検討を行っているかをお答えいただきたいと思います。

井上政府参考人 難民認定申請の件数の急増に伴いまして、その事件処理が滞り、本来難民として迅速、確実に庇護されるべき者の処理もおくれている、そのような問題の状況がございます。

 そのようなことから、難民認定制度のあり方全般につきまして、法務大臣の私的懇談会である第六次出入国管理政策懇談会という懇談会がございますが、その下に難民認定制度に関する専門部会という専門家による検討部会を設けまして、現在、専門的な観点から幅広く御議論いただいて、検討していただいているところでございます。本年末を目途に、専門部会から親会である政策懇談会に対して提言を行っていただけるよう議論を進めていただいておりますので、当局といたしましては、その提言、御議論を踏まえまして適切に対応してまいりたいと考えております。

安藤委員 ありがとうございます。

 難民認定、またその受け入れというのは、人道的な立場もありますので、結構対応は難しいところだろうと思いますけれども、それぞれの申請者の置かれた状況をしっかりと見きわめていただいて、そしてまた、この制度が今のままでいいのかということをも含めて適切に対応していっていただきたいと思います。

 次に、外国人の不法滞在者についてお尋ねをしたいと思います。

 法務省では、最近、不法滞在者の対策に力を入れており、かなり減少傾向にあるというように聞いておりますけれども、現在の不法滞在者の数の推移をまずお答えいただきたいと思います。

井上政府参考人 お答えいたします。

 不法残留者が最も多かったのは平成五年五月でございまして、当時、約三十万人、二十九万八千六百四十六人でございました。

 その後、さまざまな対策を打ってまいりましたが、特に平成十六年からは、不法滞在者五年半減計画というものを遂行いたしました。その半減計画の開始時点で、約二十二万人、二十一万九千四百十八人いた不法残留者を、計画終了時点では、おおむねの半減、十一万三千七十二人まで減少させることができました。

 その後も不法残留者を減少させる取り組みを継続した結果、本年一月現在では、それでもまだ、約六万人、五万九千六十一人の不法残留者がいると考えておるところでございます。

安藤委員 ありがとうございます。

 不法滞在者対策を御努力いただいて、以前よりはかなり減少しているということですけれども、しかし、まだまだ多いということが言えると思います。ぜひとも今後とも努力を続けていただきたいと思います。

 そして、不法滞在者とともに、偽装滞在者という方々もおられると思います。この偽装滞在者の対策というものも大変重要だと思いますけれども、偽装滞在者とはどのようなもので、その摘発をするに当たってどのような困難があるのか、お答えをいただきたいと思います。

井上政府参考人 偽装滞在者と申しますのは、典型的には偽装結婚などが当たりますけれども、実際には、不法に就労などをする目的で、例えば偽造文書でありますとか内容の虚偽の文書、そのような文書を使うなどして、身分や活動の目的を偽って不正に在留許可を受けて在留する者のことであります。したがいまして、表面上はあくまでも合法的に在留しているということになりますので、違反の調査の端緒を得ることが大変難しくて、その実態の把握にはさまざまな困難がございます。

 そのような中で、入管当局といたしましては、やはり一般の方々から寄せられる情報というものが大変重要でございまして、そのような情報でございますとか、あとは、入管当局が、入国や在留の審査の中でいろいろな情報を保有してございます。また、厚生労働省の方からは、外国人を雇用した場合の外国人雇用状況届出という法制度がありまして、その届け出に基づく情報の提供を受けてございます。

 このようなさまざまな情報をよく徹底して分析いたしまして、さらには、警察、関係機関との情報交換なども行いまして、偽装滞在者のあぶり出しを行い、その摘発に努めているところでございます。

安藤委員 ありがとうございます。

 この偽装滞在者というのは、なかなか実態が把握しにくいと思いますし、しかし、野放しにするわけにもいかないと思います。特に近年は、こういった方々も含めて、いろいろな方々の生活保護の実態もかなり問題になってきております。ぜひこれからも一層の御努力をお願いしたいと思います。

 そして、これらの不法滞在者また偽装滞在者に対して自発的に出頭を促すということも実施をしておられるということですが、具体的にどのようなことを実施しておられるのか、お答えいただきたいと思います。

井上政府参考人 不法滞在者の対策といたしまして、積極的に摘発していくということがやはり大事でございまして、そこにもちろん力を入れているわけでございますけれども、潜在化しておりますのでどうしても摘発には限界がございまして、自主的に出頭していただくという制度も大きな効力を発揮するというふうに考えてございます。

 そこで、不法滞在者の自主的な出頭を促進するための方策といたしましては、出国命令という制度を平成十六年に設けてございます。その概要は、入国管理官署にみずから自主的に出頭申告したなどの一定の要件を満たす不法残留者につきましては、一般の不法滞在者は身柄を収容してきちんとした退去強制手続をとるのに対しまして、身柄を収容しないまま簡易な手続で出国させよう、そしてまた、一般の退去強制ですと、再び日本に来るまでの、上陸拒否期間といいますが、それが五年ございますが、みずから出頭してきた場合には一年間でまた入国を認めよう、そういうメリットを与えまして出頭を促す、そういう出国命令の制度を設けたところでございます。

 また、さらに、不法滞在者でありましても、個々の事案ごとに、家族の状況とか素行、人道的な配慮の必要性など諸般の事情を総合的に勘案した結果、在留を特に認めるべき場合というものがございます。これを在留特別許可と申しておりますけれども、その在留特別許可の透明性や公平性を向上させるために、ガイドラインを設けたり、在留特別許可が認められた事例あるいは認められなかった事例などの事例集をつくって公表するなどしてございます。そうすることによりまして、自分は在留特別許可が認められそうだ、まだ日本にい続けたいという、不法残留状態でありますけれども特段の問題のない不法滞在者が積極的に安心して出頭申告できるような、そのような取り組みも行っております。

 そのような自主的な出頭を促すさまざまな取り組みによって、不法滞在者の減少にさらに努めていきたいと考えております。

安藤委員 ありがとうございます。

 このような不法滞在者や偽装滞在者がいるおかげで、本来の正規の滞在者も不当な差別を受けるというようなことにもつながっていくと思います。今後とも、これから努力をしていただきたいというふうに思います。

 次の論点に移りますけれども、日本再興戦略の一つとして、日本経済の活性化に資する外国人の受け入れの促進という課題がございます。その一環として、現在、国家戦略特区法の改正が検討されていますけれども、その中で、外国人の家事支援人材の活用が一つの案として挙げられております。まだ検討している段階であるというふうに思いますけれども、いろいろな懸念が表明をされています。外国人に対する差別になってしまうのではないか、実質的な移民政策ではないのか、また、家事支援といっても育児までを含むのか、育児を外国人にさせることについては問題がないのか。

 そういった懸念について、今政府ではどのような検討をされているのか、まずその状況をお答えいただきたいと思います。

富屋政府参考人 お答えを申し上げます。

 まず、外国人の家事支援人材についての全体の状況でございますけれども、本年の十月十日に国家戦略特区諮問会議で取りまとめがなされておりまして、その中で、「外国人家事支援人材については、現在、外交官や高度人材などの外国人に雇用される場合にのみ入国・在留が認められているが、女性の活躍推進等の観点から、地方自治体等による一定の管理体制の下、家事支援サービスを提供する企業に雇用される外国人家事支援人材の入国・在留を可能とする。」というような内容が取りまとめられておりまして、現在、この特例制度を含めまして、国家戦略特区法の改正法案の作業を進めているところでございます。

 また、この特例制度につきまして適正な運用を図っていくべく、具体的な制度設計について関係省庁と検討を行ってきているところでございます。

 まず、御質問の差別というような観点につきましては、外国人の家事支援人材への差別につながることがないように、当該外国人材の待遇について検討してきているところでございますが、引き続き、差別につながることがないようにという観点で検討してまいりたいと考えております。

 また、移民政策との関連でございますけれども、これは、「日本再興戦略」改訂二〇一四におきまして、「中長期的な外国人材の受入れの在り方については、移民政策と誤解されないように配慮」することとされておりますので、この方針に従いまして、当該外国人材の受け入れについては最長の滞在期間を限定するという方向で検討してまいりたいと考えております。

 また、家事支援サービスの提供の範囲でございますが、これについて政令で定めていく予定としておりますけれども、その際には、さまざまな御意見を既に頂戴しておりますけれども、それらを踏まえまして関係省庁で十分に検討してまいりたいと考えているところでございます。

安藤委員 ありがとうございます。

 まだまだ検討中ということですけれども、私から少し懸念を申し上げておきたいと思います。

 まず、外国人に対する差別になってしまうのではないかという点についてでございます。

 今の答弁では、待遇面をしっかりと考えて、恐らく、賃金面でも日本人とは差をつけないということをお考えだというふうに思います。しかし、今、この日本でこの業種で働いている日本人の人たちの年収は、日本人全体の中では決して高い方ではないというふうに思います。これは、高いサービスであったら需要が発生しないと思いますので、日本人全体の中では恐らく低所得というところに分類をされていくんだろうなと思います。

 そして、外国人に来てもらってこの仕事をしてもらおうという発想の中には、安い人件費で外国人を雇えばいい、その人たちは、母国でもらう給料に比べたら、日本人の水準で日本人並みの給料をもらうんだったら、母国に行ったら相当高い給料になるんだから、これは文句がないはずだということがあるように思います。

 そして、もともと、この家事支援人材に外国人をという発想は、香港やシンガポールのように外国人のメードさんがいて、とてもサービスがよくて便利である、だから日本にもこのようなサービスが欲しいというようなところから来ているようですけれども、しかし、香港やシンガポールという国は、もともと植民地支配をされた国であって、植民地においては、宗主国の人間が地元の人たちを便利に安い賃金で使っていたという歴史があるわけですね。これは、そのときの習慣が今もそのまま残っているのではないかということを思います。

 これらの植民地支配をされた歴史から来ているものをモデルとして日本に持ち込むことが果たして適当なのか、このことについては疑問を感じざるを得ないと私は思います。そのこと自体が外国の人たちに対する差別意識につながっているんじゃないかということを私は強く懸念しております。

 次に、移民になるのではないかということについてですけれども、移民にならないように、在留期間を区切って、期限が来たら必ず帰ってもらうようにするということを恐らくお考えなんだろうと思います。

 しかし、海外から来られた方が、もし日本で結婚をして、あるいは結婚をしなくても、例えば子供を産んだりしたら、では、どうするのか。そのようなときでも、期限が来たら帰ってもらうというようなことが本当に可能なのか。そういうときには、恐らく人権の問題が発生をして、帰ってもらうということは相当困難になるだろうというふうに思います。

 また、シンガポールなどでは、妊娠をした外国人には帰ってもらうということを相当厳しくやっているようですけれども、日本で果たしてそのような制度が導入できるのか。恐らく日本にはできないと思いますし、それこそ、このような制度をつくったら、人間の自由に生きる権利というものを侵害しているし、こういった制度は日本にはつくるべきではないと思います。そういった意味でも、この制度は移民につながっていくおそれが相当あるのではないかなということを心配しております。

 そして、最後に育児についての懸念を少し申し上げておきたいと思いますけれども、ゼロ歳児でも、言葉がわからないから外国人に育児を任せてもいいということにはならないと思います。言葉も宗教観も生活習慣も違う外国の方に自分の子供を預けてまで働かなくてはいけないのか、それが本当に子供たちや親たちの幸せにつながるのでしょうか。外国人のメードさんのもとで育った子供たちは、では、一体何人になるのかということを本当に心配するわけです。

 それともう一つ、親としての育ちの問題ということもあると思います。

 東京の共励保育園の長田園長という方がおられるんですけれども、この方の書いた「「便利な」保育園が奪う本当はもっと大切なもの」という本の中にこういった一節があります。

 子育てを外注化した結果、親子の関係性が薄くなり、子を思う「親心」が消えていきます。子供はゼロ歳や一歳頃は可愛いものですが、二歳を超えた頃から自我を出し、さまざまな主張を始めます。

  そうした子供の要求に手間暇をかけて対応することによって「親心」が育つのですが、その機会を他人に委ねてしまいます。発達の過程として三歳や四歳頃から出てくる嘘やずるい心、そうした気持ちを乗り越える術を、親は子供に伝えなくてはなりません。ところが、それらの一つ一つは手間がかかり、愛情も必要です。

  その手間を外部に委ねた結果、そうした手間に対する忍耐力や自分で立ち向かおうとする感覚が失われていきます。子供が大きくなれば、親にもたらされる問題はさらに大きくなっていきます。そして、その問題の深刻度が増すと、親はその問題に直接対応することを避けて通るようになります。つまり、子供の問題に真正面から対峙する親としての力が育っていかないのです。

 今、いろいろなところで問題が起きております。モンスターペアレントの問題とかも出てきておりますが、これはまさに、親としての力、親としての育ちが足りない大人が今ふえていっているということにつながっているのではないかと思うんですね。

 親というのは、子供を産んだだけでなれるものではありません。生物学的には子供を産めば親になることはできても、本当に親になるには、自分で子育てにしっかりと向き合う必要があると思います。そこには報酬もなければ見返りもなく、ただ自分の時間を犠牲にしていくということが求められていくわけです。しかし、自分の時間を犠牲にしても子供と向き合う時間をつくり、子供が安心してわがままが言えて、心の底から信頼できる人がいるという環境をつくることが、子供の将来の人格形成に大きな影響を与えるとともに、親自身の人格形成にも大きな影響を与えると思います。

 このように、子育てを外注化することによって本当に日本の将来に資することになるのか、外国人を雇ってまで子供を預けて働くことが本当に日本の将来の発展に資するのか、このことについては皆様にぜひともお考えをいただきたいと思います。

 質問を終わります。ありがとうございました。

奥野委員長 安藤君の質疑はこれにて終了しました。

 次に、柚木道義君。

柚木委員 おはようございます。民主党の柚木道義でございます。

 よもや、前回質問に立たせていただいて、また新たな大臣のもとでこうして質疑をさせていただくとは思っておりませんでした。本当に異例の二閣僚同時辞任、こういう異常事態の中で今回就任されて、上川大臣におかれましては、就任会見も拝見しましたが、非常に通常以上に重い重い、そういうお立場で大臣に就任されておられるわけです。

 個人的には、これまで厚生労働委員会などでも一緒に、例えば法案修正などお互いさせていただいたり、あるいは、まさに女性活躍自体、私もしっかり進めるべきだと思っておりますので、大臣に御就任されたことに対しては御期待申し上げたいところでございます。

 ただ、御就任をいただいたからには、まさに資質の問題も、お隣の経済産業委員会でも大変な議論が既に起こっております。そこについては、大変恐縮ながら、まず冒頭、上川大臣御本人のことについて幾つか御確認をさせていただきたいと思います。

 少し前のことになりますが、パーティー券の購入、当然、我々一人一人の議員も御協力をいただくことが多いわけですが、これは報道ベースでのことでございますが、全国貸金業政治連盟、いわゆるサラ金業界がパーティー券を購入されておられる方々、これは前の報道でございまして、自民党さんで六十七人の方がそういった対象になっている。

 その中で、私もこれは初めて知ったことでありますが、上川大臣が、当時でございますが、自民党さんの並みいる、これは現職の大臣さんも入られていますが、その中でも一番多くのパーティー券の購入をいただいている。

 まず、これは事実かどうか、教えていただけますか。

上川国務大臣 おはようございます。

 御質問をいただきました。事実でございます。

柚木委員 御案内のとおり、このサラ金の問題というのは、もちろん、借りる、借りないということがだめということではなくて、例えば多重債務の方が大変残念なことにみずからの命を絶たれるとか、いろいろな金利の問題とかが社会問題にもなり、その後、この国会における対応にもつながってきたわけでございます。

 私が意外だったのは、まさに犯罪被害者の方の救済等に率先して取り組んでこられた上川大臣が、なぜこういった団体さんからずば抜けてトップのパーティー券の購入をいただけるようなことになっているのかというのが素朴にちょっと疑問に思ったものですから、この御購入いただいている金額が自民党さんの全議員の中でも一番多いというのは、何か理由がおありですか。

上川国務大臣 多い少ないということについては、具体的にその金額が多い少ない、そういう判断をすることができませんけれども、政治活動に対して御支援をいただくということで御献金をいただいたということでございまして、そのような形で理解しているところでございます。

柚木委員 今、法務大臣という立場になられておられますし、これまでも歴代の大臣が、過去のそういった献金なりパーティー券の購入なり、その後、お立場になられて、例えば不適切だという判断をされたときに、返金をされるなり、さまざまな対応をとってこられているということが過去にはあります。

 これは、上川大臣、今大臣になられて、改めてこういった部分について何らかの対応をとる必要性について何か感じておられるかどうか、もしありましたら御答弁ください。

上川国務大臣 政治活動に対する御支援の意図で献金していただいたというふうに理解しておりまして、その限りでございます。

柚木委員 では、重ねてもう一件伺います。

 大臣はもう既に一度閣僚を、少子化担当大臣をお務めになられておられます。その後のことでございますが、これは二〇〇九年の政権交代選挙があったときですが、そのときは大臣は残念ながら苦杯をなめられたということで、報道で私も承知しておりますが、その際に、後援会事務所の方が公職選挙法違反で、事務員の方が起訴をされる、女性の方が逮捕される、その後、起訴猶予ということになっておりますが、こういったことが起こっております。

 これは、実際に事実ということでよろしいでしょうか。

上川国務大臣 事実でございます。

柚木委員 この報道を見ると、例えば略式起訴をされた事務員の方は、自分が注意すれば防げた、有権者などに迷惑をかけたと。そして、上川大臣御自身も、当時、選挙では公選法に従って適正な運動を行うように努めてきたが、このような結果を招いたことを深く反省しているというコメントが報道でなされております。

 私、この中で少し気になることが一、二点ございます。

 一点目は、この逮捕されて処分保留、釈放された女性事務員二人の方々の供述の中に、上からの指示でやったという供述がございまして、上からの指示というのはどなたからの指示というのは大臣は御認識なされていたんですか。

上川国務大臣 お尋ねの件についてでございますけれども、既に時間もかなりたっておりまして、この問題となった事務員は三年前にさまざまな責任を問われてやめているところでございます。関係者の現在の生活、平穏にも配慮するということでございまして、詳細についてはお答えを差し控えさせていただきたいというふうに思っております。

 ただ、過去、私の選挙に関しまして法令違反があったということにつきましては、先ほど申し上げたとおり、事実でございます。私自身、このことについて本当に申しわけなく思っているところでございまして、このことを教訓にして、そして、その後は、それまで以上に強い意志を持って、強い意識を持って、法律違反を犯さないようにということで努力してきたつもりでございますし、これからもそうした気持ちでやっていきたいというふうに思っております。

柚木委員 当然のことでございまして、これは、我々一人一人がそのような意識で選挙にも臨んでいるわけでございます。

 そんな中で、当たり前のことがそうできていなかったからこういったことが起こっておるのでありまして、それに対して大臣は今本当に反省の弁を述べられているわけですが、この起訴された後援会の方がこういうコメントをされていて、私、これは本当に今大臣が答弁でおっしゃられたようなことが今後しっかりとガバナンスが機能していくのかどうなのか、ちょっと不安もあるんですね。こう述べられているんですね。電話をかけることと派遣会社との契約について違法との認識を持っていなかった。

 大臣、過去には、こういったまさに電話をかけるのを委託するという事例の中で、連座制で議員辞職をされている方もおられるわけですよ。そういう本当に重大な、そういう意味では、せっかく仮に当選できたとしても議席を失う、まさに有権者の負託を裏切ってしまうようなことになりかねない、こういう中での認識を持っていなかった。そして、その責任者はやはり上川大臣ですよね。

 そういうことで、本当に今後、まさに松島大臣が、この後残念ながら少し触れざるを得ませんが、うちわの配布についても公職選挙法違反の認識を持っていなかった。いわば、誰がどう見てもうちわだというものを、開き直って、私は何も悪くないと。辞任会見のときにもそういった姿勢が残念ながらうかがわれる。やはり法務大臣ですから、他の議員の方、他の閣僚の方以上に法令遵守の意識をしっかり持っていただかなければ困るわけですよ。

 ですから、その後援会の方々が違法性の認識を持っていなかったということで、それで済むということにもならないわけですから、これは、そういう認識を当時持っておられたことに対して、本当に責任というものをお感じになられないんですか。

上川国務大臣 選挙期間中ということでもございまして、私自身、そうした事態につきましては認識しておりませんでした。

 今、その責任ということでございますけれども、そういう中での今回御指摘いただいたようなことで、私自身は、そのことをしっかりと反省して、また、これからの選挙あるいは政治活動についてしっかりとそのことを踏まえて、このことを忘れないで、心にしっかりと決めて、そして活動しよう、こういうことで再起を期して活動を再開したということでございます。

 そのときの気持ちというものをしっかりと胸に頑張っていきたいというふうに思っておりますので、その気持ちをお伝えさせていただきたいというふうに思っております。

柚木委員 もちろん、そういう気持ちで頑張っていただかなきゃ困るわけでありまして、そういう気持ちでこれまでもやってこられたであろう中でこういうことが起こっているということ、私はその責任について申し上げたわけでございます。

 今、こうして大臣になられました。そして、冒頭申し上げましたように、早速もうお隣の経済産業委員会でも、まさにこれは資質の問題も含めて議論がなされているところでございます。

 私も、上川大臣、これは二閣僚同時辞任という異例の事態で、まさに今度はしっかりとした方が任命をされた、総理もそのようにおっしゃっています、任命責任も感じているということも認められています。そんな中で、早速そのうちの一人の閣僚が、私もちょっとこういうこと自体も言葉にすることもはばかられるんですが、公金、政治資金が、これはお隣の経済産業大臣、宮沢大臣がSMバーへの支出をしているという報道があって、これは本当に私も言葉を失いました。

 同じ新任の大臣のお一人として、宮沢大臣の資金管理団体宮沢会が政治資金でSMクラブに行っていた。御本人は否定をされていますが、秘書の方ということでありますが、いずれにしても、私もきのうそういう報道に接して、何人かの方からこういう趣旨の発言がありました。それは、そういったバーに行くのは別に勝手かもしれないけれども、それだったら、政治資金ではなくてポケットマネーで行ったらいいんじゃないんですかと。

 この異例のダブル辞任というのが、巨大与党のおごりや緩みじゃないかというような指摘も出ている中で、二日もたたないうちにもうそういったことが出てきて、そして、まさに今、資質の問題が問われている。

 もう一人の新任の大臣として、安倍内閣の同じ閣僚の一員として、宮沢大臣のSMバーへの政治資金の支出については適正な支出だと思われますか。

上川国務大臣 私自身、今御指摘の宮沢大臣のことにつきましては詳細を存じ上げませんので、この場でそれについて何かコメントをしろと言われても、なかなか難しいということでございます。

奥野委員長 柚木君に申し上げます。

 要するに、ここは法務行政を議論するところであります。宮沢大臣の話については経済産業委員会に行って議論されるのが望ましいと思います。

柚木委員 私が伺ったのは、もちろん、そのバーの性質について云々というのは個人のいろいろな嗜好の話ですから、そのことをとやかく申し上げているんじゃないんです。政治資金が支出をされ、しかも、同じ閣僚の一員として、ダブル辞任で急遽二人の閣僚が起用されたそのお一人の閣僚として、さらに言えば、安倍内閣が進める女性活躍を進めていく中で、国民の方々がこういったバーへの政治資金の支出というものをどのように受けとめておられるのか。

 女性閣僚、本当に頑張っていただきたいと思いますよ。しかし、その女性閣僚として、今般の、私は不適正な支出だと思いますよ、そういうことについてどのように感じておられるのかということを質問したのでありまして、別に宮沢大臣にこれは伺いたいのではなくて、まさに女性活躍も含めて安倍政権が進めていかれる重要な施策の中で起用された上川大臣が、今回のSMバーへの政治資金の拠出について適正と考えられるかどうか、あるいは女性閣僚としてどのように考えられるか、そういった点をお伺いしたのであって、改めてお答えいただけますか。

奥野委員長 純粋に答えてください、上川大臣。純粋に。

上川国務大臣 先ほど申し上げたとおりでございまして、詳細について存じ上げませんので、今この場で何かということにつきましては言葉もございません。

柚木委員 言葉もありませんという御答弁、私は、にじみ出ていると思いますよ。

 こういった問題が、国民の皆様から、政策をしっかり遂行していかなきゃいけない中で、まさに他委員会においても問題になって、国会全体での貴重な審議の時間が失われることになってはならないと私は思いますし、しっかりと……(発言する者あり)

 ちょっと済みません、静かにさせていただけませんか。さっきからずっとやじを飛ばされているので。安倍総理も、やじが飛んだら、静かにしてくださいといつも言われますよね。お願いできませんか、静かに。委員長、御注意いただけませんか。

奥野委員長 ふくだ理事さん、少し小さい声で。

柚木委員 それで、この委員会においても、あるいは国会の場においても、前任の松島大臣について、誠実に説明責任を果たす、そういったことを言われたままやめられてしまいました。ですから、これは前任の大臣のことではございますが、実際に、国会において何らかの場で説明責任を果たしていただくことが不可欠だと思っておりますし、理事会の中でも、これは与野党を問わず、前大臣の問題についてはしっかりとした説明責任を果たされる場が必要である、この認識は一致しているんですね。

 そんな中で、大臣、このうちわの配布が刑事告発を既にされています。そして、受理されたのは二十日、まさに松島大臣が辞任をされた日です。東京地検が受理をしているわけですが、今、その最高責任者は上川大臣でいらっしゃいます。

 大臣は、松島大臣とは、当選は同じ回数で、しかも同じ自民党の所属の議員でいらっしゃるわけです。私も調べてみたら、こういう共通点もあるのかと、ちょっと単に驚いたんですが、松島大臣は趣味が盆踊り、上川新大臣は祭りのみこし担ぎが御趣味だ。

 そういう共通点もおありなわけですが、だからといって、松島前大臣への捜査に手心が加えられるようなことは決してありませんよね、大臣。

上川国務大臣 御指摘のことでございますが、既に、先ほど柚木議員がおっしゃったとおり、刑事告発の対象となっておりますので、法務大臣として、立場上、答弁は差し控えさせていただかざるを得ないということを御理解いただきたいというふうに思います。

柚木委員 上川大臣は、就任会見の際に記者の方から、有権者に対してこういったうちわを作成、配布されたことはありますかと尋ねられたと思うんですね。

 これは改めて伺いますが、このようなうちわを作成あるいは配布されたことはございますか。

上川国務大臣 そのようなうちわを作成、配布したことはございません。

柚木委員 大臣、なぜこういったうちわを作成、配布されたことがないんですか。理由をお聞かせください。

上川国務大臣 政策あるいは考え方ということにつきまして、いろいろな手法、手段で皆様にお伝えをすることができるというふうに考えております。

柚木委員 いろいろな手法で伝えることができる。

 これは、一枚目、昨日の琉球新報の報道でございます。

 御案内のように、沖縄は知事選に向けてもう既にそれぞれの候補予定者の方が、ここにつけております、これは柄のついていない、穴のあいていて、ここには「各陣営が配布するうちわ型のビラ」、こういう表現がなされておりますが、それぞれの候補予定者の方がこういう活動を行う中で、有権者の方々にまさにいろいろな御自分の人柄や政策を知ってもらおう、こういう活動をされています。

 沖縄県の選挙管理委員会は、下から二つ目のパラグラフに、ビラの形状について特に規定があるわけではない、柄もついていないので公選法上の寄附に当たる物品配布には当たらないだろうとしていると。一方で、配布時期や記載内容などについては公選法の事前運動の禁止に当たる可能性はあると指摘。そして、この時期に写真や似顔絵、名前が目立って記載されるビラを配布すると選挙運動と捉えられかねないとしていると。そして最後に、これはまさに私はこの松島大臣が配布されたうちわのことを指しているんだろうと理解しますが、政策ビラ、内部資料、まあ討議資料と書いてあるわけですが、と記載したからといって、何でも配ってよいわけではないと苦言を呈したと。

 こういう状況が全国の選挙で、既に沖縄でもこういう状況が起こり、今後選挙で必ずこういう問題が起こりますよ。現職の法務大臣が、ほかの閣僚や議員以上に法令遵守が求められるはずの法務大臣が、逆にそういう、いわばグレーゾーンというか、私たちは非常にこれはグレー、もっと言うと公選法違反だと思っているわけですが、こういったことを率先垂範してされたからこそ、他の選挙においてもこういう影響が及んでいることに対して、今の現職の法務大臣としてどのように思われますか。

上川国務大臣 公職選挙法のことにつきましては、所管ではございませんので、答弁は差し控えさせていただきたいと存じます。

柚木委員 では、皆さんもそうですが、普通に、所管の大臣ということではなくて、ちょっと資料の二枚目、三枚目をごらんください。

 これは、この最新の法務大臣のうちわの前の前に配布をされていた、二十四年のときのうちわなんですね。千四百八十本作成をされて、既に在庫がないということで、今私の手元にもない、つまり配り切っているわけです。この二ページ目、三ページ目、私はとりわけ三ページ目が非常に気になるわけですが、これはちなみに、どちらもそれぞれ、松島前大臣の名前、肩書、顔写真もしくは似顔絵が入っております。

 これは、率直に言って、上川大臣、ビラですか、うちわですか。御自分のお言葉でぜひお答えください。

上川国務大臣 この件につきましては既に刑事告発されている案件でございますので、法務大臣としてこの件に関してコメントすることはできません。

柚木委員 告発されている中身、これは、二十五年、二十六年、それぞれ、この委員会でのやりとりも含めて、配布した場所、時期などが特定をされたものが刑事告発されています。二十四年分は、そういった、どこでどう配った、松島大臣は配布したことを認められていますが、告発状の中身そのものには二十四年分のことは指摘をしておりません。ただ、もちろん検察は、当然、全体像を見ながら捜査されていると思いますが。

 大臣、これは二十四年のうちわ、私はうちわだと思うんですよ。しかし、大臣が今これをごらんになって、これは告発とは別ですよ、うちわかビラか、ぱっと見て普通に感想を述べていただくことは可能ですよ。お答えください。(発言する者あり)コピーを見ての感想で結構です。

上川国務大臣 個別の案件ということでございまして、関連する案件でございますので、法務大臣としての意見をすることができません。

柚木委員 これは、松島前大臣が……(発言する者あり)ちょっと静かにお願いできませんか。

 松島前大臣が一貫して、これは、うちわの形をしているかもしれないけれども、討議資料、裏に政策を書いている、うちわの形をしたビラなんだという御答弁あるいは発言を辞任会見の際にも続けてこられていますね。しかし、この二十四年分については討議資料のトの字も書かれていません。また、まさか、「実現力」という言葉、あるいは「働かせてください もう一度。」という言葉が政策というふうに有権者は受け取れません。

 もっと言うと、「働かせてください もう一度。」という言葉は、これは松島前大臣が落選期間中に配布されているうちわです。一般の有権者の方は、この文言を見たらどう受けとめられるでしょうか。大臣、どう受けとめられると思われますか。

奥野委員長 柚木さん、この話は、松島大臣の話を含めて、国対で議論しましょうということでお互いに納得しているわけですから、新しい大臣はもうこれ以上答えられませんと申し上げているわけですから、もうこれはこれで終了させてください。(柚木委員「委員長」と呼ぶ)

 言っていませんよ、僕は。柚木君、指示していませんよ。(柚木委員「委員長」と呼ぶ)だめ。(柚木委員「いや、委員長、今の委員長の発言について発言させてください」と呼ぶ)

 はい、どうぞ。

柚木委員 私は、理事会で委員長も、この問題は大臣を辞任しただけでは説明責任を果たしたことにならないから、政治倫理審査会も含めて国会で説明責任を果たしていただく場が必要であるということは、これは与野党で認識が一致しているんですよ。しかし、まだその場が今ないんですよ。

 ないからこそ、この場で、私は本当に、本人が本来ここに来て説明いただきたいんですよ。しかし、それがかなわない中で、そして、有権者、国民の方々も、松島前大臣がやめられましたけれども、しかし、七割の方が説明不足、そういう世論調査もあるんですよ。説明責任を果たさないままやめられてしまっている。

 連立与党の山口公明党代表も、大臣をやめただけで説明責任を果たしたことにはならないと明確に述べておられるわけですよ。もっと言うと、自民党の前安倍内閣の閣僚の方もこういうふうに述べられているんですよ。これまでは、大臣をやめれば、ポストを離れれば、追及はやむ、説明する必要はなくなる、ほとぼりが冷めたらまた表舞台に立てばいいみたいなことはもう通用しないんだ、前の閣僚もこう述べられているんですよ。そういう中で、まだそういう場所がセットされていないんですよ。

 だから、私は、しかもこれまでに出てきていなかった、しかも告発の中には直接書かれていない二十四年のうちわですよ。このうちわも、文言に「働かせてください もう一度。」落選期間中にこういう文言を書かれたら、大臣だったらどういうふうに受けとめますかということを聞いているのであって、それについてお答えいただくことは、私は、委員長の御意見はもちろんわかりますが、質問権は我々に与えられているわけですから、答えられる範囲で誠実にお答えいただきたいと思います。

奥野委員長 柚木さんのおっしゃっていることは、私も同意する部分があります。しかしながら、国対同士で話し合いをしましょうということで結論が出ているわけですから、あなたのところの国対へしっかり話をしていただいて、自民党国対と話をするのが筋ではないかと思います。

 それから、もう一つ。二十四年分については、関連するから、今の当事者である大臣としては発言を慎んだ方がいいから答えを控えさせてくださいとさっきから申し上げているわけです。それがわかっていただけないんだったら、理事会で議論しましょう。

柚木委員 私の今の質問について、委員長はそのようにおっしゃいますが、上川大臣は答えられないんですか。(発言する者あり)いや、上川大臣は答えられないんですか。同じ認識ですか。(発言する者あり)

 先ほどから何度もコピーだ、コピーだと後ろからやじが飛ぶんですけれども、では、現物を出してくださいよ、この委員会に。再三にわたって、そもそも、審議に応じる条件の一つとして、必要な資料を提示いただくということで、これはもうずっと前から、二十四年分のうちわはこの委員会に提供してくださいということを申し上げてきて、出てきていないから、やむなくコピーでやっているわけですから。

 ぜひ、委員長、現物をこの委員会に提供いただくように、法務省あるいは関係の事務所に御指示いただけませんか。(発言する者あり)

奥野委員長 ちょっと静かにしてください。

 二十四年分の件については、私も、では、国対を含めて、出るか出ないか、全部議論をさせてもらいます。この場でその議論をしていても前へ進まないというふうに感じます。

 ですから、国民のために法案を審議するのが法務委員会であって、カナダでもイスラムの話が今出てきているわけですから、早く議論を進めて、国民の安全、安心、そういったことに前向きに、法案審議に進めるようにお願いいたします。

柚木委員 私は、本当はこんな問題ばかり国会でやりたくないんですよ、皆さん、もちろん。

 ただ、ぜひ御理解いただきたいんですよ。これは単なるうちわの問題じゃないですよ。これをこのまま何にも説明責任も果たされずにスルーしてしまう。私は、この週末、地元の方から……(発言する者あり)ちょっと聞いてくださいよ、私、質問しているんですから。

 こういうような話がそのままないがしろにされていくのであれば、それこそ何でも、自分は法律違反だと知りませんでした、もうやらないから許してください。駐車禁止のところにとめても、駐禁と知りませんでした、だから、もう今度からとめませんから許してください。お巡りさんは切符を切れなくなりますよ。全国でそういうモラルハザードが起こりますよ。

 実際、地元の方から、そういうことが許されるんだったら、率先垂範して政治家がそういうことをやるんだったら、みんなそうなるよと。そういう声を我々は一人一人の議員として受けとめなきゃいけないと私は思うんです。だから、これは……(発言する者あり)ちょっと、もう本当に後ろのこの人、退室させてもらえませんか、邪魔ばかりするんだったら。

奥野委員長 皆さん、ちょっと、柚木さんの発言を聞いてください。

柚木委員 私は、本当に、一人一人の議員が問われていると思います。確かに、刑事告発しているわけですから、司法の場で違法性については明確な判断をしていただかなければ困ります。同時に立法府の中でも説明責任を果たすことが、連立与党の代表もそういう言及をされているんですよ。

 そういうような事案だからこそ、つまり、単にうちわの問題じゃなくて、法令遵守、ルール、マナーを守る、破った者勝ち、やった者勝ちじゃなくて、正直者がばかを見るようなことじゃなくて、本当にそういうルールを守る社会というものを守っていかなきゃいけないからこそ、この問題をやらざるを得ないんじゃないですか。その認識については、大臣、共有いただけますか。

上川国務大臣 今回の、先ほどお出しになったことでございますけれども、前大臣のこの問題に係るところに極めて関係があるということでございまして、そういう意味で、法務大臣として、これ以上の言及ということにつきましては差し控えさせていただきたいというふうに存じます。

柚木委員 私は、あのお二方の大臣の辞任の会見をそれぞれ拝見しました。

 小渕前大臣は、ある意味本当に、もちろん監督責任もありますし、法律にのっとって判断をされなきゃいけないことですが、少なくとも、本当に謝罪の意を感じることができました。

 他方で、まことにこれは遺憾なことですが、松島大臣のあの辞任会見は、謝罪よりはむしろ、自分は悪くないけれども、こういう追及をされてやめざるを得ない、そういうような、私は本当に残念な辞任会見だったと思うんですよ。

 そして、私もこの問題を前回も少し触れさせていただきましたが、これまでにも、私はあえて前回も立派な方だと思いますという付言をした上で、前防衛大臣がかつてお線香を初盆の時期に配って、議員辞職までされた。その方は、件数でいえば五百件程度、そして、金額でいえば五十万円程度のお線香を購入されて、それぞれ配付して回られた。松島大臣は、二万三千二百八十本ですよ、対象者。そして、金額も百八十五万円程度が発注費にかかっていますよ。

 この辞職をされた方は、これは報道ベースだから、御本人の発言かどうか、機会があれば私もお聞きしてみたいですけれども、自分が議員辞職したタイミング、松島法務大臣だったらやめずに済んだかもしれないというような御趣旨のことを言われていると報道ベースで聞きましたよ。

 まさに、既に議員の中においても、そういう法令遵守に対して揺らぎの意識が蔓延し始めているんですよ。これが仮に不問に付されたらどうなりますか。全国で、祭りのときに、盆踊りのときに、みんながこの柄のついたうちわを配るんですか。そういうことになるんですか。これまで法令遵守してきた人間はばかを見るんですか。そういうようなモラルハザードが既に国民の皆さんの中や、もっと言えば、議員の中でもそういう思いが蔓延し始めているんですよ。だからこそ、私は、この問題をしっかりとけじめをつけていただきたい、そういうことを申し上げているわけですよ。

 大臣、このうちわと同じように柄がついていて、配付してもこれは法的には問題がないんじゃないかというやりとりが別の委員会でなされています。これは安全保障委員会ですよ。副大臣が、御自分の主催するパーティーで、同じように柄のついたうちわを配付された。しかし、これについては、会費をいただいて、そして会場の中で特定の方に配っている、だからそれは違法性の認識はない。質疑者もそういうやりとりがされています。

 こちらは不特定の方々に、しかも二万三千二百八十本ですよ、これまでの印刷本数が。こういう形で配布をされている。まさにこういう部分についても、それぞれの議員の皆さんも十分にそういう部分を判断されながら、ふだん政治活動をしているわけですよ。

 防衛副大臣、左藤副大臣は、パーティーで、会費の対価として配付をされた。これについては、私も、それ以外の部分でいろいろ出ているのは別ですよ、そのうちわを配ったこと自体に対しては、そっちは確かに対価として渡された、特定の方々に対して渡された、これは問題がないと思うんですが、その件についてだったら答えられるんですか、上川大臣。

奥野委員長 ちょっと柚木さん、申し上げますが、この件について、柚木さんの御意見はわかりましたし、多くの議員であなたと同じ意見を共有する人たちがいることも私もわかります。

 しかし、この件についてこの委員会でさらに追及するということについてはもうやめましょうということで、国対へ持っていって国対で議論しましょう、こういうことでお互い合意しているはずです。

 きょうは上川大臣の就任演説に対する質疑をしようということですから、ぜひその方向へ変えていただきたい。これだけお願いします。

柚木委員 それでは、私からもぜひ委員長にお願いをいたします。

 これは先ほどの直近の理事会でも、与党はそれぞれ自民党さん、公明党さんがいらっしゃるわけですが、やはり御本人から聞かないとわからないわけですよ。それも含めて、政治倫理審査会あるいはそれ以外の、この委員会が仮に無理であったとしたときにも、倫選特、予算委員会など含めて、参考人招致も含めて、国民の皆さんの七割が説明責任を果たしていないと言われる中で、これは司法の場とは別に、やはり御本人が国会、立法府の場で説明責任を果たしていただけるように、それぞれ与党に対して、委員長からも明確に御指示をいただけますでしょうか。

奥野委員長 いずれにしろ、この件については、後で理事会も予定されていますから、そこで引き取らせてください。

 この委員会での議論については、上川大臣の就任演説に対する質疑に切りかえていただきたいと思います。

柚木委員 昨日、最高裁の判決、いわゆるマタニティーハラスメントについて、実は、差し戻しというか、そういう判決が出ていますね。私は、この判決、今後のさまざまな女性の働き方や雇用法制のあり方、ましてや女性活躍の象徴として今回法務大臣に起用された上川大臣は、少子化担当大臣も務められておられますから、そういった認識は深くお持ちだと思っていまして、その他にも通告していることをやりますけれども、ちょっとこの問題、触れていただけるだけで結構なんですが、私はこのように思うんです、大臣。

 今回のマタハラのみならずパワハラ、セクハラ、いわゆる三大ハラスメント、こういった問題がまさに女性が輝ける社会の非常に大きな障壁になっている。そして、本当に多くの方が泣き寝入りをされたり、場合によってはそのことがきっかけとなって流産をされてしまったり、本当に痛ましいような出来事が全国で起こっている。それに対する法令遵守の規範の意識も、企業あるいはそういった管理職の方々に、ともすれば欠けているのではないか。そういう中で、今回の判決が出たことは、私は非常に重要なことだと思っているんです。

 それに関連して、非常にこういうハラスメントの対象にさらされやすい方々の中に、非正規雇用の方々がおられるんですね。育休も産休も、もっと言うと介護休なども今度ふえてきていますが、とれない。そして、そういう中で、実は今、安倍政権の成長戦略の目玉として、派遣労働法改正案が来週にも国会で審議が始まると言われているんです。

 しかし、私は、これは上川大臣なら御理解いただけると思いますが、非正規雇用の方がどんどんふえていく。もちろん、望んでいる方はそれで結構ですよ。しかし、そうでない方が、六割、七割、不本意派遣と言われる方がおられる。派遣の七割が女性の方々。さまざまな、配偶者控除の問題等含めて、女性の働き方、先ほどの質問でも、育児の、子育てのあり方、それはそれぞれお考えがあるでしょう。

 しかし、私は、少なくとも、派遣労働者をどんどんふやしていくことが本当に、この国の成長戦略、もっと言うと、さっきの三大ハラスメントも含めて、働く方々の環境の改善、女性支援に、ともすれば逆行しかねないのではないか、こういう危惧を持っているわけですよ。

 ぜひ、働く女性の立場でこの間頑張ってこられた上川大臣、今回の判決への感想で結構ですから、そしてまた、本当に派遣をふやしていくということが女性の方にとって、成長戦略として望ましいのかどうなのか、この二点について御所見があればお答えください。

    〔委員長退席、盛山委員長代理着席〕

上川国務大臣 今の日本の社会において、働く女性がそれぞれの企業やあるいは組織の中で働くという過程の中でハラスメントを感じ、そして、それに対して大変大きな、痛ましい結果になるということも含めて、そういう状況が起こっているということ自体、大変重く受けとめなければいけないというふうに思っております。

 柚木議員から、雇用のされ方の違いによってそういうケースがふえているのではないか、こういう御指摘もございましたけれども、いかなる働き方であろうとも、個人の尊厳をしっかりと守って、そして、その中でハラスメントという形の事態が起こらないようにしていくためには、日本全体の意識についてもしっかりと改革をしていく必要があるということを、この案件につきましても強く感じるところでございます。

柚木委員 認識は共有するわけでございます。

 そうであるならばこそ、きょう、資料に、五ページ目におつけしておりますが、私は、これは通告もしておりますが、一言で言えば男女のイコールパートナー社会実現ということになるんだと思いますが、例えば女性差別撤廃条約、批准に向けて、ぜひ、上川大臣、そういうお考えのもとであるならば、なおさら御尽力をいただきたいと思います。

 もっと言うと、私は、これは男女の、家事、育児なども、あるいはそういう社会進出も、ジェンダーギャップが世界経済フォーラムの中で百五位ということでもありまして、そういったこと自体も少子化に拍車をかけていると思っています。

 そういったことも含めて、上川大臣みずからのリーダーシップのもとで、女性差別撤廃条約、議定書批准に向けてのリーダーシップを発揮していただきたいと思いますし、家事、育児などにおける、これはどちらかというと男性がもっとシェア、参加するという視点、こういった点などについてぜひ御所見をいただければと思います。

上川国務大臣 先ほど社会全体の意識というお話をさせていただきましたけれども、女性の働き方の中でワーク・ライフ・バランスということで、生活と仕事の調和ということについてはよく言及されるところでございますが、私は、同時に、男性もワーク・ライフ・バランス、もしかしたらライフ・ワーク・バランスかもしれない、そういう問題提起、問題をはらんでいるというふうに思っているところでございます。

 今、女性で、結婚、出産、第一子を産んだ後に御自分が職場をやめるという選択をされている方たち、これはよくM字カーブという形で表現されるところでございますが、やはり女性の方が圧倒的に多いということでございます。

 そして、男性ということになりますと、先ほど来のお話にありますように、育児や家事、こうした面について男性の参加ということを統計的に見ても、多分、一日で三十分とか一時間、その程度のかかわり方ということであります。

 そうなりますと、結婚して、出産して、育てるという環境の中で、女性が家事も育児も、そして同時に働くということも選んでいくということになりまして、それがこのまま進んでいくことになれば、なかなかこのM字カーブも解消できないのではないか。つまり、社会全体が働き方の見直しをし、そして同時に、男性が家事や育児にもっと積極的に参加をしながら、家族ということの中での父親の役割ということも果たしていくということが、ひいては仕事の質そのものにも大きなプラスの影響になっていくのではないかというふうに考えているところでございます。

 そういう方向性の中で取り組んでまいりたいという思いで、今回、所信の中でもその旨の表現をさせていただいたところでございます。

柚木委員 今後もこの課題についてはしっかり議論を深めさせていただきたいと思います。

 それからもう一点、資料の六ページ目以降におつけしておりますが、いわゆるヘイトスピーチ、ヘイトクライム対策でございます。

 せんだっても、在特会の方と大阪の橋下市長とのやりとりも拝見しました。私は、個人的には、橋下市長の言葉遣いはさておき、やはり弱い者いじめというか、そういう部分に対して厳しくこれと対峙していくという姿勢については共感を覚えます。この六ページ目以降の資料をおつけしましたが、やはり我が国の対策、対応は、世界の国々からしてみればおくれていると言わざるを得ない。

 そういう中で、私は、八ページ目、九ページ目、こういった視点も同時に考えていかなきゃいけないと思います。私は、ヘイトスピーチへの対応は必要だと思います。表現の自由とのバランス、兼ね合いも含めて、これはしっかり議論しなければいけないと思います。

 同時に、この議論をしていく中で、ともすれば、官邸周辺で、確かにいろいろな方々が来られていますよ、原発の問題、集団的自衛権の問題、特定秘密の問題、こういった方々がデモをされる。そういったことも一緒くたにしてこれを一律で規制するというのは、私は、方向性として、人種差別と表現の自由、デモ、これは明確に区別をして対策を考えなければいけないと思っておりますが、大臣は、そういった点についてどういうふうに御認識されていますか。

上川国務大臣 一部の国あるいは民族を排除しようとする言動のあることについては、極めて残念なことだというふうに思いますし、また、あってはならないというふうに思っているところでございます。こうした言動が日常的に行われるような社会環境ということについては、ゆゆしきことだというふうにも思っているところでございます。

柚木委員 私がお尋ねをしたのは、その御認識は私も共有するわけですよ、そんな中で、ともすれば法務省としての対策がやや後ろ向きではないかと。これは松島前大臣のときにも正直思いました。

 ですから、今後、政府として、法務省として、そして上川法務大臣として、対応していくべきかどうかという視点と、もう一つは、その対応していく中で、いわゆる官邸周辺でいろいろなデモなどをされている方々と、いわゆるヘイトスピーチ、クライム、いわゆる人種差別と言われる部分と一緒くたにして規制することについては違和感を持っている、この二点についての見解をぜひお答えください。

上川国務大臣 今の御質問でございます、こうした社会の中の意識に係る部分につきましては、啓発啓蒙、こうしたことについてこれまで法務省としてしっかりと取り組んできたところでございますが、まだまだ不十分だというふうに思っております。そうしたことについても、よく実態、現実を調査しながら、対応をどうするかということについても考えてまいりたいというふうに思っております。

    〔盛山委員長代理退席、委員長着席〕

柚木委員 この課題につきましては、御案内かと思いますが、超党派でも、今議員連盟の中で、どういった対応が必要なのか、どういった法案等が議員の中でも検討できるのか、そういった議論もあるわけですが、こちらの議会の側だけに任せておくということではなくて、ぜひ、やはり政府として、オリンピックをやるわけですよ、二〇二〇年に。先ほどの女性差別撤廃条約の批准についてもそうですし、ジェンダーギャップの問題もそうですし、百五位、そして、今般のヘイトスピーチ対応についても、ぜひ法務省、人権の意識啓発をおっしゃいました、率先垂範して、まさにこの分野こそリーダーシップを発揮していただくべき分野だと思いますので、最後にその決意を大臣にお述べいただいて、私の質問を終わりたいと思います。お願いします。

上川国務大臣 一人一人の尊厳に係る大変大事な課題だということでございまして、このことについて、啓蒙啓発だけではなくて、基本のところに、しっかりと掘り下げて、そして検討していきたいというふうに思っております。

柚木委員 以上で終わります。ありがとうございました。

奥野委員長 これで柚木道義君の質疑は終了しました。

 次に、郡和子君。

郡委員 民主党の郡和子です。

 上川大臣の所信を聞かせていただきました。余り例がないぐらいに長かったなというふうに実は思ったところです。大臣就任のいきさつにも配慮されてのことかなと推察もいたしました。法務行政の課題についてどのように取り組まれるのか、謙虚にそしてまた誠実に話されていたな、そういう点では評価をしたいというふうに思うんですけれども、私にとっては少々物足りなく思いました。

 今し方、同僚議員の男女共同参画社会についての質問に対して、上川大臣のお考えの一端をお示しいただいたというふうに思いますけれども、なぜ私が物足りなかったかと申しますと、民法の改正、とりわけ国連の女子差別撤廃委員会からたび重なる勧告を受けていて、差別是正に向けた民法の改正について言及がなかったからであります。

 松島前大臣にも質問をしたのですけれども、上川大臣御自身のお考えを聞かせていただきたいというふうに思います。法務省の見解を問わせていただいているのではなくて、上川大臣御出身の見解をお尋ねしたいということでございます。

 自民党内でも、二〇〇二年に、例外的に夫婦の別姓を実現させる会が発足して、法案を議員立法で出すということを目的に活動されました。このメンバーに大臣も入っておられたというふうに承知しておりますけれども、選択制夫婦別姓についてはどのような見解をお持ちでしょうか。

上川国務大臣 所信に対して御意見、御感想をいただくことができまして、本当にありがとうございます。先生のお気持ち、御意見もしっかりと踏まえて、真摯に頑張っていこうという思いでいっぱいでございます。

 ただいま御質問の件でございます、民法ということでありますが、平成十四年の七月でありますが、自民党内に例外的に夫婦の別姓を実現する会が発足いたしまして、私もこのメンバーの一人として活動をいたしました。基本的には、そういう考え方をするに当たって、いろいろな皆さんの声をしっかりと聞きながら対応していこう、こういう気持ちでいっぱいでございました。

 この選択的夫婦別氏制度の導入ということにつきましては、日本の家族の制度ということに非常に深く関与している問題というふうに思っております。一人一人の個人としての人権と、そしてお立場と、そして同時に、結婚するとかあるいは子供を産む、そういう意味での家族の問題ということが深くかかわっているということでございます。そして、そういう意味では、いろいろな考え方がいろいろな立場であるということも、そうした議連の方の活動の中でたくさんの御意見をいただいたところでございます。

 今、一般に使われている世論調査ということでありますけれども、この世論調査の結果を見ましても、これはいろいろな意見があるなということを、これは量的ということではありますけれども、その後ろ側に多くの御意見が、まあ質問が非常にシンプルなので、あるわけでありますが、非常にいろいろな角度からの御意見があったというふうに思っております。

 そういう中で、賛成、反対ということの面で二分しているようなところで物事を進めていくというのはなかなか難しいなというのが、その当時の私の率直な感想でありました。こうした社会全体のこれまで長きにわたった取り組みということについて、それを一歩動かすということについてはなかなか難しいということも感じた点でございます。

 直接、今直ちに民法を改正していくということについてはなかなか難しいなということを私としても感じているところでございますが、通称使用という形で、とりわけ働く女性の中で士業の先生方でありますとか、この分野については女性の方たちが非常に活躍していらっしゃるという中で、具体的な一歩を進められているということもございます。

 こうしたところの取り組みについては事が動き始めているなというふうにも考えておりますので、この動きがさらに進んでいくことができるようなことについても、法務省の中で何らかの対応ができるかなということについて考えていきたいというふうに思っております。

郡委員 おおよそのお考えというのはわかりましたけれども、男女共同参画大臣になられて、二〇〇八年ですか、「女性展望」という雑誌がありますけれども、その中でインタビューに答えられて、今のようなお考えの変遷も言われた上で、選択制夫婦別姓の動きも自然に前進していくんじゃないでしょうかというようなことをおっしゃって、社会の意識が熟していくこと、これが大事だというふうにおっしゃっていた。

 私は、今、社会のこれに対しての思いというのが熟してきているんじゃないだろうかというふうに思っているところです。

 先ほど、世論調査のさまざまな背景も見ていかなくちゃいけないというふうなことでしたけれども、前にも、松島大臣のときにも私は申し上げたんです。松島前大臣もこの夫婦別氏制度については大変積極的にこれまでお取り組みになってこられたので、その立場になったのだから、ぜひおやりになったらどうでしょうかということを申し上げたときに、世論調査のことをやはり例に挙げられました。

 その世論調査については、一番直近の世論調査、確かに数字の面で見ますと反対というか慎重派が多いんですけれども、これは著しく高齢世代といいましょうか、年齢構成に偏りが見られまして、これを是正してまいりますと、慎重とそれから導入すべきだというふうに答えるこの数が逆転をいたします。この現象もあわせて松島前大臣には問わせていただきましたけれども、松島前大臣は、この点についても明快な御答弁はございませんでした。

 今、上川大臣は、より前向きに検討するというふうな御発言であったというふうに理解いたしますが、それでよろしいんでしょうか。

上川国務大臣 委員御指摘の世論調査ということでありますけれども、ほぼ五年ごとに調査をしているというところでございまして、先ほど御指摘のように、年齢別で見ると、やはり時代が少し変わってきているな、動いているなという印象を私も持っているところでございます。

 ただ、数字の中に込められた、比率でやや拮抗しているということでありまして、その中にあって、最近の何回かの世論調査では、通称使用のみの容認というところの部分、このところについてしっかりと質問をしながらデータをとっているというところでございます。

 先ほど、熟しているというふうなお話が委員の方の御意見としてありましたけれども、社会が熟していくということは、時間軸でいうと、あした、あさってというタイムスパンではなくて、時間をしっかりと中長期に求めながら、今何ができるかということを現実的に解決していくということが大事ではないかなという思いで、そのような指摘をさせていただいたというふうに、ちょっと昔のインタビュー記事でしたので、そんなような考え方だったのではないかなというふうに思っておりますし、そのことについては今も変わらないわけでございます。

 ただ、通称使用ということにつきましては、従前よりも一歩も二歩も進んでいるんじゃないかなということでありますが、しかし、現実的には不便を強いられているという場面も少なくないというふうにも思っているところでございます。

 安倍政権の中の、御指摘いただきました女性が輝く社会ということになりますと、そこのところの部分で、活躍をしやすい環境づくりというところについては進めていきたいというふうに思っておりますので、旧姓使用が認められないために社会生活にいろいろな不便をこうむっている、このことについての是正に向けた措置ということにつきましては、関係省庁と協議をしながら前向きに検討してまいりたいというふうに思っております。

郡委員 これは、男女共同参画担当も務められた上川大臣に私から改めて言うまでもないことなのかもしれませんけれども、国連の女子差別撤廃条約が一九七九年に国連で採択されて、ことしで三十五年であります。そしてまた、日本が批准して、来年、ちょうど三十年を迎えます。

 批准国には、女子差別となる法律を改めて、本条約の規定に沿うよう国内法を整備するという義務があるわけであります。国内でも、民法改正を望む女性の願いは切実でありまして、夫婦別姓が認められていないのは憲法と女子差別撤廃条約に反するとして、裁判に訴える例も相次いでいるわけでございます。

 ところが、政府は、国連からの勧告に対しても、そしてまた国民の女性たちの願いに対しても背を向け続けて、民法改正法案を提出しておりません。この現状をどういうふうに捉えていらっしゃいますでしょうか。

上川国務大臣 委員御指摘のとおり、女子差別撤廃委員会から選択的夫婦別氏制度を採用すべきとの勧告、これは一つの例でありますが、平成十五年と平成二十一年の二回にわたって指摘されているところでございます。この勧告につきましては十分に理解をしているところであります。

 そして、選択的夫婦別氏制度の導入ということは、端的に示すとおり、家族のあり方に係る問題であるということから、国民の理解をしっかりと得ながら進めていく必要があるのではないかということでございまして、先ほど来、世論調査の話が出ましたけれども、こうした意識の動向については丁寧にしっかりと取り組んでいくことが大事ではないかというふうに思っているところでございます。

 この女子差別撤廃委員会の見解ということについて、法務省の立場が開きがあるということで御指摘がございましたけれども、こうした指摘されている事項に関する我が国の状況とか立場について説明をきちっとしていく、こういう中で誠実に対応してまいりたいというふうに思っております。

郡委員 松島前大臣にも御紹介をさせていただきました。ことしの六月二十三日、日本学術会議が次のような提言をまとめておられます。

 選択制夫婦別姓で、

  現行規定では、婚姻時に夫または妻の氏を称するとしており、これは夫婦同氏の法的強制を意味する。形式的には性中立的な規定であるが、実際には九六・二%が夫の氏を選択しており、男女間に著しい不均衡を生じさせている。氏は単なる呼称ではなく個人の人格権と切り離すことはできず、夫婦同氏の強制は人格権の侵害である。個人の尊厳の尊重と婚姻関係における男女平等を実現するために、選択的夫婦別氏制度を導入すべきである。

というものでございます。

 これに答えてくださいと事前に通告いたしましたが、お答えは結構です。

 二〇〇一年の十月、男女共同参画会議基本問題専門調査会による選択的夫婦別氏制度に関する審議の中間まとめというのが公表されております。

 少子化への対応から婚姻の障害を取り除き、少子高齢社会で女性の能力を生かす必要があり、職業生活を送る上での支障となるものは除去するという基本姿勢が示された上で、夫婦同氏制度には憲法上の問題があるとし、家族の一体感にとって大切なことは、同氏という形式ではなくて、愛情や思いやりという実質であると指摘し、個人の多様な生き方を認め合う男女共同参画社会の実現に向けて、選択肢を広げる制度の導入が望ましいとし、選択的夫婦別氏制度を導入する民法改正が進められることを心から期待しているというふうに結ばれております。

 これは二〇〇一年でございまして、この当時も、私も本当に恥ずかしいなというふうに思うんですが、少子高齢社会で女性の能力を生かす必要がありですとか、それからまた、少子化への対応から婚姻の障害を取り除きということがもうずっと言われ続けている。どういうふうに思われますでしょうか。

上川国務大臣 この件につきましては、二〇〇一年の専門調査会というところが、民法改正が進められることを心から期待するという内容の中間取りまとめを公表したということでございまして、委員指摘のとおりでございます。

 先ほど来申し上げているところでもございますが、夫婦同氏制度が社会生活を送る上で支障となっているということが、選択的夫婦別氏制度を導入すべきことの主な理由とされたものであるというふうに理解をしているところでございます。

 社会生活の中の支障ということについて、職業人としての女性ということで、旧姓使用が、先ほどちょっと申し上げましたけれども、士業の先生方を中心に広がっているというところもございますので、運用による改善ということも少しずつ進んできているなというふうに思っているところでございます。

 しかし、現在でもなお、社会生活上の不便を強いられているという場面も少なくないというふうに思っておりまして、私としては、再度申し上げたいというふうに思うんですけれども、女性が輝く社会の実現を目指して、旧姓使用が認められないためにこうむっている社会生活上の不便の是正措置につきまして、関係省庁と協議をしながら前向きに取り組んでいきたいというふうに思っております。

郡委員 私は夫の名前になりました。これは選択的なわけです。どういうふうに選んでも構わないわけですよ。その選択制ということに対して、一般の国民の方々にもちゃんと理由を広報すべきだというふうに思っております。

 かねてから申し上げたとおり、事実婚が多くなっているのはなぜか、あるいはまた、ペーパー離婚を繰り返して自分の氏をそのまま使っている、そういう人たちがふえているのはなぜか、そして裁判に訴える人たちがいるのはなぜかということをしっかりと分析していただきたいというふうに思います。

 もう一つですけれども、やはり女子差別撤廃委員会から勧告を受けている、女性の十六歳という婚姻年齢について伺いたいと思います。

 一九九六年当時から、男女とも十八歳が世論調査では大多数でございました。二〇一二年には、現行法維持というのは、世論調査で二〇%まで低下しております。これはすぐ改正すべきだと考えますけれども、いかがでしょうか。

上川国務大臣 御指摘の点でございます、男性十八歳、女性十六歳を婚姻の最低年齢としているところでございまして、一般的に女性の方が、心身の成熟というか発達が早いということも考慮いたしまして、男女差が設けられたものであるというふうに思っております。現在においても一定の合理性があるというふうにも考えるところでございます。

 もっとも、平成二十四年の世論調査におきましては、「女性も男性と同様、満十八歳にならなければ婚姻をすることができないものとした方がよい」とお答えになった方が四六%、「女性は満十六歳になれば婚姻をすることができるということでよい」と答えた人は二〇・九%、こういう数字もございます。婚姻の適齢につきましては、男女ともに十八歳とする改正をすべきであるとする意見の方が、改正に反対の方よりも多いというような結果でございます。

 こうした世論調査の結果も踏まえまして、社会情勢あるいは国民の皆様のお気持ちということの推移ということも十分に考慮しながら、前向きな議論をしていく必要があるというふうに考えております。

郡委員 松島前大臣もこの件については前向きに検討する方向性を示されたと思いますので、ぜひ、上川大臣におかれましては、しっかりやるんだということを明言いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

上川国務大臣 前向きな検討をしっかりと進めてまいりたいと思います。

郡委員 次に、再婚期間の問題で伺わせてください。

 現行法は、女性は、前の結婚を解消した日から六カ月間は再婚をすることができないわけです。民法の七百三十三条であります。再婚後に出生した子供の父親が、前の婚姻関係にあった夫の子なのか、あるいは後で結婚した夫の子なのか、わからなくなることを避けるためだというふうにされております。

 また、私から、釈迦に説法だと思いますけれども、民法には、妻が婚姻中に懐胎した子を夫の子と推定し、婚姻の成立の日から二百日を経過後、または婚姻解消の日から三百日以内に出生した子を婚姻中に懐胎したものと推定する嫡出推定規定があるわけであります。ですから、前の婚姻関係と、それから後で結婚したときと、三百日引く二百日で百日あればわかるわけでありまして、百日あれば、前の夫の子なのか、あるいは後で結婚した夫の子か推定できるわけでして、六カ月待つ必要は何にもないわけです。

 今、婚姻するカップルの二六%は再婚です。離婚、再婚が増加している今日、婚姻をする権利に男女の格差があるのは不合理だというふうに私は思います。女性だけに再婚期間をこういうふうに限定しているのは、女性が離婚して余りにもすぐに結婚する、そういうことをよしとしない封建的な男女観のあらわれではないかというふうな批判の声があるわけですけれども、大臣の御所見はいかがでしょうか。

上川国務大臣 ただいまの御指摘の件でございますが、民法七百三十三条の再婚禁止期間ということで、三百から二百引いて百、こういうお話もございました。嫡出推定が重複する事態を避けるために女性の再婚禁止期間が百日で足りるという御指摘があるというのは、今先生もおっしゃったとおりということで承知をしているところでございます。

 平成八年に法制審議会からも答申が出されておりまして、再婚禁止期間を百日に短縮すべきであるとされていたものというふうに承知をしているところでございます。

 再婚禁止期間が六カ月であるということの妥当性につきましては、社会情勢、国民感情の推移等を考慮しながら今後議論をしていく必要があるのではないかというふうに考えております。

郡委員 神戸家裁が先月の十八日、この民法七百七十二条の推定で、出生届を出されないまま無戸籍になっていた方に、埼玉県の女性でしたけれども、父親欄を空白にした母親の戸籍に入ることを認める判決を出しました。

 これも非常に画期的なことだなというふうに受けとめたんですけれども、その前に、既に法務省も、この無戸籍の問題についていろいろなところから声が上がって、関心を示され、そして、無戸籍の人が結婚や就職で不利益を受けたという声に応える形で、こういうような人たちがどれぐらいいるのだろうかという情報収集を始められたようでございます。

 全国の法務局へ通知を出したということですけれども、どこまで調査が進んでいましょうか。

上川国務大臣 御指摘の、無戸籍者の数ということでございます。

 調査を行っている現状の中間的な御報告ということになりますけれども、法務局から法務省の方に連絡がございました、戸籍に記載されていない者、これが無戸籍者ということでございますが、今の集計時点でございます暫定的な数字でありますが、十月十日の現在で二百七十九名であったというふうに承知をしております。

郡委員 私の想像よりも人数としては少なかったというふうに思います。

 この問題、そしてまた、その方々に対してのしっかりとした対応というのも必要になってくるわけですし、さらに調査を続けていただきたいし、迅速な対応をとっていただきたいというふうに思います。

 この問題に関しては、婚姻期間の差別の問題については一九九五年に合憲判断が最高裁で出されているわけですけれども、同じ九五年に非嫡出子の相続分についての合憲判決も出されましたが、それが覆って、最高裁判決が違憲であるとなり、そして民法改正につながったわけであります。

 九五年、今からもう二十年近く前で、この問題がずっと積み残されたままになっている。この女性の再婚禁止期間について、やはり社会的因子の変化、これも加味されて、今争われている裁判もあるようですけれども、かつての判断が変更されるという新しい判断が示されるのではないかと私自身は考えていて、そして、そうあってほしいというふうに願っているところです。ぜひ、この点についても御検討をお急ぎいただきたいというふうに思います。

 次は、イスラム過激派組織イスラム国に関することで、シリアへの渡航を企てた北大生の問題、私も非常に大きな衝撃を持って受けとめました。そしてまた、カナダでのテロの事件ですけれども、大きな懸念であります。

 現行の国際秩序に対して異議を唱えて、力による変更を主張するイスラム国ですけれども、いかなる国や集団であれ、現行秩序の武力による変更というのには、私自身も断固反対でございます。また、テロ集団の、非人道的で、人権じゅうりんと卑劣なテロ行為、これは断じて許してならないという立場であります。

 テロとの闘いに、軍事力だけでなく、我が国の掲げる総合的な安全保障政策あるいは人間の安全保障といった手法を駆使して、中長期的なテロ撲滅の闘いに我が国がリーダーシップを発揮すべきだというふうに考えているわけです。

 ところで、この北大生の件なんですけれども、別の視点から確認しておきたいというふうに思います。

 報道によりますと、イスラム過激派組織イスラム国に参加するためにシリアに渡航しようとしたとして、警視庁公安部が北大生から事情を聞いたということですが、容疑とされたのは私戦予備・陰謀罪、刑法九十三条だというふうに認識をしています。

 この刑法九十三条、私戦予備・陰謀罪は、戦後、これまで起訴された事例があるのでしょうか。

上川国務大臣 お尋ねの、刑法の九十三条、私戦予備及び陰謀罪ということでございますが、起訴例につきましては承知をしておりません。

郡委員 続いて、警察庁にお尋ねをいたします。

 この容疑で強制捜査は初めてなのでしょうか。シリアへの渡航準備を私戦予備というふうに見ることにはちょっと無理があるんじゃないかという指摘もありますけれども、問題はなかったでしょうか。

塩川政府参考人 お答えします。

 把握している範囲では、強制捜査を行ったのは今回が初めてであります。

 御指摘の事件は、現在、警視庁において大学生が反政府武装組織イスラム国に戦闘員として加わることを目的に我が国からシリアへの渡航を企てたという疑いで捜査を行っている、私戦予備・陰謀被疑事件でございます。

 この事件捜査の過程で、警視庁は、刑事訴訟法の手続に従って、裁判所から令状の発付を受けて、複数箇所の捜索、差し押さえを行ったものでございます。

郡委員 この強制捜査では、この北大生を取材していたジャーナリストに対しても家宅捜索が行われて、パソコンなどが押収されたようであります。

 ジャーナリストに対する強制捜査は、取材活動を萎縮させるおそれもあって、慎重の上にも慎重を期さなくちゃいけないというふうに考えているわけですけれども、本件においては、そのような強制捜査は必要だったのでしょうか。

塩川政府参考人 お答えします。

 この事件捜査では、複数箇所に証拠物が存在する可能性がありましたため、これらの箇所について必要な捜索、差し押さえを行ったものであります。

郡委員 余り時間がなくなりましたので急ぎますが、国連安全保障理事会が九月に、テロ目的の外国渡航者や支援者を処罰するための法整備を加盟国に義務づける決議をいたしました。

 外務省、その正確な内容、そして我が国で実行するためにどういうふうな検討がなされたのか、端的にお答えください。

河野政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘いただきました国連安保理決議二一七八号でございますけれども、これは、テロ行為の実行あるいは参加などを目的として渡航すること、あるいはこういった渡航への資金提供といった行為を各国連加盟国が国内法で犯罪化するということを求めることを主眼とするものでございます。

 この決議の実施でございますけれども、既に、国内法にも言及がございましたけれども、我が国の国内法上、もちろん個別具体の事情にもよるところでございますけれども、こういったテロ行為の実行のための渡航、あるいはこういった渡航への資金提供といった行為につきましては、処罰対象となり得るものがあるというふうに理解しております。

 いずれにしましても、この安保理決議の実施につきましては、各国の対応なども踏まえつつ、さらに詳細を政府部内で検討していく所存でございます。

郡委員 時間がなくなりましたけれども、私戦予備・陰謀罪もこの国連決議で義務づけられた法制の一つなのだというふうな理解だというふうに聞きましたけれども、個別の事案でコメントはできないでしょうが、こうした類いの案件というのは特定秘密保護法が適用される可能性も否定できないんじゃないかと私は思っておりまして、特定秘密保護法に関しては、国連の自由権規約委員会から政府に対して、情報を収集し、受け取り、発信する権利や表現の自由に適正かつ必要最小限であることとの勧告が出されております。いわゆる知る権利、表現の自由、これに十分に配慮しなくちゃいけないというふうに言ったものだと思います。

 こうした観点を踏まえ、上川大臣には、刑法及び特定秘密保護法の運用に当たっていただきたいというふうなことを最後に申し上げたいと思います。人命尊重、人権尊重、人間の尊厳を守るという立場から、テロと闘う日本として重要な問題なので、改めて、あえて要望をさせていただきました。

 質問を終わります。

奥野委員長 郡君の質疑は終了しました。

 次に、階猛君。

階委員 民主党の階猛です。上川大臣、本日はよろしくお願いいたします。

 最初に、政府内の法令遵守体制についてということですが、所信の中で大臣は、紛争を未然に防ぐという観点からの予防司法を充実させるというふうに述べられました。他方、松島前大臣は、十月三日の予算委員会でこのように述べています。法務省というのは、政府の顧問弁護士として、いろいろな訴訟が起きてから対応するのではなく、それを未然に防止する、そのような法的な支援、アドバイスを行ってまいりたいと言いました。

 先ごろの上川大臣の所信の発言は、今の松島前大臣の国会での答弁を踏襲するものと理解してよろしいですか。

上川国務大臣 今回の所信の中で、私自身、予防司法という形の中で充実を図りたい、そういう思いを伝えさせていただきました。訟務機能の充実強化に取り組んでまいる所存でございます。

 松島大臣の御答弁、今、正確にフルテキストでちょっと把握ができていないので、それと御一緒かどうかということでありますが、予防司法というところについては、特にコンプライアンスの問題も非常に大事だというふうに思っておりますので、ひとつ、そういう意味でこれから少し検討をしていきたいなというふうに思っているところでございます。

階委員 では、予防司法を充実させるという先ごろの所信は、どういう意味でおっしゃられたんですか。大臣の言葉で結構ですので、どういう意味で言われたのかということを教えてください。

上川国務大臣 法務省の中で、訴訟に対して適切かつ迅速に対応するためということ、そして同時に、紛争を未然に防止するという観点からの予防司法の充実ということにつきまして、充実強化に取り組んでまいる所存というふうに申し上げたところでございます。

階委員 全く答えになっていなくて、今のは所信で書かれてあることをそのまま繰り返しただけですよ。やはり、所信というものは自分の言葉で述べなくちゃいけないと思いますよ。何か、役所が書かれたものをただ読んでいるだけだから、今のような質問に対して自分の言葉で答えられないんですよ。そんなことでいいんですか。法務大臣として資質が問われると思うんですが、違いますか。

上川国務大臣 予防司法ということで、そのことにつきましても真剣に取り組んでまいりたいというふうに思っているところでございます。

 この点につきまして、今現状、そしてこれからの方向性につきましては、しっかりと検討しながら進めてまいりたいというふうに思っております。

階委員 この点については、松島前大臣の方が、より具体的に、自分の言葉でお話しになられました。それが先ほどの十月三日の予算委員会での答弁です。

 繰り返しますね。法務省というのは、政府の顧問弁護士として、いろいろな訴訟が起きてから対応するのではなく、それを未然に防止する、そのような法的な支援、アドバイスを行ってまいりたい、このように答弁されたんですね。

 こういうことでよろしいですか。繰り返します。

上川国務大臣 松島前大臣と同じ考え方で臨んでいきたいというふうに思っております。

階委員 ぜひそのようにお願いしたいんです。

 そこで、質問ですけれども、松島大臣は、徹頭徹尾、記者会見でもこの委員会でも、問題になっているうちわについて、うちわの形をした討議資料という弁解をされていました。これは、要は、単なるうちわだということになれば違法だということはわかった上で、だから、うちわと明言されずに、討議資料という名目にして法の潜脱を図ろうとしている。これが、私どもが質問している中で明白だったと思います。

 そういう法のグレーゾーンを極力なくして、手前勝手な法解釈によって法の潜脱を図ろうという行為を防ぐことが、私は、紛争を未然に防ぐという観点から予防司法を充実させるということにつながるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

上川国務大臣 今御発言がございました御意見、真摯に受けとめたいというふうに思っております。

階委員 そこで、私が前回この委員会で質問したときに明らかになったことなんですが、これは総務省の選挙部長の答弁で、うちわ配布の違法性ありやなしやの判断において、討議資料という記載があるかどうかは関係ないという趣旨でした。

 これから今回の松島前大臣のような法的な問題を防ぐためには、私は、二つのことを、法務省から総務省、選挙を管轄する総務省にアドバイスすべきではないかと思っております。一つ目は、うちわを選挙区内にある不特定多数の者に配布することは公選法違反であるということです。それからもう一つは、うちわに討議資料の記載があってもこの結論には変わりはないということです。

 この二つは、さっき大臣も認められましたよね、松島大臣の十月三日の予算委員会の答弁を踏襲するということですから、それによると、各省に法的な支援、アドバイスを行っていくということだから、大臣、今の二点について総務省にアドバイスをして、そこから各選挙管理委員会に通達なりを出して、各選挙管理委員会から今の二つのことを発信させるようにすべきだと思いますけれども、いかがですか。

上川国務大臣 ただいまの御質問でございますけれども、現在、告訴されているという状況でございますので、司法の中の判断ということについて結果を待ちたいというふうに思っております。

階委員 うちわを選挙区内にある不特定多数の者に配布することは公選法違反となるという一点目につきましては、選挙管理委員会によっては、明確にホームページなどで掲載されています。それはこの委員会でも明らかになっていますし、私が前回資料として出しましたけれども、公選法の事例集といいますか、質疑応答集ですか、その中にもそのことは明確に記載されています。

 ところが、松島大臣は、それを知っていたんでしょうけれども、知っているのでああいう苦し紛れの弁解になったと思うんですけれども、だから、それを明確にするということですから、今回の事件に関連して何かやるということではないんです。今まで公になっていたものを改めて明確にしてくださいということを申し上げています。

 それから、二点目について、すなわち、うちわに討議資料の記載があっても違法性に変わりはないということについては、先ごろこの委員会で明らかになったことです。

 二つとも、大臣に新しい判断を要求しているわけでもないですし、現在の事件とは全く関係ありません。だから私は申し上げています。もう一回お願いします。

上川国務大臣 ただいまの御質問の件についても、現在、うちわに係る部分について告訴されているということでございますので、私自身、法務大臣として言及することができないということで、答弁は差し控えさせていただきたいと存じます。

階委員 予防司法を充実させるんじゃないんですか。紛争が起きますよ、こんなことじゃ。早く法の解釈を明確にしないと、グレーゾーンを放置していたら、また同じような問題が起きかねませんよ。それでいいんですか。先ほどの所信と矛盾するんじゃないですか。

上川国務大臣 予防司法の基本的な骨格でございますが、国を被告とするものということでございまして、今のケースについては、個別の案件ということもございますし、答弁は差し控えさせていただきたいというふうに存じます。

階委員 先ほど、国が訴訟の当事者となってということは私も全然引用していませんし、松島前大臣が言っていた、紛争を未然に防止するということで法的な支援、アドバイスを行っていくというところを私は引用して、それを踏襲されるということを述べているわけですよ。だから、ちょっと違いますよ。

 紛争予防というのであれば、紛争を未然に防ぐ観点から、先ほどのような二点、これほど国会でも問題になった点は早くに選挙管理委員会から公にして、二度とこういう問題が起きないようにすべきではないんですか。

上川国務大臣 今回の件に象徴されることにつきましては、司法の方の結論を待ちたいというふうに思っております。

階委員 繰り返しになりますからこの点はここまでにしておきますけれども、紛争を未然に防止するということは本当に重要ですよ。コンプライアンスというのはそういうことだし、グレーゾーンをなくすことが紛争の未然防止につながりますし、先ほど柚木さんもおっしゃっていたような、グレーゾーンをなくすことによってモラルハザードも防げるわけです。この点は、大臣、所信でも述べられましたので、しっかり取り組んでいただきたいと思っています。

 それで、特定秘密保護法を担当されていますので、特定秘密保護法に絡んで、紛争を未然に防ぐというか、法令遵守体制がこのままでいいのかということを少しお尋ねしていきます。

 特定秘密保護法にも仮にグレーゾーンがあれば、法務大臣としても、担当大臣としても、そのグレーゾーンの解消に努めるべきでないかというふうに思いますけれども、この点、間違いないでしょうか。

上川国務大臣 そのように理解をしております。

階委員 ありがとうございます。

 それで、十月六日の予算委員会で、私が総理にお尋ねしたんですね。何を聞いたかというと、「政府にとって不都合な情報が、特定秘密に指定されるなどして国会に開示されない可能性があるのではないかという懸念があります。」と。そこで、こうした事態を防ぐための法制度上の担保はあるのかという質問をしました。

 これに対して総理は、閣議決定である運用基準において、行政機関が特定秘密の提供を拒む場合は独立公文書管理監にその理由を疎明しなければならないので、独立公文書管理監に特定秘密が提供されない場合は限られるということでした。限られると言っていました。

 しかし、限られるにせよ、私の質問のとおり、政府にとって不都合な情報が特定秘密に指定されるなどして国会に開示されない可能性があるということに結論としてなると思うんですが、それでよろしいですか。

上川国務大臣 ただいまの総理の発言につきまして、委員、丁寧に読み上げていただいたわけでございますが、ちょっと活字で見ないとなかなかわかりにくいので、もう一度よろしいでしょうか。

階委員 この点については朝日新聞も社説で総理の答弁を引用しておりますので、特定秘密の担当大臣でしたら当然その社説も読んでいらっしゃるかと思って私は聞いたわけですが、読んでいらっしゃらないようなので、改めて言いますね。

 総理が言ったのは、閣議決定である運用基準において、行政機関が特定秘密の提供を拒む場合は独立公文書管理監にその理由を疎明しなければならないので、独立公文書管理監に特定秘密が提供されない場合は限られると言っていました。限られるというのは、提供されない場合もあり得るということだと思いますが、それでよろしいですか。

上川国務大臣 ただいまの御質問の中で言及された総理の答弁ということでございますが、特定秘密保護法の第十条第一項の規定によりまして独立公文書管理監に特定の秘密を提供するものということでございますが、行政機関の長は、特定秘密の提供が我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがないと認められないとして求めに応じられないときは、その理由を独立公文書管理監に疎明しなければならないというふうにしているところでございます。その限りにおきまして、あるということでございます。

階委員 そこで、結局、役所の人が今の法制度の抜け道を利用して、自分たちに不都合な情報を隠してしまうのではないかということが考えられるわけですよ。疎明すればいいわけだから、疎明しさえすれば拒むことはできるわけだから、そういう自分に都合のいいような恣意的な解釈で情報提供を拒む、情報開示を拒むことがあり得るんですけれども、これをどのように防ぐか。大臣として、そのあたり、もう既に御存じであるかと思ってお伺いしますけれども、どうですか、これを防ぐ手だてはありますか。

上川国務大臣 今回閣議決定された運用基準ということでございますが、これにおきまして、指定の要件が明確に限定されているというふうに理解をしているところでございます。第一点目は、法律の別表に掲げるものであるということ、そして、公になっていないもののうち、その漏えいが我が国の安全保障に著しい支障を与えるおそれがあるため、特に秘匿することが必要であるもの、この三要件ということで限られているところでございます。この要件を満たさない指定につきましては、違法かつ無効であるというふうに考えております。

 その意味で、この指定の要件を厳格に運用することによって、今御指摘のようなことがないように、またこの運用基準で定めているところでございますので、それをきちっと運用していく、実施していくというところが極めて大事だというふうに思っております。

階委員 しかし、運用基準というのは閣議決定ですよね。法的な拘束力はありますか。違反した場合にペナルティーはありますか。お答えください。基本的なことです。

上川国務大臣 この運用基準の閣議決定の持つ極めて大きな意味ということでございまして、これは、閣議決定の部分が、担当者というか、運用する側に極めて強い拘束力があるというふうに考えております。したがって、これに対して反するような行動ということになりますと、これに対しての懲戒免職なりいろいろな処罰が来るということでございますので、国家公務員法の規定にものっとって対応しなければいけないというふうに思っております。

階委員 今、懲戒免職もあるというお話でした。違法な秘密指定、あるいは、この運用基準の中には、法令違反の事実またはその隠蔽を目的とする指定を禁止という項目もあります。だから、これに違反しても懲戒免職になり得るということでよろしいですね。答えてください。さっきの繰り返しというか、懲戒免職ということをさっきおっしゃったんだから。言ってください。

上川国務大臣 仮に指定の要件を満たさない情報を特定秘密に指定するということがございましたならば、その指定をする際の決裁文書につきましては、この内容が虚偽の公文書に当たるということでございます。したがって、違法性を認識しながらその決裁文書を作成した者、その手続に関与した者につきましては、虚偽公文書作成の罪に問われるというふうに考えております。(階委員「懲戒免職のことを聞いています。さっき言いましたよ」と呼ぶ)

奥野委員長 では、階君、どうぞ。

階委員 質問に答えていないですよ。懲戒免職になるということをさっき聞いたんですけれども、それは、法令違反の事実またはその隠蔽を目的とする指定を禁止というのが運用基準にありますけれども、その点についての違反でも懲戒免職になり得るかどうか、これを聞いています。端的にお答えください。

上川国務大臣 ただいま私の発言が舌足らずだったなというふうに思っているところでございますが、個別の事案に照らして判断をするということでございます。

階委員 では、個別の事案に照らして懲戒免職になる場合もあるというふうに承りました。うなずいて、結構です。どうぞ、では、答弁してください。結論だけでいいです。

上川国務大臣 可能性はあり得るということでございます。

階委員 ということで、法令違反の事実またはその隠蔽を目的とする指定は懲戒免職もあり得るということなんですが、これはやはり、懲戒免職するかどうかは役所の判断ですから、それもまた弱いと思っています。

 そこで、今回、運用基準の中で内部通報制度というのも設けられておりますが、大臣、それは御存じですよね、当然。はい、うなずいていただきました。

 そこで、この内部通報制度について伺いますけれども、運用基準を見ますと、まず自分の役所、総務省なら総務省、法務省なら法務省に通報してからでないと、独立公文書管理監に通報できないことにされています。しかし、自分の役所、すなわち、上司だったり、自分の上役で人事権を左右するような方だったりする可能性もあるわけですけれども、だとすると、通報者が萎縮して、本来通報すべきものを通報しなかったり、あるいは、せっかく通報しても同じ役所の中でもみ消されたりするのではないか、こういう不安があります。

 この点について、なぜ、まず自分の役所からなのかということを、理由を教えていただけますか。

上川国務大臣 運用基準におきまして、通報制度につきましては、まず各行政機関に対して行うということでございます。

 この理由ということでございますが、指定の必要性や理由について承知しているなど専門的な知見があり、通報に適切に対応することができること、さらに、不適切な指定等があった場合に指定の解除等の措置を迅速に行うことができることなどから、第一次的には各行政機関の窓口へ通報することとしているところでございます。

階委員 萎縮したりあるいはもみ消しに遭ったりという懸念については、十分それは払拭されると思いますか。

上川国務大臣 そのような運用ができるように周知徹底しながらまた対応していくということで、ルールにのっとってしっかりと通報制度も生かすことができるようにしてまいりたいというふうに思っております。

階委員 これも本当に運用次第で、法的には何ら縛りはないわけですね。

 それから、一方で、内部通報する人は、これは違法な指定だと思った秘密を、そのまま内部通報窓口に伝えられるわけではないんです。運用基準によりますと、特定秘密とされるものの概要を通報しなくてはいけない。概要ですから、自分の判断で、どこまでが概要かということをまとめて、縮めて通報するわけですけれども、要約に失敗した場合、縮めることに失敗した場合、過失の漏えい罪で刑罰が与えられるのではないですか。

上川国務大臣 特定秘密でございますが、「その漏えいが我が国の安全保障に著しい支障を与えるおそれがあるため、特に秘匿することが必要であるもの」でありまして、通報の形であったとしても、特定秘密そのものを漏えいすることになれば、我が国の安全保障に著しい支障を与えるおそれがあり、漏えい罪に問われ得るというふうに考えております。

階委員 だから、そこがおかしくて、勇気を振り絞って内部通報した人は、ちょっとその概要を書き過ぎたということで刑罰を与えられるわけですね。他方で、その勇気ある内部通報をもみ消した方は、全く刑罰は科されないんですね。運用を適切にしてまいるという話で済まされてしまうわけです。これもバランスを失していると思いますよ。

 そこで、私が今るる申し上げたとおり、特定秘密保護法にはグレーゾーンが大きく二つあると思っています。一つは、運用基準は閣議決定で定められています。法令と異なって、政府を拘束する力は弱いということです。それからもう一つは、違法あるいは不当な秘密指定を事前に防ぎ、事後に是正する手段が今のままでは不十分だということです。

 こうしたことをなくする、つまり、グレーゾーンを解消するために、そもそも特定秘密保護法とその関連法令を改正すべきであり、その改正がなされるまでは特定秘密保護法の施行は先送りすべきだと考えます。いかがですか。

上川国務大臣 今回、さまざまな議論を通じて特定秘密保護法が法律として成立をし、その中で、閣議決定において運用基準というものが明確につくられているところでございます。

 先ほど、通報制度ということで、行政の方にまずということで萎縮が起きないかというような話も含めてございましたけれども、そういうところについても含めて、この制度が、運用基準にしっかりのっとって運用することができるようにしてまいりたいというふうに思っております。

階委員 この関連で最初に私がお尋ねしたのは、特定秘密保護法もグレーゾーンがあれば、法務大臣としても、担当大臣としても、その解消に努めるべきではないかということをお尋ねしたところ、大臣はきっぱり、そうだと言いましたよね。でも、今の話だと、全く中途半端だと思いますよ。

 法令を改正すべきだと思いますが、もう一度、その点について御見解を伺います。先ほどグレーゾーンは解消すべきだとおっしゃったこととの関係で、もう一回確認させていただきます。

上川国務大臣 ただいまの先生の御指摘のとおり、グレーゾーンの解消に努めてまいりたいというふうに思っております。

階委員 では、法令を改正するのが筋だということを改めて強く申し上げます。

 テーマをかえます。

 女性の人権擁護についてということですが、所信の中で、松島前大臣の御指示を受け発足した性犯罪の罰則に関する検討会についても、今後、議論を見守りたいというようなことがありました。

 大臣は現行の刑法における性犯罪の法定刑は妥当と考えているのかどうか、この点について御見解をお尋ねします。

上川国務大臣 所信で述べましたとおり、この点につきましては、松島前大臣からしっかりと取り組んでほしいということで引き継ぎましたので、そのお気持ちにしっかりと応えてまいりたいというふうに思っております。

階委員 性犯罪の法定刑、現行法の法定刑は妥当かどうか、大臣の御見解で結構です、お答えください。大臣の御見解を聞いています。別にそれでとやかく言いません、個人的な見解を聞いています。

奥野委員長 秘書さんたち、紙を出すのもいいけれども、もう少し自分の気持ちをちゃんと素直に述べてもらうような会をしていった方がいいと思いますから、自分の気持ちをぜひ言ってください。

 それでは、質問をもう一回。さっき聞いていなかったと思うんだ、僕は。

階委員 ちょっと敷衍しますと、松島前大臣は、現行法の、例えば強姦罪と強盗罪の法定刑に開きがあって、強姦罪の方が軽いのはおかしいのではないかというようなこととか、あるいは、強姦致傷罪と強盗致傷罪を比較して強姦致傷罪が軽いのはおかしいのではないか、こういう問題意識でこういう検討を始められているんですね。同じようなお考えということでよろしいですか。

上川国務大臣 私もそのように感じております。

階委員 それで、大臣、なぜこういう開きがあるか、そもそも刑法がなぜそういう一見不合理と見られるような法定刑の定め方をしているのかということを考えたことはありますか。自分なりにその理由というのを考えられたことはありますか。率直に答えてください、全然そんな、追及じゃないですから。前向きな、建設的な話をしたいんです。悩むところじゃないです。

上川国務大臣 刑法というのは大変大きな法律でございまして、その時々の社会状況とかいうことを踏まえた形で、犯罪の種類あるいはそれに対しての刑罰のあり方というものがいろいろな御審議の中で決まってくるということで、そういう中で、時代の流れの中で犯罪の種類が変わってきている中での時間差の中にその問題の本質が潜んでいるのではないかというふうに感じております。

 今の時点で……(階委員「いや、考えていなかったらそれでいいんです」と呼ぶ)今、法律の規定……(階委員「今考えなくてもいいです」と呼ぶ)はい。(階委員「率直に答えてください、時間が無駄ですから」と呼ぶ)

 こういう犯罪の種類ということについても、また、その罪状、そして法定刑の、刑罰のあり方ということについては、時代の中で、その時々の状況の中で、いろいろ判断をしながら決断していく中で積み上がってきているものだというふうに思います。

 その意味で、今の時点で切ってみますと、いろいろな形で今御指摘のように法定刑についての違いが出てくるということについて、やはりどこかで立ちどまってそれを見直していくということは極めて大事だというふうに思っておりますので、そういう意味で、松島前大臣の御主張、御意見というもの、思いをしっかりと受けて、私もこの件につきましてはしっかりと取り組んでいきたいというふうに思っております。このことについて考える大変大きな課題でございますので、しっかりと取り組んでまいりたいというふうに思っております。

階委員 今いろいろ述べられて、その御努力には敬意を表しますけれども、私の質問は単純な話で、これまで法定刑に開きがあることを、なぜそうなっているのかと考えたことはあったのかという質問だったんですね。別に、ないならないでいいんですよ。私も、そういう問題提起があるまで深く考えたことはありませんでした。

 それで、私もるる考えてみたんですね。それで、私の結論ですけれども、私は、この性的犯罪の刑法各論の中での位置づけに関係するのではないかと思っています。というのは、刑法を大学とかで学んだ人は、罪には三種類ある、国家的法益に対する罪、社会的法益に対する罪、個人的法益に対する罪、この三種類なんですが、性的犯罪というのは社会的法益に対する罪のところに位置しているんですね。例えば賭博罪とか汚職と一緒のところにあるんですよ。

 私は、これがおかしいんじゃないかと思うんですね。単に法定刑に開きがあるから直すじゃなくて、私は、この社会的法益に対する罪というところを改めないといけないんじゃないかと。女性の人権を守ろうというのであれば、やはり個人的法益の中でも最も大切な女性の性的な自由、これに対する罪なんだというふうに刑法上の位置づけを変えないと、私は根本的な改正にはならないと思います。どうでしょう。

上川国務大臣 今回、前大臣が有識者の皆様にお願いをして、しっかりと検討していくという方向性を打ち出して、それを残されたということでございます。

 今委員がおっしゃったようなそうした考え方、深く考えられた上でそうした御結論ということでございますので、そういったことにつきましても、私自身もしっかり考えていきたいというふうに思います。

階委員 さらに、性的犯罪について重要なことは、親告罪というふうになっていますけれども、この親告罪というのも私は問題があると思っています。

 親告罪になっている趣旨なんですけれども、通常は被害者のプライバシーの保護ということに理由があると言われていますけれども、今、訴追や公判の段階で、被害者のプライバシーを保護するようないろいろな仕組みができてまいりました。また、今回の法制審の新たな刑事司法制度の答申でも、犯罪被害者及び証人を保護するための方策の拡充というのも盛り込まれています。こうしたことからすると、当初、親告罪としていた趣旨、被害者のプライバシーの保護ということの必要性は薄れてきたのではないか。

 他方で、親告罪にしていることのデメリット、例えば、被害者が、親告するかしないか、そういう選択の精神的な負担を強いられる、あるいは、周囲から、家族であったりあるいは恋人であったり、そういう人から告訴しないようにという無言の圧力が働いたり、告訴しなかった場合に、やましいことがあるのではないかというふうな臆測を持たれたり、告訴するとした場合には加害者から報復の危険があったり、あるいは、告訴しないで犯罪者が放置されると再犯の危険があったりということで、私は、親告罪、すなわち、被害者が事件にするかしないかを選ぶのではなくて、親告の有無にかかわらず性的犯罪は事件になるという方が望ましいと思うんです。

 この点について大臣の御見解を伺います。

上川国務大臣 今委員から、いろいろな状況の中での、被害者の皆さんが大変大きなトラウマを持っていろいろなことを考えていかなければいけない状況ということの説明がございましたけれども、こうしたさまざまな意見があるということは承知をしているところでございますので、今後、この性犯罪の罰則に関する検討会が開かれましたら、親告罪あるいは非親告罪という形のものにつきましても検討をしていきたいというふうに思います。

階委員 ありがとうございます。

 大臣、ちょっと私に対して警戒心を持ち過ぎだと思います。私、そんなに怖い人でもありませんし。いや、本当に、今の答弁は大変いい答弁でした。ありがとうございます。

 それで、もうちょっと砕けた質問をさせていただきますね。

 資料の方をごらんになってください。実は、この間、もりおか女性センターの田端さんというセンター長にお会いしてきて、お話を聞いたときにいただいた資料なんです。

 その田端さんが上川さんのことをよく存じ上げていて、自民党の何かの会議のときに出席して、同じ資料を用いて説明をしに行った、その後、何かお礼状までいただいてということで、大変感激していました。

 きょうは、その資料の中で抜粋したものを持ってきていますけれども、女性の置かれている現状と課題ということで、ここに書いてあるように、固定的性別役割分業が根強く残るとか、女性たちが自分らしく生きることを阻まれているとか、農業や漁業に従事する女性たちはアンペイドワークが大変多いといったようなことが挙げられていますね。

 こうしたことを克服するためには、次のページですけれども、例えば、農家などを念頭に置いていると思いますけれども、市場に出せない作物の販売、加工品の製造、規格外の野菜や海産物といったものを販売するようなことで経済的な自立を果たしたらどうか、あるいは、暮らしの中や社会的に積み上げてきたものを商品化していくこと、趣味を生業とすること、夢を実現していくこと、こういう経済的な自立を通して、女性が活躍し、かつ、女性の自己肯定感が高まって、女性が輝く社会が実現できるのではないかということでした。

 こういう現状認識、それから課題克服のための方策、女性が輝く社会の政府の一員であると所信でも述べられていましたし、また、人権擁護行政を推進して、一人一人の人権が尊重される豊かで成熟した社会の実現を目指すというふうに言われていましたので、今のような取り組みについてどのようにお考えになっているのか、お答えください。

上川国務大臣 ただいま配付をしていただきましたこの資料を拝見させていただいて、大変懐かしく、また、お顔が浮かびまして、地域の中で女性たちがいろいろ励まし合いながら大きな輪をつくっているということ、そしてその中から、今御指摘があったような具体的な取り組みも現場の中から出てくるということについて、大変大事だというふうに、その取り組みのことについてヒアリングさせていただいたときにも感じたところでありますが、まさにこうしたことの取り組みを応援していくということが非常に大事だというふうに思っております。

 そして、そのことを通じて、先ほどおっしゃったように、一人一人の女性が自信を持って地域社会の中で活躍をしていただく、そしてそれが地域社会の中で役割を果たしていく、いろいろな課題を解決していく、そういう道筋をもう既にこの盛岡のセンターは具体的なアクションとしてやっていらっしゃったということに、私自身は大変感激と感動をしたものでございます。

 そういう意味で、こうした取り組みをきめ細かく見ていきながら、そうした地域社会の中の非常に素朴でありながらも力強い活動について支援をしていくということ、このことが女性が輝く社会の大変大きな柱になるというふうに今でも思っているところでございます。

階委員 ありがとうございました。

 そこで、そのもりおか女性センターが、女性の起業を支援する芽でる塾という活動をされているということで、三ページ目、四ページ目に挙がっております。これまで六年間で二十九人の起業家を輩出したということでありますが、今、この活動が、今まで民間団体の支援を受けてやっていたんですけれども、これが今年度末で打ち切られて、五百万円ほど年間の活動費がかかるらしいんですけれども、存続が厳しくなっているということです。

 今、女性が輝く社会ということなんですが、私は、都市部のホワイトカラーの女性だけではなくて、地方の農村部に住むような女性の方も輝いてもらうためには、こういう活動をぜひ政府の一員として支援する、そのためには予算措置も講じていくような、そういう前向きな活動をされたらいかがかと思うんですが、いかがでしょうか。

上川国務大臣 今、現状が大変厳しいというお話を初めてお伺いしたところでございます。このことに対してどういう取り組みができるのか、検討していきたいと思います。

階委員 どうもありがとうございました。

 そろそろ時間でございますのでまとめますけれども、先ほど、性犯罪の中で、私の考えというか、性犯罪の罪の中での位置づけ、社会的法益ではなくて個人的法益に位置づけるべきだと。これは、私個人だけの考えではなくて、優秀な弁護士さんからもサジェスチョンをいただいて、そういう結論に至っております。

 ですから、この点もぜひ、検討会議でしたか、その中で議論していただけるようにお願いしたいんですが、最後にこのことだけお願いします。

上川国務大臣 先生の御指摘の件も含めて検討いたします。

階委員 終わります。ありがとうございました。

奥野委員長 これで午前の質疑は終了しました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時九分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

奥野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。丸山穂高君。

丸山委員 維新の党の丸山穂高でございます。

 午前に引き続きまして、午後からも、上川大臣に、一般の質疑を行わせていただきます。

 まず、前大臣にもお伺いしたんですが、大臣がやめられてしまったということで、もう一度お伺いしておかなければならない重要なことをお伺いしたいと思います。

 泉南アスベストの訴訟の件でございます。

 厚労大臣が、先日、大きく動かれまして、具体的に会見をされました。

 まず、そもそも、泉南地域のアスベスト工場の元労働者の皆さん、御家族の皆さんが、今回のアスベスト被害の集団国賠訴訟を起こされて、もう八年以上にわたってずっと闘ってこられて、ようやく先日、最高裁で、この健康被害に対して国の責任を一陣、二陣とも認めるというふうに出ました。

 ただ、残念ながら、第一陣の方が高裁の方に差し戻されているという状況において、ここで今こそ政治的な救済措置が必要であって、そして、その決断をぜひお願いしたいということを、私は、地元の大事な案件でございます、多くの皆さんのお話を伺っていて本当に胸に迫ってくる問題で、何とか一日でも早い解決をと思って、当選以来、活動してまいりました。

 そして、その中で、多くの有志の先生方、議員の方々にもお願いして、そして、役所にもお願いに回って、先日の委員会でも、厚労大臣はもちろん、松島前大臣にもかなり前向きな御答弁をいただいて、そして、先日の厚労大臣会見が行われました。

 この会見はもちろん皆さん御存じだとは思うんですけれども、厚労委員会の場ではないので少し御説明させていただきますと、このアスベストの訴訟について国の方の責任は既に認められていましたが、先ほど申し上げたように、第一陣の方が高裁に差し戻されておりまして、この賠償額を高裁の方で決めるのにまた数カ月以上時間がかかってしまう。一方で、この八年の間に十四人もの方がお亡くなりになっている中で、原告団の皆さんのお話を聞いていますと、もう一刻も早く、一刻でも早くこの訴訟の解決をしてほしい、和解をしてほしいというお声があって、具体的には三点、原告団の皆さんからは御要望がありました。

 一つは、国の方から謝罪の場をつくっていただいて、そして、大臣や総理、しかるべき方から謝罪の言葉を明確にいただきたいということ。そして二点目は、今回、救済に漏れた方々も多数いらっしゃいます、高裁に差し戻されて時間がさらにかかってしまう方々、さらには今回の判決から漏れてしまった、救済に漏れてしまった方々もいる、そうした方も含めた上での一括の政治的な救済をいただきたいということ。そして最後に、協議の場所をきちんとつくってほしいということ。原告団の皆さんから、また、その支援される皆さんから御要望が国の方にも多々あったことだと思います。

 今回、大臣の会見では、大臣は、まず、原告の方々におわびをしたいというふうに語っていただきまして、そして、直接面会をしていただけるということになりました。これは、前回の御答弁と比べてもさらにより前に進んでいただいた、大変ありがたい決断だと思います。そして、このうち、差し戻された一陣の原告二十八名の方に対して、厚労省の方で、審理を担当する裁判官が決まった段階ですぐに二陣の方と同等の賠償額で支払う内容で和解を申し入れるというさらに前向きな、二番目の話もさらに前向きなお話をいただきました。

 ただ一方で、ほかの周りの方々の救済はどうなるのか、また、地元は残存アスベストの問題等さまざまな付随の問題もございます。

 こういった点につきまして、厚労大臣の会見もありましたけれども、同じく裁判にかかわってこられた法務大臣はどのようにお考えであるのか。新大臣になられましたので、また、厚労大臣の方でも大きく動かれましたので、ここの御見解をいただきたいと思います。

上川国務大臣 今回の泉南アスベストの問題につきましては、先生のお地元ということで、大変熱心に取り組まれているということで、先生の駆け回っているお姿というのを想像できるものでございます。このようなところまで、遺族の皆さんあるいは家族の皆さん、御病気の皆さん、そうした皆さんの声をひたすら受けて取り組んでこられたことに、心から感謝申し上げたいというふうに思っております。

 長い間にわたりまして、病魔と苦しみながら闘ってこられたということでございます。本当につらい思いをされたことだというふうに感じておりますし、また、そのことを踏まえて、今回の訴訟の結果というものが大変大きな意味があったのではないかというふうに思っております。

 厚生労働大臣が二十七日にも皆様とお会いをするということでございますので、その中で、和解という方向に向けても一歩前進していくというふうに考えております。そのことをしっかりと受けとめて対応してまいりたいというふうに思っております。

丸山委員 少し伺いたいんですけれども、事務的にはこの方向で進むということで、もちろん省内でも議論いただいたと聞いているんですけれども、一方で、少しお話を申し上げた、今回救済されない方々も和解の内容に入ってくるのかどうか。このあたりを、少し細かいところになるかもしれませんが、お伺いしたいんです。

上川国務大臣 先ほど御紹介をいただきましたけれども、一陣、二陣ということでございました。

 その一陣の二審の高裁判決ということでございます、そして最高裁の結果ということでございます。そうした方向性に向けてしっかりと和解ができるようにということで、この二陣の、大阪高裁が国の責任を一部認めたという案件につきましても、原告側と国双方が上訴するという形の中ではございますが、その先には和解ということを、しっかりとした司法の枠組みの中で対応していくということでございますので、そういう意味での対応につきましては迅速に取り組んでいかなければいけないというふうに考えております。

丸山委員 済みません、大臣、差し戻されたのは一陣の方々だと思うんですね。今の話だと二陣のお話だったような感じもするんですけれども、今申し上げているのは、一陣の方々に対するフォロー、救済を、厚労大臣がやっていただけるという話があった。

 そして、厚労大臣からも、関連して、ある程度周りの方々に関しても話をいただけるという前向きな話も少しいただいているんですけれども、一方で、明確なお答えを、法務大臣、もしくは役所の方でも構わないんですけれども、この周りの方々に関する救済、そしてさらに地元では残存アスベストの話も先ほどありましたけれども、直接の裁判とも関係がある周辺のことも非常に含まれてくるというふうに、重要なことだと私は考えているんです。

 このあたりの扱いについての詳細をお伺いしたいので、細かいところなので、事務方の方でも構いません。

都築政府参考人 まず、今回の一陣、二陣の方々と同様の立場にある石綿工場の元労働者の方々につきましては、既に厚生労働大臣談話にございますように、和解の道を探っていくということになろうかと思います。

 これはあくまで訴訟上の和解ということでやらせていただくつもりでございますので、訴えを起こしていただいて、一陣、二陣の方々と同じような立場にあったかということにつきまして司法の見解もいただきながら和解を進めていく、こういう形を進めたいと思っております。

 それから、石綿工場の元労働者以外の方につきましては、今回の泉南アスベスト訴訟の最高裁判決の事案との相違を踏まえて、厚生労働省と協議しつつ、適切に対応していきたいというふうに考えているところでございます。

 以上でございます。

丸山委員 ありがとうございます。

 前半の訴訟の提起は非常に壁も高うございますので、ここは議論のあるところだと思いますが、大臣からもお話のあったように、やはり寄り添っていただいて、先ほど適切にという後段の話もありましたけれども、ここが非常に、適切かどうかが重要で、そしてそれは誰が御判断されるのかというのは、どうしても、訴えられた原告団の皆さん、そして被害に遭われている皆さんのお気持ちが一番大きいところだと思います。客観性も大事ですが、皆さんのお気持ちも酌んでいただいて、一日も早く、みんなで笑顔に、頑張ってよかったと言っていただける、そしてこういう被害が二度とないようにしていただけるような行政に、前に進んでいただけますように、心からお願い申し上げます。

 余りこの話ばかりで進んでしまうとあれになってしまうので、言いたいのはいっぱいあるんですけれども、先に進ませていただきたいんですが、大臣着任に当たっての質疑ということで、大臣の思いを改めてお伺いしたいんですね。

 為政清明という形でお話がありました。大久保卿の言葉だということでございます。旧内務省ということで、総務省のところに揮毫が、大久保卿のものがあると思いますけれども、総務副大臣のときにお撮りになった写真をホームページで拝見しまして、ずっとこの話をされているのでさらにお好きなんだろうなというふうに、その裏にどういう思いをお持ちなのかというのを最初の所信なのでお伺いしたいところなんです。

 重ねてちょっとお伺いしたいのは、今回、松島大臣が辞任されて、そして新大臣におなりになられて、時間がすごくなかったと思うんですね。そういった意味で大変だったとは思うんですけれども、所信を率直にお伺いしていて、先ほども委員のどなたかから残念だというお言葉がありましたけれども、私も少し残念だったのが、前大臣と今回の新大臣、何が違うのかというところに対して、上川大臣の独自性というか色というのが少し薄かったかなというのが率直な感想です。(発言する者あり)

 これからだというお言葉もありましたけれども、松島大臣は明確に女性の性犯罪の話を前に出してこられました。それは非常にわかりやすかった。残念ながら、違反のいろいろなのが出てきておやめになりましたけれども。

 一方で、大臣として、なられて、在任中にやりたいことをいろいろお持ちだと思いますけれども、なし遂げたいことと、そして、為政清明も絡めて、その背景にお持ちの思いを少し語っていただければ、この後のいろいろな法案の審議も含めまして、大臣のお考えの背景がわかりやすく、そして審議もしやすくなると思いますので、よろしくお願いします。

上川国務大臣 大久保卿の為政清明のことに私自身触れさせていただきましたけれども、総務大臣の部屋には揮毫された為政清明の額が掲げられているということで、私もその前で写真を撮らせていただきましたけれども、大変、時を超えて、重たい思い、言葉のメッセージを受け取って、今もそのような気持ちで臨んでいるところでございます。

 大変短い就任からの期間でございましたので、私自身、法務行政の中で、これからどういう形で、方向感を持って、そして自分なりの、これまで考えてきたことも含めて、そして、法務行政は専ら国民の皆様の命そして財産そしてまた安全、安心の暮らしを担保するための礎となる、そうした大きな役割を担っているということでございますので、所信でも申し上げましたけれども、二〇二〇年は東京オリンピック・パラリンピックという大変大きな、国を一つにまとめ上げていくという大きな国家事業が待っている、それも六年を切っているという状況でございますので、その方向に向かって法務行政としてしっかりと、例えば安全、安心に課題や問題がないかどうか、そして水際のところに問題がないかどうか、こういうことについて点検をしながら、少しじっくりと腰を据えて取り組んでいきたいなというふうに思ったところでございます。

 今回、先ほど少し女性の活躍のところで、ワーキンググループを立ち上げるということについては、これまでもどのような立場であろうとこのことについては前進ができるような方向にしていきたいというふうに思っておりましたので、直ちに組織的な立ち上げをして、しっかりと取り組んでいくということで指示をしたところでもございます。

 そのほかのことにつきましても、こうした国会の中の御議論もしっかりと踏まえながら、その方向性につきましての検討をまずし、そして骨太に動くことができるような、そしてそれによって国民の皆様一人一人から信頼していただけるような司法に向けて頑張っていきたいというふうな思いでございます。

丸山委員 具体的に御発言の中で上がったものが、女性の活躍のお話がございました。上川大臣は、少子化担当のときに男女共同参画も御一緒にされたと思うので、その背景もお持ちなんだろう、そういうことの思いもお持ちなんだろうなというふうに感じました。

 一方で、御自身も今率直にお認めになったように、いきなりなって、そして時間もたっていないところで、まだまだ消化不足といいますか、今、じっくりと腰を据えて、皆さんの御議論を聞いて、そこからしっかりと前に進めていきたいという御答弁、非常に安定感があるように聞こえて、一方で、なっていただく前にある程度、これをやっていきたいというのがもう少し明確である方が、国民の皆さんにとってみれば、今からかというふうに思ってしまうところですので、やはりここは謙虚に謙虚にやっていただいて、大事なことです、前大臣がああいう状態になってしまったところで、いろいろな、特に野党の方から攻勢もありますけれども、謙虚にやっていただけるのは非常にすばらしいことだと思います。でも、やはり私はこれをやるためになったんだというのがなければ、我々周りの委員もついていきようも、議論のしようが難しくなってまいりますので、そこは明確に押し出していただけるようにお願いします。

 女性の活躍もいろいろあると思いますので、この後少しその話もさせていただきたいんですけれども、いろいろな見解が、活躍とは何かによって変わってまいりますので、その辺も詳しくお伺いしていきたいと思います。

 その中で、先ほどほかの委員から少し御質問があった外国人の受け入れ、移民政策のお話を、大臣の御見解を伺っていきたいんです。

 先ほどのベビーシッターの関連での質疑だったと思うんですけれども、私も、安易に外国人を受け入れていくというのは非常に懸念をしているところでして、反対だと申し上げざるを得ない。今非常に人口が減っていっている中で、補助的にというのではわかるんですが、安易に入れるというのは非常に心配です。

 日本の歴史を考えても、古来よりいろいろなところから、いわゆる渡来の方々がいて、そしてその中で緩やかに土着の人々と融合が進んできたというのが事実であって、移民を完全に受け入れない、そしてなおかつ鎖国するなんというわけでは、そういうふうに思っているわけではないです。

 しかしながら、これもあくまでも緩やかに長い歴史の中で育まれてきたものであって、今、人口が減っていくと言われている中で労働力が足りない、そうした中で、安易に大量の移民や労働力を受け入れるというのは、国民の皆さんの中でも非常に懸念が多い点じゃないかなというふうに考えます。

 ほかの国でも、移民で失敗した国もたくさん出てきておりますけれども、大臣は少子化担当大臣も以前されておりました。むしろ、私は、この少子化担当が全然うまくできていないんじゃないか、企画倒れ、かけ声倒れじゃないかなというふうに感じています。

 もっともっと大胆な予算、子供を、例えば第三子、第四子、人口がふえるような人数になってきたら、それはかなり大きな補助で、国全体で、社会全体で本当にお金の面もフォローの面も全部、覚悟を持って育てるぐらいの対策が非常に重要じゃないかなと考えています。

 今、女性の活用の話がありました。大事な点です。大事な点なんですが、女性が社会進出すれば、それは相関的に出生率が下がるというデータもあります。ただ、北欧などは、この相関性を打破して、うまく出生率の上昇につなげたという国もあるというふうに聞いております。だから、これはやりようもあるとは思うんです。

 この辺の対策が今の日本の少子化の中で不十分だと言わざるを得ないと私は思うんですけれども、大臣をされていて、その辺のお話を率直にひとつお伺いしたいということと、そして、移民の話、今後いろいろな議論を進めていく上での基礎認識として非常に大事なお話だと思うんですけれども、入管を所管もされていますので、この移民についてのお話と、大きく二点お伺いしたいんです。

上川国務大臣 少子化のお話でございますけれども、私も、少子化対策担当大臣、そして男女共同参画の担当大臣を拝命いたしまして、出生率が非常に低くなっている、そして人口につきましても減少しているという中で、どうしても、社会を維持するためにある一定の出生率を上げなければいけないというような問題が非常に多いから、それでは子供を産むというようなところに少し陥りやすいことがあるなというふうに思っておりまして、そういう意味から、希望の象徴としての子供たちということを社会の中でしっかりと育み、結婚し、子供を産んで育て、また、希望の部分につきましては、一人ではなくて二人以上子供たちが欲しいという方たちがたくさんいらっしゃるということで、そうした希望を実現するための施策づくりというところに、当時、大臣のときに力を尽くしたところでございます。

 しかし、現実はなかなかそれが実現しないということでございますが、そのところの一つの課題として、先ほど御指摘いただきましたように、それにふさわしい予算の規模ということになりますと、なかなか厳しいものがあるということで、当時も、さまざまな施策をするためには予算が必要だ、それも、海外と比較してみても極めてレベルが低いというような国際的な水準であったということもありまして、何とか予算をということで、実は、適当な税収、財源があればというような話になりました。

 今回は、消費税の部分につきましては社会保障ということでありますが、今までの年金や医療や介護といった部分に加えて、子育て支援というところについてもこの予算を使わせていただくということになりまして、それは非常に新しい動きということで、このことは何とか形にしていきたいなというふうに思ったところでございます。

 そういう意味では、先ほど御指摘がありましたが、二人も三人も産みたいという方が、しかし、なかなか地域の中で育て切れない、経済的な理由もあるし、また働かなければいけないというようなこともありますので、子育て支援の環境の整備、これについては質量ともにしっかりとしていく。と同時に、働きながら子供を育てるためには、例えば、育児休業制度の取得ということについても、しっかりと雇用者の側も取り組んでいただきたい。

 そういう意味では、社会全体として、制度を取得することができるように応援をしていく、そのためのインセンティブということも含めて、施策のオールパッケージで動いていくということが大事ではないか。まさにそのことのときが今、待ったなしで来ているなというふうに思っているところでございます。

 このお話につきましては、女性活躍の部分につきましても、法務行政ということにおきましても、法務省の中でも多くの女性の皆様が採用、登用されている。また、女性の刑務所のようなところで大変過酷な中でお勤めになっていらっしゃる方もいらっしゃいまして、そういう環境の中で、地域社会から応援をして、そしてネットワークでサポートしていくというようなプロジェクトも今推進しているというふうに伺っております。

 そうしたことをよく検証させていただきながら、それを、いいものはどんどん進めていくような形で実践していきたいなというふうに思うところでございます。(丸山委員「移民の話は」と呼ぶ)

 移民については、私は、これは日本の国の形に非常にかかわることということでございまして、今、日本再興戦略に掲げられている主な柱につきましては、高度な人材については来ていただきたいということで、これは、これまでどおりの政策を、さらに風通しのよいこの社会の中でふやしていくということが再興戦略の大きな柱になっているところでございます。

 そして、先ほど、家事というところの部分でございますが、やはり、安易なというところについては非常に大事な点だというふうに思います。この家事ということも含めて、ある意味では、海外から日本に働きに来るという形で日本の社会の中で生活をするということになりますと、その方の生活もあるということであります。

 そういう意味で、その方の生活がしっかりと立っていくことができるようにということについては、例えば、かつて入国管理法の改正によって、日系ブラジル人の家族の皆様が大勢来られたというところの中で、家族を呼んで、そして子供も育ち、そして地域の小学校、中学校に通い、あるいはそこからまた離脱しというようなことで、なかなか厳しい状況の中で、やむなく帰国されたというような状況もあったやに伺っているところでございます。

 そういうこともございますので、ある意味では一人の方の一生にかかわることにもつながりかねないということもございますので、そういう意味で、日本の国にとっても、また来られる方にとっても、しっかりとそのことがうまくいくようにしていくということについては、やはり先生がおっしゃるとおり、慎重に対応していかなければいけないものだというふうに考えております。

丸山委員 今の安倍内閣で、女性の活躍を社会全体として目指していく、これは非常に大事な点だと思うんですけれども、私は、方向性が少し変だと思うんです。目標値を決めて、今回の閣僚の皆様も女性の数を最大限にしていく、非常に結構だとは思うんですけれども、一方で、今回の辞任劇も起こってしまっています。数ではなくて、そうした仕組みや、もっと予算的にも、これまでとは違う抜本的な、それこそ異次元の少子化対策というものが、実は、この女性の活躍もそうですし、少子化の話も全部つながっている、国家として最大級の課題だと私は思っていますので、しっかりとやっていただきたいと思います。

 一方で、先ほども少し議論があった中で、家族の形というのが非常に変わってきているんですが、私は少し懸念を感じているのが、先ほど選択的夫婦別姓のお話がございましたけれども、このお話も少し、これも安易に導入してしまうというのは私はどちらかというと反対です。

 名前というのはやはり家族のきずなだと思うんです。そのきずなが、家族、家庭よりも個人を過度に優先してしまって、今問題となっている家庭の崩壊の問題だとか、そういった問題をどんどん促進するおそれもあるんじゃないかなというのが考えるところなんです。

 この選択的夫婦別姓、いろいろな議論があると思います。私は、ただ、慎重に議論しなければ、今までの日本の家族制度、いろいろな共同体がある中で、それぞれ所属する、会社もそうです、地域もそうですけれども、一番ちっちゃい、最もちっちゃいコミュニティーが家族です。そこの中で、やはりコミュニティーは、名は体をあらわしますので、その名前がそれぞれ違ってしまえば、そこに違和感が出てくる、ひずみが出てくるというのが通常の組織であり共同体じゃないかなと。同じ名前のところに集っているというのが共同体の基本だと思うんです。

 そうした中で、この選択的夫婦別姓の話、余り踏み込んだお話がなかったと思いますけれども、少しこの点について大臣の御見解をお伺いしたいんです。

上川国務大臣 家族のあり方に関してという御質問の中で、選択的夫婦別氏の話ということでございます。

 今の日本の国の憲法上、氏というのを結婚したときに選択ができるということでございますが、私も実は夫の氏でございます。結婚して夫の氏でございます。先ほど郡委員も御質問に立たれましたけれども、御主人様の氏を名乗られていらっしゃるということです。先生は御結婚はなさっていらっしゃる……(丸山委員「独身です」と呼ぶ)まだですか、独身。そのときに、先生の氏ということについてはどう考えるのかということが同じように突きつけられるというふうに思っております。

 子供にとって、家族が、しっかりとその成長を育む一つの小さな単位の、一番原点のコミュニティーとして大変大きな役割、役割というよりも、それがもう大変大事だというふうに思っていますので、どのような地域に暮らしても、家族がそろっているということ、このことをある意味では持ちながら、それぞれの方が結婚し、また子供を産み育てていらっしゃるのではないかと思います。

 先ほど御懸念の、今の実態のところでいきますとそういったところが崩れているのではないか、そういうふうな御懸念があったというふうに思いますけれども、一番基本のところに、子供の健やかな育ちということを支えるためにも、家族ということが非常に大事だというふうに私自身も思っているところであります。

 そのときに、やはり、男性、つまり父親の方が子育てにかかわることができる時間というのが今の日本の社会では極めて限られているのではないか、それは残念なことだというふうに思っています。特にこうした大都市圏になりますと、通勤時間も片道一時間半、そして、電車に揺られて三時間というようなことを毎日やっておりますと、そこで家族と過ごす時間等につきましては、これを世界水準と比較するというわけではございませんけれども、圧倒的に、日本の場合には男性の方のそうした時間の使い方については決定的に少ないんです。とても少ないんですね。

 ですから、そういう意味で、男性もいろいろな顔を持って、生活の中で、成熟したこうした社会でありますので、可能性を開いていただく。つまり、男性も輝いていただくためにも、そういう意味で男性も女性も輝くことができるために、働くということについても、今の現状でいいのかどうかということについて、検討というか、一人一人の問題としてかかわっていかなければいけないというふうに思っております。そういう意味では、長時間労働等のことにつきましても、もう一段、意識の改革も含めて、このことについてしっかりと向き合わなければいけないというふうに考えているところでございます。

 先ほど、抜本的に予算というふうにおっしゃいましたけれども、やはりそこが大変大きな胆でありますので、このことについては、私もこれまでどおりの姿勢でしっかりと臨んでいきたいなというふうに思っております。

丸山委員 しっかりやっていただきたいんですけれども、同じくこの家族法関係で、再度、これも松島大臣にお伺いしたんですが、松島大臣はおやめになってしまったのでお伺いせざるを得ないんですが、嫡出推定の話と、少しお話もありました待婚期間のお話。

 これも非常に大事な話なんですけれども、私としては、家族の氏姓の、何々家という姓の話は、コミュニティーの話で今の時代にも非常に大事な観念だと思うんですが、一方で、嫡出推定の話と、そして何より待婚期間の話は、離婚後の話ですので、今の科学のDNA鑑定がある時代に、そこを変に逆にゆがめかねない、今の時代にこちらは合っていない制度なんじゃないかなというふうに考えているところなんです。

 この嫡出推定のお話、例えば、時期によっては法的に前の夫の子供さんとしてみなされてしまって、そして結果として子供の戸籍が取得できない問題だとか、待婚期間においては、百日に短縮するというお話もありましたけれども、百でいいのか、そもそも必要なのかどうか。私は、今の段階では、科学的にわかる話なので百も必要ないんじゃないかというふうに考えるところですが、この二点、大臣はどのようにお考えでしょうか。

上川国務大臣 ただいま委員から御指摘がございました、嫡出推定規定についての問いと、それから待婚期間についての所感ということでございます。

 先ほどお話がございましたが、三百引く二百で百というふうなお話もありましたけれども、このことについても、また、嫡出推定規定におきましても、社会情勢とか国民感情の推移ということを考慮しながら今後議論をしていく必要があるのではないかというふうに考えておりますので、少しじっくりと腰を据えてという中での取り組みとして考えていきたいなというふうに思っているところでございます。

丸山委員 慎重に議論をいただきたいと思いますけれども、しっかりと前に進めていただきたいんです。

 これらの話は松島大臣にも前回の質疑で伺って、場合によっては前向きな御答弁をいただいたものもいっぱいあったんです。そういった意味で、非常に短期間で大臣にやめられてしまっては、同じことを繰り返さなきゃいけない。そして、どんどん、見解がずれるのかどうかというのも、法的な不安定性が出てまいります。

 先ほどうちわのお話もありましたけれども、私からこのうちわに関して言うつもりはないですけれども、一方で、大臣を前大臣が短期間でやめられて、そして御本人はこの委員会で説明責任をきっちり果たしていくと。そして、委員長からもしっかり誠実に御答弁するようにという話をいただいて、そして誠実に御答弁されていたと思いますけれども、ただ、余りにも時間が短く、そしていろいろなほかの話が出ている中で、私は、説明責任を果たしたとは決して言えないと思うんです。

 大臣のやめられたことに対して、新大臣としての御見解、説明責任を果たしたのかどうかというのも含めてお伺いしたいんです。

上川国務大臣 先ほどの御議論もございましたが、説明責任をどのように果たしていくかということにつきましては、国会の方でお決めになっていただくということでございまして、法務大臣としての発言につきましては差し控えさせていただきたいというふうに思っております。

丸山委員 法務大臣としてか政治家としてか一人の人間としてか、いろいろな立場があると思います。今、法務大臣におつきになられて、守りに入るというのは、大事な役目なのかもしれませんけれども、一方で、やはりここは国民の皆さんは納得していない部分だと思いますので、率直に一人の政治家として御答弁いただけないのが残念なんですけれども、恐らくこれ以上お話ししても同じ答えが返ってくると思いますので、少し視点を変えたいんです。

 松島大臣で非常に残念なのは、おやめになった後にもまたいろいろなものが出てきているんです。報道でありますのは、お花を地元の社団法人にお渡しになったということが出ています。

 報道によると、去年十月に、地元墨田区の多目的施設の地域プラザの開業記念にお花を贈っているということなんです。うちわの問題がどうこうというのはもめていましたけれども、このお花を贈るというのは明らかに公職選挙法違反だと思うんですけれども、このあたり、どうですか、政府として。総務省の担当の方、来ていますか。

稲山政府参考人 お答え申し上げます。

 総務省といたしまして、個別の事案につきまして、実質的な調査、検討もございません。お答えは差し控えさせていただきたいと存じます。

 その上で、一般論として申し上げますと、公職選挙法第百九十九条の五第一項というものがございまして、後援団体は、「当該選挙区内にある者に対し、いかなる名義をもつてするを問わず、寄附をしてはならない。」と規定をされているところでございます。

 いずれにいたしましても、その事案が個々にただいま申し上げました公職選挙法の規定に抵触するか否かにつきましては、個別の事案ごとに具体の事実に即して判断がなされるべきものと考えております。

丸山委員 今、個別の事案は答えられないけれども、一般論として、これに当たる可能性があるというような御答弁だと思うんです。

 小渕大臣は、買収の件で、委員会で参考人の質疑をされる。私、今回の件は、うちわだけならと思っていたんですけれども、一方でこの買収の件も出てきて、と考えたら、この委員会のあり方について、理事の皆さん、そして、国対に預けるというお話でございましたので、御議論いただけると思うんですけれども、一方で、経産委は参考人質疑。

 一方で、政倫審というお話もありましたけれども、政倫審は原則非公開ですから、公開の場ではありません。やはり、国民の皆様が気になっているこの点に関して、参考人質疑や、もちろん倫選特という手もあります、別の委員会を開いていただいて、公開の場で議論いただくのが筋だと私は思います。

 これ以上御質問しても変わらないと思いますので、委員長を含め理事の皆様、そして国対の皆様にはしっかりとした真相究明のほどをよろしくお願いして、この件は終わりたいと思いますけれども、しっかりよろしくお願いします。

 時間もなくなってまいりましたので、細かい話を再度お聞きしたいところがあるんですけれども、所信の中で、矯正施設の医師の不足のお話が出ておりました。

 これは非常に大事なお話で、法務省さんの有識者検討会でも報告書が出ているというふうに聞いております。それを拝見すると、八割程度に減っていると。そして、その中で、お給料の問題、待遇改善の問題、兼業ができない等、いろいろな問題点を挙げられていて、当時の谷垣法務大臣に御提出されているということなんです。

 今回の所信では具体的なお話が書いてなかったんですけれども、法整備を含め、矯正医療が抱える問題の解決に向けて全力で取り組むというお答えでしたが、これは具体的にはどういったもので、法案は通常国会には出てくるという予定、現段階でどういう予定なのかというのも含めて、具体的にどのような対策をとられるのか、お伺いしたいんです。

西田政府参考人 お答えいたします。

 具体的には、まず、予算要求をして、緊急的に医師の待遇改善というか彼らの仕事をする環境を整えるということと、もう一つは、待遇改善というのは予算要求だけでおさまりませんので、どういった仕組みにして、どういったふうに彼らが勤務しやすいような仕組みにしていくかということが必要になってこようかと思いますので、それにつきましては、現在、そういったことを所管しております関係省庁と今協議もさせていただいておりますし、その結果によりましては、新しい仕組みということで、特例法ということも視野に入れて検討を進めていきたいというふうに考えております。

 以上でございます。

丸山委員 少しスケジュール感について細かくお伺いしたいんですけれども、では、まだまだ検討段階で、どれぐらいがというのはないということですか。

西田政府参考人 お答えいたします。

 時期でございますけれども、今一生懸命検討作業を進めておりますので、できれば、可能な限り早期に国会に提出させていただきたいというふうに考えております。

丸山委員 随分前向きに、できる限り早期にというお言葉、私も役所にいましたので、役所的にはかなり踏み込んだ発言だと思いますので、しっかりやっていただきたいんです。

 やはりこの待遇の話はずっと言われていて、じわじわ、急激に減ったわけではなくて、もうずっと言われていることだと思うんです。このあたり、大臣、現状をどうお考えか。大臣としてのお言葉をいただきたいんです。

上川国務大臣 所内において皆様がしっかりと健康を維持しながらということになりますと、しっかりとした医療体制ということについても極めて大事だというふうに思っております。

 施設によっては、地域の大変遠いところにあるということもありまして、なかなか医師の方たちも定着しにくいという中で、恒常的な課題として位置づけられてきたということでありますので、こちらについては、予算の面でも法制度の面でも迅速に対応するということが極めて大事だというふうに思っております。

丸山委員 もちろん制度の仕組みも大事なんですけれども、やはりこれもお金の面が非常に大きいんだと思います。

 お伺いすると、月給がかなり変わってくる、通常の民間の医療機関で働かれる方と全然変わってくるという話。また、兼業も禁止されているので、さらにその分、やはりお金の話ですね。

 そういった意味で、どうしても、先ほどの少子化の話もそうですが、お金が絡んでくるところだと思います。お金の配分こそがやはり国家として一番大きな、やるべきことの一つですので、大事なところ、わかっているところにお金を入れていくというのが大事です。

 そのときに、この点も法務省としてはもちろん大事だとお考えになっていると思いますので、予算が限られている中で難しいんですけれども、うまく仕組みをお考えいただいて、少しでもふえていくように、懸念がなくなっていくような対策をよろしくお願い申し上げます。

 少し時間がなくなってきたので、最後、どうしてもお伺いしたい。

 同じ所信の話で、登記所備えつけ地図の整備の話、特に都市部のお話をされている。これは松島大臣の所信にもあったので、役所として全体的にいきたいところだと思うんですけれども、これもずっとずっと問題を言われていて、前に進まないところなんですよ。

 お伺いしたいのは、今、どれぐらいの整備率なのかというのをまずお伺いしたいんです。これは進んでいるんですか。

深山政府参考人 全国の登記所に備えつけられている地図で、これは法律上、現地の再現性がある精度の高い地図の割合というのは、平成二十六年四月一日現在で約五五%です。残りの四五%が、精度の低い、いわゆる旧公図と言われるものになっております。

丸山委員 よく言われるのは、地図混乱地域といいますか、登記所の地図と実際の土地が違う、形状が全然違うじゃないかという話で、大臣は、これは引き続き積極的に取り組んでまいりますと。いわゆる役所用語ですけれども、一方で、具体的にどう取り組んでいくのか。年度ごと、数年ごとの目標値みたいなものを立てていくのが多分一番現実的で、そして必要な政策だと思うんです。それに基づいてお金や人員も配分していくということだと思うんです。

 この辺、目標値や、年度ごとにどう取り組んでいくかみたいな具体的なものはあるんでしょうか。大臣としてどうお考えなのか。

上川国務大臣 現在の地図整備の状況でございますが、先ほど説明をしましたとおり、八カ年計画ということでございまして、今、この中の六年目ということに当たっている中で、五五%というところの今の現状の位置づけでございます。

 この八カ年の中で伸び率をできるだけ上げていくということについては、それによってスピード感が出てくるということでありますので、そうした伸びるような方向性を予算の中にも織り込んでいこうというような形で進めてまいりたいと思いますので、そういう意味では、予算の確保は極めて大事だというふうに思っております。

丸山委員 大事な点です、しっかり前に進めていただきたいと思います。

 やはり今回、非常に残念なのは、大臣がおやめになられて、新しい大臣がつかれて、また所信から始めさせていただいて、法案が前に進まない。次、できれば法案質疑に入るんだと思うんですけれども、一方で、前大臣の説明責任、お話しさせていただいたように果たしていないと私も思います。

 この委員会でやるのかどうかは別にして、きちんと国民の皆様の前でお話ができる、そしてそれが明らかになっていく場を立法府としてもつくっていくことが非常に重要だと思いますので、このあたり、委員長を初め理事の先生方、そして国対の先生方にもしっかりとやっていくことをお願い申し上げまして、私、丸山穂高の質疑とさせていただきます。

 ありがとうございました。

奥野委員長 次に、高橋みほ君。

高橋(み)委員 維新の党の高橋みほでございます。上川大臣には初めての質問になります。どうぞよろしくお願いいたします。

 安倍改造内閣、目玉の一つが女性の登用ということでした。

 私は、地元テレビの撮影を受けたときに、今回の人事についてどう思うかというときに、五人の閣僚では本当はまだまだ足りないんじゃないか、もっともっと必要なんだと実は述べました。ただ、残念ながら、今回のお二人の辞任を見ますと、私の先ほどの意見、もっともっと女性を登用するんだという私の考えというか主張に水を差されたようなイメージがありまして、とても残念に思っております。特に、女性が数合わせのために閣僚に入ったんだとか、そんなふうに言われてしまうような現状をつくった方々に対しては、もう少し考えてほしかったというふうな気持ちでいっぱいでございます。

 ただ、上川大臣、女性の松島大臣の後を継がれて今回法務大臣ということでしたので、これだから女性はとか、女性には任にたえないなどと言われないように、ぜひ頑張っていただければと、年下で、ちょっと失礼になるかもしれないけれども、それをお願いしたいと思っております。

 ただ、私が今回の件で思ったのは、人間何かしらミスなど不祥事があることはあると思っております。ただ、そのときどうするのか、やめ方、失敗からどう学ぶのかとか、失敗をしたときの対処方法というのが後々のその人の人生を決めるのではないかと思っております。ですから、やめるにしてもやめないにしても、やはり最低、説明責任を果たしていただきたい、それだけは切に申し上げたいと思います。

 これは一般的な話ですけれども、人間が失敗したとき説明責任を果たさなければいけないという考え方についてはどのようにお考えでしょうか、お願いします。

上川国務大臣 失敗したときにどのように対処するのかということについては、その方の将来の大きな試金石になるというようなお話がございました。大変大事なことだというふうに思います。

 説明をすること、そしてそれに対して誠実に向き合っていくこと、そうしたことを通じて、またそのことの思いも伝わっていくというふうに思っておりますので、説明責任につきましては、そのあり方も含めて、国会の方でも御対応していただくということでございますが、そういう気持ちでございます。

高橋(み)委員 ありがとうございます。今の言葉、とても積極的な御意見だったと承りました。

 では次に、公職選挙法の百九十九条の二の第一項について伺いたいと思います。

 これは先回のときから出ていたんですけれども、私、こういう法律を見るとき、大学の法学部の授業をすごく思い出します。そのとき、刑法なんですけれども、人を罰するときは、構成要件に該当し、違法性があって、有責であるかどうかで決まるということを、刑法を学んだときに一番最初に勉強しました。責任を問うためには違法性の意識が必要なんだということもありまして、ここではすごくいろいろな議論があるということも勉強させていただきました。

 この点、皆さん御存じだと思うんですけれども、大きく分けますと、違法性の意識が必要であるという説、違法性の意識の可能性が必要だという説、また違法性の意識が不要な説というふうに、いろいろあるというふうに伺ったんです。私が大学で法律を学んだ当時なんですけれども、判例としては違法の意識は不必要であるというように、私は一応そのときは学んだような覚えがあります。

 今現在は違法性の意識についてはどのような考えをとられているのか、教えていただければと思います。よろしくお願いします。

稲山政府参考人 公職選挙法の寄附禁止の規定でございますが、ただいまのお尋ねは、一般的な違法性の意識の、刑事訴訟的な一般的な話でございますので、私の方からのお答えはちょっと差し控えさせていただきたいと存じます。

高橋(み)委員 私は、質問に対しまして、松島前大臣の件で法律的なことを聞きますといってお願いしたと思いますが、それは違いますか。

稲山政府参考人 通告いただきましたのは、松島前大臣の、うちわのようなものを配布したことについての公職選挙法の禁止との関係ということで承っております。

高橋(み)委員 公職選挙法のこの規定を考えるに当たって、では、違法性の意識というものを考えなくても、この条文に当たるかというのは判断できるのですか、お尋ねいたします。

稲山政府参考人 公選法百九十九条の二は寄附の禁止でございまして、よく議論があるところでございますが、「公職の候補者等は、当該選挙区内にある者に対し、いかなる名義をもってするを問わず、寄附をしてはならない。」ということでございます。外形的に要件がございますが、故意とか違法性の意識については、私の方からはちょっとお答えはできかねますので、差し控えさせていただきたいと存じます。

高橋(み)委員 私が先ほど述べました、大学の刑法を学んだときに一番最初に学んだ、違法性の意識の可能性が必要か必要ではないかということを総務省の選挙部長さんが御存じないというのはちょっとびっくりしました。

 私は、違法性の意識は、やはり可能性は必要なんだと思います。今回のうちわの件にかかわらず、違法性の意識が必要というふうにされてしまうと、やはり、私は知らなかったんだ、違法性の意識もなかったんだというふうに思ってしまうんです。何といっても、違法性の意識の可能性は必要だとしても、今回はあったんだろうというふうに私は思いました。判例その他のことを知らないということはちょっとびっくりしましたけれども、残念ながら、そこは次に行かせていただきたいと思います。

 とすると、この次もわからないのかもしれないんですけれども、ちょっと違法性のところに戻ると、可罰的違法性の理論というのがございますけれども、それは御存じでしょうか。

稲山政府参考人 私も一応法学部を卒業いたしておりますので聞いてはおりますけれども、その可罰的違法性が公選法との関係でどうかということについては、ちょっとお答えはできかねますので、お答えは差し控えさせていただきます。

高橋(み)委員 法学部出身だと。きっととてもいい大学を出ていらっしゃるんだと思うんですけれども、残念でした。

 なぜここで聞きたかったかというと、例えばよく言われる、うちわみたいなものは大して価値がないと思われているなら、そこの可罰的違法性の論理ということもここで考えられるのかなと私は勝手に考えまして、うちわの件でということで法律的にお尋ねしたかったんですけれども、お答えいただけないというのはすごく残念なことでした。

 では、次に行きたいと思います。

 次に、松島大臣と現大臣の所信表明の違いというものをちょっとお伺いしたいと思います。

 ここに二つ持ってきたんですけれども、松島前大臣が十月の十日、そして上川大臣が十月の二十二日ですから、普通の大臣の挨拶と違いまして、すごく近かったので、どこが違うのかというのが物すごく気になりました。先ほど、うちの党の丸山委員もおっしゃっていたんですけれども、私は一々番号を振っていましたら、ほとんど同じなんです。

 松島大臣、先ほどから問題になっておりますけれども、やはり強姦罪の下限を上げるということにはかなり熱意を持っていらっしゃったということをこの大臣の所信表明のときすごく感じたのですけれども、残念ながら、上川大臣の所信表明で、この挨拶の中では、何をやりたいのか全くわからないような気がしました。

 大臣はこの中で御自分の在任期間中に何を一番なし遂げたいのかということがありましたら、ぜひ私に御教示願いたいと思います。

上川国務大臣 今回の就任から大変間もない時間の中で所信をまとめさせていただきました。私も、たくさんの思いを込めて、先ほどの冒頭のところに、自分自身のスタンスということで明示させていただいたところでございます。

 法務行政というのは、国民の皆さんの生命や財産、そして社会全体の安全、安心を守るという、大変大事な、基礎となる大きな仕事であるというふうに、改めてその責任の重さを感じているところでございます。

 そして、その業務の広さ、幅も大変大きいということでございますので、課題も多々あるということを改めて感じたところでございます。

 今回、再犯防止対策につきましては、二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、日本の国が世界一安全な日本であるということになるように、そして、今の時代は、国境の部分の風通しのよい社会づくりと、つながりのある中でということでありますので、国際化ということについても積極的に取り組んでいきたいという思いを少し加えさせていただいたところでございます。

 また、そのためにも、再犯防止をしっかりとしていくということも非常に大事な点ではないかと思っておりまして、さらに、入国管理ということにつきましても、非常に大事な仕事であるというふうに思っております。

 人が安全、安心にこの国に来ていただく、そしてもう一度行きたいよというふうに、最高のおもてなしをしていくための一番初めのゲートというふうにも思いますので、そういう意味で、入国管理行政のさらなる充実ということについては、特に大切ではないかというふうに思っております。

 中には、立法上の問題ということに係る部分もこの間のやりとりの中でございましたので、そういったことにつきましても、しっかりと、フレームワークというか、そういうものを考えながら、どのような体制でしていくかということも、少し時間をかけてきちっとつくった上で実行していこうというふうに思っておりますので、今こうだからぽんとジャンプするというようなことではなくて、しっかりと準備をして進めていくということもあわせて考えていきたいというふうに思っております。

 そして、優先順位が非常に大事だなというふうに思っております。そのことにつきましても、これから、さまざまな委員の先生方からの御議論も踏まえ、また、松島前法務大臣のときのやりとりも、さらにはその前の谷垣元法務大臣のやりとりも含めて、しっかりとそのバトンもタッチしていただくということでもありますので、そういうこともあわせて考えてまいりたいというふうに思っております。

 いずれにしても、国民の皆様に信頼していただくということが何よりも大事なことでございますので、堅実にこの法務行政をしていこうという思いで取り組んでまいりたいというふうに思っております。

高橋(み)委員 ありがとうございます。再犯とか入国管理に力を入れるということを伺いました。

 ちょっと先ほどの私の追加になるんですけれども、なぜ私が今回、上川大臣の一番やりたいことを聞いたのかといいますと、この所信の二ページの三行目なんですけれども、「さて、現在、法務行政には、多くの課題があると聞いております。」というようなくだりがありました。私はここは、「聞いております。」ではなくて、本当は、自分が何をやりますということをぜひ言ってほしかったと思いました。聞いているだけで、準備に時間がかかってしまうと、もしかしたら解散になってしまって大臣の首がどうなるかわからないですけれども、時間は有限であると思いますので、ぜひ早目に計画を立てて、私たちにお示ししていただければと思っております。

 この法務大臣の御挨拶、ほとんど同じだったんですけれども、一つだけ、訟務体制の整備ということが新しく盛り込まれていたかと思います。ここを読ませていただきますと、訴訟に適切かつ迅速に対応していくということ、あと、紛争を未然に防止するという観点からの予防司法を充実させるということが書かれておりました。

 ここを私が読んで、どういうことなのかなというふうにちょっとわからなかったもので、いろいろ調べさせていただきますと、二十六年八月二十七日の読売新聞紙上では、C型肝炎、基地関係訴訟、原発差しとめの集団訴訟などの増加が予想されているから、人員をちょっと、この予防司法を充実させるんじゃないかというような記事がありましたり、国と関係が深い民間同士の訴訟にも積極的に関与していくんだというような記事がございました。

 記事なので、法務省がそう言っているのか、ちょっと私にはわからないんですけれども、国を相手にするいろいろな訴訟が起きるから、国は、無限とは言わないかもしれないですけれども、潤沢なお金があって、一般国民に対する一方当事者としてそこにお金をつぎ込んでいくんだ、原発差しとめ集団訴訟などの増加が予想されるから予防司法を充実させるんだろうかという疑問をちょっと私は持たせていただきました。そこはどのようなことなのか。私の考えが違うのか。

 そして、先ほど述べましたように、民間同士の訴訟にも積極的に関与していく可能性があると書かれているんですけれども、これは本当にそうなのか、そうならば、どのような民間同士の訴訟にも積極的に関与していくというようなことを考えていらっしゃるのか、ちょっと説明していただければと思います。よろしくお願いします。

上川国務大臣 ただいまの、訟務体制の整備に係る私の発言についてどのような内容かということでございますが、国の利害に関係する訴訟につきましては、法律上、法務省が行うことになっているところでございます。

 このうち、訴訟の結果が国の政治、行政、経済に重大な影響を及ぼす訴訟が増加しているということでございまして、国として、こうした訴訟に対しまして適切かつ迅速に対応していく必要性というのがますます高まっているのではないかという認識でございます。

 同時に、法務省は法律の専門家を多数抱えているということでございまして、訴訟が起きてから対応するだけではなくて、訴訟が起きる前からしっかりと関与して、行政の法適合性を高めていく、国民の権利利益が確保されるような行政とする、そういう意味で、政府のコンプライアンス機関というような役割を果たしていく必要があるというふうに考えております。

 こうした点にしっかりと配慮しながら、体制の充実に向けて、このことについて対応していきたいというふうに思っております。

高橋(み)委員 質問の後半、国と関係が深い民間同士の訴訟にも積極的に関与していくということは実際に考えられるかというところの御答弁をいただいていないかと思います。

都築政府参考人 訟務体制の整備につきまして、委員御指摘のとおり、読売新聞の記事がございまして、その中で民民の訴訟ということにつきまして触れられております。

 大飯原発訴訟につきまして、これは民民の訴訟でございますけれども、差しとめ判決が出たということで、さまざまな議論が起きました。その議論の中には、民民の訴訟であっても訟務が関与して適正な判断を仰ぐようにすべきではないかという御意見もいただきました。

 現在、私どもはそういう制度はとっていないわけでございますけれども、今回、訟務の体制を整備するに当たって、国の利害に大きく影響するような民民の訴訟につきまして何らかの対応ができないのかということにつきましては、これは将来の課題ということで検討していかなければいけないと御指摘をいただいておりますので、訟務体制の整備の一環として考えていかないといけないというふうに認識しているところでございます。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 民民の訴訟といっても、例えば、大飯原発のお話を今いただいたんですけれども、民民の訴訟に国がある程度公的にというか積極的に介入していくというのは、実際問題、問題がかなり多いんじゃないかと思います。今から検討していくということなんですけれども、その推移を見守らせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 では、次に行きまして、選択的夫婦別姓についてお伺いしたいと思います。

 松島前大臣、大臣になられる前はどちらかというと積極的だったんですけれども、大臣になられたらとても慎重な発言に変わられたということで、私からしますと、とても残念なイメージがありました。

 先回の松島前大臣のお話なんですけれども、国民世論を随分重視されていました。きょうの上川大臣もそうなんですけれども、やはりアンケートを、国民の世論ということで、そこを重視していたと思われるんです。

 きょう私がお配りしました紙を見ていただきたいんですけれども、これは毎日新聞の一四年十月二十日のものです。表題が「カジノ法案」なんですけれども、私が見ていただきたいのはそうではなく、新聞記事の方は一番最後の段落です。そこでは、「結婚しても夫婦がそれぞれ結婚前の名字を名乗れる選択的夫婦別姓の法改正では、「賛成」が五二%と「反対」の四〇%を上回った。男女とも賛成は五二%。反対は男性が四二%に対し、女性は三八%だった。」という結果が出ております。

 これを見ますと、松島大臣はこの前まで、アンケートを重視したということで、今回の上川大臣も、やはり国民の意見の推移を見たいというふうにおっしゃっていたんですけれども、最近のこの新しい毎日新聞では、今、五二%もの人が賛成に回っているという現状があるかと思います。それを考えますと、先ほどの、よく言われている平成二十四年の内閣府の世論調査よりも、やはりこの社会はかなり動いているんだなというような印象を持ちますけれども、この賛成と反対の、五二%と四〇%という現状につきまして、上川大臣、どのように思われるでしょうか。

奥野委員長 自分の気持ちを聞かれているんですから、お隣の方は黙っていてください。

上川国務大臣 今、世論調査ということで、二つの世論調査をお示しいただきまして、一つは十月二十日付のものであります。今ここで質問と回答を拝見させていただきますと、二者択一の、賛成、反対ということに対して、男性と女性も含めて記述してあるということであります。これによると、賛成が五二と反対が四〇ということでございます。

 これに対して、平成二十四年に内閣府が実施した世論調査ということでございますけれども、こちらの方は、長年とっている世論調査の設問の仕方が、通称使用のみ容認というところの一択がふえておりまして、三択で選んでいただくということになっているところでございます。これによりますと、平成二十四年の段階で、夫婦別氏の賛成が三五・五、通称使用のみの容認が二四・〇、反対が三六・四、わからないが四・一、こういうような数字になっているところでございます。

 先ほどちょっと御質問の中にあったんですが、世論調査の結果が、年齢によりまして考え方に少し差があるということでありますので、そういった面も勘案しなければいけないとは思いますけれども、この二つを比較してどうかというようなことには必ずしもならないということでございます。

 いずれにしても、世論というのが、世論を支えている国民の皆さんお一人お一人のこれに対しての考え方というのが数字の中でマクロとして出てくるということでありますが、その中にはいろいろな意見があるというところについては、そのような理解を、私としてはデータ的に言うと感じているところでございます。

 それから、質的な面でございますけれども、こうした状況の中で、先ほど、少し前に動いているのではないかというお話もございましたけれども、通称使用につきましては、旧姓の通称使用ということでありますが、社会認識としては以前よりも進んでいるというふうに考えておりまして、そういう意味で、社会生活上不便を強いられているというようなことにつきましては、例えば士業の先生方につきましては通称使用で通していらっしゃるという方が多いというふうに伺っておりまして、そういう意味で、旧姓使用が認められないということによって不利益をこうむっている、そうした不便を感じているというようなことについて、是正に向けた措置ということについても、関係省庁と協議しながら前向きに検討してまいりたいというふうに考えております。

高橋(み)委員 確かに、毎日新聞の方は二択です。それで、内閣府の方は三択になっております。ただ、二択にしたときに、賛成だという人が今はもう多いという現実があるかと思います。

 三択にするというのは、三択というのは逃げを結構用意しているというふうに私にはちょっと見えてしまいます。賛成ですか、反対ですかと言ったら、どちらかに決めなければいけないときに賛成と言うか反対とするかであって、通称でいいという逃げの選択肢を用意するということは、どちらかというとこのアンケートがそちらに誘導を図っているような気さえしてしまう場合もありますので、やはり賛成か反対かで決めるべきではないかなと思います。

 そして、このアンケートが何で大事かといいますと、先ほども述べましたけれども、松島前大臣は、アンケートが大事です、アンケートが大事です、こういうふうに世論がなっていますと言っていました。今回、上川大臣もやはりアンケートと言っていますので、こういう新しい二択でのアンケートでは、もう賛成するという人が多くなっているという現状は皆さんでぜひ認識してもらいたいと私は思っております。

 次に、ヘイトスピーチということに行きたいと思います。

 私たち維新の党の代表の橋下が、ヘイトスピーチ、在特会の方々と話し合われたというのがユーチューブなどで流れておりますので、多くの方が見られたかもしれません。

 私はそのときに思ったのですけれども、済みません、質問の順番をちょっと入れかえて、一と二をかえたいんですけれども、まず、人種差別撤廃条約に日本が留保を入れている。それが、平成二十五年現在で、条約加盟百七十六カ国中、留保は日本など五カ国しかないということを伺っております。

 私は、こういう憎悪表現による人種差別の扇動や思想の流布によって法律で処罰することを宣言するということを留保しなければいけない理由というのが実は全くわかりません。日本はなぜ留保しているかと伺いますと、表現の自由が大事なんだとおっしゃいます。でも、ほかの国々だって表現の自由は大事なのであって、表現の自由を尊重しながらも、やはりこの人種差別撤廃条約を留保せずにちゃんと批准しているということになりますと、なぜ日本がここを留保しているのかというのが私には全くわかりません。

 やはり特定の国籍や人種、民族などをターゲットにしたスピーチをするということは、その人たちを侮辱することでもありますし、やはり何といっても不安感を持たれることになるかと思いますので、そのようなところを、なぜ日本は留保を行っているのか、行わなければいけない理由というのを教えていただければと思います。

河野政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま御質問いただきました人種差別撤廃条約に関する留保でございますが、日本が留保を付しておりますのは、この条約の第四条の(a)と(b)の規定でございます。

 この(a)と(b)の規定、端的に申し上げますと、これは、人種的優越または憎悪に基づく思想の流布、あるいは人種差別の扇動といった行為、さらに、人種差別を助長、扇動するような団体への参加、こういったことを国内法上、犯罪とするということを求めるものになっております。

 これは、今申し上げたとおり、ここの条文の求めております射程というのが極めて広いということがございまして、さまざまな行為、言動というものが対象になり得る。このような非常に幅広い行為というもの全てについて、現行の、例えば脅迫罪であるとか名誉毀損罪であるとか、既に幾つか存在するような規制を超えて、刑罰法規をもって規制するということになりますと、その制約の必要性あるいは処罰範囲の具体性といったことについて問題があり得るというふうに考えておる次第でございます。

 また、表現の自由ということになりますと、これを制約する際には合理性が厳しく問われるというふうに理解しておりますし、さらに、刑罰ということになりますと、罪刑法定主義の観点からも明確性が必要である。そういった憲法の規定する保障といった観点から、これらとの抵触というものが懸念されるというところでございます。

 そのような以上申し上げましたような考えに基づきまして、我が国は、この人種差別撤廃条約を締結します際に、この第四条の(a)と(b)の規定につきまして、日本国憲法のもとにおける集会、結社及び表現の自由、その他の権利の保障と抵触しない限度において、これらの規定に基づく義務を履行するという留保を付した次第でございます。

高橋(み)委員 今の御答弁は全く理解できませんでした。

 なぜかといいますと、今、留保をしないほかの国では、きちんと刑罰が規定されているところがたくさんあります。例えばドイツでは、刑法百三十条におきまして、三月以上五年以下の自由刑か罰金、カナダでも二年以下の自由刑、イタリアでもありますし、イギリスでも、七年以下の自由刑か罰金、または両方というものがあります。では、これらの国は表現の自由に配慮していないのか。刑罰範囲が広過ぎるけれども、この国だけは刑法で処罰しているというのは理屈が合わないかと思います。

 これらの国が余りにも広範囲のものを処罰し過ぎている、自由を制限しているという話も聞きませんから、これは今、極めて広い範囲に処罰対象がなってしまうというのは、海外の現状を見ているとそれは言いわけにすぎないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

河野政府参考人 お答え申し上げます。

 今、諸外国の例ということでお挙げいただきましたけれども、諸外国と我が国の間には、それぞれ、固有の歴史的な経緯でありますとかあるいは国としての体験、そういったものを背景として憲法の規定も決まっておりますし、そのもとで法制度、法体系というものが決まっておるところでございまして、各国がそれぞれの法体系あるいはその国内事情に応じた法制度、規制というものを持っているということでございますので、諸外国と比べてどうこうというよりも、先ほど申し上げましたとおり、日本の憲法規定に照らして我が国として判断したということでございます。

高橋(み)委員 今、やはり全く納得いきません。日本にこれらのヘイトスピーチを許すような歴史的、文化的なものがあるのか、そんなことはないと私は思っております。きちんと整備した法律をつくるということが本当に必要なのではないでしょうか。海外で現実にはもう罰則があるということをきちんと御理解していただければと思います。

 ただ、やはり何といっても、実際、ではヘイトスピーチはどんなことがされているのか、どんなことが言われているか、実態の把握というのが必要なのではないかと私は思っております。

 警察庁さんにお伺いします。実態調査などをしているのでしょうか。

塩川政府参考人 お答えします。

 警察は、どのような言動がヘイトスピーチに当たるかについて判断する立場にはございませんが、いわゆる右派系市民グループについては、一部の過激な言動がヘイトスピーチであると批判されているというふうには承知しております。

 いわゆる右派系市民グループの全国におけるデモは、昨年、平成二十五年中は約百二十件、二十六年は九月末現在で約百件でございますが、これらのデモにおいては、警察は、トラブルから生じる違法行為の未然防止という観点から必要な警備措置を講じているところでございます。また、これらのデモに際しまして違法行為を認知した場合には、厳正に対処しております。

 いわゆるヘイトスピーチと言われる言動については、個別の事案によりますが、例えば刑法の名誉毀損罪や威力業務妨害罪などが成立する場合には、法と証拠に基づき厳正に対処しているところでございます。

高橋(み)委員 ありがとうございました。

 一応ちゃんと、どのようなものがあるかというのを把握されているという点では安心しました。

 それでは、上川法務大臣にお伺いしたいんですけれども、やはり人権を守るというところは法務省の管轄であるかと思いますけれども、人権を擁護する立場という点からは、法務省さんではどのような対策をとっているのか、お教えください。

奥野委員長 先に人権擁護局長の方がよくないですか。(高橋(み)委員「いや、これは上川法務大臣にお伺いしておりますので、大丈夫なんじゃないでしょうか」と呼ぶ)

 先に法務省の立場で言ってみて。(高橋(み)委員「いや、法務大臣、お願いします。そんな長くならなくてもいいです。短くお願いします」と呼ぶ)

 わかっている。わかっているけれども、やはり専門家に先に言わせた方がいいですよ。

 岡村さん、答えてくれますか。

岡村政府参考人 私ども法務省の人権擁護機関におきましては、日本全国の法務局、人権擁護委員の先生方のお力もいただきながら、人権相談、人権侵害についての個別事件についての救済、さらにはそういった人権侵犯となり得る人の心の問題について、少しでもよりよい方向を目指すということで、日々人権啓発の活動に力を入れております。

 その限りでは、人種差別というようなことに力を入れた最近の一部の言動については、甚だ残念なことだと思っております。

上川国務大臣 先ほど、実態調査をどのように把握しているのかというお話がございまして、そうしたことをしっかりと把握しながら、それを踏まえてどのように対応していくかということについて今御説明があったところだというふうに思っております。

 地域のそれぞれの実情に応じて、啓蒙啓発活動ということにつきましてはやはり具体的に実施していくということでありまして、人権週間も含めて、全国でも、きめ細かなシンポジウムを開催したりしながらの啓蒙活動については、一年間の取り組みだけ見ても、大変たくさん精力的にやっているなというふうに思っているところであります。

 本年十一月の十五日なんですけれども、「外国人と人権」と題したシンポジウムを大阪市において開催を予定しているところでございまして、現在、ポスターを張ったり、あるいはリーフレットを配布したりということで実施しているところでございます。

 今後も、こうした実態の把握をしっかりとしながら、ポスターやリーフレットの枚数増や掲出、そして配布地域のあり方、そして国民の皆様に何よりもわかりやすい形で御理解をいただくことができるように、そして地域の中でもしっかりと対応していただくことができるように、きめ細かな丁寧な人権擁護の活動をしてまいりたいというふうに思っております。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 先ほど、シンポジウムがあるというお話を伺いました。そういう活動も有益だとは思うんですけれども、私はやはり、学校の低学年のころからもう少しちゃんと人権教育というのをしていただければなと思っております。

 次に行かせていただきたいと思います。無戸籍者の問題についてお尋ねしたいと思います。

 十月十日現在、今、二百七十九名の方が無戸籍であるというふうに言われているとお伺いしました。ただ、新聞などでは、一万人ぐらいはいるというような新聞報道もございます。その現状と、実際どのようにして把握して今二百七十九人ぐらいというふうにしているのか、お尋ねしたいと思います。

深山政府参考人 委員御指摘のとおり、十月十日現在で二百七十九名という数字を公表しておりますが、これは、全国の法務局から法務省に連絡のあった無戸籍の方の数で、未報告の市区町村もあると考えられますので、そういう意味ではまだ暫定的な数字です。

 どうやってこの数字を把握しているかという仕組みを申し上げますと、法務省から通知を出しまして、市区町村あるいは児童相談所などが業務の過程で無戸籍の方がいるということを把握した場合には、市区町村の戸籍担当者にまずそれを伝えていただく、市区町村の戸籍担当者はさらにそれを各県の法務局に伝達する、それをまた法務省に伝えるという形で、毎月ごとに集計しているものです。

 ただ、今申し上げたとおり、市区町村のうちには、それぞれの個人情報保護条例との関係で、こういった報告を国の側にすることにちゅうちょされているところもあるやに聞いております。ただ、これは法律上の、戸籍法上の根拠に基づいて我々は報告を求めていますので、やや誤解もあろうかと思うんですけれども、そういった点も、今、再度周知をしているところでございます。

 したがって、毎月毎月この数字というのはふえていくもので、一部の報道で、先生が言われたような、もっとたくさんいるのではないかという数字が挙げられているのは承知しているんですけれども、これはまだ始めて二カ月の数字です。今後、無戸籍の方がいろいろな市役所等にアクセスするたびにこの数字がふえていくという形になりますので、しばらく様子を見た上で、全体でどれくらいおられるのかということの把握が可能になっていくんだろうと思っております。

高橋(み)委員 ありがとうございました。

 本当に、無戸籍の方というのは、日常生活にすごく困っている方が多いかと思いますので、きちんと現状把握をした上で対策をとっていただくように、ぜひお願いしたいと思います。

 あと、今回、嫡出推定の話も出ていましたけれども、嫡出推定とこの無戸籍者というのは、やはり何といってもかかわり合っているんじゃないかと思います。やはり、離婚した後に子供が生まれたとき、元夫の子供とするのは嫌だという生理的なものと、そして、例えば元夫が暴力を振るっていた場合は、その人のところに住所等いろいろわかってしまうのは困るとか、いろいろな考えから無戸籍になってしまう人たちも多いと思うんです。

 先ほど誰かがおっしゃっていたんですけれども、今の時代、DNAできちんと、ほとんど九九・何%の確率で親子かわかるというような現状にもなっていますので、この七百七十二条の規定というものは少し見直した方がいいのではないかと思っております。

 ただ、私がちょっと気になりましたのは、法務省のホームページを見ましたら、「嫡出推定制度は、なぜ必要なのですか。」とか「嫡出推定制度をなくすことはできないのですか。」というようなQアンドAがつくられておりまして、答えが、子の福祉のため合理的な制度であり、これをなくすことは相当ではありませんというような答えがありました。

 これは、本当は、今検討中というか、これから考えなければいけない条文であるということは周知の事実であって、法務省がこれは相当ではありませんと言うのは少し問題ではないかと思っております。やはり、皆さんがいろいろな意見があるところというのは公知の事実でもありますので、このようなホームページ的な掲載というのはどうかと思います。

 ですから、本当に嫡出推定の条文というものはかなり問題がある条文であると思いますので、これから御検討をいただければと思います。そしてまた、先ほども出ましたけれども、女性のみの待婚期間の制限のところも、やはり時代に合わせて少しずつ変えていかなければいけないのではないかと思っております。

 ちょっと時間がありませんので、次の、認知症で失踪している人の問題というところにちょっと移りたいと思っております。

 この前、群馬県の館林市で、認知症で徘回をしてしまって、ある施設に随分長い間いらっしゃって、何年かぶりに、テレビか何かのおかげで名前がわかって、もとの家族のところに戻れたというテレビがあったんですけれども、実際、認知症で失踪している人というのがかなり多いのではないかというような新聞記事もございます。

 そこで、厚生労働省さんに、実態把握をどのようにしているのかということをちょっとお伺いできればと思います。

苧谷政府参考人 私ども、高齢化の進展に伴いまして、今後、認知症の方々がふえていくことが見込まれるということでございまして、できる限りなれた地域で暮らせるように、地域全体で認知症の方々を支える体制づくりが必要と考えておりまして、実際の数といたしましては、これは警察庁の統計データでございますが、平成二十五年中で一万三百二十二人の方が行方不明になっているという数字は私どもの方も聞いておりまして、なお、行方不明者の約九八%につきましては、一週間以内に所在が確認されており、自宅等に戻っておられるということでございます。

 なお、これは一年間の数字でございまして、実際に平成二十六年四月三十日時点で不明な方は、平成二十四年中に受理された方が百七人、平成二十五年中に受理された方が百五十一人、合計二百五十八人という数字でございます。

高橋(み)委員 ありがとうございました。

 百人前後ということなんだと思うんですけれども、普通、失踪してしまった場合は、周りの人が捜している方も多いと思いますので、実際、百人ぐらいの人がわからないというのは、よくよく考えてみるとどうしてなんだろうというようなイメージもあります。

 実際に、認知症の方が行方不明になってしまった、そして家族の人が捜しているという場合は、やはりどうしても行政機関の方にお尋ねをして、もちろん警察に行かれる方も多いとは思うんですけれども、いらっしゃいませんか、そうなると思うんですけれども、そのとき、持っている個人情報という面で、なかなか、実際預かっている認知症の方の個人情報を余り大っぴらに出せないので、結局戻れない方が出てきてしまうんじゃないかという危惧をしているのです。

 その点、認知症の方の個人情報の保護の観点と、認知症の方を家族のもとに帰すというところのはざまでは、どのような取り組みがなされているのか、お尋ねできればと思います。

苧谷政府参考人 お答えいたします。

 徘回されている方の生命身体というのがやはり非常に重要でございますので、各自治体の方でも、徘回されている方を早く発見して御家族のもとにお戻しするということを重視されていることが多うございます。

 そういうことで、私どもとしても、地域におきまして、徘回による行方不明や身元不明を防ぐための取り組みを充実させようということで、現在、徘徊・見守りSOSネットワーク、これは、協力員の方も参加いただきまして、行方不明になりましたら、メール等で、こういう方が今いませんということで、もしわかったら地域包括支援センターの方に連絡くださいというようなことで実際にやっておりまして、本年四月現在で、六百十六市町村、全市区町村の約三分の一で実施していただいております。

 また、ほかに、まだ身元が不明のまま各自治体において保護されているという場合がございます。これにつきましては、本年八月に厚生労働省のホームページに特設サイトを設けまして、身元不明の方につきまして、各自治体で公開中の情報を一元的に確認できるようにしたところでございます。これは、各自治体でここまで公表しようという形で御判断いただきまして、その情報をホームページに載せているということでございます。

 厚生労働省といたしましては、引き続き、各自治体と連携し、積極的な取り組みを推進していきたいと考えてございます。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 少し時間がなくなってしまいましたので、次をちょっと飛ばして、上川大臣がとても興味があるとおっしゃった再犯防止について最後にちょっとお伺いしたいと思います。

 再犯防止のためには、何といっても刑務所などから出た方々に仕事をあっせんするということが大事だと思いまして、やはりそれには協力雇用主の方に協力していただくということが大事だと思っております。

 平成二十七年から奨励金制度の創設をして、今まで以上に協力雇用主の方にお金を出すということを伺っているんですけれども、ただ、残念ながら、私が聞いた限りでは、雇用主さんに登録はするものの、実際に雇うことが余りないというようなうわさも聞いているんです。

 その点、この制度によってどのように改善されて、どのようにいくという目標があるのか、最後に教えていただければと思います。よろしくお願いします。

奥野委員長 維新の党の時間は終わっていますので、できるだけ簡単にやってください。

上川国務大臣 協力雇用主の大変な御協力をいただきながらこの制度を動かしていかなければいけないということでありますので、この割合が今、一〇%くらいずつ伸びてはいるものの、まだまだ足りないということでありますので、それの増進に向けて取り組んでいきたいと思います。

 もう一つちょっと、時間が過ぎているということでありますが、先ほど、毎日新聞の世論調査と、そして内閣府の実施した世論調査ということで、私、三択というふうに申し上げたんですが、わからないという部分も選択肢のうちに入っているということで、四択でしたので、ちょっと訂正をさせていただきたいと思います。

高橋(み)委員 ありがとうございました。

奥野委員長 これにて維新の党の質疑は終了しました。

 次に、西田譲君。

西田委員 次世代の党の西田譲です。どうぞよろしくお願いをいたします。

 さて、大臣の所信的挨拶からまずはお伺いをしていきたいと思います。

 女性が輝く社会を推進する安倍政権の一員として、私は、法務行政に携わる女性の働く環境を整えるということで、まず冒頭の方で力強くおっしゃっていただいているわけでございますが、この法務行政において、何か、法のもとの平等が徹底されていないような現状であったりとか、あるいは、法務行政において法治主義が揺らいでいるような、そういった問題点が具体的にあるのか、法務行政に携わる女性に限定して、その働く環境に何か問題があるのか、御認識をお伺いしたいと思います。

上川国務大臣 女性の輝く社会の実現という、安倍政権が掲げる大きな柱ということでありまして、まず隗より始めよということで、霞が関の中でも女性の活躍をさらに推進することができるようにということについては、法務省も例外ではないというふうに思っておりまして、その意味で、所信の中で前の方で入れさせていただきました。

 今、法務行政の全体の動きを見ているところでありますが、やはり全国にいろいろな形で業務が点在をしているところでありまして、例えば女性の刑務所の中での部分につきましては、女性の刑務官の方が働いていらっしゃるということでありますが、若い世代を中心に、なかなか定着することができないという具体的な課題が実は深刻になっております。

 これを解決するために、例えば、地域の中で、保護司さんでありますとか、これも女性の方が活躍していらっしゃるわけでありますが、そうしたさまざまな皆さんにネットワークを広げていただきながら、またサポートしていただくというような形で、ある意味では地域全体で女性刑務所の支援をしているというような取り組みについて、始まったばかりではありますが、着実に芽出しができ、また進行しているというふうに、大変心強い動きもあるところであります。

 まだ全て把握しているわけではありませんけれども、入国管理の現場とか、そして、先ほどありましたけれども、人権関係の相談の窓口とか、いろいろなところで国民の皆さんの日常の生活に係る部分で仕事をしているということでありますので、それぞれの業務の特性に応じて、課題についてももう少し絞り込んで、一般的な数値がどうかということだけで非常にいいとか悪いとかということを判断するのではなくて、体制の中に入って、その中の課題をしっかりとするということが非常に大事ではないかなと今思っているところであります。

 そのこと自体が、男性の働き方とか、男性の仕事の仕方にも影響してくるということであります。そのことが、ひいては仕事の質そのものも高めていく、パフォーマンスも高めていくということでありますので、そういう方向に向けて、女性の活躍が大きなドライブになっていくことができるようにしていきたい、こういう思いでございます。

西田委員 ありがとうございます。

 法務行政において何か男女の差別が行われるとか、そういったことではなく、環境をというお話でございました。

 私も栃木の女子刑務所は伺わせていただきました。確かに、薬物犯の方が非常に多くて、自身の排せつ物を投げつけられたりとか、本当に、取っ組み合いになったりとか、そういったことも頻発をしているというお話も実際お伺いしてきますと、これでは刑務官の方が懲役じゃないかと思うような状況にある。こういったことは、やはりしっかりと改善をしていかなきゃいけないというふうに思うわけでございます。

 今、そういう意味で、女性の働く環境ということであれば、同じように、やはり男性の働く環境もしっかりと整えるという問題意識は持っていただいているというふうに認識をするわけでございますが、それでよろしいでしょうか。

上川国務大臣 御指摘の御意見、御指摘のとおりでございます。

 この社会全体が意識を改革していくということがないと、女性だけが輝くということにはなかなかなりません。女性も輝くということは、男性も輝いていただきたいということでありまして、それが全体としての社会の改善につながっていくというふうに考えておりますので、まさにそこのところが大変大きな肝になってくるというふうに思っております。

西田委員 ありがとうございます。

 とはいえ、一方、気になるのは、例えば、女性管理職、幹部の人数の数値目標をつくる、三割でございましたか。やはり、特に行政においては実力主義でなければならないと思うんですね。実力もないのに幹部にしてしまうといったことが数値目標によって誘発されてしまってはならない。逆に、そういったことがなされれば、これはもう性差逆差別につながっていくのではなかろうかというふうに考えますが、その点について大臣の見解を伺いたいと思います。

上川国務大臣 数値目標を掲げて社会を動かしていくということについては、そんなに簡単に現実が動くものではないというふうに思うわけでありますが、一つの目標を定めるということについて、努力をしていく力というものを結集していく意味があるのではないかというふうに思っています。

 私、かつて、建設の現場で働いていらっしゃる女性の調査をしたことがございますが、例えば鉄筋工とか電気工とか、重いものをしょって三階まで登っていくというような、そうした現場で多くの女性も活躍していらっしゃるということであります。そういう中で、三〇%ぐらい職場の中に入っていくと、経営者の方が、やはりマネジメントをしっかりしないとならないということで、働く環境を変えないと全体としての成果が上がらない、そういうことをおっしゃっていた経営者の方がいらっしゃいまして、もうかなり前の話ですが、大変印象深く、つまり、三〇%ぐらいになってくると、そのことを踏まえて、どういう形でやったらいいのかということの工夫というのが出てくるのではないかというふうに思っております。

 そういう意味でのドライブをかけるということの目標という形で定めている、そしてそれは大きな意味があるというふうにも思っております。

 ただ、逆差別というような御指摘が出てくるということについては大変残念なことでありますので、そうならないように女性の皆さんにも頑張っていただき、また、長いタームで育てて自己研さんをしていただくということが非常に大事ではないかなというふうに思っています。

西田委員 ありがとうございます。

 やはり、女性が輝く社会、当然でございます。輝いていただかなきゃいけません。しかし、私は、それは一義的にはもう個人の努力であり、才能であり、そして運も大事ですけれども、そういったことが非常に大事。恐らく、世の多くの女性も、何か政府の施策によって輝きたいなんて思っている人はほとんどいないんじゃなかろうかというふうにも思っております。

 もう一つ、先ほど、法務行政において男性が働く環境を整えるというふうにおっしゃいました。私は、逆にそれも女性が輝く社会につながるというふうに思うんですね。何も社会に出て働く方々だけが輝くわけではないわけでございます。例えば、法務行政で働く御主人を持たれている献身的な女性は、やはり自分の旦那さんが仕事場で輝くことを望んでいるわけでございますから、女性が輝く社会を目指すためにも、そういう家庭に対して献身的な女性をもきちんと気配りできるような、そういう視野をぜひ持っていただきたい、このように思っております。よろしくお願いを申し上げます。

 さて次に、選択的夫婦別姓の問題でございます。

 きょう初めて、大臣のこの問題に対する考え方を午前中からずっと伺っておりました。いわゆる革新的な選択的夫婦別姓運動をやっていらっしゃるわけじゃないんだなということで、安心はしておるわけでございます。

 やはりこの問題は、非常に革新的にやっている政治問題であるわけでございます。マルクスが家族の廃止と絶叫しました。そしてエンゲルスが、愛情に基づく婚姻関係のみが道徳的であると言って、恋愛至上主義の事実婚を訴えました。それを受けて、我が国でも、昭和五十年代から、共産党さんを中心に、非嫡出子の相続平等化であったり、そして九〇年に入れば、法務省も法制審に出しましたけれども、この夫婦別姓の問題、離婚手続の簡素化の問題、こういうふうに、家族弱体化に向かうような民法改悪の動き、革新的な動きがあることはしっかりと把握をしていただきたいというふうに思っております。

 ただ、大臣は、答弁を聞いておりますと、そういうことではどうやらなさそうだというふうに思うわけでございます。しかし一方で、やはり、今慎重である理由を、世論を論拠として慎重であるべきというやの答弁が非常に多いのが気になるところでございます。

 ですので、お伺いしたいんですが、世論次第では夫婦別姓の導入に向けた民法改正をするおつもりがあるのか、お伺いをしたいと思います。

上川国務大臣 この問題につきましては、先生の御意見もありますし、いろいろな意見がございます。今こうして委員の先生方から御質問をいただくときに、それぞれのお立場ということでおっしゃっていただくということで、それだけ見ても、非常に幅のある意見があるということ、それが今の現実だというふうに思っています。

 先ほど、世論調査ということでありますが、世論の方向性をいろいろな形で把握していく、あるいはそのトレンドを見ていくというのは、これは大事なことだと思います。何もそういうものがなくて、そして客観的な材料もなくていろいろなことを判断するということになりますと、それは非常にまずいことではないかというふうに思っておりまして、世論調査に一義的に全てを依存するということではなくて、そうしたことのトレンドを見ながら、社会の部分のある一つの流れについても客観的に見ていくという姿勢というのは非常に大事ではないかと思っています。

 今回、世論調査で、定期的にやっておりますが、通称使用というところについての一項目が選択肢に加わりまして、そこのところは、世論の調査と同時に、実態のところを見ますと、例えば、士業で活躍していらっしゃる女性の先生方においては、通称使用をしているということで、社会的なさまざまな不便ということについてある意味では対応していらっしゃるということ、こういうことを考えると、やはりそうした部分についての課題、問題ということについて、何らかの対策を考えなければいけないんじゃないかなというふうに思っています。

 通称使用を広げていくということについてどういうことが考えられるのかということもあわせて検討していきたいというふうに思っておりますが、直ちに民法改正で云々というようなことにはならないというふうに思っております。

西田委員 あくまで世論は参考的に、社会の情勢を把握するためにということで御答弁いただきました。

 これは、大臣だけではなくて、我々政治家にとって、国民の意見に広く耳を傾け、そしてその声に寄り添っていくという基本姿勢というのは大原則でございまして、非常に大切なことであるのはもう言うまでもないというふうに思っているわけでございますが、一方で、法務大臣という職責において求められることは、私は、一つ、法の支配の貫徹ということだろうというふうに思っております。

 谷垣大臣のときは、所信のときには必ず、法の支配の貫徹と、貫徹ですからね、貫徹と、そして法秩序の維持といったことに言及されていらっしゃいましたが、松島前大臣の所信的挨拶、そして上川新大臣の今回の挨拶の中でも、そういった文言が抜け落ちておったのが非常に気になります。そうなってくると、どうしても、今、御答弁では、世論は別に参考にする程度だとおっしゃったものの、法の支配の貫徹という意識がなければ、ついつい世論に、もしくは、何といいますか、社会のふわっとした雰囲気に流されてしまうんじゃなかろうかという懸念を持つわけでございます。

 ですので、まず、法の支配の貫徹ということについての御意思をお伺いしたいというふうに思います。

上川国務大臣 委員が御指摘いただきましたとおり、所信の冒頭のところで法の支配の貫徹ということについて述べるという形になっていないということについては、そのとおりでございます。

 ただ、法の支配の貫徹の重要性ということについては、極めて大事なことだというふうに思っておりますので、これまでの法務大臣の姿勢そのものもしっかりと引き継いでまいりたいというふうに思っております。これは、国民の皆様の安心、安全な生活を確保するための基本的な考え方というふうにも思っておりますし、また、国としてのあり方ということにつきましても、これも理念として非常に大事だというふうに思っておりますので、法務行政をつかさどる上でも、このことについてはしっかりと刻んで頑張っていきたいと思います。

西田委員 ありがとうございます。

 法の支配の反対は人による恣意的な支配になるわけでございますが、人というのは、何も特定の個人でない場合もあるわけでございます。多数派による専制という言葉がありますけれども、多数の意見による恣意的な支配といったこともまた法の支配の対極にあるわけでございます。ですから、法務大臣として、特にやはりこの法の支配の貫徹といったことについては、ぜひ大切にしていただきたいというふうに考えるわけでございます。

 そこでお伺いしますが、家族は尊重される、これは私は、もうこの日本において確立した法であると思うんですが、いかがでございましょう。

上川国務大臣 生まれて、一人の人間としてこの国で生をうけて成長し、そしてこの国で一生を終えていく。私たち一人一人のそういう意味での人権というか、それは大変とうといものだというふうに思います。その上で、結婚をし、そして一つの基本単位であります家族を持つということについて、それぞれの皆さんがそうした幸せのライフコースということを歩んでいただきたいというふうに思っています。

 これはそれぞれのお考えのところもあるんですが、私自身は、コミュニティーとして一番最小限の単位としての家族ということについて、極めて大事であるというふうに思いますし、大事であるというよりも基本であるというふうに思っています。そのことの安定の中に子供たちも健やかな育ちがあるというふうに考えておりますので、そうしたことをしっかりと実現することができるような基盤をつくっていくということもまた、国、政府の役割ではないかというふうに思っています。

西田委員 ありがとうございます。

 冒頭、子供は一人で生まれてくるとおっしゃいました。しかし、ほかの動物と違って、人間は、一人では決して子供というのは成長できないんだろうと思っております。家族という温室があって、そこでその国独特の倫理や道徳といったものがたたき込まれていく中に、文明社会の人間として成長していくわけでございますね。

 大臣おっしゃったように、家族というのは基本だという表現をされましたけれども、私は、それこそまさしく法だというふうに思っているわけでございます。

 ですから、法の支配の貫徹といったことは、イコール、家族を尊重する、逆に言えば、家族を尊重しないいかなる立法も許してはならない、これは私は、法の支配と家族のあり方を結びつける非常に大事な考え方だと思うんですね。

 そこで、選択的夫婦別姓の議論に戻りたいんですけれども、夫婦別姓というのは、当然、親子別姓になるわけでございます。夫婦別姓、そして親子別姓といったものが家族のきずなの弱体化につながらないと果たして言い切れるのか。大臣、いかがお考えでしょうか。

上川国務大臣 子供ということよりも前に、一人の人が、アイデンティティー、自分が、例えば、私は今、上川陽子と申しますが、その前の氏は竹田陽子と申しました。結婚をして姓を変えました。夫の姓であります。(発言する者あり)夫は変えてはおりません。それは選択をしているわけでありまして、このことはしっかりと認められなければいけないというふうに思います。

 家族、ファミリーということで、その中で子供が生まれて、そして一人の人間として家庭の中で育っていくというところの役割というのは、これは基本単位だというふうに思っています。そして、それを地域全体で見守っていくということもまた大事だと思います。そして、それを国としてもサポートしていくということも大事だと思います。そういう意味での基本の単位というふうに考えております。

西田委員 ちょっと明確ではなかったかなと思うんですけれども、私は、夫婦別姓、親子別姓になれば、家族のきずなは間違いなく弱体化するというふうに思うわけでございますね。恐らく大臣も同意をいただけるんじゃなかろうかというふうに思いますし、逆に言えば、もっとさらに発展すれば、そこから連鎖していく、社会に与えるさまざまな影響、害悪、弊害、そういったことは、明確に言えなくとも、逆に明確に言えないことの方が問題なんですね。どういった害悪が起こるかといったことをやはりきちんと把握しない限り、夫婦別姓、いいじゃないかという議論を封殺できないような気がしてなりません。

 ですから、仮に夫婦別姓を導入します。そうすると、親子別姓になります。家族のきずなは恐らく弱体化するでしょう。そしてその先に、そこから連鎖していく、社会へのさまざまな弊害、害悪、こういったものをやはりきちんとそろそろ調査分析し、夫婦別姓というものに対して封殺をしていく必要があると考えるんですけれども、大臣、いかがでしょう。

上川国務大臣 委員の御意見をしっかりと今承らせていただきました。

西田委員 ありがとうございます。

 法の支配の貫徹、イコール、家族を尊重しないいかなる立法も許されない、ぜひこのロジックを大切にしていただきたいと思います。

 そして、先ほど、通称使用のところをきょうもよく引用されていらっしゃいます。これまでのいろいろなアンケート結果で寄せられた国民の方々の声というのも、士業のお話もありますし、もしくは、昔からの同窓生が私のことをわからなくなるとか、いろいろなことが声として寄せられています。

 私は、そういったものは基本的に個人の事情であり、解決すべきは個人の問題、あるいは家族での問題、あるいは職場で解決すべき問題だと思っておりまして、そういった個別的案件をもって、まさに日本のコモンローと言ってもおかしくない民法の家族法を改正するという理由には決して当たらないというふうに思いますので、夫婦別姓論を封殺するためには、ここはやはりそういった啓蒙も必要であるというふうに考えておりますので、ぜひこれもあわせて御検討いただきたいというふうに考えてございます。

 そして次に、人権擁護行政というところについて伺いたいと思います。

 所信的挨拶の中で、大臣は、人権擁護行政の推進、例示を三つされていらっしゃいます。子供たちに対するいじめ、外国人に対する人権問題、インターネット上の人権問題というふうに三つ例示をされていらっしゃいます。

 この中で、外国人に対する人権問題ということでございますが、法務省が問題として認識をしていらっしゃる外国人に対する人権問題とは一体どのようなことなのか、法務省というより大臣ですね、大臣が問題視をされている外国人に対する人権問題とはどういったものなのか、お聞かせをいただきたいと思います。

上川国務大臣 人権というのは、守らなければいけないと思います。それは、国籍がどうであれ、人種がどうであれ、男性であっても女性であっても、子供であっても、障害者の皆さんであっても、人権は守らなければならない、これが基本だというふうに思っています。

西田委員 人種がどうであれ、日本人であれ外国人であれ、やはり、当たり前の生きるための生存権、ベーシックなそういったものを守らなければなりません。そういったことに対する人道的な思いというのは気持ちを同じくするところでございます。

 それでは、大臣、この外国人に対する人権問題というのを今テーマにさせていただきますけれども、例えば、確立されている日本国民の権利を外国人が行使できない、もしくは享受できないことを人権問題とお考えになるか。

 外国人の人権問題というと、外国人が日本国民同様の権利を享受できないじゃないかといったことも果たして人権問題とお考えになるかということについて、大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

上川国務大臣 今の外国人の定義ということでありますが、日本国籍を有していないということで規定するとするならば、その意味で、日本人であるから受けるサービスということについて、全てそれと同じものをということには必ずしもならないというふうに考えております。

西田委員 ありがとうございます。

 まさしく、国籍を持つ国民と国籍を持たない者との間に設けられる区別であったり差異であったり、例えば優先であったり、そういったものというのは決して外国人の人権問題ではないというふうに思うのでございますが、今の大臣の答弁というのはそういう理解でよろしいですか。

上川国務大臣 質問の趣旨が少しわからないかなという印象で、どういう形でお聞きになっていらっしゃるのかなということでありますが、自分の人権を主張するということであるならば、同じように人の人権ということについても尊重をしなければいけない、これは社会としての基本的なルールだと思います。

 先ほど、地域社会の中で家族という話がありました。そして、地域の中でというのがありました、国の中でと。また、世界の中でと。こういうような広がりの中で私たちは生きているということでありますが、どこに行っても、ひとしく自分の人権も尊重されなければいけないし、そして同時に人の人権も守らなければいけない。ここのところに、意識というところに一つの差別という問題が出てくるのではないかというふうに思います。

 そういう意味で、今、外国人という形で申し上げましたけれども、私自身の考え方の中では、それは、外国人であろうが、そして先ほど言ったように女性であろうが男性であろうが、ひとしく人権は守らなければいけない。それは、自分の人権をしっかりと守ってもらうと同時に、人の人権も同じようにしっかりと守っていく意識というのが大事だと思います。

 そのことについて問題があれば、そこのところにしっかりと、一人一人の人権を大切にしよう、つまりそれは、自分自身も大切にされるということであるということもあわせて考えていかなきゃいけないんじゃないかというふうに思っております。

西田委員 ありがとうございます。

 あれも人権、これも人権という人権バブルの状況になっているという問題意識を私は持っております。

 外国人に対する問題を私は例示させていただきましたけれども、先ほど、人種差別撤廃条約についてきょう議論がなされましたけれども、四条で留保しているということですが、人種差別撤廃条約一条の2にはこういうのがあるんです、国民と国民でない者の間に設ける区別、排除、制限または優先については適用しないと。国民と国民でない者の間に設ける区別、排除、制限、優先、そういったものは人種差別撤廃条約においてもきちんと担保しているんですね。

 つまり、どういうことかといいますと、やはり人権、人権と殊さら人権の範囲を広げるのではなくて、先ほどおっしゃったような、自分にあるものは相手に認めるとか、そういったことはあくまで国民の権利として確立されているというお話ではなかろうかというふうに私は思うんです。法のもとの平等という原則があり、そして確立された自由があり、そういったものがひとしく国民に保障されているといったことが仮に侵されているのであれば、これは法務省として取り組んでいただきたい。

 あるいは、谷垣前大臣が言及されましたが、まだ権利の生成途上にあるようなもの、そういったものに対する調査であったり取り組み、こういったものこそが法務省の人権行政ではなかろうかといったこともおっしゃっておられました。そのとおりだというふうに思います。

 ぜひ、何でもかんでも、あれもこれも人権というような人権バブルを法務省の人権行政で引き起こされないようにお願いをしたいというふうに思います。

 最後、外国人の受け入れ及び難民認定のあり方の検討という項目についてお伺いをしたいというふうに思っております。

 特に後段の部分でございまして、我が国に潜伏する不法滞在者や偽装滞在者への対策といったことをおっしゃっておられます。細かい話だと、この後に続く自発的な出頭を促すとか、一体どうやってやるんだろうかというふうに思うわけですが、それはまた別の機会にお聞きしたいと思います。

 この外国人の受け入れについて、あわせて不法滞在者の取り締まりをしっかりやる、当然大事なことでございますけれども、もう一つ大切なことは、入国させるべきでない方々をどう制限するかといった点が非常に大事ではなかろうかと思います。

 一つには、例えば、我が国に頻繁に領域侵犯をしてくるような警戒すべき国、あるいは我が国で年間犯罪検挙率が著しく高いような国とか、いろいろな検討の仕方はあろうかと思いますけれども、入国制限というような考え方を持たないと、外国人の受け入れを検討していく際に、不法滞在の取り締まりだけでは不十分ではなかろうかというふうに思います。

 あわせて、例えば今、エボラの問題が世界的な問題でありますが、そういった感染症を切り口に、入国に対する制限といったものを入管行政の中できちんと法的根拠として与えていく、こういったことも必要だと考えます。

 大臣に伺います。

 外国人の受け入れといった入管行政を考えたときに、不法滞在の取り締まりを厳正にやっていくと同時に、正当な理由での入国制限といったものも非常に大切な問題だと考えますが、いかがでしょうか。

上川国務大臣 入国管理行政の中には、不法行為をもくろむ外国人の入国を水際で確実に阻止するというようなことを挙げているところでございます。

 具体的に今取り組んでいることでありますが、旅券に記録されました本人情報や指紋、顔写真といった個人識別情報を活用しまして、要注意人物のリストとの照合を徹底するなどいたしまして、上陸を拒否すべき外国人の上陸を確実に阻止していくというようなことも進めておりますので、これからもいろいろな形でそうした方向に向けて取り組んでいきたいと思っております。

西田委員 個人個人ということではこれまでもやっていらっしゃったと思います。私、前の法務委員会でも提案したのでございますが、国ごとに峻別していくというような検討、こういったことが必要ではなかろうかというふうに考えますが、いかがでしょうか。

上川国務大臣 ただいまの御提案の件でございますが、ビザという制度がございまして、そういう中で、ビザを出さないというようなこともあり得るということでありますので、いろいろな手段ということで、目的がかなうことができるようにしていくということが大事だというふうに思います。

西田委員 ありがとうございます。またこれからも議論を深めてまいりたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

奥野委員長 次に、鈴木貴子君。

鈴木(貴)委員 鈴木貴子でございます。

 前回に引き続きまして、またこうして質問の機会をいただきましたことを、理事そして委員各位の皆様にお礼を申し上げさせていただきます。

 そして、上川大臣、先ほど、実は午前の部が終わって階段をおりていくときに御一緒させていただいたんですが、お昼の休憩もたった五分というような非常にハードスケジュールの中で、姿勢一つ崩さず真摯に向き合っていらっしゃる姿に大臣のお人柄を感じながら、また、法曹出身ではないということを伺わせていただきましたが、この法務行政、独立そして独自性が問われるこの法務行政において、まさに上川大臣の手腕がこれから発揮されていくのではないのかなと思いながら、また御指導いただきたい、このように思っております。

 それでは、時間も短いので、早速質問に入らせていただきたいと思います。

 まず、二点ほど、犯罪被害者にかかわる件について質問をさせていただきます。

 実は、前回の一般質疑の際、松島前大臣にも伺わせていただいたんですけれども、松島大臣は降板をされ、非常に残念に思いながら、また、私だけではなく、実は、松島大臣のそのときの答弁で非常に勇気をいただいたという方の声が寄せられております。

 なぜかといいますと、大臣のそのときの答弁で、冤罪に遭った方というのは、それによって人生が狂わされて、これぞまさしくこれほどの被害者はないと思う、このように発言をされました。そしてまた、冤罪が確定されているような方々でお会いできる方がいらっしゃれば、そのような方々と意見交換を考えていきたいと前向きな御答弁をされております。

 きょうもきっと、このインターネット中継を見られている多くのそういった冤罪被害者、そしてまた御関係者の方もいらっしゃると思いますが、こうした確定冤罪被害者の皆さんに対して上川大臣はどのようなお気持ちを持っていらっしゃるか、御見解をお示しください。

上川国務大臣 犯人でないのに、そのことによって大変大きな犠牲になられたというふうに思っておりまして、こうした犯人でない方を処罰するということについてはあってはならないというふうに思っております。

 冤罪によって刑に服されて、また、とうとい時間、あるいはさまざまな活動、いろいろなことを犠牲にされたということでございますので、そういう意味では、こうした皆様の思いに応えていくべく、適正な形での捜査とか公判の適正性ということについてはさらにしっかりと取り組まなければいけない、そうした強いメッセージを皆様御自身が発していらっしゃるのではないかというふうに思っております。

鈴木(貴)委員 まさにそういった冤罪をなくすためにも、検察改革、そしてまた取り調べの可視化、録音、録画といった問題、議論が出てきたかと思われます。

 先般、大臣のもとにもきっと答申が行ったかと思うんですけれども、この可視化の議論をより建設的に、そしてまた国民の生の声をより組み入れるためにも、私は、こういった、現実問題、確定冤罪被害者の皆さんがもういらっしゃるという現実があるわけですから、ぜひ大臣に、直接そういった方々の声を聞いていただく機会を持っていただきたいと思うのですが、大臣はどのようにお考えでしょうか。

上川国務大臣 私自身、基本として、さまざまな皆様の声をできるだけきめ細かく聞いていくということについては、これはどの分野もそうでありますが、大切にしてきたところでございます。

 そういう意味での声を、大切な声を聞かせていただきたいというふうに思います。

鈴木(貴)委員 ありがとうございます。

 非常に前向きな答弁に、今、これで一歩前進したというか、非常に力強く思われた方も多くいらっしゃるのではないのかな、このように思っております。

 続きまして、大臣の就任挨拶のときに、公判審理の充実化について大臣は触れられておりましたが、それに付随しまして、最新の警察白書を見ましても、「DNA型鑑定の実施件数は、年々増加している。 警察では、DNA型鑑定のための体制を強化する」と書かれております。

 大臣も、当局の捜査そしてまた公判などで使われているDNA型鑑定の有用性については認識をされていらっしゃいますでしょうか。

上川国務大臣 この分野につきましても、大変な技術進歩というか、そうしたことでありますので、最新のそうした技術を生かしていくということは捜査の中でも大切なことではないかというふうに思います。

鈴木(貴)委員 ありがとうございます。

 科学技術の進歩なども、これは広くあまねく多くの方に理解をされて、共有されている認識ではないかと思うんですけれども、九月三十日付の読売新聞朝刊でこんな見出しがありました。「「検察主張に矛盾」 袴田弁護団が批判」、また、同日付の静岡新聞朝刊では、「「不当な訴訟活動」 袴田さん弁護団、高検に抗議書」というような記事が掲載をされておりました。また、今月九日には静岡新聞朝刊にこのような見出しもありました。「「検察側の二枚舌主張は詐欺」 袴田さん支援者抗議」という記事も掲載されておりますが、このような報道の事実、報道があったかなかったか、これについて御存じでしょうか。

上川国務大臣 そのような意見書というか、出されたということは承知をしております。

鈴木(貴)委員 この記事の内容なんですけれども、袴田事件第二次再審請求審でこれまで検察側は、弁護団推薦の鑑定人が行ったDNA鑑定で用いられているそのDNAの鑑定手法について、非科学的でその鑑定人独自の手法だから鑑定結果は信用できないと主張しているにもかかわらず、別の事件の裁判では、その全く同じ手法について、科学的根拠が十分でDNA鑑定の結果に信用性があると主張し、被告人に懲役十五年を求刑しております。そしてまた、裁判所もその検察の主張を認め、その判決が確定していた。

 こういった事実があるんですが、これは、大臣、事実でしょうか。

上川国務大臣 ただいまお尋ねの件でございますけれども、現在即時抗告審に係属中の刑事事件にかかわる事柄でございまして、法務大臣として所感を述べることにつきましては差し控えたいというふうに思います。

鈴木(貴)委員 改めてお尋ねをさせていただきます。

 なぜ、現在係争中の案件、大臣の答弁はできないのか。そのなぜという理由をお示しいただけますでしょうか。

上川国務大臣 ただいま法務大臣という大変法務行政に携わる立場に立たせていただいておりまして、私自身の発言そのものでさまざまな影響が及ぼされることがあるということでございますので、そうした具体的な案件につきましての所感ということになりますと差し控えざるを得ないということでございます。

鈴木(貴)委員 今大臣、大臣の発言が影響を与えかねないというような理由で答弁できないということだったんですが、まさに三権分立といいますか、それぞれ独立をしているわけであります。

 また、司法というものは法と証拠にのっとって適正に行われているというのが、常々、刑事局長の答弁でも見られているところでもあります。法と証拠にのっとってしかるべき判断が下されるのであれば、たとえ大臣の、いや、たとえ総理の発言であろうとも予断を来すようなことはない。それがまさに日本の司法の姿ではないでしょうか。

 しかし、ここで大臣が、私の発言によって影響を及ぼすことがあるかもしれないと。まさにこの発言自身が今司法が揺らいでいるという証拠、あかしではないかと思うのですが、大臣の御見解をお示しください。

上川国務大臣 繰り返しになって大変恐縮でございますが、具体的な案件でございまして、法務大臣として所感を述べることは差し控えさせていただきます。

鈴木(貴)委員 所感を述べることを差し控えさせていただく理由を聞かせていただき、そしてまた、私はその理由に対して納得できないというようなことを述べさせていただきました。

 また、個別の案件についてお答えできないということの一つの要因だったかと思うんですけれども、事前に、質問主意書も出させていただきました。

 質問主意書の答弁によりますと、憲法七十六条、刑事訴訟法第四十七条、同法第五十三条、刑事確定訴訟記録法等の趣旨を踏まえて個別の案件には答えられないといった閣議決定済みの答弁をいただきました。

 であれば、この七十六条、四十七条、五十三条、刑事確定訴訟記録法等、どの部分にひっかかるがゆえに案件に答えられないのか、お示しいただけますでしょうか。

上川国務大臣 特定の事件につきまして法務大臣が所感を述べることは、具体的事件に対する検察の活動に重大な影響を与えたり、あるいは影響を与えるのではないかとの国民の疑念を生じかねず、その意味で控えるのが相当であるというふうに考えております。

鈴木(貴)委員 繰り返しの質問で申しわけありませんが、その影響を与えるということでありますが、裁判所は独立した機関であり、全ての裁判官はその良心に従い独立してその職権を行うと明記されております。法と証拠に基づいてあくまでも法務行政は行われるわけであります。法務大臣とて、法と証拠には勝てないといいますか、法と証拠より先に進めないというのが、今書かれている文言である。

 そういった観点からいいますと、ここでの大臣の発言が裁判に、また判決に、判例に予断を与えるということは一切ないと逆に言うと明記されているわけですから、ぜひ大臣、自信を持って答弁を行っていただけないでしょうか。

上川国務大臣 この点につきましては、特定の事件につきまして法務大臣が所感を述べることについては、具体的事件に対する検察の活動に重大な影響を与えたり、あるいは影響を与えるのではないかという国民の疑念を生じかねないということでございまして、控えるのが相当であるというふうに考えております。

鈴木(貴)委員 重大な影響または重大な疑念というのはどのようなことを想定されていらっしゃるのでしょうか。

上川国務大臣 文字どおりでございます。

鈴木(貴)委員 具体的な例をお示しいただけますでしょうか。

上川国務大臣 繰り返しの答弁で大変恐縮でございますが、特定の事件について法務大臣が所感を述べることにつきましては差し控えさせていただきたいと存じます。

鈴木(貴)委員 繰り返しの質疑になり大変申しわけありませんが、憲法七十六条、刑事訴訟法第四十七条、同法第五十三条、刑事確定訴訟記録法等の趣旨を踏まえ、個別の案件にはお答えできないと、確かに閣議決定を受けた答弁は私もいただきました。

 あえて、その閣議決定を受けたものだからこそ、大臣にお尋ねをさせていただきます。これらの七十六条、四十七条、五十三条など、何にひっかかるがゆえにお答えできないのか、その具体的な理由をお示しいただけないでしょうか。

上川国務大臣 お尋ねにつきまして、繰り返しの答弁で大変恐縮でございますけれども、具体的な刑事事件ということでございますので、法務大臣として所感を述べることは差し控えさせていただきます。

鈴木(貴)委員 時間も来ましたので、まとめをさせていただきたいと思います。

 繰り返しの質問で私も大変申しわけなく思っているところではありますが、まさに今、他の議員からも、独自性だ、独立性だ、三権分立だという声も上がっております。まさに私もそのとおりであると。三権分立というのは、それぞれがおのおのをチェック・アンド・バランスといいますか、するのが三権分立の趣旨であると思っています。相互不干渉でもなければ相互不介入でもない、真の三権分立をベースに今後とも議論をさせていただきたい、このように思っております。

 ありがとうございました。

奥野委員長 これにてきょうの質疑は終了しました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時二十六分散会


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