衆議院

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第24号 平成27年6月16日(火曜日)

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平成二十七年六月十六日(火曜日)

    午後二時二十八分開議

 出席委員

   委員長 奥野 信亮君

   理事 安藤  裕君 理事 井野 俊郎君

   理事 伊藤 忠彦君 理事 柴山 昌彦君

   理事 盛山 正仁君 理事 山尾志桜里君

   理事 井出 庸生君 理事 漆原 良夫君

      大塚  拓君    門  博文君

      菅家 一郎君    今野 智博君

      辻  清人君    冨樫 博之君

      中谷 真一君    藤原  崇君

      古田 圭一君    宮川 典子君

      宮崎 謙介君    宮澤 博行君

      宮路 拓馬君    簗  和生君

      山口  壯君    山下 貴司君

      若狭  勝君    黒岩 宇洋君

      階   猛君    鈴木 貴子君

      柚木 道義君    大口 善徳君

      國重  徹君    清水 忠史君

      畑野 君枝君    上西小百合君

    …………………………………

   法務大臣         上川 陽子君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長) 山谷えり子君

   法務副大臣        葉梨 康弘君

   法務大臣政務官      大塚  拓君

   最高裁判所事務総局刑事局長            平木 正洋君

   政府参考人

   (警察庁長官官房総括審議官)           沖田 芳樹君

   政府参考人

   (警察庁生活安全局長)  辻  義之君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    三浦 正充君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    高橋 清孝君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    林  眞琴君

   法務委員会専門員     矢部 明宏君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十六日

 辞任         補欠選任

  門  博文君     中谷 真一君

同日

 辞任         補欠選任

  中谷 真一君     門  博文君

    ―――――――――――――

六月十六日

 冤罪をなくすための刑事司法制度の改革に関する請願(清水忠史君紹介)(第一九四六号)

 同(畑野君枝君紹介)(第一九四七号)

 盗聴法(通信傍受法)の改悪と共謀罪の新設反対に関する請願(清水忠史君紹介)(第一九四八号)

 同(畑野君枝君紹介)(第一九四九号)

 民法改正を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一九五〇号)

 同(池内さおり君紹介)(第一九五一号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第一九五二号)

 同(大平喜信君紹介)(第一九五三号)

 同(笠井亮君紹介)(第一九五四号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一九五五号)

 同(斉藤和子君紹介)(第一九五六号)

 同(志位和夫君紹介)(第一九五七号)

 同(清水忠史君紹介)(第一九五八号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一九五九号)

 同(島津幸広君紹介)(第一九六〇号)

 同(田村貴昭君紹介)(第一九六一号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一九六二号)

 同(畑野君枝君紹介)(第一九六三号)

 同(畠山和也君紹介)(第一九六四号)

 同(藤野保史君紹介)(第一九六五号)

 同(堀内照文君紹介)(第一九六六号)

 同(真島省三君紹介)(第一九六七号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一九六八号)

 同(宮本徹君紹介)(第一九六九号)

 同(本村伸子君紹介)(第一九七〇号)

 治安維持法犠牲者に対する国家賠償法の制定に関する請願(梅村さえこ君紹介)(第一九七一号)

 同(志位和夫君紹介)(第一九七二号)

 選択的夫婦別姓制度導入の民法改正を求めることに関する請願(郡和子君紹介)(第一九七三号)

 裁判所の人的・物的充実に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一九七四号)

 同(池内さおり君紹介)(第一九七五号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第一九七六号)

 同(大平喜信君紹介)(第一九七七号)

 同(笠井亮君紹介)(第一九七八号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一九七九号)

 同(斉藤和子君紹介)(第一九八〇号)

 同(志位和夫君紹介)(第一九八一号)

 同(清水忠史君紹介)(第一九八二号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一九八三号)

 同(島津幸広君紹介)(第一九八四号)

 同(田村貴昭君紹介)(第一九八五号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一九八六号)

 同(畑野君枝君紹介)(第一九八七号)

 同(畠山和也君紹介)(第一九八八号)

 同(藤野保史君紹介)(第一九八九号)

 同(堀内照文君紹介)(第一九九〇号)

 同(真島省三君紹介)(第一九九一号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一九九二号)

 同(宮本徹君紹介)(第一九九三号)

 同(本村伸子君紹介)(第一九九四号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 刑事訴訟法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四二号)


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     ――――◇―――――

奥野委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、刑事訴訟法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房総括審議官沖田芳樹君、警察庁生活安全局長辻義之君、警察庁刑事局長三浦正充君、警察庁警備局長高橋清孝君及び法務省刑事局長林眞琴君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

奥野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

奥野委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局平木刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

奥野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

奥野委員長 本日は、特に取調べの録音・録画制度の創設について質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山尾志桜里君。

山尾委員 民主党の山尾志桜里です。

 本日、私、質疑に立たせていただくに当たりまして、今後のこの訴訟法についての審議の進め方につきまして理事懇、理事会出席の全ての政党が確認をした事項について読み上げさせていただきたいと思います。

 「今後は、与野党間の十分な合意形成を図ったうえで、円満な委員会運営に努めること。」「去る十二日の民主・共産の質疑時間の回復を図ること。」「審議にあたっては、四テーマに分け、「取調べの可視化関係」「合意・協議制度関係」「証拠開示・保釈関係」「傍受制度関係」の順に進めること。」「各テーマごとの審議にあたっては、別日ごとに政府質疑→参考人・視察など→政府質疑との順番を守ること。」「各テーマごとの質疑を終えた後には、概括質疑と同程度以上の総括質疑の時間を確保すること。」

 この合意に沿って丁寧な運営をいただけるという前提で、質疑に入らせていただきたいと思います。

 公安委員長、前回の私の質疑に当たりましては、少し委員長とのやりとりの時間が短くなってしまいましたので、きょうはちょっと、その継続分も含めて、委員長に議論を挑みたいというふうに思っております。

 前回、私は、警察捜査における取調べ適正化指針というものを引きまして、適正な取り調べを必要とするペーパーであるのに、人事上の措置において、取り調べ官の勤務成績の昇任、給与等の処遇への一層的確な反映だとか、あるいは取り調べ官の功労を適切に評価するだとか、表彰を一層積極的に実施するだとか、なぜこういうことになってしまっているんでしょう、警察は、この取り調べの適正化というものが冤罪を生まないために大事なことであり、そのために努力をしなければいけないということをどれだけ自分自身の問題として受けとめているのでしょう、こういう姿勢について問いたださせていただきました。

 そして、それについて、山谷国家公安委員長の方からは、「「監督対象行為を認めた場合は、諸要素を総合的に考慮して、懲戒処分を始めとする厳正な措置を講ずる」ということも記されておりまして、」こういうことをおっしゃっております。

 そこで、きょう私は、姿勢ということを端的にあらわす制度の問題として、警察内部の取り調べ監督制度、これが本当に適正を担保するのに十分たり得る制度となっているのか、そういうことをまず議論したいというふうに思います。

 まず、警察庁に伺います。

 この取り調べ監督制度の中で、監督官をした人が、その任務を終えた後、捜査畑で取り調べに戻るようなことが事前に可能性としてあり得るとすれば、内部の人間が、監督の間はきっちり監督をするということはなかなか難しいのではないかと思いますが、ワンウエー、そういった人事制度においてしっかりと一方通行の制度になっているのでしょうか。もしなっていないとするならば、そういった人事の問題についてこの規則の中ではいかなる配慮をしているのでしょうか。お答えください。

沖田政府参考人 お尋ねのございました取り調べ監督官につきましては、所属としては、通例、総務部門あるいは警務部門といった管理部門に勤務いたしております。そして、こうした者につきましても、通常の人事配置の一環で捜査部門に異動することもあり得ますし、また、その逆の異動もございます。

 ただし、取り調べ監督部門に所属する職員が、その限りにおいて犯罪捜査に従事することは当然ございませんで、御指摘のございました被疑者取調べ適正化のための監督に関する規則におきましても、取り調べ監督官等の犯罪捜査への従事禁止等を明確に規定しておりまして、犯罪捜査と被疑者取り調べ監督制度の分離は徹底されているというふうに承知いたしております。

山尾委員 今の規則はこの規則の何条何項のことを言っているんでしょうか。

沖田政府参考人 お答えいたします。

 規則の第四条第三項でございます。

山尾委員 第四条第三項にはこうあります。「取調べ監督官の職務を行う者及びその職務を補助する者は、その担当する被疑者取調べに係る被疑者に係る犯罪の捜査に従事してはならない。」

 これは、監督官が、監督をする取り調べに当たっている被疑者の、その当該被疑者の犯罪捜査に従事してはならないと書いてあるだけで、その他の被疑者の捜査に従事してはならないとすら書いてないんです。先ほど、厳重に分離されているとおっしゃっていますが、この四条三項を見る限り、担保されているのは、監督をしてのぞき見る、その被疑者の取り調べをしてはいけない、捜査に当たってはいけないと言っているだけで、そんなのは当たり前じゃないですか。

 でも、裏返して言えば、それ以外の被疑者の捜査に当たることは、この規則では禁止されているんですか、されていないんですか、お答えください。

沖田政府参考人 ただいま申し上げました規則をそのまま読みますと、確かに議員御指摘のとおりでございますが、実際問題といたしまして、本部におります取り調べ監督官、これは、先ほど申しましたとおり、総務部門あるいは警務部門の、主に警視のクラスでございます。

 また、警察署に所属する取り調べ監督官につきましては、例えば、警務課長等の管理部門の者でございまして、通常、こうした者は、ほぼ一〇〇%捜査活動に加わることはない、少なくとも取り調べを行うことは通例考えられないということでございます。

山尾委員 私は、この件においては運用は信じません。通例考えられないような取り調べが行われて、それがだめだから立法措置をして、しっかりといい改正にしていこうと言っている中で、通例考えられない、運用ではそのようになっていないということは、私は、この議論においてとても信用できないということをまずお伝えしたいと思います。

 それでは、なぜこの規則では、こんな、「その担当する被疑者取調べに係る」などという局限的な限定にとどめてあるんですか。

沖田政府参考人 ただいま申し上げましたとおり、通例考えられないということでございますけれども、例えば、非常に大規模な事件が起きた場合に、警察署で、夜間で、当直も含めて非常に捜査員の数が少ない場合、やむを得ない場合に、取り調べ監督官が例外的に取り調べに当たることもあり得るということで、この規則ではこうした書き方をしているというふうに理解いたしております。

山尾委員 はい、例外が出てきました。必ず、こういう例外を認める余地を残すために、こういう文言になっているんですよ。

 公安委員長、取り調べを監督する人間がその取り調べに携わることもあり得るという今の答弁なんです。これで本当に適正が担保できるんですか。

山谷国務大臣 取り調べの適正化のために鋭意努めてまいりたいと考えます。

山尾委員 公安委員長、もう一度お答えください。

 今、警察庁が話しました、取り調べを監督する者が例外的にその取り調べに当たることもあると。これで本当に取り調べの適正化を担保する制度となっているんですか、お答えください。

 前回、委員長がおっしゃったんです、こういう制度があるからと。委員長、お答えください。

山谷国務大臣 被疑者取調べ適正化のための監督に関する規則においても、取り調べ監督官等の犯罪捜査への従事禁止等を規定しており、犯罪捜査と被疑者取り調べ監督制度の分離を明らかにしているところでございます。

山尾委員 委員長、全く今の質疑を聞いていないか、理解されていないか、あるいは、この質問に委員長として誠実に答えるおつもりがないかだと思います。

 今、明らかにしました、この制度上、取り調べ監督官がその被疑者の取り調べをやることもあり得ると。厳格な分離がなされているとは言えない、例外的な場合があり得ると。これは、まさにあなたの下にある警察庁が答弁をしました。これに対して、委員長として責任を持ってお答えください。

山谷国務大臣 誠実に答弁をさせていただいているところでございますが、取り調べの適正化に向けて鋭意努めてまいりたいと考えております。

山尾委員 公安委員長、今の答弁ではとても納得できません。この委員会における誰もが納得していないと私は推測いたします。本気でこれをやろうとしているんだったら、誠実にお答えください。

 この例外事由がある中で、委員長はどうやって、この制度があるから適正化は大丈夫なんだと説得力を持ってこの場でお話しできるんですか。

沖田政府参考人 先ほど私の方から実務上の取り扱いについて御説明いたしたところでございますが、まさに極めて例外的でありまして、一応理論的にそういうことが考えられるということであのような規定ぶりになったわけでございまして、一般的な意味で、その例外が、通例といいますか、かなりの例で行われているということでは全くございません。

 また、被疑者の取り調べを行った場合でも、その場合には、当然、別の補助者等がそれを視認する場合もあるわけでありまして、あるいは、本部の巡察官、こうした者が警察署の巡察をする場合もあるわけでございまして、私の方から申し上げました極めて例外的なことがあるからといって、それでこの取り調べ監督制度が形骸化しているというようなことはないというふうに認識いたしております。

山谷国務大臣 例外でありまして、通例ではないものでございます。

 取り調べの適正化につきましては、私、何度か答弁をさせていただいているところでございますが、被疑者取り調べ監督制度は、取り調べの適正化に資するため、捜査にかかわらない総務、警務部門が取り調べをランダムに視認するなどしてチェックするものであり、不定期の視認等の抑止効果を働かせることにより不適正な取り調べの未然防止に資するほか、視認や苦情等を端緒とした調査を行うことにより、取り調べの適正確保に役立っているものと認識をしております。

 もとより、被疑者取り調べ監督制度のみによって取り調べの適正確保が図られるものではないことは認識しております。さまざまな施策を適切な形で組み合わせていくことが重要だと考えております。

山尾委員 公安委員長におかれましては、誠実に、この場で議論にしっかりお答えをいただきたいと思います。

 山谷委員長が前回、監督対象行為を認めた場合は厳正な措置を講ずるとおっしゃいました。そのことについて、それではお伺いをします。

 これまで、平成二十一年四月から二十六年まで、監督対象行為として、不適正な取り調べが行われているおそれがあるというふうに発覚したものは何件ありますか。

沖田政府参考人 この取り調べ監督制度が始まったのは平成二十一年の四月でございますけれども、この年が、監督対象行為が二十三件、その後、毎年大体三十件台で推移いたしまして、平成二十六年末までの累計が百九十四件でございます。

山尾委員 そのうち、山谷大臣が懲戒処分を初めとする厳正な措置を講ずるとおっしゃっておられた懲戒処分は、百九十四件のうち何件ありましたか。

沖田政府参考人 百九十四件のうち、懲戒処分者数は十三名でございます。

山尾委員 私が事前にいただいたペーパーでは十九件となっていますけれども、どちらが正しいんですか。

沖田政府参考人 十三名、十九件ということでございます。

山尾委員 懲戒処分の種類は何があるんですか。

沖田政府参考人 停職、減給等でございます。

山尾委員 等というのは何なんですか。停職、減給のほかにあるんですか。

沖田政府参考人 停職、減給、戒告でございます。

山尾委員 制度上、停職より上の懲戒処分というのはないんですか。

沖田政府参考人 制度上は免職がございます。

山尾委員 この十三名、十九件の懲戒処分に付された件数の中で、免職になった人間はいますか。

沖田政府参考人 免職の者はおりません。

山尾委員 十三名で、そのうち免職になった者はいないと。

 中身を少し見てみたいと思います。

 それでは、免職の次である停職になった者は何名いるんですか。

沖田政府参考人 二名でございます。

山尾委員 私の手元にも紙がございます、停職二名。

 これは、事案の概要がちょっと不明確なので、明確にしていただきたいと思います。

 平成二十四年から二十五年に警部補の方が停職になっております。監督対象行為の態様としては二種類、身体接触、そして便宜供与。事案概要というのが、これがふわふわしていてよくわからないんですが、「被処分者は、女性被疑者の取調べにおいて、体に触れたり、便宜を図る約束などをしたもの。」となっております。

 「体に触れた」というのは何をしたんですか。「便宜を図る」というのは何をしたんですか。その中身でどういう議論があって、この警部補は停職ということになっているんですか。まず概要を教えてください。

沖田政府参考人 ただいまの件でございますが、身体接触ということにつきましては、被疑者を抱き締めたりというようなことでございます。それから、便宜供与につきましては、私費で購入した薬を提供したということでございまして、その事案の状況に鑑みまして、停職処分といたしたものでございます。

山尾委員 私費で購入した薬を供与した。

 そして、抱き締めたりとかとありますけれども、これは、キスしているんじゃないんですか。

沖田政府参考人 そのような行為もなされたと承知しております。

山尾委員 隠さないでいただきたい。

 私、現場の監督官の方に話を聞きました。監督官になった方は一生懸命やっておられます。ただ、これが制度として欠陥があるのではないかと。そして、欠陥があるかないかということが一定程度この法案の審議にも影響を与え得るから、今真面目に議論しているんです。

 取り調べ官である警部補が、女性の被疑者に対して、抱き締め、キスをして、私費で購入した薬の便宜供与を図る。そして、この制度においては停職ということになっております。

 この警部補は今も警察組織におられるんですか。おられないとしたら、退職金は支払われたのですか。

沖田政府参考人 本件につきましては、停職処分の後、退職したというふうに承知しております。

 なお、退職金につきましては、正確には把握しておりませんが、通例、停職処分で退職ということであれば、支払われているものと思います。

山尾委員 もう一回確認します。

 通例であれば支払われているものと存じます、こういうふうにおっしゃったんですか。もう一度答弁を求めます。

沖田政府参考人 ただいまお答えいたしましたとおり、実際に支払われていたかどうかにつきましては確認しておりませんが、先ほど申しましたとおり、停職処分であれば、通例、退職金は支払われるものと承知いたしております。

山尾委員 支払われている可能性が高いということなんでしょう。

 もう一件、平成二十三年、巡査部長が停職、補助者である巡査長が戒告、この監督対象行為の態様は四つにわたっています。身体接触、有形力行使、不安困惑、尊厳侵害。事案概要がこれまたちょっとわからないので、今度は隠さずに、把握されていることをお伝えください。

 「被処分者は、被疑者の取調べにおいて、手拳で暴行したり暴言を言うなどしたもの。」実際に何が行われたんですか。

沖田政府参考人 この件につきましては、取り調べ官は、被疑者の右目付近等を手拳で殴打するなどしたという身体接触、被疑者の頭部をボールペンでたたくなどした有形力の行使、おまえの家族を殺しに行っていいか等と言ったという言動、それから、あくびばかりするやつに人権なんかあるのか等と言った、そういった行為でございます。

山尾委員 国家公安委員長は、一番重い処分がこの制度の中で二件であり、今説明されたような内容で停職にとどまって、制度上は恐らく退職金が支払われているだろう、こういう状況にあることを知っていましたか。

山谷国務大臣 存じませんでした。

山尾委員 改めて、知らない上で委員長はこの前、監督対象行為を認めた場合は懲戒処分を初めとする厳正な措置を講ずるということも記されているから大丈夫なんだ、こういう趣旨のことをおっしゃいましたが、今、新たな事実をこの場で御認識なさって、感想あるいは御意見をお伺いしたいと思います。

 取り調べ官が女性にキスをして、抱き締めて、そして私費で購入した薬を供与する、こんなことが取り調べで行われていても、退職金が支払われる停職どまり。あるいは、取り調べ官が被疑者の右目付近を拳で殴り、ボールペンで頭をたたき、おまえの家族を殺してもいいか、こんな取り調べをしても、退職金が支払われる停職どまり。これで、この制度が、本当に取り調べの適正化に十分な制度上の担保になっていると自信を持ってお考えですか。答弁ください。

山谷国務大臣 取り調べの適正化に向けて努めなければならない、これは私、山尾委員と情熱を共有するものでございます。

 その上で、今おっしゃられましたような個別具体の事例、あってはならないと考えておりますし、あった場合には、厳正な対処がなされるのは当然だと思っております。

山尾委員 なされていないんですよ。なされるために、公安委員長、今後どんな策を講じられるんですか。

山谷国務大臣 個別の事案でございますので、少し預からせていただきたいと思います。

奥野委員長 もしよければ、沖田さんが返事をしたいと言っているから。(山尾委員「どうぞ」と呼ぶ)

 沖田審議官。

沖田政府参考人 先ほど、懲戒処分を受けた者は十三名であるというふうに申し上げましたけれども、これ以外に、いわゆる公務員法上の懲戒処分以外にも、訓戒、注意等の監督上の措置、これが二十名に対してとられているところでございます。

 また、これ以外の監督対象行為とされたものにつきましては、当然のことながら、行為者に対して厳しく業務指導を行いまして、同種事案の再発防止を図っているところでございます。

山尾委員 改めて一度お預けします。きょう明らかになった事案、特別公務員暴行陵虐罪の話なんですよ。委員長、一度時間をお渡しします。事案をしっかり解明していただいて、本当に自浄作用が働くと言うなら、それを見せていただきたい。

 私、検察官をやっていたときに、本当に一生懸命捜査をされている警察の方にいろいろな御指導を受けました。送致書の中には、よく、一罰百戒の精神で厳正に起訴いただきたいというようなことが書かれてありました。そういう思いに応えようと、私自身も、大変未熟でしたけれども、一生懸命にともに捜査をしたつもりでございます。

 でも、これは、一罰百戒、自分の組織の中で全然なっていないじゃないですか。もし、こういう制度をやって、これが担保になると言うなら、本当に、こういう厳しい、非常に重たい、悪質な事案について、ちゃんと適正な処罰をしてくださいよ。それがなされていない中で、警察は適正化に向けて頑張る、こういう制度もある、だから可視化はやらなくていいんだ、ぎりぎり裁判員裁判で終わりだ、こんなことを言われて、私たちはこの法案をよしとできない。

 このことはもう一度委員長にお預けしますので、必ずやこの委員会の場等でしっかりとお答えを伺いたいというふうに思います。

 次に、引き続き山谷委員長にお伺いをしたいんですが、拡大に向けては警察庁は消極的だということは、もうこの委員会の質疑を見ても明らかだと思います。ただ、山谷委員長は、今後の全面可視化ということも議論として排除しないというふうには明確におっしゃいました。

 これは率直に伺いたいんですけれども、やはり、範囲を拡大するのには困難が伴うということの理由の一つに、予算の問題というのはあるんですか。

山谷国務大臣 機器の予算についての御質問であれば、都道府県の予算となりますので、国としてお答えするというのは難しゅうございますが、そうではなくて、もっと広げた意味での御質問であれば、予算が要因ということ、必ずしもそうではないということでございます。

山尾委員 私が聞きたいのは、やはり税金を払っている一般的な国民の側に立つと、自分たちが、もしかしたら、万が一、いつ冤罪で取り調べを受けるかもわからない、そこをしっかり可視化していただくための措置の予算と、一方で、今回合わせわざできている、自分たちの会話を聞かれる、逆方向ですよね、そっち方向にかかる予算と、私は、それを明確に知った上で今回議論したい。一つの要素なんです。

 では、お伺いしますけれども、今回、通信傍受の拡大ということもこの法案の中に入っています。通信傍受、新しい機械、この世にいまだない、そして、私どもの認識の中ではこれが幾らするのかもわからないんですけれども、これは幾らを見込んでいらっしゃるんでしょうか。

三浦政府参考人 通信傍受法の改正に伴って必要となります通信傍受装置の予算につきましては、現在、概算要求の方針等を検討中の段階でありまして、現時点で正確なお答えは困難でございますけれども、開発メーカーと打ち合わせを行いながら、必要な予算について検討してまいりたいと考えております。

山尾委員 要は、答えられないというまず第一回目の答弁だったと思いますが、引き続き問いたいと思います。

 これまで、平成十二年から二十七年にかけて、この傍受のために使われた予算は幾らなんですか。

三浦政府参考人 通信傍受装置の予算額につきましては、平成十二年から二十一年度の累計で十・五億円、平成二十七年度が一・四億円でございます。

山尾委員 総計をお話しください、平成十二年から今まで傍受に幾らかかっているのか。大きな声でお願いします。

三浦政府参考人 ただいま答弁申し上げました金額を足し合わせますと、約十一・九億円ということでございます。

山尾委員 これまでの傍受に十一・九億円。そして、今度拡大が提案されているわけですけれども、新しい機器を導入するに当たって、この十一・九億円よりも下なのか上なのか、とてつもない金額なのか、大体のイメージを持てなければ、私たちは、この世にない機械で、幾らかかるかもわからないものについてとても審議することができません。もう一度、審議をするために必要な情報を下さい。

三浦政府参考人 まさに、その新しい機器については現在検討中ということもございまして、なかなか正確な金額をお示しするというのは困難なのでございますけれども、新たな方式による通信傍受に係る調査を委託いたしました民間のITコンサルティング会社がございまして、こちらからは、法の要件を満たす傍受機器の開発整備に要する経費は十億円程度以上となるという見解を承っているところであります。

 ただ、いずれにしても、これはまだ確たる数字ではございませんで、今後、必要な予算について検討してまいりたいと考えております。

山尾委員 いろいろ厳しい状況の中でそこまでお伝えいただいて、そこはありがとうございます。

 十億円以上という一つの目安が示されましたが、一方で、今、取り調べ室、全国の警察の中で、録音、録画の装置がセットされている部屋というのは何室あるんですか。機器の台数で結構です。

三浦政府参考人 機器の台数といたしましては、全国で七百九十七台、これは、昨年度末の時点において、録音、録画制度に対応した機器として七百九十七台を備えていると把握をしております。

山尾委員 全国の取り調べ室というのは何部屋あるんですか。

三浦政府参考人 ちょっと正確な数字がすぐに出てこないんですけれども、おおむね一万室以上というように把握をしております。

山尾委員 今後、今回の法案の帰趨にかかわらず、私どもは、やはり取り調べの全過程の可視化、全事件の可視化というものに向かって進めていくべきだという観点でございますし、そういった可能性も排除されないという御答弁もございました。

 その中で、私、全ての警察署の取り調べ室に録音、録画の装置をセットするとしたら予算として概算幾ら必要なのかということを一度調べていただきたいんですけれども、これを調べることはできますか。

三浦政府参考人 ちょっと、どこまで正確な数字になるかというのは保証の限りではございませんけれども、さまざまな条件を設定した上でのおおむねの概数ということであれば可能かというふうに存じております。

山尾委員 それでは、その概数を後ほど、この質疑の中でなくて結構ですので、御報告をいただきたいというふうに思います。その上で、改めて予算の観点からもしっかりと検討したいというふうに思います。

 その次に、法務省の方にお伺いをします。

 まずは、今回のこの可視化についての例外規定についてお伺いをしたいというふうに思います。

 これは多分、刑事局長にお伺いすることだと思うんですけれども、ここに、平成二十四年から平成二十七年にかけて最高検から出されている全国の検察庁宛ての依命通知というものがあります。

 これを見せていただきますと、一番直近の平成二十七年五月二十九日の依命通知には、「録音・録画の実施手順」のところにこういうふうに書いてあります。「録音・録画は、やむを得ない事由がある場合を除き、検察庁に整備された録音・録画機器を使用して行うこととする。」

 あれっと思ったんです。これ以前の依命通知を見ると、そのどれにも、「やむを得ない事由がある場合を除き、」というのはないんです。平成二十四年八月六日の実施要領にも、「録音・録画は、検察庁に整備された録音・録画機器を使用して行うこととする。」次に、平成二十六年六月十六日の依命通知にも、「録音・録画は、検察庁に整備された録音・録画機器を使用して行うこととする。」突然、先月ですか、出た依命通知には、「録音・録画は、やむを得ない事由がある場合を除き、検察庁に整備された録音・録画機器を使用して行うこととする。」というふうになっているんです。

 検察庁のこういう依命通知というのは重いものでありましょうから、その理由をお伺いしたいんですけれども、これは何を意味しているんですか。

林政府参考人 検察において録音、録画というものについて積極的に行うという状況のもとで、その都度、実施要領というものを見直してきているんだろうと思います。

 その中で、例えば、録音、録画というものが、検察官が調べる場合に、検察庁以外で取り調べをする場合があります。一つには、例えば警察で行うような場合もあるかもしれません。そういったことがある場合において、やはりそういった場合を想定して、「やむを得ない事由がある場合を除き、」ということで、必ずしも検察庁に整備されている録音、録画機器によらない録音、録画というものもあり得るということで、このような実施要領になっておるものと承知しております。

山尾委員 そうであれば、これは、やむを得ない事由があれば検察庁に整備されていない機器を使ってもよいという中身である、こういう御答弁であると思います。つまり、必ずしも検察庁に事前にセットされた機器でなくても、録音、録画で今回の目的を達成し得る可能性があるということだと思うんです。

 何が言いたいかと申しますと、要は、この例外規定の、機器の故障でやらなくていいというのはやめた方がいい。やはり、ほかの場所でも録音、録画できる場合があるわけですし、今の答弁でいえばそういうことで努力しようとしているわけですし、これまでのいろいろな質疑の中で、ICレコーダーを使ったらどうかという提案もありました。今どき、スマートフォンでだって撮影できるじゃないかという話もありました。

 そして、自分自身が検察庁で仕事をさせていただいたときの感覚からいうと、例えば取り調べ室を予備で一室つくることだって、ほとんどの場合、物理的に不可能ではないような気がいたします。大きな広い部屋を仕切って、万々が一機器が故障したときはここを使うんだ、これだけのゆとりすらない、絶対にできない、こういう場所は余りないんじゃないかと思います。

 今おっしゃったとおり、必ずしもそうじゃない場所でも録音、録画をやっていくんだという前向きな変更だというのであれば、機器の故障でやらなくてもいい、この例外規定は考え直した方がいいと思いますが、いかがですか。

林政府参考人 あくまでも、今回の法律案は、法律で全過程の録画を義務づけるということを想定した上で、その義務づけの制度の中では、やはり、今後、録音、録画機器の故障などの外部的要因によって録音、録画が実施できないような場合にまで録音、録画を義務づけるとすると、それは捜査機関に不可能を強いることになりますので、そういった事情をあらかじめ想定して、今回の例外事由を設けているものでございます。

山尾委員 私が申し上げているのは、代替手段を本当に検討したんですかということです。

 では、今までどういう代替手段を検討したんですか。私が申し上げた、ICレコーダーや、各庁に一室、予備の部屋をつくったらいいじゃないかというようなことや、スマートフォンだっていざとなったら撮れるんじゃないかというようなこと、それに対して検討したんですか。検討したのであれば、その経過を教えてください。していないのであれば、していないとお答えください。

林政府参考人 代替手段につきましては、結局、「記録に必要な機器の故障その他のやむを得ない事情により、記録をすることができないとき。」ということでございますので、この例外事由の解釈において、「その他のやむを得ない事情」に当たるかどうかということは考慮されるものだと思います。

山尾委員 答弁になっていません。

 代替手段は検討したのか、検討したのなら、その経過を御報告してくださいと申し上げました。もう一度答弁を求めます。

林政府参考人 代替手段という場合に、ほかに機器があるのかどうかというような形で、それがこの条文の解釈の中でやむを得ない事情があるのかどうかということに当たりますので、そういった意味において、この条文をつくるときに検討しているわけでございます。

山尾委員 だから、その検討経過をこの場で言わなくて、いつ言うんですか。検討経過を教えてください。

林政府参考人 例えば、当該記録に必要な機器の故障というものが仮にあったとしても、他の機器によって録音、録画できるような場合があるならば、これは「その他のやむを得ない事情」ということになりませんので、そういった形で代替の機器による録音、録画というものは検討したわけでございます。

山尾委員 いや、そうであれば、代替の録音、録画でどういうオプションがあったんですか。ICレコーダーは検討されたんですか。スマートフォンは検討されたんですか。ほかの部屋にある機器ということは検討されたんですか。そういう予備の部屋をつくることが必要だということは検討されたんですか。

 私が申し上げたいのは、今回のこの取り調べの録音、録画、二つ目的がある、それは、捜査の適正化であり、そしてもう一つは信用性、任意性の立証に資する、この二点だというのであれば、それは、一律に機械がセットされた録音、録画でやるのが望ましいのかもしれません。でも、機器が故障しているのであれば、ほかの代替手段で、それがいわゆるあらかじめ決められている設備と違おうが、録音、録画しないよりは、ICレコーダーでもスマートフォンでも、やった方が明らかに取り調べの適正化に資するし、その後の立証にも資するじゃないですか。だから、そこのところをどこまで真摯に検討したんですかということを言っています。

 今までの局長の答弁だと、検討したと言いますが、中身については御報告されていないと思いますので、もう一度、もし別の話で報告していただけることがあるんだったら、検討経過を教えてください。

林政府参考人 例えば、今回の録音、録画という場合に、ICレコーダーというものについては、これを録音、録画機器として導入するのかしないのかということを検討いたしました。

 その結論といたしましては、やはり、供述の任意性について的確な立証を担保する、それとともに取り調べを適正に実施するという取り調べの録音、録画制度の趣旨からしますと、記録として、明確性、客観性の点で、音声だけでなく、映像及び音声の双方により記録しておくものとすることが適切であるということ、また、法律上の義務として、取り調べの状況の記録は、記録の正確性でありますとか改ざんの防止を十分に担保するための機能を備えて、記録の内容をめぐって将来の裁判での争いが生じにくい機器というものを用いて行われるのが必要であろうと考えました。

 そのようなことで、例えばICレコーダーにつきましては、法律上の義務としての取り調べの状況の記録の方法としては相当でないという結論に達したものでございます。

山尾委員 そうだとすれば、やらない方がましだということなんですかね。やった方がいいと思いますよ、やらなくていいというよりは。故障した場合にはやらなくていいというよりは、故障した場合には、代替手段で、それは多少、明確性、客観性、それは録音、録画の録画の部分が減りますから、でも、少なくとも録音はされる。録音も録画もされないより録音だけでもされた方が、それは調べ官の適正化にも資する、その後の立証にも資するというふうに私は思います。それを覆す理由の説明にはなっていないというふうに思います。

 もう一つ、例外事由で、記録の拒否等で被疑者が十分な供述をできないということが例外事由にあります。

 質問です。

 この前提として、録音、録画の意義を被疑者に伝えた上で拒否をするかしないかということが明らかになる、こういうことは制度上担保されているんですか。

林政府参考人 本法律案の録音、録画の制度における、例えば被疑者への告知義務とかそういったもの、告知の内容等については、法律において定めておりません。

山尾委員 この間視察に行ったとき、現場の検察官は、録音、録画することを伝えるかどうかすら現場の判断だということでございました。ましてや、今の話だと、新制度のもとでも、制度上、録音、録画が取り調べの適正化のためになされるものなんだということすら被疑者に伝える義務はないと。恐らく、伝える義務がなければ現場は伝えないでしょう。

 そこで、私は思うんですけれども、もし、どうしても被疑者本人が録音、録画されたくない、それを拒否する事由を例外として認めるというならば、そういった意義を弁護人からしっかり話してもらって、弁護人の同意のもとの拒否というふうにすればいいのではないかと思いますが、その制度ではだめなんでしょうか。何か問題があればお答えください。

林政府参考人 取り調べの録音、録画につきまして、例えば、弁護人から録音、録画の申し出があった場合にはそれを義務づけるというようなことでの御意見も当然ございました。

 それにつきましては、取り調べについて、録音、録画の趣旨からして、任意性の立証に資する、あるいは取り調べの適正に資するという効用がある一方で、やはり捜査に支障があってはならない。このところについてのバランスを設ける意味で、今回、例外事由という形で、その部分を、全過程の録音、録画を義務づける場合においても一定の例外事由を設けたというものでございます。

 そういった形で、弁護人の同意でありますとか弁護人からの申し出があれば録音、録画を義務づけるという制度につきましては、そうしたバランスを考える上で、やはり捜査の支障ということにおきまして、そういう制度を設けることは適切ではない、こう考えたものでございます。

山尾委員 いろいろな場合があると思いますが、弁護人は、まさにこれは録音、録画してもらわないと困る、私の被疑者はやはりしっかり可視化された上でないと適正な取り調べを受けられない、誘導されるおそれも高い、あるいは第三者を巻き込む危険もあるかもしれない、こんな場所は初めてで大変におびえているとか、そうやって、弁護人として録音、録画が必要だと思われる場面であっても、その申し出があっても、捜査上の支障があるから録音、録画はしなくていいと。やはりこれはおかしいんじゃないですか。

 もともと、適正な取り調べのために録音、録画をするんでしょう。そうであれば、せめて、申し出があったり、被疑者が自分の考えで、録音、録画の意義をわかって、それでも自分の権利として放棄をする場面だったらともかくも、どうしてここで捜査上の支障ということが出てくるんですか。

 もう一つ思いますけれども、被疑者の拒否以外の事由で、被疑者が十分な供述をできないと検察官が認めたときも録音、録画しなくていい。十分な供述とは何ですか。

林政府参考人 本法律案の刑事訴訟法三百一条の二第四項第二号における、「記録をしたならば被疑者が十分な供述をすることができない」というのは、記録、すなわち録音、録画をしたならば、その内容を問わず、録音、録画をしなければ供述できるであろうことを十分に供述することができないという意味であります。

山尾委員 済みません、私の耳が悪いのかもしれませんし、頭が悪いのかもしれませんが、ちょっと局長の答弁がわからなかったので、もう一度わかるように答弁ください。

林政府参考人 ある特定の内容の供述を前提として、そのような供述ができるかどうかを判断するものではなくて、記録、すなわち録音、録画をした場合に、その内容を問わず、録音、録画をしなければ供述できるであろう、そういったことを十分供述することができない、こういった場合を指しております。(発言する者あり)

山尾委員 そのとおりですね。今、席から声が上がりましたけれども、検察官は神様なんですか。千里眼を持っているんですか。録音、録画をしなければ得られるであろう供述は、この時点で検察官に何がわかるんですか。

 今、わかりました。要は、十分な供述というのは、検察官の立場からすれば、法務省の立場からすればそういうものだ、検察官にはわかるんだ、最初に録音、録画をするかどうかを検察官が自分で判断するに当たって、録音、録画がなければこの被疑者は自分の前ではこんなふうに供述できるはずであるのに、録音、録画があるからそれに比べて十分な供述ができないのだ、自分の取り調べの資質でも技術でも何でもなくて、取り調べの機械があるから本来やれるべき供述ができないんだということを検察官は判断できるんだと。これは制度として余りにもおかしくないですか。

 法務大臣、これは、そもそもの成り立ちは、検察官の判断する十分な供述を取り調べで引き出そう、引き出そうとして虚偽自白が引き起こされ、冤罪が起きた、だからこれを制度上ちゃんと可視化しようという話なんですよね。それを、今、例外事由で、検察官が、なければとれる供述をとれなければ、例外でしなくていいと。大臣、本当にこんな制度でいいんですか。答弁を求めます、大臣に。

上川国務大臣 今回の録音、録画制度そのものにつきましては、さまざまな冤罪事件も含めて、取り調べに対して非常に問題があったということを踏まえた上で、原則として制度として義務づけるという趣旨でございます。

 その意味では、例外ということについては、先ほど来の機器の故障でありますとか、そういうことも含めまして、極めて例外的なものであるということで、これは、そうならないように担保していくということが裏にあるということでありますが、そういう意味で、原則全ての過程について録音、録画をする、この大きな原則を義務化する、このことに大変大きな意味があるというふうに思っております。

 しかしながら、さまざまな現場の事態に応じてはそういうこともあり得る、それを排除するものではないというような位置づけの中で、こうした例外事由というものが例外という形で記載されているというふうに考えております。

山尾委員 大臣もおわかりだと思います、今、余り説明になっていないということが。

 制度になったということは、ある意味大きいと思っているんですよ。ただ、その例外事由で、検察官が、録音、録画されなければもっとこんな供述が得られるはずだ、そんな理由で録音、録画しなくていいという例外事由はおかしいのではないですかという話をしているんです。制度そのものが、制度化されていない現在よりはいい制度で、そしてそれは重たい第一歩だということは何も否定しておりません。

 そういう中で、これは大臣に知っていただきたいですけれども、今、極めて例外的であるというふうにおっしゃられました。

 特別部会、第二十八回の会議、最高検から委員となっている上野委員は、このことについてこう言っています。「実際に運用してみると、例外事由を適用できる場面は実際上相当限られてくる可能性もあるのではないかと危惧しております。」相当限られる可能性を危惧しておりますと。そういうことなんですよ。相当限られたら困ると言っているんですよ。

 大臣の認識もそうですか。

上川国務大臣 さまざまな委員会の席上、それぞれの立場で、それぞれの体験あるいはそれぞれの見識に基づいて御発言されてきたというふうに思います。

 私自身、先ほど申し上げたところでありますが、やはりこうした原則を制度化するという、委員が御指摘の大変重い制度になるということでありますので、例外はあくまで極めて例外である、そして、そうした例外にならないようにさまざまな工夫、努力をしていくということが大前提の制度だというふうに思っております。

山尾委員 刑事局長にお伺いします。

 このままこんな法律が成立して、この例外事由、これは適切に現場で運用されると今お答えできますか。適切に運用されるんですか。

林政府参考人 先ほど来の、内容を問わず、供述できるであろうことを十分供述することができない、こういう判断を検察官において行うわけでございます。その内容を問わずというものは、取り調べにおいてどのような供述がなされるかという内容を求めているわけではございません。そもそも供述することができるかできないか、こういったことを外部的な言動で判断することになります。

 例えば、拒否だけではなくて、取り調べの被疑者が、自分は録音、録画のもとでは話したくない、話しにくい、あるいは全てが記録されてしまうので話しにくいとか、こういった外部的な言動としてなされた、その事実を認定してこの例外事由を判断するわけでございます。

 そういった意味において、外部的な事情で十分に供述することができないかどうかということを判断することでありますし、しかも、この例外事由の認定は、裁判所において、この例外事由の認定が正しかったかどうかということが最終的に判断されるわけでございまして、そういったことから、恣意的な例外事由の適用ということにはならないものと考えております。

山尾委員 先ほどの二十八回会議の発言をもう一回ひもとくと、私は、こちらの現場の方が正直だと思いますよ。「例外事由が適切に機能するか否かは運用してみなければ正直言って分からないようなところがあります。」そうだと思いますよ。

 そういう中で、今局長は、話したくない、話しにくい、そういうような言動という話がありましたけれども、だったらこれは、記録の拒否、被疑者による録音、録画の拒否に収れんさせればいい話であって、なぜ拒否しない場合も含めてこの例外事由に入れているんですか。

林政府参考人 取り調べの録音、録画自体を拒否していなくても、その言動から、明確にその被疑者が、この録音、録画のもとでは自分は話しにくい、こういうような言動がなされる場合がございます。こういった場合には、録音、録画の例外事由として認定する必要があろうかと思います。

山尾委員 全く一般世論には理解できないと思います。

 もし、話しにくそうだ、話したくない、そういう振る舞いがあってせりふがない、そうしたら、聞けばいいんじゃないですか、あなたは拒否しますか、拒否しませんかと。そして、私が申し上げたとおり、拒否すると言った場合には、この取り調べが被疑者に対してもたらす人権保護の働きについてもちゃんとわかってもらえるように、弁護人からの説明だとかそういうものを制度的に担保したらいいんじゃないですか。

 なぜ、そうやって、例外事由の余地を、そしてそれに対する検察官の裁量をできるだけ広げよう広げようというふうにするんでしょうか。私は何も、例外事由を一切認めないということを言っているんじゃありません。でも、ぎりぎり詰めていかなきゃだめだ、そういうことを申し上げております。

 そして……

奥野委員長 ちょっと、何かあなたも了解しているというんだけれども、沖田さんから、追加の説明をしたいと言っているんだけれども。(山尾委員「先ほどの件ですか。いいですよ」と呼ぶ)

 この際、政府から、答弁を補足したいという申し出があるので、これを許したいと思います。警察庁沖田総括審議官。

沖田政府参考人 先ほど、取り調べ監督対象行為で停職処分となった二名の者についての事実関係について御説明が不十分でしたので、補足いたしたいと思います。

 初めに、女性被疑者を取り調べた者につきましては、特別公務員暴行陵虐罪で送致いたしましたが、不起訴となっております。この者については、退職金は支払われております。

 もう一名の男性被疑者の取り調べ官につきましては、捜査、送致の後、起訴、有罪判決を受けておりますので、退職金は支払われておりません。

山尾委員 今、口頭でいただきましたが、ちょっと改めて文字に起こして、私も、しっかり精査をして検討したいというふうに思います。

 時間がもうあと一分しかございません。私、本当は、この後に一番聞きたいことがあったんです。

 なぜ、附則の九条、そしてその附則の九条の三つ目、録音、録画については捜査に支障があるということを完全に前提にした附則九条がつくられたのか。そして、なぜ、この附則九条を含めても、この特別部会の中で全事件、全過程の可視化を一生懸命求めてきた民間有識者の方たちがこういった結論をのまざるを得なくなったのか。私、この特別部会の記録をずっと読みまして、その経過をしっかり法務大臣にお伝えをして、議論をしたいというふうに思っておりました。でも、きょうは時間がございません。

 私は、それぞれの政府側の答弁も、もう少し誠実にやっていただきたいと思います。最初の部分でかなり繰り返しの質問をやむなくされました。ぜひその点は、政府としてもう一度誠実にお答えをいただける姿勢を心から期待いたしまして、まずはきょうの質問を終わらせていただきます。

奥野委員長 次に、柚木道義君。

柚木委員 民主党の柚木道義でございます。

 引き続きよろしくお願いいたします。

 本日は、可視化はもとより、この間、この委員会でそれぞれの委員の皆様が質疑されている部分もあろうかと思いますが、いわゆる捜査手法の拡大といいますか拡充、もちろん、真犯人を検挙し、しっかりと法的な対応をとることは必要なんですが、ただ、その視点のみで本当に大丈夫なのかという観点から、例えばGPSでありましたり、あるいは防犯カメラ、Nシステムなど、そういった個別の項目についても伺いたいと思っておりますし、また、通信傍受についても何点か伺いたいと思います。

 それで、ちょっと順番を、きょう報道も出ておったものですから、防犯カメラ、これは新たな捜査手法として報道等でも取り上げられることも多いんですが、きょう資料としてまずおつけしておきましたのは、七ページに、いわゆる歌舞伎町事件とも言われる二〇〇九年四月十八日の事案でございまして、これは皆さんよく御存じの新宿歌舞伎町、ここで、警察官多数と被告人の仲間多数とで混乱状態になりまして、応援に駆けつけた警察官に対し被告人が暴力を振るったとされた公務執行妨害事件であります。被告人は、暴行を振るった事実はなく、逆に警官に投げ飛ばされたと主張し、真っ向から主張が対立をしておった事案でございます。

 これは、警視庁の街頭防犯カメラシステムの設置の草分け的な地域で、現場のいわゆるコマ劇とよく言われるあの付近は、皆さん御存じだと思いますが、当然、複数の防犯カメラが設置をされていて、その監視範囲内でございます。これを確認すれば双方の主張のどちらが正しいかというのは明確になると思われるわけですが、警察、検察が録画映像を証拠提出したが、肝心の、被告が警官に暴力を振るったとされる時間の映像が約三十八秒間欠落をしていたということであります。これは本件犯行立証には不必要であるとか、プライバシーに係る映像が映っていたとかの理由で該当部分のみ消去したとの弁明が警察から行われたということですが、裁判ではこの弁明は一切認められず、犯罪の証明がないことによって、一審有罪判決破棄、無罪言い渡しということでありました。

 こういうようなことでありますと、防犯カメラ映像というのが真実を明らかにするものではなくて、むしろ、警察が利用したいときに利用したい形で利用する、こういう疑念が国民の皆様の中にも深まるわけでございます。

 そういった点についてもちょっとお聞きしようと思っていた中で、これはけさの報道で、国と府に賠償命令を求めた訴訟の判決で、大阪地裁が両者に計六百二十一万円の支払いを命じたという判決がありました。実は、この事案というのは、堺市のガソリンスタンドで盗難品の給油カードを使ったガソリンの窃盗事件が発生して、被疑者とされた男性のカードの使用時刻が記された納品書や防犯カメラの画像などに基づいて逮捕、起訴されたんですが、弁護側が画像の時刻が実際と十二分のずれがあることを指摘してアリバイが確認された。釈放までの勾留期間は八十五日だったということですが、それぞれ検察、警察に対して、捜査手法の不適正な内容について判決でも指摘をされております。

 本当にこういうことが重なると、今回のまさに可視化、そして他方で、通信傍受や司法取引や、さまざまな捜査手法の拡充、そのツールとして、私はきょう幾つか、GPSや防犯カメラ、Nシステムなども例示しながら、もちろん犯人検挙は最重要ですし、その結果の法的な対応がとられることというのは最も重要とされることでございますが、他方で、だからといって、今紹介したような歌舞伎町の事件のような、あるいは、けさ報道されていますような大阪地裁でこういった賠償命令がなされるようなことであっては、これは本当に国民の皆さん、一体自分たちは守られるのか、そもそも冤罪のリスクを負うことになるだけなのか、そういう不安が広がってしまうわけでございます。

 国家公安委員長、私は、これまでの質疑の中でも、このような、いわば誤認逮捕とか、あるいは冤罪が起こったことに対して、以前も志布志事件の際にも幾つか認識を確認させていただいたわけですが、今回、まず、この大阪地裁の賠償命令なんですが、これは、警察の取り調べ官によって、誤認逮捕であったにもかかわらず、汚れた手で子供の頭をなでるのかとか、悪人でいくのかとか、さまざまないわば暴言も違法とされて、さらには、防犯カメラの画像の時刻を確認しなかった点など、本当に著しく、捜査水準が、注意義務を怠っているじゃないか、こういう判決がなされているわけです。

 これは、当該警察署長や地検の支部長が男性に謝罪をしておりますが、国家公安委員長としては、今回の事件に対して、事案に対してどういうふうに認識されておられますか。

山谷国務大臣 お尋ねの事案でございますが、平成二十五年四月、窃盗容疑で逮捕、勾留した男性がその後の捜査により犯人ではなかったことが明らかとなったものでございます。また、本事案に係る国家賠償請求訴訟の判決では、捜査の違法が指摘されまして、大阪府等に対し賠償が命じられたものでございます。

 もとより、犯人でない方を犯人と誤認して逮捕するようなことはあってはならないことでありまして、この種事案の再発防止を図るために、引き続き、緻密かつ適正な捜査が推進されるように警察を指導してまいりたいと考えております。

柚木委員 警察を指導していただくことは当然なんですが、この方は、そういう取り調べ、誤認逮捕を受けて心身ともに非常に体調を崩し、そういう中での賠償命令なわけですが、国家公安委員長としては、その方への謝罪の気持ちはおありですか。

山谷国務大臣 まことに遺憾に思います。

 この種事案の再発防止を図るために、引き続き、緻密かつ適正な捜査が推進されますように警察を指導してまいりたいと思います。

柚木委員 これは検察に対しても、今回の事案に対しては、防犯カメラと来店履歴管理システムの時刻のずれを十分認識できたのに看過し、男性の話した内容が本当かどうかも確認しなかったとして、起訴自体を違法としたということであります。

 法務大臣、同様に、今回の事案について、認識をどういうふうに持たれていますか。

上川国務大臣 昨日、大阪地裁におきまして御指摘の判決が言い渡されたということでございます。

 この問題につきましては、取り調べに係る適正性ということについて問題があったということでございます。あってはならないことが起きてしまったというふうに考えているところでございます。

柚木委員 起きてしまっただけではなくて、先ほどおっしゃられたように実害ですね、本当に心身ともにそういった賠償命令が出るような状況ですし、当然想像がつきますよね、社会的にどういう影響が出ているか、こういうことがやはり起こるんですよ。

 そういった中で、私がもともと通告をしておりましたのは、警察設置のいわゆる防犯カメラ、もちろん民間設置のものもあります、そういう防犯カメラの設置台数、そもそもどの程度設置をされているのか、それから画像データの捜査利用及び管理規則はどうなっているのか、その点についてまず簡潔に御答弁をお願いします。

辻政府参考人 お答え申し上げます。

 警察で設置した街頭防犯カメラについては、平成二十六年三月末現在、二十一都道府県で千百六十五台でございます。

 街頭防犯カメラを設置している都道府県警察においては、プライバシーの保護に十分配慮する観点から、管理運用に関する規程等を策定して、録画画像の保存期間や管理方法を定めるなどにより、適正な管理運用を図っているところでございます。画像データの捜査利用につきましては、法令及び管理運用に関する規程等の定めるところに従って適正に行っているところでございます。

柚木委員 当然そういう答弁になるんですね、適正な管理運用を法令に従ってと。ただ、その部分自体も本当にそれで大丈夫なのかという疑念が常につきまとうわけですね。

 この後、一つ一つ質問してまいりますが、今、防犯カメラの設置台数について、それから捜査利用の管理規則についてお尋ねしたんですが、同時に、Nシステムと言われるいわゆる自動車ナンバーの自動読み取り装置でございますが、この設置台数と画像データの捜査利用及び管理規則についても御答弁お願いします。

三浦政府参考人 平成二十七年五月末日現在、警察庁が設置している自動車ナンバー自動読み取り装置、いわゆるNシステムの設置台数は千五百十一式でありまして、これと同じ仕様の装置を都道府県が百七十九式設置しております。

 自動車ナンバー自動読み取り装置で取得した通過車両データの取り扱いにつきましては、手配車両のナンバー登録、手配車両のナンバーと一致した場合の警報出力、データの保管及び消去、データの安全管理等のルールを定めた自動車ナンバー自動読取照合業務実施要領及び通過車両データ活用要領を警察庁から各都道府県警察に対して発出しているところでございます。

柚木委員 資料の八にちょっと報道をおつけしておるわけですが、警察庁は、このNシステムで収集したデータ情報や解析報告書を秘匿するために、裁判における証拠開示請求が行われないよう、取り調べの対象容疑者らにデータ記録を直接示すことを禁ずるなど、全国の警察に指示、最高検も同様に、Nシステムの収集データの証拠化を警察に求めず、取り調べ対象者がデータの存在や内容に気づくような受け答えを禁止する旨の指導を全検察官に行ったと報道されております。

 これは、検察、警察の認識、姿勢はそのとおりなんですか、現在も。それぞれ警察庁、法務省、お答えください。

三浦政府参考人 自動車ナンバー自動読み取りシステムにつきましては、設置場所等が明らかになれば今後の捜査に重大な支障が生ずるおそれがあるため、警察庁は、従前から、都道府県警察に対し、具体的事件での運用状況等について保秘を徹底するよう指導を行っているところでありまして、このことは現在においても同様であります。

林政府参考人 警察庁がいわゆるNシステムに関する保秘の徹底を指導したということを承知しておるわけでございますが、その趣旨は、Nシステムの設置場所等が明らかになると、犯罪を企図する者が対抗措置を講じるなどしてNシステムの機能が損なわれるおそれがあるため、そのようなことのないように留意すべき事項を指導したものであると理解しております。

 最高検察庁は、そうした警察庁の指導を踏まえまして、検察官に対して、その指導の内容を伝えて、それに対する配慮を求めたものであると承知しております。この点に関する対応については、現在も同様であろうと考えております。

柚木委員 それぞれ警察庁、法務省の御答弁は、真犯人を検挙してそして法的な対応をとる、そういう観点はもちろん必要なんですが、決定的に抜け落ちている、欠落をしているのは、これは通信傍受法もそうですが、プライバシーや人権侵害の問題、私は、全く今の答弁からは配慮を感じられないわけであります、残念ながら。

 ですから、あらゆる技術を用いて捜査を有効に進める一方で、先ほど私がそれぞれ紹介をしました、いわゆる冤罪というか誤認逮捕、こういったようなことが起こってしまうような運用が実際になされてしまう、事実としてこういうことも起こっている、こういったことがあるわけでございます。

 さらに、先ほども少し申し上げましたが、警察が設置している以外の防犯カメラ、これが全国に三百万台とも四百万台とも言われておるわけであります。私も必要ないとは言いません。銀行とかコンビニとか商店街の街頭等、もちろん犯罪への抑止効果等もあるかと思います。

 では、その民間設置の防犯カメラについて、画像データの捜査利用規則は実際どうなっているんでしょうか。

三浦政府参考人 警察では、民間等が設置、管理する防犯カメラ画像を捜査目的で利用するに際しては、刑事訴訟法第百九十七条に基づき、管理者等の協力を得て入手をしておりまして、収集した防犯カメラ画像は、証拠物件または捜査資料として適切に管理をしているところであります。

 なお、管理者等の承諾が得られない場合において必要があるときは、裁判官の発する令状により、防犯カメラ画像データを差し押さえることもございます。

 こうして犯罪捜査で証拠物件または捜査資料として収集をした防犯カメラ画像は、刑事訴訟法、犯罪捜査規範等に基づいて紛失等がないよう組織的に管理を行い、証拠物件については検察官に対する送致または還付、捜査資料については捜査の遂行に必要がなくなったときは廃棄または消去をすることとしているところであります。

柚木委員 今の御答弁もそうですし、これまでのやりとりもそうなんですが、要は、実際には、違法性がないようなさまざまな我々の市民生活の部分についてもカメラで撮影をされて、その部分については最終的には消去するからいいんだ、そういうふうにどうしても聞こえてしまうわけですね。

 これは、そもそも、そういう傍受にしても、あるいはカメラの画像データにしても、実際に全ての人に通知をするというのは困難な部分も承知をしますが、他方で、そういう監視をされているという自覚もないままに、さまざまなプライバシーの問題等も含めて整理をされないままに、なし崩し的にと言うと言葉はあれですが、いわばどんどん拡充されている部分については、この後、司法取引、可視化、あるいは通信傍受の話にもなっていくわけですが、やはり懸念を覚えざるを得ません。

 そこで、私は、とりわけ今回、刑訴法の改正の中で、まず、通信傍受拡大についても、憲法違反とか人権侵害とかさまざまな指摘もある中で、捜査対象も拡充をして、他方で、歯どめになる部分については非常に心もとない。こういう状況の中で、いわばなし崩し的にどんどんそういう捜査手法の拡充を進めていくということだけではなくて、やはりプライバシーや人権問題、あるいは、私たち、自分自身の情報は自分自身が管理をする、そういう権利といいますか、知る権利であったり、もっと言うと消す権利とか訂正する権利とか、そういった幅広い観点を踏まえながら、例えば通信傍受、あるいは、ちょっとこの後GPSのことも触れますが、防犯カメラやNシステムなど、情報収集、管理とその捜査利用等についての法律のちゃんとした整備を含む統一的な考え方の取りまとめ、こういったものをきっちりと国民的議論を行うべき、そういうふうに思うわけですが、法務大臣、そういった私の考え方については、どのように受けとめていただけるでしょうか。

上川国務大臣 ただいま、委員の方から、捜査機関によりましてのさまざまな証拠収集の方法等について御質問がございました。

 防犯カメラでありますとかGPSの位置情報取得、防犯カメラについて民間のものもあるというような御指摘でございましたけれども、いずれの収集方法につきましてもその性格がございます。その際、令状を要するか否かということを含めまして、先ほど御指摘いただきましたけれども、刑事訴訟法の法令にのっとる、そして適正に運用する、そういうことで規律を保つということであるというふうに思っております。

 そうした御指摘については大変重要な視点であるというふうに思っているところでございますが、今、新たな法整備が現段階において必要かということを問われれば、現状におきましては、まさにそうしたことを勘案しながら、それぞれの収集方法の性格に応じて、令状主義を徹底するということを含めて、刑訴法の法令に基づいて適切に運用していくということが必要ではないかと考えております。

柚木委員 これまでもそうやって法令にのっとって捜査、取り調べを行ってきた中でさまざまな冤罪が起こり、さらに言えば、令状主義、これはこの後まさにGPSの質問をさせてもらいますが、これも本当に軽視をされて、まさに違法判断まで大阪地裁で今月五日に示されております。

 ぜひここは、この後私もやりとりを深めさせていただきますので、その議論の中で、きっちりとした法的な体制整備を含む統一的な体系を整理いただくことが非常に重要ではないかと私は思います。

 GPSの部分も、六ページ目に、これはこの委員会でも質問があったと思うんですが、「令状なしGPS違法 「捜査、人権侵害」」ということであります。

 今、まさに先ほど質問した点の観点とも重複するんですが、私は二日の日に質疑を行わせていただきまして、九日の日には同僚の階委員からも大臣に質問があったと思うんですね。もともと、合法の判決例を根拠に、任意捜査として許容されるという姿勢でGPSの捜査をされてきた中で、今回、全く反対の判断が示されたわけでございます。

 その示されたことによって、私はこの後他国のいろいろな取り組みも紹介させていただいた上でお尋ねしたいんですが、やはりこの段階で、一旦、捜査の姿勢に対しても立ちどまって考える、見直していただく。もちろん、事件は日々起こるわけですから、捜査等の対応をしなきゃいけないわけですが、このGPSの捜査のあり方については、私は、再検討をいただくことが必要だと思うんです。

 これは、諸外国では令状に基づく捜査や事後通告を定める立法が進められている、こういう指摘もありますので、我が国でも、立法、GPSの捜査のあり方についてきっちりと法的な対応をこの国会においても検討すべきだと私は考えますが、大臣、お考えをお聞かせいただけますか。

上川国務大臣 捜査のためにGPS発信装置を自動車等に取りつけて位置情報を取得するということにつきまして、前回、六月の二日でございますけれども、任意捜査として行うことができると判断した裁判例があるということでお答えをさせていただきました。その後、六月の五日に、検証許可状によらなかった点に着目して、違法であると指摘された裁判がなされたということでございます。

 今、まさに二つの裁判の結果ということで、そうした答弁をさせていただきますが、いずれの考え方によるべきかということにつきましては、やはり個別の具体的事例によることであるというふうに考えておりまして、一概に即断することができないということでございますが、いずれの裁判例によりましても、任意捜査として許容されるのか、あるいは検証として令状を要することとなるのかはともかく、捜査手法でございまして、現行の刑事訴訟法のもとで許容されるということについては、そのようなものであるというふうに考えております。

柚木委員 そういうふうにお考えだとしても、今回の判断、これは七月の十日ですか、判決が示されるということですが、やはり私自身は、今回の判断を踏まえて、アメリカでも、一二年に連邦最高裁で、令状を取得しないGPS捜査には違憲判決が出されたとか、いわば法規定のないまま、令状を得ずに要綱、要領だけで運用している実態を警察庁としても認めるということでありますが、やはりそういう運用方法は、まさに個別の事案ごとにどっちにも振れてしまうという見方もできるわけでありますので、そこは、今後の司法の判断も含めて、私は、しっかりとした立法府における検討を求めてまいりたいと思います。

 それで、ちょっと質問を、通告どおりに戻りたいんですが、私は、この間ずっと、きょうは可視化のことも申し上げるんですが、通信傍受のあり方についてということで具体的な質問もさせていただいてまいりました。

 これはこれまでの質問の続きということになるんですが、まず一つは、傍受令状請求が認められなかった一事件二件の却下理由の概要について、この間もやりとりをさせていただいてきているんですが、傍受令状は、資料の一にもつけておりますが、これはそれぞれまとめて各令状の裁判所による却下率ということで、逆に言うと、まさに九九%発行がされている、こういうことがこれによっても示されているわけであります。

 私がこの間やりとりさせていただいた中で、例えば、最高裁におかれては、統計上、通信傍受令状についてのみ切り分けして集計していないので、却下理由は把握していないと。それから、上川大臣におかれましては、個別事件の捜査の具体的内容にかかわるということでお答えは差し控えたい、こういう答弁が多いんですね。

 最高裁に対して、私はさらに、却下理由が傍受不適切判断によるのか、単なる書類の不備であったかとか、こういったことが全く示されないままでは、もちろん示されることによる弊害をお考えになられるんでしょうけれども、逆に言うと、全く示されないということであれば、いわゆる濫用防止機能がどういう形で作用しているかどうか検証できない、そういうことを申し上げておるわけでございます。

 これは、立法府は行政府に対する監視機能を担っておるわけでございますから、傍受令状を発行されなかった理由の概要で結構ですので、傍受法改正に合わせてぜひ速やかにお示しをいただきたいと思いますが、最高裁刑事局長、答弁いただけますか。

平木最高裁判所長官代理者 前回、委員の御質問に対してお答え申し上げましたように、通信傍受令状の請求がどのような理由で却下されたかについては把握しておりません。

 また、これも前回お答え申し上げたところでございますけれども、令状事務は、その性質上短時間で多くの事件を迅速に処理することが求められていることや、判断をした場合は直ちに記録を捜査機関に返還する必要があること、発付をしない理由についてもさまざまなものが想定されまして、定型化して集計することには困難な面があることなどがございます。

 こうした令状事務の特性から考えますと、令状を発付しなかった理由に関して報告を求めることにつきましては、慎重に考える必要があるものと考えておるところでございます。

柚木委員 そういうお考えだと、先ほどのGPSの事例も令状主義の軽視だ、こういう指摘があるわけですが、全く令状主義が歯どめにならないんじゃないですか。そういうままで、なし崩し的に盗聴対象の拡大、そちらの方ばかりがどんどん拡充をされていく、そういうことで国民の理解を得られるんでしょうか。私は、到底そのように思えません。

 さらに言えば、傍受法の二十六条による不服申し立て状況も、私の六月二日の質疑で最高裁は、統計では細かく分類していないので、傍受法二十六条による不服申し立て件数については把握できていないということだったわけですが、その後、さらに私が調査を要請いたしました結果、傍受法二十六条に基づく不服申し立て件数は、二十四年の一月一日から二十七年六月三日現在で、二百五十九件ということであります。

 さらに、年次ごとに数を調査いただいて精査いただいた結果、これはちょっと私、何でこういうことになるのかなというのを御説明いただきたいんですが、二十四年は〇件、二十五年は二百五十六件、二十六年は三件、二十七年は〇件。

 これは、それぞれの不服申し立てがどのように処理されたのか、あるいは全て却下されたのか、二十五年にはなぜ突出して多いのか、理由をお示しいただけますか。

平木最高裁判所長官代理者 最高裁において把握しております合計二百五十九件の不服申し立てについてでございますが、平成二十六年に原裁判取り消しが一件ございまして、その余は全て不服申し立てが棄却されているとの調査結果になっております。

 平成二十五年に二百五十六件の不服申し立てがなされている理由につきましては、事務当局では把握しておりません。

柚木委員 いや、把握されないと、不服の申し立ては、まさに盗聴されたことによってプライバシー、人権を侵害されたとかさまざまな理由が想定されるわけですが、それがなぜ二百五十六件と突出して多いのか、これを承知していないということであれば、まさにそういった、片方ではどんどん傍受対象を拡充していくけれども、不服申し立てについては、申し立てがありました、あるいは却下しました、理由は知りません、こういうことになるわけですが、これは何でわからないんですか。

平木最高裁判所長官代理者 今御報告しましたのは、御報告した限度で、個別報告を求めて把握したものでございますので、事務当局としてはそれ以上把握していないというところでございます。

柚木委員 これは、不服の申し立ての状況もきっちりと把握はしていない、あるいはしない、傍受の令状請求が認められなかった却下理由、この概要についてもですね。こういうようなことで、盗聴拡大だけはどんどんなし崩し的にやっていくということになるんですよね。こんなことで本当に国民の理解が得られるんですか。

 これは、さらにもう一点、私はこの間、傍受法の二十三条二項の傍受通知の延長についても個別の数字を出していただきました。

 警察庁の説明では、二十六年の傍受実施十事件での通知状況は、通知対象の当事者二百九十一名のうち、平成二十七年四月一日時点で、通知済みが百五十名、人定、つまり特定できない当事者が百二十九名、所在不明五名、捜査関係で未通知が七名ということで、半数近い、かなりの数が未通知であって、通信傍受がされて、不利益な証拠とされる可能性があることを知らされないままの状況だと。

 これは、特定できないということは最終的に逮捕、検挙できないのではないかという質問に対しては、傍受対象にかかってきた相手だから、人定、つまり特定できない、所在不明で通知できない、その時点での数字なので、明らかになってくるケースはあるので、暫定的な数字だとの説明でございました。

 それでは、それを踏まえてさらに質問させていただきたいのは、実施事件の件数九十九件全てとは申しませんが、例えば、平成二十五年の傍受実施十二事件について、この二十三条二項による傍受の通知状況と傍受対象にかかってきた相手の逮捕等の状況についてはお示しいただけますか。

三浦政府参考人 通信傍受を実施した事件に係る通信の当事者への通知につきましては、時間の経過とともにその実施状況が変動していくこと、国会報告事項ではないことなどから、都道府県警察に個々の通信傍受の実施に係る通知の実施状況については報告を求めておりませんで、警察庁としては把握をいたしておりません。

 また、平成二十五年中に傍受が行われた事件に関して逮捕した人員は、平成二十六年末の時点で計百十七人となっております。もっとも、個々の逮捕された被疑者がそれぞれの事件において傍受した通信の当事者であったか否かにつきましては、これを関連づけた集計を行っておりませんで、警察庁としては把握をいたしておりません。

柚木委員 そういう御答弁でありますと、逮捕者百十七名以外の、いわば違法性が認められなかった方も含めて、傍受はしたけれども関係なかった、後で消去しました、それでおしまい、そういうことにもなります。

 これは国会報告事項ではない、そういう御答弁でありますと、そのこと自体をやはり見直していかないと、いつまでたっても、法務大臣も御答弁されているように、自分と例えば家族との会話が何らかの形で傍受、盗聴されていて、それを知らされない、知らない、こういう状態が蔓延していくと、普通に暮らしていても何か非常に気持ち悪い社会になってしまうと思われませんか。

 私はやはり、もちろん、しっかりと真犯人を検挙していく、そのためのツールを拡充していく必要性については否定しませんが、もう一つの視点、プライバシーや人権の視点が欠落したまま、この間、きょう質問していても、そっちの点はおざなりになったまま進んでいこうとしているんですよね。そういうやり方で本当にいいのかと思わざるを得ません。

 もう一点、さらに、私はこれも問題だなと思っているんですが、傍受法十二条二項の立会人による意見申し述べ、これが全件に対してあったかどうか、あった場合はその内容はどうであったか、これについても御答弁いただけますか。

三浦政府参考人 平成二十四年から平成二十六年までに警察において通信傍受を実施した三十二の事件につきまして確認をいたしましたところ、都道府県警察から通信傍受法十二条二項による意見があった旨の報告は受けておりません。

柚木委員 結局、要は、立会人制度も実効性がどこまで担保されているのか、こういうことであります。

 では、逆に、どうすればそういう実効性が担保されるのか、これまでも議論があったわけですが、むしろそういうことを議論すべきであって、立会人もなくして、自由に、好きなときにどんどんやれるようにします、そういう方向性、きょう私が幾つか質問させていただいているそういう視点をないがしろにされたまま、さらにどんどん盗聴が拡充していけるという流れ、これは本当に国民の理解を得られないのではないかと私は思うわけであります。

 これは、ちなみに、この傍受なんですけれども、こういう傍受を拡充していくということであれば、当然、人員、予算などの拡充も必要とされてくるというふうに私は想定するわけであります。ですから、そういうことがきっちりとできないとするならば、今の状況は、そういう体制をなかなか拡充することが難しいことによって、逆に言うと、野方図な、なし崩し的な傍受拡充の歯どめになっているという見方もできるわけであります。

 これは、ちなみに、この通信傍受を行う上で、当然、捜査側の負担、捜査員の手をとられる時間的負担、予算的な制約、こういったものが想定をされるわけですが、私の捉え方でいえば、そこが傍受の野方図な拡大の抑制的な効果を果たしていると思うわけですが、実際、今回の議論で、傍受の拡充をしていく上で事業者立ち会いがなくてよくなる、何か負担をなくするというような議論があったと思うんですけれども、その負担の中身というのを改めてお聞かせいただけますか。

三浦政府参考人 御質問の趣旨が、通信事業者の負担ということなのか、捜査側の負担ということなのか、十分理解をしていない可能性があるのですけれども。

 まず、通信事業者の負担ということで申し上げますと、やはり立会人、通信事業者の職員の中から立会人を出す、一定期間、傍受令状に示された期間、場合によっては相当長い期間になるわけでもございますけれども、その期間ずっと立ち会いを行わなければならないといったような負担でありますとか、あるいは、事実上、傍受を実施できるのが通信事業者の限られた施設でございますので、そうした特定の場所を長く提供しなければならないといったようなもろもろの負担が生じているものと理解をしております。

 また、捜査側の負担ということで申しますと、今申し上げましたように、特定の場所でのみ実施ができるということでありますので、例えば、遠隔地の警察において通信傍受を実施しようといったような場合には、例えば東京でありますとか、そういうところへ出張等で出向いてまいりまして、相当多数の捜査員が相当の期間そこへとどまって傍受を実施する、そういった旅費等の金銭的負担、また、捜査上の人員を割かなければいけないといった負担も生じているところでございます。

柚木委員 事業者、捜査側それぞれについて整理して御答弁いただいて、ありがとうございます。

 私、それぞれ申し上げたかったんですが、とりわけ次の質問で伺いたかったのが、事業者側の負担というのは、今御答弁をされた部分というのは私も理解できるわけですが、では、実際、国会報告においてはその日数、通話数単位の表記があるわけですが、この傍受について、一日当たり平均何時間の傍受を行っておって、そしてまた立ち会う事業者に対しては金銭的な補償を行っておられるのかどうなのか、仮に行っている場合は、一日当たり、あるいは時間当たり、その金額は幾らなのか、お示しをいただくことはできますか。

三浦政府参考人 まず、傍受の実施の時間というお尋ねでございましたけれども、これは個々の事件によってかなり違いもございますので、ちょっときちんとした統計としてその時間数というものは把握をいたしておりません。

 それから、事業者に対する金銭的補償というお尋ねでございましたけれども、通信事業者等に対しまして立ち会いを行ったことに対する金銭的補償は行っておりませんけれども、例えば、傍受が深夜に及び、立会人がタクシーでの帰宅を余儀なくされた場合には、タクシー代の実費分を支払った例があるというように承知をしています。

    〔委員長退席、盛山委員長代理着席〕

柚木委員 確認の意味でもう一遍お尋ねしたいんですが、タクシー代の支給等を行ったという部分があったんですが、金銭的補償について、当然、時間もあるわけですが、事案ごとに違うのかどうなのか、そうでなくて一律なのかどうなのかも含めて、済みません、もう一度整理して御答弁をいただけますか、ちょっと聞き漏らしていたかもしれないので。

三浦政府参考人 何か規定があって一律にお支払いをしているというようなことではございませんで、実際問題として、先ほど申し上げたように、ある事件に関して立会人がタクシーで帰宅せざるを得なかったといった場合にその実費分を支払った、そういう事例があるということを承知しているところであります。

柚木委員 ありがとうございます。

 そうすると、半ばボランティアといいますか、そういうことなんだと思うんですね。

 これは、もちろん見方は分かれるかもしれませんが、この後ちょっとNSAのこともお尋ねするものですから、見方が分かれることも私としては理解した上で、しかしお尋ねを申し上げたいのは、そういう形で事業者の負担等を考慮して、では、もうそういうことで立ち会わなくていいという形にすることで事業者負担を減らすという見方なのか、そうではなくて、やはり必要なものについてはきっちりと、対価といいますか、そういった形でお支払いをする中で、一つの歯どめとしての役割を担っていただくということが必要なのか。そういった点について、私はやはりきっちり議論がなされていくべきだと思っております。当委員会で視察等も含めて今後も行われるというふうに聞いておりますし、そのあたりも含めて、私はしっかりと議論を深めていくことが必要だと思っております。

 それから、これに関連して、アメリカの国家安全保障局、NSAの大規模傍受についても、資料もおつけしておりますが、この間、さまざまな報道、指摘がございます。資料四ページ目におつけしております。これは少し前の報道ですけれども、アメリカの上院でテロ情報収集再開へ、米国自由法案可決という中の報道なんです。

 御案内のように、アメリカにおいては、九・一一以降、極限状況の中で愛国者法が成立をして、その緊急事態法に基づき、NSAによる大量の通信傍受、情報収集がなされていたことがスノーデン事件で明らかになったわけであります。これもまあ、私もちょっと想像がつかないんですが、携帯電話メッセージが一日二億件、GPSの位置情報は一日五十億件です。

 これは、この報道もつけておりますが、実際に、「CIA元職員のスノーデン容疑者が一三年に実態を暴露し、行きすぎた活動だと批判が高まった。大統領は昨年三月、監視対象の絞り込みや記録を政府ではなく電話会社に保持することなどの見直し案を発表した。」とあるわけでございます。

 このアメリカNSAによる大規模傍受、これはそもそも海外のいろいろな報道もなされているわけですが、まず、対象とされた我が国の関係施設、個人等について政府は把握しておられますか、把握しておられるのであればその内容はお示しいただけますか。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 アメリカの国家安全保障局、いわゆるNSAによる通信記録の収集問題についてでありますけれども、これにつきましては、日米政府間でしかるべく意思疎通をしてきたものというふうに承知しておりますけれども、事柄の性質上、その内容につきましてはお答えすることを差し控えさせていただきたいというふうに思います。

柚木委員 控えさせていただくというのは、ちょっと私、施行後の状況をよく把握していないんですが、これはいわゆる特定秘密に指定される、そういうことなのか、そうではないのか、どういうことでお答えいただけないのか。

高橋政府参考人 このNSAによります通信記録の収集問題につきましては、日米政府間におけるインテリジェンスに関する意思疎通の問題であるということで、これを明らかにしますと外交当局との今後の意思疎通に支障が生ずるおそれがあるということで、差し控えさせていただきたいということでございます。

柚木委員 差し控えるの中身が、把握しているのかどうなのかというのがあえて読み取れないという形の御答弁だと思うんですが、それは本当にそれでいいのかどうなのかというのは、私はもう少し議論を今後させていただきたいと思います。

 ただ、アメリカの場合は、先日、五月の末日で一旦失効したいわゆるサンセット法、時限立法であって、大統領に緊急事態的な法的な権限を付与するかわりに、立法府、つまり日本でいえば国会がしっかりと監視をしていく、そういう形式になっているわけであります。我が国においてはそこはどうなのかというのが、私この間議論させていただいておりましても、十分に担保されていないのではないか、そういう問題意識を持たざるを得ません。

 それで、通信傍受なんですけれども、先ほど事業者の負担と捜査側の負担と分けて御答弁いただいたのは、この後の質問につながる部分なのでありがたかったんですが、こういう観点をちょっとお尋ねしたいんです。

 通信傍受の記録から捜査に必要な通信部分を抜き出す情報処理といいますか、そういう作業は非常に膨大だと思うんですね。今後、傍受対象が拡充をしていくと、今NSAの報道も紹介をしているわけですが、その情報処理作業自体を誰がどういう形で作業していくのか。場合によっては、外部委託とかということも考えられるのか。ちょっと、なかなかそこら辺のイメージができないものですから、警察庁、御答弁いただけますか。

    〔盛山委員長代理退席、委員長着席〕

三浦政府参考人 通信傍受法上のいわゆる傍受記録の作成につきましては、捜査員が機器を手動で操作して行っております。具体的には、傍受した通信の全てについて、犯罪関連通信等に該当するかどうかを判断し、通信傍受法上、消去しなければならない通信の全てを手動により消去する方法で行っております。

 通信傍受法上、捜査員には厳格な守秘義務が課されている上、捜査の秘密を保持する必要もありますことから、司法警察員が行うこととされている傍受記録の作成等の作業について、これを司法警察員以外の者に委託するということは考えておりません。

柚木委員 現段階で考えていないという答弁を私は確認させていただきました。

 ただ、アメリカの事例を見ていると、資料の五にもつけておきましたけれども、民間五十万人に閲覧権限という形で、結局、情報処理に対応できる、そういう専門職員の育成が間に合わなくて、外注をして、まさにアメリカにおける最高機密にアクセス権を持つ百四十万人のうち民間の方が約五十万人、こういう状況にもなっております。

 今後、今の段階で外部委託を考えていないということなんですが、人員不足になって、こういうような議論が私は起こり得るのではないか。その場合には、やはり情報の保全というものについて私は非常に懸念を持っております。そういった点については、この段階でも、まずしっかりと指摘をさせておいていただきたいと思います。

 それから、この通信傍受に関連して、前回もちょっと通告していてお聞きできなかった部分がありましたので、一点、重要な点だと思いますので、ぜひ確認をさせていただきたいんです。

 報道機関に対する傍受の禁止、これは、もともとの通信傍受法、盗聴法の議論のときにも非常に大きな議論になったわけですが、報道の自由、取材の自由という憲法上の問題があるにもかかわらず、法文に明記されていないというのは、私は、やはり今回、法改正の中でしっかりと明記をすべきだ、そういうふうに考えるわけです。

 これは、大臣の見解を、大事なところなので明確に御答弁いただけますか。

上川国務大臣 現行の通信傍受法の議論の折にも、この報道機関の報道の自由やまた取材の自由につきまして御議論がなされたというふうに承知をしているところでございます。

 通信傍受法の十五条ということでございますが、医師や弁護士等の職にある者との間の通信については傍受をしてはならないということで規定をいたしておりまして、これに対して、報道機関との間の通信については傍受の禁止の対象としていないということでございます。

 報道機関につきましては、さまざまな形態のものがあり得るというところでございまして、傍受の禁止の対象となり得るものとなり得ないものとの間の線引きがなかなか困難であるということ、また、報道機関による取材及び報道機関に対する情報の提供につきましては、原則、報道に資することを前提としたものでありまして、個人の秘密を委託されることによって成り立つ医師あるいは弁護士と同一に論じることができないということから、今般の法改正におきましても、委員御指摘のように、報道機関の通信を明示的にこの第十五条の傍受の禁止の対象とするということにつきましては困難であるというふうに考えているところでございます。

 もっとも、報道機関の者による通信につきましては、その特質に鑑みて、現行通信傍受法の施行以来、警察庁及び法務省の通達によりまして、報道機関が設置、使用している電話等については、報道の自由を尊重するという観点から、原則として傍受の実施の対象としないということであります。

 また、被疑者が使用している電話を傍受の対象としている場合にたまたま報道機関が取材のために電話をかけてきた場合におきましても、取材のための通信であるということが判明すれば、それまでの間に犯罪関連通信等を傍受している場合を除きまして、報道の自由を尊重するという観点から、直ちにその傍受をとめなければならないということとしておりまして、今般の通信傍受法の改正後も、この報道機関の取材活動を通信傍受の対象とするということにつきましては想定をしていないということでございます。

柚木委員 これは資料の二、三にそれぞれつけておきましたが、まず資料の二につけておりますけれども、例えば、海外でドイツの事例がこの報道には紹介されておりますが、報道関係者を医師や弁護士らと同様に通信傍受の対象から除外している。

 しかも、犯罪と無関係な会話であった場合に傍受されたことを知るすべはないという部分も含めて、私は、今の御答弁というのは、通達でという担保は非常に脆弱ではないかと言わざるを得ません。

 また、記者が犯罪の共犯と疑われる場合については傍受対象になり得るということなんですね。これも、どこでどういうふうな形で線引きとか、具体的な明確な指針が示されているという状況には、私はないんじゃないかと。ですから、結果的に、疑えると思って傍受したんだけれどもそうじゃなかったということであれば、傍受できちゃうわけですよね。

 ですから、そういうことも含めて、それこそ取材源の秘匿がそれによって守られるのか、それを報道機関に通報することによってさまざまな、そういう犯罪あるいは不公正を抑止するとか、あるいはきっちりと対応してもらうとか、そういう機能が損なわれてしまうおそれがあると思うんです。

 これは、大臣、今御説明があったんですが、もう少し、そういった諸外国の事例も研究をいただく中で、報道の自由、取材の自由という部分についてきっちり法改正、法文の中に明記いただくことを何とか御検討いただけませんか。

上川国務大臣 通信傍受法の議論が行われていた折にも、今委員から御指摘のようなことにつきまして大きな議論の論点になったというふうに承っているところでございます。

 また、その折にも、諸外国の事例につきましての一部情報も開示されたということでございまして、例えば、ドイツの通信傍受制度においても報道機関の通信につきましては傍受の対象外とはなされていない、そうしたことについても明らかとなっているところでございます。

 そういったことを踏まえた上で、お医者さんとかあるいは弁護士さんのような職業の事例と異なる扱いということで法律の規定はなされなかったということでありますが、しかし、大変大事な問題でありまして、通達によりましてしっかりと傍受の対象としないということを運用の中で担保しているところでございます。

柚木委員 済みません、私は、この報道の事例は、ドイツでは報道関係者を医師、弁護士らと同様に傍受の対象から除外しているというふうな報道を紹介したんですが、対象外とされていないというふうに御答弁をいただいたんですが、ちょっとこれは私の認識が違うんですかね。

林政府参考人 平成十一年の七月の国会におきましても、ドイツについて一部で通信傍受の禁止の対象になっているのではないかという議論もあるけれども、ドイツでは報道機関が通信傍受の対象から除外されていることはないというふうな答弁がなされておるところでございます。

柚木委員 これは私の方でもうちょっと確認してまたお尋ねをします。

 残された時間が少なくなってきたんですが、可視化の議論、これまでも行われております。私が、きょうお尋ねする部分、非常に方向性として、これで本当に大丈夫なのかなと思いますのは、国家公安委員長、この間の質疑の中で、可視化、録音、録画しなくとも、被疑者取り調べ監督制度を設けたので取り調べの適正化は図られる、そういう御認識を述べられていると思うんです。

 その点についてちょっと具体的に幾つかお尋ねしたいんですが、同制度における取り調べの監督官、この方はどのような階級の方で、現在何人おられて、取り調べが行われる全ての警察署や交番等に配置されているのかどうなのか。個別の事案について幾つか伺いますので、これは参考人の方で結構ですので、まずそれを御答弁いただけますか。

沖田政府参考人 被疑者取り調べ監督制度におきましては、各都道府県警察に置かれる取り調べ室に係るものについては警察本部長が指名する取り調べ監督官、警察署に置かれる取り調べ室については警察署長が指名する取り調べ監督官がそれぞれ配置されることとなっておりまして、現在、全ての警察本部及び警察署に取り調べ監督官がおります。

 具体的な数字等を申し上げますと、本年四月における全国の状況ですが、警察本部では、警視四十三人、警部七十九人の合計百二十二人、警察署につきましては、警視二百四十二人、警部九百四十一人の合計千百八十三人でございます。

 なお、交番等につきましては、警察署の取り調べ監督官あるいはその下に置かれる監督補助者が確認等を行うこととされておりますことから、交番等自体についての取り調べ監督官の配置はございません。

柚木委員 ちょっと時間が迫ってきていますので、まとめて伺いますので御答弁いただきたいんですが、昨年の部分が一番直近のデータと思われますので、お尋ねをします。

 警察で行われた全ての取り調べ件数と、そのうちこの制度で監督された取り調べ数をお答えいただきたいのと、監督をしたことによって実際に調査が行われた数、調査結果、その結果に基づいて行われた適正化措置について、コンパクトで結構ですから御答弁をお願いします。

沖田政府参考人 平成二十六年中で全国の警察で行われました取り調べ件数は約百四十五万件でございまして、このうち約九六%に当たります百三十九万件につきまして視認による監督を行っております。この結果、監督対象行為として調査した件数は全部で五百件でございまして、このうち監督対象行為として認定されたものは三十二件となっております。

 なお、こうしたことで把握されたものにつきましては、当然、必要な業務上の指導を行って再発防止を図ったほか、あるいは、事案によっては監察部門にも通報して必要な対処をしているところでございます。

柚木委員 それぞれわかりました。

 それで、さらにもう一つお尋ねした上で公安委員長にお尋ねしたいんですが、先ほどの山尾委員の質疑のやりとりも私も非常に大事なやりとりだったと思いますが、この制度で、例えば苦情申し出をされた数とか申し出の取り扱い、それから申し出がもととなって調査の行われた数、その結果及び結果に基づいて行われた適正化措置について御報告をいただけますか。

沖田政府参考人 平成二十六年中、取り調べ監督制度に基づいた苦情申し出件数は四百五十九件でございます。このうち調査が行われた件数は三百五十六件でございまして、このうち三件につきまして監督対象行為として認定いたしております。

 これにつきましては、監督対象行為に該当したものはもちろん、それ以外のものにつきましても、担当部署等へ全て通報し、必要に応じて業務上の指導も行い、事案によっては監察部門にも通報しているところでございます。

柚木委員 今それぞれ、るる御答弁をいただいたわけですが、それでもやはり取り調べにおけるさまざまな不適切な事例が起こるわけでありまして、そのことはきょうの先ほどの同僚委員の質問の中でも指摘されているわけです。

 国家公安委員長、今のようなそれぞれの実績というか件数をお示しいただいてもなおやはりそういう事例が出てくる現状を考えたときに、可視化、いわゆる録音、録画しなくても、この制度によって不適正な取り調べを全て未然に防止して、そして適正化の確保ができる、そういうふうに本当に根拠を持っておっしゃることができるかどうか、それを御答弁いただけますか。

山谷国務大臣 被疑者取り調べ監督制度は、不定期の視認等の抑止効果を働かせることにより不適正な取り調べの未然防止に資するほか、視認や苦情等を端緒とした調査を行うことにより取り調べの適正確保に役立っているものと認識をしております。

 しかしながら、被疑者取り調べ監督制度のみによって取り調べの適正確保が図られるものではないということは認識をしております。取り調べが事案の真相解明のために果たしている重要な機能をできるだけ損なわないよう留意しつつ、被疑者取り調べ監督制度や取り調べの録音、録画、さらには取り調べに関する捜査員への教養の充実等、さまざまな施策を適切な形で組み合わせていくことが重要と考えております。

柚木委員 時間が来ましたので終わりますが、今最後に御答弁があったように、この制度のみによって担保されるわけではない。今それぞれ、捜査員の教養の充実等るる御答弁があったんですが、私は、その教養の充実等ももちろんやっていただけばいいんですが、やはり可視化にまさる適正化はないと思っています。

 つまり、その部分をしっかりと拡充していただくことが最大の適正化の担保になる、私はそのように思っておりますので、そのことをさらに今後質疑を通じて深めさせていただくことを申し上げまして、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

奥野委員長 次に、清水忠史君。

清水委員 日本共産党の清水忠史でございます。

 刑事訴訟法改正の議論をしているときに、「誤認逮捕 起訴も違法」、また、「国賠訴訟 大阪地裁、異例の判断」、さらに「誤認逮捕に賠償命令 大阪地裁「裏付け尽くさず」」と、厳しい判決。資料一枚目にあります。このような事件が起こると、国民としては、警察や検察への信頼を損ねるだけではなく、これからも冤罪被害をなくすことはできないのではないか、このように思わざるを得ないと思うんですね。

 盗まれた給油カードでガソリンを入れたとして大阪府警北堺署に逮捕、起訴され、その後、事件とは無関係だったとわかりました。捜査は違法だと認めて、国と大阪府に六百二十万円余りの支払いを大阪地裁が命じたわけなんですね。

 国家公安委員長にお尋ねいたします。

 無実の人を捕らえて、そして長期間勾留し、まさしく人生を奪うような、こうした事件はなくさなければならないにもかかわらず、また起こってしまった。こういうことに対して、国家公安委員長としてどのようにお受けとめになられているでしょうか。

山谷国務大臣 犯人でない方を犯人と誤認して逮捕するようなことは、あってはならないことであります。この種事案の再発防止を図るため、引き続き、緻密かつ適正な捜査が推進されるように警察を指導してまいりたいと考えております。

清水委員 そうした反省や決意が生かされていないということを改めて指摘させてください。

 今、手元に私が持っているのが、大阪府警の「インターネットを利用した犯行予告 ウイルス供用事件の検証結果」というものです。いわゆるPC遠隔操作事件ですね。これは、今回判決の出たガソリン盗難事件の前に起こった事件であります。

 このPC遠隔操作事件のいわゆる反省を受けて、大阪府警がこう述べております、「慎重を期した捜査を徹底するとともに、」「緻密な捜査を展開して、」と。今まさに山谷国家公安委員長が述べられた反省そのまま、一年前のPC遠隔操作事件のときにしているんです。にもかかわらず、大阪府警で同じような事件が起こっている。これで本当に反省していると言えるんでしょうか。

 何が問題になっているとお考えでしょうか。山谷国家公安委員長、よろしくお願いいたします。

三浦政府参考人 今回の北堺の事案につきましては、大変遺憾な事案であるというように思っております。

 この事案につきましては、防犯カメラ画像等の表示時刻の確認を怠ったことでありますとか、関係者供述に対する裏づけの不足でありますとか、本来行われるべき基本的な捜査や幹部による捜査指揮が十分に行われなかったことが問題点として認められたものと承知をいたしております。

 大変遺憾な事案でありまして、警察におきましても、この事案の反省を踏まえまして、客観証拠の収集、精査の徹底、また、防犯カメラの画像等の正確な時刻補正の徹底、幹部による捜査指揮のチェックの徹底などの諸対策を講じているところでございます。

清水委員 今答弁されたので、私、それについて聞かせていただきたいんですが、ということは、一年前のこの大阪府警の反省、いわゆる慎重を期した捜査を徹底するだとか、緻密な捜査を展開するだとか、警察捜査に対する信頼回復を図っていく所存の、この反省は生かされなかったということですね、同じような事件が起こったということですから。そうじゃありませんか。

三浦政府参考人 事件においてはそれぞれケース・バイ・ケースでありまして、指摘される問題点というのも必ずしも全て同じというわけではございませんので、もとより、適正捜査、緻密な捜査を実践するというその大きなところにおいては共通する部分もございますけれども、そうした中で、また再びそうした誤認逮捕という事案が起きたということについては、まことに残念なことだというように考えております。

 また、そうした今回の事案の具体的な反省を踏まえまして、さらに緻密かつ適正な捜査が推進されるように、警察庁としても都道府県警察を指導してまいりたいと考えております。

清水委員 まことに残念だというふうにおっしゃったんですが、残念で済む問題ではないと思うんですね。

 資料の二枚目をごらんください。

 私、早速、出た判決要旨を取り寄せました。その二のところにこのように書かれております。「本件事件における捜査において、担当警察官は、納品書と防犯カメラ画像を自ら対比せず、防犯カメラ画像等の時刻補正をせず、ジャーナルの押収及び来店履歴管理システムとの対比をせず、防犯カメラ画像を押収せず、ETCカードの使用履歴の確認等の後足捜査をしなかったもので、同事件において通常要求される水準の捜査を行う職務上の注意義務を欠いていたというべきであり、国家賠償法上違法である。」

 今、三浦刑事局長おっしゃられました、客観証拠を収集してと。客観証拠は幾らでもあるじゃないですか。目の前の客観証拠を全く吟味せず、密室で長時間拘禁して自白を迫る、こうしたことが、PC遠隔操作の事件の問題から全く反省されていないんじゃないですか。

 山谷国家公安委員長、改めてこの事件についての所見を述べてください。

山谷国務大臣 本件について、防犯カメラ画像等の表示時刻の確認、精査不足、そしてまた、重要証拠の押収漏れ、関係者供述に対する裏づけ捜査の不足など、本来行われるべき基本的な捜査、あるいはまた幹部による捜査指揮が十分に行われなかったということは、非常に問題だというふうに考えております。まことに遺憾でありまして、今後このようなことが起きないように、しっかりと警察を指導してまいりたいと思います。

清水委員 もちろん国家公安委員長には厳しく指導していただきたいんですが、指導してもこうした問題がなくならないからこそ、やはり法律なり制度でしっかりと担保していかなければならないという議論をまさに今やっていると思うんですね。

 この誤認逮捕された男性は、自分より年下の若い刑事から何度も名前を呼び捨てにされた。大変屈辱的な思いをしたというふうにおっしゃっておられます。あなたは大体普通じゃない、こんなふうにも言ったと。あなたの汚れた手で子供の頭をなでられるんですかと言われ、耐えがたい屈辱を受けたと言うんですね。しかも、おまえはもう逃げられない、犯行を認めた方が刑が軽くなるぞ、このように自白を強要しているわけなんです。

 先ほど、このような捜査手法については問題だというふうに山谷国家公安委員長はおっしゃられたんです。改めて私は聞くんですが、こうした、今私が述べたようなことは、これは違法ですよね。いかがでしょうか。

山谷国務大臣 こうした間違ったことが起きないように、警察としましては、客観証拠の収集、精査の徹底、防犯カメラ画像等の正確な時刻補正の徹底、幹部による捜査指揮のチェックの徹底等の諸対策を講じてきたところでありますが、このようなことが起きたというのは非常に残念であります。適切ではなかったと考えております。

清水委員 その資料の二枚目、赤線を引いている三番のところを見ていただきたいと思います。「原告が犯人であるとの誤った前提に立って、事件に関する事実についての事情聴取を離れ、原告の心身に強い負担をかけて、原告の人格を非難するもので、原告の人格権を侵害し、国家賠償法上違法である。」と、裁判所が違法だと認定したんですね。ですから、私が今、山谷国家公安委員長に違法かどうかというふうに尋ねたのは、このことを根拠にしてお伺いしたわけです。

 こうした事件を二度と起こしてはならない、そういう決意のもと、この刑訴法等一部改正案、与野党しっかりと審議をしていかなければならないと思うんですね。

 私、上川法務大臣にもこの事件について伺いたいと思うんです。

 この間ずっと、司法取引だとか盗聴の拡大だとかがどうして必要かというふうに私が訴えてまいりましたら、上川大臣は常に、いわゆる取り調べや供述調書に過度に依存した捜査手法がだめだったんだ、だから証拠の適正化、多様化を図るというふうにずっとおっしゃってきたと考えます。

 それで、この事件を見ますと、私が今述べたように、客観的な証拠は幾つもあったにもかかわらず、適正化、多様化どころか、それをないがしろにして自白を強要してきた。これはまさしく立法事実と矛盾するんじゃありませんか。どうでしょう。

上川国務大臣 委員から、私のこの間の答弁につきまして今御披瀝いただいたところでございますが、一連のさまざまな事態が発生したことを受けて、法務大臣のもとに検察の在り方検討会議が設けられて、そして平成二十三年の三月に提言という形で取りまとめられたということでございます。その中に、まさに、「国民の安全・安心を守りつつ、えん罪を生まない捜査・公判を行っていくためには、抜本的・構造的な改革」が必要であり、「追及的な取調べによらずに供述や客観的証拠を収集できる仕組みを早急に整備し、取調べや供述調書に過度に依存した捜査・公判から脱却するよう、その在り方を改めていかなければならない」ということで、今、一連の流れの中で起きたところでございます。

 さまざまな取り調べ手法そのものを駆使して真実に迫るということでございまして、そうしたことを適正に行うことができる、そういう現場でなければならないというふうに思っております。

 もとより、冤罪防止ということが趣旨でございますので、そういう意味での一連の取り組みということにつきましては、さらなる審議を尽くしていただきたいというふうに思うところでございます。

清水委員 この間、上川法務大臣の答弁が、冤罪防止が趣旨だというふうに言われているというのは、私の中では大きく前進してきたのではないかと思っております。

 というのは、もともと、任意性あるいは信用性、特信性を立証するということばかりだったんですが、やはり、在り方検討会議、今言われましたように、冤罪事件を生み出さない、ここにこそ刑事司法制度改革の一番大事な部分があると考えておりますし、今、証拠の適正化、多様化という前に、これを改革していく前に、目の前にある証拠さえ十分に生かし切れないのがおかしいのではないか、これは立法事実と矛盾するのではないかという指摘をさせていただいたわけです。

 この間、理事会、理事懇で大変苦労されている与党の柴山委員からも、そうだ、そうだという声をいただきまして、私も、大変御苦労されているんだなというふうに思いますし、尊敬もしておりますけれども、これは、与野党問わず、本当にこの刑訴法の改革の主題は何かということを改めて位置づけて、引き続き議論していきたいと思うんですね。

 改めて、これは法務省に聞きます。

 ガソリンの給油カードを窃盗して、そしてそのカードを使ってガソリンを給油した、このことで逮捕、勾留されたわけですが、この事件については、この法案で可視化の対象になりますか。

林政府参考人 御指摘の事件は、本法律案の録音、録画の対象事件とはなっておりません。

清水委員 可視化の対象事件になっていないということであります。

 では、今度は警察庁に聞きましょうか。

 先ほども言いましたように、違法な取り調べが行われてきた、これはそのとおりだ、論をまたないと思います。裁判所もそのように認定しました。では、取り調べ監督官は何をしていたんですか。

沖田政府参考人 本件につきましては、これは大阪府警でございますけれども、取り調べ監督官から、この取り調べに関しての監督対象行為があったという報告は受けていないところでございます。

清水委員 重大な答弁ですね、取り調べ監督官の報告がなかった。全くこれは機能していないというわけじゃないですか。

 ここでまた上川法務大臣に私は振るわけですが、この事件は可視化の対象になっていません。そして、取り調べ監督官も機能していない。こうした例で本当に冤罪を根絶できるんでしょうか。できると言うなら、根拠を示していただけませんか。

上川国務大臣 個別の事件の中で適正な捜査が行われて、そして公判の中で充実化を図るということについて、この個々の部分につきましては、適正な捜査が行われるということ、そしてそれが公判の中でも任意の取り調べの中での証拠としてしっかりとした役割を果たすこと、捜査の手法につきましては、多様化を図る、また適正化を図るということで、その捜査の手法そのものについては、恐らく、さまざまな犯罪によって、その捜査の手法の重みあるいはその組み合わせ、ケース・バイ・ケースでいろいろな取り組みがなされているというふうに思います。

 今、過去の事案の中でも、そうしたことで検証を加えながら、問題がなぜ起こったのかということを十分に検証し、それを現場に生かしていくという形の中で、二度とそうした事態が起こらないようにしていくということについては、現場で捜査に当たる者の使命としては、絶えずその基礎、基本にのっとってそれが運用されていくべきものであるということであります。

 問題が起こるたびにいろいろな形でまた検証が行われて、二度と起こさない、そうした決意のもとで実態としては動いているわけでありますが、それでもなおそうした問題が発生していくということについては、これは本当にゆゆしきことだなということを思っております。

 二度とないようにということについて、二度とこうした発言をすることがないような実態でなければいけないということでありますが、あらゆる角度からそうしたことがないようにしていくということの中で、制度そのものも、生きた制度として運用していくことができるようにしていくにはどうしたらいいか、こういうことも大きな御指摘をいただいたものというふうに考えております。

清水委員 意識や決意では冤罪はなくせない、これはもうはっきりしていると思うんですね。検証し、反省しても、同じような事件は起こっているわけです。

 それで、今、可視化されない対象事件で取り調べ監督官の役割が機能しないような場合、冤罪を根絶することができるのかという私の問いに対しては、答えられませんでした。これは私はそのとおりだと思いますよ。

 先ほど上川法務大臣も冤罪をなくすためにというふうにおっしゃられたが、今回の法改正で全てカバーすることはできておりません。それで本当に冤罪被害者の方々の思いに応えることができるのか。

 六月十日の参考人質疑、意見陳述を聞いていただいたと思います。その中で、布川事件冤罪被害者の桜井さんはもちろん、周防監督も含めて五人のうち四人の方が、冤罪の防止こそ刑事司法改革の目的だ、とりわけ録音、録画が冤罪防止の有効な手段の一つだ、そして、全事件、全過程においてこそ初めてそれは担保されるのだ、こう述べられたと思うんです。

 それで、私は、この取り調べの可視化の問題とあわせて、やはり、長時間勾留する、このことが、不当な取り調べや、あるいは自白の強要ということにもつながっていると思うんです。

 上川陽子法務大臣は、六月五日の当委員会で、私自身が取り上げた代用監獄制度あるいは人質司法、これと冤罪との関係につきまして、「留置施設における勾留が自白の強要につながるということについては、そのようなものではない」と答弁されたんですね。

 今の話を聞いても同じようなことが言えるのか。留置施設における勾留が、長期間勾留させることが自白の強要とは全く関係のないものだとおっしゃったんですが、今でもそう思われるんでしょうか。そう思われるんでしたら、その中身を説明してください。

上川国務大臣 長時間の取り調べイコール自白の強要という御指摘でございましたので、長時間の取り調べそのものが自白の強要につながるということについては、必ずしもそうではないというふうに答えたところでございます。

 何よりも、事案の真相を解明し、そして被疑者に刑事責任があるかどうか、また程度を明らかにするということにつきましては、幅広い事項につきまして、丁寧に、丁寧に聴取を行うということ、また、さらに詳細な供述を得るということも必要である場合があるということでございます。その結果として取り調べがある程度長時間に及んだとしても、そのことが直ちに自白の強要につながるものではないというふうに考えているということを答弁させていただきました。

 ただ、取り調べそのものが適正に行われるべきということは、これは当然のことであります。事案の真相解明を追求する余りに、そしてそのことをある意味では一本で追求するということになりますと、追求する余りのところから出てくる不適切な糾明ということにつながっていく、そういうリスクはあろうかというふうに思っておりまして、そういう意味で、事案の真相解明を追求する余り、取り調べにおける手続の適正確保が不十分なものとなるということについては、あってはならないというふうに思っております。

清水委員 今、丁寧に、丁寧にとおっしゃったんですが、それは無実の方に対しても同じことが言えますか、大臣。

 先ほどの堺のガソリンの給油カード窃盗事件で逮捕、起訴された男性は、八十五日間勾留されているんですよ。精神的にも参ってしまった、こう述べておられます。認めれば早く出してやる、こう迫られるんですよ。

 本当にやっている人に対して、今大臣がおっしゃられたことが必ずしも当てはまらないとは私は言いませんよ。無実の人にとって、八十五日間勾留して、認めたら出してやる、これが自白の強要以外何だと言うんでしょうか。

 それで、この男性は、途中でこう思ったそうですね。否認を続けたまま裁判で有罪になると刑が重くなる、認めて出て、執行猶予をもらった方がいいと。途中で、とにかくここから出たい、その一心で、やってもいない犯行を認めてしまいそうになったと。実際、接見した弁護士にそう述べているんです、もう認めようと思いますと。

 すると、弁護士は、やっていないなら否認し続けるべきだ、俺が何とかする、こう言って、赤堀順一郎さんという若手弁護士、当時まだ二年目ですね、この弁護士一人で、ETCの記録だとか、ガソリンスタンドの画像だとか、時刻補正の証拠だとか、実際に車を走らせてインターチェンジに行くまでの時間を確認するだとか、アリバイを確保するだとか、一生懸命やって、無実の証明をしたわけですよ。

 たった一人の新人弁護士ができることを何で警察ができないんですか。そんなこともしないで、証拠の適正化といって盗聴や司法取引を導入し、可視化はやらない。こんなことで本当に司法改革と言えるのか、真剣に受けとめていただきたいと思います。

 私は、改めて、全事件、全過程、また、今述べました赤堀弁護士は、痴漢冤罪の事件などにも多数かかわっておられまして、そうした場合は、プライバシーにも配慮しながら、被害者の供述についても一定可視化が必要だと。常に供述が変遷していく、あるいは取り調べ官の誘導によって調書がつくられていく、そうしたところが可視化されれば、その後、公判で任意性がしっかりと争われる。そういう点で、一部だとか、あるいは対象事件を狭めるということはあってはならないと思います。

 この委員会で議論をしていて、一つ、私は気になりました。林刑事局長が、機器が故障した場合、これは例外事由になるということなんですね。いろいろ、ICレコーダーのお話もされましたけれども、例えば、機械が直るまで取り調べを待つという選択肢はないんでしょうか。

林政府参考人 機器の故障で、他にも録音、録画をする機器がない場合、こういった場合には、今回、例外事由ということに当たって、録音、録画義務というものが生じないことになります。

 もちろん、それは義務が解除されるだけでございまして、そのまま録音、録画をせずに取り調べをするということは例外事由で当然ありますけれども、逆に、取り調べをしないというようなことも当然あり得ると思います。

清水委員 取り調べをしないこともあるというふうにおっしゃったので、できないということではないと思いますので、機械が壊れたら直るまで取り調べをしないというふうにすれば、せめてこの例外事由については落とせるんじゃありませんか。これは、布川事件の桜井さんも、真面目に検討したとは思えない、こういうふうに述べておられました。

 それで、私は、やはり全ての事件で可視化を実現するべきだというふうに述べてまいりましたが、六月九日の質疑で林刑事局長はこのように答弁されました。「全ての事件を一律に制度の対象とすることは、その必要性、合理性に疑問があり、制度の運用に伴う人的、物的な負担も甚大なものとなること、」云々とおっしゃられたんです。

 そこで、私は改めて聞きますが、全ての事件を一律に可視化制度の対象とすることにどういう必要性、合理性の疑問があるんですか。その必要性、合理性の疑問について、わかりやすく答えてください。

林政府参考人 全事件ということになりますと、そもそも、交通事犯も含めまして、検察官が取り扱う刑事事件の事件数というのは年間約百五十万件という膨大に上るわけでございます。そのうち半数以上の事件は不起訴となっておりまして、公判請求される事件というものは約六%にすぎない状況にあります。そしてまた、実際に供述の任意性について争いが生じる事件は、公判請求される事件の中でも千件に一件程度にすぎないということでございます。

 したがいまして、この点で、全ての事件が一律に録音、録画の必要性が高いとは言えないものと考えております。

清水委員 千件に一件であろうが一万件に一件であろうが、否認しているわけですよね。今おっしゃったように、取り調べ状況をめぐる争いが生じる事件の割合、この多寡によって録音、録画の必要性、合理性を判断するということであるとするならば、結局、割合が少ない事件については可視化しなくてもいいというふうに国民に聞こえますよ。たまたま自分が逮捕された容疑が任意性の争いの少ない事件だったら、取り調べの録音、録画の対象にならなくていいということなんでしょうか。

 もっと言うと、先ほどから私がずっと言っている大阪府警北堺署のこの男性の事件を可視化することは、必要性、合理性に欠けるんですか。どうですか。

林政府参考人 全事件を一律に録音、録画を義務づける制度の対象とするまでの必要があるとは言いがたいというのは、先ほど申し上げたわけでございます。

 もとより、録音、録画の必要性が高い場合というものは、そういった一定の対象事件以外にもあると考えられます。しかしながら、これは、個別の事案の内容でありますとか証拠関係などによることから、そのような場合を法律上の義務の対象として厳密かつ明確な形で適切に定めるというのは困難であろうかと思います。

 したがいまして、検察におきましては、こういった個別の事案の内容や証拠関係に照らして被疑者の取り調べを録音、録画することが必要であると考えられる事件につきましては、昨年、平成二十六年十月からは、罪名を限定せずに、新たな録音、録画の対象として取り組んでいるわけでございます。

清水委員 検察が必要性が高いと認定すればこの事件も可視化の対象になるということですが、必ずしもそうならないということなんですね。

 それから、制度の運用に伴う人的、物的な負担が甚大になる、こうも言われましたが、全事件を可視化の対象とすると、どれだけの人的あるいは物的、経済的な負担が大きくなるんでしょうか。その試算というものはあるんでしょうか。

林政府参考人 全事件を対象とした場合の予算的な試算というものはしておりません。

 いずれにしましても、年間で百五十万件というものについて全部を対象事件として録音、録画するとなった場合には、当然、捜査機関として、多数の録音、録画機器を調達、配備する必要があるほかに、機器の操作、点検整備、また大量の記録媒体の管理、膨大な録音、録画記録を証拠として視聴しなければならない、こういったことが人的、物的な負担となろうかと思います。

清水委員 そのコストがどれぐらいかかるか想定していないというお話を聞いて、私はちょっとびっくりしたんですけれども、試算していないのに、どうして根拠を持って物的負担が大きくなると。確かに数は多いですよ、でも、本来は、どれぐらいかというところまで試算した上で大変だと言うべきじゃありませんか。

 被疑者取調べの録音・録画に関する法務省勉強会取りまとめ、これは法務省がまとめたものです。これに何と書いているか。「取調べの可視化により実現しようとするメリットに見合わない多大な負担・コストを要することとなるのではないかといった問題を踏まえると、全事件の可視化は現実的ではない」と言っているんですよ。わかりますか。メリットですよ。メリット、デメリットで可視化するかしないか。コストですね。

 では、私、ここで改めて、コストと、可視化するかしないか、対象犯罪を限定することの関連性に道理があるかどうかということについて聞きたいと思うんですね。

 法務省、この間、冤罪事件で国が支払った和解金、国賠訴訟の総額、これは幾らになりますか。

林政府参考人 無罪判決が確定した被告人が、検察官による公訴提起が違法であるとして提起した国賠請求訴訟のうち、平成二十四年以降、国が賠償金を支払った事件は四件ございます。その合計金額は、九千百九十一万六千百二十一円であります。

清水委員 九千万円以上、国賠で支払っている。このコストはどうなるんでしょうか。

 さらにお伺いしますと、無罪の人を逮捕して、その人に対して補償する刑事補償法というのがありますが、これで、過去五年間、無実の方に幾ら支払いましたか。これは警察庁かな、法務省かな。刑事補償法に基づいて刑事補償金を払った金額。

奥野委員長 事前に話をしているんですか。

清水委員 もちろんです。資料も取り寄せています。

 ああ、ごめん、最高裁判所やな、これは。最高裁はきょう呼んでないな。失礼しました。それは答弁できへんわね。申しわけない。

 資料の四ページをごらんください。

 過去五年間、刑事補償金の予算額ということで出していただいたんですね。見てください。二十億円を超えるんですよ、無実の人を捕まえて、ごめんなさいということで。これは、一人当たり一日最高一万二千五百円でしたかね。これだけ払っているんですよ。

 次の資料を見ていただきたいんですね。

 これは、検察庁が、この間、可視化、録音、録画装置、あるいは記録媒体ですね、ブルーレイディスク、こうしたものを調達するのにかかった費用が十七億五千八百万。

 これは、まさしく単純比較できませんよ。しかし、この間、国賠や和解で九千万円以上、四件で払って、そして、今私が述べましたように、最高裁の方の数字でいいますと、刑事補償金、これは過去五年間で二十億を超える。

 このコストを考えれば、やはり全ての事件で取り調べを録音、録画して、こうした冤罪を生み出さない、無実の人を罰するということをしないということにした方が、よっぽど人的、物的コストを軽減できるんじゃないでしょうか。

 上川陽子法務大臣、今の資料等を見ていただいて、この間ずっと、全事件を対象にするというのはコストがかかるというふうにおっしゃっていましたが、こうしたコストのことを考えたときに、どうすることが一番国民のためにいいのか。このお金だって税金ですよ。御答弁をお願いいたします。

林政府参考人 やはり、無罪事件が確定した事件、さまざまな要因がございます。こういった形での国家賠償の金額でありますとか刑事補償の金額といったものと、今回の録音、録画に係るコストといったものは、単純に比較することは困難であろうかと思います。

清水委員 もちろん、単純に比較することはできません。しかし、冤罪を根絶できれば、今私が言ったような費用は必要がないわけで、そうした費用面、コスト面で、取り調べの録音、録画、全事件を対象にしていくということも私はできると思いますし、コストを理由にしてやらないということではだめだと思います。

 最後に、山谷国家公安委員長に一問質問して、質問を終えたいと思います。

 可視化対象事件についてですが、参考人の方も第一歩だというふうにおっしゃった。苦渋の決断で賛成したんだ、本当は全事件、全過程なんだ、しかし、わずか三%でもこれがきっかけになればという思いで賛成したというふうにおっしゃられました。

 この間、対象範囲を広げるということについては議論は排除しないというふうにも山谷国家公安委員長は述べられておりますが、一方で、警察庁としては、裁判員裁判対象事件がぎりぎりだとか、限度だと。現職の警察官にも私、直接聞きまして、驚きましたけれども、本当に消極的だなというふうに思いました。

 きょうの誤認逮捕の問題から、これは可視化されませんので、こうした事件を振り返りながら、改めて、全ての事件で全過程で可視化することの重要性、またその決意を述べていただけるでしょうか。

山谷国務大臣 参考人質疑、前回は速記録でと申しましたが、その後、インターネットできちんと見させていただきました。犯人でない人を犯人と誤認して、その人が刑に服するようなことはあってはならないわけでありまして、改めまして、刑事司法制度の役割の重み、適正捜査の重要性について思いを深くしております。

 その上で、警察においては取り調べの録音、録画の試行に積極的に取り組んでおりますが、裁判員裁判対象事件だけをとってみましても、ようやく五割程度にたどり着いたところでありまして、これを法の施行までの間に確実に実施できるようにしていくこと自体、警察にとっては極めて重い課題であります。取り調べの録音、録画が事案の真相究明等に与える影響を慎重に見きわめていく必要があると考えております。まずは、現在の対象範囲の中で、録音、録画をしっかりと行ってまいりたいと思います。

 全過程の録音、録画についてでございますが、将来の議論の対象としては必ずしも排除されないと考えております。

清水委員 終わります。

奥野委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時二十分散会


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